第101回国会 社会労働委員会 第11号
昭和五十九年六月二十六日(火曜日)
   午前十時二分開会
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         石本  茂君
    理 事
                遠藤 政夫君
                佐々木 満君
                浜本 万三君
                中野 鉄造君
    委 員
                大浜 方栄君
                金丸 三郎君
                関口 恵造君
                曽根田郁夫君
                田代由紀男君
                田中 正巳君
                村上 正邦君
                糸久八重子君
                本岡 昭次君
                和田 静夫君
                中西 珠子君
                山中 郁子君
                藤井 恒男君
                下村  泰君
   委員以外の議員
       発  議  者  片山 甚市君
   国務大臣
       厚 生 大 臣  渡部 恒三君
   政府委員
       文部省学術国際
       局長       大崎  仁君
       厚生大臣官房長  幸田 正孝君
       厚生大臣官房総
       務審議官     小林 功典君
       厚生大臣官房審
       議官       新田 進治君
       厚生省公衆衛生
       局長       大池 眞澄君
       厚生省環境衛生
       局長       竹中 浩治君
       厚生省医務局長  吉崎 正義君
       厚生省薬務局長  正木  馨君
       厚生省社会局長  持永 和見君
       厚生省児童家庭
       局長       小島 弘仲君
       厚生省保険局長  吉村  仁君
       社会保険庁医療
       保険部長     坂本 龍彦君
       労働大臣官房審
       議官       白井晋太郎君
       労働大臣官房審
       議官       野見山眞之君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        今藤 省三君
   説明員
       公正取引委員会
       事務局取引部景
       品表示監視課長  鈴木  満君
       警察庁刑事局捜
       査第一課長    藤原  享君
       警察庁刑事局捜
       査第二課長    上野 浩靖君
       警察庁刑事局保
       安部保安課長   加美山利弘君
       法務省刑事局刑
       事課長      北島 敬介君
       大蔵省銀行局保
       険部保険第二課
       長        田中  寿君
       文部省大学局審
       議官       齋藤 諦淳君
       文部省管理局企
       画調整課長    福田 昭昌君
       運輸省自動車局
       保障課長     福島 義章君
       自治省財政局調
       整室長      前川 尚美君
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  本日の会議に付した案件
○戦時災害援護法案(片山甚市君外五名発議)
○社会保障制度等に関する調査
 (食品添加物(アスパルテーム)に関する件)
 (高齢者の特定疾患治療事業適用に関する件)
 (死の判定基準(脳死)に関する件)
 (労災患者の健康保険適用に関する件)
 (私立学校教職員(学校法人三室戸学園)の社
 会保険適用に関する件)
 (船員保険法失業部門の運営に関する件)
 (飲料水に関する件)
 (乾電池回収に関する件)
 (人工妊娠中絶剤の承認、管理、取扱い等に関
 する件)
 (精神病院における医師等の不足、措置人院等
 に関する件)
 (大阪府医師会の一斉休診問題に関する件)
 (交通事故の場合の健康保険と自動車損害賠償
 責任保険との適用の調整に関する件)
 (差額ベッドに関する件)
 (高齢化社会の進展に伴う老人問題等に関する
 件)
 (がん対策に関する件)
 (厚生省関係の昭和六十年度予算に関する件)
 (国立病院、国立療養所の役割に関する件)
 (対がん十カ年総合戦略に関する件)
 (覚せい刑事犯とその取締り対策に関する件)
    ―――――――――――――
○委員長(石本茂君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。
 戦時災害援護法案を議題といたします。
 発議者片山甚市君から趣旨説明を聴取いたします。片山甚市君。
○委員以外の議員(片山甚市君) 私は、ただいま議題となりました戦時災害援護法案につきまして、日本社会党、公明党・国民会議、日本共産党、民社党・国民連合、参議院の会を代表いたしまして、提案の理由を御説明申し上げます。
 既に戦後三十八年を経て、あの忌まわしい戦争への記憶が一段と風化し、新しい戦争への危険さえもささやかれる中で、なお戦争の傷跡が生活を圧迫し、生命と健康を失った多くの一般戦災者が、国から何らの援護を受けることなく、戦争犠牲者として傷病苦と生活苦にあえぎながら余命をつないでいる現実を放置することはできません。
 私は、これら戦災者の心情と、報われることなく高齢化し、亡くなられる方々の続出する日々に思いをいたすとき、援護の手が一刻も早く差し伸べられる必要を痛感せざるを得ないのであります。
 振り返ってみますと、さきの大戦では、原爆投下を含の米軍の無差別爆撃によって、銃後と思われていた非戦闘員とその住居までも一瞬にして戦場に変え、我が国全土にわたる諸都市が焼き払われました。
 昭和二十年四月十二日の状況窮迫せる場合に応ずる国民戦闘組織に関する閣議決定は、「新たなる兵役義務により、真として動員し、統帥権下に服役せしめ得る必要な法的措置を講ずること」を決め、昭和二十年六月二十二日に、即時公布された義勇兵役法では、「国民義勇隊に参加せしむべきものは、老幼者、病弱者、妊産婦等を除くの外は、可及的広範に包含せしむるものを徴兵する」とし、いわゆる国民皆兵体制をつくり上げたことによっても、当時既に平和な銃後は存在せず、戦場そのものとなっていたことは明白であります。
 これによる一般市民の死傷被害は、沖縄を除いても優に八十万人を超え、罹災人口は実に一千万人を超すと言われています。中でも昭和二十年三月十日の東京大空襲は、わずか二時間余の爆撃によって全部の四割が一瞬にして灰じんに帰し、炎の中で約十万の都民の生命を奪いました。その惨状は、イギリスの一物理学者をして、原子爆弾攻撃による荒廃化を除けば、今までになされた空襲のうち最も惨害をほしいままにした空襲であると指摘させるほどでありました。
 昭和十七年二月二十四日に公布された戦時災害保護法では、昭和二十一年に廃止されるまでの間に十二万七千人の民間戦災者、傷害者、同遺族に対し、救済、補償もなされました。戦後、政府は、今日まで戦争犠牲者対策を、軍人軍属及びその遺家族など、昭和五十八年三月末現在約十一万五千人に限定してきているのであります。その後、準軍属と言われる人々など、わずかな対象範囲の拡大はあったものの、銃後の犠牲者に対する援護の手は、基本的に皆無に等しいまま、今日に至っているのであります。
 一方、今次大戦の同じ敗戦国である西ドイツでは、既に昭和二十五年に戦争犠牲者の援護に関する法律を制定し、公務傷病と同視すべき傷害の範囲を極めて広範に規定したため、援護の手はあまねく一般市民にまで及び、その対象は昭和五十二年六月末現在においても実に二百十七万八千人にも上っています。
 我が国の戦争犠牲者対策は、原爆被爆者に対する特別措置は別として、あくまでも軍人軍属等に限定しようとするものであり、こうした政府の態度は大戦の過ちを衷心から悔い改めようとする姿勢に欠けるぱかりか、軍事優先の思想がその根底にあるのではないかとの疑念さえもうかがわせるものであります。
 戦後三十八年を経て、いまだに放置されたままの一般戦災者に対し、国の援護措置を望む国民の声は戦災地域にとどまらず、それ以外の自治体からも決議、意見書が多く寄せられており、一夜にして十万人近い人々の命を奪われた東京では特に最近犠牲者を悼み、反戦平和を願う大集会が催され、その都度一般戦災者に対する援護が強く求められているところであります。本案はこのような国民の声を背景に、本案成立の日までは、いまだ戦後終わらずとの確信を持って作成し、再び提案するものであります。
 次に、本案の要旨について簡略に申し述べます。
 さきの大戦で空襲その他の戦時災害によって身体に被害を受けた者及び死亡した者の遺族に対し、戦傷病者特別援護法及び戦傷病者戦没者遺族等援護法(以下それぞれ特別援護法、遺族援護法という)に規定する、軍人軍属等に対する援護と同様、国家補償の精神に基づく援護を行おうとするものであります。ただし、遺族に対する援護については、遺族年金にかえて一時金たる遺族給付金百万円を支給することとしております。
 援護の種類別に申し上げますと、第一に療養の給付、療養の手当二万一千八百円支給及び葬祭費十万五千円を支給することであります。第二は、更生医療の給付として、補装具の支給及び修理、国立保養所への収容並びに日本国有鉄道への無償乗車等の取り扱いであります。第三は、障害年金または障害一時金を支給することであります。以上、支給要件、給付内容はすべて軍人軍属等におけると同様であります。第四は、遺族給付金、五年償還の記各国債として百万円の支給であります。遺族の範囲は、死亡した者の父母、子、孫、祖父母で、死亡した者の死亡の当時、日本国籍を有し、かつその者によって生計を維持し、またはその者と生計をともにしていた者といたしております。第五は、弔慰金五万円の支給であります。遺族の範囲はおおむね軍人軍属等におけると同じであります。
 なお、この法律による援護の水準を、特別援護法または遺族援護法による軍人軍属に対する援護の水準と同じレベルにしたことに伴い、これらの法律による準軍属に対する援護で、なお軍人軍属に対する援護の水準に達していない者については、同一レベルに引き上げる措置を講ずることといたしました。
 最後に、施行期日は、公布の日から、一年以内で政令で定める日としております。
 何とぞ、御審議の上、速やかに本案の成立を期せられんことをお願いいたしまして提案理由の御説明を終わります。
○委員長(石本茂君) 本案に対する質疑は後日に譲ります。
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○委員長(石本茂君) 次に、社会保障制度等に関する調査を議題といたします。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
○和田静夫君 まず、食品添加物の問題で若干の質問をいたします。
 味の素社のアスパルテーム製剤について、衆参の社会労働委員会でこれまで社会党の多くの委員が取り上げてまいりました。そこで、きょうその詰めを行っておきたいのでありますが、厚生省、まず第一に確認したいことは、アスパルテームはフェニルケトン尿症の子供たちにとって有害である。このことは確認をできますか。
○政府委員(竹中浩治君) アスパルテームが分解をいたしましてフェニルアラニンというものができるわけでございます。これは必須アミノ酸でございまして、母乳、ミルク、米等々に入っておりますが、フェニルケント尿症の子供さんは先天的な代謝異常で、このフェニルアラニンが入ると障害が起こるということでございます。
○和田静夫君 フェニルケトン尿症については、衆議院の答弁を読んでみますと、厚生省の見解は、小児科学会を通じて周知徹底を図っているから問題はない云々という形につながるわけでありますが、それで十分なのだろうかという点について私は大いに疑問であります。母親が低フェニルアラニン食をやっているから多分アスパルテームにも注意するだろうということになるのでありますが、絶対使わないという断言は私はできないと思うんですがいかがでしょう。
○政府委員(竹中浩治君) フェニルアラニンを全然とらないというわけにはまいりませんで、それをできるだけ少ない量に制限をするということでございます。
 それから、学会を通じてPRをするということをお答えをいたしたわけでございますが、それ以外にもいろいろの方法で周知徹底を図っておるわけでございます。特に、このフェニルケトン尿症の患者さんは全国に百三十一人おられるわけでございますが、その方々が四十九の医療機関にかかっておられるわけでございます。これは特別の医療機関でございますが、私どもその四十九の医療機関すべて把握をいたしておるわけでございまして、この四十九の医療機関を通じまして、個々の患者さんに個別に詳細に情報が行き渡るようにこの医療機関にいろいろの資料を配付いたしましてお願いをいたしておりますので、先ほど申しました百三十一人の患者さん及びそのお母さんは十分この点については周知をできておるというふうに考えておるわけでございます。
○和田静夫君 その人数は、おたくの統計によっても新生児で九八%。二%部分というのは放置をされていると見てよいわけですね。ここに対するところの、あなたの答弁によれば、保証はないわけですね。私たちは、一人の子供の人命だって尊重する立場です。その立場から見れば、放置をされている事態というものを看過することはできない、そういうふうに思いますが。
○政府委員(竹中浩治君) 先生お話しのように、九八・五%の新生児が検査を受けておるわけでございまして、逆に言いますと一・五%は落ちておるわけですが、今申しましたように、九八・五%の検査で百三十一人の方が見つかっておるということでございます。仮に、全国で一人ないし二人が落ちるという勘定になるわけでございますが、先ほども申しましたように、母乳あるいはミルク、米、ほとんどの食品にフェニルアラニンが相当多量含有されておりますので、この方につきましては、アスパルテーム以前にそういった食品が問題になるのではなかろうかと思っております。
○和田静夫君 すべてのものが問題になろうとは思いますが、一つの例を挙げながら論議をすることも私は価値があることだと思っていますから論議の追跡をやっているわけでありますが、私は、お医者さん乱造時代と言います軍医養成時代の年齢でありますから、たくさんの小児科の友人を持っています。小児科学会からどういう形のものが全般的に指示なり連絡としておりているのだろうということを、二、三の小児科医たる友人に尋ねてみましたところが、全然そういうものはおりていないと、こういうふうになります。わずかなものをその民間開業医が発見し得る状態にあるのかどうかということは、私は専門的立場にいませんからよくはわかりませんけれども、少なくとも、どんなにパーセンテージが少なくても対象者になり得ると思われる部分が存在する限り、そこに向かってやはり徹底した行政の方向がおりていくことが私は正しい姿だろうと思うんです。
 そこで、例えばコカ・コーラ・ライトが発売をされて二カ月になるわけですが、今言ったような指示が全然おりていない。この辺のところはどういうふうに今後周知徹底をさせるつもりなのか。あるいはさせる必要はないのか。承っておきたいと思います。
○政府委員(竹中浩治君) 一般的に小児科の先生方に御承知をいただくということも必要だろうとは思いますけれども、やはり先生ほど申しました検査の結果発見される特定の方々は特定の医療機関に、特殊ミルク登録医療機関と申すわけでございますが、その医療機関に必ずかかられるというシステムになっておりますので、この特殊ミルク登録医療機関を重点対象として周知をしていくということが最も効果のある方法だと考えておるわけでございます。
○和田静夫君 これは味の素のパルスィートの箱なんですがね。これに次のように書かれているんです。「アミノ酸系甘味料パルは 食品中に普通にみられる二種のアミノ酸からできています。たんぱく質と同じように消化・吸収・代謝されます。」、これを素人が読んだ場合、私も素人ですが、天然の甘味料と勘違いすることは必定だろうと思うんですね。これは全く安全なのだということを印象づけようとしているわけです。
 公取委、この説明文というのは消費者を錯誤させるというふうに考えますが、いかがでしょう。
○説明員(鈴木満君) お答えいたします。
 御承知のように、景品表示法第四条一号では、商品の品質とか効能等商品の内容につきまして一般消費者に著しく優良であると誤認される表示は不当表示として禁止されております。
 御指摘の表示がその不当表示に該当するかどうかというのはここでは直ちにお答えできかねますので、表示の内容等よく検討したいと思います。
○和田静夫君 同じようなことをきのう通告はしてはあるわけでありますが、時間が必要だと言われるのならば検討をしてください。
 同時に、コカ・コーラ・ライトの方は、「原材料名」のところに「アスパルテーム(合成甘味料・L―フェニルアラニン化合物)」という、これだけの表示ですね。これでは私はうっかり子供に飲ましてしまうことはあり得ると思いますね。先ほどの局長の御答弁ではありますが、あり得ると思う。これはフェニルケトン尿症には有毒であるというような、注意喚起の表示をする指導というものが私はあってしかるべきじゃないだろうか。これは強く要請をしたいのですが、お互いこの問題には素人である大臣、私の論議に間違いがありましょうか。
○国務大臣(渡部恒三君) 先ほど和田先生お話しありましたように、人間の命は、一人だからいい、二人ならだめというような認識ではありません。人の命は地球より重いということで私ども近代政治をやっておるわけでありますから、この種の問題について安全性を強調するということは、これは何よりも大事なことであって、それを怠ったための人の命に万一のことがあったのでは申しわけございませんから、そういうことのないように、念には念を入れよという考え方で行政において対処してまいりたいと思っております。
○和田静夫君 この味の素のパルは、私はこれは渋谷のデパートで手に入れたわけです。これは健康食品売り場で売られているんです。そうすると、少なくとも一部の人々に有害であるものが健康食品売り場で売られるということはどういうことだろう。これに対しては、厚生省はいかなる見解をお持ちでしょうか。
○政府委員(竹中浩治君) アスパルテームは非常にカロリーの少ないものでございまして、太りたくないというふうな方はこちらの方に目が行く、そういった意味で健康食品売り場に出ておるのではなかろうかと思います。
○和田静夫君 私は、これは健康食品売り場で売るにふさわしい品物だと思いません。これは厚生省と見解が違うところでしょう、きのうのレクチャーのところでは違うように思いますがね。アスパルテームは脳障害を起こす危険性が外国の学者によっては指摘をされています。おたくの方は、そういう危険性はないんだという見解のようであります。例えば炭水化物と一緒に摂取しますと、フェニルアラニンの脳内の濃度が通常の四倍になったという調査報告が、これはマサチューセッツ工科大学のリチャード・ワーツマン教授の報告であるわけですね。少なくともこういう報告は厳然として、権威あるものとして存在をしている。
 フェニルアラニンの異常な増加は、パーキンソン病や不眠症にも悪影響を与えると言われています。これが一般的な言われ方です。この辺については厚生省どういう見解でしょう。
○政府委員(竹中浩治君) 先生お話しのように、米国でワーツマン教授が、炭水化物と一緒に大量にアスパルテームを摂取した場合に、脳内のフェニルアラニンの濃度が増加をして神経伝達物質に影響を与えるという仮説を出されたわけでありますが、これについては、アメリカのFDAで十分な検討を行いまして、アスパルテーム投与によってもそういった神経伝達物質は変化をしないということを確認をし、安全性に問題はないという結論を出しております。
 私どもの食品衛生調査会でも、この点については十分御議論をいただいて問題がないという御結論をいただいておるわけでございます。
○和田静夫君 そこで、安全であると言われるものであったならば、そのデータは提示できますか。
○政府委員(竹中浩治君) 今申しましたように、ワーツマン教授の言っておられること、それからFDAの検討経過等について、いわゆる論文のような格好ではございませんが、FDAの検討経過等については、もしあれでございましたらお出ししたいと思います。
○和田静夫君 厚生省、このアスパルテームの審議資料を消費者団体が分析をされたものを見てみました。恐らく厚生省も把握をされているでしょう。それを見ますと、味の素が出した資料はずさんきわまるものであるということになっているわけです。まず、亜急性毒性実験は投与量が少ない。それから実験をやったというポーズだけだというふうに指摘をしていますね。慢性毒性実験については具体的数値なしという状態であります。また、催奇形性、あるいは骨格異常、発がん性などについてもこれは不備を指摘をいたしています。これはもう公にされていますね。
 私は、食品衛生調査会でもう一度やはり安全性についての審議をし直す必要があるとこれらを読みながら思うんですがね、その必要をお認めになりますか。
○政府委員(竹中浩治君) 一部消費者団体からいろいろ御意見を承っておりますが、それらの点につきましては、いずれも食品衛生調査会で十分検討をしていただいた上で昨年の八月指定をいたしたわけでございます。
○和田静夫君 指定のときだってかなり問題がありましていろいろ論議をしたところでして、問題はその後における指摘がずっと続いているわけでありますから、大臣、この辺のことはやっぱり謙虚に受けとめられて、調査会が再議するぐらいのことをやるのが当然のところだろうと思うのですがね、いかがでしょう。
○政府委員(竹中浩治君) 先ほど申しましたように、一部の消費者団体からいただいておる御意見につきましては、それぞれ去年の食品衛生調査会で既に御検討をいただいた点でございますので、もう一度食品衛生調査会にお諮りをするという必要はないと考えております。
○和田静夫君 私は、あなたはそういうふうに固執されますが、代替物がないのならば話は別であります。甘味料として天然に存在しているものがある。それにもかかわらず安全性に疑問があるという指摘のあるものについてなぜ行政はそんなに固執をしなきゃならぬのですか。私はそういう固執をされる姿勢というものに疑問を感ぜざるを得ません。問題は、企業の利潤追求のために安全性がないがしろにされるということが万が一あった場合、その時点でもってあなた方が責任をとるということにはならないのであります。ここのところは私たちは政治の姿勢として、もっとしっかりしなければいかぬと思うんですね。
 大臣、そこのところをちょっと答弁願います。――これは大臣の答弁ですね。
○国務大臣(渡部恒三君) 先ほど素人というお話が出ましたが、全く私も素人で、大臣に就任して最初この説明を聞いたときに、今和田先生おっしゃったように、私は農業出身ですから、どちらかといえばこれはてん菜糖とかサトウキビとかが今過剰で困っているときに、なぜこういう甘味料を輸入しなければならないのかというような素朴な疑問も持ったのでありますが、その後いろいろ説明を聞いてみますと、これは私なんかやせていますし、ありがたいことに今のところ糖尿病の気もありませんのでそういう感じを持ったのですが、やっぱり糖尿病の心配がある人とか太り過ぎの人が甘味料として、今までとっておったいわゆる天然甘味料でないこの種のアスパルテームというような甘味料を求めておるという、消費者のニーズもこれはかなり多いようであります。やはり今時代が非常に進んでおりまして、消費者のニーズというのが大変多様化され、変化されてきておりますから、そういう消費者の多様化したニーズにもこれはこたえなければならないということでございまして、もちろんその前提としてこれは安全性の確保に私ども自信を持てるように全力を尽くして努力するのはこれは当然のことだと思います。
○和田静夫君 私は、やっぱり一〇〇%安全性が確保される努力というものを行政として常に怠りなくやるべきである。その意味で私は、若干でも疑義が残る以上、すなわちすべての人が納得し得るデータが得られるまでは、こういうものは販売を中止するのは当然だ。糖尿病のお話がございましたけれども、どういう種類のものでも甘味料を使わないのが一番いいのでありまして、そしてそれになれていけばちゃんとできるわけですから。そういうふうに思います。したがって大臣、意見として述べておきますが、注意を喚起をされながら指導をされるように期待をいたします。
 次に、難病でありますが、難病疫学研究班が行いました調査によりますと、七十歳以上の難病患者が過去五カ年間の総計で全体の一六・一%いたということが判明したわけであります。厚生省は、七十歳以上には難病患者はほとんどいないということを念頭に置いてきた時期があるわけでありますが、この調査結果についての見解をまず承ります。
○政府委員(大池眞澄君) 難病の疫学研究班の調査結集によりますと、ただいま先生のおっしゃいましたように、五十三の疾病につきまして老人の占める比率は御指摘のような数字になっております。いわゆる難病の患者につきましては、最近の医学医術の進歩に伴いまして、高齢者の占める割合というものは増加してきているということが期待されておるわけでございますが、今回の調査におきまして、他の一般の疾病の全体の患者さんに比べますと、老人の割合はまだ低い比率になっておるわけでございます。しかし、相当おられるということは判明したわけでございます。
 このような難病患者さんの中で、特定疾患の治療研究事業の対象となる方につきましては、老人保健法の適用によりまして自己負担を生じた方について昨年の八月から公費負担を行いまして、患者さんに負担が生じないような措置は行っているところでございます。
○和田静夫君 難病患者の難病申請の現状というのは、どういうふうになっているんでしょうか。
○政府委員(大池眞澄君) 七十歳以上の難病の患者さんの公費負担の申請方法についてでございますが、大きく分けますと二つございます。
 患者さんが医療機関の窓口で一部負担金を支払われた後に、各都道府県にその額を請求いたしまして償還を受ける、いわゆる償還方式がその一つでございます。次は、医療機関が患者さんからの一部負担金は受領しないで、患者さんにかわって医療機関が各都道府県に請求をする、いわゆる現物給付方式、こういう二つに分けられます。
○和田静夫君 新しい調査で新事実が明らかになったわけですから、私は、現行制度の見直しというのが当然日程に上ってくるんだろうと思うんですが、こういう点は大臣どうなんでしょうね。
○政府委員(大池眞澄君) 難病の中で、特定疾患につきましては、現在御承知のように、特定疾患治療研究事業及び小児の方についての小児慢性特定疾患治療研究事業におきまして、各種の保険制度の中で自己負担額の生ずる部分を公費の方で援助をしているということでございますが、年々その対象範囲の拡大を図ってきているところでございます。
○和田静夫君 大臣、私は今回の調査によって新たな事態が生じたと認識しているわけです。難病の認定というのは、高齢者でなくても非常に難しいんだそうですが、困難が伴う、医者がなかなか認定しないケースが多いように思いますね。今回の調査結果を踏まえて、認定手続の面でもっと簡便化できないのだろうか、工夫はできないんだろうかということを考えるんですが、これはひとつ検討をされませんか。
○国務大臣(渡部恒三君) 今御指摘のありました難病患者の問題に対する対策、これは健保法の改正等の問題とも関連するものですから、私も今まで勉強してまいりまして、このような状態になっておられる方、これをあんまり窮屈にしてお困りの方が出るようなことがあってはならない、できる限り国がお手伝いをするように、行政の面でもできるだけそういう手続を簡素化するとか、範囲を拡大するとかいうことの必要性は認識しておりますので、前向きの姿勢で今後対処してまいりたいと思います。
○和田静夫君 二十二日に、阪大の医学部が脳死の新しい基準といいますか、脳死判定基準を脳死検討委員会で公表をしていました。「自発呼吸の停止」あるいは「瞳孔の散大固定」あるいは「脳幹反射の消失」、そういう三つの項目を基本にして脳死の判定を定める。厚生省としては、これ、どういうコメントをされるんでしょう。
○政府委員(吉崎正義君) 脳死につきましては、今日最も基本的なことは、まず脳死の判定をいたします医師の間で合意が形成されること、そうして引き続いて、広く国民の間で合意が形成されることであると考えております。そのためには、最も大事なことは、広く国民各界の間で議論が行われることであると考えております、そういう意味で、今回大阪大学が脳死の判定基準をつくられたということは評価できるところでございます。
 厚生省といたしましても、昨年度から脳死に関する特別研究班を設置をいたしまして研究を続けておりますけれども、その研究の参考にもなろうかと存じます。大阪大学におかれましては、今後も学内の倫理委員会でさらに議論を進められるということでございますが、私どもといたしましては、幅広く慎重に議論を進めていただくことを希望しているところであります。
○和田静夫君 脳死は臓器移植と結びついているわけでありますが、臓器移植が進むとともに、脳死あるいは臓器移植そのものについてのトラブルが増加することが考えられます。厚生省としてやっぱり今検討を進められているわけでありますが、脳死判定作業をかなり急ピッチでやる必要があるんじゃないだろうかと考えますがね、この辺いかがですか。
○政府委員(吉崎正義君) 確かに臓器移植とも深いかかわりがございます。ですけれども、基本的には、脳死をもって個体の死とするかどうか。これが、これまでは心臓がとまったという非常にわかりやすいことでありまして、医学が進歩してこういう状況が出てきたわけでございますので、できるだけ早く合意に到達することはまことに望ましいのでありますが、なかなか国民の間でどれだけ早く合意が形成できるか。先ほども申し上げましたけれども、できるだけ各界で広く議論を展開していただきたい。その場合に、御指摘のございましたように、医師の間で脳死に関する判定についての合意、これは一刻も早く形成されるべきであると考えております。
 私どもお願いしております研究班は、目途といたしましては五十八、五十九の両年度でお答えをいただきたいと期待をいたしておるところでございます。
○和田静夫君 フランス、イタリア、カナダなどでは脳死は法律で規定をされています。私は日本でも法律で明確に規定しておく必要があるというふうに考えるんですが、また、臓器移植についても法律による規定が必要ではないだろうかと最近思いますがね。アメリカでは臓器の売買が実際に行われているようですね。臓器の売買を禁止する必要はないんだろうか、私は、あるんじゃないか。また、臓器移植を急ぐ余り、脳死判定があいまいにされるおそれもあるわけでしょう。それらの規制を含めた法律が私は制定をされるべきだと思う。渡部大臣の在任中、あなたの一つの仕事としておやりになりませんか。
○国務大臣(渡部恒三君) 大変大事な話でございまして、今和田先生から激励を賜りますと、私も、これはまさに歴史的な大きな仕事であると思いますので、これに取り組んでいきたいという意欲を痛感するものであります。ただ、人間生活の中で長い間続けてきた慣習、伝統、しきたり、そういうものを一片の法律によって破れるものかどうか、非常に難しい問題をはらんでおると思います。しかし最近、内臓移植等の問題は近代医学が進み、いろいろマスコミ等でも、またこの国会でも議論されて、国民的な幅広い関心はもうかなり出てきておると思うんですが、その関心がさらに突っ込んでいって国民的な合意というものがある程度の最大公約数で形成されていかないと、なかなかこの死について法律に書き込むという作業は極めて困難なことだろうと思います。
 しかし、今日の近代医学の進歩する状態というようなことを考えますと、もうこの問題を避けて二十一世紀に進むことはできないということを痛感しておりますので、一生懸命勉強してまいりたいと思います。
○和田静夫君 大臣も余り気が進まなかった、また、与党の中でも大論議がある健保改悪なんというようなものをやるよりも、今あなたが脳死に関する法律をおつくりになれば、日本の政治史上、ずっともう不滅のものとして残っていく仕事になると私は思っていますから、ぜひ努力をしてください。
 最後に、千葉県の労災職業病対策連絡会の調査、これによると、労災保険の打ち切り後に健康保険で治療を受けているケースがふえているということになっていますね。会員中約三割が労災保険を打ち切られた後も健保で治療を受けているということになっている。労災は本来健保で見るべきものではないんですが、この辺の実態を、一つは厚生省の側から、それから一つは労災担当の労働省の側から伺いたい。
○政府委員(坂本龍彦君) 健康保険と労働者災害補償保険との関係は、労働者災害補償保険の方が業務上の傷病について給付をいたすことになっておりまして、健康保険は業務外の傷病について給付をいたすことに、これは法律上はっきりいたしております。したがいまして、業務上傷病であるということが明らかであれば、これは健康保険法からの給付はできないということになっておるわけでございます。
 しかしながら、実態といたしましては、具体的ケースについて、傷病が発生した時点、あるいは今回の新聞記事にもありましたように、一定期間経過後、それぞれ法律に照らしました場合に問題のある実態というのはあるようでございまして、私どもとしては、できるだけそういうケースについては発見をいたしまして、これを適正な取り扱いに改めるように努力をいたしておるところでございます。
○政府委員(白井晋太郎君) お答えいたします。
 今の件でございますが、労災保険の場合は、もう既に御存じと思いますけれども、傷病の状態が固定して療養の効果が期待し得ないと認められるに至ったときは治癒として処置いたしております。その結果、療養補償給付は打ち切られるわけでございますけれども、一定の障害が残った場合には障害補償給付を行うことといたしております。
 今回の千葉の件につきましては、まだ詳細なことはよくわかっておりませんが、私の方で調べましたのでは、はり、きゅうの治療で療養を継続していた方十名につきまして、専門家の基準に基づきまして、治療効果が期待できないということで、昨年六月三十日に治癒と認定したということが調査の結果出ております。その後、四名の方はこれに対して不服審査を請求しておられ、二名の方は先ほども申し上げました障害補償給付の請求を行っているというふうに結果が出ております。
 なお、これらの方々が健保とどういう関連にあるかについてはまだ調査ができておりません。
○和田静夫君 私は、千葉のみならず全国的にかなりあるのではないかと思うので、これは実態を至急に調査されて、完治していない労災患者の対策というのをやはりお立てになる必要があると思います。これは両省から一言ずつちょっと――。
○政府委員(坂本龍彦君) 現在、私どもの政府管掌健康保険におきましては、いわゆる診療報酬のレセプトにつきましてこれを常時点検いたしまして、業務上の傷病が実際に健康保険の方で給付されているようなケースがないかどうか常に把握をいたしておりまして、そういうのが発見されました場合にはそれぞれしかるべき措置をとっておるところでございますが、今後とも同様の措置を続けていきたいと考えております。
○政府委員(白井晋太郎君) お答えいたします。
 先ほど申し上げました治癒と見られる後もし障害が残った場合は障害補償給付、さらにそれに伴いまして鈍痛とかしびれ等のある場合には、特に必要な場合にアフターケアを福祉施設で、ということで実施いたしております。
 したがいまして、治癒したかどうかという問題は非常に難しい問題もございますが、今の体系の中でそういう処置をとってまいりますけれども、アフターケアの制度の問題のあり方についてはいろいろと検討すべき点もあるというふうに考えておりますので、現在、労災保険基本問題懇談会において検討をお願いしておりますが、さらにそれを進めてまいりたいというように思っております。
○和田静夫君 労働省、先日の委員会に引き続いてですが、東邦音楽大学ですが、先日雇用保険については問題点を指摘をしました。きょうは健保、共済について指摘するんですが、全学の教職員二百名中二十四名しか雇用保険に加入していなかったわけですが、指導の結果どうかなりましたか。まだ時間がありませんか。
○政府委員(野見山眞之君) 先日和田先生から御指摘ありました雇用保険の未加入問題につきましては、御質問のありました翌二十二日に飯田橋職安の次長、関係課長が学園に赴きまして、学園の事務局長等責任者に対し必要な加入手続をとるよう指導いたしましたところ、学園側はその適用につきまして了承したわけでございます。それで、昨日まで教職員各個人につきまして関係書類をチェックした上で被保険者としての資格要件の有無の確認をしました結果、昨日現在、五十六名の教職員につきまして所要の手続を終了いたしまして、現在、八十一名の教職員について被保険者となっているという状況でございます。
 なお、残った方々につきましても、資格要件の有無につきまして一両日中にこの確認事務を終了する見込みといたしております。
○和田静夫君 私の調査では、私学共済への未加入者も非常に多いことがわかりました。専任の教員中四十五名が私学共済に未加入であります。これは五十八年四月の数字ですが、現在もほとんど変わっていないはずです。
 それで、これはまず文部省にお尋ねしますが、専任の教員、常勤者が被用者保険に加入していないということはどういうことになりますか。
○説明員(福田昭昌君) 私立学校の専任の教員につきましては、すべて私学共済組合の組合員資格が認定されることになっておるわけでございます。この認定は学校法人からの届け出に基づきまして私学共済組合で行われているところでございますが、三室戸学園の場合、専任の教職員全員について届け出がなされているかどうか、これにつきまして、私学共済組合としては承知いたしておらないところでございます。
 仮に、専任教職員でありながら所定の手続をこの学園がとらず、私学共済組合に届け出を出していないということであれば大変遺憾なことでございますので、今後十分指導していく必要があると思っております。
○和田静夫君 あなたの答弁はちょっと気に食わぬのですが、いわゆる私学共済の側面から見て欠落があるかどうかというのはわからないことはよくわかっています。しかし、この三室戸学園というのは、もともと文部省との関係においては大変問題がありまして、あなた方の指導で七項目の行政指導が出てみたり、あるいは理事長が交代してみたり、いろいろあった過程では、賃金台帳その他というのは全部お調べになっているはずです。賃金台帳で見ていけば保険料が引かれていないというような教職員についてはすっかりわかるわけでありまして、あったならばではなくて、現実にあることはあなた方は認識しているわけでしょう。認識しておれば今日までなぜ指導をしなかったか。これはもう明確に文部省側にもそういう意味では落ち度があるわけでありますから、あなた方は自分の置かれている立場というのを十分に認識しながら答弁してもらわなきゃいかぬ。この前の委員会では余り強いことを言わなかったし、余り平場でこういう問題をやりたくないから、いろいろと文部省に私は注意をしてきた、長い間かかって。あなた方の姿勢自身がいわゆる三室戸学園の理事長以下の姿勢を直さない、そういう状態にも通じていることを認識しておいてもらいたいんです。
 そこで厚生大臣、常勤の大学教員が雇用保険にも入っていなかった事実があって、先週の委員会以降、ああいうふうに指導が若干進んできたわけですが、今度は、被用者健康保険にも入っていないんですよ。そんなことが大臣、常識的に考えられますか。私は、これは文部省には常勤扱いの報告で出ているけれども、非常勤扱いというようなことでやってきているがゆえに結果的にこういう事態が実際は起こっているんだと思うんですね。そうすると、健康保険法との関係においてですが、全般を掌握をする厚生大臣としてはこのことをお聞きになってどういうコメントをされますか。
○国務大臣(渡部恒三君) 私は、いろんな会合で終始申し上げておることは、戦後の日本のすばらしい発展の一つの大きな原動力は、国民皆保険、国民皆年金、国民のすべての皆さんが保険に加入して、お医者さんに、あるいは病院に入院できるということだということを申し上げておりました。そういう中で、国会議員なんかで健康保険を持たない人なんというのも例外的にはありますが、今御指摘のあったような問題は、大変申しわけありませんが初めてお聞きするので、そういうはざまというものも行政の中ではいろいろ出てくるものかなと思って今お聞きしておったのであります。これは、国民すべてがいずれかの保険に入って、万が一に備えるということがあくまでもこの国の社会保障の原点でありますから、そういう谷間が生まれてくることは好ましいことではありませんので、行政の指導で一日も早くそういう谷間は埋めていかなければならないと思っております。
○和田静夫君 これは大臣、ひどくて話にならぬのですが、例えば芸大を卒業して、日本では有数など言われる音楽家の助教授なら助教授、二十年間この大学に勤めておって、わずか六万円にもならぬような賃金なんですよ。したがって、健保の適用を受けようと思って窓口へ持っていけば、窓口の事務に携わる私学共済の皆さんにしろ、あるいは社会保険事務所の皆さんにしろ、だれだって、二十年たっておって四万円や五万円や六万円という賃金があるはずがないじゃないか、これはうそだ。そうすると、理事者側はそのことをいいことにして、そんなに面倒くさいのならば、これは健保適用の申請をしない。同時に厚生年金、いわゆる年金適用の申請をしないことになりますね。そういう状態の中で、面倒ですから、泣く泣く夫の扶養家族としてずっと行く、あるいは国保に加入するというようなことが起こる。国保に加入する人はまだ年金への道がありますが、夫の扶養家族というようなことになってきたら、これはそういう道もない。そして二十年たってしまっているこの行政の責任、いわゆる年金受給権というものが本人は奪われてしまっているわけですね。これから後おばあちゃんになっちゃうとか、おじいちゃんになっちゃうというような形になってしまいますがね。この辺のところのはざまですが、この二十年というのは、これは行政として文部省どういうふうに保障するんですか。
○説明員(齋藤諦淳君) 先生も十分御案内いただいておりますように、三室戸学園につきましては、昨年度からいろいろ指導をしておるわけでございます。それで、理事長の交代等もありまして、そういう意味ではできるだけ理事体制を刷新しながら、私立大学のことでありますので、私どもとしては後方から指導をするという、そういう態度で来ておるわけでございます。そのために、今御指摘を受けましたように非常にいろいろな問題がまだ残るわけでございますけれども、私どもといたしましても、具体的な七項目等を示して、全体として大学の体質を直しながら健全なものにしていきたい、こういうふうなことで、非常に時間がかかっておる、こういう事情であるわけでございます。
 理事長もかわりまして、私どもといたしましては、その後も再三関係者等とも接触をいたしております。実は、昨日も呼んで接触いたしておるわけでございますけれども、そういう意味で、個々の問題もございますけれども、やはり全体としていろんな問題は何かといいますと、基本的には大学の運営の体質に問題がある、そういうふうなことで非常に時間がかかっておるところでございまして、今後とも個々の問題にも注意しながら全体として健全な運営を図るように努力をして指導をしたいと、こういうように考えている次第でございます。
○和田静夫君 私学共済法によれば、専任の教員は加入を保障されているわけですね。ということは、先ほども言ったように、この場合は専任制が非常に疑わしいということに、逆の意味じゃなっているわけですよ。つまり、専任と位置づけられながら専任並みの扱いを受けていないという状態ですね。ここのところを文部省としても事実関係をきちっと把握をして、そして厳正に対処をしていただきたいと私は思います。
 それから、この前もきょうもございましたが、個別の私立学校の個々の内容に立ち入らないという趣旨の一般論として私はわからぬわけじゃありませんので、皆さん方と連絡をとりながらやってきたわけでありますが、一向に速度が早く進まないものですから、どうしても問題として提起をせざるを得なかったのでありますが、どうもこの学園の異常性というものがどこから来ているのだろうかということを考えてみると、やっぱり学園の理事者、理事長以下の体制に問題がある。ワンマンの体制というのはやっぱりどこかでひずみを出すものですよね。
 教員の常任制について非常に問題があると同時に、教員の身分、給与、社会保障からして、学園側の文部省に提出している教員数というのは虚構だということに私はなると思うんです。雇用保険の適用もやっていなかったとか、健保の適用もやっていなかった、もうみんな虚構の報告ですよ、結果的には。そういうことに判断ができると思う。学園側は、大学三十四名、短大三十五名を専任教員だと報告している。ところが、逆の意味で雇用保険やあるいは私学共済の適用から見ていくと、そのほとんどはこれは実質約には非常勤だということを白状していることを意味するわけです。したがって、そういう側面から指摘をすれば、依然として学校教育法違反の状態というのは続いている、私はそういうふうに見ておいてしかりだというふうに考えています。
 さらに、労働省とこの間論議をしましたが、学園側が就業規則案を提示をしていることは事実でありますが、就業規則中の給与規程には大学の俸給表はありません。六月八日に、今までの労働省あるいは文部省のいろいろな運びもありまして、学園側は二次回答を提示をいたしました。そこでは若干の改善があったとはいえ、基本的に時間給であることに変わりはないんです。就業規則には大学の俸給表がないのでありますから、就業規則を労働基準監督署に届け出たとしても事態は改善をされないということになります。この点も文部省しっかり認識をしておいてもらいたいと思います。労働省は、労働基準局長からこの間明確な答弁がありましたが、労働省側もこの扱いについては、私が危惧するようなことが起こらぬように労働省はすると言われているわけでありますから、そこのところは確認が願えるのならばこの機会にもう一遍確認をしておいてもらいたい。
 私、先ほど大学三十四名、短大三十五名の専任がいる、合わせて六十九名の専任教員がいると言いましたが、ところが文部省、組合側に提示されたところの文書、これを見ますと専任は五十六名となっているわけですよ。どこを信用していいのかさっぱりこれわからぬのですが、文部省への報告と組合側への回答というのは数字が合っていません。ここのところも認識をしておいていただきたい。調査をしてもらいたい。
 この辺で一遍ちょっとまとめた答弁をしてください。
○政府委員(白井晋太郎君) お答えいたします。
 就業規則の件でございますが、これは前回私の方の局長が申し上げたところで処理いたしておりますけれども、今先生おっしゃいました賃金の問題につきましては、教職員の給与に関する事項は別に定める給与規程によるということで、給与規則の案の中に別表が入っております。ただ、これは、組合側からの事情聴取によりますと、大学、短大の教員の俸給表が抜けているということのようでございまして、その辺を学校側に対して聴取するとともに、もし抜けているとすれば就業規則としての適法なものとは言えないので、そこを十分指導してまいりたいというふうに思っております。
○説明員(齋藤諦淳君) 大学の教員の数につきましては、私どもも三十四人と把握しておるわけでございますが、そのうちには授業を持っていない人が三人おったりいたします。したがいまして実質三十一名、この中には先生のおっしゃるように非常に俸給の低い者もあったりいたします。ただし、専門の方の先生の数から言いますと、基準数よりは相当オーバーしております。その点は設置基準からいってそれほど問題はないわけでございますけれども、先生の配分で、一般教育のところは非常に手薄になっております。そこのところは非常に問題であるので、昨日も理事長に対しまして特にその点について厳しく指導を申し上げたばかりでございます。
○和田静夫君 いろいろ文部省も行政指導をやっていらっしゃるし、形式は整うが実効は上がっていないという状態がある意味では厳然としてある。私は、先ほども申し上げましたように、皆さん方の私学に対する行政指導の限界というものは理解をしているつもりでありまして、だからといって余り放置できませんので、やっぱり私は期限を切ってこの学園に対して強力な指導をなさるように要請をいたしたいと思いますが、いかがでしょうか。
○説明員(齋藤諦淳君) 個々の大学の諸般の情勢とか、あるいは今七名の理事のところ一名欠けておったりいたします。それから教学体制についてもいろいろ検討をしておるようでございまして、そういう情勢を見ながら対処していきたい。結果的にできるだけ早急に事態が改善されるように努力はいたしたい。こういうように考えております。
○和田静夫君 そうこう論議をしていましたら、先週の土曜日に理事長が、ひそかに非組合員の教職員だけを集めて理事長派の組織化を図るというようなことを画策してみましたり、どうも姿勢に問題があるんです。これは不当労働行為なんですね。そんなことをおやりになるならまた不当労働行為で論議をせざるを得ませんが、文部省、そういう無用な混乱をもたらす動きというのは間違っているんだということもしっかり頭の中にたたき込むような行政サイドとしての指導もやっぱり心がける必要があるというふうに思うんです。現象を糊塗して逃げよう逃げようとしたって、そんなに簡単にいきませんよ。私だって一遍取り上げたものを、一年かかろうが二年かかろうが、改善が終わるまではずっと取り上げ続けますからね、あらゆる委員会を通じまして。
 それから警察ですが、先日問題提起をしました文京区大塚四の百二十八の土地買収にまつわる疑惑ですが、新しい材料を入手しましたので、ここで明らかにして、捜査当局の調査をさらに要請をいたしますが、この土地は、雅慶と学園との五十四年十月六日の土地売買契約で購入をされ、そうして五十四年十月六日から五十五年三月二十四日までの四回に分けて支払ったとされているわけですね。土地売買契約書の末尾に支払い内訳書が載っていました。総額四億二千五百万円、うち第一回が三千万円、第二回が一億五千万円、第三回が六千万円、第四回が一億八千五百万円を支払ったことになっているわけです。ところが、私が入手をいたしました仮払い領収書によりますと、五十五年三月二十四日に支払われた一億八千五百万円は文京区音羽の別の土地の残金として支払われているんですね。ここで、この土地売買契約書にある支払いにどうも、どちらが偽造であるかは、後からつくられたものであるかは別といたしまして、新たな疑惑が発生をするわけです。
 警察庁、今までの調査結果、ここではつまびらかにできないと御答弁が先日の委員会でありましたから、そのことは今の段階では私の方として認めておくことにしまして、ここの点はどういうふうに対処をされますか。
○説明員(上野浩靖君) お答えいたします。
 お尋ねの件につきましては、つい先ほどでございますが、領収書のコピーを見せていただいたばかりでございますので、それについて、ただいまここでどのようなことになるかということについてはお答えいたしかねますので御了解いただきたいと思います。
 私どもといたしましては、先般来申し上げておりますように、また当委員会でも申し上げましたように、幅広く情報を収集中でございますので、その参考にさせていただくつもりでございます。
○和田静夫君 もう一言ですが、情報収集中であって、参考にされるというわけでありますが、今私が提起した問題については強力に調査をされる、こういうふうに理解しておいてよろしいですか。
○説明員(上野浩靖君) ただいま申し上げましたように、現在幅広く情報を収集中でございますので、必要であれば関係者からの事情聴取など、適切に対処してまいりたいと思います。
○和田静夫君 過日、雇用保険法のときに、時間が不足をいたしまして残した問題の船員保険に関する点でありますが、厚生省、雇用保険と船員保険との間には、現行では給付日数にほとんど差がないわけでありますが、今次改正というか改悪で、給付日数に格差が大幅につけられることになるわけであります。これはどうも私はにわかに納得するわけにはまいりません。まず、その理由を伺います。
○政府委員(坂本龍彦君) 基本的には、今回の船員保険の改正は雇用保険の改正に準じて行おうというものでございます。
 その際に、給付日数の関係でございますが、雇用保険との間では、従来から若干の相違もございまして、必ずしも完全に一致していたわけではございません。今回も、どちらかといいますと、船員保険の場合には財政状況が非常に悪化してきておりまして、何とかしてこの財政状況の立て直しを図らなければいけないという状況でございます。ただ、その際に、給付日数の切り下げというようなことだけではなくて、保険料率の引き上げでありますとか、あるいは各種の適正化対策、その他諸般の対策を講じまして、全体として収支状況を改善いたしたい、こういう考え方で実施をいたしております。
 その際、今御指摘がありましたように特に問題になりましたのは、被保険者期間が一年未満という短い人については、所定給付日数が雇用保険の九十日に比べて今回の案では五十日になっているというところで、確かに開きがあるわけでございますけれども、これにつきましては、汽船あるいは漁船について一定期間内に繰り返し雇用するというような実態がございまして、先ほど申し上げました保険財政状況も考慮いたしまして、被保険者期間が長い人に比べますと若干給付日数の方を低目に抑えるという考え方で改正をいたしたものでございます。
○和田静夫君 そこで、特にこの一年未満の給付日数を極端に格差をつけている結果になっていますね。これは特段の理由がありますか。
○政府委員(坂本龍彦君) 財政状況等を考えまして、また雇用保険との全体の均衡といいますか、比較を考えました結果、やはり被保険者期間が長い人については余り大幅に給付日数を切り下げるということは問題があろうかということと、被保険者期間一年未満の方につきましては、実態として、一定期間内に何度も失業雇用を繰り返しておるという実態がかなりございます。そういう点について、やはり被保険者期間の短い方の方に少し給付日数の減というのが来たというような結果になっておるわけでございます。
○和田静夫君 ここのところは全然理解できないんですよ。今の答弁でも全然理解できないですね。
 大臣、認識の問題として、大変私は重要な誤りがあるんじゃないかと思うんですが、船員の皆さんの場合に、短期臨時雇用が急激にふえてきているんですよ。好んでここの一年未満の部分に彼らが行くわけじゃないんですね。今の産業政策構造上そこのところに行かざるを得ない状態に追い込んでいる政治状況があるわけですよ。あるいは経済状況があるわけですね。そこのところに焦点を合わせて、今言われましたように短期間で勤めたりやめたり勤めたりというようなことがあるからというのは、どうも話としては逆ですよね。基本のところを――これはそこの基本のところは厚生省の仕事でないんだということになればあれですが、その辺の認識がどうも欠けているんじゃないかというふうに考えるんですがね。大臣、どうです、これ。
○政府委員(坂本龍彦君) ちょっと私からまず……。
 今申し上げましたのは、今回の改正法案の内容についてのお答えでございますが、この法律の規定では、確かに一年未満を五十日といたしておりますけれども、実態といたしまして、その場合にもいろいろなケースがございます。そのときに、例えば船会社の倒産といったような船舶所有者の都合によって失業を余儀なくされたというようなケースの方などにつきましては、実は個別に給付日数を延長するという制度が法律上は設けられることになっておりまして、この法律上の根拠に基づきまして、具体的な基準を定めた上でケース・バイ・ケースで、給付日数をどうしても延長する必要があるというようなケースについてはさらに延長をすることも実は予定をしておるわけでございます。したがって、一般論で先ほど申し上げましたが、個別の具体ケースにつきましては従来どおりの、あるいは雇用保険と差のないような日数で給付するというような道も開いておるということを改めてつけ加えさせていただきます。
○和田静夫君 それでは、大体従来どおり、あるいは雇用保険と格差がない状態でもって適用をしていく、個別事案について。そういうふうに認識しておいていいということですか。
○政府委員(坂本龍彦君) 今問題になりました被保険者期間一年未満の方につきましては、従来どおりの扱いができるようなことを私どもは考えておるわけでございます。
○和田静夫君 どうも理解に苦しむ点で、考えてみますと、――これも労働省に聞くことなんでしょうかね。船員の雇用情勢と陸上労働者の雇用情勢というのは違いますか。どういうふうに違いますか。――これはきょうは労働省来ていないかな。
○政府委員(野見山眞之君) 先生御承知のとおり、陸上の労働者につきましては公共職業安定所、船員につきましては船員公共職業安定所で、直接私ども業務につきまして事務連絡等をやっているわけではございませんので、雇用情勢の差異については直接は把握しておりませんけれども、御承知のように、海運業界における不況等に伴いまして陸上勤務を希望される、陸上に切りかわられる方が出ていらっしゃることも事実でございまして、これらにつきましては、私どもといたしまして、各地の公共職業安定所におきまして、陸上業務につきましてのあっせんその他について従来どおり努力をしているというのが現状でございます。
○和田静夫君 船員保険の場合は片一方で保険料率を引き上げているですね。それにもかかわらず給付日数を削減をする、これは非常に問題がある措置だと言わなきゃなりませんが、なぜ保険料率を引き上げられたのか。逆に、保険料率を引き上げたのならばなぜ給付日数を削るのか。
○政府委員(坂本龍彦君) 実は、財政状況の問題でございますけれども、この制度改正をもししないとした場合には、約四十億円程度の赤字が出るという状況でございます。それは五十九年度だけでなくて、既に数年前から赤字の状況になっておりまして、何とかしてこの財政状況を立て直す必要があろうかということでいろいろ検討したわけでございますが、その際に、例えば保険料の引き上げたけを行って給付はそのままにしておくとか、あるいは保険料は引き上げないで給付を切り下げるとか、あるいは両方考える、いろいろございますけれども、仮に保険料だけの引き上げということになれば相当大幅な負担増ということにもなるわけでございますし、一方、給付だけの切り下げということになると、これまた相当程度切り下げざるを得ない。
 それで、単に財政問題だけでこれを議論することも必ずしも適当でないわけでございますが、今回の雇用保険の改正にある程度準じた給付の改定を行いまして、それとあわせて保険料負担についても余り大幅な増にならないような程度にしたい、こういうことをいろいろ考えあわせまして今回のような案になっておるわけでございます。
○和田静夫君 この短期臨時雇用というのは、先ほども言いましたが、労働者の責任でふえているわけではない。それはもう船主の責任なんですね。それを労働者にしわ寄せするということは許せませんからね。ここのところは厳格に対処してもらいたい。
 それから、私は、職安がいわゆる短期求人船主に対して厳しく指導をすべきだと思っているんですが、短期雇用の場合は、この給付に係る費用は当該の船主に負担させるぐらいの措置をとるべきじゃないだろうかというふうに考えます。また、職種の転換のために教育訓練というものをきちんとやらせる、そういうことも必要だと思うんですがね。これ、厚生省、労働省の見解を承っておきます。厚生省は大臣見解を述べられるのなら――。
○政府委員(坂本龍彦君) 一般的な雇用保険の費用負担のあり方という点につきましては、私どもの船員保険はやや特殊な制度でございますので、これは雇用保険全般の問題をどういうふうに考えるかというところに準じて考える必要があろうかと思っております。
 それから、雇用対策あるいは各種の就業のための訓練といったような点につきましては、確かにこれは非常に重要な問題でございまして、実は、船員の雇用対策そのものは運輸省の所管でございますので、私どもも運輸省といろいろ相談しながら対策を進めておるわけでございます。特に日本船員福利雇用促進センターという法人を運輸省と共管でつくっておりまして、ここに一定の経費を交付して各種の技能訓練でございますとかあるいは技能習得、そういったようなものも実施をいたしておるわけでございます。
 なお、先ほどの費用負担の関連で一つ申し上げますと、私どもの船員保険には福祉施設費というのがございまして、これは全額事業主が負担しております。その福祉施設費の中から先ほど申しました技能訓練のような就職促進のための事業も行っておりますので、純粋の失業給付のための保険料率のほかに、そういった事業主負担が被保険者よりは少し多く導入されておる、こういう実態もあることを申し添えておきたいと存じます。
○政府委員(野見山眞之君) 船員保険の方は、今お答えあったとおりでございます。
 陸上の方につきましては、所定の期間勤務した者につきましては、一年未満でありましても九十日ということで雇用保険法上はなっておるわけでございます。
○和田静夫君 大臣、一年未満の短期臨時雇用の人たちについて、これは先ほど答弁がありましたけれども、ここにしわ寄せがいかないようにしっかり行政の側は構えてもらいたい、そういうふうに思うんですが、よろしいですか。
○国務大臣(渡部恒三君) 先生の御心配、まことにもっともであるというふうに聞いておりましたので、これは横並びの問題等もありますので、規則的に私一存でどうこうというふうにまいらないかもしれませんが、これは私どもの方の分野もありますので、これから勉強をいたしまして、先生の御趣旨に沿うように進めてまいりたいと思います。
○和田静夫君 水ですがね。最近、おいしい水キャンペーンをやっているわけですね。その意図はどこにあるわけでしょうか。
○政府委員(竹中浩治君) 先生も御承知のように、国民の間で嗜好が高級化してきておるというような背景がございまして、水道につきましても、おいしい水の供給を求める声が高まっておるわけでございます。そこで今回、研究会を新たに設置をいたしまして、水道による新しい水の供給を誘導するため、おいしく水を飲むための条件を検討する、それとともに、おいしい水の水質条件等の目安をつくるということを考えておるわけでございます。
○和田静夫君 そこで、おいしい水ガイドラインというのをつくられるそうですが、このガイドラインは、安全性についても消費者の注意を喚起するものになるというふうに理解してよろしいですか。
○政府委員(竹中浩治君) 水道の水でございますので安全性はもう第一番に必要でございますけれども、おいしい水ということでは、それを基盤に置きまして、特ににおいのする水等が問題になっておりますので、そういった点を中心においしい水の問題を検討していきたいと考えておるわけでございます。
○和田静夫君 おいしい水ベスト三十を選ばれるそうですが、そうなれば私は、安全性という観点から、逆にワースト三十を選んで、その改善を図るデータとするぐらいの発想が、もう一つ並行的にあってもいいような気がするんですが。
○政府委員(竹中浩治君) 先ほど申しましたように、水道の水は安全が基本でございますので、水道法に基づいて水質基準を定めておるわけでございまして、その水質基準に合致するものだけが水道水として供給されておるわけでございます。
○和田静夫君 それはわかっているんだけれども――やっぱりもう少し答弁のしようがあるんじゃないかな。
○政府委員(竹中浩治君) おいしい水の裏返しと申しますか、基本はまずくない水というのがまず必要なわけでございまして、そういった意味でにおいの問題が一番中心になっておるわけでございます。私ども、そういうことで今回はおいしい水ということを重点に置きまして検討を進めていきたいということでございます。
○和田静夫君 だから、私の言っているのは、私たちのところでもくさい水の経験がないわけじゃありませんので、逆に悪い方の水三十ぐらいを挙げて、そうしてデータをあげつらって改善の指導をするというような方も、あわせ行うのが当然じゃないのかと言っているんですよ。
○政府委員(竹中浩治君) 実は、このおいしい水の研究会で八月にきき水をしていただく予定になっておりまして、その際に、先生の今の御趣旨を踏まえまして、おいしくない水と申しますか、そちらの方についても検討をしていただきたいと思っております。
○和田静夫君 まあ何はともあれ、安全性のまじめな論議をスポイルするキャンペーンであってはならないということを私は考えるものですからこういう問題を取り上げてみたんですが、そこのところ、大臣いかがですか。
○国務大臣(渡部恒三君) 先生のお話、大変傾聴しておったのでありますが、おかげさまで、我が国の水道事業も九二%まで普及してまいりまして、先生おっしゃるとおり、まず私どもの立場では、安全な水を国民の皆さんに供給するというのが、これが第一の絶対的な前提条件でありますが、その面がかなり進んでまいりましたので、さらにこの一歩を進めて国民の皆さんにおいしい水を供給しようということで今担当の者が意欲的にやっておりますので、これはひとつ先生からも激励をしていただきたいと思います。
 なお、もちろんまずい水、これは我々もいろいろ経験しておりますけれども、これをなくすように努力するのは当然でありますし、今おいしい水とおいしくない水の間に何かもう一つあるようでありますが、しかし、おいしい水を国民の皆さんに――もちろん安全というのが前提ですから、安全でおいしい水を供給するように積極的に努力するということは、先生の御心配のおいしくない水や危ない水はなくなっていくというふうに御理解を賜りたいと思います。
○和田静夫君 最後の項目ですが、乾電池回収なんですがね。日本電池器具工業会が二十日に町田市に対して回収要求を拒否する回答を出しました。回答の要旨は、水銀電池以外の乾電池は水銀含有量が少なく有害ではない、したがって回収する必要はないということでありました。確かに個々の乾電池の含有量は少ないでしょうが、ちりも積もれば山となるというわけでありまして、決して私は、個々の含有量が少ないから有害でない、公害問題を引き起こさないという保証はないと考えるんですが、その点はどうでしょう。
○政府委員(竹中浩治君) 乾電池の水銀の問題でございますが、大気中の水銀濃度、あるいは廃棄物処理施設からの排出水につきましての水質汚濁法等の規制の状況等々から見まして、現時点におきましては廃棄物処理に伴う水銀による環境汚染の問題はないと考えておるわけでございます。
 しかしながら、今先生おっしゃいましたように、将来の問題といたしましては、やはりこの際大いに検討すべきものは検討し、必要な対策を立てるということが必要でございますので、そういった面で今審議会にお願いをして検討を進めていただくと同時に、また、各般の調査も実施をしておるという状況でございます。
○和田静夫君 兵庫県の西宮市でも、四月から分別収集を始めていますね。ボタン型について工業会に趣旨の徹底を図るように申し入れたようであります。ところが工業会は、各自治体の広報活動により周知徹底を図れ、あるいはメーカーや小売店から相談があった場合、自治体が適切な援助、助言を与えると言ったんですね。実に工業会というのは不謹慎だと思うんですが、不謹慎きわまる回答を寄せていますね。大臣、この回答をお聞きになってどうコメントされますか。
○政府委員(竹中浩治君) 日本電池器具工業会でございますが、ボタン型の、つまり水銀電池につきましては、御承知のように工業会が中心になりまして回収をするということで進めておるわけでございまして、これによりまして電池の中の総量といたしまして、水銀の半分ぐらいがこれで回収ができると思います。
 あと問題は筒型の乾電池でございます。これにつきましては、工業会で筒型の電池につきましても水銀の減量をするようにいろいろ検討をしていただいておりますが、今後どういう形でこれを筒型の電池の処理をしていくか、これについては至急検討して結論を出したい、そういうことでそれぞれの市町村に、既に回収を進めておられる市町村につきましては、当面コンクリート化をするというようなことも方法としてあるわけでございますが、まあコストもかかりますので、それ以外の方法について技術的に早く詰めたい、それまでしぱらく保管をしていただきたいというようなことで市町村にお願いをしているわけでございます。
○和田静夫君 今言われたように、ボタン型についてはメーカー側も回収の必要を認めている。メーカー側にも回収の徹底を図る義務があるはずでしょう。不十分ながら現行廃棄物処理法第三条で、「事業者は、」「その製造、加工、販売等に係る製品、容器等が廃棄物となった場合においてその適正な処理が困難になることのないようにしなければならない。」としているわけですね。そうすると、この適正処理困難廃棄物として事業者責任をかぶせることができると私は思うんですが、この辺はどうですか。
○政府委員(竹中浩治君) 電池に関係をいたしました今の第三条二項の問題でございますが、この点について、やはり廃棄物処理困難性の評価の問題でございますとか、その場合の関係者の役割分担のあり方とか、そういった点をもう少し明確にする必要がございますので、先ほど申しました生活環境審議会の適正処理専門委員会で検討をしていただくということにしておるわけでございます。
○和田静夫君 回収の実を上げるために、消費者への回収の周知徹底について、厚生省としても強力な指導をすることが求められているわけですけれども、大臣、これどういうふうに対処されますか。
○国務大臣(渡部恒三君) これは厚生省の担当でございますが、今、先生からお話しがありましたように、原因者の企業負担というような問題になりますとこれは通産省、さらに全体の環境問題では環境庁と、三省庁共同して、相談してやる問題でありますので、先般もこの種の問題、先生方から強い御要請がありましたので、環境庁長官、通産大臣等にも協力を要請しておるのであります。
 今まで私も担当の者たちと、例えば販売のときに、まあ私は農家に生まれましたので、子供のころ、電球の球が切れますと持っていって新しいのと取りかえてきた記憶がありますが、新しいものを購入するときに使用済みのものを持っていくとか何か方法はないかとか、いろいろ今相談しているんですが、なかなか現実にやってみると、最初に非常にこれはいいアイデアだなと思って考えたことが、実際やらせようという段になると、またああでもない、こうでもないという障害が出たりで、残念ながら今和田先生に、こういう方法で、具体的にこういう命令をして解決しますという回答を申し上げられないのは残念ですが、基本的には、これは水銀が将来の国民の健康に害を及ぼすというようなことは大変心配なことでありますので、これはできるだけ原因者に責任をとっていただくような詰めをすると同時に、また法律的な責任の問題、いろいろありますので、三省庁協議いたしまして、先生の趣旨にこたえるように努力してまいりたいと思います。
○和田静夫君 ボタン型のみならず筒型についても、私は事業主に回収義務を課するべきだと考えているわけですが、それらを含んで今大臣答弁がありましたが、早急かつ前向きに対処をしていただきたい。強く要望しておきます。
 大臣、電池だけではなくて、使用済みの体温計あるいは蛍光灯にも水銀が入っているわけでしてね、これらの回収方法についてもやはりちゃんとあれすべきだと、そういうふうに思います。
 そこで、特に体温計で思うんですが、病人に、入院患者にこう挟むでしょう。重病人であろうがなかろうが、トイレにでも行く。体温計を落とす。破損をする。そういう状態で破損をした体温計の残滓を掃除機なりあるいは掃いて回収するということになるわけでありますが、そこで破損して散った水銀、これらの水銀というのは、完全な形でもっては回収をされない。そうすると、ごみと一緒になって焼却、炉に行く。焼却炉は、高温度でもって焼却するところは別として、それはまちまちですから、そうすると有毒化をするというような状態というものが私はあると思うんですね。まあ国立医療センターなどはもうそういう体温計は使わない状態になっていますけれども、多くの病院はなお旧態依然たる体温計を挟んでというような形になっているでしょう。こういうようなものに対する対処の仕方といいますか、対応というのは何かやっているんですか。
○政府委員(竹中浩治君) 体温計の処理でございますが、多くの市町村では一般のごみと合わせて焼却をする、あるいは埋め立てをするということでございますので、先生の今おっしゃいましたことを含めまして、一般のごみと同じように処理をされておるのが現状でございます。ただ、一部の市町村では体温計だけ別に集めるということをいたしておりますが、その場合もコンクリート固化ぐらいが考えられる方法で、そういったことをやっておられる市町村もあるわけでございます。
 これも先ほどの筒型の乾電池と同様に、今後あわせて検討する課題であるということで、私ども五十九年度、今年度から家庭系特殊廃棄物の処理対策に関する調査ということを実施をすることにいたしておりまして、乾電池とともに体温計も含めて考えていきたいと思っております。
○和田静夫君 自治省、待たせましたが、自治大学校の空き地に野積みしているわけでしょう。処理業者に頼めばドラム缶一本当たり十二万円ぐらいかかるわけですね。厚生省がいろいろ努力をされていますがね。こういう問題は早急に解決しないと、自治体の財政負担というのは非常に強まる状態にあるわけですよ。自治省としてもやっぱりイニシアチブをとってやっていくべきだと考えるんですが、この辺いかがでしょう。
○説明員(前川尚美君) 使用済み乾電池等の廃棄物の処理の問題でございますが、まあこの問題につきまして今厚生省の方からいろいろ御答弁がございましたように、厚生省を含め関係省庁といろいろ検討を進めておるということでございますが、私どもといたしましては、まず基本的に大事なことは、その具体的な処分方法を速やかに確定するということ、これがなければやはり市町村としても大変困難な状況になるわけでございます。あわせてやはり製造業者等による回収処理責任体制の明確化を図るということ、これは先生の御質問の中にもございました。私どもそのように考えておるわけでございまして、そこがまず基本でなければならないと考えておるわけでございます。
 地方団体によります財政負担、経費負担の是非の問題については、こういった問題の検討の結果によりまして、私どもとしても的確に対処することを検討してまいりたいというふうに考えております。
○村上正邦君 厚生省はこの五月の三十日に小野薬品工業から申請の出ておりました人工妊娠中絶剤を正式に承認したわけですが、私はこの承認に対しましては厚生省に慎重にしていただきたいということを申し入れてまいりました。それはこの薬が承認されることによって安易な中絶がふえるのではないかと心配したからであります。この薬剤を使えばより楽に中絶することができるという考えが広まって、中絶に対する最後の歯どめとも言える、中絶手術を受けるときのあの恐怖心、そして女としての、女性としての恥じらい、こういった心理的な抵抗感覚が完全に麻痺してしまう。厚生大臣、果たせるかな、いろいろ最近の週刊誌を見ますと、「人工流産剤認可で女性がもっと翔び始める」とか、それから「薬を入れるだけで妊娠中絶」とか、それからまた「手術よりも安くて安全で簡単」とか、こういう報道が最近なされて、この薬剤は夢の薬だとか福音だとか言われておるわけであります。また、驚くなかれ投資家までが、この薬剤は多量に売れてもうかる、そうした商品だということで、この承認のうわさが流れた途端に製造元の小野薬品の株価は史上最高値の一万三千八百二十円を記録しております。胎内で安らかに成長している胎児を無残にも窒息さして中絶する薬が夢の薬として成長商品などと言われるとは、何とも私は恐ろしいことではないか、私には福音ではなくして悪魔のささやきが聞こえると申し上げておきたいと思います。
 そうした一方で、体外受精までやって子供を産もうとする。これは産むということでなくしてつくるといった言葉の方が私は適切かと思うのでありますが、大臣、こうした勝手につくって勝手に殺す、こういったまことに生命に対する倫理感というものが全然変わってくる、これは人間の思い上がりにほかならないと思わざるを得ません。
 そこで厚生大臣にお尋ねします。
 大臣は、この新薬剤についてどういう見解を持っておられるかお尋ねしたい。また、認可の理由、とりわけ認可に当たってこの薬剤の社会的影響をどう考えられたのかお尋ねしたい。
○国務大臣(渡部恒三君) 先生から今御指摘いただきましたように、医学の進歩というものが人間の尊厳、それから人間のとうとさ、これを失わせるようであってはならないということは全く同感でございます。
 ただ、医薬品の承認については、厚生大臣が判断することではございますけれども、私は全くの素人でありますから、私が現実に勝手に薬を認めたり認めなかったりしたら、またこれは別な問題が起こるのでありまして、御承知のように薬事審議会で専門的な審議をちょうだいして、その答申を得て判断するということになっております。これ、長い間審議を続けられてきたものでありますが、ただ、今先生御指摘になった週刊誌や何かでいろいろ伝えられておるようなことは、実際とはまるで違った方向で考えられているようであって、これは現実に今でも妊娠中絶はやっておるわけでありますから、今までは体を傷つけてそういうことがあったわけですが、今回の薬が出れば体を傷つけることなくできるという意味では薬品としては、医薬としては一つの進歩なのでありましょうが、しかし、そのためにこれが今先生から御指摘があった週刊誌で取り上げられているようなことで乱用されるというようなことになったら全く大変なことになり、生命の尊厳を傷つけるも甚だしい問題になってくるおそれがありますので、そういうおそれが出ないようにということで、この医薬品の特殊性にかんがみ、生産、流通及び使用に当たっては厳正な取り扱い、管理を行う必要がある。その扱いの要領を定めまして、昭和五十九年の五月三十日付をもって承認いたしたのでございまして、今後ともその取り扱いの要領、不正な流通あるいは使用が乱用されるというようなことがありましたら、これは全く先生の御心配のようなことになるおそれがありますので、これらの使用や流通については、このことが先生の御心配の生命の尊厳に踏み込むようなことのないように、厳正に指導、監督をしてまいりたいと思います。
○村上正邦君 ただいま大臣は中央薬事審議会の答申と、こうおっしゃられましたが、私は、この審議会のあり方についても問題があるんじゃないか。こういう社会的な大問題を引き起こすようなこういう薬剤については、ただ医薬的専門家だけの審議会ではなくして、これはやはりもう少し広範囲の人たちの意見を十分に聞くということが私は必要だと思うのであります。そういう意味からいって、薬事審議会のあり方についても今後ひとつ考えていただきたい。
 それから、大臣には裁量権というものがあるわけですから、審議会の答申が来ましても、そこらあたりしっかりしたやはり考え方を持って、審議会が答申してきてもノーはノーだということをはっきり言っていただきたいということを要望し、また、この薬の正しい使用、運用、そしてこの薬のプラス面とマイナス面、特にマイナス面について報道機関に私はぴちっとしていただく必要があるということを申し上げて、次の質問に移ります。
 この薬品はいつから生産され、いつから流通経路に乗るのか。また、そうなったとき、所定のルート以外に流れないようにするためにどのような方法を講じているのかお聞かせ願いたい。時間が限られていますので、簡単にお願いします。
○政府委員(正木馨君) この薬、プレグランディンにつきましては、五月三十日付をもって承認されたわけでございます。小野薬品工業におきましては現在生産体制に入っておるわけでございますが、七月下旬ないしは八月早々ぐらいに販売ということになる予定というふうに聞いております。
 ところで、問題は、この薬の厳正な取り扱いということが極めて重要でございまして、その管理取扱要領というものを定めたわけでございます。
 そこでまず、簡単に申し上げますが、優生保護法指定医以外には使わせないということが第一点でございます。それから製造業者、それから卸、指定医の関係につきまして、その流れがきちっとわかるようにチェックをするということを定めておるわけでございます。
 それからこの薬はそもそも治療用に使われるということで、「妊娠中期の治療的流産」に限るということでございます。
 そこで、この薬は、利点と申しましては、従来の外科的な処置に比べまして安全度が高い。それから患者としての苦痛が少ないという利点はあるわけでございますが、一方におきまして、これは排出後におきまして子宮内の機械的な清掃等の必要があるとか、これはやはり入院して、専門の医師によって注意深く行われないと非常に危険を伴いやすいということでございます。したがって、この薬につきましては創業の指定もいたしまして、万般、妙な使い方のされることのないようにというチェックシステムをつくっております。
○村上正邦君 ところで、この薬口はワンパック何錠になっておりますか。
○政府委員(正木馨君) ワンパック五錠でございます。
○村上正邦君 一回の中絶に何錠必要ですか。
○政府委員(正木馨君) 平均で申しますと三・五錠、三錠ないし四錠というふうに言われております。
○村上正邦君 なぜ、三・五錠でできるものを五錠ワンパックしているんですか。
○政府委員(正木馨君) 平均で申しますと三・五錠ということでございますが、その患者さんの状態等によりまして、やはり五錠必要とするというケースもあるわけでございまして、そういった面で五錠パックという扱いを認めておるわけでございます。
○村上正邦君 臨床実験の結果、ここにいろいろそういうやった人たちの体験が出ておりますが、ほとんど二錠から三錠で中絶されている、こういうあれが出ておるわけであります。
 私は、なぜそういうこと聞くかといいますと、今創業に指定しているとおっしゃられた。ワンパック五錠にしてあと残った、例えば三・五で残った一・五、この残った残量はどういうふうにチェックして管理していくのか。ということは、それはやみの横流しの元凶になる心配を私はするから、その残量の管理についてお尋ねをしたい。例えば麻薬の場合は残量が厳しいチェックをされて行われているということを聞いておるわけでございますが、そういう意味でこの残量はどういうふうにしてチェックして管理していくのか、ちょっとお尋ねをしたい。
○政府委員(正木馨君) 乱用を防ぐためには、やはり先生おっしゃいますように、残量がうやむやにされるということが一番心配でございます。そこで、優生保護法指定医には一体どれだけのものが販売されたのか、それから指定医の方でもきちっとそれをチェックをいたしまして、そして、どれだけ使われたということを記録をしまして、その辺の報告もきちっととるということで、残ったものが横流しをされるということのないようにチェックするシステムを設けてございます。
○村上正邦君 麻薬の場合は、麻薬取締官が配置されてチェックしていると聞いております。そして、各県に薬事監視員が配置されております。ことし四月現在で二千六百十五名の薬事監視員がいると聞いております。ですから、特にこういう人たちにお願いをいたしまして、ぴちっとしたひとつ監視をやっていただきたいと思います。どうですか、それは。
○政府委員(正木馨君) 先生おっしゃいますように、都道府県に二千六百十五人の薬事監視員がおります。この薬事監視員は、薬事法違反がないかどうかということをチェックする任務を持っておるわけでございますが、この薬につきましても特に厳格な行政指導を必要とするわけでございますので、薬事監視員の機能というものを十分生かしまして、疎漏のないようにということに努めてまいりたいと思っております。
○村上正邦君 次に、逆輸入についてただしたいわけでありますが、アメリカ、西ドイツ、イギリス、カナダ政府に対して承認申請が行われていると聞きます。しかし、一たび海外の諸国がこれを輸入を認めたとき、この薬品が一度外国に輸出されて、そしてそれが逆輸入されてくる心配を、ほとんどの有識者の方がこれを心配をしておるわけであります。当局は逆輸入のこうした事態にどう対処なさるつもりなのか、具体的にお示しいただきたいと同時に、私は、そういうものがぴちっとできない限りには、ひとつ小野薬品に対して厚生省からこの認可申請の中止を指導しなければならない責任があるんじゃないだろうか、こう思いますが、どうでしょう。
○政府委員(正木馨君) 先生のおっしゃいました点、これも心配しなければならぬ点でございます。国内の管理をきちっといたしましても、外国に行った方が持ってこられる、その辺のチェックをどうするかという問題がございます。
 ところで、外国からプレグランディンを逆に持って帰られまして、そして国内でこれを販売するということになりますれば、これは当然のことながら無許可販売ということで、薬事法の規制で十分チェックをいたします。問題は、販売はしないけれども個大使用という形で持ってきた場合はどうなるか、これも心配しなければならぬ点でございます。これにつきましては法的にどうこうということではないわけでございますが、考えてみますと、そもそもこの薬というのは、先ほど申しましたように入院して専門の医師によって注意深くやられなければ非常に危険を伴うものでございます。そういったものを個人が使用されるということがあってはならないということを十分周知徹底しなければならない。また、場合によっては刑法の堕胎罪という問題も出てまいるわけでございますから、個大使用ということで持ってくるなんということのないようにという周知徹底を図らにゃいかぬ。
 それから輸入監視に当たりましても、そういう面でチェックをいたしまして行政指導の徹底を図らなければならない、こういうふうに考えております。
○村上正邦君 特にこの点を心配をいたしておりますので、厳重にひとつこの対応については考えていただきたい、このことを特に申し上げておきたい、こう思います。時間があればこの問題についてもう少し突っ込みたいのでございますけれども、時間がありませんので次に移らしていただきます。
 公衆衛生局長お見えいただいておりますので、これに関連いたしまして、優生保護法に基づく人工妊娠中絶の統計で、この薬剤による中絶と従来の手術による中絶、今年度の統計からぴちっと区別して集計し、発表してもらいたいわけですが、いかがでしょう。
○政府委員(大池眞澄君) お答えを申し上げます。
 本剤につきましては、その「管理・取扱い要領」に基づきまして、医療機関の管理者、指定医師に非常に厳重な記録並びにその保管が求められるわけでございますが、さらに、その使用状況につきましては、一定の期間ごとに日本母性保護医協会の当該地域の支部、さらにはまた一定期間ごとに都道府県の医師会に報告をするという仕組みを定めておるわけでございます。
 厚生省といたしましても、ただいま先生の御指摘の趣旨を果たすべく、この管理要領の仕組みを活用するということで、日母の支部、または都道府県医師会からその報告を求めるということによりまして、本剤の使用によります人工妊娠中絶の件数を把握してまいりたい、かように考えておるわけでございます。一方で、優生保護法におきまして、指定医師が人工妊娠中絶を行った場合には、第二十五条によりまして届け出が行われることになっておるわけでございますが、本剤の使用におきます人工妊娠中絶におきましても当然に届け出が必要となるわけでございます。
 ただ、この届け出は、人工妊娠中絶の実施数とその理由の届け出を求めまして、人口動態の把握、また、優生保護法の適正な運用に資するという趣旨で定めた届け出でございます。これまでは、どのような方法で中絶を行ったかは届け出の内容としてはおりませんが、新しい手法の導入に伴いまして、今後御指摘のような趣旨も含めて検討さしていただきたいと思っております。
○村上正邦君 この薬剤による中絶は、ぴちっと数字を把握して発表していただくというお約束でよろしいですね。
 もう一点は、薬の流通について各都道府県の医師会が最終集計を行うシステムになっているわけであります。厚生省は医師会に、どこの病院、どこの医療機関が何錠使用したか、年二回ぐらい報告の義務を負わせるべきだと私は考えますがいかがでしょうか。また、そうあってほしいとお願いをいたします。
○政府委員(大池眞澄君) 「管理・取扱い要領」の定めによりまして、医師会の方にはそういう報告が来ておるわけでございますが、それをどのような形で厚生省の方に求めるかはもう少し詰めさしていただきたいと思っております。
○村上正邦君 次に業務局長、何か試供品というのが、新しく開業しようとする医師に製薬会社はどっさり試供品と称して持っていくんだそうですね。それで大体一年分ぐらい買わなくて済むんだというふうに私は聞いておるわけでありますが、この薬剤は、試供品というのはどうなんですか。
○政府委員(正木馨君) この薬の「管理・取扱い要領」を定めたわけでございますが、この「管理・取扱い要領」の中で、本剤につきましてはいわゆる試供品というものは認めない、試供品の生産は行わないということをきっちり定めております。
○村上正邦君 臨床試験をやったようでありますが、臨床試験に使われた錠剤は何錠でございますか。
○政府委員(正木馨君) 承認申請に当たりまして、臨床試験が他の薬と同じように行われておるわけでございますが、本剤につきましては千六百ケース、八千個の臨床試験用のサンプルが製造されたというふうに承知しております。
○村上正邦君 それで何錠使われたんですか。
○政府委員(正木馨君) 申請データ作成のために行われる臨床試験は、第一相、第二相、第三相と三段階を踏むわけでございますが、第一相、つまり健康な人、それから少数の患者、これにつきまして約百例。それから実際の多数の患者に使います第三相が約三百例ということで、これに使いました数が大体五百四十ケース。それから、そのほかの試験としまして、規格とか安定性の試験等に対しまして九百ケースというものが使われたというふうに承知しております。したがって、残りが百六十ケースということになっておりますが、これももちろん有効期間が二年ということでございますが、まかり間違わないようにということで、きちっと廃棄済みの措置をとるということで措置をしたというふうに承知をしております。
○村上正邦君 ちゃんと残りの数字も把握し、ぴちっとした管理も行き届いておる、こういうことですね。――わかりました。
 それから、治療的流産についてでございますが、この薬品は治療的流産のみに使用される、こういうふうに規定をされておるわけでありますが、その認定は一体だれがするのか。
○政府委員(正木馨君) 先生おっしゃいますように、本剤は、「妊娠中期の治療的流産」というものを適応と定めております。この治療的流産と申しますのは、妊娠中に腎疾患とか妊娠中毒などのいろいろな重篤な疾患を併発しまして、そして妊娠を継続することが母体にとって困難である、こう判断されるようなケースを指しておると思います。そういった意味合いから、そういう症状の場合にはやむを得ず妊娠を中断する。それに使われるのが本剤でございます。
 ところで、先生お尋ねの、一体この認定をだれがするのかということでございますが、この薬は、優生保護指定医に限って使われるわけで、お医者さんの認定ということによってそれが行われるということは当然のことてございます。
○村上正邦君 私がなぜこういうことをお聞きしたかといいますと、ややこしい手術を、掻爬をするよりも簡単でと、こういうのだから、安上がりでというのだから、そして安全だ、こういうのですから、勢いその誘惑に勝てないと思うのです医者は。そうすると、何でもかんでも治療的流産という認定をする。それじゃなくたって、今優生保護法というものがちゃんとある。そして経済的理由ということでみんな中絶してしまうわけです。それは一人の医者がやるのですから、それと同じようなことになるのじゃないか。そこで何か歯どめはないのかということをお尋ねしておるわけです。
○政府委員(正木馨君) 繰り返すようでございますが、この薬は、「妊娠中期の治療的流産」に限られるということをはっきりお医者様方に認識をしてもらう。そうして、この診断というものにつきましては、これはあくまでも医師の責任と良心というものに強く期待をしなければならない。私どもとしては、この薬についての情報を医師の方々に十分提供をする。そして運用についてはお医者様方の良心に従ってきちっとやっていただく、これを強く期待していかなければならないというふうに思っております。
○村上正邦君 とにかくこの薬は、非常に間違った認識を持っている方がたくさんいるということを知っていただかなくてはなりませんね。ある人は、ああこういう薬ができたのだからもう安心して中絶できるわ、こういうことをおっしゃられた女性もいるわけですね。ですから、この薬についてはもう少しぴちっとした考え方を、今おっしゃられたような、そんな簡単なものじゃない、これは危険がいっぱいあるのだ、ちゃんと医者でこういう形で指導を受けてこうしてやらなければならないということを、もう少し私は世の女性だけじゃない、男性にもこれは知ってもらわなきゃならぬことだと思いますので、そこらあたり、厚生省は考えていただきたいと思います。
 時間になりましたから、約束の零時十分でやめろと、後々のいろいろのあれがあるようでありますからやめますが、最後に、人工妊娠中絶によってますます生命軽視の風潮が助長されるおそれがある。マスコミで言う安全で費用が安いというこの薬のキャッチフレーズは、安易な中絶を売っているようなものである。またこの薬は、胎児の生命を多量になおかつ安易に奪うものである。多くの生命を奪うという意味では、私は核兵器と同じではないか。この薬を輸出することは核兵器の輸出に例えてもよいと私は思っております。今でさえ中絶天国と言われるのに、加えて中絶剤という殺人剤の輸出国とまで言われるのは何としてもこれは恥ずかしいことであると私は思いますので、さっき言った海外の認可なんていうことはもう少し厳しくひとつ私は指導していただきたい。
 そこで大臣、私は科学の進歩に反対するわけではございません。しかし、科学の名のもとに人間の卵子にチンパンジーの精子を受精させようとする科学者もいるやに聞いております。これがされたかどうかわかりませんけれども、私はそういうことを聞くに及びまして、科学は生命をもてあそんでいるものであろうと思うのであります。今こそ生命の尊厳を訴えなければなりません。医学、医療行政の中で、しっかりとした生命の倫理、哲学というものを、特に大臣は二十一世紀に向かって医療行政をここでぴちっと打ち立てよう、こういう希望に燃えておられる我々昭和のリーダーでございますので、ひとつその決意を示していただき、ここでぴちっとそうした生命、倫理というものを厚生行政、医療行政の中に打ち立ててもらいたいということをお願いを申し上げ、その決意をひとつお示しいただいて、私はきょう突っ込んだ質問をしたかったわけでございますけれども時間がありませんので、最後に大臣にそのことを伺いたいと思います。
○国務大臣(渡部恒三君) ただいま村上先生から大変貴重な御意見を賜りました。私も、最近医学の急速な進歩の中で、いろんな説明を聞きますと、特に先生の御指摘のあった遺伝子組みかえというようなことを聞きますと、これ以上進んでいったら一体人間の尊厳はどうなるのかと、そら恐ろしいような思いをさせられることが幾たびかありました。今原子爆弾の話がありましたが、まさに科学の進歩が人類を不幸せにするようなことであっては、これは断じてなりません。したがって、私は二十一世紀に向かって、今真剣に考えなければならないのは、生命のとうとさ、生命の神秘、生命の倫理というものを医学の発展の中で、どこで調和させていくかということを痛感いたしております。
 したがって、今先生御心配の薬品の問題についても、これが悪用されるようなことないように、生命を保つために、これはあくまでも妊娠しておる女性が子供をはらんだままにしておりますと、親子ともに死んでしまうようなことになっては大変、そのときはやはり母親を、母体を助けるというために使われるものでありますから、それが悪用されることによって人間の神秘さや人類の尊厳を妨げるようなことはあってはなりませんので、これは厳正に監視して、悪用されることのないように内外にお願いをしていき、また、私ども行政として監視体制を強化していくと同時に、全体としても先生の今御指摘のような医学の進歩が人間の本当の尊厳を損なうようなことのないように努力をしてまいりたいと思います。
○村上正邦君 ありがとうございました。
○委員長(石本茂君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。
   午後零時十二分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時二分開会
○委員長(石本茂君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。
 午前に引き続き、社会保障制度に関する調査を議題とし質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
○本岡昭次君 きょうは、四月十七日の当委員会に引き続きまして、医療法人報徳会宇都宮病院の問題並びに関連する群馬県の田中病院について伺ってまいります。
 まず初めにお伺いをしたいのは、現在時点、宇都宮病院、あるいは群馬県の田中病院、またそれに関連して同じ群馬県の上毛病院、これも問題になっておりますが、この三病院は、必要とする医師、看護婦、看護士などの医療従事者が現在どのような充足状況になっていますか。まずそれを明らかにしていただきたいと思います。
○政府委員(吉崎正義君) 栃木県及び群馬県からの報告によりますと、お尋ねにはございませんでしたけれども患者数も申し上げますと、宇都宮病院につきましては、六月一日現在でございますが、許可病床数九百二十に対しまして患者数が六百八十八。それから標準医師数十五に対しまして現員が八、不足数七。標準看護婦数百十五に対しまして現員六十九、不足数四十六でございます。
 それから、田中病院でございますが、これは五月三十一日現在でございますけれども、許可病床数三百九十六に対しまして患者数四百四十六、五十の超過であります。標準医師数十一に対しまして現員六、不足数五でございます。標準看護婦数七十八に対しまして現員五十三、不足数二十五でございます。
 上毛病院につきましては、六月八日現在でございますが、許可病床数三百二十四に対しまして患者数三百一、標準医師数六に対しまして現員四、不足数二、標準看護婦数四十九に対しまして現員三十九、不足数十でございます。
○本岡昭次君 今お伺いしましたこの三病院とも、必要とする医師、それから看護婦、これは看護士も含んでいると思うんですが、それぞれが不足をいたしております。
 私は、この原因について、四月十七日のこの委員会で医務局長が、医療法違反であっても、今の医師数、看護婦等の数については、定めているものが標準ということであって、したがってそろえることが望ましいのであるが、そうでないからといって罰則等は実は加えられない、このようにおっしゃっているわけです。問題の原因はこの辺にあると思うんですが、どうですか。
○政府委員(吉崎正義君) なぜ充足できておらぬかということでございますが、最も根本的には、やはりこれは管理者の意思であろうかと存じます。標準数を超えて医師、看護婦等のおるところもあるわけでございます。
 一方、標準数についてのお話がございましたが、これはいろんな病気の態様によりまして非常にたくさん人手を要するところ、それからそれほど要しないところがあろうかと存じますし、また、地域の実情、辺地等にある病院等につきましてはなかなか困難な場合もあり得ようかと思うのでございます。そこで、従来からそういう状況も勘案しながら標準数の充足について指導をしてまいっておるところでございますけれども、これに罰則を科するということにつきましては、今申し上げましたような事情でもって、いかがなものであろうかと考えておるものでございます。
○本岡昭次君 いや、罰則についてはいかがなものかと思っておりますと、そういうことなんですが、それでは、これは厚生大臣にちょっと判断をいただきたいんですがね。私はここに、「田中病院の医療監視指摘事項及び改善計画等報告内容」というものを持っております。前回、宇都宮病院でもやりましたがね。ここで五十四年、五十五年、五十六年、五十七年、五十八年と五年間にわたって、田中病院は群馬県ですから、群馬県が医療監視によって問題点を指摘しているんです。
 例えば五十四年、指摘事項として、医師四人不足、薬剤師三人不足、看護婦二十二人不足、超過収容三十一人超過。指摘方法は文書、口頭でやっています。改善計画というのがその次にあって、これは田中病院側が出してくるんでしょう。常勤一名の勤務予定、充実に努める、准看学生五人卒業予定、学生入学予定四人、その他募集を続ける、努力すると、こういうふうなことです。五十五年になってもやはり医師三人不足、薬剤師三人不足、看護婦十九人不足、ここで文書を出した。また充実に努めると。いろいろ理屈は書いてあります。五十六年になってもやはり、医師三人不足、薬剤師四人不足、看護婦二十六名不足、そしてこれもまた、近日中にどうするとか、努力すると。
 こういうことで、五十四年、五十五年、五十六年、五十七年、五十八年、充実に努力する努力すると、同じことを言って、そしてまた、県も、これもまた飽きもせぬと同じことを指摘しておるんですよ。これは一体何をやっているんですか。これが果たして医療監視と言えるものなんですか。
 そして、この中で着実にふえているものは何かというと、超過収容は確実にふえておるのですよ。超過収容という許可ベッド以上に患者を収容したというのだけが、五十四年は三十一人、五十五年は四十人、五十六年は六十二人、こういうふうにずっとここだけがふえているんです。
 厚生大臣ね、罰則を加えるのはいかがなものでございましょうかなんて、のんきなことをそんなところで答弁してもらったってどうしようもない。問題は、こういう監視ということを医療法に従ってやって、改善の指示が出て、やりますと文書で出しても、全然それは実行に移さない、実効がなくてもまた平気で、同じことをまた県がやっているんですね。厚生大臣、こんなことでいいと思いますか。
○国務大臣(渡部恒三君) これは行政指導というものの困難さがあるわけですが、これは、一つの基準というのは、あるべき方向を設定して、当然その方向にしていかれるための行政指導を続けておるわけでありますが、遺憾ながら、今先生御指摘のように、行政指導が徹底されていないという現状が、まあ事情はそれぞれに、怠けておってだめな場合、また、一生懸命我々の指導に応じようと努力はしているんだけれどもなかなかできない場合とか、いろいろ事情はありましょうが、先生の御指摘のとおり、行政指導が徹底していないという点は大変遺憾だと思います。
 ただ、それに罰則をつけるか、こういう問題になりますと、これはまたいろいろ立法作業の問題も出てまいりましょうし、また、そうでなくても官僚統制とかいろんなことを言われるわけでありますから、行政指導を何回かして、それが聞かないものに今すぐ罰則をつけるというのにはいろいろ困難な問題等がありますので、私どもとしては、当面は行政指導の徹底を図るためになお一層の努力を続けてまいりたいと思います。
○本岡昭次君 そういう恩情あふるる配慮みたいなものが一体何を生み出しているかということを厚生大臣考えてくださいよ。それが一体何を生んでいるのか。宇都宮病院で起こったリンチ殺人の問題にしても、あるいは診療なき拘禁、無資格診療、宇都宮病院でさまざまな問題が起こったのは、皆このことが一つの原因であるということをやっぱり肝に銘じてもらわなきゃいかぬと思うんですよ。田中病院の問題は後で言います。この結果何が起こっているか。そんな悠長なことを言ってもろうたら困りますよ。
 次に、もう一つの例を挙げます。厚生大臣聞いてもらいたい。
 精神病院をやったらもうかるという話がある。なぜもうかるのか。種明かしは簡単ですよ。私は田中病院の経理を五十五年、五十六年、五十七年、資料に基づいて見てみました。五十五年に田中病院の売上高――ベッド数はさっき出ていましたね、三百九十六ですか、今年。大体三百から四百までの間ですよ。そこで売上高というのは、患者がいて医療費がおりる、それだけでしょう。病院ですから、ほかに商売することはないんだから。売り上げ十億五千二百万。そして、いろいろなことにかかる経費が八億六千七百五十七万。そして、税引き前の利益が一億九千八百九十四万円。こうなる。五十六年、売り上げが十一億八千八百三十九万円、経費が十億千九百二十一万円、税引き前の利益が一億七千八百十万円。五十七年、売り上げが十二億四千二百十一万円、着実に売り上げは伸びているんです、医療費としての収益が。経費が十億七千七百五万円ですね。そして税引き前の計上されておる利益が一億九千三百二十一万円。もうかりますね、これは。
 なぜこういうことが起こるのか。簡単でしょう。売上高が上がるというのは超過入院をどんどんやっているんですよ。三百九十何ぼしかベッドを認められていないのに、四百人以上、五十人も六十人も患者をたくさん収容する、そのことによって医療の質は落ちるんです。一方、経費というのは、医者の数、看護婦の数、それが中心になるでしょう。内部の医療体制の問題ですよ。医師は充足していない、看護婦も充足していない。そこを徹底的に切り詰めて、また質の悪い医療をそこで行う。その結果がここに出てくる利益。こう考えたら、先ほどおっしゃるような、そんな恩情あふるる話はしていられぬでしょう。これを見て、私も一遍精神病院を経営してみようかと思いたくなりますよ。
 それで一方では、そうしたことが充足してなくても、はい努力します、はい努力しますということを五年、十年と繰り返したって別に何にもないというんですからね。どうですか、厚生大臣。――ちょっと、厚生大臣に私答弁してもらっているんですよ。何かお考えはお変わりになりませんか。
○国務大臣(渡部恒三君) 今回宇都宮病院等の問題が起こりまして、今先生御指摘のような問題が非常に大きな社会的影響をもたらすことになりましたことを私ども厳しくとらえて今後に対処していかなければなりません。したがって、私もたびたび申し上げているように、こういう宇都宮病院のようなことを二度と起こさないようにしていくというのが私どもの使命でございます。それには今先生から御指摘のように、医療内容を充実していく、良質な医療を提供していく、そのためには我々の設定する基準というものに努力をしてもらわなければなりませんし、まして超過入院というようなことがあってもなりませんので、これらの趣旨を徹底するために、なお一層努力を重ねてまいりたいと思います。
○本岡昭次君 なお一層の努力ですけどね、努力を重ねてきた結果として今宇都宮病院で大きな社会問題が起こり、私がきょう取り上げようとする田中病院も同じような問題が起こりしているときに、もう努力の段階では私はないと、こう思うのですよ。
 もう一つの問題を申し上げましょう。宇都宮病院で千人余りの患者がいて、二百二十二人も三年間に死んだ。大変なことだということになっている。みんなもびっくりしている。それでは先ほど言った群馬県の田中病院で何人死亡しているのかという問題、これを調べてみた。よろしいか、厚生大臣、五十六年から五十八年までに二百十八人死亡しています。ここは入院患者が四百四十六人。もっと詳しく言いますと、こういうふうになっている。昭和五十六年には四百五十八人中九十九人が死んでいる。五十七年度は四百五十人の入院患者中六十五人が死亡している。五十八年には四百五十三人中五十四人が死亡している。合わせて二百十八人の死亡。宇都宮病院であっと驚かれたけど、田中病院を見ると、これは田中病院の方が大変ですよ、この資料。
 さらに驚くべきことは、二百十八人亡くなられたその中で、六十五歳以上の高齢者、それが百七十五人もおられるということなんですよ。そうすると、この田中病院は精神病院であります。一〇〇%精神病患者を入院さしておりますが、ある意味では老人病院であるわけですよ。老人病院が死に場所になっているんですよ、これ。
 私はお年寄りを大切にしたい。厚生大臣も一緒だと思うね。お年寄りを大切にしない政治なんてだめですよ、いろんな意味において。しかしこの田中病院では、先ほど言ったようにお年寄りが質の悪い医療を受けながら死ぬまでそこにおるということなんですよ、はっきり言えば。そしてその間搾り取れるだけの医療費を病院の経営者が――私、表現ちょっとえげつないけどね、搾り取っているということです。それでそのあげく亡くなられている。私は涙が出ますよ、こんな状態を見たら。なぜお年寄りが死ぬ、そういう状況のときに十分な医療を――手厚い看護というものを受けながらやっぱり人間最後に死にたいと思うよ。それが精神病院という中において、今言ったような徹底的に不足した医療体制の中で亡くなっていくんですよ。精神病患者であるからといって私は許されてならぬと思う、そんなことは。人間の生死に変わりはないと思う。放置できないと思うのですよ、このまま。努力してよくなった例があるんなら、それ出してきてくれというんですよ、ずっと精神病院全国調べて。
 だから私は三つ目に問題を指摘したいのは、精神病院というのは今や老人病院になっているということですよ。老人病院なんというのは、死に場所がそこになってきているということでしょう。そんなことは、きのうも決算委員会で言った、日本の人権問題というものは後進国で、イスラエルの人々からナチスの収容所じゃないかと言われたという、そういう問題がこういうところにもある、こう思うんです。宇都宮病院も同じなんですよ、調べたら。ここも二百二十二名中六十五歳以上の高齢者は百六十一名なんです。
 厚生大臣、もうそんな悠長なことを言わずに、罰則ができぬというんだったら、別の方法をとらぬと仕方がないでしょう。というのは、医師の数に合うだけの患者しか入れたらいけないという枠を決めなきゃしようがないでしょう。医師の数に合うまで病人を退院させろということをやらにゃ仕方がないじゃないですか。それをやるか、あるいはまた、充足するまで病院の閉鎖を強制的にやるか、何かをしなければ、もうここのところでただ努力努力ではどうしようもない、私はこう思うんですよね。しかも、精神病院における医師と看護婦の配置の標準というのは、例外的に一般の病院よりも低く抑えられているんでしょう。低く抑えられている、どういうわけか。私は、これはまた別の機会に問題にしたいと思います。差別だと思います、はっきり言って。最も手のかかるところにお医者さんや看護婦の数を低く抑えているんですから。それでもなおかつ充足しない。きょうはこの問題を論議する時間がありませんが、厚生大臣、罰則がだめなら、それでは努力するというのは何をどういう手段をもって医師や看護婦を充足させるかという問題について、これはやっぱりはっきり言ってください。それでなかったら私はきょう引き下がらない、この問題は。
○政府委員(吉崎正義君) 御指摘のございましたように、宇都宮病院に関する事件、私どもも深刻に受けとめておりまして、また、反省もいたしておるところでございます。
 そこで、お話にもございましたけれども、具体的な改善計画書を提出させまして、そしてその改善状況を逐次把握する必要があると思うのでございます。何年も何年も同じことを繰り返しておるというお話でございましたが、その状況を逐次把握をする、そうしてなおかつ充足がはかばかしくない場合におきましては、実地審査等とも相協力をいたしまして、入院の制限あるいは転退院を促進をいたしまして患者数の削減を図る、全体的にそういう病院につきましては対策を講ずる、このような方策を講じますように去る六月二十二日付をもちまして各都道府県に通知をいたしましたところでございます。
 具体的に、今回の事件に学びまして、そういう方策を強力に推進してまいりたい考えでございます。
○本岡昭次君 しかし、これからの問題じゃなしに、現にある問題をもっとはっきりさせにゃいかぬでしょう。
 例えば、宇都宮病院なら十五名の医者が必要なのに八人しかいない。どうするんですか、今これ。百十五人の看護婦等が要るのに六十九人しかいない。何年待って充足するんですか。田中病院も十一人に六人、七十八人に五十三人。その間にも診療行為というのは行われているんでしょう。それを許す、認めるというところに問題があるんじゃないですか。充足するまで病院としての機能を停止する、あるいはまた、その中におる患者の問題については、厚生省や県が別の側面から医療に当たるとか、何らかの方法をとらなければ、そうやりながら、先ほど言ったように、それぞれの病院がそのことによって莫大な利益を上げているんじゃないですか。こんなこと許されますか、そんな悠長なことを言って。
 これから都道府県にって、靴の底から足の裏をかくというような話があるけれども、それよりまだひどい、そんなもの。絶対私は信用できぬ。できるとも思わぬ。あすの問題ですよ。宇都宮病院や田中病院のあすをどうさせるか、そこにおる患者のために何をするかということを厚生省の責任ではっきりしてください。都道府県に指示した、指導したという問題じゃないでしょう。今日までこういう状態を放置したのは厚生省の責任でしょう。厚生省の行政責任じゃないですか。それがはっきりする答弁をいただきたい。
○政府委員(吉崎正義君) 宇都宮病院につきましては、事件発覚以後今日まで各般の努力を続けてきておるところでございますけれども、三月二十二日と二十四日に立入検査をいたしておりますが、その後、先ほど申し上げました数字は六月一日でございますけれども、医師数につきましては、当時十四人の不足でございましたのが今日は七人、看護婦につきましては八十五人から四十六人、まあいささかなりとも改善を見ておるところでございます。患者数等につきましても、実地審査等と相まちまして転退院の促進等をやっておるところでございます。
 さらにこういう努力を続けますとともに、収容患者にも十分配慮をしながら、患者の医療の適正なる確保に努めてまいらなければいかぬと考えておるところでございます。
○本岡昭次君 私は残念なのは、厚生省が少しも責任を感じていないというんですよ、局長の答弁に。そんなもの県のやることや、県がうまくやらぬからこういうことが起こっているのやというふうに聞こえて仕方がない。
 厚生大臣、私、これだけやっているわけにいきませんので、ひとつ厚生大臣の責任において、今起こっているようなこういう医療従事者の大変な不足状況を一日も早く改善をして、一般の病院よりもさらに低く抑えられている、最低それだけは何とか守らせるということについて、そんな努力という言葉じゃなしに、何か的確な方法を緊急に考えたい、せめてそのぐらいのことを厚生大臣おっしゃっていただいてもいいじゃないかと私は思うんですよ。今までのこれでずっとよくなっていろんなら、それは努力を待ちたいと思う。しかしこの五年間のこの実績を見て、今の局長の言うことをやっても、私はまたこれと同じことが続くと思う。だから、何かここで厚生省として具体的な対策というものを検討してもらわなければいかぬと思うんですよ。それだけひとつお願いします。
○国務大臣(渡部恒三君) 御指摘の精神病院の問題、今大きくクローズアップされておりまして、今御指摘のようないろんな問題で、私どもの行政指導の不十分なる点について御指摘をちょうだいいたしました。我々も決して、先生からおしかりを受けるように、責任感を欠除しているというような気持ちは毛頭ございません。力いっぱい、患者の人権を守るために、国民の医療を充実せしめるために一生懸命やってまいったのでありますが、残念ながら、先生御指摘のようないろいろの矛盾が出ておることも厳然たる事実でございます。
 そこで、現行法の中でどれだけ先生の趣旨を徹底させるように行政指導が可能かということを検討してまいり、また、現行法でどうしてもできないということであれば、これは法改正ということも考えていかなければなりませんし、幅広い立場で、先生の趣旨に沿っていけるように、患者の人権を確保するために立派な精神病院になってもらえるような指導を私ども徹底することができるように、これから勉強してまいりたいと思います。
○本岡昭次君 今の大臣の御答弁で私は一応了解をさしていただいて、これからの厚生省の努力にしばらくまつことにいたします。
 それでは次の問題に移ります。
 宇都宮病院について、措置入院患者の実地審査を行われました。その結果は、昨日決算委員会で伺いましたが、これらの措置入院患者を入院させるについて、宇都宮病院の前院長である石川さん、それから現院長である平畑さん、この二人がいずれも鑑定医師として鑑定に当たってきておられるんですね。それで、石川前院長並びに平畑現院長が鑑定に当たった上措置入院の必要ありと言った患者が、実施審査の結果どうであったかということを報告してください。
○政府委員(大池眞澄君) お答えいたします。
 措置入院患者のうち、御指摘の両名が鑑定に当たった患者数は八十八人でございます。今回の実地審査を行った件数は七十九件でございます。その結果は、措置を継続する必要があると判断されたものは二十四件でありまして、現時点で措置は不要と判断されたものは五十五件でございます。
○本岡昭次君 私は、これもおかしなことだと思うんですね、厚生大臣。そうでしょう。措置入院の必要がありと言って入院させる、自分の病院へ入れるわけでしょう。そして別の人が診たらそうでないというのが、七十九件のうち五十五件がそうでなかったと今言われた。これはどうなんだ、何を信用したらいいんですかね、これは。
 私の調査では、これは厚生省からもらった資料で調べると、こういうことになりましたよ。石川前院長と現院長とばらばらに調べてみたのですが、石川前院長が自分のところの入院患者の中で措置入院の必要ありと鑑定して入れた人は二十七人いまして、それを他の鑑定医が鑑定をしますと要措置というのは二十七人中八人、入院の必要があると言われたのが十三人、通院でいいというのが二人、仮退院してもいいというのが四人いるわけなんですよね。二十七人のうち八人しかいない、二九・六%しかいない。仮退院してもいいという人が四人もいたという。平畑現院長が鑑定をして措置入院させられた人が七十七人。それを今と同じような方法で他の人が鑑定した結果を見ると、要措置ということになったのが二十一人、入院の要ありが四十人、通院でいいというのが五人、仮退院をしてもいいというのが八人、精神医療そのものが不要だと言われた人が三人、これも随分ひどい話ですね。
 私はやっぱりお医者さんを一〇〇%信用したいんですね。診察してもらうときにはやっぱり一〇〇%信用して、君はこうだぞと言われれば、そうですかと、医者の診療方針に従って薬を飲み、そして自分の健康管理をして治そうとしますが、しかし、こういう診療をやられたのでは、これは私はどうしようもないんですが、これは鑑定がずさんなのか、それとも、鑑定という仕事が、別の医者が見れば別の答が出るという全く信憑性のないものだというふうに我々は考えなければいけないのか、実にこれは困ったことだと思うんですが、これは厚生省、どうお考えになりますか、この問題は。
○政府委員(大池眞澄君) 精神衛生法に基づきます措置入院を都道府県知事が行うに当たりましては、精神衛生鑑定医二名によりましてその判断の慎重を期することになっておるわけでございます。御指摘のように、確かに極めて専門的な判断を必要とするわけでございますが、一人ということでなくて二名の資格を持った精神衛生鑑定医の判断が一致した場合のみその措置を決定する、こういうふうな仕組みをとっているわけでございます。基本的には、それだけ制度的にも慎重を期し、運用に当たっても厳しくそういった精神に立って運用するように心がけておるわけでございます。
 なお、今回の事例につきまして、少し多過ぎるのではないか、現段階における不要が多過ぎるのではないかという御指摘でございますが、それにあえて議論を申し上げるわけではございませんが、ただ、措置入院を判断した時点と今回の実地審査を行いました時点とでは、数年、相当長期間経過しているケースが多数ございます。その間に病状変化がもしあって、いわゆる自傷他害、みずからを傷つけ他人を損ねるというおそれが精神医学的に診てなくなったと認められれば、その段階で知事に報告をいただかねばなりませんし、また、定期的に病状報告をいただいておるわけでございますが、的確に病状を把握しているならばそういったことが当然それにあらわれてきて、その段階で知事の方も必要な手が打てるわけでございます。したがって、そうした長年の経緯の中で病状把握が十分でなかったケースもありましょうし、あるいはそういう報告が必ずしも徹底をしない面があったかというようなことが今回の経緯でございまして、措置入院の行為を行うに当たっての精神鑑定がずさんであるということは必ずしも当たらないのではないかというふうに私どもは考えております。
○本岡昭次君 私もそうあってほしいと思う。そうでなかったら困りますからね。しかし、それならそれでまた別の問題が出てきますね。
 今度の問題が起こったから、宇都宮病院の措置入院の患者が、あなたは措置入院の要はないと、こうしてもらったわけで、もしこんな問題が起こらなければ、この宇都宮病院でそれなら一体だれが今あなたがおっしゃったように的確に病状を把握するとか、定期的に診てもう必要なくなったからといって県に報告して措置入院の状態から解放するという問題が、それが的確に行われなければこういう状態がまたずっと続くということをこれは立証しておるわけですよね。そうでしょう。初めに入ったときは措置入院の要があった者が今はないというのは、私もそのとおりだと思うんですよ。だから問題は、鑑定自身の信憑性という問題と同時に、精神病院における患者の症状をだれがどのようにして的確に判断をして、入退院というふうな問題、あるいはその治療の変更というふうなものをだれがどのようにして責任を持つかという事柄が、今精神病院の医療の問題として問われている、こう思うんですよ。
 そこで私は、法務省の方にちょっとお伺いしたいんですが、このように、本来、他の医者がもっと早く診ておれば措置入院の必要はない、通院してもいい、あるいは帰ってもいいという状態にありながら、それを怠り、あるいはわかっていても病人が一人おるということは、それはある意味では、別な汚い表現をすれば、金もうけの対象というようなことにもなりかねない今の状態なんですから、一人でも退院させるのは惜しいということになってくる。そういう状態でずるずるずるずるといつまでも、ある場合は死ぬまでこの病院に、最初措置入院であったということによって措置入院患者で一生をここで過ごしたとすれば、私は、これは監禁罪にここの病院の経営者は問われるのではないか。あるいはまた行政は、監禁そのものを幇助した、助けたということに人権上の問題としてなる、このように思うんですが、法務省として、こういう問題を人権上の問題としてどう考えたらいいですか。監禁罪に問われてもしかるべき中身だと私は思うんですが、どうですか。
○説明員(北島敬介君) 監禁罪という犯罪の成否の問題になりますと、やはり具体的な事実関係を詰めた上でなければお答えはいたしかねるわけでございますが、御質問の趣旨からいたしますと、やはり精神衛生法にのっとった要件あるいは手続、それに従って措置入院となり、そして入院してこられた患者という前提で考えますと、仮に後日それが、その時点においては入院の必要がないというふうに判断されたとか、あるいはそれ以前のしかるべき時期においてそういう状態になったということが判明したといたしましても、どうもそれだけで直ちに監禁罪の成立要件でございます不法に人を拘束したというふうに言えるかどうか、その辺に非常に問題があろうかと存じます。
 したがいまして、何といいますか、そういう法的手続にのっとってはいるのだけれども、なおかつ不法に患者の拘束を続けたというふうな極めて特殊な事実関係が仮にあるというふうに仮定いたしますと、その場合に監禁罪の成否というものが問題になってこようかと、かように存じます。
○本岡昭次君 ありがとうございました。
 法に基づいた手続によって入院をし、しかしその入院患者は拘束されているんですから、だから措置入院という中身において、今も厚生省が言っていたように、的確に病状の変化というものを把握をしていって、そして措置という状況にしなきゃいかぬですね。
 お尋ねしますけれども、的確に病状把握というのは、法の上で、あるいはそのほか関係する問題の中で、措置入院患者の症状を的確にどのように把握しなければならない義務がその医者の側にあるんですか。
○政府委員(大池眞澄君) お答えいたします。
 措置入院患者につきましては病院の管理者が病状を常に把握しておく責任があるわけでございまして、また、措置を行いました都道府県知事はその管理者から病状につきまして報告を求めることができるわけでございます。
○本岡昭次君 いや、常にというのはどうなんですか。常に病状を把握しなければならないとか、あるいは知事は措置入院させた患者の報告を受けなければならぬという漠然としたことじゃなしに、もっと具体的におっしゃってください。常にというのは、一カ月に一回か二カ月に一回は最低診なければならぬとか、病院であればそういうふうなものがあるんでしょう。知事の方も、措置入院させた者についての報告は、一年に一回とか半年に一回とか求めなければならないと、そういうものがあるのかないのか、どうなんですか。
○政府委員(大池眞澄君) 精神衛生法の定めによりまして、病院の管理者がその措置患者に関しまして自傷他害のおそれがないと認めるに至ったら直ちに都道府県知事にその旨を届けるという仕組みになっているわけでございます。そのようなケース以外につきましては、法文上は「措置入院者の症状に関する報告を求め、」というようなことで、例えば六カ月に一回というように、定期的にそういうような報告を求めているわけでございます。
○本岡昭次君 もっとはっきりさせてください。措置入院患者については、六カ月に一回、病院の管理者は知事に報告をする義務があるんですか、ないんですか。
○政府委員(大池眞澄君) 法的な根拠は、先ほど申し上げましたように、その期間は特定しておりません。知事が必要と判断するときに報告を求めることが随時できるわけでございますけれども、一般的にルーチンとしましては、六カ月以内の期間に一回は措置患者に関する病状報告をせよということを通達をもとにいたしまして行っているわけでございます。
○本岡昭次君 厚生大臣、やはり今言っているのは、措置入院させたそのときから六カ月以内に、措置入院させた患者はどうかという報告を求める、これだけなんですね、後はある意味では全く野放しということになるんですよ。その次は措置入院の必要がなくなったというときに報告すればいい。その間が十年であれ二十年であれいいということになるんでしょう。どうなんですか。
○政府委員(大池眞澄君) お答えが正確に伝わらなかったかもしれませんが、六カ月ごとに一回ということでございまして、一度のみではございません。現に、そういう病状報告をもとにいたしまして、また、そのほかの状況を判断しまして、実地審査も知事の権限として行っているところでございます。
○本岡昭次君 それでは、宇都宮病院の患者の六カ月ごとの報告を取り寄せてください。信憑性の問題を明らかにしようじゃありませんか、あなたはそう言ったんだから。必ずしもその鑑定の問題じゃない。その後治っていたのがそのまま病院に入っていて、そしてそのときに明らかになったというんで、六カ月ごとに報告があるんなら、この患者がいつどうなっていたのかという問題がはっきりするわけでしょう。六カ月前までやはり全部措置入院の必要があったという報告があったらどうするかという問題を私は問いたい。
 だから、申しわけないが、私が今言いました宇都宮病院と、もう一つこれからも言いますが、群馬県の田中病院、この二つの病院の措置入院患者の六カ月ごとのその報告が管理者からどのように届いてあるかというのを、五十五年からずっとこっちまで、今五十五年からのをちょっと問題にしておりますから、ひとつ提出を求めます。
○政府委員(大池眞澄君) ただいまのお求めの件でございますけれども、病状報告はそれぞれの患者ごとに非常に個別性の強いものとして知事が法の定めに従いましてとっておるものでございます。そのような関係で、守秘義務等の議論もございまして、病状報告そのものはちょっと外部に出すことは差し控えさしていただきたいと思います。
○本岡昭次君 それはだめですよ。個人の氏名までだれも出せと言っていないでしょう。私の手元に出していただいておるのは、番号を打って、番号、性別、生年月日ということでもって、そして鑑定の結果がどうであったかという資料をもう現にいただいているんですよ、どういう病状であったかということを。別にこれを見てだれかということはわかりはせぬじゃないですか。この患者が六カ月前どうであったかという問題がわかれば、あなたの言っている信憑性の問題がはっきりするでしょう。そうでなかったら、医師の名誉にかかわる問題が出てくるじゃありませんか。
 厚生大臣、これはすぐ提出さしてください。できるはずですよ、私は現にここに現在の分を持っているんですから。
○国務大臣(渡部恒三君) これは国会で先生方から求められた資料については、可能な限り私どもできるだけ審議の便に供しなければなりません。
 ただ、今政府委員から答弁ありましたのは、今の守秘義務等の問題、これももちろん個人の人権の尊重という点がございますから、それらとの絡み合いで今話したと思うんですが、これらの点、相談いたしまして、先生の求めに可能な範囲でできるだけ応ずるように努力をしたいと思います。
○本岡昭次君 いや、可能な範囲では困るんですよ。厚生大臣、ちょっとくどいようで申しわけないんですが、措置入院患者が、本来措置入院を要する患者であったのかどうかなんていうのは重大な問題でしょう。
○国務大臣(渡部恒三君) 今申し上げましたように、個人の人権の尊重もこれまた極めて重要な問題であり、また、国会での先生方の審議にできる限り資料を提供して御審議をちょうだいするということも大事な問題でございますので、私ども、今すぐここで先生のお求めの資料を一〇〇%出しますという回答も、大変申しわけないのでありますが、これはできませんけれども、個人の人権を尊重していかなければならない我々の一つの定まりもありますから、そういうのの中でできる限り資料を提供するようにということで御理解いただけませんか。
○本岡昭次君 僕は納得できぬな。
○国務大臣(渡部恒三君) では、ちょっと相談させていただけますか。
○委員長(石本茂君) 速記をちょっととめてください。
   〔速記中止〕
○委員長(石本茂君) 速記を開始してください。
○政府委員(大池眞澄君) 氏名を特定できない等、必要な人権上の配慮を加えまして、ただいま先生から御示唆を賜りましたような資料に見合うような資料を作成して、御報告したいと思います。
○本岡昭次君 その資料をいただいて、そして鑑定の信憑性という問題について、厚生省の方からも一定の見解が出ましたから、そこのところをやっぱりはっきりさせておかなければならぬと私は思うんですよ。六カ月ごとに出ていろんなら。出た結果が一体どうだったかということを、その場合にまた論議させていただきます。
 それで大臣に、いろいろ頭の痛くなるような論議におつき合いをいただいているんですけれども、私は今宇都宮病院のことを問題にしているんですが、先ほども例に挙げた群馬県の田中病院、また同じ群馬県の上毛病院とか、いろいろ全国で問題が起こりつつある精神病院の問題を私はここでこれから取り上げていきます。
 やはりそこで問題になるのは、措置入院患者が、本来措置入院の必要のない者まで入れられているのではないかという問題を思うときに、ぞっとするんですよ、本当に。だからこれは厚生省内で検討していただいて、私はきのうの決算委員会でも法務大臣に言いましたけれども、厚生大臣にはきょう言えると思ったからあの場ではあえて言わなかったんですが、ひとつこれは部内でよく相談していただいて、まず、全国の精神病院の措置入院患者の病状の結果が六カ月ごとに的確に報告をされているのかどうかというこの問題なり、あるいは宇都宮病院でやったような実地審査という問題について、やはりこの際、精神医療に対する社会的な信頼を回復するために県が実地審査をやるようにという指導を厚生大臣としてやっていただけないか、そのことについての検討をしていただけないかということです。
○国務大臣(渡部恒三君) 先生のお求め、大変大事な問題でありますので、その趣旨に沿って、そういう方向で検討してまいりたいと思います。
○本岡昭次君 ぜひお願いをいたしたいと思います。
 次に、宇都宮病院で同意入院患者は何名ぐらいで、そのうち保護義務者の選任が必要な者は何人で、そのうちに選任がなされている人は何人、逆に選任のなかった人は何人、そうした問題についての報告をいただきたいと思います。
○政府委員(大池眞澄君) 宇都宮病院におきます同意入院患者数は、六月二十日現在五百十二名でございます。保護義務者の選任に関しましては、これまでの調査過程で、家庭裁判所の選任を必要とするにもかかわらず選任書が病院に提出されていないケースが一部見受けられましたので、今月末から行う予定にしております実地審査の過程で、同意入院のケースすべてについて入院手続がきちっとなされているかどうか、十分調査することとしております。
○本岡昭次君 同意入院のところではわかると思いますが、一部とおっしゃいましたけれども、わかっているのなる一部と言わないで、今その五百十二名のうち何大正規の手続を経ないで入院をしていたかという問題、ここではっきり明らかにしてください。できるでしょう。
○政府委員(大池眞澄君) 具体的に申し上げますと、今回三月のチェック時点におきまして同意入院をしておられる方の中から無作為に七十五名を抽出しまして、その方々について同意書その他の書類がそろっているかどうかをチェックしたわけでございます。
 その際、同意書につきましては七十五名すべて備わっておったわけでございますが、その中で、配偶者、親権を行う者等を除く扶養義務者の中で複数おるような場合には家裁の選任を必要とするわけでございますけれども、それの必要な者が三十名該当しておりました。ところが、その三十名に関しまして選任書が確保されていない、そういうものが確認できなかったケースが十五ケースあった、こういう中身でございます。
○本岡昭次君 それでは全貌は、同意入院患者の実地審査の結果によってまた質問さしていただきたいと思います。
 それで、宇都宮病院がこれまで行ってきた医療の不正請求の類とその内訳はどのようになっているか、また、無資格者医療の内容、件数、これに伴う不正請求額、こういうものがわかればここで明らかにしていただきたい。
 それで、私はこれは詐欺だと思うんですね、診療もやっていないのに診療の請求をするんですから。資格のない者に検査や診療をさせて、それで医師がしたような形で請求するんですから、詐欺です。当然、そういうことによって請求され受領した医療費は返還をさせるべきだと思うんですよ。お金がないからということで、今国民に自己負担を求めるというようなときに、たとえわずかな金でも、不当に収入として得たものは全部返還させるという、一方厳しさがなければならぬと思うんですよ。当然返還させるという立場にお立ちになると思うんですが、いかがですか。
○政府委員(吉村仁君) 先生の御指摘のとおりだと思います。不正請求額があれば、これは返還をさせるのが当然であるというように思います。
 ただ、現在の時点におきましては、カルテ等を初め関係書類は全部警察に押収をされておりまして、私ども、その事実を一々確認することができない状態でございます。したがって、警察当局とも連絡をとりまして、監査ができる時点になりましたら私どもは監査をいたしまして、不正請求があればこれは返還を命ずる方針で対処いたしたいと考えております。
○本岡昭次君 ちょっと時間がなくなってしまいましたので、宇都宮病院関係についてまだまだ伺いたいことがあるんですが、これは次の機会にして、最後にやはり田中病院の問題に触れておかなければならぬと思います。厚生大臣、宇都宮病院はこれで終わりということじゃないんですよ。また次にどっさりとまだあるので、そのときにお願いしたいと思います。
 それで、群馬県の田中病院の問題について若干お伺いをしていきますが、同病院では、五月七日の夜患者四人が脱走して、これを通して病院内部のいろいろな不正行為が表ざたになっています。
 そこで質問をするんですが、この四人の病院を抜け出した患者ですね、この患者たちの入院手続は一体どうだったんですか。それをまず初めにお伺いしておきます。
○政府委員(大池眞澄君) 無断離院いたしました四名の患者は、措置入院患者が二名でございます。また、同意入院患者が二名でございます。うち同意入院患者につきましての手続関係でございますが、一名は家庭裁判所の選任が行われており、もう一名は父親の同意による入院でございましたが、選任の手続はなされておりませんでした。
○本岡昭次君 つまり違法入院であったわけですね。違法入院というのは、不法拘禁であります。したがって、第二東京弁護士会の戸塚、永野という両弁護士が、人身保護法による違法拘禁救済ということで、他の病院で治療を受けさせる仮の処分の申請を東京高裁に提出いたしますと、あれよあれよという間に、それは結構だと、そのとおりだといって、この人身保護法の適用によって転退院ということになったんですね。だから、弁護士が出てきて、人身保護法による保護措置で解放されているということなんですよ。私は法務省にこれどう考えたらいいのか質問したいと思うんですが、時間がありませんので、この人身保護法等との関連の中で、精神病院等の問題これからさらに詳しく聞いていきたいと思います。どうも本当に合点がいかぬですね。
 そこで、警察に聞きます。田中病院で、保護義務者の選任を要するのにこれをせず、アルコール症だけで入院をさせ、しかも保護室に監禁し、看護人が暴行を加え、骨折を加えさせた例があります。この件に関して、第二東京弁護士会の戸塚弁護士が川中院長に会った際、同院長は、大変お酒を飲んでいだけれど幻覚、妄想といった精神症状はなかった。また、帰ると言って荷物を持って看護室の入り口付近に立っていて保護室に入られたと、こう述べています。つまり入院手続上不備、違法で、精神症状のない人を保護室に監禁、この際暴行を加えて骨折をさせているんです。だから、家族に対し病院が説明をし、謝罪をいたしています。さらに本人に確かめたところ、暴行を受けても手も足も出せず、私は何もしていないとのことで、さきの田中院長の釈明と一致をしています。暴行はまさに事実としてあったと考えられますが、警察、この事実を調べ直してほしいと思うんですが、いかがですか。
○説明員(藤原享君) 先生御質問の件につきましては、田中病院を既に退院しております元患者が入院中に暴行を受けたという情報に基づきまして、群馬県警察で、病院内関係者や本人から事情を詳細に聴取いたしましたが、看護士等による暴行の犯罪容疑は把握できなかったという報告を受けております。
 また、先生御指摘の点につきましては、今後とも必要に応じ所要の捜査を行いたいというふうに考えております。
 以上でございます。
○本岡昭次君 ぜひ捜査をやっていただきたいということを強く要望しておきます。
 それで、田中病院では、レントゲン撮影の大部分をレントゲン技師の資格を持たない看護士にさせていたとされています。厚生省はこの実態をつかんでいますか。
○政府委員(吉崎正義君) 田中病院につきましては、五月の九日十日、二十二日、三十日三十一日の三回にわたりまして医療監視を実施しておるところでございますが、その三回目の監視の際に、エックス線撮影の資格を持たない准看護士にエックス線撮影をさせていたと院長が発言をしておるのでございます。ただし、検査伝票等関係資料を調べましたところ、そういう方面では細かい件数等が不明でございまして、立証できなかったのでございます。そこで、今後ともこの名前の挙がっております二人の関係者、近日中に事情聴取の予定でおりますが、さらに実態の解明に努め、厳正に対処してまいる所存でございます。
○本岡昭次君 さらに、この田中病院は前橋市内にマンションを所有し、市内の不動産業者などを介して本格派高級賃貸マンションをうたい文句に一般から入居者を募集し、家賃は月約五万円を取っているようであります。そこで、この医療法人はいつからこのような不動産経営を営めるようになったかということでございますが、この事実関係はどうですか。
○政府委員(吉崎正義君) 田中病院が資産といたしましてマンションを所有していたことが判明をいたしておりまして、御指摘のとおりでございます。
 その賃貸者との契約内容等、詳細につきましてはまだ群馬県から報告を受けておりませんで、県の今後の調査にまちたいところでございますけれども、お話にございました医療法四十二条との関係でございますけれども、マンションを経営するというふうなことは、医療法人の附帯事業としてこれはもう不適切である。実情を的確に把握をいたしまして、厳正に対処をする必要があると考えております。
○本岡昭次君 決算書を見てみますと、短期貸付金というのが非常に目につきます。五十五年度五千七百八十二万円、五十六年度六千九百二万円、五十七年度一億百二十一万円という多額の貸し付けがなされていますが、だれにどのような貸し付けをしていたのかということはわかりますか。
○政府委員(吉崎正義君) 五十五年、五十六年、五十七年と、御指摘のございましたような貸付金がございます。その内訳、使途等の詳細につきましてはまだ把握はできておらないところでございまして、今後群馬県を通じまして、医療法人の資産運営上不適正な事実がないかどうか調査、指導に努めてまいりたいと存じます。
○本岡昭次君 厚生大臣、最後の質問をさしていただきます。
 田中病院の問題を、私は宇都宮病院の問題と並行させながら随分詳しく申し上げてきました。総括してこの田中病院の問題を言えば、御多分に漏れず慢性的ベッドオーバー、医師それから看護に必要な職員の不足、患者に対する暴行、違法入院、無資格者診療、結果として医療費の不正請求、あるいはトンネル会社、マンション経営、これらに伴う医療法違反、あるいは補助金の目的外使用、あるいは税の過少申告等々、私たちは今疑いの目をもって中身を検討をいたしております。このようにぞろぞろと不正行為が出てまいります。宇都宮病院が大病院であったからということでなくて、四百名規模のところでもこのような事実が今浮かび上がろうとしておる。
 それで、大臣、伺いますが、この病院に対して、この五年間で結構ですから財務監査あるいは医療再監視をやっていただいて、宇都宮病院のように実態を明らかにしてもらえないかということであります。このような状況が続く限り国民は納得できないと思うので、国会の場で私は明らかにさしていただきたいと思うんです。どうでしょうか。
 厚生大臣の答弁をいただいて私は質問を終わりたいと思います。
○国務大臣(渡部恒三君) これは精神病院は、その患者の特殊性から人権の保護については念には念を入れなければならないので、私は宇都宮病院の問題が出たとき、もうこういうことは二度あってほしくないということを神に祈るような気持ちで願っておったのでありますが、残念ながら、今先生御指摘のように、この田中病院についてもいろいろの問題があるようでございます。
 本来医療法人というものは営利を目的としてはならないということになっているのでありますから、今先生御指摘のような問題がありとすればこれはやはり大きな問題でありますし、また、それ以上に患者の人権の保護ということが心配でございますので、県と十分相談をいたしまして、実態を明らかにするような方向で努めてまいりたいと思います。
○本岡昭次君 終わります。
○中野鉄造君 私はまず冒頭に、今国会の最大の対決法案であります健保法案をめぐり今日さまざまな賛否両論の動きが見られますが、その中で、賛成とか反対とかという論争とは別の次元の動きが注目されるわけでございます。すなわちそれは過日新聞でも報道されたわけですが、大阪府の医師会が七月五日半日休診を行う。いわゆる実力行使に踏み切るという全国でも初めてのケースでございますが、これに対して大臣の見解をお尋ねしたいと思います。
○国務大臣(渡部恒三君) これは、医師の方は、言うまでもありませんが国民の健康を守っていくという大きな社会的責任がございます。したがって、国民はいついかなるときでも、急病になって一刻一秒の猶予もなくお医者さんにかからなければ、あるいは病院に入院できなければ、そのために生命に支障を来すというようなことがありますから、そのようなことはあってはならないことであると思いますし、これはやはり必ずぎりぎりまでに反省されて、そのようなことはやらないで済む、済むように反省していただくように、大阪医師会の皆さん方の医師としての良心に期待したいと思っております。
○中野鉄造君 こうしたことをもし行うとすれば、これは医師法に違反しますか。
○政府委員(吉崎正義君) 特定の日を休診日とすること自体は直ちに医師法違反にはならないと考えております。
○中野鉄造君 しかし、その特定の日を個々に、個々の人が思い思いにということであればいいことでしょうけれども、こうした申し合わせにより一斉に休診する、これでも医師法には触れないんですか。
○政府委員(吉崎正義君) 一番関係がございますのが十九条の応招の義務でございますけれども、これはそのときの地域の医療機関の状況にもよりますけれども、休診をしておったからといって応招の義務は解除されるものでは実はないのでございます。そういうことで、半日休診をするわけでございますけれども、そのことをもって直ちに医師法違反とは言えないのではないかと考えております。
○中野鉄造君 先ほど大臣は、大阪府医師会の良識にまつと、こういうお答えでございましたけれども、厚生省としては、こういったようなことが今後各地でもし行われるというようなことになればこれはもう大変なことになりますし、一つの大きな前例をつくることにもなるわけですけれども、厚生省として、ただ静観しているということではなしに、何か働きかけか、そういったようなものがあってしかるべきじゃないかと思いますが、いかがですか。
○国務大臣(渡部恒三君) 先ほども私申し上げたように、医師の皆さんは、常に国民の皆さんの健康を守っていくという責任もありますし、また、それぞれそういう誇りを持って頑張っておられるだろうと思います。したがってその医師の良心と誇りを持っておられる皆さん方が、患者に大きな不安を与える、いわば一斉休診というような一種の医師のストのようなものでありますが、そのようなことはやるはずがない。必ず最後の最後には、やっぱりみずからの良心を、また責任を、誇りを思い起こしていただいて、やらないであろうということを期待したいと思います。
○中野鉄造君 今のところその期待だけで、厚生省としては別に何ら手は打っていないと、こういうことですね。
○国務大臣(渡部恒三君) 伝え聞くところによれば、その一斉休診というのは、私どもが二十一世紀の国民の健康を守るために是が非でも今国会で成立をさせていただきたいと願っておる健保法の改正に反対をしてやっておるということであります。これは国会の場で議論することでありまして、賛成反対、いずれにいたしましても、既に政府が決定して国会で提出され、それぞれの議会の手続によって今国会で審議せられておるのでありますから、その法律に反対をして国会外でそういうことをやるということ自体が間違っておるのでありますから、そういうことのために一々国会に提出した法律が撤回しなければならないとか、そういうことになれば、これは議会民主政治そのものを否定することになってしまいますので、私どもはそのような圧力によって国会の審議を云々というわけにはまいりませんので、やはり医師会の皆さん方の、国民の健康を守っておられる医師会の皆さん方の誇りと責任と良心に心から期待し、大阪の患者の皆さん方の生命の安全、健康を守るために、大阪医師会の皆さんがそのようなことは取りやめにしていただくように、神に祈るような気持ちで今願っておるところでございます。
○中野鉄造君 次に、健康保険の適用範囲についてお伺いいたします。
 交通事故に遭った場合、被害者は必ず医療機関に送り込まれるわけですが、その際、健康保険はこれ適用されますか。
○政府委員(吉村仁君) 健康保険は適用されます。
○中野鉄造君 そこで、交通事故の件数と、被害者が病院に担ぎ込まれて治療を受けるに際して自賠責保険と健康保険適用の比率について、過去三年間ぐらいの数字をお示しいただきたいんですが。
○説明員(福島義章君) お答え申し上げます。
 自賠責保険の損害の調査あるいは査定ということをやっております自動車保険料率算定会というのがございますけれども、ここで調査しました結果によりますと、自賠責保険の傷害事案のうち、過去三年間におきまして大体一四%程度が健康保険などの社会保険の利用を行っております。
 なお、これらの社会保険を利用しました場合におきましても、その社会保険の負担した額につきましては、社会保険のサイドから自賠責保険に求償ができるという仕組みになっております。
○中野鉄造君 今のお答えのように、圧倒的に自賠責保険でもって取り扱われているということがわかりますけれども、この実態から見て、どういうわけで自賠責保険が多いのか。その辺はいかにお考えですか。
○説明員(福島義章君) お答えいたします。
 先生の御質問の趣旨は、社会保険でなくて自由診療の方がなぜ多いのかという御趣旨だろうと思いますけれども、これにつきましては、先ほど厚生省の方から御答弁がございましたように、健康保険等の社会保険につきましても当然これは適用になっておりますけれども、交通救急医療の特殊性といいますか、そういうものから自由診療の方にいっているという場合が多いのではないかというふうに思っております。
○中野鉄造君 交通事故というのは不測の事態として起こってくるわけですけれども、そういうときに、各自が年じゅう保険証を携帯しているわけでもない。そういうところでもって病院に担ぎ込まれた、とりあえず自賠責でと、そういうようなことになるのではないかと思いますけれども、医師の側から見ますと、これは自由診療の方が保険会社の方へ請求を出すにしても出しやすい、あるいは請求額どおりに、一通りの審査はあるにしても、レセプトといったようなそういうようなことではなしに、請求額どおりに大体支払ってもらえるし、健康保険診療よりも額の上からいっても差が、かなり開きがある。そういうようなことで自賠責保険で治療を行うことが今や常識化されているように見受けられますけれども、厚生省としては、このことについてはもう今から数年前になりますか、医療機関に通達を出されておりますが、その後実態はこういうような状態でございますが、今日のこの実態を踏まえてどのようにお考えですか。
○政府委員(吉村仁君) 交通事故を起こした場合に健康保険の方を選択するか、あるいは自由診療の方を選択するか、なかなかこれはそのときの事情によって難しい問題があると思いますが、私ども、健康保険で請求をされても、いずれにいたしましても求償権を行使いたして、自動車損害賠償の方に求償をして、規定額はもらう、こういうことになっております。
 したがって、自由診療の方で物事が処理されればそういう求償権の行使という問題が起こらない、健康保険の方で請求をされれば健康保険の方から今度は自動車賠償保険の方に求償権を行使する、そこが違うだけでございまして、私ども、交通事故の場合健康保険が適用になりますよということにつきましては、これは周知徹底を今後図っていきたいと思いますし、従来から医療機関にも周知をする、被保険者にも周知をするというような措置を講じてまいりましたが、やはり、先ほど先生も御指摘のように、交通事故を起こしましたときに被保険者証を持っているか、持っていないか、それはやはり非常に医療機関側にとってはどの保険に請求をすればいいかということがなかなかわかりにくい面もございまして、その辺がはっきりしない場合には自由診療の方で処理をする、こういうことになるケースも多いかと思いますが、その辺はひとつ、被保険者証は後で調べれば必ずわかることでございますので、医療機関と十分話し合いをして、交通事故の医療費の処理に当たって被保険者のためになるような方法を講じてまいるつもりでございます。
○中野鉄造君 自賠責保険の適用範囲というのは、いわゆる医療費、慰謝料あるいは休業補償、こういったようなことがありますけれども、その支払い限度額というのは御承知のように百二十万円ですけれども、そうすると、この百二十万のうちに医療費がかなりかさんできてみたりなんかして、あとの慰謝料だとか休業補償というようなものが果たしてどのくらい支払われているか、そこいらが非常に私疑問に思うんですけれども、その点いかがでしょうか。
○説明員(福島義章君) お答え申し上げます。
 先ほど申し上げました自動車保険料率算定会の調査でございますけれども、これによりますと、自賠責保険の傷害につきましての損害額、これの請求がございましたものにつきまして調査しましたところでは、平均いたしまして五割強、五割を少し超えるぐらいが医療関係費ということになっております。
○中野鉄造君 運輸省にお尋ねいたしますが、五十三年度から五十八年度までの自賠責保険収支の実態を簡単にお尋ねいたします。
○説明員(田中寿君) 自賠責収支でございますが、自賠責保険は保険料に関しましては所管が大蔵大臣ということで、これは運輸省、関係省庁、審議会に諮りながら処理を進めているということでございますので、自賠責収支につきましては当方からお答えしたいと思います。
 自賠責保険収支でございますが、まず四十四年十一月に、当時で平均二倍に保険料を引き上げをお認めいただきました。これは制度発足以来ずっと収支が悪うございましたが、三十五年以降からモータリゼーションが非常に急速に進展してきた、交通事故の発生が非常に社会的な問題になったというときでございまして、非常に交通事故の頻発、そういうことで自賠責収支が非常に悪化いたしまして、四十四年十一月に当時平均二倍の保険料の引き上げをお認めいただいたわけでございます。それ以降、四十四年をピークにいたしまして交通事故がずっと減少ぎみに推移してまいりまして、そういうこともございまして収支はずっと黒字傾向を示してきたわけでございますが、五十三年以降、一つは交通事故が増発に転じたということもございますし、それから四十四年十一月以来自賠責の限度額、これは現在死亡の場合には二千万、それから傷害の場合には百二十万、それから後遺障害の場合には七十五万から二千万までと各等級に応じて決めてございますが、この限度額を四十八年あるいは五十年、五十三年と改定して増額してまいりました。そういうこともございまして、収支が非常に悪くなってきてございます。そういうことで、五十三年から収支が赤字に転じてまいりまして、最近に至りますまでこの赤字幅は拡大してきてございます。
 そういう状況でございまして、この収支改善については早急に何らかの措置をとらなきゃいけないのではないかというふうに考えている状況でございます。
○中野鉄造君 先ほどから私申し上げておりますように、御答弁にも先ほどありましたように、五割強のものが医療費に使われている。こういうところから見まして、ただいまのお話の中にもありましたような、現在かなりの赤字を抱えているということで、この赤字の原因がすべてこれら自由診療によるというようなことは私は言いませんけれども、収支悪化の最も近因というものは自動車の増加によるところの事故発生件数の上昇にはこれは違いありません。しかし、遠因ということになると、この治療機関関係費の増加もかなりこれは要因となっていると思いますけれども、大蔵省はこういったような、先ほどから私がお尋ねしているこういうような実態を御存じだったんですか。
○説明員(田中寿君) 自賠責保険の支払い保険の中で、今傷害に関しましては運輸省の担当課長の方から答弁がございましたように、五割強の医療関係費が占めているということでございます。あと死亡の場合でございますが、これは一番大きいのは逸失利益等でございまして、そういう形でございます。
 医療問題につきましては、やはり自賠責保険収支を見る上で無視できない大きい問題だと思っておりますし、いわば保険金の支払いサイドに立つわけでございます。そういう支払いサイドから見る場合には、できるだけ適正な医療費であってほしいという気持ちは切実なものがございまして、この対策につきましては、そういう支払い側であるという、しかもそれは任意ベースであるということで、限度はございますけれども、いろいろ医師会にお話しをするなり、これは保険会社、自算会等が話をして医療費の適正化についての理解と御協力を求めるなり、あるいはこの保険金請求に当たって添付されます診療明細書の請求が適切であるかどうかということについて顧問医に相談するなり医療調査担当者が当たる。あるいはいろいろ医療請求につきましてデータを集めまして、そういうものの中で過大であると思われるものについてはそれなりの協力方を要請する等、それなりの対応はしているわけでございます。
 非常に地道ではございますけれども、こういうようなことを通じてできるだけ適正な方向に持っていきたいと、こういうふうに考えているわけでございます。
○中野鉄造君 自由診療と健康保険によるところの診療によって支払う医療費の差がどのくらいになるのか計算をされたことありますか。
○説明員(福島義章君) お答えいたします。
 単価面になってくると思いますけれども、自由診療の場合の一点単価といたしましては、大体平均しますと約二倍ぐらいになっているという状況でございます。
○中野鉄造君 これは非常に乱暴な計算かもしれませんけれども、社会保険診療の利用率から見て、先ほどもお話しがありましたように、約一五%ぐらいが健保関係であるとすれば、年間の交通事故発生が、これは警察庁の調べですが、五十万件前後であると、こうなっております。そうしますと、この八五%ぐらいが自由診療で行われておると、こういうことになるんじゃないかと思います。そうしますと、平均支払う医療費が約四十二万円となっておりますので、この四十二万円を掛けると本来の医療費が出てくるということになると思いますが、こういう計算では間違っているでしょうか。
○説明員(福島義章君) 私どもちょっと詳細な計算をしたことございませんけれども、保険の場合の件数というものは必ずしも警察統計と一致しておりませんので、そういう事情がございまして、先生のおっしゃったような数字になるのかどうか、ちょっと、もう少し勉強してみないとわからないわけであります。よろしくまたお願いしたいと思います。
○中野鉄造君 まあ今即座にはわからないということですけれども、いずれにしてもこうしたようなことから、自賠責の今日の赤字というものが運営次第ではこうまでならなくても済んだんじゃないかというのが私の申し上げたいところなんですが、こういうことを踏まえて大蔵省、ひとつ、安易に保険料を今後値上げするというようなことは、これは考えるべきじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
○説明員(田中寿君) 先生御指摘のとおり、医療費の問題につきましては適正な支払いを図っていくということは非常に大切だし、私どももその実現方に努力いたすべきものだというふうに肝に銘じております。
 ただ、自賠責保険そのものの収支の構造が、この四十四年十一月以来、基本的には料率を据え置いてまいりまして、一方では交通事故がふえてきた、それから限度額の改定等が行われたというところに一番大きい要因がございまして、もちろん医療費の問題もございますが、そういう状況でございます。自賠責保険というのは強制保険でございますから、保険料の引き上げは同時に車の保有者の皆様方に負担の増を求めるわけでございますので、もちろん安易な引き上げを考えているつもりは毛頭こざいませんが、最近の収支の状況はこういうことでございますので、そこはひとつ御理解を賜りたい、こういうふうに思っております。
○中野鉄造君 ですから、収支の状況は現在赤字であるということは私もわかっております。しかし、こういうことになったというその遠因、近因というものを考え合わせると、いま少しやっぱり指導を強化するなり、何か対策を立てるべきではなかったのか、こう思うわけです。
 こういう実態にかんがみまして、最後にひとつ締めくくりとして厚生省いかがですか。今のままで、こういうような自由診療は自然発生のままで行われていいものかどうか、いかがでしょうか。
○政府委員(吉村仁君) 私ども、自賠責の医療費の動向についてはつまびらかにいたしませんが、被保険者の方の立場から言えば、やはり健康保険の適用になるものならなって、それをその健康保険制度の上で処理をするというのが被保険者のためには便利なのであろう、こういうように考えます。したがって、私ども従来からやっておるわけでございますが、医療機関あるいは被保険者等に、交通事故の場合でも健康保険の適用ができるということについて十分周知徹底を図ってまいりたいと考えます。
○中野鉄造君 今も申しますように、百二十万の限度額の中でそれが支払われるということになると、あとの慰謝料だとか休業補償だとか、そういったようなものが限度額ということで打ち切られてしまうような結果になるわけなんですから、あなたの場合は健康保険を使われた方が得ですよというようなことを教えてやるのは、そのくらいの親切はこれは当然あってしかるべきじゃないかと思うんですが、そういったような面での指導というか、医療機関に対し、あるいは国民各位に対し、その辺の指導、PRをひとつお願いしたいと思うんです。
○政府委員(吉村仁君) 御指摘のような線にのっとりまして、被保険者及び保険医療機関等につきまして指導を徹底してまいりたいと考えております。
○中野鉄造君 次に、これはもう古い話でございますが、例の差額ベッドの問題についてお尋ねいたします。
 この問題はもうほとんど今までいろいろな角度から言い尽くされてきたことではありますけれども、依然としてその改善ははかばかしくないようでございまして、特に私立医大等でそれが顕著であることが今日の現況でございますが、厚生省として今後の対策、そして現在行っておられる努力の一端をお聞かせいただきたいと思うんです。
○政府委員(吉村仁君) 三人部屋以上の病床につきまして差額を解消するという方向で、私ども鋭意努力をいたしております。五十八年の七月一日現在で、三人以上のところで差額徴収をしておるベッド数は全国で一万一千九百五十ベッドでございまして、全病床数に対する割合は一・一、こういうことになっております。五十六年と比較いたしまして一・二%のマイナスということになって、まあ私どもの努力の一端もひとつ御理解を賜りたい、こういうように思います。
 一番成績が悪いというのが今御指摘のような私立大学附属病院でございます。ただ、私立大学の病院につきましても、五十六年の七月時点では一万一千二百ベッドが差額徴収ベッドであったわけでありますが、五十八年七月一日では六千七百三十七ベッドに減少をしております。――訂正をいたします。五十六年七月一日は一万百二十ベッドでございました。それが六千七百三十七ベッドに、約三千三百八十ベッドばかり減ったわけでございます。
 こういうようにいたしまして、私ども差額ベッドの解消には十分意を尽くしておるつもりでございますし、また、この努力を続けてまいりたいと思います。しかしながら、この問題に関しましては、私立大学病院の経営問題も絡んでおることは事実でございまして、引き続き私立大学病院の関係者と話し合いを進めるというようなことが必要であろうと思います。
 また、今回お願いをいたしております健康保険法の改正におきまして特定療養費という制度を設け、差額徴収の問題につきまして適正に対処する方針をとっておりますし、そういう改正をお願いいたしておるわけでございますが、その運用を通じまして、適正かつ円滑な運用というものが確保される、こういうように私どもは考えております。したがって、法律を通していただければ、その段階でまた中医協と相談をいたしまして、差額徴収ベッドの適正化、こういう問題をさらに進めてまいりたいと考えております。
○中野鉄造君 では、もう時間もありませんので、次にまいります。
 現行の健康保険制度のもとでは、国民健康保険、組合健保の個人負担金を医療機関の請求額どおり窓口で支払わなければならないわけですが、患者は請求額どおり支払った後で差額を還付される仕組みになっているわけですが、この制度に対して、これはいささか問題があるんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
○政府委員(吉村仁君) 先生御指摘の問題というのは、恐らく、窓口で一部負担を払った後で支払い基金で査定をされる、その場合に、既に窓口で払っておる一部負担の金額と査定後の金額とが額に差が生じてくる、そこはどういうように処理すればいいのか、そこが問題ではないかという御指摘であろうと思います。
 私ども、法制局の見解をただしましたところ、やはりそのところは不当利得になるという法的な見解を示されたわけでありますが、なかなか、請求をした後支払い基金で審査減点が行われるということになるわけでありますが、その審査減点の内容もまちまちでございます。例えば事務的なミスというようなことで百円ぐらい査定をされる、こういうようなものもございますし、私どもの知っている限り最大の査定額は、一カ月の医療費は五千五百万円の請求がありまして、それを二千三百万円に査定をした、こういうようなケースがあるわけでございますが、そういう場合には、当然これは一部負担の調整ということをすべきであろう、こういうように思います。
 そこで、実際問題として考えますと、査定額が非常に大きいような場合には私どもも保険者の方から患者に知らせる、それからまた、医療機関の方からも患者の方にその辺は調整をしていただくということからひとつ改善をしていってはどうか、こういうように考えているわけでございます。例えば百円の査定があるとすれば、一割の一部負担なら十円の修正をしなきゃならぬ。あるいは家族の場合だったら三割負担ですから三十円の調整をする。その三十円あるいは十円の調整をするために非常に事務的な負担が保険者にもふえるし医療機関にもふえる、これはやはり現時点におきましては御勘弁を願えないだろうか、こういうのが私どもの気持ちでございまして、金額が大きい場合には、これは当然調整をすべきであろう。そして私どもも、金額が大きいものについて調整をしていくことからこの問題の改善を始めたい、こういうように考えておる次第でございます。
○中野鉄造君 十円だとか二十円だとかそういう少額であってみても、やはりちりも積もれば山となるということもございますように、審査の査定率を見ますときに、五十七年度においては国保が〇・九三%、健保が一%の過剰請求があると報告されておりますけれども、だからといって、今おっしゃったように十円、二十円のそれの還付をするについてのまたいろいろな事務的な負担、こういったようなことで、勘弁してくれというようなことでありますけれども、今も申しますように、少額であってみてもこれは積もり積もってかなりの額になってくると思うんですが、これはやっぱり今日の出来高払いというこの制度の中にも一つの大きな問題があるんじゃないかと思いますが、大臣、こういうようなことをこのまま放任しておいてもいいんでしょうか。
○国務大臣(渡部恒三君) 放任しておいてよいとは思っておりません。
○中野鉄造君 例えば、ある病院がレセプトに記入した国保の患者の医療費が十万円だった、その場合は患者負担が国保ですから三万円になりますね。そのうち二万円が減点されたとすると正式の診療費は八万円です。この結果、患者負担は八万円の三割に当たる二万四千円、こういうことになりますけれども、実際はその減額通知が国保連合会からも病院からもどちらからも送られてこない。このため、六千円の払い戻しを受ける権利があるにもかかわらず、負担金の減額はゼロで、還付されないままになっている、こういうこともあるわけなんですが、患者の個人負担金額に差額が生じれば、当然これは患者は請求する権利があるわけなんです。しかし、患者は減額されたかどうかそれさえもわからないのが今日の実態であるわけですけれども、こういうようなことは許されてはいけないと今大臣もおっしゃったんですけれども、許されてはいけない、けれどもこういうような実態にあるわけですが、では、その対応策というか改善策というか、そういうものはお考えですか。
○政府委員(吉村仁君) 先ほど申し上げましたように、十円、二十円ぐらいの場合は御勘弁を願いたいと、こう思いますが、今、先生御指摘のように、十万円が八万円に減額をされて自己負担の上におきまして六千円の差が出る、こういうような場合には保険者から患者の方に通知をさせる、こういうような措置をとりたい、こう思っております。それを本当にぎりぎり理屈から言いますと、十円でも五円でも通知をして調整をしなきゃならぬ、こういうことになるわけでありますが、全体的な事務的な負担、コストの面から考えまして、金額が大きいものからひとつ始めさしていただきたい、こういうように申し上げておるわけでございます。
○中野鉄造君 過日の読売新聞の調べによりますと、五十七年度の総医療費は十三兆八千七百億円で、減点額が約一千四百億円に上る、こうなっております。このうち国保と健保家族分を三〇%と見積もって、個人負担金三割の差額、つまり患者に返還すべき額を算出いたしますと百二十六円になるわけですけれども、この百二十六円、このようなことに関して、先ほど高額の方から少し改善をしていくとおっしゃいましたけれども、どこからが高額でどこまでが少額なんですか。
○政府委員(吉村仁君) なかなか金額で示すことは難しいわけでありますが、私どもの計算によりますと、今御指摘の一人当たりの一部負担の調整額、つまり査定によって、支払った類とそれから査定後の額との差が生ずるわけでありますが、これは五十七年度ベースで計算をいたしまして七十円でございます。正確に申しますと、その七十円でもこれは返さにゃならぬ、法律的には不当利得になる、こういうことなのでありますが、郵便で知らせをするにいたしましても四十円の経費がかかる。そしてまた、事務的な人件費等もかかってくるわけでありまして、その辺をいろいろ考えて金額は決めていきたい、こういうように思います。
 また、例えばコンピューターを導入をしておるというような保険者でありますとこの金額は割と簡単にはじき出すことができます。また、事務処理も非常に簡単なのでありますが、全部手作業でやっている保険者におきましては、これは非常に大変な事務になるわけでありまして、その辺はやはり保険者ごとにも考えていかなければならないであろう。こういうように考えておるわけでございます。
○中野鉄造君 おっしゃる意味もよくわかります。ただ、ちょっと私も触れましたように、現在の出来高払いというこのところにもいろいろなそうしたロスが出るというか、こういうことがあるんじゃないかと思います。まあ一件一件の件数にすれば極めてこれは少額かもしれませんけれども、全体から見ると百二十六億円のロスが出ておる。これは結局どこに落ちついているんでしょうか。
○政府委員(吉村仁君) 医療機関の収入になっておるわけでございます。
○中野鉄造君 そういうことなんですね。ですから私申しますように、現在、医師の倫理というようなものが非常にやかましく問われている今日でもありますし、こういうようなことではますます権威というか信頼というものをなくすことになるわけでございますので、先ほども申し上げましたように、現在の出来高払いの制度というか、こういったようなものも含めてひとつ十分検討をしていただきたい、こう思うわけです。これだけいろいろな先端技術も発達している今日でございますので、何かいい知恵が出てきそうなものだ、こういう気がしてならないわけですけれども、よろしくお願いします。
 次に、厚生大臣の諮問機関であります人口問題審議会が、六月の三十日、我が国人口問題の現状と将来への提言を織り込んだ人口問題審議会報告書を厚生大臣に報告をされておりますけれども、我が国の高齢化が西欧諸国をはるかに上回るスピードで進んでいることはこの白書にも指摘されておりますが、中高年労働力の活用の余地が大きいとして、社会の仕組みを人生八十年時代に合うように変えて高齢者の社会参加を促進すべきだ、こういう提言をされております。この人生八十年時代への対応をどのようにされているのか、基本的な方向をお示しいただきたいと思います。
○国務大臣(渡部恒三君) 今先生お話しのように、人生五十年と私ども言っておったのでありますが、もう人生五十年という言葉は我が日本の現代史から消えて、八十年社会へさらに進んでまいります。そうしますと、今までの人生五十年という考え方でいろいろ定年とかいろんなことがありましたが、もうすべての問題が考え方を変えていかないとならない、そういう方向に来ていると思います。
 そこで、厚生省といたしましては、これから生きがいのある老人の生活、もう何歳だからそれからは何もしないでいいということでなくて、どういう表現が適当かわかりませんが、死ぬまでとにかく元気はつらつとして世の中に役に立っていく老人ということの方が幸せなわけでありますから、寝たきり老人でおるよりは。やはり一番大事なことは、この社会で老人の方が必要なんだという考え方を若い者が持つべきでありますし、また老人の方も、自分の健康上許す範囲でできるだけ世の中の役に立っていくという考え、言うならば若者たちはお年寄りを尊敬し大事にするし、またお年寄りは若者たちに思いやりを持って、最後まで次の世代の者たちの役に立ってあげようという気持ち、これが調和していって高齢化社会というものが社会に活力をもたらすことになると思いますし、また老人が住みやすい、最後まで生きがいを持って生きていける社会になろうかと思いますので、そういう基本的な考え方の中で私どもは今いろんな施策を講じておるところでございます。
○中野鉄造君 私は、最近のいろいろな厚生省の施策を見ておりますときに、どうも政府のお考えになっていることが、今回の健保改正や年金改正の法案に象徴されるように、二十一世紀への対応としながらも、ややもすればそれは財政運営上の発想からであり、それのみが具体化し先行しているように思えてならないわけなんですが、先日ある人の論文の中に、現在の我が国の憂慮すべき社会の中で、高齢化はもちろんのこととして、そのほかに、過去にはかってなかった出来事が三つあるとして、一つが青少年の非行の低年齢化、二つ目が中高年の離婚の急増、三つ目が中高年齢者の自殺の多発ということが挙げられておりました。私も同感ですが、特にこの中で中高年齢者の自殺の多発については、現在の高齢化の中で昔とは違った家庭環境あるいは社会環境、人間関係等々いろいろなさま変わりした複合的要因があると思いますが、つまるところは夢と希望をなくしたというか、存在感あるいは生きがいをなくしての結果ではないかと思います。それは決して物や金によって出てくるものではありません。これらを思うとき、もちろん財政上の配慮は当然のことながらも、我々の知らないところで、生きているよりも死んだ方がましだと、こう思っている人たちがだんだん多くなってきているというのが現状であろうかと思います。
 こうした精神的な貧困と寒々とした孤独感の中にうずくまっている人たちに対して、何か温かい血の通った施策をこそ講ずべきではないかと思うんですが、今大臣の御答弁の中にありましたように、二十一世紀に向かってこうした精神的な面からというか、生きがい、そういったようなものに対する、抽象論ではなくて、何か具体的なものをお持ちですか。
○国務大臣(渡部恒三君) 今の先生のお話、最初の部分の健保と年金の改正の問題を除いては全く同感でございまして、私どもも今先生おっしゃったように、やっぱり老人の方に最後まで生きがいを持っていただこう、そのためには老人の方が世の中で必要なんです、我々後輩のために。これが一番大事だろうと考えます。地方なんかで、私の知っている町村でも、シルバーバンクというようなことをやりまして、非常に老人からもまたその周囲の人たちからも喜ばれておるというような話も聞いておりますし、また最近非常に老人の中で新しいスポーツがはやりまして、私も見ておりますが、非常に生きがいを持って七十歳になる八十歳になるそういう方がやっておりますので、こういうものも大いに厚生省としても地方の自治体に働きかけて普及していくことがよいなというようなことを考えておりますし、また寝たきり老人とか、こういう方もまた大事でありますから、これも介護人を派遣するとか、やはり単に施設に収容すればいいというような考えでなくて、それぞれの地域社会で、それぞれの家庭で、やはり親戚の者や隣近所の者や家族や、そういう人間の温かい励ましの中で老人が一生を終わっていける、そういう社会条件をつくっていくために今後努力してまいりたいと思います。
○中野鉄造君 とにかく、こうした高齢社会の到来やこうした痛ましい現象は、今急にこれは出てきたものではなくて、少なくとも数年前から十分に予測されたことでございますが、こうした悲惨な現象がこれからもますます急増してくるんじゃないかということで憂慮にたえないわけなんです。
 ところで今日、六十年度予算編成のシーリングが決められる時期となりましたけれども、去る四日、臨時行政改革推進審議会は、あくまで増税なき財政再建の臨調路線を堅持し、マイナスシーリシグを確認したと、このように報ぜられておりますけれども、こういうことになってきますと、ゼロシーリングあるいはマイナスシーリングというようなことになってきて、最も大きく影饗を受けるのはやはり国保予算ではないか、こう思うんですが、言うまでもございませんけれども、国保というものはこれは構造的に低所得者層が大半を占めております。しかも先ほどからも申しております高齢者層を多く抱えているわけですけれども、保険税は健保のように源泉徴収ということではなしに、かつ事業主負担もありませんし、したがってこれは国庫負担に依存せざるを得ない仕組みになっておりますけれども、そのために市町村は健全財政を維持するためにいろいろ頭を悩ましている今日でございますけれども、そういう中で、保険税の徴収を行いながら不足分は一般会計から繰り入れるというような苦肉の策をとっているわけですけれども、市町村のこうした努力にもやはり限界があるわけでして、今度の改正案によって国保の国庫負担の削減が仮に大きくなされてくるということになってきますと、ますます財政不安が高まっできますけれども、そういうことに対する大臣のお考えはどういうふうに思っていらっしゃいますか。
○国務大臣(渡部恒三君) 国保のお話、大変ごもっともなことでございまして、社会構造が変化しておりますから、私どもも自分の市町村に帰ってみるとわかるのでありますが、地方の農山村等も工業化が進んでまいりまして、所得の高い人たちがどんどんどんどん被用者保険の方に移ってまいって、国保の財政がだんだんだんだん苦しくなるような経済構造といいますか、社会構造の方向にあるようでございます。
 そこで、今回も国保財政を苦しめておった一つの要因である、サラリーマンの皆さん方が現役をおやめになって病気にかかりやすくなる、病院に入院する、あるいはお医者さんに通う率が多くなると国保に入ってくる。そういう矛盾をなくして国保の荷を少し軽くしようということで、今回退職者医療の創設等も図っておるわけでございますが、今後も国保の財政というものには大きな関心を持って進んでまいりたいと思います。
○中野鉄造君 この問題については、今も大臣の御答弁の中にもありましたように、退職者医療保険だとか、あるいは健保の問題にも絡んできますので次回に譲るといたしまして、高齢化になってまいりまして、最も大きな問題になってくるのがぼけ老人の対策でございます。現在、特別養護老人ホームの対象は、老人福祉法第十一条三項の中にありますように、「身体上又は精神上著しい欠陥があるために常時の介護を必要とし、かつ、居宅においてこれを受けることが困難なもの」と、こうあります。この特養ホームに入る痴呆性老人は病人を対象とした施設ではないということですが、先日、新聞にも報道されておりましたけれども、名前も書けない人が四割、近親者の判別もできない人が一割もいるという、こういう実態であります。確かに物忘れだとかそういったようなものは病気ではないけれども、在宅のぼけ老人は家族にとって生活破壊をしかねない状況にあることも事実であります。こういうことを思うと、精神的異常者であると言ってもこれはある意味では過言ではないんじゃないかと思いますけども、そういう点から特養老人ホームのとらえ方、見方というものをやっぱり見直すべきじゃないかと思いますが、いかがですか。
○政府委員(持永和見君) 先生御指摘の痴呆性老人の方々に対しましてどういう施策を講じていったらいいかというのは、大変大きなこれからの問題だと思っております。高齢化が進む中で、そういった方々もこれからますますふえてまいることは事実でございます。
 ただ、私ども、現在の対策といたしましては、保健面からのいろいろな精神衛生面での対策もございますが、やはり福祉面から、いわゆる医療的ケアというよりもむしろ福祉的なケアを中心としてそういった痴呆性の老人の方々を処遇していくということも必要なことでございます。そういう意味で、特別養護老人ホームの中でもかなりいろいろとノーハウを高められまして、そういった痴呆性の老人の方々の処遇にいろんな形での創意工夫を凝らしている施設も現にございます。
 私どもといたしましては、できるだけそういった痴呆性の老人の方々を特別養護老人ホームの中でいわゆる福祉的なケアを行い得るようにするということが必要だということで考えておりまして、今年度から、先般の予算でお願いしておりましたけれども、特別養護老人ホームにつきましての痴呆性老人の処遇技術の研修をことしからやっていこうということで、本年度は二十カ所でございますが、そういったところで痴呆性老人の処遇技術の研修を行いまして、今後痴呆性の老人の方々ができるだけ特別養護老人ホームの中で、家族の負担を軽減した中で処遇できるように、受け入れができるような方向で施策を進めてまいりたい、今後ともこういった施策につきましては、ヘルス面、保健面とそれから福祉面、両方の連携を十分とり合いながら施策を進めてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
○中野鉄造君 このぼけ老人の介護人という人たちが、施設においても世話する側も高齢者と、こういうような現況でございまして、現在の介護人の平均年齢を見ても四十歳から六十歳までが半数以上、こういう人たちが介護に当たっておられるわけですけれども、この方々もいずれ今度はもう高齢者として世話を受ける側に間もなくなる方々であります。こういったような観点から、特に先ほどから申し上げておりますように、このぼけ老人対策というものはもう高齢社会の中での一つの大きな重要な施策でございますが、先ほどから申しておりますように、マイナスシーリングだとかゼロシーリングだとか、こうした中で、少なくとも今年よりか下がるとか同じだとか、そんなことはないでしょうね、大臣。いかがですか。
○国務大臣(渡部恒三君) 先生御案内のように、五十九年度予算も大変厳しい状態でございましたけれども、しかしその厳しい中で、老人保健法による事業、そういったものには厳しい中ではまあまあと、こういう予算を、前年度より増額した予算を確保しております。来年度も、これは国の一つの大きな方向、あるいは政府の一つの方針、その方針の中で許される限り頑張りたいと思っております。
○中野鉄造君 次に、先ほど現在の特徴的な風潮を三つ述べました、その中の中高年者の離婚の多発についてお尋ねいたします。
 最近目立っているのは、はた目にはさほど夫婦仲が悪いとも思われない、むしろ御主人の方は非常に仕事熱心で、奥さんは何不自由ない幸せな奥さんのように思われているのが、ある日突然夫と子供を残して家を出ていくというふうなケースがふえているようであります。夫婦のどちらかに不貞、不倫があったというわけでもなく、夫が仕事熱心な余り家庭を顧みることが少なかったということだとか、あるいはまた中には事実家庭を顧みないで遊びほうけておったというような人もいるかもしれません。それと、また一方、今日の女性の方の職場の拡大と相まって、妻の自立意識の急速な目覚めに気づかなかった御主人、そういったようなこと等が原因ではないかと思いますが、こういうことが要素になって置き去りにされた父と子の試行錯誤の生活が始まるわけでございます。数年前、アメリカ映画の「クレイマー、クレイマー」というのが話題になりましたが、それが今日、我が国の社会にそれを地でいく姿が散見されるわけでございます。
 厚生省の調査によれば、昭和五十年には十万一千世帯だった父子家庭が今日では十六万七千三百世帯となっておる、こういうように報告されております。この父子家庭というのは母子家庭に比べて経済力があるはずだから既存の児童福祉体系の中で対応できるというのが厚生省の考え方のようですけれども、果たしてこれでいいのか。これでは父子対策はもうゼロに等しいんじゃないかと、そういう感がしてなりません。母子の場合は、まず母と子が一緒に暮らすことを大前提としてさまざまな施策があるわけですけれども、父子の場合は、育てられなければ子供は施設に預ければいいじゃないかと、こういうのが実態のようです。これでいいのか。最近、男性は決して強くないわけなんですから。この点についてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。
○政府委員(小島弘仲君) 確かに先生御指摘のように、最近の離婚の増加に伴いまして、父子家庭も増加しているという実態が生まれております。
 それで、父子家庭の状況を見ますと、やはり子供についての悩みは、母子家庭と比べますと、しつけとか食事、栄養、身の回りの世話なんかに子供についての悩みを持っている。また、困っている場面でも、半数以上の方々が家事の処理に困っているというふうな実態があります。これらにつきましては、しつけ面あるいはいろんな栄養指導、あるいは昼間の保育等につきましては、児童相談所あるいは保育所等によって対処しておりますが、働いている父親が家事を担当している分野も母子家庭と比べますと非常に少ない。また、その父親が病気等に際しましては、非常にその辺の家事の処理に困るという実態もございますので、五十七年度から家庭介護員を母子家庭と同様に父子家庭にも派遣するというような事業を開始しております。これは制度発足間もございませんのでまだ見るべき効果を上げておりませんが、これらの施策を総合的に当面進めてまいりたい。
 なお、さらに、このような離婚家庭の増加という傾向に対処いたしまして、家庭の崩壊ということは児童の健全育成にとっても大きな問題でございますので、でき得べくんばそういう不幸な事態を防止してまいりたい。従来からも家庭裁判所とかあるいはいろんな相談機関で対処しておりますが、もう少し体系的に離婚問題についての検討を行いまして、法制面あるいは行政面等々によりましてどのような対応手段ができるかというようなことも、近く研究会を発足させまして急ぎ検討してまいりたい、こう考えているところでございます。
○中野鉄造君 最後に、がん対策についてお尋ねいたします。
 がんによる死亡率は、依然として死因のトップとなっております。がん死亡者数は、五十七年よりも五十八年は六千四十四人増加して、今や年間十八万二千二百十八人、こういうような報告がなされておりますけれども、国民の四人に一人はがんで死亡している、こういうことになっております。こうした現実に対して、中曽根総理は就任当時、がん撲滅運動を国民の健康を守る政策の眼目の一つとして大きく掲げられたわけですけれども、最近はそれがしり細りになって、全くその声は余り聞かれなくなったわけですけれども、厚生省は今日のこの実情にかんがみ、どういうお考えを持っておられるのか。
 実は私、全国で人口対比のがん死亡多発県の実態を調べてみましたところが、共通している問題点として、やはり早期発見の決め手とも言える、自治体やあるいは保健所等で行う集団検診が極めて低調であるということがわかりました。ある県では毎回一五%ぐらいでしかない。しかも、毎回来る人たちの顔ぶれが決まっておる、こういうことでございまして、こういう点から見ても、もっと集団検診等による早期発見のための指導あるいは対策を強固に行っていくべきじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
○政府委員(吉崎正義君) 御指摘のございましたこと、全く同感でございます。
 がんを制圧いたしますことは国民の悲願でございまして、低調になっておるのではないかというお話でございますが、決してそんなことはございません。これまたお話しのございました健康診断を強化いたしますことを初め、従来、五本の柱で対策を推進しておったところでございますけれども、それに加えまして新たに対がん十カ年総合戦略が緒についたわけでございます。トップレベルの数人の研究者の方とお話しをしたのでございますが、研究にはやはり波があるそうでございまして、ちょうど今このがんの本態の解明に関する研究が上向きになっておったところであるそうでございまして、そこへもってきてこの十カ年の総合戦略をやるということはまことに適切である、そういう御評価をいただいております。十年間をもちまして何とかこの本態の解明をいたしまして、その成果を診断、予防、治療、この面に活用できますことを民学官を挙げまして一致協力して努力をしてまいらなければならぬ。大きな成果が上がることを期待しておるものでございます。
○中野鉄造君 それに関連いたしまして、先端技術の発達は最近もう目をみはるものがありますが、その一端でありますVANの出現等によって医療情報網も豊富になってくると思いますが、この間、財団法人の医療情報システム開発センターというのが発足しましたけれども、ここではどのような情報を国民に提供されようとするのか。そして、この開発センターの情報の効果は一般に広く浸透されておらないんじゃないか、こういう気がしてなりません。そこで、いろいろ企画をされているような実効ある機能がどうすれば発揮されるのか、そのPR計画等についてもお聞かせいただきたいと思います。
○政府委員(吉崎正義君) 医療の分野におきまして最近のいろんな情報技術を活用すべきこと、まことに大事なことだと思っております。
 御指摘のございましたメディスにおきまして従来からいろんなシステムを開拓いたしておりますが、例えば離島の医療でございますとか、僻地の医療等につきまして、あるいは診療報酬の請求等につきまして相当程度実用化されておるわけでございます。さらに今後、お話にもございましたけれども、この分野でますますいろんな情報システムを活用してまいりたいという考えでございます。
○中野鉄造君 PRの方法は。
○政府委員(吉崎正義君) 各県でいろんなモデル事業を行いまして、そしてその成果を示しまして使用の拡大を図ってまいりたい、そういう方法でPRに努めておるところでございます。
○中野鉄造君 以上で終わります。
○山中郁子君 私は、初めに来年度の予算要求に関連して、一点だけお伺いをいたします。
 現在、国会の最大の焦点になっております健康保険法等の改正はもとよりでありますけれども、その後に続いております年金改正案、それから児童扶養手当法の改正なども、その発端は、ただいまも若干議論がございましたけれども、いわゆる行政改革、ゼロシーリングないしマイナスシーリング、そういう問題に端を発していると思います。厚生省としてもいろいろ苦労されてきたところだと思うのであります。しかし、実際の成り行きを見てみますと、いただいております厚生省の資料によりますと、たとえば委縮減額として五十七年度四千九百億、五十八年度六千五百億、五十九年度六千九百億、こうなっておりまして、五十七年度の場合は、例えば厚生年金保険等国庫負担の一部繰り延べ、いわゆる国庫負担の三年間の凍結を初めとする、そういう制度への切り込みでもって生み出している。それから五十八年度の場合には老齢福祉年金、つまり国民年金、国庫負担の平準化という形でまたこれを生み出している。そのほかいろいろございますけれども、五十九年度は、今問題になっております健保その他児童扶養手当法などもあります。
 こういうふうにして、厚生省はいろいろ苦労して生み出してきたというお気持ちが強いのでしょうけれども、国民の側から見れば、すべて国民生活関連部分の切り込みによって犠牲を負わされてきているということは歴然とした事実です。今度の健康保険法の改正、実質的には私どもはこれは大改悪だと思っておりますけれども、この問題が厚生省、政府が思っているよりなかなか進まないというのも、結局国民の抵抗によって来ているということも当然の事実です。
 大臣に率直にお尋ねしたいんですが、もう厚生省関係の制度へ切り込むという形での大きな財源の捻出というものについては幾ら何でも限界だし、現在がかっているものについても行うべきものではないというふうに私どもは考えて主張しているところですけれども、むしろ今までさまざまな犠牲を強いられていた分野でありますだけに、今後はより社会保障の拡充に力も目も向けていくべきであるし、その必要な予算を確保しなければならないと思っておりますが、まず、その大きな国民の願いということに対して、切り込み手法はもうやめる、現在がかっているものも含めてでありますけれども、今後の問題としてももう限界であると、こういうことでは、大臣の御認識はいかがでございましょうか。
○国務大臣(渡部恒三君) 私どもの置かれている厳しい立場は、先生にも御理解をいただいて大変ありがたいと思っています。
 国の方向として、増税なき財政再建、これは国民的な合意を得て、皆さん方にも御賛同をいただいて、国が今全力を傾注しておる今後の方向だろうと思います。そういう中で、政府としてはマイナスシーリングあるいはゼロシーリングという中で、年々非常に苦しい予算編成に当たっておるわけであります。しかも厚生省の予算というものは、今先生御指摘がありましたように、人間の生命に関するもので、これは何としても確保していかなければならない。金がないからことしはやめて来年まで待ってくれというようなことのできない性質のものが非常に多いのであります。その中で、マイナスシーリングあるいはゼロシーリングという中で、これは何とか国民の皆さん方のために必要なる社会福祉は守っていくという決意で私ども予算編成に今日まで当たってまいりまして、そのためにこそ今健康保険法の改正等もお願いしておるわけでございます。
 したがって、この健康保険法の改正を今度の国会で成立をさせていただいて、私どもはいよいよ六十年度の予算編成に入るわけでありますけれども、国民のために必要なる福祉は厳しい予算の枠の中でも守り抜いていくという決意で予算編成に臨んでまいりたいと思います。
○山中郁子君 健康保険法の改悪がその最大の一つの問題であるということを私は申し上げておりますので、これを成立していただいてなどということについては全く話が違ってまいります。あくまでも私どもは、何回も主張しておりますように、こうした改悪を行うべきではないという立場を引き続き申し上げておきます。
 ところで、今基本的に国民の命にかかわる問題だから一生懸命頑張っていくのだというふうにおっしゃいました。そこで来年度の予算の要求に関連して今問題になっておりますのが、報道もされておりますが、この次は、結核、精神病、難病などのいわゆる公費負担医療です。こういうところにそのねらいがつけられようとしているということは、多くの患者や家族の皆さんに大変な不安を与えているというのが実態でございます。
 公費負担医療制度というのは、それぞれの目的や経緯がありまして制度化されてきたものでありますから、この制度の安易な見直しというようなことを行うべきではないということは当然でありますが、今大臣もおっしゃいましたように、国民の基方的な命にかかわる重要な問題、社会福祉、医療のことについては断固として頑張っていくというそのお気持ちは、私が今指摘しました公費負担医療の見直しなどを安易に行うべきではないということと通ずるものであると思いますが、ぜひこの点についてもお約束をいただきたいところでございますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(渡部恒三君) これは難病等で非常に苦労をされておられる患者の皆さんが、今後の見直しによって現在よりも負担がふえるというようなことはないように、努力してまいりたいと思います。
○山中郁子君 次に、私は、国立病院、国立療養所問題について、きょうの残された時間をお伺いをしたいと思います。
 高齢化社会が進みまして、また医療も高度化していく時代に入っておりますけれども、そういう条件のもとで、公的医療機関の役割がますます重要性を増してきていると思います。そこで、公的医療機関、特に国立病院、国立療養所のあり方に関して、その充実強化を求める方向で政府並びに厚生大臣の御認識とお考え方、またしかるべきお約束をいただきたいと思います。
 まず、国立医療機関の役割と現状ということでありますけれども、これは厚生白書でちょっと引用をさせていただきますと、「厚生省の所管する国立病院、国立療養所は、地域における医療を担当するほか、公的医療機関とともに医療の普及向上の面で特別な使命を果たすことを目的として、設置運営されている。」、さらに厚生省の方たちも多く執筆されていらっしゃいます「国民衛生の動向」によりますと、国立病院、国立療養が「国民医療の重要な部分を分担する高度にして普遍的な医療を実施するどころとして発展している」、こうしたように述べています。
 私は、今二つの文章を挙げるにとどめましたけれども、実際問題としても、他の医療機関ではなかなかできない困難な医療、それからまた今お話しがありました難病とか精神疾患の治療など、そういうことについて、国立病院や療養所が果たしている役割は大変大きなものがあると考えておりますけれども、その点についての厚生省としての御認識、評価を簡単にまずお伺いをしたいと存じます。
○政府委員(吉崎正義君) 国立病院、国立療養所が発足をいたしましてから、およそ四十年になんなんとしておりますが、お話にもございましたように、その間におきまして、我が国の医療の普及と向上に大きな役割を果たしてきたと私どもといたしましてもひそかに誇りを持っているものでございます。適切なる医療を行い、そうしてまた適切なる経営を行い、我が国の医療機関の典型とならなければならないと考えているところでございます。
 さて、その現況でございますけれども、戦争に負けましてからおよそ四十年、大分世の中の医療機関の様子が変わってまいりました。ベッド数もふえましたし、いい病院もふえてまいりました。お話にもございましたけれども、国立病院は、がんセンターのような非常に高度なものを行うものからかなり小さいものまで非常にいろいろございます。そこで、今日以後、国立病院、国立療養所が国立としての役割を的確に果たしていきますために果たすべき機能を再検討をし、そうして再編成をいたしたいと考えておるところでございます。
○山中郁子君 それが問題になってくるわけでありますけれども、今局長も認められました国立病院、国立療養所の位置づけからして当然のことであると思いますが、先ほど引用いたしました「国民衛生の動向」の中でも、「国立病院は本質的には営利を目的とするものではなく、」と述べております。つまり、利益を期待するものではない。事実、先ほども触れましたけれども、いろいろな難病に加えて救急医療、僻地医療など高度の政策医療を推進している点からも、国立医療機関の特殊性として営利にこだわらないで不採算的な役割を持っていることは客観的に事実だと思いますけれども、この点についてはいかがでしょうか。
 そして引き続きこうした本質、性格、そうしたものを堅持していくべきだと考えておりますが、その点についての御見解をお伺いいたします。
○政府委員(吉崎正義君) お話のとおりでございます。国立病院、国立療養所は営利を目的とすべきではない、これは医療法上からも当然である。今後ともこの方針は堅持をしてまいります。
 これは先ほど申し上げました適切なる医療の典型となるという意味を含めてでございますが、一方、国立病院、国立療養所の経営について考えますと、やはり国民の期待は、適切な経営を行う、経営の合理化にも努める必要があると考えておるところでございます。
○山中郁子君 今もちょっと触れましたけれども、そして局長もお認めになりましたけれども、特に大きな問題は、地域医療に対する国立医療機関の果たす役割なんですよね。それで、これが今大きな問題になっているわけでありますけれども、御承知のことでありますけれども、国立病院や国立療養所では、その他の医療機関では果たし得ない高度の診療機能、つまりIUCだとかCCUだとか、そういう診療機能も、開業医からの照会に応じて援助している、提供して援助している、ないしは協力しているということがあります。それから、夜間・救急・僻地医療、こういう病院としてもうすでに定着をしているわけであります。
 それで、改めて厚生省のお考えとして、地域医療に効果的に国立医療機関が貢献しているという点ではもちろん疑問のないところであるし、その点については、今後の方向としてもはっきり打ち出しておられる点だということについての御確認をいただきたい。
○政府委員(吉崎正義君) 国立の医療機関の機能、いろいろあると考えております。先ほど来お話しのございましたような高度の医療を提供するということもございまするし、また、地域におきまして地域医療として一定の役割を果たしていくということもあろうかと存じます。
 先ほども申し上げましたけれども、発足以来かなり世の中の条件が変わってきておりますので、地域の医療機関の配置状況等も勘案いたしながら、これから二十一世紀に向けましては地域医療のシステム化ということが一つの大きなテーマとなると考えておるわけでありますが、そういう国立病院の充実を図っていきますためにも、地域医療の中で、地域ごとによく検討をいたしまして、明確なる国立としての機能を果たしていく必要があると考えておるところでございます。
○山中郁子君 大臣にちょっと御紹介もしたいのでありますけれども、これは、こうした国立病院あるいは療養所で一生懸命働いていらっしゃる現場の労働者の方たちが、患者さんなどを対象にして面接とられたアンケートの結果です。全日本国立医療労働組合、すなわち全医労の調査の結果でございます。
 これをちょっと捨ってみましても、国立を利用した患者さんに対して、利用された理由はどういうことかという設問に対して、「国立なら安心だから」という方たちが、例えば病院の場合には六七・三%、療養所は六八・九%、大変高いです。「近くて便利だから」、地域医療ですね。そういう点でも高い数字を示しております。「医療技術がすぐれているから」、「総合病院だから」、こういうことも大変高い回答になっています。その反面、また患者さんの国立医療機関に対する要求も期待も大きいわけですから、批判ないしは要望というものも大変たくさんございます。代表的なものを御紹介いたしますと、国立病院、国立療養所は国が責任を持って運営し、国立としてもっと医療内容を充実すべきである、六〇%に近い方たちがそのようにお答えになっている。待ち時間などももっと短くしてほしい、これも七〇%近い方たちがお答えになっている。これはごく一部の問題を今取り上げました。そして要望するものとしては、国立病院、国立療養所は国が責任を持って運営し、国立としてもっと医療内容を充実すべきだというようなことに代表されるように、現在の国立医療機関をもっと整備し充実していってほしい、こういうものが大変切実な願いになっております。
 これは現実にその医療機関を利用している方たちの願いですから、単に、抽象的な、理論的にあるべきものということではなくて、そういうものである。このところはぜひ厚生大臣率直に受けとめていただきまして、現在の国立医療機関の果たしている役割をさらに国民の、地域住民のそうした方たちの期待にこたえるように充実発展させていくという基本的な姿勢をお約束いただきたいところでございますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(渡部恒三君) 国立の医療機関が今日まで国民の健康を守るために果たしてきた役割については、先ほど医務局長からお答えをいたしました。また、この国立の医療機関に対する国民の皆さんの期待、今先生からお話を承りました。私どもその責めを痛感いたしておるところであります。
 ただ、御理解を願わなければならないのは、時代というものは年々進んでおりますから、また疾病の性格というようなものもだんだんだんだん変わってまいりまして、かつては一番死亡率の高かった結核が今ではがんに置きかえられるというように変わってまいりますし、また、先端医療というようなことで、医療技術というものも変わってまいります。そういう時代の新しいニーズに国立の医療機関というものはこたえていかなければなりません。そういう中でいろいろの見直し等は行われなければならないと思いますが、あくまでも国民の健康を守っていく国立の医療機関としての責任というものは、今の先生のお考えと全く同感でございますので、今後もその責めを国立の医療機関が国民のために果たしていくように努めてまいりたいと思います。
○山中郁子君 変化する時代のニーズにこたえるということは当然のことであります。それは結局そういう要求にこたえて拡充、発展、強化されていくべき問題であるということを私は重ねて申し上げておきたいと思います。
 ただいまその限りでは基本的には厚生省当局、厚生大臣も前向きの姿勢を伺わせていただいたわけでありますけれども、ここで問題は、あなた方の御答弁の中にも関連もあるやと存じますけれども、私どものところにも、国立病院、療養所の存続と拡充を求めるという趣旨の要望書や請願が全国からたくさん寄せられております。これは厚生省当局にも、また厚生大臣のところにもたくさん寄せられていると思いますけれども、特に地方自治体では、国立病院、国立療養所に関する決議ないしは意見書といたしまして多数の、私が今まで申し上げてきたような要望が寄せられていると思いますが、その点は政府としてどのように把握をされておられますでしょうか。
○政府委員(吉崎正義君) 昭和五十九年の五月二十三日現在で、都道府県議会の決議数が十八、三八・三%、市町村議会の決議数が千八百六十、五六・七%というふうに把握をいたしております。
○山中郁子君 ちょっとそれよりもまたふえておりますけれども、後でそれは申し上げましょう。
 私はここで都道府県議会の意見書の一つでありますものの内容をちょっと御披露させていただきます。これは大分県議会の議長名で、総理、大蔵、厚生各大臣並びに行政管理庁長官あてに出されたものでございます。
  国立病院・療養所は戦後三十数年、国民や地域住民と結びついた国立医療機関として営利を目的としない運営がなされており、高度、総合的な診療機能を発揮し、地域医療の中核的役割りを果たしている。
 しかるに、国においては、経営の合理化から地方自治体への移管または民営化の方向で検討がなされている。これが実施された場合には、地方自治体の負担の増加、医療の営利性追求なとから、住民医療が大幅に後退することが懸念され、住民の健康保持に及ぼす影響ははかり知れないものがある。
 よって、政府におかれては、国立医療機関の持つ公共性を十分認識され、地方自治体への移管または民営化については慎重に対処されるよう強く要望する。こういう趣旨の要望書でございますが、大臣、こうした県議会議長名の意見書についての御見解をまず承りたいと存じます。
○国務大臣(渡部恒三君) もちろん、地方自治体のそれぞれの住民の代表が議会において審議されて、私どもに意見書をよこしてくるのでありますから、その考え方はできる限り尊重をしていきたいと思います。
 しかし同時に、これはそれぞれの地域にとってはそれぞれの地域のエゴもありますし、また私どもは国全体の立場で政治をやらなければなりませんので、特定の自治体が反対だと言ったからそのままそれを全部うのみにするというわけにはいかない場合も往々ございますけれども、できるだけその気持ちを尊重してまいりたいと思います。
○山中郁子君 大臣の出身の選挙区であります福島県議会におきましても同様の意見書が政府に寄せられておりますけれども、御承知でしょうか。福島県でどのくらいの自治体が、こうした決議ないしは意見書を決議されているか大臣は御承知でしょうか。
○国務大臣(渡部恒三君) これは承知しておるものもあり、承知していないものもございます。
 しかし、政治家というものは、やはり国全体のことを考え、場合によっては世界全体のことを考えて、勇気を持って、国民のためにやらなければならないことはやらなければならないのであって、場合によっては、私の地元の町村から反対の決議があっても、私はこれが国のためのものであるという信念があるときはあえてやるべきことはやらなければならない、こう思っております。
○山中郁子君 別にそんなに力まなくてもいいんですけれども、私が申し上げましたのは、要するに地方自治体でたくさんのところが、先ほど大分県議会の意見書として読み上げました同様の趣旨、内容によって決議しているんですよ。そして福島県で申し上げれば――福島だけじゃないですよ、だけど福島県で申し上げれば、九十一の地方自治体がありますところを七十四で決議していますね。つまり八〇%を超えています、八一%。それで、また先ほどの大分県では一〇〇%の地方自治体が決議をしております。そのほか大きいところを見てまいりますと、石川県でも一〇〇%、鳥取八五%、徳島八八%、福岡八九%、熊本九三%、沖縄九三%というふうに、非常に高い比率でもって地方自治体が決議をしています。
 それは大臣がまさに自分の地元であっても全国民の利益を優先するんだと、こういうふうに毅然としておっしゃったわけだけれども、大臣の地元のその決議の要望も全国民の要望と全く一致しているんですよね。だから、地元のことだけやるなんていう引け目はちっともお考えになる必要はなく、まさに全国民の要望、全自治体の要望に基づいて毅然としてこの趣旨に基づく国立医療機関の存続と発展のために御努力をいただいて御心配のないところだと思いますけれども、いかがでしょうか。
○国務大臣(渡部恒三君) 国民のために必要なる、また将来期待される国立の医療機関、療養機関、これを存続し、また発展させるためには、できる限りそういう皆さん方の気持ちを尊重して努めてまいりたいと思います。
○山中郁子君 私がここへこういう大きなものを持ってまいりましたのは、多分厚生省当局も入手されていらっしゃると思いますけれども、国立医療を守る決議ということで全国地方議会意見書一覧です。先ほど申し上げました労働組合、全医労が大変な努力でもってつくり上げた資料でございます。これだけ膨大な、一つの意見書がそんなにいっぱいあるわけじゃありませんよ、一枚ずつですよ。それで、これだけたくさんの地方自治体がこういう決議を厚生省に、国に対して求めているという事態の重さ、中身の重要さということをぜひとも受けとめていただきたいと思います。
 最も新しい数字を私は調べてまいりましたが、昨日六月二十五日現在で一千九百五十五の地方自治体がこうした意見書をまとめております。三千三百二十五の中で約六〇%というそういう数になっております。
 先ほど申し上げましたように、やはり大きな国民的な流れである、その要求であるということについては、厚生省としてもぜひとも御認識をいただかなければならないと思いますが、厚生当局の御見解をお伺いいたします。
○政府委員(吉崎正義君) かねてより国立の医療機関は地域の方々の信頼にこたえるように努力するようにという方針で運営をやってきたところでございます。お話にもございましたように、まあ文句もありますけれども信頼が得られておるというふうなことでありまして、私どもとしてはまことに喜ばしく思うわけでございます。
 また、多くの地方団体が国立病院の機能の強化を求めておられるわけでございますが、私どもといたしましては、二十一世紀に向かいまして国立病院が真に国立病院としてふさわしいような機能が果たせるようにもう一度この機能の検討を行いまして、そうして必要に応じて再編成を行いまして、国民の期待にこたえられるようにやってまいりたいと考えておるところでございます。
○山中郁子君 労働組合や地方自治体が求めているというだけではありません。例えばこれは一つの例でございますけれども、岩手県の国立病院並びに国立療養所の施設長五名の連名によりまして同様の要望が出ております。もちろん厚生省に対する要望、政府に対する要望でありますから御承知だと思いますが、「以上の趣旨をご理解いただき、県内五施設は、国立の経営主体のもとに、人的にも物的にも整備が促進されるよう貴職をはじめとする関係各位のご支援をよろしくお願い申しあげます。」、こうなっていますね。こういう趣旨なんです。局長が現状に合うようにと、こういうふうにおっしゃっている、それは、整理統合をしてはならぬ、現状で国立の経営主体のもとに、人的にも物的にも整備が促進されるようにしてほしい、これが施設長の願いでもあるわけなんです。患者だけの願いじゃなくて、労働組合だけの主張ではなくて。そこのところもしっかりと把握をしていらっしゃるのでありましょうか、お伺いいたします。
○政府委員(吉崎正義君) 施設長も長年にわたりまして国立病院と療養所の発展のために努めてきたのでございまして、その方々がみずからの施設を愛する気持ちはまことに貴重なものであると考えております。そういう方々の御意見は重要なものであると考えております。一方、先ほど来大臣も申されましたけれども、世の中もまた変化をしてきておりますので、国立病院と療養所が的確な役割を果たしていくためには、やはり必要に応じて機能を見直しまして、再編成も必要であると思っておるのでございます。
 先ほどちょっと申し落としましたけれども、地方団体の御意見もございますが、そういう場合に、地域の理解を得られるように努めますことは当然でございますけれども、施設長ともよく話し合いをいたしまして、いろんな意見を参考にいたして、同意を得られるように努めながら推進を図ってまいりたいと考えておるところでございます。
○山中郁子君 まだあるんですね。全国の国立医療機関二百五十四施設のうち大多数を占める二百三十五の施設で、施設長と職場組織の代表者、つまり労働組合の支部長との間で確認書が交わされています。
 その一つの例を申し上げますと、これは国立病院医療センターの院長とそこの支部長との間で交わされた確認書です。
 一、国立医療機関の統廃合、委譲等の計画には
  反対である。したがって国立病院医療セン
  ターの縮小、廃止をまねくような統廃合、委
  譲等の「整理」には絶対反対する。
 二、国立医療機関としての機能強化と医療内容
  向上のため、全職種について大幅増員を要求
  する。
 三、すべての職場、職員は公務(医療業務)遂
  行上必要なものである。したがって退職者の
  後補充は必ず行う。下請けは導入しない。こういう趣旨、それぞれによっていろいろ違うところがありますけれども、要するに、施設長とそこで働く人々との間でこういう確認書が交わされるというほど事態は共通した認識になっていて、そして、その上にさらに多くの地方自治体でそれを支持し、ぜひとも自分たちのために地域医療、住民の命と健康を守るためにやってほしいというふうに願っているという事態があるということを、私はやはりどうしても真剣に受けとめていただいて対応をしていただかなければならないと思っております。
 こういう事態のもとから、局長が言われるような何らかの整理統合だとか下請けだとか、そんなことが出てくる余裕はない、そういう部分はないと思っておりますが、まさに国民の願いは、経営者も、それから医者、医療従事者も、そして病院で働く人々も、患者もみんなそこを願って、共通して要請しているわけですから、そこのところを、やはり肝心なところを厚生行政の基本に立って受けとめていただきたいと思いますけれども、いかがでございましょうか。
○政府委員(吉崎正義君) 国立病院、国立療養所が、過去におきましても大きな役割を果たしてきたと考えておりますし、今後も国立病院としてふさわしい機能を果たしていくべきであると考えております。
 そこで、いろんな検討を進めておるわけでございますけれども、その検討を進めるに当たりましては、地方公共団体もそうでありますし、国立病院、療養所を第一線で支えてきた施設長や職員の理解を得ることも大事であると考えております。今後検討を進めるに当たりましては、各方面の理解を得るように努力してまいりたいと考えております。
○山中郁子君 大臣にお伺いしますが、今私がさまざまな資料に基づきまして申し上げました。その皆さんの主張していること、これはお気持ちとしてはおわかりになりますよね。
○国務大臣(渡部恒三君) これは、民主主義社会における政治家が、それぞれの地域の人たち、それぞれの職場の人たちの願い、考え方に謙虚に耳を傾けていくのは当然であろうと思います。
○山中郁子君 だとしますと、それぞれの施設やそこで働く方々、あるいは地方自治体が要望しております、いわゆる行革大綱実施方針などによります。そうした方針に対してこれをやめてほしいと言っている趣旨に基づいて、こうした方向を強行するのではなくて、地方自治体やあるいは施設の当事者、関係者、労働組合、そうした人々との間での協議もさることながら、そういうことを中心としつつ、いわゆる国民的合意というものが図られなければならない重要な問題だ、当然そういう方向で対応すべきであると考えておりますが、その点についての御見解をお伺いをしたい。
○国務大臣(渡部恒三君) 先生御案内のように、臨調答申、行革大綱、これも国民的合意によって行われておるわけでございますから、私どもは、今日までの国立医療機関の果たしてきた役割、また今日民間の医療機関の活力というものも非常に大きくなってまいりまして、これも国民医療に大いに役に立っていただかなければなりませんし、また、疾病構造というものが時代とともに大きく変化しておるわけでありますから、三十年前に国民のために非常に大きな役割をしてきたものも必ずしも三十年後にそれと同じ役割を果たすかということの問題もございますし、また、今までそういうものを全く必要としなかったものでも新しく今後必要になってくる場合もあるわけでありますから、これは国全体の中で国民の医療を守っていく国立医療機関の役割というものがどんどんどんどん変化をしてまいります。がんセンター、あるいはこの前私は行ってまいりましたが循環器病センター、あるいは今度十月に発足します国立小児病院小児医療研究センターとか、そういうナショナルセンターに対する大きな期待も今集まっておりますし、そういう変化する時代の中で、ただ過去のことをそのまま守っていくということでなくて、やはり政治というものは、社会というものは、常に進歩し前進していかなければならないのでありますから、私どもは、今地域の住民の皆さん方がそれぞれ私の手元によこしておられるそういう声にも謙虚に耳を傾けながら、新しい方向に向かって前進を続けてまいりたいと思います。
○山中郁子君 臨調答申、行革大綱実施方針、そうしたものが国民的なコンセンサスでないからこそ、健康保険法の改正とといってあなた方が出していることだって大きな問題になっているし、児童扶養手当だってそうですし、今までだってそうしたことで大きな論議を呼んできたんです。私が今申し上げているのは、本当に国民の命と暮らしを守る、そう最初からずっと申し上げてきました、そしてあなた方もそれをお認めになりまして努力をするということについては、おっしゃっていた国立医療機関の任務、こうしたものを現実のニーズにこたえて存続、強化、拡充、発展していくということに誠意をもって取り組んでいただきたいということを申し上げてきたわけであります。
 三十数年前から国立医療機関がちっとも変わっていないなんというかのようにとられるような御答弁を厚生省がなさるなんというのは論外です。現実は、もうよく御承知のとおりじゃありませんでしょうか。関係者が、みんな努力をして、いろいろと国民のそうした要請にこたえるように頑張ってきているんですよ。そしてさらに、そういう地域医療を中心として国立医療機関が果たすべき役割が、高齢化社会を迎え、高度医療の時代を迎えてさらに大きく広がってきているということを申し上げている。そのことはどなたもが否定できない事実です。そういうことについての役割を重視して、充実、強化を図っていくということを重ねて要求をいたしまして、私の質問を終わります。
○藤井恒男君 私は、がんの問題について二、三質問いたしたいと存じます。
 政府が昨年六月に対がん十カ年総合戦略というものを策定いたしまして、官学民一致協力してがん制圧に向けてのプロジェクトをスタートさせたわけでありますが、これは国際的な立場、我が国の国際的なポジションから見ても、極めて私は重要なことであり、その戦略というものは評価すべきだというふうに思っているわけです。
 そういった点についてお尋ねするわけですが、この対がん十カ年総合戦略というものの概要ですね、そして、まあ昨年のことしてございますから、直ちにこれは即効するということではなかろうけど、現在どういった動きをしているのか。つまりその戦略の概要をお示しいただきたいと思います。
   〔委員長退席、理事遠藤政夫君着席〕
○政府委員(吉崎正義君) 御指摘のございましたように、私どもも、対がん十カ年総合戦略は非常に重要なものであると考えております。目的といたしましては、十年を目途にがんの本態の解明を図ることを目標といたしております。そうして、その成果を予防と診断と治療に反映させようとするものでございます。そのための基本方策といたしまして、重点研究課題を六つ設定をいたしておりますが、それを集中的多角的に研究を推進する若手の研究者の育成、活用を図る、日米を中心とした国際協力を推進する、実験材料の供給等支援体制を整備をするという方策を講ずることにいたしております。
 そこで、進捗状況でございますけれども、昭和五十九年度の予算におきまして、この戦略のために、従前のがん対策のほかに、厚生省、文部省、科学技術庁で約四十五億円を新規に計上いたしております。厚生省の重点研究は、プロジェクト研究チームにより推進することといたしておりますが、先日専門家にお集まりをいただきまして御検討をいただきましたところでありまして、近日中に発足できると考えております。
 それから、がん研究の最先進国はアメリカであると言われておりますけれども、アメリカを中心として外国人の研究者を招聘する等、必要な国際協力を実施いたしますために、現在アメリカの国立がん研究所等と協議を行っておるところでございます。
 それから、お話にもございましたけれども、官学民一体となりまして、一致協力して総合的に実施をいたしますために必要な民間資金につきまして、現在財団法人がん研究振興財団が財界を中心に募金活動に着手をしておるところでございます。
○藤井恒男君 このプロジェクトの中に置かれているがんの研究振興財団ですね、これは天皇、皇后両陛下からも御下賜金を賜ったということで、官学民一体のものであるがゆえに、経済界からも多額の援助を賜りたいという意味の医務局長からの要請状も出ておるわけですが、具体的にこのがん研究振興財団というものが国家的なプロジェクトの中でどういう位置づけになっているのか。今四十五億円というものを計上したということですが、これはやっぱり金は一つの目的を持って集めなければいかぬわけで、金を集めることは私は悪いこととは思っていません。したがって、その目的というもの、あるいは具体的なこのプロジェクトの進め方もいうものがもう一つぴしっと国民の中に知られていないような私は気がするわけであります。そういった意味で、これに関連のあるところから金を集めるというだけでは、これは私は国家的な形にはならないというふうに思うわけなんで、そういった意味でもうちょっと具体的に、振興財団というものがどういう位置づけにあって、そしてどれぐらいの募金活動の規模を持っているのか、そしてそれはどういうふうに使われていくのかということを、やっぱりこの際明確にしておいてもらいたいと思います。
○政府委員(吉崎正義君) まず、最後の方にお話しのございました金額から申し上げますと、先ほど申し上げました金額は政府の予算でございますが、民間資金といたしましては、十年間で約八十億円を目標といたしております。
 そこで、具体的な民間資金の役割でございますけれども、主なもの四つございますが、一つはセミナーハウスを建設運営する。これは、先ほども申し上げました国際的にがん研究を交流いたしますために、そのための会館でございます。二番目には、リサーチ・リソース・バンクといいまして、がんの研究を推進いたしますために、細胞でありますとかあるいは遺伝子でありますとか、そういうものの銀行でございまして、研究者に研究の材料を提供する、そういう銀行の設置運営でございます。これは大変大きな役割を果たすのではないかと期待しておるところでございます。三番目には、国際がん研究講演会を開催いたすことといたしております。それから四番目には、お話にもございましたがん対策振興基金でございますけれども、これもお話にございましたけれども、天皇、皇后両陛下から、御結婚満六十年を記念されまして、がん対策振興事業奨励のため賜った御下賜金を核といたしまして、十億円を目標に基金を設立いたしまして、各事業の円滑な遂行を図ることといたしております。
○藤井恒男君 先ほども大臣おっしゃったように、かつては結核が、まあ俗な言葉で言えば死病だというふうに我々若いとき言われておったわけだけど、まあこれは、罹病率はまだありますけど、克服して、現在はがんということになっているわけです。私も昭和三十六年ごろだったと思うんだけどアメリカに行った折に、大きなポールが立っていて、言葉はもう忘れたけど、たしか銃よりもがんというようなことだったと思う。まさにそのころからアメリカがもうがんについて国を挙げて政策を進めてきていたわけです。しかし今の時期、決して遅きに失しているわけじゃないし、先進国の仲間に入った日本が地球規模で貢献できる大きな道だというふうに思いますので、これはぜひひとつ力を入れてやっていただきたいというふうに思います。
 今お話しありましたように、この十カ年総合戦略のかなめが、がんの本態を究明するということと、予防、診断、治療ということでございますが、これは当然だろうと思うんです。予防、診断で事前に防げばこれは結構なことだけど、不幸にしてがんに侵された人、これはもう全く目の前真っ暗でおられるわけなんです。そういった意味でこの治療ということが非常に重要なことだと私は思う。そういった意味で、丸山ワクチンというものが出て、大変世の中で注目されて、今でも遠いところから上京してそのワクチンをもらって、どのようにがんに効くのかはわからないけど、すがる思いでこれをいただいて帰る、そのことがまた罹病した親に対する孝行であるというような事例が幾つもあるわけで、この奏効率というものがどういうことか、私は素人だからわかりません。しかし、私の手元に、日本癌治療学会誌の「悪性腫瘍に対するインターフェロンの臨床的検討」というものがあるわけなんです。新聞にも大きく報道されたわけだけど、インターフェロンが新たな効力を持つ薬であるということが報道されて、既にこれは五十七年の十月十五日に受け付けされて特別掲載された資料です。
 それを見てみますと、このインターフェロン、これは五十三年度に厚生省にインターフェロン臨床応用に関する特別研究班というのが発足して、そのもとにこのインターフェロンというものが臨床研究されてずっと今日に至っている。その中で、この学会誌で見る限りにおいては、有効性という点について診断名別奏効率というものが出ています。この評価症例全体で二三%ほどの奏効率を得ている。それから別表で出ております「診断名別奏効率」でいきますと、実に四三%とか四〇%という奏効率を臨床例で見ているわけですね。しかもこの「結語」には、「インターフェロンは悪性腫瘍に対する臨床応用において従来の化学療法剤に劣らぬ効力を示し、また副作用が極めて少ないという利点が明らかとなった。悪性脳腫瘍に対する治療剤として従来の補助療法に新たに加えるべき有用な将来性ある薬剤と考える。」、これがこの「結語」なんです。しかもそれは昭和五十七年十月十五日に受け付けられたものですね。そのときこれはマスコミでは大きく報道された。国民にはがんに対する福音であると。ところが、現在またこれは厚生省の手元において審査中なんです。これ、一体どうなるのかということですね。
 だから、このインターフェロンが我が国においてこのように証明された後に、例えば西ドイツにおいては同じインターフェロンが出て、既に国において認可されて現に市販されている。後からスタートしてですよ。そして学界では、ドイツのインターフェロンよりも日本の方がいいということはもうだれも知っておることなんです。にもかかわらず遅々としてこれは進まない。がんに侵された人たちは丸山ワクチンを求めて鹿児島からも沖縄からもやってきて、そして列をなしてそれをいただいて帰っておる。これは一体どういうことになっておるのか、この辺のことをひとつ知らしてもらいたいと思う。
○政府委員(正木馨君) 先生お尋ねのインターフェロンでございますが、おっしゃいますように、このインターフェロンというのはビールスに感染した細胞が放出するたんぱくのことを言うわけでございまして、昭和二十九年に発見されて以来、その作用を活用しましてビールス性疾患あるいはがんの治療薬として有効ではないかということで注目されて、世界各国が研究に着手したわけでございます。我が国も例外ではなく、先生おっしゃいますように厚生省でも研究班を組みまして研究を続け、またそれより先、科学技術庁でも研究をするということでずっと来ておるわけでございます。
 ところで、医薬品の承認に当たりましては、先生御案内のように薬事法で、有効性、安全性が確認されて厚生大臣が承認するということになっておるわけでございますが、そういう専門性、科学性の見地から中央薬事審議会の審議を経るということで来ております。
 ところで、具体的な問題としましてインターフェロンは、先生御案内と思いますが、アルファ型、ベータ型、ガンマ型と三種あるわけですが、アルファ型とベータ型につきましては既に製造承認申請がなされておりまして、五十七年の十二月、おととしの暮れに承認申請が出まして、そして審議会で今審議をしておるという状況でございます。これはやはり新規の生物学的製剤ということで非常に先端的なものでございますので、いろいろな角度から審議をいたしておるわけでございますが、一般に生物学的製剤は副作用がないと言われておるのですが、インターフェロンにつきましては、副作用の点についてももう一つの問題があるのではないかというようなことで、審議会でも今せっかく御審議を願っておるわけでございます。
 いずれにしましても、がんの治療薬というものに対する国民の期待は非常に大きいわけでございますので、私どもとしましては審議会の審議を促進を願いまして、有効性、安全性というものが確認されれば速やかにその措置をとっていきたいということで現在おるわけでございます。
○藤井恒男君 先ほど私が申し上げた、学会ですよ、専用のこの道の専門ですよ、その学会誌の「結言」として、幾つもの症例、しかも臨床の中からこれははっきり書いているんだ。これは皆さんもお読みになっていると思うんだけど、今おっしゃった副作用について、「副作用がきわめて少ないという利点が明らかとなった。」、したがって「悪性脳腫瘍に対する治療剤として従来の補助療法に加えるべき有用な将来性ある薬剤と考える。」、こうはっきり言っているんだ。しかも二年たっておる、あなたが言われてから。厚生省が専門機関を設けてからだって実にこれは何年ですか、五十三年に発足しておるんでしょう。もう西ドイツでこれはやっておるわけでしょう。だからどういうことになっておるのか。薬事法に基づく薬事審議会というものがあることも私は承知しているけど、その審査の仕組みというのは一体どういうことなんですか。どういうふうにやっておるんですか。
○政府委員(正木馨君) 審査に当たりましては、申請者から出されました全臨床試験のデータをもとにいたしまして、そして審議会の各部会の専門家が審議をいたすわけでございます。特に有効性、安全性という面につきましてはこれは一番大事な面でございますので、これも学会等で公表された文献というものを添付してもらって、それをもとにその道の専門家が審議をするということであります。
 ところで、先ほど先生の御質問にございました西ドイツの関係でございますが、確かに西ドイツはベータ型インターフェロンが承認をされております。ところが、西ドイツにおきましては、昭和五十八年、昨年の三月に、免疫抑制患者の帯状疱疹というものを適応症として承認をされたわけでございます。要するに、インターフェロンの持ちますビールスの抑制効果というものによりまして帯状疱疹に適応があるということで承認をされました。ところがその後、ことし、五十九年の一月に適応症の追加ということで数種類の症状を入れたわけでございますが、その中に一部、鼻咽喉がんについての適応というのがドイツの方で認められております。ところが、現在我が国で承認申請されておりますものはB型肝炎と、それから脳腫瘍と悪性黒色腫というものが対象になっておりまして、ドイツのものよりも幅広いということで、このいろんな観点からの審議に時間がかかっておるのじゃないかというふうに思っております。
○藤井恒男君 私の聞いている範囲では、インターフェロンだけじゃないその他の問題でもそうだけど、この調査会というのが全会一致方式をとっておるんですね。そして、調査会それ自体にお医者さんが、専門家がお見えになるわけだけど、この中には例えば歯科医もいるわけでしょう、極端なことを言えば。だから、この道に突っ込んだ、この道一筋という形じゃない方もたくさんいらっしゃって、その人が疑問を発すると、これはまた次の何カ月後まで延びていくわけでしょう。まあ薬事法に基づく薬事審議会であるし、例えば副作用というような面から、そのことがどんな病気に、体の中のどこに派生していくのか、専門的に検討することは、これは人命の立場から見て、命というものから見て極めて重要であるが、しかしこの種のものは、現に外国にも症例がある、例えば鼻がんであろうともこれはがんに違いない、片一方は脳腫瘍であるが、しかしその幅を縮小してでも、これはここに出ているような奏効率から見ても効果があるんだというふうに専門家は学会誌に既に四年前に発表している。ということなら、それに即してでもこれはまず認めて治療に使うということもまた大切じゃないかと私は思うわけなんです。
   〔理事遠藤政夫君退席、委員長着席〕
 今のままで行くと、例えば審査、承認、それに基づいて薬価収載するわけでしょう。薬価収載するったって来年の春ですわな。春でしょう、大体今。そうだとすれば、それを逃せばまた再来年の春まで行くわけでしょう、これ。どうしようもないんでしょう。こういう形でいいものかどうか。今までずっと続いてきたことかもわからないけど、そういうことでいいのかどうか。あるいは、あなたその責任者だから、責任者としてそれはもう任しているんだから、任したところがオーケーが出ぬとどうしようもないんですと後ろでじっと引っ込んでおるんでは、私は厚生省としての使命感に欠けると思うんだ。
 だから、専門的なことは、それは素人としてわからないが、専門的なことはちゃんとこう学会誌にも載っているんだから、しかも外国にあるんだから、その辺のところをもうちょっと指導性といいますか思い切って、責任が怖いから一人でも反対しておったらだめですということでは私はいかぬのじゃないかという気がする。その点についてどういうふうに考えておるか。また、今のままで行ったらこれいつどうなるんですか、今の調査というのは。進捗状況と見通し。
○政府委員(正木馨君) 先生の御指摘はよくわかるわけでございまして、私どもも単に、専門家の審議会にお願いしておるからその結論が出るまでということで手をこまねいて待っているというようなつもりは毛頭ございません。
 それから、先生おっしゃいますように、薬事審議会、いろんな分野の方があるわけですが、薬事審議会の中には十六の部会と六十四の調査会ということで、それぞれその道の専門家が集まりまして審議をするわけでございます。ですから、脳腫膓の関係で申しますと、抗悪性腫瘍剤調査会ということで、これはがんの関係の専門家が調査をしておるということで、審議会の規定上は過半数で決すると、こういうことになっておるわけでございますが、専門家の中でいろいろ学問的な議論というものはこれは十分していただく。それから、学会等で発表された資料というものも全部出してもらって、それについて十分な、公平、公正な議論をしてもらうということでおるわけでございます。私どもが事務局を務めておるわけでございますので、事務局といたしましても、できるだけ審議の促進を図るようにいろいろなデータの整理とか先生方との連絡というものを続けまして、そして、国民の皆さんはいい薬というものがわかれば早く承認をしてほしいということがあるわけでございますから、私どもとしては、なかなかお忙しい先生方でございますけれども、できるだけ審議を促進していただいて、いい結論を出していただくということで努力をしておるわけでございます。
 なお、見通しは大体どうなのかということでございますが、薬事審議会で今審議中ということで、この場面でいつごろまでということは申し上げられないわけでございますが、それぞれの調査会において審議が行われておりますので、また、データ等につきましても、さらに申請者の方から追加資料の提出等を求めておりますので、その提出も願って、できるだけ早く審議の促進を図りたいということで、私ども精いっぱい努めてまいりたいというふうに思っております。
○藤井恒男君 大臣、これは今お聞きのように、私は、比較が悪いかわからぬけど、例えば水虫の薬とかね、これもなかなか難しい。水虫の薬とかあるいはその他の外傷の薬とか、いろいろあります。それなんかであれば、多少これは時間がかかっても、どうしてもいいと思うんだけど、しかし、事がんでしょう。先ほど私申し上げたように、政府がプロジェクトを組んで、国家的な事業として、十カ年の対がん戦略のためのプロジェクトを組んで、これはオタワでも総理が話しておられるが、国際的にもやっておるわけでしょう。しかも、国際的なあれは、それは症例は別だと言うけど、西ドイツで現にこれは承認されている。こっちの方が先に進んでおるわけですよ。進んでおるんだ、研究も。しかも製品もいい。それが、今言ったように、お忙しい先生方をあれしておるんでということでマンマンデーで進んでおるんじゃ、これはどうも、もう現にがんに侵される方がいっぱいおるわけだ。そして丸山ワクチンにすがりついている、こういう状況の中で、私は何とももどかしい思いがするんです。
 これは私の素人考えかもわかりませんよ。厚生省も大変努力しておられるということも私もよく承知しております。ただ、それが事務方というポジションで、言われた資料を整備する、次の会議促進に役立つように案件処理をするというだけでいいのだろうか。命にかかわる問題だから、その道の専門家ということもそれはよくわかることではあるが、しかし、命といえば、例えばプロパンガスの問題、あれは爆発すれば大変なことでしょう。これは通産省なんかの場合だと、思い切ってこれはリーダーシップをとって、においをつけたりいろんな施策をリードしてやっている。これもやっぱり命ですよ、同じことなんだ。だから、そういった意味で、今のような状況をもうちょっと張りがあるようにしていかなきゃいかぬじゃないかと私は常々思っている。
 だから、今まで厚生省が努力しておることは、私はよくよく承知した上でのことなんだけど、事がんですからね、その促進について、一遍大臣も本腰入れてやってもらいたいと思う。その所見をお伺いいたします。
○国務大臣(渡部恒三君) 今藤井先生から大変に貴重な御意見をちょうだいいたしまして、私もこれは大事なことだなと思って聞いておったところでございますが、御承知のように、中曽根内閣は対がん十カ年戦略、がんを追放するという大きな政策目標を立てまして、私もその事務局長ということで、これを一日も早く推進しなければならない責任にあります。今お聞きしますと、これは、すばらしい薬品であれば、この薬品が一日早く出たことによって、それによって助かる患者があり、またこの薬品が一日おくれたことによって助からない患者があるというようなことがあっては、これは私ども大変責任が重いのであります。
 ただ、今政府委員から答弁いたしましたように、これは何分薬のことでありますから、副作用という問題が出て、また副作用が出たような場合のこれは社会的な責任というものも大きな問題がありますので、薬事審議会という専門的な分野で慎重な御審議を願っておるわけでありますけれども、同時に、やはり国民のためになるものであれば一日も早く日の目を見るようにしていただくことがこれは国民の健康、あるいはこのがんの薬の場合は人類に貢献できるものでありますから、手続を省略するというわけにはまいりませんけれども、手続を急がせる責めは私どもに非常に大きくあると思いますので、手続を省略するというようなことは薬という特性のことでこれはできませんけれども、しかし、先生方がお忙しいために会議が延びてその認可がおくれるというようなことでは申しわけないので、これからひとつ政府委員を督励いたしまして、そのお忙しい先生方にもお願いをいたしまして、可能な範囲で、この薬品が専門家の皆さんからの安全性の確認をちょうだいして一日も早く日の目を見るように、努力をしてまいりたいと思います。
○藤井恒男君 そういった意味で、十分手をかけて安全でなきゃならないけど、急いで患者のためにやっていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
 終わります。
○下村泰君 私は、覚せい剤等の中毒性薬物のことについてお伺いしたいと思います。
 日本という国は、論外国から見れば大変優秀な治安を維持する国と言われております。殊にアメリカの方々が日本に来れば、日本ほど安心して、ましてこの東京の町なんかこんなに安心して歩ける町はない、そのくらい言われておるんです。そちらの方はすばらしいんですけれども、何か近ごろ覚せい剤とか大麻でありますとか、こういう中毒性を持った薬物の使用がまたまたはんらんしてきたようで、この方は余り先進国並みになってほしくないんです、私は、いつまでもこれは後進国の方がいいんだ。福祉の方が後進国で、こんなくだらないものが先進国並みになるということは、私大変頭の痛いことです。このところ鳴りを潜めておったんですけれども、またぞろこういうものがはやり出しまして、殊に私どもの芸能界の方にも汚染しておりまして、同じ芸能界に身を置く私としては、先輩として非常に心苦しいんです。五十二年に引き続きましてまたまた出てまいりました。
 警察庁の方に伺いますけれども、今はっきり名前も出ておりますけれども、それ以外に、大体警察庁の方でつかんでいる我々の仲間ですな、芸能人でどのぐらいおりますか。
○説明員(加美山利弘君) お答えいたします。
 芸能界の方の覚せい割とか大麻等の汚染についてのお尋ねかと思いますが、私どもとしまして、特に芸能人の方の常習者としての把握はしておりませんが、昨年中の職業別検挙状況を見ますと、芸術・芸能・文筆・職業スポーツ家という一くくりの欄がございますが、そこに芸能界の方は入っていらっしゃるわけですが、そういう分類されているものによりますと、大麻事犯で昨年は三十一人検挙されておりまして、検挙者全体の約三%に当たるわけでございます。それから覚せい刑事犯では二十五人でございまして、これは検挙者全体の約〇・一%に当たる状況であります。
○下村泰君 わりかたいるんで、あきれ返ったものだね、これは。
 それから私は、これは五十二年に承ったんですが、今回はこんなことはないと思いますけれども、強力なプロダクション、大きな力を持ったプロダクションがあります。テレビでありますとか、ラジオでありますとか、映画会社にまで手を伸ばし、しかもそのプロダクションが動かざるときは、それこそテレビ界も動かないというような大きなプロダクションもあります。こういうプロダクションに所属しているタレントがこういったような疑いをかけられると、即座にこれを海外に逃亡させる。あるいは厚生省の方に後ろの方から御依頼をして、取締官にこれはやめてもらいたいとか、あるいは警察庁の方に、これはもうこれ以上突っ込んでくれるなというようなことがあったというふうに承っておりますが、その事実はどうなんでしょうか。厚生省、警察庁ともにお答えください。
○政府委員(正木馨君) 麻薬、覚せい剤の問題は非常に大事な問題でございます。今先生のおっしゃいました、いやしくも妙なことが、依頼があるとかそういうようなことは、絶対厚生省ではございません。
○説明員(加美山利弘君) お答えいたします。
 取り締まりに当たりましては、私ども、芸能人であるかどうかを問わず、厳正な態度で臨んでいるところでございまして、特に御質問のようなことがあるとは考えられません。
○下村泰君 ない方が結構です。あったとしたら徹底的にやってください。
 それで、警察庁が六月九日に発表されました覚せい剤白書がございます。これ一月一日から十月の三十一日までという、ちょっと二カ月足りないんですけれども、どういうあれでおやりになったんでしょうか、この白書は。
○説明員(加美山利弘君) お答えいたします。
 通常、年末にその年の犯罪の状況等につきましてまとめまして発表しているわけでございますが、今御指摘のものはその年末に発表したものではないかと思いますが、その後年を経ましてから五十八年中のものを、一年間のものをまとめて新たに発表してございます。
○下村泰君 これによりますると、五十八年の一月一日から五十八年の十月の三十一日まで、何か主婦を対象にして特別調査をしたというふうに聞いておりますが、どうなんですか。
○説明員(加美山利弘君) 昨年は、主婦を対象といたしまして特別調査をいたしてございます。
○下村泰君 それの発表ですね、この六月の九日に発表されたのは。
○説明員(加美山利弘君) ただいまの御質問のとおりでございます。
○下村泰君 摘発総数が三万七千三十三件、全検挙者が二万三千三百一人、そのうち女性の検挙者が三千九百七十四人。その一二・五%が主婦で、主婦が何と四百九十七人。女性で検挙された人の八分の一が主婦であったと、こういうふうに出ています。これが一昨作よりも二十七入減というふうになっておりますけれども、これ一月から十月までで、まだ二カ月残っているわけですね。そうすると、十一月、十二月の検挙数というのは出ていますか、警察庁の方は。この後からまだ出ていますか。どうですかね、検挙者は。
○説明員(加美山利弘君) 先ほど申しましたように、五十八年中一年間のものはデータを出してございます。
○下村泰君 そうしますと、この数より多いわけですね、これは十月までですから。十一月、十二月というのがあるわけでしょう。まさか十月で締め切っちゃったわけじゃないんでしょう、これは。
○説明員(加美山利弘君) 五十八年中、私ども取りまとめた資料によりますと、主婦につきまして一年間に四百九十七名を検挙してございます。
○下村泰君 それじゃこの数と変わらないわけですね。そうすると、警察庁の計算というのは、一年一月から十二月まであるのに、一月から十月までで計算しているということになりますよ。ちょっとおかしいんじゃないですか、これ。まだ二カ月昨年残っていたはずなんですけれども、まだその二カ月の間に検挙されている人間もいたというふうに私は考えるんですけれども。してみると四百九十七人よりも多いんじゃないんでしょうか、実際は。違いましょうか。
○説明員(加美山利弘君) 五十八年中の覚せい刑事犯で検挙された主婦は、四百九十七人という数に、今データを見ましたら、間違いはございません。
○下村泰君 それじゃ、これ以上ふえていないということですね。
 しかし、二十七入減ったといっても、これは別に安心できる数じゃないと思います。検挙者総数二万三千三百一人。そのうち暴力団関係が一万六百六十八人。差し引き一万二千六百三十三人が一般市民である。暴力団の数が減っだということは、もともと暴力団は自分の方は売り手であって、この一万二千六百三十二人の一般市民の方が買い手ということになりますから、当然暴力団の数が減って当たり前なんですけれどもね。暴力団にしてみれば、今や資金源の最大のものなんですね、この覚せい剤というのは。そうしますと、各組、各組があって、その組々によって、こういうものを扱っているところというのは、自分の組織へ物すごく締めつけますわな、上納金何ぼ持ってこいとか。上納金を持っていくことによってその組が大きく大きくなっていくわけです。
 そうしますと、この締めつけがきつくなればきつくなるほど、暴力団員のこういう販売が非常に巧妙になる、こういうことになるんですが、その巧妙さについて警察庁は今どのぐらいまでつかんでいらっしゃいますか。こんなこともある、こういう売り込み方もある、こんな売り込み方もあるというようなことになると思いますが。
○説明員(加美山利弘君) 暴力団による覚せい剤の売り込みについての巧妙化という問題についてでございますが、売り込みにつきましては大変巧妙化しておりまして、みずから手を汚さないというようなことで、何段階も経まして乱用者に渡るというような格好をとったり、あるいは売るときに、最近ですと宅急便を利用したり、それから自動電話を利用したり、あるいはポケットベルを組み合わせたりという格好で、警察の目を逃れるためにありとあらゆる悪知恵を働かしてやっている状況でございます。
○下村泰君 こういうものを取り締まるのは、警察の方も大変だろうと思います。もうイタチごっこで、知恵と知恵の闘いだと思いますけれども。
 ところで、関東と関西の暴力団で、過去の逮捕数からいくとどこの組が一番多いですか。関東、関西。
○説明員(加美山利弘君) 五十八年の状況を見ますと、暴力団関係者で一番検挙数の多いのは、関西の広域暴力団でございます。
○下村泰君 いくつぐらいございますか。関西が幾つ、関東が幾つとお示しください。名前はいいです。
○説明員(加美山利弘君) 検挙者のうち、関西の大きな暴力団が約一七%を占めるということでございます。後は関東系が二つほど続いているという状況でございます。
 これらを含めまして広域暴力団ということで警察庁で七団体ほど指定し、取り締まりを強化しているところでございますが、これらの指定七団体で検挙者の半分ほど占めるという状況になっております。
○下村泰君 「暴力団の非合法活動による資金獲得状況」という表が手元にございますけれども、総額が九千五十五億六千万円。約一兆円近いんですな。覚せい剤だけでその五〇・六%。暴力団の売る額ですね。もちろんこれは表面に出てきたやつだけで、しれが潜在的に隠れている分もとなると大変なもので、これは一大産業みたいなものですね、彼らにとっては。
 そうしますと、もうあらゆる手段をとってくるというふうに想像はできるんですけれども、ここでお尋ねしたいのは、暴力団以外に、一般市民と同じようなレベルの人でこういうことで逮捕された人はいますか。
○説明員(加美山利弘君) 暴力団の資金源ということで、覚せい刑事犯についてはほとんどが暴力団でございますが、一般市民でも若干ございます。
○下村泰君 これは相当な量を扱っているんですか。それとも微量なんですか。
○説明員(加美山利弘君) ごくわずかな量と思いますが、今手元に資料がありますれば、確認してお答えいたします。
○下村泰君 それは結構です。
 何回も申し上げておきますけれども、今や暴力団にとってはとにかくもう最大の資金源。しかし、私ら芸能界とこういう社会というのは、ある程度のつながりがあります。これは正直に私は申し上げる。私は全然無縁とは申し上げません。なぜならば、これは言いかえると警察が弱いから我々はつけ込まれるんですがね。私なんかでもたばこの火を押しつけられたこともありますし、あるいは四、五人に囲まれてあわやというときもあります。こういうのをほかの連中が来て助けてくれます。助けたやつが実は同じ組の者であったとか、そういうふうにしてつながりを向こうがつくるんです。それは実に巧妙なんですよ。そういう手でやられますから何ともこれは申しわけない――私が申しわけないと謝ることないんだけれども。そういうふうにやられるわけなんですね。ですからいやでも応でもつながらざるを得ないんです。
 私らの知る限り、子母沢寛先生が書いていらっしゃいます侠客とやくざの違いというのがあります。いわゆる侠客というのはどういうのか。人様のお手伝いをする、人様のお手伝いをして幾ばくかの御鳥目をいただいて生活をする。それを取り締まっているのが親方であった。この連中は、冬といえど素足わら草履で、日本橋かいわいのああいう繁華な町の、日本橋の上を清掃する、人の通らないときに清掃する、そして終わったときにまた清掃する。そういうことをやっていたのが侠客という部類に入るものであって、さいころ転がして銭を巻き上げるのはばくち打ちで、これはやくざ、いわゆる八九三のぶたというやつですな。こういうふうに種類が分けられています。ところが今の人は、今はもう侠客なんというのは一人もいません、全部八九三のぶたに近い者ばかり。こういう連中というのはもう常識もハチの頭もない。とにかく銭になれば何でもやる、こういうふうな状態なんですがね。
 現在日本ではこういうものはできないんですから、したがって輸入品ということになりますけれども、どことどことどこが一番ルートになっていましょうか。
○説明員(加美山利弘君) 覚せい剤等の密輸についてのルートのお尋ねでございますが、御指摘のように、ほとんどが外国から密輸入されるということでございます。最近では韓国、昨年の場合ですと韓国が八割近く、残りは台湾から入ってくるという状況でございます。
○下村泰君 韓国の方は非常にこういうものに対して刑が厳しくて、最近では韓国産が非常に少なくなったというふうに承っておりますが、それはどうなんでしょうか。
○説明員(加美山利弘君) 外国からそのようなものが入るということでございまして、韓国の当局とも連絡会議等を持ちまして、韓国でも取り締まりをやっていただいているわけでございますが、ことしに入りましてから、新聞等で大きく報じられておりますが、韓国と台湾とが結びついたような大変大量の覚せい剤押収事犯が出てまいりまして、あるいは韓国が厳しくなったので場所を台湾の方へ移したのかなというようなことで今捜査を一生懸命やっておるところでございます。
○下村泰君 今お話しになったのは、多分最近警視庁が摘発した五十八キロ、末端価格にして百十六億円分という史上空前の覚せい剤のことだと思いますけれども、これが市場に出回ったらと思うとぞっとします。身のもがよだちます。この売り手の連中は、もう自分は手をつけずに人にやらしておいて、人がおかしくなる、廃人同様になることを平気でこれやっておるわけですね。言いかえれば大量殺人事件ですよ、これは。一人を殺しても、あるいは二人を殺しても、司法の手にかかればこれは極悪人として極刑の死刑が宣告される。ところが、こういう連中というのは、何千何万という人間をおかしくしているのにもかかわらず、その割に量刑が私は軽いと思うんですがね。警察当局としてはどういうふうに量刑で対処していきますか。私はもっと重くたって構わぬと思っています。
○説明員(加美山利弘君) 量刑の問題についてのお尋ねでございますが、通常、覚せい剤を密輸入したりあるいは輸出を行った者は一年以上の有期懲役となっておりますが、これらを営利目的でもって行った場合には無期または三年以上の懲役と、そういう規定になってございます。
 我々捜査といたしましては、営利性を立証することによって、しっかりと捜査することによって重刑獲得に努めていっているところでございます。
○下村泰君 むやみやたらに重くしろとは言っておりませんがね。しかし、こういうことで大量にばらまいて、しかもこれを長期使用して廃人同様になる人もいるということを考えたらば、私は本当にこれは大量殺人と同じような刑であってしかるべきだと思いますよ。どんどんやってください、これは。
 昭和二十年代にはヒロポン中毒というのがありまして、これは旧軍が持っていたものを市中にばらまいたと言っても過言ではないと思うんです。と申しますのは、私も実はビルマで航空隊におりました関係上ヒロポンの錠剤も所持しておりました。ところが、私の体質はおかしな体質で、余り効きませんから、余り使ったことはありません。ところが、昭和二十一年の八月に帰ってまいりましたところが、我々の芸能界というのは完璧に汚染されておりました。これはもう、ここにいらっしゃる方々でこういった覚せい剤の中毒患者の姿を見た方もいらっしゃいましょうし、あるいは議員という職権で視察に行った方もいらっしゃいましょう。私の場合は、仲間が目の前でそういう状態であったんです。それだけに生々しく皆様方に語ることもできるわけです。数多くいます。名前を挙げれば、あああの人もかというような方もたくさんいらっしゃいます。このときには、何といいましょうか、もう一つのはやりものなんですね。清涼飲料水を飲むのと同じ状態だったんです、このときには。何でこんなものがあの当時に許されていたのか、今振り返って考えてみて、わかりません。これが警察に取り上げられ、司法当局に取り上げられるようになったのは、恐らく朝鮮動乱の終わりごろからじゃないかと思うんです。それまではほとんど野放し状態だったと思いますよ。これは厚生大臣はそのころお若いからおわかりにならないと思いますけれども。
 「緑の地平線」という歌を歌ってスターダムにの上がった楠木繁夫さんという方がおります。この方などは、ギャラの契約しないんですよ。ヒロポンを一升瓶で何本くれたら幾日間行くと言うんですから、そのころ。そういう歌い手。それから、柳家三亀松さんという大変粋曲を演ずる我々の大先輩がおります。この方なんぞは、一升瓶から昔のあのヘチマコロンという化粧水の瓶に移しかえて――この方はまた不思議と、だれに教えていただいたのか知りませんけれども、ヒロポンと同時にビタミン剤を打っていたんですね。ですからこの方は余りひどくなりませんでしたけれども。最近亡くなりました例では霧島昇さん。私はあの方と御一緒したことがありますけれども、もうヒロポンに侵されているとき、一曲歌っては幕を閉めると言うんですよ。あるいは、全曲歌ってアンコールまでいっているのに、アンコールまだだと言うんです、舞台の上で。もう司会やっている私はうろうろしたことがありますよ。それがヒロポンなんです、これみんなね。なみの一郎という声帯模写の人なんというものは、いきがりましてね、上着の上から打つんですよ、着たまま。肩口へね。注射針をなめて、ぼん。もうこうなってくると、いきがっているとしか見えないんです。そして、打つことがいかにも最先端の芸能人であるという錯覚に陥っておるんですね。
 恐らく僕は作家の方もお使いになったろうと思いますがね。このヒロポンの覚せい興奮状態において書いたものというのは、恐らくしらふのとき見たらばらばらですよ、私そういう経験がありますから。私らの周りにも興行社の事務員の方がいて、やっぱりこれも汚染されて打ってましたね。疲れてますからヒロポンを打ちます。ヒロポンを打って、一回の興行の計算を全部出します。そして翌朝計算すると全然違うんです、これもう完璧におかしいんですよ。
 私が一番驚いたのは、「長崎のザボン売り」という歌を歌ってこの人も一世を風廓したんですが、樋口静夫という方がおりました。この方と三門順子という歌手と九州へ、忘れもしない昭和二十四年の一月の十一日、大分県の日田というところで興行の幕をあけました。ところが、この二人が完璧な中毒だったんですね。私は知りませんでした、そういうことは。そうして、一月から興行を始めて、宮崎市に逗留したのが四月ごろでございましたか、そのときにいわゆる幻覚症状に陥っているわけですね、この樋口静夫という方が。そいつと一緒の部屋におりましてね、もう目がつり上がって、常人の目じゃないですよ。目がつり上がって、鋭角的に動くんです、目玉がチャっと。これ大臣、あんなふうに動かしてごらんなさい、一発で何か動脈おかしくなるから、本当に。人間の目の動き方じゃないですね。機械的ですよ。チャっと動く。そして、今軒の下にぶる下がっておれをねらっていると言うんですよ。コウモリじゃあるまいし、そんな器用なやつがいるかというんだ、私は。天井の隅で今おれをねらっている刺客がいる――別に隠密剣士やってるわけじゃないんですよ。そういう感覚になっちゃってるんですね。
 こういう今名前を挙げた方たちというのは、本来ならば七十以上生きなきゃならないような人たちなのに、これは全部六十から六十前で亡くなっています。これも言うなればヒロポンなんです。
 ところが、これは昭和二十九年、三十年ごろになりますと、私も記憶がありますが、あのころ密造工場がたくさんありました。アパートの四畳半とか、ちょいとした物置の片隅とか、そういうものがどんどこどんどこ壊滅されていって、ついには国民の皆さんの気宇が高揚したんでしょうね、そうしてもうほとんどヒロポンというのはなくなりました。ところが、四十五年ごろからまたまたこの事犯が目立ってきたわけなんです。ところが、先ほどから申し上げましたとおり、これは国内で生産するんじゃなくして、向こうから来るんですからね、外から。これ二十年代のいわゆるヒロポン時代とは今度は違うんです。どうやったらこの上陸を阻止できるか。今申し上げたように、隣近所の国でもつくってね、下手すりゃ私はもう本当に毒ガスをこっちへぶち込まれている、ひょっとしたらよその国が日本を謀略でもってつぶしているんじゃないかと思いますよ、こんなことは。そういうふうに、今や日本をマーケットとして攻めてきているわけです。
 こういうことに対して、警察庁と厚生省はどういうふうに対処なさっていくおつもりですか、お話しを願いたいと思います。
○説明員(加美山利弘君) 覚せい剤がほとんど外国から密輸入されていることにつきまして、警察としましては、この種事犯の取り締まりにつきましては、やはり関係諸国との捜査協力が不可欠であるということから、国際刑事警察機構、ICPOと言っておりますが、そこを通じまして、また捜査官を派遣することによりまして、積極的に関係国と情報交換等を行っているほか、国際協力事業団と協力しまして、毎年我が国で開催しております麻薬犯罪取締りセミナー、やがてことしも間もなく開催いたしますが、そういうものに関係諸国から捜査官を招きまして、情報交換や捜査技術の研究などを行っております。先ほどもちょっと触れましたが、韓国とは昭和五十七年に引き続き、本年二月に覚せい剤問題日韓連絡会議をことしは我が国において開催いたすなど、緊密な連携に努めているところでございます。
○政府委員(正木馨君) ただいま警察庁の方からお答えございましたが、国連に麻薬委員会というのがございまして、これは四十カ国の委員国で構成されておるわけでございますが、これが毎年開かれます。それから、その下部機関である極東地域の麻薬取締法執行機関長会議というのがございます。そういったところで十分連絡、情報交換、協議をすると同時に、特に我が国に密輸されるのが多い韓国との関係で、日韓の連絡会議というものを持っておりまして、規制、取り締まりの相互協力、情報交換をやっております。
 先生おっしゃいますように、やはり覚せい剤につきましては、水際で阻止するということが大事でございますが、その前に、出る方を抑えてもらうということが非常に大事でございます。そういうことで、韓国とは特に、麻薬取締官を派遣いたしまして関係取締富と十分協議をする、情報交換をするということで、取り締まりの充実を図るようにということで、せっかく努力をしておるというところでございます。
○下村泰君 そこで一つ心配があるんですがね。映画なんかでもよく見たりなんかする――実際は私は知りませんよ、麻薬取締官なんてやったことありませんから。麻薬を取り締まる厚生省の方と警察の方との出先が功を争うことによって両方で何かおかしくなるなんて話がありますが、そんなことはないんですか、警察庁の方は。
○説明員(加美山利弘君) 御指摘のようなことはございません。緊密な連絡をとりながらやっているところでございます。
○政府委員(正木馨君) 私どもも、警察庁と連携をとりながら取り締まりの実を上げるということが基本だと思います。今日までもそういうふうにやっておりましたが、これからも十分連携をとりながら、取り締まりの実を上げてまいりたいというふうに思っております。
○下村泰君 功をあせるとよくそういうことありますのでね。功をあせることよりも何とかしてこういうものを入れないこと、それから売らせないこと、この方が大事なんですから頑張っていただきたいと思います。それにしても成田空港あたりでは麻薬犬がくんくんくんくんにおいをかいで麻薬を捜す、あの姿なんかいいもんですな、見ていて。人間もああいうふうになると非常に便利だと思うんですけれども。ですから、国内のいわゆる徹底的な取り締まりということをお願いしておきまして、警察庁御苦労さんでした。
 さて、厚生省の方へまた伺いますけれども、今度は、この覚せい剤の中毒患者の入院措置の問題なんですけれども、私は六法全書というのは枕にする以外使ったことがないんですが、これを一生懸命ひもときました。そうしましたら、麻薬取締法第六章の二「麻薬中毒者に対する措置」、第五十八条の九、六カ月入院措置が可能となっている。これは可能になっているわけですね。ところが、大麻、覚せい剤取締法にはこれがないんですね。これはどういうわけですか。――どういうわけというのはおかしな質問かもしれませんけれども、何でこれ麻薬の方にあって大麻、覚せい剤の方にないのか。
○政府委員(正木馨君) 覚せい剤と麻薬の、何と申しますか、人体に与える影響というものの違いがあるわけでございますが、現在、覚せい剤の中毒患者につきましては、精神衛生法の措置入院ということで措置をいたしまして、そうして治療を行うという措置をとっておるわけでございます。
○下村泰君 ところが昭和五十七年十一月十二日、公衆衛生審議会、ここで意見書が出ていますね。この意見書を拝見すると、そういう方でなくて、やはり麻薬取締法に準じた方がいいのではないか、その方がよろしいという意見書に思えるのですが、どういうふうに受けとめていますか。
○政府委員(正木馨君) 先生御指摘のように、確かに五十七年の十一月に公衆衛生審議会から、「覚せい剤中毒者対策に関する意見」というものが出されております。その意見書によりますと、やはり中毒者対策として麻薬取締法に準じたような措置をとるということも検討してしかるべきじゃないかということが言われております。それを受けまして私ども省内にプロジェクトチームをつくり、さらに覚せい剤の中毒者対策に関する専門家会議というのを設けまして御審議を願っておるわけでございますが、そこではやはり覚せい剤の場合の中毒者に対する診断基準をどうとらえるか、それから治療指針をどうするのか、アフターケアの問題がまた大事でございます。それから覚せい剤の場合には、一度治ったように思うのだけれども、五年ぐらいたってほっと出るという再燃現象とか、なかなか難しい問題があるようでございます。
 そういった点を含めまして、一体どういう医療保護措置をとるのが最も適切なのかということを今御審議をいただいておるというわけでございます。
○下村泰君 こういったことが出されるというと、今法務省と日弁連が対立しているようなあの保安処分なんていう、あんなものにひっくるめられると困るのですが、これはもうこれで完全に独立して考えていただきたいと思います。
 厚生大臣、今までの私のお話、半分おもしろくて半分つまらなかったろうと思うのですけれども、こういう話を聞いてくださって、今これだけ一般家庭の主婦がどこどこどこどこふえておるそうです。そうして全体の中でもって、一般の主婦で二十歳から三十歳、これが一番多いのですよ今。これに汚染されているのが。一番かかりやすい年代なのです、いろんなことで。太っている、これ打つとやせるよと言われれば、それは打ちますよ、何にもわからないやつは。パートタイムなんかに行って、歯が痛いと言うと、ああこれ打つとすぐ歯が治る、簡単にひっかかるのですよ。こういうことによって今中毒患者がふえておる現状なのです。
 ですから、何としてでもこういう方たちの入院措置というものをとらなきゃならないし、それには今申し上げました麻薬取締法、もちろん取り締まることも必要です。それからさっき警察庁にお願いしましたけれども、こういったものの販売、これも抑えるのも必要です。けれども、弱い立場にいて、ひょっとしたことでもってひょんなことになる人も多いものですから、そういう方たちが何とかして早く入院措置をとってお国の手によって一日も早く回復して一般社会人になれるような措置、これをお願いしたいのですが、厚生大臣のお答えを聞いて終わりにしたいと思います。
○国務大臣(渡部恒三君) ただいま下村先生から、覚せい剤のもたらしておる社会悪、大変貴重な御意見を、しかも興味深くお聞かせいただいて、私も大変に勉強をさせていただきましたし、まさに先生御心配のとおり、これは国民の将来に関する本当に重要な民族の興亡にかかわるような問題でございますから、これらの施策というのはいろいろあると思いますが、先生が今おっしゃったように、国民に対する啓発活動、これを強化していくこと、また取り締まりの強化、いろいろございましょうが、私ども厚生省としては、乱用者、中毒者に対する処置、これは先生の御指摘のとおり極めて重要なことでありますので、今政府委員も答弁しましたように、専門家会議を設けて現在検討をしておるところでありますが、これら専門家の御意見を踏まえながら法改正の必要性についても検討をいたしまして、これが必要であればもちろん法改正もしなければなりませんが、この覚せい剤中毒者に対する医療法の充実を図るように、今後一層の努力をしてまいりたいと思います。
○下村泰君 一日も早くひとつ麻薬取締法に準ずることをお願いいたします。
 ありがとうございました。
○委員長(石本茂君) 本調査に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後五時十八分散会
     ―――――・―――――