第102回国会 社会労働委員会 第4号
昭和五十九年十二月二十日(木曜日)
   午後一時十六分開会
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  出席者は左のとおり。
    委員長         遠藤 政夫君
    理 事
                佐々木 満君
                関口 恵造君
                高杉 廸忠君
                中野 鉄造君
    委 員
                石井 道子君
                大浜 方栄君
                斎藤 十朗君
                曽根田郁夫君
                田代由紀男君
                田中 正巳君
                前島英三郎君
                森下  泰君
                糸久八重子君
                浜本 万三君
                和田 静夫君
                中西 珠子君
                橋本  敦君
                藤井 恒男君
                下村  泰君
   衆議院議員
       社会労働委員長  戸井田三郎君
   国務大臣
       厚 生 大 臣  増岡 博之君
   政府委員
       厚生大臣官房長  下村  健君
       厚生省年金局長  吉原 健二君
       社会保険庁年金
       保険部長
       兼内閣審議官   長尾 立子君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        今藤 省三君
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  本日の会議に付した案件
○国民年金法及び特別児童扶養手当等の支給に関する法律の一部を改正する法律案(衆議院提出)
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○委員長(遠藤政夫君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。
 国民年金法及び特別児童扶養手当等の支給に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 まず、提出者衆議院社会労働委員長戸井田三郎君から趣旨説明を聴取いたします。戸井田君。
○衆議院議員(戸井田三郎君) ただいま議題となりました国民年金法及び特別児童扶養手当等の支給に関する法律の一部を改正する法律案について、その提案の理由及び内容を御説明申し上げます。
 本案は、昨今の社会経済情勢にかんがみ、昭和五十九年度において年金額等の改定を実施しようとするもので、その主な内容は、
 第一に、昭和五十七年度及び昭和五十八年度の累積消費者物価上昇率が五%を超えない場合であっても、年金額の特例的な改定措置を講ずること。
 第二に、年金額の改定率は二%とし、厚生年金保険及び船員保険については本年四月から、国民年金については本年五月から、それぞれ実施すること。
 第三に、老齢福祉年金の額を月額二万五千六百円に引き上げ、本年六月から実施するとともに、その他の福祉年金の額についても引き上げること。
 第四に、特別児童扶養手当の額を、福祉年金に準じて、本年六月から改定するとともに、福祉手当の額についても引き上げること。
 以上が本案の提案理由及び内容であります。
 何とぞ、御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
○委員長(遠藤政夫君) 以上をもって趣旨説明の聴取は終わりました。
 これより質疑に入ります。
 質疑のある方は御発言願います。
○橋本敦君 この際、大臣にお尋ねをさしていただきたいと思います。
 まず第一点は、我が党は、この法案提出の以前から、年金制度の抜本的改正問題と、独自に早期にやるべき物価スライドの点は、これは切り離してやるべきであって同一法案で出すべきではないということを主張してまいりました。同一法案で出されると、政治的な駆け引きの道具になりかねないと心配したからであります。結果は分離されたわけでありますが、そういった、衆議院でのいろんな審議の状況からスライド実施がおくれるという事態を招来したわけでありまして、この点については、法案提出をなさった政府の方にも責任なしとは言えないかと思うのですが、大臣のこの点についてのお考えをまず伺わしていただきたいと思います。
○国務大臣(増岡博之君) この年金法の改正につきましては、もう既に数年前から審議会その他の御意見を承っておったわけであります。たまたま予算編成におきまして二%のアップは決まりましたことから、いずれも同じ法律の内容でございますので、三月に一緒に提出をさしていただいた次第でございます。
○橋本敦君 時間がないので次の質問に移らしていただきます。
 今大臣がおっしゃったその二%の問題でありますが、言うまでもありませんけれども、五十七年では消費者物価上昇は二・四%、五十八年度は一・九%でございますから、この消費者物価に正しくスライドするとしますと当然四・四%近くになるわけでございます。ところが、なぜ二%に抑えられたか。それは共済年金や恩給等との並びだというお話もございますが、それでは結局、人勧値切り実施に連動させられるということに結局はなっておりまして、私は二重の意味で、つまり人勧の値切りが実は憲法の本旨に反するということ、それと連動さしてこの点で年金のスライドも完全に実施しないということは、これもまた憲法が生活保障を強く訴えておりますこの点にももとるのではないか。そのことは、年金で暮らさざるを得ないお年寄りやあるいは身体障害者の皆さんに、今の物価高に追いつかない状況で多くの負担をかける結果になっているのではないか。二%しか引き上げないという措置についてはやはり検討するのが当然ではないかと思っておりますが、大臣の御見解を伺いたい。
 それから最後の質問は、フランス、イタリア、オランダなどを見ますと、賃金スライドが原則であります。そしてまたスウェーデン、イギリスなどは、消費者物価上昇、それを指標としてスライドしております。我が国のように五%条項というようなことでやっている国は、主要国はどこにもないわけでございます。したがって、将来全労働者の生活水準の変化に即応させていくという立場、あるいは社会情勢の変化に即応するという立場からいえば、この五%条項は見直して、いずれ賃金スライドあるいは物価指数に見合う方向にスライドしていくことを基本に検討すべきではないかと思うのであります。
 以上の二点お伺いして質問を終わります。
○国務大臣(増岡博之君) 御承知のように、物価上昇率は五%以下でございまして、その際、どういう措置を講ずるかということは政策判断の問題であろうかと思います。そういうことから、公務員給与、共済年金の例に倣いまして二%としたものでありまして、現在の厳しい財政事情のもとでは妥当なものではないかというふうに思います。
 なお、お尋ねの外国の例につきましては、年金局長からお答えをいたさせます。
○政府委員(吉原健二君) 年金のスライドというものを何を指標にして行うか、あるいはその率をどうするか、いろんな考え方があるわけでございます。外国におきましても、物価にスライドをさせている例、それから賃金上昇率を用いている例、いろいろあるわけでございますけれども、我が国の場合は、消費者物価五%以上の場合に法律上スライドをする義務がある、こういうことになっているわけでございますが、消費者物価が五%以下の場合でございましても政策的にスライドできるということになっておりますし、過去におきましてもそういった措置をとってきたことがあるわけでございます。
 そういったことから、今の段階で、物価が五%以上上がった場合にスライドするという、こういう制度というものを強いて考え直す必要はない変える必要はないということで、今回の年金改正案におきましても従来どおりの措置にさせていただいているわけでございます。
○橋本敦君 質問を終わります。
○委員長(遠藤政夫君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(遠藤政夫君) 御異議ないと認めます。
 本案に対し、橋本君から委員長の手元に修正案が提出されております。修正案の内容はお手元に配付のとおりでございます。
 この際、本修正案を議題とし、橋本君から趣旨説明を聴取いたします。橋本君。
○橋本敦君 委員長のお許しをいただきまして、我が党提案の修正案について、提案理由を述べさせていただきます。
 前国会から継続審議となっておりました政府提出の年金制度の改革法案は、我が党が強く反対いたしまして、その撤回を求めてまいりました年金制度の抜本的な改悪をねらっている本体部分と、当然行うべき物価スライド部分の改定とが一本の法案となっております。これに対して我が党は、スライド部分を本体から分離して、物価スライドを早期に実施すべきであると主張してきたところでございます。さらに、その物価スライドそのものは昨年度見送られた消費者物価上昇率の凍結分と今年度実施分の合計四・四%にすべきであると考えております。
 ところが、本法案は、スライド部分を分離したものの、その内容は政府提出の二%案のままであります。しかし、年金受給者に過去二年にわたる物価上昇率を償う四・四%の物価スライドを実施することは、弱者にこそ政治の光をという立場に立って、国民生活を守るために政治のとるべき最低限の務めであると考えております。
 以上の立場から、我が党は、昨年度の凍結分を含め年金の物価スライド率を消費者物価上昇率に見合った四・四%へ引き上げることを内容といたしますこの修正案を提出するものでございます。
 何とぞ、慎重御審議の上、御賛同くださるようお願い申し上げます。
 以上でございます。
○委員長(遠藤政夫君) ただいまの橋本君提出の修正案は予算を伴うものでありますから、国会法第五十七条の三の規定により、内閣から本修正案に対する意見を聴取いたします。増岡厚生大臣。
○国務大臣(増岡博之君) ただいまの修正案については、政府としては反対であります。
○委員長(遠藤政夫君) これより原案並びに修正案に対し討論に入ります。
 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べを願います。
○橋本敦君 私は、日本共産党を代表して、衆議院社会労働委員長提出の国民年金法及び特別児童扶養手当等の支給に関する法律の一部改正案に反対、我が党提出の修正案に賛成の討論を行います。
 第一の問題は、政府が年金制度の抜本改悪と絡めて、当然物価上昇に見合い、独自かつ早期に実施すべき物価スライドを引き延ばしてきたことであります。この政府のやり方は、臨調路線に基づく年金制度の重大な改悪を、若干の年金額の増額をえさに強行しようとする不当な意図によるものであるということは、衆議院における審議経過を見ても明らかであります。
 このために年末ぎりぎりの今なお社会的弱者を多く含む年金受給者のみが取り残され、物価スライドが実施されていないという事態を現出しておりますが、まさにこれは中曽根内閣の国民に冷たい政治姿勢を示すものであると思うのであります。
 第二の問題は、スライドの内容そのものであります。すなわち、物価スライドは、昨年度見送られた凍結分と今年度の実施分の消費者物価上昇率の合計四・四%にすべきが当然であると思います。改正案は、政府案同様二%としておりますが、政府が二%とした根拠は共済年金との関連からであるとしていることからも明らかなように、これは昨年度の人事院勧告を不当に値切った措置に連動させたものでありまして、まさに物価スライドの値切り法案と言わねばなりません。これは国民の生存権保障の憲法の本旨に反し、国民の暮らしを守る責務にもとるものだと思うのであります。
 昨今の報道によりますと、正月用品が昨年に比べかなりの割高で庶民の財布は一層苦しくなっていると伝えておりますが、その影響を最も強く受けるのが、ほかの収入の当てもなく、大多数が三万円以下の低い年金水準にあえいでいるお年寄りと障害者であることは、だれの目にも明らかであります。これらの人々にこそ政府は、その暮らしを守る本来の政治責任を果たさねばなりません。
 我が党提出の修正案は、この立場から過去二年にわたる物価上昇率を償う四・四%の物価スライドを実施しようとするものでありまして、この案は年金受給者の期待にこたえるものと確信するものであります。
 以上で私の討論を終わります。
○委員長(遠藤政夫君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。
 それでは、これより国民年金法及び特別児童扶養手当等の支給に関する法律の一部を改正する法律案について採決に入ります。
 まず、橋本君提出の修正案を問題に供します。
 本修正案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
○委員長(遠藤政夫君) 少数と認めます。よって、橋本君提出の修正案は否決されました。
 次に、原案全部を問題に供します。
 本案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
○委員長(遠藤政夫君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(遠藤政夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後一時三十一分散会