第102回国会 予算委員会 第3号
昭和六十年二月十三日(水曜日)
   午前十時開会
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   委員の異動
 二月十二日
    辞任         補欠選任
     斎藤 十朗君     松岡満寿男君
 二月十三日
    辞任         補欠選任
     馬場  富君     中野 鉄造君
     鈴木 一弘君     中野  明君
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  出席者は左のとおり。
    委員長         長田 裕二君
    理 事
                井上  裕君
                岩本 政光君
               大河原太一郎君
                梶木 又三君
                亀井 久興君
                志苫  裕君
                太田 淳夫君
                内藤  功君
                伊藤 郁男君
    委 員
                安孫子藤吉君
                岩動 道行君
                海江田鶴造君
                梶原  清君
                古賀雷四郎君
                沢田 一精君
                志村 哲良君
                杉山 令肇君
                関口 恵造君
                田中 正巳君
                竹山  裕君
                土屋 義彦君
                中村 太郎君
                成相 善十君
                鳩山威一郎君
                藤田  栄君
                増岡 康治君
                松岡満寿男君
                宮澤  弘君
                宮島  滉君
                穐山  篤君
                久保  亘君
                久保田真苗君
                村沢  牧君
                矢田部 理君
                安恒 良一君
                和田 静夫君
                桑名 義治君
                高桑 栄松君
                中野  明君
                中野 鉄造君
                近藤 忠孝君
                柄谷 道一君
                青木  茂君
                野末 陳平君
   国務大臣
       内閣総理大臣   中曽根康弘君
       法 務 大 臣  嶋崎  均君
       外 務 大 臣  安倍晋太郎君
       大 蔵 大 臣  竹下  登君
       文 部 大 臣  松永  光君
       厚 生 大 臣  増岡 博之君
       農林水産大臣   佐藤 守良君
       通商産業大臣   村田敬次郎君
       運 輸 大 臣  山下 徳夫君
       郵 政 大 臣  左藤  恵君
       労 働 大 臣  山口 敏夫君
       建 設 大 臣  木部 佳昭君
       自 治 大 臣
       国 務 大 臣
       (国家公安委員
       会委員長)    古屋  亨君
       国 務 大 臣
       (内閣官房長官) 藤波 孝生君
       国 務 大 臣
       (総務庁長官)  後藤田正晴君
       国 務 大 臣
       (北海道開発庁
       長官)
       (国土庁長官)  河本嘉久蔵君
       国 務 大 臣
       (防衛庁長官)  加藤 紘一君
       国 務 大 臣
       (経済企画庁長
       官)       金子 一平君
       国 務 大 臣
       (科学技術庁長
       官)       竹内 黎一君
       国 務 大 臣
       (環境庁長官)  石本  茂君
       国 務 大 臣
       (沖縄開発庁長
       官)       河本 敏夫君
   政府委員
       内閣法制局長官  茂串  俊君
       内閣法制局第一
       部長       前田 正道君
       公正取引委員会
       委員長      高橋  元君
       公正取引委員会
       事務局経済部長  厚谷 襄児君
       総務庁長官官房
       長        門田 英郎君
       総務庁人事局長  藤井 良二君
       総務庁行政管理
       局長       古橋源六郎君
       総務庁行政監察
       局長       竹村  晟君
       防衛庁参事官   古川 武温君
       防衛庁参事官   筒井 良三君
       防衛庁長官官房
       長        西廣 整輝君
       防衛庁防衛局長  矢崎 新二君
       防衛庁経理局長  宍倉 宗夫君
       防衛庁装備局長  山田 勝久君
       防衛施設庁建設
       部長       大原 舜世君
       経済企画庁調整
       局長       赤羽 隆夫君
       経済企画庁物価
       局長       斎藤 成雄君
       科学技術庁研究
       調整局長     内田 勇夫君
       国土庁長官官房
       長        永田 良雄君
       国土庁長官官房
       会計課長     北島 照仁君
       法務省民事局長  枇杷田泰助君
       外務省アジア局
       長        後藤 利雄君
       外務省北米局長  栗山 尚一君
       外務省条約局長  小和田 恒君
       外務省国際連合
       局長       山田 中正君
       大蔵省主計局長  吉野 良彦君
       大蔵省主税局長  梅澤 節男君
       大蔵省理財局長  宮本 保孝君
       大蔵省国際金融
       局長       行天 豊雄君
       国税庁直税部長
       兼国税庁次長心
       得        冨尾 一郎君
       厚生省社会局長  正木  馨君
       厚生省保険局長  幸田 正孝君
       社会保険庁医療
       保険部長     坂本 龍彦君
       農林水産大臣官
       房長       田中 宏尚君
       農林水産省農蚕
       園芸局長     関谷 俊作君
       中小企業庁長官  石井 賢吾君
       運輸大臣官房国
       有鉄道再建総括
       審議官      棚橋  泰君
       運輸省地域交通
       局長       服部 経治君
       郵政省電気通信
       局長       澤田 茂生君
       労働大臣官房長  小粥 義朗君
       労働省労働基準
       局長       寺園 成章君
       建設大臣官房会
       計課長      望月 薫雄君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        桐澤  猛君
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  本日の会議に付した案件
○昭和五十九年度一般会計補正予算(第1号)(内閣提出、衆議院送付)
○昭和五十九年度特別会計補正予算(特第1号)(内閣提出、衆議院送付)
○昭和五十九年度政府関係機関補正予算(機第1号)(内閣提出、衆議院送付)
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○委員長(長田裕二君) 予算委員会を開会いたします。
 昭和五十九年度一般会計補正予算、昭和五十九年度特別会計補正予算、昭和五十九年度政府関係機関補正予算、以上三案を一括して議題といたします。
 それでは、これより順次質疑を行います。近藤忠孝君。
○近藤忠孝君 中曽根総理はことしの訪米の際にSDI、いわゆる戦略防衛構想に理解を示したということであります。そこで、SDIに関する技術協力についてまず質問をいたします。
 ワインバーガー・アメリカ国防長官は二月八日に、SDIに西欧、日本などを含めた同盟諸国が研究者、科学者を派遣するよう非公式要請を行っておる、こう言明いたしましたが、我が国にその要請はありましたか。
○政府委員(栗山尚一君) お答え申し上げます。
 そのような要請はございません。
○近藤忠孝君 政府筋は、アメリカが日本に対して技術協力を求める対象として、光電子工学、ミリ波、この二分野について考慮しているということを政府筋が明らかにしたという報道、これは一昨日の一面トップ、読売の記事であります。これはアメリカ国防報告などから見ますと、こういう要請は確実だと思うんですが、総理いかがですか。
○国務大臣(中曽根康弘君) 何ともわかりません。政府としては常に情報の提供及び協議を要請しておりまして、先方は承知しておりますが、まだそういうことはございません。
○近藤忠孝君 こういう報道があるということは、当然政府はこういう事態を予測して、これはロン・ヤスの仲ですから、当然予測して対応策を協議しているのじゃないかと思うんですが、どうですか。
○国務大臣(中曽根康弘君) まだSDIは長期にわたる研究計画でございますから、その内容を具体的にこれであるというふうには的確に承知しておりません。したがって、すべて不確実な状態でございます。
○近藤忠孝君 これは決して将来の問題ではないんですね。と申しますのは、これはアメリカのレーガン大統領の科学顧問兼大統領府の科学技術政策局長のジョージ・キーワース氏はこう言っています。これはことしの二月一日です。日本の持ったすぐれて高度な技術をアメリカは必要としており、ことしから来年にかけて日本政府と協力、共同作業分野について具体的な協議を行うことを期待していると、先方はもうこう言っているわけです。要請はことしから来年にかけてという、これは緊急の問題なんです。長い将来の問題じゃないんです。それから、しかもここで指摘しているように、単なる技術供与にとどまらないで、協力、共同作業を求めているわけです。これじゃ中曽根さんが言う理解じゃない。あるいは支持を越えたSDIについての運命共同体になってしまうのじゃないか。こういうことについてはきっぱり拒否をいたしますか。
○国務大臣(中曽根康弘君) 先ほど来申し上げておりますように、情報の提供及び必要なときにおける協議ということを要請しておる。まだそういうものは来ておりません。どういうものが出てくるか、出てきたときに我々としては我々の方の独自の立場に立って判断をいたします。
○近藤忠孝君 すると、その段階で協力する可能性はある、こういうことですか。
○国務大臣(中曽根康弘君) 物は見なければどういうふうなことを考えていいかもわからぬのでありまして、すべては代は見てのお帰りということであります。
○近藤忠孝君 これは衆議院での答弁ですが、要請があった場合にいろいろなことを考えた結果でしょうけれども、技術協力を求めてきたことに対して協力に踏み切る可能性がある趣旨の答弁をしておりますが、それは違うんですか。
○国務大臣(中曽根康弘君) ただいま申し上げたとおりであります。
○近藤忠孝君 これは条約だけじゃなくて、国連決議あるいは国会決議に関する問題なので、きちっとお答えいただきたいのですが、将来の問題として可能性は出てくるものだと思うんですね。
 そこでまず外務省に伺いますが、八三年の第三十八回国連総会で採択された宇宙空間における軍備競争の防止に関する決議、この主な内容について御説明いただきたいと思います。
○政府委員(山田中正君) お答え申し上げます。
 宇宙における軍備競争に関します決議で、今先生御指摘の一昨年の総会での決議、非常に長文のものでございますが、要約いたしますと、効果的な国際管理のもとでの全面完全軍縮は、宇宙空間を平和的目的のためにのみ使用し、また軍備競争の場としないことを必要とし、そのため一層効果的な措置が国際社会によって採択されることを強調いたしまして、ジュネーブの軍縮会議に対し、本件交渉に対して主たる役割を有すること、作業部会を設置すること、優先度をもって扱うこと、そしてこの問題を一層検討することを求めておるものでございます。
○近藤忠孝君 次に科技庁長官に聞きますが、六九年五月に衆議院の本会議で宇宙の開発利用は平和目的に限るとの決議がされたわけであります。この決議にある「平和目的に限り」ということはこれまでの政府の答弁ではこれは非軍事であると答弁しておりますが、これは確認できますか。
○国務大臣(竹内黎一君) お答えいたします。
 ただいま先生御指摘のとおりでございます。
○近藤忠孝君 さらに確認いたしますが、八三年四月二十七日の衆議院外務委員会で我が党の野間議員が「平和の目的に限るというのは、」「軍事に利用することを禁止する。」のか、こういう確認をいたしました。当時の安田科技庁長官は「そのように理解しておる」と述べております。それも確認できますか。
○国務大臣(竹内黎一君) ちょっと今手元にその種の資料がないのですけれども、多分間違いないことだと思います。
○近藤忠孝君 このように政府はこれまで宇宙空間における軍事利用を禁止しておる、こういう答弁が出ておりますが、これは総理に確認してよろしいでしょうか。
○国務大臣(中曽根康弘君) 宇宙空間における防衛あるいは軍事技術等につきましては国会の決議もあり、また累次政府がここで答弁しました政府の方針もあり、申し上げたとおりでございます。
○近藤忠孝君 将来の問題、私はこれは極めて近い将来だと思うんですが、アメリカの方からこのSDIに対する技術供与あるいは共同作業、これを求めてきた場合には、これはあくまでも軍事ですから、国連と国会の決議に反すると思うんですが、これはどうですか。
○国務大臣(中曽根康弘君) ともかく我々の方に対してどういう関係の申し出があるか、それらはその場でよく検討してみるということで今からとやかく予断をもって申し上げるべき余裕はありません。
○近藤忠孝君 これは総理、そんなことを言っている問題じゃないのです。大変大事な問題です。これは核軍拡が宇宙に進むかどうか、こういう問題であり、だからこそ国民が心配しておりますし、だからこそ、中曽根総理がアメリカへ行ってこのSDIに理解を示した、それに対して大変な反撃、怒りが高まっている。ですから今のような答弁じゃ、これは国民納得しませんよ。それは必ず来るんですから。もう今のいろんな記事を見れば、必ず日本に技術協力要請が来るんです。その場合、このSDIがどういうものか中曽根さんは十分知っておるでしょう。それはまだわからない部分はある。研究ですからね。しかし、おおよそのものはわかっているのです。これは明らかに核軍拡につながるのじゃないんですか。どうですか。
○国務大臣(中曽根康弘君) アメリカ大統領が直接私に責任を持って言った、言明したことは私は重いと思っています。それは、SDIは非核通常兵器である、それから核兵器の廃絶を目的とするものである、それからこれは防御兵器である、そういうことを私に言い、しかもこれは長期の研究計画である、そういうことを言いましたから、非核で防御兵器で、そして核兵器を廃絶目的とするということは我々としては好ましさ要素もある、そういう意味において理解を示したということであります。
○近藤忠孝君 すると、総理はレーガン大統領のその説明をうのみにして、そういうものだと、こう理解して帰ってきたんですか。
○国務大臣(中曽根康弘君) アメリカの大統領がそう言うのでありますから、それはそれなりに私は信用もしておるわけであります。
○近藤忠孝君 これは決して非核ではないんです。エックス線レーザーがSDIの頂点に立つもの、これははっきりしておるんですが、これは小型の核爆薬を爆発させて、そしてエックス線を発生させて標的のミサイルを撃ち落とす、こういうものなんですね。現にこのことはビーム・ディフェンスというアメリカの書物ですが、その中でこう言っています。「X線レーザーは、新しい分野の技術であり、未知の部分が多い。しかし、エドワード・テラー博士ならびにレーガン大統領をしてICBMに対する完璧なビーム防衛が可能だと確信せしめたのは、ほかならぬこのX線レーザー技術である。」、こういうものなんです。燃料は小型の核爆薬、しかもこれは水爆なんですよ。もうちゃんと書いてあるんです。図入りで書いてあります。ちょっと中曽根さん読んでほしいのですが、しかもこれを宇宙に五十個ほどこのエックス線レーザー衛星を置く、あるいは三百と考えていますね。まさにこれは宇宙に核が拡大することじゃないですか。この点どう思いますか。
○国務大臣(中曽根康弘君) ともかく最初申し上げましたように、向こうから責任を持って権威ある方々がこういうものであってこういうことであると、そういうのを聞いた上で我々は独自の立場で判断をすると申し上げたとおりです。
○近藤忠孝君 今私が指摘した事実を前にして、これが非核兵器だと、こう中曽根さん断言できますか。
○国務大臣(中曽根康弘君) あなたの指摘したことがアメリカ当局が私に言ってくることであるかどうか、そこがまず問題であります。そういうような問題は将来の問題であって、出てきた場合に考える、独自の立場で判断をすると申し上げているとおりです。
○近藤忠孝君 中曽根さんは非核だということは、これはもうはっきり言えないわけですね。
 それから、防御か攻撃かはこれは見る立場でも随分違うものなんです。しかもこのSDIは相手の発射したミサイルがどこをねらったかわからないうちに発射しちゃうんです。それからエックス線レーザーを直撃させる地点が相手方の領空であってもこれは撃ち落とせる。それから相手の撃った弾道ミサイルの撃破にとどまらず、宇宙に展開する各種の軍事衛星の撃破、あるいは地上の兵力の軍事施設、基地を攻撃することも可能なんですね。これはどこに攻撃、防衛の区別がつくのですか。
○国務大臣(中曽根康弘君) 先ほどから申し上げておりますように、ともかく先方が責任を持ってこういうものだというものを持って出てきた場合に、我々は独自の立場で判断を下すと前から申し上げているとおりで、いろいろなストーリーとか想像図とか、あるいは前提の何と申しますか、アサンプション、仮定的ないろいろな構想というようなものがあるだろうと思いますが、両国間、日米間、国際間においてはやはり責任ある人たちが言ってきたものを取り上げて対処するというのが正しいやり方で、現実的なやり方であります。
○近藤忠孝君 非核かあるいは防御的か、そこもこういう具体的な事実に対して何も答えられないで、それで相手の言い分を指摘する、これでは日本の総理とは言えないと思うんです。
 さらに、核廃絶につながるというのですが、これもSDIは基本的には弾道ミサイルへの防御体制であって、すべての核兵器を無力化するものではない、この点どうですか。
○国務大臣(中曽根康弘君) 向こうはしかし核兵器廃絶を目的にしてやると明言しておるんですから、現段階においては一応そういうものとして我々は受け取るのは当たり前でしょう。違うものが出てくれば我々としてはまた独自の判断をする、そういうことでありますが、向こうがそういうことを言っている間はそれなりに我々は信用しておるわけです。
○近藤忠孝君 これもレーガン大統領の言い分をうのみにして、国民に責任を持たない立場だと思うんです。
 これはアメリカの国会でも議論されています。下院歳出委員会においてSDIの集中審議の中で、アブラハムソン、これはアメリカ空軍のSDI担当部長です。これは大将ですが、SDIに含まれる研究の焦点は弾道ミサイルに対する防衛に関してだ、こう言っています。ステルス、これは総理御承知だと思うけれども、見えない巡航ミサイルですね。これに対しては対処できない。これははっきりとこの議事録に出ておるんです。ですから、SDIがそういうほかの兵器には対処できないんだから、核廃絶につながるなんというのはこれはとんでもないのじゃないですか。先ほど来指摘しているとおり、果てしない宇宙への核軍拡です。どうですか。
○国務大臣(中曽根康弘君) ともかく内容がどういうものであるかということはまだ我々の方では、アメリカが言ってきた程度のことを我々としては一応受容して理解を示す、そういう態度で、具体的にいろいろなものが出てきたときに独自の判断をすると申し上げているとおりです。ただ、これによって国際的ないろいろな判断、平均的な判断を見ると、やはりジュネーブ会談がこれを契機に開かれた、そういう面から見て、ソ連側も核の廃絶を目指すと言ってきておる。アメリカも核の廃絶を目指すと言っておる。それで長い間凍っていた米ソ間の軍縮交渉がSDIというようなものを契機にして開始されて、世界を安心させつつある、こういう効果がやはりあったということは国際的に大体判断され、言われておりますが、そういうような効き目もあって、世界がジュネーブ会談が成功するようにというみんなの大きな願望の線に沿ってきているという事実も見逃すわけにはいかぬと思っております。
○委員長(長田裕二君) 内藤功君の関連質疑を許します。内藤君。
○内藤功君 米ソが核兵器の廃絶を目指していろんな会議をやっているというのは、やはり基本的には世界の平和運動というものが一番大きな力だと私は思うんですね。
 そこで私が伺いたいのは、レーガン政権のシンクタンクであるヘリテージ財団の援助で一九八二年に「ハイフロソティア――新国家戦略」という報告書が米政府に出されているんです。これはSDI構想の基礎になった文献だと言われております。これを書いた研究グループの代表は、元CIA次長で国防情報局長を務めた退役陸軍中将のダニエル・グラハムという人であります。この報告書によりますと、相互確実破壊戦略にかわって確実生き残り戦略、これを採用するように強く勧告しているんですね。そういう転換には全地球的な弾道ミサイル防衛しかない、こういう提言をしておるんです。私は、これでも明らかなように、核廃絶を目指すどころか、SDIというものは一方の核超大国の生き残り戦略そのものだと、こういうふうに見なければならぬと思うんです。私はこの点の総理の御認識を聞いておきたいと思うんですね。
○国務大臣(中曽根康弘君) まず、ヘリテージ財団のグラハム中将の報告というものは民間団体の報告でありまして、政府の権威ある政策となっているものではない。また、その報告の内容を見てみると、同盟国の防衛にも使う、そういうことも書かれている由であります。そういう意味において、その報告に関する限りにおいてもあなたのおっしゃるようなものでは必ずしもないと思っております。
○内藤功君 民間の研究所が大きな影響力をアメリカにおいては政権に与えることはあなたもよく御存じのとおりであります。しかもこの代表のグラハム中将はレーガンの選挙のときの軍事顧問をやっている腹心の一人なんですね。その後行われたスターウォーズ演説というレーガンの演説でも、それが非常に影響を受けていることが読み取れるわけであります。ですから、民間のだからということは私は理由にならないと思う。
 私の聞いておるもう一点答えがないんですが、この確実生き残り戦略を採用している、これはお読みになっているからおわかりと思いますが、これはどうお考えになりますか。核廃絶じゃないですね。
○国務大臣(中曽根康弘君) あなたのポイントは大国だけが生き残ろうという、そういう考えであると、そういう話ですが、私が調べさせたところでは同盟国の防衛にも使う、そういうふうになっている由であります。
○内藤功君 これはどんな文献を見ても同盟国のというのはありませんよ。どなたか一人が下院の証言で言ったという程度であって、出てくる科学的な分析は、私の知る範囲ではこれは全部アメリカの防衛であるということを申し上げたいと思う。
 次に、このSDIというのは人類を私は核兵器の脅威から解放するものじゃないと思う。SDIを開発する側は核兵器を廃絶しないでしょう。どんどん攻撃兵器も一緒に開発するんです。一方、相手側は今度はその防御網を突破する方法、いろいろありますが、そういうものを研究して、これを突破してさらに攻撃力を強めようとする。こういうことになりますと限りない宇宙での核軍拡競争が激化しますよ。SDIというのは核廃絶の方向じゃなくて核の軍拡競争を宇宙で拡大するという方向へ行くものだと私は思うんです。重ねて、総理がそういうことを、これから材料が出てから考えるという態度はこれはいけない、無責任な態度になると私は思うんですよ。その点の御認識を再度お聞きしたいと思います。
○国務大臣(中曽根康弘君) ともかく我々は国家の機関として国民に対して責任を持って対外折衝もやっておるものであって、相手の責任あるものが出てきたときに我々としての判断を正確に示すというのが正しいことであります。
 それから、ともかくこういうSDIというようなものに触発されてジュネーブ会議というものが開かれた、この厳然たる事実は否定できない。このSDIというものの影響によって著しく影響された、そういうことでソ連がジュネーブ会議に応じてきて、そして今や世界がジュネーブ会議の成功を祈るというところまで前進してきた、こういうことも否定できないんです。我々としては米ソ間で核軍縮に向かって大きく前進することを望んでおるのでありまして、そういう効果も一つあったということを認めなければならぬのであります。今後はジュネーブ会議がどういうふうに前進していくか、それからアメリカ内部においてこの研究がどういうふうに進んでいくか、そういうような具体的成果というものを我々が的確に判断をして進んでいきたいと考えております。
○近藤忠孝君 ですから、ジュネーブ会議で核廃絶を直接の目的としてその協定ができること、これが一番人類の求めるところなんです。
 そこでお伺いしますが、これは衆議院の我が党の松本善明議員の質問に対して総理はこう答えているんです。善明議員の質問は、核兵器の廃絶協定ができればSDIは不必要になるであろう、これに対する総理は、それが実効性のあるものであれば、つまり検証を伴ってお互いが安心できるものであれば、そういう条件づきですねと、こう答弁いたしました。実効性のある核兵器廃絶協定ができればこのSDIは不必要になる、そうでしょう。
○国務大臣(中曽根康弘君) 私が答弁の重点として申し上げたのは、いかにしてその核廃絶協定をつくるかという問題なのであって、それには両方が安心してやめるという手段が講ぜられていなければやめるものではない。そのために今まで軍縮問題というものがこういうふうに長引いてきてまとまらなかったので、その急所を押さえなければだめだ、それは検証であるとか、そのほかの具体的に安心できる措置を講じなければだめだ、そういう措置を講じないでいたずらに抽象的な話をしても、それは空想的な廃絶論になってしまうと前から申し上げているとおりです。
○近藤忠孝君 ですから、まず政治的に核兵器廃絶協定を結んで、そして中曽根さんの言う実効ある検証問題、これをやればいいんですよ。今まで検証問題、これを理由にして結局は核廃絶の方向が阻止されていたんです。現にこの検証問題、査察はこれは科学的には完全に可能だ、技術的、科学的には完全に可能だ、これをお認めになるんでしょう。
○国務大臣(中曽根康弘君) 両方が良心を持って、そして科学的なあらゆる性能を駆使してやれば可能であると思います。
○近藤忠孝君 現に国際会議あるいは米ソ二国間協議の中でも、査察問題というのはこれははっきりしているんです。ソ連は自国の技術手段による査察にプラスして国際機関による査察をやればいいじゃないか、これはできるんですね。ところが、今までいろんなことをそこに持ち込んだり、結局させてこなかった、そこに問題があると思うんです。ですから、総理言われるとおり、実効性あるものをこれから技術的に検討していけばいいんです。そうすれば先ほど申し上げたように、実効性のある核兵器廃絶協定ができればSDIはこれは不必要になる、そうじゃありませんか。
○国務大臣(中曽根康弘君) 廃絶協定と査察というものは同時に成立するものである、安心ができなければ廃絶協定もできないのですから。ですから、そういう科学的な安心できる方策を講ずべきであると前から申し上げているとおりなんです。
○近藤忠孝君 総理はこのSDIは大変長期なものだ、二十一世紀に至るものだ、こういう発言をされておるんですが、そうしますと総理は核廃絶はそれまではできない、こういうお考えもお持ちなんじゃないでしょうか。我々は核廃絶は人類にとって死活的な緊急課題、こう考えています。しかし、総理の考えによると、SDIにこれは理解を示していくというわけだから、そういうことになりませんか。
○国務大臣(中曽根康弘君) しかし、SDIが確実にICBMやIRBMの機能をなくさせる、そういうものが出てくるということが予見された場合には、これはやめるとか、縮減するとか変化が出てくるんじゃないでしょうか。必ずしも展開しなくても、着実にそれが行われるという予測ができれば両方とも考えるのじゃないでしょうか。
○近藤忠孝君 大切なことは、兵器技術の開発によって核戦争の勃発を防ぐという、こういう幻想はまず捨てるべきじゃないでしょうか。ところが、歴史上最終兵器はこういうものだと言われながらそれで終わった例はない。次から次へ新しい兵器が開発されているわけですね。軍事的な研究開発の常として、新しい兵器がつくられれば、ほとんど同時にそれに対抗する兵器の開発が始まる。SDIに対抗して、それに攻撃を加える兵器、あるいはこれを上回る兵器、これがお互いに開発されているんですね。となれば、これはせっかく米ソで核廃絶の協議が行われる、その邪魔になりはしませんか。その点どうですか。
○国務大臣(中曽根康弘君) 兵器の開発というものは相手に負けないようにみんな努力するのが歴史でありますから、そういう要素は完全に否定すべきものでもないでしょう。しかし、現に我々が今見ている情勢においては、ジュネーブ交渉が開始されたということ自体は、これは否定できないことであって、そういう効果をもって全世界がこれで非常に安心しつつある、そういうことも我々は目の前に見ていることであります。今までいろいろな危惧とかあるいは御懸念とか、そういうような問題は我々としてもやっぱり考えておかなければならぬことでありましょう。しかし、それらはどういう具体的なものが出てくるかということを見たときに、今までのそういう御懸念やら心配というものを我々がよく頭に置いてそして処理すべきものであると、そう考えておるんです。
○近藤忠孝君 世界でただ一つの被爆国の首相として、核廃絶を目指した米ソの協議、協定が成功する、そのためにこそ第一義的に努力をすべきだと、こう思うんです。現にこのSDIは核廃絶を目指した米ソの協議にこれは邪魔になる、こう思いませんか。現にソ連はそういう立場からそれには反対の態度を示しておるんですね。中曽根さんはそれ逆じゃないでしょうか、それが第一点。
 それから、SDIはいずれにしましても宇宙の軍事利用ですよ。これは否定できないでしょう。そして、これはやっぱり国会の決議、国連決議にも反するのですから、そんなものへの研究、こういったものはやめて、むしろ真っ先に核廃絶の成立を目指していく、それが必要じゃないでしょうか。
○国務大臣(中曽根康弘君) 先ほど来申し上げておるとおりで御理解いただけるものと思います。
○近藤忠孝君 ですから、総理は核廃絶協定の成功を口では言いながら、しかし一方では宇宙軍拡の道をこれは進むんですよ。これは逆に邪魔になるんです。この点につきましては、アメリカの科学者連合のストーン会長は、レーガン大統領がSDIの演説直後にこう言っています。軍拡競争は技術的に解決できるものではなく政治的に解決すべきだと、先ほど言っているとおり技術や兵器で核を防ぐ、そんな考えは捨てろと、こういう考えについては総理いかがですか。
○国務大臣(中曽根康弘君) 国際社会の流れを見てみますれば、非常に冷厳なるものがありまして、核兵器というのは業の兵器だと前から申し上げているとおりです。この楽の兵器をやめさせるということは一片の演説でできるものではないのです。やはり国際世論も大事です。また政治家の持っておる良心も大事です。しかし、多くの国民を抱えている国という立場から見ると、国民全部が安心してそれに乗れるような具体的な科学的な手段が講ぜられなければ、おいそれとただ理念だけがいいと言って乗れるものではない、そういう政治の現実があるということを共産党もよく御認識願いたいと思うのであります。
○近藤忠孝君 いつも総理はそこに逃げ込むのですが、じゃ、これはSDIに固執している総理の立場に立ちましても、SDIなしに核廃絶ができた方がいいじゃありませんか。そうでしょう。そこはお認めになるでしょう。
○国務大臣(中曽根康弘君) 今までできなかったからこういうものが出てきたんじゃないですか。
○近藤忠孝君 まともに質問にお答えいただきたいんです。核廃絶協定ができることが一番いいと総理言っておるんですからね。そうであれば、今現にSDIがこれは成立の妨害になるんじゃないか。しかも、これは先ほど来指摘しているとおり、宇宙への軍事利用ですからね。そうであればまともにお答えいただきたいんですが、総理の立場、SDIを研究するという総理のそういう立場に立っても、そんないつになるかわからない、さっきも総理言ったとおり、それはもう大変時間のかかるものですね。果たしてうまくいくかいかないかわからない。しかも莫大な費用がかかる。こんなものに核兵器廃絶という人類にとって最重要の、しかも緊急の課題の解決を期待するのはばかげたことではないか。そうだとすれば、繰り返しますが、総理、率直にお答えいただきたいんです。SDIなしに核廃絶ができた方がよい、これは率直にそう思いませんか。まともにお答えいただきたい。
○国務大臣(中曽根康弘君) それは核廃絶というのは人類の願いであり、我が国国民全体の大きな願いです。それが今までいろいろ唱えられたけれどもできなかったのはなぜであるか。そういうことを考えてみると、やはり具体的な安心できるそういう措置が講ぜられないからだと、それで長い間軍縮交渉が行われ停滞をしてきているわけであります。それが今回SDIというものの出現によって、核廃絶という面においては両方が一致しつつある。問題は具体的な検証の方法や何かが残されてきておる。それを詰めて、そして成功に導きたいと前から申し上げているとおりです。
○近藤忠孝君 検証は技術的な問題なんです。その前に政治的にそこを進んでいくことが大事なんです。もう一度、先ほど来総理は答弁をそらしていますから確認しますが、SDIはいずれにしても宇宙の軍事利用だと、これが第一点。これは先ほど宇宙は軍事利用しないといったこの国会決議にこれは反するだろう、その点はしっかりとお答えいただきたいと思います。
○国務大臣(中曽根康弘君) いずれにせよ、中身が的確に責任ある立場から出てきた場合に、我々は責任を持ってそれらに対する自主的な判断を行うと申し上げているとおりであります。
○委員長(長田裕二君) 近藤君、時間が参りました。
○近藤忠孝君 はい。
 しかし総理、先ほど来確認したとおり、これはもう間違いなく宇宙軍事利用じゃありませんか。それだけちょっとお答えいただきたい。
○国務大臣(中曽根康弘君) 前から何回も申し上げているとおりであります。
○委員長(長田裕二君) 以上で近藤君の質疑は終了いたしました。(拍手)
    ─────────────
○委員長(長田裕二君) 次に、柄谷道一君の質疑を行います。柄谷君。
○柄谷道一君 通告いたしました質問に入る前に、二点、総理の御認識を伺いたいと思うんです。
 まず、教育改革は今全国民の深い関心が寄せられているところでございますが、十一日、臨時教育審議会の第一部会は画一主義を排し個性主義という思想に立つ部会長メモをまとめられたと承知しております。総理のひとつ評価をお願いいたします。
○国務大臣(中曽根康弘君) 今臨教審は白熱的討議をやっている最中でございまして、まだ一つの過程にあると思います。しかし、皆さん方の御議論がだんだん収れんの方向に向かっているということは結構なことであると思っております。自由化という言葉が自由放縦のそういうような連想で締まりがない、そういうような誤解を与えるというようなところから、もし個性化という言葉でかえて、そしてそれで皆さんがまとまっていくというならば、それなりに中間的段階として結構なことであると考えております。
○柄谷道一君 その方向については評価するという姿勢でございますか。
○国務大臣(中曽根康弘君) 途中の議論を一々政府が口出しするのはよくないと思うんです。そういう意味において私は言葉を慎んでまいりたい、そう思っております。
○柄谷道一君 文部大臣のひとつ評価をお願いいたします。
○国務大臣(松永光君) 臨教審の第一部会の先生方が二泊三日、実質二十時間以上も真剣な御討議をなさったことについて深く敬意を表しているところでございます。出されたメモ等につきましては私の方でいろいろ評価する立場にありませんで、臨教審の先生方がさらに一層自由濶達に論議を深めていかれることを期待しておるわけでございます。
○柄谷道一君 再度文部大臣に伺いますが、そのような方向に沿う答申が出された場合、これを尊重するという姿勢には変わりございませんか。
○国務大臣(松永光君) 臨教審設置法の規定に基づきまして総理大臣に尊重義務があると私は承知しておりますが、臨教審の答申につきましては私としても尊重してまいる気持ちでございます。
○柄谷道一君 次に、昨日、隣国大韓民国において総選挙が行われました。政府との対決色を強く打ち出しております新韓民主党が野党第一党の地位を占めると、こういう事態になりました。総理としての受けとめ方、そして今後の日韓関係に及ぼす影響についてどうお考えになっていますか。
○国務大臣(中曽根康弘君) 韓国におきまして民主的な選挙が行われたということは、私は敬意を表する次第でございます。選挙の結果につきましていろいろ外国の責任者が論評するということは適当でないと思いますので、言葉は差し控えさしていただきます。
○柄谷道一君 日韓関係には別段の変化はないと総理はお考えでございますか。
○国務大臣(中曽根康弘君) 韓国における各政党も、また日本における各政党も、みんな大局的見地に立って日韓親善友好協力を願っておるのであって、与党野党を問わないと私はそう信じております。したがいまして変化はないと思っております。
○柄谷道一君 本題に入ります。
 労働大臣にお伺いいたしますが、労働大臣は去る一月三十日の本会議で労働時間短縮に関して答弁をされました。その答弁は、受けとめ方によれば、週四十時間労働、年二千時間以内の労働ないしは太陽と緑の週法制化、これは国民の支持を得られるものではないというニュアンスとも受けとめられるわけでございます。労働大臣として真意が曲げられて伝えられることは本意ではないと思います。改めて真意をお伺いいたします。
○国務大臣(山口敏夫君) 高齢化時代における雇用の延長をめぐります労働人口の拡大、あるいは技術革新の時代における機械化社会における人間のあるいは勤労のあり方、また国際労働摩擦等が論議されておる労働時間問題、労働者の福祉や労働条件の改善、また長期的に見て日本人の勤勉性の持続等々から考えますと、やはりワークシェアリング、今から労働時間短縮問題を中長期的な展望の上に立って進めていかなければならない。そのためには週休二日制の実施でございますとか、あるいは有給休暇の完全消化とかというのが一番望まれるところだと思うのですけれども、なかなか勤勉性を誇る国民の中で定着し得ない。私はそういう立場から今柄谷先生等が御提案している太陽と緑の週の連続休暇の拡大等々、経済の活力をそぐことのないように、あるいは内需の停滞を起こすことのないように、こういう不断の配慮を検討しながら連続休暇の拡大や週休二日制を不退転の決意で進めていきたいということが労働行政を預かる私の基本的な考え方でございますが、今御指摘いただきましたように、三十日の本会議におきましては、ちょっと初答弁でもございまして、例も多少適当でなかったと、こういう御指摘もございましたが、私の真意は労働時間短縮というものがこの三年、五年、七年、まあ逆七五三の三五七的な展開の中でひとつ進めていかなければならない、こういう認識に立っておるということで御理解いただきたいと思います。
○柄谷道一君 労働省にお伺いいたしますが、日本と先進諸国、これは製造業中心で結構でございますが、年総実労働時間の対比がどうなっているのか、実態を明らかにしていただきたい。
○政府委員(寺園成章君) 労働時間を諸外国と比較いたします場合にいろいろ難しい問題がございますが、できる限りデータの基準をそろえまして、仰せの製造業の生産労働者につきまして推計によって比較をいたしますと、一九八二年の年間の総実労働時間、我が国では二千百三十六時間でございます。所定内時間は千九百四十五時間でございます。アメリカにおきましては、総時間千八百五十一時間、所定内は千七百三十一時間、イギリスは総時間が千八百八十八時間、所定内千七百五十八時間、西ドイツ、総時間が千六百八十二時間、所定内千六百四時間ということになっております。
○柄谷道一君 総理にお伺いいたします。
 総理は、貿易摩擦の解消に関連いたしまして、日本が国際的にアンフェアであるという認識を与えてはならない、そういう面があればその是正というものを図らなければならないという答弁を本会議でもされているわけでございます。ただいま労働省から発表されました先進各国との総労働時間の差というものが、国際公正競争条件という点から見てフェアであるとお考えでございますか。
○国務大臣(中曽根康弘君) 私は必ずしもアンフェアであるとは思いません。労働時間というようなものは、各国それぞれ独自の社会制度、所得構成、そのほかその国独特の事情によって成立している面も多いと思うのであります。ですから、単に結果で出てきている時間だけを取り上げて、すぐアンフェアであるという即断をするのは早いと思います。しかし、日本が先進民主主義工業国として国際社会に伍していく上に、世界水準並みの休暇を労働者の皆さんも得るように順次持っていく、政策的努力をするということは正しいやり方であると思いまして、政府としても順次そういう方向へ努力してまいりたいと思っております。ただ、これは民間の労使間で決まる要素が非常に大きいものでございますから、それを尊重しつつ政府としても政府の限界内におきまして努力していくということであります。
○柄谷道一君 労働時間の短縮、さらに太陽と緑の週の問題、単なる行政指導や労使間の交渉にゆだねるという姿勢ではなかなかこれを達成することは困難である。私は強く法制化を求めるものでございますが、きょうは与えられた時間が短いわけでございますので、総理の御所見を聞くにとどめ、また別の機会に議論をいたしたいと存じます。
 次に、財政再建についてお伺いいたしますが、大蔵大臣、税制に関する基本的な考え方、税負担率及び税収構造、税負担の公平確保、税務行政の効率化等につきましては、五十七年七月三十日の臨調基本答申を最大限尊重するという基本姿勢についてお変わりはございませんか。
○国務大臣(竹下登君) 基本姿勢は変わっておりません。
○柄谷道一君 それでは、税制を考える場合その前提と指摘されております税負担の公平確保、税務行政の効率化という臨調答申に対し今日までどのような努力を続けてこられたのか、今後どのように対処されるのか、二点についてお伺いします。
○国務大臣(竹下登君) まず公正の確保ということは、その後ございましたのが、中期答申が五十八年の暮れにございます。と同時に、毎年ごとの例えば六十年度税制についてと、こういうような答申も政府税調からいただいております。それを熟読玩味しまして法律改正をやっていくというようなところで公正、いわばでこぼこ調整、そうしたものの可能な限りの努力をしてまいりました。
 それから、いま一つは税務行政の問題でございますが、機械化とか、そういう問題もございますが、いつも本委員会等でも御鞭撻をいただいておりますいわゆる定員の確保の問題につきまして、結果的に数はわずかでございますけれども、この厳しい中で総務庁等の理解を得ながら増員をして内容の充実を図っておる、それからまた研修の問題等が挙げられるのではなかろうかと思います。
○柄谷道一君 大蔵大臣は直間比率の見直し、これが今後の大きな課題であるという指摘をされておりますが、直間比率の見直しを提起される真意は一体どこにあるのでございましょうか。
○国務大臣(竹下登君) これは柄谷さんと税の議論するときにいつも申し上げますが、私は、直間比率というのはこれは結果的に決まるものであって、したがって税体系の見直しというのが本当の表現ではないかなといつも申し上げておるところであります。今度の税調の答申におきましても、異例のことながら、直接税、間接税をも含め抜本的な見直しを行うべきであると、こういう答申をいただいておるわけであります。まさに私は直間比率を見直すというようなことではなく、「社会経済情勢の変化に即応して、」「幅広い角度から抜本的に見直さなければならない」と述べた上で、「既存税制の枠内での部分的な手直しにとどまる限り、所得、資産、消費等の間で適切な税負担のバランスを図るという観点からは税体系に歪みを生じさせ、また、税制を一層複雑化させることとなる。したがって、既存税制の部分的な手直しにとどまらず、今こそ国民各層における広範な論議を踏まえつつ、幅広い視野に立って、直接税、間接税を通じた税制全般にわたる本格的な改革を検討すべき時期に来ていると考える。」、こういう指摘がございますので、私はいわゆる直接税、間接税の比率問題を前提に置いて検討するという考え方ではございません。
○柄谷道一君 臨調の基本答申には直接税の国税収入に占める割合が七二・四%、これは五十七年度でございますが、にも達している現状を指摘いたしまして、ただいま大蔵大臣が述べられました視点を含め、比率見直しの必要性があることを強調いたしております。一言で言うと、大臣、直接税の比率が高過ぎるということも一つの大きな原因じゃないですか。
○国務大臣(竹下登君) これから御議論をいただくわけでございますけれども、総体的に直接税と間接税、主として直接税は所得に対する担税力を求め、主として間接税が消費に対する担税力に着目するという意味において、公平感というものから、そのバランスということを基礎に置いた公平感という点からすれば、今のような御指摘もあり得る御指摘であるというふうに考えております。
○柄谷道一君 それでは、大蔵大臣は直間比率の見直しは増税を意図するものではない、根本的な税制構造そのものにメスを入れたいと言われながら、直接税の比率は現在高過ぎるという認識をお持ちだと。とすれば労働各団体が一致して要求いたしております所得税、地方税の減税を行えば当面直間比率の改善ができることになるんですが、これを否とする原因はどこにあるんでございますか。
○国務大臣(竹下登君) まず一つは、直接税の比率が高過ぎるというのは、結果としてそのような意見もあると、私が断定するのはいかがかと思いますが、そのような意見も十分にあるという事実認識であるということに一つは置きまして、そこで今柄谷さん単純におっしゃいましたように、その直間比率というもの、現在結果として出ております直間比率というものを、今あらわれておるものを急速に変える措置として、経済の流れ等もそれはございましょうけれども、これは間接税というものは、なかんずく従量税なんというものはいわば弾性値のきかないものでもございますから、直接税が徐々に上がってきた。だから直接税である所得税、その大きな基幹である所得税をいわば低くすれば、総体として直間比率は結果として変わってくるというその単純論理は、単純論理というか正確論理でございますが、正確な論理は私もこれは理解するところでございます。
 ただ、それが今日の時点でなぜできないのか、こういうことになりますと、いわば五十九年、今動いておる経済、財政の中での本格減税をやったばかりであり、そしてまた税制調査会等におきましても、六十年度の税制のあり方については、いわば所得税を減税する余裕は今日ない、そういう環境にないという御指摘をいただいておりますし、まさに今日の財政事情から勘案しましたときに、六十年度所得減税をやる考えはないので、そのような法律も提出をいたしていないということであります。
○柄谷道一君 財源がないということがその大きな原因であるとすれば、六十一年度以降も仮定計算の上から見て極めて厳しい財政状況にあります。ということは、間接税の増税によって新たな財源が確保されるまで六十一年度も所得減税を行う余裕はないと、こういうことに連動するんですか。
○国務大臣(竹下登君) これはいわゆる所得税、もとよりこれは直接税の範囲であります。そして間接税、すべて根本的な議論をして制度を組み直す時期に来ておると、こういう御指摘でございますので、今所得税減税するための財源として間接税を選ぶとか、そういうことをあらかじめ念頭に置いて税制調査会での御議論をいただくという考え方はございません。増とか減とかではなく、あくまでもいわゆるゆがみの生じたという指摘をされておる税制そのものを抜本的に御検討をいただく、こういう立場にあるわけであります。
○柄谷道一君 昨年十二月二十九日、読売経済部長とのインタビュー記事が新聞に報道されておりました。それを推読いたしますと、六十年度予算が成立後税調に対して抜本検討の諮問を行う、その答申を待って六十二年度から所得税等直接税の減税、福祉目的税の創設、この二つを緩和剤として間接税の増税を行う意図があるのではないかと読み取れるのでございますが、大蔵大臣のお考えはいかがでございますか。
○国務大臣(竹下登君) 五十九年の十二月三十日付、二十九日でございましたか、予算編成作業が終わりました後、このインタビューがございました。その際、私も今から反省してみますと、まあぎりぎりの調和点を求めた予算編成作業が終わったので、もうこれ以上絞っても一滴も出ないような印象を私自身も持っておったかの反省をしております。それから一夜たって、そういう考え方ではまた六十一年度等々を考えたときに大変だぞよと自分の心にまた言い聞かせたわけでありますが、そんな環境の中でございまして、私は、今柄谷さんいみじくもおっしゃっていただきましたように、読み取れるという御評価でございますので、断定したわけではございませんが、そのような窮屈な予算編成の中で今柄谷さんがおっしゃったような意見を述べるお方がたくさんあったという感じは私も否定をいたしておりません。ただ、私がそのような意見を持ち、そのように読み取られるような発言をしたとすればやっぱりこれは慎重を欠いたのじゃないかな、いわばこれから税調で御審議いただくのに対してある種の予見と予断を与えるという非礼を犯したことになりはしないかなと、こういう反省をも含めながら、柄谷さんからの質問通告に対するお答えを考えて今お答えしたわけであります。
○柄谷道一君 じゃ、端的に伺いますが、直間比率の見直しと租税負担率の関係について大臣はどうお考えでございますか。
○国務大臣(竹下登君) これはやり方でございますけれども、いずれにしましても、直接税というものは、これは従来からの経験に資しましても、間接税に比べてより弾性値が高いということであります。したがって、総体的に言えば、租税負担率というのは、これは従量税、従価税それぞれの間接税の場合の取り方の難しさはございますが、総じて言えば、直接税にウエートが余計かかった場合が租税負担率はより自然増収等で上がっていくということになるというふうに理解をしております。
○柄谷道一君 大臣にさらにお伺いいたしますが、大臣は、本会議演説及びその代表質問に対する答弁を私なりに聞いておりますと、税調の答申を述べられ、かつそれを直接、臨調が言う、長期的に見れば今後高齢化社会の進展等により租税負担と社会保障負担とを合わせた全体としての国民負担率は現状の三五%程度から上昇せざるを得ない、しかしヨーロッパに比べて低く抑えなさい、これとを直接結びつけてお考えのような印象を受けるわけでございます。しかし、忘れてならないことは、五十八年三月の臨調最終答申では、財政再建すなわち赤字国債体質脱却までの時期は増税なき財政再建である、その増税なき財政再建とは「全体としての租税負担率の上昇をもたらすような税制上の新たな措置を基本的にはとらない、ということを意味している。」、こう言っておるわけですね。だから、六十五年までの負担率に対する基本的考え方、そして財政再建というものをなし遂げ、ないしはその見通しをつけ、あと長期的な高齢化社会への進展等を展望しての税制のあり方、負担率のあり方、これを混同するということは、冒頭大蔵大臣が臨調答申を基本的に最大限尊重するという、この基本姿勢というものに忠実ではないと私は思うのでございます。大臣いかがでございますか。
○国務大臣(竹下登君) 確かに時代というものは刻々と推移してまいりますので、臨調答申の出てきたのと、税に関しては一番近い機会に出てきたものといえば六十年度税制に対する答申であろうと、こう思いますが、それを両方結びつけますと、今柄谷さんのおっしゃった論理は私も組み立てられない論理じゃないと思っております。しかし、特別委員会でございましたか、本院などで臨調関係者として瀬島委員がお見えになってお答えなすっておる不公平税制とか、あるいはでこぼこ調整とかいうような中で考えてみますと、私は、出てきた時代は違いますが、それを連携づける理論的根拠もまた存在するなと、こういう事実認識を今いたしております。その事実認識ありませんと、柄谷さんのおっしゃるとおりでございますと言ったら、私の手足も縛ることになりますので、これも御質問を読んで整理して答弁をただいましておると、こういうことであります。
○柄谷道一君 総理にお伺いいたしますが、総理は臨調答申尊重、行革推進は中曽根内閣の生命線であるとも言っておられるわけですね。その臨調は、財政再建までは租税負担率の上昇をもたらすような新たな措置はとらないように、こう言っておるわけですね。総理はこれをただ理念として受けとめられているんですか。これを断断固として守るという決意をお持ちなんですか、お伺いいたします。
○国務大臣(中曽根康弘君) たしか臨調答申では、そこのところは、当面の財政再建のために国民所得に対する租税負担率の上昇をもたらすような新たな措置は基本的にはとらないと、そういう文章であったと思います。この方針に従って予算編成あるいは財政計画というものを進めてまいりたいと念願いたしております。
○柄谷道一君 次に、要調整額の処理問題についてお伺いしようと思っておりましたが、時間の関係もございますので、後の機会に譲りたいと思います。
 続いて行政改革について若干御質問いたします。私は、公益法人制度の改革、国鉄再建の問題について質問通告をいたしておりましたが、時間もございませんので別の機会に譲りますが、ただ、運輸大臣に一点お伺いしたいのは、本年一月三十一日、大阪地裁は、単独のタクシー運賃の値上げ申請を認めないのは道路運送法にも違反し、独禁法違反の疑いがあるとの判決を下しました。これは運輸行政の根幹にかかわる判決であると思いますが、運輸大臣の受けとめ方、そして控訴されるのかどうか、この二点をお伺いいたします。
○国務大臣(山下徳夫君) 率直に申し上げて、全く予想外の判決でございまして、はなはだ遺憾だと存じております。
 今回の判決は、いわゆる同一地域における同一運賃という従来からずっととっております一つの原則を認めないということでございますから、今後の運輸行政に対しては非常に大きなこれは問題だと私は理解をいたしております。なお、控訴するかどうかということにつきましては、控訴するかどうかということを含めて、今後の処置について担当の省でございます法務省とじっくりと協議をして決定をいたしたいと思っております。
○委員長(長田裕二君) 伊藤郁男君の関連質疑を許します。伊藤君。
○伊藤郁男君 関連して運輸大臣にお伺いをいたしますが、同一地域同一運賃制というのは、どの法律のどの条項によって行われている行政指導であるのか、第一点です。
○政府委員(服部経治君) お答え申し上げます。
 御承知のように、各種の自動車運送事業ございますが、その運賃の決定に当たりましては、道路運送法の第八条という根拠規定がございまして、この道路運送法八条の規定に基づきまして、その運用といたしまして、私どもは同一地域同一運賃の考え方が最もタクシー事業の実態に即したものということで考えておるところでございます。
○伊藤郁男君 重ねてお伺いいたしますが、今度の判決は運輸省当局の長い間の慣行行政、そして自由裁量に任せられてまいりました同一地域同一運賃制が独禁法に違反する疑いがある、こういう重大な判決でありますが、運輸省はこの同一地域同一運賃制が最も適切なものと考えておられるのかどうか。
○政府委員(服部経治君) お答えいたします。
 タクシー事業というものの非常な特異な事業実態というものを前提にして考えますとき、私どもはこのタクシー事業の健全な発展と申しますか、利用者が要求するような安定的な良質なタクシーサービスというものを提供していくためには、私どもは同一地域同一運賃の原則を維持していくことが最も望ましいというふうに現在も考えております。
○伊藤郁男君 それだけの理由、根拠だけでは納得はできませんけれども、重ねてお伺いいたしますが、この道路運送法第八条に規定されております運賃決定の原則は原価主義と、こういうことになっておるわけでありますが、その場合の原価主義というのは個別原価主義なのか、ブロック別の平均原価主義なのか、どちらなのかお伺いをいたします。
○政府委員(服部経治君) 先生も特に御承知のことと存じますけれども、道路運送法第八条第二項には、運賃認可の基準といたしまして「能率的な経営の下における適正な原価を償い、且つ、適正な利潤を含むものであること。」というふうに規定しておるところでございます。
 ところで、この今申し上げました道路運送法第八条第二項の規定と申しますのは、バスあるいはタクシーあるいはトラックといったような各種の自動車運送事業のそのいずれにも適用される条文でございまして、その具体的な適用に当たりましては、私どもとしては、タクシー運賃の決定に当たりましてはタクシー事業というものの実態を、また乗り合いバスの運賃決定に際しましては乗り合いバス事業というものの実態をそれぞれ踏まえまして、それに即しました原価算定の方式というものが考慮されることが最も望ましいというふうに考えているところでございまして、したがいまして、その意味におきまして、道路運送法第八条というのは、その適用の対象となる事業の実態に応じまして個別原価主義及び平均原価主義のいずれをも容認した規定であるというふうに考えておるところでございます。
 なお、現実には乗り合いバス事業につきましては個別原価主義をとり、それからタクシー事業の運賃決定に際しては平均原価主義の算定方式をとっているということでございます。
○伊藤郁男君 その平均原価主義による同一地域同一運賃制度は独禁法に抵触しないのか、するのか、どう考えておられるのか。
○政府委員(服部経治君) お答え申し上げます。
 独占禁止法の適用の問題につきましては、公式には、最終的には公正取引委員会の方のお考えに従うべきと思っておりますけれども、私どもといたしましては、このタクシー運賃の認可という行為は行政行為でございまして、したがいまして、事業者の行為を規制しております独占禁止法の適用の対象にはそもそもならないものだというふうに理解しておるところでございます。
○伊藤郁男君 この際、関連をいたしまして公取にお伺いをいたしますが、公取は個別申請方式を業界に要求しておられるわけでありますが、業界もそれに従って申請をやっているわけですが、それは複数運賃制になることが望ましいと考えられてそうやっておるのか、第一点お伺いいたします。
○政府委員(高橋元君) 従来タクシー運賃の認可申請に当たりまして、五十一年以前には一括代理申請、事業者団体による一括代理申請ということが行われておったようでございます。
 ところで、五十一年の暮れでございましたか、北海道ブロックのタクシー運賃の変更認可申請に際しまして、この一括代理申請方式というものが独禁法でいいます一定の取引分野における競争の実質的制限、または事業者団体による構成事業者の機能、活動の制限に当たるのではないか、独禁法の法上で申しますと三条または八条一項の一号もしくは四号、これに抵触するおそれがあるのではないかという疑問が起こりまして、その点につきまして運輸省と調整を行ったわけであります。運輸省は、五十二年の六月に個別申請を基本とすることを関係者に周知なさったというふうに承知しておりますし、五十七年にも再度その旨を通達しておられるというふうに承知しております。
 以上が経緯でありますけれども、個別申請方式が望ましい、そうあるべきだということにつきましては、運輸省も同様の立場におられるというふうに承知しておりますが、それは事業者としての、または事業者団体としての個別のタクシー事業者またはタクシー協会と申すのですか、そういうタクシー団体が申請すべき運賃の額を決定し、これに従わない限り同調することを要請するという行為をすることによって、独禁法に違反するおそれがあるとしてとったものでございます。
 公正で自由な競争によって個々の事業者の創意工夫の発揮、自主的な運賃の認可申請を行うということが独禁法の趣旨でありますから、認可申請については独禁法の運用の厳正を期してまいったわけでありますが、認可申請があった場合に、どのような方針のもとにどのような認可を行うかということは、先ほど運輸省からも御答弁がありましたように、道路運送法八条二項各号の基準をどのように使って、裁量して認可なされるかという、法の運用の問題でありまして、運輸省の所管に属することだというふうに承知しております。公取委員会が独禁法に基づき、これまでとってまいりましたいろいろな措置がございますけれども、同一地域同一運賃に基づく認可というような行政行為をどうこうというようなことを含む趣旨ではなかったわけであります。
 御質問の、個別申請方式の結果、同一地域において複数の運賃になるかどうかということでありますけれども、それは運輸省の認可の方針に係る問題でありまして、これが望ましいかどうかということを申し上げる立場ではないというふうに存じます。
○伊藤郁男君 運輸省にも聞きましたけれども、同じことをお伺いをいたしますが、道路運送法で言う原価主義運賃というのは個別原価主義なのか、あるいはブロック別の平均原価主義のそのどちらが独禁法の要求するものなのか、御見解をお伺いいたします。
○政府委員(高橋元君) 公正取引委員会が運賃の認可の申請のやり方についていろいろ今まで問題にしてまいったわけでありますが、申請のありました運賃についていかなる認可を行うかということにつきましては、道路運送法に基づく運輸省の行政の問題というふうに承知していることはただいまお答えしたとおりであります。適正原価、適正利潤ということが道路運送法の第八条二項の一号に掲げられておるわけでありますけれども、それをどのように運用されるかということについては、繰り返しになりますが運輸省の御判断ということになると思います。
○伊藤郁男君 それは結果的には複数運賃制でもよし、同一地域同一運賃制でもよし、こういうことでございますか。
○政府委員(高橋元君) 事業者団体が運賃を決定するということは、これはできないわけでございますから、その運賃の決定、認可は運輸大臣の行為でありますから、これについて独禁法の規制は及ばないことは先ほど運輸省からもお答えのあったとおりであります。
○伊藤郁男君 具体的にお伺いいたしますが、同一地域のタクシーに複数の運賃、極論すれば各企業ごとに百でも二百でも、三百でも千でも、何千の運賃があってもいいと考えておるのか、その点お伺いをいたします。
○政府委員(高橋元君) 競争政策ということだけ取り上げて申しますと、同一地域同一運賃それ自体につきましては、主務官庁たる運輸行政の問題でございますけれども、一般論で申しますれば、可能な限り事業者の創意工夫が発揮されることがいいわけでありますけれども、競争政策以外に各般の政策的な重要性を考慮して運賃の認可をなさるわけでありますから、その場合にどのような運賃水準が何個設定されるかということにつきましては運輸省の御判断であるというふうに考えます。
○伊藤郁男君 最後に一点。同一地域同一運賃は行政指導だから問題なのか、それとも法文上に明記されておれば独禁法に抵触しないのか、どのようにお考えですか。
○政府委員(高橋元君) 独禁法上問題にしてまいりましたのは、事業者団体の一括代理申請または申請に当たって、申請に応じない業者に対する不当な取り扱いということでございます。同一地域同一運賃の原則は運賃の認可方針、つまり行政方針であって、これは行政指導ではないというふうに承知しております。したがって、行政指導だから問題ありとか、法定の原則だから問題ないということとは別個の問題であるというふうに思います。
○柄谷道一君 問題を次に移します。
 総務庁長官にお伺いいたしますが、私は、昨年十二月二十日の内閣委員会で、政府が昨年十月三十一日閣議決定をした、それを守るためには給与改善費の計上について、単に大蔵省ベースで一%ということにするのではなく、長官と大蔵大臣が真剣に合い議して、閣議決定というものが実行できる担保を予算上明確にすべきではないかと提言いたしました。そのとき長官は、予算計上にはそれなりの努力をしなければならないと思っている、こうお答えになりました。ところが、全然変化がないわけです。どういう努力をされたんですか。
○国務大臣(後藤田正晴君) あのとき柄谷さんの御質問に対して、今おっしゃるような私お答えをしたわけでございますが、早速大蔵大臣と、きょうの内閣委員会でこういう議論があった、これは一つの御議論だと思う。したがって、財政が許すならばやはりそのとおりにやってもらえぬかと、つまり一・四%でしたか、そういうことは申し上たわけでございます。しかし、その後の折衝の過程で、私自身が従来どおりのやり方でやむを得ないという回答をして、本年度も一%の計上にとどめた。といいますのは、一・四%であろうと一%であろうと、要は人事院勧告のそれが目安になるわけではないわけです。一つの給与改善に対する財政上の措置として、従来五%なり二・五なり二なり一と、こう上げてきておるわけで、人事院勧告があればその段階で決定するわけでございますから、別段それに拘束はせられないということでございますので、厳しい財政事情も考えまして、それならいたし方あるまいと、こういうことで同意をしたわけでございます。
○柄谷道一君 六十年度は一%しか計上していない。六十一年度も財政見通しは極めて厳しい。
 総理にお伺いいたしますが、こういう現状のもとで、昨年十月の閣議決定は財源措置を講じ、守り抜かれますか。
○国務大臣(中曽根康弘君) 六十五年度赤字公債依存体質脱却、それから増税なき財政再建の理念を貫いていく、こういう努力を今後も続けてまいるつもりでおります。
○柄谷道一君 ちょっと焦点が違うんですよ。遅くとも六十一年度までには人事院勧告との穴を完全に埋める、これが閣議決定でしょう。これを守られるのですかということです。
○国務大臣(中曽根康弘君) これは総務庁長官が申し上げたとおりであります。
○柄谷道一君 総務庁長官は言ってませんよ。
○国務大臣(後藤田正晴君) 五十九年度の人事院勧告を決定する際に、いろんな影響等も幅広く考えまして、やはり、いわゆる積み残しというものがある、それをことしは一・四%程度でしたか、積み残しの解消を図ったわけですが、六十年度も完全実施に向けてもちろん最大限の努力はしますけれども、万々一客観情勢がこれを許さないという場合であっても、五十九年を含めて六十一年には人事院勧告の完全実施、つまり三年を目途にして解消する、こういう方針でございますから、それは間違いなしに政府としてはやるつもりでございます。
○柄谷道一君 大蔵大臣も、その場合は閣議決定に沿って財源を捻出されますね。
○国務大臣(竹下登君) やっぱり仮定の事実ではお答えにくいことではなかろうか、まずは完全実施に対して最大限の努力をするというのが建前でございます。したがって、官房長官談話で発表されたものを今正確に総務庁長官からお話がありましたが、総務庁長官がお話しなさった考え方は十分私どもも理解する立場に立っていなければならぬというふうには考えております。
○柄谷道一君 総理にお伺いいたしますが、単身赴任者に対する課税の減免について、私は昨年四月十日、本院の予算委員会で総理に質問をいたしました。私はいろいろの事例を挙げながら質問をしたところ、総理は、単身赴任者の問題を質問していただき、大いに考えさせられる課題を与えられた気がする、夕べのひとときを家族で団らんしたいと思うのは当然で、ぜひともそのような時間を月に一回や二回は持てるようにしたい、そういう面において、新しい社会問題として真剣に検討さしていただきたい、非常に前向きの答弁をされまして、単身赴任者に光を与えられたわけでございます。しかしその後、一年を経過して何ら前進をしておりませんが、改めて総理の御所見を伺います。
○国務大臣(中曽根康弘君) 柄谷さんの御質問に対する答弁、あなたの御質問それからこちらの答弁というものは、大蔵大臣を通じまして税調の方へそのまま申し渡しまして、ぜひ真剣に検討してほしい、そういうことをお願いをいたしました。
 税調の方では、それらを対象にいたしまして鋭意検討を進めたところでございますが、税調の考え方の御返事は、今までのほかのバランス等も考えてなじみにくいと、そういう返事でございました。いろいろ扶養手当であるとか、僻地手当であるとか、みんなこれは課税対象になっておる、所得税の対象になる、あるいは勤労の一つ一つというものを抜き出して、そしてそれだけを優遇するというやり方は、今までの租税のあり方について非常に大きな例外をつくるものであってなじみにくい、大体そういうような返事があったのでございます。
○柄谷道一君 労働大臣に伺いますが、労働省は大蔵省に対して国税八十億、地方税四十六億、合わせて百二十六億円の単身赴任関係減税を要求したが入れられなかったと、こう聞いておりますが、大臣はどういう決意を持ってこの実現に努力されるわけですか。
○国務大臣(山口敏夫君) 単身赴任者の家庭におけるいろいろな問題等考えますと、本来ならば家族ぐるみの赴任というのが一番理想でございますけれども、子供さんの教育の問題とか、あるいは御家族の中における老人の扶養の問題とかで、どうしても単身赴任にならざるを得ない。そういう二重生活の中で一人当たり十万円近い負担増がある、それをボーナスや預金から引き落としながら経済的に家計を賄っている、こういう状況でございますので、せめて単身赴任減税をひとつ実施すべきではないかということで、六十年度予算でも大蔵省と折衝したわけでございますが、いろいろ税体系上の問題でございますとか、また単身赴任を定着化してしまう側面もあるのではないか、いろいろ議論がまだ煮詰まっておりませんので、継続ということで今回は一応了承した、こういう段階でございます。
○柄谷道一君 大蔵大臣に伺いますが、これは与野党の今後の六十年度予算修正折衝の一つの大きな焦点になると思います。虚心坦懐、与野党語り合いまして、この協議に応ずる用意ありや否や、お伺いします。
○国務大臣(竹下登君) これは委員会の段階か、党対党の段階か、いずれにしてもいわばハウスのことでございますので、行政府として受け入れるとか受け入れないとかということは、私自身は申し上げる立場にはないという節度を重んずるべきだと思っております。
 それで、総理から詳しくお答えございましたが、今の議論、昨年の国会の議論を踏まえて税制調査会にまさに正確にこれは報告をいたしました、真剣にまた御検討をいただきましたが、税制調査会は、さまざまな国民の生活態様の中から特定の条件やら特定の家計支出を抜き出し税制上しんしゃくするには限界がある、そしてまた、その基準を決めることは困難である、新規の特別控除等を創設することは適当でないと、こういう答申になったわけであります。確かに単身赴任手当といえども、扶養手当、僻地手当、勤務手当等と同様、給与の一部でありますので、これらが給与の一部と認められておる限りにおいて、税制上それだけを特別な取り扱いとすることは、これは確かに難しいという議論と、それから手当の支給のない企業の従業員、またいわゆる出稼ぎ労働者等とのバランス、この問題等がございましたので、政府といたしましてはただいま御要望を認めることは困難である。基本的には、これは労働大臣がお答えすべきかもしれませんが、労使間で対応さるべきいわゆる雇用問題、あるいは労使関係の問題というふうに理解すべきではないか。
 事実、私どももこの議論はあれだけありましただけに報告も詳しくいたしましたが、いわゆる手当を見てみますと、本当に小笠原手当でございますとか、公務員だけで十一、その他給与の一部として認められておる手当が三十八ございます。それは、代表的なものとして北海道等へ赴任した場合の寒冷地手当の問題でございますとか、あるいはよく言われます人間性回復手当といいますか、海員学校等実習授業手当とか、いろんな手当がございますが、税体系上、これはやっぱり国会で、ハウスで御議論いただくことはあり得ますが、昨年のパートの問題は一応の基準の上の上乗せの合理性、ことしの場合はそういう基準がないままの対応ということになりますと、私どもも議論の中にいろいろ資料を提出したり、そういう労をいといませんものの、結論を出すということについては非常に税体系上は難しい問題があるなという印象を私個人としては受けておるところであります。
○柄谷道一君 この問題については私は今大蔵大臣の所見と意を異にするものでございますが、改めての機会にこの問題は取り上げてまいりたい。
 そこで、私は中小企業の事業承継税制について事例を挙げながら問題指摘をしたいと思っておりましたが、時間がございません。そこで、通産大臣の基本的認識だけをお伺いしておきます。
 昭和五十八年の四月に大蔵省は相続税財産評価に関する基本通達を出されまして若干の改善がされたことは認めますけれども、私は、この通達改正はその基本を相続税すなわち財産の相続という点に置きまして、事業の承継という視点から眺めるならば、これは多くの問題を抱えておる、こう認識するものでございます。通産大臣の御所見はいかがでございましょう。
○国務大臣(村田敬次郎君) 柄谷委員にお答え申し上げます。
 今御指摘になりましたように、昭和五十八年の税制改正におきまして、中小企業の承継税制についての例えば現行の同族会社の株式評価方法について、企業の有する個々の事業用資産を時価で評価する純資産価額の方式と、それから上場類似業種の株価を重要な評価要素として、評価に当たってはさらに類似業種の配当金額、利益金額、純資産価額等を加味して評価会社の比準価額を求める類似業種比準方式と、この二方式についての税制改正を評価について行ったところでございます。これによって、委員御指摘のとおり相当の前進が認められるわけでございますが、しかし根本的に、今、委員が御指摘になられましたような中小企業の相続、そしてまた会社の存続のための評価方式というものは大問題でございまして、これはもちろん大蔵省の税関係、大蔵大臣とよく御相談を申し上げなければなりませんが、通産大臣といたしましては、中小企業振興そして国民生活の向上という原点に立ってこの問題はなお引き続いて真剣に検討をしていきたい、こういうふうに考えております。
○柄谷道一君 私は時間がありますならば具体的事例を挙げまして、現行制度では中小企業の事業承継は困難である、このことを指摘する予定でございましたが、これは改めての機会にこの問題は徹底的に深く掘り下げて議論をいたしたいと思います。
 次に、経済企画庁長官にお伺いいたしますが、六十年度経済見通しにおいて四・六%の実質成長を見込んでおられるわけでございますが、私は、最近のアメリカの金利の高どまり、円安ドル高、個人消費の動向、公共投資の動向等の要因を考えると、政府の四・六%実質成長の達成は、現在の政策運営を前提とする限り、そのパーセンテージを完全に達成することは困難である、こう考えますが、経企庁長官の御所見はいかがでございますか。
○国務大臣(金子一平君) 最近のアメリカ経済の動きにつきましては柄谷委員の御指摘のとおりでございまするけれども、むしろ、どっちかといえばアメリカ経済の強さを端的にあらわしていると私どもは考えておるわけでございまして、一時、昨年の中ごろにはスローダウンの率が大き過ぎるのじゃないかというような心配をしたこともあったのでございますが、この分ならばアメリカ経済も六十年度におきましては軟着陸できるのではなかろうかと考えているような状況でございます。
 そういったことを前提にいたしまして六十年度の経済成長率を実質四・六%と見ておるわけでございますが、去年のような、去年というか五十九年度のような輸出の伸びは、これは望めないにいたしましても、最近における個人消費は引き続いて所得が順調に増加し、景気の拡大が続くことによりまして明るさが増してまいっておりますし、また住宅も着実に伸びております。伸びは緩やかでございますが着実に伸びておりますし、設備投資も、輸出の伸びの鈍化である程度影響を受けていることは事実でございまするけれども、次々と開花しつつある革新的な技術に関連する豊富な投資機会を利用してどんどん活発な動きを見せておりますので、こういった点から考えますると、四・六%は確実に達成できるのではないかと私どもは見込んでおるような状況でございます。
○柄谷道一君 私は、今の経企庁長官の御答弁は経済審議会が昨年十二月に行いました五十九年度リボルビング報告をもとにして、極めて楽観的な面があるのではないか、こう思うのでございます。しかし、その議論はさておいて、確認いたしたいことは、実質四・六%の成長率達成は当初見込み、これを実現したいという願望、後は成り行き任せであるのか、それともあらゆる政策を動員して機動的に対処し、例えば補正予算の編成を含め、その完全実現のために全力を尽くすという決意を込めての数字であるのか、この点を明らかにしていただきたい。
○国務大臣(金子一平君) 単なる願望で、ほっておいてもそのまま達成できると私どもは考えていないのでございまして、御承知のとおり経済見通しと同時に経済運営の基本方針を発表いたしております。例えて申しますると、内需喚起に大いに努めるとか、あるいはそのために必要な環境整備をしっかりやるとか、物価の安定だけはぜひ守りたいとか、五つばかりの基本的な政策目標を掲げております。そういった政策につきまして最大限の努力をして達成できるものと考えておる次第でございます。
○柄谷道一君 総理にお伺いいたしますが、この達成が困難であるという情勢が生じた場合、機動的経済運営を行う、例えば補正予算の編成等も含めこの達成について決意を持って臨みたいと、こういうお考えと受けとめてよろしゅうございますか。
○国務大臣(中曽根康弘君) 達成を期しておる政策努力目標であると思います。これを達成するためにはできるだけの政策を総合的に機動的に実行していきたいと思いますが、補正予算云々ということは、今予算を御審議願っておる最中でもありますし、また年度経過の経済状態、あるいは補正予算を編成するに必要な災害とかその他の問題が出てくるかどうか、そういうような問題とも関連いたしますので、今ここで明言する限りではございません。
○柄谷道一君 多くの質問を残しておりますが、時間が参りました。別の機会に質問したいと思います。
 これで質問を終わります。(拍手)
○委員長(長田裕二君) 以上で柄谷君の質疑は終了いたしました。
    ─────────────
○委員長(長田裕二君) 次に、青木茂君の質疑を行います。青木君。
○青木茂君 総理にお伺いいたします。
 昨年の年末以来、総理は税制改正の基本的な視点として、公平、公正、簡素、選択ですか、そういうことを再三おっしゃっていらっしゃるわけですけれども、総理がそうおっしゃる以上、総理の頭の中に今までの日本の税制が不公平であり、不公正であり、複雑であり、押しつけであるというような何かイメージされたものがあるからそういうふうにおっしゃったと思いますけれども、あれをおっしゃったときの総理の頭の中にあった日本税制のゆがみというものは一体何だったでしょうか。
○国務大臣(中曽根康弘君) シャウプ税制が行われましてから約三十五年の間、いろいろな付加的な税制が加えられたり、あるいは社会経済の変化がありましたり、そういう面でひずみとかゆがみとかというものが生じていると自分は一般的に感じております。そういう意味であれを申し上げたのでございます。例えば、じゃどこかと言われれば、所得分配における税の機能というものが果たして正しく行われているであろうかどうか、あるいは税の捕捉という問題もありはしないかとか、例えば端的な例を言えば、最近はしょうちゅうがうんと売れてお酒が売れなくなったと、そういうような大きな変化もあります。そういうようなさまざまな変化が起きていることを頭に置いて考えて発言したことであります。
○青木茂君 それは大変よくわかるわけなんですけれども、はっきりと四つを挙げられたわけです。ですから、四つを挙げられた以上、その一つ一つについて何か総理の頭の中にイメージされるものがあるかということを伺いたかったわけなんです。
 では、もう一つ申し上げますけれども、総理が昨年の年末に初めてああいうことをおっしゃいました一月前に、アメリカの財務長官がアメリカの大統領にあてて出しました改正意見書の前文のところに全く同じ四つの項目が並んでおるわけなんですよ。そういたしますと、私は何か総理の頭の中に今回のアメリカ税制の改正の内容がイメージされておったのじゃないか、ああいう方向に持っていこうというお気持ちがあったのじゃないかというように憶測をしたわけなんですけれども、それは全然関係ございませんか。
○国務大臣(中曽根康弘君) リーガン財務長官の提言の中に今の四つの原則があるということは、今初めてお聞きしました。偶然の符合であります。しかし、リーガン提言というものの税の内容は大体勉強して知っておりました。そして、ああいうフラット税制といいますか、あのでこぼこ調節のやり方というのは相当な見識だなと、日本の税体系を検討する場合にも一つの有力な参考資料になると、そう思って考えておったところであります。
○青木茂君 あの内容は、フラット税制、それからいわゆる人的控除を二倍にしてしまう、そして各種の特別優遇措置を廃止してしまえという意味においては非常に私は前進だと思います、あの提言は。日本におきましてもそういう方向でお考えをいただきたいというふうに思います。とにかく総理がああいうふうに四つをお挙げになったのだから、これからはいやしくもあの四つに相反するようなことは個別の政策においてやるべきではないと思うわけなんです。
 それで、私、大変不満なのは、また昨日の大蔵委員会の蒸し返しなんですけれども、俗称転作奨励金ですね、あれを一時所得にするというのを、反対が私だけで、可決はされたのですけれども、税の理論から言えばめちゃくちゃだと思います。それに対する大蔵当局の御見解をもう一度伺いたいと思います。
○政府委員(梅澤節男君) 水田再編奨励補助金のことを御指摘かと思いますけれども、税の固有の考え方といたしましては、所得の種類としては事業所得として課税されるべきものである、議員立法で一時所得と取り扱いをされるというのは非常に異例の措置であるというふうに考えております。
○青木茂君 一番理論的でなければならない税に異例の措置ということが行われたのですから、大蔵省は、なぜ断固自分の意見を、大蔵当局の意見を出さなかったんですか。
○政府委員(梅澤節男君) 五十九年分につきましても、過日の衆議院の大蔵委員会で、大蔵大臣から内閣意見として、政府としてこの提案についてはあえて反対しないと、これは例年そういう意見の表明をしておるところでございます。これは、国の農業政策と申しますか、極めて異例の政策的要請ということで、立法府の御意思として御決定になるということでございますので、毎年毎年その補助金の性格、その政策的重要性という観点から見まして、税制上の公平という観点をあえて犠牲にして、政策的要請として政府としてやむを得ないという態度をとっておるわけでございます。
○青木茂君 それから、大蔵当局としてはあえて反対しないのあえてなんですけれども、必ずしも賛成ではないと、こういう意味ですね、あえてというのは。
○政府委員(梅澤節男君) 立法府の政策的な要請からの御意思でございますので、あえて反対しないということでございます。
○青木茂君 それでは、関連して申し上げますけれども、もし立法府がほかのことでめちゃくちゃに一時所得――一時所得というのは実質免税ですから、あれが一時所得であるとするならば、例えばサラリーマンのレイオフ、景気が悪くて一時自宅で待機しろと、それで若干手当をもらう、それは必ずしも継続的なものとも言えないし、労働の対価とも言えないですね。あれの方がむしろ理論的には一時所得じゃないですか。
○政府委員(梅澤節男君) 一口にレイオフと言いましてもいろんな形態があるかと思いますけれども、通常私どもが認識しておる限りでは、やはりそれは雇用契約上の給与の一形態であると、一時性は持たないというふうに考えております。
○青木茂君 先ほど問題になりました単身赴任でも同様です。毎年毎年で転勤するわけじゃない、だから非継続的ですよ。必ずしも労働の対価とも言えない。あれだって一時所得じゃないですか。
○政府委員(梅澤節男君) 単身赴任手当というものは、これはいろいろ支給形態がございますけれども、今議論の俎上に上っておりますのは、当該勤務地におきます勤務の間、本給のほかに継続して支給される手当ということでございますから、これは一時所得の性格は持たないというふうに考えるべきだと思います。
○青木茂君 そこで申し上げます。転作奨励金というものは、今大蔵当局がおっしゃいましたように、どう考えても一時所得の性格は持たないけれども、あえて反対しない、レイオフであるとか単身赴任手当であるとかは絶対反対である、この理論的整合性というものを一体大蔵当局はどうお考えになるのか。
○政府委員(梅澤節男君) 水田再編奨励金の異例の措置についての政府の考え方については先ほど申し述べましたとおりでございます。あえてこれを異例と申しますのは、一つは農業政策という基本的な国の政策の要請があるということと、もう一つは、毎年毎年予算が成立いたしまして補助金が交付されるということが確定しました段階で、毎年毎年の時限措置として異例の措置が講じられているということでございます。
○青木茂君 転勤であるとか、単身赴任であるとかいう問題でも、必ずしも雇用政策の問題とだけ言えない面があるのじゃないか。例えば住宅問題、教育問題、老人扶養問題、そういう国の政策の不備による隘路があるから単身赴任たらざるを得ない。つまり国の政策に消極的な意味で協力しておるわけなんですよ。だから、これは雇用政策だけで押さえてしまうのは私はおかしいと思うわけなんですけれども、どうでしょうか。
○国務大臣(竹下登君) 今のような議論も正確に伝えて、税調で検討してもらいました。さればその雇用政策の面でどういうことが行われておるかといいますと、総括した単身赴任手当のところもございます。
   〔委員長退席、理事梶木又三君着席〕
あるいは月に一回、それぞれの企業の相違はございますが、帰宅旅費というようなものが支給されておるところもある。いろんな雇用政策上もこの形態がまちまちです。したがって、やっぱりこれは手当という概念の中で位置づけるべきものじゃないか。そこから抜き出すということについては大変に難しい問題だ。
 いま一つは、やっぱりそれの全くない企業ないしは出稼ぎ労務者の方々等とのバランスというものを考え、議論をされた上で、再三申し上げておるような税調の答申をいただいた。国会の議論が議論であるだけに、総理からのお答えもあり、かなり税調、専門家の議論でも長い時間をかけて議論していただいた結果であるというふうに御理解をいただきたいと思うわけであります。
 それから、国会の意思というもののもとにあえて反対しない、これはそういう例年の閣議で決めます太政官以来の決まり文句というのはございますけれども、そういうお答えをいたしておりますが、また国会の意思というのは、国権の最高機関ですから、俗称めちゃくちゃな意思が出ようはずはない、これがまた我々の国会に対する姿勢ではないかというふうに考えます。
○青木茂君 ひとつ伺いますけれども、いわゆる農業所得の年間所得税納税額合計、これはアバウトで結構です、どれぐらいであって、農水産予算というものの年間アバウトの合計額はどれぐらいでございましょうか。
○政府委員(冨尾一郎君) 私どもの税務統計上の定義で農業所得者というふうに定義をしております。これは農業所得の金額が他の給与所得、不動産所得、譲渡所得などよりも多い方ということで考えておりますが、こういう方が二十七万人おられまして、その申告納税額は昭和五十八年分で二百三十八億円でございます。ただ、この方以外に、農業所得者というカテゴリーには入りませんが、農業所得のある方が六十二万人ほどございます。そして、先ほどの二十七万人の農業所得者と合わせまして農業所得のある方の申告総額というもので、そのうちの農業所得に係るものだけの合計が、先ほどのは税額でございますが、今度は所得金額でございますが、これが六千二百億円ほどございます。ただ、制度の上では給与所得、つまりどこかに勤務をされて、傍ら二反とか三反の田んぼだけを耕作されておられるという方につきましては、二十万以下の所得でございますとこれは申告の必要はございません。そういう形で、かなりの方がこのほかに、農業所得がありながら申告不要ということで、統計上にはあらわれてこない農業所得者もいらっしゃるというふうに私どもとしては全体像を考えております。
○青木茂君 農水省予算総額。
○政府委員(吉野良彦君) 便宜私からお答え申し上げます。
 農林水産関係予算の総額は、五十九年度におきましては三兆四千五百九十七億円、現在御審議をいただいております六十年度予算におきましては三兆三千八億円でございます。
○青木茂君 今の御答弁でわかりますように、納める税金はまずどう多く見積もっても三百億円程度、農水産予算が三兆円を超える。これ一対一〇〇です。つまり一に対して一〇〇のバックがあるという現実を考えたときに、所得の低い人はほとんど税金納めてないのだから、転作奨励金を出すのは僕はかなり豊かな農家だと思うんですよ。それを免税にするということは、大変私は税の基本的な理念から見ておかしいと思うわけなんです。
 そこで、総理にお伺いをしたいのですけれども、今お聞きになっておわかりのように、大蔵当局のお考え方というものは、極めておかしい、転作奨励金を一時所得にするということは消極的な反対である、これに対して、私が今例に出しましたレイオフであるとか、単身赴任の問題はかなり積極的な反対であると、これは不公平ではないか。つまりトーゴーサンピンの拡大ではないか。総理は公平ということが大切だとおっしゃっているわけですね。おっしゃっていた後にこういう不公平の拡大みたいな問題が出てきたということに対して、私は総理はリーダーシップを発揮していただきたいと思うわけなんですけれども、これどうでしょうか。
○国務大臣(中曽根康弘君) 転作奨励金というものについて国会の各党の政治家が、自分はもっとそこで稲をやりたい、しかし国策に従って、それはもう自分の願いを犠牲にしてほかの物をつくらせられる、そういうような一種の国策から来る犠牲的意味というふうな点も政治家が考慮して、そして特例をもってそういう措置をした、そういうものであると私考えます。国会のそういう意思でございますから、我々としてはそれを尊重してまいりたいと思っておるわけです。
○青木茂君 じゃ、自民党の総裁としての中曽根総理にお伺いしたいのですけれども、国会の意思というものも実質的には自民党の先生方が一致して推さなければ国会の意思にならないわけなんだから、自民党総裁として、御自分の政権の中でおっしゃっている公平概念が崩れるというものに対して余り賛成しないようにリーダーシップは発揮されたんですか、しないのですか。
○国務大臣(中曽根康弘君) 今のような、農業者が自分の不本意に転作をしなければならぬという立場を十分考えて、私もやむを得ざるものである、そういうふうに、自民党の議員の皆さんも全部そういうふうにお考えになっておりますから、そういうことにしておるわけであります。
○青木茂君 不本意であるという点におきましては、レイオフなんてもっと深刻ですよ。転作したって次に収入があるんだから、水田から非水田になったって収入があるんだから、不本意の度合いは低い。ところが、もうレイオフなんということになってくると、いつ職場へ戻ってこいと言われるかわからないんだから。そうなると、僕は不本意という点においてはレイオフの方が強いと思いますね。だからそういう意味において転作奨励金が一時所得でもいいのだから、公平という意味においてレイオフの問題だとか、単身赴任の問題も前向きに御検討願えないかと、こういうことです。
○国務大臣(中曽根康弘君) 言わんと欲する、言われるところはよく理解できますが、ともかく税の問題につきまして今の四つの原則を中心にして根本的な改革をやろうと、そして、それは増税のためではないし、増収のためでもない。それよりもむしろ減税を考えてやりたい、そういう念願で取り組みたいと思っておりますので、そういうときにいろいろ検討していただきたいと思います。
○理事(梶木又三君) 青木君、時間が来ました。
○青木茂君 じゃ、しょうがない、やめましょう。
○理事(梶木又三君) 以上で青木君の質疑は終了いたしました。
    ─────────────
○理事(梶木又三君) 次に、野末陳平君の質疑を行います。野末君。
○野末陳平君 大蔵大臣にお聞きしますが、電電株の売却ですが、第一回はいつごろになりそうでしょうか。
○国務大臣(竹下登君) これは再三本院でも総理からもお答えがあっておりますように、慎重の上にも慎重を重ねて見きわめなければなりませんので、今の段階で全くいつごろという予測を申し上げるだけの自信もございませんし、検討もそこまでまだ進んでおりません。
○野末陳平君 この売却益を国債の償還に充てるのはいいんですが、国債整理基金の残高の方ですね、これは六十年、六十一年どうなっていきますか。六十一年度で繰り入れをストップしたということで答えてほしいと思います。
○政府委員(宮本保孝君) 繰り入れをストップした場合でございますが、六十年度末で九千九百億円ぐらいでございます。それから六十一年度末でございますとゼロ、なくなってしまうわけでございます。
○野末陳平君 マイナスはどのくらいですか。
○政府委員(宮本保孝君) 不足分は約六千億ぐらいになろうかと思います。
○野末陳平君 償還の財源はすでに底をついているわけですが、そこでこそこの売却で利益を上げて国家財政に寄与させなければいけないというのは、これは当然だと思うんですね。
 そこで、政府はこの売却による利益を向こう五年間でどのくらいに期待しているか、その点は大蔵大臣どうですか。
○国務大臣(竹下登君) まだ幾ら幾ら期待するというところまでもお答えする環境は熟しておりません。
   〔理事梶木又三君退席、委員長着席〕
○野末陳平君 売却の株価ですけれども、これはむしろ欲しい人が気にするところだと思うんですけれども、この一株五十円額面の株をどの程度で売りたいかというか、もちろんこれは何十倍ぐらいとか、これはもう期待値でいいんですから、大蔵大臣の個人的な感じはどうですか。
○国務大臣(竹下登君) これは個人的な感じと言われましても、個人的な感じも言えない段階ではなかろうかというふうに考えます。すべてを氏間有識者等の意見を聞きながら、今後十分慎重に検討すべき課題であるというのが今日野末委員にお答えする限界かなと、こんな感じでございます。
○野末陳平君 これはうまく処理すれば相当な金額になりますし、これはかなり期待しなければいけないと思うので、財政再建のプラスはもとよりのこと、極端に言えば増税だって回避できそうな額にはなるかもしれませんね。
 そこで、この売却の方法とか値段などはどこが決めるんですか。
○国務大臣(竹下登君) 株式売却の方法につきましては、それぞれ特色を十分考慮する必要がありますが、どういう方法でやるかということにつきましても、これから民間有識者等の意見を聞きながら十分慎重に検討したいというお答えが限界ではないかなと、このように考えます。
○野末陳平君 国有財産中央審議会がありますが、ここに諮問をするというようなおつもりですか、大蔵大臣。
○国務大臣(竹下登君) これは恐らく野末さんは、昭和四十四年の電源開発株式会社、それから日本航空株式会社の株式処分に際して、国有財産中央審議会に諮問をして、そこで小委員会における審議を得て答申をいただいて、それでやったという先例というものがあるということを御承知の上での御意見を含めた御質疑であろうと思いますが、それも大変先例として有力な先例でございますが、それも今決めたという状態にはございません。
○野末陳平君 そうしますと、国有財産中央審議会のほかに、この際電電の売却に当たって第三者のような機関をつくるというような含みもお答えの中に感じられましたけれども、有識者というのはそういう意味でしょうか。
○国務大臣(竹下登君) そこも決まっておるわけじゃございませんが、いわゆる国有財産中央審議会というものに諮問するその前に何か審議会をつくるという、第三者による機関をつくるという考え方を固めておるわけではございません。それこそ民間のいろんな方の意見をも聴取しながら、審議会に諮問する前にもう一つ勉強機関をつくるかどうかというようなことも含めてこれからの慎重な検討の課題であります。
○野末陳平君 今の段階で具体的にお答えをいただけるとは思っておりませんので、個人的な意見をいろいろと聞いていただいて今後検討してほしいと思っているわけですね。
 そこで、電電の株ですが、上場した後では人気化して相当な値がつくという予想はだれでもできると思うんですが、しかし、政府がこれを上場の前に売却するという時点で、この値決めというのは、人気度ではありませんので、恐らく売り買いによる人気に比べればかなり低目に値がつくということも考えられると思うんですよ。その辺のことを考えますと、せっかくの期待される財源が思ったほどのお金にならないなんて、こんな心配はないでしょうかね。
○国務大臣(竹下登君) そこのところがなかなか微妙な問題でございます。確かに、第一回の場合、その方法がいろいろ考えられるにしましても、値決めの問題は大変難しい問題です。人気度というようなものがその際はないわけでございますから、その値決めをどうするかということが問題であるし、そしてその値決めということになりますとまた量の問題が、およそ消化できる、我が国の経済社会の中で、資本市場の中で、株式市場の中で消化できるキャパシティーの問題もございますので、それらも含めてそれこそ相当な専門家に聞かないと、野末委員を含めかなりの専門家に聞かないとだめだなと、こう思っております。
○野末陳平君 これはやはり巷間どうしても国際電電との比較などを考えますので、今大臣のお答えのような値決めというのがどの程度というのは非常に難しい。
 そこで、総理、お聞きしたいんですが、総理ね、この株は欲しい人大勢いると思うんですね。だんだん話題が煮詰まってきますと、これは私も私もということになると思うんですが、上場後ならば欲しい人は相場で買えばいいわけですね。しかし、上場前の、それに先立つ政府売却の時点においては、これは必ずしも素人はどこで買っていいやらわかりませんし、また入手のチャンスも多分ないと思うんですが、総理、この株を欲しい人が入手できる公平なチャンスというのは果たしてつくれるでしょうかね。
○国務大臣(中曽根康弘君) ですから、大蔵大臣が慎重に公平に行われるようにいろいろこれから苦心して御期待に沿うようにやっていきたいと申しておるところでございます。
○野末陳平君 順次その売却の方法などを検討しながら、もう少し政府の考え方を聞いていきたいと思うんです。
 僕は、僕なりの結論を先に言ってしまいますと、いかに知恵を使ってもこれは一部の人の手にしか渡らないで、結果的に不公平が残ると思うので、公平なチャンスがなかなかないと思うんですね。
 そこで、僕の提案なんですが、思い切ってこの電電の株は財源づくりを第一に考えて、要するにたくさんの利益を上げるということをまず第一に考えて売却すべきではなかろうかと思うんですよ、公平にみんなにチャンスをと言ったってしょせんは限界があるから。そこで率直に言えば、言葉は悪いけれども政府はこの株でもうけなければいけないと思うんですね。そして、この株で利益を上げて、増税を考えるよりもここらに頭を使う方が、その方法を研究する方が国民には歓迎されるだろうと、そういうふうに思うんですが、総理、ちょっと露骨ですか、この考えは。
○国務大臣(中曽根康弘君) これは国債償還に使う、そういう方向に決めておるわけでございます。ですから、減税という面に直接には結びつかないと思うんです。
 ただ、国債償還財源がそれでできてくれば、一般会計から国債償還に今まで入れていたのが浮いてくるからその分多少余裕ができると、そういう間接的効果はあるいは出てくるかもしれません。それはそのときの情勢によると思います。
○野末陳平君 いや、僕は減税しろという話は全然しておりませんで、増税などを考えるよりも利益を上げることを考える方がいいと、間接的に効果が出てくると思いますよ、財政再建に。
 そこで大蔵大臣、売却の方法なんですけれども、過去の例を踏まえながら、まず入札の形式がありますね、この長所、短所。そして、これを電電株の売却に当てはめた場合どういう問題が起きそうか、その辺のことをお聞きしたいんですが。
○国務大臣(竹下登君) ですから、過去の株売却の例がございますので、それに対する長所、短所と、こういう角度からお答えをしてみます。
 まず、競争入札による場合は、処分の公正性が確保され、競争により適正な価格が形成されるという利点があります反面に、一時に大量処分をする場合には処分の量いかんによっては市場のキャパシティーを超えて大変大幅な価格の変動という問題がございます。
 それから、証券会社を通じまして売り出す場合は、広く一般投資家を対象とすることが容易であって相当量の処分も可能であります反面、証券会社を通じて売却する値決め、これをどうするか、これは先ほどからの議論の問題がございます。
 それから、縁故募集につきましては、国が売却する価額をどのように決定するかといういわゆる値決めの問題に加えまして、特定の者を売却相手方とするための十分な合理的な理由があるかどうか。その事例としますと、例えば電源開発株式会社の場合、随契はいわゆる九電力会社でございますので、これはもともとが政府と九電力との出資でできておったわけでございますから、ある種の合理性があったと思うわけでありますが、そのような合理性というのはなかなか現実問題としては難しいというような利点あるいは欠点がございます。
○野末陳平君 今のお答えで感じるのは、縁故募集はちょっと難しそうで、入札は問題もありそうでと、もちろん証券会社の場合もそうですが。ただ、証券会社に渡す場合、値決めもさることながら、今一般投資家にチャンスがあるというお答えでしたけれども、現実にはどの公開株を見ましても一般の人にはもうチャンスありませんね。はっきり言って、証券会社が自分の営業に利用します。つまり、損をしたお客にもうけさせるこれはもう唯一のチャンスですから。となると、証券会社に渡した場合には、要するに一握りの人は確かに手に入る、だけれども一般の投資家は全く縁がない。こういう問題も起きて、値決めと同時にこの二つがやはり非常に問題じゃないかと思うんです。結果的に政府の懐にお金がたくさん入るということが大事なんですから。
 そこで総理大臣大分お疲れのようで、ちょっと先に行きましょう。そこで、いろいろと研究をしていただくのは当然なんですが、僕は、証券会社におろすやり方も縁故募集もやはりこの株に限っては難しい。むしろ入札をこの際いろんな角度から検討して、今までとは違う入札の方法を考えて、これを本命に検討すべきではないかと思っているのです。というのは、やはり入札の方が、短所もあるでしょうが相場に近づいて売却益は多く出ますから、やはり第一回で終わるのでなくて何回かに分けるのですからね、試行錯誤もできるし、それから、つまり独占されないように株数の制限なども考えたりとか、いろいろ手は打てるので、入札の形式にした方がだれもが参加できて不公平も少なくなるんではないかと、こういうふうに考えますが、総理はいかがですか。
○国務大臣(中曽根康弘君) 入札に応募する人の範囲をどうするかというような問題もすぐ出てくるだろうと思います。とにかく公平で、公正で、そして国民の財産がそういうような方法で処理されて、政府も国家収入をかなり存分に得られたと、そういう形をどういうふうにつくっていくかということを今後真剣に検討していくべきであると思っています。
○野末陳平君 これから大いに検討してほしいんです。
 そこで総理が、やはりこの問題についてはかなりのリーダーシップをとってほしいと思うんですよ。言うなれば、電電だけじゃありませんけれども、専売公社も一種の財政再建にとっては救世主のような役割を果たしますからね。ですから総理に頑張ってほしいと思って、ここで政治家の建前じゃなくて、やはり商売人の感覚になって財源をつくるべきだと、そのぐらいの気持ちでないと財政再建は到底できないだろうと思うんですが、どうでしょう、重ねて。
○国務大臣(中曽根康弘君) 国民の財産ですから、これが活用されるということは国民の期待に合うゆえんでありますけれども、しかし、今回の場合にはやはり公正ということが非常に大事で、いささかなりとも国民から疑惑を招かないような慎重な配慮をしたやり方が一層大事であると、そう思っております。
○野末陳平君 それをお願いしておきます。
 それで、最後に大蔵大臣にお聞きするんですが、電電だけにこだわりましたけれども、実はほかにも黒字の公社とか公団とかが、あればの話ですが、これから民営化して新しい財源づくりを政府は考えていってもいいのじゃないか。すぐ増税というふうに結びつくのは困るので、やはり行革も大事です。しかし、財源づくりを政府が責任を持って考えるということもこれからは当然のことだろうと、そう思うんですよ。ですから、例えば住宅・都市整備公団などの資産を売却すればいいかもしれないし、新東京国際空港だって民営化があるかもしれないし、いずれにしても増税によらない財源づくりを政府が考えることは恥でも何でもないんですから、そういう方向というのはこれから検討できるでしょうか、大蔵大臣にお聞きしたいのです。これで時間が来ましたから最後になります。
○国務大臣(竹下登君) 増税によらない、言ってみれば税という措置によらないということになれば税外収入と、言葉で仕分けをすればそういうことでございましょう。これはまさに、単なるそこにある国有財産の処分だけでなしに、これは衆知を集めなければいかぬ課題だと思っております。どちらかといえば私の反省を込めた答弁といたしますならば、従来は言ってみれば税の主管庁である大蔵省がこれを考えましたが、これからは私は各省の協力を得て、いわゆる区分すれば税外収入でございますが、今の都市整備公団等の御意見ももちろん一つの御意見でございましょうが、そういう各般の意見を出してもらって、税外収入にひたむきに努力するというのは恥とも何とも考えておりません。
○委員長(長田裕二君) 以上で野末君の質疑は終了いたしました。
 これにて質疑通告者の発言はすべて終了いたしました。質疑は終局したものと認めます。
    ─────────────
○委員長(長田裕二君) それでは、これより昭和五十九年度補正予算三案に対する討論に入ります。
 討論の通告がございますので、順次これを許します。なお、発言者は賛否を明らかにしてお述べ願います。志苫裕君。
○志苫裕君 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました昭和五十九年度補正予算三案に反対の討論を行います。
 反対の第一は、政府の経済運営が全くもって無策だということであります。本年度の我が国経済が政府公約の内需型ではなく、専ら対米依存の成長に終わろうとしていることは既に明らかでありますが、政府はこれに何ら有効な手段をとっておりません。
 五十九年度の貿易黒字は四百億ドルを超える勢いで、さらに六十年度においてもこれを上回ることが必至と見込まれます。そこで再び日米間を初めとする通商摩擦の危機が広がろうとしておるのであります。にもかかわらず、中曽根内閣は内需拡大の具体策を持たず、減税要求も無視し、いたずらに民間活力の導入を叫ぶばかりで、民間の何をどうするのか、さっぱり明示できておりません。かくていたずらに無策を続ける中曽根内閣に国民は何らの信頼をもつなぎ得ないのであります。
 反対の第二は、人事院勧告がまたしても値切られたことであります。いかに財政逼迫とはいえ、働く者の生活の糧を、しかも争議権を奪っておいて有無を言わさず切り捨てることは、政府の国民に対する収奪と言わざるを得ない。人勧を抑制して既に三年。それが単に公務員のみならず全労働者の低賃金、全国民の生活切り下げのてことなっている実態は到底看過することができず、政府の暴挙に強く抗議いたします。
 反対の第三は、相も変わらぬ既定経費の節減についての問題であります。政府は五十九年度予算が成立すると直ちに一割の節減を省庁に命令し、補正の財源づくりを始めました。厳格な査定のもとに必要な最小限の経費を見積もったはずの予算に一律の節減を課し補正財源とするやり方は、そもそも当初予算が紛飾予算であることを告白するに等しく、国会を愚弄するも甚しい。紛飾予算の補正もまた紛飾予算と言わざるを得ず、到底容認することはできません。
 予備費もまた同様で、その取り崩しは年々ふえ、五十九年度はついに一千八百億円、総額の半分以上が補正財源とされております。近年、常に千億円以上が補正財源とされていることにかんがみ、これは明らかな過大計上と言わざるを得ず、こうした手法は認められません。
 一方、歳入について見ると、黒字隠しのために租税の過小見積もりが行われているのではないかという疑念が残ります。五十八年度にマイナス補正をしながら四千五百億円の黒字を出したこと、及び五十八年を上回る五十九年度の景気動向から見て、本補正の数値は過小評価と言わざるを得ません。政府は財政赤字の軽減のみに目を注いで、必死に働き、生き続ける国民のために財政を積極的に活用することを忘れているのではないか、五十九年度決算においての発言権を留保しておきます。
 最後に、中曽根内閣の金看板増税なき財政再建についてこの際警告をいたしておきます。
 歳出削減による財政再建を公約してきた中曽根総理が、与党内からの風圧や財界の大型間接税容認発言をいいことにして、税制の抜本改革を口にし、金看板をなし崩し的に塗りかえようとしていることは政治責任上重大であります。大衆課税に矛先を転ずることは断じて認めることはできません。
 審議会を多用して誘導政治をしようとする総理は、ここでも政府税調にげたを預けることで責任逃れをしようとする意図がありありでありまして、もはや同じ手法で国民の目を逃れることはできないことを強く警告をし、私の反対討論を終わります。(拍手)
○委員長(長田裕二君) 次に、井上裕君。
○井上裕君 私は、自由民主党・自由国民会議を代表して、ただいま議題となりました昭和五十九年度補正予算三案に対し、賛成の討論を行うものであります。
 昨年春以来、我が国経済は、米国経済の予想外の回復に伴い、全体として景気は拡大の方向に向かっております。これに対し、財政は依然として大幅な不均衡の状態にあって、赤字公債依存の体質を改善し財政の対応力を回復することは急務であり、財政改革の強力な推進が望まれるところであります。さて、今回の補正予算は、当初予算作成後に生じた事由、すなわち災害復旧や国家公務員の給与改善等に要する追加費用を補正するもので当然なる措置であります。
 まず、災害復旧についてでありますが、今回の補正により五十九年発生災害の初年度の復旧進度を高めておりますほか、五十八年発生災害についても六十年度実施予定を本年度に繰り上げて実施することとされております。これにより災害の早期復旧が図られるとともに、地域経済における景気効果も期待され、妥当な措置と考えます。
 次に、国家公務員に対する給与改善でありますが、人事院勧告制度の趣旨から、その完全実施がもとより望ましいことでありますが、現下の厳しい財政事情からして今回の措置はやむを得ないもので、国民とともに痛みを分かち願いたいと思います。
 その他、今回の補正予算における歳出の追加は、義務的経費の追加、国債整理基金特別会計への繰り入れ、地方交付税交付金等の事項について法律、制度に基づき措置されており、必要にして当然の補正措置と思います。
 他方、こうした歳出を賄うため、既定経費の節減、予備費の減額が行われているほか、租税収入、建設公債の発行、前年度剰余金受け入れ等を行って歳出の追加財源を確保していることは、財政再建の見地からも適切な措置であると思います。
 最後に、政府に要望したいのでありますが、景気は上向きにあるとは申せ、地域により業種によりばらつきも見られます。予算の執行に当たっては、経済動向に配意し、民間活力の導入を初めとした内需拡大の政策手段を機敏に、かつ弾力的に行うとともに、公共事業の配分に当たっても地域経済を十分配慮願いたいことを申し述べ、賛成討論といたします。(拍手)
○委員長(長田裕二君) 次に、太田淳夫君。
○太田淳夫君 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となりました昭和五十九年度補正予算三案に対し、反対の討論を行うものであります。
 反対の理由の第一は、政府公約の内需主導型への転換とは、逆の経済運営を行いながら、その責任を回避している中曽根内閣の無責任な態度であります。
 五十九年度実績見込みでは、今年度経済成長率が当初見通しの実質四・一%から五・三%へ大きく上方修正されたにもかかわらず、所得の伸び悩みから民間最終消費支出は、四・一%から三・一%へ、民間住宅投資に至っては五・二%から三・一%へと大幅な下方修正を余儀なくされています。国内では、内需不振の経済運営によって中小企業を中心とする企業倒産件数が二万件を超え、完全失業率も二・七%と、ともに過去最悪を記録いたしました。すなわち、今年度の五%成長は専らアメリカ経済の予想外の好景気によるものであり、内需主導への積極的な政策によるものではなかったことを証明するものにほかなりません。政府は、これまでの経済運営を転換し、内需主導の成長軌道に乗せるため、今回の補正予算において所得税減税の実行、社会資本整備のための公共事業追加等を実施すべきであります。
 反対の第二の理由は、人事院勧告の完全実施を行わなかったことであります。人事院は五十九年度において平均六・四四%の給与引き上げを勧告したのでありますが、政府はわずかその半分の三・三七%を引き上げたにすぎず、この補正予算でも改定分の一千四百四十八億円が計上されただけであります。政府は、五十七年度の人勧凍結、五十八年度の抑制に続き、これで三年連続して人事院勧告をないがしろにしたものであり、人事院勧告制度を形骸化させるものであります。人事院勧告の抑制が広く国民生活全般に影響し、今日の所得伸び悩みによる個人消費停滞を招いていることは、既に言うまでもありません。政府は、国家公務員の純減数を拡大する一方で、あくまでも人事院勧告を完全実施すべきであります。
 反対の第三の理由は、既定経費の節減及び予備費の取り崩しが極めて安易に行われている点であります。毎年のように既定経費の節減が行われ、補正予筋の財源とされておりますが、これは当初予算に補正財源があらかじめ水増しされていたことを示す以外の何物でもありません。当初から節減の余地を残さず、ぜい肉をすべて落とした予算編成を行うことは、我が党がしばしば指摘をしているところであり、政府の当然の責務であります。
 予備費の取り崩しについても、ここ二、三年その額が増大し、今年度は千八百億円と近年では最高に近い額となっております。これは、当初予算における予備費計上額三千五百億円の半分を超える額であり、予備費が補正のための財源隠しに利用されていると言わざるを得ません。これこそ財政民主主義の精神に反するものであると言わざるを得ません。政府は、当初計上の予備費三千五百億円が、取り崩しの増大にもかかわらず五十四年度以降続いている状況を明確に認識し、当初予算計上額自体を見直すとともに、安易に補正財源化が行われないよう強く要求いたします。
 以上申し述べましたように、五十九年度補正予算三案は、財政再建のためにも景気を維持していくことが必要であるにもかかわらず、政府として何ら積極的役割を果たそうとしないものであり、反対せざるを得ないのであります。政府に対し、内需主導の経済成長を可能とする政策を速やかに講ずるよう強く要望して、私の討論を終わります。(拍手)
○委員長(長田裕二君) 次に、内藤功君。
○内藤功君 私は、日本共産党を代表して、昭和五十九年度補正予算三案に反対の討論を行います。
 本補正予算審議の中でも明らかにされましたように、中曽根内閣はアメリカの核戦略に追随して、際限ない宇宙軍拡競争に発展するいわゆるスターウオーズ構想、SDIに理解を示すなど、軍備拡大と日米共同作戦体制づくりを進め、国民に大きな不安を与えています。また、臨調行革路線と大企業優先政策によって、国民生活は犠牲と忍耐を強いられています。この結果、一部大企業が史上最高の利益を享受している一方で、中小企業の倒産、勤労者の失業は過去最高の記録を更新しているのであります。さらに、農業経営も急速に悪化するとともに、勤労者の実質賃金の低下、福祉の後退が国民生活を圧迫し、日本経済は大きな障害と困難に直面しているのであります。
 私は、今こそ、従来の政府の軍備拡大と大企業優先の政治、経済政策から国民生活優先の政策への抜本的転換を図るよう、強く主張するものであります。
 以下、反対理由を申し述べます。
 反対理由の第一は、本補正予算に軍事費二百六十九億円の増が計上され、これによって本年度軍事費は対GNPの〇・九九八%となり、みずから決めた一%の閣議決定さえ踏み越えようとし、まさに歯どめなき軍拡への前夜の感があります。さらに、硫黄島旧島民に対する五億六千二百万円の見舞い金につきましても、シーレーン防衛の作戦基地建設のため、旧島民の帰島への強い願いに永遠に道を閉ざす意図を指摘せざるを得ません。
 第二は、国民生活費を一層削減している点であります。昨年八月、人事院が公務員給与の六・四四%の引き上げを勧告したにもかかわらず、本補正予算案にはわずかに三・四%しか計上しておりません。これは、公務員労働者の労働基本権の代償としての人勧制度を政府みずから破壊する暴挙と言わねばなりません。連続四年間の不完全実施は、公務員労働者の生活権を否認するにとどまらず、民間企業に働くすべての勤労者にも低賃金を押しつけ、ひいては年金、恩給を初め国民全体に低生活水準を強要するものであります。さらに、中小企業対策費、農林漁業金融費、私学助成費、身体障害者等の社会保障費など、国民生活に密着した諸経費の軒並み減額は、生活を直撃し、消費不況を一層深刻にすることにほかなりません。
 第三に、健康保険法等の改悪に伴う経費であります。これは、本人一割負担、国庫補助率削減を図った保険制度の改悪を前提として、当初予算では三千二百八億円の減額を見込んだものの、国民の強い反対の声に押されて成立が大幅におくれた結果、今回の補正を余儀なくされたものであります。今、最も必要なことは、本人十割給付制度の復活を中心とする健康保険制度の充実、改善であります。
 最後に、本補正予算によって、昭和五十九年度末国債残高は百二十二兆円を突破することは確実です。まさに財政破綻以外の何物でもありません。これこそ軍備拡大と財界への奉仕路線がもたらした惨たんたる結果であります。
 以上、私は、国民の暮らしを守るために軍事費を削り、所得税の大幅減税を初め、福祉、教育、農業、中小企業予算など、国民の切実な要求を基本に政府の方針を全面的に転換することを強く求めて、反対討論を終わります。(拍手)
○委員長(長田裕二君) 次に、伊藤郁男君。
○伊藤郁男君 私は、民社党・国民連合を代表して、ただいま議題となっております昭和五十九年度補正予算三案に対し、反対の討論を行うものであります。
 今日の財政赤字は、経済企画庁の分析からも明らかなように、経常支出の増大によって生じた構造的赤字と、税収の伸び悩みによって生じた循環的な赤字とに大別されます。したがって、一方で構造的赤字を解消するために思い切った行政改革を行い、一方で循環的赤字の解消のために拡大均衡型予算を組み、税の自然増収を大幅に確保しなければならないのであります。私は、行政改革と自然増収の確保、この二つの組み合わせ以外に増税なき財政再建を達成する道はないものと考えます。しかるに中曽根内閣の行政改革は、行政改革審議会の言う五合目にまでもいまだ達していないものと私は判断しているのであります。行政改革はなお不徹底と申さねばならないのであります。
 例えば公務員の削減を見ても、五十九年度は三千九百五十三人の純減にとどまっておりますし、省庁部局の再編計画はほとんどが看板のかけかえ程度に終わっているのであります。のみならず、国土庁のように、部を新たに増設するなど焼け太りさえ行っているのであります。さらに、約十四兆円に達する補助金につきましても、根本的なメスが入れられないままに推移しているのであります。これでは構造的な赤字の解消は不可能と断ぜざるを得ないのであります。
 次に、中曽根内閣の経済運営もまた増税なき財政再建を不可能にしているのであります。確かに政府は、五十九年度において一兆一千八百億円の所得減税を実施しましたが、この減税規模が小さいのと同時に、その財源を法人税、物品税、酒税、自動車関係諸税などの大増税に求めたのであります。減税を上回る増税を強行したのであります。
 また、減税と並ぶ積極経済政策の柱である公共事業については、過去三年間にわたりその伸び率を横ばいとし、五十九年度においては二%の削減さえ行ったのであります。これが個人消費の伸び悩み、内需の停滞を招いたのであります。五十九年度の経済成長は、実質五・三%というのが政府の見通しであり、景気は回復から拡大に向かったと言われますが、この成長はアメリカ経済の急速な拡大と、それに連動する我が国輸出の増大によってもたらされたものであって、内需拡大に直結したものではありません。
 我が党は、かねてから縮小均衡型経済財政運営から拡大均衡型経済財政運営への転換を求めてきたところでありますが、この補正予算案は縮小均衡型路線から一歩も出ておりません。すなわち、内需中心の経済運営の柱となるべき所得減税の追加、中小企業投資減税の追加、さらに一兆円規模の公共事業の追加などを見送っているのであります。特に、公共事業費については、道路整備事業に本来充当さるべき分の今年度一般会計繰入分が補正予算に計上されていないのは遺憾と言わざるを得ないのであります。
 さらに、政府は人事院勧告を無視し、これを一方的に抑制、カットしました。平均六・四四%の引き上げを求めた人事院勧告を大幅に削り込み、平均三・三七%の引き上げにとどめたのでありますが、この措置は労働基本権の代償としての人事院勧告制度の根底を揺るがすものと言わざるを得ません。
 最後に、私は、政府が公務員定員の大幅な計画的削減、補助金の抜本的な整理合理化、特殊法人の統廃合、地方出先機関の整理、地方行革の推進など、行財政改革を徹底することと同時に、速やかに縮小均衡型経済運営から拡大均衡型経済運営に転換し、日本経済の潜在成長力を引き出し、内需主導の経済成長を図り、あわせて増税なき財政再建を達成するよう求めて、反対討論を終わります。(拍手)
○委員長(長田裕二君) 以上で討論通告者の発言はすべて終了いたしました。討論は終局したものと認めます。
 それでは、これより採決に入ります。
 昭和五十九年度一般会計補正予算、昭和五十九年度特別会計補正予算、昭和五十九年度政府関係機関補正予算、以上三案を一括して採決いたします。
 三案に賛成の方の起立を願います。
   〔賛成者起立〕
○委員長(長田裕二君) 多数と認めます。よって、昭和五十九年度補正予算三案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、審査報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(長田裕二君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後零時四十四分散会