第107回国会 社会労働委員会 第7号
昭和六十一年十二月十五日(月曜日)
   午前十時開会
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   委員の異動
 十二月十一日
    辞任         補欠選任
     抜山 映子君     勝木 健司君
 十二月十三日
    辞任         補欠選任
     石本  茂君     久世 公堯君
     勝木 健司君     抜山 映子君
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  出席者は左のとおり。
    委員長         佐々木 満君
    理 事
                岩崎 純三君
                田代由紀男君
                糸久八重子君
                中西 珠子君
    委 員
                石井 道子君
                久世 公堯君
                関口 恵造君
                曽根田郁夫君
                田中 正巳君
                前島英三郎君
                松浦 孝治君
                宮崎 秀樹君
                千葉 景子君
                対馬 孝且君
                浜本 万三君
                高桑 栄松君
                沓脱タケ子君
                佐藤 昭夫君
                抜山 映子君
   政府委員
       厚生大臣官房長  北郷 勲夫君
       厚生省保健医療
       局老人保健部長  黒木 武弘君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        此村 友一君
   参考人
       日本経営者団体
       連盟
       社会保障特別委
       員会委員長    有吉 新吾君
       国民健康保険中
       央会理事長    加地 夏雄君
       全国老人クラブ
       連合会常務理事  見坊 和雄君
       全国町村会長
       茨城県玉造町長  坂本 常蔵君
       日本労働組合総
       評議会生活・社
       会保障局長    前川 哲夫君
       日本医師会常任
       理事       吉田 清彦君
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  本日の会議に付した案件
○老人保健法等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
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○委員長(佐々木満君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 去る十三日、石本茂君が委員を辞任され、その補欠として久世公堯君が選任されました。
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○委員長(佐々木満君) 老人保健法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本日は、お手元に配付しております名簿の参考人の方々に御出席をいただいております。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多忙中のところ御出席を賜り、まことにありがとうございます。皆様方から忌憚のない御意見を拝聴いたしまして、今後の法案の審査の参考にさせていただきたいと存じますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。
 これより参考人の方々に順次御意見をお述べ願うわけでありますが、議事の進行上、お一人十五分以内で御意見をお述べ願いたいと思います。全部終わりましたところで委員の質疑にお答え願いたいと存じますので、御了承をお願い申し上げます。
 なお、委員会の終了予定は午後一時でございますので、よろしく御協力をお願い申し上げます。
 それでは、これより各参考人に順次御意見をお述べいただきます。
 まず、日本経営者団体連盟社会保障特別委員会委員長の有吉新吾参考人にお願いいたします。
○参考人(有吉新吾君) 最初に、意見陳述の機会を与えていただきましたことに対しまして、お礼を申し上げます。
 本日は、特に政府の老人保健法改正案のうち、加入者按分率引き上げの点に絞りまして、五つの問題点をお話し申し上げたいと存じます。
 第一は、老人医療費の負担方法につきましては、本制度創設時の国会において種々の論議、審議が行われました結果、加入者按分率五〇%、医療費按分率五〇%として計算することで関係者の合意が得られた経緯がございます。
 加入者按分率を一〇〇%にすることは、この法律制定時の国会審議経緯を全く無視するばかりでなく、医療費按分率の必要性を認めております現老人保健制度の根幹をも否定するものであります。もしこの点について改める必要があるといたしますならば、単に当面の財政のつじつま合わせではなく、老人保健制度本来のあり方、つまり老人保健制度は福祉原理で運営されるべきか、それとも保険原理で運営されるべきか。仮に保険原理で運営するといたしましても、その程度はどのくらいが妥当であるのか等々の基本問題も含めまして、制度全般を根本的に洗い直し、真に揺るぎない制度を確立することが本筋ではないかと強く考えるのでございます。
 第二は、老人保健法の施行以来今日までに各医療制度の老人加入率の動きには大きな変化がない点でございます。
 したがって、この点から言えば、加入者按分率を急激に引き上げる必然性は全くないのでございます。巷間伝えられておりますように、退職者医療制度の加入対象者の見込み違いによりまして生じました国民健康保険制度の赤字を、負担の公平という名目で企業や従業員に肩がわりさせようとしている政府のやり方は全く筋が通らず、アンフェアであり、ここに大きな混乱と論議が巻き起こっておるのでございます。
 第三は、加入者按分率を一〇〇%にすることは、政府の主張とは全く逆に、医療制度間に著しい負担の不公平が生じる点であります。
 御承知のように、国民健康保険制度の老人医療費拠出金には実質五五%の国庫補助が行われておりますので、同制度の保険料負担分は実質は四五%になるのであります。これに対しまして、組合健保は老人医療費拠出金をすべて保険料で賄っております。したがって、厚生省の資料によりまして、例えば昭和六十五年度、加入者按分率が一〇〇%になった場合の想定でありますが、その六十五年度で両制度の負担する老人加入割合を比較してみますというと、国民健康保険制度の老人加入割合は、さっき申しました国庫補助がありますので、実質三・五%になるのに対しまして、組合健保のそれは実質七・八%となって、かえって制度間には著しい負担の不公平が生じるわけでございます。
 政府の負担の公平論には、国民健康保険制度に対する国庫補助と健保組合の事業主負担とが全く同質であるという暗黙の前提がありますが、しかし私は、国庫補助と事業主負担とは全く性格が違うものであり、同列の比較をすることは根本的に間違っていると考えるのであります。したがって、負担の公平論問題は各保険制度間の負担の公平でいくのか、それとは全然別に個々人の負担の公平でいくのかという根本問題にさかのぼって検討する必要があり、クロヨンなどの税制問題ともあわせ検討しなければ、根本的に解決されないと考えるものであります。
 第四は、加入者按分率が一〇〇%に引き上げられますと、被用者保険、政管健保と組合健保の保険料率の大幅な引き上げが必至になるという点でございます。
 この点に関連いたしますが、先日、政管健保及び組合健保の昭和六十年度の決算収支が発表されました。それによりますと、政管健保が二千九百七十億円、組合健保が三千十億円の黒字となっております。しかし、組合健保の黒字額の九〇%は標準報酬月額の上限引き上げ、四十一万円を七十一万円に上限を引き上げております。その引き上げや、被保険者本人の定率一割負担の実施などの一時的要因によってもたらされたものでありまして、また、政管健保の黒字額も、本人定率一部負担の医療費抑制効果によって医療給付費が激減したことなど、やはり一時的要因が大きく寄与しております。したがいまして、被用者保険制度の財政健全化が今後も同じように続くという保証はどこにもないのでございます。
 一方、厚生省の試算によりますと、被用者保険、政管健保と組合健保でありますが、その老人医療費拠出金は昭和六十一年度一兆三千億円から同六十五年度二兆四千億円に激増することが予測されております。しかも、組合健保の場合には、被保険者、従業員でございますが、被保険者の負担する保険料は健康保険法によって標準報酬月額の四・五%までと上限が定められておりますので、いずれは老人医療費拠出金の増加分はすべて企業の負担となることが予想されます。
 例えば、衆議院の修正案によります組合健保の被保険者一人当たりの老人医療費拠出金額は、昭和六十年度、これは加入者按分率が四四・七%でございますが、その昭和六十年度の三万六千円から、同六十六年度、これは加入者按分率を一〇〇%に今の案ではなるわけでありますが、その一〇〇%で計算をいたしますと、昭和六十六年度は九万九千円に激増すると試算されております。これは、特に円高の長期不況をもろに受けている企業にとりましては、さらに追い打ちをかけられることになるのでございます。
 第五は、医療費のチェック機能が失われるおそれがある点でございます。
 このような老人保健制度の財政調整による負担増は急激であるばかりでなく、全く歯どめがない財政調整になっているために、いずれ健保組合の財政基盤の崩壊を招くことはもちろんでありますが、問題は、このような状態が続いていきますと、健保組合は経営意欲を失ってしまうことであります。その結果といたしまして、健保組合が従来から果たしている医療費のチェック機能が失われ、むだな医療費の増大を招く確立が非常に高くなる危険性があるのであります。
 いずれにいたしましても、今回の政府の老人保健法改正案には非常に多くの問題点がありますので、私どもといたしましては、当面、現行法の本則に基づく加入者按分率五〇%によって実施をし、拙速に陥ることなく、また財政一辺倒に陥ることなく、今後十分な時間をかけて制度全般にわたって種々の角度から慎重に審議していただき、真に揺るぎない制度を確立していただくように切にお願いを申し上げる次第でございます。
 以上をもちまして陳述を終わります。
 ありがとうございました。
○委員長(佐々木満君) どうもありがとうございました。
 次に、国民健康保険中央会理事長の加地夏雄参考人にお願いいたします。
○参考人(加地夏雄君) ただいま御紹介をいただきました国民健康保険中央会理事長の加地でございます。
 本日は、当委員会におかれましては大変貴重な審議時間を割いていただきまして、私どもの意見をお聞き取りいただく機会を与えられましたことに対しまして、厚く御礼を申し上げたいと思うのであります。
 私は、現在当委員会で御審議を煩わしております老人保健法の改正案に対しまして、その趣旨に賛同する立場から若干の意見を率直に申し上げ、特に今日、かつてない財政的危機に逢着いたしております国保の実態について御理解をいただき、この法案を速やかに成立さしていただくようお願い申し上げたいと思うのであります。
 改めて申し上げるまでもありませんが、今、国保は制度発足以来の危機にさらされております。そして、その主な原因をいろいろ考えてまいりますと、やはりその大きなものは老人医療費の重圧によるものであります。
 国保は、御承知のように、構造的と申しましょうか、現行制度のもとでは社会的にリタイアされた老人の方々がほとんど国保にお入りになり、もともと財政基盤の弱い国保がこれを受けとめなくちゃいけない、こういう仕組みがあるわけであります。そういった問題を考えますと、現状のままでいった場合に、高齢化社会の進展に対応して国保が果たしてやっていけるのかと、こういう非常に危機的な認識を持たざるを得ないのであります。
 私どもは、十数年前から、こういった今の日本の医療制度の中で老人医療費の公平な負担をお願いしたいということで老人保健法の制定を強くお願いをしてまいったのでありますが、まさに不毛の議論、こういう時代が長く続きましたけれども、国会の諸先生方の御英断によりまして昭和五十七年にこの老人保健法が制定されたわけであります。そして、医療保険の各制度を通じた老人医療費の共同負担の道が開かれまして、それによりましてかなりの改善が行われたことは改めて申し上げるまでもないところであります。しかしながら、最近の高齢化の進行はまことにテンポが急激でございまして、現状を見ます限り、老人医療費の負担の公平という理念は必ずしも十分に生かされてはいないのではないかと、こう考えるのであります。
 これを数字的に申し上げますと、例えば日本の医療保険の中で国保のシフトと申しましょうか、加入者、被保険者は大体全体の三八%であります。その国保が全体の老人医療費を賄うための拠出金は五二%に達しておるわけであります。また、国保の中を考えてみましても、国保の被保険者の中で老人の占める割合は一二・五%に達しております。この一二・五%の老人の医療費は、国保全体の医療費の四〇%近い状況になっておるわけであります。国民健康保険の老人の加入率が健康保険組合の四倍であるとか、あるいは今日の老人一人当たりの医療費が五十万を超えまして一般被保険者の五倍というふうなことが相重なりまして、このような国保財政の逼迫ができておるのではないかと考えるわけであります。
 具体的にこの両三年間におきます国保財政の実態であります。まず単年度収支という観点から見ますと、これは私どもが勝手に計算したのではございませんが、政府側が老人保健法に提出をした資料に基づきましてこの収支を見ますと、国保は五十九、六十年の二年間で二千八百三十四億の経常収支の赤字であります。この赤字額は、被用者保険サイドの決算数字と対比をしていただければ、明暗はまことに鮮明であります。
 こういった厳しい状況の中で、市町村ではどのような対応をしてきたかということであります。まず、この三年間に全国平均で保険料を三六%引き上げております。それのみか、一般会計の繰り入れにつきましても、五十八年度対比で六十年度は五割増しの増額をやっております。そのほか、わずかな基金の取り崩しでございますとか、あるいは予算執行上いわば非常措置でありますけれども、繰り上げ充用という形で何とかやりくりをし、つじつまを合わせてきておるのでありまして、国保財政の問題というのは、今や国保事業だけの問題ではございませんで、市町村全般の財政問題の中の最大の問題になっておるのは御承知のとおりであります。
 特に、この三年間の全国平均三六%の保険料の値上げ、全国平均でございますから三年間で倍以上になった町村も二百数十カ町村あるわけでありますが、そういう値上げは、御承知のような今日の経済成長あるいは国民所得の伸び等から考えますとまことに異常でありまして、被保険者の新聞等に対する投書を見るまでもなく、まことに怨嗟の的になっておりますし、また、現実にこれ以上保険料の値上げは市町村長はできない、こういうことを言っておられるわけであります。この住民の医療、健康を確保し地域医療を推進していく責任者である市町村長が、今回の老健法の改正、なかんずく加入者按分率の引き上げに最大の期待を寄せているのはここにあるわけであります。私は、今回の改正の中で加入者按分率の改正については、ぜひとも原案どおり認めていただくよう特にお願いを申し上げたいと思うのであります。
 加入者按分率の問題は以上でありますが、そのほかに、今回の改正案の中には一部負担の改正案も盛り込まれております。この問題につきましてはいろいろ問題があるところでありまして、私どもはそういう御議論は十分拝聴いたしております。しかしながら、この医療保険制度を長期的に安定をし国民の医療を守っていく、こういう観点から、今回の老人の一部負担の案は、全体の医療費から見たウエートの問題とか、あるいは保険料を現実に負担をしておる若い方々との世代間の負担の公平、こういう観点からも、私は、今回のような負担は必要悪と申しましょうか、やむを得ないものとしてお願いをせざるを得ないのではなかろうか、こう考えるわけであります。
 さらに、老人保健施設、中間施設の問題であります。
 日本の今日の医療問題、特に入院医療の問題に関連をいたしまして、特にこれから本格化する高齢化社会を迎える場合に、この問題は緊急の課題であるという御認識はどなたも御異存がないところであろうかと思います。私どもも、国保財政の長期的な安定を考える場合に、今後市町村におきましても積極的にこの問題に取り組まざるを得ない問題であろうと考えておりますし、住民のニーズが十分反映されたものとなるように期待をしておる次第であります。
 それから、最後になりましたが、国民健康保険法の改正案で、悪質滞納者に対する対策の問題がございます。
 この問題は、私どもは、現実に市町村で国保事務を運営しておる課長さん方とか全国の皆さん方は、十数年来この問題を実は主張しておられたわけであります。しかしながら、この問題自体はある意味においてはすぐれて事務的な問題に近い話でございまして、こういう形で政策的に取り上げる機会はなかったのでありますけれども、私どもは、まじめな被保険者が着実に保険料を納めていただいて医療を受けておられる、こういう方々との均衡を考えました場合に、負担能力がないために保険料を払えない、こういう人はもちろん例外でありますが、悪質な滞納者に対するペナルティー措置と申しましょうか、今回の措置は我々としてもぜひひとつ実現をさしていただきたい、かように思うわけであります。
 まことに簡単に申し上げてしまいましたが、老人保健法の改正に関しまして意見を申し述べました。諸先生方におかれましては、国保の現在の窮状を十分御賢察賜りまして、これからどうしても迎えざるを得ない高齢化社会の本格化に備えた、いわば長寿社会にふさわしい保健医療制度の確立を目指す今回の改正案をぜひとも今国会において成立させていただきますように重ねてお願いを申し上げまして、私の意見陳述を終わります。
 ありがとうございました。
○委員長(佐々木満君) どうもありがとうございました。
 それでは次に、全国老人クラブ連合会常務理事の見坊和雄参考人にお願いいたします。
○参考人(見坊和雄君) 全国老人クラブ連合会常務理事の見坊和雄でございます。
 このような機会を与えていただきましたことに深く感謝申し上げ、老人の立場から意見を申し述べさしていただきます。お手元に差し上げました資料は、御参考までに後刻お目通しをいただければと存じております。
 私たち老人は、乏しく苦しい激動の時代を思い起こしましては、今、豊かな社会に生きている喜びをかみしめております。また、感謝の念を深くしております。また、戦後、日本の復興に貢献できたという自負と誇りを心の底に秘めておるものでございます。国を思う気持ちはひとしお強いものがございます。
 高齢化社会となる二十一世紀を前にいたしまして、私たちは経験と知識、技術を生かして地域社会にお返ししなくてはならない、社会の一員として、地域の担い手として、自立自助、互助連帯の活動を進めなくてはならない、新しい老人像を確立しなくてはならない、そういう気持ちで、今、全国的に立ち上がっているところでございます。
 一面、高齢化社会の到来とその対応のことが連日報道されておりまして、老人が国や社会の重荷になっているというような肩身の狭い思いが生まれていることも事実であります。老人医療費の増大に伴う老人保健法改正をめぐりましての問題、これがそのような気持ちを増幅させたり、あるいは生活不安を招くことになってはならないと考えまして、真剣な論議を交わしながら、役員一同、大わらわになっているという状況でございます。
 まず、一部負担引き上げの理由、趣旨、ねらいといたしましては、健康に対する自覚、適正な受診、負担の公平、この三点が挙げられております。この三点は、老人保健法創設の当時に一部負担のねらいとして挙げられた項目と同一であります。しかし、創設の当時、すなわち無料制度から有料制にする場合と、既に法が運用されている今日、負担をさらに強化する場合とでは、字句は同じでありましても、その意味する内容は異なるものと存じます。
 私たちは、老人保健法の発足に合わせまして、それまでの「病にかからぬ運動」の内容を一新して、「心とからだの健康をすすめる運動」と名称を変え、全国的に学習、実態把握、健康管理、健康増進、事故防止に取り組んでまいりました。その実績、経験の中から、この三つの理由についての考えを申し上げます。
 第一の健康に対する自覚は、本人の意識、努力、実践と医療・保健関係者による教育、指導、相談、助言、すなわち地域における保健事業とのタイアップによって高められると認識いたしております。
 私は、戦後、岩手県において十数年間、保健衛生の地域活動に取り組んでまいりました。岩手県は東北の先進県でございます。高い乳児死亡率、高血圧の問題、そうした問題の解決のまず初めには、住民自身がそれが当たり前のことであるという認識が長い間あったわけでございますが、それを今日見事に解決することができましたのは、やはり住民と専門関係者とのタイアップによりましての運動であったと認識いたしておるのであります。既にある一部負担の強化によりまして、さらに自覚が高まるというものではないと考えるものであります。
 第二の、適正な受診でございます。これこそ医師の判断、指示、指導にゆだねるべき事項で、素人判断は禁物であると存じております。
 老人にとりましては、病院のサロン化とか、はしご受診とか、大きな薬袋を持った老人あるいはおんぶされだっこされている老人が漫画や笑い話にされて、いかにも老人が無知で無自覚で乱受診しているかのごとく取り上げられた一時期が記憶として残っております。情けなくつらい思いをいたしまして、病院に行くのを避けた老人は少なくありません。一部負担強化の理由としての適正受診は、疑問のあるところでございます。これを理由、ねらいとして負担を強化するということは、受診抑制につながり、早期診断、早期治療を妨げ、結果的に重度、重症の入院老人を増加させて医療費増大を来すものと考えております。
 第三の公平負担については、後に述べますが、老人なるがゆえに過大となっている保険外負担や諸出費の増加などをあわせて論ずべきことでないかと考えております。
 これら三点を貫くものといたしまして老人医療費の増大がありますが、その原因、事情をもっと明らかにして、老人に納得のできるようにしていただきたいものでございます。
 次に、引き上げ案の内容につきまして申し上げます。
 老人保健法は五十八年二月にスタートいたしました。老人クラブも心機一転して、有料化した法の趣旨を生かさなくてはならない、それが大事であると考えまして全国的な取り組みを強化したところでございます。ところが、法発足二年にいたしまして、一部負担の大幅な引き上げが検討されていると報じられました。昨年、六十年早々のことでございまして、強いショックと驚きを感じました。法制定前後には老人の声を聞いていただく機会が繰り返しございましたが、今回はそれもなかったのでございます。このたび参議院においてこのような場を与えていただきまして、ありがたく思っております。率直に申し上げまして、このように短期間のうちに異常とも言える大幅な引き上げを図るということは、制度、行政に対する信頼を失わせかねない問題でないか、多くの老人に不安を与えるものでないかと憂慮しておるところでございます。
 第二に、この大幅な引き上げの方向は、高齢者の生活実態に反するものでないかと存じております。
 高齢者世帯の平均所得は、五十八年に調査史上初めてダウンいたしました。五十九年に少し回復いたしましたものの、五十六年の数字には達しておりません。一般世帯の平均所得は着実に上昇いたしております。一方、年金生活者は増加を続けておりまして、一〇〇%年金収入に頼るという高齢者世帯は五十九年に約四二%となっております。この中には年収百万円以下の老人も相当数ございますし、障害を持つ老人も刻々とふえておるところでございます。このような人たちの生活実態に焦点を合わせて、制度、行政を組み立てることが厚生行政の特色であると私どもは考えております。老人の生活実態をマクロな総平均値で論じて線を引くというのでは、力の乏しい人は自立し得なくなり、その意欲を失うのであります。社会連帯、真の公平負担の趣旨にももとるものでないかと考えております。
 第三に、外来の負担でございますが、御承知のとおり、複数の受診によります二重、三重、四重の過重負担、同じ病院と名がつきましても異なる取り扱いがあるということ、医療機関の偏在や、あるいは病気の症状によりましてはタクシーに乗らなくてはならないというようなこともございますし、へんぴな地域の交通は不便でございまして、交通費の問題も訴えられております。病弱な老人にとりましては、月一科四百円は決して軽い額とは言えないというふうに訴えられております。現行四百円を二倍以上にするということは問題があると考えております。
 また、入院の負担につきましては、家にいても食費はかかるのだからという点に関してでございますが、病気で倒れたとき、特に入院したときに出費が膨張するということは、経験した者ならだれでもよく知っているところでございます。入院したから食費分が浮くというものではございません。むしろその逆であります。さらに、老人なるがゆえに必要となってまいりますお世話料、おむつ代そのほかの保険外負担が加わってくるのでございます。
 ことし、正月の十三日でございますが、西日本のある地域で六十八歳になるひとり暮らしの女性が孤独死をいたしました。友愛訪問を続けております老人クラブ員が、前の日に異状がないのを確かめた上で、この日の朝、おむすびと副食を待って訪れまして、排せつ物にまみれて苦しい表情のまま亡くなっている老女を発見したものでございます。
 亡くなった老女は、過去を語りたがらなかったのでございますが、少女時代に身売りをされまして、国内から満州へと流れ流れて、ついにこの地域にたどり着いてひとり暮らしの道を歩き、孤独死をいたしたものと見られております。この老女は生活保護を受けておりました。心臓が悪いため入退院を繰り返しておりました。福祉事務所で何かと頻繁に連絡をとっておりました。正月になりましてからは、体がむくんでまいりましたので、周辺の方、福祉事務所が入院を勧めたのでございますが、頑固に拒み続けて、ついに死に至ったものでございます。
 生前、この老女が口にしておりました入院したくないという理由の一つが、入院すると金がかかるということであったのでございます。被保護者なのになぜかかるのかという疑問もありますし、あるいは被保護者だからそのような気持ちを持たせるのかというようなことも疑問となってまいりますが、入院時の一部負担は家にいてもかかる経費との単純比較では済まない問題を含んでいるということを示しております。
 このような考えの延長線からは、期間撤廃の合理性が導き出されてまいります。しかし、例えば年金生活者の生活実態からは、これは年金課税の強化と同様に、生活設計を破綻させる問題と映っております。九千円で二カ月、年一万八千円の入院負担が、一年入院の方であれば十八万円になるということは、年金収入の一割、二割を一部負担だけで占めることになります。大きな打撃でございます。もとよりこれだけでは済まない問題であります。
 現行の二カ月という期間は、立案段階では四カ月という期間が考えられました。その根拠は、老人の平均入院期間ということにありました。改正を企図するのであれば、考え方、根拠においては一貫性を持つことが当然でないかと考えておるところでございます。期間は切るべきであります。二カ月を一挙に無期限というのは、乱暴のそしりを免れないのでないかと考えております。診査、教育、相談、指導、訓練、訪問、これらの保健事業体制の不備、特に保健、看護サービスが重要であるのに、マンパワーが不足しているということを地域においては実感いたしておりますが、負担の引き上げだけが先行しておるように感じております。一部負担は病気を持つ老人一人一人の生活に直接深刻な影響を与える問題であります。あくまでもきめ細かく思いやりあるものとしていただきたいと存じております。
 終わりに、老人保健法は福祉か保健かという議論がありますが、私どもは福祉の理念に立って福祉の専門分野も包含して運用されることを要望いたします。老人医療は老人福祉法の中で生まれまして老人保健法に引き継がれた、そういう経緯がございます。いわば福祉と医療と保健と各制度の合作と言えるものでございまして、その理念、特色が生かされなければ財政数理のたたき売りの論議に終わる危険性をはらんでおります。縦割りセクトの垣根を払って、三者の協調一体化したサービスをもっと地域や在宅者に手厚く提供していただきたい、そう考えております。
 寝たきりはつくられるということを私どもはよく知っております。しかし、寝たきりの家族の状況を見ますと、寝かせきりにせざるを得ないという条件もございます。それが改善されれば寝たきり老人の増加も減速されるのではないか、そのように私どもは考えて、高齢化社会の到来に備えて、老人人口がふえましても要介護老人の増加を何とか減速させられればというふうに考えまして、みずから努力いたしております。痴呆性老人についても同様であります。老人保健施設については、慎重に検討していただきたいと存じております。この中に、福祉サービスの機能と体制を明確に位置づけていただきたい。また、特別養護老人ホームの整備を促進していただきたい。一方、特別養護老人ホームにおける医療、看護の機能と体制を強化していただきたい、このように考えております。
 最後に、老人保健法の運用には、老人の意見が反映できる場をつくっていただきたいということを申し述べまして、この改正案が十分な審議によりまして善処されるようお願い申し上げる次第でございます。
 陳述を終わらしていただきます。
○委員長(佐々木満君) どうもありがとうございました。
 次に、全国町村会長茨城県玉造町長の坂本常蔵参考人にお願いいたします。
○参考人(坂本常蔵君) ただいま御紹介をいただきました全国町村会長をいたしております茨城県玉造町長の坂本でございます。
 まず初めに、諸先生方には、国民生活に関係の深い医療、年金、福祉などの諸問題について、日ごろ特段の御尽力をいただいていることに対しまして、衷心より敬意と謝意を表したいと存じます。
 本日は、地方公共団体として行政の第一線に携わっている町村長の立場から、現在、当委員会で審議されております老人保健法改正案に対して、賛成の意見を若干申し述べさせていただきます。
 御承知のとおり、今日の国保制度は崩壊寸前の重大な危機に直面いたしております。各市町村では国保税を年々大幅に引き上げているにもかかわらず、増高する医療費を賄い切れないため、多額の赤字を余儀なくされているのであります。全国平均で国保税を三年間に三六%引き上げておりますが、これは平均でありまして、三年間で二倍になった市町村も出ている状況であります。所得の伸びが考えられない現状の中で、このように国保税を引き上げなければならないということは、まさに異常事態と言わざるを得ないと思います。国保制度が今日の危機を迎えているのは、被用者保険に比べて低所得者が多く、老人の割合が高いという構造的な問題点を抱えているためであります。
 国保制度は、国民皆保険の名のもとに、被用者保険の対象とならない農業者や自営業者を中心とした地域保険として創設されたものでありまして、もともと財政的基盤の弱い保険グループでありますが、近年における社会、経済情勢の変化に伴って地域の産業構造にも変化をもたらし、現在では年金受給者などの無職者と五人未満の零細企業従事者が被保険者の大半を占めている状況でありまして、その負担力はますます弱体化しており、国保税の負担も既に限界に達しているということでございます。
 また、我が国の高齢化社会の進行をそのまま反映して、国保の被保険者の中に占める老人の割合が年々高まっております。老人の医療費は一人平均五十万円となっておりまして、一般の被保険者の約五倍を必要といたしますが、老人が増加する結果、国保が負担する医療費が年々増高し続けているのであります。
 これらの事態に対処するため、国においては五十八年度に老人保健法を制定、翌五十九年度には退職者医療制度が創設されるなど、被用者保険との負担の公平化が進められてきましたが、一方、五十九年度から国保に対する国庫負担率が従来の四五%から三八・五%に引き下げられたことが、国保財政の悪化に拍車をかけることとなったことは否定できないのであります。
 ここで、私の町、玉造町の実情について簡単に申し上げておきたいと存じます。玉造町は人口約一万四千人でございますが、このうち国保の被保険者数は九千人弱であります。この中で七十歳以上の老人は一二%強とおおむね全国の平均的な割合を占めております。しかしながら、老人医療費の拠出金は、五十九年度一億五千九百万円、六十年度一億八千百万円と著しい伸びを示しており、六十一年度は六月一日から加入者按分率が八〇%に改正されることを前提として、一億六千三百万円に減少することを見込んでおりましたが、法律改正の時期が大幅に遅延することになりましたので、一億八千四百万円を超える見込みであり、本年度においては財政的に大きな穴があく状況であります。
 また、極めて困難な事情の中で、住民の理解を得ながら国保税についても年々引き上げを行っており、対前年度比五十九年度四・五%、六十年度一五%、六十一年度三〇%というように、過去三年間で四九・五%に及ぶ引き上げを実施している状況であります。
 一方、私どもといたしましては、健康診査などヘルス対策、レセプト点検など、医療費適正化対策、国保税の収納率向上対策などに力を注いでいるところでありますが、国保の決算状況は年々悪化いたしておりまして、実質収支において、五十九年度は三百六十万円の黒字でありましたが、六十年度は財政調整基金二千万を入れましたのですが、なおかつ一千八百二十万余円の赤字を生じまして、基金の取り崩しによってようやくしのいだところでございます。
 このような国保の危機を打開するためにも、また急速に進行する高齢化社会に対処するためにも、今回の老健法改正は必要なものと考えておりまして、その早期成立を強く期待しているところであります。二十一世紀を活力ある長寿社会として築き上げるためには、長期的な展望のもとに、現在の社会保障制度を総合的に見直すことが必要であり、特に医療保険制度につきましては、適切な医療が安定的に保障される制度を確立することが大切でありまして、そのためには費用負担のあり方についても再検討されることは当然であります。
 また、今回の改正は、各保険制度間の給付と負担の公平化を目指すものでありまして、将来の医療保険制度の一元化への橋渡しとしての意義は極めて大きいものと思うのであります。
 そこで、私は、今回の改正事項のうち、加入者按分率の是正の必要性を特に強調したいと思います。
 御承知のとおり、現行の加入者按分率は四四・七%でありますが、その結果、被保険者一人当たりの老人医療費負担額は、組合健保は一万五千円、政管健保は一万八千円であるのに対し、国保は三万円となっておりまして、極めて不公平な負担関係と言わざるを得ません。これは、若い時代に組合健保や政管健保に加入していたサラリーマンが定年などによって退職いたしまして、一般的には国保の被保険者になるという制度上の仕組みでありますので、国保の中に占める老人のウエートが次第に高くなっているためであります。
 六十一年度現在における被保険者中に占める七十歳以上の老人の割合を見てみますると、組合健保は二・九%、政管健保は四・三%でありますが、国保は一二・五%という高い率を占めておりまして、この傾向は高齢化の進行に伴って今後ますます強まっていくことが明らかであります。
 老人医療は、国民のすべてが公平な負担によって支えていこうというのが、老健法の基本理念であります。今後の高齢化社会の中で、老人医療制度を安定的に維持していくために、この理念に基づいて加入者按分率を一〇〇%に改めることは、ぜひとも実現されなければならない重要な課題であると思います。
 この加入者按分率の改正については、衆議院において段階的実施を図るための修正がなされておりますが、負担の公平化という意味から、これ以上後退することは許されないものと考えます。
 また、今回の改正に盛り込まれている一部負担の改正につきましては、老人の負担をふやすという事柄でありますので、私としても心を痛めるところでありますが、世代間の費用負担の公平化、健康への自覚などの観点から、この程度の負担はやむを得ないものと考えております。特に入院時の負担については、家庭において介護等を受けている老人との公平という意味でも妥当ではなかろうかと思うのであります。
 なお、寝たきり老人などを対象として、医療と介護の機能を持つ老人保健施設を整備することも緊急な課題でありますし、国保税の悪質滞納者に対して給付を一時差しとめる等の措置を講ずることは、当然の措置であると考えます。
 以上、老人保健法改正案に対し意見を申し述べましたが、諸先生方におかれましては、国保の実態を十分に御理解の上、改正法が原案どおり早急に成立されますよう重ねてお願いをいたしまして、私の陳述にかえる次第でございます。何とぞよろしくお願いしたいと存じます。
 終わります。
○委員長(佐々木満君) どうもありがとうございました。
 それでは次に、日本労働組合総評議会生活・社会保障局長の前川哲夫参考人にお願いいたします。
○参考人(前川哲夫君) 総評の前川でございます。
 日ごろ国民生活に大変密接なかかわりを持つ社会労働委員会の先生方には、国民生活向上のために大変御努力をいただいていることに、まず初めに敬意を表したいと思います。また同時に、きょうこういった機会を設けていただきましたことにも、心から感謝を申し上げる次第です。
 私は、昨年の十月、老人保健制度の見直しについて、総評、同盟、中立労連、新産別、全民労協の労働五団体が統一見解をまとめましたので、この見解に基づいてきょうは参考人としての意見を述べたいと思います。
 今回の老人保健法改正の目的は、今後の本格的な高齢化社会において、国民が安心して老後を託せる制度を確立するためのものであるとされています。しかし、私どもはむしろ不安を募らせるものだと考えています。同時に、高齢化社会は社会の成熟そのものでありますし、文明進歩のバロメーターでもあると考えています。高齢化社会は、必然的に社会的コストが一定の増加をすることは避けられませんし、したがって、私どももそれ相応の負担の増を否定するものでないことを、まず初めに明らかにしておきたいと思います。
 しかし、今日の政府の対応は、社会保障の重要な原則である国の責任と負担を放棄するものと言わざるを得ません。国庫負担を削ることに夢中で、その費用を労働者の負担に転嫁し続けておりますし、このような政府の政策を私どもは認めることができません。今回の老人保健法の改正も、こうした政府の政策の象徴的なものだと考えている次第です。
 以下、幾つかの具体的な問題に触れたいと思います。
 第一は、老人保健法が施行されたのは、御承知のとおり一九八三年二月からです。発足後わずかに三年十カ月余りしかたっていません。
 しかも、老人保健法創設当時に想定した老人の医療や保健をめぐる諸条件には、ほとんど重大な変化はありません。こういう状況の中で、老人保健法を改正しなくてはならないという客観的な条件はないと言わざるを得ません。むしろ、老人保健制度の見直しの前に、医療制度や医療保険制度、医療供給体制の不備や矛盾について早急に改めるべきであると思います。現に、厚生省の幹部の方は、現在の国保、健保のままではやっていけないので、六十年代後半のできるだけ早い時期に医療保険制度の一元化という立場から全面的な制度改正を行いたいと表明しています。このような基本問題の検討の中でこそ、老人保健制度についても同時に見直しが行われるべきであって、当面の政府の予算編成や財源対策のための制度いじりは厳に慎むべきだと思います。なぜなら、こうした安易な視点からの制度改正は、制度に対する国民の信頼と政治に対する信頼を失うことになりかねないからです。
 第二の問題は、加入者按分率の変更問題です。
 政府は、各制度間の老人医療費を平等に負担させるための措置と主張しています。この主張は、老人保健法創設当時の国会における政府の見解や、とりわけ被用者保険の拠出金の急激な負担の増加を避けるために、参議院において修正された経過を無視するものです。また、老人医療費の拠出に当たって加入者按分率のみで行うということは、現行の制度の根本的な改正であると思います。制度全体の検討を前提として行うべきであり、老人保健法適用対象年齢を六十五歳からとするなど、幅広の検討の中で行われるべきものと考えます。
 さらに、今回の加入者按分率の変更は、国の負担を大幅に削減するための改定であると言わざるを得ません。これは労働者をねらい撃ちにした実質増税であると思います。私どもとしては、加入者按分率五〇%、医療費按分率五〇%という現行制度の本則によって拠出額を決めていただくようにぜひしていただきたいということを強く訴えるものです。
 第三の問題は、今回の改正が国庫負担の削減と同時に、国保に対する財政対策となっている問題です。
 国保が、六十年度の収支決算で一千七百七十億円の赤字ということは承知をしています。しかし、国保の財政対策問題と老人保健制度のあり方は明確に区分して考えられるべきです。このような立場から、国保財政にもっと国は責任を持つべきだと思います。
 例えば、退職者医療制度の創設に当たっての退職者数の見込み違いから削り過ぎた国庫補助率を、その分だけ是正をすべきだと思います。みずからの誤りを正さず、今回の按分率の改正でしりぬぐいをしようということは、まさに無責任そのものだというふうに言わざるを得ません。
 私どもの立場からすると、退職者医療に対する昨年度の拠出額は三千五百三十億円に達しています。今後は、少なく見ても毎年三十万人程度の対象者の増加と医療費の増加も考えなくてはならず、拠出金は増加の一途をたどることは明らかです。その上に老人保健法の拠出金の大幅増となれば、被用者保険は制度全体の二割余りを財政調整のために拠出金として支出することになり、将来さらに増加が避けられないとするならば、それは保険料による財政調整の限界を超え、被用者保険制度が危機にさらされることにならざるを得ません。こうしたことのあらわれとして、政管健保より高い掛金を払いながら、付加給付もできないので健康保険組合を解散したいとの相談が出始めるまでに深刻になっていることを申し添えなくてはなりません。
 また、退職者医療や老人保健制度を通して共同の事業を行っているという立場から、あえて国保の皆さんに対して保険料収納や所得捕捉の向上などについて一増の努力を求めたいとも思っています。
 なお、国保税の悪質滞納者に対する給付の一時差しとめについては、高額の滞納者に効果は期待できないと思います。納めたくても納められないような低所得者にとっては生死につながる問題でありますし、国民皆保険の立場からも反対であるということを明らかにしておきます。
 第四は、一部負担の引き上げについてです。
 老人の有病率が高いこと、複数の病気を持つ度合いも極めて高いこと、加えて老人保健制度加入者の大多数が年金収入を主としており、年金受給者八百五十万人のうち約七〇%が月三万円程度であるということからして、老人の受診率低下は目に見えており、結果として病気の重症化をもたらすなどの問題が派生しかねません。
 同時に、老人を抱える世帯の家計圧迫につながるなどのことから、賛成できません。今急ぐべきことは、一部負担の大幅な引き上げでなく、差額ベッド代や付添看護料、お世話料などの保険外負担の是正と保健事業の強化ではないでしょうか。
 なお、一部負担の変更をもしも行おうとするならば、所得や年金の伸び率など国民が納得し得る一定の条件を明確にした上で、この条件に基づいて一部負担の改正をするというルールを確立すべきだと考えます。特に、この一部負担については、老人保健法創設当時の国会審議で、老人の生活に過重な負担のかからない限度ということで現在の額が定められた経過があります。この額が、政府の主張するように、健康保険本人負担とのバランスや世代間の負担の公平に反するという意見は、私どもの職場からは全く出ていません。また、在宅療養者とのバランスという視点からは、今までは在宅療養に対する対策が貧弱で非常に立ちおくれていることを無視してのものであり、むしろ在宅療養者に対する訪問サービスや介護などの充実こそ優先させるべきだと思います。
 いずれにせよ、一部負担の大幅引き上げは、老人の生活を根底から破壊するだけでなく、老人保健制度本来の趣旨である予防、初期診療重視の医療に逆行するものと言わざるを得ません。
 第五は、老人保健施設についてです。
 私は、老人保健施設が一月二十日の老人保健審議会の諮問事項の中にあるのを見て驚きました。間違いではないかと見直したほどです。その理由は二つあります。
 第一は、昨年八月二日に中間施設に関する懇談会から出された、要介護老人対策の基本的考え方といわゆる中間施設のあり方についての報告の中で、さまざまな問題の指摘があり、この具体的検討が全くなされない中での余りにも唐突の提起だったことにあります。
 第二は、老人保健審議会の設置をめぐる国会審議の経過からして、老人保健審議会の権限外という疑問でした。
 さらに、法案として出されている老人保健施設の内容は、法律ができてから考えるという前代未聞のものです。私は、こうしたやり方は国会軽視も甚だしいと考えるものです。
 内容的にも、高齢化社会の先輩国である欧米諸国では、この種の施設がともすればうば捨て山になることへの反省から、既に削減や転換の方針を打ち出しているところも少なくないと聞いています。住みなれた家で暮らし続けたいという老人の願いに沿った在宅支援型を基本に入所型を従とする考えに立って、うば捨て山をつくったと言われることのないものを考えていただきたいと思います。また同時に、福祉施設についてもより重視をしていただきたい、こう思うわけです。
 私は、この改正案に、私たちの立場から見て何か評価できる点はないかということで真剣に検討しましたが、残念ながら何一つ見出すことができませんでした。
 以上のことから、重ねて反対の態度を明らかにするものです。また、老人保健制度が各保険者間の共同事業として、安定した運営と保健事業の充実により、所期の目的達成に向け有効に機能を発揮させるために一増の努力が必要であり、私どももそのための努力を続ける考えであることを申し上げたいと思います。
 最後に、良識の府である参議院の先生方が、この法案を徹底的に審議され、国民の老後に対する不安を除去してくださることを心から御期待申し上げて、意見を終わりたいと思います。
○委員長(佐々木満君) どうもありがとうございました。
 それでは次に、日本医師会常任理事の吉田清彦参考人にお願いいたします。
○参考人(吉田清彦君) 日本医師会常任理事の吉田清彦でございます。
 本日、老人保健法改正案につきまして意見を述べる機会を与えていただいたことを、深く感謝申し上げます。
 私は、老人保健審議会の構成、老人医療の一部負担金、保険者拠出金の加入者按分率、それからもう一つは老人保健施設に関して意見を述べさせていただきたいと思います。
 まず、老人保健審議会でございますが、この老人保健審議会は、法制定当時から保険者拠出金加入者按分率に関してのみを調査、審議するという審議会でございましたが、この改正案では、公衆衛生審議会にゆだねられております事項を除きまして、老人保健法にかかわる全般を調査、審議する審議会にと所掌事項が拡大されております。にもかかわらず、その構成は改められておりません。
 全国民が何らかの医療保険に加入している我が国の医療保険のもとでは、医療費は中医協で審議されることになっておりますし、また、公費医療についても、その診療報酬というのが準用されているのが現状です。
 しかるに、老人保健施設において行われます医療は、中医協ではなくて老人保健審議会で審議することになっているのは極めて私は不合理だ、こういうふうに考えます。今まで一元的に中医協で行われてまいりました事柄を、中医協と老人保健審議会とに分けて審議する必要性は全く認められません。
 また、老人保健審議会の構成は、改正案では改められておりませんし、また中医協と異なりまして、診療側というような委員がいない審議会でございます。このような審議会で医療費に関することを審議するのは極めて不適当であり、拠出金の加入者按分率の審議のみを対象としてきた審議会では到底適切な運営は考えられない、私はこういうふうに言えるのではないかと思います。所掌事項を拡大した老人保健審議会は、拠出金に関することのみの審議会構成から当然改められてしかるべきだと考えます。
 次に、一部負担の増額についてですが、衆議院審議では外来一カ月千円という原案から八百円に改められておりますが、私は一部負担増額には反対でございます。
 老人保健法による医療の対象者は、昭和六十年では約八百万人を少々超えた数だと思います。昭和六十年度の国民生活実態調査、厚生省で行われたものだと思いますが、これによりますと、ひとり暮らしの老人世帯というのは百十五万、こう言われております。老人二人だけの世帯でも百七十万世帯となっております。老人の中にはもちろん裕福な方あるいは高額所得の方もいるでございましょうが、高齢者世帯の一カ月当たりの平均収入は約十八万円にすぎません。そういう数字になっております。現在の福祉年金というのは、御承知のとおり月額二万四千八百五十二円でございますか、それから国民年金にしても二万六千円を少々超えたのにすぎません。一部負担の増額はやはり過酷だと、こういうふうに思います。
 厚生省が行いました昭和六十年の国民健康調査を見ますと、二十五歳から三十四歳までの青壮年の年齢層の人口千人に対する有病率は五五・七と、こういうふうになっております。七十歳以上の老人は五五四・二でございます。実に九・九五倍でございます。一部負担を増額すれば、その金額に比例いたしまして受診が抑制されるというのは明らかなことです。
 昭和初年、当時の内務省の職員でありました長瀬氏が保険の給付率と受診との関係を統計的に示している論文がございます。現在でも厚生省はこの計数をいろいろな面で参考にしているのではないかと、そういうふうに思いますが、昭和五十九年十月以来の健康保険本人の一割負担でもこのようなことは明らかでございます。早期受診、それから早期の治療、疾病の予防、健康の管理の重要性ということを考えますと、現行の一部負担を増額すべきではないと、こういうふうに考えます。入院時の負担にいたしましても、現在の老人の社会的な環境、収入等を考慮いたしますと、これは増額するのは適当でないと、こういうふうに考えております。
 次は、保険者拠出金の加入者按分率についてでございます。
 健康保険制度が発足いたしました昭和初年の当初は、労働者の福祉対策と申しましょうか、あるいは労働力の保全というようなこともあったように聞いております。したがって、家族療養の給付というようなものはなかったわけでございまして、これは発足後十数年の後のことでございます。いまだに企業内の福祉とかあるいは労務管理というような面も考えられているのかもしれませんが、現在は平均寿命が八十年近くの長寿社会です。医療保険は、私は社会保障の一環である国家的制度と思います。平均寿命が四十歳代のころにできました健保制度というものとは、その本質を異にしております。したがって、制度間の拠出の平等、こういうことではなくて、やはり全国民が公平に老人の医療費を負担するというのが本筋ではないかと、こういうふうに考えます。速やかに一〇〇%にすべきと思っております。
 次に、老人保健施設、これについて述べさせていただきますが、老人保健施設は大変多くの問題を抱えています。
 まず、幾つかございますけれども、第一点は、この改正法案によりますと、医療法で言う病院、診療所ではないとされております。我が国の医療制度のもとでは、病人を収容し継続して医療を行うところを病院、診療所と、こう言っているんです。そして、もろもろの規制が定められているんです。病院、診療所以外では病人を収容して継続して医療を行えないというのが日本の制度なんです。これを否定して、医療法の規制を受けないところで医療を実施できるようにするのは、やはり私は医療制度の根幹を百八十度転換する重大なことではないかと、こういうふうに思っております。この重大性はもっと私は認識されるべきではないかと、こういうふうに考えております。
 医療法の規定には、病院とか診療所のほかに助産所というのがございます。これは分娩を取り扱うところです。分娩は疾病ではなく正常な現象と、こういうふうにされているので、別に助産所には医師の管理者もおりませんし、医師の常勤も規定されてはおりません。それでも医療法に規定されているんです。老人保健施設は、少なくとも寝たきり老人である病人を対象とする施設です。施設療養というのは、この改正案の第四十六条の二にも定義されておりますが、「看護、医学的管理の下における介護及び機能訓練その他必要な医療」をするとされているものです。これで見ますと、看護、介護、機能訓練その他必要な医療は病院で実施されるべきものです。現在の病院でも同様なことが行われているんです。これからの病院でも私は行われるだろうと、こういうふうに思います。
 医療法に言う病院、診療所でないとすることは、いかにも私は乱暴な話だと思います。医療制度の秩序も何も無視したものだと、こう言わざるを得ません。こんなことでは、現在アメリカを初めとしていろいろな諸外国からの参入ばかりでなくて、国内企業からも、我が国の医療は営利企業の対象とされてしまう危険が生ずるということを懸念いたしております。やはり医療法に規定すべきだと、こういうふうに考えます。
 第二点は、これも改正案の四十六条の二の四項にございますが、施設療養費の額は定額とし云々と、こういうところがございます。
 現在、特別養護老人ホームは、地域差はありますけれども、生活費相当分はほぼ定額です。しかし、医療についてはこの特別養護老人ホームでも定額ではございません。これが今後併存するわけですが、入院加療の必要のない者といっても、老人保健施設に収容されている対象者は病人なんでございます。老人の特性として容体が急変しやすく、あるいはまた突発的な事態や緊急的な合併症の危険は多いのが当然です。おすしを食べていて、のどに詰まらせて窒息したと、こういうような人がいたこともまた事実でありましょう。昔、有名な方でそういうことがあったように新聞で報道されたことがございます。老人は、感冒といってもいつ肺炎に移行するかわかりません。心筋梗塞とか脳卒中といっても、必ずしも予告されてなるような病気ではございません。速やかにそういうときには病院に転送しなさいと、こういうことを言われても、現在の日本の医療事情では右から左に収容できる病院ばかりとは限りません。それも何もすべて定額というのは、私は医療を受けさせない、医療制限に通じるものだと、こういうふうに考えます。
 現在、制度は出来高払い制という制度になっておりますけれども、この制度は、いかなる容体になっても患者さんには医療を保障し、そしてまたそれを行った医師には支払いを保障しているという制度なんです。患者さんの立場から、患者さんを第一義とする私は制度だと、こういうふうに思っております。医療保険というのは、やはり患者さんのためにある制度なのです。どうしてもこういう老人保健施設で、自分の施設内で緊急やむを得ない医療が必要なことは絶対ある、こういうふうに思います。よそから医師が来るなら、よそから医師が来てそれで医療を行うなら支払うけれども、施設の医師であったら支払わないというようなことは、これは絶対避けるべきだと思います。医療に関することもすべて定額というのは、こういった見地から私は改めるべきだと、こういうふうに思います。
 第三点は、施設の管理者についてでございます。
 改正案の四十六条の七でございましたか、では、「老人保健施設の開設者は、」「当該老人保健施設に係る施設療養に関する業務を医師に管理させ、又は自ら管理しなければならない。」と、こうなっております。施設における老人の生活については管理外と、こういうふうにされております。施設療養というのはやはり医療に関することなんでございまして、医療に関することを医者が管理するのはこれは医師法などでも明らかなことで、しごく当たり前のことでございます。老人保健施設における施設療養は、収容されている老人の生活全般を通じて管理が行われて、初めて私はその実を上げることができるのではないかと考えます。施設の管理責任者は医師でなければならないと、こういうふうに思います。
 第四点は、昨年医療法が改正公布されました。各都道府県では地域医療計画というのが策定されまして、病院病床の必要数以上と算定された地域では、新設あるいは増設が知事の勧告により規制されるというようになろうとしております。
 問題は、この老人保健施設は、改正の原案によりますと、一定の比率で病院病床として算定はしますが、知事の勧告の対象とはならないと、こういうふうにされていることです。要するに、老人保健施設は病院病床と違って新設、増設は無制限ですが、一たび建築されたら病院病床に算定するというものなんです。これは明らかに論理的にだれが考えても私は矛盾だと思います。余りにも露骨な厚生省的な理論と言うより理屈と言うべきだと私は思っております。病院病床として計算をするなら知事の勧告の対象とし、あるいはまた知事の勧告の対象としないなら、これは病院病床として計算すべきではないでしょう。こういうことが非常に問題としてあるということを指摘しておきたいと思います。
 このほかにも、老人保健施設には幾つもの問題点がございます。規模のこともございます。それから建設の基準のこともございます。あるいは、特別養護老人ホームとの相違点は一体どこなんだろうか。今までのいろんな点を見ますと、病院と特別養護老人ホームの中間といいますと、収容されている患者さん、あるいは老人一人当たりの平均の面積というのは、特別養護老人ホームの方が病院よりは広いんです。こんなことじゃ恐らく私は、こういう施設は期待しているだけできないんではないかと、こういうことを懸念するわけです。
 このようにいろんな問題がございますし、費用の算定にいたしましても、一体何を算定基準にするかということも余り明らかにされておりませんし、また重大なことは、これは福祉と一体のものだ、こう言われますが、福祉関係からは全く費用の負担がないということもやはり私は問題の一つだろうと、こういうふうに思います。もっと慎重に審議が掘り下げられて進められるべきではないかと、このように考えております。
 これから高齢社会を迎えるに当たりまして、老人への施策というのは、やはり国家財政とか医療保険財政のバランスの面から見ているだけでは私は適切なことはできないんではないか。やはり老人の置かれている社会環境、老人医療、それから老人保健、こういうようなものの実態に根差した視点からの施策であってほしいと、このように思っております。
 以上でございます。
○委員長(佐々木満君) どうも大変ありがとうございました。
 以上で参考人各位の御意見の陳述は終わりました。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
○糸久八重子君 参考人の皆様方には大変貴重な御意見をお聞かせいただきまして、ありがとうございました。有吉参考人と坂本参考人にお伺いをさせていただきます。
 有吉参考人には二つございますが、今回の改正は第二臨調答申の実践であるとの主張がなされておるわけでございますけれども、この点につきましてはどうお考えでございますか。
 それから二番目といたしまして、被用者保険における使用者負担と国保における国庫補助を同じものと見るべきと主張をされておりますけれども、この点についてはどうお考えでございましょうか。
 坂本参考人に二つございます。国保の国保税滞納者に対する給付の停止措置によって、国保税の収納率を高めることがどのくらいできますでしょうか。
 二つ目といたしまして、高齢者の医療費一人当たりの平均が五十万と言われているわけでございますが、その医療費適正対策に力を注いでいるという御意見がございましたけれども、玉造町といたしまして具体的に行っているヘルス事業でどのくらいの健康な高齢者づくりに寄与していらっしゃいますでしょうか、お聞かせいただきたいと存じます。
 以上でございます。
○参考人(有吉新吾君) 御質問の第一問は、第二臨調の考え方に沿った改正であるかどうかと、こういう御質問かと思うのでございますが、老人医療費というのは膨大な増加を示しておりまして、やはりこれを何とかしなきゃならぬと、これはもう臨調関係におきましても言われておりますところでございまして、やはり医療費の膨張をいかに抑えていくか、こういうことはこのまま放置しておきますともう大変な問題になるという、そういう認識があるわけでございますので、その意味から一部負担というような問題もある程度やむを得ないんじゃないかと、こう私どもは考えておる次第でございます。
 ただ、さっきの陳述でも申し上げましたが、加入者按分率を引き上げるという、こういうことが一つの大きな柱になっておりますのですが、これは結果としては国保の財政の援助になっておりますのと、それから国の負担がその分だけ減っているわけですね。それは結局企業と労働者に転嫁されている、こういうようなことでございまして、私どもは国の支出を減らすという、そういう線は臨調あたりでも考えている線かもしれませんけれども、それを事業主と労働者にしわ寄せするというのはこれはおかしい、こういう考え方でございます。
 それから、第二番目の御質問が、被用者保険における事業主負担と国保の場合の国庫補助とは同じであるとおっしゃったように伺いましたが、私はもう全然違うということを言っているわけでございまして、国保の御主張は、あるいは厚生省もそうなんですが、国保におきましては確かに国庫補助があると。それを差し引きまして、差し引いた後の一人当たりの負担、加入者一人当たりですね、それと組合健保の場合の、組合健保には事業主負担というのがあるわけでございますので、事業主負担を差し引いて加入者一人当たりを出すと、一〇〇%にすることによってほぼ等しくなると。これは厚生省の考えでありますし、国保サイドでもそれが負担の公平である、こういうふうに言っておられるわけでございますが、私どもは、国の補助という補助金とそれから事業主負担という保険料というのはもう全然違うんだ。だから、それを差し引いて、その差し引いた結果が一人当たり同じだというその論法はもう全然違っておる、こういうことを言っているわけでございます。
 それで、話は少しそれますけれども、御質問でございますからちょっとお答えいたしますが、現在の老人保健の制度と申しますものは、被用者保険とか国保とか、こういう制度からの拠出金で財源を賄おうとしているわけです。でございますと、公平ということを考えます場合には、その拠出をする各制度にとって公平かどうか、こういうことになるわけでございますが、国保の場合には国の補助金が出ておるわけです。補助金というのはこれはもう当然負担ではございませんから差し引くようになる。組合健保の場合には被用者と事業主がともに出し合っておりますが、ともにこれは保険料であります。制度としては補助金は全然ないわけでございます。それで、そういう考え方に立って、現行制度がその制度間の拠出というそういう上に立っておる限りにおきましては、制度間の負担の公平というのを考えるべきではないか、こういうことを私どもは言っているわけでございます。
 これは、よくここが非常に誤解をされるんでございますが、もし全然今の制度を覆しまして、個々人の負担の公平という立場に立って考えるというのであったら、国民全部老人になるわけでございますから、もう全然今の制度を御破算にしまして、各人個々人に例えば目的税とかそういうものを課して老人保健事業というものをひとつやったらいいじゃないか、これも一つ大きな検討項目ではないかと私は思っておるわけでございます。そういうことになりますと、事業主負担だとかそういう問題の入ってくる余地はないんです。個人個人の負担を所得に応じて負担をしたらいいじゃないか。それで、補助金等はそういう負担の能力のない人に対する給付ですね、こういうものに対しまして補助金というものはひとつ考えていく。個々人をベースにするならば、もう全然違ったこういう一つの制度というものを考えるべきではないか、こう思うんでございます。こういうことでございます。
○参考人(坂本常蔵君) 糸久先生の質問にお答えをしたいと存じます。
 私に対しましては、国保税滞納者に対する保険証差しとめみたいなことで収納率が上がるかどうか、これが一点と、ヘルス事業によって老人医療が軽減されるかどうかという、この二点だと存じます。
 国保税の滞納者の内容を分析してもらう必要があると思うんです。要するに、国保加入者については低所得者がおりますが、国保税は上限、下限があることは御案内のとおりであります。そして、まず、当然所得が少ないとすれば、これは減税の規定あるいはその他のことがあるわけであります。
 さて、滞納の主なるものは何であるか。私ども玉造町の例で見ますと、案外低所得者の人は滞納しておりません。していない。滞納しているというのは、当然払えるというような人が滞納しているんです。もう一つはどうかというと、一番滞納の多いのは東京都とか水戸市とか、都市の方が多いんです。これは転入、転出がありますね。移動して、追跡調査して、税金取れないということがあるんです。これは滞納の主なものに二つあるんです。ですから、農村部というのは比較的人間が温厚でありますから、私の町なんかだって滞納は少ないんです。私の郡で一番滞納の少ないのは私の町ですからね。しかし、都会化したところというのはうんと滞納が累増しているのが現実の姿なんです。その内容を分析してみると、必ずしも低所得者が滞納しているかというと、意外にそうでないんです。今の高額医療というのは、盲腸を切っても大体高額医療になりますからね、今は。昔は盲腸なんかで高額医療にならぬ人が、今は当然になっておりますね。それによって、そのとき一年ぐらいは、高額医療のときぐらいは我慢して払うようですが、その次はまた滞納するという人がやっぱりあるんですよ。
 このことについて、かつて勝田市で、これは厚生省にしかられたようでありますが、滞納者に対して保険証を交付しなかったことがある。これは厚生省からしかられたらしいんです。しかし、その効果は、確かに金を持ってきて払えばこれはやるんですから、一時催促ですから、滞納分を持ってくるとまたそれは交付するということだから、それによって非常に効果を上げたという実例があります。
 私は、この滞納者については、当然収入が少なくて苦しくてというのは、我々第一線にある町村長として、あるいは担当者として、これに対してまで悪質だと見る人は常識的にいないと思うんです。これは納められるというのが前提でありますから、これに対しては私は当然悪質だとしてやらなかったら、これはどこまでたっても――まあ補助金の問題はありますが、私たちはうんと滞納が累増いたしましたら支払い停止しようかと思っている、先生方に。本当でしたら、支払い停止したら一番困るのは私は先生方だと思うし、本人の方だと思うんですよ。
 この国保というものについては、いろいろ補助金もあります。四五%が三八・五になりました。三〇・八は、これは御案内のとおり、そういう市町村に対しましての定額、あるいは七・七が調整交付金になっておりますけれども、やっぱり一番問題というものはこの四五を三八・五に下げたことが一番なんですけれども、しかしこれ以上に滞納が累増したなら、私は国保財政というものはストップするだろうと思う。今は恐らく九〇%、八七%あるいは八五%というように年々収納率が低下しているんです。これに対する対策をどう考えなければならぬかということも国保財政立て直しの大きな問題だと、私はこのように思うわけです。ですから、私は一つの手段として、永久にこれは保険証を交付しないわけじゃない、悪質な滞納者に対して交付しないということだから、国保の財政を確立するために、皆保険であるという政治能力が私は必要だと思います。
 次に、ヘルスの事業でありますが、三十六年に皆保険になりました。国民健康保険。それ以来、私は保健施設事業、これについて、私は母子健康センターを三十四年に建てました。現在私の町では保健センターも持っております。長命化社会、高齢化社会になったとしても、畳の上で死ぬことが一番幸せである。家で孫や子供に囲まれて畳の上で逝くというのが理想である。ですから、自分の体については健康診断を十分にやる。これについては病気にならないように注意をする、病気になったなら早目に医者にかかる、早期発見、早期受診、これがもとなんです。
 国保の財政の分析をしてみますると、まず我々の町の外来と入院の比率を見てみると、大体歯医者なんというのは玉造町あたりでは二%くらいですね。二%までありません。外来が何%で入院が何%かというと、老人は大体入院しているのは私の町では五六%あります。外来は四四%なんです。外来と入院の場合、外来の方に支払いが多いときには必ず保険税は軽減いたします。入院の方が高いときにはそのときの国保財政は悪化してくるんです。これは私はデータを持っていますから後で必要なら私の町から届けますけれども、そのような事実が出てくるんです。ですから、このヘルス事業というのは重要なんです。保健施設というものは何としてもやらねばならぬ。そして入院患者を極力防ぐことである。軽症のうちに治すということの精神でやらなかったならば、保険財政というものはやっぱり立っていかない。
 私は、かつて五十五、六、七年の三年には保険税を毎年減税していった実績を持っています。しかし、昨今における高額医療その他の問題を見ますると年々ふえています。私どもは過去においては、茨城県において最高の保険税を賦課した時代もありました。しかし、最近では県内でも少ない保険税であります。私どもの郡内で一番最低の保険税をかけているのが私どもの町であると私は信じています。しかし、それにしても医療費の増し高というものは、先ほど言いましたとおりに四九・五%も三年間に引き上げざるを得なかったという問題。これは一つは医療費の増し高の問題、いわゆる国の補助金が四五%から三八・五%になったということが大きな理由であろうと私は思います。
 このたびにおける老人保健法については、私は少なくともこの按分率の問題、当然私は一〇〇%にすることが必要であるというようなことを確信してお願いしている次第でございます。
 以上であります。
○千葉景子君 本日は、参考人の皆さんに大変貴重な御意見をお聞かせいただきましてありがとうございました。何点か質問をさせていただきたいと思っております。
 まず第一点目でございますけれども、今後高齢化社会を迎えるに当たりまして、将来に向かって老人医療あるいは介護がどのような形になっていくか、あるいはどのようなものが適切であるか、こういうことについての御見解をお聞かせいただきたいと思っております。
 加地参考人と吉田参考人にお尋ねいたしますけれども、イギリスなどでは在宅医療などが今中心になってきております。我が国において二十年後、三十年後の老人医療、介護などの見通しといいますか御見解、これについてお聞かせいただきたいと思います。
○参考人(加地夏雄君) 私は医療の専門家ではございませんので、高齢化社会に向かって御質問のように将来の老人医療なり介護がどういう方向に行くのかという点については余り的確にお答えはできないのでありますけれども、一点だけ。
 むしろ医療保険制度を長期的に安定させなくちゃいけない、こういう観点から、例えば今回の改正で中間施設、老人保健施設の構想が出ております。これは確かに、諸先生方はもう十分御理解いただいておりますように、今日の日本の老人施設の関連、これがまことに不備であるということもございましょうし、また日本の医療における入院が、言うならば社会的入院というふうな問題も相当ふえておる、こういう実態があります。その意味で私どもは、これからますます老人がふえていく社会の中で医療保険を長期的に安定さしていくためには、医療機関の入院というものを純化すると申しますか、必要な入院はもちろん病院に入院する必要がございましょうけれども、中間施設のようなものに積極的に取り組むことによって全体としての医療費の負担を下げていかざるを得ないのではないか。私は財政の面からそういうことを考えておりまして、先ほど申し上げましたように、ぜひともこの中間施設は市町村が積極的に取り組むべきである、こういう観点からぜひ今回の改正法を通していただきたい、こういうことを申し上げたわけであります。
○参考人(吉田清彦君) 中間施設が必要であろうというのは、日本医師会でもやはり必要だと思っております。
 それは社会的な環境もございましょうし、また、こういう高齢化になってまいりましてからの今の世の中の家屋の構造とか、あるいは家族の構成なんかを考えましても、そういった中間施設というのは今後とももっと必要性が増していくのではないか。ただしかし、それは単に寝たきり老人だけではない。もっと大切なのは痴呆老人、言葉は余りよくありませんけれども、そういう多少ぼけのひどい人、ぼけを伴っている老人の方が、私は各家庭に置いたらもう非常にいろんな処置が大変だろうというふうに思うんです。
 また、現在こうやって老人問題を老人保健施設だけで片づけようとはもちろん思っていないかもしれませんが、今私どもが医療の現場におりますと、それぞれの家庭のお嫁さんの問題ですね。女性の問題ですよ。それはなぜかと申し上げますと、私どもが往診やなんかに行ったり診察に当たっても、大体介護しているのが男性であるということは極めてまれです。ほとんど女性でございます。そういう面からも、私は今後中間施設というものがこれからの日本には大変必要であって、そこにやはり一つの視点が置かれるということは理解できるのでございます。
 ただ、アメリカのような中間施設、いわゆるナーシングホームというのが大変いろいろな面で伝えられておりますけれども、必ずしも私は正確に伝えられていないというふうに思います。と申し上げますのは、どうも日本に伝えられますのは大変代表的で立派なナーシングホームだけ伝えられてくる。しかし、そうじゃないものもたくさんあるということ。また、アメリカでは、それが営利企業形態でもってやられておりますので、ある意味では、これは言葉が悪いかもしれませんけれども、そういったものに対する一つの、まあはぎ取られてしまっているような現象もなきにしもあらずということが私はあるだろうと思います。
 一方また、在宅医療というものがますますこれから強調されてくると思うんです。しかし、今日まで在宅医療が低調であるというのは、在宅医療に対して極めて今の保険制度の給付は悪いということです。在宅でいろんなことをやるのなら入院さしちゃった方がいろんな経済負担もないし、いろんな給付がはるかにいいということです。ですから、入院やなんかの一部負担を引き上げて、入院の給付をいろいろ実質的に引き下げてそれを行うというよりは、私は在宅医療の給付をもっと引き上げてやるべきだと思う。そうすればかなり違ってきます。
 それから、先ほども申し上げましたけれども、お嫁さんの問題だ、こう言ったのは、大体最後まで極めて高齢になったお年寄りをお世話しているお嫁さんには相続権も何にもないということもあります。これはもちろん厚生省の施策だけでできる問題ではないと思っておりますが、そういった周辺のいろんな社会的な制度も、こういった観点から、高齢化社会がもっともっと進むということの観点から、私はやっぱり直していかなきゃいけないのではないか、こういうふうに思っております。
○千葉景子君 それでは、前川参考人に一点お尋ねしたいと思いますが、先ほどの御意見の中で、一九八三年の二月から施行されましてまだ三年しか経過していない、条件にも変化がないときに安易な目先の改正などはむしろ制度に対する不信などを募らせるというお話がございました。そして医療制度、保険制度などの見直しにむしろ検討すべき事項があるというような御意見でございましたけれども、何かこの点で具体的にお考えになられるような点がございますでしょうか。
○参考人(前川哲夫君) 私の立場から申し上げますと、率直に申し上げて、労働組合の関係者は従来は被用者保険の制度のことだけ考えてずっと暮らしてまいりました。そしてある意味では、その制度が悪くならないように、こういう視点からだけで対応してまいりましたが、やはりこういう時代になってきますと、国保も含めて全体の医療保険制度をどういうふうにしていくのか、この視点をしっかり持たない限り私どものやっぱり医療保険制度に対する安定というものはないということを痛切に感じて、運動面でもそのことを今軸にしていろいろな論議をしています。
   〔委員長退席、理事岩崎純三君着席〕
 そういう論議をしている中でやはり気になりますことは、医師会の方は制度の一本化というお言葉で制度改革をお考えですし、それから厚生省の方は一元化ということでお考えになっておられるようですし、同時に、閣議決定されました「長寿社会対策大綱」の中では、大変言葉としては何といいますか立派な部分が感じられるんですが、具体的にどうなるのかというと、ほとんどそれは見当がつかない、しかもどの省庁で具体的にどういうふうにしていこうかという細目がないというそういう問題を持っています。そういう点でぜひとも、一つは、高齢化社会に向かってあの大綱なら大綱について全国民の中に論議をおろす、具体的にしてもらう、こういうやっぱり国は施策をきちんとすべきだ、まずそれが一つですね。そして、その中で国民合意をどういうふうに得るのか。いずれにしろ、私ども負担を全く拒否するものでないということを申し上げていますが、そういう中で負担も含めて考えていきたいものだ、こういうことが一つです。
 それから具体的な中身で、例えば医療保険制度の今置かれている状況で、御承知のように大体十七兆円程度の医療費ということになるわけですけれども、このうちの約三〇%が薬価だというふうに言われています。この薬価、五兆一千億ぐらいになるんでしょうか、これはもう厚生省の幹部の方が公式の場面でおっしゃっておりますけれども、そのうちの二〇%がいわゆる薬価の価額差だというふうに言われているわけですね。これは二〇%というと一兆円ですから、今回の老人保健制度の論議の金額と比べてみても遜色のないそういう金額になってくるわけですね。こういう問題をどういうふうに具体的にきちんと処理をしていくのか。医師会の吉田先生おいでですが、吉田先生の立場から見れば、技術料をどう評価するのかという問題も当然ついてまいると思いますけれども、私どもとしては、何かまだまだ急いでやらなければいけない問題が多く含まれている、そしてそれらを一つ一つ解決していかなければ、制度を一元化していく、あるいは一本化していく、そういうふうに言っても国民合意というのは極めて困難なのではないのだろうか、そういう気がしてなりません。ですから、もう早目に全体の国民の中に論議をさせる、そういうための国の施策を強く求めたいわけです。
○千葉景子君 それでは時間も残りわずかですので、先ほど有吉参考人の方から負担の公平という問題についてかなり詳しく御意見ございましたので、加地参考人、見坊参考人、坂本参考人、前川参考人、吉田参考人、それぞれに、ごく簡単にですが、今回の法案では負担の公平ということが大変言われているわけですけれども、私など、負担の公平といいますと、収入の多い者が多く負担し少ない者が少なく負担するといいますか、それが国民感情としては非常に素朴な公平感ではないかと思いますけれども、その辺の負担の公平ということについてはどういうお考えか。簡単でよろしゅうございますので、それぞれお答えいただければと思います。
   〔理事岩崎純三君退席、委員長着席〕
○参考人(加地夏雄君) おっしゃるような負担の公平は当然重要なことでありますが、今老健法の仕組みの中で考えます場合、それは制度間の拠出ということで成り立っておるわけであります。そのベースは、先ほど有吉参考人がおっしゃったことについては私は全く理解ができない。つまり、今の制度は皆保険、強制保険でありまして、国民がどの保険に入るかという選択は許されない。そういう中で大事なことは、国民がどの制度に入っておっても等しい保険料を持つ、これが私は基調であろうと思います。その意味では、比較をする場合には、加入者が払う負担金か、あるいはもし保険料をお入れになるならば、それに見合うものである国保の国庫負担を入れた金額で比較をする、これが通常社会保険の常識として言われている私は比較であろうかと、こう思っております。
○参考人(見坊和雄君) 先ほど意見の中で申し上げましたとおり、強い者が弱い者を助ける、こういう趣旨でございまして、能力に応じて負担することが真の負担の公平であると考えております。
○参考人(坂本常蔵君) 国保の仕組みから私は申し上げたいと思いますが、国保と他の保険を考えてみますと、二十歳以下は大体同じぐらいですね、構成的に見ますと。二十歳から約五十五歳、六十歳、これはもう他の保険の方がうんと多うございまして、国保は少ない。これが五十五歳、六十歳の退職後になるとずっと今度は国保の方が多くなるんですよ、加入者で。ですから、老人の占める率は、先ほど申し上げたようにうんと多くなるんです。今後将来的にも、今の仕組みでいきますと、あるいはお勤めを終わった、会社をやめたという方がみんな、弱者、収入の少ないのが国保へ来るわけです。本当に公平なら、その人たちが一生懸命会社のため、あるいは役所のため働いたのですから一生雇用してくれれば一番公平なんです。しかし、これは入っておった場合でも、定年になりましてから全部町村の国保へ加入してくるんですよ。
 これが老人医療については、私はこれはどういうことかというと、大体私の町の去年の十二月の金で言いますと、十二月のときに五十五歳以下は一人七千八百円です。五十五歳から六十九歳の金額では一万一千二百円なんです、老人医療については。七十歳以上は一人当たり二万七千六百円というのが、玉造の一月の医療費のかかり方なんです。これがどんどんどんどんふえていきますね、国保については。黙っていれば、会社をやめたのは今の制度では永久に見てくれなくて国保へ来るんですね。全部入ってくるんですから、収入の少ない低所得者の人が。しかも、年とれば当然病気になるのが多いんです、今の医療費でわかるとおり。ですから、これはお互いにこの老人の問題、それぞれの場所場所において、ただ国保だけで背負うのでなくて、按分率について四四・七じゃなくて、これは一〇〇以上になることはないわけですよ。一〇〇になれば六十九、六十九、六十九でこれは持つということになるんですね。ですから私は、按分率というのは一〇〇%が正しいんではないか、これがお互いの老人医療を考える道でなかろうか、これが本当の公平な医療費の分担であろうと、こういうふうに思うわけでございます。
○参考人(前川哲夫君) 私は見坊さんと同じ意見です。それと同時に、今度の老人保健法の改正問題の中で、日本人は昔から一つの知恵として三方一両損ということを言ったわけですが、今度のやつは二者が全く、お年寄り、患者とそれから被用者保険が出して、そして政府だけが得をするという、こういうやり方が最大の混乱の原因だと思いますし、そういう意味では極めて不公平な改正だ、こう思っています。
○参考人(吉田清彦君) 日本の今の健康保険制度というのは御存じのとおり公的保険でございますが、これは強制加入で選択ができないわけです。しかも、人間はどこに住んでおりましても、あるいはどんな職業についても、あるいは定年のあるところないところ、いろいろありましょうけれども、最後はやはりだれも年をとるわけです。ですから私は、負担というのはしょせんその人間の懐から出るものでございますから、やはり個人の負担に主眼を置いて制度というものは改めるべきじゃないか、こういうふうに思っております。
○関口恵造君 それではごく簡単に御質問を申し上げたいと存じます。
 歯科治療の問題点を考えましたときに、寝たきり老人の治療ということが非常に大きな課題の一つになっておるわけでございます。そして、その中には障害を持った人、あるいは脳卒中後遺症等の後でケアが行われておるというような状態、それに現在全身疾患で治療中という、それぞれの分野があるかと存じますが、殊に三番目のケースの場合には急激な変化等を伴うわけでございまして、非常に私どもといたしましては重大な関心を持っておるものでございます。
 老人の生きがいは食べること、食べられること、いわゆる味わえること、話せること、これが栄養改善につながりまして、外見がぼうっとしたような状態になっているお年寄りがしゃっきりとしてくるというようなことがしばしば見受けられるものでございます。また、いわゆるもぐもぐ病ということがございますが、オーラルディスキネージアというあれでございます。これは今は薬でとめているわけでございますが、これを入れ歯を治しますと……
○委員長(佐々木満君) 関口さん、どなたに御質問ですか。
○関口恵造君 吉田先生に御質問申し上げるわけでございますが、義歯を治すだけで約七、八割の人が治る。また、そしゃくと全身関係でございまして、咬合が非常に低くなるというようなときに顎関節症が起こる。それが肩凝り、偏頭痛、激痛というようなことで非常な障害を伴うことがあるわけでございます。
 先ほど吉田先生のお話を聞いておりまして非常に感銘を深くいたしましたのは、中間施設の中におきます医療サービス、また福祉サービス、いろいろございますが、定額の枠の中に入れ切れないそのものについて、医療サービスについては出来高払いで払うべきであるというお話がございました。これには私も全面的に同感であるわけでございます。こうした点について、当然と思うわけでございますが、先生にお伺いを申し上げたいわけでございます。
 なお、先生のお話の中に、一部負担金についても現在の状況よりもさらに改善をすべきであるというお話がございましたけれども、これにつきましてもまことに同感でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。
○参考人(吉田清彦君) 施設療養費が定額であるということについては先ほど意見を述べたわけでございますが、定額ということはこれは全部ひっくるめてしまうことでございまして、やってもやらなくても同じ、こういう意味でございますから、当然医療が行われなくなるという可能性が非常に強い。現実に、今も申し上げましたように、例えば在宅医療というのがなかなか低調であるというのはこれは給付が低いからなんで、給付がないからで――ないわけじゃないんですよ、あるんですけれども、もう極めて入院に比べて低いからでございます。だから、こういったことをやはり定額というような中でひっくるめてしまいますと、私はこの施設においては極めて医療の質が低下するんではないかと思っている。
 そういう観点からも、いろいろな事態の起こる老人というような人たちのことを考えたらば、医療に関することは決してこういうふうに大きく丸めて生活費の一部だなんという考え方はやめていただきたい、こういうふうに思っております。
○石井道子君 石井道子でございます。
 きょうは参考人の皆様方、大変お忙しい中をわざわざお出かけをいただきまして、心から感謝を申し上げる次第でございます。
 最近は長寿社会対策というものが大変重要になってまいりまして、いろんな角度から検討をされておりますし、人生八十年時代にふさわしい経済社会システムを構築する必要が叫ばれているところでございます。今度の老人保健法の改正はその一つの重要な柱であるとも思うわけでございますけれども、老人医療費がますます高騰をしておりますので、国保財政というものが大変危機にさらされているということでございます。そして、加入者按分率の引き上げの問題もあるわけでございますが、国保の赤字体質を改善するためにどのような方法が必要かどうか、このことにつきましては加地参考人、それから坂本参考人にお伺いをしたいと思うわけでございます。国保の取り扱う範囲が大変狭い範囲であるということがその原因であるということで、広域に取り扱うべきではないかというふうな御意見もありますし、あるいはそのほか医療保険制度の抜本改正というものがありますけれども、さしあたってはそのような対策についてお伺いをしたいと思うわけでございます。
 それからまた、加入者按分率の引き上げについては拠出をする側については反対というような御意見があるわけでございますけれども、現在の社会保障制度の見直しが進められる中で、社会保障の負担率、このことが大変重要な問題でありまして、日本では現在三六%前後ということでございます。このことについて有吉参考人、前川参考人にお伺いしたいのでございますけれども、負担が租税と保険料と本人で医療保障が行われている、そのことについて今後どのようにあるべきかをお伺いしたいと思うわけでございます。健康保険財政については、若い方々が多うございますし、そして年をとってから国保に移行するということで、一兆七千億ぐらいの累積の黒字があるというふうに伺っているわけでございまして、そんなような問題も含めましてお伺いをしたいと思うわけでございます。
 それからまた、次に見坊参考人にお伺いしたいのでございますが、これからの多様な老人のニーズにこたえるために老人保健施設の問題が今回の改正に取り上げられております。そして、これを利用する側として、この施設に対してどのようなものを期待をし求めていらっしゃるか、そしてその負担はどのような程度にすべきであるかをお伺いしたいと思うわけでございます。
 また、坂本参考人が先ほど老人負担はまあ妥当なものであるというふうにおっしゃったのでございますけれども、老人の所得とか生活状況というのは非常に差があります。低所得者の病弱者に対しまして特に配慮をする必要がないかどうか、負担能力の差がかなりありますからその点をどのように配慮すべきであるか、その点についてお伺いをしたいと思います。
 以上でございます。
○参考人(加地夏雄君) 国保サイドでこの赤字対策の問題についてどのようにこれから考えていくのか、こういう御質問であります。
 改めて申し上げるまでもありませんが、日本の今の医療保険の問題はまさに老人医療の問題一点に集約されるわけであります。老人医療をめぐって今日の医療保険にもろもろの問題が出ておる、こういうことでありまして、今日の先ほどから申し上げました国保の財政が崩壊するような中で、当面いろんな手を打っておることは申し上げたとおりでありますが、私は、そういう意味でこの老人医療、特に老健法の制度改正が今ここに出されておるのではないか。つまり、制度的には、やはり今回の改正のような形でこれから老齢化社会に向かって医療保険の財政的な長期的安定を図っていくということが必要であろうと思います。
 同時に、私どもはかねがね御指摘を受けている点は重々承知をしておりますが、この老健法を成立さしていただいた上で当然我々も自助努力をせざるを得ない。それは、例えば先ほど町村会長の坂本町長がおっしゃいましたように、大変御熱心な保健活動の推進者であります。医療費の適正化対策の一環としてそういった保健施設活動を推進するとか、あるいはむだな医療費をなくすための適正化努力、あるいはよく御指摘をされる保険料の収納率を向上させるとか、こういうことは当然国保の自助努力としてやっていくべき問題ではないか、かように考えております。
○参考人(坂本常蔵君) 私は、先ほどから申し上げているんですが、やはり我々の役目としては、町村長には住民の健康を守るという責任もありますから、先ほど申しましたとおり、十分健康診断を行えということで、自分の体をよく知って、病気になったら早く医者にかかるようにしろというようなことで啓蒙し、そのような会合を持っておるわけであります。
 私のところでは、全区、私の町では三十四区あるんですが、特に健康というものについては婦人が大切である。それで、若い婦人層について約二百人選抜いたしまして、毎月一回ずつ食事の問題から保健施設、いわゆる予防医学の徹底ですね、早期受診ということで努力しておるわけでございます。意外に女性は熱心でありますから、ほとんど欠席はないということであります。そういうようなことで町のまず健康管理をし、あわせて早期治療、長期になる前にやろう、こういうふうに思っておるわけでありますけれども、実際の現代における就業構造の形というものが大変変わってまいりまして、なかなか老人に対する看護というものは大変でありますから、いわゆる介添え手等の充実、これを図っていかなければならぬだろうと思います。私のうちでは九十五歳の老婆がいますから、うちなんかでは家内が大体面倒を見ているというのが実態でありますが、なかなか家庭によってはそうもいかぬようであります。ですから、そういうようなことをいたしまして健康管理を十分にするように啓蒙し、そして医療費の増し高を防ぐというようなことであります。これが私たちの行っているあれであります。
 さて、保険税の問題でありますが、これはやっぱりそうは申しますものの、病気になったのに先生にかかるなということは言えないんです。ですから、当然これは私は受診率が上昇することは結構だと思う。しかし、一件単価が減るような早期受診でなくちゃいかぬ。それは、先ほど言いましたとおり外来と入院の比なんですね。入院はこれは老人でも一部ですよ。外来の方はその二十倍からあるわけです。それでも入院では五十数%、外来ではまず四十何%ということなんですね。問題は、ここに医療費の増し高というような問題がありますし、先ほど私は二%ということを歯科治療で申しましたが、これは間違いでありまして、老人は二%なんです。しかし、全般的に見ますと九%というのが玉造の例でございます。そういうことでございます。
○参考人(有吉新吾君) 私どもは出す方でございますが、出す方でありますがゆえに何でも困る、こういうことを言っているわけではありません。筋の通った考え方であれば、これは老人医療費そのものはふえていくわけでございますから、当然だれかが負担しなきゃならぬ、こういうふうに思っておるわけです。ただ、今回の改正というものは、恐らくは退職者医療の見込んだ人数の見込み違い、こういうところから国保に大きな穴があいた、これを被用者保険にひとつ肩がわりしよう、そういう意図が多分に私どもうかがわれますし、厚生省の予算編成で自然増は大蔵省ではやかましく言われる、こういうことで、結局どこかにその財源を求めなきゃならぬというそういう意図から被用者保険に相当のしわ寄せが行われた、こういうふうな感じがするのであります。私どもはそういうことはおかしいと。やはり公平とは何かという考え方をひとつはっきりすべきじゃないか、こう思うのでございます。
 それで、これは私の私見でございますけれども、七十歳以上の老人医療というものは、今までの保険制度というようなものと切り離して新しい考え方をひとつやってもいいんじゃないか。国民みんな老人になるわけなんです。だから国民のみんながやっぱり負担をして老後を考える。今までの各保険制度というものに今立脚をしているわけですが、それと離れて一つの考え方を検討してみる必要があるのではないか、こう思うんです。それで当面の問題は、公平論議というのは非常におかしいと、これをとことんまでやるべきだ。それから、そういう将来の老人医療、老人保健のあり方、こういうものをよく考えるべきだ。それにはやはり時間をかけて、一、二年かけまして、そして篤とどういうあり方がいいか、これを検討すべきである、こう言っておるんですね。
 したがって、三年前に法律をつくりましたときも、医療費按分率というものはぜひとも入れるべきだ、そして五〇、五〇に最後に追っついて、しかも附則をつけまして、当分は加入者按分率は五〇%以下でやる、こういう国会審議をやった。そして、その客観情勢は余り変わってないにもかかわらずいきなりここで一〇〇%にするというのは、一体過去の国会審議というものは意味がないのか。私はその意味で、現行の本則の五〇、五〇、これでとりあえずやって、もう二年ぐらいかけて根本的なあり方というものを検討すべきである、こう言っているわけでございます。
○参考人(前川哲夫君) まず租税負担率の問題です。社会保険料も含めての先生のお話ですが、これはある一定の上昇は私は避けられない、こう思っています。ただ問題は、その際に本当にそれぞれのそこへ拠出していく立場の人たちが公平なものだという、そういう視点でどういうふうにしたら合意がとれるのかということが極めて一つは重要だろう、こう思います。
 それから二つ目に拠出金の問題ですが、拠出金というのは一体性格的にどういうものなんだろう。国会でもさまざまな論議があったことを承知しております。本来、私どもが例えば健康保険組合をつくってそこに掛金を掛けているということは、もともとは自分たちの職場の中にある労働者の助け合いであったし、それに対して使用者がある意味では賃金の一部というような性格で拠出をしていた資金であるわけですね。それが財政調整と称して、退職者医療は一応今出ていますし、老人保健の財政調整という形でどんどんふえていったら、一体健康保険組合というものをつくった意味がどうなるんだろうという疑問が私には生ずるわけです。だから、もう既に現状でも二〇%程度まで行っているわけですから、そういった意味では、これがどんどんふえていくということになると極めて大きな問題意識を持たざるを得ない。
 それから二つ目に、その拠出金の使われ方の問題で、例えば今老人保健施設の問題が出てまいりました。これは医療の部分といわゆる福祉の部分と両面にまたがっているわけですね。そういうものを、医療のための保険の掛金として出したもので全部賄っていくということが本当にいいんだろうかどうなんだろうか、この辺にも疑問があります。厚生省の立場では、そうすることによって将来の全体の老人医療費を抑えることができるんだと、こういう視点から踏み切っておいでになったと思いますが、しかし、私たち負担をする側から言えば、なかなかその辺はさまざまの論議をしなければ乗り切れない、そういう状況であります。
 それからもう一つは、大変に私ども問題意識を持っていますのは、国保の悪質滞納者の問題ですね。この人たちは、本来国民皆保険制度そのものを否定しているんだと思います。私も現地に幾つか今お邪魔をして教えてもらっていますが、百万単位で未納の方がおいでになりますね。この人たちから保険証を取り上げても、この皆さんは病気になったら自分でかかるんだからいいんだと、こう割り切ってこういうことをやっておられるわけですね。その人たちに私は保険証をとめることの効果はないと思っています。どうしたら効果が出るのか。やはり皆制度を守っていくために決まったものはどんなことがあっても出していただく、時と場合によっては、好まないことですが、強制執行でも何でもせざるを得ないというそういう断固とした姿勢がない限り、負担がどんどんふえてくる状況の中では、みんなが気持ちよく負担に応じていくという体制はできないんじゃないでしょうか。そういった点で、やはり現状の改革を一つは十分にやっていただきたい、こういうことを考えています。
○参考人(見坊和雄君) お答え申し上げます。
 中間施設の論議は、昨年中間施設の懇談会が厚生省に設置されまして、私も参画させていただきました。その際、論議は、方向とか考え方、そうした点を中心にいたしまして、まず実験的にやったらどうかというようなことで、費用の問題、内容の問題等は別の審議の場、あるいは本格的な論議をしてからということになった経緯がございます。老人保健法に突然織り込まれるということは、当時の中間施設の全メンバーは予想もしなかったところでございます。
 お答えといたしまして、まず寝たきり老人というものは六カ月以上の寝たきりを数字としてとらえておりますが、寝たきり老人が病人であるか病人でないかというようなことはこれは無理な判断であろうというふうに考えております。特別養護老人ホームに入っている老人がそれでは病人でないのか、あるいは病院に入っている者がすべて病人として決めつけていいのか、社会的入院の老人はどうなるのかという問題を含んでおります。老人の側といたしましては、何とかまず畳の上で死ねるようなそういうことを期待し、家族もそれを念願しながら、やむを得ず現在のような送り込みという実態も生まれておる。この中にありまして、何とか医療と福祉と両方の長い間に蓄積されました技術あるいは実績をもちましてそういうような種類のものができないかというのが、素朴でありますが一つの念願でございます。
 それを今回は法案の中に織り込まれたわけでございますが、これが実行に移されるという場合におきまして、まず先ほど意見の中で申し上げましたとおり、老人保健施設の中に医療サービスと生活サービスというような表現がございましたが、これは説明の中でございますが、私どもははっきりと福祉と。福祉の持っております知識、経験、技術は相当なものがございますし、老人の側といたしましては期待しております。そういうものを明確に位置づけていただきたいと思っております。施設長が医師であるのがよいのか、そうでなければどういう問題があるかというようなことはいろいろございますけれども、施設経営という立場に立ちましては福祉施設の関係者であっても立派に果たせる、医療の面はその中の医師が責任を持ち得る、このようにも考えておりますので、そのような論議でなく方向づけしていただきたいと考えております。
 また、現在特別養護老人ホームあるいは医療機関は非常に地域的に偏在をしておりまして、老人自身の健康を進める運動の中でいろいろと検討してまいりますと、医療機関もない、あるいは老人ホームもない、そういう市町村は特に特別養護老人ホームだけ限りましても二千四百に上っておりました。偏在しておるわけでございます。病院もそのとおりでございます。したがって、多くの地域の市町村におきましても、住民にとりましても、何とか今回のこうしたものがこれから実現するというのであれば、そういう地域偏在を解消する方向にまず考えていただきたいと考えております。また、この施設がもし生まれるとするならば、在宅者、家庭、地域、そのサービス機能というものを十分に発揮できるようにお願いしたい。
 なお、現在ある施設、医療機関との重複、競合は避けていただきたい、このような希望を持っておるものでございます。
 費用負担の問題は非常に難しゅうございまして、中間施設懇談会におきましてもこの論議は白熱化いたしましたが、将来の論議となりました。老人の立場といたしましては、先ほど公平負担の趣旨で申し上げましたようなことでお考えをいただきたいと存じておるわけでございます。
 以上でございます。
○前島英三郎君 時間がありませんので簡単に伺います。
 私は、施設というものは本来一過性のものでなければならない、こう思います。そしてまた、中間施設というものはいわば予防施設であってほしい。そういう意味では、私はこれから中間施設がふえていくのは、日本のいろんな家族形態を思いますと、この中間施設の普及というのは必要であるというふうに思っております。それとまた、その年齢、その時、その職場によって保険制度が行ったり来たり煩雑になっている。この保険制度の一元化ということも、やっぱり人間だれしも揺りかごから墓場までの人生があるわけでありますから、これに対して若者が負担するとか健常者が障害者を負担するとかということでなくて、これは人間だれしも寝たきり老人にはなりたくない、障害者になりたくないという人間の心理を考えますと、これはすべての人の国民負担で公平に行われるべきだ、こういう気持ちでございます。
 そこで、中間施設というものに対して吉田さんは若干批判的ではございましたけれども、私はそういう意味での予防施設という観点からこの中間施設をとらえたいんですけれども、その辺はいかがお考えでしょうか。その一点だけにとどめさせてもらいます。
○参考人(吉田清彦君) 私は中間施設を決して否定はしておりません。先ほども質問のあったときに申し上げましたように、この中間施設の必要性というのは非常に認めているわけでございます。
 ただ、現在の中間施設というのは、厚生省が今度出しました老人保健施設というのは、医療との絡まりのところで極めて重大なことを盛り込んじゃっているわけですね。ここのところはやはり整理してほしい。今後家族の構成、これから高齢者になった場合に、もっともっと別の分野での、あるいは前島先生のように脊損の方にしろ、なかなか畳の上で生活できない、あるいは難病の方、たくさんあるわけです。こういう人たちにも私は一つのリハビリに、自分の家庭の生活ができるまでの期間の訓練あるいは練習というような面から極めて必要なものだろう、こういうふうに日本医師会では考えております。ただ、今回の案は余りにも医療法の根幹、医療制度の根源となっているところをちょっとひねり過ぎちゃっているということでございます。
○高桑栄松君 きょうはどうも参考人の方々ありがとうございました。
 三人の方にお話を伺いたいと思うんですが、まず最初に有吉参考人にお伺いしたいのは、さっき加入者按分率が引き上げられると医療費のチェック機能が失われるとたしかおっしゃったように私は聞いたんですが、それは医学的な医療内容をチェックするという意味なのか、それとも経済的見地からとすれば、経済的見地から医療内容のチェックということができるものなんだろうかということについて伺いたいと思います。
 その次に見坊参考人ですけれども、先ほど坂本参考人が再々お答えの中で、健康管理が重要である、早期受診、早期治療が重要であって、医療費を下げるというお話をしておられました。私が予防医学の立場から力説している部分でございますけれども、見坊参考人にお伺いしたいのは、見坊さんも一部負担増をすると受診抑制があり医療費の高騰を招くということを最初言っておられたんですが、特に私は外来受診の一部負担増に対して強く反対している立場なんですが、そのデータをもしお持ちだったら伺いたいということでございます。
 三番目は吉田参考人でございますが、しばしば本老人保健法と医療法との関係を大変わかりやすく御説明をいただいたと思いますが、その中で老人保健審議会のメンバー構成が、私が質問したときに政府側は、二十名中二名が医師であるということでございました。承りますと、先生、委員のお一人だったようでございますが、どういう立場なのか。つまり医師なのか医療サイドなのかということが一つでございます。
 そして、これも政府側の答弁で承ったんですけれども、医療内容、医療法とのかかわりについては、本法が成立した後で専門委員会をつくって検討したいと言っておられるので、これは本末転倒ではないかと思うので、先生は老人保健審議会でそのような話を聞いておられるのかどうか。
 もう一つは、定額医療の問題も再三出ておりますが、定額医療では医療責任を医師としては果たせないというようなお話だったと思うんですが、もう一つ承りたいのは、健康保険の指定機関であるのかどうか。もし指定機関でないとすれば、健康保険による診療ということはどうなるんだろうかということをお伺いいたしたいと思います。
 以上でございます。
○参考人(有吉新吾君) 健保組合が現在、言葉は悪いのでございますが、乱診乱療と申しますか、それに関しましての、健保組合というのはやっぱり自分の経営のことを中心に考えますので、出されました請求書でございますか、そういったものにつきまして相当の厳しいチェックをやっておるわけでございます。そういうものが、按分率が引き上げられまして健保組合そのものが破綻に瀕することになっていくだろうと思うのでございます。今、恐らくは健保組合が一番そういったチェック機能を果たしているんじゃないかと思うのでございますが、それが失われていくだろうおそれがある、こういうことを申し上げたわけでございます。
○参考人(見坊和雄君) 私どもは素人でございますので、地域の中でいろいろと専門家の指導を受け、あるいは自治体の関係者からの助言を得まして運動しながら、いかにして健康保持並びにそれが財政的にも負担にたえられるようなものになるのか、そういうことを模索しておるものでございます。
 私が先ほど申し上げました点は、特に岩手県におきまして乳児死亡率の問題、高血圧の問題等取り組みまして、沢内村は代表的でございますが、住民と医師と保険の関係者、自治体一体となって長年の間取り組んでそうして上げられた実績、そういう経験を私は実感として持っておりまして、そういうことを申し上げております。極めて短兵急にその数字が出るというふうにも考えておりません。
 ただ、外来診療と入院の診療、このデータにつきましては厚生省が毎月出しておるようでございまして、私どもそれを拝見してまいりました。その分析は、我々素人としては危険であろうと存じておりますが、一部負担が導入されまして以来、外来の受診率は明らかに伸び率が低下しておる、非常に低い、多分一・数%というところで推移しているのじゃないかというふうに拝見しております。これに対しまして、入院の受診率の方は明らかにそれより高率になっておる。しかし、それよりももっと大きく伸びておるのは老人医療費の費用という点でございますので、それらを素人なりに判断いたしまして、外来が抑制されておるというふうに思いますし、入院がふえることによって老人医療費は非常に膨張しておる、こういうふうに私どもは論議をしている段階でございます。
 数字につきましては厚生省がお持ちであると存じますし、私どもとしては持っておりませんので、以上お答えいたします。
○参考人(吉田清彦君) まず第一点の老人保健審議会の委員の件でございますが、老人保健審議会の委員は現在二十名でございます。私もその一人でございますが、この老人保健審議会が発足いたしました五十八年二月には日本医師会からはだれも委員が出ておりません。私は五十九年でございましたか六十年でございましたか、そのときから委員になっておりますが、これは医療側代表という意味ではございません。学識経験者の一名として出ているわけでございまして、現在医師免許証を持っている委員は、私と、東京大学の老人学科におりました、現在退職されまして、たしか逓信病院でございましたか院長になられております原澤先生の二人でございます。
 それからその次の、老人保健審議会等におきましてこの保健施設が、いろいろ医療法との絡まりが審議されたかという点でございますが、これはされておりません。当時まだ審議会ではこういうような具体的な法文というのはもちろん示されませんし、ただ、老人保健施設というものの基準とか、それから療養費については専門部会というようなものを設けて審議されたい、こういうふうには聞いておりますが、私どもも今回出てきたのが医療法との絡まりが非常に強いということでびっくりしているような状態でございます。
 それから、この老人保健施設は健康保険上、指定医療機関かという点でございますが、私の知る限りにおきましては、これは健康保険指定の機関ではございません。どだい健康保険法は医療法に規定されないような場所は指定されない、こういうふうに思います。この辺に関しましては、また別の考え方があるのかどうか私も明らかではございませんけれども、そういうことでございます。
○中西珠子君 本日は参考人の皆様方お忙しい中をお越しいただきまして、大変貴重な御意見を賜りましてありがとうございました。時間が大変制限されておりますので、私はお三方に一つずつ質問させていただきたいと思います。
 まず有吉参考人にお伺いいたしたいのでございますが、老人保健法を福祉原理で運営するのか保険原理で運営するのか、根本的に洗い直す必要があると御指摘になりましたが、まことにごもっともな御意見と思いますし、その点についてはもう私も必要と思うのでございますが、有吉参考人は福祉原理で運営さるべきとお思いなのでございましょうか、それとも保険原理で運営さるべきとお思いなのでございましょうか。個人的な御意見で結構でございますから承らせていただきたいと思います。
 次に二つ目は、加地参考人でございますが、この法案の中に国保保険料の悪質滞納者への制裁措置がございます。それは関係者が十数年来主張してきたところなので、ぜひ実現してもらいたいというお言葉でございましたが、最近の国保の保険料の大幅な引き上げということのために、低所得者とか非常に貧困な人たちの中でやはり保険料がどうしても払えない、払いたくても払えない人がふえてきているのではないかと思うわけです。どこに悪質者と本当に貧困で払えない人のボーダーラインを引くかということは非常に難しいことだと思いますので、今までの御経験から、いわゆる悪質滞納者とおっしゃっていらっしゃいます人たちは具体的にどういう人なのか、これをお聞かせいただきたいと思うわけでございます。
 それから三つ目、前川参考人にお聞きしたいのでございますが、老人保健施設、いわゆる中間施設はうば捨て山になる危険があるというふうにおっしゃいました。現在のままではそうじゃないかと私も思います。しかし、これをもっともっと検討した暁には、中間施設というものは効用があるのではないかと思うのでございますし、それからまた、先ほど吉田参考人が大変女性に対する御理解のあるところをお示しになったわけでございまして、寝たきり老人を介護している者のほとんど九割近くが女性であり、またお嫁さんであるということもございますし、老人保健施設という名前にするか中間施設という名前にするか、それは一応法案の中では「老人保健施設」となっておりますけれども、こういうふうなものの存在は必要ではないかと思うわけでございます。そして、うば捨て山になる危険があるから在宅介護というものを重視して、そして公的サービスを充実した方がよい、このように前川参考人はおっしゃったような感じを受けたわけでございます。私も公的サービスは非常に大事だと思っておりますが、前川参考人はどのような公的サービスを殊に充実すべきであるとお考えでいらっしゃいますか、お教えいただきたいと思います。
 時間の制約がございますから、この三点、よろしくお願いいたします。
○参考人(有吉新吾君) 問題提起をしたのでございますけれども、私自身も実はそんなに詳しくはございませんで、福祉原理がいいのか保険原理がいいのか、私案というものを持っていないのでございます。ただ、ある程度ミックスしないとやっぱり実際問題難しいのじゃないか、こういう感じはいたしております。
 先ほども私案としてちょっと申しましたように、今老人保健関係は一応切り離して老人保健法で話されておりますが、それは各制度間の財源は拠出制というようなことで既存の制度に結びついておるわけでございますね。そういったものをやっぱり拠出制じゃなしに個々人の保険料にするか、負担にするか、何かそういう格好、そういうものもひとつ検討してみる必要があるのじゃないか。あるいはまた別に、今度は逆に各保険制度の卒業生は最後までその制度が面倒を見るとか、こういう逆の検討の立場もあると思うのでございます。そして、その保険料負担とか税金負担の能力のない人には、これは福祉的なやっぱり国の支出というようなものでカバーしていかなきゃいかぬだろう、こういうふうに思っておりますが、とにかく今の制度のままでいいかといいますと、どうも私はもう一遍考え直した方がいいのじゃないか、こういう気持ちでございます。
○参考人(加地夏雄君) 悪質滞納者の問題についての御質問でございますが、お答え申し上げます前に、被用者保険と違いまして、国保の保険料の賦課徴収がどうなっているかということをまず簡単に申し上げたいのであります。
 被用者保険では、御承知のとおり標準報酬制があり、法律で保険料率が決まっておれば、あとは給与成長に応じて保険料が入ってくる。しかも徴収は源泉徴収であり銀行振り込み、こうなっておるわけであります。ところが国保の場合は、いまだにこの保険料の徴収というのは事業運営の最大の悩みであります。賦課の方法は、毎年の医療費の成長を見込みましてそれを全体の中に割りつけていくわけであります。それで、料率を変えるために条例を出していく。そのことを考えますと、上限はこれはサラリーマンの標準報酬の最高額に合わせてあります。したがって、医療費の伸びによって割りつけをする場合に、片や所得の低い方々の場合は免除とかそういうものが相当ふえておるわけですね。そういたしますと、結局は国保の中の被保険者にとってみますと、中間所得者が非常にきつい保険料を負担しておる、これが実は国保の保険料の賦課の問題としてあるわけであります。
 それからもう一点、今度は徴収の問題。これは源泉徴収、銀行振り込みとはいきませんで、いろんな知恵を絞って、例えば納付組織をつくり、あるいはそれぞれの住民の理解を得ながら集めてきておる。その結果が九四%弱の徴収率でありまして、そこら辺についていろいろ御批判を受けるのでありますが、懸命に保険料を集めておるわけであります。特に、これは例が余りございませんので私は余り大きな声で申し上げたくないのでありますが、保険料を徴収に行きますと追っ払われる、身の危険を感じる、こういうことを含めて努力をしておるわけであります。
 そこで、もう一点御指摘ございましたが、この三年間に全国平均三六%ぐらい上げてまいりまして、ここにある県の投書欄がございますが、大変住民からは怨嗟の的になっておるわけであります。保険料を上げれば収入が上がるというのではなくて、もう限界に近い保険料をこれ以上上げますとむしろ滞納者がふえる、こういうことであります。そういう中でも何とか国保の財政を維持したいということで大変な努力をしておりますが、これを結果だけをごらんになりますと、徴収努力は足りないではないか、こういう御指摘を受けるのであります。
 直接御質問のペナルティー、悪質滞納者の問題は、私は、先ほど前川参考人がおっしゃったようなそういう極端な例ではないにしても、納められる人が納めない、こういう方々が相当あり、したがって、保険料を上げてまいりましても徴収率は逆に下がっていくというところまで追い詰められておる実態であるということを申し上げたいわけであります。
○参考人(前川哲夫君) 中間施設の問題について大変多くのニーズがあることは私も承知していますし、中間施設自体を全面的に否定する立場には立っていません。ただ、入所型のやっぱり弊害として、かなり閉鎖的になるし、それから寝たきりのお年寄りの人たちですから、そういう姿だけで一つの施設をつくるのには非常に大きな疑問を持ちます。むしろそこへ通所される皆さん、いろんなことを含めて、最低でも開放型の施設にはしなければいけないのじゃないんだろうか。
 それからもう一つは、特養なり福祉施設とのかかわりの問題で、本当に福祉施設が、このことが一定の制度として発足したときどうなるのか、この辺のやはり見きわめもきちんとしなければなりませんし、実際には福祉施設の医療体制をもっと充実することによって同じような機能を持つことも可能だと思います。
 そういった意味で、いずれにしましても、本当のニーズに沿った施設、とりわけ痴呆性老人の問題だとか、多くのやっぱり今切実な問題がありますから、そういったものへもこたえられるようなものに仕上げていただきたい、こういう気持ちです。
○佐藤昭夫君 きょうは皆さん御苦労さまでございます。
 最初に日経連の有吉参考人にお尋ねをしますが、政府は、老人医療費の急増を理由に、さきに老人医療の有料化、そして今次法案による国民負担の一層の増大や按分率の変更などを打ち出してきているわけでありますが、この老人医療費対策のためにも、現役の労働者ができるだけ健康をつぶさぬよう、重い疾病を老後に持ち込むことがないように、週四十時間、週休二日制などの労働時間短縮の課題、これとともに労働者の健康診断制度の充実をして疾病の早期発見、早期治療、こういったことを強化するということが必要ではないかと思いますが、お考えはどうでしょうか。
○参考人(有吉新吾君) 御指摘のように、これは世代間の負担の問題でございまして、現役の人たちの大きな負担になるわけでございます。そういうわけで、おっしゃいますように、時間短縮は既に方向が一応決まりそうに答申が出ておりますし、健康診断、早期発見、早期治療、こういうことにも企業といたしましても大いに力を注がなきゃならぬ、こういうふうに考えております。
○佐藤昭夫君 もう一つ総評の前川さんにお尋ねをしますが、今も触れましたように、この老人医療費増大の大きな原因の一つとして、特に日本の労働者が世界の先進国の中でも最も労働時間が長い、超過密労働を強いられて、その中で体をすり減らし健康を破壊されてきたという問題があろうと思います。したがって、今考えるべき問題は、今も言いました、一つは労働時間短縮の課題や健康診断制度の充実の問題、それと同時に、医療費財源を論ずるならば、軍事費削減とともに、大企業にも一層の応分の負担強化を求めるということが私は理の当然じゃないかと思うんですが、御見解はどうでしょうか。
○参考人(前川哲夫君) 佐藤先生おっしゃるように、いわゆる現役で働いている時代に健康を十分に保持をし、それを老後につないでいくということは、おっしゃるような労働の態様あるいはそれにまつわる健康診断だとか、そういったものが極めて重要だと思っていますし、厚生省が行っております国民健康調査、それらの資料を見てみますと、やはり有病率は高くなっているという傾向が明確に示されていますから、そういった意味では私どももこれらの問題についてはより一層強化をしていかなければいけないし、そういう方向に進めるための努力をしたいと思います。
 それから、負担の問題について企業からというお話がありましたが、私たち労働者の立場では、今、例えば健康保険や社会保険料の掛金の七〇%を企業の方に負担してもらいたいとか、そういう問題で一定の運動もやっていますし、今回明らかになってまいりました税制問題でも、正直申し上げて大変に大きな不満を持っています。それはもう申し上げるまでもないと思いますけれども、全体の増減税の枠の中で、むしろ企業減税と所得減税、そういったものが一緒になったことによって、実質は大方の労働者に増税になるというそういう状況にありますから、そういった意味で、より収益を上げている企業からは負担を願いたいものだ、こう思います。
 なお、いわゆる防衛費の問題についても、私どもは古くから大砲かバターかということで、バターを優先しろという立場をとってまいりましたから、そういう立場は今後も貫いていきたい、こう思っています。
○沓脱タケ子君 参考人の皆さん方には大変本日は御苦労さまでございます。限られた時間でございますので、見坊参考人、吉田参考人、加地参考人に簡単にお伺いをしたいと思っております。
 見坊参考人の御意見、大変よくわかりましたし、私ども全く同意見なのでございます。とりわけ、私もこれは先週の質問でも明らかにしたんですけれども、一番焦点になっているお年寄りの自己負担金の引き上げをやるのに、お年寄りの意見を聞かないで原案を出してきたという点では、これはやはり民主政治の原則に反する。当然、そういう点ではこの辺は御主張のとおりだと思うわけでございます。その点について、さらに御見解があれば伺いたいと思います。
 それからもう一つは、一部負担の引き上げが今のお年寄りの生活環境の実態に合わないということを非常に具体的にお話しになられました。老健施設では、生活サービスだということで食費負担あるいはその他の出費を約五万円ぐらい自己負担をお願いするというふうな方針になっているようでございます。特に、従来から医療費の一部負担金は法律によって決められておりましたし、福祉施設の徴収費は徴収基準によって決められておったわけですが、今回の提案されております保健施設におきましては、これは施設の長と利用者との自由契約になっている。ですから青天井なんですね。幾らになっても罰則はないというふうな状況になりますが、こういうことになりますと大変だなと思うんですが、その分野についての御見解を伺いたいと思います。
 それから、吉田参考人にお伺いをいたしたいのは、とりわけ一部負担の増高に反対という御見解、私どもも同様でございますが、中間施設の問題で幾つかの不合理、とりわけ日本の医療制度を根幹から崩していくというふうな問題点を幾つか御提起になられました。
 時間がありませんので簡単に申し上げますが、その中で私は非常に心配をしておりますのは、施設が一括二十万というような定額の支払い制度をやろうというふうなことになっている問題点とあわせて、その定額制が療養費払いの姿になっているという、現物給付でないという点が今後の医療制度の中に非常に大きな影響をもたらすのではないかという点が一つ。
 もう一つは食費の問題ですね。病人でない人を収容するのでないにもかかわらず、家におっても食べるんだから、施設へ来ても食べるんだから食費は自己負担というわけでございますけれども、これは厚生省の見解でございますが、病人を収容する以上はやはり給食というのは病人食、治療食であろうと思いますが、こういった点もひとつ御見解を伺っておきたいと思います。そうでありませんと、これが一般医療に敷衍されるということになりますと大変なことになるのではなかろうかと思います。
 それから、加地参考人に一言だけお伺いをしたいのは、国保の保険料の引き上げというのは限界だ、その点のお話がございました。私は大阪なんですが、大阪の実態などを見ておりますと、悪質者とそして低所得者の区別というのは一体どうするんだろうかというのを非常に心配をいたしますが、これはイコールでないということはもう御承知のとおりでございますが、そういう点のけじめはどうおつけになられるものだろうかなという点で、御見解があれば簡潔にお伺いをしたいと思います。
○参考人(見坊和雄君) 第一の老人の側の意見の問題につきましては、先ほど意見陳述の中で申し上げましたように、今後、老人の側の意見も十分に反映できるようにそういう機会をつくっていただきたい、あるいは審議会の構成についても御配慮いただきたいという趣旨で申し上げたわけでございます。今日の制度そのほかの運用は行政側、サービス提供側中心にすべて進められておるように感じておりまして、いま少し一般の当事者側の意見というものを徴するような方向をお願いしたいものと存じております。
 第二の中間施設の問題は、極めて私ども難しい問題と考えておりまして、現行の医療機関あるいは福祉施設、そのそれぞれの制度の差もございまして、老人の側といたしましては金目だけでこれを論ずることのできない問題である。それが中間施設におきましていきなり定額制で、まあ五万円見当というようなお話もいろいろ承っておりますが、非常にこうした新しい考え方というものが出てまいりますと、私どもといたしましては、いま少し本格的な御論議をしていただきまして、納得できるような一貫性のある線を出していただきたい。単に現行制度の考え方だけにとらわれないで、場合によりましてはそうしたものの整合性もあわせて考えながら新しいそういうものを打ち出していただきたい。青天井であろうかとも感じておりまして、非常に不安を覚えております。自由契約一本ということでは、それではそれに契約できないような低所得者の老人はどうなるんであろうかという不安も持っているわけでございます。
 いろいろと現行制度に矛盾もございますので、私どもといたしましては、いま少しそれぞれの考え方を整理して出していただきたい。今とりあえずその程度にしかお答えができないわけでございます。
○参考人(吉田清彦君) まず第一点の療養費払いになっている、こういうことでございますが、日本の保険制度の場合には家族は療養費払いになっている面はあるのでございますが、ただ最近、ついせんだってもできました特定承認保険医療機関というのも、特定療養費という名前のもとにこれは療養費払いになっているわけでして、そのほかに自己負担という、保険に導入されてない部分について自己負担を認める、こういうような施策がとられてまいりまして、いわゆる公的保険の給付の縮小ということが大変出てきているということは事実だろうと思いますし、私どもはその点に関しましては極めて将来、今日まで非常に日本の衛生状態にしろ寿命にしろ健康にしろ大変増進されてきて、乳児死亡率なんかの点については世界ではまれに見るくらいの非常に低い数値である。こういうような観点から見たときに、いろいろな医療給付が次第に後退していくということに対しては極めて危機感を持っております。ぜひやはりこれはもっと今までの趨勢を改めて保険の範囲というものを拡大していくべきではないか、こういう見解を持っております。
 それから老人保健施設の食費相当分でございますが、これは沓脱先生も医師でありましょうから当然おわかりのことだと思いますし、私どもも、人間の治療というものはやはり食事の管理というものが極めて重要なんであるし、いわんや成人病等におきましては若いうちからこれは強調されているところでございまして、こういうものがいわゆる生活費だということは当たらないのではないか、やはり医療の一部であろう、こういうふうに私どもはかねがね今日まで考えてきております。したがいまして、食事というのはやはり医療とは大変密接なんですから、その面におきましてはこれを別の枠であるというような主張にはどうしてもうなずけないものがございます。こういった自己負担分につきましても、こういうような理屈の上から生活費というような考え方はおかしいんではないか、こういうふうに思っております。
○参考人(加地夏雄君) 悪質滞納者は、文字どおり保険料を納める能力のある方が保険料を滞納している場合であります。したがって、保険料の賦課をされてそれが徴収に結びつかないということでありますけれども、現実の問題としていろんな家庭の事情とかそのときの経済状況等もあるでございましょうから、仮に免除をすべき対象者であるというふうなことがわかればそれは当然保険料を免除する話でありまして、いずれこの法案の施行について具体的な取り決めが行われると思いますけれども、ともかく市町村におきましては、一たん賦課した保険料を滞納した場合には、まずその方が納める能力があるかということを十分確かめてやっていくべきじゃないかと思います。
○抜山映子君 吉田先生にお伺いしたいと思います。
 先ほど在宅医療に対する給付をアップすべきだと、このように言われまして、私も全く同感なんでございまして、今後、家庭復帰志向の診療報酬というものが確立されなければいけないと思います。そこで、もう少し先生がその点についてどういうアイデアを持っていらっしゃるのかお伺いしたいということが一点。
 それから第二点に、今後医療がビジネス化してしまうのではないかというようなおそれをおっしゃいました。そこで諸外国における中間施設がどのように位置づけられているか、もし先生御存じでしたらお伺いしたいと思います。
 以上二点です。
○参考人(吉田清彦君) 在宅給付をもう少し強化するためのアイデアということでございますが、私が考えているだけではなかなか厚生省は実行してくれませんけれども、現在実際に、例えば例を挙げて申し上げますと、今、終末医療とかターミナルケアとか言われますその終末医療でも、人間の医療費の中で最も大きいのは死亡三カ月前の間の医療が大変大きいんです。こういうようなものもある意味では、今いろいろ言われております終末医療として、何にもしないで指導し、またそういう患者さんについては非常に精神的苦労があるわけですから、そういった面にだけ一生懸命やって在宅なんかで往診していますと往診料しかないんです。そういうような終末時のケアの管理料、指導管理料とかそういうものが全くないんです。そういうようなところはもっと強化すべきだろう。
 あるいは、患者さんが入院しないでどうしても訪問して往診の形で治療しなければならないときに、その家族には全然給付はございませんね、これは。これも往診料とはいい、あるいは通院とかいっても、通院するときに医療機関の窓口だけに費用を払うわけじゃございません。歩いてくるのも大変だったら、これは車なり何なり、いろんな人の力をかりて通院するわけです。これらに対しては何にもこれは現在は形にない、あるいは判定できないというようなことで診療報酬としては形になっていない、こういうことだと思います。ですから、もっと端的に言いますと、医療機関は数時間かけて指導し、あるいは精神的な労苦を取り除いてあげるような方策、あるいは予防的な措置というものを説明したときにはこれは診療報酬にならないということもよく御銘記願いたいと思うんです。
 ですから、幾つかアイデアはあるのでございますけれども、これは診療報酬改定のときにいろいろ私どもから厚生省の方にも主張していきたいと思っております。
 ただ、今日までの診療報酬の改定というのはどうしても入院医療に傾いていたということも事実でございます。ですから、診療報酬が引き上げになったときに、在宅の外来診療の診療報酬よりは入院医療の診療報酬の方が引き上げる率がすべてよかった、こういう実例があるわけでございます。これは資料は当然あるわけですから見ていただけばおわかりだ、こういうふうに思います。
 我々は、今後はやはり在宅ということを中心にしていくのであれば、そういったものに対して十分な評価をすべての面でしていく必要があるんじゃないか。ですから今日、先ほども坂本参考人が言われておりましたけれども、老人医療費のふえてくるのは外来の診療ではございません。入院の診療について非常に伸びのパーセントが違うということなんです。これは、一つにはまたいろいろな原因があるわけです。先ほど申し上げましたように、共稼ぎしていたらとても家庭でもって看護はできません。あるいはそのためには恐らく奥さんとか娘さんとか、女性の方はある程度生活を犠牲にしないと在宅では看護できない、こういうような実情がある、こういうふうに思います。こういった面に対しても何らかの給付というのはしてもいいんじゃないでしょうか。私はそう思っております。
 それからまた、中間施設の医療ビジネス化というのもありますが、現在、日本でもってアメリカや何かからいろいろな医療周辺、保険制度そのものに入ってくるというよりも、医療の中で使う道具がどうだとか、こういうコンサルタント業みたいなのがたくさん入ってきていますね。この中間施設につきましても、医療法からまるきり除外してしまいましてやりますと、これはもう一遍に入ってくるんじゃないですか。今でも非常に外国資本あるいはいろいろなところで入ってきているのは、もちろん製薬メーカーもあるでしょうけれども、医療用具とかあるいは臨床検査の業者とか、いろいろ入ってきているんです。これらの人たちは、我々の医療機関と違いまして健康保険法の指定を受けるとかなんとかそういうことがないわけでございますから、健康保険法の指定医療機関としての指定を受ければそれなりの監督あるいは規制は受けるわけですが、そういうものは一切ないんです。
 この中間施設も、私自身そんなに外国のことは詳しくありませんから申し上げられませんけれども、アメリカ等ではやはり非常に日本と違って隅々まで平等社会とは言えない部分もあるように聞いております、別に中曽根首相の言をかりるわけじゃございませんけれども。そういった点からいうと、非常にいい、比較的代表的な、模範的なナーシングホームなどは行ったときにすぐ見せてくれます。しかし、そうじゃないのはなかなか二週間や三週間の間には見せてくれないというやっぱり実情もあるように聞いております。
 それから、アメリカのような場合には、日本と違いまして、管理する医師というのはそれは名目的な建物の管理をすればいいんです。ところが、患者さん一人一人は主治医を持っていますから、向こうの方では。我々のところと違いまして主治医を一人一人持っていて、その方は別に施設療養費なんという日本のような格好で報酬をもらうんではなくて、いろんな医療保険や何かから、医療保険とは民間保険でございますよ、そういうものから、要するに給付としてそれを請求するというそういう格好になっていますから、一人のお医者さんがすべての施設の中の人を医療まで受け持っちゃっているという姿はどちらかというと少ないんではないか、こういうふうに思っております。
 以上でございます。
○委員長(佐々木満君) ありがとうございました。
 以上で参考人に対する質疑は終わりました。
 参考人の方々に一言お礼を申し上げます。
 本日は、長時間にわたりまして貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚くお礼を申し上げます。
 以上をもちまして本日の質疑を終わります。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後一時十一分散会