第108回国会 本会議 第7号
昭和六十二年二月二十七日(金曜日)
   午前十時一分開議
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○議事日程 第八号
  昭和六十二年二月二十七日
   午前十時開議
 第一 国務大臣の報告に関する件(大蔵大臣の
  帰国報告)
 第二 資金運用部資金法の一部を改正する法律
  案(内閣提出、衆議院送付)
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○本日の会議に付した案件
 一、日程第一及び第二
 一、請暇の件
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○副議長(瀬谷英行君) これより会議を開きます。
 日程第一 国務大臣の報告に関する件(大蔵大臣の帰国報告)
 大蔵大臣から発言を求められております。発言を許します。宮澤大蔵大臣。
   〔国務大臣宮澤喜一君登壇、拍手〕
○国務大臣(宮澤喜一君) 私は、去る二月二十二日、パリにおいて開催されました主要国蔵相・中央銀行総裁会議に国会のお許しを得て出席してまいりました。
 このたびの会議にはサミット参加七カ国のうちイタリアを除く六カ国の蔵相及び中央銀行総裁が参加いたしましたが、この機会に、会議後発表されました声明の概要等につきまして御報告を申し上げたいと存じます。
 まず、東京サミットの経済宣言の枠組みの中において行う多角的監視の一環として、各国の経済動向及び見通しの吟味が行われました。
 その結果、インフレなき持続的成長、金利低下等、先進国経済の積極面が評価される一方、経常収支不均衡に対する懸念が表明されました。また、保護貿易主義の防圧への決意と新ラウンドの貿易交渉に対する支持、開発途上国の債務問題解決のための協調的努力の重要性などが確認されました。
 各国の政策協調につきましては、より均衡のとれた世界経済の成長を促進し、現在の国際的不均衡を是正するため、政策協調の努力を強めることが合意されました。経常収支黒字国は、物価の安定を維持しつつ内需を拡大して対外黒字を縮小するための政策をとることを約しました。また、経常収支赤字国は、国内不均衡及び対外赤字を縮小しつつ、インフレなき安定成長を促すための政策をとることを約しました。そして、この目的のため、各国がそれぞれ具体的な政策を行うことに合意いたしました。
 我が国は、次の四点を表明いたしました。第一に税制全般にわたる抜本的見直しが我が国経済の活力の維持増進に資するものであること、第二に昭和六十二年度予算の速やかな実施を確保するためその成立に全力を傾注すること、第三に総合的な経済対策が経済情勢に応じ予算成立後準備されることとなろうこと、第四に公定歩合を二月二十三日から引き下げることであります。
 一方、米国は、財政赤字の削減を表明いたしました。具体的には、財政赤字の対GNP比を一九八七会計年度の三・九%から一九八八会計年度に二・三%に削減するとの観点から、一九八八会計年度における政府支出の伸びを一%未満に抑制することを表明いたしました。また、競争力改善のための広範囲の政策の導入等も提案いたしております。
 我が国と同様経常収支黒字国である西独は、民間部門の活動と投資に対するインセンティブの強化を目的とした包括的税制改革により、個人及び法人の税負担を軽減する政策を遂行すること等を表明いたしました。
 その他の国々も、インフレなき安定成長を持続し、国内及び対外均衡をもたらすような政策運営を行うことを表明いたしました。
 為替レートにつきましては、プラザ合意以来の為替レートの変化が今や基礎的な経済諸条件におおむね合致したという各国間の共通の認識をベースとして、為替レートがこれ以上大きく変動することは各国における成長及び調整の可能性を損なうおそれがあること、したがって、現状においては各国は為替レートを当面の水準の周辺に安定させることを促進するために緊密に協力することが合意されました。
 これは、私が昨年の秋以来ベーカー。アメリカ財務長官との間で行ってまいりました為替安定についての二国間の話し合いを多国間に広げたものであり、極めて有意義なものと考えられます。この合意が為替相場の安定に資することを強く期待いたしております。
 東京サミットの経済宣言では、政策協調のため、経済掛標を使用して経済の多角的監視を強化することとされております。今回の会議では、この多角的監視のやり方について経済指標の使用を一層改善していくことについても合意されました。この多角的監視は、他国に特定の政策をとることを強制するものではありません。ただ、経済の相互依存関係が緊密になってきていることから、各国が自国の政策の国際的影響を考慮しつつ政策運営を行うことが望ましいという共通の認識がますます強くなっていることが、これらの合意の背景になっております。
 なお、世界経済における新興工業国、いわゆるNICSの役割の重要性についても話が出ましたが、NICSが貿易障壁を削減し、自国通貨が基礎的な経済諸条件をより一層反映できるような政策をとることにより、開かれた世界貿易体制を守るためのより大きな責任を果たすことが重要であるとの認識が示されました。
 今回の会議は、為替の安定の重要性につき各国が合意に達し、為替レートを安定させるために緊密に協力することが明確に合意された点で、意義深いものであったと考えます。今回の合意により、我が国経済にとって大きな課題である為替レートの安定が実現されることを強く期待いたしております。(拍手)
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○副議長(瀬谷英行君) ただいまの報告に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。下条進一郎君。
   〔下条進一郎君登壇、拍手〕
○下条進一郎君 私は、自由民主党を代表いたしまして、さきの主要国蔵相・中央銀行総裁会議に出席された大蔵大臣の帰国報告について、若干の質問を行いたいと思います。
 まず、大蔵大臣にはトンボ返りの御出張、まことに御苦労さまでした。円高で悩む日本経済にとっては、為替の安定が何よりも必要であり、為替の安定なしには経済の安定的な成長は望めないと思います。今回の主要国蔵相・中央銀行総裁会議の合意は、まさに為替の安定を目指したものであり、大臣の御努力を大いに多とするところであります。
 最初にお伺いいたしたいことは、相互に依存する国際社会において、世界に重要な役割を担う経済大国日本の進路はいかにあるべきかということであります。今回の主要先進国の合意により、為替相場の安定が持続し、国際経済の均衡ある発展と国内経済の安定的成長が着実に実現することを国民の多くが期待しておりますが、そのためには、今回の合意に基づいて我が国が当面どのような経済財政政策をとるかが大きな課題となっております。
 次のIMF暫定委員会や、六月のベネチア・サミットに向けて我が国がその責務を果たしていかねば、今回の合意そのものが根底から覆るばかりか、再び円高ショックに揺さぶられ、日本経済は大きな打撃を受けるとともに、国際社会における信用を一気に失うことになりかねないではないでしょうか。その意味で、今回の合意は、我が国が国際経済社会において担っている役割を示すとともに、為替の一時的安定という小康状態にあって、それを自覚して我が国が今後どのような進路をとろうとしているかを見守ろうとしている重要な転機を示していると考えます。今日、その一時的な小康状態に安堵して、そのまま手をこまねいたことになることは許されないのであります。今こそ、我が国経済の原点を見詰めて、根本から考える時期が来たと思います。
 その観点に立って、まず第一に総理にお尋ねいたしたいのは、我が国が国内においても、また世界に向かっても、どのような長期ビジョンのもとに経済のかじ取りを行っていこうとしているかであります。
 今日、世界経済は総じて物価の安定や金利の低下を背景に緩やかに拡大しつつありますが、国際収支の不均衡、保護主義の台頭、高い失業率、累積債務など多くの困難な問題を抱える中にあって、我が国としては、これらの課題に対し、世界の中の日本として、世界経済の安定と成長に寄与し国際協調を図る一方、国内では、円高による景気の停滞、事業転換並びに雇用情勢の悪化など、経済へのてこ入れも緊急課題としてその対応が迫られており、いわば外へ向かっての国際的責任と、国内における二十一世紀への基盤づくりとしての活力ある経済社会の建設という、両面の命題を背負っているわけであります。
 今回の合意は、米国を含めて主要国が現状の為替相場をおおむね認めたことに大きな政策的変化が認められ、その意義は大きいと思います。同時に、その前提として、日本政府がコミットした四つの条件を守ることが当然に要請されるわけでありまして、特に内需喚起の条件としての六十二年度予算の早期成立は国際公約になったのであります。ところが、まだ本予算の提案理由説明のみしか行われておりませんが、国際公約実現と内需喚起の必要性から、早急に実質審議を開始し、一刻も早く成立させ、その執行を図るべきと存じますが、大蔵大臣の決意を伺いたいと存じます。
 今回の共同声明において、日本に対しては、内需の拡大を図り、それにより対外黒字の縮小に寄与するような財政金融政策を続けることが求められております。また、円高や構造不況による影響の深刻な国内経済を活性化するためにも、日銀の公定歩合が史上最低水準になった今こそ、財政の出動が強く求められているのではないでしょうか。すなわち、さきの国際公約の中でも、予算成立後、総合的な経済対策を準備するということになっています。そのためにも思い切った内需拡大を図り、財政再建路線を大きく踏み外さない限度において、積極財政政策に踏み切るべきではありませんか。総理、大蔵大臣の御所見をお伺いいたします。
 また、税制問題は目下最大の焦点となっておりますが、さきの公約では、税制全般にわたる抜本的見直しは、日本経済の活力の維持増進に資するものであると表明されております。御承知のように、今回の税制改正は増減税ニュートラルになっており、これでは景気刺激の面では非常に淡いものになるのではないかと懸念する向きもあります。減税を先行させ、内需がふえ、景気の拡大が進むにつれて自然に増収になるような政策を配慮する、すなわち、単年度主義の予算と並行的に、例えば二年とか三年のレンジで均衡を考えるということは、国内的にも共感を受け、また、諸外国に対しても、日本は内需の刺激に真剣に取り組んでいると見られるのではないかといった見方もあります。減税を行ってすぐ増税でその税源を確保するという増減税ニュートラルで内需喚起という効果は期待できるのでしょうか。大蔵大臣の御所見を伺います。
 さて、我が国が国際経済の面で直面している最大の課題は、申すまでもなく為替の安定であり、主要国家岡における経済の不均衡の是正にあると思います。その観点から、今般、主要国の大蔵大臣及び中央銀行総裁による会議が持たれ、世界経済の重要問題について合意されましたことは、当面の問題の解決に大いに効果を発揮し、評価いたすものであり、宮澤大蔵大臣及び関係者のこれまでの労苦を多とするものであります。
 翻って、為替相場については、一昨年秋の五カ国蔵相会議のプラザ合意以降、ドル高が急激に進み、これに伴い円レートが急騰し、我が国経済は、この一両年、円高進展により、製造業を中心に企業の業況判断には停滞感が広がっておりましたところ、昨年秋に日米蔵相会議が持たれ、それにより円レートは百六十円台で小康状態を保っておりましたが、再び本年初頭、ヨーロッパ通貨の乱れなどを引き金に、一瞬、百四十円台まで急騰いたしました。
 その後、時宜を得た宮澤大臣の訪米により、百五十円台前半で安定的に推移してまいりました。今回の会議において、こうした二国間による為替安定への合意をさらに進め、まことに難事業とされておりました世界主要国間の合意への拡大を実現されたことは、今後の世界経済の安定の上から極めて有意義な措置と思います。
 例えば、この合意に至る間において、宮澤大蔵大臣は米国と欧州との思惑違いの調整に大変御尽力されたようでありますが、今回の合意により、今後の為替安定へ向けて円高への歯どめが十分かかると期待されるか、お伺いいたします。
 円高に揺さぶられ続けている日本経済の先行きを考えた場合、今回の合意によって歯どめをがっちりかけることができるかどうかが最大の関心事であります。伝えられるところによりますと、米国議会の対日警戒には依然として厳しいものがあり、今春以降、保護貿易法案等によって一段と激しい攻勢をかけてくることが予想されますが、これらの動きに対して、米政府に任せるのではなく、我が国としても懸案となっているMOSS協議に積極的に対処するとともに、推移を見ながら、場合によっては、総理がレーガン大統領など米政府要人に直接働きかける必要も出てくると思いますので、積極的に対応をお願いいたします。
 さて、為替問題について大蔵大臣のお考えを二、三お聞きしたいと思います。
 申すまでもなく、主要国が変動相場制に移行しておよそ十四年が経過いたしました。その間、国際通貨制度のあり方についてはさまざまな議論がありましたが、現行変動相場制が七〇年代初頭以来の国際的不安定を乗り越える過程で重要な役割を果たしてきたのも事実であります。他方、現実には歯どめのかかりにくい為替相場の不安定要因が変動相場制において避けられない問題点として指摘されております。今回の声明には、各国が為替レートを当面の水準の周辺に安定させることを促進するために緊密に協力することに合意したとありますが、これは現行の変動相場制からターゲットゾーンやレファレンスレンジの構想に近づきつつあるのか、大蔵大臣のお考えをお尋ねいたします。
 為替相場については、既に短期間に大幅な円相場上昇への対応を迫られている我が国の企業の中には、今や生存の最低の線を維持できないものもあらわれ始めている折から、少なくとも現状をさらに厳しくすることのないよう御尽力をお願いいたします。我が国が世界の経済の安定に寄与することは当然ながら、そのことによりもたらされる国内における犠牲は極力避け得るよう努力しなければなりません。現在、そのことで輸出関連企業は大変な影響を受けております。
 日本人は、新しい局面に対しあらゆる努力と研究を惜しまず、生産性向上を図り、その辛苦に耐えていく国民性を有しております。例えば円レートの厳しい条件のもので、それに追いつくように合理化を図り、価格の引き下げを実現する。現に、円高により輸出数量は昨年秋ごろ一たん落ちましたが、年初から再び輸出数量が伸びる傾向が見られ始めております。これが長期的に続くかどうかはわかりませんが、その循環は何かむなしい努力の積み重ねをしつつ、これがまた外国からたたかれるという悪循環になっているような気がするのでありますが、このような日本の産業人の気質を総理はどう受けとめておられますか。
 最後に、私は質問の冒頭、今後の日本経済の新しいかじ取り、指針を示す必要があることを申し述べましたが、それは今までの日本的な経済政策の調整というものではなく、世界的視野のもとでの経済構造の転換という困難な要請を国民的合意の中で受けとめ、より一層の市場開放や内需喚起を推進していくことが国際経済に貢献する道だと信じております。
 昨今の円高により、日本人の一人当たりの国民所得は、数字から見れば確かに米国と肩を並べる水準に達してはおりますが、個人生活においては住宅などの生活実感は大きくかけ離れております。我が国として緊急に取り組むべきものは、社会資本の充実、例えば住宅建設の促進であり、思い切った住宅政策等を実施すべきではないかと思います。
 個々の国民生活を見渡してみますと、多岐にわたり、まだまだ国際的水準におくれているところがあり、そのためには、将来を展望して地道に困難を克服して、思い切った改革と政策展開を断行し、名実ともに兼ね備えた国際国家日本の建設に邁進していただきたいと思います。
 今回の合意は、そうした問題に対して我が国が真剣に考え、独自の立場での本格的な取り組みを求めていることを示していると思います。今こそ従前からの発想を改め、世界の中の日本としての責務を的確に果たしていくべきだと思います。その意味で、総理及び大蔵大臣の勇気ある選択と挑戦を期待して私の質問を終わらせていただきます。(拍手)
   〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕
○国務大臣(中曽根康弘君) 下条議員にお答えをいたします。
 経済政策の長期ビジョンでございますが、行財政改革の基本路線のもとで、言いかえれば、いわゆる臨調路線を守りつつ調和のある対外均衡と国内均衡の実現、内外均衡の実現、これを我々は大いに考えて推進していかなければならぬと思います。
 このために、需要面においては、国民生活の質の向上を中心とする時代に入りまして、内需主導型経済へ持っていく。また、供給面におきましては、この需要の変化に見合った産業構造の転換、輸入の拡大等を図って、国際的な経済摩擦を解消する必要があります。
 それと同時に、我々は世界最大の債権国になりつつありますが、発展途上国等に対しましては、世界の資金循環の円滑化を国際的にも行って貢献していく必要があると思います。
 このような認識に基づきまして、昨年十二月に経済審議会の報告、いわゆる昭和六十一年度リボルビング報告に取りまとめられました政府に対する報告を尊重して、この線に沿って経済政策を展開してまいりたいと思います。もとより、臨調路線のもとに行ってはおりますけれども、経済の状況によりまして、臨時緊急の措置あるいは応急の措置というものは適時行っていくべきものであると考えます。
 日本の産業人の気質に対する御質問でございますが、我が国経済は戦後幾つかの大きな大波やら試練を乗り切って、今や世界第二位の経済的地位を占めるに至りました。この背景には、非常に勤勉な国民の皆様、あるいは創造性と積極性に富む企業経営家、あるいは勤勉なそして理解力のある勤労者や労働組合の皆様、これらの総合力によりまして今日の繁栄、経済拡大は築かれたものであると思います。
 このような我が国の特質を今後とも生かしながら、国際経済と調和しつつ、内需と国際経済との調和というものを考えまして、今後とも努力してまいりたいと思っております。特にこれから大事な点は、発展途上国から追いつかれつつありますから、科学技術あるいは新技術の方面に向かって相当力を入れまして、日本の特質をさらに前進させなければならない時代に来ていると考えております。
 積極財政への転換の御質問でございますが、先ほど申し上げましたような基本線に沿って今後とも努力をしてまいりたいと思います。一たん緩めますというと、何といっても、政府は膨張して肥大化する危険性がございます。膨張したり肥大化する余裕は、現在の日本におきましては、この膨大な国債を見てみますと、できない状況にあるのであります。
 このために、昭和六十二年度予算及び税制改正を初めとするいろいろな政策におきましても、以上のような考えに立って行っておりますが、しかし、未来性をはらんだ幾つかの施策もこの中には入っておるのでありまして、できるだけ可及的速やかに予算の成立、関係法案の成立をお願いいたしたいと考えている次第でございます。
 残余の答弁は関係大臣がいたします。(拍手)
   〔国務大臣宮澤喜一君登壇、拍手〕
○国務大臣(宮澤喜一君) まず、このたびのパリ合意の意義でございますが、一昨年の九月にプラザ合意がございまして以来、御記憶のとおり、各国はドルを低位に導きますために積極的な介入を続けてまいったわけでございます。その結果、我が国が御指摘のように非常に大きな影響を受けまして、昨年の十月に私がベーカー財務長官と合意いたしましたことは、これ以上大きな通貨の変動があることは、我が国自身のこれからの成長あるいは内需の充実に積極的にむしろ有害であるということについての認識であったわけであります。
 この点につきまして、あの際、日米間の合意はございましたが、今回のパリの合意は、同じことが各国について今や言える。我が国はもとよりでございますが、マルクについても、これ以上ドルが急落をするということは、もはやアメリカ自身にとって好ましいことではないという、そういう基本的な合意が生まれたというところから、もしその場合には、各国が共同の緊密の協議、行動をとろうということになった。現在でもアメリカには、まだまだドルが下がった方がいいという意見を持っている人々が議会なんかにもおられるようではございますけれども、少なくともアメリカの政府、通貨金融当局は、そういう認識を持つに至りましたのでこのたびのような合意に至った、これが意義であろうかというふうに考えるのであります。したがって、合意そのもののいわば信憑性というのがそういうところに見られるかというふうに思っておるわけでございます。
 そこで、しかしそれならば、これはターゲットゾーンあるいはレファレンスレンジとおっしゃいましたが、そういうことであるかというお尋ねでございました。これは、下条議員が御自身で国際機関においでになりましたのですぐに御想像のつくことでございますけれども、そういうターゲットゾーンといったようなものは、なかなか言うべくして行われがたい。今度のことは、続けてまいりました変動相場制、この変動相場制のできるだけ欠点を改善しようという努力である、私はそういうふうに考えております。したがいまして、基本的には市場における各国の経済の基本的条件、いわゆるファンダメンタルズが市場に今や反映しておる。しかしその間に、何かのことで大きな変動あるいは投機的な動きがあれば、これに対して各国緊密に協議をし、行動しよう、こういうこととして私は認識しております。
 そこで、お尋ねになりました、しかし今の日本のレートというものは非常に厳しいものではないかということについて、私自身、現在の円レートというのは日本経済にとって大変厳しいものである、対応が容易なことでないということをよく存じております。この関係で申しますと、このたびの合意は、レートを固定したわけではございません。先ほど申しましたように、ファンダメンタルズというものが各国の間で変化いたしてまいりますから、中長期的にはそれは市場にそのとおり反映されるべきものであって、そのことを否定しようといたしておるのではなく、むしろそのことが急激な変化を伴わずに起こる、そういう急激な変化を防ごうという努力でございます。したがって私は、例えば各国間の内需拡大でありますとか、あるいはアメリカで申せば財政・貿易赤字の削減、殊にプラザ合意以来これだけ時間がたっておりますと、それがアメリカの国際収支に影響がないはずはないというふうに考えますので、そういう意味ではアメリカのいわゆるファンダメンタルズ、基礎条件が改善され、それが円・ドル関係にやがて反映すると考えることは、私は無理でないのではないかというふうに思っておるわけでございます。
 それから次に、今度のパリ会議等々でも我が国が政策表明としていろいろなことを申しておるのについて、六十二年度予算の早期成立が必要だと政府は考えないかというお尋ねでございましたが、このたびの六十二年度予算におきましても、公共事業費を前年対比で五・二%確保する、あるいは住宅対策、雇用対策、それから産業転換等々、当面の重要な施策をたくさん実は盛り込んでおりまして、ひとつできるだけ速やかにこの予算を成立させていただきまして、執行させていただきたいということを強く念願いたしております。
 なお、声明に申しましたとおり、予算の成立いたしました段階で、内需振興あるいは社会資本の充実を一層推進いたしますための施策を、そのときの経済情勢を勘案しつつ改めて考えなければならないかというふうに思っておるわけでございます。
 それから、最後に今の税制改正について御言及がございました。
 この点は、私ども、このたびの総合的な税制改正によりまして、所得税、法人税の大幅な減税を図る、それによって企業意欲、勤労意欲を盛り上げるということは、我が国のこれからの経済成長のために極めて有効であろうと考えますし、また、財源対策として売上税をお願いしようとしておるわけでございますが、その売上税の持ちます効果は、経済成長、消費という形でいえば所得税減税による可処分所得がふえるということで、私はプラスにネットとしては転じるというふうに考えております。
 それから、増税と減税との時間的な関係についても御指摘がございました。
 このたびは、御承知のように所得税、法人税についてはこの六十二年内の実施が行われるわけでございますが、売上税については六十三年の一月、納付は五月でございますが、そのような時間的な差が設けられております。下条議員の御指摘は、もっとこの時間的な差を大きくすべきではなかったかという御指摘であったかと存じますが、財政の事情から考えまして、この程度の施行日の差をもっていわば満足せざるを得なかった、それは財政上の事情もございますことを御理解いただきたいと存じます。(拍手)
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○副議長(瀬谷英行君) 赤桐操君。
   〔赤桐操君登壇、拍手〕
○赤桐操君 私は、日本社会党・護憲共同を代表して、今月二十一日、二十二日の両日にわたりましてパリで開かれた蔵相・中央銀行総裁会議について緊急質問を行うものであります。
 冒頭まず、宮澤大蔵大臣が就任以来、異常な円高に伴う産業経済の苦況脱出のために、昨年十月末の宮澤・ベーカー会談、そして今年一月のワシントン会議と精力的にこなし、まず日米間の調整を済ませて、この基盤の上にパリ会議による先進主要五カ国及び六カ国による国際通貨安定のための合意づくりに努力されたことに対し、これを多とし、御苦労さまと申し上げる次第であります。
 さて、今回のパリ会議では、現在の為替相場は各国のファンダメンタルズ、基礎的条件にほぼ合致しているとの認識に立って、一昨年九月のG5合意によるドル安誘導の国際為替市場政策に区切りをつけ、ある程度の幅はあるものの、ドル安定を目指すことになり、ドル調整の第二段階というように言われ、これにより円高にストップがかかり、円相場も落ちつくことが期待されているようであります。円高で痛めつけられ、傷ついた我が国の産業経済界の実情と深刻な雇用不安の情勢拡大等から、円高に終止符が打たれることは我が国のあらゆる政策の出発点と言っても過言ではないと思うのであります。パリ会議の成果として、円相場は安定すると言えるかどうか、宮澤蔵相の答弁を求めるものであります。
 次に、今回の会議の共同声明を見ますると、現行為替水準の維持が色濃くにじみ出ており、このために各国が協力することがうたわれております。確かに、とめどないドル安容認と誤解されかねない米国の言い分や行動に歯どめをかけた点を評価しないわけではありません。しかし、我が国の現状は、蔵相も十分御承知のとおり、そして政府機関の調査結果でも一ドル百八十円程度がぎりぎりの線と言われております。もし現行為替水準の維持が百五十円台の円レートを指しているならば、これは妥当な水準とは言いがたいのではありませんか。さらに、ある程度の幅はあるとはいえ、水準維持の名目で現在の高過ぎる円相場が固定化される危険も感じられるのでありますが、蔵相はどのように判断されて共同声明に賛成されたのか、御答弁を願いたいと存じます。
 政府はよく、円高のスピードが速過ぎたことが弊害を招いていると説明されておりますが、そのことを否定するものではありませんが、円相場の水準もスピードにまさるとも劣らない重大な影響を持つはずであります。政府は、今日の円相場を妥当な水準で、我が国の経済力を適正に反映したものとお考えかどうか。私は現行水準が高過ぎると思っておりますので、共同声明の二項、「これ以上の急激な為替相場の変動は各国の経済成長と構造調整を阻害する。」との認識には大きな疑問があるのであります。現在までの為替相場の変動と水準が、我が国の経済運営の阻害要因となっていることは明白ではないでしょうか。米国主導による昨年九月のG5決定で円高に振れ過ぎた現行為替水準を改めることを、国際会議で蔵相は主張する責任があったのではないでしょうか。御答弁をいただきたいと思います。
 次に、為替相場の水準と密接な関連がある協調介入について伺います。
 これまでの一方的な円高進行の過程を見ておりますると、円高によって我が国の経済成長が阻害され、円高倒産や石炭、造船、鉄鋼等の産業分野が立ち行かなくなっているのに、協調介入によってこの苦しみを分かち合ってはもらえなかったというのが多くの国民の実感ではないかと思います。特に、米国のドル安容認発言や口先介入は、円高をあおり、自国の利益追求に走り過ぎというのが大多数の国民の素直な気持ちであります。
 今回のパリ合意は、為替相場を現状程度で安定させるとしていますが、万一、百五十円台を切るような円高相場となった場合は、協調介入の合意ができているのかどうか、伺いたいと思います。この点が明確になりませんと、円高に終止符を打つと言われても、有効な手段がないことになると思われますが、この点、会議の模様はどうであったのか。
 英国のローソン蔵相は、先進六カ国蔵相会議終了直後に、各国中央銀行による協調介入政策に関し合意に達したと語ったと報じられております。他方、宮澤蔵相は、この種の問題は言わない方が効果的な場合もあると述べたと新聞は報じております。為替市場への影響や思惑といったことを考えれば、慎重になる宮澤蔵相の御見解もわからないわけではありませんが、今までの異常円高と米国の一部に言われている一ドル百円説などを勘案いたしますると、円高防止の国際協調の重要なポイントが協調介入の問題でありますので、ぜひ明確な御答弁を願いたいと思います。
 次に伺いたいのは、パリ会議の結果、我が国が負担する内需の拡大による対外黒字削減に寄与する財政金融政策についてであります。
 海外からの我が国の巨額な累積黒字の解消要請と、国内的には円高不況脱国策と国民生活安定のためにも、内需主導型の財政、金融、経済政策の展開が強く求められていたことは多言を要しません。しかるに、政府はこれらの要請を無視ないしは軽視して、旧態依然の政策運営を行い、内需拡大を金融政策と地方自治体に押しつけてきたと言っても過言ではありません。
 私どもは、既に一昨年秋の円高不況の兆しが感じられた時点以来、政策転換を訴え、積極的な内需拡大を図ることを主張してまいりましたが、中曽根総理の節約一本やりの硬直し過ぎた姿勢は改まりませんでした。まことに残念でありました。昨年秋の補正予算で、ほんのわずか出かけた内需拡大のための財政運営の芽も、六十二年度予算では超緊縮のマイナス〇%と挫折を余儀なくされたのであります。今回のパリ会議を見ますると、またしても外圧がない限り動かない日本政府の悪癖をさらけ出したもので、国際国家日本を標榜する政府として恥ずかしい限りではありませんか。厳しく政府の反省を求めるものであります。パリ会議の結果を踏まえ、宮澤蔵相は具体的にどのような内需拡大策の構想をお持ちか、まず伺います。
 新聞報道では、四月を目途に総合経済対策の作成を総理は指示しているとか、六十二年度予算の公共事業を繰り上げ執行し、秋には大型補正を組むといったことを主要閣僚が発言いたしております。しかし、不思議なことは、さきの衆参本会議の施政方針演説に対する野党の質問に、六十二年度予算は最善の予算である、また、国と地方を通じる公共事業の総事業費規模は対前年度比五・二%の伸びを確保し、経済成長率見込みを上回る積極予算であると大見えを切ったのは中曽根内閣ではありませんか。また、予算審議すら本格的に始まっていないこの時点で、総合対策や秋の補正が必要と見込まれるのは全くおかしな話である。さきの国会答弁は食言となりませんか、お伺いいたしたいと思います。それとも、六十二年度予算は、この一年間の政策運営の裏づけを欠く欠陥予算だということなんでしょうか。
 政府は、まず予算の成立を図り、その後で対応策を考えようとしているようですが、それは余りにもこそくなやり方であり、議会制民主主義を無視するやり方となりますので、提案中の六十二年度予算を撤回し、国際的な責任も果たせる内需拡大策を織り込んだ予算を再提出される方が妥当ではないでしょうか。また、劇的なこうした措置こそが国際公約を果たす日本政府のPRにもなると存じますが、いかがでございますか。
 内需拡大策との関連でどうしても明確にしていただかなければならぬのは、中曽根内閣の財政再建路線の変更、転換を行うのかどうかという点であります。異常円高を招いた大きな原因は、五十八年度以降五カ年にわたる緊縮財政一本の硬直化した運営と、古い自由主義経済体制を礼賛し、経済成長促進と景気対策を政府が放棄し、ただただ見せかけの財政再建にきゅうきゅうとしたからにほかなりません。したがって、円高不況の克服も、海外経済摩擦の解決も、パリ会議で合意された本格的な内需拡大策も、挙げてこの中曽根内閣の経済財政運営を転換することが出発点で、この出発点を改めずに小手先の施策を幾らやっても、また、総合経済対策の看板で集めてみても、その成果は上がらないことは火を見るよりも明らかであると思います。この点をしかと承りたいと存じます。
 次に、六十二年度政府経済見通しと内需拡大のパリ会議の申し合わせについて伺います。
 先日行われた政府の経済財政運営演説に対し、私どもは、実質三・五%の経済成長見込みは裏づけを欠いた過大見通しではないかとの立場から質疑をいたしました。その際、政府は、三・五%の成長に自信を持ち、決して過大見通しではないという旨の答弁を行ってまいりました。今回の内需拡大のパリ会議の要請を政府が同意したということは、成長率を三・五%以上に引き上げることを約束され、そのためのもろもろの措置を講じることにしたと理解すべきだと思いますが、そう理解してよろしいのかどうなのか。パリ会議の雰囲気は、我が国の実質三・五%の経済成長では国際的責任を果たしたことにならないということであるのかも伺っておきたいと思います。
 さらに、内需拡大の国際会議の要請は、六十二年度の政府経済見通しは、国内需要の伸び率が四・一%、それから輸出等の落ち込み〇・七%を差し引いて、三・五%成長を見込んでいるわけでありまするから、実は国内需要の四・一%の伸びでは不十分であるということになるわけであります。国内需要の伸びを何%ぐらいにしたならばパリ会議の合意にこたえられることになるのか、お伺いをいたしたいと思います。
 最後に、経済の国際化は避けて通れない方向でありますが、それに伴う我が国の協調体制について伺いたいと思います。
 昨年の東京サミットで合意された多角的サーベイランス、政策の相互監視の責務がいよいよ重くのしかかってきたというのが、この一年間の国際経済と我が国の関係だと存じます。パリ会議でも、日本の貿易黒字の圧縮と内需拡大政策の推進を大前提に、ドル安政策を手控えようというように、まさに相互の政策が密接に絡んでおり、当然のことですが、自国の政策調整の責任を果たさずに国際的な発言の資格なしということだと思います。多角的サーベイランスに関し、宮澤蔵相の今後の見通しをお伺いいたします。
 また、これと関連してアメリカ通貨当局が、ドル安定策の次の方策としてレファレンスレンジ、参考相場圏の導入をねらっていることが報じられております。為替レートが参考相場圏の範囲内におさまるように各国は政策協調を行い、相互監視をするということがポイントのようであります。今回のパリ会議でこの問題は論議されたのかどうなのか。さらに、こうした為替水準を一定範囲内での変動調整に各国が協調する責任を負うことになると、これは自由変動相場制が管理変動相場制に変質するのではないかと思うのでありますが、蔵相の見通しを伺いたいと思います。
 国際的な協調体制の関連でいま一つの重要な課題は、国際的な累積債務問題にどう対処するかということであります。国際的な累積債務残高は一兆ドルという巨額に達しており、世界経済の大きな不安定要因であることは間違いありません。パリ会議開催直前に、ブラジルが貿易収支の悪化を理由に、対外債務利子の返済を一時停止することを一方的に発表するという事件がありました。中南米最大の債務国ブラジルの破綻が引き金となり、発展途上国の累積債務問題に火がつき、国際金融市場に混乱が起きるおそれはないのか。パリ会議でこの問題は討議されたのかどうかお伺いをいたしたいと思います。
 国際累積債務問題に政府はどう対処し、どんな役割を果たそうと考えておられるか。債権大国日本の責任と役割をお伺いいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕
○国務大臣(中曽根康弘君) 赤桐議員にお答えをいたします。
 まず、内需拡大、財政政策の御質問でございます。
 政府は、現在の経済状況から見まして、内需の問題と為替相場の安定の問題、それから失業問題、これが大きな大事な問題であると考えております。
 内需の問題につきましては、昨年来幾つかの総合政策等をやってまいりまして、昨年四月、さらに五月、さらに九月にわたりまして随時対策をやってまいりました。特に九月におきましては、三兆円の事業量を含む補正予算等を中心にした政策を打ってまいりました。これらは相当効いていると思っております。
 六十二年度予算におきましても、公共事業費につきまして五・二%の事業量を確保し、地方財政との協力、あるいは住宅金融公庫融資の拡充、あるいはいわゆる三十万人雇用開発計画、一千億円の労働省予算の計上等々を今やっておるわけでございます。
 金融政策といたしましては、昨年来五回にわたりまして公定歩合の引き下げをやり、先般二月二十三日には二・五%と、最近におきましては未曾有の低金利政策に入っておるわけで、そのほか消費者金融の利下げ、所得税、住民税減税の先行的実施、これらによりまして景気回復につきましても努力しておるわけでございます。
 為替レートにつきましても、昨年来二回にわたって宮澤・ベーカー会談をやり、今回はまたパリ会議におきましても日本は積極的にいろいろ意見も述べまして、宮澤大蔵大臣から報告のあったような為替の長期的安定に関する各国協力を取りつけたわけでございます。言いかえれば、まずこれ以上の下がることを防止する、歯どめをかけたと、そういうことで、これ以上の将来に対する問題は、我々の内需そのほかの積極的努力、各国との協調、そういうことによって順次改善をしていくように努力しておる次第でございます。
 なお、予算成立後におきましては、予算執行に関しまして、内需拡大総合政策を実施しようと努力しておるところでございます。予算の修正、撤回を行う考えはございません。
 財政運営の問題でございますが、先ほど来申し上げておりますように、我が国の財政の状況というのは極めて厳しい状況にあり、約百五十兆に及ぶ公債の累積を抱えておるわけであります。政府は、行政改革を行いまして、大体、試算によりますと、この五年間に十兆二千億円ぐらいの経費増を食いとめております。その中には、一兆円に及ぶいわゆるベースアップの費用も、各省の節約によってこれを処理してきておるわけであります。人員につきましては、約二万九十人のネット減を公務員についてもやっておるわけでございます。そのほか、補助金そのほかにつきましても懸命の努力をいたしておりまして、例えば食管会計におきましては、約四千数百億円のこれも節減を実行いたしております。
 このような努力を一生懸命やりつつ、小さな政府、そうしてできるだけ増税を回避するという政策を懸命にして、その結果、赤字公債を発行して以来ようやく公債依存率というものが一九%台に落ちました。私が政権担当しましたときは大体二七%前後であったと思います。こういうような努力によりまして、財政の対応力を逐次強化しつつあるところでありまして、政府の肥大化を防ぎ、冗費を節約するという努力は今後も継続していかなければならぬと、そう思っておるのであります。
 したがって、財政改革の遂行、あるいは臨調路線を基本線として今後も維持していくという姿勢は、やはり政府の肥大化を防ぐためにも、我々は続けてやらなければならぬと思っております。しかし、緊急措置やあるいはいろいろな有事即応、対応の問題というものは、今までやってきましたように将来においてもやるつもりであり、今後予算成立後に、予算執行に関するそのような総合対策、例えば下期の事業を繰り上げるということを毎年やっておりますが、等々を含めたそういう考え方をもって対処してまいりたいと思っておるわけでございます。
 残余の答弁は大蔵大臣からいたします。(拍手)
   〔国務大臣宮澤喜一君登壇、拍手〕
○国務大臣(宮澤喜一君) 先ほども申し上げたところでございますが、このたびの合意は、プラザ合意以後急落を続けましたドルがこれ以上大きく変動することは、関係各国、アメリカを含めまして、決してよろしいことではないという共通な認識が生まれたということでございますので、したがいまして、そこから、この安定がすべての国の利益である、アメリカを含めましてそのような認識が生まれたというところに意義があると考えておりますので、そこから安定を期待することができるというふうに思っております。
 なお、これは、ようやく為替レート関係が市場の基本的条件、ファンダメンタルズに反映されるに至ったという認識でございますから、ファンダメンタルズが時間とともに変化いたしてまいりますとこの水準はそれによって変化する。これは当然のことでございまして、水準を固定するという意味ではございません。
 御指摘のように、ただいまのレートというのは我が国の経済にとりまして決して容易なものではない、非常に厳しいものであるということは私もよく存じております。したがいまして、各国があそこに述べました政策努力を着実に遂行することによって、経済の基本的諸条件が、殊にアメリカの場合さようでございますが、改善をしていきまして、それが市場に反映されていくということを期待いたすわけでございます。
 次に、このたびの合意で協調介入についての具体的な合意があったかというお尋ねでございました。
 少なくとも意見の相違というものはございませんでした。ローソン英蔵相がこういうことを言ったと伝えられるがと御指摘がございましたが、当たらずといえども遠からずということと存じます。実は、この点につきまして声明にどのように表現するかということについて各国の間に議論がございまして、国によりましては、もう少し具体的なところまで書いておくべきであるという主張もございましたが、結局、市場等々の受け取り方を考えますと、余り直接的に書くことはいかがなものであろうか、ただしかし、さりとて投機筋が我々のこのかたい決心を見誤るようなことがあってはならない、そこだけは、その程度にははっきりさせておこうというようなことであのような表現になりました経緯がございます。したがって、その間に関係国の間に意見の不一致はなかったということを申し上げておきたいと存じます。
 それから、このたびの合意を受けまして、これからの政府の政策についてのお尋ねでございましたが、御提案を申し上げました予算を成立させていただきましたら、その段階におきまして、内需の振興あるいは社会資本の充実等を一層推進いたしますための施策をそのときの経済情勢を勘案しながら考えさせていただきたいと思っておりますが、御指摘のように予算そのものがまだ御審議の極めて早い段階でございますので、余りそれを見越しまして具体的に申しますことは不謹慎のそしりもございますので、あのような表現にいたしておる次第でございます。何とぞ速やかに予算を成立させていただきまして執行させていただきたいと念願をいたしております。
 次に、六十三年度、将来に向かっての財政経済政策をどうするかというお尋ねがございました。
 ただいまのところ、六十二年度の予算を何とぞ早く執行したいという念願でいっぱいでございまして、先のことをなかなか考えるいとまが少のうございますけれども、ただ、六十三年度予算編成の関連で考えましても、現在のような厳しい財政
事情がにわかに改善するとは思えない。その間の問題は依然残るわけでございますので、一般歳出を抑えていかなければならないことは変わりがないと存じますが、ただ、その間に内需の拡充であるとか社会資本の充実であるとかという、今回もいろいろ議論になりました、そのようないわば対内的にも対外的にも緊要になりましたニーズをどのような形でその周に盛り込むか、どういう形でそういうアクセントをつけていくかという、いわば基本的な合意、それから枠組み、それをひとつこれから衆知を集めて考えていきたいと思っております。
 三・五%の問題につきましては、あるいは内需の四・一%の問題につきましては、まず、これを達成するということに努力をいたしたいと思っております。
 それから、サーベイランスでございますが、サーベイランスの内容をどのような指標に基づいてやるかということを今回も議論をいたしましたし、また、次回のG7でも議論を詰めていきたいと思っておりまして、その結果をベニスのサミットにも報告する、そういうことで進んでまいりたいと思っておるわけでございます。
 それから、今度の会議でいわゆるレファレンスレンジの導入が議論になったかということでございましたが、このたびの我々の合意は、なかなかレファレンスレンジというようなものは現実には行いがたい。あります変動相場制をできるだけ改善していこう、こういうことに結局、結論としては到達いたしました。したがいまして、レファレンスレンジというようなものに至らないということを申し上げるべきかと存じます。
 最後に、ブラジルの問題がございまして、これは会議の寸前に表面化いたしましたので十分な議論をいたしておりません。
 ただ、会議に参加いたしました者のいわば私的な見方は、ブラジルは過去一九八三年でございましたか、に債務問題がございました。IMF、あるいは債権国、民間銀行といろいろな協議をした経験がございますから、今回といえども円滑な資金の流れが断たれてしまうというような事態は、恐らくブラジル自身の利益にならないということは十分わかっておるのではないだろうか。したがって、次のどういうステップにブラジルが出てくるかをもう少し見ておるべきではないか、そういう見方が大半だったように思います。
 我が国といたしましては、一般的に申しまして、先進国ができるだけ金利水準を低下さしていくこと、これは債務国には非常に影響がございますので、低金利を維持する、あるいは我々の市場への彼らのアクセスをできるだけ改善していく、あるいはこれらの国に対する資金の流れを何とかしてできるだけ確保してやるというようなことで、政府も、民間も、また国際金融機関もそうでございますが、そういう努力をいたすべきであろうというふうに考えております。(拍手)
    ―――――――――――――
○副議長(瀬谷英行君) 塩出啓典君。
   〔塩出啓典君登壇、拍手〕
○塩出啓典君 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいまの大蔵大臣の報告に対し、総理並びに関係閣僚に質問をいたします。
 一昨年九月のいわゆるG5以後の驚くべき短期間での四〇%もの円高、そしてこの円高がもたらした我が国経済への深刻な影響ははかり知れないものがあります。今回の円高による中小企業倒産は、民間信用調査機関の発表によると、今年一月までの一年四カ月で七百一件に達し、前回の昭和五十二、三年の円高時に比し二・五倍以上の件数であります。また、鉄鋼業界だけを例にとっても、今後数年間で大手五社だけで全従業員の四分の一に当たる四万人余の削減を余儀なくされ、日本産業の空洞化、雇用危機は目前にあり、その対策が急務となっております。しかも、これだけの影響を受けながら、日本の対米貿易黒字は、八五年の五百億ドルから八六年は八百五十億ドルの見込みと異常な増加で、その政策目的は何ら達成されておりません。
 G5のいわゆるプラザ合意がもたらしたこれらの事態は、政策ミスによる人災と言われるのも当然であります。政府はこの事態をどのようにお考えか、まずお伺いをいたします。
 これ以上の円高は、何としても防がなければなりません。昨年末と一月の日米蔵相会議、そして今回のパリで開催された七カ国蔵相・中央銀行総裁会議すなわちG7と、大蔵大臣初め政府関係者の御努力は多とするものであります。
 今回のG7の会議は、さきのプラザ合意によるドル高是正という目的が達成されたことを確認し、現行水準での為替レートの安定についての合意を得たものとされております。しかし、このドル安という為替の流れに終止符を打つということについて、各国ともその認識を一致させているのかは疑問であります。パリ合意に対する政府の基本認識についてお伺いをいたします。
 今回のパリ合意によって、ドル下落に終止符が打たれたとするには余りにも多くの不安材料があります。通貨安定の裏づけとなる各国の具体策は新鮮味を欠くものばかりで、その実行がほとんど期待できないこと、さらには、ドル売り材料となりかねないブラジルのモラトリアム宣言という問題があります。米国上院ベンツェン財政委員長は、日本の新聞記者との会見で、貿易不均衡が続けばドルはさらに下落するであろうとの発言が、昨日報道されています。米国は、ドル安という切り札を一時しまい込んだだけで、我が国や西独の内需拡大策のやり方次第では、いつ再び円高容認に動くかわからないという心配がありますが、大蔵大臣のお考えを伺います。
 また、「当面の為替相場水準が各国の経済的諸条件を反映した範囲にある」とする共同声明は、このレンジの水準から為替相場が大きく乖離した場合は協調介入の実施を辞さないということなのか、その内容が不明瞭であります。訪米中の我が党矢野委員長との会談で、ブッシュ副大統領は、一定のレートを前提に介入することは考えていない旨の発言をしており、先ほどの大蔵大臣の報告内容とは違いが感ぜられますが、政府の見解をお伺いいたします。
 現在の百五十円台の円相場をもって経済的諸条件を反映したものとする今回の共同声明の認識自体、問題をはらむものであります。自動車やコンパクトディスクのような比較的国際競争力の強い分野でも、百五十円台は厳しいと言われ、土地の価格で見れば一ドル千五百円、農産物では七百円、食料品では三百円との指摘もあり、百五十円台のレートは日本全体の平均的なものとは言えません。政府の見解をお伺いいたします。
 現在の為替相場水準は、我が国産業にとって高過ぎる水準と考えるが、我が国産業に対する諸影響についてどのような認識を持っておられるかお伺いをいたします。
 また、一ドル百六十三円で編成しておる六十二年度予算の前提とも大きく食い違ってきており、予算の組みかえの必要性があると思うが、大蔵大臣の見解をお伺いいたします。
 今回の共同声明で、我が国は、内需拡大と対外経済黒字削減のための財政金融政策を続け、六十二年度予算成立後総合経済対策を準備すると合意し、内需拡大と黒字是正は国際公約となりました。内需拡大のための積極財政路線への転換や大型補正予算の必要性が、閣僚内等与党内からも主張されています。しかし、現在の財政再建路線のもとで、貿易黒字削減に結びつくいかなる実効ある内需拡大を実施し得るのか、六十三年度の予算編成方針も含め、明確なる答弁を求めます。
 また、昭和六十年十月からの円高による総為替差益は、十四兆一千億円と見積もられているにもかかわらず、国民生活への還元率はまだ五四%にすぎない状況にあります。円高に対する諸問題は国全体で受けとめるべきものであり、特定の業種が差益を受け、一方、特定の業種が打撃を受けるということは、社会正義の上からも断じて許されません。そういう点から、円高差益を確実に国民生活に還元することが急務でありますが、どのような具体策を今後とるお考えか、御意見をお伺いいたします。
 公定歩合の第五次引き下げにより、限界に近いところまでの低金利政策が推し進められている中で、優良企業への貸出金利は下がりやすいが、消費者、中小企業等への貸出金利はなかなか低下せず、このことが低金利政策の効果が個人消費の喚起にまで十分浸透しない大きな原因となっております。政府の低金利政策は、全く実需の拡大に結びつかないばかりでなく、株式、土地等への投機のみを刺激する経済のマネーゲーム化を推し進める結果となっております。低金利政策の効果についてどう考えているかお伺いいたします。
 また、低金利政策を効果あらしめるためには、末端金利の低下促進が急がれるわけでありますが、大蔵大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
 今国会に政府が提案している売上税法案の内容は、物価を上昇させ個人消費を抑制するものであり、また、輸入品にすべて五%の売上税を課し輸出品は非課税とするもので、共同声明に示された内需拡大、黒字削減という我が国の国際的公約に反するものであります。世論調査の結果から見ても、国民の支持もなく、中曽根内閣支持率の急落の原因となっている売上税のごり押しは速やかにやめ、売上税法案を撤回し、予算を組み替え、早期成立を図ることが必要と思いますが、総理並びに大蔵大臣に基本的見解を伺います。
 最後に、ブラジルの債務処理問題につきましてお尋ねいたします。
 ブラジルは、米国の景気鈍化の影響やインフレ再燃などで輸出不振に陥り、貿易収支の悪化に伴う外貨準備の急激な減少から、千八十億ドルに上る対外債務の支払いが行き詰まり、日米債権銀行団への事前通告もなく、利払いの九十日間停止の措置をとっております。我が国銀行は、ブラジルに対しては米国に次いで巨額の債権を保有し、そのほとんどが今回の利払い停止措置の対象となっており、我が国銀行に与える影響も極めて深刻なものがあります。アルゼンチン、ベネズエラ等、中南米諸国を中心とした他の累積債務国にも支払い停止という事態が波及しないとも限らない状況にあります。我が国銀行に対する指導方針及び対応策、さらに世界的な累積債務問題に対する基本的施策についてお伺いをいたします。
 以上の諸問題につきまして、総理並びに関係大臣の誠意ある答弁を求めまして、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕
○国務大臣(中曽根康弘君) 塩出議員にお答えをいたします。
 まず、パリ会議の認識と今までの為替安定に対する努力の問題でございます。
 政府は、為替を長期的に、合理的に安定させるために今まで懸命な努力をしてまいり、いわゆる宮澤・ベーカー会談も二回行い、また、今回のパリ会議開催につきましても積極的に働きかけも行ってきたわけでございます。
 今回のパリ会議の結果、関係各国が一定の合意を行いまして、そして、大体これ以上のドル安というものは招来せしめないように歯どめをかけた効果が私は出てくるだろうと思っております。そういう意味におきまして、パリ会議は成功したし、我々はさらに各国と協調しつつ、この成果をさらに持続し改善していかなければならない、こう思っておるのであります。
 次に、米国のドル安誘導の発言でございますが、私は、昨年の九月における宮澤・ベーカー会談以降、アメリカの責任者がドル安誘導の発言をしたということはないと思います。最近の情勢から見ますと、ボルガー議長等は、かえってドル安はアメリカのインフレを誘発する、そちらの方を警戒するという発言を強くしてきておりますし、さらに、産業の競争力の確保が非常に重要であるという方向に認識が変わりつつあります。レーガン大統領の教書にもこの点は強調されておるのでありまして、アメリカの国内においては保護主義法案が出ておりますが、この保護主義の内容も、今まで我々が恐れていた内容もございますが、アメリカの競争力付与という方向に大きく性格も変わりつつあるという点を認識しておるわけでございます。
 我々は、今後とも、良好なる両国にとって満足すべき長期的安定を実現していくために努力してまいりたいと思います。
 予算の編成の問題につきましては、先ほど来申し上げましたように、政府の肥大化を防ぎ、そして臨調路線を守りながらこの厳しい経済情勢に対処していきますけれども、内需の問題、為替の安定の問題、雇用対策の問題を重視しつつ今後とも機動的な運営をしてまいりたいと思っております。
 円高差益の還元につきましては、昨年来随時努力してまいっております。本年一月からは電力・ガス料金を大体約二兆円消費者に還元するということになっておりますし、輸入牛肉の展示販売における小売目安価格を約二〇%引き下げる等の努力もして、物価は実に、昭和六十一年の平均を調べますと、昭和三十三年以来二十八年ぶりに一%を切るという物価の安定をもたらしており、これはさらに相当経済政策にも有効に動いてきていると思うのであります。
 政府は、今後とも為替レート及び原油価格の動向を見つつ、さらに円高メリットの浸透に努めます。
 今までやりました点は、電力・ガス料金の値下げ、輸入牛肉の差益還元、小麦の政府売り渡し価格の引き下げ、国内航空運賃の割引制度の拡充、国際航空運賃の方向別格差の縮小、国際通信料金の利用者の負担軽減、石油製品の価格動向の監視、配合飼料価格の引き下げ、輸入消費財価格動向等の調査の実施、あるいは百貨店やスーパー等における輸入のさまざまな計画の実施及び並行輸入等に関する調査の実施等で、並行輸入等も順次変化しつつある情勢でございます。
 マネーゲームの問題につきましては、公定歩合の引き下げ等によりまして金利水準が全般的に低下が進む、そういう意味で消費者ローンの金利の引き下げを今強く行っておるところであります。
 株式相場につきましては、昨年来上昇傾向をたどっておりますが、これは世界的な株価の上昇につられた面もございます。最近の動向にかんがみまして、昨日、東証の理事長から、規制を強化し、また関係者に対しては自粛を要望する声明が出たところでございます。
 地価につきましては、東京等の一部においては上昇が見られましたが、全国的には落ちついております。東京都の問題については、東京都と連絡いたしまして今、逐次努力を行い、漸次鎮静化しつつあります。世田谷とかあの周辺地域は、上がってきたのが大体これは鎮静に変わってまいりました。
 また、売上税の問題で市ございますが、これはシャウプ税制以来の二十七年に及ぶ税のひずみ、ゆがみ等を是正して減税を行わなければならない、そういう考えに立ちまして抜本的な改革を心がけた次第でございます。
 減税を実行するという面から見ますと、所得税、法人税等を減税しなければなりませんが、現在の日本の収入構造を見ますと、約四十一兆円の税収を得ております。その中の大宗は、十六兆は個人の所得税であります。その相当な大きな部分がサラリーマンの源泉課税になっておるということは御存じのとおりです。それから法人税が約十一兆九千億円、それから酒が約一兆九千億円ぐらい、これが大宗です。これの三二%が地方の交付金になっていくわけです。あとは、一兆五千億円程度が物品税、相続税及び揮発油税であります。あと一兆円以上というものは大体有価証券取引税ぐらいで、たばこの消費税が約八千九百億円ぐらいであると思います。あとはずっと下がっておるわけです。
 こういう中で所得税、法人税を思い切って減税するとすると、地方に対する交付税をどこで確保するか。そういう面も考えてみますと、長期的に安定した税源を確保する必要があるわけであります。また、所得税、法人税、特に所得税源泉課税を減税するということを行う場合にどういう税源を確保するか。これを確保しなければ減税はできません。そういう面から、今までの税目等も全部洗いまして、そして政府税調が考えたのが売上税やあるいは利子課税の問題であります。
 しかし、こういう安定的な税収を確保するということによって初めて地方財政は安定性を持ちます。所得税、法人税を引き下げるだけで、地方財政に交付金が減るということで不安を与えてはならない。もしこれに対して対策がおろそかになる場合には、縮小再生産に日本経済全体が入ります。また、地方におきましては、さらに富裕県と貧しい県との格差がどんどん大きくなります。また、税源を確保しなければ公共事業費も捻出できません。そういう意味におきまして、地方の貧しい県はますます困難が出てくるわけでございます。
 そういう意味におきまして、我々としては、地方の問題あるいは公共事業費の確保、あるいは、さらに将来の長寿社会に備える福祉の問題、あるいは将来における減税財源を確保して減税をさらに推進していくという意味の税源確保、そういう面から売上税及び利子課税ということを選択した次第でございます。
 これはまた、一面におきまして、国際関係におきましても、今、各国はみんな減税を断行しております。アメリカは実行しました。イギリスも今、実行しようとしている。ドイツも八八年を繰り上げて実行しようとしている。そういう情勢を見ますと、企業の外国に対すると同じ条件における競争力を確保するためにも、今や行わないというと遅くなる。法人税が外国で下がって日本で下がらないという場合には、船籍港がみんなリベリアやギリシャに移されて日本船籍から離れたように、法人の本店がハワイやロサンゼルスに移る危険性が非常にあるわけでございます。
 そういういろいろな面を考え、将来の減税等も考えてみますと、私は、売上税で自然増収に出てきた分は社会福祉や減税に充てた方がいい、こういうことを言っておりますが、こういう将来に対するおもんぱかりも今度の税制改革で行っていかなければならない、こう考えておるわけであります。野党の皆さん方が減税を主張されておるについて我々も共鳴しておりますが、財源をお互いに示し合って、野党のパンフレットを見ますというと我々が賛成できない内容がありますが、国民の目の前でどちらがいいか見ていただくということが議会主義に沿うゆえんである、このように考えておるわけであります。
 次に、予算の組み替えの問題でございますが、今回の予算におきましては、公共事業費について五・二%の伸びを確保する等懸命な努力をし、また失業に対応する対策も十分を図って努力してきておるところでありまして、予算の組み替え、撤回は考えておりません。速やかなる成立をお願いいたしたいと思っております。
 国際債務の問題でございますが、債務累積国における債務額は一兆ドルを超すという状況になってきつつあるようでございまして、順次深刻になってきていると思います。しかし、これに対しましては、国際機関、IMFやあるいは世界銀行あるいは関係各国が協調して、例えばパリ・クラブというような機構がございますが、それらと常に綿密な協調を持ちつつ破綻を起こさないように、我々はケース・バイ・ケースで今まで処理してきました。我々はこのような努力をさらに継続することによって、そういう不幸を起こさないように今後とも努力してまいります。
 我が国は、昨年以来、例えばIMFに対するクレジットとして約三十億SDR、世界銀行に対する協力として約二十億ドル、あるいは国際開発協会、いわゆるIDAに対して二十六億ドル等の資金も供与しておりまして、資金の還流については我々としても誠心誠意努力しておるところでございます。
 残余の答弁は大蔵大臣からいたします。(拍手)
   〔国務大臣宮澤喜一君登壇、拍手〕
○国務大臣(宮澤喜一君) パリ合意の基本認識についてお尋ねがございましたが、まさに塩出議員が御指摘になりましたとおり、プラザ以来の為替レートの変化の結果、今日各国の関係は経済の基本条件、ファンダメンタルズにおおむね合致することになった、したがって、このあたりで為替レートを安定させることが大事である、こういう合意でありましたことは御指摘のとおりでございます。
 それで、これについてのアメリカの考え方について、ブッシュ副大統領のことも御引用になりましてお話がございましたが、これは先ほど総理が言われましたように、これ以上為替が大きく変動するということ、ドルが下がるということが、アメリカ自身にとって実は問題があるという認識が出てまいっておりますので、そういう意味で、このたびの協力関係について関係国間で不一致がなかったということを申し上げていいと思うわけでございます。
 しかしながら、現在のレート自身はこれでいいと思うかということでございますが、それが我が国にとりまして厳しいものであることはよく存じております。先ほどから申しましたように、しかし、このたびの努力はレートを固定するという意味ではございませんので、ファンダメンタルズが動いてまいりますとそれが市場に反映するということを考えておるわけでございます。
 それから、予算案は一ドル百六十三円を前提にして組んだのであるから、今のレートではやりかえる必要があるのではないかということにつきましては、申し上げるまでもなく、年度途中でレートというものは変化するというふうに考えるべきでございましょうし、どの時期に予算が執行されるかということにも関連がございますので、この問題は予算執行の段階の問題であって、予算そのものの修正に至る問題ではないというふうに考えております。
 それから、内需拡大のための諸施策につきましては、あの声明にも申しておりますとおり、予算案が成立いたしましたら、私どもとしても、内需拡大、社会資本充実について新しくさらに推進方法を考えたいと思っておりますが、将来の六十三年度予算編成の問題につきましては、先ほども申し上げたところでございますが、財政の困難は簡単に解決するとは思えません。したがって、一般歳出抑制の努力は依然として必要でございますが、その中から内需拡大、社会資本充実のための施策をどのように重点的に扱うかという、いわば基本的な合意あるいは合意の枠組みを考えてみたいというふうに思っております。
 それから、公定歩合につきましてお話がございまして、既に今回以前に四度公定歩合の引き下げがございましたが、これはプライムレートも四度下がっております。今回の場合も、まず、資金コストの関連もございますから、預貯金金利の引き下げをせんだって発議をいたしました。貸出金利につきましても、このように調達コストが低下いたしてまいりますと、消費者あるいは中小企業にもこれが徐々に波及していくというふうに、過去もさようでございましたが、そのように考えております。
 売上税につきましては、総理から御答弁がございましたので、省略をいたします。
 それから、ブラジルの問題がございました。これは、基本的には債務国と債権国、我が国の場合で申しますと債権国政府、それから債権国の金融機関、さらにいわゆる国際金融機関、この四者の関連になるわけでございますが、今回のブラジルの場合は、恐らく自分で資金の流通を断つようなことは得策でございませんので、前回の経験もあって、やがて何らか柔軟な態度に出てくるのではないか。少なくとも最初にございましたポジションは、いわば将来に向かっての第一歩のバーゲニングポジションでないかというふうに考えておりますけれども、いずれにしても、国といたしましては、やはり全般的に金利水準を低下させませんと累積債務国には非常につろうございますし、あるいは我が国の市場へのアクセスもできるだけ開くということも大事でございます。国としての資金の流れもできるならば確保していくということも大事なことでございます。
 また、民間金融機関に対してどういうふうに指導するかというお尋ねでございましたけれども、銀行も経営の健全性ということがございますから、その点もいろんな意味で考えてまいらなければなりませんが、同時にこの資金の流れは、将来のこともございます。適切に維持するということも大事でありますし、また、銀行間において必要であれば、その負担という問題があれば、それはできるだけ公平に負担していくといったようなことを指針にいたしたいと思っております。(拍手)
   〔国務大臣田村元君登壇、拍手〕
○国務大臣(田村元君) 一昨年以来の急激かつ大幅な円高の進展は、輸出の減少、輸入の増大、また国内市況の下落等を通じまして、各企業の懸命の経営努力にもかかわりませず、鉄鋼、非鉄金属等を初めとして、製造業を中心に我が国産業、特に下請の中小企業等に深刻な影響を与えております。
 今後、一ドル百五十円台で推移した場合の影響につきましては、一概には申し上げられないと存じますけれども、円高の影響を直接に受ける産業を中心に厳しい対応を迫られることも予想されます。それだけに予算の成立がおくれますと甚大な追い打ちをかけるおそれがあると、私は心から心配をいたしておる次第でございます。(拍手)
   〔国務大臣近藤鉄雄君登壇、拍手〕
○国務大臣(近藤鉄雄君) 先生御指摘ございましたように、最近の為替相場はこのところ百五十円台前半で推移しておりますので、見通しの前提としてのレートを幾分上回っていることは事実でございます。
 しかし、今般の主要国蔵相・中央銀行総裁会議でなされた合意等を受けて、今後円レートを一層安定することが期待できますし、特にアメリカの数字を見てみますと、米国は十二月の貿易収支赤字が前月の百九十二億ドルから約百七億ドルへと縮小をし、今後引き続き貿易赤字は縮小傾向をたどるものと見られますし、また同時に、今回の公定歩合引き下げにより日米金利差が拡大いたしまして、これが為替安定に資することを期待する次第でございます。
 一方、国内は、今回の公定歩合引き下げ等によって、大蔵大臣からもお話ございましたが、市中金利の低下が一層促進され、これが企業、家計の借り入れコストの軽減や企業収益の改善等を通じて、企業の活動、消費の活動の活発化につながってまいるものと期待する次第でございます。
 したがいまして、このところの為替相場の動向をもって直ちに見通しを改定する必要はないと考えておりますが、しかし、政府といたしましては、今後円レートの安定を図るとともに、引き続き適切な、かつ機動的な経済運営に努力してまいる所存でございます。
 為替差益の還元につきましては、総理からお話もございましたので重複を避けますが、さらに国民の皆様に還元できるように、一層努力を続けてまいりたいと思います。
 以上でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
○副議長(瀬谷英行君) 橋本敦君。
   〔橋本敦君登壇、拍手〕
○橋本敦君 私は、日本共産党を代表して、パリにおける蔵相・中央銀行総裁会議について、総理並びに大蔵大臣に質問します。
 本題に先立って、私は、国会議員に対する盗聴事件という民主政治に対するゆゆしい重大犯罪について総理に質問します。
 去る二月二十一日、我が党の上田耕一郎参議院議員の私宅に盗聴器が仕掛けられている事実が発覚したのであります。検察庁は、早速盗聴器と見られる物件を押収し、上田議員も直ちに告訴しました。
 これより先に判明している我が党の緒方国際部長宅の盗聴事件は、警察官の関与が明白となっており、権力犯罪であることが否定できないものであります。これに引き続く今回の我が党上田議員に対する盗聴事件は、卑劣な反社会的人権侵害であることは言うに及ばず、憲法が保障する結社の自由を真正面から踏みにじるもので、国会全体としても絶対に黙視できないものであります。
 元茨城県警備部長江間恒氏の言明によれば、盗聴工作は社会党から公明党にまで及んでいたと述べており、かかる行為は、まさに我が国に憲法無視の暗黒政治の魔の手が不法に横行しつつあることを示すものであります。国民の厳粛な負託を受けて国政に携わる国会議員に対する盗聴事件のこの事の重大さを総理はどのように認識されておられるのか、所見を伺うとともに、厳重な捜査と全客の徹底的解明を強く要求するものであります。
 本論に入ります。
 まず、重大な問題は、今回の共同声明の中に、我が国のとるべき内需拡大策として、今国会に提出されている税制改革法案が明記されていることであります。これが、売上税及びマル優廃止を含むものであることは疑問の余地がありません。
 そもそも総理、あなたの明白な公約違反である売上税とマル優の廃止は、今まさに広範な国民の大きな怒りを呼び起こし、当面の国政の最大の焦点となっており、しかも、国会ではまだ審議もされていないのであります。それにもかかわらず、政府の独断でこれを共同声明の中にうたい込み、国際公約にまでして強行しようとするなどのことは、国権の最高機関たる国会を軽視し、その審議権をじゅうりんするも甚だしいものではありませんか。同時に、それは、最近の世論調査でも、八割に及ぶ圧倒的多数の反対意見に示される主権者たる国民の意思に背くこと、もちろんであります。
 事は、我が国の主権と議会制民主主義の根本にかかわる重大な問題だけに、政府の責任について、総理並びに大蔵大臣の明確な答弁を求めるものであります。
 我が党は、軍拡のための売上税導入やマル優廃止法案などは直ちに撤回するよう断固として要求するものであります。
 次に、パリ会議をどう評価するかであります。
 今日、先進資本主義諸国の現状は、いずれの国にとっても、果てしなき軍事費の増大が経済と国民生活にとって耐えがたい重荷となっています。したがって、軍事費を大幅に削減し、平和と軍縮に向かって政治を根本的に転換させることが、為替レートの安定を含めて経済再建の道を切り開く上で最も確かなかぎとなっていることは、今やだれの目にも明白ではありませんか。
 ところが、共同声明は、このような基本的視点を欠落し、一言で言うなら、各国それぞれの自己弁護と自国の進めたい政策をあれこれ羅列しているものにすぎません。しかも、アメリカの巨額の財政赤字の元凶であるレーガン大軍拡についても、一かけらの批判も見られないなど、今日の世界経済の危機と混乱の根本的原因に対する具体的解明は全くなされていないのであります。これでは、危機に直面している今日の世界経済の根本的事態の解決には、およそほど遠いものであったと言わねばならないのではありませんか。
 共同声明では、アメリカは財政赤字を縮小するとは書いてあります。これは、我が党がかねてから厳しく指摘してきたとおり、アメリカの双子の赤字、すなわち、毎年の軍拡予算に基づく巨額の財政赤字と貿易の赤字は、為替レート混乱の重大な根源的要因でありますから、この縮小は当然でありましょう。しかし、強いアメリカを標榜し、核戦争を宇宙にまで拡大するSDI計画を強引に進めるレーガン大軍拡のもとで、そのようなことが容易に期待できるのですか。
 そして、アメリカの財政赤字が縮小せず、一方、日本の貿易黒字もアメリカの思惑どおりに減らないとなれば、今回の合意なるものも近い将来破綻し、現にベンツェン米上院財政委員長が、円・ドル相場は徐々に一ドル百二十円にすべきだなどと言っているように、さらに異常な円高を押しつけられないという保証はありますか。総理、大蔵大臣の明確な見解を求めるものであります。
 当面の円高問題についても、解決どころか、おおむね一ドル百五十円台を当分継続するという今回の合意なるものは、国民の願いとは全くかけ離れたひどいものであります。日本国内の当面の円高不況は、私の住む中小企業の多い大阪は言うに及ばず、全国各地にわたっていよいよ深刻であり、円高関連倒産は一年前の十倍近い水準であります。輸出産地業者は、余りの急激な円高になすすべもなく、次々と倒産、廃業に追い込まれています。夜逃げや痛ましい自殺も相次ぐという、このすさまじい中小企業の危機について、大蔵大臣、経済運営に責任を負う閣僚として、あなたはなぜもっと真剣に耳をかそうとしないのですか。
 大蔵大臣も、一ドル百七十円程度が望ましい旨を述べたこともあります。しかし、それどころか、これまでの通産省の実態調査では、中小企業の採算限度は一ドル二百円だというのが痛切な声であります。それなのに、これを無視して現在の異常な円高を国際公約として容認するなどということは、とりもなおさず、中小企業と労働者を見殺しにするものと言っても決して過言ではないのではありませんか。
 そもそも、円高について今なすべきことは何か。それは、まず現在の円レートが異常な高さにあることをはっきりと認めて、この異常な円高そのものを早急に是正することであります。それなのに、今回のパリ会議で日本はなぜこの主張を明確に貫かなかったのですか。これが問題であります。総理並びに大蔵大臣の責任ある答弁を求めます。
 次に、内需拡大の問題に移ります。
 まず、真の内需拡大のためには、我が党がかねてから主張しているように、大幅賃上げ、減税、福祉の充実などによって、内需の六割を占める個人消費、国民購買力を大きく伸ばすべきであります。また、公共投資の内容も巨大プロジェクト中心でなく、下水道、公園、住宅など生活に密着した分野に振り向ける必要があります。
 ところが、政府のとっている施策は逆なのであります。長期にわたる異常円高で大企業の海外投資、海外生産が増大する一方、新日鉄を初め鉄鋼五社で四万五千人もの大量の合理化、人員整理が進められるなど、深刻な不況で地域経済は崩壊の危機に直面しています。室蘭、釜石などでは高炉の火が消えるとともに、布そのものが消滅するとさえ言われているのであります。
 しかるに、政府は、この大企業の大量の人減らしには何の歯どめもかけず、いわゆる経済構造調整の名目で競争力のない企業の切り捨て政策を促進し、将来三百万人を超えるという大量失業の深刻な事態さえつくり出そうとしているのであります。
 総理、これではまさに本末転倒、内需をますます冷やすだけではありませんか。真剣に内需拡大を進めると言われるのなら、国内産業の空洞化を阻止し、とりわけ総理が推進本部長として進めている経済構造の転換政策は直ちに中止するのが当然であると思いますが、いかがですか。総理の明確な答弁を求めるものであります。
 最後に、一昨年九月のニューヨークG5以来、今回のパリ会談に至る経過のすべては、今や世界最大級の債務国にまで転落したアメリカを支えることにのみきゅうきゅうとして、その意を受けて各国にも働きかけるという日本政府の姿勢を端的に示しております。このような米レーガン政権のいわば副官としての役割から脱却し、何よりも日本国民に責任を負う政治の主体性と自主的経済主権を確立しない限り、異常円高はもちろん、日本経済と国民生活の危機の抜本的打開はあり得ないのではありませんか。このことを最後に厳しく指摘して、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕
○国務大臣(中曽根康弘君) 橋本議員にお答えをいたします。
 電話盗聴事件につきましては、先般もお答えいたしましたが、この種違法行為に対しては厳正な態度で臨むことで指示をいたしております。
 税制改革の問題につきましては、先ほど来申し上げましたように、我々は今日の時点においてまさになすべき歴史的責任を有すると、こう考えまして、国民の皆様にお訴え申し上げ、法案として提示しているところでありまして、速やかに御審議を願いたいとお願いする次第でございます。
 この税制改革につきましては、まだ不安や反対があることはよく知っておりますが、我々の説明不足によるところが非常に大きいと思います。国民の御理解をさらにいただくように我々は全力を尽くして実現したいと思っております。サラリーマンなどは、いろいろ話してみますと、心の中では早く実現してくれと思っている人が相当多いということを私は聞いております。
 なお、アメリカの双子の赤字の解消問題につきましては、我々は随時アメリカ側に対してはこれを主張しておるわけであります。これは宮澤・ベーカー会談におきましても、あるいは私とレーガン大統領との会談、あるいは手紙の往復等におきましても、常にこれを指摘しておるところでございます。しかし、我々といたしましても、市場開放あるいは輸入の増大、あるいは経済構造の改革という面はまたみずから行わなければならないと思うのであります。
 鉄鋼や造船等の失業が出るであろうということにつきましては、我々も非常に心配をいたしております。その考えもありまして、今回、労働省の予算、約千億円の三十万人雇用開発計画をやり、労働省の雇用予算を二千億円もふやしたというのは最近顕著なことでございます。そういう意味におきまして、これらの失業対策のためにもできる限り早く予算を通していただいて、このお金を使わしていただきたいとお願いを申し上げる次第なのでございます。
 なお、労働時間の問題につきましては、経済発展の成果を賃金と労働時間短縮に配分することは適切であります。
 そういう意味におきまして、我々は、法定労働時間の短縮等を内容とする労働基準法の改正法案を今国会に提出する予定でおります。
 下請企業に対しましては、下請代金支払遅延等防止法の厳正な運用、下請企業の新分野進出等構造調整を円滑に進めるような新たな技術開発補助や、五%の低利融資制度などの支援措置を講ずる所存でございます。
 次に、経済構造調整政策をやめよと言われますが、貿易黒字がこれだけ突出している日本経済の状況、あるいは世界における日本の立場等を考えてみますと、これをやめるわけにはまいりません。我々は貿易国家でございますから、世界の各国と協調しつつ、巧みに調和を図りつつ、みずから直すべきところは直し、先方に要望すべきところは要望して進む、そういう国際国家としての我々の国の特色を発揮してまいらなければならないのであります。国際的に孤立するということは一番危険なことでございまして、みずからなすべきことはなす、そういう態度で我々は今後も努力してまいりたいと思います。
 残余の答弁は関係大臣がいたします。(拍手)
   〔国務大臣宮澤喜一君登壇、拍手〕
○国務大臣(宮澤喜一君) このたびの声明の中で我が国の税制改革について述べておることはそのとおりでございますが、私どもがこのたびお願いをしております税制改革は、所得税及び法人税の大幅な減税をいたしまして、そして個人の勤労意欲あるいは企業意欲を刺激していく。また、所得税の減税によりまして可処分所得は当然ふえるわけでございますので、その全体的な、総合的な売上税を含めました効果は、これは我が国の経済全体、活力の維持増進に資すると考えておるわけでございます。これは国会で御審議中でございますので、御指摘のような誤解が万一あるといけないと思いまして、声明には「今国会に提出した税制全般にわたる抜本的見直し」と書いてございまして、事柄に何ら間違いはございません。また、政府が我が国日本経済の活力の増進に資すると考えておることもそのとおりでございますので、その間に誤解は生じないことと思います。
 それから、為替レートの今の水準というものは、これは非常に厳しいものであって、これを何か国際公約として容認した云々というお話でございましたが、先ほどからるる申し上げておりますとおり、このたびの合意はそのようなことではございません。ともかくプラザ以来の変化がいわば経済の基本条件を反映するに至ったので、これ以上急激な変化が当面ないように協力しようということでありまして、いわゆるフロートでございますから、これは固定制でないことはもとよりのことでございます。
 それからもう一つ、アメリカの財政赤字のお話がございまして、これは御承知のようにグラム・ラドマン・ホリングス法でアメリカ自身が何とか財政赤字を削減したいと一生懸命考えておることは事実でございます。ことしの一月の大統領教書におきましても、八八年度の赤字目標額は千八十億ドルにとどめたいとしておりますし、今回の会議におきましても、アメリカの財務長官は六百億ドル、少なくともそのような削減をしたいということを言っておりまして、これはアメリカ自身が悩んでおる問題でございますから、アメリカ自身にそういう努力の意思があることは、これはもう間違いはございません。国内の事情でなかなかそれがそのとおりいくか、いかないかということはありましても、よそに言われてしていることではございません。
 なお最後に、このたびのような会議で、日本は自分の国益よりはアメリカを支えることにきゅうきゅうとした云々というお話がございましたが、アメリカは我が国と価値観を同じくする友邦でございます。しかも、我が国とは我が国の安全保持に関して大変に密接な関係にございます。また、ドルは世界で唯一の基軸通貨でございます。そういう観点から、アメリカがよくなってくれることは我が国の国益に合致するものである、かように考えております。(拍手)
    ―――――――――――――
○副議長(瀬谷英行君) 三治重信君。
   〔三治重信君登壇、拍手〕
○三治重信君 私は、民社党・国民連合を代表し、去る二月二十一、二日に行われた先進主要国蔵相及び中央銀行総裁会議の合意事項と今後の政府の対応につきまして、総理と関係大臣にお伺いしたいと思います。
 第一に、共同声明の最後の項に、現在の為替水準はおおむね適正であり、これ以上の相場変動はマイナスとなる、この水準の安定化のため各国は緊密に協調するとあります。すなわち、円は現在の百五十円台で安定し、これ以上の円高にならないような保証ができたと承知してよろしいものでしょうか。もしそうならば、宮澤大蔵大臣の円高歯どめということの御努力を多とするものであります。
 しかし、我が国の円の一ドル百五十円台は、声明に言う、通貨水準は経済のファンダメンタルズ(基礎的諸条件)を幅広く反映していることを認めたとありますけれども、大蔵大臣は一ドル百五十円台は適正であるとお認めになりますか。つい数日前発表になりましたが、OECD(経済協力開発機構)は、一九八六年、昨年における日本の購買力平価は一ドル二百二十三円である、その平均市場レートの一ドル百六十九円は、購買力平価から見れば、加盟諸国の中で円は最も過大評価されていると報告しております。このような円の過大評価は、国民生活にも産業にも深刻な影響を与えていると思います。相互監視(サーベイランス)の経済指標を定期的に吟味するとありますけれども、この次の吟味はいつになりますか。また、新興工業国の為替レート調整にも関与していくと考えてよろしいものでしょうか。当面は韓国のウォンや台湾の元が対象になると考えていいものか。
 第二に、レファレンスレンジ(参考変動幅)の構想がアメリカから会議の前に非公式に打診があったのか。言われる一ドル百四十円から百六十五円の変動幅構想については、我が国の態度はどうなのか。西ドイツが変動幅構想に反対であるとの報道がありましたが、将来ともこういうものは実現はないと考えてよいものでしょうか、お答えをお願いします。
 第三に、途上国の累積債務残高は、世界銀行の調査によれば、昨年の八六年には一兆三百五十億ドルに上っております。つい最近、ブラジルの利払い停止問題から、このたび急にG5会議で累積債務国問題が議題とされました。日本はこれに対して具体的に今後どう対処していくつもりか。
 ブラジルの大統領は、新聞報道によりますというと、余力がある有利な立場で主権国としての尊厳を保ちつつ、経済成長を阻害しない前提のもとで債務返済の交渉に臨むと、こう言っております。これでは余裕が出ればお金は返しましょうというような態度ではないか、こう思う次第であります。
 昨年、日本は、ついに千二百九十八億ドルという対外純資産を持つような世界一の債権国となりました。我が国は、現在、アメリカとこの累積債務国にそれぞれどれくらいの債権を持っておるのか、この利子収入はどれくらいでありますか。保険会社や銀行、証券会社別にどのような債権を持っているのか、御報告を承りたいと思います。
 第四に、一昨年九月のプラザ合意による円・ドル通貨調整以降、我が国の米国に対する債権はどれくらい減価、いわゆる損失をもたらしたか。この損失を保険、銀行、証券の各社別にどう処理しておるか。
 アメリカは、一九八五年末には一千七十四億ドルの純債務国に転落しております。我が国の多額の資金をこのような米国一辺倒で投資してよいものでしょうか。返済の確保は万全なのか。将来のドルの下落に対処する投資の保護というものについては検討しておるでしょうか、明確な答弁をお願いいたします。
 第五に、百五十円台で為替が安定いたしましても、製造業は空洞化または倒産、大量の失業発生、企業城下町のような状態で壊滅的な打撃を現に受けております。共同声明には、内需の拡大を図り、対外黒字の縮小に寄与するような財政金融政策を続けるとあります。また、内需拡大を図るため、経済情勢に応じ、総合経済対策が準備されるであろうというふうにあります。今日まで、何回も貿易不均衡是正のために内需拡大策が発表されてきました。また、非関税障壁の撤廃や規制緩和、民活利用等、考え得るあらゆる限りのことを政府は発表してきております。その成果は、御存じのように、非常に寂しいものであります。従来の型の総合経済対策では、まことに絵にかいたもちであります。
 政府提案の所得税、法人税の減税を先行させて、内需拡大の柱にする考えはありませんか。大型間接税である売上税は、内需拡大には役立たない、むしろ円高不況を深刻化するであろうと思われます。民活プロジェクトを具体的に計画して、利子補給によって民間資金の大量導入を図るべきではないでしょうか。政府が考えている総合経済政策というものの概要をお知らせ願いたい。
 一昨年九月のG5では、為替レートの円高は貿易収支の改善の武器として我が国も賛成しました。しかし、そのときには二割を限度ぐらいにして、大体二百円前後と一般に考えられておりました。しかし、それが急激な想像を絶する円高となりまして、いかなる優良企業といえども、今日、赤字覚悟でなければ輸出ができません。輸出をするためには価格を下げなければならない。下げればダンピングだといって訴えられます。貿易黒字は、昭和六十一年は六十年より、より多い貿易黒字となりましたが、輸出の貨物数量や円ベースで見ると、最近減少を来しております。国内の生産活動は冷え込んできております。その実態をどのように見ておられるか。貨物数量の減少や円ベースの減少を六十二年に引き延ばしていきますと相当な輸出減少となり、また、逆に輸入は二けたで増加している傾向から見ますというと、貿易収支のドルベースも改善されるのではないかと思いますが、その見通しをお伺いいたします。
 第六に、円は、購買力平価の国際比較から見ますというと極めて高いものになっていることは、先ほどOECDの発表で説明したとおりであります。昨年一カ年の一ドル平均は百六十九円、こういうことになっておる。購買力平価から見れば日本は世界一の物価高、こういう国になっております。特に、輸入に多く依存している食糧やエネルギーが高いのは、全く逆転現象と言わざるを得ません。政府の施策が誤っているか、趣旨が徹底しておらないのか、どちらかと認めざるを得ません。物価政策は、円の過大評価をできる限り少なくする政策、すなわち国際的に見て円高差益の多い物資の物価を安くすることでなければならないと思います。物価対策から見ても市場開放が今後ますます必要と思うが、どうでありましょうか。物価の高いものから安くする施策を具体的に早急に実施すべきだと思います。
 第七に、最近の株価、地価の高騰は、今回の第五次利下げによってさらに拍車がかかるものと思われます。投機が支配し、経済の実勢を反映しなくなってきております。株の信用取引や土地転がしに対する規制を早急に実施すべきだと思うが、どうでありましょうか。特に、地価の高騰は、銀行が土地融資に一〇〇%融資するからではないでしょうか。
 最後に、最近の経済は国際的にも国内的にもどうもおかしいと、こういう異常なことが多くなりました。我が国は経済恐慌への道を歩んでいるのではないかと思われます。昭和四年、すなわち一九二九年のアメリカの株価暴落に始まる世界恐慌の再来が予感されるのであります。国際的には貿易不均衡の拡大や累積債務残高一兆億ドル、こういうのは過去最高であります。累積債務国がブラジルに次いで次々と利子支払いを停止してくるというと金融恐慌が起こるでしょう。アメリカは貿易赤字と財政赤字の膨大な双子の赤字を抱えております。いつドルが暴落しないとも限りません。黒字国日本は、金余りで株や土地の投機が横行しております。一方、製造業は設備投資は少なくなり、空洞化していく。踏んだりけったりであります。余りにも昭和四年に始まる世界恐慌と相似た現象があらわれてきております。
 総理、果たして世界恐慌は再来しない、我が国の経済恐慌はあり得ないと確信が持てますか。
 以上をもって私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕
○国務大臣(中曽根康弘君) 三治議員にお答えをいたします。
 世界恐慌の危険性、現在と今との類似性のお話がありましたが、私はそのような状況とは違う状況にあると思います。
 なぜかと申しますと、あのときと比べて、国際間の相互依存関係というものは非常に深くお互いに入り組んでおる。それからIMFや世銀等の国際機関というものの機能が著しく増大してきております。それから関係国の協調というものはかなり実績を既に上げてきております。もし不幸なことが起きた場合、解決パターンがある程度確立されておるわけであります。それから情報が非常に普遍化しておりまして、無用な不安感というものは昔と違ってそう起きる可能性は少なくなってきておると、そう思います。そういうような意味におきまして、現在の国際金融機関と関係各国が協力して努力をすればこれは確実に防げると、そのように考えております。
 日本といたしましては、これだけの黒字を持っておるわけでございますから、官民相ともにできるだけ資金の還流を南の方あるいは発展途上国に向けるように積極的に今後も努力してまいりたいと考えております。
 株価の抑制につきましては、最近の動向にかんがみまして、きのう東京証券取引所において、信用取引の規制の強化、投資家及び会員証券会社に対して、投資に当たって一層慎重な態度で臨まれたいという旨の理事長の談話、要望を出したところでございまして、今後ともこのような自粛措置を我々はとっていただきたいと考えております。
 地価の問題につきましては、最近は割合に安定しております。東京等の一部の中心地区にかなり高い上昇が認められました。これらは旺盛な事務所需要と投機と両方が絡んだ面があると思っております。
 これらにつきましては、国土利用計画法の的確な運用、あるいは東京都条例による小規模土地取引の届け出制の創設等々、規制をかなり強くしてまいりまして、順次鎮静してきております。世田谷とか周辺地域における地価は最近は下がりかけております。この勢いにさらに拍車をかけてまいりたいと思います。
 内閣といたしましては、地価対策関係閣僚会議を設置いたしまして、機動的に地方団体とも連絡をとって政策を強化してまいりたいと考えております。
 残余の答弁は関係大臣がいたします。(拍手)
   〔国務大臣宮澤喜一君登壇、拍手〕
○国務大臣(宮澤喜一君) このたびの合意は、これ以上の大幅なドルの下落があるということが、関係各国、アメリカ自身にとりましてもむしろ問題だという認識で一致したということで、この合意のいわば有効性、信憑性があるということであると思っておりまして、そういう意味で一つの歯どめをかけることができたというふうに考えておるわけでございます。
 それから、このサーベイランスについて今後どういうふうに運ぶのかといったようなお話がございまして、これは引き続きいわばG7の場でやっていくわけでございますが、恐らく次回は、普通でございますとIMFの暫定委員会の時期に行われるはずでございますので、この春になろうかと思います。
 それから、この声明の中にいわゆるNICSについての言及がある、これはどういうことかということでございました。我が国周辺の新興工業国が非常な経済力を持つに至りまして、相当な貿易黒字を稼ぐに至っておることにつきまして、その為替レートに問題がないか、あるいはまたそのような国はできるだけ自由貿易体制を守ってほしいということについての、会議参加国の考えでおりますことを述べたわけでございますが、我が国として、それらの国に対して為替レート云々、どうしてくれというようなことを申すつもりはございません。ただ、それらの国も自由貿易体制を守るために協力してほしいということは、これは我が国としても願わしいことであると思っております。
 次に、累積債務国につきまして、ブラジルのお話がございましたが、これは先ほど申し上げましたとおり、ブラジルは一九八三年に実はこういう問題が一度ございまして、そのときには、IMF債権国、民間金融機関、いろいろ協議をした経験がございます。ございますので、このたびのことも、恐らくやがてそういうような方向に進んでいくのであろうというふうに考え、また期待をいたしておるわけでありまして、いわば債務国自身の自助努力、それから国際金融機関、我々債権国あるいは関係の民間銀行と協力をしてこの事態に当たってまいりたいと思っております。
 それから、我が国の銀行の累積債務国に対する債権についてお尋ねがございました。
 実は、はっきりした統計が案外ございませんで、我が国の民間金融機関からの開発途上国向けの中長期の貸し付けは大体六百億ドルあるということが推定されておりますが、累積債務国をその中でどう定義するかということにもよります。この金額の内であることには間違いがございません。
 それから、続いて、この対米債権等々についてのお尋ねがございまして、私も実は今までうかつでございましたのですが、我が国が累積債務国でない国々に対してどのくらい債権を持っているかという統計が実はございません。OECDにもそれはないそうでございまして、国際的にそれは各国とも出していないのだそうでございます。ただ、何かの推定の方法がないかということを私も実は考えておりますので、何かそれに近いものがございましたら、できるだけ早くお知らせを申し上げるようにいたしますが、ただいまのところ統計がないということでございますので、その点だけお許しをいただきたいと思います。
 それから、米国に対して確かに相当の投資が行われておりまして、その結果、為替変動があれば損失をこうむることはあり得ることでございますが、各投資家ともいわば金利差と将来考え得る為替差損とをバランスしまして投資しているようでございますし、また御承知のようにヘッジをしているところも多うございまして、いろいろな形で為替リスクを回避いたしております。
 政府といたしましては、これだけ開かれた経済でございますので、投資家が自分のリスクでそういうことは考えておるというふうに思っております。
 また、現実にどのような減価あるいは損失が起こっておるかということについては、率直に申しまして、政府として把握をいたしておりません。
 それから、今後の政策の運営でございますが、あの声明にも申しておりますとおり、予算成立時には、経済情勢によりまして内需の振興をさらに推進するための策を考えたい。また、六十三年度の予算編成につきましては、財政の事情は急に好転するとは思えません。しかし、その中で内需振興、社会資本の充実をどのようなアクセントをつけてやっていくかということについて、基本的な合意なり枠組みなりを考えてみたいと思っております。
 それから、最近の地価の高騰について金融機関の貸し出し態度に問題はないかということでございまして、実は最近も金融機関に対して再度通達をいたしました。投機的な土地取引等に係る融資については厳に慎むようにということを申しております。金融機関もそのような注意は確かにいたしておるようでございますが、なお十分私どもとしても関心を持って対処いたしてまいります。
 株価の高騰につきましてもお尋ねがございまして、これは先ほど総理大臣がお答えになられましたが、昨日、東京証券取引所がいたしましたことは、委託保証金率を六〇%から七〇%に引き上げたわけでございます。また、先般は掛け目を引き下げました。といったような形で、そういうような金融条件をきつくいたしておりますが、なお東証から投資に当たって一層慎重な態度で臨むよう会員会社に対して注意をいたしております。大蔵省といたしましても、証券取引所と連絡をとりながら適切に対処いたしてまいりたいと考えております。(拍手)
   〔国務大臣田村元君登壇、拍手〕
○国務大臣(田村元君) 先ほども申し上げましたように、一昨年来の急激かつ大幅な円高の進展は、輸出の減少、輸入の急増、また国内市況の下落等を招来いたしました。そして、各企業の懸命の経営努力にもかかわりませず、鉄鋼、非鉄金属などを初めとして、製造業を中心に我が国産業、とりわけ下請中小企業等に深刻な影響を与えております。
 今後、一ドル百五十円台で推移した場合の影響はどうかと。これも先ほど申し上げましたように、一概には申し上げられませんけれども、円高の影響を直接に受ける産業を中心に厳しい対応を迫られることが私は予想されるものと思います。
 通産省といたしましては、このような事態に対応するために、内需の拡大に努めますとともに、雇用、それから中小企業、また地域への影響を重視した産業構造転換円滑化対策などを講ずることといたしておりまして、先般、円高等により影響を受けております事業者に対する支援措置、地域の活性化措置等を内容とする産業構造転換円滑化臨時措置法案を国会に提出したところでございます。
 今後とも、これらの対策の積極的な展開によりまして、設備処理の円滑化や新規産業分野の開拓、地域経済の活性化等を通じ、我が国製造業の基盤維持を図るとともに、雇用の安定に努めてまいる所存でございます。
 それから、民活の問題でございますけれども、政府といたしましては、昨年五月に成立しました民間事業者の能力の活用による特定施設の整備の促進に関する臨時措置法に基づきまして、全国各地の民活プロジェクト、いわゆる草の根民活を支援し、民間の資金や経営的資源の積極的な活用による内需振興に努めているところでございます。
 さらに、民活法対象事業の前倒しを促進するために、補正予算におきまして、実質的には利子補給と同等の効果を有する事業費の五%を補助する補助金を創設したところでございます。
 今後とも、民間活力を最大限に活用した内需の振興に鋭意努めてまいる所存でございます。
 また、エネルギー問題でございますが、御指摘の電気・ガス料金につきましては、原油価格、為替レートの動向を踏まえまして、昨年、本年と二回にわたり料金の暫定引き下げ措置を実施してきております。現在、総額約二兆円を上回るといいますか、一兆九千億円余の電気、ガス、それにプロパンガスが千五百でございますから、総額二兆円に上る差益還元措置を実施しているところでございます。これは正月元旦から実施をいたしております。これは相当大規模な減税に匹敵するものというふうに考えております。
 また、市場メカニズムにより決定されておりますガソリンなどの石油製品価格につきましても、過当競争などによる市況の低迷と一昨年秋以降の円高、原油安を反映して、本年初めまで一貫して下落してきております。
 なお、エネルギー価格につきましては、各国の資源の賦存状況、また需給構造の違いに加えまして、土地代、環境保全投資、それに御承知の割高の国内炭の引き受けなどコスト上の相違もございますし、また為替レートの水準にも左右されますために、正確な比較は難しいと思います。
 しかし、いずれにいたしましても、我が国経済社会の発展のためには、エネルギーの量的確保と並んで価格の安定を図ることが重要でございまして、引き続き電源多様化、技術開発の促進等エネルギーコストの低減に鋭意努めてまいる所存でございます。(拍手)
   〔国務大臣近藤鉄雄君登壇、拍手〕
○国務大臣(近藤鉄雄君) 先生から、我が国の物価は世界一と言えるほど高いのではないか、こういうお話がございました。
 個別商品の価格を国際的に比較いたします場合には、各商品の品質や規格の問題、また国民の嗜好や国土の広さなど、その国特有のいろいろな問題がございますから、これに十分留意する必要がございまして、単純な比較は困難でございます。
 とりわけ、現在は、急速に進んだ円高の中で、いわゆる購買力平価比較と為替レートとの間に乖離が生じていると思います。ただ、購買力平価と為替レートは、それぞれ異なる要因によって決定されるものであることも留意する必要があると思います。
 いずれにいたしましても、円高差益の還元は、内需拡大、国民生活の向上といった点からも重要であるとともに、円の購買力を改善するためにも大事なことでございますから、円高等のメリットを今後とも、物価の一層の安定を通じさらに経済全般に浸透させるために、政府といたしましても、為替レート、原油価格の動向等を注視しつつ円高等のメリットをより適切に物価に反映させるよう、引き続き一層の努力をしてまいる所存でございます。(拍手)
○副議長(瀬谷英行君) これにて質疑は終了いたしました。
     ―――――・―――――
○副議長(瀬谷英行君) 日程第二 資金運用部資金法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。大蔵委員長井上裕君。
   〔井上裕君登壇、拍手〕
○井上裕君 ただいま議題となりました資金運用部資金法の一部を改正する法律案につきまして、委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 本法律案は、最近における内外の経済金融環境の変化に対応して、いわゆる財政投融資の原資として国民経済に重要な役割を果たしている資金運用部資金について、その機能を円滑に発揮し、国民経済の要請に一層的確にこたえるため、資金運用部預託利率の法定制に改め、これを政令に委任することによりその弾力的な変更が行えるようにするとともに、同資金の運用対象を拡大し、外国債にも運用できるようにしようとするものであります。
 委員会におきましては、預託金利率を法定制から政令委任とする積極的理由とその利率決定の際の具体的指標、預託者側の利益に配慮した資金運用審議会の運営のあり方、国内需要喚起による対外摩擦解消に寄与する財政金融政策の内容等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録に譲ります。
 質疑を終了し、討論に入りましたところ、日本共産党を代表して近藤忠孝委員より本法律案に反対する旨の意見が述べられました。討論を終了し、採決の結果、本法律案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、本法律案に対し、預託金利引き下げに当たっては、現下における中小企業等の経営環境に配慮して早急に措置すること等、三項目にわたる附帯決議が付されております。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
○副議長(瀬谷英行君) これより採決をいたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
○副議長(瀬谷英行君) 過半数と認めます。
 よって、本案は可決されました。
     ―――――・―――――
○副議長(瀬谷英行君) この際、お諮りいたします。
 吉岡吉典君から海外旅行のため来る三月一日から十二日間の請暇の申し出がございました。
 これは許可することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(瀬谷英行君) 御異議ないと認めます。
 よって、許可することに決しました。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後零時三十三分散会