第108回国会 法務委員会 第2号
昭和六十二年五月十四日(木曜日)
   午前十時四分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 三月二十六日
    辞任         補欠選任
     小野 清子君     徳永 正利君
     寺内 弘子君     梶木 又三君
     宮崎 秀樹君     鈴木 省吾君
     小山 一平君     秋山 長造君
 三月二十七日
    辞任         補欠選任
     田辺 哲夫君     中西 一郎君
 五月十四日
    辞任         補欠選任
     関 嘉彦君      抜山 映子君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         太田 淳夫君
    理 事
                名尾 良孝君
                林  ゆう君
                猪熊 重二君
                橋本  敦君
    委 員
                梶木 又三君
                下稲葉耕吉君
                鈴木 省吾君
                土屋 義彦君
                徳永 正利君
                中西 一郎君
                長谷川 信君
                秋山 長造君
                安永 英雄君
                関  嘉彦君
                抜山 映子君
                瀬谷 英行君
                西川  潔君
   国務大臣
       法 務 大 臣  遠藤  要君
   政府委員
       法務大臣官房長  根來 泰周君
       法務大臣官房会
       計課長      則定  衛君
       法務省民事局長  千種 秀夫君
       法務省刑事局長  岡村 泰孝君
       法務省矯正局長  敷田  稔君
       法務省保護局長  俵谷 利幸君
  最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局経理局長   町田  顯君
       最高裁判所事務
       総局刑事局長   吉丸  眞君
  事務局側
       常任委員会専門
       員        片岡 定彦君
  説明員
       警察庁刑事局捜
       査第一課長    小杉 修二君
       警察庁刑事局保
       安部生活経済課
       長        上野 治男君
       警察庁警備局公
       安第二課長    鹿嶋 正之君
       防衛庁経理局工
       務課長      黒岩 博保君
       防衛施設庁施設
       部施設企画課長  笠原 恒雄君
       防衛施設庁施設
       部施設管理課長  石川 陽次君
       大蔵大臣官房企
       画官       杉井  孝君
       厚生省社会局老
       人福祉課長    真野  章君
       運輸省航空局監
       理部航空事業課
       長        平野 直樹君
       運輸省航空局飛
       行場部管理課長  鈴木 光男君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○検察及び裁判の運営等に関する調査
 (法務行政の基本方針に関する件)
 (昭和六十二年度法務省及び裁判所関係予算に
 関する件)
○刑事確定訴訟記録法案(内閣提出)
    ―――――――――――――
○委員長(太田淳夫君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 検察及び裁判の運営等に関する調査を議題といたします。
 法務行政の基本方針について、遠藤法務大臣からその所信を聴取いたします。遠藤法務大臣。
○国務大臣(遠藤要君) 委員各位には、平素から法務行政の適切な運営につき、格別の御尽力をちょうだいいたし、厚く御礼を申し上げます。
 この機会に、法務行政に関する所信の一端を申し述べ、委員各位の御理解と御協力を賜りたいと存じます。
 昨年、当委員会において就任のごあいさつをいたしました際にも申し述べたところでございますが、私は、法務行政に課せられた使命は、法秩序の維持と国民の権利の保全にあると考えております。国民生活の安定を確保し、国家社会の平和と繁栄を図るためには、その基盤ともいうべき法秩序が揺るぎなく確立され、国民の権利がよく保全されていることが極めて肝要であると存じます。私は、常にこのことを念頭に置き、全力を傾注して国民に親しまれ、真に国民の期待する法務行政の推進に努めてまいりたいと存じております。
 以下、当面の重要施策について申し述べます。
 第一は、最近の犯罪情勢とこれに対処する検察態勢についてであります。
 最近における我が国の犯罪情勢を見ますと、犯罪発生件数が漸増の傾向を示しているだけでなく、内容的にも、保険金目当ての殺人・放火事件、身代金目的の誘拐事件、流通過程にある食品への毒物混入や組織暴力団の対立抗争に起因する銃器による殺傷事件などの凶悪事犯が多発しているほか、一般大衆を被害者とする経済取引を仮装した詐欺事件、地方公共団体の首長による汚職事件、大規模かつ巧妙な租税通説事件その他の不正事犯もその後を絶たず、また、覚せい剤を初めとする薬物の乱用が引き続き一般国民の間に拡散しつつあると認められるのであります。さらに、過激派集団は、新東京国際空港第二期工事阻止等を呼号し、過般の東京サミットの際における迎賓館等に対する手製弾発射事件に見られるように、悪質なゲリラ事犯を相次いで敢行しており、他方、右翼諸団体による不法越軌行動も一段と先鋭化の度を強めている状況にあります。特に、このたびの朝日新聞社阪神支局員に対する殺傷事件は、現に警察当局において厳正な捜査を進めていると承知しておりますが、これは、まれに見る凶悪な事件であり、もし、それが言論封殺を企図したものであるとするならば、それは、民主主義の根幹を破壊しかねない重大な事件と言わなければなりません。加えて、次代を担うべき少年の非行は、依然高水準を維持しているのでありまして、今後における犯罪の動向には、引き続き厳戒を要するものがあると申さなければなりません。
 私は、このような事態に的確に対処するため、検察態勢の一層の整備充実に意を用いるとともに、関係諸機関との緊密な連絡協調のもとに、適正妥当な検察権の行使に遺憾なきを期し、もって良好な治安の確保と法秩序の維持に努めてまいりたいと存じております。
 なお、刑法の全面改正につきましては、これが国の重要な基本法に関するものでありますので、真に現代社会の要請にかなう新しい刑法典の制定を目指し各般の努力を重ねてきているところであり、引き続き所要の作業を進めてまいりたいと存じておりますが、一方で、最近におけるコンピューターによる情報処理組織の著しい発展及び普及に伴い、刑法等従来の罰則によっては的確な対応の困難なコンピューター関連の反社会的行為の発生を見るようになり、この種皮社会的な行為は、今後増加することが予想されますので、緊急にこれらに対処するための立法措置を講ずる必要があり、また、最近の国際的なテロ活動を反映して、我が国としても国際的に保護される者(外交官を含む。)に対する犯罪の防止及び処罰に関する条約及び人質をとる行為に関する条約を早急に締結することが国際的にも要請されるに至っており、これらの条約の義務の履行の上で必要とされる国外犯処罰規定の新設等の刑法その他の関係法規の整備を行うことが必要と認められることから、これらの点について、法制審議会の調査審議を願い、本年二月二十六日答申を受け、これに基づいて刑法等の一部を改正する法律案を取りまとめ、今国会に提出したところであります。十分な御審議を経て、速やかに成立に至るようお願いする次第であります。
 また、一昨年の第百二回国会において、刑事の確定訴訟記録の保管に関する法律の制定を求める請願が採択されましたことにもかんがみ、その立案作業を行ってまいりましたが、これについても、今国会に刑事確定訴訟記録法案として提出したところでありますので、十分な御審議を経て、速やかに成立に至るようお願いする次第であります。
 第二は、犯罪者及び非行少年に対する矯正処遇と更生保護活動についてであります。
 犯罪者及び非行少年の改善更生につきましては、広く国民の理解と協力を得つつ、刑務所、少年院等における施設内処遇と保護観察等の社会内処遇を一層充実強化し、相互の有機的連携を図る等、その効果を高める措置を講じてまいりたいと存じております。
 そのためには、まず施設内処遇につき、時代の要請にこたえ得る適切な処遇の実現に努めるとともに、仮釈放のより適正妥当な運用を図り、また、保護観察等の社会内処遇において、保護観察官と保護司との協働態勢及び更生保護会における処遇態勢を一層充実強化し、関係機関・団体との連携をさらに緊密にするなど、現下の情勢に即した有効適切な更生保護活動を展開してまいりたいと考えております。
 また、監獄法の全面改正を図るための刑事施設法案につきましては、第九十六回国会に提出しましたところ、第百回国会において衆議院が解散されたことに伴い廃案となったのでありますが、その後、法務省では、同法律案の修正を求める動きのあった日本弁護士連合会と合計二十六回の会議を持って、意見の交換を行うとともに、留置施設法案を所管する警察庁と意見調整を図り、必要な修正を加えた上、去る四月三十日、今国会に同法律案を再提出したものであります。
 同法律案は、もはや時代に適合しなくなった現行監獄法を全面的に改めるもので、刑事施設の適正な管理運営を図り、被収容者の人権を尊重しつつ、収容の性質に応じた適切な処遇を行うことを目的として、被収容者の権利義務に関する事項を明らかにし、その生活水準の保障を図り、受刑者の改善更生に資する制度を整備するなど、被収容者の処遇全般にわたって大幅な改善を行おうとするものでありますので、十分な御審議を経て、速やかに成立に至るようお願いする次第であります。
 第三は、一般民事関係事務の処理、人権擁護活動及び訟務事件の処理についてであります。
 一般民事関係事務は、登記事務を初めとして量的に逐年増大し、また、質的にも複雑多様化の傾向にあります。これに対処するため、かねてから人的物的両面における整備充実に努めるとともに、組織・機構の合理化、事務処理の能率化、省力化等に意を注ぎ、適正迅速な事務処理体制の確立を図り、国民の権利保全と行政サービスの向上に努めてまいったところであります。特に、我が国経済の発展に伴って逐年増加を続けている登記事務の関係では、昭和六十年度に創設された登記特別会計の趣旨に即して、事務処理の適正円滑な遂行を図るため、登記事務のコンピューター化をはじめとする登記事務処理体制の抜本的改善に努めてまいりたいと存じます。
 なお、民事関係の立法につきましては、養子制度の改善合理化を図るための民法等の改正及びそれに伴う戸籍法の改正について、それぞれ法制審議会及び民事行政審議会の答申を得、その趣旨に沿って民法等の一部を改正する法律案を今国会に提出したところであります。十分な御審議をちょうだいいたし、速やかに成立に至るようお願いする次第であります。
 次に、人権擁護活動につきましては、国民の基本的人権の保障をより確かなものとするため、各種の広報活動によって、国民の間に、広く人権尊重の思想が普及徹底するよう努めるとともに、人権相談や人権侵犯事件の調査処理を通じ、関係者に人権思想を啓発し、被害者の救済にも努めてまいりたいと存じます。特にいじめの問題及び教職員による体罰の問題、さらには重大な社会問題となっております部落差別を初めとするあらゆる差別事象の問題につきましては、その根絶に寄与してまいりたいと考えております。
 さらに、訟務事件の処理につきましては、国の利害に関係のある争訟事件は、複雑多様化した今日の社会・経済情勢と国民の権利意識の変化を反映して、例えば、選挙訴訟、環境関係訴訟、原子力関係訴訟あるいは薬害訴訟等の例に見られるように、社会的にも法律的にも新たな問題を内包する重要かつ複雑な事件が増加しており、その結果いかんが、直ちに国の政治、行政、経済等の各分野に重大な影響を及ぼすものが少なくありませんので、今後とも事務処理体制の充実強化を図り、事件の適正、円滑な処理に万全を期するよう努めてまいりたいと存じます。
 第四は、出入国管理事務の処理についてであります。
 国際交流の活発化に伴い、我が国に出入国する内外人の数は逐年増大し、我が国に在留する外国人の活動の範囲や内容も一層複雑、多様化しております。同時に不法入国、資格外活動、不法残留等の外国人による法違反行為、特に周辺アジア諸国から短期査証で入国した者による不法就労事犯は著しく増加している状況にあります。出入国管理事務は、このような情勢に適切に対応するとともに、国際協調の一層の進展に即応する責務を担っているのであり、その重要性はますます高まっておりますので、このような情勢を踏まえ、今後引き続き出入国及び在留外国人の管理に関する事務の迅速適正な処理及び組織、体制の充実強化に努めてまいりたいと存じます。
 なお、かねて懸案となっておりました外国人登録法の見直しにつきましては、指紋押なつ義務の緩和を含む外国人登録法の一部を改正する法律案を今国会に提出したところであります。十分な御審議を経て、速やかに成立に至るようお願いする次第でございます。
 第五は、簡易裁判所の配置の適正化についてであります。
 簡易裁判所は、昭和二十二年に少額軽微な事件を簡易迅速に処理することを目的として設立され、現在全国に五百七十五庁設置されております。簡易裁判所の配置は、創立以来約四十年の間、基本的な変更が加えられないまま現在に至っておりますが、その間の経済の発展等に伴い、人口の都市集中、交通事情の発達等、簡易裁判所の配置に関連する諸事情は大きく変動しております。その結果、一方ではほとんど利用されていない簡易裁判所がある反面、事件が激増し、非常に忙しい簡易裁判所もあるといった事件数の両極化現象が生じる等、裁判所の運営上種々の問題が生じ、もはや放置することができない状況となっております。
 簡易裁判所の配置の見直しの問題は、国民の裁判を受ける利便に直接関係し、また、裁判所の配置という司法制度の基盤にかかわる問題でありますので、昭和六十一年二月、法制審議会に対し本問題の審議を求めましたところ、同審議会は、慎重な調査審議を経た上、同年九月十九日、全会一致で簡易裁判所の適正配置に関する答申をいたしました。
 答申では、簡易裁判所の配置が社会の実情にそぐわなくなっているため裁判所全体の合理的な運営が困難になっているとし、現在の交通事情の改善等を考慮すると、事件数の少ない小規模な簡易裁判所については、答申に示された基準に従い、その相当数を統合し、また、事件の激増している大都市の簡易裁判所についてもできる限り統合することにより、簡易裁判所全体の充実強化を図るべきであるとしております。
 法務省といたしましては、この答申の趣旨を尊重して最高裁判所とも十分協議をした上、簡易裁判所の適正配置の具体案を確定し、今国会に下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案として提案したところであります。十分な御審議を経て、速やかに成立に至るようお願いする次第でございます。
 最後に、法務省の施設につきましては、昨年に引き続き整備を促進するとともに、事務処理の適正化と執務環境の改善に努めてまいりたいと考えております。
 以上、法務行政の重要施策について所信の一端を述べましたが、委員各位の御協力、御支援を得まして、重責を果たしたいと考えておりますので、どうかよろしくお願い申し上げます。
○委員長(太田淳夫君) 次に、昭和六十二年度法務省及び裁判所関係予算について、説明を聴取いたします。則定法務大臣官房会計課長。
○政府委員(則定衛君) 昭和六十二年度法務省所管の予算につきまして、その概要を御説明申し上げます。
 まず、法務省所管の一般会計予算額は四千五十七億二百万円であり、登記特別会計予算額は、九百二十億九千百万円でありまして、その純計額は四千四百三十二億七千九百万円となっております。
 この純計額を昭和六十一年度補正後予算額四千二百九十六億八百万円と比較しますと、百三十六億七千百万円の増額となっております。
 次に、重点事項別に予算の内容について、御説明申し上げます。
 まず、定員の関係でありますが、前年度に比較いたしますと純増三十人となっております。
 昭和六十二年度の増員は、新規に四百二十六人、部門間配置転換等による振りかえ増員五十人の合計四百七十六人となっております。
 その内容を申し上げますと、検察庁における特殊事件、財政経済事件、公安労働事件等に対処するとともに、公判審理の迅速化を図るため百人、法務局における登記事件、訟務事件及び人権擁護関係の事件に対処するため、登記特別会計の百六十三人を含め百七十一人、刑務所における保安体制及び医療体制の充実を図るため百二十一人、少年院及び少年鑑別所における処遇体制の充実を図るため四十一人、保護観察活動等の充実を図るため二十三人、出入国審査及び在留資格審査等の業務の充実を図るため十八人、外国法事務弁護士に関する事務処理体制の整備のため二人となっております。
 他方、減員は、昭和六十一年八月の閣議決定に基づく「定員削減計画(第七次)の実施について」による昭和六十二年度定員削減分として四百二十六人、その他削減分として二十人、合計四百四十六人となっております。
 次に、主要事項について御説明申し上げます。
 第一に、法秩序の確保につきましては、二千三百二十六億六千九百万円を計上し、前年度補正後予算額と比較しますと四十九億七千二百万円の増額となっております。
 その内容について申し上げますと、まず、検察庁関係では、検察活動の充実を図る経費として七百二十六億九千百万円を計上しております。
 矯正施設関係では、刑務所等矯正機能の充実を図るため一千三百四十億一千百万円を計上しており、この経費の中には、収容人員の増に対応する経費、被収容者の処遇の確保のための生活備品、日用品の改善及び食糧費の単価改定等に要する経費を含んでおります。
 更生保護関係では、保護観察の充実を図る経費として百十八億一千六百万円を計上しております。
 訟務関係では、国の利害に関係のある争訟事件の処理経費として九億四千六百万円を計上しております。
 公安調査庁関係では、公安調査活動の充実を図る経費として百三十二億五百万円を計上しております。
 第二に、国民の権利保全の強化につきましては、一般会計で六百五十九億八百万円を計上し、前年度補正後予算額と比較しますと、三十六億五千四百万円の増額となっております。
 その内容について申し上げますと、まず、登記関係では、登記事務費として五百四十五億一千四百万円を計上しております。この登記事務費は、登記事務を円滑、適正に処理するために設けられている登記特別会計の財源の一部として繰り入れるための経費であります。
 法務局のうち登記を除く関係では、国籍、戸籍等の事務処理の充実を図る経費として百八億一千六百万円を計上しております。また、人権擁護関係では、地域改善対策としての啓発等人権擁護活動の充実を図るため五億七千八百万円を計上しております。
 第三に、非行青少年対策の充実につきましては、一部法秩序の確保と重複しておりますが、三百五十八億一千万円を計上し、前年度補正後予算額と比較しますと七億八千六百万円の増額となっております。
 その内容について申し上げますと、青少年検察の充実経費として十一億七千五百万円、少年院教化活動の充実経費として百六十二億一千九百万円、少年鑑別所業務の充実経費として七十六億二千八百万円及び青少年保護観察の充実経費として百七億八千八百万円をそれぞれ計上しております。
 第四に、出入国管理業務の充実につきましては、百十三億九千四百万円を計上し、前年度補正後予算額と比較しますと一億六千七百万円の増額となっております。
 その内容について申し上げますと、出入国及び在留管理業務の充実経費として四億四千九百万円及び外国人登録事務処理経費として十五億六千八百万円等を計上しております。
 第五に、施設の整備につきましては、老朽・狭隘化が著しい基幹の大行刑施設の継続整備を含めた法務省の庁舎、施設を整備するための経費として、百八億四千万円を計上し、前年度補正後予算額と比較しますと、六千七百万円の増額となっております。
 第六に、登記特別会計につきましては、総額九百四十四億四千百万円の歳入、九百二十億九千百万円の歳出となっております。
 歳出の主な内容といたしましては、登記所等管理経費七百一億四千二百万円、登記事務のコンピューター化計画の推進及び登記簿謄抄本交付事務の適正、迅速化を図る経費百二十四億一千万円、登記申請事件の審査等経費二十一億二千六百万円、法務局の支局出張所等を整備する施設整備黄として六十二億八千五百万円等をそれぞれ計上しております。
 以上、昭和六十二年度法務省所管の予算の概要を御説明申し上げました。
○委員長(太田淳夫君) 町田最高裁判所経理局長。
○最高裁判所長官代理者(町田顯君) 昭和六十二年度裁判所所管歳出予算要求額につきまして御説明申し上げます。
 昭和六十二年度裁判所所管歳出予算要求額の総額は二千三百五十五億四千七百六万六千円でありまして、これを前年度予算額二千三百十二億九千五百六十二万四千円に比較いたしますと、差し引き四十二億五千百四十四万二千円の増加となっております。これは、人件費におきまして三十億一千九百十二万五千円、裁判費におきまして三億一千六百五十万一千円、施設費におきまして二億六千三十万円、司法行政事務を行うために必要な庁費等におきまして六億五千五百五十一万六千円が増加した結果であります。
 次に、昭和六十二年度歳出予算要求額のうち、主な事項について御説明申し上げます。
 まず、人的機構の充実、すなわち増員であります。
 民事執行法に基づく執行事件、破産事件、簡易裁判所の民事訴訟事件等の適正迅速な処理を図るために判事八人、裁判所書記官九人、裁判所事務官三十六人、合計五十三人の増員をすることとしております。
 他方、定員削減計画に基づきます昭和六十二年度削減分として裁判所事務官等三十八人が減員されることになりますので、差し引き十五人の定員増となるわけであります。
 次は、司法の体制の強化に必要な経費であります。
 裁判運営の効率化及び近代化のため、庁用図書等裁判資料の整備に要する経費として五億二千五百六十二万四千円、複写機、計算機等裁判事務能率化器具の整備に要する経費として四億六千百二十六万二千円、調停委員に支給する手当として四十七億五千四百七万九千円、裁判費の充実を図るため、国選弁護人報酬に要する経費として二十八億三千七百三十二万九千円、証人、司法委員、参与員等旅費として六億八千五百八十万円を計上しております。
 また、裁判所施設の整備を図るため裁判所庁舎の新営、増築等に必要な経費として八十一億八千五十二万六千円を計上しております。
 以上が、昭和六十二年度裁判所所管歳出予算要求額の大要であります。よろしくお願いいたします。
    ―――――――――――――
○委員長(太田淳夫君) 次に、刑事確定訴訟記録法案を議題といたします。
 まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。遠藤法務大臣。
○国務大臣(遠藤要君) 刑事確定訴訟記録法案につきまして、その提案の趣旨を御説明いたします。
 刑事被告事件が終結した後における訴訟の記録の保管等につきましては、検察官等においてこれを行っているところでありますが、刑事訴訟法第五十三条第四項が訴訟記録の保管については別に法律でこれを定める旨規定していることにもかんがみ、訴訟の記録の訴訟終結後における適正な管理を図るため、その保管並びに保管期間満了後における再審の手続のための保存及び刑事法制等に関する調査研究の重要な参考資料としての保存について必要な事項を定め、あわせてその閲覧に関する規定を整備する等の必要があると認められますので、この法律案を提出することとした次第であります。
 この法律案の要点は、以下のとおりであります。
 その一は、刑事被告事件に係る訴訟の記録は、訴訟終結後は、当該被告事件について第一審の裁判をした裁判所に対応する検察庁の検察官が保管することとし、その保管期間については、別表のとおり定めることとしたものであります。
 その二は、検察官は、その保管する訴訟の記録(以下「保管記録」という。)について、再審の手続のため保存の必要があると認めるときは、職権で、または再審の請求をしようとする者等の請求により、その保管期間満了後も、これを再審保存記録として保存することとしたものであります。
 その三は、保管記録について、その閲覧に関する手続を定めるとともに、刑事訴訟法第五十三条第二項の閲覧制限事由を具体化するなどし、あわせて、再審保存記録について、その閲覧に関する手続を定めることとしたものであります。
 その四は、保管記録について再審保存記録として保存することを請求した者または保管記録もしくは再審保存記録の閲覧の請求をした者であって、検察官の保存または閲覧に関する処分に不服のあるものは、裁判所にその処分の取り消しまたは変更を請求することができることとし、その手続は、刑事訴訟法第四百三十条第一項に規定する検察官の処分の取り消し等の請求に係る手続の例によることとしたものであります。
 その五は、法務大臣は、保管記録または再審保存記録について、刑事法制及びその運用並びに犯罪に関する調査研究の重要な参考資料であると思料するときは、その保管期間または保存期間の満了後、これを刑事参考記録として保存することとするとともに、学術研究等のため必要があると認める場合には、これを閲覧させることができることとしたものであります。
 その他所要の規定の整備を行うこととしております。
 以上がこの法律案の趣旨であります。
 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
○委員長(太田淳夫君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。
    ―――――――――――――
○委員長(太田淳夫君) 次に、検察及び裁判の運営等に関する調査のうち、法務行政の基本方針に関する件並びに昭和六十二年度法務省及び裁判所関係予算に関する件並びに刑事確定訴訟記録法案を便宜一括して議題とし、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
○秋山長造君 かねて敬愛をいたしております遠藤法務大臣、昨年御就任以来、法秩序の維持と国民の権利の保全ということを常に念頭に置かれまして、全力を傾注して、国民に親しまれ、真に国民の期待する法務行政の推進に努めてまいりたいと存じますと、こういう基本姿勢をもって熱心に法務行政に取り組んでおられ、心から全幅の敬意と信頼を表するものであります。
 ただ、この所信表明の中でいろいろお触れになりました法務省関係の立法その他についての賛否の意見ということはまた別にこれはございますので、その点は御了承いただきたいと思いますが、その立法に対する賛否の意見については、また後刻その都度申し上げさしていただきたいと存じます。
 きょうは、とりあえず、先ほどの所信表明の中の第三ページのところにございます「私は、このような事態に的確に対処するため、検察態勢の一層の整備充実に意を用いるとともに、関係諸機関との緊密な連絡協調のもとに、適正妥当な検察権の行使に遺憾なきを期し、もって良好な治安の確保と法秩序の維持に努めてまいりたいと存じております。」この四行にまとめられた文言ですね。このとおりやられましたら、もうこれは百点満点あるいは百二十点ぐらい差し上げてもいいと私は思うんです。ぜひそういうようにやっていただきたいと思います。ただ、この文言はいわば抽象的原則的なことを申されておると思うんです。
 具体的な点について、例えば「検察態勢の一層の整備充実」ということからすぐ連想するのは、最近の検事のなり手が非常に少ないということですね。それから、現職の検察官がもうちょうど四十代から五十前後ぐらいの働き盛りの、検察の一番中心になって働いておるような優秀など言われる検察官がどんどんやめていって、弁護士になったり何になったりして、なかなかこれを引きとめることに苦労されておるというようなこともよく聞くんです。新聞なんかにもよく書かれていますね。週刊誌なんかにも相当うがったことを書いたりなんかしている例もありますが、その点は一体どうなのかということです。
 それから、次の「関係諸機関との緊密な連絡協調」ということはもちろん必要なことで、ぜひそれをやっていただきたいと思いますが、例えば、大阪のグリコ事件を初めとしていろんなああいう類似の事件が次から次に起こっているけれども、全部迷宮入りでもないんでしょうけれども、一体何しとるんだという感じを持たれていますね。ああいう事件は、検察と警察との関係がどうなっておるのか詳しいことはわかりませんけれども、我々が理解するところでは検察も警察も同じように、いつでも取り組むことができることになっておるようですけれども、今度の朝日新聞の襲撃事件だとか、つまりこういう問題について検察と警察との関係というものはどうなっておるんだろうかと思うんです。
 検察の方ではグリコ事件にしてもあるいは今度の朝日新聞の事件なんかにしても、その他一々は挙げませんけれども、こういう社会的に相当大きな関心を持たれているようなことをもうじっと横手傍観されておるわけでもないんでしょうけれども、関心は持たれてはおるんだろうと思うが、具体的にそれがあらわれてこない場合も多い。今度の例の共産党の盗聴事件ですね。あれについては東京地検の特捜部が何か乗り出されてやっておられるようなことを聞きますが、事件によって検察が出たり出なかったり、汚職事件だとか何かそういう相当大きな社会的にいろんな意味を持った事件については検察が乗り出されるというようなことになっておるんだろうかとも思いますけれども、しかし、それにしてはグリコ事件だとか今度の朝日の襲撃事件だとか、ああいう問題について一体検察はどの程度の関係をしておられるのだろうかというようなことを連想するんですよ、この「関係諸機関との緊密な連絡協調」。
 それから、さらにもう一つ申し上げるついでに、これは後ほどそれだけについて若干お尋ねしたいと思うんですが、この間の平沢死刑囚の獄中で亡くなった問題です。ああいう問題について一体、裁判所は判決を下したら後はもう一切我関せずで、後は全部検察の方へお任せということに建前としてはなっておるようですけれども、そういうことで本当にいいんだろうかなという、法秩序の維持とか人権の尊重とかいうような趣旨かるいって、それでいいんだろうかなという感じを素人ながらに持つんですよ。
 そういうこととこの「連絡協調」ということがどうなのかなということで、その結果「適正妥当な検察権の行使に遺憾なきを期し、もって良好な治安の確保と法秩序の維持」と、こうなっていくんだろうと思うので、言えば切りがないんですが、ちょっと思いつく何点がそういう問題点を挙げて――刑事局長がそばでいろいろ言っておられるけれども、私は刑事局長に余り細かいことを聞くつもりはないんですよ。
 遠藤法務大臣に、法務大臣としてのお考えを聞かせていただいたらそれでいいと思うんですけれども、どうですか。
○国務大臣(遠藤要君) きょうは、当初に先生から大変ありがたいごあいさつをいただいて、私も、秋山先生から御質問を受けて答える立場になるなどということは全く夢にも考えておらなかったわけですが、本当に恐縮でございます。
 今、先生からるる御質問のあった中において、具体的には刑事局長から答えさせたい、こう思いますけれども、一つは、検事が今非常に不足しているんじゃないかというようなお話がございましたけれども、確かに先生御指摘のとおり、最近検事というのに対して、正直言うと待遇が悪いからか魅力がないからかはわかりませんけれども、どうしても希望者が多いとは言いかねるわけでございます。そういうふうな点で、何が問題なのか、そしてこれから検察の重大性、社会的に大きな一翼を担うておる立場だということを自負してもらうような、そして胸を張って仕事のできるような体制をつくっていかなければならぬということで、法務大臣の私的懇談会という名目のもとに有識者の方々にお願いを申し上げて、今どういうふうにしたらいいかということで御相談を願っているさなかでございます。さような点で、法務行政というのはもっと明るく、そして途中で今先生のお話のように、向こうの方がよさそうだからということでいろいろ別な仕事に転向したり、そういうようなことのないように、やはり検事自体も相当の経験が必要だろう、こう思いますので、長くとどまって検察に全力を投球してもらうという体制づくりをしたいというようなことで^今いろいろ御検討をちょうだいしている中であるということを御理解願っておきたいと思います。
 それから、関係省庁各所との連携を保持しながらというごあいさつを申し上げておることは、ただいま先生からも御指摘のとおり、警察自体とはもちろん一体となって取り組んでいかなければならぬ、事件の解明のために、ということであり、かたがた裁判所との連携とはいっても、事件の連携は裁判所とはとるわけにはいきませんので、行政の面や何かにおいていろいろ連携を保持していく、さらに日本弁護士会とも連携をとって三法曹が一つになってこれからの日本の法の秩序保持というような方向で、いろいろ話を進めながら努力していかなければならぬというような考えで進めさせていただいているということを御理解願いたいと思います。
 さらにまた、今平沢の問題についてお話がございましたけれども、これは先生、皆さんも御承知のとおり、死刑が確定して何十年という長い間拘置されておったというようなことで、一般の方々から非常に不信感も疑問も持たれておった、こう思います。実は、私も、法務大臣就任当初にこの問題について法務省の首脳部とも、一体どうしたんだ、役所の怠慢でないのかというようなお話もしたことがございますけれども、御承知のとおり死刑執行ということは最も重大な問題でございましたので、しかも再審請求を十八回、恩赦の出願を五回もしていたというようなことで、ほとんど連続的にそのような再審請求なり、恩赦の手続をとっておったということで、最終決定、死刑執行をやった後に、あああれは間違いだったというようなことで国民から疑問を持たれるということもどうかというような点で、事重大な問題だけにやはり審査の請求のあった場合には慎重に審査をしておったというような経過と承知をいたして、私もそれを聞いてなるほどなというようなことで、死刑確定が検察としてどうこうということではなくて、そういうような点であくまでも被告はもちろんのことでございますけれども、一般の国民の皆さん方にも御理解と納得を得て死刑を執行したいというような姿勢をとっておったということで御理解をちょうだいいたしたい、このように考えております。
 あとは刑事局長から、専門家の方からお話を申し上げたいと思います。
○政府委員(岡村泰孝君) ただいまの大臣の御説明に若干補足して申し上げたいと思います。
 まず第一点でありますが、現在の犯罪情勢につきましては大臣が所信表明で御説明されたとおりでございまして、決して楽観できるような犯罪情勢ではございませんで、こういう情勢のもとで法秩序を維持するためには検察体制を充実強化する必要のあることは言うまでもないところであると思うのでございます。そのための方策としてはいろいろのことがあるわけでございますが、その一つとしては有能な人材を検察官として迎え入れるということ、これがやはり基本的には重要なことであるわけでございますが、ただいま委員御指摘のように、最近検察官の任官希望者が少ないという現状にあるわけでございます。
 そこで、私ども法務省といたしましては、検察官の給与あるいは初任給調整手当の引き上げといったような検察官の処遇の改善ということにつきましてかねがね努力をいたしておるところでございます。また、具体的事件の捜査処理あるいは公判の維持等を通じまして検察官の活躍ぶりを正しく国民に理解してもらうことによりまして、司法修習生等につきまして検察の使命の重要性あるいは検察官の職務の魅力、こういったものを理解してもらって、検察官志望者が多くなるよう努力いたしておるところでございまして、今後ともそういう努力を続けたいと思っているところでございます。
 次に、警察と検察との関係でございますが、これは御承知のように警察が第一次的捜査権を持っているわけでございまして、御指摘のありましたような事件につきましては警察が犯人の検挙のために現在鋭意努力をいたしておるところでございます。検察といたしましては警察と必要に応じまして十分な連絡をとり、また協議を行いまして、犯罪捜査、特に犯人の検挙に向けていろいろ努力をいたしているところでございます。何しろ検察官の数は警察と比べますと格段に少ないわけでございまして、検察官があらゆる事件につきまして犯人検挙のためあるいは捜査のためその中心的役割を果たすということは困難な実情にあるのでございまして、第一次的捜査権を持つ警察がいろいろな事件につきまして第一次的に捜査を行うという建前になっているところでございます。
 以上でございます。
○秋山長造君 平沢問題については後でまとめてお尋ねしますので、それを除いてもう一度重ねてお尋ねします。
 第一点の検察官の人員不足というか、志望者が年々非常に減っていっている、やめていく人が多い。いろいろ対策に苦労されておることはわかりますけれども、具体的にはどういう――もうこのままで、対策を考えておる考えでおると言って考えるだけで何とか事が足りていくのかどうか。検察の仕事といえども、これは裁判にしても何にしてもすべてそうですが、やっぱり根本は人ですからね、人の確保なり優秀な人材の養成、確保ということはこれはもう一番重要なことだと思うんで、今の状態で何とかつないでいけるのかどうかということをもう一遍聞きたいと思うんです。
 それから、さっき朝日新聞だとかグリコ事件だとか森永事件だとか、こういうことについての検察としてのお考え、態度、御意見というものをちょっと聞き漏らしたんですが、法務大臣はどういうように考えておられるのかということをお尋ねしたいんです。
 それで私、今また新しくグリコ事件なんかを申し上げるのも、きょう警察庁を呼んでいないのに、警察庁の関係のおらぬところで警察庁の批判をするのもちょっとどうかと思うんですけれども、経緯を言いますと、私、法務委員会へ来る前に地方行政委員会におったことがあるんですよ。地方行政委員会におった当時あのグリコ事件が起こりまして、当時、社会的に随分大きな関心を呼んでおったんで、委員会でも各党の委員から随分グリコ事件の捜査についての質問なんか出たことがあるんです。その当時、警察庁の答弁は一貫して、とにかく今捜査が肝心のところまで来ておるんで、今それを先々国会で突かれると捕まるものが逃げてしまう、だから、もうしばらく質問を控えていただけませんか、もうちょっと警察へお任せいただけませんか、そのうちに捕まえますから、こういう式の答弁で終始したんです。
 当時の刑事局長、今は出世してどこかへ行っておるらしいが、名前までは言いませんけれども、警察庁のそこへ座っておられる方を言っておるんじゃないんですよ、警察庁の当時の刑事局長です。それは本当にもう何回聞かれても、しまいには委員のところへあらかじめ部屋まで行って、きょうグリコ事件を質問されるらしいですけれども、それちょっと御勘弁願えませんか、今やられますと、もうちょっとのところまで手が届いておるところに、もうちょっとでだめになってしまいますから、もうすぐ、やがてそう遠くないうちに御報告ができる状態になりますからちょっと質問控えていただけませんか、こういう調子なんですね。
 例えば、私の党の小山一平君なんかは、当時随分この問題について関心を持って、委員会で何遍か質問をやりかけたんです。ところが、警察の方から政府委員や何かみんな来てやられる。先生ちょっと待ってください、今やられると捕まるものが逃げてしまう、ちょっと待ってくださいというようなことを言う。そう言われると、やっぱりそれは捕まえるのが大事ですから、本当におっしゃるとおり、要らぬことを言ったために捕まえ損なって逃げてしまったらこれは大変だからという遠慮を当然するでしょう、まともな常識を持っておればね。そういうことで、ずるずるずるずる期待だけ持たせて、今日ただいまに至るまで待てど暮らせど全然捕まりもどうもしない。どこにおるかも全然わからない。そして、どこか消えてしまったような話でしょう。
 そうすると、これは私は国民に対する背信行為だと思う。だから、これは他山の石として、検察当局にしてもやっぱり似たような仕事をしておられるわけですから、そういうでたらめなことを言って、人に思わせぶりなことを言って期待を持たせて、そして結果的には国会の自由な質問を封じておいて、そうして実際には捕まえもどうもしない。そして本人はもうさっさとどこかへ出世して行ってしまう。はい、さようなら。そういうことは警察権に対する不信感を大変持たせるもとだと思いますよ。そういうことが一方であるんですからなおさらのこと――まあ検察が手を出したからすぐ捕まるかどうか知りませんよ。それは知りませんけれども、検察としてもそういう警察のあり方そのものに対する御批判というものは別に私はあると思う。だから、なおさら重大な関心を持たれてしかるべきじゃないかと思うんですよね。
 それから、もう一つ申しついでにうっぷんを申し上げますが、まあ警察のおらぬところでこういうことを言うのもどうかと思うんですけれども、グリコ事件を担当しておった何とかという大阪の警察本部長がおりましょうが。捕まえる捕まえると言って捕まえもせずにやめてしまって、しかもやめてすぐに、事もあろうに任地の関西電力ですか何か大企業の顧問か相談役かなんかにいきなりなっておるでしょう。ああいうことをやってみせるから、だからそれは大阪や神戸のような事件が起こっても捕まらぬのが当たり前だと、こうなってしまうんだ。もう国民は信頼していないですよ。そういうこともあるので、私はやっぱりグリコ事件なんかに対しても、検察としてもう少し何かこれ早期解決のために積極的な手の打ちようがないんだろうかということを思う。
 それから、これは大阪の朝日新聞の阪神支局の襲撃事件についてもしかりですが、それらの問題についてどういうお考えか、伺いたい。
○政府委員(岡村泰孝君) まず、第一点の検察官の不足はどういうような状況になっておるかという点についてお答えいたします。
 本年及び昨年と続きまして検察官の任官希望者が四十名を割ったというような状況でございまして、それ以前と比べますと、それ以前は五十名台が任官していたところでございます。そういうような現状から見まして、私どもも最近の検察官任官者の不足ということにつきましてはいろいろ深刻に考えておるところでございます。
 この問題をどう解決していくかということでございますが、一番根っこにありますのは、現在司法試験に合格する者がかなり高年齢化しておる、また、何回も何回も受けなければなかなか司法試験に合格しない、こういうような現状にあるわけでございまして、そういう司法試験の現状でよいのだろうかということにつきまして現在懇談会においていろいろ御検討をいただいているところでございます。そのほか、例えば、検察官の仕事について正しく理解してもらうためにパンフレットをつくるとか、あるいは先ほど申し上げましたように検察官の初任給調整手当の引き上げを行うとか、あるいは宿舎の整備を行うとかというような点での執務環境の整備と申しますか処遇の改善、こういったことにもいろいろ努力をいたしておるところでございまして、法務省といたしましては、真剣に検察官任官者の確保ということにつきましていろいろなことを考え、これを実行するように努めているところでございます。
 それから次に、グリコ・森永事件等について検察官がどの程度関与しておるかという趣旨の御質問でございますが、こうした重要な事件につきましては検察官といたしましてももちろん重大な関心を持っているところでございまして、第一次捜査機関として犯人検挙に向けて捜査いたしております警察との間ではいろいろ協議を持ち、あるいは指導助言を行うなど、積極的にこれらの事件の犯人の検挙に向けて検察官としても最大の努力をいたしているところでございます。
 以上でございます。
○国務大臣(遠藤要君) 今、刑事局長からお答え申し上げたとおりでございますけれども、一つは、警察との捜査の関連性については、今秋山先生からお話がございましたことは私も非常に胸を刺されるような思いをいたしております。ややともすると、国会答弁というのがその場限りになってはいかぬ、こういうふうなことで真剣に受けとめてまいりたいと思いますので、国家公安委員長やなんかとも十分今後協議の上に、一層連携を保持しながら捜査の徹底を期していきたい、このようなことを申し上げておきたいと思います。
 さらにまた、検事の志望者が少ない問題について、いろいろ問題が今刑事局長からお話がございましたが、一番の問題は、一つはやはりとにかく入り口がきつい、狭いということが一つと、それから検事になって同一勤務地に三年以上はおれないというような、大体そういうふうな状態なんで、子供の教育とか、お年寄、御両親を抱えている検事の人たちが転勤で大変頭を痛められている。そういうふうなことで、こんなことをやっていろんなら、名尾先生いらっしゃるところでどうかと思うんですけれども、弁護士の方が収入もいいしというような点が、橋本先生もいらっしゃいますが、そういうふうなことになりかねないというような点が私どもとして頭の痛い面でございます。
 そういうような面も懇談会にぶちまけて御協議を願って、何としてもこの重大な任務を担う検事でございますので、やはり意欲を持って希望してもらうという制度の改革をしていかなければならぬなと、こういうふうなことでございますので、これは先ほどのあれとは違いますけれども、いま少し長い目で先生見ていただきたい、こう思います。これはグリコ事件と違って、いま少し待ってくれというこのせりふは同じでございましても、どうかそういうふうな点で何とか解決したい、こう思いますので、御了承願いたいと思います。
○秋山長造君 もちろん、こういう問題は今こう言ったからいって、あすすぐ結論が出るというものではないですから。それは人間のやることですからね、若干の時間がかかるということはやむを得ぬので、それは長い目で見ることはやぶさかではありませんが、それにしても長い目で見過ぎておるんじゃないですか。あのグリコ事件だとか森永事件だとか、その他迷宮入りしているいろんな重大事件がありますね。それは当事者には当事者のまた言い分がある。人が少ないとかなんとか、証拠がなかなかつかめぬとか、いろいろあるだろうけれども、しかしそれが難しいことであっても、それをやるのがまた使命であり仕事であるわけなんだから、我々としてはその働きとそして成果を期待するのは当然だし、そうすれば警察だけでなしに検察庁もあるじゃないか。
 その中身はともかくとして、社会的には検察というものは警察を指揮するぐらいな相当ないかめしい権威を持っている役所だと思っていますから、だから警察だけに任せっきりにするんではなしに検察がみずから乗り出してやるということになれば、また事件の解決に大きく近づけるんではないかというような期待を素人なりに持つのは当然だと思うんですよ。それはそれだけのプライドを検察当局として持って仕事をしてもらいたいと私は思うんですね。それだけの使命感を持ってやってもらいたいと思います。余り乱用してもらっちゃ困るんですが、そういうことは別として。
 それから、もう一遍端的に伺いますが、グリコ事件だとか森永事件ですね、ああいうもう迷宮入り一歩前みたいな重大事件に対して検察はもう手出しをされるおつもりはあるのかないのかということ。それから、今度の朝日新聞の事件についても、先ほど特に所信表明で大臣も触れられましたが、これもまあ警察の方で大いに努力してくださっているわけだから先回りしてどうこう言うわけじゃないんですけれども、警察は警察でやっていただくとして、検察として、所信表明におっしゃったぐらいですから、関心は持っておられて、じっと警察の捜査を見ておられるんだろうと思うんですけれども、検察としては具体的にどういう態度なんですか。
○政府委員(岡村泰孝君) 検察といたしましては、グリコ・森永事件あるいは今回の朝日新聞社事件等世間を騒がせ、また重大な結果をもたらしているような犯罪につきましては警察と十分な連絡をとり、また協議を行いまして、犯人の検挙に向けて警察と協力いたしまして、
   〔委員長退席、理事名尾良孝君着席〕
最大限の努力をいたしているところでございます。
○秋山長造君 刑事局長のお話では、両事件についても警察と十分連絡をとりながらやっておられるということですから、そのお言葉をそのまま信頼しまして、その言葉どおり一層緊密な連絡、協調しながら事件の解決のために全力を挙げていただきたいと思います。これは国民に対して安心を与えるということと同時に、検察なり警察に対する国民の信頼というものが揺らぎかねませんからね。特に阪神地方を中心にいろんな事件がここ数年来起こっていますね。これじゃ本当に私はいかぬなと思うんです。大阪や神戸の辺へ行っても、一般の人は検察とは言いません、警察なんかに対してどういうようにみんな言っているかということを、声なき声に謙虚に耳を傾けられて、そして反省されるべき点は反省されにゃいかぬと思うんですね。
 私は、検察界のある長老、検察の最高位におったような方で今一線を引いておられるような方何人がおつき合いがあるんですが、そういう方といろんな話をしておりますと、こういうことをおっしゃる方々がありますね。やっぱりそれは上級幹部の身の処し方、やり方、いろんなことについて下はじっと見ておりますと。だから、やっぱり上が上なら下も下というようなことにならぬようにしてもらわぬと、訓示を垂れたとか通達を回したとかいうような通り一遍のことでなかなか締まるものでもありませんというようなことを、グリコ事件とか、次から次へ起こるいろんな事件に関連しておっしゃるわけですよ。だれがどうとか、どのケースについてだれがどうしたとかこうしたとかいうことは私は申し上げませんけれどもね。
 これは、警察にしても検察にしても一つの国家権力でしょうが。この権力に対する信なくば立たずということは私は本当に真理だと思うんですね。それに対する信頼というものがありませんと、犯罪の捜査にしても何にしても、それはかけ声ほどうまくいかぬと思うので、これは転ばぬ先のつえということにもなりますけれども、先ほど法務大臣もおっしゃっておるとおりでありまして、この冒頭の大臣の基本姿勢というものを末端までよく徹底させて、検察自身も頑張っていただきたい。警察はまた別な機会に主に警察をやって、激励しようと思っているんですけれども、激励する前に、警察も反省することは反省してもらわぬと、だらしなくなっている節々が、これは世間で言われていますよ。こういう問題についても我々としてはただもどかしいの一語に尽きるので、もどかしいものだからあれこれ申し上げるわけですけれどもね。私の申し上げる真意だけはひとつ素直にお受け取りいただきたい。
 検察行政の問題についてはそれくらいにして、次に平沢問題について若干。
 先ほどの大臣の御答弁では、三十二年もほったらかしたのは、結局、次から次に再審の請求が出たりなんなりして、とにかく延び延びになったのが主たる原因のようなお話でしたが、そういうこともなかったとは言えぬでしょうが、それだけではどうも世間も納得しませんし、私どももそれだけかなと思うんで、やっぱりその根本に、法務当局にその死刑の執行をためらわれる理由がおありだったんじゃないか、最高裁の判決は出たものの、捜査の過程等勘案してどうもやっぱり何か割り切れぬ何物かが残っておる、そういうものが引っかかってずるずる今日まで来たんじゃないかという疑惑を、疑問をぬぐい切れぬわけですよ。これはもう理屈じゃなしにそういう感じを国民感情として持たしていることは、これは否定できぬですよ。そういうことについて法務大臣あるいは法務当局がどういうようにお考えになっているか。
 せんだって、私も亡くなったときの新聞の記事を気をつけて読んでおったら、刑事局長は記者会見をやられて、談話のようなことをちょっと発表されておったですが、
   〔理事名尾良孝君退席、委員長着席〕
裁判の執行に関係する立場として平沢死亡について所感などを述べるのは差し控えたいとか遠慮したいとか、そういうことを述べる立場じゃないというようなことをどの新聞でもおっしゃっておるから、恐らくそういうことをおっしゃったんだろうと思うんです。それはそれでわからぬことはありません。わからぬことはないが、それはそれとしてこういう何か納得し切れぬ、どう考えてみても納得し切れぬ何物かが残っておるわけです。これは恐らく遠藤法務大臣もそういうお気持ちは残っておられるんではないかと思うんで、そういうことがあるから法務大臣になられても判こをつかれなかったんだろうと思うんです。
 こういう問題はどういうように説明したらいいんでしょうか、もう疑問を残したままで時の経過で消えていくのを待つということ以外にないんでしょうか。またこの経過にかんがみて、例えば、死刑囚の年齢、あるいは健康あるいはさらに恩赦、あるいは仮釈放とか、何かそういうようなことについて今の制度のままでいいんだというように突っ張っていっていいのかどうか。そういうことについてもこれを一つの貴重な教訓として再検討の余地があるんじゃないだろうか。
 それからもう一つは、今の制度上から言えば裁判所は判決を下したらもう後は一切タッチしない、後は全部検察の方へお任せということのようですけれども、一体それで本当にいいんだろうか。それは裁判所対検察庁という関係ではいいかもしれぬけれども、国民は裁判所であろうと検察庁であろうと、もうそんなことよりも何よりも国民の人権とか国民の生命、財産、自由とかそういうものが大事ですから、役所の都合で縄張りがどっちにあろうとそういうことは問題ではないんで、要するに、国として一体それでいいのかと、こうなるからそうすればやっぱり裁判所としても無関心でおれぬのではないかと思うけれども、判決を下すまではおれの仕事で後はもうそっちだと、これでいいのかどうかということ。特にこういう問題について最高裁判所なり、あなたの、裁判所の方はどういう御見解を持たれるんですか。何かコメントをされたんですか。されるつもりはないんですか、どうですか。両方へお尋ねします。
○政府委員(岡村泰孝君) 平沢の問題でございますが、平沢が帝銀事件等の犯人として認定され、死刑の判決が言い渡されてこれが確定いたしておるところでございまして、この確定判決は誤りはないものと信じているところでございます。このことは、これまでに十八回に及ぶ再審請求がなされているのでありますが、そのうち十七回につきましてはいずれも再審の理由がないということで再審請求が棄却されておるところでございまして、このような点から見ましても、平沢が帝銀事件等の犯人であると認定いたしました確定判決に誤りはないものと考えているところでございます。
 ところで、この死刑の確定判決があるにかかわらずなぜ今日までその執行に至らなかったかという点でございますが、この点につきましては、死刑の執行というものが重大な結果をもたらすものであるわけでございまして、そういうような点を考えまして刑を執行する立場にある者といたしましてはいろいろな事情を慎重に検討をいたしてきたところでございます。その中で、やはり平沢の場合は十八回に及ぶ再審請求と五回に及ぶ恩赦の出願がほとんど切れ日のないような状態で請求されあるいは出願されていたところでございます。これに対しまして刑の執行に関係する立場にある者といたしましては、やはりそういった再審請求あるいは恩赦の出願、こういったものの推移をいろいろ見守るということも必要なことでございまして、そういったいろんな事情を慎重に検討いたしてまいったところでございます。そういう事情を検討しておったため結局刑の執行に至らなかったということになるわけでございます。
 以上でございます。
○最高裁判所長官代理者(吉丸眞君) 刑事司法の運営という観点から申しますと、ただ裁判をすれば足りるというものでなく、その裁判の執行が非常に重要なものであるということは御指摘のとおりでございます。ただ、現在の法制の上から申しますと、刑事訴訟法におきましては裁判の執行は検察官がこれを指揮し、特に死刑の執行は法務大臣の命令によるものというふうに定められております。このような法律の趣旨からいたしまして、御質問のような問題につきまして私どもから意見を述べることは差し控えるべきものというふうに考えております。
○国務大臣(遠藤要君) 改めて先生に申し上げておきたいと思うのは、先生のみならずこの委員会を通じて国民の皆さん方にも御理解をちょうだいいたしたいという気持ちで申し上げるわけでございますけれども、平沢問題についてはただいまも刑事局長からお話のあったとおりなんです。当初に先生にお話し申し上げたとおり、自分も法務大臣に就任当初、この問題で、役所の怠慢なのか何かがあるのかということで私なりにただしてみたのでございますけれども、いろいろ調査、質疑応答してみてなるほどなというようなことで、この問題はこれからの死刑囚の扱い方や何かについても大きな参考になろうと思いますけれども、例えば再審の請求が十八回と、これ自体が、再審にもやはり何回ということで制限すべきではないかなというような点もあるのではないかなと、こう感じられるわけです。
 何回でも出していいんだなということになると、今度のような問題で国民には何かあるから執行をおくれさせたのではないかなというような印象を与えるというようなことも私なりに肌に感じたということでございまして、私も法務大臣になった限りは死刑囚に対してその決裁をするという、死刑執行の決裁をするということを逃げるという気持ちは私には毛頭ございません。やはり職務上執行するということになりますれば、職務上でやるべきことはやるべきであるという考えでおるわけでございますけれども、平沢問題については再審再審ということで、私が就任した後にも再審が審議され、恩赦が審議されておったというようなことで、私自身最初は先生と同じように割り切れない気持ちで、法務省に入ってみてなるほどなと、こういうふうな感じを持ったわけでございまして、帝銀事件の犯人であることはこれは疑う余地がない、いろいろの点においてもそのとおりだなと、私は法務省内において改めて平沢が真犯人だということは自覚をいたしたわけでございます。
 それから、年齢その他もございますのでというような話も、私も最初は先生と同じような気持ちで、九十五歳にもなってという話も考えてもみました。それから、病気で長く刑務所病院で療養している立場だという点も総合的にはいろいろ考えてみたわけでございますけれども、御承知のようなあの事件というのは十二名ものとうとい人命を失わせたという点を考えると、これはやむを得ないことだなという点でございますので、その点ひとつ先生自身もなるほどなということで御理解願い、よそにもそうなんだということをお話をちょうだいできればと、こう思っております。
 それから、改めて警察と検察庁の捜査の問題については、先生の御意見を私は念頭に置いて十分今後善処していきたいということを申し上げておきたいと思います。
○秋山長造君 私は法務大臣になった経験がありませんから、法務大臣になって初めて本当のことがよくわかったとおっしゃられると、これはもう遠藤法務大臣のそのお言葉どおり受けとるよりしようがないですけれども、私もそれで納得したいんですけれども、しかし、そうは言いながらもどうもやっぱり正直なところ一抹の疑問が残りますね。恐らく私だけじゃなしに相当数の人が、それは法務大臣なり検察のお立場もあろうけれども、お立場はお立場としてわからぬことはないが、しかし事実は事実で、何か疑問があったんじゃないかなという気持ちは残ると思うのです。
 そこらは、この席では一応法務大臣が法務大臣になってなるほど本当のことがよくわかったとおっしゃるんなら、そうですかなと思うよりしようがないですけれども、それならそれで検察は黙して語らずということじゃなしに、裁判官は弁明せずというような言葉があるんだそうですけれども、今の時代ですから、大臣もおっしゃるように国民に親しまれる検察行政ということをモットーにしておられるわけですから、国民に親しまれるということは国民にわかりやすい、なじみやすい、納得しやすいということにも通ずるわけで、何かそういうことを心掛けられたらどうか。しかし、心掛けてもやっぱり疑問があくまであるという話も、松本清張さんみたいな見方もありますから、永久のなぞとして残るのかもしれぬけれども、それにしても疑問を残したままというのはいかぬと思う。
 また、それはそれということでもう一つお聞きしますが、おっしゃるとおりとしましても、私は、判決が出たらすぐ執行せいということでは決してないんですよ。それは人命のことですから、死刑廃止論なんかだってなかなか有力な意見があるんですから、なぜ死刑を早く執行しなかったかという立場でお尋ねしておるわけじゃない。ただ、死刑の判決が下りながら三十二年もずるずるそのままになっておるということは、ちょっとまたその面で納得いかぬじゃないかということを言っておるだけです。
 また、考えようによっては、死刑という物理的なことは行われなかったけれども、事実上は死刑にまさるほどの、今の憲法で禁止しておる残虐な刑罰はいかぬというこの残虐な刑罰に実質的には当らぬとも言えぬのじゃないかという気もするし、とにかく三十二年もの長い間、あの老体がいつ執行されるやらわからぬ死の不安というんですかね、そういうものにずっとさいなまれての三十二年間というのは、これも大変なことだと思いますよ。死刑を物理的に執行してしまうということも大変なことですけれども、また、執行するぞ執行するぞと言いながら三十二年間じっととめ置かれるということも、これは死にまさる大変な苦痛だと思いますので、そういうことも考えるからどうなのかなという疑問を持つ。
 それからもう一つは、平沢問題は一応本人が亡くなったのでそれなりに一つの区切りがつくわけですけれども、類似の死刑囚というものが一体あるのかないのか。そこまで長くはないにしても、十年とか二十年とかいうような類似のもので、最終判決を受けながら執行されずにそのままになっているようなものが相当あるんじゃないですか。そういうことがあったらどのくらいあるかということ、それから死刑の執行をされた人で一番最高の年齢はどのくらいな年齢の人があるのか、ちょっと参考に承知しておきたいと思います。
○政府委員(岡村泰孝君) 死刑判決が確定いたしましてから相当期間刑の執行に至っていない死刑囚も何人かいるところでございます。いずれもと言っていいと思うのでございますが、再審請求をしたりあるいは恩赦の出願をしているような状況にあったと記憶いたしております。
 また、死刑執行いたしました者の最高年齢ということでございますが、若干正確でないかもわかりませんが、七十を超えた者もあったというふうに理解いたしております。
○秋山長造君 一方的、一面的なことばかりは言えぬと思います。これはあなた方もいろんな面を総合的に勘案されて処置をされているはずですし、またそれが当然だと思いますので、一方的なことばかり、例えばもう年齢が七十を過ぎた者は、どうせ出したところで何もするわけじゃないし、特に病身の場合なんかは仮釈放でもして、そしてしかるべきところで安静に、しかも軟禁状態という言葉がいいかどうか知らぬけれども、害のないような状態で置けばいいわけですから、そういうことについての現在のままのやり方よりも何かもう一歩進んだといいますか、改善された扱い方というものがないのかどうか、また、そういうことを検討されるおつもりがないのかどうかということをお尋ねしておきたい。
 それからもう一つは、先ほど最高裁のお話がありましたけれども、私はそれについて一体今のままでいいんだろうかという気がどうもするんですよ。最高裁は判決を下したらそのまま法務省の方にお任せして最高裁はそれでもう一切手を離れてしまう。それどうですか。例えば平沢問題についても、最高裁は昭和三十年でしたか、最終判決を下したわけですね。その後は一切この問題にはタッチされていないんでしょう、それで本当にいいのかどうか。何かもう少し今の状態よりも改善をするというか、改正するというか、そういう立法的なことをお考えの必要があるんじゃないかどうか。
 それから、もう一つ突っ込んで、聞くついでに聞きますが、裁判所の死刑の判決基準といいますかね、何か今は多数決でやるんですか――それを例えば、最終判決の場合は全員一致制をとるとか、とった方がいいんじゃないかとか、そうでなくても死刑廃止論なんかがますます強くなっているときでもあるし、それからまた、いろんな疑問を残したまま死刑が執行されてというような、いつまでも歴史の本に何か疑問符がついたようなことばっかり残っていくというようなケースはなるべくない方がいい。そういうことからして慎重に慎重を期する意味で死刑判決の場合には全員一致制をとった方がいいんじゃないかとか、そういう何か立法的な改善策というものを考える余地がないのかということと、両方についてちょっと伺います。
○最高裁判所長官代理者(吉丸眞君) 裁判の上から申しますと、いわゆる帝銀事件の平沢問題につきましては、昭和三十年五月七日に死刑の有罪犯決が確定いたしましたが、その後現在に至るまで、先ほどお話がございましたとおり、前後十八回にわたって再審の請求がございました。そのうち第一次請求から第十七次請求までの十七回の再審請求、これは裁判所で慎重に審議をした上、その請求がいずれも棄却された、こういういきさつがございます。そういう意味で、この判決確定後も裁判所はこの事件に深くかかわっているということでございます。なお、第十八次の請求は、ことしの四月二十一日に東京地裁に申し出られまして、現在同地裁に係属中という状況にございます。
 それに対しまして、刑の執行等の点につきましては、先ほども申しましたとおり、これは本来法務当局の問題でございますので、私どもの立場から意見を申し述べるべきものではないように考えております。
 なお、死刑の言い渡しをする場合の合議の問題でございますが、これは法律上は多数決ということでございます。しかし、死刑事件につきましては裁判所といたしましても極めて慎重に種々の面で取り扱っているということは御承知のとおりでございます。
○政府委員(岡村泰孝君) 死刑の執行に関しまして何か具体的な基準を設けるべきではないかという点でございますが、死刑の執行につきましては、先ほど来申し上げておりますように、その結果の重大性ということを考えますと、やはり個別の案件につきましてそれぞれの具体的事情を判断して決めるのが相当であるというふうに考えるのでございます。
 先ほど大臣が申されましたように、それでは再審請求の回数制限をしてはどうかというような御意見、こういう御意見もあるところでございますが、また反対の御意見もあろうかと思いますし、いずれにいたしましても、死刑執行の結果の重大性ということ、また再審請求や恩赦の出願をなしている場合に、これにつきましても、やはりいろいろ慎重な配慮をする必要があるというような問題もあるわけでございまして、こういったものを総合的に判断いたしまして、刑執行の責任のある者が適正にそこを判断を下していくということが必要であると思うのでございまして、今後とも、法務当局といたしましては、個別の案件に応じまして、諸般の事情を慎重に検討しつつ適正な刑の執行に努めてまいりたいというふうに思っているところでございます。
○国務大臣(遠藤要君) 今、刑事局長の答えたとおりでございますけれども、法務省、検察庁内部だけが慎重に厳正にやったといっても、こういうふうに長期化すると、先生御指摘のように、一般の国民の方々から何かあったんじゃないかという疑いを受ける、そういうふうなことがあるとするならば、私どもとしても長期化していく場合にはいろいろの方法を講じて、国民にも理解の持てるような方法も講じていかなければならぬじゃないかなと、こういうふうに感じておるわけでございます。
 何としても、法の秩序保持ということが原点でございますので、その点、我々としても先生の御指摘の点について今後十分検討してまいりたいと、こう思いますので、御了承をちょうだいいたし、平沢問題については、死刑執行が大変長期化したということは、法務省が人命という問題と死刑執行ということはいかに重大な問題であるかということで慎重に慎重を期したということで御理解を願い、再審申し立ての途中で執行したということになれば、また一般国民からどんな誤解を受けるかということもなきにしもあらずだという点で、念には念を入れよという姿勢でやったということをひとつ先生から皆さん方にもお伝え願えれば大変幸せだと思います。よろしくお願いたします。
○秋山長造君 大臣の仰せは私は素直にお聞きいたしますが、私が接触の範囲というものは狭いですからね、それは法務省でおやりくださらないと国民に徹底せぬですよ。
 今、刑事局長と大臣とお二人でおっしゃったように、人命にかかわる問題、人権にかかわる問題ですからね。これは何といっても法務行政の大きなたてりですからね。今後さらに慎重に慎重を期していただきたいということをお願いしておきます。
 それから、最高裁の方ね、あなたがさっきおっしゃったのは現行法はそうなっておるという説明をされただけなんで、私が申し上げるのは、現行法がそうなっているのはおっしゃるのはわかっておるんで、今後の立法政策として、一体それで多数決でいいのかどうかと。釈明をどうしようと、とにかく相当疑問を持たれておる、こういう問題もあるわけですから、なおさら人命の尊重ということ、死刑ということの重み、死刑という二文字の重みということも一層痛感せざるを得ぬので、ただ立法政策として現行法ではそれは多数決ということになっておるけれども、慎重を期しながらも多数決ということになっていますけれども、しかし、今後の立法政策としては、やっぱり最高裁の最終判決の場合の死刑判決というものは全員一致という制度の方がよりいいんではないか、また、そうあるべきではないかというように私は思うんです。
 だから、そのことについて最高裁として非公式にか公式にか、何かの機関で、どこかでそういうことについて御検討をされる御意思はありませんかと、あるいは御検討されておる事実があるんですかどうですかということをお尋ねしておるんです。現行法がこうなっておりますというのは、これはもう言われぬでも私もわかって質問しておるんですから。
○最高裁判所長官代理者(吉丸眞君) 私が先ほど申し上げましたのは、言葉の足りないところがございましたが、現行法制の上では多数決ということになっておりますが、特に死刑事件となりますと、事実の問題、また刑を定める問題についても合議その他極めて慎重に行われており、事実上は全員一致というような運用が行われていることが多いように思います。
 そのような意味で現行の法制を改めて全員一致ということを法律上の制度とすべきかどうかということにつきましては、これは立法政策の問題でございますので、この際私どもの方から意見を述べることは差し控えさしていただきたいと思います。
○秋山長造君 あなたの方はそうかもしれぬですけれども、刑法学者か何か、そういう学者の方面か何か、そういう議論はないですか。そういうことを言っているんじゃないですか。
○最高裁判所長官代理者(吉丸眞君) 学界などでは全員一致にすべきではないかというような御意見もあるように伺っております。
○秋山長造君 ただ、最高裁としては今のところそういうものに耳を傾けるつもりはないと、こういうことですか。
○最高裁判所長官代理者(吉丸眞君) 決して耳を傾けるつもりがないと申すわけではございませんが、立法政策の問題でございますので、この場で意見を述べるのは差し控えさしていただきたいという趣旨でございます。
○秋山長造君 意見をお述べになれないにしてもそういうことを十分研究してくださいよ。これは素人が玄人に申し上げるのも失礼だけれども、私はもう全く常識論で言っておる。どうですか。しかし、常識論にも真理がある場合がありますからね。
 それから、続きまして、まだ時間があるようですから刑事確定訴訟記録法についてちょっとお尋ねいたします。
 これはもう今まで請願も出たり、またこの委員会でもぜひ早くこういうものをつくれという御意見が過去にあったようですから、この法案そのものの可否についてはこれはもう問題はないと思うんです。私らもこれは結構だと思いますが、ただ中身についてちょっと一、二、簡単な疑問点にお答え願いたいと思います。
 それは、今までは検察の内規で決めていたんですか、検察庁が訴訟記録を保管するということは。
○政府委員(岡村泰孝君) 刑事訴訟法五十三条が記録の保管、閲覧といったようなことについて基本的に定めを置いているわけでございます。そして、刑訴法五十三条の四項で、「訴訟記録の保管及びその閲覧の手数料については、別に法律でこれを定める。」というふうにしていたところでございますが、その後法律を定めるには至らず、刑事局長の通達によりまして訴訟記録の保存関係の暫定要領をつくりまして、これによりまして運用をいたしておったところでございます。
○秋山長造君 これを拝見しますと非常に簡単な法案なんですが、こういうものが昭和二十四年に通達が出されたんですよね。昭和二十四年でしょう、今おっしゃった刑事局長の通達を出したのは。
○政府委員(岡村泰孝君) 昭和四十五年でございます。
○秋山長造君 新しい刑事訴訟法ができたのは何年ですか。
○政府委員(岡村泰孝君) 昭和二十四年一月施行でございます。
 そして、その昭和四十五年の刑事局長通達が出るまでは民刑訴訟記録保存規程という司法省当時の訓令で運用いたしておったわけでございます。
○秋山長造君 それが生きておったわけですね、刑事局長の通達が出るまで。戦前のね、何か司法省何とかというのが出ておったわけでしょう。それでやっておったのを四十五年に改めて刑事局長の通達が出されたわけ。それはそれでわかりますが、それから内規みたいなもんでやっておられたんだろうと思うんですが、刑事訴訟法ができたのは昭和二十四年でしょう。そうすると、二十四年にできてことしが六十二年ですからかれこれ四十年近い間そのままになっていたと。しかもこんな簡単な、大して異論のないような法律をつくるのにどうしてそんなに四十年もかかったんだろうかという素朴な疑問を持つんですが、いかがですか。
○政府委員(岡村泰孝君) 委員御指摘のように、確かに相当の期間、時間が経過したということは事実でございます。
 なぜそういうふうに期間が経過したかということでございますが、この訴訟記録をどこで保管すべきかという問題につきまして最高裁判所との間の意見の調整というものが一つは必要であったわけでございます。それからもう一つは、訴訟記録の保管するにいたしまして、その保管期間をどういうふうにすべきであるかというような問題につきまして、やはりある程度の運用の実績を見るということが必要であったわけでございます。
 そういったような点がございまして、これまで刑事局長通達によりまして運用を行ってきたところでございまして、運用の実績もまあ相当長期間になったわけでございますが、やはり法律を早急につくるべきであるという声も強うございまして、こういったような点もあわせ考えまして、今回法律をつくるということで本法案を提案いたした次第でございます。
○秋山長造君 おくれた理由として二つお挙げになったわけですが、ほかにもあるでしょうけれども、主として最高裁との意見の調整に手間取った、それから保管の期間を五十年にするとか百年にするとかいう具体的な期間の設定ということでいろいろ議論があって手間取ったというようなことをおっしゃったのですが、それはわかりますが、最高裁との意見の調整に非常に手間取ったというのは、裁判所としてはどうなんですか。この記録というのは裁判所が保管すべきではないかということで、権限争いでもないけれども、どっちが保管したらいいかというようなことで議論が長引いたんですか。いかがですか。
○政府委員(岡村泰孝君) 従来の経緯を申し上げますと、判決の裁判書の原本の一部につきましては裁判所で保管している、それ以外の訴訟記録につきましては検察庁で保管しておると、そういうような実情がこの刑訴法施行当時にあったわけでございます。そういうふうに、訴訟記録でありながら一部裁判所、大部分が検察庁というような実情を前提にいたしましてこの現行刑事訴訟法が施行されたというような実情にあるわけでございます。そういう点がございましたので、保管の主体と申しますか、保管機関をどこにするかということ、これはやはり意見の調整を要するべき一つの事柄であったわけでございます。もっとも、その間ずっと最高裁判所と意見調整をしておったというわけでもございませんで、一つはやはり運用の実績を見たいという点もあったわけでございます。
○最高裁判所長官代理者(吉丸眞君) 現行刑事訴訟法の制定過程におきましては、最高裁判所は、確定訴訟記録は裁判所が保管すべきであるという見解をとっておりました。
○秋山長造君 それで、現在はもう十分その点は両者の合意を見てすっきりした上でこういう法案になったわけですか。
○最高裁判所長官代理者(吉丸眞君) さようでございます。
 そのいきさつを若干御説明申し上げますと、当時裁判所が保管すべきであるという見解をとっておりました理由とするところは、訴訟記録はもともと裁判所が訴訟工作成、保管するものであること、また、確定後も書記官に対する司法行政上の監督権の行使等のために必要であるというようなことでございました。しかし、これに対し法務省の方は、裁判の執行等に必要であるということなどから検察庁で保管すべきであるというふうに主張されていたわけでございます。
 その後、確定訴訟記録は法律の制定を見ないまま検察庁が保管してまいりましたが、その間の運用を見ますと、確かに裁判の執行等のために訴訟記録を検察庁に置いて保管する必要が認められますし、他方、書記官等に対する監督権の行使等につきましても、検察庁との調整によりまして格別の支障なく運用されてきたという実情がございます。
 そのようなことを考えまして、今回のこの法案の作成に当たりましては、特に裁判の執行上の必要という点を重視いたしまして、確定訴訟記録は検察庁で保管するのが相当であるというふうに考えたわけでございます。
○秋山長造君 裁判所にしても検察庁で保管するにしても、これだけ膨大な資料を一定の期間確実に保管されるわけですから、これは相当な施設が要るんじゃないですか。そういうことはもう大体、現在の検察庁の施設で十分間に合うんですか、いかがですか。
○政府委員(岡村泰孝君) 検察庁が訴訟記録の全部と裁判書の大部分を保管しておるという現状が続いているわけでございまして、その保管に見合うような保管の設備というものは現在検察庁にあるわけでございます。
○秋山長造君 この訴訟記録を一定の期間保存するという一番大きい目的は何ですか。刑の執行とか何とかいうものが終わるまでの証拠書類として持っておくということが最大の目的なんですか。それともまた再審請求なんかがあった場合に備えての記録の保存ということが大きい目的なんでしょうか。
 それと、もう時間がないからあわせてお尋ねしますが、情報公開ということが時代の大きな要請になっているわけです。プライバシーの保護ということも一面ありますけれども、原則として情報公開の趣旨に沿って裁判記録もできるだけ公開主義でやるべきだというように私は思うんですけれども、その点についての御見解とあわせてお答えください。
○政府委員(岡村泰孝君) 訴訟記録保管の目的でございますが、これは裁判の執行、特に刑の執行ということがやはり中心であろうかと思いますが、それに関連いたしまして、裁判が確定しました後、例えば再審請求の問題、あるいは執行猶予言い渡しの取り消し請求の問題、こういった被告事件に係りますいろいろな手続を適正かつ円滑に進めていく。そのためには訴訟記録が保管されることが必要であるということであろうかと思うのでございます。
 次に、情報公開との関係でございますが、情報公開と申しますのは、国あるいは地方公共団体が持っております各種の情報のうち、国民生活の便利に資するものなど、公開するのが適当と認められるようなものにつきまして国民に公開する制度を言うものと考えておるわけでございますが、ただ、こういう情報公開制度のもとにおきましても、やはり個人の秘密にかかわる事項につきましては原則として公開しないというふうにしているのが通例であるというふうに思っているのでございます。
 これに対しまして、訴訟記録の公開制度といいますものは、憲法八十二条が定めております裁判公開の原則を拡充すると申しますか、裁判の公正を担保するということをその主たる目的とするものでございまして、情報公開の制度とは必ずしも同じ趣旨ではないというふうに思うのでございます。特に、訴訟記録の場合は個人の秘密にかかわる事項を含む場合が非常に多いわけでございます。そういう意味で、プライバシーの保護ということも十分にこの訴訟記録の閲覧の際には考慮しなければいけないというふうに考えておるところでございます。
 このことは、刑訴法の五十三条が訴訟記録の公開を定めてはおりますけれども、五十三条の二項におきまして、それは無条件の公開ではなくて、一定の場合には閲覧を制限し得る場合があるということを定めているところでございます。今回の法案におきましては、閲覧を制限し得る場合を具体的に明らかにいたしておるわけでございますが、これは先ほど申し上げました刑訴法の規定の趣旨をさらに具体化するということであるわけでございます。
 現在はどうなっているかといいますと、先ほど申し上げましたように、通達によって運用いたしておるわけでございます。その通達におきましても閲覧を制限できる場合というものを具体的に定めているところでございまして、今回も閲覧を制限できる場合を具体的に定めておるわけでございますが、両者の間には基本的には異なるところがないわけでございます。
 また、今回の法案が成立いたしました場合、今までの通達による運用に比べて閲覧がより制限的になるかといいますと、それはそういうことではないわけでございます。特に今回の法案では、検察官の閲覧に関します処分に対しまして裁判所に不服の申し立てをできるという規定を設けているところでございます。
○秋山長造君 もう時間が来たんですけれども、ちょっとお許しいただいてもう一問だけお願いします。
 この保存期間ですが、死刑または無期懲役というものは百年、それから判決書以外のいろんな附属的な記録は五十年というようにこの一覧表にずっとありますね。百年たったらもうこれは廃棄処分にするんですか。というのは、例えば、同じ判決にしても、中身の歴史的に非常に重大な意味を持っている判決もあれば、通り一遍の内容の判決もあるわけですよね。その場合に確定訴訟記録の保存ということは、先ほどおっしゃったような目的があると同時に、これは重大な意味合いを持った記録になると。一つの歴史的な文書というか、歴史的な記録といいますか、あるいは文化遺産といいますか、そういう性質を持ってくる場合があると思うんですね。
 そういう場合にも、期限が来たら焼き捨ててしまうのかどうか。むしろそういう場合には、その判定はまた別なところで、審議会か何かで判定しなきゃならぬでしょうが、いずれにしても、焼き捨てて廃棄処分にしてしまうにはもったいないといいますか、永久保存すべき歴史的な価値を持った文書じゃないか、資料的価値を持った文書じゃないかという場合があると思うんですよ。そういうものは国立公文書館か何か、そういうものもありますよね。それに限らぬけれども、何か別な、期限が来た上でしかる別な扱いをすべきじゃないかというように私は思うんですけれども、そういう点はどう考えておられますか、その点だけ。
○政府委員(岡村泰孝君) この二条と別表の関係では、別表に記載しておりますところの保管期間が経過いたしますと、保管期間の延長をしない限り保管は終了いたしまして廃棄処分ということになるわけでございます。ただ、しかしながら再審の手続のために必要な場合には保管期間が満了いたしました後も再審保存記録として引き続き保存するという規定が三条にございます。また、九条には、刑事法制及びその運用並びに犯罪に関する調査研究の重要な参考資料であると考えられる記録につきましては、保管期間が満了いたしました後、刑事参考記録といたしましてこれを保存するということを定めているわけでございます。したがいまして、ただいま委員御指摘のありましたような事件で、この刑事参考記録として引き続き保存するにふさわしいような記録は保管期間が満了いたしましても引き続き保存する、こういうことになるわけでございます。
○秋山長造君 どうもありがとうございました。
○委員長(太田淳夫君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時十分まで休憩いたします。
   午後零時十六分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時十四分開会
○委員長(太田淳夫君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、検察及び裁判の運営等に関する調査のうち、法務行政の基本方針に関する件並びに昭和六十二年度法務省及び裁判所関係予算に関する件並びに刑事確定訴訟記録法案を便宜一括して議題といたします。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
○猪熊重二君 きょうは一般質疑として、朝日新聞記者に対する殺傷事件の問題と平沢死刑判決の問題、これを簡単にお伺いして、その後法案についての質問をさせていただきたいと思います。最初に、去る五月三日、朝日新聞阪神支局に暴漢が乱入して、同紙記者一名を殺害し、また一名に重傷を負わせたという事件に関して、法務大臣も先ほどの所信表則の中においてもこの事件の重大性というふうなことは述べられておられますし、また先ほどの秋山委員の質問に対しても同じく法務大臣の見解も述べられているわけですが、私は、この事件は、もし通常考えられているような新聞社の報道内容に対する不満から出た事件であるとすれば、民主主義の根幹を覆す報道の自由に対する挑戦であると、このように考える立場から、法務大臣にはたびたび御答弁で申しわけございませんが、なお一度お伺いしたいと思います。
 まず第一に、この事件は、先ほど申し上げましたように、新聞の記事内容に対する不満等から生じたものであるとすれば、報道の自由に対する重大な侵害である。報道の自由は憲法二十一条の表現の自由、その具体的な報道における自由ということで民主主義の根幹をなす問題である。これに対して記事内容が不満であるというふうなことであったとしても、今回のような事件を起こすということは遺憾千万というか、民主主義に対する真っ向からの挑戦である、このように考えます。法務大臣に、この事件を報道の自由という観点からどのようにお考えであるかについてお伺いしたいと思います。
○国務大臣(遠藤要君) お尋ねの事件については、現在捜査当局において捜査中と承知をいたしております。事案の真相はまだ明らかではございませんけれども、犯行の手段、方法から見て凶悪な事件であることは私も十分認識をいたしており、この種の暴力事犯は目的のいかんを問わず許されないところであります。もしそれが先生のお話のように、報道機関の言論封殺を意図したものであるとするならば、それは民主主義の根幹を破壊するような重大な事件だと申し上げておきたいと思います。
 かような点で、速やかに真相の解明を期待しているところであり、検察としても厳正に対処していきたいという心境であるということを御理解願いたいと思います。
○猪熊重二君 ただいまの大臣の御答弁にございましたように、現在この件は警察庁において鋭意取り調べ中であるということでございますので、具体的な犯行内容であるとか現在の捜査状況であるとか、この点についてはお伺いすることを差し控えさしていただきます。ただ、戦後四十年間、報道機関に対する嫌がらせ的な各種の事件はあったにしても、今回のように直接的に殺傷を目的とするような事件というものは発生していなかった。
 そこで、一般論として、まず今回のような事件、しかもこれが伝えられているような新聞記事に対する不満からの事件であるとすれば、このような政治的な犯罪等は非常に社会情勢に原因して起こることが多いと、このように私は考えます。
 そこで、今回の襲撃事件が世の中の状況の変化等によって起きたと考えられるかどうかについて、まず最初に刑事局長の見解をお伺いしたい。
○政府委員(岡村泰孝君) 本件につきましては現在警察におきまして鋭意捜査中のところでございます。本件に至ります背景、事情と申しますか、動機と申しますか、あるいは犯行の目的、こういったものがいまだ明らかではないわけでございまして、こういったものが明らかになりませんと本件犯行がどのような事情を背景としたものであるかということにつきましても申し上げがたいところでございます。
○猪熊重二君 ところで、本件のような言論に対する暴発事件ということに関して、五月十日付の朝日新聞には次のような報道がなされております。すなわち、香港の有力英字紙サウスチャイナ・モーニングポスト紙は九日付の社説、その社説の題名は「日本に出現しつつある危険な傾向」と題する社説ですが、この社説において「日本で最も権威ある全国紙の記者二人に対する襲撃事件は、一九三〇年代の日本で数多くの政治暗殺事件を引き起こした狂信的ナショナリズムを想起させる」、「国外ではあまり理解されていない中曽根氏のナショナリズムが、一部の日本人の間で共鳴音を響かせているのは明らかである」、このように述べているそうです。この香港の英字紙の報道が本件犯行の遠因ないし背景として主張している内容について、最初に刑事局長、次いで法務大臣の見解を伺いたい。
○政府委員(岡村泰孝君) ただいま御指摘のような朝日新聞の報道記事は私も承知いたしておるところでございます。しかしながら、その香港紙の社説の全体を具体的に見たわけではございませんし、その香港紙がどういうようなことを根拠といたしましてその社説を書いたのかということも私としては承知していないところでございます。そういうようなことを前提にいたしますし、また本件朝日新聞社に対する襲撃事件につきましても、先ほど来申し上げましたように、その背景なり動機、目的というものがいまだ明らかではないわけでございまして、そういうような事情のもとにおきまして、ただいま御質問のありました点につきましては何ともお答えいたしかねるところでございます。
○国務大臣(遠藤要君) ただいま刑事局長からお答えしたとおりでございまして、私は中曽根内閣の閣僚の一員として弁解するわけではございませんけれども、中曽根総理自体がそのような指摘されるような人柄ではないと、こう私は確信をしておるわけでありまして、先生御承知のとおり、今度の国会においても三百四議席を持ちながらこのような状態で進行しているということでも十分御理解がちょうだいできるのではないかなと、こう思っております。
 しかし、それは私の思っていることで、それぞれの御見解があろうと思いますが、本件については検察当局としても徹底的に背後関係、真相等の把握に努めたい。そして、二度とこのような問題を繰り返させたくない。所信表明の中でも申し上げておるとおり、最近、各国にテロや何かが出ております。そういうふうなので凶悪犯が多発している中でございますので、とにかく日本国の法の秩序保持ということが日本の真の平和の前提だという気持ちで努力してまいりたいと思いますので、御了承願います。
○猪熊重二君 要するに、私が申し上げたいのは、戦後四十年間、ほとんどの期間を自民党内閣が政権を担当してこられた。この四十年間において、このような報道の自由に対する直接殺傷を目的とするような事件というものは起きていなかったんです。今回起きたのは中曽根さんの責任だ、こういうふうに短絡的に私は申し上げるつもりではありませんけれども、要するに、中曽根首相が五十七年十一月内閣総理大臣に就任されて以降、各種行われてきた戦後政治の総決算と称する路線が国内に不必要な摩擦を引き起こし、国論を二分、三分させ、大きな社会変動的、社会不安的状況をつくり出している。このような問題は、特に政治犯罪的社会運動に関する犯罪的な問題については慎重に検討されなきゃならぬと、このように考えるので申し上げましたが、これ以上中曽根内閣の閣僚の一員である法務大臣にいろいろお伺いしても大変でございますから、私の所感を申し述べさせていただいたということだけにとどめさしていただいて、いずれにせよ、このような暴力行為に対しては国民全体が徹底的に否定するという世論形成、意思形成というものが必要であると思います。
 このような観点から、法務大臣としてもちろん今回の事件を徹底的に究明するという側面があると同時に、今申し上げたような人権擁護、暴力否定というふうな国民世論の形成というふうなことについて、具体的にどうこうということはできないにしても、法務大臣の御決意があればお伺いしたいと思います。
○国務大臣(遠藤要君) 先生御指摘の件について一言申し上げますると、朝日新聞の問題はもちろんでございますけれども、日本国として平和と自由と人権、そして財産の保全ということは国民生活にとって何よりも日本国としては大切なことであり、それを守りいくには法の秩序が何よりもこれまた必要なことであることはあえて強調するまでもないと思います。
 そのような点で、私どもとしてきょうの先生の御意見を御意見として一層徹底していきたい。そして、閣僚の一員として万が一にもタカ派的な姿勢については私なりにそれを防御して、本当に平和な民主国家であるということを一層国民から理解をちょうだいするような政治であってほしいことに努力をすることを申し上げておきたいと思います。
○猪熊重二君 どうもありがとうございました。
 続いて平沢死刑囚の問題について二、三点お伺いしたいと思います。
 先ほどからの秋山委員の質問に対する法務当局のいろんな御答弁があったわけですが、その中で平沢死刑囚は今まで十八回再審の請求をして、十七回再審の請求が棄却されて現在十八回目が継続中であるということでございますが、この再審の申し立てを審理した裁判所というのは、人数的にどういう構成で行われていたか、お答えいただきます。
○政府委員(岡村泰孝君) 再審の請求をいたしました相手先の裁判所でございますが、これは十八回のうち最高裁にいたしましたのが一回、東京地裁にいたしましたのが十八回目を含めまして二回、残り十五回はいずれも東京高裁でございますが、最高裁の場合は、再審の請求を受けましてこれに対します決定をなすに当たりましては、五人の裁判官が合議体で審理をいたしておるわけでございます。東京高裁と東京地裁では三人の裁判官の合議体でこれを取り扱っていたものでございます。
 最後の十八回目の東京地裁に対します再審請求、これは現在請求中でございます。
○猪熊重二君 この十七回の再審請求の申し立てに対する棄却決定に対して、平沢としては不服申し立てを、回数だけで結構ですが何回ぐらいしておって、その不服申し立ての結果はどういうことになりましたか。
○政府委員(岡村泰孝君) 全部で八回抗告を申し立てておりますが、いずれもこれらの抗告は棄却されているところでございます。
○猪熊重二君 そうすると、再審請求の申し立てが十七回、その棄却決定に対する不服申し立てが八回、これだけの回数、先ほどのお話のように少なくも三名以上、最高裁の場合は五名ということで、これだけの裁判官が結局再審請求について理由なしという判断をされているわけですね。
○政府委員(岡村泰孝君) 抗告を受けました場合でございますが、その抗告の申し立ての裁判所、すなわち抗告裁判所が東京高裁に申し立てた件が一件、残りの七件につきましては最高裁判所に申し立てているところでございます。
 ところで、東京高裁の場合は三人の合議体、最高裁の場合は四人または五人の合議体でその審理を行ったところでございます。
○猪熊重二君 その十七回の棄却あるいは八回の不服申し立て棄却、それぞれの裁判について法務当局としてこの決定の理由について、要するに、再審の請求が理由がないという趣旨の決定の理由について何か疑念を持つようなことはございましたか。
○政府委員(岡村泰孝君) 再審の請求あるいは再審請求棄却の決定に対しまする抗告の申し立てはいずれも棄却されているところでありまして、これが棄却されたのは検察当局といたしましては正しい措置であったというふうに考えておるところでございます。
○猪熊重二君 次に、平沢から恩赦請求が過去五回なされているということですが、この五回の恩赦請求についての結論というか、結末はどのようになっておりますか。
○政府委員(俵谷利幸君) お尋ねの件につきましては、御指摘のように五回の恩赦の上申が中央更生保護審査会によって受理されてきたところでございます。そのうちの三回までのものにつきましては、具体的に申し上げますと、昭和三十八年の一月十一日に上申受理をしましたものが第一回でございます。これは特赦でございますが、三十八年五月十八日に不相当という議決を出しております。第二回目が三十八年十二月二十日に上申が受理されておりますが、同じく特赦でございます。これが四十六年六月二十二日に同じく不相当という議決になっております。第三回目が四十六年八月十日の受理でございまして、五十五年十二月十六日に不相当の議決がなされております。第四回目が五十六年一月十六日上申受理でございまして、これは特赦ということになっております。それから第五回が六十年二月二十五日でございまして、この内容は刑の執行の免除ということでございます。この後者の四回目と五回目のものにつきましては、去る五月十日、本人が死亡いたしましたので、上申事件は終結いたしたということになっております。
 ただ、この四回目、五回目の上申がなされております間に、中央更生保護審査会といたしましては大変慎重に審査をいたしてきたところでございますけれども、特に昨年の九月十日に、東京高等裁判所におきまして第十七回の再審請求が棄却になっております。その後、裁判記録等もさらに取り寄せまして慎重にかつ鋭意審理をいたしたわけでございます。昨年の十二月末ごろにはおおむねの結論を内部的に得ていたようでございますが、昨年の十二月暮れから本年一、二月にかけまして本人の容体が重症になってきたというようなこともございまして、審査会といたしましては最終的な結論に到達するということは避けてきたようでございます。そのうちに本人が死亡いたしまして終結をしたと、こういうことになっております。
 以上でございます。
○猪熊重二君 五回の恩赦の出願のうち三回が不相当ということで認められていないということですが、その不相当の理由は一口に言ってどういうことになるでしょうか。
○政府委員(俵谷利幸君) 簡単に申し上げまして、恩赦を相当といたします理由が見つかりがたい、発見しがたい、こういうことでございます。
○猪熊重二君 いずれにせよ、再審請求については十七回と八回、合計二十五回裁判所の判断がなされている。それから恩赦出願については三回ではありますが、中央更生保護審査会において恩赦不相当という結論がなされている。しかも本人に対する死刑判決は昭和三十年五月七日に確定しているわけです。
 そこで次に、死刑の執行の問題について刑事局長にお伺いしたい。
 刑事訴訟法四百七十五条一項「死刑の執行は、法務大臣の命令による。」というふうに規定されております。これは死刑執行の権限が法務大臣にあるということの規定ではあると思いますが、同時に、この規定は法務大臣が法に従って死刑を執行するべき行政上の義務があるという規定とも考えますが、いかがでしょうか。
○政府委員(岡村泰孝君) 死刑の執行につきましては、その重大性にかんがみまして、特に「法務大臣の命令による。」ということを規定いたしたのでございまして、この規定に従いまして厳正に刑の執行に当たるということはそのとおりであるわけでございます。
 ただ、死刑執行の重大性という問題もありますので、いろいろな諸般の事情を検討いたしまして、適正な死刑の執行を行うということであると思うのであります。
○猪熊重二君 刑訴法の同条二項は、前項の法務大臣の死刑執行命令は、 「判決確定の日から六箇月以内にこれをしなければならない。」と、このように規定されていますが、この規定の趣旨についてはどのようにお考えになっているわけでしょうか。
○政府委員(岡村泰孝君) 裁判の執行は速やかに行うべきであるという要請があるわけでございまして、こういう要請とともに死刑執行の重大性といったような点も考慮いたしましてこういう規定が置かれたものと理解いたしておるところでございます。
○猪熊重二君 ただ、この六カ月以内に執行しなければならないという規定に対して、必要なところだけ拾い上げて読みますと、ただし書きとして、再審の請求、恩赦の出願がなされた場合は、その手続が終了するまでの期間は六カ月に算入しないという規定になっておりますが、このただし書きはどのようにお考えになっているのでしょうか。
○政府委員(岡村泰孝君) 死刑囚が再審の請求をなし、あるいは恩赦の出願をなした場合におきましては、再審の請求につきましては裁判所が、また恩赦の出願につきましては中央更生保護審査会がそれぞれの立場で慎重な審理あるいは審査を行うわけでございまして、そういった審査なり審理を行っているという事実につきましては、十分な配慮が必要であるということでこの規定が設けられたものであると理解いたしておるところでございます。
○猪熊重二君 現在、刑事局長も御承知だろうと思いますが、新聞あるいは各週刊誌等によると、あたかも、再審の請求期間中もしくは恩赦の願い出期間中は、死刑執行が法的にも不可能であるというふうに読み取れる記事がはんらんしておりますが、これについてどのようにお考えでしょうか。
○政府委員(岡村泰孝君) 法律的に申し上げますと、恩赦の出願中あるいは再審の請求中でありましても、死刑の執行を行うことは可能でございます。
○猪熊重二君 ところで、この平沢の場合に、実際には先ほど申し上げた昭和三十年から今日まで三十二年間、再審ないし恩赦の願い出によって死刑が執行されていないということなんですが、このような、法務大臣の死刑を執行しないという状況の推移は、あたかも、日本の刑法で認めていない終身刑を一つの刑罰として創設したようなものだと、このようにも見られるわけです。要するに、懲役刑じゃない、何だと言えば死刑囚なんだと。しかし、死刑囚だけれども死刑は執行しない、死ぬまで出さない。まさにこれは終身刑なんです。
 日本の刑法では、終身刑というものは認めていない。また、この終身刑を認めていないにもかかわらず、具体的に終身刑のような形をとることによって裁判所が下した判決の内容というものも実質的に変更されていく・このように考えると、今回の平沢の死刑判決の執行に対して法務当局がとった態度は、立法権を侵害して、法にない終身刑みたいなものをつくり出したり、あるいは裁判所が慎重審理をして、三審制のもとに下した死刑判決というものを実質的にないがしろにしている結果になっている。この点について、刑事局長、どのようにお考えになりますか。
○政府委員(岡村泰孝君) 平沢につきましては、先ほど来申し上げておりますように、十八回にわたる再審請求と五回に及ぶ恩赦の出願がほとんど切れ間なくなされていたのでございます。こういった再審の請求や恩赦の出願というものにつきましては、これまた先ほど来申し上げておりますように、死刑執行のもたらす重大な結果というものを考えますと、やはりこういった再審の請求、恩赦の出願につきましても十分な検討、配慮が必要であるわけでございます。
 そういうことで、現実の問題といたしましては平沢の場合、これらの再審の請求、恩赦の出願につきまして、いろいろその間の事情を検討しつつ死刑の執行には至らなかったということであるわけでございます。委員御指摘のように、刑法に定められていないような刑罰をそこで実現する、そういう意図のもとに死刑の執行を殊さら延ばしてきたというわけでは決してないのでございまして、先ほど来申し上げておりますように、いろいろな諸般の事情を慎重に検討しつつ適正な対処を心がけてきた結果としてこういうことになったというふうに御理解をいただきたいのであります。
○猪熊重二君 今、刑事局長がおっしゃっておられることは、理屈としては何かわかったようなわからぬような理屈でして、私が申し上げたいのは、いろいろ慎重に配慮したのは結構だけれども、慎重に配慮した結果が結局は国会の立法権を侵害し、裁判所の裁判権を侵害するような結果に立ち至っているというこの現実に対してどのようにお考えかということをお聞きしたかったわけなんです。
 この件に関しては、先ほど秋山委員の方からもお話がございましたけれども、何か後ろめたいから処刑もできないでずるずるきているんだというふうにも世間では見ているわけです。後ろめたいなら後ろめたいで、恩赦であれ何であれ適当にまた別の国家作用というものがあるわけなんです。ですから、そちらで手だてをすればよろしい。再審の方もだめ、恩赦もだめ、しかし死刑は執行しない、三十二年間も執行しない。こういうことだと、一つには、先ほどの秋山先生のお話のように、国民に何かこの判決はうさん臭いんだというふうな疑念が出てくる。もう一つは、結局は死刑判決を受けてもああいうふうにくるくるやっていれば死刑になることはないんだというふうな国民の意思というものが形成されると、法なりあるいは裁判なりというものに対する国民の信頼というものが崩れていく。私はその点を非常に心配するわけなんです。
 先ほど、秋山委員の質問に対して大臣は、再審請求中に処刑することによる国民世論の動きと、処刑しないで待っているということによる国民世論とを比較すれば、処刑してしまったということの方が国民としては余り納得しないんじゃなかろうかというふうな御答弁があったように思うんですけれども、国民の世論がどういうふうに動くかは別にして、私としては、やはり法は厳正に執行されるべきである、このように考えます。この件に関して大臣の御意見はいかがでございましょうか。
○国務大臣(遠藤要君) 刑事訴訟法四百七十五条によれば、先生御承知のとおり、死刑の執行は大臣の最終決定でございますけれども、この法で自由刑または財産刑の執行とは異なっており、それだけに法の制度自体で慎重――まあ死刑ということは生命を絶つことである、慎重を期しなさいということからこのような立法になったのだろうと私は信じております。
 そのような点で、先ほど秋山先生にもお話し申し上げさせていただきましたけれども、私自身も、大臣就任当初にこの問題が一つの私としてのなぞでもあったわけです。なぜ三十何年間このようにしておったか。役所の怠慢が、また、何か問題があるのかというような点に疑念があったので、いろいろ法務当局の首脳部等事情を聴取した。その結果が、そうではない。やはり人間の生命を絶つということは最終的な決定であるが、先ほど秋山先生にお答え申し上げたように、再審請求のさなかに執行したということになると世論として一体どうなるか、あれは口をふさぐために早くやってしまったんだというような疑いも出てくる、そういうふうな点で慎重を期していくということが大切だということで今日までになったんだというようなお話がございました。
 さような点で、立法権なり判決に対してそれに背くとかどうとかということではなく、何としてもやはり人間の生命のとうとさということを考えると、事死刑囚であろうと慎重を期すべきであるというような点で今日までになったということを御理解願い、今後の問題として我々としても一体これでいいかどうかということについて自分なりにいろいろ考え、また、自分の頭の整理もできておりませんけれども、引き延ばして国民から何かあるかなという疑惑を残すということもいかぬし、再審さなかに執行するということもこれまた国民に疑惑を与えるというような点を考えると、どうすればいいかというようなことが自分として大きな研究課題だというように感じておりますので、先生の御意見十分承知をしておりますが、ただ、先ほども秋山先生にもお願い申し上げましたけれども、平沢は間違いなく真犯人であるということを私は改めて強調申し上げておきたいと思いますので、ぜひその点は皆さん方にもお広めをひとつちょうだいいたしたいと思います。
○猪熊重二君 平沢の問題に関しては、私が非常に、亡くなったにもかかわらずこういうことを申し上げるのは、現に、平沢以外にも現時点において、死刑判決確定後二十九年もたってまだ死刑を執行されずに再審請求、恩赦等を繰り返している全くこれと同種の事案、その他十年、十五年という期間同じようなことをしている死刑囚という者が何名もいるということなんです。こういう問題を放置しておくと死刑はなくなって――死刑が法定刑としてなくなるならなくなってももちろんそれは死刑廃止論の問題ですけれども、現に法が規定してあり、しかも裁判所が何年もかけて一生懸命やった判決を、結局法務当局が私に言わせれば任務怠慢で、十年も二十年も平沢と同じようなことをしている人間が何人もいるということは許しがたいことじゃなかろうか、こういうことで申し上げたところでございますから、法務当局としても、ほかの問題に対する先例ともなることですから、いろいろ御検討いただいて善処していただきたいと思います。
 以上でこの平沢の問題に対する質問を終わって、あとわずかな時間ですけれども、法案の質問に移らせていただきます。
 法案に対して質問するについて、条文ごとに指摘して質問したいと思います。
 まず第一条からお伺いします。
 第一条に「訴訟終結後」という言葉がございますが、これはいつの時点を指しておりましょうか。
○政府委員(岡村泰孝君) 訴訟終結後という意味でございますが、これは実質的に見ますと裁判確定という趣旨になるわけでございますが、裁判確定後としなかった理由について申し上げます。
 といいますのは、第一審の判決が控訴審で破棄差し戻しとなりました場合、控訴審の破棄差し戻しの裁判が確定いたしましても被告事件自体が確定すると申しますか、終結はいたさないわけでございまして、破棄差し戻しの裁判が確定してから第一審で審理のやり直しが行われるというような経過にあるわけでございます。そういう点を考えまして、ここには裁判確定という言葉を使わないで訴訟の終結という言葉を使ったわけでございまして、要するに被告事件が終結した後、こういう趣旨でございます。
○猪熊重二君 それに関連して、第二条第二項、別表の「保管期間」の始期についてお伺いします。
 この「保管期間」の始期は、この「訴訟終結後」とどのような関係にありましょうか。
○政府委員(岡村泰孝君) これは訴訟が終結したときから始まるのでございまして、その起算点は民法百四十条によりまして訴訟が終結した日の翌日でございます。本法案では特に始期については規定を設けなかったわけでございますが、一般的にこの民法の規定が適用されることになりますので、それに従うという趣旨でございます。
○猪熊重二君 それから、同じ別表の期間の問題についてお伺いしますが、別表の一の4の(二)及び(三)、これは無罪その他、どちらかというと訴訟の中身としては被告人に有利な判決がなされた事案ということになりますが、これの保管期間が五年もしくは三年というのは非常に短過ぎるように思います。要するに、有罪の記録の保管も大切だけれども無罪の記録の保管というのも警察、検察の捜査のあり方の適正等を考慮する上では非常に必要なことですから、この期間が非常に短いように思いますが、いかがでしょうか。
○政府委員(岡村泰孝君) 訴訟記録の保管の主たる目的は、確定いたしました裁判の執行ということであるわけでございます。ところで、無罪等の裁判の場合にはこれを執行するということもないわけでございます。そういうような点から見まして有罪の場合の裁判書よりは保管期間は短くなっているところでございます。
 しかしながら、無罪等の裁判書につきましても当該事件が世間の耳目を引いたような事件であるとか、あるいは裁判の構成が問題となっているような事件であるとか、そういったような場合には保管期間の延長ということが考えられるところでございますし、また刑事参考記録といたしまして将来ともこれを保存するということも十分に考えられるところでございます。
○猪熊重二君 この保管に関して、保管検察官は保管簿のようなものを、要するに、適当につけたりつけなかったりということでなく、きちんとした一貫性ある保管簿のようなものを作成することは予定しておられましょうか。
○政府委員(岡村泰孝君) 保管を適正に行いますためにも、やはり保管簿と申しますか、そういった種類のものをつくりましてこれに登載する措置をとる方針でございます。
○猪熊重二君 そのようにして作成された保管簿、まあ名称はともかく、これについては関係人に閲覧させることはお考えでしょうか。
○政府委員(岡村泰孝君) 保管簿を閲覧させるということは考えていないところでございます。
○猪熊重二君 この法案では、保管記録の保管期間経過後の廃棄については何ら規定がされていませんが、これについてはどのようにお考えなんですか。
○政府委員(岡村泰孝君) 保管期間が満了いたしました後、例えば、再審のための保存記録あるいは刑事参考記録としての保存記録、こういった取り扱いをいたさない場合には廃棄という処分を行うことになるわけでございます。
○猪熊重二君 続いて、第三条についてお伺いします。
 第三条第一項、再審のための保存記録、これの「保存すべき期間」については法文上は何ら規定されておりませんが、この保存すべき期間というものについてどのように考えておられるわけでしょうか。
○政府委員(岡村泰孝君) 三条の保存すべき期間でございますが、これは再審の手続がどの程度かかるかというそこの見通しのもとに、再審手続が進められている間は少なくとも記録を保存する、そういう観点から保存すべき期間を定めることになるわけでございます。
○猪熊重二君 三条二項に関連してお伺いしますが、三条二項では、再審保存記録として保存することを請求できる人間、請求権者について規定しておりますが、その中の「刑事訴訟法第四百四十条第一項の規定により選任された弁護人」という規定に関してお伺いします。
 この四百四十条一項の規定により選任された弁護人といった場合には、これは弁護人として既に選任されている弁護人に限るのか、それともいわゆる弁護人になろうとする者をも含む趣旨で解釈しておられるか。いかがでしょうか。
○政府委員(岡村泰孝君) 弁護人として選任された者でございまして、なろうとする者は含まないという解釈でございます。
○猪熊重二君 そうすると、この再審保存記録の請求人としては、いわゆる再審が開始された後に、あるいは再審の申し出をするときには弁護人が選任できるけれども、再審を申し立てようか申し立てまいか、その辺で記録でも検討してくれと弁護士に頼む、その弁護士はこの再審保存記録の請求人には入らないということになるわけですか。
○政府委員(岡村泰孝君) 三条二項に「再審の請求をしようとする者」という規定があるわけでございます。これに含まれる場合があり得ると考えられるわけであります。
○猪熊重二君 私が今申し上げたいのは、この中に弁護人となろうとする者を含まないともしお考えだとすると、この記録の保存請求について代理人は認められるのか認められないのかというふうな問題も生じてくるわけなんです。そうすると、代理人は認められるのか認められないのか、代理人を認めるとしたら代理人の資格は何か限定があるのかないのか、その辺はどうお考えなんでしょうか。
○政府委員(岡村泰孝君) 代理による請求が認められるところでございます。私、先ほど弁護人になろうとする人が再審の請求をしようとする者に含まれる場合があるというふうに申し上げましたが、正確に申し上げますと、これは再審の請求をしようとする者の代理人として含まれる場合があると、こういうことでございます。
○猪熊重二君 次に、第四条第一項について、保管記録の閲覧請求人に関する質問をいたします。
 この請求人の範囲として、何大もということですから当然ではあると思いますが、一応念のためにお伺いしておくと、未成年者、法人、外国人等は含まれますか、いかがでしょうか。
○政府委員(岡村泰孝君) 未成年者、外国人、これは含まれるところでございます。法人につきましては、まあ閲覧に来る者が恐らく自然人であろうかと思いますので、法人が含まれるというようなことはないのではなかろうかと思います。
 ただ、訴訟関係人ということになりますと、法人が処罰されたような場合、これは法人が訴訟関係人ということにはなると思います。
○猪熊重二君 この保管記録の閲覧請求人については、代理人の閲覧は認めるんでしょうか。認めるとしたらどの範囲、自由に認めるんでしょうか。いかがでしょうか。
○政府委員(岡村泰孝君) これもやはり代理に親しむ行為として代理人によることが許されるということになるわけでございます。
 ただ、訴訟関係人あるいは閲覧につき正当な理由があると認められる者から閲覧の請求があったという場合について申し上げますと、このような場合に果たして即代理人が認められるであろうかということは一つの問題であろうかと思います。この場合には、諸般の事情を考慮いたしまして、正当な代理人ということであるならば、まあ例外的と言っていいかどうかわかりませんけれども、そこらの事情をいろいろ考慮いたしまして代理人と認める場合もあり得ると思うのでございます。
○猪熊重二君 四条二項に関連してお伺いしますが、四条二項では「刑事訴訟法第五十三条第三項に規定する事件」、この事件に関しては閲覧を禁止することはないと、このように規定してあって、今の刑事訴訟法の条文は、「憲法第八十二条第二項但書に掲げる事件」ということになります。
   〔委員長退席、理事林道君着席〕そうすると、「憲法八十二条第二項但書に掲げる事件」といった場合に、この事件は政治犯罪、出版に関する犯罪及び憲法第三章で保障する国民の権利が問題となっている事件、こういう規定になっておりますが、このそれぞれについてどのようにお考えか、簡単にお答えいただきたい。
○政府委員(岡村泰孝君) 政治犯罪と申しますと、内乱罪など国家の政治的秩序を侵害する犯罪などを指すものと解釈されるのであります。また、出版に関する犯罪ということになりますと、これは出版そのものに関する犯罪あるいはまた出版の方法によることが構成要件とされている犯罪でございます。次に、第三章で保障する国民の権利が問題となっている事件というのは、国民の基本的人権を制限する法律に違反する行為を構成要件といたします犯罪につきまして、これを犯罪として処罰することの当否が問題になっているものを言うものと解釈いたしておるところでございます。
○猪熊重二君 閲覧ということについて、閲覧というのは通常は読むということでございますが、閲覧したものをメモ程度に書き取るとか、あるいは部分的に写し取るとか、あるいは写真に撮るとか、自分で持ち込んだテープに書面を読んでテープ録音するとか、どの辺までのことが閲覧の中に入るとお考えでしょうか。
○政府委員(岡村泰孝君) せいぜいメモをする程度のことであろうかと思います。刑事訴訟法によりますと、やはり閲覧という言葉と謄写という概念とが別になっておるのでございます。
○猪熊重二君 そうすると、この法案で言う記録の閲覧というのは、通常閲覧と言っている行為だけを指しているんだということのようにお伺いします。ただ、この法律とは別個に、弁護士等が再審請求あるいは民事請求等のため、あるいは刑事参考記録等の場合にすれば、いわゆる学者、研究者等、このような方々が非常に厚い記録をただ行って見てきただけじゃほとんど何もわからない。結局謄写したいと。このような謄写の問題は本法以外において、本法の問題とは別個に謄写という問題は考えておられるわけでしょうが。
   〔理事林道君退席、委員長着席〕
○政府委員(岡村泰孝君) そのとおりでございます。
 謄写ということになりますと、仮に訴訟記録を閲覧いたしまして謄写した。その謄写しましたものが一般に出回ったりして非常にプライバシーの侵害なりあるいは犯人の改善更生を妨げるおそれがあるという場合も考えられるわけでございます。しかしながら、一方におきまして例えば、弁護士がその職務の遂行上訴訟記録の閲覧と謄写が必要であるという場合もあるわけでございます。こういう場合にはやはり閲覧に限らず謄写も一般的に許すというような措置をとる方針でございます。
○猪熊重二君 ちょっと、時間がありませんので条文を飛ばしまして、九条に関連してお伺いします。
 九条一項において「法務大臣は」「刑事法制及びその運用並びに犯罪に関する調査研究の重要な参考資料であると思料する」ものについては「刑事参考記録として保存する」と、このような規定になっております。
 法務大臣にお伺いしますが、このような刑事参考記録として決定するについて、法務大臣の決定に関し第三者の意見を聴取するかしないかというふうなことについて、法務大臣個人の御見解、それから制度的にどのように考えておられるか、お伺いしたいと思います。
○国務大臣(遠藤要君) 刑事参考記録は、刑事法制及びその運用並びに犯罪の調査研究の重要な参考資料であるので、刑事に関する法令案の作成、犯罪の予防その他刑事に関する事項等を所管事務とすう法務省の長である法務大臣において選定するを相当であると考えているが、運用に当たっては、例えば法曹界の方々や学識経験者等から刑事参考記録の選定についてその御意見を開陳されればこれを十分考慮したいと考えているというのが役所から出された手本でございます。
 しかし、やはりその後のいろいろ大切な資料等については、それだけでいいかどうかということは、たまたま学識経験者なり法曹界の方々なりから御意見があればいいけれども、なかった場合は大臣だけでいいかという点については十分検討していきたい、こういうふうな心情でございます。
○委員長(太田淳夫君) 時間ですから、最後にしてください。
○猪熊重二君 最後の質問というか、刑事訴訟記録の保管、閲覧に関して戦後四十年刑訴法があるにもかかわらずずっと制定されていなかった。今回このように内容的にも立派な法案がつくられまして、法務大臣、関係部局の努力を私は多とするものです。この法制定に関して法務大臣の御感想を一言でお願いします。
 以上です。
○国務大臣(遠藤要君) ただいま先生お話のとおり、刑事訴訟法制定後今日まで三十八年余経過していると。刑事訴訟法五十三条四項に保管は別に法律で定めるということになっておって今日まで制定されておらなかったと。それを私の手で提出者として提出させていただいたということは非常に私としても喜ばしく感じておりますが、さらに成立させていただきますれば感激ひとしおであるということを申し上げ、この運用に当たっては十分皆さん方の御意見を胸におさめて、その趣旨に従って適正な運用に努めたい、こう思いますので、よろしくお願いいたします。
○猪熊重二君 どうもありがとうございました。
○橋本敦君 先ほどからも問題になっておりますけれども、憲法とそれに基づく民主的な諸原則を守らなくちゃならぬという立場で国政を審議しております法務委員会としても到底看過できない重大な事件でありますから、朝日新聞阪神支局襲撃事件について私も質問をしたいと思います。
 まず第一に、この事件は何といっても言論、そしてまた表現の自由を民主社会の根幹として保障する現憲法下で起こり得てはならぬ、そういう重大な事件だと思うのであります。その点について日本ジャーナリスト会議の緊急声明が言論、報道の自由と、それを根幹とする民主主義への卑劣な挑戦であり、絶対に許すことはできない、こう言っているのも当然でありますし、また日本新聞協会が八日に声明を出して、「暴力の威圧によって言論・報道に影響を与えようとする動きは、断固としてこれを排除しなければならない。」こう言っているのも当然のことであります。そういう観点から、この事件を見るときには何といってもこの重大な事犯の犯人の早期逮捕と徹底的な解明が急がれるわけであります。警察庁は全力を挙げて今これの追及をなさっていると思いますが、どういう具体的な罪名を基本として、捜査の進展状況は今どうなっているか、まず最初にお伺いしたいと思います。
○説明員(小杉修二君) お尋ねの事件につきましては、内容については御案内のとおりでありますが、警察といたしましては当日直ちに百十名の態勢の捜査本部を設けまして、主な捜査方針といたしましてはもちろん地取り捜査の徹底あるいは鑑定、鑑識資料に基づく捜査、それから動機面の捜査、さらには現場を中心とした地取り捜査の徹底、こういうことを掲げまして所要の捜査を進めてまいったのでありますけれども、五月の六日に至りまして、これも御案内かと思うわけでありますが、日本民族独立義勇軍別動赤報隊なる名義の挑戦状ともあるいは声明文とも受けとめられるような文書が一部報道機関に送達をされました。したがいまして、改めて捜査態勢を強化いたしまして、刑事、警備部門両部門によるところの合同捜査を進めているところであります。おっしゃられるように、本件につきましては、社会的な重大性また悪質性にかんがみまして、地元兵庫県警はもちろんのこと、全国警察の所要な捜査力を結集いたしまして、事案の早期解明を図ってまいる所存でございます。
○橋本敦君 本件は、今言ったような民主主義に対する重大な挑戦であると同時に、現に記者が一人とうとい生命を奪われておるわけです。そして重傷者が出ておる。実に残虐生々しい事件であります。これまで多くのテロ事件その他ありましたけれども、犯行の検挙というのは容易でないことはそれなりの事情もあったんでしょうけれども、特に右翼関係のテロ行為についての検挙が、日本共産党に対するこの前の茨城その他での襲撃事件でも検挙がなされておりませんけれども、非常に困難であるという状況を考えますと、まさに右翼のテロと見られるこの種事案について、今度は絶対に徹底的に真犯人を検挙する、そういう決意で、大規模な、全国的な態勢での捜査態勢をつくるというぐらいの決意で臨んでもらわないと国民の期待にこたえられないのではないか、こう思うんです。そういう意味で、改めて、どれくらいの規模でどういう態勢でこれを追及しようとしているか、もう一度警察庁の立場を具体的に明らかにしていただきたい。
○説明員(小杉修二君) 先ほど御答弁申し上げましたように、当初の百十名の態勢から捜査本部については五十名を増強いたしました。さらに、これは御答弁申し上げたように、単に地元兵庫県警だけの捜査ではいかぬだろう、こういうことで、全国的に所要の捜査力を結集してやっていこうということで臨んでいるところでありますので、御理解を賜りたいと思います。
○橋本敦君 警察庁は、今あなたがお話しになりました脅迫文とも見られる声明文を送った独立義勇軍、右翼と見られますが、これの解明は指示してやらせておられますか。
○説明員(鹿嶋正之君) 日本民族独立義勇軍名下で行われました過去の事件につきましては、五十六年それから五十七年、五十八年この三カ年にかけまして合計五件の発生を見ているところでございます。それにつきましては、以来現在に至るまで、鋭意捜査を継続中のものでございます。
○橋本敦君 新聞報道によれば、警察庁は十三日に半蔵門会館で全国の右翼・警護担当者会議を開いてこれの徹底解明を協議したと、こうありますが、これは間違いないわけですか。
○説明員(鹿嶋正之君) 御指摘のとおりでございます。間違いございません。
○橋本敦君 過去にもそういう事件が五十七年からあったというのですが、何らかの実態を把握するところまでいっておりますか、まだ全然わからぬという状況ですか。
○説明員(鹿嶋正之君) 解明の内容につきましては、大変失礼でございますが、答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
○橋本敦君 先ほどから私は、徹底解明と犯人の検挙ということを言ってまいりましたが、きのうこの銃弾を受けて重傷を負った朝日の犬飼記者が記者会見をしておりますね。その朝日の犬飼記者のテレビを私もたまたま見たんですが、よくぞ命を取りとめてくれたと思う気持ちで見たわけですが、毅然として言論と報道の自由を貫いてこれからも第一線記者としてやるんだということを言っておりますね。あの犯行声明が、すべて一人残らずこれからも天誅を加えるぞとか、どのマスコミも同罪だとか、われわれは最後の一人が死ぬまで処刑活動を続けるとか、とんでもないこういうことを言っている状況の中で、毅然として第一線記者として記者会見で所信を貫くというのは、私は本当に勇気あることだと。これは各新聞社の皆さんも共通した気概であると思います。
 こういうような、まさに民主主義が危機に立っているこのときに、本当に右翼を、右翼と見られる集団を絶対に逃がしてはならぬ。これまで日本の政治では、右翼に甘いという戦前の例、戦後の例から、ついに軍部の独裁、右翼の跳梁からまさに破滅の道に進んだわけですけれども、今こういった事件に対して、政府と警察がどう対処し、どう解明するかはまさに日本の今後の政治の動向に重大なかかわりを持つと思いますね。そういう意味で、一体検挙について確信が持てるという状況でおやりになっておるのか、これまでのようになかなか捕まらぬという状況で疑心暗鬼の状況なのか、それは真偽はわかりませんが、警察庁として、警察としてこういう記者の気概にこたえてどういう決意なのか、もう一遍聞かしてほしいんです。
○説明員(小杉修二君) すべて事件捜査においては、これを検挙して全容を解明するという意欲のもとにあらゆる事件に取り組んでいるんでありますけれども、特に事件の社会的重大性あるいは凶悪性ということを踏まえまして、あくまでも検挙をするという前提で、意欲で取り組まなければならない、そうあるべきだというふうに考えております。その点を御理解願いたいと思います。
○橋本敦君 まさに警察の最高責任者を含めた、威信だけではなくて、職をかけた決意でやってもらいたいと思いますが、いかがですか。
○説明員(小杉修二君) もちろん、捜査はすべて過去の歴史的な事実の解明ということが基礎になるわけであります。大変難しゅうございますけれども、私どもとしてはもちろん、職をかけてと申し上げればちょっと大げさになりますけれども、もちろん職務に忠実に、かつ責任を果たすという立場で取り組んでいることを御理解願いたいということであります。
○橋本敦君 近々、解明の糸口なりめどが見出せるという確信がおありでしょうか。
○説明員(小杉修二君) 現在、捜査はまだ初期捜査の段階であります。基礎捜査の段階であります。したがいまして、この基礎捜査を踏まえてどういうふうに捜査が展開されていくか、展開要素が出てくるかどうか、そういったことについては見通しのことにかかるものですから、公式の場では申し上げることを差し控えさしていただきたいと思います。
○橋本敦君 法務大臣、先ほどからもこの件についてのかたい決意の御表明がありましたが、私は、この事件の重大性を考えますと、この機会に断固として言論抑圧のためのテロは許さないという政府声明を出していただいても値打ちがあるぐらいの重大事件ではないかという気がしております。法務大臣のこの件に対する基本的なお考えをもう一度お伺いすると同時に、政府としてこれに対応する政府談話、官房長官談話を出すか法務大臣談話を出すか、ともかくテロを許さない、言論弾圧のテロを許さないという姿勢を国民の前に、内外にきっちり示すことが必要な重大な事案ではないかと私思っておるんですが、大臣の御見解はいかがでしょうか。
○国務大臣(遠藤要君) この事件については、先ほど来お話し申し上げているように、もしも報道機関の言論封殺というのが意図されているということになれば、これは、先ほど先生たちのおっしゃっているとおり、民主社会に挑戦するような犯罪である、こう思いますけれども、まだ真相が定かでないということで、先般は私的に御注意もいただいてもおるわけですけれども、先生とは同じような御意見が、猪熊先生からもどうかというお話もございましたけれども、まだ真相が把握できないので、一体言論抑圧かどうかという点にためらいを持ったというところが私の心情でございます。しかし、事件が事件だけに警察当局と緊密な連携を保持しながら徹底的に検挙の方向にいく、そして真相が明らかになった場合には改めて検討してみたい、こう思っておりますので、御了承願いたいと思います。
○橋本敦君 刑事局長にお伺いしますが、考えられる適用罪名、これは殺人、それから傷害ということは当然現場ではありますが、その後の薬きょうと一緒に届けられたこの文書等が、これ自体が脅迫という犯罪を構成するのではないか、こう思うわけですが、考えられる法適用としてはどういうようなことをお考えでしょうか。
○政府委員(岡村泰孝君) 本件におきましては、一名が殺害され、一名が重傷を受けているのでございまして、したがいまして、殺意が認められるならば殺人罪及び殺人未遂、それに関連いたしまして銃砲等の所持とか、あるいは住居と申しますか、建造物と申しますか、ここへの侵入、こういったものが考えられるところでございます。また、後の脅迫文書を送りつけた行為が、文書の内容その他から見まして脅迫行為に当たるといたしますれば脅迫罪の成立ということが考えられると思うのでございます。
○橋本敦君 最後に、この問題で刑事局長にお願いしておきますが、第一線の警察が第一次捜査権ということで、今言ったように百名から五十名要員をふやして全力を挙げて取り組んでおられるようですが、検察庁としても重大な関心をお持ちだと思いますので、警察のそういった捜査に全面的な協力態勢をしくということで、必要な協力なり必要な共同捜査なり、こういうことが必要によってはあり得るかと思いますが、そういう点はいかがですか。
○政府委員(岡村泰孝君) 検察当局といたしましても、事案の重大性にかんがみまして重大な関心を持っているところでございます。現在警察が捜査中でございますが、検察といたしましても、もちろん警察との間の十分な連絡をとりながら必要な協議、協力を行って、事案の真相の解明に努めるものと信じているところでございます。
    ―――――――――――――
○委員長(太田淳夫君) この際、委員の異動について御報告いたします。
 本日、関嘉彦君が委員を辞任され、その補欠として抜山映子君が選任されました。
    ―――――――――――――
○橋本敦君 次に、同じように国民の立場での言論あるいは報道、それと並んで知る権利、こういった自由があるわけですが、それとのかかわりで、自衛隊に関連をしての事案について質問をいたします。
 資料をお配りいただけますか。
   〔資料配付〕
○橋本敦君 実は、先日も私現場へ行ってきたんでありますが、入間基地の近く、約千メートルほど離れた南東になりますが、大京観光がライオンズマンション武蔵藤沢というそういうマンションを現在建築中であります。これは区分所有を原則とした分譲でありますけれども、そのための案内書であります。その場所につきましては、今お配りした資料の終わりから二枚目に「建設地」という表示がございまして、そこに場所が指定してございます。それから県道の宮寺・川越線を挟んで北側に航空自衛隊の入間基地がある。こういう位置関係になっておるわけであります。そして、その前のページを見ていただきますと、ライオンズマンション武蔵藤沢の見取り図、これが北の立面図でございまして、この北側が飛行場側、基地側になる、こういう図柄でございます。
 そこで、資料の一枚目に返っていただきましてごらんいただきますとわかりますが、この資料は一番上に書いておりますように、宅地建物取引業法三十五条の規定に基づきまして業者が顧客に文書で説明を法的に義務づけられておりますが、そういう重要な契約条件について作成をした文書であります。そこで、名称はライオンズマンション武蔵藤沢、所在・地番は埼玉県入間市大字下藤沢字東原二十七番一、こういうことで特定がございます。この地域は入間基地がございますので、法令に基づく制限としては、右側の下段に「自衛隊法 航空法」という表示がございますが、飛行場の周辺地域における建物等の高さの制限、こういったことで航空法の四十九条等に基づく制限がある地域だという表示があるわけであります。
 そこで問題は、次の二枚目に問題があるわけでございますが、二枚目の1、2、3、4という算用数字がございます。その上に「各区分所有者は下記条項を容認していただきます。」と、非常に一方的な言い方でございますけれども、業者の方が買い受け人に対して下記の条件、条項を承認していただきます、つまり承諾してもらいますよと、こういうことで書いてございます。その5を読んでみますと、「本物件敷地北方約一千百メートルには航空自衛隊入間基地があり、本物作は航空法第二条で定義された転移表面内の建物であるため、下記事項について承認し入居するものとし、入居後において航空自衛隊及び売主に異議、苦情等を申し立てないこと。」と、こうあります。そこで、航空法二条で定義された地域であることはわかりますが、そういうことだからといって次の問題について苦情を申し立てないことをあらかじめ約束させるというような法的な根拠は一体どこにあるのだろうか。私の見る限り航空法にはどこも出てこないのであります。
 まず第一に、「飛行機の離着陸及び飛行に伴う騒音、振動、電波障害等が発生すること。」、これについて自衛隊にも売り主にもクレームをつけるなど、そのことをあらかじめ承諾しておけと、こういうわけであります。しかし、騒音が耐えがたい受忍の限度を超えた場合は違法になることは明らかだし、損害賠償請求が成り立つことは大阪空港事件が最高裁までいってはっきりと確定しておりますし、一般的にいろんな事態が、たとえ相手が自衛隊であれ売り主であれ生じた場合に損害賠償請求権を取得するのはこれはもう当然のことでありまして、それについて訴えを起こす権利は憲法上保障された国民の権利でありますから、こういうことであらかじめ自衛隊に騒音や振動や電波障害があったら一切苦情を申し立てるなというようなことを買い主に約束をさせるというような特約条項は余りにも横暴過ぎるのではないか。あるいは横暴というよりも法的に民法九十条で言う公序良俗違反、つまり憲法原則に違反して効力がない規定ではないかというようにまず考えるのですが、民事局長、私が言っている趣旨についてどうお考えでしょうか。こういう契約の効力はどうでしょうか。
○政府委員(千種秀夫君) 大変難しい問題でございます。
 おっしゃるような見解があると思いますけれども、契約ということで一般に申しますと、契約自由の原則ということから出発しておりますので、こういう契約をして悪いかといいますと、する人はするかもしれません。その効力がどういう場合にどこまで及ぶかという問題になってこようかと思うわけでございます。不法行為といいましても、おっしゃるように重要な、重大なものについて放棄するといっても、それはおっしゃるように公序良俗に違反して無効であるという場合がございます。ただ、ささいなことあるいは自分の処分し得る利益について損害賠償請求しないということを言った場合、それはそもそも不法行為にならぬという見解もございまして、結局は程度、内容の問題に帰するかと思います。
○橋本敦君 ですから、私が言ったのは、受忍の限度を超えた侵害を受けたと、こう考えられる程度の場合には当然のこと損害賠償請求権はこの約定にかかわらず発生するから、そういう意味ではこの約定は効力がないと考えられる場合が出てきますよと、そうではありませんかと、こう言っているわけです。
○政府委員(千種秀夫君) 法律のことでございますからいろんな見解がございますが、ここに書いてある文書はそこまで含んでおるというふうに読めばそういうふうになりますし、含んでいないと読めば抵触せぬということになるわけでございます。
○橋本敦君 私は、この効力だけで論争するつもりはなくて、自衛隊にあらかじめクレームをつけるなよというようなことが民間の私的契約の中に入り込んでくるという、こういう状況はまことに大変なことだという問題意識で質問しているわけであります。
 そこで、次の問題はその第三であります。「本物件建物のうち自衛隊基地内を眺望できる外廊下については、自衛隊内機密保護を目的として一部目隠し板等が設置される場合があること。」、これであります。言ってみれば、このマンションは北側から基地が見える、その北側にはみんなが歩く廊下がある、その廊下には自衛隊の機密保護を目的として日隠し板をつくる場合があるのであらかじめ了承しておけと、こういう契約であります。これは一体どういうことだろうか。まさに自衛隊の機密保護を目的としてということでありますから、今、機密保護法はないことはもちろんでありますけれども、基地を眺める、基地を見ることが、これが機密保護ということで民間の家屋に目隠し板をさせるようなことが法制的に可能な状況が今の日本の法律制度であるのだろうか。いかに私契約といってもこれはひど過ぎると私は思うわけですね。
 そこで、なぜこういう特約をこのマンションの業者である大京観光が入れたのかということが問題になってくるわけです。基地の近くのマンションに目隠し板をつくらせる、これはもう異常ですよね。
 そこで、防衛施設庁に伺いたいのでありますが、この基地の近くの稲荷山には防衛施設庁の支所があると思うんですが、どうですか。
○説明員(笠原恒雄君) 東京防衛施設局入間川防衛施設事務所がございます。
○橋本敦君 そこで、この基地周辺、つまり航空法二条でいう概当地域に関連する地域で建設しようとする業者は、航空法の制限があり、その他がありますので指導を受けにしばしば赴かれるようですが、そういう場合にはどういう範囲でどういう点を指導されておられますか。
○説明員(笠原恒雄君) 防衛施設庁といたしましては、自衛隊の飛行場の周辺におきまして、高層建築物を建てようとする者から建築制限等についてお尋ねがありますれば、進入表面、転移表面及び水平表面の上に出る高さの建造物を設置してはならないとされておりますという旨申し述べまして、注意を喚起しております。
○橋本敦君 そういうことをおっしゃる根拠は航空法の四十九条、これにきっちりあるわけですね。
○説明員(笠原恒雄君) おっしゃるとおりでございます。
○橋本敦君 あるいは昼間の障害標識の設置だとか、あるいは航空障害燈の設置だとか、こういつた五十一条に関連する部分についての問い合わせに対する指導もあり得るかと思いますが、あり得ますか。
○説明員(笠原恒雄君) そういう問い合わせは現在私どもには来ておりません。
○橋本敦君 わかりました。要するに、建築制限についての問い合わせであり、それに対する回答は法的根拠がある。
 目隠し板をするかしないか、そんなことを施設庁がおっしゃる理由はありませんね。
○説明員(笠原恒雄君) 大京観光株式会社の人が入間川防衛施設事務所を訪ねられたこともありませんし、また、私どもから指導を申し上げた事実はございません。
○橋本敦君 この自衛隊基地には渉外室、渉外部というものがありますか。
○説明員(黒岩博保君) 入間基地に渉外係というのがございます。
○橋本敦君 業者が、自衛隊側からのサゼスチョンないし話が全然ないのに、法律で規定された高さ制限についての問題を特約条項にする、あるいはその制限に従うというなら、一ページ目にありますように、航空法という規定に基づいてそれはありますよ。しかし、目隠し板をするというようなことは航空法のどこを見てもないし、自衛隊法のどこを見ても近隣周辺に目隠し板をさせることができるような規定はないわけで、民間業者がだれにも言われないのに勝手に目隠し板をするなどということは、自分のマンションがそれだけ入る人に不快感を与えるわけですから売りにくくなるし、損するわけですから、業者がそんなことを自主的にやるわけがないというので私は調べました。
 そうすると、大京観光の責任者は、入間基地の渉外担当の人と話をして、その渉外担当の人から要請があって、そしてこれを受け入れてこういった特約をすることにしたということをはっきり言っておるんですが、事実はどうですか。
○説明員(黒岩博保君) お尋ねの件につきましては、六十一年十月十六日、入間基地の担当者が、基地を訪れました大京観光株式会社の担当者から、基地の近くの建設予定のマンションの建設計画について説明を受けております。建設に当たっての航空法上の規制について説明を求められましたので、飛行場周辺での建築物の高さの制限等について御説明申し上げたところでございます。
 その際、基地の担当者が、マンション建設予定地が基地に近いことから騒音問題の惹起が懸念されることとか、基地内が眺望できるようになるとすれば好ましくないといった趣旨のことをお話したのは事実でございますけれども、これはマンション建設によって考えられる基地側としての支障についての一般論を述べたものでございまして、基地側が業者に何らかの措置を要請したといった性格のものではないというふうに考えております。
○橋本敦君 今答弁なされましたその事実の一端が重要なんですね。一般論として言ったと、こういうことですが、基地が眺望できるようなことは望ましくないと。そうしますと、基地の周りに民間の家、特に高いマンションなどできなくなるんですよ。自衛隊にそう言われたら、これは後で問題になったら困るから買い生あるいは住居人に特約条項で目隠し板をすることもありますよということをあらかじめ納得させるとか、あるいはさっきおっしゃった振動についてはクレームをつけさせないためにあらかじめ納得させるとか、こういうことになってくる。一般論としておっしゃるというけれども、言われる側と国民にとったらそれだけの権利侵害が発生するわけですから、そういう意味では重要なことなんですよ。
 自衛隊として一般論として言ったという事実はお認めになったわけですけれども、率直に言いますと、こんな目隠し板、こういう特約は当然、当事者がやらなくても、やってくれと言う権限もなければ、またこの特約を消してなしにするということで業者と住居人が話し合ってやってもそれは法的には介入し得る余地はないし、問題はないわけですね。確認しておきます。
○説明員(黒岩博保君) 基地といたしましても、そのような契約条項があるということは外部からの問い合わせがあって初めてわかったことでございまして、そういった条項の取り消しについてとやかく言える立場にないと考えております。
○橋本敦君 まず、そのことを確認しておいて、そこで、取り消されてもどうでもいいようなそういうことを一般論として言うというのは問題じゃないですか。絶対にやってもらわにゃいかぬことを法的根拠に基づいて言うなら別ですよ。なくたっていいものですと言うんです。それを一般論として民間業者に言ったら事実上の強制力に近いことになるんですよ。
 例えば、戦争中に、横須賀へ行くのに列車に車掌さんが来て、みんなこれから基地の近くを通りますから窓を閉めなさいと言って窓を閉めた。そういう経験はもう年配の方はあちこちでありますね。そんなものは、あれはだれがやっているんだ、軍隊がやらしているのか、こう言えば、軍隊はやらしていないんです。車掌さんが閉めてくださいとアナウンスするわけです。当時は軍機保護法、要塞法、国防保安法、今と違ったとんでもない国家機密体制というものがあったわけですが、それでも民間の家に目隠しをせよという契約をやらせるような根拠があるかといったら問題ですよ。今はなおさらない。だから一般論として、国民の権利侵害や知る権利、自由、眺望権を侵すような、そういうことになりかねないようなことを一般論として言うという権限があるんですか。問題はそこなんですよ。何か法律に根拠がありますか。言ってください。
○説明員(黒岩博保君) 権限はないと思いますし、大京観光の方が来られました雑談の中でそういう話を出したというふうに私どもは受け取っております。
○橋本敦君 正直に御答弁なさったとおりだと思う。私も法律はさんざん調べました。一般論としてもそういうことを言う法的権限も根拠もないんです。だから、今後はこういうような民間からの問い合わせその他があっても、自衛隊の意向として、一般論としても国民の権利制限、これに類するようなこと、戦争中にあったような目隠し板、こういうことが契約書に入り込むようなこと、そんなことが惹起されるようなことは自衛隊としては今後慎んでいただくのが当然と思いますが、いかがですか。
○説明員(黒岩博保君) 誤解のないように、今後慎重に処理してまいりたいと思っております。
○橋本敦君 まさに私は、事実上の国家機密法の先取り、それがあらわれている、そういう意味で、危険な事態だという意味で質問をしたわけです。
 次の質問に移ります。今度は運輸省にお伺いいたしますが、日本で自衛隊と民間航空が共用している飛行場はどこどこございますか。
○説明員(鈴木光男君) 現在民間航空で防衛庁に提供しておるものが九つ空港がございまして、山形空港、新潟空港、名古屋空港、八尾空港、福岡空港、長崎空港、熊本空港、那覇空港、秋田空港でございます。
 それから、防衛庁の飛行場に民間航空が入っておるもの、これが五つございます。札幌飛行場、千歳飛行場、小松飛行場、美保飛行場、徳島飛行場、以上でございます。
○橋本敦君 米軍と共用している空港はどこですか。
○説明員(鈴木光男君) 三沢飛行場がございます。
○橋本敦君 その三沢飛行場へ入っている航空路線はどこの会社ですか。
○説明員(平野直樹君) 東亜国内航空が入っています。
○橋本敦君 その東亜国内航空が、三沢空港に着陸をするその際に、機内で乗客に対してアナウンスをやっているそのアナウンスの問題ですが、写真撮影をするなというアナウンスをやっているようですが、事実を調べておいてほしいと言ったんですが、お調べいただきましたか・
○説明員(平野直樹君) 現在、東亜国内航空は、三沢空港の着陸の際におきまして、写真撮影を禁止されておる旨の機内放送をやっています。
○橋本敦君 今、お話しになりました自衛隊との共用空港がたくさんあるわけですが、三沢以外に写真撮影禁止をアナウンスしている空港はありますか。
○説明員(鈴木光男君) そのような空港はございません。
○橋本敦君 なぜ三沢だけなのかが問題であります。
 その前に正確にしておきたいと思うのですが、こういうことがかつてあったのだろうかということで私も調べてみました。そうしますと、お渡しした資料の一番後ろを見ていただきますとわかりますが、実は、日本航空でもかつてやったということがわかりました。その資料の一番最後の紙は、日航からいただいた「CABIN ATTENDA・NT MANUAL」というものの写してございますが、右側は、一番下に「SEPT.1970」と、こうありまして、一九七〇年九月二十五日ということですが、これの上を見ますと「OKINAWA」と表示してあります。その下に、(6)として、「空中及び空港周辺での写真撮影は禁止されている。」これをアナウンスするようにという日航の内規でございます。「CABIN ATTENDANT MANU・AL(VOL.2)」です。
 それが、左側を見ていただきますと、七一年にはその(6)が消えました。つまり、沖縄復帰直前からもう必要はないということで消えたわけであります。私が調べたところ、もうこれだけなんですね、これだけ。ですから、もう三沢以外には日本の国民に対して写真を写すなというようなアナウンスをしているところは一カ所もない。当然だと思うのであります。
 TDAのその機内アナウンスをやっている根拠は何かと聞いてみますと、それは社内規程でやっているという答弁でございました。それは私の方で写しを手に入れましたが、「機内アナウンス実施要領」「特殊アナウンス」こういう標目がございまして、その特殊アナウンスの一つであります。特殊アナウンスには、例えば、緊急に代替空港着陸が必要になった場合のアナウンスの仕方がありますが、そういう特殊アナウンスの一つの仕方として、「自衛隊・米軍基地着陸時」という項目があって、「当空港は、自衛隊基地(米軍基地)でございますので、写真撮影及び単独行動は禁止されております。ご了承くださいませ。」こういうアナウンスをすることになっている。これがその社内規程のコピーであります。
 そこで、日本の国民が日本の国の上を飛行機で飛んだり、あっちへ行ったりこっちへ来たりするのにブラインドにされる、写真撮影するなど、こんなことが国家機密法がないのにやられているというのは、私驚きましたが、一体どういう根拠でこういうことをやられているのですかとTDAに聞きますと、前からやっておりますのでよくわかりませんけれども、自衛隊から要請があったのではないかと思います、というのが現在の担当者の答弁でありました。
 そこで、防衛施設庁に聞きますが、三沢についてはこういうアナウンスをするようにTDAに依頼をした事実があるのでしょうか。あるいは防衛庁でも結構です。
○説明員(石川陽次君) お答え申し上げます。
 防衛施設庁の方から直接TDAの方に対しましてそのような申し入れをした事実はございません。
○橋本敦君 ない。防衛庁は、基地の関係で、入間基地の関係の人はだれもおりませんか。
○説明員(黒岩博保君) そういう事実はございません。
○橋本敦君 そうしますと、これまた奇々怪々になるんですね。米軍が言ってきたんでしょうか。防衛施設庁、どう思われますか。
○説明員(石川陽次君) 実は、本件についてちょっと事情を御説明申し上げます。
 現在、米軍関係の飛行場で日本側民間機が定期運航しております飛行場は三沢空港だけでございます。それで、TDAがその立ち入りをやっておりますわけでございますけれども、その立ち入りに当たりましては、本件三沢空港が――米軍といたしましては三沢基地というふうに申しておりますが、三沢基地がいわゆる安保条約第六条に基づきます施設及び区域として米軍に提供しております基地であるというところから、その基地を民間空港に一時使用をさせてもらいたいというふうなTDAその他からの御要請もございまして米側と折衝してまいりましたわけです。その折衝の場は施設特別委員会でございますが、施設特別委員会のその議を経まして、日米合同委員会の合意を経まして本件一時使用、いわゆる共同使用の実現を見ましたわけでございます。
 その施設特別委員会、合同委員会の合意の内容といたしまして、運航の詳細等につきましては現地の協定による、現地の調整によるという一項がございます。その条項に従いまして現地で米軍といろいろと話をいたしました結果、民間機の米軍三沢基地使用に当たっては米軍規則の条項によるんだということになりまして、その条項の中に、三沢基地におけるフライトラインの写真撮影は禁止されるものとするというふうな了解が成立したというふうに承知しております。
○橋本敦君 だんだんわかってきた。
 その合同委員会の協議に基づいて現地協議をやったのは、米軍側と、こちら側は防衛施設庁ですか。
○説明員(石川陽次君) 現地米軍、それから当方の下部機関でございます仙台防衛施設局、それから運輸省さんの東京航空局というふうになっております。
○橋本敦君 きのう運輸省に聞いたら、もう全然それは知らぬと言ったけれども、運輸省、どうですか。きのう私に説明したのは間違っていたわけですね。
○説明員(鈴木光男君) 昨日、担当者が十分事実を承知していなかったようでございまして、その点申しわけなく思っております。
○橋本敦君 それなら、事実を言ってください。現地協議で運輸省は何を了承したんですか。
○説明員(鈴木光男君) ただいま防衛施設庁の方から御答弁があったとおりでございますけれども、三沢飛行場は地位協定によりまして米軍が管理しておる施設でございまして、TDAは地位協定の二条四項(a)によりまして共同使用を認められております。
 この共同使用の細目につきましては現地レベル、ただいま申し上げましたような三者の相談に、よって条件が定められておりまして、その中に許可なしで写真撮影を禁止するということが入っておりました。これを受けてTDAはこのような機内放送をしているものと了解しております。
○橋本敦君 それを受けてこういう機内放送をせよとTDAに指導したのはどこの機関ですか、防衛施設庁ですか、運輸省ですか。
○説明員(鈴木光男君) 東京航空局の方からこういった共同使用についての地方レベルでの取り決めがある旨を東亜国内航空には通知しております。それを受けて東亜国内航空はアナウンスをしているものと了解いたしております。
○橋本敦君 アメリカが管理しているアメリカの基地に立ち入った人に、基地の中で写真を振らないようにしてくれということを言うということは、基地管理権からこれはあり得ることでしょう、それの当否は別として。しかし、この飛行機は合同委員会で共同使用が認められて、日本の航空会社が堂々と使用して入っているわけで、アメリカの基地に立ち入ったと同時にアメリカの管理に従わなきゃならぬと、そこまで国民が縛られるんですか。そんなことは法的に私はおかしいと思いますよ。
 アメリカの基地に許可を得て入って、入った者がその基地の中で勝手な行動をしないようにという、これは基地管理権としてわかる。しかし、アメリカの基地に行くんじゃないよ。例えば、東京から飛行機に乗って三沢へ行くのは、アメリカの基地に許可を受けて、その乗ったパッセンジャーは基地へ行くんじゃないよ。飛行機に乗って三沢の空港に着いて民間航空地域にちゃんとおりて出ていくわけで、アメリカの基地に入るわけじゃないんだよ。だが、それがアメリカが基地の機密保持のために、堂々と日本に共同使用を許した日本の飛行機に、機内アナウンスで機密保持のために写真を撮るなとまで言えるというようなことは、こんなばかなことはあり得るか。安保条約というのは、そんなことまでやれるのかね。屈辱的なそういうことは運輸省も外務省もやすやすと保承認するのかね。
 仮に、これで写真撮ったら、そうしたらどうなるの。安保協定に基づく米軍の地位協定に基づく刑事特別法で処罰されるんですか。あるいはMSA協定に基づく秘密保護の違反になって処罰されるんですか。私はその法律を両方とも丹念に調べたけれども、絶対にそうはならぬですよ。どうなるんですか。違反したらアメリカに処罰されるのですか。
○説明員(石川陽次君) ちょっと補足させていただきますけれども、これは米軍によって強制されたというふうな趣旨のものではございませんで、TDA等による三沢基地の一時使用、それに伴う条件として日米間の現地におきまして協議がなされた。それで、その協議の内容の中で写真禁止等を含む条項が合意された、そのように御理解願いたいと思います。
○橋本敦君 だから、共同使用するのに、基地に入って基地の中でいろいろ仕事をする人が写真撮影するなということのアメリカの基地管理権の一部について合意するのはわかるが、一般のパッセンジャー、国民はどこからそこへ行くかわからぬけれども、エアポートとして行くだけですよ。基地へ入るわけじゃないんだよ。共同使用を認めた以上は、日本の主権からいったって日本の国民はそこへ当然行く権利があって行くわけだから、アメリカのそういった管理の、クレームに従わなきゃならぬという根拠はどこにもないんだよ。だからあなたは強制されたわけじゃないと言わざるを得ないわけですよ。まさにこんな屈辱的なことは許せるかと言うんですよ。何の法的根拠もない、アメリカから強制されたものでなかったら、こういうことはもうやめなさいと、運輸省、TDAに対してこんなものはもうやめたらいいという指導はできませんか。
○説明員(鈴木光男君) 三沢飛行場の管理権は基本的に米国、米軍の方にあるわけでございますので、その際に、いろいろな共同使用をする際に米軍サイドの要請があるのは、使う関係でやむを得ないのかなと思っております。
○橋本敦君 要請があった。強制でない。ややこしいね、政府の答弁は。はっきりした法的根拠がないのなら断りなさいと言っているんだよ。どうなんですか。基地の中を歩くわけじゃないんだから、断れないなら断れない法的理由、根拠を示してもらいたいという質問です。
○説明員(笠原恒雄君) 条約との関連の御質問でありますけれども、安保条約に基づきまして施設、区域の提供、国民の共同使用に関する事務を所掌している防衛施設庁としてお答え申し上げます。
 三沢飛行場は、安保条約に基づきまして米軍に提供している施設、区域であります。この施設、区域を一般的に国民に共同使用させるに当たりましては、地位協定第二条第四項(a)の規定、つまり、共同使用が米軍の正規の使用の目的にとって有害でないことが合同委員会を通じて確認されたときに、いわば共同使用が認められるということに相なっております。このような地位協定の趣旨に基づきまして、民間航空機の離発着、あるいは乗客の同飛行場内の移送等、詳細につきまして現地米軍と航空会社との間にいろいろ相談され調整が整ったのが、許可なくして写真撮影はしませんということではなかろうかと思います。
○橋本敦君 さっきから聞いたとおりで、事実はそれはもう聞いているんだ。そんなことを言う法的根拠や強制力はないということを言っておられるんだから、こういうのはやめなさいと。日本の土地を米軍に提供したら、今度は米軍が恩恵的に日本に認めてやる、これの条件を聞きなさい。日本の領土ですよ。安保条約というのはそんな屈辱的なものですか。
 問題は、国家機密法というのが問題になっておるが、まさにそれに先取りするように、まさに安保というものは危険なものだ、自衛隊というものは国民の言論、報道の自由、知る権利からいって大変なものだ。重大な問題をもう既に起こしているということを私は指摘したかったわけであります。
 この問題は、外務省にまた私は特別に機会を設けて追及することにして、もう時間がありませんのでこれで終わります。
 ありがとうございました。
 そこで、法案について伺うわけでありますが、時間がございませんので質問だけを三、四点申し上げますので、恐れ入りますが、順次お答えをいただくということでお許しいただきたいと思います。
 この法案について、一番大きな目玉は、刑事参考記録、これが保存されることになりました第九条でありますが、これの保存の範囲をどうするかということについては、この第九条では、 「刑事法制及びその運用並びに犯罪に関する調査研究の重要な参考資料であると思料」されるものと、こうあります。そこで、日弁連もまた文化団体その他の皆さんも、こういった刑事法制の運用にかかわらず、歴史的、文化的に保存することに価値があると見られるようなそういう記録も含めて保存してほしいという要望がございました。
 例えば、いただきました資料を見ましても、ドイツでは政治史または文化史にとって歴史的価値のあるものは保管期間が過ぎても公文書保管局に引き継ぐと、こうなっております。だから、日本でも歴史的、文化的に価値があるものを含めて、今後保存ということに道が開かれた、こう理解をしてよろしいのでしょうかどうか。そしてまた、この期間の選択に当たって、そういうことで御検討いただけるということでありましょうかどうか。これが第一点であります。
 第二点は、その選択をするについて法務大臣が権限をお持ちでありますが、九条四項によりますと、法務大臣はその権限を「職員に委任することができる。」と、こうなっております。この職員はどういう範囲でお考えか、この職員の皆さんの御意見で国民が期待できるような、そういった記録の保存が担保されるということであるのかどうか。これが第二点。
 第三点は、この記録保存については、先ほど大臣御答弁ございましたが、役所の答弁とは別に十分意見を徴したいというお考えをいただきましたが、特に事法制については法曹三者協議が非常に大事でございますので、日弁連から意見を徴していただく機会はぜひおつくりいただきたいと思うのですが、この点はいかがか、大臣にお尋ねをしたい。
 それからもう一つは、保管記録に係る閲覧の期間が三年ということで限定されております。しかし、三年では少し短い場合があり得るのではないか。再審請求の場合なんかはそれを理由として延ばすことができるんですが、そうでない場合三年ということではあっという間に過ぎますので、せめて五年ぐらいに立法する方がよかったのではないかと思いますが、これはどうでしょうかということであります。
 それから第四点は、閲覧について定められておりますが、謄写便宜を国民のために図るという必要も、膨大な記録ですからありますんですが、ここらあたりの建前は謄写について法務省はどうお考えかということであります。
 それから、最後に民事局長にお尋ねしたいのは、この貴重な歴史的、文化的価値のある記録というのは、刑事事件に限りませんで民事事件でも随分あるわけでございますね。憲法原則にかかわる問題、あるいは日本の古い制度的な国民生活の根幹にかかわるものが争われて裁判所の判断が示されるというような歴史的、文化的価値のあるものもありましょう。だから、将来は、民事記録についてもこういった重要参考記録の保存についてお考えがあるかどうか。
 以上よろしくお願いします。
○政府委員(岡村泰孝君) まず、第一点でございますが、刑事参考記録といたしまして現在どのようなものが具体的にこれに当たると考えているのかということにつきまして、類型的に申し上げますと、重要な判例となった裁判がなされた事件など、法令の解釈適用上特に参考となるような事件、また国政を揺るがせた事件や犯罪史上顕著な事件、あるいは重要な無罪事件、その他全国的に社会の耳目を集めた事件、こういったものなどを考えているところでございます。
 文化的な価値といいますか、文化的な遺産と申しますか、そういった面から刑事参考記録として保存すべきではないかという御趣旨であったかと思うのでございますが、ただいま申し上げましたような類型的な事件は文化的な遺産あるいは文化的な価値があるものというふうにもなろうかと思いますが、いずれにいたしましても御指摘のような点は今後の運用の際に考慮いたしてまいりたいと思います。
 また、法曹三者いろいろ集まりなどもございますので、そういうときにどういう記録を刑事参考記録として残すべきかということについて、御意見を拝聴できるならばそれは選定に当たりまして十分考慮いたしたい、かように思っているところでございます。次は、九条四項の法務大臣の権限委任でございますが、これにつきましては法務大臣が刑事参考記録を選定することになるのでありまして、その選定の権限は法務大臣に残しておきまして、選定されました刑事参考記録は、現実には裁判の一審対応の検察庁というものが保管することになりますので、その検察庁の長に刑事参考記録の保存並びに閲覧に関します権限を委任するということを考えているところでございます。
 それから、日弁連との関係につきましては、本法案を作成する過程におきましていろいろ意見の交換等を図ったところでございます。
 それから、第四点の三年という足切りと申しますか、これが短いのではないかということでございますが、過去におきます訴訟記録の閲覧の実績を見ますと、訴訟記録を閲覧いたしましたもののうち九八%以上のものが事件終結後三年以内に閲覧を下しておるというような実情がございましたので、そういうような点も考慮いたしまして三年というふうに定めたところでございます。
 それから最後に、謄写の件でございますが、これにつきましては、訴訟記録の閲覧と謄写ということは刑事訴訟法別個の概念になっておりますので、本法案は刑訴法の五十三条を受けまして閲覧ということについてのみ規定をいたしておるところでございます。しかしながら、記録を閲覧いたしました場合、例えば、弁護士さんがその職務上謄写を必要とするような場合もございますので、こういった場合には謄写を許すような方向で運用はいたしたいと思っているところでございます。ただ、記録を閲覧した者が謄写いたしましてそれをばらまくと申しますか、そのような形でプライバシーを侵害するとか、犯人の改善更生を妨げるというような行為が行われますとこれは大変なことでございますので、そういう点を配慮しつつ、どういう場合に閲覧を認めるかということにつきまして適正な配慮のもとに運用をいたしたいというふうに考えておるところでございます。
○国務大臣(遠藤要君) 先ほど猪熊委員にお答えを申し上げたように、法務大臣としては、法務省から与えられた、おまえはこのような答弁をしなさいという答弁書には学識経験者等のお話を聞いて開陳された場合ということになっておりますけれども、私としてせっかくこの法案が提出できる段階になったということは、皆さん御承知のとおり法曹界の最高裁、日弁連と協力をいただいてようやく三十八年ぶりに日が当たったという経緯からかんがみて、この保存の中において、特に将来、学術的また刑事学として大いに参考になるんではないかなと言われるようなものを長期保存、永久保存したいということは役所だけの考え、法務大臣だけの考えではなく、何らかの機会をもって、この模範答弁書にも法曹界、学識経験者ということでございますので、法曹界といえば弁護士さんも入っていることはそのとおりですが、私はそういうふうな点できょうのこの提出された趣旨を踏まえて検討していきたいということで御了承願いたいと思います。
○政府委員(千種秀夫君) 最後に、民事訴訟記録の保管についての御質問でございますが、民事訴訟記録につきましては、従来からこれは裁判所が保管するということを前提としていろいろな仕組みができておりまして、今まで特に法律の規定を要するという必要を感じておりません。民事訴訟法のいろいろな記録に関する規定がそういうことを前提としております上に、刑事訴訟法のような別途法律で定めるというような規定もなかったわけでございます。それを前提としまして最高裁判所におきまして、事件記録等保存規程という詳細な規程がございまして、文書によりましていろいろな規程が別表に載っているわけでございます。通常の事件でございますと十年間保存する、判決の原本ですと五十年保管する、こういうようなことになっております。
 その規程の第九条に特別保存に関する規定がございまして、御指摘のように、「記録又は事件書類で史料又は参考資料となるべきものは、保存期間満了の後も保存しなければならない。」と書いてございまして、さらにそれを受けて三項では、「前項の記録又は事件書類で相当であると認めるものは、最高裁判所の指示を受けてその保管に移すことができる。」ということになっておりまして、これに基づく運用が今日までなされているわけでございます。具体的な内容は私存じませんけれども、そういうことで今まで特に必要ということを感じておりませんので、実はそういうことを考えておりませんでしたけれども、これはまた必要がありましたら十分検討に値することと考えております。
○橋本敦君 ありがとうございました。
○西川潔君 よろしくお願いいたします。
 私は、お年寄りの問題をテーマとしてこれからもずっとやっていきたいと思っております。それに関連した質問をきょうもさせていただきますが、よろしくお願いいたします。
 早速、きょうは抵当証券の問題に入りたいと思ったんですが、前回ビデオテープで遺言というのをお話しさせていただいたんですが、きょうは民事局長にお越しいただいておりますので、まず検討していただいているのかどうかお伺いしたいと思います。
○政府委員(千種秀夫君) 検討していないわけではございませんけれども、民法のような基本法の改正についての検討というのは、法務省の場合、法制審議会という審議会がございまして、その審議会がテーマを取り上げて議論をするというような手順がございます。そういう審議会の議題とするかどうかというところにまではまだいっていないのでございます。これは事務局がそういう時事問題をいろいろ整理いたしまして、順次そのテーマとして上げていくということでございますので、まことに申しわけないんでございますが、よほど緊急に、例えば、抵当証券のような問題は先の順序でやることになりますが、遺言のようなものはちょっと時間がかかるということに御理解いただきたいと思います。
○西川潔君 それでは、その緊急の抵当証券にまいりたいと思います。
 昨年、大きな社会問題となって、抵当証券の販売をめぐるいろんな問題がありますが、最近の新聞報道ではようやく落ちつきましたといいますか、我々は一抹の不安があるんですけれども、今どないなってんのやろうと、このごろ余り新聞のニュースでもテレビのニュースでもやれへんのやけども、どないなってんのやと、こういうことをきょうは質問したいと思います。
 まず、抵当証券の売買の関係で、警察でわかっている被害状況をお聞きしたいのと、そして老後の生活資金として準備をしましたわずかな蓄えをお年寄りの方々が随分持っていかれているという、こういう被害をたくさん聞いておりますので、警察の方にこの二つについてお尋ねしたいと思います。
○説明員(上野治男君) お答えいたします。
 一昨年、豊田商事がつぶれた後でございますが、悪質な業者というのが抵当証券の業界にある面でどっと入り込んできたということがございまして、昨年の夏のピークごろにいきますと、全国で私どもで把握しました悪質業者は五十二社に達しておる次第でございます。そういうことで、私どもとしましては消費者被害にかかっているという現実から見まして、これらの悪質業者を徹底的にたたくという方針をもちまして全国に強く指示をしてきたわけでございますが、その結果、昨年の秋に静岡県警で日証抵当証券を摘発したのを皮切りに、六社の会社を正式に事件として検挙し送致しております。
 その関係の被害というのは全国で約二千名の被害、二十六億円の被害に達しております。しかし、そのほかにも先ほど申し上げたように五十二社という会社がございましたので、合計すれば、正確な数字ではございませんが、少なくとも五千人より多い人数、百億円を超える被害があったものと思っております。しかし、第二の豊田商事と言われた、ほっとけばそうなる可能性のあったものを比較的早期にたたくことができた。おかげさまで現在はその種の悪質業者は根絶できたと、こう信じておる次第でございます。
○西川潔君 お年寄りはどれくらいございますか。
○説明員(上野治男君) この種の悪質業者と申しますのは、どちらかというとそういう法律に、取引に詳しくない人、あるいは金を持っているけれども、ある面では先々の生活に不安を感じている人、そういう人をつけねらうということがございましたものですから、かなりの人数、それぞれの会社について正確な数字でございませんが、二〇%から三〇%が年寄りであったというふうに理解しております。
○西川潔君 本当に老後のことが心配、我が家も双方の親と一緒に住んでおるんですが、私に内緒で何かいろいろやっておるようでございますが、なぜこういう問題が起きてくるのかと、自分でいろいろ考えてみたんですけれども、やっぱり少しの蓄えでもって、少しの蓄えといいましても、これで将来生きていけるやろというような自分の考えでもっての貯蓄もあるわけですけれども、例えば、老人保健法が改正されて、一日三百円二カ月納めれば永久に生活ができるというそういう生活設計が成り立っておったんですが、一日四百円を今度は永久に払わなければいけない。
 また、初診料は四百円から八百円になって、頭が悪い、目が悪い、心臓が悪い、足のぐあいが悪い、行く先々でまた初診料が要る。それにまた円高の関係で利息や利子が安くなって、これで生きていけるというのに将来にまた新たな不安を持たなければいけない。そういうところから、社会の弱者であるお年寄りの、弱い部分をつけねらってこういう事件が起きているわけですが、こういう部分も多分に影響があると思うんですけれども、法務大臣、どない思いはりますか。
○国務大臣(遠藤要君) どうもこの問題については余り……やはり何といいましょうか、今お答えがあったように、どうしても相手をばかにしやすい人に取り組むというのが今までのいろいろの詐欺事件や何かにおいてもそういうような点が多い、こう考えられますので、やはり弱い者に対してはという考えが出てこういうふうな事件になっておると思います。抵当証券を初めとしてもろもろの、最近土地の問題や何かについても、どうもお年寄り、御婦人が多いという傾向が指摘されておりますのですが、これに対して法務省としての対策というのもまだ考えておらない、こう申し上げてはどうかと思うんですが、男女平等の中において、御婦人だけ注意しなさい、お年寄りだけ注意しなさいというのもどうかなという感じも持たれるものですから、痛しかゆしという点があることは正直なところです。
○西川潔君 どうもありがとうございました。
 僕らまだここへ来て間がないんですが、大臣という人はすごい力のある人だというふうに聞いておりますので、また各省庁の方に、どうぞこういう意味でのお年寄りに対する保護や応急処置ができるようなことを遠藤大臣の方からお願いできればと思います。何か予算委員会みたいにいろんなことをお伺いして申しわけないんですけれども。
 次は、大蔵省の方にちょっとお伺いしたいんですけれども、四月七日付の日経新聞によりますと、抵当証券業規制法を今国会に提出するというのが載っておりましたんですが、法案の提出のめどとその内容を、僕らにわかるようにちょっと御説明いただきたいんですが。
○説明員(杉井孝君) 抵当証券の問題につきましては、先生御案内のように、昨年の十月に法務省と共同で学識経験者等をメンバーといたします抵当証券研究会を設けまして、投資家保護の方策といったような点につきまして、法制の整備が必要かどうかという点も含めまして現在検討を急いでいただいているところでございます。
 抵当証券取引につきましては、その法的な性格とか、あるいは現在の実務との調整といったような点についての検討に時間を要する問題が少なくないものですから、現在のところ、いつまでにというふうに申し上げる状況にはございませんが、今後ともメンバーの委員の方々に、引き続きできる限り結論を急いでいただくようお願いするとともに、私どもといたしましてもできる限り早く結論が得られるよう努力してまいりたい、そういうふうに考えております。
○西川潔君 前のこの法務委員会で、抵当証券の預かり証というのを、モーゲージ証書というんでしょうか、これによる売買が適法かどうかということで公明党の猪熊委員から質疑されておりましたが、今の大蔵省で準備している、有識人でやっているという抵当証券法上、これは今回この問題に関しては問題はなくなるんでしょうか。それをちょっとお伺いしたいんです。
○説明員(杉井孝君) 先生御指摘の現在の取引仕法によります抵当証券の売買の取引仕法といったものと、それから抵当証券法との関係につきましては、いろんな御意見が存在しておりまして、先ほども申し上げたように、その点も含めまして抵当証券の研究会で現在御検討願っているところでございまして、そういう検討の状況を見て、その点も適切に対応していきたいと考えておるところでございます。
 なお、研究会と並行いたしまして、法務省ともいろいろその点につきまして御相談している段階にございます。
○西川潔君 どうもありがとうございました。
 いずれにしましても、老人の方を含むたくさんの被害者が出ておりますので、ひとつ一日も早く適正な運用がなされますよう御尽力のほどよろしくお願いいたします。もう警察の方と大蔵省の方、どうぞ。ありがとうございました。
 次に、受刑者の高齢化についてお伺いしたいと思います。
 私、国会へ来る前からたくさんの刑務所を漫才とか司会で慰問させていただいておりました。そのときは舞台の上からだけだったんですけれども、法務委員会に入れていただきまして札幌の刑務所、府中の刑務所、医療刑務所、そしてまた栃木の女子刑務所、いろんなところを見せていただきました。法務委員会から視察として行かしていただきますと、部屋から、そしてまた作業所から、いろんなところを見せていただきました。裏の部分を見せていただきまして、随分感じたことがあります。
 今まで芸能の方で慰問に参りますと、上からだけだったんですけれども、いろんな失敗がありました。例えば、舞台へ出ますと、まだ新人なものですから、ようこそいらっしゃいましたと、こう言いますと、前の囚人の人が、来とうて来てんのとちゃうわいというようなことでしかられたこともありましたし、これはもう口癖みたいに覚えたごとを台本どおりにしゃべるものですから、最後までごゆっくりお楽しみくださいというようなことを言いますと、終わっても帰られるかいというふうに、何度かいろんな刑務所で受刑者の方に、前の方の人に大きい声でしかられたこともあるんですが、そうすると教育部長さんなんかが静かにせぬかと言って御注意されたり、胸がどきどきして、どうなることかいなと思っておりました。
 今回、こうして国会に参加させていただきまして、法務委員会としていろいろ視察に行かせてもらいました。そしてまた、机の上で見たり読んだり、ここで聞いたりすることだけじゃなしに、無所属ですし、一人で行動に移して、現場で見たり聞いたり、感じたりしたことをここできょうはお話をさせていただきたいと思うんですけれども、実に高齢者が多くなっております。この間の五月三日の読売新聞にも大変高齢受刑者が急増している、「刑務所が福祉施設化する恐れがある」、こう書いてありました。
 そこでお伺いしたいんですが、高齢受刑者が急増というのは、単なる人口の高齢化の現象がそのまま反映されているだけではないと、素人考えでそう思うんですが、それだけでは新聞がさほどとりたてて問題にするほどのこともないやろと、こういうふうに思います。何か特別な要素があるのでしょうか。そのあたりからお伺いしたいと思います。
○政府委員(敷田稔君) 矯正行政につきまして格別の御関心をお持ちいただきまして、大変ありがたく、厚く御礼申し上げます。
 人口比でございますと、昭和五十二年の末が七百名。それが十年たちまして昭和六十一年には千四百名と倍に増加しております。しかし、比率からいきますと全受刑者の三%でございまして、この人口比は、日本国の全人口で六十五歳以上が昭和六十年の統計によりますと一〇・五%でございますので、一般人、社会人の人口比からいたしますとまだまだ加害者として刑務所に入っております老人は非常に少ないと、こういうことが言えるかと思います。
○西川潔君 次にお伺いいたしたいんですが、現在の行刑の考え方についてちょっとだけお伺いしたいんです。
 かつては応報刑罰であったということですが、現在の行刑の考え方は世界的に教育刑の流れを占めていると思います。我が国の行刑もこの教育刑に基づいていると思うんですけれども、念のためにお伺いしたいんですが。
○政府委員(敷田稔君) 我が国の行刑は教育刑、つまり裁判の段階では犯した罪とそれから犯した者の社会的な経歴というものを考えまして判決をいたしますが、刑罰として刑務所に入ってまいりますと、いかにして社会の復帰を図るか、その改善、更生を図るかということを主な眼点として処遇をいたしております。
○西川潔君 僕も現場をもう何度か視察さしていただいて、本当に大変な皆さん方の御尽力はわかります。百人近い受刑者の人たちをたった二人ぐらいの職員の方が監視しておられる。何かあったときどうするのかな、本当にそういう意味では大変な御尽力をいただいていると思うんです。その教育刑というのを目の当たりに見せていただきまして自分で感じたんですけれども、そうすると、出てきた人が何回も行ったり来たり行ったり来たりしているわけですけれども、教育刑に基づくと、教育刑というものの成果に重大なひょっとすると問題があるのではないかなと、こういうふうに思うんですけれども、法務省としてはどう思われますか。
○政府委員(敷田稔君) 一面においてはごもっともな御指摘でございますが、ただ全体的な総体的な人口比から見ますと、再犯を犯して刑務所に入ってくる率というものは、日本国は幸いにして比較的高くない方ではございます。もちろん、老人受刑者に限ってこれを申しますと、現在調査いたしましたところで一番多いのは宮城刑務所に受刑しております三十二犯というものがございまして、これなどは刑務所の処遇におきましても、あるいはその他の刑事政策の執行におきましても考えさせられる他山の石――他山、よその山ではありませんが、非常に重要な参考事例として考えておりますが、一般的に言いますと、比較的教育刑の成果は上がっていると。
 それからまた、仮に、仮にと申しますか、将来さらに刑務所の内容を充実しますし、あるいは刑事施設法が通過、成立する暁におきましては中の処遇が一段と向上いたしますので、この点もますます充実していくのではないか、このように考えております。
○西川潔君 ありがとうございます。
 もう一度お年寄りのことについてお伺いしたいんですけれども、先日府中の刑務所へ参りましたら、八十何歳という方がおりまして、若い方と一緒に作業しているんでしょうかということを所長さんにお伺いしますと、いや八十歳以上のそのおじいさんという人は出しておりません、中で一人で作業さしております。どんな作業ですかとお伺いしますと、これは例えば袋を張ったり、遊ばすわけにはいきませんのでそういう作業をやらしておりますということをお伺いしました。
 それから、五月三日の新聞ですけれども、だんだん高齢者がふえていく、そうすると、専門的にお年寄りばっかりを収容するという刑務所をおつくりになるんでしょうか。例えば今、呉の刑務支所、あそこは大変高齢者の方が多いんですけれども、作業場なんかには老眼鏡を常備したり、冬場は受刑者の人に湯たんぽを貸し与えたりというようなことも聞いておりますけれども、今後ふえていきますと、そういうお年寄りだけを専門に収容するような刑務所ができるんでしょうか。
○政府委員(敷田稔君) 現在のところ、御指摘の呉は現在尾道に移しておりますが、あそこは中国地方で六十歳を超す受刑者を集票といいますか、集団的に集めております。さらに仮にこの層の受刑者数がふえることになりますと、将来はその点もさらに考えていかなければならないと思いますが、この際また別個のものとして考えるべきことは、いずれ社会に復帰いたします場合に、家族に近いところ、あるいは親族縁者が多いところ、いずれそこの社会に帰っていくわけでございますから、そこから余り遠いところに移しますと帰りにくくなる。したがって集団的に集めるということは必然的にそのうちの一部の人は非常に家族から遠くなるということがございますので、その両者をうまく調和させるためにはどうすべきかということを考えながら、それからその層の人口、人数の増加をも考えながら検討していくべきことと考えております。
○西川潔君 今お伺いしまして、優しい配慮本当にうれしく思うんですけれども、帰る当てのある息子や娘がという皆さん方はまだいいんですけれども、刑期を終えて出まして、受け入れてくれるところがどこもない。何年間か刑務所の中での仕事の報酬を持って出ましても何日間しか生活ができない。そして結果また悪いことをして出たり入ったりする。
 これは、僕は思うんですが、出てきましても、社会復帰さしてもらえないような社会制度にちょっと問題があるのではないかというような気もするんですけれども、これは厚生省の方にお伺いしたいんですが、いかがでしょう。
○説明員(真野章君) 刑務所を出ました身寄りのないお年寄りにつきましては、法務省の方で更生緊急保護法に基づきます更生保護が行われておると私ども聞いております。そういうワンクッション置きまして、そういう方々はあと身寄りがないということになりますと、老人福祉法で用意をいたしております身寄りのないお年寄りに入っていただきます養護老人ホームへの入所でありますとか、生活ができない方々に適用されます生活保護法の適用ということで、特に刑務所を出たお年寄りについての特別の施策ということではございませんで、他の一般のお年寄りの施策と同様の対応を私どもはいたしておるところでございます。
○西川潔君 ありがとうございます。
 もう一つお伺いしたいんですけれども、中をずっと見せていただきまして、長くおりますとあそこではまず食べていく心配がない。出てきても今の世の中の進み方というのは半分何か浦島太郎みたいな感じになります。また結果が水に合わない、世の中が水に合わなくなってまた帰ってしまう、帰ると話の合う人がたくさん周囲にはいるわけですから。これは稼いで自分の力で飯食うこともないし、ここの方が、もう三つ四つ五つ辛抱したらここの方がいいなというようなところが刑務所が福祉施設にというようなことになっているんでしょうか、この点をお伺いしたいんです。
○政府委員(敷田稔君) 御指摘のように、犯数が三十犯を超えるというような犯罪を犯しましてまた刑務所に入ってくる。初めて犯行を犯す者が、刑務所に入るのかどうかということをはっきりわからずに犯罪を犯す者がいることはいるわけでございますけれども、このような犯数になりますと、どうすればどうなるということがわかりながらそうなっているわけでございますので、確かに刑務所にまた帰ってくるという、安住の他とまでは言えないにしましても、今御指摘のような心境で入ってくる者がいないとは言えないわけでございます。
 そういう場合に、一面においては刑務所の処遇がよいからであるという点は言えるかもしれませんが、他面におきましては刑務所はやはりあくまで刑の執行の場所でございますので、そういう気持ちで安易に入ってこられましてもまた困りまして、いろいろ考えながら一番いいと思うようなことをやっている実情でございます。
○西川潔君 大変なお仕事ではございますが、せっかく生まれてきたんですから、悪いことをしたとはいえ、生まれてきて本当によかったなというような気持ちにさせてあげるのが皆さん方のお仕事やと思いますし、数学の時間の四捨五入はいいんですが、どうぞひとつ人間の四捨五入がないようによろしくお願いいたします。こういう問題は実際本当に難しい問題があると思います。刑務所が福祉施設化するなんというのはもう異常なことです。これを何とかいい方向へ改善するような法務省としての姿勢を、いわゆるどういうふうな姿勢で臨まれるかというのを法務大臣に最後にお伺いして終わりたいと思いますが、よろしくお願いします。
○国務大臣(遠藤要君) 受刑者の社会復帰といいましょうか、それにはやはり矯正内容において受刑者に対する、特に老人に対しては自立心と労働意欲というものを持たせるということがやはり大切なことではないかなと。さらに今先生のお話のとおり、外に出た場合の社会の受け入れ体制、これが備わらないと往復切符のように行ったり来たりになる傾向が、特に高年齢層の受刑者に、犯罪者にはそういうふうな点が多くなるのではないかな、こう感じております。
 いろいろ高齢者は刑務所が安住の他とか何とかという新聞紙上のあれも出ておりますけれども、このような問題が、一つは、先ほど来お話に出ておった平沢問題なども九十五歳、完全看護といいましょうか、二十四時間大変――皆さん方にも御認識をちょうだいいたしたいと思いますけれども、刑務所病院の方で看護婦、医者必死となって昼夜一睡もせずして療養に当たったというような点、そういうような点で九十五歳の長寿を全うしたということはやはり刑務所内の健康管理がよかった、糖尿病にもならなかったというような点などを考えると、よく世間の話の中で、今先生のおっしゃったように、老人福祉の一種の場所ではないかというようなお話も出ている、こう思いますけれども、法務省自体としては、受刑者といえども、高齢者といえどもやはり厳正な刑の執行を行っていくというような姿勢をとって、自立心といいましょうか、労働力を十分に身につけさせて一日も早い社会復帰を望んでいるというようなことでございます。
 また、いろいろ矯正局長と法務大臣の意見が相違したとマスコミから書かれるかもしれませんけれども、余り高齢者だからといって高齢者だけ老人ホームのようにあれしておくということもどうかなと、こう考えます。若い人と一緒になって生活し、一緒になって働いているというようなことも私は大切なことでないかなというような点、そして早く自分の子供、自分の孫と一緒に生活をしたいというような心を持たせるということも必要ではないかなと、こういうふうな点を考えておるわけでございますが、まだ矯正局とはその点では話し合っておりませんので、意見の不一致ではございませんが、先ほどの答弁を聞いていると、何か高齢者は高齢者というような扱いをされるようですが、まるっきりそうとはあれですけれども、やはり老いも若きもというようなあれも大切なことでないかなと、そして早く社会に戻って家庭の中の生活をしたいという意欲を持たせるとかということも大切なことでないかなと、このように考えます。
 これは御承知のとおり、今高齢化社会で政府も対策に頭を痛めているところでございますので、この高齢化社会の解決にはただ単なる施策とか予算とかでは補いのつかない問題で、御出席の委員の皆さん方にもぜひひとつこの点は高齢化社会の対応策としてまず立派な子供をつくらせることだ、自分も範を示す道だというようなことで、ひとつそれが一番の高齢化社会に対する対応だと、こう思いますけれども、私は話が余談に入りましたけれども、一層法務省内において、先生のお話を話として慎重に今後検討して、高齢者にもやはり一日もこういうふうなところに入っているんじゃないという社会復帰の心を持たせるというような方途を講じたいと思っております。
○西川潔君 どうもありがとうございました。
 もうあと三十年たつと四人に一人が六十五歳以上になるそうでございます。どうぞひとつ皆さんでお年寄りを大切にしまして、年上を敬う気持ちを持ちまして、ここにいらっしゃる偉い先生方、ひとついい日本をつくっていただきますようによろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。
○委員長(太田淳夫君) 検察及び裁判の運営等に関する調査のうち、法務行政の基本方針に関する件並びに昭和六十二年度法務省及び裁判所関係予算に関する件につきましては本日はこの程度といたします。
    ―――――――――――――
○委員長(太田淳夫君) 刑事確定訴訟記録法案につきましては、他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(太田淳夫君) 御異議ないと認めます。
 それでは、これより討論に入ります。
 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。――別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 刑事確定訴訟記録法案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
○委員長(太田淳夫君) 挙手全員と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(太田淳夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後三時五十七分散会
     ―――――・―――――