第112回国会 法務委員会 第4号
昭和六十三年四月二十八日(木曜日)
   午前十時一分開会
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   委員の異動
 四月二十八日
    辞任         補欠選任
     土屋 義彦君     宮崎 秀樹君
     中村 太郎君     宮田  輝君
     宮本 顕治君     吉川 春子君
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  出席者は左のとおり。
    委員長         三木 忠雄君
    理 事
                工藤万砂美君
                鈴木 省吾君
                猪熊 重二君
                橋本  敦君
    委 員
                梶木 又三君
                下稲葉耕吉君
                徳永 正利君
                中西 一郎君
                長谷川 信君
                林  ゆう君
                宮崎 秀樹君
                宮田  輝君
                秋山 長造君
                千葉 景子君
                吉川 春子君
                関  嘉彦君
                瀬谷 英行君
                西川  潔君
   国務大臣
       法 務 大 臣  林田悠紀夫君
   政府委員
       法務大臣官房長  根來 泰周君
       法務省刑事局長  岡村 泰孝君
       法務省矯正局長  河上 和雄君
       法務省入国管理
       局長       熊谷 直博君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局人事局長   櫻井 文夫君
       最高裁判所事務
       総局民事局長
       兼最高裁判所事
       務総局行政局長  泉  徳治君
       最高裁判所事務
       総局刑事局長   吉丸  眞君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        片岡 定彦君
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  本日の会議に付した案件
○刑事補償法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
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○委員長(三木忠雄君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 刑事補償法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
○千葉景子君 きょうはまず最初に、ちょっと法案と外れるんですけれども、実は近時各省庁の土曜閉庁問題が課題になっておりまして、来年一月から実施をされるという方向性になっているようでございます。それにつきまして、法務省関係ということになりますと、とりわけ拘置所などは面会とか、差し入れとかそういうことがあろうかと思うんですけれども、土曜閉庁ということになりますと、隔週なりその日は面会等ができないという問題も出てこようかと思います。この土曜閉庁についてはどのように今後取り扱われる予定でございましょうか、お答えをいただきたいと思います。
○政府委員(河上和雄君) 土曜閉庁方式といったものの趣旨から考えますというと、やはり職員をその日は大幅に休ませるということにならざるを得ないわけでございまして、そうなりますと被収容者への面会あるいは差し入れ、こういったものも職員の数が全体的に足りなくなりますので原則として行わないことになるだろうと思います。
○千葉景子君 その実施は、大体めどとしてはやはりほかの省庁と並行してということになりましょうか。
○政府委員(河上和雄君) さようでございます。
○千葉景子君 そうなりますと、なかなか土曜日しか面会に行きにくいというような方もあろうかと思うんですね。そうすると、閉庁にならない土曜日等は少しふだんよりも体制を充実していただくとか、そういうことは考えていらっしゃいますか。
○政府委員(河上和雄君) ふだんの土曜日でも例えば現在当然お昼に終わるわけでございますが、弁護人については多少時間を延長して御便宜をお図りするというようなことをしているのが実情でございます。ただ、職員の数、やはり土曜日は圧倒的に昼から少なくなりますので、面会すべてについて特別扱い、つまり、開庁している土曜日について特別扱いができるかどうか検討いたしておりますけれども、かなり難しいのではないかと思います。それよりはむしろ閉庁している土曜日について、緊急の場合というのは当然あり得るわけですので、そちらの方で何とかできないものだろうかと模索しているところでございます。
○千葉景子君 職員の方の休日ということも必要でございますし、拘置所などは特殊な性格ということもございますので、ぜひその辺をまたいい方向で検討していただきたいというふうに思っております。
 それでは次に、前回死刑制度の問題につきまして、今後の存続あるいは廃止、いろいろ問題がありますが、お尋ねをいたしましたが、それに付随をいたしましてお尋ねをさせていただきたいと思います。
 現在、死刑確定者といいますのは、その地位というか立場、これは一体どういうことになるんでしょうか。一般のこれは受刑者の地位とも異なるだろうというふうに思いますし、死刑自体というのは刑の執行そのものが刑罰の執行だろうかというふうに思いますけれども、この間の確定者の地位というのはどのように基本的にはお考えになっていらっしゃいますか。
○政府委員(河上和雄君) 刑というのは、普通の自由刑あるいは罰金刑、自由刑を例にとりますと、やはり刑務所に収容しまして定役に服させる、刑務所に収容していること自体がいわば刑罰の執行という形になるわけでございます。
 ところが死刑の場合は、刑法に定めるところに従いまして監獄内において絞首してこれを執行する、これだけが刑罰の執行でございまして、その間拘置所内に拘置するわけでございますが、これはいわば死刑の執行という刑罰の執行の前段階、前段階の段階として、本人を逃がさないためと言うとちょっとあれですが、社会に出さないために拘置所の中に拘置するわけでございまして、その法的地位というのは非常に微妙なものがあろうかと思います。
○千葉景子君 一番簡単に考えますと、死刑確定者の処遇というのは、監獄法の九条が未決に準ずるという規定を設けておりまして、これが一番目につくというかはっきりする基準ではないかと思うんですね。そういう意味では今微妙な立場にあるということでございますが、その処遇自体は未決に準ずるというこの規定を適用していると考えてよろしいでしょうか。
○政府委員(河上和雄君) 九条の定めるところによりまして、刑事被告人に適用すべき規定、つまり刑事被告人に適用するということが明示されている監獄法上の規定につきましては準用をされるということになっておりまして、現に刑事被告人だけに適用される五つの条文につきましては準用されることは間違いございません。しかし、それ以外の規定につきましては、特段刑事被告人に適用される規定が準用されるものではございませんので、こういう規定、五つほどの規定が準用されるからといって、その他位が刑事被告人の地位と同様であるというふうに理解することはできないのではないかと思っております。
○千葉景子君 そうなりますと、死刑確定者の身分、その処遇の基準といいますか基本的な原則、これは一体何に準拠をし、そしてどんな基準で運用をされているんでしょうか。
○政府委員(河上和雄君) 監獄法のそれぞれの規定の中に在監者は云々という規定が多々ございます。この在監者の中には当然死刑確定者も入るわけでございまして、それぞれの規定の趣旨に従って私ども解釈いたしております。
 ただ、御承知のとおり、この脱獄法というのは明治四十一年、非常に古い法律でございまして、当時の矯正の基本的な考え方あるいは監獄法の基本的な考え方というものは、まず刑の確定した者を社会から隔離する、そしてこれに対していわば懲らしめといいますか、贖罪のために種々の処遇をするということでございまして、教育理念が全然ないわけではございませんが、比較的薄い、どちらかというとすべて官の許可にかからしめるということで実は入っている在監者、入っている人たちの権利というものは必ずしも認められてないのが現在の法律でございます。
 そういったところもございますが、いずれにしろ在監者にはいろいろな種類がございます。労役場留置の人もおりますし、禁錮の人もおりますし、それから懲役刑の人もいる、そして死刑確定囚もいるわけでして、それぞれその法的な地位に応じて全く同じ扱いをするというのは、これは決して好ましいものではございませんので、それぞれ別段の扱いをいたしております。
 死刑確定者につきましては、いずれにしろ矯正としては刑事司法によって本人を死刑にせよ、それまで拘置せよという命令を受けてそのまま本人をとめ置いているだけでございますので、できる限り本人の心情が安定する、あるいは逃走のようなことを図らない、あるいは他の受刑者に悪影響を与えない、あるいは保安上、規律上問題を起こさない。そういった観点から、しかしできる限り従容とした死というものに近づけさせたい、そういった観点で処遇をしているというところでございます。
○千葉景子君 今、逃亡しないように、あるいは心情の安定、他の収容者への影響、保安上の問題というようなことがございましたけれども、これは、考えてみますと極めて抽象的な基準でございます。実際にはさまざまな条件といいますか、これはどなたが判断をされて、それにのっとって処遇をされるんでしょうか。
○政府委員(河上和雄君) 監獄法の建前からまいりますと刑務所長でございます。ただ、個々の刑務所によって余りに扱いが違うということは必ずしも好ましいものと思えませんので、大臣訓令によってある程度の統一を図っている。しかし、法の本来の趣旨からいきますと、刑務所長の裁量権というのは非常に大きな法律でございます。刑務所長の裁量権が相当程度大幅に認められている、こう申し上げていいと思います。
○千葉景子君 今刑務所長の裁量権が大きい、ただし大臣訓令という形で一定の統一を図っていらっしゃるということでございますが、この大臣訓令というものはどのような問題について、どの程度の基準を定めて命じているものですか。
○政府委員(河上和雄君) 例えば、「収容者に閲読させる図書、新聞紙等取扱規程」という大臣訓令がございます。この中では、それぞれの在監者について新聞紙あるいは図書などについての基準のようなものを出しておりますが、死刑確定者につきましては「身柄の確保を阻害するおそれのないもの」、「規律を害するおそれのないもの」に該当し、「かつ、死刑確定者の心情の安定を害するおそれのないものでなければならない。」といった形で、図書、新聞紙について大枠をかぶせているような状況でございます。
○千葉景子君 今の基準をお聞きしますと、そこにもまた、さらに心情の安定とか抽象的なことが記載されているようでございますから、最終的には個々具体的な判断というのは刑務所長がされるというふうに考えてよろしいわけですね。
○政府委員(河上和雄君) さようでございます。その中での覊束裁量でございます。
○千葉景子君 そうすると、いろいろな処遇の中で問題点があろうかと思うのですけれども、一つは図書といいますか書籍等については閲読が制限をされるもの、あるいは場合によってはその内容の一部を墨塗りがなされるというような場合があるようでございますけれども、事実としてはそのとおりでしょうか。
○政府委員(河上和雄君) そういう場合もあろうかと思います。
○千葉景子君 これは、理由としてはどのような理由によって禁止をされ、あるいは墨塗りというような措置がとられているのでしょうか。
○政府委員(河上和雄君) 結局抽象的なお答えになってまことに申しわけないわけですが、先ほど大臣訓令で御紹介申し上げましたように、規律を害しあるいは保安を害するといったようなものとか、あるいは心情の安定を害するといったようなことが判断されるような場合でございます。
○千葉景子君 どうもこれも最後に行き着くと、心情の安定という一言で尽きてしまうというような気がするわけですね。ただ、心情の安定というのは一体どうやって判断をするのかということになりますと、読ませてもらえない、あるいは一部が真っ黒になってくるということの方が、非常に私などが考えると心情穏やかならぬものがあるような気がするわけですけれども、この心情の安定というのは、一体客観的にはどんな点を注意して、どんな要素を基準にして、この心情の安定というのははかれるのでしょうか。
○政府委員(河上和雄君) なかなか一概に申し上げられず、個々具体的なケースによって随分違う場合が多いだろうかと思われます。ただ、一般論で申し上げれば、例えば刑事司法制度自体を破壊するような、破壊することが正しいのである、つまりこういった死刑囚が裁判を受けた、その裁判制度自体を否定する思想が正しいといったようなことが書いてありますというと、これはやはり本人自身にとって自分の死刑判決というものは全く不当なものであるというふうな感じを抱かせるわけでございますから、それは心情の安定には必ずしも適さないというふうに思われるわけでございます。
○千葉景子君 今一例を挙げていただいたわけですけれども、この裁判制度自体について問題視をするというようなこと、別にこれは考え方あるいは思想、あるいは書物であればそれを表現したこと自体は勝手なことであり、自由なことでありそれを死刑確定者が読んだからといって、この心情の安定とは全く別な問題ではないだろうかという気がするわけですね。この心情の安定というのは、本人の心情よりも管理上、あるいは第三者かこういうものは読ませたら、死刑というものに今向かって進んでいる者に対してはどうも不適当じゃないか、こういう第三者的な判断で行われているように思われて仕方がないんですけれども、何かやはり客観的な一定の基準がありませんと、心情の安定というようなものは非常に恣意的に、あるいはそれぞれの個人的な主観で使われやすいような気がいたしますが、いかがですか。
○政府委員(河上和雄君) 規律の問題あるいは保安の問題、あるいは他囚に与える影響、社会一般に与える影響といったものは、心情の安定とは別の基準で考えているわけでございまして、心情の安定はいわばそういったものを除いた観点だけから考えるわけでございます。
 確かに御指摘のように、人の心情が安定しているか否かというのは、必ずしも科学的、純客観的に数字によってあらわすことのできるような性質のものではございませんので、どうしても主観、客観そういったもろもろの要素をだれかが判断しなければならない。それは、現行監獄法上は刑務所長の判断するところになっている、したがってそれに従ってできる限り客観性を求めつつ判断をしている、そういうところでございます。
○千葉景子君 これはある程度客観的な基準をつくるなりしない限りは、どうしてもそこに個人的あるいは主観的な判断が入らざるを得ないというふうに思うわけです。
 やはり同じく処遇は関連して、親族あるいはそれ以外の第三者との面会、接見交通、これにつきましても、先ほどの監獄法九条の未決拘留者と同等に考えれば特別な規制、制限ということもやられるべきではないというふうに考えるんですけれども、親族あるいは第三者との面会などについてはどんな基準を考えてやっておりますか。
○政府委員(河上和雄君) この基準も死刑確定者というもののその特殊な地位に応じまして、死刑確定者が罪を自覚して精神の安静のうちに死刑の執行を受けることを配慮しようと、そういう観点から本人の心情の安定を害するおそれのある場合とか、あるいは本人の身柄の確保を阻害し、または社会一般に不安の念を抱かせるおそれのある場合、その他施設の管理運営上支障を生ずるおそれのある場合、こういった場合については御遠慮願っているというわけでございます。
○千葉景子君 今しかし、身柄の確保というのはあれだけきちっとした刑務所に収容されているということがあるわけですし、社会的な不安というのも具体的にどういうことを指すのか、私はよくわかりません。また、それから施設の管理といいましても、面会をしたからといって施設管理上、例えば夜中にということなどは別といたしましてもさほど不都合があるわけではないということになりますと、一体何で第三者あるいは親族との面会を制約しなければならないのか、これも非常に判断があいまいではないか、基準があいまいではないかというふうに思わざるを得ないんです。例えば親族以外は面会をさせないとか、何かそういう基準は設けていらっしゃいますか。
○政府委員(河上和雄君) 原則として親族については自由に面会を許していると思います。また、親族以外の者につきましてはできる限り会わせるような方向で実務が運用されていると思いますが、しかし先ほど申し上げました基準に当たるおそれのある場合、基準に当たる場合、あるいは何といっても職員の数が限られておりまして、一日に数回も面会を許すということが物理的に不可能なこともございますので、そういった場合には御遠慮願っている、そういうことでございます。
○千葉景子君 確かに物理的な問題はあろうかと思うんですね。職員の数、あるいは接見する場所、その物理的な問題は別とすれば、それが可能であればあとは制限をする理由というのは私は見当たらないように思います。
 先ほど身柄の拘束といいますか、逃亡を防ぐ、あるいは社会の不安、施設管理上というようなことがございましたけれども、どういう場合が考えられますですか。物理的な問題以外ですよ。
○政府委員(河上和雄君) いわゆる支援者グループというのがございます。純粋に精神的なものでいろいろ支援なさる方もいらっしゃるわけでして、そういう方々は会わせている場合もございます。ただ、いわば何というか、本人の犯したことをむしろそそのかすと言うとおかしいですが、正当であるかのごとく思い込ませる、そういったようなことが面会によって行われることが確実なょうな場合、そういったような例が考えられると思います。
○千葉景子君 その本人のやったことを正当化するような者に対しては制限をする場合があるということでございますけれども、そうすると、そういう場合がもし仮にあるとして、それ以外には特別にそれでは面会を制限するような理由というのはありませんね。
○政府委員(河上和雄君) 結局先ほどちょっと申し上げました本人の心情の安定を害するおそれのある場合、それから身柄の確保を阻害し、または社会一般に不安の念を抱かせるおそれのある場合、それと管理運営上、この管理運営の方はどちらかというと物理的な問題があると思います。そういった抽象的な基準でございますが、こういう基準に該当する場合、個々具対的なケースについて今必ずしも的確に御指摘できませんが、いろいろな場合があろうかと思います。
○千葉景子君 これも最終的な判断は刑務所長がなさるわけですか。
○政府委員(河上和雄君) さようでございます。
○千葉景子君 これも基本的には、どんな人間が面会するかといっても、その人間の考え方あるいは心情、発言、こういうものをすべて客観的に判断できるわけではないと思うんですね。そうなりますと、これも刑務所長なりの主観的な、非常に個人的な判断、こういうものによって立っているという感じがいたします。これも基本的には客観的な基準、例えば親族には面会させる、あるいは物理的にいえば一日に何人であるとか、時間であるとかそういうことは可能であろうかと思うんですね。そういう基準をつくっていただいて、それにのっとってやる以外は恣意的な判断というのを排除できないのではないかというふうに思うんです。
 それは心情の安定、あるいは社会的な不安、そういうものを総合的に判断なさるということをおっしゃいますけれども、それは目に見えるわけではございませんで、恣意的な判断を個々刑務所長がされていると私は言うつもりはございませんけれども、そういうものを排除して適正な運用をするという意味では何らかの客観性を持たせる必要があるのじゃないかというふうに思いますが、いかがですか。
○政府委員(河上和雄君) 確かに何らかの客観性というのは当然必要なわけでございまして、ただこれもまたケースごとに非常に違いがございますので、各いろいろなケースを想定して客観性を保たせるような基準ということを考えますと、どうしても抽象的にならざるを得ない。ただ、幸いといいますか、私どもの場合は四六時中死刑執行予定者、死刑囚と接しているわけでございますから、その心理状態というものは非常に把握しているわけでございまして、その上ででき得る限り客観的にこういった抽象的基準を解釈していくと、今後も努めてまいりたいと思います。
○千葉景子君 これはまた、同じことの繰り返しになってしまいますのでこれで終わりにいたしますけれども、やはり原則と例外、例外というのはどうしても存在しようかと思うんですね。こういう場合は面会を制限せざるを得ないということはありますけれども、原則としてはこれこれこういう基準で面会をさせる、制限をするときにはそれなりの理由をもってそれを制限していただくというのが、私は適正な運用ではないかというふうに思います。ぜひそこも今後の検討課題にしていただきたいというふうに思っています。
 それでは今回の刑事補償法に関連しますが、前回参考人の方の御意見などもお伺いいたしました。そういう中で、基本的には刑事補償というのがされない状態が理想なわけでございますね。しかし万が一、我々の間違い、誤りということも考えてそのために制度をきちっと整備しておく、これが今の考え方の基本ではないかと思うんです。その中では、それではこの刑事補償が適用されないように誤判あるいは冤罪、こういうことができればない方がいいわけでして、こういうことを防ぐためにも公判手続をさらに充実、活発なものにする、あるいは被告人なりの防御権を十分に保障するということが必要であるというような御意見も出ていたようでございます。
 そこで、何点かお尋ねをさせていただきたいんですが、一つは、現在被告人については国選弁護人の制度がございます。ところが被疑者の段階におきましては、弁護人を選任することはできますけれども、これは自分で自主的にということになります。そして、それができない場合に国の選任をする弁護人をつけるというふうな制度にはなっておりませんですね。この被疑者段階での国選弁護制度、この今後の制定などについては御検討なさったことはございませんか。
○政府委員(岡村泰孝君) 被疑者の段階において、国選弁護人を付するような制度をとるべきであるという御意見がかねがねあることは承知いたしているところでございます。ただ、この問題につきましては、捜査というものは職権主義的な、合目的的な事柄であるわけでございます。これを捜査の段階で国選弁護をつけることによりまして当事者主義的なものに改めるということにもなってくるような問題など、いろいろ刑事訴訟法の根幹にも触れてくる問題があるわけでございます。
 また、現実の問題といたしまして、現在弁護士さん、地域的にはやはり偏在している面もあるわけでございます。ところで、捜査といいますものは非常に迅速性が要請されるわけでございますし、日本の全国各地において刑事事件が発生するわけでございます。そういった場合に、捜査の段階におきまして、全部国選弁護人をつけるというようなことが果たして可能であろうかという現実的な問題もあるわけでございます。さらにはまた、国選弁護人制度をとりますと、国の財政上の問題もあるわけでございます。こういったいろいろな問題があるわけでございまして、慎重に検討を要する問題であるというふうに考えているところであります。
○千葉景子君 現在でも、被疑者段階で弁護人が選任をされているというケースもあるわけでして、弁護人がつくこと自体、何か捜査に支障を来すという事態は生じていないだろうというふうに思うんですね。ただし、今御答弁をいただいたように、弁護人の数の問題であるとか偏在をしている問題、あるいは国の財政上の問題、こういうことは確かに存在するわけです。
 ただこれは、こういう制度というものが確立をされていけば、それにできるだけ沿う形で解決は可能であろうというふうに思うんです。それに引きかえて、過去のいろいろな我々の経験からして冤罪の原因、こういうものを生ぜしめる問題としては、やはり捜査段階の孤立した状態、こういう中での不当な自白などもこれまで指摘をされているところなわけですね。そうなりますと、全部に国選弁護人をつけるということではなくても、当面例えば自分はどうしてもつけてもらいたい、それに対してきちっと対応できるような体制、こういうものは検討していってしかるべきではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。
○政府委員(岡村泰孝君) そういった問題も含めまして、先ほど申し上げましたようないろいろな問題とのかかわりがあるわけでございますので、慎重な検討が必要であろうというふうに思われるわけであります。
○千葉景子君 ぜひこれも適正な、そして被告人の防御権も保障するという趣旨も踏まえて前向きに検討をしていただきたい課題の一つなわけでございます。
 それから次に、参考人から指摘がなされておりましたが、証拠開示の問題。これも非常に、証拠がすべて開示をされない、そして開示をされない証拠の中から新しい事実、あるいは事実を覆す、無罪を推定させるような、証明させるような証拠が出てくる、こういうケースも過去あったわけでございます。そういう意味では、この証拠開示、広く開示をしていただいた上で、そして適正な判断を裁判所に求めるということが誤判を防ぎ、そして冤罪を防ぐ最大の道ではないかというふうに思いますが、この証拠開示についてはどんなふうにお考えでしょうか。
○政府委員(岡村泰孝君) 証拠開示の問題でありますが、検察官といたしましては、当事者主義という原則に立ちつつ、実体的真実の発見及び被告人の防御の利益という事柄を考慮いたしまして、これを適正に行うよう努めているところでございます。検察官といたしましては、公判廷で取り調べを請求する予定の証拠につきましては、刑訴法の趣旨に基づきまして、第一回公判期日前あるいはその他の時期に閲覧の機会を与えて開示をいたしているところでございます。
 また、最高裁決定がありますように、裁判所はその訴訟指揮権に基づいて一定の場合に証拠の開示を命ずることができるとされているところでございます。この最高裁決定の趣旨に従いまして、事案の性質、審理の状況、あるいは閲覧を求められました証拠の種類とか内容、その時期、程度、こういったいろいろな事情を勘案いたしまして、事案に即しまして具体的かつ弾力的に証拠開示の要否あるいはその時期、範囲、こういったものを検討いたしまして、被告人の防御上合理的に必要と認められる証拠につきましては、検察官といたしましては適正に開示しているというふうに思っているところでございます。
 また、この証拠開示の問題につきましていろいろ御意見もあるわけでございますが、今後とも今述べましたような角度から一層証拠開示の適正に努めるということであると思っております。
○千葉景子君 やはり公判手続を適正に行い、そして被告人の防御権、あるいは人権をも保障していくということが必要かというふうに思うんですが、その関係で、私は最近非常に気になっておりますのが、起訴後に非常に長期にわたって接見禁止がなされているというケースが間々見られるという気がするんですね。これは実態として、私もすべてを知るわけではございませんので、それがどのくらいの割合になっているかなどというのはわかりませんけれども、耳にするのにおいては、第一回公判後であっても数カ月あるいは場合によっては三年ほども接見禁止が続いているというケースもあるやに聞いております。この点についてその実態といいますか、非常に長期化している接見禁止、それについて実態をある程度お知らせいただけませんでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(吉丸眞君) 私ども接見禁止の請求及び接見禁止の決定につきましては統計がございますが、しかしこの統計は起訴前、起訴後の両者を含む数でございまして、委員御指摘の起訴後の接見禁止の状況についてこれを直接示す数字はないわけでございます。ただ、私どもの実務の経験から申しますと、委員も御承知のとおり、起訴前の接見禁止の決定にも公訴の提起があるまでという限定が付されているのが通例でございまして、起訴後さらに接見禁止がなされるというのは、法律に定められております罪証隠滅のおそれ等が特に強いと認められるごく少数の事例にとどまるのではないかというふうに考えております。
○千葉景子君 私もこれは少数なりじゃなかったら困るわけでして、第一回公判後も延々と接見禁止が続いているケースがほとんどだということになったら大変なことなわけですから、これはそんなに全部がそういう事情ではないということはわかります。しかし、私一つ思うのは、接見禁止については今おっしゃられたように公訴提起に至るまでとか、第一回公判までという期限が付されておれば、これは結構でございますけれども、そういうことがない限りは、あとは裁判所でもう接見禁止を解除してよろしいと判断していただく以外には接見禁止を解く手だてといいますか、それがないわけでございますね。そういう意味では制度的に若干何か欠陥までとは言いませんけれども、何か不足しているところがあるのじゃないかという気がいたしますが、その点は何かお考えございますか。
○最高裁判所長官代理者(吉丸眞君) 制度の問題になりますと、私ども裁判所から余り申し上げることでもないと思いますが、実際の運用ということを御紹介申し上げますと、なるほどこの接見禁止の解除について当事者に申し立て権という権利は訴訟法上ないわけでございますが、御承知のとおり、被告人、あるいは弁護人から裁判所の職権活動を促すという形で事実上の申し立てがなされ、その都度裁判所が慎重に判断しているというのが実情であろうと考えております。
○千葉景子君 接見禁止というのはだれにも会わせないということで、弁護人は別といたしますけれども、要するに人に会ったりすると罪証隠滅をしたりするおそれがあるから接見は禁止をするという、簡単に言えばそういうことだというふうに思うんですね。
 そうすると基本的に、例えば起訴がなされ、しかも第一回公判が始まったというところまでいけば、普通は証拠もその公判を進めるというそれだけの材料はもうそろっている、そういう状況ですからよっぽどまれなことだと思うんです、それ以上の場合に接見を禁止しなければいけないということは。そうしますと基本的には、起訴後は接見禁止をしないという原則で運用されるべきだろうというように思うんですね。まれなというのはよっぽど特別な、具体的な事情があるということで運用されるべきだろうというふうに思いますが、その点はいかがですか。
○最高裁判所長官代理者(吉丸眞君) 現行の刑事訴訟法では、被告人について裁判所が接見の禁止をすることができるという規定がございますので、やはり法の建前上は、起訴後においても接見禁止が事案によってはなされ得るという趣旨は明らかであらうと思います。
 ただ実際には、ただいま委員も御指摘になりましたとおり、接見禁止がなされるのは、捜査の期間、あるいは第一回公判期日あたりまでというのが大多数でございまして、その後になされます場合は、先ほど申しましたように、罪証隠滅等の点について具体的にそれぞれの事案に応じて判断された上運用されているというふうに考えております。
○千葉景子君 そこで、私は考えるんですけれども、これは先ほど言いましたように、接見禁止についてはそれが解除されるまで不服を申し立てるというような機会がないわけですね。そうしますと、その途中でもう罪証隠滅のおそれなんというのはないのではないか。これはもう接見禁止を解除すべきだということを判断する機会、客観的にですね、そういうものを設けていくべきだということになると、勾留の更新時点、あるいは例えば必ず接見禁止をつけるときには期限なりをつける、そこでまたさらに判断をするというような制度的な保証といいますか、そういうものも必要になってくるのじゃないだろうかというふうに思うんですね。
 最初は確かに罪証隠滅のおそれもある、接見禁止の必要もある。しかしながら、一定の期間がたつうちに証拠もそろい、次第に公判廷も進み、接見禁止の意味というものもなくなってくるというケースもあるわけですから、一定の時期ごとにそれをきちっと再審査といいますか、できるような機会を設けるべきではないかというふうに思うんですが、その辺の制度的な今後検討といいますか、考えられませんでしょうか。
○政府委員(岡村泰孝君) 起訴後の勾留につきましては、刑事訴訟法は、当初は二カ月、その後一カ月で更新ができるというふうに規定しているところでございます。
 ところで、裁判所が起訴後の勾割、あるいは勾留の更新を行います際に、接見禁止の必要がさらにあるのかどうかという点につきましては十分判断をしておられるところであろうと思うのでございます。したがいまして、実務の運用といたしまして、法律的に勾留の更新のごとに接見禁止をさらに新たに出すといいますか、決定するといいますか、というようなことまで果たして必要なのであろうかというふうに思うわけでございます。
 いずれにいたしましても、勾留更新の機会は接見禁止の継続の要否というものを慎重に判断しておられるのが実務でございますし、そういう運用がなされておるような点その他を考え合わせますと、制度的に現在の制度を変更すべきかどうかということにつきましては、なお慎重な検討が必要であろうというふうに思っているところであります。
○千葉景子君 なかなか難しい問題点もあろうかと思いますが、ただこういう一定の期間ごとの判断なしに三年ほどの接見禁止ということになりますと、続いているというようなケースを聞きますと、これはとても尋常ではないといいますか、普通ではない。その間人に会うことができないという状況では、基本的な人権そのものも侵害するような状況になってくるのではないかというふうに思うわけですね。これは個々具体的な判断というのは裁判所なりがなされているケースですから立ち入るわけにはまいりませんけれども、こういうケースが出てくるということを考えますと、一定の期間の制限とか、あるいはその都度判断をする、そして客観的な理由を示していただく、そういう機会を制度的に担保する必要も出てくるのじゃないかと考えざるを得ないわけですけれども、こういう三年余りにわたるような接見禁止があるというような状況を踏まえてはいかがでしょうか。
○政府委員(岡村泰孝君) 御指摘の事件の内容につきまして私今承知をしていないわけでございますが、接見禁止の決定をなす場合には、逃亡あるいは罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるときというのが刑訴法の定めております要件でございます。裁判所といたしましても、接見禁止の決定を継続すると申しますか、取り消さないという背景には、やはりこういった事情が認められるからではなかろうかと私なりに思うわけでございまして、一般の事件で、長期にわたって逃亡なり罪証隠滅をする相当な理由があるような事件が多いのかどうか、これはケース・バイ・ケースという問題であるわけでございますが、中にはこういった事情が継続的に認められる事件もあろうかと思うわけでございます。そういう者につきましては接見禁止の継続が長くなっても、それは決して法律の趣旨からはみ出るものではなかろうと思うわけでございます。
 ただ、先ほど来から申し上げておりますように、私どもが承知いたしております実務の運用といたしましては、裁判所は勾留更新に当たりましては、その辺のところは慎重にまた適正に検討し判断されているところであるというふうに思っている次第であります。
○千葉景子君 わかりました。ただ、逃亡といっても勾留がなされて収容されているわけですから、接見禁止を解除したから逃亡するというようなことは通常ほとんど考えられないわけでして、罪証隠滅ということが一番の要件かと思うんですね。しかし、これも公判も進んで、証拠調べが進んでいる状況の中では、新たに証拠を隠滅するというような可能性というのもほとんど見られないわけでして、こういうことを適正に運用していただくこと、そしてそれをぜひ客観的に判断し、だれもが納得できるようにする機会、こういうものを今後ぜひ検討していただきたいというふうに思います。
 それでは、時間の関連もありますので次へ移らせていただきたいと思いますが、同じように誤判を防ぎ、あるいは適正な裁判を進めるということの一つとしてさまざまな制度的な課題があろうかというように思うんですね。その制度的な問題の一つとして、さきにも一度質問させていただきましたけれども、司法試験改革につきまして懇談会の一定の意見がまとまり、そしてそれに基づいて法務省の方で今度一定の提案をなさったということでございます。
 まず、その内容について具体的に御説明をいただきたいと思います。
○政府委員(根來泰周君) 昨年の春でございましたけれども、法曹基本問題懇談会というのが発足しまして、ことしの三月に法曹基本問題懇談会から御意見をちょうだいしたものでございます。懇談会の御意見の内容はもう既に御承知だと思います。いろいろ意見がございますけれども、「当面緊急に必要な改革」ということで数点の御提案がございました。その数点の御提案につきまして、この基本問題懇談会の事務当局をいたしております人事課が、その意見を基本にしまして司法試験改革試案というのをつくりました。これは誤解のないように申し上げますけれども、法務省の意見ということではございませんで、一応事務案ということで、いわゆるたたき台ということで作成したものでございます。
 その内容でございますけれども、これは懇談会の意見に沿ってその改革試案というのを作成したのでございまして、第一点は受験回数の制限ということでございます。司法試験の第二次試験は、連続した三年以内に三回以内の受験を認める。ただし、最終年次に筆記試験に合格した者については次回の口述試験の受験を認める。司法試験が行われる年の三月三十一日に満二十四歳に達していない者の受験のうち二回は前記の受験とはみなさないということでございます。
 第二点は、大学の推薦制でございます。これは当委員会におきましても先日委員からいろいろ御質疑があり、疑問を呈されたのでございますけれども、懇談会の意見を基本にいたしまして一応大学の推薦制というのを試案の中に入れております。これは推薦の対象といたしまして、大学入学後五年以内の者であって、大学に三年以上を超える間在学し、法学部またはこれに相当する組織において法学を履修していた者またはこれを履修した者ということでございます。
 それから推薦の基準でございますが、もちろん大学における憲法、民法、刑法の各科目その他の科目、大学が認める科目について成績が優秀であるということでございます。
 それから大学ごとの推薦数でございますが、全体で千人、各大学の推薦数の上限は百五十人ということでございまして、大体最終合格者の数を基準にしてそれを比例案分といいますか、そういうことで被推薦者の数を決める、その最高限は百五十人ということであります。
 それから試験科目の減少でございますが、これは教養選択科目というのがございます。それを廃止するということであります。
 それからさらに試験の合格者の増加ということでございまして、これは考査委員会で具体的にお決めになるわけでございますが、現在の五百人のところを七百人ぐらいでどうだろうかということであります。
 そういう一応の素案を作成いたしまして各界に提示して御意見を賜っているところでございます。
○千葉景子君 これは事務案とかたたき台ということで、法務省の案ということではないというお話でしたけれども、これが基本になって今後の司法試験改革というものが進められていくだろうというふうに思うんですね。司法試験というのは今後の法曹、裁判官であり、検察官であり、弁護士であり、そういう法曹を養成する一番基本の制度でございます。そしてまた、こういう試験によって合格した者がこれからの法曹界を担い、適正な裁判、司法の運用、こういうところに携わっていくわけですから、非常に重要な制度だろうというふうに思うんですね。
 ところが、よくわかりませんのは受験回数の制限。この受験回数の制限というのは一体こういう今後の司法養成といいますか、どうかかわり合いがあるんでしょうか。受験回数なりを制限することで、これまで以上にどんなメリットといいますか、すぐれた点、こういうことが出てくるのでしょうか。この辺の意図はどんなところにあるんですか。
○政府委員(根來泰周君) 再々御説明申し上げておりますけれども、現在の司法試験の現状というのは非常に憂慮すべき状況であると思います。また、懇談会においても、その現状について非常に憂慮すべき状況だという御指摘があるわけでございます。繰り返すようでございますけれども、今の合格者の年齢というのは非常に高くなっておりまして、何回も受けないと合格しないような仕組みになっている状況にございます。そういう状況にございますと、大学の優秀な学生が法曹にならないというような傾向を生みまして、要するに優秀な人材が民間会社なり公務員なりに流れてしまうという点が最大の問題でございます。
 ところで、そういう問題をどうして解決するかということについてはこの懇談会でもいろいろの御意見があるわけでございます。これは長期的な問題、それから短期的な問題というふうに分けて意見をいただいておりますけれども、長期的な問題は、これからいろいろ方々の意見をちょうだいいたしまして、なお検討すべき問題が、大きな問題がたくさんあるわけでございますけれども、短期的な問題といたしまして何といいますか、少し若返りを図るということが主体であろうと思います。要するに、試験を受けやすくするといいますか、そういうことに尽きると思います。
 そういう発想からいたしまして、この懇談会の意見の中にございますけれども、全受験者がなるべく平等な条件のもとで受験できるようにすることにより、大学における法学教育を受けた者が、長期にわたって受験勉強に専念しなければ合格するのが困難となっている現状を改めるために、受験者が受験できる回数をある程度の範囲で制限すべきであるというふうに言われているわけであります。この内容についてはまだ詳細に申し上げなければならない点もあるかもわかりませんけれども、試験を受けるのでありますから、平等な条件で受けてもらうということで、受験回数を制限したらどうだろうかという御提案というふうに理解しておりまして、この理解に従いまして先ほど申し上げた試案を作成したような状況にございます。
○千葉景子君 どうもその辺は、何か取ってつけた理由というような感じがしないでもないわけで、試験を受けやすくするということであれば、むしろ回数なんかを制限したら受けにくくなるので、何回か受けたらもう受けられなくなるような試験なんというのはやめて、最初からじゃほかへ行った方がよっぽどいい、むしろそうなるんじゃないかという気もするわけですね。
 それから優秀な若い人材ということも何が優秀か、本当に法曹としてどういうことが適正なのか、こういうこともそう簡単に判断できるものではない。むしろ受験回数というような技術的な問題というよりは、試験の内容であるとかあるいは合格者の数であるとか、こういうことに目を向けるべきではないだろうかというふうに思うわけですね。何か余り法曹ということで、若いというのは別にイコールというわけではありませんで、いろいろな分野で研さんを積んだそういう人材を多く登用するというようなことでも、これは非常にいいことだというふうに思いますし、どうもこの受験回数の制限というのは、ちょっと目先にとらわれ過ぎた議論ではないだろうかというふうに思うんですね。
 それから推薦制というのも、これも実際に運用するとすると難しい点があろうかと思うんですね。どの範囲に、あるいはどういう基準でどういう配分をしていくかというような、非常に利害関係も絡んだ難しい点があろうかと思うんですが、このあたりはいかがですか。
○政府委員(根來泰周君) まず、最初にお話のありました若いからいいかと言われる問題につきましては、決してそういうことを申し上げているわけではありません。ただ、現在の試験の結果が、例えば五百人合格しますと二十五歳末満の者が二割に満たないというような現状からいたしまして、もう少し若い人のシェアといいますか、それを広げた方がいいんじゃないかという意味でございまして、決して年長の方が悪いというふうな烙印を押しておるわけではございませんし、また再再申し上げておりますけれども、ほかのいろいろ人生経験を経た方が法曹に来られることについては、むしろ歓迎すべきことでございまして、これを否定するということではないと思います。したがいまして、この試案の回数制限につきましては、一応のこれは先ほども申しましたように素案でございまして、いろいろの御意見があるわけでございます。そういう意見をこれからも取り入れまして、もっといい制度があればそれを採用して、最終的な案を決めたいというふうに考えているのであります。
 それから、大学の推薦制でありますけれども、これは法曹基本問題懇談会におきましても御意見がございますように、非常に技術的な問題がある。技術的に困難な問題があるということは、これは否定できないと思います。また先日、関委員からもるる御質問がありまして、私は答弁いたしましたけれども、裏返して言えば非常な大きな問題があるわけでございます。
 ただ、現状の司法試験の受験者といいますのは、要するに極端に言いますと、大学の勉強というのはそっちのけにいたしまして、要するに司法試験の養成コースといいますか、予備校といいますか、そういうところに熱中いたしまして、そこで勉強して受かってくるという例がたくさんある状況にございます。そういうことになりますと、大学の法学教育というのは一体どういうことかということについて非常な危機感を持っておられる方がございます。そういう危機感を持っておられる方に対するひとつの回答といいますか、そういうことで大学の推薦制ということを考えられたのだと私は理解しているのであります。
 したがいまして、この推薦制ということについては非常に大きな問題がございますので、さらに大学の関係者、その他の関係の方といろいろ意見を交換いたしまして、実現できればそれにこしたことはないというふうに考えている状況にございます。
○千葉景子君 合格者の増加につきましても、懇談会の意見で増加させた方がいいという意見が出ていましたですね。今度の試案というか、たたき台ということでも合格者の増加を図り、それが七百名くらいがいいんではないかということを出していらっしゃいますから、これも何か一定の根拠なり理由、法務省といいますか、たたき台をつくるに当たっての理由なりあろうかと思うんですけれども、この七百程度というのはどういうことから出てくる数字でしょうか。
○政府委員(根來泰周君) 法曹といいますか、裁判官、検察官、弁護士の数が幾らあれば社会の要請にこたえられるかということは非常に難しい問題だと思います。
 懇談会の御意見では、国民が身近に法曹というものを置いて、そして身近に気軽に相談できるというふうなことが望ましいということを言われている状況にございます。懇談会におきましても、例えば警察とかあるいはいろいろの法律の相談センターとか、それからジャーナリスト、そういう方の御出席をいただきましていろいろ意見をちょうだいしました。そういう意見からいいまして、まだまだ法曹が活躍すべき分野というのは多いのではないかということの指摘がございまして、今の五百人の合格というのは法曹の、そういう数の要請に対して少ないのではないかという御意見がございました。六百人という御意見もあり、七百人という御意見もあり、千人という御意見もございます、これは一年の合格者でございますけれども。しかし今その中で、やはり現実的な選択をする、あるいは当面緊急に必要な改革という観点から数を設定するということになりますと、司法試験の合格者を現行制度のもとにおける修習が可能な範囲内で合格させるという選択をとらざるを得ない状況にございます。
 御承知のように、司法試験で合格しますと司法研修所に迎え入れて二年間修習するのでございます。二年間については、国から給与といいますか、手当が支給されるのでございます。その二年間におきましては、各地の裁判所、検察庁、弁護士会にお世話になって実務修習をするのでございます。そういう収容能力という点も考え合わせまして、まあ七百人までぐらいならば今の現行制度を前提にしまして合格者をふやしていただいても大丈夫ではなかろうかという判断で、七百人という数を算定した状況にございます。
○千葉景子君 この司法試験改革につきましては、これがたたき台ということでもありますし、今後さまざまな論議というものがあろうかと思います。そういうものをぜひ踏まえてよりよい改革、それは突き詰めて言えば適正な裁判、司法、こういうものにつながる、そしてそれを担う法曹を養成するという形で、その基本を見据えた上での改革、こういうことで進めていただきたいというふうに思います。
 ところで、やはり制度上裁判の適正、こういうものを考えるに当たって気になります問題の一つは、裁判所と法務省、あるいは検察官と言ってもよろしいんでしょうか、この人事交流の問題があろうかと思います。私も、これは時々話を伺ったりあるいは意見を聞いてなるほどなと思うんですけれども、まずその前提として、最近国民一般の者が国を相手にしてする訴訟、こういうものは増加をしてきているように思いますけれども、この辺について何か統計的な数字などはございますでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(泉徳治君) 国民が国を相手に提起する訴訟の統計は持ち合わせておりません。ただ、国が当事者となっております民事及び行政事件訴訟の件数につきましては、裁判所では統計をとっていないのでありますが、法務省の統計がございます。それに従いまして申し上げたいと思います。
 国または国の行政庁が当事者となっております民事及び行政事件の新受件数でございますが、これは全裁判所を通じまして昭和四十一年度が千六百九十九件でございます。昭和四十六年が二千二百四十九件、昭和五十一年が四千五百十一件、昭和五十六年が四千五百三件、昭和六十一年が五千四百三十四件、このようになっております。
○千葉景子君 これはさまざまな内容を含んでいようかと思うんですね、事件の内容自体は。しかし、四十一年から六十一年を比べますとほぼ三倍半、三倍半までいかないでしょうか、かなりの数がふえているという状況が出ているんじゃないかと思います。
 ところで、国が訴訟の当事者となるという場合に、国側の代理人をなさる担当といいますか、訟務検事というふうに普通呼ばれているだろうというふうに思うんですが、この訟務検事の方、かなりの数が裁判所との人事交流によって、裁判官出身の方だというふうにお聞きをしているんですが、このあたりの数ですね。資料をいただきまして昭和六十二年、裁判所から法務省へ人事交流で出られた方は三十六名というような数字はいただいておるんですけれども、こういう中で、例えば訟務検事として職務をされている方はどのくらいの数になるんでしょうか。その辺の数字はございますか。
○政府委員(根來泰周君) ただいま三十六人裁判官から検事へ変わった者のうち約十八名、若干正確ではございませんけれども、十八人が訟務関係の事件を担当している検事でございます。
○千葉景子君 この数字なんですけれども、前回から、この出向先のポストをぜひ教えてほしいということでお願いをしているんですが、これはきちっと整理をされたものというのはございますんでしょうか。
○政府委員(根來泰周君) 大変失礼しました。
 資料の御要求のあることは十分承知しておりますけれども、ちょっと数を、一々人事異動の現況を見まして統計的に検討しないといかぬものですからおくれているわけでございまして、委員会でお話があれば後日提出いたします。
○千葉景子君 それは正確なまた数字、実態等はお知らせをいただこうというふうに思いますけれども、さらに、このように裁判官から法務省へ出向されて国側の代理人となるような仕事をされている。それから、この人事交流の中で、裁判所から法務省へ出向かれて刑事事件の捜査あるいは公判などを担当されている方、そういう検事として働いていらっしゃる方、この数はどの程度いらっしゃいますか。
○政府委員(根來泰周君) これもちょっと正確ではございませんけれども、現在三名だと思っております。
○千葉景子君 これもまた正確なところをお知らせをいただきたいというふうに思うんですけれども、裁判所から法務省へ、逆に法務省から裁判所の方へ出向されていらっしゃるケースもあるようでございますね。これについては、その人数は六十二年で二十七名ということでお知らせをいただいているわけですけれども、どんなポストの方が出向かれているケースが多いんでしょうか。
○政府委員(根來泰周君) これは二十七人の内訳でございますけれども、本省から十人、それから訟務関係から十三人、これは地方の法務局長も入っていると思いますけれども、十三人でございます。それから検察庁検事から四人ということで二十七人という統計になっております。これも若干数にそごがあるかもわかりませんが、大体そういうところであります。
○千葉景子君 大体中心としては訟務あるいは検察、そして裁判官との相互の交流というのが中心になっているように思うんですね。
 この人事交流、これの趣旨というか目的、これは裁判所あるいは法務省それぞれに目的、目標とされるところがあろうかと思うんですけれども、それぞれいかがでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(櫻井文夫君) 一般に人事交流ということで言われておりますけれども、その中身といたしましてはさまざまでございまして、例えば法務省から、検察官から裁判官に出向がなされる場合でも、もともと裁判官であった者が検察官として一定期間勤務をして裁判官に戻る場合もあり、その逆にまた、もともと検察官であった者が裁判官として来る場合もございます。さまざまでございますが、一般に人事交流と言われておりますのは、もともと裁判官であった者が検察官として勤務してまた裁判官に戻ってくる、そういった動きのことを指される場合が多いかと思います。
 その趣旨でございますけれども、やはり裁判官が検察官に出ている場合、一番人数として多いのは訟務の担当者であろうと思います。そのほか、例えば法務省の民事局を担当する場合もございますし、また法務省の外で国税不服審判所の仕事をする場合、あるいは内閣法制局の仕事をする場合、そういったようなケースもございます。
 裁判所といたしましては、法務省あるいは法務省以外のそういったところから法律実務、特に民事実務についての能力のある裁判官の需要がございます。これを裁判所として出せる場合にはやはり出して、そしてそういった需要を満たすということも必要なことであろうと思いますし、また裁判所の立場といたしましては、裁判官がこういった機会に裁判以外の職務を経験するということも、それなりに意義があることというふうに想っております。そういうことで、今法務省の官房長の方から説明されましたような人数の者が出ていっているということになるわけでございます。
○政府委員(根來泰周君) 私どもの立場から申し上げますと、現実的な要請に基づいて裁判所から出向を、出向といいますか転官をお願いしているのでございます。といいますのは、本省におきましても、民事、刑事、あるいは先日お世話になりました裁判所定員法にしましても民事関係の知識を必要だという部門もございますので、そういう現実的な必要に基づいて裁判所から転官をしていただいておるという現況にございます。
○千葉景子君 お尋ねしたところですけれども、本来は今のような御要求というのは、基本的にはみずからの例えば法務省なら法務省、裁判所なら裁判所で養成をなさり、あるいはそういう研修をなさったりすべき問題ではないかと思うんですね。しかも、裁判所から法務省の訟務担当の検事あるいは捜査、公判担当の検事という形で仕事をされて、どうもこの間の資料をいただいた中で見ても、三年くらいでまた裁判所に戻られるということになるわけですね。こうなりますと、非常に客観的といいますか、外部のあるいは裁判を受ける当事者、そういう者から見ますと、本当にその裁判官が公正に国の立場あるいは検察官の立場、そして被告人なり原告なりの立場、こういうものとの中間で、公正な立場で判断してくれているんだろうか。何か信頼を失う、公正に対する疑惑というものが生まれる土壌があるのじゃないかと思うんですね。
 またそれから、個々の裁判官の方、この個々の方の御自覚というのは、私別に非難するわけではありませんけれども、その間行政機構あるいは検察機構の中で仕事をする、そういうことによって司法の役割と、行政あるいは検察の役割、そういうものの境目というものに非常に自覚が希薄化していくのではないか、こういう懸念もあるわけでございます。そういうことを考えますと、この交流というのは非常に慎重にやっていただかなければいけない、こういうふうに思いますけれども、いかがですか。
○政府委員(根來泰周君) 先生の御指摘でございますけれども、若干意見を異にする点を遺憾といたしますが、申し上げるまでもございませんが、法曹三者を志す者は司法試験という統一試験を受けて、それから司法修理生ということで同じかまの飯を食って、その後に希望に従って裁判官、検察官、弁護士ということになるわけでございます。その後の身分につきましても、これも申し上げる話ではございませんけれども、裁判所法、検察庁法、弁護士法によれば三者の相互乗り入れということが予定されて、規定されているわけでございます。
 先ほど申しました司法試験改正問題ということになりますと、どこからともなく分離修習とか分離試験という声も聞こえるわけでございますけれども、この点については、大方の御意見は法曹一元の理念に反するものということで反対の意見が大勢を占めるのでありまして、この意見が今のところ正しい御意見だと思うのでございます。しかし、この裁判官、検察官の交流ということになりますと、このことについては、やはり反対の意見が出てくるという点については若干私ども納得いかない点があるわけでございます。
 これはもう釈迦に説法でございますけれども、法曹三者というのは、公正な司法の実現という共通の認識の上に立って、その職務を忠実に行うということを十分認識しているのでありまして、この認識を欠けば、今までの法曹一元という理念のもとに試験を受け修理を受けてきた者は、その資格がないと言っても過言ではないというふうに私どもは考えるわけであります。ですから、裁判官であった者もあるいは裁判官である者も、検察官である者も、あしたから立場を変えれば、その立場に忠実に従ってやるわけでありまして、その前の職がどうであったかということは余り関係がない。むしろ前の職については厳しい目で見ているのではないかという現実があろうと思います。そういうことで、国民の方からなれ合いというふうな印象があると言われる意見もあるわけでございますけれども、こういう点については、私どももそういう点がないということを十分理解をしていただく努力をしなければならないというふうに考えているところでございます。
○千葉景子君 個々の裁判官なり法曹に携わる者が自覚をし、その公正な司法に携わるということは、これは当たり前のことでございまして、それとは別に、裁判というものが国民の目にとっても公正に行われている、この裁判の中で自分も納得した裁判が受けられる、これが一番重要なところじゃないかと思うんですね。そういう意味では、自分が今裁判を受けている裁判官が、そのちょっと前までは国側の訴訟の代理人をやっておった人だった、あるいは検察庁で捜査、公判を担当する検事の職をやっていたというようなことになれば、個々の裁判官の非難を私はするつもりはありませんし、そういうおかしな考え方をお持ちにならないことはよくわかりますけれども、国民の目から見れば非常に不安、不信というものも出てくるのは、これはやむを得ないところだと思うんですね。そういう意味ではぜひ納得のいくような交流の仕方をしていただきたいと思うんです。
 そして、法曹一元という今お話、言葉も出てまいりましたけれども、もっともっとこういう交流をなさるんだとすれば幅広い分野、裁判所と法務省の中だけでやるということではなくて、もっと新しい場所に目を向ける、あるいは社会の実態を知った弁護士などから裁判官なども採用できるような運用をもう少し活発化する、こういうようなことも含めて法曹一元というものも考えていただきたいというふうに思います。それがひいては司法の適正あるいは民主化、こういうものにつながっていくのではないかというふうに思うんですけれども、これについて最後に法務大臣いかがでしょうか、司法の今後の適正あるいは民主的な運用ということについてのお考えを伺いたいと思います。
○国務大臣(林田悠紀夫君) 裁判官は、現在あるいは法務省へ入りましたりまた外国の大使館に勤務をするというような場合もありまして、できるだけ広い見識を持つように努力をしております。また、弁護士の方に裁判官になってもらっておることもありまするし、またもっとその数をふやしていこうということにもなっておるわけであります。その場合に、弁護士さんが裁判官になられて、その裁判がどうのこうのというようなことを言われるのでは困るのでありまして、やはり国民はそういう広い見地から裁判官が求められ、そして広い見識を持った裁判官が裁判をするということを温かい目で見ていただく、これも必要なことかと存じます。要するに法曹は三者で成り立っておるわけでありまして、三者が互いに自己を磨きながら、また互いにその地位をかえながら維持をしていくということが最も望ましいことと存じまするので、今後ともそれを推進してまいりたいと存じます。
○千葉景子君 終わります。
○猪熊重二君 刑事補償法の改正の本論に入る前に、一点別のことですがお伺いしたいと思います。
 御承知のとおり、この四月十九日に大阪高等裁判所が、生野簡易裁判所において罰金八千円で有罪とされた外国人登録証明書不携帯罪について無罪の判決を言い渡したということが新聞報道されております。そこで、この事件の概要、控訴事実の概要を簡単に御説明願いたいと思います。
○政府委員(岡村泰孝君) 控訴事実の概要は、被告人は外国人登録証明書の交付を受けている外国人であるが、昭和五十八年五月十二日午後九時二十分ごろ、大阪市東成区の道路上におきまして外国人登録証明書を携帯していなかったというものであります。
○猪熊重二君 この被告人の年齢だとか職業ないし身分、それから外国人ではあるが日本での居住歴、その辺のことについてはおわかりでしょうか。
○政府委員(岡村泰孝君) 生年月日は昭和三十六年六月二十九日生まれでございます。職業と申しますか、本件起訴当時は大学生ということであります。
○猪熊重二君 日本での居住歴等はおわかりでしょうか。
○政府委員(岡村泰孝君) そこまでは、今ちょっと判決書を見ておりますが、わかりません。何でしたら後で調査して回答申し上げます。
○猪熊重二君 私の方も質問の通告が簡略過ぎて役所には申しわけないんですが、二審判決では、被告人が日本で生まれ育ったいわゆる定住在日韓国人であるということが、非常に大きな要素として判決の上で考慮されたというふうなことが報道されておりますが、その辺の事実関係はまだ把握しておられないでしょうか。
○政府委員(岡村泰孝君) 控訴審の判決によりますと、被告人は、昭和三十六年北海道で韓国人夫婦の長男として出生したという事実が記載されておりますので、そういうことであろうかと思います。ただ、そういったことが本件無罪の理由になっているとは思えないわけでございます。
○猪熊重二君 今刑事局長がおっしゃられたように、被告人は外国人登録法に基づく外国人登録はしているし、またその登録法に基づく外国人登録証明書の交付も受けて通常は所持しているという者であった。ところが、たまたま起訴の日時、場所において登録証明書を所持していなかったということなんですが、被告人が当日その日時、場所で登録証明書を所持していなかったいきさつというか、理由についてはおわかりでしょうか。
○政府委員(岡村泰孝君) 控訴審の判決によりますと、本件検挙を受けました当時、下宿先から大学に向けて家を出ようとした際に外国人登録証が見当たらず、探してみたけれども発見できなかったので、授業時間との関係上やむなく不携帯のまま午前八時三十分過ぎごろ下宿先の住居を出て大学に赴いた。検挙されました時間は、先ほど述べましたように午後九時二十分ごろと、こういうことでございます。
○猪熊重二君 一審の生野簡裁の判決要旨をいただいて読ませていただくと、結局被告人は当日の何日か前に結婚式があった、そのためにいわゆるふだん着ているふだん着の中に入れてあった外登証を結婚式に出席するためのいわゆる背広、スーツに着がえた、そのスーツに入れておいた。ところが、結婚式から帰ってきてそのスーツから外登証を出してふだん着に入れかえるのを忘れていた。学校へ行くときになって外登証がない、どこへいっちゃったんだろうといろいろ探したけれども、もう早く行かないと、学校というのは関西大学ですが、大学の授業におくれちゃうというので、不本意ながらやむなく外登証はないことを承知ではあったけれども、どこにあったかわからぬというままで出ていったと、こういうふうなことが一審判決には摘示されております。また裁判所で認定されておりますが、いかがですか。
○政府委員(岡村泰孝君) 前日、友人の結婚式のため着用したスーツのポケットに外登証を入れていたのを失念したということが、被告人の当公判廷における供述であるという趣旨のことが一審判決に記載されているところであります。
○猪熊重二君 私が聞きたいのはこれからの話なんですが、一番中心的なことは。このお巡りさんが外登証を持っているかということのときに忘れたと、持っていないと。そのときに被告人から関西大学の学生であることを証明する学生証と、自動車運転免許証がお巡りさんに提示されたということはいかがですか。
○政府委員(岡村泰孝君) 午後九時二十分ごろに、外国人登録証不携帯の現行犯人として逮捕されたわけであります。その後、被告人は最寄りの警察官連絡所に同行されまして、そこで所持品の提出方を求められたので、関西大学の身分証明書と運転免許証などを提出した、こういう事実関係であると認められるのであります。
○猪熊重二君 まず学生証についてお伺いしますと、この学生証には氏名、生年月日、年齢、住所、大学名、学部名、学年、証明書発行年月日、証明書の有効期限等が記載され、さらにそれに写真が貼付されて、大学長の印が押されていたということはいかがですか。
○政府委員(岡村泰孝君) おおむねそのとおりの事実が判決に記載されております。
○猪熊重二君 さらに運転免許証にも氏名、生年月日、国籍、住所、交付年月日、有効期間等が記載され、写真が貼付され、公安委員会の印が押してあるということはいかがですか。
○政府委員(岡村泰孝君) 判決によりますとそういう事実が認められております。
○猪熊重二君 この運転免許証を取得するについて、日本人の場合でしたらば住民基本台帳法に基づく住民登録証明書を添付しなければならない。しかし、外国人の場合には外登証を提出しなければ運転免許証はもらえない、交付を受けられない、こういうふうなことが道路交通法施行規則十七条第二項第二号に規定されておりますが、その点は刑事局長もちろん御承知だと思いますが、いかがですか。
○政府委員(岡村泰孝君) そのとおりでありまして、要するに住民基本台帳法の適用を受けておりません外国人につきましては、免許申請に当たりまして、外国人登録証明書、旅券、その他外務省の発行する身分証明書、こういったものを提示することになっております。
○猪熊重二君 そうすると、関西大学の学生証では果たして外国人として登録し、登録証明書があるかないかということは直接にはわかりませんけれども、運転免許証があるということは、この被告人が外国人登録法に基づく外国人登録をし、それに基づく外登証の交付を受け、その証明書によって運転免許証を受けたのだから、この被告人は通常ならば外登証を持っているということは推認できると思いますが、いかがですか。
○政府委員(岡村泰孝君) 先ほど申し上げましたように、道交法施行規則によりますと「登録証明書等」という、「等」という文字が入っているわけでございます。これをさらに具体的に申し上げますと、先ほど申し上げましたように、外国人登録証明書はもとよりでありますけれども、旅券とか外務省の発行する身分証明書、あるいは権限のある機関が発行する身分証明書、こういったものを提示することになっているわけでございまして、そういう意味から申し上げますと、運転免許証を持っていることイコール外国人登録証を持っているということまで言えるのかどうか、正確に言えるのかどうかということにつきましては若干問題もあるのではなかろうかと思います。
○猪熊重二君 それは、今刑事局長がお答えになったとおりなんです。しかし、いわゆる通過する外国人じゃなくて、ずっと生年月日から全部見たときに、旅券を持ってたまたま日本に来ていた外国人であるかないかとか、いわんや外務省の発行する身分証明書を持っているなんという人はそういるわけじゃないんだし、権限のある機関が発行する身分を証明する書類なんていうものも特別に普通の人が持っているわけじゃないんだから、一般的に推認すれば外登証以外にこういう書類というものは考えられない。
 ですから、私が申し上げているのは、一般的に言えば、お巡りさんにしてもこういう取り締まりをすると同時に、道交法の問題もいろいろやっておられるわけだから、運転免許証を持っている外国人ならば外登法の手続等はきちんとやっているだろうということは一般的には推認されるんじゃなかろうか、こう申し上げているんです。その点は今局長がおっしゃったように、厳密に重箱の隅をほじくればはっきりはせぬということも私はわからぬじゃないから、それはそれにしておきますが、私が一番問題にしたいのは、この二つの証明書、学生証と運転免許証にはそれぞれ写真が貼付されているんですから、よほど特別のことがない限り、この写真の男が被告人本人であるということは当然わかるだろうと思うんです。その辺、この持っていたそれぞれの写真が被告人の本人性を特定するために支障があったとかないとか、その辺のことはおわかりになりますか。これは質問通告もしていないで急にで申しわけないんですけれども、いかがでしょう。
○政府委員(岡村泰孝君) 写真によって本人かどうか確認できたのかどうかということにつきましては、どうもその判決、私一応見たところではありますけれども、その辺は何とも判決は書いてなかったように思うのであります。
○猪熊重二君 特別のことがなければこれもお互い、お互いというか、私も推測で申し上げて申しわけないけれども、それぞれの写真が二枚あれば本人であるかどうかぐらいはわかるだろうと、これが一般的なことだろうと思うんです。それにもかかわらず、なぜ被告人を現行犯逮捕しなければならなかったかということについてお伺いしたいんです。
 現行犯逮捕の理由としては、外登証不携帯ということで現行犯逮捕したんでしょうけれども、この場合被告人を現行犯逮捕する必要はあったかどうか、その辺のお考えはいかがでしょう。
○政府委員(岡村泰孝君) 本件判決を見ましても、現行犯逮捕が違法であったというような主張はどうもなされていないようでございますし、その点の判決の記載もないわけでございまして、当時の諸般の状況から見まして現行犯逮捕の必要性があったというふうに考えられるわけであります。
○猪熊重二君 御承知のとおり、現行犯逮捕については刑事訴訟法二百十七条で「五百円以下の罰金、拘留又は科料にあたる罪の現行犯」は、現行犯ではあっても原則的には逮捕できない、こういう規定になっております。それに対して外登証不携帯罪は罰金二十万円ですから、この刑事訴訟法二百十七条の除外規定に当たらないことは当たらないんです。しかし、住民基本台帳法に基づく日本人の住民登録に関する届け出をしないことについての罰則はないんです。せいぜい科料五千円以下なんです。それにもかかわらず外国人に対しては、持っていないということについて罰金二十万円以下になっている、ここに刑の不均衡があるから、それで現行犯逮捕が法律的には、現行法のもとにおいてはやむを得ないということになるんでしょうけれども、本人の身分も、それから住居もすべてのことが明らかになっているのになお現行犯、しかも不携帯というふうなことだけで現行犯逮捕する必要があるかどうか非常に疑問である、このことを強く申し上げておきたい。
 しかも、被告人は逮捕されて、翌日釈放された後に警察に外登証を持っていって、確かに持っていますということもやっているわけでしょう。被告人が外登証を持って警察へ釈放後すぐに出向いていったという事実はいかがですか。
○政府委員(岡村泰孝君) 判決によりますと、現行犯逮捕されまして、翌日に釈放になりましてその翌日、すなわち検挙の翌々日に外登証を警察署に持参して警察官に提示したという事実が記載されております。
○猪熊重二君 被告人が、先ほど申し上げたように、いわゆる定住外国人であるということは明らかなんですが、この定住外国人であることについて一審の生野簡裁でもこういう認定をしていることを御承知だろうと思います。ちょっと文章は長いですけれども、法務大臣にもよく聞いておいていただきたいために読ませていただきます。
 約七五万人ともいわれる定住外国人ことに約六五万人ともいわれる在日韓国、朝鮮人の多くは日本が朝鮮えの植民地化政策をなしたことの結果としてやむをえず来日した人々或はその子孫であると推定できる。そおしてこの人々は本国においては半日本人と呼ばれ暖かい眼では見られず、一方日本国に対しては、日本国民と変らぬ寄与、負担をしている面が認められ、その結びつきについても本国よりも強く、生活の本拠もまた日本においていると認められ、日本の住民と認めうる地位にあるものといいうる定住外国人である。これ等の人々と一時的在留者である一般外国人とでは明らかにその実態を異にしているものと認められる。
 在留外国人の中には、在日韓国、朝鮮人の一部のように日本名を称し、日本語を話し、日常ほとんど日本国民一般と同様の生活をするばかりでなく、本国よりも我が国に定着しているというべき者があることは公知の事実である。
このように、これは生野簡裁の判決の中の認定なんです。
 ですから、この前の外登法の審議の際にも、日本に来て一年か三年で帰っていくいわゆる外国人と定住外国人は実態が適うから、法制度についても検討をし直す必要があるというふうなことを私も一生懸命申し上げたわけです。判決でもきちんと、これらの定住外国人と一時的在留者である一般外国人とでは明らかにその実態を異にしていると、こう言っているわけです。
 ただ、生野簡裁のこの判決は、これだけ言っておきながら、しかし、在日韓国、朝鮮人といえども、その各本国の構成員であって日本国民ではないからしようがないんだというふうなおかしな結論に行ってしまっているんです。
 要するに私が申し上げたいのは、このような定住外国人である被告人に対して、しかも身分関係も明確であり、学生証、免許証によって本人であることも明確であるし、不携帯の理由も過失であるし、逃亡あるいは証拠隠滅というおそれもないし、釈放後直ちに警察にも外登証を持参している。こういうふうな事実関係のもとにおいて、およそ公訴提起の必要性があるかどうか、非常に問題であると思うのです。
 それで、法務大臣にこの件に関連してちょっとお伺いしたいのです。
 去年九月のこの外登法審議の際に、本院において携帯義務に関し次のような附帯決議がなされております。附帯決議の第二項です。「外国人登録証明書の携帯義務及び提示義務に関する規定の適用については、指導に重点を置くとともに、個人の生活態様、青少年の教育にも配慮し常識的かつ弾力的に行うこと。」、このような附帯決議がなされていることを法務大臣は御承知でございましょうか。
○国務大臣(林田悠紀夫君) よく承知をしております。
○猪熊重二君 当時の遠藤法務大臣が、この附帯決議の趣旨に沿って閣議で国家公安委員長に対し、携帯義務に関し常識的かつ弾力的に運用してほしい旨を要望したという事実も御承知でございましょうか。
○国務大臣(林田悠紀夫君) 承知をしておりまして、現在そういう附帯決議の内容に沿ってやっておる次第でございます。
○猪熊重二君 私は、この附帯決議の趣旨等から考えれば、今回の被告人を逮捕する必要もないし、公訴提起する必要もないんじゃなかろうかと、私は私なりに考えております。しかし、新聞報道によると、検察庁はこの大阪高裁の無罪判決に対して上告するというふうなことを決めたようなことが報道されていますが、上告の有無についてはもう決定されたんでしょうか、いかがですか。
○政府委員(岡村泰孝君) 御指摘のような新聞報道があったことは私も承知しておりますが、現在この事件につきましては、上告するか否かを検討いたしておる段階であります。
○猪熊重二君 この場所で上告するしないということの意見表明はできないんでしょうけれども、私としては今申し上げたようなすべての状況から考えたら、上告は不適切だし、上告の理由も非常に認めがたいと思いますが、いずれにせよ結論は、今ここではまだおっしゃっていただくわけにはいきませんでしょうかね。
○政府委員(岡村泰孝君) 先ほど申し上げましたように、現在検察におきまして検討中の段階でありますので、ここで結論を申し上げることはできないわけであります。
○猪熊重二君 先ほど法務大臣から附帯決議の趣旨についての御発言もあったんですが、法務大臣としては、去年の外登法審議の際に直接審議に立ち会っておられませんでしたので、この不携帯罪についての取り締まりや処罰に関する今後の運用について、もう一度所見をお伺いしたいと思います。
○国務大臣(林田悠紀夫君) 今まで先生の御説を拝聴しておりましたが、まことにごもっともであると存じておるところでございます。
 この事件は、昭和五十八年の今から五年前の事件でありまして、その当時はまだ、この外登法改正が出ていないときでありましたので、こういう問題が起こったのだろうと存じまするが、今刑事局長が答弁いたしましたように、検察の方におきましていかにするかということを検討中でございまして、諸般の情勢も考えて検察がやるものと存じております。
○猪熊重二君 この不携帯罪のことについては以上でございます。どうもありがとうございました。
 法案について時間のある間お伺いしたいと思います。
 まず私は、今回の法案において拘禁補償についてお伺いしますが、拘禁補償の上限額を上げられること自体は非常に結構なことだと思っておるんです。ただ、上げ幅の問題で非常に不満があるわけなんです。
 そこでお伺いしますが、このいただいた資料によると、今回の拘禁補償の上限額の策定に関しては、昭和二十五年に対する昭和六十三年の賃金の上昇率、物価指数の上昇率、これを足して二で割った平均指数によって従前の額に比べて増額した、こういうことになっているようであり託す。賃金の上昇率、正確に申し上げれば三十九・五四倍、約四十倍です。賃金が四十倍になったということで四十倍に上げる。これなら私はすとんとわかるんですが、この賃金の方は国十倍に上がったけれども、物価指数は七倍しか上がっていない。だから、賃金の四十倍と、これは概数で全部申し上げておりますけれども、物価の七倍と足して二で割って二十三倍、どうしてこういうことが出てくるんだろうか、この点についてお伺いしたいんです。
 まず、物価指数七倍をここへ持ってこられるというんですが、この物価指数、昭和二十五年に比べて七倍上がったんだという、この物価指数が対象として把握している物価というのは一体何なんだろうか。これが例えば現在における一般国民の生計支出の中において、この物価指数が七倍だということによる対象の物資が生計支出全体の中にどんなふうに占めているのか、その辺は調査されたんでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(吉丸眞君) ここにございます物価の上昇率ということにつきましては、総務庁の消費者物価指数月報による全国消費者物価指数の総合というものの数値によっております。この数値は、食料、住居、光熱・水道、家具・家事用品、被服及び履物、保健医療、交通通信、教育、教養娯楽、諸雑費などを総合的に考慮して定められるものでございます。やや具体的に申しますと、ただいま申しましたような各費目が生活費の中に占めるウエートを考慮いたしまして算出されたものでございます。
○猪熊重二君 そうすると、今おっしゃられた項目だとほとんど生計の全支出、生活費における全支出を包含しているようにもとれますが、そのように伺ってよろしいわけですか。
○最高裁判所長官代理者(吉丸眞君) そのように理解いたしております。
○猪熊重二君 そうすると、現在そういう趣旨の全支出が昭和二十五年当時に比べて七倍程度であるということは、もう我々国民の実感とは全くずれている。要するに、今般高裁刑事局長がおっしゃられたけれども、賃金の方は四十倍になった。しかし消費支出の方は七倍にすぎない。そういうことになると、国民の生活は終戦直後というか、昭和二十五年当時に比べて六倍も向上しているということになるわけです、貸金との比較からいけば。到底そんなふうには思えませんけれども、その基準のとり方には間違いないのですか。
○最高裁判所長官代理者(吉丸眞君) この物価の上昇あるいは変動ということを考えます場合には、一般に先ほど申しました全国消費者物価指数というものがとられているわけでございまして、私どもといたしましては、この数字が今最も権威のあるものというふうに考えている次第でございます。
○猪熊重二君 仮にそういうことだとした場合にも、なぜその賃金と物価のそれぞれの指数を足して二で割ったものが補償金額の上限として妥当なんだということになるわけでしょうか。
○政府委員(岡村泰孝君) 刑事補償法の趣旨といたしまして、損害の全額を補償するとかあるいは賃金の全額を補償するということではないのでございまして、これまでも申し上げておりますように、簡易な手続で迅速に補償をする、それは標準的な金額の範囲内で相当な補償を行うというのが、その趣旨であるわけでございます。相当な補償といいますためにほどの程度の金額であればよいのかということは、やはり公平の観念その他から判断して出てくることになると思われるのであります。これまで七回にわたりまして引き上げのための改正が行われておるわけでございますが、この際にはいずれも経済事情を考慮いたしているところでございます。さらにそれを具体的に申し上げますと、賃金の上昇と物価の上昇というものを総合的に勘案するということでこれまでやってきておるわけでございます。今回も、基本的にはそれと同じような考え方で引上額を算定いたしたところでありまして、先ほど来から申し上げましたような刑事補償法の性格その他から見まして、賃金と物価の両者を勘案するということはそれなりの合理性もあり、相当なことであるというふうに思っているところであります。
○猪熊重二君 結局、これは基本的な考え方が違うから、両方言っていることが合わないんです。刑事局長は、相当な補償が刑事補償の補償なんだという、こういう前提に立たれるから、その相当な補償についての相当額の算定については、平均賃金と物価とこういうものを考慮するんだ、これが制定後七回の上昇のときにずっとそうやってきていたんだ、今回もそうなんだと。私はそういう考え方でなくして、刑事補償は一口に言えば完全補償、全額補償するべきである、こういう前提に立っておるものですから。
 そうすると、法制定時の政府委員の答弁にありましたように、要するに平均日額、ここで言えば平均賃金から拘束による生活費を控除してそれに慰謝料を加える。またもとのところへ戻っての平均賃金、日当と、こうなるというぐらいに考えて、平均賃金そのもの、日当そのものが、それでも完全な補償じゃないかもしれないけれども、補償という額に相当するだろうとこう私は考えるので、いろいろ申し上げているので、これはお互いの意見の食い違いでしょうがありません。
 次にお伺いしたいのは、上限を今回はお上げになる、上げ幅は少ないけれども上げていただく、こういうことになったわけです。下限の方については昭和五十三年以降千円に据え置かれたままで、今回も千円に据え置いておるということで、この件に関して関連してお伺いします。
 まず、法制定時に、昭和二十五年に上限、当時の日当四百円というのを一応策定して、下限を二百円、二分の一としたことについては何か理由があったんでしょうか。
○政府委員(岡村泰孝君) 何分古いことでございますので、つまびらかにいたしがたい点もあるわけでございます。ただ、その当時の国会の審議の状況などを見てみますと、旧刑事補償法のもとにおきましては補償金額が一日五円以内ということになっていたのであります。この五円では昭和二十五年ではもう到底低い、これは上げなければならないということであったわけでございます。その際に、上限の四百円につきましては賃金とか物価あるいは証人の日当の額、こういったものをいろいろ考慮をいたしまして、この程度であれば、一応相当な補償であるということで上限が決められたようないきさつにあると思うのであります。そのときに下限を二百円とした点につきましても、やはり上限が四百円であれば下限はこの程度だろうというような一つの常識的判断と申しますか、そういったものによって決められた金額であるように思われるのでありまして、具体的に計数上こうなるというほど詰めた数字ではないと思われます。
○猪熊重二君 先ほど来刑事局長がおっしゃっておられるように、刑事補償を定額化に、なるべく定額化に近いようにして迅速に処理する、こういうためには、上限と下限を決め、しかもその下限を上限の半分とするというふうなことも一つの妥当な考え方だろうと思うんです。そのような趣旨において、なるべく迅速に定型化して補償しようということで上限を一本だけ決める、これが一番よろしいんですけれども、迅速に処理できますから。しかし、それだけでは具体的場合に、何がしの問題もあるかもしれぬということでの半額が下限というふうにしたように思われるんですが、この半額、二分の一にしたということについて、なるべく定額化し、なるべく迅速に処理しようという刑事補償の目的から、そのようなことが策定されたというふうなことは考えられませんか。
○政府委員(岡村泰孝君) なるべく簡易迅速に補償しようという趣旨は、やはり上限の方に主として向けられるのではなかろうかと思うのでありまして、上限の範囲内で裁判所が金額を現実に決定する際に、下限はどの辺でいいかということの一つの目安、基準と申しますか、これが下限ではなかろうかと思っております。
○猪熊重二君 いずれにせよ、それじゃ今回も下限を千円にした、下限の千円をそのまま残しておくということについては、何か合理的な理由があるんでしょうか。
 要するに私が言いたいのは、裁判所の認定する幅というものが大きければ大きいほど、裁判所はどの範囲に落ちつけようかというふうに苦労があって迅速化が阻害される。少しでも幅が少なければ考える幅が少ないから早いと思うんですが、今回下限を上げずに千円としたことについての何らかの理由はあるんでしょうか。
○政府委員(岡村泰孝君) 刑事補償法が制定以来裁判所におきまして、その運用が行われてきているところでございます。その運用の状況を見てみますと、無罪になりました者の中には、積極的に身がわり犯人であると申し出て身柄を拘束されたような場合もあるわけでございます。こういった場合につきましては、刑事補償法の三条で、その全部または一部を補償しないことができると規定されておるわけでございます。そこまで明確ではないにいたしましても、これに類するような事案もあるわけでございます。またあるいは、放火なり殺人という凶悪な犯罪を犯した事実自体は動かしがたいけれども、精神分裂その他によりまして心神喪失のために責任を問えないで無罪になるという事例もあるわけでございます。
 こういった事例につきまして、余り手厚くと申しますか多くの補償を行うのはいかがなものであろうかという国民感情上の問題もあるわけでございます。そういった点も恐らく裁判所として運用されるに当たって考慮はしておられるものと思われるのでありまして、現実の運用といたしましても下限の千円あるいはそれに近い金額で補償されている事例もあるところでございます。そういった運用の実情その他を考慮いたしますと、下限の千円をそのままに据え置くのが相当であるという考えで、今回は下限を引き上げなかったところであります。
○猪熊重二君 今の補償法三条の、全部もしくは一部を補償しない場合のことは私も理解できるんです。みずから招いた拘禁というふうな場合に、それに対する補償をしない、一部しないということ、これはよろしいんですが、今局長がおっしゃった中で、心神喪失による無罪というふうなものについて補償金額を定額にする。例えば今の一番下の千円にする、こういうふうなお考えはいかがなものだろうか、こう考えるんです。
 というのは、心神喪失の無罪も無罪であることには変わりないんです。心神喪失で無罪と、正当防衛の無罪と、何にもやってない無罪と、無罪に区分けがあるわけじゃありません。要するに、今局長がおっしゃったように、理非弁別の能力が全くない人間には刑罰を科しても刑罰の目的が達せられませんから、だから無罪になっているのであって、要するに無罪に差はない。このことは国際人権規約B規約十四条六項にも、みずから招いたような場合の拘禁補償はしなくてもいいというふうな趣旨は規定されているけれども、責任能力による無罪の場合は額が少なくていいとか、そんなようなことは人権規約B規約にも全然ありません。ですから、そのような考えに基づく運用というのは不適切だと思いますが、吉丸刑事局長、いかがでございましょうか。
○最高裁判所長官代理者(吉丸眞君) 御承知のとおり、拘禁補償の金額、特は日額を決定いたしますにつきましては、刑事補償法四条二項に規定がございまして、裁判所は、これらここに規定されておりますようないろいろな事情を総合的に考慮して補償金の額を決めているわけでございます。
 実際にどの程度のところで支給されているかということを具体的に申しますと、昭和五十七年から六十一年までの間、現行の補償日額の規定の適用を受けた事件が百七十一例ございます。上限の七千二百円を含めまして六千円を超える金額を支払った例が六十九例、四〇%でございます。そして、六千円以下三千五百円を超える金額を支払った例が七十八例、四六%でございます。そして、三千五百円以下の金額を支払った例、これは下限の千円を支払った例も含みますが、それが二十四例、一四%でございます。
 そういうことで、現実の運用といたしましてもかなり高いところで決定されているという実情はあるわけでございます。ただ、中にやはり下限の千円を支払った例というのが四例ございまして、これは個々具体的な事例の中で、先ほど申しましたようないろいろな事情を考慮して、この程度が相当だということで決定されたものというふうに考えられるわけでございます。確かにおっしゃるとおり無罪に相違がないといえば相違はないわけでございましょうが、例えば責任無能力の場合の無罪、しかもこれが非常に大きな被害を及ぼしているというような場合につきましては、いわばそれに対する国民の感情と申しますか、社会的なリアクションというようなものもございますので、そのあたりも考慮して判断されているものというふうに考えております。
○猪熊重二君 この心神喪失はよる無罪に関連して一言だけ申し上げておけば、本来警察で捜査し、検察庁で捜査したその段階で心神喪失が判明していれば身体拘束はなかったんです。これを全部警察、検察庁の責任だと申し上げるわけじゃありませんけれども、やはりそれを間違って心神喪失、無罪であるべきものを拘禁して、公訴提起して裁判所まで持っていったというのは、やはりいえば国の手落ちだろうと私は思うんです。そういう意味において、心神喪失による無罪だから少なくていいんだというのじゃなくて、やはり心神喪失による無罪も同じ無罪として考えるべきであろうと、私としては考えます。
 それから時間がありませんので、今吉丸刑事局長がおっしゃられたように、裁判所の刑事補償の実際においては、相当上限に近いところが補償されているということは、私もいただいた資料をいろいろやってみまして、そのとおりだと思うんです。
 昭和五十三年から六十一年までの九年間の統計的なことをとってみましても、特に近時二、三年においては上限の八〇%から九〇%近い金額が補償されており、再審無罪の場合には五十八年から六十一年まで上限そのものの一〇〇%の補償がされている。このことは私に言わせると、裁判所も非常に努力されて上限に近い金額をやっていてくれるわけなんですが、ということは、同時に逆に言えば、もっと上限を上げればやはり裁判所も上限の補償をしてくれるんじゃなかろうかという意味において、法務省として上限をもう少し考えると。考えればやはりまた裁判所も上限に近く考えていただいて、無罪による拘禁者に対する補償がより一歩でも完全に近づくということになるだろうと思うんです。
 最後の質問としてこれだけのことを申し上げておきたいんです。
 このような無罪による拘禁補償を請求された方が、そして認容された方が昭和五十三年から六十一年まで、私がいただいた統計によると四百三十一人いるんです。同じ期間に国家賠償を請求された方が四十六人おられます。ということは、刑事補償の補償決定を受けた人四百三十一人に対し、国家賠償を請求した人は一割以上いるわけなんですが、この四十六人の国家賠償を請求された方のうち認容されたのはわずかに二件しかないんです。まだ審理中のが十三件ありますけれども、この十三件がどうなるかわかりませんが、少なくとも四十六件請求して、請求が認容されたものは二件しかない。
 こういうことになると、無罪による拘禁補償を請求した四百三十一人に比べると、四百三十一人の人が無罪にもかかわらず拘禁され、刑事補償は受けたけれども、国家賠償の方は認められたのは、今の段階じゃ二人しかいない、こういうことになる。国家賠償のこのような運用に関して、裁判所及び法務省として何か御意見があれば言っていただきたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(吉丸眞君) 請求が認容されなかった理由の多くは、公務員の故意過失が認められなかったことによるのではないかと思われるわけでございます。この故意過失に関する認定ということになりますと、個々具体的な事案にかかわることでございますし、また現在裁判所に多数の係属中の事件もあることでございますので、私どもの立場からこれについて意見を述べることは差し控えさしていただきたいと存じます。
○政府委員(岡村泰孝君) 裁判所が個々の事件について適正に判断されているところであると思うのでありまして、その数字から見まして裁判がどうかということは、私からも申し上げにくいところであります。
○猪熊重二君 最後に法務大臣に一言だけ御意見というか、御感想で結構なんですが。
 先ほどから申し上げておりますように無罪で拘禁された、こういうことで刑事補償を請求された方が四百三十一人もいるんです。この方々が大した完全でない、刑事局長のおっしゃる相当な補償をもらっているわけなんです。無罪なんです。それにもかかわらず、国に故意過失があれば国家賠償でいってそっちで満額もらえ満額もらえと、こうおっしゃっているけれども、四百三十一人のうち満額になったかならないか知りませんけれども、国家賠償で認められたのが二名しかいないということに関連して、国家賠償制度をどういうふうに考えるか、国家賠償の方でどうもいろんな観点からだめだとすれば、刑事補償の方はせめて完全補償という方向へいくかという、この辺のことについての御感想で結構でございます。それをお伺いして質問を終わりたいと思います。
○国務大臣(林田悠紀夫君) 国家賠償と申しますのは、国家の方に故意とか過失があったという場合に初めて認められるものと存ずるわけです。刑事補償は簡易迅速に相当な補償をいたしましょうと、こういう制度でありまして、やはり刑事補償を充実していくということがいいだろうと存じます。しかし、刑事補償の中でも無罪になりましても、例えば代理で出頭をしてきて無罪になったとか、あるいはまた心神の喪失で無罪になった。心神喪失の場合は、これは無罪はしかるべきでありまするけれども、しかし社会的には相当損害を与えておるというものでありまして、その辺はやはり国民として見れば考えなければならぬ点であろうと存じます。そういうことで、何にいたしましても刑事補償を相当の額ということで決めていくのが最もいいんじゃないか、かように存ずるところでございます。
○委員長(三木忠雄君) 午前の審査はこの程度にとどめ、午後一時三十分再開することとし、休憩いたします。
   午後零時二十八分休憩
     ─────・─────
   午後一時三十二分開会
○委員長(三木忠雄君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、刑事補償法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○橋本敦君 法案そのものの質問に入るに先立ちまして、一般調査案件に属することになりますが、緊急の課題でもありますので質問をしたいと思います。
 それは、我が党の緒方国際部長宅に対する警察官の盗聴事件が重大な問題になったことは、これは言うまでもありませんが、検察官の不起訴処分に関連をいたしまして、昨日東京第一検察審査会が議決をいたしまして、不起訴不当という結論を出したわけであります。この問題は非常に重大な問題でありますので、まずこの問題からお伺いしたいと思うわけであります。
 その前提として、最初に裁判所にお伺いをいたしますが、東京第一検察審査会の昨日の議決は概要要約してどういうように言っておりますか、まず御説明いただけますか。
○最高裁判所長官代理者(吉丸眞君) まず議決の趣旨でございますが、被疑者林、同久保、同田北に対する電気通信事業法違反の点についての不起訴処分はいずれも不当である、同被疑者らに対するその他の被疑事実についての不起訴処分はいずれも相当である、その余の警察官についての不起訴処分はいずれも相当であるということでございます。
 その議決の理由として、第一に電気通信事業法違反、これは通信の秘密侵害の事件でございますが、この事件につきましては、被疑者林、同久保は、緒方方の電話を盗聴しようと企て、他の警察官と共謀の上、昭和六十一年十一月中旬から下旬にかけて数回にわたり、メゾン玉川学園二〇六号室において緒方方の電話による通信内容を盗慨しようとしたものと認められる。そして、その犯情等を考えると、検察官が両名を起訴猶予にしたことは納得できないので、両名の電気通信事業法違反についての不起訴処分は不当であるというものでございます。
 次に、被疑者田北は、みずから盗聴を実行した形跡は認められないけれども、盗聴を実行する者のために盗聴場所の確保を担当した疑いが濃い。この点の共犯関係の成否についてさらに捜査を尽くしてほしいと考えるので、同人についての不起訴処分は不当であるというものでございます。
 その余の警察官につきましては、本件盗聴は警察官らによる組織的な犯行と推測されるので、先ほどの被疑者林、同久保のほかにも警察官が加わっていたというふうに考えられるけれども、右両名を除いては、この犯行に加わった警察官を検察官の捜査によっても割り出すことができなかったので、今後さらに捜査を続けても、この点を割り出すことは難しいのではないかと思われる。そのような意味で、これらの警察官に対する不起訴処分はやむを得ないというものでございます。
 次に、有線電気通信法違反、これは有線電気通信の妨害の事件でございますが、これにつきましては、本件盗聴のための工作は緒方方の電話による通話を盗聴するためのものであって、神奈川県警の警察官らによる犯行であると推測されるけれども、しかしだれがそれをやったかということを割り出すことはできなかった。今後さらに捜査をしても犯人を割り出すことは難しいと考えられるので、この事件についての不起訴処分もやむを得ないというものでございます。
 最後に、公務員職権乱用の点でございますが、これにつきましては、本件について公務員職権乱用罪が成立するかどうかは刑法の解釈の問題である。いろいろ考えたけれども、この点に関する検察官の判断を誤りであると言うこともできないので、不起訴処分は相当であると判断した。
 以上のとおりでございます。
○橋本敦君 最後の職権乱用罪の成否については、今東京地裁、さらにその決定に対する抗告ということで議論が続けられておるわけですが、この議決について注目すべきところは、職権乱用罪が頭から成立しないものとは、この審査会としてはそうは必ずしも考えていないのであって、職権乱用罪が成立するという申立人側と、法律上これは成立しないという検察官の意見、そのどちらを正しいとするか判断に苦しむところであると、こう書いていますね。したがって、そういう意味では職権乱用罪の成立の余地について、気持ちの上では検討はなされる必要があるという、そういうことも踏まえておるということがうかがわれると思うんですが、いかがですか。
○最高裁判所長官代理者(吉丸眞君) 内容が検審の議決でございますので、私どもはいわばその検審の事務方を預かるという立場でございます。そういう立場から、この検審の議決の内容についてコメントをすることは差し控えさせていただきたいと思います。
○橋本敦君 だから、職権乱用罪が成立しないと判断したその結論はありますが、その過程で、私が言ったようにどちらが正しいかの判断は苦しむところであるという趣旨の理由づけがなされている、その事実は間違いありませんね。
○最高裁判所長官代理者(吉丸眞君) そのような文章があることは間違いございません。
○橋本敦君 さてそこで、この検察審査会制度というのはどういう基本理念に基づいて戦後法制度の中で設けられるようになったのか、その基本理念、それからこのような議決がなされた、その議決の拘束力はどのようなものとして考えているのか、その点御説明いただきたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(吉丸眞君) 検察審査会制度は、検察官の公訴権の実行に関し民意を反映させて、その適正を図るということを目的とする制度でございまして、くじによって国民から選ばれた十一人の人々によって構成される合議体である検察審査会が、検察官の公訴の提起をしない処分の当否の審査及び検察事務の改善に関する建議または勧告を行うこととされております。検察審査会が審査の結果議決をした場合には、議決書の謄本を検事正に送ることとなりますが、送付を受けました検事正は、法第四十一条によりまして議決を参考にし、公訴を提起すべきものと思料するときは起訴の手続をしなければならないというふうに定められております。この法の趣旨から申しますと、検事正は検察審査会が不起訴不当、起訴相当の議決をした場合にも、これに拘束されることはないというふうに解されるわけでございます。
○橋本敦君 法律上拘束されることはないというのは私も承知しておるわけです。この制度本来の趣旨から見て、検察側の処分に対して十分再考を促すという立場での制度構造ですから、拘束力がないという理由で検事正つまり検察当局は、この議決について十分な考慮を払わなくてよいというのではなくて、十分な考慮を払うということは、これは法的拘束力とは別に制度的に要請されている重要な課題ではありませんか。
○最高裁判所長官代理者(吉丸眞君) 検事正が、この議決に対して十分な配慮をして起訴の手続をするかどうかを決めるということは、法律の期待しているところではないかと考えます。
○橋本敦君 まさに法律が、そのように期待するゆえんのものは、検察官の処分という国家権力の専権的な事項について、司法全体の民主的な立場から国民の側、つまり市民の側からの意見の反映ということによって司法の妥当性、公正性を民主的な国民レベルでも担保しようという大事な制度ですから、そういう意味では検察審査会制度というのは、我が国司法全体の民主的な体制を守る上で極めて大事な制度であるという、そのことの認識は、私はこれは共通して大事だと思うんです。法務大臣、その点の認識は私は共通だと思いますが、いかがですか。
○国務大臣(林田悠紀夫君) 検察当局におきましては、この検察審査会の議決を受けまして該当する事件を再起して、改めてその処分を検討することとなるものと承知をしておりまして、その上で適切な処理がなされるものと存じております。
○橋本敦君 今大臣がおっしゃった議決を受けて再起をする、つまり捜査のレビューをするということは、まさに、今私が指摘した検察制度の民主的理念に沿う当然の要請に基づくことだと、そのことを確認したわけですが、それはそれとして、最高裁にもう一点お伺いします。
 検察の議決に基づいて、今大臣も言われた捜査を誠実にやるという立場をおとりになるはずですが、その結果として、近年の統計的状況によりますと、起訴されたケースというのは、起訴相当あるいは不起訴不当の議決案件の中でどれくらいの数になっておりますか。
○最高裁判所長官代理者(吉丸眞君) 最近三年間の状況について御報告いたします。
 昭和六十年におきましては、起訴相当、不起訴不当の議決が五十八件ございました。そのうち十三件につきまして起訴されております。また四十四件につきまして不起訴が維持されております。残りの一件が未処理ということになります。次に、昭和六十一年におきましては、起訴相当、不起訴不当の議決がされた件数が四十四件でございます。そのうち十一件について起訴がなされております。二十二件について不起訴が維持され、残りの十一件は未処理という状況でございます。それから昭和六十二年には、起訴相当、不起訴不当の議決が九十五件ございました。そのうち二件について起訴がされ、九件について不起訴が維持されております。残りの八十四件は未処理という状況でございます。
○橋本敦君 検察審査会にかかる全案件の中で、起訴相当もしくは不起訴不当という議決が出る率というのは平均してどのくらいですか。
○最高裁判所長官代理者(吉丸眞君) 検察審査会法施行以来の全部の数字について申しますが、既済の事件が全部で七万五千二十四件ございます。そのうち起訴相当、不起訴不当の議決があったものが五千百三十件でございます。不起訴相当の議決があったものが五万六千八百二十七件、その他が一万三千六十七件、このような数字になっております。パーセントで申しますと、起訴相当、不起訴不当の議決があったのは全体の六・八%ということになります。
○橋本敦君 ですから一つは、こういう検審の起訴相当、不起訴不当という議決が出るのは非常に少ないケースであるということがうかがわれる。しかし、その少ないケースではあるけれども、検審が慎重に考えてそういう議決をしたということになりますと、今度は、先ほど三年間の例でお話いただきましたように、起訴されるケース、これは六十二年は九十五件中二件ですが、いまだ八十四件が未処理、処理中ですから、この二という数字は直接に参考になりませんが、六十年は五十八件中十三件が起訴された、六十一年は四十四件中十一件が起訴された。こういうことですから、当初の検察官の不起訴処分を是正して、国民の世論やあるいは国民的視野にこたえるという方向で、検察当局も検審の結果を誠実に受けとめている状況もここにはあらわれていると、この数字では見られるわけですね。
 そこで、今度の件につきましても、この議決を受けてどうなるかということがこれからの課題になるわけですが、まず前提としては、この検察審査会制度の趣旨、理念、これをしっかり踏まえて、この議決を誠実に受けとめて対処をするということを基本的な態度としてもらいたい、こう思うんですが、刑事局長いかがでしょうか。
○政府委員(岡村泰孝君) 検察といたしましては、そういう方針で本件に対処するものと思っております。
○橋本敦君 現に東京地検の山口次席検事も昨日はこれを受けて、事件を再考し、そして必要な範囲で捜査もさらに行うということを言明されておるようでありますが、間違いございませんか。
○政府委員(岡村泰孝君) 東京地検次席検事の発言につきましては、私承知いたしておらないところでございますが、要するに東京地検といたしましては、検察審査会法四十一条の趣旨に従いまして、本件につきまして再検討を行うものと思っております。
○橋本敦君 今おっしゃった再検討というのは、具体的に今までの経過を再検討すると同時に、必要な範囲で捜査を再起する、そしてまた再捜査をするということも当然含まれていくというように考えてよろしいわけですね。
○政府委員(岡村泰孝君) 再捜査の要否を含めて検討するということであると思います。
○橋本敦君 そこで、再捜査の必要が極めて高い事案だということを私は強調したいわけでありますが、そのためには何といってもまず、この事件の重大性を改めて認識をしていく必要があると思います。
 この件につきましては、今問題になっております検察審査会の議決自体が明確に事件の重大性を次のように言っております。
  証拠によると、この犯行は、神奈川県警の警察官らが組織的に行っていたものと推測される。
  犯罪の取り締まり、国民の権利の保護に当たるべき警察官らが、あえて法律を破って国民の通信の秘密を侵すような犯罪を組織的に行ったという点で、事件は重大であり、社会に与えたショックも大きかった。
  このように、警察に対する国民の信頼を裏切り、これらの犯行に加わった警察官らの責任は重いといわなければならない。
こう言っております。これは私は、国民の立場から、市民の立場からそしてまた憲法を守るという立場から見て、この議決の趣旨は極めて当然だと、こう思うわけであります。大臣はこの議決の趣旨についていかがお考えでしょうか。
○政府委員(岡村泰孝君) ただいま御指摘のありましたような趣旨の議決がなされたことは事実でございます。
 検察といたしまして、こういった議決の趣旨を参考にいたしまして今後処分の再検討をするのでございまして、今の段階で検察はどう考えておるかということはやや申し上げにくいところであります。
○橋本敦君 この議決の趣旨を参考にして今後再考していくということですから、それは当然のことでしょう。
 言うまでもありませんけれども、公務員一般は憲法を擁護する義務がある。とりわけ警察官は警察法の基本原則に基づいて法そのものの規定で、政治的中立を保持しなければならないとはっきり決められている。これは大臣もよく御承知のとおりであります。そういう警察官が政党の幹部の宅に対する盗聴行為をやるということは、憲法で保障された政治活動に対する国家権力の不法な侵害であると同時に、警察法に示された警察官のみずからの政治的中立を侵すという、そういう重大な疑惑のある重大な事件だということの認識は、大臣も変わりないと思いますが、いかがですか。
○国務大臣(林田悠紀夫君) そのとおりでございます。
○橋本敦君 したがって、そういった趣旨に沿う検審の議決の趣旨は、私は極めて正しいものだというように思うわけであります。
 そこで、この議決について、さらに内容にかかわってお伺いしてまいりますが、一つは検察官が、問題となった神奈川県警の林敬二巡査、久保政利巡査部長、それから田北紀元警部補、これを不起訴にした理由の一つに、この盗聴事件が未遂であるというように認めたことを不起訴にした情状の一つにしていたわけでありますが、この検察審査会の議決は、その点については本件の盗聴は未遂とは認めていなかった、認めなかったことが明白であります。「盗聴を未遂と認めているようであるが、」検察庁は不起訴理由として「盗聴が相当長期にわたり、現場に消去した録音テープが残されていたことから見て、常識的に盗聴が成功したと見る方が自然であり、少なくとも、盗聴が未遂だから実害がないという理由で本件の情状を軽く見ることはできないのではなかろうか。」、こういうふうに言っておりますが、これは私は、まさに健全かつ常識的な市民の立場から見た本件に対する鋭い見方だと思うんですね。
 この件が未遂とは言えない、既遂であったと推認されるということは職権乱用に関する付審判請求で東京地裁決定が出ておるわけですが、この東京地裁決定でも、これは未遂ではなくて、「前記のとおり使用後消去された形跡のある録音テープが存在していたことなどからみても、具体的日時を特定することはできないが、警察官において盗聴に成功したものと推認することも十分に可能である。」と判示しているわけであります。
 だから、すべての記録、証拠に照らして裁判所がこういう判断をし、検察審査会が重ねて本件は未遂だったとは言えないということを今指摘したように指摘したという事実は、これは検察官にとって証拠の再検討の上で、まず厳密に見直してもらわねばならぬ一つの重大な事実だと思うのですが、刑事局長いかがですか。
○政府委員(岡村泰孝君) 議決の趣旨を見ましても、何月何日の分が既遂であるかという、そこまでの事実が認められるとまでは言っておらないわけでございまして、前後の状況から見て、常識的に既遂と見る方が自然であるという趣旨であろうかと思います。もちろんこういう趣旨につきましては、検察におきまして、これを参考にいたしまして今後再検討を行うものであると思っております。
○橋本敦君 ぜひともこれは、裁判所も言っているそれから検審も言っている、不起訴にされた重要な事情の一つだったわけですから、今おっしゃったように厳しく再検討してもらわねばならぬ問題だと思うのであります。
 それから次の問題として、この電話盗聴事件が組織的な犯行であったという判断、これが重要であります。
 この点について言いますならば、まず刑事局長にお伺いしたいのですが、検察庁の当初の原処分のときにも、この事件が今問題になっている三、四人の警察官の犯行ということだけにとどまらず、組織的犯行の疑いがある、そういう事件であるという認識は、これはお持ちでしたですか。
○政府委員(岡村泰孝君) 検察が不起訴処分にいたしました際の理由といたしまして、明確に組織的犯行とまでは認めていなかったところでありまして、被疑者両名を含みますその他複数の警察官によって行われた疑いがぬぐい切れないところである、こういう認め方をしたところであります。
○橋本敦君 そしてもう一つ、刑事局長ね、不起訴にした理由の情状として、現実に関与したと見られる巡査部長やあるいは巡査など、これだけを起訴して処罰するということは、これらの人たちが指揮者もしくは首謀者とは認められないから、したがって酷に失するということで情状を言われたことは間違いありませんね。
○政府委員(岡村泰孝君) 御指摘のようなことも不起訴の理由の一つであったわけであります。
○橋本敦君 したがって、その理由から逆に推論するならば検察庁も、指揮者、首謀者がほかにあった、しかしそれはわからないと。この問題となっている巡査部長などは、その首謀者でないからこれだけを処罰するのは酷だということになったわけですから、基本的には組織犯行であったということを検察庁も、これはわかっておられたと言わざるを得ないと私は思うのですが、その点について今指摘をしました議決は明白にこう言っております。「証拠によると、本件盗聴は、警察官らによる組織的な犯行と推測され、被疑者林、同久保を指揮し、又はこれと協力した警察官らがいたと考えられる。」、こう言っているわけであります。
 まさに証拠によりあるいは犯行の態様、末端の警察官が厳しい指揮系統下で仕事をする警察部内において単独で、自分の個人的な意思でかかる犯行に及ぶなどということは、これはだれが考えても考えられませんから、この議決が、「証拠によると、」ということで、証拠によっても、そしてまた一般的に今私が指摘したような判断からしても、警察官らによる組織的な犯行だと推測される。こう言っていることも、これは今後の再考をしていく上でも重要な事実と考えるべきだと思いますが、いかがですか。
○政府委員(岡村泰孝君) ただいま御指摘のありましたような議決の趣旨につきましては、検察といたしましても、これを参考といたしまして再検討いたすところであると思っております。
○橋本敦君 その点は、この議決だけではなくて、同じ証拠に基づいて、すべての資料を勘案して東京地裁が付審判請求で出した決定にもはっきりとこう書いているわけですね。「しかしながら、当裁判所における事実取調べの結果によっても、被疑者林及び同久保が上司の指揮命令を受けることなく、その独自の判断により本件盗聴を行ったものとは到底認められず、」、「到底認められず」、まさにそのとおりだと思います。「それが何者であるかを特定することはできないが、他の警察官と共謀のうえの組織的行為と推認することができるのであり、」云々と、こうなっています。こういう判示部分があることも刑事局長はよく御存じでいらっしゃいますね。
○政府委員(岡村泰孝君) 承知いたしております。
○橋本敦君 したがって、今後の再検討の課題の一つは、この組織的な犯行の全容を可能な限り明確にしていくということが、今度の議決でも要請されたものと受けとめるべきだと思いますが、いかがですか。
○政府委員(岡村泰孝君) 検察としては、その点、不起訴にいたします段階におきまして捜査は行ったところでございますけれども、その捜査の結果をさらに踏まえまして、今後どうするかということにつきまして検討をいたすものと思っております。
○橋本敦君 刑事局長、そのとおりですが、今後どうするかということについて検討される際に、今私が指摘した検審の議決あるいは裁判所の決定も十分踏まえてなされることが必要だと思うのですが、いかがですかと、こういう意味です。
○政府委員(岡村泰孝君) そのとおりであります。
○橋本敦君 そこで、具体的にこの議決に即して話を進めたいのでありますが、神奈川県警公安一課の林敬二巡査及び同久保政利巡査部長に対して、この議決は、この二人についてはこう言っております。
 被疑者林、同久保は、警察組織の中では末端に近い者であるが、本件の盗聴については、現場にいて相当重要な役割を果たしたと考えられる。また、両名とも犯行後反省しているとは認められない。
  このように考えると、被疑者両名の犯行が個人的な利欲に基づいて犯されたものとは認められないことなど有利な情状を十分考慮しても、検察官が右両名を起訴猶予としたことは納得できない。したがって、被疑者林、同久保の電気通信事業法違反についての不起訴処分は不当である。
こう結論しています。
 この議決の趣旨は、結論的に言うならば、再捜査あるいは資料の調査を要するまでもなく、現にこれまで検察庁の手元に集められた証拠や資料を検討して、その結論として、この二人は現場で重要な役割を果たしたと考えられるし、反省もしていないという点も踏まえて、この事案の当初に述べた憲法的重要性からしても、不起訴にしたこと、起訴猶予にしたことは納得できないと、はっきり言っているわけですね。
 これは次に述べる田北に対するこの検審の議決が、この田北については「共犯関係の成否について、さらに捜査をつくして欲しい」、こう言っているのと非常に違っています。田北についてはもっと捜査をすべきであるし、その必要があるでしょう、捜査してもらいたい。しかし、この二人についてはそういった捜査を必要とするまでもなく、不起訴佐したそのこと自体はこれは不当であると、こういうように検審は議決したんです。趣旨はこのように私は解しておりますが、いかがですか。
○政府委員(岡村泰孝君) 被疑者林、久保につきましては、検察官が不起訴処分をした段階において収集いたしました証拠に基づきまして、検察審査会として先ほど御指摘のありましたような趣旨の議決をなしているところでございます。被疑者田北に関しましても御指摘のとおりでありまして、これにつきましては、さらに捜査を尽くしてほしいと考えるというのが議決の趣旨であります。最初の二名につきましては、そういう趣旨はないということから見ますと、御指摘のように、最初の二名につきましては本件不起訴記録自体で判断をいたしたというふうに思われるわけであります。
○橋本敦君 したがって、私はこの両名、つまり田北を除く林と久保については、結論は不起訴処分は不当であるということになっていますが、検審のこの議決の趣旨としては起訴相当とほとんど変わらない、そういうぐらいの心証で議決をしていると、こう読み取るわけでありますが、裁判所いかがお考えですか、この議決の趣旨。――実質的に起訴相当と近いものと受け取っていいのではないかという質問です、簡単に言えば。
○最高裁判所長官代理者(吉丸眞君) 不起訴不当と起訴相当の区別といたしましては、起訴相当ということになりますと、これは単なる過半数ではなくてさらに多数の票が必要だということもございますし、これは検察審査会自体が、起訴するべきであるという判断を示す場合であろうと思います。不起訴不当というのは、いわばそれより一段落ちるわけでございまして、我々としては不起訴にしたのは納得できないという趣旨にとどまるものであろうと思います。そして、そういう議決がなされました場合に、理由などを考え合わせましていろいろ解釈の余地は出ょうかと思いますが、その解釈につきましては私ども意見を述べることは御容赦いただきたいと思います。
○橋本敦君 私が質問した趣旨はわかっておられると思うんですが、起訴相当よりも一段低いものだというように単純にそう受け取って、この事件を再考していく際に、そう単純に受け取っていいものじゃないよと、起訴相当に近い、そういう積極的な判断が示されていると見るべきですよ、こう思いませんかと、こういう質問なんですよ。起訴相当と不起訴不当という、こういう議決の趣旨があることはよく知っていますから、だからこれは起訴相当より低いんだよと、そう開き直って簡単に受け取れるようなものとして考えたらこれはいけませんよと。そういうことは、この議決の趣旨自体から積極的に酌み取っていくべきではないかということを言ってるんですけれども、審決の趣旨そのものについては、私の今の質問にかかわらず解釈と判断は避けたいということですか。
○最高裁判所長官代理者(吉丸眞君) 私どもといたしましては、検察審査会の結論をそのまま受け取るというようなことが、いわば立場上そういうことでございますので、解釈にわたることにつきましては意見を述べることを差し控えさしていただきたいということでございます。
○橋本敦君 わかりました。どっもにしても、不起訴不当、起訴猶予にした本件処分は不当であるということを言う結論の以前に、今私が指摘したように明確に言っているわけですから、これはまさに再考し、かつ起訴に向けて積極的に事案を見直していくということが要請されている議決だというように検察庁としても受け取ってもらいたいと思うのですが、刑事局長いかがですか。
○政府委員(岡村泰孝君) 東京地検におきましては、検察審査会法四十一条に規定されておりますように、その議決を参考にいたしまして、「公訴を提起すべきものと思料するときは、起訴の手続をしなければならない。」わけでございまして、今後の検討におきまして、公訴を提起すべきかどうかにつきまして慎重に検討をいたすものと思っております。
○橋本敦君 田北については、これはあの盗聴をするためのアジトを借り受けるのに、この田北という警部補の息子さんの名義で借りたわけですから、その息子さんが、そこに住む必要性がさらさらないことはもう客観的証拠で明らかですね。だから、そういう意味で関与していることは明らかになった。
 刑事局長に伺いますが、まず争いがないように事実の確認ですけれども、この田北という警察官の息子さんの名義でこのアジトが借り受けられたこと、そしてこの息子さんがここに住まわなきゃならない客観的必要性は、特に具体には何も存在しなかったこと、現にここに住んだ形跡と事実のないこと、この事実は明確ですね。
○政府委員(岡村泰孝君) かなり具体的な中身の問題に入ってくるわけでございまして、その辺のところにつきましては、現在検察審査会から不起訴不当ということの議決を受けている段階でございますので、余り具体的な捜査の中身につきましては申し上げにくいところでございます。ただ、先ほど御指摘のありましたように、検察審査会におきましては、田北の長男が自分の意思でこの部屋を借り受けたとは考えられず、父親である被疑者田北の依頼で借りたと見るのが自然であるということを議決で述べていることは、そのとおりであります。
○橋本敦君 議決がそのように述べていることについて、特に検察庁として事実の重大な誤認があるとか、あるいは明白に違っているとかいうことがあれば言ってもらいたいんですが、特にそういうことを言わなくちゃならぬ必要性はありませんね。
○政府委員(岡村泰孝君) ただいま申し上げましたように、東京地検におきまして今後検討をしなければいけない段階でございますので、今直ちに結論めいたことは申し上げにくいところであります。
○橋本敦君 しかしどっちにしても、議決がこのように言っていることは、これはやっぱり今後の捜査をさらに行うとか、あるいは処分を検討する上で重要な事実として当然受けとめていただけることは間違いないですね。
○政府委員(岡村泰孝君) 今後の検討の際に、こういった議決の趣旨は十分参考にいたすものと思っております。
○橋本敦君 これから法務大臣にも御質問をさしてもらいたい部分も出てくるのでお聞きいただきたいのですが、今回のこの検察審査会の議決はどう受けとめるかと、これですね。私は、これはなるほど職権乱用は認められなかったとか、それからこの三名以外については不起訴処分が不当とは言えないとかいう部分があるけれども、重要な盗聴事件のまさに実行行為を中心とする部分については、これは不起訴にしたということについて厳しい反省が求められる議決になった。そういう意味では、検察庁が行った起訴猶予処分、不起訴処分というものに対して厳しい批判がなされたと、こう受けとめるべきだと思うんですが。
 この検察審査会というのは御存じのように、文字どおり市民の代表という性格を持ちます。特定の者が特定の方法で選ばれるのじゃなくて、アトランダムに市民的代表ということで構成されるという意味において、この検審の議決は国民世論の反映あるいは市民の常識の反映と、こう見るべきだと思います。そういう意味で、国民の世論あるいは市民の常識の面から見て、検察庁の本件盗聴事件に関する処分に厳しい批判が加えられたものと謙虚に受けとめるべきだと、私はこう思うんですが、大臣はいかがでしょうか。
○国務大臣(林田悠紀夫君) 御承知のように、我が刑事訴訟法におきましては、いわゆる国家訴追主義、検察官の起訴独占主義、起訴便宜主義がとられておりまして、そこで検察審査会によりまする検察官の公訴を提起しない処分の当否の審査及び検察事務の改善に関する建議、勧告を通じて検察官の公訴椎の実行に関して民意を反映させて、その適正を図ろうとしたものであると、かように理解をしております。
○橋本敦君 大臣がおっしゃるとおりですね。ですから、民意の反映として今度の議決がなされたということは、民意の側からの批判として検察庁は謙虚に受けとめてもらいたいし、受けとめるべきだと思うのですが、いかがですかと、こういう質問でございます。これは大臣の方がいいんですけれどもね。
○政府委員(岡村泰孝君) 大臣も同じようなお考えであろうかと思いますので……。
 御指摘のありましたように、検察といたしましては、検察審査会の議決で不起訴処分が不当であるとされたことにつきましては、謙虚に受けとめているところであります。
○橋本敦君 なぜこういう批判を招く事態になったかということについては、いろいろな原因があるでしょう。一つは、きょうは警察庁に来てもらっておりませんが、警察庁と警察が一貫してこの犯行の事実を隠したということは、重大なこういう検察庁が批判を招かざるを得ない理由になったと思いますよ。あくまでもしらを切る、そして検察官の調べに応じても、新聞で報道されるところでは、色眼鏡をかけたまま、チューインガムをかんたまま、うそぶいて何も答えようとしない。そして国会では、検察庁に協力して事案の真相の解明に全力を尽くせと言うと、そのようにしますと、こう言いながら全然検察庁の捜査に協力をしないという、文字どおり警察の犯人隠し、証拠隠滅、これがあったと私は思いますから、この点は警察の姿勢として私は絶対に許すことのできない厳しい批判が必要だと思います。
 それと同時に検察庁も、我々がかねてから現場の実行行為者の犯行が具体的に証拠によって、指紋が出てきた、毛髪が出てきた、テープが残存している、それからアジトを借りるについて家主側に出す保証人の住民票、これを役所へとりに行ったのも警察官であった。あるいは家賃のための送金が、これが銀行から行われたそのルートもはっきりしたなど、これはかつて見ないほど証拠があった。だから、直ちに強制捜査に踏み込んで、県警に対する押収捜索もやる、それから被疑者となっている者に対しては必要な範囲で強制捜査に踏み切るなど、徹底した捜査をやれということを厳しく要求をしてきたし、国民世論もそうであったと思うんです。ところがそれに踏み切らなかったということが、犯行の全貌を明らかにしないだけでなくて、今日のこういう批判を招く要素にもなった。
 特に検察庁は、県警本部長やあるいは警察庁の警備部長など、こういった人事異動、これについて、その人事異動と絡ませながら水面下の決着を事実上警察との間でやったという要素を、私は客観的に見てぬぐいがたいと見ておるんですが、そういった検察の毅然としない態度も、これは今回の批判を謙虚に受けとめる一つとしてみずから厳しく正していただくことも、今後の捜査再検討の中に十分に生かしてもらうという意味において、そこのところはしっかりと受けとめてもらいたい。そのために、今後必要な組織的犯行の全貌の解明、先ほどおっしゃった必要な捜査を遂げる中では、必要な場合には強制捜査も改めて含めて、断固たる捜査を遂げるという決意で臨んでもらいたいと思うし、そのことが今回の議決を謙虚に受けとめる大事な課題だと私は思っておるのですが、刑事局長いかがですか。
○政府委員(岡村泰孝君) 不起訴処分にいたす前の捜査におきまして、逮捕といったような強制処分を行ってはいないところでございます。強制処分を行うかどうかにつきましては、やはり捜査全般の中で判断していくべき事柄でございまして、今後とも東京地検といたしましては本件につきまして、議決の趣旨を参考にいたしまして慎重な検討を行い、適正な処分を行うものと承知いたしております。
○橋本敦君 じゃ大臣、この点の最後で、今局長がおっしゃったように、厳正にやるということの一語に尽きるわけですが、国会でもたびたび論議をされ、当時の中曽根総理も、こういう犯行は二度と起こしてはならぬ、再発防止を厳しく通達して、こういった犯行を根絶したいという決意を表明されたわけですね。
 そこで大臣、検察庁がこの議決を真剣に受けとめて必要な捜査は、これは何にも遠慮しないでやるべきものはやるという決意で臨んでいただくということについて、大臣としても決意を新たに、こういった民主主義に反する犯行は絶対再発を許さぬという決意も込めて捜査を指示し、督励してもらいたいと思いますが、いかがですか。
○国務大臣(林田悠紀夫君) 先ほども申し上げましたように、該当する事件を再起しまして改めてその処分を検討することになると、かように承知をしております。
○橋本敦君 それはわかっておる。毅然とした決意で、本当にこの議決にあらわれた国民世論にしっかりと検察はこたえるという方向でやるということについて激励もし、大臣としてやっぱりそういう方向でやるべきだという、こういう御意見で承っておきたいと思うんですが、どうですか。
○国務大臣(林田悠紀夫君) そのとおりでございます。
○橋本敦君 それではこの件はこれで終わりまして、あと時間が十分しかございませんけれども、法案についていろいろあったんですが、もう最後になりましたので二点だけお聞きしておきたいと思います。
 一つは、参考人のときにも申し上げたのでありますが、死刑の確定判決を受け、そしてその死刑の執行のために日々拘禁をされるということに死刑囚はなるわけです。しかし、再審でそれが無実であるということを多年にわたって争い続けて、ついに再審請求が入れられて天下晴れて無罪になるということが、これまでの免田事件や松山事件等で現にあるわけですね。そこで、拘禁の間の刑事補償については、一般的な精神的慰謝料の問題もまだまだ不十分ですが、とりわけ死の恐怖、つまり死刑囚は、再審の訴えを出しながら、なかなか開かれない再審の門に苦しみながら、あすにも死刑が法律的には執行される可能性の中で、日々死と直面するわけです。こういう意味において再審無罪になった死刑事件については、死の恐怖ということも考えて特別の慰謝料というものを考慮する必要があるのではないか。
 現にこの点につきましては、下級審の判決ですが、東京地裁でヘリコプターの墜落事故に関連をして、たまたま幸い命を助かった人からの申し立てで、死の恐怖という特別の慰謝料、死に直面してはかり知れない精神的ショックを受けたとして、損害賠償請求で慰謝料を請求した事件について、裁判長は、通常の交通事故などに比べ精神的苦痛は大きく、特に慰謝料を考慮する必要があるという判断を示して認容をしている例があります。こういうことから見て、死に直面しておった者の補償については、そのはかり知れない精神的苦痛についての特別の慰謝料ということを考慮するようにすべきだと私は思うんですが、そういったお考えはあるのかどうか。
 それからもう一つ、再審の問題についてお伺いしたいのは、刑事補償で費用補償がなされるのは、再審の請求の間何遍鑑定をやり、申し立てをやりやっても出てこなくて、再審開始が決定された後の再審の間における訴訟費用だけ、こうなりますね。ところが、再審の事件で一番金がかかり長期にかかって苦労するのは、再審決定をもらうまでの努力ですね。再審決定がなされた後はそうかかりませんが、それまでが大変な証拠収集から、鑑定から含めて、弁護人も被告人も苦労するわけです。だから、そういう意味では再審請求手続における費用補償、費用弁償、これも考慮するのが妥当であると思うんですが、この二点についていかがでしょうか。
○政府委員(岡村泰孝君) まず第一点の死の恐怖と申しますか、そういったものに対する慰謝料を特別に補償すべきではないかという点でございますが、この点につきましては、現行の刑事補償法は、簡易迅速な救済を図るという考えから定型的な補償ということを考えているところでございます。補償の上限額の中には、そういったいわゆる精神上の苦痛と申しますか、慰謝料と申しますか、そういったものも全体を含めました金額であるというふうに理解をされているところでございます。現在のところ、明確に死の恐怖に対する慰謝料まで含まれているのかどうかと言われますと、私もちょっとお答えはいたしがたいところでございますが、今言いましたように、一般的な慰謝料としては含まれていると考えられるのであります。
 ただ、刑事補償の一層の充実ということにつきましては今後ともいろいろ努力はいたしたいと思っているところであります。
 次に、再審請求審におきます費用が補償の対象にならないかということでございますが、現在、刑事訴訟法で定めております費用補償制度のもとでは、再審請求審の費用は補償の対象にはなってないところでございます。これは、それなりの理由があるわけでございまして、費用補償の制度は、検察官の故意過失にかかわらず客観的に定型化できるような費用を補償しよう、しかもこれもまた迅速公平に補償しよう、こういうことがその趣旨であるわけでございます。そこで、客観的に定型化できる公判期日等への出頭のための旅費あるいは日当、こういったものに限っているところでございます。どこまでの範囲を補償するかという問題は、やはり我が国の法制全体あるいは補償制度のあり方とも関連いたしてくる問題でございます。こういった問題につきましては、やはり慎重な検討が必要であろうかと思っているところであります。
○橋本敦君 これは将来とも制度的問題として、また議論をしていくことにいたしましょう。
 もう一点最後にお伺いしたいのは、刑事補償法の補償対象は、これは言うまでもなく抑留または拘禁されたというそのことが前提になっておりますね。
 しかしながら、無罪判決を受ける人の中には、拘禁されない、在宅のまま起訴された裁判で無罪判決を受ける人もたくさんいる。この間刑事局長にお伺いいたしますと、公訴提起の時点で拘禁されている者とそれから非拘束で起訴される者と、大体五〇%前後の割合ということですから、かなりの人が非拘束で起訴はされたが非拘束で無罪になる可能性もあるんですね。ところが、これは今の法律の補償対象にならない。しかし、身柄は拘束されないけれども、刑事事件で被告人として起訴されたということを通じて、長い裁判期間の間、社会的にも、生活的にも、職業的にも多くの不利益を受けるという事実は、これは厳としてあるわけです。そういう不利益を受けない場合は、補償の必要はありません。現にそういう不利益を受けた人に対して無罪になっても一切の補償が行われないということは、これは公平を欠くのではないか。
 だから、今後の課題としては、身体、身柄非拘禁で無罪を受けた場合についても必要な範囲で補償を行うように、補償の要件、範囲を広げるべきではないかというように私は思いますが、今後の課題としていかがお考えか、答弁を承って質問を終わります。
○政府委員(岡村泰孝君) ただいま御指摘を受けましたような御意見がかねがねあることは承知いたしているところでございます。要するに故意過失を要件としない刑事補償の範囲をどこまで広げるかという問題でございまして、この点につきましては、先ほども申し上げましたように、我が国の法制全体あるいは補償制度のあり方、こういったものとも深くかかわりを持ってくるわけでございまして、こういった問題とも関連しながら今後とも研究し、また勉強していかなければいけないところであると思っております。
○橋本敦君 終わります。
○関嘉彦君 本日の議題になっております刑事補償法の改正につきましては、既に同僚議員から一昨日及び本日朝からいろいろ質問がございました。重複する点はできるだけ避けたいと思っておりますけれども、質問の順序上若干重複する点もあるかと思いますけれども、お許し願いたいと思います。
 最初に、現在提案されています改正案自体について質問申し上げます。
 まず、刑事補償法で定めている抑留または拘置に対する補償の性質、補償の意味と申しますか、それは何でございますか。
○政府委員(岡村泰孝君) 一口で申し上げますと、定型化された国家賠償であるというふうに言えると思うのであります。刑事手続で抑留または拘禁されました者が無罪となりました場合に、公平の原則上その抑留または拘禁によりまして生じた損害を国が補償するのが相当であるというふうに考えられるからでございます。したがいまして、刑事補償は損害の補てんであるという点におきましては、国家賠償とその損失を同じくいたしておるところでございますが、国家機関の故意過失を補償の要件とはいたしていないこと、また補償金の額が定型化、定額化されているということ、この二点におきましては一般の国家賠償とは異なった点がある、こういうことになると思います。
○関嘉彦君 つまり、拘束ないし抑留されたことに対する損害というわけですけれども、その損害の中には精神的な苦痛、そういうのは入っていないわけですか。
○政府委員(岡村泰孝君) これは精神的な損害、慰謝料と申しますか、これと財産的な損害、両者を含むわけであります。
○関嘉彦君 両者を含むわけですね。
○政府委員(岡村泰孝君) 含むわけであります。
○関嘉彦君 そこで、これも既に多くの同僚議員が取り上げた問題ですけれども、補償金の日額の上限、七千二百円から九千四百円に引き上げられたわけですけれども、この計算の根拠が、たびたび同僚議員も質問したんですけれども、どうもはっきりわからない。私は、やはり労務者の平均賃金の上昇率、二十五年を基準にしますと四十倍ですかね。昭和二十五年が四百四円、六十三年が一万五千九百七十七円ですから約四十倍。四十倍掛けるのが一番合理的であるというふうに思うんですけれども、消費者物価指数を加えてそれを二で割る、消費者物価指数を加えて二で割る論拠はどういうところにありますか。
○政府委員(岡村泰孝君) 刑事補償の性格から申し上げまして、拘禁あるいは抑留によって生じました財産上並びに精神上の損害、そのすべてを補償するということではないわけでございまして、相当な補償を行うというのがその趣旨であるわけでございます。そして、簡易迅速な手続で補償を行うという趣旨から、その上限額を定めているところでございます。こういった趣旨からいたしますと、抑留、拘禁されております間の生活費の全額だとか、あるいはその間の賃金の全額、こういったものを補償するというのは必ずしも刑事補償法の趣旨ではないと思われるわけでございます。
 刑事補償法が制定されました当時、上限額が四百円と定められたわけでございますけれども、これも当時のいろんな事情を考慮して四百円といたしたわけでございます。その後経済情勢が変動いたしましたことに伴いまして逐次、その引き上げを図ってきておるわけでございます。その際、経済情勢の変動の要素といたしましては、給与水確の上昇と消費者物価指数の上昇、この二つを勘案いたしてきたわけでございます。そういう一つの沿革と申しますかもございますし、今回も同じような方法で、単に賃金だけの上昇を見るんじゃなしに、物価指数の上昇も勘案して計算をいたしたと、こういうことであります。
○関嘉彦君 昭和二十五年では平均賃金日額が四百四円だったので、それで四百円に決められたわけですね、最高額をね、上限を。その考え方をそのまま延ばしていけば、平均賃金率に、この上昇率である四十倍を掛けるというのが立法当時の考え方をそのまま受け継ぐんじゃないか。消費者物価指数まで、その当時の経済事情の変化を考慮して消費者物価指数を加えられたわけですけれども、なぜ消費者物価指数だけを取り上げられるのか。経済事情全般であれば、例えばGNPの成長率であるとか、そのほかいろんな指数はあるわけですけれども、その中でなぜ消費者物価指数をとられたのか。とってそれを二で割ったのか。
○政府委員(岡村泰孝君) 刑事補償法が制定されました当時の四百円でございますが、これはそのときの貸金から直ちに四百円という数字が出てきたわけではないと思われるのでございまして、当時の国会審議の状況などを見てみますと、旧法のもとにおきましては一日五円以内ということになっておったわけでございます。これを一応の基準といたしまして、到底五円では相当な補償とは言えないので、この引き上げが図られなければいけないというようなことから、当時の賃金なり物価、あるいは使用人の日当、こういったものを勘案いたしまして四百円という数字が定められたものと思われるのでございます。
 その後物価も値上がりいたしますし、賃金も値上がりいたすわけでございますが、経済情勢の変動というものを見ます場合に、やはり物価と賃金というもので見ていくというのが一番その実態を反映しやすいものであると思われるのでありまして、そういうような点から、この賃金と物価というものを計算の根拠としているものと思われるのであります。
○関嘉彦君 どうも経済上の指標としてはいろいろあるのに、賃金上昇率のほかに消費者物価指数だけを取り上げられた理由が私にはどうしてもわからないんですけれども、想像しますに、あるいはこういうことを考えられたのかなとも思うんです。つまりその人が拘留なんかされなかったと仮定して、普通の社会で生活している。その衣食住の費用がかかるわけだけれども、拘留されている間はその衣食住の費用はかからないから、それで必要経費を差し引くという意味で消費者物価指数を考慮されたのかなと思うのですが、それとは違うんですか。
○政府委員(岡村泰孝君) 新刑事補償法が制定されました当時の国会審議の中で出てまいりますことは、上限を四百円といたしました場合に、本人の生計費などは差し引かれるべきマイナス要素である。しかし一方、慰謝料といったようなものがプラスの要素であるというような点もあわせ考えて四百円が相当であるんだと、こういうことを当時の委員会で政府側が述べているわけでございます。そういうような点から見ましても、そう厳密にこういう計数的根拠によるものだというほどの極めて明確な基準というものはない、当初からなかったというふうに思われるわけでございまして、賃金とか、物価とかその他を考えまして、この程度でやはり相当な補償と言えるんだというのがそもそもの出発点だと思われるわけでございます。制定当時の物価なり賃金から見ますと、その後かなり上昇いたしておりますので、補償金の上限も引き上げなければいけない、引き上げるときにはそういった物価の問題なり賃金の問題も考えて引き上げていこう、こういうことでこれまで来ていたところでございます。
○関嘉彦君 消費者物価指数を加えて二で割るから金額が少なくなってしまったわけですね。制定当時議論されましたように、消費者物価、これはマイナス要因であるからこれを差し引くというのでありますならば、もしそれが一つの重要な要素であるとしますならば、基準年を一〇〇とした負金上昇率から同じく基準年を一〇〇とする消費者物価指数の上昇率を差し引くというのでありますならば、それは一つの理屈にはなると思うんです。つまりそれだけの費用を勾留されている間使わなかったわけたから、その点を差し引くというのならば一つの理屈にはなると思うけれども、しかしそれならば足して二で割るのではなしに、基準年の両者の上昇率の差、賃金上昇率から物価上昇率を引いた差を基準年の上限の日額である四百円に掛けるというんだったら、これは一つの理論としては成り立つと思うんですけれども、そうでもないわけですね。もしそれで計算しますと、基準年の二十三倍である九千四百円ではなしに、三十二倍の一万二千八百円という数字が出てくるんですけれども、どうも理論的にはっきりしないわけなんです。
○国務大臣(林田悠紀夫君) 先生の方は大専門家なんですけれども、二十五年当時は、物価はどんどん上がりまして賃金は上がらないという時代であったわけです。それが現在は逆になっておるということでありまして、創設当初はこれが賃金だけで算定されますると余り上がりませんので、物価の要素を加味したんだろうと思います。したがって、両方を勘案してやった方がいいのじゃないだろうかと思うんですが、そういう制度の経緯があるのじゃないかということでございます。
○関嘉彦君 昭和二十五年ごろの生活水準、簡単な言葉で言えば生活水準、それより現在は上がっているわけですから、どれだけ上がっているかということは、昔の二十五年の名目賃金と現在の名目賃金、それの比較によって出てくるわけですから、やはり現在の上がった生活水準の補償をする、それで平均賃金の上昇率を掛けるというのが一番合理的である。しかし、これは水かけ論ですから、私はその点は非常に不満であるということだけ申し上げておきたいと思います。
 それから次は、死刑の場合の補償額の意味と申しますか、性質といいますか、これはどういうことでございますか。
○政府委員(岡村泰孝君) 死刑が執行されました場合の補償でございますが、現行の刑事補償法によりますと、まず死刑が執行されるまでの間は通常身柄が拘束されておりますので、この間は、改正案では一日九千四百円以下の金額で、その日数に応じました補償が行われるわけでございます。それからもう一つは、死亡によりまして生じましたところの財産的損害、これにつきましては立証されました範囲において補償されるわけでございます。これに加えまして、二千五百万円以内の補償を行うというのが刑事補償法の趣旨でございます。したがいまして、二千五百万円という金額は慰謝料であるというふうに思われるわけであります。
 また、この二千五百万円という根拠は何かということでございますが、これも委員からは非常に理論的な御指摘を受けるわけでございますが、正直申し上げまして二千五百万円を理論的に説明しろと言われましても、なかなかこれは難しいわけでございます。
 これも一番当初新刑事補償法ができましたときは五十万円であったわけでございまして、この程度が相当であるという判断でございます。その後逐次引き上げが行われておるわけでございまして、今回はいわゆる拘禁者補償の方の日額を引き上げますので、やはり現行二千万円のいわゆる死刑執行の場合の慰謝料も引き上げるのが相当である。最近におきます交通事故等の死亡を理由といたします損害賠償請求事件におきます慰謝料も相当多額になっておる。これらの事情を考慮いたしますれば、二千万円を二千五百万円に引き上げるのが相当である、こういう判断であるわけであります。
○関嘉彦君 二千万円を二千五百万円に引き上げた理由として、つまり賃金日額の方は七千二百円を九千四百円に上げる、三〇・六%の引き上げ率ですね。それを前回据え置かれた二千万円に加えるとそれが大体二千五百万円になる。そういうふうに二千五百万円を出されたと見てよろしいですか、上限額と比例する意味で。
○政府委員(岡村泰孝君) 比例するといえば比例いたしますし、先ほど申しましたように、最近の交通事故で死亡した場合の損害賠償請求事件における慰謝料も二千万円ぐらいにはいっておる、それよりやはり高い方が相当ではないか。こういうようないろんなことが考えられて、この二千五百万円となったわけであります。
○関嘉彦君 いろんな要素を入れてこられると、どういう要素なのかさっぱり質問のしようがないんですけれども、もし質金日額の上限の引き上げに応じて引き上げた、その要素が非常に強いとしますと、これは五十七年の改正のときには据え置かれているわけですね。したがって、五十五年の上限である四千八百円と比較する、四千八百円と比較しますと、今度の改正案の九千四百円というのは大体倍ですわね。そうすると、五十五年の二千万円の倍で少なくとも四千万円にはならなければならないじゃないかと思われるんですけれども、その二千五百万円で抑えられた理由がどうも納得できないわけなんです。
○政府委員(岡村泰孝君) この点は、先ほど来申し上げておりますように、これまでの国会審議の状況を見ましても、死刑執行の場合の慰謝料の上限額の金額といいますものは、常識的に見てこの程度で相当ではないかということでございまして、常識的に見てこの程度ということは、やはりいろんな要素を考えればこの程度であるということであったわけでございます。
 したがいまして、委員御指摘のような計算というものもありますでしょうし、あるいはまた自賠責におきまして現在死亡した場合の保険金が二千五百万円という金額にもなっておるわけでございます。そういったいろいろなものといいますとまた御批判を受けるわけでございますが、そういうものを考えましてこういう金額にいたしたところでございます。現実の問題といたしましても慰謝料が幾らかということ、これはやはりなかなか難しい問題でございまして、仮に不法行為に基づきまして損害賠償の請求をいたしましたときにも、慰謝料が幾らだというふうに認定されるかということ、これは個々の事件に即しました裁判所の判断になるわけでございまして、この点は難しいといえば難しい問題であろうかと思います。
○関嘉彦君 自動車賠償保険法のあれも一つの参考にされたと言われたんですけれども、もし他のものとの比較ということを言われるんでありますならば、これは本人に対する慰謝料ではなしに遺族給付なんでちょっと性質が違うんですけれども、例えば証人等の被害についての給付に関する法律というのがありますよね。証人が犯人から復讐を受けて被害を受けたとか、あるいは警察官への協力者、警察官が逮捕なんかするときに、それに協力した協力者の受けた災害に対する給付、これは遺族給付ですからね。ちょっとそのまま比較できないとは思いますけれども、私はやはり死刑の場合の補償額には遺族に対する配慮も考慮すべきだと思う、これは後で述べますけれども。
 その遺族給付は、妻、子供二人それから両親という標準的な家族構成で理論上の最高額は一年当たり二百九十五万六千百七十円だそうであります、このほかに葬祭給付がありますけれども除いて。そうすると、大体十年間それを受けられるとしますと二千九百五十六万円ぐらいになるわけでございます。これは民間人から危害を加えられた場合。国が加えた場合は、それよりもはるかに多くしても一向差し支えないんじゃないか、その点からいっても少ないという印象を受けるんですけれども、どうでしょう。
○政府委員(岡村泰孝君) ただいま御指摘のありました証人の被害給付の場合でございますが、年金でこれを受けるとすれば、ただいま委員御指摘のありましたような金額になろうかと思います。ただ、この金額は慰謝料というものが入るのかどうかよくわかりませんけれども、少なくとも財産的な損害とかいろんなものを、あらゆる損害を考慮しての金額であろうかと思います。
 これに対しまして刑事補償法の方は、先ほど申し上げましたように、慰謝料が二千五百万円以下である。それに本人の死亡によって生じた財産上の損失額と死刑が執行されるまでの拘禁の期間の拘禁補償がプラスされる、こういう点の違いがあるわけでございまして、一概に両者を比べまして刑事補償法が低いとは言えないと思うわけであります。
○関嘉彦君 これも結局水かけ論で、私はやはりもっともっと、めったにあるケースじゃない、またあってはならないケースなんですけれども、やはりこれは、国家としては最大の過失でありますから思い切って引き上げるべきであるというふうに考えます。
 次は、現在の制度がこのままでいいかどうか、現在の制度を改正する、将来にわたってもし改正しなくてはならない、私は改正しなくてはならないのじゃないかと思うんですけれども、法改正を前提にしたところの質問をいたします。
 日額の下限を据え置きにした、私はこれも引き上げるべきだと思いますけれども、先ほどの答弁では、いわゆる心神喪失者の行為に対して補償することに対する国民感情を考慮して、それで引き上げないんだと、据え置きにしたんだということを言われましたけれども、その前提を仮に承認するといたしまして、もしそうでありますならば、第三条では「左の場合には、裁判所の健全な裁量により、補償の一部又は全部をしないことができる。」という規定がありますですね。この中に、心神喪失者の行為に対しては減額することができるという規定を入れておけば、そうするとさっきのことを考慮せずに上限と同じように下限の引き上げをすることができるのじゃないかと思いますけれども、そういうふうな法改正を検討されるおつもりはないですか。
○政府委員(岡村泰孝君) そういった考えも一つの考え方であろうかと思うのでございますけれども、いわゆる無罪の場合はその中身がいろいろあるわけでございます。私先ほど心神喪失の場合を例として申し上げたわけでございますが、例えばそのほかに、詐欺事件等におきまして被害を与えたことはそのとおりであるけれども、犯意の点において十分な証拠がない。その十分な証拠がないのも程度の問題でいろいろあろうかと思うのでございまして、いろんな場合が想定されてくるわけでございます。そういった場合をすべてこの三条の中に網羅的に列挙することが果たして可能かという問題があるわけでございまして、そこはむしろ四条の二項でございますか、裁判所が一切の事情を考慮して補償金の額を定めるという、その中で具対的事件に即しまして裁判所が適正な判断を行っていただくということが、やはり一番妥当ではないかというふうにも思うわけでございます。
○関嘉彦君 その点についてもどうも納得できないんですけれども、これも先ほど来多くの同僚委員が言われたことの繰り返しになりますから、結局これ以上繰り返しても時間の浪費だと思いますので繰り返しません。
 次の問題は、刑事補償法のほかに、国家公務員の故意または過失である場合には国家賠償法で損害賠償の請求ができることになっているわけです。先ほどちょっと質問されたのを私聞き漏らしたかの感じがするんですけれども、今までそういったようなケースで国家賠償に持ち込んで認められた件数は二件ですか、そういうふうに聞いたんですけれどもね。もしそうでありましたならば、却下された件数は何件でございますか。
○政府委員(岡村泰孝君) 昭和五十三年から六十二年までの間に、国家賠償を請求いたしました事件でありますが、これは無罪事件に限り、かつ検察官の捜査等の違法すなわち国の違法を請求原因といたします事件について申し上げますと、全体で五十二件あるわけでございます。そのうち請求が認められましたものが二件、請求が棄却されましたものが二十四件、請求を取り下げましたものが三件、係属中のものが二十三件となっております。なお、このほかに調停で解決した事例が一件あります。
 また、警察の捜査だけの違法を請求原因といたします場合は、私の申し上げました数字には含んでおりません。それがどの程度あるのかは把握できないところであります。
○関嘉彦君 今お伺いしましたように、国家賠償法による損害賠償というのは、なかなか公務員の故意または過失を立証することは非常に難しいんじゃないかと思う、認められたのが二件で却下されたのが二十四件。
 そこで私の提案なんですけれども、この刑事補償法の中に、国家機関の故意または過失があったと認められるときは、これはあり得ることをこの条文でも想定して、第四条の二項に「警察、検察及び裁判の各機関の故意過失の有無その他一切の事情を考慮」して決めるとありますから、裁判官がそれを認定するだろうと思いますけれども、そのときは、抑留または拘禁の刑事補償に加えて加算することができる、別建てで、別な条文で、それを考慮して加算するというふうな規定はつくられませんですか。
○政府委員(岡村泰孝君) この刑事補償法の四条二項で「故意過失の有無その他一切の事情を考慮しなければならない。」という規定がありますけれども、これは、こういう事情を考慮して補償金の額を定めなければならないということでございます。したがいまして、故意過失が厳密にあるかどうかを認定するというほどのものではなかろうと思われるのであります。
 委員が御指摘になりました点は、要するに、公務員の故意過失がある場合には全部の損害を補償することを刑事補償法の中に入れるべきではないか、こういう御趣旨であるわけでございますが、そうなりますと、故意過失があったかどうかということが、それが中心問題として争いになるわけでございます。それのやはり事実の認定を行わなければならないわけでございます。また、現実にそれではどれだけの損害が生じたのかということにつきましても、これまた個々の案件に応じまして具体的な立証をまたなければならないわけでございます。そういったことを考えますと、現在の刑事補償制度が簡易迅速な補償を行うということを一つの趣旨といたしておる、その趣旨とは沿わなくなってくる面があるように思われるわけでございます。
 やはり御指摘の点は、現在の国家賠償法で故意過失を認定し、その損害を認定し、賠償すべき責任があるならば賠償を命じるということが妥当ではなかろうかというふうに思うわけであります。
○関嘉彦君 第四条第二項のは、つまり最高限、日額の最高限の範囲内で決めるときに裁判官が、警察、検察及び裁判の各機関の故意過失の有無をそこで検討するわけですね、事情を考慮するわけですね。であれば、この刑事補償法の中でそれを考慮することはできるわけですから、別建てにして、そして最高額を幾らに決めるかということは問題ですけれども、別の項目として、「その他一切の考慮」の中に突っ込んでしまうんじゃなしに、別建てにして最高額、これを加算することができるというふうにすれば迅速に、早く支払うこともできるわけであって、本来の趣旨に沿うのじゃないかと思うんですけれども、どうですか。
○政府委員(岡村泰孝君) 難しい問題であるわけでございますが、この四条二項の場合は、ここに書いてありますような事柄を逐一細かく認定するまでもなく、上限額で補償するのが相当だという判断をする例というものが、私は少なくないように思うわけでございます。個々の案件に応じまして、この四条の二項に書いてありますような事柄を逐一裁判所が認定して、補償額を幾らにするかということを決めているわけではないように思うのでございます。こういった事情を考慮して補償額を定めるということにはなっておりますけれども、それは全体的な評価として、それじゃこの場合は上限なら上限でいいのではないかという判断に達する場合もあるんだろうと思います。
 ところが、ただいま御指摘のありましたように、故意過失に基づきます損害をさらにつけ加えて補償するということになりますと、やはり故意過失があったかどうか、これがまさに争点になってくるんだろうと思います。そういう点で国家賠償法と実質的には異ならない認定になってくるのではないかと思うわけであります。
○関嘉彦君 その点もどうも意見が違うんですけれども、つまり国家機関の故意過失というのは、非常に重大なことなんで、それをそのほかの本人が受けた財産上の損失とか、得るはずであった利益の喪失とか、そういったものと一緒に並べて、それで全体を総合して決めるというのではなしに、この問題、故意過失の問題、これは重要な問題なんで、これだけは別に切り離して立法すべきじゃないか。最高限をどうするかということは問題でしょうけれども、そういう趣旨なんです。
○政府委員(岡村泰孝君) どうも私が十分理解できない点があるのかもわかりませんけれども、どうも故意過失を、余りこの点を強く打ち出しますと、現在の国家賠償法とやはり運用においては変わりかないのではなかろうかなというような感じを持つわけでございます。
 ただ、刑事補償法によります補償の充実ということにつきましては、我々今後とも努力しなければいけないところでございまして、いろいろございます御意見は十分参考にはいたしたいと思っております。
○関嘉彦君 刑事補償の場合、原則的に無罪の裁判を受けた本人に対して補償するという考え方ですね。しかし、死刑の執行による補償については、これはちょっと別格だと思うんで、これの場合だけは遺族補償の考え方も取り入れるべきじゃないか。遺族に対する補償ですね、その点についてはどうですか。
○政府委員(岡村泰孝君) 遺族補償の具体的中身がどういうことになるのかといいますと、これまた難しい問題があろうかと思いますが、先ほど来申し上げておりますように、死刑を執行されました場合の補償といたしまして、死亡によって生じた損害を補償することができることになっております。
 それでは、死刑を執行されまして死亡いたしました場合、その死亡によって生じた損害とは何かと申しますと、これは法律的に申しますといわゆる逸失利益と言われているものでございます。死亡時以後の稼働可能期間中の総収入、生きておればどの程度収入が上げられるかという総収入を計算いたしまして、一方では、その間当然出費しなければならないところの生活費等の必要経費を差し引く、残りが逸失利益だというふうに大ざっぱには言えるだろうと思うわけでございます。そういう意味の逸失利益というのがある意味じゃ委員御指摘のあります遺族に対する補償、生活保障と申しますか、そういった面もあるのではなかろうかというふうに思うわけでございます。
 ただ、刑事補償法の立て方といたしまして、今の法律ではそういった遺族の生活保障ということは正面切っては出してはおらない。先ほど申し上げました死亡によって生じた損害という表現をいたしておる、その中に含まれるものもあるんだろうというふうに思うわけであります。
○関嘉彦君 刑事補償法の補償の意味が、特に死刑の場合の補償の意味がどうもはっきりしないものですから、今のような質問も出てくるわけですけれども。
 それじゃもう一つ、無実の場合ですね、事実誤認、無実にもかかわらずに抑留、拘禁を受けた場合に、その本人及び家族の受けた精神的な苦痛は非常にはかり知れないものがあると思うんですけれども、国の個人に対する人権の侵害、しかもこれは大きな名誉棄損だと思うんです。その面で、つまり名誉棄損に対する償いという意味の補償も検討すべきじゃないかというふうに考えるんですけれども、どうですか。
○政府委員(岡村泰孝君) ただいま御指摘の点でございますが、名誉の回復という意味では、いわゆる刑事補償が行われたことを公示するという制度、これが一つあるわけでございます。
 それからもう一つは、そういう名誉侵害に対する損害ということになりますと、広い意味では慰謝料ということになろうかと思います。この点につきましては、先ほど来申し上げておりますように、現行の補償金額の上限の中には、財産的な損害はもとよりでありますけれども、精神的な損害、慰謝料、こういったものも含まれているというふうに考えられるわけであります。
○関嘉彦君 最後にもう一つだけ。これは要望なんですけれども、引き上げの定期的な見直しをする必要があるんじゃないか。つまり、先ほど例に挙げました証人たちに対する災害であるとか、警察官、海上保安官への協力者の災害に対する給付については、給付金額がしばしば見直されて、政令の改正が行われています。刑事補償についても、私はやはり賃金、物価は考慮する必要は少しもない、賃金の変動に応じてもっと定期的に見直しをすることが必要ではないか、その心構えが必要じゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○政府委員(岡村泰孝君) 昭和二十五年に制定されまして以来、今回八回目の引き上げでございまして、法務省といたしましても最高裁判所と協力いたしまして、その引き上げというものには過去努力はいたしてきたところでございます。今後とも、経済情勢、社会情勢の変動などをよく見守りながら、実情に即しまして補償金の引き上げのためには努力をいたさなければいけないし、また努力はいたすつもりであります。
○関嘉彦君 最後に大臣にお伺いいたしますけれども、先ほど述べましたようは、私の目から見ると、物価上昇率なんかを考慮するということはどうも理屈に合わないように思うんです。その前提に立ってだんだん引き上げられてきているんですけれども、いわゆる戦後の見直し、総決算という意味において、この制度そのものを見直す、そういうつもりはございませんですか。
○国務大臣(林田悠紀夫君) 今回の改正案は、経済事情の変動等、諸般の事情を考慮しながら、最善と認められる算定方法によりまして補償金額の日額の上限などを引き上げようとするものでありまするが、今後もいろいろ御審議をいただきました補償金額の改正を含めまして、刑事補償制度の適正な運用が図られるように、法務省としましても最高裁と十分連絡をとりましてできる限りの努力をしてまいりたいと存じまするので、よろしくお願いを申し上げます。
○関嘉彦君 終わります。
○西川潔君 では、よろしくお願いいたします。
 引き続きまして、私も刑事補償法の改正について、一昨日聞き漏らしたことを一つだけお尋ねいたします。
 所得税法第九条の一項二十一号及びその施行令三十条によって、交通事故による損害の賠償金は非課税となっております。また同じく、九条の十八号の適用を受けるもの以外の年金、金品などは一時所得となり一時所得税がかかってまいりますが、この刑事補償金というのは、税法上はどういうふうに扱われるんでございましょうか。
○政府委員(岡村泰孝君) 本人が補償金の支給を受けました場合でございますが、ただいま委員が御指摘のありましたように、所得税法九条の二十一号の損害賠償金というものに当たると考えられますので、所得税は課さないということになります。
○西川潔君 そこで次に、ことし一月の十四日、横浜市港北区のバス停留所で、アルバイトの少年がバス誘導員に対する暴力を見かねて仲裁に入り、相手の不動産業者に重傷を負わせて逮捕されたという事件についてお尋ねいたします。
 新聞にも大きく報道されておったんですけれども、この事件の経緯と現在どのようになっているかということをもう一度お教えいただきたいと思います。
○政府委員(岡村泰孝君) 御指摘の事件でございますが、昭和六十三年一月十四日に傷害罪によりまして少年を現行犯逮捕いたしました。検察庁といたしましては、一月の十六日に身柄づきで送致を受けまして、その日に勾留請求をいたしまして裁判所から勾留状の発付を得たわけでございます。そして、一月二十六日まで勾留いたしまして、その日に釈放をいたしたわけでございます。そしてその後、二月の十日、家庭裁判所に身柄を拘束しないままで、在宅で送致をいたしております。その後、横浜家庭裁判所において本件につきまして審理中でございます。
○西川潔君 私の質問はいつも陳情、そしてまた半ば人生相談みたいな質問が多いんですけれども、例えば刑事局長がもしこの場に居合わせた場合は、どういうふうな態度をおとりになるかとお伺いしたいんですけれども、まことに御無礼でございますが。
○政府委員(岡村泰孝君) 大変答弁困難な御質問でございます。やはりその場の状況に応じて適切な対応をとるということになろうかと思いますが、その場の状況というものをなかなか再現するのも難しいわけでございまして、今ちょっと私から、私ならこうしたということは言いにくいところでございます。
○西川潔君 この少年は適切な行動だと思って、正義感を持ってこういうふうに行動されたわけなんですけれども、もし刑事局長が、この少年の立場であった場合はどういうふうにされますでしょうか。
○政府委員(岡村泰孝君) これまた非常に難しい御質問でございますが、本件の場合は少年側にもいろいろ有利な事情はもちろんあるわけでございますけれども、少年が鉄製の立て看板で顔面を殴打するなどの暴行を加えまして、相手方に左目の失明を伴う傷害を負わせたという、結果としては大きな事件になっておるわけでございます。そういうことでございまして、私が少年の立場でどうしたかと言われましても、これまた非常にお答えしにくいところでございます。
○西川潔君 法律の最高位にいらっしゃる法務大臣が、この立場でいらっしゃったらどうされますでしょうか。
○国務大臣(林田悠紀夫君) なかなかお答えするのは難しいんですが、これは正当防衛に当たるかどうかということでありまして、現在のところは正当防衛よりも少し過剰である、こういうことで横浜の家庭裁判所に送致をされておりまして、現在裁判所において審査中であるのであります。したがって、どの程度の正当防衛をすべきかということでありまして、私でしたら、やはり同じようなことをやるかもしれませんが、もうちょっと少し目の正当防衛をやるんじゃないかと思うんですが、その辺が問題であろうと存じます。
○西川潔君 ありがとうございました。
 本当にこういう場面に自分自身が直面したら、私自身もどうしようか、かなり腕力に自信がない限りは、この方を助けにというような行動はなかなかとれないと思います。本当にこの記事を読ましていただいたときは悩みました。暴力を暴力で解決するということは本当にいけないことだと思います。しかしこの場合、警察へ通報し警察官が来るのを待っているとその方がやられてしまう、何とか助けてあげなければいけないということで、この少年は勇気を持ってこういう行動をとったのですが、新聞によりますと、現場に居合わせた多くの人たちも少年に手はかさなかった、こういうふうに報道もされております。こういうケースで、仮に少年が反対にけがをしたり死亡した場合はどうなりますでしょうか。また、国が補償する制度はあるのでしょうか。
○政府委員(岡村泰孝君) 犯罪被害者等給付金支給法という法律があるわけでございます。この法律は、日本国内におきまして人の生命、身体を害する罪に当たる行為によりまして死亡したあるいは重傷を負ったというような被害者や遺族に対しまして給付金を支給する規定になっておるわけでございます。ただ、この場合におきまして、給付金を支給しないことができる場合ということも定めておるわけでございます。例えて申し上げますと、被害者と加害者との間に親族関係があるとき、あるいは被害者が犯罪行為を誘発したとき、その他犯罪被害について被害者にもその責めに帰すべき行為があったとき、あるいは社会通念上支給することが適切でないと認められるとき、こういった場合には支給しないことができると規定しているところでございます。
 ただ一般的に申しますと、この支給法で支給することも可能でありますけれども、具体的状況によりましてはただいまの支給しない場合に当たるということもあり得るところであります。
○西川潔君 次に、被疑者のそれでは補償規程についてお伺いいたしますが、この少年は逮捕されたわけですけれども、もし今回のようなケースで正当防衛が明らかであるというときは、この対象にはなるのでしょうか。
○政府委員(岡村泰孝君) 少年の彼疑事件でありましても、検察官が捜査を遂げまして例えば正当防衛の成立が認められる場合には、検察官としては罪とならずという不起訴処分を行うわけでございます。この場合には、身柄が拘束されている期間につきましては、被疑者補償規程によりまして補償を行うことが可能であります。
○西川潔君 今までに、この補償規程が適用された具体例はございますでしょうか。
○政府委員(岡村泰孝君) 昭和三十二年から昭和六十二年生での間に、被疑者補償規程に基づいて補償いたしました人員が百九十一名でございます。
○西川潔君 ありがとうございました。
 本当に大変難しい事件だと思います。殴られている人がいますし、このままでは本当に死んでしまう、何とか助けに行ってあげたい、でもこんなことを起こして逮捕されてしまった。これでは一般市民の勇気をなくすんではないかな、さわらぬ神といいますか、かかわり合いにならない方がいいということになると思うんですけれども。これから、この少年がひょっとしてもう一度こういう場面は遭遇したときにはきっと助けには行かないんではないかな、そういうことを考えますと、何か一抹の寂しさがございます。
 このようなケースの場合、正当防衛の適用についてもう一度考え直していただくといいますか、正義を持ってとったこの彼の行動、新聞で読ましていただきまして、誠意ある処置を、今後そういうふうな正当防衛の適用についてもう一度考えていただきたいと思います。僕は、個人的にはもう国民栄誉賞を贈ってあげてもいいなと思うぐらいの気持ちでおります。
 それでは次に移らしていただきます。次は刑務所の日常についてお伺いいたします。
 午前中にも千葉先生の方から少し質問がございましたが、平日と土曜日そしてまた祝日でございますが、その中の受刑者の生活にどのような違いがあるのか、また平日の一日、土曜日及び休日の御説明をお伺いしたいと思います。
○政府委員(河上和雄君) 平日、これは懲役刑を受けた人を念頭に置いて申し上げますが、刑法によりまして定役に服するということになっております関係で、平日については八時間、土曜日は四時間でございますが、作業はいろいろな種類がございます。木工製品、こういったようなものをつくることもできますし、機械製品あるいは例えば、新しいところで佐賀にしきなどを女性に織ってもらったりしております。いろいろな種類の作業をさしております。
 そして休日、これはもとより作業はございません。あるいは土曜日の午後は作業はございませんで、教育教科の時間、つまり教育教科を必要とする人たちに対しては、そういった指導に充てておりますし、そうでない人たちについては自由な時間あるいは体操の時間、そういったようなものを設けております。
○西川潔君 私もこれまで何度か芸人として慰問にも参りました。一つ局長さんに陳情したいんでありますが、今まで漫才や司会で慰問に参りましたときは、いろいろ一言皆さん方の前で、この中で一生懸命お勤めして早く社会復帰してくださいというような、そして自分の人生の経験などもお話しさしていただいたんですけれども、議員になってから視察には参りますが、そこでちょっと疑問が生まれたんです。
 今までは自由に行けたんですけれども、今は、選挙に当選さしていただいてからは、仲間の方も一緒に、例えば自分が、この前も多摩の少年院、栃木の女子刑務所、府中の刑務所などをお伺いする前に、大した内容のお話はできないんですが、受刑者の皆さん方に、今までのように一日でも早くすばらしい社会復帰をしてもらう、いい社会復帰をしてもらうという意味合いで、少し皆さん方の前で十分でも二十分でもいいですが、お話をさしていただけないでしょうかとお願いを申し上げますと、西川先生ちょっとそれは困るんですがというような、そのちょっとという部分を御説明いただきたいんですけれども。
○政府委員(河上和雄君) まことにありがたいお申し出でございます。
○委員長(三木忠雄君) 明確な答弁を。
○政府委員(河上和雄君) はい。
 ただ、今まで西川委員のおいでになりましたときには、いわば政治からは切り離された形でお見えになっていたわけでございますが、国会議員という資格でいらっしゃいまして何かお話をということになりますと、やはり入っている人々にはいろいろな政治信条を持っている方々がたくさんいらっしゃいますし、国会議員の西川潔先生ということになりますと、いささか問題がある場合があるのではないかということで、そのちょっとということになったんのはないかと思います。もとより人間いろいろな立場ということがあるわけでございますから、そういう政治的なものを離れてお出かけいただけるものでしたら、喜んで私どもとしてはこういった余暇の活用に使わしていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○西川潔君 その場合は、バッジを外して行けばいいんでしょうか。
○政府委員(河上和雄君) 一人の人間がいろいろな資格を持っているわけでございますから、バッジを外したからといって国会議員でなくなるわけではないと思います。ただ、要するに、お話を伺う人たちの意識の方の問題として、国会議員である西川潔先生がこういうお話をしたということではなくて、タレントである西川潔先生の、あるいは人生の先達としての西川潔先生のこういうお話である、そういうふうな形が皆にわかるような形でしたならば我々としてはありがたくお受けしたい、こういうことになるのだろうと思います。
○西川潔君 中の人たちにわかりやすくは、局長の方からぜひお話をしていただきたいと思うんです。
 それで、例えば当選させていただきましてから今まで以上に歌手の皆さんとか、俳優の皆さんとか落語、漫才、仲間の皆さんが、法務委員会に潔さん所属しているんやてねということで、特に最近は芳村真理さんなんかは、私なんかで役に立つことがあったらいつでも、どこでも行きますからと言われて、いろいろ御陳情申し上げるんですが、男子の収容所のところには女性はなかなかお連れすることは、これは今まででも聞いておりますので、難しい問題が多々ございますが、ぜひみんなそういうことでしたら力をかそうという方々がたくさんいらっしゃいます。
 今までは自分は政治、国会、特に我々一市民にとってはわかりにくいところだということで、そういうことでもって中を見てくる。それで見て一つでも二つでも皆さんのためになることがあればという努力はさせていただくということで、百二万もの人に応援していただきましたので、法務委員会に所属させていただいている限りは、そういうふうに悪いことをしたとはいえ収容されている皆さん方に少しでも喜んでいただいて、それがひとつ社会復帰のためになるのであれば幾らかでもお力になりたいという気持ちはございますのですが、どうもそのあたり大変難しい問題が多々おありなようです。
 政府委員室の方々にもお願いするんですけれども、そういうお気持ちはありがたいんですけれども、ちょっとと、こうなるのでございますので、そのあたりぜひ局長さんの方からよろしくお願いいたしたいと思います。今後一度閉会中にでももしよければ、話は早い方がいいと思いますので、何とかお願いできるようなお取り計らいを願えますでしょうか。それはもう来年でも再来年でも話がつかない場合は結構でございますが。
○政府委員(河上和雄君) まことにありがたいお話でございまして、豪華けんらんたるメンバーでもし刑務所あるいは少年院といったところに御慰問いただけるならば、各施設の行事予定に合わせまして、ぜひ喜んでやっていただきたいと思います。
 ただ、そういったこととは別に、これは西川先生ばかりでなく国会議員の各先生方の中でもなっていらしていただいている方がございますが、篤志面接委員という制度がございまして、これは大勢の受刑者を集めて話していただく場合もありますし、あるいは個々的に二、三人あるいは一人の受刑者に対してお会いいただきまして、人生の相談に乗っていただく、あるいは法律相談に乗っていただく、家庭の相談に乗っていただく、こういったような制度もございます。現在千八百人の方方が全国でもって全くのボランティアベースでもって活動していただいておりまして、そういう形で西川先生あるいは法務委員の先生方、もしおなりいただけるのでしたら、私どもとしては喜んでぜひやっていただきたい、こう思っているわけでございます。
○西川潔君 よろしくお願いいたします。
 次に、毎日のように新聞紙上をにぎわしておりますが、午前中に千葉先生も御質問なさっておられましたが、四週六休制のことなんですけれども、刑務所の中も四週六休を実施するのでしょうか。その場合は刑務官の方々の就業時間、また受刑者の方々の作業時間、そしてまた四週六休になれば受刑者の皆さん方は休みになるんでしょうか。
○政府委員(河上和雄君) おっしゃるとおりでございまして、矯正職員も国家公務員でございますので、四週六休制が施行されますと当然四週間のうちの二回の土曜日は休暇ということになります。ただ、御承知のとおり矯正職員の場合は常に何といいますか、夜間の勤務あるいはそうでない休日の勤務というものもあるものですから、一個人をとった場合に土曜日常に四週間のうち二回が半ドンになるということではございません。しかし、四週間のうちいずれかの日については休日が四回とそれから半日が二回、こういうことになります。
 それから受刑者につきましては土曜日、四週間のうち二回の土曜日を休みにし、そして日曜日は当然休みと、こういうことになるわけでございます。
○西川潔君 その場合、お休みになったときには、皆さん方は特別な余暇の過ごし方などはございませんでしょうか。
○政府委員(河上和雄君) 現在いわば始まったばかりの制度でございますが、現段階で行われておりますのは、視聴覚機材を使ったものあるいは教材を使った生活指導あるいは教科指導、そういったようなことのほか、講演あるいはレクリエーション、さらには先ほど申し上げましたようにそういったボランティアベースで来ていたださます方々とのいろいろな人生上の悩みの相談事、さらにはグループカウンセリングと、そういったような形でできる限り何といいますか、時間をぼうっと過ごさせないように、少しでも社会復帰に向かって時間を有効に使うように、そういうことを私どもとしては考えて実施いたしているところでございます。
○西川潔君 お休みになりますとまた刑務官の方々も大変だと思いますが、僕は老人ホームなど、刑務所、拘置所、拘置所ではございませんが少年院などたくさんのところを見せていただきまして、刑務性の方々のお仕事の激務を目の当たりに見せていただきました。もう少し刑務官の方をふやしていただく。もう少しふやしていただいて、夜中も大変ですし、八十人、九十人という受刑者の方々をたった二人で管理していらっしゃる大変なお仕事です。
 別に刑務所の応援をするわけではございませんが、本当にそして社宅ですか見せていただきまして随分建物が古い。ひび割れしたり色がもう黒くなったり、刑務官の奥さん方にお伺いすると、参観で先生に来てもらうのが大変つらい、外で会わしてもらいたいというような奥さん方が随分いらっしゃいました。
 ぜひ中のこともさることながら外のそういう人たちにも御配慮いただいて、いい施設の中でいいお仕事をしていただきますようにお伝えいただきたいと思いますし、またその旨実行していただきたいと思います。
 次に、昭和三十年、松本少年刑務所の中に松本市立旭町中学校の分校として桐分校を開校し、受刑者の中から義務教育未修了者を集めて中学校課程の教育を始め、今日まで続いているということですが、もうすばらしいことだと思います。昨日もテレビの特別番組で見せていただきまして本当に感動いたしました。現在までにこの学校を出ている方、そしてまた在学していらっしゃる方、それからまた何歳から何歳ぐらいまでの方が一番多いんでしょうか。
○政府委員(河上和雄君) 桐分校のお話でございます。桐分校につきましては、実は現在まで五百九名の人が昭和三十年から六十二年までの間に入学いたしまして、うち四百九十三人が無事卒業いたしております。これは一年間で中学の教科課程を全部終わるということですので、全然やっていない人にとっては三年分を一年でやるということですから大変なんですが、いずれにしろ九七%という非常な好成績をおさめております。
 ただ、年齢的なものは、実は私どもの方十分現段階で把握いたしておりませんが、ただ、もともと刑務所に入ってきているわけでございますから、一番最年少で十八歳ということになるわけで、かなりの年代の方々がたくさんこの桐分校を卒業されているということは間違いないだろうと思います。
○西川潔君 これはほかの刑務所からもうわさを聞きまして、そちらに入学することができるんでしょうか。例えば北海道からでも、九州からでもそこへ入学さしていただくことはできるんでしょうか。
○政府委員(河上和雄君) 中学生募集といったような実はパンフレットを各施設に配りまして、そして各全国の受刑者に、この桐分校に自分が行って勉強する意思があるかどうかということでやっております。桐分校の方は、実は十人から三十人ぐらいまでのゆとりがございまして、現実に希望する人というのは毎年十人前後でございまして、なかなかそう大勢の人たちが参りません。というのは、三年間を一年間で履修しなければならないという大変なやはり教育課程でございます。そのために希望者だけを対象としておりますが、いずれにせよ全国から募集しております。
○西川潔君 卒業証書を最後にいただくわけですが、これには桐分校出身、それと施設の何か判なんかがついてありますと、社会復帰には支障を来すと思うんですが、そういう配慮というのはなされているんでしょうか。
○政府委員(河上和雄君) そういう配慮はいたしております。
○西川潔君 それでは最後に大臣にお伺いしたいと思いますが、大変僕はいいことだと思います。こういう桐分校のような制度をもっともっと全国的に広めていただくようなことをお願いできませんでしょうか。
○国務大臣(林田悠紀夫君) 義務教育の未修了者でありまする受刑者に対する教育は、矯正教育上非常に大事なことでありまするので、今後も前向きに取り組みましてできるだけ全国的に広めてまいりたいと存じます。
○西川潔君 これで終わります。
    ─────────────
○委員長(三木忠雄君) 委員の異動について御報告いたします。
 本日、土屋義彦君、中村太郎君及び宮本顕治君が委員を辞任され、その補欠として宮崎秀樹君、宮田輝君及び吉川春子君がそれぞれ選任されました。
    ─────────────
○委員長(三木忠雄君) 他に御発言もなければ、本案に対する質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(三木忠雄君) 御異議ないと認めます。
 本案の修正について、猪熊君から発言を求められておりますので、この際、これを許します。猪熊君。
○猪熊重二君 私は、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、日本共産党、民社党・国民連合の各派及び各派に属しない議員西川潔君を代表いたしまして、ただいま議題となっております刑事補償法の一部を改正する法律案に対し修正案を提出いたします。
 その内容はお手元に配布されております案文のとおりでありますので、これよりその提案理由と内容の概要を御説明いたします。
 これまで審議してまいりました政府提出に係る刑事補償法の一部を改正する法律案は、刑事補償法第四条第一項の抑留、拘禁等による補償の日額の上限を七千二百円から九千四百円に引き上げ、同条第三項の死刑の執行による補償の最高額及び加算額を二千万円から二千五百万円に引き上げようとするものであります。
 しかし、これらの額が適正な補償を行うのに妥当であるかを検討してみますと、甚だ不十分なものであると言わざるを得ません。
 刑事補償法の趣旨、法制定時の理念を考えますと、昭和二十五年の立法時に労働者の一日平均給与額とほぼ等しかった基準日額の上限が、改正をたび重ねているのにもかかわらず、一日平均賃金の六割にも満たなくなっているのは許されないことであります。ゆえなく身体の拘束を受けた国民の財産上の損失、精神上の苦痛に対して補償をしなければならないことは、憲法によって定められた国の責務なのであります。
 さらに、補償日額の下限につきましては、昭和五十三年に引き上げられて以来、十年間も据え置かれたままでありますが、刑事補償制度のあり得べき姿といたしましては、上限を引き上げれば下限も同様に引き上げるべきなのでありまして、この引き上げは法制定時の趣旨からも必要となるものであります。
 また、無罪にもかかわらず死刑を執行されてしまった場合の補償は、筆舌に尽くしがたい精神的苦痛に対する慰謝料としての性格を持つわけでありますので、これを算定することは困難であるとはいえ、交通事故などの慰謝料と比べ政府原案の引き上げ額は不十分であると言わざるを得ません。
 以上の理由から、抑留、拘禁等による補償の日額については、現時点での勤労者の一日平均給与額を上回り、これに近接する一万六千円をもって上限とすること、その二分の一の額八千円をもって下限とすること、さらに死刑の執行による補償の最高額及び加算額については、制度発足時の上限額五十万円と自動車損害賠償保障法が制定された当時の死亡保険金の現在までの上昇率を勘案して五千万円とすることが妥当であると認められます。
 以上が刑事補償法の一部を改正する法律案に対する修正案の提案理由と内容の概要であります。
 何とぞ委員各位の御賛同をよろしくお願い申し上げます。
○委員長(三木忠雄君) ただいまの猪熊君提出の修正案は予算を伴うものでありますので、国会法第五十七条の三の規定により、内閣から本修正案に対する意見を聴取いたします。林田法務大臣。
○国務大臣(林田悠紀夫君) ただいまの修正案につきましては、政府といたしましては反対でございます。
○委員長(三木忠雄君) これより原案並びに修正案について討論に入ります。
 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。――別に御発言もないようですから、これより刑事補償法の一部を改正する法律案について採決に入ります。
 まず、猪熊君提出の修正案の採決を行います。
 本修正案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
○委員長(三木忠雄君) 少数と認めます。よって、猪熊君提出の修正案は否決されました。
 次に、原案全部の採決を行います。
 本案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
○委員長(三木忠雄君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 工藤君から発言を求められておりますので、これを許します。工藤君。
○工藤万砂美君 私は、ただいま可決されました刑事補償法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、日本共産党、民社党・国民連合の各派及び各派に属しない議員西川潔君の共同提案による附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。
    刑事補償法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
 一 政府は、被疑者及び被告人の人権の保障並びに適正手続の確保に一層の努力をなすべきである。
 二 政府及び最高裁判所は、刑事補償制度の趣旨にかんがみ、無罪の確定裁判を受けた者に対する適正な補償を行うため、法制定時の理念を尊重し、経済事情の変動等を考慮して、補償金額の引上げについて早急に努力すべきである。
 三 政府は、刑事補償制度の趣旨にかんがみ、身柄不拘束のまま裁判を受けて無罪になった者に対する補償及び再審により無罪の確定裁判を受けた者に対する再審請求手続に要した費用の補償について、更に調査・検討すべきである。
 四 政府は、被疑者として抑留又は拘禁を受けた者に対して適正な補償を行うため、被疑者補償規程の一層適正な運用に努めるべきである。
  右決議する。
 以上でございます。
 委員各位の御賛同をお願いいたします。
○委員長(三木忠雄君) ただいま工藤君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
○委員長(三木忠雄君) 全会一致と認めます。よって、工藤君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 ただいまの決議に対し、林田法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。林田法務大臣。
○国務大臣(林田悠紀夫君) ただいま可決されました附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重いたしまして鋭意努力してまいりたいと存じます。
○委員長(三木忠雄君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(三木忠雄君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後三時五十分散会