第112回国会 大蔵委員会 第10号
昭和六十三年四月二十八日(木曜日)
   午前十時開会
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   委員の異動
 四月一日
    辞任         補欠選任
     木宮 和彦君     坪井 一宇君
 四月十八日
    辞任         補欠選任
     吉井 英勝君     佐藤 昭夫君
 四月二十日
    辞任         補欠選任
     佐藤 昭夫君     吉井 英勝君
 四月二十五日
    辞任         補欠選任
     鈴木 和美君     梶原 敬義君
     本岡 昭次君     小野  明君
 四月二十六日
    辞任         補欠選任
     小野  明君     本岡 昭次君
     梶原 敬義君     鈴木 和美君
 四月二十八日
    辞任         補欠選任
     福田 幸弘君     大島 友治君
    大河原太一郎君     永野 茂門君
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  出席者は左のとおり。
    委員長         村上 正邦君
    理 事
                大浜 方栄君
                梶原  清君
                藤井 孝男君
                志苫  裕君
                多田 省吾君
    委 員
                井上  裕君
                大島 友治君
                斎藤栄三郎君
                斎藤 文夫君
                坪井 一宇君
                永野 茂門君
                矢野俊比古君
                山岡 賢次君
                山本 富雄君
                鈴木 和美君
                丸谷 金保君
                本岡 昭次君
                塩出 啓典君
                和田 教美君
                近藤 忠孝君
                吉井 英勝君
                栗林 卓司君
                野末 陳平君
   国務大臣
       大 蔵 大 臣  宮澤 喜一君
   政府委員
       大蔵政務次官   佐藤栄佐久君
       大蔵大臣官房総
       務審議官     角谷 正彦君
       大蔵省主計局次
       長        斎藤 次郎君
       大蔵省主税局長  水野  勝君
       大蔵省理財局長  足立 和基君
       大蔵省銀行局長  平澤 貞昭君
       大蔵省銀行局保
       険部長      宮本 英利君
       大蔵省国際金融
       局長       内海  孚君
       国税庁次長    日向  隆君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        保家 茂彰君
   説明員
       総務庁長官官房
       地域改善対策室
       長        瀬田 公和君
       経済企画庁調整
       局財政金融課長  森田  衞君
       会計検査院事務
       総局第一局租税
       検査第一課長   倉田 健司君
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  本日の会議に付した案件
○参考人の出席要求に関する件
○昭和六十三年度の財政運営に必要な財源の確保を図るための特別措置に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)
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○委員長(村上正邦君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。
 まず、委員の異動について御報告いたします。
 本日、福田幸弘君が委員を辞任され、その補欠として大島友治君が選任されました。
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○委員長(村上正邦君) 昭和六十三年度の財政運営に必要な財源の確保を図るための特別措置に関する法律案を議題といたします。
 まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。宮澤大蔵大臣。
○国務大臣(宮澤喜一君) ただいま議題となりました昭和六十三年度の財政運営に必要な財源の確保を図るための特別措置に関する法律案の提案の理由及びその内容を御説明申し上げます。
 御承知のとおり、我が国財政を取り巻く環境には依然として厳しいものがあり、我が国経済の着実な発展と国民生活の安定、向上を図るためには、引き続き財政の改革を強力に推進し、その対応力の回復を図ることが緊要であります。
 このため、政府は、昭和六十三年度予算におきまして、歳出の徹底した見直し、合理化等に取り組むことにより、昭和六十五年度までの間に特例公債依存体質から脱却し、公債依存度を引き下げるという努力目標達成に向けて着実に前進することといたしております。
 まず、歳出面におきましては、国民健康保険制度の改革を初めとする既存の制度、施策の見直しを行い、特に経常経費について一層の節減合理化を行うとともに、内需拡大の要請に配意し、一般公共事業費についてNTT株式の売り払い収入を活用すること等により前年度当初予算に対し二〇%増という極めて高い水準を確保するほか、限られた財源を重点的、効率的に配分するよう努めることといたしております。
 他方、歳入面におきましては、税制につきまして、税制の抜本的改革との関連に留意しつつ、最近の社会、経済情勢等に即応して、当面早急に実施すべき措置を講ずるとともに、税外収入につきましては、可能な限りその確保を図ることとしております。
 しかしながら、昭和六十三年度におきましては、なお財源が不足するため、特例公債の発行を行うこととするほか、国債費定率繰り入れの停止などの措置をとらざるを得ない状況にあります。
 本法律案は、以上申し述べましたうち、特例公債の発行等、昭和六十三年度の財政運営に必要な財源の確保を図るための特別措置を定めるものであります。
 以下、この法律案の内容につきまして御説明申し上げます。
 第一は、特例公債の発行であります。
 昭和六十三年度の一般会計の歳出の財源に充て
るため、予算をもって国会の議決を経た金額の範囲内で特例公債を発行できることとしております。
 第二は、国債費定率繰り入れ等の停止であります。
 昭和六十三年度における国債の元金の償還に充てるべき資金の一般会計から国債整理基金特別会計への繰り入れについて、国債総額の百分の一・六に相当する金額の繰り入れ及び割引国債に係る発行価格差減額の年割り額に相当する金額の繰り入れは、行わないこととしております。
 第三は、政府管掌健康保険事業に係る繰り入れの特例であります。
 昭和六十三年度における一般会計から厚生保険特別会計健康勘定への繰り入れについては、健康保険法に規定する国庫補助に係る額から六百五十億円を控除して繰り入れるものとするなどの措置を講ずることとしております。
 以上が、この法律案の提案の理由及びその内容であります。
 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
 なお、本法律案はその施行日を昭和六十三年四月一日と提案しておりましたが、その期間を経過しましたので、衆議院におきまして公布の日に修正されておりますので御報告いたします。
○委員長(村上正邦君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。
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○委員長(村上正邦君) この際、参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 本案審査のため、来る五月十一日、本委員会に青山学院大学教授、財政制度審議会会長代理館龍一郎君、全国銀行協会連合会副会長藏原千秋君、専修大学教授松田修君、以上三名の方々を参考人として出席を求め、御意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(村上正邦君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
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○委員長(村上正邦君) これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○鈴木和美君 まず、私は一番最初に大臣の所信についてお尋ねしたいと思います。
 宮澤大臣は中曽根内閣のその末期一年大蔵大臣をなさって、今回改めて竹下内閣の副総理として大蔵大臣を担当することになったと思うんです。つまり、宮澤さんが経済政策について所得倍増論とか積極財政論とか、いろんな見識を発表されておったわけですが、中曽根内閣を継承する竹下内閣でございますね、同時にちょうど末期一年のときの大蔵大臣でしたから、宮澤大臣のいろんな発想、構想というものを具体的政策に生かすことが当時はできなかったと思うんです、もう既に予算は枠組みは決まっておったわけですから。そういう意味から見て、中曽根内閣の財政運営に対して当時を回顧しながら、今大蔵大臣になって中曽根内閣の財政運営に対する評価とか、どうであったかというような考え方がございましたら、この機会に第一に伺っておきたいと思います。
○国務大臣(宮澤喜一君) 申し上げるまでもないことでございますが、財政経済政策というのは、いついかなるときにも一つの物の考え方が一貫してというか、普遍にあるということではございませんで、一種の対症療法的な要素をいろんな意味で含んでおります。その中で、しかしその国その社会が長期的に達成すべき目標は何かということは常にございますから、そういう長期的な要請と、そのときそのときに求められているやや中短期的な問題とをどのように適当に調整していくかということに私は尽きるだろうと思っております。
 で、中曽根内閣が取り組んでまいりました財政経済政策の一つのやや中長期的な目標は行財政改革であります。これは今日といえども、今日的には持っておりますし、中曽根内閣で非常な成果が上がったと考えておりますが、まだ達成されたとは申せない。それがいわば内閣の財政経済政策の大きな目標であったと考えるのでございますが、そういう状況の中から我が国の貿易黒字が累積いたしました結果、内外からさらに内需の振興ということについて強い要請があり、また急激な円高の結果、我が国の産業がこれに対応するのにかなりの困難を覚え、しかもそれが雇用問題にも発展するというやや当面的な問題が生まれたわけでございます。
 したがいまして、中曽根内閣としては行財政改革の路線は非常に着実に、しかもよく進めてこられたということを評価すべきでありますし、その後半期におきまして内外からの要請に対応して、そういう行財政改革の中ではあるが内需の振興ということについて適切な手を打つという、やや背反した二つの長短期の課題を誤りなく処理をされたのではないか。最後に申しましたことは、昨年の五月ごろにおけるいわゆる緊急経済対策、六兆円と言われる対策でございますが、これはいわば中曽根内閣が長期の行財政改革という課題の中から短期的な内外の要請にこたえるために打たれた手であって、これはそれなりの効果を発揮したというふうに考えておるわけでございます。大体そのように評価をいたしております。
○鈴木和美君 どちらかというと、一般的には中曽根内閣の経済運営というものは、もちろんむだな経費を削減するという意味での行政改革ということは私どもも決して反対ではございません、しかし全体的には行政改革というもののツケが外に回されていったり、見せかけの行革であってみたり、ゼロシーリングがとられていったり、つまりどっちかというと小さな政府というようなことを前提に置いて、経済全体が、財政運営全体がコンパクトになっちゃって縮小均衡みたいなそういうパターンが続いてきたと思うんです。
 その当時から私どもは内需拡大というものを大いに叫びまして、そういう積極財政に転換を早くしたらいいんじゃないかというようなことを私ども主張したわけです。中身は若干違うかもしれませんけれども、宮澤さんも当時そういうことを述べられておったような気がするんですが、だから中曽根内閣の財政運営は、確かに今になってみれば評価という言葉があえて出るかもしれませんけれども、裏を返せばなぜ早く積極財政に転換できなかったのか。そういう財政主導というか、そういうものをやろうと思えばできたんじゃないのかというような私は気がしてならないのでありますが、その点はいかがでございましょう。
○国務大臣(宮澤喜一君) それはまことにごもっともなお尋ねでありますが、少なくとも財政がいわゆる赤字公債に二〇%も依存をしているという状況、あるいは一般会計の二割が国債費であるというような状況、これをそれ以上悪くしてはならないということはだれが考えても実はそのとおりであったろうと思うのであります。
 したがって、そういう問題はだれが考えてもそのとおりであるが、急激な円高等によって日本の経済がこれに対応できないといたしますと、それは同時に財政にも、先ほど鈴木委員が縮小経済と言われましたけれども、影響を及ぼしかねないという状況があり、他方で内需拡大が内外からの要請であるということがありましたときに、ある時期に、いわばこの背反した命題について、多少そういう財政の状況ではあっても財政も、犠牲というのはおかしな言葉でございますが、さらに努力をすべきである。どの程度にそれをすればよいのか、努力した結果がどうなるのかというあたりの結局見通しの問題であったろう。
 つまり、さらに財政が赤字公債を、あるいは建設公債でもよろしゅうございます、公債を増発しても、それが経済の転換に余り効果がなかったということになれば、それだけ財政悪化の深みに陥るだけのことでございますし、いやそうでなくて、ある程度呼び水的な効果があって経済全体が好転をするということであればやがて財政も受益をする、そのタイミングと幅の判断の問題であったのではないかというふうに私は考えるのであり
ます。
○鈴木和美君 意見を述べる前に、もう一つ聞いておきたいのですが、六十五年度特例公債発行がゼロ、新規債は出さなくてもいいというようなことが、どうもうれしい悲鳴なのかどうかわかりませんけれども、現実の話題に上ってきたわけです。今までは、どっちかというとどうも実現不可能じゃないか、けれどもその目標をおろすわけにはいかないというのが今までの説明だったと思うんです。ことし初めになってから、自然増収などの関係も見ながら、六十五年度赤字国債の発行ゼロというようなことが現実的な可能性を帯びてきたというように言われているわけです。
 ここで伺いたいのは、なぜそういうことになったんだろう、その理由とか根拠とか背景というようなものについて、細かでなくても結構ですが、大まかで結構ですが、どういう理由、背景、根拠があったのか、この機会に聞かしていただきたいと思うんです。
○国務大臣(宮澤喜一君) これはかなり年月がたちましてからでありませんと申し上げられないような、いわば分析をしなければならないことが幾つかあると思いますが、一つ比較的明確に申し上げられることは、いわゆる行財政改革の成果といたしまして、NTTの民営化が行われました。この結果、その株式を政府が処分できることになった、その処分益というものが財政に対してはかなりの援軍になったということは一つ確かでございます。
 それから、少し長期に、後になりませんと明確に申し上げられないと思いますことは、この円高の中から日本経済がこれに対応して、いわば経済が順調に推移し始めた、それによって税収も増加し始めたということが今お尋ねの問題に寄与していることはもう確かでございますが、それがなぜどのような経過を経てそうなったかということにつきましては、なおしばらく分析を要するかと存じます。
○鈴木和美君 事務当局にちょっとお尋ねしますが、近いところで結構ですが、自然増収というものは、これは私は租税特別措置のときにもお尋ねしたんですが、今日どういう現状にあって、三月期法人決算も行われたわけですから、自然増収はどういう現状と展望にあるのかということを聞かしていただけませんか。
○政府委員(水野勝君) お示しの自然増収の件は、昭和六十二年度のお話であろうかと御推察申し上げて現状を申し上げたいと思うわけでございます。
 六十二年度の税収といたしましては、三月決算法人の五月納付分、そこまでが年度の税収となるわけでございますが、現時点で判明しておりますのは二月末までの数字でございます。したがいまして、三月、四月、五月と三カ月分を残しているわけでございますが、二月末の累計では、補正後予算額に対しまして七五%まで参ってございます。これは前年の同期でございますと七一%でございますから、四ポイントぐらい進捗の状況はよいわけでございます。したがいまして、現状におきましては、税収の収納状況は好調であると言えようかと思うわけでございます。
 こういう数字から見ますと、何がしか六十二年度におきまして自然増収が生ずるということは期待できるわけでございますけれども、あとの残りの三カ月でまだ税収の年度の四分の一ございます。それからまた、前年の三月、四月、五月分を見ますと、三月分が一三・九%、四月分が一七%、五月分が二四%の最後の三カ月が非常に好調でございました。したがいまして、そうした最後の三カ月が好調であった去年を受けまして、ことしがどのように推移するか、これはもっぱら三月決算法人の法人税の納付状況に依存するところが非常に大きいわけでございますので、この時点で年度でどのくらいのものが生ずるかということを確定的に申し上げることはまだ難しい段階でございます。
○鈴木和美君 私が今から述べるような自然増収の現状、展望ということについて間違いがあるかどうか指摘していただきたいのですが、六十一年度の税の自然増収が約二兆四千億円、六十二年度においては第二次補正で一兆九千億円の税収入を計上しました。特にその中には売上税の廃案に伴う減収分、これを差し引いてかつ所得税の減税が一兆五千四百億円、総体として第二次補正で三兆五千億円の税の増収があったというように見てよろしいか。
 二つ目は、二月末の租税収入の状況によりますと、今局長が述べられたとおり、前年度同期比を見てみますと九・二%増ですね、まことに好調である。巷間、いろんな数字を見ながら、状況を見ながら、二兆数千億円の自然増収がさらに見込まれるんじゃないかというようなことが言われている。特に法人税税収の大部分を占める三月期決算も非常に好調だということなので、そういう状況から見ると、二兆数千億円くらいはなお見込まれるんじゃないかというようなことになっていると思うんです。したがって、六十二年度は全体として五兆もしくは六兆円ぐらいの税収の自然増があるんじゃないか。こんなふうに私は見ているんですが、間違いはございましょうか。
○政府委員(水野勝君) ただいまお示しの六十一年度が補正後に対しまして二兆四千億ということでございました。これはお示しのとおりでございます。六十二年度につきましては、大筋は御指摘のとおりでございますが、所得税減税が一兆五千四百億ございました。プラスいたしまして、法人税の一・三%と申しますのが期限が到来してこれが落ちておりまして、合わせまして減税分としては一兆八千億円程度のものが減税となっております。それに加えまして、先ほどの売上税の件の修正もございましたが、売上税の件はこれはほかの物品税なりなんなりとの振りかわりでございますので実質的には減収ということではございませんが、この減収――所得税、法人税の減税にプラスいたしまして一兆九千億円程度のなお上積みをする余裕がございました。したがいまして、当初予算に対して実質的には三兆七、八千億の見込み増を立てておるという、結果としてはそういうことに相なってございます。
 ただ、これからの点は、今お示しのように二月分が九・二%でございますが、先ほど申し上げた三月分、四月分、五月分というのは、去年が非常に高かっただけになかなか見通しにくい。それからもう一つは、今申し上げた減税額と増収額を加えて三兆七、八千億のものを積んでおります、その税収の実質的な増加率を六十二年度の経済見通しと対比いたしますいわゆる弾性値でございますが、これは結果的に一・八三という数字になってございます。この弾性値は、経済成長率よりは必ず税収は上回るわけでございますから、一・幾つというふうに必ず上回るのが適性ではございますが、過去十年平均で見ますと一・一程度でございます。したがいまして、一・八三というのはかなり異例な弾性値ということになってございますが、そういうこともあえて織り込んで補正を立てたということでございます。
 それで、なお若干何がしかの自然増収は見込めますが、一・八三という弾性値を織り込んだ見積もりの上に、これが一・八三がさらに非常に上振れするような税収動向というものを本当に期待していいのかどうか、これはまさに三月決算次第でございますので、具体的にお示しの二兆何がしがなおあるのではないかという御質問につきましては、これはまことに今の時点では何とも申し上げようがないというのが実情でございます。
○鈴木和美君 前回も指摘しましたが、水野局長はそれ以上言えないはずでしょう、役人ですから、確定的なことを言わなければならぬのですから。しかし巷間は、大体これからも二兆円が上がってくるだろうというように見られていると思うんです。
 さて、大臣、この話は先ほどの議論に戻りまして、赤字国債六十五年ゼロということになった根拠、背景ということについて先ほどお尋ねしたんですが、確かに長期的な施策というのもありますから、今一挙にそのことが効果を奏したというよ
うに短絡的に断定するわけにいかないでしょう。けれども、私が今やりとりをしたように、ある意味では、また大臣も申し上げられておりました緊急経済対策ですね、こういうものとか、所得税減税が一兆五千四百億円行われた、建設国債が当時一兆三千六百億でしょうか、NTT株が四千五百八十億でしょうか、そういう財源があったということもありましょうが、先ほど一番最初に述べた中曽根内閣時代の財政運営ということよりはむしろ宮澤さんになってからこういう施策が積極的にとられてきて、私は宮澤さんやるなと思っておるんですわ。むしろそういう財政運営が積極型に転換していかない限り大変だと思うんですね。だから私は、これからもやはり積極財政に転換をするというこの方針というものはやっぱり踏襲されて、積極的財政出動が行われるようになる方がいいと思うんです。
 この緊急経済対策にしても、細かい数字は当たっていませんけれども、どうでしょう、財政が出動したと言われるのは二兆七千億ぐらい出動しているんじゃないでしょうか。俗称真水というんですが、その真水の投入がこういう効果をもたらしているということだと私は思っているんですが、それはやっぱり間違いでしょうか。
○国務大臣(宮澤喜一君) やはり政策というものは継続することによって効果を発揮いたしますので、例えばNTT株の売上代金が利用できるようになったなんということはやはり長い間の行財政改革の成果である。いわば私の先任者からの受け継ぎました何といいますか、財産であるという感じがいたすのでございます。
 それから緊急経済対策でございますが、これは確かにいわゆる真水、そういうところもございましたし、減税分もございましたし、かなりの刺激的な効果を与えたことはこれは間違いないと存じますが、同時に日本経済がその段階にやはり急激な円高に対して、殊に企業が非常なやはり苦労をして対応するだけの内部努力をされたということ、これがやはり非常に大きかったと思いますし、また余り言われないことでございますけれども、円高そのものが原材料、燃料等を非常に安く手に入れるメリットをもたらしたということもあずかって力があったであろうというふうに考えております。
○鈴木和美君 私の積極財政の方が効を奏しているというようなことを胸を張って言ってくださるのかと思ったんですが、謙虚で、これ以上物を申しようがないんでございますが、ただ、私は毎年こうやって財確法を議論するときに思うんですが、言葉の定義というのがなかなか理解しにくいんですね。政府が言っている言葉の意味合いと、多くの国民がその言葉を理解している意味合いというのは大変私は誤差があると思うんですね。
 そこで、先ほど大臣の趣旨説明を伺ったんですが、この中の言葉からもう一回お聞きしたいんですが、「六十五年度までの間に特例公債依存体質から脱却し、」と書いてありますね。特例公債の発行をゼロにするというだけのことならまだ言葉としてはわかるんですが、特例公債依存体質からの脱却を六十五年までにやり遂げたいと。宮澤大臣の所信表明をもう一回こうやって伺わしていただいているんですが、財政改革の強力な推進という中に、「第二の課題は、財政改革を引き続き」と、「改革」という言葉も使われていますね。後ほどもう少し議論さしていただきますが、その中に「財政改革の目的は、一日も早く財政がその対応力を回復することにより」と書いてあります。目的は財政の対応力が回復することだと。前回、租税特別措置法のときに私がお尋ねしたんですが、それならば、財政の対応力というものは何ですか。どういうもので、どういうことが実現したら対応力が回復したということになるんですかというお尋ねをした。この所信表明の真ん中にまた同じことが書いてあります。「この結果、昭和六十五年度までの間に特例公債依存体質から脱却し」と書いてあります。それで一番最後に、来るべき世紀に向けて財政の対応力を回復すると。つまり、所信表明で述べていらっしゃることは、当面の目標は六十五年赤字国債依存体質からの脱却だ、目的は対応力の回復でございます、こう述べていらっしゃるんだと思うのです。
 そこでまず、私が見て疑問を今提起したんですが、一番最初の赤字特例公債依存体質からの脱却というのは、どういうことを意味しているのかお聞かせいただきたいと思います。
○国務大臣(宮澤喜一君) これは従来からずっとこのように言葉を使ってまいりましたので、確かに大変わかりにくいことだと思います。今もう端的に申し上げましたら、昭和六十五年度には特例公債は発行いたさないということをも具体的には目標にいたしておることでございます。
 ただ、それをあえて体質云々と申しましたのは、恐らくこの言葉のよって来りましたゆえんは、一遍六十五年度になくなりましても、後になってまた借金に頼るとかいうようなことではこれはいかぬわけでございますから、全体としてもう六十五年度にゼロになればそれから後もゼロでやれるんだと、こういうふうにいっときだけの、一過性の原因でできたということではいけない、こういうことが強いて申せば体質から脱却するという意味であろうかと思っております。私どもが今現に目的として努力しておりますのも、六十五年度には特例公債をゼロにするということ、並びにその後特例公債の発行は予定をしない、この二つのことというふうにお考えをいただきたいと思います。
○鈴木和美君 でも、今新聞もそうですし、政府も述べているんですが、六十五年度新規に特例公債の発行はゼロだということは、今まで遠いかすみの向こうの方にあったようだけれどももうそこに見えてきた、これだけよくやっているじゃないかということをえらく強調なさっているわけでしょう。私はそれはそれでいいと思うのですよ。ただそのときに、依存体質からの脱却だというと、ごまかし言うなよということが国民の側からどうしても見られますね。
 事務的にお尋ねしますが、現在の償還ルール六十年ということを見たときに、五十年から始まってきた借換債は依然としてあるわけですから、依存体質からの脱却だ、赤字公債をゼロにするということも含めると、現在の六十年償還ルールからすればあとどのぐらいかかりますか。事務的に計算すればわかると思います。
○政府委員(斎藤次郎君) 今の中期展望その他でお示ししておりますように、仮に六十四年度までの特例公債発行を六十五年度以降ゼロとしますと、六十四年度時点からその時点で発行しました公債発行についての償還が六十年償還で行われるわけでございますので、いわば六十四年度からスタートして六十年間かかるということになろうかと思います。
○鈴木和美君 こういう表現はおかしいですか、斎藤さん。
 現在の六十年償還ルールそのものを踏襲していきますと、六十五年以降も発行し続けるわけですね。
   〔委員長退席、理事梶原清君着席〕
ですから、現在のルールからすると、昭和という言葉がいいかどうか知りませんが、私の計算では昭和百二十四年、西暦二〇四九年まで継続していくんではないのでしょうか。私の言っていることはおかしいですか。
○政府委員(斎藤次郎君) 計算をいたしますとそのようになります。六十四年度からスタートして六十年かかりますので、完全に償還が終わるのは、六十年償還ルールに従う限り昭和百二十四年度ということになろうかと思います。
○鈴木和美君 大臣、ですから先ほど申し上げましたように、言葉がどうも「特例公債依存体質から脱却」であるということは、そういう現状それから今後の経済見通しなども考えて、どっちにでも使われているみたいなんですね。つまり、これからもそういう借換債もあるし、場合によっては、後ほど議論しますが、やっぱり全額借りかえだというようなことにならなきゃならぬような経済見通しだって不安材料としては残っておるわけ
です。だから私は、そのところは正直に述べられた方がいいと思うんです。説明しなきゃわからぬというような言葉じゃなくて、やっぱりそこは国民にわかりやすいような言葉の表現というものを使っていただきたいし、それが私はわかりやすい政治だと思うんです。これはこのぐらいにしておきます。
 それならばその次に、目的である対応力です。対応力については、前回私は四つのケースを示して大臣にお尋ねしたんです。議事録も読まさせてもらってどうもちょっとぴんとこないんですが、私が述べている対応力の回復というのには、何かの基準とか目安とかというものをきちっとしておかないと、政府の財政運営にしろ我々が議論に参加するにしても、あっち行ったりこっち行ったりして、なかなか本当のところがわからないという意味において、基準とか時期みたいなものをこんなふうに私は提起したはずです。
 まず一つは、今議論したように、特例公債新規発行ゼロとなったとき、ここから財政がだっと出動していきますよ、こういうふうに考えたらいいんですかと。二つ目は、建設国債新規発行ゼロとなったときですかと。三つ目は、国債残高のGNPに対する比率をある程度低い率までに下げたとき、これがどのぐらいでいいかというのはいろいろありましょうが、しかし基準のつくり方としてそういう考え方はございませんかと。四つ目は、公債依存度を一定率以下にしたとき。というような四つ目の基準から見たときに、政府はもう少しこういうことをもって努力して、その努力が行われたときをもって財政の回復、対応力が回復したというように言うことはできないのでございましょうか。
 今の六十五年の赤字国債脱却の問題だって、言葉でいつもあっち行ったりこっちに行ったりして、結局議論は先に先にと延びていくというようなことになるので、対応力の問題については、大臣はどんなふうな見解をお持ちでございましょうか。
○国務大臣(宮澤喜一君) ただいまお尋ねになられましたことは、政府が仮に昭和六十五年度に新規の特例債の発行をやめることができましたにいたしましても、いろいろな問題があるわけでございます。恐らくその段階におきまして今後の財政の長期計画ということを考え直すといいますか、新しく立てるということになると思うのでございますが、今言われましたようなことが全部そこに関係をしてまいりますので、ただいまのお尋ねの意味はよく私はわかりますけれども、それにきちんとお答えするためには、やはり新しく長期の財政再建をどうするかということを総合的に決めましてお答え申し上げなければならない、そういう趣旨のお尋ねというふうにやはり承ります。
 財政をお預りして一番感じますことは、やはり一般会計の二割が国債費であるということでございます。この点は、利払いと一部の償還でございますが、利払いが大部分でございますが、これは実は実額としては既発行の額がこれだけございますと簡単になかなか減らない、金利の安い分が少し多くなってまいりますと、その点は影響がございましょうけれども、新規発行はやめることができたといたしましても、既存の国債についての利払いというものはこれはもう簡単に減らないわけでございますので、財政のいわば使える金の二割はもう決まっているという感じのことでございますから、ここのところが一番つらいのでございますが、実は正直を申しまして、そこの部分が一番直りにくい部分でございます。
 ですから、それはどうも事実としてそう考えていかざるを得ませんが、他方で先ほど国債依存度ということもおっしゃいまして、予算を編成するときにこの部分は借金をしなきゃならないんだという場合と、いや税収で賄えるんだという場合とでは幾らか予算を大きく組むか小さく組むかというそういうところは確かにございますから、公債依存度が下がってくるということは弾力性を増すということになってまいると思うのでございます。
 それからもう一つ、これも適切な御指摘でありますが、今十分お答えできないと思いますのは、特例公債の発行をやめた後、建設国債をどうするのかということでございました。これも実はその時点で新しく考え方を決めていかなければならない、今まだ十分にお答えできる用意がない種類の問題ではないかと思っております。
○鈴木和美君 ここでお尋ねしておきたいんですが、その国債の依存度というか、国債をどういうふうに考えるかというときに、借金も財産よと、信用があるから借金もできるのであって、何もおまえ借金をそう苦労することもないというようなよく論議がありますね。もっと別な表現で言うのであれば、利払い費の範囲内で成長率とにらめっこして、成長率が例えば利払い費よりも多いというのであればそんな無理してわあわあ言う必要ないじゃないかという、俗称、私にわかりませんけれども、近代経済学とか、何とかかんとかという学者先生の本を読んでみますとそんなことを書いている人もいますね。それはある意味では学説的にはそうかもしれませんね。さりとて、いつまでも赤字国債持っているわけにいかないでしょう。建設国債にしたって、まあ資産があるからと言うけれども、そんなに持っているというわけにはいかないと私は思いますね。これは大臣は、国債に対する考え方というのは、どっちの方をとりましょうか。
○国務大臣(宮澤喜一君) 私は今大蔵大臣を承っておりますので、余りエコノミストがおっしゃるようなことを自由にあれこれ申しますことはいろいろ弊害もございますと思います。
 そういう立場から申し上げますが、企業が設備投資をするために借入金をするということはしばしばございます。その結果として企業の利益が増大をして、これは最終的には株主の利益に帰着するということで許されておることだと思いますが、国が借金をした場合に、しかしこれは最終的には納税者の負担にならざるを得ないわけでございますから、やはりどうも国が借金をするということはなかなか企業が設備投資のために借入金をするのとはどうも一緒には考えにくい。
 ただ、その中で強いて申すのならば、建設国債的なものは国民の必要とする社会資本等々を充実するのでございますから、これについての納税者の将来的な支出は、これは納税者も承知をしていただけるだろうというふうなことは申し上げることができるとは思いますけれども、一般論として、企業が設備投資のために借金をするのとは私は同じではないとやはり申し上げるべきかと思います。
○鈴木和美君 もう一つ事務当局にお尋ねしますが、現在の国債の消化の状況、現況ですな。毎日、新聞をにぎわしているのもありますし、どっちかというと、そんなに前ほどシンジケートが苦労して預かっているよりは、むしろマル優が廃止になったり、それから金余り現象などから見て、非常に国債の価値観というのは私は高まっているように思うんですね。したがって、現在の国債の消化の状況これが一つと、もう一つは、その国債がどういうところが保有されている率になっているか、お聞かせいただきたいと思います。
○政府委員(足立和基君) 現在の金融環境あるいは広くは経済情勢から、国債の消化というのは御指摘のように大変順調に行われてございます。
 六十三年度に予定いたしてございますのは、新規財源債として御承知のように八兆八千億余、それから借換債が十四兆五千億円余でございますので、合わせまして二十三兆三千五百億円程度の発行を予定してございますが、この消化の予定といたしましては、シ団の引き受けが八兆八千億円、それから公募入札といたしまして二十年債あるいは中期国債、短期国債、こういった公募入札で六兆九千九百億円、これで合計いたしますと十五兆七千九百億円余が民間消化分として予定をいたしてございます。そのほか、運用部でございますとか、あるいは郵便貯金の金融自由化対策資金の引き受けであるとか、あるいは運用部・日銀乗換であるとかというようなことで、全体の二十三兆三
千五百億円余を消化することを予定してございます。
○鈴木和美君 ここに参議院予算委員会提出資料、大蔵省が六十三年二月に発表された「昭和五十七年度以降の主要国における国債所有者調べ」というのがあります。その中で日本の場合を見てみますと、政府、中央銀行、金融機関、海外、その他とこうなっておりまして、一九八六年その他の部分を見ますと三〇・八%と書いてあるんですが、この三〇・八%という内訳はどういうことなんですか、これは。
○政府委員(足立和基君) この数字は一九八六年の数字でございますが、政府、中央銀行、金融機関、海外、その他となってございますが、私ども一番新しいところでは、大体この主なものは個人等でございますが、個人と事業法人こういったものでございまして、六十二年の十二月末の数字で申しますと、個人等で二八・九%、約三割弱というようなことになってございます。
○鈴木和美君 つまり大臣、今検証しましたように、先ほどの国債の問題ですが、大臣も、事業者が他にお金を借りるという意味と違って税金ですからいかがなものかというお話があったと思うんです。
 私は実はこんなふうに考えているんですが、国債というものが非常に今日信用度が高い。現実に金融機関の中でもこの国債は自行の運営に大きなファクターになっているわけです。全体の経済が回っている中でも国債の位置づけというのは大変大きいと思うんです。だから、ゼロゼロと言ってみても、これはそうはなかなかいかぬのじゃないのかなと思っています。今度他方は、今おっしゃったとおり、税金で利払い費ですから、それで金融機関にしても、先ほどその他の個人部分をお尋ねした中でも約三〇%なんですが、決して余裕のない人が持っているわけではないんです。余裕のある人が私は持っているんだと思うんです、保有しているのは。ですから、財政、税、利子などは本来やはり所得の再配分機能というものがなきゃいかぬわけです。ところが、結局は余裕のある人のところに利子をまた払って、国がこう大きくさしていくみたいな逆再配分機能になるわけです。そういう意味からすると、国債というものは何でも高くなればいいんだと、例えばGNPの成長率以下におさまっていればもういいんだよというような主張だけではいかぬように思うんです。
 さすればどうするのか、ここがやっぱり調和だと思うんです。だから、調和であるから、先ほど申し上げましたように、財政の対応力が回復したというようなことを言うときに、国債の依存度というのは大体何%がいいと思うとか、それからもっと引き下げたとき何%がいいんだとかいうような目標というものを定めておかないと、ただただ借換債で泳いでいってというようなことだけではいかぬのじゃないかという意味で私はお尋ねしているんですが、その点についての大臣の見解はいかがでございましょう。
○国務大臣(宮澤喜一君) 非常にいろんな面のお話をされましたので、私、最後のところをどういうふうに承っていいか、いろんな解釈があると思うのでございますが、債務者としての国の立場からいえば、先ほどから申しましたように、やはり利払いということは予算編成に非常に大きな支障になっておる、弾力性を失わせる結果になっておるということは、これは間違いのないところと存じますので、それはなるべく小さくしてまいりたい。また、財政そのものが国債に大きく依存することは、やはり今のことと関係がございますけれども、財政を弾力的に考える上でやっぱり考えにくいという、ここは債務者としての国からいえば間違いないところでございます。
 ところで、今度は金融商品という面がもとより国債にはあるわけでございまして、おっしゃいますように、我が国の国債の信用度が高いということは、恐らくは我が国の経済成長力、国としての国力と申しますか、それについての評価が高いということと決して無関係ではない。このことは大切なことだというふうに考えるわけでございます。そういう金融商品としての国債がなるべく国民の間に広く持たれるということは、国民の資産そのものが豊かになるということでございますので、それはもとより望ましいことであって、また最近ちょっと行き過ぎもあろうかと見ておりますけれども、やはり国民が財テクといいますか、いろいろ国債を含む金融商品について関心を持ってきておるということは、ちょっと行き過ぎますといかがかと思いますが、そうでない限りは結構なことだと、金融商品という面からはそのようなことを申し上げることができるということではないかと考えております。
○鈴木和美君 もう一つ聞いておきたいんですが、新経済計画だったと思うんですが、六十七年度の国債依存度を一けた台に圧縮するというように書いてあるんですが、これとこれからの財政再建を考える場合との数字というものの整合性というのはどういうことになりますか。
○政府委員(斎藤次郎君) 現在、新経済計画の策定について経済審議会で審議が行われているところでございますけれども、公債依存度あるいは国債残高の対GNP比率について具体的な目標値が計画に盛り込まれるという話は私どもは伺っておりません。したがいまして、そういう数値が経済計画に載ることはないというぐあいに私どもは理解しております。
○鈴木和美君 私はもう一つ、今度財政改革なんですが、大臣、もう一回誤解しないように聞いてください。私の今の論立てはつまり、大臣の所信表明でいろいろ言葉が使われているけれども、どうも抽象的過ぎるので、だから言葉、言葉をもう少しきちんとしてほしいという意味で言うておるんですが、ここで一番最後の依存体質からの脱却というところは、そうじゃないんじゃないかということはもう一回述べますが、ここのところは言葉をはっきりした方がいいですよ。その次は、それが達成されると、今度は次の目的は対応力の回復である、こうおっしゃっているから、対応力の回復ということは一体何なのかということからいろんな今話をしておりまして、いずれ、これは前回もお話しのあったとおり、私に対する答弁としては、これから大きな目標設定を改めてやらなければいかぬので、そのときにまた議論してまいりますというお答えなんです。これに尽きるんです。
 けれども、そのところに行く前に、今度は一番問題になる財政の改革、財政の改革というのは一体何ですかというのがもう一つこれはあるんです。ここのところもはっきりしてほしいんです。財政の改革ということは税制の改革ですかというようにストレートに考える人もおるし、いや、そうじゃないよというようにも考える人があるんですが、所信表明の中で財政改革の次に来るのが税制改革ですね。そこで、この財政改革の「改革」という言葉は何を意味するのか、ここでもう一回事務的に答えていただきたいと思うんです。
○政府委員(斎藤次郎君) 財政に関しましては財政再建とか財政の対応力回復とか財政改革とか、特例依存体質からの脱却とか、いろいろな言葉が使われているわけでございますが、私どもの整理としましては、財政の対応力回復というのは、先ほど大臣がお答えになりましたように、利払い費を含む国債費の重圧により政策経費が圧迫されている現在の財政構造を改善して、今後のいろいろな財政需要に弾力的に対応できるようにするということがいわば財政の対応力回復の意味と考えております。
 財政改革というのは、私どもはこうした財政の対応力を回復する、その回復を図るために歳出歳入構造を合理化、適正化していく、そういう努力をするということを財政改革ということで使っているわけでございます。いわば財政の対応力回復を図るための歳出歳入両面にわたる構造の合理化、適正化に努めることが財政改革であるというぐあいに理解をしておるわけでございます。
○鈴木和美君 その財政改革の今定義みたいな話はそれで結構なんですが、それがことしの財確を議論するに当たって、今のお話がどこにどう具体
的にはまるということになるんですか。
○政府委員(斎藤次郎君) 六十三年度の予算で申し上げますと、そういうことで公債発行額を極力縮減をするということで、特例公債について一兆八千億を上回る一兆八千三百億の減額ができたと。そのために私どもは一生懸命経常経費を中心にいたしまして、いろいろな改革努力を、国保の改革を初め、一生懸命歳出削減の努力をした。そういうようなことが、いわば私どもが六十三年度予算で懸命に努力をしたことでございます。
○鈴木和美君 そこで、先ほどの所得の逆再配分機能に国債がなっているんじゃないか、だからもう少し国債というものは、全部なくさなくてもいいけれども、ある程度やはり償還期間というものを早くしながらなくしていくように努めなきゃならぬということは当然だと私は思うんですね。
 ところが、財政改革、税制改革の方からまた申しますと、どういうふうに考えたらいいんでしょう。つまり、そういう逆再配分機能になっている国債依存度の経済体制というものはよくないと。だけど、この体質というものはだれが悪い、何が悪いと責めようがないんですな、経過から私言うと。つまり、結果としてこういうことになっちゃったんですな、その国債の依存度を構造的にこれは見直さなきゃならぬことなんですわね。構造的なもので見直すということを考えるのであれば、きちっとした配分機能を持たせるようにすべきだと思うのです。
 ところが、今回の税制改正の方を見てまいりますと、六段階になるのか五段階になるのか、新型間接税は税率が何ぼになるのかまだよくわからないんですが、仮にそのことだけをとってみたとしても、相変わらず上の方がどおんと下がってくる、七〇%が五〇%になるというような状態。本来所得再配分機能を発揮しなきゃならぬのに、また逆な配分機能に、逆にしようとしているんじゃないのかというように私はとれるんですが、その点は大臣、どういうふうに考えたらいいんでしょうか。
○国務大臣(宮澤喜一君) これは軽々しくお答えできない問題だと思うのでございますけれども、先ほどおっしゃいましたことは、国債の保有について個人の保有分が決して大きくない、小さいということを言われたのでございますが、同じようなことは株式の保有についても私は多分言えるのではないか。例えばアメリカなんかとの比較で申しますと、確かに我が国の場合、そういうことが言える。法人の所有の割合が大きい。
 そこで、なぜそういうことになっておるのか。我が国の貯蓄率が低いかというと、貯蓄率は御承知のように低くないわけでございますので、むしろ高いのでございますから、結局個人がそういう資産を持つときに、預金をするのか、証券なり国債を持つのかという選好の問題も関係があるのかもしれません。そういうこともあるのかもしれません。貯蓄率全体が低いのでございますと、今鈴木委員の言われましたような所得税の構造ということにすぐに関係するわけでございますが、必ずしも貯蓄率が低くないということになりますと、この資産選好にも関係があるのかもしれない。これはよくもう少し研究しませんときちんとしたお答えを申し上げられないところでございますけれども。
 しかし、そういうことを総合いたしまして、やはり個人がいろいろな資産を十分選好して多種多様なものを持てるようにするそういう制度をきちんとつくっておくこと、それから、それに資するような税制の構造を考えておくこと、一般的に言って私は両方とも必要なことだというふうに考えます。
○鈴木和美君 宮澤大臣に尋ねることがちょっとおかしいのかもしれませんが、もしお許しをいただければちょっとはっきりさせていただきたいと思うんです。
 新聞で大変にぎわっております我々との合意のこの減税の法案でございますが、今政府税調が行われて、大体大蔵省と申しましょうか、自民党と申しましょうか、両方と申しましょうか、法案の準備などは今国会に提出できるみたいな準備はしてあるようだが、政府税調の動向を見ながらまあ待っていようかというようなことの状況になっているというように話される方もおるわけであります。同時にまた、政府税調は六段階を、自民党税調は五段階にしようというような話もある。昨日は、三兆円から五兆円の規模のことをやりたいと、合意事項の方は減税についての成案をこの国会の終わりまでに出したいと、他方、いやそれだけやったのでは先食いになるから困るので、いろいろまとめて提案をしたいというような話などもある。こういう状況の中でこれからどんなぐあいにこの問題は進んでいくのか、もしお許しいただければ大臣としての御所見を伺っておきたいと思います。
○国務大臣(宮澤喜一君) 特に私が私の独特の見解を持っておるということではございませんけれども、まず与野党間におきまして三月以来本件につきましていろいろなお話し合いがずっと続けられてまいりまして、結局四月の十二日までこのようなお話があったと承知をいたしております。
 それで、私どもはこういうお話し合いの中から三月の三十日に六十三年度減税のための法案は今会期中に処理するよう最大限の努力をするという合意がございまして、これにつきましてただいま各党の国対委員長間でこの減税の規模等々についてはなお与野党間で協議をするというふうなお話し合いになっておると承知をいたしておりますので、私どもはその与野党間の御協議があって、その結果待ちということでございます。
   〔理事梶原清君退席、委員長着席〕
昨日も御協議があったと伺っておりますし、また連休後もなお二回にわたり御協議の予定があると伺っておりますので、その御協議の結果を待っておるというのが六十三年度の減税の問題でございます。
 他方で、政府は以前から税制の抜本改正を志しておるわけでございますが、それにつきまして政府税調は諮問に答えて本日中間的な答申をされる予定でございます。私ども党内にも党の税制調査会がございまして、これは連休後にかけて間接税の問題も含めまして検討を続けるということになっておりまして、したがいまして、最終的には党の方の税制調査会の議論をもう少し待たなければならないということでございます。
 それらを総合いたしまして、政府としてはできるならばこの国会の会期中に抜本改正の案を御提案をいたしたいということをなお希望を持って、殊にこうなりますと党の調査会でございますが、その二つの調査会の審議、検討に協力をしておる、こういう状況でございます。
○鈴木和美君 六十三年度減税のことについてはこの国会中に成立するよう努力するとなっているから、大蔵省はいつでも出せということがあったら出せるような準備はもう整っていると、これはこっちのファクターとして。他方、新型間接税、税制改正の方は政府としてはこの国会に何とか出したい、それも今協議されているということであるというように今答弁なさったと理解してよろしゅうございますか。
○国務大臣(宮澤喜一君) あるいは言葉が不十分であったかもしれませんが、六十三年度減税につきましては与野党の御協議が昨日も行われ連休後にも行われるということでございますので、政府としてはいわばその結果を待っておるということでございまして、結果いかんによりましては、それに従いまして案の準備をいたさなければならないことになるわけでございますけれども、ただいまのところ、もとよりそういうことでございますので、準備をしたものはございません。
 それからなお、与野党のこの御協議の場におきまして、与党の立場からは六十三年度の減税は、これはやはり抜本改正というものが基本的にあって、それとの関連において考えるべきものであるというふうに与党はこの協議会で主張をしておるというふうに承知いたしております。政府としてもそれはぜひそういうふうにいたしたいという考えを持っておりまして、その点は与党、政府当然
のことながら同じ考えでおるわけでございますけれども、その点につきましてもなお与野党間で御折衝が行われておるということと承知しております。
○鈴木和美君 誤解があったらいかぬので私も意見を述べておきますが、今のお話の中で、私どもが聞いている限りにおいては、六十三年度の減税の方についてはこの国会中には何とか実現するように最大限の努力をするということになっておるからまあ当然日の目を見させてもらえるんだな、六十三年度の減税の方は。政府・与党などの述べているいろいろなものとの絡みというものは、これはちょっとまあわきに置けや、しかしなかなかわきに置けないというようなことになって今延びているということでございまして、我々としては減税問題については、長い何回かの協議を続けてきた結果の話でございますから、やっぱり政府・与党の方が合意に反しているということを述べざるを得ないんです。まあ今この議論をするつもりはございませんけれども、そういう意味で私は、合意事項を守っていただきたいと意見として述べておきます。
 さてその次は、多少事務的な問題でございますが、借換債の問題についてお尋ねをいたします。
 私も承知はしておりますけれども、もう一度事務的に本法律案の第二条四項と五項についての解釈を説明していただきたいと思います。
○政府委員(斎藤次郎君) お示しは第二条の四項と五項でございますか。――四項はこれは特例公債でございますが、「政府は、第一項の規定により発行した公債の規定による償還のための起債は、国の財政状況を勘案しつつ、できる限り行わないように努める」ということでございまして、いわば借換債の発行はできる限り行わないように努めるということですけれども、これは実は四項は、裏で申しますと、償還のための起債をやってもよろしいということでございます。
   〔委員長退席、理事梶原清君着席〕
 五項につきましては「償還のための起債を行つた場合においては、その速やかな減債に努める」ということでございまして、償還のための起債を行った場合には一応六十年ルールで償還を行いますけれども、できるだけそれにとらわれずに速やかな減債に努めるという、努力規定を置いたものでございます。
○鈴木和美君 そういう四項、五項の問題については当初の借換債の禁止から努力規定というようになったわけですね。しかし、私はやはりこの償還というものは早く考えるべきだと思うんですが、それで、結論を言う前に、これをどういうふうに考えたらいいんでしょうね、先ほど大臣も述べられておりましたが、NTTの株の問題でございます。
 NTTの株の売却収入によって六十六年度まで一兆三千億円ずつの無利子貸し付けを行ったとしても、ケースAというところを見ますと、六十三年度までは五兆三千億、六十六年度末で十二兆三千七百億円の余裕金があるように示されておりますね。NTTの株の収益は国債整理基金特会に繰り入れるということにはなっておったんだが、一般会計からの定率繰り入れの問題などとの絡みもあって従来はどんぶり勘定で使われているのではないかというような指摘もしたところですが、その論点から、今まで財源がないということにおいて我々の減税要求が実現しなかったもの――今NTTの株のあれがあるならば、ここで減税財源に使ってもいいじゃないかということを何度か主張してきたんですが、政府の態度はかたくなに拒否ですな。そして余裕金はこういう現状にあるわけでしょう。それならば借換債の発行を停止するぐらいのことをやってもおかしくないと思うんですが、それに対する見解を聞かしてください。
○政府委員(斎藤次郎君) 私どもが提出いたしました「国債整理基金の資金繰り状況等についての仮定計算」のケースAでは、確かに定率繰り入れを六十四年度から二兆六千四百億、六十五年度二兆七千三百億というぐあいに毎年度復活することにいたしておりますので、その結果、NTTの売却収入を合わせますと、確かに余裕金残高は六十五年度に十一兆というぐあいに先生御指摘のように非常に大きな額になります。ただ、ケースBでもう一つお示ししておりますように、これは今後の問題でございますが、定率繰り入れというのを六十四年以降財源事情もあってもし発行しないといたしますと、余裕金残高は現状の五兆ぐらいのベースからだんだん減っていくというケースも実はお示ししているわけでございます。
 御指摘のように、NTTの財源は国債整理基金に附属しておりまして、いわば資金の充実に充てるため国債整理基金に所属させられているわけでございますが、定率繰り入れの停止を余儀なくされている現状で、いわば定率繰り入れを代替する機能を果たしているわけでございます。また、先般の臨時国会で成立さしていただきましたNTT株の活用法案によりNTT株の無利子貸し付けの財源としても活用さしていただいているわけでございますが、いずれにせよこの場合にも最終的には特例公債の、いわば公債の償還に充てるという目的を貫いておりまして、私どもが減税に用いられないと申しましたのは、そういうNTT株式のいわば所属の趣旨、目的からいって、最終的にはやはり国債の償還に充てなければならないということを申し上げておるわけでございます。
 また、今御指摘のように、特例公債のいわば繰り上げ償還のような形で借換債の発行をその分だけ減額してはどうかという御指摘でございます。それは確かに法律上は可能でございますけれども、私どもとしては、最終的には公債の償還に充てるという原則を堅持しつつ、当面は社会資本整備のために、あるいは内需の持続的拡大のためにこれを無利子貸し付けという形で活用するのが最も適切な施策ではないかというぐあいに考えておるわけでございます。
○鈴木和美君 私、きょうここに、今議事録忘れてきちゃったんですが、ちょうど禁止規定から努力規定に変える法律改正の場合の財確法だったと思うんですが、今斎藤さんがおっしゃったその借換債を停止するというところまでは考えたくない。でもあのときの議論としては、そういう余裕が出たときには具体的に対応するような努力というものはこれからも続けていきますという御答弁を私はいただいた記憶があるんです。それと、速やかな減債に努めなきゃならぬというように、これははっきり書いてあるわけですよね。
 もう一つ、ケースAの場合とケースBの場合と二つ出されているんですがね、どっちをやるんですか、どちらを政府はとろうとするんですか。また、これと違うことやるんですか、はっきりしないと議論できないじゃないですか。十二兆円も余裕金ができているから借換債、まあこの際とめたらいいじゃないと私が言うと、いやそうおっしゃいますが、ケースAの方を今度は見ますともう五兆円が三兆円に下がってきますからそれはできないのでございますと言う。定率繰り入れはどうするのかということもはっきりしていない。これじゃ本当に議論にならないと私は思うんですな。だから、私はやはり余裕が多少でもできたときには、国民の財政運営に関しての信頼というものをかち取るためにも、まあ借換債ぐらいもうとめてやった方が、ここで言うとしかられるかもしれませんが、見ばえがいいですよ。私はそんなふうに考えるんですが、もう一度その点はどうしてもだめなんですか。
○政府委員(斎藤次郎君) 私どももいわば特例債の借換債というのは少なくともその発行規模を圧縮してできるだけ繰り上げ償還に努めるというか、六十年償還ルールをなるべく縮めたいという、そういう基本的な立場を持っておるわけでございます。
 ただ、借換債発行、特例債の借換債について申し上げますと、六十四年度で申しますと五兆四千億ぐらいの借換債を発行しなければならぬ。それから、六十五年度で今の公債発行の前提で申しますと、やはり六兆一千四百億ぐらいの借換債を発行せにゃならぬということでございますので、仮にこれを停止いたしますと、即六十四年度で五兆
四千億、六十五年度で六兆一千億というお金が実は要るわけでございます。したがいまして、そういう財源を片方で特例公債を出さずに調達できるというめどが全く立っていないということで、借換債の全額を停止することについてはなかなか難しいのかなというぐあいに今考えて現状を御説明したわけでございます。
○鈴木和美君 大臣、これはNTT株の売却益のあるうちはまだいいんでしょうが、いずれなくなるわけですね。そのなくなったときというんですか、なくなる何年前ぐらいにこのケースAとかケースBとか、つまり繰り入れをいつからやるんだということをお決めになるんですか。もうことしあたりからそのことを議論しておかなければ大変遅きに失する感が私はあるんですが、編成上どういうプログラムでこれは進むんですか。
○国務大臣(宮澤喜一君) NTT株の売却代金でございますが、まあ今後どのような価格がつくかということにもよるわけでございますけれども、収入の中から国債償還をいたしまして、あと社会資本整備勘定あるいは国債整理基金のオペレーションの金等々を出しておるわけでございますけれども、仮に社会資本整備勘定に一兆二千億とか三千億とか、これでも一般会計の公共事業の二割には十分当たるわけでございますが、出しましても実は多少財源的に、売り払い代金にもよりますが、余裕ができておりますことは御承知のとおりでございます。
 したがって、これはある程度はもう私は、食い延ばすという言葉はちょっと適当でございませんが、何年かに延ばして使える金になるのではないかと思っておりますのと、長い先で言えば、無利子貸し付けでございますから償還も出てくる。それからもう一つは、考え方だけで申し上げれば、六十四年度を越えましてなお処分しようとすれば処分し得る株式の残りがあるというようなことも実はあるわけでございますので、この特例債をやめましたような段階で将来の財政展望をいたしますときにそういうこともあわせて考えなければならない、全部のことを実はその段階で考えていかなきゃならない。
 今鈴木委員の言われますことはよくわかっておるわけなんでございますけれども、少なくとも建設公債が出ておるといたしますと、それは利払いを必要とすることはやはり特例債と同じでございますので、それと借りかえなんかとの関連も出てまいりまして、その辺のことは特例債をやめられるとわかりました段階で総合的にもう一度考えなければならない問題ではないかと思っております。
○鈴木和美君 時間が間もなく来ますので、もう一つ、よく後年度負担という言葉がございますね、政府の、まあ我々の言葉で言えばツケ回しと、こういうふうに言ってきたんですが、厚生年金、地方交付税の特会、運用部からの借り入れなどなどあるわけでございますが、この総合計というのは何ぼに理解すればいいんですか。
○政府委員(斎藤次郎君) 御指摘のいわゆる繰り延べと申される措置は実はいろいろございまして、その内容も区々にわたりますけれども、私どもがそれを単純に合計するのはやや性格的に問題があるかと思いますけれども、そういうことで取り上げて申し上げておりますのは、厚生年金の国庫負担金の繰入額、これは二兆七百三十億、これは五十七年から六十三年の累計でございます。それから住宅公庫利子補給金一部繰り延べ、これが六十三年度まで五千百六十四億ございます。それから国民年金特別会計の国庫負担金の繰り入れの平準化措置、これが五十八年から六十三年までで一兆二千七百二十七億ございます。それから財確法で毎年度お願いをしております政管健保の繰入特例、これが六十年度から六十三年度までで四千二百三十九億、これを合計しますと四兆二千八百六十億円ございます。
 さらに、これに昭和五十九年度の地方財政改革によります特別会計借入金を一般会計が承継したと申しますか、一般会計負担に切りかえた分が五兆八千二百七十八億円、それと地方財政対策、補助率カット法に伴います後年度負担が一兆二千三百十四億円ございます。
 それを加えますと、合計で十一兆三千四百五十二億円になりますので、これがいわゆる繰り延べ措置として今先生が御指摘になった額の総合計ではないかというぐあいに考えます。
○鈴木和美君 十一兆三千五百ですか。
○政府委員(斎藤次郎君) はい。
○鈴木和美君 隣においでになる和田先生がよく――これも参議院予算委員会ですな、十二兆五千ね。これどっちが本当なんですか。
○政府委員(斎藤次郎君) それにつきましては、実はこの厚生年金の繰り延べ等の措置につきましては、片方でいろいろな償還というのをやっておりまして、既にお返ししたものが実はございまして、それを差っ引きますと十一兆三千四百になりますし、その差っ引いた額をカウントいたしませんと十二兆五千億になるわけでございます。
 例えば申し上げますと、自賠責特会からの受け入れ等を二千五百億行っておりますので、そういうものを足していきますと、実は十二兆五千になるわけですが、この自賠責特会からの借り入れは六十二年度の補正等で全部お返しをしております。そういうお返ししたものを差っ引きますと十一兆三千四百億、約十一兆三千五百億になるという数字でございます。したがいまして、十二兆五千億と十一兆三千五百億の差額は、国において既にお返しをしている金額を差し引いたその差額というぐあいにお考えいただければそれで正確ではないかと思います。
○鈴木和美君 それで大臣、最後でございますが、今まで私がずっと質問させていただいたものを集約してみますと、特例公債、六十五年というものが新規発行債ゼロだということで万歳万歳というわけにもいかぬのじゃないでしょうか。後年度負担の十一兆と申しましょうか、十二兆と申しますか、そういうものが残っている。片一方、NTTの株はある時期までしか見込めない。定率繰入れを一体どういうふうにお決めになるのかわかりませんけれども、私はこれから厳しい大変な状況だと思うんですね。だから、もう少し今度は政府保有の――きょう私はたばこの株まで売ったらどうですかと言おうと思っておったんですけれども、いろいろ考えていかないと私は大変な時代が来ると思うんですね。大変心配をしている一人です。
 だからといって、どうもこの発想、構想の結末のところをやっぱり広く薄く負担してもらわないと困るんだというところに結んでくるみたいなやり方はよくないと思うんです。その前に、我々が主張しているやっぱり不公平税制の是正だとか何かについて積極的に関与していかない限り私は大変だと思います。特に、先般私が租特の代表質問を本会議でやったときに、竹下総理からも大蔵大臣からも、この赤字国債の六十年償還ルールをもっと縮めてもいい、努力するということもお話しになっていますね。先ほどの国債の依存度の問題も議論しました。そういうことをあれやこれや考えまして、早期にやはりその対応力回復のための手だてを総合的にもう一度考え直してきちっとしないと――この財確法ができてからもう七回も毎年毎年ことし限りにしてください、ことし限りにしてくださいというような法案が提出されるということは本当に遺憾だと思うんです。もう少し責任ある私は対応をしていただきたいと思いますので、最後に大臣の見解をお尋ねして私の質問を終わります。
○国務大臣(宮澤喜一君) 財政の現状につきまして非常に御理解のあるお話をいただいたと思います。
 特例公債をやめましても、これで万々歳というわけには全くまいりませんで、先ほどからお話しのございました後年度への負担が十一兆三千億円余りもございますし、それに国鉄の事業団の問題も実はあるわけでございます。あれこれいろいろございまして、財政再建、弾力性を回復したと申すまでにはまだまだ大変に日が遠うございまして、税制抜本改正のこともお話しでございました
が、やはり私は、経済運営というものを気をつけてやってまいりますと、日本の経済にはまだまだ潜在力がございますので、その中から、こういうような過去の債務あるいはこれから生ずべき事態に対応する国民の経済力全体を大きくしていくということが一番大切なことじゃないかと考えております。
○丸谷金保君 どうも大臣、今のお話を聞いておりましても、一番肝心なところが見えてこないんです。と申しますのは、財政再建というのは、先ほども質問がございましたけれども、どこをとって言うかということをもう一度ひとつ、例えば国債残高とGNPの対比で言うのか、どこで言うのか。あるいは政府の持っている長期債務全体に対するGNPの対比で言うのか。いろんな取り方がありますわね、財政実態指数の。財政再建というふうに政府は盛んに言うんですが、それは一体どこのことを財政再建と言うんですか。それが出ませんと、増税なき財政再建というのは何なんだということがわからないんです。ここのところはっきりひとつきょうはまず定義をきちっと決めて、それでないと議論にならないんですよ、飛び飛びになってしまいまして。大臣の考えている財政再建とはそういうことなんだというものを、それとも公債費がゼロのときを言うのかというふうな、そのまず基準の物差しだけ一遍ぴちっと出してください。考え方で結構です。
○国務大臣(宮澤喜一君) 石油危機がございました後、特例公債を出すようになったわけでございます。その間、大平内閣時代に税制改正も考えましたが、国会の御決議がございました、五十四年の暮れでございますけれども。その中でも、そういうことを考えるよりはひとつ歳出を削減して財政をきちんとやれと、こういう国会の御意思が強く示されたわけでございます。それを契機にいたしまして財政の歳出削減という努力を非常に強く今日までやってまいりましたわけですが、その間にやはり私どもが一番考えましたことは、公債依存度をできるだけ下げていかなければならない、昭和五十七年度には二九・七%になったわけでございますから、これを何とか下げていって、そうしてやがて特例公債というものはゼロにしたいと、ここまでが私どもが今まで財政再建と申し上げてまいりました当面の目標であると、こう申し上げるのが私は正直な御説明ではないかと思います。
 それで財政再建は済むかといえば、もとより決してそうではないのでございまして、それからまだまだ大変にございますことはただいまもお話がございましたとおりでございますが、ともかくこの特例公債をとめないことにはと、それがもう最優先の課題だということでやってまいりました。それが当面の財政再建の目標である。それで全部かといえば、それはまあ言えば、先ほども鈴木委員もおっしゃいましたけれども、あるいは序の口とでも申すべきかもしれませんけれども、そこまでのところをただいまは目標にして努力いたしております。それによりまして公債依存度は三割近いところから今は一五、六%までいったわけでございますけれども、依存度を下げてまいりたいと思っております。
○丸谷金保君 公債依存度が一五・七%と昭和五十年以来の低いところへ来たと、こういうことを大蔵当局は言っております。しかし、昨日も御指摘申し上げたんですが、その依存度が一五・七ですか、一五%前後に下がったということで、ところがその五十年度のときの外国との比率を見ると、今の段階では長期債務のGNP比とかいろんな面で一番悪くなっているんですね。五十年度から最低のところまで行ったんだと言っていながら、国の財政全体を眺めると、借金とかいろんなものを並べてみると、その間にほかの国は、例えば所得に対して非常に債務の多かったイギリスなどが急激に状態がよくなってきたということで、日本だけがそのままずっと悪くなっているんです、いろんな表を並べてみましても。
 そうすると、これは要するに特例公債の発行をゼロにしたときが財政再建の努力目標だったというふうなことではちょっと私は世間に通らない話でないかと思うんですよ。そうすると、大臣あれですか、増税なき財政再建というのは特例債をなくしたときをもって言うと、これが政府の考え方という、これをひとつ週明けまでに政府の統一見解をしっかり出してください。それでないとこれは議論がかみ合っていかないんです。財確法の問題を毎年毎年やっていましても、努力目標だと、それは要するに、努力目標として特例公債を六十五年までにゼロにするんだと言っていますわね、時には。しかし、努力目標も大分見えてきた、じゃ今度それが財政再建なのかということになりますと、私はちょっと違うような気がするんです。増税なき財政再建というのはどこのところを言うんだ、それが達成したというのはどういう状態を言うのか、これをまずひとつはっきりさせていただきたいと思います。
○政府委員(斎藤次郎君) 財政再建につきましては、増税なき財政再建という御提案をいただきました臨時行政改革推進審議会が六十二年七月十四日に答申を出しております。それを読みますと、
  財政再建の目標は、基本的には、財政の体質を改善し、財政面からの政策的対応力を回復することにある。このためには、まず何よりも特例公債依存体質からの早期脱却が図られなければならない。さらに、中長期的にも全体としての公債依存度を低め、財政の機動性、弾力性を回復する必要がある。
こういうぐあいに答申をいただいておりまして、私どもはこれが財政再建の定義だというぐあいに理解しておるわけでございます。
○丸谷金保君 そうすると、それはまず特例債からの脱却であって、財政の弾力性を取り戻さなければ財政再建と言えないでしょう、今のお読みになったところからいっても。しかし、実際には特例債はなくなるけれども、この中期展望を見ましても、例えばいろんな仮定計算例が出ております。しかし、このいろんな仮定計算例を見ましても、どういう形のものをとっても国債の残高がふえていきますね、どういう形とっても。定率繰り入れにしなければその分だけ今度は国債の発行高が減ることになりますけれども、これを実施すれば残高がふえていく。同じことでして、これはどっちにしても仮定計算AとかBとか言ってみましても。そうするとそれが定義だとすれば、結局第一の努力目標は特例債依存体質の脱却だけれども、それは財政再建じゃないでしょう。それでできたということにならぬでしょう、一方でツケ回しの、その他でもって弾力が出なければ。弾力が出るということは、国民経済の中において借金体質あるいは公債の残高ができるだけ少なくて、ここら辺だったらいいんだという目安がなければならぬ。特例公債脱却すればそれでもって弾力性が出て財政再建そこで終わりですか、そうじゃないでしょう。
○国務大臣(宮澤喜一君) それはもう前々から申し上げているとおり、そうではございません。
 やはり一般会計の国債費が二割も占めておるというこの状況が財政の弾力性を著しく奪っておるわけでございますから、先ほどの臨調の答申にもございますように、まずさしずめ特例公債の新規発行をやめるということでございまして、これは私が先ほども申し上げましたように、まだ財政再建というのはそれから大変に道の長いことだと考えております。
○丸谷金保君 それで、大体どういうような状態、例えば弾力性はこういうふうになったら持つという定義、要するに、今次長さんがお答えになったように特例債のまず脱却だと。しかし、財政再建はそれでできたということではないので、少なくともどういう状態になったらだと。今の話を聞いていると、特例公債の脱却をすれば財政再建はできたということになりますわね。そんなこととんでもない話なんで、それはワンステップであって財政再建とは言えないと思う。ですから、増税なき財政再建というのは一体どういう状態になったときを言うのかということをはっきりさせていただきたい。
○国務大臣(宮澤喜一君) 前段は、もう私どもも何度も申し上げているとおり、全く同感でございます。特例公債がなくなりましたら財政再建ができるというようなことを思っている者はおりません。
 それから、その後になお国債の依存度を下げていきたい、そういうふうにすべきであるという臨調の答申も私はそのとおりであると考えますので、結局、財政再建を定義せよと言われましても、それは定性的には申し上げることができましても定量的にはなかなか申し上げられないことであろう。言ってみれば、まず特例債はやめてそして公債依存度はだんだん下がっていく、そういったような状況の中でそれを進めていくということであると思いますが、先ほども申し上げましたとおり、特例債をやめることができる、あるいはできる見込みがはっきりしましたときにこれから後の財政運営をどうすべきかということは、先ほど鈴木委員のお尋ねにも申し上げましたように、やはり一度その段階で将来の展望を考えてみなければならないであろうというふうに思っております。
 丸谷委員の言われますことについての幾らか具体的なお答え、対応というものがその段階で出てまいるかと思いますけれども、それにいたしましてもそれはやはりかなり定性的なものであって、定量的なものを正確にきちっとということはあるいは難しくはないかと思います。
○丸谷金保君 それじゃ定量的でなくお伺いしますけれども、赤字国債をゼロにすれば国債残高、つまり国の借金がふえていってもそれは財政再建と言えますか。
○国務大臣(宮澤喜一君) それは先ほども申しますとおり、きちんと今定義を申し上げられないというふうに申し上げておりますから、財政再建とは何かということに即して申し上げることはできないことでございますが、今のお尋ねは、特例公債をやめたと、それでもしかし国債残高がふえることはあるよと、それでいいのかというお尋ねであれば、それはやっぱりなかなかいいとは申し上げにくいと思います。
○丸谷金保君 私のお聞きしているのは、特例公債をやめて国債残高がふえていくのを財政再建と言いますか、こういう意味です。できたと言いますか。
○国務大臣(宮澤喜一君) ですから、財政再建ということを今定義することは難しいと申し上げておりますから、言える言えないということでなくって、特例公債がなくなりましてもなお国債残高がふえるということはあり得ることであります。そのことはそれ自身で非常に好ましいというふうには私は思っておりません。
○丸谷金保君 私は、好ましい、好ましくないを聞いているんじゃないんです。そこのところがはっきりしませんと、財確法案の論議というのは、毎年やっていましてもそこら辺の堂々めぐりになってしまうんですね。増税なき財政再建ということを政府が言っているんです、政府が。そして財政再建の定義がなかなか難しいということだったらそういう言葉を使うべきでないと思うんですが、大臣いかがですか。
○国務大臣(宮澤喜一君) 臨調の言われましたのは、財政再建は大事だと、しなきゃならぬ、しかし増税をやってするのはよくないよ、いわば歳出削減の努力等々でやれ、こう言っておられるのでありまして、政府もそれはそういう心構えでおるわけでございます。
○丸谷金保君 臨調はしかし政府の諮問機関でしょう。そうすると、臨調が言っているということは私は御答弁にならないと思うんです。それを政府が受けて、政府でそしゃくして、政府自体の表現になっているなら、そこから初めて増税なき財政再建という言葉が生きてくるので、臨調の言いっ放しですということではなくて、それはもう政府が受けたんですから、受けてそうだとなったら政府の言葉でしょう、いかがなんですか。
○国務大臣(宮澤喜一君) 今申し上げましたとおり、財政再建をやるなら増税をやればできるというのでは、これは政府としてもそういう安易な道は選ぶべきでないということを考えておるわけでございます。
○丸谷金保君 定義づけができない、定量的でなくてもなかなかできない。いわゆる形容詞的なものだということになれば、これはそれでどうにもやむを得ないことなんですが、どうも私はここのところがはっきりしないからいつもかみ合わないのじゃないか。
 第一、赤字国債と建設国債、これを区別して、赤字国債は悪いけれども建設国債はいいんだというふうな風潮になってきていること自体が私はおかしいと思うんです。建設国債だって結局は財政法四条の特例ですわね。本来好ましいことでないけれどもやむなく出すのが建設国債、そうですね。建設国債なら幾ら出してもいいんだということにはなりませんでしょう。本来なら建設国債だって出さないようにしていくべきだし、ただし永久的な財源措置をするのであれば、後世の人たちにも負担してもらってもいいんじゃないかという理論づけで六十年というふうな一つの目安をつけているというだけで、実際に国債が出回ってしまえば建設国債も赤字国債もないですわね、国債は国債ですよ。そうすると、それの償還の繰り延べをして、赤字国債と称するものも同じように六十年償還だというふうな形のものにして、先ほどの御答弁のように六十年の間にというふうなことは私はちょっとおかしいんじゃないかなと思うんですが、大臣どうなんでしょうね、これ。――どなたでも結構です、大臣じゃなくてもいいです。
○政府委員(斎藤次郎君) 財政法四条は、御指摘のようにいわゆる非募債主義というのを原則といたしております。例外事項として、いわゆる四条公債というものにつきましては、国会の議決された範囲でこれを発行してよろしいということになっております。したがいまして、私どもの基本的考え方といたしましては、特例債といわゆる四条公債、建設国債とはやはり厳に区分をすべきだというのが基本であろうと思います。経常的経費は経常的収入で賄うという原則を確立するためには、特例公債の新規発行をゼロにするということにまず全力を挙げるというのが私どもの責務であろうかと考えております。
 四条債の発行につきましては、中期展望その他の仮定計算におきまして、六十三年度発行額を横ばいと置いております。これにつきましては単に横ばいと置いているわけでございまして、これを将来どうするかということについて何らの考えも持っていないわけでございますが、仮に横ばいで発行いたしましても、公債の残高は当面少しずつふえていくという状況でございます。したがいまして、それが果たして財政再建の趣旨からいって反するかどうかということも大変定義の難しい話でございますけれども、いずれにせよ、臨調の答申にもございますように、中長期的には公債依存度を引き下げて財政の対応力の回復を図っていくというのが私どもの責務であろうというぐあいに考えております。そのためには、今後とも歳出の削減努力を懸命に私どもとしては続けていかなければならないというぐあいに考えておるわけでございます。
○丸谷金保君 建設国債もそうなんですが、建設国債の問題はまたこの後にいたしますけれども、赤字国債を借りかえていきますわな、この残高がゼロになるのならわかるんですよ。発行をとめたと言っても、今までの残高は残っているわけですよ。赤字国債の発行を始めてから今までの償還期限が来て繰り延べしたのを合わせて、赤字公債の残高は国債の中でどれだけのウエートを占めるんですか。
○政府委員(斎藤次郎君) 六十三年度末の百五十九兆の中身で申しますと、六十九兆が特例債でございます。
○丸谷金保君 大臣、少なくとも、六十九兆と今御答弁ありましたが、この特例公債の残高をゼロにしたときに、これは一つのいわゆる財政再建のめどができたということが言えるかもしれませんけれども、特例公債の残高をそのまま繰り延べ繰り延べしていて、これは財政再建に私はならぬと
思うんですが、いかがでしょう、赤字国債。
○国務大臣(宮澤喜一君) 毎々申し上げておりますとおり、財政再建という定義を政府はいたしておりませんので、それに合うか合わぬかということは、まずその定義をきちんとしてからでないとお答えがしにくいかと思います。
○丸谷金保君 財政再建の定義がないということになれば、これから財政再建という言葉を使うのは私たちも慎まなければならぬ、定義のないものを一生懸命やっていたわけですからね。
 で、今の赤字国債の残高をゼロにできる見通しは大体どれくらいなんですか。
○政府委員(斎藤次郎君) 赤字公債につきましては、先ほど御質問が鈴木先生からございましたように、当面六十年という償還ルールでやっておりますので、私どもとしては今後なるべく六十年償還ルールを短くしたいと考えておりますけれども、当面の現状で申し上げますと、特例債の残高は六十五年度発行ゼロになりますと毎年確実に減ってまいります。減ってまいりますけれども、その償還にはやはり六十年ぐらいの長期がかかるというぐあいに考えざるを得ない状況であるわけでございます。
○丸谷金保君 先ほども聞いていて私非常に思ったのですが、本来赤字公債というのはそういう性質でなかったんです、最初の発行のときは。これは十年で返すと、それを六十年度から償還期限が来て返せないから繰り延べという措置をとった。しかし、六十年といういわゆる建設国債と称するものの理論、これはその間いろんな形で投資した財があって、おおむねその償却が六十年だというところに一つの裏づけがあるんじゃないですか、いかがなんです、六十年と決めたときの。
○政府委員(斎藤次郎君) 建設国債の償還期限については御指摘のとおりでございます。
○丸谷金保君 それは永久建築物のコンクリートの場合でも百年はもつだろうと、しかし、大事をとって六十年と、いろんなそういう計算であのときは六十年というふうな一つの理論計数ができたわけですよね。これだって実際はおかしいんですよ。今は六十年、公共的な建物をそのままに置いておくなんてことほとんどないんですから、壊しちゃったら現物はなくなっちゃうんですよね。橋にしろ、道路だってどんどんその後かえていかなきゃなりませんし、あるいは公共建築物等についてもなかなか六十年というあれはないから六十年というとり方自体もおかしいんですが、元来そういう一つの理論をはじいて建設公債の償還を六十年として繰り入れを一・六と決めたのは、大体六十年ということの計算ですわね。それと、赤字公債の償還も同じ状態で考えるための担保は何があるんですか、ないんじゃないですか。これは私は六十年という物の考え方はおかしいと思うんですよ。
○政府委員(斎藤次郎君) 四条債の特例債については、御指摘のように、償還の期限の考え方について基本的な計算において相違のあることは当然でございます。したがいまして、特例債につきましては当初発行いたしますときには、十年債で発行いたします場合には十年の満期が来ればその満額を償還するということで、そういうことになっておったわけでございますが、特例債を仮に十年で満額償還をいたしますと、特例公債を新規に出している財政事情から申しますと、当然その分だけ片方で新規の特例債がふえるということになりますので、その事情も勘案いたしまして、財確法におきまして当面四条債の償還の運営に従うということを国会の議決をいただいて、お許しをいただいて運営をいたしておるわけでございます。
○丸谷金保君 建設公債と同じということでなくて、当面繰り延べやむを得ないということであったはずなんです、当時ね。建設公債と同じに扱うという筋ではなかったと思いますよ。当時の説明の記録等もまだ調べてみませんけれども、精査してみますけれども。
 この論議だけやってても前に進みませんので、実は昨日御質問申し上げた累積債務問題で、国際機関が買い上げるということは、民間の金融機関にそういう資金が還流するということだけに必ずしも限って考えなくてもいいというふうに大蔵大臣は言われたように思うんですが、そうですね。大臣は、国際機関で債務国の債権を買い上げるような措置を考えたらどうだ、いわゆる累積債務国の債務を減らしていくというために、この債権を国際機関が買い上げるというふうな御提案をなさいましたね、そうですね。そこのところはどうなっているか。
○国務大臣(宮澤喜一君) 昨日本会議でお尋ねがございまして買い上げる云々というお話がございましたが、私は買い上げるということを提案をいたしたのではございません。債務国おのおのについてやはりケースが皆違いますので本来ケース・バイ・ケースで考えるべきことでございますが、我が国といたしましては、こういう国でございますので、なるべく国際機関がこれに積極的な役割を果たしてもらう方が協力がしやすいという趣旨で発言をしたものでございます。
 なお、買い上げるというふうに申しますと、これは何か債務国を非常に交渉の立場で勇気づけると申しますか、債権国の足元を見る、債権者の足元を見ると申しますか、そういうこともございますからそういう言葉を私は使っておりませんで、いわばケース・バイ・ケースで考えていかなければならないが、その場合、IMF等々の国際機関がもう少し積極的な役割を果たしてはもらえないか、こういうことを提案したのでございます。このように昨日本会議で申し上げたつもりでございます。
○丸谷金保君 それで、これは日経の四月十三日ですが、「国際機関が買い上げ」という見出しがついているんです。感じとしてそういう感じになるんです。今のお話を聞いていると、いろいろ対応の仕方がある、それではその対応はどうなんだということになりますと、宮澤構想としてそういう表現が浮かび上がってくるわけです。それで日経なんかもそういうふうな書き方をしたんだろうと思うんですよ。では、いろいろな方法というのはそうしたらほかにどういう方法をお考えになっておったんですか。
○国務大臣(宮澤喜一君) もし新聞が買い上げというふうに報道いたしましたとしますと、それは事実を正確に理解していない表現ではないかと思います。
 実際問題といたしまして、例えば最近メキシコでございましたように、一部を証券化するといったような例はございましたけれども、そのことはこの買い上げという言葉からくる印象とは大変違いますので、買い上げという考え方ではないということを申し上げておかなければならないと思いますが、いろいろケース・バイ・ケースで片方に債務国、それから債権を持っております銀行、国際機関、それから先進国側といったようなところで、とりあえずいろいろな支払いが到来いたしましたものの繰り延べでございますとか、その繰り延べに伴いますところのいわばスタンドバイ等々の短期の金融でございますとか、その前提といたしましてのIMF等々が求めますそれこそ債務国の再建計画とでも申しましょうか、そういった何と申しますか、いわば経済引き締めとでも申すのでございましょうか、そういうものについての債務国側の合意等々、それらをいろいろな組み合わせでケース・バイ・ケースで考えてきておるというのが実情でございますし、これからもどうもこの問題はそうならざるを得ないであろうと思うのであります。
○丸谷金保君 大臣がそうおっしゃるなら「国際機関が買い上げ」という宮澤構想の日経の記事というのは間違いだというふうに理解をいたします。
 ただ、それじゃ、例えば債権を肩がわりして買い上げるんでなくても、そこに、例えば国際金融機関が利息も払えない分、もう民間の金融機関ではとてもじゃないけれども、これ以上貸せないというふうなところに資金を回しますわね、そうして利払いもできるようにしていくというふうな今度は形で、何といいますか、いわば援助していく
というふうなことはお考えの中にあるわけですね。
○政府委員(内海孚君) ただいまのお話はこのように私どもは考えているわけでございます。
 国際機関、特にIMFの役割というのは、先ほど大臣からの御答弁にありましたように、そのお金を借りている開発途上国の経済を健全なものにして、それでお金を安心して貸せるような雰囲気をつくるということもあるわけですし、また実際にそれだけの大きな債務を抱えておりますが、やはりお金を貸すという立場になりますれば、当然のことながらこれがいずれは返ってくるということの信頼がないといけないわけでございまして、その信頼をどういう形でIMFと債務国が相談しながら高めるメカニズムができるかというところがポイントであろうというのが大臣の言われたことでございまして、そういうことでどういう具体的なものがあるかと言われますと、まだこれはそういう考え方に基づいていろいろ知恵を絞っている段階だということでございます。
○丸谷金保君 いずれにしても、開発途上国を含めて開発協力というふうなことでIMF等が出資をしていく、あるいは貸し出しをしていくというようなことは、何らかの形でそういう介入をしていかなければ累積債務の解消といいますか、これ以上ふやさないということ、もう利息が払えないから利息分も貸せと言っているんですからね、貸し出しをしている金融機関に利息も入ってこないということになりかねませんわね。だから、そうするとやはり国際金融機関が買い上げじゃなくても何らかの形で見ていかなきゃならぬというのがいわゆる宮澤構想でございますか。
○政府委員(内海孚君) それをIMFとか国際機関が肩がわりとかあるいは資金的な面倒を見るというふうに直ちにそういうお話ではなくて、基本的にその国の経済というものを健全なものにして、それで将来の返済能力というものを、マネージメントさえよければうまくいくわけですから、そういうことを中心として両方が協力して信頼をどうやって高めるかということであろうと思っております。
○丸谷金保君 そうすると、累積債務の解消やその利払いのために力をかすんでなくて、そういうものが払えるような経済あるいは財政の機構を強める、このために協力していくというのが宮澤構想だと、こういうことなんですか。
○政府委員(内海孚君) ただいまおっしゃいましたその二つのことは、実は同じことになってくるんだろうと思います。
 つまり、利払いがちゃんとできるということ、それから返済ができるということ、それは同時にそういったものの能力をどうやって高めていくか、みんなが協力してどうやって高めていくか、こういうことでございます。結局は同じことではないかと思います。
○丸谷金保君 それは結局同じことでないんですよ。そういう能力を高めるために出資したやつが即累積債務とかそれから利息、特に利息を払う方にすうっと回ってしまいますと、これは能力を高める方に回らないんですよね。もう利息が払えないと言っているところに能力を高めるためにといって金融援助をして、この金が利息を払う方に回ったのでは能力は高まらぬですよ。そこら辺はどういうふうになるんですか。
○政府委員(内海孚君) 具体的にその利息の問題でございますが、これは現在でも、例えばある国がそういう今御指摘のような困難な状況になりましたときには、IMFがまずどのくらいのフィナンシャルギャップというものがあるかということを考えまして、これを信用問題を損なうことなくとりあえず解決していくためにということで、IMFは先ほど申し上げましたように、いわゆるスタンドバイクレジットを短期で供与をする半面、それの半面といたしまして、経済政策についていろいろな注文をお願いして、それで健全性を高めていくということをやるわけです。いわば、そういうIMFの役割が触媒となりまして、他方民間銀行につきましてはバンク・アドバイザリー・コミッティーという場におきましてそのニューマネーを供与する。ただ、おっしゃるようにそれがリスケとニューマネーの中でニューマネーのまたほとんどの部分は利息になって返ってくるだけじゃないかという御指摘は確かにあります。
 そこで、先ほど来大臣の言っておられることを敷衍して申し上げますと、そういった一年とか二年とかいう短期的なアプローチだけではなくて、やはりそういう国ごとのケース・バイ・ケースという考え方に立ちながらももうちょっとIMFと債務国との間で中期的に実際に信頼を高める、債務国の経済に対する信頼を高める方法というのは具体的にないものだろうかと。そうすれば、単に利払いを受けるというだけではなくて新しい金も回るようになりますし、またそれに応じて、例えば世界銀行とかあるいは我が国で言えば輸出入銀行のような、そういうバイラテラルな資金もまた動くようになる、そういったものを総合的にどうやって解決していくメカニズムができるだろうかということがポイントなのではないかと思うわけでございます。
○丸谷金保君 時間がもうありませんので、この問題はまた後日に譲りたいと思うんですが、私の申し上げたいのは、いずれにしても累積債務国の問題を考えた場合に、各国政府のやっぱり財政の出動ということが、どういう形で世銀を通そうと、どういう形にしろ各国の財政出動が必要なんだと、そういう財政出動を否定するわけじゃないんですが、なら農村の負債についても考えてくれと、こういうことなので、これはまた次の機会にここから後はやります。
○理事(梶原清君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時十分まで休憩いたします。
   午後零時十六分休憩
     ─────・─────
   午後一時十二分開会
○委員長(村上正邦君) ただいまから大蔵委員会を再開いたします。
 まず、委員の異動について御報告いたします。
 本日、大河原太一郎君が委員を辞任され、その補欠として永野茂門君が選任されました。
    ─────────────
○委員長(村上正邦君) 休憩前に引き続き、昭和六十三年度の財政運営に必要な財源の確保を図るための特別措置に関する法律案を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○塩出啓典君 まず最初に大蔵大臣にお尋ねをいたしますが、我が国の現在の財政について国際的にどう考えるか。と申しますのは、アメリカが双子の赤字ということで貿易の赤字あるいは財政の赤字、そういうことを解消しなければならないという意見をよく聞くわけでありますが、我が国の財政については、最近はNTT株の売却益とか自然増収とかそういうようなことから何となく我が国の財政が非常によくなったんじゃないかという、こういう印象に国民の皆さんが受け取る心配があるんじゃないか。政府も、減税先行、減税先行という減税ばかりで、税制改正も、増税はしません、増減税同額ですと。しかし、我が国の例えば国債の残高のGNP比率とかあるいは国債依存度の比率とかそういうような点から見て、国際的に我が国の財政の状況はどうなのか、財政の責任者である大蔵大臣としての御所感というか、それをお尋ねしたいと思います。
○国務大臣(宮澤喜一君) 財政だけについて考えます限り、我が国の財政の姿は私は余りいいとは思いません。国際的に見ましても、いい方に属するとはどうも考えがたいのでございます。ただ、それはそれといたしまして、国際的に日本の全体の経済力を評価いたしますときに、財政がよくないということが余り言われませんのは、恐らくは日本経済全体から見ればこの程度の財政の言わば欠陥と申しますか問題というものは全体としてはこなしていける、そういう評価がございますので余り財政の点が指摘されないのだろうと思います。しかし、財政だけをとってみます限り、私は
日本の財政は決していい姿であると思いませんし、他の国のいわば仮にG7ぐらいの中でと申し上げましたら、財政が非常にいいとは申しにくいと考えます。
○塩出啓典君 これ、大蔵省からいただきました「財政の現状と展望」というこれには日本、アメリカ、イギリス、西ドイツ、フランスと五カ国の資料が載っておりますが、例えば公債依存度、我が国は一五・六%、その次がアメリカの一一・八%。それから長期政府債務残高、これは国債のようなものを含めてですね、それを見ますと、対GNP比で我が国は五一・九%と一位ですね、その次がイギリスで四六・七%。それから歳出総額の中に占める利払い費が幾らかと、こういう点から見ますと、これも我が国が一九・五%、約二割ですね、それからその次がアメリカの一三・九%。そういうことで、我が国の場合は、先般和田委員が質問しましたように、二十四兆円も繰り延べをするとか見せかけよりも少なくしている。それでなおかつこういうように日本、アメリカ、イギリス、西ドイツ、フランスの中では飛び離れて非常に財政が悪い。私はそういう点をやはりよく認識をして、きょうの午前中の質問にありましたように、いわゆる赤字国債を六十年にしたということは大変な後世に対するツケを残しておるわけですから、こういう点をやっぱり忘れては私はいけないんではないか。
 そういう意味で、大蔵大臣としても、財政の現状は決してよくない、だからいろんな面で心に引き締めていかなくちゃならぬと、私はこのように思うわけでありますが、その点どうでしょうか。
○国務大臣(宮澤喜一君) その点はまことに御指摘のとおりでありますから、そのようなことは常に意識していなければならないと思っております。
 それで、今塩出委員が先進六カ国の比較を御引用になられましたが、我が国の財政がこういう姿になりましたのは、私はやはり振り返ってみますと、昭和四十八年に起こりました石油危機に対する対応の仕方が各国によって非常に違っておったということに関係があるように存じます。我が国は二度の石油危機に対して、全くの非産油国であるにもかかわらず、非常に立派に対応してそれを乗り切って、今世界の一、二のところにあるというふうに、これはもうはっきり定評があるわけでございます。それに対して、アメリカは産油国でございますからやや別でございますが、イギリスにも多少事情がございますけれども、その他の国々が我が国ほど何と申しますか上手に対応できないで今日いるということ、それとの比較においてやはりそのツケが財政にきておるというふうに申しましたらよろしいのですか、あるいはそういうことは考えての上で、やはりこの二度の石油危機を乗り切るために我々が払ったいわば対応策のコストである、そういうふうに考えるのが恐らく正しいのであろうと思っております。でございますから、決してむだに金を使ったとは思っていないのでございますけれども、やはり上手に対応したら対応しただけそれだけのコストがかかっておりまして、そのコストは、そのように長い将来に向かって回収をしなければならない、そういう負担を将来に向かって負っておるということになろうかと思います。で、私は、その間の一九七三年以来の政府の対応は全体として考えまして誤っていなかったと思いますけれども、それだけやはり将来に残っている問題が多い。塩出委員の言われますように、常に戒心をしておくべきことだと思っております。
○塩出啓典君 次に、今政府が行おうとしております税制改革では、法人税が非常に国際的に高い、だからこれではいい企業が外国に逃げてしまう、あるいは我が国が国際競争力で負ける、そういう意味で法人税の実効税率を下げるという、こういうことが一つの税制改革の主眼であるようでありますが、本当に国際的に法人税は高いのかどうかというこの点をお尋ねしたい。
 それから、私たちの印象では、日本の企業が国際的にだんだん活力を失ってダウンしているかというとむしろそうではない。では、例えば金融機関だけ見ても、世界のビッグテンの中に日本の金融機関が幾ら入っているか、そういう点を見ると、日本の企業は、法人は少し活力があり過ぎるというか、むしろ国際的にもそういう手の摩擦があるぐらいで、そういう意味で、法人税が高いというのが本当に高いのかですね。それと、実体経済から見ると、高過ぎて日本の経済活力を失うということは私は理解できないと思うんですが、この二点についてお尋ねをいたします。
○政府委員(水野勝君) 法人の税負担水準の国際比較という点につきましては従来からいろいろ御議論はあるところでございますが、やはり客観的な比較が可能な数値でもって比較するほかはないように思われます。そういう意味からいたしまして、従来から私どもが申し上げております実効税率の比較ということで言わさせていただいているわけでございます。これによりますれば、日本は五一・五五、アメリカは四〇・三四で一〇ポイント以上の差がある。また、イギリスは三五%でございますので一六ポイントぐらいの差がある。一方、西ドイツは五六・五二%となってございますので日本よりは若干高目でございますが、フランスは四二%でございますのでやはり我が国と一〇ポイント近くの差があるわけでございます。この比較の方式は、御承知のとおり、国税と地方税を含め、また配当部分につきまして低い税率がある場合には一定の配当性向を前提とし、また地方税で損金に算入される部分の税負担があればそれを差し引き調整したところで、あくまで法定税率で比較させていただいておるということは御承知のとおりでございます。
 この点につきましては各国々におきまして企業関係の租税特別措置、こういったものがいろいろ用いられている場合があり、そういったものも入れてみて計算をすべきではないか、あるいは特別措置ではございませんが、それぞれの各国の何と申しますか、企業会計と申しますか企業経理の方式にも違いがあるということから、そういったものも織り込んで比較すべきではないかとかいろいろ御議論のあるところは承知いたしておりますが、租税特別措置と一口に申しましても、例えば日本では償却というのは、これはもうごく自然の損金算入部分でございますけれども、従来からイギリスなどにおきましては、建物等は償却をするということ自体が特別措置として考えられて、そういうふうな処理は区分がされておる。そういうことからしましても、特別措置というものを織り込むという場合でも非常にいろいろ議論があるところでございますので、やはりこれは法定税率を基準にしての国際比較、すなわち申し上げております実効税率で比較するしかないのではないかということを従来から申し上げてきているところでございます。
 それから、やはりこれだけの差があっても我が国の企業の活動水準が国際的に高いではないか、これでもって海外に逃避するということはあり得ないのではないかという御指摘でございますが、アメリカが今申し上げました水準になりましたのも、レーガン改革の実行されましたおととしのことでございます。それまでは日米まずまず同じぐらいの水準であったわけでございますが、日本と一番経済的な関係の深いアメリカとの間におきまして一〇ポイント以上の差が定着するようになってまいりますと、やはりそれは中期的に見て、我が国とアメリカとの間におきますところの競争力に影響し、またあるいは海外取引の面におきまして要らざるひずみ、ゆがみを生ずることは当然考えられるところでございますので、現時点ではまだ一、二年、アメリカとの差ができたのは一、二年のことでございますが、中期的に見てまいりますと一〇ポイント以上の差ということは、私ども、これは看過できない格差ではないか、このように考えるところでございます。
○塩出啓典君 アメリカは先般の税制改革で法人税を下げたと。けれど、私の理解しているところでは、むしろ税率は下げましたけれどいろいろなそういう租税特別措置のようなものを整理をし
て、法人はむしろ増税であり、所得税を減税した、そのように理解しているわけですが、そういう点、今の税制、前は我が国と一緒であったけれども一〇%下げたというのは、これは表面的な税率はそうであっても実効税率においてはアメリカはむしろ増税になっておるんじゃないか。
○政府委員(水野勝君) 確かにそういう点があるわけでございまして、レーガン改革におきましては五年間で千二百億ドルの増収措置が講じられた、そのかわりに法定税率が引き下げられた。しかし、ネットでいきますと五年間で千二百億ドルでございますから、日本流に言いますと、二百数十億ドルの増税、二、三兆円の増税が行われたということでございます。その大きなものは投資税額控除、それから利子の扱いであろうと思います。こうした点から、確かに従来日本と同じくらいであったのがむしろ増税になった、それが法定税率では逆にあらわれているという点の御指摘はあるわけでございますが、まあそれだけアメリカには物すごい企業関係の特別措置があったということで、それを取り払って個人の所得税の減税をする余裕があった。それだけアメリカは特別措置でいわば大きなゆがみがあったとも言えるわけでございますが、そうした大きなものはほとんどなくなったところでの法定税率でございますので、この法定税率で現在比較するほかはないのかなと。
 それから、先ほど申し上げました特別措置と申しましても非常に千差万別でございまして、日本ではおよそ特別措置と考えられないようなものも海外ではいろいろある。そうしたものを全部入れて比較するということはやはり難しいというのは先ほど申し上げたとおりでございまして、やはりここは法定税率を基礎にした実効税率で比較をするほかはないのかなと。また、アメリカはただいま申し上げた大改革でほとんど大きな特別措置はなくなったところでございますので、現時点でのこの実効税率の比較、これはそれとして私ども意味がある、また当面はこれしかないのかなという感じでございます。
○塩出啓典君 今の主税局長の答弁のように、結局実効税率で比較するしかないのかなという、確かに比較するとすれば実効税率等は一番いいと思うんですけれども、しかしそのほかにいろいろな特別措置とかそういう点からいうと、今言う実効税率というのは計算上の実効税率であって、現実の、では企業がどれだけの法人税を払うかという、そういう点とは多少離れているんじゃないかと思うんですけれどもね。
 日本の企業が国際的に活躍していくためには、日本の税制が極端に国際的に重いということではいけないと私たちも思うんですけれども、ただ実効税率だけを比較して高いから下げろということはなかなか理解しがたいと思うんですが、こういう点もちょっと国際的にも調査をするとか、そういうことはできないんですかね。
○政府委員(水野勝君) 私どもその点はよくいろいろ御指摘を受け、例えば個々の会社、具体的な会社のケースをとりまして、その会社がアメリカにおきまして法人税の申告をしたらどのような税額になり、その負担は日本国内で課税を受けた場合とどういうことになるかということをいろいろ個別のケースをとってシミュレーションもしてみたりはしたこともございますけれども、なかなか一概にどちらが高い低いと統一的に申し上げるというような結論までは至ってないわけでございます。
 また、非常にマクロ的に見まして、課税所得計算の影響を探るために売上高対税込み利益といったものの比率をとって分析もしたりしていることもあるわけではございますが、なかなか諸外国と比較してうまい結論と申しますか、統一的な御説明をできるようなものは出てこない。やっぱりこの実効税率ということで比較して申し上げるほかはないのかなと。ただ、先ほど御指摘のように、アメリカは千二百億ドルの増税をしてそれで実効税率水準で四〇%だった。そうすると、それ以前はそれを加味して逆算すると三〇%ぐらいでなかったかという御指摘もある。そういう意味では実効税率水準での比較というものも問題点があることは私どもも承知はいたしておるのでございますけれども、なかなか統一的に比較可能な客観的指標というものは難しいものですから、現在は実効税率で御議論をさせていただいているところでございます。
○塩出啓典君 前回の委員会でも、また先般の代表質問のときに我が党の和田委員も、いわゆる含み益というか、このことを議題にしたわけですが、我が国の場合は、ある試算にもありますように一部上場企業の土地含みは約二百兆円、そのうち株式含みは企業では六十三兆円、金融機関では六十五兆円、こういうふうに大変な含みを持っておる。そういう意味で、そういう我が国のいろんな制度の違いというものがやはり企業の競争力というものに関係をしてくる。したがって、我が国はどうも実効税率は高くてもほかの面でいろいろ法人が国際的に恩恵を受けているためにだんだん国際競争力が強くなっていくという、そういうことであれば、これは実効税率は下げるけれども、一方、日本の習慣においてプラスの面も国際的には改めなければこれは非常に僕はアンバランスになるんじゃないかと思うんですけれどもね。日本の銀行は今自己資本比率が非常に低いということが国際的に言われておりますけれども、これはしかし実際は土地の含み等を計算すれば、我が国の金融機関の経営においても国際的にはそう劣るものではない。
 したがって、私の言いたいことは、どうも我が国は税制が高いために国際競争力が非常に弱いというのはこれはいかがなものか、ちょっと説得力がないということなんですけれどもね。きょうは、ちょうど銀行局長もお越しでございますが、我が国のそういう金融機関の国際的な位置というものはだんだん私は今上がっているんじゃないかと思うんですが、そのあたり、どのようにお考えですか。
○政府委員(平澤貞昭君) 今委員のお話がございましたように、規模的にいいますと日本の金融機関は非常に巨大化しておりまして、現在、世界の大銀行を上から十とりますと九つまで日本の金融機関が入っているわけでございます。ただ、他面、規模以外の点をいろいろな角度から見てみますと、例えば自己資本の充実度、こういう点につきましては、銀行によって差はございますけれども、やはり相対的に海外の有力国の金融機関に比べますと見劣りする場合もあるわけでございます。規模は大きいがかなりの程度に実りの程度が少し、充実といいますか、そういう点にやはり問題があるのではないかというふうに言われております。
○塩出啓典君 大蔵大臣、日本の金融機関を見ましても、アメリカのある有力銀行が非常にピンチになって日本の金融機関がよう援助をしているとか、そういうような話を聞きますと、やっぱり日本の法人というのはいろんな意味で活力を増している。その点はどうですか、法人税が高過ぎるためにだんだん活力を失っているというのは、いささか現実に合わないとお考えになりませんか。
○国務大臣(宮澤喜一君) 企業あるいは金融機関の側においては恐らく相当な税負担を背負っておるにもかかわらず、というふうにおっしゃりたいところであろうと思うんでございますね。高いか低いかということは、本当に長いこと大蔵省も経団連等々といろいろ御議論もし、御一緒に検討もしまして先ほど主税局長が申し上げたようなことになったんだと思いますので、やはりそれは実効税率としては高いのだろうと思いますが、それにもかかわらず大いに奮闘しているということを企業の側はお考えだろうと思います。
 ですからその点は、法人税が高い分が果たしてどういうことになっておるのか、仮に軽減された場合に、どういうところに軽減分が行くのであろうか。まあ観念的に考えますと、配当であるのか、労働の給与等のような形での分配であるとか、あるいは一部は競争があればコスト引き下げということになるのでございましょうか、といったよう
な要素とも関係があるのではないかと思っております。
○塩出啓典君 私は、この法人税を下げるということは、上げろと言っているわけではないんですけれども、ただ、冒頭申しましたように、我が国の財政というのは世界で一番悪い状況にありまして、しかも六十年の先まで残しているわけですからね、そういうときにもうちょっと財政の改革の方を私は優先すべきであって、法人税も下げることを悪いとは言っていないわけでありますけれども、いささかやはり本末転倒しているんではないかと、そういう感じがすることを申し上げたいわけであります。
 いわゆる日本の今のこの法人税の実効税率につきまして先般ある研究所の方にお話を聞いたわけですけれども、この人の調査では大体実際の税率が日本の場合は五五%だと、実効税率が、実効税率というか実際の利益の中から税金に取られるのが。しかし、この含み益というものはこれは課税されませんから、その含み益を自分の利益として計算をしますと法人税は二三・一%であると。それから、いわゆる東京の一等地に長い昔から事務所を構えているそういうところは非常に簿価も安いわけですから家賃も安いわけですね、時価からすれば。そういう意味でちゃんと原価で計算すれば法人税は七九・七%になるという。だから、本当はそれだけ高い家賃を払わなきゃならないのを安いからこうなっているという、こういうような報告をしておりました。
 そういう意味で、私は政府としてただ計算上の実効税率だけを比較して、いや法人税を下げなくてはならぬというそういうことではなしに今言った含み益、そういうものに対する課税が国際的にどうなっているのか、そういう点もやはり比較をして国際化するならすべてを国際化しないと、こっちだけ国際化してこっちは国際化しないというのでは非常にいけないのではないか。そういう意味で、大蔵省としてもうちょっと本当の実態がどうなっているかという、そういう調査をすべきではないか、この点はどうでしょうか。
○政府委員(水野勝君) 確かに国際的な水準にそろえるという場合におきましては、税率は税率としてそろえる、それとともに課税ベースにおきましてもこれは極力見直しをしていく必要があるということ、この点につきましてはおととしの税制調査会の抜本改革の答申におきましても課税ベースの拡大を図りつつ税率を引き下げるということにされておったところでございまして、また先般の税制調査会の素案におきましてもこの方向は受け継がれているところでございます。したがいまして、課税ベースにつきましては償却の問題、引当金の問題等々につきまして今後も検討がもちろん行われるものと思います。また行うべきものであろうと思います。
 ただ、含み益の問題につきましては、これは通常の法人税の考え方から申しますと、これは所得税でもそうでございますけれども、やはり所得課税を行います場合にはそれが現実に処分可能な経済的利益が発生したときに課税を行わさせていただく、これがやはり大原則でございますので、むしろ法人税法上は、企業が土地なり株式なりそうしたものにつきましてその企業として都合によって含み益を計上してまいりましてもこれは逆に否認しなければいけない、そういうふうな税制上の仕組みになってございます。ただ、会社更正法等そうしたものが適用になって現実に清算段階的なものに移ります場合は、これは利益として課税させていただきますが、原則はそういうことでございます。したがいまして、含み益の問題は法人税の世界におきましてこれを対処するということは、法人税なり所得課税の考え方からするとなかなか相入れないものでございます。それは例えば資産保有税である固定資産税の問題でございますとか、そういう問題として対処をされることではないかと思います。
 ただ、非常に経済変動がございまして、全般的に資産を再評価するそういう段階におきましては、含み益もその中に織り込んで操作、処理する場合もございます。戦後シャウプ勧告におきまして再評価が行われた例もございます。あのときにおきましても土地につきましてはあくまでこれは任意評価でございまして、最後まで強制ということはございませんでした。したがいまして、余り土地が全面的に再評価されたという事績はなかろうかと思います。やはり含み益の問題は法人税の世界ではそこまでが限界である。ただ含み益でございましても、その資産価値が増大していればそれが担保価値なんかとなって活用され、その活用された結果がその会社の課税所得に反映されてまいりますので、そこは全く課税上そこが取り扱われていないということも言えないとは思います。しかし、それは結果的な現象でございます。正面からいたしますとやはり法人税の世界では含み益の問題はどうしても一つの限界があるということでございます。
○塩出啓典君 この点、何も法人税ではなくて、今主税局長言われたように資産課税、固定資産税ですね、我が国は非常にアメリカと比較しても、これは地方税でありますけれども固定資産税は二十分の一とか安い、大変な差がある。そのために土地が投機として買われやすいというそういう意味で非常に諸外国と違う事情があるわけです。そのために地価が非常に高くなって含み益がまた非常に増大しているという点もあると思うんですけれどもね。それで、先般から資産の再評価をしろという、それに対して政府はそれに反対の意向を示しておるわけですが、資産の再評価あるいは固定資産税のような保有税を適正に上げる方がいいのか、このあたりもうちょっと政府として実態がどうなっているかという調査ぐらいされたらどうなんでしょうかね。
 この前、大蔵大臣は、資産再評価するとどうしても鉄鋼とか造船とかそういうような不況産業に含みが多いからだからこれは払えないのだと、こういうことをたびたび答弁されていますね。しかし一方では、じゃ含みが一体どこに幾らあるのかと言ったら、大蔵省は調べてませんということをこの前も言われました。調べもしないで先入観を持って言うというのは、いささか非常に計算をもって任ずる大蔵大臣としては私はいけないんじゃないかと思います。
 そういう点で、実際に含み益、含み資産というものが日本の企業でどの程度あるのか、そういう実態をまず調査をして、そしてどういうところにやはり担税力があるか、そういうのを私は当然手をつけるべきじゃないかと思うんですけれどもね。また、保有税の形ならば、保有税の国際水準はどうなのかという、その点調査をするお考えはありませんか。
○政府委員(水野勝君) 先ほども申し上げましたように、戦後再評価が行われたことがございます。これはしかし、シャウプ勧告によって行われましたこのときの再評価のその基本的な観点は、戦前の簿価のままになっている資産、それをそのまま用いて減価償却等を行いますとその分だけ償却不足になりまして、むしろ企業の体質を弱化させる。そういう意味からしますと、これは早急に資産を時価に直して適正な簿価にし、それに基づいて償却を行うようにしないと企業の内部留保が弱体化するという観点、企業体質強化という観点から行われたというふうにむしろ考えられるものでございます。したがいまして、土地なんかにつきましての非償却資産につきましては、結局最後まで任意再評価でございました。その際の再評価差額、六%の再評価税が課税されましたので、処分するつもりのない基本的な土地などの非償却資産はむしろそのままにされたということが実態でございました。
 したがいまして、今委員御指摘の課税の充実強化という面からの再評価というのは、余りそれは例がないわけでございます。やはり法人税の考え方からすれば、先ほど申し上げたような現実に処分可能な経済的利益が出てこない限りは、これは課税をするのは適当ではない。むしろ資産保有課税の問題として対処するべきことではないかということを先ほども申し上げたところでございま
す。
○塩出啓典君 だから、戦後シャウプ勧告によって行われたものは、私が今主張しているのと違うわけですから、それを言っているんじゃなしに、私の今の質問は、もう少し実態を調査してはどうかと、今国はお金があり余っているならいいわけだけれども、今国は財政が厳しいわけだから、大蔵省としても税金をあっちこっち取りたいわけでしょう、それであるならば、そういう負担能力がいずこにあるかという、そういう意味で含み益の実態というものを調査をする考えはないか、それをお聞きしたんです。これはどうですか。
○政府委員(水野勝君) 現在の税制改革は、これはこの税制改革でもって歳入を充実して特例公債の解消に充てるというようなこととは直接関係がないわけでございまして、税制それ自体の中におきまして所得に対する課税、資産に関連する課税、消費に関連する課税、それぞれの課税につきまして均衡のとれた税体系を構築する、こうした観点でございますので、財政事情から出発いたしまして、そうした含み益から課税をお願いして体質改善に充てるという観点は、今回はちょっと結びつけられないところでございます。
 しかし、昭和五十年に特例公債を発行開始しまして、五十二、三年ごろに税制調査会としては、何とかこれを税収の充実を図って特例公債の解消、縮減に充てたいということで税制調査会でも大いに検討をいただいたことがございます。その五十二年、五十三年当時におきまして、今御提案のような資産再評価によりまして含み益を課税して、これを財政体質の改善に充てるという構想が提起され、検討が行われたところでございます。ちょうど十年ぐらい前でございます。そのときでも、やはり所得課税としてそれを考えると、実現のしない利益に対する課税であってこれはどうも問題である、それからまた保有税として考えるのであれば、これは固定資産税の評価の適正化ということで解決すべき問題ではないか、それからまた企業の生産活動に供されている土地で現実にそれが処分を予定する資産でないもの、こういったものにつきまして再評価を行い含み益に課税をするということは、資本集約的な装置産業を中心にかなりな打撃を与えることにもなりかねないということで、含み益課税でもって財政体質改善に充てるという観点から行われたときの検討の結果におきましても、どうもこの問題は積極的に取り組むにしては問題が多過ぎるという結論でございました。
○塩出啓典君 だから、含み益の実態がどうなっているかということを実態を少し調査してやってはどうか。今は鉄鋼とか造船の経営を圧迫するというそれは話としてわかりますけれども、しかし実態も調べないでただそういうことではどうなのか。そういうことを調べるということは大蔵省の権限にはありませんか、そういうのは。証券研究所等では有価証券報告書からいろいろ計算しているわけですけれども、そういうものはもちろん大蔵省の仕事のうちには入らないかもしれないけれども、増税じゃなくてもやっぱり税の公平、国際的な公平、そういう点から考えれば、含み益のある企業と外国から日本へ進出してくるそういう企業とのやはり公平な競争条件という点から見てこれは問題にもなってきておるわけで、そういう意味でどうなんでしょうか、今含み益課税をしろという前に、含み益の実態がどうなっているかということを調査をする必要はないのか。この点どうですか。調査をするかしないか、それだけでいいですよ、ほかのことは余り答えてもらわなくても。
○政府委員(水野勝君) 厳密な意味での含み益の計算ということになるとこれは極めて難しい問題でございますが、例えば会社の簿価とこれが固定資産税の評価額との間でも現実にはかなりな差があるものと思われます。そうした固定資産税の評価額、その中の土地の部分についてでございますけれども、そうしたものと簿価というものとがマクロ的に見てどうか、それを個別的にまで対比するような分析が可能かどうか、そのあたりの点につきましては勉強をいたしてみたいと思います。
○塩出啓典君 大蔵大臣、これは大蔵大臣の所管ではないかもしれませんけれども、例えば土地の値段にしても簿価があるし、時価があるし、固定資産税の評価額があるし、何種類かの地価があるわけですね。本当に地価というものが統一されれば、全国いろんなところの土地の値段が決まれば、企業は有価証券報告書においてそういう決められた値段で評価をするということは非常に簡単でありますし、これはやっぱり日本全体の制度の改革もあると思うんですけれども、今のように有価証券報告書にはもう取得価格しか載っていない、それではやっぱりディスクロージャーというそういう点から見ても私は非常に好ましくないんじゃないかと思うんですね。
 そういう意味で、税制改革もいいですけれども、そのもとにあるそういうような問題をもうちょっと改革にメスを入れて、そういう点での不公平をやっぱり是正をするということが私はもう先決じゃないかと思うんですけれども、そういうものは何も手をつけないで表面的な税制だけを改革するというのはいかがなものかというふうに思うんですけれども、そういう点はひとつ副総理としてもぜひ検討すべきだと思うんですが、その点どうですか。
○国務大臣(宮澤喜一君) 確かに政府関係でいろいろな土地の評価基準がございまして、各省ともこれはおのおの行政目的を持っておりますものですから、例えば自分のところは三年に一度の固定資産税の関連である、あるいは自分のところは一生に一度相続が起こるその関連である、自分のところは売買取引の基準にするのである。いろいろございまして、おのおのしたがって目的が違うので一緒にならないと、こういうのが各省庁の主張であるわけでありますけれども、土地臨調でございますか、あれには一遍この問題を検討してもらいたいということをたしかお願いしてあるはずでございまして、少しそういうよその立場から検討してもらうことは入り用なことじゃないかと思います。
○塩出啓典君 私は、今度の税制改革が非常に法人税を安くして、そうして売上税、どういう名前になるか知りませんけれども、それを家計が負担をするんですね、例えば土地取得、企業が銀行から金を借りて土地を買う、その土地の利子は税金から控除される、こういうのはまさに法人優遇じゃないかと思うんですね。だから、だんだん法人の資産がふえていく。株のシェアでも法人のシェアがふえていく。そういうわけで、本来は物価を安くしたり賃金を上げるなりして家計に還元すべきものがだんだん法人に蓄積されていく、この点はどうなんですか。
 今度税制調査会から、多少これは改めるという、そういうお話のようではありますが、余りにも諸外国と比べて家計への配慮が足りない。例えばアメリカの場合は、先般の税制改正で多少変わりましたけれども、家を買う、土地を買う、その利子は控除されるんでしょう、アメリカでは個人は控除されている。日本は個人にはそういうものは全然認めない、法人だけに認めている。アメリカの逆ですよね、これでは。それがさらに今度の税制改正で法人優遇ということになると、ますます法人だけ太ってしまって個人はウサギ小屋という、こういう点はどうですか。
○政府委員(水野勝君) 利子の扱いは、まさに委員御指摘のとおりで日米に差がございます。
   〔委員長退席、理事梶原清君着席〕
この個人の家計の支払い利子と申しますのは、それは個人の所得を稼得するために借り入れた利子なのか生活上の利子なのか、生活上家計の所得の処分としての消費行為のための借入金、その利子なのか、営業上の利子なのか、そこははっきりしないということから、アメリカにおきましては、むしろ個人生活の利子は何でもとにかく引いてしまうということが一九一三年にアメリカで所得税ができたときの大ざっぱな割り切りだったようでございます。それがずっと現在に至りまして、不動産担保の利子であれ消費者金融の利子であれ全
部引けるということになっておりましたところ、これは行き過ぎであるということから、逆にアメリカでは利子の控除を制限したというのがこの間のレーガン改革の内容でございました。
 それに対しまして、法人につきましては、これは法人と申しますのは全部営業上の存在ですから、その借入金の利子は当然損金となるものでございます。これは原則としては日米一緒でございますが、ただ、その借入金の利子、特に不動産を取得するための借入金、その利子は、損金にはするとしてもいつの時期の損金にするかという問題があるわけでございますので、もし不動産なり資産を取得するための諸経費としての利子であるということで考えれば、それは資産の取得価格の中に算入して、それが営業上用いられたときにその償却の一環として引いて損金に落としていくという考え方もあるわけでございます。そういう場合には、処分する予定のない不動産でございましたら、その利子は取得価格に単に加算して資産価値としてそれだけ資産価値をふやす、そういう方式もあるわけでございますが、現在の我が国の取り扱いにおきましては借入金の利子というのは、そうした不動産と結びつけて処理をするということでなくて、いわば営業経費的な扱いとして、それを支払ったときに、資産取得のためのものでございましても、その期その期の経費として損金算入扱いを認めるということになってございます。これが御指摘のように、法人、企業が借入金をして土地を取得し、その利子を即時損金算入するということで、ほかの所得をそれでもって相殺する、そういうことを続けていけば法人税を払わなくて済むというような租税回避行為があることはあるわけでございます。
 そうした観点から、先般の税制調査会の素案におきましても、これが土地の仮需要を進めているという点もあるかもしれない、課税の負担の公平という面から見ましても問題があるかもしれない、そういう観点からしますと、土地取得についての借入金の利子についての損金算入、算入の時期、こうした点につきまして制限をする措置を講ずる。こうしたことを検討したらどうかという提言をいただいておるわけでございまして、そうした方向に沿いまして従来の扱いとの関連におきまして、企業の営業活動に余り大きな影響を及ぼさない範囲におきまして、しかしそうした問題点に対処できるような方式があるかどうか、現時点でなお勉強しているところでございます。
○塩出啓典君 時間もありませんから、要は一般消費税のような形で家計から税金を取って、そして法人税をまけるという、法人部門の税金を安くするという、そういう必要性が私には理解ができない。そういうことを申し上げて、次の問題に移りたいと思います。
 中堅所得層の重税感を解消する、こういうことが言われておるわけでありますが、政府は中堅所得層の重税感とは一体どういうものを言っておるのか、これを御説明願いたい。
○政府委員(水野勝君) 中堅所得者層と申しますか、特にサラリーマンの所得税の問題での重税感と申しますか、そういった点が議論の出発点になっておるところでございます。
 サラリーマンの方は、就職をされて後、おおむね年功序列で給料が上がってまいる。四十歳代に入りますと、お子さんが学校に、高校に大学に行かれる。またそのころには、住宅の手当ても始められる。そういう時期は、まさに収入もふえている時期ですけれども、支出がかなりなものに達して、それが一番家計を圧迫する時期でございます。一方、その時点におきましては、そのサラリーマンの方はまさに働き盛りで、社会のいわば柱となって企業活動も支えておられる。そういう時期はまた、働き盛りですから収入もふえるとすれば、所得税の累進がそこに働いてきて税負担も増大し、重圧感、重税感と申しますのも増大する。そういう時期におきますところの所得税負担をできる限り緩和できないかというのが今回の税制改革の基本的な考え方でございます。
 そういう現象を頭に置いての中堅所得者層の負担緩和ということでございますので、それはまず中堅の所得者というのをどのぐらいの範囲の方々かということを決めて、そこから出発しているというよりは、そのようにまさに働き盛りで、しかも家計の方もかなり支出がかさむ時期、そういう時期のサラリーマンのことを出発点にしている。何万円から何万円までが中堅所得者層で、その収入階層の負担を軽減するというよりは、サラリーマンのライフサイクルをとりまして、一番働き盛りで一番累進もきつくなっている時期のそういう段階のサラリーマンの方々の問題として議論をしたらどうかと、そういうことでございます。
 したがいまして、御指摘の点にお答えするとすれば、要するに働き盛りのサラリーマンの方々、そういう意味で中堅所得者層と申していると言ってよろしいかと思うわけでございます。
○塩出啓典君 じゃ、この働き盛りの中堅所得者というのは、大体年間収入はどの程度を中堅所得者とお考えですか。
○政府委員(水野勝君) 数字から申しますと、例えば国税庁の民間企業の実態調査、こうしたところからきますところの平均所得金額と申しますか、収入金額というのは余り高くはないわけでございまして、三百万とか四百万とかというところでございます。それはいわば平均値でございます。
 一方、先ほど申し上げましたサラリーマンの方のライフサイクルからいたしますと、大体二百万円を超えるぐらいの初任給から始まって、約四十年間ぐらいお働きになる。それが年功序列で五十歳代が一番働き盛りで収入階層も高い。おおむね九百万円ぐらいまで普通の、普通のと申しますか通常のサラリーマンはそこまで行かれ、そこから役員になられる。そういった方々は一千万から二千万、三千万と収入も増大してまいります。それはサラリーマンの五、六%と申しますか、そうした方々でございまして、九割ないし九五%ぐらいの方々は現時点では九百万円ぐらいのところでおおむねそれが最高の水準になっているということでございますので、平均値から申しますと四、五百万、三百万、四百万ぐらいのところでございます。そういう意味での働き盛りというイメージからいたしますと、それよりは少し上の方がイメージとして浮かんでくるわけでございます。
○塩出啓典君 政府からもらった資料では、もちろん仮定計算ですけれども、年齢とともに五十歳代過ぎで子供は大学へ行くと収支が逆転をする。そのあたりが一番経済的にも収入は多少ふえるけれども支出がふえるから苦しいという、そのあたりを中堅サラリーマンというならば、その世代での平均収入は大体どの程度ですか。もちろん上と下、いろいろあると思うんですけれども、大体その世代での平均収入というのはやっぱり五、六百万でしょう。
○政府委員(水野勝君) そうしたライフサイクルからいたしますと、今お示しのような数字、あるいはそれより最近はちょっと高目にもなっていようかと思いますが、おおむねのイメージとしてはそのあたりの水準かと思われます。
○塩出啓典君 その世帯の水準の家庭のいわゆる所得税の税率、これは国際的に見てはどうなんでしょうか。私が大蔵省からいただいた資料を見ますと、大体五百万とか一千万、一千七百十六万で日本とアメリカが交差をするようになっておりますが、そのあたりの世帯の所得税率というものは我が国は国際的にも一番低いようにこの資料はなっておるんですけれども、そのあたりどうなんでしょうか。本当に税率は低いんでしょうか、日本の。
○政府委員(水野勝君) そうした国際的な比較という観点からいたしますと、日本の所得税というのは国際的に見れば全体としては低い方でございます。アメリカ、イギリス等に比べますと、マクロ的に所得税負担を個人所得との比較で見ますと半分から三分の一ぐらいでございます。ただ、フランスはおおむね日本と同じ水準でございます。したがいまして、大体の階層におきまして諸外国に比較すると日本の所得税は低いわけでございま
すが、御指摘のような階層でございますと、フランスとはおおむね同じか前後上下しておりますが、そのほかの国と比べると、先ほどの水準のサラリーマンの方々の場合でも国際的に見れば低い水準でございます。
 ただ、そのサラリーマンの方の国際的な観点ということは別として、先ほど申し上げた初任給から始まって働き盛りになり退職されていく、そのライフサイクルからいたしますと、その時期が生活の、収入支出の状況からいたしましても、一番逼迫感がある。そのあたりのところが一番軽減の御要望が強い。そうしたものを受けての議論でございます。
 もう一つは、所得税の問題、特にサラリーマンの所得税の問題は、サラリーマンの方々の所得税は全く源泉徴収で対処されております。ガラス張りで、懐から企業によって源泉課税されているところでございますが、そうした点がやはりまた同じような生活水準をしておられる他の所得者と比べると不公平感がある。そうした問題と重なってこの働き盛りの方々に重税感、不公平感が強い、そこからの出発でございます。ただ、その水準の方々を国際的に比較してみれば、委員御指摘のように、水準は決して高いとは言えない、これは事実でございます。
○塩出啓典君 その点我が国の国民の税負担率というものも国際的に言って今低いですわね、社会保障負担も含めて三六%。アメリカは低いようですが、ヨーロッパ諸国に比べればはるかに日本は低いわけですね。その中でいわゆる中堅所得層と言われる人たちも、重税感というアンケート調査はありますけれども、実際に税率はどうかということを国際的に比較すれば日本は高いとは言えない。そこに大きな国際的な数字の比較と国民の意識との差があるわけなんですがね。それはどうしてそういう差があるとお考えでしょうか。
○政府委員(水野勝君) 所得税につきましては、昭和三十年代、四十年代を通じまして、高度成長のもとでございますから、毎年かなりな自然増収が生ずる。その裏腹としては毎年かなりなべースアップがあったということでございますが、そうした自然増収を所得税を中心に毎年減税に充ててまいったところでございます。これが昭和五十年に特例公債を発行を始めまして以来、ほとんど本格的な所得税減税というのが行われなくなってきております。そういうところから次第にサラリーマンの間での納税者の割合というのはかなり高くなる。また、減税が行われないために、ベースアップは高度成長時代には及ばないとしても、ベースアップはあるが、それによって税負担はふえる。そういう現象が続いたわけでございますので、そうしたところから、かつてに比べると負担感が痛切に感じられるようになった。
 それからもう一つは、先ほど申し上げました他の所得者との課税格差と申しますか、そうした点があろうかと思われます。そうした点が重なりまして、サラリーマンの方に重税感が強くなってきているということではないかと思うわけでございます。
 円高となったこの為替レートから換算しますと、外国と比べると同じ金額をとりますと、確かに低いわけですけれども、三百六十円が百三十円台になって、大体三分の一ぐらいになった。三百六十円時代の課税最低限というのは世界的に見るとかなり低かったわけでございますが、それでも納税者はサラリーマンの中の五割から六割ぐらいだったわけでございます。それが現在では、金額でいきますと課税最低限は世界一高いんですけれども、納税者割合としては九割近くになっている。そこのところが、為替レートとの関連で計算すればそういうことですけれども、三十年代、四十年代と比べると、むしろ課税最低限は、当時は国際的に見て低かったのが、現在は非常に高くなっているのが、納税者割合としてはむしろ相対的には納税者割合が高くなり課税最低限がむしろ低くなっているという、実感的にはそういうことになるわけですが、為替レートで計算した単純な国際比較では、委員お示しのように、むしろ日本は課税最低限も高く、負担率も低くなっている。そこに生活上の実感としてのギャップが出てきているのではないかと思います。
○塩出啓典君 大蔵大臣、私は決して減税をするなと言っているんじゃないんですけれども、ただ、今言ったように、中堅所得層の重税感という内容は何か。それは数字的に見れば決して重税ではない。むしろほかの課税所得者とのアンバランスから重税を感ずるという、そういう面が一つあると思うのですけれどもね。
 それとやはりもう一つは、これは国民生活白書でも言っておりますが、やはり教育費が高いからですね、大変これが重税である。今税調がいろいろ減税を思案をしておりますけれども、いずれにしても中堅所得者層で減税しても年間に十数万、その程度じゃないかと思うのですけれどもね。しかし子供を東京の大学へやれば、これは一人当たり月に最低十万、もっと多い少ないはあると思いますが、そのくらい仕送りをしなくちゃならぬというそういうやはり教育面、教育費が非常に高いというようなことが、私は一つの重税感の因でもあるんじゃないかと思うのです。だから私は、今度の大幅減税と言ったって、年間十万そこそこの減税をやることよりもむしろ、今税調でも意見が出ておりますが、例えば教育費の控除とか、大学へ進学する子供の仕送りは税金から控除するとか、何かそういうようなものを考えるべきじゃないか、そしてまた、中堅所得者層の重税感というのは、これをさらに下げるというのは、下げたって大した効果はないし、今言った教育減税のような方法を考えるべきではないか、この点はどうお考えですか。
○国務大臣(宮澤喜一君) 今塩出委員のお話を伺っておりまして、確かに税負担そのものは諸外国と比べて高くないはずであるのに、そういう感じがあるのはどういうわけだろうかという、私もそれはよく考えるのでございますが、一つは、主税局長が申し上げましたように、税率の刻みがそこのところがたくさんございますので昇給にすぐ税が追いついてくるという、そういう感じが私はあるだろうと思います。これは直してもらわなきゃなりませんし、今度直したいと思っておりますことは局長の申し上げたとおりでございます。
 そのほかに私は、やはり実は生活そのもの、そういうサラリーマンは大体都会に住んでおりますから、生活そのものの余裕のなさというのが重税感という形で表現されているのではないかというふうに思いますのは、例えば食べ物が高い、住居費が高い、それから教育費も高い、それから都会でございますと、やはり通勤に二時間もかかって、それが非常に快適でない状況であるといったようなこともいろいろなそういう生活の圧迫感というものがありまして、ちっとも暮らしが楽にならないというところで、それが重税感という形で表現されている部分が私はかなりあるのではないかと思います。そういうことを申し上げても、しかし、これは言い逃れをしているわけにはまいりませんので、税は税として直していかなきゃなりません。
 また、その他のことはできるだけやっぱり直してもらわなきゃならぬと思いますが、教育費の問題は教育費という形でやりますと、やはり例えば義務教育を終えて大学あたりへ行く子供さんを持っている親に対するということになりますと、今度は義務教育だけでもう世の中で一本立ちして働いて自分で稼いでいる人たちというのがすぐ対比的にございます。その間の公平感というようなこともございましょうし、どういうふうに考えていきますか、ある年齢層の扶養家族に対して多少の何か配慮を加えることができるかできないかといったような、何かそれはやはり問題はあるなというのが税制調査会でもお考えの問題でございますので、私どもも少し続けて検討させていただきたいと思っております。
○塩出啓典君 私は決して減税に反対をしているわけではないわけですけれども、やっぱりその減税の財源がいわゆる広く薄く生活保護の人あるいは低所得者にもかかるわけで、そういうものを財
源として中堅所得者に減税をしても結果的には増税になる。そういう意味で、そういう点はひとつよく検討をしていただきたい。
 それから次に、大蔵大臣は今回の税制改革は増減税同額で増税は考えていない、そういうようなお話ですけれども、それは今政府がやろうとしている税制改革は、その改革だけでは増減税一緒だけれども、将来の増税の仕掛けをつくるんだ、これがこの税制改革の目的である、このように理解していいわけですか。
○国務大臣(宮澤喜一君) 私はそう考えておりませんで、もし将来の増収を見込むのでございましたら、やはりこの所得税のような累進課税のものを置いておきました方がこれは租税の弾性値は高くなりますので、やはり増収を見込むのには楽だろうと思います。そういう意味では、そういう意図ではございません。これはもう何度も何度も申し上げますので繰り返しませんが、いわば勤労意欲、企業意欲をそぐような直接税の高さを直しておきたいと思いますし、高齢化社会に対応する考えもしておきたいと、むしろそういう感じでございます。
○塩出啓典君 けれども、一方これからだんだん高齢化社会になってお年寄りがふえてくる。政府も、六十五歳以上の人を養う生産年齢人口がだんだん減ってくる、そういう意味で将来福祉の面等を中心に財政の需要がふえてくるとそういうことを挙げて、そのために税制の改革が必要であると、それはどういう意味なんですか。そういうお年寄りの多い時代になると財政需要がたくさんふえてくるから、だから今の所得税のような税率では非常に増税しにくい、だから広く薄く大型間接税を導入した方が増税をしやすい、そういう意味で考えているんじゃないですか。
○国務大臣(宮澤喜一君) 申し上げておりますのは、今六・六人で一人のお年寄りを支えている生産年齢人口がやがて三人で一人を支えなきゃならないということになりますと、その分子になります人口は割合としては倍以上になるわけでございますが、その人たちがそんなに大きな所得税を納められるはずはないわけでございます。非常な高い所得税にならざるを得ない。しかし、そういうことは可能であるとは思われません。ということは、今程度の社会保障制度を維持しようとしてもなかなか難しいということでございます。他方で、分母におる人が分子に移ってまいりますから、六十五歳以上になればやはり稼得能力は減退すると考えなければなりません。したがいまして、その人たちの所得税に期待をすることはますます難しいことになるというような状況でありましたら、分子の人も分母の人もある程度共通に何かの負担をしてもらうふうに考えておきませんと、分母の人々は非常に大変な重税を今のままでしたら所得税の形で背負っていかなければ分子を背負えないということになる、そういうことは今から考えておかなければならないではないか、こういうふうに思っておるわけでございます。
○塩出啓典君 将来歳入をふやすための仕掛け、これが大型間接税、だから六十五歳以上の人にもまた二十歳以下の子供にも広く負担をしてもらう、そして将来歳入をふやすための仕掛けをつくるのが大型間接税の目的の一つであると。結局大蔵大臣が今言われたことと私の言ったことは同じことなんでしょう。違いますか。どこが違いますか。
○国務大臣(宮澤喜一君) それは多少違うと思いますのは、先般お目にかけました二〇〇〇年あるいは二〇一〇年における租税あるいは社会保険料の負担、これは仮定計算、機械的な計算でございましたが、今から五ポイントないし二〇一〇年には一〇ポイントぐらいこのままでは上がるであろうということは資料で出ておりますので、その限りでは塩出委員のおっしゃることが確かにあの資料には出ておるわけでございますけれども、そういうトータルコストの問題もさることながら、それを負担する、担っていく人々の数が高齢化社会になるに伴って、担われる人と担う人との比率が非常に異なってくることによって担う人の負担が大きくなる、そういう部分の問題がむしろ大きいというふうに私は考えておるわけでございます。
○塩出啓典君 間接税の場合は弾性値が非常に少ない。今大蔵大臣が言われましたように、所得税の場合は一・八とか九とか、間接税は一以下であると。そうするとこれからの財政需要は、今お話がありましたように、お年寄りがふえればふえるほど財政需要はふえてくる。これが現在のような所得税に非常に頼っている場合は弾性値が高いわけですからある程度税収がふえてきますね。ところが、だんだん間接税の比率がふえればふえるほど日本の国の税収の弾性値は低くなるわけですから、そうなると現在のような所得税の比率が多いときでもだんだん税率を上げていかなきゃならない状況になる。したがって、大型間接税を導入した場合には、そのシェアが大きければ大きいほど年々間接税の税率を上げていかなければ財政需要を賄えないというこういう傾向は否めないと思うんですが、その点はお認めになりますか。
○国務大臣(宮澤喜一君) それは、今言われましたことは、結局所得税の方が弾性値が高いのであるからみんなが同じように所得税を納めておいた方がたくさん収入があるだろう、こういうふうに言われたわけでありまして、もし所得税を納める人々の数が高齢化によって変化をしなければ私はそういうことだと思いますけれども、どうしても高齢化をすれば分子にいる人たちの稼得能力は小さくなりますので、累進が効きましても、もともと稼得能力が小さくなりますから、累進の効いた分を本当に負担するのは分母にいるより数の少ない若い人だろうというふうに考えます。そうしますと、これはもう大変な累進を背負いませんとそれだけのコストは、六・六から三になるそれだけの人で背負うことは私は難しいのではないかというふうに思うわけでございます。
 他方で、間接税であればどうかということになりますと、広く薄い間接税であればこれは分母の人はもちろん分子の人も負担するわけでありますし、間接税の弾性値を仮に一といたしますならば、社会保障はGNPの伸びだけのものは伸びていけるという勘定になりますから、その方が私は安定した社会保障制度が維持できるのではないか、こう考えておるわけでございます。
○塩出啓典君 私が質問したのは、間接税の場合は弾性値が少ない、低いわけですから、だから増大する需要を賄うためにはどうしても間接税の税率は年々上げざるを得ないと。その点どうなんですか。
○政府委員(水野勝君) 弾性値という観点から見ますと、確かに今の間接税は弾性値が小さい、平均して〇・六とか七でございますけれども、これは現在の間接税が個別消費税を中心としているわけでございまして、特に酒、たばこ、ガソリン、こうしたものがかなりのウエートを占めているわけでございます。こうしたものは所得水準が上がりましても酒やたばこやガソリンの消費量がふえるということは余りないわけでございますので、戦後の推移を見ますと、こうしたものの弾性値、例えば酒でございますとこの十年平均の弾性値は〇・一五でございます。たばこもおおむねそうした水準でございますから、こうしたものが足を引っ張っている、間接税の弾性値を小さくしている。これが個別消費税から広く薄い消費税になりますと、むしろこれは間接税としての弾性値は一に近づくわけでございますから、間接税がふえるから弾性値が小さくなるということとは直結はいたさないと思います。
 一方、所得税のウエートを減らしていきますと、所得税の弾性値は一・五から二ぐらいでございますから、確かにそれは全体の弾性値を低める要因とも考えられますが、今回の提案されておりますような税制改正、所得税減税でございますと、控除を上げるということが今回は新しく打ち出されております。控除を上げますと、それだけ逆に所得税としての弾性値は高くなる面がございます。
   〔理事梶原清君退席、委員長着席〕
したがいまして、所得税減税をする際にもどのよ
うな内容、方向の所得税減税をするかによりまして所得税自身の弾性値が小さくなったり大きくなったりする。控除を中心に減税をいたしますと、むしろ弾性値は大きくなるという面がございますので、直接税、間接税それぞれの改革に当たりまして、それが間接税の方にウエートが若干移るとしても、それが全体としての弾性値を小さくすることになるのか、大きくすることになるのか、そこらは一概にはなかなか言えないところでございます。
○塩出啓典君 昨年の政府が考えておった売上税の場合は、弾性値は幾らぐらいになるんですか、もしあのとおりいったとした場合は。
○政府委員(水野勝君) 消費一般にお願いをするとすれば、それは結局消費のGNP弾性値ということになろうかと思われます。平均的な消費性向といったものが七五、六%で安定しているとすれば一に近いものでございます。
 ただ、前回の場合は食料品とか、ああいったものは非課税にするという部分がございました。それは一体ああいう固定的な部分といったものを外すことが弾性値を大きくするのか小さくするのかという議論もあるわけでございます。ですから、消費に比例した課税であれば、現在の個別消費税よりは弾性値はおおむね一に近づく。ただ、売上税の場合が厳密にどのような弾性値の推移をたどったかということは、結局は廃案でございましたので実績がございませんので検証はできないところでございますが、現在の酒、たばこを中心とした個別消費税体系よりは一に近かったであろうと、これは推測でございます。
○塩出啓典君 いずれにしても、今政府は直接税と間接税の比率が非常にアンバランスだと、だから直接税の比率を下げて大型間接税を導入しようとしているわけで、したがって、いわゆる間接税の弾性値が現在の〇・六とか〇・七というものが全体に網をかぶせれば一に近づくということはわかりますが、それにしても所得税の一・八とか九とかというものを減らして、一の間接税をふやしてもやっぱり全体の税収の弾性値は低くなる。
 だから私が言いたいのは、これからの財政需要がふえることを考えれば、結局この間接税の場合、税率を徐々に毎年上げていかなければ財政需要は賄えない、そういう傾向は所得税の場合よりもより強い。もちろん歳出カットをして行政改革をやればそれは別なんですが、所得税を減らして間接税をふやした場合にはそういう傾向が強いということはこれはもう当然だし、これ認めるわけでしょう、主税局長。
○政府委員(水野勝君) 先ほども申し上げましたように、所得税のウエートを減らす、減税をするという場合でも、税率をどのくらいウエートを持ち、控除の面でどのくらいのウエートを持った改正をするのかということによりまして変わってまいりますので、一概に直接税を減らしてまいりましても全体の弾性値が大きくなる、小さくなるということはなかなか断定しがたいところでございます。
○塩出啓典君 先般、総理大臣は、大型間接税に六つの懸念ということを言われたわけですが、その六つの懸念の一つに税率を上げやすいというのがありましたね、税率を上げやすい。これは、間接税は痛みを伴わない税金ですから、だからモルヒネのように、取られても最初はちょっと重い感じがしますが、なれてしまえばそれまでよということで上げやすいということが六項目の一つにあったわけですが、私はそのほかにもう一つ、第七番目の懸念として、やっぱり売上税というものは、年々税率アップをしなければなかなか財政需要の増には対応できない、そういう懸念があると思うんです。大蔵大臣はそういう懸念があることをお認めになりますか。
○国務大臣(宮澤喜一君) 伺っておりまして、さっきから塩出委員の言われることと私どもが申し上げようとしていることに多少相違がございますのは、私どもは、これから二十一世紀に向かいまして高齢化するものですから、この人口の年齢別の構成が非常に大きく変わるということを申し上げようとしておるのであります。そういう場合には、安定的な社会保障制度を維持しようとしますと、若い年齢層に非常に大きな、それこそ所得税でございますが、負担がかかるので、それを防ぐ方法はないか。それで分子も分母も負担しようということを申し上げておるのでございますが、塩出委員の言われますことは、そのこととは別に、一般論として人口構成が同じであった場合には同じ歳入でも所得税でスタートする場合と売上税で、間接税でスタートする場合とは、これはもう累進の効き方が違いますから、したがって所得税の方が将来税収の伸びが大きいだろうと、こう言っておられるわけでございます。私はもうそれは一般論としてそうであろうと思います。
 ただ、そうかといって消費税の方にも伸びがないわけではなくて、仮に一般消費税であればGNP弾性値が一に近くなると思われますから、GNPの伸びほどのものは伸びられる。そういうことを考えますと、今度は私の方のまた想定に返るわけでございますが、人口構成が高年齢層に厚く変わってまいりましても、一般消費税をやることによりまして社会保障制度がGNPの伸びほどであれば間接税でもその程度のものは賄っていけるはずである。お立場、想定されておる一般の場合で申しましたら、私は塩出委員の言われますことはそのとおりであると思います。
○近藤忠孝君 先ほどの塩出委員とのやりとり、最初の方ですね、こういう答弁がありました。日本の経済の規模から見てこの国債費はこなしていけると、こういう趣旨の発言だったと思いますね。しかし私は、やはり赤字国債をゼロにしていくということと、国債残高をなくしていくという、この財政再建の達成は今の政権にとっても至上命令だと思うんですが、それはそれで間違いありませんか。
○国務大臣(宮澤喜一君) と申しますか、特例公債からなるべく早く脱却をしたいということを一生懸命考えております。
○近藤忠孝君 ただ考えても進まぬのですね、これは至上命令だしね。内需を優先してやっていくことだと思うんですが。ただ一方、政府としては国際協調の観点から、一つは内需拡大のための公共投資と、それから決してこれは我々は支持してないんですが、政府の立っておる立場からいいますと国際公共財、これは軍事費とか、海外政府援助とかですね、そういう負担といった財政赤字要因、やはりその拡大がやっぱり求められていると思います。今私はこのことを特に取り上げようというのじゃなくて、これから質問するいわば入り口の問題としてなんですが、ですから、この問題も含めて財政赤字問題を国際的連関の中で解明していく必要があるということだと思います。何回もの質疑がありますので、きょうはいわばこの財確法オンリーの問題の前提問題として、今申し上げた国際的関連の中で若干大臣に質問をしたいと思います。
 その点では、つい最近の四月十三日、大臣はG7に出席されました。特に緊急に七カ国の蔵相などが集まって話し合いをすることがあったのかなという気もしますが、この目的とそして行ってこられた成果、それについてまず御答弁願いたいと、思います。
○国務大臣(宮澤喜一君) 特にこの際、G7をやろうといって約束をしたわけではございませんで、もともとこの季節にIMFの暫定委員会がございます。その際には、その一日前ぐらいにG7をやろうということが慣例になっておりますので、いわば慣例としての会合であったわけでございます。
 基本的には、昨年の暮れのG7の共同声明以来為替も大体落ちついていると。それから各国の政策協調も、サーベイランスなんかもいたしまして、まあまあどうやらややいい方に向かっているといったような全体のトーンでございまして、その中で累積債務国の問題とかあるいはいわゆるNICSの問題とかが議論になっておった。大体そんな雰囲気のことでございました。全体といたしましては、昨年の暮れに約束いたしました協調
を、政策の上でも市場対策の上でも続けていこう、こういう基調のものであったと存じます。
○近藤忠孝君 共同声明を拝見しますと、幾つか問題と思われる点があるんです。その一つに、先進国間政策協調の指標として商品価格指数をこれから新たに導入することが盛り込まれたわけですね。どういうものかなかなか明らかにされておりませんので、ここでお聞きしますが、具体的な仕組みとして、一つはここで七カ国共通の指標を開発するのか、それとも各国通貨建てで個別にやるのか、この点どうなんですか。
○政府委員(内海孚君) 商品価格指数といたしましては、国際的な商品の価格の指数ということを考えておりまして、各国別のものは現在想定をしておりません。
○近藤忠孝君 じゃ次に、ここにどういうものが構成要素となるかということが問題ですが、金とか原油など、これはどの程度に位置づけられるんですか。
○政府委員(内海孚君) こういったものにつきましては、今後議論をG7の蔵相代理の間で詰めていくということになっております。
 具体的にどういうものになるだろうかというのはこれからの問題でございますが、現在既に例えばダウ・ジョーンズの指数とかフィナンシャル・タイムズの指数とか、ロイター指数、日経国際商品指数、いろいろなものがあるわけでございまして、そういったものも参考にしながら、どういうものが一番参考としていくのに役に立つかという議論をこれから行おうということでございます。
○近藤忠孝君 これから行おうといいましても、これはそのうち会議に臨むのでしょうから、日本政府としてそれなりの考えがあるんじゃないかと思いますが、どうですか。
○政府委員(内海孚君) これは大変技術的なものでございまして、例えば一例を挙げますと、ただいま御指摘の石油というものを別建てにした方がいいのか、あるいは入れて一つのものにした方がいいのかというようなことについて大変技術的な議論もこれから積み重ねようということでございまして、まだ我々としてこうあるべきだということを頭の中に置いているわけではございません。
○近藤忠孝君 まだこれから具体的に検討と言うんですが、私はこれは影響は大きいと思うんです。そして、これは新聞報道によりますと、推進したのはアメリカのベーカー財務長官だった。むしろ消極的だった日本、ドイツが押し切られた、こういう報道もされておるんです。となりますと、アメリカのねらいは何だろうかということが当然問題なんですが、これはどう理解してますか。
○政府委員(内海孚君) 私どもの事実の認識は今近藤委員の引用されたような報道とは全く違っておりまして、提案したのは確かにベーカー財務長官でございますが、これがあたかも例えば特定国の金融政策にそのまま運動するかのごとき報道が行われましたが、当初から別にそういった意図というか、そういった意味での提案では必ずしもなかったわけでして、その後グリーンスパン議長がアメリカの議会で証言もしておりますが、これはあくまでも、ほかの例えばGNPの成長率とか、あるいはインフレ率とかそういった指標の一つとして、経済の今後を見ていくための参考にするのだということを言っておりました。今回のG7でもそのような考え方がジョイントステートメントに出ているわけでございまして、この点だれがどうだったか、だれが反対したかというような形の認識は私どもとしては持っておりません。
○近藤忠孝君 表立って反対しなかったのかもしれませんが、腹のうちの問題という面の問題かもしれません。
 ただ、これはいろいろな論評がなされておるんですが、考えてみますと、アメリカは現在ドルの安定、それから金利水準の維持が至上命題ですね。そのために日本、ドイツの金融緩和が欠かせない。こういう面から見てみますと、これは西ドイツのペール連銀総裁がこういう発言をしております。商品バスケットは、インフレの可能性を分析するのには有益だが、一次産品の主要な生産国であるアメリカやカナダとそうでない西ドイツや日本とでは状況が違うというので、むしろアメリカ側が日本やドイツに金融緩和などを求めていく、そういうことに使うのじゃないか、そういうねらいがあるのじゃないか。だから慎重でなきゃいかぬという、こんな態度をとるのじゃないかと思うんですが、どうですか。
○政府委員(内海孚君) ペール総裁のその発言は、私どもはそのように必ずしも受けとめていないわけですが、それは別といたしまして、例えばベーカー長官がこの演説におきましてこういった提案をいたしましたのは昨年の九月でございます。昨年の九月というのは、一次産品がちょっと指数では上昇ぎみでございました。もし委員のおっしゃるような前提で考えると、それではインフレの危険があるから金融は引き締めろ、こういう話になるのかもしれませんが、あの当時において日本あるいはドイツの金融を引き締めるべきだという意見は特にアメリカにおいては全くなかったわけで、むしろ景気拡大をサポートするためには、緩めた方が望ましいなという気持ちを持っていたのではないかと思います。このようにそのタイミングから考えましても、おっしゃるような前提で理解するのはちょっと無理があるのではないかなというのが私の率直な感じでございます。
○近藤忠孝君 次の問題として、これが実現しますと、商品価格指数本位制というようなものになるのではないか。その関係で将来の通貨制度の改革に結びつくのかどうか、その辺の見通しはどうですか。
○政府委員(内海孚君) ただいま申し上げましたように、今回商品指数というものを経済の情勢を判断していく上の参考にしようということは、これによって金融政策あるいは通貨の為替レートのあり方というものと結びつけようという意図は提案者の方にもありませんし、またそれを一緒になって相談しているほかの六カ国にもないわけでございますので、商品指数に通貨をつなげようというところまで野心的なことは、当面だれの頭にもないというふうに申し上げた方が実態に合うのではないかと思います。
○近藤忠孝君 次に、為替相場の関係ですが、これはG7でもこういう確認をされていますね。為替相場が過度に変動すること、これ以上ドルが下落すること、あるいは調整過程を不安定にしてしまうほどドルが上昇することは、世界経済の成長の可能性を損ない、逆効果となると。これを確認したことの意味ですが、これは先ほど大臣は為替相場は安定してきていると言うんですが、決してこれはドルが安定していないから、こういう確認をしたんではないかという感じもするんですが、その点いかがですか。
○政府委員(内海孚君) 近藤委員御存じのとおり、為替相場というのはなかなか難しいもので、何か言えば言ったで動きますし、言わなければ言わないで動くということもあるものですから、我々が為替市場に対して確固たる協調の姿勢を持っているということは、やっぱりこの際強調することが非常に重要という判断でございます。
○近藤忠孝君 経企庁の月例経済報告を見ましても、ドルの実効変動率を見ますと、相当大きなマイナスになっておりますし、安定していないし、大体この二年間で四十何%のドルの下落、それから逆に見てみますと、購買力平価で見てみれば、いろんな見方がありますが、大体二百二十円から二百二十三円、こういった面から見ると相当かけ離れた異常相場だ。
 そういう面と、もう一つドルがやっぱり安定しない客観的背景があると思うんですね。その一つはアメリカの国際収支の状況、しかもそういう中で結局アメリカは国際収支赤字であるにもかかわらず、その削減のための本格的な引き締め政策はほとんど行ってきていなかったと、最近ちょっと行っているようですが。本来そういう国際収支赤字があれば、ほかの国であればそれこそその解消というのはまさしく緊急至上命令になりますよね。ところが、アメリカの場合には対外支払いが
自国通貨であるということもあって放置されてきて、逆に日本や西ドイツへの協力要請などがあってずうっと行ってきていると、こういう側面が一方にある。
 それからもう一方は為替取引の投機行為、要するに実需と無関係の、貿易動向とは無関係の単なる金融取引、これが国際間で激増していると、こんなことがやはりドルを不安定にしている要因ではないかとこう思うんですが、この辺の認識はあなたの方どうですか。
○政府委員(内海孚君) ドルはことしに入りましてから相対的に安定を保っておりますことは、先ほど来申し上げているわけでございます。しかし、やっぱり目を離すわけにはいかないということは、これはもう委員御指摘のとおりかと思います。やはりドルの安定というためにはアメリカ、日本、ほかの国それぞれすべきことがあると思いますが、アメリカについて、御指摘のように財政赤字の問題あるいは貿易収支の問題があること、これはだれも疑う者はないわけでございます。
 大統領選挙を前にして、アメリカの行政府と議会の間に財政赤字の縮減があのような形で合意ができ、また今年度についてそれが立法に移されていること、それからアメリカの貿易収支自体も基調としてはかなり明確な改善基調にあるということで、私どもは方向としてはかなりそういう方向に向かっていると思うわけでございますが、先ほど御指摘のように、いずれにしてもアメリカが基軸通貨国であるということはアメリカにとってそれだけ重い責任があるわけであり、また同時に、他方においてよく言われますように、基軸通貨国にあっては調整というものは、ほかの国の場合には例えば貿易赤字になれば直ちに調整しなければいけないけれども、基軸通貨国はそれをしないでもある程度はやっていけるというのがよく言われた非対称性という問題でございます。これは理論的にもある程度存在し得る問題かと思います。
 ただ、先ほど申し上げましたように、やっぱり基軸通貨国は同様にそれなるがゆえにそれなりのディシプリンを保って基軸通貨としてのドルの価値を維持する責任もあるわけでございまして、今委員もちょっと言及されましたが、このところやはりアメリカがドルの価値の維持の重要さということをかなりはっきりと認識し、またそれを外に示しているということは、現在の通貨の安定にかなり寄与している要素ではあろうと思っております。
○近藤忠孝君 基軸通貨国でなければ当然やむを得ず必然的に引き締めしなければいかぬのに、逆に基軸通貨国であるために、それをやらないで拡大をやってきたというような面がこれ実際あるんですね。
 ただ一つ、例えば最近ドルを買い支えるための努力などをしている、そういう中でSDR、IMF特別引き出し権の利用がありますね。今まで余りこういう点よくわからなかったのですが、これは実際どういうもので、その利用状況はどういうものか、仕組みと利用状況をこの機会に御説明いただきたいと思います。
○政府委員(内海孚君) まずSDR、いわゆる特別引き出し権の仕組みでございますが、これはIMFがいわば国際通貨、準備通貨として創設した通貨でございまして、SDRというものの配分を受けますと、それと引きかえに他の国からその当該相手国の通貨を取得することができるという準備資産でございます。
 これは今回アメリカ側とは通常一回一回合意して、例えばアメリカがドルを買い支えるために円を売ってドルを買うというような行為を行います場合に、アメリカは当然円が要るわけでございます。円が足りなくなった場合にSDRを日本に売って、それで我が国がそれに見合うSDRをアメリカに提供する、それによって必要に応じてアメリカ当局はこれ以上のドル安になるのを防ぐためにニューヨークの市場で介入するということができる。いわば介入のための弾ができるわけですが、これは本来IMFの協定上そういうことはできるわけですが、一回一回介入の必要の都度やるということではなくて、もうまとめて為替市場の安定のためにそういうことができるようにしましょうというふうに確認をし合ったというのが我々の話し合いの内容でございます。
○近藤忠孝君 アメリカのそれの利用の状況、これは言ってもらえないのですか。
○政府委員(内海孚君) これはほかの国にかかわることでございますし、またマーケットに不測の影響を与え得る問題でもあるものですから従来から勘弁していただいておりますし、御理解を願えればと思います。
○近藤忠孝君 それから先ほど触れた為替取引の投機問題ですね、実需と関係ないものが相当ふえて、投機ですからね、これがむしろドルを不安定にするという要素があるんじゃないかと思うので、これは資料を調べれば出てきませんか、どの程度の投機があるのかということは。
○政府委員(内海孚君) どの取引が投機かということはこれはわかりませんので、量的には申し上げることはできないわけですが、委員御記憶かと思いますが、約一年前に我が国におきまして為替市場に参加する関係者に対しまして、こういう状況にかんがみて投機的取引を自粛していただきたい旨の協力のお願いをいたしまして、その後東京市場につきましては、よく我々もいろいろな報告を伺ったりして、目を離さないわけでございますが、比較的そういうことで投機的な動きについては、何といいますか、注視を怠らない状態であるということを申し上げたいと思います。
○近藤忠孝君 注視を怠らないと申しましても、要するに実際の取引額、そのうち実需と結びつきがあるのはどの程度か。要するに、純粋の取引がどうか。これは国金局でつかめないようですね。これはつかめれば、おまえやっているんじゃないかと言えるんだけれども、つかめないと、今言ったとおり、自粛を求めて監視をすると言ったって、ただ見ておるだけでこれ幾らでも自由にされてしまうし、実際にこの間東京銀行へ大蔵委員会で行ってきましたけれども、瞬間瞬間やっていますから、あの中に相当投機的なものが私はあるんじゃないかと思うんですよね。しかし、数量的にはつかめないにしましても、一つの傾向としてそういうものがあるということはそれは何とか把握し、それをチェックする。何とか考えられないものですかね。そうでないと、これは全く実需と関係ない投機によるドルの不安というものが起きてくるんじゃないですか。
○政府委員(内海孚君) ただいま御指摘の点の認識は十分持っております。また、他方におきまして、やはりマーケットというものは本来自由であるというところにまた価値があるわけでございます。その意味で、その両方を見守りながら、どうやって投機的な行為が参加者のいわば自発的な協力によって過度にわたらないようになるかというところが一番難しいところだと思うわけでございます。
 委員御自身が今おっしゃっておられますように、実際どの取引が投機か。これは一日で世界の外国為替市場では約二千億ドルのお金が動いておりまして、東京も、インターバンクだけでなくて先物も入れましてすべての取引、一日で約五百億ドルぐらいの金が動いております。ですから、一つ一つ色分けを、そもそも色分け自身も難しいわけですし、一つ一つ誰何するわけにもまいらないということでございますので、ある程度為替銀行等から報告やシアリングを毎日しながら、御趣旨は私どもも同感の面がかなりありますので、投機的取引というのができるだけ自粛され、それによる為替の不安定という状況ができるだけ回避されるということが望ましいという気持ちでやっておるわけでございます。
○近藤忠孝君 こういうこともあろうかと思って、当委員会でも自由化をどんどん進めていくことには反対したということをひとつ、大臣、記憶を取り戻していただきたい、こう思います。
 次に、累積債務問題です。時間があればこの累積債務問題について、これが世界及び日本経済に与える影響について大臣の見解を聞きたいんです
が、もう時間が余りないので省略しまして、また別に議論する機会があるかと思うんですが、この声明の第六項でこの問題に触れておりますし、また大臣自身、IMF暫定委員会において演説をして、IMFを柱にした新たな制度を設けるなど幾つかの発言をしておられます。この新しい制度とは、大臣これはどういうものをお考えになるんですか。
○国務大臣(宮澤喜一君) この累積債務の問題というのは、結局債務国の自助努力それから銀行、債権側の国、国際機関、みんながいろいろにケースで違いますもので、ケース・バイ・ケースで少しずつ少しずつ解決をしていくしかない問題でございます。そのことは基本なのでございますが、したがって、全部を通じるうまい方式があるというような問題ではないわけでございます。
 私の申しましたのは、そういうことは十分わかっていてその上で、例えばIMFのような国際機関がもう少しこの問題の中央に近いところへ入ってきてくれて、問題の解決にもうちょっと積極的な役割を果たしてもらう方が望ましい。それは我が国のように国際機関中心で国民ができるだけ協力をしたいと考えている国にとりましては、殊にラテンアメリカのように遠い国との二国間の関連ではなくて、国際機関がこういう協力をしているということで、我々もそれを助けていくことの方がやりやすいというような話をいたしました。
 国際機関が余り出ることに消極的な国もいろいろあるものでございますから、我が国としてはそういう考えを持っているということを申しましたわけで、それ以上のことは、考えもないわけではございませんけれども、やはり全体のコンセンサスの中で少しずつそういう体制ができるかどうかを見ておりませんと、余り細かくそれから先のことを申しても言っただけのことになりますので、ただいまのところはそういうことを申したわけでございます。
○近藤忠孝君 演説しただけでどうも余り中身がはっきりしないような御答弁なのですが、そんなものなんでしょうかね。ただ、きのうもケース・バイ・ケースと言っておられて、ですから各国ごととの関係ということで、ケース・バイ・ケースですから、具体的な問題を取り上げてみたいと思うんです。
 実は、私は矢野委員とも一緒にグアテマラのIPUに出席したその機会に、メキシコへ寄ってきまして、それでちょっと調べてまいりました。メキシコの場合には、貿易でもアメリカに次いで二位ないし三位ぐらいの大変関係の深い国でありますし、また債務額も一千億ドルを超えましたし、しかしまた銀行の国有化など大変なショッキングな出来事もあるということで、大変な関心を持って行ってまいったんです。やはり日本に対する要望も大分あるようです。
 ただ、ちょっとこれ全部言っている時間がないので、一つだけ言いますと、債務の債券化問題ですね。アメリカがゼロクーポン債を出してそしてそれを担保にしてというあの問題ですが、期待したほどの落札がなかったということですね。これはどういう経過でああいうことになり、日本もそれにいわば同調といいますか、協力したことになると思うんですが、協力したのか。そして、あの結果についてどのように評価されておるのか、これだけちょっときょうはお伺いしておきたいと思います。
○政府委員(内海孚君) ただいま委員御指摘のメキシコのスキームは、メキシコの政府とアメリカの財務省それからモルガン・ギャランティー・トラスト、この三者のいわば共同作品のようなものでございまして、アメリカの財務省の発行する二十年のゼロクーポンボンドをメキシコが買いまして、それを今度二十年後の元本支払いの担保として利付債を出す。それを入札でディスカウントによって現在メキシコに債権を持っている銀行と交換をする、こういうスキームでございました。限られた外貨準備を使って銀行に対する債務を減らすという意味では私は大変ユニークなアイデアであったろうと思います。
 この結果は、メキシコが思うほど入らなかったわけでございますが、それにしましても一応メキシコは外貨準備を五億ドル取り崩しまして、それによって債務残高を約十一億ドル減らし、また利払いは二十年間で約十五億ドル減少したということですから、それなりの効果はあったということだろうと思っております。これにつきましては、やはりメキシコは今御指摘のように経済パフォーマンスがかなりよくなっており、外貨準備もある程度あるというところだからできたのかなということも言われているわけでございますが、他方におきまして、こういったスキームというのは、本当に今後もニューマネーを出し続けなければいけないような、そういった大きな銀行までがそういう形でもう債権を債券化してまたマーケットに売ってしまって、いわばこの問題にグッドバイしてしまうということがいいのかどうかという、これはなかなか評価が分かれるところだと思います。
 他方、例えばアメリカでメキシコに債権を持っている銀行というのは約四百ぐらいあると言われているわけですが、例えばそういった小さなアメリカの地方銀行みたいなそういうところですね、こういうところがこういう形でもうこの問題にはグッドバイをしてこれに協力する、あとコンソーシアムというものでもっと小さな数で合意が得やすいようになっていくというのは、その意味では今後の問題の解決を楽にする面もあるだろうと思います。
 ですから、単純に成功、失敗と言うわけにはいかないと思いますが、そういったことを全体的に勘案いたしますと、今後何らかの形でまたこういう考え方というのが適用できるケースもあり得るかと思いますが、ただこれが万能薬ではない、こういうことではないかと思っております。
○近藤忠孝君 時間が来たので、あと一問だけにとどめておきますが、私もグリア公債局長、団長でこちらへ来た人で、会いまして聞いてみたんですが、一千億ドルのうちの二十億ドルですから、それはごくわずかなもので、いわばスズメの涙だと思うんですね。私は、余り成功じゃないんじゃないかと何度もしつこく聞きましたら、いや、額が少ないのはがっかりしているけれども、ただ要するに、四十何%棒引きになりましたよね、そういう前例ができたことが画期的なことだと。だから、それをもっともっと広げていきたいんだと、こういう評価をして、今後日本に大分いろいろ期待するようなことを言っておりました。
 時間が来ましたんで、これは休暇明けにまたもうちょっと詳しく、調査の結果を開陳しながら、ひとつ質問をしたいと思いますので、この程度にしておきます。
○吉井英勝君 私は国債依存の財政運営について若干お伺いしたいと思いますが、「財政の現状と展望」の中で、特例公債と四条公債について昭和六十二年度予算額と六十三年度の予算額で比べてみますと、四条公債の発行額は前年度当初に比べて三・一%増の一千七百億円。幾ら片方で特例公債の公債依存体質からの脱却ということを言っておりましても、結局国債残高そのものを減らしていくということには、片方を減らしても片方をふやしておったのでは、ならないと思うわけですが、そこで今年度発行予定の四条公債の対象経費、そして建設国債発行額との差額ですね、これが幾らになるかお伺いします。
○政府委員(斎藤次郎君) 六十三年度予算について申しますと、建設公債の発行限度額は五兆六千九百億でございます。それに対して対象経費の総額は五兆七千百二十二億でございますので、すき間が二百二十二億ということになっております。
○吉井英勝君 建設国債の対象経費との発行額の差、いわゆるすきま率が昭和五十年度当初予算では三四・五%あったものが、この年の補正予算以来極端に減ってきて、今のお話で計算しますと、すき間率は〇・三九%と。こういうふうに特例公債、赤字国債の常態化とともに差がほとんどなくなってきたということが見られるわけですが、建設国債と申しましてももちろん国の借金でありますし、赤字国債の方が、近ごろでは建設国債と同
様に、償還の時期が参りますと借換債による償還財源の調達に踏み切っておりますし、国債整理基金への特別会計繰り入れというのを見ますと、かつての十分の一が千分の十六になり、とうとう定率繰り入れも停止ということで、建設国債も赤字国債も、公共事業目的とかそういうことを別にすれば、扱いとしてはほとんど変わらなくなってきているという、逆に言えばまさに建設国債そのものが赤字国債とほとんど区別がつかないといいますか、そういうふうになってきているわけです。ですから、建設国債を含めた国債全体の抑制と縮小こそが今非常に大事なそういう課題になってきていると思うんですが、この点について大臣の見解を伺いたいと思います。
○国務大臣(宮澤喜一君) その中で、なかんずく特例公債の抑制が大事であると考えております。
○吉井英勝君 もちろん特例公債、その抑制と縮小、ゼロにすることが大事なんですが、同時に、建設国債が事実上赤字国債と類似の性格を現在財政運営の中ではとってきているということが見られるという点が問題だと思うんです。
 ところで、国債残高は今年度末で百五十九兆、名目GNP比が四三・五%、一般会計歳出の実に二・八倍に達しておりますが、政府自身が示している「国債整理基金の資金繰り状況等についての仮定計算」においても昭和七十六年度には国債残高は二百一兆二千億と見込んでいるわけですね。そこで、百五十九兆円の国債保有の状況について次に伺っておきたいと思います。
○政府委員(斎藤次郎君) 六十二年十二月末の数字が最新でございますが、金融機関が三〇・八%、証券会社二・八%、資金運用部三四%、日銀三・六%、個人等二八・九%という分布になっております。
○吉井英勝君 これは五十六年度末現在などと比較してみますと、個人等は非常に大きく減っているわけですね、九月現在の数字ですと七・三ぐらいだったですか。さらにこれ一一%ぐらい減っていますかね。資金運用部が逆にふえて、つまりこれは国債の個人離れが進んで、郵便貯金、簡易保険など国民の貯蓄が国債の引き受けに重要な地位を今占めてきているということを見ることができると思うんですが、借金の返済である国債費の方について見ますと、一般会計歳出に占める国債費の比率というのは、十年前の五十三年度の九・五%が本年度で二〇・三%、国債費で見ますと、同じく五十三年度三兆二千三百十八億が十一兆五千百二十億で三・五、六倍に膨らんできているわけですが、財政再建が言われてきたこの七年間だけをとってみましても、国債費は七三%ふえている。
 同じ七年間についてちょっと見ておきますと、政府は財政再建ということで臨調行革を進めて、国債費は七三%ふえる。同じ間に、中小企業対策費はマイナス二一・八%、食糧管理費などはマイナス五四・九%、そして社会保障費など当然増経費に対しては約四兆五千億予算に計上せずと、切り捨て。それで、各項目全部が減っているかということを見てみますと、もちろんそうじゃないわけでして、経済協力費は六〇・四%増、軍事費は五四・二%増とふえているわけです。
 国債費が歳出予算の二〇%を超え、主要経費の中で最大の項目となっている現状について、これでは国民所得再配分という本来の財政の機能そのものの変質といいますか、喪失といいますか、こういう状況になってきておるということがうかがえると思うんですが、この点について大臣の見解を求めたいと思います。
○国務大臣(宮澤喜一君) いわゆる財政の弾力性がなくなっておるということでございます。
○吉井英勝君 弾力性の問題だけじゃなしに、本来国民所得の再配分機能が財政運営の中には当然なければならないわけで、それがただ国債費が伸びたということだけじゃなくて、軍事費とか経済協力費とか、これはどんどん伸びているんだけれども、中小企業とか食管とか国民生活の分野は減っているわけですから、ですから、本来財政が果たすべき国民所得再配分機能というものが非常に変質してきているという点、この点が非常に大事な点だと思うんですが、この点は弾力性の問題だけじゃなくて、再配分機能の問題についてどうですか。
○国務大臣(宮澤喜一君) 弾力性が損なわれますと、財政のいろいろな機能が損なわれるわけでございます。
○吉井英勝君 まあいろいろの機能という、そういう抽象的な話じゃなしに、特に国民の暮らしにかかわる分野について機能が、特に再配分機能が失われてきているという点、非常に大事な点であって、この点を特に指摘しておきたいと思うんですが、一方、国民の方は貯蓄とか簡易保険で生活のために蓄えざるを得ないという、こういう状況に置かれておりますが、その納めた税金あるいは蓄えた――納めた税金は軍事費とか大企業優遇に使われ、それでも済まずにそのための借金を今度は背負わされるという二重、三重の負担を受けているということに今なっているわけです。しかも、貯蓄はまた国債でそれを負担しているわけですから。
 そこで、日本は世界最大の今債権国になったなったと言われておりますが、日本とアメリカとイギリスと西ドイツ、フランスの主要先進国における公債依存度、利払い費の比率、公債残高の対GNP比を見てみますと、どの指標をとってみてもこれら先進国の中では財政危機の状態は最悪の状態にある、数字で見る限りそう思うわけですが、この点はいかがでしょうか。
○政府委員(斎藤次郎君) 公債依存度、GNP比と長期政府債務残高の対比、歳出総額に占める利払い費の比率、いずれをとりましても日本は世界で最も悪い状態にあることは確かでございます。
○吉井英勝君 実は、日本の財政力を引き合いに出して、アメリカなどは日本に対して貿易摩擦、市場開放などいろいろ言ってきているわけですが、しかし実際の日本の財政状況というのは、今おっしゃったように公債依存度、利払い費比率、長期債務残高GNP比をとってみましても最悪の状態でして、ですから、いかにアメリカなどが日本の財政力が豊かだからああしろこうしろというのは事実誤認であるかということ、やはり現実は逆なんだということを認識すべきだと思うんです。この点は強くアメリカなどに対して主張すべきだと思うんですが、大臣の見解を伺っておきたいと思います。
○国務大臣(宮澤喜一君) アメリカは日本の財政力が豊かだと言ったことはございません。
○吉井英勝君 金持ち日本ということですね、それは企業の側の企業活動による部分はあったとしても、実際の日本の財政力そのものは大変なんだと、ですから、思いやり予算であるとかいろいろ言ってきているわけですけれども、日本の財政力は今大変なんだと、このことはやっぱりちゃんとおっしゃるべきだと思うんですが、いかがですか。
○国務大臣(宮澤喜一君) それはよくわかっておりまして、金持ち日本といいますときに、日本全体の経済力を評価している、その中でしかし財政は貧乏だということはまた知っている、こういうような仕組みになっております。
○吉井英勝君 企業の方は豊かでありましても、今おっしゃったように国の財政力は大変、国民の生活も実は大変なんですよね。そういうことが、国民の生活は大変なのに、国民の生活を犠牲にして思いやり予算だの何だのというのは応じることはできないんですという、そこのところはやはりちゃんと財政状況をもとにして説得をされるべき、主張されるべき問題だというふうに思うわけです。
 政府は、先進国の中で最悪の財政状況、危機、特に赤字国債大量発行を生み出してきたわけですが、その最大の原因である軍拡、大企業優遇の政策を変えようとしないで、相変わらず赤字国債初め国債の大量発行でやりくりをしているわけですし、行革やったから今度は税制改革だというわけで、新大型間接税という、そういうさらなる負担を国民に押しつけるという、そういう財政運営を
今進めておられますが、これは国民にとっては本当に許されない大変なことなんだと、この点を申し上げまして、次の問題に移っていきたいと思います。
 次は、国債引き受けのシンジケート団の中の損保会社の問題ですが、実はジュリストの八八年四月一日号に「大阪地裁における交通事故損害賠償請求訴訟の実状と問題点」というのが出ておりますが、これは事前にちょっと御紹介しておきましたので、もう既に読んでいただいているかと思います。大阪弁護士会の月報百七十九号にも同様の問題を扱っているわけですが、実はこの中で、交通事故の加害者と損害保険会社が代理人を立てて債務不存在確認請求事件として訴訟を提起する場合が異常にふえているということを指摘しているわけです。もちろん中には暴力団なり、右翼なり、えせ同和団体が示談屋として加害者や損保会社をおどかしたためのものもありますが、多くはある日突然被害者が被告にされ、裁判が長引くと治療費もその間被害者の立てかえとなり、泣く泣く安い補償金で和解あるいは損保会社側が取り下げとなっているケースが目立つわけです。ジュリストなどに載っているのを少し見ておくと、大阪ではわずか二年間にこういう例が四〇%も増加して、年間二百七十件余り、損保会社側が被害者を訴えると、こういう事件が出てきております。大阪地裁の交通事件の受理件数中で見ましても、加害者側からの債務不存在確認訴訟というのが六十二年度では二百七十二件の三一・六%ですが、これ毎年数字、ジュリストなどに出ておりますが、ふえてきているわけですね。中には事故が起こって一週間で十分な折衝もしないで提訴したり、むち打ちの場合であれば機械的に六カ月たったら病状固定ということで提訴するなど、適正と言いがたいケースが目立つということをジュリストで指摘しておりますし、また、大阪弁護士会の調べによりましても、弁護士百二十五人の方からの回答のうち、七六・八%の方が六十年以降、被害者の方が債務不存在確認訴訟を起こされたという、そういう被害者側の代理になっているというケースが出ておりまして、また回答があった同種の訴訟のうち七二・一%はまだ被害者が治療中であるのに提訴されているという、そういう事情等が大阪では今問題になっているわけですが、こういう加害者や損保会社の訴訟提起というのは、これは正常な姿とは言えないと思うわけです。
 銀行局はまずこの問題を承知しておられるかどうか、この点から伺います。
○政府委員(宮本英利君) 先ほど御指摘の四月一日付のジュリスト等は読ませていただいておりまして、そういう事実があることを承知いたしております。
○吉井英勝君 損保会社というのは本来保険料によって被害者の損害をてん補することを債務者に約して、債務者からの報酬、手数料等によって採算をとることを業としているわけですね。したがって、補償金を値切って利益を上げることとか、いわゆる財テクによる、財テクというのは本来の損保会社の営業免許の目的ではないわけですね、もちろん保険料としてお預かりしたものを安全かつ有利に資金運用するという部分はこれは別ですが、本来の目的じゃないわけです。その点で、損保会社というのは被害者に支払うべき補償金をできるだけ減らした方がもちろん企業としては利益が多いとは思いますが、しかしその結果、被害者が泣かされるということは、これはやはり許されない問題だと思います。
 ちょっと被害の例を御紹介しておきますと、例えば六十一年の六月に、大阪市内でバイク運転中トラックに衝突された工業高校の子供さんですが、右腕骨折で治療中に保険会社側の代理人の弁護士から、症状は固定しており後遺症もないと、治療を打ち切れと債務不存在の訴えを起こされて、突然被告の立場になったこの少年が、昨年二月の第一回口頭弁論後、弁護士をつけて医師の診断書などから裁判所に後遺症ありと認めてもらったわけですが、裁判が長引くのは嫌だということで結局加害者側と和解、治療費を一括して和解金でもらったわけですが、この場合安い額で応じざるを得なくなって、握力も低下したまま、しかも高校退学と、被害者であるのになぜこんなに苦しめられなきゃいけないのか。
 この点で、弁護士会の人たちの話でも、賠償を減らそうとする保険会社側の姿勢がうかがわれるという姿勢があるわけです。もちろん被害者に値切った金で国債引き受けとかそんな短絡的な議論をしているわけではありませんが、本来のこういうあり方についてやはり今東京弁護士会の方の話としては、東京ではこの乱訴はほとんどない、しかし大阪で見られるこの乱訴はほっておくと全国的に広がるという問題がありますので、やはり損保会社に対して銀行局としての今指導が必要なときじゃないかと思いますが、この点についてのお考えを伺っておきたいと思います。
○政府委員(宮本英利君) 一般的に申し上げまして、自動車保険制度というものが公正に運営されまして契約者の変わらない信頼を維持していくためには、やはり正確な損害額の算出というものが行われて、それに基づいて適正な保険金の支払いというものが行われるべきということが非常に大前提ということでございまして、これは保険というものの性格からして不可欠の要素であろうというふうに言えるかと思います。
 しかしながら、いわゆる不正または過大な請求はこれを極力排除する必要があるということはそうであるにいたしましても、先生が今御指摘されましたような、理由もなく支払いをおくらせることなどを目的としたそういった提訴が行われるようなことは決してこれは許さるべきことじゃないことでございまして、この点まさに御指摘のとおりであろうかというふうに思います。
 私どもといたしましては、このような観点から、先ほど御指摘のジュリストの記事等も踏まえまして、先般損保協会に対して、損保各社による債務不存在確認訴訟の実情がたくさんございますが、こういったものの内容の詳細を直ちに調査するよう指示したところでございます。いずれ明らかになるであろうこの調査結果も十分に参考にしながら、今後とも御指摘のような、圧力団体等を背景とするような不正請求等は排除するといたしましても、御指摘のような問題の適正請求に対しましては速やかに保険金を支払っていくように指導してまいりたいというふうに考えております。
○吉井英勝君 保険業法でもちゃんと営業免許の内容等を定められておりますし、この種のことというのは是正さるべき問題でありますので、今のお話しありましたように、十分調査の上、この点は正していただきたいと思います。
 次の問題といたしまして、税務の問題について少し伺いたいと思いますが、部落解放同盟とその指導下にあるいわゆる企連に対する税務行政について伺いたいと思います。
 まず最初に総務庁に伺いたいと思いますが、昭和六十年八月から約二年間総務庁の地域改善対策室長を務め、六十一年十二月十一日の地対協意見具申の取りまとめ、また六十二年三月二十七日に参議院で全会一致で可決されました地対財特法の立案に携わってきた熊代氏が、「同和問題解決への展望」という著書を出しておられますが、これは私も読ましていただきまして、現在の政府の方針と基本的に一致しているものというふうに思われますが、そういうふうに理解していいでしょうか。
○説明員(瀬田公和君) 先生の御指摘いただきました書物でございますけれども、著者本人の序文の中でも明確に述べられてございますように、著者の地域改善対策室長としての経験を踏まえてはいるものの、総務庁の公式の見解ということではなく著者個人の見解でございまして、著者本人の同和問題に関する心情というものを大胆に吐露したものであるというふうに考えております。
○吉井英勝君 著者本人が総務庁の室長時代に実際に取り組まれた内容等がたくさん出ておりますが、これは単なる心情の吐露じゃなくて、これは行政姿勢そのものについては今日の方も当然その姿勢は引き継いでやっておられると思うんです
が、この点はいかがですか。
○説明員(瀬田公和君) 先生御指摘のように、本書につきましてはまだ私自身もこれを詳細に検討しているというわけではございませんけれども、先生の今御指摘ございましたように、昭和六十一年の地対協の意見具申を踏まえまして、それをさらに著者の考えに基づきまして具体的に展開している部分も非常に多いというふうに考えております。したがいまして、総務庁といたしましても地域改善対策を実施する上におきまして大いに参考とさしていただいている、そういう実情でございます。
○吉井英勝君 この著書の中でも「税の問題の適正化」ということが挙げられておりますね。税の問題というのは「新たな差別意識を生む要因の一つともなっている。」とか、「一般の納税者と異なった配意をすることは、決して、同和問題の解決という精神に沿ったものとは言えない。」とか、それから「脱税指南の摘発」等の問題の中でも出てまいりますが、この中でも「申告是認の適用をあてこんだ犯罪ないしはそれをまねた犯罪と言えよう。」という指摘とか、それからまた、
  特別の納税行動の背後にある昭和四三年の大阪国税局長とこの民間運動団体中央本部及び大阪の企業連との確認事項と称するものに関することである。七項目にわたるこのいわゆる確認事項は、「企業連が指導し、企業連を窓口として提出される白、青色をとわず自主申告については全面的にこれを認める。ただし内容調査の必要ある場合には企業連を通じ企業連と協力して調査にあたる。」との一項を含んでいる。国税庁は、これは確認事項ではなく、相手側がただ置いて行っただけのものと言っている。法の支配に従う法治国家日本国の国税庁としては当然の弁明である。しかし、問題は、国税庁の弁明を世論はあまり信用しておらず、この慣行の存在を前提として、それを申告是認という俗称で呼んでいることである。
と、こういう指摘までしておりますね。
 そこで、実はこの問題については昨年の決算委員会でもその当時この内容と同趣旨の答弁もあったわけですが、現在の総務庁も本件については基本的に同じお考えと、こういうふうに考えていいですか。
○説明員(瀬田公和君) 先生が御指摘の点でございますけれども、私自身、実際に七項目の確認事項という文書を見たわけでもございませんし、またそういうお話は確かに聞いておりますけれども、文書の性格についても判然としないということでございますので、それについては何とも言えないというのが現状でございます。しかし、いずれにいたしましても法律の適正な執行を通じまして、すべての納税者に対して公正な課税を行われるようにするということが原則であることはこれは間違いないことでございまして、総務庁といたしましても地対協の意見具申の趣旨に沿いまして、そういう形で指導をしていきたいというふうに考えております。
○吉井英勝君 私は持っておりますが、国税庁長官から東京国税局長あてのものとか、それからまた、いわゆる東企連の八項目の合意文書とか、これは、この種のものは以前からあなたのところへも何度もお渡ししてあって、よく見ておられるわけで、問題は総務庁としてはこのいわゆる確認事項があって、企連の申告は仮に青色、白色を問わずその申告はそのまま是認される、いわゆれ申告是認とするならば、それは地対脇意見具申の精神に反して適当でないと、この点ははっきりしているんでしょうね。
○説明員(瀬田公和君) 課税の問題でございますので、総務庁としては具体的なことはわからないわけでございますので、国税庁の方から御答弁をいただきたいと思いますが、いずれにいたしましても、私たちの原則的な立場というものは、全国民に対しまして公正な、公平な課税をしていただきたいと、こういうことでございます。
○吉井英勝君 そこで、国税庁に伺いますが、大企連の七項目確認事項と東企連のあの八項目確認事項が問題になって久しいわけですが、国税庁はその存在を認められますか。
○政府委員(日向隆君) 昭和四十三年に大阪国税局と解同中央本部及び大企連との間で、先方の取りまとめというふうに私聞いておりますけれども、七項目の確認事項があったということは私どもとしても聞いておりますが、私どもが聞いておりますところでは、これは先方が取りまとめたものでありまして、私どもとしては、先方のここで言っていることを認識し、これに対して理解をしているということであるというふうに聞いているところであります。
○吉井英勝君 その文章の三つ目に、「企業連が指導し、企業連を窓口として提出される白、青色をとわず自主申告については全面的にこれを認める。ただし内容調査の必要ある場合には企業連を通じ企業連と協力して調査にあたる。」と。で、この今内容を聞いているということとかお話しありましたけれども、その結果、どういう問題が出ているかということについては、実は昨年の六月十九日の決算委員会におきましても、これは国税庁も総務庁も、それから会計検査院も大臣も御出席のもとで出ている問題ですが、紹介されておりますが、例えばその問題が何を生み出しているかということです。
 六十一年九月二十六日に和歌山県有田郡吉備町の町議会で決議がされておりますね。「同和地区住民は、国税の減免等の適用を受けずに自立向上の努力を重ねているところであります。しかるに昨年度より、いわゆる「えせ同和団体」の活動により同和地区住民以外に減免措置が適用され、重大な問題が発生しております。」と、で、「税の明らかな不公平感を醸成し、国税当局への不信感を高めるものであります。」、そして「このような不公正な国税当局の行政措置は、町財政や国保会計に支障を生じさせております。」云々の指摘が町議会で決議されているわけですね。この問題について、会計検査院の方は昨年、「えせ同和行為の問題につきましても十分留意しながら従来検査を実施してきた」が、ただいまの御議論あるいは昨年暮れに決定されました今後の……
○委員長(村上正邦君) 時間が参ったことを御通知します。
○吉井英勝君 はい。
 検査を実施すると、努めたいという答弁がありましたが、その後、検査院が検査をされたのかどうか、この一点だけお伺いして質問終わりたいと思います。
○説明員(倉田健司君) 私ども租税関係の検査におきましては限られた人数で実施をいたしておるわけでありますが、租税の賦課徴収が法律の規定に基づいて適正に行われているかどうかという観点から主に検査を実施しているわけでございます。
 同和の関係につきましては、実際一般の検査の中で拝見をいたしておりますけれども、傾向的な問題として認識はいたしておりませんで、先生ただいま御指摘の点については集中的に検査をするというようなところまではいっておらないというのが実情でございます。
○栗林卓司君 昭和六十三年度の財政運営に必要な財源の確保を図るための特別措置に関する法律案についてお尋ねをするわけでありますけれども、結局は同じ質問になろうかと思いますので、角度をやや変えてお尋ねを申し上げたいと思います。
 この国会も五月の二十五日で終わる段取りでありまして、その後についてはまだ未定でありますけれども、新聞等の予想を踏まえて言えば、夏もしくは秋には臨時国会、そして新型間接税を含む、いわゆる抜本的税制改革の御提案と審議が始まる、このように了解をしております。
 問題は、その審議のあり方なんですが、租税法定主義の精神に照らして考えますと、かつまた、現在自民党が圧倒的な数の優位を誇っている実情に照らしてなお考えますと、一党だけの単独審議もしくは強行採決というのは、それは望ましいことではない、私はそう思いますし、この点につい
て大臣も特別御異論もなかろうかと思うので特段御意見は求めませんが、私が伺いたいのは、その一党だけの単独審議はしない、強行採決はしない、そのためには、では何をどうしたらいいかと考えてまいりますと、私は審議の進め方についてのコンセンサスを考え、確立をしていくことが一番大切なのではないか、こう思っておるのでありますが、この点について大臣の御所見をお尋ねします。
○国務大臣(宮澤喜一君) 大変抽象的にお尋ねになりましたので、お答えが難しゅうございますけれども、政府といたしましては、国民の世論によく聞きまして、このたびは十分国民の御理解も得ることができるような御提案をいたしたいと、ただいまその鋭意努力中でございます。御提案の上は何とぞ速やかに御審議を賜りたいと考えております。
○栗林卓司君 政府税制調査会が数度にわたって公聴会を実施をされました。その御意見を新聞等の報道で拝見をいたしますと、押しなべて出ておりました意見というのは、まずもって行政改革の徹底をやってもらいたい、これがまず第一でありました。第二は、不公平税制の是正、これはまずやってもらいたい、これは必ず二つ並んでおりました。そこで、これをやらないうちに、いわゆる税制の抜本的改善などということは、それは順序が逆であると言わんばかりの御主張でございました。
 振り返って考えますと、例の一般消費税の問題が起こりましたときに、昭和五十四年でございましたか、国会決議いたしましたけれども、あの内容も実は、財政再建は、一般消費税(仮称)ではやりませんと一応書いた上で、まずもって行政の縮減、合理化、二番目が、税負担の不公正の是正、これが書いてありまして、三番目が、なお足らざる場合には税の万般にわたる見直しと、こうあるものですから、大体考えていたことは、今の有権者諸氏が考えていることとは余り違っていないのでありまして、まずもって行政改革の徹底をやってもらいたいというこの前提条件といいましょうか、これと不公平税制の是正という、こういう国民の方々の御注文というのは決して私はむちゃなことを言っているわけではない。むしろ大臣が今おっしゃいましたように、率直に受けとめて、したがっていわゆる税制の抜本改革問題に取り組む場合には、まずもって行政改革の徹底した推進についての御提案と審議、その次が税制の不公正の是正についての御提案と審議、これがなければ私はいけないのではないかと思うんです。これがなくして審議が進むとはよもや思えないのであります。
 なぜこんなことをお尋ねしたかといいますと、実は今回も御提案の昭和六十三年度の財政運営に必要な財源の確保を図るための特別措置に関する法律案ですが、これは御提案なさりながら胸つぶれる思いだと思います。いろいろ議論しておりますけれども、特例債の残高が半分になれば、今抱えている問題は半分に消えちゃうんですね。思い切った財政再建がなぜできないか、こればっかりを言ってこれまで来たんです。今、私つくづく思うのは、これも去年と大してかわりばえがしないどころか全然変わってない法律案なんですが、一遍つぶせばよかった。国会でつぶした方がよっぽど真剣になって財政の再建に役所も取り組んでくれたんではないかと、しみじみ思うんです。
 そういった意味では、今度のいわゆる税制の抜本改革問題もすべてを見直すいいチャンスでありまして、この時期には今二百兆になんなんとするこの公債残高をいかにして減らすか。これを全部減らしたら、もう申し上げるまでもなく十何兆と歳出が減るんですからね。ではそんなことができるのかできないのか。国鉄はあの赤字でございました。現在はJRは黒字に転換をしたと伝えられております。その過程に何があったか、民営化されただけであります。同じように政府も民営可能な部分については思い切ってそうしていった方が結果として公債の発行残高が減ることになるんだろう。そういったひっくるめた行政改革の抜本的な検討を秋の臨時国会にはまず私はすべきではないかと思うんです。それはするとおっしゃっていただけませんかね。もう私はこんな法律案というのは質問する気がしないんです。何聞いたってどうせだめだろうというのがもう頭に浮かんでしまって質問する気にならないです。ですから、今公聴会で多くの国民が、税をいじくる前にまず行政の削減を思い切ってやれ、この声はあだおろそかに私は聞いてはいかぬと思います。
 以上、私の主張を申し上げまして、ただ審議の順序立てについての大臣の御見解を伺います。
○国務大臣(宮澤喜一君) 昭和五十四年の十二月に国会の御決議がございまして以来、私は政府は行財政改革には真剣に取り組んでまいったと考えております。また、その成果もそれなりに上がってまいったと思いますのは、NTTでございますとかあるいはただいまも御指摘のJRでありますとかはその具体的な例でございますし、また財政におきましてもマイナスシーリングを何年か続けまして、ともかく財政の縮減、節約を図ってまいりました。公債依存率も幾らかは低下をしたという結果がございますので、行財政改革は道が遠うございますから、これで終わったというようなわけにはまいりません。これからも続けてやってまいらなければならないことはもとよりでございますが、五十四年以来、その成果は目下かなり上がりつつあると申し上げてもよろしいと存じます。
 それから、不公平感の是正でございますが、これはとみに国民にそういうお声の強いことをよく承知しております。したがいまして、政府はこのたび税制の抜本改正を御提案申し上げるに際しましては、必ず不公平感の是正、これは制度にも執行面にもあろうと存じますが、それに対しましてはまず最優先でそのための施策を税制抜本改正の中に盛りまして御提案をいたしたいと考えております。
○野末陳平君 まず、財政再建あるいは税制改革、そういうような今当面する大きな問題の周辺のいろいろな問題をお聞きしたいと思うんですけれども、とりあえず経企庁にいろいろな点で確認そしてまた説明をいただきたいと思いまして、ここ数年の経済成長の見通しについて、簡単にまず説明してもらえますか。
○委員長(村上正邦君) どなたが説明なさいますか。
○野末陳平君 経企庁、間に合わない。じゃ違う方やります。
○委員長(村上正邦君) すぐ呼んでくれますか。それとも後へ回して、順番回して……
○野末陳平君 後へ回します。
○委員長(村上正邦君) 大臣いますから大臣に質問してください。どうぞ。
○野末陳平君 まず、税制改革は各国でやっておりまして、日本よりも先に実行し、またかなりの成果を上げているという例もあるわけで、とりあえずイギリスの話をいろいろ聞いたんですけれども、それを、自分で見てきたわけでないものでして、聞いたり読んだりした範囲でお聞きしますので、大蔵省にまずイギリスの税制改革についてのいろいろな意見を聞きたいんです。
 イギリスの場合は税制改革はかなりうまくいった、こういう感じがして、しかも景気もかなりよくなったとか、いい面ばかり伝わってきておるんですけれども、とりあえずどうなんでしょう、プラスの面、マイナスの面、そういう事情をどう分析なさっているか、その説明をまずしていただけますか。
○政府委員(水野勝君) イギリスのまず例でございますと、イギリスの現政権が発足いたしましたのは一九七九年でございます。五十四年でございます。その年におきましては、税制改革の第一段といたしまして、所得税率を思い切って下げる、その最高税率は八三%でございましたけれども、それを六〇%に下げる。それから基本税率としては三三%を三〇に下げるということといたしております。その一方におきまして、従来付加価値税におきましては八%と一二・五%の二本立てでございましたけれども、これを一五%に引き上げて
おります。これでもって所得税の大幅減税の財源を賄ったということでございます。
 次に、第二段といたしましては一九八四年、昭和五十九年でございますが、この年には法人税の見直しを行っております。この年におきましては法人税の税率を五二%でございましたのを三五%に下げる。これは、段階的ではございますが、最終的には八六年以降三五%になるという引き下げ計画でございます。一方におきまして、法人税の中におきまして課税ベースの抜本的な拡大を図ってございます。機械設備の初年度一〇〇%の基礎償却というのがございました。こうしたものは思い切って廃止するという措置でございました。これが第二段の一九八四年の改正でございますが、またこの年には付加価値税の課税対象の拡大を行ってございます。
 一九八六年に至りまして、所得税の基本税率を三〇から二九に下げるということを行い、さらに八七年にはその二九%を二七%に下げてございます。
 これがこれまでの経過でございますが、さらに今年度の改革案といたしまして提案されておりますのは、所得税を再び抜本的に取り上げまして、基本税率、最高税率ともに思い切って下げるとともに税率の刻みを思い切って減らす。結論といたしましては、所得税の税率を二五%と四〇%、この二段階にするという改革案のようでございます。また、相続税の税率も四段階の刻みがございますのを、これを四〇%の単一税率にする、そういうことのようでございまして、これは国会で審議が行われておるというふうに聞いておるところでございます。
 このようにいたしまして、イギリスの改革におきましては所得税におきましても思い切って累進を緩和する、それによりまして、労働者、勤労者の勤労インセンティブ、労働インセンティブの回復を図ったということでございます。また、法人企業活動につきましても、課税ベースを拡大しながら税率は思い切って下げた、そういうふうなことで取りまとめられるかと思います。こうした税制改革だけの結果かどうか、これは私どもとしてよくなお勉強すべき点でございますが、その後のイギリスの経済は活性化してまいりまして、自然増収の拡大もあり、一九八七年度からは財政が黒字に転換しておるということのようでございます。これがイギリスの税制改革の経緯でございます。
 一方、アメリカにおきましては、レーガン政権が発足いたしましたときからいろいろ税制改革は提案し、実施に移されてございますが、その第一段といたしましては、一九八一年に発足しました政権のもとで一九八二年、昭和五十七年でございますけれども、やはり所得税の最高税率七〇%を五〇%に引き下げるという思い切った改革をいたしてございます。さらに、法人税につきましては、この年は課税ベースの見直しを行うということでございました。
 このように思い切った所得税の大幅減税を行いましたところ、財政的には若干の苦しい面も出てまいりまして、その後逐次、法人税を中心として課税ベースの拡大が行われてきておりますが、基本的な税制改革は一九八六年でございます。一九八四年の一月に大統領から税制の抜本的改革をするという教書が発表されまして、財務省におきましてその原案が作成され、それが一九八五年に至りましてまとめられまして議会に提出された、これが実現を見たのが一九八六年改革法でございます。
 これは八七年から実現に移されておりますが、御承知のとおり、所得税は一五%と二八%の二段階にフラット化する、それから所得税におきまして課税ベースのやはり拡大を目指す。これは支払い利子控除の縮減でございます。また、キャピタルゲイン課税の強化も行われております。法人税につきましては、税率は四六%から三六%に下げる。しかし一方におきまして、投資税額控除の廃止、また加速度償却制度の廃止によりまして大幅な課税ベースの拡大を行ってございます。
 大きな方向としては、これはイギリスと同じように所得税の累進構造を思い切って緩和する、法人税におきまして課税ベースを拡大し、税率を思い切って下げるということでございますが、税制改革の始まりました当初からこれがかなり経済を活性化し、税収の増大をもたらし、それがひいては財政の体質改善に寄与するということは言われておったわけでございますが、この点はイギリスと違いまして、その後財政赤字の縮減の努力は行われておりますけれども、現時点におきましてはイギリスのように黒字に転ずる、こういうふうな劇的な結果としてはあらわれていない。これは税制改正がすべて原因なのか、あるいはその他の経済要因によるものでございますか、なお検討を要する点でございますが、同じような方向での改革ではございますが、特に、財政の収支に対しますところの効果としては、アメリカとイギリスではやや際立っておる、これが両国の概要でございます。
○野末陳平君 基本的な税制改革の方向というのは我が国とそれほど変わらないと思いますが、イギリスはかなり成功し、アメリカはまださほどでもないという感じで今の説明を受け取りましたけれども。
 さて、大蔵大臣にお聞きしますが、これはイギリスの場合はかなり大幅に、しかも大胆に、それほどの長期間にわたらずしてこういう改革を実現していい成果を上げているんですが、これはなぜここまでやれたのか、その辺のことをどういうふうに分析なさってますか、この背景とかいろいろ原因とか、どうなんでしょうか。
○国務大臣(宮澤喜一君) 一つは、かなり長いこと労働党政権が続きまして、いわばある意味での社会保障が相当に発達をいたしました。これは世間の言うことでございますからそのまま拝借しますが、イギリス病というようなことになりまして、英国は非常に沈滞をしてしまったということは、多くの英国人がきっと感じておったことだろうと思います。その後でサッチャー政権が登場いたしまして、正直を言って、失業率がふえるということも甘受しつつ、かなり思い切った改革をやられて、イギリスという国がやや病気を脱出するような希望をみんなが持つようになった。
 そういうことを背景にいたしまして、従来労働党が極端にいわば社会政策を推し進めていたことによって、保守党の人々に言わせれば、人々が怠け者になったということから、逆に今度は、働いたその結果をすべての人に十分満喫させよう、そういう意味での政策を思い切ってとった。殊に最低税率が二五というようなことは、これは恐らく今までに比較いたしますと、低所得者に対しては、かなり厳しい改革であろうかと思われますが、しかしすべての人が同じようにやっぱり入り用なものは負担をしなければならない。そうかといって、所得が高いから大変に重い負担をさせるのではなくて、それはやっぱり働けば働くだけのものが残らなければならない。相当これは思い切った私は改革であったと思います。それはしかし、サッチャー政権が、ここまで九年でございますか、九年間やってきたことのその成果を国民がやっぱり評価をして、その上に立ってできたことであろうというふうに私は思っております。
 正直を申しますと、所得税というものは累進が大事である、間接税というものはもう事のいかんにかかわらず逆進的なものでよくないものであるといったような説があちこちある中で、思い切ったことをやってくれたものだという感じを持っております。
○野末陳平君 イギリス病という背景があったというのも大きな成功した理由かもしれないのですけれども、それ以上にサッチャー政権が税金に関する常識を覆したといいますか、新しい時代にふさわしい税金哲学のようなものを打ち出したというような感じもするんです。もちろん今大蔵大臣のお答えの中にも一部ありましたけれども。今回の、まだこれは実施されてませんけれども、四〇%と二五%という二段階の問題にせよ、今まで要するに、高額所得著からたくさん取って、それを
低い方へ回すという、いわば富める者から貧しき者への所得再配分機能、そういうようなことを背景にした累進構造は、これは絶対正しくてと言ってたんですけれども、どうもイギリスでは、それが大分国民の納税意識をも変えてしまったという、その辺に非常に僕は興味を持つんです。
 つまり、我々の税制改革は、税制の抜本改革といいながら、やはり過去の税金常識のようなものにどうしてもとらわれてしまいますから、だから最高税率を下げるというと、これは何かいけないことのように思ったり、それから低い所得の層の税率をやっぱりできるだけ常に下げていかなきゃだめだ、課税、最低限は常に引き上げなきゃいけないんだとか、そういう部分が非常に日本的で、それはそれでいいんでしょうけれども、イギリスの例を参考にしながら考えていきますと、我々の税制改革にも、抜本改革というからにはおのずからそこに新しい税金哲学のようなものを指導者が打ち出すという、それも国民を説得する大きな武器になるんじゃないかという気もしているんですよ。
 ただ、それにしては残念ながらそれがないわけで、税調の答申もきょう出たようなんですけれども、あるようでやはりないんですね。そこら辺どういうふうにお考えになりますか。ということは、やはりこうして成功した例を参考にしながら今後税制改革を進めるべきなのか、これはこれで置いておいて、やはり我が国は我が国の事情にふさわしいようなあり方を求めていくのか、非常にそれは微妙だと思うんですがね。その辺でこのイギリスの成功例に何を大蔵省は教訓として学ぶのか、その辺のことをもう一回ちょっと確認しておきたいんですけれども。
○国務大臣(宮澤喜一君) 私自身はこのサッチャーさんの今度の税制改正について非常に関心を持っております。また、それがどのように行われていくか、その結果がどうなるかについても余計に関心を持っておる人間でございますけれども、先ほど申しましたように、この背景にはサッチャー政権の反対党である政権が長いこと政権をとって、そしてある種の施策を長いことやってみて、それを国民が全部見ておりましたからその後にこういうことが行われたということでございますので、国民はいろんな意味で問題を考え、経験する時間を持った。また、政党自身も政権党としてそういうことを実際やってみたわけでございますから、自分の経験を持っておるという、そういう背景があったと思います。
 我が国の場合にはそういうことが幸か不幸かございません。したがいまして、もし私どもがこういう提案を仮に申し上げましたら、それは国会におきまして非常に痛烈な恐らく御批判を受けるであろう、これは想像にかたくないことでございますし、国会ばかりでない、国内でも私はそうではないかと思うのでございますが、それはまあある意味では我が国が比較的うまく戦後を過ごしてきたということがございますし、善悪は別といたしまして、私どもが終始政権を担当してきたということから、まあいわば違う立場の政策、政治というものは行われずにまいったということがございますから、国民がいろんな場面の経験をしていないということがございましょうと思います。
 そういったようなことが背景になっておりますから、私は大変にイギリスの場合もアメリカの場合も関心を持って見ておりますが、今回政府が抜本改正と申しながら、政府税調あるいは私どもの党内で検討しておるところでも十二、三段階のものをせいぜい五段階とかその辺のところまででそれから先へはなかなか一挙にやろうという意見はない、あるいは非常に少ない。それは今申し上げましたようなことを背景にしておるのではないかと思います。
○野末陳平君 今の大蔵大臣のお答えは、まず日本的で、非常に何といいますか、まあ無難だと思うんですけれども、僕は思うに、何もイギリスやアメリカのようなことをやらなくてもそれはいいんです。また、できると思わないんですけれども、今のような考え方をずっと突き詰めていきますと、幸いなことに日本は日本病なんてまだかかっておりませんから、となると今なぜ税制改革かといった場合に、これを積極的に進める動機といいますかね、差し迫った理由というのがそれほど見当たらなくなっちゃうんですね。そこが非常に弱いところでもあるし、また難しいところでもある。
 仮にそちらが高齢化社会にと言いますけれども、高齢化社会というのはまだ見えてきませんから、一般の納税者にはね。しかも、十年先か二十年先か、この数字もそちらでお出しにはなっておりますけれども、あくまでも実感としてはなかなかわかりませんね。そうなると、高齢化社会への対応のために今しなきゃいかぬといっても、じゃこの秋にどうしてもという場合に非常に積極的動機に欠けてきちゃうんですね、つまり哲学がない。やはりそういう社会的な不幸なる背景がないとまずいので、そうなると非常に焦る必要がなくなってきちゃうんですね。それはどうお考えになりますか、焦るというのはまずいけれども。
○国務大臣(宮澤喜一君) 余り深いことを私わかりませんけれども、そこはやはりコンセンサスというようなことで極端に走らずに、国会でも賛成をしていただけるわけではないけれども、しかしまあ理解ができないわけではないといいますか、御提案する方もまあまあその辺のところは余り極端にならないようなという御提案をしておるつもりで、そういうことで物を決めてまいりまして、しかもそれが比較的うまくやってこれた社会と、そうでない、ひとつのかなり厳しい体験を通ってきた人たちとの、あるいはもっとこれは、もう歴史的にいろんなことが関係しておるのかも実はしれませんけれども、そういうことの違いではないかと思います。
○野末陳平君 じゃちょっと別の角度から同じような、つまり僕は税制改革の背景というものもいろんな点から考えてみたいと思っていたんですね。
 そこで、経企庁が来てくれましたね。ちょっと経済成長の見通しなんですけれども、そちらが出している五年とかそういうんじゃなくて、ここ一、二年どういうふうに現実の生きた経済が動きつつあるのか、その辺の見通しを簡単に説明してくれますか。
○説明員(森田衞君) 六十三年度につきましてお話し申し上げますと、現在政府は、我が国経済につきまして内外需で見ておりますけれども、まず外需につきましては、対外不均衡の是正過程を反映いたしまして、引き続きマイナスの寄与度となるというふうに見ております。
 一方、内需でございますが、まず住宅投資でございますが、現在非常に高水準で推移しておりますが、今年度は恐らく伸び率は鈍化する、こういうふうに見込んでおります。次に、個人消費でございますが、雇用者所得等の着実な伸び等を反映いたしまして、さらに今後堅調に推移するのではないかと、こういうふうに見ております。
 三つ目の設備投資でございますが、非製造業におきまして昨年来非常に堅調に推移しておりますが、製造業につきましても内需関連分野の投資が増加をすると見込めること等によりまして、内需は引き続き好調を持続するというふうに見込んでおります。
 以上、内外需を合わせますと、六十三年度はちょうど景気回復の二年目に当たりますので、内需を中心といたしまして全体として着実な成長が続くものと、このように見ておりまして、実質の経済成長率は三・八%程度いくのではないかと、このように見込んでおるところでございます。
○野末陳平君 そうしますと、この成長はあとどのくらい続きそうだという、そんな予測できますか。
○説明員(森田衞君) この成長の持続性につきまして強弱いろいろと見方が分かれております。
 強気の説は、今までの過去の経済成長の期間を単純平均いたしますと三十数カ月続くということで、今二年目でございますので六十三年度いっぱい当然続くと。さらには、もう少し続くんではな
いかというような見通し、強気の見通しから、例えば先ほど申しました個人消費につきましても、この個人消費の強さといいますのは、例えば昨年行われました減税の効果が出てきておるとか、さらには株、土地等の値上がりによりまして資産効果等もありましたが、一時的な要因で消費が非常に活発になっておるということ、さらには円高の効果が今タイムラグをもってあらわれてきておるというふうに現在の消費の強さというものをそういう一時的な要因とみなしまして、それほど長くは続かないんじゃないかと。高額商品が飛ぶように売れておる、そういうようなものがいつまでも続くとは限らない。したがって、今後アメリカ経済の動向等、海外要因もいろいろございますけれども、内需の中心となる個人消費もそういうものであれば、この景気の見通しというのはかなり早いうちに中折れするんではないかというような見方までございまして、私どもといたしましては、政府といたしましてそれがいつまで続くのかという公式の見通しは持っておりませんが、底がたい堅調な伸びが六十三年度は続くというふうに見ておるところでございます。
○野末陳平君 こういう予測は常に強弱分かれるわけですからどちらとも言いがたいんですが、ただ個人消費が予想以上にすごいと、強いといいますかね、そんな感じをいろいろな物の売れ方とかそれから新しい開発された商品の人気とかそういうので感じるんですね。そこで、その個人消費を引っ張っていく業種というか業界というんですかね、あれは具体的に物と言った方がいいんでしょうか、今そのお答えの中に高級品がということが出ましたけれども、もうちょっと具体的に言いますとどういうふうになりますか。それによっては必ずしも弱気の見方をとらないでかなりこれは続くんじゃないかという見方もできるような気がするんですが、具体的にもう少し説明してくれますか。
○説明員(森田衞君) 個人消費の動向につきましてさらに説明させていただきますと、最近数カ月の個人消費の特徴と申しますと、一つは耐久消費財がかなりその消費が堅調であるという点でございます。具体的に中身を申しますと、家具、さらには家事用品、家電製品、大型テレビとか音響機器とかそういうものでございますが、さらには一番大きな耐久消費財でございます自動車でございます。これがかなり強い売れ行きを示しておるというところでございます。これが特徴の第一点でございます。
 特徴の第二点は、レジャー関連支出が非常に堅調であるという点でございまして、海外旅行、国内旅行、例えば数字で申しますと二月の前年同月比が海外旅行は二二%を超えておるというようなことで、非常にレジャー関連支出が堅調であるというようなことが主な特徴として挙げられるかと思います。
 御参考までに、家計調査の中身で世帯別に申し上げますと、一般世帯とそれから勤労者世帯二つに分けて家計調査の数字があるわけでございますが、従来一般世帯が非常に好調であるというふうな傾向を示しておったわけでございますけれども、サラリーマン世帯がどうも調子がよくないということだったわけでございます。ことしに入りましてようやくサラリーマン世帯も消費が好調になってきておるという状況が見られます。全般としてことしに入りましてようやくサラリーマン世帯、一般世帯含みまして、全世帯でも堅調な動向が見られてきておるという、このような状況でございます。
○野末陳平君 ちょっとこういう話になると長くなってしまいますので、後で個人的にもっと詳しく勉強させてもらいますから。
 大蔵大臣にお聞きするんですけれども、どうなんでしょうね、やはり国民の暮らしがどの程度のレベルに来たかということも考えないと、税制改革とこれは非常に関係あるんですけれども、そんなに大変な苦しい生活はしてないんですね、今。かといって豊かなとも言いませんよ、それは個人的に違いますからね主観的に。それからまたある程度気の毒なところもありますから。しかし、平均レベルでいくとこれはかなりの豊かなレベルに来ていると、もちろん物質的だけかもしれません。しかし、経済的にやはりある程度の負担というものは、もちろん間接税を考えているんですよ、間接税のある程度の負担というものはできるというところに来ているはずなんですね。ですから逆進性の問題は、まさに低所得者とそれからお年寄りなどはもう間違いなく何らかの救済措置を考えなきゃなりませんけれども、一般的にはどうなんでしょう、今が負担できる、負担をしてもらえる説得するチャンスだという気がするんです。だけれども、それではあっても一方において税制改革をする積極的な何か哲学を打ち出せませんので、結局あいまいになってむしろ何といいますかね、失敗する方へおのずから行ってしまうという僕は非常にそこのところ疑問があるのですよ。
 つまり、やはりもう今までとは違ってきていると、世の中の情勢が。しかも納税者の意識もかなり変わっている。それをいまだに十年、二十年前の発想でもって、この税金哲学でもって税制改革をやろうとするところに何か政府の及び腰というか、失敗する原因をみずからつくっているんじゃないかと思えてならない。ですから、これはもちろん見解の相違もありますから、これは個人的に私がそう考えているということなんで、もう時間ないですから、大蔵大臣、ちょっとその辺のところお聞きしないと。何しろ結果的には今回は無難な税制改革で抜本なんていうほどのことができないで終わっちゃうという気がしてならないのです、今みたいな、さっきみたいなイギリスの例で、とてもこれは事情が違うからなんと言っていちゃ、あなた。それを最後の質問にしてちょっと御見解を聞いて、まだ時間たくさんありますのでね。
○国務大臣(宮澤喜一君) 大変示唆に富んだお話を伺ったわけでございますけれども、それだけに、お答えする方はこれ用心をしてお答えをしないといけないところでございます。
 先ほど英国の二五%のお話がございまして、これはよくわかりませんけれども、ある層、多分ひとり者で働いてかなりいわば独身貴族といいますか何と申しますか知りませんが、そういう一番低いというか層には少し私は増税になるんじゃないかという感じがするんでございます、この二五というのは従来の税率より高うございますから。しかし、我が国の場合税制改革を考えますと、やはりどの層にも増税にだけはならないようにということを私どもも一生懸命考えております。これは今の状況からはどうも最低限守らなければならない条件ではないか。したがって、片っ方で消費税のようなものがありましてもまあまあ大体はネットの減税にどの方々でもなっていくようにしなければならないという気持ちが基本的にございますし、また国会でもその点は厳しくお尋ねがあるわけでございまして、そういう点で野末委員から、お立場からいえば哲学を欠いた微温的なという今御批判はあろうかと存じます。大変示唆に富んだお話を伺ったと存じております。
○委員長(村上正邦君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
   午後四時三十七分散会