第112回国会 予算委員会 第10号
昭和六十三年三月十八日(金曜日)
   午前十時開会
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   委員の異動
 三月十七日
    辞任         補欠選任
     岩上 二郎君     寺内 弘子君
     高橋 清孝君     青木 幹雄君
     本村 和喜君     宮崎 秀樹君
     近藤 忠孝君     佐藤 昭夫君
     小西 博行君     勝木 健司君
 三月十八日
    辞任         補欠選任
     佐藤 昭夫君     近藤 忠孝君
     秋山  肇君     野末 陳平君
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  出席者は左のとおり。
    委員長         原 文兵衛君
    理 事
                伊江 朝雄君
               大河原太一郎君
                小島 静馬君
                林  ゆう君
                吉川 芳男君
                久保  亘君
                矢原 秀男君
                吉川 春子君
                三治 重信君
    委 員
                青木 幹雄君
                石井 道子君
                石本  茂君
                梶木 又三君
                金丸 三郎君
                北  修二君
                工藤万砂美君
                坂元 親男君
                志村 哲良君
                下稲葉耕吉君
                寺内 弘子君
                中曽根弘文君
                永田 良雄君
                野沢 太三君
                林 健太郎君
                降矢 敬義君
                増岡 康治君
                松岡滿壽男君
                宮崎 秀樹君
                稲村 稔夫君
                小川 仁一君
                大木 正吾君
                千葉 景子君
                野田  哲君
                安恒 良一君
                及川 順郎君
                広中和歌子君
                和田 教美君
                近藤 忠孝君
                佐藤 昭夫君
                内藤  功君
                勝木 健司君
                野末 陳平君
                下村  泰君
                青木  茂君
   国務大臣
       内閣総理大臣
       通商産業大臣臨
       時代理      竹下  登君
       法 務 大 臣  林田悠紀夫君
       外 務 大 臣  宇野 宗佑君
       大 蔵 大 臣  宮澤 喜一君
       文 部 大 臣  中島源太郎君
       厚 生 大 臣  藤本 孝雄君
       農林水産大臣   佐藤  隆君
       運 輸 大 臣  石原慎太郎君
       郵 政 大 臣  中山 正暉君
       労 働 大 臣  中村 太郎君
       建 設 大 臣  越智 伊平君
       自 治 大 臣
       国 務 大 臣
       (国家公安委員
       会委員長)    梶山 静六君
       国 務 大 臣
       (内閣官房長官) 小渕 恵三君
       国 務 大 臣
       (総務庁長官)  高鳥  修君
       国 務 大 臣
       (北海道開発庁
       長官)
       (沖縄開発庁長
       官)       粕谷  茂君
       国 務 大 臣
       (防衛庁長官)  瓦   力君
       国 務 大 臣
       (経済企画庁長
       官)       中尾 栄一君
       国 務 大 臣
       (科学技術庁長
       官)       伊藤宗一郎君
       国 務 大 臣
       (環境庁長官)  堀内 俊夫君
       国 務 大 臣
       (国土庁長官)  奥野 誠亮君
   政府委員
       内閣法制局長官  味村  治君
       内閣法制局第一
       部長       大出 峻郎君
       内閣総理大臣官
       房審議官     本多 秀司君
       警察庁刑事局長  仁平 圀雄君
       警察庁刑事局保
       安部長      漆間 英治君
       総務庁長官官房
       審議官
       兼内閣審議官   紀 嘉一郎君
       総務庁長官官房
       会計課長     八木 俊道君
       総務庁統計局長  百崎  英君
       防衛庁参事官   福渡  靖君
       防衛庁参事官   児玉 良雄君
       防衛庁長官官房
       長        依田 智治君
       防衛庁人事局長  松本 宗和君
       防衛庁経理局長  日吉  章君
       防衛施設庁長官  友藤 一隆君
       防衛施設庁施設
       部長       鈴木  杲君
       防衛施設庁建設
       部長       田原 敬造君
       防衛施設庁労務
       部長       山崎 博司君
       経済企画庁国民
       生活局長     海野 恒男君
       環境庁大気保全
       局長       長谷川慧重君
       国土庁長官官房
       長        清水 達雄君
       国土庁長官官房
       会計課長     佐々木 徹君
       法務省刑事局長  岡村 泰孝君
       法務省人権擁護
       局長       高橋 欣一君
       外務省条約局長  斉藤 邦彦君
       大蔵省主計局長  西垣  昭君
       大蔵省主税局長  水野  勝君
       大蔵省理財局長  足立 和基君
       大蔵省銀行局長  平澤 貞昭君
       国税庁次長    日向  隆君
       文部大臣官房長  古村 澄一君
       文部省初等中等
       教育局長     西崎 清久君
       文部省教育助成
       局長       加戸 守行君
       文部省社会教育
       局長       齋藤 諦淳君
       文化庁次長    横瀬 庄次君
       厚生大臣官房総
       務審議官     黒木 武弘君
       厚生省保健医療
       局長       北川 定謙君
       厚生省生活衛生
       局長       古川 武温君
       厚生省社会局長  小林 功典君
       厚生省児童家庭
       局長       長尾 立子君
       厚生省援護局長  木戸  脩君
       農林水産大臣官
       房長       浜口 義曠君
       農林水産大臣官
       房予算課長    上野 博史君
       農林水産省構造
       改善局長     松山 光治君
       運輸大臣官房審
       議官       金田 好生君
       運輸大臣官房会
       計課長      黒野 匡彦君
       運輸省運輸政策
       局長       塩田 澄夫君
       労働大臣官房長  清水 傳雄君
       労働省職業安定
       局長       岡部 晃三君
       建設大臣官房会
       計課長      鹿島 尚武君
       建設省建設経済
       局長       望月 薫雄君
       建設省住宅局長  片山 正夫君
       自治大臣官房長  持永 堯民君
       自治省行政局選
       挙部長      浅野大三郎君
       自治省税務局長  渡辺  功君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局民事局長
       兼最高裁判所事
       務総局行政局長  泉  徳治君
   事務局側
       事 務 総 長  加藤木理勝君
       常任委員会専門
       員        宮下 忠安君
   参考人
       税制調査会会長  小倉 武一君
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  本日の会議に付した案件
○参考人の出席要求に関する件
○昭和六十三年度一般会計予算(内閣提出、衆議院送付)
○昭和六十三年度特別会計予算(内閣提出、衆議院送付)
○昭和六十三年度政府関係機関予算(内閣提出、衆議院送付)
    ─────────────
○委員長(原文兵衛君) 予算委員会を開会いたします。
 昭和六十三年度一般会計予算、昭和六十三年度特別会計予算、昭和六十三年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。
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○委員長(原文兵衛君) この際、参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 昭和六十三年度総予算三案審査のため、本日、税制調査会会長小倉武一君を参考人として出席を求めることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(原文兵衛君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
○委員長(原文兵衛君) これより総括質疑を行います。野末陳平君。
○野末陳平君 不公平税制と一口に言いますが、これは人によっていろいろ中身が違いまして、何が不公平税制かということを決めるのは非常に難しいと思います。
 そこで、私はいろいろないわば普通の人にあなたが感じる不公平税制は何かを聞いてまいりまして、あるいは新聞の投書などを参考にしまして、自分流に普通の人の不公平感というものを素朴な疑問の形でまとめてみたんですね。そうしたらとりあえず二十個ばかりありまして、私自身の考えを入れますとまだ法人税関係でもってもっとふえてしまうんですが、とりあえず素朴な疑問を二十、これから並べていきたいと思うんですね。ですから専門家の議論ではありませんで、むしろ素朴な疑問に普通に答えていただく、こういう形で御答弁をお願いできればありがたいと思います。
 まず素朴な疑問の一は、宗教法人ですね、宗教法人はなぜ無税なのか、その理由が聞きたいという人が多いんです。実は無税じゃありませんで、これは税の優遇を受けているということなんですが、まず正しく実態を知ってもらうために政府委員から答えてほしいんですが、お布施とか寄附とか、いわゆる本来の宗教活動から来る収入、非収益部分ですね、それに対してはどういう税の優遇があるのかというのを、国税と地方税それぞれの立場で何と何が優遇されているか、その税目を並べていただきたい、そう思います。
○政府委員(水野勝君) 宗教法人の国税関係につきましては、所得税、法人税、登録免許税、物品税、こうした税目におきまして優遇措置が講じられておるところでございます。
 御指摘の非収益課税ともあわせました全体としての優遇措置と申しますか、税制上の特例措置を合わせて御説明申し上げますと、まず法人税関係につきましては、今御指摘のように、非収益関係につきましてのその収入は課税の対象にはなってございません。収益事業を行う場合につきまして法人税が課税される。まず第一点は、その税率が通常の税率よりも低い二七%の税率になっておる。それから収益関係の部門から公益関係の部門への支出はこれは寄附金として取り扱われる。その寄附金の損金算入限度額が、通常よりも高い三〇%まで損金算入が認められるという特例がございます。ですから非収益関係につきましては、非課税ということ、税率、それから寄附金の損金算入限度、この三つについて特例があると申し上げられるかと思います。
 それから所得税につきましては、関係いたしますのは利子配当関係でございますが、これは非課税であるという特例でございます。
 それから細かい話になりますが、登録免許税関係になりますと、その宗教の用に供する境内の中の建物、境内の土地、これの所有権の取得登記は非課税でございます。
 それから、さらに細かくなりますが一応申し上げますと、物品税におきまして、宗教法人が購入するピアノ、オルガン、これは特殊用途免税の対象として物品税が免除されておる。こうしたところが国税としての特例でございます。
○政府委員(渡辺功君) 地方税につきましては、所得にかかわるものにつきましては、国税で非課税所得のものは地方税で非課税所得ということは原則的なことでございますし、所得の計算も国税による所得の計算によっております。
 地方税について特徴的なことで一点申し上げますというと、固定資産税でございますが、これにつきましては宗教法人が専らその本来の用に供する境内建物及び境内地について非課税という規定がございます。ただ、これはそういう境内地あるいは境内建物でございまして、この利用形態が例えば駐車場であるとかほかの利用形態になっているものは課税ということになります。この措置は地租、家屋税のころからずっと続いている、そういう制度でございます。
○野末陳平君 かなりの優遇があるわけですけれども、さあそこで、宗教法人はなぜこれだけたくさんの優遇を受けているのか、その理由を大蔵大臣に説明していただきます。
○国務大臣(宮澤喜一君) 先ほど政府委員が申し上げましたとおり、宗教法人は税法の扱いでは基本的に公益法人あるいは公共の法人というふうに扱われております。したがいまして、その部分について免税になるのは当然というふうに考えられますが、収益事業につきましてもある程度の軽減
を考えている。全体の国税としては、先ほど申し上げましたように、法人税、所得税、登録免許税、物品税等々にわたるものでございますが、その活動の中で収益的な部分であってもそれは公益的な部分を助けるという部分については軽減をしている、つまり公益目的、公共目的を持っておるという観点からの軽減であるというふうに考えます。
○野末陳平君 文化庁が宗教法人のあり方をめぐって何か監査に乗り出したというような話も聞くので、実情は知りませんですが、いずれにしてもこれは税金面とのかかわりがあるのかどうか。というのは、最近この宗教法人について税逃れの温床だとかいろいろ批判が高まっておりますから、そういう背景を踏まえて文化庁が宗教法人のあり方を監査するようになったのか、何かその辺の背景と実情、それを簡単に説明してください。
○政府委員(横瀬庄次君) 文化庁ではこれまでもほぼ定期的に宗教法人の公益事業その他の事業の活動につきまして調査を行ってきたわけでございますが、五十年代に入りまして社会の目覚ましい変化がありまして、宗教法人の活動も非常に変化があるということもございまして今回調査を計画いたしまして、現在御審議をお願いしております予算案にその経費を計上しているわけでございます。
 今回の調査は、全宗教法人の約一割程度を抽出いたしまして、宗教法人の行う事業の全体について調査しようということでございます。これによりまして、宗教法人が行っております公益事業とかその他の収益事業の実態について把握いたしまして、これは一つは、今御指摘の最近の宗教法人の収益事業をめぐっていろいろ生じております問題にも対処し、かつ宗教法人制度の適切な今後の運営についても参考に供したい、こういうような目的で調査を企画しているものでございます。
○野末陳平君 実例があれやこれや目につきますが、霊感商法の母体が実は宗教法人であるというような話もありまして、これは文化庁はもうわかっていますか。
○政府委員(横瀬庄次君) 宗教法人が霊感商法にかかわっているというそのお話につきましては新聞報道で承知いたしまして、私どもとしてもさらに所轄庁、これは都道府県知事ということになりますが、当該都道府県知事を通じまして実情を調査しているわけでございます。この霊感商法に関することにつきましては当該宗教法人みずからは一応否定しておりまして、したがいまして、目下所轄庁を通じてさらに事情を調査しているというところでございます。
○野末陳平君 じゃ文化庁、今度は宗教法人の代表者が不動産会社の社長であるという実例も幾つかあるんですけれども、それもちゃんとわかっていますか。
○政府委員(横瀬庄次君) これにつきましても、そういう例につきまして新聞報道がなされましたので、私どもとしても早速所轄庁を通じて調査いたしております。これにつきましては、その実態はかなりわかっているつもりでございますが、宗教法人法によりますと、宗教法人の代表役員に法律上宗教人であるということを特定の要件にしておりませんので、全国十八万余の宗教法人がございますが、その中にはごくまれでございましょうけれども、そういうケースが見受けられるというふうに思います。
○野末陳平君 国税庁に聞きますけれども、健康食品の販売を宗教活動そのものとしてやっていてしかも脱税までした、こういうケースもかなりあるやに聞いておりますが、幾つか実態を知っていますか。
○政府委員(日向隆君) 私どもが各国税局から一件当たり七百万以上の不正所得について報告を受けているその範囲でございますが、宗教法人が、御指摘のように健康食品等の販売事業を行って脱税をしている例は最近において一例ございます。その内容を申し上げますと、薬草等の健康食品等を信者に与えまして、その見返りとして祈願料等の名目で金員を徴収していた行為がございまして、これは私どもの立場から言いますと宗教法人における収益事業、物品販売業と認定いたしまして課税した、こういう事例でございます。
○野末陳平君 たくさんの宗教法人ですから、中には本来の目的を逸脱して公共性、公益性を逸脱して何かやるのがあって不思議じゃないんですが、最近非常に困ったことに、例えばここに雑誌があるんですね。「儲かる宗教ビジネス」という特集をやっているんですね。それから別に、これ記事ですが、「無税・節税、自由自在 宗教法人の作り方、儲け方」、こういうのもあるんですね。これでまともにつくる人がどれだけいるか知りませんが、現実には出てきているという。
 そこで文部大臣にちょっと感想をお聞きしたいんですよ。「儲かる宗教ビジネス」のこの記事ですが、こういうことが書いてあるんですね。宗教ビジネスで簡単に、しかも短期間のうちに金もうけをしようと考えるならば、既存の宗教法人やまだ法人化していない宗教団体をまず買収する、そして事実上宗教活動をせずに金もうけだけのために宗教法人を利用し、収益事業を営めば、この後ですよ。宗教法人にはびた一文税金はかからないし、信者から集めた金を報告する義務もない。宗教団体に認められる三十三種類の収益事業については税金がとりあえずかかるが、一般企業の四二%の税率に比べると宗教法人であるというだけで二七%に落ちると。宗教法人であるか否かの違いだけで一五%も差が出ると、こんなうまい話はない、こういう勧め方をしているので、これはちょっとオーバーかもしれませんが、感想を聞きたいですね。
○国務大臣(中島源太郎君) 宗教法人についてお尋ねでありますし、現在宗教法人がいろいろなところで話題になっておるということも散見をいたしております。ただ、宗教法人というのは本来宗教活動を目的として認められた法人でございますから、あくまでもこれが営利事業をするということは相ならぬわけでございます。ほとんどの宗教法人が本来の目的に沿って営まれておると思いますけれども、しかし宗教法人制度を営利のために悪用するというようなことがあるとすればまことに遺憾なことでございますので、今文化庁次長からも申し上げましたように、六十三年度予算に調査費用を計上いたしておりまして、いろいろな事業がございますが、その実態を把握することが必要だということで実態調査を行おうと、こういうことにいたしております。
 それからもう一つは、今もちょっと申し上げましたように、全国で十八万三千ぐらい宗教法人がございまして、そのほとんどの所轄は都道府県知事でございます。文部大臣所轄と申しますと約三百七十程度でございますので、私どもも文化庁を通じてしっかり指導せねばいかぬと思いますが、所轄であります都道府県知事に対しましてもその認証あるいは指導に対してより強化をしてもらう必要があろうと思いまして、近々都道府県知事に対しましてその面の通達を出したい、このように考えております。
○野末陳平君 宗教法人のあり方をここで追及するわけじゃありませんで、税との優遇の関連で御質問しているわけですが、大蔵大臣にももう一つ聞きますがね。これもとぼけた記事なんですね。宗教は宗教、金もうけは金もうけとはっきり割り切って宗教法人を売買したり活用することを考えるのが一番よろしい、決して神罰や仏罰が下ることはない、これほどうまみのある事業は現代においてなかなか見つからないと、ここまで言い切っているんですね。もうちょっとどうかと思いますが、こういうことが堂々と出ちゃうという、やはりこれは問題じゃありませんか、大蔵大臣。
○国務大臣(宮澤喜一君) 宗教法人は本来公益的なものである、公共的なものであるということは、本来の考え方としては私は間違っていないと思いますから、そのために税の減免措置、優遇措置を講ずることも、これも私は適当なことであると思うのでございますが、問題は、その宗教法人が宗教法人の名のもとに、今御指摘のようにいわば脱税あるいは税の軽減の手段に使われるという
ことになりますと、これはそもそもそういう宗教法人に対する監督の問題であろうと思います。
 今文部大臣が言われましたように、中央官庁の監督に属するものもありますが、都道府県の監督に属するものが多い。推測をいたしますと、都道府県の立場からいいますと、そういう宗教法人が活動が大きくなりますことは、その地方に非常に人が集まったりいわば地域の繁栄につながるという要素が現実にございますから、なかなか監督の立場でもちょっとそこが甘くなっていくところがあるのであろうと思います。しかし、それはまたこういう優遇を与えている立場からいたしますと困りますので、まさに監督のお立場もひとつしっかりお願いしたい。
 私どもの方も、もちろん本来の目的を外れました部分につきましては、先ほどから申し上げておりますように、計算を否認するとか課税をするとかいうことは今後もやってまいりますけれども、もともとそういうはずの宗教法人ではなかったという本来論にやはり監督の立場から返していっていただきたいという点も強調いたしておきたいと思います。
○野末陳平君 それは正論ですね。
 ですから、文部大臣のお答えは前向きでいいと思うんですけれども、念のためその前提となりますどの程度に宗教法人が生まれ変わっていくか、六十二年のデータでいいですから新しく設立されました宗教法人の数、あるいは代表者をかえたりいろいろありますでしょう、その内容を変えるという、規則の変更ですか、その程度の件数がどのくらいあるかを念のためちょっと教えてください。
○政府委員(横瀬庄次君) 昭和六十二年に新しく設立を認証されました宗教法人につきまして、国、文部大臣所轄のものが一件でございます。それから都道府県所轄のものが二百二十九件というものでございます。
 それから第二の規則の変更の認証でございますが、これが六十二年中に行われたものが国が十五件、それから都道府県が千百八件でございます。その規則変更の主なものは責任役員等の員数の変更、それから事務所、所在地の変更、それから事業に係る規則の変更、こういうものが主なものでございます。
○野末陳平君 宗教法人の売買とか内容を簡単に変更するとか、これがかなりの数があるというのがそれでわかりました。特に地方の公共団体の方が問題なんですけれども、少なくも本来の目的を逸脱したいわゆる宗教ビジネスと称するお金もうけが簡単に安易にできるというこの背景には、これは税のゆがみとひずみがあるからなんですね。それ以外にもうないんですよ。
 前向きの御答弁、大蔵大臣ありましたが、私はあえて結論としてこういう不公平に一日も早く何らかのメスを入れるということが税制改革では絶対に必要だと、そう思うので改めて総理に御所見をお伺いしたいんですけれども、これはもう間違いのない不公平です。素朴な疑問じゃなくて、これは税制のゆがみですよ。これを抜本改革の中で避けて通ったらこれは絶対に抜本改革なんて言えないと思うんですが、いかがでございましょうか。
○国務大臣(竹下登君) この問題につきましては、やはり直近の税制調査会からの答申というのを私も読んでみました。例えば税率構造にすれば、昭和二十五年のシャウプさんのときには一緒だった、それが二十七年から法人税の率が上げられた場合に据え置かれた。そういうことからする軽減税率の税率構造の歴史というものが存在しておるなというふうな感じで見ておりました。「基本税率との格差を縮小する方向で検討すべきである。」と、結論的にそういう答申もいただいております。
 もとよりこれは宗教法人としてではなく、公益法人としての指摘でございますが、公益法人――当然のこと財団法人、社団法人、宗教法人、学校法人、こういうものが対象であるわけでございますので、宗教法人として限ったものではございませんけれども、そうしたことを指摘されたことに対して、やはり十分検討すべき課題であろうというふうにも考えております。
 私も今十八万三千なんということは本当は知りませんで、よく数字のことを私も興味を持って覚えますが、お酒屋さんの小売が十七万幾ら、お医者さんが約十七万ですから、お医者さん、お酒屋さんの数よりも余計あるんだな、たばこ屋の数が二十六万でございますから、たばこ屋よりは少ないんだな、大変余計あるなという感じを率直に持ちまして、いわゆる心の問題を象徴する宗教という問題とかなり乖離した存在も御指摘のように存在するではないか。直近のところで言えば、六十一年末の指摘等は十分勘案、検討をすべきものであるという印象をより強くいたしました。
○野末陳平君 それでは、この問題の締めくくりとしまして私提案しますからね。この部分を少なくも直すべきだと言うんですが、一つは、非収益事業というものがあいまいなので、ですからこの枠を狭めて収益事業の枠をぐっと拡大していって、少なくも課税対象を広げなきゃいけない、これ第一点ですね。
 二番目は、税率が余りにも低いので、副業ビジネスの税率、これをやはり中小企業以上には上げないとまずいんじゃないか。
 この二点を提案しておきますが、税制改革の中で大蔵大臣、これを検討していただけるかどうか。
○政府委員(水野勝君) 収益事業の範囲につきましては、戦後随時見直しを行ってきているところでございますが、今後ともそういう方向は堅持されるべきものであろうと思います。
 それから税率の点につきましては、中小企業並みという具体的な御提案でございますが、そこまで行けるかどうかわかりませんが、先ほど総理から御答弁がございましたように、一般税率との格差をできるだけ縮小していくという方向で検討が行われていくものと考えます。
○国務大臣(宮澤喜一君) 基本的にはただいま野末委員が御指摘になりましたような方向で検討いたしてまいります。
○野末陳平君 それでは、普通の人の不公平感、素朴な疑問ですから、今度は二番目ですね。
 医師優遇税制。これは今開業医は、地方税における事業税ですが、全く非課税になっておりますから、これは不公平の典型として政府税調でも何度も撤廃ということを強調している。いまだにこれが放置されている。なぜだ。ですから、抜本改革の中でこれは総理大臣にお願いしますが、税調答申のとおりに、この医師優遇税制の中の事業税、これは撤廃の方向を打ち出してもらわないと困るんですが、いかがでございますか。
○政府委員(渡辺功君) 委員御指摘のように、事業税におきますところの社会保険診療報酬の実質非課税措置につきましては、累次にわたる税制調査会の答申におきましてもその撤廃、見直しを行うべきである、あるいは少なくとも現在所得税、法人税で行われているような措置までは改めるべきであるというようなことが指摘されているところでございます。
 御承知のとおりでございますが、社会保険診療報酬に係る事業税の特例措置は、二十七年に参議院におきまして議員提案によりまして修正になりまして、「医業及び歯科医業については健康保険医としての保険収入を課税標準から除外する」という趣旨の修正案が可決されて創設されたということでございまして、今時に至っているわけでございます。この特例措置は、社会保険制度の普及充実を図るとともに、社会保険医の一定の所得水準の維持を図るという趣旨によるというふうに思われます。
 創設されて以来非常に長期間を経過しておりますし、この間いろいろ状況も変わっておりますので、ただいま御指摘のような意見が出てきているところでございます。同時に、そうした問題について私どもいろいろ問題提起もいたしておるわけでございますが、この問題につきましては、やはりいろいろ他の事業に見られない医業の特殊性を
考慮すべきであるという意見であるとか、あるいは老人保健制度の見直しに伴う医業経営の実態の変化を見きわめるべきだというような意見であるとか、あるいは医療体制の整備あるいは保険医療政策全体の関連を総合的に検討しなければならないじゃないかというようないろんな意見がございまして合意を、コンセンサスを得るに至っていないところでございます。
 この措置につきましては、引き続き、答申の趣旨を踏まえまして、十分保険医療政策との関連ということも考えながらその見直しの実現に努力をしてまいりたい、こういうふうに考えているところでございます。
○野末陳平君 ちょっと歯切れが悪いんですが、自治大臣でも結構ですけれども、もう一つ踏み込んで答えてもらいたいんですが、どうですか。
○政府委員(渡辺功君) 税制を預かる当局といたしましては、この問題についてはそれこそ累次にわたって相当踏み込んで議論をやっているところでございますが、しかしいろいろこれに対するまた慎重な議論というものは各方面にございます。そういったことについて合意を得るようになお一層の努力をしてまいりたい、こう考えております。
○野末陳平君 それでは、医師優遇税制のもう一つの不公平についてお聞きしておきますが、なぜ開業医にはいまだに七二%という概算経費率が認められているのか、こういう問題ですね。これは理解に苦しむ。というのは、最近商売とか事業の経営は非常に経費が厳しいですから、経費率が非常に下がっております。そういう方向にあるのに開業医がいまだに七二%の優遇を受け続けるというのがおかしい、そう思いますので、大蔵大臣、まだ七二の優遇を続ける必要がどこにあるのかという、これをお答えいただきたいと思います。
○国務大臣(宮澤喜一君) この問題は、御承知でございましょうが、大変長い経緯がございまして、昭和二十年代の終わりごろでございますか、当時、一点単価との関連で歳出の方に制約があったりいたしまして、そういうこともあって七二%というのを、形はたしか議員立法であったかもしれませんが、事実上そういう制度を出発させました。しかし、その後大変に長いことその都度その都度御議論がありまして、昭和五十四年でございますか、これを基本的に改めまして段階別に処理をすることにいたしたわけでございます。
 その後物価水準、所得水準が上がっておりますけれども、この段階の区分を直しておりませんので、事実上は納税者にとってはかなりきつくなってまいりまして、したがって最近はこの特例を使う納税者、お医者さんの数も少しずつ少なくなってまいっている。つまり、五十四年に決めたものをそのままにしておきましたので、大体ここらあたりでいいところへ来ておるということが実態ではないかと思うのでございますが、この問題はそういう昭和二十年代以来の沿革というものを離れてはなかなか御説明のしにくいことだと思います。
○野末陳平君 それでは、いまだに七二%の適用を受けている開業医というのはどのぐらいの数いるか。大蔵大臣の答えでは減っているということは確かにそうなんですが、現時点で青色、白色含めましてどのぐらいの開業医がこの特典、優遇を受けておりますか。
○政府委員(日向隆君) 直近の昭和六十一年分確定申告において、社会保険診療報酬の上がる医師、歯科医師の数は約十一万でございますが、このうち、御指摘になりましたように、社会保険診療報酬課税の特例を適用している数は六万四千でございまして、したがってその割合は五八%となります。なお、この六万四千件のうち青色申告者は三万三千件、白色申告者は三万一千件でございます。
○野末陳平君 これは確かに沿革があるので一概にいい悪いと言える話じゃないんですが、普通の人はどうもここら辺はやはり割り切れないと思っているようですね。
 そこで、これは提案ですが、経費の実態はもう七二以下であろう、会計検査院なども言っておりますが。それでどうでしょうか、もう七二%の役割は終わったと。そろそろこの優遇はやめて、あくまでも実態に即した経費を認めるという方向に踏み切るのはこれは当たり前なんですから、これも近い将来においては見直しの必要があるのではないか、これを大蔵大臣にお願いしておきます。
○国務大臣(宮澤喜一君) 常に問題意識を待ちながら事態を考えていくということと思います。
○野末陳平君 三番目の素朴なる疑問というのは、これはどこでも出てくる話ですが赤字法人なんです。これも非常にわからないという人が多いんですね。つまり会社が赤字なら税金を払わなくていい。ところが、現実に日本の会社が半分以上も赤字会社で税金を払っていないという事実がある。これはだれも信じてくれない。その実態を数字で示していただきたいと思います。
○政府委員(日向隆君) 昭和六十一年二月一日から昭和六十二年一月三十一日までの間にその事業年度が終了いたしました休業清算法人を除くいわゆる内国普通法人について行いました私どもの会社標本調査の結果によりますと、全法人数百七十万二千件のうち赤字法人数は九十二万四千件でございまして、したがって赤字法人割合は五四・三%でございます。
○野末陳平君 そこで、素人が考えると、赤字が続けば会社というのは倒産しそうなんだけれども、これがつぶれないで堂々と税金も払わないで営業を続けていけるのはどうも不思議だ、その理由が何なんだというのを素人流に考えるらしくて、僕はよく聞かれるんですよ。
 例えば、これは十八歳の学生なんですが、何で税金を払わないで済んでいるのか、私の両親は三流大学出なのでわかりやすく説明してくれないと言うんです。いや、本当に書いてあるんです。ですから国会でこれを聞いてくれと。ですから理由は何だろう。赤字でつぶれないでちゃんと商売できている、それも半分以上。どういうわけだろうということなんです。
○政府委員(日向隆君) 私どもが年々赤字法人に対して税務調査を実施しておりますが、それによりますと、まず恣意的な経理等の処理をしまして実質黒字でございますのに赤字で申告している法人が、この数年の調査結果から見ますと赤字法人のうち約四分の一存在している、かように考えております。
 また、これ以外、赤字申告をしている法人の実情を税務調査の中から実態的に見てみますと、比較的大法人におきましては、長期開発投資にかかる減価償却費、または不動産等土地が主体でございますが、投資にかかる借入金の利子負担、これは損金算入になりますので、そういったことによりまして赤字になっているものがございますし、また観点を変えまして、比較的規模の小さい中小法人にございましては、役員報酬等が確保されておりますと代表者及びその家族の生活に支障がないわけでございますし、会社の資金繰りも代表者からの借入金や代表者の信用による銀行からの借入金によって賄われることがございまして、これらをいろいろ総合いたしまして、赤字申告でございましてもなお会社が存続している実質的な理由ではなかろうかと、かように考えております。
○野末陳平君 確かにわかるんですけれども、普通の人はやはりわからない。そういうわけで、素朴な疑問なんです。私は、やはりもっと厳しいチェックをすれば、今の国税庁の発表以上に、実は赤字じゃないんだ、偽りの申告だというケースも出てくると思うんですね。ですからさらに厳重なるチェックをすることがこの際必要なんじゃないか。
 同時に、ここでまた一つ提案したいのは、赤字だから税金を払わなくて済んでいるんですよということで済まされるかどうか。やはり外形を構えて営業する以上は、事業税とは別の形で何らかの外形標準に対する課税というものが検討されるべきではないか、そういうふうに考えているんですが、まずこれについて大蔵大臣の御所見をお伺いします。
○国務大臣(宮澤喜一君) それは一つの視点だと思いますし、私どもも、とにかく社会的な存在として店を張っていていろいろ公共の施設等々のいわば恩恵を受けて事業活動をしているわけでございますから、それについて何らの納税をしてくれないということはどんなものだろうかということは本当に考えますけれども、ただ、これも百も御承知のように、法人税というのは所得課税でございますから、所得がないという場合に課税の対象を求めるということは本来所得課税としてはどんなものだろうかというところへいつも突き当たっております。
 ただ、そうは申しましても、きのうもたしか小倉会長がちょっと言っておられたかと思いますけれども、交際費であるとか寄附金であるとかいうものはこれを経費でどんどん認めるということはそれならいいのかというようなところあたりは、これは問題にしてもいいのじゃないかという気持ちを持っております。
○野末陳平君 その点はぜひとも検討してほしいと思います。
 赤字法人の問題はなかなかすっきりしたお答えが出ませんが、では四番目の疑問として使途不明金があるんですね、会社の使途不明金。これをなぜ認めるのかというのが、僕もこれ、わからないんですがね。
 昭和六十一年のデータを見ましたら、企業の使途不明金は約四百三十億円とありましたけれども、業種別では使途不明金はどういうところが一番多いんでしょうか。それから使途不明金の中身ですが、判明する分ではどういう使い道なのか、その辺の実態をお答え願います。
○政府委員(日向隆君) 資本金一億円以上の調査課所管法人、二万三千九百十六社ございますが、これにつきまして昭和六十一事務年度に実地調査を行った中から使途不明金の把握の状況を申し上げますと、委員が御指摘になりましたように、実地調査件数五千七十五件で使途不明金のあった法人は七百三十八社、把握しました使途不明金の総額は四百二十九億円。四百三十億円とおっしゃいましたが、四百二十九億円でございます。
 これをお尋ねにございました業種別に大分類のベースで多い順に申し上げますと、建設業が二百六十五億円、全体の六二%。製造業が六十四億円、全体の一五%、卸売業が三十億円、全体の七%。あとはその他ということになっております。
 次にお尋ねがございました、使途不明金のうちそれがどういった使われ方をしているかということでございますけれども、この四百二十九億円の総額のうち、私どもの実地調査によりましてその使途が判明したもの、これは解明と言っておりますが、これが八十七億円、したがいまして解明率は二〇%でございます。
 この使途を解明したものの例を具体的に一、二申し上げますと、まず食料品製造業を営む法人の場合でございますが、雑費勘定の中に三千五百万円を申告加算していましたが、よく調べてみますとこれは特定の得意先に対するリベートであるというふうに判断されましたので、これはやはり実質所得者である得意先に課税すべきでございますので、そういう処理をしております。それから貿易業を営む法人でございますが、支払い手数料勘定中に九千八百万円をやはり申告加算しておりましたが、これはよく見ますと代表者に帰属したものであると判断されましたので、代表者に対する認定賞与として両方の面で課税をしております。
 さらにまた、一番多い業種でございます建設業を営む法人につきましては、外注費勘定の中に七千六百万円を申告加算しておりまして、これは施主や地元の関係者に対する供応、贈答費用であるというふうに判断いたしまして、これもまた交際費として課税した、こういった例でございます。
○野末陳平君 そうして調査でわかった部分には適切な処置だと思いますけれども、そもそもこの使途不明金という、後ろ暗いというか、うさん臭いといいますか、何しろ使途不明なんですから、それを税法が認めること自体がおかしいんだと思うんですよ。仮に百歩譲ってこれが必要悪だと考えるならば、使途不明金には相応のペナルティーを課すべきであって、税金だって二倍や三倍は課税してもいいんじゃないかというぐらいの姿勢でないと、今のような話はやみで幾らでもある。これをやはり不公平の感じを持たせる理由で、サラリーマンが自分の会社でそれをわかっているわけですから、何かこれは手を打たなければおかしいんじゃないかと思いますが、これは大蔵大臣いかがでしょうか。
○国務大臣(宮澤喜一君) これは、しかし考えようによりますと、使途不明でありましても使われたということが間違いないといたしますと、ある立場から言えばそれは経費ではないかという主張は成り立つと思います。経費なら何かちゃんと言ってくれないと困りますという主張はいたしますけれども、経費であるという主張は言えないから経費でないということはありますまいという立場は片方であると思いますが、そうは言っていられませんから、それは当然否認をするということになりまして課税をするわけでございます。
 そこのところはやっぱり課税当局の主張が私は立っておると思いますので課税はする、計算は否認する。その場合隠ぺい行為があれば重加算税を課すことも私はあり得ると思うのでございますが、言えないから、言えませんが経費として認めてくださいという立場は、それは課税当局としては認められないということが使途不明金に対する課税だと思います。それを超えますと、問題は税法の問題よりは商法の問題であるとかあるいは刑法の問題であるとか、そういうことであるかと思いますけれども、税法としてはいけるところまでいっておるというふうに私は思うのでございます。
○野末陳平君 その場合には実調率の低さというのがちょっとネックじゃないかと思いますけれども、大蔵大臣のお説もわからないでもないんで、非常にこれは難しいなというところにとどめておきます。
 不公平感に関する素朴な疑問ですけれども、今度は五番目にいきましょう。
 暴力団。暴力団の人たちが、連中といいますか、なぜ税金を払わなくて済んでいるのか、これは一般の人はみんな思っていますよ。だって、彼らはビルを持ったり億ションを借りたり、あるいは金回りがいいわけで、組員のヤッちゃんたちもベンツに乗ったり、新幹線はグリーン車、飛行機はスーパーシート、いや本当ですよ。ですからあそこまで金遣いが荒い、だけれどもまともに税金を払っているという話は聞かない、これが大体一般の受けとめ方だと思うんです。
 そこで警察の方に聞きますけれども、覚せい剤とかあるいは賭博とか、いわゆる暴力団のブラックマネーですけれども、年間の水揚げというのかな収入、全体でどのくらいの金が動いていると推測されていますか。
○政府委員(仁平圀雄君) これはちょっと古い調査で恐縮でございますけれども、昭和五十三年に行いました特別調査の推計によりますと、いわゆるブラックマネーによる年間収益というのは約九千億に上っているところでございまして、その後の経済の発展や暴力団の資金源の多様化等を考慮いたしますと、現在ではこれよりさらに大幅に増加しているのではないかと見ておるところでございます。
○野末陳平君 これは一説には数兆円と言われていまして、文教予算より多いとか、いや、いろんな比較はありますが、あるいは全国のデパートの年間売上高よりも多いとか、ブラックだから、実態がつかめないからブラックなんで非常に微妙ですが、少なくも今のお答えで数兆円というような感じも出なくはない。
 そこでこの異常なブラックマネーですが、このうちのどのくらいが課税対象になっているのか、ひとつこの暴力団関係の申告納税の実態を国税庁からちょっとデータ的に示していただきたいと思います。
○政府委員(日向隆君) 暴力団関係者の所得に
は、私どもが見ておりますと、これ一般的に言いまして覚せい剤取引、賭博等の不法行為による所得と、実はそれ以外に例えば土建業、サービス業、金融業等を営んで得た所得または会社役員として得た所得等がございます。したがいましてその種類といいますか、内容はやや多岐にわたっておりますので、申告面で見てその申告が暴力団関係者の申告であるかどうかという判断が大変難しゅうございますので、またそういった申告者につきましての計数の取りまとめも全体としてしておりませんので、御指摘の暴力団の申告の実態について具体的に申し上げることができないことは御理解をいただきたいと思います。
 そうではございますけれども、またある意味におきましては、不法行為によります所得は課税の端緒が大変つかみにくく、また任意調査に対する協力も得られにくいということから、経費の実態であるとかあるいは所得の帰属がどこにあるかといったことを正確に把握することが困難でございます。したがいまして、私どもといたしましては任意調査でこれをやるについては限界があるところでございますけれども、しかし御指摘もございましたようにできるだけこれについても努力をしてまいってきておりますし、また実際、従来から警察当局との協力関係を密にいたしまして暴力団の課税に関する情報の提供を年々受けております。
 ちなみに申し上げますと、六十一年度に警察当局から通報を受けました課税資料約二百件のうち約百件を活用いたしまして、新たに関係者に課税いたしました所得金額は約三十七億円というふうな状況になっております。申告面で具体的な計数を申し上げることができないことを御理解いただくとともに、私どもといたしましてもいろんな角度からこの点についての課税の適正化に努力しているということについても御理解を賜りたいと思うわけでございます。
○野末陳平君 アンタッチャブルの世界ですから、もう御苦労は察しますけれども、やはりブラックマネーがこんな数兆円も流れている。そこに課税が正しく行われていないという実態は問題だと思うんですね。
 今度は警察の方に聞きますよ。じゃ、暴力団というよりも組員ですね、組員というような人たちは合計で今どのくらいいるんですか。
○政府委員(仁平圀雄君) 現在警察で把握しております暴力団の組員数は全国で約八万六千人でございます。
○野末陳平君 これ国税庁に聞きますけれども、この組員というのはサラリーマンなんですか、個人事業主、これどっちになっているんですかね。源泉徴収を受けているのとか、さっき経費の問題とか出ましたけれども、どういう課税の形態になるんでしょうね、人によって違うんでしょうけれども。
○政府委員(日向隆君) これは委員御存じと思いますが、対価を得まして継続的に行う業務による所得はこれは事業所得または雑所得でございます。雇用関係に基づいて使用者から受ける報酬による所得はこれは給与所得でございます。したがいまして、これはお尋ねに対するお答えにはなるかどうかわかりませんが、暴力団の組員がいかなる形でその所得を得ているかということによりまして、場合によりましては事業所得または雑所得、場合によりましては給与所得ということに相なろうかと思います。
○野末陳平君 例えば宗教法人なんかは、監査して源泉の実態を見て、お寺のお坊さんでも源泉所得税を払っていなければ後で追徴されるとか、現実にいろんなケースはあるんです。暴力団の場合もそういうのを、源泉の課税の実態をちょっとやってみればもっとはっきり答えができるんじゃないですか。
○政府委員(日向隆君) いろんな形で実態調査をいたしまして、その結果計数的に把握したものをここで私が申し上げれば委員に対する正しい答えになると思うのでございますけれども、何分にもそういった計数を私ども今の時点で把握しておりませんのでやや観念的なお答えで恐縮でございますが、先ほどのお答えを繰り返さしていただきます。
○野末陳平君 それでは角度を変えまして、まじめに申告をしているというブラックマネーについてですよ、もう不動産業とか飲食業、それは会社形態でやっているんだから当然なんですが、まじめに申告をしている良心的な暴力団というのがあるかどうかわかりませんが、そういうものについては先ほどの国税庁のお答えでは当然経費の問題も出てきたんですが、暴力団のブラックマネー収入のこの経費というのは一体何なんですか。それとも経費率のようなものがあって当てはめるのか、あるいは帳簿があってそれを検討するのか、この経費というのは何ですか。
○政府委員(日向隆君) 先ほど申し上げましたように、その暴力団が活動して――活動してというのはちょっと言い方がおかしいかもしれませんが、所得を得た場合に二通りあるというふうに申し上げましたが、土建業等の事業を行っている場合には、通常は収支計算により実額で申告課税が行われている例が多いと思っております。
 ただ、委員がまさに御指摘になりましたように、覚せい剤取引、賭博等の不法な行為による場合には、通常原始記録やまたはそれに基づく帳簿等がない。また任意調査に対する協力も実際得られにくいわけでございまして、経費の実態を実額で把握することが大変困難な実情でございます。そういう場合、通常私ども推計課税を行うわけでございますけれども、この推計課税を行う場合におきましても、このケースの場合には、例えば同業者比率を使うということや所得標準率を使うということもまた実際問題としては大変難しいわけでございまして、結局、個々のケースによりできる限り、部分的にせよ合理的な推計を行ってその経費を算定しているという場合が多いということで御理解を賜りたいと思います。
○野末陳平君 アンタッチャブルの世界をあれこれ根掘り葉掘り聞いてもそれは無理なのはわかりますけれども、推計課税なんというと、概算で経費率をどのぐらいと見るのかわかりませんが、それがいわばサラリーマンの必要経費に当たる給与所得控除を上回ったりとか、そんなこともないとも言えないような何か非常に複雑な気持ちになりますから、これは不法所得、違法所得とはいえども無申告、無納税で、しかもアンタッチャブルというのでそのままにして、これで税制改革と言われても非常に困る。もともときっちりした課税をすることは暴力団の資金源を断つことにつながって、これはもうある程度は限界があるにしても、これをやらないというわけにもいかないですね。
 大蔵大臣に半ば無理を承知でお聞きしますけれども、対策とは言いませんが、今後こういうものに対してどういう考えで臨むのか。その辺を考えないと、ブラックが数兆円、これがさらに膨れ上がる、税は全然かかっていないなんていつまでも放置できませんね、このきちっとした税法を持っている我が国において。それをお願いします。
○国務大臣(宮澤喜一君) 問題は、職業別の電話帳を引きましても暴力団という職種はないわけでございますので、そこのところが一番難しいところでございます。あるいは物品販売業であったり、あるいは娯楽遊戯場経営であったり、結局そういうふうな分類のもとに、そこから出ました所得、それは経済的利益であれば不法所得でありましてもこれは課税の対象になるべきものでございますから、そういうふうな形で警察等々からも通報を受けましてそういう形での資料を収集して課税をしていく、そういう努力をすべきものであろうと考えます。
 統計的にこれを暴力団として分類せよということは、そういう職種というものはないわけでございますので、どうもそういうことは難しいと思いますが、必ず何かで経済的な利益を生じておるわけでございますから、それは課税の対象になるというふうに考えるべきだと思います。
○野末陳平君 苦しい御答弁をありがとうございました。
 六番目に行きましょう。これはあくまで普通の人の不公平感を聞きましたので、必ずしも不公平税制とは言えないようなものも含めて二十、素朴な疑問としてここで御紹介しているわけですが、次は政治家に参ります。
 普通の納税者の疑問がどうもここに集中するんですね。ですから取り上げないわけにいかないんですけれども、第六の素朴な疑問、政治家がパーティーなどで集める億単位のお金がなぜ無税でいいのかその理由を知りたい、こういうことなんですが、大蔵大臣にお願いします。
○政府委員(日向隆君) 政治資金収入は通常雑所得を構成する収入金額として私ども把握しておりまして、この収入から政治活動のために支出した費用を差し引いた額、これが課税の対象になるということになっております。これはよく御存じのことと思います。したがって、この額が残りません場合には課税関係は発生いたしません。つまり、政治家個人の私的消費や私的資産の形成に使われない場合には課税関係は発生しないということでございます。
 私どもとしては、日ごろから有効な資料、情報の収集に努めまして、これらと申告を突き合わせて、課税上問題がある場合には、政治家の場合におきましても必要に応じ実地調査等を行って適正な課税に努めているというところでございます。
○野末陳平君 今のお答えだと、例えばこのテレビを見ている人にはわからないと思うんですね。つまり僕は、パーティーなどで集めたお金が無税で済むというのは普通の人だれが考えてもおかしいから、理由があるならばその理由をと、こういう聞き方をしているわけですから。
 そこで、パーティーといえば、最近も問題になりまして自民党は自粛するとか。いいことだと思いますけれども、総理のパーティーの話は余りにも有名ですから、これは総理に代表してお願いするんですが、ああして集めたお金が政治資金なるがゆえに無税で済むというのは、これは一般の納税者は非常に不公平だなと思うのが当然だと私は受け取るので、総理はどうでしょうか。
○国務大臣(竹下登君) 厳密に申しますならば、いわゆる政治活動との峻別さえつけば私はある程度御理解いただけるものであるというふうには思いますが、率直なところ、この部分は政治活動、この部分は自分の生活費等に使ったとかいうような峻別の仕方が難しいので、雑所得という形でそれぞれの方々が大体自分の申告のときに幾ばくかのものを載せていらっしゃるというふうに私自身は理解しております。今自由民主党のお話も出ておりましたが、自粛とかあるいは政治資金規正法の改正の中へ工夫してみるとか、そういう作業が行われておるということは、そういう問題意識があるから行われておるというふうに私も見ておるところでございます。
○野末陳平君 まあこの問題は一般の人に幾ら説明してもなかなかわかってもらえないだろうと思うんです。ただでさえ政治家という名前だけで誤解を招くような部分もありますしね。
 そこで官房長官にちょっとお聞きしようと思うんですが、全くこれは主婦の疑問なんです。政治活動というと、こう見るといつも料亭が出てくると言うんですね。料亭でしばしば会合がある、それからまたゴルフで重要な話をするとかいう話もあるが、さて、これら料亭やゴルフなどの費用がこれは政治活動として認められているのですか、そういうお金も政治資金から支出されるのですか、こういうことを聞かれましたので、これは余計かもしれませんが、官房長官に念のために実態をお聞きします。
○国務大臣(小渕恵三君) 私が御答弁を申し上げるように御質問をちょうだいいたしましたゆえんのことをちょっと理解できませんが、政治家の一人として考えますと、やはり連日にわたりまして政治活動をいたしておりまして、その場所それぞれが今御指摘のようなところであろうかと思います。いずれにいたしましても、政治活動の一環として行いましたことにつきましては、これをもって政治活動として行ったものだ、こういうふうに御理解をいただきたいと思います。
○野末陳平君 これは、テレビをごらんの皆さんに笑われちゃうから、質問をする方もピエロになっちゃいますからね。雰囲気が悪くなるのも嫌だし、今のでは全く答えにならないんですが。
 要するに、料亭などは相当な金がかかる、普通のところで会合をやってもいいのに何であんなことをやるんだろう、芸者だっているかもしれない、一人五万円も十万円もかかるばかなところで無税の政治資金などを使うというのはもう時代おくれも甚だしいじゃないか、そういう疑問ですよ。ゴルフならまだしも。だから、そういうものを政治家という一部であってもやっていて、さて税制改革は国民の皆さんにと、こんなんじゃ通用しないということだと思うんですよ。ですから素朴な疑問という形で紹介したわけです。
 官房長官、突然指名しちゃったもので考える余裕がなかったので申しわけないんですけれども、総理でも大蔵大臣でもいいですからもう一つ言っていただかないと、テレビを見ている方は欲求不満になっちゃいますからお願いします。それからもう次へ移りますから。
○国務大臣(竹下登君) 私も今おっしゃった料亭の問題についての届け出というような、自治省へ届け出いたします、あるいは地方にあっては都道府県の選挙管理委員会へ届け出する支出の面の内容にわたるわけでございますけれども、そういう批判が随分二十年ぐらい前からございまして、いわゆる会合費というものにおのずから節度を設けて私ども区分をして、それらの支出届け出をしておるというのが現状でございます。
○野末陳平君 的確なお答えがいただけるとは思っていなかったんですけれども、これが天の声ですからあえて紹介したわけで、私は、きょうは自分の考えよりも普通の人が抱く不公平感というものに対して素朴な疑問をぶつけているわけですから、ピント外れのものもあるかもしれませんが、私個人はこの税制改革というものが三本柱で行われるべきである、減税、不公平の是正、それから間接税の導入、これが三位一体でなくてはならないと。ただし不公平の場合は、きょうそれを完全に直してすぐあしたから財源になるとかそういうものでもありませんし、時間もかかる。それを承知の上で方向は出さなきゃいかぬ、これがこの秋あるいはさらに先に予定されるべき税制改革と思っているわけですね。ですから、そのためにきょうは不公平の問題を重点的にお聞きしているわけですが、八番目に行きますね。
 ここから後五つばかりは、申告納税の人たちとサラリーマンの間に横たわるいろいろな格差と不公平についてなんです。これは大きいんです。というのは、サラリーマンが今一番多く納税額も多いですが、このサラリーマンの不公平感を何とかして解消する手だては一体何だ、こういうことが我々の課題だと思いますから、八番目の素朴な疑問は青色申告なんですね。
 自由業、自営業などから見ればこの青色申告は当然のような制度ですけれども、一般サラリーマンにとっては不思議なことがいろいろありまして、一つ、妻に給料を払える、専従者給与ですね。夫が事業を営んでいて妻に給料を自分で決めて適当な額を支払ってよろしい、青色申告はこうなっているんですよ。これはこれでいいんですけれども、じゃサラリーマンは妻に仕事を手伝ってもらって給料を払えるか、配偶者控除だけだ。これはちょっとおかしいんじゃないかという素朴な疑問でして、そこでいいですか、サラリーマンだって、じゃ青色申告して妻に給料も払いたいよなんていう人だって出てくるわけでして、ここでお聞きしたいのは、こういう不自然なうまい話が青色申告の場合はなぜ堂々と認められているかという素朴な疑問についての説明をしていただきたいと思います。
○政府委員(水野勝君) 青色申告者の場合におきましては、いわば店と奥との経理が区分されておる。店の営業の方と個人の関係は区分されておるとすれば、その店の会計におきまして、個人の商店におきまして雇用される人が給与と扱われ、給
与所得控除が適用になるということは一つの自然な姿ではないかということから、こういう制度が認められておるところでございますが、そこは個人的な経営内部の話でございますので、その金額が適正なものとなるよう一応の税制上の規制はあるわけでございます。また、御指摘のような、それがサラリーマンの場合にはないということ、そういった点も勘案いたしまして、昨年の臨時国会におきましては、サラリーマンの場合においても適用される配偶者特別控除といった制度を御提案申し上げ、実施されているところでございます。
○野末陳平君 この問題は、妻に給料を払ってもいいんですけれども、幾らぐらいがという基準がないんですね。しかも常識以上に高い給料を払う結果赤字になって納税しないこともあるんですが、これは調査をすれば指導ができますが、実調率が低いから調査が及ばない。となるとこれが不公平という形で残っちゃうんですね。ここに問題があるんじゃないかと私は思うんです。
 同時に、九番目に素朴な疑問として、みなし法人があるんですね。このみなし法人の制度もよく指摘されるんですが、会社でなくて個人営業なのにみなしという形をとる。そこでいろんな優遇がもらえる。その一つが、みなし法人をとれば本人みずからが自分に給料を自分で決めて払っちゃうという、ここら辺もちょっと会社でないのになぜこれがいいのかという疑問があるんですが、これもどういう説明ですか、青色の場合と似たような説明になるんですか。
○政府委員(水野勝君) これもただいま申し上げました、個人の事業でございましても、いわば店と奥との区分経理が明確にされておりますところの小規模経営でございましたら、そうした企業経営の近代化をさらに推進するという目的で設けられている政策税制でございます。しかしながら、実態を見ますと、先ほどの専従者給与制度とあわせて適用いたしますと、御主人につきましても事業主報酬として控除され、さらに家族の専従者給与として控除されまして、大体九割以上のものが事業所得が給与所得化しているというのが実態ではないかと思いますので、税制における一つの問題点ではあるということで検討課題とされているところでございます。
○野末陳平君 公聴会などで地方をこの間うち回りましたね。あそこでもみなし法人に対する疑問とか批判がかなり出たように聞いておりますので、これは大蔵大臣にお願いしますが、みなし法人の制度は部分的にちょこっと、見直しはないとは言いませんけれども、今後不公平税制を直すという観点からこれはどういうような扱いをなさるおつもりなのか、それを聞いておきたいと思います。
○国務大臣(宮澤喜一君) 今申し上げましたように、事業主自身への報酬をどこまで給与と考えるかということは、いわば青天井であってはいかぬというそういう御主張は私もそうであると思います。したがいまして、どのぐらいが相当であるかということについてやはり基準を設け、過去における基準も一つかと思いますが、そういうことで、それ以上のものは給与としてはみなさないというような運営をしていかなければならないと思います。
○野末陳平君 十番目の疑問は、さらにおかしいのが同族法人、家族法人といいますかね。これは芸能人などに多いわけですけれども、同じ仕事内容をしていても個人事業として申告すればかなりの税金だ、法人にして申告すれば税金が安い。世間ではこれを節税法人と言うわけですね。さて節税法人の名のごとく、芸能人とか自由業の中には自分でどんどん会社をつくって節税に励む、こういう傾向がますます目立ってきましたが、大蔵省から見てこれは税法上問題は全くないのかどうか。
○政府委員(水野勝君) 同族会社でございましても形式上は法人格があるわけでございますから、独立した法人格を持つ会社といたしましては通常の法人税を適用するのが原則でございます。ただ、同族会社におきましては、それは少数のいわば家族的な首脳者の個人的なお考えで会社経営を支配する、経理も操作をするということも可能でございますので、通常の場合では考えられないようなもろもろの税務経理も行われ得る。そうしたことに対しましては税制上は、同族会社に対します留保金課税の制度、それから一定の行為や計算につきましては否認をできる規定、こうした二つの特例措置が設けられているところでございます。
 ただ、先ほどもお話のございました赤字法人の問題、これは先ほどもありましたように、一定の同族の役員で給料でもって皆分けてしまって会社には残らないようにするとか、きのうも話のございました寄附金や交際費の支出の問題、こういった点がどうしても任意的に経理されまして赤字法人となり結果として五〇%以上が欠損法人になっているという、こういう実態につきましてはやはり一つの問題点であると私どもは認識はいたしておりますが、通常の法人と同じ法人格を持つこういった法人につきまして税法上どこまでの区分、規制ができるか、なかなか難しいところでございます。
○野末陳平君 これはサラリーマンの目には非常に不思議らしいですね。というのは、同族法人として家族で会社をつくっちゃうんでしょう。それぞれが給料を取るから所得の分散ができます。税率が低くなりますね。結果は間違いなく節税になります。名前だけで何にもしない家族だってかなりの高額の給料を取れるわけですね。しかも本社が自宅だったり会社はペーパーカンパニーだったり、もうざらにありますからね。
 これは節税というよりも、税法をうまく使ったテクニックだけの実体のない会社ですから逃税法人ですね。税を逃れるための法人としか言えないと僕は思いますよ。ですから、かなりの人が所得番付にも出てこないし、税金を本来納めるべきなのに納めないで済んじゃう。これはやはり源泉徴収でばっちり取られているサラリーマンから見たら、不公平だね、あれはいいねと、こういうふうになっちゃう。
 税法では問題がないと。確かに調査してわかればそれはいろんな手があるが、今の人手では実調率が高くなりようがないというような納税環境を考えた場合に、こういう同族法人、節税のための、逃税のための、これを、税法上それほどの問題がないから大いにおやりくださいと言っていいものかどうか。大蔵大臣、御所見をお伺いしておきます。
○国務大臣(宮澤喜一君) それは制度といたしましては、御承知のように留保金に課税することもできますし、同族会社の行為あるいは計算は否認をすることもできる、また実際いたしておりますが、本当にちょっとひっそりとやっておられますとなかなか実調率はたくさん出ませんので、そういう問題は私はあると思います。これはせいぜい実調をやっぱり高めていって、行為を否認するなり留保金課税をするなりということであると思います。
○野末陳平君 十一番目の不公平感は、経費の問題なんですね。これはサラリーマンの奥さんたちの会話の中にもしょっちゅう出てくるんです、特に最近。大蔵大臣もお聞きかもしれませんけれども。
 例えば、だれそれさんの奥さんはクラス会のレシートも持って帰った、あれは税金で落とすんだって、いいわね商売の人は、なんて、こういう話は日常の会話ですよ。あるいは公給領収証を売買するとか、そういう話だってあったりね。いや、大臣、聞くでしょう、そういうのをたくさん。
○政府委員(日向隆君) ただいま議論になっておりました同族会社の問題に関連して今の御質問にお答えいたしますと、確かに同族会社の場合には三人以下の人がその株式の五〇%以上を所有するということでございますので、率直に言って、内部牽制機能が十分働いていないというところで恣意的な経理で課税を不当に免れるという例が依然として後を絶たないということでございます。
 具体例を少し申し上げますと、代表者やその家
族の個人的な費用、例えば自宅や外国旅行の費用等家事関連費を会社の経費に算入する、それから会社名義の高額資産、例えば外車や別荘等を個人的に使用する、また、勤務の実態に見合わない不相当に高額な役員報酬を支給するといったようなことで不当に税を免れているという実態がございまして、私ども今後ともこの点には十分着目して、税務調査、指導等で厳正に対処していきたい、かように考えております。
○野末陳平君 商売というか事業の人たちの経費というのはどうしても公私混同が多くなってしまうんですけれども、今の答えにもありました家族同士の外食、これも経費、お土産代も車代も経費とか、プライベートな交際費、家族の旅行費用、あるいはデパートの買い物とか、こういうのを事業経費で落としているというような例がもう目に余るわけですね。調査が及べばそれは否認されるにしても、調査が及ばなきゃそれまでになっている。
 そこで大蔵大臣、こういう過剰なる経費というものは実態がわかっていて全く何の規制もできない、手が打てないというのでは情けないと思ったりするんですが、これはどうにもならないものでしょうか。調査以外に方法はないのでしょうか。
○政府委員(水野勝君) 所得税の体系の中におきましては、やはり収入金額から必要経費を差し引いたものが所得である、これが所得税の大原則でございますが、これは我が国におきまして申告納税制度をとっておるわけでございますので、そこは納税者の誠実な納税協力に御期待申し上げるということでございますし、またそれを税務調査によりましてバックアップするというところでございます。
 しかしながら、こうした所得税の本質からいたしましてはどうしてもそこには限界がある。限界があるとすれば、税体系全体の中におきまして、所得税をどのくらいに位置づけ消費税をどのくらいに位置づけるかということからも考えてみるべき問題ではなかろうかと思うわけでございます。
○野末陳平君 もう一つ、今度は十二番目になりますけれども、サラリーマンから見た申告納税の人たちに対する不公平感として、給与所得控除ですね。
 給与所得控除というのはそもそも会社に雇われているサラリーマンに対して必要経費を見るという性格、その他二、三いろいろ時代とともに説明が変わってきているようですけれども、確認しますが、給与所得控除の性格はどんなもので、なぜこれがサラリーマンに認められているかというのをとりあえず確認させてください。
○政府委員(水野勝君) 給与所得控除の根拠につきましては従来からいろいろ議論が行われているところでございますが、現在におきましては大きくは二つの観点からということで整理されておるところでございます。
 一つは、勤務に伴う費用を概算的に控除すること、これが第一点。それから、給与所得者はほかの人に雇われて働く、それによりますところの時間的拘束、場所的拘束、それからまたその担税力の性格、そういったものをもろもろ合わせました給与所得の特異性に基づきました他の所得との負担の調整を図る、これが第二点であるというふうに最近は整理されてございます。
○野末陳平君 としますと、会社に雇われていない青色の妻とか家族とか、みなし法人の事業主とか同族法人の家族たちのような、家庭に帰属する内なるサラリーマンに対しても給与所得控除が平等に認められるというのは理屈に合わないような気がしますが、どうですか。
○政府委員(水野勝君) 御指摘のような点がまさに議論となっておるところでございまして、一昨年の税制調査会の答申におきましては、したがいましてこれを、ただいま申し上げましたような観点から給与所得控除を区分いたしまして、その適用関係を、勤労者と申しますか給与所得者の態様に応じて若干の、若干のと申しますか、適用を区別するという考え方も出されたわけでございますが、現実に、専従者給与の場合、みなし法人の場合はある程度それが納得が得られるとしても、それでは同族会社の家族従業員の場合になるとどうか、同族役員になるとどうか、そこらになりますと、先ほどの法人格の問題とも関連いたしましてかなり大きな問題となりますので、現時点ではそこまでの考え方の整理を実際に適用できるような状態にはなっておらないわけでございますが、一つの検討課題であろうかと思うわけでございます。
○野末陳平君 これはもう専門的にやれば非常に難しい問題で、またこれ以上深入りしますと、自由業、自営業、農業とか申告納税の人に恨まれちゃいますからね。ですけれども雇われサラリーマンから見れば、家庭内サラリーマンと全く同等の給与所得控除というのはやっぱり不公平に映るようですね。というのは、家族の社員が三人いて、三人ともが給与所得控除を認められているということは経費がいわばダブるようなもので、さっきの給与所得控除の性格とはかなり違う。
 そういうようなことを含めまして、以上五つ、この申告納税とサラリーマンの間に横たわる格差、不公平、あくまで感ですけれども、これは総理大臣、このサラリーマンの感ずる格差、不公平、この部分を抜きにして税制改革をしてもサラリーマンは割り切れないものを持つのではないか、彼らの不公平感を解消するわけにはいかぬのではないか。以上挙げました五つの部分、これはやはり前向きに何らかすっきりした形がとれないかなと思ったりしているんですが、御所見をお伺いします。
○国務大臣(宮澤喜一君) ただいまお挙げになりました幾つかの点は私どもも気がついている点でございますし、またそれが、勤労所得者、サラリーマンからいいますと、事業所得に対する一種の不公平感、重税感になっておることは疑えないところであると思います。
 したがいまして、従来とも、例えば先ほどみなし法人の話がございましたが、その際の事業主報酬であるとか、あるいは青色申告の場合でもその専従者の給与控除、これも野方図でどれだけでもいいということであってはいけないのでございましょうし、他方で給与所得者の側で配偶者特別控除のようなものを設けるといったように、少しずつ少しずつ事態の改善を制度面からも図っております。
 また、行政面からは、これはやはり実査をしていくということが一番有効なことでございますが、おっしゃいました点はいずれも理由のあることでありまして、私どももこれからもなお対処をしてまいらなければならない問題だと思っております。それらがやはり税制改革の一つの国民が持っておられる問題意識であるということも、私どもよく気がついております。
○国務大臣(竹下登君) 自分の所得を一番よく知っておる者は自分自身でございますから、したがって申告所得制度というものは、私はそういう意味において割り切ってきて今日までに至っておるわけでございます。
 がしかし、今野末さんがおっしゃいました実調率に象徴されるものは、ある意味において執行面で解決できる面がかなりあろうと思っております。これにつきましては、実調率問題は毎年の当委員会なり大蔵委員会等でも御議論のあるところでございますが、順次これを拡大していくと申しますか、執行面、あるいは人の問題ということになりますけれども、それで対応していくべき課題であるというふうに思っております。
 それからサラリーマンの方の給与、なかんずく源泉徴収を受けられるサラリーマンの方とでも申しましょうか、この中でクロヨンとかトーゴーサンピンとかいろんな言葉、これは調べてみますと昭和三十年代から言われた言葉で、その前は余りないようでございますが、そういう言葉そのものが存在するようになったその基本は、やっぱりいわゆる源泉所得の対象たるサラリーマンの方の重税感、不公平感というものが基本になっておるのであろうと思いますので、今も大蔵大臣からお話がございましたいわゆる主婦専従控除の問題が一
つ、それからもう一つ、もちろん十分じゃございませんけれども経費の申告制度の採用、こういうようなことで逐次改善されておると。
 しかし、今おっしゃった問題は、ずっと税制調査会の答申を読んでおりますと、絶えず指摘されながらペンディングとして残っておる問題だという問題意識は私も持っております。
○野末陳平君 それにしても、税務署員の数がふえまして実調率が高まればいいなという感じもします。同時に、申告納税の限界もそろそろかなということも考えたりします。
 十三番目へ行きましょう。十三番目は株式のキャピタルゲイン。これは原則課税の方向が打ち出されているようですからそれはいいんですけれども、その場合、もうけに課税するならば損も認めてやるということにしないと公平ではない、そう思います。これが一つ。
 それからもう一つは、今ある有価証券取引税というものをどうするんだと。これをそのままにして課説というわけにもいかぬでしょうから、キャピタルゲイン課税が決まれば有取税の方は廃止の方向かなと。
 この二点について大蔵大臣の御所見を伺います。
○国務大臣(宮澤喜一君) キャピタルゲインを課税するといたしますと、キャピタルロスをそれから引くということは当然のことであると考えております。どの範囲からどのようにして引くかというのはいろいろ問題はあるかもしれませんが、原則としてそれはそうでなければならないと思います。
 それから、有価証券取引税は本来流通税でございますから、所得税でありますところのキャピタルゲインとは異なった種類の税金でございますが、経過的には、昭和二十八年にキャピタルゲインの課税をやめましたときに、これにかわりまして有価証券取引税を創設いたしまして、一兆七千億円というような大きな税収を見込まれるように至っております。これがやはり一種の有価証券の取引に伴う負担であることは間違いございませんから、仮に税体系を異にいたしましても、両方の間に一つの密接な関係があるということは事実として考えていくべきであろうと思います。
 そこで、問題は、どのようなキャピタルゲインの課税が可能であるかということいかんによりまして、有価証券取引税をそれによってどのように調整していくか、具体的な課税案が出ましたその段階において考えていかなきゃならない問題であろうというふうに思っております。
○野末陳平君 次に十四番目へ行きましょう。二十用意したのでこれからは早くやってしまいましょう。
 これは去年の予算委員会でも私指摘して、ほかの委員の先生方も指摘なさるところであろうとは思いますが、大都市圏の農地の宅地並み課税。この宅地並み課税は制度があるのになぜきっちり実行されないのかと不思議でしょうがない。そこで、これはきちっとやれない、やりにくい事情があるのか、あるなら一体どういうことなのか、こういう点を自治大臣にお聞きしておきたいと思います。
○政府委員(渡辺功君) 市街化区域内農地における宅地並み課税、固定資産税の問題でございますが、これは、本当に営農を継続するものではなくて固定資産税を安くするために形ばかり耕作をするというようなものに対する不公平感はあるというふうに思います。
 この問題についてお答えするためには、ちょっと固定資産税についての基本的な考え方といいますか立場なんでございますが、農地に対しては農地として課税する、これが一番の出発なんでございます。しかしながらこの市街化区域農地については、主として宅地供給促進という観点からいたしまして、真に営農を行うものを除きましていわゆる宅地並み課税を行うべきである、こういう各方面からの論議がございました。これを踏まえまして、いろいろ紆余曲折はありましたけれども、五十七年度に現在の制度が創設されたわけでございます。
 五十七年度の改正以前におきましては、いわゆる特定市街化区域農地でございましても、当該農地が現に耕作の用に供される農地で一定の要件に該当するものは減額措置であったわけです。減額だと、では翌年売ってしまったらそれは得ではないかという話になりまして、それはいかぬと。そこで徴収猶予制度にしておいて、申告と違ってそれを宅地として売ってしまうというようなことが起きたら、原則として一定の場合を除きましてさかのぼって取ると、そういう徴収猶予制度に変えたということでございます。したがいまして、この問題は、そうした制度はかなり制度としては厳しい制度でございますので、専ら本当に営農を継続する、そういうものであるかどうかということをきっちりやっていくために努力をしなければいけない、こういうことであろうと思います。
 自治省といたしましては、昨年度も長期営農継続の意思ある者に対してこれが適切に行われますように通達も行いまして、今後これを厳正に執行していくように指導してまいりたい、こういうふうに考えているところでございます。
○野末陳平君 答弁が古いんじゃないの。そういうのはもう前から言っていることですから。もっと、もう時代は進んでいると思いますけれども。
 もう一つ行きます。
 大都市圏の農地の、今度大蔵大臣、相続税ですけれども、二十年の猶予というのももうそろそろ見直さなくちゃいけない時期に来たとそう思っていますから、どうでしょう。
○政府委員(水野勝君) 農業をめぐりますところのもろもろの経済環境等は大きく変化してきている点は確かにございますが、この農地の相続税の特例につきましては、農業基本法におきまして、とにかく共同相続人の中の一人だけが相続できるように特別の施策を講ずるといった農業基本法の特別の規定、それからまた、農地法におきますところの農地というのは必ず耕作者みずからが所有するのが最も適当であるという、こうした二つの法律上の特別の規定、こうしたものを背景として講じられているところでございますので、こうした考え方がなお継続している現段階におきましては、なお制度としては存続されるのが適当であるというのが現在までの考え方でございます。
○野末陳平君 そんな説明で納得してもらえるとは思いませんけれども。宅地並み課税の問題、相続税猶予の問題、これは前と同じようなお答えを繰り返すだけではちょっと、不公平感を和らげるというところには到底いかないだろうという、それだけ指摘しておきます。
 次へ行きましょうね。
 次は、コンピューターを利用した脱税というのが横行しておりまして、今後ますますふえていく心配がこれありますから、これも早目に手を打たなきゃだめだなと思いますね。ですから、外国のようにコンピュータープログラムの規制をそろそろ検討すべき段階に来たんだという認識を持っておりますが、いかがでございますか。大蔵大臣でも結構ですけれども。
○政府委員(日向隆君) 確かに御指摘のように、私どもが見ておりましても、六十二年七月末現在で資本金一億円以上の調査部所管法人の五八・六%はコンピューターによりまして既に会計処理をしている、いわゆる機械化法人になっております。
 このように、コンピューターによる経理処理が普及してきた中にありまして、コンピューターを利用した不正計算の手口もだんだん大きく出てまいりまして、例えば不正プログラムの使用、入力データの除外、不正入力、出力データの改ざん等、こういったものが見られるわけでございまして、私どもこれに対しましては、やはりコンピューターの知識を十分に備えた調査官がこれに十分な調査を行うということが必要であると考えまして、現在各国税局に十八人の機械化調査専門官を配置いたしまして、一般の調査官等に対しまして調査手法の開発とその指導に当たらしているところでございます。
 ますますこういった努力を積み重ねまして、今申し上げましたような事態に適切に対応するように努力してまいりたい、こう考えております。
○野末陳平君 これは急いだ方がいいですよ。早いですよ、物すごい。コンピューターを利用した脱税の知恵を考えるのは納税者の方が早いですから。
 次に行きます。
 次の素朴な疑問というのは、申告漏れなどが確定申告の季節には非常に新聞をにぎわすんですけれども、この申告漏れというのは申告書を少なくも出しているという、ごまかしはよくないが申告書を出しているという点ではまだ救いがある。全然申告書を出さない、無申告という人たちもかなりの数いるんですね。サラリーマンなどに聞いてみますと、やっぱりどうもかなりいるような感じがするんですが、国税当局としては、このいわゆる無申告、 潜り営業者といいますかね、どういうような認識を持っていますか、こういう人たちに対して。
○政府委員(日向隆君) 御指摘のように、申告すべきでありながら申告をしてない人を把握することは極めて私ども重要であると考えております。このため、確定申告の直前に、やや技術的な言葉で恐縮でございますが、戸押し調査や臨戸調査のような概況調査、これを幅広く行うとともに、これは大体年間四十八万一千件について実施しております。地方税当局等から開業資料等の貴重な各種の資料、情報をいただきまして、新規有資格者の把握に努めているところでございます。
 ちなみに申し上げますと、年々の確定申告におきまして自主的に新規有資格者として申告してくる人を除きまして、かような努力によりまして私どもが把握しました新規有資格者は約二十五万人という数に及んでおります。
○野末陳平君 これは大都市に多いんですね、無申告者。かばん一つ、電話一本、デスク一個、部屋一つ、こういう端的に言うと新人類、片仮名職業に多いですよね。ですからこれは、国税当局の努力はわかりますが、ますますふえるから潜りの無申告者をきちっとしなきゃいかぬ。
 そこで、先ほど答弁に出ましたけれども、税務署への届け出義務があるわけなんですね、新規開業は。ところが罰則が何もないから、潜りのままで、届け出すらも知らずにやってしまう。となると、私これ新規開業の届け出義務を課している以上は何らかのペナルティーを科すということをして、申告をしてもらうという方向に行かなければまずい。だって、申告して、ごまかしたといって怒られて、ああ悪い悪いと言うんだけど、全然申告しなきゃ税務署はだれがどこでどんな商売をやっているか捕捉すらできない。やっと頑張ってその程度というのでは矛盾だなという気がするんですがね。そこで、届け出義務にはペナルティーを科すのが当然じゃなかろうかと思うんですけれども、いかがでございますか。
○国務大臣(宮澤喜一君) それは、課税の立場からいえばぜひそう願えればという気はいたしますけれども、片方で営業の自由という問題がございます。届け出は自由を束縛するということではございませんが、それにペナルティーがつきますと幾らかそういう心配を生むのではないかということもございますので、私どもの方ではできるだけやはり足で歩きましてそういう人たちを探していくということ。ペナルティーをつけるということはやはりいろいろに問題が波及しそうな気がいたします。
○野末陳平君 全くそのとおりで、ペナルティーで何でもやるというのはよくないけれども、しかし、余りにも良心とか誠意に期待するというような申告納税を果たしてこのままよしとするかという基本的な問題になってしまいますわね。
 次の素朴な疑問に行きましょうね。
 これは話が大き過ぎて非常に微妙なんですけれども、納税者番号です。税の不公平を直そう、できるだけ公平な課税に近づけようとするならば、たどり着くところ、それは納税者番号ではないかと。特に外国で暮らしたサラリーマンなどに聞きますとそういう意見が多いんですよ。そこで、これこそ公平な捕捉手段だなとは思うけれども、しかし同時に、プライバシーの侵害という点でも、日本人はこれになかなかなれないでしょうから、私個人としては非常にこれは時間のかかる重要な課題だと思うんです。
 そこで、総理でも大蔵大臣でも結構なんですけれども、この納税者番号というのは、不公平を是正するという場合にこれに消極的になるというのはやや矛盾なんで、その辺の感触を、納税者番号を推進して公平を期すという方向を打ち出せるのかどうか、それはできるだけ触れずに他の面で不公平を直していきたいというのが当面の姿勢なのか、その辺の判断をひとつお聞かせ願いたいと思います。
○国務大臣(宮澤喜一君) これも税務だけの立場からいえば、納税者番号がありますと非常に行政はやりやすくなるわけでございますけれども、おっしゃいますように、いろいろな問題を持っております。仮に、納税者番号によらなかった取引は取引として無効であるのかといったようなことから始まりまして、やはり税の話でありながら税の範疇にとどまらない、あっちこっちへ波及をすることを考えなけりゃなりません。
 それからまた、これを付すことによって各方面にかなりいろいろな負担、手続上の、あるいはコスト面での負担というものも生ずるでございましょうし、それから、おっしゃいますように物の考え方の問題として、一遍番号をつけますとそれがいろんなところへ波及をしていって、プライバシーの問題になるといったようなこと。我が国ではかつてプライバシーが侵害された経験が戦前にございますだけに、国民は特にそれについては関心を持っておられると思うのでございます。
 いろいろございまして、したがいまして、ただいま御承知のように有価証券のキャピタルゲイン課税との関連において、それに限ったような形で弊害を呼ばない納税者番号が可能であるかどうか、可能であるとして、それは好ましいことであるかどうかといったようなことを税制調査会の方で御審議を願うことにいたしまして、その御審議がごくごく最近始まりましたので、もう少しその推移を見てまいりたいと考えております。
○野末陳平君 どうやら時代は納税者番号の方に流れているような気がしますけれども、なお今後慎重なる検討も必要だと思っております。
 十九番目の素朴な疑問になると思うんです。これはちょっと小さ過ぎるんですけれども、一応正しい申告は正しい記帳ということになっておりますが、現実に記帳義務という点に関してですけれども、我が国ではサボって記帳を怠っていても罰則がない。よその国はある。どうしてなんだろう、少し甘過ぎないか、余りにも申告納税者の良心や誠意に期待し過ぎているのではないかと、こういう声があったので、念のためこれについてもお聞きしておきます。
○政府委員(水野勝君) 記帳という制度は、申告納税制度をとる以上はこれが基本的な要素でございます。しかし、シャウプ勧告以後の戦後の税制におきましては、これは青色申告制度の推進ということで実質的に図られてきたところでございます。しかし、やはり一般的に記帳の問題を避けて通るのはいかがかということから、昭和五十九年度の改正で一般的な記帳義務の制度が導入されたところでございます。しかし、これを制度化するとともに直ちに罰則をもってこれを担保するということは、確かにそういう御意見も強かったのでございますけれども、先ほどからお話のございますように、実地調査割合はかなり、今のところ個人でございますと五%程度でございますから……
○野末陳平君 何、何%ですか。
○政府委員(水野勝君) 五%前後というのが実態でございますので、そういったものを罰則をもって強制をいたしますと、そこに不公平を招くおそれがないか。それからまた、現実に小さな事業者の実際の記帳の現状等も考慮すると、直ちにこれを罰則をもって直接的な制裁でもって担保するということはいかがか。当面はとにかく五十九年度
に開始、導入いたしましたこれは指導をもってまずこの制度の定着を図ってまいる、それがやはり現実に合った考え方ではないかということで、罰則の導入は見送られたところでございます。
 なお、ただいま申し上げた実調割合は、四%前後ということでございますので、訂正させていただきます。
○野末陳平君 何たって結局は実調率の余りにも低いところに問題が何となく落ちていくんですね。
 最後に、今の答弁と関係がございますけれども、二十番目の素朴な疑問というのは、これは非常に我が国の税制の根本にかかわるんですけれどもね。先ほどから出てきておりますが、日本流の申告納税ですけれども、良心と正しい税知識と、この二つを前提にしているんですね。誠意という言葉も使われましたけれどもね。自分で所得を計算しまして経費をいろいろ出しまして、そして申告しなくていいなと思えば申告しなくていい。申告すべきだ、よろしい、じゃ申告しよう、こういうことに結果的にはなっているわけで、この日本流申告納税というのは、全員が必ずしも良心の持ち主であるか、正しい税知識の持ち主であるか、良心はあっても正しい税知識は難し過ぎてなかなかわからないと、こういう面があるわけです。
 そこで、私いろいろサラリーマンと話しますと、もちろん自営業や自由業でまじめにやっている人たちとも話しますと、これは不正直な人が得する税制になっちゃう、行き着くところ日本流の申告納税というこの制度は。だからこれは所得税の限界である、こういう意見も随分聞いたので、限界となっちゃうと困りますけれども、少なくもやはりこれは、罰則はいかがかというお答えがありましたが、むしろペナルティーという方向を打ち出すことによって良心と正しい税知識の欠如の部分を補うしか方法はない、将来的には、と考えておりますので、最後にそれをお答え願うことにします。
○国務大臣(宮澤喜一君) 私自身は、戦前に税務行政の末端におりましたので、そのことを考えますと、やはり申告納税制度というのは、我が国の戦後の民主化とともに誕生いたしました大事な制度だと思っております。したがって、このことを基本的に欠いてはならないと思いますが、その罰則にいたしましても、これはもう税の逋脱につきましては罰則があるわけでございますから、そういうことをやはり厳しく適用していくこと、それから税務行政の面でいわゆる実地調査がもっとまんべんなく行われるようになること、それから殊に事業をやっていらっしゃる方に対する記帳義務等々をできるだけもっと、指導と言ってはいけませんが指導をして奨励していくことといったようなことで、基本的には私はこの制度を大事に、しかし場合によりましては厳しく守って育てていくべきだと考えております。
○野末陳平君 どうもありがとうございました。
○委員長(原文兵衛君) 以上で野末陳平君の質疑は終了いたしました。(拍手)
    ─────────────
○委員長(原文兵衛君) 次に、下村泰君の質疑を行います。下村泰君。
○下村泰君 私は、どういうわけですか、この予算委員会に参りますと、もちろんこうしてお話しさせていただけるのは大変ありがたい立場でございますが、大概どういうわけか午前と午後、一部と二部の二場面に登場するということで、非常にややこしい。時間もできるだけ五十四分三十秒にとどめなくちゃいけない。この配分が非常に難しいわけです。質問の内容によりますると余りうまく時間がとれませんので、簡単なものから参りたいと思います。
 まず、中国残留孤児帰国問題についてお伺いします。
 こういうことを聞いてくれないかと頼まれたんです。めでたく日本での親が判明しても、日本の親あるいは親類が日本での受け入れを拒否した場合、この孤児たちはどうなるのだろうか、これを聞いてほしいというようなことを頼まれましたので、まず厚生省に伺いたいと思います。
○政府委員(木戸脩君) お答えを申し上げます。
 今先生がおっしゃったようなケースは確かにあるわけでございます。現在のシステムといたしましては、従来引き揚げ援護という長い歴史もございまして、身元が判明した孤児につきましては肉親の方から国の方に帰郷旅費の申請をする、そして肉親が身元保証人になって帰国を受け入れる、こういう形になっているわけでございます。
 ところが、先生がおっしゃったようなケースがあるわけでございます。私どもはこれについてどういう対応をしているかと申し上げますと、まず肉親とよく話し合ってもらう。なぜかと申しますと、やはり肉親の判明した孤児の方、恐らく大部分がまだ戸籍が回復をしていない、こういう状態にあるかと思います。こういう状態にある場合には、やはり肉親の協力がなければ実際上なかなか戸籍をもとへ戻すというのが難しいという問題もございまして、そこは十分に話し合うようにというふうにしております。
 それから、今先生がおっしゃったような、孤児の方からはそういう御意見がありますが、一方どういうことで肉親が拒んでいるかということを肉親側に聞きますと、またそれも肉親側のやはり愛情あふれる意見であることもあるわけでございます。しかしながら、私どもとしては、話し合いがつかない場合には、厚生省あるいは地方自治体が中に入りまして肉親にかわる身元保証人を立てて、その身元保証人が帰国を受け入れる、そして帰郷旅費の申請をするという形にしておるわけでございまして、今このような先生がおっしゃったようなトラブルのケースが多うございますので、最近、どういう場合にどの程度話し合いをしてもらうか、話し合いがつかなかった場合にはこれを速やかに肉親にかわる身元保証人を立てるということの周知を徹底したいというふうに考えておる次第でございます。
○下村泰君 先般、年金のことや何かについてお願いしましたときにも、中国語と日本語と両方できちんと解説したパンフレットをつくっていただきまして、これは総理、厚生省の大変な大ヒットでございます。先般の社労のときですか私お願いしたんですが、今これを引き揚げてきた各方々にお渡しして、大変中国語でもわかりやすく書いて中で説明されていますので、いつぞや年金の問題も中国から引き揚げてきて今仕事をしていらっしゃる方々から疑問を投げかけられましたんですが、それはそれによって一応解決とまではいきませんけれども、大変引き揚げてきた方たちに納得できるというようなパンフレットができました。これは大変結構なことだと思います。
 それから、また厚生省に一つお願いしますけれども、全国に自立研修センターを新設すると聞いておりますけれども、どの程度まで機能しますか、これは。
○政府委員(木戸脩君) 現在、帰ってこられた方々は、まず四カ月の定着促進センター、所沢のほか五カ所ございます全国六カ所の定着促進センターに入りまして、初歩的な日本語の研修それから日本の生活習慣というものを学んでいただくわけでありますが、問題は四カ月では必ずしも十分に日本語の研修効果も上がらない、あるいは日本の生活習慣ものみ込めないという問題があるわけでございまして、そこで私どもやはり帰国後一年ぐらいは積極的に行政がボランティアの協力を得てバックアップする体制をつくっていく、こういうことから自立支援センターというものをつくりまして、これは一応厚生省あるいは自治体のあっせんで全国各地に公営住宅等をあっせんいたしまして、その住宅から通えるという支援センターというのを、中身は八カ月間ぐらいの間に日本語の補充教育あるいは生活習慣あるいは就職相談、そういったようなものを考えているわけでございます。
 予算の要求の中では十カ所ということでございます。今全国各地から十五カ所の希望が出ているわけでございますので、大蔵省と相談をいたしまして、地方自治体の意向も酌みながらこのセン
ターというものを適正に配置して、帰国孤児の皆さんの早期自立に役立てたいというふうに考えているわけでございます。
○下村泰君 厚生省とかそれから地方自治体の引揚者に対する御努力というのは私も大変評価し、評価なんという偉そうな言葉は使いません、ようやってくれているなとは思っておりまするけれども、心理状態になりますと、余りいい方には向いておりません。殊にジュニアといいましょうか、二世か、結婚をするのはやはり中国の女性、日本人の女は嫌だ、中にこういうことを言っているジュニアの方々もいると。どこかに何か欠陥があるような気がします。したがいまして私は、そういうことを言われないような、帰ってきてよかったと言われるような日本であってほしい、こういうふうに考えます。
 これをもちまして、午前の部は終わります。
○委員長(原文兵衛君) 下村泰君の残余の質疑は午後に譲ることとし、午後一時まで休憩いたします。
   午前十一時五十四分休憩
     ─────・─────
   午後一時開会
○委員長(原文兵衛君) 予算委員会を再開いたします。
 昭和六十三年度総予算三案を一括して議題といたします。
 休憩前に引き続き、下村泰君の質疑を行います。下村泰君。
○下村泰君 ケア住宅についてお伺いしますけれども、昨年は国際居住年にもかかわりませず、皮肉にも東京などでは異常な土地の高騰を見たわけで、住むという環境はもうまるっきり悪化の一途でございます。特に障害を持った人などは地上げなどで追い出されますと、次に住むところ、これはもうどうしようもない状態になります。特に重度のケアを要するような人は、どこへ行っていいのかさっぱり見当もつきません。
 そこで、ケアつき住宅の必要性を訴えたいわけなんですけれども、現在障害者向けのケアつき住宅はどのくらいありますか。また、公営住宅における状況はどういうふうになっておりますか、お話しください。
○政府委員(小林功典君) いわゆるケアつき住宅のお尋ねでございますが、障害者の生活に適するような設備がある住宅といたしましては、現在心身障害者世帯向けの公営住宅と身体障害者福祉ホームがございます。これは先生もう御承知のとおりであります。これが整備されておりまして、これからもこの二つの施策を推進していくことが政府の方針でございまして、いわゆるケアつき住宅、これについて全部の数を把握しておりません。
 なお、特定目的住宅の心身障害者世帯向け住宅、これは建設省所管でございますが、便宜私からお答えいたしますと、六十二年度末で一万四千戸程度建設されているということでございます。
○下村泰君 建設省の方もひとつ。
○政府委員(片山正夫君) ただいま厚生省から御説明があったところでありますけれども、建設省の公営住宅といたしましては、構造設備につきまして障害者に配意した住宅を供給しているところでありまして、総数で約一万四千戸、六十二年度ベースでは約三百五十戸の供給をしているところであります。
○下村泰君 これはどうなんでしょうか、建設省の方にお伺いしますけれども、将来に向かってふえる可能性はあって、減る可能性はありませんね。まだこれからも先の予定がございますか、それ以上の計画は。
○政府委員(片山正夫君) 障害者用の公営住宅のこの数年の経緯を申し上げますと、大体三百戸から五百戸でずっと安定的に推移しておりますので、今後もそのように続くと思っております。
○下村泰君 はい、ありがとうございました。
 例えば、現在既に運営されている福祉ホームを拡充するのも一つの方法だと思います。このホームを構想した当初と現在では大分状況も変わっております。厚生省の方では、最初この自立ホームなどというのは、どちらかといえば軽度の人を対象にしておったんですね。ところが身体障害者の福祉ホームありのまま社というのが仙台にございますが、再三申し上げておりますけれども、これは筋ジストロフィーの患者の山田富也君というのが主になって活動しておるんですけれども、ここではむしろ軽度じゃなくて重度なんです、ほとんどが。そして、重度の状態に置かれた障害者の方々が頑張って自分たちの自立ホームをつくっておる。これが状況なんです。
 ですから、今までのように軽度の障害者を対象にするのではなくて、内容はどんどん重度の障害者の方に変わっておりますので、建設省と厚生省の両方で知恵を絞り合って何とかしていただけないかなと思うんです。両省で汗を流していただきたいと思うんですよ、変に縄張り争いばっかりなさらずに。具体的な方法が何かあるのか、あるいは後期計画というのがございますね、それについて、こういうのがございますけれども、この後期計画について何か施策があるのかどうか。この本部長は総理でございますのでひとつ後から総理にもお話を伺いたいと思いますが、とりあえず厚生省、建設省、答えてみてください。
○政府委員(小林功典君) 今お話ございましたように、当初私どもが想定しておりましたのは比較的軽度という頭がございました。ただ、実態を見ますとかなり重度の方も入っておられるということで、これも先生よく御承知のとおり、六十二年度から新たに運営費の補助を始めたわけでございます。これは将来とも続けるつもりでございますが、そういう運営費補助をやるというのが一つ。
 それから福祉ホームにつきましても、入所者の実態を勘案いたしまして、もし必要であればホームヘルパーの派遣という道もございますので、そこら辺をうまく活用すればかなりのケアができるだろうということを考えております。
○政府委員(片山正夫君) 住宅対策におきましては、障害者が自立して生活する場合にその日常生活に適した住宅を供給する、こういう観点から、公営住宅でありますとかあるいは公団住宅につきまして設計上の配慮をし、あるいは入居上の優遇措置を講じております。また、金融公庫関係につきましても、障害者同居世帯に対しましては割り増し融資などの措置を講じておりますが、ケアという、サービスという問題につきましては、これは福祉対策の方でもって御配慮をいただかないと何ともこれはいたし方ございませんので、厚生省と連絡を密にいたしまして対応していきたいと考えております。
○国務大臣(竹下登君) 確かに、建設省からお話がありましたように、設計上の配慮を行うとか、あるいは公庫の割り増し融資を行うとかそれだけでもとより、これは建物の面だけでございますので、したがって福祉の面からの運営費の補助に踏み切るとか、さらにはホームヘルパーの派遣とか、そういうようなことが両々相まって初めて、いわゆる今おっしゃっております福祉ホームというものの意義が生きてくるじゃなかろうかというふうに私も思っております。
○下村泰君 次は難病について伺います。
 現在、日本には難病と言われる疾病の数はどのくらいあって、患者さんの数はどれくらいなのか、厚生省にお願いします。
○政府委員(北川定謙君) 難病の定義というものが特定をされていないわけでございますが、そういう観点から数が幾つあるかということは非常に難しい問題でございます。専門家の間でいろいろ分類をいたしまして、百五十疾病あるいは二百疾病というようなことが言われておるわけでございます。
 一方、厚生省が特定疾患対策で対応しておる疾患は現在二十九疾患でございますが、その対象者は約十四万人でございます。なお、小児慢性疾患対策というのがあるのでございますが、これは約八万六千名ということになっております。これはいずれも六十一年度の数字でございます。
○下村泰君 殊にこの実態というのはなかなかつかみにくいと私は思います。しかし、疾病の数ぐらいはきちんと把握しておかないと今後医学的に解決策も何も見出せないんですから、これはきちんとつかんでおいていただかないと困ります。私の聞くところによりますと、百単位の疾病があって百万人ほどの人が苦しんでいる、こういうお話も聞いております。
 とりあえず現在把握している疾病で、進行性でありかつ重度化していくもの、十八歳で打ち切られる小児特定疾患で成人に達し継続医療の必要な人については全く特定疾患として指定が受けられない、こういうことですから、特定疾患として受けられるような概算要求というのはすべきじゃないかと思うんですがね。例えば、大蔵省に断られても構いませんからしゃにむに言っていただきたいと、私はそう思うんです。とにかく命にかかわる問題なんですから。そういったことを厚生省さんは大蔵省さんにそういう無理やりに概算要求したことがございますか。それとも最初からあきらめていますか。
○政府委員(北川定謙君) 今先生御指摘の点は小児慢性特定疾患の件でございますが、これは小児の発育期にいろんな病気を持つことによって健全な発育を阻害をする、これを何とか防止をしたいという観点から、小児期、つまり基本的には十八歳未満でございますけれども、そこまで経済的にも面倒を見ながら医療の内容も一定の水準を保つといういろんな行政施策をやっておるわけでございます。
 一方、特定疾患対策でございますけれども、これは全く治療方法がわからない、あるいは特に病気のメカニズムもわからない、こういうものを医学的に何とか解明して、その結果として患者の福祉を図りたい、こういうことでそれぞれ目的を異にしているわけでございます。そういうことから申しまして、ただいま先生のお話しのような考え方はとっていないわけでございますが、なお御参考までに、医療費問題というのはもっと全般的にいろんな対策を総合的に進めていくというふうに考えているわけでございます。
○下村泰君 例えば、ちょっと伺いますけれども、この特定疾患、普通には難病と言うわけでしょう。活字の上でいろいろな書物に書く場合にはこれは特定疾患というふうになるんでしょうけれども、これの認定基準というのですか、特定疾患の基準、どういうものが難病なのか、これは基準というのはあるんですか。
○政府委員(北川定謙君) 特定疾患治療研究事業、こういうことでやっておるわけでございますが、これは専門家を網羅した研究班を設けまして、原因の究明あるいは治療法の確立のために研究を行っておるわけでございますが、医療費の公費負担は、ただいま申し上げましたような研究の対象となっておる病気のうちで、特に診断基準が一応確立したもの、そうして非常に難治度が高いもの、あるいは重症度が高くて患者さんが非常に苦しんでおるもの、そういうところから重点的に取り上げていくというふうに進めておるところでございます。
○下村泰君 いわゆる特定疾患の基準ですけれども、一番わからないのがこの診断基準の確立というのがあるんですよね。診断基準の確立ができるんですかな、難病に。
○政府委員(北川定謙君) 病的な状態を患者が持っておるわけでございますから、そういう状態をきちんと記述をし、整理をして、どういう状況を持っておるものがどういう病的な状態になっているかということは一応整理ができるわけでございます。
○下村泰君 そうしますと、どこにも入らない、じゃこういう今まで事例がなかったというのが難病になるわけですか。
○政府委員(北川定謙君) 基本的にはそういうものも難病という概念の中に入るわけでございますが、あくまでもこの事業は医学の研究を進め、医療の体制をつくっていくことによって患者さんの福祉を図りたい、こういうことでございますから、全く地図がないようなものについて対応するということはなかなか難しいわけでございますが、そういうものも当然今後の問題として、医学の研究の進展に応じて対象に取り入れていくという考え方をとっておるわけでございます。
○下村泰君 私なんか頭が悪いものだから簡単に物を判別したがるんですよね。今おっしゃったように、地図にないとか地図にあるとか、地図にもない、何にもない。何にもないから難病なんだというふうに私は解釈するんですよ。と、その中に全然入らない。じゃ、その基準があって、その基準にも、こういうのが特定疾患であると断定する基準というのがそんなにはっきりあるものなんですか。聞いている私がわからない。
○政府委員(北川定謙君) 基準というのは、非常に抽象的ではございますけれども、原因がはっきりわからない、したがって治療方法がなかなか、まだ確立をしていない、抽象的にはそういうことでございますが、そういうものの中でも、ある程度医学的にどう対応していったらいいのかという技術が全くないわけではございませんので、そういうものをなるべく有効に確立していきたい、こういう目的でこの仕事を進めておるわけでございます。
○下村泰君 そうしますと、その特定疾患の制度によってもはみ出す方が出てくるわけですね。ほかの制度によって身障、いわゆる身体障害者の福祉法とか、いろいろとそういったものがあります。そういうことでもってカバーされる人もいますけれども、全然はみ出る方も出てくる、こういうことになりますが、そういう人は一体どうなるんですか。
○政府委員(北川定謙君) 基本的には、病的な状況があるとすればそれは医療の対象になるわけでございますから、どこかの医療機関で対応しておる。その場合には健康保険の適用を受けるということは当然あるわけでございますが、これも診断名が確定しないとか、そういう状況のことはどうしても医学の進歩の過程で残る問題というのはあると考えられるわけでございます。
○下村泰君 じゃ、その今残るものがあると考えられるなんて、その人はどうなっちゃう、その対象の人は。
○政府委員(北川定謙君) そういう方々は特定疾患治療研究事業の対象にはなりませんが、一般の医療制度の上では対象になっておるわけでございますから、医療が全く受けられないということはないというふうに考えております。
○下村泰君 まだわからないですがね、いずれもう少し私も勉強します。
 こういうお話を聞いたことがあるんですよ。常時介護が必要な重症の患者さんの奥さんが生活保護の申請に福祉事務所へ行った。すると奥さんに対して、御主人を施設か病院に預けて働きなさいと、こう言われた。奥さんは保健所に出かけて、そうした施設や病院のあっせんを頼んだ。ところが、長期の受け入れをしてくれるところはない。それで、保健所は生活保護を受けるようにと言う。奥さんはまた福祉事務所へ行く。こんなことを繰り返しているうちにこの御夫婦は疲れ果ててしまって、ついにみずからの命をという場面に直面し、未遂に終わったという話があるんです。
 これ、経済大国の日本に生まれてこういう方々がいるんですね。どう思いますか、こういう御夫婦を。
○政府委員(北川定謙君) 医療の立場からは、医療が必要であるというケースについては、それが長期にわたるにしても受け入れていくという努力をする必要があると考えておるわけでございまして、国立病院あるいは国立療養所も厚生省としては運営をしているわけでございますけれども、そういうところでも重症心身障害とか、あるいは筋ジストロフィーとか、あるいは今先生御指摘のいろんな難病の中で、全部とはいきませんけれども、キャパシティーの範囲でそういうものは受け入れていく努力を進めておるわけでございます。
 一方、地域社会においてもいろんな医療計画という考え方も進んでおりますので、現段階におい
て、先生の御指摘のケースがそこでうまく救済をされたかどうかは別として、制度の上ではそういうものをさらに進展をさせていく努力は続けておるところでございます。
○下村泰君 私は、もう十年以上前でございますけれども、いわゆるあゆみの箱という我々芸能人だけでつくった運動をやっているときに、こういうケースがたくさんあったんですよ。殊に、障害児を抱えているお父さんが自分のお子さんの面倒を見るために、その障害児のお子さんを見るための職業、見れる職業につこうとするんだけれども、なかなかない。ついにお子さんとともに入水したという記事があった。そのときに、厚生省のある課長さんの答えは、どうしてそこになるまでに相談に来てくれなかったか。大抵いつも決まっていましたよ、そういうふうにせりふが。
 私は、厚生省というのは厚かましく生きて省みないところだと言ったことがあるんですよ。つまり、言葉でいろんな形を出すんですけれども、実際の形というのはなかなか出てこないんですよ。例えば、今のようなお話をお聞きになって、総理大臣というのは昔流に言えば日本人の父親なんですよ。お父さんとしての感じいかがですか、こういう気の毒な子供さんたちがおるんです。
○国務大臣(竹下登君) 昔のことになりますが、伴淳さん、それから先生、あゆみの箱、私も参加させていただいた経験がありますが、あのときのシーンも日本武道館もまだ私の脳裏には残っております。が、言ってみれば、いかに自立しようとしても、そういう自分の意欲はあってもその意欲を生かすことができない諸問題について相談相手になっていくのがお父さんとでも申しましょうか、まあお父さんであると同時に、いま一つは国会で指名されるから主人の使用人でもあるわけでございますけれども、国権の最高機関で指名された者が責任をとらなきゃならぬことであるな、こういう感じはいたしました。
○下村泰君 感じだけでなくて何か形の方にひとつあらわしていただきたいと思います。
 こういうときこそホームヘルパー制度、訪問看護制度が機能をするということになるわけです。常時介護となると極めて困難。しかも全市町村で制度化しているわけではないんですね。こうした患者さんや内部障害の人々にも十分役立つ在宅ケア制度を充実強化すべきであるということになるわけなんですが、いかがでしょうか。
○政府委員(小林功典君) ホームヘルパー制度、これは年々拡充を図ってきておりまして、今実施している市町村が九五・五%のはずでございます。たしか十幾つだけがやっていないということで、三千二百の中でもう大部分がやっております。
 それから国といたしましても補助制度をつくっておりまして、この数年間大体二千人に近い大幅拡充を図っておりまして、ホームヘルパーが有効に機能するように指導もやっておるところでございます。
○下村泰君 先般国立病院・療養所の統廃合を進めるための法律もできました。そのとき、統廃合の目的の一つに高度先端医療の強化がありました。専門医療、高度なケアを必要とする患者を受け入れるのもその目的だと考えます。しかし、現実には国立では受け入れてもらえないんですね。私大病院で短期ならということで受け入れてくれるというのが実態なんです。
 人手の問題もありますが、今までの看護基準のあり方、それから医療体制のあり方など抜本的な難病対策が急務だと思います。病院があるのに入れない、国立という名前がついていながら入れてくれない、こういうのは非常に問題だと思うんですが、こういうことに関してひとつ心ある御答弁をお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
○政府委員(北川定謙君) 国立病院、国立療養所を厚生省は運営しているわけでございますが、特に国立療養所は、歴史的には結核でございますが、長期慢性にわたる患者さんを受け入れていくということが使命でございまして、そのために磯能の整備ということは従前から進めておるわけでございまして、重症心身障害児等につきましても八千ベッド、あるいは筋ジストロフィー症につきましても二千四百余ベッド、難病、これは非常にいろいろございますけれども、そういう方々を受け入れるためにも二千ベッドを超える実績を持っておるわけでございます。
 先生御指摘のように、もっとさらに拡大すべきという御意見もあるわけでございますが、いずれもいろんな制約があるわけでございまして、既存のキャパシティーの中でなるべく効率的にそういうベッドを活用していく、特にベッドに全部入れておくということだけではなくて、地域への還元とか地域社会とのいろんな連携によってなるべく社会生活を維持できるようにしていく、そういう努力も現在も進めているところでございますし、今後ともそういうものはさらに拡大をしていく必要があると考えているわけでございます。
○下村泰君 私が聞いているところによりますると、病院側の方の態勢がとにかく人手が足りない、人手がたくさんあれば幾らでも引き受けるんだけれども、現在の状態でこういう人たちを引き受けるといわゆるオーバーワークになって、とてもじゃないができない、だから断るんだというようなのが根底にあると承っておりますが、どうですか。
○政府委員(北川定謙君) 基本的にはなるべくそういうケースを受け入れていくという努力をすべきでございますし、厚生省としても当然そういう方向でやっておるわけでございますが、地域によってはどうしてもベッドがあかないとかそういうことで、あるいは特に最近は医療が非常に専門分化をしておりますので、特定の施設に行ってどの病気でも入れろということはなかなか実際問題として難しい点が出てくるわけでございますが、基本的には国もそういう努力を続けておる。一方では、特に日本は民間の医療機関も非常に多いわけでございますので、地域医療計画の中でそういうものが全体としてうまく動いていくように今後とも努力をする必要があると考えております。
○下村泰君 私は医療と福祉を総合的に進める必要を強く感じておるんですけれども、保健医療局に福祉の専門官というのはいるんですか。
○政府委員(北川定謙君) 保健医療局には福祉の専門職はございません。ただし、厚生省の中には社会局、児童家庭局、福祉の専門家もたくさんおります。そういうことで内部では十分情報の交換、知識の集約というようなことはできるわけでございますので、そこのところは現状で何とか対応できるというふうに思っております。
 また、国立療養所等には例えば児童指導員とかいうようなそういう福祉職もかなり配置をされておりまして、現場では先生がおっしゃるように医療と福祉の連携、特に療養所では周辺に養護学校、これは教育のための文部省の施設でございますけれども、そういうものも積極的に連携をとるようにしておりますので、決して十分とは申しませんが、福祉の問題とも十分連携をとってやっていくというふうに考えておるところでございます。
○下村泰君 それは、厚生省の中には今局長のおっしゃったようにそれぞれの目的を持ったそれぞれの局、課があるんでしょうけれども、縦割りだけがしっかりしていて、それが横に連絡となるとなかなかうまくいかないというのが現状らしいんですね、これどこの役所でも。ですから、落語に印鑑証明なんというのも出てくるんですよね、何番の窓口へ行け、何番の窓口へ行け。事実私が取り扱いました問題の中にも口唇口蓋裂というのがありましたけれども、そのときでもどこの課へ行っていいのかわからなかったというのが現状だったんです。ですから、局長はそうおっしゃいますけれども、そういうときの連絡というのはきちんとやっていただきたいと思います。
 それで、今度何か難病という名前がなくなるんですって、課の中から。
○政府委員(北川定謙君) 厚生省が対応すべき医療の問題というのが非常に幅広くあるわけでござ
いまして、そういういろんな仕事に適切に対応していくためにはそれぞれの課が特定の名前を持っておるということも好ましいわけでございますが、実際問題として非常に長い名前になってしまうというようなこともございまして、残念ながら難病という名前は六十三年度の組織再編成でなくなるという方向でございますけれども、しかし実際問題としてそのために仕事が後退するとかいうことは全くないわけでございますので、御理解を賜りたいと思います。
○下村泰君 名前がなくとも実はちゃんと残るということなんでしょうけれども、患者の皆さんにとっては自分の行くべき課が今まであって、そこに文字がなくなると物すごく寂しいんですよね。何か国籍を抹殺されたような気になるんですよ。そういう寂しさというのがあると思います。
 東京都の後期計画の中で、ここにこういった本がございますけれども、在宅難病患者への訪問診療を始めるんだそうです。施設、病院を含めた医療、雇用、所得、在宅患者のケアなど既にある制度の拡充強化とともに、先ほど申し上げた長期慢性疾患患者のために医療と福祉を包含した法律の整備が必要と私は考えます。それで、これはもう全く猶予のならないことなんで、早急に前向きの検討をお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(藤本孝雄君) 難病問題につきまして、かねがね十分に御研究また御指導をいただいておりますことをまずお礼申し上げたいと思います。
 まず、予算の点につきましては、御承知のように約百億程度の予算を六十三年度でお願いいたしておりますし、さらに今後の問題といたしましては治療と調査研究、これにはさらに力を入れていかなければならぬと考えております。
 それから患者の受け入れにつきましては、先ほど来から御指摘がございますように、原因がわからない、治療方法が確立していない、こういう病気でございますので、まさにこれらの方々は国立の病院並びに療養所で受け入れられるべきものだというふうに私は考えております。事務当局にもさらに国立病院・療養所についての受け入れについて再検討を指示いたしておるところでございます。さらには、法律的には現在の身体障害者福祉法、これによりまして十分対応できると思っておりますので、今後とも全力を挙げて努力してまいりたい、かように考えております。
○下村泰君 今までのお話で、総理、この難病に対する何かお考えがございましたら一言お願いしたいと思います。
○国務大臣(竹下登君) これも古い話になりますけれども、私の県で国立の医科大学ができて、それで初代の学長さんをお迎えするに、なかなか学長さんで来てくれる人がないというようなことでお願いに行きましたら、そのときに難病研究所というものを財団で別につくってもらえぬかというお話があって、幸いにしてこの地域の人並びに地域出身の東京におる人等からの基金によって難病研究所というものができて、今も立派に機能しておるというふうに聞いて、大変そのことは私なりにいいお世話をしたなと思っております。
 そこで、今おっしゃった公費負担にかかわるようなことに対してはまだいっていないんじゃないか。今は研究、まさに研究所の仕事をしているんだなというようなことを思い出しながら、そういう難病治療に対する公費負担問題というのにもっと関心を持たなきゃいかぬという感じを持ちました。
○下村泰君 私は日本人の知恵というのもすばらしいものがあると思います。そして、ノーベル賞というものの対象になる方々も、頭脳もあります。それから、医学的にも過去においてすばらしい成績を残した、それから業績を残した、あるいは世界的にも世界の人々に光明を与えるような医療というものを残された先輩、先達もおるわけですけれども、難病というものに関しましてもっともっと、それは日本の医学界に政府の方が援助して、そしてすばらしい機関をどんどんつくって、それこそエイズなんていうものは日本の方が先鞭をつけて、日本の方が先に完璧に治すだけの治療薬をつくるというくらいの私は医療界への援助をしてほしいと思うんです。ですから、せっかく総理が難病のどうのこうの今おっしゃいましたけれども、できるだけそういった目に見えない――日本の一番悪い癖は目に見えないものに銭を出したがらないですね、これはもうはっきり私申し上げますけれども。
 先般東北大学医学部へ行きました。それで、東北大学医学部の五つの各部門の先生方が英知を絞りまして、チームをつくってある薬をつくりました。それで、その薬を患者さんに投薬して五分ごとにレントゲンを撮っていくわけです。そうしますと、その薬ががんの細胞のところへ集結するわけです。すると、そこにがん細胞があるんだということがはっきりわかる。これはもう肝臓であろうと何であろうとすぐわかる。それだけの機械をつくった。ところが、これがメード・イン・USAなんです。日本の企業はどこも金を出してくれなかったそうです。したがいまして、アメリカの方の企業にその話をしたら、すばらしいじゃないか。向こうはできるもできないも、それだけの一つの理論が成っていてそれでこういうふうになりますよというと、お金をどおんと出してくれるんです。日本では出してくれないんです、そういうものは。企業はもちろんのこと、政府も出さない。これではいつまでたっても私は前の方へ行かないような気がするんですけれども、いかがでしょうか、総理。
○国務大臣(竹下登君) これも感想程度になって申しわけありませんが、先日利根川博士がお見えになりまして、そうしたら北里柴三郎先生の話が出まして、本来は、自分よりも本当はもっと古い時代に北里柴三郎先生がこの医療・生物にかかわるノーベル賞はもらわれるべきであった、こんなことを言っておられまして、なるほどそうしたすばらしい英知というものは日本に存在する。北里研究所はその後順調にそれは発展しておりますけれども、そういうことに対する関心は持つべきである。しかし、今でもいわゆる北里研究所一つ考えてみましても、いろんな企業等からする税制上の仕組みとかというものはございます。
○下村泰君 次は、低肺機能、内部疾患の方々のことについてお伺いしますが、内部障害者問題、大変これは大きくなってきました。きょうは低肺機能、慢性呼吸不全の方々の問題を中心にお伺いします。
 低肺機能と言われる人たちの実態について厚生省はどの程度把握なさっていらっしゃいますか。
○政府委員(北川定謙君) 低肺機能の一番の大きな原因は結核でございますけれども、厚生省は、結核問題は最終的に国の責任であるという基本的な立場から従来仕事を進めておるわけでございます。
 昭和五十八年度の厚生省の先ほど来申し上げております特定疾患の研究費の中で呼吸不全調査研究班を設けておりまして、いろんな実態調査をやっておるわけでございますが、現在我が国には約四万から五万人の低肺機能者がいると推定をされております。
○下村泰君 これは、厚生省さんのおっしゃるのは大体このぐらいなんですが、私どもの方では大体二十万を下らないのではないかと思っております。患者数だけ見てもこれだけギャップがあるわけです。実態調査というのは本当にこれは難しいのはよくわかります。
 この間、実はこれ私ごとですが、東京の保谷というところへ参りました。ここで障害者の方々のためのお話をしたんですけれども、その中に外見から全然障害者と見分けのつかない方々がおりまして、その方たちが後から来て私と話をしてくださったんですが、実はその方たちが低肺、いわゆる慢性呼吸不全、こういう方々なんです。ですから外目には全然わからない。ところが、御本人はもうバスに乗るのも大変、電車に乗るのも大変、駆け出すなんていうことはもう死に直面するようなものだ、こんなことのお話を伺いました。
 こういう実態調査というのは、その方たちは恐らく今まで厚生省のこの四万、五万の中に入っていないんじゃないかと思うんですね。ですから、こういう実態調査というのを今後厚生省はおやりになるのかならないのか。いかがでしょう。
○政府委員(北川定謙君) 先生も御存じのように、実態調査というのはなかなか大きなエネルギーが必要でございますし、経費もかかりますので、何回も何回もというわけにはなかなかいきませんが、行政を進めていく上で最低必要ないろんな材料の収集ということは今後ともやっていく必要があると考えております。
○下村泰君 東京に清瀬喜望園という重度身体障害者授産施設があります。全国で唯一の低肺機能者の施設なんですが、この十年間に十三人が退園しました。物すごく少ないんです。そのうち五人の方が亡くなり、五人が再入園してきています。この亡くなった五人の中には、ひとりでアパート暮らしをしていて、亡くなりまして何日もわからなかったという例が幾つかあります。結核ということで受けた差別と長期の療養の生活は今も多くの苦しみを残しております。中には離婚でありますとかあるいは縁切りによって多くの方が独身でおられます。そのために、ひとり在宅で暮らすことは実に多くの危険と日常生活の制限を伴います。買い物にもお医者さんにも行けない。電話も中にはかけられない状態なんていう方もおります。
 先ほども言いましたホームヘルパー派遣制度それから訪問看護は、ぜひとも早急にその対象を拡大して、すべての市町村で実施されるようにしてもらいたいんですが、いかがでしょうか。
○政府委員(小林功典君) 先ほど難病のところでもお答え申し上げましたように、ホームヘルパー制度がございまして、日常生活を営むのに支障のある低肺機能者、これにつきましては当然ホームヘルパーの派遣の対象でございます。
 しかも、このホームヘルパーにつきましては、これも先ほど申し上げましたように、もう大多数の市町村で実施をしておりますし、毎年大幅な増員を図っておりますので、ぜひそういう場合には市町村に御相談いただきたい。十分対応できる数字はあるというふうに考えております。
○下村泰君 えらい自信を持って答えられていますから大丈夫なんだろうと、これは私の推察だけです。
 次に、療養施設の問題ですが、昨年の七月三十日に厚生大臣、斎藤さんでございましたけれども、低肺機能の人は内部更生施設で受け入れており一層充実していく旨のことを述べておられましたけれども、その後、全内協というところに意見を聞かれたりしているようです。内部更生施設の実情を知っている人にとっては実態に沿わない大臣答弁であった、こういうふうに言われておりますので、厚生省もしっかりした対応をしていただきたいと思いますが、この経緯、そして今後のことをひとつ伺いたいと思います。
○国務大臣(藤本孝雄君) 昨年の七月三十日の大臣答弁を引用されての御質問でございますが、御承知のように、内部障害者更生施設は訓練施設でございまして、療養施設ではございません。したがって長期療養には向かない施設でございます。長期療養に利用できるものといたしましては療養施設と授産施設がございまして、そういう施設で対応できるものと考えております。
○下村泰君 これはとにかく大きな問題でございまして、アメリカには呼吸療法士という資格を持った方が約二万人、で、これをまた養成する制度があります。この人たちは、呼吸訓練や肺理学療法を行うばかりでなく、患者の自己管理のため日常生活の指導を行うそうです。で、呼吸器科のある病院では、呼吸器科のある病院はたくさんありますけれども、慢性呼吸不全に十分対応できる熟練した医者は東京の大病院でわずかです。特に結核後遺症の慢性呼吸不全は、その器質的変化が著しく、敬遠されております。
 実はこういう投書があるんです。「肺機能障害者の切なる願い」と題がつきまして、井上節子さん、四十五歳、福岡県の宗像市にお住まいの方。
  療友のHさんは、結核は治ったものの肺機能障害が残り、酸素を必要とする重度の低肺になりました。
  低肺専門の、ある国立療養所では、酸素吸入器を借りて在宅酸素療法に切り替えるように言われ、やむなく一般病院へ入院すると、「あまり酸素に頼らない方がよい」と、だんだん取り上げる方向にもっていきます。
  専門病院では、「酸素を吸えば動けるのだから、酸素を吸いながら身の回りのことは自分でするように」という指導を受けました。酸素療法は、健康保険でも認められているのに、医師の考え方がこうも違うと、患者は不安でなりません。
  結核は過去の病気と言われるようになりましたが、長期にわたって重症の人や、若い時、手術を受けて社会復帰を果たしたものの、老齢を迎えて、さらに肺機能が低下して苦しんでいる人は多いはずです。このような人たちは、健保で認められている療法を受けたいと願っています。せめて公立病院では、どこでも在宅酸素療法が受けられるよう切望します。
こういうふうに訴えている方もおります。
 さて、こういうふうに訴えている方に、対応としてどういうふうになさいますか。
○政府委員(北川定謙君) 医療は、なるべく施設の中でなく、できれば家庭でという一つの大きな流れがあるわけでございます。今の低肺機能の問題につきましても、家庭でできるだけそういう治療、あるいは治療的な生活ができるという環境づくりを厚生省としては全般的に進めているわけでございます。ただ、どういうケースにどういう適用をするかというのは個々の医師の判断になりますので、先ほど先生の御指摘のありましたようなケースにつきまして、行政がとやかく言うことは差し控えさしていただきたいと思います。
 いずれにいたしましても呼吸器科を標榜する医師は全国で今約八千八百人おるわけでございますし、それから国立療養所も、先ほど来申し上げていますように、結核を起点としたいろんな低肺機能問題についても対応しておるわけでございますし、そういう在宅酸素療法の促進ということについても鋭意努力を続けておるところでございます。
○下村泰君 先ほど申しました喜望園という、この清瀬の駅ですね、何段もの階段があるんです。低肺の人は階段を上ることが苦しいために、階段のない次の駅までタクシーで行って、そこから電車に乗るんだそうです。この間も、ある委員の方がおっしゃっていましたけれども、障害者や高齢者、妊婦にとって階段などは大きな壁なんです。これは駅だけではございません。学校でもデパートでも、職場も郵便局も銀行もそうです。こういうための施設改善、これは私も前に当委員会でやはりやったことがありまして、西武線でしたか小川駅、あそこにやっとつけていただいたような覚えがございますけれども、こういうのは低利融資で何とかできないものなんでしょうかね、各省にまたがる問題なんですから。
 官房長官にちょっと伺いますが、私、官房長官というのはどういうお仕事かなということをちょっと承りたいんです。
○国務大臣(小渕恵三君) 内閣総理大臣を補佐いたしまして、内閣全体の問題につきまして、諸般にわたりまして責任を持ってまいりたいと思っております。
○下村泰君 そうしますと、官房長官というのは、我々の仲間ではよくインフルエンザの親玉だなんて言うんですね。カンボウ長官ですから風邪を引いた親玉。これはしゃれの部類ですけれども、よくそういうことを言うんですけれども。
 してみますと、今の官房長官のお話を承りますと、例えばこれプロダクションにしますと、これまことに失礼な言い方かもしれませんよ。竹下内閣を竹下プロダクションとしますと、マネジャーということになるわけですよね。ですから、それだけ、つまりマネジャーという権限というのは、
これは大変なものなんですよ。親玉を売り出すも売り出さないも、人気を落とすも上げるのも、これマネジャーの腕なんです。してみると、マネジャーが知恵を働かせれば、各省にまたがる問題ですから、各省のいわゆる隠れている財源があると思う、こんなことを言っちゃいけないかもわかりませんけれども、そういったものを引っ張り出して、それを集めてもこういう対策費は出るような気がするんですが、いかがでしょうかね。そういう知恵の働かせ方というのはいかがでしょうか。
○国務大臣(小渕恵三君) それぞれの役所で、大臣初めみずからの役所におきまして、しかるべき予算につきましては、国民に対して責任を負って支出できるように努力をしていると思います。しかしながら、政府全体の問題として取り組まなければならない問題のときには、私ども、官房長官という立場でそれぞれの大臣とも御相談をしながら適切に努力をしていきたい、こう思っております。
○下村泰君 大蔵大臣に伺いますけれども、こういう問題はとにかくまだたくさんありましてね、障害者の方々がいつもぶつかるのはこの問題なんですよ。もちろん私鉄の会社なんかにはそれぞれのあれがありまして、そう簡単にはいかないんでしょうけれども、こういう安い利子で、いわゆる低利融資と言うんですか、私余り経済の方はよくわからないですが、そういうような方法でこういう会社に貸し付けるとか何かして、こういう問題を一つ一つ解決していけないものなんでしょうか、どうなんでしょうか。
○政府委員(平澤貞昭君) 委員がおっしゃいますような制度といたしましては、六十一年度より旅客施設安全対策工事融資というものを開発銀行でやっておりまして、いわゆる身体障害者等の方々のために、例えば私鉄の駅のスロープをつくりましたり、それから盲人用の誘導ブロック等をはめ込みましたり、あるいはエレベーターをつくらせたり、そういう意味での資金を、金利といたしましては五・五%という金利で融資しております。金額は六十二年度の見込みで二十二億円程度というふうになっております。
○下村泰君 そういう制度がありながら意外とやらないというのはどういうんでしょうか。それは私鉄あるいはJRの方でもそういう気がないからやらないんでしょうかね。あるいは今できている既設の駅その他はやりにくい、こういうことなんでしょうか。
○国務大臣(石原慎太郎君) これから新設されます駅には、既にガイドラインを設けておりますのでそういう設備を附帯するように指導しておりますが、できてしまった駅は、もうこれ非常に構造も古くてなかなかエスカレーターをつくるとかエレベーターをつくるというのは難しい場合が多うございまして非常に難渋しておるんですけれども、何か古い駅、例えば新宿なんか副都心が、あそこに都庁が移ったりしますと大改造せざるを得ないんじゃないか。そういうときにはあそこに指導してそういう施設をつくっていこうと思っておりますけれども、既存の駅は非常にそういう点難しいということだけひとつ御了承ください。新規の駅についてはそういう努力をいたします。
○下村泰君 さてそこで、いつも伺うことなんですけれども、こういう内部障害者の方たちの運賃割引、運輸省もとにかく難しいと言うんですけれども、JRは民間ですから。
 そもそも割引制度というのはどういう趣旨のものなんですか、割引制度の趣旨。
○政府委員(塩田澄夫君) お答え申し上げます。
 身体障害者に対します運賃割引制度は現在各種の旅客運送事業において取り入れられておりますが、その経緯を申し上げますと、最初に昭和二十四年に身体障害者福祉法が制定される際に国有鉄道運賃法の一部が改正されまして、旧国鉄が公共企業体としての性格を有することから、国鉄運賃については介護を要する重度身体障害者及びその介護人の運賃を半額にする旨の規定が設けられたことを受けまして、旧国鉄が翌年の二十五年の四月から割引制度を導入したことが契機になっております。それ以降他の事業におきましても、旧国鉄の例に倣いまして私鉄各社が昭和二十五年以来順次割引制度を導入しておりますし、また乗り合いバスは二十六年から、航空についても四十九年から割引制度を設けてきているところでございます。
 このような経緯から、身体障害者運賃割引制度は、身体障害者の福祉を図ることを目的としまして、身体障害者及びその扶養者の経済的な負担の軽減を図り、その自立の促進を図る観点から設けられたものと理解をいたしております。
○下村泰君 そうしますと、「フルムーン」とか「ナイスミディ」とかというのあるでしょう、いろいろと。ああいうものの割引というのはどういう発想から始まったんですか、あれは。
○政府委員(塩田澄夫君) 「フルムーン」とか「ナイスミディ」とか、そういう割引制度はそれぞれの運送事業者がその経営の改善を図るために営業的な観的から導入している制度でございます。
○下村泰君 早い話が、大勢の人にできるだけ利用してもらう、そして売り上げを上げる、そのためにはいろんな方法を考える、そういうことですね。
○政府委員(塩田澄夫君) そのとおりでございます。
○下村泰君 それはそれでいいんですよ、それはそれでね。ただ、内部疾患の方々というのは、これは運輸大臣、聞いておいてくださいよ。今昭和二十四年に身体障害者福祉法ができて、割引はそのころからできたと。ところが、内部疾患の人というのは後なんですよね、これは、この発生は。そのために外されておるわけですよ。そこのところを考えてほしい。
 それと、この方たちは、先ほども申し上げましたように、もちろんなかなか動けないんです、そう素早くは。百メートルを何秒で動くなんてそんなこととてもじゃないができっこない。そういう体の持ち主なんですから、割引をしてくれという人数がそうたくさんいるわけじゃない。ただ、この方たちにとりましても、ふるさとへ行くとか、あるいは冠婚葬祭に出るとか、あるいは時によってはそれはリハビリの意味を込めた旅行もありましょう。そのことはこの人たちにとっては最大の喜びであり、そんなに年中行事としてあるわけじゃないんですよね。それだけに数が知れておるということなんです。ですから、何とかしてこの方たちにも割引制度を賜るわけにはいかぬのですかと私は言いたいんですが、いかがですか。また答えは同じですか。
○国務大臣(石原慎太郎君) 決してボールを厚生省にパスするつもりはないんですけれども、エレベーターをつくるとか、それから例えば過疎バスみたいに、御老人と子供とあと身障者の方が主に使われて、普通の人は自分で運転して行っちゃうというような、バスを残すなんということは運輸省の本質的な仕事でありますけれども、これはもともと公的な政策を施行するときに一企業あるいはお客さんたちに負担をかけるというのはちょっと筋から違う。しかし、それでも心身障害者の方にはやっているわけですからね。下村委員の言われることはよくわかるんです、私、自分の答えが歯切れが悪くなるのはいかにも残念なんですけれども。
 例えば国会議員のパスですね、あんなものはJRになっても国が買い上げて、大方の野党の方が反対みたいだけど、自民党はあれをもう撤廃しようと言ったんですが、何か変なことになっちゃったんですけど、あるいは地方の議員だってそれぞれの地域のその交通の恩恵にただで浴しているわけです。そういうものよりは、私はその分少しでも振りかえてこういうものに使った方がいいんじゃないかという気が痛切にいたします。
○下村泰君 やりますか。
○国務大臣(石原慎太郎君) いや、積極的に検討をいたしますが、基本的には企業あるいはお客さんが負担するということですからね、範疇としてやっぱりちょっと違うということだけはひとつ御了承いただきたい。
 しかし一方、それじゃ国会議員のパスなんということになると、非常に私は矛盾といいましょうか、こう、割り切れないものを感じますです。(発言する者あり)
○下村泰君 むしろ、お仲間の方でいろいろと外野席から声が飛んでおるようですけれども、何か内輪もめなさらないようにしていただきたいと思いますけれども。
 とにかくこの方たちはもう所得が低いんですよね。で、働けない方も中にはいらっしゃいますし、いわゆる年金をいただいている方もいらっしゃいます。それだけに割引というものを切望しているんです。ですから、そこのところをひとつお考え願いたいと思います。
 こういうときに、これ中にはテレビを見ている内部疾患の方もいらっしゃいましょう。それはつらいでしょう、答えるのに。その人たちから見れば、石原さんの顔は本当に鬼に見えますからね。「太陽の季節」なんて、そんなことを言っておられませんよ、太陽の爆発みたいな顔になっちゃって。そういうふうになります。それだけに、私はこれはいわゆる政治家として――私はもう政治家なんて大きな気持ちは一つもございませんけれども、これはここに御列席なさっていらっしゃる全閣僚の皆様で考えていただいて何とかしていただきたいように私は思いますけれども、代表して総理いかがでしょうか。
○国務大臣(竹下登君) この割引の問題は毎度御質問がございますが、今石原運輸大臣からお答えいたしましたように、他の乗客がそれを負担するという建前になるわけでございます。したがいまして、ただ福祉政策だけでそれをさらに拡充していくということについてはいろんな問題があるということはひとつ御承知おきいただきたいと思います。
○下村泰君 それでは、低肺機能の話はこのくらいにいたしまして、今度は子供のことについてちょっとお話をしてみたいと思います。
 失礼ですが、総理、お孫さんはいらっしゃいますか。
○国務大臣(竹下登君) いらっしゃいます。
○下村泰君 これは驚いた、大変御丁寧なお言葉で。
 今、あれですか、総理、お孫さんと御一緒にお住まいですか。
○国務大臣(竹下登君) 一緒にはおりません。
○下村泰君 一緒にいないんですか。どちらにいらっしゃる……。
○国務大臣(竹下登君) 私、女の子ばかりでございまして、みんなお嫁に出しておりますので、それぞれのところにおります。
○下村泰君 私は幸いにして今長男の孫が二人おりまして、うちは男の子ばっかりだったんですが、幸いに長男が二人目に女の子を産んでくれまして、孫ほどかわいいものはないと言いますけれども、多分総理もお孫さんに会うときは、本当に国会の渋面と違って、満面に笑みをたたえて、しわくちゃな顔をしていると想像つきます。
 そのお子さん方は、果たして総理のおっしゃっているような「ふるさと創生論」というような状況の中でそのお孫さんたちは生活なさっていらっしゃるんでしょうか。
○国務大臣(竹下登君) その暮らしている地域に対する大変強い独自性というようなふるさと意識というのがどこまであるかということについてはまだ私もにわかに理解をしておりませんが、徐々にそうした意識がつきつつあるではないかというふうに見ております。
○下村泰君 実際私が子供のころ、私自身は浅草で生まれ育った人間ですけれども、それでもそのころの東京にはそれこそふるさとのにおいはありました、浅草でも。そして、我々子供が遊ぶに十分な空き地もありましたし、それから登ることのできる木もございました。もうまるっきりないですよ、今東京には。隅田川でロープで囲いをしまして、そこに赤い旗を立てまして子供たちはそこで水泳をやったものです。そのロープから外へ出ますと水上警察のお巡りさんにつかまるんです。これがまた追っかけっこするのが楽しみでやったことがありますけれども、そういうものは今東京に一切ございません。
 そこで、ある小学校の女性教師です、これは埼玉県の志木第四小学校の佐藤先生とおっしゃる女性の先生なんですけれども、この先生がカメラを持ちまして塾通いをしている子供たちの実態を撮って歩いたんですね。で、粘りに粘って撮った、そしてその記事がここにあるんですが、
  塾通いの子どもたちの食事はいつも立ち食いそばか、ファーストフード店。真冬でも冷たいジュースを飲んでいる。運動不足の解消のためなのだろうか、電車内のつり革にぶら下がっている。改札口を通る時もマンガを手放さない。子どもたちには遊ぶ暇もなく、家族で夕食を食べることもないようだった。
  と同時に、「子どもってたくましいと思った」ともいう。「与えられた環境の中で精いっぱい生きている。大きな器で育てれば大きく育つし、小さな器で育てれば小さく育ってしまう。それだけに、教師の職業は重大だ」。
御本人はこういうふうにおっしゃっているわけですね。まるっきりこれサラリーマンと同じような動きをしておるらしいんですけれども、こういう記事をお聞きになって、まず文部大臣、どういうふうにお感じになりますか。
○国務大臣(中島源太郎君) 幾つかの御示唆のある話だと思います。
 一つは、そういう、多分小学生でございますか、小学生の生活にゆとりがない、こういうことでありましょうし、それは一つには、やっぱり昔は自分の未来像というものを胸に描きまして、そしてその将来の未来像に一歩でも近づくために、砂が水を吸い込むように新鮮な知識、体験を吸収していく、これが青年像、少年像だと思うんですが、今はどちらかというと、えてして進学という厚い――厚くはないんですけれども、厚い壁のような目標に向かってどうしても努力し過ぎるという感じがありまして、学校教育のほかに塾通いをする、そして自分の自由な時間がだんだん減っていくということは不幸なことだと思います。
 そういう点では、これからは、学校教育はもちろん必要でありますけれども、それは生涯の学習の中の基礎的な重要な部分だという位置づけをいたすのと、それから学歴偏重というものを両方からなくしていかないと、どうしても進学第一主義でありますとゆとりがだんだんなくなる。したがって、学校の方も開かれた個性重視の教育をしていきましょうと。また受け入れる社会の方も、やがてその青少年が社会に出られるころは学歴偏重を打破するような、個人個人の人間性あるいは創造性を評価して社会で受け入れるような、そういう形をして学歴偏重をなくしていくということもこれ必要であろうと思います。もちろん、教育というか社会環境ですね、昔、おっしゃるように家庭のすぐそばに空き地があった、どこでも遊べるという環境はだんだんなくなっておりますけれども、せめて教育環境の中では今申し上げたようなことを心がけていきたい、こう思っております。
○下村泰君 厚生大臣。
○国務大臣(藤本孝雄君) 確かに昔と比べまして子供の社会に大きな変化があるように思います。自分の子供のときと比べてどう変わったかなということを考えるわけですけれども、一つは、やはり兄弟がほとんどない、それから塾通いというような問題もありまして、友達や兄弟で青空のもとで伸び伸びと遊ぶというようなことは少なくなっているのかなというふうに思います。
 しかし、昨年暮れに児童施設に私参りまして、収容されている子供と一緒にもちつきをいたしました。非常に元気はつらつとしておりまして、その点は安心して帰ってきたわけでございますが、やはり一番大事なことは、はつらつとして心豊かに育つようなそういう環境を我々は十分に気をつけて提供してあげなきゃならぬなと、そういうふうに思っております。
○下村泰君 総理いかがでしょう。
○国務大臣(竹下登君) 全くお二人の大臣からも
ろもろお述べになりました心境と同じ心境でございます。
○下村泰君 こういうふうな事態は、政府が考えている教育改革ではとてもよくならないと私は思いますよ。もう教育だけの問題ではなくなってきています。子供心が失われております。もしそうだとしたら、これは我々大人が大変申しわけないということになります。
 手元に、朝日、毎日、読売、三紙の過去十年分の五月五日の社説のタイトル、サブタイトルもございます、これを抜き書きしたものがございます。
 五十二年、これは毎日です、「子供たちに子供らしい生活を」。読売、「こどもの日と「国際児童年」、「子どもは多忙で疲れている。子どもの戸外の遊びが減ったこと」。そして五十六年になりますると、毎日が「子供に自然との接触を」。五十七年に、これも毎日になりますが、「親も子もせわし過ぎないか」。五十八年に朝日、「尾を垂れた鯉のぼり」というんです、尾っぽを垂れたこいのぼりですね。五十九年になりますと、朝日が「一人で方角を決められる子に」、自分で方角を決められる子に育てなければいかぬということを言っているんですね。このころはよく、会社でも転勤を命ずると、うちへ帰ってパパとママに相談してくるという子供がいたんだそうで、卒業式にも親がついてきたとか、それから入学式にもついてきた、東大に。これはそんなようなうわさが飛んだときですね。それから五十九年に読売ですが、「子供たちに「遊び」の復権を」。これが六十二年、昨年になりますると、朝日が「与えられ過ぎるつらさ」、それから読売が「子供の人権は守られているか」。こういうふうに記事がいろいろ変わってくるわけです。
 これをまずお聞きになりまして、文部大臣、厚生大臣、それから総理大臣に御意見を伺いたいと思います。
○国務大臣(中島源太郎君) 社説の中でやはり世相とそれから子供のあり方が如実にわかるという点ではいい御指摘だと思います。
 特に、今おっしゃった自分で方向が決められないということは、今私も申し上げましたように、学歴学歴、進学進学進学と行きまして、そして大学進学に一生懸命やられる。大学を出るころには自分の進むべき方向がまだ定まらないというのは全く逆でありまして、先ほど申したように自分の未来像、将来像というものを胸に描きながら、そのために学び加えていくという立場であるべきであろう、こう思います。
 また、それからもう一つは環境でありますが、教育の中でそういうことを言わざるを得ないというのは、反面、遊びの空地空間がなくなったということでもありましょうけれども、青少年活動の中で野外、自然に親しむ活動、これを今普及させるように教育の中でもやっておるわけでございます。それからまた、かわいそうなんですけれども、余り家庭に閉じこもらないで外に出ろと言っても、家庭のそばに空き地がなくなったという点はもう本当に残念でありますけれども、せめて今申したような野外活動、自然に接する活動をさらに活発化してまいりたい、こう思いました。
○国務大臣(藤本孝雄君) 厚生省も五月五日にはこいのぼりを上げます。私も上げたいと思っております。
 今社説をお伺いいたしておりまして、いかに子供の健やかな成長が重要であり、しかもそれに対する社会的な要請が非常に大きいかということを改めまして再認識いたしました。厚生大臣といたしましても、健やかな子供の成長のためにいろいろな面で援助いたしてまいりたいと考えております。
○国務大臣(竹下登君) 今おっしゃった見出しのところだけ私もメモさせていただきましたが、世相の面から見た分析で一々もっともだなと思って私自身も感じたわけでございます。
 私も若いころ中学校の教師をしておりました。それからボーイスカウトのリーダーをしておりました。したがって野外活動などということは今でも一番いいことだと思っております。ただ、私自身はそれこそ人口四千数百人の過疎地帯の出身なものでございますから、窓をあければ公園みたいなところにおったわけでございますので、そういうところから来る感じを見ますと、本当に都会のお子さんは気の毒だなと。よく中曽根前総理が放牧教育なんて言っておられましたが、可能な限り野育ちの子供が育っていけば方向は自分で定めるようになるだろうと思います。
○下村泰君 総理はお幸せでした、そういうところに住んでいらしたのですから。藤浦洸作詞でしたね、窓をあければ港が見える。窓をあければそれこそ公園が見える、山が見える、木が見える、結構な――もう全然今の子供はだめですからね、今窓をあけないですから、あけたって目の前はコンクリートですから、今の子供たちは。
 こういう教育問題になるとルソーという方が出てくるんですけれども、子供を教え育てるとは、アイスランドの氷の上でもクレタ島のやけつく大地のもとでも生きていける、そんな人間をつくることだと、こういうふうにおっしゃっているんだそうですけれども、今の子供たちは全然これと逆ですね。ファミコンだとかテレビ漫画、うちの孫もそうなんですが、あんなものばっかり見ていますね。外で遊ぶ工夫というのは余りしません。もっとも外がありませんから、うっかり出ればひき殺されますからね。
 子供たちのこういうアンケートがあるんですね。小中学生を対象にして家の近くに欲しい遊び場所、これはもう今文部大臣がおっしゃったとおり。男の子はサッカーや野球のできる原っぱや空き地を望む、女の子はウサギや牛馬のいる牧場、水遊びのできる川、レンゲやタンポポの咲く田や畑、こういうふうになるんですね。ですから、女の子と男の子では違いますけれども、やはり空き地というものがいかに必要か、こういうことになるわけです。そうしますと、今の公園なんというのは、公園というような名前があったってコンクリートですからね、下が。これはもう大人のあくまでも設計、大人の知恵でつくったものですから子供には向かないわけなんです。こういうふうなことをこれからはどうしたらいいとお思いになりましょうか。まず文部大臣。
○国務大臣(中島源太郎君) 二つありまして、今、一つの方の公園その他生活環境の面になりますと、これは私も何とか改善していく方法はないだろうか、していただきたいものだという願望が先に立つわけでございますが、そういう中でも、できるだけ教育の中で自然に接するというような時間をとることは可能でございますので、身近なところにない場合には多少遠出をしても自然に接すると、そういう時間をとるように努力していく以外になかろう。あるいは森林だけでなく水に接するとか、あるいは洋上で勉強するとか、あるいは少し遠出をするようなことにつきましても、例えば修学旅行につきましては内容を少し緩和するようにいたしましたり、そのようなことの機会を広げるということが努力目標かなと、こう思いました。
○下村泰君 時間がなくなってきましたので、取り急ぎ行きたいと思います。
 昭和二十二年十月二十五日の第一回国会の本会議において児童福祉法の趣旨が述べられております。私、読みます。
  本法案は、消極的には、終戦後の社会的混乱に伴って著しい増加を見た孤児、浮浪児等に対する緊急の措置をとり、欧米諸国に比してきわめて高い乳幼児死亡率に示されるような乳幼児の保健状態を改善するとともに、積極的には、さらに進んですべての児童につき、心身ともに健やかに生れ、かつ育成され、またひとしくその生活を保障され、愛護され、もってその福祉が増進されることを企図しているのであって、単に従来の少年教護法及び児童虐待防止法を吸収したのみでなく、はるかに大きな構想をもつ、児童に関する総合的法律案であります。
こういうふうになっておるんですが、「はるかに大きな構想をもつ、」という言葉に随分反してい
ると思うんです、四十年たっても。一体この「大きな構想」というのはどういうことなんでしょうか。
○政府委員(長尾立子君) お答えを申し上げます。
 ただいま先生がお読みになりましたように、児童福祉法の法制定時は非常に大きな社会問題でございました戦災孤児の問題があったわけでございますが、こういった要保護児童に限りませんで、日本の将来を児童の将来にかけるという意味で児童一般の福祉を積極的に増進するということをその趣旨にうたっておりまして、その意味で画期的な立法である、こういう委員長の御説明であったかと思います。
 そういう意味では、私どもの対策の中で戦災孤児等の対策、障害児、障害を持っておられますお子様の対策に加えまして、すべての児童を対策の基本に据えてやってまいったわけでございまして、この中では、今お話にございました子供の遊び場という観点では、例えば児童館、児童遊園等の整備を進めてきたわけでございます。また御承知のように、働くお母様方のための保育所は、この当時千六百カ所でございましたけれども、現在は二万二千八百カ所というような形で増加をいたしておりまして、国民の皆様にとりまして最も身近な福祉施設ということになっているのかと思います。こういった児童全体を視野に置きまして私どもが行政を進めるという姿勢は、今後の高齢化時代におきましても私どもの旨とするべきところと思っておりまして、今後とも施策の充実には努めてまいりたいと思っております。
○下村泰君 今いろいろとお話がございましたけれども、とにかく「はるかに大きな構想をもつ、」というこのはるかに大きな構想と現状は全然違っているような感じがするんです。
 先般来、子供の間に考えられないような事件が起きていましょう。若い男女から金を奪おうとして殺してしまったやつとか、どういうかけをしたのか知らぬけれども、ギャンブル、ばくちをして先輩に払えないからといって殺しただとか、きのうも何かいじめられるからといってナイフを持っていてももを刺したとか、こういうことが起きているわけなんです。
 ですから、これはもういつも私は言うことなんですけれども、何でこの日本という国はほかの国の何かまねをしなきゃ自分で独自のものができないのかなという気もするんですけれども、この話はちょっと後にしまして、警察庁から出された子供たちの意識調査というのがありますね。わかっていてもやってしまうのが非行少年、やっていいと思うが実際にやらないのが一般少年と、こういう分け方をしているというんですね。こういうふうな警察庁の子供の意識調べが四十年後の今日で、四十年前にこれだけの立派なことを言っているんですが、文部大臣、これを聞いてどうお思いになりますか。――いや別に、どうぞ御感想だけで結構です。
○国務大臣(中島源太郎君) 感想と申しましても、先ほどから、文教行政を預かる身といたしますと、その中には小学校、中学校を通じましてもう少し伸び伸びできないか。これは空間とか時間の問題でなくて心の問題だと思いますので、一言で言えば、教室が自分のすべての世界だと思わずに、八十年の人生でありますから八十年の人生をいかに有意義に社会人として全うするかという、もう少し大きな目標を立ててその目標に向かって歩み続けるような、そして新しい知識を次々吸収して伸びていくような、そういう若い芽のような青少年であってほしい、私は、やはり文教を預かる身としては、それを目標にしていくことによりまして今のような御心配が徐々に排除されていくということを一層明確にいたしてまいらなければいかぬな、そういう実感を受けまして、一生懸命やらしていただきます。
○下村泰君 私、こういうお願いがあるんですけれども、もちろん福祉教育の拡充はもう必要でございますからこれもどんどんしていただいて、もう一つ、福祉刑、刑罰です。ボランティア刑と言ってもいいかもわかりません。これは西ドイツとかイギリスそれからオーストラリア、ニュージーランドの方でやっている実例があるんです。同じ罰するのでも、つまり少年院とかなんとかというんじゃなくて、いわゆるボランティア活動をやらせるわけですね。
 西ドイツで私こういう話を聞いたことがあるんですが、やはりこういう重度障害児者の施設へ、成人式を迎えてからでしたでしょうか、あるいは日本のように高等学校を卒業してからでしょうか、女性がそこに一年間奉仕する、途中でやめちゃう人もいるそうですが、決められた一年間をきちっと奉仕した女性は引く手あまたの嫁の口が来るんだそうですよ。それだけのことが辛抱できる女性ならば大丈夫だろうと。女に限らず男もこういったような制度を設けてそういうところで活動させる、福祉の手伝いをさせる、重度心身障害者の施設、そういうところでも何でもいいでしょう。そういう福祉刑というようなものが考えられないものか、やってみる必要があるような気がするんです。
 これを最後に私の質問を終わりたいと思いますが、法務大臣からもひとつお聞かせください。やれるのかやれないのか、やってみる気はあるかないか。
○国務大臣(林田悠紀夫君) 今のお話は、刑の執行にかえまして社会奉仕命令制度、こういうようなものがイギリスなんかにあるわけでございます。これにつきましては、日本の国情としてそれに合うかどうか、要するに、監視をいかにしていくかとか、あるいはどういう人をそれに適合させるかとか、いろいろ問題があると思います。十分イギリスなんかの制度も研究をいたしまして考えていきたいと思います。
○国務大臣(藤本孝雄君) 少年の時代に福祉施設に入所をしてボランティア活動に従事する、これは、その人その少年の人格形成にプラスするわけでもありますし、また福祉マインドという極めて現在社会の要請にあるそういうものをつくる上でも私は賛成でございます。しかし、犯罪者の刑罰として福祉活動に従事するということになりますと、これはいささか他の関係者との間を考えましても問題があるのではないかな、福祉罰ということを考えるといたしますと、そういった福祉施設に入所をしてボランティア活動をするということではなくて、例えば公園で清掃に従事するとかそういうものの方がよりいいのではないかな、そういうふうに考えております。
○下村泰君 文部大臣いかがですか。軽犯の方ですが。
○国務大臣(中島源太郎君) 御趣旨の説とはちょっと違うかもしれませんが、学校におきまして特別活動の中で奉仕体験というものをさせておるわけでございます。
 その中では、例えば老人ホームへ参りまして奉仕体験をする、それはちょっと教育の方から申しますと、そういう奉仕体験を通じて社会活動の意義を青少年に知ってもらうということと同時に、もう一つは、これから高齢化社会に入りまして高齢者の方々の知恵をもう一度若者に還元してもらおう、そういう接点が少ないものでございますから、一方で若い方は奉仕体験を、そして高齢者の方々からはもう一度リーダーとして後輩に知恵を与えてもらうための事業もやっていきたい、こう思っておりまして、この辺は、例えば金目で言っては失礼でありますが、六十三年度では二億二千万ほどとりまして高齢者と若者の接点をつくっていく、こういう活動も活発にしてまいりたい、こう思っておるところでございます。
○国務大臣(竹下登君) いわゆる刑罰というものから来る我々の感じとそれから福祉に対するボランティアというものとの融和性というのを端的に理解するのは大変難しいことじゃないかな、したがって、やっぱりボランティアというのは麗しいことですからそれを体験する必要はあるけれども、それが刑罰そのものの事実として存在するのはどんなものかなあというような印象で聞かしていただきました。
○下村泰君 ありがとうございました。
○委員長(原文兵衛君) 以上で下村泰君の質疑は終了いたしました。
    ─────────────
○委員長(原文兵衛君) この際、石原運輸大臣より発言を求められておりますので、これを許します。石原運輸大臣。
○国務大臣(石原慎太郎君) 先ほど私が国会議員のJRパスの導入の経緯について言及した部分は、事実と相違しておりますので、取り消します。
○委員長(原文兵衛君) 石原運輸大臣より再発言を求められておりますので、これを許します。石原運輸大臣。
○国務大臣(石原慎太郎君) 先ほど私が国会議員のJRパスの導入の経緯について言及したことは、事実と相違しておりますので、おわびし取り消します。
    ─────────────
○委員長(原文兵衛君) 次に、青木茂君の質疑を行います。青木茂君。
○青木茂君 きょう質問の途中で税調会長にお願いしたいと思いましたけれども、何かきょうは税調の総会かなんかでお急ぎだそうでございますから、ちょっと質問の順序を変えまして、冒頭に申し上げてすぐお引き取りをいただくということにさしていただきたいと思います。
 それでは、まず税調会長にお伺いをしたいんですけれども、先年特定支出控除ですか、これができましたときに、政府税調の方は給与所得控除との二分の一比較というふうに答申をされた。ところが、党税調のところへ参りまして給与所得控除との全額比較ということに変わってしまったという経緯がございます。この点につきまして、会長は現在でも二分の一比較の方が正しいというふうにお考えでございましょうか。
○参考人(小倉武一君) 給与所得者の必要経費についてどういうふうに所得税制上考えるかということについては常々問題になっておりました。
 そこで、たしか一昨年ですか、六十一年の十一月の税制改正に関する答申の中では、今お尋ねの中にありましたように、給与所得についての控除を二つに分けまして、一つは経費に当たる部分、一つは給与所得という特殊の事業所得と違った性格ということにかんがみてそういう手当てをするというふうに分けまして、したがって実額経費に当たる部分の二分の一については、それを超えるような特殊の支出がある場合は考えようじゃないか、二分の一を超えましてもその超えた分を考えようじゃないかというような答申をしたことがございます。ただ、その後、年度改正のときの討議におきましては、実額控除というのをいろんな費目について限定をしないで申請によって処理していくということになりますと、これは大変な手数がかかるおそれがあるということで、費目をできるだけ制限をしたいというような意見もあったことは事実であります。
 その後、お話しのように、党の税調でもいろいろ御意見があったようでありまするし、六十二年度の税制改正の答申におきまして、ただいまお尋ねのありましたようなことにかえまして、実額控除のできる品目を五つでございましたか、に限定をするということで今日に至っておるということでございますが、ことしから始まるということでありまして、実際上まだ適用されていないといいますか、六十三年から始まるんじゃないかと思いますが、したがいまして、現在のところまだそれをどうこうするというには少し早過ぎるのではないかというふうな気がいたしております。
○青木茂君 私が伺いましたのは、政府税調の段階では特定支出控除が給与所得控除の二分の一を超えた部分、ところが党税調の段階で全額との比較になった。会長は政府税調の答申どおり二分の一比較の方が正しいというふうにお考えでしょうか。
○参考人(小倉武一君) 政府税調の方で二分の一ということにいたしましたのも、それなりに理由があるかと思います。給与所得控除という性質には種々なものがあるので、大まかに言えば半々に分けまして、特別の控除と、それから経費に当たる部分というふうに分けてみるということも一つの考え方であったろうと思います。
 しかし、先ほど申しましたように、実際問題としまして実額経費をどう見ていくかということは、やはり野放しにしておきますればこれは税務行政上大変面倒なことも起こってくるというようなことで、ある程度限定をしなければならぬというふうには私ども感じておりまして、それは行政上国税当局等が処理すれば足りるんじゃないかとは思っておりましたけれども、それはやはり法律事項みたいなことに関連しますので、行政的にそれを処置するということはなかなか難しい。そこでさかのぼって、一体二分の一というようなことにしたのが適当かどうかというようなことが六十二年度の税制改正のときに問題になりまして、あわせてたしか当時の党の税調の考え方なども参照しまして現在のようなことにいたしましたので、どちらがいいかということはいろいろお考えによって違ってくるところではないかと思います。
○青木茂君 会長はいつもほかのところでは歯切れがいいんだけれども、この問題はどうもはっきりしません。よくわからないんですね。私の質問に対するお答えとしてはよくわからない点があるわけです。
 ところで、会長はいろんなところで大変歯切れよくいろんな御意見を述べておられます。その中で特に、週刊朝日に対談でお述べになりましたことにつきまして、いろんな人から、あそこまで言われておまえは黙っておるのかという苦情がかなり来ております。特徴的なことは、サラリーマンだけでなしに都市で商売をやっていらっしゃる方々からも苦情が非常に来ている。ここで会長の実は真意を伺いたいわけでございますけれども、まず読み上げてみます。全部を読み上げることができませんから、苦情が来た部分を読み上げてみます。
  サラリーマンは冷遇されてるかね。数が多くなったんで、声が大きくなっただけだ。他の仕事と比べて、税法上とくに勤労者の所得税が重いなんて比較研究を読んだことない。サラリーマンがそんなに辛ければ、農家に婿入りしたり、八百屋や魚屋を始めたらいいんだ。できもしねぇくせに、税金が高ぇなんて、とんでもねぇや。
歯切れがいいですね。その次、
  クロヨンだ、トーゴーサンピンだとかいう、最近の日本人の根本精神がいかんよ。多少の不公平はどの国にだってある。
税調会長がこうおっしゃるんです。
 多少の不公平はどこの国にだってある。ないわけないが、自分だけが損してるんじゃないかと考えるのは、日本のサラリーマンぐらいだ。そんな下品なこと、外国じゃ、だれも口にせんよ。――都会の人間は弱いものをすぐ虐待する。不愉快だ。
こういう対談記事があるわけなんです。ここまで歯切れよく、かなり下品におっしゃいました会長の真意をひとつ、私というよりむしろテレビを通じて全国の皆さんに御釈明をいただきたいと思うわけでございます。
○参考人(小倉武一君) もう数年前になりますけれども、イギリス、フランス等に参りまして、業種間の税制上の不公平あるいは徴税上の不公平について、日本で言っているようなクロヨンとかトーゴーサンといったような言葉に類するものがあるかということを大使館の方々にお尋ねしたことがございますが、そういう言葉は、イギリスやフランスあるいはドイツもあったかもしれませんが、ありませんと、なぜ日本にだけそういうことがあるんだろうかということに非常に疑問を持ったことがあります。しかし、フランスやイギリスだって税制上の不公平がないということはないわけですね。
 私の申さんとする趣旨は、サラリーマン労働者の税金、税負担が重いということであれば、こういう実態で重いということで不公正があるから減
税すべきだ、こういう御主張をすればいいので、ほかの職業の人がいかにも、税制上の不公平ではなくて、みずから脱税をしたりあるいは税逃れをしたりするということを余り声を立てて、それを理由にサラリーマン労働者の減税を要求されるというのはさてどんなものかというようなことが、真意とおっしゃれば、私の気持ちはそのようなことでございました。
○青木茂君 所得税を考える場合においてよく垂直的な不公平と水平的な不公平という言葉がございますね。水平的な不公平というのは、同じ日本人で同じ所得でなぜ職業によって税額が違うのかというのが水平的な不公平、そういうふうなその定義はよろしゅうございますか。
○参考人(小倉武一君) 水平的不公平という定義、私よく存じませんけれども、御指摘のように職域の違うことによって所得金額あるいは収入金額が同じであるのに税金は違うというようなこと、あるいは同じ職種であっても住んでいる場所が違うとか、あるいは何かの違いがあって所得税についての不均衡があるというような、同じような所得階級において不平があるというようなことを言うのだろうと思います。
○青木茂君 そうすると、今私が読み上げましたことについて取り消しも陳謝もしていただけないわけですね。
○参考人(小倉武一君) 今のお読みになりました文章は、私のしゃべっていることと無関係ではありませんけれども、あのような言論を、そのまま私がしゃべったということは、普通週刊誌等の性格上あり得ないわけです。国会の速記録を載っけたようなふうにはいかないわけで、でありますから私の言わんとする趣旨はさきのとおりで、特に陳謝するとかというふうなことは必要はないと思います。
○青木茂君 やむを得ませんな。
 私といたしましては、会長に三つのことを御提言並びに御警告を申し上げまして、終わります。
 とにかく、税制調査会の会長は取りまとめ役です。取りまとめ役の方が、幾らプライベートの場であるとはいえ、自分の意見をかなりエキセントリックな形でお述べになるということは、会全体が方向を喪失してしまう、かつて衆議院にも例がございましたけれども。やはり取りまとめ役は余りおしゃべりになり過ぎない方がいいんじゃないかということ。
 と申しますことは、税というものは納税者が、タックスペイヤーが喜んで出して初めて国家財政は成り立つわけなんだから、最大多数の納税者集団であるところの都市の人たち、これに対して余り刺激をしない方がいい。それをすると、政府税調のあれだけ立派な方があれだけ長い間の年月をかけて答申をしてくださったことに対して、私は国民が素直に受け入れない環境づくりになってしまうのではないかという危惧を持っておるということが第二点でございます。
 第三点といたしましては、小倉会長はいわゆる農林官僚として最高の地位に上がられまして、そして退官をされましてから政府の税制調査会の会長として長い間御苦労を願った。もう税の権威者、税の神様ある意味においては税の世界における豊臣秀吉みたいなものですね。(「褒め過ぎだ」と呼ぶ者あり)いやいや、そんなことはない、本当にそう思っています。偉いですよ。しかしながら、豊臣秀吉は晩年我が子かわいさの余り全体を見失って、とうとう豊臣家を滅亡に追い込んだ、そういう歴史の教訓もございます。まさか小倉さんがそういうふうにおなりになるとは考えておりませんけれども、人はそういうふうに見ることもあるんだから、どうぞひとつ御自重と御自愛をお願い申し上げる次第でございます。
 税調会長、お忙しいところをどうもありがとうございました。
 実は、最後まで小倉さんにおっていただきましてこの議論に参加をしていただきたいというつもりでおりましたけれども、いろいろ御所用ということを承っておりましたからあの程度でやめたんです。
 そこで、クロヨンというようなものが一体あるのかないのか、これは税務当局がしっかり資料を出してくださらないと計算できません。できませんから、在野においてはかなり乱暴な計算でこれを立証するより仕方がないわけなんです。その乱暴な計算の一つといたしまして、私は国民所得統計と税務統計と二つ比べてみたんです。もちろん統計の目的、性格は皆違いますから一緒にはならぬことはわかっています。しかしながら、被写体は同じなんですね。国民所得という被写体は同じなんです。だから、違ってもまさか小錦と寺尾みたいに違うわけはないんです。
 そういう形で計算をしてみましたら、例えばサラリーマンで見てみれば国民所得統計は大体百五十七兆円ぐらいで出ます。これに対して税務統計は百五十兆円ぐらいで出ます、所得金額は。これに対して農業の場合は、国民所得統計は三兆四千五百五億、税務統計は七千一百八十三億、事業所得は十六兆、それから税務統計が五兆です。こういうふうに出ます。ただ、農業、事業所得については申告して税金を納めている者、それだけの統計ですから、このままの比較はできません。例えば青色申告者で税金を納めなくていいというのは半分なんです。二分の一なんです、無資格者は。だから便宜上掛ける二をやってみたらサラリーマンの場合とほぼ似た性格の数字が出るんじゃないか、こういうわけで、すべて農業の方、事業所得の方に二を掛けてみて、そして国民所得統計と税務統計と比較したらぴしゃりとクロヨンと出ます。そういう意味におきまして、全然ないということは言えないと思います。
 片道で私ばかりしゃべっておったら演説になってしまいますが、いいですか、立ちっ放しで。
○委員長(原文兵衛君) どうぞ。
○青木茂君 まず、簡単なものから伺っていきます。
 最近ちまたでは、竹下内閣は何か機会を見てデノミネーションをやるんじゃないかというようなうわさがかなりございますけれども、これは大蔵大臣、総理大臣、デノミネーションというものが頭の中に少しでもおありになるかどうか、ちょっと伺っておきたいと思います。
○国務大臣(宮澤喜一君) 私は全く考えておりません。
○国務大臣(竹下登君) 幼少のころ、デノミネーションという言葉の持つ意味について勉強したことがございますが、今は勉強すらいたしておりません。
○青木茂君 市街化区域の農地の固定資産税について伺います。
 仮に百平方メートルの土地が農地としてあった場合の固定資産税は幾らになるでしょうか。
○政府委員(渡辺功君) 長期営農継続農地全体についての平均税額で百平米当たりを見ますと約四百十円でございます。これを宅地として課税した場合には一万四千七百円でございます。その差が徴収猶予されることになるわけでございます。
○青木茂君 このとおりです。ひどい差でしょう。これはやはり不公平と言わざるを得ない差ですよ。
 そこで、これは自治大臣でしょうか。宅地並み課税の完全実施はもう踏み切らなきゃならぬ、これは土地対策ということでなしに、税の不公平という観点からも踏み込まなければならないと思いますが、いかがでございましょうか。
○国務大臣(梶山静六君) むしろ農地と宅地を峻別して、農地は農地並み課税をする、宅地は宅地並み課税をすることが原則であります。そして、土地対策からいかがな手配をとろうかというのがむしろ応用編でございます。
○青木茂君 東京二十三区で農地というのはどれぐらいございますか。
○政府委員(松山光治君) 一九八五年の農業センサスで調べたところによりますと、東京二十三区内の五アール以上の農地を耕作している人の経営耕地面積、これが千六百ヘクタール余というふうになっております。ただ五アール未満の人もおりますものですから、税制との関係からまいります
れば大体同じころの面積はたしか千八百ヘクタールぐらい、こういうふうに考えております。
○青木茂君 東京二十三区内で私は農業が一つの企業として成り立つとは思えないんですよね。千八百ヘクタールと申しますと、これは新宿区全体の広さとほぼ同じじゃないか。この税の不公平の観点あるいは土地対策、そういう面から見まして市街化区域内の農地というものはどんどんどんどん宅地化を推進すべきだと思いますけれども、これはもちろん農水大臣と建設大臣は御意見が違うと思いますから、総理に伺います。総理いかがですかね。
○国務大臣(竹下登君) 必ずしも適切なお答えになりますのか、いわゆる土地の有効利用という観点からと、いま一つは、今自治大臣からもお答えしておりましたが、私は、農地課税というのはあるべき姿はそれであって、応用編が現在いろいろ議論をされておる問題点ではなかろうかという問題意識を持っております。
 と申しますのも、そもそもが一九四五年に戦争が終わりまして、四六年の十一月ごろでございましたか、自作農創設特別措置法、今六法全書を開いてみたらその法律はもうございませんでしたが、それによりまして、いわば元来農業を営む者すなわち耕作する者がその土地の所有をすべきだという原則から、いわゆる農地解放というものが行われて、日本の民主主義のこれは大原点であった。私は、そのころ若かったが農地委員をやっておりまして、青春の情熱をささげておったような気がしております。
 したがって、その原点というものから進んだものであって応用編、私もわからないわけじゃございませんが、原点はやっぱりそこにあるという考え方を申し述べてもそう時代錯誤ではないんじゃないかなと私自身は思っております。
○青木茂君 どうもわかったようなわからないような感じがありますけれども、こういうふうにとにかく固定資産税、今お見せしましたように余りにも差が激しいではないかということ、そしてまた土地対策の面からいきましても、東京二十三区で仮に農地が宅地になったら私は八十七万戸の家が建つと思いますから、ぜひひとつ前向きに御検討をいただきたい。
 また、農業をおやりになりたい方は当然やっていただいて結構なんですね。これは結構だけれども、その場合は固定資産税はやっぱり市街化区域の中においては宅地並みにお払いいただくというのが正しいんじゃないかと思います。この問題はこれで終わります。
 それからもう一つ、これは自治省でございますか、東京都が地価対策といたしまして都市計画税の半減を言いましたときに、自治省は余りいい顔をしなかったですね。これはちょっと自治大臣、どういう理由だったんでしょうか。
○国務大臣(梶山静六君) 一月の何日かちょっと失念をいたしましたけれども、都知事の来訪を受けまして、人口定住の確保を図るために都市計画税の減額をしたいと。私は都市計画税の減額に反対はいたしておりません。ただ、不均一課税が悪いということで申し上げております。ですから、理論的にはわかるけれども、文理上はやって悪いということじゃございませんから違法とは申し上げませんが、ただ思いとどまるように十分御忠告を申し上げた次第であります。
○国務大臣(佐藤隆君) 農地と宅地ではそもそも評価が違うわけでございますから、さっき数字をお示しになりましたけれども、そのもとにある評価が違うということもつけ加えていただきませんと、またテレビを見ておられる方がよくわかりませんので、それだけつけ加えておきます。
 なお、建設省と農林省とどうせ意見が違うということでございますけれども、随時話し合いをして進めてきたところでございます。先ほどの総理の答弁も既にございましたので、ちょっと早口で申し上げますけれども、補足をさせていただきたいと思います。
 市街化区域は都市計画法上おおむね十年以内に優先的計画的に宅地化すべき区域であり、農政上の扱いも農地転用は届け出制とし――届け出だけでいいんです。それから、基盤整備等の効用が長期に及ぶ施策は行わず、災害復旧、防災普及等、当面の農業の継続に必要な最小限の施策のみを実施することといたしております。他方、現実には都市施設の整備の進展との関連もあり、市街化区域内でまじめに農業を継続しようとする者が存在することも事実であり、この点はお認めをくださいました。生鮮野菜の供給源として一定のウエートを有しております。このほか市街化区域内の農地は緑やレクリエーション空間の機能、大気の浄化、洪水調節等環境保全の役割を果たしております。市街化区域の本来的性格と現実の状況を踏まえ、私どもは市街化区域内に存続する農業についてはその継続が可能となるよう配慮すべきものと考えております。こういうことでございます。
○青木茂君 都市計画税の質問をしていたら、ほかのものになってしまったから……。
 環境保全でしたら、イギリスのように公園を中心としたところの緑の場というものをつくるのが私は都市政策としては本来の形だろうというふうに考えております。時間があれで税制論議に入れませんから、税制論議にぼつぼつ入っていきたいと思います。
 きょうはいわゆる新型間接税についてはまだ論議をする気はないわけなんですけれども、ただ、非常に国民の意見が新型間接税につきましてあっちへ行ったりこっちへ行ったりしている。なかなか完全な意味において国民のコンセンサスを得ることは百年河清を待つごとく難しいだろうと思います。そこで万が一にも、これは私は賛成だ反対だという問題は抜きにしてですよ、万が一にも何らかの意味の課税ベースの広い間接税を御採用になるということになった場合も、これだけ国民の世論が割れていることなんだから三年間ぐらいの時限立法にしてやってみて、三年たってからもう一回メリット・デメリットというものを比較勘案して、最終的にやめるのかやるのか決める、それぐらいの慎重さというものがこのテーマについては必要なんじゃないかと思います。
 この時限立法説につきまして大蔵大臣と総理の御見解を承りたいと思います。
○国務大臣(宮澤喜一君) 新しく基本的に税制の抜本改正をいたそうとしておるのでございますから、十分国民に納得をしていただけるものでなければなりませんし、もとより国会がお認めいただけるものでなければなりません。成案を得るにつきましては十分に慎重にやるつもりでございます。また現にそうやっておりますし、過去の経験をも反省しつつ、ただいま税制調査会等を中心に、私どもの党内でも検討をしているところでございます。
 慎重には慎重を重ねて案を練りましてやがて御審議をいただきたいと思っておりますが、大変に重いそのような改正でございますから、これを比較的近い将来にもう一遍変えることあるべしといったようなことでございますと、これはやはり一つ税が行われますとそれなりに国民の側でもそれに対応される。経済社会がそれに従って形づくられてまいりますから、何と申しますか、朝令暮改といったようなことになりませんように慎重に案を練って御審議をいただきたいと考えております。もとより、誤りを改むるにはばかっているわけではございませんけれども、提出いたします前にその点は十分考えて、成案を得ました上で御審議を仰ぎたいと思っております。
○国務大臣(竹下登君) 大蔵大臣の答えのとおりでございます。
 私どもが今こいねがっておるのは、あくまでもシャウプ以来の抜本改正ということでございますから、ある種の租税特別措置等に見られるごとく時限立法にするということを前提に置いて考えるというようなことは全くこれはないことではなかろうか。税というのは確かに、なれるということをよく申しますが、けものへんに甲と書いた字の狎れるではなく、まさに習熟するというためにもやはり朝令暮改的なことは避けるべきものであるというふうに考えます。
○青木茂君 この問題は、しかし余り政治的に扱わない方がいいと私は思います。
 と申しますことは、先般、ヨーロッパ諸国の税制を視察にやらせていただきましたときに、各国とも取引高税的な非常に悪い税金がまずあったんですよ。悪い税金があって、その悪い税金を改めるということで、いわゆるEC型付加価値税を導入した。だから、悪い税金をいい税金にするんだから、これは国民も与党も野党も何の異論もなくストレートに来たわけなんです。だから、悪い税金をまずつくっておいて、そしてそれがだめだからEC型がやはり一番いいんだというような政治的な手腕、これはないでしょうね。
○国務大臣(宮澤喜一君) 前回の政府提案が国会で御審議をいただけずに廃案になりました経緯を考えますと、あるいはそれより以前に政府提案が発表されましたときに、国民から起こった反論の中に、やはり非常にわかりにくいという部分があったと思います。そのわかりにくい部分の一つが付加価値といったような物の考え方。それは日本語としても確かに付加価値というのは熟さない言葉で、これはシャウプ税制で使われたわけでございますからそれからもう四十年近くたっておりますけれども、国民にはやはりちょっとなじまない言葉であった。物の考え方がなじまなかったのではないかと思いますが、青木委員のおっしゃいますように、まさにヨーロッパの国々はいわば累積的な税をやっていまして、これはおかしい、それはおかしいのでネットの付加価値で課税すべきであるというふうに国民の理解が進んできて付加価値に至ったんだと私どもは理解しておるわけでございますが、それはそういう社会的な実際の体験をして、その上で国民の理解に達したという経緯があったのではないかと思っております。
 そういうことから考えますと、やはり国民自身が一つのことをやってみられて、そしてその体験の中から何かをまた求められるということであれば、それはもうまことにしかるべきことでございますけれども、政府自身が、国民がなかなかうまく腑に落ちない、胸に落ちないといったようなことで御提案をするということはやっぱり問題があったなというのが前回の反省でございました。
 あれ以後いろいろ御議論がございますので、あるいは今日になりますと、いやもうそのことはわかったと国民が思っておられるかもしれませんので、今これからどういうことを御提案するかというようなことを予断を持って申し上げておるわけではないのでございますけれども、やはりその国にはその国の国民の受け入れやすい物の考え方、風土というものもあるだろうということは十分に考えておく必要があろうかと思います。
○青木茂君 立派な答えだけど、ややちょっと含みが物騒なような気がしないでもないわけなんですね。EC型付加価値税というのが一番すぐれているということは、私もそう思うんですよ。ただ、それへ持っていくためには、EC型付加価値税については一つ隠し味があります、所得の完全捕捉という隠し味がある。そこを逃げて、所得の完全捕捉ができないようなおかしな間接税を先に持っていくというような政治手法をおとりになる気はないでしょうね、ということを伺ったわけなんです。
○国務大臣(宮澤喜一君) 要は所得、消費、資産の間のバランスのとれた税体系はどういうことかということでございますから、一つの間接税を御提案するにいたしましても、それを何か別のいろんなことのために役立たせるといったようなことをまず考えて御提案するというようなことは思っておりません。
○青木茂君 税制改革の基本問題に入りたいというふうに思います。
 総理はシャウプ以来の税制の抜本改革に命運をかけるというふうにおっしゃっていらっしゃるわけなんですけれども、この税制の抜本改革の第一義目的は一体何なんでしょうか。いろいろあるけれども、一番こういうことがあるから、こういうふうにしなければいけないんだと、これは何でしょうか。
○国務大臣(竹下登君) 諮問をしておりますのは、国民の税に対する不公平感が現実にある、それをぬぐい去って所得、消費、資産の間で均衡のとれた安定的な税制ということ、やっぱり総括的に言えばそれが第一義、こういうことになろうかと思います。
○青木茂君 そうすると、例えば不公平是正あるいは長寿社会への対応あるいは財政改善、三つあるとすれば、その中では不公平是正が第一義目的だというふうに理解してよろしゅうございますか。
○国務大臣(竹下登君) いわゆる不公平感というものが税制改革というものの環境を醸成した一番大きな要素ではないか。それで、歴史的に見て、それが基本にありつつも、昭和五十三年の議論というのは、やはり国民福祉充実のためには安定した財源が必要であるということからの税制改革の面の突っ込み方がそのときは大きかったんじゃないかな。それから高齢化社会の到来というのは、今日生きとし生けるものだれしもが将来にわたって憂えることでありますから、当然存在する。したがって税制改革、いろんな見方はありましょうが、それそのものを考える場合はやはり不公平感というものの払拭される所得、消費、資産の間の均衡のとれた税論理の構築、こういうことになろうかと思います。
○青木茂君 所得と消費と資産、いわゆる三部門バランスばかり考えておりますと、直直不公平ですね、あるいは間間不公平、資資不公平が現在のままでほっぽり投げてしまわれるという危険性があります。だから、まず我々が一番大きい所得税間の中における不公平を正すということが私はプロセスとしては最初じゃないかと思います。
 さっき不公平感という言葉をお使いになりましたけれども、その不公平感がどこにあるかということについてはひとつ、これは大臣に読んでいただくのは大変失礼ですから経済企画庁のどなたでも結構でございますから、国民生活白書六十一年版の不公平感を書いたところがありますね、これはきのう申し上げておいた、ちょっと読んでください。
○国務大臣(中尾栄一君) 青木委員にお答えいたします。
 六十一年度の恐らくこのパートだと思いますけれども、もし足らざるところがございましたら政府委員にまた答弁させます。「さらに、サラリーマンと他の所得者間で、収入の把握や経費の認定等に差があること、サラリーマンには夫婦間での所得分与の途がないこと、また、経費について実額控除が行えず、申告納税に参画する機会がないこと等がいわれており、これらの不公平感を払拭し、公平性を確保することが、重要な課題となっている。」、この問題点だと思います。
○青木茂君 ありがとうございました。所得分割ですね。
 国民生活白書といえば、とにかく閣議で御承認になった純政府見解です。そこにちゃんと不公平感の内容が書いてあるわけですよ。だから、そこら辺からメスを入れていかなければ不公平感の払拭というものはできない。いわゆる三部門バランスの前段階にこの問題があると思うわけなんです。
 そして、不公平是正と申しますけれども、今言われている不公平是正というのは、全部増税的不公平是正なんですよ。キャピタルゲインに課税して増税する。僕は本当の意味の不公平是正というのは、今まで不公平税制の中で虐げられた人たちの不公平を正す、つまりその不公平是正の中に被害者の減税が埋め込まれている、そういう形のものでなければおかしいというふうに考えるわけです。
 そこで、今国民生活白書を読んでいただきました。その中で、把握率の問題と所得分割の問題と必要経費の問題、この三つをもう生活白書自体が御指摘になっているんです。必要経費についてちょっと申し上げますけれども、今税調会長にも申し上げましたけれども、税調で給与所得控除との二分の一比較をやったのを党税調で全額比較に切
りかえちゃったんですけれども、これはどういう理由であるか、ひとつ重ねてちょっと御見解を承りたいと思うわけでございます。
○政府委員(水野勝君) 御指摘のように、六十一年十月の税制調査会の基本的な答申の中では、そういう考え方が示されておったところでございます。ただ、三千万人から四千万人に達するサラリーマンの方についてそれぞれ実額を計算して、場合によっては申告をしていただくという道を開くということは、たとえその給与所得控除の半分を超えたという場合に限定をするにいたしましても、百年の歴史を持つ所得税の中では初めてのことでございますので、執行部局としても非常に心配がされたところでございます。
 そこで、今回はまだそこの実額控除というところまではいかない。しかし実額経費控除ではございませんが、特定の支出が給与所得控除を超えた場合には申告できる道を開くということで、先ほど御指摘のあった申告納税手続に参画できないというサラリーマンの方の不公平感、こういったものに対処する道を開く。そしてその制度の定着と申しますか、実施状況を見て少しずつ前に進むということが現実的な対処方法ではないかということで、年末の具体的な年度答申ではそうした方向に固められたところでございます。
○青木茂君 そういたしますと、特定支出控除というのはサラリーマンの必要経費へ向かって進むための第一歩であるというふうに理解してよろしゅうございますか。
○政府委員(水野勝君) そういう意味を持つものとして御理解をいただくことが実態に即したことであろうかと思いますが、形式的に申し上げると、これは勤務に伴う経費を特定のものに限って控除するというところまではまだ徹底しておりませんで、とにかくサラリーマンとして御勤務されるに際しそれが経費であるかどうかというのは、一応議論は置いておいて、こうした特定の支出がかなり高額になる方につきましては、一部申告によって控除する道を開いたということでございますので、厳密にはまだ実額控除というところまでもいってはいない、まあその芽という程度の話ではないかと思うわけでございます。
○青木茂君 前半だけでやめておけばいいんですよ。前半だけでやめておいてくれたらありがとうございますと僕は言うんだけれども、後半は蛇足ですね。
 とにかく特定支出控除を、どういうものかはあれだけれども、おつくりになったんだから、これはどれぐらいのサラリーマンが一体利用できるものなんだろうかと。とにかく制度をつくって、どれぐらいの人が利用できるかのめどなしに制度をつくったってしようがないんだから、どれぐらい利用できるというふうに、極めて大ざっぱで結構ですからそのお見込みを伺いたいんですけれども。
○政府委員(水野勝君) 先ほど小倉会長からもお話のありましたように、六十三年分の所得からこれが適用になるということでございます。最初の試みとしてこうしたものが導入された。どのようにサラリーマンの方がこれに対応されるか、全く私どもも具体的なその予測というものを持ってはございません。何と申しましても、いろいろな証拠書類を整え、それを持って税務署にお出かけいただく、年末調整だけで済んでおられる方が、そういう道を開かれたからといって、かなりの方が御利用になるのか、概算控除でもって終わりということをお選びになるのか予測のつかないところでございます。
 いずれにしましても、最初の年なり二、三年の実績をよく見て検討をいたしたいと思うところでございます。
○青木茂君 そうすると、どれぐらい活用できるかという何の予測もなしに制度をつくっちゃった。その制度は意味ないですよ。私どもに言わせれば、あめもあめも、九九・九%のサラリーマンが利用できませんな、これは。それで、何か道を開いた道を開いたと言われますが、私は、道をこれから開きたい、これこれをやったんだと前半で説明しておいてくれればもうそれで結構なんですよ。余分なことをおっしゃるとわからなくなっちゃうんです。
 フランスの税法は実際かかった経費と概算の一〇%を比較しておいて、それからさらに給与所得控除を、二〇%を引きますね。これが非常に僕はすっきりした形だと思いますけれども、当局はいかがでございましょう、その方向に行く……。
○政府委員(水野勝君) まさに御指摘のように、六十一年十月の答申では給与所得控除を半分にいたしまして、片方は給与所得者としてのもろもろの事情を考慮した、担税力を考慮した控除、片方は経費の概算控除というふうに区分いたしまして、そこから給与所得者に対する実額控除制度の適用、あるいは他の種類のと申しますか、純粋の給与所得者でない給与所得者と申しますか、そういった方々についての給与所得控除の適用の問題が論ぜられたところでございますが、現実には特定支出控除といった方法でだけ道が進められてきたということで、理論的には先ほど申し上げた税制調査会の考え方はややフランスに近いのかなという感じがいたします。
○青木茂君 ひとつフランス税法を範として、ステップ・バイ・ステップで結構でございますから、その方向に行ってくださればサラリーマンとしても文句はないと思うわけでございます。
 必要経費の問題が出ますと、どうしても私は十年一日のごとく言うように、背広だとかワイシャツだとかネクタイだとか、これはサラリーマンの必要経費じゃないかということを言わざるを得ないんです。
 私ちょっと上着を脱がせていただきます。それで、参議院の事務総長、参議院規則から見て、本当は上着だけじゃなしにネクタイもとって見せた方がいいんだけれども、それはちょっと芝居が過ぎるからやめますけれども、上着をとって議場に入った場合は退場を命ぜられるんじゃないですか。四百十一条ですか。ちょっと御説明いただけませんか。
○事務総長(加藤木理勝君) 参議院の議場におきましては議員は上着を着用すべしということになっております。これは法律または規則によるものではございません。昭和二十六年の八月十日に、議院運営委員会におきまして、ちょうど夏季でございましたけれども、議員は議場においては夏季であっても上着を着る、こういうような決定をされております。それは従来の慣行を確認したわけでございまして、以来そういう取り扱いになっております。
○青木茂君 ありがとうございました。
 夏でも上着を着なきゃならないんです。ただ、家へ帰って夏に背広の上着を着る人はいないんだから、やっぱり議員としての職業上我々はこういうものを着なきゃならないんですよ。だから必要経費じゃないですか。一般のサラリーマンだって、こういう背広やワイシャツやネクタイを着ていかなければ職場でしかられて、自由だといってそれをやったら立身出世はそこでとまるんです。必要経費だと言ってくださいよ。どうですか。
○政府委員(水野勝君) 現在の給与所得控除は概算控除でございますので、必要経費であるかどうかを問わず、サラリーマンの方につきましては一定の形式によりますところの給与所得控除が適用になるということでございますので、現時点では背広が必要経費であるかどうかという点につきましては、税法上はまだその問題には逢着はしていないわけでございます。ただ、昭和六十一年の全国勤労者世帯の家計調査の実態を見ますと、被服類、その中でも洋服類というのは、平均数値でございますけれども九万四千円ということでございますので、仮にそうしたものが必要経費全額であるといたしましても、現行の給与所得控除の金額の中では特にそれが問題になるというものではなかろうと思うわけでございます。
○青木茂君 これも前半部分だけでとめておけばいいんですね。
 この問題につきましては、五年前でございますか、当時の主税局長の梅澤さんと長い時間をかけ
て私やり合ったところでございます。これをやり出したら時間が全部済んじゃいますから。とにかく、実額控除がもしこれから具体化していくという仮定を置いた場合に、背広だとかネクタイだとかワイシャツだとかあるいは冠婚葬祭費だとか、その他もろもろのものが必要経費として性格づけられるかどうかという税の理念について伺っておきます。
○政府委員(水野勝君) 欧米諸国におきましては、給与所得者の所得税の算定の場合に実額控除の選択の方法が認められている場合が多いようでございますが、その場合におきましても通常の衣服は、これはその範囲には含まれないようでございます。ただ、特殊の職業につきましてそれが厳密な意味で着用を義務づけられておる、それが現物として支給されたりするというような場合におきましては、例外的に経費の部類に入る扱いがされているようでございますが、一般的には衣服というのは必要経費の観念には該当していないようでございます。
○青木茂君 我々は日本の税法を日本の風俗習慣について議論をしておるのであって、外国がどうだこうだというのは余り私は重視する必要がないと思うわけでございます。
 そこで、聞きますよ。外国の税法ではもう常識になっているところの二分二乗方式は、なぜそれじゃ日本で採用しないのか、外国を言うならばですね。
○政府委員(水野勝君) 外国で二分二乗を適用している例もあるわけでございますが、その二分二乗制度の導入の経緯を見ますと、むしろ夫婦と申しますか、世帯は合算をするというのが原則とされておって、それが負担に不公平をもたらすということから二分二乗が開かれたという経緯が多いようでございます。それに対しまして、我が国はそもそも稼得者単位の分別課税が行われておりますので、それをわざわざ合算して二分するという発想がなかなか出てこない。そういう点からいたしまして、外国の制度とやや背景が異なるのではないかと思うわけでございます。
○青木茂君 だから、あるときは外国、あるときは日本独自と、ここら辺のところがとても困るんだけれども。
 例えば外国のことを問題にするんだったら、アメリカでは地方税は連邦税の所得から控除されますね。それで、日本の国民は地方税の高さに、住民税の高さに泣いているんだから、これはアメリカ的に控除してみたらどうですか。これは御検討のあれはないですかね。
○政府委員(水野勝君) これもアメリカという国になりますと、連邦と州というのがかなり相互に独立した地方団体と申しますか、連邦はむしろその連合体という意識が強い、全く対等のと申しますか、独立した課税当局者間の関係であるという感じが強い、そういったところからそういう経費控除的な扱いをしている、そういう感じではないかと思います。
 日本ももちろんのこと地方公共団体は独立した財政団体でございますけれども、むしろある場合には所得税を基準にしてそれを課税標準にしているとか、税額を基準にして課税をしたとか、いろいろな経緯があって、ほとんど一体として扱われてきた、そういう経緯でございますので、アメリカのような場合とはやや違うのではないかと考えるわけでございます。
○青木茂君 日本もアメリカのように地方自治の独立というのはどんどん進めなければいけませんな。
 ではもう一つ聞きましょう。アメリカでは金を借りた場合の支払い利子は、セカンドハウスを建てる費用まで含めて全部これは経費です。外国をまねしたいのならば、これもひとつまねしてみたらいかがですか。
○政府委員(水野勝君) これもまた背景の違いということになるわけでございますが、アメリカで一九一三年に初めて所得税ができました際に、事業上の利子であるか、借入金による利子であるか、個人生活上の利子であるか、これの分別はうまくできない、そういう意味からいたしまして借入金利子というのは一切差し引くというのがアメリカの制度でございました。それが少し行き過ぎではないかということで、先般のレーガン税制改革でもこれがだんだん縮減されて、現在では一般の消費金融利子は引かないようになってきているわけでございます。
 一方、我が国におきましては、個人の所得税につきましては、営業上のものを除いては一切利子は引かないというところから出発してまいりまして、住宅取得につきましてはその一部控除が特別措置として導入されてきている。まさに両極端から出発いたしまして少しずつ相互が近寄ってきていると申しますか、そういうのが実態でございますので、発祥の背景がどうも基本的に異なるようでございます。
○青木茂君 だからこそ、外国で背広を認めなくても日本で認めてもいいんじゃないかという感じが出てくる。
 今度は逆に行きましょう。みなし法人であるとか、医師優遇税制であるとか、午前中も出た問題ですけれども、これは外国ではありますか。
○政府委員(水野勝君) ヨーロッパにおきましては人的会社、これはむしろ法人税でなくて個人所得税の扱いを受ける。アメリカにおきましてもそういう選択の道はあるわけでございますが、個人のままで法人課税というこの選択制度というのはややユニークなものではないかと思うわけでございます。
○青木茂君 あるところでは外国のものを、外国と比較してこうだと、またあるところでは外国にはないけれど日本はこうだと。つまり御都合主義である。だから私は、とにかくいいものはそれは取り入れるけれども、日本の風俗、習慣、歴史、そういうもので日本の税法は構築していただきたいと思うわけでございます。
 それからもう一つ、我々が税について、これは不公平というより不合理の問題だと思いますけれども、問題にしなければいけないのは、人的三控除というのがございますね。これはいわゆる最低生活費というものに課税しないという趣旨から出たんですけれども、これはちょっと見ていただきたいんですけれども、基礎控除三十三万円、扶養控除三十三万円、一人につき。配遇者控除三十三万円でまた十六万五千円ふえたわけだけれども、年間ですよ、これは。年間三十三万円で生活できる人間というのは一体どこにいるのかということですね。不合理過ぎる金額ではないかというふうに思うんですけれども、これはいかがでしょうか、この金額については。
○政府委員(水野勝君) 給与所得者につきましてどの水準の収入から所得税の課税をお願いするか、それが課税最低限でございます。その課税最低限を構成するものとしては人的控除あり、給与所得控除あり、その他の所得控除ありでございます。その水準をどのように措定するか。これは課税最低限の基礎的な考え方になるわけでございますが、それは最低の生計費的なものは控除をする考え方、あるいはそのときの財政需要に応ずるという考え方、それからまた、執行上の簡素化、簡素さという点を考える考え方、いろいろな考え方があるようでございますが、そうしたものをもろもろ組み合わせて行われた、いろいろ制度化して行われてきた結果の数値が現在の三十三万円であろうかと思うわけでございます。
○青木茂君 これが三十万だとか四十万だとか五十万だというラウンドナンバーならば、もろもろでいいですよ。三十三という極めてはっきりした数字になっておるんだから、計算根拠がなければこういう数字は出ないはずなんですよ。だから、この三十三万円なるものの計算根拠はどういうことなんですか。
○政府委員(水野勝君) 現在の三十三万円は昭和五十九年度改正で二十九万円から引き上げられたものでございまして、その時点その時点におきましてこれを絶対的な金額として御説明申し上げて規定してまいったというよりは、従来からの金額、それに応じましてどの程度の減税を行うか、
また一方どの程度の財政需要に応ずるかという、そこらの総合的な判断から具体的な新しい金額を決めまして、御提案を申し上げてきたところでございます。
 したがいまして、現在の三十三万円それ自体の絶対的な説明根拠と申しますか、制定理由というものを具体的に申し上げるということはなかなか難しいところでございます。しかしながら、そうしたものを組み合わせた結果としての所得税の課税最低限といったものを、全体としての従来からの経緯、それから、またおしかりを受けるかもしれませんが、諸外国との比較、こういったものの中で判断して相当であるとされれば、その個々の構成する金額もおおむね適当なものではないかというふうに申し上げたいところでございます。
○青木茂君 私は、先ほど給与所得控除の性格について必要経費の概算控除ありという話もございましたし、それから課税最低限の中には社会保険料の支出分も入っている、そういうものを加えた課税最低限の計算方法が正しいかどうかということについては多大な疑問を持っております。それにつきましては、きょうは時間がございませんから、この次の一般質問か何かでやらしていただきたいと思いますけれども、課税最低限の計算方法というものはあれは世界的な統一基準があるわけじゃないんですよ。日本で勝手に計算して、それに合わせて世界のやつをつくったという形であって、全くもって国際比較の根拠はないんです。だから、あくまで我々はこの人的三控除そのものを基礎控除、一人の一年間の最低生活費、それを言っているわけなんです。だから、こういう物の考え方に立つ限りにおきましては、この人的三控除三十三万円でとにかく一年間暮らせ、それ以上あったら税金を取るぞという考え方の合理性というものを問題にせざるを得ないんです。これが余り軽く見られますと、僕は下手をすると違憲問題まで生じるのではないかという気がしないでもない。
 そういう意味におきまして、御説明を願いたいんですけれども、昭和五十五年三月二十六日のこういう問題に対する東京地裁の判例がございますね。これをちょっと最高裁の方、御説明をいただきたい。
○最高裁判所長官代理者(泉徳治君) 青木委員御指摘の東京地裁の判決は、「課税最低限を定めるにあたって何が健康で文化的な最低限度の生活であるかの認定判断は」「立法府の合目的々な判断に委ねられており、立法府の定めた課税最低限が現実の生活条件を無視したことが一見明白なほどの低額である場合にのみ違憲の問題を生ずべきものと解すべきである」、このように申しております。
○青木茂君 ありがとうございました。
 今お読みいただきましたとおり、課税最低限というものを我々が正しく計算したその結果、それがもし一見して明白なほど低額であった場合、違憲の問題が生ずる、憲法違反の問題が生ずるということは明瞭に書いてあります。したがいまして、課税最低限の計算は慎重の上にも慎重を重ねて、いやしくも恣意的なもので、都合のいい数字の積み上げではいけないということを、私はくどくも辛くも念を押しておきたいと思うわけでございます。
 もう一つ、昭和四十二年五月二十四日、いわゆる朝日訴訟と言われるものなんですけれども、最高裁の判例がございます。これも一緒に御説明をいただきたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(泉徳治君) 青木委員御指摘の最高裁の大法廷判決は、御質問の事項との関係では次のように述べております。
  憲法二五条一項は、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」と規定している。この規定は、すべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営み得るように国政を運営すべきことを国の責務として宣言したにとどまり、直接個々の国民に対して具体的権利を賦与したものではない。具体的権利としては、憲法の規定の趣旨を実現するために制定された生活保護法によって、はじめて与えられているというべきである。生活保護法は、「この法律の定める要件」を満たす者は、「この法律による保護」を受けることができると規定し、その保護は、厚生大臣の設定する基準に基づいて行なうものとしているから、右の権利は、厚生大臣が最低限度の生活水準を維持するにたりると認めて設定した保護基準による保護を受け得ることにあると解すべきである。もとより、厚生大臣の定める保護基準は、生活保護法八条二項所定の事項を遵守したものであることを要し、結局には憲法の定める健康で文化的な最低限度の生活を維持するにたりるものでなければならない。
以上のように申しております。
○青木茂君 今お読みいただきました判例でもわかりますように、憲法二十五条における「健康で文化的な最低限度の生活」、最低限度の生活というものが一応生活保護基準というものを一つの比較対象にしているということはおわかりいただけたと思います。そうなりますと、そういう生活保護基準の出てきた数値というものと、そして正確に積み上げましたところの課税最低限というものの数値というものと、これを比較して本当に課税最低限が、いわゆる所得なきところに課税ありというような形にならないかどうかということは、これは本当に慎重にやらなければ問題としてはえらい問題が起きてくるのではないかと私は思います。これも私自身の見解はございますけれども、時間の関係でこの次の一般質問というところに譲らしていただきたいと思うわけでございます。
 その次ですけれども、これはひとつ勉強をさしてください。大型間接税というのが盛んにかつて言われました。今でもちらほらちらほら出てくるんだけれども、この大型間接税の「大型」というのは何のことなんですか。いわゆる課税ベースが大型なのか、課税される段階が多いのか、あるいは税率が高いのを大型と言うのか。まずここの定義を詰めていきませんと次に入れないんですよ。これはどうお考えでしょうかね、大蔵大臣。
○国務大臣(宮澤喜一君) これにつきましては、たまたま衆議院の予算委員会におきましてお尋ねがありまして、総理大臣がかなりの時間をかけてお考えになりましたのを答えておられます。
 言っておられますことは、この言葉は今まで政府等々で使われたことはない。時間の経過とともに、いわゆる課税ベースの広い間接税という政府が使っていた言葉が大変になじまない言葉であるので、それを簡略化した意味でマスメディア等々がつくった言葉、発生的にはそういうものであろうということを言っておられまして、したがって、政府としてこれをきちんと定義したということではない、便宜的に使われて定着してきたと思うと。しかしながら、総理大臣として施策を考える場合に、そのような大型間接税、前内閣で大型間接税といったようなものを国民が非常に懸念されたのには理由があることであろう、それらの懸念は幾つかに分けられると言って、それについてこれは政策あるいは立案によっていずれも克服し得るものであるし、そうしなければならぬということを説明しておられます。
○青木茂君 よくわからないんですけれども、時間がありませんから次へ行きます。
 一般消費税の一般というのはどういう意味ですか。
○国務大臣(宮澤喜一君) それは恐らく、例えば物品税が個別の消費税である、酒税も個別の消費税であるというのと分けました意味での消費一般にかかる課税、こういうことかと思います。
○青木茂君 そうすると、これからの税制論議の問題は、大型間接税と突如出てきた新型間接税とどう違うのか、一般消費税と新型間接税とどう違うのかということが、これは入り口論議でこれから問題になってくると思います。問題の提起だけしておきたいと思っております。
 それからもう二つほどお願いをしたいんですけれども、非常に土地が高騰をいたしまして、しかも固定資産税が今度評価がえになる、それが家賃
にはね返って庶民が非常に困る。こういう状況が出てくるわけでございますけれども、その緊急避難措置といたしまして、今回と次回、土地騰貴がもろにかぶってくる次回ですね、次回だけは緊急措置、もう理屈抜きの緊急措置といたしまして固定資産税の評価増というのを凍結してみる気はございませんか。これはもう庶民に対する思いやりという意味だけで、理屈抜きです。これはどうでしょうかね、自治大臣。
○国務大臣(梶山静六君) 固定資産税については、三年に一度、資産価値の変動を勘案した評価額の見直しをすることにより、その評価の均衡と負担の公平が図られるものであり、お尋ねのように評価額の見直しを行わないとすることは、評価の不均衡と負担の不公平を生ずることになるので適当でないと考えております。
 今回の評価がえによる県庁所在地の基準宅地の平均上昇割合は一・一六倍と、前回の一・一九九倍を下回っており、また宅地全体の評価上昇割合はこれをさらに下回る見通しでありますので、一般に心配されているような上昇割合にはならないものと考えております。
 なお、次回についてはさらに検討しなければなりませんけれども、血も涙もある気持ちでこういうことを申し上げるわけであります。
○青木茂君 次回は大変ですよ。
 それならば、都市計画税の半減もやりましたけれども、あれは東京都の本当に思いやり税制だと思います。これはひとつ余り渋い顔をなさらずに全国に奨励をなさっていただきたいと思いますけれども、この点はいかがですか。
○国務大臣(梶山静六君) 先ほども申し上げましたように、都市計画税のいわば目的税たるゆえん、こういうものをお考え願いますと、私は制限税率の範囲内で画一的にいわば軽減をすることには何らの異議を申しているわけじゃございませんけれども、ある宅地、具体的に申し上げますと、小規模の宅地のみ軽減をするということは、それじゃ大きい宅地はどうなのか、その他の事業所やその他の建っている建物はどうなのかといいますと、都市計画という事業を行うことによって均質的に地価を高めるわけでございますから、そういうものに対する不均一課税というのはむしろ不公平になってしまう、そういう観点からされますので、税は安いほどいいかもしれませんが、不均一な課税でそういうものを実現するということは望ましくない。
 しかし、地方自治本来の公益上の権限を持っておりますから、そういう税制をとられることもまた可能でございますが、決して適当なものというふうには考えておりません。ですから、ほかの東京都下の市や町は均質ないわば減税を行うことによってこの減免を図っている現状でございます。
○青木茂君 別なことでは思いやり予算というのがあるんですよ。国民に対する思いやり予算というものが僕は何かあってもいいような気がするんだけれども、四角四面の法律解釈で済んでしまうということは甚だ遺憾だと思わざるを得ないんですね。
 それから、時間が来ましたから最後にキャピタルゲイン一つだけお願いをしておきます。
 キャピタルゲイン課税は当然今その方向ですから、資産課税でなしにあれは所得税にカウントされるんですね。
○国務大臣(宮澤喜一君) OECDなんかの分類とか構成比等々の場合には所得課税の方に入ります。
○青木茂君 しかしあれは資産を源泉としての所得なんだから、三部門バランスをもしこれから問題にするとするならば、あれは所得課税でなしに資産課税に入れるべきだと思いますね。そうでなきゃまた直接税がふえちゃって、また間接税をふやせという議論になりますから、そこら辺のところは十分御注意をいただきたいと思うわけでございます。
 最後に、演説をさしていただきたいと思います。これは教師と生徒の対話でございますけれども、生徒が経済と国防と民の信望のうち一番重要な順位は何だって教師に聞いたんです。そうしたら教師は、それは民の信望が第一で、経済が第二で第三が国防だと、こういうふうに答えている。それで今度は生徒が、じゃ民の信頼はどこから得られるんだと。そうしたら政治のセイは正しいだと、上の者が正しいことをやれば民の信望が得られる。さらに一番重要なのは、政治の要諦は不公平がないということだ、不安定がないということだと、こう答えています。この教師というのは孔子ですよ。論語の文句にあるんです、はっきりと。だから、不公平こそ諸悪の根源ということ。
 あるいは今度は日本で言えば、渋沢栄一さんがこう言っていますわね。政府の財政と企業の会計と国民の家計簿があった場合において、価値の順位は、国民の家計簿こそ第一の順位であると。もし政府の都合によって国民の家計簿を赤字にするようなことになったら国家百年に禍根を残す、というふうに渋沢栄一さんは大正の初めに言っています。
 こういう先人の教えを旨とされまして、どうか立派な抜本的な税制改革を衆知を集めて竹下内閣はやっていただきたいと、これはくれぐれもひとつお願いを申し上げる。最後にこのお願いに対する総理、副総理の御見解を伺いまして、私の質問を終わります。
○国務大臣(竹下登君) 立派な税制改革をやり遂げたい、この一語に尽きます。
○委員長(原文兵衛君) 以上で青木茂君の質疑は終了いたしました。
 これにて総括質疑は終了いたしました。
 明日は午前十時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
   午後三時五十三分散会