第113回国会 社会労働委員会 第3号
昭和六十三年十一月二十二日(火曜日)
   午前十時開会
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   委員の異動
 十一月二十一日
    辞任         補欠選任
     中野 鉄造君     高桑 栄松君
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  出席者は左のとおり。
    委員長         前島英三郎君
    理 事
                佐々木 満君
                宮崎 秀樹君
                山本 正和君
                中西 珠子君
    委 員
                石井 道子君
                石本  茂君
                遠藤 政夫君
                斎藤 十朗君
                関口 恵造君
                曽根田郁夫君
                田中 正巳君
                対馬 孝且君
                浜本 万三君
                渡辺 四郎君
                高桑 栄松君
                沓脱タケ子君
                内藤  功君
                藤井 恒男君
   国務大臣
       厚 生 大 臣  藤本 孝雄君
   政府委員
       厚生省健康政策
       局長       仲村 英一君
       厚生省保健医療
       局長       北川 定謙君
       厚生省薬務局長  北郷 勲夫君
       厚生省保険局長  坂本 龍彦君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        此村 友一君
   説明員
       法務省入国管理
       局参事官     山崎 哲夫君
       文部省体育局学
       校健康教育課長  石川  晋君
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  本日の会議に付した案件
○医薬品副作用被害救済・研究振興基金法の一部を改正する法律案(衆議院提出)
○後天性免疫不全症候群の予防に関する法律案(第百八回国会内閣提出、第百十三回国会衆議院送付)
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○委員長(前島英三郎君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 昨二十一日、中野鉄造君が委員を辞任され、その補欠として高桑栄松君が選任されました。
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○委員長(前島英三郎君) 医薬品副作用被害救済・研究振興基金法の一部を改正する法律案及び後天性免疫不全症候群の予防に関する法律案の両案を便宜一括して議題といたします。
 これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○渡辺四郎君 今提案になっております後天性免疫不全症候群の予防に関する法律案、エイズ法案というように言われておりますが、その点について以下法案内容そのものに入る前に少しお聞きをしてみたいと思うんです。
 まず、今約五千名というように言われております血友病患者の方々がおられますが、その約四割、二千名の方々が、見通しでございますが、国と製薬会社の私はあえて手によってというように申し上げたいと思うんですが、血液製剤の治療によってエイズウイルスに感染したというように報道されております。患者として頼みとする製剤によって被害を受け、被害者の半数は未成年者であり、学童期の子供も含まれている。そういう犠牲者が集中しておるのです。私は血友病患者の方々とその家族のことを思うと、まず今何をなすべきか、ここを非常に中心に考えなければいけないのじゃないか。そして将来に向かってどう予防し、エイズウイルスそのものを根絶していくかということを急がなければならないと思うのです。
 私も社労の方にお世話になっておりますが、その当時斎藤前厚生大臣も大変御心配をなさって、緊急に何とか手を打たなければいけないと大変実は大臣を中心に厚生省その後も努力をされておったということも承知いたしておりますが、しかし私が申し上げたいのは、今提案されているエイズ予防法案そのものに一番危機感を持っておられる方たちはだれか。あるいは人権を侵され、差別されるというように反対運動の先頭に立っている方々が先ほどから申し上げます悲劇に見舞われた方々とその家族ではないか。このことをやはり最大限に重視しなければいけないのじゃないか。こういう視点に立って予防そのものをどう確立していくか、こういう観点で、以下大臣初め政府の方に私の質問に対するお答えなり御見解をお聞かせ願いたいというように思っておるところであります。
 一連の法案そのものを熟読してみますと、まず一つは、エイズ法案の起草の時期から、そして国会提案、六十二年の三月三十一日ですが、そして現在に至るわけですが、その間エイズウイルスの感染経路等について全く変わりはないのか。今言われておりますように性行為あるいは男子の同性愛だと、それが感染の経路だというように言われておりますが、このエイズ法案そのものの起草当時からその感染経路についてはそういうように言われてきたかどうか、まずお聞きをしたいと思います。
○政府委員(北川定謙君) エイズそのものがこの社会の中で見つかったのは一九八一年、非常に歴史の新しい病気であるわけでございまして、そういう意味ではまだエイズに対するいろんな医学的な知見というのはこれから積み重ねが進む段階にあることはあるわけでございます。厚生省がエイズの問題に着目して法案をつくる準備を始めた当初においての基本的な認識というものは、やはりエイズは感染症であり、男性同性愛あるいは麻薬等の回し打ち、そういうグループの間での感染が極めて危険度が高い、こういう認識であったわけであります。
 一方、血液を介して感染するということでありますので、その周辺で血液の付着の可能性のあるいろいろな状況について感染の心配があるのではないかという議論が一部にはあったわけでございますけれども、現段階ではそういうことについての証明は長いある時期の中で否定されてきている、そういう事実があるわけでございます。
○渡辺四郎君 だから、私は一般的にアメリカを中心にそういう国のウイルスの汚染の仕方ということであれば、今の局長がおっしゃったような経路でいいと思うのです。しかし、事日本の場合を考えた場合にそれだけでいいのか。だから、大臣の提案理由の説明の中にも「感染経路が限られていることにかんがみ」というようなお話もありま
すけれども、感染経路が限られておる、今局長がおっしゃったような経路だけしかないんだと。しかし、日本の場合はそれと違った、九〇%以上の方が血友病のいわゆる薬剤によって感染した。こういう違いを私は最重点に置いた法案でなければいけないのじゃないかということを冒頭申し上げたわけですが、そこらについてはどういうようにとらえておりますか。
○政府委員(北川定謙君) これは日本だけの特殊事情ではないと思いますが、血液凝固因子製剤の使用によって感染した血友病患者さんたちの感染問題、これは日本のみならずアメリカにおいてもイギリスにおいても日本と同様に起こっておるわけであります。
 一方、幸いにして我が国では、それ以外の同性愛あるいは麻薬あるいは覚せい剤等の乱用という部分が非常にそれ以外の諸外国に比べて少ないという実態はあるわけでございます。そこで、我が国の場合には血友病患者さんたちがそういう血液凝固因子製剤を使うことによって感染したという実態についても、広く深くいろいろと議論がされてきておるわけでございまして、この法律の御審議の過程でもその点についてのいろんな御意見もあり、衆議院段階でその点についての修正もなされたというような過程があるわけでございます。
 一方、不幸にして感染を受けた皆さん方は、その発病の防止ということが非常に重要なことである、あるいは非常に不安な状態に置かれておるということに対するカウンセリングの問題、総合的に血友病患者さんたちに対しては、その置かれた状況に即した対策を立てていく、こういうことが必要であるというふうに考え、またその方向で施策を進めておるところでございます。
○渡辺四郎君 どうもそこらが少し私の感覚と違いますけれどもね。
 これは一九八七年三月十四日の毎日新聞の「エイズ法案強化が必要」ということで、「自民訪米調査団が見解」というようなことで、この中でも団長の小沢先生がおっしゃったのが、「「エイズの恐ろしさを改めて認識した」と語り、「エイズ対策は民族存亡がかかっている」」と。そしてこの中に「予防法案要綱の不十分な面を指摘。「ワシントンの売春婦のエイズ感染率は極めて高い。わが国も特定施設の従業員に対しエイズ検査を義務づける必要があるのではないか」」というようなことをおっしゃっておるわけですね。ですから、わざわざ自民党の方で特別委員会をつくられて調査に行って帰ってきた団長の先生の報告でも、やはり売春によってあるいは同性愛によってエイズというのは感染するんだと。今局長のおっしゃったのは、アメリカでもいわゆる血友病の患者の方たちに血液製剤で感染した部分もあるんだ、日本と余り変わらないんだというふうにおっしゃっておりますけれども、日本の場合、九〇%を超しておるというふうに言われておるわけでしょう。そういう点から見たら、私は根本的に違うんじゃないかということをお聞きしておるわけです。
○政府委員(北川定謙君) 確かに現状においては、先生が御指摘のように、日本のエイズ感染者の大多数の部分が血友病患者さんたちである。しかし、諸外国の状況を見れば、日本においても今後それ以外のいろんな集団の中で感染が拡大していく、そこのところが一番心配になるわけでございますね。今のところ治療方法がない、死亡に至る率が非常に高い、こういう疾病が世界を覆っておるわけでございますけれども、こういう状況は幸いにしてまだ日本までは及んでいない。しかし今後及ぶ可能性は非常に高いのではないか。そういうことからいたしますと、将来のことを踏まえて、今の段階で万全の対策を打っておく、こういう必要があるのではないか、このように考えるわけでございます。
○渡辺四郎君 だから今後の問題としては、今おっしゃったように、確かにどう拡大を防止していって根絶に向けてやっていくかという、そういう防止法そのものは私は必要だと思うんです。
 しかし、さっきから何回も申し上げますように、現在の日本のエイズウイルスの感染者の大部分がいわゆる汚染の血液製剤によって感染しておる、そういう実態を踏まえた視点に立っての法案でなければいけないのじゃないか。
 だから、例えばこれは一つの言葉じりということじゃありませんが、私はどうしても理解できないのは、大臣の提案理由の説明の中にも、「最近では女性患者の発生等エイズの一般への感染が懸念される」というふうな言葉もありますが、そうすれば今の感染者の皆さんは一般国民じゃないのか。一般と言えば、特殊の人とかあるいは別人とかいうふうにどうしてもとらざるを得ぬのです。既に感染されておる血友病患者の皆さんあるいはエイズの患者の皆さんたちが特殊の人なのかどうなのか。さっきから言いますように、エイズの感染経路から見た場合に日本の場合は根本的に違うんじゃないかというところを視点に置いて法案をつくるべきだというのが私はここら付近にも言葉としてあらわれておるんじゃないかという気がするわけです。ここらについてはどういうふうにお考えでしょう。
○政府委員(北川定謙君) 提案理由説明の中で、女性の患者の発生によりエイズの一般への感染が懸念される状態になったということは、私どもは血友病の患者さんたちは不幸にして血液製剤の輸血によって感染しておるわけでございますが、この方たちは血友病という基本的な病気を持っておるわけでございまして、すべて医師の管理下にある、医師との連携が非常に強い環境にあるわけでございますから、当初から私どもとしては、この人たちが感染源になるという心配は全く持っていないわけでございます。
 先ほども申し上げましたように、諸外国の状況を見ますと、同性愛とかあるいは麻薬の回し打ちとか、そういう行動をとる集団の中に非常に患者さんが多い。これがだんだんと一般社会の中にそういうところから感染が広がっていっておるという実情があるわけでございまして、そういうことは日本の社会においても当然考えられる、予測すべき問題でございますので、そこのところを一般というふうに言ったわけでございまして、血友病の患者さんたちのことを一般に対置して考えているわけではないわけでございます。
○渡辺四郎君 血友病の患者の皆さんには医者との関係で感染するおそれはないんだというふうに言われておりますが、十一月八日の日に衆議院で一部修正されて本案が可決されましたね。そして、一番今先頭に立って何とかひとつ廃案に追い込んでいただきたい、見直していただきたいというふうに国会なり政府に対して陳情なりにお見えになっておるというのは血友病患者の家族会の皆さんですよ。
 きのう、私に旭川の方からこういうお手紙が来ました。エイズ予防法案を廃案にしてください、息子を普通の血友病患者にしてください、息子のプライバシーを守ってくださいというようなことを書いて、エイズ予防法案にはもう絶対反対でございますからと。
 今おっしゃったように、感染経路が、さっきから何回も言いますように性行為と同性愛だというふうに限定されてきた。そう言うならば、何であの神戸で御婦人の方がお産する時点で、私はやっぱり一つのパニック状態じゃなかったかと思うんですけれども、いろいろあの資料を読んでみますと、他人からタオル借りても感染するんじゃないかというふうな問い合わせがあった。そのくらい非常に国民の中にはエイズのウイルスそのものについての恐怖心があるわけです。それは一体どういうことで起きてきたのか。そういう恐怖心をあおって、あおってというのは国民の中に浸透しておる中でのこの法案でしょう。
 ですから、後ほど幾つか事例を出しますが、血友病という患者の子供さんたちに対して、もう既に具体的に学校関係でも地域関係でも差別が起きておるという実態の報告がたくさん出ておるわけです。ですから、性行為あるいは同性愛以外に感染はないんだというんであれば、何も子供さん方までそういう差別が起きないわけです。現にそういう差別が起きておるということについては一体
どういうふうにお考えでしょうか。
○政府委員(北川定謙君) エイズが治療方法がなくて致命率が非常に高い病気である、こういうことから一般に非常に恐怖心が国民の間に広まったということも事実であったと思うわけであります。ああいう状況の中で、特に一部のジャーナリズムが非常に誇大にそういう危険性を強調したということも大きな国民に対する間違った認識を植えつけた理由の一つではないかと考えるわけでございます。
 そこで、私どもはこのエイズについての正しい認識、やっぱり敵をよく知る、これが非常に大事なことであるということで、政府のエイズ対策大綱の中でも正しい知識の普及ということが非常に大きな柱になっておるわけでございます。その観点からいろんなPR活動を行って、ここ数年そういう点で政府自体も努力をしておりますし、地方自治体もそういう点では非常に力を入れております。
 また一般の新聞、雑誌等においても、そういう非常に異常なパニックな状態の時期を過ぎて、現在ではかなり冷静にエイズの病気の実態というものを見ることができるようになっているのではないか。こういう状況の動きの中で、先生がおっしゃられましたような、学校の現場だとかあるいは職場の現場等で過剰な不安、こういうものを取り除く努力をこれからさらに地道にやっていく必要があるというふうに思うわけでございます。
○渡辺四郎君 ですから、さっきから申し上げますように、現在では感染経路は確かに特定されておる、限定されておるということは国民の多くの皆さんもあるいは知っておるかもしれませんけれども、私が申し上げておるのは、この法案の起草段階の厚生省の皆さんあるいは私らを含めて、非常に感染しやすい、そして治療方法のない、死亡率の高いウイルスだというふうに自覚しておったと思うんです。
 一つの例ですが、医学的な立場から、しかもこのエイズ問題の対策会議の座長であります塩川先生のお話もあるわけです。塩川先生も唾液や涙でも感染しないという保証はないんだということをおっしゃった、出ておりますけれども。だから、先ほども言いましたように、他人のタオルを借りても感染するんじゃないかというふうにお母さん方が必配された、そういう時点での、状況の中でのこの法案の起草ではなかったのか。
 だから、今こんなに変わってきつつある。そして何回も言いますように、日本の場合の感染者の多くの皆さんがいわゆる薬剤行政によって犠牲になった血友病患者の皆さんだ。そういう点から思えば、もう少しやっぱり慎重に法案の一項一項を吟味する必要があるんじゃないか、そういうことを実は申し上げておるところです。
○政府委員(北川定謙君) 法案の起案の当初、その時期においては確かにいろいろそういう心配、過剰な心配、あるかもしれないという心配があった。科学的に言えばまず大丈夫であると思うが、しかしそういう可能性も否定はできない。今先生が御指摘になった塩川先生の御発言もそういう趣旨であったと思うのです。
 しかし、政府がエイズ対策を進めていく上で、そういう非常にパニック的な状態を背景にしながらも、しかし問題の本質はどこだということについては当時から一つの考え方がまとまっておったわけでございまして、今これから御議論いただくこの法案でございますけれども、ごらんをいただければ、そこまではいろんなことを言っていないわけでございます。感染防止のポイントはどこであるか、これが一つの柱でございますし、もう一つは、性行為感染症あるいは非常に致命率が高いというようなことからくる患者さんへのプライバシーの侵害とか人権の侵害とか、そういう問題が起こることへの配慮をしながら法律の構成をしておるわけでございますので、先生が先ほど来御心配になっておる、法律案の作成当初と今の社会情勢が変わっておるのではないか、したがって法案に対する考え方も変わっていくのではないかという御趣旨の御発言だと思いますが、そこのところは一貫して筋は通っておると私どもは考えておるわけでございます。
○渡辺四郎君 大臣、ちょっとお聞きいたしますが、衆議院で十一月八日の日に法案が一部修正をされて多数決で採択をされた。その後、マスコミを含めて国民の声がたくさん実は出されたわけです。例えば十一月九日の朝日新聞では、「エイズ法案は抜本的見直しを」、こういう見出しで、エイズより怖いとも心配されるエイズ法案が参議院に移った。そして内容を読んで見ますと、予防法でありながら予防に役立たない。そして、法案の問題点を大きく三つに分けて整理して指摘をしておったわけです。そのうちの一つは、衆議院で血友病患者の感染者の皆さんについては除外をしたという部分の一点だけは解決したけれども、あとの二点については未解決のままに残されておるという報道がされておりましたけれども、大臣、お読みになったと思うんですが、感想があればひとつお聞かせ願いたいと思います。
○国務大臣(藤本孝雄君) エイズ法案につきまして、私どもこの法案の最大の目的として考えておりますのは、このエイズという極めて死亡率が高くしかも治療方法が確立されていないというこの病気の蔓延、二次感染、三次感染という蔓延を防ぐということがまず第一の法案の目的でございます。と同時に、現在この病気に感染している方々の人権、プライバシーという問題も当然守っていく。つまり、この病気の蔓延を防ぐという社会防衛的な側面と患者の人権、プライバシーを守るというこの両方のバランスの上に立ってこの法律というものがあるわけでございます。
 同時に、先ほどからいろいろ御指摘ございましたように、日本の場合には血友病患者のエイズ患者が多い、こういう特殊性も考えまして、これらの方々に対していかに対応していくか、この問題は極めて重要な問題であり、そういう特殊な問題もあるわけでございまして、その三つの点が非常に大きな問題点でございます。
 私どもは、この第一のエイズの病気の蔓延を防ぐという社会防衛的な側面と患者の人権、プライバシーを守るというこの両面は、両立さしていかなきゃならぬ。御承知のように、非常にエイズ患者の多い国によりましては、例えて言えば患者の結婚を禁止しているというような極めて人権を阻害しているような法律があるところもあるわけでございますが、そういう考え方には我々は立っていないわけでございまして、蔓延の防止と人権、プライバシーの両面を十分に確保していくという点が私どものエイズ法案についての最も重要な考え方であるわけでございます。
 この法案についてのマスコミの報道ぶりにも積極、消極両論あるわけでございまして、御指摘の新聞の指摘につきましては、この法律が成立することによって患者が潜在化する、つまり地下に潜るのではないかという第一の御指摘でございますが、この法律を十分御理解いただければ、そういう問題は起こらないのではないか。つまり、これもあるマスコミでございますけれども、この法律が成立して医者に診てもらった段階ですべて氏名、住所を報告される、そういう記事が実はございました。ですから、そういう誤解がもしあるとすれば、この法律を十分に御理解いただければ、そういうことは考えていないわけでございまして、患者の人権、プライバシーというのは十分に守られるように守秘義務も課しているわけでありますし、また、ほとんど大部分の方々について言えば住所とか氏名は報告をしない。報告をする場合には、反社会的なそういう行動をとる人に限って報告をするということであるわけでございまして、ひとつ十分に御理解いただければ、そういうことの御心配はなくなるのではないかというふうに思っております。
 また、英国の梅毒の取り締まりの問題を例に挙げておられますけれども、これは百年前の問題でございまして、日本で言えば明治十年ごろの話であるわけでございまして、そういう事実はあったにいたしましても、百年前の問題を今日に置きかえていろいろと言われておることについては、少
し比較としてはいかがなものかなというふうに私も思います。
 それから第二の問題、この法律によりまして差別が助長されるのではないか、こういう御指摘、御心配でございますが、差別をもしするとすれば、それは社会がするわけでございまして、社会がこういう差別とか偏見を持たないような、そういう社会にしていくということが最も大事なことでございます。そのためには、この病気の本質、内容、そういうものについて国民の皆さん方が正しい知識を持っていただくということがまず何よりも大事であるわけでございます。そういう知識を前提にして、この病気は一部の人の病気ではない、だれもがこの病気に感染する可能性のあるそういう病気であるわけでございまして、だれもそういう可能性のある病気であれば社会としてはこれを受け入れていかなければならぬわけでございます。そういうことについて我々はまた社会共通の目標としてこの患者を受け入れられるような、そういう社会をつくっていくということに私は力を入れていかなければならぬというふうに思っておる次第でございます。
○渡辺四郎君 大臣のおっしゃることについては理解できますけれども、私が最初から申し上げておりますように、例えばここに「エイズ」という何かの冊子が出ておりますが、ここの中で「無用な社会不安の高まりに万全の配慮を」と。今大臣がおっしゃったように、
  むしろ急ぐべきは教育・啓蒙活動だ。この点は政府も認めており、「エイズ問題総合対策大綱」でも重点対策の一番めに「正しい知識の普及」を掲げている。
  この点でちょっと気になるのは、医師側のエイズ対策の最高権威とも言うべき塩川座長が、テレビなどマスコミや講演会で「唾液、涙などの体液による感染も完全には否定しえない」という発言を繰り返していることだ。
 そして、先ほど言いました自民党の対策委員長の御発言にもありますように、ワシントンの場合であれば売春婦のエイズの感染率が非常に高い、こういうことがマスコミを通じてしきりに国民に流されたわけです。そういう中で、私ももう六十近い男でありますけれども、いわゆる死亡率が高い、そして治療方法がないという病気について国民そのものが恐怖感を持つのは当然です。
 私が子供のころ、一番やっぱり差別を受け若い人が自殺をした、その件数だって知っておりますけれども、結核なんですよ。結核なんかにもしも友達がかかろうならば、その友達と一切つき合うな、交際をしちゃいかぬ、その家にも入っていけないし、その家族の人ともつき合うな、そしてその自宅の前を通るときなんか避けて通れというような、そういうことまで指導し、逆に言ったら差別をされてきたわけですよ。学校関係でも、結核患者の家族の子が同じ席に並べば、村の有力者なんかは先生に文句を言ってきて、うちの子供の席を変えてくれ、こういうことまで言って学校に強引に乗り込んできて、そして結核患者の家族の子供さんまで差別をされていった事実もあるわけです。私はやっぱりエイズそのものについての恐怖感というのが、今大臣なり局長がおっしゃっておるように、今の段階ではかなり感染経路もはっきりしてきた。しかしこの当時は、厚生省はそうおっしゃっておっても、マスコミを通じて報道されるのは、非常に感染しやすいエイズだ、そして治療方法がない、死亡率が高い。そういうことであおった状況の中で、先ほどから言いますように、国民の中に恐怖感がわいてきたわけです。だから、今から幾つか申し上げますが、具体的にやっぱり差別の実態が出てきておるわけです。
 これは厚生省の方もお読みになったと思うのですが、二十一日の朝日新聞にも出ておりました。「血友病・エイズ感染者の治療 「拒否された」四十九件」という見出しで、救援団体の皆さんがアンケート調査をやった結果の報道が、途中でありますけれども、出されておるわけですよ。これまでに回答を寄せた血友病患者二百人のうちに、エイズウイルス感染者であるということを理由に医療機関から治療を拒否された体験例が四十九件ある。そしてエイズウイルスに感染をしたというのが三四・五%に当たる六十九人で、感染していなかったというのが二〇%の四十人、残りは感染の有無を医者から告げられていなかった。そして、個人病院が何ぼというふうに拒否された病院ごとの率も示しております。拒否の理由としては、他の患者に対しての病院のイメージがダウンするおそれがある、あるいは医師そのものが勉強不足で診られない、それから血友病患者への対応がわからない、希望する因子製剤が使えないというのが医師側のいわゆる治療拒否の理由であったというふうに調査の結果が出ておるわけです。そして前にもアンケート調査の結果が、これはマスコミを通じてだったと思うんですが、報道されておりましたけれども、具体的に児童あるいは学生の皆さんが学校関係で友達に言われたり、あるいは近所の大人からしつこく血友病の問題について聞かれたり、そういう具体的な差別が出ておる報道もされておりました。
 私は、これは宿舎に入っておりました十二月六日の第三種郵便認可ということで、ちょっと私らと異なった人の編集人の方の内容ですけれども、今リクルート問題にこれを引用しておるわけです。リクルート問題が
  遂に来るところまできたとでも言うか、俄然”疑惑”から”疑獄”事件へと底なし沼の様相を呈して来た。
  巷では、同事件の関係者の事を「利狂人」と呼ぶそうである。この利狂人族に何んと政治家達の多いことか、ロッキード事件以来、日本人の間に深く静かに浸透して来た「政治不信」が益々深刻度を増し、日本の政治の末期的症状がエイズウイルスの様に広がり出している。
 だから、私はここで言いたいのは、今政治家を含めてリクルートから株を譲渡してもらったという人については、私は軽べつをしております。政治家としては正しくない、やめるべきだ、こういうべっ視の目で見ておるわけです。ところが、それが今非常に広がっておる、汚職なり疑獄事件と言われるように広がっておる、その広がり方を「エイズウイルスの様に広がり出している。」、こういうことにもエイズウイルスを使っておるわけです。
 そうしますと、例えば帝京大学の安部英副学長がこう言っておるわけです。「我々医者が投与した凝固因子製剤がもとで多くの血友病患者たちをエイズウイルスに感染させてしまった。言わば私は下手人なんだ」と。そして、日本のエイズ問題がアメリカと違って、性行為感染症である以前に、凝固因子製剤による感染という薬害、血液行政の失敗に最大の不幸があることを指摘しておるわけです。
 話が行ったり来たりしますけれども、そういうふうに今の血友病患者の皆さんあるいは家族の皆さんが、さっきから一つの例を出しましたけれども、人間をべっ視する、あるいは国民ではないかのように言われる、そういう代名詞に使われてきつつある。あるいは学校関係でもそういう差別が出ておるということをもう少しやっぱり考えるべきではないか。
 ですから、私はこれ大臣に最後にちょっとお聞きしたいのですけれども、先般来血友病患者の方々について、まあ十分でありませんけれども一定の救済措置を行いましたけれども、私はやっぱり今この法案を考える場合に、患者あるいは犠牲者の家族の皆さん方については金銭面では救済できない問題があるわけです。確かに血友病という病気は持っておりますよ。ところが、エイズにならしてくださいと頼んだ覚えはないわけです。そういう点で、こういう家族の方たちを含めて一番心配をなさっておる問題、あるいは将来的に危惧をされておる問題、ここら辺もやっぱり十分お話を聞いて、どうそこらを排除していくかということで法案をつくるべきではないかという気がしてなりません。いかがでしょう、大臣、そういう点について。
○国務大臣(藤本孝雄君) 先ほど申し上げました
ように、日本の場合には大部分のエイズ感染者、患者が血友病患者の中で血液凝固製剤を使ってエイズに感染した、こういう特徴はございまして、その点につきましては御指摘のとおりであります。
 したがって、日本の場合にはこのエイズ対策を考える場合に、蔓延を防ぐ、患者の人権、プライバシーを守る、同時に血友病患者の中でエイズに感染されている方々については十分に配慮をする、これはもう今まで申し上げていることでございます。また、御心配のように血友病患者即エイズ患者だというような国民の皆さん方に誤解を与えないために、私どもも当初国会における御質問に対しましては血友病患者という名前は実は申し上げていなかったわけでございます。血液の凝固因子製剤が原因でというふうに申し上げていたわけでございますが、だんだんそれがこの血友病患者という名前が出てまいりまして今日に至っているわけでございます。
 しかし、この国会での議論等を通じまして、国民の間では当初よりもこの問題について正しい理解が私は促進されてきておるようにも思うわけでございまして、その点につきましては今後さらに、血友病の皆さん方の中でエイズに感染もしくは患者になられた方々の人権、プライバシー、またそういう皆さん方の御意見を承るということについては、今後とも私どもは十分にそれはしてまいらなきゃならぬ課題であるというふうには十分に心得ているわけでございます。
 ただ、渡辺先生も御承知のように、アメリカ、ヨーロッパ、日本、アフリカ、この四つにエイズにつきまして分けてみましても、それぞれその地域地域によって特徴があるわけでございまして、アフリカにおきましてはもう社会生活の中にエイズという病気が蔓延しておるということも事実ございます。アメリカにおいては同性愛とか麻薬の回し打ちが中心でございますけれども、これとても今後異性間接触によってふえていくということも十分に考えられるわけでございます。我が国の場合でもそういうおそれが十分にございますだけに、この二次感染、三次感染の防止については今の間に適切な処置をとる必要が私どもはあるというふうに考えておるわけでございまして、この点もひとつ御理解をいただきたいと思うわけでございます。
○渡辺四郎君 ですから大臣、私も冒頭申し上げましたように、二次感染、三次感染の予防対策を早急に手を打たなきゃいけないということは全く同一であります、どう予防されていくかという立場から。しかし、どうしても私の頭に残るのは、さっきから何回も言いますように、日本のエイズ感染者の中の九〇%以上の方が、さっきから安部英先生のお話まで引き出して言いましたけれども、いわゆる犠牲者であるわけですね。そこをやっぱり頭に置いて、これから後の二次三次の予防対策をどうやっていくか。
 ですから、私はやっぱり法案の立法趣旨そのものの基本を、特に厚生省に関係がありますが、国際障害者年の精神を基本に、障害や病気を持つ人とともに生きようという基本テーマがありますね。この姿勢に立って国民の賛同を得るような予防法案をつくらなければ、大臣はイギリスの梅毒の問題を先ほど出しましたけれども、私らが子供のころあるいは成人のころ知っておるのが、例えば売春防止法ができる前です。臨検と言って、いわゆる特飲街に行政職員がもう全く女性の人権なんか無関係に行って検査をしておりましたね。行く人間も非常に私のようにやっぱり悔やんできたことがあるわけですよ。女性の生理も全く関係ない、人権も全く関係ないということで臨検だ、臨時の検査だ、検疫だということで試験管を持って入っていく。そういうことも私らは知っておるものですから、だから人権そのものも侵害されないように、あるいはプライバシーを守る立場からもやっておるというふうに言われておりますけれども、やはり漏れるわけでしょう。
 例えば、後ほど山本先生がやりますが、公務員の守秘義務だって、自分は公務員だったから一番よく知っておるわけです。それじゃ、保健所に結婚する相手の皆さんが両方とも健康診断に来る。血液検査の結果、保健所の医師がエイズウイルスを持っておったというふうに知った場合、一方では行政官として感染しない予防対策の責任もあるわけですよ。しかし、二人が結婚をするということで健康診断に来た。片一方の例えば男性がウイルスを持っておった。女性の方にそれを教えた場合には守秘義務に違反をするわけでしょう。私はあの公務員の守秘義務というのは両刃の剣だというふうにいろいろ今までもやってきましたけれども、あるいは自分の身内があの人と結婚をしたいと言った場合に、例えば私の方の身内がウイルスを持っているかもしれませんし、あるいは相手の方が持っておるかもしれないということを行政の立場で知っておる人間はおるわけでしょう。そういう人たちも感染を予防しなければいけないという立場がありながらそれを言えない。言った場合には実刑まで食らわせる、こういう法律になっておるわけですね。ですから、そういう点で私は、本当に秘密が守れるのか、あるいは人権侵害がないのか、プライバシーが守れるのかということが非常にやっぱり心配でならないわけですよ。
 ですから、これはちょっと方向を変えますが、きのうの新聞ですか、「献血に協力したのに高校へ「性病」の通知」。姫路の赤十字の血液センターが、献血をしてもらった高校生の二十一校の生徒の中の七校の生徒にいわゆる性病とB型肝炎の陽性者がいたということを学校に教えたというふうに報道されましたね。やっちゃいかぬ、しちゃいかぬ、人権は守らなきゃいけない、プライバシーは守らなきゃいけない、こういうふうに言いながら、一人の行政官の手落ちのためにこういう結果が、侵害される事件が起きてくるわけです。私らも、あるいは家族の皆さんあるいは患者の皆さんが一番やっぱり心配しておるというのがそこにあるわけですよ。
 そういう点について絶対に人権侵害はないのか、あるいはプライバシーの侵害がないのか。法律の内容を見ても、例えばこれこれの「おそれがある」云々とあります。だれがそういうおそれがあるという判断をするのか。それぞれ立場立場におる行政官なり警察官なり、あるいは近所の人の密告、通報によってもおそれがあるというふうにみなされるわけです。それで果たして人権、プライバシーが守られていくのか、そこらをもう一回一応お聞きしたいんですけれども。
○政府委員(北川定謙君) プライバシーを守るという問題、特にこのエイズあるいはこれに類する非常に個人の秘密を尊重しなければならないような疾患を取り扱う場合に非常に問題になるわけでございますけれども、先ほど先生が例に挙げられましたように、今現実の社会の中ではどうしてもそういう間違いが起こる。その間違いが起こるというのは、これはある場合には善意の場合もあるのではないかというふうに思うわけでございます。高校生の場合にそういう報告をしたということ自体がどういう意図であったかということはわかりませんけれども、先ほど先生がおっしゃられたようにもろ刃の剣である、こういうことがあったわけでありますけれども、これは今現実の社会の実態がそうだということであって、これと法律の有無ということとは今の段階では関係がないわけでございます。これからやはり社会をよくしていく、あるいはこういう病気に対する具体的な対応の仕方をどうするという一つのルールをつくっていく、このためにどうしてもやっぱり法律が必要ではないかと私どもは考えるわけでございます。何度も申し上げますけれども、この法律は感染防止という役割と同時にプライバシーの保護ということを強く主張しているわけでございますから、こういう基本的な考えに沿って個々の具体的な現場でどう改善をしていったらいいかということをこれから強く指導していく必要がある、このように考えるわけでございます。
○渡辺四郎君 確かに、斎藤前大臣も人権問題あるいはプライバシーの保護については非常にやっぱり配慮して法案を作成をしたというふうに、終
わった段階でのコメントでそういうのを発表されておりますけれども、今例えば私が指摘をしましたこの献血によって高校生のプライバシーが具体的に侵されておるわけでしょう。これについてはどう思いますか。どういう手続でなっておるのか、そこら付近からひとつ聞きたいと思うんです。
○政府委員(北郷勲夫君) 御指摘の姫路の日赤の話でございますが、二十一校のうち七校というのはそのとおりでございまして、私どももすぐ調べまして、学校医さんに親展で通知をしたというような話でございます。これは日赤の指導では、当然のことでございますが、血液検査の結果については本人以外の者へは行わないというのが原則でございまして、たまたまこの職員が新しい職員でございましてその辺の過ちを犯したというようなことでございました。
 これは献血を推進いたします上でこういった事態というのは、もちろん人権という点がまず第一に問題でございますが、献血を推進するという上でも大変な障害でございまして、日赤の方でも直ちにその辺の事情を調査し、姫路日赤に対して指導を行いますとともに、今後こういうことが起こらないように全国的に措置を講ずるというようなことで、今早速手配をいたしておるところでございます。それぞれプライバシーの保護という観点から特にまた献血なんかの問題については注意を払うべきだと考えておりますので、こういうことが起こらないようにしたいということで日赤とも相談をいたしておるところでございます。
○渡辺四郎君 今の回答で私は重大なことが落ちておると思うんです。
 確かに日赤の職員の方が新しいとも書いております。しかし、少なくとも二十一校の集団献血に応じているうちの十校から、学校の方から教えてほしいという要請があったというふうになっておるわけですよ。きのうもちょっとお聞きをしました、確かに学校医を通じて親展で通知をしているというお話は聞きましたけれども。であれば、何で学校の方から、二十一校中十校の学校からそのことを教えてください――今の御答弁と違うでしょう。日赤の職員が新しくてわからなかったというだけでない。学校から督促をしたから日赤の職員は出したと思うんです。そこらは一体どうなっておるんですか。
○政府委員(北郷勲夫君) たとえ学校の方から要請があったといたしましても、それは断るべき筋のものでございます。通常は断っているわけでございます。
○渡辺四郎君 そうすれば、私この姫路の何学校か知りませんが、ここの学校が初めての献血であるかどうか知りませんけれども、そういうことであれば学校の先生方も知っておるはずですよ、要求したってそれはいわゆるプライバシーの保護の問題から報告はしないのだと。ところが、二十一校中十校が要求しておるわけですよ。要求すれば来ておったという、それが今までわからなかったというだけのことじゃないですか。
○政府委員(北郷勲夫君) 従来どうであったかということは私も承知いたしておりませんが、通常であれば断るべきケースでございます。今後その辺の徹底を十分にいたしたいと考えております。
○渡辺四郎君 だから、それは過ちを犯しているわけですから徹底して指導していただかなければいけないわけですが、それで人権を侵害された、プライバシーを侵されたという人は消えるわけじゃないわけですよ。だから、私は人権とかプライバシーの問題というのは、間違いを起こしたら訂正すれば直るという代物じゃない。だから差別というのは、差別する方でなくてされる方でなければわからないというのが差別なんです。差別した方は、いや間違いがありました、これは訂正しましょう、それで済むかもしれませんけれども、差別されたとか人権を侵害されたというのは、侵害された、差別された人しかわからない内容なんです。そこらがやっぱり非常に害ではないかという気がしておるわけですが、ひとつこれは徹底した指導をここでお願いしておきたいと思うんです。
 それから、ちょっとこれから後はこの内容の中にあるわけですが、例えばエイズ対策の方法として、警察庁が指示したハイリスクグループ対策として売春行為を挙げておるわけです。これはさっきから言いますように性行為あるいは同性愛だというふうに言われておりますが、売春とは一体何なのか。今、日本の国民の全体の頭の中にあるのはやっぱり春を売るということで、売る方は女性だというふうに一般的に国民の中には入っておるわけです。そこらについてはどういうふうにお考えですか。
○政府委員(北川定謙君) 私どもはエイズの感染防止という観点から見るわけでございまして、その場合に性行為というのは男女両性の間で成り立っていくというそういうことだと思うわけでございます。一般的には女性が中心ということかもしれませんけれども、これは相対的なものであると私どもは考えておるわけでございます。
○渡辺四郎君 ですから、政府なり厚生省はそういうふうに考えておりますけれども、わざわざ先ほど申し上げましたけれども、一般の国民の認識としては、売春とはといった場合にはいわゆる女性を対象に、あるいは売春防止法ができる前女性以外に身を売る人がおったのかという点から見ても、ですからここらについてはやっぱり御婦人の人たちからもいろいろ言ってきておりますけれども、私は性行為を売った買ったということで議論したくないわけですけれども、いわゆるエイズウイルスの感染率だって女性からの感染率よりも男性の方の感染率が高いという検査結果も出ておるわけですね。そういう点では、それじゃきれいな売春だったらいいのか、エイズウイルスに感染していなかった場合には売春はいいのか、そういうことを一方では奨励するような格好になってくるのではないかという心配もあるわけですね。
 ですから、売春防止法そのものはありますよ。ありますが、例えば水際作戦でそういう人が上がってくる場合には外国人だってチェックをしなければいけない、こういうふうになっておりますが、それじゃ、エイズウイルスを持たなかった人がどんどん上がってくる、そういう人たちが売春行為をやっていいのか、そういうことまで、考え過ぎかもしれませんけれども、かぶりを振っておりますけれども、だからここらについては私は売る買うということではなくて、売春というのはやっぱり売春婦でなくて、婦も男の方もという対象にしなければいけないのじゃないか。ですから、ハイリスクグループという名前を使ったのはそうでしょう。そこら付近に働く人というのは圧倒的に女性でしょう。そういう人たちを中心に血液検査をしなさい、こういう指示になっておるわけですよ。だから、そこら付近についても差別と言われれば差別の観念があるのじゃないか。これは男女差別の問題です。そういう実は指摘まであるわけです。
 ですから、そこらから見ても、私は先ほど大臣にもちょっと申し上げましたけれども、どう二次感染、三次感染を予防していくのかという立場に立ってはこれは国民と政府が一緒になってやらなければいけない。しかし、性行為だけに限定をされてきた、あるいはもとから厚生省がそう言ってきた。しかし、日本国民の中には、そうじゃない、空気感染だってあるかもしれないように一時は思っておった。そうすればエイズ予防法案というわざわざそういう独立法案を立てずに、私は今の性病予防法そのものがいいとは言いません、これは売春防止法ができる前の法律ですから非常に人権問題も侵される部分があるわけですけれども、性病の一環として取り締まる方法はないのか、あるいは予防する方法はないのか。そういう点で議論をされたかどうかをお聞きしたい。
○政府委員(北川定謙君) 幾つかの問題点があったわけでございますが、きれいな売春ならいいのかという先生の御指摘、売春防止ということとエイズの感染防止ということはそれぞれ独立の目的を持ったものであって、先生が御心配になるような考え方はとらないわけでございます。
 それで、エイズだけ単独に取り出さずに性病予防法の中で全般的な規制をしたらどうかという御指摘でございますけれども、これには二つの論点があると思うわけでございますが、エイズだけを取り出すからエイズが非常に特別視されるのではないか、そういうことからすれば性病予防法の中で一般的な規制をしていくという考え方は確かに成り立つと思うわけでございます。
 しかし、一方性病予防法を見てみますと、これは患者あるいは感染者の隔離とか収容あるいは治療命令等非常に規制色が強いわけでございます。これはそういう病気の特殊性からそういう状況になっているわけでございますけれども、エイズについて見ますと、これは先ほど先生がおっしゃられたように感染力が非常に弱い。非常に感染形態がはっきりしておる。それから現時点で見ると非常にプライバシーの侵害という問題が起こる危険が強い。そういうことからいくと、どうしても性病予防法で一括して取り扱うことは難しい。そういうことから政府としては別個に独立の立法を考えた、こういう経緯があるわけでございますので、そこの点についてはぜひ御理解を賜りたいというふうに思うわけでございます。
○渡辺四郎君 私は、先ほど申し上げましたように現在の性病予防法そのものがこれは非常に人権を侵す大変な法律だと、だからそれでいいとは言っておりませんけれども。
 言いますように、感染の経路が性行為あるいは同性愛だけに限られてきたというのがはっきりしておるわけですから、そうすればわざわざこういう法案をつくって、こんなに多くの方たちが反対をされておる、その反対の理由が利害関係じゃないわけでしょう。人権が侵害される、プライバシーが侵される、基本的な人権の立場からの問題ですよ。そうであるならば、私は何も議論をして多数決で賛成反対だというふうにそういうことで採決をして決めるような法律じゃない。本当にやっぱりエイズの感染を防止してそして根絶していこうじゃないか。
 確かに死亡率は高いわけですけれども、では、がんの死亡率が高いわけですけれども、がんなんかに対しては国民の中では感染の恐怖心はないわけでしょう。これは感染をしないからというふうに一般的に言われておりますからね。しかし予防法はないわけですね。治療法はないわけですよ。予防はないことはありませんですけれども、治療法はないというふうに言われておる。しかし、それほど人権を侵されるとかプライバシーが侵害されるということはない。ところが、感染率も非常に低い、しかし死亡率が高いというこのエイズウイルスだけに対して、何でこんなに多くの方々が人権が侵されプライバシーが侵害されるおそれがあるというふうに心配なさっておるのか。そういう点をもう少しやっぱり私は立法府である国会の段階でも考えて、そして冒頭申し上げましたように国民全体が本当に二次感染、三次感染をしないようにどういう対策を講じてやったらいいのかということはもう少し広くから意見を聞いて、そして法案をつくり直すべきじゃないか。
 どうしてもいろいろ人権侵害ではないというふうに言われますけれども、先ほど言いました献血ですらこういう問題が起きておるわけですから、ぜひひとつこれらについてはもう一回大臣再考をお願いしたいと思うんですけれども、いかがでしょう。
○国務大臣(藤本孝雄君) 先ほどから申し上げておりますように、この法案の目的はエイズという病気の二次、三次感染、蔓延から国民の健康、生命を守る、こういうことが一番大事な目的でございまして、その点につきましてはマスコミの論調の中にも積極的に評価をしていただいておる論調もございます。と同時に、これも先ほどから申し上げておりますように、患者の方々の人権、プライバシーを守る、これも当然のことでございまして、そういう点にも十分に配慮いたしておるわけでございます。
 この病気が最初発見されましたときには、確かに治療方法が確立していない、しかも死亡率が高い、非常に恐怖心があったと思うわけでございますが、だんだんこの病気の実態というものがわかってまいりまして、感染経路についても正しい理解が国民の皆さん方の間に私は今あると思うわけでございます。最初は蚊によってもこの病気はうつるというような誤解もあったわけでございますけれども、今日では、国会その他の議論、マスコミの報道等によりましてそういう誤解はないわけでございまして、やはり私どもといたしましては正しい知識を国民の皆さん方に持っていただくことによって社会としてのこの病気に対する偏見、差別をなくしていくということにも無論努力をいたさなきゃならぬわけでございますし、また治療方法の研究にも力を入れていかなきゃならぬ。しかし、当面はそういう治療方法の確立がない以上は予防に全力を挙げていかなきゃならぬ。そういう中でこの法律が持つ大きな使命というものは私どもあると思っておるわけでございますので、どうぞひとつ御理解をいただきたい、かように思うわけでございます。
○渡辺四郎君 最後ですが、私はさっきから何回も申し上げますように、これから後、二次三次の感染防止のためにどう政府なり国民が一体となってやらなければいけないかということについてはそう変わりはないと思います。しかし、何回も申し上げますように、少し内容に触れるようなことになるかもしれませんけれども、少なくとも薬務行政のエキスパートと言われた前の厚生省の大幹部が出ていったところの会社が全体の血液凝固因子製剤の四〇%以上シェアを占めておった。そしてやっちゃいけない、そういうおそれがある場合直ちにやめなきゃいけないということはわかっておると思うんです。これはカネミオイルの関係だってそうです。危ないからあのときに在庫を一切ストップさしてしまうというのであればあんなにカネミオイルの患者はふえなかったわけですけれども、もちろん血友病という患者の皆さんがおりますから、その時点では薬がなかったかもしれませんけれども、何とかここらでやっぱり手を早く打つべきじゃなかったかという意見だってあるわけです。ですから、私はこれから後、二次三次の予防感染対策と現在冒されておる人たち、いわゆる感染をしておる血友病の患者の皆さん、そして血友病の皆さんまでがエイズ患者だというふうに子供さんを含めて言われておるという現実がある。そこをもう少し私は分けて考えていくべきではないかということがどうしてもひっかかって、この法案そのものには賛成ができないわけです。
 ですから、そこらの部分をどうか整理するとか、今一番心配なさっている皆さんたちから御意見を聞いて、どうやっていくべきかということで整理をした後、その法律そのものをその時点で練り直す部分だって出てくるかもしれませんから、万全なものにしていったらどうかということを最後にお願いをしておきたいと思います。
○政府委員(北川定謙君) 先ほど来大臣から御答弁申し上げているように、我が国のエイズ感染の実態が現時点においては血液凝固因子製剤注射による感染というところが非常に大きい。そこで先生が先ほど来御主張になっておられる点が出てまいるわけでございますけれども、衆議院の議論の段階でもこれが非常に議論になりまして、その結果として第五条、医師が都道府県知事に報告をする対象から血液凝固因子製剤による者が除かれるというようなことに修正をされたわけでございます。
 そういうふうに全体として将来の感染の拡大防止ということは何としてもやらなければいけないわけであります。それとあわせて血友病の患者さんに対するいろんなきめ細かい対策、これは法律上の取り扱いもそうでございますけれども、現在既に感染をしておられる方あるいは発病しておられる方が少しでも安心できるように発症予防の研究ということも別途進めておるところでございます。社会生活の上でのいろんな差別を受けるとかあるいはいろんな不安を持っておるとか、そういう状況に対していろいろ相談にあずかる体制をつくる、これをカウンセリングというようなことで
言っておるわけでございますけれども、そういうことを進めながら血友病の患者さんたちが少しでもいい状況でエイズの問題と共存できる、こういう状況をつくってまいりたい、このように考えているわけでございます。
○山本正和君 今、渡辺委員からこの法案の基本的なといいましょうか、法案以前の問題も含めていろいろと意見の開陳がありました。
 私も実はこの法案そのものでは賛成できない問題が余りにも多いと思っておるわけでありますけれども、やはりエイズという大変な問題を何とかしなければいけないという観点から、もし修正できてそしてある程度国民の理解も得られるような状況の中ならば、場合によっては賛成していきたいというふうにも思うのです。そういうことも含めまして、ひとつこの法案について私なりにまず初めに少し基本的な部分についての意見をちょっと申し上げて、それに対してひとつ厚生省側のお考えも聞きたいと思うのです。
 まず、この法案そのものについて、一体この法案が提出された背景や経緯あるいはこの法案の必要性、特にこの法案が単独立法として出されたという事柄、こういうふうなこと等にも問題があります。しかし、実はこのエイズ法案をめぐって国民の間で大変大きな議論を呼んでいるその背景は、厚生行政そのものが今まで薬事行政、医療行政、いろんな分野に分かれております。そういうふうな中で本当に一貫してこういう大変な問題が出てきた場合にどう対応するか。あるいは、特に病気にかかられたあるいは病気を持っておられる国民の皆さんに対して、国民の皆さんのそういう病気を治すためにこれは薬を使うわけです、あるいはさまざまな検査をするわけです。そういうことに対して本当に厚生行政はきちっと目が行き届いているのだろうか。そういうことからくる懸念もこの法案に対する審議のときにいろんな意味で絡んで回ってきている、こういうふうに私は思うのです。
 これは随分前から私が当委員会でも申し上げたことでありますけれども、医療の根本的なあり方の中に、どうしても病院を経営する以上は一定の利潤を上げなければ経営ができません。しかしながら何よりも大切なことは、患者の人権あるいは人として生きていく力をどういうふうに病院なら病院が、あるいは診療なら診療が保障するかということが背景になくちゃいけない。その範囲内で利潤というものを考えていかなければいけない。ところが、巷間今までもたびたび言われたことがありますけれども、病院等を経営するときにどうしても薬をたくさん使わなければいけない、検査をたくさんしなければいけない、いわゆる薬づけ、検査づけ。そしてさらに、我が国の製薬業界の生産する薬品の数たるや膨大なものです。そういう製薬業界がやっぱり我が国で一定の何といいましょうか経済的な役割を果たしているわけですから、確かにそこの企業というものの経営ももちろん考えなくちゃいけないだろうと思うわけです。しかし、そういうものの中で一番大切なのは、医療というのは人の命の問題なんだという、そこがなくちゃいけない。
 ところが、この問題の背景に、なぜ今エイズ法案が混乱するかということの背景に、出発点に血液製剤の問題がありまして、血液製剤に対する監視がもっと厳しくされておって、そして特にアメリカでやったことが我が国では一年余もおくれてから気がついたというふうな状況ですね。ですから、こういう問題も含めて厚生行政に対する不信がありはしなかったか、そういうことを私はまずこのエイズ法案の審議に入るに当たって思うわけです。
 そういうことも含めまして、まずひとつ、これは今渡辺委員からも指摘がありましたけれども、ミドリ十字の問題です。ミドリ十字といいますと、恐らく今エイズに汚染されている方の中にはその名前を聞くだけでもおぞけがするというふうな方々もたくさんおいでかと思うんです。そのミドリ十字がまたまた大変な問題を今度は起こした。要するに十倍もの薬価差益を生むようなものを無許可で販売しておった。それを病院が使って、しかも国立病院に至るまでこれを使っておったというようなことが報道されておる。ですからそういう意味で、厚生省はそういうものに対してどう対応しているのか。また一体ミドリ十字という会社はなぜ、どこからどういうふうな形でそういうことが生まれたのか。こういう問題をこれはやっぱりまずこの法案審議の前に少し明らかにしておいていただきたい、こういうことを私は思うわけです。
 ですから、ミドリ十字が今度薬事法違反で業務停止一月ほどでしょうか、受けた。あるいはその後国立病院等がこういうことをして一体どうなんだということで、厚生省がいろんな形で指導されたということを聞いておりますけれども、その辺の経過についてまずお伺いしておきたいと思います。
○政府委員(北郷勲夫君) ミドリ十字の薬事法上の問題でございます。
 ミドリ十字は五十八年の一月から昭和六十三年の三月までの間にキセノンガスほか二十八品目、これはいずれも放射性医薬品でいわば体内診断薬でございますが、これにつきまして二十三億五千万円、これはミドリの売上価格でございますが、こういった二十八品目の医薬品につきまして無許可の輸入販売を行っていたという事実がございました。
 これに対しまして、薬事法上の処分といたしまして、本年七月十五日から八月十八日までの三十五日間の佐倉工場の業務停止を行ったところでございます。
○山本正和君 この種の問題が出てきた場合、これは私は薬事行政という薬事法関係の問題もありますけれども、病院がいろいろとやっていぐ上でどうしても、どうも新聞の報道あるいはいろいろ私どもの方で調べた資料によりましても、これは国立病院がやったとか私立病院がやったとは言いませんけれども、要するに無許可でやったものをうっかり使ってしまった、いわゆるうっかり型といいましょうか、あるいは何も知らずにそのまま使ったというところもあったようです。しかしそれを少なくともこういう薬を使いましたといって薬価基準に基づいて保険請求した場合、恐らくこれはだめですよという答えが出るはずなんですね。出て気がついた病院もたくさんあっただろうと私は思うんです。
 そういう意味で、病院側の方の責任というものは一体どうなっているのか、その辺は保険局長の所管でございますか、一遍ひとつお伺いしたいと思うのです。
○政府委員(坂本龍彦君) 保険請求をいたしますときに、実際に使った医薬品の価格を請求するというのは当然でございまして、今回の事件のように、無許可さらに薬価基準に収載されていない医薬品を使用いたしましてそれを他の医薬品を使ったという内容で請求をいたしますと、これは明らかに不正請求という形になるわけでございます。これは健康保険法におきましてそういう不正請求を行ったということが保険医療機関の取り消しの事由の一つになっておりますので、そういう事実があればそういう処分の対象になるということでございます。
○山本正和君 処分の対象になるということで、これは新聞の書き方でいろんなことを書きますけれども、処分を要しないんじゃないか、また病院に対して本当の意味での指導が的確にできるんだろうか、こういうふうなことがいろいろ言われておりますが、国立病院といってもいろいろあります、各省それぞれまたがっていますしね。それから私立の病院といいましても、大学の附属病院もあれば個人経営の病院もある。さまざまですね。そういう場合にそういう指導はそれぞれどこがおやりになるのか、その辺はどうですか。
○政府委員(仲村英一君) 病院全体につきましての医療監視でございますとか経営指導管理、これは健康政策局の所管でございまして、実際上の立ち入りは都道府県知事がやるということになっております。
 その際に、医療監視では、医療法に基づいて定められております法令に従っておるかどうか。あるいはもっと広い意味で経営管理という観点からいたしますれば、今のお尋ねの件で言いますれば、物品購入について病院がどういう管理体制になっているか、あるいはどういうチェックシステムをしいているかというようなことの指導管理要領というものを私ども持っておりますが、それに基づいてやっていただくということが一般的な原則となっておるわけでございます。したがって、経営主体はいろいろございますけれども、都道府県レベルではそれぞれの地域にございます病院に立ち入りをして監視をする、あるいは指導するということでの一般的な業務はそういう形で行われておるわけでございます。
○山本正和君 これは余り個人的なことを言うのは私はこういう場所にはそぐわないと思いますが、ある病院の経営者で大変私の懇意な人がおりまして、中核病院と言われている病院が実はこれをやった、だけれども恐らく都道府県も含めてこれはどうにも手をつけないだろう、つけられたら見ものだと、こういうふうなことを言っている人もおるわけです。要するに、こんなことをしたら困るじゃないかということがあってもなかなか指導ができない、またそれに対して厚生省もなかなか物を言って厳しく都道府県なら都道府県に対してきちんと指導をするということができないということが巷間ささやかれるんですが、そんなことはありませんか。
○政府委員(坂本龍彦君) 保険医療機関といたしましては、先ほど御指摘がございました国公立、私立、これは皆同じ立場で、保険医療機関という一つの保険医療を扱う機関として同じように処分の対象として考えることになっておるわけでございます。
 その際に、具体的な事例に基づきましてどういう違反があったかということをこちら側で十分確認した上で具体的な処分を決めるわけでございますが、この健康保険法上の処分は、やはりその病院の設置主体とかあるいはその規模とかその他、そういったものを基準にして考えるのではなくて、実際にどういう不正の行為があったかと、こういうものを基準にしてこの処分というものを考えるということになっておるわけでございますので、ただいま御指摘がございましたような一部のそういうお話というものはあるかとは思いますけれども、私どもとしては実際に行われた不正行為というものを確認した上でそれに相応する処分というものを実施したいというように考えております。
○山本正和君 このミドリ十字の問題、七百六の病院がかかわっているというようなことが言われているんですね。恐らくこれは調査するといっても大変な数ですからなかなか難しいと思うんですけれども、今後どういうふうに対応されていつごろまでにこれについては結論をお出しになる見込みなのか、その辺はどうでございますか。
○政府委員(坂本龍彦君) 私どもは各都道府県に対しまして十一月末までにこの件についての調査の結果を報告せよという指示を出しております。したがいまして、十一月末の時点で全国からの調査結果が厚生省に集まるというスケジュールになっておりまして、ただいまこの作業を各都道府県で実施しておるわけでございますけれども、私どもはその提出されました調査結果を十分に内容を精査いたしまして、また必要な確認も行いました上で具体的な処分を決定してまいりたいと思っております。
 約七百の病院でございますので、作業量としては相当なものになるであろうということも予測されておりまして、その調査結果を見た上で、いつごろどういう処分をするかという点につきましては現在の段階でまだ確実なことは申し上げられませんが、できるだけ調査結果について十分な精査、確認を行って処分を決定してまいりたいというように考えております。
○山本正和君 ひとつ厳正な対処をぜひお願いしておきたいと思います。
 要するに、医療機関の間にある特に医療機関の経営といいますか、特に国立病院ですね、国立病院の場合には同じ国同士だからそんなに大したことないだろうというふうな甘えもあるやに聞こえるわけです。それからまた事実、例えば各県にある国立大学の、これは文部省所管かもしれませんけれども、附属病院なんかは聖域化している、なかなか経営内容については議論もできないというふうなことまで言われているわけですね。ですから、そういうことも含めて、やっぱり厚生行政という立場からそういうものに対してもひとつ厳しい対応をしていただきたいと思いますが、これについてはよろしゅうございますか。
○政府委員(坂本龍彦君) 国立病院であるからとか、そういったようなことで処分というものを左右すると申しますか、そういうことは私どもは考えておりません。
○山本正和君 またこれは今後の段階でお尋ねしていくことがあろうかと思いますが、一番大切なことは、私はやっぱり根本は病院経営が非常に苦しい。なぜ苦しいのか。しかも国民医療費はどんどん上がっている。その辺にメスを入れてもらわぬことには、これはなかなか解決しないんだろうと思うのです。
 お医者さんが例えば処方せんをお書きになる、五百円とか六百八十円とかですね。処方せんというのは実は患者と医師にとっては大変な、まさにお医者さんを信頼して薬を飲むわけですから大変な行為なんですね。それをわずか五百円か六百円というふうな値段で位置づけられている。あるいはお医者さんの初診料なら初診料、そうしたものというのは大変安いわけですね。ところが薬価でもってやると幾らでももうかる。幾らでももうかるというのはおかしいですが、もうけようとすればできぬことない。
 そういう制度も含めて、今日私どもが一番心配するのは、国民の健康を守るという観点からいった場合に、余りにも企業といいましょうか、あるいは利潤の世界が医療の中に入り込み過ぎている。そして、本当にお医者さんがお医者さんとして自信を持って仕事をおやりになるような部分についての対応がされていないというところに問題がありはしないか。私は本当の話、大学出たての若いお医者さんでも命を預かるんですから、本当に一月百万円やろうと二百万円やろうと、国民はそのお医者さんに対する待遇の保障というものはしてもいいと思っていると思うのです。ところが、そのお医者さんが薬を売らなければどうにも病院経営ができないというふうな実態をそのまま置いておくということに問題がありはしないか。
 それから製薬業界も随分たくさんなコマーシャル使って、大変なお金を使っているんです。そういうものに対して、なぜ一体薬をあんなに宣伝しなきゃいけないのかという問題等もありはしないかと思うんです。
 今度のエイズ法案の一番根本の問題は、要するに製薬業界の行う血液製剤、そこからきたんじゃないかという不信が大変強いんですね。ですから、私はそういうことも含めて今後十分これについては御検討いただきたいと思いますし、今後も私はこれについてはいろいろと問題点を指摘して厚生省の見解をただしていきたいと思っております。
 きょうはエイズ法案の問題でありますから、少し法案の方に戻りまして質問いたします。
 まず、先ほど渡辺委員からいろいろ質問されましたことに入る前に、少し衆議院で議論されましたことの復習といいましょうか、それをしてみたいと思うのです。
 一つは、衆議院の議事録の二十九ページに、これは木下衆議院議員の質問に絡みまして、学校教育の中で一体エイズの問題をどういうふうに扱うのかというふうなことが質問されておられました。そしてその中で、特にこれは私も見てびっくりしたんですけれども、日本学校保健会がこういう「エイズに関する指導の手引」というのを出しているんです。これは文部省とも相談し、恐らく文部省は厚生省とも相談したと思うのです。要す
るに、今学校で子供たちがエイズというものをどう見るかということは、これはやっぱり大変これからの我が国の、やがて成人していくわけですし、また子供たちの中にはこれは本当にウイルスに侵されている、感染されている子供さんたちもおるわけですね。そういう中でこれを扱うのは大変難しい問題です。
 この難しい問題でここに書いてあることは、なかなかいいことをずっと書いてあるんですけれども、見ていきますとこういう表現がある。これは木下議員も指摘しておられますが、まず小学校の展開例で「エイズはこわくない」、こういうことを言うんだと。ところが「こわくない」という中で、こういうことが書いてあるんですよ。「「エイズ」に関しては、断片的な知識や、さまざまな情報から、児童の間に誤った理解や混乱を起こしている。」。これは大変正しい指摘だと思うんです。「したがって、この病気を正しく理解させ、日常の手洗いなど健康的な生活習慣を確実に実践することは、エイズに対する最も基本的な対応策となるばかりでなく」云々と、こう出ているわけです。
 そうすると、手を洗えばエイズにかかりませんよと。逆に言えば、エイズの人と握手をしたらうつりますよというふうな妙な印象を与える。こんなことが簡単に出されていくということに対して、実は本当にエイズの問題に取り組んでおられる行政の立場の中の皆さん方にもいろんな誤解がありはせぬか、またここから誤解が生まれはしないかということを私は心配するんですけれども、こういう問題についてはどういうふうにお考えでございますか。これは厚生省、あわせて文部省の方も含めて見解を承りたいと思います。
○説明員(石川晋君) お答えいたします。
 先生今お持ちでございましたが、「エイズに関する指導の手引」は、もちろん御承知のようにエイズというのは感染し、かつ発症すれば恐ろしい病気であるけれども、日常生活の中で感染する心配のない病気であるということ、こういうことを子供たちにまずわかっていただきたい。さらにそれはどういうことかといえば、先生が今御指摘されたところにもありますように、健康的な生活を実践する、そういうことが重要であるということを言っているわけでございまして、言ってみれば通常の生活において普通の注意をしていれば心配はないということを指導するというのがこの趣旨でございます。
 そういうことで、ここで言っている「健康的な生活習慣を確実に実践する」という、これは保健教育、衛生教育の基礎であるわけでございますが、他のいろんな感染症と同じような意味で健康的な生活習慣を実践しなさい、そうすればエイズだけが特段怖い病気とかそういうことはなく、感染しません、こういった趣旨でこの部分は記載されている、こういうことでございます。
○山本正和君 ですから私も、文部省も手で握手したらうつりますよというようなことを言っているんじゃないと思うんですよ。しかし、意図がどうあろうと、やっぱり表現は慎重にされるべきだというふうに思います。
 それで、特に子供の間に、子供の遊びの中で妙な差別のことが出ているんですよ。これは文部省の方でも学校現場をいろいろと調査されたらわかると思うんです。あいつはエイズだ、こう言って子供をこうやる。本当にエイズの問題というのは新聞でも随分騒がれましたけれども、要するに、政府も含めて国民的対応がおくれたがゆえに本当にさまざまな悲劇が世の中に生まれてきている。ですから、こういうものをつくるときにも本当に十分な対応をしてもらわなければ大変なことになっていくだろう、こういうことを私は思ってあえて指摘したわけです。
 それから、あわせて今度はこれは厚生大臣が中心になられてエイズ問題総合対策大綱というのをおつくりになられた。そして、文部省それから郵政省、労働省、各省がこの対策大綱に基づいていろんな指示をお出しになったんですね。これはその後一体どのようなフォローをされているんでしょうか。こういうことをおやりになって、そしてそれぞれ指示をした、その指示したことに基づいて具体的にどういうふうな行政措置をおとりになっているのか、あるいは具体的にどういうふうな形でそれぞれの省庁が省内で、あるいは国民に対してどういうふうな役所としての施策をおやりになったのか、その辺ちょっとありましたら伺いたいと思います。
○政府委員(北川定謙君) 先生御指摘のように、昭和六十二年の二月にエイズ対策関係閣僚会議においてエイズ問題総合対策大綱を決定しまして、ここでエイズに対する正しい知識の普及、こういうことを基本にしまして、その他各種の柱立てをしているわけでございますが、これに基づいて各省はそれぞれ正しい理解を深めるためのポスターとかパンフレットとか、そういうものをそれぞれの対象の地域あるいは職域、そういうところに対して広報活動を進めておるという状況でございます。その後組織的にそういう状況の結果については情報を集めておることはございませんけれども、そういうことが積極的に進められておるということを承知しております。
○山本正和君 通達は出された、そしてそれが各省庁それぞれ末端まで通達が行ったということはわかると思うんですね。しかし、本当はそういうことをしながら、同時に国民に対して、我が省としてはこういうことをいたしますよというものがなければいけない。例えば厚生省の場合はエイズ問題についてはいろんな啓蒙宣伝等おやりになっている、パンフレットもお出しになっているというふうに思うんですけれども、そういう種類のことはそれぞれの省庁でやられたかやられなかったか、これは厚生省の係ではありませんけれども、例えば厚生省ではこうしていますというふうなことをひとつお示し願いたいと思います。
○政府委員(北川定謙君) 非常に多岐にわたっておりますので一例を申し上げてみますが、一つは、医療保険制度の体系があるわけでございますが、例えば政府管掌の健康保険の組合ですとか、あるいは組合管掌健康保険の組合ですとか、共済組合ですとか、こういうところがありますが、それぞれの組合の広報紙等を通してのPR、あるいはリーフレットをつくるというようなこともやっております。
 それから厚生省は、この問題は国際交流との関係が非常に深いわけでございまして、そういう点で海外旅行者あるいは在留邦人へのPRというようなことを、これは検疫所でございますけれども、そういう場を通して積極的にエイズに対する正しい理解を深めるためのパンフレットをつくったり、リーフレットをつくったりして配布をしております。また検疫所においては、希望者があれば無料で匿名の検査をして差し上げるというようなこともやっておるわけでございます。
 厚生省以外、学校教育の場においてとかあるいは労働省関係の職域等においても、それぞれただいま申し上げましたようなやり方に準じていろいろおやりになっておられるということは承知をしておるわけでございます。
○山本正和君 それからもう一つ、衆議院の社会労働委員会会議録をそちらにお持ちだと思うのですけれども、三ページで私どもの伊藤忠治議員が、この法案の中の医師が判断をして届け出るということについていろいろと質問をいたしました。その質問に対して北川局長からお答えがございました。要するに、医師が判断をするということを言う場合に一体何を基準にするんだ、お医者さん独自といってもそこにはいろいろな問題がありはしないかということで質問をいたしまして、局長が御答弁になっているわけですね。その御答弁になっておられることが今後はどういうふうに、例えば政令なり省令なりあるいは指導通達なりなんなりを出されるのか出されないのか、その辺も含めてちょっとお伺いしておきたいのですが。
○政府委員(北川定謙君) 伊藤先生の御質問に対して御答弁申し上げているわけでございますけれども、確かに多数に感染をするおそれというのは非常に抽象的な表現でございますので、これを私
はその場で、売春行為等を反復して行っておるような場合ですとか、あるいは麻薬あるいは覚せい剤等を回し打ちしておるケースとか、こういうことを具体的な例として申し上げたわけでございます。その他いろいろ考えられると思いますので、こういう点については非常に個別的なことにもなりますので、指導通知で具体的に明確にしてまいりたい、このように考えておるところでございます。
○山本正和君 先ほどの渡辺委員の質問の中でも触れましたのですけれども、大変ここのところが懸念している部分だと私は思うんです。要するに、今の売春行為あるいは麻薬常習者、こういうふうな形で基準をつくってできるのかできぬのかというところなんですね。ですから、それは今のこの法案を審議するについても、そういうものがあれば審議の場合また若干いろいろな条件が変わってくるわけなんですけれども、それはこの法案審議中にはできませんか。
○政府委員(北川定謙君) ただいま申し上げましたようなことが文書になろうかと思いますが、全体的な指導要綱をどのような形でつくるかということについては、まだ形をとったものになっておりませんので、その点だけについてもし先生がお尋ねであれば、その点についてはこの委員会での御審議の中で明確にさせていただきたいと思います。
○山本正和君 ひとつ次回までに何とか厚生省としての御見解でも何でも結構ですから、メモでも結構ですし、何でもいいからひとつお出しいただきたいと思います。
 それから次に、この本法案についての議論のもう一つの焦点として言われておりますのは、なぜエイズだけを取り上げるのだ。要するに、もっと難しい病気があるじゃないか、そしてその患者も既に百万人と称せられているような、これもエイズとほとんど感染経路が一緒だと言われているような病気もある、こういうことをよく言われます。その問題についてはどういうふうな見解お持ちでございますか。
○政府委員(北川定謙君) なぜエイズだけを独立させるのかということにつきましては、これまでの御討議の中でも何度か御指摘をいただいて、何度か御答弁申し上げているわけでございますけれども、エイズそのものは非常に感染形態が特定されておる。十分な注意さえ払えば今の段階で日本のこの社会の中でエイズの拡大を防ぐことができる、それははっきり見えておる、こういうことが言えると思うんですね。そういうことからいって、アメリカあるいはヨーロッパあるいはアフリカにおけるエイズの蔓延していった過程を参考にしながら、我が国の中でこの予防体制をつくっていきたい、こういうことからこの法案の作成の作業が始まっているわけでございます。エイズそのものは感染力は非常に弱いけれども、感染をすると非常に致命率の高い、しかも今治療方法がまだない、こういう状況にあるわけでございますから、何とかこれを抑制する必要がある、こういうことになるわけでございます。
 それで、それならばエイズだけではなくてほかの病気も一緒に扱ったらどうかという御意見の中の一つとして、例えば性病予防法というような体系の中で一緒に取り扱えばエイズがそんなにクローズアップされないで済むのではないか、こういう御意見が一方にはあるわけでございます。
 それに対して政府といたしましては、性病予防法は非常に強権的な取り扱いが濃厚である。例えば強制的に隔離をするとか治療命令を発するとか、割合に強い姿勢で体制を組んでおる。それと比べてエイズは、感染形態が非常に限られておるというようなことからすれば、そこだけ注意をすればよろしい。それから一方では、エイズが非常にまだ本体がわからない状況、治療方法がないというような状況からして、先ほど来御議論いただいておりますように、非常にプライバシーの侵害につながる、こういう御心配が強いわけでございます。そういった点を含めて考えていきますと、どうしても単独な形で考えておるところを明確に打ち出していくという法体系をつくることが望ましいというところから、ただいま御審議をいただいておりますようないわゆるエイズ予防法案ということで取りまとめをさせていただいたというところでございます。
○山本正和君 どうなんでしょうか、ある種の肝炎ウイルスや成人T細胞白血病ウイルス、これはどういう感染経路で広がるわけですか。
○政府委員(北川定謙君) 例えば肝炎ウイルスでございますが、その中で現在一番問題になっておるのがB型肝炎の問題でございますけれども、これは一つは血液によって感染をするということで、一つは輸血でございます。それからもう一つは母子感染というようなことがあるわけでございますけれども、この点については、輸血用の血液については全部検査ができるような体制の中で今処理をされておる。それからワクチンが開発されて母子感染についてももう完全にめどがついておるというようなことからすれば、この点については非常に一つの体制ができた、こう考えていいのではないかというふうに思うわけであります。
 また、もう一つ先生が御指摘のATLでございますけれども、これは非常に長い歴史的な経過の中で日本の中にも一部あるということでございますけれども、この感染もまだ非常に感染から発病に至るまでの経過が長い、あるいはその感染の形態というものがなかなか明確になっていないというようなことからしてみても、これはまだ研究的な対応をする段階ではないかというふうに考えておるわけでございます。
○山本正和君 そうしますと、結局このエイズ法案というのは、簡単に言いますと、要するにどちらかといえば異常な性行為、性交渉によって感染する、そういうふうな部分が一番怖い、その部分を何とかしたい、こういうのが趣旨なんですか。
○政府委員(北川定謙君) 今比較としてお出しになられましたB型肝炎あるいはATLというものは非常に人類の歴史の中で古い経過をたどってきておるものでございまして、そういう意味で言えば非常に爆発的に流行をしていくというような心配が一つはないということだと思います。
 それに対してエイズは、一九八一年でございますからまだまだ十年たっていないというような非常に特異な状況で人類の中にあらわれてきたという病態でございます。これが幸いにして我が国ではまだ非常におとなしい状況にあるわけでございますけれども、アメリカですとかヨーロッパのその流行の広がり方というものを見ると、これはB型肝炎やATLとは全く質の異なる病気である、このように考えざるを得ないということでございまして、そういう観点からしてもエイズは今のうちにきちんとした対応をすれば拡大を防止することができる。これは私どもが考えるだけではなくて、WHOもあるいはアメリカの政府も何とか日本だけはエイズの対策にきちんと成功してほしいというような願望をも含めていろいろと意見交換があるわけでございまして、そういう状況の中でエイズ対策を総合的に進めていく。その中の一つの大きな柱としてやはり個人のプライバシーの問題を守るという観点からも、この法律がどうしても必要であるという立場に立つわけでございます。
○山本正和君 これは血友病の患者の皆さん方に対しては、本当に国の責任といいましょうか、私どもも含めた社会の責任で、大変な御苦痛をおかけしているわけですけれども、今局長の言われる爆発的に蔓延するおそれがある、あるいは何とかこれを防ぎたいという趣旨の部分は、そうじゃない部分からの感染の話をされていると私は思うんですね。
 要するに、例えば外国を旅行してきた、何かちょっと自分に身に覚えがある、こういうふうな人、あるいは国内でも何かそんなことで身に覚えのある人、そういう人たちを何とか、その人たちからほかに広げないようにしようというのがこの法案の目的だと、こういうふうに受け取っていいですか。
○政府委員(北川定謙君) 先生が御指摘になった
ようなそういうケースも含めて、性的な接触あるいは血液が直接身体の中に入るような注射の回し打ちというような習慣を持った集団、そういうところに焦点を当てながら、全般的に国民のこのエイズに対する正しい知識を深めていただく、そういうことを総合的にやることによってエイズの蔓延を防ぐことができるのではないか、このように考えるわけでございます。
○山本正和君 私は、結局このエイズ法案についてもう一つどうしてもしっくりこない理由は、麻薬あるいは注射の回し打ちでも何でもいいです、あるいはそういう性行為から来た感染のおそれのある人でもだれでもいいです、そういう人たちが待てよと言って病院に安心して行けるような、あるいは検査を本当に安易に受けられるような条件をつくるのが大切なんじゃないかと思うんですが、その辺はどうなんですか。
○政府委員(北川定謙君) その点はまさに先生の御指摘のとおりだと思うわけでございます。そういった意味から匿名健診の機会をつくる、そういう機会を方々で広げていくということはこの法律案とは別個に行政的に進めていくことができるわけでございますので、そこは今後ともさらに重点的にやってまいりたいと思うわけでございます。
 法律によらなければならないところというのは、一つは国民の権利義務に関するところだと思うわけでございます。この点についてはやはりきちんとしたルールのもとにやっていくということがどうしても必要なわけでございまして、そういった観点で法律案を提案させていただいているわけでございます。その第一が、いわゆる第五条にございますようなエイズの感染の状況を的確に把握するための医師から行政への報告でございます。これも一体どういう分野にエイズが拡大していっているのかということを的確に把握をする必要があるわけです。そのためにはどうしても法的な根拠を持つ必要がある、こう考えておるわけでございます。ただこの場合におきましても、個人のプライバシーということに最大限の配慮を払うという観点から、名前とかあるいは住所とか、個人を特定することにかかわる事項についてはそれを報告する必要がない、感染の一般的な状態についての事項を報告していただく、こういう構造になっているわけであります。
 また、先ほど来各先生方から御議論をいただいているわけでございますけれども、プライバシーの問題が非常に重要である。しかも現場の中ではそういうことがしばしば破られるというようなこともあるわけでございます。現実の社会というのはどうしても百点満点とはいかない点が多いわけでありますけれども、少なくともそれは百点に近づくように法的にきちんと方向を示すということがどうしても必要になるのではないか、このように考えるわけでございます。
○山本正和君 確かに法律によって一定のきちんとした枠をつくらなければいけない要素はあると思うんですね。しかし、その法律を提案したときに、そこから生まれるさまざまな誤解あるいは社会的偏見、そういうものが生まれる余地、そういうものが私は一番怖いと思うのです。
 ですから、この法案を出すと同時に、この法案の施行に当たってはこういうことを用意いたしておりますというものがなければ、この法案だけ独立していけばこんなものは恐ろしい法案にしかならないというふうに私は思うのです。ですから、この法案を出すについてはかくかくしかじかのことを行政としていたしますというものが、今局長若干お示しになりましたけれども、そのような事柄を出されるお気持ちはおありになるのかどうなのか、その辺はどうですか。
○政府委員(北川定謙君) 先生御指摘の点はまさにそのとおりでございまして、私どもも法律案だけでエイズに対応しようとしているわけではございませんでして、先ほど来も申し上げております匿名健診ということもその一つになろうかと思うわけであります。
 それで、エイズ問題について総合的にどう対応するかというのが先ほども御指摘のあったエイズ問題総合対策大綱、こういうことになるわけでございますけれども、その中で、正しい知識の普及を図る、それから感染源の把握をする、あるいは不幸にして感染をされあるいは発病をされた方々に対する相談、指導体制を充実していく、あるいはさらには研究を促進して早くエイズの本体を解明し、そして治療方法を確立していく、こういう全体の動きの中で法律を位置づけておるわけでございます。そういう点では先生方が御指摘をいただいている点と全く同じように考えながら進めておるわけでございますが、そういう点についてもまだ私どものPRが十分でないということを反省しながら、今後そういう点もあわせて国民の皆さんに御理解をいただくようにさらに努力を重ねてまいりたいというふうに思います。
○山本正和君 例えば、ちょっとエイズと言ったらおかしいけれども、血液検査してほしいというふうな希望に対して、それじゃそれは一体費用はだれが持つんだ、場所はどこにあるんだ、こういうふうなものがなければ、どうぞどうぞと言ってもらってもなかなか行けないだろう。また、匿名で大丈夫ですよ、いつでも来てください、安心しておいでくださいという条件がなければ、一般の人がなかなか行きにくいんですね。大体、普通四十代から五十代になりますと、病院へ行くのも、ちょっと待てよ、おれは肝臓でがんと言われぬかと恐れるぐらいで、よっぽど行きやすい条件をつくらなければなかなか行かないんですよ。
 そういうふうなことについては、この大綱の中ではなかなか読み取れないんですよ。大綱の中の中心は、いきなり「感染源の把握」というのがぽんと出てきて、「エイズの患者及びウイルス保有者を診断した医師からの届出制を導入する。」と、ばしっときてしまっておるんですね。ですから、エイズに対して国民がもっと本当に怖くない、エイズは怖くないんだ、だからだれでも安心して検査してもらおうじゃないか、こういう空気をどうつくるかということが必要なんですけれども、その部分がなかなかこの大綱の中から読み取れぬのですけれども。ですから、そういうことについては厚生省として今後お出しになる予定があるのかどうか、その辺はどうですか。
○政府委員(北川定謙君) 対策大綱の中で読み取れないという点についてもう少し敷衍をさせていただきたいわけでございますが、今先生から御指摘をいただいた匿名健診、これが非常に大きな力を持ってくるというふうに思うわけでございまして、これにつきましては現在既に七百二十七カ所の保健所、これは先生御存じのように都道府県の行政の末端機構でございますけれども、こういうところにエイズのまず相談窓口を設ける、そこで検査をする体制ができておるわけでございます。さらには、エイズあるいはその関連する感染症に対しての力を持った公的病院等のリストも保健所の窓口で持っておるわけでございまして、そういうPRを今後さらにきちんとしてまいりたいと思うわけであります。
 ただ、その経費の問題についてどうするかというのは、これは現在の我が国の体制の中ではやはり個人に負担していただくことが適当ではないかと私どもは考えておるわけでございまして、この点については個人の負担能力との兼ね合いの問題もありますけれども、そんなに高額なものではないわけでございますので、検査の費用については基本的には個人の負担でいいのではないかというように考えているわけでございます。
 また、エイズが怖くないということについては、これはそういう正しい知識の普及が図られれば、エイズは決して怖い病気ではない、きちんとした生活をしていけばその範囲では全く感染の心配はないんだということを従来もいろんな場面を通してPRをしてきて、既に現段階ではかなりこの点については国民の御理解がいただけておるんではないかというふうに思うわけでございますけれども、さらにその点について継続して努力をしてまいりたい、このように思っておるわけであります。
○山本正和君 法案の中に、今のお話ずっと聞い
ていきますと不必要な部分があるようにも思うんですね、これはこの次の段階で私いろいろともっと法案のこの条文について質問をいたしますけれども。
 ですから、今局長が言われたような、エイズは怖くない、そしてエイズというのは一般国民の中でみんながこのことについて十分関心を持って対応していくべきものだという趣旨の法案ならば、それらしいまずその前段といいましょうか、その条件整備というものがこうなっていますよということをやっぱりお示しをいただきたい。次回の段階までにぜひともひとつそういうふうなエイズ対策についてはかくかくしかじかのことをしていますよということを私どもにお示しをしておいていただきたい、こう思います。
 それから、ちょっとそれに絡んで、これも大変誤解を招くので私も心配するんですけれども、対策大綱の中にもありますし、それから法案の中にもあるんですけれども、「エイズウイルスに感染している外国人の入国規制に関する関係諸国の事例を早急に調査するとともに、かかる外国人の我が国への上陸を拒否できるよう所要の措置をとる。」と、こうなっていますね。そうすると、これは恐らく所管は法務省だと思うんですけれども、一体これはだれがどう鑑定するんですか。人の顔を見てこの人はエイズかエイズでないか、その辺は一体どうなっているんでしょうか。
○説明員(山崎哲夫君) 御説明いたします。
 法案の附則三条に、出入国管理及び難民認定法の一部改正が規定されておりまして、そこでは「後天性免疫不全症候群の病原体に感染している者であって、多数の者にその病原体を感染させるおそれがあるものは、当分の間、第五条第一項第一号に掲げる患者とみなす。」という条項がございます。これは外国人の出入国を管理しております入管法というのがございまして、そこの五条に、入ってくる外国人につき上陸を拒否するという条項が掲げてあります。これに基づきまして港におります入国審査官というのは上陸を拒否するかどうかを決定しておるわけでございますが、先ほど御説明しましたように、法律案におきましては上陸を拒否できる者はエイズに感染している者であって、しかもその者が多数の者にエイズを感染させるおそれがある者に限っているわけでございます。したがいまして、我が国を訪れる外国人の中にエイズに感染している者がいたとしましても、それのみによって上陸を拒否することはなく、これらの人が他の多数の者にエイズを感染させるおそれがある者と判断されない限り上陸を拒否されることはございません。この上陸拒否事由に該当するか否かの判断は、入管法第九条第二項の規定によりまして、厚生大臣または法務大臣の指定する医師の診断を経た後に入国審査官が決定することになっております。
 エイズはその感染力が弱く、感染経路が限られており、特定の行為に伴い感染するものであるから、多数の者に感染させるおそれがあるかどうかということは純粋にその医学的見地からだけの判断ではございませんが、問診の結果知り得た情報、その者の過去の行動、職業をもとに導かれる経験則などにより医師が下した判断を尊重しまして入国審査官が上陸拒否事由に該当するかどうかを判断することになっております。
○山本正和君 それが一番実はこの法案の中にもお医者さんが届けるということについて、これはお医者さんの中でも随分議論があるんですけれども、今の法務省の御答弁を聞いていますと、一体お医者さんが診て、これは常習的な売春行為を行う者であるかどうなのか、そんなことがわかるんだろうかと、簡単に言えばね。しかしこれは拒否できる、こうなっているわけですから、最終的に拒否するときに、ちょうどこれはいわゆる一般国民の中のエイズ感染を多数に広げるおそれがあるということを診断するときの難しさと若干質は違いますがよく似ているところもあるんですよね。だから、何か非常に恣意によってやられはしないかというおそれがある。
 外国の場合、一体こんなようなことになっているところがどこかありますか。
○説明員(山崎哲夫君) 私ども外務省を通じまして外国の立法例を対策大綱にございますように調査したわけでございますが、私どもが承知している限りでは、法令上ないし既に諸外国にあります関係法令を準用するなどによりエイズに感染している外国人の入国または滞在を規制している国は、米国、ソ連、カナダ、中国等二十三カ国でございます。
 どういうように規制しているかということはそれぞれ各国その状況に応じまして違いまして、例えばフィリピン、メキシコ、米国、コスタリカ等はエイズ非感染証明を出させるとか、在留後その留学生などには三カ月たちましたら検査をさせるとか、例えばイラクですと五日以内にエイズ検査を受けなきゃいけないとかというようないろいろの規定がございます。
 ただ言えますことは、今回の法律案で私どもが規制しようとしておりますのは、単にエイズに感染しておるということのみをもって上陸拒否をするというようなことは考えておりません。これはどういう趣旨かといいますと、もし仮にその病原体に感染しているすべての者を上陸拒否の対象としますと、エイズの治療を受けることを目的として入ってくる者とか、親に伴われた年少の感染者など、他人に感染させるおそれがほとんどない者などにつきましても上陸を拒否するというように、人権上いろいろ問題が出てくるわけでございます。
 その点につきましては、現在入国審査官というのは、入管法五条に上陸拒否事由というのが、伝染病予防法、らい予防法の適用を受ける患者とか、売春関係に従事する者というようなものとか、暴力的破壊活動に従事する者というようなものを掲げてございますが、十四項目にわたりまして上陸拒否事由が掲げてございまして、入国審査官が恣意的にやるとかというものでは決してございません。
 空港におきましては入国審査リストというようなものが、いわゆる上陸拒否をすべき事由がある者のリストが配付されておりまして、それに基づきまして判断をした上、医師の下しました判断、さらに私どもが持っております、その外国人が例えば売春常習者であるとか常習的な薬物乱用者であるとかというような資料に基づきまして、最終的に入国審査官がその者が感染させるおそれのある行為をする者であるかどうかということを判断するわけでございます。
○山本正和君 ちょっと時間がありませんので、もう少し法務省に詳しく聞きたいんですけれども、また次回に譲りたいと思います。
 この部分に絡んで、私がとにかく一番心配しておりますのは、我が国の現在のこのウイルスに感染されておられる人たちの大部分が、先ほど渡辺委員からも申し上げたように、本来からいえば国の厚生行政が責任を持ってもう少し気をつければこんなにならなかったということが原因としてある。そういうことがまず根本にあって、そしてこのエイズ法案の審議についてさまざまな国民的な疑惑といいましょうか、不信が生まれていると私は思っているんです。
 その辺のことも含めまして、要するにこのエイズというものが一体何なんだということが国民の間にきちっとわかって、そしてこれから絶対これを広げないでおこうというためにどうしたらいいのかということでの論議としてこの法案が出てくるんだという、その辺の経過が出なければなかなかこれは納得し得ない問題になってくるだろう、私はこういうふうなことを思っているわけです。そういう意味で次回またもう少し具体的な問題等も含めまして質問を申し上げますから、厚生省としてもひとつ法案の趣旨については十分な意見の開陳をぜひお願いしたいと思っております。
 それから、時間がもうあと二分か三分しかありませんけれども、ちょっと緊急な問題として私どもの方へ上がってまいりましたので、少し厚生省の見解を伺いたいんですけれども、国立予防衛生研究所、国立栄養研究所、それから病院管理研究
所、こういうふうなものを一緒の場所に建てる、こういうふうなことでの計画が昭和六十年から六十四年にかけてということで出されておった。しかもこの合築する場合の目的として、米国の国立衛生研究所と並ぶ国際水準を行く総合的な医学研究区域を形成したい、こういうふうな趣旨になっておるのですね。
 ところが、これと同時に今度はまたこの十一月に入ってからの報道ですけれども、厚生省所管の試験研究機関が十三機関ある。その十三機関を何とか全体としてひとつ統合と言ったらおかしいのですけれども、研究機関をもう一遍再編してきちんとやっていきたい、こういうことでまた新たな構想が生まれてきている。
 となりますと、この二つの間の一体相関関係どうなるのかということがあるんですけれども、それよりもとにかく目の前に新宿区の中で、これは区長さん初め、また区議会の全員の決議でもあったようでありますけれども、今予定されているところへとにかくもう何が何でも持っていくんだ、こういうふうなことで、住民が何と言おうと、新宿区がどう言おうと、区議会が何と言おうとやるんだというふうなことで、大変心配しているというふうなことが言われておるわけです。この問題一体どうなっているのか、ちょっとその辺伺っておきたいんですが。
○政府委員(北川定謙君) 先生御指摘のように、国立予防衛生研究所それから栄養研究所、病院管理研究所、この三つを移転して新しく建て直そうという計画が今進められておるわけでございますが、この基本的な理念は、先ほど先生が御指摘なされましたように、米国のNIHとこう言っているわけですけれども、これに見習ったような格好で立派なものにしたい。その基本的な考え方は、医学が非常に進んでまいっておりますので、どういう状況で進んでいくかというと、臨床と基礎、これが一体化をして仕事をするということがもういろんな面で必要になってきておるわけでございます。我が国におきましては国立がんセンターなどもまさにその形をとってやっているわけでございますけれども、従来から疾病予防、特に感染症予防の大きな仕事をやっておる国立予防衛生研究所におきましてもそういうことがぜひ必要だ、こういうことで、もうかなり長い昔からそういう構想があったわけでございます。
 これがいろんな環境条件が整ってまいって進められ、六十年度に事業に着手をして進めてきておるところでございますが、この事業が進むに当たりまして関係地域であります新宿区の戸山地区でございますが、区議会議長さんあるいは区長さん等からいろんな御要請があることは事実でございます。しかし、これも間違った御理解、過剰な御心配、そういうことから出発して地域の住民の方がいろいろ反対をなされた、こういう経過があるわけでございます。私どもも何が何でも強引にそこへということではなくて、やはり周辺の住民の御理解をいただきながらと、こういうことが基本的なことでございます。
 大分予算と執行の時期がずれてしまって実は苦慮しているわけでございますけれども、この研究所はWHOが示しておりますような国際的な指針にも従って十二分に安全性については自信があるという状況のもとに進めておるわけでございます。そういう観点から、地域の一部の住民団体とはいろいろと妥協した話し合いが成り立った。しかし、残った一部の人たちの間にまだ反対の声があるというようなこともございまして、現在もいろいろと説明会を開いたり現場の研究所を見ていただいたりしながら理解を深めていただいているところでございます。新宿区議会あるいは新宿区といたしましても強行をするなという御希望でございまして、その点は十分に配慮しながら、しかし時間の制約もありますので、一定の手順を踏んでやってまいりたい、このように思っているわけでございます。
 また、これと相前後して国立試験研究機関等の将来構想検討会というものが厚生省の中で組織を組んで進められておるわけでございますけれども、これは今申し上げました三件の合築問題は既に固まって進んでおるわけでございます。その点は一応是認した上で全体構想を考えよう、こういうことでございまして、両者の間に矛盾あるいは全く無関係に進んでいるということではございませんので、その点どうぞ御理解を賜りたいと思います。
○山本正和君 終わります。
○委員長(前島英三郎君) 両案に対する午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時二十分まで休憩いたします。
   午後零時二十五分休憩
     ─────・─────
   午後一時二十二分開会
○委員長(前島英三郎君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続きまして、医薬品副作用被害救済・研究振興基金法の一部を改正する法律案及び後天性免疫不全症候群の予防に関する法律案の両案を便宜一括議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○関口恵造君 現在のところ幸いにしまして日本の歯科医師のエイズ感染者は報告されておりませんが、歯の治療の際に抜歯などの出血を伴う治療を行うと感染の可能性があるわけでございます。
 歯科医師がこうしたウイルス感染の危機に立たされましたのは今回が初めてではございません。四、五年ほど前にB型肝炎が歯科医師の間に猛威を振るったときはワクチンの接種や消毒の徹底でしのいだわけでございますが、エイズは今のところ確実なワクチンもなければ治療薬もない。そこで、考えられるエイズの院内での感染の予防対策として次の六つの項目の実施が有効であろうとして、一つ、患者から唾液、血液等の飛沫を直接受けることを防止するために医師と患者の間にプラスチックの透明な板を置くとか、あるいはエアタービンを含むすべての器具を百度で二十分以上普通用いられる消毒薬で消毒する、または使い捨てをふやす。あるいは三番目に、消毒針で過って自分を傷つけないことに注意する。四番目に局所換気。患者からの濃厚な飛沫を局所で吸引排除する。五番目に室内換気で、上部より新鮮な空気を入れ、下部、いわゆる呼吸線以下でございますが、より排出をする。ゴム手袋の着用を患者ごとに処分するということ等細心の注意を払っているような現状でございます。
 さて、通常の健康人にとっては何でもない微生物でも、重症の免疫不全を起こしているエイズ患者にとっては命取りの感染症となるわけでございますが、このようなエイズの日和見感染は多彩であっていろいろの臨床症状を呈するわけでございますが、口腔内カンジダ症、ヘルペス等、口腔内所見も重要と思うわけでございます。
   〔委員長退席、理事佐々木満君着席〕
 エイズの臨床所見として口腔内所見を示す患者はどの程度か、厚生省は実態を把握していらっしゃるかどうか、これについてお答えいただきたいと思います。
○政府委員(北川定謙君) 我が国でエイズの患者さんというのはまだ非常に数が少ないという状況でございますが、昭和六十三年にまとめられました「日本のエイズ症例」という本があるわけでございますけれども、これによりますと、我が国のエイズ患者三十例を収録しておるわけでございますけれども、そのうち二十例の患者さんに口腔のカンジダ症がある、あるいはヘルペス症などの病変があるということが報告されております。エイズ患者ではカンジダ症等の口腔内所見を示す症例が多いということはあるわけでございますけれども、しかし一方口腔内カンジダ症というのは一般的な病気でございまして、エイズ患者のみならず、例えば抗がん剤を使っておって免疫力が低下しておる患者さんなどにもよく発生する病気でございます。したがってカンジダ症イコールエイズと言うわけにはまいりませんが、いずれにいたしましてもこのような問題があるということは事実であろうというふうに思うわけでございます。
○関口恵造君 次に、法案の第五条では、医師はエイズの感染者を診断したとき知事に報告することになっておるわけでございます。口腔内所見もしばしば発現するエイズの特性を考慮したとき、歯科医師が診療時にエイズを発見したとき知事に報告する必要はないのかどうか、この点厚生省はどのように考えておられるか、教えていただきたいと思います。
○政府委員(北川定謙君) 法案第五条で医師に対して、エイズと診断した場合に、その感染者に感染防止上の必要な指示を行った上で知事にその事実を報告する、この場合に当然匿名ということで個人を特定できない形での報告をする、こうなっておるわけでございます。
 歯科医師がエイズ感染の疑いのある患者さんを診察した場合のことでございますけれども、まず医師が感染者であるかどうかを確定しまして、次に感染者であれば継続的な医師の指導を受けるということが必要になるというわけでございますので、歯科医師がこういう場面に直面した場合には都道府県等が設置をしております専門相談窓口、これは医師が窓口におるわけでございますけれども、そういうところを紹介していただくなど、医師による確定診断を受けていただくように進めていただきたいというふうに考えるわけであります。
 また、口腔内所見がエイズ感染の確認への端緒となるということも考えられますので、厚生省といたしましてもこれからエイズ対策を進めていく上で歯科医師の御協力は非常に重要だと考えているわけでございまして、歯科医師の方々にもそのような考え方でエイズ対策に御協力をいただけるようにお願いしてまいりたいと思っておるわけであります。
○関口恵造君 三番目でございますが、エイズのみならず我が国ではB型肝炎ウイルスのキャリアが多いわけでございます。歯科医師は患者の口腔内の処置をする等の、あるいは観血的処置をする等の診療行為を行っておりまして、B型肝炎ウイルスの感染防止対策というものは極めて重要と思うわけでございます。厚生省は歯科医師におけるB型肝炎ウイルス感染防止のためにどのような指導をしているか、教えていただきたい。
○政府委員(北川定謙君) B型肝炎問題はかなり長い経過を持っておるわけでございますけれども、昭和六十年の五月に「B型肝炎の予防方法について」という都道府県知事あての通知が出されております。その中で、特に医療機関に対しましてB型肝炎研究班が作成いたしました「B型肝炎医療機関内感染対策ガイドライン」、これを紹介させていただいております。
 昭和六十二年の八月、三重大学で医師が劇症肝炎で死亡した事例が報告されたことが端緒になりまして、肝炎対策推進協議会というものを開催いたしまして、肝炎予防対策の新しい知見を取り入れた「医療機関等におけるB型肝炎の予防について」という文書を、保健医療局長、健康政策局長名で各都道府県知事、医師会、歯科医師会等にあてまして御通知申し上げたほか、B型肝炎予防のためのパンフレットを歯科医師会の御協力を得まして歯科医師会員全員に配付をいたしたというようなことがございます。
 今後とも、専門家の御意見を徴しながら、その趣旨の徹底に努めてまいりたいと考えておるところでございます。
○関口恵造君 「エイズ診療の手引き」の中で、HIVの院内感染防止のガイドラインが示されているわけでございますが、中をよく読んでみますと歯科の部分が極めて不十分と思うわけでございます。
   〔理事佐々木満君退席、委員長着席〕
歯科も含めましてガイドラインをつくるべきと思うわけでございますが、この点について厚生省のお考えをお願いしたいわけでございます。
○政府委員(北川定謙君) 先生が今御指摘になられました「エイズ診療の手引き」でございますが、これはエイズの診断の手引、感染者の指導の方針及び医療機関内感染予防の手引等についてまとめまして、これを医療機関に示しているわけでございますが、最近いろいろな新しい知見がさらに集まっておりますし、それから治療方法というものもいろいろな経験を踏まえて少しずつ進展をしているわけでございます。
 そういう状況で、近くこの「手引き」を改訂するということを前提に検討しているわけでありますが、この改訂版の作成に当たっては、先生が御指摘になられたような歯科医療の場での問題ということもございますので、歯科医師会の御協力も得まして、できれば今年度内にでもそういうものを完成して、さらに周知徹底を図ってまいりたいというふうに考えております。
○関口恵造君 歯科の診療所におきますエイズの感染予防対策としては、B型肝炎ウイルスキャリアの場合と同様、例えば陽性者の血液や体液で汚染される可能性のある器具等につきましては、原則としてディスポーザブルのものを用いることなどが必要であると考えられて、実際に実施しているわけでございますが、この場合、歯科診療所の経営に影響が及ぶことから、診療報酬点数表の面でもこの点を勘案する必要があると思うわけですが、この点について厚生省の考え方をお願いをいたしたい。以上です。
○政府委員(坂本龍彦君) 歯科診療所におきましてもエイズの感染予防対策をとられるということは必要なことでございまして、その対策の一つとして、ただいまお示しがございましたような、患者を診る際の、あるいは治療する際の器具等についてディスポーザブルなものを使用するということが適当な場合があるということは当然考えられるわけでございます。そのような措置をとることによりまして、歯科診療所の経営に何らかの影響があるであろうということも考えられるわけでございます。
 そこで、診療報酬の問題でございますが、診療報酬につきましては、例えば国民医療費の動向の問題でありますとか、賃金あるいは消費者物価の動向でございますとか、あるいは保険財政の状況、またその他の経済的な諸変動の問題あるいは医療経営の実態、さまざまな要因を考慮いたしまして総合的にこれらのものを勘案して改定を行ってきているところでございます。
 ただいま御指摘のありましたような点に関しましても、こうしたさまざまな要因の推移とあわせまして今後念頭に置いて考えてまいりたいと考えております。
○関口恵造君 以上、五つの御質問を申し上げたわけでありますが、こうした点について国民の皆さん方のお互いの健康を守るためにさらに努力してまいりたいと思うわけでございますが、今後ともこの点に関しましてよろしくお願い申し上げたいわけでございます。
 以上をもちまして質問を終わります。
○宮崎秀樹君 日本のエイズの特徴と申しますか、これは諸外国に比べましてまず私が一番不幸なことだと感じておりますのは、血液凝固因子製剤によります血友病の患者さんの感染被害でございます。
 御承知のように、血友病の患者さんのキャリア、それから発症した方がほとんどでございまして、私これに関しましては、国の責任と申しますと、まあこれは一方から考えるとある、また一方から考えるとないんじゃないか。またメーカーといたしましても、これはやはり責任の所在がどうもはっきりしてない。それからまた、血友病の患者さんの団体にお聞きしますと、ある団体の方はたまたま当時血液凝固因子製剤を自宅でストックして、それでそれを自家注射をするというような要望をしておりまして、そのようなことも実は行われた時期であったと。不可抗力なことも加わったかと思いますけれども、大変大きな被害が出ております。これはまことに同情にたえないわけでございまして、これは一日も早く救済をしなきゃならない。
 今回、それで医薬品副作用被害救済・研究振興基金法の一部を改正する法律案の中でこれをやろうというようなことが衆議院の方からこちらの方
へ提出されてきたわけでございますけれども、私この問題は大変行政としても、国としても積極的に進めてもらわなきゃならないと思うわけでございますが、まず厚生大臣、これに対します御決意をお伺いしたいと存じます。
○国務大臣(藤本孝雄君) 今御指摘がございました我が国のエイズ患者の特徴といいますか、血友病患者の中で血液凝固因子製剤を使うことによりエイズに感染もしくは患者となったという方が多いわけでございまして、エイズ対策を進めていく場合に、蔓延の防止と感染者、患者の人権、プライバシーの保護とあわせまして、これらの不可抗力によりエイズに感染もしくは患者になられた血友病患者対策、これは大きな問題でございます。そういう認識を持って私ども対応しておるわけでございますし、総理が衆議院の予算委員会におきまして、政治で真に解決すべき課題であるというような御答弁もあったわけでございまして、そういう趣旨を体して今後とも十分に取り組んでまいりたいと考えておる次第でございます。
○宮崎秀樹君 そこで、専門的なことにちょっとなるかと思いますけれども、血液凝固因子製剤が、これは血漿分画製剤でございますけれども、この医薬品の副作用というものの対象には今までなっていなかった。十月にこの辺が拡大されて一部医薬品の副作用という範疇の対象にするということになったと思うんですけれども、今回血液凝固因子製剤が一応対象になったということは、この血液凝固因子製剤というものは今後ずっと対象としていくのか、その辺のところはどういうふうになっているか、ちょっとその辺をお聞かせ願いたいと思います。
○政府委員(北郷勲夫君) 血漿分画製剤は従来副作用被害救済基金の対象になっていなかったわけでありますが、加熱処理なんかをいたしまして非常に安全性が高まりましたので今回入れたというようなことでございます。
 それで、アルブミンそれから加熱血漿たんぱくあるいは免疫グロブリン、こういったものは既に入っているわけでございますが、なお残っております全血製剤あるいは血液成分製剤につきましては、なお今後の製造技術の進歩の状況なんかを見てさらに検討を加えていきたいと考えております。
○宮崎秀樹君 そうしますと、今後血液凝固製剤が万が一、こういうことはあってはならないと思いますけれども、製造過程においてウイルスが殺菌できなかったというような製品が出てきて、不幸にしてまた感染者が出たというときには今後はこの法律は動かないんですか。
○政府委員(北郷勲夫君) ウイルスの混入に伴うものにつきましては、これは医薬品の副作用という範疇に入りませんので、これはこの副作用被害救済基金の救済の対象には大部分の場合にはならないというようなことになろうかと思います。
○宮崎秀樹君 そうしますと、この血友病の血液凝固因子製剤に限って今回今までの例については対象としよう、こういうことでございますか。
○政府委員(北郷勲夫君) 従来の分と申しますか、これは新たに入れましたので、ウイルスによる汚染にかかる被害、これはケースによりますが、大部分の場合には今回入れたケースにつきましてもウイルスによる汚染に起因するものにつきましては救済の対象にはならないということになります。
○宮崎秀樹君 そうしますと、これはおかしいんじゃないですか。現在患者さんなりキャリアが出ていますね。これは汚染されてなったんですね。ウイルスですね、これは。だからこれは対象になっているわけでしょう。ならなかったら、これ救済できないじゃないですか。この法律が動かないんじゃないですか。
○政府委員(北郷勲夫君) 医薬品の副作用に伴う被害と申しますのはウイルスのほかにいろんなことが考えられるわけでございまして、今回患者さんの方から特に要望の強かったのはへモフィルMという新しい技術を用いました血液凝固因子製剤ができているわけでございます。これはネズミを利用しまして一つの遺伝子技術を使いまして純度の高い凝固因子製剤ができ上がっているわけでございます。
 これは非常に患者団体の方からの要望もございまして、できるだけ早くということでつくったわけでございますが、これは二つの相反する、一つはメリット、一つはデメリットみたいなものがございます。メリットと申しますと、一般に輸血をいたします場合に免疫力が下がると言われております部分が、純度が非常に高いために免疫力がそう低下しないで済むんじゃないか、こういう一つのメリットが期待されているわけでございます。ところが反面、マウスを使用いたすものでございますから、何らかの副作用があるんじゃないかという懸念も一部心配されておったわけでございます。このデメリットと考えられます部分につきましては、恐らくその心配はないと私どもは考えておりますので、できるだけ安心して患者さんにこういった新しい純度の高い凝固因子製剤を使っていただけるような環境をつくりたい、こう思いまして、特にその辺を一つのねらいにいたしまして、凝固因子製剤を含む、そのほか若干いろんな要素も入っておりますが、こういったものを副作用被害救済基金の対象に加えた。
 未知の副作用もいろいろございますので、ウイルス以外にもいろいろ心配されるものがございます。こういったものについて救済の対象に加えて安心して使っていただこう、こういうことを目標に今回対象を広げたということでございます。
○宮崎秀樹君 日本のエイズの感染者は、昭和六十三年八月三十一日現在千四十八名と報告が出ております。血液凝固因子製剤の九百六十九名というのがそこに書かれておりますけれども、この方々の把握はどうやって把握しているか。仮に今五千人血友病の患者さんがいらっしゃるということをよく言われています。そのうちの四割が既にキャリアであるとしますと、実はもう二千人キャリアがいらっしゃるわけです。しかしその約半数しか把握されていないというわけですが、これはどこでどういう方法で把握されているのか、また疫学情報というのは一体どういうふうにつかんでいらっしゃるか、お教え願いたいと思います。
○政府委員(北川定謙君) 現段階ではエイズの感染者の数を正確に把握をするということは百点というわけにはいかないわけでございますが、関係医療機関の御協力をいただいてその把握に努めておるという状況であるわけでございます。
 昭和六十一年度に厚生省が委託をしまして発症予防・治療研究班というのができまして、ここで調査をされたのが千七百四十七名の血友病患者のうち六百七十八名がエイズに感染をしておったという事実がわかったわけでございます。これはパーセントにしますと三八・八%、約四〇%ということになろうかと思います。このことから、約五千名いると言われる我が国の血友病患者の約四割に当たる二千人が感染しておると推計をしておるわけでございます。
 一方、九百六十九名というのは、現在任意の報告をお願いしております医療機関からのサーベイランス委員会への報告数、これが二百九十一名になるわけでございますが、発症予防・治療研究班の調査の結果把握されました六百七十八名とを加えて計算した数字であるわけでございます。
 したがいまして、実際には医師の診断が行われて既に治療が行われてはおりますが、行政に報告をされていない例が相当数まだあるというふうに考えるわけでございます。
○宮崎秀樹君 そうしますと、血液凝固因子製剤以外の感染経路で感染された方、患者さん等のサーベイランス、これは具体的にどのように今行われておりますか。
○政府委員(北川定謙君) 厚生省として各都道府県を通じましてある一定水準の医療機関を選定していただきまして、これはすべての国立病院、それからすべての公的総合病院、それからその他都道府県が必要と認める病院及び診療所、これは保健所とかあるいは性病予防法第十六条の病院及び診療所を含むわけでございますけれども、そうい
うエイズの診断をする可能性の高い病院を特定しまして協力をお願いし、そこからデータをいただいておるという形でサーベイランスをやっているわけでございます。
○宮崎秀樹君 そうしますと、血友病の患者さんでまだそういう把握されていない部分というものは、そこの国立病院、今おっしゃったところ以外でつかまれている方々でしょうか。
○政府委員(北川定謙君) そういうことも考えられると思いますし、また今お願いをしておる医療機関の中でも患者さんの状況とかいろんな診療上の御判断から報告をいただいていないケースもあるのではないかというふうに思っております。
○宮崎秀樹君 次は、来年度の厚生省の概算要求を見ますと、エイズ対策関係の予算というものを一応要求しておるんですが、これはトータルで二十一億三千万円となっております。これは諸外国に比べますと余りにも少ないのですね。ちなみにアメリカは本年度千二百十一億六千万円でございます。広報だけでも百五十億円。これは御承知のように諸外国は広報活動ということで国民にエイズの予防ということを周知徹底させる。私は何はさておいても広報活動をするということが大切じゃないかと思うんですけれども、フランス、イギリスでも日本の数倍ということでございますが、このエイズ予算についてはどういうふうにお考えでございましょうか。
○国務大臣(藤本孝雄君) 私も全く同じような疑問を感じまして、中身や諸外国の内容を実は調べたわけでございますが、日本の場合は初年度が一億六千万円、六十三年度、次年度が十二億四千万円、約十倍、六十四年度は今御指摘のように二十一億三千万円になっておるわけでございます。したがって、倍率、伸びとしてはシーリングがかかっておる今の予算編成の中では非常に予算としては伸びておる。ところがトータルではイギリスやフランスの半分ぐらい、アメリカと比べますと一けた違う、こういうことなんでございまして、その中身を詳細に実は調べてみたわけでございます。
 例えば広報費でございますが、これは日本の場合には総理府で全部一括してございますからそちらの方にも入っておるというようなことで、厚生省の予算の中では広報費は非常に少額でございますけれども、その点はそういう理由がございます。それから研究開発費、発症予防・治療研究、こういう問題が一番大切なポイントだと思うわけでございまして、この点につきましても必要な予算というのはこれで来年度においては十分な予算だというようなことでもございますので、一応六十四年度はこの予算の獲得に全力を挙げていきたいというふうに考えておりますが、今後の問題としては確かに言われるように予算をもっとふやしていかなきゃならぬ。特に発症予防・治療研究、この予算につきましては今後ふやしていくことが極めて大事な問題だというふうに考えております。
 なお、先ほどの御質問の血液製剤によるエイズ感染者の救済対策の問題で申し忘れましたけれども、先般、衆議院の社労委員会で決議もあったわけでございまして、これを受けまして厚生省といたしましても早期に各種の救済、給付を実施に移すことのできるように今作業中でございまして、そのことも付言をさせていただきたいと思います。
○宮崎秀樹君 予算の件に関しましては、WHOの事務総長に中嶋事務総長を日本から選出して出しておりますので、その点も含めて国際的にちゃんとした予算というものをとらないと、やはり外国に対しても私は経済大国と言われておる日本のこけんにかかわるのではないかと思いますので、ぜひよろしくお願い申し上げます。
 それで内容を見ますと、六十四年度の概算要求ではカウンセラーの養成、研修手当というので千六百万円を要求しておりますけれども、カウンセラーの養成といいますと具体的にどういう方をカウンセラーとして養成なさるのか、どんなことを考えていらっしゃるのか、お教え願いたいと思います。
○政府委員(北川定謙君) このエイズの問題が非常に大きな社会問題になっていく過程で、感染をした人あるいは発病した人がいろんな意味で非常に悩まれる。就学の面で問題にぶつかる、あるいは就職の面で問題にぶつかる、あるいは全く治療上の問題で非常に問題にぶつかる。そういうようなことで、エイズ対策を進めていく上で感染者に対するカウンセリングが大変重要だということがだんだん認識をされてまいりました。そういうことから、厚生省といたしましても六十四年度予算にカウンセラーの養成費を計上したわけでございます。
 具体的には、既に六十三年度からカウンセリングということは始めたい、こういうわけでございます。厚生省としては保健福祉相談事業、こういう柱立てをいたしまして、いろんなバックグラウンドの専門家にこの場面に参加をしていただいてカウンセリングをしていきたい。そのためにどうしても必要な医学の面あるいは心理学の面、両方の面の知識をきちんと修得をしていただきたい。そういうことのための研修会を開催し、またカウンセリングの指導的な役割を担う人材を養成するために、こうした分野では非常に経験の深いアメリカ等幾つかの外国が考えられるわけでございますけれども、そういう外国の研修コースにも派遣をするというようなことを考えておるわけであります。また、学校においての対応ということも大変重要であるということから、学校や幼稚園あるいは保育所等の職員に対しましても必要な知識を与えるための研修会の開催を今後の問題として考えておるところでございます。
○宮崎秀樹君 今学校の問題が出ましたのですが、昨年アメリカの教育省から「ステートメント・オン・エイズ・エデュケーション」というのが出ておりまして、この中で、
  学校が性教育を行うならば、その内容は、エイズによる恐怖を含むべきである。一般的に言うならば、性教育は、学校当局にとって両親、地域公衆衛生機関、市民一般に対し、広く意見を求め、いつ、そしていかにそのような教育を教室内に持ちこむかはデリケートな問題である。
というようなことが出ているんですけれども、学校の研修に関しましては大変慎重に内容をよく検討されてやる必要があるんじゃないか。その辺のところは文部省ともちろん御一緒になってやられることだと思いますけれども、ひとつ慎重にこれはお取り計らいいただきたいということをお願いしておきたいと思います。
 それから次は、エイズの今度の法案でございますが、衆議院で修正されたわけでございますが、修正部分を見ますと、血液凝固因子製剤の投与で感染した者に対しては医師の都道府県知事への報告が除外されているわけです。これは私当然のことだと思いますし、そういう血友病患者さんという方々のプライバシーということではもう当然のことだと思いますけれども、一方、法のもとではすべて平等であるという原則があります。
 そういうことからいいますと、私が次に述べるようなことはもう絶対ないケースですけれども、これから除外された方々の中で医師の指示に従わないような方が出た場合の対応策というものは何かこの中では考えていらっしゃるんですか。
○政府委員(北川定謙君) 法制度上は第五条で都道府県知事への報告に関して血液凝固因子製剤によって感染をした人は除かれるということになっておるわけでございますが、それ以外の部分については、先生が御指摘のように、特段のことを規定をしておるわけではございません。
 しかし、実際問題として血友病の患者さんというのは、常時血液凝固因子製剤の補給あるいは健康管理等、医師と密接な連携のもとにあって、医師の指導を受けて療養生活を送っているわけでございますので、医師の指示に従わないで多数の者に感染させるという心配はないと考えられるわけでございまして、事実上はその点については問題ない、このように考えているわけでございます。
○宮崎秀樹君 ところで、性病予防法、それから伝染病予防法、らい予防法というようなものがございます。この中で、届け出に対する罰則を設けておるのがらい予防法、性病予防法、伝染病予防法でございます。また、入院または入所に関しましては、らい予防法は勧奨を進めておいて命令をする。性病予防法も命令でございます。それから伝染病予防法は強制収容、このエイズ法案は勧告、指示ということになっております。また守秘義務に関しましては、これは医師、弁護士とかそういう職業によりまして、刑法で、漏らした場合には六カ月以下の懲役、二万円以下の罰金、こういうのが百三十四条ですか、刑法の中で書いてあるわけですが、それよりも重い罰を、実は性病予防法は一年以下の懲役、またエイズ法案の方も一年以下の懲役というふうになっております。
 そのようにエイズに関しましては、入院または入所に関しては勧告、指示ということで非常にこれは軽いことに一応はなっております。そしてまた、守秘義務に関しましては非常に重いということになっております。
 私はこの法律を見まして、確かにほかの性病予防法とか伝染病予防法とか、それは違うかもわかりませんけれども、非常にその点は配慮はされていると思うんです。しかし、法律というのができますと、やはり実際の感染者、患者さんがどうも地下に潜っちゃうんじゃないか。どうもそういうことの懸念もあるわけです。正しい理解というものをさせないと、これは逆効果でございます。そういう点に関しましてどのようにお考えでございましょうか。
○政府委員(北川定謙君) 先生のただいまの御指摘は私どもにとっても大変大事な点であると従来から思っているわけでございますけれども、いつもこのエイズ予防法案の御審議の中で伝染病予防法あるいは性病予防法等が議論の対象として比較をされるわけでございます。まあ法律はそれぞれねらっておるところの問題、それからその法律が制定された時代の背景とか社会情勢とか、いろんなものが総合的に勘案をされて形づくられていくんだろうというふうに思うわけでございまして、そういった観点から、現在御提案申し上げておりますいわゆるエイズ予防法案は、先生が御指摘になられたように非常に個人のプライバシーを守るということに配慮をしておるわけでございます。
 そういうことからいいまして、ただ単にエイズということが表に出るからそれが刺激となって地下に潜るという現象が、これは決してないとは申せませんけれども、そういう問題について時間をかけてきちんと社会に御理解をいただく努力をすれば、そこのところはだんだん理解をされるのではないか、このように考えておるわけでございまして、政府としてもそこの点については格段の努力を図ってまいりたい。そういうことによって何とかエイズの感染の拡大ということを今の時点で防止したい、このように思うわけでございます。
○宮崎秀樹君 午前中から話が出ているんですけれども、エイズ予防法案の第七条第二項でございます。
 医師は、感染者にエイズの病原体を感染させた者がさらに多数の者にエイズ病原体を感染させるおそれがあることを知り得たときは、その旨並びにその者の氏名及び居住地等を都道府県知事に通報することができるとなっているわけです。しかし、医師は興信所の職員でもなければ警察権もないわけでございますから、診ている患者さんに対して感染させた人がさらに多数の人に感染させるなんということは証拠をつかまない限り言えないんで、自分が体験してそこにぶつからない限りはこんなことは二十四時間ついていなければできないわけでございます。これは私は空文に等しいと思うんですけれども、ここで言う多数というのは一体何人ぐらいでございますか。二人ぐらいならいいんですか。それが一つ。
 それからもう一つは、性病予防法というのがあるんですね。性病予防法というのは既にもう施行されておるんですけれども、ここにもこう書いてあるんです。「患者に病毒をうつしたと認められる者がさらに多数の者に病毒をうつすおそれのある者であるときは、その者の居住の場所を管轄する保健所長を経て、その者の氏名及び居住の場所その他省令で定める事項を、文書をもつて、すみやかに都道府県知事に届け出なければならない。」。私も医師でございますが、私はこういう届けをしたことはございません。しかし、過去にこういう実例がございますか。実例があったらどの程度で出ているものかということをお答え願いたいと思います。
○政府委員(北川定謙君) エイズ予防法の第七条二項の通報の件でございますが、実際に医師が自分の目の前にいる患者さんを診断して、これがエイズに感染をしておるということがわかった場合には、当然どこで感染をしたんだろうかということをお考えになるだろうと思うわけでございます。そして、恐らくその患者さんにいろんなことを説明をし、あるいは問いただして周辺のいろんな状況を情報としてつかまれるんだろうと思うんですね。そういう過程の中で非常に重大な感染源が、その患者さんの背後におる感染源でございますけれども、こういう者がわかった場合にそれをどうするかということになるわけでございまして、根掘り葉掘り、さっき先生がおっしゃったような興信所の機能ではないわけでございますからそういうことをするわけではございませんけれども、実際に社会に感染を広めていくそのポイントがもしわかったときに、それにどう対応するかというのは非常に医療の現場でお悩みになられるわけでございます。そういう点を明確にしてこの七条の二項の規定を考えているわけでございまして、都道府県知事に通報したからといって、それが公報に載るとかそういうことではないわけでございまして、都道府県知事はその知り得た情報をもとに感染防止という行動に移すわけでございます。
 ただ、その点についてどうやってやるかというのは、当然保健所等の医師が実際にさらにそのケースにいろんな質問をするというようなことになっていくわけでございますので、それが社会一般に広がっていくというようなことはないと思うんですね。それをさらに担保するために、公務員に対する守秘義務、それからこの予防法でさらに厳しく守秘義務を関係者に課しておるわけでございますので、そういう体系の中で全体を御理解いただければ大変ありがたいというふうに思うわけであります。
 それから、いわゆる性病予防法上感染をさせたその背後のケースを報告された事例があるかという御質問であったと思いますが、昭和五十五年に梅毒で一例記録に載っておるわけでございます。
○宮崎秀樹君 そうすると一例だけでございますね。
 私が非常に心配しているのは、プライバシーが守れると言っておるけれども、例えば健康保険の保険証に病名を書くんですね。それからレセプトにこれはやはり病名を書く。ある警察署長さんが梅毒ということがそれから署員にわかった。それはやはり健康保険証から漏れてきた。それで首をくくって自殺をされた。それからまた、もう数十年前の話ですが、らい病の患者さんが、当時はこれは守秘義務が当然あったんですけれども、保健所が来て家の周りに縄を張っていっちゃった。そういうことでその患者さんも自殺をした。過去にそんなような例がございますので、私は非常にこのプライバシー問題は行政の中で運用について厳しく対応してもらわないと、つい午前中も同僚委員から御質問があったような、いわゆる献血の際の報告を学校の方へしちゃう、第三者に漏らしちゃう。それは新人だから知らなかったということで済まされない問題が起きますので、そういうことは慎重にひとつやっていただきたいと思うわけでございます。
 それから、献血のときに今エイズの検査をする。ところが、エイズというのは感染をしてから八週間ないし十二週間ぐらいしないと陽性という結果が出てこない。感染の機会を得て一週間目ぐらいに献血をしてもらった人、また中に不心得な
人がいて、献血すれば検査がただでできるからというような考えのある人がもしいたとすると、その間の血液が第三者に輸血されてしまうというようなことが起きるわけです。これは大変な盲点ですけれども、この辺の対応はどうされているのか、その辺をお聞かせいただきたいと思います。
○政府委員(北郷勲夫君) 先生おっしゃるとおりでございまして、今エイズウイルスの検査の方法は抗体検査でございます、先生の方がお詳しゅうございますが。したがって、抗原が入ってから抗体ができるまで六週間ないし八週間かかると言われておりまして、この辺がちょっと弱点といいますか困っておる点でございますが、こういったことのために、ハイリスクグループにつきましてできるだけ間診をいたしまして、ハイリスクグループについて献血を、そう言っちゃなんですがしていただかないようにする、こんなようなやり方もひとつやっておるわけでございます。
 それでも例えば集団の献血なんかの場合に、何か理由があって自分だけ抜けるというわけにいかぬという場合もあるのじゃないかというようなことで、献血された後で電話でいわばそっと言ってきていただくというような献血者の申告制度みたいなものも設けまして、そういった危険を避けるというようなことをやっておる。しかし、なかなかこれも抗原検査が早くできる方がいい、その検査技術が早く確立することが望ましい、こういうふうに思っております。
○宮崎秀樹君 それは非常に私ども聞いていて物騒な話なんです。仮にそれじゃ検査の結果がそのときはマイナスであったけれども後からプラスになった人は、おれは献血してしまったよということは言わないと思うんです、絶対にその本人は。言ってくれれば、だれに入ったかということでまたそれはできるわけですけれども、そういう後のフォローというものに対しては、例えばプラスの人がいたら、あなたはどこかで献血されたことがありますかということを聞いて、そしてそれをフォローして、その前にさかのぼって、じゃだれからもらったかという、さかのぼるようなことまで現在やるシステムというのはあるのですか。
○政府委員(北郷勲夫君) 一遍献血してしまって、後で言ってこないだろう、こういうお話ですが、やっぱり人間というのは意外といいますか、真っ当といいますか良心的でございまして、ちゃんと後からそっと電話してくださる方もおられるわけでございます。平気で献血して知らぬ顔しているという方は、たまにはいるかもしれませんけれども、まあ大丈夫じゃないかという気がいたしております。
 それから、一遍献血の際に検査してクロとなった人については番号がございますので、一応フォローできるものはフォローしておるというようなことで努力いたしております。
○政府委員(北川定謙君) 大変途中で申しわけございませんが、先ほど宮崎先生から御質問のありました、性病予防法でその患者に感染をさせたその背後にあるケースで、さらに多数の者に感染をさせるケースの報告がどのくらいあったかという御質問につきまして、私が梅毒で昭和五十五年に一例とお答え申し上げましたが、これは間違いでございまして、訂正をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。
 一例と申し上げましたのは、これは保健所からの報告でございまして、それ以外の性病専門の病院あるいは診療所からの報告事例を集めますと、昭和五十五年から六十一年までの間に八十四件のそういう事例がございましたので、訂正をさせていただきます。
○宮崎秀樹君 そうすると、その八十四件についてはどういう処置をしたのですか。それはその人たちを法律に基づいてきちっと処理をしたんですか。
○政府委員(北川定謙君) これは処理をした結果についての報告はございませんけれども、当然予防法に基づいて適切な対応をしておるというふうに考えております。
○宮崎秀樹君 今北郷局長さんのお話ですけれども、これは重大な問題でございますので、あらゆる角度からひとつ御検討願ってそごのないような対応をぜひお願いしたいと思います。
 終わります。
○高桑栄松君 けさ出がけしなにテレビを見まして、大変興味のあるのがございました。タイトルが「妻七人を持つ男逮捕」というのです。七番目の妻、あれっと思ったわけです。そして、中で説明しているのを見ると、全部妻は同居している。子供が十人。長男は二十三歳で、アンケートに答えて、いいお父さんだと思っていると。七番目と思ったことがないので一人ふえただけだ、こう言っているんですね。ところがニュースの説明、リポーターはこんなことがまかり通っては困るんですと言っているんですが、よく考えてみると法律違反をしていないわけだ。何で逮捕されたのかなと。私よく見なかったので、タイトル見ただけでわかりませんが、法律を犯していなければ何をしてもいいというのに、テレビではこんなことがまかり通っては困ると言っているんで、何だか最近起きた事件をいろいろ思い起こしたわけでございますが、私はリクルートを言おうと思ったんじゃないんです、これはエイズに関係して申し上げたいと思ったんです。
 エイズを予防するのであれば、フリーセックス禁止法というのがあればいいんですね。一夫多妻、一妻多夫一切禁ずるということであります。不義密通は重ねて四つ、こういたしますと絶対にふえないわけですよ。そういう法律はつくる御意思ございませんか、厚生大臣。――厚生大臣に伺いたいんです。
○政府委員(北川定謙君) 大臣がお答えになる前に一言申し上げさせていただきますが、私どもはあくまでも現在の一般的な社会環境の中で非常に急速に蔓延が広がるであろうということを心配して、このエイズの予防を何とかしたい。現社会は私どもは民主的な社会に生活をしておるわけでございますので、そういう全体の枠組みの中で最大限の努力をする。そのためにエイズ予防法案を御提案申し上げているわけでございます。
○国務大臣(藤本孝雄君) エイズの蔓延を防止する、その対策の一つとしてのいろいろなお考えであろうと思うわけでございますが、私はやはりこの病気の特性からいたしますと、現状におきましては予防にウエートを置く、そういう対応がまず必要であろうと思うわけでございまして、この病気に対する正しい知識、中でもどういう場合に感染するかということを十分に国民の皆さん方が御理解をいただいて、それに対する相応の対応をすればこの病気から自分を守ることが可能であるというふうに考えております。
○高桑栄松君 私が今申し上げたのは、できないことを承知の上で申し上げたんで、何かよくわからない御返答であったわけですが、フリーセックス禁止法はできないということだと思うんですね。発生源対策ということを私は申し上げたんです。感染症予防の原則は発生源対策でございますから、発生源をどうなくするかということに法律は絞られていくはずでありますから、これから私が申し上げることにそれぞれお答えを願いたいと思います。
 政治の要諦というのは未来予測ということを非常に重要な条件にしていると思うんです。先憂後楽ということですね。未来予測に立って何が不幸をもたらすかということを考えるのが政治の最も大切な要諦だろうと私は思います。
 そこで、自分のことを申し上げるようでありますが、エイズを語るときにやっぱり私がやったことを申し上げる必要がございます。
 私が国会で初めてエイズの質問をいたしましたのは昭和六十一年三月十四日、予算委員会総括質問のときでございます。そのときの新聞の見出しは「居眠り閣僚なし」と出ておりました。みんなびっくり仰天して見たということであります。その翌日の朝刊に、当時の後藤田官房長官が、いい議論であったとうなったと書いてございます。そして数カ月後に後藤田正晴さんと河野洋平さん、当時の科学技術庁長官でありますが、お会いしま
したら、一年近くたってみると先生の言うとおりになってきましたねとお二人が私におっしゃいました。ついこの間、当時の法務大臣の鈴木省吾さんが私に改めてまたおっしゃいました。私が質問したときにはびっくりした、こんな病気があるのか、恐ろしい病気だなと思った、しかし一年もたつと全部先生の言うとおりですねと。
 私が今申し上げたいのは、疫学的な解析によって未来予測を私はしたのであって、際物をつかんだのではないということであります。週刊誌も扱っていなかったこのエイズというのを私は勉強しました。文献を集めました。その結果どうなるだろうかと予測をいたしました。当時、患者は十四名です。どうです、今。九十名でしょう。だから私の予測はほとんど的中してきました。したがって、これから私の申し上げるのは、当然私の集めたデータと、疫学の専門家の一人としての私の話をよく聞いてもらいたいということであります。これはイデオロギーではありませんので党利党略はございません。与党の方も野党の方も全部私の話をよく聞いて賛否のときには判断をしていただきたい。そういうことを私は今最初に申し上げたいと思います。私は自分の疫学の専門家としての予測に立って、これからいろんなことを質問させていただきたいと思います。これは私のやっぱり長い間の習性でございまして、何となくレクチャーが半分入りますので、お許しをいただきたいと思います。
 感染症予防の疫学。疫学というのは、当たるも八卦当たらないも八卦の易学ではないんです。疫病の疫でございます。伝染病学ということであります。この感染症予防の疫学で今度エイズ予防法案が上がってまいりましたが、この目的とするところの重要なポイントは何でしょうか、伺います。
○政府委員(北川定謙君) このエイズ予防法案の目的は、その第一条に、「この法律は、後天性免疫不全症候群の予防に関し必要な措置を定めることにより、エイズのまん延の防止を図り、もつて公衆衛生の向上及び増進に寄与することを目的とする。」というふうにうたっております。
○高桑栄松君 したがいまして、問題は、目的の蔓延を防止するのに予防法案が役に立つかという解析が必要であります。
 午前中来いろんな委員の方からの御質問もありまして、私は二つ三つやっぱり忘れないうちにそれを受けて質問をさせていただきたいと思います。
 渡辺委員がプライバシーの侵されたことについて質問をされて、そのときに北川局長が善意で漏れることもあるというふうなお話をされました。人権が侵されたときに、善意であるとか悪意であるというところは問題になるんでしょうか。人権が侵されたそのことが問題でありまして、善意とか悪意とか、知らなかったとか知っていたとかということではない。侵された人がどのような被害を受けたか。人によってずうずうしい人もいますよ、何ぼ言われても知らぬ顔をしている人いるわけだ。しかし、ほんのちょっと言われただけで自殺をする人もいる。ですから、そういう意味で立法をする人というのは、常に法を適用される人がもしその法の対象になったときにどんな惨めな思いをするか、これを考えないで立法してはいけないと思うんです。これは私は為政者の心だと思います。その為政者の心というものを忘れて何でも法律でやればいいという考えは間違いであると私は思います。
 北川局長にもう一度、善意で漏れることがあるということの善意ということの解釈を伺いたいと思います。
○政府委員(北川定謙君) 私は、善意で漏らすというか、必要だと判断をして医師が当人以外のところにその事実を漏らしたと、こういうことを申し上げたわけで、善意であるからそれはやむを得ないといって認める発言を申し上げたわけではございません。そこのところをひとつ御理解賜りたいというふうに思います。
○高桑栄松君 山本委員が手洗いの勧めということで質問をしたら、課長さんだったですかね、健康的な生活習慣を形成するんだという答弁が返ってまいりました。聞いていて私はおかしくて笑っちゃいそうになったんですけれどもね。
 私がかつて予算委員会で杯のやりとりをやめた方がいいということを言ったことがあるんです。それはエイズがうつるかもしれないということが一つあると、しかしもっと怖いのは肝炎だと、肝炎はもっと感染力が強いから。それから、後で問題にしますけれども、口唇梅毒なんていうのはうつりやすいわけだ。そういうことを加えて、世界でたった一つ杯のやりとりをするというばかげた不衛生な習慣を持っているのは日本だけだからやめた方がいいということを申し上げたら、そのときの中曽根総理は早速閣議にそれを持ち出されたわけだ。私にも言っておられました。先生おっしゃっているのは疫学の問題なんだから、絶対うつらないと言っているわけじゃない、可能性が百万分の一あってもやめた方がいいと、しかし先生肝炎のことですよねとこう僕に言いました。中曽根さんの方がよっぽど理解していますね。その直後に厚生省のだれか知らぬが新聞にコメントが出た。杯のやりとりでうつるようなことを言われては困る、そういうことを書かれましたね。手洗いのきょうの話で僕は笑っちゃったんだわ。手洗いの勧めに対して健康な生活習慣と言いましたよ。
 本当につばがやりとりするんですよ。うつらないというんだったら、厚生省のお役人、エイズで完全に病気で入院している人のつばをべっとりつけてなめてごらんよ、できますか。答弁を願いたい。
○政府委員(北川定謙君) 大変難しい御質問でございますけれども、一般的に言ってエイズの感染原因がどこに一番ポイントがあるかという議論と、非常に可能性は薄いがゼロではないという問題との間にはかなりの幅はあるであろうというふうに思うわけでございます。
 そういうことを前提として、ただいまの先生のお話の杯のやりとり、これは積極的に勧めるべき問題ではない。一般的な公衆衛生の観念からしても、こういう習慣は好ましくはない。しかし、長年の日本の社会の中で形成をされてきたこういう習慣をどのようにして変えていくか、これはもう一つ別の問題であろうかというふうに思うわけでございます。
○高桑栄松君 日本医師会のお話をしましょう。日本医師会では杯のやりとりやめようとした、数年前に。そしてバッジをつけたんですね、献杯お断り。それでもできなかったらしいんだ。今度初めて中曽根総理が閣議で言っているのに、厚生省は水をかけたということですよ。健康的な生活習慣をつくろうというんだったら、それはコメント入れてもいい、しかし不健康だからやめた方がいいと言ったらいいと思うんだ。
 それから局長に聞きたい。確率が少なければいいというのかということでありますが、エイズがこれだけ大きくなった直前に私の質問があったということは今説明いたしました。直前じゃない、数カ月前だ。みんながびっくりしたわけだ。厚生省もびっくりしたんじゃないですか、何にもしてなかったんだから。まあ注目はして、何かかんか二千七百万ぐらいの研究費は出していた。きょうの宮崎先生のお話でも一千億円は出せと、言わなかったかな、何かそれに近いようなお話でしたね。
 しかし、あのときにあるウイルス学の偉い先生が、神戸の事件が起きて売春婦の人がエイズになって死んだとみんなが慌てたときに、慌ててコメントが出たんだな。行きずりセックス論というやつです。セックスは一回でうつるもんじゃない、行きずりのセックスの一回ぐらい大丈夫だと、こう言っているんだわ。局長聞きなさいよ。確率の問題というのは、僕は聞かれるから講演をいたしますとね、行きずりセックスの一回ぐらい大丈夫だ、先生何回やったら危ないんだろう、おれも知らぬがな。面倒だから五回とする。最初の一回は行きずり一回だからいいと。二回目もその次の一回だ。三回目、四回目、五回以上するとい
うとだめだと。これだけやめればいいのか。しばらくしてまた始めるとまた一回だ。冗談じゃないんだな、五回に一回というのは最初かもしれないんだ。宝くじと一緒ですよ。百万人に一人当たるからおれは当たらないと。大抵当たらないさ、百万人に一人だもの。しかし当たる人は当たるんだから。エイズだったら死ぬんです。行きずりセックス論というのはばかげた話なんだ。疫学の統計確率論とうつった人が死ぬということとは違うんだ。
 厚生省、私が献血の検査をせよと六十一年三月十四日に言ったときにどういう答弁したと思います。過去二年間で四万五千だったかな、検査した結果献血者にはゼロでした、何ですか一体。あのときには私は一応十万人に一人の感染者がいるだろうという推定をいたしました。それは十四人の患者の百倍として千四百人と見たわけだ。当時百倍または三百倍と言っていました、日本あたりは。百倍、一番少ないところを見て感染者は千四百人、それを一億二千万で割ると十万人に一人だったです。だから、十万人に一人だとしても九万九千九百九十九人が大丈夫だから一人ぐらいかかって死んでもいいというのかと。私は違う。百万人に一人でも、その献血の輸血を保証するのは医者だって保証できない。輸血の血液を見てエイズ陽性であるかどうか、だれがわかるか。患者は最もわからないんじゃないか。それでもいいんですか。
 当時、厚生省は私に一件実費千円だと言った。今保健所へ頼むと二千円だから、まあ実費千円ぐらいかもしれませんね。そして、一応六十一年度は五万人分の献血検査費用を約五千万円組んでいました。それを私の質問に応じて後藤田さんが言ってくれたんだ。予算が衆議院から参議院に回ってきますと、参議院はもぬけの殻みたいなもので何もやることはないみたいなものだ。しかし後藤田さんは言った、予防は重大であって銭金を惜しんではいられない、政治決断で金はつけられると。九百万人の献血検査は九十億、約百億です。毎年今やっているわけだ。これで初めて国民の輸血に対する安心感が出たわけだ。
 しかし、宮崎先生が言いましたね、それでも感染直後二週間から八週間。違うんだ、六カ月ぐらいまで陰性の人がいるんです。これをどうするかということです。そこまで突っ込んだら厚生省どぎまぎするから私は黙っていた。後で言いましたけれどもね、別な機会に。これも厚生省は僕を否定しているが、私の言っていることは全部否定された後でどんどんそのとおりになっていくんだから。そのことがあるんです。
 それで、今の行きずりセックス論というのは北川局長の考え方はやっぱりいけないんだわ。確率論と感染をした人の話なんだ。後で言おうと思ったけれどもついでだから言いますけれども、昨年の十月に私がハワイから帰ってきたとき、ハワイでは私はエイズ関係のシンポジウムの座長を務めてきたんです。日本政府のエイズに対するレスポンスはというので、私が座長をしながら私は自分のやったことを言ったんです。大変感銘を与えたと思います。
 それで、帰ってきたときに読売新聞の記者が、先生、六十一年三月、都内の病院で手術を受けた三十歳の女性がエイズにかかったと。そのとき患者はこの血液大丈夫でしょうかと聞いた。医者が何と答えたか、それは新聞記者は僕に言わなかったが、医者は答えようがないでしょう。十万人に一人だったら多分大丈夫だと思ったんじゃないですか、大丈夫ですよと言った。かかった。彼女はどうしていると思いますか。死を待っているんだ、死を。私の質問がもう一カ月早かったらこの人は、と思いましたね。しかし、この人は一カ月前だったかもしらぬが、その前に何十人かは厚生省が血液検査を怠ったばかりにかかっている人がいる。一人や五人ではないです、後で数字を挙げてみますが。ですから、そういうことを考えてもらいたいんだな。
 だから、この法案が本当に目的にあるようにエイズの蔓延を防止できるのかということです。そういうことについて私は私の考えを述べてみたいです。委員の皆さんによく聞いてもらいたいというのはそこです、政府側は何としても通そうという方針で答弁いたしますのでね。採決は私たちなんだから、しっかりお願いしたいと私は思います。斎藤さんもおられるので、大変私はありがたいです。
 それで、私は未来予測、疫学の問題を申し上げましたが、感染症、伝染病の予防というのは疫学的な理解、認識のもとで初めて賛否が出せるものだと思うんです。ただ党がこれは反対だと言ったから反対する、そんな無責任なことはやめてもらいたい。党が賛成だと言ったから賛成する、それはやめてもらいたい。これは党利党略、一片の利益もないものです。私がこれだけの努力をしても私に何もないんですよ、あり得るわけないんだ。これでだれが利益になるんですか。国民のだれかがありがたいと言っているだけなんです。だれかが、自分だと思っている人いませんよ、わからないんだから、うつらないのが原則なんだから。だから、血液検査を幾ら私がもう三年ほど前に言ってみたって、恩恵をこうむるのは国民全体のだれかであります。今度もそうです。私はこの法律が本当にいいことかどうか……。
 それで、理解、認識と申し上げたのは、国会議員であれば僕は良識という言葉で恐らく皆さん理解していると思うんです。良識というものは何であるか。私の定義を言わしていただきますと、やっぱりこれはある長年月を経ると思うんです。長い年月を経て、広く一般が受け入れて、コンセンサスを得たものを良識と言うんだと思うんです。良識がないものが法律になっていいかということでありますが、その良識という定義について局長、別な定義をお持ちですか。長年月を経て、皆さんがよく理解をして一つのコンセンサスを得たものを私は良識だと思っています。いかがでしょう。
○政府委員(北川定謙君) 特段異議はございません。
○高桑栄松君 どうも済みません。どうも講義をする癖がありまして、やっぱり答弁を学生に当てるような気がちょっとするものだから。
 そうすると、私が質問したのは六十一年三月十四日と申し上げました。エイズの閣議決定は翌年二月二十四日です。法案提出が三月三十一日、一年たってであります。世の中が沸騰したのは、私が質問したのが六十一年三月で、十一月に松本のフィリピンのじゃぱゆきさんというのが問題になりました。そして六十二年の一月に神戸で人が亡くなったわけであります。したがって、我が国の国論がエイズのホットなニュースの中で沸騰したのは私が質問してからほとんど十カ月ぐらいたってからです。そしてエイズ法案の提出が一年後であります。長年月を経てたくさんの人のコンセンサスを得たか。先ほど来局長はしばしばPRが不足であった、皆さんの御理解を得てと言っていました。御理解を得ないうちに法案が出されたということを私は今その意味で指摘したいんです。
 この法案は、税金と違いまして、直接その人が何か得する損するというものじゃないんだ。だから、こういうものこそ本当にいいか悪いかをよく考えてもらいたい。もし拙速をとうとぶのであったら、私が言った翌日でも立法するために私のところに相談に来たらよかった。そういうこともしないで一年たってから。私に相談なくという言い方は悪いですけれども、私が最初に質問した人間なんだから私の意見を少しは聴取していただきたいという気はないではないんですよ。しかしそれはおこがましいことでありますから、行政の専門家集団である厚生省はもっときっと検討を加えての話でしょうから、未来予測を立ててのことだと思うんです。だから、そういう意味で医療の方でさえもエデュケーションが行き届いていない。
 これは渡辺先生でしたか、病院が拒否したというのを言われた。ついこの間の話ですよ。国立病院を含めた病院がへモフィリアである、血友病者であるというだけで、もう一つは、アンドでしょうね、アンド・エイズにかかっているということ
で診療を拒否された。医療機関でさえもそうなんだから、一般国民がどのような差別をするかなんというのは立法者はわかるんですか、一体。私が何遍も言っているのは、法の適用を受ける人の身になってほしいということです。消費税も同じだと思うんだ。やっぱり何でも法律というものはそれが適用される人の身になってこそ法律は生きてくると私は思うんだ。だから、そういうことがあるのだ。医療機関でさえもそういう認識ではないですか。これは答弁もらってもしようがないんだ、やっぱりレクチャーでやめた方がいいかもしれない。
 今度はエイズの病気そのものについて少し予定質問を挙げてありますから。因果関係、エイズとは一体どういう病気なんだ。時間を倹約していただくためになるべくてきぱきと答えていただきます。
 まず原因、そして潜伏期、診断、まあそれくらいのところで一応御返答いただきます。
○政府委員(北川定謙君) これは先生十分御存じのように、エイズはヒト免疫不全ウイルス、HIVと言っておりますが、これに汚染された血液や精液等を通して人から人へ感染して、一度感染が成立すると次第に免疫機能が低下をし、一年間に平均してHIV感染者の五から七%がエイズを発症し、エイズに特徴的なカリニ肺炎などの日和見感染ですとかカポジ肉腫などの悪性腫瘍を合併するというふうに記載をされているわけでございます。
 潜伏期でございますけれども、いろんなケースがあるようでございますが、ある成書によりますと、成人の男性、ホモの場合には七年から八年、長いケースは十五年というような数字が出ております。
○高桑栄松君 感染者の五ないし七%が発症するとその残りは全部大丈夫のように聞こえますね。それは間違っていると思うよ。まあ今議論をする場ではないからいいけれどもね。
 潜伏期、このときに説明をしてもらいたかったのは、この間は全く健康でありまして普通の生活ができるということであります。つまり感染をしていくということであります。これがほかの感染症とは全く様相が違うんです。完全に健康生活で、セックスでも、ビールを飲むことも、献杯をすることも、キッスをすることも、何でもできるというのがこの潜伏期二年ないし八年ということであります。
 診断はどういうふうにつきますか。
○政府委員(北川定謙君) 診断学はいろいろの場面をとらえて行うわけでございますが、確定的な診断はHIVの抗体検査によることになるわけでございます。
○高桑栄松君 重要なことは、今言われたとおりなんですけれども、特有症状がないということです。普通の人が病気ですと、やっぱりインフルエンザならこんなふうになって腰が痛くて熱が出てううっと、こうなるんですけれども、これはないんです。したがいまして、初発症状というものが潜伏期の間は一切ないから、診断は、感染しているかどうかは血液の抗体検査以外ない。これは非常に困った病気なんです。下痢をしたとか、熱が出たとか、腰が痛いとかと言ってくれりゃ早いんですけれども、全くエイズウイルスによる、つまりウイルス毒素による病気ではない。最初言われたHIVというウイルスによって免疫機能が破壊されていく。つまり免疫が低下するに従って、あるレベルまでいくとかかった病気に免疫ができないので間違いなく死ぬ。
 治療法、予防法、予後について承りたい。
○政府委員(北川定謙君) 順番からいってまず予防ということになろうかと思いますが、予防につきましては、現在ワクチンの可能性ということが考えられておるわけでございますが、このHIVウイルスが持っておる特性からいって非常にその開発が難しいとされております。
 また、治療法につきましては、化学療法の中でAZT、アジドチミジン、あるいはインターフェロン、それからデキストラン硫酸ナトリウム、あるいはメチオニン等が有効であるとされておりますが、これも決定的な治療薬ではないと言われております。
 なお、そのほか日和見感染を併発するわけでございますので、そういう状況に対するそれぞれの対症的な療法ということが考えられるというふうに思います。
○高桑栄松君 今お伺いになったと思いますけれども、薬はない。たった一つ今許可になっているのがAZTでありますけれども、これは半年ぐらい服用すると副作用が出て造血機能に影響が出てくるというので使えなくなる。したがって、せいぜい延命効果半年ということでありまして、発症したら三年以内にほとんど全員が死ぬということでありまして、これ致命率と言いますが、致命率はほぼ一〇〇%。ほぼというのはよくわからない部分があるからでありまして、論理的には一〇〇%だと思います。免疫がなくなるんですから治るわけがないんです。
 それから、ワクチンができないというのは、インフルエンザで皆さん今効くか効かぬかで問題になっていますが、インフルエンザはことしの型がありまして、来年別な型になるからそのワクチンが効かない、こう言っているんでありますが、エイズは、その年のじゃなくて一カ月ぐらいして血液を調べたらもうエイズのウイルスのタイプが変わっている。したがって、もうワクチンなんてものじゃないということであります。しかし、人間の知恵ですから、もっともっと変化しない部分の免疫を増強できないかというふうな今研究が行われていますので何年か後にはと思いますけれども、潜伏期を十年とると全員が発症し全員が死ぬだろうと言っていますね。だから、多分論理的に言えば、感染をした直後、ウイルスの数が少ない、弱い、そしてこちらの免疫が強いときに最初の勝負をしてやっつけてしまえば生き残れるかもしらぬ。それを少しでも過ぎたらもう間違いなく死にますね。これは論理的にはそうなはずだと私は今思っています。予防法はだからないんですね。たった一つあるのはフリーセックス禁止法をつくればいいのではないか、こう思っているわけです。
 これだけの条件がある中で、しからばエイズ予防法は何を目指すんですか。
○政府委員(北川定謙君) ただいま高桑先生、最後にフリーセックス禁止法というふうに仰せになりましたけれども、これは非常に重要な御示唆ではないかというふうに思うわけでありますが、要するにエイズは感染形式が非常に特定をしておるということではないかというふうに思うわけであります。高桑先生の先ほどの確率論でおっしゃられると非常に問題が残るわけでございますけれども、現実社会の問題として考えますと、今までのアメリカあるいはヨーロッパのエイズの感染の拡大の状況から見ていきまして、男性の同性愛、それから麻薬あるいは覚せい剤を共通した注射で打ち合うというようないわゆる注射の回し打ち、こういうことで感染者の血液が健康者の血液の中に入るというような環境の中から患者が出てくる、こういうことでございますので、全部一〇〇点というわけにはいかないけれども、少しでも被害を抑えていくということのためには、そういう点に着目した総合的な予防対策、それを踏まえてさらに国民全般にそういう状況について御理解を賜る、こういうことではなかろうかというふうに思うわけでございます。
○高桑栄松君 私は最初に申し上げましたけれども、伝染病予防、その方が皆さんおわかりやすい、感染症と言うと別な病気のように見えるかもしれません、伝染病ですわね。この感染症予防の一番大事なポイントは、やっぱり発生源対策。どうしても発生源対策で、ワクチンができればと、これはもう何といっても重要なポイントであります。しかしワクチンができても非常に難しいのは、普通は野外実験というのを行いますから、例えばインフルエンザですと、こっちの半分はワクチンをする、こっちの半分はしない。そして、ほっておくと電車に乗るごとにインフルエンザのウイルス
にわあっと暴露されて、そしてこっち側の人は感染確率が一〇%である、こっち側は八〇%だと。自然治癒力、抵抗力がありますから一〇〇%効くということはないかもしれないです。インフルエンザなんかはもっと少ないから問題になっているわけでありますが、副作用ありますから。こういうものなんです。
 ところが、エイズはセックスがもし手段であるとすれば、こっちの半分はワクチンした人、こっちの半分はしない人、いずれも同じようにあっちこっちで多数のセックスをしてくださいと言わなきゃいけないです。それをしない限り、何にもしない人はうつらないんだから、最初から。ですからフィールドトライアルができないんではないかということです。難しいんだ、非常に難しい。そして、もし実験をやって、自分がワクチンをして、そしてこのウイルスを例えば注射したら、もし効果がなかったら死ぬんですから、これは大変なことですね、生き残る確率がないということですから。ほかの病気と違うんです。これは我々が今まで遭遇した病気の治癒、自然治癒――自然治癒というのは医者が治さないように聞こえるんですが、ほとんど医者は治していないんですから、全部免疫力で治っているものなんですから。医者はそれを補助しているんです。心臓がぱくぱくするから強心剤を打つとか、熱が高くておかしくなるから下熱剤をやるとか、貧血しているから輸血をするとか、何か命長らえるのを助けているのでありまして、病気を治すのは自分の免疫力です。ところが、エイズが初めて人間の生存を脅かすというのは、免疫力を破壊するからであります。非常に問題なんです。初発症状がないということです。梅毒は一カ月ぐらいすると初発症状が出ます。局所にいろんなものが出てくる。淋病なら四、五日で痛いとかかゆいとか、うみが出るとかとあります。これはないから問題なんです。どうしようもない。
 ですから、そういう病気に遭遇をしたんですから、我々はこれをどう予防するかということは本当に英知を集めてもらいたい。私は予算委員会のときに、今地球上の全国家は軍事拡張というものをゼロシーリングにして、毎年膨張していく分だけでもエイズ研究につぎ込んでもらうことはできないか、中曽根さんサミットで言ってくれと、僕はこれを頼んだんです。それくらいやっても足りないです。アメリカはあの当時円換算で五百億エイズに出していました。我が国は二千七百万です。斎藤さんが大臣のときであります。その年に一億になりました、三倍です。翌年二億三千万かになった。六十三年度、ことしは十億を超えました。飛躍的な研究費の増大であります。しかし、先ほど宮崎委員が言われたように、アメリカの千数百億に比べては問題にならない。レーガンの年頭教書でエイズ関連予算は千九百億円と書いてあります。日本は今十億円が今度幾らになるのか、幾ら注文しておられるのか。これはまあいいです。どうせもう余りにも少ない、情けないぐらい少ないです。
 それで、感染症予防法がもし施行されるとすれば、そこに何が条件になってくるか、これを一つずつ今度解明していきたいと思うんです。
 まず、皆さんどうもレクチャー的で恐縮ですが、感染症を予防するには感染者が発見される、把握されることが大事なんです。この人が陽性であるということが第一です。そうしたら、この陽性であるということをどういうふうに把握するのかということをまず伺いたい。
○政府委員(北川定謙君) 今御指摘の点が一番難しいところであるわけでございます。
 この法律は、先ほど来高桑先生が御指摘になっておる疫学的な全体像をどうやってつかむか、これが第一であるわけでございまして、どのような社会、どのようなグループの中に一番その感染源になる感染者が多いかというようなことをつかんでいく必要があるわけでございます。そういう観点から、このエイズ予防法案の一つの柱が感染情報の都道府県知事への通報、こういうことになっているわけでございますけれども、感染者そのものを一般社会が、どこのだれさんが感染をしたということはこれはプライバシーとの関係でそこまでチェックすることは必要がないだろう。そういうことからいたしますと、感染者は当然医療機関との接触というものをきちんとしていただく。これは医師の指導下に入っていただく。そういうことをしながら御自分で他に感染をさせないという努力をしていただく。これは今後いろんな正しい知識を普及するというようなことを言っておるわけでございますけれども、そういうようなやり方をやって、感染者御自身が御自分で注意をしていただく。
 それから、これは一般的な注意でございますけれども、エイズの感染をする危険性の高い集団というのはどこにあるか。これは先ほど来も御答弁申し上げているわけでございますけれども、そういうことを今後疫学調査を続けていくことにより、より明確にしながらそういうところでの生活についてはさらに注意をする。特に感染が起こる危険性というのは血液あるいは精液の付着というような性交渉であるということが言われておるわけでございますので、そういう生活態様から離れていくというような一般的な衛生的な指導をしていくというふうに考えておるわけであります。
○高桑栄松君 今指導ということでひょっと思いついたんで、持ってきたのでちょっとお目にかけますけれども、日本医師会発行、一九八七年三月、一年ちょっと前ですね。「エイズ読本」であります。QアンドAです。正しい知識なんですね。何カ所かにこう書いてあるんです。例えば、「アナルセックスは夫婦間でも感染するか。」と書いてあります。アンサーは、どちらもエイズウイルスに感染していない限り大丈夫と、極めて明快ですし、まことに正確ですよね。相手が感染していなきゃうつらぬというんだ。こういう回答が幾つかあるんです。全くもう正しいです。物すごく正しいんです、相手がエイズに感染していなければうつりませんと。いや皆さん、これ本当は大事にしてください。相手がうつっているかどうかを確かめる必要があるんです。検査をする必要があります、エイズでないという検査を。しかも二週間から八週間、または六カ月待って検査をして大丈夫なときに初めてオーケー、でなかったらうつりますからね。これを正しい知識ということなんですからね。書いてありますよ。見たでしょう。これ見るとすごいんです。至るところにもうびっくりするような正確な知識ですよ。「精液を飲み込んだが、大丈夫か。」、「相手がエイズウイルス感染者でなければ大丈夫。」と、本当にうれしくなっちゃう。いいですか、正しい知識というものはどういうものかということを一例挙げたんです、何ぼでもありますから。
 さっきも言われておったが、蚊でうつるかどうか。これも私が一応国会でやったやつですよ。私が言ったんじゃないですよ。ヒューチャリストというアメリカの雑誌なんです。そのヒューチャリストに出てきたんです。一九八九年ノベンバーには「エイズイズディスカバードツービースプレッドバイモスキートス」と書いてある。モスキート、蚊によってツー・ビー・スプレッド、伝播されることがディスカバードされる、証明されるとヒューチャリストという未来学派の雑誌に載っているんです。それを私が紹介したんです。私はうつると思いますけれどもね。まあそれはいいです、論争にはならぬかもしれないんで、これはいいです。
 それでは、今の感染源の把握で、先ほど宮崎委員が非常にここは追及をされて、局長もちゃんと答えられておった。ことしの八月三十一日で感染者千四十八、これを見ていろんな素人、素人と言えば言い方が悪いが、専門家でない一般の方が、ああ大したことありませんね、このごろさっぱりエイズの話出ないから日本のエイズなくなったんじゃないでしょうかと。法律が出ないうちになくなるんだから法律なんか要らないんじゃないかと僕は思いますが。厚生省は、千四十八の感染者がおって九十名が患者であって六割は死んだというデータです。ほかの人はキャリアはこれだけだと
思っているんです。
 先ほど宮崎委員が大分きつく追及をされた。ヘモフィリアの方だけで一応サンプリング調査によれば四割、つまり二千人おる、そのうちの九百六十九人だけが届けられている、こういうわけであります。患者が九十名いる。アメリカのような非常に個人の協力もはっきりしているし、がんの告知も恐れないあの国でさえも五十倍ぐらいがキャリアだと言っていますけれども、もし五十倍を適用すれば四千五百人がキャリアであります。たかが一千名をキャッチしておいて、それを法律で縛ってみたところで、残った三千五百人はどこへいくんですか。これはそのままばあっと蔓延をさせる側に回っていきます。
 したがって、感染源の把握ということは、今の状態でどうして千四十八の残り何千人かをキャッチするか。しかもヘモフィリアの方たちのように医師の監督下にある人でさえも千人は出てこない。しかも宮崎先生は正直に、性病予防法があって罰せられるようになっているけれども私は届けなかったと、つまり罰せられなかったと先生は言っているわけです。それは医師患者関係でしょう。STDがそうなんですけれども、エイズはもっともっときつい病気なんだから。
 それから、これが陽性者であると皆さん説明をさせていただきます。これさえ隔離すればいいというのは腸チフスみたいなのがそうなんです。なぜかといいますと、この人がこれにうつったとしますと、これも一週間ぐらいの潜伏期で間もなく発熱してくるからわかるんだ、間違いないんだと。しかし、この場合は感染しても二年から八年も何もない。だから、これを見つけて隔離してもだめなんです。これをもとにして、だれからうつり、だれと接触をしたかとコンタクト・トレーシング、コンタクトをした人を追求していくのが必要なわけです。
 これについても宮崎委員も大分言われましたが、もう一度承りたい。どういう手段を持っていますか。
○政府委員(北川定謙君) ただいま御提案をしておりますエイズ予防法案におきましては、患者さんが医師と密接な人間関係を持って医師の指導下にあるということを前提にして物を考えているわけでございまして、その限りにおいてはこの法律は特段の関与をしない形になっているわけでございます。しかし、その背後に、さらに大勢の人に感染をさせるおそれのあるいろんな行動をとっておる集団が実際には考えられるわけでございます。そういう集団あるいは個人がわかった場合には、そういう状況についてこれは臨床の専門家の先生方は御自分のクリニックから出ていろんな調査をするというようなことまではとてもできないわけでございますので、そういうことをするためのいろんな機能を持った行政、これは都道府県知事でございますけれども、に通報することによって相互に協力関係を持ちながらそういう感染源の把握に努めるという考え方をとっているわけでございます。
○高桑栄松君 私が承った範囲では、報告、通報、それから質問、命令等はすべて医師の通報によるということですね。医師の通報がもとなわけだ。したがって先ほどと同じことになりますけれども、医師がコンタクト・トレーシングできるのだろうか。この人が何人セックスをしたか、どうしてこれをつかむことができるだろうか。これは先ほど来言われていますよ。性行為による感染症を自主申告する人はいませんよ。さっき入国管理局の関係の方が見えておりましたけれども、エイズ感染者である外国人でたくさんうつすかもしれない人は入れないなんて、どうしてそんな判断できるんですか。できるわけないじゃありませんか。私はエイズですって何か証明書持ってきて、それで入国したいという人はいないと思う。まず一〇〇%いませんよ。
 どなただったか局長さんが、全部そうじゃないというようなことを言っていましたが、全部そうでなくても漏れたらだめなんだわ。一〇〇%とらえなければいけないんです。漏れるということがあったら漏れた人だけ損するような形になる。そして、そっちの方が怖いということです。みんなそんな人のためなんとか言っているけれども、我が身かわいいのでありまして、人のために自己を犠牲にするというのは、まあ政治家ぐらいのものじゃありませんか。政治家は国民のために身を犠牲にする。それでも偉い人は、絶対そうでないと言っていても証言法ができたら途端に言を変えた人がいます。人の言っていることは信用できないんだ。
 ですから、殊に性行為感染症は虚偽の申告があると思うんです。その虚偽の申告をどういうふうにしてコンタクトしていきますか。それができなければ意味ないんだ。死文に等しいです。どうですか。何にも言わない場合でも、この人がだれから感染したかということをどういうふうにしてキャッチしますか。張り込みしますか、どうですか。
○政府委員(北川定謙君) この法律は人の善意に基づいてという前提があるのではないかと私どもは考えているわけでございますが、医師が患者さんを診断をするときに、感染症であれば当然その患者さんの状態をキャッチすると同時に、あなたはどこでそういう状態になったのかということを追及をするわけでございます。その場合にいろんな追及の仕方はあると思いますけれども、本人の理性あるいは先ほど先生が言っておられた良識というようなことに訴えながら、本人が御自分の病気の状態を正しく理解する上からも、あるいはさらにほかの感染者をつくらないという観点からもある程度は協力をしていただけるのではないか。
 そういう格好で協力をしていただいた場合に、医師がその情報を有効に活用するように都道府県知事と協力関係を持つ。これは、要するに一〇〇%ではございませんが、可能性としては大きいし、その情報はエイズ予防の観点から非常に重要な情報になると考えるわけでございまして、そういう情報を医師が都道府県知事に通報することについて守秘義務を解除するという考え方をとっているわけでございます。
○高桑栄松君 法律が適用されなくても、今把握されているキャリアが千四十八。推計はどれぐらいいるかというのが論争になりますから、私のデータをもとにしてもらうだけにいたしますけれども、患者の五十倍と見て四千五百。つまり四千五百分の一千ということは二〇%ぐらいしかキャッチしてない。しかも、それは恐らくその先コンタクト・トレーシングはその千名の相当数が拒否すると思います。やってみたらいい。拒否されたらどうするのか。そういうことがあって、漏れるということは一%でも僕は嫌ですけれども、二〇%ぐらいしかつかんでいなくて、そのうちの半分例えばドロップしたら一〇%ですよ。そんなものはざる法でないですかということであります。性病予防法がざる法であることは天下周知です。これは大ざる法なんですね、もっとざるなんだ、
 なぜかというと、罰則等々もっと医師の責任にだけゆだねている。医師はそんなに信頼できる、そんなに力を持っている人たちでしょうか。僕はそうは思わない。私も医者の教育をした人間でありまして、医者というものがどういうものかも若干心得ています。忙しいさなかに、この人の言ったことが本当かどうか、虚偽申し立てであるかどうか、偉い人をマスコミが何百人かかってもわけのわからぬ人もいるのに、まして一介の市井の人を、たまたま来た患者がエイズになったら、だれと関係しましたか、それ一々虚偽であるかどうか調査をすることは不可能です、調査機関持ってないんだから。いずれは保健所でやるとすれば、なぜ医師の責任にしたか。私は医師の立場を擁護したい。医師ができるわけのないことを、これは非常にたくさん医師の責任におっかぶせています。
 それから、患者の取り扱いというのを僕聞きたいんだわ。コンタクト・トレーシングその他をすべて含めまして、そこで発見された患者も出てくるわけだ。本当のエイズ患者はもう間違いなく入院します、数カ月後に間違いなく死ぬんだから、
これは入らざるを得ない。
 ARCがあるでしょう、エイズリレーテッド、エイズ関連、前エイズ的――前ではないんですよね、あれは。前エイズじゃないんだ。エイズリレーテッドというのは前がん状態の前と違う。前がんというのはうまい言葉があったもんだと思いますけれどもね、がんに似ているけれどもがんでないかもしれませんと言っているんです。エイズリレーテッドというのは違うんです。エイズに陽性であって、ある症状が出てきたら間違いなく典型的なエイズに変わる。典型的にすべっていくだけの話。日和見感染と局長言ったけれども、日和見感染というのは普通かからない病気という意味でありますから、問題にならない病気なんで、日和っている菌なんですから、そんなものにもやられてしまうということであります。エイズは間違いなく入院しますから聞くまでもない。ARC、エイズリレーテッドの症状を出した人たちは入院させるのか在宅看護にするのか、どうなんですか。
○政府委員(北川定謙君) ARCをどのように扱うかということについては、行政は特段まだ意見を言っているわけではございません。
○高桑栄松君 極めて不備な法律であると私は思います。感染源を把握して、その人たちをどう処理するのかを考えないで法律だけを先行させるというのは。だから法律を適用される人たちのことを考えてないんじゃないかと私は申し上げているんだわ。しかし局長正直でいい。そうだと思うんだ、これはきっとそこまで行っていないんだ。
 もう一つ聞くのなんかもっと考えていませんよね。陽性者の取り扱いどうしますか、陽性者とわかったら。
○政府委員(北川定謙君) いずれの場合も法第五条ではそのケースについて報告をしていただくということでございまして、その感染者をどのように扱うかということについては、これは医師の判断にお任せをしているというわけであります。
○高桑栄松君 医師には何にも力ないですよ。困っている人ならお金出してやると言うんですか。私はエイズと発表されたら生活できないと。どうするんですか。自殺したらいい、そう言うんですか。医師に何でもゆだねるって、医学教育の中で医師は診断をまず教わります。治療というのは僕らのとき習わなかった。診断だけです。診断が決まれば治療はおのずからできるという話だった、今は少し治療も教えるようでありますが。医者は一人前になるのに卒業して十年かかるというのはそれですよ、ケース・バイ・ケースで、教科書どおりの症状を示さないから。だから診断を習ってもそのとおりではないんですよと言っている。ですから、診断をすることが医師の条件ですよ。治療はそれに伴ってあるんです。これも医者がやるべきことです。
 しかし、生活指導からすべてを医師が任されている。そういうことは私は医学教育の中でこれっぽっちもやっていないと思います。やっていないことをなぜ任せるんですか。個人差が物すごくあると思う。三時間待たせて三分診察と言われている。それはうそにしましても、一人に十分もやっていったら飯の食い上げですよ、医者だって。それをやりながら一体何をやるんですか、この患者の取り扱い。
 私は陽性者の問題はもっと深刻だと思うんだわ。生身で生活をしておって、そしてそれが数千人いるんだから。どうなんですか、やらないんでしょう。
○政府委員(北川定謙君) 先ほどの答弁で医師にお任せをしているというのは、医学的な管理の面についてお任せをしておるということでございまして、生活万般について医師が担当した患者さんにどのように対応するかというのはまた別の問題ではないかというふうに考えるわけであります。感染防止のためのいろんな指導、これがこの法律の上で医師に課せられた義務であります。それ以外の、先生が恐らく御指摘になられるのではないかと考えます患者の心理、あるいは生活万般にかかわる相談事業、あるいはこれはカウンセリングと言っていいと思いますけれども、そういうことにつきましては社会全体の枠組みの中で適切に対応していくということで解決をするという方向があるのではないか、このように思うわけであります。
○高桑栄松君 私は未来予測で随分勝手なことをいっぱい言ったんですけれども、陽性者が気の小さい人ならもう自殺するかもしれないんですね。オランダでは、患者だったと思いますけれども、十一人が安楽死を求めて、医者が黙認をした。それはもう死ぬのがいつかいつかと待っているつらさだと思うんだ。しかし陽性者も同じですよ。いつ死ぬんだろう、いつ発病するんだろう、そう思いながら暮らすわけだ。しかも、社会にはもし秘密にできても、我が家で秘密にできませんからね。我が家は毎日何かかんか接触があるんだから、どうしようもないじゃありませんか。ですから、家庭で秘密を守るということはあり得ないです。そんなことできるわけないんだ。ふろも一緒に入るかもしれない。かみそりだって一緒に使うかもしれない。それをみんなおれは別だ、何でというもんだ。そんなばかなことできるわけないでしょう。ですから、守秘義務といいましても社会的なことも私は不可能だと思っていますけれども、少なくとも家庭内には本人の意思で発表しなければいけないです。不義をしたなんてものじゃないんだから。感染をさせるということですから。知らなかったら困ります。ですから、そういうことをどうカバーするんだというのがあるわけだ。
 私は陽性者の方が怖いと思っているんです。ふだん健康なんだから困るんだ。ぐあいが悪ければまだいいです、医者にかかれるんだから。ぐあいが悪くないんだ。きょうここに来ておられる方だってそうかもしれない。まあそれはでたらめで申し上げているんで、侮辱しているんじゃないと思ってください。私が勝手に申し上げたんです。自分では健康なんだから、我々と変わりないんです。ただ、調べてみたらプラスだったかもしれない、こういうことを私は申し上げたい。
 そういう人たちが、どうしよう、家にはいられない、いたくない。といってどうしたらいいだろう。ひっそりとどうして暮らすんですか。この人たちがもし希望したら、せっかく統廃合しようとする国立病院のベッドが一万ぐらいあいているんだから、当分収容できる。治療は要らないんだから、この人たちを収容できないかと奇想天外な案を私は言ったことがあります。それはしかし私は本気で考えていたんです。つまり適用される人の身になってみろというのはそこです。あなたが陽性だと言われたときにあなたはどうするんですか。それでも知らぬ顔してここへ来ますか。それとも私は御承知のとおりエイズです、そのつもりでつき合ってください、こう言うのか黙っているのか。そして家ではどうするんだ。僕なら嫌だと思うね。死にたくないからどこかに隔離――死にたくない理由はあるんです。ひょっとしたら二年後、三年後に画期的な治療法が開発されたらおれは生きられる。それが梅毒ですよ、治るんだから。そういう開発を期待するということです。
 私が献血血液の検査をしろと言って、そのとおり後藤田さんが言ってくれてやった。六十一年度から始めた。そのときに私は研究費を一挙に増大してくれと申し上げた。それは生きる希望を与えるためなんです。たかが三億や五億で日本が治療法が開発できたらお目にかかりますよ。しかし、日本ではすぐ額だけじゃない学だと言うけれども、額と学と一緒なんですよ。額は多いほどいいんだ、一遍にたくさんの実験ができるから。金額少なければ、三つ実験しようと思っても三分の一の費用ならこれしかできないわけだ。それで次にこれをやるわけだ。その次にこれをやるわけだ。もし三倍あったら一挙にアイデアが三つやれるわけです、人を雇えばいいんだから。だから、一挙にやるためには莫大な金を突っ込んでくれ。できなくても仕方がない。しかし患者に生きる希望を与えるでしょう。政治というものは人間に、先行きは不幸かもしらぬが希望を与える、生きる希望
を与えるのが政治ではないか。私が研究費を惜しむなと言ったのはそれです。私は十億研究体制をと昨年言いました。それでことし十億になった。私はうれしいと思います。しかし、それで解決ができるなんて思っていないです。ただ患者さんあるいは陽性者に生きる希望を与えたい、これが一番大事なことだと私は思っているんです。
 質問の半分もいかないで時間になりましたが、梅毒の話だけ聞いておきましょう。
 梅毒は三年連続このところ実数がどんどん上がっています。しかも、感染力の強い早期顕性梅毒が新聞によりますと八二年度五倍になっている。しかし、実数は報告の十三倍以上であると。十三倍というのはまことらしい数字なものですから、これの根拠は何であったか。そしてどうして今後ふえてきて、なおかつ実数が十三倍以上だと推定されているのか、その辺ちょっとお伺いしたいと思います。
○政府委員(北川定謙君) 今先生が御指摘になられました梅毒の件でございますけれども、我が方の統計によりましても、先生の御指摘のように患者数がここ数年増加傾向をたどっております。ただ一方では、梅毒については治療法が確立しておるというようなことから、実際に梅毒の診断を担当されたお医者さんのすべてが報告をしていただいておるかどうかということになると、その辺はお医者さんの判断がかなりあるのではないかというふうに思うわけでございまして、そういった意味でどうしても登録された数と背後にある実数との間に大きな乖離があるというのが現状であるわけでございます。
 一方、梅毒の死亡者数でございますが、これはもう申し上げるまでもないことでありますが、かつては数千という死亡数があった時期があるわけでございますけれども、現在は百のオーダーで、一番新しい一九八六年では六十六と、だんだんと減少しておるというのも事実でございます。
○高桑栄松君 時間がなくなりましたので、質問というよりはレクチャーをさしていただいて、きょうの私の質問は半分ぐらいしかできませんでしたが終わろうと思いますが、今局長がお話をされましたけれども、梅毒はここ三年間ぐらいは毎年実数が増加してきていると言えます。しかも、性病予防法というれっきとした法律で届け出の義務を負わされているわけであります。実数は十数倍だと言っているわけです。十三倍というのが余り正確なのでびっくりしているんですけれども、まあやっぱり予測だろうと思いますから、十倍以上なんでしょう。エイズと梅毒の違いは――りん病はどんどん下がっているんですよね。というのは、りん病は急性症状でありまして、すぐ痛いとか膿が出るとかということで本人もつらいし、行けば治るということであります。梅毒も治るんです。しかし、しばらくすると慢性化してわからなくなるわけだ。そして十数年、二十年たったら脳に来るということでありますから、しばらくの間はまあいいという、こういうものでないかと思うんです。そして、新聞によりますと、医師は患者のプライバシー保護に不安を持って報告をしない。つまり、医師は行政側のプライバシー保護に対して不信感を持っている。数字で言えば十倍です。十倍報告してないんだ。数字で言えば十倍の不信感を持っている。十分の一だけが出してきているということであります。そして梅毒との違いは、梅毒は治る。したがって病院に行けばいいんだ。しかしエイズは治らない。致命的なんですね。だから、これはもうどうしてもやっぱり行かないんだな。まあそういうことですね。
 ですから、いずれまたもう一度お話をしますけれども、毎日新聞の十一月十九日、三、四日前の夕刊に載っていた一節を御紹介いたします。
 都立駒込病院のエイズ専門外来であります。そこでどうなったか。昭和六十一年以降は一カ月に大体二百人ないし三百人が外来を訪れている。今年四月以降も大体一カ月平均六十五人が外来に来た。ところが、エイズ予防法案審議が本格化した九月、五十七人。十人ばかり減った。十月、四十四人。また十人ばかり減りました。そして十一月でありますが、今日までで十七人である。二十日間ですからもう十人ふえるぐらい、二十七人ぐらいいくかもしれませんね。しかし問題は、衆議院を本法案が通過した八日には予約していた二人もキャンセルして初めてその日の外来はゼロであった。九日もゼロであった。こう書いてあります。結論はどう書いてあると思いますか。法律が通れば、このように明らかに外来に来る人がいなくなってきた。それは間違いなく潜在キャリアであって、潜在感染のもとになる。したがいまして、この法律が通ったら明らかに蔓延防止の逆効果があると。私はもうはっきりそう思う。駒込病院は専門外来も要らなくなるんじゃないかと、それくらい今激減したことに対する心配をしているわけです。どうぞ皆さんよく考えていただきたい。
 この続きはこの次の委員会に私さしていただきたいと思っております。時間ですので終わります。
○沓脱タケ子君 それじゃ初めにお伺いしておきたいと思いますが、衆議院でエイズ予防法案が修正をされて本院に送られてまいりました。その修正の中身は、血友病患者を除外されるというふうなことになるんだとか、あるいは血友病患者の方々にはいわゆる救済措置をとられるというふうなこともあわせてやられてまいったわけでございます。ところが、その後なお全国の血友病患者、へモフィリア友の会の皆さん方から、何としても参議院でこの法案は廃案にしてもらいたいという強い御要望が各地から私のところにも寄せられているわけでございます。
 その中には、いろいろ切々と訴えておられますけれども、血友病患者を法案の対象外としても、単独立法はエイズ患者を際立たせ、社会の偏見、差別を助長し、血友病患者の社会生活が著しく脅かされます。この法案は、過剰な取り締まりを柱として、実効性のある予防施策をとるものではないのです。エイズ患者、感染者は社会に感染を広げる怖い存在ではなく、社会の理解、保護そして適切な医療を必要とする弱い存在だということをわかっていただきたいと、こういうふうに書かれておるわけでございます。
 私はこれをいろいろ拝見して思うんですが、やっぱりそれにはそれなりの理由があるだろうと思いますが、こういった衆議院修正の上で通過をした後も、患者の皆さん方からぜひこれは廃案にしてほしいんだという御要望が強く出されてきているという理由について、厚生省はどういうふうに御理解になっておられますか、まずそれを伺っておきたい。
○政府委員(北川定謙君) エイズに感染をされておる血友病の患者さんたちが非常に不安な状況に置かれておるということは、私どもも本当に心痛む思いでお受けしておるわけでございます。
 それで、エイズそのものについて申し上げますと、先ほど来高桑先生からレクチャーをちょうだいいたしましたように、我が国の国民全般にとってみると、やはり非常に厳しい問題を抱えておるという現状が一つにはあると思うわけであります。これにどのように対応するかということでいろんな御議論があるわけでございますけれども、そういった観点から、このようにいろんな観点から御議論をいただいてこれからの我が国におけるエイズ対策というものを間違いのない方向に持っていくということがこれは必要なことであるし、いろんな御審議を経てそういう方向に持っていかれるのではないかというふうに思うわけであります。
 それはそれとして、血友病の患者さんたちにとってはやはり現状いろんな不安な状況に置かれておる。まずは発病するのではないかという、これは一番心配な状況にあるわけでございますので、そういうことに関しては厚生省といたしましても発症予防の研究班で、全般的に、全患者さんを対象にしてそういう発症予防あるいは治療ということをネットワークを組んでやる。これは個々のお医者さんの御意見はあるけれども、そういう御意見を全部集約して一番いい方法を探し求めてその普及をしながらやっていく、こういうことで
あります。
 また一方、いろんな日常生活における不安があるわけでございますので、そういうことに対しても適切に相談できるような体制もつくっていきたい、こういうふうに考えておるわけでございますので、エイズのこれからの一般社会における予防の問題と血友病の患者さんたちの対応の問題とは別個に考えていくことができるのではないかと考えておるわけでございます。
○沓脱タケ子君 余り厚生省は御理解になっていないんじゃないかなというふうに思います。今も高桑先生から御高説を大分拝聴したわけですが、エイズという病気というのはかかったら最後、今日の段階では治療法が確立していなくて発症すれば死に至る、こういう大変怖い病気だということは例の神戸の例あるいは高知の例、大阪の例等などショッキングな格好で国民の中に知らされたわけでございますから、これは国民の中には非常に強く印象が恐ろしい病気ということで植えつけられているわけでございます。
 そこで、いろいろと既に同僚委員から御質疑がありましたけれども、簡潔にはっきりさせておきたいと思います。
 まずエイズの概念ですね。いろいろ言われてきましたように、いろいろ言うけれども性感染症だという点ですね。その点はいいんですね。
○政府委員(北川定謙君) 先生御指摘のように、エイズはウイルスによる感染症の一種である、感染力は非常に弱い、そして感染経路はまた非常に特定な形に限定をされるということがわかっておるわけであります。すなわち、エイズウイルスに汚染された血液ですとかあるいは血液製剤によって起こる感染、これは不幸にして血液凝固因子製剤の使用の過程で我が国で起こった、我が国だけではない、これは世界でもどこでもでありますけれども起こった実態でありますが、これについてはもう既に適切な対応がとられておると言うことができるわけであります。
 第二は、性行為を介する感染であります。
○沓脱タケ子君 ちょっとそんな余計言わぬと、私が聞いたことだけ答えてくれたらいい。
○政府委員(北川定謙君) それからさらには、感染をした母親からの母子感染の問題、あるいは麻薬あるいは覚せい剤等の回し打ちによる注射器を共有しての感染というようなことが考えられるわけであります。
○沓脱タケ子君 限られた時間ですから、できるだけお聞きをしたことについてだけお答えを願いたいと思います。
 確かに麻薬の回し打ちなどということもあるし母子感染という問題もありますが、基本的には性感染症ですね。しかも、ウイルスは感染力が弱くて普通一般の社会生活ではほとんど感染のおそれがないというふうに考えてよろしいわけですね。これは先ほどいろいろと学問的に細かいお話がありましたけれども、概念としてそういうふうに理解をしてよろしいですね。
○政府委員(北川定謙君) そのとおりだと思います。
○沓脱タケ子君 私は、国民は大変ショッキングな形で大変恐ろしい病気だということだけが植えつけられておりまして、こういった正確な知識というのが必ずしも国民の中に広げられていない、与えられていないと思うんですね。そういう点で、この二つの概念、基本的な概念を前面に出して、もっと徹底的に国民の中に御理解を広げていただく必要がありはしないかと思うんです。これは御見解伺わなくて結構です。
 先ほどからもお話がございましたように、日本のエイズの状況というのは、これは欧米諸国あるいはアフリカ大陸等と比べまして格段の違いがありますね。日本のエイズの現状というのは、エイズ患者九十人のうち五十一人が血友病患者の方ですね。死亡なさった五十人のうちの三十二人は血友病患者。いわゆる感染をされたキャリアの方々というのが千四十八人中九百六十九人、率にして九二%が血友病の患者の方々。そのキャリアの中で二十歳以下の方というのが千四十八人中四百五十五人、これはですから四三%ですね。これは、アメリカの患者が七万人余りとかヨーロッパ諸国が数千人だとかいうのとは全然違うんですね。だから患者だけ見ますと、我が国のエイズでは患者九十人、これはことしの八月三十一日現在の厚生省がお示しをいただいた数字ですが、患者九十人のうち血友病の方々を除きますと三十九名なんですね。そういう状況で、大変怖い病気だということでエイズ予防法案というものを単独立法をしようということになっておるんですが、私はちょっとやっぱり理解に苦しむなというふうに思うんです。
 先ほどからお話も出ておりますように、例えば肝炎対策と比較してみても、これはどうしてエイズだけこんなに単独立法をつくるかなというやっぱり疑問があるわけです。もう多くを申し上げると時間がかかりますから簡潔に言いますが、B型肝炎だって、あるいは非A非Bの肝炎を含めまして大体感染者四百万から五百万でしょう。一年間に三十五万人の急性肝炎のうち三分の一はB型肝炎だと。B型肝炎の方で劇症肝炎になって七〇%以上の方々が亡くなる。やっぱりこれも血液からうつるし、性行為感染もするし、母子感染もする。さらにもっと言えば、B型肝炎あるいはA型肝炎の方もそうでしょうが、慢性肝炎になり、あるいは肝硬変になり、肝臓がんになって死に至るという方々というのは二割ないし三割も出てくるということになりますと、五百万の二割といえば十万ですね。そういうことになっておるわけですね。救いは、B型肝炎についてはワクチンができているということでエイズとの違いはあろうと思うんです。しかし、B型肝炎について昨今そういう対策ができてはおりますけれども、いまだにやはり輸血をすれば血清肝炎という心配は依然として残っておるという状況になっておるんですが、こういう肝炎に対して厚生省の何らかの法的措置がございますか。
○政府委員(北川定謙君) 先生が御指摘のように、B型肝炎につきましては確かに患者数あるいはキャリアの数が非常に多いということはあるわけでございますけれども、これは、その肝炎の日本の社会の中における広がりの将来の心配ということから考えますと、もうめどはついた、つまり一定の治療方法がきちんとしておる、それからワクチンによる予防が可能になっておるということからすれば、今後減少をするわけでございまして、非常にパニック的に増加をしていくという心配はない、こう判断をしているわけでございます。
 そういう点から考えますと、今の段階ではエイズはまだ非常に数は少のうございますが、ヨーロッパあるいはアメリカの様子を見ておりますと、これは日本の社会においても決してよそごとではないという観点から、肝炎の問題とエイズの問題とは同一に論ずることはできないと我々は考えているわけでございます。
○沓脱タケ子君 国民の健康や命に対する危険性の度合いからいいますと、今日の段階ではエイズよりははるかに広がっているという事態なんです。私はそのことを特に追及しようときょうは思っていないんですが、それじゃ国民の意識の中にエイズと肝炎についての意識がどういうふうになっているか。それは肝炎よりエイズの方がよっぽど怖いというふうに意識が定着をしてきているであろうと思うんですね。そういうふうに既に大きく誤った意識というのが国民の中に広げられている、そこの解消というのがエイズの対策にとって非常に大事ではないか。そこを解消しないと、少なくとも社会的差別の発生の土台というものをなくすることはできなかろうと思うんです。
 そういう点で、厚生省いろいろと国民の理解を深めるための宣伝方策をお考えになっておりますけれども、この辺はちょっと考えてもらわなければいけないんじゃないかなと思うんです。何しろ厚生省のパンフレットなどを見たら血友病患者が最も恐ろしい病気感染源だということになるようなことが書かれているんですね。例えばこれは厚生省感染症対策室監修のエイズ、後天性免疫不全
症候群の宣伝パンフなんです。これ見ましたら、こう書いてあるんですよ。日本でのエイズ患者二十六名、この時期はそうだったんでしょう。その中で男性同性愛者十名、そのうち死亡五名、血友病者十四名、そのうち死亡十一名というふうに明記しておる。これを国民の方がごらんになったら、やっぱり血友病患者というのは怖いんやなということになるであろうと思います。
 そういうふうに見てまいりますと、どれもみんなそうなんですな。これは海外出張の方々に対する注意書きなんですね、「世界に広まるエイズ」、これは欧米型、アフリカ型、その他日本というふうに書いておりまして、日本のエイズの広がり方の六〇%は血液凝固因子製剤だと。これはもう血友病患者のことなんですね。こんなグラフで書いてある。これを見ても血友病患者は怖いんだなということになりますよ。
 それから、これもやっぱり厚生省感染症対策室監修ですがね。これの四ページ、欧米、アフリカいろいろ書いてありまして、「日本では、」冒頭に「血友病、男性同性愛者の他、異性間の性的接触による」云々と書いてあるんですね。
 大体この宣伝物を見たら、エイズを感染させる一番怖いのは血友病だ、血友病患者だということを国民に認識させるような宣伝になっているわけです。こうなったら、これは血友病患者の方々がキャリアであろうがノンキャリアであろうが社会的差別を受けるケースが発生してくるのは当然だと思うんですね。もっとこれは国民に対する啓発のやり方というものをまともに考えるべきだ。あるいはまさかそんなことは考えてないと思いますが、エイズの最大の危険源は血友病患者でございますということをわざわざ宣伝しようとは思っていないでしょうね。それははっきりそういうことにならないようにしていただきませんと、これだけ見たら一番怖いのは血友病患者ということになるんです。いかがですか。
○政府委員(北川定謙君) 幾つかのパンフレットの中で御指摘をいただいたわけでございますけれども、我が国における実情を客観的な数字としてここに記載してあるということ、これはこういう種類のパンフレットとしてある程度やむを得ないのではないかというふうに基本的には考えるわけであります。
 なお、そのうちの一つに血友病患者というふうに直接血友病ということを言っておるのがあるわけでございますけれども、これは日ごろ私どもは血液凝固因子製剤によるという言い方をしてきておったことがここではこういう形になってしまっておるわけでございますから、今後この点については十分配慮をしていきたい、このように考えます。
 なお、もう一つのこのパンフレットでございますけれども、「エイズってなあに?」という種類のパンフレットでございますが、ただいま先生御指摘をいただいて、「日本では、血友病、男性同性愛者の他、異性間の性的接触による患者発生もみられています。」と書いてございますが、最後のところに、「つまり、男性同性愛、薬物中毒、母親がウイルスをもっている の場合はともにエイズにかかる危険性が高いと考えられます。また、異性間の性的接触も注意が必要なようです。」というようなコメントがついておりますので、ここでは血友病については積極的なコメントはしておりませんけれども、心配ない、こういうことになろうかというふうに思うわけでございます。
○沓脱タケ子君 けさほど来からも、既に職場あるいは学校あたりで社会的差別を受けている、それはキャリアであろうが、ノンキャリアであろうが血友病の子供たちまで差別を受けているという問題が出されていたでしょう。その点をやはりはっきりと把握されぬとよくないと思うんです。
 私、冒頭に、だからエイズというのは性感染症なんでしょうということを特に申し上げましたのは、血友病の感染者の中の四三%が二十歳以下のいわば性行為能力を持たない子供たちなんですよね。性行為感染の疾病がそういう年齢の、能力のない子供たちにまで感染をしているという悲惨な事態というのがあるわけなんです。それは人為的に起こったものなんですから、いわゆる性感染症とは違うグループなんですね。それをエイズと言うたら全部――一番数多いんですから、日本では。だからそれを血友病が一番先に出ると、何ぼコメントをつけたって、「日本では、血友病、男性同性愛者の他」云々と書いてある。一番多いのは血友病、患者も一番多い、死んだのも一番多い。グラフで見たら血友病は六〇%、黄色でびゃっと書いてある。やっぱり血友病は怖いんだなというふうに国民が一見して思うというふうな、そういう意識を持つというふうなPRのあり方というのは私は正しくないと思いますが、そういう点で随分いろいろ配慮をされて今まで施策についても衆議院段階でもやってこられたわけですが、この辺はひとつきっちりと、そうでなくても起こっておる社会的差別、そういったものをなくするようにきちんとするべきだと思いますが、はっきりしてほしいと思います。
○政府委員(北川定謙君) 御指摘の点はごもっともな点が多いわけでございまして、このパンフレットはエイズとは何かということについて端的に答える格好で書かれたものでございますが、今後は今度の法案審議の過程で議論されたことを基本に血友病問題について正しい理解をさらに深める、このための努力をしてまいりたい、このように思います。
○沓脱タケ子君 特に私このことを申し上げますのは、いわば血友病患者のエイズ感染者というのは犠牲者ですね、明らかに。何にも本人の責任ないそういう人たちが、数の上で一番多いからといって一番危険だと一見してわかるような宣伝の仕方、これは厳に慎んでいただきたいと思うんです。
 時間の都合がありますから次へ進みますが、そういうふうに見てまいりますと、エイズ予防法案として提起されておりますけれども、私は我が国のエイズ予防というのは、この予防法の中心というのは血友病患者の感染者の対策が一番大きなウエートを占めるんじゃないか、数の上でも一番多いんだから、という結果になると思うんですね。だってキャリアの九二%が血友病の方なんでしょう、今把握されておられる感染者の四三%が子供さんたちなんでしょう。これが私、日本のエイズの諸外国との極端に違う特徴であろうと思うんです。
 これはけさほどの御質問の答弁の中で、いや欧米諸国にも血友病患者の感染者はおるとおっしゃっておられた。けたが違います、患者全体のけたが違いますよ、実際。だって、患者にしたら三十九名、そこまで言わなくても日本では実際にはキャリアの中の九二%が血友病患者の方々だと、しかも感染者の四三%が二十歳以下の子供たち、こういう状況なんですからね。私は、そういう点では血友病患者こそ我が国の血液行政の最大の被害者じゃないかと思うんです。何にも本人に責任ないんですね。この血友病の患者の方々を法案から切り離したから救済をしてもらえたと。救済策を決めたから、それで決してありがたいと思っておりません、何とかしてこの法案は廃案にしてもらいたいというところがやっとわかった気がした。
 それはそうですよ、だってエイズの話が出たら全部冒頭に血友病患者というのが出てくるんだから。表現が凝固因子製剤という表現になろうとも血友病というのが出てくる。それが法律についてまとう限りこれは安心して社会生活を行っていくことができない。今でも肩身の狭い思いをして暮らしているのに、せめてもっと安んじて社会生活ができるような環境をつくってもらいたい。そのためにはせめて法律はやめてほしいということの御意見だということがやっとわかったんですが、いかがですか、うんとは言わぬでしょうけれども。
○政府委員(北川定謙君) 確かに日本のエイズの現状は、その大多数が血友病であるという状況にあるわけでございますが、ヨーロッパの血友病の姿と比較して全体の中での割合ということではな
くて、血友病についてはどこの国も同じような状況のバックグラウンドを持っておるんですね。そのほかのところがアメリカあるいはヨーロッパは余りにも多いということで、むしろそこが非常に問題である。それから将来の我が国のことを考えれば、そこのところがふえていくことが非常に問題だという認識のもとにこのエイズ予防法案をお願いしておるわけでございます。
 なお、エイズ対策全般は、先ほど来申し上げておりますように、法律だけではなくていろんな柱を持っておるわけでございまして、その中の非常に大きな柱として、血友病の患者さんたちでエイズに感染をした人たちに対する発症予防あるいは治療の研究体制、これは日本全国を全部一つの組織にして、専門の先生方の最大の知識を集めて最善の体制を組んでいこう、こういうことでやっておるわけでございます。そのための予算も、これは昭和六十三年度ベースですけれども二億一千万を計上しておる。それからもう一つ、その並んだ柱として保健福祉相談事業ということで、いろんな悩み事に対しても御相談に応じていく体制をつくる。こういうことで、血友病の患者さんでエイズに感染をされておられる方々も安んじて今の生活をしていけるような環境づくり、これは万全とはいきませんけれども、そういう努力を格段に進めておる、こういうことも御理解を承りたいというふうに思います。
○沓脱タケ子君 私、大阪で血友病の患者さんでキャリアの方にお目にかかりました。こう言うんですね。小さいころからとにかく関節が痛くなったりすると、お母さんに病院に連れていってもらって輸血をしてもらっていた。少々痛くても我慢をして、行くのを一日延ばし、二日延ばしにしていた。お母さんに迷惑をかけると思って行かなかった。そしてこういうふうに関節がぐあいがよくなくなったんです。そのうちに低濃縮の薬ができて、うんと楽になったなと思っておりました。そして高濃縮ができて、社会生活をしていく上で非常に救われるようになった。そう思っていたら、その喜びもつかの間、こういう命の危険にさらされるようなことに突き落とされました、我慢がなりませんということを悲痛な叫びでもって訴えられました。本当に私はそうだと思う。
 この人をそういうことにしたのは一体何か。やっぱり私は国の血液行政だと思うんですよ。そういう点で、血液行政について若干お尋ねをしておきたいと思うんです。
 私は、血液行政の推移について少々調べてみてちょっと驚いたのですけれどもね、詳しいことを今繰り返そうとは思いませんけれども、黄色い血事件で輸血で梅毒が感染したという事件がありましたね。それで、あのときには昭和三十九年に閣議決定をしたのですね。その後ライシャワーの血清肝炎事件もあったりして閣議決定がやられた。このときは売血に頼らずに自給方針の確認をしたのだったですね。これはいかがですか。
○政府委員(北郷勲夫君) 自給自足という方向が出ております。
○沓脱タケ子君 昭和五十年四月十七日には、血液問題研究会から当面推進すべき血液事業のあり方について大臣への意見具申をしておられますね。これを拝見すると、「医療に必要な血液は、すべて献血によって確保されるべきである。」「血漿分画製剤製造のための血液は、献血を一層推進することによってその必要量を確保し、一日も早く売血や輸入血漿に頼らなくてもいいよう努力すべきである。」ということが意見具申をされた。
 その当時ずっと見てみますと、WHOも同じころ、一九七五年ですから昭和五十年、無償を基本とする国営の血液事業を推進することというふうなことが決議されていますね。
 そういうことで、大体昭和五十年ころというのは厚生省はいわゆる売血によるのではなしに自給方針をとるべきだということで方針を固めておられたのですね。
○政府委員(北郷勲夫君) できるだけ自給自足という方向に向けての努力を始めたところでございます。
○沓脱タケ子君 ところがその実態はどうかというのですね。閣議決定や意見具申やWHOの決議など、いわば国の内外で基本的な方針を決めておりましたけれども、昭和五十年のころですね、ところが我が国は逆に翌年から急速に急増しているんですね。どのくらい急増していったのか、その推移について簡潔に言うてください。
○政府委員(北郷勲夫君) 自給を目指しまして、日赤、厚生省、地方公共団体と三者一体となりましてこの献血運動を進めたわけでございまして、五十年に献血の方の数字を申しますと、献血者の数でございますが、五十年の時点で三百八十五万人でございました。五十五年ではそれが六百十八万人にふえております。それから六十二年、最近では八百二十二万人というようなことでございます。献血量の方も五十年に七十七万リッター、それが五十五年には百二十四万リッター、それから六十二年では百八十六万リッターというようにふえて、全体としては献血量はふえてまいっております。
 ところが片方で、これも先生御存じのとおりでございますが、血漿分画製剤の需要が非常に伸びてまいったわけであります。分画製剤と申しますと、アルブミンあるいはグロブリン、それから今回の血液凝固因子製剤、こういったものでございますが、五十年の時点で、これはアルブミンの量で申しますと血漿換算で十七万リッターでございました。それが五十五年には百六万リッター、これは原料血漿換算の数字でございます。それがさらに六十年になりますと三百八十四万リッターというように非常な勢いで血漿分画製剤の需要が伸びてまいったわけでありまして、これはとても献血で追いつく数字ではございません。
 それで、適正化をいたしまして、六十年には三百八十四万リッター、ガイドラインを出しまして消費を抑えるというようなことをいたしまして、六十二年にはアルブミン量で二百六十五万リッターというように、やっと落ちてきた、こういう状況でございます。
○沓脱タケ子君 私はちょっと不思議だなと思うんです。五十年のころに、いわゆる過去の閣議決定、意見具申、WHOの決議などが決められて、方針が決まった途端に翌年からばかばかっとふえて、十年間で十倍以上ふえた。これは買血をせざるを得ぬですね。これはアメリカから買血をしたんですね。売血の輸入血ですね。
○政府委員(北郷勲夫君) アメリカから輸入したものでございますが、アメリカでは売血の分とそれから一部そうでないものもあるように聞いております。
○沓脱タケ子君 アメリカの売血の実態というのはどんなふうになっているか、よく御承知でしょうか。
○政府委員(北郷勲夫君) ある程度は承知いたしておりますが、もし必要があれば申し上げます。
○沓脱タケ子君 安全ですか。
○政府委員(北郷勲夫君) 今回の事件が起こりましたように、五十年代に至りまして安全でない血液が日本に入ってきたということは、これは歴史的に明らかだと存じます。
○沓脱タケ子君 時間の都合がありますから私簡潔に言いますが、これは献血供給事業団の理事の青木さんがアメリカへ行ってこられてお書きになっているものを読みまして、ちょっと驚きました。
 簡潔なところだけ読みますが、「昭和五十一年から原料血漿の輸入が開始され、以後製品輸入も増加し、昭和六十年には原料血漿換算で三百八十四万リッター、世界の使用量の三分の一も使用し、その九六%を輸入する状況を生みました。」と。
 「海外の売血の実態」というのをお書きになっておりますが、その文章によりますと、「アメリカの売血所は、一昨年」、これは一九八四年、昭和五十九年、「一昨年三百四十カ所だったものが、この一年間で三十カ所増え、三百七十カ所になっています。AIDS多発地域で一九八三年ごろ約五十カ所閉鎖したのですが、魅力ある日本市場のため
か、増加してしまいました。」、これは血液製剤メーカーの直営の売血所もあれば個人経営もあると。それで「問題は」というところで恐れ入ったんですが、「問題は個人経営で、一般の人が立ち寄れない犯罪地域や、貧しい人たちの集まる浮浪者の街にあります。サンフランシスコはマーケットストリートの南、ミッションストリートにあります。一昨年」、つまり一九八四年ですが、一九八四年は「この通りには一カ所だったのですが、昨年六月からベトナム人経営の売血所が一カ所増えました。前からある所は、ホモの集まることで有名なカストロストリートから歩いて十分のところにあります。ここに集まる売血者の一割はホモセクシャルの男だといわれています。」「ロサンゼルスは、ダウンタウンで一番の犯罪地域といわれるメインストリートにいくつかあります。」というふうに、これは実際に行ってきておられての報告でございますが、こういうことになる。つまり、犯罪地域やエイズの多発地域としてハイリスクグループばかりおるようなところにみんな売血所があったという、こんなひどいことになっているんです。
 私、ちょっとお聞きしたいのは、なぜ厚生省はこういうことを許したのかということなんです。だって、三十九年には閣議決定があり、五十年に意見具申が厚生大臣にはなされ、WHOの決議があり、国の内外で決めた途端にどんどん売血がウナギ登りでしょう、十年間に十倍になったんだから。政府の方針と全く違う反対のところへ事態が動いている。そういう中で血友病の患者のエイズ感染というのが出てきたわけです。何でこんなことが起こったか。
 いろいろ資料を見ておりましたら、きょうもさっきまで御出席でありましたけれども、五十年三月三十一日の参議院予算委員会の田中正巳当時厚生大臣の御答弁ではこういうふうに言われている。
  血漿分画製剤などの原料血がまだ不十分で売血に頼っているとか輸入血に頼っているというようなことをやっているのはまことにどうも遺憾千万でありまして、今後こういったようなことはしなくて、献血によってこういったようなものが賄われるというふうにしなければなりません
当時そう言っておられた。ところが全然逆の方向へ行った。ですから、そういう中でエイズ感染が起こったんで、政府が決めた方針のとおりやっていたら血友病の患者の方々がエイズ感染を受けなくて済んだんです。何でこんなに急増したか、十年間に十倍以上も。簡単に聞かしてください。
○政府委員(北郷勲夫君) 一番大きな理由は、やはり医療の変化だと存じます。いろんな医療上の技術が進んでいるわけでございますが、例えばがんの終期に非常に血液製剤が有効である、あるいは全血交換の医療が始まるとか、それから今ここで議論になっておりますような血液凝固因子製剤というのも非常に血友病の患者さんに福音をもたらしたものでございます。先ほどちょっとお話がございましたが、ちょうど患者さんにとって生活上非常に便利な医薬品としての凝固因子製剤が普及し始めたころ、医療券でも取り入れられまして非常に喜ばれた、ちょうどその時期とアメリカでエイズの発生を見た時期とが重なった、こういうようなことでございます。
 ちょっと先生の御質問にそれましたが、そういった新しい医療技術の開発というのが私は一番大きかったのではないかというふうに考えております。
○沓脱タケ子君 そんなのんびりしたことを言うていたら厚生省要りません。方針がちゃんと決まっているんだから、方針のとおりやっておればこういう被害は起こらなかった。いや医学水準の向上でございます、あるいは需要の急増でございますというようなことを言うて傍観をしていたということが極めて重大ですよ、責任は。大臣、そう思いませんか。
○政府委員(北郷勲夫君) 今私は、なぜふえたんだということを問われたものですからそういうふうにお答え申し上げたわけでございまして、今先生おっしゃいましたような御質問に対して答えるとすれば、これは国内で余りにも血漿分画製剤の需要が伸びたために献血が追いつかなかった。片方で全血製剤あるいは成分製剤、こちらの需要も伸びておるわけでございまして、このテンポがとても追いつかなかったというのが大きな理由でございまして、できるだけの努力をいたしたわけでございますが、間に合わなかったという状況でございます。
○沓脱タケ子君 できるだけの努力をしてみたけれども十倍以上にふえましたと、それだったら方針を変えなくちゃいかぬじゃないですか。五十年の段階できちんと方針を決めているんだ。とにかく傍観者でしかなかった。その間にこんな重要な事故を起こしたんですから、私は重大な責任問題だと思いますよ。大臣、御見解どうですか。
○国務大臣(藤本孝雄君) 私も実はよくこの問題を調べてみました。厚生省も昭和三十九年の閣議決定、また昭和五十年の血液問題研究会の意見等を踏まえまして、そのときそのときの時点でできる限りの努力はしてきたと思います。また数字を見ましても、この五十年を一〇〇といたしますと、この十二年間で献血量にいたしましても約二・五倍、献血者数にいたしますと二・三倍ぐらいにふえておりまして、そのことによって輸血用の製剤の伸び、この五十年から六十二年まで約二倍でございますが、これは十分に対応をしておるわけでございます。
 ところが、局長からの答弁もございましたように、血漿分画製剤が昭和五十年にはアルブミンで見ますと十七万リッターでございますから、当時の献血量七十七万リッターに比べますと比較的小さい数字になるわけでございますが、これが昭和六十年時点では二十二倍に増加をいたしております。ここに確かに問題があるわけでございまして、厚生省もこの使用の仕方については極力適正化指導を今しておりまして、六十年をピークとして今は五十年時点に比べまして十六倍程度に下がってきておる、こういう今状況でございます。
 私といたしましては、少なくとも昭和六十一年度から実施しております新しい血液事業、これを積極的に推進しまして、血液凝固因子製剤の国内自給に向けましてはまず当面の大目標としてこれを取り上げまして、昭和六十五年までに完全自給、こういうことを達成したいということで今努力を始めておる次第でございます。
○沓脱タケ子君 いろいろおっしゃるけれども、結局結果としては要するに民間製薬企業が輸入血をばかばかふやして買い集めて、血漿分画製剤をどんどん売りまくったという結果になっているんでしょう。客観的な推移はそうなっていますね。なぜこんなことが起こるのか、ここは私はやっぱり問題だと思うんですよ。
 それで、時間の都合がありますから余り詳しくは言えませんけれども、新聞にも報道されたように、血液製剤協会、ミドリ十字は「まるで厚生省薬務局分室」と毎日新聞だったかに出ていました。こういうことが言われるように、ミドリ十字の前社長は元の松下薬務局長、以下何人かが天下っていますね。そういうふうに天下って、そして厚生省と癒着をしてばんばん輸入血を買い上げて売りまくる、そういうことをやってきたと言わざるを得ない。しかも厚生省はあれよあれよと見ていた、規制もしないで。その間に血友病患者がエイズに感染した。私はやっぱりこういうことははっきりせないかぬと思うんです。今リクルート問題ではいろいろと文部省や労働省の高級官僚のモラルが問われるような問題が起こっていますけれども、あれは元薬務局長の松下廉蔵氏なんていうのがミドリ十字の社長になって、社長の現職のときに未承認薬を売っておるわけでしょう。大体薬務局のOBというのは一体どないなっているんですか。
 こういう問題だって、きょうはもう時間ないからやりませんけれどもね、そういう天下って民間製薬メーカーと癒着をしてどんどん輸入血を買って売りまくる、こういうことの結果がこの血友病
患者の被害になって出てきておるということなんですね。だからこそ我が国のエイズというのは諸外国と比べて大変特異性があるというのはそういうことなのね。
 それで、もう時間がありませんのでちょっと聞かせてもらいたいんですが、薬事法の第一条ですね、これは読んでもらったらいいけれども、時間かかるから読みますわ。
 「この法律は、医薬品、医薬部外品、化粧品及び医療用具に関する事項を規制し、もつてこれらの品質、有効性及び安全性を確保することを目的とする。」と。だから、薬事法というのは有効性と安全性の確保というのが最大の目的なんでしょう。
○政府委員(北郷勲夫君) さようでございます。
 立ち上がりましたので申し上げますが、先ほどミドリ十字と薬務局が癒着があるかのような御発言がございましたが、一切そういうことはございませんので、申し上げます。
○沓脱タケ子君 いや、直接癒着があると言うてない。元局長以下天下りがたくさんあるなということを言うている。きっちり言いましょうか。
 それは話別としまして、そういう状況なんで、薬事法の目的というのは有効性、安全性の確保というのが第一なんですね。我が国は不幸なことに重大な薬害事件を今までたくさん起こしていますよ、サリドマイドだとかスモンだとかね。そのスモンの判決でも、随分長いことかかりましたけれども、国と製薬会社の過失責任というのが裁判では確定しているんですね。厚生省は、こういう重大な薬害事件にかんがみて、この教訓を酌み取って万全を期しているはずですね、当然。にもかかわらずなぜ二千人とも推定される血液凝固因子製剤の利用者、いわゆる血友病患者にこのようなたくさんのHIVの感染者を出したのか、一体この点についてはどのように反省しておられるのか、はっきりしてもらいたい。
○政府委員(北郷勲夫君) 血漿分画製剤、血液製剤が原因となって血友病の患者さんに患者が出ておりますことは非常に遺憾でございます。そのように思っておりますが、ただ厚生省といたしまして、できるだけそのときどきの知り得ること、これに基づきましてできるだけの措置を講じてまいったわけでございます。知恵が足りなかった、あるいはもっと努力が足りなかったとおっしゃられればこれは甘んじて受けざるを得ませんが、少なくとも薬務局あるいは厚生省全体といたしまして、できるだけ情報をとり、それから当時の科学的な知見をできるだけ探りまして、そのときどきできるだけのことはやってまいったというふうに私どもは考えております。
○沓脱タケ子君 こんなの一般論で言うたかて、薬事法の目的、精神から言うて、これは当然危険やら副作用が予見できるときにはその危険回避義務、そういうようなものというのは高度なやっぱり義務でしょう。当然あるでしょう。車みたいなものでもそうです、危ないということがわかったら何万台といったって回収するんだから、当たり前だと思う。こういう観点から見たら、私はこの血液凝固因子製剤のメーカーというのは薬事法五十六条第六号に違反しているのではないかと思うんです。それを簡単に答えてくれますか。
○政府委員(北郷勲夫君) 五十六条は販売、製造の禁止の規定でございまして、要するに不良の医薬品あるいは病原微生物により汚染されたり、または汚染されているおそれがある医薬品について販売しちゃいかぬ、こういうような規定でございますが、こういったことの判断はやはりそのときどきの科学的な知見あるいは技術水準、こういうもので判断せざるを得ないのでございます。
 今のお尋ねは、五十八年当時の問題として、その当時の判断として五十六条違反と考えるべきではないか、こういうふうに受け取るわけでございますが、五十八年当時の状況としてはそこまでの判断はできなかったのではないかというふうに考えます。
○沓脱タケ子君 スモンのときも同じように言うたんですね、予見できなかったと。そんなのんびりしたことは裁判のときにはだめだというのがスモンの実例ではっきりしているんです。
 薬事法七十七条の二、もう時間の都合で簡単に言いますが、これは医薬品製造業者は必要にして適正な情報を提供しなければならないという努力義務があるんですね。六十六条の一項のこの趣旨は、虚偽、誇大な広告を禁止したものになっておりますね。これは当然そうで、六十六条、七十七条の二つとも薬事法の目的、精神からいって、要するに正確な情報の提供、それが一番大事だということが考えられるから、ここから出発してこの条文があるんだろうと思いますが、どうですか、この二つはそういう意味でしょうか。
○政府委員(北郷勲夫君) そのとおりでございます。
○沓脱タケ子君 今お手元へ資料配りましたかな。
   〔資料配付〕
○沓脱タケ子君 この文書は、血漿分画製剤のトップメーカー、シェアが四〇%と言われておりますミドリ十字の文書なんですね。ここのミドリ十字のプロパーが各医療機関に説明、配付をしたものなんです。これも広告なんですね。この作成期日というのは大体五十八年の九月ごろなんです。社内文書なものだから、この文書ごらんになっていただいたらわかるように年月日が入っていないんです。プロパーが持って歩いて病院へ説明に行く文書なんです。
 これを見たらこう書いてあるでしょう。これはミドリ十字の現社長須山忠和の名前ですね。「日本は血漿分画製剤および原料血漿の八〇%以上を米国からの輸入に依存している。しかしそれによるAIDSの日本上陸・発症の可能性は皆無に近い。ほとんど考えられない。以下にその理由を述べる。」ということでいろいろ書いてあるんですが、時間の都合で簡単にいたしまして、その二ページ目の「第VIII因子、血友病とAIDS」、ここには
  第VIII因子製剤の輸注を常時必要とする血友病患者に関しては、一九八三年四月現在十一人のAIDS例が報告されている(全AIDS例の一%)。しかし全米での血友病患者が二万人と言われているところから計算するとその発症率はわずか〇・〇五%であり、その危険率は非常に小さい。またそれが第VIII因子製剤によるとする証拠は全くない。それでもより安全を期するため、ミドリ十字では
云々と書いて、加熱処理工程の研究を既に完成しているということを書いているんですが、この文書、この時期に正確な情報ですか。
○政府委員(北郷勲夫君) これは先ほど配っていただきまして拝見しまして、詳細に検討してみないとわからないんですが、大ざっぱに見たところでは、当時の知見の一部を代表しているものではないか、考え方の一部を代表しているものではないかというふうな感じがいたしますが、ただ断定的に断定できる段階ではございませんので、正確ではないんじゃないかという感じでございます。
○沓脱タケ子君 ただ問題は、五十八年九月といったらどんな時期であったか。もう既にエイズ問題が国内でも問題になってきた。そして五十八年九月二十二日には全国へモフィリアの会の皆さんが血液製剤の安全性についての申し入れをやっておられる時期です。
 この間どういう時期であったかということを言いますと、アメリカでは血友病エイズ患者第一号が五十六年秋に発症した。これは当時はまだ名前がエイズとついてなかったんですね。五十七年七月にはCDC、FDA、NHFの代表者会議がやられた。血友病治療用のものをもっと安全な血液製剤製造を考慮することが合意をされた。五十八年の一月には合同会議をやって、血液製剤の安全性についての勧告をアメリカでは出しております。五十八年の五月には加熱製剤開発を指示している。
 日本ではどうであったか。五十八年六月にはエイズの実態把握に関する研究班を設置した。そして七月には、輸入製剤についてハイリスクグルー
プから採血してない旨の証明書添付を指示せよということになった。八月には加熱製剤の開発を指示した。こういう状況のときなんですね。
 だから、患者の方々は厚生省へ問題を持ち込む、大変だということでかなりマスコミでも騒がれる、アメリカの情報も入るということで、大体医療機関ではてんやわんやになりつつあったときですね。こういう状態のときに、一番安全第一にするべきところを、いや心配ありませんというこんな文書を持って医療機関へ売りに回っているというのはこれはむちゃくちゃですよ。全く犯罪的ですよ。
 しかも、もっと言えば、今の須山社長がその当時研究部長だったらしいけれども、その当時、五十七年ごろには「私はまだ研究所におりましたし、すぐそういう文献も入ってきたので、エイズ感染の危険性があるということをすぐ社内的に流したんです。ミドリ十字もこういうふうに対処しなければいけないということは、書類にして出しました。」、だから社内的にはもう危険だということを五十七年ごろから知っていた。それで、五十八年九月ごろ大騒動になって医療機関がどうしようかということになったときに、こんな文書を持ち出してやるなどというのはまさに製薬メーカーとしての信義にもとりますよ。こんなのうその宣伝でしょう、どうですか。そんなのは社内では知っていた。これは皆さんの資料の後ろにつけてありますけれども、財界という雑誌のことしの九月二十七日号、当時を思い起こして対談で社長が言うておるんです。
○政府委員(北郷勲夫君) 私も先ほど拝見したばかりなんですけれども、特に今おっしゃいました財界の対談のところで、「その時は」というのは「五十七年ごろ」と横に振ってございますが、これもよくわかりませんし、よく知っていてこういうふうな比較的安全だというニュアンスのものでございます。対談の方は危険だというニュアンスでございますし、あるいはこの文書自体が一体どういう使われ方をしているのか私も承知いたしておりませんので、よくまた調べてみたいと思います。
○沓脱タケ子君 これは先ほども申し上げた薬事法の五十六条の六項ですね、これに明らかに製造メーカーとしては違反だと思いますよ。
 だからそういう点では、もう時間が残り少なくなっておりますので、これは重大な問題なので一遍よく調査をしてみてください。こんなことがあったら話にならぬ。第一、元薬務局長が社長のころにそんなむちゃなことをやってもらったら困る。だから、きちんと調べてみてほしいと思いますが、いかがですか。
○政府委員(北郷勲夫君) いずれにしましても、先ほど私も拝見したばかりでございますので、調べてみたいと存じます。
○沓脱タケ子君 ちょっと質問途中になりましたので、次回に国の責任も含めてお尋ねをしたいのと、法案についての問題点等について次回に譲らしていただいて、きょうはこれで終わりたいと思います。
 どうもありがとうございました。
○委員長(前島英三郎君) 両案に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後四時四十二分散会