第114回国会 本会議 第3号
平成元年二月十日(金曜日)
    開 会 式
 午前十時五十八分 参議院議長、衆議院参議院の副議長、常任委員長、特別委員長、参議院の調査会長、衆議院参議院の議員、内閣総理大臣その他の国務大臣及び最高裁判所長官は、式場に入り、所定の位置に着いた。
 午前十一時 天皇陛下は、衆議院議長の前行で式場に入られ、お席に着かれた。
   〔一同敬礼〕
 午前十一時一分 衆議院議長原健三郎君は、式場の中央に進み、次の式辞を述べた。
   式 辞
  天皇陛下の御臨席をいただき、第百十四回国会の開会式を行うにあたり、衆議院及び参議院を代表して、式辞を申し述べます。
  昭和天皇には崩御あらせられ、まことに哀痛の極みであります。
  いま、平成の時代を迎え、われわれは、ここに決意を新たにするものであります。
  現下、わが国をめぐる内外の諸情勢はまことにきびしいものがあります。
  われわれは、外に対しては諸外国との相互理解と協調を深め、世界の平和と繁栄に一層貢献するとともに、内にあっては、政治経済の各般にわたり当面する諸問題に対処して適切なる施策を強力に推進し、もって国民生活の安定向上につとめ、新しい時代を実りあるものにいたさねばなりません。
  ここに、開会式にあたり、われわれに負荷された重大な使命にかんがみ、日本国憲法の精神を体し、おのおの最善をつくしてその任務を行し、もって国民の委託にこたえようとするものであります。
 次いで、天皇陛下から次のおことばを賜った。
   おことば
  本日、第百十四回国会の開会式に臨み、全国民を代表する皆さんと一堂に会することは、私の大きな喜びであります。
  我が国は、今日まで、幾多の苦難を乗り越え、国民の英知とたゆまない努力により、国民生活の安定と繁栄を実現し、平和国家として国際社会に名誉ある地位を占めるに至りました。
  内外の諸情勢が変動する中で、我が国は、国民福祉の一層の向上を図るため不断に努力するとともに、世界の平和と繁栄を目指し、自然と文化を愛する国家として広く貢献することが期待されています。
  ここに、国会が国権の最高機関として、その使命を十分遂行することを切に希望します。
   〔一同敬礼〕
 衆議院議長は、おことば書をお受けした。
 午前十一時七分 天皇陛下は、参議院議長の前行で式場を出られた。
 次いで、一同は式場を出た。
   午前十一時八分式を終わる
     ―――――・―――――
平成元年二月十日(金曜日)
   午後二時二分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
○議事日程 第三号
  平成元年二月十日
   午後二時開議
 第一 国務大臣の演説に関する件
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 一、議員福田幸弘君逝去につき哀悼の件
 一、特別委員会設置の件
 一、裁判官弾劾裁判所裁判員予備員辞任の件
 一、裁判官弾劾裁判所裁判員予備員等各種委員の選挙
 一、国家公務員等の任命に関する件
 以下議事日程のとおり
     ―――――・―――――
○議長(土屋義彦君) 開会に先立ち、御報告申し上げます。
 昭和天皇の崩御に際し、弔意を表するため去る一月九日議決されました弔詞は、翌十日、皇居において奉呈いたしました。
     ―――――・―――――
○議長(土屋義彦君) これより会議を開きます。
 議員福田幸弘君は、昨年十二月二十三日逝去されました。まことに痛惜哀悼の至りにたえません。
 同君に対しましては、議長は、既に弔詞をささげました。
 ここにその弔詞を朗読いたします。
   〔総員起立〕
 参議院はわが国民主政治発展のため力を尽くされました議員正四位勲二等福田幸弘君の長逝に対しつつしんで哀悼の意を表しうやうやしく弔詞をささげます
    ―――――――――――――
○議長(土屋義彦君) 安永英雄君から発言を求められております。この際、発言を許します。安永英雄君。
   〔安永英雄君登壇〕
○安永英雄君 ただいま議長から御報告がありましたとおり、本院議員福田幸弘君は、昨年十二月二十三日、都内関東逓信病院において急性心不全のため急逝されました。余りにも突然の訃報は、耳を疑うばかりでありました。御家族の方々のお悲しみ、地元の皆様のお嘆きはもとより、同僚議員としてまことに痛惜哀悼の念にたえません。
 私は、ここに、議員各位の御同意を得て、議員一同を代表し、正四位勲二等故福田幸弘君のみたまに対し謹んで哀悼の言葉をささげたいと存じます。
 君は、大正十三年熊本県人吉市に生をうけられました。長じて福岡県中学明善校から海軍経理学校に進み、太平洋戦争末期の昭和十九年三月、第三十四期生として卒業、軍艦「長門」に乗り組んでレイテ沖海戦に参加されるなど、実弾の下をかいくぐられました。
 終戦後、東京大学法学部に入学、司法試験、国家公務員試験に合格、二十七年三月卒業の後直ちに大蔵省に入省され、以後ほぼ一貫して税の分野で活躍してこられたのであります。すなわち、在カナダ日本国大使館一等書記官、福岡国税局長、大臣官房審議官、日本銀行政策委員、主税局長の要職を歴任、五十七年六月に国税庁長官に就任されました。
 翌五十八年六月国税庁長官を退官された後の君は、しばらく野にありましたが、六十一年の参議院通常選挙に関係者の輿望を担って福岡県から出馬し、見事当選を果たして身を政界に投じられたのであります。
 君は、議員在職中、大蔵、逓信、決算の各委員会、産業・資源エネルギーに関する調査会、税制問題等に関する調査特別委員会に所属され、広範な国政の審議に熱心に参加されますとともに、議員同志と税制に関する私的な勉強会をつくり、税制改革への提言を発表するなど真摯な勉強家でありました。特に、在職中を通して籍を置かれた決算委員会においては、理事として、決算審査の充実のため苦心されていた君のお姿が昨日のように思い出されます。また、自由民主党にあっては、全国組織委員会都市局、農林水産局、通信情報局の各次長として特段の尽力をなされたと伺っております。
 君は、また、肥後もっこすの豪気とロマンを求める若々しい心をあわせ持った、大きな風格を感じさせる人でありました。君の優しいまなざしは、すべての人を包み込む温かさにあふれていました。マージャンもゴルフも時間のむだとしてこれらをたしなまれなかった君は、映画をこよなく愛し、多くの映画評を物された玄人はだしの映画評論家であり、さらに戦記、随筆等にも健筆を振るい、すぐれた著作を残された日本文芸家協会の会員でもありました。
 君が大蔵省の広報誌「ファイナンス」に長年にわたって連載された映画評の最後は「敦煌」についてのものでありました。君は、その中で、砂に埋もれたロマンと歴史の中に戦乱と文化、一生と永遠、権力と宗教の問題を感じ取られ、また、「反乱は、人間の持つ最高のエネルギーの爆発である。映画の終り近く、砂煙に包まれた乱戦の遠景には哀愁が漂う」と述べておられます。
 君は、このとき、かつて若き海軍士官として激しい戦闘の中で常時死と対面し、人の生と死の意味を問い詰められた青春の日を思い返しておられたように思われてなりません。太平洋戦争において、陸軍と海軍との違いはあれ、君と戦争体験を同じくする私は格別の感興を持って拝読したのであります。君の人生観に裏打ちされた映画評は、これまで多くの人の感動を誘ってきたに違いありません。
 さらに、君は、何よりも税の専門家として意義ある業績を多く残されました。「税制改革への歩み」と題する正・続二巻千四百ページに及ぶ君の対談集も、恐らく君のこの面での広範な活動の一端を示すにすぎないものでありましょう。君は、常に税の公平確保を強く主張された正義の人であり、君の理論は、単に税制問題にとどまらず、より根源的な我が国政治のあり方を問い、多くの示唆と感銘を与えてくださいました。
 政界に身を置いてわずか二年有半、大成を期待されながら志半ばにして倒れた君の心中の御無念は察するに余りあるものがあります。
 今日、参議院が自主性の発揮を強く求められているとき、君のごとき高潔な人格と豊かな識見を備えた大器を失ったことは、本院のみならず、国家にとっても痛恨のきわみと言わなければなりません。
 今、君と幽明境を異にし、再び君の温顔にこの議場で接することができないことに改めて深い悲しみを覚えます。
 ここに、謹んで君の業績とお人柄をしのび、院を代表して心から御冥福をお祈り申し上げ、哀悼の言葉といたします。
     ―――――・―――――
○議長(土屋義彦君) この際、特別委員会の設置についてお諮りいたします。
 リクルート問題等に関する調査のため、委員三十名から成るリクルート問題に関する調査特別委員会を設置いたしたいと存じます。
 本特別委員会を設置することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(土屋義彦君) 御異議ないと認めます。
 よって、リクルート問題に関する調査特別委員会を設置することに決しました。
 本院規則第三十条により、議長は、議席に配付いたしました氏名表のとおり特別委員を指名いたします。
     ―――――・―――――
○議長(土屋義彦君) この際、お諮りいたします。
 工藤万砂美君から裁判官弾劾裁判所裁判員予備員を辞任いたしたいとの申し出がございました。
 これを許可することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(土屋義彦君) 御異議ないと認めます。よって、許可することに決しました。
     ―――――・―――――
○議長(土屋義彦君) つきましては、この際、
 裁判官弾劾裁判所裁判員予備員、
 国土審議会委員及び
 国土開発幹線自動車道建設審議会委員各一名の選挙
を行います。
○柳川覺治君 各種委員の選挙は、いずれもその手続を省略し、議長において指名することとし、また、裁判官弾劾裁判所裁判員予備員の職務を行う順序は、これを議長に一任することの動議を提出いたします。
○鈴木和美君 私は、ただいまの柳川君の動議に賛成いたします。
○議長(土屋義彦君) 柳川君の動議に御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(土屋義彦君) 御異議ないと認めます。
 よって、議長は、裁判官弾劾裁判所裁判員予備員に斎藤文夫君を、
 国土審議会委員に梶木又三君を、
 また、国土開発幹線自動車道建設審議会委員に増岡康治君を、
それぞれ指名いたします。
 なお、裁判官弾劾裁判所裁判員予備員の職務を行う順序は、斎藤文夫君を第二順位とし、第二順位の鈴木貞敏君を第一順位といたします。
 これにて休憩いたします。
   午後二時十五分休憩
     ―――――・―――――
   午後三時十二分開議
○議長(土屋義彦君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 この際、国家公務員等の任命に関する件についてお諮りいたします。
 内閣から、人事官に佐野弘吉君を、
 社会保険審査会委員長に信澤清君を、
 航空事故調査委員会委員長に武田峻君を、同委員に東昭君、薄木正明君、竹内和之君及び宮内恒幸君を、
 また、労働保険審査会委員に倉橋義定君及び瀧川勝人君を
それぞれ任命することについて、本院の同意を求めてまいりました。
 まず、人事官並びに航空事故調査委員会委員のうち薄木正明君及び宮内恒幸君の任命について採決をいたします。
 内閣申し出のとおり、いずれも同意することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
○議長(土屋義彦君) 過半数と認めます。
 よって、いずれも同意することに決しました。
 次に、社会保険審査会委員長、航空事故調査委員会委員長、同委員のうち東昭君及び竹内和之君並びに労働保険審査会委員の任命について採決をいたします。
 内閣申し出のとおり、いずれも同意することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
○議長(土屋義彦君) 総員起立と認めます。
 よって、全会一致をもっていずれも同意することに決しました。
     ―――――・―――――
○議長(土屋義彦君) 日程第一 国務大臣の演説に関する件
 内閣総理大臣から施政方針に関し、外務大臣から外交に関し、大蔵大臣から財政に関し、愛野国務大臣から経済に関し、それぞれ発言を求められております。これより順次発言を許します。竹下内閣総理大臣。
   〔国務大臣竹下登君登壇、拍手〕
○国務大臣(竹下登君) 第百十四回通常国会の再開に当たり、内外の情勢を展望して施政の方針を明らかにし、国民の皆様の御理解と御協力をお願いしたいと存じます。
 まず最初に、昭和天皇の崩御に対し、衷心より哀悼の意を表する次第であります。
 私たちは、この悲しみを乗り越え、心と力を合わせて、国運の一層の進展と世界の平和、人類福祉の増進に努め、新しい平成時代を築いていかなければなりません。
 「平成」には、その名の示すごとく、平和が我が国の内外に達成されることを願う意味が込められております。私は、人類が希求する平和を恒久的に確保し、かけがえのない美しい地球を守り、育て、後世に残していくことこそ、新しい時代に生きる私たちに与えられた最大の使命であると確信をいたしております。
 顧みれば、昭和の時代は、世界的な大恐慌に始まり、悲しむべき大戦の惨禍、混乱と窮乏きわまりない廃墟からの復興と真の独立、比類なき経済成長と国際国家への発展に至るまさに激動の時代でありました。これらの時代を通じ、我が国は、多くの困難と試練に遭遇したわけでありますが、これを克服し、今や経済的な繁栄を達成するとともに、平和を目指す国家として国際社会の中で名誉ある地位を占めるに至りました。私は、今日の豊かな日本を建設された国民の努力と英知に改めて深い敬意と感謝の意を表し、さらに新しい時代への力強い前進を決意する次第であります。
 また、戦後の我が国の繁栄は、米国を中心とする自由主義諸国の努力と協調に支えられた国際秩序に大きく負っていたことを忘れてはなりません。今日、国境という枠を超えて活動と交流が深まり、国と国の相互依存や多極化の傾向が強まる中で、国際秩序の担い手として我が国が果たすべき責務はかつてないほど大きなものとなっております。人類と地球の未来のために、米国や欧州、アジア諸国を初め多くの国々と力を合わせ世界の平和と繁栄を支えていくとともに、一層主体的に世界の期待と要請にこたえていかなければならない時代を迎えていることも確かであります。
 私は、このたび米国を訪問し、就任直後のブッシュ米大統領と会談して忌憚のない意見の交換を行ってまいりました。私たちは、かたい友情と相互の信頼を確認するとともに、今後とも、日米両国が協力し合うことにより、地球的な視野に立っておのおのの責任を果たし、世界に貢献していくことを誓い合った次第であります。
 平成時代を迎えて、私たちは、これまで以上に斬新な発想とたくましい気力を持って、活力に満ち、しかも文化豊かな国づくり、世界に開かれた国づくりを着実に進めていくべきだと存じます。日本には長い歴史と伝統があります。これを誤りなく継承しつつ、しかも必要に応じて時代に先駆けた挑戦を繰り返すことにより、時には痛みを分かち合いながら、人類共通の願いにこたえることこそ、私たちにとって大事な課題ではないでしょうか。
 時代の転換点とも言うべき今、もう一度初心に立ち返り、来るべき時代への洞察と未来を切り開く勇気ある実践が強く私たちに求められていることをひしひしと感じてなりません。
 来る二月二十四日に昭和天皇の大喪の礼を挙行することといたしておりますが、国民の代表や世界の国々から弔問のため来日される多くの首脳や要人を迎えて、厳粛にしかも滞りなくとり行うよう万全の準備を進めてまいります。
 今日、リクルート問題等を契機として国民の間に政治に対する不信が広がっております。このことは、我が国の議会制民主主義にとって極めて憂慮される事態であると認識いたしております。
 政治改革は、竹下内閣にとって最優先の課題であります。私は、各方面からの厳しい御批判を真剣に受けとめ、皆様と力を合わせて、必ずや政治への信頼の回復をなし遂げなければならないとかたく心に誓っておる次第であります。
 政治は、それを動かす精神や文化を抜きにしては考えられず、また、政治倫理については、第一義的には政治にかかわる者一人一人のモラルに帰着する問題であることも確かだと思います。私を初め政治に責任を負う立場にある者は、率先して自粛自戒し、みずからの姿勢を正すことが求められております。私は、政治家みずからが自己改革し、衆参両院で決められた政治倫理綱領を守り、国会の自浄能力を高めるための環境づくりを急ぐことによって国民の負託にこたえていくしか道はないと思うのであります。
 このため、政治資金における公私の区別の明確化と透明性の確保を図り、金のかからない政治活動を確立するとともに、さらにその基礎をなす選挙そのもののあり方について検討を進め、思い切った改革をしなければなりません。
 このような考えのもとに、当面の問題だけでなく中長期的な課題を含め、多方面の方々から御意見や御提言をいただくこととし、先般、有識者による政治改革に関する会議の場を設けました。これらの改革は、政府のみにて達成できるものではなく、国会、各党各会派の皆様の御理解と御努力によって初めてなし遂げられるものであります。私は、みずからのすべてをかけて、皆様とともにその実現に取り組む決意であります。
 また、全体の奉仕者である公務員についても、その職務を行うに当たって、いやしくも疑惑を招くことのないよう一段と綱紀の粛正を図ってまいる所存であります。
 私は、もう一つの大きな目標として、「ふるさと創生」を国づくりのテーマに、いよいよその具体化に向かって前進してまいる所存であります。これからの我が国に必要なことは、その経済的豊かさにふさわしい日本を築いていくことにあると考えております。
 私はかねてより「ふるさと創生」を唱えてまいりましたが、それは、日本人一人一人がみずからの住む地域を「ふるさと」と感じることができるような充実した生活と活動の基盤をつくり、真の豊かさを目指すものであります。同時に、一層開かれた社会を築き上げ、世界の人々に敬愛される日本を創造していくことにほかなりません。
 豊かな自然や住みよい都市環境、地域における人と人との心の通い合い、住民の創意工夫を生かした町づくり、村づくり、地域づくりを進め、そして何よりも家族の団らん、温かい家庭を大切にしながら、国内はもとより、世界と交流し貢献していくという新しい社会をダイナミックに創造いたしたいと存じます。
 このように、「ふるさと創生」には輝かしい未来をつくる夢とロマンがあります。しかし、自主的で地道な努力の積み重ねと忍耐強い継続なしにはこれを実現することはできません。多くの人々が「ふるさと創生」という一つの大きな目標に向かって知恵や努力を結集していけば、やがて壮大な運動となり、心豊かな人々によってさらにすばらしい日本、美しい地球がつくられていくことを私は大いに期待しておるところであります。
 以上の考え方に立って、国政の各分野にわたり基本的な方針を申し述べたいと存じます。
 最近の国際情勢には新たな潮流が見られます。特にソ連の対外姿勢の変化を背景に、米ソ間の対話を初め中ソ関係正常化の進展、世界各地の地域紛争における解決への具体的努力などが見られ、今後の展開が注目されます。このような変化はいまだ緒についたばかりであり、楽観は許されませんが、歓迎すべき変化については、これを定着、発展させるため、我が国としても新たな創意を持ち、体制を整備しつつ積極的な外交を展開していくことが必要であります。
 国際社会において相互依存関係が深まる中で、我が国は経済のみならず国際関係全般にわたってこれまでにない大きな責任と役割を有しております。私は、政権を担当して以来、「世界に貢献する日本」の推進を最重要課題としてまいりました。今後とも平和憲法のもと、他国に脅威を与えるような軍事大国にはならないという不変の方針を堅持し、世界の平和と繁栄のために最善を尽くす決意であります。
 我が国が国際的貢献を果たすに当たっては、まず自国の平和と安全を守る努力がその前提となります。私は、日米安全保障体制を堅持し、その円滑かつ効果的運用を図り、また非核三原則と文民統制を確保しつつ、中期防衛力整備計画に従い、節度ある防衛力の整備に努めてまいります。なお、平成三年度以降の防衛力整備については、現行のような中期的な計画を策定する必要があると考えており、今後検討を進めてまいります。
 また、世界有数の経済規模を有する我が国には、世界経済の持続的成長のため、さらに多くの努力が求められていることも確かであります。主要先進国との政策協調を促進し、為替レートの安定を図りつつ、内需主導型の経済構造を定着させ、規制緩和を含む構造調整を一段と推進するとともに、輸入の拡大、市場アクセスの一層の改善に努めていかなければなりません。さらに、多角的自由貿易体制の維持強化を目的としたウルグアイ・ラウンドの交渉についても、最大限の努力を行ってまいります。特に、農産物貿易については、食糧の安全保障等に十分配慮しつつ交渉の進展に向けて積極的に対応していきたいと存じます。
 世界の平和と繁栄に一層貢献していくため、私は昨年、平和のための協力、政府開発援助の拡充、国際文化交流の強化を三つの柱とする「国際協力構想」を打ち出しましたが、今年はこの三本柱の一層の具体化を図りたいと存じます。
 まず、平和のための協力では、国連の平和維持活動に対する各国の期待の高まりにこたえて、資金面での協力はもちろんのこと、要員派遣についても我が国にふさわしい分野において強化し、そのための体制の整備に努めてまいります。さきの訪米の機会にデクエヤル国連事務総長と会談した際、私はこの平和のための協力について説明し、賛同を得たほか、昨年私が提唱した核実験検証を含む核軍縮問題に関する国連会議を本年四月京都で開くことについても合意したところであります。
 また、本年は、アフガン難民の支援を強化するほか、四月開始予定の国連のナミビア独立支援活動に対し、資金面並びに選挙監視等の要員派遣面での協力を行ってまいります。カンボジア問題においても、国際的な枠組みの中での紛争解決とその後の復興に向け積極的に協力していく考えであります。
 次に、ODAの拡充では、昨年策定した第四次中期目標の着実な達成に向け努力するとともに、一層効果的、効率的な援助の実施に努めてまいります。このような努力に加え、開発途上国の累積債務問題が世界経済の発展のためにも克服しなければならない問題であることにかんがみ、資金還流などを図り、その解決に向け積極的に取り組まなければならないと思います。
 そして、国際文化交流の強化では、海外での対日関心の急激な増大に対応していくとともに、留学生、研究者などを含む人的知的交流等を進め、また人類共通の財産としての世界の諸文化の維持発展に寄与していくことといたしております。さらに、地方においてもさまざまなレベルでの海外との交流を推進するなど、草の根外交や地方の国際化のための施策を強化してまいりたいと存じます。
 青く美しい地球は人類共通のふるさとであります。これを末長く後の世に残すことは私たちの責務であり、人類の英知を結集していかなければならない課題であります。そのため、地球温暖化を初めとする地球規模での環境問題の解決に積極的に取り組む考えであり、国連及び各国との協力のもと、本年秋には地球環境保全に関する国際会議を東京で開催する予定であります。また、地震などの自然災害や麻薬問題など国境を越える課題に対しても、引き続き国際協力を進めていきたいと存じます。
 我が国が積極的な外交を推進するに当たっての基本的な立場は、先進民主主義諸国の主要な一員として西側諸国との協調を図りつつ、アジア・太平洋地域の一国としてその地域の安定と発展に貢献していくことであります。
 特に、東西関係を初めとする国際情勢が一層好ましい展開を示すように、日米欧を中心とする西側諸国相互間の連帯と協調が重要であります。私は、本年七月フランスで開催される主要国首脳会議などの国際的な場において、世界が直面する諸問題の解決に向け日米欧の協力関係をさらに強化してまいる所存であります。
 中でも日米関係は我が国外交の基軸であります。私とブッシュ大統領は、今後とも二国間の課題を静かな対話と地道な努力を通じて解決していくとともに、両国が相携えて世界の平和と繁栄のために貢献すべく政策協調と共同作業を一層進めることを確認したところであります。
 また、西欧諸国との関係強化も重要であります。昨年の二度にわたる訪問を踏まえ、西欧諸国の首脳との信頼関係を一層強固なものとすることにより、世界的視野に立った協力を強化してまいります。
 ソ連との関係では、最近の二度にわたる外相会談で、日ソ間に横たわる諸問題や緊要な国際問題について率直な意見交換が行われました。我が国としては、北方領土問題を解決して平和条約を締結することにより、真の相互理解に基づく安定的な関係を確立することが一貫した方針であります。ゴルバチョフ書記長の「新しい思考」に基づく政策転換が対日関係に反映されることを期待しつつ、昨年十二月の外相会談で合意された最高首脳レベルをも含む対話の拡大強化を通じ、さらに粘り強い外交努力を続ける所存であります。
 アジア・太平洋近隣諸国との関係を強化し、発展させることは極めて枢要であります。中でも、民主化の進む韓国との友好協力関係を一層発展させるとともに、朝鮮半島の緊張緩和のための環境づくりに努力し、また近代化を目指して力を尽くしている中国との間に良好で安定した関係を維持発展させることは我が国外交の重要な柱であります。さらに、私は、朝鮮半島をめぐる動きを注視しつつ、日朝関係の改善に努力いたします。また、ASEAN諸国や大洋州諸国等との関係強化に意欲を持って取り組んでまいります。
 このほか、外交の幅を地域的にも広げることを目指して、中南米、インド亜大陸、中近東、アフリカなどの地域との間で首脳レベルの交流を精力的に展開し、関係強化を図ってまいりたいと考えております。
 さきの国会において税制改革関連六法が成立し、長年の課題であった税制改革が実現をいたしました。私は、この改革が我が国経済社会の活力を維持し、豊かな長寿・福祉社会をつくる礎となるものと確信いたしております。国会における審議やつじ立ちを通じて、国民の間に消費税の導入について種々の懸念や不安があることは十分承知いたしております。それを解消し、新しい税制に対する国民の信頼を得るためには、この制度を円滑に実施に移していくことが不可欠であり、最大限の努力をしてまいりたいと決意をいたしておるものであります。
 政府としては、先般新税制実施円滑化推進本部を設けたところでありますが、今後とも私みずから陣頭に立って、新税制について理解を得るための広報や相談等を積極的に実施し、また、消費税が円滑かつ適正に転嫁されるようきめ細かな対策をとるとともに、便乗値上げの防止にも配慮してまいります。消費税が実施に移され、身近なものとなれば、必ずや大幅減税とあわせて、税制を改革してよかったと感じていただけるようになるものと私は確信をいたしております。いわゆる税率の歯どめについては、竹下内閣として税率の引き上げを提案いたす考えのないことをつけ加えておきます。
 行財政改革と税制改革は日本が新しい時代に向かって歩むためにともに必要なものであり、私は車の両輪に例えられると思っております。税制改革が実現しその円滑な実施が求められている今日、行財政が効率的に運営されることは一層重要であります。平成元年度予算においては、歳出の徹底した合理化に取り組み、平成二年度に特例公債依存体質から脱却するという目標に向け前進するとともに、平成元年度に実施する事項を中心に行政改革の方針を取りまとめたところであります。多額の公債残高を抱えるなど行財政をめぐる厳しい状況を踏まえ、これからも行政の各面にわたり制度や歳出を見直し、手綱を緩めることなく行財政改革を進めてまいる決意であります。
 また、地方財政については、今回の補助率などの見直しに際し所要の措置を講ずるなど、その円滑な運営を期することといたしております。
 国土の均衡ある発展と地方の活性化のため、国、地方にわたる行政改革を行い、真の意味での自主的、自立的な地方自治の体制を築き上げることが今強く求められております。昨年十二月臨時行政改革推進審議会に対し、国と地方の行政の役割や機能分担、費用負担など幅広い問題について掘り下げた検討をお願いしたところであります。その答申を待って改革に一層積極的に取り組む所存であります。
 全国各地にはそれぞれの個性があります。新しい「ふるさと」づくりは、みずからの地域に根づいた歴史、伝統、文化や産業を見直し、その中から地域の特性を引き出し、大きく伸ばし育てることに尽きます。
 そのためには、これまでの発想を転換して、地域が自主性と責任を持って、おのおのの知恵と情熱を生かし、小さな村も大きな町もこぞって、地域づくりをみずから考え、みずから実践していくことが極めて重要であります。この自立の精神により、私は、誇りと活力に満ち、しかも文化の薫り豊かな「ふるさと」を築くことができると信じております。各地域で青写真をつくり、人間味あふれた「ふるさと像」を描いて、その実現に向けて努力していただきたいと思います。政府におきましては、全国各地で動きの見られる自主的、主体的な村づくり、町づくりにおこたえすることができるよう、地域の活性化の具体化に向けて積極的な支援を図ってまいります。
 一方、東京への過度な集中や依存から脱却し、多極分散型の均衡ある国土づくりを強力に推進いたします。このため、第四次全国総合開発計画に基づき、ふるさとづくりの基盤となる都市・産業機能などの地方分散、地域の振興拠点の開発整備及び大都市地域の秩序ある整備を図るとともに、高規格幹線道路、空港、整備新幹線などの交通網及び情報・通信体系の整備やイベント開催などソフト面の施策の充実による交流ネットワーク構想を進めてまいります。さらに、今後とも国の行政機関等の移転の推進に全力を挙げて取り組んでまいります。
 また、北海道の総合開発と沖縄の振興開発のための諸施策を引き続き積極的に推進していくことはもとよりのことであります。平成二年に開催される国際花と緑の博覧会については、その成功に向けて諸般の準備を進めているところであります。
 今や土地問題は、早急にその解決を図らなければなりません。東京圏では地価の鎮静化傾向が見られるものの、依然として高水準で推移する一方、大阪圏などにおいても地価上昇が見られ、引き続き地価の抑制に努めていく必要があります。政府一体となって、需給両面にわたる土地対策を強力に推進するとともに、土地の公共性についての共通の国民意識を確立していくことが必要であり、本国会に土地基本法案を提出いたしたいと存じております。
 我が国は、今や世界最長寿国となり、まさに人生八十年時代を迎えております。四人に一人が六十五歳以上という本格的な長寿社会の到来を間近に控え、高齢者が社会を支える重要な一員としてその豊かな経験や知恵を生かせるよう、雇用、社会保障を初め経済、社会のシステム全体をこれからの時代にふさわしいものとしていく必要があります。
 このため、各人が生涯を通じてその能力や創造性を発揮できるよう、六十五歳程度までの継続雇用を初め多様な就業機会の確保、社会への参加を促進し、その条件整備を図りつつ公的年金を中心とした老後所得の確保に意を用いたいと存じます。
 国民のだれもが、長い人生の中で、家族とつながりを持ち、長生きをしてよかったと感じられることが長寿・福祉社会の目指すところであります。この目標のもとに、生涯を通じた健康づくりを一層推進し、地域における保健・医療・福祉サービスの総合的展開を図り、在宅サービスの拡充を中心とする一方で、老人保健施設等の施設サービスの拡充に努めてまいります。また、高齢者を含む三世代が生き生きと生活できる住みよい町づくりを進めていきたいと考えております。
 国民の生活を支える公的年金については、給付の改善を行うとともに、厚生年金について、世代間の給付と負担の均衡を確保するため平成十年度から支給開始年齢を段階的に引き上げ、さらに、制度の一元化に向けて被用者年金制度間の負担調整を実施することをお願いしたいと存じます。医療保険についても、制度間の給付と負担の公平化などの改革に取り組みたいと思います。
 寝たきり老人や障害者、母子家庭など経済的、社会的に弱い立場にある方々へのきめ細かな配慮を行うことはもちろんのことであります。このほか、長寿を支える科学技術研究の推進や、がん対策、エイズ対策を初め難病の克服に全力を尽くしてまいります。
 教育は我が国が創造的で活力ある文化国家として発展し、世界に貢献していく基礎を築くものであり、このため教育改革に全力で取り組まなければなりません。私は、日本人としての自覚に立って国際社会の中でたくましく活動できる個性豊かな青少年を育成するため、道徳教育の充実など教育内容の改善、教員の資質の向上、高等教育の個性化、活性化等を積極的に推進するとともに、国民のさまざまな学習意欲にこたえる生涯学習社会を築くことが必要であると確信いたしております。さらに、国民の文化、スポーツに対する関心の高まりにこたえるため、文化施設の整備、生涯スポーツ、競技スポーツの振興を図ってまいります。
 豊かで多様な国民生活の実現、国際社会への貢献、地域社会の均衡ある発展などの課題に取り組んで未来を開くためには、我が国経済社会の発展基盤を確かなものとしておくことが必要であります。我が国経済は堅調な拡大局面にありますが、インフレなき持続的経済成長と対外不均衡の一層の是正を図るため、引き続き適切かつ機動的な経済運営に努めるとともに、新しい経済計画すなわち「世界とともに生きる日本」に沿って経済構造調整を進め、内需主導型経済構造への転換と定着を実現してまいります。
 他方、我が国経済社会が成熟しつつある今日、高い経済力を国民一人一人の生活に生かすことによって真に豊かさが実感できる社会を築き上げることが急務であると存じます。
 国民の多様化したニーズに対応して供給構造を変革し、国際的に均衡のとれた物価水準を確保して消費生活の充実を実現してまいらなければなりません。しかも、民間の活力や創意を生かすことを基本に、生産・流通・サービス機能や価格形成にかかわる規制の緩和、制度等の改善を積極的に進めることが肝要であると考えます。このため、昨年十二月には規則緩和推進要綱を決定したところであり、その着実な実行を図ってまいります。
 農業については、内外の厳しい状況に対応して足腰の強い、産業として自立し得る農業を確立するとともに、生産性の向上を図り、国民の皆様の納得を得られる価格水準で食糧の安定供給が行われることが重要であります。活力ある地域社会の維持、国土・自然環境の保全、さらには生きがいの充足など農業の持つ多面的な役割も重視していかなければなりません。これらの観点から、農業の長期展望の確立、構造の改善、農山漁村の活性化などの施策を一層強力に推進してまいります。また、牛肉・かんきつ等については必要な国内措置の実施に万全を期す考えであります。
 厳しい環境変化に直面している中小企業につきましては、健全な発展が可能となり、地域経済の活性化に資するよう、構造転換対策等を強力に実施してまいります。また、資源エネルギーの安定的供給の確保に努めてまいります。
 完全週休二日制の普及など労働時間の短縮は、我が国全体として取り組むべき課題であります。広く労使との対話を深め、地域雇用開発の推進、健康で豊かな勤労者生活の実現などに努めてまいります。
 今日、国民生活にゆとりと潤いが求められており、このため住みよい住宅供給の促進、安全で良好な居住環境、都市環境の形成など相対的におくれている社会資本の整備、生活面での情報化、大規模地震対策、十勝岳などにおける防災対策、水資源対策など多面的な対策を講ずるとともに、地方の芸術、伝統産業、スポーツの振興など特色ある地方文化の創造を図ってまいります。また、社会資本整備を円滑に進めるため、大深度地下の利用について検討を行うとともに、リニアモーターカーなど新しい交通システムの実用化に向けて研究を進めてまいります。
 さらに、国民の安全を脅かすテロ・ゲリラ事件などの犯罪や事故の防止に力を尽くしてまいります。
 時代を切り開くかぎの一つは、学術研究及び科学技術の振興であります。創造的、基礎的な研究開発を総合的に進めるとともに、ヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラムの推進などの国際交流を促進いたします。
 私たちは、過去と未来をつなぐ今を生きながら大きな使命を担っております。世代から世代へ先人の意志を引き継ぎ、力を合わせて新しい文明を創造していくこと、それこそが時代の大きな節目を越えようとしている私たちに課せられた命題にほかなりません。もとより、争いや対立に進歩はなく、この地上から過度の競争や相互不信を取り除く賢明で地道な努力が必要であります。私は、調和と信頼、そしてとうとい命やかけがえのない自然を大切にする心優しい政治を勇敢に実行することによっていかなる困難も克服することができると確信し、ひたすら歩み続けてまいります。
 何事かをなさんとするとき、あらゆることが忍耐によってなし遂げられるということは、洋の東西を問わず人々を導く指針であります。いつの時代にも、謙虚にしかも誠実に、学びつつ実践し、反省しつつ前進する心構えを忘れてはならないと思うのであります。
 私たちが進む道の遠く険しきを思い、私はみずからに与えられた責任の重大さを改めて痛感いたします。これから後も、一日一日の歩みを怠ることなく、不動の信念を貫き、平和で豊かな世界と日本を築くため全力を尽くす決意であります。
 国民の皆様の一層の御理解と御協力をお願いいたします。
 ありがとうございました。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(土屋義彦君) 宇野外務大臣。
   〔国務大臣宇野宗佑君登壇、拍手〕
○国務大臣(宇野宗佑君) 第百十四回国会が再開されるに当たり、我が国外交の基本方針につき所信を申し述べます。
 本演説の冒頭に当たり、一言申し述べます。
 去る一月七日のパリにおける国際会議において、デクエヤル国連事務総長より、昭和天皇の崩御が知らされました。そのとき、ミッテラン仏大統領の提唱により、急遽会議の予定変更の上、昭和天皇に対する黙祷がささげられました。参加国百四十九カ国全員の起立による敬けんにして荘重な黙祷は、全く異例のものであり、私たち日本国代表団には感涙禁じ得ない厳粛なる一瞬でありました。謹んでこのことを御報告申し上げ、当日の参加者全員に心より御礼を申し上げる次第であります。また、昭和天皇の大喪の礼に海外よりの参列を明らかにされました多数の国々、国際機関などの首脳、要人の方々に対しましても、衷心敬意と謝意を表するものであります。
 さて、平成の時代の初めに際し思いをいたしますのは、一九四五年以降の我が国民の軌跡であります。私たちはさきの大戦の反省のもとに、ひたすら平和を希求しつつ、それぞれの分野で渾身の汗を流し、今日の自由と繁栄をもたらしました。この事実を胸に、私は、平和国家に徹するとの我が国外交の基本方針のもと、我が国並びに世界の平和と繁栄のため一層努力していくことを誓う次第であります。
 かかる見地からも、我が国外交が引き続き、先進民主主義諸国の主要な一員としての立場とアジア・太平洋地域の一国としての立場を踏まえて、その役割を果たすべきことは当然のことであります。同時に、今後は、中南米、インド亜大陸、中近東、アフリカとの関係においても、「国際協力構想」をさらに肉づけして、外交の幅を広げていくことが重要となってまいりました。
 しかも、その我が国を取り巻く国際情勢には新しい動きが生じております。
 INF全廃条約の発効、アフガニスタンからのソ連軍の撤兵合意の成立を初め、ソ連の対外姿勢の変化を背景とする東西関係の新しい展開は、将来への期待をはらむものであります。西側先進民主主義諸国といたしましては、現在の変化の肯定的な側面を評価することに憶病であってはなりません。例えば、昨年十二月、ゴルバチョフ書記長がソ連軍五十万人の一方的削減を発表したことも妥当な方向への第一歩だと考えます。
 しかし、これをもって直ちに東西間の対立構造が根本的に変化したとは言い得ません。現在の世界の平和が基本的には力の均衡と抑止により維持されておるということ自体が自明の理である以上、東西間には依然、戦略核兵器等の軍備管理・軍縮問題、さらには地域問題、人権問題といった課題が残されているからであります。
 また、中ソ間の動きに目を転じれば、両国外相の相互訪問が行われ、首脳会談も予定されるなど関係正常化の動きが見られますが、これが、アジアの平和と安定に資する方向で進展することを期待するものであります。
 したがって、我が国といたしましても、これらの国際情勢の新しい動きによっていかなる実質的な変化がもたらされるかを注意深く見守っていくべきであり、極東の安定と東西関係のさらなる安定化のため、米国を初めとする西側諸国と今後一層連帯、協調してまいる所存であります。
 当然、我が国自身がかかる国際情勢を慎重に見詰め、自衛のために必要な限度において節度ある防衛力を整備していくことは、今日の状況においても重要であります。同時に政府といたしましては、日米安保体制を堅持し、その一層の円滑かつ効果的な運用確保のためにも、引き続き努力しなければならないと存じます。このような我が国の努力はアジアの平和と安定に貢献するからであります。
 今般、米国では、レーガン大統領が任期を終え、ブッシュ新政権が発足しました。レーガン前大統領は八年間にわたり、アジア・太平洋地域に対し一貫して高い関心を維持し、特に対日関係の強化に格別の貢献をされたことを私たちは高く評価するものであります。当然その姿勢をブッシュ新政権も継がれると思いますが、まさに我が国こそ、新政権との間においても、我が国外交の基軸である日米関係の一層の強化のため尽力せねばならないと存じます。私自身、今般総理に同行して米国を訪問し、ブッシュ大統領、ベーカー国務長官を初めとする主要閣僚ともお会いいたしました。その際、日米両国が世界のGNPの三分の一以上を占めている現実に立脚して、両国が引き続き協力関係の強化に取り組むとともに、政策協調と共同作業を通じて世界の諸問題の解決に貢献し世界の平和と繁栄のためおのおのがふさわしい役割を果たしていくことの重要性につき、意見の一致を見ることができました。
 また、最近の西欧諸国の対東側外交の活発化や一九九二年のEC域内市場統合へ向けての動きには注目すべきものがあります。私は先般西欧を訪問し、各国の首脳、外相と忌憚のない意見交換を行いました。日欧がともに国際的責任と役割を増大させつつある現状にかんがみ、今後ますます、西欧諸国との間でこのような対話を活発化させ、その結果を日欧双方の政策に反映させていくことが必要と考えます。また、太平洋国家であり、西側の一員でもあるカナダとの協調関係も今後一層促進してまいります。
 ソ連との間では、昨年十二月、シェワルナゼ外相を迎えて、二年七カ月ぶりに日ソ外相間定期協議と、さらにあわせて平和条約締結交渉を行いました。この機会に、同外相との間で極めて実務的で真剣な話し合いが行われた結果、ゴルバチョフ書記長の我が国訪問実現に向けての準備の開始に合意したことを初め、日ソ間の一層の政治対話拡大の方向が確認されたのであります。領土問題につきましては、双方により、歴史にさかのぼった議論が初めて詳細かつ長時間にわたり行われましたことは有意義だったと存じます。しかし、ソ連は従来の考え方を網羅的に繰り返したにすぎず、その立場には依然として極めて厳しいものがありました。北方領土問題を解決して平和条約を締結することによりソ連との間に真の相互理解に基づく安定的な関係を確立することが我が国の不動の方針であり、今後とも北方四島一括返還の実現に向け、さらに粘り強い努力を続けなければなりません。先般、パリにおいて再び同外相と会談した際にも、我が方の基本的な考え方を改めて伝え、また、次回外相会談や平和条約作業グループ等の日程につき話し合いましたことも、これら交渉の大切な積み上げと存じます。
 また、東欧につきましては、その動向が今後の東西関係に大きな影響を及ぼす可能性があることにもかんがみ、これら諸国の国情と政策を十分勘案の上、対話及び交流を一層促進していく考えであります。
 次に、アジア・太平洋諸国について申し上げます。
 我が国は、アジア・太平洋地域の一国として、域内諸国との友好協力関係の増進に努めるとともに、サミットを初めとする幾多の場におきましても、同地域の問題に対する関心を積極的に表明するなど、その安定と発展に意を用いてまいりました。
 韓国との関係は、近年一段と緊密の度を増しており、昨年も、盧泰愚大統領就任式並びにソウル・オリンピック開会式出席のため総理が訪韓されたのを初めとして、さまざまなレベル、分野での交流が進められました。朝鮮半島をめぐる情勢は、最近中国、ソ連等の社会主義国と韓国との関係が進展するなど新たな展開を見せており、南北国会会談、南北首脳会談等をめぐり、朝鮮半島の緊張緩和のために関係者の努力が鋭意続けられております。我が国といたしましても、その環境づくりのため可能な限り側面的努力を惜しまない所存であります。
 また、北朝鮮との関係改善につきましては、朝鮮半島をめぐる国際政治の均衡に配慮しつつ進めていきたいと考えますが、そのためにも早急に第十八富士山丸問題の解決が必要であります。政府といたしましては、本問題解決のために各般の努力が払われていることに留意し、可及的速やかに日朝政府間の接触が実現し、その話し合いの過程において本件の解決が図られることを希望いたします。
 中国との友好協力関係の維持発展は、アジアひいては世界の平和と繁栄にとって重要な意義を有しております。我が国は、現在「改革と開放」の方針のもと近代化建設を目指す中国の努力を高く評価し、今後ともできる限りの協力を行うとともに、日中共同声明、日中平和友好条約及び日中関係四原則を踏まえさらに両国関係発展のために尽力する所存であります。
 東南アジア地域の安定のかなめであるASEAN諸国につきましては、広範な分野での協力関係を推進し、もってアジア・太平洋地域全体の安定と発展に貢献していきたいと考えております。フィリピンでは現在アキノ大統領のもとで新たな国づくりが進められておりますが、これに対しましては、昨年のサミットにおける経済宣言にもうたわれておりますとおり、引き続きできる限りの支援を行っていく所存であります。
 さらに、昨年末、我が国が外交関係を樹立しましたマーシャル諸島共和国、ミクロネシア連邦などの太平洋諸国とも、今後友好協力関係をさらに強化してまいります。
 また、PECCを初めとする太平洋協力に対しましても、積極的に支援してまいります。
 次に中東に移りますが、中東における情勢は依然として流動的であります。
 中東紛争につきましては、パレスチナ民族評議会及びジュネーブ国連総会におけるPLOの和平のための現実的政策の表明、これを踏まえた米国とPLOとの直接対話の開始等、和平実現に向け大きな流れが生じつつあります。しかし本問題の解決には、なお関係当事者の不断の努力が要請されるところであります。私自身、昨年中東紛争当事国四カ国を訪問し、それらの国々が我が国に寄せる期待の大きさを痛感した次第でありますが、我が国といたしましては、国際的協調のもと、かかる関係当事者の和平努力に対し積極的に協力していく所存であります。
 イラン・イラク紛争は、昨年八月二十日に停戦が実現しました。私もパリで両国外相と会談しましたが、両国は依然和平交渉を続けており、合意は見られておりません。我が国は、今後とも、安保理決議五九八号に基づく紛争の平和的解決のために、国連事務総長の和平努力に対する支援を中心に可能な限りの努力を行っていく所存であります。
 アフガニスタンに関しましては、ジュネーブ合意に基づきソ連軍が撤退いたしますが、今後は、アフガン人自身による国民の総意を反映した暫定政権が同国に樹立されることを強く希望いたします。
 続いて、中南米、アフリカについて申し上げます。
 中南米諸国は、約百数十万人の我が国からの移住者や日系人が在住し、伝統的に我が国とは親密かつ友好的な関係を有しておりますが、近年、累積債務問題等による経済困難の増大に直面しております。私は、同地域諸国の我が国に対する期待と国際場裏での支持に積極的にこたえるべく、資金還流措置の実施、経済・技術協力の拡充等を通じ、今まで以上に同諸国の自助努力に対する支援を強化してまいります。
 中米和平の動きは最近残念ながら停滞いたしておりますが、関係者の粘り強い努力による真の平和の実現を強く希望いたします。また、中米和平の進展を見つつ、同地域の経済復興開発、難民援助、人づくり等にできる限りの協力を行っていく所存であります。
 アフリカ諸国は、依然として食糧問題、累積債務問題等の多くの困難を抱えております。我が国は、ノンプロジェクト無償資金協力、国際機関との協調融資、債務救済措置等を通じて、同地域諸国に対する積極的支援をさらに強化してまいります。
 しかし、南アフリカ共和国のアパルトヘイトには断固反対しなければなりません。そのために我が国は、各種の対南ア規制措置を講じておりますが、対南ア貿易においても引き続き関係各方面に慎重な対応を求め、また、アパルトヘイトの犠牲者のための人道的援助、及び南ア周辺諸国に対する経済協力も強化してまいります。
 以上の外交推進のためには、世界経済の健全な発展が基礎であり、主要先進国間におけるマクロ政策協調の維持が極めて重要であります。そこに我が国の使命があります。我が国といたしましては、内需主導型の経済運営を行うとともに、構造調整、規制緩和、及びさらなる市場アクセスの改善によって対外不均衡の一層の是正を図らなければなりません。その一方、我が国は、他の主要先進国とともに、開発途上国、なかんずくアジアの新興工業国・地域とのよりよい協力関係構築のため、今後とも努力を払わなければなりません。
 かつ、世界貿易進展のためにも、多角的自由貿易体制の維持強化を主張しなければなりません。私は昨年末、ウルグアイ・ラウンドの中間レビュー閣僚会合に出席し、交渉の早期成果の取りまとめと後半の交渉に向けた指針づくりに積極的に参画いたしました。今後の交渉の道は決して平たんではありませんが、二十一世紀に向けたより強化されたガット体制の構築を目指すウルグアイ・ラウンドに一層積極的に取り組んでいく所存であります。
 さらに、米加自由貿易協定及び一九九二年に予定されていますECの域内市場統合が、排他的でなく開放された多角的貿易体制の強化に資するものとなるよう関係国との対話を深めてまいります。
 さて、相互依存関係のますます深まっている現在の国際社会において、我が国の平和と繁栄は世界の平和と安定に極めて密接に結びついております。したがって、世界のGNPの一割を優に超える経済力を有し、今や国際秩序の主要な担い手の一人となった我が国は、みずからの平和と繁栄のためにも、そして地球全体の福祉のためにも、経済大国日本は軍事大国にならずという信条のもと、「世界に貢献する日本」を実現すべく努力していくことが必要となってまいりました。
 竹下総理は、我が国外交の最も基本的な課題への取り組みの上に、新たな貢献の具体的施策として「国際協力構想」を内外に明らかにされました。すなわち、平和のための協力、ODAの拡充、国際文化交流の強化の三本柱であります。
 この総理の積極的な考えを受け、我が国は世界への貢献に新境地を開きました。私が昨年、みずから陣頭に立って中東紛争当事国を訪問いたしましたのも、また、国連アフガニスタン・パキスタン仲介ミッションや国連イラン・イラク軍事監視団等に対し資金面での協力に加え要員の派遣を行ったのも、かかる観点からであります。
 私は今後、要員の派遣をさらに進めていく所存であり、そのために必要な体制整備を行ってまいります。当面は、本年四月一日発足予定の国連ナミビア独立支援グループに対し、地方自治体等の協力も得つつ、選挙監視等の分野において要員を派遣する考えであります。また、カンボジア問題等につきましても、紛争解決に向け国際的な枠組みが設立される場合には積極的に協力し、あわせて復興援助についても検討していく所存であります。さらに、アフガン難民の自主帰還支援、あるいはジョルダン川西岸及びガザ地域等中東のパレスチナ難民救済のため引き続き協力を惜しまない所存であります。
 国連等の国際的な場で進められております軍縮努力への参画も、平和のための協力の重要な一環であります。さきにも申し上げました先月の化学兵器禁止パリ国際会議が成功裏に終結したことを歓迎するとともに、我が国といたしましても化学兵器包括禁止条約の早期締結のため努力いたします。
 さらに、国際社会の平和と安定を脅かすテロには断固反対との立場から、その防止のための国際協力を一層強化、推進してまいります。
 政府開発援助につきましては、我が国は今日まで、国連加盟国中百二十八の開発途上国すべてに対しODAを供与した実績を有しております。これは、我が国国民の御理解、御協力のたまものであり、それなくしては我が国の国際的責任の一翼を担うODAの拡充は不可能であります。
 ODAの実施に際しましては、これまでも、五年間に五百億ドル以上を供与するとの第四次中期目標のもと、累積債務問題、第一次産品市況の低迷等の経済困難に直面する相手国の諸情勢を勘案し、量の拡充のみならず内容や質の面での改善に努力してまいりました。また、累積債務問題に悩む後発開発途上国に対しましては、約五十五億ドルの債務を無償化するとの新たな債務救済措置も決定いたしました。さらに、技術協力の拡充、青年海外協力隊の強化にも努めてまいりました。今後は、国民の皆様の御意見に留意しつつ、援助のより一層の効果的実施を図るため、実施体制の整備拡充を図るとともに、民間援助団体(NGO)や地方との連携、及び国際開発金融機関、国連諸機関との調整、協力を強化してまいります。
 国際文化交流におきましては、文化を通じて国際的に貢献し、また、人類共通の財産である文化遺跡の保存への協力等により、世界の諸文化を維持発展させていくことが肝要であります。私は、高まる対日関心にこたえるための日本紹介を積極的に行うと同時に、幅広い相互交流を通じてお互いの国柄、歴史、社会等を認識し合う努力を積み重ねることが重要であると考えております。また、留学生、研究者、文化人といった知的レベルでの交流を促進し、新しい文化の創造に貢献していく所存であります。さらに、これらの交流の拡充のため政府の実施体制の強化等にも意を用いてまいります。
 加うるに、今や我々は、地球温暖化現象を初めとする環境問題や自然災害問題、あるいは麻薬問題等、その影響が国内にとどまらず、国境を越え地球的規模にまで広がっている多くの問題に直面しております。政府といたしましては、諸外国とも協力の上、今後このような問題にも国際協力構想の一環として積極的に取り組んでまいる所存であります。
 以上、今日の我が国外交は、極めて多様な課題を背負い、その重要性はますます高まっております。国益に沿って積極的な外交を展開することは国民の負託にもこたえるゆえんであり、そのためには我が国外交実施体制の一層の強化が必要であります。
 加えて、緊急事態における在外邦人保護体制の整備や海外子女教育の拡充などにも新しい努力が必要とされます。
 我が国が世界とともに歩み世界とともに栄えていくためには、世界みずからが閉鎖的でなく開かれた世界となると同時に、我が国自身が世界に対し開かれた日本となることが必要と考えます。この観点から、近年、地方公共団体、民間各層における国際文化交流活動や海外との人的交流が活発になっている事実は歓迎すべきことであります。政府といたしましても、こうした傾向を一層促進し、「ふるさと国際化」を図っていくべく交流活動の基盤整備及び情報提供の強化にさらに努めていく所存であります。
 思えば、昭和は幾多の感慨とともに去り行き、私たちは平成の時代をここに迎えました。平成という年号は、諸外国においても、平和を達成する意として広く理解されています。そして、この瞬間にも平成の新しき生命が呱々の声を上げているであろうことを思うとき、彼らが今よりも一回り、二回りも大きな国際人として地球に羽ばたくその輝かしき未来のためにも、今日ただいまの私たちは、世界の平和に貢献せんとする我が国の厳然たる礎をさらに強固に築き上げておかねばなりません。
 我が国外交を進めるに当たり、国民各位及び同僚議員の力強い御支援をお願いいたす次第であります。
 ありがとうございました。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(土屋義彦君) 村山大蔵大臣。
   〔国務大臣村山達雄君登壇、拍手〕
○国務大臣(村山達雄君) 平成元年度予算の御審議をお願いするに当たり、今後の財政金融政策の基本的な考え方につき所信を申し述べますとともに、予算の大綱を御説明いたします。
 我が国経済は、二度にわたる石油危機を初めとする幾多の試練を乗り越え、目覚ましい発展を遂げてまいりました。その過程で経済社会全般にわたる国際化が著しく進展し、今や、我が国の経済運営は世界から注目を受けている状況にあります。
 今後我が国の進むべき道は、これまでの成長と発展の上に立って、対内的には豊かで活力のある経済社会の構築を進め、対外的には調和のとれた国際関係を形成し、世界経済の安定的発展のために我が国にふさわしい貢献をしていくことにあります。
 現在、我が国の経済は、落ちついた物価動向のもとで内需を中心として力強い拡大を続けております。個人消費は堅調に推移し、設備投資も増勢を強めるなど、民間需要は順調に推移しております。経常収支の不均衡是正も進んでおります。このような我が国経済の現状につきましては国際的にも評価されているところであります。
 一方、国際経済情勢を見ますと、先進国においては、物価安定に努力が払われるもとで景気の拡大が続いております。しかしながら、主要国の対外不均衡は、改善傾向にあるとはいえ依然大幅なものであり、これを背景として、保護主義的な動きにはなお根強いものがあります。さらに、累積債務問題につきましては積極的な対応が迫られております。
 私は、今後の財政金融政策の運営に当たり、我が国を取り巻く状況を踏まえ、以下に申し述べる諸課題に取り組んでまいります。
 第一の課題は、内需を中心としたインフレなき持続的成長を確保していくことであります。
 ただいまも申し述べましたように、我が国経済は現在、経済構造調整が着実に進展する中で内需主導型の自律的な成長を続けております。今後の経済運営に当たっては、物価の安定を維持しながら、この状況をできる限り長期かつ安定的に持続することが肝要です。
 このような見地から、平成元年度予算につきましては、内需の自律的な拡大基調を背景として、財政改革をさらに推進するとの考え方のもとに編成いたしました。
 金融面では、現在我が国の公定歩合は依然として極めて低い水準にあり、また、量的にも緩和された状況にあります。今後とも、金融政策の運営につきましては、内外の経済動向及び国際通貨情勢を注視しつつ、適切かつ機動的に対処してまいる所存であります。
 持続的な経済成長を確保する上で、為替相場の安定が重要であることは申し上げるまでもありません。主要国の政策協調努力もあり、為替相場はこのところ安定的に推移しております。
 我が国経済の健全な成長は、国民福祉の向上の基礎であると同時に、世界経済全体の発展に貢献するものでなければなりません。経済運営に当たっては、この点を常に念頭に置きながら各般の課題に取り組んでいく必要があります。
 我が国は、他の主要諸国とともに政策協調の積極的な推進に努めてまいりました。先日開かれた七カ国蔵相・中央銀行総裁会議の場においても、これまでに構築されてきた主要国間の協調の枠組みを確固として堅持していくことの重要性が再確認されたところであります。今後とも政策協調のための努力を続けてまいる所存であります。
 第二の課題は、財政改革を引き続き強力に推進することであります。
 政府は、平成二年度までの間に特例公債依存体質から脱却し公債依存度の引き下げに努めるという目標を掲げ、財政再建を着実に進めてまいりました。平成元年度の予算編成に当たりましても、経済が好調に推移しているこの時期にこそ目標達成に向けて確かな歩みを進めることが何よりも重要であると考え、緩むことなく歳出の徹底した見直し、合理化に取り組んだところであります。その結果、特例公債発行額を前年度当初予定額に比し一兆八千二百億円減額することができました。また、公債依存度についても、前年度当初予算の一五・六%から一一・八%にまで低下しております。
 しかしながら、来年度末の公債残高は百六十二兆円程度に達する見込みであり、その国民経済規模に対する比率は主要諸外国と比較しても特に高い水準にあります。これから生ずる国債の利払い費は歳出予算の約二割を占めており、財政は基本的にはなお極めて厳しい状況にあると申し上げざるを得ません。
 将来の高齢化社会においても、経済社会の活力を維持し、国際社会における責任の増大にこたえていくためには、今のうちにその基盤とも言うべき財政の対応力の回復を図ることが不可欠であります。また、今次の税制改革を円滑に実施する上で国民の理解と協力を得るためにも、行財政の効率的な運営を図っていく必要があります。
 次の世代に対する我々の責任を全うするためには、財政改革の歩みを緩めることは許されません。今後とも、これまでの連年にわたる努力を無にすることのないよう各般にわたり行財政改革の推進に不断の努力を傾注してまいる所存であります。
 第三の課題は、新しい税制の円滑な実施を図ることであります。
 昨年末、税制改革関連法が成立いたしました。シャウプ勧告以来の税制の抜本的な改革はまことに意義深いものであり、これまでに各方面から賜った御理解、御尽力に対し改めて敬意と感謝の意を表したいと存じます。
 今般の税制改革は、高齢化・国際化の進展等将来の展望を踏まえ、税に対する不公平感を払拭し、所得、消費、資産等の間で均衡のとれた安定的な税体系を構築することを目指して行われたものであり、必ずや将来の我が国の経済社会の礎になると確信しております。
 政府は、新税制実施円滑化推進本部を設置し、この改革の意義及び全貌について国民の理解を深め、新しい税制の円滑な実施を図るための対策を総合的に推進することとしております。特に、新しく導入される消費税については、便乗値上げの防止に配慮しながら、その円滑で適正な転嫁のため各般にわたりきめ細かな対策を実施することとしております。
 もとより、税の適正、公平な執行は税制が国民の信認を得るための基本であり、国税庁及び税関においてはそのため一層努力してまいります。
 どのような税制も、その導入当初は種々の懸念や戸惑いを生じやすいものであります。なかんずく、消費税の執行に当たりましては、この種の税になじみの薄い我が国の現状を踏まえる必要があります。このため、制度導入当初においては積極的な広報、親切な相談、適切な指導を中心とした運営を行い、制度の意義、仕組み、手続等について国民の十分な御理解をいただき、混乱や不安が生じないよう配意してまいります。
 新しい税制の円滑な実施は現下の最重要課題の一つであり、私はこのために万全の態勢を整えて対処してまいる所存でございます。国民の皆様の御協力を切にお願いいたします。
 第四の課題は、金融資本市場の自由化、国際化を着実に進めていくことであります。
 金融資本市場の自由化、国際化は、今や世界的な潮流であり、世界経済における我が国の地位に顧みても積極的に取り組む必要があります。この課題の着実な推進は、金融の多様化、効率化に対する国民の期待にこたえ、我が国経済の発展に資するゆえんでもあります。
 このような観点から、預金金利の自由化、外国金融機関のアクセスの拡大等の措置を逐次講じ、短期金融市場、国債の発行・流通市場、先物市場の整備拡充等に努めてまいりました。
 さらに、証券市場につきましては、内外の信頼を確保する見地から、取引の公正性、市場の透明性を高めるため、内部者取引規制の整備及び株式公開制度の改善等を進めております。
 今後とも、我が国金融資本市場が内外経済の発展に十分な貢献を果たし得るよう、諸外国との協調を図りながら一層努力してまいります。
 第五の課題は、調和ある対外経済関係の形成に努めることであります。
 自由貿易体制は世界各国の経済発展と福祉向上の基礎であり、各国との協力のもとにその維持強化に努めていく必要があります。ウルグアイ・ラウンドにつきましても、昨年十二月の中間見直しを踏まえ引き続き積極的に交渉を推進してまいります。
 また、主要国における対外不均衡是正の問題は重要な課題であります。我が国としては、国民生活の質的向上を図る見地にも立って、物価構造における内外価格差の是正、市場アクセスの改善等を推進し、貿易の拡大均衡を図ることが必要であります。
 関税制度につきましては、この見地から、来年度において熱帯産品等の関税の引き下げ、撤廃等の改正を行うこととしております。
 経済協力につきましては、開発途上国の自助努力を支援するため、厳しい財政事情のもとではありますが、政府開発援助の着実な拡充に努めております。また、開発途上国への三百億ドルの資金還流措置につきましても順調に進めてきております。
 累積債務問題につきましては、国際的な協調の枠組みの中で、債務国ごとの事情を踏まえ、自助努力を前提に問題の解決を図ることが基本であります。我が国としても、最貧国について債務軽減措置を実施する等、積極的に取り組んでいるところであります。
 今後とも、関係国との対話を深めながら、我が国の国際的地位にふさわしい貢献を行ってまいる所存であります。
 次に、平成元年度予算の大要について御説明いたします。
 平成元年度予算は、内需の持続的拡大に配意しつつ財政改革を強力に推進することとして編成いたしました。
 歳出面におきましては、引き続き既存の制度、施策の見直しを行い経費の節減合理化に努めるとともに、限られた財源を重点的、効率的に配分するよう努めました。
 一般歳出の規模は三十四兆八百五億円となり、これに国債費及び地方交付税交付金等を加えた一般会計予算規模は六十兆四千百四十二億円となっております。なお、消費税の影響額につきましては適切に計上しております。
 また、補助率等につきましては、昭和六十三年度まで暫定措置が講じられてきましたが、改めて最近における財政状況、国と地方の機能分担、費用負担のあり方等を勘案しながら検討を行い、見直しを行うこととしました。厚生年金の国庫負担金の繰り入れにつきましては、所要の特例措置を講ずることとしております。これらにつきましては、別途、国の補助金等の整理及び合理化並びに臨時特例等に関する法律案を提出し御審議をお願いすることとしております。
 国家公務員の定員につきましては、第七次定員削減計画を着実に実施するとともに、増員は厳に抑制し、三千六十九人に上る行政機関職員の縮減を図っております。
 次に、歳入面について申し述べます。
 税制につきましては、税制改革の円滑な実施に配意する措置及び地域の活性化、社会政策上の配慮等の当面の政策的要請に対応する措置を講ずるほか、租税特別措置の整理合理化を行う等の改正を行うこととしております。
 公債発行予定額は七兆一千百十億円であり、その内訳は、建設公債が五兆七千八百億円、特例公債が一兆三千三百十億円となっております。特例公債の発行等につきましては、別途、平成元年度の財政運営に必要な財源の確保を図るための特別措置に関する法律案を提出し御審議をお願いすることとしております。なお、借換債を含めた公債の総発行予定額は二十二兆三千百四十九億円となっております。
 財政投融資計画につきましては、社会資本の整備、地域の活性化及び資金還流措置の推進等の政策的要請にこたえ、資金の重点的、効率的な配分に努めました。
 この結果、財政投融資計画の規模は三十二兆二千七百五億円となり、このうち資金運用事業を除いた一般財投の規模は二十六兆三千四百五億円となっております。
 次に、主要な経費について申し述べます。
 社会保障関係費につきましては、今後における経済社会構造等の変化に対応して各種施策が長期にわたり安定的かつ有効に機能するよう、制度、運営面において不断の見直しが必要であります。このような観点から公的年金制度の見直しを行うとともに、在宅福祉施策の大幅な拡充等緊要な施策については重点的な配慮を行っております。また、雇用対策につきましては、六十歳代の前半層を中心とする高年齢者の雇用就業機会の確保等の施策の充実を図っております。
 文教及び科学振興費につきましては、教育環境の整備、生涯学習の振興、基礎的、創造的研究の推進等の施策の充実に努めております。
 公共事業関係費につきましては、NTT株式売り払い収入の活用を含めて前年度当初予算と同水準の予算を確保しております。その配分に当たっては、生活環境の向上のため下水道、公園等の事業に特に配意しており、また、地域の実情に十分配慮されるよう対処する所存であります。また、住宅金融公庫の貸付限度額の引き上げ等住宅対策の拡充も図っております。
 中小企業対策費につきましては、環境の変化に適切に対応し得るよう構造転換を促進することとし、特に地域経済の活性化に資する中小企業の育成等の施策の充実を図っております。
 また、農林水産関係予算におきましても、内外の情勢変化を踏まえ、需要動向に適切に対応し、生産性向上を図るため、生産基盤の整備等の施策に重点的に配慮しております。
 経済協力費におきましては、政府開発援助予算について、第四次中期目標の着実な達成を図る観点から、内容の一層の改善にも配意し、前年度当初予算の伸びを上回る七・八%増としております。
 防衛関係費につきましては、厳しい財政事情のもとで、他の諸施策との調和を図りながら、中期防衛力整備計画を踏まえその質的充実に配意しております。
 エネルギー対策費につきましては、中長期的な需給見通しをも踏まえ、安定的なエネルギー供給の確保等の施策を着実に推進することとしております。
 地方財政につきましては、地方税及び地方交付税等の大幅な増加が見込まれることから、中期的な地方財政の健全化等を図るため、交付税及び譲与税配付金特別会計の借入金の返済等の措置を講じております。地方団体におかれても、歳出の節減合理化をさらに推進し、より一層効率的な財源配分を行われるよう要請するものであります。
 この機会に、昭和六十三年度補正予算について一言申し述べます。
 昭和六十三年度補正予算につきましては、歳出面におきまして、消費税創設等税制改革関連経費、農産物輸入自由化等関連対策費、貿易保険特別会計への繰り入れ、厚生保険特別会計への繰り入れ等、特に緊要となった事項について措置を講じております。また、歳入面におきましては、税収について三兆百六十億円の増収を見込むとともに、前年度の決算上の剰余金二兆九千七百四十五億円を計上しております。この結果、特例公債を一兆三千八百億円減額しております。
 以上によりまして、昭和六十三年度一般会計補正後予算の総額は、当初予算に対し歳入歳出とも五兆一千五百二十億円増加して、六十一兆八千五百十七億円となっております。
 以上、平成元年度予算及び昭和六十三年度補正予算の大要について御説明いたしました。御審議の上、何とぞ速やかに御賛同いただきますようお願い申し上げます。
 平成元年度予算の御審議をお願いするに当たり、私は、平成の時代は、平和の中で国民一人一人が公平と真の豊かさを享受できる時代となってほしいと祈念しております。
 二十一世紀まであと十年余りとなっております。新しい世紀においては、洋の東西、南北を問わず、貧困が払拭され、友誼が一層深まっていることを期待したいと存じます。我が国の国際的責務はますます重くなっていると考えます。また、国内にあっては、高齢化が進行する中で活力ある福祉社会の建設が進んでいなければなりません。
 新しい平成の時代の始まりに当たり、積年の課題であった税制改革が実現し、また、財政再建の第一段階ともいうべき特例公債依存体質からの脱却の目標年度も一年後というところまで参りました。今後、二十一世紀までの残された期間に一層の発展、充実のための枠組みを築き上げていかなければなりません。私はただいま申し述べました諸課題を一歩一歩着実に実行してまいります。
 国民各位の一層の御理解と御協力を切にお願いする次第であります。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(土屋義彦君) 愛野国務大臣。
   〔国務大臣愛野興一郎君登壇、拍手〕
○国務大臣(愛野興一郎君) 激動の昭和の時代が終わり新しい平成の時代を迎えるに当たりまして、我が国経済の当面する課題と経済運営の基本的考え方について所信を申し述べたいと存じます。
 昭和の経済の歩みを振り返ってみますと、世界的な恐慌に始まり、戦時経済への移行、大戦による国土の荒廃、戦後の混乱と窮乏からの復興という苦難と試練の時代を経験した後、世界でも例を見ない高度成長を実現しました。また、二度にわたる石油危機や大幅な円高など幾多の困難に直面しながらもそれらを克服し、着実な発展を遂げ、我が国は今や世界経済の繁栄に重要な役割を担うに至りました。
 新しい平成の時代におきましても、物価の安定を基礎として、経済の安定と均衡のとれた発展を目指していくべきことは言うまでもありませんが、今後は特に、経済発展の成果を国民生活の質的向上と経済、科学技術、文化など各方面における世界への貢献にいかに反映させていくかが重要な課題になると考えます。
 また、世界の繁栄と日本の発展は密接不可分に結びついておりますので、あらゆる課題について世界との関係を念頭に置いた経済運営を行っていく必要があると考えます。
 昨年五月に策定した新しい経済計画「世界とともに生きる日本」におきましても、このような視点に立って思い切った経済構造の調整を推進し、内需主導型経済構造への転換、定着を図っていくことが重要であるとしております。
 私は、新経済計画に示された方向に沿って各般の施策を積極的に推進し、対外不均衡の是正と世界への貢献、豊かさを実感できる多様な国民生活の実現、さらには産業構造調整の円滑な推進と地域経済社会の均衡ある発展に向けて全力を尽くしてまいる所存であります。
 ここで、内外の経済の現状について申し述べたいと存じます。
 まず、世界経済の動向を見ますと、各国間の政策協調が進展する中で、インフレなき持続的成長が続いております。また、アジアNIESの目覚ましい経済発展やECの市場統合、米加自由貿易協定などの新しい動きも見られます。しかしながら、縮小傾向にあるとはいえ依然大幅な主要国の対外不均衡、保護主義的傾向の台頭、発展途上国の累積債務問題など、今後解決を図っていかなければならない課題が数多くあります。このような問題を抱える一方、世界経済の相互依存関係はますます緊密なものとなっており、政策協調の重要性は一層高まりつつあります。
 他方、我が国経済は、個人消費や民間設備投資を中心とした自律的な内需主導型の成長過程にあります。こうした中で、引き続き企業収益の増加や雇用情勢の改善が見られ、所得の増加がさらに内需の拡大に結びつくという好ましい循環を形成しております。また、輸出はこのところ強含みに推移しているものの、製品類等を中心とした輸入が引き続き堅調であることなどから、経常収支の黒字幅は縮小傾向にあります。
 このような内外の経済の動向を勘案しますと、昭和六十三年度の我が国経済は、経常収支の黒字が縮小しつつ内需中心の景気拡大が維持され、実質経済成長率は、政府の当初見通しを上回る四・九%程度になるものと見込まれます。
 以上のような状況を踏まえ、私は、平成元年度の経済運営に当たりましては、新経済計画に示された方向に沿って特に次の諸点を基本としてまいりたいと考えます。
 第一は、内需を中心とした景気の持続的拡大を図るとともに、雇用の安定及び地域経済の活性化を図ることであります。
 このため、主要国との協調的な経済政策を推進しつつ、為替レートの安定を図るとともに、引き続き適切かつ機動的な経済運営に努めてまいる所存であります。
 消費税の導入を含む新しい税制は、広く国民に理解され円滑に実施されることが重要であります。新しい税制の円滑な実施を図るため、新税制実施円滑化推進本部等を通じて広報、指導、相談等を初めとする各般のきめ細かな施策を講ずることとしております。
 また、公共事業について引き続きNTT株式売り払い収入の活用等により事業費の確保を図るほか、中小企業対策や地域雇用対策等についても積極的に推進することとしております。
 金融政策につきましては、内外の経済動向及び国際通貨情勢を注視しつつ適切かつ機動的な運営を図る必要があると考えております。
 さらに、産業構造調整を引き続き円滑に推進する一方、国土の均衡ある発展や新たなフロンティアの開拓等により、将来に向けて我が国経済社会の発展基盤の整備を図ってまいる所存であります。地域の特性と創意を生かした魅力ある地域づくりを目指すとともに、創造的研究開発を総合的に推進し、また、民間活力の最大限の発揮等を図るため規制の緩和を推進してまいります。
 平成元年度の我が国経済は、以上のような政府の施策と民間経済の活力が相まって、引き続き対外不均衡の是正を進めながら内需を中心とした着実な拡大を実現し得るものと考えられます。この結果、平成元年度の実質経済成長率は四・〇%程度になるものと見込まれます。
 第二は、自由貿易体制の維持強化に向けて率先して努力するとともに、貿易の拡大均衡を通じた調和ある対外経済関係の形成と世界経済活性化への積極的貢献を図ることであります。
 改めて申すまでもなく、戦後我が国経済が飛躍的な発展を遂げてきた背景の一つには、自由貿易体制の恩恵に浴してきたことが挙げられます。対外経済政策の運営に当たりましては、今後とも、自由貿易体制のもとで貿易の拡大均衡を図るという基本的考え方に立って各般の施策を積極的に展開していく必要があると考えます。
 このため、まず内需の持続的拡大に加え、我が国市場の積極的開放等による市場アクセスの改善や規制の緩和、流通の一層の合理化などを通じて輸入の拡大を図り、対外不均衡の着実な改善に努めてまいる所存であります。また、投資受け入れ国との調和に配慮し海外直接投資の推進を図るとともに、輸出がふえやすく輸入がふえにくい体質を改善しながら、国際的に調和のとれた産業構造への転換を推進してまいります。ガットのウルグアイ・ラウンド交渉に対しましても、その一層の進展に向けて積極的な役割を果たしてまいる考えであります。
 発展途上国への経済協力につきましては、我が国の国際的地位にふさわしい役割を果たしていくことが重要であります。このような観点から、政府開発援助の第四次中期目標に基づき、経済協力の拡充と質的改善に一層の努力を払うとともに、発展途上国に対する資金還流の促進などを図ってまいります。
 第三は、物価の安定基調を維持していくことであります。
 物価の安定は、国民生活安定の基礎であり、また、均衡のとれた経済発展の基本的要件をなすものであります。最近の物価の動向を見ますと、円高、原油安のメリットが広く国民経済全般に浸透する中で落ちついた動きを示してきておりますが、今後とも、国内の需給動向、国際商品市況、為替レートの動向などを注視しながら現在の安定基調を維持するべく細心の注意を払っていく考えであります。
 ここで、消費税と物価の関係について私の基本的な考え方を申し上げたいと存じます。
 消費税の導入の時点で物価の上昇が生じますが、この物価上昇はいわゆるインフレ的な物価上昇とは性格を異にする一回限りのものであります。
 また、消費税は最終的に消費者に負担を求める税であることから税負担の円滑かつ適正な転嫁を図る必要がありますが、その際、便乗値上げを防止し、既存間接税の廃止等による税負担の軽減額を適切に価格に反映させていくよう努めることが重要であります。
 このため、政府といたしましては、積極的な情報提供や価格動向の調査・監視体制の強化など万全の対応を図ってまいる所存であります。
 また、消費税導入に伴う公共料金等の改定に当たりましても、物価及び国民生活に及ぼす影響を十分考慮して厳正に取り扱うことを基本としつつ税負担の円滑かつ適正な転嫁を図ることといたしております。
 近年の円高の進展に伴い、国際的に見た我が国の価格水準について割高感が生じてきております。今後は、物価の安定を図るだけでなく、国民生活のより一層の質的向上を図る観点から内外価格差の縮小に努めていくことが重要な政策課題となると考えます。
 このため、今後とも円高メリットの浸透に努めるとともに、製品輸入の拡大、農業の生産性向上、規制の緩和、流通業における競争条件の整備等についても積極的に取り組んでまいる所存であります。
 第四は、豊かさを実感できる多様な国民生活の実現を図ることであります。
 このため、経済発展の成果をより一層国民生活の質的向上に反映させていくという基本的姿勢のもとに、住生活の改善、労働時間の短縮、自由時間の充実といった課題に積極的かつ早急に取り組む必要があります。
 住生活の改善につきましては、良質の住宅の蓄積と居住環境の整備を推進するとともに、地価形成の適正化を図るため、総合土地対策要綱等に盛られた各般の施策の強力かつ速やかな実行に努めてまいります。
 また、労働時間の短縮につきましては、本年から国の行政機関等の土曜閉庁や金融機関の完全週休二日制が実施されるのを契機に、完全週休二日制の普及に向けて努力してまいる所存であります。その際、自由時間充実のための施策につきましても欧米諸国の経験も参考にしながら幅広い角度から検討してまいります。
 経済社会における国際化、サービス化等の進展に伴い消費生活の内容や消費者取引の形態はますます複雑かつ多様化してきておりますが、豊かな国民生活を実現する上において、消費者の利益を擁護し増進していくための施策は重要な柱の一つであります。今後は、悪質な商法等による被害を防止することはもとより、消費者の選択の幅を広げ、より豊かな消費生活を営むための支えとなるよう、消費者教育の充実にも重点を置いてまいりたいと考えております。
 以上、我が国経済が当面する主な課題と経済運営の基本的方向について所信を申し述べました。
 我が国経済は、これまでも、重要な節目節目において、国民の英知と努力を結集し、必要な構造転換をなし遂げることによって次々と新たな発展の道を切り開いてまいりました。
 私は、輸出依存型の経済から内需主導型の経済に向けて発想を切りかえていくとの観点に立って、経済構造の調整に積極的に取り組み、新しい時代における我が国の発展基盤を築いてまいる所存であります。同時にその際、国民の勤勉性や変化に対する柔軟な適応力といった我が国社会の特質を十分生かしてまいる考えであります。そして、国民の一人一人がゆとりと潤いのある真に豊かで多様な生活を営めるようにするため誠心誠意努力してまいります。
 国民の皆様の御支援と御協力を切にお願い申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(土屋義彦君) 宇野外務大臣から補足発言を求められました。宇野外務大臣。
   〔国務大臣宇野宗佑君登壇、拍手〕
○国務大臣(宇野宗佑君) 先ほどの私の外交に関する演説において、カンボジア問題及びインド亜大陸等に関する部分が欠落いたしまして申しわけありません。ここに補足させていただきます。
 また、この地域の平和と安定にとって不可欠なのはカンボジア問題の解決であります。これにつきましては、最近、当事者間の対話が活発になり、政治解決達成への機運が高まってきております。同問題解決のためにはベトナム軍の完全撤退の確保と、過去ポル・ポト政権が行ったような非人道的な政策の再来を阻止することが重要でありますが、我が国といたしましても、カンボジア人の真の民族自決の実現を目指した関係国の和平努力を支持しつつ、独立、中立、非同盟の新カンボジアの誕生に向けて積極的な役割を果たしていく考えであります。
 さらに、さまざまな動きの見られるインド亜大陸の安定と経済発展のために引き続き協力するとともに、同地域の国々との関係の一層の強化に努めていく所存であります。
 豪州との間では、先般の日豪閣僚委員会で合意されました建設的パートナーシップの構築に向け努力してまいります。
 以上であります。(拍手)
○議長(土屋義彦君) ただいまの演説に対する質疑は次会に譲りたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(土屋義彦君) 御異議ないと認めます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後五時三分散会