第120回国会 本会議 第18号
平成三年四月十二日(金曜日)
   午前十時一分開議
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○議事日程 第十八号
  平成三年四月十二日
   午前十時開議
 第一 船舶安全法及び船舶職員法の一部を改正する法律案(内閣提出)
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○本日の会議に付した案件
 一、育児休業等に関する法律案(趣旨説明)
 以下 議事日程のとおり
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○議長(土屋義彦君) これより会議を開きます。
 この際、日程に追加して、
 育児休業等に関する法律案について、提出者の趣旨説明を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(土屋義彦君) 御異議ないと認めます。小里労働大臣。
   〔国務大臣小里貞利君登壇、拍手〕
○国務大臣(小里貞利君) 育児休業等に関する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
 育児休業制度は、労働者が育児のために雇用を中断することなく、その能力を有効に発揮することを確保するための制度であり、労働者はもとより企業にとっても役に立つ制度として広く認識されてきたところであります。その結果、近年、労使の自主的話し合いにより育児休業制度を導入する企業が相次ぐなど、同制度への社会的関心が急速に高まるとともに、その法制化を期待する声が広がってきたところであります。
 このような育児と就業に関する労働者の意識の変化等に対応し、育児期の労働者が職業生活と家庭生活をそれぞれ充実して営むことができるような働きやすい環境づくりを進めることは、労働者の福祉の増進の観点はもとより、我が国経済社会の発展のためにも重要なことであると考えます。
 こうした背景のもとに、政府としては、昨年十二月より婦人少年問題審議会において育児休業制度確立に向けての法的整備のあり方について御検討いただいてまいりましたが、本年三月同審議会から建議をいただきましたので、この建議に沿って法律案を作成し、同審議会にお諮りした上、ここに育児休業等に関する法律案として提出した次第であります。
 次に、この法律案の内容につきまして、その概要を御説明申し上げます。
 第一に、育児休業の権利であります。
 一歳に満たない子を養育する労働者は、期間を明らかにして事業主に申し出ることにより育児休業をすることができることとし、事業主は、育児休業を理由として労働者を解雇することができないこととしております。また、育児休業制度の円滑な実施のため、育児休業中の待遇に関する事項等の周知等の措置及び配置その他の雇用管理等に関して必要な措置を講ずることを事業主の努力義務としております。
 第二に、勤務時間の短縮等の措置であります。
 事業主は、一歳に満たない子を養育する労働者で育児休業をしないものに関して、勤務時間の短縮その他の、就業しつつ子を養育することを容易にするための措置を講じなければならないこととしております。
 第三に、一歳から小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者に関する措置であります。
 事業主は、これらの労働者に関して、一歳に満たない子を養育する労働者についての育児休業制度または勤務時間の短縮等の措置に準じて、必要な措置を講ずるよう努めなければならないこととしております。
 第四に、指針及び国の援助であります。
 育児休業制度の円滑な実施のために事業主が講ずべき措置、勤務時間の短縮等の措置に関して、労働大臣が指針を定め、これに従って助言、指導または勧告を行うほか、国は事業主に対し必要な援助に努めることといたしております。
 最後に、この法律の施行は、周知に必要な時間を考慮し、平成四年四月一日からとするとともに、常時三十人以下の労働者を雇用する事業所については、施行の日から三年間育児休業の権利等に関する規定の適用を猶予することとしております。
 以上が育児休業等に関する法律案の趣旨でございます。(拍手)
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○議長(土屋義彦君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。前島英三郎君。
   〔前島英三郎君登壇、拍手〕
○前島英三郎君 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となりました育児休業等に関する法律案につきまして、総理並びに労働大臣にお伺いをいたします。
 我が国の輝かしい経済の発展に伴い、所得水準、生活水準の向上、生活環境の改善など、全般的には国民の暮らしもかなり向上してまいりました。国際連合は昨年から、社会のあらゆる構成員の能力を引き出し、かつ個性を生かす全員参加の社会を提唱しておりますが、我が国が国際社会において、すべての国民の暮らしを大切にする福祉国家の名に恥じない地位を占めるためには、労働時間の短縮を初めとするゆとりの創造を一層進めることが不可欠であります。特に、現在の我が国の状況を考えますと、仕事と家庭とを調和させることにより、働く男女一人一人が健康で充実した職業生活と家庭生活とを送ることができるように、改めて国民的な合意の形成を図るべきときが来ていると感ずるものであります。
 さて、子は宝、無限の可能性を秘めた社会の財産と言われますが、家庭の重要な役割の一つに、次の時代を担う子供の健全な育成があります。出生率の低下が著しく、また二十一世紀における高齢化社会の到来が予測される今日において、その家庭の構成員である勤労者がいかに職業と家庭、特に職業と育児をどのように両立させるか、そして政府がこのためどのような支援策をとるかが我が国の将来を左右することになるものと考えるのであります。
 また、働く女性の存在を抜きにしては日本の経済社会の発展はあり得ないとも言える今日、職業と育児の両立という政策課題を解決することがどれほど重要であるかについては、どなたも異論のないところだと存じます。今や、職業を生涯のものと考え、子供を育てつつ継続した雇用を望む女性の増加は、その就業分野の拡大、専門的、技術的な職業につく女性の増加等、ますますその勢いを増すことと考えられます。このような中で、かつてのように育児や家庭の責任はすべて女性が負うものという考え方ではなく、二十一世紀に向けて、国際的な動向も踏まえながら、男性も女性も働くことが普通になった時代にふさわしい政策を講じていくことがまことに大切ではないかと思うのであります。
 自由民主党は、この問題に関しまして、かねてから国民の福祉並びに我が国の将来にかかわる重要な政策課題であるとの認識のもとに取り組んでまいりましたが、一昨年十一月には党の労働部会に育児休業問題等検討小委員会を設置いたしまして本格的な議論を重ね、昨年十一月には育児休業制度の法制化に向けて最終取りまとめを行ったところであります。また、参議院におきましては、積極的にこの問題に取り組んでこられました野党の皆さんとともに、社会労働委員会に育児休業制度検討小委員会を設置いたしまして、大いに議論を行ってきたのであります。このような中で、いよいよ政府が立案した育児休業等に関する法律案を審議する運びとなったことはまことに喜ばしい限りであります。
 そこで、まず総理に、この法律案を提出するに当たっての基本的な考え方及び成立に向けての決意のほどをお伺いしたいと存じます。
 次に、法律案の内容について幾つかお尋ねしていきたいと思います。
 我が党は、育児休業制度の法制化に当たっての基本的考え方として、一つは、労働者に子が一歳に達するまでの間の休業の権利を与える、二つ目として、罰則は設けない、三つ目として、ノーワーク・ノーペイの原則を守る、四つ目として、中小企業には猶予措置などの配慮を行うなどの主張を行ってまいりました。今回の法律案は、ほぼこの考え方と合致する方向でまとめられていると理解しておりますが、その中でも特に、民間企業における普及率が二割程度の現状の中で、働く男女が育児休業を権利として得られるようにした点はまさに画期的であると考えるのであります。男女雇用機会均等法におきましても育児休業は事業主の努力義務にすぎなかったこと等を考えますと、政府にとってはまさに勇気ある前進であったかと推察するのであります。
 そこで、労働大臣、今回、育児休業を労働者の権利として法制化する基本的考え方につきましてお聞きしたいと存じます。
 さて、育児休業制度は、労働大臣が先ほど趣旨説明の中で述べられましたように、子を養育する労働者の福祉を増進するという観点から重要であり、つまり働く側にとってもプラスであるのはもちろんでありますが、そればかりではなく、育児期の労働者の能力及び経験を有効に活用するという観点から、企業にとっても大いに有益な制度であります。その意味で、企業も労働者が休業することによる雇用管理への影響などの負担をある程度は覚悟しなければならないと思いますが、しかしながら、過度の負担を強いれば結果として労働者が休業することに対して企業が抑制的な行動に出ることも考えられ、かえって逆効果にもなると思うのであります。
 そこで、労働大臣、この法律で育児休業の制度をつくるに当たり、その仕組みの中で、企業の雇用管理への影響についてどのような配慮をされたのか、具体的にお聞かせ願いたいと存じます。
 また、このような休業制度上の仕組みに加え、最も関心の高いのが休業中の経済的保障の問題であります。本院における育児休業制度検討小委員会で議論した際、野党の委員の方々がたびたび御主張になったように、所得保障をとか、額は少しでも賃金を支払うべきであるとの考え方は、それはそれとして傾聴すべきものではありますけれども、一方で、企業にとってみますと、最大一年にわたる休業を労働者の意思表示のみで取得できるという制度の枠組みを設けることだけでも雇用管理に与える影響が多大であります。現実には、育児休業制度を既に実施している企業の多くが労使の交渉によりまして何らかの経済的保障を行っておりますが、少なくともノーワーク・ノーペイの考え方が基本的に堅持されなければ、現段階では育児休業を権利として与えるこの法律が到底受け入れられることはできないと私は考えておるのであります。現時点では、男女の労働者が権利として育児休業をとることができる法制度をまず確立することが何よりも肝要であると思います。
 所得保障につきましては法律案では特段の規定は設けておりませんが、事業主に対し育児休業期間について賃金その他の経済的給付の支払いを義務づけるものではないと考えてよろしいか、労働大臣にお尋ねしたいと思います。
 さらに、育児期の労働者は家庭の状況や職場の環境によりまして就業意欲やニーズはさまざまでありまして、このようなニーズに対応していくためには、休業するか通常どおり働くかという二者択一ではなく、多様な選択肢を提供することが必要となってきております。その意味で、今回、育児休業に加えて、勤務時間の短縮その他の、働きながら子を養育することを容易にするための措置を講ずることを事業主に義務づけたことは、まさに時宜を得たものだと考えますが、この規定に基づいてどのように事業主を指導していくおつもりなのか、労働大臣の所信をお伺いしたいと思っております。
 ところで、今回の法律案では、育児休業を労働者の基本的権利としつつも、日本経済で重要な役割を果たしている中小企業に対する配慮の措置として、常時三十人以下の労働者を雇用する事業所につきましては三年間育児休業の規定が猶予されることとなっております。しかしながら、これらの事業所の事業主は、その猶予期間中手をこまねいているのではなく、一日も早く法律で規定する育児休業の制度を取り入れることが求められるでありましょう。また、事業主にこのような努力を求める以上は、国としても中小企業に何らかの援助をすることによりましてこれらの事業所に雇用される労働者の育児休業の実現を図る必要があると考えるのでありますが、かねてから温かみのある制度をつくることが必要と説かれております小里労働大臣、このような中小企業への援助の必要性について御所見を伺いたいのであります。
 さて、総理、私がこれまで質問してまいりましたように、今回の法律案は男女に等しく育児休業の権利を与える画期的な法律であります。ここでは、職業生活と家庭生活を男女が全く同様に享受し、また同様に責任を負う平等な社会があたかも目の前に実現するかのような印象を持ちますが、現実はそうではありません。多くの場合は、夫婦のどちらかがより多く収入を伴う職業活動をして、どちらかが少なくとも一定期間は家庭において育児を中心とした家事を行うという分業が一般的であります。こうした分業において、一たん退職するなど、より子育てに比重を置いた選択を行うこともまた一つの道でありますが、しかしながら、このような選択をした後にも再び社会で生き生きと働きたい、頑張りたい、そのようなチャンスが欲しいと願う女性が大多数なのではないでしょうか。
 この場合、特に一年間を超えて長期に職業生活から離れていた女性を、よりスムーズに、また本人の意欲、能力、そして適性によりふさわしい形で再び就業できるようにすることは、依然として重要な政策課題であると考えるのであります。このような女性の再雇用、再就職につきまして今後どう取り組まれていくおつもりか、御決意のほどをお聞きしたいと存じます。
 もう一つ、家庭生活を考えるときに避けて通ることができないのが、老いたる親の介護の問題であります。迫りくる高齢化社会においては、職業生活と両立した形でおのおのの親の介護ができる環境が大変重要になってまいります。我が党におきましても、育児休業と並んでこの介護休業制度の問題を重視し、党の労働部会、社会部会等においてもその実効ある普及促進の措置を講ずるよう提案したところであります。生まれてくる子供たちを育てるための制度とともに、私たちを生み育ててくれた、そしてまた長きにわたって我が国の発展を支えてくれた年老いた親のことも感謝と尊敬の念を込めて考えなければならないと思うのであります。今後さらに切実となる介護休業の問題についてどう取り組まれていくおつもりか、総理並びに労働大臣の御所見をお聞きしたいと存じます。
 さて、最後に一言申し上げたいと思います。
 現在、我が国は国際的にも大きな曲がり角に立っております。ここで、我が国が目指す人間性重視の社会づくりを国の内外に改めて明らかにする重要な役割を、この育児休業等に関する法律は担っていると私は認識いたしております。この重要な法律が、働きつつ子育てをするすべての労働者にとって実効ある法律となることを私は願ってやみません。また、いろいろな意見、不満があろうかと思いますが、まずこの法律を生むことが大切であり、はえば立て、立てば歩めの心で温かく育てていくことを願ってやまないのであります。
 そして、この法律のその成否は、企業を初め国民一人一人にいかにその趣旨を浸透させ、定着させられるかにかかっておると思うのであります。その意味で、施行の責任を負う労働省の役割は大変重要になってまいります。ぜひ、その組織の強化に努め、万全の体制で臨まれますよう心から希望いたしまして、私の質問を終わります。
 どうもありがとうございました。(拍手)
   〔国務大臣海部俊樹君登壇、拍手〕
○国務大臣(海部俊樹君) 前島議員にお答えを申し上げます。
 育児休業法案は、働く人々がその能力と経験を生かしながら、仕事も家庭も充実した生活を営むことができる働きやすい環境づくりを進めることが喫緊の課題となっておる中で、重要な意味を持っておる、こう考えて提案しておるものでございます。御指摘のように働く男女が育児休業を権利として得られる、画期的な内容でございます。御審議をいただき、成立させていただきたいと政府は強く望んでおります。
 また、育児期に仕事を中断されて、一段落してからもう一度就職したいという人々の要望にどうこたえるかとお尋ねでございましたが、再雇用制度の普及促進に努めるとともに、再就職援助対策を政策努力としてどのように推進していくか大いに検討をし、努力を続けてまいりたいと思っておる課題でございます。
 また、最後にお触れになりました老親等家族介護の負担は、人口の高齢化、核家族化、女子の就業増加が進展します中で、働く人々にとっては大きな問題となっております。今後とも、介護休暇制度の普及促進を図ってまいりたいと考えます。残余の質問は関係大臣から答弁いたします。(拍手)
   〔国務大臣小里貞利君登壇、拍手〕
○国務大臣(小里貞利君) 前島議員にお答え申し上げます。
 まず、育児休業制度を男女労働者の権利として法制化した基本的考え方をということでございます。
 育児休業制度の今日における役割の重要性にかんがみ、労働省といたしましては、同制度を今後一層広くかつ迅速に普及させるために、その法制化を図ることといたしました。御承知のとおり、三月二十九日、育児休業等に関する法律案を国会に提出したところでございますが、本法律案では、育児休業制度を、子を養育する労働者の雇用の継続を促進し、労働者の福祉の増進を図るとともに、男女労働者の権利として法制化したものでございます。労働者がその能力と経験を生かしつつ、仕事も家庭も充実した生活を営むことができる働きやすい環境づくりを進めていく上で、大きな前進と考えておるところでございます。このため、本法律案についてはできるだけ早く御審議いただきたいと考えております。
 次に、本法律案で育児休業の制度を構築するに当たり、その仕組みの中で企業の雇用管理への影響をお尋ねでございます。
 本法律案で規定する育児休業は、労働者の申し出のみによって取得できる権利であり、その子が一歳に達するまでの長期的な休業であることから、企業においては、休業期間中の当該事業所における人員の配置等の雇用管理への影響などの負担が生ずることも予測されるところでございます。このため、企業の雇用管理に与える影響も考慮いたしまして、育児休業の申し出時期や申し出変更の場合の取り扱い等を定めるとともに、とりわけ育児休業が直ちに認められる場合に雇用管理の面で種々の困難が予想される中小事業所については、適用猶予期間を設けるなど配慮したものでございます。
 次に、本法律案では育児休業中の所得保障については特段の規定を設けていないが、事業主に対して育児休業期間について賃金その他の経済的給付の支払いを義務づけるものではないと考えていいのか、そのようなお尋ねでございます。
 休業期間中の労働者への経済的援助については、一方で、安心して育児休業が取得できるよう所得保障を労使国、三者で負担する新たな基金制度で行うべきであるという意見もあり、他方また、いかなる支払いも事業主に法律で義務づけるべきでないという意見もあり、あるいはまた、育児休業が任意的、選択的であることから、他の労働者などとのバランスを考える必要があるなどの見解も見られるところでございます。このようにさまざまな意見、見解の違いが見られる中では一定の方向を定めることは困難な状況にあり、本法律案においては事業主に対し経済的援助を義務づけるような規定は設けなかったところでございます。
 なお、現実に企業において労働者福祉や人材確保の観点から何らかの給付が行われているところが見られるのでございますが、この種の給付については、今後ともそれぞれの労使間で育児休業制度の趣旨を十分踏まえ妥当な方向を見出していくべきであると考えております。
 次に、勤務時間の短縮その他の、就業をしつつ子を養育することを容易にするための措置を講じることを事業主に義務づけているが、この規定に基づきどのように事業主を指導していくかというお尋ねでございます。
 一歳に満たない子を養育する労働者にとって、勤務時間の短縮その他の、就業しつつ子を養育することを容易にするための措置は、育児休業と並んで雇用継続のために必要性の高い措置であると考えられるため、事業主はこれらの措置を講じなければならないといたしたのでございます。事業主が講ずべき措置に関しましては、その適切かつ有効な実施を図るため指針を定めることといたしております。なおまた、この指針に基づいて、事業主に対し必要な助言、指導または勧告を行ってまいる所存でございます。
 次に、本法律案では、常時三十人以下の労働者を雇用する事業所について三年間その適用を猶予しているが、このような企業においても一日も早く育児休業の導入を図るための、これらの企業に対する援助の必要性についての労働大臣の見解を問われておりますが、常時三十人以下の労働者を雇用する事業所においては、育児休業が直ちに認められる場合は雇用管理の面においても種々の混乱が予想されるので、準備期間として本法律案では三年間の適用猶予期間を設けることといたしたのであります。しかしながら、このような事業所については、猶予期間内においてもなるべく早期に制度の確立が図られるよう、指導、援助を行う必要があると考えております。
 次に、高齢化社会での老親の介護休業制度の重要性でございますが、総理からお答えがございましたけれども、私にもお尋ねでございますからお答え申し上げますが、人口の高齢化、核家族化、女子の就業増加が進展する中で、老親と家族介護の負担は労働者にとって大きな問題でございます。今後、介護休業制度の必要性は高くなるものと考えられることから、広報啓発や行政指導によりまして介護休業制度の普及促進を図ってまいりたいと考えております。(拍手)
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○議長(土屋義彦君) 糸久八重子君。
   〔糸久八重子君登壇、拍手〕
○糸久八重子君 私は、日本社会党・護憲共同を代表し、ただいま議題となりました育児休業等に関する法律案につきまして質問をいたします。
 近年、女性の職場進出は目覚ましく、一九八九年には雇用されて働く女性の数は千七百四十九万人に達し、そのうち有配偶者が約六割を占めるに至っており、今後も乳幼児を持ちながら働く女性の増加が見込まれております。しかし、働く女性の職場環境を見ますと、出産後も勤続する意思を持ちながら育児のためにやむなく職場を離れなければならない例が多く見られ、一度離職すると再就職が難しく、また不利な労働条件を余儀なくされる場合が多い実態にあります。この職業と家庭生活との調和の問題に対処するためには、延長保育、夜間保育、ゼロ歳児保育を行う保育施設の整備充実を図るとともに、育児休業制度を普及させることが不可欠となっております。
 子育ては、人間生活における最も基本的なことであります。女性も男性もともに働き続けることが普通となった今日、育児休業をする権利は、憲法第十三条の人間として尊重され幸福を追求する権利、憲法第二十五条の人たるに値する健康で文化的な生活を営む権利に基礎を置く、基本的人権として認められるべきではないかと思いますが、海部総理の御見解をお示し願いたいと存じます。
 一九八五年に我が国が批准した、女子に対するあるゆる形態の差別の撤廃に関する条約は、その前文で「子の養育には男女及び社会全体が共に責任を負うことが必要である」とうたい、また一九八一年採択されたILOの家族的責任を有する男女労働者の機会均等及び平等待遇に関する条約及び勧告にも、男女労働者を対象とした育児休暇制度の確立がうたわれております。さらに、一九八九年採択された国連の子供の権利に関する条約では、父親と母親の共通の養育責任について明記し、政府に対し育児のための条件整備を要求しております。我が国も、ILO第百五十六号条約、国連の子供の権利条約等を早期批准すべきだと考えるのですが、いかがでしょうか。
 また、ヨーロッパ諸国では、早くから育児休業請求権を法律上明確に位置づけるとともに、休業期間中の所得保障を初め、育児休業取得のための手厚い配慮がなされております。我が国もヨーロッパ諸国と同様の制度を早急に確立すべきだと考える立場から、諸外国における育児休業法制と休業期間中の所得保障についてどのように把握しているか、お尋ねしたいと思います。
 さて、平成元年には出生率が一・五七と史上最低を記録し、平成二年にはさらに下回るのではないかと予測される中で、出生率の急激な低下が懸念されております。新聞報道によれば、五年後の出生率は一・三二まで落ち込むとされ、超高齢化社会の到来が待ったなしの状況であります。もとより、出産、子育ての問題は、個人の生き方や価値観に深く根差したものではありますが、人間生活における最も基本的なことであります。このような出生率の低下は、安心して子供を生み育てる環境づくりを怠ってきたからではありませんか。安心して子供を生み育てる環境づくりについて海部内閣は一体どのように取り組んでいくのか、お考えをお聞かせください。
 さて、以下、法律案の内容について具体的にお尋ねいたします。
 その第一は、法の目的と権利性の確保についてであります。
 育児休業制度は、労働者が家庭生活と職業との調和を図りつつ就業を継続するための制度であり、安心して休業できるようにすることが必要不可欠であります。そのためには、育児休業の取得を権利として確立し、事業主の経済的な事情等によってその行使が妨げられることのないようにしなければなりませんが、本法律案には、目的として、「労働者の福祉の増進」とともに、「経済及び社会の発展に資すること」が挙げられております。このような規定ぶりによって労働者の育児休業請求権の行使が妨げられ、事業主の経済的利益の追求が先行するようなことは決してあってはならないところでありますが、労働大臣の御見解を伺いたいと存じます。
 その第二は、休業中の経済的保障についてであります。
 休業中に何らかの所得保障または経済的援助を行わないのでは、労働者が安心して休業することができません。労働者の休業中の生活保障については一体どのように考えておられるのか、労働大臣の明確な答弁を求めます。
 また、安心して休業できるようにするため、四党共同の育児休業法案のように、一種の社会保険方式を採用することによって賃金の六割相当の手当を支給することも可能でありますが、この点については大蔵大臣の見解を伺いたいと存じます。
 言うまでもなく、休業中の所得保障については、今日、労働者が最も望んでいる点であると同時に、この制度が生き生きと活用されるためには必要欠くべからざるものと思います。その意味で、両大臣、しっかりとお答えいただきたいと思います。
 第三は、育児休業制度の実効確保措置についてであります。
 育児休業は、通常、年次有給休暇よりも長期にわたる休業でありますから、育児休業の権利の実効性を確保するために、賃金等の労働条件について不利益取り扱いの禁止を法律上明記する必要性は、年次有給休暇以上に高いことは明らかです。今月初め、人事院は「一般職の国家公務員の育児休業等に関する法律の制定についての意見の申出」を行いましたが、この申し出においても、職員は育児休業を理由として不利益取り扱いを受けないものとすることとされています。原職または原職相当職への復帰を保障する意味合いも含めて、不利益取り扱いの禁止を規定すべきと思うのですが、労働大臣、いかがでしょうか。
 また、育児休業を権利として認めることとするのでありますから、育児休業を理由とする不利益取り扱いを禁止するとともに、罰則規定により育児休業の権利を担保するのは当然ではないかと考えるのですが、この点についても労働大臣のお考えをお聞かせいただきたい。
 第四は、休業期間の取り扱いについてであります。
 私ども四党共同法案では、昇給、退職手当等について少なくとも休業期間の二分の一以上を勤務期間とすべきものとし、年次有給休暇については出勤したものとみなすとしております。政府案ではこの問題は労使間にゆだねられておりますが、せめて年次有給休暇の出勤率の算定においては、産前産後休暇のように、育児休業についても出勤したものとみなすべきではないでしょうか。労働大臣の御見解をお聞かせいただきたい。
 第五に、中小企業の取り扱いについてであります。
 労働者の就労先事業所の規模によって、育児休業取得の権利が認められたりおくらされたりするのは不当であります。基本的には全労働者に対して一斉に適用することとし、中小零細企業に対しては、経済的な援助措置も含め、法の円滑な施行を促進するための支援措置を講ずべきと考えますが、労働大臣、いかがでしょうか。
 ところで、先ほども触れましたように、人事院は今月初め、公務員の育児休業の法制化に関する申し出を行いました。政府としては、従来の例に倣い、公務員関係の育児休業法案について早急に作成し、国会に提出すべきでありますが、その取り組み状況はいかがでしょうか。総務庁長官並びに自治大臣にお伺いいたします。
 最後に、私は、総理に特に御注意を促し、またお願いしておきたいことがございます。それは、今回政府がこの法案を提出するについては特別な経過と事情があったということであります。
 総理も御承知のように、参議院社会労働委員会は数年来育児休業法制化問題について論議してきており、昨年十二月七日の育児休業制度検討小委員会において、それまでの与野党間の論議内容について整理、確認するとともに、与野党が歩み寄り、その後具体的な成案づくりについては政府にお願いすることで与野党間の合意を見るに至りました。しかし、成案づくりについて全くの白紙委任をしたわけではありません。育児休業期間中何らかの所得保障または経済的援助の措置を講ずること、育児休業取得の実効性を確保するための措置を講ずること等の注文を与野党一致していたしたはずであります。そのような経過に照らしてみた場合、政府案には強い不満を表明せざるを得ません。私たちは今後十分検討吟味させていただきますが、総理もそのような経過や事情についてあらかじめ十分御理解いただきたいし、また、今後の委員会における審議結果については、十分尊重することをここで約束していただきたいと思うのであります。
 実効性ある育児休業の法制化は、全国の男女全労働者の切実な願いであり、それがいつ実現するのか、熱い期待を込めてこの国会の動向に注目しているところであります。したがって、全国の労働者に直接答えるようなおつもりで、しっかりと温かみのある御答弁をしていただけるよう、くれぐれもお願いいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣海部俊樹君登壇、拍手〕
○国務大臣(海部俊樹君) 糸久議員にお答え申し上げます。
 子育ての重要性は、個々の人々の家庭生活の充実という観点でも、また次代を担う者の健全な育成という観点においても、大切なものであるということを十分認識しておるところでございます。今回の法律案は、子供を育成する労働者が継続して雇用されることによる幸福の追求、福祉の増進を目的として、政策的に育児休業の権利の規定を設けることとしたものでございます。
 なお、ILOの百五十六号条約につきましては、家族的責任を有する男女労働者の必要を考慮した措置をとるよう求めておるところでありますが、その趣旨は私も理解をいたしておりますし、今回の育児休業法案はこの条約の趣旨に沿ったものになっていると考えておりますが、我が国においてはこの条約の適用についてはいまだ十分な国内のコンセンサスが得られているとは言いがたく、なお検討を続けさせていただきたいと思います。
 児童の権利に関する条約については、できるだけ早期に締結ができますように、現在、政府部内での検討作業を急いで行わせているところでございます。
 最近の出生率の動向を踏まえて、政府としては何をしたかというお尋ねでございましたが、健やかに子供を生み育てる環境づくりを推進するために、内閣に、十四の省庁が関係しておりますので、これを一つに集めた連絡会議を設置して、去る一月二十三日に、家庭生活と職業生活の調和、家庭生活と生活環境の整備及び家庭生活と子育て支援を柱とする総合的対策の取りまとめを行ったところであり、今後、この取りまとめを踏まえて、安心して子供を生み育てやすい環境づくりのために総合的に政策努力を続けていくことを決心いたしております。
 また、休業期間中の労働者の経済的援助について申されましたが、さまざまな御意見があること、あるいは見解の違いがあることを承知しておりまして、ただいまのところ一定の方向を定めることは困難であり、今後さらに広範に多角的な観点から論議が深められる必要があるものと認識をいたしております。なお、今後とも、御指摘のように育児は男女の共同責任であり、相互に協力しなければならないという認識の浸透を図ってまいりたいと考えております。
 政府といたしましては、この法律案の作成に当たって、婦人少年問題審議会における審議の経緯や、国会における参議院の育児休業制度検討小委員会での審議の経緯等を踏まえたものであると考えておりますが、国会において十分審議を尽くしていただき、成立させてくださいますよう、御協力をお願い申し上げる次第でございます。
 残余の質問については関係大臣から答弁をいたします。(拍手)
   〔国務大臣小里貞利君登壇、拍手〕
○国務大臣(小里貞利君) 糸久議員にお答え申し上げます。
 まず、諸外国、中でもヨーロッパ諸国におきまする育児休業法制と休業期間中の所得保障についてのお尋ねでございます。
 スウェーデン、ドイツ、フランス等、西欧諸国においては法律によって育児休業が認められているところが多いのでございますが、アメリカ、イギリスでは認められておりません。例えばスウェーデン、ドイツでは子供が生後一歳半まで、フランスでは原則一年間、最長三年間、育児のために男女を問わず休業することができることとなっております。この育児休業期間中について、事業主に賃金支払いを義務づけている例はほとんどないと承知いたしております。また、育児休業中の労働者が育児手当を何らかの形で支給されている例は見られます。例えば、スウェーデン、ドイツ等では育児休業中の労働者に限定されずに、自営業者、専業主婦等も対象とされているなど、育児手当の支給目的、支給の対象者とも国によりさまざまでございます。
 次に、本法律案の目的の規定ぶりによって育児休業請求権の行使が妨げられるのではないか、あるいは事業主の経済的利益の追求が先行するようなことがあってはならぬというお考えで労働大臣の考えをお聞きになったと思いますが、本法律案は、企業の事業活動の状況のいかんにかかわらず、労働者は申し出のみにより子が一歳に達するまでの間休業できることとする旨の規定を設けておりまして、この権利の行使を妨げることはできないものと考えております。したがって、雇用管理の面で種々の困難が予想されるにもかかわらず、このような規定を設けたこの法律案におきましては、事業主の経済的利益の追求が先行することはあり得ないと考えておるところでございます。
 次に、労働者の休業中の生活保障についてはどのように考えているかということでございますが、これは総理からただいまお答えがございましたが、私にもお尋ねでございますから申し上げます。
 休業期間中の労働者の経済的援助につきましては、一方で、お話しのように安心して育児休業が取得できるような所得保障を労使国、三者で負担する新たな基金制度で行うべきであるという意見もありました。他方、いかなる支払いも事業主に法律で義務づけるべきではない、あるいは育児休業が任意的、選択的であることから、他の労働者等とのバランスを考える必要があるなどの見解も見られたところでございます。このようにさまざまな意見、見解の違いが見られましたので、この際一定の方向を定めることは極めて困難な状況であったと思うのであります。
 なお、現実に企業におきましては、御承知のとおり、労働者の福祉や人材確保の観点から何らかの給付が行われております。これについては、今後、それぞれの労使間で育児休業制度の趣旨を十分踏まえ、妥当な方向を見出していただきまするよう強く望むものであります。
 次に、休業中の所得保障がないとすると、特に男性労働者の育児休業取得者は極めて少なくなると予想されるのであるが、このようなことでは結果的には家庭責任を男女共同で負担するという理念の実現に背くのではないかというお尋ねでございます。
 経済的援助の有無自体が男性の育児休業取得に影響するかどうかは明らかではないと思われますが、今後とも、育児は男女の共同責任であり、相互に協力しなければならないという認識の浸透を図ってまいるつもりでございます。
 次に、原職または原職相当職への復帰を促進する意味合いも含めまして、育児休業の権利の実効性を確保するために、賃金等の労働条件について不利益取り扱いの禁止を法律上明記する必要があるのではないか、あるいはまた、育児休業を権利として認めることとするのだから、罰則規定により育児休業の権利を担保するのは当然ではないかというお話でございますが、不利益取り扱いの禁止については、何が不利益かの判断が非常に難しゅうございます。ケース・バイ・ケースの問題でありますので、法律で規定することは適当でないと判断をいたしました。法の施行に伴い、趣旨の徹底を図るべき重要な事項であると考えております。
 次に、育児休業制度の実効性の確保についてのお尋ねでございますが、御承知のとおり、婦人少年問題審議会におきます審議の中でも、罰則により担保すべきであるという意見もあったことでございます。しかしながら、同審議会の最終的な建議は、行政機関による適切な指導や勧告を行うことにより実効性を確保していくことといたしたところであります。
 次に、休業期間の取り扱いについて労使間にゆだねられているが、年次有給休暇の算定においては出勤したものとみなすべきではないかというお尋ねだと私は理解をいたしたのでございますが、その前提でお答えをさせていただきます。
 年次有給休暇付与の要件である出勤率の算定に当たって、育児休業をとった期間を労働日として出勤したものとみなすとすることは、他の事由による休業の場合との均衡から見て、制度上問題があると私どもは判断をいたしたのでございます。
 次に、育児休業取得の権利は、事業所規模によって適用に差異を設けず、全労働者に対し一斉に適用することとして、中小零細企業に対しては、経済的な援助措置を含め、法の円滑な施行を促進するための支援措置を講ずるべきであるがというお尋ねでございます。
 常時三十人以下の労働者を雇用する事業所においては、育児休業が直ちに認められる場合は、雇用管理の面においても種々の困難が予想されますので、準備期間として、本法律案では三年間の適用猶予期間を設けることといたしたのでございます。しかしながら、このような事業所については、猶予期間内においてもなるべく早期に制度の確立が図られるよう指導、援助を行うことが必要であると考えております。
 以上でございます。(拍手)
   〔国務大臣橋本龍太郎君登壇、拍手〕
○国務大臣(橋本龍太郎君) 糸久議員にお答えを申し上げます。
 子供を育てつつ働く方にとりまして、その能力と経験を生かしながら職業生活と家庭生活の調和を図りますことができるように、働きやすい環境づくりを進めることが必要であると考えております。そして、このような観点から、育児休業制度の法制化を図るため育児休業法案が作成され、今国会に提出されたものと承知をいたしております。
 その育児休業期間中の所得保障など労働者への経済的援助につきましては、三月五日に提出されました婦人少年問題審議会の建議におきまして、さまざまな意見、見解の違いが見られる中では一定の方向を定めることは困難な状況にあるとされております。こうした点を踏まえ、育児休業等に関する法律案では、労働者への経済的援助に関する事項が盛り込まれていないものと承知をいたしております。したがいまして、政府としては、議員御提起になりましたような、所得保障を前提として一種の社会保険方式を採用するということによりまして賃金の六割相当の手当を支給するという考え方は全くとっておりません。(拍手)
   〔国務大臣佐々木満君登壇、拍手〕
○国務大臣(佐々木満君) 一般職国家公務員の育児休業制度についてでございますが、これは御指摘のとおり、先般人事院から法律に基づきます意見具申がございました。政府におきましては、現在、この意見の内容を踏まえつつ、立法化に向けまして鋭意作業を続けてございます。なるべく早く成案を得まして国会へ提案しますので、その節はよろしくお願い申し上げます。(拍手)
   〔国務大臣吹田ナ君登壇、拍手〕
○国務大臣(吹田ナ君) 糸久先生にお答えいたします。
 私の場合は地方公務員の問題関係でありますが、地方公務員の育児休業の取り扱いにつきましては、一般職の国家公務員の問題についてはただいま総務庁長官からお話がありましたが、この取り扱いに準拠いたしまして法律案を準備してまいりたいと考えております。
 以上であります。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(土屋義彦君) 中西珠子君。
   〔中西珠子君登壇、拍手〕
○中西珠子君 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となっております内閣提出の育児休業法案について質問いたします。
 父親でも母親でも育児のために休業できる両親休暇制度を世界で初めてスウェーデンが導入したのは一九七四年のことであり、その後引き続いて他の北欧諸国、西欧、東欧諸国にも類似の育児休業制度が広く普及いたします一方、それぞれの国では保育施設も整備されているのを見てまいりまして、ヨーロッパの国々に負けてはいられないと、公明党・国民会議は独自の育児休業法案を一九八五年に国会に提出いたしました。その後、四野党の共同の育児休業法案をつくろうということになりまして、この法案作成にも参画させていただいたわけでございますが、この法案は、四野党と連合参議院、参院クラブなどの共同提出の法案として、ただいま継続審議になっているところでございます。
 今回の政府案、これは育児休業請求権と取得権を男女労働者双方に認めている点、また、育児休業の申し出や取得を理由とする解雇を禁止していること、また、一歳に満たない子を養育する労働者で育児休業をしないものに対しては勤務時間の短縮などの措置を導入している点では高く評価いたします。しかしながら、残念なことに政府案では、育児休業の権利の行使を実質的に確保し実効性あらしめるために不可欠だと思われる規定が整備されておりません。すなわち、休業期間中の生活保障がない、解雇以外の不利益取扱禁止条項がない、原職または原職相当職への復帰の保障がない、また休業期間の勤続年数への算入に関する規定などが欠如しております。
 そしてこれらの問題は、その大半が労使の自主的な話し合い、労使協議にゆだねられている。労働組合の組織率が低下している日本の現状ではどういうことになるのかと心配です。労働組合のないところでは労働者の過半数を代表する者を選んで労使協定を結ぶことになっていますが、民主的な手続で代表が選ばれるという保証もない中で、育児休業の取得に不可欠な条件が労使の力関係によって決められるという点に危惧の念を感じます。これらの問題は法律として明文の規定をするべきだと思いますが、総理と労働大臣の御意見を伺います。
 育児は両親の責任ではあるが、社会全体が共同責任を持つべきであるというのが今や国際的には共通の認識となっています。例えば日本も批准している女子差別撤廃条約は、子の養育には男女及び社会全体が共同責任を負うことが必要であると明記しています。また、まだ批准はしていませんが、一九八一年の採択において日本政府も賛成した、ILOの男女労働者特に家族的責任を有する労働者の機会均等及び均等待遇に関する条約と勧告も、育児は両親ばかりでなく社会が共同責任を持ち、保育施設の整備や育児休業の制度化を図るべきであるとしております。育児は社会の共同責任であるという考え方から、育児休業中の所得保障を社会保険や公的基金から行うのが国際的常識となっており、育児休業制度を導入しているヨーロッパ諸国のほとんどは休業中の生活保障を行っています。
 しかるに、政府案では休業期間中の生活保障が全然ありません。これが第一の、また最大の問題点であります。
 育児休業を取得しても全くの無給では、子供のための経費がかさむ上に、社会保険を続けていくため保険料の労働者負担分も支払わなければならない。生活は苦しくなって、経済的に逼迫するから育児休業はとりたくてもとれない。また、たとえとったとしても非常に短期間しかとれないという調査結果も出ております。せっかく法的に育児休業請求権、取得権が保障されても、実質的にはその行使ができないという事態を招くことになるのです。したがいまして、権利実現の経済的保障としても所得保障は不可欠であります。
 私ども四野党の法案では、育児休業手当として従前の所得の六割を支給することにしており、その費用は労使と国が三分の一ずつ負担することにしています。この所得保障のために、私どもは育児休業法案とセットにして育児休業手当特別会計法案も既に国会に提出しています。育児は社会の共同責任という観点から、休業中の所得保障の問題をぜひ検討していただき、何らかの形の生活保障を考えていただきたいのですが、総理、大蔵大臣、労働大臣の御意見を伺います。
 政府案の第二の問題点は、育児休業請求資格を制限し、日々雇用される者及び期間を定めて雇用される者は除外していることです。
 現実の職場においては、日々雇用される者、また期間を定めての雇用という形式をとってはいても、実際には契約を何度も更新し長年にわたって雇用されている人も多いのです。こういう人々に対して、全然育児休業の請求権、取得権を与えないことは不当であります。契約更新を重ねて長期間勤務している人たちには、育児休業の請求権、取得権を保障するべきだと思います。また、政府案のままでは、育児休業法を脱法する、逃れるために、日々雇われる雇用とか、期間を定めて雇う有期雇用の形式、こういう契約形式を行う事業主がふえてくるというおそれがあると思いますが、労働大臣、この点もあわせて御答弁願います。
 第三の問題点は、ヨーロッパ諸国の育児休業法には原職または原職相当職への復帰の保障と育児休業を理由とする不利益取扱禁止条項があるのに、政府案にはこれがありません。
 日本の法律、例えば義務教育諸学校等の女子教育職員及び医療施設、社会福祉施設等の看護婦、保母等の育児休業に関する法律には、その第七条に不利益取扱禁止条項があります。また、労働基準法第百三十四条は、年次有給休暇の取得に関する不利益取り扱いを禁止しています。それなのに、なぜこの政府案には不利益取扱禁止条項が入れられないのですか。原職や原職相当の職への復帰の保障もなく、不利益取扱禁止条項もないと、労働者は安心して育児休業をとることができません。この点は御再考願います。
 第四の問題点は、罰則の欠如であります。
 政府案は、第三条に育児休業請求権のある労働者からの休業申し出を拒むことができない旨規定していますが、事業主が拒否した場合どうなるか、労働者と事業主の権利義務関係を担保するためには罰則が必要だと思いますが、いかがですか。政府案の第七条には解雇の制限があり、「事業主は、労働者が休業申出をし、又は育児休業をしたことを理由として、解雇することができない。」との規定がありますが、罰則がないので実効性を担保することができません。民事上の救済で解雇を無効にすることはできるでしょうが、裁判にかけると長い年月と費用が必要です。これも罰則を設ける必要があると思いますが、どうですか。
 第三と第四の問題点について、労働大臣の答弁を求めます。
 第五に、政府案には育児休業期間の勤続年数への算入についての規定がありませんが、昇給、退職金などの算定については少なくとも二分の一は通算するべきであり、年次有給休暇の出勤率の算定に当たっては、育児休業期間は出勤とみなすべきだとの考えで、私どもの法案はそのように規定しておりますが、労働大臣の御意見をお聞かせください。
 第六に、三十人以下の事業所に対する三年間の猶予措置の問題ですが、三十人以下の事業所で働いている男女労働者は全労働者の半数近くいるわけです。この人たちは三年間育児休業の請求権も取得権も行使できない。これは差別であると思います。三十人以下の事業所に対しては補助金を出すとか、何らかの政策的な援護措置をとって、猶予期間を設けることはやめるべきです。猶予がどうしても必要ならば、期間をもっともっと短縮するべきだと思いますが、労働大臣、いかがでしょうか。
 最後に、残念ながら政府案はひっきょう企業や事業主の立場に偏り過ぎていると言えます。弱い立場にある労働者の意見や要望をもっと取り上げていくのが労働省の役目であると思いますが、総理、労働大臣のお考えを伺います。
 我が国では、今人口の高齢化が進む一方で……
○議長(土屋義彦君) 中西君、時間が超過いたしております。簡単に願います。
○中西珠子君(続) 一人の女性が生涯に出産する子供の数を示す合計特殊出生率は一・五七となっており、また労働力不足も叫ばれている今日、育児を必要とする熟練した労働者の雇用の継続と福祉の増進のために、真に実効性のある育児休業法をつくることが緊急に必要だと思いますが、総理大臣、労働大臣に御答弁を願って、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣海部俊樹君登壇、拍手〕
○国務大臣(海部俊樹君) 中西議員にお答えをいたします。
 育児休業の法制化において、育児休業制度に関する諸条件をどこまで法律に盛り込むべきかについてはいろいろ御意見があるところでございますが、政府といたしましては、育児休業の取得を法的に保障するための基本的な枠組みをつくることが現時点では最も必要なことと考えてこの法案を作成、提出した次第でございます。
 休業期間中の労働者の経済的援助につきましては、さまざまな御意見、さまざまな見解が見られ、一定の方向を定めることは困難であることを踏まえ、今回提出の法律案では特段の規定を設けないこととしたところでございます。
 政府は、この法律案をつくるに当たって、労働省において公労使三者構成の婦人少年問題審議会に諮り、各方面の御意見を十分尊重してまとめたものであり、子供を養育する労働者に一定期間の育児休業を権利として認めることによって労働者の福祉の増進を図るものになっている、このように認識をいたしております。
 また、この法律案においては、育児休業制度の法制化に当たって各方面からのいろいろな御議論があったことはよく承知いたしておりますが、政府としては、提出した法案に関する育児休業の取得を法律的に保障するための枠組みをつくることが現時点では最も重要と考えて作成したものでありますから、どうか御議論をいただき、御審議をいただき、成立させていただきたいと心からお願いを申し上げる次第でございます。
 残余は関係大臣から答弁をいたします。(拍手)
   〔国務大臣小里貞利君登壇、拍手〕
○国務大臣(小里貞利君) 中西議員にお答え申し上げますが、総理大臣の答弁と重ねて労働大臣の見解も求められておりますから、その点御了承いただきたいと思います。
 休業期間中の生活保障、不利益取り扱いの禁止、原職復帰、休業期間の勤続年数への算入等の規定が欠如し、これらの問題を労使の話し合いにゆだねているのは問題である、法律に明文で規定すべきではないかというまず最初のお尋ねでございます。
 休業期間中の労働者の経済的援助につきましては、さまざまな意見、見解の違いが見られ、一定の方向を定めることは困難であることを踏まえまして、本法律案では規定をいたさなかった次第でございます。
 次に、四野党は育児休業手当特別会計法案を提案しているが、育児は社会の共同責任という観点から、休業中の所得保障の問題をぜひ検討し、何らかの形の生活保障を考えるべきではないかというお話でございます。
 四野党共同提案による育児休業法案におきましては、国労使三者負担による基金制度を設け、休業期間中に六割の所得保障を行うことといたしておられるようでございますが、さらにそのための育児休業手当特別会計法案を提案されておりますことは承知をいたしております。しかしながら、休業期間中の労働者の経済的援助につきましては、さまざまな意見、見解の違いがありまして、先ほどお答え申し上げたとおりでございます。
 次に、日々雇用される者及び期間を定めて雇用される者であっても、実際には契約を何度も更新し長年月にわたって雇用される場合が多いが、こういう人々に対して育児休業請求資格を除外しているのは問題である、脱法目的の有期雇用がふえるおそれもあると考えるがどうかというお尋ねでございます。
 本法案で育児休業の対象から日々雇用される者及び期間を定めて雇用される者を除外したのは、これらの雇用形態が、子が一歳に達するまでの長期的な休業という育児休業の性質になじまないことによるものでございます。有期雇用が反復した場合の育児休業の取り扱いについては、当該契約が期間の定めのない労働契約と見られるかという観点から実態に応じまして個別に判断すべきものではありますが、一般的には、反復継続したことだけで直ちに期間の定めのない雇用契約と同様に取り扱うべきことにはならないものと考えております。また、育児休業を免れるためだけに有期雇用がふえることは考えられない、これも先ほどちょっと触れたところでございます。
 次に、原職や原職相当職への復帰の保障もなく、不利益取扱禁止条項がないと労働者は安心して育児休業をとることができないのではないか、再考をというお話でございます。
 育児休業後に原職または原職相当職に復帰させるということは、我が国の民間企業における人事異動慣行等を踏まえますと、法律により一律に枠をはめることは困難であると考えられます。不利益取り扱いの禁止につきましては、何が不利益かの判断が難しく、ケース・バイ・ケースの問題でございますので法律で規定することは適当でない、法の施行に伴い趣旨の徹底を図るべき重要な事項であると考えております。
 次に、労働者と事業主の権利義務関係を担保するために罰則が必要と思うがどうか、要約いたしますとこういうことだと思うのでございますが、これにお答え申し上げます。
 解雇の制限も含め、育児休業制度の実効性の確保については、婦人少年問題審議会における審議の中でも、罰則により担保すべきであるという意見もあったところでございます。しかしながら、同審議会の建議を踏まえましたところ、行政機関による適切な指導や勧告を行うことにより実効性を確保していくことといたしたところでございます。
 次に、昇給、昇格、退職金、年金の算定については、現行特定職種育児休業法と同様、少なくとも二分の一は出勤扱いとし、年次有給休暇の出勤率の算定に当たっては野党法案は育児休業期間を出勤とみなしているが見解はどうかというお尋ねでございます。
 育児休業に関する賃金その他の労働条件につきましては、事業主と労働者が話し合いの上決定すべきものであることから、法律上一律に定めることといたさなかったわけでございます。
 次に、三十人以下の事業所に働く労働者にとって三年間の猶予は差別ではないか、三十人以下の事業所に対して補助金を出すなど政策的援護措置をとり、猶予期間を設けるのはやめるべきではないかという御意見でございます。
 これも先ほどお答え申し上げたところでございますが、常時三十人以下の労働者を雇用する事業所においては、育児休業が直ちに認められる場合は雇用管理の面においても種々の困難が予想されるので、準備期間として本法律案では三年間の適用猶予期間を設けることといたしたのであります。このような事業所において、雇用管理の見直しを行うこと等により育児休業を実施できる体制を整備するためには三年程度の準備期間は必要であり、短縮することは適当でないと考えた次第でございます。
 次に、政府案は企業や事業主の立場に偏り過ぎている、弱い立場にある労働者の意見や要望をもっと取り上げるのが労働省の役目ではないかというお尋ねでございます。
 本法律案は、労働省において、公労使三者構成の婦人少年問題審議会から出されました建議を踏まえまして作成をいたしました。また、法律案要綱を同審議会に諮るなど、各方面の意見も尊重してまとめたものであります。子を養育する労働者に一定期間の育児休業を権利として認めることにより、労働者の福祉の増進を図るものとなっていると考えております。
 以上でございます。(拍手)
   〔国務大臣橋本龍太郎君登壇、拍手〕
○国務大臣(橋本龍太郎君) 中西議員にお答えを申し上げます。
 先ほど労働大臣の御答弁にもございましたが、婦人少年問題審議会の建議の中におきましても、育児休業中の所得保障など労働者への経済的援助につきましては、さまざまな意見、見解の違いが見られる中において一定の方向を定めることは困難な状況にあるとされておるわけであります。こうした中におきまして、今回提出をされております育児休業等に関する法律案にはこうした事項は盛り込まれていないと承知をいたしております。議員から御提案のございましたような、所得保障を前提といたしました育児休業手当特別会計といったものを今日政府は創設することを考えてはおりません。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(土屋義彦君) 沓脱タケ子君。
   〔沓脱タケ子君登壇、拍手〕
○沓脱タケ子君 私は、日本共産党を代表して、育児休業法案に関して質問を行います。
 御承知のように、働く女性は千七百五十万人、全労働者の三七・四%に上り、我が国経済社会を支える大きな力となっています。その中で、乳幼児を持つ女性雇用者も増加をし、六歳未満の子供を持つ妻の四人に一人が雇用者として就労をしております。したがって、働き続けながら安心して子供を生み育てられる環境づくりというのが強く求められているのであります。
 ところが、我が国の政治は、主に家庭責任を負っている勤労女性が子供を安心して生み育てられる環境とは残念ながらほど遠いものがあります。長時間過密労働と満員ラッシュの遠距離通勤、高い保育料など、必死の思いで、しかし生き生きと家事・育児と仕事を両立させながら生き抜いているのであります。私がよく知っております子育て中の女性の方は、毎朝六時に起き、子供を起こし慌ただしい朝食、子供を保育所へ送って、その足で息つく間もなくぎゅうぎゅう詰めの電車に飛び乗り一時間の通勤。仕事を終えてまたラッシュにもまれて保育所へ、子供を抱きながら買い物をして帰宅し、手品のような夕食の準備、洗濯や入浴、後片づけなどの多忙な一日なのです。これは、まさに生活との格闘の姿であります。
   〔議長退席、副議長着席〕
 総理、この子供を育てている勤労女性とその夫の生活の奮闘ぶり、このような頑張りが我が国の経済社会を支えていることが理解できますか。この生活、仕事との格闘のどこに世界第二位の経済大国ぶりやゆとりが見られるでしょうか。これでは、我が国が国際社会において名誉ある地位を占めるなどということは到底できるものではありません。総理の見解を求めます。
 このような勤労国民の生活の実態から、労働時間の短縮や児童手当の充実、保育所や学童保育の拡充とともに、育児休業制度の必要性というのが切実に求められているのであります。こうした社会状況を踏まえ、また数年来国会でのたび重なる論議もこれあり、本院の社会労働委員会育児休業制度検討小委員会で七回に及ぶ審議を行い、これを受けて本法案を提出するに至ったものであります。
 しかし、本法案には重要な問題点が残されています。本法案では、民間の労働者を対象として、一年以内の育児休業もしくは労働時間の短縮措置がとれることといたしております。しかし、育児休業を労働者の権利として保障するという体系をとらず、残念ながら事業主の良識にまつという側面の強い法案となっておることです。第七条では解雇制限の条文は設けていますが、育児休業制度の実効性を本当に確保するためには、解雇禁止はもちろんのこと、降格等不利益処分の防止等のために罰則を設けて担保するのが当然であります。なぜ罰則を設けなかったのか、労働大臣の御見解を伺います。
 安心して育児に専念するためには、一定の所得保障が不可欠であります。しかるに、本法案では休業中の所得保障の規定はなく、無給であります。政府は、児童手当の支給年齢を三歳未満に引き下げる理由として、親が若く所得が低いことを挙げています。育児休業をとる親も同じく若い世代であります。一方では親が若く所得が低いから児童手当を集中して支給するのだと言いながら、同じく所得の低い育児休業者には何の所得保障もしないでは、論理の一貫性がないではありませんまか。
 本院の育児休業制度検討小委員会では、立法化を政府にゆだねるに当たりまして、野党各党は一致して所得保障を要求し、自民党も、一定の所得保障を検討することと注文をつけたのでありました。自民党も必要を認めた所得保障をなぜ取り入れなかったのか。また、今からでも遅くはありません、審議の中で一定の所得保障制度を導入する用意があるのかないのか、事は極めて重大な基本問題でありますから、総理に明確な御答弁をいただきたい。
 原職復帰の原則を明示することもまた、安心して育児休業を取得する上で大切な点であります。企業にとっても、労働者の能力の継続性というのは経営上も必要なことであります。また、安心して育児休業を取得する上で、代替要員の確保、これは必要であります。この点もあわせて労働大臣の明確な御見解をお聞きしたい。
 次に、休業中の身分保障に関してお伺いをいたします。
 本法案は、第八条では育児休業に関する定めの周知について事業主に努力義務を課してはおりますが、内容についてはこれまた事業主の良識と労使協議にゆだねております。私は、有給休暇取得、昇給、昇格、退職金の算定等に当たっては、育児休業中も最低二分の一以上を勤務したものとみなすべきであると考えます。人事院が政府に提出した育児休業法制に関する意見書でも、この点明文化するように求めています。公務員については二分の一勤務を明記し、民間労働者には何の規定もないとしたら官民差別であり、法のもとの平等に著しく反することになるではありませんか。なぜこの点を法文上明記されなかったのか、またそのつもりがおありになるのか、労働大臣の答弁を求めます。
 私は最後に、本法案の適用に関して二点伺います。
 第一点は、一年以内の期間を定めて雇用される者に適用されないことになっていますが、有期雇用を反復して、実態として長期雇用になっている労働者がたくさんおります。本法はこれらの労働者にも適用すべきであります。その考えがおありになるのかどうか、重ねて伺います。
 さらに重要なことは、三十人以下の事業所には適用を三年間猶予することとしている点であります。適用猶予を受ける労働者は全労働者の半数近くの四七%に及び、しかも同一企業でありながら出先機関労働者には適用されないなどの矛盾が起こります。我が党は、中小企業には一定の援助をして、全労働者、全企業に適用すべきだと主張するものですが、労働大臣の御見解を聞いておきたいと思います。
 本制度は、ヨーロッパ主要国では、もう十分御承知のとおり、有給で既に定着している制度であります。その水準から見ましても、私が御指摘を申し上げたところはこれはすべて改善されるべき内容と考えます。我が党は、労働者の権利として確立された育児休業制度の発展を目指し、活力に満ちて社会活動に参加しているすべての女性とともに努力することを表明いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
   〔国務大臣海部俊樹君登壇、拍手〕
○国務大臣(海部俊樹君) 沓脱議員にお答えをいたします。
 いろいろな制約の中で勤労女性の方々が生き生きと家事・育児と仕事を両立させながら生きている、その頑張りとその夫の奮闘ぶりが我が国の経済社会を支えていると考えるがどうかという冒頭のお尋ねでございますが、私は大きな役割を果たしていただいている、こう受けとめております。そして女子の職業生活と家庭生活との調和を図りながら就職を継続するための環境を整備することが極めて重要な課題となっております。そのために、育児休業制度の法制化を初め、男女雇用機会均等の確保、パートタイム労働対策の推進、介護休業制度の普及促進など、女性の働きやすい環境整備にこれまでも努めてきたところでありますが、今後も一層努めてまいる考えでございます。
 休業期間中の労働者の経済的援助につきましては、さまざまな御意見や見解の違いが見られるところであり、一定の方向を定めることは困難でございましたが、今後さらにこの問題については広く多角的な観点から論議が深められる必要があるものと認識をいたしております。
 残余の質問については関係大臣から答弁いたします。(拍手)
   〔国務大臣小里貞利君登壇、拍手〕
○国務大臣(小里貞利君) 五項目につきまして整理して具体的にお尋ねをいただきました沓脱議員にお答え申し上げます。
 育児休業制度の実効性を確保するためには、降格等不利益処分の防止等のために罰則を設けて担保すべきなのに、なぜ罰則を設けていないかというお尋ねでございます。
 不利益取り扱いの禁止については、何が不利益かの判断が極めて難しく、ケース・バイ・ケースの問題でありますので、法律で規定すること及びその違反について罰則規定を設けることは適当ではないのではないか。不利益取り扱いの禁止については、法の施行に伴い、趣旨の徹底を図るべき重要な事項であると判断をいたしております。
 次に、原職復帰の原則を明示する必要があるのではないかというお尋ねでございます。また、代替要員の確保についてはどうかというお尋ねでございます。
 原職または原職相当職への復帰については、婦人少年問題審議会の検討の中でもさまざまな意見がございました。育児休業後に原職または原職相当職に復帰させるということは、我が国の民間企業における人事異動慣行等を踏まえますと、法律により一律に枠をはめることは困難ではないかと判断をいたしました。
 代替要員の確保につきましては、育児休業制度の円滑な運営を図るため重要なことであると考えておりまして、労働省といたしましても、今後、公共職業安定所等における職業紹介機能の活用、整備を図る等いたしまして、具体策を検討してまいりたいと思っております。
 次に、有給休暇取得、昇給、昇格、退職金の算定等に当たっては、育児休業中も最低二分の一以上を勤務したものとみなすべきである、特に公務員については二分の一勤務を明記し民間労働者には何の規定も設けないことを考えると官民差別であり、法のもとの平等に著しく反することになるのではないか、なぜこの点を法文上明記しなかったのかというお尋ねでございますので、お答え申し上げます。
 年次有給休暇付与の要件である出勤率の算定に当たって、育児休業をとった期間を労働日とし出勤したものとみなすとすることは、他の事由による休業の場合との均衡から見て制度上問題があると判断いたしております。また、昇給、昇格、退職金の算定等については、事業主と労働者が話し合いの上決定すべきものでありますから、法律上一律に定めることといたさなかったのであります。
 次に、公務員についての取り扱いは、人事院の意見の申し出を受けて総務庁で御検討されているものと理解をいたしておりますが、勤務条件について労使の話し合いで決定することのできない公務部門と民間部門では法律の規定の仕方に違いが生ずることもあり得るものと考えております。
 次に、有期雇用を反復して、実態として長期雇用になっている労働者にも本法を適用するべきではないかというお話でございますが、本法案で育児休業の対象から期間を定めて雇用される者を除外いたしましたのは、通常最長一年という契約期間をもって雇用が終了し、当事者の意志で契約を更新するか否かを決めるこれらの雇用形態は、子が一歳に達するまでの長期的な休業という育児休業の性質になじまないことによるものでございます。有期雇用が反復した場合の育児休業の取り扱いにつきましては、当該契約が期間の定めのない労働契約と見られるかという観点から、実態に応じ個別に判断すべきものであります。一般的には、反復継続したことだけで直ちに期限の定めのない労働契約と同様に取り扱うべきことにはならないものと考えております。
 最後に、三十人以下の事業所には適用を三年間猶予することとしておりますが、中小企業には一定の援助をして、全労働者、全企業に適用すべきではないかという御意見のようでございますが、常時三十人以下の労働者を雇用する事業所においては、育児休業が直ちに認められた場合は雇用管理の面においても種々の困難が予想されます。準備期間として、本法律案では三年間の適用猶予期間を設けることといたしました。しかしながら、このような事業所については、猶予期間内におきましてもなるべく早期に制度の確立が図られるよう指導、援助を行うことが必要であると考えております。
 以上でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
○副議長(小山一平君) 乾晴美君。
   〔乾晴美君登壇、拍手〕
○乾晴美君 私は、連合参議院を代表して、育児休業等に関する法律案につきまして、総理並びに関係大臣に質問をいたします。
 女性労働者は既に雇用者の四割近くを占め、今後生産年齢人口の減少から、女性労働力に対する期待が高まっています。一方、出生率の低下、少子化に伴う一層の高齢化の進行により、家庭責任が女性の肩に背負わされ、女性の職場進出の障害になっています。未来に希望を持って子供を生み育てることができ、子供のいる女性がそのことで差別されることなく、安心して就業を継続できる条件づくりこそが、今、国の重要な課題であります。男女を問わず労働権は基本的人権であり、男女平等の一層の推進、母性保障の充実、家庭責任に対する支援施策の充実を進めるとともに、男女の役割分担意識を改めることが不可欠であります。このためには、縦割り行政の弊害を排除し、総合的に施策を与える必要があります。
 この点に関し、女性労働者に対する施策の基本的な視点及び具体的施策の推進について、総理並びに関係大臣の御所見を伺います。
 連合参議院におきましても、職業と家庭生活の調和を図るために育児休業制度の法制化が不可欠だとの観点から、既に四党共同で育児休業法案を提出しているところでありますが、今国会において政府においても本法律案が提出されましたこと自体は評価に値するものと考えております。しかし、提案された法案を見てみますと、その内容においても理念においても不十分、不完全なものである点は非常に残念でなりません。
 本来、育児休業制度は、労働者が育児によって雇用を中断することなく安心して就業継続できることがその基本でなければなりません。ところが、政府案は、休業中の生活保障もせず、休業権を担保する罰則も設けておりません。一体このような内容で労働者が安心して育児休業をとれると考えておられるのか、労働大臣の見解を伺います。
 以下、本法律案の具体的内容について伺います。
 その第一は、休業期間中の生活保障についてであります。
 安心して育児休業に専念できるように生活を維持するためには、何らかの所得保障を行うことは必要不可欠であります。共同提案している育児休業法案では、休業中の生活保障の観点から、従前賃金の六割相当額を支給するものであります。政府は、休業期間中の労働者の生活保障についてどのような検討を行ったのでしょうか。なぜ所得保障の規定を盛り込まなかったのでしょうか。労働大臣の明確な答弁を求めます。
 連合がことし二月に発表した「育児休業制度利用者の休業期間中の生活調査」から、育児休業をとっている労働者の夫婦共働きの二十五歳の例を見てみますと、休業前は二十八万七千三百円であったものが休業後は十七万円になってしまっています。これで安心して休業ができるとお思いでしょうか。こうしたことから、「無給なため、社会保険料や地方税の負担、子供が生まれることによる光熱費、ミルク、洋服、保健医療費などの経費増で生活が苦しく、一年間は休めない」との声が寄せられています。総理並びに労働大臣は、こうした切実な要望に対し、どう受けとめられるのでしょうか。子育ての経済的支援をしてあげたいという気持ちにはなりませんか。
 婦人少年問題審議会の建議の中で、休業中の経済的援助については、「更に、広範、かつ、多角的な観点から論議が深められる必要がある。」とされていますが、問題の先送りでは困ります。いつから論議を始め、いつまでに結論を得るのでしょうか。この際、提案いたしますが、総理並びに労働大臣は、英断を持って法案の中に所得保障措置を盛り込む修正を受け入れていくべきではないでしょうか。積極的な答弁をお願いします。
 その第二は、育児休業の取得等を理由とする解雇の禁止を除いて、不利益取り扱いの禁止が規定されていない点であります。
 育児休業が一時的に比較的長期にわたり取得されるものであることにかんがみれば、育児休業の権利の実効性を確保するために、賃金等の労働条件について不利益取り扱いの禁止を法律上明記する必要性は極めて高いものと言えます。解雇以外の不利益取り扱いの禁止を法律に規定しなかったのはどのような考えによるものなのか、労働大臣の明確な御答弁をお願いします。
 また、去る四月一日に人事院からなされた「一般職の国家公務員の育児休業等に関する法律の制定についての意見の申出」によれば、育児休業等を理由として不利益な取り扱いを受けないものとすることとされております。育児休業を理由とする不利益取り扱いの禁止は、公務員であるか民間労働者であるかの違いによって差別されるものではなく、全労働者にひとしく保障されるべきものであるはずです。
 そこでお伺いしますが、公務員についてのみ不利益取扱禁止規定を設けようとする趣旨は何なのか、また、公務員と民間労働者との均衡についてはどのようにお考えなのか、総務庁長官及び労働大臣の御見解をお聞かせ願いたいと思います。
 第三は、権利の裏づけとなる罰則規定が盛り込まれていない点であります。
 たとえ育児休業を理由とする解雇を明文で禁止しても、その担保措置としての罰則が規定されていなければ、労働者は安心して育児休業を取得できず、まことに不十分であると言わざるを得ません。育児休業を権利として規定するのであれば、育児休業を理由とする不利益取り扱いを禁止するとともに、権利の裏づけとして罰則規定を設けるのは当然のことであると思いますが、総理並びに労働大臣の御見解を伺います。
 第四は、原職復帰の規定が盛り込まれていない点であります。
 育児休業を取得した後、原職または原職相当職への復帰が保障されていなければ、労働者は安心して育児に専念することができません。原職または原職相当職への復帰を規定しなかった理由は何なのか、労働大臣の明確な御見解を伺いたいと思います。
 第五は、常時三十人以下の労働者を雇用する事業所の労働者へは三年間法の適用を猶予することとしている点であります。
 この猶予措置によって、大企業と中小企業の労働者の間に新たな格差が生ずる結果となります。適用猶予措置を設けた趣旨について、労働大臣の明確な答弁をいただきたいと思います。
 また、法律の適用は全労働者について同時に行うべきで、中小企業については別途助成措置を講ずるべきであると思いますが、労働大臣の御見解をお聞かせ願いたい。
 以上、政府案について幾つかの問題点を指摘してまいりましたが、今後の審議における議論を踏まえ、政府案の不十分な点は積極的に見直し、家庭責任を女性のみに担わせることなく、男女が等しく担い、労働者が安心して就業継続できるよう、真に実効性のある育児休業制度の確立と、同時に保育所の充実が不可欠であることを申し添え、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣海部俊樹君登壇、拍手〕
○国務大臣(海部俊樹君) 乾議員にお答えを申し上げます。
 育児休業の取得を法的に保障するための基本的な枠組みをつくることが最も大切だと政府は考えてこの法律案を提案した次第でございますが、休業期間中の労働者の経済的援助につきましては、さまざまな御意見、見解の違いが見られて、この法案に一定の方向を定めることは困難でございますが、今後さらに広く多角的な観点から論議が深められる必要があると認識をいたしております。
 不利益取り扱いの禁止につきましては、不利益の判断がケース・バイ・ケースの問題でもありますので、法律で規定すること及びこれについての罰則を設けることは適当ではありませんが、不利益取り扱いの禁止については、法の施行に伴い趣旨の徹底を図るべき重要な事項であると受けとめております。
 残余の質問につきましては関係大臣から答弁を申し上げます。(拍手)
   〔国務大臣小里貞利君登壇、拍手〕
○国務大臣(小里貞利君) 乾議員にお答え申し上げます。
 九項目にわたる質問でございますが、総理大臣が答弁なさいましたが私の立場からも重ねて答弁せよという項目もございますから、その点御了承を願いたいと思います。
 まず、休業中の生活保障問題で罰則を設けないのはどういうことかというお尋ねでございます。
 先ほどもお答え申し上げましたが、育児休業の法制化につきましては、育児休業制度に関する諸条件をどこまで法律に盛り込むべきかについてはいろいろさまざまな意見がございました。育児休業の取得を法的に保障するための基本的な枠組みをつくることがまず現時点では最も必要なことではないかという現段階における判断を私どもはいたしました。そのようなことで本法律案を上程いたしておるところでございます。
 次に、休業期間中の生活保障についてどのような検討を行ったか、こういうお尋ねであるかと思うのでございます。
 休業期間中の労働者の経済的援助については、婦人少年問題審議会における検討の中でもさまざまな意見が出されたところであります。このようなさまざまな意見、見解の違いが見られる中で一定の方向を定めることは困難な状況でありました。しかしながら私ども労働省、政府といたしましては、可能な限りの検討をいたしたつもりでございますが、現段階におきましては特段の規定を設けないことといたしたところでございます。
 次に、育児休業をとっている労働者の例を見て、具体的にいろいろ月給額等をお挙げになりましてお尋ねでございましたが、この問題に対しましてお答え申し上げます。
 育児休業の法制化において、育児休業制度に関する諸条件をどこまで法律に盛り込むべきかについてはただいまも申し上げたとおりでございますが、育児休業の取得を法的に保障するための基本的な枠組みをつくることが現時点では最も大事と判断をいたしました。休業期間中の生活保障につきましては、さまざまな意見もありましたが、先ほどの質問でお答え申し上げましたような観点に立ちまして、ただいま上程をいたしました法律案となった次第でございます。
 次に、経済的援助について、いつから論議を始め、いつまでに結論を得るのか、労働大臣は育児休業法案の中に所得保障措置を盛り込む修正を受け入れるべきではないかというお尋ねでございますが、労働者の経済的援助については、婦人少年問題審議会の建議におきまして、「広範、かつ、多角的な観点から論議が深められる必要がある。」とされておりまして、今後議論が始められることを強く期待いたしておるところでございます。現時点においては、さまざまな意見がありますが、先ほどもお答え申し上げましたように、この段階で一定の方向を定めることは困難でございましたので、特段の規定を設けなかったということで一応御了承を願いたい次第でございます。
 次に、解雇以外の不利益取り扱いの禁止を法律に規定しなかったのはどのような考えか、こういうお尋ねだと思います。
 不利益取り扱いの禁止については、何が不利益かの判断が極めて難しいケース・バイ・ケースの問題でございます。法律で規定することは適当でないが、法の施行に伴い趣旨の徹底を図るべき重要な事項であると考えております。
 次に、「一般職の国家公務員の育児休業等に関する法律の制定についての意見の申出」によればという前提で、育児休業等を理由とした不利益取り扱いを受けないものとすることとされているが、不利益取り扱いの禁止は全労働者にひとしく保障されるべきであるとお話しがあり、公務員と民間労働者との均衡についての考えをただされたと思いますが、不利益取り扱いの禁止につきましては、何が不利益かの判断が難しく、先ほどの質問に対しましてもお答え申し上げたところでございますが、御了承をいただきます。
 次に、育児休業を権利として規定するのであれば、権利の裏づけとして罰則規定を設けるのは当然と考えるがどうか、こういうお尋ねでございます。
 労働省の考えを申し上げますが、育児休業制度の実効性の確保については、婦人少年問題審議会における審議の中でも、罰則により担保すべきであるという意見もあったところでございますが、同審議会の建議を踏まえ、行政機関による適切な指導や勧告を行うことにより、その実効性を確保していくことといたしたのでございます。
 最後でございますが、適用猶予の措置により大企業と中小企業の労働者の間に新たな格差が生じる結果となる、適用猶予の措置を設けた趣旨はどこにあるのか、全労働者に適用した上、中小企業には別途助成措置を講ずるべきではないかという御意見でございました。
 お答え申し上げますが、常時三十人以下の労働者を雇用する事業所におきましては、育児休業が直ちに認められる場合は雇用管理の面におきましても種々の困難が予想されます。準備期間として、本法律案では三年間の適用猶予期間を設けることといたしたのでございます。しかしながら、このような事業所におきましては、猶予期間内においてもなるべく早期に制度の確立が図られるよう指導、援助を行う必要があると考えておるところでございます。(拍手)
   〔国務大臣佐々木満君登壇、拍手〕
○国務大臣(佐々木満君) 私は、育児休業を理由とする不利益取り扱いというのはもともとあり得ないものである、こう考えております。そして、先般の人事院の意見具申にありますこの不利益取扱禁止規定というのは、このことを確認的に明らかにしたものだ、こういうふうに私は人事院の意見を理解いたしております。
 それから民間の労働者と公務員とのバランスの問題でお触れでございますけれども、両者はそれぞれ別個の法体系のもとにあるわけでございまして、これを同列に論ずることは必ずしも適当ではないのではないか、こういうふうに理解をいたしております。(拍手)
    ―――――――――――――
○副議長(小山一平君) 勝木健司君。
   〔勝木健司君登壇、拍手〕
○勝木健司君 私は、民社党・スポーツ・国民連合を代表いたしまして、ただいま議題となりました育児休業等に関する法律案に対しまして、総理並びに関係大臣に幾つかの基本的問題について質問を行うものであります。
 我が国の女性の労働人口は今日二千五百万人を超え、このうち女子雇用者は千七百五十万人を数えているのであります。このことは、労働者の三人に一人が女子労働者であることを意味しております。こうした中で、男女の雇用の平等を図るため男女雇用機会均等法が制定されましたが、育児休業については極めて不十分な措置となっております。
 そこで、私どもは、全労働者を対象とする育児休業法案を野党四党で共同提案をいたしました。今日ようやく法制化に至ろうとしていることは、勤労者の強い要望にこたえる意味で大変喜ぶべきことであると考えるのでありますが、この法案の眼目は、子を生み育てる勤労者が安心して休業できる実効ある制度を確立することでなければなりません。育児休業制度は、男女が家族的責任を共有し、安心して生み育て、ともに社会参加できる環境づくりを進めることが目的であります。労働者にとってはもとより、企業にとっても労働力不足の中で有能な人材を確保し得る極めてメリットの多い制度として、その必要性が広く認識されているところであります。
 総理も、本年の施政方針演説の中で、「子供を持ちたい人が健やかに子供を生み育てることができるよう、児童手当制度の充実、育児休業制度の確立など総合的視点に立って必要かつ効果的な環境条件の整備に努めたい」と述べ、育児休業制度確立の必要性について言及をされておりますが、改めて、育児休業制度の必要性、その効果等についてどのような認識をお持ちなのか、お尋ねをいたします。
 近年、労使交渉により育児休業制度を導入する企業が相次いでおりますが、それでも育児休業を実施している事業所はわずかに一九%にすぎません。しかもこの数字は、いわゆる特定職種育児休業法に基づく実施事業所を含んでいるものでありまして、それを除きますとさらに低いものであります。このため、女子労働者のみならず男子労働者も含めてすべての労働者を対象とし、雇用を継続しながら一定期間休業し育児に専念できるように、法案を野党四党共同により本院に提出したのでありますが、与野党の意見がまとまらず、政府において法律の作成作業を行うべきであるという合意に達したことは御承知のとおりであります。
 今回、これを受けて政府から法案が提出されたのでありますが、この法律案を作成するに当たって、政府は拙速の余り従来の国会論議を十分に踏まえなかったのではないかと思うのでありますが、法制化に当たりましての経緯を含めて、労働大臣の所見をお伺いいたします。
 以下、法案の内容につきまして具体的にお尋ねをいたします。
 第一は、休業期間中の経済的支援についてであります。
 働く女性の増加に伴い、女子労働者の約七割が有配偶者となっており、家庭におきましては家事・育児の負担は女性に重くのしかかっており、就業継続についてさまざまな問題を抱えております。このため、妊娠女子労働者の約三割が出産、育児を理由に退職しており、仕事と育児を両立させるための施策の推進は喫緊の課題となっております。また、現在のような出生率の低下傾向がこのまま続きますと、我が国の高齢化のスピードを加速し、労働人口の減少、年金、保険等の社会保障面での負担増などで、我が国社会全体に大きな影響を与えます。この意味からも、安心して生み、働き続けることのできる環境づくりを進めることは、出生率の向上にも寄与することにつながるものであり、社会全体の相互扶助という精神に基づいて、子供を生み育てる勤労者に対し何らかの財政的援助を行うべきであります。
 ILO第百六十五号勧告では、育児休暇及び病気介護休暇にいう休暇の間、関係労働者は、国内の事情及び慣行に従い、法令、労働協約、就業規則もしくはこれらの組み合わせ、または国内慣行に適合するその他の方法で国内事情を考慮した上適当とされるもののいずれかにより、社会保障による保護を受けることができると記されております。また、諸外国の育児休業中の所得保障の制度を見てみましても、趨勢としては有給保障は常識化しつつあり、経済成長の成果を勤労者に還元し、ゆとりのある生活を保障するという意味からも、国が直接、育児休業を取得する勤労者に対して一定の財政的支援を行うべきであります。
 私ども野党四党案は、賃金の六割相当額の育児休業手当を支給することとし、その財源は、すべての労働者と事業主及び国がそれぞれ三分の一ずつ負担することとしているものであります。今回の政府案では、休業期間中の労働者に対する経済的支援につきましては全く触れられておりません。この育児休業期間中の経済的支援について、総理はどのような所見をお持ちでありましょうか。労働大臣はどのような見解をお持ちなのか、あわせてお伺いをいたします。
 第二は、現行法とのバランスについてであります。
 申し上げるまでもなく、現在、国家公務員等の教員及び看護婦等の特定職種の女子職員を対象に育児休業法が制定され、本人負担に係る社会保険料相当分を使用者が負担、育児休業給が支給されているのであります。去る四月一日の人事院の意見の申し出によりますと、これら職種における人材確保の達成に資するため、引き続きこの措置を継続することといたしております。このことは、民間におけるこれらの同職種の労働者との間にアンバランスが生ずるのでありますが、少なくとも新しくできる法律は現行制度よりも後退することがあってはなりません。育児休業中の所得保障につきまして、現行雇用保険制度等の活用も含めて、検討すべきであると考えますが、労働大臣はどのように考えておられるのか、お伺いいたします。
 また、国家公務員法によりますと、公務員間における平等取り扱いの原則が規定されております。これら職種と一般職員との均衡につきまして、総務庁長官はどのような見解をお持ちなのか、あわせてお伺いいたします。
 第三は、育児休業制度の実効性を確保するための措置についてであります。
 私ども野党四党案では、罰則による担保措置を講じ、全労働者が安心して育児休業を取得できるようにいたしております。今回の政府案では、労働大臣が適切かつ有効な実施を図るための指針となるべき事項を定め、この指針に沿って事業主に対し必要な助言または勧告を行うことができることとなっているにすぎないのであります。そこで、どのような指針を定めようとされるのか、これだけで本当に実効性が確保されるのか大いに疑問でありますが、労働大臣の所信をお尋ねいたします。
 また、常時三十人以下の労働者を雇用する事業所の労働者に関しましては三年間制度の適用を猶予することとしておりますが、適用を猶予する理由は一体何なのか。果たして猶予期間の三年間でそれらの問題点が改革されていくのでありましょうか。中小企業の人材確保と魅力のある職場づくりという観点からも、私は、企業の規模にかかわらず取得できるような制度にすべきであり、むしろ中小企業に育児休業制度を円滑に実施させるような助成措置を国として検討すべきではなかったかと思うのでありますが、あわせて労働大臣の見解をお伺いいたします。
 さらに、就業形態の多様化が進む中で、女性のパートタイマーは四百三十万人にも上っております。女性雇用者総数に占める割合は二五%に上っております。期間を定めて雇用されている人は育児休業の申し出ができないこととなっておりますが、今後もふえ続けることが予想されるパートタイム労働者に育児休業取得の道を閉ざすべきではなく、実態として反復契約を行っている労働者にはこの法律が適用されることを明確にすべきであります。また、育児休業を取得しない、一歳に達しない子供を養育する労働者に対して、勤務時間の短縮の措置を事業主は講じなければならないこととされておりますが、この措置は労働者に請求権を認めるべきであると考えますが、労働大臣の見解をお伺いいたします。
 さらに、この法案には、原職または原職相当職への復帰を含む不利益取り扱いの禁止、休業期間の勤続年数への二分の一通算の規定などが盛り込まれておりません。労働大臣は今後どのようにこの問題について取り組んでいかれるのか、御所見をお尋ねいたします。
 これまでの経過を十分に尊重し、勤労者の求める安心して休業できる実効性のある制度の確立を強く要望して、私の質問を終わります。
 なお、答弁は、質問の要旨を省略され、中身の濃い回答を求めるものであります。(拍手)
   〔国務大臣海部俊樹君登壇、拍手〕
○国務大臣(海部俊樹君) 勝木議員にお答えを申し上げます。
 働く人々がその能力と経験を生かしつつ、仕事も家庭も充実した生活を営むことができるという、働きやすい環境づくりを進めることが大切な政策課題となっている中で、今回の育児休業制度はその中核的な施策の一つであると認識をいたしております。この制度の法制化は、子供を養育する労働者の雇用の継続を促進することによって、その福祉の増進と経済及び社会の発展につながっていくものと認識をいたしており、この制度は必要であると考えております。
 残余の質問は関係大臣から答弁いたさせます。(拍手)
   〔国務大臣小里貞利君登壇、拍手〕
○国務大臣(小里貞利君) お答え申し上げます。
 まず、今までの国会審議をどのように踏まえたかというお尋ねでございますが、政府といたしましては、本法律案については、婦人少年問題審議会における審議や国会における参議院の育児休業制度検討小委員会での審議経過等を十分注目しながら、可能な限り努力をいたしたつもりでございます。本法案については、国会において審議を尽くしていただき、ぜひ成立をさせていただきたいと考える次第でございます。
 次に、経済的支援についてのお尋ねでございますが、休業期間中の労働者の経済的援助につきましては、先ほどからお答え申し上げておりまするように、一方で、安心して育児休業が取得できるよう、あるいは所得保障を労使国、三者で負担する新たな基金制度で行うべきであるという意見などもございました。他方、いかなる支払いも事業主に法律で義務づけるべきではない、あるいは育児休業が任意的、選択的であるということから、他の労働者等とのバランスを考える必要があるなどの意見もございました。さまざまなこのような意見の違いがありましたことから、私どもは一定の方向をこの段階で定めることは困難であったわけでございます。
 次に、雇用保険制度についてのお尋ねでございます。
 育児休業中の経済的援助につきましてはさまざまな見解が見られたということを先ほど御説明申し上げておるところでございますが、雇用保険制度におきましては、特に失業給付は労働者が失業した場合に必要な給付を行う制度であり、たとえ休業中であっても、失業していない者に対する給付を本制度の枠内で行うことはできないものと判断をいたした次第でございます。
 次に、労働省がこれから行います指針についての御質問でございます。
 第十二条の「指針」は、第八条の「育児休業に関する定めの周知等の措置」、及び第九条の「雇用管理等に関する措置」、及び第十条の「勤務時間の短縮等の措置」、第十一条の「一歳から小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者に関する措置」について定めることといたしておりますが、具体的内容につきましては、今後婦人少年問題審議会におきまして十分検討した上決定することといたしております。
 次に、指針だけでは真の実効性が確保できるのかという疑問を呈してのお尋ねでございます。
 育児休業制度等の適切かつ有効な実施を図るため、指針を定めるとともに、この指針に基づいて事業主に対し必要な助言、指導または勧告を行って、育児休業制度の実効性が確保されるよう努めてまいりたいと思っております。
 次に、三十人以下の中小企業云々のお尋ねでございますが、常時三十人以下の労働者を雇用する事業所においては、育児休業が直ちに認められた場合は雇用管理の面においても種々の困難が予想されますので、準備期間として、本法律案では三年間の適用猶予期間を設けることといたしたものでございます。したがって、これらの事業所におきましては、三年の適用猶予期間の間に、育児休業制度の実施に必要な雇用管理の見直しを行うこと等により、育児休業制度を実施できるような体制を整えることを期待いたしておるものでございます。
 次に、魅力ある中小企業という観点から、規模にかかわらず早急に育児休業制度を導入すべしという御意見でございますが、常時三十人以下の労働者を雇用する事業所については、本法律案では三年間の適用猶予期間を設けることといたしておりますが、猶予期間内においてもなるべく早期に制度の確立が図られるよう、行政としても必要な指導、援助を行ってまいるつもりでございます。
 次に、パートタイマーについてのお尋ねでございます。
 本法案で、育児休業の対象から期間を定めて雇用される者を除外したのは、通常最長一年という契約期間をもって雇用が終了し、当事者の意思で契約を更新するか否かを決めるこれらの雇用形態は、子が一歳に達するまでの長期的な休業という育児休業の性質になじまないことによるものであります。期間の定めはあっても反復継続している場合の育児休業の取り扱いにつきましては、当該契約が期間の定めのない労働契約と見られるかという観点から、実態に応じ個別に判断すべきものであります。一般的には、反復継続したことだけで直ちに期限の定めのない労働契約と同様に取り扱うべきことにはならないと考えたのでございます。
 次に、勤務時間の短縮についてのお尋ねでございますが、一歳に満たない子を養育する労働者にとって、勤務時間の短縮の措置は育児休業と並んでその雇用継続のために必要性が高い措置であると考えられますため、事業主はこれらの措置を講じなければならないことといたしたわけでございます。また、この措置を労働者の権利としなかったのは、事業の種類、労働者の状況等によって、そのニーズや対応可能性がさまざまでありますから、具体的権利として特定することが現状では難しいことによるものでございます。
 最後のお尋ねでございますが、原職復帰を含む不利益取り扱いの禁止規定等についてのお尋ねでございます。
 先ほどもお答え申し上げたところでございますが、不利益取り扱いの禁止については、何が不利益かの判断が難しく、ケース・バイ・ケースの問題であると考えます。法律で規定することは適当でございませんが、法の施行に伴い趣旨の徹底を図るべき重要な事項であると判断をいたしております。
 さらに、あわせてお尋ねの育児休業制度の実効性の確保につきましては、婦人少年問題審議会における審議の中でも罰則により担保すべきであるという意見もあったところでございますが、同審議会の建議を踏まえ、行政機関による適切な指導や勧告を行うことにより実効性を確保していくつもりでございます。
 なお、勤続年数の換算につきましては、労使の話し合いによりまして決定されるべき事項でございまして、法律において具体的な基準を示すことは適当でないと判断をいたしました。(拍手)
   〔国務大臣佐々木満君登壇、拍手〕
○国務大臣(佐々木満君) 看護婦、教員等特定職種に属します女子職員に対する現行の育児休業制度というのは、御承知のとおり、いわゆる人材確保ということを目的にして制度がつくられ、また運営されておるものでございます。一方、先般人事院から具申のございました育児休業制度というのは、民間の制度に準拠してつくるべきだと、こういう具申でございまして、それぞれ趣旨、目的が異なっております。したがいまして、国家公務員法上でいわゆる平等の原則に反するものではない、私はこう理解しておりますので、御了承を賜りたいと思います。(拍手)
○副議長(小山一平君) これにて質疑は終了いたしました。
     ―――――・―――――
○副議長(小山一平君) 日程第一 船舶安全法及び船舶職員法の一部を改正する法律案(内閣提出)を議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。運輸委員長中川嘉美君。
    ━━━━━━━━━━━━━
   〔中川嘉美君登壇、拍手〕
○中川嘉美君 ただいま議題となりました法律案につきまして、運輸委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
 本法律案は、千九百七十四年の海上における人命の安全のための国際条約の改正に伴う全世界的な海上遭難安全システムの実施に対応し、あわせて船舶の安全性の向上を図るため、同システムの実施に必要な無線設備を同条約の適用船舶等に対して義務づけ、及び当該無線設備に係る無線業務に従事する海技従事者の資格を新たに定めるとともに、無線設備を施設しなければならない船舶の範囲を拡大する等の措置を講じようとするものであります。
 委員会におきましては、新システムの信頼性確立の必要性、通信士の配乗のあり方、陸上保守に関する資格制度の検討等各般にわたる質疑が行われましたが、その詳細は会議録により御承知願いたいと存じます。
 質疑を終局し、採決の結果、本法律案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、本法律案に対し、全会一致をもって附帯決議を付することに決定いたしました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
○副議長(小山一平君) これより採決をいたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
○副議長(小山一平君) 過半数と認めます。
 よって、本案は可決されました。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後零時三十分散会