第120回国会 法務委員会 第7号
平成三年四月十六日(火曜日)
   午前十時開会
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  出席者は左のとおり。
    委員長         矢原 秀男君
    理 事
                鈴木 省吾君
                福田 宏一君
                北村 哲男君
                中野 鉄造君
    委 員
                斎藤 十朗君
                中西 一郎君
                林田悠紀夫君
                山本 富雄君
                久保田真苗君
                千葉 景子君
                八百板 正君
                安永 英雄君
                橋本  敦君
                山田耕三郎君
                紀平 悌子君
   国務大臣
       法 務 大 臣  左藤  恵君
   政府委員
       法務大臣官房長  堀田  力君
       法務大臣官房司
       法法制調査部長  濱崎 恭生君
       法務省刑事局長  井嶋 一友君
       法務省人権擁護
       局長       篠田 省二君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局総務局長   金谷 利廣君
       最高裁判所事務
       総局人事局長   泉  徳治君
       最高裁判所事務
       総局経理局長   町田  顯君
       最高裁判所事務
       総局民事局長
       兼最高裁判所事
       務総局行政局長  今井  功君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        播磨 益夫君
   参考人
       日本弁護士連合
       会会長      中坊 公平君
       東京大学名誉教
       授        三ケ月 章君
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  本日の会議に付した案件
○司法試験法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
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○委員長(矢原秀男君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 司法試験法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本日は、本案につきまして御意見を伺うため、日本弁護士連合会会長中坊公平先生並びに東京大学名誉教授三ケ月章先生に参考人として御出席をいただいております。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多忙の中、本委員会に御出席をいただきまして、心から御礼を申し上げます。
 両参考人におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、本案審査の参考にさせていただきたいと存じます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。
 次に、議事の進め方について申し上げます。
 まず、参考人の方々からお一人十五分程度御意見をお述べいただきまして、その後、各委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。なお、念のため申し上げますが、発言の際は、その都度、委員長の許可を得ることとなっております。また、各委員の質疑時間が限られておりますので、御答弁は簡潔にお願いいたしたいと思います。
 それでは、まず中坊参考人からお願いいたします。
○参考人(中坊公平君) 日本弁護士連合会会長の中坊公平でございます。
 現在審議中であります司法試験法の改正問題に関しまして、日弁連の立場から参考人として意見を述べさせていただきたいと思います。
 それでは、皆様のお手元に陳述メモというのを配付させていただいておりますので、これを見ながらお聞きいただきたいと思います。
 まず、結論から申し上げたいと思います。日弁連は、今回の司法試験法の一部を改正する法律案につきまして、やむを得ない選択として賛成をいたしております。
 まず、このような結論に至ったいきさつについて簡単に申し上げます。
 日弁連は、法務省が法曹基本問題懇談会を発足されましたことに対応いたしまして、昭和六十二年二月二十日に法曹養成問題委員会を設置し、法曹養成制度全般、わけても司法試験のあり方につきまして、司法制度の根幹にかかわる問題として調査研究を続けてまいりました。そして法務省が平成元年十一月二十日、皆様のお手元の資料二十四ページ以下にあります「司法試験制度改革の基本構想」を提案されましたことに伴いまして、この基本構想に対しまして日弁連は平成二年三月十六日、基本構想に対する基本方針を決定いたしました。そして、この基本方針の中で七百名への増員あるいは運用改善については賛成する、甲、乙、丙の三案につきましては司法試験の理念に変更を加えることについては問題があるという指摘をいたしました上で、さらに日弁連側から積極的に大学関係者、法曹三者によりまして司法試験並びに大学教育についての抜本的改革を作成するために法曹養成制度等改革協議会の設置を提案したのであります。
 その後法務省の方におきまして、現実的には甲、乙、丙のうち丙案の実行を考えておるということになりました。丙案と申しますのは増員分二百名を三回以内の受験生から合格をさせるということであります。この丙案につきまして、日弁連は平成二年の七月二十五日に一種の検証案なるものを提案いたしました。この検証案の内容と申しますのは、まず両方で異議のない増員、運用改善を平成三年から実行していただきまして「五年間実行した上で平成七年の試験終了後に多数回受験の滞留現象に改善の効果があるかどうかを検証いたしまして、改善の方向が見定められないときには丙案の導入もやむを得ない、ただし一たん丙案を導入いたしましても五年後にはさらに廃止を含めて見直すこと、またこれと別に改革協の方が抜本的な対策を提案されましたときにはこれを先行することなどを提案いたしました。
 この提案に基づきまして法曹三者は平成二年十月十六日に、皆様のお手元資料二十六ページ以下の基本合意をするに至ったわけであります。このようにいたしまして日弁連は今回の司法試験の改正について異議がないということになったわけであります。
 それでは、なぜ日弁連はこのような結論に至ったかを御説明申し上げたいと思います。
 最初に、日弁連は司法試験をそもそもどのように評価しておったのか、また、なぜ改正の必要があると考えるようになったかについて申し上げたいと思います。
 司法試験は、言うまでもなく次代の法律家の量と質を決定する極めて重要な試験であります。現行司法試験制度というものは統一、公正、平等の理念のもとに四十年間の長きにわたりまして幅広く多様な人材を平等に受け入れるべく年齢、性別、受験回数などによって差別しないという極めて開放性に富んだ試験として実施されてまいりました。そしておおむね所期の目的を達成してこられたと考えております。次に、この統一試験の合格者が原則として修習生に採用されることに伴い、修習がまた統一に行われることと相まちまして、法曹三者の共通の理解を生じさせ、ひいては法曹一元の基礎の役割も果たしてきた、このように考えておるものであります。
 ところが、この司法試験につきまして近時この試験に多数回受験の滞留現象という一種の病的な現象が発生し始めてまいりました。多数回受験の滞留現象と申しますのは、受験者の数が多いにかかわらず合格の数が余りにも少ないということから、合格水準に達しながらなお合格しない受験者が数多く滞留しておるということであります。この現象の結果は、合格平均年齢が現在では二十八歳を超え、また合格までの平均受験回数は七回に近い状態になってくることになりました。しかも、このような状態が長期間継続することによりまして大学卒業者が司法試験を敬遠することになり、出願者数も最近では減少傾向にあります。この結果、司法試験の本来の目的である幅広く多様な人材を得ること自体がまた困難になってきたという現象が発生してきたわけであります。
 それでは、なぜこのような現象が発生したのでありましょうか。またこの発生原因はどこにあるのでしょうか。
 いろいろな原因が複合的に関係していると思われますが、最大の原因は出願者数の増加にかかわらず合格者数を据え置いたことであります。皆様のお手元の資料の三ページ以下をごらんいただいたらおわかりいただけますように、昭和三十八年当時の出願者は約一万二千人でありますが、昭和四十八年には倍以上の二万四千人を超えるようになっております。そしてこの状態が昭和六十二年まで続いておるのであります。ところが、昭和三十八年の合格者数五百人ということは現在に至るも据え置かれたままであります。このような異常な低い合格率になったのは当然であります。このことが最大の理由ではなかろうかと考えております。
 この理由以外にさらに、例えば戦後の大学教育の改革、すなわち専門科目は三回生から履修するということと、一方、司法試験の学習対象は法律制度の複雑化に伴いまして一層拡大していくこととの乖離がさらに大きくなってきたことから長期化の受験を余儀なくされるようになりました。また、このような状態にありながら司法試験を実際に運用されておる当局側が、考査方法などにおいてその対応が不十分ではなかったか。例えば、試験がますます技術的な傾向をたどったのではないかというようなこともまた理由の一つに挙げられるのではないか、このように考えておるわけであります。
 そこで日弁連といたしましては、今回の司法試験の改革問題はこれらの発生原因を除去するところにあると考えておるのでありまして、その除去するために、以下に述べますような対策を立てたのであります。
 まず第一に、合格者数の増加、五百人から七百人であります。この発生原因を除去するためには、先ほどから説明いたしておりますことから明らかなように、まず合格者数を増加させることであります。この考え方から合格者数を五百人から七百人に増加させたわけであります。この二百人の増加だけでは不十分ではないかという見解もあると思いますが、二百人という数字は五百人からいたしますと四〇%という大幅増加でありまして、現在の修習の受け入れ体制からは少なくとも現時点では適当な数字ではないかと考えております。
 次に、受験者の負担の軽減、教養選択科目の廃止であります。先ほども申し上げましたように、大学教育と司法試験の乖離のために、受験者に一層の負担がかかっていることを軽減すべく教養選択科目の廃止に賛成したわけであります。
 さらに三つ目といたしまして、司法試験の運用改善があります。司法試験の運用改善は極めて多方面にわたって積極的に行われなければならないと考えております。すなわち、まず試験をする側では考査委員の増員あるいは考査委員の報酬の見直しといったようなことが必要であります。また、受験をする側にとっては合格水準に至る道筋を明らかにするための情報公開、例えば受験者に対する成績通知あるいは短答式試験の正解答案の公表などが必要ではなかろうかと考えておるのであります。日弁連といたしましては、今後三者協議あるいは改革協においてこの点に関しましての協議、実行をさらに要請していきたいと考えております。
 四番目に、法曹養成制度等改革協議会の提案であります。日弁連が積極的に提案しました法曹養成制度等改革協議会が積極的に活動を行われることによりまして、大学教育、司法試験あるいは法曹人口そのものにつきまして抜本的改革を図られることが重要であり、その結果滞留現象の解消にも役立つと考えておるのであります。現在、既にこの協議会の設置要綱が法曹三者で合意され、約二十名の大学関係者、法曹三者並びに学識経験者による協議会が本年五月から発足することになりましたことは極めて喜ばしいことであるとともに、日弁連はこの協議会の活動に積極的に協力していく所存であります。
 最後に、丙案に対する評価と検証案について意見を申し述べます。
 まず、丙案というものは受験回数によって合否を差別する制度でありまして、司法試験法に定めております判断基準である学識、応用能力に関係ない要素によって合否が決定されることを意味いたしております。この意味におきまして、司法試験法の根本的な理念である平等の原則にもまた反することは明らかであります。
 現在の採点からいたしますと、四回以上の受験者は四回以上というだけで五百一番目の者が不合格となり、逆に三回以内の者は一千八百番目であっても合格するという異様な状態をつくり出すことになるわけであります。しかも、このような合格者に二つの群れをつくること、特にその一群れにげた履きの合格者が存することは、広い意味では法曹全体にとって一種の分裂を招くことになり、外部からも法曹全体に対する信用を損なうおそれがあり、統一修習、法曹一元の立場からも危惧される点が多いと考えております。このため、日弁連におきまして積極的に丙案に賛成する会員は極めて少ないのであります。しかしながら日弁連といたしましては、先ほどから申し上げておりますように、多数回受験者の滞留現象を緊急に改善することは極めて重要であるという視点から、やむを得ず丙案の導入も考えなければならないと考え、基本合意に踏み切ったものであります。
 日弁連といたしましては、増員と運用改善によって丙案を実現しないで済むことを希望いたしております。また、改革協においてより抜本的な改革案が提案、実行されることによって、もっとすっきりした形態のものができ、多数回受験の滞留現象の解消に役立つことを希望しておるものであります。
 終わりに、日弁連は今回の司法試験の改革問題に限らず、国民のための司法を実現するために真剣に努力をささげてまいりました。今後も司法が国民にとってもっと身近な、もっとわかりやすい、もっと納得しやすいものにし、その結果、国民がもっと司法を利用することによって司法の容量が大きくなり、国民主権のもとにおける法の支配の意識が国民の間に定着する司法改革をさらに実行していく所存であります。
 本日はどうもありがとうございました。
○委員長(矢原秀男君) どうもありがとうございました。
 次に、三ケ月参考人にお願いいたします。
○参考人(三ケ月章君) 三ケ月章でございます。
 私の専門とするところは司法制度及び特に民事裁判制度でございます。
 私の司法制度に関する基本的な考え方の一つは、一国の司法制度の実績はその国の平均的法律家の質と量との相乗積によって規定されるものであるということでございまして、法曹養成制度はその意味におきましては司法制度の最も重要な部分を形づくるものでありますが、今回のこの法律案は、まさにこの問題にじかに対峠する重要な法案であると考えるわけでございます。
 私が民事訴訟法の研究生活を始めました時期は、第二次大戦後における制度の大改革の時期でございました。そして、法の担い手につきましても二つの大きな変革が試みられた時期でございます。その一つは、現行の法曹養成制度の基本であるところの司法修習制度が創設されたということでございますし、第二は、戦後の学制改革によりまして新制大学の発足を見、ひいては法学部の非常な増加があったということでございます。
 その後、私は民事訴訟法学の中で司法制度論を手続論から独立させまして、裁判法という新しい学問の場を設けることを主張し、そしてそれを実践してまいったわけでございますが、その中で、司法制度全体の中で最も重要な部分である法曹養成制度に抜本的な検討を加える必要があることを主張し続けてまいったのでございますが、つい最近に至るまで私のような主張はどちらかといいますと少数説ないしは孤立説であったと見ております。
 しかし、この間に、最近では我が国の司法を取り巻く環境は大きく変化いたしました。かつて法曹社会の量の面での立ちおくれ等が、このままでは新憲法の基底にありますところの法の支配の実現ということに対して非常に消極的な影響を与え、法の支配は絵に描いたもちにすぎないではないかということが一つの大きな問題の中心であったわけでございますが、現在におきましてはそうした問題に加えて、法律事務を含みますサービス業務の国際化ということの要請が全世界的に緊迫化してまいりました。こうした新しい国際環境のもとにおける法の担い手の充実ということが緊急の新しい課題となって登場してきたと見ておるわけでございます。
 こうした状況の中で、私は法務省が昭和六十二年春に設けられました法曹基本問題懇談会のメンバーとなることを求められたのでございますが、これは法務省が今回の司法試験制度改革の基本的な方向を探るために、法務大臣の勉強会として設けたものでございました。この会は、法曹界からは最高裁判所長官、検事総長、日弁連会長等の職を経験された方が出席されましたし、また私を含みます法律学者も若干加わってはおりますが、過半数は法律家以外の日本の各界を代表する有識者の方々であり、その検討の主題は、将来における我が国の法曹のあるべき姿から見て現在の司法試験制度に改革すべき点はないかということでございました。ようやく日本におきましても、人の面から見た司法制度の改革が公式の場で議論されるようになったということは、私としては画期的なことであると評価している次第でございます。
 その懇談会におきましては、約一年間にわたります意見交換を行って意見書を取りまとめました。その結論的な部分を紹介いたしますと、
  我が国社会が今後更に高度化し、また、国際化するにつれ、法的解決を必要とする社会事象はいよいよ増加するとともに、複雑多様なものとなっていくことが予想される。法曹は、当然のことながら、そのような社会の進歩変容に適応して、国民の期待に応えなければならないのである。そして、そのためには、豊かな人間性と人権感覚を備え、柔軟な思考力と旺盛な意欲を持ち、国民の法曹に対する負託に十分応えることのできる能力を有する裁判官、検察官、あるいは、弁護士が国民の身近に存在し、その需要を満たしていくことが、従来にも増して要請されるのである。
こういうのが結論の要旨でございました。司法試験の現状については、法曹界が国民の期待にこたえ得る後進者を確保するという観点から見まして、現状はもはや放置しがたいというものでございました。こうした懇談会の意見は、私の年来の問題意識と全く同じものであったわけでございます。
 現在、国会に提出されております司法試験法の改正法案は、このような問題意識を出発点として立案作業がなされたものと私は理解しております。その改正内容は、法曹養成制度全体の問題の中では、また諸外国の大きな流れというものの中において見ますならば、比較的小さな、部分的な改正にとどまっているという批判がございます。こうした比較的小さな改革から出発せざるを得ないのは、これを超えましたドラスチックな、全面的な改革を行うためには、なお幾つかの根本的な問題に取り組む必要があるからでございまして、しかもその結果が出るまでこれを待っていたのでは、我が国の司法が回復不可能なダメージを受けるおそれがあると考えられるからであると思います。
 その根本的な問題の幾つかを挙げますと、第一は、我が国における適正な法曹人口という問題でございます。私は、現在の司法試験合格者数及び法曹人口が余りにも少ないということは、どのような観点から考えても、世界の流れを点検いたしましても、疑問の余地のないところであると学問的な私どもの立場からは考えているものでございます。しからば、適正な法曹人口というのはどの程度なんだろうかということになりますと、これは大変難しいのでございまして、単純な国際比較や訴訟事件の数といった指標から直ちに結論が導き出されるものではございませんで、我が国の社会構造を十分に分析して研究すべき問題でございます。また、法律家の数がふえただけでは、それが国民に対する法律サービスの向上に結びつくという保証もなく、むしろそこの結びつきを図っていかなければ意味がないわけでございまして、そのためには単に数をふやすということ以外にもいろいろなそのための条件整備を図っていかなければならないわけでございますが、これもまたかなり息の長い仕事になるはずでございます。これが第一の問題点でございます。
 第二は、法学教育のあり方の問題でございます。戦後の学制改革によりまして新制大学が誕生し、法学部は量的には飛躍的に増大いたしました。しかしながら、法曹養成制度の出発点を担うものとしての性格はそれだけ希薄になってしまったのでございます。最近になりまして、大学院の役割を見直そうという機運が高まっておりまして、高度な専門的知識、能力を持つ職業人の養成と再教育を行う、法学教育の領域でもそういうことを行うための大学院改革が幾つかの大学で始まっております。こうした大学改革の動きを十分に見きわめつつ、それと法曹養成制度全体のあり方の関連ということを考えていくべき時期に来ていると考えるわけでございます。
 第三は、司法修習制度のあり方であります。修習制度のあり方は、養成する人数や大学法学教育の充実の程度によって規定されてくる面がございまして、それらとの関係で総合的な検討が必要でございます。国民の立場からあるべき法曹人口や養成制度という問題を考えていくためには、結論として現行制度の基本構造を変えることにするかどうかはともかくといたしまして、現行司法修習制度及びその内容を新しい事態のもとで再評価していくことは避けて通れない課題であると考えられるのでございます。
 こうした三つばかりの大きな問題を今後の検討課題として残して、今回の改正法案が国会に提出されたわけでございます。先ほど申しましたように、学会の一部などでは、これはこれだけで果たして問題が解決できるのかという批判がないわけではございませんが、私は今次の改革は、その内容は確かに比較的小さいと申してはいけません、つつましいものではございますが、長期的な観点から見まして極めて重大な意義を持つものであると評価しているのでございます。
 その理由を申し上げます。
 第一に、その改革の内容は、望ましい試験制度に多少なりとも近づける効果があるということでございます。まず、今次の改革によりまして、司法試験の合格者数をそれまでの数の四割程度増加させることにしているわけでございます。その増加の程度は、客観的な必要性から考えますと、なお不十分なものであると私は考えております。しかしながら、法曹人口を増加させる方向で当面実現可能な最大限の増加が図られているわけでございます。
 また、司法試験の現状は短期間の合格が極めて困難であるという異常な状況にあるわけでございますが、およそ試験というものは相当の能力を有する者が十分な努力をすれば相当の期間内に合格し得るものでなければならず、受験を志す者にそのようなものとして認識される必要があるのでございまして、今回の法律改正によって導入される合格枠制は、司法試験の試験制度としての機能を回復するために、現状においては必要不可欠であると考えるのであります。
 なお、この点に関して一言いたしますと、世界の法曹資格試験制度を全部眺めてみまして、何らかの受験回数制限をしている国がほとんどでございます。法曹資格試験においてそれまでの受験歴を考慮するということは世界的に見ても何ら不都合なこととは考えられていないと私は考えております。
 こうした改革の結果として、合格者数が増加し、かつ司法試験としての機能が回復することによりまして、より多くのすぐれた人材が法曹界に吸収されるようになることが期待されるのでございまして、国民の期待する法曹養成制度に一歩近づく改革内容であると評価しているわけでございます。
 第二の点は、法律家が社会の実情から、自分たちのいろいろな面での世界の流れから見ました立ちおくれを自覚して、それを改革していこうという具体的な合意を今回のこの法律改正によって成立させたということの評価でございます。こうした程度の合意を形成するだけでも今日までの長い年月を要したという事実、あるいは事態がここまで深刻になるまで合意が法曹三者の間で形成されなかったということにつきましては、私は恐らく法律家に対して最も強い批判を持っている者の一人でございます。しかし同時に、これまでの挫折の経緯も私は十分に知っておるつもりでございます。そのような者といたしましては、ようやくにして改革の具体的な第一歩がここで結実しようとしていることに深い感慨を禁じ得ないのでございます。これまで改革を阻んできたある意味での現状維持的な思考というものが、今次の改革の実現によりまして部分的にせよそれが打ち破られていくきっかけが形づくられるのだとしたら、長い目で見ましてその意義は大変大きいものがあると私は考えるものでございます。
 第三は、今次の改革によってより抜本的な改革が棚上げされるものではなく、関係者が直ちに、さきに述べた抜本的な課題を含めて検討を開始して、法曹養成制度全体の改革を実現するための作業を開始するということになっているということでございます。法律家のこれまでの現状維持的な思考が今次改革の実現によって打ち破られて、真に国民的見地に立って法曹養成制度のあり方が考え直され、かつ実現されていくことを強く希望しておる次第でございます。
 また、今次の改革の内容は、それ自体大学の法学教育を終えた直後の者の合格可能性を相当大きく広げることによりまして、大学における法曹養成教育の分担ということに好ましい影響を与えると法学教育のOBといたしましては考えているわけでございますが、それにとどまらずに、抜本的な改革論議が大学関係者も参加して行われるという話でございまして、それが大学改革の動きを加速する効果もあると期待しているわけでございます。
 以上のような観点から、ぜひともこの法案は前向きの方向で御検討いただき、かつそれが通過するように御努力をいただきたい。かつては法学教育に携わり、現在は弁護士として実務を担当し、また、ただいまはいろいろ立法にも関与いたします私の心からなるお願いでございます。
 どうもありがとうございました。
○委員長(矢原秀男君) どうもありがとうございました。
 以上で参考人の方々の御意見の陳述は終わりました。
 それでは、これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○千葉景子君 きょうは、中坊参考人とそして三ケ月参考人に御出席をいただきまして本当にありがとうございます。ただいま貴重な御意見をお聞かせいただきまして、ぜひ私たちの審議に役立たせていただきたいというふうに思います。
 この機会でございますので、数点それぞれの参考人の方からもう少し深い話を聞かせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いをいたします。
 今、中坊参考人、三ケ月参考人からそれぞれ御意見を伺わせていただきまして、司法試験の現状について問題があると、中坊参考人からは病理現象というお話でございましたし、三ケ月参考人からも今後の抜本的な改革へ向けた法曹人の取り組みが求められるというお話もございました。
 私も、現状の司法試験そのものがこれでよろしいということはないというふうに認識をしているところでございますが、ただ一つ、まず中坊参考人にお尋ねしたいというふうに思いますが、先ほど病理現象というんでしょうか、非常に多数回にわたる受験者が多い、滞留をしているということについて発生原因の一つとして、出願者数が増加している、しかしながら合格者数がそのまま据え置かれてきたという点を御指摘になったかというふうに思います。私もこれを考えてみるに、ずっと出願者数の変動があるにもかかわらずほぼ五百名前後で合格者数が終始をしてきたということについては、これは今後改善をしていく必要はありますけれども、これまでの間もこの点についてはもう少し改革といいましょうか、合格者の増加などが図れなかったんだろうかという感じもするわけです。
 そういうところから、中坊会長、実務の面からごらんになって、あるいは修習を終えられて受け入れをされる側としましても、これまでの間、法曹人口あるいは合格者数が据え置かれてきたということはどうお考えになっていらっしゃるか、まずその点についてお考えをお聞かせいただきたいと思います。
○参考人(中坊公平君) このような現在の司法試験の現状に至りました根拠として、今おっしゃいましたような指摘はまさに適切だと思っております。
 それでは、このように据え置いたというのは一体だれの責任なのかという問題はやはりあるかと思っております。この司法試験そのものを管理されているのは法務省でありますし、また修習を直接管理されているのは最高裁でありまして、やはり第一義的にはそのお二人がなぜこういう合格者数を限定されていたのかということになろうかとは思いますが、しかしながら私たち日本弁護士連合会といたしましても、今からの反省ではありますけれども、この問題についてさらにもっと努力をして、我々の方としても積極的に提案していく必要があったのではなかったか、いわば法曹三者共同の責任の結果このような事態を招いたということにつきましては、私は大変遺憾なことであった、このように考えております。
○千葉景子君 今、合格者数あるいは司法修習あるいは司法試験について改善をしていく必要性の基本的な考え方をお示しをいただいたかというふうに思いますが、先ほどその関係で、もっと運用の改善というのができるのではないか、考査委員の問題あるいは報酬の問題、それから成績の通知とか正解の発表とかこういう問題を御指摘になられましたけれども、考査委員の問題についてもう少し実情とか具体的な面で何かお気づきの点などがございましたら御指摘をいただきたいと思います。
○参考人(中坊公平君) 現在、受験者数が非常に増加しておりますことから、考査委員一人一人の負担が大変なものだというふうに聞いております。
   〔委員長退席、理事中野鉄造君着席〕
一人一人の答案を非常に慎重に調べなければならない、この労苦が大変だと聞いておるわけでありまして、そのためにはやはり一人でも多くの人たちがこの答案を見るという、すなわち考査委員を増員させることによってその負担を軽減していくという方法が一つ考えられると思いますし、二つには、この一人一人のいわゆる考査委員の報酬の額が、私も詳しいことはよく存じませんが、大体答案用紙一枚について百円余りだと聞いておるわけであります。このような安いもので、しかも長期間大量のものを調べなければいけない。そういうところからどうしても採点が技術的にちょこちょこっと、ここが書いてあればこれで合格、こういったような機械的なことになりかねないことになっておると思っておりますので、この考査委員側の改善は運用改善の中で必要ではないか、私はこのように考えております。
○千葉景子君 今のお話ですと、こういう運用の面から改善を加えることによって大分司法試験のあり方そのものも改善できる部分があるんじゃないかというように私もちょっと感じるわけなんです。
 さて、先ほどからお話が出ていますように、法曹人口あるいは合格者数の増加、これは今後当然考えられていくことだろうと思うんです。しかしながら、三ケ月先生もおっしゃられましたように、ただ増加したということではこれは質の面からも問題があるということでございますが、中坊参考人、そして三ケ月参考人にそれぞれお話を伺いたいんですが、現状と、そして今後の問題として法曹人口の増加、それに伴う条件整備あるいは国民との接点とかそういう部分でよりサービス業務といいましょうか、あるいはリーガルサービスというんでしょうか、そういう面で考えていくべきところというのはあるかと思うんです。これまでの現状反省なども踏まえて、今後どういう点がこれから必要になってくるのか、その点についての御指摘などあればそれぞれからお伺いさせていただきたいと思います。
○参考人(中坊公平君) 確かに、法曹人口の問題というものはやはり法的需要とパラレルなものだと思っております。法的需要というものが我が国においてどの程度あり、またどうなっていくかという問題であります。また、ある意味においては掘り起こしてもいかなければならない側面もあろうかと思っております。そのようにいたしますと、やはり問題は現在の司法の状況がこのままでいいかという問題に帰着するのではないかと思っています。
 現在の司法というものは、国民一般からいたしますとやはり遠いものであります。またわかりにくいものであります。そしてまた、判決の内容等につきまして納得できないものも多いわけであります。したがって、諸条件の整備ということであればやはりこの司法の改革をしていくことがまず一番に望まれる。私といたしましては、先ほどから申し上げますように、司法というものがもっとまず国民に身近なものになるようにいろいろ直していかなければいけない。そしてまた、わかりやすいようにしていかなければならない。そしてまた、納得しやすいものにしていかなければならない。その結果、司法の容量がもっと大きくなっていく、国民が司法に接する機会がもっと大きくなる、こういうことが必要ではなかろうか。
 そのためには、例えば法律扶助等によるアクセスの権利等の確保も図られなければなりません。このようないろんな諸条件が整備されていく中で法的需要というものが増し、それとの関連においてまた法曹人口の増加も論じられていくべきものではなかろうか、このように考えております。
○参考人(三ケ月章君) 今後の日本の法律家の国際的な要請、国内的な要請に対してどういうふうにしてその資質を高めていくべきか。まさに日本の司法制度の直面する最も根本的な問題であると考えるわけでございます。私の考え方は、やはりこういう法律家のあり方というふうなものは非常に時代によって、時代の要請を敏感に反映するものであろうと考えておるわけでございまして、戦前の法律家のあり方、戦争直後の法律家のあり方、それから現在要請される法律家のあり方というふうなものの間には非常に大きな格差があるんだということを国民は敏感に感じております。
 しかし、法学教育なりあるいは法曹実務家の方はとかく今までの伝統の中で物を考えがちでございまして、私はそういうことを考えますならば、やはりまず意識の変革はどちらの方が進んでいるかと申しますと、今や国民の方が進んでいる面さえあるのではないだろうか。例えば、日本では訴訟制度が伸び悩んでいるから法曹人口は要らぬというのでございますが、私は教授として立っておりましたときも多少感じておりましたし、また十年間弁護士としていろいろな面を経験いたしまして感じますことは、やはり非常に法律家の数が少ないがゆえに法律家に事件を依頼するネックが多いし、その報酬の取り方が不明確であるし不安であるし、それからやりましても司法制度の問題で不必要なままに引き延ばされたりして、いたずらに時間と費用がかさんでいくということに対する非常に敏感な国民の反応があるのではないだろうか。国民のそういうものに専門家である法律家なり学者なりの方がむしろ自分のこれまでのあり方を反省していくことが一番大事なことなんじゃないかと、法学教育のOBとそれから現在の実務家としての感想を持っておるわけでございます。
 一つの考え方といたしましては、やはり法曹養成制度、確かに戦後四十年間続いた司法研修所の制度、いい制度であることはだれも否定しない面がございますが、どちらかと申しますとこれは余りにも過去の行き方になじんだ小手先の技術教育の面があって、戦前、戦争直後の現実と現在との間にどれだけ国際的な要請の開きがあるのか、さらには国内的な要請にどれだけ開きがあるのかということに対して、果たして戦後の研修教育は対応できたかということになりますと、私は問題があるんじゃないかと思うのです。
   〔理事中野鉄造君退席、委員長着席〕
 そういたしますと、将来の法曹養成を担う修習としては、そういう技術教育の方は多少スローダウンいたしましても、もっと国際的な企業の第一線だとかあるいは行政官庁の業務であるとか国際金融の面であるとかの生々しい動きをむしろ吸い取るような形での研修制度を取り入れながら、新しい時代の息吹を修習時代から感じ続けるような工夫が要るのじゃないかなということを感じているわけでございます。
○千葉景子君 ところで、今国民の方が進んでいるのではないか、あるいはもっと国民に対するアクセスが重要なのではないかというような御指摘をいただきまして、これはこれからも多分検察庁や裁判所そのものにもさまざまな取り組みをしていただく必要があろうかというふうに思うんですが、中坊会長、弁護士会ですね、これも法曹の大きな一翼なんですけれども、先ほど法律扶助の問題などの御指摘もありましたが、やはり弁護士会あるいは弁護士としての今後の自己改革のようなものも多分必要になってこようかというふうに思うんです。
 それから三ケ月参考人には、大学の教育などの関係も先ほどちょっとお触れいただいたわけなんですけれども、やはりそういうものが相乗作用といいますか、それぞれが積み重なって初めて、司法試験だけをどうするのではなくて、全体としての司法、法曹というものの向上が図れるというふうに思っております。
 そういう意味でそれぞれに、お伺いしたいんですが、中坊会長には特に最初にお触れいただきましたが、司法試験の制度、それに連なる研修制度の統一性といいましょうか、そういう法曹一元の面からも評価をなさりつつ現状の問題点を指摘なさいましたので、そこもお踏まえいただきましてのもし御指摘がございましたら、あるいは弁護士側としてこういう点はやはり改革すべき点だというような点がございましたらお聞かせいただきたいと思います。
○参考人(中坊公平君) 先ほども若干申し上げましたが、司法改革ということを考えましたときには、やはり一つには司法の容量を大きくするための阻害になっていいろんな法律改正、当事者適格等を奪っている法律改正という面もありますし、そしてまた裁判制度の運用の問題もあります。しかし同時に、今千葉先生が御指摘なさいましたように、弁護士会自身にも大いに問題があると私は考えております。
 まず、弁護士会というものはやはり同業者の間におけるエゴだと思われるようなことに対しての感覚がやや鈍っておると思っております。私は、弁護士会というものが本当に国民の立場から見てどう見られておるのかという側面を考えていくという意味での姿勢の転換がまず必要ではないか、このように考えております。その最たるものといたしましては、例えば報酬規程一つにいたしましても、現在のように極めてわかりにくい報酬規程で本当に市民とのアクセスが得られるんだろうか、こういう具体的な問題があろうかと考えております。
 しかし、それ以上にもっと弁護士会にとって基本的に反省しなければならない点があると思っております。それは、いわゆる弁護士がオンリービジネスと考えている弁護士が多いのではないかという問題であります。弁護士というのは基本的に言うまでもなく公共的な使命を帯びた職業でありまして、英語ではプロフェッションと言われておるものであります。ところが、プロフェッションであるべきものがオンリービジネス化してはいないか、いわば弁護士法一条がお題目で唱えられているのではないかという点に関しましては、私は会長といたしまして極めて遺憾に思い、この点を単に倫理として述べておるというだけでは足らない。さらにもっと、例えばキュービックとかいうアメリカのABAでもそういうような委員会があったようでありますけれども、一定の公共的な仕事をせよといったような義務を課するというところまで日弁連もこれからは考えていかなければならないのではないか。
 あるいはまた、我々が裁判所の運用がいけない、検察庁の運用がいけないと言うているだけではなしに、その裁判官、検察官に弁護士からなっていくという方向も考えていかなければならない。それを単に口で言うているだけじゃなしに、本当に弁護士の中から裁判官、検察官になることによって、いわゆる裁判官不足、検察官不足問題を弁護士がみずからの手で解決していく、こういう意味における公共性もまた必要ではなかろうか、私はこのように考えております。
○参考人(三ケ月章君) ただいまの御指摘、特に弁護士会側の反省すべき点、大学制度の反省すべき点ということを含めまして、私は大学制度側の反省についてどう考えているかということを主に述べたいわけでございますが、その前に、ただいまの中坊参考人のお話を承りまして、私非常に感銘を受けていることを申し上げさせていただきたいのでございます。
 実は、先ほど私の報告の中に述べましたように、そういうふうな形でもっと法曹全体が日本のそういう問題について前向きに取り組んでほしいということを三十年来述べ続けてまいったにもかかわらず、それが孤立した声にとどまっていたと先ほど私は申し上げたわけでございますが、こういう国会の法務委員会の席上でただいまのような言葉が日弁連会長の口から出てくるということに私は非常に大きな時代の流れというものを感じると同時に、非常にうれしいという感じを持ち、やはりこういうふうなところで何か成立しない限りはしょせん司法試験制度の改革などは小手先の改革の繰り返しにすぎないんじゃないかと思っていたわけでございます。非常に大きな感銘を受けたということをちょっと私の弁ずる前に感想を申し上げさせていただきたいと思います。
 さしあたり、私に向けられました法学教育の方の対策はどうなのかということでございますが、実はこれは鶏と卵の関係でございまして、非常に司法試験が貧弱な状態でいっておりますときには、大学の教育の方ではこれに対してもそれに応じたエネルギーしか割こうとしないわけでございますし、これの窓口が広がっていきさえすればそれに応じた努力はおのずから法学教育の方からもそれに向けて努力がなされていく、こういうダイナミックの中に置かれているというのがこの問題であろうと思うのでございます。
 この司法試験制度の今回の改革は、法制審議会の司法試験制度部会というところで非常に活発な論議の対象となりました。そこでは、これはぜひ通していただきたいが、これでとどまってはいけないというふうなのがそこの意見でございまして、将来そういうことをぜひ考えていただきたいが、さしあたり出発点としてはぜひこれを通していただきたいというのがこの司法試験制度部会の全員一致の意見でございます。私はそれの部会長を務めさせていただいたわけでございます。
 そういうふうな中で、大学の教官が非常に多く出ているのでございますが、その人たちの意見を要約いたしますと、しょせんいかに法学教育が教育の部面で頑張ってみましても、二十人に一人というふうな試験制度はもはや試験制度の合理性をはるかに超えておる。そんなところではどんなに努力しても、これは結局いかにして足を引っ張って落っことすかということに主眼を置くことにならざるを得ない。本当に大学教育と法曹養成とを強い、太いチャンネルで結ぶためには、試験制度というものをあるべき合理性の限度にまで引き戻すということをしてくれなければ、法学教育に幾ら頑張ってくれといったってとてもではないが対応し切れない。
 しからば合理的な限度というのはどこか、こうなりますといろいろ主観によって分かれますが、私が長い間大学教育に携わりました経験からいたしますと、せめて十人に一人という試験制度であるならば、志のある者はそれ相当な努力をすれば合格いたしますし、そういう実績が続いてくるならば、今度は司法試験離れというふうな形でなしに、非常に今後の日本の国際的なまた国内的な社会で魅力のあるところの法曹社会へすぐれた人材をどんどん吸引できるのではないだろうか。法学教育を現在の試験制度のままで改革せいという声と、まず試験制度の方で入り口を開いてくれたらば我々も頑張ると。どっちかといえば法学教育に携わる者としては後者なんだという声が非常に強うございます。
 最近、先ほどもちょっと申しましたように、私がかつて所属しておりました東京大学でも、やはり法学教育のレベルダウンはいけないので、世界各国のレベルまでいくためには大学院教育を法学教育の部面でも活用しなきゃいかぬということになっているのでございますが、その場合でも、法学教育の担当者があるシンポジウム、これは法学教育と企業との関係というそういうシンポジウムでございましたが、司法試験の現状が今のままでは、いかに法学教育で大学院制度などを利用しようとしてもいい者は絶対に行かない。むしろそういうふうにいい者をそこで養成されても、みんなどこへ行くかといったら、もっと魅力のあるところにどんどん行っちゃって、結局司法試験の方は取り残される。それではいかぬので、やはりせっかく大学教育を充実しようと思ったならば、そういう人間が喜んで抵抗感なしにすいすいと入っていけるように窓口を広げてくれないと困るんだという声が出てくるわけでございまして、教育に携わった者の声としては私は全くそのとおりであろうと思います。
 鶏と卵との関係ではございますが、まず突破口をどこに求めるかといったら、やはりまず制度の改革及び司法制度をより魅力あらしめるという、こういう方向から行っていただければ法学教育はスムーズにこれにフォローしていく、こういうふうに私は考えております。
○千葉景子君 ありがとうございました。
 いろいろな御意見を伺わせていただいたので、最後にちょっと中坊参考人にもう一点だけお聞きして終わらせていただきたいと思いますが、この法律に基づいて合格者が増加をしていくとしますと、今研修所の問題とかちらちらと耳にするようになってまいりましたけれども、これからの合格者増に伴う研修所や研修内容あるいは実務修習の問題等ございますが、そういうことについての今後のお考えとか、あるいはこうしていくべきだというようなことがございましたら御指摘をいただきまして、私の方からの質問を終わらせていただきたいと思います。
○参考人(中坊公平君) 確かに今回、合格者が増員されることに伴いまして修習生の数もふえていく、このように考えられます。そのようにいたしますと、研修所の移転問題も起きてまいりましょうし、それにも増しまして、現在全国五十二の弁護士会があるわけでありますけれども、その中で十三の単位会は修習生が配属になっていない未配属庁というものであります。この十三の未配属庁には、増員の際にぜひ修習生を配属していただきたい、このような申し入れを日弁連としてはいたしていきたいと思っております。そしてこの未配属庁という問題は、いわゆる過疎地対策とも極めて影響がございまして、例えばこの十年間におきまして、一番弁護士会の会員の増加したところは五十二の中でどこかと申しますと、奈良県なんです。六二%の増加率なんです。そこはまさにその十年間から修習生の配属があったところなのでありまして、このように修習生の配属があることは、すなわちそこでまた弁護士を開業していくということになります。過疎地対策もそういうことで解消していくわけであります。
 こういう問題等に関しまして、あるいは移転そのものに伴いますいろいろな問題、教官の通勤の問題あるいはもっと広範囲から教官を採用してもらわなければいけないような問題、このようないろんな問題が考えられると思っております。そこで、日弁連といたしましては、現在増員に伴う協議会というものを発足させておりまして、そこで今いろいろな具体的な課題について成案をつくっております。これは近日中に成案ができ次第、最高裁の方に申し入れていきたい、このように考えております。
○千葉景子君 終わります。
 ありがとうございました。
○北村哲男君 北村でございます。
 両先生方、本日はどうもありがとうございました。片や私どもの所属する日弁連の現役の会長の中坊先生、また、片や私がかつて司法試験を受けたときに口述試験の試験委員であられた三ケ月先生、しかも私が答えられなかったということで、きょうは非常に緊張しております。
 千葉委員の方から多くのことを聞かれましたので、私の方から聞くことは余りないのですが、まず中坊参考人の方にお伺いしますけれども、中坊参考人は統一、公平、平等の原則ということを強調しておられました。この原則は、丙案が実現していく過程の中で、あるいは今後改革協議会の中で抜本的な改革ということを言っておられますけれども、そういう中でこの三つの原則が崩されていくという危惧があるのではないかと思うのですけれども、その辺についてはどのようにお考えでしょうか。
○参考人(中坊公平君) 先ほども丙案に対する日弁連の評価といったものを申し上げましたように、これは極めて丙案の導入というものは、統一、公平、特に公平の原則からは大いに離反するものである、このように考えております。したがって、決して丙案の導入は望ましいものだとは考えていないわけであります。したがって、現在二百名に増員したこと、並びにきめ細かい運用改善を図っていただく中でこのような多数回受験の滞留現象というものが少しでも少なくなっていく、そして改善の効果が見定められれば丙案の導入に入らないということが一番望ましい形ではなかろうかと思っております。
 同時に、改革協の方におきまして、先ほど言われる大学教育等の関連におきまして、あるいは法曹人口のことからも考え合わせまして、もっと抜本的な案ができるならばそれを先に実行してもらうという、局面ががらっと変わるというような状況の中でまたこの丙案の導入が考えられる余地もある、このように考えております。私といたしましては、先ほども申し上げましたような丙案の導入によって五百一番が落っこちて逆に千八百番が受かるといったような、こういうような現象というのは決して望ましいものではない。しかも、二つの群れをつくるということの危険性は、今考えられている以上に大きい。
 少し長くなりますけれども、私たち弁護士は昭和の初めに試験が二つありまして、一般の司法試験と政令五十二号の試験があって、片一方はやすかったわけです。そういう弁護士資格の中に二つのことがあった経過があります。そのために、どれほど長い間弁護士がお互いに違う試験によって受かってきたということのためにいろんな問題を起こしてきたかということは、私たち自身がよく知っております。こういう二つの群れをつくるということの危険性ははかり知れないものがある、私はそのように考えております。
○北村哲男君 もう一つ、先ほども千葉委員からの質問に半分はお答えになっているんですけれども、確かに修習生から弁護士になる数は非常に多い、三分の二ぐらいは弁護士になっていくんですが、さらにこれから数もふえて多くの弁護士の人たちが研修所から卒業していくんですが、弁護士の倫理の面で、一つは確かに公共性を失った金もうけ主義の方に流れていくというおそれはあるんですけれども、もう一つは弁護士自治との関係で、弁護士会がしっかりしないと倫理的な面、特に最近新聞なんかで時々出てくるような、人のお金を使ってしまったとかという非常に悪い面も多くなってくるんだと思います。その辺について会長はどのような対処をしようとしておられるのか、お考えをお伺いしたいと思います。
○参考人(中坊公平君) まさに弁護士会は自治権を持っておりまして、その自治権に基づきまして弁護士個人の指導監督を厳格にいたさなければならない、このように考えております。しかも、我々がしておるということが外部にすっきり見えるということが必要ではないかというようなことも考えております。そのために、つい数カ月前には懲戒事由といったものを公表するということに踏み切った会則改正等も行いました。
 そして現在、このような綱紀、懲戒の問題に関しまして、幾つかの具体的な案を考えております。例えば、小さなように見えますが、いわゆる除斥期間というのが三年になっておりますけれども、そういうような問題をどのように改正していくかというような問題、悪いことをした者がきちっと処罰をされるというような状況にしていかなければならない。そのようなことをいろいろ含めまして、現在日弁連といたしましてはこのような綱紀の問題に関しましては一層努力を続けていきたい、このように考えております。
○北村哲男君 もう一点、現在の研修所教育の中で、研修所は裁判所が運営しているということもあるんでしょうが、研修所の教育が裁判官教育あるいは検察官教育に偏るというか重くて、大多数の弁護士志望者に対する弁護士教育がやや薄いんではないかという感じがするんですけれども、その辺についての会長の御意見はいかがでしょうか。
○参考人(中坊公平君) 具体的に研修所の教育がどのように偏っておるのか偏っていないのかについては、私自身は正確な知識を持ち合わせておりませんので断定的なことは申し上げられませんが、しかしながら、いずれにいたしましても研修所のあり方、そういう教育のあり方、カリキュラムの組み方その他のことに関しましても、まず必要なことは法曹三者が対等の資格で話し合うことではないかと思っております。ともすれば、研修所は最高裁がやっているんだからあなたたちが余り関係しなくてもよいと、このような姿勢では困るわけでありまして、我々といたしましては今回の増員に伴いましても、先ほども申し上げましたように協議を申し入れまして、協議をする中でそのような問題についても実態を明らかにし、それに伴うものにしていかなければならない。もちろん、今言いますように、弁護士教育のカリキュラムというものももっと充実したものにしていただかなければならない、このように考えております。
○北村哲男君 ありがとうございました。
 三ケ月先生にお伺いしたいと思います。
 司法試験制度そのものの理念、今中坊会長からも言われたんですが、公平、平等、統一という原理、それ自体は正しいということで、しかも今の現状が二万人以上の受験者のうち五百人しか受からないということで、これは原理原則は正しいのであるけれども、一点二点の差で一年間を受験生が棒に振ってしまう、滞留現象が起こる、それは一種の病理現象なんだというふうに中坊会長は言われました。三ケ月先生はその点について、これは一種の病理現象と見られるのか、あるいは司法試験制度の基本、根本に触れる構造的な欠陥であるというふうにお考えになるのか、その辺はどういうふうにお考えでしょうか。
○参考人(三ケ月章君) 私は決して構造的な問題だとは思っておりませんで、やはりこれは試験制度の常道から外れている、余りにもひど過ぎる。先ほど申しましたように、どの試験制度をとりましても、一番難しい入学試験を考えてみましても、本当に競争相手になる人間が十人程度であるならば、私は試験制度というものはどんな試験制度であってもうまくいくんじゃないか、日本の過去の経験から申しましても、入学試験を見ましても、採用試験を見ましても、うまくいくと思うんですが、率直に申しまして、百人に二人しか通らない試験というのは世界じゅうに例がないのでございます。
 ちょっと余談を申し上げてよろしゅうございましょうか。数年前でございましたか、ドイツから高等裁判所長官クラスを含む大デレゲーションが日本の司法制度の視察にやってまいりました。法務省の講堂で大シンポジウムをドイツ語でいたしました。私も出ました。ここに法務省の方いらっしゃると思いますが、そういうことをよく御存じの方も多いと思うのでございます。そのときに日本の司法制度とドイツの司法制度の対比の問題が出てまいりました。
 御承知のように、日本の司法制度はこれまではドイツの司法制度をまねするところから出発してきたわけでございますが、今や日本の国際的な地位と日本人のいろいろ一生懸命な勤勉さということもあって、学問の面におきましては、ある程度と申しますか、むしろ向こうの方が我々のことを勉強することも多くなってきているのがテクノロジーの世界の実情でございますし、社会科学の面でも少しずつそういうアンバランスは是正されていると思うんです。
 そういう状態におきましてドイツの一流の実務家が日本の視察にやってまいりまして、いろんなことを見てまいりました。そして、たまたま法曹養成の問題もそこでの論議の対象になりました。そして、彼らが日本の司法試験の実情を見まして、そうして百人に二人しか通らない試験だという現実にぶつかったときの彼らの反応の仕方がどういうことであったかと申しますと、こんなことは考えられない、ドイツであったならばこれはすぐに憲法抗告を申し立てて、こんな試験制度をやっているのは違憲である、そうするとドイツの憲法裁判所は、余りにもわかり切ったことであるので、口頭弁論を開くまでもなしに即日これは違憲だという決定をするであろうと、高等裁判所長官クラスの人たちが即座にこういう返答をしたわけでございます。百人に二人などというものでは、手をとり足をとって引きずりおろすような試験制度がいかに法曹試験の常道から外れているか、私どもも自分でもそういうことを言ってきたのでございますが、ここまで国際的にそういう目で見られているのかと思ってびっくりした次第でございます。
 そういう意味におきましては、病理現象とかなんとかというんじゃない。病理現象というのは、一定の試験制度がある中で、しかもそれがとにかくうまくいかないということだろうと思うんですが、私の表現によりますと、病理現象が入り込むか否かの前の試験制度そのものの枠組みとしてむちゃくちゃである、こういうふうな感じを恐らく外国の法律家は持っているんじゃないだろうか、こういうふうな感じでございます。やはり私はそういう意味で、それは広い意味での病理現象といえば病理現象、しかしどこかから手をつけていかなきゃならないということでございますから、幸いに法学教育の方も少し気合いがかかってまいりました。
 私がいろいろ大学教授との懇談会などで意見を徴しましても、司法試験制度の方が少しずつ動いてくれれば我々も気合いが入るんだがというふうな声は法学教育の関係者の間にかなり充満しておりますので、これがいい方向へのきっかけになっていけば、病理現象というか枠組みそのものが問題のものが直っていくのには、私がさっき申しましたように、今すぐここのところでやったって無理でございますから、長い間かけて、やがて二十一世紀にでもなりましたならば、気がついてみたら随分国際的な水準に接近したんだという努力が積み重ねられていけば病理現象的なものもおのずから変わっていくんじゃないか、こういうふうに考えている次第でございます。
○北村哲男君 終わります。
 どうもありがとうございました。
○中野鉄造君 私は、本法案については基本的には賛意を持ちながらも、現行の試験制度等について幾多の疑問を抱いておりますので、その中から幾つかをお尋ねしたいと思います。
 まず、中坊参考人にお尋ねいたしますが、例えば一般職の公務員や一般企業の試験というのは、これは完全な就職試験でありますが、この司法試験はどの種の試験になるのか、その位置づけについてお尋ねしたいと思います。
○参考人(中坊公平君) 司法試験は、位置づけといたしましては資格試験であります。しかしながら、先ほども若干申し上げましたように、司法試験に合格した者は原則として修習生として採用するということになっておる側面も忘れられない、このように考えております。
○中野鉄造君 だから、司法試験はいわゆる就職試験ではないと考えながらも、現実には完全な就職試験になっていると言われておりますが、そこでその辺の意識のギャップをどのように考えていったらいいのか、その辺のところをもう少しお尋ねしたいと思います。
○参考人(中坊公平君) これは私の個人的な意見でございますけれども、資格試験ではありましても結果的に修習生に採用するということ自体は私はいいことだ、このように考えております。
○中野鉄造君 そこで、先ほどからいろいろお話もあっておりますように、国民生活が複雑多様化して、またこのように国際化している中で、国民のための法曹としての必要人口はどの程度なのか、今後五年、十年の展望を含めて、その辺のところもお聞かせいただきたいと思います。
○参考人(中坊公平君) ただいまのお答えには、一定の数をもってということはなかなか難しいと思っております。先ほども若干申し上げましたように、法的需要、また法的需要を生み出すための諸条件の整備、こういうものが行われている中で法曹人口がまた決められていくものでありまして、現時点においてどれだけが妥当かということはなかなか難しい問いではなかろうかと思っております。
 しかしながら、例えば事件数だけを考えてみましたときには、現在の事件数というのは昭和三年ごろと余り変わらないんです。だから、事件は余りふえていないわけです。そのような現象等もあることもまた考え合わせなければならない。また同時に、裁判外の業務が非常に拡大してきている、あるいは国際的な仕事がふえてきているということもまた考え合わせなければならないところでありますし、そもそも国民がもっと自分の権利を裁判所に訴え出るという状態にしていかなければならない。このような諸条件というものが整備されていく中で、弁護士の人口、いわゆる法曹人口も決まっていく。しかし、現時点においては、少なくとも我々としてはそれではもう十分であるかというふうに思いますと、私はやはり十分ではない、このように思っております。
 司法の容量は少なくとも行政の肥大化傾向と比較いたしまして小さいわけでありまして、この容量はもっと大きくしていかなければならない。大きくしていくためには必然的に法曹人口もまた大きくしていかなければならない。したがって、傾向といたしましては、今幾らが適当かということは言えませんが、少なくとも法曹人口そのものはもっと大きく拡大していく方向になければならない、このように私は考えております。
○中野鉄造君 今回の法案は確かに一歩前進という点については評価できますけれども、しかし学識者の中には今後毎年これは千五百人ぐらいずつふえていったっていいはずだと、こういう意見も多いようです。そうであってこそこれは国民のニーズにもかなうんじゃないかと思うんですけれども、仮にそういう千人、千五百人というようにふえていったとしても決して法曹の質に変化はないのじゃないか、こう私は思考いたしますが、もしそうなったときにはこういう問題点があるという、もしそういうものがあるとすればどんなことが考えられるでしょうか。
 どなたでも結構ですが……。
○参考人(三ケ月章君) 中坊先生への質問と思ってうっかりしておりましたが、もう一度ポイントを追わせていただきますと、どのぐらいの人口が必要かということでございますね。この点につきましては先ほど出ました法曹基本問題懇談会というので、法律家のメンバーは大体半数以下でございまして、あとはジャーナリズム、行政官のOB、それから他の専門の大学教授等々で集まったところで一応いろんな案が出ましたところでは、もし今「のような形で全員とにかく公務員としボーナスまでも給与するということになりますとこれはいろいろな障害が出てまいりまして、二千人ふやせなんとかといったってそうすぐにはいかぬだろう、将来の法曹人口という角度からすれば千人ないし二千人が適当であるということが法曹基本問題懇談会の結論として出ているわけでございます。
 しかし、現在のような形の月給体制、公務員体制をやりますと、それは全部が全部裁判官、検察官になるならば金も出すけれども、結局自由職業になるのにこれだけのあれというのはほかにないではないか。これは既に今までのところで、これ以上三倍にせよ、四倍にせよ、とんでもないという恐らく財政当局からのいろいろなあれがあると思うわけでございまして、そうなりますと、ただいたずらにそれで二千人にしてくれ、一千人にしてくれといったってそんなのは机上の空論ではないか。もし仮にそういう形で、現行制度を余り大幅にいじらないでやればまあ七百人ぐらいから出るよりしようがないではないか。これが千人になり二千人になったならば、先ほどもちょっと私も触れましたが、司法修習体制の大きな改革というふうなことにまでいかざるを得ない。
 場合によりますと、これは国会の先生方にお願いしたいことなのでございますが、今も大きな行政、小さな司法と言われましたが、非常に日本の司法予算は少ないのでございます。今の日本の国力をもってすれば、本当を言いますと、今の司法修習生を二千人にふやすぐらいのことはやっていただいてもいいとは思うのでございますが、これがなかなかやはり現実問題として難しい。そうなってきたならばどちらをとるか。現行制度を維持するか、それとも将来の法曹人口のあるべき姿をねらってむしろ思い切って過去を振り捨てていくか、どっちかの選択にならざるを得ないとすれば、恐らく法曹基本問題懇談会の意見も、また司法試験制度部会の識者の意見も、私の意見もそれは後者でございます。
 この点につきまして客観的なある種一つの報告を申し上げますと、一昨年ですか一昨々年でございますか、日本とアメリカとの司法制度の領域における大きなシンポジウムが開かれました。当時の法務省の人事課長の方なども非常に努力されまして、ホテルオータニのある会議室を全部借り切った大シンポジウムを開きました。その中で変化する社会における法律家の役割というこういうセクションがございまして、私もアメリカの一人と一緒にコンチェアマンを務めたわけでどざいます。
 そこで、東京大学の新堂教授、この方は私と一緒に民事訴訟法を専攻していてもう来年定年になる長老教授の部類に入る方でございますが、その人が少なくとも将来におきましては今の人口を四倍にする必要がある、ということは司法試験を受かる人口はやっぱり二千人ぐらいは採らないと国際化では置いていかれるぞということでございます。
 それから、法曹基本問題懇談会で配られました資料、これは公にされております。ジュリストの臨時増刊の中に「わが国の法律家はこれでよいか」、法務省の人事課の編で非常に貴重な資料が載っかった臨時増刊がございます。その中でこういう事実が明らかにされております。今二千人ずつ司法修習生を探っていったとしても、二十一世紀になって――世界の比較的先進国と言われる国の中で一番法曹人口が少ないのがフランスでございますが、フランスにも到底追いつかない、今から努力してもですよ。今から二千人ずつ採っていってもフランスの法曹人口にさえ追いつかないということが推計の専門家の手によって明らかにされておるわけでございます。
 そういうことを考えますと、まさに先生のおっしゃったこと、私の言いたいことをそっくりおっしゃっていただいたような感じがいたしました。ただ、そこまで一挙にいきますと、今、中坊参考人が言われましたように、いろんな波及効果が、がちゃがちゃ生臭い問題でございますから、競争相手がふえるだとか質が落ちるだとか、それを一挙にごりごりやりますとまた思わぬ副作用も出てきて本来ねらっていたものがぐちゃぐちゃになる可能性があるとすれば、そこは利口にうまいぐあいに弊害をむしろ少なくしながら、長所の方も余り欲張らずにできるところから地道に積み上げていって、その間に国民の意識も変わりましょうし法律家の意識も変わってまいりましょうし、今であったならば非常に不可能な改革と思われることもすっと改革できるような時代があるいは二十一世紀になったら来るかもしれないということをねらいながら地道な改革を進めていく以外にないのじゃないかということを中坊参考人もおっしゃりたいと思うし、私も先ほどの公述の中で、いろんな問題があってすぐにはいかぬけれども第一歩としたい、こういうことを申し上げた趣旨でございました。
○参考人(中坊公平君) それじゃ私の方からも、今の中野先生のお尋ねに対して何点かお答えを申し上げたいと思います。
 まず、今合格者の定員を千名あるいは千五百名に増加させてもその合格した者の程度は落ちないのではないかという御指摘がありました。確かに、現下のように合格水準に達しながらなおかつ合格していないという人たちのことを考えますと合格水準が落ちるということはない、このように思われます。しかしながら、これから長い将来果たしてどうなるのかということは、またその受験者の質との関連においてこれから決められていくことではないか、このように考えております。
 その次に、法曹人口というものを千名、千五百名という数、それがまた諸外国との中の比較で出てくるということにつきましては基本的には正しいと思いますけれども、しかしながら日本は御存じのように、ほぼ弁護士と同じ数の司法書士あるいは四倍程度の税理士の方というものもやはりそういう意味ではいらっしゃるわけでありまして、そのような数もまた我々としては考え合わせていかなければならない数字ではなかろうか、このようにも考えておるわけであります。
 そして、プロパーに我々司法に携わっておる者の感覚からいたしますと、確かに今法曹人口をふやす、そのことによってどこをまず一番ふやしていかなければならないのか、充実させていかなければならないのかということであれば、私は裁判官、検察官というものがもっと充実されていかなければならない。現在のように副検事さんに大方頼っている捜査であって決していいわけがないわけでありまして、本来資格を持っておる検察官がもっと検事の役割をしなければならない、また裁判官にしても同様ではなかろうか、このように考えるわけであります。したがいまして、問題は裁判官あるいは検察官の不足問題をどう解決していくかという受け皿ができることが、また数をふやすことの前提にもなるわけであります。
 これに対して我々が今どう対応していくか。もちろん定員を増加させ、予算の問題ではありましょうけれども、そういう問題を進めていただくと同時に、私たち弁護士としても、いや行かないのは検察庁が悪いんだ、裁判所の雰囲気が悪いんだ、このように言いっ放しにしているだけでは足りない、むしろ私たち弁護士の中から裁判官や検察官になっていくべきではないか、こういう方向を考えておりまして、私の方といたしましては、弁護士から裁判官、検察官にさらに任官していくことを現実のものとしたい、このように考えておるわけであります。
 そして同時に、一番基本的には、法曹人口というものは先ほどから申し上げておりますように法的需要とパラレルに出てくる問題でありまして、法的需要ということに関しましては、大変恐縮なあれではありますけれども、この国会等でいろいろな立法をしていただいております。しかしながら、その中で我々司法の者が実際にその法律を使えるということが実は少ないわけであります。
 例えば、有毒添加物があります。それに対して行政がいろいろ指定をいたします。これに対して、それじゃああいう有毒のものは困るのだ、あるいは有毒でなくてもそれが争いたいんだと言っても、実は争えないわけであります。いわゆる一般庶民にはこういう行政処分に対して当事者適格がない、このような法律になっておるわけであります。このような状況がもし司法の範囲に入ってくるならば、事件もふえてまいります。そしてまた、そういうことにおいての法曹人口もふえてまいります。そしてまた、現在製造物責任でも問題になっておりますように、何ぼ訴えを起こしてもてん補賠償である、とにかく損害が起きたものを賠償してもらうだけだ、これが今の日本の法律の定めであります。しかしながら、アメリカのように、いやそうじゃない、悪いことをしたならば懲罰賠償というものを求めるべきではないか、こういう立法が今問題になって、現在の製造物責任の中でもこの導入が我が国でも問題になっております。
 このような法律ができることがすなわち法曹人口の増加にまで触れてくる問題でありまして、先ほど言いますように、法的需要をそういう形でふやして、もっと透明なものを、行政ばかりにゆだねずに司法の範囲に、もっと我々の仕事の範囲にふえてくるような状況にしていく。このような諸条件の整備が我々は今必要ではないか。これを我々弁護士会といたしましてもあらゆる角度から国会その他の方面にも働きかけさせていただいておりますので、どうかこの点もよろしくお願い申し上げたいと思います。
○中野鉄造君 終わります。
○橋本敦君 きょうは両先生ありがとうございました。私の方から、時間が少ないのですが、二、三お伺いしたいと思います。
 今お話が出たことにも関連をするのですが、こういった問題が大きくなりましたそもそもの発端の一つに検察官の志望者が少ない、裁判官の志望者が少ない、こういうことがあったわけでございます。そういった面で、若い人たちが早く試験に合格できるようにという社会的ニーズはもちろんあるわけですが、このことだけで検察官及び裁判官の志望者がふえるのであろうかということになりますと、それは独自にまた考えるべき要素があるのではないかというように思っておりますが、その点について両先生の御意見はいかがでしょうか。
○参考人(中坊公平君) 確かに橋本先生御指摘のとおりでありまして、この司法試験法を改正いたしまして二百人増加いたしましてもそれが直ちに検察官不足問題あるいは裁判官不足問題に寄与するところはあるいは少ないのではないか。その意味では裁判所あるいは検察庁といったものの体質そのものの改善が必要である、このような指摘はもっともではないか、このように考えております。
 しかしながら、現在日弁連として考えておりますのは、相手が悪い相手が悪い、こう言っておればそれじゃ事が済むのかということでありまして、私の方といたしましては、今弁護士になった人もこれから裁判官や検察官になろうではないか、こういうようなことを運動として展開していかなければならない。そして、このことがすなわち弁護士の公共性にもつながり、先ほども少し出ておりますように、統一修習の中でなぜ国費をもってやられるのかという問題にもつながることでありまして、検察官あるいは裁判官の任官がすべて修習生からだけということじゃなしに、弁護士からも任官していくという方向を我々はもっと具体的に模索していかなければならない。そして、この不足問題をそういう立場からも変革していかなければならない、私はそのように考えております。
○参考人(三ケ月章君) おっしゃるとおり、非常にこれは難しい問題でございまして、しかも若い人間のメンタリティーの問題、それを取り囲む社会環境の問題、仕事の魅力というふうなものを若い人がどこに求めるようになりつつあるかというふうな文化的な問題、そういういろいろな問題が絡み合う問題でございます。したがいまして、人数をふやしたならばすぐに裁判官や検察官の数がふえるかというふうに問題を簡単にすることは、これはとても間違いでございまして、法務省の方が日本の法律家はこれでいいかということを考えましたときも、背後には確かに少し検察官の不足というふうなことがあったのがある意味でのインパクトになったのかもしれませんけれども、私どもがそういう将来の日本の法律家のあり方というものを考える場合に、検察官や裁判官を補充するための懇談会というような、そんなけちなものじゃないよというつもりで一貫いたしまして一度もそんな議論をしたことはない覚えがございます。
 ただ問題は、裁判官も検察官もどちらかと申しますと受け身な仕事でございますし、それから非常に緻密な、はったりのない仕事でございます。それだけにこれをどうしたならば魅力あるものとして若い人間もそれを受け入れるような形にやっていくか、これは司法行政当局に一工夫していただきたいところでございまして、これは私どもも事あるごとに裁判官の方や法務省の方に申し上げているところでございます。
 その一つといたしましては、やはり執務の内容、環境をもうちょっと一般人並みに、週休二日ぐらいは思い切って自由に法律問題を離れて休めるようにしてやる。毎日毎日ふろしき包みをぶら下げて自宅に帰ってくるというふうなことで、どうして若い人たちの気持ちを維持できるのか。そういたしましたならば、司法行政の方もそれに応じた多少の枠を広げることを考えていかなきゃなりますまいし、もう一つは、やはり転任の問題というのが、教育ママの問題とも絡みまして非常に難しくなっている。しかもこれは、昔から伝統的に検察官などは余り長い間土地にいてコネができるのはよくないというので、むしろぐるぐる回すのをよしとした時代の伝統もございまして、それは昔に比べればずっとよくなっていると私も思うんですけれども、しかしどうも見ておりますと、特に弁護士などとして法廷の下からずっと眺めておりますと、やはり転任が頻繁である。それに応じてやはり煩わしさが多い。若い連中はそれを見ていて、ある段階になってまいりますと、十年、二十年選手ぐらいのが、そろそろ子供が大きくなってまいりますと、おれやめたというふうな形になるのもいないではないんじゃなかろうか。
 どこの国でもこれは大きな問題なんですが、かえってそこでは、さっきから中坊さんが言っておられるように、法曹一元の制度がございまして、日本では簡単に裁判官、検察官がすぐ弁護士になれるというシステムでございます。外国では裁判官、検察官の人間が弁護士になるということにはかなりの決断を要する。キャリアの変更でございます。そういうこともございまして、なかなか日本特有の問題があると思うのでございますが、私はそういうところで努力していただくよりしようがないんじゃないかと思います。
○橋本敦君 ありがとうございました。
 次に、中坊先生にお伺いしたいんですが、丙案の問題点については厳しい御批判の御指摘がございました。したがって、日弁連としても可能な限り丙案を実施しないで現状の病理的現象は解消したいという基本的なお考えがこれはずっと貫かれていると思うんです。
 そういう点からいいますと、一つは、純増でうんとやったらいいじゃないかという意見もあったようにも思うんですけれども、そういう人数をふやすことと同時に、検証それからさらには見直し、あるいは協議会のところで抜本的な案が出たら丙案を実施していてもそれにいくという、二重、三重の言ってみれば改善方向を基本的に押さえながら進めていらっしゃると、こう思うんですが、その考え方の基本は、やはり可能な限り丙案というものは実施しないで現在の病理的現象は解決したいというのが一貫して流れているようにお伺いをしたんですが、そう伺ってよろしいわけですか。
○参考人(中坊公平君) 橋本先生が御指摘のとおりでありまして、丙案そのものはこれはだれが考えても決していい案ではない、しかも司法試験の根本理念に反する問題である、こういうことは大体だれもが考えることだと思っております。したがって、よほどのことがない限り、こういう丙案を導入させてはならない、このように基本的には考えておるわけであります。
 しかしながら、先ほど言いましたような滞留現象というものがどうしても改善しなければ、時によったらこういうドラスチックな案も一時期的にもせよ導入するのもやむを得ないという意味で、今回の司法試験法の改正にも賛成しておるのであります。したがって、まず日弁連が現在考えておりますのは、増員の効果それからさらに運用改善といったものを非常にきめ細かくやっていただきたい。先ほど言いました考査委員の報酬の問題とかそういうような問題についても、もっと考査委員が先ほどから言うように学識じゃなしに応用能力を本当に見られる、長期間要した者が有利にならないような問題の出題ができ、そしてまたその採点ができるというような体制に持っていかなければならない。また、受験者側の方についても情報公開等もしていただかなきゃならない。こういう運用改善についても、これは法務省、最高裁並びに日弁連側ももっと三者協議あるいは改革協の中で論議をし、これを直ちに実行していくということが必要ではなかろうかというふうに思っております。
 そして、さらにおっしゃいましたように、改革協においてもっと抜本的な案を早急に出していただいて、そういうことからこんな小手先のものじゃなしに、もっと基本的な視点からこの問題が考えられる、そしていずれかの方法の中でこのような丙案というものが実現しないで済んだということになりますことを、少なくとも会長としては希望しておるわけであります。
○橋本敦君 最後に一問だけ。
 その改革協がこれから非常に重要な役割を担うわけですが、そこでの議論の基本的な理念としては、先ほどから問題になっておりました法曹一元を守っていく、そしてまた修習についても統一、公平、平等の原則は理念として守り抜いていくということが大事だと思いますが、この点について会長のお考えはいかがですか。
○参考人(中坊公平君) そのとおりだと思っておりますが、やはり具体的には本当に大学教育と司法試験との乖離をどちらからどう埋めるのか、先ほど三ケ月先生のお話では司法試験が寄ってきてくれ、今度司法試験側からすると大学教育が寄ってきてくれということですが、その接点をどこで求めて、本当に多数回の受験をしなくても受かるような状況にまず持っていく、このところが大切であると私はこのように考えております。
○橋本敦君 終わります。
○山田耕三郎君 まず、お二人の参考人の先生にお尋ねをいたします。
 法曹人口につきましては、法曹界に活躍をいただきます方々は数の問題だけではなしに幅広い人材もまた確保していかなければならない、そういうことから考えますと非常に難しい問題が出てまいります。しかし、今日のように素人的に考えまして裁判が長引きます。さらに、私たちのような政治の場におる者までやっぱり一般の国民の皆さんから相談や依頼を持ちかけられます。法でぴしっと守られておるのにかかわらず、なぜその法を活用してみずからの権利を守っていかれないのだろうか、このように思うことが時々ございます。それもやっぱり法律というものが大変なじみにくいからではないか、このように思います。
 私ごとで恐縮ですが、かつてインド洋にセイシェル共和国というのがございます。島の国でごく小さい国ですけれども、そこへ友好を目指して参りました。車で走っておる前を、暑いところですから皆スーツは着ておいでになりませんが、スーツを着た人が横切られました。私も肥満体ですから、おなかが出るのいけませんので、つい上着を着ます。そしたら政府の人たちがおっしゃった、この国でスーツを着ていらっしゃるのは先生と弁護士だけですと。なぜ弁護士を強調なさったのかわかりませんが、たまたま横切った方が弁護士さんだったそうです。やっぱりそれだけ地域社会で尊敬を受けておられることをおっしゃったのではないかと今思っております。
 大変この法律というものが一般の国民の皆さんから見ると難しい。難しいからなじみにくい。そして、困ったらすぐ弁護士さんのところへ駆けつけていく、こういう習性が日常生活の中で忘れられてしまっておる。そういうことからして、法曹需要がもっとあるはずですのに少ないように思われます。そんな状況は私の認識が正しいのでしょうか、間違っておるのでしょうか。先生方はどのように見ておいでになりますか、そのことを一つお教えをいただきたいと思います。
○参考人(中坊公平君) 山田先生おっしゃっているとおりだと思います。少なくとも我が国では、法というものは基本的に私はこれは社会を規制する合理的な道具だと思います。だから、国民が道具を使うという意識を持って法を使わなければならないと思っております。しかしながら、我が国では遺憾ながらずっと長い歴史の中で、法は常にお上の命令でありまして、そういう道具だという感覚がないわけであります。本当に国民主権のもとになって、道具として使うという感覚になってまだ四十年余りしかたっていない、ここに一番基本的な問題があろうかと思っております。
 したがって、そういうような状況の中で法の活用を図るというためには、本当に関係者の非常に大きな努力が必要ではないか、このように考えております。そのためにも、まず法曹となる者が本当に人間味豊かな、そしてまた一般の常識を持った者ということが必要でありまして、こういう人たちがまず生まれてきまして、そしてその方と国民との間のいわゆるアクセス、接近が図られていくことが必要ではないか。我々弁護士の方といたしましても、従来のやり方だけではだめでありまして、もっとそういう意味ではこの点についての努力を続けていかなければならない。先ほどから盛んに申し上げております司法改革もこのような視点から推し進めていかなければならない、このように考えております。
○参考人(三ケ月章君) 御指摘全く私はそのとおりであると思います。
 一つには、これは日本の文化的な伝統がございまして、裁判と申しますときに日本人は何を考えてきたかと申しますと、今も中坊さん言われましたけれども、律令制度から出まして、「律」というのは刑法でございます、「令」というのは行政法でございます。常に権力のチャンネルが法であるというところで我々の法生活は営まれてきた。それが条約改正のために一種の権利義務というふうなものを主軸にする制度もあるんだということに一度は踏み切ったわけでございます。これは格好をつけるために非常に努力いたしました。権利という言葉もなければ義務という言葉もない、裁判所という言葉もなかったのが明治初年でございました。それを条約改正のために全部つくりまして、非常な熱気が注がれたのでございますが、条約改正という目的を達した途端にこれはしぼんでしまうのでございます。先ほど司法試験の合格者は五百人が横ばいになったというのと同じように、裁判官の定員も明治二十数年以後横ばいでございます。
 同時に、民事訴訟というものに対して余り官憲はこれを好まなかったわけでございます。濫訴健訟はいかぬという言葉がございます。要するに、何でもかんでも裁判所まで持ち出すのは非常に悪いことなんだというイメージがずっと定着させられておりまして、これは日本弁護士連合会の公式の記録に載っかっておりますが、戦争末期になりますと弁護士に向かってある憲兵軍曹が、おまえは弁護士か、もっと正業につけと説教したという話が日本弁護士連合会沿革史という広報的な歴史に載っかっているわけです。
 実は我々は、それではいかぬなと思って動き出してから四十年でございます。私はそのちょうど変革期に学問を始めましたからよくわかるのでございますが、今から見ますとやはりそれはおかしかったんですけれども、よくまあここら辺のところまでこれはついてきたわいなと。だから日本人はやっぱりうまいな、あるいは利口だなという感じはするのでございますが、しょせん悲しいところは、まだそれがわずか四十年しかたっていないがゆえに板についていないところがあるということでございます。
 それで、一つ申し上げさせていただきますが、ただいまの御指摘のように、戦前はそういうなるたけ国民を裁判から遠ざけようとするポリシーが暗黙のうちに働いてきたと私は学者の立場からは信じておるのでございます。それはやっぱりいろいろ法律の言葉の難しさ、法律の判決文の難しさということになるわけであります。私は今民事訴訟法の改正という大事業に取り組んでおりますが、そこの一つの目標はうんと国民に近づきやすい民事訴訟法典をイロハからつくり直そうではないか。こういう面で今非常に日弁連の強力な御協力もいただきながらやっておりまして、私のこの世での最後の御奉公ができるとするならば、やはりそういう国民のための民事訴訟法をつくるということに何とかいって、今御指摘のような形の入れ物をつくりたい。それから今度は、それをどう動かしていくかはこちらにお任せしたい、こういうふうな感じであるということを申し述べさせていただきます。
○山田耕三郎君 今回の法律改正にも、いわゆる若年者優遇の方法、別枠をつくってというところがございますけれども、このことが文章となりますと大変難しい、理解しにくい。しかし、法務省当局の説明を求めますと、ああやっぱりこれしか書きようがないのかな、こういうように思いますんですけれども、三ケ月先生、法律の専門家として、もう法律はこれよりしようがないのかどうか、その辺のところを。
○参考人(三ケ月章君) ここに法務省の担当官がいらっしゃるし、私もいろいろ相談を受けながらやってきたんで悪口を言うのは申しわけないのでございますが、私でさえこの法律案だけ読んで、これは一体何を考えているのかなというぐらいわかりにくい。規則を読みましても、最後になると三者協議の何だか内容があって、これは私は三者協議に全然タッチしておりませんでちっともわからないのでございます。しかしながら、ある法制審議会の委員もみんなの御意見とやっぱり同じような発言、これは何を言っているのかよくわからないじゃないかと。
 しかし話を聞いてみると、これをちょっといじりますと、例えば二百人ふやすよと、二百人のうちは若年者を探るぞなどということで余りはっきりしてきますと、今度はそれが固定化しちゃってもよくないんじゃないかとか、いろいろこれをもっとわかりやすくしようとすれば必ずそれに対する反対のエフェクトというふうなものも考えられまして、結局最後に三者協議でも約束されたところがなかなか――あるジャーナリズム出身の委員はこう申しました、今回の改正案はガラス細工みたいなものだなと。ちょっとここをいじるとがらがらと崩れちゃって絶対壊れちゃう。だから、これはこのままそっとしておいて、しかしこれは第一歩として今後つくるときにはもう少しはっきりした、もうだれの前でも恥ずかしくない、国民が見てもわかるような法律をつくらなきゃいかぬなと。さりとてといって、今国民の納得する法律をつくるというと今の現状のもとではガラス細工は壊れてしまう。ここが苦しいところでございまして、これを国民のすべての人が読んですぐわかれという方が無理であろうと思います。
 しかしながら法務省の方では、だからおれたちは一生懸命これの内容を、この趣旨はこういう趣旨であるということを全国の大学やいろいろ利害関係を持つ人に徹底的にPRをします、情報はですからそういうふうなところでいたしますというんで、そこでとにかくやっていただくよりしようがないだろうなと。逆に、これを法律案の別なところに別な表現をつくりますと、さっき言いましたようにせっかくのガラス細工が壊れてしまうという心配があるということは私もよくわかるんです。そういう苦心の作、私もこれは本当の苦心の作だなと思うのでございます。
○山田耕三郎君 ありがとうございました。
 終わります。
○紀平悌子君 中坊先生にお伺いいたします。
 先ほど御陳述の中でも、やむを得ない選択として賛成ということを前提として御陳述がございました。いわゆる三者協あるいは法制審でございますけれども、この中で司法試験制度の改革について弁護士側として最も重要と思われてその実現を主張された改革目標、どういうことであったか再度承りたい。
 いま一つは、直接司法試験を受けていく者の立場がございます。受験生の立場に立ってのそれらの意見や希望を取り入れるというプロセスはございましたんでしょうか。
○参考人(中坊公平君) 今回の法律改正に関連いたします司法試験改革問題につきまして日弁連が最も重要だと考えておりましたのは、先ほどの陳述の中にもあらわれておりますように、まず日弁連としては合格者の増員をさせることが先決である、一番大切なことだと思います。さらに、司法試験の運用の実施の中で、受験生側にとってもいろんな情報公開等をする中でもっと受かりやすい試験にするための運用改善がきめ細かく図られなければならない。この二つがまず大切である。さらに、この問題は大学教育と司法試験との間の乖離にあるわけですから、そういう問題についての根本的な案が出てくる必要がある。そういう問題が片づく中でこの司法試験改革問題は考えられなければならない。したがって、どちらからといえば丙案というようなドラスチックな案を考えなくても、今言いましたような三つのものによって当然できてくるはずだというのが日弁連の基本的な考え方であります。
 その間にありましては、私の方といたしましても非公式あるいは公式に受験生の方の意見も若干ではありますけれども聞いてまいりました。そして、そのような中からこのような意見を出させてきていただいたわけであります。
○紀平悌子君 続きまして中坊先生に、当面、司法実務に悪影響を及ぼすと考えられる検察官の志望者が少ないということでございますが、この志望者をふやすための何か妙案というものがございますでしょうか。
○参考人(中坊公平君) 検察官の不足を突如ふやすという妙案と言われると、やはり検察庁自体の体質等いろんな問題があろうかと思っております。しかし、妙案になるかどうかわかりませんが、私が今考えておりますのは、日弁連が我々弁護士の中から検察官に任官する、裁判官に任官すると同時に検察官にも任官する、こういうことを具体的に考えられないだろうか。そしてみんなで出しましょうというような運動を日弁連内部でいたしまして、検察庁の方から我々に対して協力要請をしていただきまして、そういう中において弁護士会の中から若い検察官を出していく。そしてその方は何も捜査検事に限らず、例えばただいま問題となっています訟務検事等をその中でやられれば、いわゆる判検交流ということもまたなくなっていく方向になるわけでありまして、我々弁護士会といたしましては、単に体質が悪い悪いと言うだけじゃだめなんで、我々の方からみずから人を出していくという運動をこれから続けていきたい、このように考えております。
○紀平悌子君 中坊先生に続いてで恐縮ですけれども、法曹実務家のお立場から見て現行の司法試験の難易度というか有効性、どのようにおとらえになっていらっしゃるでしょうか。また、大変失礼な質問ですけれども、もし御自分が現行の試験をお受けになるとしたら、受かる自信がおありになりますでしょうか。かつての受験の内容ともう大変な開きがあるようでございますが、その点について率直な御意見をお聞かせください。いわゆる選抜手段として適当な試験内容であるのかどうか。
○参考人(中坊公平君) 私も正確にはよう申し上げられないと思いますが、率直に言いまして、それは今の試験を受ければ合格はしないだろうというふうに思います。
 されば、それはなぜかということを言われれば、ただ試験が悪いからということだけでもないのかもしれません。したがって、先ほどから言っていますように、私たちがもとの考査委員の先生方あるいは現在の考査委員の先生方にお話を承っておりますと、確かに今のように技術的な試験になるんじゃなしに、もっと応用能力を問うような出題もできるあるいは採点もできる。ところが、正直言って人も少ないし、先ほども言いましたよう晟に、何か一枚の答案を見るお金が百円余りとかいうようなことで大変なんですということをおっしゃっておられます。だから、こういう問題を解決するためには、存外そういうきめ細かさというかそういうようなところの対応がなされていくことによって、おっしゃるような技術的な試験だけじゃなしに、本当にその応用能力を問うような試験になり得る可能性もあるんじゃないか。これは運用改善の中で我々もこれから法務省の方にも要請いたしますし、そういう中で実現していく必要があるんじゃないか。また立法の方でもぜひそういう点も法務省の方に働きかけていただきたい、このように思います。
○紀平悌子君 三ケ月先生にお伺いしたいんでございますが、大変素人質問で恐縮でございます。
 法曹一元という言葉のもとで、裁判官、検察官それから弁護士、すべて同じ試験で選抜がされております。この現行制度の長所と短所、その辺のところをお伺いさせていただきたい。
 それから、検察官の任官志望者が少ないという点ですね、これはまた別の角度からでもどこにあるとお考えになりますか。検察官だけは別枠というふうなことは非常によくないことなのでしょうか。
○参考人(三ケ月章君) 法曹一元というふうな角度からいたしますならば、できるところまではやはり現在のように、裁判官も検察官も弁護士も同じかまの飯を食べてそして友達をつくって出ていくというふうな制度が望ましいことについては私も全く同感なんでございますが、しかしこれは世界各国には余り例もない。唯一の例は西ドイツでございますが、西ドイツはそれでも司法修習生を一年に二千人ぐらいとってみんな給費を与えているのでございますが、それに対して一挙にそこまでのあれができないということ――それができれば一番よろしいんですが、それがやはり難しいということになってまいりますと、さっき言ったように、この制度は非常にいい制度だから現状でとめておくのか、それともこの制度はもはや限界に来ているから少しそれからはみ出すのか、こういう選択に迫られざるを得ない。私は、その選択の時間は徐々に除々に近づいて、世界の流れから見ましてもそういつまでも放置しておけるような時代ではないので、いつかは法曹養成問題も一定の、例えば千人、二千人ということになりました場合には一工夫あるところではないかと思いますが、そうでない限り私は今の制度はできるところまで維持していただきたい。
 国会の方でも、司法予算というふうなものは非常に貧弱でございますし、今の五百人を七百人に増枠することは今度は通ったらやっていただけるんでしょうが、七百人をやがて何年か後に千人にし、千人をやがて二千人にするということが、果たして今の日本の経済規模からいって戦争前に考えられていたと同じ程度に全く不可能であると言えるのか、私ちょっとその辺がむしろ先生方の御理解と御尽力をお願いできればという気持ちの方が先でございまして、いい制度だということを申し上げる以外にないのでございます。
 ただ、今言いました欠陥は産児制限に連なってしまう、法曹の産児制限に連なってしまう。七百人しか予算がないんだから、五百人しか予算がないんだからこれでしようがないんだ、しようがないんだ、責任は大蔵省が悪いんだ、大蔵省が悪いんだ、こういう状態が既に何十年も続いておる、これでいいのかというところに私は問題があるように思うのでございます。
 率直に申しまして、声を大きくして叫んできたつもりでございますが、しょせん一学者の意見などというものはこういう司法修習予算の大増額などというものにつきましては全く弱いものでございまして、国会でそういうことを申し上げるチャンスもついなかったわけでございますが、今回はそういうことを申し上げる機会を与えられまして非常に喜んでおるわけでございます。
 そういうことで、御返事になっておりますか。
○紀平悌子君 結構でございます。
 ありがとうございました。
○委員長(矢原秀男君) 以上をもちまして、参考人に対する質疑は終了いたしました。
 参考人の方々に一言御礼のごあいさつを申し上げます。
 本日は、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。
 午前の審査はこの程度とし、午後一時まで休憩いたします。
   午後零時四分休憩
     ─────・─────
   午後一時開会
○委員長(矢原秀男君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、司法試験法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 これより質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○千葉景子君 きょうは、午前中に参考人の皆さんからも貴重な意見を伺わせていただきまして、それらの意見なども頭に置きながら、また質問をさせていただきたいというふうに思います。
 さて、まず最初に、今回司法試験法の一部を改正する法律案ということで、司法試験制度を今後いかに考えていくかということがこの法改正の中心のテーマでございます。司法試験制度を考えるときには、やはりこれは法曹を確保するという意味での一番の入り口になるわけでございますので、司法試験制度だけを考えるのではよりよい司法試験制度というものの結論は生み出せないだろうと思います。やはり法曹を確保する制度のあり方というのは今後の私たちのこの社会そのものにも大きな影響を与えることでございますので、そういうことを基本的に認識をしながらこの司法試験制度そのものも考えていくということが私は肝要であろうというふうに思います。
 特に、司法の将来像、あり方を考えるときには、ひいては国民一人一人の人権の擁護であるとか、あるいは社会的な正義の実現、こういうことに大きく関連いたしますので、そのあたりをどう私たちが認識をしていくか、そしてそのための最も第一歩、入り口である司法試験制度をどう考えていくかということを検討していかなければいけないというふうに思います。
 そこで、根本的な認識でございますけれども、司法試験制度を検討、改革するに当たっては、一体これは何のためにあるんだろうと考えますと、別に法務省のためでも弁護士のためでも検察庁のためだけにあるわけではありませんで、やはり真に国民的な観点に立ちながら法曹確保の制度をどう考えていけばよいか、どうすれば最もよりよく国民の期待にこたえていけるかということを基本的な認識として持っていなければいけないだろうというふうに思いますが、この司法試験制度改革に当たっての司法全体を考えながらの基本的な考え方、認識を法務省としてはどのようにお持ちであるのか、まずその点についてお聞きをしたいというふうに思います。
○政府委員(濱崎恭生君) 御指摘のとおり、法曹三者がそれぞれ国民の負託にこたえる活動をすることが根幹でございます。司法試験というものはそういった法曹の後継者を選抜する、いわばその入り口に当たる制度でございます。したがいまして、司法試験制度のあり方を考える場合においても、御指摘のとおり、国民の負託にこたえる、国民の要請に十分にこたえることができる法曹の後継者をどうやって選抜するか、これを基本に置いて考えなければならないというふうに考えております。
 今回提出させていただいております改革案も、いろいろな制約の中でそういった要請にできるだけこたえることができるように、現在の時点で実現可能な範囲内でその制度の改革を考えておるわけでございまして、今後ともそういう考え方でこの改革問題に取り組んでいく必要があるというふうに考えております。
○千葉景子君 そこで、少し個々具体的にお尋ねをさせていただきたいと思いますが、まず司法試験というのは一体どういう試験なんだろうかということでございます。法曹資格を付与する試験としてこれが一体どういう性格を持っているものかという基本的な問題でございますけれども、従来から司法試験というのは独立性があり、そして法曹の一元という観点からも法曹の統一性を担保できる試験である、また国民に対しても特別な恣意的な観点が入らないという意味からも広く平等に開かれた試験である。そして、午前中にもちょっとその性格の問題が出ておりましたけれども、基本的にはいわゆる採用試験というものと対比をして考えれば、資格試験制が主要な中心になっている試験である、こういうことが言われているというふうに私は認識をしております。
 そういう意味で、これらの性格はこれまで法曹資格あるいはその入り口の試験としては大変有意義な試験であったというふうに私は評価できるものだというふうに考えておりますけれども、どうなんでしょうか、司法試験そのもの、これまで行われてきた司法試験という制度そのものの評価ですね、それについて法務省としては、今申しましたように独立した、そして統一性のある平等な資格試験であると、そういうことによってこれまでの司法、法曹というものがやはり国民の公正な負託にこたえられるような、そういう意味での一定の意義を持ってきたというところについてはどう評価をなさっていらっしゃるのか、ちょっとその点についてお尋ねしたいと思います。
○政府委員(濱崎恭生君) 司法試験法第一条におきまして、「司法試験は、裁判官、検察官又は弁護士となろうとする者に必要な学識及びその応用能力を有するかどうかを判定することを目的とする国家試験」であるというふうに規定されております。そこにあらわれておりますように、この試験制度、今御指摘のありました統一性、平等性、資格試験制といったものを基本的理念に置いてつくられている制度であるというふうに認識しております。
 司法試験は、法曹三者の後継者を統一的に選抜する制度といたしまして、現在の修習制度と相まって司法制度の担い手である法曹三者が十分に適切な後継者が得られるようにということを図っているわけでございますし、また、司法試験は受験資格に何らの制限も設けることなく、大学教育を受けていない者に対しても一次試験を受験することによって合格する道を開いているという意味で、平等の考え方に立っているわけでございます。また、法曹三者となろうとする者に必要な学識、能力といったものを備えていなければ合格させないという意味において、基本的に資格試験としての性格を持っている。そういうことによって法曹の後継者を適切に確保するということを期しているわけでございまして、そういう意味で、御指摘の理念には非常に重要な意義があるというふうに認識しております。
 この理念のもとに、現実の問題としては適切に法曹の後継者が確保されているということが極めて重要な事柄でございまして、こういう観点から考えました場合に、現状の司法試験はその機能を十分に果たすことができていない実情にある。この関係は午前中の参考人の御意見の中にもるる述べられておりましたが、そういう実情を踏まえて緊急にその実情を改善する必要があるという観点から、今回御指摘の統一性、平等性、資格試験制という性格を損なわない範囲内において司法試験が十全の機能を果たし得ることができるように改革案を策定した次第であります。
○千葉景子君 今、司法試験の根本的な理念そのものについては評価をしているということでございますが、今後もさまざまな議論が展開されていくようになるだろうというふうに思うんです。やはりこれまで積極的な意義を持ってきた理念、統一性あるいは平等である、資格試験制、こういう基本的な考え方というのはこれからも司法試験を考えるに当たって法務省としては根本的なものとして維持をされていく、そういう考え方に立って検討されていくというふうに受けとめてよろしいでしょうか。
○政府委員(濱崎恭生君) ただいま申し上げましたように、現時点において法務省といたしましては今御指摘の基本的理念、これは重要な意義を果たしてきたし、またこれからも果たすものであろうというふうに認識をしているわけです。ただ、これからの抜本的改革について、法曹三者の合意に基づいて改革協議会を設けてそこを中心に検討を鋭意進めようというふうに考えておりますが、その改革の検討の中におきましては国民の各層から幅広く自由な御意見をいただいて、その中で国民の期待にこたえ得る改革案を策定していきたいというふうに考えているわけでございます。
 したがって、今後の改革協議の場において一定の制約を設けるというようなことは適切でないというふうに考えておりますけれども、しかしながら現在の私どもの認識としては、先ほど申しましたように御指摘の理念は重要な意義を持っているということを認識しつつ、そういった改革に取り組んでまいりたいと考えております。
○千葉景子君 司法試験の基本的な理念そのものはだれしもが評価するところであろうというふうに思うんですが、さてそれが現状ということになりますと、午前中の参考人の御意見にもありましたように、中坊参考人の言葉を使わせていただきますと病理現象といいましょうか、そういう状況にもあるという指摘もございました。
 この現状でございますけれども、例えば受験者を考えますと、既に現在二万人を超えているというのが相当期間の現状でございます。これは私は率直に言って、いろいろな動機はあろうかと思いますけれども、やはりこれだけ司法の役割とかあるいは法曹の必要性というのが叫ばれている中で、それを目指そうという受験者が多いということは決して悪いことではありませんし、むしろその中で積極的に頑張っていこうという人たちが多いということは、これは歓迎すべきことであろうというふうに思っております。
 ただ残念ながら、受験者は多くはなりましたけれども、合格者の方はほぼ五百名前後ということで終始してきているわけですね。確かに試験の方法あるいは選抜の方法も厳格に行われていると思いますので、決して内容におかしいところがあるという意味ではありませんけれども、ただ、どうしてずっと五百人なのであろうかということは常々私たちも考えてきたところなんですね。じゃ、六百人ぐらいになってもよかったんじゃないか、そこへいっても別にそれほど水準が極端に下がるというようなことも考えられない。そういうことを考えますと、いろいろな弊害が生まれてきたその一つに、やはり多く指摘がありますように、これだけ目指す人が多いにもかかわらず、門戸が五百前後で閉められてしまっているというところをもう一度まず率直に考えてみる必要があるのではないかな、そんな感じがするところです。これまで司法試験の合格者を五百名ということでほぼ固定化してきたわけですけれども、これについては物理的な問題もあったかと思いますが、非常に消極的で、新しい受験者あるいはそれを目指そうという意欲に対してこれを受け入れる側の姿勢というのがもう一つ対応が悪かったのではないか、そういうことも考えなければならないところだというふうに思うんです。
 そういう意味では、幾つかの問題点があろうかと思いますが、例えば研修所の問題であるとか、それからその後の例えば実務の研修のあり方であるとか、そういう問題もあろうかと思います。また、午前中も指摘がありましたように運用の面で、例えば考査委員の数とか報酬とか、そういうところも改善をして、できるだけよりよい選考をして、そして受け入れを多くしていく、こういうふうなことはこれまでも考えることができたのじゃないかと思うんですね、ここまで来る間に。そのあたりは法務省としてはどのようにお考えなんでしょう。これまで例えば人数をふやしていこう、入り口をふやしていこうというようなことに対する対応策とかについては検討されてこなかったんでしょうか、その辺をお尋ねしたいと思います。
○政府委員(濱崎恭生君) 御指摘の点に関しましては、午前中に三ケ月参考人からも大変強い御指摘、御批判をいただいたと思っております。
 司法試験の合格者は、基本的には先ほど申しましたように、法曹となるに必要な最低限の学識、応用能力を備えているかどうかということで判定すればいいという規定ぶりになっているわけでございますが、現実問題といたしましては、司法試験に合格した者はすべて司法修習生として二年間国費の支給を受けながら司法研修所及び全国の裁判所、検察庁、弁護士会において非常に濃密な研修を受けるということになっているわけでございます。これも法律上は、司法修習生は司法試験の合格者の中から最高裁判所が命ずるということになっておりまして、必ずしも全員司法修習生に採用しなければならないという規定ぶりにはなっておらないわけでございますけれども、しかしながら現実の問題としては、合格すれば特段の事情のない限り司法修習生として採用されるという運用がされておりますし、これはまたそういう運用であるべきであるというふうに考えております。
 そういうことを前提にして考えますと、そういった充実した修習、しかも法曹三者の統一修習というものを維持するという観点から、おのずから制約がなければならない、制約があらざるを得ないということでございます。これまで司法試験の合格者が五百人前後で推移してきましたのは、戦後合格者が次第にといいますか急激に増加してきた中で、法曹に対する社会的な要請の事情あるいは司法修習の受け入れ体制の問題から、昭和三十年代の末あるいは四十年代の冒頭ころまでに当面合格者の上限を五百人程度とするということで、その当時の関係者の意見が事実上一致して、その後法曹三者を含む関係者がこの数を見直す機会を持たないままに現在に至ったというのが実情であるというふうに言わざるを得ないわけでございます。司法試験の合格者の増加は、今申し上げましたとおり、修習生体制の整備の問題、これは金の問題だけではなくて、研修所の受け入れの問題さらには実務修習を受け入れる現場の裁判官、検察官、弁護士の対応の問題というようなものも重要な問題でございます。それに加えて、法曹人口の増加という問題については、午前中参考人の御意見の中にもありましたように、いろいろ難しい問題がございます。
 そういうことで、この合格者を増加するということにつきましては、法曹三者を含みます大方の理解と協力がないと実現することが難しい、そういうことで推移してきたというふうに考えております。今回ようやくにして、この点について再検討する機会が持たれまして、必ずしも十分な数ではないのかもしれませんけれども、当面七百人程度まで増加させることについて了解ができ、こうして改革案を提示させていただいているわけでございます。
 今後の問題については、引き続きそのさらなる増加の可能性も含めまして、熱意を持って検討していきたいと考えているところであります。
○千葉景子君 私は、今後やはり少しでも受け入れ体制を充実させて、法曹人口そして合格者の増加を図っていくということは基本的に当然のことであろうというふうに思っております。ただ、ここまで放置してしまったことに対しては、もう一回法務省としても反省をしていただかなければいけない部分があろうというふうに思います。
 例えば研修施設の問題でも、これは現実に何とか頑張ってみる積極的な姿勢があれば、全く不可能なことでもなかったであろうというふうに思いますし、それから考査委員などの問題についても、やはりもう少し改善をして十分な幅広い考査ができるように体制を整えていくというようなことも、これも現実にやれない問題ではなかったはずでございます。そういう意味では、もう一度これまで放置してしまったことについても謙虚に反省もしていただいて、そして今後の改革につなげていただきたいというふうに思うのです。
 さもしませんと、私は今回一定の期間で丙案、これの検討がなされるということにもなろうかというふうに思うんですけれども、こういうもともとの条件整備をしないままに安易に丙案、一定の範囲ですけれども回数制限などを入れるということになりますと、例えば統一性の問題であるとかあるいは平等性、資格試験制度というその理念、そういうところにも抵触してくることになるだろうと思いますので、やはり検討する前にできるだけ条件整備をして窓口を開き、そして、その結果多くのすばらしい人材がふえていくということであれば、決してこそくなといいますか、特殊な改革をする必要は、私はないのではないかという感じがいたします。そういう意味で、ぜひこれまでの反省も踏まえて、積極的にその条件整備などに取り組んでいただきたいというふうに思うんですが、この点についていかがでしょうか。
○政府委員(濱崎恭生君) まず、今回の改革案について先ほど若干申し上げましたが、補足して申し上げさせていただきたいと思います。
 今回の改革案、いわゆる合格枠制と呼んでおりますが、この制度は試験の統一性、平等性、資格試験制度というものと相矛盾するものであるというふうには私ども理解しておらないわけでございます。すなわち、合格枠制はすべての受験者にとって初めての受験から三年以内は合格の可能性がひとしく拡大するというものでございますので、受験者を差別し、不平等に取り扱うというものではないと考えております。また、合格枠制のもとで統一性といったことに影響を及ぼさないかというような御指摘もあるわけでございますけれども、これは一般枠と制限枠のいずれで合格したかにかかわりなく、法曹三者の統一的な養成制度であります司法修習制度のもとで実務教育を受けた後、それぞれの道を選択することになるわけでございまして、法曹三者の特定の職種の後継者を選抜するために設けられたものではございません。そういうことで、法曹三者を統一的に養成するという趣旨にも反するものではないと考えております。
 さらに、この合格枠制を実施した場合でございましても、法曹となろうとする者に必要な学識及び応用能力を備えていない者を合格させるということはないわけでございまして、この点は司法試験考査委員が専門的な見地から合格者を定めるに当たりまして、これまでと同様に、将来法曹資格を与えても差し支えない程度の学識、能力を備えた者のみを合格させるということでございまして、そういう意味から資格試験であるという基本的な性格に反するものではないというふうに考えている次第でございます。
 そういうことでございますけれども、私ども現在の司法試験の実情にかんがみまして、いろいろ抜本的な改革について考えなければならない問題はあるけれども、緊急に改革を実現する必要があるということから、今回の改革案を提示させていただいているわけでありまして、これが最後の答えであるというふうに考えているわけではございません。御指摘のような点も踏まえまして、今後の合格者の数の問題あるいは司法試験の運用上の問題に最大限の努力を傾ける所存であります。
○千葉景子君 おっしゃっていることはわからないわけではないんですけれども、やはりこれまでのおくれていた対応に対する認識がもう一歩まだまだ甘いのではないかなという感じがしないでもありません。これから、もうここまで来てしまっている部分ですから、できるだけ受け入れがしやすいような、そういう条件をぜひ積極的に講じていただきたいというふうに思います。
 そこで、ちょっと午前中に出ておりましたのでお伺いしたいんですけれども、いずれにしても合格者の増加であるとかあるいはその試験の内容の変化であるとか、そういうことにもつながってこようかと思うんですが、これから考査委員の増加とか、あるいは待遇といいましょうか報酬などの改善などの点については何かお考えになっていらっしゃることはございますでしょうか。
○政府委員(堀田力君) 考査委員の人数につきましては、これは少しずつでありますけれどもその状況に応じまして現在までも増加に努めてきておりますし、これからも必要があればそういう措置を講じたいと思っております。
 さらに報酬につきまして、これは午前中も出ておりましたが、これにつきましても現在までのところ少しずつ答案採点料単価を上げてきておりますけれども、今後とも経済情勢に応じて上げていきたいと考えております。
○千葉景子君 今できるだけ積極的に条件整備をしていただきたいという話をしたんですけれども、これは合格者が増加することに伴って法曹三者がバランスよくふえていく、増加をしていくということが必要だろうと思いますし、そういうことができないのであればこの合格者増というのも本当の改革になっていかないと言えるというふうに思います。
 そこで、それぞれの法曹三者の場面で条件づくりというのが必要になってこようかというふうに思います。きょうは法務省、そして裁判所も来ていただいておりますので、その辺についてお伺いしたいというふうに思うんですが、この改革の問題が出てくる出発点の一つとしては、やはり検察官、裁判官の不足ということがかなり問題視されてきたであろうというふうに思うんですね。今回も合格者の増加ということを考えるに当たっては、ここの改善というものがなされませんと、せっかく人数をふやしてもそれが検察官、そして裁判官の増加ということに結びついていかない、そういう結果にもなりかねません。
 そこで、検察官の問題についてちょっとお尋ねをさせていただきますが、今回この合格者の増加をすることによって検察官の適正な増加に結びつくというふうに法務省としてはお考えでしょうか、まず率直にその点はいかがですか。
○政府委員(堀田力君) 今回の改正案、必ずしも検察官の増加のみを目的とするものでありませんことはもちろんのことでありますけれども、この改正の過程におきまして検察官につきましても質的、量的に充実していくものと私どもは期待いたしております。
 どういう理由かということでありますけれども、現在の合格者の状況で見ますと、かなりこれが何回も試験を受けられまして年齢が非常に高くなってきておる。検察官に任官します際にはやはり年齢が一つの大きな要素になっておりまして、例えばいかなる年齢でありましょうと検察官に最初任用したときは同じような待遇になる、そうしますと高年齢の者としてはいろいろとちゅうちょする。そのほかにも、年齢が高くなることによりまして親の扶養の問題でありますとか家族の扶養の問題でありますとか、こういうこともいろいろ問題になってまいります。そういうことで、年齢が一つのかなり大きな要素であることは間違いない。
 ところで、今度の改革によりまして、これも年齢を下げることを必ずしも直接の目的とするものでありませんけれども、そういう効果が生まれてまいりますと、やはり検察官に任官しやすいような人たちが多く合格してくるんじゃなかろうかということを期待いたしておりますので、そういうことから改善効果も生まれてくるというふうに期待しておるわけでございます。
○千葉景子君 法務省の方として期待をされているということでございますけれども、ただ私は、なかなかそう簡単に結びつくのかなと、率直にそう思うところもあるわけです。
 これは以前にもお尋ねをさせていただいたりしたこともあるんですけれども、検察官になかなか希望をする方が少ないということ、あるいは途中で退官をなさる方も数としては裁判官などに比べると多い。これはそれぞれ個々には理由がおありとは思いますけれども、いろいろなアンケートとかの結果を見ますと、それから私も直接お聞きしたりすることから推測をいたしますと、それが全く全部がそうという意味ではありませんけれども、例えば転勤の問題などもひっかかるでしょう、これも出てまいります。しかしながらほかにも、例えば人事の面であるとか、あるいは検察が統一的に仕事をされるということでやむを得ない面もありますけれども、どうしても上意下達といいますか、そういう仕事のやり方が強い、こういうようなことも、なかなかそういう中で仕事をするのは余り意欲が持てないというような指摘あるいは意見なども出ているところです。
 そういう意味では、このあたりももう一回検討していただく、あるいはよりそういう疑問とか不安などにもこたえていくようなこともしていただきませんと、人数がふえた、少し若くなるかもしれない、結果的に。だから、じゃ検察官の増加の期待にこたえるような結果が出るかどうかというのは非常に難しい面があろうかというふうに思いますが、その辺について、やはりこういう機会に受け入れる側は、そしてそれを増加させていこうという期待をお持ちであればあるほど、みずからの状況づくり、条件づくりというのをしていただかなければいけないように思いますが、いかがでしょうか。
○政府委員(井嶋一友君) 千葉委員にはいつも、検察の魅力をあらしめるように頑張れという御質問をいただくわけでございます。大変恐縮に思うわけでございますが、昨年が二十八名という数でございましたけれども、ことしはもう既に御案内のとおり、女性四人を含めまして四十六名の検事が任官をしてくれまして、私どもやっております努力がそれなりにひとつ実を結んでおるのかなというふうにも考えるわけでございます。いずれにいたしましても、今後とも、また司法試験制度が改革されました暁には、やはり若い優秀な、検察に飛び込んで仕事をしようという正義感のある、あるいは人権感覚のある検事をたくさん受け入れるということのためには、委員御指摘のような環境整備をする必要があるということはもう私どもも十分認識をしておるわけでございます。
 そういった意味で従来から御答弁申し上げておりますけれども、まずその検察の職場を魅力あらしめるために、あるいは待遇をよくするためにというようなことで、いつも申し上げることで恐縮でございますけれども、例えば初任給調整手当を引き上げることによって弁護士との収入格差を是正するとか、あるいは庁舎あるいは宿舎を整備いたしまして職場環境あるいは住環境をよくしていくといったようなことをやりますとか、あるいはOA機器を整備するとか、図書、資料を整備するとかいったようなこともやっていかなきゃならない。さらには転勤の問題も一つの大きな隘路でございますので、人事政策と申しますか、転勤のあり方といったものについてもいろいろ考えながら施策をやってまいったといったごと、そういったことが総合してそういった結果につながってきておるのかなというふうにも思うわけでございますし、またこれからもそういったことをもっと進めていかなければならないと思っておるわけでございます。
 もう一つ、いわゆるこの仕事の仕方と申しますか決裁のあり方と申しますか、そういったような点についても委員から御指摘がございましたけれども、この点につきましても最高検察庁に検察問題調査会というのを昨年設置いたしまして、それぞれの部分に分かれまして分科会方式で、今御指摘のような問題も含めました基本的な今後の検察のあり方といったものを研究する検討委員会が発足をしておりまして、これが極めて充実した審議を現在続行しておるわけでございます。そういったことが一つの結論を得ますれば、そういったことをさらに実現をしていくことによって、委員御指摘のような検察の職場がより魅力ある職場になるように努力を続けていかなきゃならない、このように思っておるわけでございます。
○千葉景子君 これは裁判所の方にもやはり問題点がないわけではなかろうかと思うんです。これは定員法の問題のときにもいろいろと議論がございましたので細かくは申しませんけれども、少なくとも決して今の裁判官の数で十分だということではなかろうというふうに思うんですね。そういう意味では、やはり裁判所の側としても、その採用に当たってもっともっと積極的になっていただくという必要があるというふうに思います。
 私なども経験をいたしましたし、多く指摘をされますが、どうしても裁判官の採用となりますと、従来は人数が限定されているということの中で若い者でないとなかなか採用されないとか、あるいは成績が相当上位でなければ採用されないというような傾向があるように思います。これは誤りであれば御指摘をいただければいいと思いますけれども。ただ、裁判官というのはいろいろな経験を持って人間性豊かに社会を見詰めるということも当然必要なわけで、そういう意味ではもう少し柔軟な姿勢で裁判官の人材を受け入れていくという姿勢もやはり持っていただく必要があるのではないかというふうに思います。
 そういう意味で、裁判所の側でも、法曹人口はふえていくけれども裁判官にはちっとも増加が見られないということでは、これはよりよい法曹全体の発展ということにはつながりませんので、その点について率直に認識をなさっていらっしゃること、あるいは今後の条件整備、受け入れ体制などについてお考えがあればお聞かせいただきたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(泉徳治君) ただいま委員の御指摘の中で、裁判所はこれまで人数の制限などから採用を抑える面があったのではないかという御指摘がございましたが、この点は現在までもそういうことはございません。
 私どもといたしましては、裁判官にふさわしい人員が来てくれればそれを全員採用していくという態度でおったわけでございます。ただその際、成績という点もございましたが、やはり私ども、裁判官にふさわしいそれだけの実績を二年間の修習の中で示してくれた人物を探りたいということであったことは、これは事実でございます。しかしながら、裁判官にふさわしい者はどんどん探っていくという態度であったわけでございます。今度、司法試験改革を実現していただきますならば、修習生もふえまして裁判官任官者がふえてくるということを私ども期待しておりますが、その際にはふさわしい人間を私どもとしてもできるだけ受け入れていきたい、こういう態度でおります。そのために増員が必要になればこれまたお願いしていきたい、こういう態度でおるわけでございます。
 それから、年齢の点などで制限しているのではないかという御指摘もございましたが、決してそういうことはございません。昨年八十一名、ことし九十四名の判事補を採用したわけでございますけれども、その中の約三分の一は三十歳を超えております。三十五歳を超えている判事補もおるわけでございまして、私どもとしては、社会の中で経験を積んだ、そういう経験も裁判の中で生かしてもらいたい、そういう願望でおりまして、今委員御指摘のように、柔軟に対応しろという点につきましてはそういう態度で臨んでおりますし、今後ともそういうふうに続けてまいりたいというふうに思っているわけでございます。
○千葉景子君 ぜひそれぞれの部分で条件を整備していただきたいというふうに思います。
 それと同時に、合格者がふえ法曹人口もふえてきた。しかしながら、これと国民との距離というものがこれまた遠いままであれば、合格者が増加し法曹人口がふえても、これは国民の負託にこたえるということにはならないだろうというふうに思うんですね。ですから、そこの部分も相まって質と量もふやしていくということが必要であろうというふうに思います。
 そういう意味では、もっともっと広く国民へのリーガルサービスといいますか、そういう部分を充実させていく必要があると思います。そして、積極的な施策を講じていただく必要があると思います。例えば、法律扶助に対する予算措置をもっと積極的にしていただくなどのことも必要であろうと思います。それから最近、弁護士会などを中心にいたしまして、被疑者段階での弁護人を何とかつけていくということで、当番制度などを講じて積極的に国民の要請にこたえていこうということもあるんですが、こういう面でも被疑者の国選弁護の制度を検討するとかそういうことで、日常あるいは身近なところに司法あるいは法曹が存在をするというための制度的な充実、こういうことも検討しなければいけないだろうというふうに思いますが、この点については法務省などはどのようにお考えでしょうか。
○政府委員(濱崎恭生君) まず、私の方から一般論として御答弁させていただきます。
 御指摘のように、司法試験の合格者を増加させるということにつきましては、国民の理解と支持を得るということが大切であり、せっかく増加した員数をもって国民に密着した司法サービスを提供できるようにという方策を考えることが重要であるというふうに思っております。
 今回の改革は、合格者を当面五百名程度から七百名程度までふやすということにとどまっておりますが、今後より一層の増加を考えていくという上においては、法曹が国民に対して一層充実した法的サービスを行うことができるようにするために、また裁判制度を一般国民に利用しやすいものとするためにどのような方策を講ずるべきかということについて、これは基本的にはそれぞれ法曹三者が考えていくべき問題でございますけれども、法曹三者が協力して検討をしていかなければならない問題であるというふうに思っております。今後、これから設置されます法曹養成制度等改革協議会の検討事項といたしましても、「国民の立場から見た法律専門職の在り方」ということを一つの重要な検討課題として考えているところでございまして、そういった問題について法曹三者がこの場を中心に鋭意考えていきたいというふうに考えております。
 あと、個別の問題についてはそれぞれの担当の方からお答え申し上げます。
○政府委員(篠田省二君) 法律扶助の点についてお答え申し上げます。
 法律扶助制度と申しますのは、基本的人権の一つである国民の裁判を受ける権利、これを実質的に保障するための重要な制度でございまして、国といたしましては昭和三十三年以来今日まで、財団法人法律扶助協会が行う法律扶助事業に対して予算補助を行ってまいっております。毎年、扶助費について補助金を交付し、相当の成果を上げてきているものと考えております。この制度は、既に定着してきており、当面は現行の予算補助の方式によって法律扶助制度の安定充実に努めてまいりたいというふうに考えております。ちなみに、平成三年度予算におきましては、扶助費の補助金を二千二百九十九万七千円増額して一億二千七百二十五万五千円を計上しております。
○政府委員(井嶋一友君) 被疑者に対する国選弁護人制度の立法化というテーマにつきましては、千葉委員も含め従来この委員会でも御議論がございまして、その都度お答えを申し上げておるわけでございますが、立法化そのもののお答えにつきましては従来と同じお答えになるわけでございまして、要するに職権主義的な捜査行動をとっている現在の刑事訴訟法を前提といたしますと、やはり当事者主義的な国選弁護人制度を被疑者段階、捜査段階で導入するということが現在の刑事訴訟法の建前と大きく抵触する。したがって、刑事訴訟法上の捜査の手続のあり方といったものを検討する中で一つの問題として考えるべき問題ではないかということ。
 それから、弁護士が大都会あるいは首都圏を中心とした大都会に集中をしておるというようなことがございますために、地方における国選弁護制度といったものが本当に機能するだろうかといったような問題あるいは予算的な問題、こういったことが従来指摘されまして、立法については慎重な検討を要するということを申し上げてきておるわけでございまして、本日もその点についてはそのようなお答えをせざるを得ないわけでございます。
 ただ、委員今御指摘ございましたように、最近弁護士会、日弁連におきましてこの問題を先取りすると申しますか、被疑者に対する弁護人制度の充実を図るという観点から各弁護士会がいろいろ工夫を凝らされまして、一つは刑事弁護人推薦制度、もう一つは刑事被疑者弁護人援助制度といったようなもの、あるいは御指摘のあった当番弁護士制度といったようなものを各弁護士会が始めておられます。これはやはり被疑者段階における弁護を強化しようという御趣旨でございまして、今おっしゃったような立法へ向けての一つの制度の事実上の仕組みを構築していこうというお考えだろうと思います。
 この点につきましては、私どもも御協力できる範囲で御協力するということで各検察庁に通知も出しておるわけでございまして、そういったところで被疑者段階における弁護人の充実を図ろうという日弁連の動きにはそれなりの理解もできますので、そういった方向で対応していく、その上でいろいろこの制度のあり方を見ていくということが今後の立法問題に対する一つの答えが出てくるのかなといった感じでおるわけでございます。
○千葉景子君 これにつきましては、また別途検討させていただくことにいたします。
 さて、司法試験の合格者の増加に伴って司法修習の面でもさまざま変動が出てくるのではないだろうかという感がいたします。何点かについてお尋ねをしたいというふうに思うんですけれども、現在湯島に司法研修所がございます。これが合格者がふえることによって当面はどういう受け入れ体制をとられるのか、ちょっとその点についてお聞きしたいと思うんですけれども、まずクラス編成あるいは一クラスの人数、それから教官の増加とか職員の増加、そういう面についてはどのように計画をなさっていらっしゃるのでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(泉徳治君) 今回の司法試験改革が実現いたしますと、平成四年度の入所者から修習生が六百人に、また平成六年度の入所の修習生から七百人になるわけでございます。それに対応してどうするかという御指摘でございますが、この修習生の増加に伴う修習体制につきましては、この法案が通り次第、私どもといたしましては日弁連それから検察庁と協議してまいりたいというふうに考えているわけでございます。
 ただ、その協議に当たる私どもの考えでございますけれども、六百人体制におきましては現在の司法研修所の施設のままでやっていきたいというふうに考えております。そういたしますと、物理的な制約がございますのでやはり六百人体制では、現在のクラスは十クラスございますが、これを維持せざるを得ないのかなというふうに考えているわけでございます。そういたしますと当然教官も現在の体制ということになります。職員につきましてはできるだけ内部の努力でやってまいりたいと思いますが、これはさらに時間をかけて検討していきたいと思っております。七百人体制になりましたら、これはもうとても十クラスではまいりませんのでクラスをふやす方向、また教官もふやす方向で対処をしていきたいと思います。職員も、これは施設も広がりますし修習生もふえますので、これはやはり手当てをしなければいけないだろうというふうに考えているところでございます。
 いずれにいたしましても、十分法曹三者で話し合いをしコンセンサスを得てやってまいりたい、こういうふうに考えている次第でございます。
○千葉景子君 急な体制になりますので難しいとは思いますけれども、六百名で十クラスということは一クラス六十名ということですね。なかなかこれは質的な面からいってもかなり――今、普通小学校でもだんだん三十人とかそういうクラス編制が求められている時代ですから、その倍ほどの人数ということでこれはいかがなものかという感じがいたします。そういう意味では、ぜひこの辺についても法曹三者なりあるいはそれに直接携わる皆さんなどの意見も聞いていただいて、できる限りやっぱり充実した質のよい研修ができるようにしていただきたいというふうに思うんですね。敷地の面などを考えますと、湯島に少し増築ぐらいはできるんではないかと思うんですけれども、それはともかくとして、内容を低下させないような措置というのは当然考えていただくべきではないかなというふうに思います。
 さらに今後の問題としては、研修所の移転なども今検討をされているということもお聞きしておりますが、この点について具体的な今後の計画などがございましたらお聞かせをいただきたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(町田顯君) ただいま人事局長が申し上げましたとおり、六百人でございますと何とか無理をして現在の司法研修所に収容することができるわけでございますけれども、七百人となりますと現在の研修所に収容することは不可能でございます。そこで、七百人になります平成六年四月をめどにいたしまして、現在の修習地を移転して近代的な研修施設として充実したものをつくりたいということを考えております。現在、その移転先につきましては関係省庁と鋭意折衝中でございます。早期に結論を出したいと考えております。
○千葉景子君 埼玉県の朝霞とかそのあたりという話も漏れ承ることがあるんですけれども、その辺で検討なさっているというようなことはございませんですか。
○最高裁判所長官代理者(町田顯君) 和光市から練馬区にかけて国有地があるわけでございますけれども、そこも候補地として現在折衝中でございます。
○千葉景子君 これは物理的な器の問題もそうなんですが、人数がふえてくるということになりますと、その内容などについてもだんだん大きくなっていろいろな問題点が出てこようかというふうに思うんです。その中でやはり気になりますのは、例えば人数が多くなったから分けて研修をしようとか、あるいは一定のコースでまとめて研修をしようとか、そういう話というのが出てこないとも限らない。そういう危惧も抱くわけです。せっかくこれまで法曹一元ということを趣旨として統一的な修習がなされてきたことに大変大きな意義があると思うんですけれども、分離で修習をするとか、そういうことは全く考えていらっしゃいませんか。
○最高裁判所長官代理者(泉徳治君) 今回の司法試験改革は、現在の修習体制を維持するという前提のもとでどれだけ修習生が採用できるかといったところから七百人という数字が出てきたわけでございまして、今回の改正につきまして分離修習をするとかあるいは一定のコース分けの修習をするということは全く考えていないわけでございます。
○千葉景子君 それから、人数がふえてまいりますと、実務修習の受け入れもこれまた体制づくりが必要になってくるだろうというふうに思うんです。それに伴って、例えば、大変だから実務修習の期間をむしろ少なくしてそして研修所での修習の期間を長くしようとか、あるいはまた、午前中に中坊参考人からもお話がありましたように、実務修習先の問題、弁護修習なども含めてそういうところでやはり今後さまざま増加に伴う問題点が出てこようと思いますけれども、その辺についてのこれまでの御検討方などがございましたらお知らせをいただきたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(泉徳治君) 日弁連から最高裁に対しまして、司法修習生が増員された場合の今御指摘の配属地の問題でありますとか、そういったいろんな問題については協議したいという申し入れがございます。私どもといたしましては、司法試験法改正をお認めいただきました後に早急にこういった問題について、弁護士会は当然でございますし、それから検察庁も含めて三者で話し合ってまいりたいというふうに考えているわけでございます。
 配属地の問題でございますが、御承知のように、現在三十七の配属地がございます。これが七百人体制になった場合には残りの十三の配属地もこれも受け入れをお願いしなきゃならないのではないかと現時点では考えているわけでございます。
 それから、修習の期間でございますが、先ほど申しましたように、今回の司法試験改正におきましては基本的に現在の修習体制を維持していくという前提のもとでのものでございますから、基本的には現在の実務修習の期間を維持していきたいというふうに考えているわけでございます。
 しかしながら、それには問題かないわけではございません。現在の実務修習は十六カ月でございますが、その十六カ月のうちの最初の四カ月は前の期と重なり、後の四カ月は後ろの次の期と重なるというようなことで、ちょうど半分の八カ月が二期重なる。ですから、現地に配属されます修習生が二倍になるという問題がございます。そのために、どうしてもその受け入れに限界という問題が生じてまいります。一カ部の配属修習生も四人程度は受け入れてもらわなきゃならないといった問題になりまして、そうなりますと修習の中身が薄いものにならざるを得ないという問題を抱えているわけでございます。そういう問題もこれは今後提起いたしまして、三者でどういう方法がいいのか話し合っていかなければならないというふうに考えております。
○千葉景子君 ぜひその点についてはこれまでの修習の意義なども積極的な評価をいただきまして、関係者と十分協議をするということに努めていただきたいと思います。
 時間も余りありませんので最後に、今後、平成七年にでしたか、この増加の状況を見ながら検討が加えられるということでございますけれども、これは先ほど申しましたようないろいろな条件もぜひ整備をしていただいて、そしてそういう中で、丙案といいますのもある意味ではこれまでの司法試験のあり方から考えますと一部特別扱いというような問題になりますので、できるだけ広く平等に、そして統一をした試験としてその意義を貫徹していただきたいというふうに思います。
 そういう意味で、条件整備をした上慎重に検討なども加えていただきたいというふうに思いますが、この検討については司法試験管理委員会が最終的な結論といいますか、判断機関になるのだろうというふうに思います。しかしながら、できるだけ広い観点でいろいろな多くの皆さんの意見なども取り入れていただいて最終的な結論に導いていただきたいというふうに思いますが、その点について今後の検討の方法、プロセス、これについて確認をしておきたいと思います。
○政府委員(濱崎恭生君) 御指摘の検証は、昨年十月の法曹三者の基本的合意に基づいて、平成七年までの試験の結果を見て平成八年度からの合格枠制の実施をするかどうかということを決めようというものでございます。その前提といたしまして、御案内のとおり、早速ことし平成三年から合格者を六百人、平成五年からは合格者を七百人にふやすその増員の効果、それからその間できるだけ運用で改善できる点は改善していくということによって司法試験の抱えている現在の状況が合格枠制を実施しなくても解消することができるかどかということを見定めようとするものでございまして、私どもその前提条件は確実に実現していく考え方であります。
 平成八年からの実施は、法律的には司法試験管理委員会が決定するということでございますけれども、法曹三者の合意によりまして、その検証のために必要な作業は、この改革が実現すると同時に、これも法曹三者の合意によって設置されます法曹養成制度等改革協議会の場において行うということを予定しております。そこには、法曹三者のほかに大学関係者、学識経験者にも入っていただくことを予定しているわけでございます。
 具体的にどうやって検証していくかという手法につきましては協議会の中で協議していくものと考えておりますけれども、協議会におきましては法曹三者それぞれが必要な資料を提供するなどその運営に協力するということになっておりますので、法務省といたしましては、検証基準として定められている事項を含めまして、このような検証のための検討に必要な資料を十分に提供して、適切な検証評価が行われるように努めたいというふうに考えております。
 なお、検証の手順といたしましては、いきなり平成七年の試験結果だけを見てやるということではございませんで、平成三年から早速増員がされる、その増員の効果を毎年毎年どういうふうにその効果があらわれるかということを見まして、毎年の検討を積み重ねていって、最終的に平成七年の試験の結果によって検証を行うということを考えている次第であります。
○千葉景子君 最後に、大臣にお尋ねしたいと思いますけれども、今いろいろと私も意見なども述べさせていただいてきたんですが、こういう司法試験そのものが非常に異常なといいますか、ゆがんだ状況になっている、そういったことをもたらしてきたというのは法曹関係者の責任もやはり大きいというふうに思います。そういう意味ではそういうことも十分認識しながら、今後国民の十分負託にこたえられるような法曹の育成ということに私たちは努力をしていかなければいけないだろうというふうに思いますが、その点について大臣の今後の御認識といいますか、決意というものをお聞かせいただいて、終わりにしたいと思います。
○国務大臣(左藤恵君) 今の我が国の社会が非常に高度化し、また国際化していくとか、そういうふうないろんな問題で複雑多様な社会事象が、それでまた、しかも法的に解決を要するような社会事象というものがふえてきている、こういう今時代になってきている、このように思います。いろいろ御指摘のような点から考えまして、司法というのはそういった社会の進歩、発展、変容というものに適合したものでなければいけませんし、そしてそういった方向に努力をしていかなければならない、このように考えるわけであります。
 そういうためには、より豊かな人間性と人権感覚、そういったものを備えた、そして柔軟な思考力といいますか、そしてまたやる気といいますか旺盛な意欲というものを持って、そして国民の負託に十分こたえることができるような法曹三者ですね、裁判官、検察官、それから弁護士さん、そうした方々が国民の身近なところにあってその需要を十分満たしていくことができるような、そういう社会づくりというものを我々努力していかなければならないんじゃないだろうか、このように考えるところでございます。
○北村哲男君 私は、今回の法改正に対するスタンスがまだ決まっておりません。と申しますのは、平成元年十一月二十日に法務省が出された「司法試験制度改革の基本構想」に示された具体的内容として由、乙、丙案が出されておりますけれども、これは基本的にはあるいは本質的改革にはならないというふうに私は考えるわけです。こんな案を出されて、その甲、乙、丙、さあどれをとろんだというふうに言われても、結局ノーと言うしかないということだと思います。
 日弁連としましては、やむを得ない選択として、苦渋の選択としてこれをとった、そして検証期間の時間的余裕と改革協議会からその間により抜本的な案が出ることを期待をして丙案をとることにしたいというふうに、きょう午前中の中坊参考人は言われました。しかも中坊会長は、丙案としてもだれが考えても公平な案ではないということまで言い切られました。したがって、この丙案をとる目的のための今回の八条二項の改正案は、それだけとってみると問題があるというふうに私は思うわけです。
 しかし、現在のまたむちゃくちゃな状況、これもけさの三ケ月先生が言われた言葉ですけれども、むちゃくちゃな状況は何とかしなければならないというのは、これは共通の認識であろうと思いますし、その立場から積極的に見ていきたいというのが私の立場でもあります。したがって、私のこれからの質問もやや軸足を欠いた、私のゴルフのようなあっちこっち球が飛んでいくような形の質問になるかもしれませんけれども、ひとつよろしくお願いしたいと思います。
 ところで、私はまず、この改正の必要性の有無ということでありますが、非常に難しい法律案が出されております。一つは、司法試験は法曹を志す者に対して将来法曹として働くにふさわしい素質がある人物か否かを試す試験であって、御承知のように、法曹の役割は国民あるいはその人の人権を保障するという最も重要な役割を担うために、その試験は大変な厳しさが求められてきたということは今さら申すまでもありません。そうした原因によるものかどうかは別としまして、最近試験に合格することが著しく困難で、受験生にとっては過酷な状況になってきておって、そのために本来難しい試験であれば飛び切り優秀な人間が入ってくるはずであるのに、逆に柔軟で判断力のある人材が法曹界に来ないと言われ、あるいは法曹となるに適した人材の司法試験離れが起こってきているというふうな言われ方をしております。その点について、本当にそうなのかという言い方もおかしいんですが、実際どういう意味で通さない人間が来ておるのか、不適格な人間が来ておるのかということについて、まず法務省当局及び裁判所当局にその点の認識をお伺いしたいと存じます。
○政府委員(濱崎恭生君) 今次改革の必要性につきましては、これまで折あるごとに説明しているところでございますが、簡単に繰り返させていただきますと、合格するまでに余りに長期間の受験を要するようになっている。現在、合格者の平均受験回数が六回ないし七回ということでございまして、平均的には大学を卒業した後数年間、大学を離れて専ら受験勉強に没頭するということで初めて合格し得るというような試験になりつつある。放置しておきますと、これからこの状況はさらに進行するおそれが大きいということでございます。そういう長い期間大学教育から離れて画一的な受験準備に専念することを余儀なくされておるということ自体大変問題であると思いますが、そのほかに、ただいま委員御指摘のように、法曹となるに本当にふさわしい人が最初から試験にチャレンジしない、あるいは一、二回受けてあきらめてしまうという受験離れという状況を生じている。
 さらにその結果といたしまして、任官を希望する人を十分に確保することができないような状況になっている。そういう状況がますます進行するおそれがあるということでございます。言葉をかえて言いますと、法曹となるにふさわしい人材、これはいろいろ多様な人材が求められるのではないかというふうに思いますけれども、現在ではそういった長期間の受験勉強というものに社会的、経済的にも、あるいは進路選択の考え方の上においても耐え得る人でなければなかなか合格することができないという試験になりつつある。こういう状態を抜本的改革が実現するまで放置することはできないということで、今回甲、乙、丙案を提案し、協議し、ここまでに至ったわけでございます。
 午前中の日弁連会長の御意見の中に、丙案はとりたくないという御発言がございましたけれども、しかしそれでもなお一定の検証を経てやむを得なければということで了解されたということは、これは現状を放置することができないという点においては異論がないということを踏まえて、そうしたら今すぐ実現するものがどういうものがあるかということになると、なかなかほかの解答がないというところからそういう結論に達せられたものだというふうに思っております。
 私どもそういう問題意識を持っておりますが、現在の試験制度のもとで合格してこられる多くの方々は長い受験勉強を経て合格されるわけでありますけれども、そういう方々が法曹としてふさわしくないんだというふうに考えているわけではございません。そういう方々も有用な人材であろう。しかしながら片方、もっと短期間に合格し得るフレッシュな人、こういう人もやはりチャレンジし合格するという試験でなければならない。そういう制度にするためには、今提案申し上げている合格枠制という制度のほかに当面の解答はないのではないかというふうに考えている次第であります。
○最高裁判所長官代理者(泉徳治君) 裁判所におきましても、基本的にはただいま法務省から御説明のあったような認識でいるわけでございます。
 司法試験の現状は、合格に要する受験回数の増加、それから合格者の年齢等からうかがえますように、多くの者にとって大学卒業後合格まで相当長期間の受験勉強に専念しなければならないという状況でございまして、これは法曹の入り口であるべき試験のあり方としてはやはり極めて異常であろうというふうに認識いたしております。
 その結果といたしまして、私ども裁判所におきましても任官者を確保するということが困難な面がございます。昨年は八十一、ことしは九十四と探れましたけれども、ちょっと前は六十人を割るということがあったわけでございます。そういう司法試験の異常さというものが人材の確保という面で障害になっているというふうに認識を持っておりますので、やはり早急に改善をお願いしなければならないというふうに考えているわけでございます。
○北村哲男君 改善の必要性についてはよくわかりますが、しからば今回この法改正を試みられたというんですが、今ある司法試験法のどこがどのように問題なのかという点なんです。
 一つは、確かに教養科目の廃止だとか、これは司法試験法に出ておりますのでこれを廃止することについては法改正が必要だと思うんですが、八条二項につきましては、いわば当面人数をふやすことについては、昭和二十年代の二百人の合格者からその後四十年代、五十年代と五百人まで倍以上、三倍近くまでふやしてくるについて何ら法改正をしないでここまできておられるわけです。しかるに、今度の出された八条二項だけを見ましても、これは「合格者の一部」とかあるいは「一定の期間内」というふうな表現がありますけれども、これだけ見たのではさっぱり何のための改正かわからないわけです。いわばこの法律が八条二項にありますように、司法試験管理委員会の規則に白紙委任をしているような形の法律になっておるわけですけれども、何も八条二項を改正しなくても今までのような形で司法試験管理委員会が考査委員に何らかの規則をつくるような形の指示あるいは命令を出せばできるんではないかという点、何のための改正なのかというのが一つ。
 それからもう一つは、この八条二項は、資料末尾にある「司法試験制度改革に関する基本的合意」というものと結びついていることは当然今までの経過からよくわかるんですけれども、この合意にどのような形で拘束されるのかということです。法律とそれから法律外の合意との関係、関連性を御説明を願いたいと思います。
○政府委員(濱崎恭生君) いろんな観点から御質問をいただきましたが、順次答えさせていただきます。
 まず、なぜ法改正が必要なのかという点でございます。今回の改革は、既に御理解いただいておりますように、受験者がより短い受験期間で合格できる可能性を高めるという観点から論文式試験の合否決定において受験期間を考慮する、受験期間によって別枠の合格枠を設けようとするものでございます。
 司法試験は、法曹三者になろうとする者に必要な学識及びその応用能力を判定することを目的とする国家試験というふうに定められておりまして、試験ごとに任命される考査委員が受験者の成績評価を行った上で合格者を決定するということにされております。また合否判定におきましては、知識の有無に偏することなく、「理解力、推理力、判断力等の判定に意を用いなければならない。」という規定もございます。このような制度のもとにおきましては、一般的に合否判定は受験者の試験の成績によって判定をするというふうに考えるのが素直な考え方であろうと思われますし、これまでもそういう合否決定の方法がとられてきたわけであります。また受験者もそういうものとして理解しているわけでございます。
 そういうこれまで行われてきた中で、今回、先ほど申しましたような合格枠制というものを導入するにつきましては、これはやはり法律できちっとこういう制度をとることができるという授権をいただく必要があるのではないかというふうに考えたわけでございます。
 また今回の改正におきましては、司法試験管理委員会が司法試験の状況に照らして必要があると認めるときにこういう制度を採用することができるという制度にいたしております。これは、今申しましたような合格枠制というような運用は、その試験ごとに要するに知識、能力の判定のための専門家として選ばれた考査委員が個別に判断するということよりも、司法試験法上司法試験を管理運営する独立の行政機関として設置されておる司法試験管理委員会が試験の状況を継続的に把握した上で、その上での政策決定としてそういう判断をするということが適当であるというふうに考えた結果でございます。そこで、司法試験管理委員会がそういう合否決定方法を定めて、考査委員がそのルールに従って合否決定をしていただくということにするためには、現行法の八条におきまして「司法試験の合格者は、司法試験考査委員の合議によって定める。」ということの規定上、その例外としてそういうことができるということを法律で規定していただく必要があるというふうに考えたわけでございます。
 なお、余りに白紙委任で法律だけ見てもわからないではないかという御指摘をいただきましたが、この点についても午前中三カ月参考人の御発言を伺っておりまして、三カ月先生でも大変御理解いただきにくいんだなということを反省いたしておりますけれども、しかし、私ども決してこれは白紙委任をしているつもりではございません。司法試験管理委員会としてはそういう状況に照らして必要があると認めるときにこういう制度をとることができるということ、そしてその制度をとるかどうか、あるいは管理委員会規則を定める場合の基準として「多様な人材の合格の可能性を損なわないように配意」するという枠をかぶせていただいております。それからまた、管理委員会がとることができるあるいは管理委員会規則で定めることができる中身は、合格者の一部について初めて試験を受けたときから一定の期間内の者から定める、そういう方法に限定する、そのほかのげた履かせというものを恣意的にとることはできないという形で枠をはめているわけであります。そういうことで司法試験管理委員会の権限を法律で一定の枠をはめていただく、そのために法律の規定が非常に複雑な規定になっているということもあるわけでございます。
 次に、基本的合意との関係でございます。この点は委員既に御案内のとおり、平成三年から平成七年までの五年間、一定の合格者の増加と運用改善等を鋭意行った上で、その結果によってこの合格枠制を採用するかどうかを決定しようとするものでございますが、この法律におきまして司法試験管理委員会が司法試験の状況に照らして必要があると認めるときにそういう方法をとることができるというふうに規定しておりますので、法曹三者で合意した検証の基準というものは司法試験管理委員会が状況に照らして必要があると認めるかどうかという基準としてワークすることができるわけでございます。もちろん法曹三者の合意が法律上拘束力を有するというものではございません。しかしながら、これは私どもこの制度の実現のために真摯に協議をして合意に達したものでございますので、法務省としてはもちろん、裁判所としても弁護士会としても同様でございましょうけれども、この合意に従って誠実に行動しなければならないということでございます。
 今回、こういう形で法律案を提出して御審議をいただいておりますのも、そういう合意を踏まえて私どもとして法律案を立案し提案させていただいているわけでございます。管理委員会の採否の判断におきまして、あるいは司法試験管理委員会規則の定める内容におきまして、これは私どもとしてその合意の内容どおり実現するように司法試験管理委員会に働きかけてお願いをする、司法試験管理委員会としてもそういうことで内部的に御了解をいただいているということであります。
○北村哲男君 今の御説明で大体わかるような気もするんですけれども、八条二項で片や司法試験管理委員会が必要あると認めるときはというふうに司法試験管理委員会の裁量権がはっきりとうたわれております。片や法曹三者の検証というのは基本的合意として固められてあるのですね。これは確かに法曹三者の真摯な合意であるから当然やられるかと思いますけれども、もうこの辺は必要があると認められたことになるわけですか、この検証、いわゆる基本的合意の第三の「検証等について」は。なおかつ今後も司法試験管理委員会に必要性の有無をゆだねることになるわけですか。
○政府委員(濱崎恭生君) この司法試験管理委員会の合格枠制の採否の決定、これはそれを実施する年度の試験のスタートに間に合う段階において行うということを予定しているわけでございまして、具体的にこの法律の規定及び予定しております管理委員会規則の規定によりまして、管理委員会がこの合格枠制を実際に採用することができるのは平成八年の試験からということになります。したがいまして、平成七年までの試験結果をこの規定の司法試験における状況として判断をいたしまして、それを踏まえて平成八年から実施するかどうかを管理委員会で決定されるということになるわけでございます。そういうことを予定しております。
 司法試験管理委員会が状況に照らして必要があると認めるかどうかということを決するためには、管理委員会としても内部的な基準というものを当然定立しなければならないというふうに考えておりまして、その内部的基準としてはこの法曹三者の合意による基準を踏襲していただく、そういうことで法曹三者が司法試験管理委員会に働きかけ、内部的な御了解をいただいているということであります。したがいまして、司法試験管理委員会としては、この法改正が施行されました段階におきまして、直ちに将来の検証の基準というものを三者の合意に沿って内部的に定立していただくということを予定しているわけであります。
○北村哲男君 基本的合意のうち改革協議会というところがございます。既にその要綱はいただいておりますけれども、4に「協議事項」という項目があります。その中の(2)に「検証に必要な事項」というふうなことが早急に検討協議されなければならないとして挙げられておりますが、これはどのくらい既に具体化しているのか、もしわかる部分がありましたら御説明を願いたいと思います。
○政府委員(濱崎恭生君) 改革協議会の開催の時期についてのお尋ねかと思いますが……
○北村哲男君 それは後に聞きます。ちょっとお待ちください。もう一回質問し直します。
 先ほど必要な検証等についてという質問をしましたが、それに関連しまして、この改革協議会の中で協議事項として「基本的合意に係る検証に必要な事項」ということが協議の対象になっておりますけれども、その「検証に必要な事項」とはどういうことを指しておるのか、そしてそれが既にどのくらい具体化しておるのかという点について、まずお伺いしたいと思います。
○政府委員(濱崎恭生君) どうも失礼いたしました。
 この合格枠制の実施の法律的な決定権限は司法試験管理委員会にあるわけでございますが、法曹三者のレベルの問題といたしましては、先ほど来申し上げております昨年十月の合意に基づいて、これで平成八年から合格枠制を実施するかどうかという法曹三者の確認をしようというふうに考えているわけであります。そのためにはいろいろデータを集めて将来予測をする、まずその数字の評価をし、それに基づいて将来評価をするという作業が必要になるわけでございます。そういった最終的な検証評価に必要な作業をこの改革協議会の場で行おうということでございまして、「検証に必要な事項」という書き方をしているのはそういう趣旨でございます。
 また、この検証というのは、最終的にといいますか、最終的検証は平成七年の試験結果を見てからということでございますが、その前にも本年度から合格者を増加していくわけでございますが、毎年合格者を増加しあるいは運用改善をした効果をその都度見ていこうと、それを積み重ねることによって最終的に平成七年の検証に結びつけようということを考えているわけでございまして、毎年のデータの分析評価といったこともこの改革協議会の場で作業をするということを考えております。
○北村哲男君 それでは、先に各論に入って申しわけなかったんですが、先ほどお答えになろうとされました点ですけれども、基本的合意では、この改革協議会については今回の法令の改正が完了後直ちに第一回の協議会が開催されるようにする、そしてその中では改革協議会の性格、構成、協議事項、それから発足までの手続、日程等について協議を行うというふうに出ております。確かに、この要綱を見ますと、性格、構成、協議事項等についてはかなり具体的になっておりますけれども、その後の発足までの手続、日程等についてもし決まっておりましたら御説明を願いたいと思います。
○政府委員(濱崎恭生君) 現在、具体的にこの改革協議会を発足させるための法曹三者の代表から成る準備会というものを既に発足させておりまして、その会議を先般持ったところでございます。そこで最終的な構成メンバーの推薦、そのほか細かい運営事項について決定して、そういう手順を経て協議会のメンバーが確定し次第第一回の協議会を開催するということを予定しております。具体的には五月ないし六月中には第一回の協議会を開催すべく準備を進めているところであります。
○北村哲男君 第一回はというか、その後はどういうふうな手順で進められる御予定なんですか。
○政府委員(濱崎恭生君) この改革協議会は、お手持ちの要綱をごらんいただいてもおわかりいただけますように、極めて広範な問題について抜本的に取り組むということを考えております。したがいまして、その答えがいつ出るということを見定めて協議がスタートするというような性格のものではございません。検討すべき事項は極めて多方面にわたりますので、そういう事項をどういうふうに調査検討していくか、その進め方につきましてはこれからの協議会の中で、あるいはその協議会を運営する立場での法曹三者の事務局的なものを設けるというようなことを考えておりますが、そういった中で検討を進めながら考えていくという問題であろうと考えております。
○北村哲男君 ちょっと質問が飛びますけれども、現在の司法試験は大変難しいということと、それから合格者の人数が非常に少ないということに関連してお伺いします。
 合格者数については昭和三十六年ぐらいまでは非常に少なかったんですけれども、三十八年ぐらいからかなり数がふえて、昭和四十一年には五百五十四人の人を合格させております。その後、昭和四十三年以降は五百人弱となって一〇%近く少なくなっておるわけです。そして、資料を見ますと昭和五十六年には四百四十六人となって百人以上も少なくなっている。これは先ほどの司法修習のクラスで言うと二クラスも少なくなっているような表になっておるんですけれども、どうしてせっかくの収容能力があり、そして指導体制があるのに百名近くも少なくなったのか、その間はどういう理由によるのかを御説明願いたいとともに、この五百五十四人という水準をずっと保っておれば現在のような悲惨な状態にはならなかったんではないかというような御意見もどこかであったように聞いております。衆議院のどなたか参考人の方が言われたような気がしておりますけれども、その点についての御説明をいただきたいと思います。
○政府委員(堀田力君) 北村委員御指摘の御質問は、参考資料の中の三ページにあります数字に基づいての御質問かと思います。この最終合格者の決定は、委員御承知のとおり、考査委員会にゆだねられておるわけでありまして、その年その年に開かれます考査委員会議におきましてその年度の成績分布の状況を、問題の難易あるいはそれまでの試験問題における合格水準等と考え合わせ、さらには研修所における収容能力、その他諸般の事情も考え合わせまして決定しておるわけでございまして、このような若干の数字の変動ございますけれども、この間において司法試験管理委員会なり考査委員会において明確な政策的な変更があったということはないと承知しております。その年度年度のできぐあいを見まして、こういう決定になってきておるものだと理解しております。
 二つ目に、五十年代に入ってから四十年代と比べ若干人数が減っておって、これをもとどおり採っておれば今の事態がもう少しよくなっておったんではなかろうかという御質問でございます。これは私どもも推測でしか申せるわけはございませんけれども、やはり現在の合格者の状況、もしこの人数があるいは五十年代においてもう少し、百名程度多いと仮定いたしますと、その限度においては改善されてきておるんではないか、これはそういうふうに推測されます。
○北村哲男君 今のは確かに考査委員の権限ですから、ほかの人が試験の結果についてだれも口を出すことはできないかもしれません。しかし、前々から法曹人口が非常に少ないということを言われておりまして、それも二〇%近く減っていくというのは、それを見てもかなりおかしいなという気がするんです。
 そこで、試験のやり方によるんでしょうけれども、一体どうして一点を少なくすることでそんなに百人も減っていくのか。そのあたり正直に言えば短答式ということがありまして、短答式の難しさ、それが大体どのくらいの点数で、どのあたりにどれくらいの人数が固まっているのかということ。論文式についても、何人ぐらいが論文試験に合格して、それもまた年々差があるのかどうか。そこで一体ちょっと違ったところが、それだけ二〇%も差がつくような形の試験方法なのか。その辺について具体的にわかりやすく御説明を願いたいと思います。
○政府委員(堀田力君) 各年度の試験の成績、合格点等は、これは従来ともに秘密ということにされてきておりますので、大変難しい御質問をちょうだいしておるわけでございます。
 この点のあり方につきまして、まず短答式試験につきましては、昭和五十四年ころからは大体二万数千人受けられますうちで四千人ぐらいをめどに合格者が決められてきております。どの程度の成績をとった者が受かるかということでございますけれども、これは短答式の問題は各年度によりましていろいろと傾向が変わりまして、その合格最低点につきましてはかなりの異同がございます。非常に簡単なだれでもできる問題にしてそのかわり問題の数を多くするというようにした場合もございますし、かなり詳細な知識を求めるような問題の場合もある。あるいはその受験者の法的な推理力、推考力を確かめるような問題にしたような場合もあるということで、これは各年度においてかなりのばらつきがございますのでごくかいつまんだところしか申し上げられませんが、大体六割台から七割台ぐらいあたりまでの方が四千人の範囲に入っておられるというような状況でございます。
 それから論文式につきましては、これは短答式と違いましてかなり各年度、大体の点数は出ておるわけでございますけれども、これを百点満点の割合ということで申しますと、大体これも六割から七割くらいあたりの成績をとった方々のところで合格点が決められておるということでございます。
 ただ、これまでの状況から申しますと、比較的正常と申しますか、司法試験が今日ほどの問題でなかった時代におきましては大体合格者がピラミッド型のような感じで最高点からずっと広がってきておりまして、あとは紡錘型でまた悪い点の方は狭まるというような形でございますけれども、そのうち大体上の方からある程度のところで線引きをすればいい形でピラミッドの上の方が切り取れるというような形になっておりましたが、その後競争が非常に激しくなり、また中坊参考人の言葉をかりますれば滞留現象が進むにつれまして、受験技術の点で非常にそういう知識を積まれた方が受けられるようになりまして、トップの合格者と合格する点あたりの点数の差がそれほどなくなってきており、さらにその合格点の下のあたりにもそれに準ずる成績の方がふえてきておられる。ピラミッドの姿がだんだんやや平らになってきておるというような傾向があろうかと思われます。
○北村哲男君 時間がありませんのであと一点。今せっかく短答式と論文式を言いましたので、口述試験というのは大体論文式の合格者のうちどのくらいの数の人が振り分けられるのか。そして口述試験はどのように活用されているのか。これは単なる論文試験の補完的なものにすぎないのかという意味で、ちょっとお伺いしたいと思います。
○政府委員(堀田力君) 口述試験の方は論文式試験と違いまして、合格率は大体九割は超えておるようなところで例年運用されてきておると思います。
 その判断基準は、やはり論文式試験を通ってきておりますので相当の知識を持っておることは大体わかるのでありますけれども、中にはそれが丸暗記だけの方というような方もおられましょうし、そういう方については落ちるというような形で運用されておるかと思います。
○北村哲男君 時間を過ぎて恐縮ですが、大臣に私も一言御所見をお伺いしたいと思います。
 今までるる質問もしてきましたけれども、法曹養成制度の抜本的な改革は重要な意義を有するものであって、それだけに法曹関係者及び大学関係者はもちろんのこと、国民各界各層の意見に対して十分に耳を傾け、かつ専門的な調査とかあるいは研究を十分に行った検討がなされるべきだと考えます。それについての法務大臣の御所見をお伺いしたいと存じます。
○国務大臣(左藤恵君) 法曹養成制度のあり方につきまして、我が国の将来と国民の福祉に重大な影響を与えるものであるということでありますから、その抜本的な改革の検討に当たりましては、委員御指摘のとおり、国民各界各層の意見を十分聞かなければならないと思います。そして関係者間の協議や専門的な調査研究を十分行っていく必要もあると考えますので、それは法曹養成制度等改革協議会にこうした点を十分お考えいただいて協議が行われるものと、このように考えておるところでございます。
○北村哲男君 終わります。
○中野鉄造君 私は本改正案について、この改正によって司法試験を国民及び受験生の立場から見て十分な制度に改革し得るかどうかという観点から幾つかお尋ねしたいと思います。
 午前中の参考人質疑を通してみても、法曹人口の絶対数が足りないということがわかります。また、二十一世紀を目指して国民のニーズにこたえるためには二百人ふやしたというようなそういうことではなくて、本当に大挙、千人も千五百人くらいも合格者数をふやしていいのじゃないか、またそうあるべきだというようなお話も承ったわけでございますが、それがなかなかできないで今回ようやく、それこそ何十年かぶりに二百人というようなこういう改正になったわけでございまして、確かに一歩前進ということは言えるかもしれませんけれども、なぜにそういう思い切った合格者の増員ということができないのか。いろいろ予算の都合等もございましょうけれども、国民の側から見れば何か法曹界というのがギルド社会的なそういうふうにさえ目に映るわけなんですけれども、そこいらのところをお尋ねいたします。
○政府委員(濱崎恭生君) これまで合格者の数を約二十数年間にわたって五百人前後ということで推移してきたということについての御批判、これは午前中も三ケ月参考人から非常に手厳しい御批判をいただいたところでございます。ほかの委員の御質問に対しても申し上げましたように、合格者の数につきましては戦後現行の司法試験制度が発足しました後、出願者の増加それから司法研修所等の司法修習生の受け入れ体制、そういったこと等の兼ね合いから次第に合格者を増加させまして、法曹三者、その他の関係者の了解、合意し得る点として昭和三十年代後半ごろに五百人程度にまで増加させてきたわけでありますが、その後合格者の数につきましては司法修習の受け入れ体制、あるいは法曹人口の問題、そういった関係者の了解がなければなかなか実現できない難しい問題であるということから現在まで推移してきたということであろうと思っております。
 今回、その問題、そういった推移に対する反省をも踏まえまして、現段階で直ちに実現できる数で、かつ現在の司法試験の実情を相当程度に改善するために思い切った数ということで二百人程度の増加を図るということに合意ができたわけでございますが、そのことが遅きに失したという点については謙虚に受けとめなければならないというふうに考えております。
   〔委員長退席、理事北村哲男君着席〕
○中野鉄造君 午前中からのいろいろな質疑の中で、今日のように何回受けても何回受けてもなかなか合格しない、もういいかげん嫌になって途中で挫折してほかの企業に回るとか、あるいはもうこの司法試験そのものにだんだん挑戦しなくなってくるというようなことにもなっていくんじゃないか、こう思うんですけれども、今回こういうように合格者の数をふやしたとか多少の改善はありますが、これによってでもしょせん大枠としての現行制度というものは余り変わらないわけですけれども、果たしてそれでも現行のままで法曹となるにふさわしい人材を十分に吸収し得ることができるとお考えであるのかどうか、そこいらいかがですか。
○政府委員(濱崎恭生君) ただいま申しましたように、現状をできるだけ改善するための合格者の増加、直ちに実現できる数として七百人というところまで踏み切ったわけでございますが、私どもいろいろ司法試験に関するデータを分析し、それから統計に関する専門家にそのデータに基づいて将来の推計をしてもらったところによりますと、合格者を二百人程度ふやすということだけによって抱えている問題が改善されるかどうかということについては、これはあくまでも予測でありますが、かなり悲観的である。合格者をふやせばそれだけ新たな挑戦者がふえるということが考えられますし、また合格者がふえただけ途中で断念する者もふえてくるというようなことも総合して考えますと、二百人程度にふやすだけでは、将来の予測の問題でございますけれども、現在抱えている問題を解消する効果はほとんど期待できないのではないか、そういう予測に立ちまして、それだけでは改善が期待できない。
 そこであわせて、より短い期間で合格する可能性を高めるという観点から、法案として提案させていただいております合格枠制というものを司法試験管理委員会の判断によって採用することができるという制度をつくっていただこうと考えたわけでございます。もっとも、先ほど来出ております法曹三者の合意によりまして、その増員と運用改善だけで抱えている問題を解消することができるかどうかを見定めてこの制度を使うかどうかを決定しようということになっておりますが、私どもの予測としては今申し上げたようなことでございます。そういうことでぜひともこの合格枠制というものを制度としてつくっていただく必要があるということで、改正法案を提出させていただいたわけであります。
 この合格者の二百人程度の増加とあわせてこの合格枠制を採用し、さらに試験科目を一科目削減するという改正もあわせて提出しておりますが、そういう改革を実現することによって現在の抱えている問題、完全にということではないかと思いますけれども、相当程度に改善されるということを期待しております。単なる期待ではなくて、改善されるであろうというふうに考えておるところでございます。
 なお、将来のより抜本的な改革、委員御指摘のような点も含めましたより抜本的な改革につきましては、そういった今次の改革の成果も見ながら考えてまいりたいと思っているところであります。
○中野鉄造君 私、こういうことをお尋ねする基本的なものは、要するにこの司法試験なるものは、午前中もちょっとお尋ねしたんですが、これは資格試験なのか就職試験なのか、こういうことがあるわけなんですね。
 それで、司法試験法第一条には「裁判官、検察官又は弁護士となろうとする者に必要な学識」、こういうのがありますけれども、これは具体的にはどの程度のレベルが要求されるのか。これは修士過程修了程度なのか、それともそれ以上なのか。それと、司法試験はそういうような第一条に言う目的、こういうものを目的とする国家試験であるために、これは少々難しくたっていいんだというような考え方がやっぱりあるのじゃないかと思うんですけれども、その辺はいかがですか。
○政府委員(濱崎恭生君) 司法試験は、裁判官、検察官、弁護士となろうとする者に必要な学識、能力を判定する制度でございます。裁判官、検察官、弁護士という極めて重要な職務を担う候補者の登竜門でございますので、この試験自体相当厳しい試験であるということは、これは性質上否めないものであろうと思います。ただ、その要請される厳しさに比べて、現状は合格がもっと難しくなっているという問題であろうかと思うわけでございます。
 ところで、この司法試験法第一条の学識、応用能力はどの程度であるのかという御質問、大変難しい問題でございますけれども、ある一定のレベルを引いて、その水準に到達している者をすべて合格させるということが求められているようにも見えるわけでございますし、また現状におきまして、成績上位に長い期間受験を継続してきた者がたくさんたまっているということが比較的短期間の受験による合格を困難にしているということを考えますと、そういう最低限の能力のみで合格者を定めるという方策をとれば問題が解決できるというふうに考えられないでもないわけでございます。
   〔理事北村哲男君退席、委員長着席〕
 ただしかし、学識、能力に差があります比較的少数の受験者を選抜するという場合には、ある程度明確な合格の基準を設けることが可能かと思いますけれども、現在の試験のように多数の受験者が上位で厳しい競争をしているといった状況のもとにおきましては、あらかじめ合格者を定めるための一定の基準を設けるということは大変難しい問題でございますし、各回の試験の合格水準あるいは合格者数といったことを参考にして合格者を定めなければならないという面があることも否定することができないわけでございます。
 また、御質問の資格試験なのか採用試験なのかということでございますが、私ども基本的には資格試験であるというふうに思っておりますが、現実の問題といたしましては、合格者は原則として全員二年間国費の支給を受けた上での非常に密度の高い修習をする。したがいまして、司法試験は実質において司法修習生の採用試験であるという性格を否定できないであろうと考えております。そういうことから採用可能な司法修習生の数が考慮されざるを得ないという面があるわけでございます。
 そういうことで、合格に必要な学識、能力とはどういうものかということ、大学の修士課程修了程度かどうかということを問われましても、なかなか具体的に御説明することは困難な問題であると言わざるを得ないと思っております。
○中野鉄造君 そこで、司法試験法第一条に言う、先ほどもお話がありました「学識」というのは、いわゆる今直ちに法曹としての業務ができるという学識ではなくて、さらに二年程度の研修を受ければその時点で初めて法曹実務につけるという、その程度の学識でもいいのではないか、こう思うんですけれども、今おっしゃるように、どうしてもこれが修習を受けるための就職試験的なものに現実はなっているわけなんです。この辺はどう思われますか。
○政府委員(濱崎恭生君) 御指摘のとおり、司法試験に合格した者は二年間の修習を経て法曹としてスタートするわけでございますので、二年間の修習があるということを前提にしてそれになろうとする者に必要な学識、能力ということであろうというふうに思います。ただ、裁判官、検察官、弁護士の職務の重要性にかんがみまして、そういう観点であっても相当程度の高いレベルの学識、応用能力が必要とされるということは言えようかと思います。
 基本的な構造は、先ほども申しましたように、そういう観点から合否判定をするというのが基本的な資格試験としての性格でございますが、再三繰り返しますけれども、現実にはやはり司法修習生としての受け入れ体制というものを考慮せざるを得ない。そういう意味におきましては、基本は資格試験であるけれども、あわせて採用試験あるいは競争試験としての性格を持っているというふうに言わざるを得ないというふうに思っております。ただ、少なくともそういう必要な学識、応用能力を有しない者まで合格させることはできないという点においては資格試験としての基本は堅持されておるというふうに考えているわけでございます。
○中野鉄造君 それであるならば、今度はこういうような法曹三者になるための資格があるということを判定する試験と、限られた司法研修所のハードに結びついた司法研修という職業教育を行うということが一体にならなければならないという理由がいま一つわからないんですが。
○政府委員(濱崎恭生君) 法律の規定によりますと、司法修習生は、司法試験に合格をした者の中から最高裁判所が命ずるというふうになっております。この規定の外形だけ見ますと、司法試験は資格試験に徹して、一定の水準に達した者はすべて合格させる、しかし修習生として採用するかどうかというのは、これは受け入れ体制を考えてその中の一部の者だけ修習生に採用するということも理論的には不可能ではないと思います。
 しかしながら、この点につきましては立法当初からいろいろな御議論があったようでございますけれども、当初からやはり司法試験に合格した者は特段の事情がない限り修習生として採用するということが予定されていたように承知しておりますし、これまでそのように運用されてまいりました。また、実際問題といたしましても、司法試験に合格させて、そのうちの一部の者だけ修習生として採用するという運用が受験者あるいは国民の理解を受けられるというふうにも思えないわけでございまして、やはり合格すれば修習生として採用するという制度が選択として正しいあり方であろうというふうに思っております。そういう現状を前提にした上でこの合否判定というものを考えざるを得ないというふうに考えております。
○中野鉄造君 私は、先ほどから何回も言うように、大学が職業訓練教育をする場でないことはもうこれはだれしも承知していることでありますが、卒業後直ちに第一線の現場でできるという能力と大学を出るときの能力との間に差がある、一定の幅があることはこれは当然です。
 そこで、かつての司法試験は基礎の学力があるから訓練さえすれば一人前の法曹人になれるという意味の資格試験であったと思いますけれども、そうすると現行では、第一条で言う「学識」としてあしたから裁判官、検察官あるいは弁護士として通用できるような程度を予定したら、大学を出たばかりの者は一人もいないということになるんでしょうか。
○政府委員(濱崎恭生君) もちろん、大学在学中あるいは大学卒業直後に合格する方もあるわけでございまして、一人もいないということではないわけでございます。ただ、司法試験の実情は非常に合格点のすぐ下のところに分厚い合格ラインすれすれの人がいるということから、大学卒業後あるいは最初に受験を始めた後二、三年間の間に急速に成績を上昇させますけれども、しかしなおいろいろ答案の書き方とか、そういった技術的な点も含めまして長らく受験勉強をしている人には負けてしまうということで、せっかく二、三年で成績が相当な程度のところに参りましても、最終的には合格しないということで、さらにその後勉強を重ねて合格ラインに達する、そういう実情にあるわけでございまして、そういう点を端的に申し上げますと委員の御指摘のような実情にあると言わざるを得ないと思っております。
○中野鉄造君 大体、資格試験であると言いながらも現状は今おっしゃったようなことになっておりまして、本来司法試験というのは大学を相当程度のレベルで卒業しているかどうかを評価する試験でもあると思うんですけれども、先ほどから申しております学識を問うと言いつつも、余りにも知識が偏重を来している。しかも、その知識たるや受験技術的知識に偏っているんじゃないのか、こう思うんですが、いかがでしょうか。
○政府委員(濱崎恭生君) 条文では「学識」だけではなくて「応用能力」ということが規定されておりますし、また司法試験法の第六条第五項におきましては、司法試験の「第二次試験においても、知識を有するかどうかの判定に偏することなく、理解力、推理力、判断力等の判定に意を用いなければならない。」ということが規定されております。これは昭和三十三年の改正でこの規定が導入されたわけでございますが、それ以前ももとより、この規定が導入されました以後、司法試験の考査委員におかれてはそういう理解力、推理力、判断力といったことを総合的に判定できるような問題の作成及び採点ということに鋭意努力をしてこられたわけでございます。また、最近におきましては考査委員の中から問題の改善委員会という委員会を構成しまして、どういう問題がそういった総合力を判断する上において適切であるかということについて検討してきておられます。今後もそういった方向で鋭意努力を傾けていただくということを考えているわけでございます。
 ただ、やはり多数の受験者の中から一定の限られた人を、しかも法律科目の試験ということで選抜するということになりますと、試験のこれは宿命と言わざるを得ない面もあるかと思いますけれども、どうしても長期間受験勉強をした者とそうでない者とそれを平等に、そういうハンディがないものとして判定できるという方法はなかなか見つからないわけでございまして、その努力はこれからも傾けていく必要があると思いますけれども、そこにはおのずから限界があろう、そのために今次改革案を策定した次第であります。
○中野鉄造君 いずれにしても、現在我が国の中で行われている資格試験という中で考えてみると、この司法試験というのは異常中の異常である、そういうように認識せざるを得ないんです。
 とにかく、そういう基本的な問題のほかに、長年受験技術の温床になってきている予備校の問題がありますが、今日受験生の間では受験勉強のために予備校に通うということは、これはもう既に常識になっておりまして、予備校に行かずして合格はあり得ない、こういう状況でございます。言いかえれば、今の司法試験がそうした予備校で得られるところの受験技術的知識がないと合格できないような試験になっているということじゃないかと思うんです。この予備校の問題について、法務省はどのようにお考えになっておりますか。
○政府委員(濱崎恭生君) 司法試験の現状が御指摘のように極めて異常な状態になっているわけでございます。それを是正するためのどうしても必要な改革としてこの法案をお願いしているわけでございます。
 そうなりました原因といたしましては、委員御指摘の受験者の数と合格者の数の乖離、これが基本であろうと思いますが、そのほかに昭和五十年ころから急激に問題が深刻化してきたということの背景には、やはり家庭的あるいは経済的に長期の受験勉強に専念することができるという環境ができてきたということ、それに対応していわゆる受験産業、予備校といったものが隆盛になって、一人でこつこつ勉強しているのでは長い期間の勉強には耐えられないけれども、そういうところに通うことによって長期間の受験勉強に耐えられる、そういう環境が出てきた、そういうことも一つの大きな原因であろうというふうに分析しているわけであります。
 予備校の現状ということでございますが、いわゆる予備校の多くは会社組織でございまして、法務省としてその現状を把握することができる立場にはございませんし、正確にその実態を承知しているわけでございませんが、いろいろな経路から次のように今理解しております。
 まず、修習生に対する最近のアンケート調査の結果によりますと、司法試験予備校に通学した経験があると答えた者の割合は五百十三人中四百六十五人、約九〇%に上っております。このうち三百七十一人、全体の七二%は答案練習会というものだけではなくて予備校の講座に通っていた者でありますが、そのうちの半数近くの四四%の者が三年を超える期間予備校に通学したというふうに答えております。
 また、予備校が発行している案内書等を見て承知しているところによりますと、複数の予備校が合格者の九〇%以上が我が方の会員であるというように称しておりまして、その割合が近年急増しているというふうに述べております。これは重複して答案練習会等に参画することによってそういう数字になっているかと思いますが、施設といたしましては全国の主要都市に学校あるいは連絡所を置きまして、さらに海外にもネットワークを持っているというふうに称しているところもございます。講座といたしましても多様なものを提供しておりまして、受講料などもいろいろさまざまのようでございます。
 さらに、若干の予備校で使っているテキスト類を見ますと、法律問題について深く考えさせるものであるというよりは要領よく答案をまとめるという方法を指導する内容であるという印象を、これは全体を見ているわけではございませんが、印象として持っているところでございます。また、大学の先生方のお話によりますと、最近司法試験を目指す学生の中には在学中から予備校に通う者が非常に多いということを聞いております。
 御指摘のとおり、合格するためにこういった予備校に通わなければならないという実情はまことに異常な状態であるというふうに考えております。予備校というものを一概に否定するべきかどうかということについては、これはいろんな考え方がございましょう。ただ、予備校が大学の法学教育の足らないところを若干補足するという補完的な役割を果たすというのならともかくも、専らそういったところで勉強するという実情は極めて重大な問題であろうというふうに受けとめておりまして、私ども今回の改革によりまして少しでもそういった状況を改善の方向に持っていけるのではないかと考えているところであります。
○中野鉄造君 今お話がありましたように、司法修習生の九〇%の人たちが予備校通いをした。しかもその内容は、いわゆる答案を要領よくまとめる技術といいますか、そういうような部分もかなりある。結果的に出てくる答案が一言一句違っていない、どの人もどの人も隣の人も全部一言一句違わないというような、そういう答案であるというようなことも珍しくないということも聞いております。
 そうした中で、一点の差どころか、先ほどからお話があっておりますように〇・幾らというような、そういう神わざ的な差をつけて当落をつけていくというのは、これもまた異常なものだと思います。
 そうした予備校通い、予備校生は大体一カ月どのくらいの費用かかるんですか。
○政府委員(濱崎恭生君) 受講料の問題は、企業秘密ということで私どもなかなか承知することができません。間接的に承知しているところでは、一つの講座当たり数万円から数十万円といういろんなばらつきがあるというふうに聞いております。
○中野鉄造君 だから、それに一年通う、二年通うということになると莫大な費用がかかるわけですけれども、いずれにしてもこういう予備校通いも含め、受験生にとっては司法試験の勉強が大変な負担になっているということは、これは事実であります。
 ところで、法務省は司法試験によって求める人間像について、豊かな人間性を持った人ということをよく言われておりますが、普通の若者なら当然に持ち得るいろいろな社会経験や教養、趣味のために時間を割いていくでしょうけれども、勉強のためにこうしたものを犠牲にしなければ合格できない、そうしてそういう形でやっと合格したその結果が、冷厳な法に携わるためには、いい意味で言えばいわゆるもう勉学一筋で世間の濁悪に染まらないという点もあるかと思いますが、悪く言えば世間音痴の人間ができ上がってくる、そういうようなことも言えなくないんじゃないかと思いますけれども、その辺のところをどのようにお考えになりますか。
○政府委員(濱崎恭生君) 長期間受験勉強に没頭された上で合格された方々のことを一概に申し上げることは大変難しいと思います。そういう人が、要するにじっくり型の人が法曹の中にいるということも大切な要請ではないかという考え方もございます。ただしかし、合格者の大半がそういう人ばかりになるということは問題であろうと思いますし、一般的に言えば、そういう受験勉強に没頭するということによって豊かな人間性を備えるということではマイナスなのではないかという指摘を伺っているところであります。
 現在、抱えている問題は委員御指摘のとおりでございまして、それを改善するためにいろんな角度から総合的に、抜本的にこの司法試験のあり方を見直さなければならないという問題、これは私どもあるいは法曹三者とも十分に認識しているところでございますが、とりあえず緊急に実現できる改善策として今回の改善策を出させていただいております。
 今回の改正は、法曹となるにふさわしいより多くの人が比較的短期間の合格の可能性を高めるということとするための改正でございまして、そういうことが実現できればそれだけ法曹に豊かな人間性を備えた人を迎え入れることができるという効果が期待できるというふうに考えているところであります。
○中野鉄造君 御承知のように、私たち人の生命や身体を扱う医師の国家試験でさえ一定の点数をとれば必ず合格できる、純粋な意味での資格試験でありますのに、一方のこの司法試験が合格人数の上限を定めている、落とすことを目的としているというようにさえとれるようなことで合格率二%という難関になっているわけです。しかも一方では、この司法試験改革というものは相当以前からこれは国民サイドで言われ続けてきたわけですけれども、それが今日まで何ゆえに放置されたのか、その原因というものはどこにあったんでしょうか。
○政府委員(濱崎恭生君) 司法試験の制度改革の問題につきましては、戦後何度かそのための努力が傾けられてきたという経過がございます。その結果、いずれも細かい改正でございますけれども、昭和二十八年、昭和三十三年に部分的な改正がされております。その後、昭和三十七年から三十九年までの間に内閣に臨時司法制度調査会が設置れました。そこで、司法制度の運営の適正を確保するため主として法曹二九の制度、裁判官、検察官の任用制度及び給与制度について必要な基本的かつ総合的な施策について調査、審議が行われたわけでございます。その結果、同調査会は司法試験制度について、素質のある優秀な者を多数合格させるための方策として、一次試験を廃止して短答式試験を一般教養及び基礎的法律知識について行う、あるいは論文式試験及び口述試験の試験科目の減少をさせる、あるいはまた受験回数制限または年齢制限の導入の可否の検討といったことを意見として取りまとめたわけでございます。
 ただしかし、その意見につきましては一部から大変強い反対意見が唱えられましたため、その内容を法律案として国会に提出するまでに至らなかった、こういった経緯もあるわけでございます。
 そういった経緯から、その後はむしろ制度改革はなかなか難しいということで、現状の制度のもとでの運用改善という方向でいろいろ努力をしてまいったわけでございますが、その運用改善ということでは限度があるということで、御指摘のとおり遅きに失したという感はございますけれども、昭和六十二年からどうしてもこれは緊急に何らかの手を打たなければならないということで精力的に関係方面と協議を尽くし、各界の意見を聞いて、そして今回の改革案を取りまとめるに至ったということであります。
○中野鉄造君 もう時間がございませんから、あと一問、二問お尋ねしたいんですが、一つここで聞いておきたいのは、二年間の修習ということで将来必ず弁護士の道を選ぶ人も含めて国費で実務教育をしなければならないという、そこいらの理由はどういうことでしょうか。
○政府委員(濱崎恭生君) 現在の司法試験は、法曹三者それぞれの後継者を統一的に選抜する試験となっておりますし、また修習制度も法曹三者を統一的に修習するという制度になっているわけでございます。このようにいわゆる統一試験、統一修習を行っておりますのは、適正かつ円滑に司法を運営するという上におきましては、その担い手であります法曹三者それぞれが均質な学識、能力を有して、互いに信頼し合い一体感を持つということが極めて重要である。また、それぞれお互い他の職務についても実務修習の形で経験をしてこれを理解し、法曹の共同の使命を自覚することが必要である、そういう考え方でとられてきているわけでございます。この統一試験、統一修習の制度につきましては、私ども極めて重要な意義があるというふうに考えております。
 将来の法曹養成のあり方については、国民的な見地に立って幅広くいろんな意見を聞いた上で解決策を見出していかなければならないというふうに考えておりますが、私ども現在のところ基本的には現在の修習制度のあり方に重要な意義があるという認識を踏まえてその検討に当たっていきたいと考えているところであります。
○中野鉄造君 最後に、大臣にお尋ねしますが、今回の司法試験改革の流れを見てみますと、今も答弁がありましたけれども、必ずしもそうはなっていない。つまり、国民的立場からの裁判官、検察官、弁護士の必要数、それから法曹のあるべき適正数の確保という理念がないままに、研修所の収容能力あるいは修習実施のための物理的、人的制約の中で合格人数が決まってしまう。あとは若い受験生にどの程度のげたを履かせるかという非常に技術的な問題に終始してしまっている、私はこういう感じを深くします。
 そこで、今回の改正案は法曹三者のニーズが非常に濃く国民のニーズは極めて薄いものになってしまっていると思うのですが、この点はいかがですか。それと最後のもう一つは、法曹にすぐれた人材を求め、この制度を高めていこうという姿勢はわかりますけれども、その一方で先ほどもちょっと触れましたけれども、法曹界にギルド的観念が根強く存在している、そのために法曹三者のニーズだけが先行して国民のニーズから遠くかけ離れていきつつあるのじゃないかと思うのですが、国民が法曹に期待する権利義務の実現はこれからどこへ行ってしまうのか、どうなっているのか、その辺を法務大臣に最後にお尋ねいたしまして、私の質問を終わります。
○国務大臣(左藤恵君) 今いろいろお話がございましたが、とにかく法曹を確保して養成していくための制度のあり方につきまして、我が国の社会の将来とか国民の福祉への重大な影響、そういうことを考えますと、もっと国民的な視点に立って抜本的に考え方を変えるべきじゃなかろうか、改革をすべきだろう、こういうお考えだろうと思います。
 そういうことから、今回の改正は一応暫定的なと申しますか、この法令の一部の整備だけでやっておるわけでありますけれども、今後先ほど来お話がございましたように、幅の広い関係、特に法曹三者それから大学関係者、学識経験者、そういった者で構成されます法曹養成制度等改革協議会、ここでもってより一層国民的な見地に立った改革をやっていただきたいということを我々も強く希望しておるわけでありますが、そうしたことでその協議会が積極的に御検討いただきまして、抜本的な本来の目的であります国民の負託に十分こたえられるような、そうした国民的視点を身近に感ずるような、そういう法曹の確保、養成制度を確立していただきたい、このように我々念願しておるところでございます。
○中野鉄造君 終わります。
○橋本敦君 それでは、続いて私からもお尋ねをいたします。
 今回の司法試験法の一部の改正法案そのものを見ましても、実際どういうことになるためのどういう事情からのどういう内容を持った改革なのかということが法案自体からはなかなか出てきません。その背景に法曹三者の基本的合意というのがあるわけで、私はこの基本的合意が法曹三者間で成立したというのはそれ自体は評価に値するいいことだと思っておりますが、こういう特異な立法形式というのはそうあるわけじゃないのですが、午前中も若干この問題が出てまいりました。今回の改正法案の法形式として、また改正内容として、これでしか仕方がなかったんだろうというのが午前中の意見でもあったんですが、もう少し実態を正確に反映した工夫というものがなかったんだろうかという疑念も一つあるんですが、ここらの点について法務省はどうお考えですか。
○政府委員(濱崎恭生君) 今回の改正案の目的、これは再三申し上げておりますけれども、合格までに余りに長期間を要するようになっている現状を緊急に是正するために、法曹となるにふさわしいより多くの人材が比較的短い受験期間で合格することができるようにするためのものでございます。そのために、わかりにくいという御批判はいただいておりますが、この合格枠制、それから試験科目を一つ削減するという改正をお願いしているわけでございます。このような、合格枠制と呼んでおりますが、ここにまで至るにつきましては、私ども昭和六十二年から具体的な検討に着手して後、いろんな各方面の意見を伺い、法曹三者の間で協議を尽くし、いろんな方策を検討した結果としてここに至ったわけでございます。
 その過程を申し上げると大変長くなりますけれども、やはり各界の意見、法曹三者のみならず、大学関係者あるいは受験者、大学法学部の学生の意識、そういったものも踏まえまして、関係者の了解のもとにできるだけ早く実現できる制度ということで煮詰めてまいったのがこの案でございまして、でき上がった案についてはいろいろ御批判をいただいておりますけれども、この改革を実現していただきますれば、これによって現実の問題としてより多くの者がより短期間に合格する可能性、これが大幅に高まる、それによって司法試験の現状を相当程度改善できるものであるというふうに自負しておりますので、ぜひとも御理解を賜りたいというふうに考えている次第であります。
○橋本敦君 私が言いたいのは、今後の運用の問題としてもあるいはこの法の実際の適用の問題にしても、法曹三者で行われた基本的合意というのが尊重されていかなければならないという重要な背景を持っているわけですね。それは間違いないんでしょう、法務省。
○政府委員(濱崎恭生君) そのとおりであります。
○橋本敦君 そこで、一つの問題は、いわゆる丙案というものについて、これで試験にいわゆるげたを履かせるという言い方が悪ければ二重の合格基準ということになるわけですが、こういうことが行われずに現在の司法試験で起こっているゆがみなり病理的現象なりが改善されるということがこれは基本的には一番望ましい。そういう点から考えますと、この法案は法務省の基本構想で言ったところの丙案を実施するための法案だというように見るべきではなくて、基本合意を尊重していくならば、可能な限りの改善措置をとってそして所期の改善の目的を達する、それがまさに法の目的なのであって、丙案そのものを実施することがこの改正法案の直接の目的だというような短絡した理解はすべきでないというように基本的には言えるのではないですか。
○政府委員(濱崎恭生君) この改革問題に着手いたしました当初、法務省におきましては法務大臣の勉強会ということで、法曹の先輩方を含む各界の有識者にお集まりいただいて、法曹基本問題懇談会という場所でいろいろ意見を伺ってまいりました。その意見といたしまして、長期的方向では合格者を大幅にふやすということを基本に据えた抜本改革をやる必要がある、しかしそれにはいるいろ条件整備の問題あってすぐにはできないだろう、しかしそれができるまで待って座視しているということはできない状況にあるので、緊急の対応策をあわせて考えなければいけないという御指摘をいただきました。その中で具体的な方策といたしましては、受験回数の制限あるいは科目の削減、さらには大学推薦制――一定数の者に対して大学の推薦によって試験の一部を免除するという大学推薦制、そういったことについて考えるべきだ、こういう指摘をいただきまして、そこからこの検討に着手したわけでございます。
 その中で、まず合格者の増加ということを図らなければいけない。そこで、いろいろ私どもといたしましても努力をいたしました結果、すぐに実現できる数として七百人という数が出てまいったわけでございます。もちろんこれは最終ゴールではございません。現段階において合意できた数字という位置づけでございます。その七百人程度に増加させるということを踏まえて、それで現在の問題が解消できるだろうかということについて私ども真剣にデータを分析し、統計の専門家に推計を依頼して調査いたしました。その結果によりますと、やはり二百人程度増加させる、それに運用改善ということを加えましても、それによって問題が解消されるということはかなり期待薄なのではないかという結果が出たわけでございます。
 そういう中で、やはり合格者の増員とあわせてもう一つ、もう少し短い期間で合格する可能性が高まるような制度改革をあわせて行う必要がある。そこで、御案内の基本構想におきまして甲、乙、丙三案を提示して検討したわけでございます。もちろん私どもといたしましても、そういう方策を講じないでも問題が解消されるということであれば、それはそれにこしたことはないであろうというふうに考えております。そういうことを踏まえて、三者の合意で検証期間を置くということにしたわけでございますけれども、しかしそれで問題が解消しないということがはっきりした場合には、やはりこれはこの丙案ということを実施する必要がある。また、これはいろいろ御指摘がございますけれども、現在の司法試験の理念である統一性、平等性あるいは資格試験制というものに基本的に反するものではないというふうに考えている次第であります。
○橋本敦君 ですから、長々と答弁されました趣旨は私もよくわかっておるんですが、要するに丙案というものを実施せずに改善できればこれにこしたことはないというふうに今おっしゃった。まさにそこのところを法曹三者が基本合意をした基本的な方向づけとして探求をしてみるということが一応合意されているわけですからね。だから、したがっておっしゃったようなそういう努力をしながら検証もやってみよう、そして平成七年の検証時点をさらに越えて、たとえそのときに丙案が実施されておっても、その間の改善の実態を見た上では、これの廃止も含めて検討しようとか、あるいは基本的な改革が行われるということになった場合には、それはそのことを直ちに実施する方向に行こうというようにされているわけですからね。だから、基本的にはやっぱり丙案というのは、これはやむを得ない次善の策として一つの方策ではあるけれども、二重の評価基準を設けるというようなことなしに、統一、公正、公平という理念を貫徹するならば、可能な限りそれなしに改善されれば一番いいという基本的考え方は、これはおっしゃったように、可能な限りそうであればいいということは間違いないと思うんですよ。
 だから、そういう意味からいうと、現在の問題の基本的解決というのは、やっぱり五百名という合格枠が、これは頭がありますから、どうしてもその五百の枠の中に入れるということになりますと選考基準が厳しくなって、法曹の養成という観点から見れば、合格してもいい、そういう力をつけている人がたくさんあっても五百の枠に入らなければ滞留していくわけですからね。だから、そういう意味では、基本的には単純に合格者枠をうんとふやすということが抜本的な解決の一つの有力な方法であることはこれは間違いない。ただ、それを無制限にふやせないというのでいろいろ知恵を絞らなきゃならぬ、こうなるわけでしょう。ですから、基本的には私はやっぱり単純増というのを頭に置いて可能な限りふやすということが大事だと思うんです。今おっしゃった二百の枠、将来的には千名に近い枠にするという方針は、これは間違いないわけですか。
○政府委員(濱崎恭生君) 現段階におきましては七百名ということが関係者の了解に達した内容でございますので、法務省として将来もっとふやすんだということを確定的に申し上げるべき問題ではなかろうというふうに考えております。
 ただ、この改革を実現していただくと同時に、法曹三者を中心とする改革協議会を設置して鋭意協議することになっておりますが、その中ではやはり合格者の増加ということが極めて重要なと申しますか、中心的な検討課題になろうと思います。そこでより大幅な増加について関係者のコンセンサスができ、諸条件の整備ができますれば、またそれを踏まえてどういうことであるべきかということを考えることができようかと思います。
○橋本敦君 その点は先ほどから言っております基本的合意の「合格者の増員」というところで、「平成三年から七年までの間に合計九百人以上となる」、こういう言い方がありますのが、これは間違いないわけですね。
○政府委員(濱崎恭生君) この九百人という数字は、委員既に御理解いただいていると思いますが、現行が五百人程度であるということを前提にいたしまして、平成三年と四年は百人程度、五年、六年、七年は二百人程度増員させる、その合計を単純に足しますと八百人になりますが、それをさらに毎年少しずつ多目に採るということで、その合計が九百人以上となるようにしようということでございます。その実現をするつもりでございます。
○橋本敦君 最高裁の方も、この法案が成立した後で日弁連あるいは法務省とも協議をいたしまして、将来の研修所体制をどうするか、基本的な協議を詰めたいというお話がございましたが、その展望としては、今言った枠を大きくふやすということを展望して、お話がありました和光ですか、そこも候補地の一つとして最高裁としても検討していくということで、将来の目途として移転する司法研修所の構想としては大体同名ぐらいを頭に置いていらっしゃるんですか。
○最高裁判所長官代理者(町田顯君) 先ほど来、法務省の方から御説明がありましたような増員を行うということで現在のところ進んでいるわけでございます。私ども、建物を建てていくことになるわけでございますけれども、決まらない数を基準にするというわけにはまいりませんので、やはり先ほど来法務省が説明しております数を前提とした施設を建てていくということになろうかと思います。
 ただ同時に、法曹養成制度等改革協議会の設置も決まっております。それが決まっているということを念頭に置いて敷地の折衝には当たっていきたいと考えております。
○橋本敦君 私が指摘したかったのはそこなんで、今後その協議会で議論される一つの大きな問題として、午前中から参考人の意見を含めて我々議論したんですが、我が国の法曹人口をもっとふやしても先進国的水準ということにはまだまだ差があるぐらいまだ日本は少ないんだということでありますから、そういう意味で将来の法曹養成の問題としてもっと数をふやすという、こういう国民的コンセンサスが進み、あるいは議論が進む可能性がある。そうなりますと、そういったことも頭に置いて最高裁としては将来的展望で準備をしていただくということも一つは検討内容にしておいていただかなくちゃなるまいかな、こう思っておる趣旨で聞いたわけですが、そういうことは踏まえていらっしゃるわけですか。
○最高裁判所長官代理者(町田顯君) 先ほど申し上げたことの繰り返しになるわけでございますけれども、こういう協議会ができるということは十分念頭に置いて敷地の折衝に当たってまいる所存でございます。
○橋本敦君 それでもう一つの問題は、実際に現実の問題として毎年行われる試験制度そのものを積極的に逐次改善をしていくという、そういうことによって現在の行き詰まっている状態を改善していくという方途の努力もこれは必要である、そのことは基本的合意でも言われておるわけですが、現在の試験制度の運用の改善ということで、具体的にお答えいただけるような内容のものを今法務省お考えでしょうか。
○政府委員(濱崎恭生君) これは昨年十月の法曹三者の基本的合意の中で既に具体的な改善策といたしまして、大学教育の実情及び受験生の実情を考慮して、司法試験の出題及び採点が法六条五項の精神によりよく合致したものとするための継続的検討をする、すなわち出題、採点の検討を継続的に行うということ、それから短答式試験の成績通知等、受験生に対するより多くの情報を提供するということ、それから最終合格者の増加に伴って短答式試験合格者の増加を図るということ、そういう点については既に三者の合意に基づいてこれを司法試験考査委員会議に伝達しているところでございます。そういう方向で考査委員会議でも検討を進めていただけるものと考えております。
 それから、運用改善としてどういうものがあるかということについては、さらに法曹養成制度等改革協議会の中でこれも一つの検討議題として協議をして、そこで相当であろうと考えられるものとして出ました改善策については、これは順次考査委員会議あるいはその構成メンバーでつくられております第二次試験運用等検討小委員会、こういう小委員会を設けて鋭意検討しておりますが、そこに伝達するなどして鋭意改善を図っていく所存であります。
○橋本敦君 検察官の志望が今年度四十六名ということで、今までの努力も実ったかなということで先ほど刑事局長からお話もあったわけですが、私も、判事補あるいは裁判官、検察官を志望される方が非常に少ないというのは健全な司法制度そのものではございませんので、これはやっぱり大事な課題であると思っておるんです。こういった問題が近年いろいろ議論をされて、そういうことで若い人が早く合格できるようなそういう方途はないかということに発展をしてきたという経緯もあるわけですが、現在こういった状況で今年度についてはかなり改善されたということで、事実はそういった面で一歩進んできたわけですが、こういう傾向が今後とも期待されるとするならば、法務省が考えていた一つの改善の方途というものが達成をされつつあるというようになるとは思うんですが、その点はどうですか。
○政府委員(井嶋一友君) 委員に、今御指摘があったような意味で本当に効果があったと胸を張れるかということになりますと、それは若干じくじたるものがあるわけでございますけれども、しかしいずれにいたしましても、検察の今後の仕事のあり方、何を重点に志向するか、またどういう待遇改善をやっていくかといったことを真剣に検察庁が考えているという姿勢、こういうところも修習生にはわかっていただけているんだろうと思いますし、また私どもが法務行政の中でできる限りのことをやっておるということについても、研修所の教官を通じていろいろ説明をしておりますので、そういったことにも理解が得られたんだろうと思っております。今後もこういったことは続けてまいりたいと考えております。
○橋本敦君 その点で一点お尋ねをしておきたい問題は、裁判官の中途退官よりも検察官の方々の中途退官の方が多いという数字があるということですね。これはもう検察官になってくださる方が少ない上に中途退官が多いと、今おっしゃった努力もなかなか実らないことになってしまうわけで、そういうようになっている事情というのは何かあるのか、どう理解したらいいのか、どうなんでしょうか。
○政府委員(井嶋一友君) 中途退官というのは定年でおやめになる方以外の退官者を指すわけでございますが、大体毎年五十名前後でございます。この数はもうほとんど毎年変わりません。最近の例で申しますと、退官者が平成元年度では全部で五十六名おりましたが、その中で二十九名が五十歳以上でございます。四十歳代が十四名、三十歳代が十三名。それから平成二年度で見ますと中途退官が四十八名でございますが、五十歳以上が三十二名、四十代が九名、三十代が七名ということでございまして、要するに六、七割が五十歳以上の方々でございます。
 御案内のとおり、検察は一つのピラミッド型の組織をつくっておるわけでございますのでポストがそれぞれ限られております。そういったところへおつきになって順次検察としての仕事を終えていかれるといったような方が五十歳代での退官の大半を占めるわけでございまして、問題は、委員御指摘のところは若手の方の問題だろうと思いますけれども、最近どうも若手が多くなってきているという傾向は必ずしも看取されない。大体毎年同じぐらいの数は若手でも退官いたしますけれども、これはもう家庭の事情によることが多いわけでございますのでそれほど私は心配いたしておりません。むしろ修習生からの任官者が足らないということが問題なのであろうという認識をしておりますが、ただ若手がやめることも事実でございます。その大きなところはやはり転勤でございます。どうしても仕事を続けたい、しかし転勤と言われたときに家族と相談をして、ここで子供の教育とか親の扶養とかといったことで後ろ髪を引かれる思いでやめざるを得ない、そういう事情の方が多いわけでございますので、その辺につきましては何とか適切な施策を考えていかなければいかぬなと考えておるわけでございます。
○橋本敦君 事情はわかりました。転任ということは裁判官も含めて大変な御負担だということは私もよくわかりますが、そういう意味で任地制を採用するとか何か抜本的な方策というものは御検討の範囲にあるんでしょうか。
○政府委員(堀田力君) 人事政策の問題でございますので、私の方からお答えいたします。
 転勤自体を廃止するということはこれはなかなか困難でございます。それぞれ転勤制度には昔からの理由がございまして、職務を厳正公平に行う、全国の検察の運用を公平、統一的にする、あるいはいろんな検察官にいろんな場所の検察庁を経験させる等々目的がありますのでこれを全廃することは困難でございますけれども、その目的の範囲内で合理的に転勤を少なくしていくということは委員御指摘のとおり重要なことであると思います。
 そこで具体的には、例えば二年の転勤のサイクルを最近は可能な限り三年に改めるというようなことを考えましたり、あるいは委員御示唆いただきました地方定着人事、これも具体的な事情によりますけれども実施を始めております。これからも積極的な方向で検討してまいりたいと思っております。
○橋本敦君 最後にお伺いすることになるんですが、これからこの基本合意で法曹養成制度等改革協議会ができて、非常に重要な役割を今後の課題を実現する上で担っているわけですが、ここのところで基本的に今までの伝統的な統一修習あるいは統一修習における修習生の実務修習やらその期間等も含めて充実した内容が必要だと思うんですが、そこで、統一修習の理念というのは守っていかなきゃならぬということが一つ。それから、実務修習期間を短縮するというようなことはこれは基本的には考えるべきでない。現在、二年ですか、これは短いぐらいで、これはやっぱり十分やっていかなきゃならぬので、これを短くするということは考えるべきではないのではないか、こう思います。
 それから、先ほど中野委員からもありましたけれども、弁護士になる者についてはこれは特別に給費貸与制にするとか国から支給しないという、そんなことも考えるとかいうような説も一部にはあるようですが、これも我が国司法全体の健全な国の責任での育成という点から見て私はとるべきではないと思っておりますが、そこら辺についてこれから改革協議会でいろんな議論がなされるにしても、そういった今私が指摘した問題についてどのようにお考えなのか、法務省と裁判所に御意見を伺って終わりたいと思います。
○政府委員(濱崎恭生君) 今後の改革協議会の非常に大きな検討課題として、合格者をどの程度増加させるかという問題がございます。合格者を大幅に増加させるということになりますと、どうしてもその合格者をどういうふうに修習していくかという修習体制のあり方というものを考えざるを得ない、これは必然的にそういう結びつきになろうと思います。
 ただその際に、現在のどういう長所を生かし、どういう点を改めるかということが課題になろうと思います。御指摘の統一修習あるいは二年間の充実した修習、国庫から給与の支給を受けた修習、こういう現在の修習体制、これが適正な法曹の確保という観点から果たしてきた意義は大変重要なものがあろうと思います。そういった問題についても国民各層の意見を聞いて、法曹三者の独善に陥らないという形で検討しなければならないというふうに思っておりますが、私どもとしては、そういう現在の制度が果たしている重要な役割というものを十分に頭に置いた上でこの検討に当たっていきたいと考えているところであります。
○最高裁判所長官代理者(泉徳治君) 裁判所の立場から申し上げますと、私どもも、今後の抜本的改革を検討いたします法曹養成制度改革協議会におきましては、これまでの司法修習制度が果たしてきた役割を十分認識しながら、国民各層の方々の御意見を謙虚に聞くということで、白紙の状態でいろいろな御意見を伺い、そして国民の皆さんの御理解がいただける理想的な制度を探ってまいりたいというふうに考えているわけでございます。
 具体的に修習期間の問題を御指摘になられましたが、現在実務修習期間が十六カ月ございますけれども、七百人の増員をする今回の改正におきましてはこれを原則として守っていきたいというふうに思っているわけでございますが、すべての裁判所すべての検察庁等に配属をお願いいたしましても七百人というのが現在の修習期間を守っていく限りは限界でございます。と申しますのは、十六カ月の間、前の四カ月後ろの四カ月合計八カ月は期が二期ダブりまして、受け入れの人員が二倍になるということがございまして、どうしても限界になってまいります。そこで、改革協議会でもし修習生の受け入れをもっとふやすということになりますと、この実務修習期間の見直しということはどうしても物理的に必要になってくるんじゃないかというふうに予想しておりますけれども、この点ももちろん三者で話し合い、またほかの方々の御意見も伺ってコンセンサスを得てやっていかなければならないことは当然でございます。
 それから給与の点でございますけれども、私ども、この給与制度を定めております裁判所法の六十七条二項の精神というものは十分わかっているわけでございます。しかし、この点につきましてもこれまたいろいろな御意見があるところでございますから、改革協議会におきましては六十七条二項の精神を十分踏まえつつ、これまたいろいろな御意見を伺ってまいりたい。そうした上で、最終的には国会の御判断を仰ぎたい、こういうことを考えている次第でございます。
○山田耕三郎君 私は、司法試験法の一部を改正する法律案についてお尋ねをいたします。
 司法試験の改革については、一九五四年以来何度か試みられたが、結局は日の目を見ることなく今日を迎えた。しかし、今回法曹三者の合意を見たのを機会に改正法案の提出を見たとのことであり、それだけに法曹三者の合意の意義は大きいと法務省も評価をしておられるようでありまするし、午前中の参考人の御意見も同様でありました。
 今回の司法試験改正法案の目的は何であったのか、まずお尋ねをいたします。
○政府委員(濱崎恭生君) 司法試験は、御案内のとおり、裁判官、検察官、弁護士となるための唯一の登竜門としての国家試験でございますが、最近といいますか昭和五十年ごろから急速に、合格までに極めて長期間の受験を要する状況になっております。その状態は大勢的には次第に進行しておりまして、今後放置すればますます進行するということが予想されるわけでございます。
 具体的には、現在、合格者の平均受験回数が六回ないし七回。それに伴って合格者の平均年齢も二十八歳から二十九歳ということになっておりまして、二年間の修習を経て実務につくのは平均的に三十歳になってからという実情になってきているわけでございます。そのこと自体大変大きな問題でございますが、そういうことのために法曹となるにふさわしい大学法学部卒業者が最初から司法試験というものをあきらめてしまう、そんな難しい試験は最初からチャレンジしない、あるいは一、二回試験を受けてそれであきらめてしまうというような、いわゆる試験離れの状況を呈しております。これは法曹界に適材を吸引するという観点から大変大きな問題であろうと思っております。
 さらには、合格者の年齢がそういうことから総体的に高くなっていることによって、裁判官、検察官の任官希望者の数が十分に確保できないのではないかという懸念が次第に強くなってきているわけでございます。
 そういうことで、こういう状態は一刻も放置できない、何らかの改革を早急に実現しなければならないということで取り組んでまいったわけでございまして、今回の改正の目的を端的に申しますと、こうした現状を緊急に改善するために、法曹としての資質を有するより多くの人がもっと短期間の受験で合格することができる試験にしようということでございます。もっと短い期間で合格する可能性を高めるということが今回の改正の目的でございます。
○山田耕三郎君 ただいまの御説明と事前にいただきました説明の中でのことをまとめてみますと、私は次のようになるように思っております。
 司法試験合格者の高齢化の現状は異常なものであり、これを正す必要がある。もう一つは合格者が少ないのが原因で受験者に滞留現象が起こり、結果として特に検事を志望する者の減少等が進んで法曹要員の充足が非常に困難になりつつある。もう一つの問題は、弁護士や司法官の不足で裁判の長期化に拍車がかかるなどの弊害が出てきており、これらの異常な状態への応急対応措置と位置づけられておるように理解をいたします。
 一つは、そのために今回の改正案は受験者の負担を軽減するため試験科目のうち六条二項の教養選択科目を削る。二つは、改正法案には明記はされませんが、合格者の増加を図るとのことであり、それでも目的を達しない場合には第八条に極めて難解な文章で「次の二項を加える。」と表現してあります。その内容は、説明によれば五年間の検証期間を経て、優先合格制度を実施する、平たく言えば若年者にげたを履かせて別枠をつくるとのことであります。この理由はわからないでもありませんが、これでは司法試験が余りにも難しいから科目を減らして負担を軽減し、門戸を広げて合格者をふやすという極めて短絡的な考え方であり、このことによって引き起こされる多くのマイナス要因に目をつぶられておるように思います。
 けさからの参考人の意見を聞いておりましても、この優先採用制度というのは本来のあるべき姿ではない。だから、こういうことが起こらない方がよろしい、こう言っておいでになります。やっぱりこれはマイナスの要因だと思いますけれども、こういうことで果たして目的が達せられるのだろうか、素人ながらも何かおぼつかなさを考えております。いかに異常な事態からの緊急避難的措置であるとはいいましても、余りにも思想の単純性を指摘せざるを得ないように思いますのですが、この辺についてどのようにお考えになっておられますかをお尋ねをいたします。
 さらに、教養選択科目の削除はなるほど昭和三十三年の改正で新しく採用されたところであります。年こそ経ておりますけれども、改正回数にすれば前回の改正であり、それを今削ってしまわなければならないというのはいかがなものかと思いますけれども、この二つについてお尋ねをいたします。
○政府委員(濱崎恭生君) 御質問の二点にお答えする前に、委員から今回の法改正の目的をおまとめいただいたわけでございます。私どもが考えているところを御理解いただいているものと思っておりますが、ただ若干補足して申し上げますと、私ども若い人ほどいいということを考えているわけではございません。多様な経験を積んだ方も法曹として入っていただくということが、これまた必要なことであろうというふうに考えておりまして、年齢を問題とするよりはむしろ合格までに長年の受験勉強を要するということの実態が問題であろうと思っております。
 それから、検察官の志望者の減少といったこと、あるいは裁判官の志望者の問題、そういったことへの対応ということも重要な目的でございますが、それよりも何よりも法曹全体の後継者として多様な人材、有為な人材が多く集まっていただく、そういうことが極めて重要である。それが今回の改革の基本的な中心的な目的であるというふうに考えているところでございます。
 次に、順序が逆になりますが、いわゆる教養選択科目、非法律選択科目と私ども呼んでおりますが、その廃止の問題についてお答えしたいと思います。これは、御指摘のとおり、昭和三十三年の改正におきまして、法曹となるためには法律の科目だけではなくて、法律以外の分野についても識見を有するということが必要であるという趣旨から、試験科目として加えられたものでございます。法曹となるために法律以外の識見、素養、そういったものが必要であるという要請は現在も変わるところはないというふうに考えております。
 ただ、この試験科目が実際にどういう効用を果たしているかということに関しましては、最近とりわけ長期間の受験勉強を要するという現状のもとにおいて、いろいろ批判があったところでございます。ごらんいただきますとおわかりいただけますように、その七つの科目のうちから現実には最も勉強しやすいと思うものを選択して、そしてその科目について相当の期間をかけて受験勉強に専念する、そういうことが要請されるという実態になってきておるわけでございまして、そういう実態の中でその一科目を受験するということが果たして法曹としての幅広い人間性を涵養するという意味において役に立っているのかどうかという疑問の声がかねてから強く指摘されておりました。
 それから、今回の改正の目的であります、より短い期間で合格する可能性を高めるという観点からいいまして、できるだけ負担を軽減するということが要請されます。そういうところから、この科目、三十三年にできたものをまた削るということでありますけれども、そういうことを検討の俎上に上せまして、この点については法曹三者、それから大学関係者もひとしく賛成していただいておりますし、また大学法学部の学生とか受験者、そういったところももちろん歓迎しているわけでございます。
 そういうことで、先ほど来申しております今回の改革の目的を実現するために、この科目を一科目削るということにしたわけでございまして、むしろそういう改正によってもう少し短い受験勉強で合格することができるということになることによって、法曹となる前あるいは法曹となった後も人間性の幅を広げるいろんな素養を身につけていただくという機会がふえるという効果の方が重要なのではないかというふうに考えているところであります。
 それから、御指摘の合格枠制、若年者にげたを履かせるという御指摘でございました。これが短絡的な発想ではないか、あるいは便宜的ではないかという受け取り方をされがちでございますけれども、こういう改革案を必要とする理由については、先ほど来るる申し上げさせていただきました。やはり合格者を七百人程度に増加させるということを踏まえました上で、もう少し短い期間で合格する可能性を高めるという方策といたしましてはこういう方策をとるほかはない、こういう制度をとらなくてもそういう問題点が解消できるということならばそれにこしたことはないというふうに思っておりますが、この制度はすべての受験者にとってひとしく最初の受験から三年以内は合格しやすいという利益を与えるわけでございまして、決して試験の平等性を害するというものではないと思っております。
 それから、諸外国の制度を見ましても、一般的にこういう法曹関係の試験におきましては受験回数制限がなされております。そういう例から考えましても、受験回数あるいは受験を開始してからの期間といったものを合否の決定において考慮するということは、それ自体試験制度として不適切なものであるということではないというふうに思っております。
 そういう考え方でこれまで各方面の意見を聞き、法曹三者で十分協議しました結果、緊急に対応できる案としてはこれしかないということで改革案を提示させていただいているわけでございまして、緊急の対応策でございますけれども、決してこれが不合理な制度であるというふうには思っておらないところでございまして、御理解を賜りたいと思います。
○山田耕三郎君 法務省首脳は、これは緊急措置であり法曹の病弊を正すには司法試験制度の改革だけではだめだ、もっと司法制度全体について長期的、抜本的な協議を続けていく必要があると話しておいでになる旨が報道されました。午前中の参考人意見にも出ておりましたが、すなわち法曹教育に果たす大学の役割はこれでよろしいのか。二つ目には、司法自体も解決に当たらなければならないが、正義の番人をしてやる気をなくさせるような今日の社会の乱れた実態はどうするのか。三つ目に、法曹人口比率等、法曹社会の実態はどうなのか等々、司法試験の改革だけでは対応できない本質的な問題をそのままにしておかれて改革が期待できますのかどうか。もちろん法曹三者は法曹養成制度等改革協議会、仮称のようでありますけれども、を設置して抜本改正も並行して精力的に検討されますようでありますが、改革の実効性に対する見通しはいかがなものですか、お尋ねをいたします。
○政府委員(濱崎恭生君) 御指摘の問題、私ども極めて重要な問題であると受けとめておりまして、そういうことを踏まえまして今次改革の実現を一つの大きな足がかりといたしまして、法曹三者を中心にそのほかの関係者もお集まりいただいて法曹養成制度等改革協議会において御指摘の問題をも踏まえた抜本的改革案についての検討を行うということにしております。
 そこで、検討すべき問題、非常に幅広い多岐にわたる問題を検討する必要がありますし、またその個々の問題点についているんな御意見のあるところでございます。そういう御意見をどういうふうに集約し、そしてそれを一つの改革案としてまとめ上げていくか、これは大変難しい問題であり、相当の期間を要する問題であるというふうに考えておりますが、私どもまた裁判所も弁護士会におかれても何とか国民の要請にこたえる司法を実現する一つの重要な方策として熱意を持って取り組んでまいりたいと思っているところであります。
○山田耕三郎君 司法試験法に合格者の数を規定していない理由は、この試験が資格試験であるからだと思います。しかし、最近の法務省の説明では、司法修習生に採用をする一種の資格試験だとも言っておられます。そうだとすれば予算を伴うものでありますから、採用試験として法律に明記された方が適当だと思いますけれども、どのようにお考えになっておるのか承りたいと存じます。
 なお、今日まで数次にわたって採用人員の変更がございました。今回に限って法律改正により対応しようとされておられますのはなぜなのか、あわせてお尋ねをいたします。
○政府委員(濱崎恭生君) 司法試験の基本的性格につきましては、委員御指摘のとおり、国会でもたびたび御答弁させていただいております。
 ただ、現在あるいは今回の改革の検討の過程で私どもその問題を非常に重要な問題として考えてまいったわけでございますが、これまではそういった視点からこの性格について十分な部内的な検討をした上で御答弁申し上げたということでは必ずしもないと申しますと語弊がございますけれども、今回の改革を機に、私どもそういう問題について基本問題として十分に検討させていただいたわけでございます。その結果といたしまして、現時点で端的に申し上げますと次のように考えておるところでございます。
 司法試験はやはり基本的には、法曹となろうとする者に必要な学識、応用能力を有するかどうかということを判定するという意味で資格試験であろうというふうに思っております。ただしかし、現実の問題といたしましては、先ほど来いろいろ申し上げておりますように、合格者は原則として司法修習生に採用される、また修習を卒業すれば特段の事情がない限り法曹三者いずれかの道に巣立っていくという制度として定着しております。そういうことを考えますと、司法試験は司法修習生の採用試験であるという実質、採用試験でありますればやはり競争試験という実質を持っていると言わざるを得ないわけでございます。私ども現時点では、基本的には資格試験であるけれども、そういった性格もあわせ持つものである。そういう両方の性格を端的に承認した上で、司法試験が法曹の後継者を適切に確保するという本来の機能を全うするためにどういう対応をしたらいいかということを考えるべき問題であろうというふうに思っております。
 端的に採用試験であればその旨を明記してはどうかという御指摘でございましたけれども、やはり単なる採用試験ということになりますと、一定の必要な人員があってその人員までは採用する、こういうことになろうかと思いますが、司法試験というものは裁判官、検察官、弁護士という非常に重要な職責を担うその卵を選抜するという試験でございますので、それに必要な最低限の学識、能力というものを有する者でなければ合格させてはならないという意味において資格試験としての基本は動かすべきものではないと現時点では考えているところでございます。
○山田耕三郎君 最後に、左藤法務大臣にお尋ねをいたします。
 我が国の司法試験が合格率においても試験の内容においても、いずれにおいても世界に誇れる国家試験だと聞いております。これは、試験が難しく厳しかったからこそ誇りを持って受験生が挑戦をされてきたからではなかったのかとも思います。山が高く険しいといってそれを削ったり登りやすくしたのでは、多くの人が確かに登るでしょうけれども、登山者の満足感はどうでしょうか。今回の制度改正で若くして合格したという優越感なり満足感が保たれるのでしょうか。本当に意欲を持った人材が挑戦をしてくれるでしょうか。この辺のことについて大臣のお考え方を承って、質問を終わりたいと思います。
○国務大臣(左藤恵君) 確かに、この司法試験は極めて合格することが難しい質の高い試験であることは今お話しのとおりでございますけれども、現状の試験は余りにも長期間の受験勉強を余儀なくされるとか過酷なものになり過ぎている。こういうこともありますので、本来意欲のある者も受験を敬遠してしまうとか断念してしまう、そういう者が多いという状況から考えますと、やはり何かそこで改革をしていかなければならないということで、今回の改正が導入を図ろうとしている合格枠制の実施ということによりまして全体としては競争状態は若干でも緩和される、それからより多くの者が比較的短期間の受験で合格する可能性が出てくる、そういう意味で、それによって本当に意欲を持った人材がより多く受験してくるものだ、このように考えるわけであります。いろいろな考え方があろうかと思いますが、そういうことを期待して今回の改正が図られている、私はこのように思います。
 そういうことで、今次の改革によってより多くの多様な人材というものが適切に法曹として確保できるのじゃないか、こういうことを期待しておるところでございます。
○紀平悌子君 法務省にお伺いいたします。
 司法試験の内容改革についてでございますが、今回の改正案では主として合格音数の増加が中心となっております。それも現行の五百人程度の合格者数を平成三年度から五年度までの三年で七百人程度にする、四〇%程度の増加にとどまり、私が肝心と思います司法試験の内容そのものの改革は、単に非法律選択科目を廃止しただけでありました。
 しかし、現行の試験の現状を考えてみますのに、一次試験、これは法学部卒業者は免除されるとしましても、短答式試験、論文式試験の記述試験を経て口述試験という半年がかりの過酷な試験内容の構造そのものになっております。この改革こそが実は本当に国民のための法曹実務者育成の道につながるのではないか、必要であるというふうに私は考えますけれども、今回の法曹基本問題懇談会や法制審の中でその点につき、先ほど一部お触れになりましたけれども、どのような検討がされましたか、また今回の改正でその点十分とお考えになっておられるのか、その二点を簡潔に具体的にお答えいただきたいと思います。
○政府委員(濱崎恭生君) 一次試験から始まって、第二次試験だけでも三つの段階の試験があるということについての御質問でございますが、司法試験というのは法曹三者、すなわち国民の権利義務関係を公正に規律し、法秩序を維持し、国民の権利を擁護し、社会正義を実現する、そういった特別の重大な任務を負う者、その候補者を選抜するということでございますので、もともと厳しい試験であるということは、これは制度として予定されているものというふうに思っているわけでございます。
 今のような試験構造になっておりまして、その全部の試験をパスするまで相当長い期間の受験に耐えなければ、一回の試験だけで最初から最後まで相当期間がかかるということでございますが、この点についてどうあるべきかいろいろなお考え方があろうかと思いますけれども、この点を改めなければならないという観点からの御議論は現段階では有力な意見としては承知しておらないところであります。むしろ実際に過酷になっておりますのは、ただいまも大臣が答弁申し上げましたように、試験の仕組みというよりも余りに合格までに長い期間、何年間もの受験勉強を要するということ、これが極めて過酷になっている、それを改善しなければならないということで今回の改革に至ったわけでございます。
 なお、試験のありようと運用上の問題につきましては、特に近年大学法学部の授業内容から離れたものにならないように司法試験管理委員会において指針を示す、あるいは司法試験考査委員会議においてその改善のための検討をするということで鋭意努力をしてまいってきておりますし、これからもそうしていきたいというふうに考えているところであります。
○紀平悌子君 おっしゃいますように、司法試験がだれでも通るような易しい試験であればいいとか、それからそれが短期間で済むようなシステムにしたらいいとかということを必ずしも私申し上げているわけではございません。一定の能力、水準を維持して優秀な法曹を選んで育成するための試験であるということは本当に大事なことだと思っております。ただ、今回の改革の中で司法試験が法曹としての資質を有するより多くの者が比較的短期間に合格できる試験制度、それに脱皮するということでございますので、それに対するシステム的な努力というのがほとんど顔を見せてないと思います。
 そこで、まず短答式の中身ですね。これは憲法、民法、刑法、基本的な三法について二十問ずつ計六十問を三時間三十分で択一するという方法になっています。論文式の試験では、憲法、民法、刑法、商法及び訴訟法一科目と選択一科目の六科目、各二題計十二問をそれぞれ二問につき二時間で作文するというような試験です。短時間にどれだけの知識量を体系化して示せるかという技術論に徹し過ぎているのではないでしょうか。法曹としての人間性とかあるいは資質ということよりも、時間当たり事務処理能力を問うというふうな試験の傾向になっているように思われるのですけれども、この改正が図られない点について法務省、そして法務大臣にお伺いをしたいと思います。仮にこのような試験を法務大臣も、法務大臣としてというよりはお受けになった場合をお考えになってどうお感じになるかも含めて、受ける立場になってお答えいただきたいと思います。
○政府委員(濱崎恭生君) まず、事務当局から答えさせていただきます。
 現在の司法試験法におきましても、先ほども触れましたけれども、第六条の第五項におきまして、司法試験の第二次試験におきまして、「知識を有するかどうかの判定に偏することなく、理解力、推理力、判断力等の判定に意を用いなければならない。」という現定がございます。そういう知識に偏しないで総合的な能力を見るという観点からの問題の作成、採点については、多数の考査委員の方々にこれまで大変な努力を傾けていただいているわけであります。また、先ほど申しましたように、最近では出題、問題のつくり方の改善のための小委員会を設置する、あるいは最近ではさらにその小委員会を発展的にいたしまして、運用全体についての検討小委員会を組織いたしましてそこで鋭意検討が続けられているところでございます。そういう観点から、今回の改正の中身にはなっておりませんけれども、あわせてより一層知識に偏しない、あるいは技術に偏しない試験にするための努力も傾注していかなければならないと考えているところでございます。
○国務大臣(左藤恵君) 裁判官、検察官、それから弁護士、こういった方々それぞれ国民の権利を守っていただかなければならない、擁護していく、それから法秩序を維持する極めて重要な職責を担うものでありますから、法曹になろうとされる人たちはとにかくただ単に法律に関する知識を有するというだけでなくて、今先生おっしゃったように、豊かな人間性とか人権感覚というものがなくてはなりませんし、また柔軟な思考力、旺盛な意欲というものが必要である、このように考えます。
 これはずっと前、終戦直後に私自身がこの試験を受けたことがございまして、このときには口述試験なんかにこういった問題が何か取り上げられているような感じを自分自身は受けたわけでございますが、今そういった口述試験の中身でも、こういったものがある程度考えられてやっていただいているものと、このように思います。いずれにいたしましても、こうした人材を法曹として確保し養成していくということは、単に試験制度だけではなくて法曹制度全体にとって大変重要な問題である、このように考えているところでございます。
○紀平悌子君 先ほど同僚委員の御質問の中にもございましたけれども、本来資格試験であるのかそれとも採用試験であるのかということに対して濱崎部長の御答弁がちょっとわかりにくかったんですが、基本的には資格試験だけれども、実質において司法修習生の採用試験というものがあるので両方の要素があるというふうに伺ったんですが、それでよろしゅうございますか。
○政府委員(濱崎恭生君) 司法修習生の採用試験という実質をもあわせて持っているということでございまして、御指摘のとおりでございます。
○紀平悌子君 さて、それはおきまして、今回の改正の主目的と思われます合格者の若年化ということを考えますときに、現行の司法修習所に人所する時点である程度の実務法曹家としての筆記能力を有していること、これを判定すると思われる論文式、口述式の試験でございますが、いかに司法試験の目的が司法試験法第一条により「必要な学識」を問うものであるとしても、既に今のレベルは大学法学部卒業の域を超えているように思われます。合格者の若年化を目指すということと「必要な学識」、そこの中身ですけれども、それを問う現行試験内容とはいささか矛盾をするようにも思いますが、いかがでしょうか。
○政府委員(濱崎恭生君) 御指摘のように、現在大学法学部の教育のあり方と司法試験に合格するための知識、能力との間に実際問題としてかなりの乖離が生じているということでございますが、それはそれぞれ両方に原因があるというふうに考えております。司法試験が余りにも難しいものになっているということ、片や大学法学部の教育において法曹となろうとする者に必要な知識、能力を涵養するカリキュラムになっているかどうかということについては疑問があるということ、その両方に問題があろうと考えておりまして、今後抜本的な改革を考える上においてはその両者の乖離を縮めていくということ、これが一つの重要な課題になるものと考えております。
 ただ、現在の試験問題の出題の方針につきましては、正しい解答を出すために必要な知識は大学の基本書などに共通して触れられている基礎的な知識に限る、そういう基礎的な知識をしっかり理解しておれば正解を得ることができる、そういう考え方で問題の作成に当たり、そのためのそういう問題づくりについて鋭意努力をしていただいておるところであるということをつけ加えさせていただきます。
○紀平悌子君 むしろ入るのを易しく出るのを難しくするという、これは普通の学校教育の受験制度にもちょっと言えることなんですけれども、司法試験による選抜は問題のレベルを大学卒業相当程度、今触れられましたような程度のものとして、実務法曹としての職業訓練を図る司法修習の期間を三年ないし四年ぐらいにする、そして実務を現場で教育を受けるというふうなことで、現在よりも充実させながら研修させるという養成方法も考えられますが、若い人たちが正義、公平の観念を身につけながら法曹の分野に入りやすくなるんじゃないかと思います。そうした政策論みたいなものは法制審や三者協ではどのように出ましたでしょうか、あるいは出ませんでしたでしょうか。
○政府委員(濱崎恭生君) 御指摘のようなあり方が極めて理想的なあり方であろうというふうに考えます。ただしかし、そのためには大幅に合格させて、非常に大勢の人数をしかも長期間にわたって修習させるということが必要になりますので、その修習体制をどうやって整備するかということが非常に大きな問題でございます。これまでの検討におきましては、現在の修習体制というものを基本的に維持するという方向で検討してまいりまして、その成果として今回の改革案を策定するに至ったわけでございます。したがいまして、これまでそういったことについて本格的に議論がされているということではございませんが、これからの抜本的な改革の検討におきましては、委員御指摘のような考え方も参考にしながら考えてまいりたいと思っております。
○紀平悌子君 現在の論文式試験の委員の構成なんですけれども、実務法曹と大学教授の数の比率を教えてください。それから、採点はどのようにされるのですか。また、採点基準などはどのように統一を図っておられるのですか。
 もう一つ、口述試験のときですけれども、これは受ける者の側からの言い分ですが、試験委員によっていわゆる当たり外れがあって、気難しい委員に当たりますと、あるいは激しい御性格の委員に当たった場合と比較的寛容な方に当たった場合で大分違う、合否がかなり左右されるというふうな話も仄聞いたします。せっかく論文の難関を通られても一割近くの不合格者が口述で生じているようにも伺っております。
 幾つも伺いましたけれども、よろしくお願いをいたします。
○政府委員(堀田力君) 最初に、司法試験考査委員の実務法曹と大学教授の数の比率でありますけれども、現在考査委員のうち実務法曹が三十八名、大学の教授が六十九名ということで大学教授の方が多くて、比率は約六四%という実情でございます。
 こういう考査委員の方々が論文式試験でどのように採点されるのか、その際どのように統一を図るのかという御質問でございますけれども、最初に採点に入ります前に考査委員会議におきまして、一般的にこういう基準で採点しようという申し合わせをいたしまして、以後採点を担当する考査委員が、これは一つの論文を二名の考査委員が全く別々に採点するわけでございますけれども、さらに一般的基準によりまして十分打ち合わせをいたしまして採点をするということになっております。
 どういう採点基準にするかということは秘密にされておりますけれども、これを例えば少しわかりやすく例を申しますと、現在の学校で採用されております一から五までの評価をするに際しまして、相対評価の場合、一の者が何%、二の者が何%、三の平均の者が何%と、大体こういうような割合で相対評価をいたしておりますけれども、これと同じように全体についてのできぐあいを基準にいたしまして、そういう基準を定めまして採点しておる。したがって、各科目ごとにこの基準に従っておりますので科目間の不公平はなく、そのできぐあいに応じましてその割合が出てくるということでございます。そういう採点方法をいたしております。
 最後に、当たり外れがないかということで、これは口述試験を受けました者の印象としまして、先生によりましてぶっきらぼうの先生もおられますし、大変厳しく質問される方もおられれば、やややわらかく助け舟を出したりする先生もおられまして、受ける方としてはいろんな印象を受けるかと思いますけれども、この口述試験につきましても同じように事前にどういうパーセンテージでやるかということを各科目打ち合わせして統一的にやっておりますので、出てきました結果は各科目ごと、各先生ごとに統一されたものになっております。したがいまして、それは受験生の単なる印象であろうかと、こういうふうに思います。
○紀平悌子君 時間もございませんので少し飛ばしまして、最高裁にお伺いをしたいと思います。
 現在、国民の間に権利意識が高まり、個人主義の浸透が進んでおります。この中で本当に国民のための裁判制度、司法制度、これを実現するために裁判実務上、法曹三者のお考えの中で全体の総数についてはどれくらいの増加を図れば適切な裁判への迅速かつ充実した審理が行われるか、現行の体制と比較しつつ最高裁の御見解をお伺いしたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(金谷利廣君) 現在、裁判官二千八百名おるわけでございますが、今後のさまざまな要素の展開を見てどの程度の裁判官がいれば法曹としていいのかということについては、まことに申しわけないんですが、現時点でこういう数がよいということを出し得ておりません。そういう状況でございます。
○紀平悌子君 現在の司法試験が法曹として過度に高い知識水準を求めることから来るその考え方が――考え方というより実際の状況が現実には実務法曹の不足を招いているということになっているとも思います。これが法曹のいわば閉鎖的な体質と相まって、国民をいわゆる気軽に法律による問題解決に向かう方法をとることから遠ざけ、そして例えば判決書一つを見ましても国民にとてもわからない言い回しがわかりにくく書いてございます。また暴力団の民事介入は跳梁はっこというような状況も見られますので、まだまだ予防法学を含めた国民のための司法制度からは遠い現実になっています。司法試験の改革を初め今後どのような司法改革に向かっておいでになるのか、これは法務大臣の御所見を伺いたいと存じます。
○国務大臣(左藤恵君) 今国民のための司法という見地から法曹養成制度をどういうふうに考えるか、こういう御質問だろうと思います。
 法曹の養成は、先ほど来お答え申し上げたようなこともございまして、とにかく我が国の社会の将来、それから国民の福祉の増強という点から見まして重大な影響を及ぼすものでありますから、本当に先生おっしゃるように、国民的な視点に立ってこういった制度をどうすればよいか、これが我々真剣に考えなければならない問題だろう、このように思います。
 そういう観点に立って考えますと、法曹という社会といいますか、それが我が国の社会の進歩に適切に対応して国民の期待にこたえていくためには、先ほど来お話し申しましたように、ただ法律的な問題ということだけでなくて、人間性とか人権感覚とかそういったものを豊かにしていく、そういうこととか柔軟な思考法とかやる気を持った考え方、こういうものがなかったならば国民の負託にこたえることができないだろうと思います。そういったことに十分こたえることができる裁判官、検察官、それから弁護士、こういった方々がその需要を満たしていくという見地からこの法曹養成制度というものは考えていかなければならないと思いますし、先ほど来お話ございました協議会はこういった線で真剣な討議をしていただけるものと、このように御期待申し上げているところでございます。
○紀平悌子君 今後の協議会におきまして、きょう承りましたさまざまな御公約に沿った前進が見られることを重ねてお願いをいたしまして、質問を終わらせていただきます。
○委員長(矢原秀男君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
 これより討論に入ります。
 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。――別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 司法試験法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
○委員長(矢原秀男君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 北村哲男君から発言を求められておりますので、この際、これを許します。北村君。
○北村哲男君 私は、ただいま可決されました司法試験法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、日本共産党、連合参議院の各会派及び各派に属しない議員紀平悌子君の共同提案に係る附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。
    司法試験法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府並びに最高裁判所は、次の諸点につき格段の配慮をすべきである。
 一 国民が、必要に応じ、広く、容易に、より高度な法的サービスを享受できるようにするため、我が国における適正な法曹人口の確保を図るとともに、その質の維持に努めること。
 二 右の目的を達成するため、法曹養成制度における大学教育との関係及び司法修習制度の在り方については、大学関係者及び法曹三者の密接かつ有機的な協力の下に検討を進めていくこと。
 三 法曹三者の合意に基づいて設置される法曹養成制度等改革協議会においては、現在の司法試験・法曹養成制度の基本的理念を尊重しつつ、国民的見地に立って、これら制度の改善についての協議を行い、その充実・発展を図るようにすること。
  右決議する。
 以上でございます。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
○委員長(矢原秀男君) ただいま北村君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
○委員長(矢原秀男君) 全会一致と認めます。よって、北村君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 ただいまの決議に対し、左藤法務大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。左藤法務大臣。
○国務大臣(左藤恵君) 司法試験法の一部を改正する法律案につきましては、委員の皆様方の御熱心な御審議をいただき可決されましたことに対し、心からお礼を申し上げます。
 なお、ただいまの附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重いたしまして、今後とも努力を重ねていく所存でございます。
○委員長(矢原秀男君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(矢原秀男君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後五時八分散会