第120回国会 法務委員会 第8号
平成三年四月二十五日(木曜日)
   午前十時開会
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   委員の異動
 四月二十五日
    辞任         補欠選任
     八百板 正君     会田 長栄君
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  出席者は左のとおり。
    委員長         矢原 秀男君
    理 事
                鈴木 省吾君
                福田 宏一君
                北村 哲男君
                中野 鉄造君
    委 員
                斎藤 十朗君
                田辺 哲夫君
                中西 一郎君
                林田悠紀夫君
                山本 富雄君
                会田 長栄君
                久保田真苗君
                千葉 景子君
                安永 英雄君
                橋本  敦君
                山田耕三郎君
                紀平 悌子君
   衆議院議員
       法務委員長    伊藤 公介君
   国務大臣
       法 務 大 臣  左藤  恵君
   政府委員
       法務省民事局長  清水  湛君
       法務省刑事局長  井嶋 一友君
       法務省矯正局長  飛田 清弘君
       法務省人権擁護
       局長       篠田 省二君
       法務省入国管理
       局長       股野 景親君
       外務大臣官房審
       議官       竹中 繁雄君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局刑事局長   島田 仁郎君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        播磨 益夫君
   説明員
       警察庁刑事局刑
       事企画課長    泉  幸伸君
       警察庁刑事局国
       際刑事課長    小田村初男君
       警察庁警備局外
       事第一課長    漆間  巌君
       法務大臣官房審
       議官       本間 達三君
       外務大臣官房領
       事移住部外国人
       課長       宮下 正明君
       外務省国際連合
       局人権難民課長  角崎 利夫君
       文部省教育助成
       局地方課長    小野 元之君
       文部省学術国際
       局国際企画課長  牛尾 郁夫君
       労働省職業安定
       局業務調整課長  吉免 光顯君
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  本日の会議に付した案件
○日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法案(内閣提出、衆議院送付)
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○委員長(矢原秀男君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法案を議題といたします。
 まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。左藤法務大臣。
○国務大臣(左藤恵君) 日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法案について、その趣旨を御説明申し上げます。
 我が国には、終戦前から引き続き居住し、昭和二十七年の日本国との平和条約の発効に基づき日本の国籍を離脱した在日韓国・朝鮮人及び台湾人並びにその子孫が多数在留しておりますが、これらの人々の我が国社会における定住性がますます強まりつつある今日、これらの人々が我が国の社会秩序のもとでできる限り安定した生活を営むようにすることが重要であると考えられます。特に、在日韓国人の法的地位等の問題については、日本国に居住する大韓民国国民の法的地位及び待遇に関する日本国と大韓民国との間の協定に基づき、韓国政府との間で、昭和六十三年以来累次にわたり協議を行ってまいりましたが、本年一月の海部内閣総理大臣訪韓の際に協議は決着し、その内容を取りまとめた覚書に日韓両国の外務大臣が署名いたしたところであります。
 この法律案は、右に述べた経緯を踏まえ、在日韓国・朝鮮人及び台湾人並びにその子孫を対象として、その歴史的経緯及び我が国における定住性を考慮し、これらの人々の法的地位のより一層の安定化を図るため、出入国管理及び難民認定法の特例を定めることを目的とするものであります。
 次に、この法律案の主要点につきまして、御説明申し上げます。
 第一は、これら対象者について、特別永住者として本邦で永住することができる資格を設けることであります。その第一点は、日本国に居住する大韓民国国民の法的地位及び待遇に関する日本国と大韓民国との間の協定の実施に伴う出入国管理特別法に基づく協定永住者など、この特例法施行前から既に永住許可を受けている者などにつきましては、法施行後は特別永住者として本邦で永住することができることとするものであります。第二点は、法施行後に新たに出生した者などにつきましては、申請に基づき特別永住者として永住することを許可することとし、その申請受理等の手続は、市区町村の長において行うこととするものであります。第三点は、法施行前から引き続き在留している者で、定住者等の在留資格をもって在留する者につきましては、申請に基づき特別永住者として永住することを許可することとし、その申請受理等の手続は地方入国管理局において行うこととするものであります。
 第二は、これら特別永住者に対する出入国管理及び難民認定法の特例を定めることであります。その第一点は、特別永住者に係る退去強制は、内乱、外患もしくは国交に関する罪、外交上の重大な利益を害する罪またはこれに準ずる重大な罪を犯した者に限定することであります。第二点は、特別永住者につきましては、再入国許可の有効期間を四年以内とし、さらに、一年以内に限り在外公館での延長を認め、再入国許可による出国期間を最大限五年とすることであります。第三点は、再入国の許可を受けて上陸する特別永住者につきましては、出入国管理及び難民認定法第五条に定める上陸拒否事由につき審査しないものとするこ
とであります。
 以上がこの法律案の趣旨であります。
 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願い申し上げます。
○委員長(矢原秀男君) この際、本案の衆議院における修正部分について、衆議院法務委員長伊藤公介君から説明を聴取いたします。衆議院法務委員長伊藤公介君。
○衆議院議員(伊藤公介君) 日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法案に対する衆議院における修正部分の趣旨について御説明をいたします。
 政府提出の本法律案においては、特別永住者について、再入国許可による出国期間を最大限五年とすることとしておりますが、衆議院においては、さらに、いわゆる在日韓国・朝鮮人及び台湾人の人々の有する歴史的経緯及び我が国における定住性を考慮し、特別永住者に対する再入国の許可については、これらの人々の本邦における生活の安定に資するとの本法律の趣旨を尊重するものとする旨の規定を追加する修正を行ったものであります。
 以上が政府提出の本法律案に対する衆議院における修正部分の趣旨であります。
 何とぞ、慎重審議の上、本修正に御賛同くださいますようお願いをいたします。
○委員長(矢原秀男君) 以上で趣旨説明並びに衆議院における修正部分の説明は終わりました。
 これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○北村哲男君 北村でございます。
 本件の特例法案の審議に先立って、大臣に御所見を一つお伺いしたいことがございます。と申しますのは、つい三日前のことですが、東京高等裁判所で逆転無罪になりましたいわゆる昭和四十九年八月に発生した松戸OL殺人事件についてであります。
 東京高等裁判所の竪山真一裁判長は、有罪の中心的な証拠であった目白の任意性を否定する根拠として、留置業務と捜査活動が混同されていたこと、すなわち留置業務が捜査の一手段に利用されていたことが原因であると指摘して、判決文の中で次のように指摘しておられます。
  被勾留者を警察署に附属する留置場に収容するいわゆる代用監獄は、自白の強要等の行われる危険の多い制度であるから、その運用には慎重な配慮が必要である。本来、被疑者の取り調べという犯罪捜査と被疑者の留置業務とは、同じ警察が行うにしても、全く別個の業務であり、混同して運用されてはならず、それぞれ別個独立の立場で適正に行われることが必要不可欠であり、留置業務が捜査に不当に利用されることがあってはならないのである。
と言っております。
 そして、この事件の昭和四十九年九月から五十年三月にかけての約百八十日間の事件捜査において、この事件を取り扱った印西署は留置業務に独立性がなくて、捜査に不当に利用された、これは代用監獄に身柄を拘束して自白を強要したものとのそしりを免れないという判決趣旨でありました。
 これは、私どもが常々言っております代用監獄で冤罪につながる自白の強要が行われることが明らかとなったという事案でありまして、数々過去に、免田事件あるいは財田川事件、松山、島田の各死刑判決の再審事件は言うに及ばず、近年においても、その以後におきましても、代用監獄においてとられた自白の任意性あるいは信用性を否定して被告人に無罪の判決を下した例はかなりの数に上ります。例えば一九八九年七月二十日の大津地裁判決あるいは同年七月二十七日の大阪地裁の判決、そしてやはり同じ年の十月二十六日の最高裁判決、さらに十一月十三日の大津地裁判決、そしてつい今年二月の大阪高裁の窃盗(すり)無罪判決、そしてまたまた三月四日の選挙違反事件で百二十二名もの無罪判決を出した大阪地裁の判決、あるいはまた、最近の三月二十五日の大阪地裁の女児殺人事件判決など数々に上るわけであります。
 こういうことも勘案しまして、これとは直接関係はないかもしれませんけれども、大臣は代用監獄制度はつきまして今年四月十九日に法律新聞という雑誌のインタビューに際して、代用監獄制度につきましてはアムネスティーの勧告とか国際機関からの批判もあるけれども、どうお考えですかという質問に対しまして、大臣御自身が、代用監獄をなくせと言われても予算上の問題などで一遍に廃止することは困難だ、現在の施設をどうするかを含め、現実的な観点で国会で論議をしてもらいたいというお答え、あるいはその国際的批判は一気に理想までいけという論議なんだということで、必ずしも肯定はされておりませんけれども、代用監獄制度が余り好ましくないということもうかがえるようなインタビューのお答えをしておられるように思います。
 確かに、現在この留置施設法など四法が国会に上程されているときですから、これについてどうこうということは大臣として非常に微妙な立場であろうと思いますけれども、大きな方向性として代用監獄制度、そしてあるいは留置行政と捜査行政のあるべき姿、進むべき方向ということについて大臣の御所見をお願いしたいと存じます。
○国務大臣(左藤恵君) 今お話しの代用監獄制度のことにつきましては、昭和五十五年の法制審議会の御答申の中にも、その設備及び管理機構の改善等に努力していかなければならないと、こういう御指摘がございます。実際、現実問題としまして今お話がありましたように、今すぐこの代用監獄を廃止するということはできないという問題でもございますので、私はこの具体的な事件の捜査の処理に当たりましては、今いろいろ松戸事件の判決で御指摘になっておりますようなそういう自白の強要などが行われないように、検察当局としては十分指揮監督していただきたい、このように思っております。
 今お話がございました国際的ないろんな一つの大きな流れといいますか、アムネスティー・インターナショナルの御報告とか、そういったことから被収容者の人権尊重の機運の国際的な高まりというものも我々十分理解するところでありますが、さりとて今の現実問題としまして、今国会に提出した刑事施設法案に関連しましても、国際的な水準というふうなことで特に問題があるとも考えてはおりませんが、いずれにいたしましてもしかし、こういった問題については国際的なこれからの諸活動というものを十分我々も内容とか動向というものに注目はしていかなければならないと思いますが、当面の問題としまして、今お話しありましたそういった問題については被収容者の人権に十分配慮した適正な処遇をしていかなければならない、そういう立場で代用監獄というものをすぐになくすということは非常に難しいのではないか、このように考えておるところでございます。
○北村哲男君 ただいま大臣から国際的な流れということも踏まえてお答えいただきましたけれども、先ほども申しましたように、法案自体が提出されているので、そのものに立ち入るのは私も今したくありませんが、しかし拘禁二法あるいは四法と言われるものの法制審議会の答申が行われたのは一九八〇年、もう十年以上も前のことでありまして、その後、国際人権の関係の原則を含めていろんな事案が出てくるということを考慮しながら、再度その問題について対処するというお考えがあるかどうか、その点についてもう一回御所見をお願いしたいと存じます。
○国務大臣(左藤恵君) 私の申し上げたのは、そうした動向についての勉強というものは十分していかなければならない、このように考えますが、今当面、代用監獄をなくすというようなことにつきましては、非常に予算上の問題、いろんな問題がございまして困難であるという点も考え合わせて、当面どうするか、将来的にどっちへ持っていくかということについての勉強は続けていかなければならない、このように考えておるところでございます。
○北村哲男君 どうもありがとうございました。
 それでは、特例法案の問題についてお伺いしていきたいと存じます。
 まず、特例法案の十条の関係からの質問に入っていきたいと思います。
 大まかな感覚というか感じ方の問題としまして、十条は従来一年であったもの、すなわち再入国許可の期間が一年であったものが四年に延長され、四年でさらに一年、最長五年ということに延長されたものでありますけれども、これは従来の一年ではその一年の間に行ったり来たり一々、そして一回ごとに再入国許可書の交付を受けていては、昨今のように国際的交流が激しい今日、不便であるということからの改善と思われます。
 私どもがパスポートを取得する際に、ずっと以前は一回限りで外国へ行くたびに一々もらっておったという時代がありました。その次に一年間の有効のパスポートという期間があった。その間に何回か行き来ができるような形のパスポート、いわゆる旅券であった。そして最近、どのくらいになるかもう忘れましたけれども、五年の数次旅券というのが一般的になった。それは、五年の間に何回も行き来ができるというそういう国際情勢、日本の国際化の反映であったと思いますけれども、今回のこの特例法の五年間というのは、それと大体同じような考え方に立っているとお伺いしてよろしいのでございましょうか。
○政府委員(股野景親君) この最大限五年間にするということが十条に定めてあるわけでございますが、その趣旨は幾つかございます。
 ある面におきましては、この再入国許可という制度は、ただいま委員御指摘の旅券の制度とは大幅に意味を異にする、違うものであるという面がございます。すなわち旅券は、日本国民が基本的に海外渡航の自由というものを持っておって、そしてそれについて海外での安全あるいは邦人の保護という観点から旅券というものが発給をされているわけでございます。他方、再入国許可制度は、その性質上外国人を対象とするものでございますので、外国人についての海外渡航というものの扱いは、そこには日本人の場合とは一つの違いがあるという点がございます。
 他方、それでは海外渡航という中身が、最近の状況で一般的に在日韓国人等の方々を含めまして非常に頻繁に行われるようになってきた。また、一遍海外渡航された場合に、海外におられる期間も長くなる傾向があるという点では日本人の海外渡航と共通する面もございます。そこで、そういう制度上の違いというものを一方において踏まえながら、他方において海外渡航が今のように頻度も増し、また海外駐在あるいは海外留学といったような期間が長くなっているという状況も踏まえて、その結果として従来の最大限二年まで有効にする制度を最大限五年までにこの法案の対象者になる方々については延長しよう、こういう考えでございます。
○北村哲男君 私は非常に感覚的に聞いたわけで、制度の違いはもちろんあると思います。ただ、日本に住んでいる人が海外に行くということについては、これは国籍があろうとなかろうと日本に生活の本拠を置いている人が行くんですから変わりないわけで、そういう意味では同じような感覚、感じで五年間という期間の問題を定めたんだろうというふうに聞いたわけですが、今のお答えの中で入っていると思いますので結構です。
 それで、関連しまして、再入国の有効期間が従来は一年であったわけですけれども、それでも多くの場合一年という法律上の期間がありながら、現実には三カ月限りという例が非常に多く見られたようです。今回四年と改正をしても、現実には前と同じ一回限り三カ月というふうなことにならないんだろうか。普通の感じでは、今申しましたように、期間的には大体日本に住んでいる人が外国に行っていろんな仕事をしたり留学をしたりなんかするときには、五年ぐらいはあって行ったり来たりしなければ非常に不便であるという社会的な要請があると思うんですけれども、そういうところから今まで一年であったものを四年にしたことによっても、しかし実際は一つ一つの渡航目的とか渡航先とか現実に審査されて、これはもう三カ月でいいじゃないかということで、法定期間は延びたものの実際には三カ月限り、一回限りというのが非常に多かったら余り意味がないと思うんですけれどもね。
 その点については、改正後の見通しとして永住者の方々がどういう期待を持っていいのか、その辺についての方向性というか、そういう観点からのお考えを御説明願いたいと思います。
○政府委員(股野景親君) まず、再入国許可制度の問題の一般的な仕組みという点について一言だけ申し上げたいと思います。
 これは委員も既によく御存じのとおりでございますが、再入国許可を行うに当たりましていろいろの要素というものを法務大臣が総合勘案いたしまして、そして許可の問題についての決定を行うということでございまして、その際に再入国に関する海外渡航について、渡航の目的や渡航先、それから渡航先国と我が国との関係、さらには国際情勢等の諸事情を勘案する、こういうことがまず基本的にございます。従来の再入国許可制度の運用につきましても、したがってただいま申し上げましたようなことを総合的に勘案して再入国許可制度が運用されてまいりました。そういう意味において、委員御指摘のような、法定では例えば初めから有効期間を一年としないで、そこに至らない期間を定めるということも、その渡航の目的あるいは必要性等にかんがみて行っているケースは確かにございます。
 新しい法律は、これは一般的な再入国許可制度の運用というものを踏まえました上で、この法律の案の対象となる特別永住者の方々につきましてそういう法的地位を設けるというこの法律の趣旨というもの、それから先ほどもお話のございました本問題について衆議院においてこの法律案に修正をいただいておるという経緯、こういったものを十分尊重しながら再入国に関する規定というものは運用していくべきものと考えておるわけでございます。
 したがって、その意味においては基本的にこの特別永住者の方々の海外渡航というものが円滑に行われるように配慮する、このことが重要であると考えておりますので、その意味では基本的な心構えとしては今の許可の内容あるいは許可の有効期間ということにつきましても、先ほどのような総合的な諸事情についての判断というものはいたしますが、その上で特段の事情がない限りはできる限りその申請人の海外渡航というものが円滑に行われるようにしていく、こういうことで運用をしてまいりたいと考えております。
○北村哲男君 これも今までのことなんですけれども、正確な統計によって言っているわけではないんですが、種々の訴えあるいは声を聞くところによりますと、朝鮮総連系の人には再入国許可期間を原則三カ月で一回限りしか出さない、しかもそれに伴って多くの添付書類なんか出させて、期間的にも非常に長い、二週間以上かかるという苦情を多く聞いてまいりました。一方、韓国籍をお持ちの方は原則一年間、しかも数次の再入国許可書を普通にいただける、しかもスムーズにいただけるというふうに、どうも区別あるいは差別がなされているということをよく聞いてまいりました。
 今回の改正によってそれがなくなることを期待をするわけですけれども、先日の衆議院の審議において、やはり私どもの同じ党の鈴木喜久子議員の質問で、その質問も同じく在日朝鮮人の方と在日韓国人の方の間に区別があるんではないかという質問に対し股野政府委員は、その在留状況あるいは渡航目的、渡航先とか各個の要素を総合勘案して、期間あるいは一次か数次かを決めると言っておられます。そして、その中の勘案の要素に国交の有無ということも入れておられますけれども、私はちょっと国交の有無という点についてひっかかるところがあるんです。
 というのは、在留者側の個人の事情、素行が悪いとか、何か過去にやったとかということが判断の材料になるということは、これは理屈としては
わかります。しかし、国交の有無というのは個人の事情ではなくて国と国との間の事情であって、個人としてはどうしようもないし、改善のしようもない問題であります。これが他の国籍の方々と区別される原因となるというのは一体どこにあるんだろうか。先ほどからもおっしゃいましたが、いろんな要素を総合勘案してというふうにおっしゃいますけれども、その勘案要素の中に国交がぽこっと出ることが異質なものが入っているような気がしてならないんですけれども、その辺について絞って御説明願いたいと思います。
○政府委員(股野景親君) 先ほど申し上げましたとおり、再入国許可制度の運用に当たりましてもろもろの要素を総合勘案するということを基本といたしております。そのもろもろの要素の中に渡航先あるいは渡航先国と我が国との関係、そしてまたそれに伴う国際情勢、こういった要素を申し上げさせていただきました。
 そういう中に、やはり北朝鮮と我が国との間にまだ国交がないということは一つの要素として考慮をすることになっております。したがって、そういういろいろな要素の中での一つの要素として国交がないということがあるわけでございますが、特にその点が重視されますのは、やはり渡航先が北朝鮮になっているとこういう場合に、特にその点についての重みが出てくると考えるわけでございます。何分にも国際情勢というものにはさまざまな動きがあり、その点について日本の国の全体的な国際関係ということを考えた運用というものも必要であろうと考えておる次第でございます。
 しかしながら、この新しい法案を今御審議をお願いたしておるわけでございますが、その新しい法律の対象となる方々の海外渡航について、先ほど申し上げましたような配慮を十分に行っていくということも、これもまたひとつ大事なポイントであろうかと思っております。
 したがいまして、今後のこの運用について、国際的な情勢の総合判断の中に北朝鮮との間でまだ国交がないということがどうしても一つの要素としては入るわけでございますが、しかしその要素のとらえ方というものについてはまさに総合判断の中でとらえるわけでございまして、特に国際情勢が現在のように朝鮮半島についても改善が見られる、また北朝鮮と我が国との間での国交正常化に向けての話し合いというものも進んでいる、こういったものも当然考慮をしていくべきものと考えておりますので、そういう意味で総合判断の一つの要素ではございますが、同時にほかの要素というものも十分加味した今後の運用になっていくということでございます。
○北村哲男君 ただいまの御答弁で大体その方向性は何となくわかるんですけれども、しかし北朝鮮との関係も、国交はないにしても国交回復に向けて明るい見通しのある今日、国際情勢も非常に好転していることも事実であります。
 そうしますと、再入国許可という点でやはり北朝鮮の場合も韓国の場合も同じ歴史的経緯と同じ定住性というものであるから、当然法律上も同じ処遇、待遇をしなくちゃいけないということも当たり前だと思うんですけれども、その辺についての今後の見通しとしては、今までのような、格差があるから何とかしなくちゃいけないという国民の間からの要望が強く私どもに寄せられるということはだんだんなくなっていくというふうな期待をしてよろしいのでございましょうか。
○政府委員(股野景親君) この法律は、平和条約の発効に基づいて日本国籍を離脱された方々について同じ法的地位を設けたという一つの立法の精神がございます。その精神というものは、やはりその再入国許可制度の運用に当たっても十分尊重していくべきものと思いますし、同時に、先ほど申し上げましたもろもろの国際情勢を含む総合判断という点があるわけでございますが、そういう中で従前との比較においてはできる限り関係者の海外渡航が円滑に行われるように配慮していくということが私どもの考え方でございます。
○北村哲男君 ただいまの御答弁でいいとは思うんですが、大臣にも一言この点について、再入国許可書の発給については大臣の自由裁量に基づいて行われるわけですので、国交、国籍を問わず、あるいは出身を問わず差別をしないという方針を政府として確認していただきたい。その差別の中には、書類等の申請手続あるいは発給までの期間の長短の問題等、差別なく平等に取り扱うべきであるということの確認がしていただけるかどうか、その点についての御所見を伺いたいと思います。
○国務大臣(左藤恵君) 特別永住者に対します再入国の許可につきましては、一般の外国人に対するものと同じように、先ほどお話がありましたように、法務大臣が渡航目的、渡航先、渡航先国と我が国との関係、国際情勢等の諸事情、そういったものを総合的に勘案して決定するものではございますが、特別永住者につきましては特別永住者という法的地位を設けるこの今回御審議いただいています法の趣旨、それから衆議院におきます先ほど御説明のありました修正が行われた経緯、こういったものを十分尊重して再入国に関する規定を運用していかなければならない、このように考えておるところでございます。
 なお、この特別永住者の国籍とか出身地の違いというようなことによって扱いに差異を設けるという考えはございません。
○北村哲男君 どうもありがとうございました。
 それでは、次の質問に移ります。
 入管法二十六条七項の問題ですけれども、「再入国許可書は、」「本邦に入国する場合に限り、旅券とみなす。」という規定があります。「旅券とみなす」という点はともかくとして、「本邦に入国する場合に限り」というその文言にやや気になるところがあるんです。これを逆に考えますと、出国とか他国に在留しているとき、諸国を旅行するときにはでは旅券とはみなされないのかという逆の解釈も成り立つような気もするんですが、過去の条文をつくった経緯を見ますと、いつごろのことかわからないんですけれども、法案検討の過程――入管法のことでしょうが、法案検討の過程では、在日朝鮮人等有効な旅券を所持し得ない外国人に交付する渡航文書の名称を旅行証明書と呼ぶ時期もあったというふうに言っておられるようです。
 さらに具体的には、これは一九八一年五月十五日の衆議院の法務委員会で、あるいは同じ年の六月二日の参議院の法務委員会で、当時の大鷹入管局長が、難民旅行証明書と再入国許可書の間には差別はないと、そしてその機能は同様で、再入国許可書も多くの諸外国から有効な旅行文書として承認されるだろうというふうに述べておられます。ということは、再入国許可書が一般旅券とほとんど同じように国際的に通用するというか、作用するというふうな認識を示されているというふうに思うんですが、私自身は、そうなると再入国許可書というふうな言い方よりもむしろ当初の旅行証明書の方が、これからも述べていくんですが、今日のようないろんな問題を起こさずに済んだというふうに思うんですけれども、どうしてこうなったのか。そして、これは実質的に旅行証明書、すなわち旅券に近いものとして考えていいのかどうかということについての御説明をいただきたいと存じます。
○政府委員(股野景親君) この再入国許可書の扱いにつきまして、入管法第二十六条の第七項を御引用いただきましたのですが、委員御指摘のとおり、ここで「本邦に入国する場合に限り、旅券とみなす。」という規定になっておりますので、この扱いが現在の扱いの基本となっているわけでございます。この問題、いろいろな角度からのとらえ方ができると思うわけでございますが、基本的には日本の国として、日本人についてその海外渡航において海外での保護というものを要請していく、これは日本国民について日本国政府がするというのは当然でございますが、外国人である方についての取り扱いは、その点については一つのやはり違いがあるであろうということでございます。
 他方、海外に渡航されて、海外から日本へ帰ってこられるという場合に、先ほどの規定で示されておりますように、この再入国許可書が旅券と同様の効力を持つという点がございまして、そういう点にかんがみまして、諸外国においてこの文書を日本が当該外国人の方の再入国を認めているということを保証しているという文書であるということに着眼して、そして有効な旅行文書として扱っているというケースが確かにあるようでございまして、その点が先ほど御指摘になりました以前の国会での御審議で、政府側が旅券というようなことについての御論議の中で、再入国許可書が諸外国において有効な旅行文書として扱われている例があるという精神で御答弁を申し上げたものと思います。
 そういう意味で、私どもこの再入国許可書は入管法上の制度からいって旅券そのものではなくて、一つの違いがあるものとして扱わざるを得ないと思うわけでございますが、しかし、それが諸外国において有効な旅行文書としてみなされているということは、それはそれで意味のあることと考えているところでございます。
○北村哲男君 今の諸外国において有効な旅行文書として認めておられることは意味があるでしょうという、ちょっと突き放した言い方が気になるんですが、それはそれとして次に質問移りますけれども、その辺を意識してそういうふうにしていただかないと、日本に在住しておられる方々が大変外国で苦労されるので、むしろ積極的にその点をアピールされるなり、そしてその作用を強めていただきたいという質問に移りたいと存じます。
 私が一つ最近の例として、「世界」の去年の一月号に載った横浜国大の先生をしておられる尹先生とおっしゃる方の書かれた「「再入国許可書」と渡航の自由」という報告文書があります。ここでの報告では、諸外国政府は再入国許可書を実際には旅券としてみなさず、事実上、再入国許可書所持者は外国では無国籍者扱いにされるので非常に不安である。これは日本政府の対応に原因があるというふうに言っておられる。この中で旅券とみなすということについては、確かに言い方に若干の違いがあると思いますけれども、諸外国の対応が必ずしも期待されるようにいっていないのは日本政府の対応に原因があるんじゃないだろうかということについての報告を少し紹介したいと思います。
 この尹先生は、御一家でロンドン大学に一年留学されたということがあるようです。このときに、再入国許可書の不都合が数々起こってきた。尹さん一家は、先生本人は韓国籍であり、そして奥様は朝鮮籍である。子供二人が一緒なんですが、これは韓国の父系主義の建前で韓国箱となっているという複雑な国籍の関係になっているようです。これは尹先生に言わせると、今いらっしゃる在日韓国・朝鮮人の方々の家族にはごく普通によくある例だということのようです。
 それでまず、尹先生が再入国許可書の発給を受ける手続をされたときに著しく日数がかかった。すなわち、御自分はともかくとして奥様で十日間、子供の場合は十四日もかかったというふうな複雑な問題があった。
 二つ目に、イギリスに入国するためのビザを取得するのに、これは在日のイギリス領事館に行ったところ七十日も日数を要したということです。それでこうなると、果たして旅行文書として認めておったんだろうかという疑問を呈しておられます。
 次に、奥様と子供さんがイギリスに入国したときに、再入国許可書の国籍欄にコリアということを書いておったところ、これが向こうですべて消されて、アンサーテン、国籍がはっきりしないということを意味する言葉とか、あるいはステートレス、無国籍というふうに書き直されてしまったということ、これによって非常に不安を感じたというふうに言っておられるわけです。こういうことについて、報告文書ですから一つ一つ正確な証拠に基づいて私言っているわけじゃないんですが、同じような訴えがほかの方々からもありますので一つの例として申し上げておきます。
 そこで、この点について幾つか質問していきたいんですが、まずちょっと統計的なことですが、再入国許可書の発行件数あるいは朝鮮籍を含めて国籍別の発行状況は一体どういうふうな形になっているのか、この数年の間の統計を示していただきたいと存じます。
○政府委員(股野景親君) 再入国許可書の発給の問題でございますが、再入国許可書そのものの発行は実は統計をとっておりません。なぜならば、委員も御存じでいらっしゃると思いますが、必ずしも再入国許可書は再入国許可の出される都度発給されるわけではございませんで、同じ許可書の中に複数回の再入国許可の証印が押されるということもございますので、それで再入国許可書の発給件数の統計はとっておらないという状況がございます。
○北村哲男君 そうすると、国籍別とかそういうものは当然ないというふうに理解します。それはそれで結構でございます。
   〔委員長退席、理事鈴木省吾君着席〕
 先ほどの大鷹局長の御答弁の中で、再入国許可書が「諸外国から有効な旅行文書として承認されるだろう」というふうに言っておられるとすれば、その根拠といいますか、あるいは政府は、諸外国政府が再入国許可書を旅行証明書あるいは旅券に近いものとしてみなすようにいかなる措置をとってこられたのか。単にそのまま各外国の入管が適当にそれぞれの立場で判断すればいいとおっしゃるのか、あるいはこれはこういうものですよと。例えば難民旅行証明書には、当然裏に旅券のかわりとなる旅行証明書ということが明記されているようですけれども、それと同じような何らかの措置をとってこられたかどうかということについての御説明をお願いします。
○政府委員(股野景親君) 再入国許可書につきましては、先ほど御説明申し上げましたように、本来日本の入国管理手続の中での文書としての位置づけをいたしております。したがって、日本法の中での位置づけでございますので、諸外国についてこれの一定の効果をあらかじめ想定しているということではなかったわけでございますが、ただ日本への再入国がこの文書によって保証されているということはこれは諸外国にとっても十分わかることでございますので、その観点から諸外国が有効な旅行文書として扱っている事例があると、こういうふうに考えているわけでございます。
 そこで、そもそもの再入国許可書の性質というものを考えますと、これはやはり日本の国内の手続のためのものであるという観点がございますので、あらかじめこれが諸外国において旅券に類似したものとして扱いを受けるような想定ということは必ずしもしていなかったわけでございます。その点で難民旅行証明書の方は別途の意義がございますので、そういう点については国際的な一つの慣行というものがございますが、再入国許可制度につきましては諸外国ではない国もございますし、なかなか再入国許可制度というものが世界一般で必ずしも十分なじみがないという面もございますので、そういう点にかんがみまして、この点は従来日本側の制度として運用させていただいてきておるという経緯がございます。
○北村哲男君 ただいまの御答弁はとても問題があると思うんですね。なじみのない制度であるがゆえに、しかし日本に生活の本拠を置いている人は、パスポートのある人もない人もいるんですけれども、特にない人なんかはそれがもう外国へ行ったら唯一のよりどころになると思うんです。そうすると、その再入国許可書というものをよりどころにしてそこでビザを取ったり外国を旅行したりなんかして、そして日本に帰ってくるということのたった一つのよりどころであるんですから、日本の国内の制度のものであるというふうにほっておかれるととても困るような事態が先ほどのように生ずる。ですから、外国を旅しているとき、外国にいるときはせめて旅券、旅行証明書と同じような意味を持つんですよということを積極的に示してあげるのが日本のやはりサービス精神とい
いますか、日本の態度ではないかと思うんですけれども、その点について今までなかったにしても、今後それを改善される、あるいはそれを通告される、あるいは何らかの表示をされるというおりもりはないんでしょうか。
○政府委員(股野景親君) なかなか難しい問題がございます。
 難民旅行証明書につきましては一つの国際的な通念というものがあり、そこでこれが日本としても難民旅行証明書を出すことについて、難民条約の規定も含めまして一つの基礎というものがございます。他方、再入国許可書の方は、これは入管法が基礎になってくるという観点で、入管法の想定している範囲を超えたことを再入国許可書に持たせ得るかという問題があるので、委員の御指摘の点について、そのままそれではこれに旅券と同様の効果を持たせるような措置を日本政府として講じていくことがどの程度できるか、私としてもなかなか確信が持てない点がございます。
 ただ、委員御指摘の、実際に海外旅行をされたときにいろいろ御不便があるという事例を御指摘になられましたので、そういうことについて再入国許可書というものが、ただいま申しました法の基礎という点は十分踏まえた上で、なお実際上の利便という観点で何か今の状況よりもさらに検討するという余地がないか、これはひとつ考えさせていただきたいと思います。
○説明員(宮下正明君) ただいま委員御指摘の点ですが、再入国許可書につきましては、昭和五十七年一月六日付の更新で再入国許可書の見本を各国政府に送付いたしまして、このような文書を我が国で発行しているということは通報済みでございます。
○北村哲男君 済みませんが、今ちょっとよく最後の方わからなかったんですが、どういうふうに言われたのかもう一回お願いします。
○説明員(宮下正明君) 昭和五十七年の一月六日付で我が方の在外公館あてに、各国政府に通報するようにという指示を出しまして、その際に再入国許可書の見本を政府に送付するということと、このような文書を我が国が発行しているということを通報してございます。
○北村哲男君 そういうふうに旅行者、外国へ行っている方々の便宜を図っていただくように、さらに積極的な施策をお願いしたいと思う次第です。
 ところで、それに関連してですけれども、通常の旅券「私どもが持っているパスポートは外務省の発行で、人的事項なんかも全部英語で書いてあってだれが見てもわかるようになっています。
   〔理事鈴木省吾君退席、委員長着席〕
ところが、再入国許可書の場合は法務省の発行で、本人に関する事柄はすべて日本語で書いてある。したがって本人が自分で、しかも手書きで、もし外国へ行く場合は記載事項の上に英語で記載して、諸外国ではそこへ行ってビザの申請をしたりなんかする。そうすると、やはり信用性とか見た目とかいう点でどうも国際的に通用する体裁を整えるというふうに見えない感じがあるわけで、その点についても今後の国際的な流れといいますか、どんどん多くの人が出ていくんでしょうから、諸外国に共通に通用するような体裁を整えていただくということが必要であると思うんですけれども、そしてその要望も強いと思われますが、その点運用改善をされるおつもりはありますでしょうか。
○政府委員(股野景親君) 先ほど来申し上げておりますように、再入国許可書の本来の目的が日本の出入国管理行政上の目的でございましたので、ただいま委員御指摘のような記載の仕方もしておったという経緯がございますが、他方同じく委員御指摘のように、実際上の海外における旅行文書としていろいろな意味合いが出てきている。実際に渡航される方がまたほかに自分の身分事項を証明するというものを持っておられない、例えば旅券を持っておられない、そういったような場合に海外旅行で御不便が生ずる、こういうことであろうかと思いますので、そういう点については、先ほど申し上げました実際的なことという観点から今後改善することについては検討をしてみたいと思います。
○北村哲男君 外務省が来ておられますのでもう一点だけちょっとお伺いしておきますが、これも先ほどの尹先生の報告文書にあったんですが、この先生がロンドンの日本領事館で、今の再入国許可書にはたった五ページしかビザ欄がないんですけれども、ヨーロッパへ行けば大体ちょっと旅行したければ十カ国ぐらいすぐあるんで、とても五ページじゃ足りない。それで、このビザ欄を使い果たしてしまって再入国許可書の再発行を領事館にお願いしたところ、再入国許可書は法務大臣の発行したもので、外務省の出先公館である領事館とは何ら関係ないので、必要があれば自分で法務大臣に手紙を書いて新しいのをもらったらどうだというふうな対応をされたというふうに苦情を言っておられます。結果的にはいろいろとやりとりがあって、領事館の方から東京にテレックスを打っていただいて、しかしそのために一カ月もかかってやっと再発行していただいたというふうなことがありますけれども、そういうことはあったのか。あるいは、あったとしたら今後はっきりとそういうことはしないというふうな徹底が図られているのか。その点についての御回答をお願いしたいと思います。
○説明員(宮下正明君) 委員御指摘の事実関係につきまして調査いたしましたところ、昭和六十二年の六月十五日、尹先生よりビザ取得上、家族三人分の再入国許可書の増補申請がございました。それでロンドン総領事館の方ではこれは増補し得ないということで、本省と協議いたしまして再入国許可書再発給願と写真を一応送付越したということでございます。それで当省では、同許可書を入管当局から協議の上取得して、七月七日付の更新で総領事館あてに送付したということでございます。したがいまして、少しは時間がかかっておりますが、二週間ちょっとぐらいのあれじゃないかと思います。
 御承知のとおり、再入国許可書の発行権限というのは法務大臣になっておりまして、現在のところ、在外公館には許可書を発行する権限は認められていない。したがいまして、通常の場合、再発給の申請があれば直接入管当局に行うことになっているわけでございますが、総領事館といたしましてはこういう事情を考慮して本省の方にこれを送付越したということだと承知しております。
○北村哲男君 その辺はスムーズにやっていただきたいと思うんですけれども、ところで法務省に対して、今のような不便も、今後特に五年の長期にわたるとなりますと大いにあり得ることですので、ビザ欄をふやすとか、あるいは在外公館に再入国許可書の所持者の便宜を最大眼に図るようにお願いをするとかということの方向、二つありましたね、まずビザ欄をふやすというようなことは考え得ることなんでしょうか。それからもう一つは、在外公館に対してスムーズにやるようにというふうにお願いすることができるか、その二つをお伺いします。
○政府委員(股野景親君) 今後の改善の方向でございますので、それぞれについてひとつ検討させていただきたいと思います。
○北村哲男君 それでは、今の点は改善をぜひやっていただきたいということ、それから今後もそれについて恐らくいろんな形でお願いに上がるだろうと思います。
 次の質問に移りますが、こういう例があります。ある在日韓国人の場合に、韓国の政治犯の人権救済のアピールのために国連のジュネーブ本部に渡航するために再入国許可書の交付を受けたという事例があります。その際、政府から誓約書を書くようにというふうに要請された。結局、日本及び友好国に対する非難をしないことを約束しますという一筆を入れて許可書をいただいたということがあるようですけれども、これは一九八三年、十年ぐらい前の話なんですが、今でもそういうことは行われているんでしょうか。まず、その点で今でも行われているのか、あるいは今後もや
るとすれば続けるのか、あるいはやめるのかという点についてお答えを願いたいと存じます。
○政府委員(股野景親君) 私どもの承知しております限りにおいては、このような誓約書といったようなものの取り扱いについては、これは当局が出すということを求めるというようなものではなくて、やはりそれぞれの渡航目的について、その趣旨を明らかにしていただくという疎明資料という観点で、御本人の方から御提出があったというようなことで承知しております。
 したがって、我々としてはそういう誓約書というようなものを、例えば当局側から義務として出していただくというような、そういう取り扱いはいたしておりません。我々としては、そういうことで臨んでおるという立場でございます。
○北村哲男君 ちょっと腑に落ちないんです。疎明資料として御提出願ったということになりますと、当然そこに指導があると思うんですけれども、こういうのを出しなさい、出さなければ疎明資料として不十分だからいけないんだよと言われれば、どんなにやさしく言ったってやはり強制になるんじゃないかと思うんです。もしそういうことがやられていないと言うんなら、もうそういう誓約書的なもの、これはまさに日本及び友好国に対する非難をしないということを約束した誓約書ですよね。それが疎明資料として要求されるということは、やはりどこかに強制的なものがあるよるな気がするんですが、あるいは例えば指導でもいいんですけれども、あると思うんですが、そういうことは個人の思想、信条にかかわる問題にもなりかねませんので、それは疎明資料とは峻別すべきだと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○政府委員(股野景親君) 御指摘の点、私どもとして渡航目的を明らかにしていくためのいろいろな資料は、これはぜひ出していただきたいと思うわけでございますが、そういう誓約書というようなもので出していただかなきゃならぬという立場で臨んできていないというふうに承知をいたしております。
 その意味で、この具体的な内容についてどういうことがあったかということで私どもなりに理解しておりますのは、今申し上げたような立場でこの問題については扱われた。少し前のことになりますのですが、しかし、そのときからも今でもそういう意味で何かそういうものを渡航の手続の中でひとつ出してもらわなきゃならぬものだという扱いでしてはいないということでございます。
○北村哲男君 よくわかりました。前のことなので、今後もしそういうことがあるならばそういう例を出して、こういうことはもうやめようということは言えるんじゃないかと思うんですが、ぜひそういうふうにしていただきたいと思います。
 それからもう一点、これもまた手続的なことなんですけれども、何か再入国許可書の発給の手続的なもので、申請のときから発給されるまでが相当かかるようで、通常の旅券申請と同じぐらいにスムーズにいかないんだろうかという要望も多くあるようなんですが、とても時間がかかると先ほどの尹先生のあれにもありましたですね。それはもちろん入管手続をする人の人数、定員という問題も絡んで、人が足りないと言われれば、いろいろほかの問題もあると思うんですけれども、スムーズにいくようなことは努力をしておられるのか、あるいはその辺をどういうふうに処理をされようとしているのかという点についてお答え願いたい思います。
○政府委員(股野景親君) 再入国許可書の発給を含めまして、いろいろな御申請をいただきましたときに、それが迅速に処理されるということが行政当局としては大事であると考えておりまして、各種の申請をいただきましたときにできる限り早急に処理するということで、関係の部門には常々指導をいたしております。委員ただいま御指摘いただいて恐縮でございますが、いろいろな意味で最近業務量が急増しておるという状況がありまして、やむを得ず多少の時間をちょうだいすることもございますが、基本は早期迅速処理でございます。
 ただ、再入国許可書の手続の中で、一部の方であろうと思いますが、例えば旅券を持っておられないというようなときに、旅券を持っておられないということについてその辺の事情を確認させていただくといったような手続が通常の手続以外に時間を多少とるというような面もございます。しかし、それも含めましてやはり早期処理が大事でございますから、これは委員御指摘のとおり、我我として早期処理ということで今後とも大いに努力をしていかなきゃならぬと思っております。
○北村哲男君 次に、再入国の今度は不許可の問題について少し伺っていきたいと存じます。
 ここ十年余り、在日韓国人あるいは朝鮮人の間で大きな問題になってきたのは、指紋押捺拒否者に対して再入国不許可の処分が行われたり、あるいは朝鮮総連の関係者が北朝鮮に行こうとしたときに不許可となったということが多く問題になったり、あるいは政治問題化したりしたことがあります。そして、この不許可の処分に対してさらに再入国不許可処分取り消し請求訴訟という裁判まで起こされるなど、社会的にも放置されない事態が引き起こされてきております。
 そこで次に、幾つかの統計的なことについてまず御質問していきたいと思うんですけれども、大体十年ぐらいの間に再入国を不許可とした件数を年次ごとに明らかにしていただきたいと存じます。
○政府委員(股野景親君) 私ども最近五年の数字を実は手元に今持っておりますので、五年の数字を申し上げさせていただきたいと思います。
 不許可の件数でございますが、これはすべての外国人に対する再入国の不許可になった件数でございます。過去五年でございますと、昭和六十一年が不許可が二十六件、それから昭和六十二年が不許可が三十件、そして昭和六十三年が不許可が十六件、そして平成元年が不許可が百五十九件、それから平成二年が不許可が三十一件、過去五年の不許可の件数はこういう動きになっております。
○北村哲男君 この中で不許可とされたその理由、何ゆえに不許可なのかという具体的な理由が挙げられるならば、多い順から挙げていただきたい。すなわち、いかなる場合に不許可になったのか。
 私が先ほど言いましたように、この中には特に元年など百五十九件と極端に多いようですけれども、これは指紋押捺を拒否した者に対する場合とか、総連幹部の人たちの北朝鮮への渡航ということが特殊の例として不許可になっているのかということについて、個別的に理由を挙げていただきたいと思います。
○政府委員(股野景親君) 実は、不許可になりました場合のその不許可になった理由ということに基づいての統計というのはつくっておりませんので、ただいま申し上げました統計の数字がどういうふうな不許可理由別の内訳になるのかという点についての残念ながら資料がございません。
 ただ私なりに、今委員御指摘の平成元年百五十九件というのが、その前年あるいはその一年後の平成二年に比べて異様に突出しておるということについて私自身も不思議に思いまして、これはどういうことだったんだろうと調べてみましたら、ある程度のことはわかりましたのでございます。それは、この年にいわゆる日本語学校等で勉強している就学生が再入国許可を求めてきた例がかなりございました。それを見てみますと、本来就学生でございますから学校にきちんと出て、そして日本語を勉強して、そして勉学に励んでいただくために来ているのに、学校の出席状況を見ますと甚だ悪い。そういうような方が再入国許可をあらかじめ得て海外に渡航するということは決していいことではない、そういう意味において、やはりこれは本来の日本にいる在留目的に沿った再入国許可申請と思えないということから、学校での勉強ということについての状況が悪いということでかなりの数の不許可がこの年に出たということがあったというふうに承知をいたしております。
 そのほかの事由については、先ほど申し上げましたとおり統計がございませんですが、一部に指紋押捺の拒否が理由になって不許可になった例がかつてあったということは、これは委員も御承知のとおりでございます。
○北村哲男君 五年間の統計で大体三十前後というか、三十以下ぐらいですけれども、その前もわかればよかったんですが、私の方でも通告をしていませんで失礼しました。これの三十件程度の中でも同じように理由を、今指紋押捺拒否の人も中にはあったというふうな言い方なんですけれども、これが主な事例になるのか、あるいは希有な例になるのかという点についてはお調べになったでしょうか。
○政府委員(股野景親君) 恐縮でございますが、その点については資料がございませんでした。
○北村哲男君 そうすると、今の統計からは特例永住者及び一般永住資格者に対して不許可とした件数とか、そういうふうな分類も難しいということになりますでしょうか。
○政府委員(股野景親君) 残念ながらそういうことになります。
○北村哲男君 そうすると、さらに統計的なことなんですが、再入国を不許可とされた者のうち再入国の許可を得ぬまま出国したというような場合があるかどうか、あるいはそれが統計的に出るのかどうか私もはっきりしないんですが、そういうことは統計的にわかるんでしょうか。
○政府委員(股野景親君) その点も実は統計的には資料はございません。
○北村哲男君 今最後に申しましたように、再入国を不許可とされた方々が再入国の許可を得ぬままやむを得ず出国してしまったという人の場合、これは非常に常識的なことになるんですが、再入国をしたいときには当然改めて入国の許可を得なくちゃならぬことは当たり前なんですけれども、韓国籍で旅券の発給を既に受けている人、あるいは韓国籍の人でも旅券を持っていない人、日本においてですね、民団系の方だと思うんですけれども、それが日本に永住しながら旅券の発給を拒否されている人もいると思うんですが、そういう人、あるいは朝鮮籍で旅券の発給を受けられない人というのは、それぞれ再度入国をする場合には手続などはどういう形になるのか御説明を願いたいと思います。
○政府委員(股野景親君) 基本的には日本におられる方々についてそれぞれの在留の資格がございます。それぞれの在留の資格というものを見た上で、再入国許可が海外に出ている間もその永住の資格が実質上継続されているという、そういう効果というものはあるわけでございますが、しかし、それじゃ個々に旅券を持っておられる方、あるいは旅券を持っておられない方等についてどうするかという点は、やはり法の定めるところで手続をきちんと踏んでいただけばそれに応じた再入国許可というものについての決定がなされる、こういう運用になっております。
○北村哲男君 それはケース・バイ・ケース、その人の個人の事情というふうにお伺いしてよろしいわけですね。
 今の問題に関連しますけれども、過去に指紋押捺拒否を理由に、まあ指紋不押捺を理由に再入国許可処分を受けて、その結果協定永住資格がなくなったという人のケースがございます。そして再度の在留資格を半年に短縮されてしまった。これは在日大韓キリスト教信徒の崔善愛さんという方の報告書によるわけですけれども、この方が今のようなケースになっておられます。この崔さんは、日本で生まれた在日韓国二世でもともと協定永住者であった人なんですけれども、今回の特例法によって特別永住許可を与えられる対象はなるかどうか、その辺はいかがなことになるんでしょうか。
○政府委員(股野景親君) 日本においての永住の資格というもののこの新しい法律における意味合いになってまいります。今度の法律は日本に継続して居住をしているということを要件にいたしております。そこで、その意味での一つの例えば永住資格者の場合になりますと、その永住資格というものが切れないで継続しているということが居住が継続していることになりますので、その点が一遍切れてしまった、そしていわゆる単純出国をして新規に日本に入国されたという場合でありますと、これは居住が継続されたとは見られませんのでこの特例法の対象とはならない、こういう立場でございます。
○北村哲男君 そうすると、これは法律ですから何も個々的な理由が指紋押捺拒否なのかあるいは別の理由なのかというふうに差があるわけじゃないと思うんですけれども、確認ですが、指紋押捺拒否あるいは指紋不押捺ということを理由としたのが今の崔さんの例なんですが、そのほかの理由によって再入国不許可処分を受けて永住権がなくなった人も崔さんの例と同じように考えていくことになるんでしょうか。
○政府委員(股野景親君) もと持っていた永住資格というものが一遍失われて、そして海外で生活されて新規にまた日本へ入国された、こういう場合ですとそれはその原因のいかんを問わずやはり居住が継続していないと考えられますので、この法案の対象者にはならないということでございます。
○北村哲男君 再入国許可の期限切れという例があります。韓国で政治犯として長期拘留されておられたという人の例も幾つかあるんですけれども、こういう場合はいかがなんでしょうか。
○政府委員(股野景親君) 先ほど申し上げましたように、再入国許可が有効であるということは日本での一つの在留の資格が継続している、こういう効果というふうに見てまいりますと、再入国の有効期間が切れてしまったということになりますと、そこで本邦における居住の法的な基礎も一遍切れたということになりますので、やはりその意味では今のようなケースになりますと、この特例法の対象にはならなくなってくると思います。
○北村哲男君 同じような質問になってしまうんですが、在留期間の更新が不許可になった、すなわち指紋の不押捺を理由に更新を拒否されたというふうな例もあるようですけれども、これはやはり同じということになるわけでしょうね。
○政府委員(股野景親君) 今委員の御指摘の意味は、指紋不押捺が理由で再入国許可が出なかった、出なかったにもかかわらず出国をされた、そして日本における在留の資格がなくなってしまったと。こういう場合でありますと、先ほど来申し上げているように、やはり居住が継続していないのでこの法案の対象にはならないということでございます。
○北村哲男君 それでは、私はこの程度にしておきたいと思います。
○千葉景子君 今回の法案につきましては、衆議院そして今同僚の北村委員からも多々質問がございましたので、できるだけ重なる部分がないように私の方も考慮しながら質問させていただきたいと思います。細かい点などでこれまでにも議論されている部分もあろうかと思いますが、その点については御容赦をいただきたいというふうに思います。
 まず最初に、この法律のつくり方というんでしょうか、その点についてお聞きをしたいというふうに思います。
 と申しますのは、この法案そのものが日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法ということでございます。これの経緯は、在日韓国人三世問題に関する協議、これを基本にいたしまして、それについて覚書が交わされ、それを基礎にしながらつくられた法律だということでございますので、この法律がそういう形になっているというのはわかりますが、ただ覚書あるいはその交渉そのものを法律にすればいいということではございません。日本としてのまた改めての判断ということが当然あってしかるべきだというふうに思うんですね。そういう意味では、今回は平和条約の発効で国籍を離脱したということから、在日韓国・朝鮮人そして台湾人という方々とその子孫というものが対象にな
りました。
 しかし、このいただいております資料から「国籍・出身地別外国人登録者数」、これを見ますと、韓国・朝鮮は六十八万人、そのうち特例法の対象者として六十万人余り、こういうことになります。その次に中国の方ですが、登録者数は十三万七千四百九十九名、今回は特例法の対象者としては五千七百六十名、これは台湾御出身の方ということで考えられるというふうに思います。それからあとフィリピンとかあるいはその他東南アジアの諸国などの出身の方もいらっしゃるわけなんですけれども、そのほか中国でも台湾出身以外とかあるいは東南アジアの御出身の方などで終戦前から日本に在留をされている、そういうような方もいらっしゃるかと思うんですが、そういうところは全く今回は対象にされないそういう法律になったわけです。
 この辺の平和条約の発効によって日本の国籍を離脱したというところに対象を限った理由、この法律をつくった背景といいますか、まずその点について御説明をいただきたいと思います。
○政府委員(股野景親君) この法律案について、先ほど法務大臣から提案理由の説明を申し上げたわけでございますが、その中でも申し上げました点になりますが、終戦前から日本に引き続き居住をして、そして昭和二十七年の日本国との平和条約の発効に基づいて日本の国籍を離脱した方々とその子孫の方々が在留しておられるこの方々の歴史的な経緯というもの、それからまた、その方々が日本の社会で有しておられる定住性というもの、こういうものを踏まえまして、こういう方たちが日本の社会秩序のもとでできる限り安定した生活を営むことができるようにすることが重要である、こういう観点に立っての法案になっております。
 したがいまして、ただいま御指摘のように、日本には現在いろいろな近隣の諸国からの方が在留をしておられます。その方たちの中には戦前から住んでおられる方も確かにおられますが、この法律はただいま申し上げましたように、終戦前から本邦に居住しておって、かつ日本国籍を有していたという点が一つの重要なポイントになっております。そして、かつこれらの方々は、平和条約の発効の際に御本人がどういうことを希望しておられるかというその希望を表明する機会というものが与えられないままに日本の国籍を離脱するということが起こった、そういう歴史的経緯がある。そこで、これらの方々についてはこの法案の対象として特別に安定した法的地位というものを設けさせていただくということでございます。
 そこで、それと違う背景を有せられる方については、これはこの法案の対象外とさせていただく。ただいま申し上げましたように、平和条約の発効に伴う国籍離脱というその歴史的経緯をこの法律の一つの基礎に据えておりますので、同じような日本におられる近隣のアジア諸国からの外国人の方でも、そこには今の点で該当するかしないかという違いは生じてくるわけでございます。
○千葉景子君 この法案としての御説明というのはよくわかります。しかしながら、この問題はそもそも、やはり日本の戦争に対するあるいは侵略などに対するはっきりとした反省の上に立って本来ならば組み立てられるべき法律ではないかというふうに思います。そのきっかけといたしましては、確かに在日韓国人の三世問題というところから端を発しておりますけれども、やはりこの際はきちっとした、戦後私たちが怠ってきた戦争への反省、こういうところに立って本来ならば法案をつくっていただきたかったという気がするわけです。
 そう考えますと、確かに日本国籍を離脱した、国籍を選択の余地なく離脱させられたというところに歴史的な背景があるというお話でございましたけれども、むしろその歴史的背景ということから考えますと、過去の日本の植民地支配あるいは侵略戦争、こういうことがやはり本来の歴史的な背景、経緯であろうというふうに思うわけです。そうなりますと、日本の国籍を離脱したか否かにかかわらず、やはり日本に在日を余儀なくされてきたという方は、この国籍を離脱した方以外の部分でも相当数いらっしゃるのではないだろうか、私はそんな気がいたします。
 そこでちょっとお尋ねしたいんですけれども、先ほど申しました中国出身の方で外国人登録をしていらっしゃる十三万七千四百九十九名、この皆さんは多分台湾出身の方が五千七百六十名余り、その他にも留学生あるいは就学生、研修生、そういう方の数というのは今相当数に上っているだろうというふうに思います。しかしながら、戦前、終戦前から日本に来られてそのまま日本に定住をされているというような方も多分含まれている数であろうというふうに思うんですけれども、その辺は調査などはなさっていらっしゃるのでしょうか。あるいはそういう数などは把握なさっていらっしゃいますか。
○政府委員(股野景親君) なかなか今の御指摘の点、私どももいろいろ考えたところがございますのですが、今先生が御指摘になりました統計、これは最近の、たしか平成元年の十二月末でございますね、その時点で外国人登録をしていた方の数になりますので、御指摘のとおり日本に来ておられる中国からの留学生の方、研修生の方等がたくさん含まれております。
 さて、それではその中に今委員御指摘の戦前からずっと日本に居住して、そして今日ずっとその居住が続いておられる中国の方が数としてどのくらい把握できるかという点なんでございますが、私どもいろいろ努力してみたのでございますが、残念ながらその数というものは正確にはやはりちょっとつかみにくいので、この点について私どもとしてもこのぐらいの数がおられるということは統計上ちょっと申し上げにくいということがございます。というのは、登録の統計のとり方が、いろいろな在留資格という点ではわかるわけでございますが、その在留資格を取るに至られた経緯については、これは統計の上で出てまいりませんので、なかなかそこの点が難しいということがございます。ただ、今委員御指摘のそういう方たちは日本に長年居住もしておられますので、そのほとんどの方は永住資格を既に何らかの形でお持ちではないかと推定いたします。
○千葉景子君 その永住資格は現在の中で持たれているという方もいらっしゃるかもしれません。これは衆議院の参考人の皆さんからも御指摘や御意見が出たというふうに私も聞いたところなんでございますけれども、やはり中国出身の方の中にはいわゆる旧満州の御出身の方というのが相当数いらっしゃる。旧満州から来日をして、そして出入りは私も直接に私自身が調査をできませんのでわかりませんけれども、日本に定住をされているという方が数万人はいらっしゃるのではないだろうか、こういうふうにも言われております。
 こういうところに、先ほど言ったように歴史的な経緯、背景あるいは定住性というものも日本が今本拠地になっている、こういうことなども含めて考えますと、全くこの法律から除外視する、あるいはそういう皆さんについて何らかの対応をとらないということについては大変私も遺憾な部分ではなかろうかというふうに思います。さらには、例えばそのほかにも東南アジア諸国からの方もいらっしゃるかもしれませんし、そういう部分についてはこの法律では含まれてはおりませんけれども、一体どういうふうにお考えなのか、あるいは今後何らかの御検討なりを考えていらっしゃるのか、その辺ございましたらお聞かせいただきたいと思います。
○政府委員(股野景親君) ただいま委員の御指摘の方々についての統計上の実態というものを私ども具体的にはつかみ得ないでおるわけでございますが、相当の数の方がおられるだろうということは、先ほどのかなりの方が既に永住資格を持っておられるであろうということからも想像できるわけでございます。それにつきまして私どもなりにこの法律をつくる過程でいろいろ考えておるわけでございますが、今委員御指摘のように、日本に長いこともう居住を続けておられる、そして日本
の社会での定住性というものも大変高い、こういう方々について既に一般入管法上の永住資格を持っておられるということもおありだろうと思いますが、それはそれなりに法務省当局としても従来からそういう方たちの日本における居住の実績あるいは居住歴と言っていいでしょうか、そういうものを十分勘案して、こういう方たちの日本の生活が安定的なものであるように取り計らうべきである、こういう考え方に立ってこれまでも臨んでまいりました。
 したがって、この新しい法律の対象にはなりませんが、一般入管法上の扱いにおいては、今申し上げましたように、これまでのいろいろな過去の御縁というもの、そしてまた日本で今も定住をしておられて日本での社会に十分なじんでおられる方々、こういう方々に対しては今後の一般入管法上の扱いの上でも十分配慮するべきだと思っておりますので、繰り返しになりますが、こういう方方についても日本の社会における生活が安定的なものとして営めるように、この法律の対象にはなりませんが、一般入管法上の措置については十分努力し、配慮すべきものと考えております。
○千葉景子君 私は、ちょっと根本的にそこは違うんじゃないかというふうに思うんです。
 というのは、一般入管法上でできるだけ配慮をしてというお言葉はよくわかります。しかし、先ほど申しましたように、確かに朝鮮半島については日本の国籍をむしろ強要してきた。しかしながら、日本の支配あるいは侵略、そういうことの背景を考えますと、例えば朝鮮半島であろうがあるいは旧満州なりにおいても同じ歴史的経緯を持っている。そういうところから日本への来日を余儀なくされたというような方々については、やはり同じ歴史的な背景や反省の上で同等に考えていくべきではなかろうかというふうに思うんです。
 確かに、一搬入管法上配慮をすると言いますけれども、今回の法律ではそこから一歩大きく踏み出して退去強制あるいは再入国などの問題について、やはり一般の法律とは違った特別な考え方に立って法律がつくられたわけですね。だとすれば、確かに一般的には配慮をするということでありましても、やはりもう一回その点を基本的な歴史的な認識に立って検討をいただく、あるいは考えていただくという姿勢が必要なんではなかろうかというふうに思います。その点について法務大臣、そういうこれまでの反省の意も含めてお考えをぜひ聞かせていただきたいと思います。
○国務大臣(左藤恵君) 日本の歴史の中におきましての、今お話がありました大陸、朝鮮半島、そういったところにおきますいろんな戦前のことにつきましての反省というものは、どの地域に対しても私は同じような反省をしなければならないものであろう、このように思います。
 ただ、今回の法律のことにつきまして、日本国との平和条約の発効とこういうものが一つはありますために、そのときにたまたま日本国籍を離脱されたり、それからその子孫として本邦で出生し、引き続いて本邦に在留する者、そういう方々というのを何かまとめてやりましたときに、日本国籍の離脱というものを伴わない方とは、非常に微妙なところがあろうかとも思いますけれども、やはり取り扱いは若干異なっておるんではなかろうか。そういう点もありますので、本人の意思というものと全く別に国籍の離脱をさせられた方々とその子孫の方々を対象とする今回の法律とは、やはりその法律の適用は違うようにはするわけでありますけれども、今お話がございましたように、その取り扱いにおいては在留するに至った経緯とか在留状況とかほとんど変わらないというような点も考慮して、これから法的地位を確保するための方法としては、現在御審議いただいている法律では手当てをすることができなくても、その考え方については今後とも十分同じ考えで配慮していかなければならない、私はこのように考えておるところでございます。
○千葉景子君 それでは、次の問題点に入らせていただきたいと思います。
 これももう既に聞かれている部分かというふうに思うんですけれども、今回の法案で退去強制事由ですね、これに一定の限定がなされたということでございます。しかしながら、この内容を見ますと、本当にどういう基本的な考え方に立ってこの退去強制事由というのが定められたのかというのがいまひとつよくわからない。
 といいますのは、基本的には日本に本拠を持ち、そこがもう自分の生活の原点だというようなことから、どうしてもこれは日本の国としてやむを得ないという意味でその退去強制事由が定められているのか、あるいはこれまでのものに若干特別な意味も含めて少し絞りをかけようという考え方なのか、そこの点をもう一回明確にさせていただきたいというふうに思います。
○政府委員(股野景親君) この退去強制事由につきまして、現在の法案は極めて限定した内容になっております。その極めて限定した理由は、これはこの法律で特別永住者としての資格を設ける方方ではあるけれども、しかし万やむを得ないと認められるような事由があるときには、これは退去強制手続の対象とせざるを得ない、こういう考え方でございますので、言いかえますと、真にやむを得ない必要最小限の事由に限定した、こういう考え方でございます。
○千葉景子君 その考えの御趣旨はわかりました。それに基づいてこの退去強制事由が定められているということなんですが、しかし今回定められている中でも、外国の元首等に対する犯罪行為により禁錮以上の刑に処せられた者、これは後に条件が付せられておりますけれども、これは外国の元首等に対する何とか犯というのはあるわけではありませんで、外国の元首等に対する犯罪行為というのはかなりいろいろなケースが考えられる。あるいは「無期又は七年を超える懲役又は禁錮に処せられた者」、これもその後に条件はつきますけれども、まず基本的な範囲としては相当に広い犯罪類型に入るわけですね。そういう意味では、これは極めて限定なさったということですけれども、私は極めて限定されてないように思うんですね。
 例えば、外国の元首等に対する犯罪行為というのは一体どういうことが予想されるのか。あるいは無期または七年を超える懲役、禁錮ということになりますと相当広いんですけれども、例えばこれまで退去強制などに関連をした事件などで大体具体的にどういうことがここに該当してくるというふうに考えられますか。
○政府委員(股野景親君) まず、この新しい法律案の九条の一項第三号で「外国の元首、外交使節又はその公館に対する犯罪行為」ということが示してございますが、これは私どもも基本的に最初に申し上げましたように、真にやむを得ない事由という観点で考えますと、基本的には最初の第一号でもございますが、内乱、外患というようなものが示されております。すなわち、日本の国家としての基本を害するようなそういうものという点を一つの重要な要素として考えておるわけでございまして、その場合に外国の元首、外交使節あるいはその公館に対する犯罪行為というものは、その態様によりましてその国――その対象となったその元首あるいは外交使節等の本国でございますが、本国とそれから日本との外交関係というものに大変な緊張関係を、重大な支障を生ずる、こういったようなことが起こってまいりますと、これは日本の国のまさに重大な利益というものを害する行為だ、こういう場合が考え得るわけでございます。
 したがって、そういう場合というのは極めてこれは限定された場合であり、通常においてそういうことというのは想定しにくいわけでございますが、しかし事外交、国際関係でございますと、そういう場合も法律上は想定をしておく必要があるだろうという観点で、ただいまのようなところを取り上げさせていただいているわけでございます。同じように、国家としての基本が害されるようなそういう犯罪という観点で、同じこの第九条の一項第四号に「無期又は七年を超える懲役又は禁錮に処せられた者で、法務大臣においてその犯
罪行為により日本国の重大な利益が害されたと認定したもの」というものも同じ考え方になろうかと思います。そういう意味で、この限定というものも今の国家についての利益というものを基本に据えた、したがって事例としてはもう極めて限定的なものになるということでございます。
 それで、従来の、この法律ができますに先立ちまして、これと類似の規定が日韓法的地位協定で定められ、その結果としてその法的地位協定の実施に伴うところの出入国管理特別法がございまして、その中での規定で「無期又は七年をこえる懲役又は禁錮に処せられた者」が退去強制事由になっているという例がございまして、これは今のこの新しい法案ほどの絞りはかかっておりませんが、一般入管法に比べればぐっと絞りをかけた内容になっております。
 そこで、それの実際上の運用を見ておりますと、ただいま申し上げましたその項目で、日韓特別法の中に規定されている規定で実際に退去強制を行った者の事例というものを見てみますと、日韓特別法施行後でございますが、これまでに実際に退去強制をされた者というものは十九名という数になっております。その中身を見ますと、殺人、強盗致傷、強盗殺人未遂あるいは強盗、覚せい済取締法違反等、いろいろございますのですが、いずれも法の規定に従って懲役七年を超える有期懲役に処せられた者でございまして、最近の例として、例えば殺人で懲役十五年というものに処せられた者、あるいは覚せい剤取締法違反等で懲役十年に処せられた者というものがあるということでございます。したがって、この新しい特例法におきます事由は、従来の日韓特別法よりもさらに厳しく事由は限定をいたしております。
○千葉景子君 この第三号ですが、外国の元首等、この犯罪につきましては「禁錮以上の刑に処せられた者」ということで、執行猶予の場合も含んでいると思いますけれども、これはその後の法務大臣の裁量といいますか、その部分で何らか考慮されたりするということはあり得るわけですか。
○説明員(本間達三君) 今の御質問の「刑に処せられた」ということの意味でございますが、執行猶予が付せられた場合はどうかということでございますけれども、これもまた「刑に処せられた」一つの場合でございますが、それは含むということになろうかと思います。
 それから、後の法務大臣の方で何か考慮されるのかというような御質問でございましたけれども、恐らくこの退去強制手続の中で法務大臣に対して異議を申し立てる、その手続中において法務大臣が再度その異議申し立てについて判断をして、場合によっては在留が特別に許可される場合があるのかという御質問だとすれば、法律の道といたしましてはそういう道も開けているというふうに考えております。
○千葉景子君 幾つかの質問をさせていただきましたけれども、最終的には「法務大臣においてその犯罪行為により日本国の外交上の重大な利益が害されたと認定したもの」という絞り方がされるわけですね。これは「外交上の重大な利益が害された」と認定されるかどうか、そこは後は法務大臣の御裁定ということになるんだろうと思いますけれども、ここはどういう基準といいますか、この「外交上の重大な利益が害された」というところについては相当な厳格な基準とかあるいは考え方ということを持っていただかなければいけないというふうに思いますが、その点についてはいかがでしょうか。
○説明員(本間達三君) 法務大臣が認定するに当たりましては、当然のことでございますけれども、当該犯罪行為がどういう目的で、どういう態様で行われたのか、またその結果としてどういう結果が生じたのかということはもちろん当然考慮に入れなければなりませんし、また最も重要な点ではございますけれども、その犯罪によっていわゆる国家の機能といいますか、最もこれは国家の重大な要素でございますけれども、そういったものが影響を受けたのか、支障を及ぼしたのかといった影響の点、さらにその犯罪を理由にいたしまして諸外国からどのような反応があったかといった点、あるいは我が国内の政治、経済全般に対してどういう影響があったか、諸外国がそれの行為によってどういう反応を示し、我が国に対してどのような不利益な行動を起こしたか、そういった総合判断のもとに国の重大な利益が害されたかどうかということをやはり判断していかなければいけないんではないかというふうに考えております。
○千葉景子君 午前中はここで終わります。
○委員長(矢原秀男君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時まで休憩いたします。
   午前十一時五十九分休憩
     ─────・─────
   午後一時開会
○委員長(矢原秀男君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法案を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○千葉景子君 午前に引き続きましてよろしくお願いいたします。
 まず、指紋押捺制度につきましてお伺いをさせていただきたいと思います。
 これは、日韓の交渉によりまして、この指紋押捺制度についての廃止ということが合意をされているところでございますが、これについてはそれにかわる代替の手段、制度、これを検討するということになっているわけでございます。その検討状況、それから大体その目途、どのように考えられていらっしゃいますか、まずお尋ねしたいと思います。
○政府委員(股野景親君) 指紋押捺問題につきましては、委員御指摘のとおり、本年の一月、海部総理が訪韓をされました際に日韓両国間で確認をされた事項がございまして、それが両国の外務大臣が署名をした覚書に記されております。その中で、指紋押捺の問題につきまして、その代替手段というものを開発していくということを日本政府として明言をいたしておるわけでございます。
 この指紋押捺にかわる手段というものは、本来指紋押捺がその本人が本人であるということを特定するための手段として意味を持っておるということにかんがみまして、指紋押捺にかわる手段もそれと同様の意味合いを持つものとして考えているわけでございますが、指紋押捺よりも当該外国人にとって心理的負担の軽いものということについて、今具体的な手段を検討しておる状況でございます。
 現状はまだこの代替手段についての開発の途中段階でございますが、現在その途中段階の状況を申し上げますと、指紋押捺にかわる具体的な手段として、写真、それから署名及び外国人登録に家族事項というものを加味するということ、これを中心に検討をいたしております。
 何分にもまだ開発途中でございますので中途の段階でございますが、写真について申し上げますと、本人であるかどうかということをきちんと確認できるような鮮明な画像が得られるような方法ということを中心に、今合理的な方策というものを検討中でございます。
 それから、署名も同じく本人を特定するための一つの手段と考えているわけでございますが、これについても具体的な方式がいろいろまだ検討すべき事項がございまして、今は多角的な検討をさらに進めているところでございます。
 第三番目の外国人登録に家族事項を加味するということにつきましては、例えば父母、配偶者、それから子というような人の氏名、それから生年月日、続柄、こういうものを登録原票の上で記載をしていく、こういうことで検討をしているわけでございます。
 したがって、今の状況でまだ具体策は固まっておりませんけれども、先ほど申し上げました日韓両国間の本年一月確認されました事項を記した覚書の内容に基づきまして、ことしの一月の時点か
ら数えて今後二年以内に指紋押捺にかわる措置が実施できるように所要の改正法案を次期の通常国会に提出させていただくということを一つの目標といたしまして、現在その開発を鋭意進めているところでございます。
○千葉景子君 二年以内に実施ということでございますので、早急な検討が必要になろうというふうに思います。
 ただ、これは廃止ということが決まりまして、そして二年以内に実施をするということですので、そのいわば二年という間、これについては、廃止は決まったけれども次の手段がないという非常に中途半端な時期といってもいいわけでございます。これについては、もう既に近い将来、指紋押捺というのが廃止をされるということが見えているにもかかわらず、この間というのは場合によると指紋押捺を強制されるといいますか、そこの時期にかかる人が出てくるわけですね。しかも、この間に押捺をさせられるという人は十六歳という青少年という方も多いわけでございます。そうなりますと、できる限り早く代替手段を考えるにしましても、それまでの間何らかの措置を講ずる必要はないのだろうか、こういうことを私はどうしても考えるところなんですね。
 特に、これまでも指紋押捺につきましてはさまざまな反対の意見もあり、あるいはそれによる心理的な非常に圧迫感あるいは差別感、さまざまなものがございました。それがまあ何とか今回の交渉によりまして廃止をされるというめどがつき、それが目の前に来ている、そういうときに新しくまた指紋を押さなければいけない。それが例えば一年ずれたらそうしなくても済むというようなところにかかる方もいらっしゃるわけで、そういうことを考えますと、ここの間何らかの方策を講じなければいけないのではないかと思いますが、法務省としてはそこはどう考えていらっしゃいますか。
○政府委員(股野景親君) 御指摘の点、これは在日韓国人の方々についてこの問題を韓国側との間でいろいろな話し合いを積み重ねてまいりました。その際に二年という日本側の一つの基本方針を示すに関連いたしまして、委員御指摘のように、非常に近い将来にその時期が来ている。それではそれまでの間どうするかという問題についてもいろいろな角度から日本政府部内でも検討いたしましたし、また韓国側との間での話し合いでもその問題が提起された経緯がございます。その中におきまして、我々関係者として非常に難しい問題としていろいろな角度から検討いたしましたんですが、基本的に指紋押捺が本人を特定するための方策としての意味があるので、それにかわる措置というものがないと本人を特定するということについての大きな問題を生ずるという状況があるので、それがすなわち指紋押捺にかわる手段というものが開発されてないままに何らかの中間的なことを考えるということがやはり難しいということの結論に達した次第でございます。
 そこで、政府としては、本来の指紋押捺にかわる措置をできる限り早く開発して、そしてこれを実施するということによってこの問題の解決を図りたい、こういうことにいたしましたので、それまでの間に、先生御指摘のように、確かに一定年齢に達した方が指紋押捺をしていただくという法的な規定がございますので、それにつきましては法律がこれは現に有効な法律でございますので、その趣旨をよく御理解を願って、その法律の趣旨は趣旨として尊重していただくように政府としても関係方面の十分な御理解をいただく、こういうことで対処いたしております。その意味で、いろいろ私どももこの点については一生懸命努力をし考えたのでございますが、結論はただいま申し上げたようなことになっております。
 そこで、この問題について、指紋押捺について問題を感ぜられる方もあるということは私どもも承知しておりますが、そういう方に指紋押捺というものについての現行法がやはり有効な法律としてあるという点にかんがみての法の趣旨ということに十分理解を願うように、関係方面に対する法務省当局としての指導ということも重視するという意味での法の趣旨の理解ということについて力点を置いた取り組み方で当面臨んでまいるということにいたしております。
○千葉景子君 確かに現在の法がそのまま生きているわけですので、そのお答えというのはわからないではございません。ただ、同一性の確認の手段といいますと、今代替手段として検討なさっているということでございますけれども、その中には写真とかあるいは署名であるとか、そういうことも含めて検討が加えられているということでございます。一般の私たちの今行われている社会の中のさまざまな制度の中でも、例えば車の免許証ですね、これなども写真を使用して一定の同一性の確認をしている、こういうこともあるわけで、これも決してそれで困ったというそういうことも別に聞くことはないわけでございます。
 そういう意味では、やはりもう廃止が決まった二年間というのは、例えばそういう写真等での判断をするとかさまざまな手段というのはやろうと思えばできることではなかろうかというふうに思うんですね。全く指紋は押さない、何にもしないという意味ではありませんで、やはり何らかの一定の制度、あるいは手段を講じながら、これまでそれだけ本当に心理的負担になり、いろいろな屈辱的な思いもしてきた皆さんに少しでもそれを早く解消するという手段をこの間講ずることができないのだろうか。特に十六歳という若い皆さんにせっかく希望といいますか明るい道が開けてきたわけですから、それを何とか早く適用できるようなそういう道を開いていくということが、やはり人道的にも、あるいは人権保護の面からも必要なことではなかろうかというふうに思いますが、その点で何らか一歩踏み込むということはできないでしょうか。
○政府委員(股野景親君) 御指摘の点も私ども内部で本当に真剣に検討いたしました。現在の法律が有効であるので、もしこれについて例えば二年の間の期間に何らかの措置をとるといたしますと、基本的にはやはり法改正が必要になってまいります。その法改正の措置をとるというために、この指紋押捺にかわるものが何らかそこに一つの代替措置として考えられなきゃならないということが基本的にまた議論の中で出てまいりまして、結論的には、この法改正をするということであるとすれば、これは本来の、ことしの一月に日本と韓国の間で確認されたこの方針というものに基づいて努力を進めていくことが基本的に一番実際的な対処方針であろうという結論になったわけでございます。したがって、これはできるだけ早くとにかく開発を急ぐということに最大限努力をする、そういう意味で現在その努力を急いでおります。
 また、その結果を法律案の形で国会にお諮りをさせていただきたいと存じておりますので、もうしばらくの間でございますので、その間についてぜひ今ある現在の法律は法律として尊重されるよう関係方面の御理解をいただきたいと考えておるところでございます。
○千葉景子君 そうなりますと、少なくともその代替の手段がない、現在の法律を施行せざるを得ないということでございますれば、例えば指紋押捺をどうしてもこれは私はできないと拒否をするような方について、できる限りのやはりその心情なり、その思いというものを受けとめていただく必要があるだろうというふうに思います。
 そこで、私はこの間少なくとも指紋押捺拒否が出た場合には、いろいろな説得などはきっとされるのかとは思いますけれども、できる限り告発などがされませんように、そこをやはり法務省としてもきちっと配慮するような指導というものを各自治体などになさるべきではなかろうかというふうに思いますが、その点についてはいかがでしょう。
○政府委員(股野景親君) 御指摘のこの関係者の心理的な負担ということを考えていくということが、現在の指紋押捺にかわる手段の開発の中の一つの要素でございます。他方、法は法としてこれ
は守っていただく必要がある、こういう観点から、心情的に指紋押捺についてどうしてもこれに応ずることに納得がいかないという方々について、法務省としてはいろいろな事情を考えた上で基本的には法の趣旨を理解していただくというその面での対処の仕方ということに力点を置いていくということで臨んでおる次第でございます。
○千葉景子君 それでは、少なくともそういう指紋押捺拒否などがあったときに、法務省として例えば市町村などに対してそういう場合には告発をしなさいとかすべきであるとか、特別にそういうことをなさるというようなことはありませんでしょうね。いかがでしょう。
○政府委員(股野景親君) ただいま申し上げましたとおりでございまして、市区町村側に対しましても法の趣旨について指導をしていただくということに力点を置いて法務省としても指導をしているということでございます。
○千葉景子君 警察庁にお伺いをさせていただきたいんですけれども、この指紋押捺が廃止をされるまでの間、確かに現在の法が生きておりますので、全くその法を無視するということは警察当局としてもできないだろうという気はしますけれども、例えば指紋押捺拒否に関する捜査などについてどんな態度で臨まれようとしているか、警察庁の方のお考えを聞かせていただきたいと思います。
○説明員(漆間巌君) さきに行われました日韓首脳会談の際の覚書に定められました対処方針、これを踏まえまして個々の事案の内容に従いまして今後とも適切に対応してまいりたいというふうに考えております。
○千葉景子君 多分今のお言葉の行間ににじみ出ているものをぜひ配慮いただきたいというふうに思うところでございます。
 さて、この指紋の問題は今後早急に代替手段を開発するということでございますが、一つちょっと今大きな問題になっております子供の権利条約、そことの関連で問題がないのかどうかお尋ねをしたいというふうに思います。
 まず、子供の権利条約、この間いろいろな議論がなされているところでございますけれども、外務省に来ていただいていると思いますが、この子供の権利条約、一体今どんな検討状況になっているのか、そして今後の批准などの時期についてめどがつかれているのか、そのあたりを外務省にお尋ねさせていただきたいと思います。
○説明員(角崎利夫君) お答え申し上げます。
 今お尋ねの児童の権利条約でございますが、現在できるだけ早期に締結できるように最大限の努力を行っているところでございます。
 具体的な作業といたしましては、本件条約の各条文の定める権利義務の内容と我が国国内法令との関係につきまして引き続き詳細な検討を行っているところでございまして、国内法の改正の必要性の有無につきましても現在検討中でございます。
○千葉景子君 この子供の権利条約については、私たちも検討させていただいている中ではかなり国内法の改正等の準備も必要なのではなかろうかというふうに思うんですが、これまで余り子供の権利条約批准に向けて法改正などは御提起をいただいていないように思われますけれども、ここはいかがなんでしょうか。法改正などなくて十分この権利条約批准に向けていけるとそう考えていらっしゃるのか、あるいは一定の法改正などを今検討、準備をなさっているのか、そのあたりはいかがでしょうか。
○説明員(角崎利夫君) 法改正の必要性の有無につきまして、関係各省とともに現在検討しておる最中でございまして、今の段階で確定的なことを申し上げる段階ではございません。
○千葉景子君 それでは、この指紋などにかかわる部分で、私も一点これは法改正なり検討していただく必要があろうかと思う部分なんですが、権利条約の二条、差別の禁止を規定している部分でございます。これは子供についてさまざまな社会的な事由によって差別をしてはならないということが規定をされております。
 そこの中で、外国人登録法による指紋の押捺、これは現在では十六歳になると指紋押捺が強制をされるということになるんですが、これは国内の同じ年齢の青少年、子供と言っていいんでしょうか、と比較をいたしまして、この平等原則あるいは差別禁止の規定にやはり違反するおそれがあるんではないかという思いがいたします。その点については一体そう考えられているのか、あるいはそうではないということで検討されているのか、この点についてお考えをお聞かせいただきたいと思います。
○政府委員(股野景親君) ただいま委員御指摘の児童の権利に関する条約の第二条第一項に一定の事由を掲げまして、そういう事由等にかかわらずいかなる差別もなしにこの条約に掲げる権利を尊重すると、こういう内容になっております。
 そこに掲げてある事由に、例えば人種であるとか皮膚の色とか性、言語、宗教、政治的意見と例示がございます。こういうようなものについての差別の取り扱いを禁ずるということがこの二条の趣旨であろうと考えておりますが、御指摘の外国人登録法でのこの指紋押捺に関する扱いを含めまして、外国人登録法の規定は今御指摘の第二条のこの条項で取り上げているような事柄で差異を生ずるというようなそういう規定は私どもないという立場でございますので、したがってこの児童の権利に関する条約との関係で外国人登録法の条項が抵触するようなことはない、こういうふうに考えております。
○千葉景子君 これは必ずしも私と意見を同じくするというお答えではないわけでございますが、これは非常に指摘をされている部分でもございます。また機会を見て改めて話もさせていただきたいというふうに思いますが、これは国籍によって取り扱いを異にするという意味では、やはりこの差別条項、平等原則というところに私は抵触するおそれが十分あるのではないかというふうに思います。今後のまた御検討をお願いしたいというふうに思います。
 さて、この外国人登録法、その間生きているわけでございますけれども、常時携帯につきましても一応登録法がこの間そのまま生きているということになりますと、常時携帯の義務、それに関する刑事罰というのもそのまま残っているということになります。しかしながら、この点についても今後やはりこの交渉の経過あるいはこれまでの経緯等を考えまして、十分な配慮をいただきたいと思います。特に覚書におきましても、常時携帯にかわる解決策というのも検討すべきことになっております。これについては一体どういう検討がなされているのか、ございましたらお答えをいただきたいと思います。
○政府委員(股野景親君) ただいま御指摘の今年一月の日韓の両国間で確認をされました事項を盛り込んだ覚書の中で、「外国人登録証の携帯制度については、運用の在り方も含め適切な解決策について引き続き検討する。同制度の運用については、今後とも、在日韓国人の立場に配慮した、常識的かつ弾力的な運用をより徹底するよう努力する。」こういう形で両国間の確認がなされておるわけでございまして、これが現在私どもの入国管理局としてこの問題について検討を行っている基本的な立場でございます。
 したがいまして、今後の検討の中に、まさにその運用のあり方も含めた検討を行っておりますが、そのためには広く関係の情報というものもしっかり把握する必要がございますので、この問題についての諸外国の制度の状況というようなものも踏まえ、また今後のこの制度の日本におけるあり方ということについても考えるというようなことも含めまして、非常に多角的な見地から現在検討を続けているという状況でございます。
 そしてその際に、ただいま申し上げましたように、運用についても従来から既に常識的かつ弾力的な運用ということに心がけてまいったわけでございますが、運用面での今後のそのような常識的かつ弾力的な運用の一層の徹底ということも、今
後の検討策とあわせて努力をしていかなければならぬ点だろうと考えております。
○千葉景子君 これは従来からも指摘をされているところでございまして、常時携帯というのは極めて一般の社会生活にはふさわしくないといいますか、かけ離れた現状にあるわけでございます。
 要するに、いざというときに、私はこういう者で、ちゃんとこういうものを持っていますよということがわかればいいわけでして、それを本当に隣へ行くときも持っていかなければいけないというようなことは極めて不合理なんですね。これは先ほどの御答弁にありましたように、常識的かつ弾力的な運用というようなところで当然配慮はされていることと思いますけれども、やはり日本の制度でも別に住民登録票が備わっていれば、いざというときに使えるというようなこともあわせて考えますと、むしろ早急にこの辺は解決策というのを打ち出していただく、それも早く考えていただくという必要があるんじゃないかと思うんです。
 そういう意味では、今検討されているということでございますけれども、これもずっと検討していただくだけでは困るわけで、できるだけ早く何らかの形で法改正あるいは実施をしていくような方向づけをしていただきたいと思いますが、その辺のめどというのはございますか。
○政府委員(股野景親君) この外国人登録証の携帯問題につきましては、従来もいろいろ御議論いただいております。
 基本的に実は、外国人登録証の携帯ということについて、これはその外国人の方が即時的に御自分の身分関係というものを明らかにする手段としては、なかなかその携帯ということにかわっての効果的な措置というものがそう簡単には出てこない。非常に手軽なもので、かつすぐに身分関係が把握できるという点での効率という点はなかなかやはり大きなものがございます。他方また、今我我入国管理行政を預かる者といたしまして、所定の法律上認められた日本における在留の期間というものを不法に超えて、不法残留する外国人の数が最近非常にふえている。その意味での対処方針ということもひとつ考えなきゃいかぬ。こういうようないろいろ難しい問題ございます。
 他方、先般来、この問題についていろいろ御議論いただいている中で、この常時携帯ということが当該外国人の方にとって負担になっている面をどういうふうに緩和していくか、こういう点も検討しなければならぬことだろうと思いますので、なかなか今すぐにこうだというような方針がまだ打ち出せるところまでまいっておりませんが、しかし今申し上げましたようないろんな要素を十分考えて、かつ既に日本と韓国政府との間で在日韓国人の方について一定の方向というものを明言しているわけでございますから、それを踏まえて、これも検討に鋭意努力を進めていかなきゃならぬ、こういう心構えで臨んでおります。
○千葉景子君 さて、指紋押捺につきましては、今後これが廃止をされ、新しい代替の手段、制度が講じられる際、既に押捺をされています資料、この取り扱いについてはどう考えられておりますでしょうか。登録原票あるいは指紋原紙などについては、これは廃棄をするというようなことで考えてよろしいんでしょうか。その点についてはどうお考えになっていらっしゃいますか。
○政府委員(股野景親君) 今御指摘の、まず登録原票というものは各市区町村で現在保管されておりまして、他方、指紋の原紙はこれは法務省において保管をいたしております。
 さてそこで、今度現在私どもが取り組んでおります指紋押捺にかわる制度が開発され、法律上の措置として国会で御審議をいただき、御承認をいただきました暁に、新しい指紋押捺にかわる措置が実施されるという段階がいずれ参るということを私ども心から願っておるわけでございますが、そういう段階におきまして、それじゃ既に押されている指紋が記録されている登録原票と指紋の原紙の扱いをどうするかということ、これも実は今の指紋押捺にかわる手段の開発を含めまして外国人登録制度全体についての検討を今行っておりますので、その制度全体の検討の中で、今保管されている指紋の今後の取り扱いのことについても検討するということにいたしております。したがって、今後の検討課題ということになっております。
○千葉景子君 今後の検討課題では当然あろうかと思いますけれども、やはり少なくともこの指紋については代替の手段が講じられる、それによって同一性の確認なりもできるという段階になるわけですから、やはりこれまでの指紋、これは先ほど言いましたように大変な差別的な扱いであり、そしてそれによる大変な心理的な圧迫などもある中で押した指紋でございます。そういう意味では、同一性の確認ができる以上は、こういう指紋というものは原則として廃棄をするというのが私はやはり筋ではなかろうかというふうに思うんです。そのやり方というのはいろいろあろうかというように思うんですけれども、その方向でぜひ検討を加えるべきではなかろうかというふうに思いますが、いかがですか。そういう方向で検討いただけませんでしょうか。
○政府委員(股野景親君) この指紋問題につきましていろいろ幅広く私どもも御意見を伺いながら、今後一番いい対処方針というのを打ち出していこうと思っておりますので、いろいろ御意見をよく承りながらしっかりとした方針を考えていきたいと思っております。
○千葉景子君 それから、それとはちょっと別ですけれども、使用済みの外国人登録証明書などは既にこの間きちっと廃棄をされているんでしょうか。
○政府委員(股野景親君) 御指摘の使用済みの外国人登録証明書は順次廃棄をいたしております。
○千葉景子君 この法案につきまして、法律の内容、それから覚書に記されているさまざまな諸点についてお尋ねをしてまいりました。ぜひこの法律のみならず、午前中にも話をさせていただきましたけれども、やはり歴史的な経緯なども踏まえて今後の検討をできるだけ早く、そしてまた納得できるような形で進めていただきたい、その要望をいたしまして、別な問題に入らせていただきたいと思います。
 実は、既にこれは午前中の質問で北村委員の方から指摘があったかというふうに思うんですけれども、つい先日、松戸のOL殺人事件と一応呼ぶといたしましょう。この無罪判決が東京高裁で出されました。これについてはもうさまざま報道な、どもなされておりますので、私どもも内容がほぼわかるところでございますけれども、ちょっと最高裁の方にお伺いしたいと思います。
 この判決の概要、特に今回は無罪に至る理由の中で、自白の任意性というものが非常に取り上げられているところでもございます。そういうものも含めて、この判決の概要というのをちょっと御説明いただけますか。
○最高裁判所長官代理者(島田仁郎君) まず事案の概要でございますが、昭和四十九年の七月、国鉄の馬橋駅はたまたま下車いたしました被害者、女性、十九歳でございます。これを姦淫しようと追尾して、所携の包丁様の刃物で脅迫した上同女を姦淫し、自分の犯行を隠ぺいするために同女が着用していましたスカートのつりひもで絞殺したという事件。ほかに常習累犯窃盗と住居侵入、強姦の事件がございます。
 それで、この常習累犯窃盗、強姦等の事件につきましては、このたびの高裁の判決でも有罪ということになりまして懲役六年という刑が下っておりますが、さきに述べました殺人事件の方につきましては、被告人の別件起訴後の自白にはその任意性に疑いがあり、またその信用性にも疑問があるということで無罪という判決はなっております。
○千葉景子君 今概要を説明いただいたわけなんですけれども、やはり自白の任意性、信用性というところに大変重点が置かれた判決でもございます。
 これは、内容を検討いたしますと、百八十二日
間、勾留期間のほとんどがいわゆる警察署の留置場で行われてきた。その間も、この留置場改築の直後でほかに勾留中の被疑者がおらず、単独で、しかもこういう改築直後ということもあり看守も配置をされずに捜査員がその看守の役も兼ねていた。こういうような背景も記されているところでございます。
 そこで最近、この判決、それから選挙違反での大量の無罪、それから大阪府の堺市での少女殺害の無罪、東京赤羽の放火事件の逆転無罪など、大変たび重ねてこういう判決が出されております。しかもこれは、細かくは申しませんが、そのほとんどがやはり自白偏重の捜査というものが問題とされ、指摘をされている、そういう判決ばかりでございます。
 そこでお伺いをさせていただきたいと思いますが、こういうたび重ねた、しかも自白やあるいは捜査、そういうところが問題とされている判決が出ていることに対して、まず警察庁ですけれども、捜査当局としてこういう判決についてどう考えていらっしゃいますか。その捜査のあり方あるいはこの間の指摘をされている問題点などを踏まえて、今どんな御認識をなさっているのか。まず、警察庁の方からお伺いしたいと思います。
○説明員(泉幸伸君) ただいま御指摘がありました事件は、総じましていずれも物証が非常に乏しい難事件でありまして、警察といたしましては、それぞれの事件について当時全力を挙げて捜査し、被疑者を検挙送致したものでございます。しかしながら、これらの今御指摘のありましたような判決において指摘されました点につきまして謙虚に受けとめまして、十分に検討を加え、自白の任意性の確保を含め今後の捜査に生かしてまいりたいと考えております。
○千葉景子君 お答えはよくわかりますけれども、ただこれは捜査に対するかなりの警告であろうというふうに思うんですね。そういう意味では、今のお答えはお答えとして受けとめておきますけれども、厳しく反省をしていただく、そういうことが必要ではなかろうかというふうに思うんです。
 これは検察当局にも問題がないわけではない。やはりこういうものをそのまま起訴しているということについてもこれは指摘をされているところでもございますし、当然の反省点があるかというふうに思います。その点について法務省の方、検察当局としてはどのようにこれを受けとめていらっしゃるかお聞きしたいと思います。
○政府委員(井嶋一友君) 委員ただいま御指摘のような一連の重要事件につきまして、自白の任意性あるいは信用性について、裁判所の疑いを理由とする無罪というのがございましたことは、一般的に申し上げますとまことに遺憾なことだと思っております。ただ、個別の事件につきましては、それぞれ控訴しているものもあればあるいは現在上訴検討中というものもございますので、個別の事件についての論評はいたしかねますけれども、一般的に申し上げまして、委員御指摘のように検察が公訴権を独占して国の刑罰権の実施に当たっている以上、慎重の上にも慎重に証拠の吟味をし、犯人の供述を十分吟味し、客観的な証拠との突合、そういったことにも十分意を用いて確信の持てる事件について裁判に付するという態度を堅持することが大事であることは申すまでもないと思います。
 こういった一連の事件につきましては、いずれそういったことの反省材料にもなるわけでございますけれども、十分部内で検討いたしながら今後ともそういった方針で処理をしてまいるものだというふうに考えております。
○千葉景子君 お話の中には反省点も出ておりましたけれども、やはり私はもう一度、代用監獄、警察の留置場での勾留というものを真剣に問い直さなければいけない、そういうことではなかろうかというふうに思います。
 今回の判決を考えましても、先ほど申しましたように、そのほとんどが警察の留置場である、勾留中ですね。こういう問題点を考えますと、やはり代用監獄問題というのは、法務省の方は拘禁二法、四法お考えではございますけれども、それではなく、まずこの代用監獄をできる限り解消していくその方向づけ、あるいはそれへの具体的な第一歩を踏み出すという積極的な姿勢が必要なのではなかろうかというふうに思います。この点に限ってぜひ法務省としても、いやなかなかこれは理解を得るのが難しい、場所を確保するのが難しい、こういうことはあろうかと思いますけれども、第一歩を踏み出していただくという必要があろうかと思います。その点のお考えをお聞かせいただいて終わりにしたいと思います。
○政府委員(飛田清弘君) 実際問題といたしまして、代用監獄を廃止する方向に進めとおっしゃられても、なかなか事実上できないのが現状でございます。
 そこで、むしろ代用監獄が自白偏重あるいは自白強要に使われているというような誤解を招かないような適正な捜査ということが現状では必要なんではないかというふうに考えております。そういうふうな面でいろいろ努力していきたい、こういうふうに考えております。
○千葉景子君 今のお答えでは、これからたび重ねてこういう問題が起こるだろうと思います。やはりそこの基本的な考え方をもう一回きちっと改め、そして認識をしていただくということを私は改めて要求をさせていただいて、質問を終わりにしたいと思います。
○中野鉄造君 私は、午前中そして先ほど来いろいろ同僚議員から質疑が行われておりましたが、基本的にはこの法案に賛成でございますので、私が用意しておったいろいろな質問と、同僚議員がなされた質問と重複する点もございますので、それらを省略して数点に限ってお尋ねいたしたいと思います。
 まず、第五条の立法の必要性といいましょうか、第五条をつくる必要性、言いかえるならば第五条の対象となる人たちが果たして今どのくらいいらっしゃるのか、またどうしてもこれをつくっておかなくちゃいけなかったという理由についてお尋ねしたいと思います。
○政府委員(股野景親君) ただいま御指摘いただきました特例法案の第五条でございますが、これは平和条約の国籍離脱者、こういうカテゴリーの人につきまして、この法律の中で第二条で定義をさせていただいておりますが、こういう方たち、それからまたその子孫の方たちの中で在留期間が限定されている、そういう在留資格を持っておられる方たちがおられまして、その方たちの在留資格というものは一般の外国人と同じ外見を持っているという点がございますので、在留資格だけを見ておりますと、この法律の対象となる方であるかどうかということが明確に浮かび上がってまいりません。
 そこで、せっかくのこの法案の対象者になられる方たちでありますので、そういう方たちについてその法的地位を明確にしておく必要があると考えられますので、この方たちについては申請をしていただいて、そしてそれに基づいて特別永住者という資格を定める、こういう立法の趣旨にさせていただいたわけでございます。
 それでは、一体どのぐらいこの五条の対象になる人がいるのであろうかというお尋ねでございます。私どもの推計になりますのですが、この五条の規定を受けまして特別永住者としての申請を行われるという方として該当する方は、現在入管法上の在留特別許可を受けて定住者等の在留資格で本邦に在留しておる人々、それからその子孫、あるいは昭和二十七年に法律第百二十六号ができましたときのその法律の適用を受けてそのまま日本に在留しておられる法一二六―二―六該当者の孫に当たる方等のカテゴリーの方がこの対象者になってくるだろうと考えております。そういう方たちを推計いたしますと約千人ぐらいであろう、こういうふうに現在考えております。
○中野鉄造君 それはわずか千人ぐらいではあってみても、そうしますと第四条によるところの永住許可、この人たちは自分の住む市区町村の役場
に行って簡単に申請をすることができる。しかし第五条の人たちは、今は数はわずかではございましょうけれども、その人たちはわざわざ地方の入管局にまで足を運ばなくちゃいけない。こういうような差異が出てくるわけです。市区町村の役場と入管局の職員の数あるいはその場所、官庁そのものの数というものも非常に異なっているわけですけれども、そういうような四条の対象者、五条の対象者、その人たちに時間的あるいは肉体的に非常に差がある。だから、これをどうして一緒にできないのかなという気がするわけなんですが、その点いかがでしょうか。
○政府委員(股野景親君) 委員ただいま御指摘の第四条による特別永住許可を受けられる方たちは確かにこの法文の中で市区町村に許可の申請をする、その手続をとることができるようになっておりまして、それに比べまして実際の取扱窓口が数の上でずっと限られている地方入国管理局の窓口においでいただかなければならない第五条該当者との間での違いというものは、確かにそういう面では窓口が限られているという違いがあるわけでございます。
 この点、実はこの第五条の該当者の方々が今日本に在留しておられることについての在留の経歴の記録、こういうものがこの第五条の該当者であるかどうかの判定の基礎になります。そういう記録は、これはこの方たちについては一般の外国人と同じ在留資格という形を持っておられますので、入管局で今までの日本における在留歴というものの記録が確認されないとその該当者であるかどうかの判断ができないという事情がございます。市区町村ではそのような記録がございませんので、やむを得ずその点について地方入国管理局においでをいただくという取り扱いにしたわけでございます。
 ただ、御指摘のような御当人の負担ということも考えまして、この方たちについてすぐに申請の手続をとっていただくということにしなくとも、この方たちは在留期間というものを持って在留をしておられますので、その在留期間の更新期が来るというようなときにはおのずと地方入国管理局で手続をおとりになる時期が参りますので、例えばそういうようなときに地方入国管理局で手続をとっていただくというようなことも可能でございますので、そういう点も我々として配慮して対処をしていきたいと考えております。
○中野鉄造君 次に、この日韓覚書、ことしの一月十日は締結されたこの覚書の一番最後の方ですが、「教育問題については次の方向で対処する。」というのがございまして、その次の四番、五番に「公務員任用に関する国籍による合理的な差異を踏まえた日本国政府の法的見解を前提としつつ、」ということが掲げられておりますが、この「合理的な差異を踏まえた日本国政府の法的見解」の「差異」ということ、またその「法的見解」、こういったようなものの中に先ほどから論議されております指紋押捺、あるいはそれにかわるべきものだとかそういうものも入るんでしょうか。
○説明員(小野元之君) お答え申し上げます。
 日韓三世協議におきます覚書の結果で、「公務員任用に関する国籍による合理的な差異を踏まえた日本国政府の法的見解」という部分でございますが、これは私どもは、いわゆる我が国の政府が従来からとっております公務員に関する当然の法理を指すものというふうに考えております。したがいまして、教員でございますとか地方公務員の任用等の、公務員を任用する場合に公務員に関する当然の法理の運用としてこの規定は置かれているものというふうに理解しているわけでございます。
○中野鉄造君 だから、この「合理的な異差」ということについて、指紋押捺等もこれに入るかということを聞いているんです。
○政府委員(股野景親君) ただいま御指摘いただきました条項は「公務員任用に関する国籍による合理的な差異」、こうなっておりますので、事項が公務員任用というところに特定されておりますので、その意味で一般的な国籍による取り扱いの違い等、意味合いはそういう広いものではなくて、公務員任用についての特定された事項、こういうことと理解しております。
○中野鉄造君 そうすると、地方公務員への任命あるいは教職員の採用ですね、これらについては今どのように対処をされようとしておりますか。
○説明員(小野元之君) 私ども文部省では教員の採用問題について所管しているわけでございますが、この点につきましてはいわゆる日韓三世協議におけます覚書による決着を踏まえまして、文部省といたしましては先般、三月二十二日に文書で各都道府県と指定都市の教育委員会に対して指導したところでございます。
 具体的中身といたしましては、平成四年度の教員採用選考試験、これはことしの大体七月ごろ行われるわけでございますけれども、平成四年度の採用試験から在日韓国人を初め日本国籍を持たない方につきましても教員採用試験の受験の道を開くということで指導をいたしております。そして試験に合格した方につきましては、いわゆる任期を付さない定年まで働ける常勤講師という形で任用いたしまして、身分の安定を図るとともに待遇についても配慮するよう各都道府県を指導したところでございます。
○中野鉄造君 それと、この覚書の一番最後に、「地方自治体選挙権については、韓国政府より要望が表明された。」こうありますけれども、これはどういった内容で、それに対する対応はどういうふうになされていますか。
○政府委員(股野景親君) 本件につきましては、実は私ども法務省側の直接の所管事項でございませんので、私どもとして受けとめている理解という点で申し上げたいと思いますが、基本的にはこの地方自治体の参政権ということについて国際社会でもいろいろ現在御論議がある、そういう中にあって在日韓国人の方々が地域社会の住民として日本で居住し生活をしておられる中で、日本の地方自治体の選挙ということについて道を開くということを在日韓国人の方々の間で要望する動きがいろいろある。こういう声を踏まえまして韓国政府側からそういう問題についての日本側の考え方を尋ねる、こういう場面があったというふうに理解をしておりますので、そういうことについて韓国側が在日韓国人の方々のそういう気持ちというものを踏まえた一つの意見表明を行ったものと、かように理解をいたしております。
○中野鉄造君 終わります。
○橋本敦君 まず最初に、先ほども議論がありましたが、二十三日、東京高裁が言い渡しました宮田早苗さん殺害事件、略称松戸OL殺人事件と呼ばれているようでございますが、これに関連をして大臣の所見をお伺いしておきたいと思うわけであります。
   〔委員長退席、理事中野鉄造君着席〕
 ことしの三月に大阪地裁の堺支部でも女児殺害事件に関連をいたしまして無罪判決が言い渡されて、警察における長期拘禁のもとでの自供に重大な信用性、任意性についての疑いがあるとして無罪の判決が言い渡されました。いわゆる代用監獄の弊害がかねてからの一連の無罪判決に加えて大きく浮かび上がったわけでありますが、それが二十三日、東京高裁の松戸OL殺人事件で改めて今日の日本の刑事裁判における重大な問題として浮かび上がってきたわけであります。とりわけこの高裁判決は大臣等も御検討いただいておると思いますけれども、いわゆる警察における代用監獄、捜査と留置の業務を明確に区別しないどころか、まさに捜査の手のうちに留置業務をのせて長期間にわたって繰り返し執拗な取り調べをやったということの中で、代用監獄の弊害が改めて指摘をされたわけであります。
 私は、捜査を担当する警察はもちろん、検察庁も、また法務大臣としても謙虚にこの判決は受けとめて検討していただくに値する重大な問題だと思っておりますが、まずその点の御見解はいかがでしょうか。
○国務大臣(左藤恵君) この松戸OL殺人事件のことにつきましては無罪の判決が出たわけでござ
いますが、これについて上告するとかいろんな問題については私から意見を述べることは差し控えたいと思います。
 代用監獄制度につきまして今いろいろお話ございましたが、昭和五十五年十一月の法制審議会の答申で、その設備及び管理機構の改善等に努めるべきであるという一つの御指摘がございました。しかし、現実問題としましては代用監獄を今すぐ廃止するというわけにはいかないというような状況でございまして、そういうこともありますので、具体的な事件の捜査の処理に当たりましては、こうした今の判決で御指摘されたような自白の強要というふうなことが行われるということがあってはならないわけでありまして、そうしたことのないように十分検察当局をして指揮監督させなければならない、まずこの問題はこういうふうに考えるところでございます。
 いろいろそういった御意見の問題がありますが、今国会におきまして既に刑事施設法も提出いたしておりますので、こうしたことはこの代用監獄制度は一応そういうことで存続を認めた法制審議会の御答申というような趣旨もありまして、そうしたことで御提案いたしたところでございますけれども、今のこういった御趣旨の点につきまして、まず代用監獄の運用の問題について我々十分考えなければならないと同時に、この法案のことにつきましても国会でこれから御審議をいただきたい、このように考えておるところでございます。
○橋本敦君 捜査の点で厳しく運用等の面でも反省的に検討すべきだという御意見はわかりましたが、この判決が指摘しておりますように、まさにこの代用監獄と称されるそこのところが偽りの自白をつくり出し、裁判における真実解明を妨げ、重大な人権を侵害するという温床になっているというところに弊害の根源があるわけであります。したがって、単なる運用によってこの弊害が根絶できるのかということになりますと、これまでの数多くの冤罪事件、今日まで続いているという実態を見ましても、やはり代用監獄の廃止ということが我が国刑事司法における公正さを、あるいは人権を擁護する上での基本的な目標でなくてはならぬのではないかというように私は強く思っているわけであります。
 とりわけ、この事件で判決が指摘しておりますような内容を見ますと、まさに心胆寒からしめられる思いがするわけで、長期間にわたる警察勾留の中で捜査員が一々細かく看守役に命じて報告をさせる、そして被害者の位牌まで持ち込んで被疑者に詰め寄っていく、そしてまた空腹と寒さを立て続けに訴えねばならぬようなそういう状況に被疑者を置いてそれで取り調べを続行する、これはまさに言ってみれば拷問に等しいわけであります。そういうことが行われていたという事実が公正な裁判所の判決によって指摘をされたということは、まさに代用監獄の弊害たるものの実態がいかにひどいかということを浮き彫りにしているわけであります。
 そういう意味で、今大臣は国会での審議と仰せられましたけれども、基本的には代用監獄の廃止を目指して、むしろ廃止ではなくてそれを存置することを合法化するような拘禁四法はこの際改めて撤回をして、政府としては今大臣がおっしゃった厳正な運用の改善も含め、そしてまた拘置所の増設も含めて長期的な展望でどう対応していくか、改めて検討すべきときに来ているというように私は思うのですが、重ねてその点、大臣の御意見はいかがかお伺いしたいと思います。
○国務大臣(左藤恵君) 確かに、今のお話のような代用監獄に留置して長期間いろいろ連日にわたって取り調べをする、そしてそのことから自白の任意性というものに疑いがかかってきた、こういうことはこれは言ってみればあってはならないことだと私はそのように思います。
 そういう意味で、代用監獄というものについてのいろんな問題があるわけでありますけれども、現実の問題としてそうしたことをすぐに廃止するということがなかなかできないということもありますので、そうしたことを考えますととにかくまず我々考えなければならないことは、この中で、代用監獄でそういう自白の強要が行われることにならないようなまず運用を真剣に考えなければならない、このように考えるところでございます。
○橋本敦君 日弁連の方も今直ちに廃止ということを決して言っているわけでございませんで、新聞等で大臣もごらんのように、二〇〇〇年をめどに廃止しようではないかという提言をいたしておりまして、それまでの間の運用の改善としていろんなことを具体的に提起をしておるわけであります。
 例えば、少年や女子は拘置所に入れることを原則として代用監獄に入れないようにしようではないかとか、また、重大犯罪について否認をしている事件は代用監獄を使わせないようにしようではないかということだとか、それからさらには捜査担当官との関係では、捜査担当官は留置業務に従事してはならないということを厳しくして、こういったことについて法務大臣が報告を受けたりあるいは意見を述べたりするようなそういうシステムを暫定的に行いながら廃止を目指していこうという提言をしております。
 私は、これはプロセスとしてそれなりに合理性があるし、また実現を目指して努力する可能性、また合意が得られる条件もあると思っておるんですが、こういった日弁連の提言もこれあり、法務大臣としても法務省としても、国会に法案を出したからもうそれで協議をしないというんじゃなくて、引き続きこの問題について日弁連との協議も重ねていただくようにお願いしたいんですが、いかがでしょうか。
○国務大臣(左藤恵君) 御意見を十分私ども伺っていきたいと思いますし、今のお話のこれから長期的なこれに対する考え方というものをまとめる上からもまた御意見を伺っていかなければならない、このように思っております。
○橋本敦君 それでは、法案に入らせていただきます。
 法案について基本的な考え方ということを前提としてまず問題にしておきたいのでありますが、それは基本的にはこの特例法案をつくってきた歴史的な背景の中にあるのは何か。それは言うまでもなく、日本が過去において朝鮮に対する不当な植民地支配をやってきた、そういうことへの歴史的反省が一つはある。そして、そういう日本の植民地支配の中で朝鮮の皆さんに対するいわれのない差別感を助長し生み出してきたという、そういったことについても政治的な面で責任が日本にあるという歴史的状況がある。そういったことを基本的に反省するということがこの法案の背後にきちっとなくてはならないのではないかというように私は思っておりますが、大臣の御見解はいかがでしょうか。
○国務大臣(左藤恵君) 今お話しのように、これまで日本政府としてもしばしば機会のあるたびにそういうことを明らかにしてきておりますが、過去におきまして我が国が近隣諸国の国民の皆さんに多大な苦痛、損害、いろんなものを与えてきた、こういうことを考えましたときには、当然に今お話のありましたそういうことを自覚し反省して、二度と繰り返してはいけないということを決意しなければならないわけでありまして、そうしたことで平和国家として我が国が戦後進んでまいりました中にそういった反省があって、初めて平和国家として生きていく具体的な展開が生まれてくるわけであろう、このように考えます。そうしたことで今後ともこの立場を確固不変のものとして、あらゆる問題について対処していかなければならない、このように考えるわけであります。
○橋本敦君 この特例法で「特別永住許可」ということが第四条で出てくるわけでありますが、この皆さんについて言うならば二世、三世で考えてみますと、実質、生活環境からいってもあらゆる面からいっても日本人そのものと変わらない状況の人たちがたくさん出ているという現状があるわけですね。そういう点を国籍という点で考えてみますと、血統主義をとっている我が国としては、
これは国籍は当然問題はならないんですが、世界でも出生地の生地主義をとっている国がある。もしも生地主義をとるならば、二世、三世の人は当然日本の国籍も取る資格を持っている人たちというように見ることもできるわけですが、そういうような見方というものは成り立ちますか。
○政府委員(清水湛君) 在日韓国・朝鮮人の国籍についてのお尋ねでございますけれども、御指摘のように我が国の国籍法は原則として血統主義をとっているわけでございます。そういうことのために、日本で生まれたから韓国人の子弟が当然日本国籍を取得するということにはならないわけでございます。しかしながら、御指摘のように在日韓国・朝鮮人の多数の方は日本で生まれ、日本の社会の中でもうほとんど日本人と全く変わらないような形で生活し、成長してきたという経緯があるわけでございます。そういうような事情を私ども十分しんしゃくいたしまして、これらの方々が日本国籍を取得したいということで帰化を希望する場合には、できるだけ速やかに帰化を許すという方向でこれまでも帰化行政を進めてきたところでございますし、今後ともそのような方針で臨んでまいりたいというふうに考えておるところでございます。
○橋本敦君 少し論点が先へ進んだようでありますが、今帰化という問題が局長の答弁に出てまいりましたので、その点に論点を移してもよろしいわけですが、その場合、我が国は国籍法という法律がございますから、その法律に基づいて処理しなきゃなりません。
 そこで、帰化の要件ということになり、その第五条を検討いたしますと、「法務大臣は、次の条件を備える外国人でなければ、その帰化を許可することができない。」ということでずっと書いてあるわけでございます。今局長が答弁なさった、できるだけ許可をするという方向で検討するというのは、この第五条の運用について、二世、三世の人たちについては弾力的にといいますか、合目的的にといいますか、人権尊重の立場を先行させてといいますか、積極的に帰化を認める方向で運用するという趣旨をおっしゃったわけですか。
○政府委員(清水湛君) 国籍法第五条第一項各号の要件というのは、これは「法務大臣は、次の条件を備える外国人でなければ、その帰化を許可することができない。」ということで、いわば帰化を許可するためには最低限備えなければならない要件を定めたものでございます。したがいまして、この要件さえ満たせば、じゃ当然帰化は許可されるのかというと、それは実は必ずしもそうではないわけでございまして、形式的にはこの要件を満たしている方でございましても、例えば日本語がほとんど話せないとか、それだけではなく日本の生活様式や慣習にもなじまないとか、あるいは頻繁に本国に帰っておるとかというようなことで、日本の社会とかそういうものにほとんどなじみがないというふうなことになりますと、これはやはり形式的には五条の要件を備えておりましても不許可になるということも現にあり得るわけでございます。
 ところが、在日韓国・朝鮮人の方は形式的にこの五条の要件を備えているのみならず、先ほど申し上げましたように、実質的に日本で生まれ、日本の社会、経済、文化の中で育っておられるというような事実がございますので、もう形式的にこの要件さえ満たされれば他の事項についてはほとんど考慮することなく帰化が許可される、こういう意味で私は先ほど申し上げた次第でございます。
○橋本敦君 趣旨はわかりました。
 そしてまた、実際現にそういったような法務省の運用の結果、申請のなされた帰化事件の中でほとんど大多数が帰化が認められているという状況にあるのかどうか、この点はいかがですか。
○政府委員(清水湛君) ほとんど九十数%、平成二年度で申しますと申請者のうちの九七・二%が許可されておる、こういう状況になっているところでございます。
○橋本敦君 今生活環境といったことがありましたが、やはり民族意識というのがございますから、礼節の日にはチョゴリを着るとか、あるいは民族の風習に従っていろいろ生活行事を行うとか、そういったことが当然あるわけですが、そういったことがしばしばあるからといって帰化を認めないということになるのか、そこらあたりの判断はどうなんですか。
○政府委員(清水湛君) 全体的な判断の問題でございますので、そういう一事を取り上げて、直ちにこれが許否に影響するというようなことを申し上げることはちょっとできかねるところでございますけれども、例えば教育は日本の学校教育法が定める学校ではなくて朝鮮人高級学校と申しますか、中級学校と申しますか、そういう系統の学校で教育を受けた方でも現に帰化が許可されているという例がございますので、必ずしもそういうことだけで判断がなされるということではないというふうに私ども考えております。
○橋本敦君 わかりました。
 そこで、民事局長、私はこの五条の中で気になる条文がございまして、レクでも指摘したと思うんですが、第五条一項の六号なんですね。ここで許可しない要件として「日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを企て、」云々と、こうありますね。政府を暴力で破壊しちゃならぬことは言うまでもないし、また政府を暴力で破壊するという行動があり得ることは観念的にわかるんですけれども、日本国憲法を暴力で破壊するということは、これは法概念としても社会行為の類型としても考えられないことではないかと思うんですが、日本国憲法を暴力で破壊するということはあるんですか。
○政府委員(清水湛君) 私も実はこの条文を丁寧に読みまして、日本国憲法を破壊する、こういう表現に初めてはっきりと気がついたわけでございまして、まことに申しわけございませんが、同じような規定は国家公務員法あるいは地方公務員法にもこのような規定があるわけでありまして、要するに日本国憲法を暴力で破壊するというのは、法律自体を破壊するということは観念としてはあり得ないわけでございまして、日本国憲法が定める基本的な法秩序なり制度というものを暴力をもって無効ならしめる、その機能を失わしめる、こういうようなことを企て、もしくは主張する政党その他の団体を結成する、こういうことであるというふうに私どもは考えているところでございます。
○橋本敦君 解釈としてはそうおっしゃる以外に言いようがないんでしょうが、ロジックとしては極めて妙な法文であることは間違いないでしょう。素直に読めば、日本国憲法を暴力で破壊するというのはちょっと考えられないことですものね。
 それからもう一つの問題は、これはおっしゃったように、国家公務員法の三十八条五項の欠格条項がそのまま来ているわけですね。国家公務員法というのは日本国民を対象とする法律で、言うまでもありませんけれども、昭和二十八年三月、法制局の一発二十九号という文書では、国家公務員は日本人に限るということで、外国人に適用されないわけでしょう、適用されない。そういう外国人に適用されない国家公務員法のその条文を、国籍法で帰化した人に適用するんじゃなくて、帰化する以前の外国人の帰化要件を考えるそのところへそのまま持ってきて適用するという法律の仕組みも構造もおかしなものだなというように感じるんですね。いかがですか、おかしなものだとお思いになりませんか。
○政府委員(清水湛君) 日本国憲法というのは日本国の存立の基本でございまして、公務員になる以上、憲法を遵守するというのは、これはもう当然のことでございます。同じく日本国民たる資格を得たいということで帰化を申請するわけでございますから、少なくとも日本国の基本である憲法秩序を暴力をもって破壊するというふうなことを主義とする政党を結成する等の者は帰化を許す場合におけるその最低の要件にも当たらない、こう
いう考え方でこの法律はできているものと私どもは考えているところでございます。
○橋本敦君 それならば、日本国憲法を遵守することということを素直に言えばいいということにもなるんですね。どっちにしても、法律の条文の体裁、体系としてこういうものでいいのかどうかということは一つ問題があるなということを指摘しておきます。
 次に、特例法の第九条関係について伺いたいと思います。
 これでは、退去強制の制限緩和ということが趣旨ですから、それ自体の立法趣旨は私も賛成であります。ところで、この九条をずっと見ますと、一つは刑法の第二編第二章、つまり内乱。第三章、つまり外患に関する罪によって禁錮以上の刑に処せられた者云々がまず一つあります。それから二つ目に、刑法第二編第四章の罪ですから、これは国交に関する罪でありますが、その中は刑法によれば外国の国旗や国章損壊等が含まれる、そういう罪であります。これは二年以下の懲役ということであります。そして第三に、外国の元首、外交使節、その公館に対する犯罪行為で禁錮以上、こうなっております。第四は、無期または七年を超える懲役、禁錮、こうなっております。
 そこで、先ほどもお話がありましたが、日韓特別法の関係でいえば、第四号の「無期又は七年を超える」ということが一つはそこにあったわけですが、この一から二、三、この関係で今度の特例法でここで初めてこのような形で浮かび上がってきているわけで、こういったことについては、今までの出入国管理及び難民認定法二十四条との関係では特別にこれに類する規定がない。それがここで浮かび上がってきた理由をまず伺いたいと思います。
○政府委員(股野景親君) 今の御審議を願っております特例法というものにつきましてのこれまでの検討の経緯の中に、昭和四十年にできました日韓法的地位協定というものが一つの要素としてございます。そして、その日韓法的地位協定において一般入管法で受ける処遇よりも、その在日韓国人で協定永住許可を受けられる方々について有利な処遇というものが定められておるわけでございます。その中において、その趣旨は日本における生活をより安定的なものにするという趣旨でございますので、その趣旨を日韓法的地位協定、さらにはそれの実施に伴うところの入管の特別法というものの中で、この趣旨として現在特例法の九条の一項一号、二号と該当するもの、これはそのままの同じ思想の流れがあり、また三号につきましても一つの同じ思想の流れがございます。
 すなわち、昭和四十年の時点におきましても、法的な地位をより安定的にする上において退去強制事由をより限定していくということであったわけでございますが、その際に、より限定するにしてもこれらの犯罪というものはその与える影響が極めて大きい、そういう観点から、ほかにも日韓法的地位協定の場合には事由がございましたのですが、この刑法の内乱、外患あるいは国交に関する罪といったもの、さらに外国の元首云々とありますような規定というものを設けておる。これは、この新しい入管特例法をつくるに際しましても、これに該当するような犯罪であるというものは、これはやはり国家の重大な利益にかかわるものであるので、これは退去強制事由を限定するにしても、なおこの規定については設けておくことが必要かつ妥当である、こういう判断があったということでございます。
○橋本敦君 今四十年の地位協定でおっしゃったわけですが、一九九〇年四月三十日の関係での中山外務大臣と韓国の外務部長官との間で交わされた関係文書によりますと、「退去強制事由は、内乱、外患の罪、国交、外交上の利益に係る罪及びこれに準ずる重大な犯罪に限定する。」ということで、「重大な犯罪」ということで絞りをかけようという趣旨で言われてますでしょう。そこで「重大な犯罪」ということで絞りをかけたというんですが、その「重大な犯罪」ということになれば、基本的には無期または七年を超える懲役、禁錮に処せられるということで重大犯罪という絞り方が一つあるんですね。ところが、今私が指摘したように、国交に関する罪といえば一番重くて懲役二年ですよ。だから、そういった刑のバランスからいえば重大犯罪に限るという日韓間の協定にかかわらず、これは重大犯罪というのがなぜここに入ったのかということが一つは問題になるんですね。
 それから、さらに「外国の元首、外交使節又はその公館に対する犯罪行為」という問題ですが、これは法務省も御存じのとおり、千葉委員も指摘をされておりましたけれども、この罪というのはもともと昭和二十二年の改正までは外国の君主、大統領に対する暴行、脅迫、侮辱ということで旧刑法九十条が特にあったわけですね。ところが、この刑法九十条は、天皇、皇族に対する不敬罪とか危害罪が廃止されるということで、これは一緒に廃止されて今ないわけですね。現にない。だから、そういう意味で「外国の元首、外交使節又はその公館に対する犯罪行為」とあるけれども、刑法上の中身としては特別にそういう構成要件や罪名はないので、一般の暴行、脅迫あるいは名誉棄損、こういった罪に該当する場合ということになるわけですね。そうすると、それらの罪は最低刑が無期あるいは七年以上なんということはないわけで、それよりはるかに低いランクですね。そういうことであるにもかかわらず、ここへ入ってきているということで全体のバランスでどうかという問題が一つあるのと、それからもう一つは、実際上この特例法九条の一項三号でこういうように入れたということは、こうした外国の君主や大統領あるいは外国の外交官等も含めたそういう人たちに対する一般の暴行、脅迫等の刑法と区別をして、特にこれを重く罰するという旧刑法そのものの復活とは言いませんけれども、そういった方向づけが先取りされるという心配が私は立法論としてあるのではないかということで一つは問題意識を持っているわけですね。
 御存じのように、これまでも刑法改正の準備草案等ではこの問題が出てきましたが、法務省の解説書を見てみますと、こうした問題については通常の法定刑の範囲内で十分に重く処罰することも可能であって、特別の規定を設けなければ国際的な要請に応じられないというわけではないし、他方、外国の元首、使節の保護と天皇の保護との関係について国民各階層の考え方が必ずしも一致していない現状のもとで、こういう特別規定を刑法でつくることは必ずしも適当でないという考え方もあり得るので、これらの規定を設けないこととする代案を作成して、草案と代案とのいずれによるかについて各界の意見を聞くこととしたという経過が、法務省の解説書にも出ているわけですね。
 そういうことであるにもかかわらず、これを先取りするような格好で、九条で「外国の元首」云々の、ここへこういうのが入り込んでくるというのは、これはいかがなものであろうかということを私は疑問点として持っておるんですが、いかがお考えですか。
○政府委員(股野景親君) まず、先ほど委員御指摘になりました昨年の四月三十日の時点で、今回の在日韓国人の問題の一つの対処方針としての基本方向を打ち出したものが日韓両国間で合意を見た経緯があり、その中で委員ただいま御指摘のように、「退去強制事由は、内乱、外患の罪、国交、外交上の利益に係る罪及びこれに準ずる重大な犯罪に限定する。」こういうことを規定いたしました。これを受けてことしの一月、日韓両国間での改めて覚書という形での確認があり、さらにその内容をこの法案の形でまた盛り込ませていただいておるわけでございますけれども、その間において日韓両国間でいろいろな話し合いもございました。また、日本国政府として今後こういう問題について取り組むべき一つの基本的な考え方について、関係の省庁間でのいろいろな協議もございました。
 そういう中で基本的な考え方は、先ほどの昨年の四月三十日の時点で一つの表現がございました
「これに準ずる重大な犯罪」という、この思想でございます。これは基本的には、国家の重大な利益というものについてこれを害するようなそういう犯罪、こういう思想でございます。そこで、その犯罪の重みがその国家の重大な利益をどう害しているかという点からの規定になってまいりますので、外国の元首、外交使節等についての先ほどのこの規定は、すなわち九条の一項三号の規定につきましては、これは基本的にそういう行為がその外国の元首ないし外国の使節の本国においていかなる衝撃というものを与えるか、またその結果として、その本国と日本との関係あるいはほかの一般的な国際関係にどのような悪影響を及ぼしてくるか、こういう点を考えますと、この内容というものはやはり日本の国家としての重大な利益に大いにかかわり合いのある行為として考えなければいけないだろう。そういう観点で、この規定をここに設けていくということについてそれは妥当であるという判断があったわけでございます。
 したがって、先ほど昔の刑法の九十条と九十一条でございますか、御指摘もございましたのですが、これは刑法の規定とまた別の、国家の重大な利益というものが、特に国際関係という局面においてとらえられるという観点からの規定の仕方にさせていただきました。ただその場合にも、ここにございますように、禁錮以上の刑というものであって、かつ法務大臣が認定をする、こういう行為を一つそこに加重しておりますので、そういう観点からこの条項というものが一つ設けられているという考え方でございます。
○橋本敦君 もう時間ありませんから、一問だけ最後に。
 いろいろ言いたいこともあるんですが、要するにこの三号については旧刑法的な思想を持ってきたのではない、あるいは旧刑法のこの問題の復活を意図的に法務省として考えている趣旨でもないということははっきり言える、こういうことですか。もう簡単で結構です。
○政府委員(股野景親君) そのとおりで、先ほどのように刑法という観点での論議ではなくて、日本の「外交上の重大な利益」というこの規定、すなわち国際局面でとらえた考え方でございます。
○橋本敦君 終わります。
○山田耕三郎君 ただいま審議中の入管特例法案は、さきの日韓首脳会談における在日韓国人の法的地位に関する協議の結果を受けて、在日韓国・朝鮮人及び台湾人、いわゆる旧植民地出身者の法的地位を定めると説明されております。その旧植民地出身者とは、言うまでもなく戦前日本が朝鮮、台湾の植民地支配をしていた当時、日本に強制連行されてきたか、あるいは経済的理由によってやむなく日本に渡ってきた人とその子孫の方々です。この人たちは、戦前は日本人たることを強いられ、戦後は日本との平和条約の発効に伴い、必然的に日本国籍から離脱させられ、現在に至るまで十分な補償を受けることもなく、その上さまざまな民族差別を受けてきたのであります。最近になりまして、ようやく関係者の口から侵略戦争や植民地支配についての反省が表明をされ、朝鮮民主主義人民共和国との国交正常化の交渉等も開始されてきました。また、戦争で犠牲になった韓国や台湾出身の旧軍人・軍属、遺族からは、このことに対する謝罪と補償の訴えが次々と出されてきています。
 こうした情勢の変化を背景として、この入管特例法が国会に提出されてきたものと思います。当事者から見れば不満がなお残るといたしましても、今日、この程度の法案が提出できるのでありますなれば、なぜもっと早く提案をされて、善隣友好にも役立つ対応ができなかったのか。我が国の政治は外圧がなければ前進をしないのかとの印象がつきまといます。本件に関する法務省御当局の所信を求めます。
○政府委員(股野景親君) 歴史的な展望に立った一つの御指摘と受けとめさせていただいたわけでございますが、実は在日韓国人あるいは在日朝鮮人の方々のように、終戦前から本邦に引き続き居住して、平和条約の発効に基づいて日本の国籍を離脱された人、あるいはその子孫の方々につきまして歴史的経緯を振り返りますと、これまで逐次この戦後の歴史の各段階というものを踏んで、その法的地位についての制度が整備されてきた、こういう経緯がございます。
 このたび、この法案をそういう方々についての法的な地位を一つのものとして新たに特別永住という資格を設けるという形で提案させていただいておりますが、こういう法律を国会にお諮りできる、そういう法律を国会に提出させていただくことができるということにつきましては、やはりこれまでの、ただいま申し上げましたような逐次の歴史的な段階があり、歴史的な推移というものがあって、今日これが可能になったんだろう、こういうふうに考えているわけでございます。
 すなわち、最初に昭和二十七年の法律第百二十六号というものがあり、その後昭和四十年の日韓法的地位協定に基づく協定永住許可制度、さらには昭和五十六年の法改正に基づきます特例永住許可制度等々が各段階の措置でございます。
 今度のこの法案につきましてはそういうものを踏まえた上で、なおその後の情勢のいろいろな発展、あるいは日韓両国間の法的地位協定に基づくところの協議、こういうものを踏まえて、こういう方々全般について一つの新しい法的地位を設けさせていただくということでございまして、そういう戦後の歴史の中のいろいろな情勢の発展を経てそういうことが今度新しい制度として御提案できるということは、それはまた一つの重要な意義を持つものである、こういうふうに考えておるところでございます。
○山田耕三郎君 本法案では、旧植民地出身者は日本との平和条約によって国籍を離脱したとされておりますが、平和条約とてもこの人たちが原因者ではございません。国籍離脱も決して本人の意思に基づいて離脱していったものではありません。日本の敗戦により植民地政策が崩壊、この人たちを取り巻く状況に変化が起こった結果措置されたものであり、原因者はやはり日本であるはずです。法律にいたしますとこのような文章になるのもいたし方がないのかと素人目にも思いますが、すべては国家が勝手なことをやった結果、この人たちに犠牲を強いてきたのです。
 だとすれば、迷惑をかけた人たちへの法的地位を規制する法律を制定するに当たっては、まず過去の日本の過ちに対する反省と謝罪がにじみ出ていなければならないのではないかと思います。それどころか逆に、許可の文言がやたらと多く、また法律案の趣旨では、その歴史的経緯及び定住性を考慮し、その法的地位の安定を図るためとしておられながらも、第四条には法務大臣によるその旨の確認を受け、この法律に定める特別永住者として本邦に永住することができるとあるとおり、極めて恩恵的な表現に奇異を感じます。
 本国に生活の基盤のないこの人たちにとっては、希望される限り日本人と同様、特別の規制もなく定住することのできることが当然なのではないか、そうすることに何か不都合がありますのか、このことに対して法務大臣の所見を求めます。
○国務大臣(左藤恵君) 平和条約で国籍離脱者それからその子孫の方々でありましても、やはり国籍が日本にあるわけではありません、外国人という取り扱いになっておるわけでありまして、そういう意味では、日本国民とはその法的地位とか取り扱いに若干の差が生まれてくるということは、これはやむを得ないことだろうと思います。したがって、外国人でありながら法律上当然に本邦に在留し、出入国することができるものではなくて、その永住、再入国等についてはやはり何かそこに条件というようなものが生まれてこざるを得ないわけでありまして、それが法務大臣の許可という形になっておるということでございます。
 こうした立場を踏まえた上で、なおこの法案におきましては、先ほどからお話がありました歴史的経緯とか定住性というものを十分考慮して、そして平和条約に基づく国籍離脱者は原則として何ら手続を要することなく法定の特別永住者という
ことにするほかに、これらの者の子孫につきましても裁量の余地なく特別永住を許可する、こういうことにいたしまして、その法的地位の安定化を図ろう、こういうのが今回の制度の特段配慮をしておるところでございます。
○山田耕三郎君 この法案には退去強制や再入国許可制度が存続させられておりますが、このことが端的に示しておるように、政府・法務省は侵略戦争や植民地支配に対する反省を口にしておいでになりますが、在日韓国・朝鮮人、台湾人に本当に安定した永住権を保障するのではなく、相変わらずこの人たちを治安管理の対象として処遇しようとする姿勢が見え隠れするのを否定することができません。
 例えば退去強制についても、協定永住者については七年を超える懲役または禁錮であったのが、覚書及び法案は特定の重大な犯罪に限定をするという形で軽減をしようとする旨、説明をしておられますが、既に母国に生活基盤を持たない者にとっては退去強制はやはり一つの威嚇であり、刑罰を二重に科するに等しいし、重大な犯罪に限定しているとおっしゃいますけれども、法務大臣の恣意にゆだねられた面も多々あり危険であります。
 退去強制を置く意味はどこにあるのかお尋ねいたしますとともに、あわせて「日本国の重大な利益が害された」とする背景にある国益の認定基準は一体何なのか、さらには麻薬犯罪などもこの中に入るのか入らないのかについてお尋ねをいたします。
○政府委員(股野景親君) お尋ねの点が三点ございましたので、お答えを申し上げたいと思います。
 まず、退去強制事由というものを依然この特例法で置いている意味はどこにあるのかという点でございますが、これは大臣も先ほど申し述べましたように、この特別永住者という特別の地位を有せられる方ではありますが、やはり外国人でおられるということが一つの要素としてあるわけでございます。その外国人であるということに伴いまして、日本の国の国家としての利益が害される、重大な利益が害される、こういったような場合には、これは万やむを得ないものとして退去強制手続というものが法的に用意されておくことが必要で、かつまた妥当なもの、こう考えている次第でありまして、極めて特定され、極めて限定されたものですが、やはりそういうものの意味があると考えているわけでございます。
 それでは、またあわせて「日本国の重大な利益が害された」とは、これはどういう認定がなされるのか、こういう二番目のお尋ねでございます。この点は、まず犯罪であります場合に、この犯罪が社会的に見てこれは重大であるというのはもとよりでございますが、さらに国の重大な国家的な利益というようなものの侵害ということに規定をいたしております。
 それじゃ、具体的な認定はどうなるのかという点につきましては、基本的には個々の事案に応じまして判断するということになりますが、これはそれに関連する内外の情勢といったものも含めまして十分慎重な判断というものが必要になってまいろうかと思っております。
 また、その関連で、さらに麻薬犯罪というようなものが、それではそういうところの国家の重大な利益を害する行為になってくる場合があるかどうかというお尋ねでございます。この麻薬犯罪といいましても、それはまた一つ一つの行為がさまざまなものがあろうかと思いますが、通常の麻薬犯罪というぐらいでございますと、これは重大な国家的利益が害されるというようなことには当たらないと考えられますが、しかし、それじゃ麻薬犯罪が絶対重大な国家利益を害することがないかということになってまいりますと、もし非常に大規模な麻薬犯罪組織というものが関与してきて、そして国の一つの国家的な秩序というものを破壊する、こういったような目的で大規模な犯罪行為が行われる、こうなってきますと、そういうことについて国家の秩序が著しく害されるとなってきたような場合にこれは日本国の重大な利益が害されるといった場合が無しとはしない、こういうような考え方であろうかと思っております。
○山田耕三郎君 次は、再入国許可制度について、法案では確かに緩和されております。しかし、再入国許可制度そのものは間接的には退去強制を担保するものだとの意見もあります。国際化社会の今日、出入国の自由という人権が今までより以上に大きくなっていることを考慮いたしますと、このような形で縛りをかける合理性はどの程度あるのか。この人たちの日本在住の歴史的経過を考えるときには、これくらいのことは日本国民と同様の形をとるべきではなかったのかと思いますが、法務省の見解をお尋ねいたします。
○政府委員(股野景親君) 先ほど来再入国許可制度についていろいろ御論議を賜ったところでございますが、基本的に国際慣習法上外国人の入国の自由というものが認められているということではないと言えると思いますので、そういう意味で日本の一つの国際的な立場ということをいろいろ考えました上でも、なお再入国許可制度ということ自体の一つの存在の意味というものはあるだろうと考えておる次第でございます。
 しかしながら、その運用につきましては、またこれも先ほど来御説明しておるとおりでございますが、特別永住者の方々につきまして、この法律の趣旨そのもの、そしてさらには衆議院でちょうだいいたしました修正というものの趣旨等を踏まえまして、この方々の日本における定住性という実態を尊重して海外渡航が円滑に行えるようによく配慮していく、こういう対応で臨んでまいるところでございます。
○山田耕三郎君 以上お尋ねをいたしましたほかに、覚書に触れられている問題として、指紋押捺廃止、登録証の常時携帯義務の廃止、公務員採用問題等の雇用問題及び教育権の確立等多々ございます。それらのうちから、まず雇用問題についてお尋ねをいたします。
 就職差別は現在憂うべき状態にあります。就職差別解消のための行政指導の強化は喫緊の要件です。特に大企業ほど門戸が閉ざされているという傾向にあります。政府が率先をして雇用の拡大を図るとともに、就職時だけではなしに雇用後の差別をなくするためにも、雇用実績の調査、公表、さらには啓発活動を含めた行政による差別の監視が必要な事態に来ておると思います。労働省に対しまして、これらに対するお考えを承りたいと思います。
○説明員(吉免光顯君) お答え申し上げます。
 私ども労働省でございますが、企業の採用選考につきましては、国籍等、応募する本人の職業適性でありますとか能力、そういったことと関係がないことで採用選考を行わないように、公正な採用選考が行われるということでそういうシステムを確立するように指導をしているわけでございます。また、不幸にも非常にそういった方法が不適切であるような場合には、該当の求人者と連絡をとりまして、採用選考の経緯に問題があったかなかったか、そういった調査も行って是正指導をしておりますし、そういう観点で再発防止に努めているわけでございます。
 委員御指摘の在日朝鮮・韓国人等について、どれくらいの雇用をどういうふうにしているかということを調査するということにつきましては、逆に個々人を特定するというような懸念もございますし、プライバシーの侵害ということにもおそれが出てまいりますので、なかなかこれは難しいことではないかというふうに考えております。
 ただ、御指摘ございましたように、いずれにしても事業主に対して意識啓発といいますか、そういった指導を重ねていくということが非常に大事でありますし、問題解決につながっていくことだというふうに考えておりますので、そういう点で努力を重ねてまいりたいと思いますし、特に今年度は新たにこれらの人たちに対する就職の機会均等といいますか、そういう点で事業主を集めた説明会を開いたり、あるいはいろんなリーフレット等の啓発資料を作成して指導啓発といいますか、そういった活動を強化していきたい、このよ
うに考えております。
○山田耕三郎君 次は、教育についてお尋ねをいたします。
 覚書では、韓国語や韓国文化の学習への配慮が述べられていますが、全く当然なことでありますし、国際化社会における価値の多様化を尊重するためにも必要なことであります。しかし、現実は民族教育を反日教育として排撃する市民感情もございます。こういったことを誘発しかねない、従来の民族性を抹殺しようとするのではないかと思われるような態度はやはり反省をすべきです。さらに差別解消のための教育を徹底するとともに、民族学校に対する自主性の尊重を前提とした卒業資格の付与、補助金などで助成をする配慮は当然のこととして、特に最近各地でその芽生えが見られるようになりましたスポーツ、文化活動の交流促進がさらに図られるべきだと思いますが、文部省当局の所信を承りたいと思います。
○説明員(牛尾郁夫君) ただいまお尋ねのいわゆる民族教育の問題でございますが、さきのいわゆる日韓三世協議において決着が図られた教育問題の一つでございます。
 決着の内容といたしましては、現在地方自治体の判断によりまして学校の課外で行われております韓国語や韓国文化等の学習が今後も支障なく行われるよう日本国政府として配慮する、こういうことでございました。文部省におきましては、これを受けまして去る一月に各都道府県教育委員会等に対しまして通知を発出いたしまして指導を行ったところでございます。
○山田耕三郎君 もとに戻りまして、諸外国との比較について、法務省当局にお尋ねをいたします。
 かつて植民地を有しておりました欧米諸国の旧植民地出身者に対する対応はどのようになっておりますのか。特に、イギリス、フランスを中心に法務省所管に属する分野でおわかりの程度だけで結構ですから御説明をいただきたいと思いますとともに、これらの国々の施策は我が国のそれと比較してそれぞれ長短はあることと思いますけれども、概括的に見ていずれがすぐれておりますのか、あわせてお尋ねをいたします。
○政府委員(股野景親君) ただいま御指摘いただきました欧米、その中でもイギリス、フランスあるいはアメリカという国との比較を私どもとしても試みてみました。なかなかそのものでの比較ということが難しい点がございますが、英国で見ますと、英国の国内で出生した者であって、その人が英国の市民の子供あるいは英国に定住している外国人の子供、こういう場合にこれは英国の市民として扱う、こういう制度があると承知をいたしております。また、アメリカにつきましてはこれはアメリカの国内で出生いたしますと、またその出生によってアメリカの市民とされる、こういう制度がございます。日本とその点がいずれも大幅に異なる点でございます。他方、フランスではフランスの国籍を有していない者についてはこれは外国人、こういう扱いになりまして、旧植民地国の人の子供として生まれたというようなことによる国籍とか法的地位について特別の規定はないと承知をしておるところでございます。
 さて、そういう状況に対しまして、この法律というものは先ほど来御審議いただいておりますように、日本国との平和条約の発効によって元日本の国籍を有していた方が日本の国籍を離脱されて、しかも終戦前かち引き続き日本に住んでおられる方、そしてその子孫の方、こういう方を対象としまして、そういう歴史的な経緯と日本における定住性ということにかんがみて、子々孫々に至るまで非常に安定した特別の法的地位というものを保障する、こういう内容になっておりますので、そういう意味ではちょっと比較のベースというものがなかなか難しいわけでございますが、こういう法律というものについてだけ見るならばちょっと諸外国には類似の例というものは見当たらないというふうに感じております。
   〔理事中野鉄造君退席、委員長着席〕
○山田耕三郎君 最後に、左藤法務大臣にお尋ねをいたします。
 旧植民地住民に対する我が国の施策はただいまお聞きのとおりでございます。我が国における民族差別意識が非常に憂うべき状態にありますということは、ただいまの御答弁ではありますけれども、こういった旧植民地の皆さんに対する取り扱いがやはり我が国は厳しいのではないか、このように私は考えております。例えば、現実の社会において現に借家の入居等に厳しい差別があります。現実を直視していただき、社会のさまざまな場で行われている差別の解消のために、特に法務大臣とされましては積極的な行政の監視、啓発活動を行っていただく必要があると思います。
 そういった立場から、このことに対する大臣の御所信を承って、私の質問を終わりたいと思います。
○国務大臣(左藤恵君) すべての人間は平等であり、ひとしくその人権が尊重されなければならない、されるべきものである、このように考えるわけであります。
 そこで、在日韓国・朝鮮、台湾の人々を初めとして外国人のすべての人権は尊重されなければならない、このように考えますが、今お話しの点もありまして法務省といたしましても従来からそういう人権の尊重につきまして種々の啓発活動を実施してまいりましたけれども、今後ともこの差別の根絶、それから外国人の人権の確保という点で啓発の努力をさらに重ねてまいりたい、このように考えているところでございます。
○山田耕三郎君 終わります。
○紀平悌子君 大分時間もたってまいりましたし、同僚議員の御質問に対しての御答弁の中で、およそ私自身の持っておりましたいろいろお伺いしたいことのお答えもお答えをいただいているという状況ではございますけれども、確認の意味も含めましてしばらく時間をいただきたいと思います。
 本特例法案に関しまして、まず一九五二年平和条約発効以来の韓国・朝鮮の方々、台湾の方々の在留制度及び日本はおける法律上の地位の変遷を簡潔にお教えいただきたいと思います。
 先ほど来、逐次の歴史的変遷を経てというお話でございましたけれども、このことは約四十年近くかかっているということでございますので、国民のためにそれを教えていただきたいと思います。
○政府委員(股野景親君) 昭和二十七年に日本国との平和条約が発効いたしまして、そこでこの平和条約の発効に基づきまして日本国籍を離脱をされたという方々が今度の法律の対象になっております。そういう方たちについての法的地位の変遷ということを概略逐次御説明を申し上げたいと思います。
 まず最初に、昭和二十七年の、先ほど来言及をさせていただいております法律第百二十六号というものができまして、その法律第百二十六号におきまして平和条約に基づいて日本の国籍を離脱する方で終戦前から引き続き本邦に在留する者及び平和条約発効日までに出生したその子供、こういう者はその後も引き続きこの法律第百二十六号によりまして、本邦に在留資格というものを有することなく本邦での在留をすることができる、こういう法的措置がとられました。これが一番の大もとの基礎になっております。逐次その後、同じ昭和二十七年でございますが、外務省令の第十四号が定められまして、その中でただいま申し上げました法第百二十六号、それの二条の六項で規定された方たちが、ただいま申し上げました大もとの法的地位を持っておられる方ですが、その方たちの子供の在留資格というものをまず定めたということがございます。
 さらに下りまして、昭和四十年に日韓法的地位協定ができまして、これに基づくところのその法的地位協定を実施することに伴う出入国管理特別法が昭和四十年の法律第百四十六号として規定をされました。ここで法的地位協定で定められましたところの在日韓国人の第一世代及び第二世代の方々についての協定永住許可というものが定めら
れました。また、退去強制事由について先ほど来御審議いただいているように、非常な限定を行ったという経緯がございます。
 次いで、昭和五十六年に至りまして、入管法の一部を改正する法律、法第八十五号が成立をいたしました。これは一般の入管令でございますが、その附則の改正が行われて特例永住許可制度というものができました。これによりまして従来法律第百二十六号、すなわち昭和二十七年の法律をもって本邦に在留資格を有することなく在留を続けてきた方々を対象にしまして、その該当者とその子孫について申請に基づいて永住許可を与えるという新しい制度ができました。この場合に、昭和四十年の法的措置が在日韓国人の方々を対象といたしましたのに対して、その在日韓国人の協定永住許可で永住許可をとらなかった朝鮮半島出身の方々が数多くこの際、この昭和五十六年の法律によりまして新たな永住許可をとられたということがございました。また、同じくそのときの法改正でその永住者等の配偶者や子についての簡易な要件での永住資格の取得ということが認められたわけでございます。
 以上を総合いたしまして、この法律の対象となる方々が最初の法第百二十六号の該当者それから日韓協定永住の許可を受けている方、さらには一般の入管法の永住者の在留資格を持っておられる方、そして最後に法百二十六号の二条の六項でおられる方の子供としての在留資格を持っておられる方々、こういる方々が法の対象となり、さらに入管法の一般の在留資格の中でのいわゆる在留期間というものを伴う在留資格を持って在留される方、これも同じくこの法律の対象者にさせていただいているわけでございます。
 そういう意味で、大まかに言いまして五種類の異なる法的地位を持っておられる方々がこの法律によって新しく一つの法的地位を得られるに至った、こういう経緯でございます。
○紀平悌子君 ありがとうございました。
 いろいろ歴史的な事情によって一たんは日本人とされ、そして日本国の敗戦、平和条約の発効で日本国籍から離脱せざるを得なかった方々が今回の法改正によって法定の永住許可を得るに至るということにまさになるわけですけれども、およそ三十九年くらいの月日を要しております。こういう長い時間の間でさまざまな御努力というものがあったと思いますが、いわゆる外国人差別事象の発生の原因がこうした韓国・朝鮮の方々などの身分の不安定ということが相当程度背景になっていたというふうにも思われるのですけれども、その点についてどんなふうな評価をお持ちでございましょうか、法務省に伺います。
○政府委員(股野景親君) この点、ただいま申し上げましたような歴史的な経緯をたどりまして、法的地位を安定的なものにする措置を逐次積み重ねてまいったところでございます。
 今の委員御指摘の身分の不安定ということと差別の発生ということに関連があったんではないかという御指摘でございますが、なかなかこの差別の問題というのは難しい問題でございます。私どもとしても、これは国民一人一人が日常生活の場で在日韓国人や朝鮮人の方々の立場についての理解と配慮というものを深めていくということが基本的に大事であろうと考えております。そういう関連で私どもとしては、この法的地位の安定化ということについてこれまで逐次各種の措置と努力を積み重ねてまいりましたが、この新しい法律というものはその意味での法的地位の一層の安定化ということがここでできるものと意義を見出しているところでございます。
○紀平悌子君 先ほど同僚議員の御質問の中でお答えの主たるところはもう伺っておりますのですが、今回の法改正によって特別永住者としての身分を取得するであろう方、その方の年齢別人口などはおわかりでございましょうか。
○政府委員(股野景親君) 私どもなりに統計を見ましておよその計算をいたしました結果、十年刻みの年齢構成を見てみると、対象者となります約六十万八千人の方について以下のような構成になります。
 すなわち、まずゼロ歳から九歳の年齢に当たられる方が約六万九千人、それから十歳から十九歳の年齢に当たられる方が約十万三千人、それから二十歳から二十九歳の年齢に当たられる方が約九万八千人、さらに三十歳から三十九歳の年齢に当たられる方が約十万人、そして四十歳から四十九歳の年齢に当たられる方が約九万八千人、五十歳から五十九歳の年齢に当たられる方が約六万一千人、そして六十歳から六十九歳の年齢に当たられる方が約四万六千人、七十歳から七十九歳の年齢に当たられる方が約二万五千人、そして八十歳以上の方々が約八千人と、このような年齢構成になるという把握をいたしております。
○紀平悌子君 先ほどから御質問が引き続いてございます第九条でございますけれども、特別永住者の退去強制についてでございます。私もこうした退去強制の規定が必ずしも必要であるのかどうかという疑問をいささか持っております。
 ここ十年間の韓国・朝鮮、台湾出身の方々などの退去強制がどのくらいの人数、また年ごとに、どんな理由であったでしょうか、お教えいただきたいと思います。
○政府委員(股野景親君) 今回の特例法の対象となります在日韓国人の方、あるいは在日朝鮮人の方について過去十年間を振り返ってみますと、その間に実際に退去強制を行った人の数は十六名、こういう数になってまいります。
 その内訳は、先ほど申しました日韓法的地位協定の実施に伴う出入国管理特別法、これの第六条の該当者が八名でございました。別途一般入管法の第二十四条の該当者が同じ数でございますが、八名おります。
 これを年別に見ますと、昭和五十六年がまず十二名でございます。その内訳が入管特別法の該当者が五名でございまして、それから一般入管法の該当者が七名でございます。それから、昭和六十年は、これは一人でございまして、入管の特別法の該当者でございます。六十一年も一人でございまして、これも同じく特別法の該当者でございます。それから六十二年、これも一人おりまして、これも同じく特別法の該当者でございます。六十三年は、一般入管法の二十四条該当者が一名という数になっておりますので、そういう意味で十六名の人が実際に退去強制を行われたということでございます。
○紀平悌子君 九条の一項四号なんでございますが、先ほど御質問もございましたけれども、「犯罪行為により日本国の重大な利益が害された」というその表現、いま一つ具体的に教えていただければ、例えばどういうことでございましょうか。
○政府委員(股野景親君) 例えで申し上げますと、国の中枢機能を破壊する目的で爆発物を爆発させるというような爆発物取り締まりの罰則違反とか、あるいは交通機関を転覆させる、電・汽車の転覆、さらには殺人とか放火、こういったような罪を犯して、そして無期または七年を超える懲役または禁錮に処せられる、こういったようなものが日本国の重大な利益が害されるということでございますので、一般的にいわゆるテロリストの行為と、こういったものを想定をいたしております。
○紀平悌子君 無期または七年を超える懲役もしくは禁錮刑に処せられたというのは、これは処断刑のことを言っておりますのですか。
○説明員(本間達三君) 処断刑ではございませんで、実際に裁判で言い渡した宣告刑という意味でございます。
○紀平悌子君 入管関連で在留の外国人の犯罪の現状につきまして、警察庁にお伺いしたいと思います。
 それに先立ちまして、一昨日四月二十三日の深夜、警ら中の四谷警察署の西村警部補が中国国籍の容疑者に刺殺されたということにつきまして、哀悼の意を表しながら御質問申し上げます。
 平成二年度以降、現在までの外国人関係の犯罪の発生件数とその傾向、対策について、簡単で結構でございますので警察庁にお伺いしたいと思い
ます。
○説明員(小田村初男君) お答えいたします。
 平成二年の外国人全体の刑法犯の検挙件数でありますが、一万三千四百十件となっております。ここ数年の傾向といたしましては、窃盗犯が若干減少して凶悪犯が増加しているというようなことが挙げられます。特にこのうち、来日外国人による刑法犯の検挙状況でありますが、四千六十四件の二千九百七十八名ということでありまして、検挙人員につきましては前年とほぼ同数でありますが、検挙件数は過去最高ということで増加をしております。
 その特徴的な傾向といたしましては、一つはアジア地域からの来日外国人による犯罪が検挙件数全体の八四・九%を占めている。またこの関連で、アジア地域からの外国人の入国者数につきましては全体の約六割程度でありますので、それと比較しますとその比率は高いということが言えると思います。
 二つ目でありますが、殺人、強盗等の凶悪犯罪につきましては検挙件数七十七件、検挙人員百十一名ということで依然多発傾向にありまして、検挙人員では過去最高となっております。中でも不法就労中のフィリピン人、パキスタン人等によります殺人事件、中国人就学生らによります強盗事件等の凶悪事件が目立っております。
 三つ目には、偽造トラベラーズチェックやクレジットカード使用詐欺事件等の国際的な職業犯罪者グループによると見られる犯罪が多発しているというようなことが挙げられます。
 こうした情勢に対処するための警察庁としましての対策でりあますが、国際捜査体制の整備強化と国際捜査協力の強化、こういうことを核といたしました諸対策を積極的に推進しているところであります。
 具体的には、国際捜査体制の整備強化につきましては、平成元年の四月までに全国のすべての都道府県警察に国際捜査係を設置いたしましたのを初め、通訳体制の強化を図るために国際捜査研修所における研修の拡充及び部外通訳協力者の確保に努めているところであります。また、国際捜査実務教養の充実を図るため、国際捜査研修所を初め管区警察学校及び都道府県警察における教養の拡充に努めております。
 二つ目の国際捜査協力の強化でありますが、ICPO事務総局及び加盟各国警察との密接な連絡による情報交換や具体的事件に際しての外国捜査機関との捜査協力を積極的に推進しているところであります。
○紀平悌子君 ありがとうございました。
 次に、覚書においても触れられております指紋押捺の代替手段の開発に関してでございます。
 この代替手段、先ほど御説明がありましたのでそのお答えは結構でございますが、この代替手段の性格でございますけれども、戸籍原本に近いようなものでございましょうか。それとも住民票的なものでございましょうか。これが人物証明として非常に適切なものになるのかということでお伺いしたいと思います。
○政府委員(股野景親君) 先ほどこの外国人登録の中に家族事項を加味するということを申し上げました。その関連で、どういうそれじゃ家族事項を加味する仕方を今考えているか。これは現在まだ検討中の段階でございまして固まったわけではございませんが、その家族の父、母、配偶者、子、こういったような人たちの氏名を記載いたします。それからその続き柄は書く、また生年月日を書く、このぐらいを考えておりますが、しかし例えば婚姻とか認知とか養子縁組とかそういうような身分行為を記載することは考えておりませんので、それはどちらかというと表記の仕方は住民票的なものになろうかと思っております。
 そこで、そういうものをもってこの本人であるという同一性を確認するために、この家族関係の事項ということについての問い合わせ、本人に対する質問あるいは家族に対する問い合わせを行えば、やはりその本人が例えばほかの人と入れかわっていない、こういうことについての一つの手段になるという意味で家族事項というのは意味があると考えているわけでございます。
○紀平悌子君 代替手段がもし相当人物確認について有効性のあるものでございましたら、韓国・朝鮮、台湾の方々と同じように、日本に極めて長い間住んで生計を立てていらっしゃる他の国籍の方々に対しても一定の要件、例えば在留年度とか生活実態だとかそういうものが一定の水準を満たして日本における生活実績がある者については、その希望によって指紋押捺要件を緩和する方向性をとった方がよいのではないかと思います。これは、人である以上その人権を可及的に尊重すべきとする日本国憲法の趣旨にも沿うようになると考えますけれども、指紋押捺に関する有識者懇を含めて検討されておられるわけですね。この有識者懇に期待するわけですけれども、この対象をもう少し広げて緩和するというようなことについてはいかがでございましょうか。法務省に伺います。
○政府委員(股野景親君) 従来の指紋押捺にかわる手段の開発とそれの開発に伴うところの新しい措置の導入、そしてそれによって指紋押捺を行わないこととする、この方針は在日韓国人の方についてこれを日本政府として明言をいたしているところでございます。
 さて、それでは在日韓国人以外の方々で、しかしこの在日韓国人と同様の歴史的経緯や定住性を有せられる、すなわち今度の特例法の対象になられるような方々について、これは今その在日韓国人の方々についての指紋押捺にかわる手段を開発しておるところでございまして、その開発を今行っている中でそういう在日韓国人の方と同様の歴史的経緯及び定住性を有せられる方々についてのことを念頭に置きながら検討をあわせて今行っているというところでございます。
 さて、それではそれをさらに超えてこの特例法の対象にならない外国人の方々のどこの範囲にこの指紋押捺にかわる手段の導入ということが考えられるかという問題がまたございますが、これについてはまた別途の検討が必要であろうと思いますが、ただいま申し上げました在日韓国人の方々を中心として今指紋押捺にかわる手段の開発を行っております中で、その一般の外国人の方々の問題ということについての対応も考えていくことにいたしております。
 それから、今もう一つ懇談会の問題がございましたが、この懇談会についても今の私どものそういう作業を行っていく中で幅広く各界から御意見を伺うという趣旨でこの懇談会も開かせていただいているものでございます。
○紀平悌子君 ちなみに、その懇談会には女性の委員ほどのくらいおられますでしょうか。
○政府委員(股野景親君) 比較的小ぶりの懇談会でございまして、懇談会のメンバーとしては十人の方が今おられるわけでございますが、その中で女性の方はお一人いらっしゃいます。しかし、この懇談会のレギュラーのメンバーの方以外に、この懇談会を通じましてまた各方面からいろいろな御意見を伺うことにいたしております。
○紀平悌子君 女性が少な過ぎるように思います。男女同数にしていただきたい、指紋押捺の対象には女性もたくさんおられるわけですので。御説明を伺って数の少ないのにびっくりいたしました。ぜひこれは一番後で大臣にもお願いをしたいと思っております。
 次は、代替手段ができるまでというか、妥当な結果を得るまで現状が続くわけでございます。先ほど千葉委員の御質問に対してだったと思いますけれども、急いでこの代替手段を、できるだけ早くというふうなお答えでございました。この二年の間にはそれはなさらなければならないわけだと思いますけれども、もう少し早くというか、例えば一年後ぐらいにはめどが立つとか、そういうふうなことで何か御公約ができますでしょうか。
○政府委員(股野景親君) この指紋押捺の開発には実は三段階ございまして、第一段階が現在私どもが取り組んでおります指紋押捺にかわる手段の開発そのものの段階でございます。第二段階は、
この内容をまとめましたものを法律の形にして国会にお諮りして国会で御審議をいただくというのが第二段階でございます。国会での御承認をいただきました後、今度はこの外国人登録制度が新しい制度になりますので、これを実際に外国人登録の事務を行っておられる全国の市区町村の側に十分周知徹底して新しい制度に取り組んでいただくための準備をいただく、これが第三段階になります。
 その三つの段階をできるだけ早くして二年以内にこの措置をしようということでございまして、各段階それぞれについて私どもとしてはできるだけ早くその措置を進めていきたいという希望を持っておる次第でございます。
○紀平悌子君 私は、基本的にはこの法改正に賛成の立場で御質問を申し上げておりますけれども、今後、本法の改正施行後でございますが、特に在日の韓国・朝鮮、台湾の方々などについて、我が国の入管政策行政といういわゆる国益とそのバランスをとった上で積極的な民族差別解消への努力を官民のあらゆる分野で図っていくべきだと考えます。この改正を機に法務省が図っていかれるこういった差別撤廃の具体策がおありになれば、今後の方針ともどもお聞かせいただきたいと思います。
○政府委員(篠田省二君) 在日韓国・朝鮮、台湾の人々を初めといたしまして外国人の人権も尊重されるべきであるということは当然のことであると考えております。そういった考えに立ちまして、法務省の人権擁護機関といたしましては外国人差別をなくするために積極的に啓発活動を行っていかなければならないわけでございますけれども、基本的人権が侵害されるような具体的な事案があった場合には、人権相談及び人権侵犯事件の調査を通じまして在日外国人の人権の擁護を図るということを今後とも積極的に図ってまいりたいと思いますし、また一般的にそのような事例再発防止に向けての啓発活動に積極的に取り組んでまいりたいと思っております。
○紀平悌子君 最後に、法務大臣にお伺いしたいと思います。
 韓国の方々そのほかに対する就職差別とか就学差別についてどのようにお考えでございますでしょうか、率直にお伺いしたい。
 また、今後の入管行政を含めて差別解消に努めていかれるその大臣としての大きな御方針というものをお聞かせいただきたいと思います。
○国務大臣(左藤恵君) 就職差別、それから就学差別の問題につきましては、国民一人一人が職場や学校あるいは地域社会といった日常生活の場において、これらの人々の立場についての理解と配慮を一層深めることがその解決に当たっての基本である、このように考えるわけでありますが、法務省といたしましては今後とも人権擁護の見地から差別解消のために努力してまいりたい、このように考えておる次第でございます。
○紀平悌子君 ありがとうございました。
 終わります。
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○委員長(矢原秀男君) この際、委員の異動について御報告いたします。
 本日、八百板正君が委員を辞任され、その補欠として会田長栄君が選任されました。
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○委員長(矢原秀男君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
 これより討論に入ります。
 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。――別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
○委員長(矢原秀男君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり]
○委員長(矢原秀男君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後三時四十六分散会