第126回国会 法務委員会 第3号
平成五年三月二十九日(月曜日)
   午前十時開会
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         片上 公人君
    理 事
                下稲葉耕吉君
                真島 一男君
                竹村 泰子君
                猪熊 重二君
    委 員
                斎藤 十朗君
                鈴木 省吾君
                服部三男雄君
                平野 貞夫君
                山本 富雄君
                大脇 雅子君
                角田 義一君
                深田  肇君
                矢田部 理君
                石原健太郎君
                紀平 悌子君
   国務大臣
       法 務 大 臣  後藤田正晴君
   政府委員
       法務大臣官房長  則定  衛君
       法務大臣官房司  濱崎 恭生君
       法法制調査部長
       法務省民事局長  清水  湛君
       法務省刑事局長  濱  邦久君
       法務省矯正局長  飛田 清弘君
       法務省保護局長  杉原 弘泰君
       法務省訟務局長  加藤 和夫君
       法務省人権擁護  筧  康生君
       局長
       法務省入国管理  高橋 雅二君
       局長
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務  上田 豊三君
       総局総務局長
       最高裁判所事務  泉  徳治君
       総局人事局長
       最高裁判所事務
       総局民事局長   今井  功君
       兼最高裁判所事
       務総局行政局長
       最高裁判所事務  島田 仁郎君
       総局刑事局長
       最高裁判所事務  木村  要君
       総局家庭局長
   事務局側
       常任委員会専門  播磨 益夫君
       員
   説明員
       警察庁刑事局保
       安部生活保安課  瀬川 勝久君
       長
       総務庁行政監察  田中 順一君
       局警察官
       文部省初等中等
       教育局中学校課  河上 恭雄君
       長
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○検察及び裁判の運営等に関する調査
 (法務行政の基本方針に関する件)
○裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内
 閣提出、衆議院送付)
    ―――――――――――――
○委員長(片上公人君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 検察及び裁判の運営等に関する調査を議題とし、法務行政の基本方針に関する件について質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○竹村泰子君 昨年十二月、後藤田法務大臣が就任されまして、去る二十三日に所信をお伺いいたしました。本日は当委員会におきます最初の質疑応答でございますので、大臣から率直なお答えをお伺いしたいと思います。
 法務大臣の発令に当たり、今回の後藤田法務大臣の御就任ほど世論がかまびすしいことはなかったのではないかと思います。一方には政治不信があり、他方には検察批判がありました。いずれもその信頼回復のために後藤田法務大臣の采配ぶりを期待されての入閣とも言われておりますし、また事実、総理からどうぞよろしく頼むという、そういう期待をされた、要請をされた事柄があったというふうに私どもは聞いておりますけれども、その御指示はどのようなものであったのでしょうか。
○国務大臣(後藤田正晴君) 昨年の十二月十二日に第二次の宮澤内閣が発足をしたんですが、その前日、総理から御要請がございました。ただ、特別にどういう仕事があるからといったようなお話ではございませんで、ただ難しい時期だからしっかりお願いしますよとこういうことで、まあしかしこういう言葉は、私は何回も閣僚をやっていますが、毎回同じなんですね。特別な私は意味合いを持ってお話があったとは理解しておりませんし、私もまた、何といいますか、難しい時期だから厄介だなあということは思いながらもいわば普通のことだなあと、こう思いながらお引き受けをした次第でございます。
○竹村泰子君 御就任のときのインタビューが随分各社新聞に出ておりまして、その中で国民の批判に対しては正面から受けとめる心の余裕がほしい、ゆとりがほしいというふうなお言葉もございます。また検察批判の中に、検察は適正な手続の中できちんと事案を処理する、しかし法律の中に制約があって、この制約を枠を越えることは絶対許されない云々とございまして、しかし国民の目から見たら不公平ではないかなどという疑問が噴出をしている。これは法律を改正しなければできないことだと、そして法律のどこに欠陥があるのかを指摘することだと、解明するべきは解明すればよろしいが、それで解明すれば終わりではないと、一番大事なところだというふうなお言葉、数々出ております。
 今、御就任のときから時が大分たっておりますし、どんどん金丸さんのやられましたさまざまな富の蓄積に絡むいろいろな汚れた部分、検察の手によって明らかにされているわけでございますけれども、今どのように法務大臣はお考えになっておられますか、率直な御意見をもう一度お伺いしたいと思います。
○国務大臣(後藤田正晴君) これまた就任のときというのは、任命があったその晩に記者会見があるわけです。そのときには大体いつも事務当局からいろんな説明を聞きながら記者会見でお答えをするわけですが、大体、大臣就任早々ですから事情のわからぬままにあそこでいろんな応答をせざるを得ないことになるわけで、人によってもまたいろんな経歴等からくる濃淡があろうと思います。私も別段検察の仕事を承知しているわけでもありませんけれども、似たようなところの仕事を長年やっておりましたから、率直にあのときは、今、竹村委員がおっしゃったような考え方をお述べをしたわけでございます。今でも一つも変わっておりません。
 やはり、検察といえども国の一つの組織でございますし、また検察官もこれは国の公務員でございますから、国民の批判に対しては率直に耳を傾けなきゃ私はならぬことであろうと。そしてまた、やはり弱い人間でございますから時に失敗もあるでしょうし、成功もあるでしょう。そこらは素直な気持ちで私は国民の声に耳を傾け、批判は批判として受けとめなきゃならぬということは当然であろうと。
 当時は、ちょうど例の金丸さんの五億円の問題があり、検察の処理に対して国民の厳しい批判があったことも事実でございます。やはり国民の立場に立つと私はこれは当然の批判であるだろうし、当然の怒りであろうと思いました。ただ、こういった国民の批判は受けとめながらも、やはりこの批判の底にあるものにどうも検察官といいますか検察といいますか、そういうものに対する国民の皆さん方の中に理解しにくい面があるんではないかな、こういう点も私は率直に考えておったわけでございます。
 といいますのは、やはり検察の仕事というのは、一番大事なことは私はデュープロセスであろうと思うんですね。与えられた法律の枠の中で、法の適正な手続に従ってきちんとその枠の中で最大限の努力をするのが検察の役割であろうと、こう思います。枠を飛び越えることは許されない。ところが、国民の側から見ますと、いかにもおかしいではないか、けしからぬではないか、何をしているんだといった批判が出るのは、国民の立場に立ては、これまた私は当たり前の国民感情でもあろうと思います。
 そういったようなことを考えながら、検察というものは与えられた職員を与えられた手続の中できちんとやることだと、こう考えておるわけでございますが、その際、あの当時のことを伺いますとどうもその点に何かギャップがあるなど、やはりそういった国民の声にこたえるためには、法律そのものの中に問題があるんじゃないかといったようなことで立法論として解決をしなきゃならない面がある、それは政治資金規正法でございます。この政治資金規正法にやはり改善を要するところがあるんではないか、こういうようなことで、それはそれとして政治の場で解決をする必要がある。そして検察はその枠の中で適正に法の執行に任ずると。ここらでそれぞれのけじめをつけながら私はやらなきゃならないなと、こう思ったわけでございます。
 そこで、検察は法の中で精いっぱいのことはやったということは私は確信もし、検察に対する信頼感も持っておるわけでございます。
 一方、やはり私も政治家でございますから、党の中でこれはやはり政治資金規正法を、ああいった罰則がいかにも整合性を欠いておるじゃないかと。ならば、これは場合によればああいうときに強制権というものが発動できるような、罰金二十万といったような最高刑を改める必要がある。私は罰則で世の中よくなるとは思っておりませんよ。しかしながら、やはり整合性を欠いているところはきちんと直してもらおうということで、たしかさきの国会でこれは直していただいたと思いますが、そういったような一連の政治の場で解決しなきゃならぬ立法の問題。
 もう一つは、ああいった事件があれば、やはりこれはどこかに欠陥があるだろうと。それは現在の金のかかる政治の運営の中にあるんだと。ならば、これは政治の抜本改革としてきちんと改めるべきところは改めて、そして国民の信頼を得ることができるような政治の姿、これの回復に我々としてはやらなきゃなりません。これはまだ手がついておりません。これから私は国会の皆さん方にお願いもし、私も自由民主党の一員として政治改革の実現に努力をしなきゃならない、これは私の就任当時から今日まで変わっておらない考え方で、ややくどくなりまして大変恐縮でございましたが御理解を願いたいと、かように思います。
○竹村泰子君 今いろいろとお伺いいたしましたが、検察批判に対して法律の制約あるいは立法府の責任による処理、そういうことを大臣は力説されていらっしゃいますけれども、私はむしろ国民と政治家、あるいは国会議員と地方自治体の議員とで法の運用、取り扱いに事実上の差別があった、それを行ったことが今回の国民の検察批判を招いた一因であるというふうに見ております。
 そして、後藤田法務大臣は、この新聞記事の中でも、佐川解明の結果を政治改革に生かすということを何度もおっしゃっております。政治改革が本当に今必要だ、従来の汚職事件の反省を抜本的な政治改革の実現に生かせていないことが、繰り返し繰り返し同じことをまたもやってきたこのことが国民の政治不信を招いた最大のもので、これはもう自民党だ、社会党だ、公明党だ、そういうことでなく政治全体に対する国民の信頼をどうやって回復すればよいのかということが非常に大きな問題であると、これはもう大臣、繰り返しおっしゃっておられます。佐川問題につきましては後で同僚の大脇委員が質問させていただきます。
 しかし、ごく最近の情報によりますと、大手の建設会社、ゼネコンのリストの中に後藤田さん、あなたのお名前も出ているというふうに伺っております。これはひとつきっちりと調査をして国会に、あるいはこの委員会の中に報告を出していただきたい、強く要望いたしますが、いかがですか。
○国務大臣(後藤田正晴君) これは法務大臣としての私よりは、それぞれの担当の大臣がおりますから、そちらの方であの問題をどのようになさるのか、処理をしていかなきゃならない課題であるならばそのお立場の閣僚からお答えをすることではなかろうかなと、かように思います。
○竹村泰子君 もしそうでないのであれば、あなたの疑惑を晴らすためにも、これは担当の大臣にきちんと指示をしていただいて指導性を発揮していただきたい。強くお願い申し上げますが、よろしゅうございますでしょうか。もう一度御答弁をお願いできますでしょうか。
○国務大臣(後藤田正晴君) 結構でございます。
○竹村泰子君 私は、これは通告していないのですけれども、きょうはどうしても御質問を申し上げなければいけないと思います。
 三年四カ月ぶりに死刑が執行されました。大臣御就任のときにも、確定している者の執行は法務の仕事に携わる者として大事にしないと法秩序がおかしくなるというふうに発言をされておりまして、死刑廃止を願っている多くの仲間たちが非常に警戒をしておりましたし、私どももアムネスティ議連の一人といたしましても後藤田法務大臣のところへお願いに参りました。何とかせめてこの状態をいま少しというか凍結をしていただきたいと。その理由は、やはり世界の趨勢、国連の死刑廃止条約の締結に向けて世界が動いているということもございます。
 確かに我が国の中には、悪いことをした、本当に幾度殺しても憎み足りないような犯罪を犯した人たちをどうして死刑にしちゃいけないんだ、国民の半分以上の人はやっぱり死刑は必要ではないか、犯罪の再発を防ぐためにもという御意見であることは私も重々承知しております。しかし、多くの冤罪事件があったことは法務大臣一番よく御存じだと思いますけれども、罪のない人が自分のやっていない犯罪のために死刑にされたということがもしあるとすれば、これはもう免田さん初め多くの方たちが無罪になって釈放されているわけですけれども、そういうことが人間のやることですから起こり得ますね。
 法務大臣とて完璧ではないと私は思いますけれども、今回三年四カ月ぶりに、非常に強く私どもが願っていた死刑の執行凍結、このことについて大臣があえて執行なさった理由をお聞かせいただきたい。
○国務大臣(後藤田正晴君) 死刑の執行につきましては、いろんなこともあって従来から法務省としてはコメントを差し控えさせていただくということになっておるわけでございますから、ここ数日いろいろ新聞に出ておりますが、その件については私は具体的にお答えすることはこの際はひと
つお許しをいただきたい、かように思いますが、一般的な一般論としてお答えを申し上げたい、かように思うわけでございます。
 この点についても、実は法務大臣就任のときの最初の記者会見で突然質問があって、これまた私が日ごろ考えておったことをそのまま実はお答えをしたわけでございまして、その点についても今日といえども変わってはおりません。
 といいますのは、やはり一方で死刑制度というものがあり、そして極悪非道な犯罪が発生した場合に、当該犯人に対して司法が、裁判所が、裁判官が――本当に私はこれは裁判官も重たいお役目だと思います。その裁判官は、しかしながらこれは死刑に相当するということで厳密なお調べの上で死刑の判決を下していらっしゃる。その判決の今度は執行は、裁判の執行というのは大体また検察に返ってくるわけですけれども、その検察で大体処理するんですが、死刑の判決だけはさらに重い刑罰であるだけに法務大臣の執行命令ということに返ってきておるわけですね。
 そのときに法務大臣がそれを執行しない、個人的な思想信条や宗教観でやらない。それなら初めから大臣に就任することが間違いだと、私はそう思いますね。あるいはまた、就任当時にわからなかったということであるならば、その段階において私は法務大臣の職を辞するというのが当然で、一方で三権分立の中で裁判官にそういう重い役割を担わせて、裁判官はそれを判決しておる、それを行政の法務大臣が自分はそれを執行はしないといったことで一体国の秩序がもつんだろうかと。そういうことでは私は法秩序そのもの、国家の基本がゆるがせになるのではないかなと、私は執行についてはさような考え方を持つんです。
 しかし、それじゃ死刑制度そのものはどうかと、これは立法論にまたなってくるわけですね。そうなってきますと、私はあのときにも申し上げたんですが、世界の趨勢はだんだん死刑制度を廃止していくという国がふえておることは事実です。しかし、同時にまたアメリカのように、アメリカは州ごとですけれども、死刑制度を廃止してまた復活させておるといったような国もあるわけですね。だから、世界の大きな流れとしては制度廃止に流れておることは事実ですけれども、やはりそれぞれの国の実情に応じて死刑制度の必要性を認めておる国もある。
 日本の場合はどうかといえば、死刑制度は存在をしておると。そして世論の調査とでもいいますか、政府として調査したのはたしか平成元年、八九年だったと思いますね。それを見ますと、七〇%近い六六、七%だったと記憶しておりますが、死刑制度は存置すべしというのがまだ国民の大方の御意見ですね。十数%が廃止論、あと残りはわからない、こういったような状況でございますから、それらを考えますと、制度論として私は考えなきゃならない大きな課題であることは事実だけれども、今これを取り上げて死刑制度を廃止するという時期には私は日本はまだ来ていないのではないかなと。
 ただ、あのとき私がお答えしたのは、どうもしかし日本の中にも案外年齢の若い人の中には廃止論に賛成の人が少しふえてきつつあるのではないかなと、かような見方もしておりましたので、それをまた率直に私はそういうことを申し上げて、制度論としてはこれからの課題ではあるだろうといったような意味合いを申し上げたわけでございまして、これまたあのときと私の考え方とは一つも変わってはおらないと、かように御理解をしていただきたいと、こう思います。
○竹村泰子君 大変大きな重い問題であるということは確かによくわかりますけれども、今の法務大臣のお答えですと、三年四カ月の間、四人の法務大臣が死刑執行をなさらないで任期を終えられたわけですが、それはそうすると社会的な法秩序は正しくなかったということなんですか。法務大臣としての責任を全うしなかったというふうに私はお聞きいたしますけれども、そうなのでしょうか。
 もし今法務大臣がお答えになったようなことでいきますと、制度として残っているからこれは執行しなければ法秩序が乱れると。それではその制度を、私は個人的に法務大臣は随分死刑廃止論をお勉強なさっていたと聞いております。私がいつかお伺いしたときも団藤さんの御本が机の上にありました。それだのに、なぜその制度の有無をきちんと論議をするまでの間モラトリアムにできなかったのでしょうか。なぜ執行なさらなければならなかったのか。それは先ほどの前段の論議がお答えになるのでしょうか、どうでしょうか。
○国務大臣(後藤田正晴君) 私はこういう席で前任者がどうであったといったような批判がましいことは申し上げるわけにはまいりません。それぞれの方のお考えであったのであろうと、こう思いますが、私は一般論として申し上げるならば、法務大臣はどなたもこれ厳しい役目だとこう思います。
 しかしながら、現行の国全体の秩序の中で、いかにそれが過酷な自分に対する使命であろうとも、その職についた以上は私はきちんと職員を果たすべきである。しかもまだ、大臣というのは最近大体一年でかわるんですよ。お役人だってここに座っていらっしゃる方はやはり二年ぐらいでかわるんです。やりたくないなと思えば後へ残すということはできるんですよ。しかし、それで一体国の秩序がもてますか。私は、それならば当然職を辞して、国民の先頭に立って廃止運動に全精力を注ぐべきではないのかと、私自身はさような、私はそういう考え方で仕事をさせていただいておる、このように御理解していただきたいと思います。くれぐれも前任の人のやり方についてとかくの批判をするつもりは私は毛頭持っておりませんから、その点は改めて重ねてお答えをいたしておきたい、かように思います。
○竹村泰子君 もちろんそうだと思いますが、先ほどのお言葉からいうとそういうふうにとれましたので、それは法務大臣としての重要な使命であるというふうにとれましたので、それでは三年四カ月の間は間違っていたのかと私は申し上げているわけです、
 それではお伺いいたしますが、今何人の死刑確定囚がいて、今回何人処刑をなさいましたか。
○政府委員(濱邦久君) 今、委員のお尋ねは具体的な数字をも含めてのお尋ねかと思うわけでございます。
 これはあらかじめお答え申し上げてひとつ御理解を得ておきたいと思うわけでございますが、死刑の執行ということにつきましては、これは死刑を執行された者の家族その他の関係者に与える影響、特にこれらの者の名誉、心情を殊さらに傷つけないようにすることを考慮すること、またほかの未執行の死刑囚の心情の安定に留意いたしまして、死刑の執行につきましてはこれは公にさせていただいていない、公表しないのが相当であるというふうに考えているわけでございます。
 もとより、これは申し上げるまでもないことでございますけれども、死刑の判決が確定した経緯、いきさつ等はすべてこれは公開の裁判によって国民の前に明白になっているわけでございまして、刑罰権行使の適正を図るという見地に立ちましても死刑の執行状況まで公にする必要はないというふうに考えているわけでございます。したがって、そのような理由から、死刑執行があったかどうか、あるいはそれ以上の事柄につきまして、死刑の執行の状況等については事前事後を問わず一切公にしない取り扱いを従来もさせていただいていたと理解しているわけでございますので、その点は御理解をいただきたいというふうに思うわけでございます。
 それから、お尋ねの中で死刑確定者の数につきましては、これは従来もそういうことでお答えをさせていただいているわけでございますが、平成四年十二月末現在で死刑確定者は五十六名であるということはお答えをさせていただきたいというふうに思うわけでございます。
 そういうことでひとつ御理解をいただきたいと思います。
○竹村泰子君 新聞には今回二人とも三人とも書
かれておりますけれども、確定できない。
 家族の身になってみてください、家族の。不幸にしてあなたが、あるいは大臣の御家族がそういうところにおられるとしたら、死刑が執行されるんだろうか、御本人はもちろんですけれども、執行されるんだろうかそうじゃないんだろうか、いつなんだろうか、もしされるとしたら会っておきたいと思うじゃないですか。人数ぐらいはっきり発表したってどうということはないと思いますし、新聞にはもう名前が出てますよ、名前が。この人が処刑されたのではないかと。それをなぜそう隠し立てをするんですか。死刑確定囚の家族の人には、どんな連絡をしていて、どんな処遇を与えていて、そしていつごろ執行されるかもしれないと、そういうことがきちんとお話をされるんですか、どうなんですか。
○政府委員(濱邦久君) 先ほどお答え申し上げましたように、この死刑執行についての情報公開につきましては、従来も当委員会でも御議論がございましたし、その都度今私がお答えしたと同じことをお答え申し上げまして御理解を得ていると思うわけでございます。
 要するに、死刑執行について公表しない理由は、先ほどもお答え申し上げましたように、死刑を執行された者の家族その他の関係者に対する影響、特にこれらの者の名誉、心情を殊さらに傷つけないようにすることを考慮する。また、他の未執行の死刑囚の心情の安定に留意して、死刑の執行については公表しないのが相当であるというふうに考えるからでございます。
○竹村泰子君 大臣、御存じと思いますが、フランスでは、先ほどアメリカのことをおっしゃいましたけれども、フランスでは世論は当然六割ぐらいは死刑が必要だと考えていた。世論調査の結果もそう出ていたんですけれども、しかし四年ほど死刑執行しない後、ミッテラン大統領が誕生した八一年にこの死刑を廃止いたしました。そして、そのときの法務大臣だったロベール・バダンテールという方が二、三年前に見えまして、死刑廃止というのは国民の賛同を得られるようなものではないので非常な政治判断が必要である、行政にはできない、政治判断が必要だから法務大臣が決断をしなければいけないんだと、こういうふうにロベールさんはおっしゃっているんですよね。
 行政に任せて、システムとして存在するから、制度が存在するから死刑は行わなければいけないということであれば、法務大臣の決断は要らないわけです。法務大臣だから、あなたは政治家だからこの問題をどういうふうに考えていくのか。そうしたら、世論もそうだけれども、きちんと国のシステムとして国連の死刑廃止条約のこともあり、世界的な流れもあり、日本はどういうふうな国になっていけばよいのか、この点で。そういうことを判断なさるのが法務大臣、あなたのお役割ではございませんでしょうか。もう一度御意見を聞かせてください。
○国務大臣(後藤田正晴君) 私もフランスのいきさつというものは承知をいたしております。といいながら、今ある制度で司法が死刑の判決をしているんです。そのときに政治判断で自分はやらないということは私のとるところではございません。
 ただ、私は先ほど来申し上げますように、制度論として大きなこれは先行きの課題であるということは十分わかっておりますし、制度論としては私は私なりの意見も持っております。しかしながら、今死刑判決が行われておる。そのときに、その判決を執行しない、しかもまだ国民は死刑制度そのものに賛成者の方が圧倒的に多いといったような時期に、私の一存で執行しないということは私にとってはできないことでございます。
 ただ、私は就任以来、今でもこの問題は私自身の大きな心の中で課題であるということは今日までずっと持ち続けております。したがって、就任以来いろんな書物も読み、また意見も聞きました。そして竹村さん御自身もお見えになったんじゃなかったですかね。アムネスティの議員の方がお見えになったときに、私はそのときに、具体的に名前を挙げまして申し上げるのはどうかなと思いますが決して悪いことではありませんのであえて申しますと、江田君が代表で皆さんをお連れになってこられたときに、あなたは十年余り裁判官をなさっておったじゃありませんか、あなたの今のお気持ちは私はよくわかる、わかるが、あなたが私の立場に立ったときにあなたはどうなさると私があえて反論をしたときに、江田さんもそれに対してはお答えができなかった。それぐらいこの問題というものは非常に難しい課題であると私は思います。私は私に与えられた使命を一方で非常な悩みを持ちながらも、ここで法務大臣の権限でおれはやらぬというわけには私はできない。その点は私はひとつ竹村さんにお答えをして御理解をしていただきたいなと、かように思います。
○竹村泰子君 時代はやっぱり大きく変わっていると思うんですね。その昔はそういった極悪非道の犯罪人はさらし首にしたり、町じゅうを引きずって歩いたり、火あぶりの刑にしたり、いろんな、どうやって懲らしめればこのような、同じような犯罪をする人が減るだろうかという知恵だったんだろうと思いますけれども、そういうことが行われていたし、現在でも世界じゅうのすべての国が死刑を廃止しているわけではないからアムネスティなどの活動があるわけですけれども、どうか時代の流れをくんでいただきまして、せめてきちんと日本の中での論議ができるまで凍結をしていただきたい、強くこれは御要望申し上げておきます。
 それでは次の質問に移りたいと思います。
 矯正施設に関する総務庁の行政監察が入りました。後藤田大臣は総務庁長官も歴任をされまして、行政改革、行政監察の重要性については十分認識されていると思うんですけれども、総務庁は、附属機関等総合実態調査の一環として、ことしの一月、「矯正施設に関する調査結果報告書」というのを公表されました。これに基づき所要の勧告をなさいました。
 まず、矯正施設の実態調査に至った経緯及び概要並びに具体的内容について簡単にお答えいただきたいと思います。
○説明員(田中順一君) ただいま先生御指摘ちょうだいいたしました矯正施設に関する調査、平成三年十月から十二月までの間、総務庁で実地調査を行いまして、その結果を取りまとめました。御指摘のとおり、去る一月十八日に法務省に対して勧告を行ったものでございます。
 私どもの行政監察局におきまして、各省庁の附属機関等の業務内容及びその実施体制の改善合理化に資するため、昭和五十九年一月に閣議決定されております行政改革大綱を踏まえまして、昭和五十九年度以降、各省庁のすべての附属機関を対象に順次これを調査していくという基本的な考え方のもと、今、先生御指摘ちょうだいしました附属機関等総合実態調査というものを実施いたしておりまして、御指摘の調査もその一環として平成三年度に行ったという経緯でございます。
 次に、調査結果の概要でございますが、勧告の柱は受刑者の生活・教育の問題と社会復帰推進のための刑務作業の二つとなっておりまして、その内容の概略を申し上げますと次のとおりでございます。
 まず、受刑者の生活あるいは教育の問題につきましては、新たな処遇制度の創設に向けて累進処遇制度を見直す、まだ面会機会の拡大、居住環境の改善等受刑者の処遇の改善を図ること、あるいは対象者に応じた釈放前教育の充実を図ることなどを指摘いたしております。
 次に、社会復帰推進のための刑務作業の関係では、まず民間事業所における作業の実施を推進すること、次いで刑務所における職業訓練を推進すること、さらに出所予定受刑者及び少年院出院予定者に対する就職援助を活発化することなどを指摘しておる次第でございます。
 概略、以上でございます。
○竹村泰子君 調査対象を刑務所、少年刑務所及び拘置所とした理由は何なんですか。少年院、少年鑑別所、婦人補導院などの必要性はなかったの
ですか。それとも手が回らなかったのですか。
○説明員(田中順一君) ただいま申し述べました矯正施設に関する調査、私ども調査対象といたしましては、刑務所、少年院、少年鑑別所、婦人補導院と、すべての矯正施設を対象にいたしております。
 御指摘のとおり、勧告の中身につきましては、実は少年院につきましては若干指摘をいたしておりますが、今、先生御指摘の婦人補導院については勧告本文において特に触れていないのは事実でございます。これにつきましては、私どもなりに最善の調査を行いまして、勧告すべき点につきましては勧告いたしておるつもりでございまして、勧告で触れてない部分につきましては、我が方の調査、我が方の問題点の構築あるいは問題の認識に至らなかったということで御理解を賜りたいと思います。
○竹村泰子君 大変詳しく私も拝見させていただきました。報告をお出しくださっているんですが、これは受刑者の生活・教育と社会復帰推進のための刑務作業の二つの柱からなっていますが、私ども衆議院で継続審査に付されました拘禁二法の存在を前提に改善が考えられているところもありますので無条件でこの勧告に賛成することはできないのです。
 そこでお伺いをいたしますが、代用監獄というのがもう世界的に、世界共通語となってしまっているというふうなこともあり、面会制限の問題だとか、ゆゆしき人権問題ということがあって私どもは拘禁二法には強く反対をしております。
 これは朝日新聞の二月二十三日の「記者席」という欄ですが、「「塀の中」の実態はヤミ?」というタイトルで、ことしに入ってからも、日本の監獄における看守の暴行はもう日常化しているとか、本当に暴力問題などはもう当たり前のこと、御飯を食べるようなものだとか、そういう訴えが大変多く寄せられていると。それから、日弁連がお出しになりました、私ここに持っておりますが、「日本の監獄」というパンフレットがあるんですけれども、看守の暴行や不十分な食事など刑務所や拘置所内での人権侵害の実例を示したのに対して法務省が事実と異なると抗議をなさった、それに対して日弁連が反論をしているというふうな、そういう記事の紹介がありまして、決して日本の拘置所あるいは刑務所の中が人権がきちんと保障されていてよい状態であるとは言えないところか面会すら容易ではないということをこの報告書の中にも総務庁はお書きになっております。
 面会につきましては、「受刑者と家族等との面会については、施行規則第百二十二条において、原則として執務時間内と規定されているが、調査した刑務所の中には、休日等における面会を認め、家族、受刑者の便宜を図っているものがある一方、面会受付終了時間を執務終了時間より相当早めに設定しているものがある。」、「したがって、法務省は、受刑者の処遇等の改善を図るため、各刑務所等における処遇の実態を把握するとともに、次の措置を講ずる必要がある。」とこの勧告書は言っております。その面会については、「機会の拡大を推進する方向での運用指針等を策定すること。」というふうにあるんですね。
 御家族の方々に伺う機会があって実態をお伺いいたしますと、四時過ぎごろに行っても、もうきょうは終わりですといって追っ払われてしまう。そうしますと、これ日中は、ウイークデーはお勤めをしている家族は絶対に会えないわけです、早引けをしないと。そして休日は認められないとなったら、これはいつ会いに行けばいいんですか。このような状態があるということ、法務省の御所見を伺いたいと思います。
○政府委員(飛田清弘君) その前に前置きで触れられました行刑施設、すなわち刑務所それから拘置所、少年刑務所などの処遇が非常にいいかげんであって、しかもなおかつ暴行が日常茶飯事に行われているというような御指摘がありましたが、そういう事実はございません。それは私の名前で日本弁護士連合会に反論を出しているわけでございますから、私は自信を持ってそれを申し上げることができます。
 ところで、その面会についてでございますが、確かに総務庁からの調査結果の御指摘によりますと若干ばらつきがありまして、面会の「機会の拡大を推進する方向での運用指針等を策定すること。」、こういうふうな勧告がなされております。
 そこで、その勧告に対する対応といたしまして、私どもといたしましては、まず実態を調査し、最終的にどうするということは総務庁にお答えしてからの話でございますけれども、現在までの検討の結果、相当数の施設が面会受け付け終了時間を午後四時までとしておりますが、午後三時三十分までで受け付け終わりというところも若干あるようでございますので、これらの一部の施設については、当該施設における被収容者の動作時限、職員配置等の状況を詳細に検討の上、午後四時まで伸長することが可能と認められる場合は伸長するように指導することを検討しております。
 なお、面会が何時まで受け付けられるかということにつきましては、現在の施行されております監獄法のもとでは執務時間内、こういうふうになっております。ですから、面会を受け付けて、それから被収容者を連れてきて、それで面会が終わって帰る、それが大体午後五時になるように設定しております。だから午後四時ぐらいがやっぱり面会受け付けの限度であろうと思っております。
 ただしかし、それ以外でも、あるいは休日におきましても、個別の事案をお伺いしまして、緊急性とか必要性があって、これはやはり面会を許可しなければちょっとかわいそうだなと思うような事例につきましては、それぞれの施設長がその可否を決定するような指導をしておりますし、現在もそういうふうに行われていると思います。これまで、拘置所は別といたしまして、刑務所六十七庁いろいろ調べましたが、休日に面会を実施したことがあるという施設は四十七庁になっておりまして、そのほかの施設でも、休日に面会に来なかったから面会はまだやってないというところはありますけれども、恐らく緊急性、必要性があるのに絶対面会を許さなかったという施設はないと思っております。
 そういうふうなことでございますから、やはり私どもといたしましては、職員の勤務条件とかそういうものを考えますと、今の監獄法のもとでは面会は勤務時間中、こういうふうになっておりますから、これを前提とする限り、できる限りその時間でやっていただきたい、こういうふうに考えております。
○竹村泰子君 今の問題でいきますと、四時にできればとおっしゃいましたけれども、普通の一般の人の勤務時間というのは五時までですよね。それが終わらなきゃ行けない人というのがほとんどなのではないでしょうか。これは公務員の労働の問題も絡んでまいりますから大変難しいのを私よく承知で言っているんですけれども、例えば面会時間を二部に分けて、早番と遅番とに分けて、公務員の労働の問題もそういうふうに分けるようなことを、少し柔軟なお考えで面会に対する優しい配慮ができないものだろうかと思うんです。
 執務時間というのはそちらの執務時間ですね。だけれども、面会をしたい人たち、家族の人たちのことは考えられていないのではないかと私は思えて仕方がない。どこに一体中心があるのかと。面会というのはお情けで、御容赦でさせてやっているものなのか。だれしも家族や恋人や子供たちとの逢瀬は楽しみたい、その人間としてのごく当たり前の基本的な問題をどういうふうに考えておられるか。それはもう執務時間に来てもらえないと会えませんよ、罪人なんだから当たり前でしょうというふうな、そういう考え方は、しかもそれが裁判所長の裁量でかなり左右されているというこの問題は非常に私は、この報告書にもこれをちゃんと直しなさいという勧告が出ているんですけれども、どういうふうにお考えになりますか。
○政府委員(飛田清弘君) ただいま裁判所長の裁量とおっしゃいましたけれども、これは恐らくそれぞれの施設長の裁量という趣旨であると思いま
す。
○竹村泰子君 訂正します。
○政府委員(飛田清弘君) それで、確かに受刑者あるいは被収容者とその家族との面会は施設長の裁量で行わせることにしております。しかし、私どもとしても、刑務所あるいは収容施設というのは役所でございますから、それはやはり一般の役所と同じように考えていただかないとやはりぐあいが悪いわけで、例えばいろいろな市役所、区役所あるいは登記所、その他いろいろな役所にいろいろな届けをしに行ったり、いろいろな用事で行く方々も、やはりできれば勤務時間外でもやってくれればそれは非常に便利だとお思いになると思いますけれども、やはり役所は役所なりに職員のいろいろな勤務条件あるいは勤務時間というものはございますし、また現在の監獄法のもとでははっきりと面会は勤務時間中に行わせるというふうに書いてあるわけでございますから、私どもの方が非常に人手が余るぐらいありまして、それでサービスができればそれはそれにこしたことがないわけでございますが、現在の状況はぎりぎりの人手でやっているわけでございますし、なかなか難しいところがあることは御理解いただきたいと思うわけでございます。
 ただ、人道的に見て、これはどうしてもなるほど特別な事情があるなというものにつきましては、施設長の配慮によりましてそれ以外のことも適宜やっているわけでございますから、できるだけ面会受け付けの時間内に受け付けを終えていただきたいというのが私どもの気持ちでございます。
○竹村泰子君 飛田さん、あなたが抗議なさったその抗議文も、それからそれに対する日弁連からのお返事も私見ております。
 法務大臣、これごらんになられましたでしょうか。「プリズンズ・イン・ジャパン」という、これ英文と両方で日弁連がお出しになっているんですけれども、この中身が事実と違うという抗議をしていらっしゃるんですね。ですが、これは十分な調査の上に書かれております。しかも面会などの問題については家族の方たちが実際に体験している日常のことでありますから、それを聞き取り調査をきちんとして出された本で、これはもう世界的に出回っております。こういうものが日本の監獄として世界にもう知られているわけです。これはもう改善をせざるを得ないと。大臣、これを後ほどお届けいたしますのでお読みになってみていただきたいと思いますけれども、そういうことからこの勧告が出されたものだと私は思うんです。
 ですから、ぜひこれは総務庁から強い御要望もあり、飛田さん、一度現場をどういうふうなことになっているかきちんと調査をしていただきたい。強く要望しておきます。
 次の質問に移りたいと思います。
 ところで、獄中者、獄外者の外部交通権――面会、文書ですけれども、として獄中訴訟にかかわる質問をしたいんですけれども、獄中の処遇をめぐっての問題で、獄中者を原告として提訴されている訴訟、これは現在何件起こされていますか。
○政府委員(飛田清弘君) 行刑施設に収容されている者の処遇等に関して提起した訴訟は、本年二月末現在で裁判所に百八件係属しておりますが、具体的な訴訟の追行を当局で行っているわけじゃございませんので訴訟の内容あるいは動向をすべて知っているわけではございません。ただ、百八件係属しているというふうなことはわかっております。
○竹村泰子君 提訴者数及び代理人、弁護士の有無などはどうですか。
○政府委員(飛田清弘君) 提訴者の数あるいは代理人の数は承知しておりません。
○竹村泰子君 それらはどのような問題で提訴されて、例えば面会制限であるとか文書閲読制限だとか医療問題とか、どんなケースなのでしょうか。
○政府委員(飛田清弘君) 百八件の全部を一々詳しくは承知しておりませんけれども、大まかに言いますと、面会、信書の発受、懲罰、医療等、行刑施設における処遇の全般にわたっていろいろな訴訟が提起されているというふうに理解しております。
○竹村泰子君 提訴者はそれらの訴訟において出廷できますか。
○政府委員(飛田清弘君) ケース・バイ・ケースで施設長が判断することになるわけでございますが、獄中原告であるからといって必ず本人が提訴した裁判に出廷できるとは限らないものであります。
○竹村泰子君 その出廷が通常の公判時すべてについてなんでしょうか。原告本人尋問のときだけなのでしょうか。分けてお示しいただきたいと思います。
○政府委員(飛田清弘君) どの場合にどうということではございません。すべて施設長の判断によって決せられる問題でございます。
○竹村泰子君 獄中原告の出廷が認められない事例で、出廷が認められないという法的な根拠は何ですか。
○政府委員(飛田清弘君) 監獄に収容されている者は、刑法とか刑事訴訟法とか監獄法に基づいて監獄に拘禁されているのであります。ですから、出廷させなければならないというような義務が法令によって施設の長に課せられていない限り、本来の監獄に拘束されている根拠によりまして拘禁されているわけで、その拘禁の性質上、拘禁を継続しても当然差し支えない、そういうふうな考え方であります。
○竹村泰子君 死刑確定者について出廷が許されているケースがありますか。
○政府委員(飛田清弘君) 具体的に許されているとか許されてないとかという個々のことは承知しておりませんが、死刑確定者であれそれ以外の懲役囚であれ、その施設の長の判断によって出廷を許す場合と許さない場合がある、こういうふうに理解しております。
○竹村泰子君 施設の長は、例えば通達とか法律とか、そういう何か根拠があってそうしているんでしょうか。何によってそれを判断しているんですか。
○政府委員(飛田清弘君) 施設の長は、その施設について全権を委任されているようなものであります。でありますから、根拠といいますかそういうものは特に承知しておりませんけれども、その施設の長は、要するに出廷させる場合のいろいろな護送の状況とか、あるいは出廷させたことによってその拘禁を継続することにどういう影響があるかとか、そういうふうなことを総合的に判断して出廷させるかさせないかを決めるべきものだと思っております。
○竹村泰子君 その施設の長が判断をして出廷できるとかできないとかそれが本人には伝えられておりますか、理由も。
○政府委員(飛田清弘君) 本人に伝えるといっても、裁判があるからといって、本人が行きたいとか行きたくないとか言わないのに伝えるということはあり得ないわけですから、大体そういう問題が生じるのは裁判所から本人に呼び出し状でも来たような場合だろうと思います。そういうふうな場合には、その呼び出し状は速やかに当の被収容者に交付いたしまして本人に見せます。そして、見せた上で本人が出廷したいという意思表示をした場合に、改めて施設長が、出廷した場合に拘禁に及ぼす影響とかそれから護送の難易度などを判断して、それでやっぱり出廷させないよとか出廷させるよということを決めるわけですが、その場合に、その結果については担当の職員から当該被収容者に告知させております。ただしかし、なぜ出廷させるのか、なぜ出廷させないのかという理由についてまで告知しているかどうかは私は承知しておりません。しかし、結論については必ず告知しているはずであります。
○竹村泰子君 関連して以下の資料をお願いしたいんですが、昭和三十五年七月二十二日、矯正甲六四五号、法務省矯正局長通達、「収容者提起にかかる訴訟の取扱いについて」、もう一つ、昭和三十六年二月七日、矯正甲一一五号、法務省矯正
局長通達、この二つを後日で結構ですからお願い申し上げたいと思います。
○政府委員(飛田清弘君) ただいまの前の方のものにつきましては、たしか社会党の政策審議室からの資料要求で社会党の方に提出しているはずでございまして、その内容は、被収容者の出廷は施設長の裁量によりその許否を決すべきこととか、未決の拘禁者につきましては裁判所や検察官と打ち合わせるべきことなどについて書いたものでございますから、委員御承知のとおりであると思います。
 後の方の昭和三十六年の通達とおっしゃいました文書は通達ではございません。個別の案件についてある施設から照会があったものに対する回答文書でございまして、個別の事案のことでございますからその内容は公表するわけにはまいらないので御了解いただきたいと思います。
○竹村泰子君 あるんですね、これ。ないとお聞きしていたんですが、あるんですね。
○政府委員(飛田清弘君) 通達というふうなお話でしたら、そういう通達はない、こうお答えせざるを得ませんけれども、その日付の文書を探しましたところが、そういう日付の文書は通達ではないもので、あったことはあったんです。ただしかし、その内容というのは個別の問題について、これをどうしたらいいでしょうかという照会に対して回答したものでありますから、一般的なものじゃございませんで特別な個別の問題でございますので公表はできない文書である、こういうふうに申し上げた次第でございます。
○竹村泰子君 今、情報公開の時代なんですよ。そんなもの、昭和三十六年の文書を隠してどうするんですか。私たちは委員長にお願いをすれば調査権があってこれは出していただくことができるわけです。そんな古い文書をなぜ隠そうとなさるんですか。
○政府委員(飛田清弘君) 個別の事案について個別的に回答したものについてこれをお出しすることになりますと、ほかのものについてまでいろいろお出ししなければならないことになってまいるわけでございます。
 この三十六年の文書自体はそれは出していいのか悪いのか、私はまだ判断しておりませんけれども、仮にこれはいいとしてもほかに出せないものもあるかもしれません。要するに個別的なものはなぜかと申しますと、個別の被収容者のいろいろなことが書いてある可能性があるわけでございます。そういうふうなものを公にするのは適当ではないという考えからお出しするのを御容赦いただいているわけでございます。
○竹村泰子君 名前が書いてあるんですか。
○政府委員(飛田清弘君) 名前が書いてあるかどうかはちょっと私は承知しておりません。
○竹村泰子君 これはたしかないとおっしゃっていて、捜してくださって、文書としてあって大変よかったんですが、よくわかりません、承知しておりませんとおっしゃる。何か変ですね。何がわかっちゃいけなくて、プライバシーにかかわる部分はもちろん伏せていただいて結構ですよ。だから、もう一度検討してください。そして、出せるところは出してください。
○政府委員(飛田清弘君) 個別の案件に対する照会の回答ですからこれはいろいろなことが考えられますので一般的にお出しできない、こういうふうに申し上げているわけでございますので御了解いただきたいと思います。
○竹村泰子君 委員長、これ大変大事な部分なので、私は委員長に委託をしたいというふうに思いますので、この場をどうかお引き取りいただけますでしょうか。
 質問時間がなくなってきたのですけれども、事柄は、今私たちがいろいろ議論してきたところは、大臣、定員増やあるいは予算措置によってかなりよくすることが、改善することが可能であるというふうにも思われます。国連の被拘禁者処遇最低基準、これは受刑者の処遇は社会からの排除ではなく社会との継続関係を強調するものでなければならない、社会に復帰できるためのものでなければならない、これは総務庁の報告の中でもそのように私ども読み取りました。ところが、なかなかそうはなっていない。勧告を受けて、大臣、どのようなこれに対する御返事をなさるおつもりか、どのような感じをお受けになったか御所感を伺い、それから先ほどの資料の問題については委員長にお願いを申し上げて、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
○国務大臣(後藤田正晴君) 総務庁から勧告をちょうだいしていることは聞いておりますが、細部の点については私まだ承知をいたしておりません。ただ、お答えするとすれば、今回の勧告は、矯正施設における被収容者の改善、更生に関する業務の改善に資することを目的としてなされたものと承知をしておりますが、勧告の内容は現在矯正局で検討をしておりますので、その結果に基づいて勧告の趣旨に沿った改善策を講じてまいりたい、かように考えております。
○大脇雅子君 まず私は、去る三月二十五日、水俣病に関しまして、熊本地方裁判所で水俣病の拡大の過程で国が被害防止の義務を怠ったとして原告の救済を命じました。国の指定代理人を統括される法務大臣として、法務省を中心にこれから各省庁で検討、協議なさると思います。控訴について、私どもはぜひ控訴をしないで水俣病の今まさに最終解決の時期が来ているということで、和解に向けてその席に国も着いてほしいというふうに要望したいと思いますが、法務大臣のスモンのときの努力に私も敬意を払っている一人でございますので、ぜひこの事件につきまして大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
○国務大臣(後藤田正晴君) この水俣の問題は、申し上げるまでもありませんが、大変長い時間の経過を経て今日に至っておるもので、患者等の皆さん方、大変な長い間の苦しみをなさっておる、こういったようなことで一日も早くこういう問題は解決すべき問題である、かような私は認識を持っておるのでありますけれども、なかなかこの問題は、何といいますか、規制権限を持っておる役所の責任論の問題と、もう一つは病像論とでもいいますか、水俣病であるのかどうかといったような認定の医学的な問題、こういったような難しい課題があるわけでございます。そして同時に、今日公健法の法律も制定をして、認定患者等についてのそれぞれの取り扱いというものは決まっておるし、同時にまたこういった問題についての総合対策、これも政府は政府なりに努力はいたしておる問題である、かように承知をしております。そして、現在のこの訴訟というのは何カ所か、八カ所ぐらいでしたか、まだ係属をしておるんですが、その中で和解勧告というものも出されておるしするんですけれども、なかなかこの病像論あるいは行政の責任論といったのは、国の行政についての基本的な大きな課題が潜在をしておるなと、こう私は見ておるわけでございます。
 何しろ原告と国との主張の中に、ともかく和解そのものについて見ても、余りにも開きがあり過ぎる、こういったようなことがあるわけで、私は実は、主管官庁は厚生省でありますけれども、例の種痘の問題についての長年の争いについては丹羽大臣からのお話もあり、私の方は、御承知のようにこの種の問題については直接の行政官庁ではありませんで、国を代表しての訴訟の当事者である、こういう立場でございますから、丹羽君との話もあり、これはこの際はどうだと、早く片づけた方がいいのではないかといったようなことで、種痘の問題についてはたしかあれは和解に踏み切ってもらったのでございます。
 ただ、この水俣の件については種痘の問題と違いまして、種痘の方の問題はこれは最高裁の判決もたしかあり、これはまた判決の内容も国の責任を認めておる、国に責任があるじゃないかと。こういったような裁判所の判断もあり、私はこの際、いろんな経緯はあろうけれども和解がよかろうと、こういったようなことで踏み切ってもらったんですが、水俣のはまだそこまで今認定する、これは主管官庁は当然環境庁が主管でございますので、まだ環境庁とも、事務的にはもちろん十分
話をしておるのは当然ですが、環境庁の長官と私の間の話はまだやったことございません。
 そういうようなことでございますので、今ここでこれこうするというお答えは残念ながらできません。もう少しひとつ検討をこれはさせてもらいたい。ただ、今言えることは、なかなかこれはそう簡単に右左とはいかぬのではないかなという率直な私は感じを持っておることだけは申し上げて御理解を仰いておきたい、かように考えております。
○大脇雅子君 今、法務大臣はその当事者の開きが本件では大き過ぎると、こう言われましたが、平成二年九月以降、福岡高等裁判所が和解勧告をいたしまして、そして三十数回の協議を重ねまして一応の大枠の和解案ができているんです。これは原告も、あるいは被告チッソも、熊本県も、三者で病像論も責任論もその対立を超えてできていて、国に対して呼びかけがあったところに三月二十五日の判決。
 この判決もその福岡高等裁判所の和解勧告の枠組みにまさにのっとって、そして国の拡大の責任は一割なんだという形で国の面目もきちっと踏まえたこれは和解の呼びかけというような判決というしかないということでありまして、この段階で国の指定代理人の立場からですと、このいわば一つの和解のチャンスというのは今をおいてないということがお聞きになればおわかりいただけると思いますので、ぜひ環境庁との御協議の際にはその事情を十分に裁判所からもお聞きになられまして国の態度をお決めいただきたいというふうに切にお願いをいたしたいと思います。
 次は、金丸前副総裁の所得税法違反についてお尋ねをいたします。
 八七年、八八年、八九年分の起訴がありまして、三年分で十八億四千八百万円余が起訴をされたわけでありますが、新聞によりますと、おおよそ起訴処分は終わったというような法務大臣の談話が新聞に出ておりますが、八八年、八九年の追起訴は報道されるところによりますとまだあるような情報がありますし、あるいは九〇、九一年分はどうなのかということについてお尋ねしたいと思います。
○政府委員(濱邦久君) 今、委員御指摘になられましたように、この金丸前議員及び生原元秘書に対する所得税法違反事件につきましては、去る三月二十七日に金丸前議員の昭和六十三年分及び平成元年分と生原元秘書の昭和六十三年分ないし平成三年分の事実によりまして両名を検察当局において公判請求をいたしました。
 この全体を通じた公訴事実の要点でございますが、今、委員が御指摘になられたのは適脱所得の金額をおっしゃったと思うわけでございますが、金丸前議員につきましては生原元秘書と共謀の上、または単独で所得を秘匿するなどして昭和六十二年から平成元年まで三年分の所得税約十億円を免れたというのが一つ。それから生原元秘書につきましては、この金丸前議員との共謀事案のほかに、同じような方法によって所得を秘匿して昭和六十二年から平成三年まで五年分の所得税約三億余円を免れたというものでございます。
 本件脱税事件の捜査処理はおおむね終了したものというふうに聞いているわけでございます。もちろん、既に公訴を提起いたしました事実に対する公訴維持の観点から必要がありますれば、例えば押収した多数の証拠物の検討、分析など必要な補充捜査を行いまして立証に万全を期するものというふうに思っているわけでございます。
 それから、九〇年、九一年分についてはどうかというお尋ねでございますけれども、これまでのところ既に公訴を提起した事実以外につきましては犯罪の嫌疑が認められたという報告には接していないわけでございます。
○大脇雅子君 そうしますと、一九九二年の夏に十億円のワリシンを換金したという事実が新聞では報道されておりますが、これの出の方の捜査というのはいかがになっているでしょうか。
○政府委員(濱邦久君) 今、委員具体的に事実関係に踏み込んでのお尋ねでございますけれども、その点についてはこれは具体的事実に立ち入ったお答えは差し控えさせていただきたいと思うわけでございます。
 ただ、先ほど申し上げましたように、既に公訴を提起いたしました金丸前議員に対する所得税法違反の事実以外には、先ほど申し上げましたようにこれまでのところ犯罪の嫌疑が認められる事実が確認されたという報告は受けていないわけでございます。
○大脇雅子君 これまで政治資金規正法とか所得税法違反で立件をされているわけですが、事の本質は構造的な政治腐敗として法律的にはあっせん収賄罪なり贈収賄罪が当然視野に入ってしかるべきではないかと思いますが、捜査の中でこの両罪というものとの関係はどのようにお考えになっているんでしょうか。
○政府委員(濱邦久君) 捜査の過程におきまして大手建設会社の事務所等を捜索し多数の証拠物を押収したことはこれは事実でございますけれども、これまでのところ、今委員がお触れになられましたような犯罪につきまして訴追すべき嫌疑が認められたという報告には接していないわけでございます。
 いずれにいたしましても、検察当局といたしましては、これは一般論として申し上げるわけでございますが、刑事事件として取り上げるべきものがありますれば適正に対応するものと考えるわけでございます。
○大脇雅子君 この両罪の適用については従来の職権の概念にこだわっていてはなかなか立件ができないのではないかというふうに考えるわけですが、こういった職権の概念を現在の政治的な状況の中で見直していくという考え方、これは裁判所の任務になるのかもしれませんが、しかし立件の段階について検察庁が意欲を見せていくということを国民は期待していると思うわけでございますが、それはいかがなものか。あるいはまた第二に、この両罪の犯罪の嫌疑がないとおっしゃいますと、証拠として何が足らないんでしょうか。検察庁のお立場から一般論で結構ですが、お答えいただきたいと思います。
○政府委員(濱邦久君) 委員が今おっしゃられました両罪とおっしゃられるのは政治資金規正法違反と……
○大脇雅子君 あっせん収賄罪と贈収賄罪。
○政府委員(濱邦久君) どうも失礼いたしました。
 刑法上の贈収賄罪及びあっせん贈収賄罪につきましては、これはその構成要件自体は委員も十分御案内のとおりでございますので詳しくは申し上げませんけれども、検察当局におきましては、これはもういつの場合でもそうでございますけれども、刑法上の贈収賄罪あるいはあっせん贈収賄罪に限らず刑法の犯罪に当たる事実があると思料いたしますれば、これは厳正に捜査を行って適正に処理を行うものというふうに考えているわけでございます。
 これはもちろん、申し上げるまでもなく、今、委員がお触れになられました贈収賄罪あるいはあっせん贈収賄罪、いずれにつきましてもそれぞれの構成要件として要件がきちっと定められているわけでございますから、その要件を証拠にのっとって事実を認定して今申しました両罪の要件に当たるかどうかを慎重に判断をするということはもとより当然のことだと思うわけでございます。
○大脇雅子君 山梨とか中央のゼネコンとか、国際興業あるいはバスの事業の業界というものからの献金の問題が大きく暴露されまして、いわゆる族議員と言われる人たちとそういった建設業界の癒着の問題が国民の関心を集めておりますが、この解明について検察庁としてはどのような取り組みを今なされているのでしょうか。
○政府委員(濱邦久君) 今、委員がお尋ねになっておられますのは、大手建設会社やあるいは山梨県内の建設業者等から提供された資金等の点について解明すべきである、あるいは解明した上でそれが犯罪の構成要件に当たるかどうかを十分に吟味すべきであるということをおっしゃっておられ
ると思うわけでございます。
 一般論としてお答えを申し上げるわけでございますけれども、贈収賄罪におけるわいろと申しますのは、これは公務員等の職務に対する不法な報酬として供与等される利益をもちろんいうわけでございますし、政治活動に関する寄附と申しますのは、これは政治団体に対してされる寄附、あるいは公職の候補者の政治活動に関してなされる金銭等の財産上の利益の供与または交付であると理解しているわけでございますが、いかなる名目で提供された資金でありましても、検察当局におきましてはそれぞれの具体的な事案ごとに法の定める手続に従って収集した証拠に基づいて判断すべきことでございます。その上で、今、委員がお尋ねになっておられます刑法上の犯罪に当たるというふうな事実がございますれば、検察当局におきましては厳正に捜査をして適正に事件の処理を行うというふうに考えているわけでございます。
○大脇雅子君 清水建設などの献金リストが押収されて話題になっておりますが、これに関連して議員を調べられるようなことはありますか、それとももうされたんでしょうか。
○政府委員(濱邦久君) 今、委員が御指摘になられましたような報道がなされていることは承知しておるわけでございます。ただ、検察当局が例えば本件の所得税法違反事件の捜査の過程においてどういう具体的な事実について捜査をし、あるいはどういう人物を捜査したかということにつきましては、これはお答えを差し控えさせていただきたいと思うわけでございます。
○大脇雅子君 法務大臣を前にしておりますとちょっと言いにくいのでございますけれども、後藤田法務大臣の事務所に対しても、法務大臣は、以前つき合いがあったけれどもここ数年はないというふうにお答えをしておられまして、テレビでも私は見せていただいたんですが、このことを踏まえて、やはり実態解明に関して法務大臣としての御決意というものはどんな、こういった建設業界との癒着に関する問題というのは私はこれは政治腐敗のきわみだと思うんですけれども、大臣としての御決意を伺いたいと思います。
○国務大臣(後藤田正晴君) 私も新聞を見まして、これは一体どういうことかなと、こう思っておるわけでございます。ともかく総理大臣以下自民党の、何といいますか、偉い人、みんなあれに名前が挙がっておるわけでございますね。問題は、政治資金としてきちんともらっておるとすれば処理をしておったのかどうかといったようなことであろうと思いますが、なぜああいう記事が出たのかわからない、私には。
 私は建設族でもなければ何の関係もございません。ただ、建設省との関係といえば、昭和十四年、古い話ですけれども、大学を出て内務省の本省で見習いをしたのは、今は運輸省へ移っているんですけれども、港湾局とそれと道路局の兼務でございました。それ以外は、長い役人生活の中、そしてまた政治に入ってからも全く建設関係とは私は関係がないものでございますから、いずれああいう関係についてははっきりしていただきたいなと、かように考えております。
○大脇雅子君 それならば、ぜひこの建設業界と政治家との癒着の問題については、法務大臣として大胆なメスを振るっていただきたいと心からお願いをいたしたいと思います。
 次は、佐川の問題で、検察審査会が金丸前副総裁が五億円を授受したことの政治資金規正法違反について不起訴が不当という、そういう認定をしたのに対して、捜査は厳正かつ十分に尽くされていないというものに対して、そうではないという形でまた再び不起訴という形になったわけですが、この検察審査会のいわば結論というのは、指定団体である新国土開発研究会に寄附したとする金丸前副総裁の供述というのは疑問だ、入っていないじゃないかということであります。入っていなければこの五億円というのは所得税法違反になるのか、あるいは政治資金規正法の虚偽の記載、不実記載というものになるか、何らかの形で網に引っかかってこなきゃいけないのが相変わらず幕がかかったような状況だということについて御説明いただきたいと思います。
○政府委員(濱邦久君) 金丸前議員に対する政治資金規正法上の量的制限違反事件につきましては、今、委員御指摘になられましたように、検察当局の不起訴処分に対しまして検察審査会が不起訴不当の議決をいたしまして、さらに検察当局におきまして再度検察審査会の不起訴不当の議決を受けて捜査を行った上、再度の不起訴処分を行ったという経緯にあるわけでございます。
 この金丸前議員らに対する政治資金規正法上の量的制限違反事件の不起訴処分に関しましては、約六十名の候補者に分配されたとされる五億円が金丸前議員から直接分配されたとの事実を合理的な疑いがない程度に認定することができるのか、逆にその指定団体を経由して分配されたとする合理的な疑いが残るのかという点が争点になったわけでございまして、その点につきまして金丸前議員におきましては、一般に政治活動に用いる資金を指定団体に寄附していたとの取り扱いがうかがえるのではないか、そういうことから、金丸前議員あるいは生原元秘書の供述と関係証拠から金丸前議員から直接分配されたという事実を合理的な疑いがない程度までに認定することは難しいという判断をしたわけでございます。
 今、委員が御指摘になっておられます点は、まさに検察官のこの金丸前議員に対する政治資金規正法上の量的制限違反事件の不起訴処分の判断をする過程におきまして、今お答え申し上げましたように、金丸前議員から直接分配されたとの事実を合理的な疑いがない程度に認定することは難しい、逆に申しますと、金丸前議員の指定団体を経由して分配されたとする合理的な疑いが残ると認めざるを得ないという判断から再度の不起訴処分を行ったという経緯になるわけでございます。
○大脇雅子君 そうすると、金丸と生原両氏の言葉を措信して、後は推認をした。しかし、金丸前副総裁というのは政治団体に入った献金までも全部自分で蓄財をしたという事実が今出ているわけですから、自分の政治団体に入れたということがなぜ合理的に推認されるのかということは当然新たな疑いを持って出てこなければいけないんじゃないんですか。
○政府委員(濱邦久君) 先ほどお答え申し上げましたように、この金丸前議員に対する政治資金規正法上の量的制限違反事件の不起訴処分に当たりまして、去る一月二十九日の不起訴処分、検察審査会の不起訴不当の議決を受けて再度の不起訴処分をするに当たりまして、その不起訴処分の時点において検察当局の判断を私が御説明したわけでございます。
 今、委員がお尋ねになっておられますのは、起訴に係る所得税法違反事件における隠匿所得の原資との関係においてお尋ねをなさっておられるわけでございますけれども、この起訴に係る所得税法違反事件における隠匿所得の原資がどういうものであったかということにつきましては、これはこの起訴に係る事件について隠匿所得の原資に関する検察官の主張がいまだ公にされていない現段階においては、具体的に立ち入ったお答えは差し控えさせていただきたいというふうに思うわけでございます。
○大脇雅子君 こういう状況が出てきたわけですから、当然その佐川の献金についてももう一度きちっと捜査をし直されて、そしてその合理的な推認とされた検察官の意見がやっぱり私は問題があると思います。再度調査をなさるでしょうか。
○政府委員(濱邦久君) 先ほどお答え申し上げましたように、この金丸前議員らに対する量的制限違反事件の不起訴処分に至る判断の過程は先ほどお答え申し上げたとおりでございまして、もう一度要約いたしますと、要するに被疑者である金丸前議員及び生原元秘書が供述するところ及びその他の関係証拠から金丸前議員の指定団体を経由してこの五億円が分配されたとする点についての合理的な疑いが残る以上は、金丸前議員から直接に約六十名の候補者に分配されたという事実を積極的に合理的な疑いがない程度に認定することはで
きないということで、証拠上嫌疑が不十分であるという結論を出したわけでございます。
 なお、念のために申し上げますと、金丸前議員に対する量的制限違反事件の事実につきましては時効切迫等の関係があって早期に捜査処理を終えたものでございまして、既に時効期間は完成していることは十分御理解いただいていると思うわけでございます。
○大脇雅子君 まだ不実記載の方は残っていると思いますので、その点についてはしっかりと御捜査いただきたいと思うわけであります。
 それから、検察審査会の件についてお尋ねをしたいんですが、この検察審査会のハンドブックを見ますと、審査事件罪名別順位表によりますと職権乱用は七位で、四千四百十九件となっております。
 この内容についてお尋ねをいたします。大体どんな種類でしょうか。
○最高裁判所長官代理者(島田仁郎君) 罪名別に検察審査会に申し立てられたものの中でどんなものが多いかという御質問だと思いますが、受理件数の多いものといたしましては、第一に業務上過失傷害罪、それから業務上過失致死罪、そして傷害罪、詐欺罪、そのような順序で続いております。
○大脇雅子君 第七位の職権乱用罪は非常に低いような気がしまして、今回の事件で検察審査会への申し立てはふえたわけですが、例えば職権乱用罪というとどんなようなケースというか、どんなのがあるかお尋ねします。
○最高裁判所長官代理者(島田仁郎君) これは罪名ごとに統計はとっておりますが、その内容までは私ども十分把握しておらないわけでございます。職権乱用罪、これ数が多うございますが、この中にはよく警察において捜査官等に乱暴を受けたとか、そんなような申し立てもかなり多いように承知しております。
○大脇雅子君 ロッキードとかリクルート事件のときは、三木首相と稲葉法務大臣というお二人の熱意によりまして、灰色高官といったものがさまざま出てまいりましたが、今回のこういった建設業界やさまざまな業界等に関する政治腐敗の事実が明らかになったときは、ぜひ私は法務大臣にその灰色高官の公表という形に意欲を燃やしていただきたいとお願いいたします。
 最後に、そういったロッキード、リクルートと今回の事件を対比いたしまして、法務大臣の御決意はいかがかお尋ねをいたしたいと思います。
○国務大臣(後藤田正晴君) ロッキードのときは、私の記憶に間違いかなければたしか議長の裁定みたいなものがあって、そして院としても、何といいますか、灰色とでもいうんですか、そういうものの定義があって、その上にしかもこれは秘密会だというようなことでああいった処置がとられたんですが、さっぱり秘密会どころの騒ぎじゃない、夕方になったらみんな出ちゃった。
 ところで、検察の仕事というのは、私はこれ率直に言いますけれども、白か黒ですよ。そんな灰色なんというのはあるわけはない。検察としては刑事事件の責任を追及しているんですから。そのときに捜査の過程でいろいろな強制力まで使って調べもするし、証拠も押さえているんですね。それで犯罪に関係のない者を灰色だと言って法務当局が発表するなんということは、私はよろしくないと。それはやっぱり国会御自身が御調査なさって、政治の場で政治論議として私はきちんとやるのが筋道ではないのかなと。
 そして、国会御自身は、これは検察でもなければ裁判でもないわけですから、それはやはり政治的な見地において問題をどう取り扱うかと、こういうことであって、それとの関連の中で検察に対してどういう資料があるんだといったようなときには、私はやはり最大限国政調査には協力すべきであるという基本の認識はなきゃならぬと思いますけれども、しかし検察の役割というのはそうじゃないんだといったようなこともありますから、法律の中で必ずそういうときには法令の許す限度ということにちゃんと制約もありますから、そこらも十分考えながら我々としては対応するのが適切であると。したがって、どんどん強権によって得た資料をどこへでも提出するということは、私は避けた方がよかろうと、かように考えております。
○委員長(片上公人君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。
   午前十一時五十分休憩
     ――――◇―――――
   午後一時二分開会
○委員長(片上公人君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、検察及び裁判の運営等に関する調査を議題とし、法務行政の基本方針に関する件について質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○猪熊重二君 きょうは法務大臣の所信に対する質問ということで、もう少し格調高くやらなければいけないんですけれども、申しわけないんですが大臣にまず、かけマージャンの問題についての三月二十四日の参議院予算委員会における答弁について、私はどうも納得できないのでもう一度お伺いしたいと思うんです。
 と申しますのは、この三月二十四日の参議院予算委員会において江本委員からかけマージャンについて、世間ではかけないでただ積み木だけするということはあり得ない、大体どの範囲ならいいのかということをお聞きしておきたいと、こういう質問なんです。それに対する大臣の答弁は、
 刑法百八十五条で、偶然の勝敗にお金や物をかけてそれの取得を争う、これはばくちになるわけですね。ところが、そのただし書きに、娯楽の程度であればいい、こう書いてあるんです。それはどういうことかと言えば、社交儀礼の範囲内であれば私は賭博にはならないのではないかなと、これ以上は答えられないんですと、こういう答弁をしておられるんです。
 まず、この答弁の当否を考える前提として、かけマージャン、いわゆるお金をかけるマージャンについて司法当局がどういうふうな考えに立っているか。
 まず警察庁、かけマージャンの賭博性について、どういう立場で捜査しておりますか。
○説明員(瀬川勝久君) ・刑法の賭博罪は、偶然の勝敗に関して財物をもって賭事を行った場合に成立をするということとされております。ただし、一時の娯楽に供するものをかけた場合には成立しないこととされておるわけであります。
 この一時の娯楽に供するものというものにつきまして、金銭につきましては金額の多少にかかわらず一時の娯楽に供するものとは言えないという判例があることについても承知をしております。
 警察といたしましては、こういった判例等も踏まえ、適正に対処しているところでございます。
○猪熊重二君 検察庁及び裁判所、順次これについての見解を述べてください。
○政府委員(濱邦久君) もう委員が十分御案内のところを申し上げるわけで釈迦に説法かと思いますが、賭博罪は刑法百八十五条で、偶然の勝敗に財物をかけてその得喪を争うこととされているわけでございますが、この刑法百八十五条にはただし書きがございまして、一時の娯楽に供するものをかけたときは賭博罪は成立しないこととされているわけでございます。
 検察当局におきましては、いわゆるかけマージャンにつきましてもこの法の趣旨に従いまして、当該事実がこの刑法百八十五条本文に該当すると認められる場合、他の刑事事件の処理と同じように、その犯情、被疑者の前科前歴、改悛の情の有無、その程度等を総合勘案いたしまして処罰に値すると認められる事案について公訴を提起しているものというふうに承知しているわけでございます。
○最高裁判所長官代理者(島田仁郎君) 私どもといたしましては、この関係について判例を見てまいったところでございますが、どうもそのただし書きの適用が問題となるような微妙な事案につい
ては起訴されないせいもあるかと思いますが、その辺の接点についての判例というのは余り見当たりませんでございまして、かけマージャンについて賭博罪として起訴された事件につき公刊物に掲載された判決例を調査いたしましたところ、最高裁の昭和三十七年六月二十六日の決定が裁判集に入っております。これの原審判決の認定として、百点十円の割合で現金かけてマージャン賭博をした事件について賭博罪の成立を認めております。もっとも、この最高裁の決定自体は、賭博罪のそのただし書きの適用の有無が争点になったわけじゃございませんで、未遂か既遂かが争われた事案でございます。
 ちなみに百点十円というのは千点百円でございますか、当時の物価水準、これ昭和三十五年当時の事件でございまして、現在物価の値上がりを見てまいりまして約五・三倍ということでございます。そうすると、この事案でいけば千点大体五百円程度の割合で現金かけた事案である、これについては賭博罪の成立を認めておると、こういう事案が出てまいりましたが、ほかにちょっと相当な事案は見当たりませんでございました。
○猪熊重二君 それは最高裁刑事局長ね、金銭についてはその性質上、一時の娯楽に供するものとは見られない、その額の多少にかかわらず本罪となるというのが大審院判例、大正十三年三月九日。その後幾つもある。
 いずれにせよ、私が言いたいのは、法務大臣の答弁が、金丸前副総裁がワリシンで稼いだ利息を十万、数十万、百万単位でかけマージャンして、そしてそのかけた金をわざと負けてやって相手にくれてやるというふうな報道がなされている事態のもとにおいて、あたかも社交儀礼の範囲内であれば賭博にならぬというふうなことになると、じゃ、金丸さんがかけた、あの人は金持ちだから十万や数十万は社交儀礼の範囲内かななんということで間違う人がいると困る。要するに、金をかけたら賭博罪であるということを明確にやっぱり言ってもらわなきゃならぬと思うんです。その辺、大臣の所見を伺いたいと思います。
○国務大臣(後藤田正晴君) 私が申し上げたのは、江本議員がかけマージャンというのは一体どれぐらいならかけマージャンになるんだと、こういうような趣旨に理解をしたわけでございます。もともとかけマージャンがいけないというのは、そのこと自身よくない、これは。初めから私はそれは決まっていると思います。そこで、ああいう席でそういったことをお答えするのはいかがかなとこう思ったものですから、私は刑法百八十五条を頭に置いて、条文そのままのつもりでお答えをいたしたのが私の真意でございます。
○猪熊重二君 次に、ちょっと質問の順序を変えて申しわけありませんが、死刑の問題についてお伺いします。
 まず、二十六日に死刑が執行されたのかされなかったのか、その点についての竹村委員の質問に対して、刑事局長は明らかにできないとおっしゃる。明らかにできない理由として、本人の家族の問題と、それから同じような境遇にある死刑囚に対する影響、こういうことをおっしゃいました。
 そうだったら伺いたい。具体的な名前を言えば死刑になった人の家族の問題が出てくるでしょう。しかし、死刑が執行されたのかされないのか、何人されたのかという質問で、三人死刑、二十六日に死刑執行しましたと言った場合には家族なんかどこにもいないんです。それから、同じような境遇にある死刑囚に対する影響と言うけれども、それは刑務所における情報管理の問題であって、これも理由にならぬ。二十六日に死刑が執行されたのかされないのか、人数、おっしゃってください。
○政府委員(濱邦久君) 午前中の竹村委員のお尋ねにもお答えしたわけでございますが、結局死刑の執行について今委員のお尋ねにお答えいたしますことは、先ほど午前中の御質疑にもお答え申し上げましたように、死刑を執行された者の家族その他の関係者に与える影響、特にこれらの者の名誉、心情を殊さらに傷つけないようにすることに考慮しなければならない、また他の未執行の死刑囚の心情の安定にも留意しなければならない、こういう観点から死刑の執行は公表しないということで従来お取り扱いさせていただいているわけでございまして、それが相当であると考えているわけでございます。
○猪熊重二君 あなたがそう先ほどおっしゃったから私は今質問の頭に言っているんです。具体的な、山田一郎さんの死刑を執行しましたと言えば山田一郎さんの家族がいるけれども、二十六日に三人死刑執行しましたと言って、家族なんてわかりゃせぬじゃないの。だれも家族の感情も、家族の立場も、そんなもの考える余地はないと言っているんです。それからさらに、同じ死刑囚の立場にある人に対する影響と、こうおっしゃるけれども、それはさっきも同じことを申し上げているように、それは刑務所の情報管理の問題でしょう。国民に対して死刑を執行したかしないかということがなぜ明らかにできないんですか。もし明らかにしなかったら、どのような死刑囚がどこにどれだけいて、それも生かすも殺すも勝手なんという、そんな国家権力が生かすも殺すも勝手みたいなことで死刑を執行したということを言わぬというような、そんな秘密主義はない。答えてください。
○政府委員(濱邦久君) 死刑執行についての情報を公表することにつきましては、これまでもたびたび御議論がございまして、従来法務当局からお答え申し上げておりますのは、例えば何年から何年までの間に死刑が執行された者の数は何人である、あるいは何年末における死刑確定者の数は何人であるということについての情報はお答えを申し上げているわけでございます。それ以上に、さらにその執行状況につきましてお答え申し上げることは先ほどお答え申し上げた理由から差し控えさせていただきたいということを申し上げているわけでございます。
○猪熊重二君 それじゃ、この菊田幸一という明大の先生の書かれたこの本の中には、死刑執行人員というのが明治六年から平成元年まで、これは本がそのころ出た本だから平成元年までなんです。ちゃんと、しかもそれには司法統計年報、刑事統計年報などによって作成したということで、毎年毎年の死刑執行の人数が書いてある。
 今、あなたがおっしゃる。じゃどのくらいたったら今言われたような影響がなくなるから公表をするということなんですか。
○政府委員(濱邦久君) 今、委員がお尋ねになっておられる死刑執行に関する情報の関係では、例えば検察統計年報及び矯正統計年報によりまして公表される限度において御認識をいただきたいというふうに思っているわけでございます。
○猪熊重二君 しかし、二十六日の死刑執行があったかないかをわからぬままに法務大臣にいろいろ意見を聞くというのは非常に何か仮定論みたいでぐあいが悪いから、私は死刑執行があったものという前提に立ってお伺いしたいんです。
 先ほども竹村委員から話がありましたが、刑の執行を含めて裁判の執行は検察官がこれを指揮して行うことになっている。しかし、死刑についてだけは法務大臣の命令によって死刑を執行するということになっています。これについて大臣はどのようにお考えになりますか。一般的な検察官の指揮でなくして法務大臣の命令にかからしめたことについての御意見をお伺いしたい。
○国務大臣(後藤田正晴君) 判決はすべて司法機関でおやりになるわけですが、その判決の執行は、これは一般の事件についてはもう一度検察に返ってくる、つまり行政権の方に返ってくる。そのうち死刑は、言葉が果たして適切かどうかはわかりませんが、一たん執行しますと取り返しのできない重要なこれは刑でございます。それだけに私はあくまでも慎重な手続を踏むべきである、こういうことで法務大臣の執行命令書を必要とすると。そして、その執行命令があれば当然のことながら検事がそれに立ち会う、こういったような入念なるお取り扱いをしているものと、かように理解をいたしております。
○猪熊重二君 もしこれが事務的にただ死刑を執行すればよろしいというのだったら、他の裁判の執行と同じように検察官に全面的に任せればよろしい。しかし、死刑は今大臣がおっしゃったように、もし間違って死刑を執行した場合に、回復しがたい生命の損失、生命の尊厳に対する冒涜、こういうことで法務大臣の命令にかからしめている。そしてまた、私はそういう意味では法務大臣の死刑執行に対する裁量というふうなものを十分に考慮したこの刑事訴訟法の規定だろうと思うのです。
 そういう意味において、今回法務大臣が死刑執行を命令させたとすれば、せっかくこの規定によって法務大臣の裁量権にかからしめている法の趣旨というものはもう失われてしまうのじゃなかろうか、こう考えますけれども、この点についての御意見はどうでしょうか。
○国務大臣(後藤田正晴君) 私は、今お答えをしましたように、大変重大な刑罰でございますから、それだけに一般の事件よりは慎重の上にも慎重を期して扱う必要があるということで大臣の承認を必要とすると、こうなっておるのであって、さればといって、だから手続は非常に慎重にいま一度見直せよということであろうと思うんですね、大臣に来るまでの間に。これはもう精査の上にも精査をしたがってやっているわけですが、御説のように法務大臣の承認を必要とするということが大臣の裁量の範囲内であるかどうかということになると、私はいささかそこは疑問に思っております。そう裁量の余地の私はないものであろう、かように考えます。
○猪熊重二君 大臣、先ほどの御意見だと、法務大臣として法によって付与されている権限であると同時に職務である死刑執行というものはやっぱりやらにゃならぬと、こういうふうに大臣はおっしゃいました。その点についての御意見をもう一度お伺いしたい。
○国務大臣(後藤田正晴君) 私は、やはり今日の三権分立の上に立って、司法がそういう死刑の判決をした以上は、さらなる法務大臣の執行命令書を必要とするということは、慎重な上にも慎重を期してできる限り間違いのないような処置をするということが基本であって、法務大臣の裁量権で右左することはできないものである、かように考えております。
○猪熊重二君 要するに、死刑制度についての大臣のお考えの問題と、法務大臣としての死刑執行命令の問題とはちょっと別な問題ではあるんです。
 それじゃ大臣は、法務大臣としての死刑執行命令についてはどのようにお考えになるんですか。
○国務大臣(後藤田正晴君) これは今お答えしましたように、法務省の中に、死刑判決を受けた者の死刑執行の前に、それぞれの係がさらに絶対にこれは疑いのない、間違いのないことかといったような点を詳細に精査をして、その上で私のところに上がってくる、こういうことでございますから、私はそれをさらに私自身の考えのもとに、係の局長なりあるいは担当の検事なりを呼びまして十分それを精査した上で、ああこれは間違いがないなと、こう思えば私は裁決をするというのが私の職務であろうと思います。もし万一、私がそれを聞きながら、これは、ここの点はどうなんだ、おかしくないかといったような点があれば、これは差し戻しということは当然あるわけでございます。私はそういう考えのもとに死刑の執行命令は処理をしていきたい、かように考えております。
○猪熊重二君 要するに大臣は法律上の、一つの職務上の義務として死刑執行命令があると、こういうふうにお考えのようですが、法律に規定があるからといって世の中の問題がすべて法律で動いているわけじゃないんです。例えば食糧管理法一つ考えてみたって、食糧管理法という法律はある。しかし、そんな法律はもう全く守られていない。政治資金規正法なんといえばもうその最たるものだ。法律があるから必ず守られているし守らなきゃならぬということはない。今のは悪い方の例ですが、刑事訴訟法上幾ら大臣の職務として死刑執行命令があるとしても、そこにはやはりもっと考えなければならない問題があるだろうと。
 死刑問題の一番中核は、いろいろありますけれども、一つの問題としては誤判の問題があります。
 大臣も御存じだろうと思いますが、最近において死刑囚が再審無罪になったのが四件ある。免田栄さんという人が昭和五十八年、拘束三十四年の後に再審無罪になった。谷口さんが昭和五十九年、拘束三十四年の後に無罪になった。斎藤さんがやはり昭和五十九年に拘束二十九年の後無罪になった。赤堀さんが平成元年、三十四年間の拘束の後に無罪になった。
 二十九年、三十四年間も拘束されていて、この間に法務大臣のような方がおられて死刑執行を命令されたら、この方々は絞首刑によって命を失ったんです。しかし、再審無罪ということは無罪なんだ。この方々は無罪で三十年、三十四年間刑務所には置かれたけれども、しかし再審によって無罪になって出てこれた、命拾いをした。
 大臣が今回死刑執行命令を下した人の中にもし無実の人がいたら、大臣、どうお考えになりますか。要するに、人間のやることに間違いがないことはないんだ。現に四人もつい最近殺され損なった人がいるんです。どうですか。
○国務大臣(後藤田正晴君) おっしゃるように、最近四件ばかり無罪の判決があった死刑囚の事件は承知をしておりますが、これはちょうど新刑訴が施行後この運用に必ずしも熟達していないといったような時期における事件が多かったなという私率直な感じを持っております。いずれにせよ、人間が人間をやることですからそれは絶対ないんだということは、これは私は申し上げることはできません。
 しかしながら、日本の裁判制度の中には御案内のように再審制度とかいろんな制度があって、そういった間違いのないような、何といいますか、訴訟制度上のシステムというものがきちんと整備を私はしていると思います。そういった中で最終どうなるかということは決まっておるわけでございますが、私自身は、こういう事件の執行命令の承認を得たいというような書類が上がってきた場合においては、あくまでも精査の上にも精査をさすつもりでございます。そして同時に、私自身が納得をしない限りは、これはもう一度内部でよく精査をしてもらいたい、こう言って私はそれを取り下げてもらうというのが私の基本的な考え方でございます。
 今回の場合にそれをやったかどうかといったようなことは、これは具体的な問題でございますからお答えをいたしませんが、私の大臣としての仕事の仕方ということについては、そういうような十分な精査をしない限りは私は裁決はしない、こういう考え方で処理をするつもりでおります。
○猪熊重二君 大臣がいろいろ間違いがないようにということでその立場において個人的に一生懸命頑張っておられる。それはそれとして、再審事件においては合議制の三人以上で裁判官がそれこそ何年間もいろいろ間違いがあるかないかを裁判しているんです。ですから、法務大臣のいろんな検討というものが無意味であるとか価値がないとか申し上げるわけじゃありませんが、そういうことをおっしゃる前に、もし誤判であったらどうなんだろうということをお考えになりますかということを私は申し上げたいんです。
 要するに、国家刑罰権と言うけれども、死刑に関する限り具体的にそれを執行するのは法務大臣なんです。ほかの刑は一般検察官がやるけれども、死刑だけは法務大臣がやる。その法務大臣がもし誤判だったらということをお考えになったら軽々しく死刑執行命令なんか押せないだろうと。そして押さないことが、法務大臣は先ほど職務怠慢のようなことをおっしゃいましたけれども、職務怠慢ではなくして、仮にそういう法律があったとしても、なおかつもう一歩考えてみょうということがあって当然だろうと思うんです。
 次の観点からお伺いしますが、法務大臣はなぜ国家が犯罪者に対して死刑を執行できる、もっと
言葉を露骨に言えば、国家は人を殺す権利をどこから持ってくるのか、そこをお伺いしたい。
○国務大臣(後藤田正晴君) これはそれぞれの国によって考え方が違うと思いますけれども、やはり国家はその国家を維持し、社会の平和秩序を維持する、そして同時に国民の生命、財産というものを保護をしなきゃならぬ国の大きな責任があるわけでございます。その責任を果たすという意味合いにおいて、秩序を乱す者、あるいはまた国民個人個人の生命、財産を脅かすといったような罪を犯した場合に、それなりの国家としての処罰権というものは私は当然認められてしかるべきではないのかと。その際に死刑を置くかどうかということはそれぞれの国の行う政治といいますか、土壌とでもいいますか、そういった中で制度をとる国もあれば制度をとらない国もあろうと。
 御案内のように、刑罰の中には教育刑的な主張をなさる方もおるし、あるいは応報刑的な主張をなさる方もおります。私はどちらでなきゃならぬとかなんとかということを申し上げるだけの知識はありませんけれども、私は常識的に両方の考え方があると。そして、死刑制度を置いておるというのは、やはり国民全体の考え方がこういう問題についてどういった意識をしておるかというようなことを頭の中に置きながら、どちらかといえば応報刑的な思想に重点を置いた刑罰として死刑制度を設けておるのではないのかな、私はさように考えておるわけでございます。
○猪熊重二君 要するに私が伺いたいことは、国家というこの組織体は、それを構成する個々の国民が持っている権利以上の権利を保有することができますかできませんか、そこをお伺いしたい。
○国務大臣(後藤田正晴君) ちょっと、もう一回。
○猪熊重二君 国家は、それを構成する個々の国民が持っている権利以上の権利を国家が持つことができるとお考えですか。
○国務大臣(後藤田正晴君) 私は個々の国民が持っておる権利を守っていくのが国の役割であろうと、こう考えます。
 先ほどお答えするときに申し上げませんでしたが、現在の日本国憲法が既に、三十一条ですか、その中にこの死刑の存在ということを前提にした条文を置いておることもこれは頭の中に置かなければならぬのではないかなと、私はさように考えます。
○猪熊重二君 私が申し上げたのは、要するに、まさに憲法にすべて国政は国民の厳粛な信託によるものであると、こう書いてありますね。ですから、国民から信託された以上の権利を国が持つことはないと私は思うんです。個々の国民は人を殺す権利を持っていない。正当防衛とか特殊な場合は別ですよ。正当防衛とかどうとかそういう場合は別にして、個々の国民は人を殺す権利を持ってない。個々の国民が持っていない権利が国民の信託によって成り立っている国政においてもあり得ようはずがない、こう私は思うんです。
 要するに、大臣がおっしゃったように、秩序を維持しなければならない。まさに強盗犯人、殺人犯人がいる、それに対する直接的な秩序維持の警察行動なり、これはいいですよ。今、死刑囚としているのは十年も二十年も刑務所に放り込まれていて、反逆するも攻撃するも何もない。しかも、もっと言えば、自分の行為を反省して、前非を悔いて人間として真っ当に生きようと考えている人間かもしれない。善悪で言えば我々よりももっと善人になっているかもしれない。そういう人間に対してまでなぜ国がその人間を殺す権利を持っているか。要するに、個々の国民が人を殺す権利を持っていないとすれば、ゼロを幾ら足してもゼロなんです。という意味において、国には国民を殺す権利はない。国家刑罰権の名においても国民を殺す権利はない、私はそう思います。大臣の御見解はどうでしょうか。
○国務大臣(後藤田正晴君) あなたの御意見を聞いておりますと、個々の国民が持っていない権利は国家が持つはずがない、こういう御主張ですね。私は、個々の国民が持っておる権利を守らんがためには、国家としては必要な場合には国家としての機能を持っても、これは国民全体が認めておるとするならばそれでいいのではないのかなと、そこで憲法の中にも三十一条というものがちゃんと規定をしてあるではありませんかということをお答えをしておるんですが、やや理屈っぽい議論ばかりで、これは政治家の議論じゃありませんから、専門的な意見は私の方の刑事局長からお答えさせます。
○政府委員(濱邦久君) 今、大臣がお答えになられたことで尽きていると思うわけでございますが、国は社会秩序を維持し、犯罪から国民の生命、身体、財産等を保護する責務を有するわけでございまして、社会秩序保持のために必要な限度で刑罰権を行使すること、その責務を果たすものであることはもう改めて申し上げるまでもないわけでございます。このような責務を果たし、犯罪から国民の生命等を保護するためには、刑罰権の行使として死刑を科すことも許されるという考え方をしているわけでございます。
 もう少し申しますと、国は犯罪に対して私人が報復行為に出ることを禁ずるとともに、みずから刑罰権を独占することとしているわけでございます。これも改めて申し上げるまでもないわけでございます。これは国がその責任において、厳格な要件のもとで犯罪に照応する刑罰を科することによって全体として社会の秩序維持に資する制度であるというふうに考えられるわけでございます。死刑を執行する権限もそのような刑罰権の一環として理解されるべきものであると思われるわけでございます。
 我が国の憲法におきましても、刑罰の一態様として死刑が否定されていないことは先ほど大臣が御指摘になられました憲法三十一条のほか、憲法十三条等の規定に照らしても明らかであるというふうに考えるわけでございます。
○猪熊重二君 要するに私が申し上げているのは、国の権限というものはすべて国民の信託によって初めて発生するものであって、その信託者が持っていないものが何で受託者である国家に発生するかと、こういうことなんです。しかし、これはそれぞれの考え方の問題ですからこれ以上はやめておきます。
 それから世論調査の問題、これは前から何回も言われていますからもう申し上げませんけれども、平成元年六月総理府の世論調査はまことに不届き千万な世論調査なんです。要するに、誘導誤導の世論調査であって、この世論調査の結果として、死刑廃止に反対する国民が六割いるというふうなこの調査結果は、全く設問自体が誘導であって、まともな価値を持つようなものじゃないと思うんです。
 この死刑廃止問題、死刑制度の存続に関する問題は、必ずしもそういうふうな世論調査というふうな多数決原理でやるべきことではないとは思いますが、先ほど法務大臣も、世論の動向もこれありと、こうおっしゃいますので、もし本当に世論調査というものが死刑制度の存廃論議にとって必要だとお考えならば、法務省としてもう少し客観的な立場に立つ死刑存廃に関する世論調査をおやりになる御意思はありませんか。
○政府委員(濱邦久君) もう委員がさきに指摘されましたように、この死刑制度に関する世論調査の質問事項につきましては、従前から同じような内容の調査が継続的になされてきたことでもございますし、統計の継続性という観点を重視してこれまでの調査の際の質問方法を踏襲しつつ、調査対象者の意見をできる限り正確に把握するよう努めてきたところでございます。
 この問題につきましてはいろんな世論調査が行われていることは承知しているわけでございますし、それはそれといたしまして、今後世論調査をするということになりました場合に、なお改善すべき点があれば世論調査の専門家の意見もさらに聞くなど改善を図ってまいりたいというふうに思うわけでございます。
 ただ一点だけ、これはもう言わずもがなのことでございますけれども、先ほどから委員が御指摘
になられましたのは、総理府が平成元年に行った死刑問題についての世論調査でございます。
 実は、これは昨年十一月に民間機関によるアンケート調査結果というのも出ているわけでございまして、もう少し具体的に申しますと、昨年十一月にニッポン放送が「スーパーステーション 死刑への扉」の放送の際のアンケート結果を集計しておりまして、その結果によりましても死刑制度に賛成する意見が約七〇%、死刑制度に反対する意見が約二一%というような状況になっておるわけでございます。したがいまして、平成元年に総理府が行いました世論調査につきましても、おおむね傾向は同じような傾向が出ているのではないかと思うわけでございます。
 いずれにいたしましても、委員が御指摘になられましたように、世論調査を行う場合には調査対象者の意見が正確に反映されますよう、質問事項等についても工夫を凝らしていかなければならないものと考えているわけでございます。
○猪熊重二君 先ほど申し上げましたように、死刑廃止、存続の問題は世論調査による多数決の問題ではないと私は思う。
 特に、法務大臣に申し上げておきたいのは、多数決によって命を奪われたらたまらないということ、これだけは申し上げておきたい。要するに、世論調査の結果によって死刑を存続させるかどうかということは、多数決によって万一にも無実の人間を死刑によって殺すとしたらそれは殺人だという意味において、世論調査というのは一つの目安ではあるけれども、人の命は多数決によって左右されたらたまったものじゃない、このことだけは申し上げておきたい。
 時間が来ましたので、ともかく法務大臣、私がいろいろ申し上げたのは、確かに法律としてはあるけれども、刑事訴訟法上法務大臣の職務権限であると同時に、確かに職務なんです。死刑執行命令というものはそういうものではあります。
 しかし、大臣のお考えは、全世界が滅びても正義行わるべしというようなカント的発想過ぎてどうもぐあいが悪いんじゃなかろうか。誤判によって命を奪われる者が一万人の中に一人でもあるとしたら、国家がそんなことをやることは許せないということ。そして、国家は大体そのような殺人の権利を持ってないということ。世界の趨勢の問題あるいは死刑廃止条約の問題、それから死刑の一般予防、特別予防的効果の問題、あらゆる問題から考えて、ぜひとももっと慎重に対応していただきたい。そして、法務大臣をおやめになったときには死刑廃止運動の先頭に立って頑張ってもらいたいと私は思うんです。最後に法務大臣、時間ですので簡単で結構です、御意見をお伺いしたいと思います。
○国務大臣(後藤田正晴君) 猪熊議員の御意見はそれなりに重く受けとめさせていただきたい、こう思います。
○猪熊重二君 終わります。
○石原健太郎君 法務当局におかれましては、日夜御苦労さまです。
 今日の政治不信の大きな原因の一つは、政治とお金、特に政界と業界との金銭的癒着にあると思われますが、現在その一端が解明されつつあることは政治や行政への国民の信頼回復のため大いに役立つ好ましいことと御努力に敬意を表し、高く評価いたすものであります。今後腐敗の根源を絶つためさらに御努力いただきますことをまず要望させていただきます。情において忍びがたいこともおありと推察いたしますが、かつて司法省の創設者であった江藤新平さんも司法当局に捕縛されたことに思いをいたしますとき、それが検察の宿命なのかとも感じております。
 ところで、後藤田法務大臣の所信の中にもありました外国人の人権の保全について伺わせていただきます。
 私は、当委員会に所属させていただくようになりまして在日外国人のことを知りたいと考え、本屋さんでそんな関係の本を探しているうち、「タイから来た女たち」とか、「ラパーン事件の告発」あるいは「近くて近いアジア」などの本を見出しましたけれども、そういう本を読んでいますと中身がとても悲惨で読み続けることができない、もう三、四ページ読むとあとは嫌になってしまう、そんな感じの本でございました。それで本当にこんなことがあるのかとびっくりして警察庁に問い合わせたら、それが本当なんです。
 それで、警察庁の資料をちょっと読ませていただきますが、「キャバレー経営者らによるフィリピン女性十八人に対する労基法違反事件」、「松山市内のキャバレーの経営者は、従業員四名と共謀して、平成三年七月二十五日ごろから、同年九月六日ごろまでの四十四日間にわたり、フィリピン女性十八名を自己の経営する三店舗において従業員として稼働させ、トップレスダンスや客への卑猥なサービス、売春行為を強要していた。」。
 それで、九一年九月十日、読売新聞にその事件が報じられているんですけれども、「ジャパゆきさん強制労働−松山のキャバレー比の十八人保護」、「……容疑者ら五名は共謀し、……十八歳から二十六歳のフィリピン人十八人を、……プレハブ小屋に住まわせ、階段への出入り口に鍵を掛けて行動を制限。殴る蹴るの暴行や脅迫を加えて、……売春を強要するなど労働を強制していた疑い。……パスポートや帰国用航空券は会社側が預かっており……小屋は、約二十八平方メートル。」、十六畳くらいなんでしょうか、「……多いときは二十一人が詰め込まれ、一つのベッドに二、三人が体を縮めて寝ていた。」、こうなってるんです。
 それから、これ一件だけじゃなくてもう一件ぐらい例を挙げさせていただきたいと思うんですが、これも警察庁からいただいた資料です。「一九九一年十月、相模原市内のスナック売春を端緒とした一連のタイ人女性を使用した売春事犯の概要(神奈川県警)」、「神奈川県警では、平成三年五月、相模原市内のスナックでタイ人女性にホステスをさせながら、飲食客らに売春をさせていた同スナックの経営者である暴力団幹部とその妻の二名を売春防止法違反で逮捕するとともに、」、さっきの記事では女性は保護したと書いてあるんですけれども、こっちは女性は逮捕したとなっています。
 続いてその事件との絡みで、「埼玉県浦和市内でスナックを経営する暴力団幹部らからタイ人女性の斡旋を受けた」、「浦和市内のスナック経営の暴力団幹部らは、千葉県松戸市内でスナックを経営する暴力団準構成員らと共謀してタイ人女性を支配下に置いて売春をさせていた」。
 これはこのときの新聞記事によりますと、「監禁して強要・搾取−タイ女性組織的売春苛酷ぶり全容解明」となっているんです。「……相模原市内のスナックの売春が発端になった一連の事件で、売春防止法違反で六人が起訴され、入管法違反容疑で逮捕されたタイ女性は五十人以上にのぼった。女性たちは、タイのブローカーを通じて千葉県の九十九里浜近くのスナックに送られ、」、「スナックがブローカーに払う金は一人あたり約百五十万円。しかし、スナックは渡航費用や借金を口実に約三百五十万円を女性の借金として負わせ、半ば監禁状態にして売春を強要、代金の殆どを搾取した。」。
 どうもこれは暴力団の資金源にもなっているようでして、今五万人ぐらいのタイやフィリピンの女性が日本にいるかと思うんですけれども、一人百万ずつ暴力団に入っていたとしても五万人ですから五百億円ですか、大した金額になると思うんです。
 この本には、「タイから来た女たち」という本に書いてあるんですけれども、「現行の捜査機関は、彼女達の問題を正面から「人身売買」として把握しようとせず、徹底した捜査・事実究明を一貫して、半ば意識的に怠っているのである。」、こう出ているわけです、これはちょっと書いた人の独断もあるかもしれないんですけれども。
 これ、最近出された不法滞在者問題分科会の報告書による数字なんですけれども、平成二年七月一日現在にはタイとマレーシア、フィリピンの女性の日本に滞在する合計が二万三千人でありまし
た。しかし、平成四年五月にはこの三国の女性たちが五万一千人も日本に滞在している。まさにそうした女性たちが日本に来ることが、それは入国管理局や何かで水際でも随分防止しているようですが、こういうふうに実態は増加しているということを見ますと、何かさっきの著者の言うこともあながちいいかげんなことばかりではないと思うんです。
 こういう事態がこの日本で行われているということは文明国の名に恥じるものではないかと私は考えるのであります。また、人道的見地から国際貢献をしなくてはいけないなんて言っておりながら、一方国内でこんな非人道的な仕打ちを外国人に対して行っていたのでは、これは支離滅裂なことではないかとも思うわけであります。
 法務大臣は、こうした実態があることをどのように受けとめられるかお聞かせをいただきたいと思います。
○国務大臣(後藤田正晴君) 御質問の中にありましたように、発展途上国の国々から相当数の御婦人がいろんなルートで入ってきて、その人数がふえつつある。しかもそれらの婦人を、何といいますか、大変気の毒な、また同時に許すことのできないような不幸な運命に陥らさせておる日本人の業者、あるいはまた双方連絡をとりながらそういったことを商売にしているブローカー、こういうようなものが暗躍をしておるということは私自身時々うわさとしては係の者からも聞くことがありますし、大変こういうことは許すことのできない問題であろうと、かように考えておるわけでございます。
 基本的に私は、これだけ国際交流が激しくなりますから多くの国から多くの人が日本にいらっしゃる、そういうときにどうもこの日本はまだ、これだけ交流が激しくなっても、何といいますか、従来の長い間の日本人の意識というものが必ずしもそれにマッチするほど適応していないという面があるのではないかと。そういったことからくる外国人を異人として見る、そういう目がまだあるんではないかなというようなことで、だんだんこういう点については意識改革をしていかなければなりません。そういう外国人を見る目、これが場合によれば差別の観念にも通じるといったようなことでございますから、基本的にはやはりこういった方に対して政府としては温かい法の手を差し伸べる、かりそめにもこういう人をめぐっての人権問題等を起こすことは許さないといったような厳しい態度が望ましいな、私はこう思います。
 それと同時に、一方、これまた今度は日本としても認められないような不法事案が外国人の間に行われていることも事実でございますから、そういう面については、外国人の管理といったようなことですか、あるいはまた外国人の不法行為の取り締まり、こういう面についてきちんと体制を整備しなきゃならぬのではないかなと。
 ともかく急激にこういうのがふえておりますから関係官庁とも今密接な連携をとりながら対応はしておりますが、決してこれで私は十分とは思っておりません。殊に御質問のような事項は、これは私は絶対許してはならぬことであろう、こういうつもりで今後とも対応してまいりたいと、かように考えております。
○石原健太郎君 法務大臣の強い御決意を伺わせていただいて私も得心はいきますけれども、そういう日本に来る女性は、ある程度こっちでの仕事を理解しながら来る人もいることはいるらしいんですけれども大抵は日本に一週間モデルの仕事行かないかとか、皿洗いがあると日本に行ってやるといい収入になるからとか、こうぽこっと日本に来るから言葉もわからない、地理もわからない、どこにどう相談したらいいかもわからない、何もわからない人たちがいきなり日本にいるわけです。ですから、そういう人たちを救うためには行政機関が積極的に働きかけをして手を差し伸べてやらなくちゃいけないんじゃないかと私は感じております。
 それで、ことしになってからも、ことしの二月に福島県でですけれども、やっぱり暴力団員がタイの女性に管理売春をしていたということで捕らえられています。本当に地方の、何というんですか、離れた町や村にもそういう人たちがたくさん送り込まれているわけです。たまたま法務省の支局や分局なんというのは福島県だけでも二十九カ所、三十カ所ぐらいあるわけですから、そういう機関なんかにもどんどんそういうことを通達していただいて、少しでも情報を集めたり、積極的にこちらから手を差し伸べてやる、そういうこともぜひやっていただけたらとお願いをいたす次第であります。
 それから、法務省の用語の中に不法残留とか不法就労という言葉が出てまいります。
 これ、お役所の言葉としてはそういう言葉遣いも必要なのかもしれないんですけれども、テレビや新聞で不法残留とか不法就労という言葉がしょっちゅう出てきたり、そういう人が二十七万人もいるなんて報道されたりしますと、町の中や電車の中で外国人なんか見たときにも、あの人も不法に滞在している人なのかななんて、何となくそんなふうに思ったり、それから不法という言葉は無法という言葉と非常に似ていまして、余りいいイメージの言葉じゃないと思うんです。子供なんかが小さいうちから不法残留外国人なんという言葉をしょっちゅう聞いていますと、それが差別感情につながっていったり、昔チャンコロとかなんとか言ったりして差別した、そんなふうな傾向を助長するおそれも私はないではない、こう思うわけです。
 それで、できればなるべく不法滞在なんという言葉は使わないで、超過滞在とか、それから不法就労については規則外就労とか、そんなふうにしていただければありがたいとこう思うんですけれども、どんなものでしょうか。
○政府委員(高橋雅二君) 今、不法残留とか不法就労という言葉が盛んに使われて、こういう不法という使い方が外国人に対する偏見を助長しているのではないかという御意見でございますが、一般に不法と申しますのは、違法といいますか、というのと同じ意味でございまして、行為または状態が法令に違反するということとされている場合でございます。
 それで、不法残留や不法就労と言う場合は、出入国管理及び難民認定法に違反する行為ないし状態でございまして、それを表現するためでございまして、不法という言葉が外国人に対する偏見を助長するというふうには私どもとしては考えてはおりません。ほかに何かいい言葉があればそれでもよろしいかもしれませんけれども、客観的な状態を表現するものとして不法ということが今私たち使っておるので必ずしも偏見を助長するものとは考えてはいないわけでございますので、もしいい言葉があればまた検討させていただきたいとは思います。
○石原健太郎君 一言つけ足させていただきたいんですけれども、そういう規則外で就労していてそれが摘発された場合、一週間ぐらいで強制送還されるようになる。そうすると、その間の賃金や何かが未払いのまま帰されちゃう人がたくさんいるらしくて、さっきの女性たちなんかでも本当に摘発されて送り帰されちゃうともう日本でただ働きした格好になってしまう、そういうことも出ているようですから、できるだけ強制送還する前にはそうした問題を残さないように処理していただきたい、このようにお願いいたします。
○政府委員(高橋雅二君) 先ほど人権侵害のケースの御指摘がございましたが、例えば女性とか、女性でなくても不法就労をして入管当局に摘発されまして退去強制の手続に乗った場合でも、仮に私たちの方でこれは不法に就労していたということであっても、賃金が未払いであるとか、あるいは医療費について治療費を払ってもらえないような非常に人権上問題がある場合には、仮に不法であっても雇い主の方に払わせるようにいろいろ努力して、全くただ働きでただ帰らされるということができるだけないようにそれなりの努力はしているところでございます。
○石原健太郎君 終わります。ありがとうございました。
○紀平悌子君 法務大臣の所信表明を、短いものですけれども、眼光紙背に徹しはしないでも改めて読ませていただきました。大変簡略に書かれておりまして、法務行政についてこういうふうに書かれております。法務行政に課せられた使命は、法秩序の維持と国民の権利の保全という問題に尽きると、それ以上のこともあるでしょうけれども、書いております。まことに胸に落ちるお言葉でございます。
 このお言葉を胸に置きましてちょっと申し上げたいことがあるんです。文面を見ていきますと、最近における犯罪情勢についてという御見解が述べられておりますけれども、全般的にはおおむね平穏に推移している、とはいうものの、凶悪事犯、経済事犯、国際的事犯などが続発している、こういうふうに書いてあるんですけれども、表現がまずいかもしれませんが、政治家事犯、政治家の犯罪ですが、このお言葉がないんですね。
 もちろん二十六日、そして今日も現在国民の信頼を失っているような不祥事については、これは責任を持って対処していかなきゃならないというお言葉は再々伺っております。これは、金丸信前自民党副総裁の百億を超す不正蓄財にまで及んだ巨悪というか、これはたまたまあったので最近の犯罪の傾向ではないというところでお外しになったのかなというふうにちょっと読みましたけれども、違いますでしょうか。
 これ実は、確かにリクルートもそうですし、それから今回の脱税問題もそうなんですけれども、急に今突如出てきたことじゃないわけですね。そうすると、たび重なる過去を振り返って見ますと、これはたしか大臣自身もどこかのコメントでおっしゃっていたと思いますけれども、古くは昭電疑獄というのから始まりまして、そして造船疑獄、それから四十一年、二年の国会の黒い霧というのもございました。それから飛びまして、国際的な規模になりましてロッキード、ダグラス・グラマン、そしてちょっと飛びましてリクルートと数えただけでも、あといろいろ砂利船だとかいろいろなのがございますけれども、非常にたび重なる政治家のかかわった犯罪というかそういうケースが、これは有罪となるケースもあり、そうでないのもありということで来ているわけで、そういった積み重ねの上に現在のこの金丸前副総裁問題があるというふうに私はとらえております。
 そうしますと、やはりこの御所信の中に文章としても入れていただきたかったなと。このことについて甚だ、何というんでしょう、遺憾という言葉はよく使いますけれども、そうでない、もう少し現法務大臣らしい表現で入れていただきたかったなというふうに思うわけでございます。
 そこでお伺いしたいわけなんですけれども、政治改革によってこれを受けとめて、国会は国会で政治改革という立法あるいは制度の確立によってこれをなるべく未然に防止するとか、あるいはなくしていくということに努力すべきが役目だと思いますけれども、じゃ法務行政の中でいわゆる政治改革というものをともに推進していくためには何かと言えば、やはり法秩序の維持と国民の権利の保全、そのことに対する対策が一番だというふうに思います。
 これから近々の問題ですけれども、ことしあるいは来年と言われております総選挙がございますけれども、政治資金及び公職選挙法関係の違法な行為に対する未然防止とかそれから摘発の態勢というのがどういうふうに準備をされつつあるかということ、これは今本当にいわゆる法秩序の素乱は許しませんということの何よりの法務行政の一つだというふうに思うわけです。
 また、これは済んでしまったことだというふうに私はとらえていないんですけれども、三万一千件に上る市民、有権者の刑事告発が金丸前副総裁の佐川マネー五億円の分配先の政治家の特定、それとこの政規法違反関連の追及をしてほしいということが出まして、しかしこれはそのような地検の結果にはなりませんでしたので検察審査会への申し立てということになって、これもまた退けられたという言い方は違うかもしれませんが、御採用にならなかったという結果を生んでいるわけです。
 今、正直言いまして、この六十数人の金丸マネーをもらったという議員あるいは政治家が実在しているというふうに国民は大体の人がそう思っているんです。思うことも自由ですし、そういう事実関係があろうがなかろうが、こういうこと自体が政治不信をますます深めていっているわけなんです。
 そこで、こういった今申し上げた二つの点、これからすぐでもお取りかかりになっていらっしゃるであろうこと、それから過去に済んでしまったと言わないで、例えば金丸前副総裁から渡ったという、さらなる政規法違反の嫌疑というふうに判断するに至らなかったと、至らなかったから略式起訴で検察審査会の結果も一応ためにならなかったというふうなことがなぜ行われたかということの経緯の解明をやはり法務当局として国民の前にはっきりさせた方がいいと思うんですね。
 なぜかといいますと、今度は脱税という問題になりますとこの問題がちょっと忘れられかけるんですが、実は覚えているんですね。ですから、エンドレスの問題になっていくと思うんです。今のこの二つのこれからの問題と、それから六十数人の特定及びどうしてこれが審査会の結果も入れられないようになったのかという、先ほどここでは御説明が大脇委員の御質問に対してあったように思われますが、私自身もちょっとまだ伺っても納得できないものですから、法務大臣にこの件に関して御所見を承りたいと思います。
○政府委員(濱邦久君) それでは、今、委員が御指摘になられた不起訴処分を初めとする告発に係る事実関係の捜査、あるいはその処理結果等についてごく簡単に私から先に御説明を申し上げたいと思います。
 委員が御指摘になられました点につきましては、金丸前議員に渡ったとされる五億円の問題につきまして、金丸前議員それから生原元秘書、さらには平成二年の衆議院総選挙の立候補者その他関係者多数の取り調べを行うほか、これら政治家やその政治団体の収支報告書その他の証拠物の検討を行うなど所要の捜査を行ったわけでございます。その結果、今委員も御指摘になられました政治資金規正法上の量的制限違反事件の関係では、本件五億円は金丸前議員から一たんその指定団体に寄附された後、その団体から約六十名の候補者に分配されたものと見られる、金丸前議員が五億円を直接約六十名の候補者に分配したという告発事実については合理的な疑いを入れない程度の証明をすることはできないという理由によりまして起訴処分を行ったものでございます。
 現在捜査継続中の収支報告書不記載事件等につきましても、その被告発人が約六十名の氏名不詳者とされていることから、その特定も含めまして五億円の使途等についてなお幅広く捜査を行っているものというふうに承知しているわけでございます。
○国務大臣(後藤田正晴君) 今の紀平先生の御質問、非常に多岐にわたっておるんですが、私の所信表明の中に、最近金丸事件その他で政治家をめぐるいろんな不祥事件がある、それについて触れていないのはどういうことかと、こういう御質問でございますが、私はこの点はむしろ触れておいた方が率直に今になって考えますとよかったのではなかったかな、こうは思います。
 ただ申し上げたいことは、検察というものは、それが政治家であろうと一般の庶民であろうと、それはやはり区別なしに法の範囲内でできる限りの、犯罪が犯されている、こう思えば的確に私は捜査すべきであるし、また私は日本の検察はそれはやっておる、かように考えて信頼をいたしておるということは申し上げておかなきゃならぬと思います。
 ただ、所信表明の中でああいうふうにすらっと書いたのは、やはり日本の治安は、最近のような情勢ですから大型の経済事犯がふえるとか外国人
の事犯がどうとかというような中の犯罪の態様が変わっていることは事実ですけれども、それなりに治安はおおむね私は、何といいますか、平穏というとおかしいんですけれども、そう犯罪が激増しておるといったような見方はいたしておりません。こういう情勢をできるだけ長く続けさせていかなきゃならぬと、それについての我々の使命も重いなと、かように考えるわけでございます。
 さらに、御質問の中に金丸事件の扱いのその後の問題についてのお話がございましたが、これは一応脱税事件、それから政治資金規正法の量的違反というものはほぼ終わったわけでございますが、六十人の特定の問題に絡んでの政治資金規正法の不記載の罪等の容疑はまだ残っておる、かように御理解を願いたいと思います。今後どうするんだということになりますと、これは私の口からこの席で申し上げることはひとつお許しをいただきたい、かように考えます。
 なおまた、選挙の問題にもちょっとお触れになったようでございますが、これは言うまでもありません。選挙民の自由公正な意思が投票行動にあらわれるように、選挙ができるだけ公正に公明に行われるように今後とも選挙違反については悪質事犯というものに重点を置いて取り締まりを強めていかなければならぬなと、かように考えておるわけでございます。
 大体そういうことでよろしいんですか、大変広範囲にわたりましたので。
○紀平悌子君 根っこは一つでございますので、いろいろ申し上げまして、早口なものですから失礼をいたしました。
 所信についてのお答えをいただきました上にさらに意見を申し上げて恐れ入りますけれども、私は、例えばリクルートですとか、それからダグラス・グラマン、ロッキード各事件におきましてちまたというか、それは事実でございますけれども、そのことにかかわって理由はいろいろあるでしょうけれどもお亡くなりになる方もあり、巨悪の影に、何というんでしょうか、犯罪というか、直接殺すのでなくても一人の人を一人が何かの理由であやめるということ以上に多くの人が迷惑をこうむる。すなわち国民の安全である権利とか、それから福祉の権利を侵しているというのが政治犯罪だというふうに私は思っております。
 ですから、ほかのあまたの犯罪に比べて安いとか高いとか、そんなことを私も申しませんけれども、しかしそれにも増して多くの者に迷惑をかける。国民の政治不信とか、あるいは目に見えない子供たちへの教育、それにもはかり知れない害毒を流しておると思いますので、どうぞこの次所信をお書きになりますときには、その点を文字でもお書きいただきたいと思うわけです。お気持ちの上ではいろいろ御表明がありますのでわかっております。
 次に、せっかく厳正公平な選挙ということで違法な行為があればそれは取り締まると、特にこのごろの選挙違反の事例が買収供応という悪質なものになってきているということは、地方選挙、国政選挙を問わず、発表のたびにそういうことがございます。こういった選挙違反を犯した、なかなか大もとの方までには及ばないんですけれども、特に当選されると逃げ切るということが言われておりますけれども、末端で運動なさる運動員の方が捕まって、これは公職選挙法違反者ということで罪に問われるということになるわけでございます。このことはケース・バイ・ケースがございますので、私も一律に選挙違反をしてけしからぬといってその人の人格まで責め立てるというようなことはどうかな、いろいろ事情があったんだろうというふうには思いますが、やはり違法は違法でございます。
 こうして一生懸命第一線の取り締まりの方で頑張られても今度は、これも世間で言うことでございますので、恩赦があれば許されるというようなことをボスの方が運動員の方に言って、いずれ恩赦があればみんな解き放たれるから頑張れというふうな声もかかるというふうに伺うんですね。そうすると、そうかなと思って思わず違法行為をしてしまうという人もいるし、あるいはそれにつながってしまうという方もあって、小さい方たちというか、どちらかというとつられてしたというような方までが刑の対象になるんですね。
 恩赦というのが、きのうも法務大臣から御答弁いただきまして、例えば片一方の手でしたことを片一方の手が許してしまうとか、そういうようなことはやはり大変問題があるかもしれないというような意味での法務大臣、お話があったかもしれません。ですから、これは慎重に、いわゆる政令恩赦ということで一律に解放してしまうということについてはじっくり考えて、よく考えるように当局にお話ししてあるんだという話でした。それは、大臣としてはそこまでのことだろうと思いますけれども、この恩赦の、きのう私が申し上げ方が下手で、かつて恩赦法の改正が選挙事犯者をたくさん含んでしまうということが、だんだん世の中進歩していわゆる再審制度だとか個別恩赦がだんだん機能してきた、こういうことによっていわゆる政令恩赦というものを特に国家による特別な計らいというふうな形でする必要はだんだんなくなってきているんじゃないか。もう一つは実害というのが、選挙違反者の一斉釈放なんですけれども、次の選挙でまたそういう方が同じことをおやりになるかもしれないという実害を防ぎたい、この二つです。
 私が三十一年、三十二年、三十三年の、ここの額にもなっていらっしゃる市川房枝さんなんかがかつて推進されました恩赦法、恩赦審議会の設置ですけれども、これについてはお答えが、恩赦審議会でいろいろしゃべられたことが漏れてしまうと実際困るというような非常に現実的、ああなるほどと思いました。その点はわかりましたけれども、もっと基本的な問題として、今の実情に合わなくなっているんじゃないかというふうには法務当局はお考えにならないんでしょうか。もし、それがちらっとでもございましたら伺わせていただきたく、また、それに対応というか、いろいろ深くお考えと思いますので、その辺のところをお教えいただきたいと思います。
○国務大臣(後藤田正晴君) 恩赦の問題ですが、恩赦制度も御承知のように戦前の恩赦と戦後の恩赦は性格が確かに変わってきていると思いますね。そして同時に、戦後の恩赦もずっと積み重ねがあるわけですけれども、しかし紀平先生のおっしゃるように、確かに個別恩赦が日常的に行われておるではないか、あるいはまた日本の裁判制度そのものの中に再審とかいろんな周到な裁判の見直しのやり方もとられておるではないか、こういったようなことを考えると恩赦制度そのものについて考えたらどうだ、こういう御意見があることは私は承知をいたしております。ただ、恩赦というのは憲法上の制度ではありますし、そして同時に、戦後といえども戦前と意味合いは変わったけれども、やはり過去の大変な積み重ねがあるわけでございます。
 そして一方、刑事政策的に見ましても、法律というのはやはり、何といいますか、かた過ぎるんですね。固定化してしまっておるといったような面もあるわけですね。いろんなそういう避けがたいマイナス面もあるわけでございますから、私はやはり国の何らかの大きな事柄が起きたときのそういった節目節目に恩赦制度というものはあってしかるべきであろう、こう考えておるんです。
 ただ、それを具体的に適用するときは、何といったってこれは司法権の作用を行政権の作用で消してしまう、あるいは変えてしまうといったような、これは重大な、三権分立の上からいきますと、これよほど気をつけて運用しないといけない制度でございますから、私は制度の必要性、そしてまたやらなきゃならない制度であるとは思いますけれども、運用はあくまでも抑制的に、そして慎重にやらなければならぬのではないかな、こう考えております。
 具体的には、申し上げるまでもありませんが、まだ私どもとしては事務当局に勉強だけしてくれということで、私のところに一切まだ案が上がってきておる段階ではございませんのでやるともや
らぬとも、やるとすれば何だといったようなことについても今お答えをする段階には至っておりませんので、そこは御理解をしていただきたいと思います。
 なおまた、選挙の違反の問題についての例の特別恩赦の中の復権ですかね、これはよく一般の世間の方々からはけしからぬ、勝手なことをやる、こういう批判もあるんですが、それは私が承知しております。ただしかし、さらばといって、それじゃ選挙違反だけ、何で残りはいけないんだといったようなまた議論もありますから、そこらは私はあくまでも抑制的な先ほど言ったような態度でありながらも、そこは自然体で私は考えてしかるべきではないのかな、かように私自身は考えておりますが、まだ事務当局から上がってきておりませんのでこれ以上のお答えは差し控えさせていただきたい、かように思います。
○紀平悌子君 御丁寧にありがとうございました。
 それでは、この前の委員会のときに申し上げておきましたけれども、子供のいじめの問題です。
 これはやはりいろいろな人権問題、数限りなくございまして、人権擁護行政のことが多いと思いますけれども、子供のいじめの問題というのは、子供自身がまだ成熟していない人格でございます、それから体力というか、そういうこともございますのでやり場のないケースになってくるわけです。これはどこかでだれかがしなければならない問題じゃないかということを二十六日にも申し上げたんですけれども、もちろん家庭にも問題はございましょう。それから地域社会、それから学校にもありましょう。それから教師にもございましょう。それから子供たち自身にももちろんあると思います。
 ですけれども、法務省、それから文部省にお伺いしたいわけなんですけれども、いじめを完全になくすということは、これは不可能に近いことだと思います。戦争がなくならないと同じくらいいじめがなくなるのは難しいことだとは思いますけれども、少なくとも未然にそういった事例を、特に痛ましい死に至る事例を防ぐ、これは自殺の形あり、それから殺されるという形あり、あるいは自閉症になってしまって登校も不可能となって人生をそこから間違ってしまうという一生にかかわる問題でございます。
 特に、山形県新庄市十日町の明倫中学で一月十三日に起こりましたケースにつきましては、このようなことがもう潜在的にいつどこで発生するかわからないという状況は大げさかもしれませんがあると思うんですね。こういうことに対して、文部省、法務省それぞれ、それから共同なさいまして何かそのことを承る窓口の設置とか、そういうことをお考えになっていらっしゃいますかどうかですね。
 もう時間が参りましたので私はもう口を閉ざしますけれども、この次でも結構でございますので、大臣はこの問題を一人の人間として、あるいは法務大臣としてどう考えておられるか、いつかどこかで伺いたいと思っております。
 以上です。
○政府委員(筧康生君) 委員御指摘のとおり、いじめの問題というのは大変根の深い問題であると思っております。
 この問題の解決のためにはいろいろな面での対策が必要であると考えておりまして、文部当局とも具体的な事件ごとに学校あるいは教育委員会等教育関係機関と常に連携をとりつつ、この問題の解決のための啓発に努めているところでございます。
 これは、具体的な人権侵犯事件として生じたときの場合はもちろんでございますけれども、さらに一般的には、このいじめの基本的なといいますか根本的な理由としては、子供がお互いの人格といいますか、あるいは人権というものの尊重というものの意識を高めていく、こういう努力をしていかなければならないのではないかと考えておりまして、いろいろな機関を通じまして、子供に対して人権意識の啓発という活動に努めてまいりたい、このように考えております。
○説明員(河上恭雄君) 今の先生の御指摘のとおり、いじめの問題というものは児童生徒の健全な人格の発達に影響を与えるだけではなくて命にもかかわる重大な問題でございまして、教育の場でございます学校では特にあってはならない問題であるというふうに思っております。
 文部省でも各学校や教育委員会に対しまして、学校だけでなくて家庭や地域社会と連携をとって、さらにまたいろんな専門の機関、法務省あるいは厚生省の児童相談所とかいろんな機関がございますので、そういったところと連携を図って対処していくように、また学校におきましては校長を中心に教員が一致協力体制を組んでこれに対処するようにということをいろんな指導通知あるいは会議の場等を通じまして指導をしているところでございます。
○紀平悌子君 ありがとうございました。終わります。
○委員長(片上公人君) 本日の調査はこの程度といたします。
    ―――――――――――――
○委員長(片上公人君) 次に、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○猪熊重二君 裁判所にお伺いします。
 この法律案によって裁判官の定員を増員するということですが、この十年ぐらいの間で結構ですが、裁判官の定数と実際の充足数との関係はどうなっておりますか。
○最高裁判所長官代理者(泉徳治君) お答え申し上げます。
 現在の裁判所職員定員法で定められております下級裁判所の裁判官の定員は二千七百七十七人でございます。その充足人員、いわゆる現在員でございますが、現在員は二千七百十三人ということになっております。この数を十年前の昭和五十八年と比較いたしますと、定員の方は六十一名の増加、現在員の方が四十六人の増加、このようになっているわけでございます。
○猪熊重二君 そうすると、現在でも六十四人ぐらいは定員に対して不足というか、人間の方が不足しているということになるわけですが、この辺について裁判所としてはどう考えておるんですか。
○最高裁判所長官代理者(泉徳治君) 委員御承知のとおり、裁判官は資格を要します。裁判官の主たる給源は毎年四月に司法研修所を卒業してまいります者から採用いたします判事補でございます。したがいまして、年度途中におきまして、定年でございますとか死亡でございますとか、そういった年度途中での欠員というものをその欠員ができた都度補充するということはできない仕組みになっております。そのために現在のところ六十四人の欠員がございますけれども、この四月に判事補が現在のところ九十八人志望いたしております。これらを採用すれば、この欠員は四月の時点では埋まる、こういう状況になるわけでございます。
○猪熊重二君 わかりました。
 下級裁判所の裁判官、現人員が二千七百十三人ということなんですが、この中でいわゆる裁判官として実際に裁判実務を担当している人数、これに対して、裁判は実際には行わないで司法事務に従事している人数、あるいは他省庁に出向している人数、場合によっては国内外に留学している人数、要するに私が伺いたいのは、実際の裁判を担当している人はこの二千七百十三人中どのくらいいるんだろうかということについてお伺いしたいんです。ほかの今の数字、もしわかったら述べてください。
○最高裁判所長官代理者(泉徳治君) 先ほど申しました現在員のうちで裁判実務を担当いたしております者は二千五百九十六人でございます。現在員のうちで司法行政事務に従事いたしておる者は五十二人でございます。このほかに司法研修所等
の教官が四十二名おるわけでございます。また、現在員のうちで国内外に留学いたしております者が二十三人ということになるわけでございます。
 それから、他省庁に出向している者はどうかというお尋ねでございますが、他省庁に出向いたします場合には、これは裁判官の身分を離れますために先ほど申しました現在員の二千七百十三人には含まれないわけでございますけれども、出向いたしております者は百十五人おるわけでございます。
○猪熊重二君 そうですか。他省庁に行っている裁判官は裁判所をやめて行っているんですかね。その人数に入っていないということになると、裁判所をやめて行っていることになるんですか。
 それで、いずれにせよ法務省に出向している裁判官はどのくらいになりますか。出向というか、身分がなくなるんだから出向じゃないのかどうか、その辺ちょっとよくわかりませんけれども、何人ぐらいおられますか。
○最高裁判所長官代理者(泉徳治君) 他省庁に出向いたします者は主に検事に転換をいたしておるものでございます。その検事に転換した者の中で法務省で働いておる者は現在八十四人でございます。
○猪熊重二君 そうすると、外務省とか、どこかほかの省庁にも行っているかもしれませんが、法務省に行っている人が八十四人というとほとんど大半占めているわけです。
 この法務省に出向している裁判官について、これ法務大臣にも聞いておいていただきたいんですが、法務省に行きっきりで打っちゃうんならいいんですけれども、行ったのがまた戻ってくるということが非常に困るんです。
 困るというのは、法務省に出向して、国の代理人としていろいろ公害訴訟だとか、あるいは難しい住民訴訟だとか、あるいは基地に関連するような訴訟だとか、こういうことできのうまでは国の代理人として被告席なりに座っていて、それであした来てみたら裁判官の席に座っていると。今までボクシングで相手になって一緒にけんかしていたのが、あしたになったらレフェリーになっているというんじゃ、何だってそのレフェリーはレフェリー性が欠如しちゃうんです。
 そういう意味において、法務省に対する出向ということについて裁判所も、法務省も含めてもう少し考えていただきたいと思うんです。いかがですか。
○最高裁判所長官代理者(泉徳治君) 法務省の仕事の中で民事法に関係いたします民事行政という分野がございますが、司法修習生から検事に任官されました方々は、通常は地方検察庁で刑事事件を取り扱われるわけでございまして刑事の専門家でおられますが、民事事件には必ずしもなれておられないという事情がございます。そのため法務省の方で、特に民事行政の分野で裁判官で民事事件にある程度の経験のある者の派遣を求めるという要請がございます。それが法務省に出向しているという実質的な理由でございます。
 一方、裁判所の方から見ましても、法務省に出向いたしまして裁判所では体験のできないような仕事を体験するということは、その視野を広め識見を高めるということにも役立つというものがございまして、裁判官としての成長に資するものがある、このように考えているわけでございます。
○猪熊重二君 法務大臣、今の点も含めて、法務省はどうもよそから借金しているのが多過ぎると思うんです。要するに、民事局なり訟務局なり法務局なりは裁判所からお借りしてくる。出入国管理局は外務省からお借りしてくる。とりあえずはお借りしてくるのはいいけれども、もうお借りするのが常態だったら、何か今の国家財政と同じで赤字国債が常態になっちゃうようなもので、これからの先もあるんですから何とか法務省で自前で民事もわかる検事、出入国を含めて外交関係もわかる検事というか、これを自前でやることをもう考えたらどうですか。特に、裁判分野においては裁判官が行ったり来たりしているのは見ていてぐあいが悪いんです。
 その辺、法務大臣、そこを自前でやるということをもうそろそろ考えられたらどうなんでしょうか、いかがですか。
○国務大臣(後藤田正晴君) この法曹三者というのは、私が言うのは釈迦に説法なんですけれども、やはりそれぞれの立場は違いますけれども、同じ目的のためにお互いに専門的な立場に立って、それぞれの立場立場で良識を持って仕事をなさっておるのではないかなと、こう考えるわけでございます。そういう観点に立ては、おっしゃるような御心配もあろうかと思いますが、やはり人材の活用とでもいいますか、そういう面で一概に排斥すべきものでもないのではないのかなと。
 確かに訴訟法上いろんな、きのうまで調べておったのが今度は裁くんだといったようなことに御心配をなさるのもこれは当然ですけれども、その際は訴訟法上の裁判なんかでは除斥、忌避、回避といったような制度的な仕組みもできておるわけでございますので、私は人事交流というのは、裁判官、検事、弁護士に限らず、それぞれの行政庁にも、私はどっちかというと長年人事やりましたけれども、望ましい制度ではないのかなとすら思っているんです。
 といいますのは、私の経験を申しますと、私は官房長官をやっておったときにどうも少しかたいなという印象を持った、裁判官に対して。批判じゃないんですよ、これは。批判だなんて言うとしかられちゃうから。そうじゃなしに、少しかたいんではないかなと。
 そこで、外国へ留学させるのは、これはおやりになっておったと思いますね。それは一つの方法でよかろうと。しかし、これだけ世の中が複雑になって、一つの事件を裁くにしても、それは法律だけに従ってあとは良心でおれはやるんだというのは建前であっても、相当広い常識が必要ではないのかいという話を率直に私は当時の事務総長、今長官をやっている草場さんに、草場さん、少しどうだと、少し広い意味での体験からくる知識、これが必要でないのかなというお話をしました。ところが、定員の問題がすぐ出てくるんですよ。しかし、定員は必要ならふやせばいいじゃないか、ぜひひとつやってくれということで、これまたやはり広い視野を持って、そして適切な法の運用ということが望ましいという考え方でやっていただいて、今やっているんじゃないですか、たしか。内地留学ですよ、内地留学の制度をやってもらっているんです。
 こういうこともありますから、今の御質問よくわかるんですよ、僕は。よくわかるんだけれども、そういう意味合いにおいての人事交流のこの利点というものも必要ではないのかなと、かように考えておるわけでございます。
○猪熊重二君 要するに、いろいろなところへ行くのはいいんですけれども、法務省だけ行っていると、弁護士会の方からするとおれのところへちっとも来ぬなと、こういうことになるというようなひがみもあるわけじゃないんですけれども、まあそんなようなこと。
 私は、裁判官の研修のときに国内留学、それから海外留学、これについて質問しようと思ったんですが、時間があれですから私の意見だけ申し上げてます。
 裁判所だとか法務省なんというのはどうせ天下り先が何もないんですから、せめて在職中に見聞を広めておくという意味において海外留学なんかもう少し大々的にやったらどうだろうと、大した予算じゃないんですから。国内留学もそうだけれども、海外に今何人行っているか知りませんけれども、もう少し裁判所も行って見聞を広めて、六十五で定年になっても何か食っていける道があるようにというふうな点まで含めて海外留学なんか大いにやったらいいと思うんです。後藤田法務大臣もおられるんだから、おられる間に一生懸命予算をつけてもらって海外留学の制度化というふうなこともやったらどうでしょうか。答えはなくて結構でございます。
 以上で終わります。
○紀平悌子君 持ち時間が極めて短いものですか
ら司法試験の短答式でよろしくお願いいたします。
 二問だけお伺いいたします。
 まず第一問ですけれども、最高裁にお伺いいたします。
 裁判官の報道機関、民間企業での研修というのをされております。毎年十五名から二十名が実績を上げておられるというふうに伺っているんですが、研修先の裁判官に対する評価はどうでしょうか。非常にこれがよかったとか悪かったとか、特にあれば教えてください。
○最高裁判所長官代理者(泉徳治君) 委員御指摘のとおり、裁判官に多様な経験を積ませるという趣旨から民間企業に派遣いたしております。
 研修先でどういうふうに受けとめられているかという御質問でございますけれども、研修先では裁判官や裁判所のことをよく御存じない部分がございまして、研修生の派遣によりまして裁判所が身近に感じられたという感想をいただいております。
 それから、先ほど法務大臣からも御指摘がございましたけれども、裁判所、裁判官というのはちょっとかた苦しいところがあるという御指摘がございました。研修先の方でもどうもそういう感覚をお持ちのようでございますが、最近の若手の方は予想以上にと申しますか、比較的高い適応力、順応性を持って企業に入ってまいります。そういった点で、研修先では裁判官を好意的に受けとめていただきまして、親しみのある存在として理解していただいております。そういうことで、研修先の方も裁判官という異質な人間が入ってきたことによりまして向こうでも刺激を受けたということを言っていただいておりますので、相互理解のためにも役立っているのではないか、このように考えております。
○紀平悌子君 検察審査会について、一つは、検察審査会は昭和四十七年以来九百九十二名でしょうか、これ中身が何かで変化しているのかもしれませんけれども量的な変化がないようですけれども、これは事務量というのは全然変化していないんでしょうか。
 それから、国民は検察審査会というのは非常に最近もう身近に感じていまして注目もし、期待もしているんですね。この検察審査会に対する法務省、そして最高裁の評価を一言ずつでいいですからお聞かせいただきたい。もちろん認めていらっしゃるからあるんでしょうけれども、それの真の評価というのをお聞かせいただきたいと思います。
 以上です。
○最高裁判所長官代理者(島田仁郎君) 御質問の最初の方でございますが、事務量といたしましてはおおむね変わっていないというふうに考えております。要するに、事件数の方は若干減ってきておるんですが、しかし事件の内容的には複雑困難なものがかなりふえておること、それから広報活動等に以前よりもよりウエートを置いておるということ、そのようなことがございますので、総体的に言えば事務量はそう変化していない。したがって、委員御指摘のように、九百九十二名という職員数は増減ございません。
 それから、評価ということでございますが、私ども検察審査会、なかなか日本として世界にも例のない制度でございまして、これの定着については最高裁事務局としても非常に力を置いてまいったところでございますが、扱っておる事件と内容等を考えまして、私どもの願っております方向で定着してまいってきておるというふうに積極的に評価しております。
○政府委員(濱邦久君) 検察審査会制度に対する評価についての法務当局の認識はどうかというお尋ねの部分でございますが、検察審査会制度は、これは申すまでもなく、国民の中から無作為に選ばれた審査員が検察官の行った不起訴処分の当否を審査することなどによりまして公訴権の実行に関して民意を反映させて、その適正を図るための制度であるというふうに評価しているわけでございます。
 検察庁におきましては、検察審査会の議決があった場合にはその議決内容を尊重いたしまして、必要な再捜査を遂げた上で適正妥当な処理を図っているものというふうに承知しているわけでございます。
○紀平悌子君 ありがとうございました。終わります。
○竹村泰子君 この立法に当たりましての基本的な指針と申しますか、からお伺いをしていきたいと思います。
 今年度のこの改正は、判事補を七人、裁判官以外の職員を二十四人、それぞれ増加しようとするものなんですが、これらの内容は、その増員の理由として破産事件が加わった点を除けば、昨年、一昨年の改正とほぼ同じである。今回の改正案を立案するに当たって、今までにない新しい観点から何かつけ加えられた、検討された、特別な配慮をした、こういう点があったらお聞かせください。
○最高裁判所長官代理者(上田豊三君) 委員御質問の御趣旨でございますが、増員を要求するについての最高裁の基本的な考え方は何かということではなかろうかと思います。
 私どもがどのような理由で増員をお願いするかという点でございますが、まず裁判所として取り組むべき課題がいろいろある中で、特に人的な手当てを行う必要性の高い分野は何かということを考えるわけでございます。つまり、裁判所は現在取り組まなければならない喫緊の課題は何か。事件数の急増によりまして、内部的な努力とかあるいはOA化等では対応できない分野はどの点にあるかということを考えるわけでございます。その上で現実に充員できる判事補あるいは裁判所書記官の数がどの程度であるかを見きわめまして、どのような理由で何人の増員をお願いするかを決めているところでございます。
 例えば、今回判事補及びその他の職員について増員をお願いしている地方裁判所における民事訴訟事件の審理充実でございますが、これは平成三年度からこういう理由で増員をお願いいたしております。判事補の定員を本年度は七人ほどお願いしているわけでございますが、裁判所におきましては、従来から、事前準備の徹底あるいは弁論兼和解の活用等によりまして民事訴訟事件の審理の充実促進を図ってまいりました。
 少し難しい事件におきましては、訴えの提起から判決までに依然として二年以上あるいは十年以上という期間を要するものがあることは事実でございます。このような現状に対しまして国民の側からは民事裁判に時間がかかり過ぎると、こういうような御批判を受けているところでございます。また、諸外国からも審理の促進を求められている状況にあるわけでございます。
 社会生活のテンポがとみに速くなっている現在、現状を放置いたしますと国民の司法に対する信頼、支持が得られなくなりますので、私どもとしましては、このような現状を改善するためには、現在法務省で行われております民事訴訟法の全面的な見直しをお進めいただくとともに、現行法の運用におきましても訴訟関係人の理解と協力を得た上で事前準備の徹底、弁論兼和解等のより一層の活用等によりまして審理の充実を図り、集中的に審理を行うことによりまして口頭弁論の実施回数を少なくし、あわせて口頭弁論期日の間隔を短縮するなどの改善を図る必要があると考えているわけでございます。そういう理由から要求をしているわけでございます。
 なお、破産事件の審理の充実強化について申し上げますと、委員御承知のとおり、昨今破産事件が爆発的に増加をしておりまして、もはや事務処理の合理化とか、私どもの内部努力では対応し切れなくなってまいりましたことから増員のお願いをしたものでございます。もとより、これらの増員をお願いしている理由以外の点が重要ではないと判断しているわけではございません。今回増員のお願いをした点以外にも、私どもとしまして取り組まなければならない課題は多くあろうかと思われますが、これらにつきましては、内部努力と
かあるいは事務の十分な合理化、あるいはOA化等によりまして増員をお願いしなくとも何とかやっていける、このように考えている次第でございます。
○竹村泰子君 裁判官の不足といいますか、裁判官が足りないということはよく聞くところなんですが、絶対的に不足をしているのではないか。従来からたびたび指摘もされておりますし、各地の弁護士会からも裁判官増員の要望が出ている。私の手元にあります資料でも、北陸・三重弁護士協議会、神戸弁護士会、名古屋弁護士会豊橋支部、長野弁護士会などなどから裁判官が足りないということで要望が出ておりますけれども、そういう御認識はお持ちでありながらも充員の可能性、つまり裁判官の供給源という点で大変制約があって、裁判官の質を維持することも必要だということを前々から言っておられる。なかなか抜本的な増員が図れないとこれまでの国会審議の中でも答えていらっしゃるんですけれども、この御認識については現在でもそのまま維持されていると理解してよろしいでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(上田豊三君) そのとおりでございます。
○竹村泰子君 こうした裁判官不足の解消に向けて、司法制度においてさまざまな改革が行われてきた。その一つに司法修習生の数の増加、すなわち従来より段階的に二百人ふやして来年度から七百人にするという点が挙げられておりますけれども、司法修習生のうちの裁判官志望者の割合は、多少年度によってばらつきがあるものの、ここ二十年ぐらいはずっと一〇%あるいは二〇%ぐらいの範囲内で推移していますね。そうしますと、単純計算しますと、修習生が二百人ふえれば裁判官志望者は二十人から四十人ふえるという、そういう計算になります。
 これに加えて、先ごろの司法試験法の改正が功を奏して合格者の定着化が進めば、これはさらにふえることが予想されるのではないでしょうか。本年度から始まった弁護士定期任官制度、これが将来的にしっかりした制度として定着するということも期待できる。こうしたことを考え合わせますと、裁判官の供給源という点から見ますと将来的に大幅な増員を可能とする条件が整いつつあるのではないかというふうに思うんですね、素人考えですけれども。
 こうした点を踏まえて、長期的な展望をお伺いしたいと思います。
○最古裁判所長官代理者(上田豊三君) 委員御指摘のとおり、司法修習生を五百人体制から六百人体制へ、あるいは将来七百人体制へふやしていこうという合意が法曹三者の間でできているわけでございます。
 ところで、その修習生をふやせば果たして裁判官にたくさんなってくれるかといいますと、これはまた非常に現時点でこれを見通すことが難しい状況でございまして、例えば私が裁判官になりましたのは今から三十年前でございますが、修習生の数が三百四十人程度でございました。そのときに裁判官になりましたのが八十八人でございました。
 ところが、司法修習生が五百人体制になりまして、今から十年ないし五年ぐらい前までは大体六十人ぐらいの裁判官の希望者しかいなかったわけでございます。そして、ここ二、三年をとって見ましても、平成三年度は裁判官になりましたのが九十六人ございましたが、平成四年度はぐんと減りまして六十五人、それから本年度は今のところ九十八人が裁判官を希望しているわけでございまして、同じ五百人程度の司法修習生でありましても裁判官になる数が年によって大きく異なっているというのが実情でございます。
 したがいまして、私どもは司法修習生の数が増加するからといって直ちに裁判官の志望者がふえるとは必ずしも考えておりません。もちろん、ぜひ裁判官にふさわしい人ができるだけ多く裁判官を志望していただきたい、こういう希望は持っているところでございます。したがいまして、現段階で将来の長期的な裁判官の希望者数というのを予測することは非常に困難である、こういうことを申し上げざるを得ないのが実情でございます。
○竹村泰子君 なかなか厳しい現状であるというふうに見ますけれども、何とかこれ増員に向けてよい展望が開けますようにお願いをしたいと思います。
 ところで、次に家庭裁判所の充実強化なんですけれども、家裁を充実強化しようという姿勢は、職員の増員に関してはほとんど全くあらわれていないですね、数字から見ますと。すなわち、昭和六十年度を最後にして、家裁関係の増員はその後一切行われていない。裁判所職員全体の増員数が各年度とも六十人から七十人に達していることを考えますと、この中に家裁関係が全く含まれていないということには納得しがたいものがあるんです。
 家裁というのは、いわば私たちの市民生活に最も近い裁判所と言っていいのかもしれないと思いますけれども、このように家裁関係が増員されていないというだけではなくて、その欠員数においても心配な状況にあるのではないでしょうか。
 昨年十二月一日の時点での沖縄を除いた裁判官の欠員は、地裁では全くないのに対しまして、家裁では判事十二人、判事補十四人、合計二十六人を数えております。また調査官の欠員も、従来二十人台だったのが、一昨年、昨年と続けて四十人近くにまでふえているという資料を私見たんですけれども、これらを見ておりますと、当局の言う家裁の充実強化というのはほど遠い現状にあると思えるんです。
 今後の家裁関係の充員の展望について、ちょっと御説明をいただけますでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(上田豊三君) 委員御指摘のとおり、家庭裁判所につきましては昭和六十一年以降増員のお願いをしていないわけでございます。
 私ども増員要求する場合には、先ほどお答えを申し上げましたとおり、裁判所として人的手当てをする必要があるのは何かということをいろいろ考えまして増員要求をしているわけでございます。その中でも特に事件数、新受事件数の全国的な動向というものを考えるわけでございます。
 恐縮でございますが、お手元にお配りしてございます法律案関係資料の二十三ページをごらんいただきたいと思います。
 これをごらんいただきますとおわかりのように、昭和六十一年以降、家事事件数は全体として若干減少の傾向を示しているわけでございます。昭和六十一年に家事審判事件が三十万件ぐらい、家事調停事件が八万七千件ぐらい、その他も合わせまして合計四十万件ぐらいあったわけでございますが、平成三年になりますと家事審判事件が二十五万件、家事調停事件が八万五千件、その他を入れまして三十五万件ぐらいと、こうなっているわけでございます。また、少年事件につきましては大幅な減少をしているわけでございます。
 このことから考えますと、私どもとしましては、家庭裁判所につきましては、他の民事訴訟事件等に比べまして人的措置の手当てをする必要性が低い、こういうふうに考えているわけでございます。
 なお、委員御指摘の裁判官の欠員が家庭裁判所にばかり偏っているではないか、こういう御指摘でございますが、まさしく御指摘のとおりでございます。
 この点について、例えば判事補の発令について御説明申し上げますと、A地方裁判所判事補に補する、兼ねてA家庭裁判所判事補に補する、こういった形式で辞令が出されております。こういった形式で辞令を出されました判事補は、地裁の事件を処理する一方、家庭裁判所の事件の処理にも携わっているわけでございまして、大きな裁判所は別でございますが、普通の裁判所、特に支部等におきましてはすべて地裁の事件も家裁の事件も担当する、こういう形で仕事をしているわけでございます。
 そして、このような場合には、地裁が本務庁であることから、現在員をカウントする場合には地
我の裁判官として計上をしていくわけでございます。つまり、本務が地方裁判所であるか家庭裁判所であるかということによって形式的に現在員を計上いたしますので、たまたまこの十二月一日現在では家庭裁判所において欠員が生じている形をとっているわけでございます。しかし、決してその家庭裁判所の仕事をしていないというわけではございませんので、その点御理解を賜りたいと思います。
○竹村泰子君 こうした状況を見ていますと、家庭裁判所がほかの裁判所と比べてより厳しい状況に置かれているかのように見受けられますし、こうした傾向が定員の問題だけではなくてほかの司法行政一般にも及んでいるのではないかと、そういうちょっと危惧を覚えたんですね。ですからお尋ねをしたわけなんですけれども、そうした疑いを払拭するためにも家庭裁判所に対して定員の拡充を初めとして温かい配慮をしていただきたいと、このことを思いますし、それが家庭裁判所に高い期待を寄せる国民の声にこたえることにもなると思うんですが、この点について当局の御決意をもう一度お願いいたします。
○最高裁判所長官代理者(上田豊三君) 委員の御発言の御趣旨を十分踏まえまして努力をしてまいりたいと思っております。
○竹村泰子君 裁判所職員の減員についてお尋ねをいたします。
 裁判官以外の職員については、毎年政府の定員削減計画に協力する形での減員を行っておられます。増員、つまりこっちで減らしてこっちでふやしているわけですから、その増員数との差だけがふえていくということになるわけで、この削減数はこれまで必ずしも政府の削減数に対する一定の割合によって決まっていたわけではないのだと思いますが、裁判所職員の減員はどのような根拠に基づいて算出されるのでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(上田豊三君) 委員御指摘のとおり、現在、行政機関におきましては政府の定員削減計画によりまして定員削減が進められているところでございます。
 ところで、私ども裁判所におきましては、行政機関ではないということでこれに直接は拘束されないわけでございますが、従前から、裁判所の事務の中でも他の行政機関と同性質の事務がございますので、その事務の面で事務の簡素化、能率化を図る余地がある司法行政部門の職員を対象としまして政府の定員削減計画に御協力を申し上げている、こういう状況でございます。
○竹村泰子君 これまでの減員はタイピストと技能労務職員を対象として行われてきたんですね。このうちタイピストについては、従来は各裁判所で行われてきたんですが、昨年度から地裁と家裁に限定してこれまた減員されている。その理由は何なのでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(上田豊三君) 委員御指摘のとおり、地裁と家裁のタイピストを削減いたしておりますが、そもそも地裁、家裁のタイピストの方が高裁のタイピストよりも圧倒的に数が多うございました。現実に地裁、家裁においては、ワープロ等を導入いたしまして司法行政文書の取り扱い事務を改善するなどいたしまして、事務の簡素化、能率化を図ってきたわけでございます。その結果、タイピストの必要がなくなった庁につきまして退職者の後補充をしなかったり、あるいはタイピストの補職を解除すると申しますか、通常の裁判所事務官になっていただきまして、そうやって欠員状態にしたものの中から定員削減を図っていくと、こういうことをしているわけでございます。
○竹村泰子君 あと技能労務職員について、印刷工の問題ですとか速記官の問題などなどお尋ねをしようと思っていたんですけれども、時間がなくなってしまいました。こういった速記官の問題も非常に大きな問題でして、特別な技能を要するものですし、確保が大変難しい。それで、これもまた弁護士会からも裁判所に対して具体的に要望が寄せられていると思いますけれども、速記官の確保のために今後どのような決意で臨んでいかれるかお伺いしょうと思いましたが、次の質問に移りたいものですから、ぜひそうしたタイピストあるいは印刷工、速記官などなどの特別な技能職の確保についてしっかりと対策をお立てになっていただきたいと強く要望しておきます。
 最後に、裁判所の量刑ミスの問題、この間ございました。二十三日に千葉地方裁判所で、一たん判決した主文を宣告した後、量刑のミスに気づき訂正したという出来事がありました。一般国民には大変理解しにくい問題でもあるので、この際お伺いしておきたいと思います。
 まず、この事件の公訴事実の概要を御説明願いたいと思います。簡単で結構です。
○最高裁判所長官代理者(島田仁郎君) 公訴事実としては強盗殺人罪のほかに死体遺棄罪、監禁罪、強盗罪、四つの罪が併合罪として起訴されていたわけでございまして、被告人は中国人でございました。
○竹村泰子君 一たん懲役十八年を宣告した後に懲役十五年に訂正したんですね。これ、本来強盗殺人罪の法定刑は死刑または無期懲役と刑法二百四十条によって決められているわけですが、この法定刑に対して、本件において認められた加重減軽を適法に行った場合、その処断刑はどうなるのでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(島田仁郎君) 委員が御指摘のように、強盗殺人罪の場合には法定刑は死刑または無期懲役だけでございますが、これが重過ぎるということで酌量減軽いたしますと七年以上十五年以下の有期懲役となります。この場合、併合罪がございますけれども、一つの罪について無期懲役または死刑を選択した場合にはほかの罪の刑は影響ございませんので、今申し上げましたように酌量減軽の結果七年以上十五年以下というのが処断刑でございます。
○竹村泰子君 有期懲役の上限については原則十五年ですよね。何らかの加重事由がある場合には最高で二十年まで引き上げられる。それにもかかわらず、無期懲役を減軽するときには、仮に加重事由があっても原則どおり十五年が上限とされている。国民の目から見るとどうもバランスが変だなと、私も新聞をえっと思って読んだんですけれども、そういうことが今回の裁判所のミスを誘発した原因だったと思いますが、この点は立法の不備と言えるのではないんでしょうか。大臣、いかがでしょうか。
 ちなみに刑法の改正草案では、無期懲役を減軽する場合の上限は二十年に引き上げているんですよね。その辺のところをもう一度答弁をお願いいたします。大臣、いかがですか。
○政府委員(濱邦久君) ちょっと外国の立法例等との関係もございますので私からお答え申し上げたいと思います。
 まず、ドイツでは無期自由刑を軽減する場合は三年以上の自由刑とすると規定されておるわけでございまして、有期自由刑の長期は我が国と同じく十五年ということになっているわけでございます。したがいまして、ドイツでは無期刑を軽減いたしますと三年以上十五年以下の有期刑を科することになるわけでございます。
 諸外国における有期刑の上限につきましては、主要国のすべてについてもちろん承知しているわけではございませんが、今申し上げましたとおり、ドイツでは十五年でございますし、フランスでは重罪事件に対する有期懲役刑の上限は二十年であるというふうに承知しているわけでございます。
 ところで、この無期刑に限らず、一般に刑の加重または減軽の方法につきましては、刑法六十八条以下に加減例としてその準則が定められておるわけでございます。このような加減例が設けられました趣旨は、罪刑法定主義の要請に基づくものでございまして、仮に刑を加重または減軽すべき事由がある場合に、その処断の幅を定めずに、その程度や順序を全く裁判官の任意の裁量にゆだねるときは刑罰の予測可能性が失われるわけでございまして、法的安定性を害する結果となるからであるというふうに一般に言われておるわけでござ
います。今、委員が御指摘になっておられます無期刑の減軽規定につきましても、このような趣旨から設けられているものであるというふうに理解しているわけでございます。
○竹村泰子君 そもそもその有期懲役の上限が最高でも二十年に制限されているというのは、無期懲役と比べて余りにも差が大き過ぎるような気がするんですよね。これは一体どのような刑事政策的な理由に基づいているかと、今大体お答えいただいたのかなと思いますけれども、今後の課題としてこれは刑法、立法上の不備はないかどうか考えていかなければならない問題ではないかというふうに思います。大変国民にはわかりにくい。しかも大変なミスを犯しちゃったわけで、判決を差し違えたということで大きなミスであったと思いますので、今後の御決意と方向性を聞きまして終わりたいと思います。
○政府委員(濱邦久君) まず、立法の点についてお答えを申し上げるわけでございますが、委員先ほど御指摘になられましたように、法制審議会が答申いたしました改正刑法草案におきましては、無期の懲役または禁錮を減軽するときは七年以上二十年以下の懲役または禁錮とするというふうに規定されておるわけでございます。これは先ほどから委員も御指摘になっておられますように、有期刑の長期を十五年にしておくのでは無期刑との差が大き過ぎてそのいずれを選択するのかの困難な場合があること、長期を二十年にすれば、死刑や無期刑が軽減しやすくなることなどの理由によるというふうに解されているわけでございます。
 いずれにいたしましても、この改正刑法草案のような規定をとるのか、あるいは現行法のような規定でいくのか、これはそれぞれ長所短所いろんな御意見があるところでございますので、もちろん今委員が御指摘になられました御意見をも十分参考にさせていただいて、今後の刑法全面改正作業の中で検討させていただきたいと思っておるわけでございます。
○竹村泰子君 以上で終わります。
○委員長(片上公人君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
 これより討論に入ります。
 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。――別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
○委員長(片上公人君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(片上公人君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後三時三十一分散会
     ――――◇―――――