第131回国会 法務委員会 第3号
平成六年十一月八日(火曜日)
   午前十時開会
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   委員の異動
 十月二十八日
    辞任         補欠選任
     岡  利定君     志村 哲良君
 十月三十一日
    辞任         補欠選任
     糸久八重子君     竹村 泰子君
 十一月二日
    辞任         補欠選任
     竹村 泰子君     糸久八重子君
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  出席者は左のとおり。
    委員長         中西 珠子君
    理 事
                下稲葉耕吉君
                糸久八重子君
                平野 貞夫君
                荒木 清寛君
    委 員
                斎藤 十朗君
                坂野 重信君
                志村 哲良君
                山本 富雄君
                北村 哲男君
                深田  肇君
                山崎 順子君
                翫  正敏君
                國弘 正雄君
                紀平 悌子君
                安恒 良一君
   国務大臣
       法 務 大 臣  前田 勲男君
   政府委員
       法務政務次官   角田 義一君
       法務大臣官房長  原田 明夫君
       法務省民事局長  濱崎 恭生君
       法務省刑事局長  則定  衛君
       法務省矯正局長  松田  昇君
       法務省保護局長  杉原 弘泰君
       学省人権擁護
       局長       筧  康生君
       法務省入国管理
       局長       塚田 千裕君
       公安調査庁長官  緒方 重威君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局総務局長   涌井 紀夫君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        吉岡 恒男君
   説明員
       内閣総理大臣官
       房男女共同参画
       室長       坂東眞理子君
       警察庁長官官房
       国際部国際第一
       課長       井口 憲一君
       警察庁生活安全
       局銃器対策課長  小野 次郎君
       警察庁刑事局捜
       査第一課長    南雲 明久君
       警察庁交通局交
       通指導課長    篠原  渉君
       労働省職業安定
       局業務調整課長  井原 勝介君
       自治省行政局選
       挙部管理課長   山本信一郎君
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  本日の会議に付した案件
○理事補欠選任の件
○検察及び裁判の運営等に関する調査
 (検察官及び裁判所事務官の不祥事に関する件
 )
 (入国警備官の暴行問題に関する件)
 (婚姻制度に関する民法改正要綱試案に関する
 件)
 (公安調査庁の機能拡充に関する件)
 (死刑廃止問題に関する件)
 (監獄法の改正に関する件)
 (外国人登録原票の保存に関する件)
 (外国人犯罪に関する件)
 (部落差別問題に関する件)
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○委員長(中西珠子君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 まず、委員の異動について御報告いたします。
 去る十月二十八日、岡利定君が委員を辞任され、その補欠として志村哲良君が選任されました。
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○委員長(中西珠子君) 次に、理事の補欠選任についてお諮りいたします。
 委員の異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。
 理事の選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(中西珠子君) 御異議ないと認めます。
 それでは、理事に糸久八重子君を指名いたします。
○委員長(中西珠子君) 検察及び裁判の運営等に関する調査を議題といたします。
 これより質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○下稲葉耕吉君 きょうは検察官の問題についてまずお伺いいたしたいと思います。
 最近の報道によりますと、あってはならないことでございますけれども、検察官の暴行事件等がいろいろ報道されているわけでございます。参考人二名に対して平手打ちするなどの暴行を加えたいわゆる金沢事件、あるいはまた、これも参考人に対しまして暴行を加えた増田事件、あるいはこれは被疑者でございますが、暴行を加えました新穂事件等々、検察官の取り調べの過程における、いわゆる職務上、職務の過程における暴行事件ということでございまして、本来そういうふうなことがあってはならないわけでございますし、加えて検察は社会正義実現の最後のとりでと申しますか、そういうふうな人たちがこういうふうな行為に出られるということは、我々としても非常に心外であり遺憾であり、残念なことでございます。
 以上は職務上のことでございますが、その他いろいろマスコミに報道されている事件がございます。不動産会社の社長が購入いたしましたゴルフの会員権を名義がえして使用していたというふうな事件でございますとか、あるいはある地検の次席検事が公舎に取材に来た女性の記者に対しましていかがわしい行為に出たとか、あるいはまた高検の検事さんが、これは愛きょうと言えば愛きょうと言えるかもしれませんが、お酒に何か麻酔薬みたいなものを、睡眠薬みたいなものを入れてピンサロみたいなところで飲まされてお金を奪われた事件とか、これは被害者の方でございますけれども、そういうふうな事件が起きているわけでございます。
 特に、私、注目しなければならないのは、職務上、取り調べの過程において、被疑者、参考人を問わず、暴行があったという事実でございます。これにつきましては、検察庁、法務省といたされましても厳重に処罰され、あるいはまた民事事件等につきましては和解等の手続をとっておられまして、加えて法務大臣あるいは検事総長以下、いろいろそういうふうなことの起きないようなことのために苦労しておられる状況もよくわかるわけでございます。
 そこで、まずお伺いいたしますけれども、こういうふうな事件の起きる原因はどの辺にあるだろうかというふうなことにつきまして法務省がどういうふうに御認識なさっているか、お伺いいたしたいと思うのでございます。
○政府委員(則定衛君) ただいま委員から御指摘を受けましたように、最近、捜査、特に事件関係者の取り調べの過程におきまして、相手方に対しまして検事が暴行を加えるという事件が相次ぎましたことにつきまして、私ども大変遺憾に思いますし、申しわけないことであると思っております。
 この原因につきましてどのように考えるかというお尋ねでございますけれども、本来、これまた御指摘のように、検察官が捜査の必要工事件関係者を取り調べる場合には、相手方の人権並びにその手続の適正を考えながら遂行しなければならないという職員を負っているわけでございまして、そのような立場にありながら今回のような事件が起こったことについて、組織としてそういう、何といいましょうか、体質があるというふうな考え方ではございません。
 ただ、それぞれの検事が置かれた中でできるだけ関係者から真実の供述を得ようという努力の過程ではございますけれども、いやしくも事件関係者に暴力を加えるということはあってはならないことでございまして、それらの緊迫した場でそのような行為に及んだ各検察官の資質といいましょうか、人格と申しましょうか、平常心を持って事に当たるという忍耐力といいましょうか、こういった点についていささか欠けるという資質の面が多分にあったのではないかというふうに考えておるわけでございます。
 しかしながら、そのような事件が相次いだという点につきましては、やはり検察としていろんな面で再発防止のために取り組んでいく必要があろう、こう思っておるわけでございます。
 とりあえず、一応そのように答弁させていただきたいと思います。
○下稲葉耕吉君 個々の資質の問題という御説明もございましたが、もちろんそういうふうな問題もあるだろうと思います。それと同時に、やはり事件が難しければ難しいほど調べの過程で、真実を引き出そうという真摯な努力と、片やこちらはそれを防衛と言っちゃ言葉は悪いですけれども、その辺の闘いといいますか、厳しいものがあるだろうと、これはわかるんです。そして、社会的な評価を帯びている事件になればなるほど検察としても何とか格好をつけなくちゃならないというふうなお気持ちも十分わかるんです。
 検察官自身がやはりそういうふうなことで、真相解明といいますか、できれば被疑者から供述を引き出して事件を固めたいという気持ちもわかるんですが、そういうふうなことによってその検事さんがいろんな評価をされて、そして非常に軌道に乗ったルートに乗っかるというふうな、何といいますか、そういうふうなことのために相当無理をして、せっかくチャンスを与えられたんだから何とかやろうというふうな、そういうふうな気持ちも多分に働いたんじゃないかなというふうな感じもしないでもないんですが、その点についてはいかがでございますか。
○政府委員(則定衛君) 大変難しい御質問でございますけれども、やはり検察官といたしましては、世間の注目する事件で功績を上げたいという気持ちがあることは率直に言って間違いないと思います。また、そういう気持ちがあるからこそ困難な事件の解明に日夜立ち向かっていってくれているんであろうと思うわけでございます。
 その場合に、俗な言葉で言いますと、功名心にはやって、つい常軌を逸した行動に出るおそれがあるのではなかろうかということでございますけれども、今般の事件が物語っておりますように、一たん有形力の行使、暴力が加えられたという場合には、検察自体が大変大きなダメージを受けることは明らかでございまして、これは法律家としての検察官、若手検事を含みます検察官としてはよく認識していることであろうかと思っております。
 したがいまして、そういう限界を心得つつ熱意を持って相手方に当たる、こういうことで日常処しているものと思っておりまして、いわば真実解明に向かう熱意は必要ではありますけれども、それが行き過ぎてこのような暴力行為に及ぶようなことが一般的にあるとは考えてはおらないわけでございます。
○下稲葉耕吉君 法務・検察といたしまして、このような不祥事の再発防止のために抜本的な対策をおとりだろうと思うのでございますが、その辺についてお伺いいたしたいと思います。
○政府委員(則定衛君) やはり体制として再発防止のために万全の措置を講ずる、こういう覚悟でございます。そのためには、検事の採用の過程から、指導教育、監督、それから個々の取り調べという検察権の発動の具体的な場に至るまで指揮監督を徹底する、こういうことになろうかと思うわけでございます。
 採用の面につきましては、従来からも適性のある検察官をということで、司法研修所及び各実務修習庁でそれぞれの担当指導官がチェックをして、本省人事課でそれを集約して、また個別に面接も行いまして採用の有無を決定しておるわけでございますけれども、今後一層細心注意して人物考査といいましょうか、この点について官房当局と調整しながら実施してまいりたい、こう思っておるわけでございます。
 さらに、指導面におきましては、特に若手検事の段階におきましてそういう適正手続の確保及び事件関係者の人権確保、こういった感覚を一層高める必要があろうかと考えておるわけでございまして、そのために来年度から、新しく採用された検事を東京に集中いたしまして、これを二カ月ないし三カ月の間、いわば集合実務教育と、それからいわば一般教養的な場面における教養訓練というものを相兼ねた新任検事教育というものを抜本的に改めた形で採用してまいりたいと思っておるわけでございます。
 さらにまた、個々の検察権運用の場に関しましては、これまで何回かにわたりまして、かつまたいわゆる検事正、次席あるいは係検事、そういった各種のレベルの検事の会合等におきまして、私ども法務当局あるいは大臣みずからいろいろと訓示、指示を行いましたし、さらにまたこれを受けて検事総長以下各級検察庁で、それぞれのレベルの検察官の会議で再発防止のための協議等をとり行っておるわけでございます。
 このようなことを徹底いたしまして、二度とこのような不祥事が起こらないように細心の注意を働かせてまいりたいと考えておるわけでございます。
○下稲葉耕吉君 報道によりますと、先般、法務大臣が検事総長をお呼びになりまして御注意なさったというふうに伺っているわけでございますが、大臣のこの種の問題につきましての御所見と申しますか、お伺いいたしたいと思います。
○国務大臣(前田勲男君) ただいま下稲葉委員から検察の引き続く不祥事について御指摘があったわけでございますが、検察官という使命は、まさに人の非違を問い、また職務上は一般の人以上に高度な道義というものが律せられる立場の職を持った人でございまして、これらの検察官が連続して不祥事を起こすということに大変深刻な気持ちを持っておるわけでございます。特に、検察官が取り調べ中の参考人に対して暴行を加えるという、まさに検察官として自覚を欠いた不祥事が相次いでいる、大変残念なことで、まことに遺憾の限りでございます。
 こうした事態を厳粛に受けとめまして、ただいま先生から検事総長に対しても注意をしたというお話がございましたが、十月五日の日に検事総長を呼びまして不祥事の再発防止のために注意をいたしたわけでございますが、検察におきましては再発防止のために、ただいま刑事局長がるる申し上げましたが、万全の努力をし、また真剣な努力をするものと考えておるところでございまして、なお私も検事会同等々におきまして訓示その他でさらにその徹底を図っておるところでございまして、検察の信頼回復のために、また向上のために努力を続けてまいりたい、かような決意でおるところでございます。
○下稲葉耕吉君 先ほども申し上げましたけれども、やはり検察官に対する国民の信頼というのは非常に高いし、また期待も大きいわけでございますから、大臣のお話にございましたように、ひとつ十分引き締めていただきまして、このような事案の再発しないようにお願いいたしたいと思います。
 次に、最高裁判所に移りたいと思いますが、きょうは変な事件ばっかり取り上げまして恐縮でございますけれども、今月の一日の報道によりますと、「ニセ印鑑で裁判書類」、浦和地裁管内の川口簡裁の事務官が裁判書類の偽造、それから行使をしていたと。しかも、件数が大変多いように承っておるわけでございますが、その辺の事実関係につきましてまず御説明いただきたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(涌井紀夫君) まず、私ども裁判所の職員がこういう大変な重大な事件を引き起こしまして、事件の当事者、関係者の方に大変御迷惑をおかけする結果になりましたことをまことに申しわけなく思っております。この場をおかりしまして心からおわび申し上げたいと思います。
 事件の概要でございますが、この事件は、裁判所の事務官が支払い命令でありますとかあるいは過料の決定書という裁判関係の書類を、裁判官の印鑑を偽造いたしまして偽造したという、そういう事件でございます。件数自体、委員御指摘のように、合計いたしますと千五百件という膨大な数に上っております。
 その内訳を申し上げますと、約一千百件が仮執行宣言付支払命令という、こういう命令書でございます。それから、残りの四百件余りが過料、過ち料でございますが、その決定書でございまして、過料の決定書にはいろいろなものがございます。一番重大なのは、過料に処するという、いわば有罪と申しますか、そういう宣告をした決定、これが二百件余りございます。それから、過料に処さない、不処罰にするというそういう決定が百件余りございまして、それ以外に、一応過料に処するという決定書はつくったんですけれども、当事者には送られないで記録につづられた段階で発見されたというものが百件余りございます。
○下稲葉耕吉君 お話しのように、千五百件ものそういうふうな事案を扱っておる、しかも裁判官でない事務官が過料に処する旨の決定書を偽装しておる、これはもうとんでもないことだと思いますし、大変な問題だというふうに私ども認識いたしております。
 三年ちょっとにわたって簡裁に勤務していた職員だというふうに伺っているわけでございますけれども、その間、こういうふうなことがどうしてチェックできなかったのか、その辺についてお伺いいたしたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(涌井紀夫君) どうも本当に、こういう多数の文書が偽造されますのをなかなか発見できなかったということは、やはり私どもとしては日ごろの執務の指導監督体制に問題があったということを痛感しておりまして、まことに申しわけなく思っておるわけでございます。
 どうしてこれが発見できなかったということでございますと、どうも言いわけがましい話になって恐縮でございますが、やはり第一には、我々裁判所の内部の者としまして、内部の職員が裁判官の印鑑を偽造してこういう書類を偽造するというふうな、そういった事態というのは本当に予想もしておらなかったということが第一だろうと思います。
 それと、やはり本件で最も件数の多い仮執行宣言付支払命令と申しますのは、御承知かと思いますが、当事者からの申し立てで裁判官がいわば命令の本体であります支払い命令を発行いたしました後で、債務者の方にその命令書を送るわけですが、債務者の方から二週間以内に異議申し立てがありませんと、いわば自動的にと申しますか、仮執行宣言というものをつけるわけでございます。そこのところの書類でございまして、いわば二週間という時間が経過したかどうかという形式的な審査しかしないものですから、法廷で宣告しますような裁判書ですと、その裁判書の作成の過程で裁判官が何度もそれをチェックするという、そういう過程が作業の中に入ってくるわけでございますが、この仮執行宣言付支払命令の場合ですと、何といいますか、形式的に事務官の方でその書類を当事者の方に送ってしまいますと、その後で裁判官がその書類を目にする機会というのがないシステムになっておりますので、やはりその辺に多数の書類が偽造されたのを発見できなかったという理由があったのではないかと思っております。
 それと、やはり、この偽造されました印鑑自体が裁判官の印鑑に非常に似た印鑑が使われておりましたので、後で見ましてもなかなかそれが発見できなかったという、そういう事情もあったというように考えております。
○下稲葉耕吉君 これは釈迦に説法でございますけれども、やはりこの種の事案というものを防止するためには、基本的には私は本人自身の問題だろうと思うんです。しかし、組織的にそういうふうな不正ができないようなやはり、今システムという言葉を使われましたけれども、体制というものをやはり何かお考えになる必要があるんじゃないだろうかと。こういうふうなことでしょうがありませんでしたということでは私は済まないと思うんですね。だから、本人の問題もございますし、組織的な問題もございますし、それからチェックポイントも幾つかやっぱりおつくりになるということもそうでしょうし、たまたま監査みたいな格好で発見されたというふうなことでは、国民に及ぼす影響というのは非常に甚大なものがございますし、そして裁判所に対する不信感というものを増長するんではないかと、このように思います。
 いずれこの事件は、今、検察庁の方で身柄を拘束されまして取り調べ中だと承っているわけでございますが、その辺のところが、事案の真相というものが明らかになりますれば、それは私は監督責任も当然出てくると思うんです。そういうふうな意味でひとつ厳しく対処していただきたいと、このように思いますが、いかがでございましょうか。
○最高裁判所長官代理者(涌井紀夫君) 御指摘のように、こういう事件が起こりましたことにつきましては、やはり裁判所の中の執務体制といいますか、監督体制に問題があったということを我々の方でも痛感しております。事件発覚後、直ちに各庁に指示いたしまして、もう一度各簡裁等の執務体制の見直しを命じまして、再発防止のための具体的な工夫を現在やっておるところでございます。
 委員御指摘のとおり、やはり一番の問題は、一人の人に仕事を任せないで、その人が仕事をやっていく過程で、いろんな過程でほかの職員なり上司からチェックを受けるといいますか、そういう体制をつくっていく必要があるだろうと思っております。
 こういう規模の簡裁の場合ですと、主任書記官というそういう職制の者がおりまして、その主任書記官が執務体制を監督しておるわけでございますので、今後その主任書記官による仕事の監督体制をさらに考えていきたいというふうに思っております。
 それからもう一つは、同じ仕事を一人の者に長くやらせておきますと、やはりどうしても気の緩みと申しますか、そういう不正が出てくる土壌にもなってまいりますので、やはりある程度の時間でその仕事をかえるというローテーションのようなことも考えていかないといけないのではないか。
 そういう点も含めて、今回の事件につきましては、最高裁の方でも全国の庁に特別の査察を行いましてそういう指導を的確にやっていきたいと、こういうふうに考えております。
○下稲葉耕吉君 次に、入国管理局長にお伺いいたしたいと思います。
 これも先般の報道によりますと、十一月一日の日に東京入国管理局の入国警備官が新宿の歌舞伎町で、摘発いたしました容疑者に対しまし亡暴行を行ったという事案が報道されているわけでございますが、その事実関係につきまして御説明いただきたいと思います。
○政府委員(塚田千裕君) 十月三十一日から十一月一日未明にかけまして、お話のございました歌舞伎町の飲食店におきまして入管と新宿の警察署が合同で不法残留等の入管法違反者三十七人を摘発いたしました。このうち二十六人を東京入国管理局の第二庁舎と呼んでおる庁舎に任意連行の上、調査を行いました。
 その際、問題の容疑者が別人の名を名のるなど供述に矛盾点が見られたため、私どもの職員が当該容疑者の所持品検査を実施いたしました結果、容疑者名義の旅券や顔写真が発見されました。そこで、事実関係をさらに追及しようとしましたところ、容疑者が突然立ち上がり、この写真を口の中に入れて飲み込もうとしたわけでございます。それで、調査に当たっていた職員がこれをやめさせ、写真を取り出そうとしたため、暴れ出した容疑者との間でもみ合いになったわけでございます。職員は指をかまれたり足や腹をけられたという事実はございましたが、一応取り押さえることに成功いたしました。
 しかし、一たんは静かになったんでございますが、再び職員につばを吐きかけ職員の腹をけったりしたということがございまして、職員の方も我を忘れて容疑者を殴打したということでございます。
 その後、中国人の容疑者が床に頭を数回打ちつけるなどの自傷行為、これは非常に特異な行為なんでございますが、そういう行為があったものでございますから別室に連行したところ、なおも罵声を浴びせたり足や腹部をけるなどの行為があったものでございますから、再び容疑者を数回殴打したという事実がございます。
 事実はこのように、抵抗して激しく暴れる容疑者を制圧するために有形力を行使したものではございますが、行き過ぎとの非難を受けるような行為があったことは大変遺憾であり、私といたしましては深くおわび申し上げたいと存じております。二度とこのような事例が発生しないよう対処していくつもりでございます。
○下稲葉耕吉君 職務執行の過程で警備官が暴力を振るったということは、これはもう絶対よくないことでございますし、そういうふうな意味の私は責任は当然追及されるべきだと、このように思います。
 しかし、今の状況をお伺いして聞きたいと思うんですけれども、指をかまれたといいますが、何か傷害がなんか診断書が出ておるんですか。
○政府委員(塚田千裕君) 指をかまれたほか両足に打撲を負っておりまして、診断では治癒まで七日間の打撲傷ということになっております。
 ただ、指はかまれたのでございますけれども、指自体に大きなけがはいたしておりません。
○下稲葉耕吉君 つばを数回かけられたということですが、それはどこに対してかけられたんですか。
○政府委員(塚田千裕君) 主として顔だと思います。
○下稲葉耕吉君 傷害を受けているわけですね。つばをかけられるというのは暴行じゃないですか。
○政府委員(塚田千裕君) それぞれの国で習慣がございますが、私も、つばをかけられるのは少なくとも大人と大人との間では非常に侮辱的な行為で、暴行の一種だと考えます。
○下稲葉耕吉君 よく聞こえないんですけれども、刑法上の暴行罪には該当しないですかどうですかという質問です、つばをかけられたということは。
○政府委員(塚田千裕君) つばを吐きかける行為は、不法な有形力の行使ということで刑法上も暴行に相当すると考えます。
○下稲葉耕吉君 繰り返して申し上げますけれども、職務上、暴行を加えることはこれは私は絶対よくない、これはやはり責任を問われてしかるべきだと、このように思います。
 しかしながら、現場の状況というのを私なりに考えてみますと、大変現場というのはここで議論しているよりも厳しい現場じゃないかと思うんです。向こうは必死になってもう罪を逃れようとかいろいろやろうと思っている。だから写真を飲み込む、飲み込ませまいとする、これは当たり前のことです。まあ、飲み込まぬようにそれは配慮しておけばなおよかったんですけれども、結果として飲み込まれようとした。だからそれを出そうとして一生懸命警備官が取り押さえる。そうするとそれに対して必死の抵抗をする。現場の警備官は私は大変苦労をしていると思いますよ。そして、マスコミにああいうふうな報道がなされますね。そうすると、あたかも一方的に警備官が悪いみたいに報道されがちになるんです。
 そして、結果としてその警備官が責任を追及されるというふうなことになりますれば、繰り返して申し上げますけれども、暴行そのものはもう本当によくないことであります。ですから、これはこれとして責任を追及せぬといかぬけれども、こちらも傷害だとか暴行の被害者でしょう。その辺の入管当局としての判断はどうなんですか。それがうやむやにでもされるような状態なら、警備官の志望者はなくなりますよ。厳しい現場でごたごたして、夜も遅くいろいろ仕事をなさる、そういうような中でそういうようなトラブルというのは私はしょっちゅうあると思うんです。素直に応じてくるようなそういうふうな相手というのは私は少ないんじゃないかと思う。本人自身もオーバーステイしている人なんですね。
 当然私は、この事件の結末がついたら、そういうふうな入管法上の処置というものもなされてしかるべきだと思うけれども、何か報道を見ますと、一方的にその警備官が暴行を働いたというふうな印象を一般に受けさせる。私はこれは、それじや現場の人たち、私ども非常に苦労して増員なりなんなりでお手伝いしていますよ。お手伝いしていますけれども、それは、そういうふうな本当に緊迫した状態の中でいろんな問題があると思うんです。そうして、ちょっと問題が起きるとすぐもう、一〇〇%とは言わないまでも警備官が悪いんだというふうな形で出されますと、現場の人たちは士気がもう阻喪するし、希望者は少なくなるし、入管行政というのはうまくいかなくなる、こういうふうに思うんですが、いかがでございますか。
○政府委員(塚田千裕君) 問題の女性は、単にオーバーステイのみならずホステスで働いていたわけでございまして、在留資格の点でも入管法の違反を犯しているわけでございます。したがいまして、事件は事件、入管法に従いまして退去強制の手続を厳然として取り進めるということは別個のことでございますので、後者の手続は厳然として取り進めたいと存じております。
○下稲葉耕吉君 その暴行だ傷害だについては問擬されないんですか。
○政府委員(塚田千裕君) 実は、この点につきまして告訴もございますので、その点は当然事実関係の究明の中で私どもの方の立場も明らかにして主張していくつもりでございます。
○下稲葉耕吉君 告訴とおっしゃいましたが、だれが告訴しているんですか。
○政府委員(塚田千裕君) 先ほど来問題になっております、この不法滞在をしホステスをやっておりました中国人の女性でございます。
○下稲葉耕吉君 今の告訴というのは、警備官が被疑者の告訴でしょう。被疑者としての告訴を受けているんでしょう。こちらが告訴しているわけじゃないんでしょう。
○政府委員(塚田千裕君) 違います。
○下稲葉耕吉君 そうすると、ちぐはぐじゃないですか、私の質問に対して。
○政府委員(塚田千裕君) 警備官が被疑者としての告訴をされておるわけでございます。
○下稲葉耕吉君 ですから、私の申し上げているのは逆さまの話をしているんですよ。こちらが被害者の話をしているんですよ。被害者じゃないか。傷害、一週間とおっしゃいましたかな、傷害を受けている。つばを吐かれる。暴行ですよ、これは。そのようなものが表に全然出ないで握りつぶされちゃって、そして今度はこっちが被疑者として告訴を受けている。告訴を受けておりまして事実がはっきりするといったって、それは事実がはっきりするのは警備官の犯罪がはっきりするのであって、告訴している相手側だったって傷害なり暴行なりあれしているんでしょう。それに対する追及のために告訴なされているわけじゃないでしょう。それは問題が別ですよ。その点をお伺いしているんです。
○政府委員(塚田千裕君) 失礼いたしました。
 告訴された警備官の方の立場をどうするか、どういうふうにその人権を守っていくかということにつきましては、私どもこれから検討いたしまして対処をしていきたいと思います。
○下稲葉耕吉君 繰り返して申し上げますけれども、そのようなことについての基本的な姿勢というのが私は一番大事だと思うんですよ。警備官が暴行した、これはよくないですよ、何回も言いますけれども。しかし、そこに至るまでの過程でこちらは傷害を受けている、暴行を受けているんですよ。その点について今のお話を承ると、余り迫力のある答弁が出てこないんですよ。そういうふうな状態で本当に苦労している現場の警備官がやる気を起こしますか、士気高揚しますかということを私はお伺いしているんです。
 大臣、いかがでございますか。
○国務大臣(前田勲男君) 入管の不祥事のお問い合わせでございますが、入管業務、今日大変、社会情勢、国際情勢を踏まえて極めて重い責任を果たしておるところでございまして、ただいまの事例を申し上げますと、現場の状況、トラブルの状況をよく調査、把握をして、先生おっしゃいます中に、私、法律家でございませんのでこういう言葉が正しいかどうかよくわかりませんが、まさに公務執行妨害的なことがあったのかどうか、その辺を適正に状況把握をして判断をしていかなければならない、かように考えておるところでございます。
 なお、あえてつけ加えれば、入管の職員はこれは入管のまさにプロでございますから、手を出す、暴力を振るうということは、先生御指摘のとおり、絶対あってはならないことだ、かように考え、こうした点については今後十分注意して再発をしないように努めてまいりたい、かように考えております。
○下稲葉耕吉君 次に、先般、更生緊急保護法が通りまして、いわゆる更生保護事業につきまして実は十分お伺いしようかと思っていたわけでございますが、余り時間もございませんので、私の考えていることを申し上げまして御意見だけ承るうかと思います。
 私は、刑余者の保護事業というふうなものは国の仕事であるということが法律上もう明らかに書いてあるわけでございます。ところが、実際に調べてみますと、税制上、福祉関係の事業をやっている方々と比べて、私は少なくとも同じぐらいのことではなかろうかと思うんです。ところが、法人税の問題にいたしましても地方税の問題にいたしましても、その他いろいろございますが、税制上見ておりますと社会福祉事業よりも冷遇されているというのが現状でございます。
 これはどうしても、先般の更生緊急保護法の成立を一つの契機として、何とかこの際是正しなければならないんじゃないだろうか。そうでなければ、幾ら口先で国の事業だ国の事業だと言っても、実際はそういうふうなことではない。いろいろ計算してみますと、数千万があるいは億単位になるのか知りませんけれども、全体を通じてそういうような問題もあるんじゃなかろうか、こういうふうに思うわけでございます。
 だから、私どもも何とかそういうふうな意味でお手伝いさせていただきたいという気持ちは強いわけでございますけれども、まず法務省として、時間もございませんので、その辺の考え方と決意をできれば大臣御答弁いただければありがたいと思います。
○国務大臣(前田勲男君) 先生御指摘のとおり、この更生保護事業、まさに国でなすべきことが第一義的でございます。その中で、税制関係で特に社会福祉法人関係、法人税なども比べまして確かに格差が存在をして、私どもも税制上不公平感が極めて強く問題意識として持っておるわけでございます。法人税におきましては、例えば寄附金の損金算入の限度額でございますとか、これらにつきまして今後税調その他で特にお訴えをして、この格差是正を御理解いただき実現してまいらなければならない、かような決意で取り組んでいるところでございます。
 法人税関係以外、所得あるいは地方税関係も幾つかの御指摘の点があることを十二分に踏まえて、御支援をいただきながら取り組んでまいりたい、かように思っております。
○山崎順子君 私は、今回の民法改正試案について質問させていただきたいのですが、できれば法務大臣に御答弁いただきたいと思っております。
 御存じのように、今回の民法改正試案は、夫婦別姓の選択ですとか女性の待婚期間の短縮、また嫡出子と非嫡出子の相続分の公正など、大変国民生活に影響を与える民法改正試案が出されております。
 中でも、別居生活が五年以上あれば有責配偶者からも離婚できるという積極的破綻主義のこの試案は、離婚を考えている人だけじゃなくて、もう多くのすべての夫婦、またこれから結婚しようという方たちにも大きな影響を与えるものです。
 この今回の民法改正試案が、夫婦のあり方、家族のあり方、また女性の生き方に相当変化を及ぼすと思われるのですけれども、法務大臣は今後そういった結婚観や女性の生き方等がどのように変化するとお思いになっていらっしゃいますでしょうか。
○国務大臣(前田勲男君) 大変難しい御質問をいただきました。
 積極的破綻主義の導入がどういう影響を与えるかということでございますが、私、素人としてまず最初に感じたのは、これによって、結婚生活を大事にしないと、いずれにしても夫婦、男女ともに配偶者に逃げられるということが間々起こり得る可能性がある、今後そういう結婚生活というのも国民みんながまず大事にしなきゃならぬな、それはみずから言い聞かせたような感じを持ったところでもあります。
 そこで、この審議会答申はまさに方向づけを示し、国民の皆様の保各界の御意見を賜るということで現在進めておるところでございますが、先生のお書きになった著書の中の見出しにも、不幸な結婚よりも幸福な離婚、こういう見出しが非常に私、頭の中に残っておるわけでございます。
 ただ、今日の離婚、離婚は協議離婚が我が国は九割ほどでございまして、極めて多いのが特徴でございますけれども、この離婚後に特に女性、妻の、元妻ということになりますが、女性の立場として経済的自立がどこまで図られていくだろうか、その辺をどう法律的に何か解決する方法があるのか、この辺が私は一つの関心だと思っております。
 特に、年を言ったら申しわけございませんが、四十を過ぎてまいりますと女性の再就職というのもなかなかこれ大変だと私は理解しておりますし、また就職ができたとしても男女間の給与の格差というものも、低いと言われる社会で女性、また特に中でも子供の養育を離婚後女性の方がはるかに養育をされておる。先生の御著書によると七割と、こう書いていただいておりましたが、こういう中でたちまち生活ができなくなってしまう問題がありはしないだろうか。それから、別れた妻に対する債務の履行がどう保証されるのか。
 そういうことがある程度見通しがつきませんと、この五年間、有責配偶者からの離婚申し立てを、それのみの法文の解釈が国民の間で持たれてしまうということは、私、非常に問題であるので、法制審の答申をよく読んでいただきますと決してそうは書いておりませんで、審議会答申では失礼しました。先ほど審議会答申と申しましたが、民法改正要綱試案、訂正いたします。
 この試案でまいりましても、先生御指摘のとおり、離婚後の養育費の支払い債務その他家事債務の履行確保の方法等とともに、特に離婚した夫婦の一方または子が精神的、社会的、経済的に著しく過酷な状態に置かれるときは、離婚の請求を棄却することができる、こういう精神もうたっておるわけでございますから、これらを踏まえて国民的ななお詰めた論議、お互いみずからのこととしてとらえた論議がされることを望んでおるという立場でございます。
○山崎順子君 私の本もお読みいただいてありがとうございます。
 何か、きょう質問することをすべてもうお答えいただいたような大変いいお答えをいただきまして、ありがとうございました。
 それで、最後のところで過酷条項のことをおっしやいましたけれども、過酷条項は、確かに生活費も払わないような夫ですとかそれからそういう財産分与等が決められない場合は有責配偶者からの離婚は認めないというふうになっているんですけれども、現実に離婚を認められないことがその弱者の救済になるかということがあると思うんです。
 私ども、大勢の女性たちから相談を受けておりますけれども、確かに今回の積極的破綻主義が示す方向というのは大変いいことで、破綻している結婚生活をだれもそこにしがみつきたいとは思っていないわけです。みんな新しい生活にできればいきたい、そう思っている方が多いんですね。確かに世論調査の結果でも、結婚しても相手に満足しないときは離婚すればいいというような考え方に賛成する方も、もう十年前、二十年前に比べればふえておりますし、今言いましたように、離婚に直面している女性たちの多くは、愛情と信頼関係が消えうせた関係は解消した方がいいかと迷っていらっしゃるわけです。
 しかし、離婚というのはそう簡単にはできません。現実には皆さん思い悩んで、体を壊すほど緊張が高まり、ストレスの強い関係になっていても、そしてまた別居が相当長引いていてもそう簡単には離婚に踏み切れない。それは、今本当に大臣がおっしゃったように、生活力のないこと、それから夫という後ろ盾のなくなること、また社会の中でちゃんと自立してやっていけるかどうかという不安、子供に教育を受けさせられるか、家賃が払えるか、体を壊したらどうなるのか。また、女性の年金というのは大変低いんですけれども、今、七、八割がサラリーマンですが、そのサラリiマンの妻は基礎年金というものがございますけれども、あの基礎年金で六十歳や六十五歳以後どの程度の年金が受けられるかといったら、本当にとてもそれでは食べていけません。
 そういった老後の不安も考えますと、今まで高校または大学を出てとりあえずほとんどが働いた経験のある女性だと思いますけれども、でも一たん家庭の中に入ってしまうと、もう一度社会に出て経済的に自立することがいかに困難か。そして、妻の座というものについての法律を余り知らない女性も多いんですけれども、初めて離婚というものが前提になったときに、日本では結婚の枠組みの中でしか女は余り守られていないんだなということに気がつくわけですね。それで離婚にひるんでしまうんですけれども。
 そういう意味で、先ほど言いましたように、現実に過酷条項というものがあっても、今、破綻した関係を続けることが決してよくないとほとんどの人は思っている。だから、そこでじゃ離婚しなくていいんだよということよりは、離婚できるような状況をつくることの方が大事だと思うんですね。
 そういう意味で、例えば女子差別撤廃条約などでも、結婚する平等の権利、離婚する平等の権利というものがきちんと書かれていますけれども、そういったことからいきますと、日本では女子差別撤廃条約も批准しているにもかかわらず離婚の自由というものがない。それは私は、民法部会の中だけで、民法の中で今、財産分与、養育費、いろんな点でまだ不備な点はありまして、これからも民法部会でいろいろ検討していただけるものとは思っておりますけれども、そこだけでやっている問題ではないと思えるんですね。国民生活に大きな影響を与える状況の中で、本当の意味で女性たちが、男女共同参画型社会などと今言われていますけれども、結婚してまた再就職するときにすんなりできる、経済的自立ができる、そういったことを保障できるような社会をつくらなきゃいけないと思うんです。
 例えば、四十代では仕事もとても働きにくい、再就職しにくいと今法務大臣もおっしゃいましたが、民法以外のところで、女性たちが離婚して不利になるとか、離婚されることで恨みつらみを一生持ち続けるとか、そういうことがないような、本当に前向きに、愛情も信頼関係もうせた結婚生活を解消して別の人生を歩もうとできるような社会制度にするにはどんなことが必要だと思われますでしょうか。
○国務大臣(前田勲男君) ただいま先生から、民法部会以外の分野で、先ほども先生の、まさに不幸な結婚より幸福な離婚のしやすい、しやすいというのもちょっと言葉が適当でないかもしれませんが、無理なく離婚の道を選び得る社会情勢をどう醸成するか、こういう御質問だと思います。
 これは現在、男女共同参画審議会その他でこうした議論が行われておるところでございまして、それらについては、特に雇用問題については労働省がいろいろお考えをいただいておりますし、生活保護その他については厚生省、また全般については経済企画庁あるいはまた総理府、あるいは文部省、教育でありますとか。国を挙げてそれぞれ関係機関が取り組んでおるところでございますけれども、私どもとしても関係省庁と常に情報交換をよくし、それぞれの立場から先生が御指摘の観点に立った論議を深めていくということがまず大事であろうと思っております。
 特に、私も直感しますのは、女性の権利が世に問われ出し、そしてそれがどちらかというと先に妻の権利にいき、今度は妻から離婚した女性の方に、今現在、社会の関心はあるいはウエートは移ってきておる、そういう段階だと理解をいたしているところでございます。
○山崎順子君 今、法務大臣がおっしゃったように、男女共同参画推進本部ですか、村山さんが本部長を務めていらっしゃいますが、もちろん法務大臣もその一員で、今おっしゃったように各省庁と連携して男女共同参画型社会実現に向けて努力してくださっているということですけれども、この民法改正、来年の一月に各界からの意見をまとめ、およそ来年の秋かまた再来年ぐらいまでには最終のものが出るというふうにもお聞きしておりますけれども、それまでに推進本部の中で、この民法改正に伴う受け皿として、社会の状況を男女共同参画型の方にぜひ向けていただく努力を法務大臣からリーダーシップをとってやっていただけたらと思いますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(前田勲男君) 法務省として、また審議会として当然情報も提供し、また意見の交換を密にして反映してまいりたい、かように思っております。
○山崎順子君 それで、先ほど申しましたように、法律の問題だけではなくて、積極的破綻主義が採用されまして、また採用されない今でも、女性たちが離婚をした方がいいような関係に思い悩みながらも、でもためらう一番大きな障害というのは、やはり生活力のないこと、それから住居がない、住む家がないこと、それから子供の心配。
 この子供の心配といいましても、例えば小さい子供のうちは六畳一間でも暮らせるんですけれども、自分よりも体の大きくなった中学生や高校生などがいる場合、一間の賃貸住宅に暮らせませんし、また教育費も大変日本では高いというところで、そういう問題があって、子供のことといっても精神的な問題もありますけれども、一、二、三、住居、生活力、子供、全部経済にかかわることなんですね。
 そこで女の人たちが考えるのは、生活保護を受けようとか、それから夫からとにかく財産を分捕りたいとか、そういうことではなくて、とにかく自分自身が働いて自立したいということが真っ先に出てくる要望なんです。ところが、働くときに当たって、一番最初に大臣もおっしゃいましたけれども、けさも私、新聞求人案内欄を見てきたんですけれども、多分法制審議会や民法部会のメンバーの方や立法府の国会議員の方たち、それから行政の官僚の方たちは余り求人案内欄などごらんにならないんじゃないかと思いますけれども、これは離婚する女性に限らず女性たちのほとんどは、例えば末っ子が小学校ぐらいに入りますと、また再就職したいなと思って、社会の中で働きたい、そう思って毎日のように新聞やまた求人情報誌を見るわけですね。そうしますと、ほとんどが今でも二十七歳までとか三十五歳までとか限られておりまして、年齢制限があるわけです。
 御存じだと思いますけれども、アメリカでは一九六七年に年齢による就職時の差別を禁じた法律が既にできております。もちろん、その後も何度か修正がありまして、ちゃんと年齢による差別をしてはならないと決まっているんですが、残念ながら我が国では、公立学校、公立保育園というような教職や保母ですら年齢制限がございます。教職の年齢制限を廃止しております県は、静岡県と富山県だけなんですね。そんな状況で、廃止しても決して不便なところはないと思うんですけれども、なぜそういう自治体や国が年齢制限を設けているのか。私は、率先して年齢制限を廃止すれば民間もそれに倣ってくるんじゃないかとも考えているんですね。
 この件についてと、また私は、年齢制限というものは労働の権利を保障した憲法二十七条に違反するのではないかと思っておりますけれども、このあたりの御見解をお聞かせいただきたいと思います。
○政府委員(濱崎恭生君) 憲法の解釈の問題を御指摘でございますので、大変難しい問題の御指摘をいただいたわけでございますが、そういう就職に当たっての年齢制限、これは公的な職場、民間の職場、それぞれにあるという御指摘でございますが、そういう問題についてどうあるべきか、あるいはそれを憲法の規定上どう解すべきかというようなことを、私、事務当局では立ってしまいましたけれども、なかなかお答えできる立場にはございません。そういう御指摘を踏まえて、関係省庁の方で適切に対応していただくべき問題ではなかろうかというふうに思っております。
○山崎順子君 憲法の問題だけではなくて、我が国は女子差別撤廃条約を批准しておりますけれども、もちろん年齢の問題というのは女性だけの問題ではございませんで、こういう平均寿命が長くなった現代にあっては、男性も例えば五十になって六十になって二十代で決めた職業ではない職業につきたいと思う方はふえてくるはずで、そういったときにいつでも入れる大学の制度ですとか、それから生涯教育の問題だけではなくて、勉強したことを今度は職業として生かせるような状況になるのが高齢社会にはふさわしいと思うのですね。
 そういう意味では年齢制限は男女ともに廃止すべき問題で、女性差別の問題ではないと思われるかもしれませんけれども、先ほど言いましたように、男の方は大体高校、大学を出て、今までの終身雇用の日本ではほとんどずっと同じ会社に勤めていらっしゃいます。まあ最近は転職も少しふえてきましたけれども。そういう中で、性別役割分業の価値観が徹底している日本では、ほとんど出産や育児、また夫の転勤等で女性は仕事をやめざるを得なくて、再就職のときに年齢制限にひっかかって、ああ悔しいと思われるのはほとんどが女性なんですね。そういう意味でこの年齢制限は女子差別撤廃条約にも違反する。つまり、女性の多くの差別の問題ではないかと私は思われますので、このあたりを、憲法の問題はまたこれからもいろいろやっていきたいと思いますけれども、例えば法務大臣はこの年齢制限等、女子差別撤廃条約など国が国際条約として批准したものに対して国内法や国内のさまざまな制度がその条約にまだ合致していない、整合性がないということについてどう思われるか。
 といいますのは、もちろん法務大臣だけではありませんけれども、憲法九十八条、九十九条では、私たちはしっかりと憲法尊重、擁護の義務と、それから最高法規、条約及び国際法規の遵守を明記されているわけですね。それは道徳義務ではありますけれども、一般人の道徳義務とは違いまして、国会議員ですとか国務大臣というものはもっと高いレベルの、政治的レベルのやはり道徳義務があるのではないかと思われるのですね。ですから、ぜひ国際条約を批准した上で国内法の整備等に向け努力していただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
○国務大臣(前田勲男君) 答弁の御指名でございますのでお答え申し上げますが、労働条件、雇用条件等につきましては労働省がおやりになっておるわけでございまして、所管外の私からどうお返事していいかということも実は迷っておりますが、いずれにいたしましても労働大臣にはこの先生の御意見をよくまずお伝えをしたいと思います。
 そして、高齢化社会に向かう中で年齢制限を設けておられるということは、場合によっては優秀な人材、労働力を使えないという国家としての損失という観点もあるかもしれませんし、また女性の年齢制限、もともと私は余り女性に年齢は聞かないことにいたしておりますが、先ほども四十歳過ぎると就職、再就職が困難な様子であろうと、私もずっとそんな感覚を持ってきておりました。先生からそういう具体的な事例を挙げて御指摘でございましたので、労働大臣にその旨もよくお伝えをして御意見もよく承り、先生のおっしゃる方向が私もすばらしいことだと、かように考えておりますので、法務大臣としてはそういう努力を申し上げたいということで答弁させていただきたいと思います。
○山崎順子君 年齢制限などなくなって四十歳でも五十歳でも自分が望む仕事につけるようになってくる、そういう社会であれば、多分女性は余り年を聞かれても気にならないんじゃないかと思いますけれども。私などいつも本にもう最初から書いてしまっておりますけれども。
 さて、今せっかく労働大臣や労働省のお話をしていただきましたので労働省の方にちょっとお伺いしたいんですけれども、先ほどから四十代とかは再就職が難しいという話が出ておりますが、実態は女性が再就職する場合どういう状況になっているのか、特に中高年の場合どうなのか、もしありましたら教えていただきたいんですが。
○説明員(井原勝介君) お答えいたします。
 現在、不況の状況もございまして全般的に求人倍率は非常に低い状況にございます。最近の九月の状況で〇・六四倍ということでございます。
 女性についても同様に厳しい状況にあるだろうというふうに推測をしておりますけれども、実際の求人状況等につきましては、男子と女子の雇用に関する均等な機会を確保するという観点から、男女別の求人等については受け付けてないという形になっておりますので、女子の求人状況、求人倍率等について特に申し上げる数字は持っておりませんけれども、全体の中では非常に厳しい状況にあろうかというふうに思っております。
○山崎順子君 ありがとうございました。
 総理府の方にお伺いしたいんですけれども、今、推進本部の方でも民法改正についていろいろ、法務大臣の方からもその整備のために協力、情報提供等をしていきたいとおっしゃってくださいましたけれども、現実にさまざまな女性差別がまだあると思うんですけれども、そういった実態を把握していらっしゃいますか。
 それから、民法改正に伴う関連法や制度の整備などを進めようというおつもりはございますでしょうか。今の労働省のお答えで、現実には中高年女性の再就職の厳しさみたいなものが全く調査として出てきてないというようなこともございましたけれども、いかがでしょうか。
○説明員(坂東眞理子君) 私どもでは、女性たちがどういう状況に置かれているかということを、政府の既存の統計をできるだけ集めまして精査いたしまして比較するようにして、その中から女性たちが本当に男女共同参画という名前にふさわしいような状況にあるのかどうかということについていろいろ調べておりますけれども、今労働省の方がお答えになりましたように、必ずしもその統計そのものが存在しないとかといったようなこともありまして完全に把握しているとは言いがたい状況ですが、いろいろ各省庁にもお願いをしながら、そういった場面での、部門での状況の把握に努めてまいりたいと思っております。
 またさらに、それをいかに改善していくかにつきましては、労働の問題あるいは福祉の問題、教育の問題、税制の問題とか、非常に多岐にわたっておりますので、男女共同参画推進本部の各省庁挙げてそれぞれの所管の分野で努力をしていく、協力をしていくということで連携に努めております。
○山崎順子君 今おっしゃったように、本当に再就職の際の年齢制限だけではなくて、税制も主婦の勤労意欲を阻害しておりますし、女性の経済的自立を阻んでいるわけですね。そういった税制、年金制度、ありとあらゆるところで女性の問題を考えていかなければなりませんが、それは大蔵省、これは厚生省、これは文部省という縦割りの形ではなかなか女性問題を総合的に把握することはできないと思うんですね。
 それから実態調査も、残念ながら先ほどの年齢制限も、学校の教職や保育園の保母さんの年齢制限がどこが何歳なのかということは文部省は全く把握しておりませんでした。ですから、個別に私が全国の市町村すべてに電話をして、すべてではありませんが、いろんなところに電話をして調べたのが幾つか、三十か四十あるというようなそういう状況で、どうも女性側から見た統計とか、そういったものが不足しているのではないかと思われるのですね。ですから、ぜひ総理府の坂東さんのお部屋でそういったことも、統計の見直しをやっていただきたいと思っております。
 それから、これは統計だけではなくて法律もそうなんですが、大体男性優位で法律ができておりまして、そういった法律に詳しい方たちだけが法制審議会で議論なさってもなかなか女性の問題が入ってこない。そこで、民法だけではなくてと先ほど申しましたのは、離婚した人たちの現状、また離婚する前の、別に離婚女性に限らず働く女性たちの現状というものをしっかり把握しないと、今後の結婚というものが多分、育児も家事もだれも手伝ってくれない、保育園も余り整備されていない、そういう状況ではからしくてというので三高とかいろんなことが出てきましたけれども、だんだん結婚する女性が少なくなるんじゃないか、また子供を産む女性たちも少なくなるんじゃないか。本当は三人子供が欲しいという女性が多いのに、今だってもう一・四六という出生率ですから。ですから、この辺をしっかり考えないと、これからの少子・高齢社会を日本は生き抜いていけないと思うんですね。
 ですから、法制審議会でもぜひ来年、再来年の最終答申を出される前に、法制審議会民法部会とはまた別の、かなり生活に根差したところの状況を知っている方たちで有識者の会議などを、これは推進本部でもいいんですけれども、開いて、そこと一緒に民法を改正する方向で考えていくというような、そういったことも考えていただきたいんですが、坂東さんと法務大臣の両方に今のお答えをお願いしたいと思います。
○説明員(坂東眞理子君) 民法の改正につきましては、本当にこれは男女共同参画社会の形成にも、女性の暮らし、人生にも大変大きな影響を与える問題でございまして、本部の方で決定しております西暦二〇〇〇年に向けての新国内行動計画の中でも重要な項目として位置づけております。
 それで、総理府におきましても、法務省の方の御協力を得まして、来る十一月三十日には民法改正を考えるというフォーラムを開催いたしまして、その場で専門家の方と実際にいろいろな離婚のケースを扱っていらっしゃる弁護士の方ですとか女性の代表の方たちとディスカッションをしていただいて、それを法務省の方にも十分御参考にしていただくような機会を設けたいと思っておりますし、また男女共同参画審議会、まだことしの八月から始まったばかりでございますけれども、その席でも重要な課題として検討をしていただきたいと思います。
 また、先ほど先生がおっしゃいました統計につきましては、いろいろな国際的な場でも、もっと女性の状況を正確に反映する統計をしっかりつくることが必要であるということが強調されておりますので、ぜひこれについては関係省庁の方とも協力をして進めてまいりたいと思っております。
○国務大臣(前田勲男君) 先生から今、女性の立場から見て、統計その他等についても女性の目から見た視点が欠けるという御指摘をいただいて、私も認識を新たにまたいたしたところでございます。
 お尋ねの点については、法制審議会のメンバーも同じ問題意識を持っている方がたくさんおられるということを私も実は認識をいたしておりまして、そういう上に、法制審議会と男女共同参画審議会、こちらが意見交換を行い、かつまた民法の小委員会におきましても来年の一月二十日以降、各界から皆様方の御意見を徴収するという機会が多々ございまして、そうした中でもそういう御意見が出てくるものと予想いたしておりますけれども、私どもも胸襟を開き、心を開いてよくお承りしてこたえてまいりたいと、かように思っております。
○山崎順子君 ありがとうございました。終わります。
○平野貞夫君 短い時間でございますので、三つぐらい用意した質問を一つにまとめますので、二十一分までの持ち時間でございますので、ひとつ簡明にお答えをいただきたいと思います。
 最近、政府部内で、社会状況の変化を理由に、公安調査庁を縮小統合あるいは整理したらという意見があると伺っておりますが、まず第一点は、法務省としてこういった情報をどのように掌握されているかということをお聞かせ願いたいと思います。
 第二点は、公安調査庁のもとにある破壊活動防止法というのは確かに、我が国独立直後、米ソ冷戦真っ盛りの状況の中でつくられた法律でございますが、冷戦が終わったとはいえ、急激な国際化、これはやむを得ないことでもありますが、によって複雑でかつ巧妙なテロとかそういった暴力的破壊行為が続発しておりますし、また直接暴力的な行為でなくとも、いろいろな世界にわたって、状況にわたって公共の安全を侵す問題が多発しております。縮小するどころか整備強化、刷新されなければならないと私は思っております。こういうことについて実務の責任者の方の御意見を伺いたいと思います。
 そして、公安調査庁の業務そのものは、やはり基本的人権とかということについての配慮をされなきゃいけませんですが、同時に、国の独立、公共の安全というものが適切に確保されなければ基本的人権もデモクラシーもありません。
 そういう意味で、法務大臣は七月二十一日のごあいさつの中で、法秩序の維持と国民の権利の保全に法務行政の目的を持ってこられて、しかも国際化に伴う新しい時代の要請を踏まえながら法務行政をやる、こういうふうにあいさつされておりますが、そういった意味で公安調査庁の職務の拡充あるいは人材の育成、そういったものを図っていただきたい、こういうふうに希望するわけでございます。
 以上、まとめて甚だ恐縮でございますが、御答弁いただきたいと思います。
○政府委員(緒方重威君) お答えいたします。
 委員の御質問になりました、最近の情報機関の整理統合の問題でございますが、いろいろ議論されていることは公安調査庁としても十分承知しておりますし、また公安調査庁が一員となっております合同情報会議におきましても、こういった問題について云々されていることも承知しております。
 しかし、その方向性につきましては、私は、委員の言われましたような国際情勢、非常に多極化し不透明である、そういう中においては情報の必要性というのは今後ますますふえてくるところだろうと思います。あわせて危機管理の問題等も考えますと、内閣に一つの情報が一本化してまとまるということは非常に大事なことであり、そういった面において情報機能を強化するということは重要であろうと、かように認識しております。
 しかし、内閣において情報が集約されるということと、その情報をどの機関がどう集めるかということはまた別の問題であろう、かように思っております。情報ということについて私が云々するのは、多言を要するまでもないと存じますけれども、いろいろな形で分化された情報が必要ではないだろうか。一本の情報機関において一本の情報しか集まらないということでは、情報の確実性というものが期しがたいわけでございますので、その情報収集は多方面からやはり集めるべきものではないだろうか。公安調査庁といたしましてもそういった観点から、我が国の公安にかかわる情報についての情報調査、収集分析、これについて従来にも増してやはり頑張っていかなければいけないんじゃないかなと、かように思っている次第でございます。
 次に、冷戦後の現在の国際情勢をどのように認識しているかという御質問でございますが、これにつきましては、この東西冷戦構造が崩壊いたしまして民主主義体制の実効性が証明されたということは間違いなく言えるところでございますが、しかし、冷戦終結が直ちに国際秩序回復につながったかといいますと、必ずしもそうではないという認識を持っております。むしろ、従来そういった枠組みの中にあった一定の安定、これが逆に混沌として、世界各地では今までの東西対立てあるとか左右対立というような図式ではない、異なる、民族問題あるいは宗教問題等に起因する紛争が多発しており、これに我が国がどうかかわるかという問題が生じております。また、極東アジアにおける政治経済の混迷、これが近隣諸国に及ぼす影響など、我が国を取り巻く内外情勢はやはり依然として不安定かつ流動的である、かように認識しております。
 そのような情勢のもとにおいて、我が国の法秩序に脅威となるような事態が従来では全く想定されてなかった形で発生することも予測されておりまして、これに対する規制ということも従来とは異なった次元で考えなければならないことも想定される、かように認識しております。かように情勢が非常に変化しておりますので、公安調査庁といたしましても、こういった情勢の変化を視野に入れまして、幅広い観点から情報収集、分析活動の充実強化、こういうことについて努めてまいりたい、かように思っております。
 当庁といたしましては、発足以来四十二年間、規制の問題を中心にしながら調査を進めてまいりました。その結果、破壊的団体による破壊活動の未然防止という抑止力といいましょうか、そういった面においてはそれなりの効果を果たしてきた、かように思っておりますけれども、今申し上げましたような現状においては、それのみをもってしては公安調査庁としては役割不足である、かように思っておりますので、先ほど申し上げたような観点からさらに業務体制を推進し、情報の収集分析に努めてまいりたい、かように思っている次第でございます。
○国務大臣(前田勲男君) お答え申し上げます。
 先生から公安調査庁につきまして大変御理解をいただき、またお励ましをいただいて大変心強く、ありがたく、感謝を申し上げておるところでございます。
 先生御指摘のとおり、まさに法治国家として法秩序の維持、これはすべての基本でございまして、我々厳正にこれを守っていかなければならないという決意で取り組んできております。先ほど来公安調査庁から申しましたとおり、内外情勢大変複雑に流動しておるさなかにございまして、こうした情勢の中で適切に対応していくということは極めて大事なことでございます。公安調査庁といたしましても、今後とも情報収集の充実強化に努めてまいり、国民の信頼また期待に十二分にこたえられるように努力をしてまいりたい、かように思っておるところでございます。
 ありがとうございました。
○荒木清寛君 まず大臣にお伺いをいたします。
 今月の三日になりますが、有力新聞に憲法改正試案なるものが発表になりました。これは一マスコミの試案ではございますけれども、海外からも論評が来るほどの大きな波紋を投げかけておるわけでございます。私は、この憲法改正を論ずること自体は決してタブー視すべきではない。今回の論調にも、そういう憲法改正を言うこと自体が非常にタカ派的な発想であるとかあるいは反動的である、そういう論調もあったわけでございますが、それは私はくみしないわけでございます。
 しかし、私なりによくよくいろいろ思索をしてまいりましたが、現段階では憲法を改正しなければ解消できないような矛盾あるいは不合理、それはないんではないか、そういう気がしているわけでございます。特に、自衛隊が違憲か合憲か、長年にわたり論争がありまして訴訟でも争われたわけでございますが、現時点では国民の八割以上がこれを容認をしている。しかも、先般の社会党の政策転換によりまして、国会においてもそれに相応するだけの合憲であると言う方がいるということでございますから、この問題についても直ちに憲法改正をしてはっきりしなければいけないという状況にもないような気がするわけであります。
 そこで大臣に、これは大臣という立場というよりも政治家としての見解で結構でございますが、この憲法改正という問題あるいはその議論をすることについてどういう所見をお持ちなのか、まずお伺いしたいと思います。
○国務大臣(前田勲男君) 先般、大手新聞、これはもう読売新聞でございますから名前も申し上げますが、憲法改正試案については私も一読をさせていただいたという、熟読をしておりません、その機会を実はまだ持っておりませんわけでございます。
 それで、現在、私は法務大臣という立場にございます。九十九条にもございますとおり、憲法を尊重し遵守する立場にございますので、この試案等の中身について意見を述べることは適切でない、かように考えておりますし、また一議員個人としてもまだコメントするほどよく熟読もいたしておらないというのが現実でございます。
 そこで、あえて政治家として憲法改正についてどう思うか、こういう御意見でございますが、まさに先生御指摘のとおり、私も先生と同じ考えだと今何いながら感じておりましたが、これだけ世界情勢が変化する中で憲法について国民が大いに議論をすること、これは決して否定されるべきことではなくて、憲法あるいは政治その他に皆さん国民が関心を持っていただくことは極めて私はいいことだと思っております。しかし、改正云々については、政治家としてという限定でお答えをするとするならば、今まさに国論を二分するような議論をここでしなければならないという状況になるとは思っておらない行けでございまして、現在私は閣僚の一人として憲法を遵守してまいるということに専念をいたしておる立場にある、かように思っております。
○荒木清寛君 次に、死刑の是非ということについてお伺いしたいと思います。
 この死刑是か非か、あるいは憲法との関係ということにつきましては、各党の中にもいろんな考えの方がいらっしゃるわけでありまして、これは努めて個人の世界観また人生観にかかわる問題であると思います。そういう意味では、どの党がどういう立場だということは言いにくい問題であると思います。
 十一月二日に死刑廃止を推進する議員連盟が総理及び大臣に申し入れをされましたが、そこには衆議院七十名、参議院五十一名、私も入っておりますが、その議員さんが名を連ねているわけです。要するに死刑を廃止すべきだという見解を表明しているわけでありますが、それだけ衆参で百人を超える議員の人が廃止という見解を持っていることに大臣はどういう感想といいますか、所見をお持ちでしょうか。
○国務大臣(前田勲男君) 死刑廃止を推進する議員連盟の先生方から、先日も総理並びに私にも御意見を賜ったところでございます。多数の衆参の議員の先生方の御意見ということでございまして、私も謙虚に耳を傾けなければならないと、これは一義的にまずそう思っております。
 そして、死刑制度そのものの存廃ということにつきましては、我が国の刑事司法制度のいわば根幹にかかわる重要な問題であるわけでございまして、国民の世論に十分配慮をしながら、社会における正義の実現の要請等種々の観点から慎重に検討すべきものであろうと考えております。過去の行われました世論調査の結果等からいたしまして、国民的な世論というものは、死刑を全面的に廃止するというのは適当でないというような国民的な世論があるということは承知をいたしておるところでございます。
○荒木清寛君 その世論調査の質問の立て方につきましてもいろいろ指摘がされているわけでありまして、その質問に従って回答していくとどうしても一定の結論に導かれるようなそういう項目を立てているんではないか、いわゆる死刑の存在を容認する方向に回答を出すようなそういう質問ではないか、質問事項ではないかという指摘があることを申し上げておきたいと思います。
 それはそれとしまして、現在、確定している死刑囚の方は何人いて、そのうち何人が再審を請求し、そして再審の準備をしている人が何人いるのか、お教えいただきたいと思います。
○国務大臣(前田勲男君) 先ほどの世論調査でございますが、誘導質問と申しますか、あったんではないか、あるいはそう理解しておると。ただ、これは政府としても総理府でおやりをいただいておりまして、あるいはまた総理府以外にもマスコミ等でもいろんな角度からと申し上げた方がいいかもしれません、アンケートが行われておりますが、大方の世論調査は大体六十数%、七割弱が死刑存続賛成をされておるというふうに理解をいたしておるところでございまして、以下、細かい問題につきましては刑事局長より御答弁申し上げます。
○政府委員(則定衛君) お尋ねの死刑確定者の人数でございますけれども、昨年末現在におきまして五十六名でございます。また、その時点におきまして再審請求の申し立てをしておる者の数は十三名でございます。ただ、あわせてお尋ねの再審請求準備中の者の数という点につきましては、これは事実行為でございますので、私ども正確には把握しておりません。
○荒木清寛君 五十六名の死刑囚のうち十三名が再審請求をしているということを私は重視をしたいと思うんです。
 先ほどの議員連盟にも団藤重光元最高裁判事が当初来られましてお話を承りましたが、団藤判事の意見、団藤先生も廃止論でございますが、誤判の可能性、誤判があった場合に、死刑を執行した後でそれが発覚した場合にはもう取り返しがつかないではないか、これが死刑廃止論の最後の決め手になるんではないか、そういうお話をして帰られたわけでございます。
 また、その先生の本では確かに、殺された方の「被害者側の感情を満足させることは、正義の要請に違いありません。しかし、無実の者が処刑されるということは、そんなこととはまるで比較にならない位大きな不正義であります。」、私はこの一文に感銘をしているわけでございます。
 現に、日本でも無実を叫びながら処刑といいますか死刑になった方もいらっしゃるわけでございまして、私も誤判の可能性ということがゼロでない以上はこの死刑制度というのはやはり不正義ではないか、そう考えるわけでございますが、こういった主張、団藤先生あるいは私どものこういう誤判と死刑ということにつきまして大臣はどういう所見をお持ちでしょうか。
○国務大臣(前田勲男君) 無実の方が執行されることがあってはならぬ、これはもう当然のことでございます。
 裁判において判決が出されるわけでございますが、死刑の適用につきましては、司法、裁判におきましても極めて慎重に審理されておると理解をいたしておりますし、また裁判制度、三審制のもとで、しかもなお確定した判決に対しても再審あるいは上告あるいは恩赦などの救済制度が設けられておるわけでございまして、これらは誤判を防止するために有効に機能しておる、かように考えております。
 死刑は、これらの適用事由の有無をまさに慎重の上にも慎重に審査をした上で、厳密な調査の上で執行されておる、かように私は理解をしておるところでございます。
○荒木清寛君 もちろん、慎重の上にも慎重にと、三審プラス再審ということになるわけでありますが、それでもやはりゼロではないというふうに思うわけでございます。これは最高裁の判事をやった方がその職務についた実感としての言葉ではないか、そういう重みを、我々は謙虚にそういう主張といいますか、聞くべきではないかというふうに思うわけでございます。
 それで先ほど、世論も七割弱が賛成である。確かに各種の世論調査はそういうデータでございますが、それは死刑についての十分な情報が国民に公開されていないということがあると思うんです。新聞あるいはテレビの論調を見ましても、凶悪犯人が逮捕されたときにはまさにセンセーショナルな報道をするわけでございまして、家族のプライバシーも含めて全部公開され、もうまさに一家そろって鬼か畜生のようなそういう報道がなされるわけでございます。そういう報道に我々は接するわけでございます。じゃ、いざそういう方が、そういう犯人が死刑になって執行されるという場合に何か報道されるかといいますと、全くそんなことはないわけでございます。
 要するに、法務当局としましても、死刑囚がどういう生活をしているのかとか、あるいはいつ執行されたのかとか、あるいはどういう方法で執行したのか、そういうことは一切公表しないわけでありまして、その死刑囚本人にもその執行の朝知らされるというぐらいでありまして、全く情報公開というのはないわけであります。執行された後で家族には通知だけが行く。そのほかの情報は何ら我々国民は知ることができないわけでありまして、国会で質問をしても一切お答えをいただけない。
 現に、平成二年六月二十二日の衆議院決算委員会で自民党の志賀先生が質問され、当時の与党の先生が質問をされ法務当局が答えているわけでありますが、そこでもはっきりと今の死刑の執行については、「密行制度をとっておりますがゆえに、その正しい姿が一般の方々に理解しがたい面があるというふうな御指摘も、まことにそのとおりだろうと思います。」と、要するに、密行主義ではないかという質問に対して、そうですということを答弁しているわけですね。
 これは平成二年のことでありますけれども、その後、死刑についての情報公開、この運用につきまして何か変わった点はございますでしょうか。
○政府委員(則定衛君) 死刑囚の執行の事実についての公表という面につきましては、御指摘の時点から現時点まで法務当局としては考えは変わってはおりません。
 私どもといたしましては、この死刑問題についての情報公開ということになりますと、最大のものは公開の公判廷で審理され、それがまた報道機関を通して国民に広く知れ渡っていること、あるいはその判決内容についても、死刑判決になるような事件といいますのは世間が注目しておる事件でございますので、これまた広く報道機関を通じて国民に知らされているということがあるかと思いますし、それから全般的な執行状況というものにつきましては、それぞれ各年、その統計上の数字ということで公表されているわけでございまして、何といいましょうか、一切死刑事件について公表していないということにはならないものと考えておるわけでございます。
○荒木清寛君 一切の情報が開示されていないということはもちろんないと思いますし、いろんな統計でそういう、例えば現在の確定囚が何人いるのかと知ることができるわけであります。しかし、密行主義であるというふうに、まあ判決まではもちろんそれは公開でしょうけれども、それは死刑の執行ではないわけでありまして、確定してからが執行の問題になるわけでありまして、その後の問題が全然公表されていないではないかということを言っているわけであります。密行主義であるというふうに当局が認めた実態は、今も変わっていないわけでございます。
 そこで、私は大臣に最後にお願いというか質問をしたいわけでありますが、国民には知る権利というのがあるわけでありまして、この死刑の存否につきましても、正しい情報を得た上で賛成、反対という意思表示をする権利があるはずなんです。ですから、今のそういう、もうなるべくベールに包むという実態ではなくて、できる限りそういう執行の面でも国民に情報を公開し、知る権利に奉仕をしていくべきではないかと思うわけでございますし、先ほどの議連もそういう申し入れをしたと思いますが、この情報公開ということにつきまして前向きに検討すべきではないでしょうか。
○国務大臣(前田勲男君) まず、密行主義だという御指摘、あるいは当局がそう是認したということでございましたが、今刑事局長から申し上げたとおり、私は密行主義という言葉はいささか過ぎるかなという感じを持っております。
 それはそれとして、この死刑の公表、事実公表の問題でございますが、死刑を執行された御遺族の感情というものも私ども考えなきやならない、また他の死刑確定者の心情の安定等もやはり配慮しなければならない等々、まあプライバシーと申しますかというものも含めて今日までずっと公表等については差し控えてきたわけでございます。
 先生御指摘の、まさに知る権利という問題もこれから、特に私は、世の中、情報公開あるいは知る権利への奉仕という時の流れ、世界情勢の流れというのもございますから、こうした観点も踏まえながらお時間をいただいて、この問題についてはなお法務省においてよく検討、協議をしてまいりたい、かように考えております。
○荒木清寛君 先ほどの密行主義というのは、正確な言葉で当時の矯正局長の密行制度ということでございまして、まあ余り大差がないんですが。
 わかりました。その検討するということはお約束いただいたというふうに思います。
 次に、監獄法の改正という問題についてお伺いしたいと思います。
 昨年十月にジュネーブで開かれました国際人権自由権規約委員会、いわゆるB規約委員会というふうに略称しているようですが、そこの勧告で、日本政府に対する勧告として、要旨として、代用監獄を国際人権規約に適合させる必要があると、もう一つは、死刑囚の処遇その他囚人の処遇についても改善をすべき点がある、そういう勧告をしているわけでございますが、この勧告に対して大臣はどういう所見をお持ちですか。
○国務大臣(前田勲男君) 国際人権規約委員会のコメントに対して大臣はどう思うかと、こういう御質問でございます。
 この勧告についての中身はもちろん承知をいたしておるところでございますが、中の死刑制度の存廃につきましても、国民の正義感情、国民の世論を十分に配慮して、国家社会のまさに我が国の法秩序維持等々の観点から慎重に検討されるべきものと考えておりまして、全面的に今死刑を廃止するということは適当ではないと考えておるところでございます。
 また、死刑廃止までの過程におきましても、死刑は最も重大な犯罪のみに限定されるべきであるという勧告をされておるわけでございますが、我が国では死刑は凶悪事犯の中でも特に極めて悪質な、また少数な事件についてのみ、慎重が上にも慎重、厳正の上にも厳正に、極めてそうした適用をされておるということを御理解を賜りたいと思うわけでございます。また、死刑確定者を含む被拘禁者の取り扱いについても、今日までもその適正を期してまいっておるところでございますけれども、今後ともその適正な取り扱いに努めてまいりたい、かように思っておるところでございます。
○荒木清寛君 囚人あるいは未決勾留の人の処遇を定めたのが監獄法でございますが、これは明治四十一年にできたもう古色蒼然たる法律でありまして、これを改善する必要があるということは、もう多くの人が認めるわけでございます。現に法務省、警察庁においても、昭和五十七年以来、いわゆる刑事施設法案、留置施設法案の二法案を三たび国会に提出をし、最終的には昨年の衆議院の解散によって廃案になったと。もう既に十二年、改正をしようということで政府提案をされて十二年がたっているわけでございます。
 要するに、もう一向にそういう明治四十一年の法律が改まらない。もちろん運用の改善ということはありますでしょうけれども、抜本的なそういう処遇の改善というのができていないわけですね。これはもう非常に不幸なことであるというふうに思います。そういう拘束された人にももちろん人権の保障はあるわけですから、非常に残念な結果になっているわけでございます。
 一部には、この廃案となりました二法案につきまして、来年の通常国会に四たび提出するんではないか、もうそういう観測もあるわけでございまして、大臣もある新聞で早期の成立ということをおっしゃっているわけでございますが、これはどういうふうに対処されますか。
○国務大臣(前田勲男君) 監獄法改正の必要性についてどう考えておるか、こういう御質問だと思います。
 現行法、まさに明治四十一年でございましたか、私も就任さしていただいて以来、数カ所の行刑施設の視察もさしていただきました。何よりもまず、監獄法という名前から非常に違和感を持っておる一人であるということを最初に申し上げたいと思いますし、大変、この法律そのものを見ましても、条文そのものも片仮名まじりの文語体で全く今では使われなくなった言葉というのも多々ございます。あるいはまた、死文化した条文もあって、ちょっとこれは読んでも理解しにくいというような内容になっておることがまず第一点ございます。
 それから内容的にも、監獄の規律、保安を優先させるという厳しいものでございまして、強いて申し上げれば、受刑者の改善更生あるいは社会復帰というような現代の刑事政策の理念にそぐわない、沿っていないというような問題があるということはもう従来から国会でも議論をいただいてきたところでございまして、そこでその全面改正はまずもって必要である、かように考えておるわけでございます。
 そこで、先生御指摘のとおり、現行監獄法を全面的に改正をいたします刑事施設法案、この法案は法制審で五年に及ぶ審議をいただきまして全会一致で答申が決定したものでもございます。しかし、五十七年に国会に提出をされましたけれども、三たび今日まで、提出、廃案、再提出、廃案と、残念ながら経過をたどっておるわけでございます。
 そこで、何としても御論議をいただき、成立を見たいということでございますので、いずれにいたしましても、この三たび繰り返してきた、同じことを繰り返してはならない。今日まで国会でるる御審議をいただき、また御指摘を受けた点などもございます。そうした点もよく振り返りながら、いろいろ側面からなおよく精査検討して法案の再提出に向けて、現在、準備を進めさせていただいておる、こういう状況にございます。
○荒木清寛君 要するに、何らかの形の修正をして早期に出したいというふうにお伺いをいたしました。
 この問題につきましては、法務省、警察庁と日弁連のもう長年にわたる対立があったわけでございます。私は何も弁護士会の言うことが絶対であるとは申しませんけれども、しかし、拘禁される人の立場に立っていろいろ主張していることは事実でありますから、なるべく関係各方面の合意を得て改正できるということが望ましいんではないかと思うわけであります。
 ですから、そのままお出しになるつもりはないようですが、この際もう一回法制審に、昨年のジュネーブでの代用監獄についての勧告もあったわけですから、もう一回この答申をし直して、そして抜本的な見直しをして出すという方法をとるべきではないでしょうか。最後にお伺いしたいと思います。
○政府委員(松田昇君) お答えいたします。
 委員御指摘のように、もう一度法制審議会にかけ直すという御議論があることは承知いたしておりますけれども、私どもといたしましては、既にこの間、先ほど大臣が申し上げましたように、五年にわたりまして十分な審議を尽くした上で、弁護士会の代表の方もお入りになってとりあえず全会一致で答申をいただき、その答申の枠内で法案をつくりました。その後、不幸にして三回、解散という事態になりまして成立は見ておりませんけれども、改めてこの問題を法制審議会にかけるのはいかがなものであろうか、その必要は今のところないんではないだろうか、かように考えております。
○国務大臣(前田勲男君) 改めて提出をいたしたいと申してこの出し方について検討しておる、その中身を変えるとかということに限らず、出し方の問題とかいろいろ全般について検討していくということでございまして、どこをどう変えるかということはまだ議論をいたしておる段階ではございませんので、御了解を賜りたいと思います。
○荒木清寛君 少なくともそのまま、原案のまま出すということは、またこの不もの対立を繰り返すということになりますから、ぜひ慎重な対応をお願いしたいと思います。
 最後に、五分ぐらいございますので、帰化の問題につきましてお尋ねをしたいと思います。
 私も地元でよく帰化申請についての相談があるわけでございます。要するに、非常に時間がかかるわけでありまして、書類をそろえて法務局に提出をして、法務局の段階で一年ぐらい審査に時間がかかる。そして、中央といいますか、民事局の方に上がっていって、さらに半年ぐらいかかってやっと大臣の許可がおりるというのが実態なんです。もう少し何とか早くやってもらえないかということで相談に見えるわけでございますが、それは私にお願いされてもどうしようもありませんということで帰っていただくわけでございますが、いずれにしても一年半程度かかるわけでございます。
 今、裁判が非常に遅いということを言われておりますが、裁判でも地方裁判所に提訴をして判決が出るまでにそんな一年半もかかるということは余りないわけでございまして、それを見てもいかに時間を要しているのかということがわかるわけですね。その間、その帰化申請をした人は、駐車違反とか交通違反をしただけでも許可されないんではないかということでびくびくしながら許可を待っているという実態があるわけでございます。
 私、そういう相談をたくさん受けるにつけ、何とかもっと早く迅速に帰化の許可といいますか審査ですね、できないものかと思うわけでございますが、大臣は今のこういう一年以上も帰化に時間を要しているという実態についてどういう感想をお持ちなのか、これを改善に取り組むつもりはないのか、お聞きしたいと思います。
○国務大臣(前田勲男君) 帰化の手続に時間がかかり過ぎる。実は私も議員生活を今日までしてまいりまして、そういう御陳情が幾つもあったことを経験をいたしておりまして、今日、一年あるいはそれ以上にかかっておるのが実態でございます。特に、東京、大阪でございますとか、いわば件数の多いところはなお、一年というような単位ではなくて、一年半とかというような時間がかかっておるということを実は実態としては把握をいたしております。これはもう当然法務省としても、まさに国民にやさしい政治という観点からも、行政サービスという観点からも、当然早く手続等行われることが望ましい、またそうすべく努力をいたしておるところでございます。
 ただ、帰化ということになりますと、特に法律的には我が国に帰化される方の戸籍が編製をされるという、これまた法律上極めて重いことが行われるわけでございまして、その戸籍に記載すべき身分関係等についてもやはり慎重な調査、責任ある調査をしなければならないという作業があることもこれまた事実でございまして、ただいずれにいたしましても、一年以上経過するということについては短縮をする努力をこれからもしていかなければならない、かように考えて鋭意取り組んでまいりたいと思っております。
○荒木清寛君 特に日本の場合には、過去の歴史的な経過から、平成五年度に許可された人を例にとりましても、従前のその方の国籍というのは韓国・朝鮮が七四%、中国が二二%ということで、ほとんど朝鮮半島、中国で占めているという、そういう事情もあるわけでございますから、やはり早くしてあげるのが親切というものではないか、行政サービスというものではないかというふうに思うわけでございますから、慎重ということはよくわかるわけでありますが、それにしても一年半もかかるような調査と作業はやっていないというふうに思うわけでございますので、その努力ということを結果が出るようにしていただきたいというふうに思います。
 以上で終わります。
○委員長(中西珠子君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。
   正午休憩
     ―――――・―――――
   午後一時開会
○委員長(中西珠子君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、検察及び裁判の運営等に関する調査を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○翫正敏君 自民党の党員でもあり、それから人権擁護の最高責任者である法務大臣でもあられる前田勲男大臣に、自民党の機関紙の自由新報に掲載されておりました記事の内容に絡んで質問をしたいと思います。
 事実関係の部分を読みますので、それについて事前に当局の方に事実関係の確認をお願いしておりますので、まずそれからしていただいて、しかる後に大臣の方から所見、所感をお聞かせ願いたい、そのように思います。
 ことしの九月二十日号の自民党の機関紙自由新報にこのような記載がございます。
  さて、七月二十一日、午後六時十分。北海道・
 胆振支庁、支笏湖に近い山中でトラックと乗用
 車の衝突事故があり、乗用車を運転していた人
 が亡くなった。同日午後十時六分に死亡したの
 は、創価学会が破門された日蓮正宗系の有力な
 住職、室蘭市・深妙寺の大橋信明さん。
  その直後、B四判の「号外」とかかれたビラ
 が、深妙寺の信徒のみならず、遠く札幌でもば
 らまかれた。そのビラには「六万登山前に遂に、
 天罰下る!日蓮正宗 室蘭(深妙寺)大橋住
 職交通事故死!」と大書されていた。さらに、
 事故原因を「スピードの出し過ぎのためガード
 レールに衝突し、一〇時二〇分ごろ死亡した」
 と書き、「お悔み申し上げます。皆様もお気をつ
 けください」。こういうふうに記載されているんですけれども、これは事実として警察当局の方からお答えいただきたいと思いますが、どんなふうに把握しておられますか。事故の……
○説明員(篠原渉君) お答えいたします。
 御質問の交通事故は、本年七月二十一日午後六時十分ごろ、北海道有珠群大滝村の左カーブの国道上で、普通乗用車が右側車線にはみ出し、対向して来ました普通貨物車と衝突いたしまして、普通乗用車を運転していた男性が亡くなった事故でございます。
○翫正敏君 その後のことについても説明してください。
 事故の原因については、亡くなった住職の方がスピードの出し過ぎでガードレールに衝突して亡くなったのかどうか。
○説明員(篠原渉君) 捜査状況につきましては、現在捜査中でありますので詳細につきましては答弁を差し控えますけれども、現場での捜査、それから車両の鑑定、それから関係者からの事情聴取など所要の捜査を行っているとの報告を受けておるところでございます。
○翫正敏君 いや、もう大分日がたっているんですから、おおよそどういうことで事故になったかということはわかるんじゃないですか。おおよそでいいですよ。
○説明員(篠原渉君) これにつきましては、まだ現在捜査中との報告を受けているところでございます。
○翫正敏君 じゃ、その交通事故の直後に、今ほど読みましたような天罰下るという内容のビラが近所やこのお寺の信徒の皆さんにばらまかれたという、そういう事実は警察として把握していますか。
○説明員(篠原渉君) 号外ビラがまかれたということにつきましては、報告を受けておるところでございます。
○翫正敏君 そのビラの内容についてはどのように報告を受けていますか。
○説明員(篠原渉君) 内容につきましては、今先生が指摘されたような内容というふうに報告を受けております。
○翫正敏君 では、今ほど読みました自由新報の九月二十日号の事実関係の記事の内容についてはおおよそ正確である、このように理解してよろしいですか。
○説明員(篠原渉君) それで結構だと思います。
○翫正敏君 それで、私は、亡くなった人、死者にも名誉があってそれを棄損することは許されないというふうに考えておりますが、それは後で少し聞くことにいたしまして、まず、いろんな事情聴取の中で、この亡くなっ食お寺の住職さんの家族の方、この家族の方やお寺の有力な責任者といいますか、そういうような方、責任役員というんでしょうか、そういう方とか、お寺側の有力な人と家族の人からいろんな事情を聴取されていると思いますが、どんなことを聴取されていますか。
○説明員(南雲明久君) 当該事案につきましては、名誉棄損に当たるかどうかということでございましょうけれども、名誉棄損の場合には親告罪でございます。現在まで関係者の方々から御指摘のような告訴、相談等があったという報告は受けておりません。
○翫正敏君 名誉棄損罪が親告罪であるということはわかっておりますが、要するに、交通事故があった、亡くなられた、その後に天罰下るという、死者を傷つける、むちうつこういう印刷物が信徒の皆さんやその周りに大量にばらまかれたという事実がある。そういうことについて、その亡くなられたお寺の関係者の人、住職さんとか総代さんとかそういう人に、どういうふうに思っておられるかとか、そういう事情についてどうだとか、そういうことを聞かれたでしょうと聞いているんです。どういうことを聞かれましたかと聞いているんです。
○説明員(南雲明久君) ただいま申し上げたとおり、この事案につきましては、親告罪であり、関係者からの告訴、相談等がない現在、北海道警察がどのような対応をしているかについての報告はありませんけれども、告訴、相談等があれば北海道警察において事案に応じて適切に対応するものと思っております。
○翫正敏君 いや、告訴、相談があればって、告訴があれば調べるのは当たり前のことですけれども、告訴があれば。そうじゃなくて、交通事故で亡くなられたわけですね。そういうことだけでも、どういうふうにしてとかということで家族の人とかに普通されるんじゃないですか、お話を聞かれるんじゃないですか。そのときに何か、どういうことを聞かれてどういう応対があったのかということを聞いておるわけで、名誉棄損についての告訴があっなかなかったかということを聞いておるんじゃないんですから、もう少し私が聞いていることにちゃんと正しく答えてください。告訴がなかったということはわかりましたから。
○説明員(篠原渉君) 交通事故につきましては、その家族等からも事情聴取はしておるとは思いますけれども、詳細につきましては報告を受けていないところでございます。
○翫正敏君 これからもそういうことについて聞こうという気はないんですか。例えば、その後にこういう天罰下るというようなビラが大量に近所にばらまかれているということ、これは私は、家族の人が死者に対する名誉の罪ということで告訴すれば、刑法二百二十条の死者の名誉棄損罪に当たるというふうに判断するわけですけれども、それは、告訴するかしないかはもちろん家族の方の判断ということになるわけですけれども、そのことはちょっとともかくとして、交通事故に遭った、そしてその後、そういうビラが大量にばらまかれたというようなことについて、警察に家族の人は何事もおっしゃっておらない、そういうことでいいんですか。何かおっしゃっているでしょう。
○説明員(篠原渉君) このビラがまかれたことにつきましてこの家族の方から何らかの話があったということにつきましては、現在報告を受けていないところでございます。
○翫正敏君 じゃ、大体事実関係がこういうことなんですけれども、大臣、人権を守る立場の責任者としての法務大臣ということで、こういう事実、交通事故があったことはまことにもちろんお気の毒なことですが、それで亡くなられた方に対して天罰が下るという内容のビラが信者の人やそれからその近所にばらまかれるということは、これは家族にとってはいたたまれない気持ちになるだろうと思うんですね。こんなことについて、自民党の機関紙としてこの後にいろいろコメントが書いてございますけれども、機関紙の立場としてのコメントが書いてございますが、それはともかくとして、大臣のお立場でどのようなふうに今お考えになっておられるか、お聞かせください。
○国務大臣(前田勲男君) 不幸にも事故に遣われ亡くなられました大橋信明住職の御家族、関係の皆さんのお気持ち、先生おっしゃるとおり複雑なものがあろうと推察はいたしております。
 亡くなられましたこの御住職の故人の名誉の問題ということにもなってくると思いますけれども、事務当局から御説明もいたしておりますが、御遺族等からの人権侵犯に対する親告があれば対応するというのが今、建前でございまして、現在のところその親告がなく、また親告罪である告訴等も今のところはない、こういうふうに思っております。
 なお、人権侵害かどうかというコメントにつきましては、大臣として個別案件のコメントということにもなりますので、まことに恐縮でございますが差し控えたいと思います。
○翫正敏君 この後に、自民党の機関紙自由新報のコメントが書いてあります。ちょっと読みますが、二人の人間の死に対して、こうして書いているだけでもベドが出そうな悪質さである。このビラを受け取った多くの人が、翌日になって新聞で大橋師の死を知ったのである。この素早さは何か、だれがやったのか。」、こんなようなふうに書いてございますが、へどが出そうな気持ちになるとあなたが所属している自民党の機関紙で書いてあるんですね。大体同じようなお考えじゃないかと、感じを持っておられるんじゃないかと私は推察するんですが、いかがでございますか。
○国務大臣(前田勲男君) この記事に対する私の気持ちでございますが、法務大臣として個人的な気持ちは申し上げることは差し控えたいと存じます。
○翫正敏君 それでは、ちょっと警察当局の方に尋ねておきます。
 親告罪なので告訴が必要であるということはわかっておりますが、死者の名誉を棄損したる罪というのは御案内のとおり刑法二百二十条に明記されておるわけでありますから、もしもこの家族の人から告訴があれば、これは私は当然捜査に乗り出すべきものであると、そういう事案であると考えますけれども、いかがでございますか。
○説明員(南雲明久君) おっしゃるとおり、今後告訴、相談等がありますれば、北海道警察におきまして事案に応じて適正に対応するものと承知しております。
○翫正敏君 じゃ、別のことを質問します。
 前田法務大臣にお伺いしたいんですが、きのう私、法務省の方に行きまして、そして担当者に面会を求めて陳情したわけでございます。そのときに初めてわかったことですが、外国人登録法に違反している者、そういう人に対しては国会議員の紹介とか同行があっても法務省としては面会をしたり陳情を受けたりはしないと、こういう方針であるということがきのう初めてわかったわけですけれども。
 まず、大臣にお聞きする前に、担当責任者としての局長さんからお答えいただきたいと思うんですけれども、このような法務省の方針というものが確立しているものなのかどうか、確立しているのならばそれはいつからどのような事情で確立したものなのか、こういうようなこと、それからその理由、なぜ外国人登録法に違反している者の面会、陳情を受け付けないのかという、この点についてお答えをいただきたいと思います。
○政府委員(塚田千裕君) 陳情につきましては、基本的にそれを受けるのは当然でございますけれども、外国人登録法関係につきましては従来よりさまざまな御意見がございまして、これに明白に違反をしておられる方が片やその陳情をなさりたいというお話がございまして、それはやはり法の精神から見ていかがなものかなということで、その陳情を受けるに当たってはそういう方には御遠慮いただくという制度が始まったと私は理解しております。
 それがいつごろ確立したかという時期につきましては、恐縮ですけれども、今ちょっとその資料はございません。
○翫正敏君 外国人登録法に違反している人というのは、これは外国人ですね、当然ですけれども。そういう理由ですか。
○政府委員(塚田千裕君) 外国人であるからということではなくて、外国人登録法の趣旨を否定されておる方が即陳情に来るというのは順番としていかがかなということで、そういう者がそのままでは陳情を受けるわけにはいかないという慣行を始めたと理解しております。
○翫正敏君 おかしいと思うんですね。
 要するに、これは具体的には指紋押捺の問題が大体陳情の内容なんですね、外国人登録法の問題、違反しているといいましても。それから、陳情をするこういう内容についても、指紋押捺制度を廃止してほしいと。今は、一昨年法律が変わりましたから、そのことについて後で聞きますが、ともかく、その以前からこういう陳情を受け付けないということは確立していたんだと思うんですけれども、法務省として。
 そうしますと、そういう法律に違反していながら陳情をするというのは理屈に合わないということを局長おっしゃいますが、この人たちがいろいろ運動をしたりして指紋押捺制度を廃止してくれということを求めたりした結果、法律の一部は改正になっているという事実があるんですね。あるんです、一昨年。そういうことから考えでみましても、指紋押捺を拒否している人が指紋押捺制度をやめてほしいという陳情をする、こういうことはある意味で当然の要求だったわけですね。当然の要求であるからこそ国会においてその法律の一部が改正されたわけですから。
 それから考えてみましても、外国人登録法に違反しているという理由だけによって陳情や面会を一切受け付けないという法務省の方針は間違っていると私は思うんですが、あなた自身はそれ局長として変えようと、この機会に変えようというようなお気持ちございませんか。
○政府委員(塚田千裕君) 外国人登録法がいろいろな経緯を経ていろいろな改正が行われてきたということは私もよく承知しております。それは単に外国人登録法に違反している人の声だけではなくて、もちろんいろいろな角度からこの法律を変えなければいけない、外国政府もございました、外交交渉の結果もございますし、それ以外の法律家の意見、違反者ではない方の意見も十分しんしゃくしてと申しますか、改正を行ってきたわけでございます。
 したがいまして、私自身は、外国人登録法の精神を正面から否定して違反しておられる方の陳情を受けなければいけないとは思いません。
 ただ、過去においては、実際問題としてそういう方だけが陳情に来られたのではなくていろいろな方が一緒におられた。そういう中には違反しておられた方もいたに違いないです、記録を見ると。御一緒にいて意見を伺ったということもあるように私は承知しております。
 したがいまして、実際上、そういう外国人登録法に対する御意見をくみ上げる、聞く、聞いていくという上で実務上の不都合があるかといえば、私はないと思っております。
○翫正敏君 大臣、きのうのことなんですが、そういうふうにして、違反していない人、している人、こういう人がいわゆる何名か一緒に陳情したい、申し入れをしたいということで私が紹介議員になって法務省の方へ行ったわけです。それについて法務省当局の方でメンバーチェックをした結果、この人とこの人は外国人登録法に違反している、だから会えない、この人は違反、苦していたけれども今はしていない、どんな理由だったかはともかく、そういうようなことを言って会えるとか、そういうふうな仕分けをしたわけです。このことはやっぱり私はおかしいと思うんです。改めるべきだと思うんです。
 外国人登録法に違反している人たちだけの声で指紋押捺制度の一部改正が行われたわけではないと局長はおっしゃいましたね。確かにそのとおりだと思います。国民の多くの声があったと思いますし、それから外交交渉もあったと思います。しかし、直接的に自分が指紋を押さなければならないという、そういうことが嫌だということで拒否をされた人の声、それが国民、マスコミなどを通じていろいろ世論を盛り上げたというそういう側面、これは否定できないですね。そのことを、従前、そういう人もまじっていたのを拒否したというようなことではなくて一緒に陳情を受けたこともあるというふうにおっしゃっておられるわけですから、この機会に明確に大臣の方から、そういうふうにして指紋押捺問題ということにある意味で的を絞って言えば、外国人登録法に違反しているということをもって面会、陳情は一切受け付けないというような、そういう方針は明確に撤回すると、こういうふうにきょうの機会にすべきだと私は思うんです。いかがですか。
○国務大臣(前田勲男君) 指紋押捺の関係の違反者の陳情を受け付けるべきかどうかという御質問だと思います。
 これはもちろん、今、入管局長からもお話を申し上げましたとおり、制度として法務省内で定着しているものではなくてそういう運用が行われておる、こう理解をいたしております。
 それぞれ、指紋押捺については御意見のある方も多数いらっしゃることは存じております。今後陳情においでになるとすれば、我が国のまず法律に従って守っていただいてから陳情に来ていただきたいというのが私の本意で、お願いでございます。
○翫正敏君 そういうのを改めてほしいというふうにお願いをしているわけなんですけれども。
 我が国の法律、他の一般的な法律についてさまざまな法律違反しているということはあり得ますね。その方については別に面会しないということはないわけですよ、法務省。他の省庁もそうですけれども、そんなことはないんですね。それで、この法律を変えてほしい、条例などを変えてほしい、運用も変えてほしいとか、さまざまな要求、要望を持って省庁に陳情される、申し入れされるということはあるわけですよ。
 そのときにどうして、外国人登録法というこの法律に反しているという人、つまりこれは具体的には外国人、定住の外国人なんですけれども、実際問題として。そういう人たちに対してのみそのような過酷な、法務省として窓口を閉ざすという方針をとられるのか私は理解に非常に苦しむので、これはそういう、何かそこに書いてあるものをさっきお読みになったような気がしますが、そういうような局長が上げてきたようなものを読むというようなことじゃなくて、もっと親身になって、その人たちがどうして自分たちがその法律を犯さざるを得なかったのか、外国人登録法を。つまり、法律を犯してまでもこの法改正をしてほしいという願いを持って行動されたわけです。そういう人たちの気持ちになった場合に、その人たちとは会わないんだという方針そのものは間違っている、今後は再検討してそういう人たちとも会うという、こういう方針に改めていただきたいということをお願いしているわけですから。もう一度、いかがですか。
○国務大臣(前田勲男君) 一般論、原則論でお答えして申しわけありませんが、私どもは、何よりもまず法務省としては、法律を守る、遵守するということに最大の使命を持っておる役所と、かように理解をいたしております。
 先ほども、たびたび申し上げますが、指紋押捺等についてのいろいろ権利の主張をいただくことは、これはもう当然自由でございますが、我が国にお入りになった外国人の方は、まず我が国の法律を守ってそれぞれの御主張をしていただくというのが、我が国の法制度のもとの筋であろうと考えておるところでございます。
○翫正敏君 一九九二年に外国人登録法が一部改正になりましたが、当局の方からお答えいただいて結構ですけれども、改正の内容を簡単に言えば、定住外国人の場合は指紋押捺をせずとも署名のみで登録を受け付ける、こういうふうになったと、簡単にこういう理解でよろしいですか。
○政府委員(塚田千裕君) 今、委員は定住外国人とおっしゃいましたが、もう少しそこを敷衍して申しますと、韓国・朝鮮系の方で従来いろいろ在留資格上複雑な制度があったわけでございますけれども、そういうものを全部ひっくるめて改正いたしまして、特別永住者という地位を認めたわけでございます。これらの方々につきましては、日本への定住性が非常に強いということで指紋押捺制度はやめて別の制度に変えたわけでございます。
○翫正敏君 それで、その法律が改正になりましたときに国会の方で附帯決議がなされて、そしてこの附帯決議において、「法改正により指紋押なつを必要としなくなった者の指紋原紙については、これを速やかに廃棄すること。また、それらの者の外国人登録原票の指紋部分については、今回の法改正の趣旨を踏まえ、今後の措置を速やかに検討すること。」と、こういう附帯決議がなされているところであります。
 きのう申し入れをしましてわかったことですけれども、法務省としては指紋のマイクロフィルムによる永久保存の方針をとっていると、こういうことを聞いたわけでありますけれども、これについては、要するに法務省が現在持っているところの指紋原紙、これは廃棄することとこの決議になっているから廃棄をする、それから地方自治体が保管しているところの外国人登録原票というものについては、これを全部法務省の方に提出させてこれをマイクロフィルムに撮って永久保存する、こういう非常に法の精神をねじ曲げる措置がとられようとしている、こういうふうにきのう承ったところでありますが、この方針は改めるべきであると私は強く主張したいんですけれども、当局の方としては、責任者の立場から、こういう自治体の方から原票というものを上げさせて、それをマイクロフィルム化するという方針は確立したものであると、今後こういう方針でやっていくと、こういうことを決めたのかどうか、その理由、これを説明してください。
○政府委員(塚田千裕君) 若干技術的になりますけれども、登録原票というのは、指紋だけではなくて当該外国人の個人的な記録、例えば生年月日だとか国籍だとか、あるいはどこで生まれた、日本へいつ来られだというような一連の事項が登録してあるわけでございます。その一隅に御当人であるということの確認の手段として指紋の欄があったというわけでございます。
 これは一枚の紙でございますので、何度か登録更新をしているうちにいっぱいになって、いつかは更新しなければいけないということで、一番最近の改正以前にも、この原票がいっぱいになると法務省の方へそれを送りまして保管している、それで市町村の窓口の方では新しい原票をつくるということはやっていたわけでございます。そういう事実がございました。
 その上で、参議院の附帯決議でございます先般の改正でございますが、指紋原紙は、指紋押捺制度がなくなるわけでございますから、これは廃棄したわけでございます。原票の方はそういうわけで、指紋だけではなくて当該外国人の日本におけるこれまでの長い在留の記録が全部載っているわけでございます。これは窓口には置かずに、いっぱいになったらば法務省の方へ集めますけれども、原票は廃棄する。しかし、いろいろな情報が入っておりますので、これはマイクロフィルム化して保存するということで、指紋だけを保存しているわけではございません。
○翫正敏君 つまり、法務省が保管している指紋原紙については廃棄するが、自治体が保管している原票はそれを集めてマイクロフィルム化するということは、そういう方針だという、そういうことですね。
 その場合にその理由として、自治体が持っている原票というものは指紋だけがあるわけではない、ほかのいろんな事実記載がされている、だからこれはなくするわけにいかないので残しておかなきゃならない、こういうことなんです。そういうことをおっしゃっているんですが、この外国人登録法の改正を求めた外国人の方及びそれを支持したり支援したりした私たちの立場からいいますと、指紋というものを押さなければならないということ、そしてそれが役所の方に保存されているということ、こういうことが我慢がならないということで法改正を求めたわけです。それが、十分な改正だったとは言えないとは思いますが、署名ということで受け付けることになった。
 そういう九二年の改正ということから考えてみまして、この附帯決議の趣旨、これから考えてみましても、自治体が保管しているところの外国人の登録原票をマイクロフィルム化するということがもしもどうしても必要不可欠なことであるといたしましても、指紋の部分はマイクロフィルム化しないということは極めて簡単にできることだと思います。これをしない理由はありますか。それを行わない理由がありますか。
○政府委員(塚田千裕君) この点は先般の改正のときにも何度も議論があったところでございます。
 大変技術的な問題でございまして、マイクロフィルムというのは二センチちょっと四方の中に撮影をするものでございますから、既に過去に記録されている原票もあるわけでございます。新しいのもあるわけでございますが、百万という単位の数のものを処理するのは非常に難しいということを御説明申し上げたわけでございます。
○翫正敏君 大臣、今の局長の答弁を聞いていて、百万人も人がいるから大変だということなんですが、私、単なる思いつきで言うんですけれども、指紋を押してあるところを墨でちょちょっと消せば、あっと言う間に消えるんですね。そういう方法によって他の部分は消えないわけです。他の部分の記載は残るわけです。
 そういう、マイクロフィルムで残すということ自身も私問題だと思うのですけれども、そのところはちょっとおいておいて、技術的なことになって膨大な量だからなんとかというようなことを局長が言われるから、その点について反論として申し上げるんですが、そういうふうに墨を塗って隠すとかということをすれば指紋の部分は全く残らないんですね。そういうふうにすれば、法務省が従来持っていた指紋原紙は速やかにこれを廃棄するという国会における附帯決議を十分に満足させるということにもなりますし、それから、そういうことを求めて例えばきのうなんか法務省の方に陳情、要望に来られた人たちのそういう気持ちにもかなうことになる。割と簡単にできることじゃないかというふうに思うんですが、大臣、聞いておられていかがですか。
○国務大臣(前田勲男君) 登録原簿上の記録、これをマイクロ化することは、いろいろ先生の御意見もございますが、当該在留外国人の方が過去にさかのぼってみずからの在留継続性を主張する、立証手段を必要とされる場合も個人的にはいろいろあるようでございまして、これらの立証手段としてマイクロ化しているということであろうということでございます。
 そこで、指紋の部分を先生おっしゃいます墨でちょちょっと消してというその辺を、実は事務当局は、百万以上で事務的に大変だ、いろいろ問題がある、こう申しておるところでございまして、事務的にそういう作業そのものが極めて煩雑になると、私は事務当局からの説明を受け、そう理解をいたしておるところでございますが、入管局長から重ねて説明をさせていただきます。
○政府委員(塚田千裕君) 先ほど、原票をマイクロフィルム化して保管するというところで私の説明が少し足らなかったかもしれませんので、つけ加えさせていただきます。
 マイクロフィルム化してなぜ保存するかと申しますと、毎年何千件という数に上るいろいろな関係者の問い合わせがあるわけでございます。死亡に伴う相続だとか、あるいは土地だとか不動産、その他財産関係を法律的な争いがあるので確認しなければいけない、そういうような照会がございまして、それに役立っているわけでございます。
 それで、過去の原票に残されております指紋というものは、過去の原票は依然として公文書としての公証力を持っております、その一部の指紋を私どもが墨でもってちょっちょっと消すというのは、公文書の投棄といいますか、公文書を傷める行為に当たるわけでございます。それは、公文書にそんなことをするのはいかがかなということで、一体としてそのまま保存すべきだ、保存するのが筋であろうということで保存しているわけでございます。
 したがいまして、繰り返しになりますが、墨で当該部分を消せば簡単に済むではないかという御指摘は、事実は決してそのようなことではないということで御理解いただきたいと存じます。
○翫正敏君 墨で消すという方法がなぜいけないのかということについて二点おっしゃったと思うんです。一つは、事務が煩雑である、百万で大変であるということと、もう一つは、公文書を傷つけることになるという二つの理由を挙げられたんですけれども。
 まず、事務が煩雑であるということは、それはマイクロフィルム化するということ自身が大変な作業だと思いますから、それに伴うものに消すなら消すということはそう大変なことではない。マイクロフィルム化することは大変なことだと思いますよ。しかし、それはするんですから、されるわけですから、そのときにすることで簡単なことだと、これはそう思います。
 それから、公文書を汚すことになるからいけない、こういうふうにおっしゃいますが、指紋については、今後指紋をとらないということにこの人たちはなった、そういう人たちの問題を言っているんですよ。一般的な全外国人のことを言っているのではなくて、九二年の改正によって指紋押捺をせずに署名のみで登録を受け付けることになった人の指紋は残しておく必要がないんです。必要がないから法務省の指紋原紙について破棄をするということになって、それを行うわけでしょう。
 ということは、そのかわりにこれをマイクロフィルムにして持つということはそもそもおかしいわけですから、その指紋を消すという行動、行為が公文書を傷めることになるなどというのは、私はそれはこじつけだと思うんです。
 大臣、そう思いませんか。事務的に煩雑かどうかということについての問題は一応議論の余地はあるところだと思いますが、いかがですか。
○国務大臣(前田勲男君) 実はマイクロフィルムは、これは私の知識から申し上げまして、かなりマイクロフィルム化もう既にされておるわけです。それで、先生御承知のとおり、私も見たことがございますが、マイクロフィルムというのは本当に小さな、ICのチップのような、この小さなマイクロフィルムにおさめられている指紋というのは、恐らく虫眼鏡で見て針でつっつくような作業になろうかという推測を私はいたしておるところでございまして、マイクロフィルムのあの細かいチップの中の指紋部分をどう消すかというのは、これは技術的な確かに煩雑なものであると。
○翫正敏君 マイクロフィルムに撮る前のものを消せばいいんですよ。
○国務大臣(前田勲男君) でも、かなりもう既にマイクロ化しちゃっておりますから、しかも古いことでございますから、ということでひとつ御理解を賜りたいと思います。
○翫正敏君 全然納得できないけれども、時間が来ましたから終わります。
○紀平悌子君 私は、五年前に法務委員会に所属をさせていただきましてからずっと法務委員会におります。近ごろは主になったんじゃないかと口の悪い方がおっしゃいますが、一向に主になれずにおります。
 それで、ただ、前にお聞きしたことで再度伺ってまいりたいという方針から、お話が続くようですけれども、きょうは出入国管理問題を質問させていただきたいと思います。
 八九年の十二月だったと思いますけれども、出入国管理法の大幅な改正を法務省として御提案になって、それが通りまして、いろいろな附帯決議はつきましたけれども、現在それが施行されているわけでございます。
 その当時から実は私は、世界に開かれた法務行政、それから外国人労働者の人権の問題、あるいは間違ってというか、あるいは知らないで雇っておしまいになった雇い主の方々に対する罰則のきつさ、こういうようなことを踏まえましてこれに反対の投票をいたしました。だからしつこく聞くわけではないのですが、今、外国人労働者の問題に関しては、秩序立った流入であれば是認するという基本方針、これをおとりになっていらっしゃいますね。ところが、アジア諸国の経済格差あるいは香港等の国際情勢を見ますと、今後日本に労働者として入国を望む者の数はふえていくだろうというふうに考えられます。
 ここで問題になりますのは、いわゆる正規に入国はしているけれども不法就労をしている外国人労働者の現状ですけれども、その現況と対策について、これは簡潔にで結構でございます、もし数値等後で十分時間のかかり過ぎるのは文書でいただきたいと思いますので、これを法務当局にお教えいただきたいと思います。
 時間が短うございますので、続けて質問申し上げておきます。
 今度は警察庁の方なんですが、外国人の犯罪が最近増加しているように承っております。いわゆる青龍刀を用いた刃傷さだとか、売春あるいは銃砲刀剣の密売など新しいタイプの犯罪類型となっていると聞きますけれども、平成五年、六年度の外国人犯罪の特質、国籍がもしわかれば国籍と、その対応をお聞きしたいと思います。勝手でございますが、どうぞ続けての御答弁をお願いいたします。
○政府委員(塚田千裕君) 不法就労者の状況について簡潔にお答え申し上げます。
 私どもの電算統計によりますと、ことしの五月一日現在で約二十九万四千人が不法残留しておりまして、大部分が不法就労者と推定されます。
 不法就労対策、各般の努力を行っておるところでございますが、大きく分けまして、入国審査、入国事前審査、在留審査、こういうような審査を厳格にするということ、それとブローカー介在案件を中心に悪質なものの摘発活動を一層強化する、それと情報交換や合同摘発など関係機関との連携の強化あるいは外務省との連携で査証の発給その他を厳格に行う、あるいは海外に対する広報活動というようなもの、一運の措置をとっておるところでございます。
○説明員(井口憲一君) いわゆる来日外国人による犯罪、御指摘のとおり大変増加いたしております。
 昨年の数字を一つだけ申し上げますと、いわゆる刑法犯で検挙された人員で申しますと七千二百七十六人ということで、これは申すまでもなく過去最高でございます。また平成四年、前年と比べますと千三百十五人、約二割強、二二%増加しているという状況でございます。その後、本年に入りまして上半期の数字でございますが、これが三千六百四十人、これも昨年の上半期と比較しまして約一〇%増加しているという状況でございます。
 この上半期の三千六百四十人の内訳としての国籍別の数字を見てみますと、一番多いのが中国人で千四百六十六、以下、韓国、ペルー、フィリピン、イラン、ブラジル、マレーシア、こういったような順番でございます。
 平成五年、六年を通じまして特徴的な傾向としまして、殺人あるいは強盗といったいわゆる凶悪犯、これが多発しているということ。それから二番目に、麻薬ですとか覚せい割あるいはヘロイン、コカインといったような薬物犯罪が増加している。それから、集団的な暴力すりですとかあるいは広域窃盗グループといったような、言ってみればもともと日本に犯罪を目的として来るようなプロのグループ、こういったグループによる犯罪も目立っております。あるいはまた集団密航事件、これも後を絶ちません。あるいは合法滞在を装うための公文書の偽造、こうした犯罪も多発しております。
 先ほど先生御指摘の青龍刀の事件と申しますのは、本年に入りまして新宿歌舞伎町地区で発生しました四件の殺人事件、これは六名が死亡しておりますけれども、このうちの一件が、まだ凶器は発見されておりませんけれども、どうも青龍刀のようなもので殺害されたということがございましたが、そのことだと思います。
 以上、簡単でございますが。
○紀平悌子君 御対応をお願いいたします。
○説明員(井口憲一君) 警察としましては、こうした集団密航あるいは旅券の偽造といったような不法滞在者を呼び込むと申しますか、その増加を助長するような犯罪、これを徹底的に取り締まると同時に、凶悪犯罪あるいは先ほど申しました薬物犯罪、国際的なプロの集団による日本の治安にとりまして直接といいますか、根本的に脅かすこうした犯罪について確実に検挙していきたいというふうに考えております。
 いろいろ困難はございますが、例えば通訳体制の整備等々につきまして力を入れてまいりたいというふうに考えております。
○紀平悌子君 次は、政治改革についてお伺いしたいのですが、腐敗防止法案、これは公職選挙法改正でございますが、それから政党法人格付与法案が、衆議院小選挙区制の区割り法案とともに、新たな政治改革三法ということで十一月二日に衆議院を通過いたしました。参議院で審議をしていくわけでございますが、今回のこの括弧つき政治改革につきまして、この法の施行を含めて大臣の御所見をまず承りたいと思うんです。
 政治改革というのは、申し上げるまでもなく議会制民主主義、議会制民主政治の根幹を正すということ、国民有権者の政治への信頼を取り戻す、これはもう歴代の大臣の施政方針演説の冒頭にも述べられてきた御主張だと思います。
 最近、私が非常に気になりますのは、片一方で政治改革論議というかそういうものが進みます一方で、各種選挙が各地域で行われております。その状況をつぶさにではございませんが、ある程度私なりに調べてまいりますと、村とか非常に身近なところはちょっと違いますけれども、投票率の低下の傾向がずっとございます。都市部が特にそれが強いと思います。
 去る九月十一日、参議院の愛知県の補選がございました。このときの投票率は四二・八七%、それから十一月六日施行の福岡市長選挙では三一・六七%という低率でございました。女性の投票率が男性より常にこれは昭和三十八年から地方選挙では上回って、昭和四十三年、四十四年ですべての選挙で女性の投票率の方が男性を上回っているという傾向がございまして、ですから近ごろも、今申し上げた低投票率の中でも男性より一%から三%女性の投票率は上回っております。これがわずかに女性はまじめに義務として投票に行くのかなというふうに思わせる点でございますけれども。
 参議院の第十六回の、前回の選挙区選挙の平均が五〇・七二%でございます。それから、平成三年四月施行の統一地方選挙の指定都市の市長選の平均が六五・七五%でございます。これを考えますと、このところ極めて低調だと言ってももういいんじゃないだろうかという数値を示しております。
 この原因の最たるものは何にあるんでしょうか。私の調べました範囲で申し上げますと、戦後日本はいろいろ政治的な努力を各議員とそして政府がなされまして非常に経済的な発展は遂げ、それなりに国民も幸せなるもの、まだ完全ではございませんでも、それを得てきているわけでございますが、汚職の種が尽きません。それで、戦後送中で辞任をやむなくされました大臣が全部で七十三人おられます。そのうちの大半はお体のぐあいが悪くて、あるいはお亡くなりになるというようなことが一番多いんですけれども、七十三人中の九人が汚職関係でやめておられるんです。その次に多いのが憲法発言関係なんですね。こういうふうなのをずっと国民が味わってきたわけですね。そのたびに事件があり、事件がなければやめるわけはありませんので、そういうことが国民の意識の中に非常にしみ込んできてしまっているということがあります。
 つい先ごろ、大変個人名を出して恐縮ですけれども、藤波さんの第一審無罪判決がございました。このときの新聞その他への国民の怒りの声というのは非常に大きかった。でも、そのことよりももっと大きかったのが無関心であるということです。そんなことは当たり前よ、よくあることだ、またそうなんでしょうというふうな感じの方が私には怖かったというふうに思います。ですから、法の裁きを云々申し上げる気持ちは私にはございませんけれども、少なくとも国民の意識がいわゆる選挙離れ、政治離れ、国会離れ、そういうふうになっていることは事実ではないかと思うんです。
 金のかからない選挙になるということがもう一つの改革の理由。小選挙区制というものにするとすべて、定数もそれから腐敗選挙も片づくと、こういう話だったんですが、これはやってみなければわかりません。政策による選挙にぜひなってほしいというふうに祈ってはおりますけれども、これもやってみなければわからないということでございます。
 私は反対の立場をとったわけなんですけれども、国民有権者の期待というものは、津々浦々までやはり金権腐敗の選挙と政治の根絶ということにあるわけなんですね。やはり、幾らいい政策でも基本的に政治の根っこが金権体質であれば、これは本当に正しい国とは言えないというふうに思っております。この投票率の低下というのは、主権者が政治への怒りというものを通り越してむしろ無関心になりつつあるということで、このことは本当に怖いことだというふうに、長年政治啓発運動をしてきておりますのでそれを感じます。
 統一地方選挙や参議院選挙、衆議院選挙も順次あると思いますけれども、この今回の公職選挙法改正案、具体的に一つだけ、小さいかもしれませんが取り上げて申し上げますと、今回の公職選挙法改正案の中では連座制の範囲を広げておりますね。秘書にまで拡大する等々ございますし、一歩前進ではあります。ですけれども、実際の今度は違反が起こった後でございますが、百日裁判規定というものが今は有名無実であるということを考えますと、今回の拡大して厳しくしたということが実効性が果たしてあるのかどうかというふうに懸念を持つわけなんです。
 そこで、公職選挙法改正案が通った際、まだ通っておりません。通った際、施行後の法務行政の御姿勢と、それから改革法の法的効果というものがどんなふうにあるのかということの御所見を大臣にお伺いしたいと思います。ぜひ大臣にお伺いしたいと思います。
 また、自治省お願いしてございますが、選挙執行をつかさどる自治省ですから、この法の施行にあわせて今申し上げたような観点での啓発活動をどのようになさっていただけますか、具体的にお聞かせいただきたいと思います。もう御成案はあると思うんですね。よろしくお願いします。
○国務大臣(前田勲男君) 紀平委員からたくさんの御質問をいただきまして、順にお答えを申し上げます。
 まず、公選法改正案が成立をいたしました暁には検察当局はどういう体制をとるか。これは検察といたしましては、この事犯について従来から、厳正、公正、不偏不党の立場で選挙違反事件の捜査処理を行ってまいりました。今後とも、この選挙関連事案につきましては、法と証拠にのっとり厳正にこれからも対処していかなければならない、かように考えておるところでございます。
 また、ちょっと順番がおかしくなりますが、法的効果につきましては、連座制の強化等を踏まえ、その効果が発揮されるものと思っております。ただ、罰則や摘発ということをもって政治改革をするというのは、これは主客逆転でございまして、政治家みずからが姿勢を正していくということが何よりも肝要であろうと思っております。
 そこで、るる各般の地方選挙を含め参議院選挙、国政選挙の投票率の低下について御指摘がございましたが、まさに先生御指摘のとおりの結果になっております。あるマスコミの言葉をかりれば、まさに政治離れというような言葉もございます。この投票率の低下そのものは、いろいろ条件、環境によってもちろん変わってくることもございます、身近な選択をすることがその選挙の争点として争われているかどうかとか、いろいろ関連はございますが、先生御指摘の中にも、汚職等政治腐敗も政治離れの原因の一つではなかろうか、そうであろう、こういう御指摘がございましたが、私も同感でございます。
 こうした政治に対する信頼を国民の中からなくしていくことは、まさに政治に関する無関心層を大量に創出しておるということでございまして、まさに民主政治、議会制民主主義のある意味では危機的な状況になってくるのではないかということを懸念をいたすわけでございまして、またそれゆえに現在政治改革が進められておると、かように理解をいたしておるところでございます。
 政策本位となるこの選挙法の改正でございますが、腐敗防止に関しまして検察当局としてはこれからも厳正、公平、不偏不党の立場で厳正に取り組んでまいるということも重ねて申し上げて、御答弁にかえたいと思います。
○説明員(山本信一郎君) 政治改革開運の啓発についてお答えを申し上げます。
 既にこの春に成立をいたしました政治改革関連諸法につきましては、新聞広告ですとかあるいはテレビスポットですとかパンフレットといったようなメディアを使いまして、これまで周知啓発活動を既に展開をいたしてきておるところでございます。
 今回、区割り法案を成立させていただきました後には、あわせまして腐敗防止関連法等々の内容につきまして、国民の皆さん一人一人にさらによく理解をしていただけますように、地方公共団体と一体となりまして、例えばチラシでございますとかポスター、テレビこフシオスポットあるいは車内づり広告といったような手段を、いろいろ工夫を凝らしまして、全力を挙げて啓発活動に取り組んでまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○紀平悌子君 終わりますけれども、せっかく来ていただいたのに申しわけございませんでした。痴呆老人対策の問題と、それから大臣にはいじめの問題、これは歴代の大臣に伺っておりますので、いじめの問題の対策について伺いたかったんですが、これでやめます。
○安恒良一君 時間が二十分しかありませんので、私はこの犯罪白書の資料と原本は十分読んでおりますから数字的な説明は要りません。政策的なことを主として聞きたいので大臣に答えていただきたい。
 今も何人かの先生から質問がありましたが、私はこの白書を読みまして、外国人犯罪がふえているということを大変心配しています。
 そこで、最近の外国人の犯罪の特徴は、今さっき御答弁があったように、国籍の多様化、それから地方への拡散、それから凶悪化、三つが大きな特徴ではないかとこれを読んで思うんですが、間違いありませんか。
○国務大臣(前田勲男君) 御指摘のとおりでございます。
○安恒良一君 そこで、警察庁がおまとめになったことしの一−六の外国人犯罪の刑法犯は一〇%ふえている。そして、検挙者全体に占める来日外人の割合は二・五%にすぎませんが、これ人口比で見ますと○・九%、ですから犯罪発生率が非常に高いのであります。
 そこで、これが諸外国と比べてみますと、人口に占める外国人の比率が高いドイツ、フランス、スウェーデン、これでは外国人が二〇%から三〇%に達しています。そのかわり、これは外国人の比率が五ないし八%ありますから、犯罪割合。これらの国では深刻な社会問題になっているんです。そこで、日本の場合にも、ますます国際化をしてこれから外国の人の往来が激しくなりますので、この対策を基本的に考えなきゃならぬところへ来ている。
 そこで、根本的な対策についてちょっとお聞きしたいんですが、これも私の方から申し上げながら大臣のお考えをお聞きしたいんですが、日本の社会の犯罪防止システムというのはいわゆる国際化時代向きにできてないんではないかと、これが私の質問の一つです。
 それから、犯罪の捜査や犯罪者の処罰の仕組みはもともと日本人を想定してつくられている。また、地域社会の持つ犯罪防止抑止力も外国の人には及ぶような制度に今まではなってなかったんじゃないかと、これが一つ。
 そこで、根本的な対策として私たちは早急にこれらのシステムを、いわゆる国際化の規格に先進国の経験等を学びながら再編成することが私は外国人犯罪問題の根本ではないかと思います。
 以上の点について、法務大臣として具体的にこういうふうにこれは変えていかなきゃならぬとか、いろいろ所見があると思いますからお聞かせください。
○国務大臣(前田勲男君) それじゃ、大枠について私からお答え申し上げ、補足は刑事局長からさせていただきます。
 先生から、今日の日本の司法体制は国際化に対応できてないのではないか、おくれているのではないか、また従来からそうではないかと、こういう御指摘がございましたが、まさにこの国際化そのものもここ数年の極めて急激な変化でございまして、現実に不法就労者等の数もごらんいただいても、まさに御指摘の点は私どもも深刻に受けとめるところでございます。
 いずれにいたしましても、これからの時代、来日外国人の増加というのは私はもう避けられない現実であろうと、まずそう思っております。
 そうした観点からしますと、従来からのやり方でございますが、水際における入管のチェックでございますとか取り締まり、あるいは海上保安庁、警察関連の関係機関の連絡を密にしてまず水際でのチェックをするということを従来どおりこれは続けていくことは当然であろうと思います。
 それと同時に、少なくとも、発生した外国人犯罪、外国人に限りませんが、犯罪を迅速、適正に捜査をして裁判にかける。そして、日本で罪を犯せば必ずとらまって法の従うところによって処罰されるんだということをとにかく来日外国人に明確に私はさせることが必要であろうと思っております。
 そうした観点から、取り締まりの強化ということがまず私どもの頭の中にございますが、先生御指摘のこの国際化の対応の二番目に、処罰についても日本人を想定しておるのではないか。これも全く先生の御指摘のとおりでございまして、特に捜査から矯正に至る間、あるいは保護に至る間、外国人ということになりますと、まず我々今身にしみて困っておりますのは言語の問題がございまして、外国人のいわば捜査から外国人の人権を守る過程までこの言語ということが極めてネックになっておることも事実でございまして、来年度予算では東京、大阪に通訳センターなる、仮称でございますが、等々も今計画をいたしておるところでございます。
 それから、地域社会への抑止力、これも特に保護関係は地域社会の御協力もいただいておりますが、これもこれからの大事な課題であろうと思っております。
 根本的な国際情勢下の中での対応を検討すべきという先生の御指摘は、今後十二分に、これらも踏まえながら、これは従来からの連続でございますが、新たな観点も頭の中にいろいろ描きながら取り組んでまいらなければならない、かように思っております。
○安恒良一君 当面の対策として最も効果的な対策は今大臣がおっしゃったとおりで、特に外国人事件では問題は言葉ですから、そういうものも積極的に取り組もうともおっしやいましたけれども、それはそれで結構ですが、私はやっぱりこの外国人問題は、ひとつ国全体として考えなきゃならぬのは、外国人を地域社会で孤立させないということも非常に重要なことじゃないか。相互の不安心理が犯罪を生んでいるんじゃないかということも思いますし、また、このごろは大分あれしてきましたけれども、日本人はずっと前から鎖国の精神で何となく外人は怖い、こういう不安感やもしくはいわれない偏見を持っている人も多いわけですね。ですから、この排除意識、こういうものを、これは何も法務省だけの問題じゃありませんが、国全体としてやっぱり戒めていくということと同時に、私は、政府が発展途上国に援助に行く、かなりの大きなコストをかけています。
 このことは結構なことだと思いますが、それと同時に、やはり今大臣が当面の対策としていろいろの、特に言葉の問題等についてもやる。いろいろこれお金がかかることがあるんですよ、これは率直に言って。ですから、こういうことにもやっぱり予算の中で、国際化への対応のおくれと、それをやっぱり取り戻すということのために積極的にお金をかけてやっていくというお考えがありますか。あるならある、ないならないで、それだけで結構です。
○国務大臣(前田勲男君) 十分、予算の獲得に努力をしてまいりたいと思っておりますし、語学の方はなかなか金だけでもうすぐ、人材という問題もございまして、その辺は苦労をいたしておるところでございます。
○安恒良一君 次は、相次ぐ一般人への発砲事件、これは非常に重大な問題ですから。
 実は、一般人を対象とした銃器使用犯罪が非常に最近ふえています。ことしの一月から最近まで、NHKの調査によりますと二十九都道府県で事件が起きた、そして百九十七人が殺傷を受けた。これは殺人だけでなく殺傷ですね。その中で、一般人が六十九名もいると報道しました。ちなみに最近二年間の統計を見ますと、一般人は二十六、二十八ということで、かなりことしの一月からふえているんですが、これも数字は結構ですが、こういう傾向にあるということについては、これは法務省ですか、警察庁ですか、間違いありませんか。数字は細かいのはいいです。
○説明員(小野次郎君) お答え申し上げます。
 私どもで持っております数字で申し上げますと、死者数につきましては、一昨年が二十一人、平成五年が三十人、ことしにつきましては十月末の数字でございますが、二十八人の方が銃器発砲に伴って亡くなったというふうに承知しております。
○安恒良一君 そこで問題は、いわゆる銃というものが手近にあればつい使いたいという、一般論として人間は誘惑に駆られるわけです。ですから日本の国是としましては、いわゆる日本人はずっと銃を遠ざけてきました。それから、嫌いだ、発砲に驚く、これはアメリカの地域社会とは全く違いますね。ですから、これを新聞等で見ますと、世界にまれな安全という文化を形成してきた、こういうふうに新聞は報道しているわけですね。ところが、その安全な社会が最近私は揺れ出したんじゃないかと、一般人に対してまで。というのは、今まで銃使用の犯罪というのは、やや暴力団同士の抗争とかそういうのが多かったように思いますけれども。
 そこで、私は、日本人が個人個人が武器を持つということについて慎重だったのは、これは政治として為政者側が武器を持つことは許さない、そのかわり国が責任を持って安全を保障する、こういうことがあったからこそそれが定着をして、新聞によると安全という文化の形成ができたと思いますが、それがどうも最近は私は揺らいできたんじゃないかと思います。
 ですから、後のお答えで返ってくると思いますが、平成四年の暴力団対策法の施行や昨年の銃刀法の改正による取り締まり強化でやっていきたいというふうに言われていますが、私は、それだけで十分なのかどうなのか。すなわち、一般人を対象とした銃器使用犯罪の防止策を今後どうするのか。それから二つ目には、いわゆる短銃の摘発、捜査力の強化について具体的にどうするのか。これを、今後の方針を明示していただかないと、せっかく非常に日本という国は今申したよい社会慣行でやってきたことが、これを放置しておくと崩れかねないということの心配がありますが、これは大臣それから警察当局両方から、具体的にどういうふうに今後していこうとしているのか、お考えをお聞かせください。
○国務大臣(前田勲男君) 安恒先生御指摘のとおり、大変この銃の発砲事件がこのところございまして、特にことし九月までの事例を見ますと、これ私、新聞で読んだんですが、三割がその犠牲者が一般市民でございまして、今までにない新たな事態を、深刻な事態を迎えておるところでございます。
 何よりも、この防止に対しては摘発にかかっておるということがまず第一でございまして、この摘発につきましても、従来の摘発に加え、特にまた海外捜査当局と連携を密にしていくということでございますとか、これは警察の方からお答えがあろうと思いますが、都道府県の壁を乗り越えて、特に銃関係の専門の捜査の方に一致できる体制づくりなどをしていただいて取り組んでいただくことが大事であろうと思っております。
 また、国民の間に銃が少し流れているのではないか、これも御指摘のとおり、暴対法の改正によりまして、暴力団からむしろ暴力団に近い一般市民の方に流れているというふうな傾向もマスコミ等で私も読んでおりまして、こうした観点も踏まえますと、やはりこの銃砲等の所持に対する禁止の国民に対する遵法精神の啓発と申しますか、こういうものも必要であろうという時期にもう既に来ておるというふうに考えておるところでございます。
 いずれにいたしましても、今日、この世相の中で極めて深刻な問題と受けとめ、この対策について関係各省庁挙げて全力で取り組んでまいりたい、かように思っております。
○説明員(小野次郎君) 最近、けん銃の発砲事件が多発しておりまして、特にその銃口が市民生活、企業活動、言論活動等に直接向けられていることにつきましては、市民生活に大きな不安を与えており、また治安上も極めて重大な事態であると認識いたしております。さらに、そうしたけん銃の不法所持の犯人というか、不法所持をしている人の三〇%近くが暴力団以外の者になっている、そういう事態についても深刻に受けとめております。
 こうした現状を踏まえまして警察としては、まずもって、けん銃拡散の元凶であります暴力団等の武器庫の壊滅を重点とした取り締まりを強力に推進して、国内に潜在しているけん銃の摘発に努めていくことはもとよりでありますが、それとともに、我が国で押収されているこうしたけん銃のうち、その大半が外国から密輸入されたものであります。そうしたことを考慮に入れますと、これを水際で徹底的に封圧しなければならないと考えております。そのため、税関当局等とも一体となった密輸阻止体制を確立して海外からのけん銃流入阻止に全力を挙げてまいりたいと考えております。
 その中で、外国捜査機関との情報交換を緊密に行うことによって効果的な摘発を進めるとともに、また漁業関係者の方々、その他民間の方々の御協力も得るように努力してまいりたいと考えております。
 なお、今後の課題としては、関係国に対する適正な銃器管理に関する我が国からの働きかけの方法等につきまして検討いたしているところでございます。
 このほか、社会に潜在するけん銃を一丁でも多く回収するために、改正銃刀法の中にございます、自首の減免規定の周知に努めるとともに、長い間我々日本人が持っていたはずでありますけん銃に対する拒否感と申しますか、抵抗感というようなものがいささかなりとも低下することがないよう、いわゆるノーモア・ガン・キャンペーンなどの広報啓発活動を今後さらに一層強化してまいりたいと考えております。
○安恒良一君 もう時間がありませんから、一言だけ大臣にお答え願いたい。
 というのは、やはり外国人犯罪の中で入管法違反というのが非常に多いんですね。そこで、ドイツが九三年の七月に基本法を改正しておりますが、それは、やはりドイツも非常にいわゆる難民なり労働者が流入するということで、ポーランドとの間に二国間協定を結んで年間割り当て数を決めて、そして季節労働者を受け入れているわけです。ですから私は、もう前から、無条件ですべての労働者を受け入れるなど、そんな開国論を言っているわけじゃありませんが、やはり二国間協定をこの際きちっと結ぶということの方向を法務省も前向きにお取り組みにならないと、これは労働省、外務省との関係もありますが、私は、ますますいわゆる不法残留者とか入国管理法違反というのが今後ふえる。今ちょっと景気が後退して一時的に減っていますが、またふえてくる。
 ですから私は、もう一遍、もうここまで来たら、警察や法務省は治安ということに問題を置くだけではなくして、関係省庁との間で十分にそこらのところを、いろんないい事例がたくさん先進国にあるわけですから、お考えをくださいということを申し上げて、終わりたいと思いますが、大臣どうですか。
○国務大臣(前田勲男君) 外国人労働者の受け入れ、特に二国間交渉、早く言えば単純労働者云々の問題にもなってくるわけでございますが、これにつきましては、我が国の経済、社会に及ぼす影響というものも非常にこれまた大きいものがあろうと思いまして、二国間協定による単純労働者まで含めた受け入れの是非ということについては、労働市場の問題あるいは社会的負担の問題等々、なお国民の合意というもの、コンセンサスがつくられていくかなり時間がかかるのではないかという気もいたしておりますが、せっかく先生の御意見でございますので、外務、労働とも先生のお話は十二分に伝えたいと、かように思います。
○深田肇君 きょうの最後の時間が決まっておるようでございますから、それを自覚してなるべく早く上げたいと思います。それに、一番最初に申し上げておきたいことは、実は私どもの都合で順番を変えてもらって済みません。一番最後にしてもらいましたことをお礼申し上げておきたいと存じます。
 法務委員会ではもう何回も私の方でお話し申し上げたり、同時に、法務省を初めとする関係のところからその対応についての御返事をいただいている問題で大変恐縮でございますけれども、今回も、大臣新たにかわられたわけでございますから、拘禁生活三十一年、刑確定後十七年を数える埼玉県の石川一雄さんの再審請求と仮出獄、仮釈放についてのその後の世論を中心に御報告しながら、法務大臣の人道上の見地からの温かい配慮ある御所見などを賜りたく発言をいたしたいと思います。
 以上、前置きを申し上げた上で、少し具体的に入りたいと思いますが、お互いの理解をしておるところでありますが、村山政権ができまして、村山総理は「人にやさしい政治」、「安心できる政治」をやりたい、憲法を尊重する政治をやりたいと、こういうわけでありますから、その意味では政府当局、積極的にこれから人権の政府としての仕事をしてもらえるものだというふうに確信をした立場から、本日のところは、石川一雄さんの問題に関連いたしますけれども、人権問題に絞ってちょっとお話をさせてもらいたいと思います。
 しかも、人権問題の中で、特に日本国有の差別と考えられている部落差別の実態について、現在、人権擁護局を中心としてどのように実際を把握しておるのか、同時にまた、どのように対応しているのかなどについてお話をさせてもらいたいと思っている次第でございます。
 そんなことを質問しようかなとお話し申し上げていたら、御丁寧に「人権の擁護」というパンフレットをお届けいただきました。皆さんお持ちのようですね。これを拝見をしてもう一度、一遍どこかの委員会でお話し申し上げたことがあるんでありますけれども、九ページで初めて同和問題という活字が出ますね。この中にとにかく部落差別という言葉は一言もない。同和問題という言葉では、これも九ページ、気になりますよ。こんなことを今答弁もらう時間ありませんから、私が一方的にしゃべっちゃいますから。
 人権問題や同和問題を初めとする、なぜ人権問題や同和問題と分けますか。質問したい、討論したいところでありますが、時間がありませんから、後でまた人権擁護局に行きまして直接やりましょう。私が行くことは拒否されないでしょうから。お話を、先ほどのようなことにならぬだろうからね、というふうに話をしておきたい。
 そこで、十九ページに参りますと、「最近の主な人権問題」というきれいなパンフレットがあるんです。これは順番まで嫌みを言うつもりはありませんが、六つ書いてあるんです。一つはいじめ、体罰の問題、これもあるでしょう。二番目が近隣紛争、ピアノの音で困るよという話だね。こういう紛争問題。三番目が外国人問題、これも大変大事なこと。四番目、やっと、あえて言う、四番目、同和問題。五番目、これは全部言っておかぬと失礼になりますから、女性問題。女性問題という表現も余りよくないけれども、女性問題。それからその次、障害者問題。これで終わり。こうなるわけですね。だから、項目のことを言っているんじゃなくて、同和問題がここで初めて出てきます。
 さあ、出てきた上で、同和問題の文章を読む時間がありませんから、確かに明治四年における解放令のことも書いておられるんでありますが、私が一番気になるのは、これはもう私が落としてはいかぬと思って何遍も何遍も読みましたが、同和対策の審議会があって、そこへ時の政府が諮問をして、そして我々の言うところの同対審の答申をいただいているんだが、その活字は一言も出てこない。このパンフレットにはない。同対審は、我々部落解放・反差別闘争という観点からすれば、一番よりどころにしているんです。それがここに全く活字がない。なぜ外したか。これまた御答弁いただく時間もないから、なぜ外したかと怒りを込めて質問したことだけ言っておけばいいんであって、後、また人権擁護局に行ってやりとりしたいと思いますが、外れているんですね。
 いや、それはそうじゃないんだよと、そういう答申があって、その後、昭和で書いておられますが、一九六九年、昭和四十四年にはこういう特別措置法をつくったんだよというようなことをおっしゃってそこへ持っていきたいんだろうが、今一番大事なことは何かと言ったら、お互い確認できるように、事業が残っている、残っていないことも大事だが、これは大臣も御存じのとおり、ど机だけ我々が全体の人間の心の問題として物事がわかっているかどうかというところが問題なわけだから、その観点からすると、意識的に外したわけじゃないし、忘れたというならこれまたお粗末な話だと思うが、大変、やっぱりそんなものかという印象を持ちながらこのパンフレットを見たということをまず申し上げておきたいと思います。
 そこで、これまた時間の関係でどんどんしゃべっちゃいますから、きょうの場合は御答弁をまたもらえるというような時間でもありませんから一方的にしゃべっちゃいますけれども、もう私はここで言いたいんですからメモだけちょっちょっと言います。
 徳川の前から人間が人間を差別したことは、お互いの歴史としてもうしっかり、今申し上げたように、あえて言えば、日本の固有の差別のものとしてお互い確認ができているだろうと思います。そういうことは学校教育でも我々は学んでいるんですね。徳川時代に入りまして、ここの本にもちょっと書いてありますけれども、いわゆる被差別の身分がつくられて、権力者が支配として我々を、人間を、人間と人間がそこで差別され身分制として抑え込まれた、差別されたということは、お互いこれまた知識としても知っているわけですね。
 そういう状況の中で、一九二二年、これはここに書いてもらえないかもわからぬ、これは政府が書くんだから書いてもらえないかもわからぬが、ぜひひとつお互いがしっかり確認した方がいいと思うのは、全国水平社が一九二二年に創立された。そしてもう七十周年を超えておる今日の状況。水平社宣言の中で「人の世に熱あれ、人間に光あれ。」、だれもが今お互いのものとして確認できる人権宣言が今でも生きている。生きていると同時に、その人権がまだ完全に保障されていなければ、差別もここに存在しているという状況をお互い歴史としてもう一遍確認することが必要だろうと思います。
 そういうことの延長線上で、一九四六年、今の部落解放同盟の前身の組織が結成されて今日まで継承発展されて、部落差別解放のために私たちの参議院の大先輩である松本治一郎先生を先頭にして今日まで人権闘争として闘って大きな成果を上げたことは、これも何回もお互いが理解できることだし、確認できると思います。
 新しいところでは、一九八八年、もう法務大臣皆御承知と思うけれども、反差別国際運動として、いわゆる国際的な反差別運動体や個人の方がどんどん参加して世界的に今や認められる運動として確認されて行動がされていることも御承知のとおりでございます。
 そこで、パンフレットに書いてありますからもう一度言いますが、明治に入ってという一八七一年、いわゆる解放令が出て、今もう百二十年たっている、百二十年たっている。これは強調しておきますが、百二十年たっている。同時に、戦後でも四十九年ですから、来年で戦後五十年、新憲法下の今日において、今日まだ差別問題が大変続発しているというふうに思うんです。
 そこで、私は、今回は少し角度を変えて、石川さんの問題に入る前に、人権擁護局としてはどういうふうに今日の反差別・人権問題をどのように把握しておられるか。
 同時にまた、今ここで数を聞いたり、どこの県がどうこう言う時間がありませんから、私の方でデータを持っていますが、大変、私の印象としては、一生懸命やっておられるかもわからぬが、全体の把握は必ずしも正確でない。私の埼玉県の出来事なんかほとんど挙がっていないんじゃないかと思う。もし挙がっているとおっしゃるんなら、具体的に例を挙げて御存じかと聞いてみたら恐らく知らないと思う。知らなかったら、そういうことが現場であるのに法務省は御存じない。これじゃ本当の意味の人権問題をいわゆるお互いが保障し合うことにならぬだろうという感じもありますけれども、量の問題でありませんが、いわゆる当局はどのように実態を把握されているのかなどなど、量の問題中心ではなくてお話をしてもらうとありがたいなと。まずここで一区切りして、まず局長の方からお話を伺いたいと思います。
○政府委員(筧康生君) いろいろなことをお尋ねいただいたと思いますけれども、まず法務省の人権擁護機関の人権侵犯事件といいますか、あるいは人権にかかわる実態の把握の仕方でございますけれども、御存じのとおり、法務省の人権擁護機関はその下部機関として法務局組織、それから……
○深田肇君 パンフレットの話はもういいんだよ。そんなのはわかっているんだから。
○政府委員(筧康生君) 人権擁護委員の組織というのを持っておるわけでございますが、そういう組織を利用いたしましてさまざまな情報を入手し、それによって人権の状況一般、その一部としての同和関係の情報も得ておるという状況になっております。
 そして、同和問題に対する私どもの基本的な認識と申しますか、現在における状況というものは、これはさきの地域改善対策協議会の意見具申の中にも明らかにされているところでございますが、いわば物的な状況といいますか、そういう面は大幅な改善を見たと。しかし、私どもが直接の所掌事務の対象としております心理的差別という面につきましては、これはもうかなり改善の方向にはあるというように認識しておりますけれども、これは私どもの人権侵犯事件として挙がってきております事件、あるいはまたいろんな情報を総合いたしますと、今なお、結婚であるとか就職であるとかというような事案において極めて厳しい差別事件が存在しておる、あるいはまた差別落書き等、あるいは差別の言辞等が後を絶たないという状態になっておりまして、なおなおこの心理的な差別の解消の面については一層の努力を重ねなければいけないという状態にあると認識しております。
○深田肇君 そういう抽象的な答弁は意味ないんだな。だから、むしろ私は、もう皆さんが御承知と思うからこちらの方から誘導しなかったんだけれども、人権擁護委員のいわゆる任命についても、大臣、現場がどれだけわかっている人、今の人が全部ため生言わないよ、みんないいことにしてもいいですよ、定数ふやしてもいいから、いわゆる現場がわかっている人、いわゆる差別を受けておる方、それから女性差別という言葉があるなら女性の方、障害者差別があるなら障害者の方、そういう方々がなかなかあえて言えば少ない。任命なんかされていないということはもうデータで明らかなんだから、そういったことも一生懸命やるよと具体的なことを言ってもらわないと、何ぼ言葉だけのやりとりをしてもしょうがないわけなんで、そういったことはもう注文をつけておきますから、どうぞひとつ、一番最後に大臣にいろんなことを含めて温かい言葉をいただきたいんで、よろしくお願いをしておきたいと思います。
 そこで、その次の話に進めます。もう糸久さんの顔を見ているから、気になってしょうがない。
 八月の二十三日に、埼玉県の部落解放同盟が中心になって埼玉県実行委員会ができまして、部落解放基本法を制定するという実行委員会が八月二十三日、これがやっぱり法務省へ要請行動に行って文書を出している。同時に、九月二十九日には、それのいわゆる親と言われるところの全国の中央実行委員会がやはり法務省だけじゃなくて政府全部のところに行っているんだから、法務省にも行っている。この事実については、人権擁護局長は確認をしてもらった上で、ここで時間がないから、そのときの印象を言ってください、印象。そのときどんな印象を持たれたか。
○政府委員(筧康生君) これは、私どもの係官がいずれも対応いたしまして、その要望の御趣旨を記載した書面を受け取ったわけでございますが、幾つかのその差別の具体的な事例というものが指摘されておりまして、私どももその中の大部分は把握しておる事実関係に基づいて差別の実態の御指摘を受けたというように認識しております。
○深田肇君 もう少し具体的にこの問題をやりとりしたいんですが、全国の方のこともございますけれども、埼玉県から出した中で具体的な、公の場でございますから、どこの町のだれだれということを言いませんが、文書で出したいわゆる差別事件が起きておることについては、その後調査されましたか。そのとき局長は出てないわけだから、それとも聞きおいて適当に処理しておけとほっておいたんですか、どうですか。
○政府委員(筧康生君) いずれも、このとき文書によって指摘された事件につきましては、関係の法務局において情報の収集に当たっておる事案あるいはまた調査に当たっている事案の中に含まれておるという状況になっております。
○深田肇君 じゃ、それが八月二十三日ですよ。きょうはもう十一月ですよ。私、今度は今月の末に、埼玉県じゃない、よその県の皆さんと一緒になってあなたのところに行きますから、部落解放基本法制定を含めて。そのときにちょっと時間があったら残ってもいいし、その場でもいいけれども、全国皆さん同じような共通課題だから、この問題をあなたたちが調査した結果、こういうふうに対応している、こういう立派な成績が上がっているとおっしゃるんならデータもらいたい。私はそんないい成績今上がっているとは思えないということをあえて申し上げておきます。
 これは県の方もある、それから皆さんの方の下部組織である法務局のこともある、支所のこともある、全部承知の上であえて言っているんですけれども、いわゆる差別された側が一生懸命声を上げて活動しているけれども、行政の側や皆さんの方からいわゆる具体的に対応して、具体的にその処理が進んできているとはなかなか思えない。その不満のずれは大変なものが現場にある。あなたより私の方が現場は深いからね、だから現場の話をしておくけれども、現場はそれがある。これは大臣うなずいておられるけれども、あなた全然うなずかないけれども、大臣うなずいておられる。そういう事実があるということをしっかりあなたの胸に残してもらって、今月の末、行ったときにできれば返事を聞かしてもらいたいと思います。そういうことが大変大事なんじゃないかというふうに思いますね。
 そこで、前の話にちょっとこれ戻るんだけれども、これを今さら印刷物どうこうということを言うんじゃないんだが、この差別の問題の中で、いわゆる部落差別の問題が一般論として短小化されているというか抽象化されている。例えば、今でも例を挙げれば結婚差別の問題、二十五年間結婚していて、突如どこかからあの人は部落の出身だと言われて、亭主の方が奥さんに対して、おまえは部落出身かというところから夫婦仲が悪くなっちゃって五年間苦しんで、わかったというので離婚するわけだから。これはあなた、十何年間続いているんだから。それをその町も、どこどこの県もとあえて言わぬけれども、そういうのを全部ほっておいて、片づけにゃならぬのは本人たち二人と、その周辺にいらっしゃる人権問題を考えているメンバーだけが一生懸命やるという状況になっているんです。
 そういうふうなことについて、いわゆる結婚差別があるとか女性差別、いろんなことがあろうけれども、その中に日本の伝統的ないわゆる身分制としてつくり上げた差別意識と教育というものが、人間形成の中でつくられているものがそういうものをつくっているんだということを認識してもらえるんなら、パンフレットのちょっと筆の書き方を変えないかぬという印象を持ちませんかね。ちょっと大臣の答弁の前にこれをひとつください。
○政府委員(筧康生君) 御指摘を受けておりますこの「人権の擁護」というパンフレットは、我が国における人権問題、それに対する法務省の取り組みを国民の皆様方に広く啓発するという目的でつくっておるパンフレットでございます。
 ここに掲げております子供の問題あるいは外国人の問題あるいは今の同和問題、女性問題、ここに掲げております問題は、私どもの認識する現在の日本における最も重大な人権問題であるというように認識しておりまして、それに特に強弱をつけてというようなことを意識して書いておるわけではございませんので、必ずしも順序が後ろであるからその問題が重要でない……
○深田肇君 後ろなんて言ってないよ。
○政府委員(筧康生君) というような認識でもって書いておるわけではないわけでございます。その点はひとつ御理解をいただきたいと思います。
○深田肇君 人権担当者が、私の説明が、これが四番目にあるとか五番目にあることが問題だというふうにあなたに聞こえちゃうんならしゃべる方も下手くそなのかもわからぬけれども、こっちが下手くそだと言われればそれで終わりだけれども、國弘先生みたいにうまくしゃべればいいのかもわからぬけれども、あなたがそういう答弁をされるなんていうのは本当に認識のずれなんです。
 日本の固有の部落差別というものはどういうものかと、あなたら書いているように、明治時代の出来事であり徳川時代のことでございますということは文献にもなっているわけだから、そのことの人間形成の中で過ちを犯したものが今日こういうものがあるだろうし、若干話が広がるけれども、朝鮮半島に対する日韓併合のときの思想問題だって植民地支配だってあるわけだよ。そのぐらいのことはあなたがわかって答弁してもらわないと、一生懸命皆さんが聞いている目の前で、おれが四番目だからけしからぬと言ったようにとられて、四を一にしたらいいかという御答弁じゃ、お役所はそれで済むかもわからぬけれども、全然次元が違うな。おれはもう人権擁護局長に不信持つね、そういう説明の仕方は、ということを率直に言っておきたい。時間がございませんので、この問題はそういうことで、言葉が過ぎたところは御勘弁ください。
 私も一生懸命やればやるほどどうも現場とずれているなと。これは余分なことを言いますけれども、先般やっぱりこの法務委員会でいわゆる更生施設のことをパンフレットも出した。やっぱりこれも、一生懸命つくっておられるんだけれども、そこに入る人とか、その町の人の間に微妙な表現のことがあって、丁寧にここで説明させてもらったんですよ。だから、何が何でも皆いいとか悪いとか言っておるわけじゃなくて、まじめに国が出す、法務省が出すパンフレットを見れば見るほどどうも現場の皆さんとずれがありますよと。もっと言えば、国民や市民との間ではずれがありますよということを言いたくて話をしているわけですから、その点をひとつ御理解をいただいておきたいと思います。
 そこで、本題と言っては恐縮でありますが、石川一雄さんが再審をお願いしているんです。時間がありません。したがって、もう再審の中身も言いませんが、再審のところで強調しておきたいのは、もうこれは大臣なり、きょうは大変心優しい保護局長の顔も見えていますから申し上げますが、とにかく七年も再審を申請してそのまま音信もない。そして、きょうの法務委員会で皆さんの前で御報告申し上げなきゃいかぬのは、裁判長がかわって新たに文献を見てくれることになったと。そのまた裁判長のところへは、前のときから続くのでありますが、検事の方からも新しい証拠を出した。もちろん、弁護士の方からも新しい証拠を出している。証拠が出てきているわけだから、そうなると、この証拠調べとか事実調べなんていうものは、我々の市民感覚から言えば当たり前のことのように思うんです。
 具体的なことを言われては答えられないと刑事局長が言うことはわかっているんだが、一般論として、長くかかっている再審の過程の中で新たに検事の方が証拠を出した。新たにまた弁護士が出した。それを裁判長が見て判断してくれるんだろうけれども、具体的に現場検証だとか、いわゆる証拠といいますか事実調べだとかいうものはやってもらえるものだと我々一般市民は思います。
 同時に、もう御承知のことですから省略いたしますが、時間がありませんから内容は簡単に言います。憲法だとか刑法だとか刑事訴訟法の専門の大学の教授の先生方が八十一名運署して、事実調べをやりなさいよと、やらぬとどうも納得できないなというお願い書が高裁に出ているということなども含めて刑事局長、一般論でちょっと一言簡単にいただいて、人権擁護局長、この事実をどう感じますか、人権擁護局長として。お役所の範疇ならおれの範疇じゃないと言うかもわからぬが、そうじゃないよ。中に入っている石川さんにしてみれば人権問題だ。本人が提訴しなきゃいけないというなら、私が今あなたに提訴したことでもいいから、人権擁護局長、このことをどう考えますか、お答えをいただきたい。
○政府委員(則定衛君) 御指摘の再審といいますのはいわゆる第二次再審で、昭和六十一年八月に申し立てられた案件であろうかと思います。その後、やはり御指摘のようないろいろな資料が双方から提出されているということは承知しておりますけれども、これらについてどのように取り扱うかは、まさに具体的案件の裁判所の訴訟指揮ということにかかっておるわけでございまして、これらにつきまして法務当局から何らかの感想めいた意見を申し述べるというのは差し控えるべきであると心得ております。
○政府委員(筧康生君) 同じようなことを申し上げてまことに恐縮でございますけれども、具体的な裁判所に係属している事件のことについて、人権擁護局といえども行政機関の一部がそのことについてとやかく申し述べることは差し控えるべきであると思っております。
○深田肇君 一般論というか原則論というか、お立場という点ではそういうことなんだろうということは承知の上で、むしろこの際、しっかりと大臣以下皆さんにこの事実を知っておいてもらって、心と心が通じ合えば、こだますれば、お互い人間裁判官だし、人間法務大臣だししますから、刑事局長といえどもそんなむちやくちやなことをおっしゃっているわけじゃないだろうからということで、保護局長の顔を見ながらもお願いをしているような次第でございます。
 本当にもう時間がございませんから最後に大臣、六月の本委員会でも私質問させてもらいましたし、予算委員会でもあったのでありますが、前の大臣の方から、石川一雄さんの仮釈放のことについてお願いいたしましたところ、粛々と今手続が行われておりますという大変温かい御答弁をいただきましたことを踏まえて、もう半年たったんじゃないか、ひょっとしたらもっと長く前からかかっているんではないかというふうに思いますが、関東地方更生保護委員会の方でその審査は順調に進んでいるんだろうなという大変期待をしながら考えているわけでございますけれども、この辺のことについて大臣の方から一言御感想なり御意見を賜って終わりたいと思います。
○国務大臣(前田勲男君) 先生から石川一雄受刑囚の仮釈放の件についてお問い合わせがございましたが、本来これ、具体的な仮釈放の手続等、回答を差し控える立場にございますが、前中井法務大臣がお答えされておるとおり、先生の御質問のとおり、粛々と進んでおります。
○深田肇君 終わります。
 どうも皆さん、勝手なことを言いましたが、ありがとうございました。
○委員長(中西珠子君) 本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
   午後二時四十七分散会
     ―――――・―――――