第132回国会 法務委員会 第9号
平成七年四月二十七日(木曜日)
   午前十時開会
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   委員の異動
 四月二十六日
    辞任         補欠選任
     坂野 重信君    大河原太一郎君
     林田悠紀夫君     尾辻 秀久君
 四月二十七日
    辞任         補欠選任
     尾辻 秀久君     河本 三郎君
    大河原太一郎君     山崎 正昭君
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  出席者は左のとおり。
    委員長         中西 珠子君
    理 事
                下稲葉耕吉君
                糸久八重子君
                荒木 清寛君
                平野 貞夫君
    委 員
                河本 三郎君
                斎藤 十朗君
                志村 哲良君
                鈴木 省吾君
                山崎 正昭君
                北村 哲男君
                深田  肇君
                山崎 順子君
                翫  正敏君
                紀平 悌子君
                三石 久江君
                安恒 良一君
   国務大臣
       法 務 大 臣  前田 勲男君
   政府委員
       法務政務次官   角田 義一君
       法務大臣官房長  原田 明夫君
       法務大臣官房審
       議官       古田 佑紀君
       法務大臣官房司
       法法制調査部長  永井 紀昭君
       法務省刑事局長  則定  衛君
       法務省人権擁護
       局長       筧  康生君
       公安調査庁長官  緒方 重威君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        吉岡 恒男君
   説明員
       警察庁刑事局刑
       事企画課長    篠原 弘志君
       防衛庁人事局人
       事第一課長    新貝 正勝君
       文部省初等中等
       教育局中学校課
       長        石川  明君
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  本日の会議に付した案件
○刑法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議
 院送付)
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○委員長(中西珠子君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 昨二十六日、坂野重信吾及び林田悠紀夫君が委員を辞任され、その補欠として大河原太一郎君及び尾辻秀久君がそれぞれ選任されました。
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○委員長(中西珠子君) 刑法の一部を改正する法律案を議題とし、前回に引き続き質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○荒木清寛君 平成会の荒木です。
 まず、ゴールデンウイーク直前でございます。年に一度の大型連休、国民を挙げてのバケーションでありまして、私はもうこれは国民的な行事であると言っても過言ではないと思います。
 ところが、今、国民の気持ちというのは必ずしも明るい気持ちではありません。先月以来の地下鉄サリン事件、國松警察庁長官の狙撃事件、横浜毒ガス事件、さらには最近のオウム真理教教団幹部に対する殺傷事件、一方でオウム真理教関連施設に対する大規模な捜査というのが現在も、きょうもまた進行中であります。私は、こういう状況でゴールデンウイークに入りまして、レジャーに対する心理的な悪影響、ひいては景気に対する影響というものを非常に心配するわけであります。
 そこで私は、政府としても国民が安心してこの休暇を迎えられるように何か思い切ったそういう対策を今打ち出すべきである、そう考えますが、大臣、いかがでありますか。
○国務大臣(前田勲男君) この地下鉄サリン事件等は、何の関係もない一般市民を大量、無差別に殺傷するという極めて凶悪かつ卑劣な犯罪でございまして、大変国民の日常生活に大きな不安また脅威を与えているわけでございます。こうした点から、一日も早く真相、事実を解明して、厳正な処罰を行い、不安を解消する必要があるという観点から、警察におきましても、また検察におきましても、日夜総動員と言うに等しいあらゆる努力をしておるところでございます。
 先生御指摘のように、連休までに国民に安心を与えるべきである、御指摘のとおりでございますが、気持ちとしては私ども連休をまつまでもなく、それまでにも、きょうにもやりたいという気持ちで取り組んでおるところでございますが、何分事犯も極めて多岐にわたっておりますし、その捜査の対象は広いというふうに見られておるところもございます。連休までに一段落、一段落というのも、いろいろ御安心をいただく手段ということであろうと思いますが、政府として、いずれにいたしましても一日も早く、一刻も早く解明をし、国民に安心をしていただきたいという決意のもとでやっておるということだけ申し上げたいと存じます。
○荒木清寛君 次に、オウム真理教に対する各般の捜査につきましてお尋ねします。
 私は、これほどもう社会的ないろんな疑惑を招いているわけでありますから、捜査当局においても断固捜査をしてもらいたい、そう念願いたします。しかし一方で、公正な取り組みというのもぜひ心がけていただきたい。そういう観点からお尋ねいたします。
 まず、三月二十日に教団施設に対しまして捜索が開始されましたが、以後今日に至るまで、およそ何人のオウム真理教関係の被疑者につきまして送致を受け、そのうち何名をどういった罪名で起訴をしたのか、御報告いただきたいと思います。
○政府委員(則定衛君) 法務当局といたしまして、今般のオウム真理教関連の事件で全国の検察当局に送致されました者についてそれぞれ報告を受けておるわけでございますが、今日までの事件を合計いたしますと、送致された被疑者の数は既に百名を上回っておるわけでございます。
 そのうち、今日までに起訴しましたのは、東京地検におきまして、三名について上九一色村におきます監禁罪ということで東京地方裁判所に公判請求しておりますし、また大阪地検におきまして、覚せい剤取締法違反で二名を公判請求しております。さらにまた大津地検におきまして、一名を公務執行妨害、器物損壊等で公判請求しております。加えまして静団地検におきまして、一名を毒物・劇物取締法違反でやはり公判請求しております。
 これら以外の事件につきましても、それぞれの関係検察庁におきまして、現在、鋭意事実を究明し、その罪責を追及するための捜査活動を続けているところでございます。
○荒木清寛君 そうしますと、現段階における法務当局あるいは大臣の認識をお聞きしますが、オウム関連施設でサリンが生成されていたかどうか、あるいは武器の製造がなされていたかどうか、さらには地下鉄サリン事件とこの教団との関係、これを現時点ではどう認識しているのか、お尋ねします。
○政府委員(則定衛君) 今御指摘の三つの事項につきまして、捜査当局といたしましてはその実行者について鋭意捜査をしておるわけでございます。しかしながら、現時点におきまして私どもから、それらの事件についての実行犯がだれであるか、これについては確たることを申し上げる立場にはございませんので、今後の捜査当局のそれぞれの捜査の進展を待たなければならないというふうに考えているわけでございます。
○荒木清寛君 そうしますと、オウム真理教をめぐる疑惑の最も根幹をなす部分につきまして、まだ今捜査中である、国会に確たる報告ができる段階ではないというふうにお伺いいたしました。
 そういう前提で考えますと、私、非常に納得できないことがありまして、二十五日に与謝野文部大臣は東京都知事と会談をし、その後記者会見をされたということです。その中で、「文部省、法務省、警察庁、東京都の四者が一体となって、解散請求に必要な資料や書面などを整えるべきだ。」、そういう答えをしているわけです。あるいは、国会、委員会での答弁等を聞きましても文部大臣は、オウム真理教に対しまして解散請求をするということはもう自明の理である、もう当然のことである、そういう趣旨で発言をしているわけです。
 私は非常に疑問に思うわけであります。要するに、いろいろ今オウム真理教につきまして疑惑に捜査がされているわけでありまして、その犯罪につきまして裁判所で判決が確定をしなければ解散請求はできない、そんなことを言うつもりはございません。起訴された時点で、あわせてそういう請求がなされるべきであろうとは思いますが、現段階ではまだ全くの捜査中でありまして、国会にもその内容につきまして報告ができない。さらには、疑惑の中心をなす部分につきまして今の段階では起訴もされていないわけです。そういう段階におきまして閣僚の一人が、解散請求をすることはもう当然である、疑う余地がないというようなそういう趣旨の発言をするということは、私はちょっと軽率ではないかというふうに考えるわけであります。
 そこで、法務大臣にお尋ねをいたしますが、大臣もこのオウム真理教に対する解散請求については文部大臣と同様のそういうお考えなのか。もう一点は、この点につきまして文部大臣と既にもう相談をしているのか、お尋ねしたい。
○国務大臣(前田勲男君) オウム真理教の関係事件でございますが、先ほども刑事局長から御答弁を申し上げましたように、現在、まさに総力を挙げて事実解明に取り組んでおるところでございます。
 そこで、宗教法人法による解散請求でございますが、私は、宗教法人の解散請求につきましては、事実解明がなされた段階で判断されなければならない、かように考えておりまして、文部大臣の御発言も、仄聞をいたす範囲では事実関係が解明されなければならない、あるいは起訴された段階でというようなコメントがつけられておる、あるいはついておると私は理解をいたしておるところでございます。
 そこで、文部大臣とそれらについて打ち合わせをしたのかということになりますと、正式に打ち合わせはしておりません。ただ、閣議で席も隣でございまして、事実関係が解明されなければという、私も文部大臣にこの法律の趣旨についてはいろいろ話もお互いにしておるところでございます。
 あと、文部大臣との間はそういうことで、実質的にはしておらないわけでございますが、事務担当者レベルにおきましては、その事実解明等も踏まえながら、時期等も踏まえながら、必要に応じて情報交換を関係省庁のもとにされておるとは理解をいたしております。
○荒木清寛君 私も今大臣がおっしゃったように、今は事実の解明中でありますから、その事実の解明の結果を待って、具体的に言うと起訴をする段階という話になると思いますが、そういう段階でこの解散請求につきましても判断をすると、そのように発言をするのが私は大臣として正しいのではないかというふうに思って質問したわけです。
 そこで、この解散請求につきまして文部大臣の方からもいろいろ協力の要請もあると思いますが、そういう要請があった場合、例えば捜査資料を提出してもらいたい、そういう協力の要請があった場合には、これには応じますか。
○政府委員(則定衛君) 将来といいましょうか、近い将来そういう要求がございました場合に、つまり事実関係が明らかになって宗教法人についての解散請求がなされるのが熟しておるというふうに認められました段階で、所管庁から宗教法人法に基づきます解散請求のために必要があるとして協力の御依頼がありました場合には、検察当局におきましてその時点で刑事司法手続がどのように進んでいるか、これらも勘案しながら法令に照らしてどのような御協力ができるか検討することになると考えております。
○荒木清寛君 この問題はこのぐらいにしまして、次に改正法案につきましてお尋ねをいたします。
 先般、板倉参考人、岩村両参考人がおっしゃっていましたことは、今後も刑法の改正に取り組んでもらいたい、その場合には国民に開かれた形でそういう改正作業を行うべきである、この法制審の委員の人選の公平あるいは審議の公開、そういうことに心がけてほしいといった参考人の陳述があったわけであります。
 そこで現状についてお尋ねしますが、法制審、特に刑事法部会につきましてこの審議の公開がなされているのか、議事録の公開はどうか、あるいは委員名の公開はどうなっているのか、御報告願います。
○政府委員(永井紀昭君) まず議事録の公開の問題でございますが、法制審議会は議事規則上その会議を公開しないこととされております。こういう趣旨から、会議の議事録につきましても公開するのが適当でないとされております。これは、会議における自由な討論を確保し、審議の過程で提供された公務上の秘密を保持するということのためでございます。もっとも、審議に際しまして問題となりました事項や審議経過などにつきましては相当の資料を公表しておりまして、また、適宜報道機関を通じても発表するなどの方法によりまして国民の理解を得るよう努めてきたところでございます。
 次に、委員の氏名の問題でございますが、法制審議会の総会の委員に関しましてはかねてから公表しているところでございます。各部会における委員の氏名を公表するかどうかにつきましては、昨年の六月に各省庁間の申し合わせでガイドラインができておりますが、ここにおいてはそれぞれの審議会の決定にゆだねるという、特段の事情があれば公開しないでもいいという趣旨のガイドラインになっているところでございます。
 そこで、法制審におきましては、総会におきまして部会についてどう考えるかということを御審議願ったんですが、結局、これはそれぞれの部会の特殊性があろうから各部会の決定に任せるという、こういう総会決定が出まして、その結果、刑事法部会については、各委員の御意見をお伺いいたしましたところ、委員の氏名を公表しないという決定がされました。これは刑事法部会における各委員の意思決定でございますし、推測いたしますと、中立公平な立場からの自由な討論を確保するための、そういうことから刑事法部会でそういうふうに御決定になったものと、こういうふうに考えております。
○荒木清寛君 議事録は公開していない、しかし相当の、経過につきまして報道機関に対する記者発表等である程度はその内容を公表しているというお話でありました。
 しかし、刑事法部会の委員名は秘匿されているというわけであります。今後刑法改正というふうになりますと、やはりこの刑事法部会で答申を得て国会に法案が提出されるという手順になると思うわけでありますが、この刑事法部会での審議に国民の意見が反映される、あるいは開かれた部会での審議にするためには、その部会の委員の人選が公平であり、また均衡がとれていなければそういう国民の意見を反映した議論にならないわけであります。しかし、その委員の氏名さえ公表されていないというふうになれば、我々国会議員でさえその部会での審議が国民の意見を反映しているか検証のしょうがないわけでありまして、これではどう考えても参考人が望むような開かれた議論はできないというふうに思いますが、大臣、御見解を求めます。
○国務大臣(前田勲男君) 先ほど永井部長の方から刑事法部会の委員の名前を公表していない問題について、公正中立な立場、また自由な討論の確保という観点から御答弁を申し上げたわけでございます。
 また、片や、先生御指摘の点も私も多々あると思っております。もともと過去もこうした事例の中で、特に議論された中でこの部会等には大学の先生等専門家の立場の方がたくさんいらっしゃいまして、歴史的にはかつての学園紛争のころなどに、いろいろこうした問題から校内での、時にはつるし上げとか、当時を知っておられる皆さんにはいろいろお話も聞いておるわけでございますが、今日でき得る限り、あらゆる部門の中で情報公開というのが時の流れでもございますし、国民の大きな関心と要求下のもとにございます。こうしたことも今後も踏まえながら、刑事法部会、また法制審において良識を持って対応されていかれることを期待いたしております。
○荒木清寛君 私は、審議会の委員あるいは部会の委員の方の良識に任せるというだけではやはり足らないのではないかと考えます。
 昨年の六月に、審議会あるいは各種の懇談会につきましての情報公開、情報公開という言葉は使っておりませんが、そのガイドラインが設けられました。これは言うまでもなく、情報公開あるいは国民に開かれた審議会という意味でのガイドラインであったと思いますが、しかしよく読んでみると、ややしり抜けになっているといいますか、そういう感じがするわけです。今の、部会の委員を公表するかどうかにつきましても、部会で公表するかどうかを決定するというわけでありますから、これでは何の情報公開にもなっていないわけです。
 先ほど御答弁の中に、特段の事情がある場合には公表しないという決定ができるというふうにおっしゃいましたが、ガイドラインを見ますと、別に特段の理由というのは要求していないわけでありまして、単に部会の委員が公表したくないというふうに多数決で言えばそれが通ってしまうというわけでありますから、情報公開になっていないわけです。あるいは審議会の議事録につきましても、やはり審議会が公表するかどうか決めるというわけでありますから、本当にこれで情報公開と言えるのか。
 そういう意味ではガイドライン自身を見直す必要もあるというふうに考えますが、大臣の御所見を求めます。
○政府委員(永井紀昭君) ガイドラインを見直すべきだという御意見はお承りいたします。
 ただ、法制審につきましてちょっと御説明させていただきますと、実は従来、法制審議会の部会委員の氏名を公表してこなかった理由は、公表いたしますと、先ほど大臣も少し触れられたところでございますが、部会委員の方々に対しまして非常に個別のさまざまな形の働きかけが行われたことがありまして、中立公正の立場からの自由な討論を確保できなくなるおそれがある、あるいは学問的、専門的見地からの調査、審議を全うできないおそれがある、こういったことから公表してこなかったわけでございます。
 ただ、最近やはり時代も変わってまいりましたし、昨年六月のガイドラインはある面で前向きにできるだけ公表するという原則のスタンスがとられているんじゃないかと思うんです。法制審議会におきましては、その後、各部会でそれぞれの部会の先生方に御意見をお聞きしましたが、民法部会、商法部会あるいは民事訴訟法部会、国際私法部会等、いずれも公開するということになっておりまして、現に公開をしております。ただ、刑事法部会だけにつきましては特別の考え方といいますか、いろんな事柄を、諸般の事情を考慮して差し当たり公開しないという、そういう決定がされた、そういう経緯がございます。
○荒木清寛君 次に、強盗傷人罪につきましてお尋ねいたします。
 大臣の法案提案理由説明の中に、条文の現代用語化とともに、「あわせて刑罰の適正化を図るために必要な改正を行う」、そういう趣旨でありました。ですから、内容につきまして全く変更を加えないというのではありませんで、必要最小限度、各界の意見が一致している事項について、緊急性の高いものについて改正を加えるという意味ではないかと思います。それで尊属加重規定の削除等も行われたわけでありますが、そういう意味では強盗傷人罪の刑の不均衡というのがなぜ今回是正がなされなかったのかというふうに考えます。
 先般、岩村参考人も言っておりましたが、例えば事後強盗罪、窃盗犯人が家の人に見つかって、逃げるためにその手を振り払って逃げた、それで軽微なけがを負わせてしまったというのでも強盗傷人罪になりまして、最低でも懲役七年、ですから酌量減軽をしても執行猶予はつかないという、こういう刑の不均衡がある、不均衡といいますか下限が重過ぎるのではないかという意見があるわけであります。
 この点につきましては、実務の面でも、あるいは学者あるいは弁護士、各関係者、刑の不均衡があるという意味では意見は一致していると私は思いますが、この点はいかがですか。まず当局にお伺いします。
○政府委員(則定衛君) 御指摘の、強盗傷人罪の法定刑の下限が重過ぎるのではないかという声は、確かに実務家の中でもかなり大きな声として存在するということもよく承知しておるわけでございます。
 今回、刑法の現代用語化を図りますに当たりましては、基本的には内容の変更を伴わない、どうしても最高裁判所の違憲判決等を受けてこの際触れざるを得ないところは別としてと、こういう前提で事に当たったわけでございますが、法制審議会の刑事法部会の審議におきまして、この強盗傷人罪の下限の引き下げについて考慮すべきでないかという点についても実は検討がなされたわけでございます。しかしながら、他にも例えば現住建造物等放火罪の下限の問題等ともいろいろ関係してくるところがございますし、また強盗罪の法定刑の下限とのバランスの問題等もございまして、いわゆる各罪種ごとの法定刑のバランス全般について考えてみないと、この強盗致傷罪の法定刑のみだけ取り出して下限を引き下げるというのはいかがなものかという考え方が大勢を占めたわけでございます。
 そういう意味におきまして、早急に大方の合意が得られるものに限って手当てをさせていただくという基本的な方針から申しまして、今回はこの強盗傷人罪についての法定刑の下限の見直しというものは行われなかった、結論的にはその方向で合意がなされた、こういうことでございます。
 将来、刑罰法令全般について見直すというときには、この問題についても一つの大きな課題として検討すべきものと考えておるわけでございます。
○荒木清寛君 それでは、実務の運用についてお伺いしますが、先ほど私が例示したような事後強盗罪で軽微なけがを与えたというような場合も、すべて強盗傷人罪ということで起訴しているんでしょうか。
○政府委員(則定衛君) 強盗致傷罪におきます傷害の程度といいましょうか、実務上、積極的にそれを強盗致傷、傷害ということで評価してやっている場合はどういうことか、こういうことになろうかと思いますが、その場合は、一般的に申しまして、日常生活上看過されるような軽微な傷害はこれに該当しないという有力な見解もございまして、実務におきましてはそういう見解を踏まえまして適切に対処しているものと思われます。つまり、傷害といいますのは非常に軽微なものから重度のものまであるわけでございますけれども、日常生活上看過されるようなものについて、強盗致傷罪におきます傷害としてそれを認定して起訴するということは必ずしも一般的ではないという考え方でございます。
 また、事後強盗罪における暴行、脅迫につきましては、相手方の財物を取り返そうとする意思や逮捕しようとする意思を制圧するに足りる程度のものであることを要する、そういうふうに解されておりまして、軽微な暴行、脅迫にとどまる事案まで事後強盗とされているものではないと考えております。実務の運営におきましても、そのような理解を踏まえまして、事後強盗罪に当たるような暴行、脅迫があったかどうか、これを慎重に判断して処理しているものと承知しております。
○荒木清寛君 私がいろいろお聞きしますと、理屈の上では強盗傷人罪になるような案件でも、この刑の下限が重過ぎるという点から、強盗と傷害に分けたりあるいは窃盗と傷害に分けて起訴をしたりということがよくあるというふうにお聞きしているわけでありまして、この不均衡の是正というのは私は急務ではないかというふうに考えます。今後、余り長い話じゃなくて、一つの優先課題として取り組んでいただきたい。
 先日も北村委員からいろいろ逐条的に、おかしいじゃないかというお話がありましたが、改正法の百五条の二、証人威迫罪であります。「面会を強請し、又は強談威迫の行為をした者」という表現ですね。これは到底私、今の現代用語とは言えないんではないかと思うんですね。私も法律を勉強しましたけれども、これはキョウセイと読むのかゴウセイと読むのか一瞬わかりませんで、また調べ直してこれはキョウセイと読むんだというふうにわかったわけでありますし、読み方といい、また意味内容といい、大体類推はできますけれども、例えば「面会を強要し、又は威迫する言動をした者は」というような表現になぜできなかったのか、その点についてお伺いいたします。
○政府委員(古田佑紀君) 委員御指摘のとおり、これはキョウセイ、ゴウセイ、どちらでもよろしいようではございますが、あるいは「強談威迫」と、こういう言葉が必ずしも日常的に今使われていないことは事実だと考えております。この点につきまして、私どもといたしましても、ほかに適当な表現がないかいろいろ検討し、法制審議会でも御議論をいただいたところでございます。
 例えば、「面会を強要あるいは威迫する言動をする」、こういう案も検討されたわけでございますが、「強要」という言葉を用いますと、どうしても強要罪にいう「強要」との関係が問題になりまして、やや現在の「強請」という言葉よりは狭めに解釈されるおそれがある。それから、「威迫する言動」と申しますと、「強談」という、こわ談判というふうに普通は説明されておりますけれども、そういうふうなことについてどうもやはりうまく表現することができなくなる。そういうことから、どうしても現在の言葉に置きかえる適当なものがなく、ほかのわかりやすい言葉に置きかえますと従来の解釈あるいは理解にかなり大きな影響を与えるおそれがあるというふうな問題があったわけでございます。そのような点から、ここのところは、やや古い言葉ではございますけれども、現行法と同じ規定の仕方ということにしたわけでございます。
○荒木清寛君 終わります。
○平野貞夫君 まず、大臣にお聞きしますが、刑法典というのはその時代や国の社会、文化を象徴するものだと私は思います。
 今回、表記を現代用語化して平易化したわけでございますが、先般、国語学者の水谷先生は、昭和二十二年代の言葉だということをおっしゃられておったんですが、いろいろ批判とか評価とかあるいは具体的な指摘は各先生から出されておるわけです。
 どうでございますか大臣、自己採点して何点ぐらいだと思いますか。そして、この平易化、現代用語化をどういうふうに大臣意義づけられておられますか。
○国務大臣(前田勲男君) 刑法は、先生御指摘のとおり、国民生活に極めてかかわりの深い、まさに国民の行動規範であり、国家による最終的な強制力を持つ法律であると考えております。
 国民が何をすればどう処罰されるか、こうした観点からいくと、すべての国民が読んでわかるというのが私はまず理想であろうと思っております。単に専門家だけが知っていればいいというものではないということ、こうしたあるべき姿を求めてこれに向かう今後の刑法改正への第一歩である、基盤整備作業としては今回大きな意味を持つ私は大きな一歩であろう、かように思っております。
 そうした点から考えますと、かなりいい点をいただきたいと思っておりますが、ただ、こうした理想を考えましたときに、この改正でかなりわかりやすくなってはおりますが、しかし先日来、北村先生を初め各委員の先生方の御指摘にも、いろいろまだ国民生活になじみの薄いというか、ないといいますか、非常に専門的な言葉もあるわけでございます。
 ただ、今回の現代日本語化、平易化で、構成その他もほとんど一部を除いては変えておらない、変えないというむしろ前提でやっておるというわけでございますし、もちろん内容の変更も一部を除きない、そうした観点。そしてまた私は、これは専門家にゆだねられたことでございますが、例えば刑罰規定が言葉を変えることによって拡大してもいけないしあるいは縮小してもこれまたいけない。こうした幾つかの前提のもとに、また前提があるだけに、国民がすぐ読んでわかるというような改正が行われなかったということは、これは御指摘の事実をまつまでもないことでございますが、まずはこうした新しい時代に合った、また国民に理解されやすい刑法のいわば大きな改正をまたれるという段階を考えて、かつ、理想にはまだその段階に至っていないということからいくと、及第点はいただけるのかな、さように自負しておるところでございます。
○平野貞夫君 私は、いろいろ問題点があると思いますが、結論的には一種の情報公開じゃなかったかと思います。
 率直に申しまして、私も大学時代に刑法を学んではおるんですが、いわゆる改正の対象になっている刑法については、語学力の極めてない私ですらも英語の方がわかりやすい、同じ日本語だけれどもとても意味はわからぬという内容でございますので、これの現代用語化で情報公開という意味が、私は、改革の一つの本国会の法案ではないか、そういう観点から平成会としましても積極的にこれにいろいろな形で協力してきたわけでございます。
 現在、御承知のように、非常に我が国にとっては不幸ないろいろな事件が起こっております。これはいずれも、危機管理あるいは国家の秩序、国民の生命、財産の保護という意味から大変法秩序のあり方が国民的な関心になっておりますが、ちょうどそういう機会とこういう刑法の現代用語化が重なったということは一つの縁だと思います。そういう意味で、法秩序の大切さを国民に理解してもらうためには、私は、刑法は読みやすくなった、わかりやすくなったという広報活動をこの機会にすることが、不幸ないろいろな事件を少なくする、防止する役割になるんじゃないかと思いますが、この現代用語化に伴って、法務省として国民へのPR活動、何か具体的なものを考えておりましたら御答弁いただきたいと思います。
○政府委員(則定衛君) 御指摘のように、刑法は法秩序を維持する上で一番重要な法律ということでございます。また、それとともに、国民生活にも深くかかわる法律でございますので、国民の皆様方に理解をしていただくということが大変重要なことであると考えております。
 そこで、法務省といたしましては、今回の刑法改正につきまして、法制審議会から答申をいただきました段階で広報活動もそれなりにさせていただきましたが、今回、この国会で成立させていただきました場合には、改めて新聞、テレビ等につきまして、その意味内容等について誤解のないように広報させていただきたいと思いますし、また法律関係の雑誌等につきましてもできれば特集的な扱いで、実務法曹についてもまた正確な理解がなされるように広報をしてみたいというふうに考えておるわけでございます。
○平野貞夫君 この法律案を提出されるにつきまして、私、事務当局の方大変御努力をされたと思いますが、現代用語化といいましても、意味を全く違えずに言葉を変えるわけですから、用語がなかなか難しかったと思うんですね。
 それで一条だけちょっとお聞きしたいんですが、用語が大幅に変わった典型的な例は七十七条の内乱罪だと思います。改正刑法草案というのがございますね。むしろ非常にこちらに近いといいますか、こちらのイメージを連想するわけでございますが、ここの七十七条、内乱罪の中で非常に難しいと言ったらあれですが、非常に抽象的な用語が幾つかありますので、一般論としてで結構でございますから当局の解釈を確認しておきたいと思います。七十七条の「統治の基本秩序を壊乱する」と、「統治の基本秩序」というのはどういう解釈というか意味でございますか。
○政府委員(則定衛君) これは現行刑法の七十七条の「朝憲」という言葉を言いかえたものでございますけれども、従来、「朝憲」につきましては、判例では「国家ノ政治的基本組織」としております。また、学説を見てみますと、「凡そ国家あれば、その成文なると不成文なるとを問わず統治の大則を定むる準則存するものなり。この準則すなわち法文にいわゆる朝憲なり」というふうに言われておるわけでございまして、それを今回、「統治の基本秩序」というふうに言い直させていただいたということでございます。
○平野貞夫君 そうしますと、今の話に切りかえて恐縮でございますが、公共輸送機関の秩序を乱すようなことは「統治の基本秩序」じゃないですわね。入りませんですわね。
○政府委員(則定衛君) なかなか微妙な御質問でございますけれども、一般的に申しましておっしゃるとおりだろうと思います。
○平野貞夫君 もう一点、「暴動」という言葉がここでございますね。これは前のものにもあるわけですが、この「暴動」というのはちょっとどういう概念なのか教えていただけますか。
○政府委員(則定衛君) これは一般に多数人が結合して暴行、脅迫を内容とする行動をすることを意味しておりまして、「暴動」の人的な規模は、この刑法にございます騒擾罪におきます多衆集合では足りませずに、いわゆる朝態素乱の目的を実現する可能性を持つ組織的集団であることが必要であると解されておりまして、その結果一地方の静ひつを害する程度に行われることを要するというふうな理解でございます。
 その場合の暴行または脅迫といいますのは大変広い概念として使われているようでございまして、場合によりましたら殺人とか放火とか、こういったことに至りますものも含めていわば暴行というふうなとらえ方、つまり一般的な言葉で申しますと暴力的な行為といった意味でこの暴行の概念を理解しておると思われます。
○平野貞夫君 やっぱりこの内乱罪というのは、お話しのように、国家の統治機構、それから統治の基本秩序、こういったものに対する一つの攻撃といいますか、そういうものを前提としていると思いますが、最近のやはり犯罪の中で一番問題なのはテロ、あるいは毒ガスとかハイテクで武装化された、場合によっては軍事的など言ってもいいと思いますが、そういったものが日本だけじゃなくて世界各国に発生しておる。こういったものがなかなかこの内乱罪でもって、この七十七条で取り締まれるかどうかという問題が一つあると思います。そういう意味で、一昨日、最近の連続異常事件に内乱罪を適用する議論は現時点ですべきでないという御答弁はそのとおりだと思います。
 そこで、今、懸命に証拠による事実を捜査で集めていると思いますが、これもまた当局が大変な御苦労をなさっておりますが、現段階で逮捕とか捜査等そういったことで適用した法律あるいは罪名で、法務省が承知している範囲で結構でございますが、どんなものがあるか、御答弁いただきたいと思います。
○政府委員(則定衛君) いわゆるオウム真理教関連の一連の事件についてどのような罪名で検挙されているかということでございます。
 私どもが報告を受けておりますところからいたしますと、刑法の各罰条からいいますと、恐喝あるいは脅迫、監禁致傷あるいは誣告、犯人蔵匿等々十七つの罪名にわたっておりますし、特別法犯につきましては、古物営業法違反あるいは道路交通法違反等十四の特別法にわたっております。
○平野貞夫君 村山首相が二十日の衆議院の予算委員会で、際どい別件逮捕という非常に無責任な発言をしたんですが、今のお話がこれの実態の一部ではないかと思いますが、危機管理の最高責任者が、みんなが一生懸命本当に寝ずに捜査をしているのを、際どい別件逮捕なんというそれこそ違法な発言を総理がされるという、そういうところ自身に日本の法秩序がいかにまともでないかという私は非常に怒りを感じます。
 そこで、法務行政を所管する責任ある大臣として、村山総理の発言に対してはどんな感想を持っていますか。そして、本来なら注意を喚起すべきだと思いますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(前田勲男君) 総理の御発言をめぐってでございますが、まず法務省といたしましては真相解明がとにかく急務である。そこで、警察における犯罪捜査は法令に従いまして適正に行われておると聞いておるわけでございまして、検察当局におきましても、法と証拠に基づいて適正な捜査、処分を行っておるものと確信をいたしております。
 そこで、私もこの予算委員会に出席をいたしておりまして総理の答弁を聞いたわけでございますが、私が聞いた範囲では、法的にできる限りの捜査を尽くしているという意味の趣旨で総理は答弁されたものだと私は解釈をしておるところでございます。
○平野貞夫君 新聞によりますと、この発言を訂正したいということで、これは正式に私は知りませんが、軽微なという、そんなような表現に変えたいと。これまた、軽微な云々ということになると、余計私はまずいんじゃないかと思いますね。それは、やっぱり一つ一つの法律はそれぞれの目的を持って、それぞれの役割を持ってあるわけですから。
 ここら辺、現政府のやっぱり現在の日本の国の危機状況に本当にどんな感覚をしているかという、非常に私はもう悲しいぐらいでございます。もうこれ以上このことについては申し上げませんが、ひとつ大臣、そこら辺のことをよくお含みいただいて、国会議員の中にも怒りの声があるということを総理にお伝えいただきたいと思います。
 捜査に当たっている方は各方面の方がおるんですが、大変苦労されておるわけで、その苦労は私は理解できます。しかし、国民の目から見まして、私たちもそうでございますが、捜査の効果というのが、こんな事件ですから、何とか一日も早く、安心してと。東京に修学旅行を中止した学校が相当ございまして、こんなことは日本の近代始まって以来私はない状況だと思います。なかなか具体的に目に見えないものですから、テレビばかりがこれを報道するという、しかも、余り報道し過ぎて、なれちゃって危機感が逆に薄れているという傾向もあるわけですが、効果はひとつ問題があると思います。
 私は、効果が上がらない原因は、社会構造とかあるいは私たちの生活、それから技術の進歩、それから価値観の多様化という、物すごく変わったわけです、社会自身が。そういう変化に対して、危機管理、秩序を確保するという法整備が対応できていないところに私は原因があって、これは当局だけじゃなくて、政治、国会の責任の方が大きいと思っております。
 刑法の現代用語化ができましても、内容はほとんどそのままでございます。ここには弁護士の先生方がたくさんいらっしゃいまして、おしかりを受けるかもわかりませんが、せめて改正刑法草案でも早く成立していたら少しは違ったんじゃないかと、そういう私は個人的な印象を持っております。そういった観点から、今後の刑事法規の整備についてどのようなお考えをお持ちになっておられるか、お聞きしたいと思います。
○国務大臣(前田勲男君) 先生御指摘のとおり、社会の複雑化、高度化、国際化、また価値観の多様化等、犯罪情勢は全般に大きく変化をいたしておりまして、捜査に対する困難化等も身にしみておるところでもございます。こうした環境の変化に対応して、刑事司法の目的を的確に果たし得るように常に努力をしていくことが責務であろうと考えております。
 刑事法制上の整備につきましては、こうした観点から、社会や犯罪情勢全般の変化を踏まえて、冷静かつ慎重、また総合的に検討をしていかなければなりませんし、とにかく現行法で何が不備で不足しているのか、こうした点などもよく踏まえて取り組んでまいりたいと思っております。
○平野貞夫君 一月の阪神・淡路大震災のときもそうでございましたのですが、危機管理というのはやはり、この危機というのはやっぱり避けられないと思うんです、我々が生きている限り。したがって、その危機が起きたときに被害をいかに最小限に食いとめるかというのが、これが大事なことで、そのためのシステムというか体制、これが必要なわけですが、これが政治のやっぱり一番大事な役割だと私は思っております。そのために我々は税金をちょうだいして活動しているわけですが、そのためにはやはり事前の情報収集とか、それから分析、予測、準備、訓練等本当にいろんな積み上げ方が必要だと思いますが、同時に、その発生したときの対応も非常に大事だと思っております。
 そこでお尋ねしたいのは、今回のこの連続異常事件でもって閣僚レベルで、事務レベルでは当然あると思いますが、閣僚レベルで対策本部とかそれに類似した機関をつくられたでしょうか。あるいはつくられていたら、何回、どのような活動、協議をなされたか、お答えいただきたいと思います。
○国務大臣(前田勲男君) 今回のこのサリン事件等に対して、社会に重大な不安と脅威を与えて市民生活の平穏の確保に支障を、もう既に先生御指摘のとおり修学旅行等も東京には取りやめられたというような現況にかんがみまして、まず何よりも関係行政機関相互間では緊密な連絡を確保するという観点で、犯罪防止、再発防止を図るためにも、四月六日に内閣にサリン問題対策関係省庁連絡会議が設置をされております。これはまさに法務省からは刑事局長が参加をいたしておるというようなことでございますが、この協議会を設けており、協議会自体は二回にわたり開催をされております。
 協議会の中身は御質問ではございませんで、閣僚レベルでどういう対応をしておるのかと、こういう御質問でございます。
 そこで、閣議あるいは閣僚懇で常に自治大臣等々から報告を受け協議をいたしておるところでございますし、またそれぞれ関係閣僚間におきましても緊密な連絡を取り合って万遺漏なきように対処をいたしておるところでございます。先生御指摘の閣僚レベルの対策会議というものは、まだ現在設置はしておりません。
○平野貞夫君 私、今お話を聞いておりまして極めて不十分だと思います。
 問題をサリンに限定することの問題もあると思いますが、今さまざまな、外国からの武器購入とかそういうことが報道されておるんですが、そういう意味では私はやっぱり異常事件というのはもうちょっと包括的にとらえるべきだと思います。サリンだけに限定すべきじゃないと思います。これだけの国民生活の危機、国家秩序の危機に対して政治家、いわゆる閣僚レベルでそういう相談する機関がつくられていないというのは、これは法務大臣に文句言ってもいかないと思いますけれども、これはやっぱり総理大臣の見識を疑いますね、本当に。
 今や戦争ですよ、日本は。見えない敵、まあ見えているかもわかりませんが、そういう自覚を私はぜひ持ってもらいたいと思いますね。要するに、この異常事件は通常の犯罪と違うと思うんです。先ほど申し上げましたように、ハイテクを使った、これはこれから調査するでしょうけれども、捜査するでしょうけれども、武装化、軍事的な活動をするという可能性もあります。しかも、外国とつながっているんじゃないかという見方もあります。
 これは私は、やっぱり政治の対応は物すごく大きいと思う、大事だと思うんですよ。そういう意味で、私も国会議員ですけれども、残念ながら大変、文句言うばっかりで活動はしておりませんが、政治のこういうものに対する対応の仕方のまずさが各種の選挙で無党派層をふやす一つの原因だと私は思っております。本来なら国会だって国会決議ぐらいやって政府を叱咤激励する、そして当局も頑張れというぐらいのことを本当は国会としてもやらなきゃだめですけれども、どうもそういう動きにもならぬ。本当に日本人のモラルの空洞化の現象だと私は思っております。
 このような状況の中で、私は、一部報道されております破防法の適用、先輩議員が先般御質問されたと思いますが、これにもやはり限界があると思います。やはり市民社会に対する攻撃というものに対して法秩序をどうするかというものが私は一本抜けていると思います。国家の機構とか、今までの大体この種の犯罪というのは、治安当局をぶっつぶせとか、大学の管理者をぶっつぶせということでやられているわけですけれども、こういう市民社会に対する無差別、こういったものはやっぱり率直に言って法制度ができていないと私は見るべきだと思います。
 そういった中で、法務省、特に公安調査庁の役割は私はまた改めて見直すべきじゃないかと思っております。与党の一部から出ております縮小とか整理というふうな話は、とんでもない話だと思っております。むしろ新しい機能を持たせるべきだと私は思っておりますが、大臣の御所見をいただきたい。
○国務大臣(前田勲男君) その前に、閣僚会議を持つべきだという御指摘を先生からいただいたことを大変ありがたく承っておりますが、閣議、閣僚全体で実態解明に向ける対応、またサリンのみならずこうした危機について閣僚全体で熱心に議論をしておりますということを御報告だけ申し上げておきたいと存じます。
 そこで、公安調査庁の果たすべき役割は極めて今日大きくなっておる、整理、縮小、統合等は不適当と、大変御理解またありがたい心強い御意見をいただきまして、感謝を申し上げております。
 まさに先生御指摘のとおり、内外情勢は大変複雑に流動化しておりまして、従来では全く想定できなかった形での事件が発生をいたしております。もうまさかというのはない、まさかは常にあるんだ、こうした気持ちで法秩序維持に私ども努めていかなければならないと改めて決意を新たにしておるところでございます。法秩序維持に大きな脅威となっております、公安調査庁につきましても、こうした情勢の変化を視野に入れまして、やはり時代に対応した組織にしなければならないというような観点も含め、現行の組織体制を最大限に機能させ、そしてまた幅広い観点から情報収集活動の充実強化に努めるとともに、やはり内部体制などもよく考えていかなければならないという気持ちで私もおるところでございます。時代に即応した役割を果たしていける公安調査庁に努めていく決意でございます。
○平野貞夫君 最後にいたしますが、これは御答弁は結構でございます。
 一連の異常事件というのは、私は日本の議会制民主主義に対する挑戦だと思っております。そういう意味では憲法体制に対する挑戦でもあり、また逆に言えば憲法体制が崩壊しかかっているからこういうことが起こると思っております。
 そこで、個々の特別法とか刑法のいろいろな各法でいろいろ捜査をし、事実関係、証拠を集めるわけでございますが、そういうデモクラシーに対する挑戦というものに対しては、私はやっぱり最終的にはその証拠をもとにマクロなものでおさめなきゃこれはやっぱり日本の国家の崩壊につながると思います。そういう意味では、これは答弁は要りませんが、内乱予備罪ぐらい、あるいは時間はかかるでしょうけれども、こういうことを再び起こさないために破防法の適用もやっぱり線上に入れて十分法務省として対応されるよう要望いたしまして、質問を終わります。
○山崎順子君 平成会の山崎順子です。
 御存じのとおり、刑法は一九〇七年に制定されたわけですけれども、そのときの帝国議会の構成員は当然全員男性でございました。その上、帝国憲法下の裁判官にも法律学者にも、残念ながら女性は一人もおりませんでした。
 それで、強姦罪の暴行、脅迫といった程度というのがあるんですが、その程度を確立、確定しました最高裁判所の裁判官もそのとき全員男性でございました。
 それで、今回刑法の改正は、表記と、尊属加重の廃止とか、瘴唖者の問題とかいろいろございますけれども、刑法ができたときに女性の権利の視点というものが欠けていたのではないかという点につきまして、強姦罪のことできょうは御質問させていただきたいと思っております。
 まず、理事会の承認を得まして皆様に資料を配らせていただいたんですけれども、これをごらんになりますと、強盗罪と強姦罪の量刑が随分遣うんじゃないか、不均衡なんじゃないかということがあるんですけれども、強姦の方が強盗罪よりも軽いんですね。もちろんこれは、百七十七条と二百三十六条で懲役の刑期を、それぞれ、「二年以上」と「五年以上」というふうに違いますので当然かもしれませんけれども、性的な自由といいますのは人間の尊厳にとってかけがえのない自由だと思うんですが、なぜそれよりも財物とか財産的利益の方を重く保護した量刑になっているのか。この辺おかしいとお思いにならないでしょうか、お答え願います。
○政府委員(則定衛君) 大変お答えするのに難しい御質問でございまして、御指摘のとおり、刑事裁判におきましては、まずもって法定刑の枠内でと。それぞれの案件に即して適正な量刑がなされているということになると思いますが、既に御指摘のとおり、一つはやはり強盗罪と強姦罪におきましては法定刑の下限が二年と五年という差があると、上限についても同様ということでございますけれども。それともう一つは、何といいましょうか、強姦罪等におきます犯罪の被害者と犯人とのいろいろな態様その他微妙なところもこれありまして、なかなか一概に軽過ぎるというふうなことではないのかなというふうに思っております。
○山崎順子君 それでは、強姦罪の保護法益といいますか、どういう利益を守るためにこの強姦罪があるのか、ちょっとお答えください。
○政府委員(則定衛君) 強姦罪につきましては、一般的に個人の性的自由ないし貞操を保護法益とするというふうに考えられております。
○山崎順子君 この「強姦罪」や「強制猥褻罪」といいますのは、刑法第二十二章の「猥褻、姦淫及ヒ重婚ノ罪」の中に置かれているんですけれども、その次の二十三章といいますのは「賭博及ヒ富籤二関スル罪」、二十四章は「礼拝所及ヒ墳墓二関スル罪」と続いておりまして、これらは社会的法益の中の道徳的秩序に対する罪の一部というふうにとらえていいんじゃないかと思うんですね。
 それですと、刑法で強姦罪をつくった立法者はその当時、二十二章の罪というのは性秩序ないしは健全な性風俗を保護法益と考えていたということがわかると思うんですけれども、当時、戦前の家父長制思想のもとでは、性秩序を乱すこと、女性に貞操を守れということであって、女性が貞操を守り、貞操なんという言葉もあれですが、二夫にまみえぬという、こういう言葉もあるんですが、ことによって初めて維持されるという、そういうことだったと思うんです。
 今は、現行憲法が基本的人権の保障を定めることになっておりますから、当然、強姦罪の保護法益は女性の性的自由でなければならないと思うんですけれども、どうもこの二十二章にあるということは、それから、その後の裁判での強姦罪をつけるかつけないかというそういったところを見ておりますと、個人の保護法益、個人的法益に対する犯罪というのは建前ではないかと。性的自由というものが現実に守られていないのではないかというふうに考えるのですが、いかがでしょうか。
○政府委員(古田佑紀君) まず、お尋ねの中の前段の、なぜいわゆる社会的法益と呼ばれているところに強姦罪の規定が設けられているかということでございますが、これ実は沿革的に見ますと、もともと強姦罪はいわゆる公然猥褻罪とかそういう性風俗に関する罪とは別に、身体的自由に関する罪として整理されていたわけでございます。
 それが旧刑法の時代でございまして、それが現行刑法になったときに現在の位置に変わったわけですが、この点につきまして当時どういうふうに考えていたのかということが必ずしも資料的にはっきりしないところもあるわけですが、推測で申し上げて大変失礼ではございますものの、要するに性関係に関する罪ということをここでまとめたというふうに理解する方が適当ではないかと思うわけです。
 国家的法益、社会的法益、個人的法益というふうなこういう分類というのは、実は現行刑法ができました後に、いわば学説的に分類されてきたという経緯もございまして、必ずしも今、その章の位置だけで御指摘のようなことになるとは限らないと思っているわけでございます。
 それともう一つは、性的自由の方が薄いのではないかという問題でございますが、これは確かに強盗と比較した場合にそういう面の御指摘もあるかと思うわけでございます。ただ、これ別に、生命犯という、身体犯というふうに考えますと、実は傷害致死の刑と同じでございまして、決してもともと軽いというわけではないわけで、強盗が重いんではないかという意見もまた逆にあるわけでございます。
 いずれにいたしましても、実際、強姦罪等につきましては、いろんな被害者の事情等も考慮いたしまして、実務上十分その辺を配慮して運用していることは間違いないと考えております。
○山崎順子君 前田法務大臣にお伺いしたいんですけれども、今この百七十七条は、「暴行又は脅迫を用いて十三歳以上の女子を姦淫した者は、強姦の罪とし、二年以上の有期懲役に処する。」となっているわけですね。この二百三十六条も目的のところが違うだけで、「暴行又は脅迫を用いて」までは同じなんですね、「他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。」と。
 先ほどの質問になるんですけれども、強姦の方が「二年以上」で強盗の方が「五年以上」という、今お答えでいろいろ、こちらの強盗の方が重過ぎるんじゃないかという意見もあると、先ほど同僚議員の方からもそんな質問もございましたけれども、確かにそういうこともあるとしても、大臣は、先ほどの質問に返るんですが、人間の尊厳にとってかけがえのない自由である性的な自由よりも、財産とか財物、物の方を重く保護しているということ。
 レイプされて自殺した女性はおりますけれども、私は、自分の家の物を強盗されて自殺したということは聞いたことがないんですね。やはりレイプされた方がその被害者にとっては大変に重いものだと思うんですけれども、大臣の個人的な御意見で結構なんですけれども、どちらが人間にとってかけがえのない価値だとお思いになりますでしょうか。
○国務大臣(前田勲男君) どちらがかけがえがないかとお問いでございますと、人間の尊厳があって初めて物の尊厳が出てくるという順番であろうと思います。
○山崎順子君 そういう意味では、ぜひこの強盗罪と強姦罪の不均衡の是正ということを刑法の改正の中でしっかり考えていただきたいなと思っております。
 それからもう一つ、強姦罪といいますのは十三歳というところで、年齢で十三歳以下の場合、その場合は、相手が抵抗したかどうか、それから暴行、脅迫を用いたかというようなことは余り関係なく、同意したか同意してないかも関係なく強姦罪になるわけですけれども、問題は、「暴行又は脅迫を用いて」というふうに書いてあるんですが、これはどういう程度かということは、もちろんこの刑法には書いてないんですが、暴行、脅迫の程度ということが大変無罪か有罪かというときに問題になっております。
 それで、夜遅く歩いていた君が悪いんじゃないかとか勝手にそんな男についていったのがいけないとか、大抵の場合、物をすられたとか盗まれたとかというときに、普通、それはあなたに油断があったから、すきがあったからだと言って被害者の側を責めたりはしないと思うんです。加害者がどういう犯罪を犯したかという点にだけ焦点を当てて罪というものが決定するものだと私などは思っているんですけれども、強姦の場合は違うんですね。もう被害者が徹底的に責め立てられると。なぜそんな、それも夜道を歩いていたからだめだとか、肩に手をかけられて松林の海の方に行って、それでもう君は強姦されたのを同意していたなんていうふうな犯罪の判例まであるんですけれどもね。
 そこで、女性の意思というものが全く問題にされないで、逆にどれだけ抵抗したかということが問題になって、よほど生命の危険にさらされるまでの抵抗をしなければ、そういった相手の犯行を著しく困難にする程度の抵抗でない限り無罪になってしまうというような、強姦罪が適用されないなんということがございます。
 これについてちょっとお伺いしたいんですが、この暴行、脅迫を用いてということが、必ずこの強姦罪を適用するときに必要だと思われますでしょうか。
○政府委員(古田佑紀君) 私の方であるいは御質問の真意を必ずしも把握できない御答弁をすることになるかと思いますが、やはり人を処罰するということでございますので、明確な形でいわば違法なこと、悪いことだということが立証できるということが必要なわけでございます。
 そういう意味で、この強姦罪の場合には、要するに女性の方にまあいわば基本的に自由な意思決定によって同意をした場合には、もちろんこれを処罰するということはあり得ない性質の話でございます。じゃ、そこで一体、どういうふうなところまでいったときに違法な行為として刑罰を科するのかというところの区切りの問題があるわけで、そういう点から、当然ながら意思決定の自由を制圧している、そういうふうなことが認められる暴行、脅迫というものがあったときに処罰すると、こういう考え方で強姦罪というのはできているというふうに思っているわけでございます。
○山崎順子君 この「暴行又は脅迫を用いて」というものがあるがゆえに、本当に命の危険にさらされるような形にまで抵抗をしないと落ち度があったというふうに責められるわけですから、ほとんどの人が警察にも通報しなかったり裁判に訴えるということもしないという、今泣き寝入りの状態の方の方が圧倒的に多いんですね。
 今、女性の自由意思があったとすればもちろん強姦罪にはならないとお答えになりましたけれども、女性の意思で嫌だということだけでは足りないとお思いになっているということでしょうか。
○政府委員(古田佑紀君) 嫌だというのがどういうふうなことなのかという問題なんですけれども、要は、無理に姦淫をするということがどうしてもやはり必要なんじゃなかろうか。その無理にという点をどういうふうな場合に無理にと考えるのか、それが人を処罰するという刑罰法規との関係で明確なものでなければならない、そういうふうなことがどうしても出てくるんだろうと思うんです。
 そういうところで、例えば先ほどお話の中にありました十三歳未満の場合には、これは一切そういうことはない。これは、そういうふうな意思決定というのを十分できるようなものではない。そういうようなときにはもうその同意とかそういうことを問わずということになっているわけで、それと似たようなものとしては、例えば睡眠中でありますとか、およそそういう自由な意思決定というのが考えられないというふうなものにつきましては、これはまた別途、暴行、脅迫を使わなくても強姦罪だということにされているわけです。
○山崎順子君 一つちょっと、強姦救援センターというのがございまして、電話で強姦された人たちの相談を受け付けてもう十年以上やっているところなんですけれども、そこで支援を私などもしておりますけれども、弁護士さんたちで。いろいろ相談を受けておりますときにこういった、もちろんこの人は警察にも言っていないし告訴もしていない人なんですが、ちょっと読ませていただきますね。「私はどうしても生きて帰りたかったのです。抵抗してみてもナイフを持っている男にかなわないことは、はっきりしていました。明日の朝、この車の中で殺された私が放り出されているかもしれないと思いました。男は「オレの言う通りにしなければ殺すぞ」と、私の首にナイフをつきつけて言いました。私は「わかったわ」と、生きて帰ることだけを考えました。後はすべて男の言う通りにしました。服を脱げと命令されて自分で脱ぎました……」こういう陳述というか相談の場で話された言葉があるんですが、こういった女性は大変多いんですね。当然、殺されるかもしれないという恐怖感で抵抗しないケースもたくさんあると思います。
 そうしたときに、嫌だということがわからないとおっしゃいましたけれども、嫌だというだけで、やめてくれとか逃げようとして例えばブラウスを引きちぎられて破れたというケースでも無罪になっているものもあるんですね。そうしますと、その中で、身をよじったときにブラウスが切れたりすることはあり得るし、ごく通常の性行為の中でも身をよじることはあり得るという、そういうことを裁判官が判例で言っているわけですね。
 そうすると、本当に私なんかは、強姦救援センターやそういったところでやっている女性たちはみんな、へえ、そうすると裁判官というのは、申しわけありません、もちろん全員の方のつもりではありませんけれども、通常そういった、ブラウス、着衣が破れるようなそういった性行為をなさっておるのかしらとみんなで大笑いしてしまったんですけれども。
 そういった貧しい性的な関係から、個人的にはそれでもいいかもしれませんが、それでケースを裁くということは許されないことではないかと思っているんですね。それもこれも厳密に、被害者だけじゃなくて加害者の方が本当にその加害者なのかということを公正に裁判しようというあらわれかもしれませんけれども、そのときに、今の「暴行又は脅迫を用いて」というような一文があるがゆえに、生命の危険を冒してまでの抵抗ということが必要になってくるんじゃないかと思われます。
 これはアメリカ等でも今まで、女性というのは夫の財産とか物というような考え方がありまして、またそれから夫婦間ですから強姦罪が成立しなかったというか、またその強姦でやはり女性の側が自分の貞操を守るためにどれだけ抵抗したかと、それで死んだ方が逆にいいというようなところがあって、どの国でも強姦罪というのは不備だったんですけれども、ミシガン州がまず客観的な基準をつくりまして、それによって加害者が何をしたかということだけを問う形になって、被害者が同意したかどうかとか抵抗したかどうかということは不要になったんですね。
 こういったことを受けて、アメリカではもう三十五州がそういった改正をしておりますし、他の国々でも強姦罪の見直しがどんどんなされている状況ですので、決して日本だけそういうことができないということはないと思いますので、ぜひこのあたりのことも刑法改正の中で加害される側の、被害者の側の女性の立場に立った検討をしていただきたい。そういったときにぜひ女性を委員に入れていただきたいなと思っているわけですが、その辺については、前田大臣、いかがでしょうか。
○政府委員(則定衛君) 大変貴重な御指摘が幾つがあったかと思います。また、そういう外国立法例というものにつきまして今後、実は私ども現時点におきまして必ずしもその辺についての資料を持っているわけじゃございませんけれども、よく勉強してまいりたいと思います。
 そもそも強姦罪といいますのは、一般的に女性いわゆる被害者側の性的自由なり貞操というようなものを保護するということでございますから、仮に裁判の実情がその女性の方々に、非常に女性側に過酷であるというふうな印象を与えるとするならばこれは決して好ましくなくて、また法的に考えるべき点があればこれはまた考えてみないといけないというふうに受け取りたいと思います。
 ただ、ミシガン州等の法制の御指摘内容から受けますところは、いわゆるアメリカ法制といいましょうか、いろいろ推定的事項をたくさん規定しているのではないかという点がございまして、これが我が国の伝統的な刑法の構成要件的なものとなじむのかどうか、この辺につきましてもやはり検討する必要があるのかなという感じは持っております。
○山崎順子君 そうしますと、ちょっと一つ、告訴までの期間を六カ月と決められておりますけれども、これについては適当とお思いになっているでしょうか。
○政府委員(則定衛君) 強姦等の親告罪につきます告訴が訴訟条件とされているわけでございます。ということは、刑罰権が行使されるか否かが結局私人の意思にゆだねられているということでございますので、原則として告訴をなし得る期間を一定の期間を設けませんと法的に不安定な状態が長期にわたって継続するということになるわけでございまして、これは反面、被疑者の人権の保障を図る上からも適当でないということから告訴期間が設けられているわけでございます。
 ところで、現在、「犯人を知った日から六箇月」とされている告訴期間は、告訴をするかどうかの判断をするに当たって一般的に不当に短いということは言えないのではないだろうかというふうに考えておるわけでございます。
○山崎順子君 その相談センターの方には六カ月を過ぎてから結構ありまして、告訴したいというような、でもできないということがあって、それを今、被疑者の側の人権という問題もあって六カ月と。余り長くしてはいけないというふうにおっしゃいましたけれども、被害者の側がその六カ月間相当に悩んで、すぐに怒りとかという形が出ないで、もうショックを受けてどうしていいかわからないようになってしまうというようなこともあって、怒りとか告訴したいと思うようになったり人に相談したりというのは相当期間を置いてからということがわかっております。
 そういったことからすると、その六カ月という期間は短いのではないかということも考えられますし、またこういった期間を定めなくてもいいのではないかということもありまして、この辺もぜひ御検討いただきたいと思っております。
 もう一つ、十三歳で切るという、この十三歳という年齢についてはどうお考えでしょうか。
○政府委員(則定衛君) 先ほども若干議論になったわけでございますけれども、これまでの日本の子女の生育ぐあいということから考えますと、十三歳未満という方々についてはやはり一般的に精神的に未熟である、したがいまして、姦淫につき承諾ないしは同意を与えるにつきまして十分な能力を一般的に持ち合わせていないのではないかと。そういう考え方から、その同意が仮にありましても意に反する姦淫と同様に評価するということで、従来からそういう十三歳未満の者につきましては仮に同意があっても強姦罪になる、こういう考え方で法律が規定されているというふうに受けとめております。
○山崎順子君 改正刑法の中には十四歳でいいのではないかというのもございましたし、それから婚姻年齢等もありますし、高校への進学率が九五%以上なんというような状況の中では十三歳というのは低いかなと私などは思っておりますので、その辺も御検討いただければと思います。
 それで、ちょっと法務省はまた後にさせていただきまして、警察の方にお伺いしたいのでございますけれども、警察の犯罪白書などを見ますと、一九九三年の場合に強姦認知件数は千六百十一件、検察庁の処理が千四百三十件で、そのうち起訴は七百六十七人というふうに半分ぐらいになっているんですけれども、この強姦認知件数とか検察庁の処理などの件数よりも多分本来の事件発生件数は四、五倍とか十倍とかというふうにも言われているんですけれども、なぜ女性たちは警察に届けないのか、届ける人数がこれだけ少ないのかということについて、どういう原因があるとお考えでしょうか。
○説明員(篠原弘志君) 犯罪につきまして私ども全部掌握しているわけではございませんで、殺人等を除きましていずれも暗数があるわけでございます。私どもは、その暗数についての調査というものはなかなか難しい点がございますけれども、一般的には、やはり性的被害に遭った場合につきましてなかなか訴え出にくい心理という点が働くのかなというふうには幾分かの推測はしておりますけれども、特にこの点についてちょっと、過去に調査があったかもしれませんが、私どもの方は詳細な調査については承知しておりません。
○山崎順子君 強姦の被害に遭った女性たちは、また警察に行って逆に根掘り葉掘り聞かれて、そこで二度目のレイプに遭ったみたいだと言っている方たちもいらっしゃいますし、その警察での事情聴取というものが、その被害者の心情とか不安、怒りとか、パニックの状態にきちんとした対応ができているのかということが大変心配なんです。
 一九九四年九月に、日本の女性の現状についての国別報告を国連に日本政府はもちろん提出しておりまして、その中に、これは「女性に対する暴力の根絶のための取組」という形で、「警察における教育訓練については、警察学校や職場における教育訓練の機会をとらえ、警察官に対し必要な教育を行っている。」とあるんですけれども、どういった教育をしていらっしゃるのか、また、その事情聴取などはどういった形で女性被害者に対して二度目のレイプだと思わせないような配慮をしていらっしゃるのか、お伺いしたいと思います。
○説明員(篠原弘志君) 私ども、被害者、参考人に対する事情聴取につきましては、学校教養あるいは職場での各種教養の機会をとらえまして、被害者の立場に立った事情聴取、特に事情聴取の場合の場所の選定とか被害者のプライバシーの保護など相手の立場に配慮した捜査活動を行っておるところでございます。また、特に女性の性的被害者の場合につきましては、必要な場合に婦人警察官の事情聴取を進めるというようなことなどをやっております。
 また、ちょっと前段の方の御指摘で根掘り葉掘りということがございましたけれども、現在いろいろ無罪等の判例などを見ておりますと、単純に暴行とかそういったものがあった場合には特に問題はないわけでございますけれども、そういった肉体的な暴行がなされていない形での自由な意思決定を奪ったような形での形態の場合、やはり単純にその行為自身ではなくて、その前後のいきさつに至るまで裁判において詳しく認定をされるということがありまして、私どもの方としてはやはりそういった前後のいきさつまで一応調べなければいけないという点がございます。
 これにつきまして、被害者の方がそういうふうに見られるということであれば、私どもの方もより一層そういった点に気をつけて指導していきたいというふうに思っております。
○山崎順子君 先ほど起訴率が半分ぐらいだと言いましたけれども、例えば先ほどの中で、女性の側にも落ち度があるんじゃないか、過失があるんじゃないかというふうに言われて、それで告訴の取り消しを勧められるようなケースも結構あると聞いているんですが、それについてはいかがでしょうか。
○説明員(篠原弘志君) 私ども警察の方から告訴の取り消しを勧めるということはあってはならないことですし、またそういった事例については特に聞いておりませんが、ただ実際に告訴の意思の確認をする場合において、やはりいろんな面で心理的なちゅうちょを行うという場合があり得るかと思います。
○山崎順子君 その事情聴取のときに、女性の側に大変な落ち度があったからだというような、被害者を責めるような言い方はされないような、そういった教育をもちろんしていらっしゃると思いますけれども、ぜひともそういった被害者の側に立つ、どんな心理状況になるのかといったような教育を徹底させていただきたいことと、それからやはり女性の性的被害者に関しては女性警官をつけていただくというふうな形にしていただきたいと要望して、もう一つ、法務省の方に戻らせていただきたいんです。
 今回の尊属加重規定の削除なんですけれども、これは刑法二百条が違憲とされた昭和四十八年の最高裁で審理されたケースですけれども、この資料を読ませていただきました。十四歳の実の娘を父親が強姦して、以来十五年間姦淫行為を続け五人の子供まで産ませてしまったという、これは大変な暴力をもって人の幸福を踏みにじる、人権も奪うというこういったケースでございます。
 私は、そういった場合に尊属の加重規定を外すことは当然のことだと思っておりますけれども、その前に、十五年間もなぜ実の娘がこういった行為を受け続けてきたのに対処できなかったのかなということがありまして、その近親姦に対して、近親相姦という言葉がありますけれども、これは決して私は相姦ではないと考えておりますので近親姦と呼ばせていただきますけれども、近親姦に対する処罰規定が不備なんじゃないかというふうに考えられるんですが、いかがでしょうか。
○政府委員(則定衛君) 強姦罪は犯罪の性質上、起訴によって事柄が公になると被害者のプライバシーが害されるということから、精神的苦痛等を与えることが多いために原則として被害者の保護の観点から親告罪としておるわけでございますが、お尋ねは、仮に未成年で親権者が加害者であるという場合に告訴されないのではないだろうか、こういうことだろうと思います。
 ただ、その場合には、被害者の他の親族が独立しまして告訴をすることができるということが刑事訴訟法二百三十二条に規定がございまして、その母親なりあるいは祖父母なり、そういった近親者たる親族から適切な対応があればこれはやはり刑事上の処分ということも十分可能な法制になっていると思っております。
○山崎順子君 一九八九年の発表なんですけれども、これは全国児童相談所長会の発表で、前年の一九八八年四月からの半年間で、親またはそのかわりの保護者も入りますが、から虐待を受けた子供というのは千三十九人おりまして、その中で性的な暴行を受けている子が四十八人もいるんです。
 先ほどの、十四歳で強姦されて以来十五年間もというそのケースもそうですけれども、親告罪で幾ら親権者である母親なりがといっても、やはりそれは、その人の夫でもあるわけですし、なかなか外には出さないと思いますので、ここの今の児童相談所の方でわかったケース以上に性的暴行とかというものはあるんではないかと思うんですね。現実に私が十六年間離婚相談を受けてきました中にも、夫と子供がというようなケースはかなりございましたので、それでも警察にも言っていないしということもございました。
 やはり私は、子供を守るという側からいけば、逆に近親姦というものを処罰する、これは重罪として刑法に入れた方がいいのかなということを考えるわけで、もちろんいろんな御議論があるかもしれませんが。先ほど、アメリカとは法律のあれが違うとはおっしやいましたけれども、アメリカでは近親姦の処罰は御存じのとおり大変重罪になっております。ただ、実際には刑罰として機能することは少なくて、一般予防としての意味が大きいと言われていると聞いておりますけれども、日本にそういったものがないというのは法律が許しているというふうに考えられてしまわないかと思うのですが、近親姦ということについて、刑法の中でそういったものをお考えになってはいらっしゃらないか、これから検討なさる余地があるのかどうか、お聞かせ願いたいんですが。
○政府委員(則定衛君) いわゆる法律の罰則をもって規制する範囲がいかにあるべきかという大変深刻な問題にかかわる事柄であろうかと思っております。
 本来は、親と子の中でそのような近親姦が行われるということは、日本の伝統的な道徳観から申しましてこれは排除されるべきものということであろうと思います。現にまたそういうふうな見方が世間一般の国民に定着しているんだろうと思います。したがいまして、本来それらの問題は、健全な道徳また家庭の中における健全な親と子の間柄として当然保持されるべき規律であろうというふうに思っておるわけでございまして、あえて現時点で国家の法律をもってそこまで踏み込むのがいいのかどうか、これは相当慎重な検討を要する問題ではないだろうかというふうに考えます。
○山崎順子君 これで終わりますけれども、ことしの九月には北京で世界女性会議が開かれます。そのときの中心的な審議されるものというものには、女性に対する暴力の問題が取り上げられまして、二〇〇〇年に向けて各国が努力するということの項目の中に、「政府に対しては、家庭内暴力に対する処罰など、現存の法律の再検討、警官・裁判官等に対する訓練や指導、避難所その他の方策への援助、暴力に関する総合的な資料の収集」ということがございます。ぜひ大臣も、ほかの省庁とも一緒に協力して、女性への暴力根絶に向けて、その法律改正というところで、強姦のあたりももちろん含めてぜひ対処していただきたいんですが、一言だけお願いいたします。
○国務大臣(前田勲男君) 御指摘の点、私も問題意識を持っております。北京で間もなく会議も行われるようでございますし、国際会議の決議等も重く受けとめ対処してまいりたいと思っております。
○山崎順子君 終わります。
○翫正敏君 第七十七条について質問します。
 七十七条は、現代語に訳されているという以上に表現が相当変わっておりますので、その辺についての根拠とその要件、そういうことについて順次お尋ねしたいんですが、まず内乱罪の判例ですが、いわゆる五・一五事件に対する昭和十年の大審院の判例がございますので、この事件のごく簡単な概要と内乱罪の適用がどのようになっているのか、説明してください。
○政府委員(則定衛君) 御質問の五・一五事件でございますけれども、これは御案内のとおりでございますが、昭和七年五月十五日に当時の東京市等におきまして国家改造を志す海軍将校、陸軍士官候補生ら十八名、それと民間人二十名が手りゅう弾やあるいはけん銃等を用いて集団で敢行した事件でございまして、当時の総理官邸等を襲撃し総理を殺害する等々の犯行が行われたわけでございます。
 これにつきまして、大審院は昭和十年十月二十四日に、海軍刑法の反乱罪、具体的にこのときの被告人は民間人でございましたが、反乱罪の幇助犯ということで処断しております。内乱罪は適用されておりませんけれども、その判決の中で内乱罪の成否について言及しているということでございます。
○翫正敏君 その昭和十年の大審院の判例は内乱罪についてはどのように述べていますか。
○政府委員(則定衛君) ただいまの大審院の判例は、内乱罪の構成要件の解釈といたしまして、まず「政府ヲ顛覆シ」とは、これは「行政組織ノ中枢タル内閣制度ヲ不法二破壊スル如キコトヲ指称スルモノト解スルヲ相当トス」、制度そのものを破壊することを相当とすると。それから、「朝憲ヲ素乱スル」とは「国家ノ政治的基本組織ヲ不法二破壊スルコトヲ調フ」というふうに言っております。
○翫正敏君 そうすると、今回のこの刑法改正案でかなり文章が現行法から見て表現が変わっておりますが、これはこの大審院の判例を考慮した上で表現を直したと、このように理解してよろしいのでしょうか。
○政府委員(則定衛君) 御指摘のとおりでございまして、今回、内乱罪の規定を現代用語として書きかえますときには、ただいまの大審院の判示や、それからそれらをもとにいたしました関連の学説を踏まえまして、それらの理解の上に立って立案したものでございます。
 すなわち、「政府ヲ顛覆シ」につきましては、先ほど申しましたように、大審院の「行政組織ノ中枢タル内閣制度ヲ不法二破壊スル如キコトヲ指称スルモノト解スルヲ相当トス」という判示を踏まえまして、学説等も参照して、今回提案させていただいておりますように「国の統治機構を破壊しことしたものでございます。
 また、「朝憲ヲ素乱スル」につきましては、その文理的な意味が憲法の定める秩序を乱すことと解され、学説上も国家の統治の大綱、準則を不法に変革したり破壊することなどとされていますほか、大審院の判例が「国家ノ政治的基本組織ヲ不法二破壊スルコトヲ調フ」としていることなども踏まえまして、「統治の基本秩序を壊乱する」としたものでございます。
○翫正敏君 それで、現行法で「政府ヲ顧覆シ」ということがあって、それから次に「邦土ヲ僭窃シ」というのがあって、その次に「朝憲ヲ紊乱スル」ということがあるんですけれども、この三つの相互関係について述べていただくとともに、その後に「暴動ヲ為シ」という言葉が続いておりますが、これは要するにこの三つのことを、それぞれ、つまり政府を転覆することを目的として暴動する、それから邦土を僭窃することを目的として暴動する、朝憲を紊乱することを目的として暴動すると、こういうふうに読むのですかどうですか、お願いします。
○政府委員(則定衛君) 結論的には御指摘のとおりだと思います。「朝憲ヲ紊乱スル」ということが包括的な概念でございまして、「政府ヲ顛覆シ」あるいは「邦土ヲ僭窃シ」というのがその例示ということになっておると解されております。
 そしてまた、御指摘のとおり、それらのことを「目的トシテ暴動ヲ為シ」ということで、いわゆる目的犯であるということでございます。
○翫正敏君 この中でも特に、「政府ヲ顯覆シ」という言葉が「国の統治機構を破壊しこというふうに相当表現上変わっているわけですけれども、これも先ほどの大審院の判例に基づくという理解だけでよろしいんでしょうか。
○政府委員(則定衛君) 大審院の判例とその文理、それから学説等々を勘案いたしまして言いかえておるわけでございます。
 「政府ヲ顛覆シ」といいますのは、大審院の判例のケースなどもそうでございますけれども、単に内閣をいわば不法に強制的に交代させるとか首班を入れかえさせるとか、こういったことでは足りなくて、内閣制度そのものを破壊すると、こういうふうに理解されておるわけでございます。
○翫正敏君 ここでちょっと横道へそれるんですが、防衛庁の公正審査会の方に来ていただいておりますので、ちょっと一、二点確かめておきたいんですが、自衛隊がクーデターを起こすということを週刊誌で主張して首になった柳内伸作という人がおりますが、この人の現在についてお尋ねしたいんです。
 まず、本人のことですけれども、首になった後、公正審査会に審査を請求しているわけですが、それに関連して、文書を提出しておるのでちょっと確認してほしいと言われておるので確認させていただきます。
 平成四年十月二十日付の上申書のコピー、それから二番目が瀬間喬元海将補の手紙のコピー、三番目が平成五年一月二十七日付朝日新聞の記事のコピー、四番目が平成五年四月二十一日付毎日新聞の記事のコピー、こういうものを審査会に提出していると言っておるんですが、受け取っていますか。
○説明員(新貝正勝君) 今御指摘のありました四年十月二十日付の本人の上申書につきましては、本年の二月十日付の本人の反論書の添付書類としてこの上申書がついております。ただ、この上申書と申しますのは、一たん上申書ということで提出されましたけれども、本人に返却をされたものでございます。
 それから、瀬間元海将補の手紙のコピーというものにつきましても、平成七年二月十日付の本人の反論書の添付書類としてついてきておるところでございます。
 それから、五年の一月二十七日付朝日新聞のコピー及び五年四月二十一日付毎日新聞のコピーにつきましては、平成七年四月二十四日付の反論書の添付書類としてついてきているところでございます。
○翫正敏君 それで、柳内伸作本人は審査の公開を要求しておりますが、その理由は、自分が防衛庁を首になった原因がクーデターをするというようなことを週刊誌に書いたと。もう少し詳しく言えば、当時のことを思い出せば、金丸信がやめなければ自衛隊はクーデターを起こすんだというようなことを週刊誌に書いたと、そういうことなんです。
 クーデターといえば国民の生命、財産、生活に重大な影響のある事案でありますので、そういう真偽のほどというものは国民に公開されるべきであるというふうに主張しているんですが、審査会として、自衛隊法の訓令にある、本人は公開という言い方で言っていますが、訓令では口頭審理と書面審理に分けられておりますうちの口頭審理に当たるものだと考えますが、この口頭審理を行わない理由を説明してください。
○説明員(新貝正勝君) 一般的に申し上げまして、公正審査会におきましては、審理方式の決定について、書面審理の方が資料がすべて書面に記載されておりまして明瞭かつ確実であるということ、それから陳述者の陳述漏れ、聴取者の聞き落としがあり得ないということから書面審理を採用してきておりまして、御指摘の件についても書面審理方式が採用されたものと考えておるところでございます。
○翫正敏君 私が訓令を読む限りは、本人が口頭審理を望めば口頭審理になるように読めるんですけれども、そこはよろしいです。
 それから、本人は平成五年五月二十七日付に反論書を出した。平成七年二月十日付にも反論書を出した。同じく四月二十四日付にも反論書を出した。三回出しているけれども、回答として書類を出されたのは最初に出された一回のみで、その後、本人が平成五年五月二十七日以後今日に至るまで三回文書を出しているにもかかわらず、二年間にわたって一度も回答が出されていないということは非常におかしいというふうに言っているんですが、回答を出さない理由がありますか。
○説明員(新貝正勝君) 公正審査会というのは一種の裁判所のようなものでございまして、その中立性を保つということが要求されているところでございます。
 御指摘の事案に係る反論書に対する回答ということでございますが、これは公正審査会の審査の評議の経過にかかわることでございますのでお答えすることは困難でございますが、しかしながら、一般的に言いまして、反論書に対する処分者側の回答というものは義務づけられているものではございません。また、反論書に対する回答につきましては、審査が確定した段階でその結果について本人に通知することといたしております。そういうことで、これまでにそういうことをやっていないということでございます。
○翫正敏君 では、これからも審判というんですか、最終的な決定、そういうものが出るまでは回答書は出さない可能性が高いと、そういうふうに考えていいんですか。
○説明員(新貝正勝君) 恐らく、議決がありますまでにそういうふうなことになるということはないんではないかというふうに思っております。
○翫正敏君 どういう意味ですか。
○説明員(新貝正勝君) 回答書が出るということはないんではないかなというふうに……
○翫正敏君 出ないんですか。
○説明員(新貝正勝君) それは公正審査会の方で決めることでございますが、私自身がどうこう申し上げる立場にはないわけでございます。
○翫正敏君 わかりました。
 さっきの七十七条の条文のことに戻りますが、まず最初に、今度の改正では「国の統治機構を破壊しこと、こういうふうになっておりますので、これは具体的にどのようなことを指すのか例示をしてほしい、そういうふうに思います。
○政府委員(則定衛君) どのような事案がありますと内乱罪の個々の要件に該当するかは、これは現実の問題といたしましては、捜査機関が収集した証拠に基づいて具体的に判断すべき事項でございますけれども、若干典型的な事例を申し上げますと、「国の統治機構を破壊し、」につきましては、先ほど来言及されております昭和十年の大審院の判例が「行政組織ノ中枢タル内閣制度ヲ不法ニ破壊スル如キコトヲ指称スル」としておりまして、またその判例におきましては、議会制度の否認、軍政府の樹立などもその例示として挙げていると解される部分があります。
 したがいまして、「国の統治機構を破壊しこの具体例といたしましては、内閣制度や議会制度を破壊することなどが考えられます。もっとも、新たな政府を樹立する必要まではなくて、いわゆる無政府状態にすることもそれ自体要件に当たるというふうに考えられると思います。
○翫正敏君 次の「その領土において国権を排除して権力を行使しこという、この項目は具体的にどのようなことを指すのか例示していただけますか。
○政府委員(則定衛君) 先ほどのようなことで引き続き申し上げますと、学説上は、例えば地域や島嶼、島でございますね、一つを占拠し、独立国、解放国などにしようとすることなどが挙げられておりまして、そのような事例、すなわち一地域あるいは島などについて、暴動を起こすことによって日本国の主権を排除して、これを占拠して自分たちの独自の統治のための組織をつくり上げ、その地域について、いわゆる独立国と称して当該地域の住民を支配するような場合がその典型的な例として考えられます。
○翫正敏君 参考に七十九条の方を見ますと、ここに「兵器、資金若しくは食糧を供給しこというような言葉があって、「兵器」という言葉が出てくるんですけれども、兵器の所持とかその兵器の種類、そういうようなものは、その後に、今あった二つのようなことを目的として、「その他憲法の定める統治の基本秩序を壊乱することを目的として暴動を」するという、この「暴動」ということに関連してお聞きするんですが、そういう場合はその兵器の所持、それからその使用、それからその兵器の種類、こういうようなものはこの犯罪要件として入ると、どういうものがあるというふうなことが想定されていますか。
○政府委員(則定衛君) 結局、内乱罪の場合に、その一地方の平穏を害するに至れるような暴動を起こすということになるわけでございますので、その用意される兵器等につきましても、今申しましたような状態を惹起するに足り得る兵器の性質あるいはその量といったことが予定されているものと考えます。
○翫正敏君 所持ということでは暴動にならないという前提でよろしいですか、それは使われるということが前提ですか。
○政府委員(則定衛君) おっしゃるとおりだろうと思います。つまり、着手があったかどうかということになりますので、現実にそれらのものを用いるなどして一地方の平穏を害するに至る暴動を起こすということがありませんと内乱罪の既遂にはならないと、単に持っているだけでは足らないということでございます。
○翫正敏君 毒ガスというようなものは、ここに指摘されている兵器の中に入りますか。
○政府委員(則定衛君) 化学兵器の取り締まりにつきまして国際規制も出されているわけでございまして、いわゆる毒ガスの性質なりその使用の手段、方法なり等から見まして、もちろん兵器になる場合は十分あり得ると思います。
○翫正敏君 例えば、国の内外に向かって日本国とは別の国であると、この地域は別の国であるというようなことを高らかに内外に向かって宣言する、そういうようなことは要件に入るような感じが私はするんですけれども。暴動を起こさなきゃ、ただ宣言しただけでは要件にならないのはもちろんですよ。暴動をするというのが前提にありますが、その暴動の前にとか後に、そういう内外に向かって日本国とは別の国であるとかいうような、そういうことを宣言するというようなことも要件に入るような感じがするんです。これはどこに入るかというと、私は、「領土において国権を排除して権力を行使」するという表現の要件に入るんじゃないかなと思うんですが、いかがですか。
○政府委員(則定衛君) この内乱罪は目的犯でございますので、いわゆる朝憲を素乱する目的を持って暴動を行うと既遂になるわけでございます。
 現に、その地域について、自分たちが対外的に一つの国であるということを宣告するということは、必ずしもその場合必要ではないわけでございますけれども、朝憲を素乱する目的ということを認める上での一つの大きな徴憑になるかというふうに理解いたします。
○翫正敏君 自分は王様であるとか、それからその王様のもとに何とか大臣がいるとか、ある大臣がいる、こういう大臣がいるというような、そういう政府の統治機構のようなものを発表するというのは、そういうようなことも要件に加わるような感じがするんですけれども、そういうのはいかがですか。
○政府委員(則定衛君) 何といいましょうか、いわゆる犯意といいますか内乱罪の犯意、これ特に目的犯でございます。そういう認定の場合に、御指摘のようなことも含めて積極認定の一つの材料たり得るものというふうに考えられます。
○翫正敏君 終わります。
○委員長(中西珠子君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時三十分まで休憩いたします。
   午後零時五分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時三十分開会
○委員長(中西珠子君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、刑法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○紀平悌子君 本日は大変いいお天気でございます上に、ちょうどお食事後の昼下がりでございますので、多分皆様お疲れがほっと出たころだと思います。大変お聞きづらいというか、上手にうまく皆様が眠らないように言いたいと思いますが、うまくいけるかどうか、私自身非常に疲労こんぱいの中で申し上げますので、そこのところはお許しをいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 世に、古い言葉ですけれども、「よらしむべし知らしむべからず」という言葉がございますね。それはいわゆる封建時代のことでございましょうし、民主平和憲法以降はそういうことはあってはならないということではございます。しかし、私も何回か行政訴訟等にかかわりまして、判決文の非常に難しいというか、ぱっと読んだだけでは、これは違憲とは書いてあるけれども果たして違憲だからどうなのかということをそんなに瞬時に読み取るなどとはとてもできないということで、法律の文章というものはとかく難しく書くようにしてあるんだろうというひがみさえ持ったくらいなんです。
 それでございますので、今回のいわゆる改正は明治四十年以来八十八年ぶりという大改正ということでございまして、非常にこれはルビコンを渡ったというふうな感じがするわけでございます。これは大いに歓迎なのでございますが、せっかくルビコンを渡ったわけですから、ちょっと欲を出しましてお願いあるいはお伺いしたいことが幾つかございます。
 まず、今回は表記の平易化ということが重点的に図られたわけなんですが、まず刑法の条文そのものが大変素人の者たちには難しいんですね。基本法でございますので、また、どんな行為が犯罪になるのか、それからその行為がいかなる罰則であり、またいかなる行為がいかなる罰則に値するものかを決めるという日常生活に非常に密接な関係があるものだけに、もう少し内容と言葉での説明が詳しくてもよかったんじゃないかというふうに欲を出しているわけでございます。それについてどうお考えでございましょうか。
 これは参考人にもちょっとお伺いしましたら、若い人にはちょっとまだ難解でしょうねというような大方のお答えがあったようでございますが、法務省におかれましてはどんなふうにお感じになっていらっしゃいますでしょうか。
○政府委員(則定衛君) 御指摘のように、表記の平易化の程度の問題につきましていろいろと御見解があるかと思いますが、何分今回の改正作業は、できるだけ平易化を早期に実現する、そういうこととの関係上、条文をできる限り忠実に現代用語化いたしまして平易化して、内容の変更を伴う改正は原則として行わないという基本方針のもとで行われたわけでございます。
 ただ、そういう中で、例えば公正証書原本不実記載罪の客体に登記簿、戸籍簿などの例示を加えてできるだけわかりやすくとか、それから午前中に御審議いただきました内乱罪の要件につきましても、できるだけ意味内容を変えないでわかりやすくという努力もさせていただいたと思っております。さらにはまた、二百五十六条の「贓物」という言葉につきまして、これをできるだけわかりやすいように書きかえさせていただいたと思っておるわけでございます。
 ただ、何分現行の刑法の意味内容を変えないでという制約もございましたので、新たに書き起こす場合と違いましておのずから制約があったということだけは御理解いただければと思っております。
○紀平悌子君 今度は法務大臣にも、そして法務省にもお尋ねいたしますが、条文の順序なのでございますが、これは総則から始まりまして、その次が国家に対する罪、公益に対する罪などが来て、最後に個人に対する罪というふうに並んでおりますね。国民主権の新憲法のもとでの枠組みとしては、個人に対する罪というのがまずもって一番前に来ても不思議ではないというふうに素人考えいたしますが、それは条文の並べ方で済むことでございますので内容にはわならないというふうに考えますが、平易化と並べてそんなふうな並べかえというのも行ってもよかったんじゃないかと思います。
 こういうふうな意見は法制審議会では全然出なかったんでしょうか。また、今後の方針も法務省にお伺いしたいと思います。法務大臣はこの順列についてどんなふうな御感想をお持ちかということをお伺いしたいと思います。
○政府委員(則定衛君) 先ほどもお答えいたしましたように、今回の刑法の改正は、現行の規定をできるだけ忠実に平易化する、そうしまして合意の容易に達し得る範囲内において必要最小限の手当てをさせていただく、こういうことだったわけでございます。
 お尋ねの条文の並べ方といいましょうか、法益ごとにどういうふうに配列していくかという点については、御指摘のようなお考えもありますし、やはり本来国家というものがあって、そこで法秩序が維持されるというような観点で国家の法益の問題からという考えもこれあるわけでございまして、この辺になりますと相当人によって考え方が違う、法哲学的な分野にかかわる問題でございまして、そう短期に合意が成立する見込みが薄いという部類のものかと思います。したがいまして、今回、法制審議会におきましても、この条文の配列の問題につきましては、私ども提案をいたしました現行法の順序にのっとり書きかえるものという前提で御審議いただいたのが実情でございます。
○国務大臣(前田勲男君) 今回の改正は、できる限り忠実に現代用語化、平易化ということを主眼にして取り組んでまいりました。そうした観点から、刑法の条文をどう配列を変えるかという問題については、実はその対象としておらないという前提で取り組んでおります。
 ところで、現在、国家に対する罪、公益に対する罪、個人に対する罪という条文のいわば配列について、先生御指摘の御意見もあるということは私も十分に承知しておりますし、片やまた国民主権のもとに成立した国民共通のものであるという国家についての犯罪を規定することが順序として適当という御意見もあるわけでございまして、いずれにいたしましても、将来、条文の配列をどう見直すかについて御意見を賜りつつ検討していくべきであろうと、かように考えております。
○紀平悌子君 今回、尊属殺規定等が削除になるわけなんですけれども、昭和四十八年四月四日の最高裁大法廷の判決が大きなターニングポイントになったわけでございます。これは今から数えますと二十二年前でございます。他にも最高裁大法廷での判決、例えば違憲判決というものが現実に国会の中では変えられていないという問題はほかにもございますけれども、この場合の判決が今に至るまでそのままになっていたと。これはいろいろ資料も拝見はいたしておりますけれども、ほとんどというか全部議員提案ということで改正案が出ておりますようでございます。
 衆議院でも御質問はあったようでございますが、ここで、今回尊属殺規定が二十二年を経て改正されることに対する経緯、それから御所感というか、これは恐縮ですが法務大臣ということでお答えいただきたいと思います。
○国務大臣(前田勲男君) 経緯からまず申し上げますと、四十八年の四月四日に尊属殺人についての違憲判決がございました。法務省といたしましては、当時も直ちに尊属殺人事件の実態とこれに対する一般社会の司法機関への評価等を総合的に検討いたしまして、実は同条の規定を削除して、あわせて尊属傷害致死、尊属遺棄及び尊属逮捕監禁に関する規定も削除することが適当であると考えました。
 そのために刑法の一部を改正する法律案を同年、四十八年の国会に提出すべく準備をしておりましたが、当時国会の方、特に与党でございました自民党の了承を得ることができずに法案提出に至らなかったという経過がございます。顧みますと、四十八年でございますので二十年以上前、今日の国民的な家族意識等ともやはり変化が、二十年前でございますので世代間の構成等も今とは変わっておりまして、明治にずっとお育ちの皆さんも多かった時代でございます。そうした時代背景でもあったと思っておりますが、いずれにいたしましても、当時与党である自民党の了承を得るに至らなくて、法案の提出に至っておりません。
 その後、四十九年に尊属加重規定の削除を盛り込んだ改正刑法草案の答申を受けまして、各方面の御意見、批判を参考としながら政府案作成の検討作業を続けてまいりましたけれども、刑法の全面改正についてはこれもまた大変多くの意見、また反対意見も数ございまして、国会提出に至っていなかったところでございます。
 今回の表記の平易化のための刑法改正に伴いまして、かねてから懸案であった尊属加重規定の整理を行うということにしたわけでございますが、今るる申し上げましたこうした経緯、また議論を踏まえまして、法務省におきまして事案の実態や今日までの量刑の実情等の調査を行い、また種々の角度から検討を続けてまいりましたが、尊属に対する殺人等の事案の実態、量刑の実情の調査結果、法制審からも累次にわたり全部削除の答申があったことなどを踏まえまして、尊属加重規定を全部削除することが相当と考えてこの法案を提出いたしておるところでございます。この問題は家族観、倫理観とも深く関係するものであっただけに、やはり合意を形成するに至るには長年にわたった慎重な調査と種々の角度からの検討が必要であったという思いがいたしております。
 こうした観点から、今回の御提案はまさに国民に読んでいただき、わかりやすい法案改正の、あるいは今後あるべき刑法の改正に向けてのいわば改定作業の基盤作業を行うことができることになるであろうと、こうした感想を持っておるところでございます。
○紀平悌子君 この尊属殺という問題は非常に難しい問題で、種々意見がある。その人の立場立場によって、あるいは環境によっていろいろな考え方を国民はみんな持っていると思います。ですから、今もってこれについては御議論がまだ多分に残っているところだと思いますが、私、四十八年の最高裁の判決の記憶というものは非常に鮮明でございましたので、今回の御判断は一つの吹っ切れというか、新憲法の一つの具現だというふうに思ったわけでございます。二十二年という長い時間たったものだというふうに感じ、なおかつ人々の心の中にさまざまの思いがこれについては残るであろうし、それからまた時間をかけてそれを納得していく、あるいはそういう社会にしていくということが非常に肝要ではないかというふうに思っております次第でございます。
 大臣に全部答えていただきましたので、次に移らせていただきます。
 尊属殺と申しますと、金属バットで両親を撲殺した事件だとか、なかなか難しい背景のある、家庭の事情にもよって特殊なケースになろうと思われます。しかし、この逆の子殺しというのがあるわけですね、子供を殺す。いわゆる親子心中のケースもまたそれでございます、子供に意思がないのに心中するわけですから。また、チャイルドアビュースと言われる、親による児童虐待のケースがある。これはアメリカでは非常に顕著な例が出ておりますけれども、親権者からの児童に対する権利侵害行為も世の中には実はたくさんあるわけですね。
 これは、先ほどの山崎委員の御質問にもございましたようなケースと非常に似ておりまして、外になかなか出にくい。親が子供をどうしたっていいだろうという、親のものというふうな概念がまだまだ親の方に残っているケースがありますので難しい。ですから、児童に対する保護という立場から児童に関する権利条約もできている現在でございますので、実態把握ということについてどういうふうにお考えでいらっしゃいましょうか。
 法務省そして文部省にお伺いしたいわけなんですが、学校内も一つの世界でございますね。なかなか立ち入りはできません。その中における児童に対する教師の懲戒、ひどい懲戒ですね、それから児童の権利侵害行為、さまざまあると思います。心理的なものもあり体罰的なものもあると思いますけれども、これの実態把握というものを文部省がしておられるか。また、法務省は実態の把握を行う努力というか、あるいは既に行っておられるか。その点について、簡単で結構でございますので、お願いいたします。
○政府委員(筧康生君) まず法務省の人権擁護機関の方から申し上げます。
 私どもといたしましては、ただいまの委員の御指摘のような親権者と子供という、そういう直接的な観点から人権侵害という問題を取り上げたものがないわけでございますが、親の子供に対する人権侵害というのを酷使虐待、強制圧迫というような分類をいたしまして、統計的に整理をするなどしてその実態の把握に努めているところでございます。これらの類型に当てはまる人権侵犯事件というのは、毎年かなりの数の事件が人権擁護機関の処理の対象とされているという状況にございます。
 その原因の主たるものは、ただいま委員の御指摘がございましたように、子供を独立した人格として尊重するというそういう態度に欠如するということによるものが多く見られるところでございまして、私どもはことしの人権擁護機関の重点啓発目標として子どもの人権を守ろうというのを掲げておるわけでございますが、こうした中にはただいま御指摘のありましたような、子供に対する親からの広い意味での虐待という問題も取り上げて積極的な啓発活動を行ってまいりたいと考えております。
○説明員(石川明君) 御説明を申し上げます。
 学校関係でございますけれども、児童生徒の権利を侵害する教師による違法な懲戒ということにつきましては、体罰というものが考えられるわけでございますけれども、公立の小中高等学校につきまして、平成三年度から平成五年度におきまして、学校段階で体罰ではないかとして問題にされまして調査をされた事件数というものを私どもの方で毎年調査をしておりますが、これにつきまして申し上げますと、平成三年度で八百五十五件、平成四年度で六百九十八件、そして平成五年度で七百八十件という数字になってございます。
 そして、今お話にもありましたように、体罰というのは学校教育法でも現に禁止をされておりますし、教育的な効果も期待できないものでございます。私どもといたしましては、あらゆる機会を通じて体罰の根絶について指導を行っているところでございますし、今後ともそのように努めてまいりたいというふうに考えております。
○紀平悌子君 女性と刑法、これは大げさな課題で、もう非常に幅が広いわけでございますが、入り口のところのことだけしかきょうは伺う時間がないと思います。
 現在、男女共同参画型社会ということをつくろうということで、政府の御方針としてもこれを進めていらっしゃるわけですけれども、一昨日の参考人の御意見というかお言葉の端にございました中でも、女性のこの件の審議会にお入りになっていらっしゃる方はゼロ%だったという話を承りました。それで、私も女性の政策決定参加の一端としてこのことを調査その他いたしておりますけれども、改めて、法制審には何人女性がおられて全体の何%なのか、それから今後メンバーに女性をふやす方針というものを具体的に一つのプログラムとしてお持ちかどうか、ふやしたいではなくて、ふやすプログラムをお持ちになるかどうか、お聞かせいただきたいと思います。
○政府委員(永井紀昭君) ことしの四月一日現在におきます法制審議会総会の方では女性委員は二名でございまして、全体二十九名のうちの六・九%に当たります。それからまた、法制審議会のただいま申し上げました総会及び現在動いております五つの各部会を含む女性委員の合計は七名でございまして、全体百七十三名中に占める割合は四%でございます。
 私ども、ただいま御指摘がありましたとおり、法制審議会委員の職にふさわしい女性の方を人選し、その就任をお願いするよう鋭意努力しているところでございまして、具体的には、各推薦母体がある場合がございまして、そこにはここ一、二年、委員の交代がありますときには必ずできる限り女性の委員を含めていただきたいということをお願いしております。
 それから、私どもいろんな学者その他の方々と御相談申し上げて、専門家等の人選をする場合にはできる限り女性の方がいないかどうかということでやっておりまして、現に今具体的な人選を行っているところでございます。
○紀平悌子君 御案内のように、女性は人口において二百三十九万人、一番直近の調査で男性よりも多うございます。それから、女性の有権者はまだ多くて、二百八十二万六千五百七十二人男性より多うございます。やはりどう考えましても、目標は二〇〇〇年までに一五%という審議会参加の率を上げようということになっておられますので、一番やはり法のもとの平等ということをモットーとなさる省であるところの法務省の審議会においてぜひ女性の率を、率じゃなくて女性を参加させていただきたいというふうに大臣には特にお願いをいたしておきます。
 次に、もう時間もございませんので、今回の言葉の平易化に当たっていろいろ改正作業の中で、市民アンケートをなさるなどしてわかりやすい法律用語のパターンをつくり上げるということもできたと思うんですけれども、例えば一昨日の参考人の御意見の中で、「女性」という言葉はいかがかということになりましたときに、性という言葉を使うと女性が嫌う、それで「女子」ということになったという経緯がちらっとお話に出ました。
 実は、「女性」か「女子」かあるいは「婦人」か、これは婦人問題の中でもいろいろ論争のあるところでございます。法律用語というか実際に使われている用語も、例えば労働関係で「女子労働者」というと比較的若いという感じのあれになりまして、「婦人」というと成熟した婦人、つまり中年のおばさんというふうな感じに、いろいろこれは使い分けがございます。そしてこれは一定しておりませんね。
 今回、「女子」ということなんだそうでございますが、「女性」という言葉について実はどなたが非常に抵抗があるとおっしゃったのか知りませんが、ちらっとその意見をお聞きになっただけで「女性」という文字は嫌われるというふうに考えてしまうところは、ちょっと女性の意見の酌み取りが少なかったというか、酌み取りかねたというふうに私は、おととい、伺っていてそんなふうに感じました。
 法律の中でも、刑法は国民をいわば裁く法律でございますので、裁かれる方としては、それがいかなるものであるか承知していることが望ましいわけです。また、それが民主主義の要請と思うのですけれども、刑法第三十八条には「法律を知らなかったとしても、そのことによって、罪を犯す意思がなかったとすることはできない。ただし、情状により、その刑を減軽することができる。」とされていますけれども、やはり国民の知る権利というか、法律をよく知って、そして国民としての良識というか倫理というか、それに外れないような生き方をするためには、やはりもっとわかりやすい中身であってほしかったと思うわけです。
 ほかの質問もございますけれども省きまして、今後この点につき法務省、法務大臣はどのように、これでもうおしまいでございますか。それとも、まだまだこれから検討していくというお話もおとといとか、いろんなきょうの御答弁の中にもあったと思いますけれども、その辺は一遍法律が変わりますと当分変わりませんね。ですから、その意味でいかがでございましょうか。
 例えば、女性に意見を聞かなかったからオンナの扱いがわからなかったわけですね。オンナをどう書くかということ、女と男というのもおかしいしとか、いろいろ出ましたけれども、やはりそれほど女性の問題というのはいろいろあるということでございます。
 一言、御感想なりいただければ結構でございます。
○国務大臣(前田勲男君) 法制審等におきましても、女性に参加をより多くしていただくことを私どもも望み、また努力をいたしておるところでございます。
 かつまた、この刑法でございますが、国民すべてが読んでわかるということがまず理想でございますし、そうあらねばならぬと思っております。
 そしてまた、刑法に幾つかの課題を持っておることも事実でございまして、今後の刑法のあり方、時代に即した刑法のあり方に努力をしていかなければなりませんし、そのためには国民の大いなる合意が必要であるし、その大いなる合意の中に、特に先ほど「女性」、「女子」いろいろ言われておりますが、いずれにいたしましても女性の御意見というのは極めて大事であろうとも思っております。
 今回の作業は、まさにそうした将来の改正に向けての、たびたび申し上げますが、基盤整備作業として大きな意義を持っておるものだと、かように思っております。
○紀平悌子君 ありがとうございました。終わります。
○三石久江君 三石です。
 まず初めに、法務大臣にお伺いいたしたいと思います。
 私は、刑法というのは法律の中でも大変難しい法律、怖い法律と思っておりました。しかし、国家の刑罰権の行使に関する基本法です。国民に刑罰をもって臨み、時には生命まで奪いかねない強力な法律です。それだけにわかりやすい言葉で国民に知らせるということ、また刑罰の行使に当たっては慎重に抑制的に当たることは大切なことだと思います。
 国家にとって重要である基本的な法律である刑法を新しい形に制定するに当たって、法務大臣の御所信をお伺いしたいと思います。
○国務大臣(前田勲男君) 先生御指摘のとおり、刑法の国民生活に持つ意味というのは極めて大きく重大なものがあると理解をいたしております。そうした観点から、今回の改正は、かねてから一般国民が刑法を読んで内容を正確に理解することが困難であるという御指摘が現行刑法につきましてはあったわけでございます。そうした観点から、その表記をまず平易化し、現代日本語化するものでございます。そうした観点から、国民生活にとっても重要な意義を持つものと思っております。
 今回の改正は、まさに今後の刑法改正の基盤整備作業として大きな意味を持っておるわけでございまして、今回この改正が成立をいたしましたならば、間もなく二十一世紀を迎えるまさにあすの刑法のあり方や内容等について広く国民の間で議論が活発化することが期待をされるところでございます。こうした御議論等を踏まえて、社会の状況に合致いたしましたよりよい刑法実現を目指して作業を進めてまいりたい、かように思っております。
○三石久江君 よろしくお願いいたします。
 次に、刑法は国民の生活にかかわりの深い基本法です。この刑法が片仮名まじりの漢文調の古い文体であり、非常にわかりにくいことで問題性は以前から指摘されていたようです。
 平成元年、二年ころの国会の委員会での法務省答弁を見ますと、当時の則定司法法制調査部長、そこにいらっしゃいますけれども、濱崎司法法制調査部長の方は、全面的な改正あるいはまとまった部分を改正する際に文語体を口語体に改めたいとしておられました。前田法務大臣の今回の刑法改正の提案理由では、平成三年、百二十回国会の罰金引上げのための刑法改正案の際の衆参法務委員会の附帯決議も改正の動機になったようにお述べになっておられます。しかし、実際には現代用語の調査の委託は前の年の平成二年十二月になされています。実際にはいつごろから現代用語化を先行させる今回の改正を考えられたのでしょうか。今回の改正に至った経緯の御説明をいただきたいと思います。
○政府委員(則定衛君) 平成二年前後に、私、確かに今御指摘のような法務当局としての考え方を答弁させていただいたわけでございます。実は、この刑法典につきましては、昭和三十年代後半からこれを全面的に改めようという作業をいたしておりまして、そのときは内容自体も新たなものに策定する、そのときには当然のことながら用語用字についてもいわゆる現代用語化を図ろうということをやったわけでございますが、先ほどその法案作業の進め方の状況につきましては大臣から答弁ございましたように、いわば大方の合意に至らない点もございまして、いわば中断いたしていたことがございます。
 そういう意味で、かねてから国会で、特に刑法あるいは民法その他法務省所管のいわば明治の制定の法律について現代用語に書きかえる作業を急ぐべきだといったびたびの御指摘もありましたので、平成に入りましてから、やはりこれは法務省といたしましては、実質的な内容の改正を短期に行えるものはともかくといたしまして、刑法の全面的な実質改正が先ほど申しましたような状況でございますので、まずもって用語用字の現代用語化を図ろうという内部的な検討が強まっていたわけでございます。そういう過程で御指摘の第百二十回国会におきます附帯決議もちょうだいいたしましたので、あわせてこれらを勘案して作業を急いだというのが経緯でございます。
○三石久江君 わかりました。
 次に、刑法は明治四十年にできた法律であって、時代に合わなくなっている部分も少なくありません。現代用語化によって全条文を書きかえるのであるならば、中身についても手を入れた方がよかったのではないかという気がいたします。全面的に見直すことは議論も多く時間もかかることになるのでしょうが、せっかくの改正の機会でもあるので、尊属殺と瘴唖者以外の問題についてももう少し内容の改正に踏み込んでもよかったのではないでしょうか、そう思います。
 そこで私は、二百十二条の堕胎罪について質問をしたいと思います。
 昭和二十三年に優生保護法ができ、翌二十四年に経済的理由が追加されたことによって、現在では合法的で広範囲な妊娠中絶が認められております。平成五年には三十八万六千八百七件の人工妊娠中絶が行われ、そのうちの三十八万六千四百四十四件、九九・九%がいわゆる経済的理由のものです。人工妊娠中絶に関する社会的倫理観も変化しており、母体の保護、生命保護が重視されるようになってまいりました。その結果、刑法の堕胎罪は有名無実化していると言われています。
 先日、岩村参考人からも、日弁連が自己堕胎罪、同意堕胎罪、業務上堕胎罪は削除すべきだと主張されているように伺いました。また、昭和四十九年に法制審議会が答申した改正刑法草案でも、医師などが堕胎した場合に刑を加重する業務上堕胎罪が削除されているとのことです。
 この際、「女子が」などと女性を標的にするような堕胎罪は削除すべきだと考えますが、いかがなものでしょうか。
○政府委員(則定衛君) この堕胎罪の存廃の問題につきましては、法制審議会におきます刑法の改正草案の審議の際にも議論されたわけでございまして、そのときも既に積極、消極両論があったわけでございます。
 ただ、胎児もまた生命を持つものとして保護する必要があるということ、その軽視はひいては人命軽視につながるというおそれがあるのではないか。それからまた、堕胎に関します処罰規定の廃止によりまして性道徳が一層乱れるおそれはありやしないかというようなこと。それから、御指摘のように、確かに堕胎罪の検挙件数自体が少ない状況にありましても、一般予防的な見地から処罰規定を置く意義があるのではないか。さらにはまた、国民意識としても一般的に堕胎を是認するには至っていないのではないか。当時そういう議論がございました。
 それから、その後、諸外国におきまして堕胎の規制が緩和されるようになっておりますのは、妊娠中絶に対しまして御指摘のような日本とは比較にならないほどの厳しい態度をとっている、それを修正しようという動きが底流にあるように承知しているわけでございまして、私ども知る範囲では、堕胎罪を全廃した立法例はどうもないようでございます。
 そういうようなことでございまして、現時点におきましても大きく事情が変わったとは私ども考えておりませんので、堕胎罪を廃止すべきではないというのが、当面、私ども法務当局としての考え方なのでございます。
○三石久江君 端的に言って、女子のみが堕胎罪というのは私はいただけないんですね。堕胎罪は「女子」と書いてありますので、なぜ堕胎罪が女子のみなのかというふうに思ってしまうわけもあります。
 そこで、堕胎罪の検挙もほとんどないのが現状だと聞いておりますが、年間とのぐらいありますか。
○政府委員(則定衛君) 平成元年から五年まで検察庁で受理しました事件の中で調べてみますと、業務上堕胎罪が一件、同意堕胎致死罪が一件あります。そのうち、業務上堕胎罪については不起訴処分、同意堕胎致死罪については起訴、公判請求ということになっております。隔年にそれぞれ一件ずつ程度、こういう状況でございます。
○三石久江君 大変に少ないようですね。名目だけの処罰規定を残しておくということは、法律を完全に守るという遵法精神を害することになるのではないでしょうか。法律学辞典にも、「今日、堕胎罪は事実上死文化している。」と書かれてあります。積極的に検挙されない堕胎罪を殺人罪や傷害罪、放火などと並べて刑法の中に置くのはおかしいのではないでしょうか。いかがでしょうか。重ねて申し上げます。
○政府委員(則定衛君) 御意見はよくわかるわけでございますけれども、私どもといたしましては先ほどお答えさせていただきましたような考えでございまして、当面、これを全面的に廃止するのはいかがなものかということでございます。
○三石久江君 先ほど言いました、女子のみにというのはいかがですか。
○政府委員(則定衛君) これはいわば生理的に、堕胎罪、いわゆる自己堕胎罪、これは女子について規定されておりますのは、これは端的に申しまして男子については妊娠するということがないということでございまして、ただ男子におきましても、女子に対して堕胎の処置をしたときには、これが同意があれば同意堕胎罪になりますし、同意がなければ不同意堕胎罪により、それぞれ、処罰されるわけでございます。ただ、女子がみずから堕胎の処置をされることに関与すれば自己堕胎罪としてその共犯の処分もなされるわけでございまして、必ずしも処罰の対象は女子に限らないということで、その点はいわば男女それぞれ処罰対象になっておるということでございます。
○三石久江君 次に、重ねて重ねてですけれども、我が国において堕胎を犯罪として禁止した最初の法律は明治十三年に制定された旧刑法です。これはキリスト教思想に基づいたフランス刑法に倣っただめですが、そればかりでなく当時の日本の政府の富国強兵政策と一致したためでもあるとも言われております。日中戦争が始まった途端、私どもの母親たちは医学的な知識もなく、命がけでの避妊行為などなどで悩みに悩んだ末の結果堕胎罪を犯した女性に対して非常に求刑を重くした検察官もいたそうです。戦争に人的資源が重要であるからとの理由だったようですが、女性に対してこんな使われ方をした堕胎罪を現代に残しておくのは時代錯誤だと思います。表現が現代用語になっても中身が明治時代のままでは大変困ります。
 堕胎が刑罰に値するほどの罪悪かどうか。社会一般でこれほど意識が変わった現代では、刑法の中でも改正か削除を考えなければならない問題だとまだまだ私は思っているわけです。改正に向けて、削除に向けての検討をお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。重ねてお願いいたします。
○政府委員(則定衛君) 刑罰法令といいますのは、社会の実態の変遷あるいは国民の価値観の変化といったものと大きく離れるようでは適切でないと思うわけでございまして、現時点での堕胎罪についての私ども法務当局の考え方は今申したようなことでございますけれども、今後いろんな御意見あるいは価値観の変化あるいはいわば社会経済情勢の変革等々を見定めながら、今御指摘の問題についても検討していくことになろうかというふうに思っております。
○三石久江君 一たんつくった法律を削除することの難しさを本当に改めて感じました。
 次に、改正案に残っている難解語などもっと減らす努力をすべきだったのではないかとも思うわけです。改正案を読ませていただきました。現行の片仮名まじりの漢文調の文体の条文に比べ、格段に読みやすくなっていると思います。原則として内容は変えないで易しく言いかえた文章をつくる作業は大変だったと思います。作業に関係された方々の努力を評価したいと思います。
 特に刑法三十八条二項、「罪本重カル可クシテ犯ストキ知ラサル者ハ其重キニ従テ処断スルコトヲ得ス」という条文は難解であることで有名な文章などのことですが、本当にこれを説明なしに理解できる人はほとんどなかったのではないかと思います。改正案は「重い罪に当たるべき行為をしたのに、行為の時にその重い罪に当たることとなる事実を知らなかった者は、その重い罪によって処断することはできない。」と丁寧に言いかえられており、本来法律とはこういう一般国民にわかりやすい形であるべきなどの意を強くいたしました。
 ただ、改正案の中にもわかりにくい言葉が幾つか残っているように思いますのできれば義務教育終了者、少なくとも高校生にわかるような法文であるべきだと考えるのですが、この点、立案に当たってどのように考慮されたのでしょうか、お伺いしたいと思います。
○政府委員(古田佑紀君) 御指摘のとおり、私どもといたしましてもできるだけ、ふだん使われている言葉あるいはそれほど難しくない言葉に置きかえようという努力をしたわけでございます。ただその中で、例えばのことで申し上げますと、「心神喪失」とか「心神耗弱」などというかなり難しい言葉がございますが、こういうふうなたぐいの言葉は一つの技術的な言葉として中身が刑法の中でしっかりある意味では決まっている、これを置きかえようといたしますと実はいろんな解釈がこざいまして、それをそのうちのどれか一つにしてしまうというふうな問題などがありまして、どうしてもやはり現在の刑法の意味を変えないで直すのには言いかえようのなかった言葉というのもあるわけでございます。こういうふうな言葉につきましては、中身のことも検討しなければならないという問題を伴ってい至言葉でございますので、そういうふうな中身を検討すべき適当な機会にあわせてより易しい表現ということをこれからも考えていきたいと思っているところでございます。
○三石久江君 努力をしていただきたいと思います。
 特に刑法の第二編は、こういう行為はこういう罪に当たるということを国民に知らせる部分ですから、できるだけわかりやすい文章であるべきだと思います。法律家ではない一般国民の立場から幾つか指摘させていただいて、この次の改正のときに考慮していただければと思います。
 まず、常用漢字以外の漢字という観点からお尋ねします。
 現行刑法には常用漢字以外の漢字が六十五文字あるそうですが、改正案にはまだ十四文字残っているようです。今回の改正では、原則として常用漢字以外の漢字は使用しないとの作業基準があったとのことです。それならば、もう少し減らすことはできなかったのかという気がするのですが、この点はいかがでしょうか。
○政府委員(古田佑紀君) おっしゃるとおり、常用漢字以外の字をできるだけ減らすという努力を私どもとしてもしたわけでございますけれども、その中で例えば「勾留」というふうな言葉あるいは「禁錮」というような言葉、これは刑事訴訟法とかほかの法律でもたくさん使われている言葉で、これを常用漢字に置きかえるということは、全体の法律の法令用語の中で非常に統一を欠いてしまうというふうな問題があるわけでございます。そういうふうな点から、やはりどうしても現在の法体系全体の中から見ると置きかえることが困難な字というのも幾つかあるわけでございます。またそのほかに、例えば「賄賂」の「賂」、こういうのも常用漢字にないわけでございます。あるいは「強姦」の「姦」という字もない。
 ただ、こういったぐいの言葉につきましては、いろんな新聞なり雑誌なり社会的な出版物等の中でどういうふうに使われているか、それほど難しい字として扱われているだろうか、そういうふうな点も種々調査をいたしまして、その結果、やはり漢字で書かないとどうしても意味がよくわかりにくい。例えば「強姦」の「姦」というのを平仮名で書くとどうしてもイメージとしてよくわからないとか、そういうふうな問題もあるわけでございます。そういうふうなものの中で、やはり現在、常用漢字以外ではあっても社会の中でかなり一般的にも使われていてその方がかえって意味がわかりやすいというふうなものは、やはり刑法が、先ほどからお話のありますように、何をすれば処罰されるのかというふうなことがわかるための法律という面もあるわけで、そういうふうな、漢字で書いた方がかえって意味が把握しやすいようなものにつきましてはやはり漢字を常用漢字外でも使わせていただいていると、こういうことでございます。
○三石久江君 では次に、幾つかの言葉を取り上げてお尋ねしたいと思います。
 昭和六十二年の改正で設けられたコンピューター犯罪に関する条文に「電子計算機」との言葉が入っています。これは難しい言葉ではありませんが、今日では「コンピューター」を使う方が一般的ではないでしょうか。当時は、現行刑法が片仮名書きなので片仮名の言葉を入れるのはだめだったのでしょうが、改正案では「ボイラー」、「ガス」と片仮名の言葉も入ってきました。コンピューター犯罪とは言っても電子計算機犯罪とは言いません。いかがでしょうか。
 また、準強制わいせつ、準強姦罪の要件に、人の「抗拒不能に乗じこと書いてありますが、「抗拒」は日常的に使わない言葉だと思います。字を見て、抵抗、拒絶を合わせたような意味だろうと推しはかるのですが、それならむしろ「抵抗、拒絶」という日常使う言葉を使って言いかえた方がわかりやすいと思うのですが、どうでしょうか。
 また「浸害」、さんずいの「浸害」は広辞苑にも見つかりませんでした。法律的な専門用語でないものは、ああいう大型の国語辞典に載っている言葉を使うのが一つの指標になると思うのですが、いかがでしょうか。
 また、漢字一つ一つは常用漢字の範囲内でも熟語となると難解なのが「蔵匿」、「隠避」、「強談威迫」など、耳で聞いてもぴんとこないほど日常の生活ではなじみがないと思います。「強談威迫」は漢字から、強引に談判し威力をもって脅迫することだろうかと想像しますが、意味がはっきりとれないのでは国民は困ってしまいます。常用漢字を使った熟語ももっと積極的に易しく言いかえてほしいと思いますが、こういう点、いかがなものでしょうか。
○政府委員(古田佑紀君) 種々の点にわたるお尋ねでございますが、まず「電子計算機」という言葉をそのままにした理由でございますけれども、これは最近の法令を見ましても「コンピューター」というのはむしろ例外的で、ほとんどの法律が「電子計算機」という言葉をずっと使っているわけでございます。そういうような点からいたしまして、現在、法令用語としてはやはり「電子計算機」の方が定着している言葉になっているというふうに判断されましたので、「電子計算機」という言葉を使うこととしたわけでございます。
 それから、そのほか多々御指摘があって、いずれもごもっともで、私どもとしても内部でも随分検討し、また法制審議会でも御議論いただいたところが実は今委員御指摘のほとんどの問題であったわけでございます。
 一つ一つ申し上げますと大変時間がかかりますので結論的にだけ申し上げますと、ただいま委員の御指摘のあったような言いかえの意見というのもやはり検討の過程で出てまいったわけでございますが、いろいろ検討してみますと、どうしても現在の法律の理解、現行法の解釈を変えないで置きかえるということがこれはもう極めて困難だということで、今回の改正の目的からして、わかりにくい言葉ではあるということはわかってはいるわけですけれどもこのままで置くほかないと、こういう判断に達したと、そういうことでございます。
○三石久江君 大変御苦労さまでした。
○委員長(中西珠子君) 時間が超過していますから短くお願いします。
○三石久江君 はい、わかりました。これで終わりです。
 刑法の平易化については、今回の改正で終わらないで、さらに一般国民が法文を読んで内容を十分に理解できるように引き続いて研究を続けていただきたいことをお願いして、終わります。
    ―――――――――――――
○委員長(中西珠子君) この際、委員の異動について御報告いたします。
 本日、尾辻秀久君が委員を辞任され、その補欠として河本三郎君が選任されました。
    ―――――――――――――
○委員長(中西珠子君) 引き続き質疑を行います。
○安恒良一君 二日間にわたって下稲葉委員を初め八名の人が質問されましたので、質問したいと思っておることはほとんど終わりましたから、私はいわば落ち穂拾い的に、もしくはある程度今までのやりとりの中でさらに納得いかない点を少し聞きたいと思います。
 まず、今回の改正には私は賛成なんですが、実は驚きました。刑法制定から八十八年、改正刑法草案公表から二十一年、このままになっておったんです。だから、戦前の帝国憲法のときのことを今言ってみても意味はありませんが、少なくとも戦後の平和憲法になって約五十年間、こんな難解な言葉をそのままによく放置しておったなと。これは率直に言って、私は歴代法務大臣、法務省に大きな責任があると。もちろん、国政の場にある我々国会議員も責任の一端は免れないと思います。しかし、やっと今度、現代用語化ということで改正になったのでその中身は賛成なのでありますが、少し今後のことを含めて聞いておかなきゃならぬと思います。
 御承知のように、既に御報告があったとおりに、昭和四十九年に改正刑法草案ができて、これが当時の刑法学者や学界や日弁連その他に反対されてそのままになってしまったと。そういう中でやっと今回、現代用語化ということで刑法の改正案が出てきたんですが、しかしながら、もう多くの同僚委員から問題が提起されたように、依然としてまだ難しい、常用漢字が使われていないというような、それから中身にもいろいろ問題がありはしないかと。参考人からもありましたし、同僚議員からもありましたように、例えば罪刑法定主義の明示、保安処分の導入、企業秘密の漏示問題、それから自動設備の不正利用の問題、それから無賃乗車罪等の新設等は、今日の社会においては極めて必要なことなんです、これは私の意見でもありますが。
 ところが、いろいろ審議会で議論もあったようですが、今回はとにかく横のものを縦にということで言葉のあれだけに終わっていますから、私はどうしても改正刑法草案にやっぱり早急に取り組まなきゃならぬと思います。
 そこで、ちょっと聞きたいんですが、歴代法務大臣の所信表明をずっと調べてみましたら、昭和五十六年、五十七年、五十九年、六十年、六十一年、六十二年までの法務大臣、例えばここに鈴木先生がおいでになりますが、鈴木先生が法務大臣の六十一年の所信表明の中に、刑法の全面改正につきましては、これが国の重要な基本法に関するものでありますため、国民各層の意見を十分考慮しつつ、真に現代社会の要請にかなう新しい刑法典の制定を目指し各般の努力を重ねてきているところであり、引き続き所要の作業を進める所存でありますと、当時、鈴木大臣はこの委員会でお述べになっています。
 ところが、六十三年以降、法務大臣の所信にこれが入っていないんですよ。なぜ入っていないのか。あなたのものも見ましたけれども、この現代用語化のことは書いてありますが、根本的なことについてはあなたのことしの所信表明にも入っていないんです。ですから、もう改正刑法草案はあきらめられたのかどうかなと。今までずっと歴代法務大臣が書いておったようなことが突如として六十三年以降消えていますから、だからそこの熱意ありや否やということと、いま一つ私が心配するのは、ここに弁護士先生もおられますが、日弁連の態度が今回これに賛成だと。この賛成をすることは、わかりやすい言葉で言うと、これによって改正刑法草案の全面改正は免れるんじゃないかとか、つぶれたんじゃないかというような意見があるやに聞いています。
 私は、この現代用語化というのは一歩前進であって、これからやはり早めに、少なくとももう新平和憲法になって五十年ですから、ですからやらなきゃならぬと思いますが、そこのところの決意について、大臣、あなたの所信にも入っていないものですから心配ですが、どうされようとするのかお考えをお聞かせください。
○政府委員(則定衛君) 刑法全面改正問題につきまして、御指摘のように、昭和六十二年まで歴代大臣の所信表明で言及されながら六十三年以降言及していないという点でございますけれども、これは、昭和四十九年に法制審議会から答申がございました、御指摘の改正刑法草案の取り扱いにつきまして、昭和六十二年まで日弁連等といろいろ協議を重ねてその実現のための努力を重ねていったわけでございますが、根本的な理念の対立あるいは大きな制度についての意見の不一致等々で短期に全面改正を行うことが極めて困難という見通しに立ち、当時の与党、自民党との意見調整におきまして、当面実現可能なものに限ってそれぞれの一部改正でやる方策を模索すべしということもございましたものですから、いわば言及しなかったという点だけまず御説明させていただきたいと思います。
○国務大臣(前田勲男君) 今回の改正は、実は明治四十年に制定された刑法の内容を基本的に維持したまま平易化するあるいは現代目語化するものでございますので、現行刑法を全面的に改正することも検討課題にしなければならないと当然考えておるところでございます。
 特に、刑法は国民生活に極めて深いかかわり合いを持つ基本法でございますし、また国家の強制力を持つ極めてこれまた重要な法律でございますので、大方の国民の合意が得られる形で改正が行われることが重要であろうと思っております。
 そこで、まず改正に対する熱意ありやということでございますので、これはやはり時代に合った国民合意のできる刑法に改正すべきであるという熱意は変わっておらないと私は確信をいたしておりますし、所信にはございませんが、刑法の全面改正は決してあきらめたわけではございません。所信に特に申し述べませんでしたのは、まず現代日本語化、平易化をして改正に向かっての御議論をいただく基本整備作業、かようにとらえて、まず第一歩としてこの改正をお願いいたしたい、こういうことで特に全面改正等については所信では申し上げなかったという次第でございます。
 なお、昭和四十九年の改正刑法草案に基づく刑法改正につきましては、ただいま刑事局長からも申し上げましたが、基本的あるいは根本的と申しますか、日弁連その他御専門の立場からもいろいろ対立やら御意見の違いもあるところでございました。今日は、こうしたいただいた数多くの御意見を十分に踏まえながら検討を続けておるところでございますし、今後もこうした法改正のもとに全面改正に向けての検討を続けてまいりたい、かように思っておるところでございます。
○安恒良一君 大臣は午前中の質問の中で、冷静かつ慎重にといろいろ改正について言われましたけれども、私が心配しているのは、これで現代用語化ができたということでまた何十年ほっておかれたらかなわぬわけですよ。現実に今までほっておったわけですから、平和憲法になって約五十年間。これができたらこれで一安心ということでは、国民は納得しないと私は思います。
 ですから、ぜひここのところを、改正刑法草案については一回は審議会で決めたんですから、いろんな問題点を打開して改正をしていくということを早い機会にやらないと、また今度この次は三十年後だったなんてそんなばかげた話になってはいけないと私は思います。このことを申し上げておきます。
 そこで、そうなるとこの法制審議会刑事法部会でまた審議されると思いますが、これは重要でありまして、ここの民主化、委員をふやせということはもう全委員が言われました。参考人も言われました。今の構成に加えて、言語学者であるとか女性であるとか国民の良識の代表であるとか、そういう者を入れて法制審議会の刑事法部会、これは法制審議会全体ですが、やはり開かれた審議会にしろということがたくさん出ましたからこれはもう私は重ねて言いません。私も、ぜひ審議会の委員構成については再検討されることを強く大臣に申し上げておきます。
 そこで問題になるのは、午前中それから午後のやりとりを聞いておって、私はやっぱりこの審議会の議事録の公開と委員の氏名の公開は明確にしなきゃならぬ。お聞きすると、何か刑事法部会だけは非公開になっているそうですね。その理由も承りました。しかし、私は非常におかしいと思うんですが、実は私が調べたところでは、公開にするか非公開にするかということで議論があったときに、ある委員は非公開が委員受諾の条件であった、こういう委員がおったり、法務省自身の姿勢も消極的であったと思います。
 なぜかというと、刑事法部会の出席委員で採決をすることをあなたたちは避けたでしょう。大臣はお知りにならないか知りませんが、いわゆる法制審議会規則に定めてない異例の郵便による投票をしていますよ。というのは、日弁連の委員から、氏名の公表をやっぱり決めるべきだと。それに対して、そこで投票することすら避けているんです。そして、郵便を出して賛成反対をとって、その結果、委員名は公表しない、こういうことをしたというふうに私は聞いているわけです。私はこんなやり方はないと思うんですよね。
 大臣、私は中身の細かいことをぐちゃぐちゃ言いませんが、少なくとも今日これだけ情報社会で開かれた社会になったときに、いわゆる申立公平な自由な討論を確保できないとか、もしくはその身に危険があるからとか、世の中は変わってきているんですから、そういう理由で私は委員名を公開したくないという人は委員になる資格がない、なってもらわなくてもいいと思うんです、そういう人は。やっぱり大臣が任命するときに少なくとも、なるべくおれの名前を公開しないんならおれは委員になってやるぞと、そんな時代錯誤の人をどうして委員にするんですか。そんなばかなことはない。ですから、その点は大臣にきちっとした後から答弁を願いたいと思います。
 同時に、これも午前中のやりとりを聞いておりまして、いわゆる委員の氏名なり審議内容の公表については、これは日米構造協議で強くアメリカから求められたんですよ。それで政府は慌てて、局長が言ったように、審議会のガイドラインの策定のための関係省庁連絡会議で申し合わせをして、「審議会等及び懇談会等行政運営上の会合の運営等に関する指針」をまとめられた。そして、それはその部会ごとに決めましょうと、こういうことになっているんですね。これもいわゆる日米構造協議の中から出てきてやられておるんです。しかし、実際の運営は今言ったようなことをやって、とうとう刑事法部会は非公開にしたと。私は納得できませんね。
 やはり、少なくとも刑事法部会もこれからは氏名は公表すると、またそういうことにいろいろ御意見のある方については委員になっていただかなくて結構ですと、遠慮してもらうと、こういうようなやり方で、これからやはり情報公開というのは非常に重要な時期ですから、審議会の民主化のためにもそこのところは、もうこれは全委員が皆さん大臣に求めたことですから、お約束してください。
○政府委員(永井紀昭君) 刑事法部会におきまして委員の氏名を公表しないことを決定した経緯につきまして、若干の誤解があるようでございますので、一言だけ釈明させていただきます。
 この刑事法部会が開かれましたときに、このガイドラインの問題が急速問題になりまして、直ちに、あらかじめ事前に先生方にいろんな資料をお渡しすることなくその場でいろんな御意見をお伺いしたわけです。それにつきましては、いろんな理由、個人個人で理由を書いていただいた方がいいとか、あるいはここでは時間がないので述べないけれども後で書面で出したいとか、いろいろそういう意見がございまして、その場でもうすぐ書いていただいた方もおりますし、それから欠席者もおりましたものですから、いろんな資料を添えて説明をして書面でいただいた方が正確だろうということでそういう措置をとったことでございます。
○国務大臣(前田勲男君) この刑事法部会のみが法制審の中で秘密会といいますか、公表しておらないわけでございます。
 伺いますところ、かつて歴史的に保安処分問題等々のときに、委員のメンバーでございます先生方、特に大学の教授等もいらっしゃいましたようでございまして、ここらが大学において非常に個人的にいろいろ圧力をかけられ、デモに押しかけられたり、いろいろそういうことが歴史的な経過にあったようでございまして、そうしたことも踏まえて、申立公正な立場から自由な討論を確保するために公表すべきでないと判断したものと私は理解をいたしておるところでございます。
 やはりこうした国民の基幹的な基本である法律をする部会でございまして、公表する国民に対する利益と公表しない国民に対する利益、これを慎重に考えなければいけないと思いますが、今日、情報公開その他あるいは刑法の性質から踏まえて、実はこれは法制審議会の会議規則四条によって定められることでございまして、その法制審議会におきまして、本委員会の御意見等も踏まえながら法制審議会で良識を持って対応されるように望みたいと思っております。
○安恒良一君 大臣、望みたいなんてそんな消極的なことじゃなくて、やはり法務省自身がその気持ちに僕はやっぱりならなければだめだと思うんですよ。
 私も政府関係の審議会、国会議員になる前、米審から税調から中医協から社会保険審議会、ありとあらゆる審議会やりましたけれども、そんなばかげたことを言う委員はいませんよ、氏名を公表してもろたら困るとか。それから、言いわけ的に、あなたたちは言いわけする必要ないと思うんだよ、例えば郵便によってあれしたことも事実なんだから。それを今言ったような、ぐどぐどいうようなことを言って、少なくともいわゆる公開する、そういうことまで郵便によって一部出してもらって最終的に決めたことは事実でしょう。だから、そんな審議会というのは僕は聞いたことないんだよ。
 僕も審議会の委員三十年ぐらいやっているけれども、公開するか公開しないかということを委員がその席上でようしゃべり切らぬで、後から郵便で出して集めて、ああこれはやっぱり公開しない方が多かったなんて、そんなばかげたことがあってはよくないし、そんなことの言いわけを僕は聞いているんじゃなくして、少なくとも参考人から出た意見も、また全委員から出た意見はやはりこれは公開にすべきだよということを国会の意思としても言っておるわけですから、これは積極的にやってもらわなければ、そしてまた余りこんなことを指摘されるのはよくないけれども、日米構造協議においてもいわゆるそういうことを指摘されているわけですよ。日本政府に対して強く求められている。そんな恥ずかしいことを僕はしたらいかぬと思いますから、この問題はこれだけ強く要望して終わりたいと思います。
 そこで次に、尊属殺人、尊属加重規定の削除、私もこれは賛成なんです。ただ、これもどうも皆さん言いわけばかりされているけれども、何でこんなに、昭和四十八年四月四日に出たのにそれからほうっておかれたかということが、これの原因がわからないんですよ。どうも聞くところによると、当時与党である自民党との間に意見がなかなか調整できなかったというんだが、それならそれで正直に言ってもらいたいんですが、私は当時の歴史をちょっと調べてみましたら、自民党の議員の一部に、最高裁の判決が出て、孝行が滅ぶ、おれの目の黒いうちは絶対これはまかりならぬと言った議員がおりまして、その議員は数年前にもう既にお亡くなりになっています。そんなことで急速今度出てきたのかなと。その有力な御発言の方がもうお亡くなりになっておりますし、もう議員もおやめになっていますから。
 ですから、私はやっぱり、今聞いておりますと、当時与党である自民党との意見調整がということを盛んに言われますけれども、国会というのは与党だけじゃないんですから、与野党おるわけです。ですから私は、もう少しこういうものについては、もちろんそれは政府・与党の意見をまずお聞きになって野党とのあれということになりますけれども、どうも尊属殺人、尊属加重規定が二十二年も放置をされたということについては非常に理解に苦しみます。しかし、これもまたここで言いわけを聞いていると時間がたちますから結構です。今後こんなことがないようにしてもらいたいと思います。
 そこで、もう時間が余りありませんが、最終的に一つ聞かなきゃなりませんのは、各条文の条項はもう多くの委員からたくさん出ましたから私の聞きたいことは重複しますが、ただ、これも今度削除の中で瘴唖者規定というのが削除されました。私もこれは賛成であります。ただ、賛成でありますが、問題は、責任能力に問題のない瘴唖者は通常人と同様に扱われることになりますが、ところが具体的な取り調べで不利な扱いを受けることがないのかどうかという心配をちょっと。例えば捜査の段階、公判の段階において、いわゆる一般健常者よりやはりハンディがあるわけですね。ですから、この瘴唖者が不利にならないようにどのような改善措置をとろうとされているのか、その点、これをごく簡単に。あと、警察にちょっと一言聞かなきゃならぬことがありますから。
○政府委員(則定衛君) ただいまお尋ねの、刑事手続におきます聴覚障害者が被疑者、被告人、被害者その他の事件関係者となった場合におきましては、本人の手話、筆談の能力あるいは御本人の希望などを考慮いたしまして適当な手話通訳人を選任、依頼などしておりますし、また、手話や筆談を用いて正確な意思疎通に遺漏なきを期しているところでございますけれども、今後とも御指摘のことは十分踏まえまして、刑事手続上の権利保障に欠けることのないよう十分配慮してまいりたいと思っております。
○安恒良一君 これももうたくさんの議員から出ました、地下鉄サリン事件、それから國松長官の狙撃事件、最近の横浜周辺駅におけるいろんな問題。私は、こういう凶悪犯は断固として、我が国の法の秩序に対する重大な挑戦ですから断じて許すことはできないし、これは捜査を進めて処罰すべきものはしなきゃならぬと思います。
 ただ、そうは言いながらも、何人かの委員からもちょっと心配も出ましたね。というのは、いわゆる大臣も今の捜査の進め方に対して、法令に従って適正な捜査が行われているとこう言われる。また、予算委員会における総理以下の発言問題もここでいろいろ問題になったんですが、私は、警察庁にきょう来ていただいたのは、例えばホテルで偽名チェックインした者を私文書偽造で逮捕したり、刃渡り五センチのカッターナイフ所持者を軽犯罪法違反で逮捕するというのは、従来のやり方からするとちょっとやり過ぎじゃないかなと。やはり人権という問題はこれは考えなきゃなりませんし、それから一番私心配するのは、こういうような進め方が今後の先例となって、取り締まり優先社会になるようなことがあってはならないと思うんです。
 私は、少なくともホテルで偽名チェックインしたら私文書偽造で逮捕というのは今まで聞いたことないんですよね、こんなこと。ですから、そこらについて、捜査は大変苦労されて、厳正に進められなきゃなりません、これは。そして、早く解明しなきゃなりません。しかし、ちょっと今二点の例を挙げたような点について、警察当局はどういうお考えをお持ちか。それから、法務大臣は法令に従って適正な捜査が行われているとここで言われましたが、今私が聞いたようなところも適正と考えられるのかどうか。その点だけ聞いて終わります。
○説明員(篠原弘志君) お答えいたします。
 オウム真理教開運につきましては、これまでの捜査の過程におきまして、同教の関係者が組織的に逮捕監禁事件あるいはサリンの原料物質を含めましての大量な化学薬品を教団施設内に隠匿あるいは関係者自身が保有という状況がございます。また、指名手配犯人の組織的な隠匿という事実も出ておるところでございます。このような状況を踏まえまして、警察といたしましてはオウム真理教関係者に対しまして必要な職務質問あるいは捜査を行っているところでございます。その結果、違法行為が判明しますれば、これを看過することなく検挙などの措置をとっているところでございますけれども、検挙に当たりましては、それは個別の具体的な状況に照らしまして逮捕の必要性を具備している場合に逮捕しているものでございます。
 私どもの方としましては、こういうかつてない事件に対しまして、国民の方々の不安を一日でも早く解消すべく、法の許す範囲で最大限の努力をやっておるということを御理解いただきたいというふうに思っております。
○国務大臣(前田勲男君) 具体的な事例について、特に私も内容を細かく伺っておりませんので、申し上げることはお許しを賜りたいと存じますが、警察における犯罪捜査は法令に従い適正に行われておると聞いており、また今後もそうでなければなりませんし、検察当局においても法と証拠に基づき適正な捜査、処分を行い、人権侵害等なきように尽くしていかなければならない、かように考えております。
○安恒良一君 終わります。
○委員長(中西珠子君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
    ―――――――――――――
○委員長(中西珠子君) この際、委員の異動について御報告いたします。
 本日、大河原太一郎君が委員を辞任され、その補欠として山崎正昭君が選任されました。
    ―――――――――――――
○委員長(中西珠子君) これより討論に入ります。
 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。――別に御意見もな墓いようですから、これより直ちに採決に入ります。
 刑法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
○委員長(中西珠子君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(中西珠子君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後二時五十七分散会