第132回国会 地方分権及び規制緩和に関する特別委員会 第4号
平成七年三月十五日(水曜日)
   午後五時三十一分開会
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   委員の異動
 二月十七日
    辞任         補欠選任
     梶原 敬義君     今井  澄君
    日下部禧代子君     竹村 泰子君
 二月二十日
    辞任         補欠選任
     木宮 和彦君     石井 道子君
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  出席者は左のとおり。
    委員長         小林  正君
    理 事
                斎藤 文夫君
                服部三男雄君
                山口 哲夫君
                渡辺 四郎君
                勝木 健司君
    委 員
                石井 道子君
                上野 公成君
                沓掛 哲男君
                高木 正明君
                野沢 太三君
                溝手 顕正君
                宮崎 秀樹君
                吉村剛太郎君
                今井  澄君
                岩崎 昭弥君
                佐藤 三吾君
                竹村 泰子君
                峰崎 直樹君
                続  訓弘君
                鶴岡  洋君
                広中和歌子君
                小島 慶三君
                星川 保松君
                吉川 春子君
    国務大臣
       国 務 大 臣
       (総務庁長官)  山口 鶴男君
       自 治 大 臣  野中 広務君
    政府委員
       総務庁行政管理
       局長       陶山  晧君
       自治大臣官房総
       務審議官     二橋 正弘君
       自治省行政局長  吉田 弘正君
       自治省行政局公
       務員部長     鈴木 正明君
       自治省財政局長  遠藤 安彦君
    事務局側
       常任委員会専門
       員        佐藤  勝君
    説明員
       内閣官房内閣内
       政審議室内閣審
       議官
       兼内閣総理大臣
       官房参事官    妹尾喜三郎君
       農林水産省農蚕
       園芸局繭糸課長  瀧倉  昭君
       通商産業省生活
       産業局通商課長  稲葉 健次君
       資源エネルギー
       庁石油部流通課
       長        松永 和夫君
       運輸省自動車交
       通局技術安全部
       技術企画課長   溝口 正仁君
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  本日の会議に付した案件
○地方分権の推進及び規制緩和に関する調査
(地方分権の推進及び規制緩和に関する件)
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○委員長(小林正君) ただいまから地方分権及び規制緩和に関する特別委員会を開会いたします。
 地方分権の推進及び規制緩和に関する調査を議題といたします。
 去る二月十五日の委員会において聴取いたしました山口総務庁長官の所信及び野中自治大臣の発言に対し、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
○上野公成君 私は、自由民主党を代表いたしまして両大臣に質問をさせていただきたいと思います。
 まず、地方分権でございますけれども、最近は地方分権に限らず、政治改革もそうでございましたし、規制緩和もそうでございますけれども、非常に抽象的な言葉が先走りをしまして、マスコミその他もそれに大合唱になるということがございます。
 私も、地方分権に反対だということではありませんけれども、あえて慎重に考えるということも大切なことだと思うわけでございまして、十分に中身を知って一つ一つ判断をすべきだという、そういう観点から少し質問をさせていただきたいと思うわけでございます。
 まず、国と地方の役割でございますけれども、国の役割は外交だとか防衛だとかできるだけ狭い範囲に限定して、地方の役割を大きくしていくべきだというような考え方が示されているわけでございますけれども、しかしこの間の阪神・淡路大震災のような大規模な災害でありますとか、それから昨年の夏の全国の異常渇水でありますとかへの対応、それから私も住宅の専門家でございますけれども、大都市の住宅問題のような、これは地方だけではどうしてもできない。国の役割が相当果たされないと国民生活の安定だとか向上を図ることができない、こういうこともあるんじゃないかと思います。
 そこで、政府の大綱方針の中で、国の役割として三つの事務が言われているわけでございます。
 国家の存立に直接かかわるような政策、それから全国的に統一されていることが望ましい基本ルールの制定、それから全国的規模、視点で行われることが必要不可欠な政策。防衛でありますとか外交、社会保障、生活保護、教育、こういうものは当然含まれるものでございましょうけれども、私がさっき住宅の問題でお話をしましたように、広域的な観点から処理すべき事務、こういうものもこの三つ以外のところに含まれるんじゃないかと。
 例えば、私も住宅政策を長くやってきたんですけれども、公営住宅なんかは市長さんによっては、どうも選挙のときに団地に行くと窓を閉められちゃうから公営住宅はつくりたくないなんという人が大変多いんですね。そういう市長さんのえり好みによって住宅政策ができないというようなことであると大変困るわけでございますし、それから流域下水道でありますとか道路だとかネットワークを形成しなきゃいけないようなものにつきましては、当然公共団体間の調整というのが大きな役割を果たすべきであると思うわけでございます。
 そういった点から、その三つに限らず、広域的な観点から処理すべき事業も国として当然かかわっていかなきゃいけないんじゃないかと思うわけでございますけれども、総務庁長官の答弁をお願いしたいと思います。
○国務大臣(山口鶴男君) 広域的な施策についてはどうか、こういうお尋ねだと思います。
 地方公共団体も、基礎的な地方公共団体としての市町村、それから広域的な仕事を行う都道府県という形で、自治体自体にもやっぱり役割分担というものがあろうかと存じます。そういう中で、今、委員御指摘の点は、広域的な都道府県の役割として進めていくということも考えればこの点は一つの解決の方法ではないかと思いますし、また市町村におきましても、広域的な事務を行うのは一部事務組合でありますとかあるいは広域連合制度というものもございますので、広域的な仕事を地方公共団体がやっていくということは私は可能ではないかと思います。
 いずれにいたしましても、法律によれば、地方分権推進委員会が設置をされるわけでございまして、そこで各方面の意見を十分聴取しながら具体的にはどうするかということについて決めていくことだろうと考えておる次第でございます。したがいまして、これは何も広域的な仕事だから国がしなきゃならぬというふうに限定的に考える必要はないのではないかというふうに思います。
○上野公成君 確かに、広域的な仕事を全部国がやれということじゃなくて、今、大臣の言われたようなことはもちろんそういう範囲内でできると思いますけれども、広域的な観点から、大都市の住宅問題でありますとかそういうこともあるんではないかということでございますので、御検討いただきたいと思うわけでございます。
 それから、今、信用組合に関する事務で問題になっておりますけれども、機関委任事務のことを質問させていただきます。
 信用組合の事務というのは、監督といいますか、これは東京都に機関委任事務として委任されているわけでございますけれども、金融の秩序というようなことはなかなか公共団体の手に負えるものじゃないんじゃないか。特に、都の職員なんか三年ぐらいでどんどん交代するわけでございますから、金融の内容まで熟知をするというようなことは到底不可能ではないかというふうに考えるわけでございます。そういったこともございますし、それから直轄以外の国道でありますとか河川の管理、これはみんな機関委任事務になっているわけでございます。
 例えば端的な例を言いますと、道路でありますけれども、例の阪神地域で山手幹線というのがありますけれども、神戸市の部分はでき上がっているんですね。しかし芦屋市に入ると一つもできていないというようなことがあります。機関委任事務ということをなくしてしまって全部地方に任せるということになりますと大変こういうことが多くなるんじゃないかということでございます。
 もちろん廃止した方がいいものはどんどん廃止するということが大事だと思うわけでございますけれども、廃止した場合に、廃止した後どういう姿になるかということをどういうふうにお考えになっているか。そしてまた、必要なものは廃止してもやっぱり制度自体は残すべきものが相当あるんじゃないかというふうに考えているわけでございまして、これもすべてなくせばいいということじゃなくて、残した方がいいんじゃないかというものがあるわけでございます。自治大臣の御見解を伺いたいと思います。
○国務大臣(野中広務君) 委員御承知のように、昨年の十二月二十五日に地方分権大綱を閣議決定いたしました。去る二月二十八日、これに基づきます推進法案をただいま国会で御審議を賜っておるところでございます。
 この分権大綱におきましても、機関委任事務につきましては、その整理合理化を積極的に推進するということを申しておりまして、一概にこれを廃止するとかあるいは国に返上するとかそういう性格ではないのでございまして、先ほど総務庁長官からお話がございましたように、推進委員会におかれましてそれぞれ専門的に御討議をいただき、地方の意見を吸い上げていただいて、そしてその結果、整理統廃合をされることになろうと考えておるわけでございます。
○上野公成君 ぜひよく一つ一つ検討していただいて、廃止すべきものは廃止するし存続するものは存続していただきたいと思います。
 それから、ドイツでありますとかアメリカ、これは連邦制をとっているわけですから非常に地方分権が進んでいる国と言ってもいいんじゃないかと思うわけです。
 私、専門の町づくりに関してちょっとお話しさせていただきますと、ドイツではBプランというのがありまして、Bプランというプランをつくることによって町をつくり上げていくということをやっております。このプランの基準は、これは連邦建設法というのがありまして国で決めておるわけです。しかし、それに基づいて地方公共団体でいろんな独自のものをつくって、そして地方議会でつくっているという、同じ地方分権でも国の役割というものがあるのがドイツの型だと思うんです。
 しかし、アメリカの場合は、これは州だとかによって全く違いまして、そして全く統一がとれていない。そのことがむしろ大変問題になりまして、例えば建築の部材なんかもう各州によってみんな違うわけですね。生産性が非常に悪いということでオペレーション・ブレークスルーというようなことも行ってなるべく統一していこうというような動きも逆にあったようなことがあるわけでございます。
 そこで、我が国においても、そういう地方分権をするにしても、何でもかんでも分権をしてしまうということじゃなくて、例えば建築物を例にとりますと、県界を越えるとどうも建築物の制限が異なるというようだと大変支障が出てくるんじゃないかと思うわけでございますけれども、総務庁長官いかがでございましょうか。
○国務大臣(山口鶴男君) 先ほどお答えもいたしましたが、やはり国として全国的にある程度統一をする、基準を示す、基本ルールを決めるというような仕事は、もちろん地方分権推進委員会での御議論を賜った上で具体的には決めていく問題だと思いますが、十分そういう点は配慮いたさにゃならぬという点はあろうかと存じます。ただ、いずれにいたしましても、我が国の制度が余りにも中央集権的過ぎる、権限の面からいいましても税財政の面からいってもそうだったと思います。
 それからまた、地方自治法を見れば自治体の基本的な任務というのは簡単に書いてあるが、そのおしまいの方の別表第一、別表第二、別表第三、別表第四というような機関委任事務、団体委任事務は大変たくさんあるというようなのが、やはり地方自治の建前からいっていかがであるかということがありまして、一昨年の衆参両院の決議にもなったんでしょうし、今回の法律提案ということにもなったのかと思います。
 したがいまして、ある程度地方自治体がその地域の住民の意向に沿って、それぞれ独自な姿というものがあって私はしかるべきではないか。同時にまた、国全体としてある程度守っていくべき基準というものもあるのではないか。両方の調和を十分図って地方自治の本旨を達成していくというのが私たちの願うところではないだろうかと思っている次第であります。
○上野公成君 今、大臣の言われたとおり、国と地方とのバランスのよい権限というのが一番大事なことではないか。確かに私も、こんなことまで国がやらなきゃいけないかということも随分あると思いますし、地方分権そのものはすることは結構だと思うわけでございます。
 そこで、地方分権をしたときに、地方公共団体が三千三百もあるわけでございまして、正直言ってその力といいますか能力といいますか、そういったことも本当にばらばらなわけでございます。それでちょっと御質問をしようと思ったんですけれども、時間がありません。
 例えば定員の問題は、国家公務員の場合は少しずつ減っているわけでございます。しかし、地方公務員の場合は、資料をいただきましたところ、ふえているわけですね。ですから、そういうようなことになって、地方分権をしたけれども地方の方の行政が肥大化するというようなことがあっては、やっぱりこれはかえって結果がよくないということになるわけでございます。
 そこで、地方分権の受け皿として地方公共団体の行政能力をどういうふうに評価しているか。また、地方分権をしてもいいような条件整備を進めていくということが地方分権の大前提になるのではないか思うわけでございますけれども、自治大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
○国務大臣(野中広務君) 今、最初に地方公務員の総数のあり方について御指摘があったわけでございますけれども、地方公務員は最近御指摘のように若干増加傾向にあることは事実でございます。
 これはもう委員御承知のように、地方公共団体それぞれ事務の統廃合、縮小、民間委託等積極的に行政改革に努力をしておるわけでございますけれども、他方におきまして医療、看護、病院、こういう問題等、あるいは消防、警察等、基準を満たすべき事業が多いわけでございまして、高齢化が進む中で地方が身近なところでお世話をしていくという仕事がふえてきておることを御理解いただきたいと思うわけでございます。申すまでもなく、これからも合理化に努め、そして地方が真にいわゆる分権の受け皿にふさわしい状況への努力は重ねていかなくてはならないと考えておる次第でございます。
 そこで、その受け皿としての地方公共団体の行政能力について今お話があったわけでございますけれども、地方分権の推進につきましては、地方がその実情に沿った個性あふれる行政を積極的に展開をしていきますように、先ほどお話もありましたように、国と地方の役割分担を本格的に見直しまして、そして権限移譲や国の関与等の廃止を行い、また緩和を行い、かつ地方の税財源の充実強化に努めまして、地方公共団体の自主性あるいは自立性を強化をしていかなくてはならないと思うのでございます。
 先般、地方制度調査会の答申におきましても、現在の市町村あるいは都道府県という二層性を基礎として地方自治制度は国民の間に広く定着をしておるわけでありまして、全体として地方公共団体は広範多様な事務事業を処理するようになり、地域経済に占める比重や地域住民からの信頼が高まるなど、総合的な行政主体として広く国民から評価されるようになっておるという表現で答申が行われておるところでございます。
 したがいまして、委員も御承知のように、地方自治法が施行をされましてから約半世紀にもなろうとする今日でございますので、地方公共団体の能力が着実に向上しておることは正当に私は評価をいただけると考えておるところでございます。
 いずれにいたしましても、地方分権の成果を十分なものにしていきますためには、もとより地方公共団体への権限移譲等の国の側における努力が必要でありますけれども、同時に地方公共団体みずからにおいても行政能力の向上、自己チェックシステム等の整備、住民の信頼の確保等の観点から行政運営の改善充実に努め、新たな地方公共団体の役割を担うにふさわしい行政体制の整備確立を図ることが必要であると考えておりまして、自治省といたしましても必要な支援を行ってまいりたいと考えておるところであります。
○上野公成君 私も国家公務員の経験もありますし、それから地方公務員として勤務したこともあるわけでございますけれども、国家公務員は御承知のように霞が関なんかは夜でも電気がこうこうとついていまして、六時になっても七時になっても帰らないという状況ですけれども、地方の場合は五時になったらすっと帰るようなことがあるんで、やはりかなり違うんじゃないかと思います。
 大臣も町長の経験もありますし、府知事の経験もあって、また大臣の経験があってもう十分に実態を御承知だと思うわけでございますけれども、その受け皿としての公共団体の力をつけるためにぜひ御尽力いただきたいと思います。
 それから、時間がありませんので、最後に規制緩和について一つだけ質問させていただきますけれども、規制緩和につきましても、先ほど言いましたように大合唱でございまして、何でもかんでも規制緩和をすればいいというような風潮でございます。
 この間、ある現役の経営者といいますか、会長や社長さんに会ったわけですけれども、経済界の中で規制緩和だとか政治改革だとかといろんなことを言っているのは、どうも経営者としてはOBの既に実業にもう携わっていない人がいろんな審議会の委員になって、勲章をもらいたいからかどうかは知りませんけれども、そういう傾向があるということで、本当に経済界の意見を代表している意見なのかどうか、経済団体の意見が。非常に疑問があるところなんでございます。
 例えば一つの例で申し上げますと、大店法というのがございます。これは、段階的に廃止していくんだというようなこともあるわけでございますけれども、地域の雇用でありますとか、実際にその地域を担っている中小の小売店だとか商店街、こういうものを守っていくということもその地域を守っているということで大変必要なことじゃないか。
 そういった意味から、外国からの要望をうのみにしてどんどんどんどん規制緩和をしていって、そういった大切なものまでなくしていくというのは大変残念なことだと。むしろ、被害を受ける商店の方々、小売店の方々のいわゆるマイナス面も十分受けとめて規制緩和をやっていくということが大事な問題じゃないかと思うわけでございまして、総務庁長官の御見解を伺って、質問を終えたいと思います。
○国務大臣(山口鶴男君) 本日参議院の予算委員会で同じような御質問がございまして、村山総理から答弁がございました。
 概要を申し上げれば、もちろん経済団体からの要望は、経団連からの要望もございますし、また、商工会議所からの要望というのもあるわけです。私たちは、経済団体の要望を聞きます場合、あらゆる経済団体の御要望というものにやはり耳を傾けていかなきゃならぬだろうと思います。
 それからまた、地域の歴史を考えますと、地域の商店街を形成しておられる方々が長い間かかってその地域の発展のために、また伝統をつくるために努力をしてこられたということもやっぱりこれは十分私たち見なきゃならぬ問題だろうと思います。
 ただ、やはり時代の要請というものもございますし、国民各層の意見というものもございます。したがって、大店法につきましては、営業時間を延長するとか休日を減らすとかいう形である程度消費者、一般国民の皆さん方の要望にこたえて、何といいますか、規制緩和をいたしてまいっております。
 そういう中で、この問題につきましては今度の中間取りまとめでも中期的な検討課題ということになっているわけでございまして、今、委員から御指摘されましたような問題点につきましては、十分やはり各方面の意見を聞きつつ対処をいたしてまいりたいというふうにお答えを申し上げておきたいと存じます。
○上野公成君 終わります。
○山口哲夫君 どうも御苦労さまです。
 まず、地方分権の関係で総務庁長官に質問をいたします。
 国の役割分担でございますけれども、できるだけこれは具体的に法案に書かれた方がよろしいんでないか。こういうことで前の委員会で質問をいたしましたところ、野中自治大臣から、大綱の取りまとめに当たりましては具体的な内容が入るように私どもぜひ努力をしてまいりたいと、大変心強い御答弁があったんですけれども、残念ながら今回のこの法案を読んでみますと、三つには分けておりますけれども大変抽象的な書き方になっているわけであります。
 そこで、抽象的には三つに分かれておりますけれども、この解釈といたしましては、地方六団体から出ております地方分権の推進に関する意見書の中で、国の役割分担というものを極めて具体的に十六項目に分けて書かれております。これは御存じかと思います。また、政府の行革推進本部の地方分権部会の「本部専門員の意見」というのが出されておりますけれども、これにも大体法案の三つに分けた抽象的な項目の後に括弧書きで具体的に書いてあります。
 例えば国家の存立に直接かかわる政策に関する事務でいえば、「(例えば、外交、防衛、通貨、司法など)」。それからその次には、国内の民間活動や地方自治に関して全国的に統一されていることが望ましい基本ルールの制定に関する事務、「(例えば、公正取引の確保、生活保護基準、労働基準など)」。そして最後に、三つ目は、全国的規模、視点で行われることが必要不可欠な施策、事業に関する事務、「(例えば、公的年金、宇宙開発、骨格的・基幹的交通整備など)」。こういうふうに具体的に例を書いてあります。
 したがいまして、お尋ねしたいことは、抽象的には書かれているけれども、この法案の精神というものは、今述べたような具体的な例示のようなものを指すんだというように解釈してよろしいですね。そうでないとこれはどんなふうにでも拡大解釈できるような文章になっておりますので、念のために聞いておきたいと思うわけです。
○国務大臣(山口鶴男君) 御指摘のように地方六団体の意見書、また御指摘ございましたように地方制度調査会の答申、それぞれ例示がございます。今回、私たちは主として地方制度調査会の答申というものを十分尊重いたしまして、国家の存立にかかわる事務、それから全国的に統一されていることが望ましい基本的ルールの制定、そして全国的規模、視点で行われることが必要な事務という形で一応法律としては整理をいたした次第でございます。
 そして、具体的にそれでは地方制度調査会のような内容なのかと、こういう意味を含めてのお尋ねだと思うんでございますが、そういうことをイメージしていることは事実でございます。具体的には法律では、総理大臣の特にイニシアチブで地方分権推進委員会というものを設けることにいたしまして、しかもこの委員会は国がつくります計画に対して勧告もできる。そして、今後のあり方について監視もするという極めて強い権限を織り込んでつくったわけでございますので、十分国民各層の意見または地方自治団体の意見というものを尊重して対処いただけるものと私は思いますので、委員の御心配されるような点は、そんなに心配をする必要はないのではないだろうかというふうにも考えておる次第でございます。
○山口哲夫君 それであれば結構です。
 地方制度調査会の国の役割分担のこの括弧書きの具体例も、今私が述べた専門員の意見と全く同じでございますから、そういうものをイメージして考えているということであれば結構でございますので、ぜひひとつ、拡大解釈がされないようなことで今後やっていただきたいものだと思っております。
 次に、地方分権の一番問題は、今お話にありましたように、政府が国会の承認を得て選任する七名の推進委員というのは、非常に私は大事な役割を今後持ってくるというふうに思います。
 それで、政府が国会の承認を得て任命するこういったたぐいの委員というのは、今までとかく元官僚が非常に入るわけですね。例えば、行政改革審の豊かなくらし部会、ここは三十人の専門員の中に、何と官僚OBが十一人も入っている。そのうちの九名は元事務次官です。そして、肩書は全部民間の肩書です。だから、見ただけではどの方が元官僚OBだか全然わかりません。しかし、調べるとそんなに入っているわけです。ですから、パイロット自治体は骨抜きされたんだというのはこれはもう通説になっているわけですね。
 ですから、これからも地方分権を真剣に進めるという考え方に立てば、この七名の推進委員の中には官僚OBは絶対に入れるべきではない、私はそう思います。いかがでしょうか。
○国務大臣(山口鶴男君) 地方分権推進法案が成立させていただけますならば、まさに総理大臣がすぐれた有識者の方々を選考いたしまして、しかも国権の最高機関であります国会、衆参両院の御同意を得ました上で七名の委員の方を任命する、こういうことになるわけでございます。
 したがいまして、私が今、どういう者はいいとか、どういう者は悪いとかいうことを言うことは控えさせていただきたいと思うんですが、ただ、昨年成立をいたしました行政改革委員会、五名の委員の顔ぶれを見ていただけばおわかりだと思いますが、まさに村山総理の指導性をもって任命した五名の方でございます。その顔ぶれを見れば、ただいま山口委員の御心配というものは解消されるのではないであろうかなというふうにも考えるわけでございまして、この点は意のあるところをひとつお酌み取り賜ればと思います。
○山口哲夫君 今、衆議院の方に法案も出されておることでございますから、これが通った暁におきましての推進委員の選任に当たりましては、今、山口長官のおっしゃったことを信じて期待しておきたい、こう思っております。
 それにあわせまして、事務局でございますけれども、これは法案のときにまたやりたいと思いますけれども、第十六条で事務局長ほか所要の職員を置くことになっておりますけれども、これはあくまでも専任の事務局長を置くべきだというふうに考えますし、そのように解釈してよろしいでしょうね。
 と同時に、この事務局長もまた問題なわけです。少なくとも、元官僚OBなんか入れたんではまた骨抜きにされる危険性がありますので、その辺も十分ひとつ配慮をしていただきたいなと、今からそうお願いしておきたいんですけれども、いかがでしょうか。
○国務大臣(山口鶴男君) 事務局長は専任の事務局長を置くことは当然でございます。ただ、事務局長の人事についてお触れになったわけでございますが、これも昨年の話で恐縮でございますが、行政改革委員会が設置されました際の事務局長人事をどうするかということでいろいろ議論がございました。そして、事務局長不在という期間も若干あったわけでございますが、最近事務局長も選任をされました。
 私は、日本の官僚の皆さん方というのはシンクタンクとしては世界で最もすぐれたシンクタンクではないかと思っております。すぐれた方々がおられることも事実であります。ただ、そう言ってはなんでございますけれども、我々政治家から見ると、やや、課あって局なしとか局あって省なしとか、あるいは省あって国なしというような点なきにしもあらずという方もおられることも事実だろうと思います。
 そういう意味での御懸念があろうかと思うんですが、私は官僚の肩書をお持ちになった方でもやっぱりすぐれた方はおられるだろうと思うんです。ですから肩書だけですべてを排除するということはいかがかなと。行政改革委員会もそういう点を十分お考えになって、そして事務局長の選任もなされたというふうに私は理解をいたしております。
 したがって、限定的にどうこうということではなくて、その七名の委員をもって構成されました地方分権推進委員会が、最もすぐれた人物をという形で事務局長が選任されれば、私はそれでいいのではないだろうかというふうに考えておる次第であります。
○山口哲夫君 できれば民間人を据えた方が私は理想だと思いますけれども、百歩譲って、現職の官僚の方を据えるということも考えられますね。そういう場合であっても、少なくとも分権に関する事務局長は、これはやっぱり事業実施主体の官庁、そういうところの方は充てるべきではないと思います。自分たちの権限を移譲しなければならない立場にある人たちですから、やっぱり誤解を招くこともありますから、そういう点では事業実施を持たない、そういうところからやっぱり選ぶべきでないだろうかなというように私は思いますので、要望しておきたいと思います。
 それから次に、権限移譲の問題については二層制になっております。それで、まず都道府県に移譲をする、そして都道府県から今度は市町村に二段階的に移譲していこうという考え方ですけれども、前にもちょっと質問しましたけれども、大分県の知事は、平成七年、ことしの四月一日から十一事務百三十一項目を市町村にもう移譲することを既に決めております。そして、平成八年の四月一日以降は十三事務百三十八項目を移譲しよう。合わせますと何と二十四事務二百六十九項目を市町村にもう移譲することを約束しているわけです。
 これ全部詳しく申しますと、政府が今、市町村までは移譲はまだ考えていない、府県までしか移譲を考えていないようなものが、もう既に先進的に市町村まで移譲しようという内容になっているわけでございまして、大変私は結構なことだと思うわけでございます。そういうことからいたしますと、これはやっぱり市町村でも十分権限を移譲してもらってもこなすことができるという実証だと思うわけです。
 そういう意味で、やっぱり基本的な組織であります市町村に権限というものはできるだけ移譲する方がいいと思いますので、とりあえず都道府県に移譲はしますけれども、後はその都道府県と市町村との話し合いによって、すぐにでも移譲できるものは市町村に移譲させるというような方針で臨んだ方がよろしいんではないだろうか、私はこんなふうに思いますけれども、いかがでしょうか。
○国務大臣(山口鶴男君) 地方自治法の第百五十三条の第二項を活用いたしまして、都道府県が事務を市町村に委任するということは全国どの都道府県においても行われていることだろうと思います。私の出身であります群馬県の知事もこの点は大変熱心でございまして、都道府県の事務をなるべく市町村に移譲したいということで努力もいたしております。
 総務庁は全国に行政監察事務所を持っておりますが、その事務所の一つの仕事として、当該都道府県が事務の移譲にどのように取り組んでおるかということにつきましても実はまとめるように指示もいたしまして、そういう仕事も今進めていただいておるわけでございますが、御指摘のとおり、地方制度調査会も地方自治団体二層制、このもとでの権限移譲をお考えになっておられるわけでございまして、そういう中でまた都道府県がさらに市町村に対して地方自治法に基づいて委任をしていくということは当然あってしかるべきだし、それはまた大変結構なことであるというふうに思います。
○山口哲夫君 次に、自治大臣にお尋ねをいたします。
 起債の許可権の問題ですけれども、どういうわけか法案の中にもそういうものが見当たりません。この起債の許可権というのは、地方分権に関係なく相当以前からできるだけ早く地方自治体の方にこれはもう移譲するべきであるという意見が大変強く出ていた問題でございますけれども、これをもし自治省がいつまでも握っているようでは、これは地方分権は何のためにやったのかという批判が出てくるんでないかなというように実は思うわけでございます。
 以前の委員会での質問に対する答弁でも、これはどなただったでしょうか、遠藤財政局長の答弁でしたですね、許可制度はあるけれども、実態としては地方団体にかなり自由に起債をする自由が今は生じているんだ、こういうふうに言われております。確かに、市町村の起債の許可というのは自治省から都道府県知事に移譲したということはありますけれども、しかしまだ都道府県知事の許可をとらなければならないことだけは事実でありますね。
 そんなようなことを考えれば、これは確かに、自治省に言わせますと、起債をした後の償還について、元利償還の一部をこれは交付税として自治省で面倒見ているんだと。だから、そういうことを考えたら、借金することだけは自由にさせておいて、返す方はあと政府が面倒見ろというのであればまずいだろうと。こう自治省の方はおっしゃるわけです。
 それは確かにそういう一理はあると思うんですが、しかし分権をした場合には、これは財政というものはある程度地方の権限の中にもう移譲するというか、交付税ももちろん含めてですけれども、ある程度の財政的な枠を与えるのであって、その中で自由に起債の償還とかそういうものは自治体が行うような形を私は財政的にはとるべきだと思うわけです。
 ですから、そうなったら一々起債の許可を自治省あるいは都道府県知事からいただかなくたっていいんではないだろうか。そういう先を見越した、地方分権の中における財政のあり方を今言ったようなことで考えれば、当然そのときは起債の許可権というのは切なくするというようにしていかなければいけないんでないかなと思うんですけれども、どうでしょうか。
○政府委員(遠藤安彦君) お答えを申し上げます。
 確かに、今、先生おっしゃったような有力な意見もあるわけでありまして、一考に値すると思うのでありますが、今の地方財政の全体の姿というものを考えていただきますと、やはり地方団体の間には税源の偏在というものがございまして、これは財源調整制度で調整をしていくという仕組みになっております。先生も御存じのとおりに、これは地方交付税というものがその財源調整制度の重要な役割を担っておるわけであります。したがって、私どもとしましてはこの地方交付税というものを的確に確保していかなければいけないという大命題があるとも思います。
 そういったことからいいますと、やはりこの地方財政計画の策定というのが現在の地方財政制度の中で非常に大きなウエートを占め、この中で地方税あるいは地方交付税というものによって地方の一般財源を額として保障していくというシステムになっているわけであります。
 実は、御質問の中に地方債の元利償還金の一部を交付税で基準財政需要額に算入しているという表現があったわけでありますが、私どもは地方債の元利償還金の全部を地方財政計画の公債費の中に入れて、そしてそれが支出可能な財源を全体として保障するという仕組みになっているわけでございます。
 そういった意味で、現在の段階でこれだけ財政力に差がある地方団体というものの現状を考えてみたときに、この地方債の許可制度をなくして自由に各地方団体が地方債を起こし、その元利償還金をすべて財政計画において財源として保障していかなければならないということは、今の地方財政制度の中ではなかなか難しいのではないかというように考えている次第であります。
○山口哲夫君 今の財政計画あるいは地方財政制度の中ではそれは無理だと思います、確かに。今おっしゃったようないろいろな問題がありますからね。ただ、私が言うのは、分権の時代が訪れたときには財政計画そのものもやっぱり大きく変えていかなきゃならない性格のものだろうと思うんです。そういう中では、一々自治体に対してどこの自治体はどの程度の借金をしているからそれに対して元利償還はどの程度持つとか、そんなことは必要なくなるのではないだろうかというように私は実は思っているわけなんです。
 それはそれといたしまして、これは地方分権にかかわらず、さっき言ったように、当分の間許可権を政府が握っているというんですから、当分の間というのは法的に何年くらいのことですかといっていつか法制局に聞いたら、それは常識的には数年でしょうねと。それが今四十年もなっちゃっているんですけれどもね。
 ですから、今、分権をしようとするときに、自治省が分権でなくてもやらなければいけなかった起債の許可権というものを自治省が握っているのであれば、これはほかの官庁がおれたちの方は分権しろ分権しろと言うけれども、自治省は肝心なところを分権していないじゃないかというようなものにも私は使われるのではないかなというふうに思うものですから、将来の地方財政のあり方、分権との関係の中で改革をしていく時代には、当然起債の許可権というものは一切これはなくするというようにしていくべきであろうな、そういうふうに私は考えるわけです。もし間違っていれば御指摘ください。私はそういうふうにぜひ御検討いただきたいものだと思っているわけです。
○国務大臣(野中広務君) 今、山口委員がおっしゃいましたように、分権が行われ、これに伴います税財源が十分地方に担保されましたそういうときに、起債の許可制度を含めて検討をされるべきだという御意見は、私もそのとおりだと思うわけでございます。
 ただ、山口委員のような首長さんばかりではないわけでございまして、自分の任期中だけ大幅な起債をやりまして後の人のことを考えないという人もあったわけでございますので、現行制度の中におきましては、やはり起債について定のチェックをせざるを得ない状況がありましたことは御理解をいただけると思うわけでございます。
○山口哲夫君 起債の許可権をなくして自由に起債をさせるようにすれば、今、大臣おっしゃるように、とにかく借金だらけの自治体が出てくるのじゃないかという、そういうお気持ちはわかります、心配は。しかし、それは自治体の場合には首長リコール制度もあるわけですよ。だから、そこが一番大事なところだと思うんですよ、住民が自分たちの町がこんなに借金をしていいのかということをやっぱり判断をするという、これは地方自治の一番大事なところだと思うんです。だから、恐れる必要はないと思うんですよ。そういう自治体は必ずかわっていくわけですから、首長はかえられていくわけですから、私はそういう心配だけは御無用だなというふうに思っております。
 次は機関委任事務でございますけれども、これは野中自治大臣、前の委員会では、機関委任事務というのは基本的には廃止するという方向で進めていくべきだと、大変力強いお答えをいただいたんですけれども、残念ながら原則廃止というのが今度の法案には入っていないようであります。
 ただ、考えてみますと、分権が進んできますと、今、機関委任事務で自治体がやっている仕事の大部分は、これは自治体の仕事になっていくんでないんでしょうか。例えば、戸籍事務とか国勢調査だとか、国がどうしてもやらなければならないような仕事の委任事務は別ですけれども、たくさんある中の大方の仕事というのは、分権が進んでいけばもう自治体が権限を持ってやるということになれば、おのずから機関委任事務というのはなくなっていくものではないだろうか。そうすれば、機関委任事務は原則廃止ということをはっきり書いた方がむしろよろしかったんでないんだろうかなというように思いますけれども、いかがでしょうか。
○国務大臣(野中広務君) 私の答弁に関係して御指摘をいただきましたので、私からお答えを申し上げたいと存じますけれども、自治大臣としては、委員がおっしゃるように、機関委任事務のほとんどをそれぞれ地方の事務として行っていくべきが基本であると考えております。
 ただ、大綱さらには法案作成の段階で総務庁に各省庁間の調整に大変御苦労をいただきまして、そういう結果からこのような表現になりましたことは、大変御苦労いただいた山口長官を初めとする総務庁の御苦労があったことを御理解をいただきたいと思うわけでございます。
○山口哲夫君 最後に、規制緩和について山口長官にお尋ねをいたします。
 最近、経済団体の一部から、最低賃金制も規制緩和の対象にするべきだという意見が出ているように聞いております。しかし我が国の場合は、労働組合のあり方、産業別労働組合ではない、どちらかというと企業内の組合、そういうことからいって、みずからやっぱり最低賃金というものをきちっと決めていくだけの力というのはなかなかないということから考えれば、最低賃金制があるから何とか賃金をある程度生活に見合ったもので押さえることができるわけですけれども、日本の場合、最低賃金制の規制緩和を仮にやったということになりますと、これは大変賃金を低く抑えられる危険性があるんでないだろうかというように思うんですが、そういうことについていかがお考えでしょうか。
○国務大臣(山口鶴男君) お答えする前に、一言機関委任の問題について申し上げておきたいと思います。
 御案内のように、委員も御指摘ですが、選挙の執行でありますとか戸籍事務でありますとか、旅券の発給でありますとか、どうしてもやっぱり廃止できない機関委任事務というのもあろうかと思います。
 したがいまして、法律の中ではああいう表現になっておりますけれども、これはあくまでも昨年十二月の地方分権大綱における、機関委任事務制度については整理合理化を積極的に進めると同時に、機関委任事務制度そのものについても検討するということになっておるわけでございますので、この点は自治大臣が今お話しになりました気持ちと私も同様の気持ちであるということを申し上げておきたいと存じます。
 それから、今お話のありました日経連から産業別最低賃金の廃止が要望として出されていることは承知をいたしております。この要望につきまして、労働省は、去る三月十日の中間的な検討状況の公表におきましては実施困難というところに入れている次第であります。
 総務庁といたしましては、今後、各省と調整を行っていくわけでございますけれども、このように関係者の間で大きく意見が分かれております問題につきましては、まず関係者間でよくお話し合いをすることが必要ではないのかというふうに考えております。したがいまして、一つの団体だけの御意見をもってそれをよしとするということではないということで御理解をいただきたいと存じます。
○山口哲夫君 終わります。
○広中和歌子君 細川内閣は、緊急経済対策の中で、規制緩和を推進するため経済的規制は原則自由、社会的規制は必要最小限にするという基本的考え方を打ち出しました。
 こうした方針は村山内閣でも引き継がれると発表され、総理御自身も繰り返し答弁されておりますが、改めて総務庁長官にその御決意をお伺いいたします。
○国務大臣(山口鶴男君) 経済的規制につきましては原則自由、社会的規制につきましては必要最小限にとどめる、それが村山内閣としての考え方でございます。
○広中和歌子君 しかしながら、規制を緩和するということは、これまで規制で守られていた業界、利益を得ていた人たちは損をする。ですから当然反対いたしますし、他方、規制を受けていた業界や、また消費者の多くは自由化で利益を得ます。経済的規制を撤廃する中で利害調整は決して楽ではないわけでございます。
 そこで伺いますけれども、現政権は規制緩和についてどのような優先順位をつけて臨まれるのか。消費者が第一順位であるのかどうかをお伺いいたします。
○国務大臣(山口鶴男君) 去る三月十日に、規制緩和に関する中間的な取りまとめをいたしました。
 これは、村山総理が、規制緩和の内容をより充実させることに努力をする、より立派なものをつくる、このことがもとより一番重要であることは言うまでもないと。しかし、同時に忘れてならないのは、その結論を出すに当たって民主的な手続、ガラス張りの中で透明性を確保した形でこれを進めていくかどうかということもあわせて考えなければならぬ重大な課題だということを強調されるわけでございます。
 私も全くそのとおりだと思いまして、そういう意味で三月十日に中間集約をやって各省庁がそれぞれ公表する。また、十三日には総務庁と外務省とが一緒になりまして、各国の大使館、あるいはEU、アメリカ等の財界の人たちにも呼びかけをいたしまして、そうして内容をすべて公表いたしまして、御質問等にも応じた次第でございます。
 そういう形の中で、消費者の皆さん方、国民各階層の皆さん方の御意見というものを十分承る中で、この規制緩和というものは進めていくべきだというふうに考えております。したがいまして、御指摘の消費者の御要望というものは十分踏まえる中で、ぎりぎりこの規制緩和を進めていきたいと考えておる次第でございます。
○広中和歌子君 規制緩和といいましても、本当に難しい問題だろうと思います。それで、具体的な例でお伺いしたいと思います。
 京都の西陣と丹後の絹織物は日本の伝統産業でございます。この伝統産業に生糸を提供するのが養蚕農家でございますけれども、現在二万軒ございます。ところが、それだけでは十分ではございませんので当然輸入をしなければならない。それを蚕糸砂糖類価格安定事業団が生糸の一元化輸入をしているわけでございます。
 その結果として非常に高い原料、原糸を使わなければならず困っているというふうに伺っております。ひどいときは国際価格の四倍の生糸を使わなければならなかった。ですから、イタリアといったような国との国際競争に太刀打ちができないということでございますけれども、こうした一元化輸入というのは経済的規制なんでしょうか、それとも社会的規制なんでしょうか。
○国務大臣(野中広務君) 京都の西陣並びに丹後の事情を十分御了承の広中委員からの御指摘でございまして、今御指摘のございました、昭和四十九年、議員立法で成立をいたしましたいわゆる生糸一元化輸入のあり方については、近年、和装産業の衰退あるいは生糸価格の不安定等からその見直しが強く言われておるところでございます。私どももその事情を十分承知いたしておるところでございます。
 特に最近、西陣等におきましては一時は高級品等が非常に売れ行きが伸びたわけでございますが、景気の衰退等で、また手形の長期化等で非常な苦悩に陥っております。丹後におきましても同様、洋装の広幅等に転換を求めてその苦境を乗り切ろうとしたわけでございますけれども、今日また低迷を続けておるという実態でございます。
 今回のいわゆる特殊法人の見直しにおきまして、全部を廃止することはできなかったわけでございますけれども、蚕糖事業団を合併することになりましてその効率化を図ることになりますとともに、本年、平成七年の四月からは、いわゆる一元化輸入の見直しといたしまして、事業団以外でも関税相当額を払えば直接生糸の輸入を行うことができるようになってきたわけでございまして、十分ではありませんけれども、ようやく産地の皆さん方の希望に一歩近づいたと認識をしておるところでございます。
○広中和歌子君 WTOの実施に伴いまして、本年四月から一元化が廃止されます。そして関税化が導入されるわけですけれども、そういたしますと、少なくとも、この蚕糸砂糖類価格安定事業団の蚕糸の部分に関しましてはもう廃止してよろしいんではございませんか、合併ではなくて。
○説明員(瀧倉昭君) 農林水産省の繭糸課長でございますが、ただいま御指摘の蚕糸砂糖類価格安定事業団の蚕糸部分の業務でございますけれども、今回WTO協定の施行に伴いまして、昨年の秋に繭糸価格安定法等の改正をさせていただきまして、来月から、一番目に、生糸についての事業団の一元輸入制度を廃止いたしまして、事業団以外の者でも関税相当量を支払えば生糸を輸入できるということにしたわけでございますが、その際に、事業団が関税相当量の一部を徴収するというふうな仕組みをいたしまして、この仕組みは、国際ルールで設定されます関税相当量は相当高いものになります。そこで、絹織物業者の皆様方に原料生糸を安く提供できるように一定の枠を設定いたしまして、需給上必要な数量について関税相当量を大幅に下げるというふうな形をとる、そういう趣旨のもとに事業団の機能を生かすということでございます。
 なお、これによりまして、従来事業団が一元輸入をしていたというふうな形から、実需者でございます絹織物業者の皆さんが直接に輸入先の中国なりそういった国あるいは業者と、また品質、価格について交渉できるというふうな形で、かねてから要望されていたものについての形が実現をするというふうなことでメリットがあるというふうに考えておる次第でございます。
○広中和歌子君 そうすると、この関税化の結果といたしまして、絹織物業者は生糸を従前よりも安い値段で手に入れる、そしてその安い部分というのは事業団が支払う。つまり、我々の税金が払われる、そういうことになるわけでございますか。
○説明員(瀧倉昭君) 生糸の輸入価格につきまして、これまで事業団が一元輸入という形の中で、絹織物業者の皆様方からは中国なりから日本は高く買わされているというふうな御指摘をいただいておりました。そこで、今後は事業団が一定の関税相当量はいただきますけれども、その範囲で輸入業者の皆さんが直接に相手方と交渉がなされます。
 それからもう一つは、従来は生糸について二国間の政府間協定でもって数量を設定しておりましたが、そういうことも今後は国別の枠はなくしていくというふうなことでございますので、どこから輸入するかということの牽制効果もございまして、絹織物業者の皆さんは今後輸入生糸が安くなるというふうな期待をしておりますし、私どももそういう形でぜひ応援もしていきたいというふうに思っております。
○広中和歌子君 何か今の御答弁、後でゆっくり議事録読んでみますけれども、自由化の中で、時代錯誤のような感じがしてしようがないわけでございます。
 ともかく日本の織物業者たちは生糸を関税という形で高く買わされるわけですけれども、問題はそれだけではなくて、今御指摘ありましたように製品輸入の場合には関税がかかってないわけです。日本の業者、商社などが海外で日本の和装用品、そういうものを海外、特に人件費の安い中国あたりでつくらしているらしいんですけれども、そういったものの輸入が非常に日本の伝統産業を圧迫している、そういった部分もあるわけでございます。
 そうした場合、こうした伝統産業をどのような扱いで見るのか。例えば靴なんかに関しましては、一足につき七千円とか六千円とか非常に高い関税がかかっておりますけれども、そうした関税が社会的規制であるんだったらば、伝統産業の保護というのも社会的規制なのかなと思ったりするわけでございますけれども、その点についてコメントをお願いいたします。
○説明員(稲葉健次君) 通産省の生活産業局の通商課長でございます。
 ただいま先生の御指摘の件でございますが、絹の製品のことであろうかと思います。
 それで、生糸の一元輸入制度、一九七四年に導入されたわけでございますが、この結果、絹の製品、例えば絹糸ですとか絹織物の輸入の増大が懸念される事態が生じたわけでございまして、私ども通産省といたしましては、七六年以降、主な供給国でございました中国及び韓国との間で協議を行いまして毎年の輸入数量を設定いたしまして、輸入貿易管理令あるいは輸出入取引法に基づく輸入管理を行ってきております。
○説明員(瀧倉昭君) 原料を所管する立場として、ただいまの先生の御指摘の製品輸入の問題でございますけれども、国内で絹織物なりの形で消費をされておりますものは生糸換算して三十六万俵というふうな数字になっております。その中で、最近非常に二次製品ということで製品のでき上がったものがふえておりまして、それがパーセンテージで四七%ぐらいになっておりますけれども、ただいま御指摘の和装品が相当ふえて、その結果として国内の絹織物業者の皆さんが苦境に陥っているのではないかという点につきましては、二次製品の中の九割程度は洋装品でございまして、従来必ずしも絹というものが使われていなかった部分が中国なりで非常に低価格品が日本の業者とも協力をしてでき上がりまして、それが輸入されて、最近は下着のたぐいでありますとか、あるいはハーフコートといったものでありますとか、そういった洋装品での需要の開拓がなされておるというふうに私どもは認識をいたしております。
○広中和歌子君 では次に、自動車の車検制度について伺いたいと思います。
 これまでの制度はどのような意味を持っていたのかお伺いいたします。
○説明員(溝口正仁君) 自動車は、運転する人だけじゃなくて歩行者とか住民とか、そういうものの安全とか、公害を防止するという意味で、我が国において安全の確保とか公害の防止に必要な道路運送車両の保安基準を定めて、これに基づいてメーカーを指導し、さらには使用者に保守管理を要求しているわけでございます。そういう意味で、自動車の安全のために必要な制度だというふうに考えております。
○広中和歌子君 車検による整備というのは業界に二兆二千億円をもたらしているというふうにあるところで読みました。それが事実かどうかはともかくといたしまして、もし安全面への配慮からこうした車検が必要であるんだとしましたらば、その点検はブレーキとか、それからヘッドライト、テールランプ、それからワイパー、そうしたまさにいわゆる直接安全性、その部分に限るべきであって、他の整備はユーザーに任せてもいいんじゃないか、そんなふうに思うんでございますけれども、御意見を伺います。
○説明員(溝口正仁君) 先生の今の御指摘の二兆二千億という部分はいわゆる整備という点でございまして、車検というものの狭い範囲の話は、いわゆる国の車検場へ持ち込みまして検査をする。その場合には小型の乗用車でいえば千四百円という検査料でございます。おっしゃるのは定期点検整備のことだと思います。
 自動車は当然磨耗する部品を使ってございますので、そういう意味で定期的にやっぱり整備をしないと故障が起きるなり事故に至るというようなことでございますので、その辺の部分は、おっしゃる意味でやはり最終的には自己管理というんですか、使用者の自己責任ということがあります。現在までは検査の前に定期点検整備を実施するようユーザーに求めてきたわけでございますが、本年の七月に予定してございます制度改正におきまして、おっしゃるとおり、整備点検といわゆる検査、これを分離するというふうに考えてございます。
○広中和歌子君 さらに申し上げたいことがあるんです。
 安全面に配慮するということが非常に大切であると思うわけでございますけれども、それだったらばもっと外国車のようにボディーそのものの安全性を高めていただきたいと思います。
 例えば、サイドビームとかバンパー、フレームのフレキシビリティー、吸収度を高めるとか、あるいはエアバッグをつけてくださるとか、そういうようなことをいたしますと、これドイツの例なんでございますけれども、一九八〇年から九二年の間にドイツ、これは旧西ドイツでございますけれども、交通事故死者数が約半分に減っているんです。一万三千四十一人から七千二百九十八人に減っている。他方日本は、車の数もふえたということもあるんでしょうけれども、八千七百六十人から二万一千四百五十一人と、非常にふえているわけですね。
 日本では非常にファンシーなエレクトロニックのいろんなところは立派でございますけれども、安全面、例えばドアのところにつくビームとか、そういったことに関しては、日本の自動車メーカーがつくれないんじゃなくて、外国に輸出する車に関してはそういった安全性を装備された車が輸出されるわけですけれども、我々が日本で使う車に関してはそういった安全性の配慮がない車が多いと。特に小さな車に関してはそういうことが言えるというわけでございまして、むしろそういうことを積極的に規制をしていただきたい。そういう規制を強めていただきたいと思うわけでございますが、いかがでございましょうか。
○説明員(溝口正仁君) 先生御指摘のとおり、かつては自動車の仕様に内外格差というんですか、内外仕様に差がありました。その点につきまして、私どもそういう格差の是正をメーカーに指導してまいりました。
 先生御指摘のサイドドアビームでございますが、これは例でございますけれども、平成二年ごろには確かに国内の車には六%前後しかついていません。現在は九九%ついてございます。そういうふうに、基本的にはもう内外格差がないように基本的な安全対策は同じに指導してございます。おっしゃる趣旨で、安全性向上のために、運輸技術審議会の答申を踏まえまして、段階的に、例えば前面衝突試験の導入とか後部の座席の三点シートベルトの義務づけ等を順次やっているところでございます。
 それからドイツの話は、確かに現在東ドイツを吸収いたしまして若干上がっているようでございます。ただ、いろいろな施策をやっていることは事実というふうに聞いておりますけれども、ただ現在の状況を申しますと、十万人当たりの死者数でいえば、日本の場合は十・六人、ドイツは十三・二人で、半減したといっても日本には及ばないという状況でございますけれども、いずれにしても効果を上げたことは我々も勉強をいたしまして、取り入れていきたいと思っております。
○広中和歌子君 そのお答えを伺って大変うれしゅうございます。実を言うと、安全性の問題については私はかつてから問題意識を持って質問しておりましたので、この二、三年の間に随分よくなったものだと大変感謝いたします。
 ついでにガソリンの値段について伺います。
 私は、日本のガソリンが高いのは税金が高いからだと思っておりましたんですけれども、そうではなくて、税金の部分とその他の部分に分けると、その他の部分、つまりコストプラス利益という部分が日本では非常に大きいんですよね、諸外国に比べまして。その理由、なぜかということをお伺いしたいんですけれども、これは規制と関係があるんでしょうか。
○説明員(松永和夫君) お答えいたします。
 今、先生御指摘のとおり、ガソリンを例にとりますと、日本と欧米諸国の間の価格差は税金以外に精製元売から流通段階でのコスト差というのがかなりございます。その要因といたしましては、いろんな分析がございますけれども、一つには、日本の場合、これらの製品の輸入が実質上精製企業に限定をされている。特定石油製品輸入暫定措置法というのがございまして、その法律によりまして限定をされている。これもかなりの大きな要因の一つになっているんではないかというふうに我々は認識をしております。
○広中和歌子君 規制緩和、自由化の方向はいかがでしょうか。
○説明員(松永和夫君) こうした石油製品の内外価格差問題に対応するために、これまでの石油製品の安定供給、こういう政策目的に加えまして、効率的な供給というものを確保するために、昨年来審議会等で議論をしてまいりまして、その成果といたしまして、今お話をいたしました特石法の廃止、それから流通面におきましては、指定地区制度の廃止等の関係法令の整備を行います法案を今、国会に提出をさせていただいておりまして、こうしたような規制緩和、制度改革によりまして内外価格差の是正を目指していきたいというふうに考えております。
○広中和歌子君 きょう御質問いたしましたのは限られた時間の中で三つの点でございましたけれども、規制緩和というのは非常に複雑、難しい問題であり、利害関係の調整その他大変だろうと思いますけれども、どうぞ政府の取り組みをよろしくお願いしたいところでございます。
 それから最後に一点、地方分権についてお伺いいたします。
 この委員会におきまして参考人をお招きして調査を行ったわけです。その中で新藤宗幸先生、教授ですけれども、この方は、戦後日本の行政はナショナルミニマムを達成することを目的としてきた。そのために中央集権制度がうまく機能してきた。しかし、それを達成した今、達成したという認識のもとですけれども、これからは多様性、ユニークさ、柔軟性が求められている。そしておっしゃったことなんですけれども、等しからずを憂えず、格差があってもいいじゃないかという、つまりそれがユニークさの源であるというような御発言をなさって、私は大変おもしろいコメントであると思ったわけでございますけれども、自治大臣にコメントをお願いいたしまして、私の質問を終わります。
○国務大臣(野中広務君) 今お話のございました御意見も傾聴すべき御意見であると私も存ずるわけでございますけれども、私ども地方自治を預かる者といたしましては、それぞれ地域に個性のある特色を伸ばしながら、地域が総合的にやはり振興発展をし、調和がとれた発展が行われることを願っておるわけでございまして、その意味におきまして今回の地方分権は大きな意義を持っておると存じておるところでございます。
○星川保松君 地方分権についてお尋ねをいたしますが、最近、現役の市長をなさっておる友人と会いましたら、今回の地方分権はベストチャンスでありラストチャンスだと、こういうことを言っておられました。私も、今回やらなければまた何十年か本格的な分権はできないのではないかということからして、関係の両大臣には大変大きな期待を持っておるところでございます。
 それで、今この思い切った地方分権をやらなければならないということは、今までは大変な中央集権的な日本の政治の形になっておるということなわけでありまして、なぜこういう中央集権的な形になったんだろうと思って、ずっと歴史的に私調べてみました。
 その最初の形ができたのはやはり明治維新だと思うんですね。明治維新の際に、明治新政府がいわゆる慶応三年に大政奉還ということで幕府の権限を移譲させたわけです。しかし、幕府というのは大名の中の一つの頭領にすぎないわけでありまして、三百諸候が残っておったわけでございます。それで三百諸侯の今度は権限を取り上げるということで、初めにいわゆる版籍奉還をやらせて、それで廃藩置県をやったわけです。
 そのときのことを調べてみますと、これはもう大変な仕事であったわけです。何しろ三百諸侯みんな武力を持っている地方団体なわけでありますから、それから全部権限を取り上げたということで大変な苦労をしているわけなんですね。そうしていわゆる近代的な統一国家日本をつくったわけでありますけれども、そういうことでずっとあの戦前の七十数年間、いわゆる大日本帝国憲法のもとで中央集権的なことをやってきたわけですけれども、ただその際地方の権限を根こそぎ取り上げたというのは、日本の統一国家をつくる際の一つの特徴であったと思うんです。
 そのときにそれぞれの地方の権限をそのまま生かしながらやったのがいわゆる連邦国家なわけなんです。アメリカの場合はいわゆる入植者がコロニーをつくってそのコロニーがそれぞれ国をつくっていったと。スイスあたりを見ましてもやはりそういう地域の権限を生かして連邦国家に持っていったんですね。
 そういうことから比較しますと、もう根こそぎ取り上げてつくったというのが日本の特徴だと思うんですよ。戦前はそれでずっとやってきて、いわゆる戦後の新憲法ができて初めてこの地方自治という思想が入ってきたわけです。ですから、そのときに、憲法の中に「地方自治」というあの第八章に規定をした際に、私はそれまで根こそぎ地方から集めてしまった権限を思い切って分け与えなければならなかったと思うんです。それをほとんどやっておらないので、まあ目につくのは官選の知事を民選の知事に変えたとかということで、権限そのものはほとんどそのときに移譲しておらないわけなんですよ。
 ですから、戦前七十数年、戦後五十年ずっとそういうのが続いてきた。百二十数年間続いてきたいわゆる中央政府の権限を、言うなれば明治維新の逆をいって今度は地方に返さなければならないというのが今日の地方分権の問題ではないか、こう思うわけなんです。ですから、地方から取り上げるときには幕府ももちろんそれから三百諸候も大変な抵抗を示したわけで、今それを今度分散していくということになりますと、官僚の皆さん、各省庁の皆さんが明治維新の逆の意味で大変な抵抗を示しているんじゃないかなと、こう思うんですよ。ですから、お二人が今後どういう気持ちで地方分権を進めていくか、その意気込みといいますか、それに大変大きくかかっている、こう思うわけなんですよ。
 そういうことで、まず機関委任事務のことでありますけれども、だから新憲法ができて地方自治という考え方が入ってきたときに、本来なれば思い切って分権すべきことをやらないで、権限と財源は中央政府が握ったまま、仕事だけは自治体にさせるというような極めて私はこれは変則的なものだと思うんですよ。それが今日の機関委任事務としてずっと別表に長官がおっしゃったような形で残っているんじゃないかと思うんですよ。私のような地方の行政経験をしてきた者からすれば、あの別表をずっと読んでいきますと腹が立ってくるんですよ。何でこんなことまで法律でやって地方に移譲しないで政府がやっておるのかと。まさしく地方を無能力者扱いしているなという気がして腹が立ってくるんですよ。
 ですから、そういう意味でまず第一に私がお聞きしたいのは、なぜ新憲法のときに権限移譲を思い切ってしないでこんな機関委任事務などという形で大量のいわゆる事務をこういう形で残したのか、そこのところをまずお聞きしたいと思います。
○政府委員(吉田弘正君) 機関委任事務の創設にかかわるお話でございますが、御案内のように、この機関委任事務制度につきましては、現行の制度の骨格ができましたのは昭和二十二年の地方自治法制定当時でございます。ただ、戦前におきましても、市制、町村制においては一部採用されていたわけでございますが、現行の制度は、今申しましたように、二十二年の自治法制定当時ということでございます。
 当時、この機関委任事務制度について、これをつくりまして国の指揮監督権を認めることといたしましたのは、国政事務については国全体を通じて統一的に処理される必要があるということ。また、指揮監督権を認めないとすれば国が個別的に出先の行政官庁を設置するというようなことになり、地方行政の民主化の要求に反するものとなる。そしてその結果、経費、労力の面においても、極めて不合理になるというような説明がなされているわけでございます。
○星川保松君 そういう説明があるかもしれませんけれども、私からすれば権限を移譲したくなくてこういう、言葉は悪いかもしれませんが、ごまかしたんじゃないかというふうにしか思われないわけですよ。ですから、今回は初めから原則廃止という声が出ておったんですね。
 私は、ここに、山形県でも地方分権に関する研究報告というこういうのをまとめているんですよ。これを見ますと、やはり原則廃止にすべきだということなんですね。だから、私は原則廃止ということでやってくれるものと思っておったんですが、大綱方針には、いわゆる検討というところまで大幅に後退をしてしまったですね。これではやっぱり先が思いやられるわけなんですよ。
 それで、これはやっぱり見直しを検討するということですから、その検討は、廃止するものは廃止する、存続するものは存続する、あるいはもう引き揚げてしまうものは引き揚げてしまう、この三つの方法しかないと思うんですけれども、この三つの方法をとる、こういうことなんですか。
○国務大臣(山口鶴男君) 我が国が中央集権的な制度で、率直に言いまして私はこれは改めなきゃいかぬと思いまして、一昨年でございますが、この際やはり国権の最高機関が地方分権推進の国会決議をすべきだということを当時の自民党の三塚政調会長に私、話をいたしまして、そうだと。この際、推進の決議を両党で十分話をして他の党にも働きかけてやろうということになってあの決議ができましたことは、私、今でも大変当時の感激を覚えておる次第でございます。
 それだけに、この際私は、地方分権は徹底的に推進しようと。しかも村山総理も、この村山内閣の最大の課題は行政改革であり、その柱は地方分権の推進であると、こう言っておられるわけでございますから、私はそういう意味で大変意を強くいたしておる次第でございます。
 そういう中で、御指摘の点でございますが、昨年暮れに決定いたしました大綱方針では、「機関委任事務の整理合理化等」といたしまして、「機関委任事務の整理合理化を積極的に進めるとともに、機関委任事務制度について検討する。」と。制度について検討するということは、廃止も含めてこれは当然検討するということであろうと私は理解をいたしました。
 したがいまして、積極的に進めたいと思っておりますが、ただ、機関委任事務制度をすべて廃止するということが無理があるということは、これは星川委員も御理解をいただけると思うんです。したがいまして、この際、我々といたしましては、総理のリーダーシップで法律に織り込みました地方分権推進委員会、各界の有識者の方々によってこれを構成して、これによって機関委任事務制度については徹底的な検討をいただきまして、そうしてできる限り地方公共団体に対して移譲できるものは移譲していく、機関委任事務制度については整理をしていくということをぜひとも実現したいものという熱意を込めて、今回法案を提出いたした次第でございます。
 ですから、廃止するものは廃止をする、残すべきものも若干あるかもしれない、しかしできる限り地方分権の推進という観点でこの問題を処理いたしたい、これが提案者としての私の気持ちでございます。
○星川保松君 時間がなくなってしまったんですが、一つだけ。
 この機関委任事務が、いわゆる自治体の固有の事務とどのぐらいの比率になっているとお考えか。さっきも言いました山形県の場合ですけれども、県の場合は七〇から八〇%に上る、こういうことを言っているわけですよ。こうなりますと、果たして県というのは自治体かということになってしまうんですね。ひとつその点を最後にお願いします。
○政府委員(吉田弘正君) 山形県の資料にはそういうことも書いてございます。また、一部そういうふうに巷間言われているところもあるわけでございますが、地方団体におきましては相当程度の機関委任事務を処理しております。
 ただ、地方公共団体の事務に占める機関委任事務の比率について、これが数量的にどのくらいかということになりますと、具体的にどのような方法で事務量を把握するかという問題もございますし、またこの機関委任事務が地方公共団体の団体事務と一体となって行われているということもありまして、定量的に示すというのはなかなか難しい問題でございます。
○吉川春子君 国民総背番号制の問題について伺いたいと思います。
 自治省は平成七年二月に、住民記録システムのネットワークの構築等に関する中間報告を発表しました。ここで検討されている住民基本台帳番号制度は、生まれたばかりの赤ん坊に一つの番号をつけて、それが一生その人を識別する番号になるというものですけれども、対象は国民一億二千万すべてということで間違いないですか。
○政府委員(吉田弘正君) 先般、住民記録システムのネットワークの構築等に関する研究委員会の方から中間報告がございました。
 その中で、住民基本台帳番号については住民基本台帳制度を基礎として構築するということにされておりまして、御案内のように、現行の住民基本台帳制度は、日本国籍を有しない者及び戸籍法の適用を受けない者を除いてすべての住民がその対象とされておりますので、この番号制度はすべての住民を対象とするという報告書になっております。
○吉川春子君 内政審議室にまずお伺いいたしますが、八九年二月に行われた税務等行政における共通番号制度に関する関係省庁連絡会議に出席した省庁の名前と座長、これをお答えいただきたいと思います。
○説明員(妹尾喜三郎君) 税務等共通番号制度に関する関係省庁連絡検討会議の座長は、内閣の内政審議室長がやっております。
 それで、この構成メンバーでございますが、役所の名前で申し上げますと、内閣官房のほかに外務省、法務省、大蔵省、文部省、厚生省、農林水産省、運輸省、郵政省、労働省、自治省、警察庁と総務庁でございます。
○吉川春子君 連絡検討会議における検討に資するために、関係省庁の課長クラスから成る幹事会を設置されていますね。技術的、専門的課題について検討を進めておりまして、各省庁のデータを一元化するということを念頭に置いて連絡会議を開かれているものだと思いますが、総務庁にお伺いいたします。
 国の行政機関における電子計算処理に係る大規模個人情報ファイル、その数の最新のデータをお示しいただきたいと思います。「個人情報保護法」という本を総務庁の行政管理局が出されておりまして、ここの中に個人情報ファイル名、省庁名が書かれておりまして、データ量があるんですが、これは昭和六十三年六月のデータでございまして、私がお願いしたいのは最新の数字という意味です。
○政府委員(陶山晧君) ただいまの御指摘でございますが、お示しいただきました数字は、当時いわゆる個人情報保護法の策定のための基礎資料として私ども各省庁から収集した数字であろうと存じます。その後、個人情報保護法の仕組みの上においてデータそのものの総数を私どもが掌握をするという前提に立っていないということもございまして、最新のデータについてただいまのところ手元に数字を持っておりません。
○吉川春子君 総務庁がそういうお答えでございましたので、私きのうの夜遅く、各省庁を煩わせまして数字をつかみました。例えば、運転手管理、警察庁は六千七百二十九万。法務省、日本人出帰国記録四千六百七十四万件。旅券管理、外務省が二千六百七十六万件。大蔵省の納税者原簿が約千三百万件、これは正確な数字ではないんですが。厚生省、年金保険喪失被保険者、これが一億一千五百三十六万件。特許権業務用出願が通産省ですが千八百十三万件。自動車登録検査、運輸省が七千六百三十一万件。定額・定期貯金原簿、郵政省が四億一千九百五十八万件。雇用保険被保険者数、労働省が四千九百六十五万件、こうなっております。
 自治大臣に伺います。プライバシー保護のためには、基本的には一組織に集まる個人情報量をできるだけ少なくする、これがもう鉄則でございます。一元化はプライバシー保護とは全く反対の方向で、しかも一元化された行政データが民間に必ず流れます。そういうことを考えると本当に恐ろしいわけです。現に、行政データが志木とか江戸川区とか札幌とか、外へ流れているという例が最近でもございましたね。行政の効率化を図るためにプライバシーを侵害するようなことは許されないので、こういう一元的に国民一億二千万のデータを全部総合するというような計画は即刻中止していただきたいと思いますが、いかがですか。
○政府委員(吉田弘正君) 今回出ましたのは研究委員会からの中間報告でございまして、ここでは今後のマルチメディアへの対応等、これからの行政の高度情報化によって住民が高度な行政サービスを享受することができるようにしていくことを念頭に置いた場合に、こういった市町村の区域を越えて個人を的確、効率的に識別する必要が高まってきておりまして、すべての住民を対象とした統一的な番号制度を設けることを検討する必要があるとしているわけでございます。そうしておりまして、このプライバシー等の問題につきましてはこの中間報告書にも触れておりまして、今後プライバシーの保護措置などの問題点をさらに検討するということにしておりますので、研究会においてさらにこの点について検討を深めていただけるというふうに考えている次第でございます。
○吉川春子君 全部のデータを、今私が読み上げましたこの膨大な行政が持っているデータを一元化する、そしてしかも住民基本台帳と結びつけるなんということは、もうまさにプライバシー保護にとどまらないわけです。こういうことを即刻中止していただきたいということを今質問したんですけれども、これ後で大臣に御質問いたしたいと思います。
 その前に山口長官にお伺いいたしますが、社会党はかつて国民背番号制に反対しておられました。その理由は、プライバシー保護が、コンピューター化され本人に知らされることなく行政目的に利用されるという点。それから二番目に、導入する側は、今答弁にもありましたけれども、役所の非能率とか行政需要の拡大を理由にするけれども、これは効率の名による非人間化だとおっしゃっていました。それから三番目に、国家権力がこのシステムを握るということにより、基本的人権の空洞化なんだ。四番目に、地方自治の破壊、民主主義の破壊、軍国主義化の方向が強まる。こういう理由を挙げて総背番号制に反対されておられましたが、この基本的な見地というのは社会党は、政府の立場ではなくて社会党はこの基本的な立場は今でも変わりないと思いますが、いかがですか。
○国務大臣(山口鶴男君) 御指摘のいわゆる統一国民コードといいますか、国民総背番号制度と申しますか、これにつきましては今、委員も御指摘をされましたようにプライバシー保護の面、基本的人権の保護という面、さまざまな問題があるということは私も認識をいたしております。
 したがいまして、私としましては、こういったいわゆる統一国民コードというものにつきましては国民のコンセンサスというものがなければ軽々にこれはやるべきものではない、したがいましてまずやっぱり国民のコンセンサスというものが必要である、慎重にこれは対応すべきものである、かように考えております。
○吉川春子君 重ねて山口長官、さっき私がちょっと部分的に申し上げた社会党のこの基本的な考えは今でも変わりありませんね。
○国務大臣(山口鶴男君) 当時私も社会党の書記長としてそのような主張をいたしたことは今でもよく覚えております。そういう気持ちがあるからこそ、ただいま私としてはこのような考え方でありますと申し上げた次第であります。
○吉川春子君 自治大臣にお伺いいたします。
 つまり、今申し上げたような重要な問題が含まれているわけなんです。一億二千万の国民をすべていろんな各省庁の持っている、今十何億になるかしら、そういうものと結びつけて、それを統一的に把握するということは非常に重要な問題なんであって、その後プライバシーの問題は考えますというような水準の問題ではないんです。だから、そういう一億二千万とそれぞれの省庁が持っているデータを結びつけるようなことは、会議もやられているようですけれども、そういうようなことはぜひ即刻中止していただきたい。そのことを質問いたしますが、いかがですか。
○国務大臣(野中広務君) 私ども中間報告を受けました研究会のテーマというのは、若干委員の事実認識が異なるのではないかと思うわけでございまして、住民基本台帳に基づく番号制度を中間報告いただきました基礎は、番号をつける際の正確性を確保するために、いわゆる住民の氏名、住所、性別及び生年月日の四情報を基礎としてやろうというわけでございまして、先ほど委員がおっしゃいました各省庁にかかわるすべてのデータをこれに収録しようとするわけではないわけでございます。
 けれども、それぞれ今日までの経過を考えますときに、委員が御指摘になりましたプライバシーの保護、悪用の問題、持ち出しの問題等重要な課題を抱えておりますので、中間報告が指摘をしておるようにこれからも引き続き御検討をいただこうと考えておるわけでございます。
 ただ、今回の神戸の阪神・淡路大震災の経過を見ましたときに、幸い県庁あるいは市役所等において施設そのものが崩壊することはございませんでしたけれども、仮にああいう事態で市のすべての機能が崩壊をしたときのことを考えますときに、この基本台帳を収録することが他に必要である側面が私はあるのではなかろうかという考え方を捨て切ることができないのであります。
○吉川春子君 自治大臣にもう一点伺いますが、端的にお答えいただきたいと思います。
 自治大臣としては住民基本台帳のデータだけであって、ほかの省庁の持っているさまざまなデータと結びつけるということは考えていない、このようにとらえてよろしいですか。
○国務大臣(野中広務君) そのようにとらえていただいて結構です。
○吉川春子君 終わります。
○委員長(小林正君) 本日の質疑はこの程度とし、これにて散会いたします。
   午後七時二十二分散会