第140回国会 法務委員会 第5号
平成九年三月二十七日(木曜日)
   午後一時開会
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         続  訓弘君
    理 事
                岡部 三郎君
                久世 公堯君
                浜四津敏子君
                橋本  敦君
    委 員
                岡  利定君
                志村 哲良君
                下稲葉耕吉君
                中原  爽君
                服部三男雄君
                林田悠紀夫君
                大森 礼子君
                山崎 順子君
                及川 一夫君
                照屋 寛徳君
                伊藤 基隆君
                菅野 久光君
   国務大臣
       法 務 大 臣  松浦  功君
   政府委員
       法務大臣官房長  頃安 健司君
       法務大臣官房司
       法法制調査部長  山崎  潮君
       法務省民事局長  濱崎 恭生君
       法務省刑事局長  原田 明夫君
       法務省矯正局長  東條伸一郎君
       法務省人権擁護
       局長       大藤  敏君
       法務省入国管理
       局長       伊集院明夫君
       公安調査庁長官  杉原 弘泰君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局総務局長   涌井 紀夫君
       最高裁判所事務
       総局経理局長   竹崎 博允君
       最高裁判所事務
       総局民事局長
       兼最高裁判所事
       務総局行政局長  石垣 君雄君
       最高裁判所事務
       総局刑事局長   高橋 省吾君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        吉岡 恒男君
   説明員
       国税庁課税部所
       得税課長     神原  寧君
       自治省行政局選
       挙部管理部長   山本信一郎君
       自治省行政局選
       挙部政治資金課
       政党助成室長   細谷 芳郎君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○平成九年度一般会計予算(内閣提出、衆議院送
 付)、平成九年度特別会計予算(内閣提出、衆
 議院送付)、平成九年度政府関係機関予算(内
 閣提出、衆議院送付)について
 (裁判所所管及び法務省所管)
○裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内
 閣提出、衆議院送付)
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○委員長(続訓弘君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 昨日、予算委員会から、本日三月二十七日午後の半日間、平成九年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、裁判所所管及び法務省所管について審査の委嘱がありました。
 この際、本件を議題といたします。
 裁判所及び法務省関係予算につきましては、去る二月十八日に説明を聴取しておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○岡部三郎君 自民党の岡部三郎です。
 裁判所所管及び法務省所管の平成九年度予算の委嘱審査ということであります。
 私も、この法務省、裁判所の予算というのは今回初めて勉強してみたわけでありますが、他の官庁の予算とは大分性格が異なる。特に、いわゆる政策的経費というものが極めて少ないわけでありまして、大部分が人件費と施設整備費であるわけであります。特に、人件費が裁判所、法務省とも八〇%を超しておる、こういうことであります。
 そこで、まず定員について若干お尋ねをしたいと思うんですが、平成九年度は一般会計でネットで六十二名の増、そのうち検事の増員が三十四名ということであります。これは昨年に続く二年連続の増員だと。それ以前は、昭和四十七年、沖縄返還があった年でありますが、それ以来、実に二十三年間にわたって千百七十三名に固定をされてきた。こんな長期にわたって一つの職種の定数が変わらなかったということも、こういう例は他には余りないんではないかと思うわけでありますが、なぜ二十三年間にもわたって検事の定数が変わらなかったのか、それが、平成八年度三十五名、平成九年度三十四名と急にふえ出した理由はどういうところにあるのか、まずお尋ねしたいと思います。
○政府委員(原田明夫君) 委員御指摘のとおり、昭和四十七年度から長らく据え置かれておりました検事の定員が、おかげさまで今年度、また明年度ということで増員していただける運びになりました。その背景といたしまして、検察といたしましては、近年のさまざまな犯罪情勢、ますます複雑困難化する事務から大変多忙でございました。そういうところで、できれば人員の補強をしていただきたいという希望を持っておりましたが、諸般の事情からそのような形になっていたんですが、委員御承知のとおり、司法試験制度というものに大きな問題が一つございました。
 これは裁判官も同じでございますが、検事の新しく任官を図っていくという場合には、司法修習生の課程を終えた方々から採用するということが主たる給源でございます。そういう中で、なかなか限られた人数の中で裁判官あるいは検事に任官していただける方を確保するということが徐々に徐々に難しい状況になっていたわけでございます。それは、司法試験制度が大変難しい試験になってしまったという点もあるのでございますけれども、また、それに対して長年受験にかかるということになりますと、新たに任官して一から始めるということについてはさまざまな問題点がございます。
 そういうことから、法曹養成制度全般を考えていこうということでいろんな角度から御論議をいただきました。その過程で当委員会にも大変御腐心いただきまして、司法試験改正法が平成へ入りましてできまして、そしてそれに基づき、そのことを前提といたしまして司法修習生の増員を図ってこられたわけでございます。
 そういう中で、裁判官また検事につきましても、特に検事につきましては任官者が、希望する方が相当程度出てまいりました。これは大変新しい状況でございます。それまでは、いわば定員をやっと確保するというのが本当に難しい中で関係者の努力によってなされてきたわけでございますが、おかげさまで現在の司法試験制度、またそれに基づく司法修習生の教育、そしてまた予算面その他の点でさまざまな待遇改善ということが図られてまいりました。おかげさまで、そのような状況のもとで検事任官を希望する方々が徐々に徐々にふえてまいりました。
 そういうことを背景に、定員をこのまま維持することも困難ということになってきたわけで、その検事の増員を図ることの必要性は大方の先生方、当委員会を初めとして国会の先生方もその点は十分御理解いただいたわけで、それを背景としての事情が特にそのような法曹養成制度の改善という形で結んできたというふうに私どもとしては理解しております。もちろん、人数をふやせばいいというものではございませんけれども、基本的にはそのような条件をもとにして体制を整備していくことができたということが私どもとしては大変大きな成果であったと考えます。
 近年、ますますこれからも複雑困難化していく犯罪情勢に十分対処するために、お認めいただきました人の力を十分活用してまいりたいと考えておる次第でございます。
○岡部三郎君 増員の必要性は大変あったんだけれども、なかなか検事のなり手が少なかったと、それが、司法試験合格者が五百名から六百名、七百名とふえてきて、ようやくこの増員できる環境が整ったということかと思います。
 確かに、検事、副検事の欠員の状況を見ますと、一時よりは大分少なくなってきたわけですが、それでもなおかつ平成八年度は検事で二十名、副検事で五十名、計七十名の欠員がある、こういうことでありますが、これについては埋まる見込みというものが新年度においてはあるわけですね。
○政府委員(頃安健司君) 委員御指摘のとおり、検察官につきまして平成八年度の年度途中におきましては相当数の欠員が生じたことは事実でございますが、幸い、検事につきましては、この四月に司法修習を終了いたします司法修習生の中から七十名の任官予定者が見込まれておりますので、これによりまして、新年度三十四名の増員が認められたとしましても、その三十四名を含む新しい定員全員充足する見込みでございます。
 副検事につきましては、年度途中に五十名の欠員が生じましたけれども、その後、年度途中ではございますが二十八名の副検事を採用しまして、欠員は大幅に解消できました。今後、副検事につきましては、定年による退官者が漸減する見込みでございますので、近々に定員は充足できるものと考えております。
 以上でございます。
○岡部三郎君 要するに、国民の法的なニーズにこたえるためにも、やはり優秀な有資格者をふやすということが今非常に求められていることだと思うわけであります。法務省は、本年十月末までに、現在七百人程度の司法試験合格者を中期目標としては千五百人程度とするが、とりあえずこの三者協の結論を得て千名への増員について所要の措置をとり、平成十年度の通常国会には改正案の提出を予定しておるというふうに聞いておりますが、そういうことでよろしいのでございましょうか。
○政府委員(山崎潮君) この法曹人口の問題に関しましては、平成七年十一月に法曹養成制度等改革協議会というところの意見書が取りまとめられております。これによりますと、司法試験の合格者の数につきましては、法曹人口を大幅に増加させるために、中期的には年間千五百人程度を目標としてその増加を図り、かつ修習期間を大幅に短縮させることを骨子とする改正を行うべきである、こういう多数意見が示されているところでございます。
 法曹三者といたしましては、この意見書の趣旨を尊重いたしまして、この具体的な措置を速やかに講ずるために、昨年の七月から「司法試験制度と法曹養成制度の抜本的改革について」ということを議題といたしまして三者協議会を開始して、熱心にあるいは建設的に議論を進めているところでございます。
 現在のところ、当面の目標でございます司法試験合格者の年間千人程度への増加と、これに伴う制度改革ということを論点といたしまして協議を行っているところでございます。具体的には、司法試験制度及び司法修習制度の改革案、それから裁判所、検察庁、弁護士会の各実務庁におきます司法修習生の受け入れ体制等につきまして意見交換を行っているところでございます。今後、さらにその後の司法試験合格者の年間千五百人程度への増加と、これを図る上での問題点等につきまして協議を続ける、さらに卒業いたしました後の継続教育、これ研修でございますけれども、この充実についてという論点についても協議を進める予定でございます。
 ただいま委員御指摘のとおり、法務省といたしましては、本年の十月末を目途といたしまして、制度改革の具体策につきまして合意に達するように最大限努力をしているところでございます。この合意が得られ次第、平成九年度に召集されます通常国会には司法試験法の改正、あるいは裁判所法の改正等を提出したいというふうに考えているところでございます。
○岡部三郎君 法曹界の中にもいろいろな御意見があるようではありますが、やはり法曹人口をふやすということは今国民の強い要望があるわけでありますし、そうした方針でぜひ実現できるように御努力をいただきたいと思うわけであります。
 次に、登記特別会計におきましても、ネットで七名の増ということが認められております。法務省は現在、登記所の適正配置といいますか、いわゆる整理統合に大変な努力を払われておられるわけでありますし、昭和三十年に比べると登記所の数が既に半分以下になった。さらにこれを半減させよう、またコンピューター化とかオンライン化等にも努力をされているということであります。
 したがって、こうした合理化の過程においては若干定員がふえるということもいたし方ないかと思いますが、将来はその成果として当然この省力化が図られ、これから確実に増加が予想される出入国管理の問題であるとか、あるいは人権、あるいは訟務関係等の業務に定員を振りかえることが可能になるのではないかとも思われるわけでありますが、そういうふうに考えてよろしいのでございましょうか。
○政府委員(濱崎恭生君) 御指摘のとおり、法務局におきましては、これまで、組織の効率的な運用を図るという観点から、これらの地域の住民の方々の理解を得るという大変難しい作業をやりながら登記所の統廃合を鋭意推進しているところでございますし、また登記事務のコンピューター化を初めといたします事務の効率化を推進しているところでございます。
 ただ、登記所の業務につきましては、戦後必ずしも十分でない人的体制からスタートいたしまして、その後の経済の拡大やそれからまた政府の各種施策の実施等により登記事務量が非常に高水準になってまいりまして、そういったことから従前慢性的な人手不足の状況にございました。したがいまして、今申しましたような施策によって生じた人的メリット、これは現段階におきましては、これまでの体制では必ずしも十分でなかった、しかし国民の権利保全のために大変重要である、そういう例えば表示登記事務の充実でありますとか、そういった登記所の事務処理の充実強化を図るということに振り向けている実情にございます。したがいまして、現段階におきましては、人員に余剰を生ずるという状況にはなってはおらないという実情にございます。そういうことから、今御指摘いただきましたように、こういう厳しい事情でございますが、毎年少しずつ増員をいただいているということでございます。
 ただ、大変厳しい財政事情のもとで、定員の配置のあり方というようなことについても十分配慮しながら、引き続き、より一層の事務の効率化を図っていきたい、このように考えておるところでございます。
○岡部三郎君 登記制度につきましては、このほか外庁制度の導入ということが行革会議等で検討対象になっているというふうに聞いております。外庁という言葉は余り耳なれない言葉でありますけれども、いわゆるイギリスのエージェンシーという言葉を訳したんだということです。法務省ではイギリスに職員も派遣をされていろいろ研究をされているというふうにも新聞等で拝見をしたわけでありますが、この外庁制の可能性とかあるいは特質とか、こういうことについてどういうふうにお考えでしょうか。
○政府委員(濱崎恭生君) 今いろいろ議論されております外庁制あるいはエージェンシー制というものがどういう中身のものであるのかということについては、まだまだいろいろ御議論があるようでございまして、私どもとしても一体そうなるとどうなるのかということを十分に理解できる状況にはなっておりません。したがって、それが登記の関係で導入できるかどうかということについても今はっきりしたお答えができる状況にはございません。また、このエージェンシーはイギリスで採用されているということで、若干の調査に着手しているところでございますが、登記制度そのものの違いというようなこともあって、なおさらに十分に研究をして考えてまいりたいというふうに思っているところです。
 ただ、登記を取り扱っている法務局の組織につきましては、これは登記だけをやっているわけではございませんで、御案内のとおり、戸籍事務でありますとか、帰化を中心とする国籍事務でございますとか、それから供託の事務、さらには訟務、人権擁護、そういった国民の権利保全にかかわる業務を一体的に行っている、そういう組織でございますので、登記部門のあり方ということだけではなくて、こういった組織全体のあり方を総合的に検討しなければならない、そういうことであるというふうに考えております。
 いずれにいたしましても、登記部門につきましては、今、先ほどの御質問にお答えしましたように、一層の合理化、効率化を図っていきたい、このように考えているところでございます。
○岡部三郎君 これからの検討課題である、こういうことだろうと思います。
 次に、オウム真理教事件に関連をして、公安調査庁のあり方ということについて、ちまたではいろいろな議論がなされておるわけであります。今回のこの予算書を見ますと、公安調査庁の定員が十二名減と相当目立っておるわけでありますが、これは今後も定員を減らしていくという方針なのかどうか、今後の公安調査庁の位置づけとかあり方についてひとつ御説明いただきたいと思います。
○政府委員(杉原弘泰君) オウム真理教によります一連の凶悪事件のように、私どもの既成観念では予想できなかったような事案が発生しておりまして、それが現行の法秩序に対する大きな脅威になっていることは御承知のとおりであります。このような民主主義的な憲法秩序を暴力で破壊する勢力が、組織が存在する限り、やはり破防法のような団体規制の制度と、そしてその法規を執行する私どものような、公安調査庁のような組織が必要であるということを考えております。
 また、最近のオウム真理教に対する規制手続を進める上で発生しましたいろんな諸問題、これにつきましては十分に検討し、またその手続の結果、公安審査委員会でなされました決定についても、十分な検討を加えました上で今後の問題に対応していきたい、こういうふうに思っております。
 また、公安調査庁の今後のあるべき姿の一つとして、私どもは平素、調査の過程でいろんな情報を収集しておりまして、そういった情報を必要に応じて政府機関に提供することによっても、公共の安全の確保にそれなりの寄与をしてきたものというふうに理解しておりますので、そういう面におきましてもさらに工夫をして、一層の貢献ができるように考えていきたい、かように考えております。
○岡部三郎君 私も、公安に関するそういうしっかりした調査機関というものが、我が国においてはそうでなくてもそういうのは少ないわけでありますから、ぜひひとつそれを、充実したものをつくっていく必要があるんじゃないかなというふうに考えます。
 そのほか、刑務所の運営等についても、例えばイギリス等では民間に委託をしてやってというふうなことも言われております。外国と日本とは当然国情も違うわけでありますから、だからすぐ日本にそういう考え方を取り入れられるものかどうかというようなことも非常に問題でありますし、いろいろとこの法務省関係諸機関のあり方ということについては、これから議論をすべき事柄が多いと思います。
 法務省は、今回の行革においては、省庁自体としての統廃合の対象にはなっておらないようでありますが、そうしたさまざまな面で、この行革、法務行政全体の分野における行革ということはやはり避けて通れない事柄ではないかと思いますが、これについての大臣の御所信をお聞かせ願いたいと思います。
○国務大臣(松浦功君) 行政改革につきましては、法務省として積極的に取り組むべき極めて重要な問題であるということを前提にして、いろいろ示される案については全面的に実現を図るように努力してまいりたいというふうに考えております。
○岡部三郎君 裁判所の定数、定員等につきましては、後ほどまた裁判所職員定員法の審査が引き続き行われまして、同僚議員からも御質問があろうかと思いますのでここでは省略をいたしたいと思いまして、最後に施設整備費について若干お伺いをしたいと思います。
 来年度の施設整備の中心は、東京拘置所の改築ということであろうと思いますが、どのような計画で進められるのか、御説明をいただきたいと思います。
○政府委員(東條伸一郎君) お尋ねの東京拘置所につきましては、平成八年度から現在地において全面改築する計画としておりまして、既に一部工事に着工いたしております。平成九年度は、八年度に引き続きまして、管理棟の主体工事を実施いたしますほか、新たに収容棟の一部主体工事に着手する予定でございます。
 なお、大変厳しい財政状況のもとでございますが、東京拘置所の施設全体の完成時期といたしましては、私どもといたしましては平成十六年度ごろを目途としてまいりたい、このように考えております。
○岡部三郎君 東京拘置所といいますと、いろいろな重要事犯あるいは暴力団関係あるいは在日外国人などの被告人などを数多く収容されておるところでもありますし、その改築が平成十六年までかかる、こういうことではなかなか国民の安全感を阻害することも甚だしいというふうな感じもするわけであります。やはりこの矯正施設というのは、国の治安維持の基盤でもありますので、一日も早くそういう整備を促進すべきではないかと思いますが、こういった矯正施設、これは東京拘置所ばかりでなくて大阪の拘置所も同じような状況にあるとも聞いております。こういった矯正施設全体の整備に対する法務大臣の御決意をお伺いさせていただきまして、私の質問を終えたいと思います。
○国務大臣(松浦功君) ただいま政府委員からお答え申し上げました、平成十六年を目標にしておるというのは、現状のままで進んだ場合にということでございまして、私どもはそれを一年でも二年でも早くでき上がるように、予算等については大蔵省と折衝していく、こういう態度を基本に考えております。
 また、全国の施設の中には非常に狭隘あるいは老朽が甚だしいというような施設がたくさんございます。これを基本的にきちんとしていきませんと、やはり日本国の安寧というものが維持できないというおそれも出てまいりますので、この点については最大限法務省として力を注ぎたい、こう考えておるところでございます。
○岡部三郎君 終わります。
○大森礼子君 平成会の大森礼子です。
 まず最初に質問させていただくことは、最近、いろんな犯罪で起訴とか判決等が出ました場合に、これに対していろんなコメントを政治家の方がされる場合がございます。これについて、果たして問題はないのかという点を指摘したいと思うんです。
 これは起訴の当否をめぐってとなるんでしょうか、昨年十月十一日には、ゼネコン汚職事件で被告となりました中村喜四郎元建設大臣について、梶山官房長官がその演説会で次のような発言をされたと。「これから日本の国を背負って仕事ができるのは中村君をおいてほかにいません。どうか、冤罪を晴らして、もう一度国政の場で仕事をさせてやってください。」と。「冤罪を晴らして」ということが当時も問題となったわけであります。
 これは、「冤罪を晴らして」ということを閣僚が言っていいのかどうかということなんです。冤罪といいますと、要するに簡単に言えば、何もやっていないのに検察庁がめちゃな起訴をしたということになるんだと思うんですけれども、こういう発言に対して法務大臣はどのように思われましたでしょうか、お聞かせ願いたいと思います。
○国務大臣(松浦功君) あくまで私の私見でございまするけれども、恐らくその発言は、官房長官とかそういう立場の肩書を抜きにした、国会議員としての立場でお話しになられたものと思っております。
 ですから、この場で、個々の事件について大森先生から私に仮に御質疑がございましても、法務大臣という肩書がついた松浦としては何にも意見を述べられないということではなかろうかというふうに考えております。
○大森礼子君 よくそういうふうにおっしゃるんですね。個人的な見解だからどうのこうのとかと。よく政治家の方はそうおっしゃるんですけれども、個人的にはこうだけれども公の立場はこうだと言いましたら、これ国民の側から見ましたら、じゃあの人は二重人格者なのかと、こういうふうな印象を持つと思うんです。おっしゃるような簡単なことではないと私は思います。むしろ政治家が自分の立場がどういうものなのか、自分はどういう立場で発言しているのかということをもう少し認識すべきではないかというふうに思います。
 この演説会場でも、司会者が「一梶山国会議員においでいただきました」と言うわけないのでありまして、やはり官房長官と言って御紹介するんだと思うんです。
 それからもう一つ、今度は裁判批判ということで問題になった事案で、平成七年二月二十二日のいわゆるロッキード事件丸紅ルートの上告棄却判決に対する田中眞紀子当時科学技術庁長官の発言がございました。これは、マスコミから取材が殺到していたので答えたということですが、一問一答には答えないと前置きして、用意した文書を読み上げたという形になっております。
 この中で、当時の田中長官は、「最高裁が異例な形で検察の捜査に協力し、被告人は一方的な不利益を被った」と。これは最高裁と検察の批判になるんでしょうか。それからまた、「日本の司法に公正かつ公平な裁判は期待できない」と、こういうことをおっしゃいました。このときも、個人、家族としての心情としてというわけですけれども、やはり当時は閣僚の立場にあったわけです。
 先ほどの法務大臣のお考えですと、こういう場合にも、個人として言ったのだから、それは関知するところではないということになるんでしょうか。
○国務大臣(松浦功君) 今、大森委員がおっしゃったようなことになるとすると、肩書のついている間は何もしゃべれないということになると思うんでございます。法務大臣という肩書がついた場合とつかない場合とでは、政治資金の扱い方についても全然違うんでございます。だから、そういうことを考えると、やっぱり二重に分けて考えるというのが、私個人の考えでございますけれども、穏当なのではないかというふうに考えてお
 ります。
○大森礼子君 ここでは、法務委員会ですから、法務大臣のお立場として私は質問をさせていただいているわけであります。そうすると、個人と公のものとは区別していいんではないかというお考えですね。
 そうしますと、もう言うまでもありませんが、三月二十四日にリクルート事件の裁判で藤波孝生元官房長官に対する東京高裁の判決がありました。これは高等裁判所の判決です。この点について総理は、記者団の質問に、「潔白を信じていただけに、大変複雑な思いがする」と。これも問題なのかもしれませんが、この範囲ならぎりぎりで許されるのかなという気は個人的にしておるんです。しかし、また再び梶山官房長官ですが、「藤波先輩に、ご同情申し上げる」と。非常に抑えた表現かもしれませんが、「ご同情申し上げる」という、こういう発言をされました。この「ご同情申し上げる」、本当に災難に遭ったみたいで気の毒だと、こういうふうに普通の人は理解するわけであります。
 このような発言につきましても、これまでの法務大臣の御見解を聞きますと、特に問題はないということになるんでしょうか。
○国務大臣(松浦功君) 恐らく同僚議員としての感想を述べられたことだと思います。詳しいことは私どもは承知いたしておりません。
 法務大臣という立場では、この問題についての論評は避けさせていただきたいと思います。
○大森礼子君 本当に、個人とそれからいろんな立場、使い分けるのはこっちの勝手かもしれませんが、こういうのを聞くのは国民の側なんです。私が問題にするのは、個人的な事情、内心の事情、それはあるでしょうけれども、それは表に出ないわけであります。私が恐れますのは、こういう発言が出ますと、国民の司法に対する信頼というものを損なわせるのではないかと。この意味で、私は、国会議員でも実はそうだと思うんですが、ましてや閣僚は気をつけなくてはいけないと思います。
 そして、このリクルート事件の判決で竹下元総理はこういうふうにおっしゃっているんです。「さまざまな思いはありますが、立法府に籍を置く者として、司法の判断には従来からコメントをしないことにしています」と。これはやはり、そういう立場で聞かれているわけですから、そこら辺のおじさんだったら何も記者が聞くわけないのですから、私はこの竹下元総理のこのような発言が最も妥当なものであろうと思いますが、最後にこういう点について、法務大臣、何か御発言いただければと思います。
○国務大臣(松浦功君) 先生のおっしゃるとおりだと、私も思います。
○大森礼子君 今挙げましたこういう発言は、法務大臣がおっしゃったわけではございませんし、法務大臣なら決しておっしゃらないだろうと思います。ただ、やっぱり司法に対する国民の信頼というものがございますので、できれば、お気づきになれば同僚の方に御注意いただければと、こういうふうに思います。個人としてでも、法務大臣の立場としてでも結構です。
 次に、臓器移植の問題なんですけれども、臓器移植法案というのが十八日から審議入りになったわけです。人の死の認識にかかわるものだけに、各党とも党議拘束を外すなど、非常に難しい問題をいろいろ抱えております。それで、私どももこの法案について考えていかなきゃいけません。これは議員立法ですね。法務省が提出された法案ではありませんので、ここはどうなっていますか、ああなっていますかとお尋ねする立場にはないと私も思っております。
 そこで、ひとつ私たちが考えていく上での判断材料といいますか、そういうことで、もし教えていただければという趣旨で質問させていただきます。
 この法案、脳死を死とするということなんですけれども、臓器移植のみでなく、死によっていろんな法律上の権利義務に変動を生ずる場合があるわけでございます。例えば、民法の相続、民法八百八十二条で、「相続は、死亡によって開始する。」とあります。それから、これを受けて戸籍法の方で、その死亡の届け出については、何年何月何日の何時何分に死んでと、それを証明する診断書やら死体検案書ですか、そういうものを添付するということになっております。何時何分、これはやはり死亡の先後を決するというためで必要なことにもなってくると思うわけなんです。
 そこで、この臓器移植法案について、仮に脳死を人の死とするという法案が成立した場合に、これはすべての法律関係において脳死が死というふうになるのかどうか、これはどういうふうになるんでしょうか。
○政府委員(濱崎恭生君) ただいま御紹介されましたとおり、現在御審議しておられる臓器移植法案、これは議員提案ということでございますので、その中で六条を中心としてこの脳死の関係の規定がございますが、この規定の趣旨が死一般ということとどういうかかわりを持つものとして御提案されているのかということは、私どもから申し上げることができない問題だと思います。
 したがって、死一般との関係でどうお考えかということについては、これは私どもとして御答弁申し上げかねるわけですが、民法上の観点から申し上げますと、民法上、人の死を定義した規定は現在ないわけでございまして、何をもって人の死とするかということは、医学的所見を基礎とする社会通念によって定められる。そういう中で、これまでは一般的にいわゆる三徴候説、心拍の停止、呼吸停止、瞳孔の拡散をもって死を判定する、いわゆる心臓死をもって人の死ととらえるということが社会通念になっていたものと考えられるわけでございます。
 ただ、社会通念というのは不変のものではないわけでございますので、この臓器移植法案が成立して、この法案の規定しておる脳死判定をもって人の死を判定するということが社会的に受け入れられるという状況になれば、民事法の分野においてもこれに応じて同様に解される、そういう関係になるものではないかなというふうに考えているところでございます。
○大森礼子君 おっしゃるとおりなんです。
 しかし、よくわからないのは、死というのは定義がございません。ですから、逆に、一つ死の定義を定めた法律ができることによって、それがすべての関係で死の定義になるのかどうか。つまり、法理論上、死について相対的定義ということもあっていいのかどうか、この点はいかがでしょうか。普通はどういうふうになるんでしょうか。
○政府委員(濱崎恭生君) 大変難しい問題でございまして、一民事当局としてお答えしかねる問題でございますし、またこれは間接的に伺っておりますところでは、そういった問題、大変難しい問題があるという状況の中で今の形での法案の提案がなされ、御審議がされているというふうに承っているところであります。
○大森礼子君 そうですね。それはもう議員立法を出した人たちに聞けと言われたらそうなるんでしょうが、ただ、これやっぱりこういう法案が出ましたら、法務省としても当然検討されると思うんですね。そこで当然、この死というものがすべてに行き渡るのか、それとも臓器移植の範囲内なのかということは問題になることではないかなと思うんです。それでちょっとお尋ねしたんです。
 それで、なぜこういう質問をするかといいますと、普通、法律の適用とか解釈というのは、その法律の大抵第一条にありますが、その目的、これが一つの基準になると思うんです。それで、この法案の目的というのは、第一条で、要するに「移植医療の適正な実施に資することを目的とする。」ということになるんです。この目的から、つまり移植医療の場面からはみ出た場面においても脳死イコール死という法律効果を生じさせるような法律の効力が生じるものかどうかということを、法理論上のことをお尋ねしたいんです。
 例えば、一つのこの臓器移植の範囲内だけですよと限定しても、だんだん人が脳死を死と認めるようになれば、そのいわゆる社会通念が変わって、三徴候説から脳死説というふうに変わっていって、脳死説というのが定着するだろうということはわかるんですが、実際にこの脳死は人の死という臓器移植法案が成立して、ほかの分野にこの定義が及ぼすその影響を考えますと、さまざまな問題を引き起こすと思うんです。
 当然そこで、法務省としてもこれを相対的に見るのか、絶対的に見るのかということは検討しているんじゃないかなというふうに思ったんですけれども、余りそういうことはお考えになっていないんでしょうか。
○政府委員(濱崎恭生君) これは民事マター、刑事マター、いろんな分野で問題があろうかと思いますが、民事の関係について申し上げますれば、ただいま御指摘のように、相続がいつ開始するのかということに影響を及ぼすわけでございます。ただ、現行法のもとでも、死によって始まるその死というのはいつかということは法律に規定していない、それは社会通念によって定まっているということでございまして、そういう関係は社会通念によって定まるということ自体は、この法律ができても動かない。ただ、この法律が社会通念というものにどういう影響を及ぼすかということであろうと思っております。
 その影響の及ぼし方というのは、これはこれからの国会の御議論を通じての、この法律案の趣旨というようなものも参考にしながら解釈されていくということになるんだろうと思いますし、それから、例えば相続で個々具体的な問題が生じますれば、その具体的な事案において、いつ相続を開始するのかというのは、争いになればそういう状況の中で最終的には裁判所で判断されるということになるわけでございまして、行政当局としてどうなるということを確定的に申し上げることができる問題ではないと思っております。
 先ほど、戸籍の記載をどうするのかというような御指摘ございましたが、これはこの法案ができた場合に、脳死の判定ということが行われるような法案になっていると承知しておりまして、その判定をどうするかというようなことはまだ省令で定めるということになっておるように承知しております。そういうことを受けて、いわゆる死亡診断書というものがどういう形で作成されるかということは、これはまた医学の世界でいろいろ議論されておのずから定まってくるのではないだろうか、そういうものを受けて戸籍事務を処理するということに相なろうかと思っているわけでございます。
○大森礼子君 法律ができてみないと、どうなるかわからないという御意見になるんでしょうか。
 例えば具体的に言いますと、同一事故で瀕死の重傷を負った、それでどっちが先に死んだかで相続関係が全然変わる場合があるんです。そうした場合に、三徴候説では大体が同じぐらいかなとか決まっても、いやそうじゃない、脳死によると違っていたとなりますと、そこでその現実の問題として相続を争って訴訟になることだってあると思うんです。そのときに、脳死を基準とするのか三徴候説を基準にするのかということでまた判断も違ってくるだろうと思うんです。
 そういう具体的な事案が起きてから裁判所が判断するんだと投げてみても、じゃそのときまでこの法律の解釈はわからないのかということになりますし、まだ社会通念としては脳死イコール死と定着していない段階で、これで裁判官に判断しろといってもやはりちょっと無理なのではないかなと。というのは、裁判官はそういう法律とかに拘束されますのでね。
 だから、こういう非常に難しい問題が起こると思うんですが、こういう点についてはまだ法務省の方は、こうなったらこんな問題が生じるとか、そういう検討とかはされていないんでしょうか。
○政府委員(濱崎恭生君) 私どもも、こういう法案が成立した場合に、どういう法律上の、民事上の問題が生ずるかということは念頭にございます。しかしながら、そうだからといって私どもが民法の場面で死の定義規定を置くというようなこと、これはこの臓器移植法をめぐる議論を考えてみましてもなかなか困難なことであろうというふうに考えております。結局、その今御審議されている法案が成立した場合には、その国会の議論等を参考にしながらその趣旨というものを把握し、そして考えていかなけりゃならないという問題であろうと考えておる次第でございます。
○大森礼子君 そうすると、だれにこういうことを確かめればいいのか。議員立法を出されている方というのは、ほかの分野との整合性も考えておられるのかなという気がしたので、法理論上のことをお聞きできるとしたら法務省かなと思ってちょっとお聞きした次第なんです。
 先ほど、脳死判定という言葉が出たんですが、この脳死判定というのも、少なくともこの法案では六条に規定してあります。六条の三項で、「厚生省令で定めるところにより、行う」というんですが、これは臓器の摘出、つまり本人が臓器提供の意思を表明していて、かつ遺族の承諾がある場合とかと。臓器移植ということを前提としているわけでありまして、普通一般の場合、つまり臓器移植を予定していないような場合には、この厚生省令で定める脳死判定の手続というのは一般の医師に義務づけられていないわけですね。
 そうしますと、もし脳死イコール死となって相続関係もすべてそれになりますと、一般には脳死が人の死とされて相続の対象になる。しかし他方で、その脳死判定というものを一般化していないという点で非常に混乱が生ずるのではないかというふうに思った次第でございます。
 そうすると、こういう疑問をどこにお尋ねしたらいいかと言っても、法務省の民事局とかにお尋ねしてもお答えいただけないということなんでしょうか。
○政府委員(濱崎恭生君) 先ほどの御質問については、先ほど来申し上げた以上のことは申し上げかねるわけでございますが、私ども承知しているこの法案を拝見いたしますと、これは脳死体というのは、その六条三項に定める厚生省令で定めるところによってその脳死という判定が行われた場合にのみ問題になることでありまして、そういう判定が行われない一般の死亡ということにつきましては、恐らく従前の考え方がこの法律の成立によって変わってくるということはないのではないだろうかというふうに理解をいたしております。
○大森礼子君 それからもう一点。
 この臓器移植について、要するに法律ができる前に、移植学会の方でしょうか、本人の事前同意があった場合にやろうじゃないかという試みもあるわけです。
 これは現行法ですと、まだ死と認められていないわけですから承諾殺とかになるんでしょうか、その壁があるわけなんです。それでお医者さんも、そんなの法律なんかどうでもいいんだという形でやろうとしているのではないと思うんです。それで、この同意をもってその承諾殺人罪をクリアできるんじゃないかという考え方も一つあると思うんです。例えば、承諾、本人の同意があれば違法性が阻却されるというふうな考え方かと思うんですけれども、こういう考え方について法務省としては、いやそんなのは到底できないんだというお考えなのか、そういうなり得る場合もあるというお考えなのか。刑法理論上、どういうふうにお考えでしょうか。
○政府委員(原田明夫君) 犯罪の最終的な成否ということになりますと、具体的な事件を離れて一概に申し上げることはできないのでございますが、あえて一般論として申し上げますと、ただいま委員御指摘のように、いわゆるこの臓器移植ということに際しまして、人の死と認められるかどうかということが一つのけじめにといいますか、一つの時点として前と後でいろいろな法律の適用が変わってくることはそのとおりでございます。
 そして、これを、仮にいわゆる脳死という状態が人の死とされるのでございますと、殺人罪の成否ということでなくて、死体損壊罪の成否の問題だろうということが理論上は出てまいるでございましょうし、また、脳死が人の死でないということになりますと、先ほど御指摘のように、殺人罪あるいは承諾殺人罪の成否の問題になる。いずれにいたしましても、その際に、臓器移植ということで果たして違法性が阻却されるのかということがまさしく御指摘の点でございますし、それを具体的に判断していくということになるわけでございます。
 一般論として申し上げますと、保護法益がやはり人の生命ということにかかわるものでございますから、従来検察におきましては、その違法性阻却の可否については極めて慎重に取り扱ってきたと承知しております。
 ただ、そのような状況でございますので、単に本人の同意がある時点であったからというだけでこれが違法性を阻却するのだというふうには言い切れないさまざまな問題点があったということが恐らく念頭にあるのではないだろうかと思うわけです。しかしながら、一方では、このような法案が出される背景となる事情もございます。
 そういう中で、恐らく国会におきまして、この法案を通じましてさまざまな議論が尽くされて、そしてそのことがいわゆる立法者の意思として明らかになった形で法律が成立するということになりますれば、検察官としてはそのことを十分に尊重させていただいて、違法性阻却の問題について判断をしてまいるということになるのではないかと存じます。
○大森礼子君 わかりました。法務省としてはそういうことになるだろうと思います。
 殺人罪、これは死刑、無期もしくは三年以上の懲役です。承諾殺人罪になりますと、六月以上七年以下の懲役または禁錮と、禁錮まで入っているわけで、法定刑は非常に軽くなっております。この理由として、本人の承諾によって違法性が減少するんだと言われているわけです。
 自傷行為の場合でしたら、自分で傷つけた場合はこれは処罰されない。違法性が阻却される。それから、自殺した行為者が処罰されないのは、これはもう可罰的違法性がないからというふうに言われているわけなんですけれども、こういう法益の問題等を考え合わせますと、現行法では本人の事前の同意をもっても違法性阻却しないというのは当然だろうと思います。というのは、承諾があった場合でも六月以上の懲役もしくは禁錮の処罰を受ける違法性はあるということになるからです。
 それから、承諾の条件としまして、被害者自身による承諾、それから事理弁識能力を有する被殺者、つまり殺される人の自由かつ真意に出た承諾であること、それから明示的になされること、それからもう一つ、行為開始時に存在することというのがあります。これも、臓器移植との関係で言いますと、患者の承諾というのは条件的承諾、将来においてこうなったらということなので、この二つの現行の刑法ではクリアできない問題があるわけです。
 繰り返しますと、承諾があっても現行法上は違法性を完全に阻却するものではないということ、それから条件つき承諾ということは認められないということだと思うんです。
 そこで、これを何とか法的にクリアできないものかどうかということを参考意見としてお尋ねしたいんです。
 というのは、こういう刑法が規定されたとき、生命が保護法益ですけれども、そのときに脳死概念というのはなかっただろうというふうに私は思うわけなんです。今、脳死という問題が出てきた。そうすると、これを、生命の保護法益をどの程度と見るか。やっぱり脳死というのは、もう実際は限りなくその生命の保護法益というものがゼロに近づいていっている状態ではないかなと思うわけなんです。そういうことを考えますと、本人がそうしたいというのであれば保護法益の方を何とかクリアできないのかなというふうに思うんです。
 そこで、今の一般の刑法理論上ではクリアできない問題を、例えば臓器移植に関する範囲内に限って特別の規定、条件つき承諾だけれども、これはいいとする、それから、承諾によって普通だと違法性阻却しないけれども、脳死の状態だと生命に対する保護法益ちょっと軽くなるので阻却できるとする理論を用いて、この範囲内だけで行為者つまり医者ですか、処罰しないという、こういうふうなことが法理論上可能かどうか。あくまで参考のためで結構ですから、お聞かせ願えないでしょうか。
○政府委員(原田明夫君) 今、確定的に委員のお尋ねに答えることはかなり難しいだろうと思います。しかし、まさに現在論議されております法案は、委員のお立場と同じような観点から、この問題はクリアできるのではなかろうかということで御提出がなされているんだと思います。
 そういたしますと、この法案のでき上がりまたはその過程で論議がなされておりますことが、先ほども申し上げまして繰り返しになりますが、いわば立法者の意思、国法をつくる際の意思ということでつくられました場合には、検察官は恐らくそのことを十分に尊重しなきやなりませんし、またそうしてまいるものというふうに考えるわけでございます。
○大森礼子君 私の述べたような考え方であれば、私は特別規定、つまり、適用の範囲を限定したものになると思うんです。この法案が、脳死はすべての死に通じる、すべての死の定義になるというふうに解釈する余地があるとすれば、その点において私の考え方と違ってくるので、これから考えていく上で説明を求めた次第です。
 次の問題に移らせていただきます。
 外国人事件、それから少し入れたら司法通訳の問題について伺いたいと思うんです。
 最近、密入国者もふえております。それから、不法残留外国人がことし一月一日現在で二十八万三千人あるということです。こういう傾向の中で、法務省は出入国管理及び難民認定法の強化を図るというふうに伝えられておりますけれども、この趣旨等について、簡単で結構ですから、御説明いただきたいと思います。
○政府委員(伊集院明夫君) 法務省といたしましては、近隣諸国からの船舶を利用した集団密航事案が急増、激増しておりますので、このような事件の背景にある密航を助長、援助する行為に厳しく対処するために、出入国管理及び難民認定法を改正することを検討しております。
 その要点は、次のとおりでございます。
 その一でございますが、集団密航に係る罪を新設いたしまして、集団密航者を本邦に入国または上陸させる行為、上陸した集団密航者を受け取る行為などを重く処罰し、営利目的の場合はさらに加重処罰することとするものでございます。
 その二は、集団密航に係る罪に使用された船舶等や車両を必要的没収の対象とするとともに、集団密航に係る罪により刑に処せられた外国人を退去強制の対象とすること等、関連規定の整備を図るものでございます。
 その三は、上陸の許可を受けないで本邦に上陸しようとする外国人につきましては、その者が有効な旅券等を所持する場合であっても不法入国罪で処罰するとともに、退去強制の対象とすることでございます。
 この改正につきましては、できる限り早急に成案を得まして、今通常国会に提出し御審議を願いたいと考えております。
○大森礼子君 それから、報道によりますと、三月十八日北京で、中国からの密入国の防止策強化について法務省は、外務省、警察庁、海上保安庁などとともに中国政府、これは外務、公安省担当ですか、と協議したとありましたけれども、この協議によりましてどういう具体的な成果があったのでしょうか、簡単で結構ですから御説明いただきたいと思います。
○政府委員(伊集院明夫君) 三月十七日から二十二日まで、法務省入国管理局の担当者が警察庁、外務省、海上保安庁の担当者とともに中国を訪れました。中国では中央政府の外交部、公安部と協議を行ったほか、中国の密航者の主な出身地である福建省、それから密航者の主な出港地である上海市の地方政府当局と協議を行いました。
 日本側からは、最近の中国人密航の急増状況を説明して、これに強い懸念を表明しまして、六つのことを申し入れました。
 一つは沿岸パトロールの強化、二つは船舶監視の徹底、三つ目は蛇頭と呼ばれる密航ブローカーの取り締まり強化及び処罰の厳格化、四つ目は密航者が多い福建省等の住民に対する啓発の徹底、五つ目は密航者に関する情報の提供及びICPO手配に対する誠実な対応、六つ目は退去強制令書が発出された者の早期引き取りの六つでございます。
 これに対しまして中国側の方は、日本への密航急増の事実はよく認識しておる、これまでも多くの対策を講じているけれども、さらに福建省等における取り締まり、監視体制、密航を防止するための住民への広報教育等を強化するとともに、密航の厳罰化を含む改正刑法をことしの十月から施行して処罰を強化するという説明がございました。
 私どもとしましては、こういう中国側との話し合い、直接の申し入れを通じまして、中国側から取り締まりを強化するという返事を得ておりますので、これを機に中国人による密航事案の抑制にこの訪問がつながることを期待しておるわけでございます。
○大森礼子君 ありがとうございました。
 密航者、これは外国人犯罪の一つの類型に入るわけなんですけれども、いわゆる外国人事件に関連しまして、きょうは司法通訳の問題についてお尋ねしたいと思います。
 この三月十六日に、大阪で「外国人事件における司法通訳の現状」と題する国際シンポジウムというのがございました。これは、日本司法通訳人協会の会長でもある聖和大学の長尾ひろみ助教授が中心となって、ハワイ大学から通訳・翻訳学研究所の所長のデビット・アシュワース博士、それからハワイ大学の言語学科助教授で、ハワイ州の裁判所で法廷通訳も務めておられるマイケル・フォーマン博士を初め、いわゆる通訳の実務家の方が集まって司法通訳の現状と課題等についてシンポジウムを行ったわけであります。私もちょっとこれに出席させていただきまして、改めて司法通訳人の立場と役割の重要性を認識した次第なんです。
 外国人の入国の増加によりまして、外国人による犯罪が増加するのは自然の成り行きであります。そうすると、警察、検察庁で調べを受け、それから場合によっては裁判となります。被疑者、被告人のみならず、外国人が被害者になる場合もありますし、参考人、それから証人になる場合もございます。捜査段階でも公判段階でもいわゆる通訳というものが必要になりますが、この通訳が正確、公正になされて初めて被疑者、被告人は十分に防御することができるわけで、真相解明のためにも、また被疑者、被告人の人権を守るためにも、さらに迅速な裁判を実現するという意味でも司法通訳の果たす役割というのは重要であると思います。
 私自身も捜査を経験しまして外国人事件を扱いましたけれども、特に捜査段階では限られた勾留日数の中で適正な通訳人を確保することが非常に困難な場合がございます。それから、正確な供述録取書ができるかどうかという問題もありますし、また公判廷で通訳の正確性について争われるような問題がございまして、いろんな問題を含んでいると思います。
 きょうは、時間の関係で最小限の質問だけにさせていただくんですけれども、こういう外国人事件に通訳を要するケースにおいて、それぞれ、検察庁、それから裁判所の方はどういうふうに現状の中で対応しておられるか。そしてその中で、障害となる大きな問題はどういう点かという点について教えていただきたいと思います。
○政府委員(原田明夫君) まず、事柄の順番上、検察の現場における状況からお答えさせていただきたいと存じます。
 委員御指摘のとおり、外国人が関連してまいります捜査に当たりまして有能な通訳を確保するということは、まさしく適正な捜査の遂行と被疑者及び関係者の権利の保障にかかわる大きな問題であろうと思います。
 そこで、有能な通訳のできる方を確保するために、各検察庁におきまして関係機関とも連携をとりまして、さまざまなルートを通じまして通訳人の確保に努めると同時に、法務省におきましても通訳人名簿を常に全国版で作成いたしまして、これを各検察庁に配付いたしますとともに、その名簿の内容をデータベース化いたしまして検察庁相互間において有効に活用できるように努めております。
 また、その過程でさまざまな問題があることがわかってまいりましたので、とりあえず例えば日本の刑事手続をわかりやすく説明した通訳人向けの資料でございますね、制度上の説明、またやはり法律用語が言葉ができるだけではよく伝わらないということがございますので、法律用語の対訳集をいろいろな言葉でつくりまして、それを配付させていただく。
 さらには、通訳人セミナーを全国規模で本省により主催いたしまして、各地で通訳をなさる方に、これは各国語ともどもでございますが、できるだけ幅広くさまざまな角度から理解を広めていただくというようなこともやらせていただいているわけでございます。しかし、これも限られた人数で、それでもって十分ではないという点があろうと思いますので、セミナーで得られた知識をできるだけ幅広く各地で活用していただけるような連絡をとれるように、各検察庁に、こういうことが行われているということを伝えるなど、その質の向上のために少しでも役立てればということでやらせていただいている状況でございます。
 また、全国の検察庁における通訳謝金の年度別予算額も、ここのところ確実に増加させていただいております。平成五年度には八千二百十七万円でありましたのが、平成九年度予算では約五倍の四億三千二百四十万円余りを計上させていただいているわけでございます。
 必ずしもこれで十分というわけではございませんが、特に少数言語における通訳人の確保も含めて、まだまだ検討すべき課題はたくさんあると思いますが、着実にそのための対策を講じてまいりたいと考えております。
○大森礼子君 今、法務省の全国版で通訳人名簿というのができているということですが、そうしますと、要するに問題なのは少数言語の通訳なんです。例えば一つの高検内といいましょうか、山口で事件が起きた場合、広島の方の通訳を派遣できるとか、こういうふうな体制ができているということでしょうか。
○政府委員(原田明夫君) 果たして体制と言っていいほど整備しているかどうかわかりませんが、少なくともそのための便宜が図れるように、各検察庁においてはどこへ頼めばどういう方がおられるかということがわかるようにいたしたいと思います。また、必要においては検察庁相互間で声をかけ合って緊急の用にたえられるように努めてまいりたいと考えております。
○最高裁判所長官代理者(高橋省吾君) 裁判所の方から、法廷通訳人確保の現状について御説明させていただきたいと思います。
 裁判所におきましては、日ごろから地元の大学あるいは語学学校、領事館、あるいは自治体の国際交流協会等との連絡を密にしまして通訳人確保に努めているほか、通訳人確保のためにマスコミとかあるいは政府の広報紙などを通じて通訳人確保のための広報といった点についても意を用いているところでございます。
 このようにして確保しました通訳人につきましては、各高裁単位で通訳人候補者の名簿を作成しまして、本年三月一日現在、全国で三十六言語、千六百八十八人が登載されるに至っております。
 平成六年からは、他の高裁の名簿も各高裁に送付しておりますので、地元で適当な通訳人が見つからなかった場合には、他の高裁の名簿を利用して通訳人を確保することもできる、そういうふうになっております。
 また、平成七年度からは、通訳人の確保と養成を目的としまして、それぞれの地域で必要とされるいわゆる少数言語を対象として、語学力はあるけれども法律的な知識の不足などから法廷通訳をすることをためらっている人を対象としまして、法廷通訳人セミナーという研修会を開催しております。この研修会につきましては、予算的な措置も講じて、受講者の旅費、日当等の支給ができるように手当てをしております。その結果、それぞれの地域で不足しております言語につきましては、新たな通訳人の確保に非常に役に立っていると考えております。
 それから、このようにして確保しました通訳人につきましては、外国人事件の説明用ビデオといいますか、そういうビデオを見てもらったり、あるいは法廷通訳のマニュアルであります法廷通訳ハンドブック、これを貸したり、あるいは通訳能力とか経験に見合った事件に、それぞれ能力に見合った事件で選任して通訳をやってもらう、そういう形でいろいろ裁判所としても配慮しております。
 以上でございます。
○大森礼子君 ありがとうございました。
 それぞれの、どのようにそういう対策がされているか、今御説明いただきましたけれども、その個々の内容についてはまた別の機会にお聞きしたいと思います。
 先ほど法務省の方から、通訳の謝金の方もこんなにふえましたというふうにおっしゃいましたけれども、私も前に外国人事件をやっておりまして、年度末の事件だったもので本当にもう予算がなくて支払いがおくれたということがありましたけれども、法務大臣、通訳というのは非常にお金がかかりますので、ぜひこの手の予算はしっかりとつていただきたいというふうに思うわけです。
 通訳につきましては、語学能力の高い水準、それから法律用語が理解できること、訴訟法上の基礎知識も必要ですし、また公平さを保つ人格と、普通の通訳以上に高い水準が必要とされると思うわけであります。
 先ほどちょっとお名前をお出ししました長尾ひろみ氏の「刑事裁判における法廷通訳」という論文があるんです。その中で、全部引用できませんけれども、要するに、日本においても法廷通訳人の資格試験というものを実施し、通訳人のトレーニングを実施する公的機関を設置することを提案する、こういうことを言っておられるわけなんです。
 それで、日本におきまして、一定のレベルを持った、そして法律的知識も訴訟の基礎知識も持った信頼できる通訳というものをつくるために資格認定制度をつくるとか、あるいは時々セミナーを開くんじゃなくて、司法通訳人のきちっとした養成機関をつくるとか、こういうことが必要でないかなと私は思うわけですけれども、こういうのは検討の段階にあるのかないのか、これ裁判所の方ではどういうふうに検討されているのか、まず裁判所にお尋ねいたします。
○最高裁判所長官代理者(高橋省吾君) 委員御指摘のとおり、急増する外国人事件に対処するために裁判所で通訳人を養成すべきではないかとか、あるいは資格認定制度を設けるべきではないか、そういった指摘がなされていることは承知しております。
 ただ、このような通訳人の養成機関を設けて法廷通訳専門家、そういった職種を設けることにつきましては、要通訳言語が非常に多様化して、かつ年によって必要とされる言語にもいろいろの変化がありまして、そういう関係上個々の言語の件数は非常に少ない。これらの専門家を養成しましたとしても、法廷通訳の需要のないときには一体どのように処遇したらいいのかどうか、そういうような問題もいろいろあります。
 また現状におきましては、不足する少数言語の通訳人の確保と養成というのが早急に解決しなければならない課題となっておりますことから、先ほど申し上げましたようないろんな法廷通訳人セミナーといったそういう研修会の開催とか、あるいは具体的な事件を通して裁判官や書記官の指導による通訳人の力を高める、そういった施策をとりまして、今その下地を固めているという状況にございます。
 法廷通訳のための資格認定制度を設けることにつきましては、このようないろいろ問題点を踏まえまして、今後の検討課題にしてまいりたいと考えております。
○大森礼子君 最後ですが、先に裁判所に述べていただきました。例えば法務省、検察庁の場合、むしろ資格認定制度みたいなのがあった方が、一応資格を受けた通訳が通訳したんだといえば、その通訳の正確性について、いたずらに法廷で争われることもなくなるんじゃないかなというふうに私個人は思っているわけです。
 それで、こういう資格認定制度というものについて、あった方がいいのかどうか等について、法務省、何かお考えがありましたら最後にお伺いしたいと思います。
○政府委員(原田明夫君) ただいま委員御指摘の点は、私どもとしても重大な関心は持っております。
 現実、先ほど申し上げました本省主催で行います通訳人セミナーにお集まりの、これはもう相当経験のある方が多いわけですが、そういう方々からも、例えば相当勉強して知識も申し分のない方から、法律用語を含めたそういう場に経験のない方までいろいろ差があって、場合によってはいわゆる謝金が実質的に平等に行われるべきだという観点からの指摘もあるくらいでございまして、確かにそういう面からもう少し認定制度ということ、委員御指摘のような、関係者に対する安心感を与えるという面からもあるいは必要なのかという感じがいたします。
 なお、先ほど裁判所からも御説明があったと同じような事情で、現在はまずその必要の数をできるだけ確保してすそ野を広げていく、そしてこの問題についての重要性をできるだけそういう話学のできる方に持っていただいて、そういうものに力をかしていただけるという基盤をつくっていく。その中で、ただいま申し上げましたような資格認定あるいはもう少し公的な養成のための方策が必要なのかどうかということを考えていかなければならない、そういうふうに現在検討している段階でございます。
○大森礼子君 どうもありがとうございました。
○及川一夫君 社民党の及川でございます。
 限られた時間ですので、そうたくさん御質問申し上げるわけにはいきませんが、今国会でもまた次年度国会でも大きな問題にし、またはされるであろう、要するにコスト論議というのが非常にクローズアップされると思うんです。
 それは、今の各省庁すべてでありますけれども、実際の予算そのものあるいは決算からうかがい知るところ、本当に無理、むら、むだというのがないのかどうかということが、財政構造改革をするに当たって大変問われている問題だと私は思うんです。これは、橋本総理大臣以下、政府の大臣たちがその気になるんじゃなしに、むしろ行政当局そのものがみずから自分の足元を洗うというようなことを手がけていかないとこの政治目標というのは達成しない、私はこういうふうに思っているわけであります。
 そこで、今年度の予算というものを見ると、確かに岡部先生が言われたように、法務省の予算というのは、省の性格上、政策的なものがそうたくさんない。そういった点では、そう無理とか、むらとか、むだというのがあるとは言えないのかもしれませんけれども、しかし洗ってみなきやわかりません。その判断を下すのには何が必要かということになれば、予算上計上されていく金額というものがどういう構成要素で、どういう根拠で、そして結果的にこういう数字になったのかという
 ことが明らかにならなきゃいけません。
  そこで、法務省の予算というものを見てみると、例えば人件費というのがあります。これはごく一部なんでしょうが、一つには俸給表の種類があって、それから予算定員があって、そして級別内訳があって、その上で俸給額というのがあって、トータルが出されていますよね。したがって、定員で割れば一人当たりどのぐらいの人件費を必要として法務省は構成されているか、そこまではわかるわけです。
 問題は、じゃ、定員とは何か、その定員というのはどういうもので一体つくられているのかということが問題になってくるんです。私の勉強の仕方が悪いのかどうか知りませんが、例えば要員算定基準なるものは予算上どうも目に触れてこないというふうに思うんですが、この辺のことについて、定員自体について根拠的なものを持っておられるのかどうか、まずお聞きしたい。
○政府委員(頃安健司君) 予算定員は基本的に業務量に応じて定められているということでございますが、法務省の中にいろんな組織がございまして、その組織組織によりまして特色はございます。業務量をいかにしてはかるかということでございますが、業務の内容によりましては定量的に計算できるものもございます。
 例えば、一例を挙げますと、入国管理局の職員につきましては、いろんな業務量算定のメルクマールはありますけれども、例えば日本人、外国人が出入国する数などを一つのめどとすることができます。あるいはまた、矯正の関係でありますと、矯正施設に収容しておる収容人員などが一つのめどになります。
 そういうふうに定量的に計算できる面もございますが、他方、例えば検察庁における業務量をどうはかるかということでございますが、これは基本的には受理事件数というものではかることができますが、ただ、事件といいましても千差万別であり、また時の経過によって性格が変わってくる。刑事事件につきましても、よく言われますが、複雑困難化、大型化、国際化とか、事件処理に要する手間暇が非常にかかってまいっているということで、そういう質の変化というようなものも考慮されております。
 以上であります。
○及川一夫君 そういうお話があるだろうということで、ちょっと私も計算をさせていただきました。
 確かに、特に例えば不法残留者数の推移というのを法務省で出しておられます。これによると、平成二年には約十万人ほどおったが、平成五年ではそれが二十九万人になっている、大変な激増ぶりです。しかし、幸か不幸か知らぬけれども、そこから少し微減状態になっていまして、平成九年一月の時点ではそれが二十八万というような数字になっているわけです。
 したがって、増なんですから当然定員はふやしていかなきゃいかぬということになってくるわけですが、平成二年では六百七十三名、三年では逆に四名減って、そして平成四年ではわずかだけれども五名減っているという形になってきて、平成五年に約百三名ふえたと。そこからおおむね、百九名とかあるいは百九十六名とか二百四十二名というふうにふえてきているんです。
 それは確かに、物量に対して対応するわけですからそれはそれでいいのでありますけれども、それをふやす場合に一定の根拠というものがあるのかないのかということになりますと、出た物量に対して定員で割れば一つの答えが出る、その答えが一定であれば根拠あり、こういうふうになるはずなんです。常識論ですよ、これは。
 だから、今、官房長が言ったように、いろんなことがありますから一概には言えないにしても、しかしそういいながらも、どの数字を同じ定員で割れば、また違った定員で割っても一人当たりは大体同じ物量が出てくる、こういうのが僕はやっぱり要員算定上は必要になってくるんだと思うんです。
 ところが、答えが全部違うんです、見てみると。ずらっと言うわけにいきませんから、平成二年では、入国警備官の数というので、これを六百七十三人の警備官で物量の方を割ると百五十八人を扱うのが一人当たりの物量、こうなるんですけれども、ところが平成五年で見ると三百八十七人にぽんと上がっておるわけですよ。ということは、労働強化ということに理屈はなります。それから、平成八年では三百九と。要するに、みんな数字は違うんですよ、計算してみると。
 そうすると、一体人員算定の根拠というのは何だ、何を根拠にしてやっているのかということを問題にしたくなりますよ。そうすると、官房長がごちゃごちゃと述べたのが、どの程度はね返ってそういう数字になるんですかということになって、その説明としてはどうも数字には、プラス・マイナス・ゼロにもならないし、何かマイナスになってみたりプラスになってみたりというような形に見えるわけです。
 ですから私は、だから問題だとは言いません。しかし、実際の現場の状況とか、確かに国際的に見て外国人問題というのはそんな簡単な理屈でぱさっといくわけにいきませんから、私は理解はしますけれども、今後の要員の定め方の問題として、ぜひともそういう角度から考えていただいて説明のできるようなもの、説明されればなるほどと思うようなものを出していきませんと、平成十年度の法務省の予算はどうなるのかということになるような気がしていますので、私は一言申し上げておきたいというふうに思います。
 それから、次の問題としては、法務省、特に刑事局長にまずお伺いしておきたいんですが、藤波さんの判決が出ましたね。それで、これは目からうろこが落つるような感じがするほど判決は明快、むしろ今まで何となく、わいろ性とそれから政治献金と証拠という構成要素があるんだが、今まではどうしてもわいろ性が問題になって、政治献金の性格の問題についてさまざまなことがあって争いがあったと私は思うんですが、刑事局長、今回の判決をどういうふうに受けとめておられますか。判決理由ですよ、藤波さんの話じゃなしに。
○政府委員(原田明夫君) 具体的な事件につきまして裁判所が言い渡した判決でございまして、それにつきまして法務当局として所感と申しますか、考え方を述べることは、この際、差し控えさせていただきたいと存ずる次第でございます。
○及川一夫君 いや、藤波さんの判決そのものの評価を私は言っているんじゃなしに、判決理由として取り上げた中に、政治献金にわいろ性があるかないかというような争いだったんですね。
 それで、大体、私流にこれを解釈すると、政治献金をもらったことは認めておられるんですよ。問題は、そこにわいろ性があったかなかったかというのが問題なんです。本人は、いや、わいろ性はないとあくまでも言いましたね。しかし、これは裁判官の判断によれば、そうはいっても、そのいただいた政治献金の中から例えば住宅の建設に回っているということになったら、それは政治献金を政治活動に使ったということになるんでしょうかというふうに見えるところが随分あるわけですよ。
 そこでは、どうもそれは政治活動に使ったということにはなりませんよと。ならないということになれば、その政治献金自体にそういう要素があったし、それが収賄とか贈賄というふうに置きかえてしまうと、どうもこれはわいろ性があったということにならざるを得ないんじゃないですかというような判決の書き方になっているんですよ。
 ですから、これからのこの種問題に対する判決には私は多用されるんじゃないかというふうに思っています。それから、昭和六十一年で約七百二十九件あった収賄贈賄事件というものが今日では四百八件に減っているということは結構な話だと思いますけれども、この段階の中で、その判断になかなか右か左か決め切れずに来たという点で言うならば、私は、今度の判決というのは、そういったものを踏まえてむしろ刑法というものを改正すべきじゃないかと。
 そうすることによってむしろ、何となく割り切れない、すかっとしない、常識に反して我々には理解のできないようなことが、今度の判決で私はすかっとしたというような感じがするので、そういう推測というのか推定というのか、法律用語ではわかりませんけれども、そういう要素を含めた一つの判決ができたということになれば、そういうことが可能な意味での刑法の改正というのは必要ではないかと思うんですが、いかがですか。
○政府委員(原田明夫君) 委員の御指摘の点、大変難しい問題でございまして、御質問の御趣旨はよく理解できるところでございますけれども、これはあくまで事件を離れてと申しましても、やはりある一つの事件で裁判所がその事実関係をどう評価して最終的にどう判断したかということの一つの事例が示されたということでございますので、そのことは私どもとして重く受けとめてまいらなきゃならないと思いますが、それについて、その評価なり、あるいは今後に与える影響ということをただいま申し上げることは適切でないと存じますので、その点、どうぞ御理解いただければと存ずる次第でございます。
○及川一夫君 私も、政治献金がゼロかといったら、それはゼロじゃないでしょうね。だから、もう当然届け出しているわけだし、使うにも当然政治活動に使うということを前提にして支出をしているつもりですよ。
 ただ、今までのような判決の枠内でいくと、このぐらいは許されるんじゃないかということで、気持ちが緩んじゃってばっと使ってしまうというようなことはありますわね。そういうことからいえば、今度の判決などを見ますと、やっぱりそういうものはいけないんだよということを示されたことになるし、何も今回の事件に限らず一般的な犯罪でもそうなんですが、判決というのは、あなたが悪いということと同時に、こういうことは悪いことですからやりなさぬなよということを社会に示すことになるんです、示したと思うんですよ。
 それを私どもは受けとめながら、自分の行動に気を配るということが私は大事な問題だと思っています。刑事局長、きょうはもう時間もありませんから、これはこの程度にしますけれども、やはりもう少し社会全体が受け入れることのできるような常識というものは、刑法上、はっきりさせた方がいいというのが私の主張でありますので、申し上げておきたいと思います。
 それから、次の問題として、夫婦別姓問題と俗称言われておりますけれども、これは法務省では審議会か何かにおかけになって一定の答申か何か出ているわけだというように私は思うんですが、それはいかがなものでしょうか、ありますか。
○政府委員(濱崎恭生君) 御指摘のいわゆる選択的夫婦別氏制度を中心といたします民法身分法の改正につきましては、法務大臣の諮問機関でございます法制審議会、具体的にはその民法部会におきまして平成三年から慎重な審議が行われ、その間にいろいろ国民各層の意見も聞きながら審議が行われまして、その結果、昨年の二月に法制審議会としての改正要綱案を答申という形でいただいているということでございます。
○及川一夫君 各省同じなんでしょうけれども、恐らく審議会にかけられるというのは、その是非を論じてもらって、別に事務当局が考えるのかどうか知りませんけれども、できればぜひ社会に出して通用するような一定の内容のものを出してもらいたいというのが普通ですね。
 そういう意味合いでは、法務省が今お答えになったような意味で答申が出たということに対しては、当然我々からいえば閣法で出てくるんじゃないか、こう思っておったんですが、なかなか出てこないでうろうろしている、こういう状況でして、しかも議会ではもう業を煮やして議員立法でというような動きになっているわけですよ。そういうことについては、法務省としてはもう少し責任ある対応をしたらいいんじゃないかと思うんですが、いかがですか。
○政府委員(濱崎恭生君) 民事法あるいは刑事法、そういった基本法につきましては、その改正については法制審議会の答申をいただいて、それを尊重して、それを踏まえて法案の立案をさせていただくというのが私どもの立案作業の一般的なやり方でございます。したがいまして、法制審議会の答申につきましては、その趣旨から考えましても、可及的にこれを尊重して取り扱うというのが私どもの基本的な考え方でございます。
 ただ、この今の選択的夫婦別氏制度の導入の問題につきましては、法制審議会の答申がされた後も、その内容がそれぞれ国民一人一人の生活に密着する、それぞれ国民一人一人が独自のお考えを持たれるという性質のものでありますことから、答申後におきましてもそれをめぐって国民の中からもさまざまな意見があり、そういった御意見を踏まえて各党を初めいろんなところで多様な御議論がされているという状況にございます。
 そういう中で、国民の意見もなお分かれ、それを踏まえた活発な議論が行われているという事情に照らしまして、法務省といたしましては、この問題につきましては、各方面で適切な御議論をいただいて、国民的なコンセンサスを得られる状態において法案を提出させていただくのが適当ではないかというふうに考えておりまして、こういった観点から今後とも努力をしていきたいというふうに考えているところでございます。
○及川一夫君 そういうお答えをしているから、なかなか審議会の答申というものが我々の前面に出てこない。しかも、本当のことを言われないから僕は困るんですよ。
 それは、国会ですし、世の中にはさまざまな意見がありますよ。イエスと言う人もあれば、ノーと言う人もいるわけで、それを議論していってまとめていこうという努力をしていくわけです。ということになれば、一つの問題提起をするということは大事だし、それは、審議会にかけられて一つの結論が出ているのにこれを取り上げないということはあったんでしょうか。全くゼロだとは私も言いません、物によってはあったかもしらぬ。しかし、この問題は大変関心の深い問題でして、国会の中だって本当に、これは右か左か手を挙げろとこう言ったら、どっちが多くてどっちが少ないかわかりませんよ。しかし、僕は議論をしなければならない問題だと思うんです。
 そこで、法務大臣、これ最後になりますけれども、ここにジュリエット・ヒンデルさんというイギリスの女性の方で、BBC放送の東京特派員の方がおられます。この方が東京新聞に、これはお願いされたんでしょう、それでコラム欄みたいなのがありまして、見出し「日本男性は女性を信用しないの?」と、こう書いてある。それでこの中で、非常に困っている話なんですよ、「最近の日本政治にかかわるニュースの中で、「選択的夫婦別姓制度」の問題ほど英国の放送視聴者への説明に困ってしまう問題はない。」、これほど困った問題はないという解説がありまして、それで最後の方に書いてあるのは、「日本女性はこれまでずっと旧姓を使うことを認められなかった、というだけでほとんどの英国人は驚くに違いない。」ということを強調されているわけです。すべて日本の男性は家族制度の問題に逃げ込むと、崩れるからだめだ、こう逃げ込むと、こういうふうに言っているわけで、これはある意味じゃまともな指摘だと思うんです。
 僕らだってあなた、家族制度をいいか悪いかと言われたら、必ずしも悪いことばかりない、いいところもあるとやっぱり答えは出ます。だけれども、この問題はそういうことで律する問題じゃないという前提に立つからこういう質問になっているんです。
 法務大臣、この辺の、国際的にもこれは問題にされる、日本だけだというふうに言われるような問題なんです、これを取り上げないということは。ということを申し上げますので、最後に法務大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
○国務大臣(松浦功君) 先生も政策審議会長というポストにおありになるので十分おわかりいただけると思いますが、法案は、提出する以上、国会の皆様方の御同意をいただいて成立させるということが一番大切なことなんでございます。その状況を今じっくり見ております。
○及川一夫君 余りじっくり見ちゃだめだよ、大臣。
 終わります。
○菅野久光君 私、民主党・新緑風会の菅野でございますが、主として裁判所の関係について御質問を申し上げたいと思います。
 速記官の問題を主にして質問したいんですが、初めに一般会計歳出予算各日明細書、裁判所所管の六ページの右側の方の積算内訳に、沖縄の復帰に伴う特別措置に関する法律第六十三条による定員何名というのが三カ所ほど書いてあります。この法律は、四十六年の十二月三十一日、すなわち沖縄が復帰する前に、復帰したときにきちっとできるようにということでこれは成立されたものだというふうに思いますが、その法律の中で「当分の間」と、こうあるんです。一体、その当分の間というのは、どのぐらいをもって当分の間と考えておられるのか、それをまずお聞きしたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(涌井紀夫君) 沖縄の復帰に関する特別措置法でございますので、裁判所の方からその立法の趣旨等を御説明するのもいささかおかしいかと思いますが。
 実は私どもの方も、この特別措置法に基づきまして、規則でその裁判所の沖縄の定員というのを決めております。その背景は、沖縄につきましては、本土と違いますいろいろ特殊な歴史的な背景、条件等がございますので、本土の場合とはやはり違った形で裁判所の定員も決めていかないといけない、いわばそういう特殊な配慮を要する期間内は特別の形でこの定員を決めるということであろうと思います。
 したがいまして、非常に抽象的に言いますと、そういう特別な配慮が必要とされる時間がいつまでかということになりますが、実はこれは裁判所の規則だけの問題ではございませんで、国の機関全体を通じて同じような決め方がされておりますので、裁判所の方から、この当分の間というのはいつまでかと言われますと、なかなか適切なお答えができないことをお許しいただきたいと思います。
○菅野久光君 裁判所は直接法案を出すということができないということですが、それはそうだと思うんですが、これ官房長、どうなんでしょうか、この問題については。
○政府委員(頃安健司君) 突然のお尋ねで、また私ども法務省の所管というわけでもございませんので、正確にお答えする自信がございません。
○菅野久光君 突然の質問であることは間違いがないんですが。やはり政府全体としても、もう復帰して二十五年たつわけですね、それがこのままもうずっと毎年毎年、しかも法律では「当分の間」と、こうなっているんですが、どうも法律に「当分の間」といったら、もう何かがなければいつまでもそのまま当分の間になっているんです。私は、沖縄の特殊的な事情があって、当時はこういう形でやむを得なかったと思いますけれども、これは政府部内で、まだ裁判所職員以外の問題もありますので、ぜひひとつ御検討願いたいものだ、このように思います。
 では、短い時間ですので、裁判所速記官の問題についてお尋ねをしたいと思います。
 最高裁は、裁判所速記官の新規募集を今春から取りやめることにしたと。在職する約八百二十人の速記官は六十歳の定年まで残る。かわりに、テープで録音し、民間の団体や業者に委託する方式を導入することを考えているようです。
 裁判所の速記官制度は、これは一九五七年の裁判所法改正で制度化されて今日まで来たわけでありますが、この制度を変えるに当たって国会での論議というのは一体どのようになされたのか。これは、言えば日本の裁判の根幹にもかかわるような大変な問題ではないかというふうに、いろんなものを見まして私は思うわけでございますけれども、これ裁判所の内部だけのいろいろな実験だとかそういうことを含めて、変えるということができるのか、そういうことを決めるということができるのか、その辺についてのお考えをまず承りたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(涌井紀夫君) 法律上といいますか、裁判所法の定めでは、各裁判所に速記官を置くという規定があるだけでございまして、これは、速記官というものを配置しまして逐語的な供述調書をつくる、そういう体制をとる必要がある庁につきましては裁判所速記官を置くという、そういう規定でございます。
 実は、今回考えております構想といいますのは、今いる速記官八百名余りを一気にその仕事をかえてしまうという案ではございませんで、従前のシステムではなかなかこたえていけないような新しいといいますか、逐語調書の需要にもっと的確かつ機動的にこたえていくような、そういうシステムをつくるために、当分の間はこの速記官制度と併用する形で録音反訳方式を採用していこうということでございます。
 したがいまして、今の、各裁判所に速記官を置くという法律自体とは矛盾しないといいますか、そういうところでございますので、法改正の問題は生じないということで、こういう方針を決めさせていただいたわけでございます。
○菅野久光君 しかし、法律をつくるときには、ぜひこれをつくってください、しかし時代の変化に従って、そうでない方法がいいのではないかということになれば、それらのことについていろいろ論議をして、それから決めるべきものではないかなと思うんですが、そういうふうにするに当たって何か二つばかり理由があるようですけれども、どのような理由ですか。
○最高裁判所長官代理者(涌井紀夫君) 今回の制度見直しを考えました一番大きな理由は、今後の裁判所に提起されてまいります事件の動向というものを見ますと、非常に内容の難しい事件が数の上でもふえてくるだろうと。そうしますと、やはり証人の供述等も、要領を筆記するだけじゃなくて、その言葉どおりに逐語的に調書にとっていく、そういう逐語調書の需要というものがどんどん大きくなってくるだろう。
 ところが御承知のように、現在の裁判所の速記といいますのは、速記官が特殊な速記タイプという機械を用いまして速記をとるというシステムでございまして、これ実は職業病の問題がございまして、速記官一人の立ち会い時間というのがなかなか延ばせない状況になっています。そういう意味で、非常に容量自体が伸びないシステムになっております。こういうシステムでは、今後のそういう裁判上の逐語調書の需要に的確にこたえていくことが難しいんじゃないかということから、こういう制度改正を検討したわけでございます。
 実はそれ以外にも、現行の機械による速記につきましては、速記用のタイプ、これは裁判所だけでしか使われていない機械でございますので、年間に六十台程度の需要しかない機械でございます。これは民間のメーカーでつくっていただいておりますけれども、果たしてこの製造体制というようなものをいつまで維持していただけるかということも非常に難しゅうございます。
 さらに、速記官というのは、高校を卒業いたしました方で適性検査等を合格された方、二年間研修所の設備で非常にハードなトレーニングをやりまして技術を身につけてもらうわけですが、最近の進学事情といいますか、そういうこともございまして、こういう技術を身につけようというお気持ちを持っておられて、またこういう技術を身につけていただける適性を備えた方という、そういう速記官の後継者というものがなかなか得られなくなってきております。
 そういうふうな状況があります一方で、片や民間の方では、速記というのは今や手書き速記からむしろ録音反訳、録音機でとりましたテープをワープロ等を用いまして文字に反訳しているという、そういう業態が通常の形になってきております。そういったところを見まして、今後の裁判所における逐語調書の作成体制ということを考えました場合、やはり裁判所でもこういう新しい方法をとっていかないと国民の裁判所に対する期待にこたえていけないのではないか、こういうところが最大の制度改革の動機になっておるわけでございます。
○菅野久光君 何か新聞等では、速記官の大量退職期を迎え後継者の確保が難しいということを一つの理由に挙げておりますが、それはそのとおりですか。
○最高裁判所長官代理者(涌井紀夫君) 裁判所の制度というのが戦後すぐの時期にできた制度が多いものですから、昭和二十年から三十年代にかけて速記官の場合も大量の速記官が養成されましたが、そういう人たちがちょうど今定年の年齢を迎える時期に差しかかっておりまして、毎年相当数の定年退職者が今後出ていくという状況になっております。片や、その後を埋めます新しい速記官の候補者ということになりますと、今言いましたような社会状況を控えましてなかなか適格者を数多く採用していくことが難しい、そういう問題がありまして、それもこの問題検討の一つの背景になっておるわけでございます。
○菅野久光君 速記官の申込者というのはかなりの数がいますね。しかし、毎年、合格をして入所する者は大体三十名前後ということでずっと来ていますね。これは、合格者の中で入らない人もいるわけですけれども、このことを考えていくと、別に後継者がいなくなるだとか何とかということじゃないんじゃないか。むしろ、職業病の問題などを含めて、いわゆる過労でしょうな、そういうことを考えていきますと、もう少し合格者をふやすような、これだけ、大体千人ぐらいずっと応募者がいるわけですから、そういったようなことは私は可能ではないのかというふうに思うんです。
 それから、タイプライターの問題、これも何か全司法という組合で、最高裁の方でそういうことを調べられたものですから、何か日本タイプライターに行っていろいろ聞いた、そのときの最高裁の方の設問の仕方によって答えというのは変わってくるわけです。それで、最終的にはいろいろ、二十年先、三十年先の発注台数がだんだん少なくなってくるので、それまでずっと約束できるかと言われればなかなか心配な問題はあるということは言っているようでありますけれども、今の技術的な問題からいえば、注文があればクリアできない問題は何もない。ただ、台数が少なくなれば当然のことながらコストの問題がありますから値段は多少上がるでしょうと、こういうことなんです。ですから、特別なタイプライターだから製造ができないということではないというような調査をしております。
 それから、会社の方も、裁判所には和文タイプも大変お世話になっているので、もしもこれからもそういったようなタイプの注文があれば、お世話になっているからぜひ何とかしたいというふうには考えていると、こういうようなことなんです。
 そういうことからいきますと、特注のタイプライターのメーカーが生産中止を申し入れてきたという、何かそういうことではないように組合の方の調査から見れば私は思うんですけれども、その辺はどうなんですか。
○最高裁判所長官代理者(涌井紀夫君) 問題点、人材確保の点とタイプの製造確保の点、二点ございましたわけですが、確かに人材確保の点では、受験者は、このところ、不況の影響もあるのかもしれませんがかなりの数でございまして、九百名を超えるような受験者が来ております。ただ、実はこれ、速記官の場合はある程度、ある程度といいますか、かなりの学力がありませんとその速記の仕事は覚えられないということと、それとやはり適性といいまして、その速記の機械を動かしていけるだけの運動神経といいますか、それから、あと病気にならないような体質といいますか、そういう検査に合格しないといけないわけでございまして、実はそういう試験に通っていただける方というのが非常に少ないということでございます。
 それと、実は合格いたしました方でも、大体今、委員御指摘のように毎年五十名近くの合格者を出すんですけれども、それでは、次の年の三月になって、いよいよ研修所に入って訓練に入ってもらおうという段階になりますと、そのうち大体三割程度の方はもうやめさせてもらいたいということをおっしゃるんです。そういう方は、例えばその後、大学の受験をして大学に進学するようになったのでそっちに行きたいとか、あるいはほかに就職先を見つけたりとかということで脱落をしていくわけでございます。
 さらに、そういう形で三十名程度の方が研修を始められるんですが、二年間の研修についていけないで脱落していくという人がやはり毎年二割ぐらいおります。そういう人たちの処遇をどうするかということも非常に難しい問題になっておりまして、そういうふうなところから、後継者で問題のない方というのを確保していくことがなかなか難しい状況になっておるわけでございます。
 それから、あとタイプの問題ですが、実はこれはこの製造メーカー自体がもともとタイプの製造メーカーでございましたので、委員御指摘のように、かつては裁判所の方から和文タイプの注文をしてそれを納めていただくというふうな取引もあったわけでございますが、この会社自体、つい一、二年前ですが、和文タイプの製造自体をもう打ち切ってしまいまして、和文タイプの供給ももうできなくなっております。実は、このタイプの製造というのは、この会社が全部できるわけではございませんで、百数十の部品でできておりますのが、これ皆下請会社から製造されてまいります部品を使っておるわけですが、これまでにもいろんな部品が下請の方でつくれなくなっております。活字がっくれなくなったり、あるいはタイプ用のインクのリボンがつくれなくなったり、そのたびにその代替策をどうするかで大変非常に苦しい思いをしてきたわけでございまして、そういうことから裁判所に対しても製造打ち切りの申し入れが現にあったこともございます。
 ですから、ここしばらくどうだと言われますと、恐らく数年とかいう単位であれば無理を言って製造を続けていただくことは可能かと思いますが、裁判所速記官というのは、速記官に任官しますのが二十歳でございますので、定年までの仕事を考えますと、四十年くらいこのタイプを使って仕事をしていくという、そういう仕事でございます。果たしてその四十年先あるいはそれより先、それよりもっと短く二十年先を見た場合に、安定的にこのタイプの製造を確保できるかといいますと、我々の見方としては、やはりこれは非常に不安定な状況で、そういう不安定な状況に依拠したままこの制度を維持していくということは非常に問題じゃないかという、こういう問題意識を持っておるわけでございます。
○菅野久光君 裁判は、裁判官と被告と弁護士、そういう中でいろいろ審理がなされるわけです。だから、裁判所の都合だけでそういったようなシステムといいますか、そういうものを変えるということが果たしてどうなのか。
 日弁連などもいろんな意見を出されております。去年半年、実際に幾つかのところで実験をして、そしてもうことしの一月には採用をやめるということを通知しちゃっているわけです。一体どこで、特に裁判にかかわる弁護士の方々の意見、そういったようなものを聞かれたのか。そういったような時間的な問題からいって、余りにも私は拙速過ぎるんじゃないかというふうに思うんです。裁判所だって、実験をしたところだって幾つかに限られたところですね。
 やっぱり一つのそういう制度を変える、しかも裁判というのは、その人の一生を左右するような人権にもかかわる大変な私は問題だと思っているんです。裁判所の都合だけで、しかもかなりな拙速的なことを、しかも去年、おととしから、もうこの制度はやめるんだ、速記官の採用もだんだんやめていくんだ、いる間はやってもらうけれどもというようなことで話をしている。採用に当たっても、そういったようなことを言っておられるんです。それから、各高校の就職担当のところにもそういう話を出しておられるということでございますから、就職活動にも当然影響を与える、こういうことになっているわけです。
 それは、今の状況から見て、急がなきゃならぬという気持ちはわかるにしても、私の気持ちとしては、もう少しやっぱりきちっと手を尽くしてやるべきではないか、このように思っているんですが、その辺についてはいかがでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(涌井紀夫君) 委員御指摘のように、これは制度改革といいましても、かなり大きな影響を持つ制度改革であるということは我々も全く同じ認識でおりまして、実はこの作業を非常に時間をかけてやってきたつもりでございます。
 現実にこの作業にかかりましたのは、平成五年六月に最高裁の中に、これは速記官自身をメンバーに含めましたプロジェクトチームをつくりまして作業を開始しましたので、足かけ五年間の作業になっております。しかも、この間、組合との間ではその当初から何度も何度も繰り返し意見交換をし協議をする。それから、弁護士会との間でも二年近く、いろんな裁判所の速記をめぐります客観的な状況に関する資料も提供し、お互いに意見を聞くという形の意見交換の機会を定期的に、非常に密度濃く繰り返してきております。
 そういうふうな弁護士会との意見交換を踏まえまして、昨年の六月から全国の裁判所で相当大がかりな録音反訳の検証実験をやってみたわけでございます。規模で言いますと二千二百件ぐらいの証拠調べについてこれをやっております。現実にこの証拠調べにお立ち会いになった弁護士さんは数百名おられるわけですが、そういう弁護士さん方には個々に、この録音反訳方式でできた調書のできばえはどうだったかということを一々お尋ねしております。そうしますと、弁護士さんの回答としては、九割を超える方が、従前の速記録と遜色のない、裁判をやっていくに何の不安もない調書ができておりますというお答えをいただいております。
 日弁連の方も、確かに、今の時点で養成をすぐやめてしまうということには不安があるということではございましたけれども、この録音反訳方式を採用するということについては、きちんとした体制が組め、手続的にも問題のないような措置がとられるのであれば積極的に考えていくべきだという、こういう御意見をいただいたわけでございます。
 したがいまして、我々の方としては、委員御指摘のような重大な問題であるということは十分踏まえまして、時間をかけて、また関係者との間でも十分オープンな議論をやった結果、こういう方針を出させていただいたというふうに考えておるわけでございます。
○菅野久光君 立ち会った弁護士さんの中には、確かに今おっしゃられるように、従来のものと何も変わらないという方もいらっしゃるでしょうが、何か日弁連のあれを見ますと、別にテープのあれを否定するということではないんですよ。
 ただ、今、速記官をなくすということについてはどうかということで、職業病の問題なんかについても、速記官の制度発足当初は定員を二千三百名にしていた。しかし、昭和三十九年以降、予算定員を九百三十五名に据え置いたままずっと来た。それが結局、過度な仕事によって職業病になってくる。それじゃとってもかなわないから、これをやめてしまおうじゃないかということでもないかもしれませんが、そういうふうにやっぱり思わざるを得ない。大体、半分以下の人数でこなすということになれば、これは大変だと思うんです。
 そこで、速記官の人たちも、「はやとくん」というコンピューターを使った速記反訳システムを速記官の人たちがいろいろ工夫をしてやってこられているです。これは、いろいろな方々のお話を読みますと、すばらしいものだということでありますが、今のこの速記官が考え出された「はやとくん」、いわゆるリアルタイムでやるようなことを裁判所で採用するといいますか、使うというような、そういう気持ちはおありですか。
○最高裁判所長官代理者(涌井紀夫君) 「はやとくん」という愛称で呼ばれておりますシステムの内容等を私どもも関心を持って見ておるところでございます。
 ただ、実はこのシステムといいますのは、先ほど説明いたしました速記タイプによる速記技術というものを前提にしているシステムでございます。要するに、速記官が使います速記タイプにコンピューターを接続しまして、その符号を自動的に文字に変換していこうという、こういうシステムなわけでございます。
 したがいまして、実はこのシステムを採用します前提としては、やはり今の機械、速記タイプの機械の製造が確保されるということが前提になりますし、また今の速記で速記をするという技術の習得というものも当然の前提になってくるわけでございます。
 そうしますと、実は先ほど言いましたが、一つは職業病の問題がございまして、この機械を使ったからといって立ち会い時間を延ばせるというものではないわけでございます。それと、一度速記原本に打ちましたものを改めて反訳する場合に比べますと確かに幾分反訳効率は上がるようでございますけれども、実は今の速記といいますのは、証人等の発言が非常に早口になっておりますので、速記だけではもうほとんどとり切れない。かなりの部分を録音機に頼って、そこで補充して記録をとっておるという状況でございますので、その機械を使いましても後で録音テープ等を用いた補充作業がどうしても必要になってまいります。そういう補充作業を入れて考えますと、反訳の効率というのもそんなに著しく、例えば二倍になるとかというようなものではございませんで、例えば従前十時間かかっておりましたものが八時間程度になるかという程度のものでございます。
 そういうところからいたしますと、この「はやとくん」というそのシステム自体、今までの制度が抱えておりました問題点を抜本的に解決するものにはなかなかなり得ないんじゃないかというのが私どもの判断であるわけでございます。
○菅野久光君 時間が参りましたので、この程度にいたしますが、いずれにしろ、せっかく国会でつくった法律が、何かこういう裁判所のいろんな形で、いろんな論議を経ないうちに、もう採用をやめるだとかなんとかということは、どうも私どもとしてはちょっと納得できない、そういう面があるということをこの機会に申し上げて、私の質問を終わります。
○橋本敦君 私は、最初に予算に関連をしてお伺いをしたいんです。
 今、調査室に至急調べていただいたんですが、法律扶助事業、これの補助予算が四億三千九百四十八万円、このうち震災関係が一億九百万円ほどありますが、これをのけますと法律扶助事業に対する補助が九年度わずか三億三千万円余りなんです。
 政策経費が少ないという指摘もいろいろございましたが、諸外国に比べて法律扶助というのが非常に日本はおくれているということは、当委員会でも私も質問したこともありますし、国民の裁判を受ける権利を保障する上からいっても非常に大事な事業、補助予算だと思うんです。これがわずか三億三千万円余りでいいのだろうか、これをふやすということで国民の裁判を受ける権利の保障に向かってもっと思い切って前進をしていくべきだし、そうあってほしいと思うのですが、法務大臣にこの点の御意見をまず伺いたいと思います。
○国務大臣(松浦功君) 御指摘をいただいておりますように、まさにこの問題は人権に関する問題でございます。できる限り私どもも努力をして予算の増額に努めてまいりたいと思っております。
○橋本敦君 ぜひその点の御尽力もお願いしたいと思います。
 さて、私は、裁判所にわざわざお越しをいただきましたが、政党助成金問題に関連をして質問をしたいと思っておるわけでございます。
 その前に、九六年三月十九日に最高裁第三小法廷が、南九州税理士会政治連盟の特別会費納入を拒否した事件について非常に重要な判決をいたしております。そこで、最高裁に、この事件の概要と、最高裁が判決をされた趣旨の一番大事な部分はどういうところにあるということなのか、まず簡単に御説明をお願いしたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(石垣君雄君) ただいま委員が御指摘になりました事件は、被上告人であります税理士会が、税理士法改正運動に要する特別資金とするために各会員から特別会費を徴収し、その特別会費を政治団体に配付する旨の決議をしたと。ところが、被上告人の会員であります上告人が右特別会費を納入しなかったために、被上告人の役員選任規則というものに基づきまして、右特別会費の滞納を理由として上告人を選挙人名簿に登載しないまま役員選挙を実施したという事案でございます。
 この事件で、上告人は、政治団体へ被上告人が全員を寄附することは、その目的の範囲外の行為であり、そのための特別会費を徴収する旨の決議は無効であるとして、被上告人との間で上告人が特別会費の納入義務を負わないことの確認を求め、さらに被上告人が特別会費の滞納を理由として役員選挙において上告人の選挙権及び被選挙権を停止する措置をとったのは不法行為であるという主張をいたしまして、被上告人に対し慰謝料等の支払いを求めたという事件でございます。
 御指摘の最高裁の第三小法廷では、判決理由の中で、「政党など規正法上の政治団体に対して全員の寄付をするかどうかは、選挙における投票の自由と表裏を成すものとして、会員各人が市民としての個人的な政治的思想、見解、判断等に基づいて自主的に決定すべき事柄であるというべきである。」ということを判示しております。
 以上でございます。
○橋本敦君 この判決は裁判官一致の意見だったと思いますが、間違いございませんね。
○最高裁判所長官代理者(石垣君雄君) 仰せのとおりでございます。
○橋本敦君 最高裁はこの判決で、さらに続いて、「なぜなら、政党など規正法上の政治団体は、政治上の主義若しくは施策の推進、特定の公職の候補者の推薦等のため、全員の寄付を含む広範囲な政治活動をすることが当然に予定された政治団体であり、これらの団体に全員の寄付をすることは、選挙においてどの政党又はどの候補者を支持するかに密接につながる問題だからである。」、こういうことを判示いたしまして、政治献金をどの党にどうするかは、それはまさに市民としての個人的な思想、見解、それに基づいて自主的に決定すべき事柄でありますから、そういった会が、特に税理士会という強制加入団体が団体の多数の決議で政党に対する寄附を義務づけるということは、まさにこうした市民的自由を侵すおそれがあるという立場を明確にしたものだと思いますが、間違いありませんか。
○最高裁判所長官代理者(石垣君雄君) 正確な表現はともかくとして、趣旨としては大体そのようなものであろうと存じます。
○橋本敦君 こうした判決は前にもございまして、例えば昭和五十一年十一月二十八日、最高裁第三小法廷の判決で、いわゆる国労事件という判決がございます。ここでも、国労という組合が政治団体に対して寄附をするという、そういうことで、特定の立候補者支援のための所属政党に関する寄附を決めたということについて、同じように最高裁は、この問題については、投票の自由と表裏をなす組合員各人の政治的思想、判断、そういった自主的に決定すべき事柄について、そういったことを強制的に決めることはできないという判決をしております。
 私は、この問題に関連をして、政党助成金問題に関連をして話を進めていきたいのですが、今年度、政党助成についてどのくらいの予算が組まれておりますか、自治省。
○説明員(細谷芳郎君) 平成九年度予算案におきましては、政党交付金として三百十三億九千二百五十六万二千円、これが計上されております。
○橋本敦君 平成七年度及び平成八年度交付金を合計いたしますと、六百八億九千二百万円余りになると承知しておりますが、この数字は間違いありませんね。
○説明員(細谷芳郎君) 間違いございません。
○橋本敦君 実に莫大な金が国民の税金から出されておるわけでありますが、まさにこの国民の税金からの支出というそのこととの関係で、今私が指摘した判決からどう理解するかという問題が法律的にも、また民主主義の基本的課題としてもあるわけです。
 まず、そこで伺いますけれども、自治省に御答弁願いたいんですが、参議院選挙が行われまして、これの投票率が四四・五%、五〇%を切ったということで大きく問題になりました。昨年行われました総選挙では投票率が五九・六%ですから、それぞれ棄権は五五・五%あるいは四〇・四%という、こういう数字であること、これは間違いありませんね。
○説明員(山本信一郎君) 仰せのとおりでございます。
○橋本敦君 つまり、これで見ますと、国民のうち、投票権を有する皆さんの中で五〇%を超える皆さんが特に支持する政党がないというんです。ところが、支持する政党はなくても強制的に税金から政党助成金を取られ、その人たちが支持もしない各政党にそれが配られるという、こういう経過になっているわけです。
 今年度の政党助成額がどれくらいになるか先ほどお話がありましたが、今年度の政党助成額を現在の政党の議席で配分をして考えてみますと、自民党には約百四十六億円余りが交付される予定、新進党には九十三億円余り、民主党には二十七億円余り、社民党には二十七億円余り、これが先ほどおっしゃった今年度予算から計算されるおよその見当ですが、この数字も間違いありませんね。
○説明員(細谷芳郎君) 現在、試算をしておるところでございますが、そのような数字になろうかと存じます。
○橋本敦君 そこで考えてみますと、例えば自民党の場合、さきの総選挙での絶対得票率は一八・六四%でございました。助成費の中での割合は四六・八%という計算ですから、得票率よりはるかに高い助成費を受け取ることになる。新進党の場合は、絶対得票率が一五・九五%で助成費は二九・六四%ですから、これも同じですね。
 だから、実際に選挙で得票された得票がどれくらいか見ますと、自民党は千八百二十万票おとりになっていらっしゃいますが、それで助成金を百四十六億円受け取りますと、仮に一人二百五十円という計算でいきますと五千八百七十六万人分となり、実際に得た得票率に応じた金額より何と四千五十六万人分たくさん受け取ることになるし、新進党の場合、得票は千五百五十八万票余りですから二千百六十四万人分多いということで、こういう計算からいきましても、国民のそれぞれの自主的な政党支持のその意思を超えた多額の金が各政党に配分されるという、こういう制度になっておるわけです。
 これは、まさに国民の政治、信条、投票行動と表裏をなすと最高裁が言っている政治献金、寄附の、それぞれの思想的、市民的自由の範囲を超えているという結果になっている。こういう状況であること、そのこと自体は自治省は認めますね。
○説明員(細谷芳郎君) 計算をいたしてみますとそういう形になるわけでございますが、そのようになっておりますのは、基本的に総額を法律上の基準に基づきまして算定いたしまして、これを特定の配分方法を用いて配分すると、そういうやり方に基づくものでございまして、そういう事情があるわけでございます。
○橋本敦君 計算方法がどうであろうと結果的にそうなっていく、そのことはあなたも否定できないと思うんですよ。
 大蔵省に、単純な話で申しわけありませんが、教えてほしいんですが、住専処理問題で国民から大変批判が起こりまして、国民一人当たり大体一万円の負担だと。それについては、これは市民の中から、私は払いたくないということで還付申告をした事件があったということが新聞で報道されました。また、同じく新聞で報道されたのでは、国民一人当たりの一万円、私の意思に反するとして、これを税額控除欄に控除として記入をして申告するということがあったということも報じられました。こういうことはどうなりましたでしょうか。
○説明員(神原寧君) 国税当局といたしましては、税法を適正公平に執行する立場にございますので、税法の定めに従わない申告や納税が行われた場合には、税法の定めるところに従い、適正に対処していくといったことになったと思います。
○橋本敦君 つまり、税法上、それは取り立てる、控除だとか還付は認めないということですね。
○説明員(神原寧君) 具体的に申しますと、税法の定めに従わない申告については、税法の定めるところにより更正等により是正し、また納期限までに国税を納付しない場合には、国税徴収法その他関係諸法規の定めるところによる処理を行っております。
○橋本敦君 それはそうでしょう。それは、その答えで私は異存ありません。そうなさるだろう。
 ところが、政党助成金一人当たり二百五十円というこの問題ですが、これについて、今私が指摘したようなことで、最高裁の判断から演繹されるところに従っても、私の支持しない政党にも配分されることは、制度的にそうなっていくという、そういう状況になっているこの政党助成金は私は納付したくないと、こう言って納付しない場合に、同じように税務署は、今あなたがおっしゃった税法上の手続に従って、これは納付しないことは認めない、滞納処分あるいは申告控除は認めないということで申告をさせる、こういったことで取り立てられるわけでしょう。
○説明員(神原寧君) 国税当局といたしましては、先ほども申し上げましたとおり、適正公平に執行する立場にございますので、税法の定めに従わない申告や納税が行われた場合には、やはり税法に定めるところに従い適正に対処するということになると思います。
○橋本敦君 つまり、二百五十円、私は支持しない政党にも行くような政党助成金のその部分の税金の納付はしないということは、そういう自由は国民にはないということははっきりしていると思います。間違いないでしょう。結論だけでいいです。大蔵省、そういう自由は認めますか。
○説明員(神原寧君) それは、繰り返しになりますけれども、具体的には、税法の定めに従わない申告については、税法の定めるところにより更正等により是正することになると思います。
○橋本敦君 だから、税法には二百五十円控除してよろしいという規定もなければ、払わなくて自由だという、そういう定めはないから、当然取ることになるわけですね。
○説明員(神原寧君) おっしゃるとおりでございます。
○橋本敦君 そこで、最高裁判決によれば、税理士というのは強制加入の団体だから、だからそういう強制加入の団体がその会員に対して一定の政治的寄附をすることを強制するようなことをやったらそれはいけませんよという、そういうことだし、国労判決でもそういう趣旨を演繹して、労働組合であろうとも自由を侵害してはならぬという、こういうことなんです。税金というのは、これは憲法で国民の納税義務として決められていますから、あなたがおっしゃったように、みだりに納付しない自由なんてないわけです。
 だから、そういう意味では、日本国民であることを簡単にやめるわけにいかないし、国籍離脱の自由があるといったって勝手にできるわけじゃないし、日本国民である以上は、いや応なしに二百五十円一人当たりの計算での税金を取られて、しかもそれが、今私が指摘したように、支持もしない政党に配分されるシステムの中で使われていくという、こういう大きな矛盾をこの政党助成制度というのは持っているわけです。だから、私たちは、この制度は憲法違反だと、個人の政治、信条の自由、これを侵す、そういうものだとして、これは政党として日本共産党は受け取らないし、こういう制度は憲法違反の制度としてやめるべきだと、こう言っているわけです。
 この問題について参議院の予算委員会で、三月十日ですが、大変興味のある議論がなされまして、自民党の関根議員が、あのいわゆる友部議員の詐欺商法に関連して、「詐欺によって得られた金がずっと渡っていって新進党に行っているとすれば、新進党に対して仮に請求権が出た場合を想定いたしまして、政党交付金は差し押さえの対象になりますか。」、こういう質問をしたときに、牧之内自治省選挙部長は、「政党交付金は使途が特定をされておりませんので、損害賠償等に使用することは可能でございます。」という答弁をなさった。
 濱崎民事局長も同趣旨の答弁をなさっておるんですが、間違いありませんか。
○政府委員(濱崎恭生君) 私の答弁の関係でお答え申し上げますが、その際お答え申しましたのは、政党交付金の請求権が一般的に差し押さえの対象になるかという御質問がございまして、それに対しまして、政党交付金の請求権も一定の手続を経て金銭債権という性質を有するに至るものであるから、金銭債権につきましては、特に法律上差し押さえが禁止されているもの、あるいは解釈上債権の性質によって差し押さえすることができないものを除いて、一般的には差し押さえの対象になると。
 ただ、政党交付金請求権については、政党交付金請求権が今申しました解釈上差し押さえることができないものに該当するかどうかということは、政党助成法の規定する交付金制度の趣旨、目的に照らして定まるものであり、民事当局として結論的なことは申し上げかねるということを申し上げたわけでございます。
 そして、重ねて御質問がございましたので、金銭債権というものは、先ほど申しましたような例外的な場合を除いて、一般的に差し押さえの対象になるということを重ねて御答弁申し上げたということでございます。
○橋本敦君 政党交付金は、法律上、使途が限定されておりませんね。自治省、いかがですか。
○説明員(細谷芳郎君) 政党助成金につきましては、基本的に使途は限定されておりません。
 限定されておりますのは、貸付金の原資とする場合、あるいは借入金の返済に充てる場合、これにつきましては充てることは想定されていない、こういう形になっております。
○橋本敦君 したがって、政党が損害賠償しなきゃならぬようなことが起こったときには損害賠償に充てるということ、したがって、損害賠償請求権者が差し押さえをそれに対して行うということも、これは可能だと自治省は考えていますね。
○説明員(細谷芳郎君) 先般の参議院予算委員会におきます選挙部長答弁、これをちょっと簡単に要約して申し上げますと、政党交付金の差し押さえにつきましては、過去の判例を見ますと、国庫補助金であるからといって差し押さえができないという考え方には立っていないようでありまして、交付の趣旨から差し押さえを禁止する趣旨のものであるかどうかということが問題となるようでございますが、一般論として申し上げれば、政党助成金が損害賠償に使われることも可能である、このようなこと。また、特段、差し押さえを否定するような根拠、これは私どもの段階では見当たらない、このような答弁が行われております。
○橋本敦君 私が言いたいのは、細かい法律論をするつもりはない。この政党助成金というのは国民の税金でしょう。だから、政党が国民から損害賠償を請求されるようなことがあった場合に、差し押さえも、その賠償に使うことも可能だとなりますと、国民は、支持もしない政党に金は取られるわ、国民の税金で政党の損害賠償のしりぬぐいをさせられるという、こういう制度になるんです。こういう制度は、一体、民主主義の中で、民主政治のもとで、国民の税金の使途との関係においても、納税者の権利との関係においても、政党支持の自由の関係においても、あらゆる点から見てこれは大問題を持っているんですよ、こういう問題を本当に考えなくちゃいけないですよというのが私の問題指摘なんです。
 私の質問したことから大体問題点が浮き上がってきたでしょう。私は最初になぜ法律扶助事業予算を聞いたかといいますと、国民の裁判を受ける権利の補助のためには年間たった三億三千万なんです。ところが、政党助成金は二年間で六百億も出ている。今、国民から行政改革あるいは財政改革と言われ、いろんな意見が出て、むだを省かなきゃならぬときに、こういう重大な法律問題や憲法にかかわる違反性の強いこういう制度こそ、これは直ちに早く見直して、国民に対して姿勢を正すのが私は政党と国会の責任だと思うんです。消費税の税率を国民には一方では押しつける、政党助成金のこの予算はどんどん組んでいく、これはやっぱり問題です。
 私は、もう時間が来ましたので終わりますけれども、まさに憲法と法を守り、国民の権利を守る立場にあられる、これは自治省じゃありませんが、法務大臣としても、この制度についてはしっかり検討する必要がある。私は廃止すべきだと思うのでありますが、大臣の御所見を承って、時間が来ましたので、この点の質問は終わりたいと思いますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(松浦功君) 政党交付金は、民主政治の健全な発展に寄与することを目的とする政党助成法に基づいて交付されておるものでございます。特に憲法上の問題があるとは全く考えておりませんし、これを直ちに法務当局の意見として取りやめるべきだということを申し上げる気持ちはございません。
○橋本敦君 終わりますが、恐らく大臣の答弁、私は、大臣の立場でそうだと思います。しかし、私が指摘したようなこういった問題があるので、少なくとも国会において、民主政治の基本的あり方として、あるいは国民の思想、信条の自由にかかわる重大な問題として、私が指摘した問題も含めて国会ではまだまだ積極的な論議を行うべきである。そして、この問題については、御存じのように、企業献金禁止の問題と絡めて五年後に見直すという、そういうことも、企業献金禁止の見直し等も含めて国会で成立した法律でありますから、積極的にこの問題については各党論議をもっと深めていく、そういう問題を持っている重大な問題だということについては少なくとも御理解いただけたでしょうか。
○国務大臣(松浦功君) 発想方法が大分食い違っておりますので、この場で議論をすることは避けた方が穏当かと思います。
○橋本敦君 それじゃ、発想方法が違うようでございますから、これで終わらせていただきます。
○委員長(続訓弘君) 以上をもちまして、平成九年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、裁判所所管及び法務省所管についての委嘱審査は終了いたしました。
 なお、委嘱審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(続訓弘君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ―――――――――――――
○委員長(続訓弘君) 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○中原爽君 自由民主党の中原でございます。
 このたびの裁判所職員定員法の一部を改正する法律案は、地方裁判所における民事訴訟事件と民事執行事件の新しい受け付け件数の増加傾向へ対応するということ、並びに平成十年一月施行予定の新しい民事訴訟法と同規則の業務に対応するために判事補及び裁判官、裁判所の書記官の増員を図るという必要性があるということであります。そのことは十分に承知をいたしております。しかし、幾つか基本的な事項につきまして御質問を、お尋ねを申し上げたいと思います。
 持ち時間も短縮をいたしたいと思いますので、質問事項に限定をいたします。
 最初にお聞きいたしますのは、この民事訴訟事件、それから民事執行事件が増加傾向にあるということでありますが、ただ、量がふえるということについて、中身がどういう形で、どういう問題がふえるのかということをお尋ねしようかと思います。
 と申しますのは、この訴訟事件の受け付け件数、平成七年度は平成三年に比較いたしまして一・二九倍増加しているんだと。もう一つ、執行事件につきましては、やはり平成七年の時点で、平成三年に比較しますと、こちらは百分率でありますが五九・四%増加しているんだと、この件については住専の処理、債権回収が本格化するとさらに増加するんだと、こういう御説明でございます。いずれにしても、増加傾向にあるということと、その増加をする実態の中身についてお尋ねをしたいと思います。いかがでございましょうか。
○最高裁判所長官代理者(石垣君雄君) バブル経済の崩壊とその後の経済不況の影響を受けまして、ただいま御指摘ありましたように、民事訴訟事件及び民事執行事件の新受件数は、ここ数年、増加傾向が続いているところでございます。
 その増加の中身でございますが、特に今後どういう事件が増加するかということになりますと、なかなか予測が困難でありますが、あえて申し上げますと、例えば民事訴訟事件につきましては、規制緩和あるいは経済取引の複雑化、国際化の進展等に伴って新たな金融商品、例えば変額保険とかあるいはデリバティブ商品等でございますが、そういった新たな金融商品をめぐる事件、それから知的財産権の関係の事件、あるいは金融機関等の破綻に伴う事件、損害賠償請求事件とかあるいは株主代表訴訟などもそれに含まれるかと思いますが、こういった事件が増加することが予想されます。
 また、民事執行事件につきましては、住宅金融債権管理機構を初めとする金融機関等の不良債権の処理のための不動産執行事件が多数申し立てられることが見込まれると申し上げてよろしいかと存じます。
○中原爽君 もう一つ、似たような御質問を申し上げるわけでありますけれども、もともと我が国の法曹人口が少ないということでありますけれども、今後我が国が高齢社会に向かいまして、高齢社会における国民生活がこの法曹人口が少ないということによりましてどのような影響を受けるのかということは、高齢社会にとっては大変重要なことではないかというふうに思っております。したがって、法曹人口の割合が外国に比べてどうだということではありませんけれども、この法曹人口が少ないということと高齢社会の国民生活とのかかわり、この点について御意見がございましたらお願いをしたいと思います。
○政府委員(山崎潮君) 社会の高齢化が進展するとともに、委員御指摘のように、高齢者をめぐる各種の法的紛争が多数生じていくだろうというふうに見込まれるところでございます。このような社会の変化に伴う国民の法的ニーズに適切にこたえていくということは大変重要なことでございまして、法務省といたしましては、このような観点から、我が国の法曹人口について大幅な増加を図るということが必要であると考えているところでございますし、現にその努力を続けているところでございます。
○中原爽君 それでは、これから高齢社会に向けて裁判に対する国民のニーズというのがふえていくわけでありまして、しかもそれにおこたえをするということが重要でありますが、地方裁判所とあわせて簡易裁判所の役割のあり方、これが相互にいろいろ関連をしてくるのであろうというふうに思います。また、このたびの新しい民事訴訟法とその規則によりますと、特に少額訴訟の手続というのが従来の通常の訴訟手続とは少し異なっているというふうに聞いておるわけであります。異なった手続的な特徴があるんだという御説明がございました。基本的には、簡易裁判所の現行法の民事訴訟の手続の運営をさらに改善をするという趣旨が含まれているのではないかというふうに思いますので、このあたりの手続上の特徴と申しますか、そういったところを少し御説明いただければというふうに思います。
 あわせて、簡易裁判所判事の配置状況につきましては、資料によりますと定員が七百九十四名で欠員が十名というようなデータをお示しいただいておるわけでありますけれども、この簡裁の判事の役を裁判官が兼務をされているということも伺っておりますので、このあたりの人的な配置の状況等もあわせて御説明を伺いたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(涌井紀夫君) 国民の側から裁判所を使う場合の問題ということでございますので、主として民事事件について申し上げたいと思います。
 地裁、簡裁、これはいずれも、国民の側から持ち込まれます法的紛争を適正かつ迅速に解決するということ、またわかりやすく利用しやすい裁判をやっていくという点ではこれは全く共通でございますけれども、やはりその手続のあり方の特徴等が多少違ってまいります。
 御承知のように、地方裁判所に提起されます事件というのは、訴えの額といいますか、請求金額が九十万円以上という比較的金額の大きな事件が提起されることになっておりますので、どうしてもその手続自体慎重にといいますか、そういう点が出てまいります。そういたしますと、どうしてもその審理期間もおのずから長くなるという傾向がございますが、国民の側からいたしますと、この地方裁判所の裁判につきましてももう少し短い時間で解決をしてもらえないかという要望があるだろうと思うんです。そこが今一番の大きなポイントでございますので、裁判所の方としましても、この地方裁判所におきます民事訴訟の運営のあり方というものを改善いたしまして、できるだけ早期に解決ができるような、そういう工夫をしてきております。また、わかりやすい裁判にするために、判決書の書き方自体も余り難しいものにしないで、御本人がお読みになっても比較的わかっていただけるような平易な判決書というものを考えていこうというふうな、そういう工夫をしております。
 今回の民事訴訟法の改正というのは、こういった実務上の工夫をいわば法制化したものでございますので、今後ともこの新しい民事訴訟法の趣旨にのっとりました集中的な争点の整理と集中的な証拠調べ、こういうものが実現できるような訴訟運営を考えていく必要があろうかと思っております。
 それからもう一つの、簡易裁判所の方でございますが、これはどちらかといいますと、もう少し国民の身近なといいますか、そういうふうなイメージの裁判所として充実させていく必要があるだろうと思っております。
 実は、簡易裁判所に提起されてまいります事件というのは、もうほとんどが双方とも弁護士さんがおつきにならない事件でございます。全事件のうち九割ぐらいは、双方とも御本人だけで裁判をおやりになるという、そういう事件でございますので、どうしても法律の知識が乏しいわけでございますので、地方裁判所の事件の審理とはやはり違ったいろんな工夫が必要になってまいります。例えば、訴訟におなれになっていない方には、どういう手続でその裁判を進めていったらいいかということを御説明するとか、あるいは手続の案内等もいろんな形でやっていくというふうな工夫が必要になってまいります。
 最近の簡易裁判所では、新しいところをごらんになっていただきますとわかるかと思いますが、受付の窓口のイメージを一新いたしまして、オープンカウンターといいますか、低いカウンターで、裁判所の者が対面方式で、その裁判所に来られた当事者の方等といろいろお話をして、手続の教示をしたりあるいは案内をしたりするような、そういう雰囲気をできるだけつくるような施設も考えております。
 さらに、委員が先ほど御指摘になりました新しい民事訴訟法では、少額訴訟手続という制度が設けられました。これは、市民同士の間での簡単な紛争を、原則として一回裁判所へ出てきていただければ判決まで行けるような、そういう解決方法を用意しようというシステムでございます。国民の利用しやすい簡易裁判所という観点からは、この少額訴訟手続というものを的確に運用していけるような、そういう体制をつくっていく必要があろうかと思います。
 それからもう一つ、簡易裁判所の裁判官の配置の問題がございましたが、裁判所は全国に多数の簡易裁判所を持っておりまして、庁によりましては非常に事件数が少ないところがございます。人一人を配置しておきますと効率が悪いというところがございますので、一部兼務の裁判官になっている庁もございます。
 ただ、このあたりは、実はこの十年来、簡易裁判所の配置の見直しというのをやってまいりまして、戦後すぐの時期とは交通事情も違っておりますし、人口動態にも変化が出ておりますので、今の時代の交通事情なり人口動態に合ったような形に簡易裁判所の配置を見直そうということで、こういう作業を進めてきたわけでございます。
 その作業の過程で、配置を見直すけれども、そのかわり、新しく配置が決まった裁判所については、できるだけ常駐の簡易裁判所判事を配置していこうということで、従前兼務になっておりました庁にも専任の簡易裁判所判事を配置するというふうな努力をやってきておるところでございます。
○中原爽君 ありがとうございました。
 新法に対しますいろいろな解説書の中は、利用者に対する手続の教示というような、そういう表現で、その教示をちゃんとしてくれというような御指摘と申しますか、そういう解説が多いようでございますので、ただいまお話しになりました内容については、十分この手続上の問題が利用者に理解のできるようにお願いをしたいと思います。
 それから、法曹人口の問題と絡みまして、司法試験の状況を改善するために、平成八年度の司法試験から少し改善がなされたと、合格枠制というようなことが実施されたということでございます。そのことについて、どのような目的で、目的についてはそれはわかっておるわけでございますけれども、その実施をいたしました結果、どのような効果が出てきたのかということをお尋ねしておきたいと思います。
 と申しますのは、昭和六十二年から平成五年までの合格平均年齢が二十八歳でございますけれども、これが下がってまいりまして、二十六歳まで下がってきております。また、三年以内の合格者数も、平成七年度以前に比較いたしますと、はるかに合格率がよくなっているということのようでございます。しかし、合格率全体そのものは、この八年度では三%を割っているという状況であります。年間の大学法学部の卒業者数のおよそ一〇%相当の四千人が新規受験者として受験をして、総枠としては二万人程度が受験をすると。従来、合格率が三%程度であったと、こういうことでございますが、それがこのたびの新しい方式でどのような形になったのかということについて、概略御説明をいただきたいと思います。
○政府委員(山崎潮君) ただいま御指摘の合格枠制というものは、司法試験の第二次試験の論文式試験の合格者を決定するに当たりまして、おおむね七分の五を全受験者から決定をいたしまして、残りのおおむね七分の二を初回受験から三年以内の者から決定するという制度でございます。平成三年の司法試験法改正によって法制度として導入され、平成八年から実施されたものでございます。
 この制度は、ただいま委員御指摘のとおり、難関と言われる司法試験が、特に昭和五十一年ころから合格率が二%前後という一層難しい試験となりまして、法曹となる資質を持つ多くの人が司法試験を敬遠する一方、法曹を志す者にとっては、定まった職につくことなく何年も受験勉強に専念しなければならないということなど、さまざまな弊害が生じたことから導入されたものでございます。
 その目的は、長い期間をかけてでも法曹を目指す者に合格可能性を残しながら、資質を有する学生や社会人が比較的短期間の勉強で合格できるようにいたしまして、司法試験の魅力を高めまして資質を有する人により多く受験してもらいまして、これらの人ができるだけ早く法律家としてスタートできるようにするところにあるわけでございます。
 平成八年の司法試験の結果につきまして、四点ほど特徴がございますので申し上げさせていただきます。
 まず、受験開始から三年以内の合格者が大幅に増加したことでございます。平成元年の三年以内の合格者は全合格者の一五%でございましたけれども、平成八年は五四・一%になっております。二番目が、合格者の平均受験期間が大幅に短縮されたことでございます。平成元年には六・六六年かかっていたものが、平成八年には四・五二年に短縮されたわけでございます。三番目が、合格者が大幅に若返ったことでございます。合格者の平均年齢は、平成元年が二十八・九一歳、平成八年が二十六・三五歳というふうに下がっているわけでございます。四番目は、大学生の合格者が大幅に増加いたしまして、無職者が減少したことでございます。大学生の合格者は、平成元年が一八・八%でございましたが、平成八年には四三・三%と増加をいたしております。それから無職者の合格者は、平成元年が六三・四%だったものが、平成八年には四三・七%に減少すると。こういうような合格枠制による改善効果が顕著にあらわれているところでございます。
 このような合格枠制の効果が今後定着していくかどうかという点につきましては、なお数年推移を見守る必要があるというふうに考えているところでございます。合格枠制の導入実施により、司法試験が、頑張れば短期間で合格可能な試験になり、法曹にふさわしい資質を有する人がますます多く受験をしていただく、そういうような誘因効果が高まることを期待しているわけでございます。
○中原爽君 ありがとうございました。
 お答えになりましたように、この効果が今後どの程度見込まれるのかということは大変期待をするところでありますけれども、資料でございますと、現状は法曹人口一人に対しまして国民人口が六千六百、したがってイギリスの十分の一ということであります。しかし、国それぞれの事情があるわけでありますから、どの国と同じでなければいけないということではないと思います。我が国独自の国民的な事情もありますので。しかし、現状、法曹人口が少ないということは事実のようであります。したがって、試験制度そのものの改善ということは以前から言われていたところでございますけれども、このたびの制度がある程度効果が出てくるということを期待したいというふうに思っております。
 それからさらに、今回、判事補の増員を含めまして、裁判官の増員計画の全体像ということになるのであろうというふうに思っているわけでありますけれども、平成三年度以降、民事訴訟事件のかかわりで判事補の増員をされてきたわけであります。平成三年で五名、四年で七名、そういった形で、平成六年以降は十名、十二名、十五名と、そういうような増員をしてこられたわけでありますけれども、今回は、民事訴訟プラス民事執行事件の処理という形になりまして二十名増員と、こういうことになっておるかというふうに思います。
 したがって、今回、この訴訟と執行で合わせて二十というのは、今回に限定したような形になるのか、あるいは先ほど申し上げたように、裁判官の増員計画の中の全体像としてとらえたらいいのか、この辺のところのお答えをいただきたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(涌井紀夫君) 裁判官の長期の増員計画というものを具体的に立てていくというのは非常に難しい面がございまして、やはり一番の問題は、事件数が今後長期にわたってどういう傾向をたどるかということを予測するというのは非常に難しゅうございます。
 それからもう一つ、裁判官の場合、判事補について申し上げますと、増員いたしました場合、その給源といいますか、増員分をどこから持ってくるかといいますと、これは現実には司法修習を終了いたしました修習生に限定されてくるわけでございます。実は、司法修習生の進路希望というのは、従前どちらかといいますと弁護士さんに偏っておりまして、なかなか裁判官を志望していただける方というのが数に限りがございましたので、そういう点から、仮に枠をお認めいただいても、増員ができる限界というのがあったわけでございます。ただ、幸い、このところ修習生の数も増加してまいりましたので、ある程度着実な増員ができるようになってきております。私どもの方の今回の二十名という増員要求は、そういった状況を踏まえて計算した人数でございます。
 今後の増員計画といいますか、大きな方針としましては、事件数の動向は具体的に予測はなかなか難しいんですけれども、恐らく傾向としましては訴訟事件も執行事件も今後も増加していくんじゃないかというのが一般的な見方であろうかと思いますので、私どもの方、今後とも当面はやはり今年度並みといいますか、こういう着実な増員はお願いしていかないといけないんじゃないかというふうに考えておるわけでございます。
○中原爽君 ありがとうございました。
 同じようなことでありますけれども、今回、裁判所書記官を人員的に増して、特に百五十人増員するということであります。また、これに対しまして、裁判所書記官以外の裁判所職員を減員するという形にもなりまして、増減が二十一名、こういう形になるわけでありますが、これも先ほどの判事補と同じような意味合いで、裁判所職員の全体像として何か将来を目途としたお考えがございましょうか。その辺のところをお聞きしておきたいと思っております。いかがでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(涌井紀夫君) 今回の書記官百五十名の増員というのは、近来にない大きな数でございます。これは、最近特に増加してきております民事の訴訟事件と執行事件の処理対策ということで、こういう従前にない増員をお願いしておるわけでございます。
 実は、訴訟事件について申し上げますと、新しい民事訴訟法では従前の書記官の仕事とかなり違った仕事が書記官には期待されております。従前、どちらかといいますと、調書を作成するというのと手続上のいろんな事項を証明するといいますか、そういうことが書記官の主たる仕事であったわけでございますが、新しい民事訴訟法のもとではもっともっといろんな積極的な役割を書記官に期待しようと。訴訟を進めていく上での当事者とのいろんな準備のためのやりとりといったところに書記官に積極的に参加してもらうという、我々の方で使っております言葉ではコートマネジメントといいますか、そういう仕事をも書記官に担当してもらおうと思っております。
 したがいまして、新しい民事訴訟法のもとでの審理のあり方というのを考えますと、今後ともやはり書記官の増員というのはかなりの規模で考えていかないといけないんじゃないかというふうに考えておるわけでございます。
 それから、削減の方でございますが、こちらの方は、ある意味では政府の方の定員削減計画に裁判所としてもできる限度で協力をさせていただいておるということになるわけでございます。ただ、私どもの方、事件を処理しております部門というのは、先ほど申し上げましたように、事件数が量的にもふえておりますし中身も難しくなっておりますので、むしろ人員を増加しないとやっていけないというふうに思っております。
 ただ、これと違いまして、事務局の部門といいますか、一般的な人事とか会計とかをやっておりますこういう部門につきましては、これはやはり国のほかの機関の場合と同じように、現下の厳しい財政事情のもとではできるだけ効率化を図って、削減できるところは削減していくという努力は必要だるりというふうに考えまして、そういう部門に限ってこういう削減を今回させていただいたわけでございます。
 今後とも、こういう計画を継続的に実行していく必要があるだろうというふうに考えております。
○中原爽君 ありがとうございました。
 ただいま御説明がございましたように、平成十年一月以降の新法に対しましてのお考え、したがって、その状況が平成十年以降進めば、また書記官の業務も含めてさらに充実していくという方向性であろうかというふうに思います。今回は、百五十名のうち百名を事務官から振りかえという形で処理をされているわけでありますが、公務員の全体数等も含めて、今後この書記官の役割が重要だとおっしゃっておられるわけでありますので、今後も引き続いて増員計画をどのような形でやりくりをするかということは十分御検討をお願い申し上げたいというふうに思っております。
 それからもう一つ、やはりこの書記官の増員に関係をいたしまして、これから地方裁判所における民事訴訟事件の審理、これをどういうふうに充実させるかということであります。
 今、御説明がございましたけれども、訴訟費用の確定とか督促手続、そういった裁判所書記官の権限が、平成十年以降非常に変わった形、権限が付与されたということにもなりましょうし、公示送達については裁判官の許可を得なくても書記官事務の段階で処理ができるとか、いろいろ新しいことがあるようでございます。それにあわせて、訴訟の規則についても書記官業務、非常に深いかかわりが出てきているようでございます。
 このあたりのところにつきまして、先ほどの増員計画とのかかわりで、もう一度、同じようなお答えをお願いするということになるかと思いますけれども、書記官の業務についてこれからのお考えを御説明いただきたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(涌井紀夫君) 民事裁判の場合は、どちらかといいますと迅速な処理というのがこれからの大きな課題になってまいりますので、そのための方策として今回の民事訴訟法が一つ考えておりますのが、書記官に今まで以上にもっと新しい権限をいろいろ与えまして、これまで以上に訴訟の進行に積極的に関与してもらえる、そういう役割を果たさせようという、そういう構想が一つの大きなテーマになっておるわけでございます。
 従前の民事訴訟の審理というのは、どちかといいますと、法廷での各弁論期日、そこだけがいわば訴訟活動の場でございましたので、どうしても効率的な審理というのがなかなかできないという面がございました。
 今回の民事訴訟法の新しい審理のあり方というのは、むしろその期日と期日の間に、できるだけ書記官が積極的に関与をしまして当事者といろんなやりとりをしまして、例えば争点についてお互いの主張を整理したり、あるいは証拠につきましても、準備してもらえるものは期日間にいろいろ連絡をすることによって準備をしてもらって、そういう準備の成果を各法廷での口頭弁論期日に集中的に出してもらうという、こういうふうな進行を、心がけていこうということでございます。
 したがいまして、書記官が訴訟の双方の当事者との間でいろんなやりとりをしながら、訴訟の進行をできるだけ進めていくという非常に大きな役割を担ってくることになるわけでございますので、そういった役割の変化を踏まえて、今後とも民事訴訟の適正迅速な処理のために書記官の陣容の増強といいますか、そういうふうなことを考えていく必要があるだろうというふうに考えております。
○中原爽君 最後でございますけれども、ただいま御説明をいただきました書記官業務にあわせまして、新しい民事訴訟法の実施ということについて、裁判所職員の構成あるいはその役割ということが、ある意味では大きく変わるということになろうかと思います。
 したがって、この平成九年度については、そういった関係の準備態勢に入るということであろうかと思いますが、裁判所関係を含めていろいろな研修施設などをお持ちだと思いますので、特に平成十年を目途といたしましたその職員の研修の体制といったものについて、概略の御説明をいただきたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(涌井紀夫君) 新しい民事訴訟法のもとでの審理の仕方というのがかなり変わってこないと、これはなかなか国民の側から新しい裁判の運用ができたという評価をいただけないわけでございますので、法の施行の時期までにできるだけそういうことができるような体制をつくっていきたいと思っております。
 職員の研修につきましては、裁判所の場合は、書記官につきまして研修を担当する機関として裁判所書記官研修所という施設がございます。そこで既にもう現在から新しい民事訴訟法のそういう考え方、この理解を深めるための研修というものを開始しておりますし、また各庁ごとにもそういう研究会といいますか勉強会というようなものを組織して、新しい法律の勉強をもう始めてもらっております。
 それからもう一つは、こういう机の上でといいますか、書物を読んだりする形の勉強だけではなくて、現実の事件処理を通じて、上司といいますか先輩である主任書記官とかあるいは裁判官が具体的な書記官の仕事の仕方を一つ一つ指導していくという、いわゆるオン・ザ・ジョブ・トレーニングと申しますか、そういうことも必要になってまいりますので、今後そういうふうな指導体制も充実していきまして、新しい法律の施行に備えたいというふうに考えております。
○中原爽君 持ち時間の関係もございますので、以上の質問の内容にとどめさせていただきたいと思います。
 どうもありがとうございました。
○浜四津敏子君 平成会の浜四津でございます。
 司法改革に関連いたしまして、幾つか質問させていただきます。
 法曹三者、それぞれ改革すべき課題を抱えているわけでありますけれども、そのうち裁判官につきましては、従来から、忙し過ぎる裁判官、こういう問題が何度も取り上げられてまいりました。これは、裁判官の方々にとっても大変過酷な生活を強いられるものでありまして、また一方国民にとっては、裁判に時間がかかり過ぎたり、あるいは十分な言い分が聞いてもらえない、こういう不満も出てきたりいたします。また、丁寧な事実認定や適切な事件処理を必ずしもしてもらえない、こういう裁判不信の結果を招くことにもなります。
 代表的な裁判所として東京地裁を例に挙げさせていただきますが、現在、東京地裁において民事通常事件を担当している裁判官は、平均して一人何件くらいの事件を常時担当しておられますでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(涌井紀夫君) 東京地裁というのは全国的に一番忙しいといいますか、そういう裁判所ではございますけれども、民事の通常事件担当の裁判官の例で申し上げますと、合議事件というのが大体八十件くらいはございます、これは主任は左陪席が担当するわけでございます。
 単独事件を担当しております裁判長と右陪席の例で申しますと、単独事件の手持ち事件数というのは平均いたしますと現在では二百五十件程度ではなかろうかというふうに考えております。
○浜四津敏子君 事件の性質あるいは内容、複雑さ等さまざまで、一律に言えないことはもちろん承知の上で伺っているわけですけれども、例えばこの東京地裁の民事通常事件担当裁判官、単独事件で結構ですけれども、平均して大体一人何件くらいの事件数であれば迅速適切な裁判ができるか、妥当とお考えか、裁判所としての大体の目安なり目標なりというものを持っておられますでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(涌井紀夫君) これは大変難しい御質問でございまして、人によりまして、仕事の早い人もおりますし、なかなかスピードという面ではどうもという方もおられますので難しいんですが、実は私自身も東京地裁の民事部で事件を担当した経験がございますので、その際の同僚裁判官なんかとのいろいろな話での感想といいますか、そういうところから言いますと、二百件そこそこの手持ち件数であれば、これはかなり余裕を持って仕事ができるかなという感じでございます。これは何も長年裁判官をやっていた人がそう思うだけでございませんで、最近では弁護士から任官していただく方がございます、東京地裁にも何人かおられますが、そういう方にお伺いしましても、二百件程度ならこれは案外余裕があるものだなというふうにおっしゃっております。ただ、これが例えば三百件を超えるとなりますと、これはかなり忙しいかなと。
 ですから、適正な件数というのは非常に難しいんですが、その間ぐらいのところということになるのかなと思います。
○浜四津敏子君 大変ありがとうございました。
 恐らく、今お話しありましたように、最大限二百件ぐらいであれば、丁寧に関係者の言い分も聞いたりあるいは証拠も十分に調査ができる、審理が尽くせるというふうに思います。これが二百五十件から三百件ということになりますと、いかに有能な、優秀な裁判官の方々でも絶対的な時間数が足りないということになるだろうと思います。
 今回の増員、例年よりは多いわけですけれども、しかし、かといって現在のこの忙し過ぎる裁判官の方々の実態がすぐに改善できるとは到底期待できないと思います。焼け石に水の感があるわけであります。
 先ほどもお話に出ましたけれども、大ざっぱな比較をいたしますと、アメリカでは大体国民八千人に裁判官が一人、ドイツでは四千人に一人、フランスでは一万二千人に一人、イギリスでは三万人に一人と、こういう数が出されております。それに比べまして日本では六万人に一人と、こう伝えられております。
 裁判所は、毎年大体裁判官の増員、今回多少ふえたといっても、それほど格段にふえるわけではない、この程度の増員で十分とお考えなのか、それともやはりもう少し、あと何名くらいは必要だと、こういうふうにお考えなのか、率直なところを伺わせていただければと思います。
○最高裁判所長官代理者(涌井紀夫君) このところ、実はある程度私どもの方としては、裁判官、判事補でございますが、着実な増員をお認めいただいてきているというふうに考えております。これはなかなか、実は裁判官の場合、先ほども申し上げましたように、実際増員の枠をお認めいただきましても、その枠を埋める要員というのは司法修習を終了いたしました修習生に限定されてまいりますので、果たしてその枠に見合うだけの裁判官希望の修習生を得られるかどうかという問題がございますので、そのあたりも見ながら増員の数を決定していかざるを得ない面があるわけでございます。
 ただ、これまでの増員というのが私どもの方としては決して焼け石に水とは思っておりませんで、例えば、このところの増員されました裁判官というのは、主として繁忙な庁に重点的に手当てをする財源に使ってきておるわけですが、一番忙しいと申し上げました東京地裁の民事部で申し上げますと、平成六年から八年までの三年間で単独係を八係増設できました。その効果がありまして、先ほど言いましたように、かつて一人の手持ち事件数が三百件近くあったのが二百五十件くらいまで何とかなったという状況でございます。ことしも、要求しております二十名の増員、これをお認めいただきました場合には、東京地裁の場合はさらに六係程度増設を予定しておりますので、かなり改善効果は出てくるんじゃないかと思っているわけでございます。
 ただ、今後の大きな計画として、ことしの増員これで足りるのかと言われますと、決してそう考えているわけではございませんで、今後の事件動向を見ますと、現在の着実な増員の計画といいますか、これを今後とも当分継続的に続けていく必要があるんではないかというふうに考えておるわけでございます。
○浜四津敏子君 少し部分的に重複するかもしれませんが、裁判所がお考えの十分な数の裁判官を増員するための御努力、これまでもなされてきたと思いますけれども、具体的にはどのような努力をなされてこられたのか。
 また、焼け石に水ではないという今のお話ですけれども、必ずしも十分な増員が実現できてこなかったと思われます。いろんな原因があると思いますが、その中でも最も大きな原因はどこにあると裁判所でお考えになっておられるのか。また、十分な増員のためには今後どのような取り組みをお考えになっておられるのかを御説明いただきたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(涌井紀夫君) 従前の増員にいつもつきまとっておりました一番大きな問題はやはり給源の問題でございまして、どうも司法修習生の進路希望というのは、景気のいい時期にはどうしても弁護士さんの方に偏ってしまいます。かつて裁判所の方としても、もっとその枠をふやして裁判官の増員を実現したいと思っていた時期にもなかなかそれができませんで、例えば新任の判事補の採用数でいいますと、かつては五十名とか六十名、この程度の数を採用するのがようやくだったという時期もあるわけでございます。ところが、最近ではその状態がかなり改善されてまいりまして、このところ毎年百名程度の新任判事補が確保できるような状況になってきております。
 この百名という人数を確保するためにどういう努力をしないといけないかといいますと、修習生に裁判官の仕事のやりがいとかあるいは魅力というものを理解してもらうような教育をやっていくということもありましょうし、また現在、法曹三者の間で協議しております法曹自体、つまり司法試験合格者の数自体をもう少し増加していくという、そういう方策も必要になってこようかと思います。
 私どもの方としては、そういう方策も考えながら、今後とも着実な増員を続けていきたいというふうに考えておるわけでございます。
○浜四津敏子君 裁判官の方々がこれまでは忙し過ぎると、こういう状態に置かれていたわけでありますけれども、そのために具体的にどういう弊害があらわれてきたか。その一例として、具体的な事件を挙げて大変恐縮ですけれども、変額保険の裁判の判決について触れさせていただきたいと思います。
 これは、個別の判決やあるいはその判決に関与された裁判官の方々を批判する意味で取り上げさせていただくのではありませんで、忙し過ぎる裁判官のこういう現状がどういうひずみになってあらわれているかという、その一端を御説明させていただくために話をさせていただきます。
 このいわゆる変額保険の訴訟は、全国でこれまで約六百件起こされたというふうに報道されております。そのうち既に約八十件判決が出たと言われておりますが、既に出されましたこれらの判決の中で、いわゆる模倣判決とかあるいはコピー判決という批判がされた判決が幾つか出ました。
 東京地裁で平成七年から平成八年の間に八つの判決が出されましたが、この八つの判決のうち三つは同じ合議体で出された判決であります。ほかの五つの判決は、いずれも異なる裁判官による判決でございます。この六人の異なった裁判官の方が書かれた判決文が共通して全く同じ間違いをしていると、こういう批判があります。
 この判決文を私も見させていただきましたが、判決された裁判官の方は、個人的に存じ上げている方もいまして、大変まじめで優秀な方々であるということはもう十分承知しているわけです。
 この誤り、具体的に簡単にお話しさせていただきますと、変額保険の仕組みの中で、変額保険を保険会社の担当員あるいは銀行員が勧誘するときにどういう説明をしたか、それが旧募取法違反になるのではないか、あるいは偽りの説明をしたのではないか、説明義務違反があったのではないか、こういうところが争点になったわけです。判決文を見ますと、この今挙げさせていただきましたいずれの判決文の中でも、担当の金融機関、保険会社そして金融機関の担当員はこういう説明をしたと、こういうふうに書かれてあります。それは、本来、年利回りと銀行金利、借入金利の比較をしなければいけないのに、運用実績と借入金利を比較して説明したと、そういう事実認定をしております。
 この運用実績というのは、例えば保険契約をしたときに特別勘定に入れる金額が一千万だとしますと、その一千万が五年目に仮に運用益が加算されて一千三百万円になったという場合には、運用実績というのは三〇%と、大変高い数字になって出るわけです。ところが、これは年利回り、この年利回りで計算しますと約五・三%で、非常に数字としては大きな差が出てくるわけです。
 これは、判決文の中で、担当者はこの大きな数となって出てくる運用実績を示して、だから損しませんよと、こういう説明をしたと。ここが争点になっているわけですけれども、この判決の中で認定されたのは、運用実績と銀行金利を比較して説明した、そして運用実績としてはそれほど低くなかった、だから決して誇大な数字を言ったわけではない、だから募取法違反でもなく説明義務違反もなかったと。簡単にお話ししますと、そういう同じ誤り、運用実績の意味するところと年利回りの意味するところを全く混同した判決が続けて出されたわけです。
 この誤りにつきましては、原告、被告双方から、そこを取り違えているという、こういう指摘があったわけですけれども、なぜこのようなことが起きたかをいろいろ考えますと、この変額保険の仕組みそのものが余りに複雑難解で、こういう優秀な裁判官の方々ですら十分に理解はできないような仕組みにそもそもなっているというふうに私は考えます。
 一方で、裁判官の方々が、余りに忙し過ぎて十分に丁寧に理解する時間がとれずに、安易に先行する判決、判例を使ったのか。ですから、いわゆるコピー判決あるいは模倣判決と批判されているようなことがなされたのか。あるいは、これは原告側の疑問として声が上がっているわけですけれども、あるいは裁判所全体としてこういう変額訴訟については一定の方向づけをしているんじゃないかと、私はそうは思わないんですけれども、そういう疑問の声もあるわけです。
 裁判所としては、こういう批判が出る模倣判決、コピー判決、これは変額保険の訴訟に限らないことだと思いますが、ほんの一例に挙げただけですけれども、この原因というのをどういうふうにお考えでいらっしゃいますでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(涌井紀夫君) ここ数年来の事件の動向を見ますと、確かにいわゆるバブルの崩壊という経済状況の影響が出ておりまして、大都市部を中心に民事訴訟事件が非常にふえてきておる。その結果、大都市部の裁判所で民事事件を担当しております裁判官の負担が重くなってきているということは、もう御指摘のとおりでございます。
 ただ、私どもの認識としましては、裁判官が忙しいから手抜きの判決をしたり、あるいはずさんな判決をしたりということは、これはそもそも裁判官の仕事のあり方としてあってはならないことでございますし、全員それはもう十分わかっておるはずでございますので、忙しいためにおかしな判決が出たということはあり得ないことではないかと考えておるわけでございます。
 ただ、そうはいいましても、やはり事件の処理にいろんな法律問題を調べましたり調査をしたりという時間的な余裕というのはどうしても必要でございます。そういった点を考えまして、私どもこのところ裁判官の増員を着実に毎年継続的にお願いしまして、その増員いたしました裁判官を繁忙な部署に振り向けまして、繁忙な部署の負担を軽減するという措置を講じてきておるわけでございますので、今後ともそういう努力を続けていきたいと思っております。
○最高裁判所長官代理者(石垣君雄君) 具体的な事件につきましては、性質上、コメントを差し控えさせていただきたいと思いますが、今、変額保険の事件に関連しまして、裁判所として一定の方向づけをされていることはないかというような、若干御疑問のようなお話がございましたので、そのようなことはございませんので、誤解のないようにお願いしたいと思います。
○浜四津敏子君 ありがとうございました。
 最初にも申し上げましたが、これは担当された個々の裁判官は大変優秀な裁判官の方々でいらっしゃいまして、本当に忙し過ぎる中で、ある意味ではお気の毒なことだなというふうに私も感じた次第でございます。
 次に、九七年度予算で、国から法律扶助協会への国庫補助の金額ですけれども、先ほど大体お話が同僚議員の方からありました。震災関係を除いて約三億三千万と、こういう金額が示されましたが、参考のために、ほかの国が法律扶助にどれだけ国庫補助といいますか、国から支出しているか、その額をお話しさせていただきたいと思います。
 ある統計によりますと、イギリスは年間約一千七百億円相当、アメリカは三百三十億円、ドイツ二百六十億、フランス二百億、隣の韓国が六億と、大体こんな数になっております。これに比べますと、日本は本当に比較にならないほど貧弱な金額であります。
 今、法律扶助は、日弁連が全額出資して設立いたしました法律扶助協会が扶助事業をやってきておりまして、国庫補助を一部受けているわけですが、国庫補助の金額が小さくて、扶助協会の財政というのはもうほぼ破綻に近づいていると、そういう現状であります。
 他国に比べて格段に国庫負担の金額が貧弱だというこの日本の現状はどこに原因があると考えておられるのか、法務省の見解をお伺いしたいと思います。
○政府委員(大藤敏君) ただいま委員が御指摘になられましたように、この法律扶助制度は国民の裁判を受ける権利を実質的に保障するための大変重要な制度でございます。
 そこで、かねてから法務省といたしましては、財団法人法律扶助協会が行っております法律扶助事業に対しまして、交付する補助金の増額などを通じましてこの制度の充実を図ってきた次第でございます。
 また、法務省としては、この法律扶助制度の役割の重要性にかんがみまして、この制度のあり方について調査研究する必要があるという観点から、平成六年度から法律扶助制度研究会を発足させまして、我が国の司法制度に適合した法律扶助制度のあり方について本格的な検討を現在進めているところでございます。
 今後ともこの制度の充実のために努力してまいりたいと考えております。
○浜四津敏子君 先ほど数字を挙げさせていただきましたが、これほどの格差があるその一番の原因は、国民の裁判を受ける権利というものを本当に大事な基本的人権と考えているのかどうか、その意識の低さにあるのではないかと、個人的にはそういう感想を持っております。
 私は、法律扶助、むしろ法律援助と言うべきなのかもしれませんが、それは、今お答えにありましたように、確かに恩恵ではなく基本的人権保障のために必要不可欠な制度と、こういうふうに考えております。
 法務大臣、この法律扶助制度の理念、根拠につきまして御見解をいただければと思います。
○国務大臣(松浦功君) 法律扶助制度につきましては、それが基本的人権を守るという意味で極めて重要な問題だと思っておりますので、前向きに今後も引き続いて努力をしてまいりたいと、こう思っております。
○浜四津敏子君 ありがとうございました。
 日本は当然のことながら法治国家でありまして、法律によって権利義務、さまざまなルールが定められております。基本的人権を初めといたしまして、権利が法により定められているわけで、その最終的な権利実現の手段として裁判を受ける権利が憲法により保障されております。裁判を受ける権利そのものも基本的人権でありまして、この裁判を受ける権利を実質的に保障するためには、弁護士費用あるいは裁判費用などを賄えない人のために法律扶助の制度が不可欠で、そういう意味でも世界各国にこの制度が共通してあるわけであります。
 先ほど、法律扶助に対して、その重要性にかんがみ増額、充実に御努力されてきたと。その姿勢は十分評価させていただいておりますけれども、やはりまだまだこの法律扶助の制度、十分とは言えませんで、基本的人権の擁護についてすら法的サービスが十分に供給されているとは言えない状態であります。
 こうした現状、法治国家として、あるいは民主主義国として、また基本的人権を尊重することを基本理念とする自由主義国として大変憂うべきことだと思っておりますが、この事態を抜本的に改革する、こういう必要性がある。微々たる増額というのではなくて、制度そのものの抜本改革を図るべきときが来ているというふうに思いますが、
 これはどう認識しておられますでしょうか。
○政府委員(大藤敏君) 先ほども御説明申し上げましたように、現在、法律扶助制度研究会におきまして、今、委員御指摘の点も含めまして、総合的な観点から我が国の司法毎度にふさわし、法律扶助制度のあり方について御審議をいただいているところでございますので、その経緯を見ながら、今後とも慎重に検討してまいりたいと考えております。
○浜四津敏子君 これは昭和二十四年の九月に、当時の法務庁人権擁護局が作成した法律扶助協会設立要綱案というのがあります。その中には、元来、法律扶助は、失業保険、健康保険と同じく、国の事業として実施すべきものである、こういう記載がありました。
 ところが、現在まで、これは国の事業が主体ではありませんで、運営主体も財政主体も日弁連が主となってやってまいりました。本来は、運営主体も財政主体も国であるべきというふうに考えておりますけれども、この点については法務省としては基本的にはどのようにお考えでしょうか。国の事業として取り組むべきというお考えなのか、それとも従来どおり、これは日弁連が半ばボランティア的にやってきて国が少しずつ補助すればいい、こういう制度のままでいいとお考えなのか、お答えいただければと思います。
○政府委(大藤敏君) この現行の法律扶助制度は、昭和三十三年度以来、民事事件について、経済的な理由で弁護士を依頼することができないために裁判を受けることが困難な人たちに対して、その裁判を受ける権利を実質的に保障するという理念のもとに充実が図られてきておるわけでございまして、委員御指摘のとおりのような現在の運用でございます。
 しかし、これが将来、制度としてどうあるべきかという点につきましては、法律扶助制度研究会における検討を見ながら、慎重に検討してまいりたいと考えております。
○浜四津敏子君 重複して申しわけありませんが、世界の法律扶助は、大体各国共通して、その草創期にあっては日本のように弁護士のボランティアで出発しております。ただ、その後、法律扶助が恩恵や慈善として実施されている間はそういうボランティアでしたけれども、そうではなくてむしろ権利であるというふうにとらえられるようになりましてからは、どこの国でも国の事業として取り組むようになってきたわけであります。そういう意味でも、日本ももうそろそろ発展途上から少し一歩踏み出していただいて、国が基本的には責任を持つという制度に大転換するべきときが来ているというふうに思います。ぜひ研究会でそういう方向性で御検討いただければと思います。
 また、この基本的な制度自体の問題のほかに、個々の、個別の問題が現在の法律扶助制度にはあります。
 その一つが、法律扶助を受けられる対象者が、日本では財政上の理由から、貧困者に限られております。これも、その背景には、法律扶助というのは権利ではなくて恩恵なんだという思想がどうも見え隠れしているように思うんです。その上、対象を貧困者に限定した上で、その扶助金額を全額これは受益者負担、つまり後で還付すると、これが原則になっております。つまり、法律扶助協会が訴訟費用等を立てかえるけれども、後で返しなさいよというのが原則になっているのが日本の制度です。これは世界でも例を見ないというふうに言われております。
 例えば、イギリスやドイツなどの法律扶助から学ぶべきことはたくさんあると思いますけれども、例えば制度の受益対象者層、こうした国々では貧困者だけではありませんで中間所得層にまで認められている。これらの国々では原則としてこれは免除すると、これが原則になっております。
 例えば、イギリスでもドイツでも還付しない、免除しますと、この率は約八割に上っているわけですけれども、日本でのこの免除率というのは平成七年で大体八・四%と、つまり九割、九十何%以上が返しなさいよと、こういうことになっております。この立てかえ金の免除を受けられる、たった八・四%ですけれども、それも非常に厳しい条件がつけられております。
 またもう一点、この日本の扶助制度の問題点として、これもよく指摘されておりますけれども、国が法律扶助協会に国庫補助金を出している、その補助金を使える対象、使い道が非常に狭く限定されております。つまり、補助金が使えるのは訴訟及び調停の、訴訟費用と着手金、報酬金、そして保証金だけに限られております。ほかの刑事事件、殊に被疑者弁護とかあるいは少年保護事件とかあるいは精神障害者の権利保護あるいは法的助言、援助、こういったものは全く除外されております。
 この厳しい制限を定めているのは、実は法務省の法律扶助事業費補助金交付要領、これによって非常に厳しく限定されているわけであります。この額を大幅に増加していただくその御努力は評価いたしますけれども、この交付要領につきましても制限が非常に厳し過ぎる。これも何とか拡大する方向で検討をお願いしたいと思いますけれども、法務省、いかがでしょうか。
○政府委員(大藤敏君) ただいま委員が御指摘になられましたように、法律扶助の対象となるべきものの範囲あるいは立てかえ金の償還制度のあり方の問題等、さまざまな点について御指摘のような御意見があることは十分承知いたしておりまして、法律扶助制度研究会におきましてもそのような問題点も含めて検討しているところでございます。
○浜四津敏子君 ちょっと話がそれて申しわけありませんけれども、昨日、予算委員会で質問させていただいたことの中に、農水省の外郭団体の特殊法人の財団、これが毎年一つの事業のために約三十五億の補助金をずっと受け続けてきた。それは、実は全部使い切れずにため込んでいた。その総額が約五百億に上っている。しかも、その五百億をためておいて、その運用費で人件費とかほかのものに使っていた。
 こういう事実が実は明らかになったわけです。こういう使い道につきましては、実はこれは法律違反ではないですかと伺ったんですけれども、いや、それは農水省のこういう交付要領ですか、こういうもので人件費に使ってもいいんだと決めているから、使途外の使用ではないんだと、こういうお答えがあったわけです。どうもこういうものについては非常に甘くて、国民の権利保障のためには非常に厳しい、法治国家としてはちょっと恥ずかしいのではないかという個人的な感想を持ちました。
 それはそれといたしまして、いずれにしてもこの法律扶助の制度というのは、金額の点あるいは制度の本来のあり方という面からいたしましても、どう説明しても先進諸国からはるかにおくれているというふうに私は言わざるを得ないと思っております。
 そのうちのまた一つの問題といたしまして、多くの国々では法律扶助制度を先ほどもお話しいたしました国の制度として確立している。しかも、明確な法律を定めております。世界各国では一九六〇年代から八〇年代にかけまして、例えば一九六九年にはニュージーランド、それから七二年、カナダ、スウェーデン、七四年、イギリス、アメリカ、七九年、オーストラリア、八〇年、ドイツ、ノルウェー、八二年、フランス、八六年、韓国、これ全部挙げたわけではありませんけれども、もうここ三十年間に飛躍的に法律扶助の制度が各国で充実発展してまいりました。
 ある方に言わせますと、この法律扶助の制度がどれほど充実しているか、あるいは確立しているかというのは文化国家あるいは人権国家としてのバロメーターでもあると、こう言われております。日本では法律援助基本法など試案も発表されてまいりましたけれども、なかなか法制化が前に進んでいるのかどうかもちょっと見えない状況でございます。
 法務省はこの基本法制定について検討されているのかどうか、基本法制定についての御見解を伺わせていただければと思います。
○政府委員(大藤敏君) 委員がお話しになられましたように、法律扶助についての法律をつくって、そのもとで法律扶助制度を運用するべきであるという考え方もあることも承知いたしておりまして、これも先ほどと同様に、法律扶助制度研究会で重要なテーマとなっているところでございます。
 今、法務省としてどういう考えを持っているかということは、特に持ち合わせておりませんので、その点についてはお答えを控えさせていただきたいと思います。
○浜四津敏子君 先ほどからお話に出ております法律扶助制度研究会、これは法務省、扶助協会、日弁連、最高裁などで構成されて、制度の問題点あるいは各国制度の調査をされているというふうに伺っております。現段階までにどのような議論、検討がなされてこられたのか。また今後、報告書なりあるいは提言なりを出される予定があるのか。あるとすれば、大体いつごろそういうものが見えてくるのか。差しさわりのない範囲でお答えいただければと思います。
○政府委員(大藤敏君) 先ほど来、委員が御指摘になられたような点が主要な検討課題になっておりまして、事業の主体をどうするのか、扶助の範囲をどうするか、扶助の方法をどうするか、償還の問題をどうするか、その他もろもろの問題がございます。
 これらの点について総合的に、外国の実情等も踏まえながら、検討しているところでございまして、現在、第二読会の後半でございます。今後の予定は、確定的なことは申し上げられませんが、四月から五月ころに第三読会に入ることができればというふうに思っております。その後、これは研究会の方でお決めになることでございますが、報告書をまとめていただくことになるのではないかというふうに理解いたしております。
○浜四津敏子君 ところで、刑事事件の被疑者ですけれども、被疑者には弁護人依頼権があります。これが経済的理由で奪われることがあってはならない、こういう見地からこの被疑者弁護援助事件については弁護士会が当番弁護士制度を実施してきております。その財政面は、主として日弁連が設置いたしました当番弁護士等緊急財政基金、これによって賄われておりますが、これも御多分に漏れずもう破綻寸前、こういう状況でございます。
 この基金を支えているのは、日弁連の会員である弁護士から月額千五百円の特別会費を徴収しておりまして、それが基本的にこの基金のもとになっております。つまり、弁護士自身の負担で、弁護士のボランティアでこの当番弁護士の制度が支えられているという状態でございます。
 私は、これはやはり本来のあり方からかけ離れていると思っておりますが、いずれにいたしましても、この当番弁護士制度をどのように評価されておられるのか、裁判所及び法務省の御見解を例えればと思います。
○最高裁判所長官代理者(高橋省吾君) 当番弁護士制度自体につきましては、その活動が法令の範囲内の適正なものにとどまる限りは、被疑者段階における弁護活動の充実、さらには適正裁判の実現につながるものであり、基本的には刑事司法全体のために結構なことであると考えております。
 現在まで全国の地方裁判所におきまして、勾留質問控室等に当番弁護士制度の説明文の掲示が実施されておりますが、この掲示の実施により当番弁護士制度の利用が非常に急増しているというふうに聞いております。
 今後とも、裁判所の中立性あるいは公正さを損なうことのない限り、協力していく考えでございます。
○政府委員(原田明夫君) 法務省といたしまして、検察官の立場と申しますか、側から見たこの運用の状況に対する考え方についてお答えさせていただきたいと存じます。
 委員御指摘のとおり、日弁連におきましては、弁護士の方々の発意と申しますか、被疑者段階における弁護活動を充実させたいということで、いわゆる当番弁護士制度というものが設けられている。それに対しまして、ただいま裁判所からも御説明がございましたように、法務省といたしましても、検察の場で現行制度の中で御協力できる点は協力いたしましょうということでやらせていただいている面がございます。
 ただ、当初、当番弁護士ということで、ごく一部だったんだろうと思いますけれども、いわば捜査段階で弁護活動の範囲を若干、いかがかと思われるような活動もあったようなことが実際にはございまして、現場における検察官も相当緊張した時期がございます。例えば、既に警察段階で自白しているような事件についても、それについて基本的に見直すというふうなことがかなり行われたというようなことがございまして、そのことによってかえって事件の解決がおくれるというふうなこともあったようでございます。
 しかしながら、この点につきましては、その後、相当程度私どもの方でも認識を改めさせていただくようなことがさまざまな機会で行われてまいりました。現在、当番弁護士制度協議会ということで、法務省、日本弁護士連合会、また法律扶助協会の方々と協議を行っておりますが、その中で、十分に準備されたそういう弁護士による被疑者段階における弁護活動があることによって、かえって事件の実質的な正義が図られていく。かえって検察官の立場としても望ましいような、例えば被害者に対する宥恕措置がそういう弁護士さんの立場によって行われる、そして実質的にその事件が正義の観点からもまた被疑者の観点からも評価できるというような活動が行われている実態も紹介されてまいりまして、法務省といたしましても、その制度の実質的な意義ということについては評価できる、こういうふうに考えている次第でございます。
○浜四津敏子君 この被疑者弁護制度につきましても、弁護士のボランティアではなくて、憲法あるいは国際人権法の観点からもぜひ国として被疑者国公選弁護制度の創設が必要と思っております。ぜひその方向で進めていただきますようにお願いいたしまして、質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
○照屋寛徳君 社民党・護憲連合の照屋寛徳でございます。何点か質問をさせていただきます。
 過日、当委員会で東京拘置所を見学させていただきました。その後の本委員会におきましても、矯正施設の整備充実を図ることについていろいろと論議が交わされたのでありますが、その直後に福岡拘置所で逃走未遂事件が発生いたしまして、しかも矯正職である看守がそれに深く関与しておったということで、大変ショッキングな事件であったわけであります。これは、国民に対しても本当に申しわけが立たない事件でありますし、このようなことが繰り返されるようなことがあっては断じていかないわけであります。
 それで、福岡拘置所逃走未遂事件についての経過と結果、さらに再発防止策などについて具体的な対応を講じられたのであれば、そのことについてもお聞かせを願いたいと思います。
○政府委員(東條伸一郎君) ただいま委員御指摘のとおり、今回の福岡拘置所における事件は、まことに前代未聞の不祥事でございます。矯正行政の当面の責任者といたしまして、まず深くおわびを申し上げます。申しわけございませんでした。
 事件は、昨年の十二月二十一日に発生いたしました。この事件につきましては、本年三月四日に福岡拘置所の職員が福岡地方検察庁に逮捕されました。今月二十五日、看守者等による逃走援助未遂の罪で起訴されております。
 事実の要旨は、当該職員が殺人等被告事件により同所に勾留中の被告人から逃走の用に供する器具の供与などを依頼されまして、これを承諾し、昨年の十二月二十一日に、その被告人に対して居房鉄格子を切断するに必要な金切りのこぎり一丁等を手渡すなどいたしまして同人を逃走させようといたしましたが、他の職員が鉄格子の切断箇所を発見いたしましたのでその目的を遂げなかった、こういうことでございます。
 この事件は、法に基づいて未決拘禁の職務を遂行すべき職員として断じて許されざる行為でございます。このことは当然でございます。まことに遺憾なことでございました。その職員につきましては、行政上の処置といたしましては、本月十四日付で懲戒免職処分といたしております。
 私どもといたしましては、昨年十二月にこの未遂事件が発生いたしました直後に、保安課長から全国の矯正施設に対して、まず逃走事故の未遂防止についての通知を発出いたしました。
 それから、本件職員が逮捕された翌日及び起訴の当日に、私の名前で全国の矯正施設に対して厳正な服務規律を保持するように二度にわたって指示をいたしております。
 さらに、事故の重大性にかんがみまして、本年四月に人事異動がございますが、ことしの人事異動の直後に新任の矯正管区長となりました者などを本省に招集いたしまして会議を開催いたす予定としておりますし、また施設の警備機器の整備などを含めまして、これまで以上に保安体制の充実を図るなどいたしまして、この種の事故の再発防止のために所要の措置を講ずることといたしております。
 いずれにいたしましても、私どもの職員が刑事司法実現のために身柄を預けられております。その身柄を逃がそうとする、こういうことは私ども矯正にとってはまことに痛恨のきわみの事件でございまして、二度とこのようなことがあってならないことは当然でございますし、矯正全体を挙げて矯正行政の名誉回復のために一層努力を重ねてまいりたいと思っておりますので、よろしくお願い申し上げます。
○照屋寛徳君 もう現実に裁判になっているようでございますので、裁判が終わりましたら、裁判の過程で明らかになった、矯正の側で反省すべきものはぜひやっぱりきちんと反省をしてもらわないといけないというふうに私は思います。
 同時に、それは伝聞でございますけれども、いろいろ被収容者の方から看守に言葉巧みに言い寄ったり、便宜供与を求めたり、あるいはまた看守と被収容者という立場で一定期間つき合っているうちに情が移ったり、あるいはまた逆に被収容者からいろいろ個人的なことで弱みを握られてしまうというふうなこともあるやに聞いております。ぜひ今度の事件をやっぱりしっかり反省をし、教訓を得て、国民の期待にこたえるような矯正行政を確立していただきたいということを私は要望しておきたいと思います。
 次に、バブル崩壊後、これはもう間違いなく民事執行事件等がふえているんではないかと思います。そういたしますと、この民事執行事件の新受件数の増大に伴う裁判官や書記官の配置というのを、これまた従来とは違う体制をつくらなければいけないんではないかと思います。執行事件の処理が非常に遅過ぎるという国民の批判もあります。一方で、執行事件というのは、御承知のように裁判官の業務量よりは、膨大な書記官の事務があるわけですね。
 そういうことで、東京、大阪ぐらいでも結構でございますが、民事執行事件の新受件数や既済件数の状況はどうなっているのか、それに伴う裁判所としての裁判官、書記官の配置体制等についての御意見を賜りたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(涌井紀夫君) 執行事件、全国的に平成三年くらいからずっとふえてきておりまして、特に大都市部の裁判所でその増加傾向が著しいわけでございます。
 事件が一番多いのは東京地裁でございます。本庁の件数で申し上げますと、平成七年度の件数が六千五十五件ということでございますので、これは平成三年に比べますと二千六百件程度も増加しております。それから、大阪の事件が次に多いわけでございますが、七年度の件数が三千百九十三件ということでございまして、平成三年に比べますと千四百三十九件も増加してきております。
 私どもの方、このところずっと、この大都市の執行部へ重点的な人員の手当てをやってきておりまして、東京地裁の本庁で申し上げますと、事件が急増する前の平成三年、これは裁判官、書記官、事務官合わせまして、執行部の体制というのは三十九名の体制でございました。これを順次ふやしてまいりまして、この平成九年の四月にもかなりの手当てをしようと思っております。この手当てができますと、ことしの四月には裁判官を含めましてこの執行部の陣容が百十五名という、かなりの規模になる予定になっております。大阪地裁も同様でございまして、平成三年度は裁判官、書記官、事務官、三十一人程度の体制の執行部でございましたが、ことしの四月にはこれが五十八名程度の規模にまで増員できるというふうに考えております。
 今後とも、事件の動向を見ながら、こういう人の手当てを重点的に考えていきたいと思っております。
○照屋寛徳君 民事執行事件の増大と並んで、むしろこれは裁判所だけの問題じゃないかもしれません、いわゆる破産事件、特に自己破産事件がふえておるということを私も感じております。
 これはもうむしろ社会問題かもしれませんけれども、きょうの審議中の法案との絡みで、自己破産事件の新受件数などがどうなっているのか、その増大に伴う同じく裁判官、書記官、事務官などの配置体制、これをどういうふうに考えておられるか、お聞かせください。
○最高裁判所長官代理者(涌井紀夫君) この自己破産の件数の経過は、平成二年あたりからずっと増加してまいりまして、平成四年度以降、全国の件数でいいますと四万五千件程度という一種の高原状態がずっと続いておりまして、これが平成八年には再びさらに増加いたしまして六万件という件数になっております。
 これ東京地裁の件数で申しますと、平成七年、三千九百件であったものが、八年には四千七百件と二割以上ふえておりますし、大阪地裁では平成七年が三千件程度でありましたのが、八年には三千七百件、これも二三%程度の増加になっております。
 執行部の場合と同様に、この破産部に対しても重点的に人の手当てをしてきておりまして、先ほどと同じように平成三年と平成九年の対比で申し上げます。
 東京地裁の破産部でございますが、平成三年四月は裁判官を含めまして十八人という体制でございましたが、ことしの四月にはこれを四十一名という体制にまで増員することを予定しております。それから、大阪地裁の場合でございますが、これは破産事件だけを担当しておる部でございませんので人数は東京より多くなりますが、平成三年四月が三十人でありましたのを、この平成九年の四月には五十七人体制にまで増員していこうというふうに考えております。
○照屋寛徳君 先ほどの委嘱審査の中で、速記官の養成制度の問題が取り上げられました。私も何点か問いただしておきたいと思います。
 実は、最高裁判所は速記官養成制度を廃止しようと、こういうふうな方針のようでございますが、沖縄の裁判所、復帰して二十五年たちましたが、一人も速記官を送ってないんですね。基地の犠牲だけじゃなくして、人権のとりでである裁判所が沖縄の裁判所には二十五年間一人も速記官を配置しなかったというのは、私は大いに問題があるんじゃないかと思います。ともあれ複雑な事件が沖縄でも多いわけで、逐語調書の重要性、必要性というのは、私も二十五年弁護士をやっておりますので、身にしみてよくわかっております。
 そこで、最高裁が考えていらっしゃる民間委託の録音反訳方式導入に当たっての日本弁護士連合会との協議状況、これはどうなっておるのか。この調書というのはやっぱり正確を期さなければならない、正確性の確保、同時に、裁判の性質上、秘密の保持という問題などもありますので、最高裁と日弁連との間にこれまでどのような協議がなされてきたのか、それをお聞かせいただきたい。
○最高裁判所長官代理者(涌井紀夫君) 今回の制度検討につきましては、実は日弁連とも約二年間、非常に詰めた協議をずっと続けてきております。結論的には、録音反訳方式を採用するということにつきましては、日弁連の方からは、いろんな条件整備の要求はございましたけれども、積極方向の賛成をいただいたわけでございます。
 日弁連の方から指摘をされております問題点、幾つかございます。一つは、この録音反訳の費用をだれが負担するんだという問題、それからもう一つは、本当に録音機できちんと法廷の供述を録音できるのか、そういう機械の整備は大丈夫かということ、それから正確な反訳ができるのかということ、それからさらに秘密保持の問題、こういった点が指摘されたわけでございます。
 私どもの方、日弁連とこれらの点についていろいろ意見交換をしまして、まず費用の点につきましては、これはやはり裁判に必要な逐語調書を裁判所の責任で作成していくというのは当然のことであるということで、この費用負担を当事者に負わせるというようなことは一切考えていないということをはっきりお約束しております。
 それから、録音機につきましては、一台だけじゃございませんで、バックアップ用の機械を含めました非常に機能のいい録音機を整備するということをお約束しまして、検証実験の際にも現にそういう体制で臨みまして、事故は起こっておりません。
 それから、正確な反訳という点につきましては、これからの工夫にまつところもあるわけですが、反訳者が反訳をする場合の基準でありますとか、さらにこれを書記官が校正する場合の校正基準といったものを整備していくという約束をしております。
 それから、秘密保持の点につきましては、まず不安のない業者を選んでいくということが基本になろうかと思いますし、さらに業者との間での契約の仕方につきましても、秘密を守るという条項をきちんと入れさせ、録音テープの扱いでありますとかあるいはワープロ等でフロッピーに入れましたデータをきちんと消去させるというふうな、そういう手続の定めを契約書の中にきちっと置くというようなことで、日弁連からの要望におこたえできるような対応を考えていきたいということを日弁連の方にもお約束しているところでございます。
○照屋寛徳君 次に、予算とも関連しますので、裁判所庁舎の障害者への配慮の問題でございます。
 実は私、沖縄支部で、高校生がレスリングの部活動のときに、練習相手の教師が随分強引なことをやりまして、それで首を折っちゃって下半身麻痺になったという事件がありまして、その国賠訴訟をやりました。それで、裁判そのものは勝訴したのですが、証人調べとかなんとかに行くときに、三階建ての庁舎、法廷は三階にあるのにスロープの階段もない、エレベーターもない、だからどうしたかというと、当事者である原告を私の法律事務所の職員と私と二人で車いすに乗せて担いで上りおりするわけですね、法廷のたびに。だから、それでは私はいけないんじゃないかと思います。
 そういう意味でのスロープ階段、エレベーターなどの設置状況、これはもう裁判所庁舎は平屋なんというのはほとんどないだろうと思いますし、全国すべて知っているわけじゃありませんが、それはどうなっているのか。
 それから、裁判の公開の原則からしますと、聴覚障害者が裁判を傍聴したいというふうに言った場合に、そういう対応が今できているのかどうか。そういう人が来たときに、いや対応できないから、おまえは傍聴だめだとかいうふうなことでは私は困るんじゃないか思う。
 そういう、障害者に対する裁判所の庁舎のあり方、現状はどうなっているのか、あるいは傍聴権の確保、裁判の公開という点で、特に聴覚障害者などに対してどういう対応をしておられるのか、最後にお聞かせ願いたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(涌井紀夫君) 庁舎の整備に関しまして、障害者の方で来庁される方の便宜を図るような、そういう形の庁舎を整備していくということ、最近の私どもの方も重点項目としていろいろ整備を進めてきているところでございます。
 全国に裁判所四百六十ばかり施設がございますが、ほとんどの庁、数で言いますと四百四十六庁程度につきましては、スロープを設置する等いたしまして、玄関に段差ができないようなそういう構造にできております。それから、エレベーターにつきましては、三階建て以上の庁舎が百六十三庁ございますが、そのうち現在百九庁、ですから比率で言いますと七割弱ということになりますが、につきましてはエレベーターを整備済みでございまして、平成九年度におきましても四庁の整備を予定しております。今後とも、新営の際はもちろんでございますけれども、既存の庁舎につきましても整備を行っていきたいと思っております。
 それから、聴覚障害者に対する手話通訳の問題でございますが、当事者につきましては、これは裁判所の方で手話通訳者を選任いたしまして手話通訳をつけるということにしております。傍聴人につきましては、裁判所の方で選任するというところまでなかなかまいりませんが、傍聴人の方で手話通訳者を同道されたような場合には、傍聴席にお座りいただいて、手話通訳を介して傍聴をしていただけるような、そういう運用を各地でやっておるところでございます。
○照屋寛徳君 質問しようと思っておりましたが、時間がありませんので、その速記官養成制度については、職員団体である全司法とも十分協議を尽くしてもらいたいということを要望しておきたいことと、それから今御答弁ございました三階以上の庁舎、例えば沖縄にも沖縄支部とか幾つかありますので、これまた、速記官を一人も配置しなかったように、沖縄が最後にならないように特段の御配慮をお願いいたします。
○菅野久光君 法案の審議でございますが、先日、大臣から提案理由の御説明をいただきました。
 ここに印刷されておりますから、大臣としては印刷されたとおりにお読みにならざるを得ないわけでありますが、黙って聞いておりますと、何が何だかあの提案理由の説明がわからない。この説明に説明をつけなきやわからないような書き方なんですね。それは、「裁判官以外の裁判所の職員の員数の増加」だということを第二点に書いてあるんです。そして、「百五十人増員するとともに、他方において、」「職員を百二十九人減員」すると書いてあるんです。後ろの方についております参考資料を見ますと、裁判所の書記官を百五十名増員すると、そして裁判所の事務官や技能労務職員を百二十九人減員するんですね。このことをどうしてちゃんと書かないのかなというふうに思うんです。
 地方裁判所における民事訴訟事件及び民事執行法に基づく執行事件の適正迅速な処理を図るため、裁判官以外の裁判所の職員中、書記官を百五十人増員する、他方において今の職種を減員する、したがって差し引き二十一人を増加しようとするものだというふうにおっしゃれば、一遍にこの提案理由の説明ができるんです。しかし、これだけ聞いておったら何のことだか、片方で百五十人ふやしてください、片方で百二十九人減員しますということなので、まあこれはどなたがお書きになるのか、通常こういう書き方ばかりされているのかわかりませんが、もっと国民にわかるように書いていただくことが私は必要なのではないかと。
 言われていることは、参考資料の方を見てよくわかりましたけれども、この提案理由の説明だけを見ると、何で片一方で百五十人増員して、何で片一方で百二十九人減員するのか、若干の理由は書いてありますけれども、これじゃちょっとわかりづらいので、国民にわかるような、そういう書き方をされてはどうかということを御提言申し上げておきます。
 それから、裁判官以外の裁判所の職員の定員の問題でございますが、私がいただいたのは十二月一日現在ですから、それぞれ、書記官あるいは家裁調査官、廷吏、それから行(二)職員にかなりの数の欠員があります。片方、事務官は定員、これは予算定員だと思うんですが、それをオーバーしております。これ十二月一日現在ですが、年度当初はどうなのか。それから、年度途中でこれだけ欠員が出て、その補充といいますか、そういうことがなくても仕事が順調にできるのかどうなのか。その辺をまずお聞きしたいというふうに思います。
○最高裁判所長官代理者(涌井紀夫君) 確かに、裁判所の場合、職種がいろいろ分かれておりまして、専門職と言われます書記官とかあるいは家裁調査官、年度途中、欠員がどうしても出てまいります。というのは、これは専門職でございますので、一定の資格といいますか、訓練を経て資格を得た者で後を埋めていくわけでございますので、年度途中に退職等をしました後、すぐには埋まりませんで、四月に新しい任官者で埋めていくということになるものですから、十二月一日の時点でとりますとこういう欠員が出てくるわけでございます。
 ただ、全体としましては、翌年四月の時点で、実は事務官が既に書記官なり調査官に任官するという前提で研修を受けておるわけでございまして、その分がいわば定員上は事務官の過員となっておりますが、四月の時点ではこれが書記官なり調査官にかわっていく形で定員が埋まっていくという、こういう仕組みになっているという点をひとつ御理解いただきたいと思います。
 そういう形でございますので、四月の時点では定員がおおむね埋まりまして、お認めいただきました増員を含めた定員どおりの陣容が整うという、そういう仕組みになっております。
○菅野久光君 そういう仕組みになっていることも資料の中で、特に事務官ですね、これは一年ないし二年、何か研修所に入られると。しかし、予算定員の中では事務官ということで、いわゆる定員オーバーの形でやっているわけですね。これは毎年ずっと大体二百人前後オーバーしているわけですよ。そういう形であればそういう形で、大蔵の査定が厳しい厳しいと言っているんですけれども、大蔵との折衝のときにこういう形でも予算定員が認められるような仕組みになっているんですか。
○最高裁判所長官代理者(涌井紀夫君) なかなかこれは微妙な問題がございますが、裁判所の官職の場合には、基本的な官職が事務官だとお考えいただければいいかと思うんです。事務官が特殊な専門分野の研修を受けまして資格を取りまして、その資格が事務官に付与されますとそういう専門職になっていく、書記官というものになっていく。そういう意味では、いわば事務官という根っこの上に資格がつきまして書記官になるということから、ある意味で定員の流用のような形が出てきておるということでございます。
○菅野久光君 いや、言われることは、これはもうわかるんですけれども、毎年、とにかく予算の査定が厳しい厳しいと言いながら、約二百人近くが予算定員のオーバーで、それで予算が認められるということになると、大蔵省もまあ大して厳しくはないのかなというような感じをちょっと受けるわけです。毎年これだけの数が大体決まったぐらいあるのであれば、やっぱり予算定員の中にきちっと入れておくべきではないかなというふうに私は思います。この表を見まして率直にそのように思いました。
 それから、裁判官やあるいは判事補の問題でありますけれども、特定の裁判所に事件、案件が集中するようなことというのはあり得るかどうか私はわからないんですが、もしもそういうことがあり得たときに、当然そこに配置されている判事や判事補だけでは対応し切れないという問題が起きたときにどのような対応をとられるのか、ちょっとお聞きしたいと思うんです。
○最高裁判所長官代理者(涌井紀夫君) 確かに最近、特に民事事件を中心にしまして事件がふえてきておりますけれども、この増加傾向というのは各庁均一ではございませんで、どちらかといいますと、最近では大都市部の増加が非常に著しいわけでございます。したがいまして、相対的に地方の方は余裕があるのに、大都市部は忙しくなるという傾向がございます。
 裁判所の方では、毎年定員の設定作業をやっておりまして、そういう状況を見ながら、余裕のある庁から繁忙な庁に定員を移しかえるといいますか、そういう作業をやっております。それから、実はこの定員設定作業に間に合わないといいますか、その年度の途中で非常に特殊な事態が起こりまして、特定の庁が繁忙になるというようなこともございます。例えば、阪神大震災のときの神戸地裁ではそういうふうな事態が起こりました。そういう際には、もう定員とは関係なしにほかの庁から応援要員を選定しまして、そういう応援要員を忙しい庁に投入する、そういった措置も随時とっているところでございます。
○菅野久光君 限られた人数の中ですから、そういうことで、役人の身というのは紙切れ一枚でどこへでもということなんでしょうが、なかなか大変な作業ではないかなというふうに思っております。やっぱり裁判の迅速化ということもまた国民の強い要求でもありますので、そういったようなことで、異動される方についてはそれなりの対応といいますか、そういうものが必要かなというふうに思っておりますが、その辺はどうなんでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(涌井紀夫君) 裁判所全体で申しますと二万人余りの職員ございますので、毎年の定員配置の見直しの結果による人の異動といいますか、それはそんなに無理なく、希望のある人を異動させるような形で定員配置どおりの人員配置ができると。多少難しい場合があることは否定できませんけれども、できるだけ職員の方の理解も得ながら円滑な形でそういう人員の配置ができるように毎年苦労してやっているところでございます。
○菅野久光君 今の最後の、苦労してというところで、私も、人事異動というのは本当に大変な、配慮もしなけりゃなりませんし、いろんな条件を考えながら、いい仕事をしてもらうための異動ということでやらなきゃならないわけですから、今のその言葉で状況についてはよくわかります。
 先ほどもちょっと質問に出ましたけれども、やっぱり諸外国と比べて日本のこの法曹人口というのがもう本当に極めて少ないんですね。年々そのことについて努力をされているとはいいながら、まだまだ相当、遠く及ばない。そのことは結局、国民の権利だとか、何かがあって被疑者になったときなんかの問題なども含めて、これは大変な問題だと思いますので、抜本的に法曹人口をふやすようなそういう対策が必要ではないかというふうに思いますので、ひとつ特段の御努力をお願い申し上げたいというふうに思います。
 この件についてもちょっと御質問しようと思いましたが、他の方が質問いたしましたので、私からはその要望だけ申し上げて、私の質問を終わります。
○橋本敦君 裁判所の裁判官の増員や書記官の増員につきましては、国民のための裁判所という、そういう国民のためのことを考えてもますます増員が必要だということで、各党派一致で増員について本委員会でも請願が採択されまして、松浦法務大臣も増員には努力をするというお約束をいただきました。今回提案された法案で見る限り、判事補が二十名、その他職員二十一名、これが純増となっておりまして、これは我々としては評価できるものであります。
 ところが一方、最高裁が速記官の養成はもうやめるという、そういう態度をおとりになったことは、これはまた極めて残念なことだと思うわけであります。この問題について当委員会でも本日、同僚委員からその立場での指摘もございました。私もこの問題に触れさせていただきたいと思うわけです。
 総務局長に、大変単純な質問で失礼ですが、裁判所法六十条の二では文言としてどう書いてあるかということですが、どうですか。
○最高裁判所長官代理者(涌井紀夫君) 裁判所法六十条の二の規定は、「各裁判所に裁判所速記官を置く。」という、こういう規定が置かれております。
○橋本敦君 法律ではいろんな規定の仕方がありまして、何々することができるとか、あるいは何々するとか、いろいろあります。私は、この裁判所法が各裁判所に速記官を置くとはっきりこう書いていることは、速記官の権限と責任が重い、まさに裁判所を構成する重要な一翼を担う責任ある立場の人として、専門職として速記官を置くと、こう書いていることは、日本の司法制度にとって非常に大事だと思うんです。速記官を置くことができると書いてないんですよ。置くと書いているんです。このことを私はもっと慎重に考える必要があるのではないかというように思うわけです。
 それで、速記官の養成を停止するということは、事実上、将来速記官が裁判所からいなくなるということですから、この法律の置くという規定との間では、客観的には矛盾することを先行的に裁判所が行っているということにほかならない。そういう問題は、まさに法の本来の趣旨に照らして、国会の法務委員会でこの裁判所法六十条の二とのかかわりで、慎重に検討すべきそういう問題ではなかったか。日弁連との協議、全司法との協議も大事です。しかし、法そのものの基本のあり方として、法務委員会でもっと慎重な論議を尽くす必要が法本来の建前からいってあるのではないか、私はこう思いますが、最高裁はどうお考えですか。
○最高裁判所長官代理者(涌井紀夫君) この裁判所法六十条の二の規定を文理的にどう解釈するかというのは、非常に、なかなか難しいわけでございますが、私どもの理解としましては、これは、各裁判所で逐語的な供述調書をつくるために裁判所速記官というものを置きまして、そういう供述調書をつくらせる必要がある部署がある、そういうところには裁判所速記官を置くという、こういう趣旨の規定だと考えております。
 実は、今回の制度改正というのは、先ほども御説明したかと思いますが、現在在職しております八百名余りの速記官、この速記官を一挙にほかの仕事に転換させるとか、そういったことではございません。そういう意味では、この八百名の速記官を今後も必要な裁判所に置くという、そういう事実は変化がないわけでございます。そういうところからいたしまして、この今回の制度改正が直ちに裁判所法六十条の二の規定の改正問題につながるということではないのではないかというのが私どもの考えでございます。
○橋本敦君 その点、ある意味では最高裁は政策的考え方を先行させておるというだけのことで、意見は私は納得できないんです。
 私は、さきに衆議院の正森議員と一緒に最高裁を訪れまして、速記官制度が戦後の裁判所における実体的真実の発見に大きく貢献されてきた、このことは各界の認めるところである、したがって、最高裁が国会での十分な審議を尽くすことなしにこの養成をやめるということは慎んでいただきたいということを申し上げてまいりましたが、残念ながら、国会での十分な審議なしに、結論として最高裁は養成をやめるということになってしまいました。
 しかし、戦後、今日までの我が国のいろんな司法界の意見を考えてみましても、裁判の民主化ということが大きく国民の課題になった中で速記官が置かれることになり、そしてその速記官が証言を客観的に正確に記録するという役割を通じて、法廷での難解な事件、真実究明と国民の権利を救済する必要がある多くの冤罪事件その他の事件について、裁判所が正しい判決を生み出す上で大変貴重な、そしてまた重要な役割を果たしてこられたと。そういう制度であったというそのことの評価は多く各界から言われておるんですが、こういう評価は最高裁としてはお持ちであると思うんですが、どうですか。
○最高裁判所長官代理者(涌井紀夫君) 戦後、新しい裁判制度になりましてから、やはりどうしても非常に難しい事件というのがどんどんふえてまいりました。そういう内容の難しい事件を適正に処理していくという上で、証人の供述を一語一語逐語的に記録する、そういう制度としての速記官制度、あるいはその制度を担ってこられた速記官の方々が、適正な裁判の実現という意味で非常に高い貢献をされたということは、恐らく関係者どなたにも異論のないところだと思いますし、最高裁としても全く同様の認識を持っているところでございます。
○橋本敦君 したがって、軽々に養成をなくすということになってはならない。技術的な問題、いろんなことでいろいろとおっしゃいましたけれども、私は、日本の司法の基本的あり方として、技術的問題、あるいは局長がいろいろ言われました養成上の困難だとか、そういうことで簡単にやめるという結論を出してはならぬというふうに思うんです。
 日弁連のこともおっしゃいましたが、日弁連は、「現時点において録音反訳調書を速記録に代替し得るものと位置づけ、速記官の養成を停止することは、わが国の裁判の水準を維持するうえでのかけがえのない逐語録の質と量を将来にわたり保持することに大きな不安要素を持ち込むものと言わざるを得ない」ということで、録音反訳方式の導入そのことについては反対はしないけれども、この養成を停止することについては反対だと、これは最終意見としてまとめている。このことは御存じですね。
○最高裁判所長官代理者(涌井紀夫君) 日弁連の方でおまとめになりました報告書の最終的な記載、委員御指摘のとおりになっていることは私どもも十分承知しております。
○橋本敦君 一方、自由法曹団は、戦後多くの難事件に取り組んで、まさに人権を守る闘いの先頭に立ってきたともいう弁護士の皆さんが多くいらっしゃる集団です。その自由法曹団でも、「民間委託による録音反訳方式の導入と速記官の養成停止は、速記官制度の廃止となり、」、いずれ廃止になりますね、「公正な裁判の制度的保障を大きく後退させるものであり、逐語録調書の拡充どころかひいては調書の簡略化につながりかねない」という危惧を表明して、抗議の声明を発表していますが、これはお耳に届いておりますか。
○最高裁判所長官代理者(涌井紀夫君) 私どもの方でも拝見しております。
○橋本敦君 私どもは、一番当事者の全司法の皆さんとの協議を今までやってこられたというお話も聞きましたが、さらに真剣に続けていただきたいということも要望しました。しかし、残念ながら養成廃止ということを決定されまして、全司法労組もこれについては、「公正な裁判を実現するには、何よりも正確で客観的かつ信頼性の高い記録が必要である。」、そのとおりですね、「とりわけ法廷での微妙な証言を残す必要がある事件の記録については、その情景描写も含めて表現できる速記録にまさるものはない。」、こういう立場で速記官の養成停止には反対をして抗議の意思を表明しておられます。
 私も長年弁護士をやってきた者の一人として、単なる録音の第三者への委託の反訳じゃなくて、その法廷を構成する一員として速記官が専門職の速記官として裁判に携わっておられるという、その体験自身から正確に記録を反訳するということは、これはまさに裁判そのものを客観的に正確に構成するという重要な機能を持っていると私は思います。だから、正確に録音反訳すればよろしいという、そういうものではないと、そこに生きた裁判としての重要な問題がある、こういった指摘は、私は、真剣に今後とも最高裁は酌み取っていく大事な問題を提起している意見だと思いますし、こうした意見については今後とも慎重に検討を深めていただきたいと思いますが、いかがですか。
○最高裁判所長官代理者(涌井紀夫君) 実は、今回の制度改革を考えました一番の原因は、繰り返し申し上げましたように、今後恐らくどんどん増大していくであろう逐語調書の需要に今の機械による速記制度でこたえていけるだろうか、そこに不安があるとすれば、むしろこれからの新しい時代の、そういう要請にこたえていけるような新しいシステムを考えるべきじゃないかというところに最大の原因があったわけでございます。
 ただ、委員御指摘のように、その新しいシステムで完成されます調書の内容が正確なものでないということであれば、これは大変なことでございますので、そこがやはり今回の検討で一番私どもとしても重要視したところでございます。
 実は、録音反訳の結果どういう調書ができるかという点につきましては、先ほども言いましたように、全国で二千二百件を超えるようなかなり大がかりな実験をやりまして、その結果、尋問にお立ち会いになった弁護士さんにも個別に、その調書のできばえがどうであったかということを意見をお聞きしております。その結果として、九割を超える弁護士さんの方から、調書のできばえとしては従前の速記録と比べても遜色はない、裁判をやっていく上で支障はないと考えるというお答えをいただきましたし、日弁連の方も、今後のこのシステムの運用の仕方について、さらに正確性を担保するためにいろいろ措置を講じてほしいという要望はございましたけれども、方向としてはそういう積極方向の御意見をいただきました。
 日弁連の方から、調書の正確性を担保するための工夫とか、いろいろ御要望をいただきましたので、その点につきましては、今後とも日弁連とも十分意見交換をしながら、将来裁判を進めていく上で困らないような措置をきちんと講じていきたいというふうに考えております。
 もちろん、組合との間でもこれまでずっと意見交換を続けてきておりますが、これからの速記官の裁判所という職場での仕事の仕方にもかかってくる面がございますので、十分意見を聞きまして、速記官が今後とも一層やりがいを持って仕事をしてもらえるような、そういう工夫を講じていきたいというふうに考えるところでございます。
○橋本敦君 局長、録音反訳、それを委託して、それが不正確になるということだけを言っているんじゃないんです。それが不正確だったら、これは最高裁もやらないでしょう。だれだってやれませんよね。
 そういう、単に技術的に正確性のある録音反訳ができれば速記官をなくしていいのか、そうは単純にいかないでしょうと。速記官を置くと法が定めた今日までの歴史的経過や、生きた裁判としての実際の機能とか速記官の貴重な職責と責任を考えれば、裁判を構成する重要な問題としてこれは考える必要がある。
 しかし、速記官の数が足らないから、とてもカバーできない部分もそれはあるでしょうから、録音反訳方式を一部取り入れても、それは正確性さえ担保できればいいですよと、これが日弁連の意見。私もそう思います。しかし、だから速記官をなくしていいということを、技術的だけで考えていいということじゃないということを私は厳しく指摘しているわけなんです。
 今回の制度変更に対して、私どものところにも、実際に速記官として頑張っていらっしゃる皆さんから本当にたくさんの意見が寄せられました。あなたのところにはどの程度届いているか、これはわかりませんけれども。
 例えば、松山の方から、「私はこれまで、裁判のなかで、裁判所への必死の思いを証言、供述する人と目を合わせ、その証言、供述を正確に調書に記録、再現する仕事に、誇りと熱意を持ってやってきました。」、まさに生きた裁判なんですよ。目と目を合わせ、必死になって耳から聞き、正確に調書を記録するという職責に誇りを持ってやってきた、そういうことでしょう。「誰にとっても一生の一大事である裁判での言葉の一言一句を正確に記録する」、だれにとっても裁判は一生の大仕事です。その公正さを担保する裁判の一翼を担うことに誇りを持ってやってきた、それはよくわかります。
 仙台の方はこう言っています。「私たちが速記録を作ることで、法廷内の秘密も堅持されるという思いで頑張ってきました。」、そうです、人権にかかわるいろんな問題があります。しかし、裁判所の職員として公務員として守秘義務があり、自覚を持って秘密を漏らさないという、そういう立場も貫くことができる、そういう立場でこの問題についてもやってきたんですと。「でもこれからは、録音反訳を民間に委託するということで、法廷内の情報も容易に外へ持ち出せるようになります。」、これが国民のための裁判を本当に守る制度につながるのかどうか心配だと言っておられますが、この点もそうです。
 そして、また高知の方は、この間、高裁、地裁でいろいろ研究会が開かれましたが、速記官の私どもが何を言っても、それは既得権を守らんがための理屈としか受け取ってもらえない向きがあったと残念がっておられます。
 まさに、速記官養成廃止が先にありきという思いを持っていらっしゃる。私は、総務局長の同僚議員への答弁をいろいろ聞いても、まさに速記官の養成停止が先にありきという感じ、率直にいたしました。まさに当の皆さんもそう思っていらっしゃる。養成をこれから継続しないと、そういう施策を最高裁がとった、そういう職種である私たちはこれからどうやって誇りを持ってやっていけるんでしょうか、こうも言っておられますが、その気持ちわかりますよね。
 私は、この問題は、そういう重大な問題でありますから、時間がないので、あと、多くの議論はできませんけれども、今後とも最高裁は真剣にこの問題について考慮をされて、速記官の皆さんからも全司法の皆さんからも法曹各界からも意見を聞かれて、まだまだたくさんの皆さんがいらっしゃるんですから、皆さんがどうやって誇りを持って速記官として仕事をしていけるか、どのように配慮をするかということをどうお考えなのか、一つ。
 それから、今後まだ長い間がありますから、将来とも真剣に考えて、養成を復活するということが絶対にないわけじゃなくて、あり得るのではないかという、そういう議論もまた真剣に考慮をするということも含めて今後とも検討してもらうことを要求して、質問を終わりたいと思いますが、いかがですか。
○最高裁判所長官代理者(涌井紀夫君) 今回の制度改正、私ども裁判所の立場としましては、裁判を利用される国民の立場から見て、今後必要な逐語調書の需要というものにこたえていける体制を裁判所の方がつくれるかどうかという、それが一番のポイントであろうと思います。
 そういう観点から今回の制度改革の方針を決定したわけでございますが、ただ、委員御指摘のように、現職の速記官からいたしますと、今まで自分たちが苦労して身につけてきました速記術というものが、後継者がなくなるという形でなくなっていくという、そのことに対する非常に寂しい気持ちを持っているというのは私どもも十分認識しております。そういった裁判所速記官の心情というものを十分考えた上、今後のいろんな施策を講じていく必要があるだろうと思っております。
 現に、今後の速記官の仕事の仕方が今まで以上に充実したものになるような、研修のあり方でありますとか、あるいは立ち会いの体制づくりでありますとか、あるいは速記をつける事件を選ぶ選び方自体にもう少し速記官自身積極的に関与していけるようなそういう運用ができないかというようなこととか、あるいは速記官の中に速記管理官という管理職のポストがございますが、そういう人たちの職務権限をどうしていくかというようなこと、さらには速記官全体の給与上の問題も含めました処遇等につきましても今後いろいろ検討を進めていきまして、残りました速記官の人たちがこれまで以上にやりがいを持って仕事をやっていける、そういう体制をぜひつくっていきたいというふうに思っております。
○橋本敦君 私の時間は、四十五分ですから、もう一分しかないんですが。
 そういうような御配慮をいただくと同時に、局長もおっしゃったように、速記官の養成に希望する若い人がいないわけじゃないんです、いるんです。そういう人をテストした結果、いろいろ採用するのに最終的には三十人ぐらいになるというお話があって、そういうこともあり、機械がいつまで製作してもらえるかということもある、こういうことですね。これは、応募をする人たちがいてくれるんですよ。機械をつくることを最高裁が本当にやろうと思えば、これは発注してやってもらうことに協力してもらうということは、最高裁がやれば、日本じゅうの会社でそんなのに協力できないといって、そんなことには僕はならぬと思うんですよ。だから、今言ったようなことも真剣に考えられて、まだ将来、日本の裁判は長く続くんですから、検討を深められることを希望して、質問を終わります。
○委員長(続訓弘君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
 これより討論に入ります。――別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
○委員長(続訓弘君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(続訓弘君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後五時四十六分散会