第142回国会 総務委員会 第3号
平成十年三月十九日(木曜日)
   午後二時三十分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 三月十二日
    辞任         補欠選任
     井上  孝君     塩崎 恭久君
     鈴木 貞敏君     服部三男雄君
     竹山  裕君     二木 秀夫君
     大久保直彦君     横尾 和伸君
 三月十三日
    辞任         補欠選任
     塩崎 恭久君     井上  孝君
     服部三男雄君     鈴木 貞敏君
     二木 秀夫君     竹山  裕君
     横尾 和伸君     大久保直彦君
 三月十八日
    辞任         補欠選任
     足立 良平君     吉田 之久君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         石田 美栄君
    理 事
                板垣  正君
                木宮 和彦君
                寺澤 芳男君
                吉岡 吉典君
                永野 茂門君
    委 員
                井上  孝君
                鎌田 要人君
                鈴木 貞敏君
                竹山  裕君
                真鍋 賢二君
                村上 正邦君
                矢野 哲朗君
                吉田 之久君
                猪熊 重二君
                大久保直彦君
                瀬谷 英行君
                栗原 君子君
                武田邦太郎君
   国務大臣
       国 務 大 臣
       (総務庁長官)  小里 貞利君
   政府委員
       内閣総理大臣官
       房審議官     榊   誠君
       内閣総理大臣官
       房管理室長    佐藤 正紀君
       総務庁長官官房
       長        菊池 光興君
       総務庁恩給局長  桑原  博君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        志村 昌俊君
   説明員
       総理府賞勲局審
       査官       阪本 和道君
       海上保安庁総務
       部人事課長    津野田元直君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○恩給法等の一部を改正する法律案(内閣提出、
 衆議院送付)
    ―――――――――――――
○委員長(石田美栄君) ただいまから総務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 昨十八日、足立良平君が委員を辞任され、その補欠として吉田之久君が選任されました。
    ―――――――――――――
○委員長(石田美栄君) 恩給法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。小里総務庁長官。
○国務大臣(小里貞利君) ただいま議題となりました恩給法等の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
 この法律案は、最近の経済情勢等にかんがみ、恩給年額及び各種加算額を増額すること等により、恩給受給者に対する処遇の改善を図ろうとするものであります。
 次に、この法律案の概要について御説明申し上げます。
 この法律案による措置の第一点は、恩給年額の増額であります。
 これは、平成九年における公務員給与の改定、消費者物価の動向その他の諸事情を総合勘案し、平成十年四月分から恩給年額を一・一九%引き上げようとするものであります。ただし、七十四号俸以上に係るものについては、平成十年四月分から平成十一年三月分まで〇・三八%の引き上げとしております。
 第二点は、遺族加算及び寡婦加算の年額の増額であります。
 これは、遺族加算の年額について、戦没者遺族等に対する処遇の改善を図るため、平成十年四月分から、公務関係扶助料に係るものにあっては十三万七千五百円に、傷病者遺族特別年金に係るものにあっては九万十円にそれぞれ引き上げるとともに、寡婦加算の年額について、平成十年四月分から、普通扶助料を受ける六十歳以上の妻または扶養遺族である子が一人ある妻に係るものにあっては十五万三千五百円等に引き上げようとするものであります。
 第三点は、短期在職の旧軍人等の仮定俸給の改善であります。
 これは、六十歳以上の短期在職の旧軍人に給する普通恩給またはその妻子に給する扶助料等について、老齢者、寡婦等の優遇の趣旨により、平成十年四月分からその年額の計算の基礎となる仮定俸給の格付を一号俸引き上げようとするものであります。
 以上がこの法律案の提案理由及びその内容の概要であります。
 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。
○委員長(石田美栄君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。
 これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○寺澤芳男君 民友連の寺澤です。
 恩給法等の一部を改正する法律案について若干の質問をいたします。
 この恩給の恩という字を辞書で調べてみますと、「(君主・親などの)めぐみ。いつくしみ。」と書いてあります。恩給とは主人であった国家が仕えた者や命を落とした者、その遺族に対して金品を給与するという、公務員の共済年金制度がなかったころのやや古い時代の仕組みであり、国家補償的な性格を持つものであろうと思います。
 さて、今回政府が提出したこの法案に基づく恩給年額のベースアップは一・一九%であります。この一・一九%という数字は昭和六十二年度以降のいわゆる総合勘案方式によって算出されたものであろうと思われます。ところが、昨年、平成九年の消費者物価の上昇率は一・九%でありました。つまり、平成元年以降初めて恩給年額のベースアップの率が物価上昇率を下回ってしまったわけであります。すなわち、給付される恩給の実質的な価値が前の年より下がってしまったというわけであります。
 私が思いますのに、この一・一九という数字は余りにも機械的に算出し過ぎたのではないか。総合勘案方式のよさは公務員給与の改定や消費者物価の動向等をまさに総合的に考えられる点にあろうかと思います。昨年の物価上昇は主に消費税の増税であって、極めて人為的、政策的な原因によって発生いたしました。つまり、このような政策的省物価上昇をもまさに総合的に勘案して恩給牛額の上昇率を決めることもできたのではないかと思います。
 この物価上昇率を下回る恩給年額のベースアップ率一・一九%について、小里総務庁長官の御所感をお伺いいたします。
○国務大臣(小里貞利君) 恩給の改定に当たりましては、従来、その時々における社会経済事情等を勘案しながら最も適当な改善指標を採用してまいったところでございます。昭和六十二年度からは公務員給与の改定率やあるいは消費者物価の動向等の諸事情を総合的に勘案する、すなわちただいまお話がございましたようにいわゆる総合勘案方式により恩給の改善を行ってまいったところでございます。
 特に、平成十年度におきましては恩給の改善率が前年の物価上昇率よりも下回ることとなったのでありますが、現在の社会経済事情のもとでは、恩給の実質価値と申し上げましょうか、その維持等の観点から、総合勘案方式による改善は妥当である、さように判断をいたした次第でございます。
○寺澤芳男君 現在、恩給をもらっている人が約百六十二万人、平均年齢七十九歳。この受給者一人一人のところに毎年一回誕生日の月に恩給局からはがきが送られてきて、受給者はそのはがきを持って役所とか役場へ行って判こを押してもらい、それをまた送り返す、こういうことをやっておられます。受給者が健在であるということをこのようにして証明して年四回の給付が行われているわけですが、これは受給者にとっても大変面倒なことであり、万が一の御不幸があった場合も年四回の給付は継続して行われてしまう可能性もあります。
 先週、三月十日に住民基本台帳法の改正案が国会に提出されました。これは全国民の住民票に十けたのコード、番号をつけ、そのデータを全国の役所で利用するものだという説明を受けております。この法案の是非については今後国会で審議されるわけですが、恩給行政に限ってもこのコード化、コンピューターネットワーク化によってかなり変化が出るものと思います。
 この住民基本台帳のコード化によって、果たして受給者の一人一人がわざわざ役場に行かなくても済むのか。もっとも、はがきを持って役場へ行くことを非常に楽しみにしている受給者もおられますけれども。今後、恩給に関してこのほかにもどんな変化があるのか、総務庁での検討状況をお聞かせください。
○政府委員(桑原博君) 恩給局におきましては、毎年、受給者の誕生月に受給権調査を行っているところでございます。この調査におきましては、受給者に対して住民票記載事項について市町村長の証明を求めることで受給者の生存を確認しているわけでございます。
 住民基本台帳ネットワークが完成した場合には、恩給局においで都道府県から本人確認情報の提供を受けまして受給者の生存を確認できることになりますので、受給者がわざわざ役場に出向いて市町村長の証明を受ける手間が省けるということになろうかと思われます。
 具体的にどの事務についてどのように利用できるかということにつきましては、ネットワークシステムの細部がまだ明らかではございませんので、これからの過程で関係省庁と協議を進めながら考えてまいりたいというふうに考えております。
○寺澤芳男君 次に、この恩給の給付が明治四十三年以来郵便局に限られていることについてお伺いいたします。
 これは恩給法十八条を受けて、政令で給付窓口を郵便局に限定しているからであります。これからますます高齢化する利用者の利便を考えれば、郵便貯金口座への振り込みに限らず、銀行、信用組合、信用金庫などの民間金融機関の普通口座へ振り込むことを考えてみてはどうかと思います。
 目の前に銀行があるのに遠くの郵便局に行かなければならないという受給者の声もあるようです。あるいは恩給受給者が海外に住む息子夫婦と同居するなど、今後の国際化の進展を考えれば、郵便局のみを窓口とすることは不便であろうと思います。先ほどの住民基本台帳のネットワーク化によって、受給者がお亡くなりになった場合、直ちに給付を停止することも可能になります。そうすれば、従来のように死亡後に払い込んでしまった恩給を郵便局の人が返してもらいに行くいわゆる債権管理業務もなくなり、民間の金融機関でも十分対応できるのではないかと思います。
 このような問題についての総務庁の御見解をお伺いいたします。
○政府委員(桑原博君) 御指摘のように、現在、恩給の支払い事務は郵政省が所管しているところでございます。郵政省においては、単に受給者に恩給給与金を支払うという業務だけでなく、恩給制度が円滑に実施されるために不可欠な返還金債権の管理、恩給受給者からの相談、また諸手続の指導業務等も行っていただいております。これら金融機関の業務とかかわりない業務を銀行等の金融機関に処理させることができるかどうか、また経費の面等々の問題もあり、なかなか困難ではなかろうかというふうに考えております。
○寺澤芳男君 現在、御承知のように大変不景気のさなかで、受給者の方々にとっても非常に厳しい状況ではないかと推察いたしております。その中で、恩給受給者の方々がいわゆる町の金融機関にお金を借りて、その際に恩給証書、郵便貯金通帳、印鑑を担保にとられてしまったという話をよく聞きます。証書を担保に入れることはもちろん恩給法十一条によって禁止されているのであって、例外は国民金融公庫から融資を受けるときだけであります。
 このような違法な証書の担保入れの状況について総務庁はどのように把握しているのか、またその対応、あるいはどうしても必要なときには国民金融公庫から融資を受けられる旨の周知、広報活動は徹底しているのか、御説明をお願いいたします。
○政府委員(桑原博君) 恩給につきましては、恩給法第十一条によりまして、国民金融公庫及び沖縄振興開発金融公庫への担保に供する場合以外の担保提供が禁止されております。これに違反した場合は恩給を差しとめるということにいたしております。これは恩給を受ける権利の保護を目的とした規定だというふうに解釈しております。
 したがいまして、御指摘のように、債権者が恩給証書を受給者に返還しないような場合には、その恩給の支給を差しとめ、当該恩給証書を無効にするとともに、受給者からの恩給証書の再発行申請を受けまして新たな恩給証書を再交付することにより、正常な形で受給者に対し恩給を支払うように措置することとしております。
 なお、御指摘のようなケースにつきまして個々に把握をしているわけではございません。ただ、そのような御相談があれば迅速かつ適切に対応するように心がけておりまして、恩給証書の裏面に「この恩給証書は、譲渡したり、国民金融公庫又は沖縄振興開発金融公庫以外に担保に供することはできません。」というふうに明記いたしまして注意を促しているところでございます。
○寺澤芳男君 去年十一月十二日の朝日新聞の報道によりますと、東京都板橋区在住の台湾人、林さんという方が日本政府を相手にお父さんの恩給に関する訴訟を起こしたとあります。林さんのお父さんは日本統治下の一九二一年四月から一九三九年三月まで台湾の小学校教諭を務められ、その後、三九年四月から四五年十月まで月額二十二円の恩給を支給されていましたが、それ以降は支給を打ち切られたそうであります。
 積み立ての共済年金とは異なる恩給の国家補償的な性格を考えますと、例えばこのように戦争前の台湾で日本人として生まれ、日本の公務員として長い間働き、現在台湾人である方をこのまま放置しておいてよいのかと思います。
 この訴訟も含め、日本国籍を給付の条件とする恩給法について小里総務庁長官の御所見を承りたいと思います。
○国務大臣(小里貞利君) 実は寺澤先生からそのようなお尋ねがあるということで、けさほど私も同新聞を一読してみました。
 御承知のとおり、恩給法におきましては、大正十二年の同法制定以来、日本国籍の保持を恩給受給権の付与及び存続の要件といたしておるところでございます。この国籍条項は公務員年金制度としての我が国の恩給制度の沿革及び性格に由来するものでありまして、制度創設以来今日に至るまでの恩給制度の基本的な約束事の一つとなっているところであり、やむを得ないところではないかなという判断をいたしたところでございます。
○寺澤芳男君 以上です。
○猪熊重二君 今回の恩給法の改正に関しましては格別の異論もございません。今、個別的なことについて寺澤委員の方からいろいろ御質問がございましたが、私はこの恩給法そのものについて大変勉強不足なので、総務庁長官にもいろいろお伺いしてみたいと思います。
 御承知のとおり、この恩給法は大正十二年に制定され、それが現在に至るまで恩給法の改正という形をとって引き続いて存続している法律であります。
 大正十二年に恩給法が制定されたいきさつとしては、一番最初に明治八年に陸軍武官傷痍扶助及ヒ死亡ノ者祭粢並ニ其家族扶助概則ということで陸軍軍人に、次いで海軍に対しても、やがて文官に対しても拡大適用されてきた。この給付制度を統一、総合して大正十二年に恩給法が制定されたというような経過であると思います。
 そうしますと、大正十二年に制定されたときの恩給制度は、大日本帝国憲法のもとにおいて、同憲法の十条、「天皇ハ文武官ヲ任免ス」という規定に基づいて、天皇の任命人権によって任命された天皇の武官、文官に対する諸給付を行うということを前提につくられていると思います。すなわち、恩給法という法律は、先ほど寺澤委員もお話しになりましたが、恩給という字を見てもわかるとおり、天皇親政を補助した官吏に対する天皇の恩恵と慈愛のもとに制定された法律であると言えると思います。
 しかし、現行の日本国憲法のもとにおいては、御承知のとおり、公務員に関し、十五条一項では「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。」、二項において「すべて公務員は、全体の奉仕者」である、こういうふうな憲法の規定になっております。現行憲法のもとにおける公務員の地位は主権者である国民によって任命、罷免される地位にある、そしてその職務内容も国民全体に奉仕するものである、こういうことになっております。
 そうすると、現行の恩給法は大正十二年に制定された恩給法の改正という形をとってはおりますけれども、明治憲法下における恩給法の制度趣旨と現憲法下における恩給法の制度趣旨は根本的に異ならなければならないと私は考えるのでありますが、総務庁長官の明治憲法下における恩給法についての所見、それから現行憲法下における恩給法の制度趣旨、目的についての所見、この両者の異同について御所見があれば伺いたいと思います。
○国務大臣(小里貞利君) 恩給法の長きにわたるいわば起伏のある歴史を今お聞かせいただきながらお尋ねいただいたところでございますが、相当年限公務に従事した者で公務による傷病等により退職した者、あるいはまた公務により死亡した者に対する国の補償的な措置という恩給制度の基本的な性格は戦前においても現在においても同様である、こう思っております。また、それにふさわしい処遇を行うという恩給法の趣旨、精神は今日まで引き継がれているものと、さように思っております。
 しかしながら、ただいま先生も若干お触れになりましたように、給付の種類、内容等についてはその時々の社会的あるいは経済的条件に影響されてきているところであります。特に戦後におけるもろもろの制度の画期的な変革や経済情勢、社会情勢の著しい変化は恩給制度にも反映されておりまして、個々の事項の取り扱いにつきましては必ずしも戦前そのままの姿となっていないし、また最低保障制度等、新たな制度の創設なども行われているところであります。
 したがって、現在の恩給制度は、戦前からの恩給の基本的性格を踏まえつつも、今日に至る社会経済情勢の変化を反映したものとなっていると判断をいたしております。
○猪熊重二君 ただいま総務庁長官の御答弁がありましたけれども、この点については私はまだ異論がありますが、もう少し勉強してからまた後にお伺いさせていただきたいと思います。
 次の質問に移ります。
 昭和六十一年六月十日、臨時行政改革推進審議会の答申において、「今後における行財政改革の基本方向」と題する中の「行政施策等の改革」、その中の「社会保障」、さらにその中の「年金」の項目で年金行政施策の改革に関してこの答申はこういうふうに述べております。「恩給制度については、年金制度改正とのバランスを考慮して、必要な見直しを急ぐとともに、引き続き新規の個別改善は行わないこととする。」という答申がなされております。
 総務庁にまずお伺いしたいのは、今の答申の中で、年金制度改正とのバランスを考慮して必要な見直しをしたらどうだ、こういう提案ですが、この昭和六十一年の改正から以降、現在に至るまでに必要な見直しがあったのかなかったのか、あったとすればその概要を御説明願いたい。
○政府委員(桑原博君) 恩給制度におきます先生御指摘の点でございますけれども、年金制度改正とのバランスを考慮した恩給制度の見直しにつきましては、その内容について鋭意検討を行ったところでございます。その結果、恩給制度は国家補償的性格を有すること、その対象者が原則として既に裁定を受けた者であること、それから対象者の大部分が旧軍人という特殊な職務に服した者やその遺族であって極めて高齢であるといったことの特殊性から、制度の基本的枠組みを変更することは適当でないという結論を得ました。
 しかしながら、年金としての機能という面から見れば、恩給も公的年金も共通する側面がございます。これらとのバランスを図るという見地から検討を行った結果でございますけれども、恩給のスライド方式につきましては、従来の公務員給与の改定に準拠する方式にかえまして、公務員給与の改定、物価の変動等を総合勘案する方式、現在行っておりますいわゆる総合勘案方式でございますが、その方式によりまして年金恩給の実質的価値の維持を図るということにいたしました。
 さらに、多額所得による普通恩給の停止制度につきまして、その停止率を従来の三割五分の一律方式から三割五分ないし五割の累進方式に強化したこと、そういうものにつきまして昭和六十二年度から実施をしております。
○猪熊重二君 同じこの答申の中で言われている「新規の個別改善は行わないこととする。」ということについての総務庁の理解と、それから具体的に個別改善の施策の有無について御説明ください。
○政府委員(桑原博君) 新規の恩給改善、個別改善は行わないという意味でございますが、私どもといたしますれば、実はそれまでは受給の対象をかなりいじってまいったといいますか、ふやしてきたということがございます。この検討以来、恩給制度の基本的な枠組みを変更するような新規個別改善というのは行わないということで、昭和六十一年以降行っておりません。
 なお、個々の問題につきましては、それぞれ処遇の改善という形で年額の改定なり手当の増額等を図ってきているところでございます。
○猪熊重二君 ちょっと確認しますと、この答申で言っていることは、新しく制度的に個別的な改善は行わないようにせよということでして、給付の額をしかるべく改善するということはこの中には含まれていないと私は理解しているんです。
 そうすると、今のお話だと、この答申を受けた後、新規に制度的に個別的な改善を行ったことはないという御趣旨でしょうか、どうでしょうか。
○政府委員(桑原博君) 御指摘のとおりでございます。
○猪熊重二君 時間がありませんから一つ質問を飛ばして、恩給法の法律としての形態について伺いたいと思います。
 御承知のとおり、ほとんどすべての法律はまず本則があって、この本則の規定を施行するために附属的な事項を定めたのが附則というふうな形になっております。例えば本則が百条あって、この百条の法律を実際に実施するための付随的な施行日であるとか適用の日時だとか、そういうのを附則で数条ぐらい規定するのが法律の通常の形だと思います。ところが、この恩給法というのは、失礼ですが、読んでもどこまでが法律でどこまでが附則だか全然わからぬ。
 その前に、附則というのももちろん法律の効力としては本則と同じでありますから、本則百条、附則が六条という法律があった場合、この百条も附則の六条も効力としては同じなんです。ただ、一般の法律とすれば、本則が五十条、百条という法律があって、附則はせいぜい数条のものがある、そしてもしこれを変えたときにはほとんど前の附則が要らなくなって改正した改正附則だけが生きている。だから、常に通常の法律の形式とすれば、本則が百条あって生きている附則が数条ある、これが一般的な法律の規定なんだと思います。
 ところが、恩給法は本則は三章で八十二条なんです。これが本則としての法律なんです。しかし、その附則は、附則という名前をつけておりますけれども、今申し上げましたように附則も法律の本則と同じ効力がありますから、この附則で実質的に恩給法と同じような効果を持つ附則がいっぱいあるんです。
 昭和二十八年の改正附則から現在まで、ちょっと数字を読むのもおかしいぐらいなんですが、昭和三十六年、三十九年、四十一年、四十五年、四十六年、四十八年、四十九年、五十一年、五十二年、五十三年、平成七年の法改正ごとの改正附則が生きたままここへ全部ぶら下がっているんです。だから、本則は八十二条だけれども、十何回かにわたる改正附則が何十条という、あるいは百条を超えるのもあったか勘定はしていませんけれども、これだけの附則がずっとある。しかも、この附則は読み飛ばしていいんじゃなくて、本則と同じような、新規の軍人恩給を含めて全部附則に書いてある、こういう奇妙な法律なんです。
 それで、本則に対して附則の方がその五倍、十倍の分量があって、中身は同じなんですよ。このような立法例は私も知りません。絶対こんなおかしな法律はないということまでは言いませんけれども、ほとんどこんな法律はないだろうと思う。
 まして、法律というものは国民に理解してもらうためにつくるものだとしたら、こんな法形式では、失礼だが、私なんかも実際に法律の仕事をしている人間だけれども、どれがどれだか、どこに何があるんだか全然わけがわからぬ法律です。今、法律を平仮名化したりあるいは常用漢字にしようとか、何とかわかりやすく国民に親しみやすい法律にしようと言っているときに、この恩給法という法律はまことに反国民的法律だと、形式がですね。
 それで、私は総務庁長官にお伺いしたい。
 もし今後もこの恩給法のような法律を維持する社会的必要があるというお考えであるとすれば、恩給法という法律の名前も検討されたらどうでしょう、社会保障制度との整合性、統一性も考えて抜本的に規定を変えたらどうでしょう、それから現在の公務員の地位だとか処遇の現状をも勘案した観点から抜本的に改正したら国民のためになると思うんですが、御所見をお伺いして、終わりにしたいと思います。
○政府委員(桑原博君) 先生御指摘のように、恩給法は大変難解であるという御指摘を受けております。特に片仮名の法律でございますので、私どもも最初入門するときはなかなか難しいことでございます。
 現在の恩給制度は、何遍も申し上げますように、大正十二年に恩給法が制定されてからさまざまな変遷を経まして、今日まで幾多の法改正の積み重ねによりまして現在の形になったものでございます。その結果、大変複雑なものになったことも事実でございます。
 しかしながら、恩給受給者の大宗を占めます旧軍人関係につきましては、そのほとんどすべてが昭和二十八年以降の法改正の経過規定により逐次受給範囲が拡大し受給するに至ったものでございまして、法改正の経過規定により受給している者が多数存在しているところでございます。これらの制度的経過を完全に整理し新たに組み立てるというのは大変困難なことであり、非常な労力がかかることも事実でございます。
 それから、今日では法律上の恩給公務員が現職者としては存在するわけではございません。それによりまして、規定を整備した後の法改正というのがどれだけの実益を見込めるかということについても若干の疑問がございまして、そういうような理由から、現時点では抜本的なといいますか、新たに恩給法というのを立て直すというのは極めて難しいことだというふうに考えております。
○猪熊重二君 終わります。
○瀬谷英行君 私は、この恩給法の改正というのは非常に話が古いので、果たしてこの金額が妥当なのか妥当でないのかという判断のよりどころがわからないわけです。だから、結局は今の時代に合わせてこのぐらいがいいじゃないかというアバウトでもって決めざるを得ないだろうと思うんです。
 そこで、軍人恩給についてちょっと私もお伺いしてみたいと思うんですけれども、大将、中将くらいになりますとそう簡単には行けない位なんです。だけれども、下の方を見ますというと兵まで書いてあるわけですね。兵が百三十七万四千三百円。私の記憶では、陸軍の二等兵というのは月給が五円五十銭だったんです。その五円五十銭の月給は今や仮定俸給年額百二十七万幾らということですから、これだけを取り上げてみても根拠がいいとか悪いとかということはこれまた何とも言いがたいわけですね。だから、そういう意味でこれはやむを得ないことだろうと思います、大ざっぱに言って。
 しかし、例えば兵というふうにありますけれども、兵というのは大体四、五年すれば大概下士官ぐらいに階級が昔は上がっちゃっているんです。これを見ますと、兵の階級がまだ残っているんだろうかというふうな疑問を感じたんですが、兵としての該当者というのはあるんですか、お伺いします。
○政府委員(桑原博君) 実は恩給を受給します場合には最短恩給年限というのがございます。それには実際に勤務した年限と加算年とが加味されまして、恩給年限に達すれば恩給を支払うということになっております。
 今次大戦におきましては、ある一定の段階で戦争が終わって、その段階で皆さん退職をなさったわけでございまして、大変な激戦地に行かれた方々の中には、非常に短い実在職年ながら激戦地に行かれたということで恩給年限に達している方がいらっしゃいます。そういう方々の中には実際に兵の段階で退職をしたということになる方がいらっしゃる。数とすれば、今ちょっと手元にございませんけれども、かなりの数の方々がいらっしゃるはずでございます。
○瀬谷英行君 担当者の方にしてみても、かなりの数というところで正確な数字は把握できないだろうと思うんですね。
 また、種類からいっても、昔は公務員と言わないで官公まという言葉を使いました。その官公まという名称から、軍人だって随分名前が変わってしまっているわけですね。場所だって、これまた内地でもって年数がある程度かかってその年限に達した人と、それから戦争が間にありましたから、戦争となると外地に行った人だっていろんなところに行っているわけです。激戦地もあれば、鉄砲を撃たずに終わってしまったところもあるし、いろいろさまざまなわけですね。
 だから、これを判断するのは非常に難しいだろうと思うんですよ、実際問題として。だから、こういうような判断は、いわゆる弾の下をくぐってあるいは命を多くの者が失ったような場所と比較的のんきに暮らした場所と、これまた随分千差万別だろうと思うんですね。そこにいろんな格差をつけて仮定俸給を決めるということになると、これもまた大変難しい作業だろうと思うんですけれども、よくこういうふうに仮定俸給なんかを決められたものだというふうに私も思うんです。
 今後、これは時代の変遷と同時にますます昔の物語になるので、その昔の物語がいいか悪いかということの問題を提起されても、こちらの方も何とも言いようがないということになるわけです。だから、結局は大ざっぱなところ、まあこの辺でいいかというところに落ちつかざるを得ないと思うのであります。失礼な話だけれども、決め方としてはそういうふうに大ざっぱに決めざるを得なかったんだというような判断に基づいていると理解をしてもよろしいのかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
○政府委員(桑原博君) 先生十分御承知のことだと思いますけれども、ただいま御指摘のありました戦地勤務等危険性が大変高いところ、それから特殊性のある勤務等につきましては、加算という形で、一カ月過ごしたことを三カ月にカウントする等々の措置によりまして延ばして、年限にそれを反映させるという方式をとっております。
 普通恩給の年額の計算方法は、在職年が最短恩給年限の場合に、兵、下士官にありましては十二年でございます。准士官以上につきましては十三年、これを最短恩給年限というふうに言っておりますけれども、その場合には仮定俸給年額の百五十分の五十、三分の一相当額、これを年額にしております。これを超える在職年一年につきまして仮定俸給の百五十分の一ずつを加えていくという方式でございまして、一年ごとというこの年限でもって調整をするというやり方で計算をさせていただいております。ただ、そういう計算をいたしましても、普通恩給の場合には大変低額の恩給が多うございます。したがいまして、この計算による恩給年額が最低保障額として設定された一定額より低い場合には最低保障額を支払うというやり方をとっております。
 ちなみに、普通恩給の最低保障額でございますけれども、実在職年が最短恩給年限以上のいわゆる長期在職者、実際に十二年以上勤めた方でございますが、その方にありましては年額で百十二万二千円、実在職年が最短恩給年限未満のいわゆる短期在職の方々につきましては、在職年が九年以上あった場合には八十四万一千五百円、六年以上九年未満の場合には六十七万三千二百円、実在職年が六年未満の場合には五十六万一千円ということで最低保障額を設定いたしまして、計算値で出てきた年額がこれ以下の場合にはこの金額を支給するということにいたしております。
○瀬谷英行君 該当者の平均年齢が七十九歳というふうに伺いましたけれども、平均年齢はますます上がるだろうと思うし、新しい該当者は出てこないという気もいたします。この軍人恩給というのは、みんながみんな百まで生きるわけじゃないだろうし、そうすると一体いつまでこれが続くものなのか、適当なところで打ち切ってしまうものなのか、その辺はどういうふうになさるお考えなのか、ちょっとお伺いしたい。
○政府委員(桑原博君) ただいま先生御指摘のように、実は今回の予算の中でもお願いしている受給者の数でございますが、前年に比べて五万三千人ばかり減るという前提で予算を組ませていただいております。
 実際に恩給の受給者は大体九万人程度亡くなるわけでございます。ただ、そのうち御遺族、特に未亡人には扶助料が給されるということになりまして、その方々が新たな受給者として生まれてくる。亡くなる方々は九万人程度でございますけれども、実際に恩給受給者の減というのは五万三千人程度ということでございます。これからなお高齢化していくに従ってその数字も動くかというふうに考えております。
 ただ、予測はなかなか難しいところでございますけれども、この受給者をもとにある一定の考えに基づいて推計をいたしましても、あと十年ぐらいで受給者の数が大体百万人程度になるというふうに考えております。
 恩給につきましては、この恩給を生活のよりどころにされている方が多数おられるわけでございまして、現時点で恩給制度の先行きについて云々するのは適当でないというふうに考えておりますので、その点につきましては今後さらに時間が経過した段階で御議論をいただければというふうに考えております。
○瀬谷英行君 終わります。
○吉岡吉典君 私がお尋ねしたいことの幾つかは既に同僚議員からの質問で答えがありました。再確認の意味で最初にお伺いしたいのは、ただいま述べられました提案理由説明の中で、最近の経済情勢にかんがみてこういう改正を行うんだとおっしゃっていますが、経済情勢というなら、物価上昇というのが最大の要因に当然上がるべきだと思いますけれども、物価スライドという点は余り重視されていない改正になっているという問題です。
 先ほどの答弁だと、これはよくよく検討した結果こういうふうになったということだと思います。長官、それで経済情勢等にかんがみた改正案だというふうに言えるのか、私は疑問を持ちながら答弁を聞きましたが、いかがでしょうか。
○国務大臣(小里貞利君) 先ほども若干お答え申し上げたところでございますが、くどいことを申し上げるようでございますが、恩給の改定に当たっては、従来からその時々の社会経済情勢等を勘案しながら改善指標を立てて採用してきた。昭和六十二年度から公務員給与の改定率や消費者物価の動向等の諸事情を総合的に勘案するいわゆる総合勘案方式によってまいりました。しかも、それは原則的に定着した一つの方式であります。現時点でこの方式を変えなければならないような社会経済事情の変化があったとは考えられない、そういう一つの判断に立ったものでございます。
○吉岡吉典君 私はやはり物価上昇に見合わないということが恩給を頼りにしている人から見ればいろいろあると思いますので、そうはっきり断定的におっしゃらないで、今後もあり得ることを大いに研究課題として受けとめていただきたいということを最初に要望として申し上げておきたいと思います。
 私はきょうは幾つか恩給そのものに関連してお伺いしたかったんですが、いろいろ論議もありましたので、戦後の恩給法の運用というか実施に関して幾つか私が理解しがたい問題を抱えておりますので、まずそちらの方をお伺いしたいと思います。
 一つは、朝鮮戦争中の一九五〇年十月十七日、朝鮮海域の永興湾で機雷掃海中に触雷して公務死し、一九七九年に叙勲を受けている海上保安官の中谷坂太郎さんの恩給問題です。
 最初に確かめておきますが、中谷さんが叙勲を受けていることは間違いないかどうか。叙勲されるぐらいだからまじめな方だったと思いますが、その点も含め、叙勲の理由とあわせて報告をお願いします。
○説明員(阪本和道君) お答えいたします。
 御質問の方につきましては、昭和三十九年一月七日の閣議決定に基づきまして、今次の戦争に関する勤務に従事し、これに関連して死没した軍人軍属及びこれに準ずると認められる者として戦没者叙勲の対象とされているところでございます。
○吉岡吉典君 中谷さんが。
○説明員(阪本和道君) 中谷さんでございますが、昭和五十四年九月二十七日発令の海上保安庁職員七名に対する叙勲のうちの一人としまして、戦没者叙勲として発令されてございます。
○吉岡吉典君 短い時間で質問しているんだから質問に答えてくださいよ、よく聞いておって。今あなたは全然別のことを答えていますよ。
 今、叙勲の確認がありました。私はまじめな人だったと思うが、理由等もお伺いしたんですが、それはおきましょう。
 恩給を受ける資格があったお方です。私の知るところでは、両親もあり、中谷さんは大変まじめなお方で両親に仕送りもしていた。その人が一九五〇年亡くなられた。当然、私は恩給の資格があると思います。ところが、私が調べたところでは、中谷さんは恩給を受けておられないというふうにしか判断できない状況です。申請そのものがなされなかったことによるものではないかというように思いますが、恩給の支給は行われたか行われていないのか、事実関係をお聞かせください。
○説明員(津野田元直君) お答えします。
 中谷坂太郎さんの恩給につきましては、海上保安庁の現有の記録によりますと請求がなされておりません。
○吉岡吉典君 請求がないと恩給が支給されないということになるだろうと思います。しかし、そうだとすると、一体どうして海上保安庁の業務で公務死した人に恩給が出ないのか。申請がないからほったらかしていたのかどうなのか。そうだとすれば、当時の海上保安庁は非常に不親切だったということにもなるわけですが、しかしこれには私は非常に深い理由があったと思っています。
 恩給の申請をさせて、こういう死亡事故があった、公務死があったということを世に知られたくなかった、こういう事情があったと思います。それは「海上保安庁三十年史」にもちゃんと書かれている事件でありますが、中谷さんが当時、海上保安庁が秘密裏に編成した特別掃海隊に参加して、アメリカと一緒になって朝鮮戦争に参戦し、そこで機雷掃海中に触雷、死亡した、こういうことですね。憲法にも海上保安庁法にも反する朝鮮戦争参戦による戦死だった。こういう事件が起きたということは何としても秘密裏にしておきたかった、これが私が四十年近くこういう性質の問題を調べてきての結論です。
 それで、どういう措置がとられたか。叙勲だって二十九年たってから一九七九年に行われているというのもまことに不思議な出来事だと言わざるを得ないわけです。かつて私はこの点も含めて質問主意書も出したことがあるし、内閣委員会で取り上げたこともありますが、一切わからないという答弁でありました。これはそういうふうに秘密裏にしておきたかった。そのかわり、当時この人に対しては日米間でいろいろな交渉があって、総司令部、GHQが弔慰金を贈るということで解決された。
 ある本によると、GHQが四百万円、現在の額だと二億円という額の弔慰金を贈った、そのかわりこれは黙っておれということになったと書かれております。アメリカの国防総省日本課長であったジェームズ・アワー氏も、この戦死に関連して、総司令部公安局の者がその戦死者の家庭を訪問し、その父親に補償金を支払ったとちゃんと書いております。その額が四百万円、現在なら二億円に上るという本もあるわけです。
 そういう本が出ていること、これは海上保安庁、御存じでしょう。
○説明員(津野田元直君) ただいま先生御指摘の文献でございますが、私どもはそういう文献につきまして承知をしておりません。また、その弔慰金なるものの支払いがあったかどうかにつきましても私どもでは確認ができません。
○吉岡吉典君 この弔慰金はどこで支払われたか。この授与式は海上保安庁の第六管区海上保安本部航路啓開部長室で行われたということまで書いてあるんですよ、何にも知らないという答弁をいまだに続けようという態度は私はまじめでないと思いますよ。
 この戦死の事態は、朝鮮戦争当時ならいざ知らず、「海上保安庁三十年史」にも長々と、永興湾で起きた事件だということまで書かれているわけですよ。そして、叙勲まで行われた今、何もわからないと。古い国会の速記録を私読んでみましたら、古い時期には総理大臣も防衛庁長官も何にも知らないという答弁をしています。何も知らないことはない。僕は四十年近くこういう問題を調べました。私が最初こういうものの調査結果を本に書いたのは一九六六年です、ここにも持ってきていますけれども。その当時でもこういうものを調べれば幾らでも明らかになったわけです。
 叙勲だけはやった。叙勲の理由はどういう理由ですか。
○説明員(阪本和道君) 終戦後のいわゆる機雷の掃海業務中の死亡につきましては、当時の取り扱いといたしまして戦死と同様に取り扱うということがなされております。それに基づきまして、先ほど申し上げました閣議決定に基づいて戦没者叙勲が発令されたものというふうに理解しております。
○吉岡吉典君 戦没者叙勲と言いますけれども、第二次世界大戦中の戦死と違って、朝鮮戦争中の戦死ですよ。それを第二次世界大戦中の戦死と同じような扱い方をしたなんという答弁は、これは通用しませんよ。それもなぞはあるんです。私はずっと調べてきましたから、聞きましたよ。
 この叙勲はいかに人に気がつかれないようにやるかということで四苦八苦しながら行われた叙勲だったということを私は聞いています。だから、官報に発表されたのを見ても、そういう事件での叙勲だということは全然わからない、だれも気がつかない、そういう発表の仕方になっています。これは憲法に反する朝鮮戦争参戦であっても、御本人は犠牲者であることは間違いないわけですよ。そういう人を、何が起きてどうだったかわけがわからないようにすることは問題だと思いますよ、今の答弁にしても。
 わからなかったことじゃないんです。こんなにきちっと書いた本が出ているんですよ。しかも、その項の序文はこの当時の責任者である大久保さん自身が書いた本の中で書かれているわけですから。そういうことなのに、知らないと言って逃げようというのはよくない態度です。僕は犠牲者に対してもよくないと思います。
 いずれにしろ、こういう経過を経て、当然もらうべき資格を持っていたと思う人への恩給が実施されていないということが起こっているわけですね。恩給法の精神からいって、そういう形で恩給申請を抑えるをいうことはどういうことですか。長官、どう思いますか、こういうケース。
○政府委員(桑原博君) 恩給の制度上は、恩給の申請はそれぞれの任命権者といいますか所属長を経由して申請されて出てくる、それにつきまして恩給局長がこれを裁定するという規定になっております。
 私どもといたしましては、恩給の制度にのっとって適正な申請が出てきた場合、これを適正に処理する使命を負っております。恩給の制度がそれぞれの任命権者において的確に運用されているというふうに信じておりますので、できますればその線に沿って今後とも進めてまいりたいというふうに考えております。
○吉岡吉典君 いずれにしろ、その額は大きい額ですが、アメリカの弔慰金で恩給権はここで行使できないようにされてしまった。黙らせられたわけですよ、本にも書いているように。戦後、恩給をめぐってこういうことがあったということは長官も念頭に置いておいていただきたいと思います。
 きょうは恩給法ですから、私はこれ以上ここでは深入りしないで、長官にも問題提起しておきますが、朝鮮戦争のときの日本の戦死者というのは中谷さん一件じゃないんです。たくさんの戦死者が出ている。調達庁が当時公表した文献によりましても、この人数は死傷者三百八十一名、うち死亡者四十九名、こういうふうに書いて、内訳もかなり詳しく調達庁史の中には書かれているわけです。そういうのが人に気がつかない形で確認はされているわけですけれども、こういう朝鮮戦争下の日本の参戦ということ、その協力の実態というのはやっぱり今明らかにする必要があると思います。
 一九七九年に突如として二十九年ぶりに叙勲が行われた。時あたかも旧ガイドラインが取り結ばれたときです。私は因果関係があったと思います。今またガイドライン、周辺有事だ、朝鮮半島をめぐってどうだこうだということが論議されているときだけに、この問題はほうっておかないで、やはりきちっとしなくちゃいけないと思います。朝鮮戦争に日本がどういうふうに協力したかというのは、これは防衛庁の幹部の論文なんかもまとめられてどんどん出ているんですよ、最近では。ここへ来ると何にもわからない。こういう当時の責任者が書いた本さえも知らないという答弁がまかり通ったのではだめですよ。長官、どう思いますか。
○国務大臣(小里貞利君) 議員が相当長きにわたりまして注意深く精査をしておいでになったお話をお聞かせいただきました。大変注意深くお聞かせいただいたところでございます。
 なおまた、私どもの対処の基本としては、先ほど局長が申し上げましたように、任命権者の適正な、そして正確である申請をまず基本にして処理いたしてまいっておるところでございますので、御理解いただきたいと思います。
○吉岡吉典君 時間が来ましたので、これはもう答弁いただく時間がないかもしれませんけれども、私は戦後の恩給法の運営というか実施の過程でもう一つ、これも取り消すことのできないものですから、どう考えるかということで念頭に置いていただきたい問題があります。
 恩給法では、「死刑又ハ無期若ハ三年ヲ超ユル懲役若ハ禁錮ノ刑ニ処セラレタルトキ」には資格を喪失するということになっております。ところが、国際軍事裁判で判決を受けた人は国内法による有罪でないから犯罪者とみなさないという理由で恩給が復活させられているという問題についてであります。
 私は戦犯の遺族といえども憲法で言う生活の保障は必要なことだと思っております。かつてもそういうことで提起したことがあります。しかし、恩給法の条文にこういうことがあるのに、国内法による犯罪者と国際裁判による犯罪者は区別して恩給を支給するという措置をとったことは、国際的には理解されがたいことだと私は思います。当時の東京裁判初め国際裁判の判決は日本を侵略戦争をやったと断定し、そして平和に対する罪、人道に対する罪で罰し、日本はサンフランシスコ平和条約第十一条でこれを受け入れた。これはもう反論することも何もできない国際的取り決めたという答弁が国会でも繰り返されている問題であります。
 ところが、その受け入れた犯罪は犯罪とみなさないという態度を日本がとれば、国際的には日本はあの戦争についての責任を何にも感じない国かというようにしか受け取られないと私は思います。
 この問題は、後にA級戦犯であった人々を靖国神社に合祀したことが日本の戦争に対する反省のなさとしていまだに国際的な批判を受けているとともに、我々がそういう措置をしたことはどう考えるかということを、二十世紀を締めくくり二十一世紀を迎えようとする今、考える必要のあることだと私は思っております。考えていただけるかどうかということだけ長官にお伺いして、質問を終わります。
○国務大臣(小里貞利君) 法制上の形についての大筋はお話しいただいたとおりであろうと思うのでございますが、いわゆる戦犯は連合国等によりまして裁判によって処刑されたものであり、一般の刑事犯とはその性格を異にする、これが従来の政府の解釈でもございます。
 これらの戦犯につきましては、昭和二十七年の平和条約の締結後におきましては、国内法上のすべての扱いにおいて何ら他と区別されることがないとされておりまして、いわゆる恩給法における戦犯者に対する取り扱いが平和条約第十一条の規定に反しているとは考えられない、それが従来の政府の判断でございまして、さようお答え申し上げる次第でございます。
○永野茂門君 自由党の永野であります。
 恩給法改正に関する直接的な事項を一問総務庁の方にお伺いし、引き続いて非常に関連のある周辺事項について総理府の方に時間のある限り御質問申し上げたいと思います。
 第一は、私は参議院のこの総務委員会がまだ内閣委員会と称していた時代のうち大部分、本年を入れて約十年間内閣委員会でいろいろやっておりましたけれども、その間に毎年毎年この恩給法の改正について審議がありました。その都度政府の方から強調され、また委員の方から確認をされてきたのは、言わずもがな、本日も大変に強調されております恩給制度の本質は国家補償であるということでありまして、そしてまた具体的に毎年毎年改善が行われ、毎年恩給受給者の処遇をどのように改善するかという観点からこの問題が取り扱われてきた。極めて適切なことであり、今後ともこういうことが続くということを熱望しお願いするものでありますけれども、本年度、具体的に政府はこの国家補償という本質を適用したかということを承りたいわけであります。
 その中で、特に何人かの人が触れられましたように、恩給年額は一般的に一・一九%、七十四号俸以上の人は〇・三八%の引き上げということでございますが、同僚の寺澤委員の指摘にもありますように、物価上昇率との比較等を勘案しますと、一体どういう基礎で今申し上げました引き上げ率というのは決定されたんだろう。
 確かに総合勘案方式というのはわかるわけでありますけれども、総合勘案というのは大変にあいまいになってきやすいものであります。例えば物価上昇率は何%ぐらい考慮するんだ、あるいは公務員給与の上昇率は何%ぐらい考慮するんだ、あるいはさらに政治的考慮というのはこういうことなんだと、こういう意味で政治的考慮、全般的な考慮でこうなるんだというような計算の基礎が何かあるはずでありまして、全くなければこれは腰だめであって、総合勘案方式というのは悪く言えば勝手に決められる。そんなことはもちろんないわけでありますけれども、そういうことさえも推測できますので、どのように計算されたのか、その基礎をまず第一に伺いたいと思います。
 それと同時に、去年もそうでありましたけれども、六十歳以上の短期在職の旧軍人の仮定俸給の改善は一号ずつ上げてきているわけでありますが、今後も継続していただけるのか、そしてどういうように今後考えておるのか、それはなぜかということも一緒に承りたいと思います。
○政府委員(桑原博君) 平成十年度の恩給の改善につきましては、恩給が国家補償的性格を有するものであるという特殊性を考慮しまして、公務員給与の改定、物価の変動等を総合勘案し、この件につきましては後ほどお答えいたしますけれども、各種恩給年額を一・一九%引き上げる。さらに、国家補償という色が大変強いものといたしましては、戦没者遺族、傷病者遺族等に対し処遇の改善を図るということで、なるべく処遇が改善できるように努めてきたところでございます。
 先ほど委員御指摘の一・一九%の中身でございますけれども、必ずしもしっかりした方程式があって自動的に出るものではないということでございます。ただ、実は公務員給与の改定率につきましては、大半の場合には前の年度といいますか、予算編成を待たずに人事院勧告に基づきまして公務員の給与改定率というのは通常は出ているわけでございます。そういった意味で、予算編成時にはその数字がございます。今回の場合には行政職俸給表の平均改定率の一・〇一%というのを一つの基礎にしております。
 それから、消費者物価の動向でございますが、実は予算編成をする段階では必ずしもまだ確定値が出ないわけでございます。公的年金の物価連動につきましては確定値で物価連動しておりまして、私どもが消費者物価の動向と言っているのは、予算編成時の見込み値ということで計算をさせていただいております。必ずしも確定値と見込み値というのはいつもぴったり合う場合だけではございません。
 今回の予算編成のときに見込みました消費者物価の見込み値は一・九%ということでございます。実際の確定値はこれより若干低い数字だというふうに考えております。この両方を見込みまして、諸般の情勢を勘案し、従来と同じように実質的な価値を維持できるというふうに判断されたところで今回の改定率の一・一九%というものを出させていただいたわけでございます。
 七十四号俸以上につきまして一年間〇・三八%の改定率といたしましたのは、国家公務員給与におきましては指定職相当の者につきまして一年間ベアが凍結されたという事情に基づきまして、実はベア率の公務員給与部分をカットしたということでこういう数字が出たわけでございます。
 もう一点お尋ねの短期在職の旧軍人に係る仮定俸給を今回一律一号俸引き上げたことでございますが、このことによりまして長期在職との格差があと二号俸あるのも事実でございます。今後さらに短期在職者について号俸の切り上げ是正による処遇改善をとるということが適当かどうかということにつきましては、関係者の御意見も十分聞きながら、恩給制度内のバランスを十分考え、平成十一年度以降の予算編成過程において検討させていただきたいというふうに考えております。
○永野茂門君 今の御説明である程度わかりましたが、そうすると、この計算の基礎と申しますか、勘案する場合に公務員給与のアップ率の方が重視される、七割から八割ぐらいのウエートを置いて考えられる、こういうように理解してよろしゅうございますか。
○政府委員(桑原博君) 必ずしも何割という形で固定をしているわけではございませんけれども、先生御指摘の範囲の中だろうというふうに考えております。
○永野茂門君 では、次の質問に移らせていただきます。
 次は恩給欠格者に関することでございますが、とにかく私が議員になって以来、この恩給欠格者の陳情といいますか、これも毎年大変なものがあります。御承知のように、途中で平和祈念事業法によっていろんなことが行われるようになりまして、若干陳情は緩和されてきたというように思います。しかし、なお陳情は続いているわけでありまして、私が昔軍隊にいましたころの部隊、私どもは中支にいたわけでありますが、中隊の人たちの希望はもう少し何か色をつけてくれないかということが現在も依然として非常に強いのであります。
 そこで、まず平和祈念事業法によって実際に慰藉の行為を何名中何名ぐらいおやりになったのか、それからそれに対して恩欠者はどういうように受けとっておるのか。私は大体感謝している人が多い、そしてこれで結構です、本当に国から褒めてもらいました、感謝してもらいましたと思っている人が多いと思いますが、そのような状況についてどのように把握していらっしゃるか、まず承ります。
○政府委員(榊誠君) 恩給欠格者に対する慰藉事業の実施状況についてまず一点ございますが、慰藉事業の内容は勤務地あるいは勤務年数によって現在三つに分かれてございます。この慰藉事業は平成元年度から始まったわけでございますが、昨年暮れまでに申請件数四十万三千件ございます。
 内容別に数字をちょっと御説明いたしますと、一つは外地勤務経験があり加算年を含む在職年が三年以上の方、この方に対しましては、書状、銀杯、あと高齢者の順でございますが慰労の品というものを贈呈しているわけでございます。書状につきましては三十五万一千件、銀杯につきましては三十四万九千件、慰労の品につきましては二十三万七千件贈呈してございます。
 次に、外地勤務経験があり加算年を含む在職年が三年未満の者であって実在職年が一年以上の者、この方々に対しましては、書状、銀杯を贈呈しているわけでございますが、この件数といたしましてはそれぞれ四千件でございます。
 それからもう一点は、内地勤務の経験だけがある方でございまして、年数が加算年を含めまして三年以上の方、この方に対しましては書状を贈呈しているわけですが、これまで七千件の贈呈を行っているところでございます。
 それから、この事業に対する恩給欠格者の受けとめ方につきましては、私ども必ずしも統計をとっておるわけではございませんが、この事業をやっております平和祈念事業特別基金の方に先生が先ほど言われたような趣旨のお手紙なりはがき等をいただいているというふうに伺っているところでございます。
○永野茂門君 状況はよくわかりました。
 いずれにしろ、一年足りないとか一カ月足りないとか、恩給受給者と恩給欠格者とはそういう差で国家補償を受けるか、そうじゃなくて感謝のしるしだけをいただくという、これは非常に格差が大きいわけであります。陳情の大部分は、何らかの慰労金といいますか謝意を表する慰藉のための十万円でもいいんだ、その程度で結構だ、心持ちだけで結構なんだけれども、そういうものをいただくと胸がすっとするんだがなという希望が多いことは確かなんですね。
 これについて可能性を承っても余り意味がなさそうなので、そういう希望が強いということは今後の施策において勘案をしておいていただきたいということを本問についての結末といたして、総理府に対する第一問は終わらせていただきます。
 第二問もこれと非常に似たような問題でありますけれども、旧日赤看護婦でありますとかあるいは旧陸海軍の看護婦は軍人とほとんど変わりない勤務をやっているわけです。軍人と変わりないほど危険な業務を、そしてまた大変に困難な苦しい業務をやっておるわけであります。たまたま軍人でなかったというだけで、衛生兵とどちらがきつい勤務をやったのか、あるいは戦闘状況の中でどうしたのかというようなことはどっちがどっちとも言えないわけでありますが、一方は軍人恩給の対象になっておるわけであります。
 最近とにかく慰藉の制度ができまして、これには両者とも大変に感謝しているようでありますけれども、恩給制度との関連を見ますと大変に差がある。こういうことで、昨年三月の旧内閣委員会におきまして前官房長官は、そういうものに対する何らかの是正措置、委員会でもその要望をする人が多かったわけでありますが、それに対してとにかく旧軍人に準じたような形でやってあげるのが一番望ましい、そしてまた早急に検討を加えてぜひともそういうようなことを実現するように努力したいと官房長官みずから述べられましたし、そのときの政府委員は榊さんでしたか、ちょっと忘れましたけれども、同じような答弁をしていらっしゃいますが、その後の本件に関する検討状況はどうでしょうか、これを承ります。
○政府委員(佐藤正紀君) 先生の御指摘の日赤救護看護婦あるいは旧陸海軍の看護婦につきましては、兵役義務のない女性の身でありながら軍の命令によりまして戦地で戦傷病者の看護に当たられたという極めて特殊な、それから長年の御労苦に報いるために、昭和五十三年八月に六党合意によりまして、戦地の加算年を含めまして十二年以上の方々に対しまして慰労金を給付するということになったものでございます。
 この慰労給付金はこれらの看護婦の方々の長年の御労苦に報いるという性格のものでございまして、所得を保障するという恩給とは性格を異にするものと考えております。しかしながら、政府といたしましては、この慰労給付金の実質的価値の維持を図るためにこれまでに四回にわたりまして額の改定を行ってきておりますが、平成十年度予算案におきましても消費者物価指数を勘案いたしまして一・八%の増額を盛り込んでおるところでございます。
 なお、平成六年の与党戦後五十年問題プロジェクトの合意で、消費者物価の動向をより適切に反映するようにという合意がなされておりますので、今後におきましても慰労給付金の実質的価値の維持に努力してまいりたいと思っております。
○永野茂門君 質問を終わりたいと思いますけれども、先ほど申し上げました恩欠者にいたしましても、従軍された日赤あるいは陸海軍の看護婦にいたしましても、確かに恩給法の適用を当時において受けるような資格はなかったわけであります。したがって、現在そういうような恩給の範囲の中に入れてもらえないわけであります。しかし、本質的には同じような勤務をやり、同じような危険にさらされ、本当に国のために尽くした方たちでありますので、今後ともできるだけ給付額が少しでも大きくなるように、軍人に準ずるという趣旨は、本当は恩給に近いものを考えた方がいいという趣旨が入っていると思いますが、これは別にいたしまして、今後とも改善に御努力をお願いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
 総務庁長官、何か御所見がございましたらぜひ承りたいと思います。
○国務大臣(小里貞利君) 先生から大変造詣の深いところを幅広くお聞かせいただきまして、十分拝聴申し上げた次第でございます。
○永野茂門君 終わります。
○栗原君子君 新社会党の栗原君子でございます。
 実はここに二年前に新聞報道されたものがございますけれども、この方は韓国人で元日本兵金成寿さんとおっしゃる方であります。日本の厚生省の資料室で、黄ばんだ陸軍戦時名簿の中から、上等兵大立俊雄というかつての自分の名前に出くわしたわけでございます。
 この金さんはビルマ戦線で左足に迫撃砲弾の破片を受け、負傷して後送中、今度は野戦病院で空襲に遭い、右腕を切断。部隊には捨ておかれ、傷口にたかるウジをみずからの手でつまみ出しながら数百キロの逃避行、自力でチェンマイの陸軍病院にたどり着いた、こういった歴史の方でございます。私はこの方から、日本の国籍条項があるばかりに何ら補償されない、こういった相談を受けたことから、きょうは国籍条項につきましてお尋ねをさせていただきたいと思います。
 このように、志願兵としてかつての戦争に参加した人についてでございますが、今日これが国籍によって当時忠誠心があったとかなかったとか、こういうことは言えないということが言えるわけでございます。
 この国籍条項のために恩給の支給を拒まれている旧軍人の人数はどれくらいいるのか、いつどのような調査によってこれらは把握をしているのか、そしてそれらのうち過去に恩給を事実上請求した者の人数はどれくらいになるのか、まずお答えいただきたいと思います。
○政府委員(桑原博君) 旧軍人恩給は昭和二十一年二月以降、連合国最高司令官の指令に基づく法令によりまして、重傷者に対する傷病恩給を除き廃止されました。一方、昭和二十八年の法律により旧軍人恩給が復活いたしましたが、その受給要件として、退職後恩給法に規定する普通恩給を受ける権利を失うべき事由に該当した者は対象外というふうにされております。すなわち、昭和二十七年四月のサンフランシスコ平和条約の発効により日本国籍を喪失した朝鮮半島や台湾出身の元日本兵につきましては恩給受給権が発生しないものとなったわけでございます。
 なお、これらの者のうち国籍条項がなければ恩給受給権が発生すると見込まれる者の数についてお尋ねでございますが、私どもとしてはそういう方々の人数は把握しておりませんし、またそういう形の請求があった者の数につきましても把握しておりません。
○栗原君子君 全く何も把握していないんですね。
 続きまして、仮に現在国籍条項により恩給の支払いを拒否している者に恩給を支払うとすれば、どれくらいの額になるとお考えでしょうか。
 戦後から今日まで旧軍人に対する恩給の支払い総額はどのくらいになっておりますか。
○政府委員(桑原博君) 国籍条項がなければ恩給受給権が発生すると見込まれる者の数につきましては、先ほど申し上げましたように把握できておりませんので、金額につきましてもここでお述べすることはできないわけでございます。
 旧軍人恩給が復活した昭和二十八年から平成八年度までに旧軍人遺族等恩給費として支払った額ということについてお尋ねでございますけれども、その間に恩給制度の変革もございますし貨幣価値の変動もございまして、これを単純に合計することにどのような意味があるかというのは大変難しいところでございますが、そのことを捨象いたしまして単純に各年度に支払った額を累計いたしますと約三十四兆五千五百億円という数字になっております。
○栗原君子君 政府の方では全く把握もしていないということでございますけれども、諸外国ではさまざまな動きがあるわけでございます。それらにつきましての実例を調べたことがあるのか、その結果はどうであったのか、またそれらを調べたことによって担当者の間で議論も重ねてきたことがあるのかどうか。
○政府委員(桑原博君) 欧米各国の年金制度についてはそれぞれの沿革、制度の考え方が異なっておりまして、我が国の恩給制度と単純に比較することは必ずしも妥当だというふうには考えられません。
 各国の状況につきましては必ずしも細部にわたりまして明らかにされているところではございませんけれども、国により国籍の保持を年金受給権の要件としていない国というのもあることも承知しております。
○栗原君子君 二言目には一九五二年のサンフランシスコ講和条約の発効があることによって自動的に資格を喪失したということ空を言っております。
 国籍をサンフランシスコ条約によって強制的に失わされ、恩給受給権を剥奪されるということは日本国の約束違反で、信義にももとるものではないか、こういうことを考えます。サンフランシスコ条約以前のこれらのものに対する支給はどのようになっていたのか、お聞かせください。
○政府委員(桑原博君) 戦前、朝鮮及び台湾に本籍のある者は日本国籍を有していたことから、その限りにおきまして、日本軍人として召集された朝鮮及び台湾出身者については恩給法の適用関係は一般の日本人と何ら変わるところがございませんでした。
○栗原君子君 それでは、ある日突然に受給権が剥奪されたわけですね。そういうことになるんですね。
 そこで、世論のことも大変気になさっているようでございまして、国籍を理由に恩給支給を拒否していることについて国民感情をもって合理化しようとするなら、具体的に世論の動向を調査したことがあるんでしょうかどうでしょうか、いろいろなところで世論のことも言っていらっしゃるんですけれども。
○政府委員(桑原博君) 国籍の問題については、たびたび御答弁もしているところでございますけれども、恩給制度上の一種の約束事の中の一部でございます。世論のことについて言及したこともあろうかと思いますけれども、恩給局でかつてそのような調査をいたしたことはございません。
○栗原君子君 それでは、国際世論の動向については調査したことがございますか。
○政府委員(桑原博君) 国際世論の動向というつかみ方が大変難しゅうございますけれども、新聞、マスコミ等、それから国際機関等で出ております議論につきましては逐一情報を収集し、その内容について理解に努めているところでございます。
○栗原君子君 国連の自由権規約批准というのを一九七九年にしておりますけれども、国籍条項との抵触をどのように検討したのか、それから抵触しないと考えた理由とは何なのか、お聞かせいただきたいと思います。
 七九年に国際人権規約を批准しておりますけれども、規約人権委員会で注意をされていると聞きます。人権規約とこうした今までとってきた態度というのはかかわりがないのかどうか、お尋ねをいたします。
○政府委員(桑原博君) 恩給法の国籍条項が市民的及び政治的権利に関する国際規約、いわゆる国際人権規約B規約第二十六条に反するかどうかということにつきましては、恩給局が解釈権を有しているわけではございませんが、同じく法のもとの平等について定めた憲法第十四条と同趣旨のものと解されるところから、合理的かつ客観的な差を設けるところにつきまして、これを排除するというわけではないというふうに理解しているところでございます。
○栗原君子君 それでは、セネガルのケースについては御存じと思いますけれども、一九八五年に規約人権委員会の見解が出たとき、国籍条項との抵触をセネガルのケースを通じてどのようにお考えになりますか。フランスはこの国籍条項を取っ払っている、日本だけが国籍条項をかたくなに言い続けているということに対してどうお考えでしょうか。
○政府委員(桑原博君) 御指摘のフランス軍の退役軍人であるセネガル人の年金受給権の問題につきましては、その制度が我が国の恩給制度とはかなり異なる制度だというふうに理解しておりまして、必ずしもそのことをもって我が国の恩給法の国籍条項を云々することにはならないというふうに理解しております。
○栗原君子君 同じように戦争に参画させているわけでございますけれども、どう異なるんですか。例えばどういうことが異なったんですか。
○政府委員(桑原博君) 私どもの恩給の制度につきましては、制度発足以来一つの国籍要件というのをずっと掲げた約束事としてきております。
 実は私も必ずしもフランスの制度について十分承知しているわけではございませんけれども、フランスの制度につきましては、我が国の恩給制度だけではなく、例えばほかの制度も中に入れた年金制度というふうに考えられておりまして、私どもが今御審議いただいている恩給というのはその一部分だというふうに我が方は考えております。
○栗原君子君 それでは、ちょっと性格のところに触れさせていただきたいと思いますけれども、先ほど同僚の議員が質問をしておられまして、恩給の性格について答弁の中で社会保障という言葉が出ましたけれども、あくまでも日本の恩給というのは社会保障と考えるんですか。
○政府委員(桑原博君) 私どもの従来の答弁では、恩給の制度は国家補償的性格を持っているというふうに御説明を申し上げております。
○栗原君子君 国家補償的性格でございますね。労務を軍人としてやったわけでございますね。そうするならば、役務の対価と考えることになるのではないでしょうか。仕事の対価、だから国家は終生を約束して戦地に行かせたわけですね。そして、軍人という役務につかせたわけでございますけれども、そうすれば対価とは考えられませんか。
○政府委員(桑原博君) 純粋に役務の対価ということならば、それは給与という形で支払われるのが通常でございまして、恩給の制度とは違う制度だというふうに考えております。
○栗原君子君 それでは、また戻りまして、一九九三年の自由権規約との抵触の関係でございますけれども、この九三年の審査の際、規約人権委員会からコメントで主要な懸念事項として指摘された後、国籍条項の撤廃を少しは考えたのかどうか。さらには、九八年の審査に向けて、ことしは九八年でございますけれども、国籍条項の撤廃を検討しつつあるのか、全くしようとしないということなのか、どうでしょうか。
○政府委員(桑原博君) 恩給法におきましては、大正十二年の同法制定以来、日本国籍の保持を恩給受給権の付与及び存続の要件としております。このことは公務員年金制度としての我が国の恩給制度の沿革及び性格に由来するものであり、制度創設以来今日に至るまで恩給制度の基本的な約束事の一つだというふうに理解しておりまして、現在の時点でこれを改めるということについて結論が出るというふうには考えておりません。
○栗原君子君 それでは、総務庁長官にお伺いいたします。
 一九二三年、大正十二年四月十四日に施行されました恩給法の第九条には、恩給権の消滅事由として「国籍ヲ失ヒタルトキ」とありますけれども、かつて第二次世界大戦時に日本の軍人軍属として戦争に駆り出された朝鮮、台湾の人々は、サンフランシスコ講和条約の発効、一九五二年四月でございますけれども、によって日本国籍を剥奪され、恩給法の対象外とされております。この国籍条項により、過去日本人になされた戦後補償、救済がこうした人たちにはなされずに今日に至っております。
 そこで、総務庁長官にはこの人々に対して人道的な、そして道義的な立場に立って救済の措置をぜひ考えていただきたいと思うのでございますけれども、御答弁をいただきたいと思います。
○国務大臣(小里貞利君) 先ほどからくどくど申し上げておるところでございますが、恩給法の国籍条項は約束事の一つでありますという原則がございます。ただいま議員がお話しになりましたいわゆる人道的、道義的立場に立ってという点につきましては、新たな御指摘、御提言であり、困難な面もあろうと思うのでございますが、慎重に検討してまいりたい、さように思っております。
○栗原君子君 かつて日本の軍人として戦地に出向いて、そして傷害を受けて、ずっとこの間何の手当てもされないまま送っている人たちがまだあると思います。そうした人たちに対して、人権大国日本と言うならば、あるいはまた次の世紀は人権の世紀だとまで言う人たちが識者の中にはありますけれども、それならばここで、もう既に高齢化していらっしゃいますし、このまま亡くなられるということになりましては、やはり私も日本人の一人として大変胸が痛む思いがいたします。
 ぜひとも前向きに検討していただきたいということをお願いして、終わります。
 ありがとうございました。
○委員長(石田美栄君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めます。
 これより討論に入ります。――別に御意見もないようですから、直ちに採決に入ります。
 恩給法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
○委員長(石田美栄君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(石田美栄君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後四時二十三分散会
     ―――――・―――――