第145回国会 法務委員会 第24号
平成十一年八月三日(火曜日)
   午前十時開会
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   委員の異動
 七月二十九日
    辞任         補欠選任
     岸  宏一君     有馬 朗人君
     佐々木知子君     竹山  裕君
     佐藤 昭郎君     井上  裕君
     内藤 正光君     角田 義一君
 七月三十日
    辞任         補欠選任
     森下 博之君     阿部 正俊君
 八月二日
    辞任         補欠選任
     有馬 朗人君     佐々木知子君
     井上  裕君     吉川 芳男君
     角田 義一君     内藤 正光君
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  出席者は左のとおり。
    委員長         荒木 清寛君
    理 事
                鈴木 正孝君
                服部三男雄君
                円 より子君
                大森 礼子君
                平野 貞夫君
    委 員
                阿部 正俊君
                佐々木知子君
                世耕 弘成君
                竹山  裕君
                仲道 俊哉君
                吉川 芳男君
                海野  徹君
                小川 敏夫君
                千葉 景子君
                内藤 正光君
                橋本  敦君
                福島 瑞穂君
                中村 敦夫君
   国務大臣
       法務大臣     陣内 孝雄君
   政府委員
       警察庁生活安全
       局長       小林 奉文君
       警察庁刑事局長  林  則清君
       金融監督庁監督
       部長       乾  文男君
       法務省刑事局長  松尾 邦弘君
       通商産業省機械
       情報産業局長   広瀬 勝貞君
       郵政省電気通信
       局長       天野 定功君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        吉岡 恒男君
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  本日の会議に付した案件
○組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関
 する法律案(第百四十二回国会内閣提出、第百
 四十五回国会衆議院送付)
○犯罪捜査のための通信傍受に関する法律案(第
 百四十二回国会内閣提出、第百四十五回国会衆
 議院送付)
○刑事訴訟法の一部を改正する法律案(第百四十
 二回国会内閣提出、第百四十五回国会衆議院送
 付)



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○委員長(荒木清寛君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 まず、委員の異動について御報告いたします。
 去る七月二十九日、岸宏一君、佐藤昭郎君及び佐々木知子君が委員を辞任され、その補欠として、有馬朗人君、井上裕君及び竹山裕君が選任されました。
 また、去る七月三十日、森下博之君が委員を辞任され、その補欠として阿部正俊君が選任されました。
 また、昨二日、有馬朗人君及び井上裕君が委員を辞任され、その補欠として佐々木知子君及び吉川芳男君が選任されました。
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○委員長(荒木清寛君) 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律案、犯罪捜査のための通信傍受に関する法律案及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案を一括して議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○佐々木知子君 自民党の佐々木知子でございます。
 まず、通信傍受法案につきまして、警察庁に一点お伺いしたいと思います。
 本法案では、傍受令状に記載された通信に該当するかどうかが明らかでない場合、その該当性を判断するため、必要最小限度の範囲に限って傍受ができることとされております。この実施方法としてスポットモニタリングという方法がとられるとこれまで説明されてまいりましたが、具体的にはどのように行われるのでしょうか。この点の運用基準やマニュアル等を定める御予定なのかどうか、その点についてお伺いいたします。
○政府委員(林則清君) 御指摘のように、必要な最小限度の範囲に限って該当性判断のための傍受を行うためにスポットモニタリングという方法、これが一番いいのではないかというふうに考えております。
 その具体的な方法いかんということでございますが、若干御説明させていただきますと、例えば対象とする特定の電話番号あてに電話がかかってまいりました。あるいはその対象とする当該電話から電話がかけられました。そういうときには、その通話がこの法に言う傍受すべき通信、つまり犯罪実行関連等の通信に該当するかどうか明らかでなければ、当該通話の最初の部分だけを傍受して、犯罪実行関連等の通信に該当するかどうかを冒頭だけを聞いて判断するということになるわけであります。
 非常に短ければ短いほどいいわけですが、一定の時間傍受した結果、それが犯罪実行関連等の通信に該当するものと思料されない、違うというときには直ちに傍受を中断する。それが法で言う犯罪実行関連等の通信であるということであれば、これは傍受を継続するということになるわけでありますが、これは違うということで一たん傍受を中断しましたが、その間ずっと通話が行われておるという場合には、場合によったら話題なり通話の当事者が変わっておる可能性もないとは言えないわけでありまして、その中では犯罪実行関連通信等に該当するに至っている可能性も生じておる。そうなりますと、該当性の有無というものが不明になりますので、そのときにはまた再度、それこそスポットで聞いてみる、こういうことになるわけであります。
 犯罪実行関連通信等に該当することから傍受を実は継続しておった場合でも、そこからその話が変わって犯罪実行関連通信等に該当しなくなった場合には、これは当然傍受をやめるということになるわけであります。当該通話が継続する限り、犯罪実行関連通信等に該当するか否かを判断するためにこのような傍受をちょっと聞いてみる。該当するかどうかを判断して、すれば聞く、していないとなったらすぐ切るということを繰り返すということになると考えます。
 警察といたしましては、この法案の本来の規定の趣旨でありますとか国会でいろいろと御議論がなされたところを十分踏まえまして、このようなスポットモニタリングの具体的な方法などにつきましても、国家公安委員会規則あるいは通達等によって厳格に規定しまして、都道府県警察に対して周知徹底し、そしてまた指導もしてまいりたい、そういうふうに考えております。
○佐々木知子君 スポットモニタリングに関連いたしまして、先ほども警察庁から御回答があったようでございますけれども、ある通話の中で傍受すべき通信があった場合、その通話についてはその後も継続的に傍受するのか、それともまたスポットモニタリングに戻るのか、今度は法務省の方にお伺いしたいと存じます。
○政府委員(松尾邦弘君) 今、林局長の答弁にもありましたけれども、傍受すべき通信については、それが内容的に継続している限りは傍受をするということになります。
 ただ、今も話がありましたが、その中で話題が変わることがあります。それで、傍受すべき通信に当たらない会話になりました場合にはこれを一時中断することになります。ただ、一つの通話の中で犯罪に関連する通話が行われたということになりますと、その後中断いたしましても犯罪に関連する通話が再び行われる蓋然性は非常に高いということが言えると思いますので、スポットの時間といいますか、それも比較的短い時間にしてもう一度聞いてみるということで、これは関連があればそのまま今度はまた継続するというような形で傍受が行われていくものと考えております。
○佐々木知子君 消去義務に関してでございますけれども、「複製その他記録の内容の全部又は一部をそのまま記録した物及び書面」に及びますけれども、内容を要約したメモには及ばないことになっております。ただ、このメモにつきましてはその内容を伝達、使用することは禁止されておりますが、使用禁止規定を実効あるものとするために、メモについても消去するような運用を検討すべきではないでしょうか。
○政府委員(松尾邦弘君) 御指摘のとおり、法案の第二十二条第四項の消去義務は、「複製その他記録の内容の全部又は一部をそのまま記録した物及び書面」を対象としております。内容を要約したようなメモにはこれは及ばないということになります。
 このようなメモを含めまして、傍受記録に記録された通信以外の通信については、その内容を他人に知らせ、または使用することが禁止されております。これは法案の二十二条第五項でございます。これを怠った場合は監督者を含め懲戒処分の対象となり、内容の漏えいに及んだような場合は通信の秘密を侵害する罪が成立するということになります。運用上、原則としてこのようなメモは作成しないにこしたことはありませんので、まず作成しないように指導する。仮に何らかの事情で作成した場合にも、捜査機関の組織としての適切な監督によりまして、これを速やかに廃棄するよう運用を徹底していきたいと考えております。
○佐々木知子君 次に、公衆電話でございますけれども、公衆電話についてはだれが利用するかわからず、不特定多数の者が利用する可能性があることから、これを傍受の対象とするのであれば、犯罪に無関係の者の通信が傍受されてしまう危険性がより多いといった主張もなされておるようでございます。ですが、見方を変えますと、公衆電話はだれが使ったかわからないというわけでございますから、まさに犯罪に関係する通信に利用されやすいという面も否定できないと思いますが、この点についてはいかがでしょうか。
○政府委員(松尾邦弘君) この法案によりまして通信傍受が認められますのは、犯人による犯罪関連通信に用いられると疑うに足りる通信手段でございます。単に被疑者が公衆電話を使用しているというだけでは公衆電話が傍受の対象になることはありません。
 しかしながら、特定の公衆電話を使用して犯罪関連通信を行っていると認められるような場合でございます。何らかの事情で捜査結果、ある特定の時間に被疑者がこの公衆電話を使って犯罪関連通信を行うというようなことが証拠上その他で認められるような場合を言うわけでございますが、当該公衆電話による通信を傍受の対象としなければならないケースもまた考えられるところでございます。
 このような場合でございますが、捜査官において被疑者がその公衆電話を利用することを確認した上で、通信事業者の施設で待機する捜査官がその連絡を受けましてその通話のみを傍受するという措置をとることになろうと考えております。この場合には、傍受令状におきまして特定の利用者が利用することを確認した上で傍受を実施することが条件として付されることになるものと考えております。当然、その傍受令状を請求する場合には公衆電話であること等、いろいろな諸状況を説明いたしますが、裁判官がそのような条件を付するということが考えられるわけでございます。
 このような方法によりまして、一般市民の通信が広く傍受されるということがないように運用上もすべきものと考えている次第でございます。
○佐々木知子君 組織犯罪対策三法といいながら、当委員会におきましては専ら通信傍受法にターゲットが置かれて審議されてきた感がございますので、以後、私は他の二法につきまして審議をお願いしたいというふうに考えております。
 まず、組織的犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法案でございますけれども、組織的な犯罪に有効に対処するためには、組織的に行われた犯罪に厳罰をもって臨むことというのが一つの柱であり、もう一つの柱といたしましては、組織的犯罪のインセンティブであります経済的利益の追及、つまり犯罪によって得られた利益を剥奪することが肝要であります。
 国際通貨基金、IMFの推定、これは昨春でございますけれども、マネーロンダリングの取引額は世界の国内総生産、GDPの二ないし五%に達し約八十兆円、日本の当初予算にも匹敵するといわれております。南米のコカインカルテルがこの手法をよく使ったことから国際的に大きな問題になったといわれるマネーロンダリングでございますが、犯罪収益を規制の緩い国に流入させ、その国の金融システムなどを利用してクリーンな外観を有するものに変えるという手法でございます。
 このマネーロンダリング取り締まりにつきましては、一九八八年、国連で採択されましたいわゆる麻薬新条約を批准するに当たって、日本では国内法を整備し、平成四年からいわゆる麻薬特例法を施行しておりますが、これによって薬物犯罪に関してのみがマネーロンダリング罪、つまり犯罪収益等隠匿罪が定められたところではございますが、これまでこの罪名でどれだけの捜査実績があるのかお伺いしたいと思います。
○政府委員(松尾邦弘君) 麻薬特例法におきまして、第九条で薬物犯罪収益等にかかわる隠匿罪が定められております。
 法務当局において把握している薬物犯罪収益等隠匿罪の検挙受理人員でございますが、同法が施行されました平成四年七月以降、平成十年までに合計五人でございます。そのうち一人を除いて公判請求がされておりまして、公判係属中の二名を除いて有罪が確定しております。
 公判請求されました事件の一つを紹介いたしますと、平成十年に摘発された事例は、覚せい剤等の譲渡代金三千百万円余りを仮名名義等を用いて外国の銀行口座に送金した事案でございます。このようなことをして薬物犯罪収益の取得につきまして事実を仮装するとともに、その収益を隠匿したという事案がございました。
○佐々木知子君 この法案が通ることになりますと、前提犯罪を薬物犯罪から飛躍的に増大させるものとなります。これまではスイスが犯罪組織によるマネーロンダリングの抜け穴になっていると国際的批判を受けておりましたが、スイスも昨年の春にマネーロンダリング法を発効させまして、検察庁が三年もの捜査の末、メキシコ大統領の実の兄が捜査の情報を提供する見返りに麻薬組織から受け取ったという金をスイスの銀行口座などに隠匿していたとして、一億ドルを差し押さえるといった動きもありまして、国際的な抜け穴になっているという批判は専ら日本に向けられるようになったわけでございます。
 我が国がそういった国際的なマネーロンダリング対策において果たすべき役割やその責任の重さについてどのように考えておられるか、これは法務大臣にお伺いいたします。
○国務大臣(陣内孝雄君) 御指摘のように、マネーロンダリング対策につきましては、国際的に協調した対応をすることが求められておるわけでございます。我が国は、世界の金融市場の中心の一つであるということですので、ここが抜け穴になったら大変なことでございますし、また国連やサミット等の会議に参加する国際社会の一員として、これらの会議におきましても支持されておるFATF活動を十分に尊重しなければならない。アジア太平洋地域におけるマネーロンダリング対策グループにおいて、むしろリーダーシップを発揮すべき大きな責任を与えられている、このように考えるわけでございます。
 先般、東京で開かれたFATFの全体会議におきましても、多くの国から我が国の組織的犯罪対策三法が強く支持されました。FATFの総意として、早期成立について大きな期待が寄せられたことは報道等でもよく御存じのことと思います。我が国の組織的な犯罪対策に対する諸外国の大きな期待にこたえていく重い責任を背負っておると思うわけでございます。
 我が国が国際社会の一員として責任ある役割を果たすとともに、組織的な犯罪から国民の平穏な生活を守り、真に国民が安心して暮らせる健全な社会を築くために、できる限り早期にこの法整備を実現させていただきたい、このようにお願いする次第でございます。
○佐々木知子君 本法案九条に、犯罪収益等による法人等の事業支配罪というものがございます。これは麻薬特例法には設けられていない規定でございます。
 これにつきまして、例えば日本の暴力団が株式を出資するなり、そういった方法で会社を支配するというようなことが日本で行われている事例があるのかどうか、またそれを当局が把握しているのかどうか。恐らく多分難しいのだろうと思います。豊田商事の事件だとか、ある意味ではそういう悪徳商法、経済犯罪、会社犯罪につきましては、恐らく何件かあるのだろうというふうに思うわけでございます。
 私は、二、三年ほど前になりますが、国連のそういう国際犯罪の専門家と話をする機会がございまして、その方が言われるには、麻薬組織という国際的な犯罪組織が、ある国の銀行とかそういう大きな会社の株式を買い占めることによって、その国を乗っ取るような事例があるのだというようなことを言っておられました。私は、それを聞いて、そういうこともあるのかというふうに思っていたのですが、どうもそういうことは現実に本当に起こっているようでございます。
 ですから、こういう規定が設けられたのは当然だろうというふうにも考えているわけですけれども、一部にはこういう規定を設けますと株主の権利行使を侵害するものだとか、正常な法人の活動を阻害するものであるといった批判もあるようなのですが、この点について法務省はどのようにお考えでしょうか。
○政府委員(松尾邦弘君) 犯罪収益等による法人等の事業支配の罪でございますが、犯罪収益等を用いて法人等の事業経営を支配する行為によりまして、その事業活動が犯罪その他の不正な行為に利用されたり、あるいはその事業経営に際して犯罪収益等が不法な競争手段に用いられるなどの不正な活動が行われるおそれがあるということなどから、法人等の事業経営に対する犯罪収益等による不当な干渉を防止することを目的として設けたものでございます。
 法人等の事業支配の目的で犯罪収益等により株式等を取得して、その権限を行使し、あるいは犯罪収益等により取得した株主への債権の取得、または行使に関して、その株主の権限等を行使させるなどして役員を変更させる行為等でございますが、いわば株主の権利を悪用しまして、あるいは他の株主の権利の正当な行使を妨げて会社を不当に支配するものでありますから、かかる行為を処罰することは正当な株主権をも保護するものでありまして、これに不当に干渉するというものではございません。
 また、この処罰規定でございますが、法人等の事業活動それ自体を犯罪としてとらえるものではありません。この罪による処罰によって、その法人等や善意の第三者に不測の損害を与えることなく法人の合法的経済活動を制限するおそれはないと考えております。
○佐々木知子君 麻薬特例法にも同じ規定がございましたけれども、本法案にも犯罪収益等の収受罪というのが設けられております。
 この点でございますが、犯罪収益等と言いましても、外見上は一般の財産と変わらないから、犯罪収益等を受け取っただけで犯罪が成立するとなると、正常な経済活動を阻害することになるとか、弁護人が被疑者または被告人から報酬を受け取ることをちゅうちょさせるものだとか、あるいはビラを読みますと、賃貸人は賃借人がその手の人であればその賃貸料を受け取ることができないとか、そういうビラまであったようでございますが、弁護人の選任権を侵害するものであるといったような批判がなされているわけですが、これについての見解をお伺いいたします。
○政府委員(松尾邦弘君) 確かに、この点につきましては、今委員の御質問の中にありましたように、いろいろな誤解があるところでございます。
 この法律案の十一条に定めます犯罪収益等収受罪というものが成立するための要件を考えてみますと、まず収受した財産が客観的に犯罪収益等に当たるということは大前提でございます。ただ、それだけではなくて、さらにその財産が犯罪収益等であることの情を知った上で、それを十分わきまえた上でということですが、その収受を行うということが次の要件になります。
 この場合でございますけれども、犯罪収益等であることの情を知っているというためには、具体的な当該財産が現実の犯罪行為による犯罪収益等であるということの個別具体的な認識というものが必要になります。単に犯罪収益であるかもしれないといったような一般的、抽象的な危惧とかあるいは懸念というだけではこの要件を満たすことにはならないということになります。
 しかも、その財産の受領が契約に係る債務の履行としてなされる場合には、契約のときにそのような認識が必要とされております。契約のときにそのような認識がなければ、その財産を受領するときに犯罪収益等であることを万が一知ったということであった場合でもこの罪は成立しないということになります。
 したがいまして、この罪の成立範囲が不当に広がることにはなりませんし、正常な経済活動を営んでいる者や弁護人となろうとする者が犯罪収益等収受罪によって処罰されるということにはならないと考えております。
○佐々木知子君 次に、金融監督庁にお伺いしたいのですけれども、本法案に疑わしい取引の届け出制度が設けられております。もちろんこれは麻薬特例法にもございます。マネーロンダリング行為が金融機関等を利用して行われることが多いことから、金融機関等から疑わしい取引に関する情報を集約して犯罪収益等の隠匿の罪及びその前提犯罪の捜査に役立てることを主目的とするとともに、副次的に犯罪者によって金融機関等が提供する預金の受け入れサービスや決済システムが利用されることを防止し、金融機関等及び金融システムに対する信頼を確保しようとするものであって、マネーロンダリング対策として重要な機能を果たすべきものと期待されているわけでございます。
 現行でも、先ほど申しましたように、麻薬特例法にこの制度があるわけでございますが、届け出件数は非常に少なく、自発的なものは年間五件ペースと。九六年に米国で七万五千件、英国で一万六千件余りの届け出があったというのとまさに対照的でございます。また、届け出を端緒とする摘発事例も残念ながらまだないというふうに聞いております。
 届け出が極めて少ない理由の一つといたしましては、現行の届け出制度が薬物犯罪に特定されているためにその見きわめが金融機関ではできないということもあるようでございますが、本法案によって前提犯罪が飛躍的に広がるために実効性が上がると私は考えておるものでございます。
 米国、英国、フランス、イタリアなど、既に二十カ国以上でFIU、ファイナンシャル・インテリジェンス・ユニットという政府機関が設けられておりますが、その意味で、金融監督庁内に設置された特定金融情報室、現在はまだ準備室かもわかりませんが、日本版FIUと言えるのではないかと思うのですが、本法案によってその機能を準備室から脱してやっと発揮できるようになるのではないかということで、今後の取り組みについてお伺いしたいと思います。
○政府委員(乾文男君) 前半のその届け出の件数等が少ないということは、今先生が御指摘になったとおりでございまして、少なかった等の理由でございますけれども、まさにおっしゃいましたように、犯罪収益の前提犯罪が薬物犯罪に限られておりましたこと等があるのかと思います。それからさらに、法制度上、金融機関等からの届け出のあった疑わしい取引に関する情報につきまして、金融監督庁におきましてこれの整理、分析を行うことというふうに制度上されておらなかったということから、全体といたしまして今御指摘のありましたような実情にあったことは確かでございます。
 最近の届け出件数を見ますと、平成十年度以降増加しておりまして、また、ことしに入りまして急増しております。その背景といたしましては、この制度につきまして金融機関等の理解が深まりつつあることが要因であるというふうに考えております。
 今回の法案におきましては、犯罪収益の前提犯罪がこれまでの薬物から殺人、強盗、未成年者略取誘拐等、重大な犯罪にまで拡大をされることになっております。また、疑わしい取引に関する情報を当庁に一元的に集約しまして、これを整理、分析し、その情報を捜査機関に回付する、また国際的な協力にもこたえることができる制度というふうにされておるところでございまして、先ほど申しました金融機関からの理解が深まりつつありますこととあわせまして、制度の実効性は十分に期待できるものというふうに考えておるところでございます。
○佐々木知子君 この制度の運用におきまして、金融機関等に過大な負担をかけることにはならないか、あるいは顧客のプライバシーを侵害することにならないか危惧する声も一部であるようでございますが、それにつきまして金融監督庁に御見解を問いたいと思います。
○政府委員(乾文男君) この制度におきましては、金融機関の日常の業務におきまして、収受した財産が犯罪収益等である疑い等がある場合にのみ届け出ることとされておりますことから、一般市民の正当な金融取引までが届け出の対象になるものではないと考えております。
 それで、取引が疑わしいかどうかの判断でございますけれども、金融機関が各取引ごとに顧客の日ごろの取引状況、送金方法等の態様、個々の具体的な事情を考慮いたしまして判断するものでございますけれども、監督庁といたしましては、金融機関がこの届け出義務を適切に履行できますよう、届け出の方法でございますとか内容及び疑わしい取引の参考事例等につきまして、当庁から金融機関に対しまして具体的に示すことを予定しております。
 したがいまして、この制度の運用におきまして、金融機関に過大な負担を負わせることにはならないと考えておりますし、また顧客のプライバシーを不当に侵害することにはならないと考えているところでございます。
○佐々木知子君 特定金融情報室がこれからスタッフを充実させて、予算も充実させて、それから日本全国に、多分財務局あたりに設置することになるかもわかりませんけれども、ぜひ実効を上げられて捜査の実を上げられますよう心から願っております。
 次に、刑事訴訟法の一部を改正する法律案でございますけれども、これは専ら証人の保護ということでございます。
 組織的な犯罪を摘発して、刑事裁判において刑事責任を追及するためには、その立証に協力する者の保護という面を忘れることはできません。本法案により刑事訴訟法を改正して、証人の安全を確保するため、住居等に関する尋問制限等の措置を盛り込むこととされておりますが、これは非常に重要な意義を持つものと考えております。
 ただ、一部におきまして、これは被告人の防御や弁護人の弁護活動を不当に制約するものであるといった批判もあるようですが、この点について法務省はどのようにお考えでしょうか。
○政府委員(松尾邦弘君) 暴力団の構成員等が被告人になっている事件に検察側の証人として出るということは、非常に心理的な負担が大きいわけでございます。まして、居所、住所、あるいは例えば毎日学校に通っている場合でありますと、どういう学校にどういう経路で通っているのかということについても、それを被告人側に知られることについて、証人が非常に心理的な負担を受けるということは当然考えられるわけでございます。
 今回の法案は、そういう場合に住所等に対する尋問制限等の措置を盛り込んだ刑事訴訟法の改正案としているわけでございますが、今回の法案による尋問の制限でございますけれども、被告人もしくは弁護人のする尋問を制限することによりまして、被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあるときはできないとされております。こうした住居等に対する尋問制限の配慮の要請は、被告人の防御に関し必要がある場合を除くものでありますから、これらによりまして被告人の防御権を不当に制約することにはならないということでございます。
 また、検察官が弁護人に対し配慮の要請をする場合に、被告人の防御に関する必要の有無及び具体的な配慮の内容や方法につきましてはその弁護人自身が判断するものでございます。警察官が弁護活動に不当に介入するおそれもないと考えております。
 なお、この改正は、刑事手続の中で証人等が自己の住居等を知られることに不安を感じることがあることから法律上このような配慮がなされることを明定するものでございまして、弁護人に対する不信を前提とするものではございません。
○佐々木知子君 ありがとうございました。時間が参りましたので、これで終わります。
○海野徹君 おはようございます。民主党の海野徹です。
 それでは、通告に基づきまして質問させていただきます。過日、参考人質疑で暗号の解読の技術的可能性について私は質問させていただきました。これは数字、数学ですから、理論的には可能な部分もあるかもしれない、しかし、現実的には全く困難だろうというのが専門家の意見であります。
 松尾局長は、技術的に可能だからできますよという話を委員会で答弁しております。規制も今は考えていない、暗号を規制するということも考えていないということだったんです。それはまさに考えてほしくないわけなんですが、欧州だって今実態としては暗号の規制をどんどん緩和しているわけですから、アメリカでもそういう方向ですから、日本だけが規制を強化するなんということはあってはならないわけなんです。
 そこで、警察庁にお伺いしたいんですけれども、暗号を解読する場合、どのくらいの予算をかけて、松尾局長はできると言ったわけですから、可能性はありますよ、それをやりますよと言ったわけですから、じゃ警察庁としては、どのぐらいの予算でどんな設備を整えれば一つの暗号を解読できるのか。それがしかも十三条二項の「速やかに」ということですから、その辺について御答弁をお伺いしたいと思います。
○政府委員(林則清君) 今御指摘の暗号というものにも種類が複数ありまして、その強度にも違いがあるということで、一概にどの程度の予算、設備、時間が解読に必要かということについて述べるというのは困難でありますが、一般的には暗号を解読するために必要な時間等は暗号のかぎの長さに依存するということのようであります。
 例えば、現在インターネット上で用いられる標準的な暗号としてDESというのがあるそうでありますが、このDESで標準的なかぎ長とされる五十六ビットのものを解読しようとした場合、高性能の専用スーパーコンピューターを利用すれば数日で解けたという例もあると聞いております。
 しかしながら、暗号かぎの長さを含め暗号解読の難度というのは今後数年で急速に上がっていくということが予想されており、一方では解読するためのコンピューターの能力も急速に向上しておることから、まことに残念でありますけれども、御質問に正確にお答えするというのは困難でございます。
○海野徹君 正確に答えるのが困難だということなんですが、暗号を解読することがもう非常に困難なんです。五十六ビットという話だったんですけれども、この間通産省もそういう話だった。今はもう百二十八ビットが最低なんです。百二十八ビットなんというのはもう解けないんです、これは。その五十六ビットをやったのもすべて前提条件を整えて、さあどうですかとやっての話なんです。だから、暗号を解くというのは私はもう解けないと思った方がいいんじゃないか。
 ネットワーク時代というか、インターネットの時代ですから、もうセキュリティーというのは一番の基本なんです。そのために暗号システムというのはいろんなところで使われているんです。普通のパソコンのユーザーですら、この間私が質問させていただきましたPGPとかSSH、SSL、こういうような程度の暗号を複数使っているんです。我々聞いてみましたら普通のパソコンユーザーですらこれを使っているんですね。じゃもっといろんな意味で安全性を確保しようとしたら暗号化ファイルシステムあるいはIPv6というような次世代型IPなどを使っているという専門家からの話でありました。それ以外にも個々のアプリケーションにファイルを暗号化する機能がもう入っていますよという話だった。そういうことを考えると、とてもじゃないけれども暗号なんて読めないなと思うんですが、再度御見解をお聞かせください。
○政府委員(林則清君) 今、委員御指摘のように、大変技術が進んで暗号等についても解読するのが非常に困難化する。一方、過去解けない暗号はないという言葉もあるわけでありまして、やはり解読するのが必要ということであれば、警察も全技術力を挙げて解読することができるよう努力してまいりたいと考えております。
○海野徹君 努力するといって、じゃ一体どのぐらいのスーパーコンピューターを並べて、どのぐらいの人員で、幾らの予算でやるんですか。もう概算要求の時期が来ているでしょう。年間に数十件対象にしますよという話もありましたから、もうすぐの話なんですよ。その点どうなんですか。
○政府委員(林則清君) 具体的に法案がまだ成立していないわけでありますし、法案が成立して、それを法案の趣旨に沿って実施をしてまいりたいという場合に、具体的な問題を検討しながらそういった今おっしゃる予算なり設備なり人員、技術なりというものを考えていくわけでありまして、現時点においてどうするんだということについてお答えするのは、これもいささか困難である、こう考えております。
○海野徹君 答弁によりますと、要するにもうできないということなんですね。もし、今それが少しでもできるという可能性があるとすれば、もう既にその人員はある、技術はある、マニュアルはある、そういうことですか。
○政府委員(林則清君) 現在の技術でできる部分についてはやってまいりますし、さらに技術を進めなければいけないところについては、先ほど御答弁申し上げましたように、それが可能になるよう最大限の努力をしてまいりたい、かように考えております。
○海野徹君 大変いろいろ答弁をして努力しますという話なんですが、私はもうできないと思います。先ほど言ったように、普通のパソコンのユーザーですらやっておるんです。PGPはもう解けないと言われているんですよ。それはSSHとかSSLとかそういうのを複数にやっていますから、まず解けない。ということを改めて専門家の意見をお聞きになった方がいいと思いますよ。
 それでは、次の質問に入りますけれども、松尾局長にお伺いしますが、法案の二条三項で、「それ以外の者であって自己の業務のために不特定又は多数の者の通信を媒介することのできる電気通信設備を設置している者」には、これは一般企業が含まれますね。
○政府委員(松尾邦弘君) これは、「通信事業者等」というのは、通常NTT等の他人の通信を媒介することを業とする者ということでございますが、以前の答弁で申し上げましたように、大きな企業等によりますと、その中に交換設備等を自己が保有するというような企業も当然ございますので、そういった場合にはこの「等」の中で、事業者ではございませんが、「通信事業者等」ということでこの中に読み込むということになります。
○海野徹君 一般企業も含まれるということですから、それを前提にして、通産の方来ていらっしゃいますね。お伺いしたいんですけれども、Eコマース、電子商取引、非常に規模が拡大しております。日経新聞なんかにはIT技術との融合とか、あるいはEコマースの話、電子商取引の話がもう連日載っていますよ。少なくとも三面、四面に載っているんですよ。非常に市場の規模が拡大する、そういう技術がどんどん進展していくという話が載っておりますが、昨年で八兆七千億円、これは日本ですけれども、二〇〇三年には七十一兆六千億円ぐらいになるだろうというような数字をこの間聞きました。これは企業間のものと企業対消費者のと二種類あると思うんですね。一体どっちの方がどのくらい多いのですか。企業対消費者と企業間のとをお答えください。
○政府委員(広瀬勝貞君) 電子商取引の中では、お話にありましたように企業と企業、それから企業と消費者というものがありますけれども、現在やっぱり圧倒的に企業と企業の間の電子商取引というのが多うございます。九八年で八兆七千億というふうに申し上げましたけれども、このうち企業と消費者の間は六百五十億ぐらいでございます。
 それから、二〇〇三年になりますと、電子商取引の規模が七十一・六兆円と申し上げましたけれども、このうち企業と消費者の間が三兆二千億円ぐらいでございます。圧倒的にやっぱり企業と企業の間の電子商取引が多うございます。
○海野徹君 インターネットの父と呼ばれるビント・サーフ、彼も二〇〇三年にはEコマースというのは経済活動全体の一〇%、世界全体で三千二百億ドル、これぐらいに膨らむというふうにスピーチでしゃべっているのですね。だから日本も、前回私お話ししたのですが、ものづくりとIT技術をどう融合化させるかというのが二十一世紀の産業だと思うんです。そういった意味で非常に多くなってきますので、Eコマースというのは企業間取引に非常に重要だ。
 そうなると、企業も知らず知らずのうちに被害者にも加害者にもなってしまうケースというのはあるのですね、これだけ多いと。可能性があるのですよ。そうすると、それは傍受の対象にも当然なってきちゃうんです。その可能性がありますね。
○政府委員(松尾邦弘君) ちょっと趣旨がもう少しわからないところもあるのですけれども、企業自体が傍受の対象になるということはなかなか考えられません。今回の傍受の対象は、対象犯罪が四種類、薬物、銃器、蛇頭、それから組織的な殺人ということになっておりますので、正常な取引等の活動をしている企業自体がこういった犯罪に手を染めるということは通常考えられないことでございますので、大規模な通信が企業間で行われるといいましても、にわかにそれが通信傍受の対象になるということはなかなか想定しにくいところでございます。
○海野徹君 松尾局長、そうおっしゃっていますけれども、これは今度の通信傍受法案の対象じゃないかもしれませんけれども、クレディ・スイスが電子メールで証拠隠しを指示したというようなこともありましたよね。やっぱり何らかの形で巻き込まれるという可能性はあるわけです。
 私もNECとか富士通とか全銀協とかいろんな企業に聞きました。要するに、この法案があなた方の経済活動にどう影響ありますか、その辺を検討したことがありますかと聞いてみました。後でその辺はお話ししますが、通産省の方はその辺を聞きましたか、各企業あるいは業界団体に。
○政府委員(広瀬勝貞君) この法律の策定の段階で、一般論としていろいろ関係の業界とも議論をいたしました。ただ、これも先日来申し上げておりますけれども、やはり健全な高度情報通信社会の発展ということを考えていくと、暗号技術とかそういうことも含めていろいろ開発をしなきゃならぬ技術もたくさんありますし、そういうことを開発しながら、経済の発展とかあるいは国民生活の多様化といったようなことに対応していくということは大事でありますけれども、その反面、いろいろこの情報化に伴う陰の部分というのは出てくるわけでございまして、その部分についてはやはり情報化社会の健全な発展のために必要最小限の対応をしていくということもまた大事だろうということで我々は理解をしておりますし、また関係業界にも理解をいただいているというふうに考えております。
○海野徹君 いや、松尾局長はそういうことはないということなんですが、現実に電子メールで指示したということもありますし、これは交通事故的にトラブルに巻き込まれるということもあるんです。従業員だっていますし、取引先だってあるし、その取引先の関係者ということもあり得るんですね、大変な情報量が行き来していますから。
 それで、産業界の人に聞きますと、やっぱり対象になりますから、NECとかソニーとか富士通とかそういうところに聞きましたら、自分たちがPOPサーバーを持っているんですね。それで聞きましたら、やっぱり非常に不安を感じているんです。自分のところで起こすということはあり得ないんです。何らかの形で侵入されたり、何らかの形で犯罪に巻き込まれて改ざんされたり、あるいは情報が持っていかれたりという危険性を非常に感じているんですね。全然別なことで傍受の対象になったときに、ならないことを当然期待しますし、あってはならないわけですけれども、その可能性はやっぱり彼らは企業活動を進める中で全然否定はできないというんですよ。
 そうすると、貴重な企業秘密が漏れるという可能性が出てきますから、非常にEコマースに対してよっぽど暗号をかけない限り、とても破られないという暗号をかけない限り、消極的にならざるを得ないというような話がありましたけれども、通産省はやっぱりそう思いますでしょう。
○政府委員(広瀬勝貞君) 先ほどから申し上げておりますけれども、この法律案は重大犯罪を対象として、その犯罪捜査のための手続等を定めたものというふうに理解をしておりまして、その趣旨に照らしますと、高度情報通信社会の構築をしていく上で懸念されるような問題はないのではないかというふうに考えております。
 なお、これが成立した暁に実際の法の運用に当たりましては、いろいろ通信事業者の協力の範囲等について定められておりますけれども、その範囲等についてはいろいろ議論をいたしまして、またこれからも法案の施行に当たりまして、関係当局と通信事業者の間ですり合わせが行われるというようなことも聞いておりますので、御懸念のようなことはないのではないかというふうに考えているところでございます。
○海野徹君 可能性として一%もない、要するにゼロだということじゃないものですから、皆さん気になるんですよ。
 これは非常に、この法案というんですかこの問題はアメリカの商務省が頑張っているんですよ。ヨーロッパとアメリカというのはお互いに市場として非常に尊重し合い、意識し合っているんです。日本の市場というのはそんな大して評価していないんです。ジャパン・マネーがアメリカへ来ればいいじゃないかという程度にしか評価していないんですね。EUができて、ユーロが共通通貨として使われ出した。それと暗号規制を緩和するのがヨーロッパでは一致しているんですよ。これは今まであったのを、いや、その暗号を組み込んだ商品を開発することも、販売することも、輸出することも規制をかけませんと、ほとんどのEUは言い出した。あのフランスでさえ緩和し出した。その時期と、アメリカはもちろんもう暗号なんて規制はかけられない、それはもう情報通信産業の人たちが大反対していますから、お互いにそれはヨーロッパやアメリカというのは連動しているんですね。何で日本だけ今ごろこんなおくれた法案が出てきたのかなと、非常に産業界は疑問に思うんですよ。
 こんな声がありました。私のところは極めて強度な暗号をかけてありますから大丈夫です、それさえ解かれなければ大丈夫ですよ、まさか暗号規制の規制法なんてつくりませんでしょうねというような話。これから企業の行動なり消費者の行動がこの法案によってどう変化するか、それを判断しかねているんですと。影響は軽微だと思いますが、全くないとは思えませんと。それだったら、あなた方がこの委員会に出てきて、企業として企業活動で懸念があるんだったらその辺を表明してくださいよと話をしたんですが、それは個々の企業として、いやNECからこういう発言があったとか、ソニーからこういう発言があったとか、さくら銀行からこういう発言があったなんというと困りますから、それは全銀協とか経団連とかそういうところへ言ってくれませんかというような話だったんです。何しろアメリカの通商政策とか産業政策にかかわっていますから、個々にはお答えできませんという話だったんです。
 こういう産業界の懸念というのを通産省としてはどうお考えですか。
○政府委員(広瀬勝貞君) 今、御議論は二つあったと思うんですが、一つはただいま御審議をいただいている法案の御議論、もう一つは暗号に対する規制の問題、この二つであったと思います。
 暗号に対する規制につきましては、諸外国の例を見ますと、一つは輸出の規制、一つは輸入の規制、一つは国内での利用の規制といったような面があると思います。我が国では、輸出につきましては国際的な紳士協定、ワッセナー・アレンジメントに基づいて規制をやっておりますけれども、輸入規制あるいは利用規制のところはそういうことがございません。また、これから将来のことを考えましても、暗号というのは高度情報通信社会の中で非常に大事なインフラでございますから、やはり自由に使っていくということが大事なのではないかというふうに考えているわけでございます。
 ただ、今御審議いただいておりますこの法案につきましては、これは重大犯罪への対応ということで考えていただいておるわけでございまして、暗号を自由に使うということの反面として、やはり先生からも御議論がありましたように、これを今度は当局として解読するという苦労もまた逆に出てくる。しかし、そこのところはその苦労をあえてしながら、暗号が自由に使えるという世の中を守っていこうというお考えではないかと我々は感じているところでございます。
○海野徹君 それでは、ちょっと視点を変えますけれども、一日の日経新聞に「日米暗号戦争」と載っていました。日本のNTTの暗号技術が採用されるか、それともアメリカのものなのか。ワッセナー・アレンジメントと言いましたけれども、六月に通産省が輸出の規制緩和をしたという記事が若干小さく載りました。この法案と関係があるのかなと思ってちょっと調べてみたんです。一面で経済新聞が取り上げて、日米の暗号戦争というぐらいにやっていますし、暗号技術を握ったところが経済戦争に勝つんじゃないかというぐらいどんどん進んでいます。松尾刑事局長も、解けますよ、警察庁の方はそれは努力しますと言っていますが、現実問題としては暗号技術というのはどんどん進んでいると思うんですよ。
 今、通産省としてはその点どの程度把握していらっしゃいますか。
○政府委員(広瀬勝貞君) 先生御指摘のとおり、暗号技術というのは、電子商取引を初めとして高度情報通信社会の推進にとって大変重要な技術でございます。この技術も日進月歩で進んでおります。
 お話のありましたワッセナー・アレンジメントにおける規制緩和の方も、実はこれまではすべての暗号について規制をしていたわけでございますけれども、今度ようやく暗号技術の発展に合わせましてビット数で下限を設けたわけでございます。先ほどからお話のありますDESについて言いますと、五十六ビットを超えるものについて規制をするというようなことで、これはまさに先生御指摘のように暗号技術の発展を物語るものだというふうに考えております。
 私どもといたしましては、暗号技術の開発におくれをとらないようにやっていくということは非常に大事だと思っておりまして、情報処理振興事業協会等を通じまして、暗号アルゴリズムの開発とか、あるいは暗号強度の評価方法の開発といったようなことについて力を注いでいるところでございます。
○海野徹君 ヨーロッパとかアメリカは、どんどん規制緩和してEコマースを発展させようとしています。その中で、日本がそれに若干懸念のある法案でもつくってくれば、Eコマースの相手として日本というのはちゅうちょされる相手になっていくんではないかと、私は非常に懸念するんですよ。
 それでは、通産省の方に聞きたいんですけれども、Eコマースを非常に高度にしたものでエージェントシステムというのがありますけれども、御存じですか。エージェントシステム、Eコマースを高度化したものです。──じゃ、いいです。
 エージェントシステムというのは、企業が何か物を生産するときに必要な部品について、自動的に自社の部品の在庫を調べながら、あるいは生産業者を調べながら、コンピューター間で見積もりを出し合って最も有利な業者に自発的に発注する、それが全部情報が飛び交っているんですよ、今現在。
 だから、例えば仮にNECが何か製品をつくるのでLSIをどこかに発注したと。もし何かの形で傍受しているところへその情報が行ってしまったら、もう開発競争におくれる、商売に影響が出てくるという可能性というのはあるわけです。というのは、このLSIを使ったら何をつくるんだというのはライバル会社はすぐにわかるわけですよ。
 だから、さっき言ったように、交通事故的に、いろんな人と多数間で情報のやりとりがありますからわからないんです。重大な犯罪の連中であればあるほどいろんなところへ潜って行動しますから、割り込まれることだってあるわけです。それを非常に産業界は気にしつつあるということが、私はいろんなところで聞いてみましたら話がだんだんわかってきたんです。
 そこで、法務大臣にお伺いしたいんです。
 今まで技術的な問題あるいは文理解釈の問題等でずっと議論をしてまいりました。だけど、一つの法案ができることによって社会を大きく変えてしまう、経済活動を変える、人間の行動を変えるということはあるわけなんです。ましてや、自由な行動に規制をかけてはいけないと思います。
 そういった意味では、産業界の生々しい意見、Eコマースを初めとしたこれからの二十一世紀の産業のあり方と通信傍受のかかわりについて、懸念がなければ懸念がないでいいですよ、私どもはこんな法案は全然関係なくてやれますから、国際的にもどんどんやっていきますからということが出てくれば、またそれはそれでいいんです。あるいは、インターネットバンキングが毎日のように報じられています。きょうもNTT―MEがネットで資産運用情報ということとか、あるいはフランスのパリバというのが世界の株式のネット取引をやるというようなことが新聞報道されています。
 私は、そういった意味で産業界の方々から意見を聞く機会があってもいいんじゃないか、連合審査も当然すべきだと思いますし、いま一度慎重に議論をすべきじゃないかと思いますが、大臣の御見解をお伺いします。
○国務大臣(陣内孝雄君) これからの産業の活力を高めていく上で、情報技術、情報通信、情報を中心にしたそういった取り組みというのが大事なことは議員と同感でございます。
 今回御提案申し上げているこの通信傍受というのは、先ほど来申し上げましたように、四種類の重大凶悪犯罪に限ってその傍受をしようということでございまして、それが産業界の情報通信化に影響があるというふうには、ちょっと私には理解ができない面がございます。
 しかし、今御懸念のような向きもあるとすれば、これからこの施行に当たりましては十分そういう点についておこたえをしていって、我が国がやっぱり情報通信の先進国として今後とも大いに飛躍、発展していただけるようなことに私たちとしても十分意を用いるべきである、このように思ったところでございます。
○海野徹君 最後に。
 私も最初は産業界のことなんて考えなかったんです。だけれども、ずっとイメージしていくとそういったことになっちゃうんですね。麻薬取引にしてもお金が動くんですよ。実効性を担保すると暗号を規制することになる。要するに、暗号規制の方向へ向かわないように、自由にしてもらわなくちゃインターネットバンキングなんてできないんです。インターネットバンキングでお金が動くんですよね。だから、たまたま見つかっちゃったという場合があるんですよ。
 だから、そういった意味がありますから、これから銀行業界も非常に慎重に検討したい、どうやってこれに対して対抗していくか考えているという話だったんですが、そこまで産業界に考えさせるということ自体、私はいろんな意味で問題を含んでいる法案じゃないかと思いますが、再度、大臣の御見解を聞かせてください。
○国務大臣(陣内孝雄君) ただいま申し上げましたように、この通信傍受というのが、今委員の御懸念のあるようなものとはかかわりがないというふうに思っておりますが、なおこれを円滑に施行していく上にはいろいろな配慮が必要であるということを重く考えておるところでございます。
○内藤正光君 民主党・新緑風会の内藤正光でございます。
 まず、運用上の問題点について何点かお尋ねさせていただきます。
 この種の法律というのは、でき上がってしまった後ひとり歩きするおそれが十分考えられるわけでございます。したがって、運用上の事前のきめ細かな取り決めがやっぱり大切になってくるんだろうと思います。ところが、今までの衆参の審議を見てみますと、運用上のそういった取り決め等が全くと言っていいほど審議されていない。これは本当にゆゆしき問題であろうかと考えます。
 そこで、私、まず通信傍受捜査に関するマニュアルというものについてお尋ねをさせていただきたいと思います。
 この法案だけですと、捜査を行うに際してあるいはまた協力をするに際して、どんなことをやっていくのか、どんなことをやっていけばいいのかという具体的な形が全く見えてこないんです。
 そこで、私は、詳細な捜査マニュアル、もうこの時点でつくっていて当然だと思うんですが、いかがでしょうか、法務省。
○政府委員(松尾邦弘君) 捜査マニュアルといいましても非常に広範囲にわたります。例えば通信傍受の場合の、その傍受の現場においてどういうような段取りで傍受を行うのかということにつきましては、いろいろなレベルでマニュアルあるいは一般的な準則のようなものをつくっていく必要があるということはもう間違いございません。
 まず、一般的な準則をつくり、あるいはその運用要領のようなものをつくりまして、それから具体的な傍受に当たっては、個別的に、傍受案件というのは千差万別でございまして、なかなか一律なそういう基準になじまないこともあります。
 例えばスポットモニタリングの時間にいたしましても、場合によりますと、その聞く時間を三十秒間とすれば十分な場合もありますし、場合によりますともう少し長目に設定しておくことが必要だということもあります。そんなことも、それは個別の事案ごとに定めるべき場合もまたあるわけでございます。
 そうしたことは、この法案が成立いたしましたら、その運用に当たります機関とも十分な話をしまして、また通信傍受の協力をいただく通信事業者等とも話し合いを十分に重ねながら適正なものをつくっていきたいと考えているところでございます。現在、明確なものがあるということではございません。
○内藤正光君 これから早急につくるという理解でよろしいわけですね。
 先ほど局長は、個別事例ごとにつくることはできても画一的なものはできないとおっしゃいましたが、しかし、やっぱり基本的なことはマニュアルとして私はちゃんと押さえておくべきものだと思います。
 私の手元に第六十五回の法制審の中で配られたというアメリカの通信傍受マニュアルがございます。ここで大事なことが何点か含まれております。個別ごとにちょっと確認をさせていただきたいと思います。
 まず、九章「進展状況報告」という項目がございます。この中でこんなくだりがございます。「この報告は、一般的には、五日ごと、七日ごと又は十日ごとに行われる。」、つまり捜査官から裁判所へ行われる報告のことを言っているんですが、それが五日、七日あるいは十日ごとに行われると。報告には、相当な理由がまだ継続していることを示すに足るだけの傍受した会話の要約を記載して報告すべきであると。
 私は、これは大変大事なことだと思いますが、こういった文言あるいはその精神はマニュアルには組み込む予定ですか、どうですか。
○政府委員(松尾邦弘君) アメリカの通信傍受のシステムとは大分違いますのは、今お触れになったところだけについて申し上げますと、アメリカは、まず原則として通信傍受は当初の令状は三十日でございます。日本の場合は一番長くて十日でございますので、その十日の期間内で何日間必要ですからお願いしますということで令状を請求します。
 それで、仮に例えば七日ということで令状がおりたとしますと、事案によってはさらに延長してもらう必要が出てくる場合もあります。その場合には再度、延長を裁判所にお願いするんですが、その場合には、今まさに委員がお読みになったような、当初の令状の期間にどんなことをやったのか、あるいはそれがなぜそれだけでは足りないのか、延長する必要があるのかということを当然、内容に盛り込まなければいけません。
 ですから、そういった場合の、どういう事項についてどういう書類をつくるかといったような準則的なことは、当然、法案が成立いたしましたら、具体的な書式等も含めまして関係機関と協議した上できちっと定める予定でございます。
○内藤正光君 じゃ、それに関しての議論はちょっととりあえずわきへ置いておきまして、次の項目へ移りたいと思います。
 同じく、このマニュアルの中に「最小化に関する指示書」というのがございます。この中でこんな文言、三点ぐらい読ませていただきます。「捜査官は、対象者が現在し会話に参加しているか否かを確認するために、二分間を超えない範囲の合理的な時間、スポットモニターをすることができる。スポットモニターの間隔は、合理的な範囲内のものであればよいが、少なくとも一分間は間隔を空けなければならない。」、これが一つでございます。
 二つ目、「対象者が会話に加わっている場合には、その会話が犯罪に関係のあるものか否かを確認するために、合理的な時間、通常は二分を超えない範囲で、傍受を継続することができる。」。
 そして、三つ目としまして、「当該会話が、明確ではないものの、他の犯罪行為に関係あるかもしれないときは、およそ二分後には傍受を止めなければならない。ただし、その時間内に、当該会話が実際に他の犯罪行為に関係あることが確認されたときは、傍受を継続することができる。」というようなくだりがございます。
 いずれの文言にも共通していることは、具体的な数値がそこには書き込まれている、つまり拡大解釈のしようがないということでございます。
 私は、現場の捜査官のそれぞれの拡大解釈を許さないためにも、だれが捜査官としてその捜査についたとしても、やはり明確な基準を設けるべきだと思います。そういった意味で、具体的な数値をマニュアルの中に書き込むべきであると考えますが、そういったものを書き込む予定があるのかどうか。
○政府委員(松尾邦弘君) 今、委員御指摘の点、全く同感でございます。
 今、委員のお読みになったものは、アメリカにおける通信傍受の際の一つのサンプルとしてつけてあるという資料でございます。法案が成立後、我々が通信傍受を行うに当たりましては、アメリカのそのやり方というのも大変重要な参考資料でございます。
 今、委員の御指摘のように、現場の通信傍受に当たる捜査官にいたしますと、抽象的なことを言われてもなかなか判断に苦しむ場合があります。むしろ、まさに委員御指摘のように、例えば三十秒聞いたらその二倍の期間聞かないでそのまま置いておきなさい、一分たってからもう一度三十秒聞くというようなやり方をとりなさいとか、個別事案ごとに指揮官から時間の具体的な指示を受けないと、捜査官が個々の判断で、自分はでは四十五秒聞こうとか一分聞こうというようなこと、ばらばらということはあり得ないわけでございます。また、そのような明確な個別事案ごとの基準を設ける必要がもちろんあるわけでございます。それと同時に、事案ごとに大幅に違うということになるのもまた安定性あるいは信用性の面で問題がございます。
 ですから、今のお読みになったものにあるように、最初に聞く期間を例えば一分ないし二分を超えてはいけないとか、そういうような一般的な基準みたいなものもまたつくる必要があろうかと思います。一般的な大きな基準をつくりまして、個別事案ごとにその中で指揮官が裁量によりまして、この事案はこれを選択しよう、この事案では三十秒だということで捜査官に指揮をする、あるいはもし明確にするのであればそれをメモにして捜査官に個々に配るとか、そういう徹底させる方法も、あるいはそういうふうにしろ、そういうふうにしなさいということも、一般的な準則の中に、判断の誤りがあるといけないのでそれはメモで示しなさいとかということを書くかもしれません。
 そのように、実際の運用に当たって捜査官が個々の判断でばらばらにならないように全体的な準則あるいは個別事案ごとのマニュアルといったものは当然つくるべきものであると思います。その際には、今お読みになったアメリカにおける事例なども重要な参考になろうかと思っております。
○内藤正光君 では三つ目、これまた具体的な一つの事例ではございますが、こんなくだりがございます。「法に従って最小化することを怠れば、傍受の結果得られた証拠に基づく訴追が危うくなるし、あなた方又はその所属機関が民事上の金銭賠償責任を負うこともあり得るし、あなた方が刑事責任を問われることも考えられる。」。あるいはまたこんなくだりもあります。「微妙なとき「インクローズケーシズ」は、慎重を期する方に誤ることとし、傍受を中断すること。」、つまり、どちらかわからないときは慎重な方を採用するということを言っているわけですね。「特定の会話を傍受した理由を、法廷において宣誓の上で、説明することを求められるかもしれないことを常に念頭に置いておくこと。」というくだりがございます。
 一つの具体的な事例にすぎないとはいえ、私はこれは大切な精神だと思います。こういった精神、現に六十五回の法制審の刑事法部会でこれを参考にしながら通信傍受法案をつくるとか運用するというふうにおっしゃっているわけですから、当然こういった精神も盛り込むべきだと考えますが、いかがでしょうか。
○政府委員(松尾邦弘君) 今お読みいただいたところに含まれている精神というのは、大変私どもとしても重要なものと考えております。特に委員のお読みになった中で、どちらかわからないという微妙なケースについては抑制的にということでございますが、それは我々としても同じような文言で、一般的な基準を設ける際にはそうした表現を盛り込みたいと思っております。
 今お読みになったところの部分に関していえば、ほとんどそのまま我々が考えております一般的な運用要領なり運用基準なりという中に再現されることになろうというふうに考えております。
○内藤正光君 続きまして、マニュアルもすごく大事なんですが、やはり捜査官の事前トレーニングも大切なものなんだろう。聞くところによれば、アメリカでは、マニュアルも用意するけれども、その一方で捜査官への事前のトレーニングもかなりの時間をかけて行っているというふうに聞いております。
 そこで、警察庁にお伺いしますが、そのようなトレーニングを考えているのかどうか、考えているとしたならばどんなメニューを考えているのか、お答えいただけますか。
○政府委員(林則清君) 言うまでもなく、通信傍受法案は通信の秘密にかかわる極めて重要なものでありますから、その適正な運用を徹底していくということは言われるまでもないところであります。
 このために、今お話がありましたように、この法案が成立した暁には、個々の捜査員の法の趣旨に沿った適正な法執行を確保するために、捜査員に対する指導、教育というものは徹底して行いたいというふうに考えておりますし、そしてこの点については、そういった指導を行うことによって警察組織としての責任をも全うしていきたいと考えております。
 具体的には、通信傍受の具体的な方法等につきまして、国家公安委員会規則あるいは通達等によって、今もお話が出ておりましたようないろんな実施方法、関連のいろんなことを規定いたしますとともに、捜査員のための本当に実務的なマニュアルの作成、配付と実施のための専門教養、それから警察もいろんな教育機関がございますけれども、ここの捜査を教養する課程でありますとか、あるいは各種の会議の機会における指導、教育の実施といったものを徹底しまして、個々の捜査員をそういうふうな形で適正な執行を行うべく教育してまいりたいと思っております。
 また、個々の事件の捜査において通信傍受を現に行おうとする場合には、これに従事する捜査員が対象となる通信手段により行われる可能性ある犯罪に関連する通信の内容、他の捜査により判明している当該事件の組織的背景等に関する情報を十分に把握して、法第十三条に規定する該当性判断、これを最小化の方法で適正に、的確に行えるよう十分教育をしてまいりたい、さように考えております。
○内藤正光君 運用上の問題で最後に一点お伺いしたいと思います。
 この通信傍受法案の持つ一つの大きな問題点はやはり報道の自由との関係だろうと思います。今もいろいろな報道機関の方々が来ていらっしゃいます。これはかなり興味、関心を持っていることだろうと思います。
 そこで、一点お伺いします。たまたま私きのう既に質問通告していたんですが、きょうの東京新聞に出ていたんですが、再度確認をさせていただきたいと思います。報道機関並びに報道関係者の持つ電話に対する傍受は全くあり得ないと断言できるのでしょうか。これは法務省ですね。
○政府委員(松尾邦弘君) 結論はおっしゃるとおりということでございます。
 通信傍受法案でございますが、傍受するためには高度の嫌疑が認められる特定の犯罪の実行、準備等の謀議とかあるいは指示などの犯罪関連通信に用いられると疑うに足りる通信手段を電話番号等で特定して行うものでございます。
 報道機関には犯罪に関する情報も含めまして種々の情報が集約されるということが考えられるわけでございますが、たとえ報道機関が設置、使用している電話等に犯罪に関する情報が寄せられることが判明したとしましても、そのような報道機関の特質に照らしまして、また報道の自由を尊重するという観点からも、報道機関の電話等を傍受の対象とすることは許されないと考えております。
 したがって、本法案による通信傍受が報道機関の取材源の秘匿等を侵害し、報道の自由の制限につながるものではございません。
○内藤正光君 その気持ちはわかります。そうはおっしゃいましても、しかし実際に法律の中に書き込まないことには、処罰の対象にもならなければ、あるいは違法収集証拠ともなり得ないわけです。私は、明確に修正をしてこの文言を法律の中に書き込むべきであると考えます。でなければ、これは単なるリップサービスであったり、あるいはまたマスコミの懐柔策に終わってしまうのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○政府委員(松尾邦弘君) 本法案を立案する過程におきまして、諸外国の通信傍受につきましての報道機関、どう対応しているかということも調べたわけでございますが、少なくとも報道機関を法制面で通信傍受の対象から除外しているという国はございませんでした。
 ただ、最近ドイツにおきまして、室内会話ということの傍受でありますと、報道機関がこの対象外とされたというケースはございましたが、通信傍受ということにつきましては、その傍受の対象として制度的にそれを明定しているという国はなかったわけでございます。
 では、我が国はどうかということで検討したわけでございますが、従来からの答弁でも申し上げております。本法案では弁護士等他人の秘密を打ち明けられまして、それに基づいてその依頼者のために活動するということがその職業に内在されている、あるいは本質的にそういう職業ということになりますと、現在の刑事訴訟法におきましても証言が拒否できます。また、押収の拒絶権もあります。そういった刑事訴訟法の大きな仕組みの中で現在でも保障されている職業につきましては、これはその職業がその業務に関して通信をする場合には傍受の対象外にすべきであろうということは当然の結論として導き出されるわけでございます。こうした対象外にするということは、一面におきますと、刑事訴訟法の目的としている捜査によって真実を究明していくという非常に高い目標をその部分については例外を設けるということで調整を図っているということでございます。
 報道機関の場合には、その報道機関に寄せられる情報が確かにあるわけでございますが、これはつまるところは報道することに資する情報ということでございまして、弁護士等他人の秘密を守る中でその業務を行っていくというような職業とは本質的には異なるものという理解でございます。そのような理解に立ちますと、現在の刑事訴訟法の枠を大きく変えて、報道機関についてこういった弁護士さんと同じような形で通信傍受の対象外にするということまでの法制化というのは難しいであろうという判断でございます。
 ただ、今申し上げましたように、報道機関が報道の自由あるいは取材源の秘匿ということで社会的に非常に有用な活動をされているということ、その特質等をいろいろ考えますと、報道機関が取材として行う通信につきましては、これは原則として通信傍受の対象外にするというような運用は当然考えられるところでございます。
 ただ、例外的には、これはもうあってほしくないことでございますが、報道機関の一員が当該傍受の対象となっている犯罪の共犯者になっているというような極めて希有な例が理屈の上では考えられる、あるいは現実にも残念ながら過去になかったことはないわけでございますが、そういった者がする通信につきましてはまた別途の考慮が働くということでございますが、原則として報道機関の通信はこの傍受の対象外として運用としては考えていきたいということでございます。
 それから、その例外としてもう一つ触れますと、我々捜査機関がたまたま傍受の対象としている特定の電話がございますという例を考えてみますと、そこに記者の方が取材でかけてくるというケースが考えられます。このケースでも、今申し上げましたとおり、それは取材であるということが判明した段階ではスポットモニタリングを直ちに中断するということで、運用マニュアル等には、あるいは通達等ではそれは明確に盛り込みたいと考えております。
 ただ、その際にも、例えば当該通話でその対象者たる被疑者等が犯行を自供する、あるいはこういうような内容だということで犯罪内容を打ち明けるような希有な例が考えられますが、この場合はまた別途考えざるを得ないかなというところでございます。
○内藤正光君 立会人のことについて聞きたいので、ちょっとそれはまた後から時間があれば御質問させていただきます。
 次に、立会人の協力内容についてお伺いをさせていただきます。
 協力すべきこととして四点ぐらいがあるのかなと。傍受のための機器の接続が適正かどうか、あるいはまた令状に記載された傍受の期間、時間等が遵守されているかどうか、あるいはまた該当性判断のための傍受が適正な方法で行われているかどうか、あるいはまた傍受した通信のすべてが記録されているかどうか、これらの外形的なチェック、これが立会人の果たすべき協力事項だと言われております。
 そこで、一番、二番はいいとしても三番目ですね、つまり該当性判断のための傍受が適正に行われているかどうか、これを立会人にチェックしろといってもなかなか負担は大きいものだと思います。
 そこで、極力立会人の負担を軽減するために私は提案をさせていただきたいんですが、例えば以下の機能を備えた機器を開発すべきだと。例えば、捜査官による傍受という行為と録音がシンクロをする。二つとして、該当性判断のための時間、例えば事前に二分間設定したもの、それが過ぎたら自動的に切れてしまう。あるいはまた、一定のインターバルを経なければ通話モニターを再開できない。そしてまた、犯罪通信の本格的な傍受を行うためにはやはりそれなりのボタンを押す、そういうことをしないとだめだというような機械を私は開発して使用すべきだと考えます。それによって立会人の負担を軽減すべきではないかと思いますが、ちょっと時間もないので短目にお願いします。
○政府委員(松尾邦弘君) 大変貴重な御提案をいただきました。我々としても、機材の開発ということは考えておりまして、その機材の機能に今御提案になった中でできる限りのものを取り入れていきたいというように考えております。
○内藤正光君 ちょっと改めてお伺いしたいんですが、しかし、そういう機械ができたとしても、適正に傍受が行われているかどうか外形的チェックをせよということなんですが、内容も聞けないのに具体的にどうやってやるんですか。手短にお願いします。
○政府委員(松尾邦弘君) これは相当人数が予定されると思うんですが、立会人の皆さんにもどういう形でこの傍受を行うのかについては具体的な方法をその場において説明します。この場合は三十秒聞きます、その後で一分間はあけます、あるいは機械的に、今委員のおっしゃったような一分間はあけざるを得ないような機械を開発するのが一番早いわけですが、そういった仕組みでやりますというふうなことを説明しますので、外形的にはそういう間隔でやっているかどうかは容易にわかることでございます。
 そういったことも含めまして、それほどの負担ということにはならないのではないかなと我々は思っております。
○内藤正光君 次は、常時立ち会いについてお伺いします。
 原案では常時立ち会いを要しないとしていたかと思います。ところが、いつの間にか常時立ち会いという修正案ができ上がってしまった。私はなぜなんだろうと。これだけの重要法案の重要項目がなぜこんなに簡単に翻ってしまったんだろう。本来なら法制審の意見を聞くなりすべきだったと思いますし、そもそも衆議院の法務委員会の方でこの辺の質疑はほとんどなかったというふうに私は思います。何で変わってしまったんですか。
○政府委員(松尾邦弘君) 原案では常時立ち会いは原則ということでございましたが、例外を認めておりました。それは、例えばどうしても人的都合が突然つかなくなる、例えばNTTのある局で傍受していたところ大規模な事故が起こって総員がその復旧にかからなきゃいかぬということになりますと立ち会い要員を十分に確保できないというような場合も考えられましたので、極めて例外的には立会人がいないこともそれはやむを得ない場合もあるかというのが原案の作成の判断でございました。
 ただ、その場合でも重要な時点、例えばカセットをかえるときとか、あるいは中断するときというようなときには必ず立会人が必要ですよということでございましたが、それ以外の場合ですとやむを得ない場合も例外的にはあるのかなということで、立会人の負担軽減ということもありまして、そう原案ではなっておりました。
 しかし、立会人の重要性を修正案で指摘されまして、修正案としては、やはり常時立ち会いということがこの法案としてはあるべき姿だというふうにお考えになって、その旨修正されたということでございます。
○内藤正光君 私は、原案で常時立ち会いを必要としないというふうな結論に至ったというのは、やはりいろんな通信事業者の諸事情を聞いた上でのことだと思います。実際に通信事業者というのはさまざまな問題、事情を抱えているわけでございます。
 言うまでもなく、インターネットプロバイダー、その多くは数人で運営するような、それこそ一人で運営するような弱小零細企業でございます。また、例えばNTTだとかそういった大きな通信事業者だったら大丈夫だろうとお思いになるかもしれませんが、例えば全国三千ぐらいある電話局のうち実際に人がいて保守をしているのは二百にすぎない。つまり、大半が無人局だと。何かあったらそこに行かなきゃいけないわけですね。アナログの通信が今九三%ですから、実際にその電話局のMDFまで行ってクリップを挟んで聞かなきゃいけない。つまり、どんな通信事業者も大小を問わずやはり常時立会人を出せるほどの余裕はないわけなんです。
 そこで、お伺いします。
 原案のあの精神を私はもう一回思い返していただきたいんですが、それぞれの通信事業者が人的な問題で業務上支障があると判断した場合、常時立ち会いを拒否できるんですか。そして、拒否した場合、それは処罰の対象になるんですか。
○政府委員(松尾邦弘君) この法案の通信事業者等の協力というのは、非常に過度なあるいは過分なことまで要求しているわけではございません。どうしても難しい場合には例えば地方公共団体の職員を立会人に加えるとか、あるいは最初からそういう需要が見込まれる場合にはそういう通信事業者とそれから地方公共団体の職員とでチームを組んでもらって立会人をするとかということでそれぞれの負担を軽減させる、合理的な範囲内の協力をいただくということでおさまるようにそれは事前に十分な協議があるということでございます。
○内藤正光君 つまり、人的な理由は通信事業者の相当な理由というふうに認められるというふうに理解してよろしいんですね。
○政府委員(松尾邦弘君) そのとおりでございます。
○内藤正光君 それを埋めるべく通信事業者以外が立会人、言ってみれば公共団体の人たちが立会人になり得るということでいいんですね。
○政府委員(松尾邦弘君) おっしゃるとおりでございます。
○内藤正光君 もう時間もなくなってしまいましたので、最後に一点お伺いをさせていただきます。
 今後、この通信傍受法案が通ったとしたら定期的に国会報告が行われていくわけなんですが、そしてその際通信傍受法のいろいろな問題点が審議されるだろうと思います。そのとき、そういう機会をつかまえて通信事業者からもいろいろな事情なり意見を聞いて、もし必要とあらばこの通信傍受法はどんどん見直していくというふうに考えてよろしいんですね。
○政府委員(松尾邦弘君) 国会に御報告するということの意味の一つは、今おっしゃったような、何せ日本で採用する新しい制度でございますので、これをまた国会に御報告していろいろ論議をいただいて、また国民からのいろいろな改善点等についての御意見もちょうだいして、改善すべきものがあれば今後改善していくということでございます。
○内藤正光君 私がこの法務委員会で質問に立たせていただいたのは先週からでございます。きょうで三回目でございます。たった三回の審議においてでも、例えば実は携帯電話は技術的には現行システムでは傍受できなかったり、あるいはまたそれに対してどうするのかとお伺いしたら、国家予算で開発を進めていくとかいろいろ重要なことがぽろぽろ出てきたんです。
 私はまだこの通信傍受法に関して審議が十分になされたとは決して思っておりません。ですから私は、早急に拙速にこれを通過させるということは断じてあってはならない、もっと慎重な審議を行っていくべきだということを申し上げて、関連質疑をお許しいただきたいと思います。
○小川敏夫君 郵政省の方に最初にお尋ねします。
 現行の交換機システムでは携帯電話の傍受が不可能もしくは著しく困難であるということで、これについて法務省の方はそれが可能となるようなシステム変更を要請する、こういうふうに言っておられますが、この点、郵政省の方は同じように携帯電話を行う電気通信事業者に対してそのような技術開発あるいはシステム変更の要請、行政指導、こういったことを行う考えはあるんでしょうか。
○政府委員(天野定功君) お答え申し上げます。
 傍受を実施するために必要なシステム等を新たに開発することは、ただいま御審議いただいております法案第十一条により通信事業者が負う協力義務の範囲外というふうに考えております。新たに必要となるシステム等の開発につきましては、法案成立後、捜査機関等が通信事業者に対しまして協力要請が行われ、そして両者間で話し合われるべき事項であるというふうに認識しております。
 したがいまして、郵政省としましては、通信事業者に対しましてただいま御指摘のようなシステム等の開発を指示ないし要請するようなこと、あるいは協力を拒んだ場合に不利益な扱いをするというようなことは考えておりません。
○小川敏夫君 先に回答いただきましたけれども、仮に事業者が法務省の要請に応じないとしても、郵政省としてはその業者に対して何ら不利益な取り扱いは一切しないということでございますね。確認の返事だけで結構です。
○政府委員(天野定功君) そのとおりでございます。
○小川敏夫君 郵政省に対する質疑はこれで終わりでございます。
 法務省にお尋ねしますが、これまでの答弁の中で、携帯電話に関しては一年以内に国の予算を使って通信事業者にシステム変更していただくという回答をいただいております。
 まず一つは、技術面の問題でありますが、先般参考人で出席されましたデジタルホンでは発信では不可能、受信では探索に相当な時間を要するということでしたが、他の通信事業者の現行システムではどのような状況になっておるか把握しておられるでしょうか。把握しておられたら、それを教えてください。
○政府委員(松尾邦弘君) 携帯電話の傍受に関しては、技術的に現行のシステムを前提といたしますといろいろな困難があるということはこれまでの参考人の御発言等でもありまして、そのとおりでございます。
 ただ、これは通信の傍受という今まで法制面でのシステムがございませんでした。また、そういったことについての必要性という観点からそれぞれの通信事業者がそれに応じたシステムを考える、あるいは採用するというようなことでもございませんのでそうした技術的な困難が存在するということでございますが、そのような技術的な問題については我々は解決が可能であるというふうに考えております。
 ほかの携帯電話について、確かに複数の業者等があるわけでございますが、基本的なシステムとしてはそれほど大きな違いはございませんので、技術的に例えば越えられない壁があるというようなシステムをとっているというような通信事業者はいないというふうに理解しております。
○小川敏夫君 素人考えなんですが、技術的問題は時間とお金をかければ幾らでもできると思うんです。ただ、時間的な問題、私は一年じゃできなくてもっと時間がかかると思うんです。
 あと費用の問題、これはやはり相当な高度の交換機システムを、さらに傍受を行うためには非常に瞬時もしくは瞬時に近い状態で傍受ができるような状態にしなくてはならないとなると相当大幅なシステム変更が伴い、相当膨大な費用がかかるんじゃないかと思うんです。これは例えば国が、国というか警察がこの法律ができたときにどういう体制をつくるんだということでどれだけの予算を使うんだという話ではなくて、これは通信事業者がシステム変更しなければ有効性を確保できないということであるから、いずれ予算をどうするこうするではなくて、必ずこれだけの費用がかかるという性質のものだと思うんです。
 ですから、どれだけの費用がかかるという見込みなのか、そこのところをもっと具体的に教えていただきたいんです。
○政府委員(松尾邦弘君) 通信傍受システムの構築ということが必要なわけでございますけれども、現在利用されております携帯電話のシステムの技術の応用の問題でございます。したがいまして、膨大なコストがかかるということはないということでございます。現に諸外国では既に携帯電話も通信傍受の対象として実施されているわけでございまして、膨大なコストがかかったという例はなかったというふうに我々は承知しています。
○小川敏夫君 例えばデジタルホンですと、発信については全くその回線を探索するシステムになっていない。これを回線を瞬時に把握するシステム、あるいは非常に速い時間に回線を探索するシステムというものを備えつけるとしましても、仮に今の交換機システムあるいはコンピューターシステムではもともとそこまではできないというのであれば、これは交換機システムそのものを新規に交換しなければならないというような問題になってくるわけです。そうしますと、これは数億円とかあるいは数十億円という単位じゃない、もっと巨額な費用を要するんではないかと思うんですが、そこら辺はいかがですか。
○政府委員(松尾邦弘君) 各国で用いられている携帯電話のシステムというのはさまざまでございますが、原理的にはそれほど変わってはございません。そうした中で今御質問のあったようなケースを考えましても、それに莫大な費用がかかるということは考えられないわけでございます。
 現に、例えば携帯電話の通信回線というのは最適なものを選んで自動的にその回線が設定されるというシステムを今とっておりまして、参考人の質疑のときにもありましたが、通話中でもその最適な状態が変わりますと同一通話内で使われている回線も変わるということでございます。そうなりますと、回線をまた特定してさらに傍受を続けるという作業が必要だということになりますが、これは現在の傍受ということを想定していないとそういうことになるわけでございます。
 ただ、現在でも、例えば十回線のうちの適宜の回線が最適状態によって瞬時に変わっていくというシステムを考えてみましても、では十回線の中のどの回線に変わったのかということを瞬時につかまえる装置自体を開発することについてはそれほどの技術的な問題はない、つまり現在の技術の応用の問題の範囲内で比較的容易に技術的な開発ができるということでございました。
 また、そのほかの似たような技術上の問題が確かに幾つかあるということでございますが、いずれも技術的にそれほど難しいことではないし、また膨大な金がかかるというような技術的な問題は存在しないと我々は考えております。
○小川敏夫君 技術論争はここで私と刑事局長が繰り広げても余り意味がないかもしれませんが、ぜひそこのところをもっとわかるような技術的な専門家の意見も聞くような機会をまた持っていただくよう、委員長に要請いたします。
 それから、費用の面で膨大か膨大じゃないかというのは余りにも抽象論過ぎるんですが、ただこの法案の実効性がそこにかかっている以上、ある程度の目安的な費用の数字を説明していただかないと、これはやはり審議するに当たっては不十分ではないかと思うんですが、そういう目安的な数字そのものも今示していただけないんでしょうか。
○政府委員(松尾邦弘君) 今いろいろな技術上の問題を検討している最中でございまして、今算定している、始めているということはそのとおりでございますが、今ここで幾らぐらいというのはなかなか積算が難しいわけでございます。
 ただ、通常の予算といいますか、その範囲内である程度賄えるぐらいの金額ということでございまして、何十億もかかるような話として我々は考えておるわけではない、また技術的にも金額的にもそのような膨大なものではないということでぜひ御理解をいただきたいと思っております。
○小川敏夫君 ある雑誌の資料、具体的な明細がわからないものだから直ちにそれがそのままというわけではないんですが、ドイツの政府が通信傍受のために要する費用の見積書を出したところ、四十億マルク、邦貨にして約二千五百億円というような報告がなされているというようなこともあります。これは明細がわからないから直ちに言えないんですが、ただ、やはり刑事局長から具体的な数字あるいは単位が全然出てこないんですが、私は数億円とか数十億円ではないと思うんですが、そこら辺はいかがでしょうか、その見込みは。
○政府委員(松尾邦弘君) そのドイツの例の積算の根拠というのはよくわかりませんが、人件費等いろいろ含んだものであるのかどうかという点、我々としてはその詳細は把握しておりませんので、何とも申し上げられません。
 それから、一年ですべての技術上の問題を解決するということになりますと、これはなかなか期間の問題としては難しい問題もあろうかと思います。我々としては、まず携帯電話等で言いましても非常に汎用率の高い業種というものを優先的に技術開発していく必要がございます。
 最終的にはイリジウム通信という、これは技術的には確かに現在の技術ですと非常に難しいということでございますので、将来はそれをどうするかということはいずれその先の段階で検討するということでございますが、とりあえずは通常の携帯電話からイリジウム通信までの間のいろいろな携帯電話通信、これをターゲットにしまして順次技術を開発していく、できる限り汎用性の高いものについては実施までの期間にその技術を開発したいということで考えております。
○小川敏夫君 終始一貫して、携帯電話を傍受できるシステムにシステム変更をお願いするに当たってのかかる費用の目安となる数字も出てこないのでありますが、国民の税金をそのために投入するわけですから、それが全く白紙のままでいいのか、やはりそういった金銭的な目安、この法律の実効性を担保するために税金を幾ら使うのかということは明らかにしていただかないと十分な審議ができないと思いますので、そこら辺のところはまたこの質疑が終了する前に改めて提示していただいて、質疑を行いたいと思います。
 それから、この携帯電話の傍受の問題は技術的な問題以外にもう一つ大きな問題がございます。
 通信事業者間で今激しいシェア争いといいますか、競争を行っている。そういった場合に、通信事業者の中でばらつきが出て、法務省の要請に応じて傍受ができるというふうにシステム変更に応じる業者と、それから憲法の通信の秘密を厳格に守って法務省の要請に応じない業者というものが出た場合、これはやはり一般に対する販売競争としましては、警察による傍受ができない、著しく困難ということを口コミかあるいは大々的に宣伝するかは別にして、今後の通信事業者間の競争に与える影響が非常に大きいと思うんです。
 ですから、その点に関して、通信事業者に対して単なる要請だけでそうした通信事業者間の競争に誤ったというか不適当な競争関係を生じさせる結果になってしまわないかということを心配しているんですが、そこの点、法務省の要請に対する通信事業者の対応の見込み、どの程度の今交渉をしているのか、あるいは確信を得ているのか、そこら辺を具体的に教えてください。
○政府委員(松尾邦弘君) この法案の立案の段階で、通信事業者とはかなりの回数にわたりましていろいろな協議を行いました。
 その際には、今話題になっております技術上の問題についての御意見もちょうだいしたりしたこともございますが、前提といたしましては、この通信傍受というのはやはり犯罪捜査のために必要不可欠な捜査手法としてお認めいただきたいということで出しておりまして、これは現在の組織犯罪の状況を考えますと、国民の平穏な生活を維持し、現在の良好な治安状態を維持していくということについては捜査手法としてぜひ必要な手法であるということでお願いしているわけでございますので、今の点については、私どもとしては通信事業者に十分な御理解をいただいているというふうに考えております。
 その上で、通信事業者等と今後の実際に傍受できるようなシステム等を開発するに当たりましてお話し合いをさせていただきますが、そうした理解を前提にいたしまして、通信事業者等に過度な負担をかけないという基本的な姿勢、またそれは財政面でもまたは人的な協力という面でも同じでございますが、そうした姿勢を我々としては貫いていきたいと思っておりますし、そうした話の中で国としてのそういう姿勢も御理解いただきますれば、こうしたシステムの開発がもし必要な場合にはいずれの事業者からも御協力をいただけるものというふうに今理解しているところでございます。
○小川敏夫君 御協力はいただけると御理解していらっしゃるんならいいけれども、ただ、いただけるものという思いだけではやはり足らないんで、具体的に約束をもらっているのかどうか、そこの点はどうですか。
○政府委員(松尾邦弘君) このいろいろな話し合いの過程で、確かに先生御指摘のように、通信事業者側からはどれほどの負担が通信事業者等にかかるのだろうかという懸念が表明されていることはまた事実でございます。
 その点につきましては、我々は今申し上げましたように、過度の負担を課することはないというようなことで、今申し上げたような基本的な通信傍受の必要性を御理解いただいた上で御納得いただける範囲内の協力をいただくというふうに御説明をしております。そうしたことに対しましては絶対反対であるというような事業者は、これまでの間おらなかったように理解しております。
○小川敏夫君 どうもわかりにくい話なんですが、ただ、そうするとまだ確約はいただいていないということでよろしいわけですね。
○政府委員(松尾邦弘君) 具体的なシステム開発についての個々の事業者との話し合いはまだ始めておりません。
○小川敏夫君 やはり仮に一社でもシステム変更を行わない、憲法の通信の秘密を守るという姿勢を貫くということであれば、その電話を集中的に犯罪者が使うことになるでしょうからこの法案の実効性が確保されないわけでございます。
 ですから、そこら辺は単に大丈夫であろうという刑事局長の見通しだけではなくて、通信事業者に再度委員会にお越しいただいてその点の意見をすべて聞くとか、そういったことをきちんと示していただかないと、この法案、しり抜けになるばかりか通信事業者の競争にあってはならない不必要な要素を加えて市場を乱してしまうということにもなりますので、そこら辺のところをきちんと詰めていただきたいというふうに考えております。
 次に、ほかの質問に行きますが、通信傍受法案の第三条の点でございます。特定の問題ですけれども、これまでの質疑の中で、家庭で一つの電話を複数の人間が使っているという場合、その中の一人が他の要件を満たせばその電話が傍受されることになる。その結果、犯罪に関係しない他の家族も該当性判断という範囲で傍受されるということになるということは御答弁いただきました。
 さらに、そうしますと、例えば家庭ではなくて私のような法律事務所でも同じように、事務所の中に五人、六人いて、一つの電話あるいは二つの電話をみんなで共用しているわけです。これもやはり同じようにその中に犯罪者がいれば他の人間は該当性判断という範囲で聞かれるという理屈になると思います。
 それで確認するんですが、私が聞いた例では回線が一本でしたが、例えば回線が二本、三本あって、そのうちの代表電話ということで、二本、三本の複数の電話回線を複数の人間が使っているという場合は、やはり同じようにその複数の電話について傍受されるということになるんでしょうか。
○政府委員(松尾邦弘君) ある通信手段がその犯罪関連通信に用いられる通信手段として特定されるかどうかというのが一つの要件でございます。仮に特定された場合に、今委員のお挙げになった例ですと、複数の者が例えば事務所等でそれを使うということになりますと、その複数が特定されているかどうかというのも一つのまた判断材料になります。
 例えば、複数の電話あるいは複数の回線が特定されたとして、その利用者が特定されている場合には比較的傍受ということについては障害がないように思いますが、その通信手段が特定されましても利用者が不特定多数であるというようなケースもまたあり得ると思います。そういった場合には、通信手段を実際に傍受の対象とした場合の弊害、つまり不特定多数の通話も聞かざるを得なくなってくるということも当然考慮する必要がありまして、通信手段が特定できたからといって直ちに傍受の対象とすることは適当でないケースも考えられるところでございます。
○小川敏夫君 どうも特定の話とそれ以外のあるべき運用の話とを一緒にごちゃまぜに説明されているのでわかりにくいんですが、要するに回線が二本、三本の複数であっても、それが犯人が使用する電話であるということが特定されれば、その複数の回線全部について傍受ができることになるわけですね。
○政府委員(松尾邦弘君) 傍受の対象となり得るものかどうかという点から見ますと、委員のおっしゃったとおりでございます。
○小川敏夫君 そうすると、その複数の回線が先ほど言ったように家族でも事務所でもいい、複数人が使っている場合に、複数人の中の一人が犯罪者である場合に、その犯罪者以外の人間も該当性判断という範囲で聞かれるということになるわけですね。
 そうすると、その人間がかけた電話、それからその人間にかかってきた電話も該当性判断の範囲で聞かれることになるわけですね。
○政府委員(松尾邦弘君) それは御指摘のとおりということになります。
○小川敏夫君 それから、該当性判断の範囲を超えて捜査官が仮に乱用に及んで、あるいは違法に及んで傍受してしまったといっても立会人はそれまでチェックできない。それから、裁判所による事後的なチェックもないということもそれでよろしいわけですね。
○政府委員(松尾邦弘君) 今の点は直ちにそうですというふうになかなか申し上げられません。
 本来、傍受すべき区間を超えて不必要に傍受しておりますと、それはもちろんこの法律としては違法なことでございますので、懲戒処分等の対象になります。また、傍受したことはすべて原記録には残されているわけでございますので、不服申し立てあるいはその他必要な裁判所がチェックする機会にはそうした行為についての裁判所の判断が入るということでございます。
○小川敏夫君 ただいまの刑事局長の答弁を、はい、そうですかと私も認めるわけにはいかないのですが、そこの点の議論はもう既にしてありますので、ほかの点に行きます。
 十六条の逆探知の問題ですが、特に十六条の三項の問題、場所も離れているし対象の通信事業者も異なるという場合、これなどは刑事局長のお考えですと刑事処分に伴う付随処分、こういうことで行うことなのでしょうか。
○政府委員(松尾邦弘君) そのとおりでございます。
○小川敏夫君 どうもこれまでの強制処分の付随処分といいますと、やはり場所も同一、対象者も同一というのが一つの原則なんですが、この場合ですと場所も違うし通信事業者の人も違う。果たしてこれで付随処分と言えるのか。付随処分でできる範囲を超えているんではないかと思うんですが、その点はいかがでしょうか。
○政府委員(松尾邦弘君) 令状による傍受の実施場所とは別の場所において逆探知を要請する場合がこの十六条三項の規定です。その場合には、通信の当事者との関係では新たな法益侵害が生ずるということはないということはまず言えるわけでございまして、要請を受けた通信事業者との関係では直ちに令状の効力がそのまま及ぶものではないということですので、この三項で協力義務を課して、逆探知の要請を受けた通信事業者が通信の秘密を守る義務から解除されるということを明らかにしたということでございます。
○小川敏夫君 ただ、そうはいっても捜査官の行う一つの処分ですから、仮にこれが強制処分であれば本来令状がなくてはいけない。しかし、実際には口頭の告知で足りるわけですね。では、任意処分であるなら任意処分で本来法律上の協力義務はないはずでございます。ですから、強制処分としてもおかしいし任意処分としてもおかしいし、全く新たな類型に属するものをこの法案はつくってしまったというので、どうもこれは、ただ付随処分とも考えられませんから、やはり刑事手続を定めた憲法上相当問題がある規定ではないかというふうに思います。その点は回答も先に聞きましたから、次の質問に移ります。
 先ほど二十二条のメモの問題が出てきました。これは、メモに関しては使用してはいけないという規定があるということですが、この使用の概念ですね、例えば証拠として使用してはいけないとかそういう法律的な意味を指すのか。捜査官が何か捜査をしているときに自分の記憶喚起のために自分が手帳を開いて思い出す、これも日本語の広い意味では使用に当たるんですけれども、この使用の概念について手短に説明していただきたいのです。
○政府委員(松尾邦弘君) 二十二条の四項は、傍受記録を作成した場合において、複製等があるときはその記録を全部消去するということになっております。これは、傍受記録と原記録というものの存在をこの法律の柱にしておりますので、そのほかにメモ等がある場合にはそれが乱用されることのないようにここに消去義務を課したものでございます。
 したがいまして、傍受記録の内容以外のものについては一切の使用を許さないというふうに御理解いただきたいと思っております。
○小川敏夫君 先ほどの質疑ですと、メモについても消去するように努めたいということですが、そういうことであれば、法案を修正してメモをとることを禁止するなり消去の中に含めればいいというふうに思っております。
 最後ですが、警察庁の方にお尋ねします。
 これまでの法務省の刑事局長の答弁で、この法案上、警察施設から技術を駆使して傍受を行うことは禁止されているんだという説明をいただきました。あるいは、インターネット通信の場合に、該当性判断ですべての情報を受信した後、即時その場において傍受記録を作成するんだ、それが速やかに傍受記録を作成するという法律の意味だという答弁をいただいております。これは警察庁の御見解もそれと同じでよろしいんでしょうか。すなわち、今説明した範囲で違うことをやることは違法だという認識でよろしいんでしょうか。
○政府委員(林則清君) まず、最初のお尋ねの傍受の実施の場所につきましては、もう言うまでもないことでありますけれども、個別の事案ごとに裁判官がその実施が可能な最適な場所を決定するということになるものと承知しております。
 したがいまして、傍受の実施は、通信傍受法のもとでの裁判官の法的判断として、電話交換局等通信事業者等の監視する場所において通信手段の傍受の実施をする部分を管理する者等の立ち会いのもとに行うということになるわけでありまして、捜査機関の施設内で傍受を行うというようなことは、この法律をしっかり読めばそういうことは許されるものではないというふうに理解をいたしております。警察としましては、そういう意味では松尾刑事局長の答弁と全く同じでございます。
 それから、後半のお尋ねは、該当性の判断の速やかな実施の点のお尋ねだと思いますけれども、電子メールのように傍受のときにその内容を知ることのできないものにつきましては、法案の第十三条二項の規定により、通信に係る信号全体を一たん傍受、つまりコピーをして、これを文字等に変換した上で該当性の判断を行うというのはもう先生御指摘のとおりであります。
 この場合、法案十三条第二項後段の規定によって、該当性の判断は速やかに行わなければならないというふうにされておりまして、したがいまして、直ちに復元することが可能なものについては立会人がいる傍受の実施の場所において復元する、そして必要最小限度の判読を行って該当性を判断すべきであると考えております。
 すなわち、直ちに復元することが可能であるにもかかわらず、傍受した記録をその場において該当性判断をせずにそのまま警察署へ持ち帰るといったことは、同項の規定に違反するものというふうに考えております。
 警察といたしましては、蛇足ではありますけれども、今申し上げましたことにつきましても、国家公安委員会規則、通達等によって厳格に規定して、都道府県警察に周知徹底させていきたい、かように考えております。
○小川敏夫君 まだ質問事項たくさん残っているんですが、時間が来ましたので、終わります。
○千葉景子君 きょうは質問通告を既にさせていただいておりますけれども、その前に、今、同僚議員の方からるる質問をさせていただきました。それにかかわって、私も大変疑問に思い、あるいは改めてお尋ねをしておかなければいけないと思われる点がございますので、まずそこからお願いをしたいというふうに思います。
 率直に言いまして、この法案、審議をすればするだけ非常に問題点が明らかになってきた。これはそれぞれ技術的、専門的な皆さんの質疑もあり、私も大変参考にさせていただきました。考えてみますと、本当にこれは、法案をまず法務省が出されるときに、どれだけ緻密な、あるいはいろいろな分野との調整も図り、日本のこれからの行く末、こういうことにもきちっとした理念を持ちながら法案を出されたのかどうか、大変疑問に思います。
 通信傍受というその捜査手法を何が何でもまず取り入れるんだ、何かそれが先行して、本当に問題点が置き去りにしてこられたという感が私は率直に言っていたしております。本来であれば、もう一度練り直して法案をつくり直す、出し直す、それくらいの問題ではないかと私は今率直に思っております。それをまずよくよく理解をいただきたいというふうに思います。
 先ほど海野議員の方から暗号の問題について質問がございました。私は、これは大変矛盾に満ちた議論だと思うんです。
 というのは、警察庁、それから法務省もそうですけれども、やはりこれからのインターネットなどについては、これはオープンな通信手段ですから、当然、暗号、あるいはプライバシーを守るという手法がとられるわけです。しかし、それについては、何とか解読をして捜査に生かしたいというふうに言われます。解読できないと困るわけですね、一方では。ところが、電子商取引などを含めて、これからの新しい情報通信の大きな発展ということを考えてみるときには、商取引の安全とかあるいはプライバシーなどを守るためには、今度は暗号などを使ったときにやたら簡単に解読されては困るわけです。
 要するに、矛盾したこの二つの問題を一体どういうふうに解決していこうとされているのか。それについて、本当に日本の政府としてもきちっとした物の考え方というのを持っておられたのかどうか。その辺が私は大変今疑問に思うところです。
 今申し上げましたように、片方では解読をせにゃいかぬ、片方では解読されちゃいかぬ、この矛盾というのをどういうふうに考えられますか。
○政府委員(松尾邦弘君) 問題としては、委員御指摘のように大変大きな問題だろうと思います。
 OECDの閣僚理事会による暗号政策ガイドラインというものがございますが、この中で、一方で、暗号技法というのは情報技術の安全な利用を確保するための一つの有効な道具となり得る。安全な情報・通信ネットワーク及びシステムの重要な構成要素であることを認識するという一つの項目が明確に入っております。
 それと同時に、別のところでは、暗号は個人または団体による非合法な活動のためにもまた利用される可能性がある。それにより、公共の安全、国家の安全、法の執行、ビジネスの利益、顧客の利益またはプライバシーに悪影響が及びかねず、したがって、政府は、産業界及び一般国民とともに、均衡のとれた政策を発展させることを要求されているということを認識している。こういう文言もまたあります。
 先進国の中で、この暗号の問題というのは今さまざまな角度から論議されているという点で、まさに重要な問題であるというのは委員御指摘のとおりでございます。
 ただ、三点だけ申し上げておきたいんですが、一点は、暗号の問題というのは通信傍受法案特有な問題ではございません。これまでもいろいろな企業を捜索、押収した場合に、暗号を解読する必要があるそういう電子的な情報というものがあったこともございます。オウムの例で言いましても、暗号解読に相当な日時を要したということもまたございました。したがって、捜査手法として、暗号の解読というのは、やはりこれまでにも一つの大きな重要課題であったわけでございます。
 それから、通信傍受法案の十三条二項をごらんいただきますと、直ちに内容が判読不能の場合には、これを一たん全部傍受記録として、暗号の場合は解読する必要があるということがございます。確かに解読には、比較的容易に解読できるもの、相当な日時をかけて解読しなきゃいけないもの、あるいは場合によりますと全然解読できないものということもそれはあり得ることでございます。
 ただ、これは暗号解読の技術開発の問題でございまして、捜査機関としては、そうした問題につきましても徹底して努力していくということは従来からもやっておりますし、これからも、特に通信傍受では暗号の使われる機会というのが多いことも想像されますので、そうした点についてもまた十分な努力をしていくということでございます。
 こうしたことで、その暗号の問題というのは、確かにこれからの情報通信が高度に発達していく中でますます重要性を増すと同時に、通信傍受でもある意味では永遠の課題ということで、新しい技術の暗号が開発されればそれをまた捜査機関は一生懸命解読に努める。それを技術として蓄積していくということがまた重要かなというふうに考えているところでございます。
○千葉景子君 それはそれとしてお聞きしておきますが、もう一つ、小川委員の質疑の中で携帯電話の問題に触れられました。
 これも現在では技術的になかなか傍受が困難という問題があり、これについてはこれからのシステム開発ということを国の費用でされるということです。先ほども、費用の点についてははっきりしたお答えはございませんでした。ただ、やはり予算を使って行うことです。それから、費用とそして効果、一体これがどういうバランスで行われるのか、こういう問題があります。
 それから、例えば携帯電話というのも、これからさらに技術開発がされて新しいシステムに数年したら変わっていくというふうに言われています。そういう際に、現在のシステムを前提にしてこの傍受のための開発をする、費用をかける、かけた途端にもう次の新しいまたシステムに変わっていく。こういうときに、どの程度そこに金をかけ、そして費用をかけて、その反面の効果がどの程度だ、こういうことを全く抜きにしてこの議論というのは進まないだろうというふうに思うんですね。これもようやくこの審議で徐々に明らかになってきたことです。
 だとすれば、携帯電話について一般的にこの法律に盛り込むのではなくて、もう少し議論を詰めて、じゃ今回はこの中から一たん削除をして、少しその議論を煮詰めた上で、その通信傍受が可能であるか、あるいはどういう形態で行うのかということを国会で議論してはっきり定めていくというようなことだって必要ではないかと思います。
 私たちも、無責任に、できないもの、これから開発しよう、どれぐらい費用がかかるかもわからない、そんなものにそうですかと言うわけにはいかないわけですよ。
 そういう点について考えたときには、改めて、例えば費用とかあるいはこれから将来の新しいシステム開発が行われる際の対応の仕方とか、そういうことをどう考えていますか。
○政府委員(松尾邦弘君) まず、携帯電話等の傍受の必要性につきましては、これはそういう通信事業者等の参考人質疑のときにも、現在非常に重要な部分が携帯電話等で行われている、それから最近におきますとメールが使用されることもだんだんシェアも大きくなってきているということでございまして、事業者の方も、通信傍受を行うのであればこの部分を除外してしまうということは適当でないことは我々もわかっていますということを明確におっしゃっておりました。
 まさにそのとおりで、捜査手法として、電話だけではなくてこうした新しい分野の、発展しつつある分野の通信手段も通信傍受の対象として取り込むということがどうしても必要だということで、まずその点は御理解いただきたいと思います。
 費用の点は、先ほどからいろいろお尋ねいただくんですが、今の法律が通りますと、それぞれの事業者ごとに、あるいは事業者団体ごとにといいますか、さらに詳細な打ち合わせとお願いをする機会を当然設けるつもりでおります。その中で、どの程度の協力をいただけるのか。あるいは、基本的には既存の技術の応用の問題でございますので、既存の技術についてのある程度の技術的な提供ということも場合によるとお願いすることもあると思います。そうしたことを総合して費用というのは積算されるということになります。
 我々が従来検討しております範囲内では、それほど問題にするほどの多額な費用はかからないということでございます。現に、これまで携帯電話等で傍受を実施している国におきましても、実施する過程の中でシステムのグレードアップがあり、あるいは技術開発があったわけでございますが、それについて莫大な費用がかかって国民に迷惑をかけたとか国民の税金を相当費やしたなんという話はこれまで聞いておりませんので、そうした問題は生じないものというふうに我々は考えております。
○千葉景子君 さっぱりわからないんですね。こういう状況を見ても、例えばこれからの国の将来、そういうことにも大きくかかわってくる、あるいは財政にどういう影響があるかということにもかかわる、あるいはこれからの情報通信の発展とのかかわり合い、こういう問題もある。
 当然のことながら、この委員会でも、交通・情報通信委員会などとの連合審査とか、そういうことで本当にそれぞれの分野で誤りなきよう、あるいはそこに意思のそごがないような形で議論をしませんと、これはとんだことになるのではないかというふうに思います。
 そういう意味では、私も強く連合審査の必要性というものを改めて指摘しておきたいというふうに思いますので、委員長、ぜひその点については早急に御議論をいただきたいというふうに思います。
○委員長(荒木清寛君) はい。よく理事会で協議いたします。
○千葉景子君 さて、もう一点。
 先ほど報道機関の問題がございました。これについての適用を、取材として行うもの等については適用しないという方向なんですけれども、改めてお伺いをしますが、それを明確に法に定めるということはなぜできないんでしょうか。確かに、医師、弁護士等の職務とは性格が異なるということはわかります。だから、必ずしもここで言う十五条に一緒くたにして加える必要があるかどうかは別としましても、やっぱりそれは法的にきちっと記載することというのは別段不可能なことではなかろうというふうに思うんですが、その点についていかがですか。
○政府委員(松尾邦弘君) その点につきましては、先ほども申し上げましたが、この通信傍受の対象外にするかどうかという問題で、この法律では医師とかあるいは弁護士をその業務に関する通信はこの傍受の対象外にするということを申し上げて、そのように規定がなっているということを申し上げているわけでございます。
 この刑事訴訟法の規定自体も、真実の発見という一つの大きな要請とそうした特殊な職業、つまり、他人の秘密を打ち明けられましてそれによって業務を遂行する、あるいは業務の端緒がそこにあるというような、内在的にそういったものを含む職業に証言拒絶権、押収拒絶権を認める。いわば真実の発見を、その部分では義務という面からいいますと例外をつくっていくという一つの決断を刑事訴訟法の体系はしているわけでございまして、かなりぎりぎりのところの選択によって現在の法制度はでき上がっているということでございます。
 では、一方、報道機関を医師、弁護士並みに扱うかどうかという問題に帰着するわけでございますが、この点は、先ほどから申し上げておりますように、報道機関といいましても種々多様なといいますか、規模についても内容についてもさまざまございます。どの範囲をこの報道機関としてくくっていくのかという問題もございます。また、報道機関の業務といいましても、これは先ほど申し上げましたが、報道機関にいろいろな情報が寄せられる。しかし、それは報道するということに向けての情報ということでございまして、医師、弁護士のように他人の秘密を抱え込んで、あるいは秘密のまま行っていくという本質的なそういう職業とはまた違うということもあります。
 そういったことで、今回は先ほど言った刑事訴訟法の組み立て方の問題、あるいは今言ったような報道機関自体の性格の問題、それからもう一つは、これは挙げることが適当かどうかわかりませんが、諸外国においても恐らく同じような判断からだと思いますが、報道機関を通信傍受の対象外にはしていないというような世界の趨勢、そういったものを考えますと、法制面で原則的にといいますか、条文としてこの報道機関の取材行為その他にかかわるものについては通信傍受の対象外に明定するということについては、そこまで踏み込むのはいかがなものかという判断でございます。
 ただ、先ほどから申し上げましたように、そうはいいましても、報道機関のいろいろな特質から考えますと、取材についてあるいは取材に関する通信については最大限の配慮をする必要があるという点については我々捜査機関としても同じでございまして、運用面においてその点の十分な配慮をするということで、先ほどは個別具体的に何点か申し上げた次第でございます。
○千葉景子君 いかがなものかということですけれども、それは法律にどういう条文をきちっとつくるか、盛り込むかということにかかわるんだと思うんです。別に私はこの十五条のところに一緒に報道機関というふうに入れろとは必ずしも申しません。しかし、やはりその報道の自由なりを保障する、そういう意味での立法をここに盛り込むということは十分に私は可能だというふうに思うんです。もしもそういうことが立法的に可能だとすれば、別に嫌だと拒否される筋合いはないんじゃないかと思うんですが、改めてもしそういう工夫、知恵があるならばそうしたらいかがでしょうか。私はそうすべきだと思います。
○政府委員(松尾邦弘君) 法律に盛り込むことが相当かどうかという点については、立案の段階から、現在もそうですが、消極として考えていると。その理由は先ほども申し上げました。
 それから、報道機関の取材にかかわる、あるいは報道機関のかかわる通話は、これを傍受の対象外にするかどうかというのは、基本的な理由は今幾つか申し上げましたが、そのほかにも若干申し上げますと、今度は必要性の問題でございます。
 医師、弁護士等でありますと、他人の秘密を聞くことが本質的にその職業に内在するということで、刑事訴訟法もそれを正面から認めているわけでございますが、報道機関の場合、果たしてどういう場合に通信傍受をすることによって報道の自由なりあるいは取材源の秘匿なりの問題がかかわるのだろうかと。今度は具体的に考えていきますと、先ほどから申し上げますとおり、極めてそれは希有な例であろう。全くないとは言いませんが、極めて希有な例であろう。
 先ほどは合計するところ、二つ申し上げました。一つは、例えばある暴力団の組長の電話を傍受していたときに取材の電話がかかってきた。この場合は、先ほど言いましたように原則的にはスポットモニタリングをして、取材であればこれは切るというふうに申し上げました。では、切らないケースというのはあるんだろうかというのは、先ほど例として申し上げた、暴力団の組長が何をどう思ったかわかりません、本当に希有な例だと思いますが、実は何月何日の暴力団との抗争の中で、あれをやったのはおれの組だよとか、やったのはこいつだよ、ただおまえ黙っていろよというような犯行の自白のような話が流れた場合には、そのために、つまりそういう犯罪の捜査で、組織的な殺人ということで令状をとっている場合に、まさにそれで傍受しているわけですから、それを切れというのは、極めて例外的なケースでありますが、相当でない場合も考えられる。
 そういう極めて例外的なケースで報道機関の取材とその通信傍受というのがバッティングするというのがありますが、そうした希有な例を想定して、じゃ法制面で明確に医師と弁護士と同じように最初から通信傍受の対象外にすべきかどうか、必要性があるかどうかという点になると、それは医師や弁護士の場合と本質的な違いがあるだろうということでございます。
○千葉景子君 これは、私も別に医師や弁護士と同じだとさっきから言っているわけじゃないんです。ただ、法的にきちっとした位置づけを報道機関、あるいは報道の自由、こういうものについて明確にしておくべきではないか、こういう趣旨ですから。改めて私ももうちょっと知恵を働かせてみたいと思いますが、さらに専門家でもございます法務省においてもぜひそこを明確にできるような知恵を出すべきではないかというふうに思います。
 そういう意味で、私はこの法律でもう一つはっきりしておくべきことがあるのではないかというふうに思うんです。
 修正が施されまして、確かに違法な通信傍受については罰則がかなり強くされました。ただ私は、この法律はこういう構造で考えるべきだというふうに思っています。それは、そもそも通信の秘密、プライバシー、こういうものは原則として公権力によって基本的には侵されるべきものではない。原則としては通信傍受、盗聴というものは禁ぜられるべきものだ。それをまず原則として、しかし一定の限度で捜査の必要上、適正な手続、令状、こういうものをもって一定の最小限の範囲でそれを解除する。したがって、その条件にも合わないようなものについては厳正に処罰をする。こういうきちっと明確な段階を踏んで本当は法律がつくられておればよりわかりやすい。
 ところが、通信の傍受、盗聴というのは原則違法なことだということがこの法律では必ずしも明確にされていないんです。そういう規定をまず冒頭置いたらどうでしょうか。そして、捜査のために一定の限度では盗聴、通信傍受を認めるという構造にして、やはり盗聴というのは原則違法なことだというのをまずはっきりすべきだ。そこから本当は議論はスタートするはずだったんだなと改めてまた思うんです。
 それについて、法務大臣にどうお考えになるかお聞きをしたいんですけれども、その前に警察庁、いかがでしょうか。この間もいろいろ警察に対する信頼のなさというものも指摘をされてまいりました。基本的に私は公権力による盗聴というのは違法行為だと。これまでも当然のことだったろうとは思います。警察庁として、それをきちっとこれまでも認識をされていたか、そしてこれまで万が一にも盗聴という事実はなかったんでしょうね。おやりになったようなことはありませんね。明言できますか。
○政府委員(林則清君) 言うまでもなく、およそ警察活動というのは法のもとに適法、妥当に行われるべきであるというのは当然のことでありまして、今国会において当庁より累次御答弁申し上げておりますとおり、警察は今まで組織としていわゆる盗聴という違法行為は行っておりませんし、今後もそういうことを行うことはあり得ないということを申し上げておきたいと思います。
○千葉景子君 大変今重要なことをおっしゃいました。組織としてはやってこなかったと。そこに所属をする、あるいは公務員として国の政府機関の一員たる者が盗聴という事実行為を行ったかどうかということはわからないという意味ですか。
○政府委員(林則清君) いわゆる緒方宅事件についての御指摘だろうと思いますけれども、昭和六十二年当時の東京地方検察庁の捜査において、警察官個人による、おっしゃるところの盗聴行為があったということが認められたということ、その後の民事訴訟においても同様の行為があったということが推認されたことは事実でありまして、警察として非常に厳粛にこれを受けとめており、まことにこれは残念なことであったと考えております。
 以来、そのような疑いをいささかも抱かれるような職務執行は絶対に行われないよう徹底しておるところでありまして、そういう意味でも盗聴行為というのは全然行っていないということを明言することができると思います。
○千葉景子君 別に緒方事件ということに限らないんですけれども、それはそれとして。
 法務大臣、やっぱりそこのところを疑念を持たれたまま、あるいはこれからも盗聴というのは原則違法行為だよということをまずははっきりさせてこの法案というのをつくった方がよろしいのではないかと思いますが、大臣、どうですか。そこだけお聞きして終わります。
○国務大臣(陣内孝雄君) 通信の秘密を守るというのは、これはもう基本的な権利として非常に大事なものであるということでございます。そういう中で、先ほど来委員が御心配なさっていた、あるいは御提言なされたように、一般的にこれを禁止するような条文をこの通信傍受法の中に取り込んだらどうかというようなことも付言されたわけでございますが、私どもは、既に電気通信事業法等におきまして一般的に通信の秘密の侵害行為に対する罰則規定が設けられておりますし、その上、衆議院において修正された本法律案によりましてこれらの法定刑を引き上げるということをしたわけでございますし、捜査または調査の権限を有する公務員が、その職務に関し電気通信事業法等に定める通信の秘密を侵す罪を犯した場合の加重罰則規定も設けられたところでございます。
 したがって、この法案において令状によらない通信傍受の一般的禁止規定を設けるには及ばないと考えておりますし、今後も通信の秘密の基本的な人権における大事な意味合いを十分拳々服膺しながら、それぞれの立場でこれを執行していくというふうにすべきであると考えております。
○千葉景子君 終わります。
○委員長(荒木清寛君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時半まで休憩いたします。
   午後零時三十三分休憩
     ─────・─────
   午後一時三十三分開会
○委員長(荒木清寛君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律案、犯罪捜査のための通信傍受に関する法律案及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案を一括して議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○大森礼子君 公明党の大森礼子です。
 早速質問させていただきます。
 まず、午前中の審議の中で、参考人の質疑の中で出てきたことで、現在の時点では携帯電話の傍受は困難という発言があったことをめぐっていろいろ議論がされております。
 それで、例えばNTTの場合にはできる。それは傍受をする必要がある場合があるからでありまして、例えば一一三番、故障のところへ電話する場合があります。うちの母親は田舎におりますけれども、ずっと話し中で通じない、こんなにうちのおばあさんが長電話するはずがないから、もしかしたら倒れて受話器でも外れているんじゃないかとか、こんな場合に確認することもありますし、いろんなケースがあると思います。そのときに必要な情報は、話し中か受話器が外れているかという情報なわけでありまして、それに対応してNTTではそういうシステムになっている。
 携帯電話の場合には、それはまず必要とされることはないのではないか。そして、必要でないシステムのために金をかけるということは、これは企業のあり方としては余り賢明なやり方ではないわけでありまして、現行システムがそうなっていないからといって先もできないということにはならないと思います。
 それから、そういう技術開発ができてから法案を出せばいいじゃないかという意見も、場外といいますか不規則発言の中でちょこっとありましたので、これに触れますと、これについても、もし法案が通っていない段階で警察が何か技術開発をやっていましたらどういうことになるのでしょうか。それ自体批判されるのではないか。何かにスクープで出て、既にここまで進んでいる盗聴の準備とか、やがて訪れる一億総盗聴監視社会みたいな、こういうセンセーショナルな見出しで批判されるのではないかなという気がいたします。
 それから、法律の根拠がなければ予算もとれないということも、これも周知の事実でございます。
 そこで、刑事局長にもう簡単に聞くんですけれども、アメリカでは携帯電話の傍受は行われているのかどうか、教えてください。
○政府委員(松尾邦弘君) アメリカでも当然携帯電話が非常に普及しておりますので、その傍受は通信傍受の中の非常に重要な部分を占めているというふうに聞いておりまして、傍受を始めて以来、アメリカでも携帯電話の傍受が行われているということでございます。
 技術上の問題等について困難があるというようなことは我々としては聞いていないということでございます。
○大森礼子君 アメリカで技術的に可能であれば、客観的に不可能ではないということになると思います。
 それから、システムの開発については事業者に協力を要請することになる。その場合に、協力しない事業者が一社でもあれば実効性がないのではないかという質問のやりとりもございました。それで、協力義務ですから、強制ということはできないのはもちろんであります。
 ただ、やっぱり通信というのは公共性もございます。それで、もし暴力団一〇〇%出資の事業者であればそういう協力は得られないかもしれませんけれども、もしそうなりますと、そういう犯罪者は、例えばA社は協力する、B社は協力しないとなると、犯罪者はみんなB社の携帯電話に集中するわけでありまして、これがB社にとって果たしてよい結果を生むのかどうか。あそこは犯罪者ばかりが専用で携帯を使っているとなりますと、社会的信用を損なうのではないかという気もいたします。あるいは、我が社はあなたの犯罪通信の秘密を徹底して守りますと、これを宣伝文句にするわけにもいかないわけでありまして、誠意を持って協力を求めれば妥当な結論が得られるのではないかと思いますし、そのように努力していただきたいというふうに思います。
 それから、ずっとこの通信傍受法案を含みます組織犯罪対策三法を審議してまいりました。特に、通信傍受法案については多くの議論がございました。それで、先ほど、もう一度練り直すべきではないかという意見もあったわけでございます。
 確かに、政府原案につきましては我々公明党も反対しておりました。傍受という捜査手法を一般法化するものであって、乱用の危険も非常に大きいということでございます。この原案提出につきましては、与党間で三十三回ですか何か協議されたと聞いております。そこまで協議したんだったら、今反対される党は提出自体を何とか阻止してほしかったなと。そこから混乱が生じてきたというふうに私は思います。
 それで、私どもは独自に党で検討してきて修正案骨子のもとをつくり出したわけであります。ほかの党は知りませんけれども、我が党は原案を練り直して党独自の見解というのを出したわけでございます。もう一度練り直すべき必要性というのは今のところ感じておりません。
 それから、もし練り直すというのであれば、参議院に送付されてこの法案は六十日経過いたしました。憲法五十九条四項の規定を見ましても、必要ならば送付のときから六十日以内に練り直すことが予定されているのではないか、要請されているのではないか、こういう気がいたします。
 それから、報道の自由との関係ですけれども、午前中の質疑で内藤委員の質問に対して非常に積極的な答弁があったと思います。それで、報道機関というものはやっぱり十五条の中に入れるべきではないか、それ以外であっても明文化すべきではないかということについて、私どもも非常に報道の自由、取材の自由、正当な報道の自由と言った方がいいかもしれませんが、大事だと思いますので、何とかそういうことができないかなというふうに検討したんですが、先ほど刑事局長がお答えになりました、それに加えまして、非常に定義づけといいますか、その範囲を明確にすることが難しいということで、立法技術的に困難である、こういうふうな結論に至ったわけでございます。
 それで、結局は運用にゆだねるしかなくなるわけです。一般に運用にゆだねるといいますと、乱用の危険が定型的に大きくなると考えられておりますけれども、しかし正当な報道の自由、正当な取材の自由を尊重する、こういう運用の仕方を法務省当局がここで述べられたということは、これは積極的な意味があると考えます。
 この報道の自由との関係で、もう既にこれは質問されましたので重ねて聞きませんけれども、一つだけちょっと触れておきたいのは、刑事局長の最後のところで、例えば傍受の対象となっている電話で被疑者がみずからの犯罪について告白する場合がある、その場合には傍受の対象となり得るとおっしゃいました。それはそれで仕方がないのかもしれませんけれども、この取材、報道の自由との関係で、自分がもし記者の立場であったならばどんな場合に困るかなとちょっと考えてみました。
 それは、記者というのは、やっぱり取材源については秘匿するといいますかしゃべらないということが知られておりますから、あんただからしゃべるというケースが多くあるのではないかなという気がするわけです。それで、だれにも知られたくなかったら実際に対面して取材すればいいという言い方もできるかもしれませんが、対面しては嫌だという場合もあるかもしれません。
 そこで、あんただから話す、信用ある報道関係者であるから話すといって告白した場合、そしてそれが証拠となるような場合ですと、多分その取材者側としては、自分がそういう供述を誘引した、引っ張ったのではないかという気持ちが残って非常に嫌な気持ちになるだろうというふうに思うんですね。それで、結局、そういうことは取材対象者と取材者との間の信頼関係というものを少しずつじわじわと崩していく危険があるのではないかなという気がいたします。
 それで、特にこういう点に、報道関係者側の立場といいますか、これも十分配慮していただいて、先ほど刑事局長が述べたような運用をしていただきたいと思うんですが、簡単に御意見をお伺いいたします。
○政府委員(松尾邦弘君) 今の、配慮が必要だということは、まさにおっしゃるとおりだろうと思います。
 私が言いました、極めて例外的に傍受するというケースにつきましても、報道関係者、記者が当該、まあ暴力団としますか、暴力団の傍受されている電話にかけたところ、向こうがまずいろいろな犯罪事実に関係することを言ったという想定なんですね。その場合でも、あくまで取材だということで、スポットモニタリングしておりますから、取材の言葉があり、犯罪事実に関係しない言葉があればその段階で本来切っていますから、それはもう傍受はしていないことになります。
 ただ、さらに希有な事例として、ああおまえか、実はこういうことがあったということで、スポットモニタリングの中でそういう告白があった場合だけですから、頭の中では考える事例ではございますが、現実にはないんだろうと思います。
 そんなことを考えあわせますと、原則として報道機関が関する電話は傍受しないというふうに言っても差し支えないかと思います。
○大森礼子君 それから、報道機関以外にも少し配慮が必要だと思われるケースがあると思いますのでお尋ねいたします。
 条文に規定することはできないかもしれませんけれども、運用上配慮しなくてはいけないのではないか、こういう質問でございます。
 ダルクという民間の薬物依存者の更生のためのリハビリセンターがございます。実は、この新聞記事を読みまして、こういうことをしておられる方がいるのだなとわかりました。みずから薬物依存の経験を持つ近藤さんという方が設立されたリハビリセンターです。ドラッグ・アディクション・リハビリテーション・センター、これの略でダルクと言われております。薬物犯罪から手を切れない薬物依存者からの電話による相談も数多く寄せられていると聞いております。
 そうしますと、そのような相談の中には、薬物犯罪に関する会話も含まれるかもしれません。あるいはその中に入っている人に、外から薬物犯罪者、仲間といいますか、ここら辺が電話をかけてくることもあるのかもしれません。これも捜査のために傍受するとした場合、かえってその施設の活動、それから薬物依存者の更生を阻害することになるのではないか、そのリハビリセンターの設立目的自体を逆に否定することになるのではないかという気がするわけです。
 ここでも、犯罪摘発の必要性と、それからそういう大事な施設の存在意義といいますか、これとをてんびんにかける場面が生じるのではないかと思うのですが、こういうケースについて法務省はどのようにお考えでしょうか。
○国務大臣(陣内孝雄君) 大変大事な御指摘をいただいたわけでございますけれども、薬物依存者の更生に今御指摘のような民間のリハビリ施設が大きく貢献していることは十分承知いたしております。
 このような施設に対して電話等で、薬物依存者から薬物犯罪を犯したことの告白等が、そういうことを含めて薬物犯罪に関する相談がなされるということは大いにあり得るわけでございますが、この法案におきましては、通信傍受は組織的な犯罪に対処をするためのものであるということでございます。そもそも薬物の使用の罪というのは対象犯罪とはされていないということでございます。その上、末端の薬物使用者の単純所持や譲り受けの事案について通信傍受という捜査方法がとられるということは、したがってないというふうに考えるわけでございます。
 さらに、本法案において、これは医師等との間の通信について、他人の依頼を受けて行うその業務に関するものと認められるときは傍受が禁止されておる、これまで議論されたところでございますが、薬物依存者がその更生のために一定の信頼関係に基づいて相談を行う民間のリハビリ施設についても、同じような観点から、これらの施設に設置された電話に関しましては、犯罪関連通信が行われることがたとえ判明いたしたとしてもこれを傍受の対象にすることはあり得ない、こういうふうに考えております。
○大森礼子君 あり得ないと言い切れるのかどうか、個々具体的なケースで違ってくるというような気もいたしますが、非常に今の法務大臣の御答弁を重く受けとめたいというふうに思います。
 それで、我々、例えば青少年の薬物汚染を防止しよう、そして啓蒙活動もしようと、そうであるならば、流れてくる薬物をとめなければいけない、摘発しなくてはいけない。そこで、その捜査手法として通信傍受が不可欠だという考え方に立つわけですが、一方で、既に薬物に汚染された方、薬物依存者になってしまった方、こういう方の更生という点についても、やはりその救済措置を考える必要があると思います。
 例えば、覚せい剤使用者というのは犯罪者となります。しかし一方で、薬というものに対する、あるいはそういうものを売る人間との関係では被害者であるという認識を私は持っております。そうであるからこそ、そのような薬物の害毒をまき散らして莫大な犯罪収益を上げて、そして税金も払わないで勢力を拡大していく、そういう組織犯罪集団に対しての怒りもまた強くなるわけでございます。
 この通信傍受法案と直接は関係しないのですが、そういう民間の方がやってくださっているわけですから、やはり国としても薬物に侵された人の更生といいますか、特に青少年なんかも、十分施設に考慮した対策を立てなくてはいけないと思います。
 法務大臣、法務省だけの管轄ではないかもしれませんが、こういう点にもやはり何らかの対策を講じていくべきではないかと思うのですが、御見解をお尋ねいたします。
○国務大臣(陣内孝雄君) 今御指摘のように、薬物犯罪対策を効果的に進めるためには、薬物依存者の更生を図るということも大変重要なことでございます。民間のリハビリ施設がこれに大きく貢献しているわけでございます。
 法務省といたしましても、そういうことを踏まえまして、矯正保護の分野において、薬物依存者の更生のために関係部局において必要な措置をとってはおりますけれども、今の御指摘もございます。今後も一層その努力を続けてまいりたいと思います。
○大森礼子君 それでは、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律案について質問いたします。短く、いわゆる組織的犯罪処罰法案と呼ばせていただきます。
 まず、この法案の第三条におきまして、団体の活動として、当該犯罪に当たる行為を実行するための組織により行われたときには一定の犯罪について刑が加重されることとなっております。そして、この中に出てくる団体の定義につきましては第二条に規定されているわけですけれども、犯罪と関係を持ちそうな団体に限定されておりません。つまり、この定義だけですといろんな団体が含まれてしまうわけであります。政治団体、宗教団体、労働団体とかも含まれる。
 それで、ここに非常に懸念をいたしまして、例えば挙げられている対象となる犯罪につきましても、信用毀損及び業務妨害、威力業務妨害、それから建造物等損壊とか、こういう罪が挙がっておりますが、これらは過去に労働組合等に対して適用されたようなこともある罪名でございます。こういうところから、何というんでしょうか、団体を犯罪関連団体に限定していないということで非常に不当な結果になるのではないかという批判もあるわけですけれども、この点について法務省はどのように考えておられるでしょうか。
○政府委員(松尾邦弘君) 御指摘のように、本法案の第二条第一項では団体の定義が定められております。これは三条の加重類型を定めるに当たりまして団体という概念を明確にするための規定が二条でございます。この定義規定のみでは加重類型に当たる行為の範囲が確定されるものではございません。
 本法案の第三条第一項の加重類型に該当するのは、ごらんいただきますと、ある個人の殺人等の犯罪行為が団体の活動、すなわち「団体の意思決定に基づく行為であって、その効果又はこれによる利益が当該団体に帰属するもの」というのがその三条の括弧書きとしてあるわけですが、そうしたものとして行われ、かつ「当該罪に当たる行為を実行するための組織」、すなわちある罪に当たる行為を実行することを目的として成り立っている組織により行われた場合でございます。
 また、本法案の第三条の第二項の加重類型に該当するのは、ある個人の殺人等の犯罪行為が団体の不正権益、これは暴力団の縄張り等のようなものをイメージいただければと思いますが、不正権益、すなわち「団体の威力に基づく一定の地域又は分野における支配力であって、当該団体の構成員による犯罪その他の不正な行為により当該団体又はその構成員が継続的に利益を得ることを容易にすべきもの」と、こういう意味で縄張りというのが一つの例として考えられるわけでございますが、その獲得、維持または拡大の目的で行われた場合でございます。
 したがいまして、本法案による加重処罰が行われるためには、その団体が具体的な犯罪行為と明確な結びつきを有していることが必要でございます。労働組合その他の正当な目的を有する団体が通常行っております活動に適用される余地は全くございません。犯罪と関係のある団体に限定されていないという批判はこういう意味で当たらないということでございます。
○大森礼子君 三条の「当該罪に当たる行為を実行するための組織により」という、これは平たい表現で言うといわゆる犯罪実行チームみたいな、こういう観念ととらえられるのでしょうか。
○政府委員(松尾邦弘君) わかりやすい例で、オウムを持ち出すと場合によると問題があるかもしれませんが、例えばオウムが坂本さん一家を殺害したという事件を考えてみます。これは、松本智津夫という者を教祖としていただくオウムという団体の活動として行われたことも明白でございます。それから、その実行に当たる行為をするための組織、これは数人の者が現場においてそういう殺害行為を行ったということで、先生御指摘のチームと呼んでもいいと思いますが、まさにそういったことをこの第三条ではあらわしているということでございます。
○大森礼子君 それから、加重処罰の根拠なのですけれども、これは理由としては違法性がより大きいとか、責任がより大きいとか、こういう理由になると思うのですけれども、この加重処罰の根拠についてはどのように説明されるのでしょうか。
○政府委員(松尾邦弘君) 法定刑の引き上げがあるわけでございますが、法定刑というのは違法類型のその違法性の評価ということになろうかと思います。こういうような組織的な犯罪は、それ自体として犯罪実現に対する危険性が非常に大きいということ、あるいはその形態を考えてみますと結果発生の危険性も非常に大きい、そういったところに着目いたしまして、通常の個人的な犯罪とは類型的に違法性が違う、違法性が強いというような評価でございます。したがいまして、その点に着目してこれを加重類型としてとらえるというふうに御理解いただきたいと思います。
○大森礼子君 ただ、この第三条の加重処罰規定につきましては、従来の刑法の法定刑の範囲内で十分対処できるのではないか。いろんな犯罪でも刑法で最高限といいますか、規定されている。それに近いような運用をするならば十分賄えるのではないかという意見がございます。
 それから、あるいは引き上げるのであるならば、むしろ刑法の基本刑の方を引き上げたらいいのではないか、そういう犯罪が広まってくるから変えるんだったらむしろその刑法の中で法定刑を引き上げたらいいのではないか、こういう意見もございます。
 それから、今おっしゃった結果発生の危険性とか、こういうことにつきましては、一般のこういう法案がない場合でも、論告のところで情状として極めて犯罪態様が悪質でとか、計画的犯行でとか、こういうことを述べるわけですから、従来のやり方でもカバーできるのではないか、この意見にも一理あるのかなという気がいたします。
 この点については、法務省はどのように説明されるのでしょうか。
○政府委員(松尾邦弘君) 法定刑の考え方でございますが、これは先ほど申し上げましたように、違法性、反社会性の尺度を示しているというふうにお考えいただきたいと思います。
 組織犯罪の場合には、その行為、態様また目的あるいは先ほど言いました結果発生の蓋然性といいますか、そういったことももろもろ含めまして特に違法性、反社会性が高いと認められるものを類型的にとらえましてその法定刑を決めるということでございます。既存の刑法の各罪の法定刑はこのような場合の法定刑として十分でない、違法性の評価として十分でないというふうに言いかえてもいいかと思いますが、こう考えられますことから、本法律案においてはその違法性の評価を明示して各行為者の責任に応じ適切な量刑をなし得るようにするということで法定刑を引き上げ、ひいては犯罪の抑止を図ろうということでございます。
○大森礼子君 刑法の法定刑だと類型的に十分でないと答えられるわけですが、こちらは十分じゃありませんかと質問しているわけでありまして、何かそこがうまくかみ合わないのかなという気がするわけです。
 それで、素朴な疑問ですけれども、例えば犯罪集団というものを想定した場合に、本当に団体の意思に基づいてそういうことを実行する、そうしますといわゆる共犯からの離脱といいますか、そういうことがやりにくくなって、例えば暴力団による犯罪なんかを考えましても一たんその社会に入ってしまうとなかなか離脱ができない、だから刑罰を重くしても余りこういう人たちについては威嚇というのか抑止力にならないのではないかという気もするのですが、ちょっと論理的でない質問で申しわけないんですけれども、この点はいかがでしょうか。
○政府委員(松尾邦弘君) 例えば一つの例としてお考えいただくのは、本法案の第三条一項の三号でございますが、殺人の場合です。
 これは、通常の刑法ですと「死刑又は無期若しくは三年以上の懲役」ということになっております。これを本法案では五年以上の懲役ということで引き上げているわけでございます。例えば、こういうような例として三年以上の懲役、一番下限でいいますと、三年といいますと執行猶予がつくぎりぎりでございます。ところが五年、一番下は五年ということになりますと、どうしても執行猶予がつかないというような法定刑になります。つまり、組織的な犯罪としてこの第三条第一項三号の罪に該当する行為が行われた場合には、違法性の評価としては今言ったような「死刑又は無期若しくは五年以上の懲役」とすることによりまして、その違法性の評価の高さということを示しているということでございます。そこに刑法での法定刑と本法律案の法定刑との差の意義といいますか、一つの例として御理解いただければと思います。
○大森礼子君 それでは、犯罪収益の規制についてお尋ねいたします。
 ことしの六月三十日からでしょうか、東京の方でいわゆるFATF、これは金融活動部会というふうに言われておりますけれども、この全体会合が開催されました。この会合での報告書も取りまとめられたというふうに聞いております。
 この全体会合の中で、我が国は組織的犯罪対策に関する法整備について報告したというふうに伺っておりますけれども、どのような報告がなされ、またそれに対して各国からどのような意見が出されたのか、要旨で結構ですから説明していただきたい。これまで聞こう聞こうと思いながら聞く機会がなかったものですから、お尋ねいたします。
○政府委員(松尾邦弘君) 本年の七月二日の東京で開かれましたFATFの全体会合におきまして、組織的な犯罪に適切に対処するための法整備に関してFATFの四十の勧告というのがございますが、我が国は、その遵守のために法制度の改善に努力しておりますということをまず言いまして、組織的犯罪対策三法が本年六月一日にマネーロンダリングの前提犯罪の追加を含む一部修正の上衆議院を通過し、現在、参議院において審議中であるという報告をいたしました。
 この三法案には、マネーロンダリングの前提犯罪の拡大、犯罪収益等の没収及び追徴の充実整備、それから金融監督庁にFIUの機能を付与するなど、疑わしい取引の届け出制度の拡充、それから通信傍受法案ということが盛り込まれていることもその際に具体的に報告をしております。
 これに対しまして、その会合において多くの国から、アメリカ合衆国、ベルギー、ニュージーランド、フランス等でございますが、この三法案を支持し早期に成立することを期待する旨の発言がなされております。
 その中でもアメリカ合衆国からは、特に犯罪捜査のための通信傍受につきまして、組織的犯罪対策として必要不可欠であって、実際にアメリカにおきましてもマフィア対策あるいは薬物密売組織対策に非常に大きな効果を上げているという旨の発言がなされたものと承知しております。
 また、このような各国の発言を受けて、議長代行からも、FATFの総意として組織的犯罪対策三法案を支持しその早期成立を望む、法案が成立したという知らせが届くことを楽しみにしているという旨の発言も付加してなされております。
 このように、我が国の組織的犯罪対策に対して諸外国から大きな期待が寄せられていることを重く受けとめておりまして、我が国が国際社会の一員として責任ある役割を果たすとともに、組織的な犯罪から国民の平穏な生活を守り、真に国民が安心して暮らせる健全な社会を築くために、できる限り早期にこの法整備を実現させていただきたいと願っている次第でございます。
○大森礼子君 外国がどのようなことを言いましたといったお答えになりますと、勢い外圧によってこういうのを決めるのかと言われそうなのですけれども、一つは、やはり国際犯罪情勢というのはどのようになっているのか、その中で日本はどのように位置づけられているのか、これを考慮することも必要なことであると思います。
 それから、いわゆるマネーロンダリング、資金洗浄、この行為の処罰規定があるわけです。非常に単純な質問をするわけですけれども、従来の刑法理論によりますと、処罰の対象は収益を生んだところの犯罪行為そのものでございまして、後その得た金をどうしようかというのは、いわゆる不可罰的事後行為というふうに言われていたわけであります。その前提犯罪とは別に処罰するということは、行為を二回処罰することにならないのか、刑法の基本的な枠組みに反することになるのではないか、こういうような意見も伺ったことがあります。これは麻薬特例法の審議のときに既に克服された論点かもしれませんけれども、改めてその理由を簡単にお尋ねいたします。
○政府委員(松尾邦弘君) この法律案に定めます犯罪収益等による法人等の事業支配を目的とする行為あるいは犯罪収益等の隠匿、収受の処罰規定でございますが、犯罪収益等を保持、運用する行為によりまして、その犯罪収益等が将来の犯罪活動に再投資されたり犯罪組織の維持拡大に利用されるだけではなく、最近特に注目されている、あるいは力点が置かれていることではございますが、事業活動に投資されることによって合法的な経済活動に重大な悪影響を及ぼすというようなことにかんがみまして、その行為自体の反社会性、法益侵害性に着目して、その行為を処罰するというものでございます。
 こうしたマネーロンダリング行為は、財産犯によって得た財物のそれを使う行為、使用行為のような新たな法益侵害を伴わない、今先生御指摘の不可罰的事後行為というようなものとは異なるものでございまして、その処罰は何ら刑法の基本的枠組みを変えるものではございません。
○大森礼子君 それから、よくこの法案につきまして批判が集中するところですが、この法律案では有罪判決が確定する前の段階で没収または追徴の対象となる財産を保全する制度が設けられております。確定前に没収または追徴の対象となる財産を保全するというこれも一つの処分行為だと思いますが、こういう行為をするということは無罪推定の原則に反するという批判がございます。これにつきまして、法務省はどのように説明するのでしょうか。
○政府委員(松尾邦弘君) 犯罪収益をどう規制していくかということにつきましては、マネーロンダリング行為の処罰とともにその犯罪収益等を剥奪するために没収、追徴を徹底することが非常に重要でございます。
 犯人等が保有する財産、犯罪収益等については、仮装あるいは隠匿されることによりましてその把握が困難となる場合も少なからずあるわけでございます。また、処分により散逸するというおそれも高いことから、没収、追徴を確実に行うためには有罪判決が確定する以前においてもその対象となる財産を保全する必要があるということでございます。
 現行法上、没収すべき有体物を差し押さえることはできますが、その効果は裁判所または捜査機関がその物の占有を取得するということにとどまりまして、その処分を法律上禁止することはできない仕組みになっております。また、その金銭債権について考えてみますと、その処分を禁止することは現在ではできないということになります。
 また、追徴につきましても、刑事訴訟法上、仮納付の制度は一部ございますが、これは裁判所が追徴を言い渡す場合につけるものでございまして、それ以前に裁判の執行を確保するために被告人または被疑者の一般財産の処分を禁止することは現在の法制ではできません。
 そこで、この法律案では、犯罪による収益の剥奪を確実に行うということが必要だ、そうしたことを目的としまして、その対象となる財産を保全するための制度として、没収保全及び追徴保全の制度を設けることにしたわけでございます。
 FATFの四十の勧告というのがございますが、その中におきましても、各国が没収することを可能とするためのとるべき措置の中に、財産の取引、移転、または処分を防止するための凍結、あるいは差し押さえなどの暫定措置をとる権限をも含むべきであるということがうたわれているところでございます。
○大森礼子君 収益の剥奪を確実に行うための手段ということで制定する意義というのはわかるわけですけれども、他方でそういう保全処分を行った後に例えば無罪になったという場合、やはりいろんな形で、ちょっと具体的に思い浮かばないんですが、社会的信用を落とすとか、ある方は銀行取引停止になるかもわからないとか、こういう不利益が生ずる場合がございます。そして、その後に無罪になった場合で、そのような被告人の不利益といいますか、これについてはどのような手当てがなされるのか、救済がされるのか、その点についてお尋ねいたします。
○政府委員(松尾邦弘君) 確かに、事例によりますと、例外的には無罪のケースというのがあるわけでございますが、仮に没収・追徴保全によってそうしたケースで損害が発生しました場合には、それが公務員の故意または過失による場合には、国家賠償制度によりまして救済される、あるいはその救済の道が講ぜられているということになります。
 なお、念のため申し上げますと、今回の制度で没収保全また追徴保全がなされた場合でも、その被疑者等は準抗告または抗告によりまして不服申し立てを行うことはできます。また、その没収・追徴保全の理由もしくは必要がなくなりましたときは、または没収・追徴保全の期間が不当に長くなったようなときでございますが、裁判所が没収保全命令を取り消さなければならないこととしております。これは法案の第三十二条、第四十七条をごらんいただくと、そのような判決以前の段階における不服申し立て制度等の手当てもされているところでございます。
○大森礼子君 それから次に、午前中、佐々木委員も質問になりましたけれども、いわゆる疑わしい取引の届け出制度について質問いたします。
 マネーロンダリング行為を行うためには、銀行等における仮名あるいは借名口座が利用されたり、あるいは資金の移動のために銀行等により送金手続が利用されることが多いと思われますけれども、そうであるとするならば、銀行が持っている情報を活用することはマネーロンダリング対策としては確かに効果的であります。そういった意味で、この法律案に定める疑わしい取引の届け出制度というものが十分に機能するならば、これは確かに有益な制度に違いないとは思います。
 先ほど、金融監督庁の方が午前中の質疑で、指針の中身とか届け出の手続とかをきちっと示しますというふうにおっしゃったのですけれども、この疑わしい取引の届け出制度の内容といいますか、判断基準といいますか、これを簡単に御説明いただきたいと思います。
○政府委員(松尾邦弘君) この疑わしい取引の届け出制度でございますが、委員御指摘のとおり、マネーロンダリング行為というのは金融機関等を利用して行われるということが多いことにかんがみまして、金融機関等から疑わしい取引に関する情報を集約して犯罪収益等の隠匿罪あるいは前提犯罪の捜査に役立てるということを主目的にした制度でございます。
 それとともに、副次的には、犯罪者によって金融機関等が提供する預金の受け入れやサービス、決済システムが利用されることを防止しまして、金融機関等及び金融システムに対する信頼性もまた確保しようというものでございます。
 この疑わしい取引の届け出制度では、このような観点から、金融機関等の一定の業務において収受した財産が犯罪収益等である疑いがあり、または当該業務に係る取引の相手方が犯罪収益等の隠匿等の罪に当たる行為を行っている疑いがあると認められる場合には、金融機関等に届け出義務を課しているわけでございます。
 こうした疑わしい取引に関する情報を金融監督庁に一元的に集約するということはこの法案の重要な眼目でございますが、そうした集約をした上でこれを監督庁において整理、分析して、検察官等による犯罪収益等の隠匿罪、または前提犯罪にかかわる刑事事件の捜査等に資すると認めたときはその情報を検察官等に提供する、回付という言葉を使っておりますが、こととしております。
 また、検察官等は、これらの刑事事件の捜査等のため必要があると認めるときは、金融監督庁長官に対しまして、その情報の記録の閲覧もしくは謄写またはその写しの送付を求めることができるとされております。
 さらに、国際的な協調というものがこの分野では大変重要でございますが、その要請にこたえるために、金融監督庁長官は、この法律案に規定する金融監督庁長官の職務に相当する職務を行う外国の機関に対しまして、その職務の遂行に資すると認める疑わしい取引等に関する情報を提供することができるというふうにされております。
 以上がシステムの概要でございます。
○大森礼子君 疑わしい取引の届け出制度というものは、実は麻薬特例法五条以下にも同様の規定がございました。
 午前中、佐々木委員がこの質問をされまして、麻薬特例法のもとにおける疑わしい取引の届け出制度が十分機能したと言えるのかどうかという点について、余り機能していなかった、その理由として、薬物犯罪に限定されていたのでその見きわめが困難だったからではないか、こういうことを述べられました。
 それも一つの理由かもしれませんけれども、果たしてそれだけなんだろうかという気もするわけです。それは、日本の金融機関の体質にも多く負うところがあるのではないか、もうけのためなら何でもするという体質もあったのではないか。それから、金融機関というものはその公共性にかんがみまして社会正義というものに裏打ちされて初めて経済活動の健全な発展がある、こういう認識にも少し欠けていたのではないかという気がするわけでございます。
 これについて、これまで十分に機能しなかった理由、そしてこれからは十分機能するんだというところ、麻薬特例法のときに十分機能しなかったその原因は解消されるのかどうかという点について説明を求めます。
○政府委員(松尾邦弘君) まず第一には、委員御指摘のように前提犯罪が極めて限られていたということがあろうかと思います。それから二点目は、これは先ほど監督庁の担当者からの答弁にもありましたけれども、金融機関の理解が必ずしも進んでいなかったということもあろうかと思います。
 監督庁の説明によりますと、最近、各金融機関を精力的に回りまして、この疑わしい取引の届け出制度の趣旨を説明したということがあったようでございます。それからもう一つは、金融監督庁にまだ予備的な段階ではございますがFIUに当たる機関の準備室が設置されたということもありまして、そうしたような努力が相まちまして、届け出件数は平成九年ごろから順次増加しておりまして、特に平成十一年度は非常に増加しているというような報告がなされてきております。つまり、麻薬特例法の五条という疑わしい取引の届け出制度の段階におきましても次第にその制度の趣旨が理解されまして、届け出件数もかなり急速にふえているということをまず第一点として申し上げたいと思います。
 それから二点目は、本法律案が成立いたしますと、まず前提犯罪が抜本的に拡大されます。その点が第二点でございます。
 それから第三点目は、これもまた非常に重要なことでございますが、従来は、疑わしい取引の届け出制度の届け出られた情報がどうなるかという問題でございましたが、それぞれの金融機関を監督する官庁の手元に情報がとどまるということでございました。例えば、郵便貯金でありますと郵政省とか、あるいは農協等の金融機関でございますと農林水産省とかということでございまして、必ずしも金融監督庁に一元的に集約するというような法制度になっておりませんでした。今回は、そうした金融機関からの情報を金融監督庁に一元的に集約する、そこで整理、分析することが可能になるということでございます。
 それから四番目、これも重要でございますが、こうした情報を監督庁としまして捜査機関に回付することが適当だと認めた場合には回付義務を監督庁に課しております。つまり、捜査、調査機関にそうした情報が回付されるということが法律制度として担保されているということになります。これも実効性を担保する上では非常に大きな制度的な改善と言うことができます。
 そうした制度的な改善と、これまでと同様の金融機関等に対する制度の趣旨の説明をさらに徹底していくことによりまして、この疑わしい取引の届け出制度の運用は恐らく質的には大きな変化を遂げるというふうに我々は期待しているところでございます。
○大森礼子君 それでは、次に刑事訴訟法の一部を改正する法律案について質問いたします。特に、証人の保護規定についてお尋ねいたします。
 二百九十五条の二項、それから二百九十九条の二が新設となっているわけですが、暴力団等による事件につきましてはこれまでも証人保護の必要性というのはあったわけでございます。
 例えば、暴力団による恐喝事件ですと、被害者自身が何か被害を受けたことについて話すとなると、暴力団からの報復が恐ろしいということで被害申告したくないというケースもよくございます。それから、証人として立つ場合でも、もう一たんそういうところへ出ると何をされるかわからない、ずっと警察が守ってくれるんですか、こういうふうなことも言われて、我々は処罰すべき者を処罰すべきだと言いながら、やはりそういう証人とかの協力が必要なわけでありまして、そこで非常に難儀な問題が生ずるわけであります。
 しかし、そうであったとしても、これまで個々のケースごとに対処してきたと思います。今回、条文でこの証人保護の規定について明記されるわけですが、それはいかなる理由によるものか。背景となる社会事情といいますか、これに大きな変化が生じたためなのでしょうか。
○政府委員(松尾邦弘君) 委員御指摘のように、現行の刑事訴訟法におきましてもこうした配慮を行うことは可能でございます。しかし、今回の組織的な犯罪を予防するための立法というものを考えるに当たりまして、そうした配慮を事実上行うということにとどまらず、これを法律上明記するということによりまして、裁判官、検察官、弁護人等の注意を喚起して証人等に危害が加えられることなどを未然に防止することができるとともに、このような実務の運用は一般の国民にとっては把握しにくいものでありますので、それを法文上明記することによってそうしたことを徹底させるということ自体が証人等にも安心感を与えて、証人等の出頭や十分な供述の確保にも資するというような考慮からこの法律の改正に当たるということでございます。
○大森礼子君 次の法案二百九十九条の二のところですが、これは証拠開示のときに、これは検察官または弁護人ですから、お互いにできるということなのでしょうけれども、検察官から弁護人にお願いする場合が多いのかなという気がいたしますので、それを前提にして聞きますと、検察官から弁護人に対して配慮することを求めることができると規定してございます。これは例えばどのような配慮というものを具体的に予定しておられるのか、お尋ねいたします。
○政府委員(松尾邦弘君) 暴力団の構成員が被告人になっているような事件に証人として出廷するというのは、その証人自体にとっては非常に心理的な圧迫が強うございます。
 その場合に、それでは何を配慮してもらうのかということでございますが、まずどこに住んでいるのかということ、あるいは住所だけではなくて、毎日どこに通勤しているのかとかどういう経路で行っているのかということ自体も、証人の側にしますとこれを知られると家に押しかけられ、あるいは嫌がらせをされ、あるいは通勤通学の途中で何らかの報復行為があるのではないかというような心理的な負担を非常に感じることがあります。
 検察官としましては、そうした事情がうかがわれる、あるいは証人がそのような心理状態にあるということが明らかな場合には、弁護人に対しましてそうしたことが明らかになるような尋問については控えていただけないかというようなお願いをすることになります。
○大森礼子君 今、例えば法廷に証人として出ていただく場合、証拠調べ請求予定の調書というのが事前に開示されるわけですけれども、それを聴取しないでいきなり証人として出ていただく場合もあると思います。それが今お話しになったケースだと思うんです。
 それで、ここで証拠書類を請求する場合にも事前にそういう要請ができるとしますと、普通、証拠閲覧の機会を与えまして、弁護人側はこれを謄写することもできるわけですね。その場合にも、例えば謄写されたらそれを組関係者の方に見せないでくださいとか、というのはその参考人の調書には住所、氏名とかいろいろ書いてございますので、こういったことも要請する場合があるのでしょうか。
○政府委員(松尾邦弘君) 証人を請求するときには、調書等がありますとそれを開示することがありますが、その場合に法廷でそういった尋問を制限していただくという配慮をお願いするのであれば、当然にその調書の例えば住所のところは抜いてしまって、仮に被告人にどうしても防御上渡す必要がある場合には抜いて渡してもらうような配慮だとか、そういうようなものを弁護人にお願いするということになろうかと思います。
○大森礼子君 そうなんですね。法廷で、二百九十五条の二項でできるとしたら、通常、調書というものを証拠調べ請求しまして、それが不同意になった、それから証人による立証ということになるわけですから、通常、調書を閲覧、証拠開示をする段階、ここでまず問題になるんだろうと思います。
 極めて例外的なケースですけれども、よく暴力団の被疑者なんかでもなかなか自供いたしませんね、自供したら男が廃るというのもあるかもしれませんが。それで、もう一つよく捜査の現場におりまして聞くことは、結局、調書をとられたらそれ全部コピーが組事務所の方に回ってしまうんです、だから、自分が何をしゃべったか全部わかっちゃうのでとてもそれはしゃべることはできないということも聞くわけですね。
 それで、弁護人が仲立ちになるんでしょうが、こういうのを果たして一概に非難できるのか、ここが非常に難しいところだと思うわけです。同様にしまして、参考人の調書についても組事務所の方へコピーを渡さないでくださいとか、ここまで言うのはちょっと差し出がましい、いや、言わなきゃいけないけれども言うのは差し出がましいのかなという、私が現場の検事でしたら非常に難しい立場に置かれるのかなという気がいたします。必要があればそういうことを言う場合もあるのでしょうが、問題は、そのような検察官が要請した場合に、証拠開示の段階、二百九十九条の二の場合です。弁護人がそれを無視した場合、何か法律効果というのが生ずるのでしょうか。
○政府委員(松尾邦弘君) 委員御指摘のように、証人の尋問に限らず、二百九十九条の二のところでは証拠書類等の閲覧等の場合に関係者、つまり被告人も含みますが、それに住所、勤務先その他が特定される事項が知られないようにする配慮を求めることができるという規定でございます。
 それをお願いした場合に、その弁護士がそういう了解ができて、つまり被告人の防御等に差し支えない範囲内で弁護士としては認めるということになったにもかかわらず、漫然と住所あるいは勤務先等の書いてある調書を被告人に見せてしまうということになりますと、それは義務を怠った、つまり二百九十九条の二の弁護人の義務を怠ったということになりますので、弁護士会による懲戒処分が問題となり得ると思います。
○大森礼子君 そこの判断というのは極めてデリケートなものだろうと思います。法廷で裁判官が公平な立場からする分にはいいのですけれども、この段階ではお互い当事者の立場にあるわけですね。それで、確かに条文で「犯罪の証明若しくは犯罪の捜査又は被告人の防御に関し必要がある場合を除き、」、こういうような文言がありますけれども、いわゆる当事者主義訴訟構造の、お互い当事者間の判断によることになります。
 先ほど、午前中の答弁の中でも、どうするか弁護士の判断にゆだねられる、こういう御答弁もありました。そうしますと、お互い対等な立場とされる当事者間で、一方の検察官の方が弁護人の方に要求する、こういった場合に検察官の申し出というものがその弁護人の弁護権行使、あるいは被告人の防御権行使、これを事実上萎縮させるような行為が生ずるのではないかという気がするんです。条文でこう書いてあるからと言われてみれば簡単なんですけれども、実際の場面ですと非常に難しい問題が生ずるだろうというふうに私は思います。
 そこで、証拠開示段階での適用につきましてはやはり弁護人の防御活動、これを十全ならしむために十分な配慮が必要だと考えますけれども、この点について法務大臣はいかがお考えでしょうか。
○国務大臣(陣内孝雄君) 本法案による改正後の刑訴法第二百九十五条第二項の尋問の制限は、「被告人若しくは弁護人のする尋問を制限することにより被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあるとき」にはできないこととされており、同じく第二百九十九条の二の配慮の要請は、「被告人の防御に関し必要がある場合」を除くものとされておりますので、被告人の防御権を不当に制約することはないものと考えますが、この運用に当たりましては御指摘の点にも十分配慮してまいります。
○大森礼子君 それから、法務省にお尋ねするのですけれども、例えば証人保護規定を設けられました。それで、実際に証人に現実的な危険が生じた場合、この場合に刑法百五条の二で証人等威迫の罪がございます。これは余りこれまで十分活用されなかったのではないかなという気がするわけです。それで、刑事訴訟法一部改正のこの趣旨を考えるならば、この刑法の規定につきましても十分、活用という言葉がいいかどうかわかりませんが、活用しまして、そして証人に対する不当な行為が現実になされたならば、やっぱり摘発してきちんと処罰すべきではないか。そのことによって、証人に不当に手を出してはいけないということを広く知らしめることにもなりますし、ひいては証人一般を守ることになるんではないかと思うんですが、法務省はいかがお考えでしょうか。
○政府委員(松尾邦弘君) 御指摘のように、証人等の保護を図るとともにその刑事裁判の適正を確保するためにも、御指摘のような証人威迫等の罪につきまして厳正に対処すべきものと考えている次第でございます。
○大森礼子君 時間がぎりぎりですが、法務省、ちょっと通信傍受について一点だけ聞かせてください。
 二十九条に「国会への報告等」がございますけれども、この中で「傍受の実施をしている間における通話の回数」となっています。これは一つの令状についてなされた通話の回数、このように理解してよろしいのでしょうか。
○政府委員(松尾邦弘君) おっしゃるとおりでございます。
○大森礼子君 そうしますと、確認ですが、この二十九条の報告等につきましては、全体の統計的な数字ではなくして、個別の令状ごとといいましょうか、この実施状況についてここに書かれているような情報が報告される、このように理解してよろしいでしょうか。
○政府委員(松尾邦弘君) 国会への報告は、できる限りその運用の実態がわかるように具体的な内容もかなり含んだものにしたいと考えておりまして、今御指摘のような点もこの報告内容には入れたいというふうに考えております。
○大森礼子君 終わります。
○橋本敦君 この通信傍受法案、いわゆる盗聴法案は、かねてから言っておりますように憲法二十一条の通信の秘密にかかわる極めて重大な法案でございますから、捜査のためということで安易に認められるべきものではない。したがって、その要件なり、あるいは乱用を防止するための厳格な条件というものが法自体の中で明記されていなければ、違憲性というのはいよいよ明白になってくると思うわけです。
 そういう観点でお伺いをしたいと思うんですが、まず第一に、傍受令状を請求する、その請求権者を指定検察官あるいは警察関係においては警視以上というように修正をされたということが一つあります。もう一つは、簡裁の裁判官による判断ではなくて地方裁判所の裁判官の判断によって傍受令状が出されるようにするという修正もありました。しかし、これで本当に十分にチェックできるだろうかという点の問題がまず第一の問題であります。
 アメリカのワイヤータッピング・レポートという司法省の記録を見てみますと、一九八五年に七百八十六件請求された傍受令状のうち却下されたのはわずか二件、八六年は七百五十六件請求されて却下されたのはわずか二件、八八年は七百四十件請求されて却下されたのは二件、八七年、八九年、九〇年から九五年に至るまで却下はゼロであります。
 通信傍受令状ではありません、当然のことですが、現在の捜索・差し押さえ令状、これが地方裁判所で却下率がどうなっているかといいますと、八六年から却下率がだんだん下がってまいりまして、九五年には三万二百二十二件請求された捜索・差し押さえ令状で却下はわずか四十二件、〇・一四%、九六年も同じく〇・一四%、それから九七年は〇・二二%となっております。これは司法統計年鑑による数字であります。
 したがって、裁判官が厳格にチェックをするといっても、捜査の必要性、捜査官が出す疎明資料、裁判官は何にもわからないわけですから、捜査のそういった必要性ということに力点を置いて考えるなら却下率はどんどん下がっていくということは、これはもう実務上避けがたいわけです。そういう状況の中で、この通信傍受という問題が令状で本当に裁判官がチェックできるだろうかという問題を改めて私はしっかり検討する必要があると思うわけであります。
 そこで伺いますが、法案の第六条で、傍受令状に記載すべき事項として、被疑者の氏名、被疑事実の要旨、罪名、罰条、次に傍受すべき通信とあります。それから傍受の実施対象とすべき通信手段があります。それから方法、場所があります。そこで問題は、被疑事実の要旨とは別に傍受すべき通信を令状に記載しなきゃならない、こうあるんですが、この傍受すべき通信というのはどういうものをこの法としては考えておるんですか。
○政府委員(松尾邦弘君) 具体例で申し上げますと、例えば集団密航事案、蛇頭事案を例にとりますと、被疑事実には集団密航の事実が入ります。それで、罪名、罰条はそれに見合ったものが入るわけですが、傍受すべき通信になりますと、これはできる限り限定できれば限定するということでございますので、当該被疑事実に掲げている事案についての、上陸後その目的地である、例えば浜松に上陸して東京へ行くような場合に、その運搬手段の調達に関する通信というように限定できればそのような内容になります。
 それ以外に、あわせて同時に、例えば船の手配も同時に行う場合には、その運搬するための船の手配とか、そういったことで目的がダブることもありますが、できる限り内容としては限定するということですから、今の例でお考えいただきたいと思っています。
○橋本敦君 そんな将来の予測に関して合理的な限定ができますか。大体、傍受いわゆる盗聴の対象、それはこれから行われる会話なんでしょう。特定の当事者間の通信で何が行われるのかわからないならそういう対象をあらかじめ限定すること自体不可能なんです。だから、この法案でも犯罪関連通信かどうかは試し聞きができる、そういう規定まで十三条で設けているわけでしょう。だから、今、私が指摘したまさに重要な問題ですけれども、そもそも傍受すべき通信自体を傍受令状で特定すること自体が極めて困難だという問題があるんです。今、刑事局長がおっしゃったように、集団密航の場合はこうだと。では、ほかの犯罪の場合はどうだ。一応将来予測にかかわる問題であって、疎明資料をいろいろ出されるかもしれませんけれども、本当に厳格に令状としての特定性を本来持ち得ない重大な憲法上の問題がここにはあると言わざるを得ないわけです。
 そして、もう一つの問題は、一たんこの傍受令状が出されたならば、裁判所による司法チェックが可能かという問題です。例えば十日間ということで令状を出したとしましょう。その十日間は傍受令状によって傍受つまり盗聴を実際に行うのは捜査機関ですから、捜査官憲ですから、一たん令状を出して、十日以内なら十日で結構です、その間司法的チェックがきく法律構造になっていますか、どうですか。
○政府委員(松尾邦弘君) まず、前半部分の特定ができるかどうかということですが、これはこの傍受令状を請求するまでには、これまでも申し上げましたが、非常に地道な捜査のかなりの積み上げがあるということを前提にお考えいただく必要があろうかと思います。
 補充性というものもこの法律は要求しておりまして、ほかにもう手段、方法がないというときに認めるということでございますので、それからいいましても十分な捜査が積み上がっていないといけない、つまり傍受すべき通信を具体的に特定できるという捜査が前にあるというふうにまず御理解いただきたいと思います。
 それから、傍受の期間の問題でございますが、十日ということで傍受令状が出ますと、その傍受の実施は捜査機関が傍受の現場においてやるということでございますので、裁判所の手は離れるということになります。
○橋本敦君 前提の問題として私は異論がありますが、時間がありませんから詳しくは言いません。
 捜査を積み上げてその上で傍受すべき通信が特定できるといっても、通信というのは将来性がありいろいろ舞い込んでくるんですから、厳格な特定性自体は極めて困難ですよということを言っているんですよ。完全に特定できるなんということじゃないです。
 それから、今おっしゃったように、一たん傍受令状が出されたらその執行は専ら捜査官憲ですから、司法的チェックはきかない、お認めになったとおりですね。
 その点アメリカなどでは、傍受令状を出すそのときに裁判官が裁判官の裁量で、その傍受が許可された目的達成に向けて進展状況はどうなっているか、あるいはまたそれを継続していることについて、必要性について報告を行うということを傍受令状を許可して出すときに命ずることもできるし、報告も何度しなさいということでその期間、頻度まで決めて出すことができる、こうなっておるわけですから。アメリカの場合は司法的チェックが入る。そのアメリカでもこの前私が指摘したように八〇%以上の犯罪に直接関係のない市民の通話が傍聴されるという事態が起こっているわけです。ですから、一たん令状が出されたら専ら捜査官憲の裁量のまま行われるという、これがまさにこの法の実態ですよ。
 そこで次の問題ですが、法務省は法十三条によって関係のない通信を聞かないように該当性判断の場合でも最小限にそれを聞くということを、いわゆるモニターということでおっしゃいましたね。だから、一分聞いたら、あるいは三十秒聞いたら一分停止してまた聞く。これは有線の通信には適用できますが、コンピューター通信、インターネットなどには適用できませんから、最小化法則というのはそれ自体でも全部貫徹できるわけはないという問題がある。
 それからもう一つは、そのようなマニュアルは先ほどからも議論がありここでも議論されました。この法自体が法的拘束力を持って決めていない、捜査官憲の内部的な基準にすぎないんですから、そのことが果たして法的効果を持つかどうかということについては、十分の検証はこの法律によっては行われていない。ただ、刑事局長がおっしゃったのは、それに違反すれば違反した捜査官憲は懲戒処分の対象になるとおっしゃった。これだけですね。間違いないでしょう。
○政府委員(松尾邦弘君) それだけかと言われますとなかなかお答えしにくいんですが、秘密を漏らすようなことがありますとこれは罰則がかかってまいりますから、今度の法律で改正されました、あるいは新設された捜査に当たる担当者でありますと三年以下の懲役という、秘密を漏せつした罪ということになります。
○橋本敦君 ところが、私は緒方事件で引いて言ったじゃないですか。警察官憲は緒方事件で盗聴した現場の警官に対して一体どういう態度をとったですか。いまだに盗聴の事実は認めない。裁判所の判決が盗聴を認めて損害賠償を命じても警察は一貫して事実を認めない。検察庁はそれに対して起訴猶予処分にしてしまって、未遂だということで、警察が証拠を隠したら立件もできないということでしょう。
 だからそういうことで、私はこの前言ったでしょう、通信事業法による秘密を侵したということの罪を加重してもそのことによって効果はありませんよと、具体的には、警察の態度がそういう態度である限り。今、懲戒処分という問題について言えば、警察が隠しちゃって懲戒処分しなかったらそれまでですよ。
 ですから、そういうような乱用が行われたかどうかということについて司法的チェックもなければ、市民の側から、国民の側からのチェックのしようもない。しようがありますか、どうですか。
○政府委員(松尾邦弘君) 通信傍受の実施の適正化というものの担保につきましては、これまでいろいろな点で触れてきました。
 この法案としては、例えば先ほど先生お触れになりました請求権者をいわば格上げしたということもその一つの方法でございますし、それから原記録と傍受記録というものを峻別することによりまして原記録を裁判官が保管する、不服申し立て等がある、あるいは異議があるということでございますと通信の当事者からの申し立て等によりましてその内容がチェックされるということ、その他、先ほど申し上げましたような違法行為がありましたらそれは懲戒処分の対象となり、なおかつ通信の秘密を侵したということになりますと加重された法定刑が適用されるということなどがございまして、総体として通信傍受が適正に行われるための担保はこの法案の中に十分に盛り込んだつもりでございます。
○橋本敦君 全然だめですよ。一つ一つ検証しましょう。
 懲戒処分にするといったって、だれがするか。警察の上司、検察官の上司、内部でわからなかったらそれまでで、国民的検証の方法はないんでしょう。
 国民の側からチェックする方法は今おっしゃった不服の申し立てということがありました。ところが国民は、試し聞きとかあるいは別件盗聴とかいろいろ広範囲に傍受されますけれども、全部通知されるわけじゃありませんね。傍受記録に証拠として裁判所に出す刑事手続に記載された当事者にだけ通知されるわけですから、一般の人はわからないわけです。不服申し立てできないじゃありませんか。だから、その不服申し立てによって乱用チェックができるというのは当たりませんね。それは間違いないでしょう。申し立てができるのは傍受記録に記載されて通知された人に限りますね。まずその点。
○政府委員(松尾邦弘君) それはおっしゃるとおりでございますが、その傍受記録にならなかった面、スポットモニタリングの通信の当事者になぜ通知をしないのかということについてはプラス、マイナスがありまして、総合的な判断でそれは通知しない方がいいだろうというのがこの法律の判断でございます。
○橋本敦君 私は今それに触れていませんよ。要するに客観的に不服の申し立てのしようがないんだ、国民は、違法に傍受されても。
 それからもう一つの問題として、この傍受期間は一番長くて何日間できますか。
○政府委員(松尾邦弘君) 三十日でございます。
○橋本敦君 これまで検証令状によって通話を傍聴した記録では四日、五日という短い期間でした。それが三十日間も、しかも一日二十四時間の範囲でずっと傍受ができるというようなそのこと自体はチェックを欠く、大変なことだと思いますが、今おっしゃった三十日はさらに延長できるんじゃありませんか、どうですか。
○政府委員(松尾邦弘君) この法案で、先生御承知のとおり原則十日、まず第一回目は十日でございます。それから、最大限延長して三十日ということでございますので、それ以上の延長はないということです。
○橋本敦君 今あなたは重要なことを抜かして答弁されていますよ。
 令状で再請求ができるようにこの法律でなっているじゃありませんか。それを抜かして答えてもらったら困りますよ。どうですか。
○政府委員(松尾邦弘君) それは御指摘のように再請求することはあり得るわけでございますが、その際には前に請求した事実については裁判所にしっかりと説明をしまして、さらに再度傍受をすることが必要だということについての裁判所の判断を得なけりゃいかぬということで、漫然と何度もできるということにはなっていないわけでございます。
○橋本敦君 私はそれを聞いているんです。裁判所に要求して裁判所の判断があれば三十日を超えてもできるという規定になっていますねということを確認している。そうでしょう。
○政府委員(松尾邦弘君) こだわるようで申しわけないんですが、三十日を超えて傍受できるという法にはなっていないんです。
 つまり、再請求できるという道を講じてあります。ただし、その場合は再請求ですから、裁判所に前に傍受をしました、あるいは傍受令状の発付がありますということを言いまして、もう一度やる必要があるというのでさらに請求しますよということを明確に述べないと令状請求はできないというふうになっております。
○橋本敦君 いいですよ、述べたら。述べて、再請求して認められたら、三十日がさらに続くのじゃありませんか。そうでしょう。そのことだけでいいです。
○政府委員(松尾邦弘君) 漫然と続くというふうな誤解を与えるといけませんので再度申し上げますが、裁判所はそのような令状請求が来た場合には、漫然と続くということは最長三十日にした法の趣旨を没却することになりますので、さらにそれが必要だということについては相当厳格な判断をするということはこの法の前提としているということでございますので、漫然と三十日、三十日を繰り返していくということはあり得ないということでございます。
○橋本敦君 私は漫然となんて言っていません。法律には、「特別の事情があると認めるときに限り、これを発付することができる。」と書いてあるんだから。法律を私も読んでいます。
 では、ここの「特別の事情」とは何かということは法で決めていないものですから、専ら裁判所の判断でしょう。だから、裁判所が要求によって特別の事情があると認めたらさらに再発付できるんですから、三十日とは限らないということで、厳格に言えば完全に法的にリミットが確立されているということにならないですよと言っているんです。
 次に、立会人の問題に触れましょう。
 立会人の権限の問題ですが、修正によって、終始立ち会いということに加えて立会人は意見を述べることができる、こうなりました。
 しかし、一番肝心な犯罪関連通信でない一般の市民やあるいは政党や政治家や市民団体などのそういう通話について、これは聞いてはならぬという切断権がない。これははっきりしている。それは局長、間違いないですね。
○政府委員(松尾邦弘君) 立会人に切断権を与えておりません。
○橋本敦君 ですから、一番大事なチェック機能がないんです。
 そうすると、その次に、立会人は一体どういう権限を持っているかといいますと、令状記載どおりの期間に、令状記載どおりの場所で、令状記載どおりの通信施設が傍受されているかどうか、そういう外見的なものを見る、検証するという以外に権限はないのではありませんか。
○政府委員(松尾邦弘君) 一番重要なのは原記録を封印するということでございます。そのほかには、今委員の御指摘のとおりのことが中心になるということでございます。
○橋本敦君 原記録を封印するのは傍受が終わったときの話で、封印自体が乱用のチェック機能になるということには何にもなりません、封印という行為だけですから。
 もう一つ重大だと私が思ったのは、内藤議員の質問にもあったんですが、該当性判断、つまりその通信が犯罪関連通信かどうかということに該当するかどうか試し聞きをする場合に、試し聞きをする該当性判断が適正な方法で行われているのかどうかも立会人は見ることができるというような御見解がありましたが、そのとおりですか。
○政府委員(松尾邦弘君) 立ち会う当初に、どういうようなやり方で傍受をするかということの説明がございます。その場合には、最小化の法則によりスポットモニタリングというやり方をやりますという説明がありますので、そのときに三十秒で一分休みという話がそこに出てくるわけでございますから、そういったものを頭に置いて立ち会っているということになります。それが言われたとおり実施されているかどうかという点はチェックするということになります。
○橋本敦君 傍受令状に今おっしゃったようなマニュアル的なことは書かれませんね。
○政府委員(松尾邦弘君) それは令状の記載事項ではございません。
○橋本敦君 したがって、警察官がこういうマニュアルでスポットモニタリングをやります、該当性判断をやりますということを言うということが前提になっている。しかも、立会人は被疑事実は知らされますか、知らされませんか。知らされませんね。
○政府委員(松尾邦弘君) 被疑事実まで知らせることは、その内容になっておりません。
○橋本敦君 したがって、本当の意味で、犯罪関連通信かどうか実態的に聞く傍受は立会人はやっていいんですか、やってはならないことになっていますか。
○政府委員(松尾邦弘君) むしろ、内容には関与させないというのが法律の今回の制度になっております。
○橋本敦君 したがって、該当性判断が適正に行われているかどうかというそのことも外見的な話しかないし、その外見的な話自体も警察の方がマニュアルをきちっと出しているということが前提になっているし、しかもそのマニュアルどおりやっているかどうか、聞いていないんですからチェックのしようがないということで、これだってチェック機能としては十分なことにならぬと思います。
 それからもう一つ、先ほど局長がおっしゃった不服の申し立ての問題ですが、この傍受記録は速やかにつくらねばならぬとありますが、速やかに傍受記録がつくられて傍受記録に名前が出てくる人に通知するということになりますから、不服申し立ては通知された人ができる、こうなるんですが、速やかに傍受記録をつくらねばならないこの「速やかに」というのはどれぐらいの期間ですか。法律的に制限がありますか。
○政府委員(松尾邦弘君) 法律的にはその期間を明定しているというわけではございませんが、速やかにということですと、通常、その作業として予定されている時間というのが合理的には考えられるわけでございますので、それを大幅に超えるということになると、それはもう「速やかに」ということは言えませんので、この法律には違反しているということでございます。
○橋本敦君 しかも、重大なのは、二十三条を読みますと、その傍受記録はいつまでにつくらねばならないというリミットが法で定められていないだけじゃなくて、二十三条によりますと、傍受の実施が終了した後三十日以内にこの通知をしなきゃならないということは決めたものの、ただし、裁判所の裁判官の判断で、捜査が妨げられるおそれがあると認めるときは捜査官憲の請求によって六十日以内の期間を定めて通知をするようにしてもよろしい、こうなっているんです。
 全然自覚的に傍受をされたという記憶も何にもない人が三十日も六十日もたった先に、実は二カ月前の何月何日のこういう人の関係での電話を傍受しましたよと、そういうことを知らされて、果たして記憶がよみがえって、そして自分のプライバシー侵害だということで効果的な不服申し立てができるだろうか。そんなものできるわけないです、速やかに知らせないと。
 しかも、先ほどから言っているように、傍受されたすべての人に通知が行くわけじゃないんですから、そういう意味でも、この不服の申し立てということによって不当に権利侵害された権利救済ができるわけはないです。
 そこで、もう一つ刑事局長に聞きますが、この不服の申し立てということによって救済されるのはどういうことですか。
○政府委員(松尾邦弘君) それはいろいろあると思いますが、この手続自体の中でいいますと、不当な傍受等でありますと、その傍受記録からの抹消ということを請求できるとか、あるいはそれによりまして、違法な不当な行為により損害を受けたということでございますと、民事的には損害賠償請求なりなんなりができます。また、仮に裁判で被告人の立場でそれを主張する場合には、証拠能力を排除するという申し立てをするなり、具体的な場面で不服申し立てがどう効果を発するか、いろいろ考えられると思います。
○橋本敦君 ですから、それはよっぽど記憶をしていて、よっぽどよくわかって、原記録、傍受記録、そういう関係から不当な傍受がされたという局限的な場合です。だから、我々国民が恐れている、通知もされない多数の国民の傍受されたその傍受に対して不服の申し立て方法もなければ、損害賠償を提起しようと思っても提起もできないという構造になっているということは大問題なんです。
 もう一つ重要な問題として、弁護士あるいはお医者さん、この関係においては傍受はしないということをこの法律は一応書いています。しかし、その場合に重要な問題として、ここにどういうような規定をしているかといいますと、まさに「他人の依頼を受けて行うその業務」という規定があるでしょう、十五条に。
 だから、弁護士が、例えば私も弁護士ですが、私の家に電話がかかってきた、実はこういうことで相談したいんですと。まだ事件を受けていませんよ、受任していませんよ。だから、そういう意味では依頼を受けた業務とは言えません。しかし、こういうことで私が、警察との関係で心配ですから相談に乗ってくださいということでいろいろ話すと、その人がたまたま被疑者だという、警察から疑われて、その人の通信が探知されるということになったら、これはまだ依頼を受けていないのですから傍受できるわけですか。
○政府委員(松尾邦弘君) 委員は依頼を受けてということを極めて厳格に受け取りになっておられると思いますが、仮に被疑者が弁護人に、弁護人になっていただきたいという旨の話をしようと思ってかけた電話は、まさに他人の依頼を受けて行う業務そのものに該当するというふうに理解していただいて結構だと思います。
○橋本敦君 依頼をするかどうか決めていない人がたくさんあります、知人の紹介で相談だけ乗ってくださいというのもあります。
 ですから、この十五条で、「依頼を受けて行うその業務」というこの特定性の仕方自体が傍受対象を厳格にチェックするという機能を持ち得ないんです。そういうことが一つ重大な問題である。
 それからもう一つは、報道機関の関係ですが、刑事局長は報道機関については傍受対象としないということをおっしゃいました。確かにそのおっしゃったことは間違いないですね。もう一遍確認しておきます。
○政府委員(松尾邦弘君) 極めて例外的な場合として一、二、想定を申し上げましたが、それは現実問題としては事実上考えられないケースだろうと思いますので、報道機関の報道に関する通信については傍受対象としないということを申し上げておきたいと思います。
○橋本敦君 報道機関の通信の問題ですけれども、私の手元にありますのは、これは昭和四十四年十一月二十六日、最高裁判所の大法廷判決ですが、最高裁は、「報道機関の報道は、民主主義社会において、国民が国政に関与するにつき、重要な判断の資料を提供し、国民の「知る権利」に奉仕するものである。したがって、思想の表明の自由とならんで、事実の報道の自由は、表現の自由を規定した憲法二一条の保障のもとにあることはいうまでもない。また、このような報道機関の報道が正しい内容をもつためには、報道の自由とともに、報道のための取材の自由も、憲法二一条の精神に照らし、十分尊重に値いするものといわなければならない。」と判示している。この判示は正しいですね。
 だから、報道機関の通信傍受というのは、この最高裁判決から見てもそう軽々に許されていい性質のものじゃないんだ。だから、刑事局長もこの通信傍受法では対象にしないということをおっしゃる。しかし、法的にその保障はないんですよ。刑事局長がここでそう答弁されたからといって、そのことは法的覊束力、拘束力を持って報道機関に対する傍受ができない、そういうことにならないんです。そこにこの法律上の問題があるんです。重大な問題だと僕は思いますよ。そういう意味で、この法案は重大な欠陥があるということを私は指摘せざるを得ないと思うのです。
 もう時間がありませんから、あとの問題はさらに重ねて質問していきますけれども、要するに、本法案によって一たん傍受令状が出されたら、あとは捜査機関の裁量判断にほとんど任せられて、市民的、国民的チェックがきかないという重大な憲法上の欠陥がある法案だということを指摘して質問を終わります。
○福島瑞穂君 社民党の福島瑞穂です。
 まず初めに七月二十九日、世耕委員が配付をされた資料についてお聞きをいたします。
 これは技術面、法律面、可能あるいは容易、不可能・困難、やってよい、やってはいけない、四つに分けられております。松尾刑事局長、これは正しいのですか、正しくないですか。間違っているところがありますか。
○政府委員(松尾邦弘君) この資料が間違っているかどうかというのは、これはどう説明するかということとあわせて考えないといかぬですが、世耕委員が説明した範囲内で、こういう分類で御説明いただいた範囲としては全く正しい指摘だったと私たちは理解しております。
   〔委員長退席、理事大森礼子君着席〕
○福島瑞穂君 では、一つずつお聞きいたします。
 法律面でやってはいけない、引き込み柱での盗聴はやってはいけない。どの条文のどれに基づいてやってはいけないんですか。
○政府委員(松尾邦弘君) 引き込み柱の傍受ということになりますと、場合によると立会人も柱に登らなきゃいかぬということにもなりますので、この法律が到底、立会人も柱の上で見張ってくれということにはならないと思います。
○福島瑞穂君 緒方靖夫さんの件は、引き込み線を引いてアパートを借り、その中で聞いていたというふうに言われています。立会人は十分つけられます。
 もう一度質問を繰り返します。引き込み柱における盗聴はこの条文上何条に基づいて許されないのか、答えてください。
○政府委員(松尾邦弘君) いろいろな条文で私は許されないと思うんですが、その緒方さんのケースで言いますと、緒方さんの電話回線にきちんと接続したかどうかを、立会人はもしそこで立ち会うとしたら確認しないといけません。つまり、電信柱に登らにゃいかぬということになります。
○福島瑞穂君 いえ、これは要するに、法律上やっていいか、やっていけないかということを聞いているんです。事実上とかそういうことでは全くありません。それだったら、立会人はほかはもっと無力ですから。引き込み柱で盗聴するのは、この法案上、盗聴法上可能かどうか。
○政府委員(松尾邦弘君) これは、世耕委員の分類どおり技術的には可能なんですが、法律的には違法になります。
○福島瑞穂君 なぜ違法なんですか。条文の根拠を言ってください。
○政府委員(松尾邦弘君) いろいろ説明するとわかりにくいんですが、先ほど申し上げたように、やはり立会人の制度一つ考えてみても、柱の上での立ち会いということはあり得ないわけでございますから、これはもうどう見ても不可能でございます。
○福島瑞穂君 いや、電柱の上でやれというのではなくて、この引き込み柱というのは緒方さんの事件がそうですが、別にアパートを借りてそこにいるわけです。引き込み柱のところでの盗聴というのは可能です。技術的には可能なんですよ。世耕さんが書いていらっしゃるように、法律上やってはいけないというところに入っていて、正しいとおっしゃるから、条文上の根拠を示せというふうに申し上げているんです。
○政府委員(松尾邦弘君) 答弁者が質問してはまずいかもしれませんが、それでは立会人は緒方さんのその回線に接続したかどうかはどう確認するんでしょうか。その点から考えても、電信柱に登らなきゃいかぬというのが私の結論でございます。
○福島瑞穂君 私は繰り返し言いますが、技術上可能かどうかなどということを聞いてはおりません。法律上可能かどうかということを聞いているのです。それを言うんだったら、ほかの立会人はもっと無力ですよ。
○政府委員(松尾邦弘君) 技術的には可能なんですが、立会人制度を考えた場合に、まさかそうした立ち会いの形態までも法律が想定しているとは到底思えませんので、立会人というこの制度自体を考えても、これは法律的に許されないということを非常に象徴的な例で申し上げたということでございます。
○福島瑞穂君 私が非常に問題だと思うのは、あるいはこの法務委員会での審議の中で、条文と答弁がずれるというふうに私は思うんです。
 立会人は電柱に登って確認をしなくてはいけないんですか。ほかの立会人はどこまで義務があるんでしょうか。先日、松尾刑事局長は電子メールの場合に転送をすると。どこに立会人がいるのだというふうに申し上げたら、転送先に立会人がいるとおっしゃいました。では、その立会人はどこまで確認をするんですか。
○政府委員(松尾邦弘君) 電子メールの転送の場合が出てまいりましたので、その例をとって御説明いたしますと、まず立会人は、例えばPOPサーバーのところでそれを転送するための電気的な何らかの措置が必要ですが、それをまず確認しまして、それで場所が違う場合にはそれを確認した上で、例えばそこがもう狭くておられないという場合は隣の部屋なりあるいは隣の建物なり直近の場所に傍受する具体的な場所が置かれますが、そこに行って今度はそのほかの立ち会い業務をやるということになります。
○福島瑞穂君 電信柱についても接続しているかどうかの確認はできる。技術上できますよね。それがなぜ法律上やってはいけないというところに書いてあるのかわからない。やはりこれは技術面と法律面を混同しているのだという気がいたします。
 では次に法律面、やってはいけないPTT、PTTは法律上なぜやってはいけないんですか。
○政府委員(松尾邦弘君) そもそもこのPTTというのは、今までいろいろな形の説明がありましたけれども、ここにあるように、技術的な困難だけではなくて、例えばTWSにNTTの方が接続して使用する機械でございます。
   〔理事大森礼子君退席、委員長着席〕
 したがって、PTTによる電話の傍受ということはTWSで電話の傍受ということを予定しておりますので、技術的にもまた場所的にもPTTによることは想定されていないということです。
○福島瑞穂君 いえ、技術上の問題ではありません。技術上、若干付加すれば、PTTでもTWSでも可能だというふうに聞いておりますけれども、法律面でやってはいけないというところにPTTが書いてあるんです。それについていかがですか。
 もう一度聞きます。どの条文の何に基づいて法律上だめなのか、それを答えてください。
○政府委員(松尾邦弘君) PTTを使う場合というのは、これまでも申し上げておりますけれども、まず、PTTの機械自体がNTTがある特定の目的のために開発した機械でございまして、それを使って傍受することは想定されていないものですから、法律上でもやはりできないということになります。
○福島瑞穂君 想定していないということ、それを言うのであれば、TWSだってもともとは試験制御装置の端末なわけですから、盗聴など予定をしていないわけです。そもそもNTTのさまざまな施設は盗聴など予定はしていないと。しかし、デジタル回線の中でTWSでやるというふうに法務省自身もおっしゃっているわけです。
 ですから、私はここで技術的にできるかどうかということを今聞いているのではありません。局長の答弁が、政府の答弁が法律上やれるかやれないかということについて条文とずれるから、そこを確認したい。どの条文の何に基づいてできないんですか。
○政府委員(松尾邦弘君) PTTというのは技術的にできないということのほかに、PTTによっては通信傍受法案が予定している傍受ができないわけですから、これは法律的にもできないというふうに分類せざるを得ないんです。
○福島瑞穂君 おっしゃっているのは技術上できないということで、法律上できないということではありません。法律上は別に引き込み柱からやっちゃだめだとかそんなことは何も書いてないわけです。なぜ法律上PTTでできないのか、それを答えてください。
○政府委員(松尾邦弘君) 技術的にできないということ、というのは通信傍受を可能にするためにはそのための機材が要るわけですね、あるいはそれを可能にするための例えば施設が要るということでございますので、PTTはそういうことを予定していないわけでございますから、法律上も予定していないというふうに言わざるを得ないと思います。
○福島瑞穂君 今、技術的なことをおっしゃっていると思います。条文に基づいて法律上できること、できないこと、これは刑事手続上の条文ですから、万が一成立すればこの条文のとおりに施行されるわけです。ですから、それに基づいて納得のいく説明をいただかなければ、私たちは今ここで法律を成立させることはできないわけです。それは当たり前のことだと思います。
 では、電子メールについて、転送をする、それは警察以外の別の場所だとおっしゃいました。なぜ警察に転送してはいけないんですか。
○政府委員(松尾邦弘君) これも前にお答えしましたが、通信傍受を実施するのは警察なんですね。警察の担当官が行うわけでございまして、今回の法案はその傍受の適正をどう担保するかということをいろいろな形で組み込んでいます。そうした法律の立て方からいいましても、傍受をする機関が自分の施設でそれを行うということについては、これは法律の立て方からいいましてもそれは許されないというふうに当然考えられます。
○福島瑞穂君 立会人で公正さを担保することはできないんですか。
 それからもう一点、例えば別室に引いて、転送が警察以外のところでも、それが例えば緒方さんのときのアパートのように、アパートを借りたのが警察であれば結局は同じですよ。そこを警察の場所と言うか警察の場所と言わないかというのはもう単なる言葉の遊びで、別のところへ転送するのであれば、そこは警察でなくても警察が借りていればそれは警察の場所ですよ。公正さの担保はどこが違うんですか。
○政府委員(松尾邦弘君) 傍受をしている場所自体、いろいろのことが考えられると思いますが、小さなプロバイダーのところで、傍受をする人たちが入れないとか機材を置けないというときになりますと、裁判官の判断としてはどうするかという問題になるわけですね。
 その場合に、じゃ隣の……
○福島瑞穂君 裁判官の判断を聞いていません。
○政府委員(松尾邦弘君) それでは隣の部屋に用意しましょうと、隣の部屋を借りる費用がかかりますね。それを仮に警察が払ったとして、それは警察で傍受したということにはならない。そういう意味では、その施設を警察の施設と呼ぶんだと言えばそれはそうかもしれませんが、警察が借りてその部屋でやることももちろんある。つまり、費用は警察が負担するということもそれはあり得るんですね、転送先として。
○福島瑞穂君 私が不思議なのは、警察の中では絶対にやらないということを非常に強調される点、それが条文では明確な条文はないということがあります。
 それからもう一つ、警察の施設の中でなくても、結局転送をする。今おっしゃったようにアパートを警察が借りて転送して、そこでコンピューターの絵を入手する。そういう場合に、警察の施設内と言おうが外と言おうが、それはもうほとんど関係ないと思います。
 ちょっと時間がもったいないので先へ行きます。
 きょう、せっかく郵政省に来ていただいていますので、先ほど小川委員も聞かれましたけれども、携帯電話について、先ほど技術的にできないことと、コストの面については郵政省自身が今判断されていないということはお聞きをしました。
 次にお聞きするのは、衛星携帯電話、イリジウムの問題です。覚書の中にもありますけれども、七月二十三日、衆議院法務委員会で松尾刑事局長は、「覚書第三項は「交換機能を有する人工衛星局を介して行われる、端末相互間の無線通信」ということでございます。これは、現在のところ、技術的に非常に難しい問題がございまして、現在の技術のレベルにおきましては、傍受は予定していないということでございます。」という答弁があります。
 衛星携帯電話について、盗聴はできるのでしょうか。
○政府委員(天野定功君) 現在、衛星携帯電話はイリジウムのシステムが実用化されておりますので、それについて御説明します。
 まず、イリジウムの衛星携帯端末相互間の通話につきましては、これはほとんど不可能に近いぐらい極めて難しいと聞いております。それから、イリジウムの衛星携帯端末と他の事業者の携帯端末または固定電話との間の通話についてはどうかということでございますが、これも地上の交換局において行うことが想定されますが、その場合でも、傍受回線を特定してその通話内容をモニターすることは極めて難しいと。いずれの場合も困難であると承知しております。
○福島瑞穂君 将来、これは技術的に盗聴が可能になるのでしょうか。
○政府委員(天野定功君) これは技術的な可能性でございまして、私どもそれを専門に検討したわけじゃございませんので、それについての答弁は、明確にお答えできません。
○福島瑞穂君 ちょっとこれも言わずもがなかもしれませんが、ではコスト面、どれぐらいかかるかということについても試算はされていらっしゃらないのでしょうか。
○政府委員(天野定功君) 技術的な開発の可能性あるいはコストの見通しにつきましても、私どもは検討いたしておりません。
○福島瑞穂君 この委員会の中でも携帯電話、特に衛星携帯電話などについては盗聴ができない、少なくとも今の段階ですが盗聴は非常に難しい、特に衛星の携帯電話についてはどうなるかわからないわけです。
 そうしますと、この間もちょっと申し上げましたが、悪い人間を捕まえるのだということでこの盗聴法はスタートをしました。私は、今までの短い審議の中でも、どこが悪い人を捕まえることになるのだというふうに思います。
 確かに、衛星携帯電話は一台六十万ぐらいかかると言われております。でもこれは、本当に覚せい剤の取引をやっているような人にとってみれば、恐らくはした金でしょう。そうすると、本当に悪事を働こうと思う人は盗聴ができないものを使う。結局、盗聴ができないところが部分的にまだらのようにあるわけです。そうすると、盗聴法の実効性そのものが問題で、私自身はこの間も申し上げましたが、白紙に戻せというふうに言いたいと思います。
 郵政省にちょっとお聞きします。
 立会人のことが非常に問題になっております。それで、これは例えば二十四時間やるとして、しかもそれは先ほどありましたが三十日になるかもしれない、それを超えるかもしれない、そういう場合の費用の負担について、人件費についてはどうなるのでしょうか。
○政府委員(天野定功君) 令状による通信の傍受の具体的な実施方法につきましては、立ち会いの方法なども含めまして、法案成立後、捜査機関と通信事業者との間で標準的な実施手順を定めるための協議が持たれるものと承知いたしております。
 したがいまして、郵政省としては現時点におきまして立ち会いのコストの見積もりは行っておりません。
○福島瑞穂君 NTTもほかの大手も小さいところも、先ほどどなたかの委員もおっしゃいましたが、余裕を持って働いているところなどないと思います。
 先ほど松尾刑事局長もおっしゃいましたが、例えばプロバイダーの部屋が狭い、それでどこかアパートを借りるとなった場合にその賃料それから立会人の人件費、アメリカでも一件につき七百万ぐらいお金がかかると言われています。法務省はさまざまな試算についてどのような計算を行っていらっしゃるんでしょうか。
○政府委員(松尾邦弘君) 具体的に幾らぐらいかかるのかというのはケース・バイ・ケースで随分あると思います。アメリカの場合はどうも人件費が入っているようでございますので、人件費の積算というのは、我が国の場合は、例えば捜査官が三十日、そういう場合三十人従事しましたと、その場合に、警察官の給料の中の三十日分を人件費として捜査費用に入れるのかどうかという問題とか、それは入れて計算した方がいいというふうに言う方もいるかもしれませんが、それ以外の機材の使用料だとかそんなことを経費として考えればずっと少なくなりますし、人件費も入れればそれは多くなるということでございますので、必ずしも七百万というのが多いのか少ないのかというのは積算に何を入れるかということによります。
 我々も、実際にこれを運用する段階になりますと費用というのは現実にかかるわけでございますので、それを資料としてやはり集積し、できる限り少ない経費で行えるような工夫算段も必要ですし、あるいは国民に対して大体このくらいの費用ということで、もし個別に発表できるものがあれば国会報告等に盛り込んですることも検討しているということでございます。
○福島瑞穂君 今の段階でも衛星携帯電話などについての盗聴を可能にするだけの技術開発、それからTWSについての技術開発、それから人件費、立会人の人件費だけでもかなりになると思いますけれども、多額のお金をかけて、しかも穴があるという法律をつくることにどれだけのコストパフォーマンスがあるのかというふうに思います。
 次に、強制処分という観点からお聞きをしたいと思います。
 盗聴は捜索とのアナロジーでよく議論になっておりますが、捜索と全く違う点が山ほどあります。捜索、逮捕であれば、強制処分を受けた人は自分が強制処分を受けたことが直ちにわかり、ほとんどの場合ですね、直ちにわかり、すぐ準抗告あるいは国家賠償請求訴訟、不当であれば権利救済ができます、先ほど橋本委員もおっしゃいましたけれども。ところが、この盗聴法は強制処分を受けても、例えば私が令状の交付を受けたとしても、私と話をした何千人という人も一切通知が来ない可能性が高いわけです。その点についていかがですか。
○政府委員(松尾邦弘君) 強制処分を受ける場合に、事前にどの程度被疑者なりあるいは関係者が承知できるのかという問題については、現在の刑事訴訟法上でもさまざまでございます。
 捜索の場合でもその場に被疑者等がいない場合ももちろんあるわけでございまして、隣人等に立ち会いをお願いしているということも許されているわけでございます。それから、通信傍受記録に該当しない通話の当事者にはこの法案では通知はしないということにつきましては、そのプラス、マイナスをいろいろ総合して勘案した上でそのようなシステムの方がベターであるということで行ったものでございまして、当初からそれを省いたということではございません。
○福島瑞穂君 例えば本人がいない場合に臨時に立会人をつけるということはあります。しかし、その場合でも、押収品目録が出たり、あるいは本人にあなたのところは捜索が入ったよと絶対言うと思うんですね。本人が知らぬ、あるいは捜索、逮捕であれば部屋とかいろんなものが変化しますから、本人は捜索、逮捕があったことを一生知らないということは恐らくないだろうというふうに思います。
 ところが、盗聴の場合はそれがあるんです。臨時の立会人というふうにおっしゃいましたけれども、本件の立会人は本人に対してあなたは盗聴されましたと言うことができますか。
○政府委員(松尾邦弘君) この場合の立会人というのは押収、捜索の場合の立会人とは異なった役割を担っております。それからまた、立会人として立ち会った場合には、それを被疑者に伝えることは許されていないというふうにこの法律ではなっております。
○福島瑞穂君 ですから、捜索、押収における強制処分と盗聴法における強制処分、つまり恐らくこの盗聴法で初めて見えない形、本人が一生知らない形で強制処分が起こるということが発生するのだと思うのですが、いかがですか。
○政府委員(松尾邦弘君) そういう場合もあるわけでございますが、しかし、現行法におきましても、例えば手紙の押収の場合には差出人が一生知らない場合も多々ございます。そういった意味で、現行法においてもそういった場合が必ずしも想定されていないかといいますと、そうではないということだろうと思います。
○福島瑞穂君 捜索と押収は違います。郵便物について捜索を認めないで押収しか認めなかったのは、内容について触れる点が検閲に当たるというふうに法律が考えたからだと思います。そして、この盗聴は押収ではなく捜索です。中身を必ず聞きます、見ます。ですから、この場合に、手紙の押収が認められているからということは理由にならないと思います。
 再度お聞きします。それ以外の点で本人が一生知り得ないで強制処分が起こり得るという、これは今回初めて、あるいはほかに何か例がありますか。本人が一生知らないで強制処分が起こる。
○政府委員(松尾邦弘君) 手紙の場合でも押収、捜索の際にはそれぞれ内容は捜査官は見るわけでございますから、内容について触れないということではない。そういう意味では通信傍受の場合と本質的には差はないんだと思います。
○福島瑞穂君 普通の立会人であれば、捜索の場合の立会人であれば、例えばそれは子供部屋ですから入らないでくださいとか、必ずチェックができる。刑事訴訟法上なぜ立会人を置いているかといえば、それは違います、それは見ないでくださいというふうに一応チェックができる、何が起きているかをチェックすることができるというふうに言われています。
 しかし、この盗聴法では、盗聴が行われるときにだれが違法性がないかどうかをチェックできるんですか。
○政府委員(松尾邦弘君) これは今回の通信傍受の制度全体をごらんいただきたいと思うんですが、最終的な担保はやはり原記録が裁判官のもとに封印されて保管されている、それで不服申し立て等がありますとそれをひもといて内容をチェックするということでございますので、初歩的なチェックというものの担保をそこに置いているわけでございます。
○福島瑞穂君 それは全く担保にならないのは明らかです。つまり封印されているわけです。それからもう一つ、強制処分を受けた人間はそれを可視化できないんです。見ることができないんです。知ることができない。通知がなければ知らないわけです。
 ですから、私は令状の発付を受けました。私の知り合いは何千人と聞かれました。明らかにプライバシーは侵害され、強制処分を受けているわけです。だけれども、通知が来なければ、私は封印されたテープにどうやって届くのですか。
○政府委員(松尾邦弘君) 通知をされないことだけを取り上げられるといろいろなことがあろうかと思いますが、スポットモニタリングで犯罪に関係ないという通話の当事者については確かに通知制度は置きませんでしたが、これはいろいろな理由がございますが、一つには……
○福島瑞穂君 それは聞いていません。
○政府委員(松尾邦弘君) いや、しかし、今のお答えとしてはそれを申し上げざるを得ないものですから。
 そうした当事者に通知すること自体のマイナス面、例えば被疑者のプライバシーが必要以上に広範囲な人に通知されてしまう。例えばたまたま同窓会の通知のために被疑者のところへ連絡した。そのために、ではその人にも通知をするということになると、同級生に、あれはああいうことで傍受されているのかというふうなことまでわかってしまう。そういうことが広範囲に起こりますと、かえって被疑者のプライバシーの問題というのがむしろ重大問題になってくるというようなことを一例として申し上げますが、そうしたことを総合的に考えて、犯罪に関係のない通信の当事者に通知をするということのマイナス面は大きい、プラス、マイナスをいろいろ総合しまして、通知をしないというシステムが妥当であるというのがこの法案の考え方でございます。
○福島瑞穂君 強制処分を受けたにもかかわらず、それが一生わからないということの方が問題だと思います。
 「捜査手段としての通信・会話の傍受」、井上正仁さんのでも、ちょっと一部ですからあれですが、「ただ、そのような通信についても、それが違法に傍受されていたとしたなら、国家賠償や民事賠償の訴えを起こすということが理論上考えられなくはないから、その機会を与えるという意味では、その当事者に対しても通知を行うというのが徹底した考え方かもしれない。」という部分の記述があります。つまり、通知を受けなければ準抗告、国家賠償請求訴訟ということがそもそも全くできないんです。
 ですから、村井敏邦先生その他参考人が、今回の盗聴法が今までの犯罪概念、捜査概念を全く変えてしまうものだというふうにおっしゃったことは、さまざまな面でこの法律の中にそれはあるというふうに思っています。強制処分を受けてもそれは一生見えない、知り得ないんですよね。それの担保は全く不十分で、封印されたテープがあるのだというのは全く理由にならないというふうに思っています。
 先ほど橋本委員も違法盗聴の歯どめについて聞かれました。立会人は中身を聞くことができませんから、もしそこで違法盗聴が行われていたとしても、それをチェックできる人はいないわけです。捜索のような立会人はいません。
 七月二十九日付の東京新聞、「特定議員へ選挙情報」、「公安庁が極秘文書」として、極秘文書が出ております。「関係強化へ方針明記」、すなわち、「文書は「議員の最大関心事は、選挙および地元情報であることが明らか」とした上で「共産党など当庁得意分野に焦点を当てた地元選挙情報を作成し、説明に赴くことが議員との関係を深めるのに効果的」」というふうに出ております。つまり、情報というのはそういうふうに使われる危険性もあります。
 アメリカの場合の盗聴も、上院議員、下院議員、最高裁のリベラル派、ジャーナリスト、公民権活動家、アメリカの情報公開法に基づいて、マルチン・ルーサー・キング牧師の家は十七年間、ちょっと不正確で済みませんが、十数年間にわたって事務所と自宅が盗聴されていたということが明らかになりました。そういう意味では、明らかになるだけまだましと言えるかもしれません。日本で違法盗聴が万が一起きた場合に、どういう形で今後明らかになっていくのだろうかという気がします。
 もう時間がありませんので、きょうは郵政省に来ていただきました。いろいろ教えていただいたんですが、世耕さんのつくっていただいた資料をもとにお聞きしましたが、衆議院と参議院で技術の説明が違っていたり、私たちの中でも若干混乱があります。条文と法務省の説明の間にも私はずれがあると思います。委員長、ぜひ郵政省あるいは警察との連合審査、先ほど千葉委員もおっしゃいましたけれども、連合審査をしてくださるよう強く要求したいと思いますが、いかがですか。
○委員長(荒木清寛君) 理事会、理事懇で協議をいたします。
○福島瑞穂君 それから、ぜひNTTの見学、私どもは、世耕さんなどを除いてTWSその他について見ていませんので、ぜひNTTの現地視察をアレンジしてくださるように強く要望いたします。
 以上です。
○委員長(荒木清寛君) 速記をとめてください。
   〔速記中止〕
○委員長(荒木清寛君) 速記を起こしてください。
○平野貞夫君 組織犯罪防止三法が参議院に送付されましてからきょうで六十五日目でございます。六十六日目のあしたは公聴会を開くということになっております。ただいまの福島先生の質疑が終わって、全体で四十時間十五分という質疑時間になりました。衆議院が十四カ月で二十二時間五十分でございますので、それから比べれば随分効率はいいんですが、それにしても六十数日にわたる四十時間十五分というのは、本当に各先生方それぞれ御自分の人生観なり国家観なり社会観をかけていろいろ御論議されて、私は素人でございますので大変勉強になりました。
 尽きるところ、現代社会は非常に技術が発達して、しかも凶悪な犯罪が組織的大規模に行われるような状況の中で、基本的人権の概念がオーソドックスな今までのものでいいかどうかということ。すなわち世界と言ってもいいと思いますが、例えば国連の推測では、世界の薬物取引の総額は五千億ドル、これはオイルマネーの総額に匹敵する額だと言われております。あるいは専門家の推測によりますと、二〇二五年には、あと二十五年たてば、このままの情勢でいけば人類の約三〇%が覚せい剤に汚染されるのではないかと。
 こういう非常に危機的な状況の中で、人間全体の基本的人権というものを本当に守るために、やはり犯罪容疑者なり犯罪者の人権についてはある程度の制約をしてもらわなきゃ困る。そして我々が、大きな真の意味の人権を確立するために、そのコストとして若干の人権を制約されることを許容しなければいけない、そういう時代になっているのじゃないかと思います。同時に、やはり国家権力とか警察権力というものを信用するか信用しないか、この問題、この二点に尽きると思います。
 自由で活力のある市民社会を日本で続けていくために我々政治が考えなきゃならぬのは、こういう世界の犯罪の実態、しかも我が国が直面するさまざまな凶悪犯罪に対する対応、こういったものについてやはり政治は真剣に対応を迫られているのじゃないかと思います。
 私は、そういう意味で、限られた時間ではございましたが、覚せい剤の犯罪実態、それから集団密航の犯罪実態、こういったものをこの委員会で取り上げてまいりましたのですが、きょうはマネーロンダリングについてお聞きしたいと思います。
 例によって素人の質問をいたしますが、警察庁にお聞きします。
 そもそも、いわゆるマネーロンダリングというものは何ですか。どういう行為のことを言うのか、御説明いただきたいと思います。
○政府委員(林則清君) マネーロンダリングと申しますのは、簡単に申しますと、犯罪活動により得られた収益について、課税や没収による剥奪を免れるために、これを他人名義のものと偽る、あるいは正業によって得た正当な資金であるかのように偽装する、いわゆる汚い金を洗浄するといいますか洗濯するといいますか、これのことをマネーロンダリングと言っておるわけであります。
○平野貞夫君 マネーロンダリングにつきましては、犯罪団体、組織によるものもありましょうし、政治絡みのことも多少言われる場合もあるんですが、こういうことが世の中にあってはいかぬわけでございますが、我が国のマネーロンダリングの実態というのはどんなものでございましょうか。
○政府委員(林則清君) 我が国におけるマネーロンダリングの全体像は、事柄の性質上必ずしも明らかではないわけでありますけれども、薬物、銃器等の売買でありますとか、暴力団などによる経済活動にまつわる違法事案では、一つ一つ見ましても莫大な収益が取得されておるということがうかがわれるわけであります。
 それにもかかわらず、それに対する適正な課税なりなんなりというものはほとんどなされていないという現状でありますから、こういう違法な活動によって得られた莫大な収益、想像もできないような収益が隠匿され、あるいは形を変え、犯罪者の手に残される。いわゆるマネーロンダリングが我が国においては自在に行われて、また、これが次の犯罪の資金にもなっておるというのが実態ではなかろうか。そういった抽象的なお答えしか申し上げることがちょっとできない状況でございます。
○平野貞夫君 そうしますと、我が国で余りマネーロンダリングを規制する制度が整っていない。こういうことは、当然、我が国が国際社会の中でマネーロンダリングの抜け穴みたいな状況にあるのではないかと思いますが、現行の法制度で我が国でマネーロンダリングはどの程度規制されておりますか。
○政府委員(小林奉文君) 現行法上の規制の内容についてでございますが、いわゆる麻薬特例法が薬物犯罪に係るマネーロンダリングについて規定しております。巨額の収益を得る目的で薬物犯罪組織が地球規模で暗躍している実態を踏まえまして、その不法収益の剥奪と取り締まりの国際協力の拡充を図ることなどを目的といたしまして、昭和六十三年にいわゆる麻薬新条約が採択されました。この新条約を受けまして麻薬特例法が平成三年に制定されたという状況にございます。同法第九条で不法収益等の隠匿行為、それから十条で不法収益等の収受行為がそれぞれ犯罪として規定されております。
 具体的な条文の内容でございますが、まず第九条で規定しておりますのは、他人名義で銀行に預金する、あるいは通謀した第三者に仮装譲渡するなどの不法収益等の収得につきまして事実を仮装する行為、こういったものが規制されております。また、偽名で金銭の両替を受ける、あるいは暴力団が上部団体への上納を第三者名義の銀行振り込みによって行うなど、こういった行為を不法収益等の処分につき事実を仮装する行為という形で規制されております。また、売掛代金の支払いや借入金の返済を装うなどの行為、不法収益の発生の原因につき事実を仮装する行為、こう言っておりますが、こういった行為などが規制されている状況にございます。
 また、第十条では、薬物の密売により得た収益であることを知りながらこれを暴力団の幹部が上納金として受け取るなど、不法収益を自己の財産として取得し、または引き渡しを受けて実質的に自己の財産と同様のものとしてシェアする行為、こういったものが規制されている状況にございます。
○平野貞夫君 麻薬特例法でマネーロンダリングを検挙した状況、それから代表的な検挙事例を説明してくれませんか。
○政府委員(小林奉文君) いわゆる麻薬特例法が平成四年七月に施行されたところでございますが、それ以降の検挙状況につきましては、第九条、不法収益等の隠匿の違反でございますが、八事件、第十条、不法収益等の収受違反、これが二件でございます。
 このうち、主要な事件について二件、御説明させていただきたいと思います。
 まず、第一の事件でございますが、平成九年九月、大阪府警で摘発した事例でございますが、暴力団幹部が他の暴力団員から薬物密売のショバ代、場所代として約一億五千万円を徴収した事件を第十条違反で検挙している事例がございます。
 また、平成十年一月、警視庁において検挙した事例でございますが、イラン人密売グループの首領が薬物密売で得た不法収益約五千三百万円をドバイの銀行に送金していた事実を不法収益の隠匿としてとらえまして、第九条違反で検挙した事例。
 こういったものが主な検挙事例でございます。
○平野貞夫君 印象として言いますと、検挙数が少ない感じがします。ですから、いわゆる脱法的なマネーロンダリングの量というのはもっともっと巨大な数じゃないかという印象を今の説明で私は持ちます。
 そこで、今話に出ました暴力団絡みの話なのでございますが、暴力団もマネーロンダリングをやる対象でございましょうね。その辺いかがでございますか。
○政府委員(林則清君) 先ほども若干申し上げましたが、議員御指摘のとおり、暴力団勢力は広範にマネーロンダリングを行っておるというふうに警察の方でも見ております。
 暴力団による薬物の不正取引でありますとか賭博を検挙いたしましたところ、その収益が他人名義の口座へ預金されておったというような事例が相当捜査の過程で見られるところでありますし、暴力団の収入が、たびたび申し上げますように、巨額なものであると認められるところから、いろんな形でのマネーロンダリングが御指摘のように行われておるというふうに認識しております。
○平野貞夫君 暴力団のマネーロンダリングの代表的な事例、わかりませんか。
○政府委員(林則清君) 暴力団によるマネーロンダリングの事例といたしましては、一つは、例えば暴力団組長、大変大物の組長でありますが、これが特別背任で得た百五十七億円の収益を用いて、自分が実質的に経営する企業の名義でゴルフ場を開発したり、借名口座等を利用して上場企業の株式を買い占めたりしておったという事案がございます。
 それからまた、これもまた大変有名な暴力団組長でありますが、これが野球賭博等で得た収益を内縁の妻等の名義で開設した預金口座に預け入れて隠匿しておった、こういうような事案がすぐ頭に思い浮かぶ事案であります。
 暴力団における地位の高低とかあるいは金額の大小というものに関係なく、彼らは不法に得た収益というものを非常に広範に、いろんな形でマネーロンダリングを行っておるということは、我々の日々の捜査の過程でも実感するところでございます。
○平野貞夫君 わかりました。
 実は平成八年に住専問題というのがありました。住専問題の処理というのはバブルの崩壊した後始末でございまして、これの処理の仕方、例えば債権放棄の仕方によっては、当時私たちが聞きました話だと、裏世界に約四十兆円ぐらいの不動産のさまざまな利益が移るのではないか、こういう話がありました。
 当時、私は新進党でございましたのですが、新進党の議員は衆参合わせて二百人ちょっといたと思います。その中で、八十人がこの組織犯罪、もちろん通信傍受も含めた制度を確立すべきだというので勉強会をつくりました。現在、新進党は解党されましたが、公明党に行かれた方、戻られた方、あるいは民主党に入られた方、そして自由党、それから自民党に戻られた方、いろいろ散っておるわけなんです。
 実はこの八十名の勉強会の事務局長は、現在衆議院議員で民主党に所属している方だったんです。それから、参議院の現在民主党に所属される元の我々の同志も結構勉強会に入っていまして、積極的に推進していた方たちが多うございます。この間もその方の一人に会って昔話をしましたら、おれの名前は言うなというので申しませんが、そのくらい実は当時、覚せい剤のことは私はそのころは不勉強でございましたが、暴力団絡みのさまざまな組織犯罪について、このままではいけないということを当委員会でも申し上げ、結構法務省がやっぱり腰が重かったときもありました。この法案の審議の過程で私はそれを思い出すわけでございます。
 その話はおきまして、マネーロンダリングと関係のある言葉で地下銀行という言葉があるんですが、これはどのようなものでしょうか。
○政府委員(林則清君) いわゆる地下銀行につきましては明確な定義があるわけでは毛頭ありませんが、一般的には全く銀行業の許可を受けずに多数の者から一定の手数料を取って外国への送金依頼を受けまして、そして当該相手国の仲間にこれを連絡しまして、仲間は送金依頼額に見合う金額を依頼先に交付する、事実上送金した格好になる。言いかえますと、我が国の国内法に反して銀行法上の免許を得ずに業として海外への送金を行うものを指す、これが地下銀行であります。
 言わずもがなでございますけれども、地下銀行は利用者の匿名性というのが極めて高いわけでありますし、今問題になっておるこのマネーロンダリングに大変利用されやすいと考えられ、また実際に送金される金の中には犯罪に関係するものも相当含まれておるだろうというふうに思っております。
○平野貞夫君 この地下銀行の検挙状況と代表的な例を説明してください。
○政府委員(林則清君) 警察庁といたしましては、地下銀行というものの利用は、不法滞在の問題でありますとか来日外国人犯罪の問題と表裏一体の関係にあるというふうに見ておりまして、これは重点的にその摘発に力を注いでおるところでありますが、平成九年以降では全国で二十事件の地下銀行事件を摘発しておりまして、これらの事件では約千八百億円の海外送金がこの地下銀行、アングラで行われておる。
 それで、代表的な事例ということでありますが、思いつくところを申し上げますと、例えば平成九年の六月に神奈川県警において、日本国内にいる中国人多数から中国本土への送金依頼を受けて、〇・五%から一%の手数料を得て中国向けに送金するという手口で、一年三カ月の間に百二十六億円の不正な送金を行っていた中国人を銀行法違反で検挙した事件。それから、ごく近くですが、平成十一年二月、大阪府警におきまして、これまた中国人不法滞在者等から送金額の一%を手数料に中国への送金を請け負い、本人名義及び借名口座を使用して一カ月のうちに十八億円の不正な送金を行っていた中国人、これは外国為替及び外国貿易法違反、銀行法ではなくてこちらの方で検挙しておりますけれども、そういった事例が相当いろいろ見られます。
○平野貞夫君 具体的な事例をお聞きしましたが、それとて私は氷山の一角だと思います。
 そして、この地下銀行、それからマネーロンダリングの嫌らしさといいますか怖さは、単なる犯罪の収益の問題でなしに、やはり日本の安全保障を脅かすものに周辺諸国が使う、あるいは利用するという可能性もあるわけでございます。そういう意味で、国の独立あるいは国益という形から我々はこの問題に無関心ではいられないわけでございます。
 そこで、現在ある制度で、端的に言って麻薬特例法だけでこのマネーロンダリング対策というのは十分でしょうか。
○政府委員(林則清君) 先ほども答弁がありましたし、先生の御指摘もありますように、我が国の現行法制上は麻薬特例法によって薬物犯罪のみがマネーロンダリング罪の前提犯罪ということになっておりまして、他の犯罪で得た不法収益のマネーロンダリングは全然カバーされていないわけです。
 このため、効果的な取り締まりの観点からも、それから国際的な要請の見地からも、現行法ははっきり言ってマネーロンダリング対策にとって十分ではないというふうに考えております。
○平野貞夫君 参考のために教えていただきたいことは、諸外国でマネーロンダリング対策はどういうふうなシステムをつくっているか、各国共通なものでよろしゅうございますから、その代表的な例を説明してください。
○政府委員(林則清君) 現在、国際社会では、犯罪収益の逃避地をつくらないというためにも、マネーロンダリング対策の国際協調を進めておるのは御案内のとおりでございます。OECD加盟国を中心にする二十六の国と地域及び二つの国際機関で構成するFATF、たびたび出てきます金融活動作業部会でありますけれども、ここにおきましては、マネーロンダリング対策のための四十の勧告を設定し、日本を含む参加国に対して勧告の遵守を徹底するよう、総合審査等を行っておることは法務省の方からもお答えがあったところであります。このようなFATFの活動は、国連あるいはサミット等でも強力に推進するよう支持されておるところであります。
 こうした国際的な取り組みによりまして、海外の主要国では、お尋ねの共通したという点で言いますと、前提犯罪をまず拡大する、それから金融機関への報告義務、これを徹底するといったような勧告に従った対策が共通の代表的なマネーロンダリング対策として行われている。
 もう一回繰り返して言いますと、いろんな形はありますけれども、前提犯罪を拡大する、それから金融機関への報告義務をきちっとする、こういうことが共通して行われておる対策でございます。
○平野貞夫君 そうしますと、現行の我が国の対策といいますか、システムに対する諸外国からの批判といいますか、評価というとおかしいですが、評判というのはいかがなものでしょうか。
○政府委員(林則清君) これも先ほど答弁があったと思いますけれども、昨年行われましたFATFの対日審査におきまして、現在の日本のマネーロンダリング対策のシステムは実際上有効ではないと大変厳しい評価を受ける一方、今審議されております組織犯罪対策法案の施行によるマネーロンダリング対策の効果的な向上というものを期待する旨の報告書が採択をされております。
 さらに、六月末に東京で行われましたFATF全体会合において、各国から、世界第二位の経済大国である日本がマネーロンダリング対策を的確に進めることは極めて重要であり、そのためにも法案ができる限り早期に成立することを強く期待する旨のコメントが相次いだところであります。
 FATF勧告のうち、最も基本的な勧告の一つである前提犯罪の拡大につきましては、未達成の国がFATF参加国のうちもはや我が国のみであるということを考えますと、現在の我が国のマネーロンダリング対策に対する国際的評価については大変厳しいものがあるというのが現状でございます。
○平野貞夫君 現在、審議中の三法案、衆議院で通信傍受法については修正があったんですが、これで自信を持ってマネーロンダリング対策に対応できますか。
○政府委員(林則清君) 現在、御審議いただいております組織犯罪対策法案では、一番重要なこのマネーロンダリング罪の前提犯罪が薬物犯罪以外の重要な犯罪にも拡大をされております。
 警察といたしましては、このような前提犯罪の拡大により、これまで直接の処罰規定のなかったマネーロンダリング行為につきましても法の網がかけられる、資金獲得を最大の目的にした組織犯罪の一番痛いところに決定的な打撃を与えることができるということで、大変期待をしておるところでございます。
○平野貞夫君 最後に、法務大臣にお伺いしたいんですが、今刑事局長の話にもありましたとおり、我が国は一国で世界に生きているわけじゃございません。しかも、経済大国として大きな影響力を持ち、さまざまな国で日本人が活躍しておりますし、日本の国の信用というのは、これは落ちたりといえどもまだまだ世界の平和なり世界の安定に寄与すべき責任を持っていると思います。
 マネーロンダリングのもとは、やはりさまざまな覚せい剤犯罪による犯罪収益であり、あるいは銃器等の販売による犯罪収益であり、場合によりましたら集団密航、そういったものによる収益だと思います。
 そういう意味で、話がもとへ戻りますが、やはり日本人のあり方といいますか、決して基本的人権というのは個人主義というもののみで存立するものじゃないと思います。我々がそれぞれその社会状況に必要なコストを払うことによって初めて社会構成員全員の基本的人権が確立されるわけでございまして、この法律を早く成立させて、これは我々の責任でございますが、そして施行する際に、ひとつそういったことをよく心がけして施行していただきたいわけですが、それについての大臣の御決意をお聞きしたいと思います。
○国務大臣(陣内孝雄君) これまでの委員会で、各般にわたって組織犯罪対策の重要さを説いてこられたわけでございます。国民の平和な生活を脅かすとともに健全な社会経済の維持発展に悪影響を及ぼすものであり、時には国民の生命をも奪う痛ましい事件として現実化しておるという御指摘、まさに同感でございます。
 こういったものに対処するための組織的犯罪対策三法案による法整備というのは、組織的な犯罪に適切に対処するために認められる法的武器でございます。これを適切に活用して組織的な犯罪に断固として対処する必要があると考えます。同時に、いやしくも法の乱用による人権侵害があってはならないというのは、これはもう当然のことでございます。
 捜査当局におきましては、そういった趣旨を十分に踏まえ、国民から十分信頼されるよう、法の厳格な運用に努めつつ、真に国民全体が安心して暮らせる社会を築き守っていくために組織的な犯罪に対して断固とした決意で厳正に対処していく、このように考えております。
○中村敦夫君 中村敦夫です。
 この通信傍受法案、いわゆる盗聴法案におきましては、対象犯罪が薬物、銃器、集団密航、組織的殺人に関連するものというふうに修正されたわけです。このうち、組織的殺人というこの言葉は刑法上初めて登場した言葉であると聞いております。
 そのことに関しては、もう一つの法案、組織的犯罪の処罰及び犯罪収益の規制法案、この中の第三条一項、二項で規定されているんですが、どうもいま一つ概念規定がはっきりしないんです。
 今までもちょっと関連するような質問があったように思いますが、もう一度ここで明確に確認したいんですが、つまり組織的殺人というのは具体的にどのような犯罪を指すのか。大体範囲というのがどういうものかということを簡潔にお答えいただきたい。法務省、お願いします。
○政府委員(松尾邦弘君) まず、抽象的な規定からいいますと、委員御指摘のように、二条で「団体」というものが定義されております。これは非常に無色な規定でございますので、通常の組織体はほとんどこの団体の概念には入ってくるということになります。
 具体的な行為との関連でいいますと、御指摘のように今度は第三条で、ここでは言葉としましては、「団体の活動」というものとその罪に当たる行為を実行するための組織により行われる、この二つがあるんですが、「団体の活動」としてはこの括弧書きの中でもう少し具体的に書いてあります。団体の意思決定に基づく行為で、その効果またはこれによる利益が団体に帰属するというものを団体の活動と言っているわけでございます。
 この概念で、余り抽象的なことばかり申し上げてもなかなかイメージがわかないと思いますので、先ほどはオウムの例を、坂本さん一家殺害事件を申し上げました。これがまさにこの典型だと思いますが、そのほかにもう一つ、暴力団のかかわるもので例を言いますと、暴力団が例えばある企業の幹部の殺害を請け負ったといたします。暴力団の組長がその暴力団としてこれを実行するというときに、そういう決定をします。これはまさに団体の活動、つまり団体の意思決定に基づく行為であって、その効果またはこれによる利益が団体に帰属するということです。
 ただ、これだけでは足りませんで、その罪に当たる行為を実行するための組織、この場合はヒットマンを送ります。それとともに、車で行きますと運転手、見張り、それから連絡役と、恐らくチームを組むことになります。このチームが当該犯罪、罪に当たる行為を実行するための組織ということになります。つまり、組織的な殺人というのは、今言った坂本さん一家殺害事件あるいは暴力団のヒットマンを送り込む事件ということになります。
 もう一つ違った類型が実はありまして、この第三条の二項には「不正権益」というのがございます。これは縄張りをイメージいただければいいと思いますが、それを「継続的に利益を得ることを容易にすべきもの」というような、暴力団が不法な利益を継続的にそこから得ているという縄張りみたいなものですが、それの維持もしくは拡大目的ということになります。これも例を申し上げますと、暴力団の抗争事件、いわゆる縄張り争いというのがまさにこれになります。そのために暴力団として行う殺人行為ということがこの組織的な殺人の二つ目の類型でございます。
○中村敦夫君 大体イメージはわかったんですが、一つこの法案に対して大きな問題がございます。
 これは、自由党の小沢党首が七月六日の経団連の講演で、この盗聴法と住民基本台帳法を危機管理に使用するものだという趣旨の発言をしたわけです。これは共同通信七月六日の配信なんですが、ちょっと読ませていただきます。
  自由党の小沢一郎党首は六日午後の講演で、国民すべてに番号を付ける住民基本台帳法改正案について「政府は国防、安全保障、治安の問題では(データを)使えないと説明しているが、そこに使わないで何のためにやるんだ。当たり前じゃないか」と述べ、住民基本台帳を国家的危機管理に利用すべきだとの考えを示した。
  小沢氏は「(政府は)正面から「一朝事あるときや治安維持のために必要。プライバシーを守るための厳重な乱用禁止規定を設ける」と言えば済むのに、こてんぱんにやられるから絶対そうは言わない」と強調。電話などの傍受を認める通信傍受法案についても「単に泥棒や麻薬犯を捕まえるだけの話じゃない。総背番号の話もそうだが、国家的な危機管理という考え方が根底にあって初めて成り立つ」と述べた。
こういうふうに書いてあるわけです。
 私は前からも発言しているんですけれども、盗聴という捜査技術によって大きな犯罪組織が壊滅したり麻薬犯罪が減ったというような例証というのは実はないんです。むしろ、どんどんそういう状況が深刻化しているというのが実は現実なわけです。ですから、むしろこの小沢氏の発言の方が非常にこの法案の本質をついて率直な考え方ではないかというふうに思えるわけです。しかし、これまでの政府答弁では、先ほどのように、組織的犯罪の内容というのは、麻薬だとか暴力団だとかという社会的な犯罪、つまり刑事犯罪を強調しているわけです。
 そうしますと、同じ与党でこの法案は出てきているんですが、小沢党首の言うような国家的危機管理というのは全く趣旨が異なるわけです。これは与党の中で明らかに見解が分裂しているとしか思えないんですが、これは法務大臣にどうかお答えいただきたいんです。これはちょっと大変な問題ではないかと思うんです。
○国務大臣(陣内孝雄君) 御指摘のような報道があったことは承知いたしておりますが、小沢党首が実際にどのようなお話をなさったかということはわかるわけではございません。
 一般論として申し上げますと、近年、暴力団等による薬物、銃器等の取引やその不正権益の獲得を目的とした各種の犯罪のほか、オウム真理教事件のような組織的な殺人事件、また法人組織を利用した詐欺商法等の経済犯罪など、組織的な犯罪が少なからず発生しておる、それで我が国の平穏な市民生活がこれによって脅かされている、あるいはまた健全な社会経済の維持発展に悪影響を及ぼす状況にある、こういうことでございます。
 また、国際的にも、最近のように交通通信手段が発達して経済活動の規模が大規模化してまいりますと犯罪の国際化もそれに伴って進むということで、国内の暴力団組織と外国の不法集団とが一緒になった、つまり蛇頭と一緒になった大規模な密入国も行われるというような事実も多く起こっております。
 そういう我が国の治安に対する脅威がますます重大なものになっておる、こういう組織犯罪に対処するための三法案というのは必要不可欠な法整備であるということでございまして、これが国家的危機管理と言うかどうかは別といたしましても、我が国の治安や国民生活に対する重大な脅威である組織的な犯罪から国民の生活とそれから人権を守る、こういうことは私は政治にとって大変重要であると認識しておるところでございます。
○中村敦夫君 これは小沢さんもちゃんとした場所で発言しているわけですから、これは治安維持だということなんですから、それを麻薬犯罪とかそういうのを含めて国家危機だと言うのは難しいと思うんです。
 ですから、もうちょっと率直に聞くんですが、私はいいとか悪いとかということを聞いているわけじゃないんです。そういうものが含まれるかどうかでこの法案というものの性格が全然違ってくるということを申し上げたいんです。
 これは法務省にはっきりお答えいただきたいんですけれども、この組織的殺人というのは政治テロを含むものなんでしょうか。
○政府委員(松尾邦弘君) 政治テロというのがどういうようなものを想定しているのかというのは必ずしも明らかではございませんが、この法案の第二条、第三条に組織的な殺人等という概念が先ほど申し上げたように規定されているわけでございます。つまり、その構成要件に該当するかどうかの判断でございます。それが政治目的で行われたのかどうかというのは格別ここには規定しているわけではございませんが、構成要件的にこれに該当すれば、目的のいかんを問わず、組織的な殺人として処断されるということになります。
○中村敦夫君 政治的テロというのは、アメリカなんかでは大規模にいつも起こっているわけです。日本でもいろいろと国内の派閥がやっている場合もあるけれども、国際化していく問題の中で、特に軍事的に日本が積極的な態度を示したことによっていろいろ起こるという可能性は考えられるわけです。
 それはともかくとして、法案の提出理由の説明の中に、「国際的にも、組織的な犯罪に対して協調した対応が求められ、」とあるわけです。この「協調した対応」というのは、これは具体的にどういうことをやるのかということを非常に簡潔に説明していただきたいんです。
○政府委員(林則清君) 今日、組織的な犯罪というのは、国境をまたいでネットワーク化する傾向が世界の至るところで見られることは御案内のとおりであります。我が国におきましても、来日外国人による薬物犯罪でありますとか、たびたび言われておる集団密航事件等が深刻さを増し、またこれに関し日本の暴力団との連携動向も、二十一世紀のとば口としてどんどん広がると思われますが、見られるところであります。
 こうした組織的な犯罪への対策は、サミットや国連の場で継続的に議題に取り上げられるなど、国際的に重要課題になっておる。このため、組織的な犯罪に対しては抜け道を世界じゅうでつくらないということで、国際的に協調した対応が求められているというのが我々の認識であります。
 こうした状況下において、例えば国際的な麻薬・銃器密輸事犯について他国から我が国に対して重大な情報が寄せられたという場合に、これを生かして対象人物を的確に検挙するために通信傍受という手段を必要とする場合に、我が国ではこれができないんだということでは国際的に協調して対応することの実というのは上がらない。結局、我が国がこの種犯罪にとって、ネットワーク化したこういった犯罪にとっての抜け道になる、ひいては諸外国における努力をも阻害することにもなりかねないということであります。
 したがいまして、警察といたしましては、どんどん国際化する組織犯罪に対決していくために、従来から行ってきた取り締まりだけではなく、また国内外の関係機関との連携といったことを従来以上に推進するとともに、通信傍受法案が成立した場合、これによってそういった国際的に足並みをそろえて二十一世紀は肥大化する組織犯罪と対決するということの実を上げていきたい、そういうことでございます。
○中村敦夫君 抽象的にはわかりますが、国際的にこれを盗聴の技術によって協力し合うということにはたくさんの抜け穴があるわけです。
 例えば、国内でAとBという国際的な犯罪団体がいるとします。しかし、これ直接連絡したんではすぐわかってしまうということで、外国において、アメリカでもいい、香港でもいいですけれども、サーバーがありますね。外国製のサーバーです。そこに両者がコンタクトをする、そしてそのサーバー同士がつながっていくということになりますと、これを利用してAとBはコンタクトがとれるというようなことがあるわけなんです。そうしますと、専用回線で日本でそういう大きなところでは盗聴ができない、技術的に無理だ、困難だということがありますから、外国のサーバーを押さえない限りわからないというような事態も起こるんです。
 そうなると、それは日本の警察が行って勝手に押さえるわけにはいかないわけですね。やはりその外国の公的権力が押さえなきゃいけないということになりますから、そうしたネットワークというものなしにはこれは不可能じゃないかと思うんですけれども、そういうネットワークを具体的にどうやってつくるのかということをお答えいただきたい。
○政府委員(林則清君) 今御指摘の点は、捜査共助というものが世界じゅうに緊密に行われなければ効果的に対処できないではないかという御指摘だと思いますが、個別の国との条約あるいは個別のそれぞれの国との捜査協力というのは具体的に進めておりますので、それをますます推進するということの上でこの傍受法案が生きてくるということになろうかと思います。
○中村敦夫君 国際的犯罪組織、これは政治のテロ組織とかあるいは麻薬のテロ組織とか、これは南米においてもあるいはタイのゴールデントライアングルなんかにおいても非常に重なる部分というのがあるわけです。ある場合は政府が麻薬を利用しているとか、入り組んでいるという部分があるわけなんです。ですから、我が国がそういう国際協調をするとしても、発展途上国のような国情ではなかなかできにくい。
 そういう意味では、国際的なテロ対策という面で見ると、一番問題が大きく熱心なのはアメリカであるわけです。そして、我が国との同盟性も一番強いという状況にあるんですけれども、このアメリカから、今回この法案をつくるに当たって、テロを含む国際犯罪組織対策のために盗聴の捜査の導入に関する示唆というものはあったんでしょうか。これは法務省に。
○政府委員(松尾邦弘君) この通信傍受法案の立案に当たりまして、特定の国から個別の要請を受けたという事実はございません。
○中村敦夫君 これは警察庁にお伺いしたいんですけれども、アメリカの自由人権協会の幹部、そして弁護士で有名なバリー・スタインハードさんというのがおります。この夏日本にも来まして、盗聴というものがアメリカで乱用されて大変な被害に遭っているんだ、そして八〇%の人々は今反対している、ですからアメリカを一つのサンプルにして日本ではこの法案に対してはやはり気をつけて考えなくてはいけないという警告をした方なんですが、この方が六月にアメリカ政府に対して、日本における盗聴法制定に関し日米政府間で協議があったのかどうかということに関して公文書の開示請求をやったわけです。
 そうしましたら、同じ月に回答がございました。ところが、これは回答が来たところが中央情報局、つまりCIAから来たということなんです。そして、その回答の内容が、日本の盗聴法が米国の安全保障や情報収集活動とかかわりがあるので回答を拒否するという答えが来たわけなんです。これはスタインハードさんも大変驚いたわけです。そして、インターネットで世界じゅうにこれを発表しているんですけれども、CIAが開示請求に対して回答を寄せたこと自体、私たちは強い違和感を抱かざるを得ない。なぜなら、CIAは本法案が対象とする日本国内の一般刑事犯罪の捜査や組織的犯罪捜査上の国際協力と間接的にもかかわる組織ではないからです。つまり、非常にとんでもないところから答えがやってきたということなんです。
 そうしますと、大変疑問な点が出てきます。つまり、日本の盗聴技術によって国際協調をする際に、アメリカ政府の窓口となるのは、これは相手はCIAということになるんでしょうか。
○政府委員(林則清君) ちょっと御質問の御趣旨がわからないわけでありますけれども、捜査共助ということは、その双方で共通傍受という問題ではなくて、それ以前にある事件に対する捜査の共助ということでありますから、我々が捜査を共助してともにやるところは、必ずしも一定したところではありませんけれども、アメリカを例に出されますと、やはり一番多いのはFBIでございます。
○中村敦夫君 では、CIAではなくて日本の警察とFBIが協力関係になるということですね。
○政府委員(林則清君) 捜査の共助ということではFBIという捜査機関となることが最も多い。向こうの国内状況によってはあるいはニューヨーク市警に振られたりということはあるでしょうけれども、一般的にはFBIが一番多い。
○中村敦夫君 欧州議会、EU議会というものですけれども、ここで昨年発表された報告書がございます。これはタイトルは「テクノロジーの政治的管理」という公文書ですが、その中に「民衆支配テクノロジーの実態評価」というものがあります。日本語にも訳されたこういうものですけれども、(資料を示す)この中で、アメリカの国家安全保障局いわゆるNSAと呼ばれているところですが、そこが監督するエシュロンという国際的監視技術ネットワークがあるというふうに報告されて、それが非常に大きな問題になっているんです。
 そこでは、電波傍受によって電話、ファクス、インターネットを盗聴してヨーロッパ国民を監視しているんだということが書かれているわけです。このネットワークの中には、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどの諜報機関が参加しているということが明らかになっている。ですから、参加していないヨーロッパの国々で大変問題になっているということがございます。
 日本に対して、この組織、エシュロンと呼ばれているもの、あるいは何らかの国際通信調査組織から国際協調で一緒にやろうという参加要請というのは今まであったのでしょうか。法務省にお聞きしたいんです。
○政府委員(松尾邦弘君) 御指摘のエシュロンなる組織については、法務省としては承知しておりません。また、改めて申し上げるまでもないことですが、本法案による通信傍受というのは、具体的な犯罪行為がある場合にその捜査のために行うものでございますので、一般的な情報収集を目的とするものではございません。したがいまして、エシュロンというのがいかなる組織かよくわかりませんが、国際情報調査というように銘打ったものであるとすれば、本件の通信傍受法とは全く無関係というふうに考えていただいて結構ではないかと思います。
○中村敦夫君 この傍受法案、盗聴法案によりますと、盗聴される通信というものがある、これは大体三つに分類されると思います。一つ目は、犯罪に関係のなかった消去すべき通信、要らないというのが一つあります。それからもう一つは、裁判で刑事手続に使用されるもの、この部分をとっておくわけです。この通信があるわけです。これが二つ目です。もう一つあるんです。つまり、形としては捜査中の傍受記録ということです。つまり、どう処理していいかまだ判断のつかない過程の傍受記録というものが一つあります。それからもう一つは、結果として出したんだけれども裁判に使われなかった傍受記録ということがあるんです。
 この三つ目が私は問題だと思うんですけれども、この三つ目のいわゆる捜査中の傍受記録、中途半端な位置にある傍受記録、そして、裁判で使われなかった、使わなかった、両方ですね、その傍受記録というものがあるんですけれども、これに関して、法的に守秘義務とかあるいはほかに流用するということに関しての制限というのは法案の中にないんですね。非常にここの部分が浮いていると私は思うんですけれども、いかがでしょうか。
○政府委員(松尾邦弘君) 傍受記録につきましては、捜査に使用するということでございます。したがいまして、その目的以外にこれを乱用し、あるいは通信の秘密の漏せつというようなことになりますと、それは罰則がかかっているということになります。そういう意味では制約はあるということでございます。
○中村敦夫君 どこでそれが罰がかかっているんでしょうか。
○政府委員(松尾邦弘君) 捜査機関の者ということになりますと、通信傍受法案の三十条をごらんいただきますと、これは修正されたところでございますが、捜査または調査の権限を有する公務員がその捜査または調査の職務に関し電気通信事業法等々違反の罪、これは秘密を漏らす罪ですが、それを犯したときは三年以下の懲役または百万円以下の罰金に処するという非常に厳しい刑事罰がかけられるということでございます。
○中村敦夫君 これは要するに乱用というものの概念だと思いますけれども、それがたまたまそこの傍受記録というものが例えば政治的なテロ、そうしたものに結びつくとか、あるいは大がかりな他の機関がかかわっているような問題に関連していて非常に重要だというような場合、例えば公安調査庁や防衛庁にこの傍受記録を提供できるのかどうかということなんです。ですから、これを乱用と見るかどうかということなんですけれども。
○政府委員(松尾邦弘君) 先ほど申し上げましたが、今回の通信傍受法案の通信の傍受はあくまで犯罪の捜査のための傍受でございまして、いわゆる治安のための傍受というものではございません。したがいまして、捜査以外の目的でこれを横流しするといいますか他の機関に安易に渡すようなことになりますと、やはりこれは三十条の問題、今ごらんいただいた問題にストレートになってまいります。
○中村敦夫君 それでは、例えば先ほどの国際協調の場合、アメリカの場合はFBIがカウンターパートナーになるということを言われましたけれども、日本で得たそうした傍受記録、これを相手方に渡すということはあり得ますか。
○政府委員(松尾邦弘君) これは、例えば覚せい剤事件の捜査の過程で通信傍受が行われます。その結果、傍受記録として捜査の資料としてその通信傍受の内容が活用される場合がございます。その場合に、例えばこれが国際的にまたがった覚せい剤事犯の大規模な密輸事犯ということに関連するということでありますと、これはまさに捜査情報、捜査記録でございますので、それは捜査に活用されるということでございます。したがって、外国の捜査機関に対して必要があればやっぱり提供されるということもあり得べしということになります。
○中村敦夫君 今、全般のお答えとしてはやはり社会的事件、刑事的な事件というものに主にこれは使われると言いつつも、現実的にはそうしたものと政治的な勢力とが重なり合ったりする部分がありますし、アメリカの連邦ビル爆破とかああいう例を見ますと、やはり政治的な問題に応用していくと。そうすると、それが本当のテロ集団ならいいけれども、単に思想性が違う、あるいは政府の考え方と違うといったようなところまでどんどん歯どめがなく拡大していくということの危険性が非常にあると思うんです。
 ですから、逆に小沢党首がはっきりと言っているようなことを正面から言うのであればまたわかりやすいけれども、そうではないところでもってこの法案を通していきながらそちら側のものに使っていくというところが非常にこの法案の持っている危険性ではないかと私は思っております。
 時間がなくなりましたので、その警告であって、やはりそういう欠陥を持っている法案であるということで、これはもう少しやり直した方がいいという意見を言わせていただいて、終わります。
○委員長(荒木清寛君) 三案に対する本日の審査はこの程度にとどめます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後四時三十六分散会