第146回国会 法務委員会 第7号
平成十一年十一月三十日(火曜日)
   午後一時三十分開会
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  出席者は左のとおり。
    委員長         風間  昶君
    理 事
                北岡 秀二君
                塩崎 恭久君
                竹村 泰子君
                魚住裕一郎君
                平野 貞夫君
    委 員
                岩崎 純三君
                佐々木知子君
                竹山  裕君
                中島 眞人君
                服部三男雄君
                江田 五月君
                小川 敏夫君
                角田 義一君
                橋本  敦君
                福島 瑞穂君
                中村 敦夫君
                松田 岩夫君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        加藤 一宇君
   参考人
       同志社大学文学
       部教授      浅野 健一君
       弁護士      武井 共夫君
       大阪市立大学法
       学部助教授    三島  聡君
       東京都足立区長  鈴木 恒年君
       弁護士
       破産者オウム真
       理教破産管財人
       常置代理人    大野 金一君
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  本日の会議に付した案件
○理事補欠選任の件
○無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関す
 る法律案(内閣提出、衆議院送付)
○特定破産法人の破産財団に属すべき財産の回復
 に関する特別措置法案(衆議院提出)
○サリン等による人身被害の防止に関する法律の
 一部を改正する法律案(橋本敦君外一名発議)

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○委員長(風間昶君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 去る二十五日、荒木清寛君が委員を辞任され、その補欠として魚住裕一郎君が選任されました。
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○委員長(風間昶君) 理事の補欠選任についてお諮りいたします。
 委員の異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。
 理事の選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(風間昶君) 御異議ないと認めます。
 それでは、理事に魚住裕一郎君を指名いたします。
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○委員長(風間昶君) 無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律案、特定破産法人の破産財団に属すべき財産の回復に関する特別措置法案及びサリン等による人身被害の防止に関する法律の一部を改正する法律案を一括して議題といたします。
 本日は、三案の審査のため、お手元に配付の名簿のとおり、五名の参考人から御意見を伺います。
 本日御出席をいただいております参考人は、同志社大学文学部教授浅野健一君、弁護士武井共夫君、大阪市立大学法学部助教授三島聡君、東京都足立区長鈴木恒年君及び弁護士破産者オウム真理教破産管財人常置代理人大野金一君でございます。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。
 参考人の皆様方から忌憚のない御意見をお聞かせいただきまして、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 議事の進め方でございますが、まず浅野参考人、次いで武井参考人、そして三島参考人、さらに鈴木参考人、大野参考人の順に、お一人十五分程度で御意見をお述べいただきまして、その後、各委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。
 なお、念のため申し添えますが、御発言の際は、その都度、委員長の許可を得ることとなっております。また、各委員の質疑時間が限られておりますので、御答弁は簡潔にお願いいたしたいと存じます。
 なお、参考人の方の意見陳述及び答弁とも、着席のままで結構でございます。
 それでは、浅野参考人からお願いいたします。浅野参考人。
○参考人(浅野健一君) 浅野です。
 きょうはこういう機会を与えていただきまして感謝いたします。
 私は、共同通信の記者を二十二年務めまして、五年半前から同志社大学で新聞学、ジャーナリズムマスコミュニケーション論を教えております。専門としては人権と報道、特に犯罪報道による被害、人権侵害の問題を主にやっております。
 私は、一九九五年の末に公安調査庁長官による破防法に基づく団体解散処分請求が行われた際、弁明手続がありまして、五人立会人を選任できるということでそのうちの一人になりまして、六回にわたる弁明手続すべてに参加しました。その後、皆さん御承知のように、九七年一月三十一日に公安審査委員会は全員一致で請求を棄却するという決定を下しております。
 その経験からいいまして、そのときに出された公安調査庁の証拠なるものが白抜きの調書であったり、だれが調書をとったのかわからないとか、あるいは新聞記事を証拠にするという全く驚くべきことがありまして、取材をしていた報道陣の中からもあきれられたと。新聞の中には破防法について割と評価するといいますか反対していない新聞社もありますが、そういう新聞記者ですら、あるいは放送記者ですら、これはとんでもない役所だということで、そういうこともあって公安審査委員会が決定しております。
 特にそこで焦点になったのは、政治目的があるかどうか、あるいは将来の危険性があるかどうかということだったわけですが、この公安審査委員会の決定は、きょうは私レジュメを用意していますので、その一ページ目を見ていただければよろしいのですが、オウムを取り巻く諸状況が変化しており、そしてサリン事件を惹起した当時の状況とは大きく変化しているとした上で、結局、公安調査庁提出の書類をもってしては本団体が今後ある程度近接した時期に継続または反復して暴力主義的破壊活動に及ぶ明らかなおそれがあると認めるに足りるだけの十分な理由があるとは認めることはできないと。
 最近、一部の政治家やメディアの中から、破防法に反対した文化人がけしからぬというふうな言い方がよくなされるんですが、この公安審査委員会というのは内閣総理大臣がたしか指名して国会が承認している法務省の外局に当たる組織ですね。そこが法務省の一部局である公安調査庁長官の請求を棄却したということでありまして、しかもそれは全員一致でされたということであるわけですから、別に文化人がどうのこうのというわけでもなく、もし不満であればそういう人を任命した人の責任を問うべきだというふうに私は思うのです、もしそれが偏っているとすれば。
 そして、このオウム側の代理人を務めた内藤隆弁護士がさきに行われました集会で、この破防法の手続の中でオウムについての危険性とかそういうものについては十分議論され、そして棄却された、それにもかかわらず二年九カ月後にこのような法案が出てくるということは全く信じられないというふうに発言しておられます。私も全く同じ意見であります。
 私は、オウムの信者の人たちが逮捕、起訴され、そして一部有罪も確定している中で、オウムの犯罪というものの真相を究明することは非常に重要だと思っております。そして、その判決に基づいて刑罰を受け、罪を償い、そういうことが二度と起こらないような社会にしていくということが重要だと思います。
 しかし問題は、その首謀者とされている麻原被告の裁判が今も続いており、裁判の動向を見ますと、検察や警察やマスメディアが主張しているようなオウムの指導者による自暴自棄の犯罪ということが果たして本当に言えるのだろうか。本当にオウム以外の何かほかの勢力が関与していないのかどうか、権力の関与はないのかも含めて非常に疑問な点があります。これは警察庁長官の狙撃事件とか、オウムナンバーツー、スリーと言われた村井さんの死についての真相がまだ明らかになっていないというふうに私自身は考えています。
 おおむねのところオウムの信者たちが関与したことは間違いないと思われますが、しかしどうしてこの一連の事件が起きたかについてはやはりまだ真相を待つべきだという余地があるというふうに思います。そういう意味で、一連の事件がすべて団体の犯罪として行われたということを断定して、現段階で行うのはいかがなものかというのが私の考え方です。
 この法律は、連座制というんでしょうか、その団体に属していたからという理由で、その団体の一部の人たち、あるいは団体全体、団体の幹部と言っていいでしょうか、そういう人たちが行ったとしても、しかしそういう計画を知らなかった一般の信者までも巻き込む、そういう法律が果たして許されるのだろうか。これは日本の戦後の法体系を私は根本的に転換するものではないかと。そういう意味でこの法案はそういう劇薬を含むものであるということを認識してもらいたいというふうに思います。
 この法案の趣旨説明というものを私読ませていただきましたが、冒頭に二つのサリン事件などについて述べた後、最近の国際情勢から、ケニア、タンザニアにおけるアメリカ大使館同時爆破事件に代表されるような公共の場所での爆弾で多くの市民が犠牲になっている、そういう無差別大量殺人事件が多発しておりますと書いております。
 これは私は非常に不思議なんです。日本の国会の議論の中で何で突然アメリカ大使館のことが出てくるのか。世の中にはいろんな、最近の東ティモールでのインドネシア軍による虐殺などでたくさんの不幸な侵略戦争あるいは民族紛争やそういうものがある中で突然アメリカ大使館のことが出てくる。考えてみますと、米軍は中国大使館を誤爆するという事件を起こしているわけでありまして、そういう意味でいっても非常に唐突な感じがしました。
 日本の新聞はこの法案について、いつ衆議院を通過するとかしたとか、いつ成立するかとか、そういうふうに占い師のような記事を連日書いておりますが、私は、法案の中には慎重に議論され安易に成立させてはならない法案というものがあると思います。この法案はその代表的なものだというふうに考えております。したがって、この法案の持つ危険性、あるいは将来にわたる日本の法律システム、法の支配を大きく変えてしまうような危険性を持っているということを考えて審議をしていただきたいというふうに思います。
 それはこの法律の第二条と第三条に、この法律は国民の基本的人権に重大な関係があるものだ、拡張解釈してはならない、いやしくも権限を逸脱して、思想、信条、信教、集会、結社、表現及び学問の自由並びに勤労者の団結権、そういう憲法で書かれているような諸権利を侵害することがあってはならない、不当に制限することがあってはならないなどと規定しております。これは破防法と同じですが、普通の法律にはこういうことは余り書かれないわけでありまして、この法律の持っている危険性というものを法律そのものが認めているというふうに私は思います。
 そして、この法律の目的として第一条で書かれているわけですけれども、そこで書かれている無差別大量殺人行為というのは、破防法第四条第一項第二号ヘに掲げる暴力主義的破壊活動であるというふうに規定しております。そして、その上で、そういうものを遂げないものも含まれているわけです。したがって、これは未遂も含まれるということでありまして、こういうことでありますと、対象をオウムに絞るという宣伝があるわけですけれども、しかし幾らでも拡大解釈が可能だろうというふうに思われます。この法律は破防法ではできないこと、破防法ではやり得なかったことを容易に実施できるようにするための法案であり、第二破防法と言うべきであります。しかも、この第二破防法は従来の破防法よりもその危険性が高く、悪法と私は考えます。
 政府首脳は当初、破防法の改正やオウムへの破防法の適用の再申請を小渕首相も発言されましたが、それは無理ということでこの二つの法案が用意された。つまり、破防法改正ではできないことを単独立法でやる、そういうことが果たして適切な処置なのだろうかというふうに私は不思議に思います。
 次に、この法律は観察処分と再発防止処分の二段階になっておりますが、この観察処分で慫慂という言葉が使われておりまして、こういう言葉が法律として使われるということは余り私は聞いたことがないわけであります。しかも、破防法の要件とされている将来の危険性の証明がここでは必要ないということで、処分の決定が非常に簡易迅速化されておるというふうに思います。
 そして、処分を受けた団体に対して、公安調査官や警察官が土地、建物に身分証明書を見せるだけで、つまり捜査令状なしに入ることができる。これは明らかに憲法が禁止している令状なしに個人の住居に入ることを認めるということになるわけでありまして、しかもこれに罰則があるということであります。
 再発防止処分、いろいろ書かれていますが、これは観察処分もそうですが、破防法の場合は三つの大きな要件を満たさなきゃならないというふうになっているのが、この法案ではそのうちの一つでいい、どこか一つに当てはまればいいという意味で、非常に幅広い適用ができるというふうになっているわけです。
 しかも、破防法には弁明手続というものがあって、私もその弁明手続に参加したわけですけれども、処分を受ける団体がそれに対して異議を唱えることができるわけですが、ここではそういう手続が全くない、しかも非常に短い期間にその決定を下すということになっていて、それから行政不服審査法による不服申し立てもできないというふうになっていて、そういう意味で、受ける団体は弁明、反論の機会が非常に少ないというふうに思います。
 私は、先ほども申し上げましたが、日本の法律体系というのは、やはり個人の責任というものを追及するということだったのが、団体の責任を追及する、そしておそれがあるということ、あるいは未遂でしかもおそれがあるということになりますと、保安処分、こういう犯罪を起こしそうだということで人権を制限する、そういう初めての法律というふうに私はなると思いまして、その乱用が非常に心配されるというふうに思います。
 現在、神奈川県警、佐賀県警、京都府警などで警察のあり方というものが非常に問題になっているわけですが、そうした警察が果たしてどのように自己変革を遂げるかということが今問われているわけですけれども、現在のところそういう動きがない。神奈川県警の盗聴事件にしても、きちんとした反省をしているとはとても思えない。公安調査庁のさまざまな行為に関しても同じであります。
 したがって私としては、国会がまずやるべきことは、警察や公安調査庁など公安当局の透明性の確保、そしてそういう公務員の人たちに憲法や刑事法を守らせるための法整備を考えるべきではないか。スウェーデンなどで導入されておりますオンブズマン制度とか、諸外国にある、そして日本でも情報公開法はできましたが、捜査当局にも公的情報への自由なアクセス権を市民に認める、そういうふうなさまざまな施策こそ考えるべきではないかというふうに考えております。
 この財産に関する特別措置法についても団体規制法とセットになっておりまして、現行の法体系を崩すことになります。松本サリン事件の被害者である河野義行さんは、マスメディアの取材に対しては、そして私の電話での取材に対して、これに対して反対であるというふうに言っております。この二つの法案は時限立法でいいはずなのになぜそれをしないのか。それはほかの団体にも使えるようにしたいのだろうというふうに言っております。そして、犯罪被害者の救済については、他の先進国で行われているように公的な資金、税金で経済的ケア、精神的ケアを行う。日本はその点において非常に貧しい国でありますので、そういう犯罪被害者救済法をまず制定することが適切であるというふうに言われております。私も同感であります。
 一部の新聞報道によりますと、法務省の幹部が自分の名前を明らかにしないで、この二つの法案はオウムの広報部長であった上祐氏が出所する前に施行したいというコメントをしております。一人の人間が刑務所から出てくる、そのために法律を準備するという国が果たして民主主義的な国だというふうに言えるでしょうか。日本の既存の法律や法の執行機関がそういうことでおたおたするということは、私たち市民にとって非常に不安で、そのことの方が不安でなりません。衆議院においてさまざまな修正がなされ、前進したと思いますが、しかしそれによってもこの法案の危険性の体質は変わっていないというふうに思います。
 私は、ジャーナリズム論の立場から、この反オウム感情というものを少し考えてみたいと思います。
 マスメディアの報道にしても国会における議論にしても、必ずオウム真理教は再び活動を活発化させ、国民の多くが不安を抱いているというまくら言葉があるんですが、本当にそうでしょうか。きょうは資料を用意いたしましたが、この資料の十二ページをごらんいただきたいんですが、これは朝日新聞にオウムが栃木県の鹿沼市で土地探しをしているという記事が出るわけです。続いて六月二十六日に下野新聞に「オウム、大田原に進出」という記事が出ます。そして、その社会面では「全住民挙げ戦い抜く」というふうな見出しが立っております。そして、行政の方が転入届を受理しない、そしてオウム対策協議会ができている、そういう展開になっているわけですが、果たして六月二十六日に下野新聞が報道したときに、その大田原市で反オウム運動というのが本当にあったのかどうかということです。つまり、この新聞を見て多くの人が不安を感じ、そして住民運動が組織されていったというのが真相ではないかというふうに思います。
 この反オウム感情というんですか、反オウム住民運動というものが盛んになるのがことしの一月、二月ごろなんですが、例えば茨城県の三和町では、それまでにその町で住民が住んでいたにもかかわらず突如としてオウム出ていけという運動が起きていく。大田原もそういう形でマスメディアがそういう情報を流すことによって、大体市民がどこに住民票を移すかということは私はプライバシーの最たるものだと思うんですが、そのことが、前日の午後一時ごろに役所に行って申請をしたのが次の日の朝の新聞に出る。これは下野新聞だけに出たわけですけれども、これはどう見ても当局者がリークしたとしか思えません。その申請、届けを出すときにたまたま新聞記者がそこにいたという可能性は余りないだろう。そのことは十九ページ以下に下野新聞が新聞週間のときに三回連載をしておりまして、明らかに私たちの取材と報道が住民運動をあおったということを認めているわけであります。
 私は現地の調査にも、大田原には行ったんですけれども、そこで住民の側からオウムの信者の人たちを見るのと、オウムの信者の人たちが住んでいるその中から外を見る、その二つをやってみたのですが、その両方向から見ますと、どう見ても住民の運動のやり方に行き過ぎがあるのではないか。そのことはここのレジュメにも書きましたし、オウムの人たちが撮ったビデオがありまして、この資料三にあります。それはビデオのテープ起こしですが、夜中の十一時、十二時、そして昼間、その住民たちがどういうことを中にいる信者の住民に対して叫んでいるのかということをぜひ皆さんに読んでいただきたい。できたらこのビデオを見ていただいたらいいのですが。それから、トラックが門から突っ込むとか、宣伝カーが来て問題を起こすとか、そういうことも起きております。
 レジュメの六ページを見ていただきたいんですが、最近、女性信徒監禁事件というのが長野県でありました、九月二十九日に大きく報道されたわけですが。それから、いわゆる女子大学生の拉致事件というのもありました。この二つともオウムの犯罪として大きく報道されたわけですけれども、結局一つは起訴できない、そしてもう一つは自作自演の狂言であった。しかし、例えば読売新聞の社説などは、この二つの事件がオウムの犯行だということを前提にしてこの法律が必要だということを社説で書き、いまだにそのことを訂正もしていないというのが実態ではないか。したがって、この法案が必要だ必要だというときに出されたさまざまな情報、その情報を公安調査庁や公安当局がメディアに流し、それをそのままメディアが検証することなく流して、その上でつくられた議論、つくられた世論ではないかというふうに思っております。
 ただ、私は冒頭で申し上げましたように、オウムの人たち、信者の人たちが一部そういう犯罪を犯したということでもう確定しておりますし、オウムが全く関係ないということは絶対に言えないわけでありまして、オウム真理教の信者自身の人たちが社会から自分たちが嫌われている、なぜ嫌われているのかということについて深く考え、その対応をとることが必要だというふうに考えております。それから、麻原被告についても、裁判における無罪推定の原則から、英語でいろいろしゃべったりするのもいいのですが、しかし信者に対して、そして社会に対して彼がきちんと社会的責任を果たすべきだというふうに考えております。
 私、最後に参議院の本委員会の皆さんに申し上げたいのは、この法律を審議する際に、公安審査委員会の人たちが一年以上にわたって真剣に取り組み結論を出された、それぐらいの同じ努力をこの委員会の皆さんにぜひ求めたいと思います。
 以上で私のお話は終わります。ありがとうございました。
○委員長(風間昶君) ありがとうございました。
 次に、武井参考人にお願いいたします。武井参考人。
○参考人(武井共夫君) 弁護士の武井でございます。
 私は、当時私と同じ法律事務所に所属しておりました故坂本堤弁護士が殺害される、当時わからなかったわけですけれども、殺害される、いなくなるという事件があって以来、もう十年以上になりますけれども、オウム真理教と闘ってまいりました。私自身は、オウム真理教被害対策弁護団の中心メンバーでもあり、また坂本弁護士事件の事実調査の責任者でもあり、そういう立場でオウムのいろいろな犯行、違法の実態について、警察が捜査を始める前から調査をしてまいりました。また、警察の強制捜査後には、地下鉄サリン事件の被害救済という意味で弁護団の副団長を務めたり、あるいは現在もオウム真理教の横浜支部の明け渡し訴訟などを行っております。
 そういう立場から意見を申し上げますが、まずこの法案提出までの経過について若干申し上げたいと思います。
 先ほど申し上げたように、私どもは一九八九年以来、オウム真理教の実態の究明に力を注ぎ、特に九四年以後は、弁護団から警察当局を初め関係当局に対して、オウム真理教がサリンなどを有している、非常に危険な実態があるということを指摘してまいりました。私どもとしては、何とか今回の地下鉄サリン事件のような悲惨な事件は防ぎたいというふうに思っていたわけですけれども、残念ながら私どもの力及ばず、そして当時全く何もしていなかった公安調査庁、また警察当局も非常に不十分な対応だったということから、このような事件になってしまった。その意味で、国家の責任というものはこのオウム事件に関して非常に重大であるということを指摘したいと思います。
 私ども弁護団は、九五年の十二月十一日に教団の破産申し立て手続を行いました。そして、十四日には各施設、各物品の差し押さえを行い、教団の危険な活動の封じ込めに一応成功したわけですけれども、その日に破防法適用の動きが明らかになっております。
 この破防法に対しては、弁護団としては、破防法の適用が教団を消滅させる役には立たない、むしろ活動を禁止していくということによってかえって信者の信仰をいたずらに強固、過激なものにしていく危険がある、また破防法適用の法律的な要件である、例えば政治目的、あるいは「継続又は反覆して将来さらに団体の活動として暴力主義的破壊活動を行う明らかなおそれがあると認めるに足りる十分な理由がある」という、この要件について満たしているとは言えないということで反対いたしました。
 その後、解散指定の請求は棄却されたわけですけれども、今日までオウム真理教の側はそれをいいことに一連の凶悪事件に対する反省、謝罪をすることなく、また被害者への弁償もしておりません。そして、松本智津夫被告への帰依を続け危険な教義を維持している、そして非常に活発な活動を行っている。私どもは、現在の教団は破防法適用の法律的な要件を満たすという意味での危険性を有するとは現在も思っておりません。しかしながら、被害者、市民に与える危険性についての不安、これは無視できるようなものではない。そのような危険性というものはやっぱり否定できないんだということを申し上げたいと思います。また、被害救済の実情も極めて不十分である。
 こういうことから、本来、特別な立法がなければ、もちろんそれなしで解決できることが望ましいと思いますけれども、このような立法措置を招いたということは教団自身の責任でもあり、立法自体はやむを得ないのではないかというふうに考えております。
 ただし、一言申し上げておきますけれども、規制立法によって教団の危険性というものを一定抑制することは十分可能だと思います。しかしながら、教団や信者を消滅させることは絶対にできない。教団、信者消滅という目的にとっては、かえって場合によってはマイナスになることもあるんだ。すなわち、一部信者の信仰を強固、過激にしてしまう可能性もありますし、また元信者の社会復帰が妨げられる、そういう事態が生ずることもあるんだというマイナス面、副作用があるということを十分御理解いただきたいと思います。
 それでは次に、今さらと思うかもしれませんけれども、なぜこのような立法が必要になってくるのか、その原点とも言うべきオウムによる凶悪事件はどのようにして起こったのかについて、ここには資料の意味も込めまして長く書いてありますが、簡単に触れたいと思います。
 まず、どのような人がどうしてオウム真理教に入るのでしょうか。私どもが接している限り決して特別な人が入信するのではなく、多くは普通の人、むしろ場合によっては普通以上にまじめと言われているような人、こういう方が多いのではないか。もちろんこういう人だというふうにパターン化することはできませんけれども、多くの場合、まじめな例えばお医者さんだったり看護婦さんだったり、あるいは科学者だったりという方が現状に飽き足らずについ引かれてしまうということがあったと思います。
 私は、このような理想に燃えたまじめな人々が行き詰まるところに現在の教育や科学の問題点というものがあると思います。これについてもやはり国会でぜひ御論議いただきたいと思いますし、また学校や社会における教育、カルト対策という意味での教育の問題もやはりぜひ御検討いただく必要があるだろうと思います。
 そして、このようなまじめな青年がどうやって犯罪に加担させられていったか。これがいわゆるマインドコントロールと言われているものですけれども、一番大きいのは、やはりオウム真理教の教義を繰り返し繰り返したたき込むというシステムのもとで、特に三ページの方に書いてありますけれども、例えばLSDを使ったりあるいはLSDと覚せい剤を使ったり、これはキリストのイニシエーションとかルドラチャクリンのイニシエーションと呼ばれているものですけれども、このようなことが行われるようになって凶悪化が一層進んでおります。
 また、多くの出家信者は、直接犯罪者になったかどうか、いわゆる凶悪事件を起こしたかどうかにかかわらずこのようなイニシエーションが行われている、その中でオウム真理教の教義というものをたたき込まれているということを忘れてはいけないんだろうと思います。ほかにもいろいろなイニシエーションがありますけれども、これらのイニシエーションによって、例えば自白剤を打たれてもオウムでたたき込まれたことをしゃべるというところまでコントロールされてしまうんだということを指摘したいと思います。
 そしてまた、一方では、オウム真理教においてはリンチ、懲罰が非常に盛んでありまして、逆らえない。上の者に逆らうと懲罰を受けるということから逆らえない、そういうシステムもございました。これらがオウム真理教の中でのいわゆるハルマゲドンという思想、そしてヴァジラヤーナの教え、そういう教義と合わさって、すべての凶悪犯罪を正当化し行わせしめたということを、今さらと思うかもしれませんけれども、改めて強調したいと思います。
 私は、このオウム真理教の信者が行った数々の犯行、これは決してその信者個々がみずから意図して起こした犯罪ではなく、松本智津夫被告以下幹部の指示に基づいて組織的に行われたものであるということを強調する必要があると思います。これは、犯行においてもそうですし、あるいは捜査を妨害する方面でも青山元弁護士を中心にして徹底的に行っているということを指摘しておきたいと思います。
 このようなことから何が言えるのか。私は、刑事被告人となった信者たち、この信者たちがオウム真理教において決して特殊な信者ではないということを指摘したいと思います。彼らももともとは純粋、まじめな青年であったことがほとんどですし、またその彼らが結局は凶悪犯罪の実行者になってしまった。これはたまたま彼らが松本智津夫被告らによって凶悪犯罪の実行者に指名された、指示されたということが決定的な分かれ目になったのであります。
 したがって、例えば、現在刑事被告人は危険だけれども、捕まっているじゃないか、残りの一般信者は安全な存在なんですよというふうには決して単純に言えないんだということも残念ながら指摘せざるを得ないというふうに考えております。もちろん、加害者としての刑事被告人が責任を負うのは当然ですけれども、そうでない一般信者もまた彼らの犯行をいろいろな意味で支えてきた、そういう支えてきた責任、いわば道義的な責任というものもありますし、また、もし万一、何らかの形で松本智津夫被告なりほかの幹部から指示があればいつ犯行があっても決して教義上おかしくはないんだという存在だということは、残念ながら指摘せざるを得ないというふうに思います。
 ただ、現状で、当時指示にかかわった多くの幹部、そして松本智津夫被告自身が拘禁されているというもとで、その危険性は極めて明らかというような、一見明らかなようなそういう高い段階ではないとただ全く否定することはできないんだということを指摘しておきたいと思います。
 彼らのいわゆるマインドコントロールを解くにはいろいろなカウンセリング等が必要なんですが、その過程については、私自身が経験したことなどを若干まとめておきましたので、これはお読みいただきたいと思います。
 次に、被害者の対策の状況なんですけれども、残念ながら被害者のケアというものは非常に不十分であります。財産的損害については、国会議員の皆さんのお力や破産管財人団のお力、いろいろな特別立法や管財人団の御尽力によって、現在可能な最大限のことはやっていただいたと思いますけれども、それでも破産債権届け出額のわずか二二・五九%しか配当されておりません。
 私どもは民事訴訟を幾つも起こしましたけれども、その中で被害が完全に回復されたという例はほとんどありません。多くの例は差し押さえしてもごく一部しか回復できない、あるいは全く空振りに終わってしまうということで、被害救済の見通しというものは財産面においても非常に乏しいということを指摘します。
 また、被害者の現状、これは財産面だけじゃなくて、心身の傷というものが非常に大きいんだということを申し上げたいと思います。
 最後の方に被害者のアンケートをつけておきましたけれども、例えば、四年が過ぎた現在でも治療体制が進んでいないのはなぜか。被害者がどんな思いでいるのかも知ろうとしないのはなぜか。迅速に治療体制を整えてほしい。四年を過ぎた今も、後遺症が解明されないまま、レントゲンを撮ってもCTを撮っても異常ありませんで片づけられ、投薬といえば安定剤と睡眠薬だけ何種類も持たされ、日常生活は精神不安で眠れない日が続いている。オウム事件と被害者、そして国との関係など、なぜ私どもが被害者にならなければならなかったのか。国はどんな責任をとったのか、またとろうとしているのか。現在の被害者はどのような状況にあるのかを自分の目で確かめてほしい。少なくとも被害者の治療費はすべて負担してほしい。なぜなら国の身がわりになったのだからということで、非常に心の傷、体の傷は大きく残っておりますし、また、被害者の国に対する要望、国に対する責任を追及する気持ちというものは非常に強いんだということを御承知おきいただきたいと思います。
 したがって、受傷者に対する健康診断、ケア等を国家で責任を持つということもぜひ御論議いただきたいと思います。
 具体的な法案について幾つか申し上げます。
 まず、団体規制法案につきましては、極めて強力な規制を可能とする法律案となっております。したがって、憲法の定める国民の基本的人権に最大限配慮し、その適用対象を現実の教団の危険性に対処するために必要不可欠なものに限定するということを求めたいと思います。そのためには、オウム以外の団体への乱用のおそれをなくしていただくこと、そして適正手続の理念に沿った手続の整備をすることをお願いしたいと思います。
 具体的には、無差別大量殺人行為の定義について、破防法の引用という形で行われていますけれども、これによってかえってオウム以外の団体への乱用の危険性を懸念させるものでありますから、これはやはり破防法と切り離していただきたいと思います。
 また、特に政治目的の関係におきましては、事件が松本智津夫被告の指示に基づいて行われたという関係で、彼の供述がまだ正確に得られないという中で、政治目的が果たしてはっきりとあると言えるのかどうか。かえって、定義規定において破防法を引用することによって、オウム真理教への適用の可能性を狭めることにならないのかということも懸念されるところであります。
 また、この法案の定義規定によりますと、未遂も含まれることになっておりますけれども、オウムは既遂を行ったことは明らかでありますので、未遂を要件に加えることは、またこれもオウム以外の団体への適用の余地を残すんではないかという心配をしております。
 次に、適正手続についてですけれども、特に観察処分後の立入検査について、衆議院での修正によって、立入検査先を特定する書面の提出ということが法案に追加されたようですけれども、やはりそれでは不十分だと思います。少なくとも委員会による事前、あるいはどうしても緊急やむを得ない場合には事後に速やかにということでやむを得ないかもしれませんが、承認を必要とするというような令状主義的なチェックが可能になるようなシステムというものが必要だと思います。
 また、再発防止処分に関しては、より強力な規制内容だけに、より厳格な適正手続、厳密な法律要件の適用を要望したいと思います。
 また、サリン被害防止法改正案については、この無差別大量殺人行為の定義について破防法の引用をしていないという点、また立入検査について国家公安委員会の承認を必要としている点、さらに職権乱用罪の法定刑を重くする点など、評価できる点は多くあるというふうに考えます。
 さらに、特定破産法人の特別措置法案ですけれども、これは特別関係者の有する財産に関する推定とか、特別関係者に対する否認権の行使に関する推定と否認権行使の時効の特例、さらには破産管財人の公安調査庁長官に対する資料提供請求権などが主な内容ですけれども、私どもとしては、かねて要望してきたことからすれば決して満足というふうに言い切れるものではありませんけれども、ただ、現行法体系の枠組みの中でその整合性を保ちつつ、合理的な法案として実効性を持ち得るのではないかというふうに期待したいというふうに考えております。
 被害者側としてはこれは最低限の要求でありまして、当然の立法内容であるというふうに考えます。財産権の侵害ではないかという疑問もあり得るかもしれませんけれども、私ども被害者側から見ればあくまでも推定規定にとどまっているのでありまして、反証が許されるのだから現行法体系の中でも許容される範囲だというふうに考えます。
 最後に、事件の再発防止と教団の消滅、そして元信者の社会復帰のために一言申し上げたいと思います。
 第一に、国政調査権によるこの問題に関する調査を徹底的にお願いしたいと思います。国会は、この規制立法だけで終わりにするのではなく、国政調査権の行使によって、国家が地下鉄サリン事件まで何もせず、そして多くの被害者を出してしまったこと、オウム問題について、事件前はもちろんのこと事件後も被害者対策、元信者の社会復帰対策等に国家として必ずしもきちんと取り組んではこなかったのではないかということを調査、把握し、国家として反省していただきたいと思います。その上で、政府、自治体は一体何ができたのかあるいはできなかったのか、これを明らかにし、カルト対策を含めた今後の対策の体制をとっていただきたいと思います。
 具体的にはカウンセリング体制について一言申し上げますけれども、先ほど申し上げましたように、立法でオウムの信者や教団をなくすことはできません。オウムの信者や教団をなくしていくためには、やはりこれまでカウンセリングを実施してきた民間団体やボランティアがありますので、そういうボランティア、民間団体、個人に対する援助、これは研修とか資金の提供とかあると思いますけれども、こういうものが必要だろうと思います。カウンセリング体制をとるということが一番大事だと思いますけれども、ただ、必ずしも公共の窓口にそういう看板を出すということによっては解決しない、むしろ民間の力を活用するということが必要ではないかというふうに考えております。
 さらに、今回成立するであろう法律について、その存在や運用がオウムをなくしていくという上でマイナスにならないような運用を最大限配慮していただくようにお願いしたいと思います。
 第一に、元信者の社会復帰との関係では、本当にやめた元信者とやめたふりをした元信者、これはあり得るわけですけれども、現在でも元信者に対して公安調査庁や警察が接触して社会復帰を困難にしてしまうという例は間々ございます。やめたふりをした元信者を監視することはもちろん必要だと思いますけれども、それだからといって本当にやめた元信者の社会復帰を阻害することのないように配慮をお願いしたい。そのためにも、立入検査に際しては適正手続の厳正な実施というものを最低限求めたいと思います。
 さらに、この規制によって、場合によっては一部信者の信仰をかえって強固、過激にするおそれもあります。彼らは、もし仮に違法な運用あるいは拡張的な運用など、彼らを正当化できる運用がされれば、それを声高に言い立て、そしてかえって自分たちの存在、教義を正当化する、そういう目的に使われかねません。したがいまして、適正手続も含めて、人権等には最大限の配慮をすることがオウムを利さないためにも必要だということを一言申しておきたいと思います。
 今回の立法で決して終わりとすることなく、今後も国会としてオウムの問題に取り組んでいただく第一歩としていただくようにお願いして、私の意見を終わります。
○委員長(風間昶君) ありがとうございました。
 次に、三島参考人にお願いいたします。三島参考人。
○参考人(三島聡君) 大阪市立大学法学部の三島です。
 研究者の立場から、団体規制法案の法的問題について、意見を述べさせていただきたいと思います。
 レジュメを配付してありますので、見ていただきたいと思います。
 この団体規制法案の中心的な問題は、憲法二十一条一項の結社の自由に違反しないかという点であります。
 結社の自由の制約は、表現の自由の制約と同様に厳格な違憲審査に服するものと一般に解されています。そこで、例えば法律の文言が漠然としていないかどうか、規制対象が過度に広範でないかどうか、さらにまた団体の行為によって生ずる害悪の危険が明白でありかつ現在する場合に限って規制がなされているかどうかなどについて詳細に検討する必要があるということであります。
 本法案の一条からは、本法案の目的は無差別大量殺人行為の防止にあるというふうにとらえられますので、その規制目的の妥当性ないし立法の必要性が肯定されたとしても、さらにその手段が無差別大量殺人行為の危険が認められる範囲に限定されているかどうかということが問われなければならないと思います。
 そこで、次に立法の必要性についてちょっと考えてみたいと思います。背景事情については時間の関係で省略させていただきます。
 本法案は、基本的にオウム真理教に対する規制というものをねらったものだというふうにとらえられると思います。そこで、果たして現時点においてオウム真理教が無差別大量殺人行為を行う危険というものが十分に認められるかどうかということが問題になるわけです。
 この点について私は十分な情報を持ち合わせておりませんので断言することはできませんが、少なくとも新聞なり雑誌等の報道を見る限り、オウム真理教が組織として無差別大量殺人行為を行う危険が公安審査委員会の棄却決定のときよりも格段に高まったというふうには思えないわけです。この点については先ほどのお二人の参考人と同意見だということになります。
 そうだとしますと、本法案は立法の必要性というものを欠く人権制約立法ということになるわけですから、その一点をもって私は合憲性のテストというものをクリアしないというふうに思うわけであります。
 次に、団体規制法案の具体的な問題点を見ていきたいと思います。
 第一に、四条一項の無差別大量殺人行為の定義についてです。
 先ほど浅野さん、武井さん、お二人のお話の中にも出てきましたが、この定義の中に殺人の未遂行為を含めているという点がまず問題になると思います。破防法の四条一項二号の暴力主義的破壊活動というものの中には殺人の未遂は含まれておりません。殺人の既遂のみであります。オウム真理教をこの規制の対象、標的にするということからすれば、このような規制の拡大というか、この定義を広げるということは必要ないはずであります。私には、なぜこれをこの時点で拡大しなければならないのかということについてはよくわかりません。合理的な理由があるのかどうかについてはよくわかりません。むしろ、むやみに公安調査庁の権限を拡大することにならないかという懸念を持っているものであります。
 二番目は、Aの点は読んでおいていただければと思います。時間の関係で次に行きます。
 第二に、観察処分であります。
 この点についてですが、公安調査庁に強制調査権を与えるということになるわけですが、注意しておく必要があると思われるのは、強制調査権の付与は公安調査庁のこれまでの年来の要求というか念願というようなものであったのではないかというふうに推察される点であります。そしてまた、この強制調査権の付与というものが、破防法制定において反対に遭って、法案段階で削られた事項だったということであります。このような事情を踏まえて、この要件、この処分について慎重に検討する必要があるというふうに考えます。
 そこで、まず五条二項、三項、所定の観察処分というものですが、これは決して軽微なものとは言えないと思います。全構成員の氏名、住所の開示というものがこの処分で可能になるわけです。もしこの処分がなされますと、その全構成員一人一人の生活が常時監視下に置かれる危険性というものが極めて高いのではないかというふうに思うわけです。このような人権侵害性が認められるにもかかわらず、五条一項の要件は甚だあいまいであるというふうに思います。
 また、無差別大量殺人が行われる危険が存在する場合に限定がされていないと思います。その例としては、レジュメに書いてあるとおりであります。例えば、あいまいな点については一号、四号、五号の一般条項、そしてまた本文の「その活動状況を継続して明らかにする必要があると認められる場合」などであります。
 また、過度に広範だという点については、三号、そしてまた四号の殺人を明示的、暗示的に綱領を保持するという点などであります。
 次に、七条二項の強制的な立入検査の点に行きたいと思います。
 この点については、五条一項よりも厳格な要件が定められています。すなわち「団体の活動状況を明らかにするために特に必要があると認められるとき」となっているわけです。しかしながら、その判断は公安調査庁長官の裁量にゆだねられているということでありまして、その要件については全く歯どめになっていないと言わざるを得ません。すなわち執行者である公安調査庁側の独自の判断で立入検査がなし得るということでありますので、手続の適正さを欠いていると言わざるを得ません。しかも、十四条二項によって警察官までもが強制的に団体の施設に立ち入って検査することができるとされているのですから、その問題性は極めて大きいと言わざるを得ません。
 次に、再発防止処分に参ります。
 八条二項の所定の処分の内容を見ますと、これらはいずれも団体の存在を危うくするものだというふうに見てとれます。実質的には破防法七条の解散指定につながりかねないものであります。そこで、果たしてこれらの処分が無差別大量殺人行為防止のために不可欠な処分だろうかということがまず問題になるわけですが、私はそうとは言えないと思います。規制が広範に過ぎるからであります。特に、四号には当該団体への単なる勧誘までもが禁止されることになっております。これはどう見ても行き過ぎであると思います。
 次に、要件の方に参りたいと思います。
 当該団体が無差別大量殺人行為に及ぶ危険性が現在するという場合に限定されているかといいますと、この要件も限定されていません。殊に七号の構成員や資産の増加、それから本文の立入検査拒否というものについては特に限定がなされていないことは明らかであります。また、その要件も漠然としております。六号、七号さらには八号の一般条項など、それから全体を通じてですが、団体としてという言葉も明確ではありません。
 それから、立入検査拒否に関してですが、これについては三十九条で罰則が別個に設けられております。それにもかかわらず、これに加えて再発防止処分を科するという必要があるのかどうかということを考えますと、私はその必要性が認められるとは思えないわけであります。
 ところで、Dのところですが、この法案でオウムに反対している住民のオウムは出ていけという要求にまともにこたえようとするならばどういうことになるだろうかということを考えてみますと、オウム真理教の現在の活動が八条一項、所定の要件に該当するんだというふうにして、オウム真理教に対して現在使用している土地、建物の使用禁止処分を課す、それによってその地域から信者を追い出してしまうということになると思います。さらには、ほかのところでまた紛争が生じたら困るということになりますと、他の土地、建物の取得、借り受けを禁止するということにもなりかねません。そうしますと、これはまさに信者の居どころをすべてなくしていくということになります。恐ろしい人権侵害だというふうに私は思います。
 第四点、警察の立入検査権のところは読んでおいていただければと思います。十四条七項によって立入検査は犯罪捜査のための処分だというふうに考えてはならないという形になっていますが、むしろこれは犯罪捜査のために頻繁に利用されることになってくるんではないかということが問題であります。
 それから審理手続ですが、この点については参考人、今までお話しされた浅野さん、武井さん、お二人からも出ました。処分の重大性に見合うような適正手続は用意されていない。やはり手続の適正ということを図るのであれば裁判手続で行うべきだというふうに思います。
 以上、具体的な規定を簡単に見てまいりましたが、これらを見てみますとさまざまな点で問題があるというふうに言えると思います。この具体的な規定に照らしても本法案は違憲だと断ぜざるを得ません。
 最後になりますが、若干指摘しておきたいと思います。
 憲法十三条にあるとおり、日本国内にいる人それぞれが個人として尊重されなければならないというふうに思います。それはもちろんオウム信者でも同様なはずであります。オウム信者の居場所を奪っていくような法律を制定したり、行政が行政サービスの提供を行わないといったことは私は許されないことだというふうに思います。
 ただ、このように申しますと、では不安を感じている地域住民の人々の利益はどうするんだという批判が多分返ってくることだと思います。これに対しては、それはあくまで漠然とした不安感なのではないか、十分な実体を伴ったものではないのではないかというふうに思います。むしろそのことを行政は明らかにし、その不安感を和らげていくべきであろうと思います。また、できる限り行政がオウム信者と地域住民との融和を図るような努力をすべきなのではないかと思います。もちろん大変なことだと思いますが、そのような形でできる限り進めていくのが道ではないかと思います。
 さらに、被害者の支援ということについても、もうお二人から出ましたけれども、その点についても不十分だということはさまざま指摘されているわけで、その点についても充実させていく必要があろうと思います。
 ともあれ、一部の人間を排除していくのではなく、皆が共存できるような社会の建設を目指していくべきだというふうに思うわけです。そういうふうに申し上げて、私の意見陳述を終わりたいと思います。
 ありがとうございました。
○委員長(風間昶君) ありがとうございました。
 次に、鈴木参考人にお願いいたします。鈴木参考人。
○参考人(鈴木恒年君) 東京都足立区長の鈴木でございます。
 本日は、オウム真理教対策関係法案の審査に際しまして参考人として意見開陳の機会をいただき、深く感謝を申し上げるとともに、オウム真理教の進出に苦慮している全国の関係市町村の実態を諸先生方に十分お伝えできるか、大変緊張しているところでございます。
 私は、一自治体の首長として、住民の一番身近で行政を担当している立場から意見を申し上げたいと思います。
 当区の概要でございますが、東京の北東部、北の玄関に位置しまして、北部を埼玉県の八潮市、草加市、川口市、鳩ケ谷市に、南西部を東京都の北区、荒川区、そして東部を葛飾区、墨田区に接する人口六十四万の特別区でございます。
 当区でオウム真理教問題が顕在化いたしましたのは、区内の谷中四丁目の三階建てビルに平成十年六月ごろからオウム真理教の信者と見られる人々が入居を開始しまして、昼夜を問わず見なれない大勢の人々が集合する等の行動に対し、地域の住民がみずからの生活の平穏と安全を求めまして区議会に対しまして陳情書が提出されたのが発端でありました。
 その後、日を経るにしたがいまして、オウム真理教が教祖としている麻原彰晃が収監されています東京拘置所を聖地と位置づけられていると言われておりますが、これに隣接しているという当区の特殊な地理的要因から、多数のオウム信徒が区内に居住しているという情報がマスコミを通じまして連日報道されるとともに、区内の各所の住民から情報も寄せられ、行政といたしましては対応の必要性が生じてまいったわけであります。
 さらに、かつてオウム真理教が引き起こしました地下鉄サリン事件が当区を経由しております千代田線で発生したことから、当区の住民の中には、乗客の救出に当たりましてみずからは殉職されました営団地下鉄職員の御遺族を初めとしまして多数の被害者が今なおサリン被害の後遺症に悩まされておりまして、いやされない中で生活を強いられているということで、オウム真理教に対しましては特殊な環境にある自治体でもあります。
 こうした状況から、私は、区長に就任直後から強い決意を持ちましてオウム真理教対策に取り組んできたところであります。
 当区の今日までの経過につきまして御報告を申し上げます。
 まず、先ほども触れましたが、谷中四丁目のビル全体がオウム真理教の中枢機能拠点として活動が活発化した平成十年十月に、地元住民から区議会に対しまして施設からの退去の説得、指導と防犯上の対策につきましての陳情が出されました。区といたしましては、庁内に私を長とするオウム真理教対策本部を設置しまして、区議会と協議をしながらその対策に努めてまいったところでございます。この施設につきましては、地元住民の粘り強い運動とともに、建物の所有者が自己破産宣告を受けまして、破産管財人であります阿部弁護士の努力によりまして本年の九月三十日をもってオウム側が明け渡しを完了し、本施設につきましては当区にとりまして一応の解決を見たところであります。
 一方、時を同じくしまして、同じ足立区内の千住河原町というところに三階建てのビルがございまして、そこにオウム真理教の関連企業であるパソコン組み立て工場が進出してまいりまして、地元住民から区に対しましてこの対策方について要請がなされました。区では、対策を検討するに当たってはこの工場の実態を把握することが必要であるとの考えから、再三にわたりまして同施設に出向きまして内部の公開を要請いたしましたが、施設側からは責任ある対応が全くないままに今日に至っているところであります。
 この施設周囲の状況は、閑静な住宅地にあるにもかかわらず、真夜中にも頻繁に人の出入りや製品等の搬入、搬出がなされまして、二十四時間操業がなされております。近所の住民が注意すると恫喝に近いような口調で反発するなど、住民のストレス、不安は限界に近づいているという訴えもありまして、健全な地域社会を維持することに大きな問題となっているのが現状であります。
 このように、一般社会では到底受け入れることができないんではないかと思うような反社会的な考え方を信条として、地域住民と協調をしない閉鎖的体質を持つ教団並びにその関連企業に対しまして、地元住民は不安とともに恐怖に近い感情を持つことは十分過ぎるほど理解できるものと考えております。
 行政といたしましては現行の法体系の中でできる限りの対策を行ってまいりましたが、住民が求めているところの有効かつ具体的な成果を上げるには至っていないことに大変残念な思いをしております。
 しかしながら、六十四万区民の安全を守り、公共の福祉の向上を図るということは地方自治体に課せられた大きな責務であるとの考えから、オウム真理教に対する施策としまして、一つ、オウム真理教関係者の区内への転入届の不受理、二つ目には、オウム真理教及び関係者の公共施設の使用不承認を決定し、さらには区内の官公庁、町会連合会、宅地建物取引業協会等にオウム真理教の進出を阻止する要請を行い、いろいろと協力をいただいているところでもあります。
 この決定に際しましては、さまざまな議論があるとは承知しておりますが、私は、安全、平穏な生活を守る公共の福祉が最優先されるものとの立場から決定をし、実施した次第であります。
 私が今日までオウム真理教対策を進めてきた中で特に感じましたことは、この問題は一自治体の力では到底根本的な解決の策はないということでありました。先ほど申し上げました教団の中枢機能を持つ谷中四丁目施設が、破産管財人の御努力で明け渡しが完了しまして、当区としては解決を見たわけでありますが、一方では、今まで居住していた信徒がいずれかに拠点を構え、そこでまた同じ問題が繰り返されるということであり、釈然としない思いも持っているわけであります。
 オウム真理教につきましては今さら私が申し上げるまでもないわけでありまして、松本サリン事件、地下鉄サリン事件、営利略取事件等、数々の凶悪事件を引き起こした集団であり、一連の組織犯罪についていまだ何らの謝罪、反省もなく、現在も従来の教義に従って行動し、組織の再建を図っている集団であります。今般、オウム真理教を規制するための法案が成立を目指して御審議をいただいていますことに対しまして、私といたしましては心から期待をいたしている次第であります。
 全国のオウム真理教の活動拠点がある自治体と近隣に生活する市民は、有効な手だてがないまま、みずからの生活を守るために、少数の信徒のために大勢の住民が膨大なエネルギーを傾注しておりまして、今なお報われない努力を続けております。このたびの法整備の動きは、関係自治体と市民にとりましては真に待ち望んでいたところであります。日々オウム真理教拠点の近くに生活しなくてはならない住民の素直な感情としましては、教団の活動を観察し報告を徴する、あるいは立入検査という形で活動を規制していくというよりは、教団そのものを解散させるべきだとの考えが圧倒的に多いのが実情ではないかと推察いたしております。
 しかしながら一方、現在審議されております法案は、憲法を基本とした法体系が整備されている中で、整合性と立法の効果を十分に検討された結果であると理解し、一日も早い成立を望んでいるところでもあります。
 なお、同時に審議されております特定破産法人の破産財団に属すべき財産の回復に関する特別措置法案につきましては、地下鉄サリン事件を初めとする多数の被害者が今日も後遺症と闘い、十分な補償もなく苦しんでいるのが現状であり、この法律の成立によりまして、これらの被害者に対しより多くの補償が可能となり、さらには教団の活動におきましても経済的に大きな抑制力となる二重の効果が期待できるものと賛意を表する次第であります。
 加えて、希望を述べさせていただければ、法成立後、それぞれの機関で法の目的に沿って厳格な執行を切にお願いするとともに、立入調査等で得たオウム真理教に関する情報を地元自治体に速やかに提供をお願いいたしたいと考えております。地域住民に対し、行政が責任のある情報を適時的確に伝えることによりまして、地域社会のいたずらな不安と混乱を除去し、平穏な生活を保障する大きな力となるものと考えております。
 最後に、この規制により、オウム真理教信徒並びに関係者がみずからの判断に基づいて健全な社会の一員として復帰しようとする場合、国において適切な対応策をとられ、二度と教団に戻ることのないよう、体制の整備についてもお願いをいたしたいと考えております。
 以上、十分意を尽くせないところとなりましたけれども、私の意見とさせていただきます。
 ありがとうございました。
○委員長(風間昶君) ありがとうございました。
 次に、大野参考人にお願いいたします。大野参考人。
○参考人(大野金一君) 弁護士の大野金一でございます。
 私は、破産者オウム真理教の破産管財人常置代理人としまして、その破産管財業務に従事しております。したがいまして、本日は、三つあります法案のうち特定破産法人の特別措置法の関係でここに出席させていただいておりますので、その法案に限りまして意見を陳述させていただきます。
 平成八年三月二十八日にオウム真理教に対し破産宣告がありました。即日、阿部三郎弁護士を破産管財人に、それに東京から四名、大阪、山梨各一名の常置代理人が選任されました。自来、サリン被害者等多数の被害者の債権届け出、全国にまたがる道場からの信者の退去及びその建物の解体、それに跡地、それから機械類の売却、否認権訴訟等の裁判など、各自分担して鋭意その業務を遂行してまいりました。そして、数年はかかるであろうとの大方の予想よりも早く、昨年の十月、破産宣告からちょうど二年半でございましたが、約九億六千万円の中間配当を実施いたしました。そのうちサリン等の被害者に対する配当は八億六千万円余りで、配当率は二二・五九%でございました。
 このオウム真理教の破産業務の通常の破産業務と異なる点は二つございます。
 第一に無差別の大量殺人行為を行った団体の破産であるということでございます。通常の会社の破産手続では、皆さん御承知のとおり、破産宣告と同時に会社の財産、帳簿類は一切管財人の支配下に置かれます。ところが、オウム真理教の場合は、隠匿しようのない不動産、これも直前に信者などの名義にかえられておりまして、破産宣告後、私ども否認権の行使によって破産財団に取り戻しましたが、これらの不動産以外、現金、預金通帳それから会社の帳簿類すべて、逃走中の教団の幹部が持ち逃げしたものと思われます。
 その根拠を幾つか具体的に申し上げますと、平成七年三月、強制捜査時に富士宮市の富士山総本部の金庫に約七億円の現金が存在していたということが当時の新聞で報道されております。この件につきまして、管財人側が教団を追及しましたところが、教団広報部の担当者はこの現金が存在したことは否定しませんでした。それで、取引業者に対する支払金に充てたとか、信者の生活費に充当したとかいうことで、約三億五千万円の金額でございますが、そのお金の使途に関する説明は一応はございました。
 また、平成七年六月に、東京地検と東京都から解散命令申請が出されたわけですが、それ以来、全国の教団所有の不動産の中で売れるものはどんどん売れ、こういう指示が幹部の方からありまして、かなり多くの不動産の売却処分が行われたようでございます。
 さらに、平成八年六月に脱会したと称する元信者が管財人のところに参りまして、教団から預かっておる五千万円を返還したいと言ってきたわけでございますが、その信者の話によりますと、自分に五千万円渡した教団幹部は当時自分の自由にできる金として二億円持っていた、こういうことも言っております。
 もう一つ、このオウム真理教の破産業務の特異な点の第二は、破産債権者のほとんどがこのオウムの無差別な殺傷行為による被害者であるということでございます。
 先ほどサリン等の被害者には二二・五九%の配当率と申し上げましたが、通常の会社の破産の場合でしたら、優先権のある債権者に配当しますと一般債権者にはもう配当ゼロということも決して珍しくはございません。しかし、通常の会社の債権者はその会社との取引によって利益も得ているわけですから、その配当がゼロということになりましても普通はあきらめがつきますが、この教団の殺傷行為による被害者の皆さんは教団とは全く関係のなかった方でございます。二二・五九%という配当率が決して満足できるものでないということは御理解いただけると思います。
 サリン等の被害者に対する配当をふやすために、私どもは、第一に山梨県の上九一色村等のサティアン群、その多くは犯罪の舞台になった施設でございますが、これらの解体に関しまして平成八年十二月の閣議決定により、阪神・淡路大震災に対してとった国の財政措置に準じまして、四億九千四百万円の解体費及びその処理費について補正予算を認めていただきました。これを破産財団の負担で解体したとしますと、被害者に対する配当財源は半分以下になる計算でございます。
 さらに、平成十年四月、議員立法によりましてオウム真理教に係る破産手続における国の債権に関する特例法を制定していただきまして、国の債権を実質上放棄していただきました。これに準じまして、全国の債権届け出をしたほとんどの四十九の自治体が、このためにわざわざ条例等を制定していただきまして、租税債権等を実質上放棄していただきました。また、これらに準じまして、民間であります帝都高速度交通営団それから各国民健康保険組合等もこれらの債権を放棄していただいております。
 その結果、破産債権者に対する本来の配当率は一六・二一%でございましたが、このような国会及び政府を初め全国の自治体等の御配慮により、生命、身体上の被害を受けられた債権者には二二・五九%の配当率になりまして、六・三九ポイントも配当率を高めていただいたわけでございます。しかし、これが破産管財人として現行法上とり得た最大限の限界でございます。
 以上、オウム真理教の破産業務の特異性について申し上げましたけれども、先ほど冒頭に申し上げましたように、破産管財業務は短期間のうちに順調にまいりました。しかし、教団オウム真理教はいまだにまだ謝罪、被害弁償もしていないばかりか、逆に破産宣告後も同じオウム真理教という名称を使って活動しております。その教団の説法会等の収入それから実質オウム真理教が経営しておりますパソコンショップ、その収益を管財人はどうして押さえないのか、こういう一般市民の率直な疑問があると思います。
 しかし、現行の破産法は、破産宣告と同時に法人は完全に管財人の支配下に置かれることを前提としていますので、管財人に無断で社員などが活動する、今のオウム真理教ですけれども、そういうことは予想していないわけです。したがいまして、破産宣告時の財産、宣告されたときの財産、これを換価して配当するのが私ども管財人の必要にして十分な仕事であるわけです。また、破産法は純粋な民事手続ですから、逃走犯を捕まえたり、怪しい場所を捜索して現金や帳簿類を押さえたりすることはできないわけです。
 そこで、立法的に解決する方法としましては、現在のオウム真理教、任意団体のオウム真理教ですが、これを破産した破産者オウム真理教と同一とみなすと。今のオウム真理教が新たに取得した財産、新得財産と申しますが、その新得財産も含めて破産財団に取り込んでしまう、これが一般の市民の方も一番わかりやすい方法であるわけですが、これを同一体とみなすにはまだ憲法上それから破産法の原則上無理があるだろうと。この法案はそういうことを踏まえて、第三条で現在オウム真理教などの特別関係者が保有している財産、これはもともと破産したオウム真理教の破産財団から流出したものと推定をする、それをもとの破産財団に不当利得として返還させようというものでございます。
 法律上の推定でございますから、現在の信者などの特別関係者と規定されている者は、その財産は例えば自分の親から相続でもらいました、そのお金で買った財産だということを反証を挙げて争えばそれはそれで認められるわけですから、財産権を不当に侵害するというおそれは全くないわけでございます。
 ここでまた肝心なことは、この法案の第六条で規定されております管財人が団体規制法の規定によって得た公安調査庁の資料の提出を当局に請求できるということでございます。先ほど申し上げましたとおり、純粋の民事手続上の破産管財人には強制捜査権はありません。特に、オウム教団のように、幹部が逃走して財産や帳簿類を隠匿し、出家信者は親子関係も断絶せよという独自の教義によって閉鎖主義、秘密主義を徹底している団体に対しましては、破産管財人といえども全く無力でございます。
 第三条の推定が争われた場合、管財人において破産財団からの流出、転化の経過についてどうしても解明できないことが出てまいります。そういう場合に、管財人は公安当局から得られます証拠資料によって立証することができ、業務上は大きな武器になるわけでございます。
 この法案は、政府提案に係るいわゆる団体規制法の観察処分がなされたことをこの推定規定を適用する前提としております。それに管財人が公安調査庁長官に提供を求める資料、公安調査庁が団体規制法の規定に基づいて資料を得ますが、その資料をいただきますことから、この団体規制法の成立が前提となっております。そのために、管財人としましてはまず団体規制法の成立を心から願っていることはもとより申すまでもございません。
 また、特別関係者に対する否認権の行使に関する第四条の推定規定でございますが、無差別殺傷行為をした後、これはオウムの場合でございますが、教団幹部から多額の資金が信者たちに配られておる、こういう事実もございます。それが法律上の原因に基づく正当なものであるという教団側の主張がされてまいりますと、管財人も立場が、立証が難しいことになりますので、この否認権の行使を必要とするわけでございますが、この第四条がその否認権の行使の規定でございます。
 しかし、せっかく認めていただいた否認権も、現行の破産法上では既に消滅時効にかかっております。二年間の消滅時効にかかっております。この否認権の行使を実効あらしめるためには第五条を設けていただいて、その時効期間にかかわらないと、この観察処分が効力を発したときから二年間と、こういうことで救済措置がなされているわけでございます。
 以上の次第で、私は、本法案につきましては、この特定破産法人の特別措置法案につきましては、管財人の立場としまして全面的に賛成いたします。もちろん、その前提となります団体規制法につきましても一刻も早い成立をお願いしたい、こう思っております。
 最近、この法案の動きを察知しましてか、教団が所有物件を地元自治体に売却しようという動きが出ているようでございますので、一刻も早い成立をお願いしたい、これが私の本日の意見でございます。
 どうもありがとうございました。
○委員長(風間昶君) ありがとうございました。
 以上で参考人の意見陳述は終わりました。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○竹村泰子君 民主党・新緑風会の竹村泰子でございます。
 きょうは、五人の参考人の諸先生方、本当に御多忙の中、私どものために要請に応じておいでいただきまして、本当にありがとうございます。厚くお礼申し上げます。
 私は、先日、民主党・新緑風会を代表いたしまして、この法案に対する代表質問を行いました。そのときにも申し上げたのですが、死者十一人と五千五百人もの重軽傷者を出した地下鉄サリン事件、そしてその前年の六月には松本市で七人のとうとい命がやはりこのオウム真理教によるサリン散布の犠牲となられた。そういったことがあったわけでありますけれども、特に私たちがどうしても思い起こさなければならないことは、坂本弁護士一家の殺害事件であります。この殺害事件自体は防げなかったとしても、この坂本事件を早期にオウム真理教に照準を当てて捜索しておけばこれらの悲惨な事件は未然に防止することも可能であったのではないかというふうに、当局の捜査関係機関の対応が非常に緩慢であり、あいまいであったということに政治、政府の責任をまず問いただしたわけでございます。
 きょう、五人の参考人の皆様の御意見の中にもありましたとおり、オウム真理教は平成七年の十二月に、宗教法人法に基づく解散命令が確定して清算手続に、大野管財人がおいでになりますが、入ったわけでございます。そして、公安調査庁は、破壊活動防止法による解散処分請求を行いました。しかしながら、この解散指定適用要件である将来の危険性について、公安調査庁提出の証拠をもってしては、本団体が今後ある程度近接した時期に継続または反復して暴力主義的破壊活動に及ぶ明らかなおそれがあると認めるに足りるだけの十分な理由があるとは認められないということで、オウム真理教に対する解散処分請求を棄却したのでございます。公安調査庁提出の証拠のずさんさ、あいまいさ、そういったことがつかれておりますことは記憶に新しいことであると思います。
 一時、そして解散手続を命令されて、信徒の数も減少し非常に勢力も衰えていたわけでありますけれども、最近また全国各地に新たな拠点を求めて活動が活発になってきております。足立区長さんのように、自治体の首長でいらっしゃる立場の方たちが本当に地域住民の安全と秩序を求めてさまざま心を砕いておられることをよく存じ上げているわけであります。
 そこで、浅野参考人にお伺いをいたします。浅野参考人は、激しくマスメディアのあり方、この報道のあり方について、元報道記者でいらっしゃったこともありますけれども、かなりそういったことを追及して、一連の大変たくさんの資料をちょうだいしております。そこのところが非常に被害を受けそうな住民あるいは受けている住民、そしてそれが浅野参考人のおっしゃるように、つまりメディアの過剰報道だということにつきましては、当該の自治体の方たちあるいは住民の方たちにとりましては非常な反発もあり、一般社会の中でもそれは違うのではないかとか、あるいはもう二十四時間体制で監視小屋をつくって監視をしているのに、そういうことを言うのはけしからぬとか、いろいろな攻撃もおありになると思うのです。
 過剰報道であるかどうか、それはきちんと証拠を挙げて調べてみないとわからないことでありますけれども、そこのところの、その住民の皆さんとのあつれきと申しますか、そういうことについて、もう少し詳しくおわかりのところをお教えいただければ幸いでございます。
○参考人(浅野健一君) レジュメの四ページ、五ページあたりにそのように書いてあるんですが、例えば大田原市議会の中で特別委員会をつくっていまして、そこが例えばオウムの住居と言っているところに視察に行くということが決まっていたのを取りやめたわけです。あるいは新聞記者の中にも取材しない、取材すると中が危険でないことがわかるということを朝日新聞の支局の方が言っておられました。
 この二つの例を見ますと、つまりその中で何がどういう形で住んでいるのかということをオウム側の人たちは見せると言っているのに、それを見る必要がないというふうに答えられている、ここにこの問題の本質があるのではないか。見ると危険でないことがわかるからと、それは市議会議員の方がこう公の場で言っておられるんです。ほかの自治体では施設の中を視察された方々もいらっしゃいますが、私は非常にそこが不思議なんです。
 最近、活動を活発化しているというのは、公安調査庁はそういう発表をしています。つまり、住んでいるところを拠点という言葉で言っている可能性もあります。ですから、本委員会でも出された資料で、カラーの資料を見ましたけれども、あれを見るとすごく活発だなと思うんですけれども、本当にそこを見に行った人がどれだけいるのかということが問題だと思います。
 ですから、今大切なのは、河野義行さんのように荒木浩広報副部長と対話をしたり、実際にオウムの人たちと会ってみる、その人たちが何を考えているかということをきちんと聞くことが大事ではないか。頭からあの人たちはおかしいんだと。宇宙へ行け、この地球から出ていきなさいというプラカードもありましたよ。そういうことでは、相手を人間として認めないのではこれは始まらないと思うんです。逆に、彼らはそういうふうに言われるとますます自分たちの世界に閉じこもってしまうという、武井先生が言われたとおりだと思うんです。
 そういう意味で、私は現地に行きましたけれども、住民の人たちに対してオウムは怖いですかと言ったら、それは怖いでしょうよ、あなたも怖いと思わないかといって同意を求めるんです。荒木さんなんかが豊島区の泊まるところへ行くと、ハンドマイクでどなっているわけです、荒木さんに対して。それをテレビで見ましたけれども。本当にオウムが怖かったら、本当にオウムが再びサリンをまくような危険性がある団体だったら、あんなことができるだろうかと思うんです。これはだから、私から見ると、力もない弱い立場、そういう人に対していじめているという側面が一面ではあるのではないか。
 ですから、マスコミ報道とかを見て、あるいは公安調査庁の情報を得て、あるいはそういう過去の犯罪と今いる信者を連動させて考えて、危険だとか不安だという感情はわかるんですけれども、そうであるならば、例えば組織暴力団の人たちが近所に住んでくることがあります。そういうときに、果たしてその人の家の前に行ってあんなことができるだろうか、あるいは組織暴力団の責任者の家のところに行って解散しろとかそういうことが果たして言えるだろうかと考えると、やはり結局は本当に怖いとは思っていないのではないかと思います。
 それから、大田原でいろんな看板とかを見ましたが、とても市民運動とは思えないような立派な看板、社民党の人によりますと、あれは一本一万円はするだろう、とても自分の党ではできないと言っていましたけれども、そういう立派な看板がいろんなカラーで次々と出てくるんです。これはどう見てもどこか組織的なところからお金が出ているんではないか、純粋に市民が怖いといって集まってきて自主的にやっているというだけでは済まないところがあると思っています。
 きょうお配りした資料の中にも、そういう実際に住民の人たちと対話した人の話もありますし、あるいは私のレジュメの中に、河野義行さんは被害者でありながら、オウムの人にも適正手続とか人権をきちんと認めてあげたい、裁判の行方をきちんと見守ってもらいたいと。
 法治国家なんですから、やはり裁判できちんと、先ほどからさまざまに参考人の方がオウムによる犯行、麻原被告の指示による犯行というふうに断定されておりますが、そういうふうに国家権力が断定して、今裁判が行われていて麻原被告が防御している、安田弁護士を初め多くの弁護士さんが公開の場できちんとした歴史に恥じない裁判を進めているわけですから、そこを尊重しないと。国会の場で、そういう一連の事件は決まっているんだというふうに言ってしまうと、司法というものの存在意義というのが私はなくなるのではないかと思いますので、あくまでも、今のところオウムのそういう教団の犯行の可能性が大いに高いけれども、しかし本当のところはどうかということは今一生懸命解明されているんだということを市民がみんな冷静に考える、これは河野さんがいつも言われていることです。
 そういうことを考えると、マスメディアが、きょう資料の中で私、間に合わなかったんですが、例えば読売新聞は、甲山事件の無罪判決、同じ日だったんですね、九月二十九日、オウムのいわゆる長野の監禁事件がトップなんです。こっちに甲山事件の無罪が出ている。結局これは起訴されていないわけです。狂言もしかりです。そういう意味で、オウムに対しては、とにかく断定してオウムがやったんだ、そういう形でそういう世論がつくられているということは非常に危険だと思うんです。オウムであっても、間違った捜査、結果的に捜査が間違えていれば、それはきちんと捜査を反省し、マスメディアもそれは違っていたんだというふうに私は訂正すべきだと思うんですが、それがなされていない。
 そういう意味で、マスメディアのスタンスというのは、やはりかなり公的な情報と。かつて日本のマスメディア、新聞社はすべて、ほとんどの新聞社が、読売新聞を含め破壊活動防止法に反対していたわけです、社説で。そして、全国の大学教授会、そして労働運動もこれに反対してきた。その原点にもう一度立ち戻って、破防法の危険性、それと今そういう形でオウムが怖い、怖いという世論をみずからつくり上げて、それをもとにして法律ができようとしていることについて、もう一度本当にオウムは怖いのかということ、そして本当にオウムの活動は今どうなっているのかということを、公的な当局からの情報だけではなくて、もう一方では調査報道、ジャーナリストとしてのきちんとした調査、そして国会議員の皆さんもそういう形で実態をみずからの手で明らかにしてもらった上で判断してもらいたいということです。
○竹村泰子君 武井先生がおっしゃいますように、やはりそうした住民の過剰な反応を巻き起こしているのも、一連の凶悪事件に対する反省、謝罪、被害者への賠償をしないまま松本智津夫被告への帰依を続け、危険な教義を維持しつつ活発な活動を行っている、経済的な活動も行っているわけでありまして、そのようなことが問題を引き起こしているというふうに思えるんです。
 私どもが一番気にいたしますのは、やはりたとえオウムの信者であっても日本の住民であり、一人の人間としての人権の問題であります。特に観察処分につきましては、住居の立入検査についても、あるいはさまざまな令状なしに住居に立ち入ることについても憲法違反ではないかという疑念が寄せられている。
 また、足立区長さんにもお伺いを申し上げたいと思いますけれども、残念ながら時間がほとんどなくなってしまいましたが、自治体の首長さんが住民登録拒否あるいは就学拒否、何人にも移動の自由、居住の自由は憲法に保障されてあるわけでございまして、こういった違憲の対応をいや応なく強いられるという不幸な現実があるわけで、逆に言えばオウムの信者たちは居住、移転、就学、子供たちも含めて憲法上の権利が阻害されているということでございます。
 もう時間がありませんので、ほかの先生方にはまことに申しわけないと思いますが、この点につきまして鈴木恒年区長さんはどのようにお考えでしょうか。
○参考人(鈴木恒年君) 私の方は、先ほど申し上げましたように、被害者の数が全国の被害者の中の一割以上もいらっしゃる、被害者の家族が。それから、オウム関係者が二百人以上もいるんではなかろうかというようなことがあります。それと、中枢部がありました。これは阿部管財人さんのおかげで退去しましたけれども、まだ先ほどお話ししましたようにたくさんの信者がいますし、パソコン工場もある。
 そういう中で、いろいろとお話を承っておりますと、一般の住民、区民というものがオウムに対してどういう感情を持っているかというのは実際にそばにいる人間でないとわからないんではないか、そんな気がしてまいりました。
 といいますのは、私の家のすぐ真ん前にもございます、住んでいるところが。実は、これは個人的なことなんですけれども、私は息子夫婦と住んでいるんですが、朝、出がけにうっかり、ああ、きょうはオウムの家は洗濯物が少ないなと言ってしまったんです。それまではあのうちがオウムだなんということは嫁さんには言っていなかったんですけれども、それでびっくりしまして、帰ってきましたらセコムを入れているんです。何だと言ったら、怖くてとてもそのままじゃいられない、だからセコムを設置しましたと、うちの息子の嫁が言っているんです。そばにオウム関係者がいるというだけでもって市民は相当怖がっている、不安を感じているどころじゃないんです。
 私は、そういったことを考えますと、公共の福祉、これをまさに侵しているんだと。そういうことから、それを前提にして、いろいろ議論もあるでしょうけれども、住民登録の拒否あるいは施設の貸し出し禁止、こういったことをやっているわけであります。
○魚住裕一郎君 公明党の魚住裕一郎でございます。
 五人の参考人の先生方、本日は本当にありがとうございます。時間が限られておりますので、何点か質問をさせていただきたいと思います。
 まず、浅野健一参考人にお願いをしたいんですが、先ほど先生のお話を伺っていますと、何か戦前の治安維持法事件をやっていた、その被告事件を扱っていた弁護士も捕まってしまったというような、そういうような日本の戦前の歴史があります。何か非常に似たような日本人の心理状況というのがあるのかなというふうに実は思っております。
 私は、浅野先生のメディア論、マスコミ論、いつも刮目しているところでございますが、結論とすれば、先生の立論、これは十一月十六日付の東京新聞の日弁連人権擁護委員会委員長のインタビュー記事でございますが、ここにはこういうコメントがあります。「オウムに関して特別な事態だからとこんな立法が安易に行われては、将来国民が情報操作された状態で国民の権利を制限するような法律が作られる前例になりかねません。」。こういうコメントが載っているんですが、先生の立場というか、こんなような感じというふうに理解してよろしいんでしょうか。
○参考人(浅野健一君) 破防法というのは戦前のそういうものを引き継いだ法律で、私は、この法案の危険性は、やっぱりある団体のために一つの法律をつくるということは、奥平康弘先生も言っておられますが、戦後初めてのことではないかというふうに思います。
 私は、これまでオウムに対しては微罪、別件逮捕、マンションでチラシを配ろうとするだけで逮捕されたり、同志社大学の学生も逮捕されていますが、赤信号無視、それぞれ犯罪ではあるでしょうけれども、ほかの団体の人にはそういうことは余り適用されていない。いわゆるピンクチラシなんかでは、警察のすぐ横でそれがべたべた張られていてもそれは放置されているということを考えると、そういう意味で、今の現行法で十分監視の対象下にあると思うんです。皆さんおっしゃっていますように市民の目も厳しい。
 そういう中で、果たしてこの団体だけに特別につくる法律というのが今オウムに対して必要なのかどうかということでありまして、もしそういうことを許すと、そういう法律はひとり歩きしていくわけです。河野義行さんに対する家宅捜索というのは、昔七〇年前後の公安事件で使われた被疑者不詳のままの家宅捜索なんです。河野さんは被疑者でもないのに捜索された。それは、過激派に対してはそういう捜索が許されるんだということが一般市民に二十年後に来たわけです。
 そういうことを考えると、例えば今大きな宗教団体にしても戦前弾圧された経験などを深刻に考えていただいて、私は、この法律が一度こういう形でできてしまうと、特に日本ではそれを廃止することが非常に困難である。これは、PKO法ができた後にPKFを解除するという、東ティモール問題を利用して解除するなんということが行われている。
 そういうことを考えると、そういう体質を持っている日本の政治を考えると、これは絶対に今はやめていただきたいということです。
○魚住裕一郎君 恐らく、今先生がおっしゃったような懸念があるからこそ、逆に先生の評価はほとんどフォローになっていないという意見でございましたけれども、衆議院で修正がなされたものと私は理解するところであります。
 それから次に、鈴木足立区長さんにちょっとお尋ねをしたいというふうに思います。
 ことし六月ですか、区長に就任されまして、本当に一生懸命約半年取り組んでこられたということがよくわかったところでありますけれども、先般のこれ十八日付の東京新聞だと、「足立区」というふうになって、鈴木区長さんのコメントも実は載っているんですね。本部施設が撤退したことを受けて、「「住民の不安は解消されず、信者の住民票の不受理方針を変える状況にはなっていない」とのコメントを出した。」というような表現になっております。また、この対策協議会の役員の人も、まだこの法律案では「関連施設が監視対象に入らない恐れがあるし、安心できない」と、足立の状況を踏まえてコメントがなされておりますが、先ほど三つの方針を伺いました。これは本法案が成立した段階ではどういうふうになりますか。
○参考人(鈴木恒年君) 私どもの方は、この法案が成立しましても、実際にその後の経過といいますか、法律によりまして成果が上がることに大きな期待を持っているわけですけれども、その成り行きを見ませんと何とも私どもにはわからないわけでありまして、そういうところから考えまして、その状況を見守るという形でしばらくの間は今の状況を続けていきたいなと。
 これは、その法律の効果があらわれて区民の不安がなくなってきた、そういう状況を見きわめましたらば、今やっていることは解除したい、こう考えております。
○魚住裕一郎君 この法案については、憲法上大変な疑念があるという立場もあれば、これほとんど実効性があるのかという、そういうようなお思いの方もいるわけであります。
 ただ一方で、例えば住民票の不受理自体はやはり憲法違反だと思うんです、これ自体は。それで、それをいつまでも放置するというのもまたこれいかがなものかなというふうな私は思いがありまして、そういう状態を一刻でも解消したいがためにいろんなことを国会としても考えてきて、そしてこういう法案が出てきている、またこれを審査しているというのが今の状況ではないかというふうに思っておりますが、二点目、三点目はまだともかくとして、一点目はそのまま続けるということなんでしょうか。
○参考人(鈴木恒年君) 実効あるといいますか、実際に厳格にこれを施行していただきたいというのが私どもの望みであります。ただ、その法案が成立しただけでは区民の不安というものは解消されないんではないかという危惧があるわけです。区民の皆さんの意見を聞きまして、ああよかった、この法律ができたおかげで我々も平和になったよ、安心して生活できるよというような形になりましたらば、これは直ちに今やっていることはやめたい、こう考えております、すべてのものについて。
○魚住裕一郎君 私も、地元の区でもございますので、一生懸命やっていただきたいなというふうに思うところであります。
 次に、大野先生にお願いしたいんですが、二二・五九%、破産事件としてはかなり配当率はいい方なんだろうなというふうに思うんですね。私も破産管財人をやったことがありますが、一〇%、それから一%でも上げるのがどれほど大変かというそんな思いで。だから、暴力金融等が入った場合に、ほとんど帳簿書類もどこかへ行ってしまうような会社もいっぱいあるわけですね。そういうことを考えると、オウムも同じような部分もあるなとは思うんですが、先生方の御努力でここまで配当率を上げられたということは心から敬意を表するものでございます。
 このもう一方の破産の特例法が成立した段階では、これはやってみなきゃわかりませんが、配当率といいますか、被害救済率がどの程度アップするというふうに、先ほど具体的な、何億円持っているようだみたいな話がありましたけれども、資産をそろばん勘定をはじいておられるでしょうか。
○参考人(大野金一君) 先ほど申し上げましたように、この破産者オウム真理教の場合は普通の会社とは全く違うわけです。普通の会社の経済取引行為であれば、得した損したで得もしているわけです。ですから、普通の場合は一%でも、ゼロでもしようがないだろうと、これは貸し倒れ償却でやりましょうということで処理しているのが普通だと思います。私どもも債権者の立場で考えた場合に、それであきらめがつくんです。
 ところが、このオウムの場合は、サリンの被害者、深刻な身体障害、生命まで奪われた深刻な被害者です。その方々に対して二二%、これはいいじゃないかということは私としては言えないです。やっぱり満額補償してあげないと、これは破産管財人の立場としては満足し切れないものがございます。
 それで、この新法ができて、ではそれだけの効果があるか、残りの債権を過不足なく配当できるかということは、今の段階では全くわからないです。今、各地に新しい道場がいろいろ消えたりできたりしていますが、この山の中の建物、土地を換価したところで大した金額にはならないだろうと。その前に、仮差しだ仮処分だ本案訴訟だということでいろいろ手数がかかります。最終的には、これは差し押さえして競売にかけるわけですから、売れなければ持ち出しになります。破産財団の持ち出しになります。ですから、どの財産が最終的に配当できる財産になるかということは、今の段階では全く予測できないということがございます。
 それから、パソコンショップにかなり世間の皆さんは期待されているんじゃないかと思いますけれども、これも公安調査庁が実際に教団の裏側を全部調べ上げないと、とにかくオウム真理教の場合はすべて閉鎖、秘密主義ですから、その裏側は全くわからないです。一般の市民の不安がこれだけ大きくなっているのはすべてそこから出発しているわけです。ですから、それを明らかにすることがまず第一だろう。それによって、その中から隠し財産が出てくれば、これは債権者、被害者の方々には非常にいいことだと思いますけれども。
 それとあわせて、やっぱり財団あるいは教団の中を公にするという一つの大きなこの規制法は、特に規制法の方の観察処分にはその期待がかかっているんじゃないかと思います。
○魚住裕一郎君 もう時間がありませんから、一点だけ。
 私の関係者というか、選挙をやっていたときに地下鉄サリン事件がありまして、自分を支えてくれた方がサリンを吸ってしまったということがあるわけでございますけれども、これは今言ったような、二割ちょっとを超えたぐらいの今のところの被害救済という状況であります。
 我が党も推進した犯罪被害者救済制度というのがございますが、アメリカでは年間三百億ぐらいの予算を組んでやっているんです。ところが、日本では約六億ぐらいしか裁定では出ていないということでございまして、大野先生は、債権者はほとんど被害者ですから、接しておられているその立場で、被害救済という面で見てこの犯罪被害者給付金制度というものをどういうふうにお考えになっておられますでしょうか。
○参考人(大野金一君) 基本的には、こういう偶発的に被害に遭った方々の救済は、やっぱり被害者救済の基本法があって、それでカバーすべきというのが本来の姿ではあると思います。
 この特例法、特別措置法でどの程度被害者にそういう目的を達成することができるか、非常に私どもも今のところ自信がないわけですけれども、これは公安調査庁の資料次第です。それはできませんけれども、基本的にはそういう偶発的に被害に遭った方の被害はやっぱりそういう基本法でカバーするのが本来の姿であると私は思います。
○橋本敦君 きょうは、参考人の皆さん、御多忙中ありがとうございました。
 最初に、武井先生に御意見を伺いたいと思うんですが、坂本さんの事件以来、今日までオウムの不法な数々の凶悪な事案と対決しながら御奮闘いただきました貴重な経験を踏まえての御意見ありがとうございました。
 まず最初に一点お伺いしたいんですが、先生から、地下鉄サリン事件に代表される凶悪な事件、こういうことを許したことについては、これはまさに警察当局も含めた国家の責任は重大であるという御指摘がありました。私もそう思っております。具体的にどういう点について国は責任をはっきりさせるべきなのか、どういう点が警察当局として責任が重大なのか、先生の御経験から御指摘をいただけますか。
○参考人(武井共夫君) まず最初に、坂本一家事件が起きたときのことからお話ししたいと思います。
 一九八九年十一月七日に私どもは事件の発生を知ったわけですけれども、そのときに直ちにこれはオウム真理教が関与している可能性が高いというふうに私どもはさまざまなこれまでの状況から判断いたしました。しかしながら、直ちにその日、警察当局に対してその旨を伝え、むしろ強調するぐらいに伝え、その後の連日の捜査の要請、協力に対してもそれを強調してきたんですけれども、警察当局の対応はどういうことかといいますと、オウムとの対応はもう弁護士さんがやってくださいと。自分たちは、現場の聞き込みとかあるいは坂本弁護士一家のつき合っていた先との接触の内容など、そういう周辺を調べます、オウムは弁護士さんお願いしますということで、実は私はその事件の直後に、十一月十二日に麻原彰晃、松本智津夫被告に対して、坂本君を返してくれというふうに富士宮の総本部に言いに行ったんですが、このときも警察は、私どもが本部に行ってやり合っている、その後ろを警察の車がただくるくると巡回して、一応何かあったら駆けつけますよということでありますけれども、ただ見てくれているだけというのが実態でありました。
 その後、いろいろな機会に私ども捜査の要請をしたわけですけれども、その際もオウムについては、最初はそれこそほとんど触れない、だんだん捜査の対象の一つではあるというふうになってはきているんですけれども、具体的なオウムに対する捜査という意味では非常に迅速さに欠ける、非常に弱いものがあった。実際、今回逮捕、起訴されております、あるいは既に判決が一審で出ております岡崎被告や早川被告、これらに対して、早川被告に対してはろくな折衝をしていない、また岡崎被告に対しても十分な、もう本当に犯人に肉薄していながら十分な捜査をしないで、結局九五年まで見過ごしてしまった。
 これはひとり神奈川県警だけの問題ではなくて、私どもは各地のオウムの違法な実態を各地の警察に言いました、訴えました。しかしながら、各地の警察では、それぞれがまともに取り合わない、盗聴事件などを発見してもそれを立件しないというようなことがありました。これは坂本事件が広域指定されていなかったという問題もあると思いますけれども、警視庁も含めた各警察、県警、警視庁等が全くばらばらの対応をしている。
 甚だしいのは、私自身の経験でも、九五年の強制捜査の後に、私のところに神奈川県警と警視庁が相前後して資料をそれぞれ別個に取りに来ると。もうどっちかに渡しましたよと言うと、いや、そっちからもらうのはちょっとまずいので直接下さいということが再三ありました。これは私だけじゃなくて多くの私どもの仲間がそういう経験をしております。
 そして、地下鉄サリン事件ですけれども、特に私自身が印象に強いのは、三月の上旬に私ども、坂本堤弁護士と家族を救う全国弁護士の会というのを横浜で開いたんですが、これは全国から弁護士が集まりました。その場で私はオウム真理教の凶悪な実態について報告し、特にサリンなどの化学兵器を持っていることは確実であると。そして場合によっては、これは結果的には杞憂で済んだわけですけれども、場合によっては核兵器すら持っている、あるいは持とうとしている形跡があるということを報告いたしました。
 これは弁護士だけじゃなくて、多くの新聞社、テレビ局の前でも報告したわけですけれども、もちろんこれは、私どもが証拠をつかんで、分析した結果サリンだとわかって言っているわけじゃなくて、いろいろ元信者の話とか周辺の話を積み重ねてそういう事実を知ったわけです。
 私ども、しかしながらこれらの事実はすべて警察当局にお話ししていたわけです。恐らく警察当局がその気になれば、地下鉄サリン事件は防げたというふうに私は確信しております。結局具体的な対応をせず、したのかもしれませんけれども、極めて不十分な形でした。
 私は、きょう配付された資料の中にあるように、陰謀だということを言っている人がいるようですが、陰謀だとは思いませんけれども、重大な怠慢だというふうに思っております。したがって、私どもサリンの被害者と会うたびに、本当にオウムも憎いけれども、国はもっと許せないと言う人が少なくありません。この被害者の訴えにどうか皆さん耳を傾けていただきたいというふうに思います。
○橋本敦君 一方、公安調査庁の方は、この委員会でも長官が答弁をしているんですが、オウムは危険な団体であるという認識を持っている、オウムに対して危険な団体として対応することになったのは地下鉄サリン事件が起こされた後であったということを率直に言っているわけですね。
 そういう意味では、公安調査庁自体もこのオウムの犯罪の防止、鎮圧ということについては結局は役に立たなかった、そういう意味での責任もないわけじゃないんではないかという思いがいたしますが、先生の御意見はいかがですか。
○参考人(武井共夫君) もちろん公安調査庁に関しては、地下鉄サリン事件以前全く何もした形跡はありません。地下鉄サリン事件後、強制捜査後に、私どものところに公安調査庁から再三にわたり資料を出してほしいという要請がございました。私どもはそれに対して、既に警察に渡してあるから警察からもらってくれというふうに答えました。警察も非常に後手後手でありましたけれども、それよりもはるかに後ろを走っていたのが公安調査庁であるということは、私の経験からも絶対に断言できるというふうに確信しております。
○橋本敦君 次に、浅野先生にお伺いしたいと思うんですが、浅野先生も武井先生もまた三島先生も、破防法を下敷きにしておる本件の団体規制については、破防法以上に違憲性が広がり危険であるという趣旨の御指摘があったというように理解いたします。
 政府の方は、法務大臣が答弁をいたしまして、実質的にオウム教団に特定している、だから団体規制ということでの乱用のおそれはない、こういう答弁をなさっているんですね。ところが、法文上は法律的な要件として決してオウムに特定されているわけじゃないということは私は明らかだと思うんです。そういう点を考えましても、この法案の違憲性というのはぬぐえないと思うんですが、浅野先生の御指摘でも、対象をオウムに絞るどころか幾らでも拡大解釈が可能ではないかという御指摘がございますけれども、その点もう少しわかりやすく御指摘いただきたい。
 それから、三島先生にもお願いしたいと思いますのは、この問題については一つは立法の必要性を欠いているということを御指摘になりました。それから、その次の問題としては、いろんな観察処分、それから更生処分に至るそういう段階の手続において、あいまい性、それから憲法でいえば三十一条違反と見られかねないそういった要件の問題があるということも御指摘がございました。この点について、もう少し先生の御意見を絞ってわかりやすくお教えいただければと思います。
 両先生にお伺いして、質問を終わります。
○参考人(浅野健一君) 先ほどの警察の責任についてちょっと私言いたいんですが、松本サリン事件が九四年六月に起きて、そのとき、九四年の九月ぐらいからやっぱりオウムの犯行ではないかということが長野県警の中でもあって、これは河野さんなどが明らかにしていますが、捜査本部の中にあったそういう意見をつぶしていって、そして九五年の一月一日の読売新聞で、オウムの名前は出ませんでしたが、オウムではないか、教団ではないかというような記事も出ておりまして、もう九五年に入ってからそういうオウムが対象になっていたにもかかわらず、警察も公安調査庁も動かなかったということも踏まえていただきたいと、最初のサリン事件についてもですね。
 それから、今私は、今度の法律のひとり歩きというのがやはり一番危険なのは、国家権力が、思想、信条というんですか、頭の中で何を信じたり何を考えているかということに対して立ち入ってはいけないという、罪刑法定主義でいわゆる個人の行為に対して責任を負っていくということがいわゆる法の支配、適正手続の最も重要な点だと思うんですね。そういう意味でこの法律はそこに踏み込むわけです。
 しかも、かつてそういう団体にいて、もう違う団体に行っている人、あるいはもうやめている人も含めてそういうふうな対象になってしまう。その人とまた接触する人も対象になってしまうという意味で、ジャーナリズム活動にも、あるいは研究者の活動にも、表現するものすべてにこの法律が適用されていく。土足で公安調査官や警察官が踏み込んでいく。今までもそういう例はあるわけです。でっち上げの爆弾事件と称して百カ所も二百カ所も家宅捜査がなされるということが行われている警察がますますそういう権限を得たら、しかも日本の警察はとても民主的とは言えないわけです。本当に憲法が及んでいるのかどうかということが疑わしいぐらい、警察の組織の中の自由というものもないような、ほかの組織に比べると非常におくれていると思いますので、そういう意味で非常に危険性が高いというふうに思います。
○参考人(三島聡君) 法案の必要性ということについては、要するにこのような団体規制の法律をつくる、法律をつくれば必ず乱用なりの危険が生ずるわけですね。ですから、法律をつくるときには、皆さんは専門家ですが、つくるときにはまずその必要性が十分確認される必要がある。これは当然のことだろうと思います。ですので、その必要性が認められないということになれば、それはやはりそのような法律はつくるべきでないんだということになるはずだということなんですね。
 それから、個々の問題点はかなりたくさんあるのでどの程度御説明すればいいのかわかりませんが、乱用の危険ということからというか、オウム以外のものに波及するということからすると、無差別大量殺人行為に未遂が入っているということも一つかもしれないというふうに思うんですね。オウムに適用するのであれば、先ほど申しましたように、既遂で十分だろうと思うんです。
 従来、どうも公安調査庁の方は、平成八年ぐらいまでの段階で、これは未遂も含む、破防法含むんだというふうに考えていたようなんですね。政令改正か何かのときに内閣の法制局か何かに尋ねたら、いや、それは入らないんだということになったという経緯がどうもあるようであります。そこで、多分、そこの分までぜひとも入れたいということでここは入っているんじゃないかというふうに私は勘ぐっているんですが、ですから、そうすると単にオウムだけではなくて、ほかのにもやはり適用できるようにということを考えてこのような規定の仕方になっているだろうと思います。
 それから、観察処分、再発防止処分について要件が漠然としているとかいう点については、見ていただければ多分いいと思うんですが、基本的にやはりこの法律の目的は何なのかというところをまず確認をして、それとその目的に手段が合っているかという形で私は議論をしていくべきだというふうに思うんですね。
 ですから、住民の方々がやはり不安感を持つ。やはり我々とちょっと異質だというか、近づいたことがない、それで割に閉鎖的な中に住んでいる、そういう人がいれば不安感を持つというのは私だってもちろんわかりますし、ですけれども、そのための規制なのかということなんですね。
 そうしたときに、いや、これは無差別大量殺人行為の再発を防止するというのが本来の目的なんだろう。それは一条でそういうことになっているだろうと思うんです。そこから考えていきますと、それに見合うだけのものになっているか、こう見ていくわけですね。
 そうすると、観察処分でも要件を見るとどうもそうではない。さらに、再発防止処分を見てもそんなことはない。先ほど言いましたように、再発防止処分の八条二項の四号などは単なる勧誘まで禁止されるわけですね。勧誘ですぐさま無差別大量殺人行為が起こるかといったら、そんなことはないわけです。これは、もっと言いますと、破防法十六条でも単なる勧誘は入っていないと思うんです。そういうふうに私は多分読めるはずだと思うんですね。そうだとすると、かなり広げてこれは団体規制の網をかけたんだというふうに思います。それはやはりその目的から見ても許されないということになるということです。
 適正手続の点については、このような重大な処分を科すに当たっては、それに見合うだけの、もともと実体要件も問題なんですが、実体要件が問題の上にさらに手続的な要件も問題だと。少なくともきちっとした中立的な審判官、裁判官ということになるんだと思うんですが、それで訴訟手続の中できちっと主張を出し、また証拠についてもきちっと、例えば証人尋問もできるとかいう形にすべきなんではないかというふうに考えるわけであります。
 以上です。
○橋本敦君 ありがとうございました。
○福島瑞穂君 社民党の福島瑞穂です。
 きょうは、お忙しいところをどうも本当にありがとうございます。
 立法事実が果たしてあるのかという問題が出ましたけれども、規制手段が果たして妥当なのかどうかという意見もかなり出していただいたと思います。
 公共の福祉によって基本的人権が制限できるという発言もあるんですが、先ほど三島参考人が、公共の福祉という漠然としたことで果たして基本的人権が制限できるのかとおっしゃっていただきました。精神的自由権についての憲法適合性、規制手段としてこの法律が妥当かどうかという点についてもう少し話をしてください。
○参考人(三島聡君) もう一度言っていただけますか。済みません。
○福島瑞穂君 ごめんなさい。
 規制手段、要するに公共の福祉によって基本的人権は制限できないと思うんですが、この法律の規制手段についてどうお考えか。
 特に私は、「国民の生活の平穏」という文言が入ったことによって、逆に漠然とした不安感ということが入っているわけですから、よりこの法律の違憲性が明確になったのではないかというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。
○参考人(三島聡君) 公共の福祉による制約、かなり漠然とした制約が少なくとも憲法の二十二条なり二十九条ですね、以外の人権については、そのような漠然とした理由で規制はできないというのは、これはもう憲法学ではもちろん定説になっているだろうというふうに思います。
 結局は、基本的に今、精神的な自由などについては内在的な制約しか認められない。要するに基本的には人権と人権とのぶつかり合いの問題になるということであるわけです。したがって、国民生活の平穏を含む公共の安全という形で、これを見ますとかなり漠としているということで、このような要するに生活の平穏を含む公共の安全というような形でかなり規制根拠を広くとらえることは許されないだろうと思います。
 ただ、ここは「もって」ということになっていますから、その前段階の行為というのが基本に本来なるはずだというふうに思います。そうすると、「その活動状況を明らかにし又は当該行為」、当該行為というのは無差別大量殺人行為のことですから、「の再発を防止するために必要な規制」ということになり、ここは「又は」という形でつながれていますが、結局のところ、多分その前段階は観察処分、後者については再発防止処分を前提に置いているのかもしれません。
 再発防止処分は結局のところ、これは当該団体の無差別大量殺人行為に及ぶような危険性ということをどうも八条で問題にしているようでありますので、最終的に全体としてとらえると、これは無差別大量殺人行為の再発を防止するために規制したものに限られるというふうに読むべきだと思うんです。
○福島瑞穂君 次に、浅野参考人にお聞きいたします。
 参考人の中からも意見が出ましたが、鬼は外、福は内とやって、鬼は出ていけという気持ちはわかるんですが、じゃ鬼は日本の国内でどこへ行ってしまうのだろうかというふうに思うんです。武井参考人、三島参考人、浅野参考人の中から、実効性、この法律が果たしてオウム対策として実効性があるのかという疑問が提示されました。それについてちょっと話をしてください。
○参考人(浅野健一君) 私は、例えば住民票を不受理にした場合、やっぱり行政としてはそれじゃどこへ行ったらいいのかと言わないと、住民票を届け出しないといけないわけです、国民は、市民は。ですから、それを受け入れないということは、熊本県の判決でも確定していますし、明確に違法なわけで、そういうことが堂々と行われていて、きょうニューヨーク・タイムズの記事を資料でつけましたが、そういうことを取り締まる役所はないのかということがニューヨーク・タイムズの記者の私に対する質問でした。
 それから、オウムの人たちはやっぱりそれを信じているわけですね。私も会って、もう出るべきじゃないか、やめるべきだというふうにいろいろ言うんですが、これは森達也監督の「A」という映画を見ていただければ、森監督もそういう視点で荒木さんや教団の幹部の人たち、信者の人たちと対話をしている映画ですけれども、決してオウムのことを持ち上げたりしているんじゃなくて、オウムの問題点というものを問いかけて、それに対して彼らはどう答えているかということを映画にしているわけですね。
 ですから、私も彼らと接触して思うのは、彼らが閉じている心、そして今これだけ批判を受けていてもまたそこに入る若者がいる。そういうことは結局、私たちの社会の中にそういうところに逃げ出そうとする人間がいる、市民がいるということですよね。その根源的なものをとらえないと、出ていけ、それから、君たちに人権はないんだ、生きる権利はないんだというふうに通告した上で彼らと対話することは難しい。
 破防法の代理人の弁護士さんが言っていたのは、この法律が適用されたら人と人とのコミュニケーションを破壊するんだということを弁護士さんが言われていました。私も全く同じ意見で、こういう法律ができると、つまり彼らとの対話のパイプというものが閉ざされてしまう、そういうことによっては本当の意味での問題の解決にはならないというふうに思います。
○福島瑞穂君 この団体規制法を見ていますと破防法がまともに見えてくるという、恐ろしく感じるんですが、例えば、現在及び将来の危険については極めて漠然とした規定、例えば当該団体の役職員または構成員が団体の活動として構成員の総数を急激に増加させると観察処分の対象になる。つまり、宗教でしたら一生懸命だれかを、宗教以外でもそうですが、勧誘しようとするとこれが危険というふうに見られるということが破防法の仕組みとは随分違う。
 それから二点目は、これは三島参考人にお聞きしたいんですが、先ほど手続的なことをおっしゃいました。破防法は弁明手続がありますから、そこに証拠が提出され、その当該団体に対して証拠書類が開示をされます。ですから、その証拠書類を精査した上で反撃するということが、反撃というか私たちが観察処分を受けるのはおかしいというようなことがその場面で言えることもあり得ると思うんですが、今回は条文をどんなに読んでも観察処分を付する上での手続的なものがわからないんですね。
 そういう点からの手続的なことについて、憲法あるいは刑事法からの立場でコメントいただけますでしょうか。
○参考人(三島聡君) ここでの手続については、前のような弁明手続を一段階置いて、その後ろに公安審査委員会が判断をするという形ではなくなっているわけですね。むしろ、一段階になったということが言えるだろう。つまり、直接公安調査庁の長官が請求をするという形になり、そしてその後、一応意見聴取というものについては公開の聴取を行うという形にはなっています。
 しかしながら、私は特に問題だと思うのは、一つは、要するに証人尋問の手続はもちろんないわけで、のみならず決定までの時間的な制約が施されている。二十二条の二項ですが、結局三十日以内だということになります。そうすると、三十日というのはどこから起算されるかというと、十七条の二項の公示があったときということになりますから、十七条の二項の公示があり、そしてさらにそこから意見聴取が七日間ということになるわけですね。そうすると、三十から七を引くと残り二十三日間しかない。
 オウムの破防法の審理経過を見ますと、かなり何回も弁明手続が行われる。ああいう形で何回も行うことが従来可能だったのが、今回はまさに二十三日間でできるだけ早く出せということになると、かなり拙速な手続が行われ、そこでばちっと打ち切られて十分な攻防がなされないまま判断がなされるだろう。その点はかなり大きな問題なんだというふうに思います。
 それから、あとはもう一点、後ろの再発防止処分も問題なんですが、その手前の観察処分の特に立入検査については浅野さんから出たと思いますが、これは捜索、差し押さえに当たるということになるので三十五条の類推適用という形になるんでしょうか、それが問題になる。そうだとすれば、それはもちろんこの場合には裁判官が判断することになるはずだと。そこは、だから三十五条からしっかり来るし、残りの後ろの再発防止処分についてもそれ以上に重大な処分だということからすれば、きちっと訴訟手続にのっとって裁判官が判断するというのが本来だというふうに思います。
○福島瑞穂君 被害者救済法は団体規制法と双子の法律、前提としている点で問題だと思うんですが、二つ目、武井参考人にお聞きいたします。
 今回、十二人死亡して五千五百人が重軽傷を負っています。ただ、破産債権の届け出は千三十六人ですから五分の一弱しか破産債権の届け出にはなっておりません。ですから、この被害者救済法がうまく作動しても、破産の届け出は五分の一弱なわけですから、先ほど武井参考人がおっしゃったように多くの人が実はさまざまな救済の外にいるという面もあると思います。
 ですから、これから私たちが被害者救済ということを考える場合にどんなことが必要なのかについてお話しください。
○参考人(武井共夫君) まず、この二つの法案がリンクしているんじゃないかということですけれども、現在提案されている法案はそのようになっております。私自身は、この団体規制の法案について破防法の引用をすべきではない、無差別大量殺人行為の定義において破防法の適用をすべきではないという意見を持っておりますが、少なくとも破防法とのリンクという意味ではこの特別措置法についても外すべきだというふうに考えております。
 それから、確かに破産債権届け出をした人はわずかといいますか、数分の一にすぎません。これは、そもそも思い出すことすらつらい、債権届け出というようなことをすることが自分自身の症状を悪化するというような人がいることも含めて、非常に債権届け出すらできない人が大勢いるということを示しております。
 ただ、私どもこの法案に関して期待するところとしては、やはり救済を求めて立ち上がっている人が破産債権届け出をした人であり、民事訴訟を起こしている人なんですが、これらについてすら要するに救済の手が十分差し伸べられていないという点をまず指摘したいと思います。したがって、まずこれらの人に関しては十分な救済が少しでも受けられることに近づくような手だてという意味でこういう特別措置法というのは必要ではないかというふうに考えております。
 もちろん、今議員の方から御指摘がありましたように、債権届け出をしていない人に対してはこの法案は直接の効果といいますか、そういう救済の効果はありません。私としては、国家の責任でこのような事件が起きたということを踏まえれば、国家によって何らかの形で、財産的な意味も含めた賠償がされてしかるべきだというふうには考えております。
 また、特に受傷者と言われているサリンによって傷害を負った人たちに対しては、もちろんお金の問題もそうですけれども、同時にやはり治療、まずその前提としての健康診断、そして治療をしていくという体制が非常に重要だろう。今徐々に健康診断など進んではおりますが、ただ健康診断のお知らせが来るだけでまたぐあいが悪くなってしまうという人もいるのがまた現実ですので、非常に進め方が難しい面はありますけれども、そういう健康診断、治療に対する援助、そういう体制づくりというものも国家として何としても責任を持ってやっていただきたいというふうに考えております。
○福島瑞穂君 どうもありがとうございました。
○中村敦夫君 中村敦夫でございます。
 最初に、浅野先生と三島先生に同じ質問をいたします。
 今日のような大問題になった原因というのは、それはもう間違いなく捜査当局のミスジャッジとそれから怠慢ということから発している問題で、これはやはり国として責任をとらなきゃいけない。しかしながら、それは始まってしまい、経過があり、今日無視できない現実なり現象なりというものがあるわけなんです。そして、その解決の一つの方法としてこの法律が出てきたと読めば、準法的に解釈すれば憲法違反の疑いもあり、また乱用のおそれもあるという大変難しい法律であり、だからといって現実にある問題に政治が何もしないでいいのかというところで我々は非常に苦しい難しい立場にいるわけです。
 ここで、この問題を解く一つのキーワードがあるような気がしているんです。いわゆる宗教団体というものが社会で敬意を持って認められて存在するという一つの条件としては、それは社会的な規範、憲法や法律を守るということがあるんだと思うんです。そしてまた、宗教的規範というものは精神的なものであって、社会活動をする場合には社会的規範を守るということだと思うんです。
 ところが、この特殊なカルト宗教集団というものの存在が実は今回の問題になっているわけです。私は実際、オウムの人たち、彼らは本来はまじめで優しい青年が多いんですね。大体カルト集団の信徒はそういう人たちです。これは、私自身が別のカルトの問題に突き当たってさんざん現場で感じたことでございます。
 しかし、やはり危険性があるということはどういうことかといいますと、彼らの人格や人間性が危険があるんじゃないんです。徹底的なマインドコントロールによって自我というものを失われているということが問題なんです。つまり、自分で何かを判断するという能力がないというところなんです。結局、独裁者なり組織なりの命令がないと動けない、命令があれば犯罪ですら平気で犯してしまうというところにこのカルト集団の特性があるということなんです。これが危険の原因だと思うんです。
 もう一つの危険が私はあると思っているのは、そうした過去にやはり大きなサリン事件を起こし、そしてそれを認めないという自我のない人々がうろうろといろんな地域に定住したり動いてしまうということによって人々が不安になる。これはわかります。不安になるというのは、何だかわからないから怖いわけなんですね。これが結局どんどんいろいろなほかの形の団体なんかも住民運動みたいな中へ入り込んできて、一種の非常に住民ファッショ的な状況をつくり出しているということがあると思うんです。これを放置しておくと、逆にこれが日本全国である種のファッショ的な大きな現象を起こしてしまうという、全然別の角度からの危険性というのを私は感じているわけです。
 ですから、政治はとにかく出動しなきゃいけない、何かしなきゃいけないと思う。そして、この法律すべてこれがいいということではなくて、立法することです、一つの政治的手段ですが。そのことに浅野先生、三島先生は反対なのか、今までの法律で対処できるんだというふうに言っていいのかどうかということを簡潔にお答えいただきたいんです。
○参考人(浅野健一君) 私は、村山総理大臣が破防法の申請にオーケーを出したときに、もう一回サリンがまかれると社会党としても責任を問われる、そういうようなことを判断根拠にされたんです。今回もそうだと思うんです。また何か起きると責任が問われる、あるいは住民が不安だからというふうな形でこういうことになってきているんだと思うんです。
 もう一度冷静に考えるならば、今オウムの人たちがうろうろという形で言われたんですけれども、逮捕された人は百人ぐらいでしょうか、起訴されている人が二十人ぐらいでしょうか、多くの一般の信者、例えば京都で麻原被告のそういう講演なんかを京大で聞いてオウムに入っていた人とか、いろんな入り方があるわけです。
 そういう事件が起きるということ、計画していること、そういうことも全く知らないで信仰を続けていた、その人たちが今こういう事態になって責任をとれ、謝罪しろというふうに言われているんですけれども、一部の信者の方に私はそういうことを聞きますと、何に対して謝っていいかわからない、何が起きたか自分たちにまだわからない、それを知りたいんだというふうに言っているんですね。ミドリ十字のように重役が頭を下げる、神奈川県警のように頭を下げる、それでは済まないだろうと思う。だから、どうしてそういうことが起きたかを一番知りたがっている、そういう信者もまた信者の中にはいるわけです。
 それが、そういう区別なしにこの法律はかぶさっていく。政治が何かしなけりゃいけないということはわかるんですが、やはり信教の自由の問題に政治は関与すべきではない、基本的に。法律は関与すべきではない。大学の学問もそうですけれども、できるだけ関与すべきじゃない。全く関与しないでとは言いませんが、できるだけ関与は抑制しないといけない。つらいけど、とめないといけないときもあるというふうに思います。
 そういうことを私は真剣に考えていただいて、オウムの人の中にも例えば私のところへファクスが来ている幹部の人もいるんです。もう半分ぐらい出たいと思っているんでしょう。自分がなぜオウムに入ったかということを書いているんです。そういう形で悩んでいる人たちがいて、やはり先ほども言いましたように、その人たちの立場に立って対話をするということが重要なのではないかと思います。
 ですから、面倒くさいし、手間はかかるし、危険性はあるかもしれないけれども、思想、信条とか信教の自由とか表現の自由というところには、やはり本当にこれしかないというときにそういう形で議論をしていただきたい。それが今果たしてそうなのかということを中村議員にも考えていただきたいと思います。
○参考人(三島聡君) 基本的には浅野さんと同じような考え方であります。
 先ほどおっしゃったことの中に、宗教団体が要するに宗教的規範というものを守ろうとする、それが社会的規範とぶつかったときに、社会的規範を優先せずに宗教的規範を優先してしまうんだというようなお話だったと思うんですね。それで問題が起こるんだと。それは確かにどちらを優先するかといったときに、そういう団体は実際に過去にあるわけだし、それはあるんだと思うんです。ただ問題は、我々がどうするかということなんです。
 つまり、我々がそういう団体に対しては社会規範を守らなくていいかという、私は一つはそういう問題だろうと。つまり、じゃ、そういう団体に対しては、何をやってもというのは言い過ぎだけれども、本来越えていけない線まで越えちゃっていいんだと、そういう団体だったら構わないんだという対応をとっていいかというと、私はそれは許されない。我々はやはりきちっとした社会規範を守っているんだということで押していくしかないんだというふうに私は思っています。ですから、違う方法をやはり考えるべきだというふうに思います。
 マインドコントロールされていて、自我が失われていて問題が起こるということは多分あるんだと思うんですね。ただ、浅野さんが今言ったように、言っていると思うんですが、対話をしていくとかいう中で、地道な活動を続けていく中で少し開かれてくるんだ。結局、私が思うには、この法律をつくって、じゃ彼らをどうするつもりなのかというのは私にはよくわからないわけです。
 先ほど言ったように、要するにけ散らしてそこから追い出して、追い出して、追い出していけば済むんでしょうか。住民票を拒否するのは、なくなるためには、彼らがいなくなることなんだ。そうしたら、その人間はどこに行ってしまうんだ。結局、彼らをどんどん追い詰めていくだけじゃないか。この社会に住んでいる人間なんだから、この社会に帰るようにマインドコントロールを解かなきゃいけないというのが基本的な我々みんなのスタンスですね。そうだとすれば、この法律はマイナスのはずだというふうに思います。
 これは一例にすぎないかもしれませんが、十一月二十六日の「週刊金曜日」で森達也さんが書いているんですが、群馬県の藤岡市とか池袋とかいうところで、そこで監視している住民の人たちと信者の人たちがいろいろ会話をしたり写真撮影をしたりということもあったようです。それに対して、マスコミの批判になるわけですが、テレビや新聞もみんな肝をつぶして帰っていくと、住民がこういうしゃべっている状態を見て。しかし、記事になったことは一度もない。相変わらず洗脳が解けない信者とおびえる住民みたいな記事ばっかりできて、どうして見たままを書いてくれないんだと私たちはいつも言っているんだというような話もあるぐらいなんです。
 だから、そういうところから、ほんのちょっとした糸口かもしれませんけれども、権力的な対応をとるのではなくて、むしろ非権力的な形で我々の社会に、できるだけお互いに住める社会にしていくということが重要なんだというふうに私は思います。
○中村敦夫君 マインドコントロールを解くことが本当は最大の問題なんです。その現場を知っていますものですから、群がっていたら解けないということは条件としてあるんです。それをどうしたらいいかということで、人道的なお答えはよくわかるんですけれども、やはり方法があるんではないかなと私は思っているんです。これは法務省にもどうやってそのアフターケアをやるんだということでは聞いたわけですけれども、答えがないわけです。そこのところが大変大きな問題だと思います。
 ただ、この法律、私すべてこれがいいなどと全く思っていないんですが、これは武井先生にちょっとお伺いしたいんですけれども、この団体規制法では立入調査に際して公安審査委員会へのリストの提出というのが定められているだけなんですね。そうしますと、今の警察のかなり不正、腐敗が蔓延している状況などから考えてみても、乱用がないということはちょっと考えられない。この不正の防止のシステムとしても、立ち入り先リストを国会に提出するとかあるいは公安審査委員会が立ち入り先の可否を認定する仕組みをつくるとか、こういう条件というものは入った方がいいのではないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○参考人(武井共夫君) 私どもが一番心配するのは、今おっしゃられたマインドコントロールを解くという作業、これは例えば信者と対話することによって行われるわけです。あるいは、元信者が社会復帰するためのいろいろな元信者同士の交流、こういうものも当然必要になってくると。有名な会としてはカナリヤの会というのがありますけれども、元信者が集まっていろいろ悩みを語り合いながら社会復帰を目指していくという試みが行われております。
 もし仮にこういう法案が成立いたしまして、仮に信者に対してそういう社会復帰を促していく、あるいは脱会を促していく、そういう活動がいろいろなところで行われてきた場合に、例えばそこに信者が何人か訪れて悩みを打ち明けている、あるいは元信者が何人か集まっている、そういうところがやみくもに観察処分の立ち入り先ということで踏み込まれるというようなことがあると、これはかえって本当に逆効果になってしまうということを私どもは一番心配しております。
 ですから、今議員も御指摘ありましたけれども、これについては原則としては事前にやはり何らかのチェックが必要だろう。それで一番いいのは、もちろん裁判所の令状をとるということが一番厳格な手続でいいんだと思いますけれども、行政処分という性格上、そこまで要求するかどうかという、それは疑問があるかもしれませんが、少なくともやはり公安審査委員会の事前の承認というような要件は最低限必要ではないかというふうに考えております。
 それで、その際に、やはり公安審査委員会としてはそういう元信者の社会復帰やあるいは信者の脱会のための妨げにならないような配慮をしていく。これはもちろん立入検査をする当局の側も、例えば仕事をするために、仕事をふやすと言ったら変ですけれども、何かやらなくちゃいけないということでやみくもに入るんじゃなくて、もし仮に集まっているのがわかったとしても、この集まりというものは本当に何らかの危険な兆候というものがあるような集まりなのかどうか、そういうものを運用する当局そのものが、公安調査庁そのものが慎重に配慮する必要がありますし、またそれをさらに公安審査委員会の方でチェックするということはぜひ求めたいというふうに思います。
○中村敦夫君 ありがとうございました。
○委員長(風間昶君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
 参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、お忙しいところ大変貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。当委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。(拍手)
 本日の審査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
   午後四時十四分散会