第147回国会 法務委員会 第7号
平成十二年三月二十八日(火曜日)
   午前十時開会
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   委員の異動
 三月二十八日
    辞任         補欠選任
     吉川 芳男君     久野 恒一君
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  出席者は左のとおり。
    委員長         風間  昶君
    理 事
                北岡 秀二君
                塩崎 恭久君
                竹村 泰子君
                魚住裕一郎君
                平野 貞夫君
    委 員
                阿部 正俊君
                岩崎 純三君
                岡野  裕君
                久野 恒一君
                竹山  裕君
                服部三男雄君
                松田 岩夫君
                吉川 芳男君
                江田 五月君
                小川 敏夫君
                角田 義一君
                橋本  敦君
                福島 瑞穂君
                中村 敦夫君
   衆議院議員
       発議者      太田 誠一君
       発議者      中井  洽君
       発議者      上田  勇君
       発議者      北村 哲男君
       発議者      保坂 展人君
   国務大臣
       法務大臣     臼井日出男君
   内閣官房副長官
       内閣官房副長官  松谷蒼一郎君
   政務次官
       法務政務次官   山本 有二君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局総務局長   中山 隆夫君
       最高裁判所事務
       総局人事局長   金築 誠志君
       最高裁判所事務
       総局民事局長
       兼最高裁判所事
       務総局行政局長  千葉 勝美君
       最高裁判所事務
       総局家庭局長   安倍 嘉人君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        加藤 一宇君
   政府参考人
       証券取引等監視
       委員会事務局長  舩橋 晴雄君
       防衛庁人事教育
       局長       新貝 正勝君
       法務大臣官房長  但木 敬一君
       法務省民事局長  細川  清君
       法務省刑事局長  古田 佑紀君
       大蔵大臣官房審
       議官       木村 幸俊君
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  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内
 閣提出、衆議院送付)
○株式の消却の手続に関する商法の特例に関する
 法律の一部を改正する法律の一部を改正する法
 律案(衆議院提出)

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○委員長(風間昶君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に防衛庁人事教育局長新貝正勝君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(風間昶君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
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○委員長(風間昶君) 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○江田五月君 おはようございます。
 けさ、実は私は大変心を痛めております。同期でクラスが一緒ですぐ隣の隣に座っておりました裁判官、大濱惠弘君がおととい病死をいたしまして、きょうは一時から名古屋で葬儀というんです。二十期ですから今五十七歳。裁判所のために命を落としたとは言いませんが、去年の暮れには同期の河本誠之君がやはり病気で亡くなると。現職の裁判官の皆さんが本当に苦労しているということを思いながら、半分鎮魂の思いを込めて裁判所職員定数関係の法律について質問させていただきます。
 まず初めに、判事補の七十人の増員ですが、その前に、大濱君が実は病気だというのを聞きまして、二月の終わりでしたか、手紙を出しました。三月十二日というのではがきが来ておりますので、ちょっと現職の裁判官の思いですので御披露しますが、
  御多忙中にもかかわらず心のこもったお見舞いのお便りありがとうございました。
  お便りをいただきました当時は自宅にいましたが、貧血がひどくなり、自力でトイレ等も次第に困難になったため、八事日赤に入院することになりました。現在は、食欲もほとんどなく困っています。何とか精神的な力で乗り切りたいとは思っていますが。
  江田さんいろいろお世話になりました。どうか江田さんの政治的な信条をいつの日か達成されるよう祈っています。
  乱筆乱文お許しください。
 最後まで心遣いのこもった、そういう思いを持った男でございました。
 さて、気を取り直して質問ですが、判事補七十人の増員ということですが、提案理由の説明では、「地方裁判所における民事訴訟事件、民事執行法に基づく執行事件及び倒産事件の適正迅速な処理を図るため、」、こういうことをお書きですが、実際は、これは司法修習の制度改正でこの十月に修習終了者が出る。来年の四月まで半年遊ばせておくわけにはいかないというので、この四月とそして十月と来年度は二期にわたって人を採るという、そのための大幅増員ということで、何か七十人、民事事件その他の適正処理のために大変画期的なことをやるなというのはちょっと褒め過ぎという感じなんですが、もう少し詳しくそこの四月のこと、十月あたりのことを説明してください。
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) お答えいたします。
 委員御指摘のとおり、今回の増員には秋にも修習生が修習を終了して任官できる状況になるということが関係しておりますが、この間の充員の関係などについて申し上げますと、平成十一年十二月一日における判事補の欠員は十八人でございます。本年四月期の判事への任官やその後の退官等によりさらに欠員が広がりまして、この四月には現在員は合計で七十人程度不足するということが見込まれております。これに、今回の改正によりまして増加される予定の七十人のうち四月から予算上の手当てがされております三十人分を加えた枠で本年四月に司法修習を終える者から例年程度、最近は九十人程度が採用されておりますが、判事補を採用することによりましてほぼ充員される見込みでございます。
 その後、十月までに現在員は退官や簡裁判事への任命分などによりまして五十人を超える程度不足することが見込まれております。これに十月から予算上の手当てがされております四十人分を加えた枠で本年十月に司法修習を終える者から例年程度の人員を判事補に採用することによってほぼ充員されるという見込みになっております。
○江田五月君 九十人程度というんですが、私がいただいた資料だと、小さなことですが、平成七年が九十九人、八年が九十九人、九年が百二人、十年が九十三人、十一年が九十七人。九十人というよりもむしろ百に近いあるいは百前後じゃありませんか。
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) 委員御指摘のとおり、ここ数年はそのぐらいの数でございましたが、ことしは、現在願書を出しておりまして採用手続を進めております者が八十七人でございます。これにあと弁護士等からなったりするという可能性もございますが、一応九十人程度というふうに見ております。
○江田五月君 冒頭にも言いましたが、裁判官諸君、本当に現場で苦労しています。現場で苦労している裁判官と大体最高裁事務総局にいる人と相当の意識の差などがあるとかいうようなこともよく言われますが、現場で苦労している人たちのことを本当に考えてやっていただきたいと思います。
 裁判所書記官と家庭裁判所調査官の十六人増員、これももう少し詳しく説明をしてください。
○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) お答えいたします。
 裁判所職員十六名の内訳でございますが、これをいま少し詳しく御説明申し上げますと、裁判所書記官につきましては、四十人の純増のほか、裁判所速記官及び裁判所事務官から各百人を書記官に振りかえるという二百人の増員、合わせて二百四十人の増員をお願いしているものでございます。さらに、家裁調査官につきまして五名の増員をお願いし、合計二百四十五人の増員をお願いしているところでございますが、今申し上げましたように、振りかえ分としての裁判所速記官及び裁判所事務官各百名のほか、庁舎管理業務の合理化等により技能労務職員二十九人を減員することにしておりますので、以上の増減を通じますと、裁判官以外の裁判所職員の増員が十六人ということになるわけでございます。
○江田五月君 裁判官の方の増員、充実ももちろん大切ですが、裁判官だけでは裁判できない。補助職員といいますか、書記官その他が充実していないと裁判官だけ頑張っても空回りをするだけなので、この点は十六人増員、これで本当に十分かなという感じはいたします。
 それから、速記官の転換ですが、速記官はもう新規の採用をやめておられる。しかし、それでいいのかなという感じもあるんですね。速記という仕事自体は速記官というものでなくてもそれはできるじゃないかということでしょうが、裁判所の速記官の皆さん方は大変苦労して独自のいろんなソフトを開発されている。
 「はやとくん」というのを聞いたことがあるんですが、この「はやとくん」というのは、ちょっと突然になるかもしれませんが、どうされるおつもりですか。
○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) 「はやとくん」をどうするおつもりかというちょっと質問の御趣旨がはっきりはいたしませんけれども、「はやとくん」を現実に法廷で使っている速記官はおります。
○江田五月君 それはおるから聞いておるわけですが、「はやとくん」という、きょうはもうここでいろいろ説明する時間はありませんから省略しますけれども、速記官の皆さんがいわば自主的に、なかなかすぐれもののソフトのような感じでしてね。時間がありませんが、国会の速記と違いまして裁判所の速記は速記タイプという器械でやりまして、全部紙に記号で出てくる。それにいろいろコードをつないで、ソフトをつけて、もう打つとすぐに反訳文が文章になって出てくるんですね。もちろん、誤訳はありますから、そこをいろいろソフトを開発すると。きょうは医療過誤だからというので、そういうソフトを入れると、そういう。きょうは労働事件だからというと、そういう。そういう非常に早く反訳文が出てくるというのを開発されている。裁判所速記官が勝手にやっていることで最高裁はあずかり知らぬところだ、こういう感じがにじみ出た答弁でしたが、さてそれでいいのか、そんなことも感ずるわけです。
 ところで、今回の定員法の改正と司法制度改革との関係ですが、最高裁が昨年の十二月八日に司法制度改革審議会に対して意見陳述をされた「二十一世紀の司法制度を考える 司法制度改革に関する裁判所の基本的な考え方」という文書の中に、裁判所の体制の充実、裁判所の機能の強化ということも書いてあるわけですが、今回の定数増とこの考え方、これはどういう関係になりますか。
○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) 今回の裁判官の七十人の増員は、民事訴訟事件等、近時の事件数の増加を踏まえるとともに、先ほど人事局長の方から御説明申し上げましたとおり、二期分の司法修習終了者から新任判事補を採用することが可能である、そういった特殊事情を踏まえてのものでございまして、法曹一元や陪参審制度などの司法制度改革論議とは何ら関連をしないものでございます。
○江田五月君 司法制度改革も、結論が出るまで改革を待っていろと言っているわけじゃない。そうではなくて、できるものは速やかにやれと。しかし、抜本的改革については、今の法曹一元、陪参審などを含めてこれから議論をするということで、できることはまずやるという意味で、とりあえず人員の充実、これをやろうと。ですから、司法制度改革と無関係じゃないけれども、別に司法制度改革の行く末を見据えた手を打っているということでもない、そう理解してよろしいですね。
○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) おっしゃるとおりでございます。
○江田五月君 司法制度改革の中で、言うまでもなく法曹人口の拡大、特に弁護士の数をふやす、これも今大きな課題になっております。もちろん、そのこと自体にも議論がないわけじゃありません。しかし、例えば時代の変化、これまでの規制社会から規制緩和で事後的な救済のそういうシステムにと大きく変わっていく。そうすると、司法の役割というのは今までと比較にならないほど重要になってくるとか、あるいはこれまでも司法に対して、どうも司法サービスは市民から見ると近寄りがたい、もっと市民の司法に変わっていかなきゃいけないんじゃないかとか、いろんなことを言われております。
 そういう流れの中で、弁護士の数を大きくふやすということは私はやはり必要なことだと思っておりますが、今一万七千人の弁護士に対して、さてどのくらいかなというので、これは大づかみの数字で、細かな議論を組み立てた上でというわけじゃありませんが、見当としては五万人か六万人ぐらいの弁護士体制、そういう私論も中坊さんあたりから出てきておりまして、私もそう思いますが、仮に弁護士五、六万人体制ということを想定すると、裁判官は一体どのくらい、書記官どのくらい、調査官、事務官、それぞれどのくらいという、何かそういうビジョンというのはお持ちですか。
○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) 今後、社会の法曹に対するニーズというものは多様化することが予想され、弁護士が増加いたしますと、その職域が拡大し、従前の弁護士業務以外の分野に進出していく方も増加するでありましょう。また、弁護士が増加すれば契約書の作成等に関与するなど、紛争の事前予防が進むということも考えられるわけであります。そのようなことを考えますと、弁護士が増加したからといって、必ずしも正比例するような割合で裁判所の事件が増加していくかどうかはこれは一概には言えませんけれども、裁判所へのアクセスが容易になることは明らかでありましょうから、その意味で裁判所の事件数を押し上げる大きな要因になるというふうには考えております。
 裁判所としては、そのような事件数の状況も見ながら、弁護士五万、六万ということならば、必要な人員、それに応じた増員というものを図っていかなければならないというふうには考えております。
○江田五月君 弁護士の大幅増員ということはいわば外圧かと思いますが、それだけでなくて、やはり規制社会から自由な社会へと、事後的な司法救済というのが非常に重要になる社会へと転換をしていく。あわせて、これまでの司法サービスというのは市民にとって近寄りがたいものであったという反省、そういうところから、やっぱりこれまでの司法サービスの提供体制ではだめなんだという思いはぜひ持っていただきたいと思います。
 次に、家庭裁判所の調査官の皆さん方から私のところにもいろんな要望が寄せられておりまして、その中に、家庭裁判所調査官研修所と書記官研修所を総合して裁判所職員総合研修所、これは仮称でしょうが、を建設するという最高裁の計画に対して、家庭裁判所調査官の専門性を損なうのではないかという強い懸念が示されています。
 先日、最高裁の説明では、それは杞憂なんだ、こうはっきり言われた。なぜそれが杞憂であるのか。調査官の皆さん方が納得できるような十分な説明をいただきたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) 家庭裁判所におきましては、家庭裁判所調査官は欠くことのできない基本的な柱でございます。その役割の重要性につきましては最高裁として十分認識しております。
 新しい研修におきましても、人間関係諸科学及び家庭裁判所の実務に関する家庭裁判所調査官の専門性を一層充実発展させるということを基本に据えまして、研修体制、研修設備の充実をいたしまして、これまで行われてきた専門的な研修を質量ともに充実させたいというふうに考えております。
 したがって、家庭裁判所調査官の専門性が薄れるというふうな懸念は全くないものというふうに考えております。
○江田五月君 今の言葉をそのとおり受けとめたいと思いますが、なかなかそうであるかどうか。
 最近、裁判所の中でヒラメという言葉があるようでして、ヒラメというのは何かというと、目が上についていて、上ばかり見ていて、その上のとおりに自分を合わせるということのようで、ヒラメ裁判官じゃ困るんですが、調査官は特に医学、心理学、教育学、社会学その他の専門的知識を要求される。その仕事の重要性というのは現代社会の中でますます重要になってくる。重要性が増すことはあっても減ることは決してない。しかも、司法体制全体の中でそういう人間諸科学とのつながりで仕事をする場面というのは調査官のところしかないと言ってもいい。そういう非常に重要なところなので、ここがおろそかになったらやっぱりいけないですね。重大な関心を持ってフォローしていきたいと思います。
 職員総合研修所ということになると、例えばもちろん所長は一人、事務局体制も一つの体制になって、そうすると、どうしても今までの司法のあり方からすると、書記官の方に偏って調査官は隅の方にということになるんではないか。調査官の方の研修の事務局体制というものはしっかりとしたものをちゃんとつくるという覚悟がおありかどうか。
○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) 調査官の重要性というものは最高裁としても十分認識しており、職員総合研修所を、まだこれはどういった体制を組むかということは決まっておりませんけれども、今御指摘の点も含めてきちんとしたものをつくり上げていきたい、こういうふうに思っております。
○江田五月君 あわせて、今ヒラメというちょっとやゆ、ごめんなさい、どうも昔の仲間ですのでついついきついことを言ってしまいますが、調査官の皆さんの意見を十分聞くと。やっぱり伝統的司法の世界の中にいる人のところに調査官の皆さんが物が言いにくいということがあっては困るので、特に調査官の皆さんの言うことはよく聞いていただきたいと思いますが、いかがですか。
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) 今回統合されます研修所につきましては、これまでも調査官の方々の意見を広く聞いております。これからも十分そういう意見を聞いて進めてまいりたいと思っております。
○江田五月君 次に、私たち民主党は、昨年暮れ、司法制度改革審議会にいろんな論点の追加の提言を行いましたが、その中で裁判所のジェンダーバランスということを言いました。特に最高裁のジェンダーバランス、これは性別のバランスということですが、最高裁のジェンダーバランスの問題を取り上げてみたいと思います。
 官房副長官、わざわざお越し願って恐縮ですが、最高裁判所の判事、これは長官は内閣の指名、天皇の任命、それでそれ以外の最高裁判所裁判官は内閣が任命と裁判所法三十九条、憲法で定められておりますので、任命権者は内閣ですので副長官にお出ましいただきました。
 現在、十五人の最高裁判所判事に女性が一人もいない。これはなぜこういうことになるんですか。
○内閣官房副長官(松谷蒼一郎君) 最高裁判事の任命におきましては、今、江田委員からお話がございましたように、内閣の任命でございます。
 それで、識見の高い法律的素養のある四十歳以上七十歳未満の方で最高裁判事としてふさわしい方であれば、当然男女、年齢の別を問わず任命するということは言うまでもないことであります。
 これまで女性の最高裁判事が少なかったのは、女性法曹の層が必ずしも厚くなかったなどの事情もあったのではないかというように思っております。しかしながら、近時、女性の社会進出に伴い、次第に最高裁判事の女性候補の層も厚みを増してくるものと思われますので、当然最高裁判事につきましても女性の進出が多くなってくるのではないかというように思っております。
○江田五月君 戦後新しい憲法ができて男女同権になって五十年以上たっているわけですね。この五十年以上の新しい最高裁判所体制のもとで最高裁判事がさて何人できたか。ちょっと数えていませんが、おそらく三けたもある、もうかなりの数になっているはずですが、それだけ大勢の中でただ一人しか最高裁の判事はいない。しかも今はゼロだと。ゼロは今だけたまたまというわけじゃないんですね。ちょっと調べてみますと、現在六十三歳から六十九歳まで、平均年齢は六十六・二七歳、全員男性。これで本当に社会のルールを最終的に決める裁判所としていいのか。
 男女共同参画社会基本法をつくりました。前文には、「男女共同参画社会の実現を二十一世紀の我が国社会を決定する最重要課題と位置付け、社会のあらゆる分野において、男女共同参画社会の形成の促進に関する施策の推進を図っていくことが重要である。」と。あらゆると言うんですから、司法の場は例外ということはない。これはひとつ内閣の方針でなきゃいけないことで、当然、方針。
 それで、そういう内閣の方針を持って、最高裁判事の任命のときにもやっぱりそういう二十一世紀の最重要課題を司法の場でも実現するんだ、そういう思いをぜひ披瀝していただきたいと思いますが、副長官、いかがですか。
○内閣官房副長官(松谷蒼一郎君) これまでは、今、委員のおっしゃったとおり、高橋久子判事のみでございました。しかし、ただいまのお話のように、男女共同参画社会の実現のためにも、できるだけこういった司法の場にも女性の登用が多くなっていくように私どもも願っているところであります。
○江田五月君 先ほど、法曹といいますか裁判官の中にこれまで女性が少なくて適任者がいなかった、そういう事情もあるのではないかということをちょっとおっしゃいましたが、高橋さんは司法畑の人ではありませんね。ですから、最高裁というのは司法畑の人を中心にということはありますけれども、司法畑の人でない人が入ってくることがまた最高裁判事の任用にとって重要なポイントでもあるので、女性が司法の世界に十分これまで育っていなかったということを余り言われない方がいい。
 それだけじゃなくて、現実には今随分、かつてもなかなか優秀な女性の裁判官の皆さんがおられた。三渕さんにしても野田さんにしても大変すぐれた方々だったと思いますが、私どもが最初任官する当時は、女性は裁判官に向かないんだ、なぜなら山へ検証に行くのに女性じゃ困るからなんというようなことを、公のところでは言ったことはないと思いますが、実はひそかに言われていたりしましたが、今そんなことを言ったらもう裁判所はもちませんよね。そんな時代になっているので、これは最高裁判事の任命についてどういう手続でやるのかちょっと細かくいろいろ聞いてみたいところもあるんですが、最高裁の方としても女性の最高裁判事及び下級裁判所の裁判官についてお考えがあると思いますが、いかがですか。
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) 委員も重々御承知のとおり、最高裁判事の任命は内閣の重要な権能でございまして、三権分立の建前から申しまして、その権能の行使の当否について私どもが意見を述べるということは差し控えるべきと思いますが、今お話の出ております女性の最高裁判事ということに関しましては、官房副長官もお答えになりましたように、従前は女性法曹の数がそれほど多くはなかったわけでございますが、近年非常にそれが顕著にふえてきております。そういうことで事情が変わってきておるということが言えようかと思います。
 下級裁判所の方の裁判官は、最近非常に毎年二十人以上女性が裁判官になることが多いような状況でございまして、全国各地で女性の裁判官が大変活躍しておられる状況でございます。
○江田五月君 最後になりますが、最高裁判事は内閣の任命ですから最高裁としてもなかなか物が言いにくいところだというのはよくわかります。わかりますが、現実には内閣、特に内閣総理大臣がさて最高裁だれにしようかなといってつらつら沈思黙考してというわけではないんで、やっぱりいろんな意見を聞いてやっておられる。裁判所、最高裁の方からのいろんな助言といいますか、意見の具申も当然あると思うんです。どうもそのあたりが甚だベールの中でよくわかりませんが、今、官房副長官のおっしゃるように、女性の登用も考えていきたい、そういうことで、内閣総理大臣の方からひとつ女性のいい最高裁判事の候補はいないかねと言われたら、最高裁どうですか、困りますか、それとも今はもう困るようなことではない、大いに人はいますということになりますか。どうですか。
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) 今お話ありましたように、最高裁判事の任命につきましては最高裁長官が内閣総理大臣に対して意見を申し上げるという機会がございます。その際、今、言われたらどうかというふうに言われますと、これは仮定の質問でございまして、ちょっとお答えはしにくい問題でございます。
○江田五月君 しっかりやってください。
 終わります。
○魚住裕一郎君 公明党の魚住裕一郎でございます。
 今回、裁判所職員定員法、人数をふやすということで改正案が出てきているところでございますが、判事補については平成三年以降ですか、五人とか七名とかそういうふうに徐々にふやしてきているというふうな状況であるわけでございますが、判事補ではなくて判事については全然この十年ばかり増員されていないようでございます。判事の給源、どこから採用していくかということもあろうかと思いますが、そろそろこの判事の増員がされてもおかしくないんではないかというふうに思うわけでございまして、何でこの増員がなかったのか、またいつごろになったら判事の増員ということが考えられるのか、まずその点からお聞きしたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) お答え申し上げます。
 判事を増員することが望ましいことは言うまでもないところでございます。しかし、現実問題として、弁護士から判事への任官数を見てみました場合、最近十年間でも三十三人、年間三人程度にすぎず、判事への任官者は判事補として十年の経験を得た者がほとんどを占めているという状況にございます。この四月に判事補から判事に任官する予定者の数を踏まえてみましても、ここで判事の定員をふやしてもなお直ちに充員できない状況にございます。そこで、判事の増員の前提として、まず判事補をふやして判事への給源の充実を図っていく、こういうことで増員を近年進めてきているところでございます。
○魚住裕一郎君 先ほど、平成三年から判事補の増員ということでございますけれども、そうすると来年、再来年ぐらいから判事の増員も必要になってくるというふうな考えでいいんですか。
○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) 今後の裁判官の退官数がどうなるか、そういうところが響いてくる問題でもございますので、判事の充員状況や事件動向を踏まえて検討していくということになると考えております。
○魚住裕一郎君 それで、判事補については、先ほどちょっと御紹介しましたけれども、五名、七名、またその後十名、十二名、十五名、二十名、二十名、三十名というふうに順次増員が図られてきた。今回七十名ということになるわけでございますけれども、これは、先ほど先行委員からお話があったように、やはり事件数の急激な増加、民事事件あるいは執行事件、倒産事件、もちろん適正迅速な処理を図るためということはあろうかと思いますが、最終的にはことしの四月と十月に修習生が出てくるというふうなことが理由であるというふうに考えていいわけですか。
○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) 今、委員御指摘のとおり、民事訴訟事件が依然として増加傾向にあること、倒産事件が急増してきておりますこと、執行事件も金融機関の不良債権処理等に伴い引き続き増加が予想されることから、これらの事件のより一層適正迅速な処理を図るためということとともに、今また委員が重ねて御指摘のとおり、二期分の修習生の採用を今回行う、そういった特殊事情も考えてのことでございます。
○魚住裕一郎君 これは弁護士の仲間では二〇〇〇年問題、ことし正月二〇〇〇年問題というのがありましたし、またうるう年もあってコンピューターの世界では大変だったんですが、法曹の間での二〇〇〇年問題というのがあって、これは要するに弁護士にことし一気に千百人ぐらいなるということでございまして、就職先をどう確保するのか。いわゆるいそ弁になりたい人もなかなか就職先がなくて先輩の弁護士のところに机だけ貸してもらうというような、あるいはパートタイムで弁護士が就職するというような、そういうようなことも言われ出しているところでございまして、急激な増というのが、裁判所においても一気に二倍以上の、二・三倍ぐらいの定員増を図る、そういうような形に今回来ているわけです。
 やはり私は、計画的な、将来を見通した、先ほど江田先生からもお話がございましたけれども、将来の構図を見ながら図っていく必要があるんではないか、急激だとやはり受け入れ側も大変な状況になるんではないかと思いますが、将来を見通した上での増員計画になっているのかどうか、もう一度御答弁いただけますか。
○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) 今回の七十人の判事補については、きちんとした合議体に組み込めるような形での、そういった体制で受け入れられるような体制を今検討しているところでございます。
 また、先ほども江田委員の方にお答え申し上げましたけれども、基本的に今後の事件の動向等を見ながら、裁判所としてはより一層適正迅速な裁判ができるように検討を進めてまいりたいというふうに思っているところでございます。
○魚住裕一郎君 この提案理由にもありますけれども、適正迅速な処理ということが毎回定員法改正のたびに出てくる言葉ではあるのでありますが、これが言われ続けて十年、二十年だろうというふうに私は思います。経済がどんどん伸展してきて確かに事件数もふえてきているところでありますが、やはり経済社会の基本的なインフラでありますこの裁判制度が本当にうまく機能しているのかということが常にマスコミ等からも指摘されているところであります。
 また、経済界においても日本の裁判を使うんではなくしてアメリカの裁判の方が早いからそちらを使おうというような、そういう具体的な事例も出てきているところでありまして、やはり今の日本の司法というのは日本の経済のスピードにマッチしていないんではないかということが常に指摘されているところであります。
 私も、迅速な裁判を受ける権利というのがありますけれども、やはりスピードアップをしなきゃいけない、裁判制度だけではなくしてもっと紛争解決の方途が多岐にわたってもいいんではないかというふうに思うところでございまして、法廷外の紛争解決手段、ADRというようなことが言われておりますけれども、それも幅広く私は活用をしていくべきではないかというふうに考えておるところでありますが、この点に対して司法全体を見渡しておられる法務大臣としてどのようにお考えになっているか、基本的な御認識をお願いいたします。
○国務大臣(臼井日出男君) ただいま委員御指摘をいただきましたADR、すなわち裁判外紛争処理制度は、その紛争の類型に応じまして当事者の意思を尊重した解決、迅速な解決、専門技術的見地からの解決を可能にするものでございまして、私的紛争の解決に多様な選択肢を与える点で意義あるものと考えております。
 このような裁判外紛争処理制度の充実を図り、裁判手続と相まって、今後増加することが予想される国民の法的ニーズに的確に対処できるものとしていくことは、国民に利用しやすい司法の実現にとって極めて重要なものと考えております。
 司法制度を所管する法務省といたしましても、今後、裁判外紛争処理制度の充実のために必要な協力をいたしてまいりたいと考えております。
○魚住裕一郎君 ぜひお願いをしたいと思います。
 その際、やはり裁判外とはいいながらも紛争解決の手段ですから、どうしても法律家の素養というものが必要になってくるんであろうというふうに思います。裁判官という身分の問題もございますけれども、具体的な紛争処理制度の中には裁判官のOBの方に参加をしてもらうとかいろんな工夫があるようでございますし、また一方で裁判が同時並行してもしようがないわけで、裁判を一方は停止させておくというようなことも必要ではなかろうかというふうに思っておりまして、今後いろいろ議論を私もさせていただきたいというふうに思うところであります。
 さて、長期化する裁判の中で、やはり専門的な訴訟というのが非常に長期化の原因ではないかというような指摘がございますが、例えば医療過誤訴訟、医療をめぐっていろんな訴訟が起きておりますが、法律家は医療についてそんなに詳しくないわけでございます。最終的にはやはり鑑定人の意見というものが大事になってくるわけでございますが、結構鑑定人を決定するまでそもそも時間がかかるというような指摘がございますが、具体的にはどのぐらいの期間を要しているものなんでしょうか。
 裁判所にお伺いします。
○最高裁判所長官代理者(千葉勝美君) 医療過誤訴訟におきまして鑑定人の選任にどのぐらい時間がかかるか、網羅的な調査をしているわけではございませんけれども、昨年東京地裁の方で調査した結果によりますと、平均的に四カ月半ほどかかるというデータも出ております。事件によりましてはもう少し時間がかかるという例もあるようでございます。
○魚住裕一郎君 結局、訴訟代理人からしてみれば、鑑定人に証拠方法として鑑定を申請するわけですが、具体的な、代理人の方で折衝してくださいよみたいなことまでやらないとなかなか採用してくれないというようなことも実はあるわけでございます。
 ドイツの事例のような場合は、例えば医師会と連携の上で、裁判所の要請があれば鑑定人を推薦するような、そういう法律で義務づけられているようなところもあるようでございますが、医療過誤訴訟等について日本の裁判所は、日本医師会ですか、あるいはお医者さんとは協議されているんでしょうか。どのような制度になっていますか。
○最高裁判所長官代理者(千葉勝美君) ドイツの制度につきましては正確には承知しておりませんが、やはり鑑定人を選定するということについては大変な問題でございまして、今医師会という御指摘がございましたけれども、医師会、医学会など専門家の団体の協力が得られるということが大切でございます。協力が得られれば鑑定手続が円滑に進むというふうに思われますので、裁判所としてはそういう協力が得られるようにいろいろな働きかけをしているというところでございます。今後もこうした努力を続けていきたいと思っております。
○魚住裕一郎君 医療過誤訴訟で考えれば、例えばその問題自体が医師みずから自分の問題だというふうにとらえてぜひ積極的にやっていただきたい、鑑定に応じていただきたいというふうに思うところでございますが、医療事故に詳しい加藤良夫弁護士のコメントの中で、「医師の本音は「同業者のミスを指摘して恨みを買うのがいや」ということ。学閥や学会のしがらみに縛られ、相互批判を封じるギルドのようになっている。鑑定書を作成しても業績評価にはつながらないことも、敬遠される一因と思われる」というような新聞記事が載っておりましたけれども、本当にそうだなというふうに思うんです。
 その辺どうやって克服をしていくか。制度自体の、日本の社会全体の問題でもあろうかというふうに思いますが、この辺はいかがですか。
○最高裁判所長官代理者(千葉勝美君) 実は昨年の秋に、東京、大阪などの裁判所で鑑定の経験を有するお医者さん、それから弁護士、裁判官などが集まりまして鑑定人の協議会が行われまして意見交換が行われたわけでございますが、その中で鑑定人を経験した医師の方からは、今の鑑定の一番の問題点は、やはり鑑定書提出後に証人として呼び出されて、特に不利な鑑定の結果が出た弁護士の方から、鑑定人としての能力や適性がないと言わんばかりの個人の人格や経歴を中傷するような尋問を受けるとか、あるいは鑑定書の中身をよく理解しないまま不必要で執拗な尋問を繰り返される、そういうようなこと、いろいろ御指摘がございまして、こういうことが改善されなければなかなか鑑定を引き受けたくない、鑑定人を引き受けるのはどうしても消極の姿勢をとらざるを得ないという話がございました。
 これだけではもちろんない、先生御指摘の点もございますが、こういうような指摘も踏まえまして、裁判所としましては、やはり専門家の協力が得られるように裁判所の審理の運営の改善をしていかなきゃならないというふうに考えております。裁判官の有志による研究などもございますし、それから東京地裁、大阪地裁などで医療過誤事件の運営改善に関する提言などもいろいろ出されておりますので、そういうものも踏まえまして運営の改善に努めて、鑑定人を引き受けやすい環境整備をしていきたいというふうに考えております。
○魚住裕一郎君 確かに、後で呼び出されて鑑定人の適格性等を糾問されるというか、そういうこともあろうかと思いますが、ただ、具体的に事件を担当していますと、明らかに偏ったといいますか、初めに結論ありきのような鑑定も出てくる場合もあるんですね。やはりそこの部分を何かせざるを得ないわけでございますが、今御答弁の中で、具体的に鑑定に関する訴訟運営の改善というようなお言葉がございましたけれども、これは具体的に何を指しますか。強硬な訴訟指揮をやる、そんなことは私ないと思いますが。
○最高裁判所長官代理者(千葉勝美君) 改善の提言はいろいろございまして、一つは、まず鑑定人を頼むときに、その事件の概要をまとめた書面を出すとか、争点をまとめた書面を出して鑑定人にお願いするとか、あるいは鑑定人に対する鑑定人尋問をするときにも事前にきちっとした書面を出して尋問をするとか、あるいは鑑定をした事件の結果をきちっと、これは裁判所の問題ですけれども、鑑定人に通知をするとか、そういうような運営改善の提言がされているところでございます。
○魚住裕一郎君 ぜひ適切な運営をお願いしたいと思います。
 さて、またこの法律に戻りまして、今度、裁判官以外の職員が十六名増加ということでございますが、この内訳の中で、書記官が二百四十名増になって、事務官、速記官がそれぞれ百名ずつ減になるということでございますが、書記官二百四十名というのは非常に大きな数に感じられます。
 事務官が枠としての異動というのはわかるんですけれども、具体的な生首として異動するというようなことになるんですか。たしか書記官は書記官の試験があって、また研修も受けるという形になると思いますが、一気に事務官から書記官の方に行くというわけにはいかないと思うんですが、いかがでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) 事務官から書記官になる道といたしましては、書記官研修所に入って研修を受けてなるということでございまして、書記官研修所に入るにも、部内で難しい試験がございますが、その試験に合格した上で書記官研修所の研修を受けてこれで初めてなれると。
 今回、二百四十名の増員をお願いしておりますが、この充員も、書記官研修の課程を修了して今度書記官資格ができるという人を任命する、あるいはそのほかに速記官からの転官者とか定年になりました方の再任用というふうなことでこれを充員していく、こういう予定になっております。
○魚住裕一郎君 そうすると、既にもう事務官の方あるいは速記官の方で書記官の研修を受けている方がおられるということですか。
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) この春に、今度書記官研修所を出て書記官資格を取得するという方が相当数おられる。転官の場合には今後ということもございます、近々ということもございます。
○魚住裕一郎君 このほかにも廷吏さんから事務官への振りかえというのがあるようでございますけれども、これは具体的にはどういうことですか。
○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) 委員も御承知のとおり、廷吏は、法廷内において出頭してきた証人等の訴訟関係人に対する手続教授や準備書面、証拠書類、証拠物の受け渡しあるいは証拠物の展示等を行っているわけでございますが、このあたりをより効率的に合理化を図ることによって廷吏から事務官への給源を生み出せる、こういうふうに考えての結果でございます。
○魚住裕一郎君 終わります。
○橋本敦君 私は、本法案に賛成の立場から問題提起をしたいと思います。
 相変わらず忙しい裁判官という問題が重大な改善を求められる問題になっておりまして、国民のための司法の実現の上からも緊急の課題になっております。
 私は、特に破産事件の関係について、その点を指摘してみたいと思うんですが、最高裁からいただいた資料によりましても、破産事件の新受件数は、平成二年が一万一千二百七十三件、それが平成十一年には十二万二千七百四十一件と十二倍にもなっておるわけですね。
 これを東京地裁本庁、大阪地裁本庁ということで資料を見ますと、法人を除く国民の自己破産事件の申し立ても大変な急増ぶりでございまして、東京は、平成二年、九百三十一件が、平成十一年、九千百八十三件、まさに九・九倍、こうなっております。大阪地裁本庁では、六百九十五件が八千四十六件と、平成二年の十一・六倍にもなっております。
 こうした急増ぶりであることは間違いありませんか。
○最高裁判所長官代理者(千葉勝美君) 今の事件数の数字はそのとおりでございます。
○橋本敦君 こうした状況の背景には、自己破産が最悪十二万件を超すという今日の不況の中での深刻な国民生活の実態があるわけですが、自己破産を申し出た人のかなりの割合が多重債務に陥っている、あるいはリストラなどで職を失い住宅ローンの返済が苦しくなる、そういった国民の苦悩がにじみ出ているわけであります。
 こうした問題を処理するのに、それでは裁判官はどのような状況でふえているかということを最高裁でいただいた資料で見ますと、東京地裁の民事二十部、平成二年は裁判官四名でございまして、それが現在、十一年で十二名、平成二年の三倍。そして大阪地裁民事六部では、平成二年、五名でありますが、これが平成二年のわずか一・六倍の八名という状況にとどまっております。
 裁判官一人当たりの破産事件数を見てみますと、東京地裁は、平成二年が二百三十三件、それが平成十一年には七百六十五件にも増大をしております。そしてまた大阪地裁では、平成二年が一人当たり百三十九件であったものが一千五件というように、平成二年の大変な倍数を示しているわけでございますね。
 こういった裁判官の持ち事件の大変な増加ということになっているということは間違いありませんか。
○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) 東京地裁及び大阪地裁の各破産部におきます裁判官の員数がそういった状況であり、事件を平均して割れば今おっしゃったような数になることはそのとおりでございます。
○橋本敦君 事件は十倍にふえているのに、担当裁判官の数は一・六倍とかあるいは三倍とかという程度にとどまっておる。こういう現状は、こういう指数から見ても、いかにバランスを欠くものであるか。まさにこの点については、裁判官の増員ということがまだまだ必要だということを示していると思うのですが、最高裁はどう考えておられますか。
○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) 委員も御承知のとおり、倒産事件とか和議事件におきましては裁判所書記官の役割が非常に大きいところでございまして、裁判所書記官につきまして見てみますと、東京地裁の場合には、書記官等十三人から平成十一年には書記官等五十一人まで増員してまいりました。また大阪地裁におきましては、書記官等二十五人から書記官等五十二人にまで、こちらもふやしてきているところでございます。
 さらに、事務処理上の工夫といたしまして、破産事件処理システムというコンピューターによる、OA化による事務処理の効率化を図ってきておりますし、窓口相談等を効率的に行うため定型申し立て書を備え置いたり手続をわかりやすく説明したリーフレットを配布するなどして、その適正迅速な処理に資するようさまざまな工夫を凝らしてきたところでございます。
 他方でまた、今回もお願い申し上げておりますように、裁判官も逐次増員してまいりましたし、今後とも、そういった事件動向等を見ながら、より一層適正迅速な処理ができるように考えてまいりたい、こういうふうに思っております。
○橋本敦君 そういったいろんな努力をされていることを否定しませんが、結論的に言って、まだまだ裁判官なり職員の増大が国民のニーズから見て必要だということは認識されておられますね。そのことをはっきり聞いておきたいんです。
○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) 今回も、平成十二年度につきましてもそのあたりのところをきちんと検討した上、その必要性があると認めて裁判官、書記官の増員をお願いしている、こういうことでございます。
○橋本敦君 今後ともその増員について私が指摘したようなそういった実態と認識を踏まえて一層努力されるということは間違いないですかと、こう聞いているんですよ。ことしこれでいいということを聞いているのじゃないんです。
○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) 今後とも同様の姿勢で臨んでいきたいというふうに考えております。
○橋本敦君 話題を変えるんですが、農水省汚職があり、新潟県警あるいは神奈川県警の腐敗があり、さらにそれだけではありません、政府の諸機関におけるいろんな重大な問題が起こっておりまして、まさに法秩序を維持する司法、そしてまた厳正に不正な違法行為を取り締まる検察の任務というのは、私はますます重大になっていると思うんです。そういった観点から、この機会に私は防衛庁の問題について質問しておきたいと思うんです。
 防衛庁に伺いますが、秀島容疑者、これが自衛隊第一空挺団普通科群長であったわけですが、民間人三人と自衛隊の小銃あるいは機関銃とも言われておりますが、こういう違法射撃事件を起こした。このことがなぜ今日まで明らかにされなかったのか、端的に言ってください、防衛庁。
○政府参考人(新貝正勝君) お答えいたします。
 平成六年の十一月十六日、当時の第一空挺団普通科群長の秀島一佐が東富士演習場内の射場において部外者三名を見学させた際、そのうちの一名が携行していたライフル銃を借り受け射撃を実施した事案に関しまして、本年一月中旬、部外から処分に疑義があるのではとの問い合わせがあり、直ちに調査に着手いたしました。その結果、処分を含め当時の本事案の処理が不適切であったと判断し、本年一月二十日、処分等当時の検討の経緯等を改めて徹底的に調査するよう防衛庁長官から陸上幕僚長に指示を行いました。
 防衛庁長官から陸上幕僚長への指示を受けまして、自衛隊において、陸上自衛隊警務隊等によって捜査を実施してきましたところ、新たに平成六年十一月十六日ごろ東富士演習場の射場において小銃を違法に射撃したというふうなことが判明した次第でございます。
○橋本敦君 新たにわかったと言いますけれども、そこには重大な疑惑がありますね。例えば、そのときにライフル銃を撃ったというその事実でもって報告書を陸幕長にも上げ、訓戒処分にしたと。ところが、そのときに小銃発射事件は報告されていなかった、これは事実ですね。端的に言ってください。
○政府参考人(新貝正勝君) 当時は、これは猟銃射撃事案ということで処理をされておるところでございます。
○橋本敦君 私が指摘したとおりでしょう。報告されていないと。
 猟銃射撃事件だということで処理をしたということで、陸上自衛隊でこの報告について一体どういう報告を上げているかということになりますと、群長みずから隊員の眼前で行ったこの行為というのは明白に規則違反で、「群の規律及び健全性の保持という点で重大な問題である。」と。ところが、「この事案が外部に漏れ自衛隊の威信失墜となることを懸念していたが、発生から一カ月以上事案が判明した現在、」、一カ月以上たって事案が判明した現在、「部内的には当日関係した隊員の一部が疑念を持っている以外部隊内での風評もなく、厳正に措置すれば隊員からの告発などはないものと思われる。また、民間人三名の調査隊による背景調査及び過去の自衛隊との関係からして民間人自身から事案が表面化する恐れはないものと推測される。」、こういった報告書を上げて、そして部内の厳正な規律を取り締まるんではなくて訓戒という処分で済ませてしまった、こういう経過がある。
 これは朝日新聞でも報道されておりますが、こういうような報告書が出されておったという事実は、私の手元にこの報告書のコピーがありますが、間違いありませんね。
○政府参考人(新貝正勝君) 今、委員御指摘のような内部文書があるということは国会等でも御返答、御返事いたしているところでございます。
○橋本敦君 その結果、本来、ライフル銃発射という事案はこれはまさに銃刀法違反の行為ですから刑事処罰にすべき事案ですよ。警務隊が捜査をして検察庁に送らなきゃならぬ。この罰則は五年以下の懲役または罰金ですから。ところが、これはそういう扱いをしたために、公訴時効五年で既に時効が成立した。まさに犯人を隠して時効を成立させて刑事責任を追及できないようにしたのは自衛隊なんですよ、いいですか。そういうことをやっておることは許せないじゃありませんか。
 そして、今回は小銃発射事件ということで、今検察庁が調べられておるんですが、これはどういう罪名、どういう事実ですか、検察庁。
○政府参考人(古田佑紀君) 御指摘の事件は、現在、静岡地方検察庁沼津支部において平成十二年三月十四日に送致を受けて捜査中でございますが、その罪名は銃砲刀剣類所持等取締法違反幇助被疑事件でございます。
 その送致事実の要旨は、秀島一等陸佐は、平成六年十一月十六日ころ陸上自衛隊東富士演習場内において、民間人三名に対し法定の除外事由がないのに自衛隊所有の武器である小銃一丁を順次貸し付け、さらに同小銃に適合する実包約四百発を順次弾倉に入れた状態で譲り渡し、もって同人らが同小銃とこれに適合する実包をともに射撃のため携帯して所持することを容易にして、これを幇助したというものでございます。
○橋本敦君 これらの行為はもちろん銃砲刀剣法違反幇助罪ということで検察庁は厳正に捜査を今やっていると思いますが、四月三日が勾留満期だと聞いておりますが、それに向けて厳正な捜査を遂げることはこれは間違いありませんね。
○政府参考人(古田佑紀君) 御指摘のとおり、検察当局におきましては必要な捜査を尽くし、事案の実態に即した処理を行うものと考えております。
○橋本敦君 ところが、新聞等の報道によっても、陸上自衛隊の東部方面警務隊はこの事件を実は把握していた、そしてこれを把握していたけれども、これは上部の方でどこかで消されたのではないかという重大な疑惑が出されておるんですね。
 警務隊の任務は自衛隊法九十六条第一項で規定されておりますが、自衛隊施設内で起こった犯罪については司法警察職員としての職務を行う、こうなっておりますから、この事件についても厳重にやらなきゃならぬのに事件の報告すらしていない。報告すらしていないということは、防衛庁、間違いないでしょう。
○政府参考人(新貝正勝君) 猟銃の射撃事案につきましては、猟銃射撃事案が発生当時防衛庁長官に報告されなかったということは事実でございます。
 それから、陸幕及び部隊における処分等の検討経緯、また小銃違法事案事件が発生当時報告されなかった理由等につきましては、現在その調査を行っているところでございます。
○橋本敦君 報告されなかった理由は今調査中だとおっしゃったから、報告されなかった事実はあったということは間違いないですね。
○政府参考人(新貝正勝君) 猟銃射撃事案、それから現在の小銃射撃事案、ともに当時報告されておりません。
 それで、小銃射撃事案については、今回、防衛庁長官が徹底的な調査を命じた結果、そのことが判明したわけでございます。
○橋本敦君 だれがどうして隠していたんですか、防衛庁。
○政府参考人(新貝正勝君) まさに先ほど申し上げましたように、なぜ当時報告されなかったか、どういうルートであったのか等について現在調査をしているところでございます。
○橋本敦君 その調査は徹底的に行うことが必要であるし、厳正な調査が必要である、これはもう言うまでもありません。それは徹底的に調査をして、なぜこういう重大違法行為について報告もあるいは刑事責任の追及も今日まで、新聞で明らかになるまでしなかったのか、重大な責任問題ですから、厳正に調査するということをはっきりここで約束してほしい。どうですか。
○政府参考人(新貝正勝君) 先ほども経緯で申し上げましたように、防衛庁長官は一月二十日に……
○橋本敦君 経緯はもういいです。厳正にやるかということです。
○政府参考人(新貝正勝君) これを厳正に調査せよということで指示をいたしておるところでございます。我々はそれに沿って徹底的な解明に向けて厳正に対処してまいる所存であります。
○橋本敦君 厳正に調査をした結果、厳正に処理しなきゃならない。
 神奈川県警の渡辺本部長にかかわる神奈川県警警察職員の覚せい剤取締法違反事件について、これを事実を隠して、この事件について犯人を隠避したということで検察庁は犯人隠避罪によって起訴をしている。今、公判中であることは間違いありませんね。
○政府参考人(古田佑紀君) 御指摘のとおりです。
○橋本敦君 私は、今回の事件も防衛庁の組織的な事実の隠ぺい、そして刑法的には犯人隠避罪の可能性がある重大な事案だと思うんです。
 犯人隠避罪ということになりますと、これは神奈川県警の県警本部長が起訴されておりますけれども、重大な事案ですから、国民の信を問うという意味からいってもこれは徹底的、厳正にこの点を明らかにしなきゃならぬ。
 防衛庁は徹底的に調査をしてその責任も究明する、こう言っておりますが、検察庁としてもこの事案の捜査の一環として犯人隠避の犯罪の可能性を含めて徹底的な捜査をするということを私は責任を持ってやっていただきたいと思いますが、法務省、いかがですか。
○政府参考人(古田佑紀君) どのような事件を捜査の対象にするかということにつきましては、捜査当局において具体的な資料あるいは証拠に基づいて判断されるべき事柄でございますので、法務当局としては答弁を差し控えたいと存じます。
 ただ、一般論として申し上げれば、検察はどのような事件でございましても真相解明に向けて徹底した捜査を行い、刑事事件として取り上げるべきものがあればこれは法と証拠に照らして適切に対処するものと考えております。
○橋本敦君 したがって、防衛庁は徹底的に調査をしてしかるべき処置もとると。その結果、今調べている事件との関連で犯人隠避という犯罪の可能性もあるということを視野に置いて、法と証拠に基づいて今後厳正にそれも視野に置いて捜査を進めてもらうということが必要だと思うから聞いているんです。そういう観点で、厳正に捜査をするということは当然ではありませんか。
○政府参考人(古田佑紀君) ある事件を処理いたします際には、その事件の立証及び事件の真相を解明するため必要な範囲において捜査をするものでございまして、その中で刑事事件として取り上げるべきものがあれば、先ほど申し上げましたとおり、当然これにも適切に対処していくということでございます。
○橋本敦君 最後に聞きますが、したがって、今お話しのような経過の中で防衛庁内部の実態が明らかにされ、犯人隠避という刑法に触れる違法行為があるという状況になれば、検察庁は当然それも視野に置いて厳正に捜査をやるということは当たり前ですね。
○政府参考人(古田佑紀君) たびたび同じようなことを申し上げてまことに恐縮でございますが、若干仮定が入りますので、そのことについて具体的にお答えすることは差し控えたいと存じます。
 ただ、いずれにいたしましても、先ほど申し上げたとおり、捜査の過程で当然刑事事件として取り上げるべきものがあれば、これには当然厳正に対処するということでございます。
○橋本敦君 刑事事件として取り上げるべきものがある、その一つの問題として犯人隠避という重大な問題がありますよ。これも視野に置いて厳重な捜査をするということを私は強く求めて、質問を終わりたいと思います。
○福島瑞穂君 社民党の福島瑞穂です。
 判検交流あるいは行政に出向した裁判官の問題についてお聞きをしたいと思います。
 国の代理人であった裁判官が全く同じケースで裁判を担当したことはありますか。
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) 同じケースということでございましたら、それはございません。そういう事件が来れば、当然裁判官は回避いたします。
○福島瑞穂君 行政に出向した裁判官がその後行政部の裁判官になっているケースがかなりあります。つまり、東京地方裁判所や大阪地方裁判所、横浜、浦和、京都、神戸、名古屋、それぞれの裁判所は行政事件を扱う特別の行政部がありますけれども、そこの行政部の裁判官はかつて行政庁に出向経験を有する人がかなり占めております。現在では三十四名中七人、去年は三十四名中七人、平成十年度は三十七人中八人、平成九年度は三十五人中八人。
 それで、もっと問題だと思いますのは、例えば戸籍の通達に関して情報開示を求めた裁判で、判決を出す裁判官がかつて東京法務局の訟務部長をしていらした。あるいは、戸籍の続柄差別をなくしてほしいという裁判を提訴したところ、担当裁判官は幾ら何でもできませんけれども、三人裁判官はいますけれども、その合議部の部長がかつて法務省の戸籍担当課長であった。
 つまり、私たちは裁判所に行って裁判に対して救済を求めたところ、何ということはない、その裁判官はかつて、全く同じケースはやっていないにしろ、行政の経験者である。場合によってはその類種の事件を担当した可能性はあるという裁判官が現に座って判決を出し、先ほど言った情報公開のですと負けております。
 全部の情報公開の裁判を今回調べることはできなかったんですが、六つの情報公開してくれという裁判で、開示せよという判決と非開示でいいという判決と両方出る可能性があるわけですが、非開示、開示しなくていいといった判決の裁判官、どういう裁判官が占めているかと調べますと、行政出向経験者がおります。かなりおります。
 この点について、非常にこれは問題ではないかと思うのですが、裁判所、いかがですか。
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) この問題については、たびたびお答えしているところでございますが、もちろん同じ事件は先ほど申し上げましたように担当いたしませんし、たとえ同じ部におりましてもほかの人が担当した事件について口を差し挟むというふうなことはないわけでございますが、それはそれといたしまして、法律家はいろいろな仕事をいろいろな立場でするわけでございまして、裁判官にも弁護士や検察官からなれるということになっております。では、検察官からなった人は、昔は訴追側だったからそういう方向でしか物を見ないかということはないんだろうと思います。裁判官になりましたら、それは中立公正な両当事者の主張を聞いて判断するという立場で判断する。弁護士でありましても、かつてはいろいろな依頼者の弁護、代理人としてその利益、法的立場を擁護するためにいろいろな主張をすると思いますけれども、裁判官になったときにそういう立場、かつての立場にとらわれて判断をするということはないんだろうと思います。
 これは、そういうことからすれば現在の制度が成り立たないということになるわけでございまして、行政の経験を有する人がそういう行政に関係するような事件をするからといって常に行政の味方をする、そういうものではないというふうに思っております。
○福島瑞穂君 全く納得できないんですね。現代のような行政国家では、行政権のチェックが裁判所の大きな役割であるというのは教科書などに書いてあります。行政権のチェックをすべき裁判所が行政と一体になっているかのような様子を呈している。
 平成十一年十月一日段階で行政に出向している裁判官は百四十三人です。裁判所は非常に規模が小さいですから、地裁、高裁、最高裁で裁判官の数は約二千人、そのうち、定員には入りませんが、百四十三人の裁判官が出向している。数の大きさからいって非常に多くの裁判官が行政に出向している点についてはいかがですか。
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) 出向先の内訳などにつきましてもこの委員会等におきまして申し上げていると思いますが、出向している先もいろいろでございます。理由もいろいろございますが、一つには、各省庁で裁判の経験がある法律家が担当するにふさわしい仕事がありまして、そういうところへ裁判官が来て仕事をしてくれないかという要望があるわけでございます。あるいは、若い裁判官などで、例えば外務省へ行きまして、外交官、アタッシェになって、そういう仕事をしておるのもございます。
 こういうものは裁判官が非常に幅広い経験を積んで識見を高める、広い視野を持つということで、出向している間は実質の裁判の仕事をしておりませんからそういう点では痛手ではございますけれども、しかし、それは帰ってまいりますならば、そういう広い視野を持った裁判官として帰ってくるわけでございますので、これは全体として長い目で見れば非常に裁判所にとっていいことであるというふうに思っております。
○福島瑞穂君 識見を持つことが必要であれば、判事補制度、キャリアシステムをやめて、弁護士やジャーナリストや学者などから判事を、広いいろんな経験のある人から判事を採用するというふうにすればいいじゃないですか。
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) 司法一元制度の是非というふうな問題につきましては、ただいま司法制度改革審議会で議論をしているところでございます。
 これはこれで一つの大きな問題でございますが、今私が申し上げておりますのは、現在、現実問題としてはキャリアの裁判官が大部分でございます。こういう方々にどういうふうな経験を積んでいただいて広い視野を持っていただくかという見地から物を考えますときには、今申し上げておりますような行政庁でさまざまな経験を積むということも有益である、こういうふうに思っているわけでございます。
○福島瑞穂君 最近は、短期間民間企業に行っているのもあると思うんですが、全くお答えになっていないと思うんですね。つまり、キャリア裁判官システムの問題点、今おっしゃったようにキャリアとして採用される裁判官の識見を高めるために非常に行政偏重に、行政にのみと言っては大げさかもしれませんが、民間企業は最近ちょっと出ておりますが、行政にのみ出向を百四十三人している。
 寺西裁判官は、いわゆる盗聴法の集会に出ないで、きょうは発言できないと言っただけで、言外に反対する意思を示したと仙台高裁で言われ、最高裁でも戒告処分は有効になりました。ですから、普通のいろんな市民運動やNGOや集会に行くこともできない、集会で発言することもできないという状況を一方でつくっておきながら行政とだけ仲よくするということは、今の裁判所の最大の欠点である。キャリア裁判官システムの問題と判検交流の問題は、司法制度改革の中で最優先としてやらなければ国民の信頼はかち得ないというふうに思います。
 私は、なぜ裁判所が優秀な人材を行政を勝たせることにのみ力を注ぐのかというふうに思います。行政が訴えられたときの裁判官は、国の側の被告席に座り、どうやって行政が勝つかということに関して知恵を絞り、書面をつくり、頑張るわけです。その裁判官が裁判所に戻る。
 また、ひどいと思うのは、清算事業団、国労の問題がありますけれども、清算事業団は法的に弱いから裁判官を呼んだわけです。裁判官、来てくれ、頼むと。裁判官は清算事業団で、どうやったら裁判所で国労側が負け、清算事業団、国が勝つかということの理論を一生懸命考えるわけです。その結果、労働委員会で全部勝っていた国労の事件は、裁判所に行って負けました、千四十三人のケースに関して。もちろん、同一の裁判官は裁判をしませんけれども、清算事業団に出向し、清算事業団の法規担当をやった裁判官は裁判所に戻るわけです、東京地裁に。同僚の裁判官たちがそこで、じゃ勝たせるかというふうに思います。裁判所の有能な頭脳や人材をなぜ行政にのみ加担させて、私から見ると、そんな汚いことをやらせているのか、お答えください。
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) 行政へ出向して仕事をすることの意義は、先ほど来申し上げていることでございますが、それ以外のことにつきましても、委員今御指摘になりましたように、裁判官を民間企業に長期に派遣して、中でいろいろそういう民間の仕事のありようというものを学ぶということもやっております。
 それから、先ほど申し上げましたように、これは一応身分は行政官でございますが、外国のアタッシェ、外国の外交官になりましてアタッシェとしていろいろ世界を見る、留学をしていろいろ見るというふうなこともやっておりまして、いずれにいたしましても、いろいろ幅広く勉強するということが大事だと思っております。
○福島瑞穂君 行政に出向し、そこで立法をしている裁判官はいますか。いるとすれば、どのような法律に関係していますか。
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) 行政庁に出向して立法作業に携わっている裁判官は確かにおります。例えば、法務省の民事局に出向している裁判官は民事の基本法令の立案等の事務に携わっております。
 ただ、個々の出向者は具体的にどういう法律の立案に携わっているかというふうなことは出向先での内部的な担当事務のことでございますので、その詳細までは裁判所では承知しておりません。
○福島瑞穂君 裁判官は各省庁からすれば有能であり、かつそのもとの役所とのひもつきがないために非常に使い勝手がいいというふうにも言われているというふうに聞いております。
 例えば、外政審議室に出向した裁判官がPKO法案を外務省と一緒につくったというふうにも聞いております。そうしますと、議員立法が少ないという日本の欠点もありますけれども、立法もやり、行政部にも行き、そして裁判所に戻るというと、中村敦夫さんなどもよく質問されていらっしゃいますが、三権分立ではなくて、まさに三位一体、見聞を広めるというのはいい言い方だけれども、その三権の行政の中で裁判官が仕事をしている。これはもう大至急改善されるべきである。
 司法制度改革審議会が議論になっておりますけれども、国民が思っているのは、国民にとって裁判所が自分たちのためにやってくれるかどうかということなのです。行政裁判を起こしたら、その裁判官がかつて行政部に行っていた人に当たる可能性がかなりあるとすれば、勝たないですよね、こういうふうに裁判を起こしても。それはやっぱり国民にとって身近な裁判というふうにはならないと思います。
 ぜひその点について、裁判所が行政といつも友好関係を持ち、たくさんの人材、十分の一以上を毎年出向させていることを改善してくださるよう、あるいは今後司法制度改革の中でもっとやってくださるよう要望します。
 ところで、法務省は、なぜ多くの裁判官を働かせているんでしょうか。どんな必要があるんでしょうか。
○政府参考人(但木敬一君) 法務省の所掌事務でございますが、裁判制度を含めました司法制度あるいは民事、刑事の基本立法、これを所管しております。したがいまして、現場の経験のある裁判官がそうした基本的な法令の立案に参画していただけることは非常に大切でございます。
 その他、法務省には法律関係事務が多いということから、専門的な知識を有し、また法律家としての気構えを持っておられる裁判官が法務省の仕事をしていただけるということは、それなりの意義があるというふうに私たちは考えております。
○福島瑞穂君 検察官以外の人で法務省で次官になった人はいますか。法務省の一般職で官房長になった人はおりますか。
○政府参考人(但木敬一君) まず、事務次官でございますが、これはないと思います。それから、官房長ですが、これもないと思います。
○福島瑞穂君 法務省の一般職で一番出世をしている人はどのポストまで行っていますか。
○政府参考人(但木敬一君) 現在、本省課長以上で検事の者が四十名ございます。それに対しまして、事務官から本省課長以上になっている者は十五名おります。その中には、いわゆる官房審議官クラス等を含んでおります。
○福島瑞穂君 法務省は非常に奇妙な役所のような気がします。というのは、民事の部分については優秀な裁判官を裁判所から引っ張ってきて外人部隊をフルに活用していく、そして刑事の部分では検察官が上の方を占めていて、いわゆるかつての国家上級あるいはT種に合格して一般職で入った事務職の人たちは例えば次官や官房長になれない。つまり、今の法務省は、民事の方に目を転ずれば裁判所の裁判官が頑張っていて、刑事の方を見ると検察官が頑張っている。これは法務省の姿として私はやっぱりおかしいと思います。外人部隊が民事局で頑張るというのもおかしいです。
 但木官房長は今まで衆議院でも答弁されていらっしゃいますけれども、私は、法務省はなぜ独自の職員の育成をしないのか、裁判官を引っ張ってこないで済む、それは先ほど言ったように三権分立の点から問題があるわけですから、法務省は事務職の人の育成をぜひやってほしい。国会に来て思うのは、調査室や法制局、極めて優秀な若い人たちがいっぱいいます。法律家でなくても法律家以上に非常に優秀な人たちがたくさんいます。
 今すぐ、例えば半年後に判検交流をやめろというのが難しければ五年後にはなくなるように、今から法務省は人材育成を始めていただきたいと思いますが、どうでしょうか。
○政府参考人(但木敬一君) いろいろな問題を含んだ御質問でありまして、幾つかに整理されると思います。
 一つは、裁判官が法務省に来て検事として活躍することの当否の問題。
 これは基本的には法律家、これは委員もそうですので、言うまでもなくその価値は何物にも拘束されず法律と独立した法律家としての良心、この二つだけを持って仕事をするというのが法律家の価値であるというふうに思っておりまして、そういう意味では、弁護士であろうと裁判官であろうと検事であろうと、あるいは時によっては学者であろうと、法曹がそういうところでそういうマインドを持って活躍する場というのはいろいろ与えられるべきであろうと思います。法曹一元という思想の中にはそうした法律家の特性に応じた考え方があるように思います。
 この問題につきましては、現在、司法制度改革審議会が開かれておりまして、今後一体、裁判官、検察官、弁護士あるいは学者も含めたそうした法曹のお互いの交流というのはどうあるべきかという根本問題ですので、そこで御論議いただけるものというふうに思っております。
 もう一つの御質問の中身は、法務省において一般職の職員を育成すべきではないかと、これはまた別の問題だと思います。
 その点については、私どもも非常に大きな展望を持つべきであろうという御指摘はそのとおりであろうと思います。現在におきましても、昔から比べれば本省の課長の数は一般職の人がかなりふえてきております。今後、そうした一般職の中で有能な人たちを本当に適材適所というのを口だけではなくてこれから考えていくべき時期に来ているということは、御指摘のとおりであるというふうに思っております。
○福島瑞穂君 わかりました。
 以上です。ありがとうございました。
○平野貞夫君 議題となっております裁判所定員法改正案、これで、判事補が七十人それから裁判官以外の職員が十六人増員されることになるわけですが、昨年の三月三十日に当委員会で同改正案に附帯決議をつけておりまして、その附帯決議には大幅に増員すべしと、こういう内容があったわけでございます。
 この数が大幅かどうかということについてはいろいろ判断があると思いますが、一定の評価をしたいと思います。自由党としては、そういう意味で賛成でございます。
 ただ、今回は附帯決議はございませんですが昨年の附帯決議は生きているというふうに理解しておりまして、さらなる努力、そして数も大変大事なことでございますが、資質の向上、こういうものにも法務大臣、最高裁判所、努力するよう要請しておきます。答弁は要りません。
 私は、前々回から、一昨年十月に牛久市で発生した岡崎少年事件の問題をここで取り上げておりますが、その問題を取り上げる前に法務大臣にちょっと確認しておきたいことがございます。
 実は、先般の委員会で大臣の元秘書の証人喚問要求が出て、理事懇でこれが協議されて、私は、委員長がこれは議調わずということでいわゆる協議事項から落ちたと、こういうふうに理解しておりました。その後、新たに証人喚問の要求が出て、再び協議事項になったという認識を持っております。
 ただ、法務大臣という非常に重要な職責、そしてこれから重要な法案を審議する中で、理事会で大臣関係の証人喚問問題をぶら下げながら審議するということは非常に私は適切でないと思いまして、この際、確認をしておきたいと思います。
 大臣のお立場が、当事者というとちょっとおかしいですが、元秘書との関係でいわゆる政治家としての立場が一つあるということと、それからこの問題は当然告発されて検察の問題になっているわけですが、検察の最高指揮官としての立場と二つあろうと思いますが、先般の委員会ではどうも検察の立場というものに配慮をされたのではないかと思いますが、私が理解しているところでは、検察の捜査を見守りたいというスタンスの御回答があったと、したがってそれが我々理事懇等で証人喚問問題を適切に処理できない一つの原因になっていると思います。
 そこで、ひとつ政治家の立場ということで御関係はどうであったか。私も、二十年千葉県に住んでいまして、大臣のお父さんの時代からよく承知しておりますが、大臣が、若干の監督責任はあったとしても、こういうことで不正をなさる方ではないと私は信じておるんです。そこら辺のことについて政治家としての御決意をいただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。
○国務大臣(臼井日出男君) こうした場ではっきりとお答えできる機会を与えていただきまして、ありがとうございました。
 私自身は、ただいま問題になっております脱税コンサルタントとは全く面識がございません。したがいまして、政治献金を受けたこともございませんし、残念ながらパーティー券については実は確実に確認する方法はございませんが、しかし私は買っていただいていない、こういうふうに確信をいたしております。
 そして、私の元秘書をめぐる問題につきましても、秘書から今回の件について相談を受けたりしたこともございませんし、仲介をしたこともございませんし、また秘書が受けたとされるものの中から金品を受け取ったということもございません。
 したがいまして、先般来申し上げておりますとおり、私自身のことにつきまして検察当局の捜査の公正さが疑われるおそれを生ずることはないということを申し上げているわけでございます。
○平野貞夫君 わかりました。
 以上のような御答弁を参考にして、これから理事懇で我々も対応していきますが、委員長に要望しておきますが、なるべく早くこの問題を処理するように要請しておきます。
 さて、短い時間ではございますが、岡崎少年事件のことについて最高裁判所に若干の確認をしたいと思います。
 昨年八月、土浦の家裁支部の判決を御両親は問題としまして、特に家裁が選任した方によって行われた鑑定が真実を曲げたんじゃないか、こういうことでことしの三月に三つの民事損害賠償請求を提訴しております。
 これは、両親にとりましては真相の解明、真実を知ることが目的でございます。その提訴の裁判の中の一つに、岡崎少年の遺体のある部分が、重要な部分が保存されておりますのでこれを改めて鑑定するように、こういう要請を提訴でしているわけでございます。この鑑定ができるかできないかということがこの問題の真相、真実を知るかぎだと私も思っております。
 そこで、最高裁判所にお尋ねしますが、一般論として、裁判で行う鑑定というのはどういう目的でやるんですか。
○最高裁判所長官代理者(千葉勝美君) 民事事件においての鑑定でございますが、これは正しい事実認定をして適正な判断をするということのために、学識経験を有する専門家の知見を活用するということのために鑑定が行われているというふうに承知しております。
○平野貞夫君 正しいことを知る、真実を知るために鑑定というのを行う、こういうことでございますね。
 鑑定を行う際に、私は法曹の素人でございますから教えていただきたいんですが、弁護側の要請で鑑定する場合、あるいは提訴した側の要請で鑑定する場合、いろいろあると思いますが、決定するのはどこ、あるいはだれが決定するんですか、鑑定するということを。
○最高裁判所長官代理者(千葉勝美君) 鑑定を採用いたしますのは、事件を担当する裁判所でございます。
○平野貞夫君 裁判所といいますと機関ですね。そうすると、裁判官が会議を開いて決める、こういうことでございますか。
○最高裁判所長官代理者(千葉勝美君) 判断をいたしますのは裁判体でございまして、単独で事件を処理する場合にはその裁判官、合議体で事件を処理する場合、その合議体が決定するということでございます。
○平野貞夫君 真実を確認するため、真相を解明するために鑑定が行われる、その鑑定を行うのは裁判官あるいは裁判官の会議だ、こういうことなんですが、鑑定の必要性を促す動機みたいなもの、これはどんなものなんですか。私、素人でございますから、ちょっとわかりやすく説明していただきたいんです。
○最高裁判所長官代理者(千葉勝美君) 一般論で申し上げますと、鑑定の必要性につきましては、事案の内容、性質、当事者の主張、証拠などを総合的に勘案して判断するわけでございますが、いわゆる学識経験を有する者の知見を必要とする、そういう人たちに判断をしていただいた方が事件の処理に適切ではないかというような場合に鑑定が採用されるというふうに考えております。
○平野貞夫君 先ほども魚住先生から質問がございましたように、鑑定で果たして真実が証明できるかどうかという問題があると思います。特に、岡崎少年事件の場合にはそれが大変重要な問題になっておるわけです。個別のことを余りここで最高裁に追及しても一つの限界があると思うんですが、私は、率直に言いまして、一般論を言いながら個別のことを追及しているわけなんです。
 そこで、刑事事件の判決が原因で民事損害賠償請求が提訴された、そういうケースで鑑定が行われた例というのはございますか。
○最高裁判所長官代理者(千葉勝美君) 具体的な事例は把握してございません。
○平野貞夫君 理論的にはできますか。
○最高裁判所長官代理者(千葉勝美君) 民事事件の処理において必要であるというふうに判断される場合につきましては、刑事事件において鑑定が行われた場合であっても、民事事件において改めて鑑定が採用されるということは理論的にはあり得るところでございます。
○平野貞夫君 理論的にあり得るということは、要するに当該裁判所が、真実、正義を確立するために、このことについては鑑定が必要だという判断が必要だと思います。
 そこで、この岡崎少年事件の場合に、弁護士さんを初め遺族、そしてそういう方々の要請を受けてここで私は質問しているわけでございますが、そういう中で、土浦家裁のやった、選任した鑑定は極めて重要な問題があって、この問題を追跡していきますと、一岡崎少年事件の問題だけではなくて、裁判あるいは司法あるいは警察の鑑定のあり方そのもの、ひいては日本のそういう司法制度の根っこにかかわるような、信頼性にかかわるような問題があるというふうに私は確信して今取り上げておるわけでございます。十分足らずの時間で十分なことを言い切れませんが、改めてまた機会があったらお尋ねしたいと思います。
 改めて鑑定をするという場所は東京地裁でございます。そして鑑定する材料も残っております。それから、私たちの判断ではこれは鑑定しなければ司法の信頼性を失う重要な問題だという問題提起をこの国会の場でもしますし、それから国民的なものもしていきたいと思っております。
 率直に言いまして、刑事事件の判決について国会でああだこうだということを言うということは、これは適当なことじゃないんです、本当は。しかし、あえてそれを言わざるを得ないというところに、私は非常に今の裁判システム、司法制度に問題があるという認識をしておりますが、最後に私の今の思いについて大臣から一言コメントをいただければありがたいと思います。
○国務大臣(臼井日出男君) 大変恐縮でございますが、個別の問題についてはお答えできないわけでございますが、私ども検察といたしましては、警察が捜査を尽くして送致した少年事件につきまして、さらに被害者及びその御遺族の心情に十分に配慮しつつ徹底した捜査を行いまして、少年審判において適正な事実認定が行われるよう最大限の努力をすべきだと考えております。
○平野貞夫君 時間が参りましたので終わります。
○中村敦夫君 簡易裁判所についてお尋ねいたします。最高裁、お願いします。
 裁判所職員定員法によりますと、簡易裁判所判事というのは七百九十四人と定まっているわけですね。法務委員会の調査室の資料によりますと、現在の人数が七百六十人。ところが、最高裁の報告書では六百四十八人というふうになっています。明らかに数字が違うんですが、この数字のずれは何なのかということをお尋ねしたいんです。
 それからもう一つは、これも法務委員会の調査室の資料ですけれども、地裁の判事及び判事補で簡易裁判所の判事を兼任しているのが判事が五百二十人、判事補が三百五十七人、合計で八百七十七人いるんですね。この人たちは一体何なのか。臨時応援団というものなのか。要するに、それほど簡裁の判事が足りないということなのかということもお聞きしたいんです。
 それから、兼任者の一部が簡裁判事の定員の中に含まれているのか。どうしてもこの数字が合わないんですよ。含まれているとすれば、いない人との線引きはどうなっているのか、そのことについてお聞きしたいんです。
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) お答えいたします。
 違うところのお尋ねにお答えしたためにその辺のわかりにくさが生じていると思いますが、専任の簡裁判事六百四十八人というのは、他の官職を兼任していない人、純粋の簡裁判事でございます。ですから、兼判事と兼判事補とかいう人は含まれていないわけでございます。現在員の中には、簡裁判事を本務として判事補を兼務しておる者がございますので、それが六百四十八人と現在員との差になるわけでございますが、他方、法務調査室の資料の地裁の判事、判事補で簡裁判事を兼任しているという人たち、これは多数おるわけでございますが、この人たちは簡裁の仕事というのを主としてやっているということではございませんで、例えば地裁の判事、判事補でございましても、令状請求などでは簡裁に対する請求というのはございますので、そういうふうに令状の処理等をするために簡裁判事の資格が必要であるというふうなことから簡裁判事の兼任をしておる、こういう関係になっております。
○中村敦夫君 ちょっと非常にわかりにくいんですね。数字をいろいろと調整してみたんだけれども合わないんですが、わかりやすい表を提出していただきたいと思うんです。
 二番目の質問として、簡易裁判所というのは、少額訴訟とか小さい争いを専門的に扱うわけですね。簡易裁判所の判事というのは、簡裁判事選考委員会というものの選考によって任命されているわけですね。司法試験を通っていない書記官など長く勤めた人も多く選ばれているわけです。定年も七十歳という非常に高齢になっています。つまり、扱う用件が小さくて比較的易しいということで、任命要件というものが緩和されているわけなんです。実際に、専任の簡裁判事六百四十八人のうち、司法試験合格による法曹資格を持っている人は九十人だけなわけですね。それはそれでいいとして、こういうことがあるんですよ。
 簡裁判事が地裁において裁判に関与しているということがしばしばあるんだというふうに関係者の間で話題になっているんです。これが事実であると大変問題だと私は思うんです。地裁裁判に関与する簡裁判事のうち、法曹資格のない者も含まれているのか、あるいは地裁判事や判事補が簡裁の応援をしているような状況で、なぜ逆のことが起こっているのかということをお答えいただきたいんです。
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) 委員がおっしゃいましたように、簡裁判事の中には、法曹資格を有しませんで、選考試験で簡裁判事になった方がいらっしゃいます。この方たちは法曹資格がありませんので、地裁の判事とか判事補には任命できないわけでございまして、当然のことながら、そういう資格で簡裁判事になっておられる方は、地裁で裁判する、関与するということはございません。
 簡裁判事が地裁で裁判に関与していることがあるというのがどういうところから出てきたのかよくわかりませんが、先ほどから申し上げておりますように、兼任者がおります。簡裁の方でかなり仕事をしている若い判事補がおりまして、そういう方は法曹資格がございまして、これは法曹資格を得て、修習生を修了いたしまして三年裁判官をやっておりますと簡裁判事に任命できる資格が出るんですが、そういう人たちが簡裁の仕事もやりつつ地裁で判事補の資格として訴訟事件の合議の陪席をするとかその他の判事補としてできる仕事をする、これはあり得ると思います。
○中村敦夫君 今のお答えとも関連するんですけれども、少額訴訟制度というものが一昨年から始まりました。で、簡裁の扱う事件数は非常にふえていますね。平成元年、百十五万件あったものが平成十年では百八十四万件と大体二倍近くに近づきつつあるわけですよ。ところが、簡裁判事の定員というのは二十年間で十五人しかふえていない。この五年間では一人もふえていないんです。しかも、コンスタントに専任簡裁判事の定員というのは大幅に欠員ができているということなんですね。
 これでは現実社会に対応する義務と責任感がちょっと欠如しているのじゃないかというふうに当然思われます。また、定員拡大ばかりじゃなくて、市民のニーズにこたえるためにやっぱり簡易裁判所の設置箇所というものをふやすべきではないか、そういう情勢にあるのではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) お答えいたします。
 簡裁判事は、このところ大量退職期にございまして、たくさん定年でおやめになっております。裁判所といたしましては、これに対応して採用者をふやすということで検討してきておりますけれども、簡裁判事の適性を有する人の確保というのは必ずしも容易ではございません。これは試験でございますけれども、相当難しい試験でございまして、それなりの水準の人を採用するということになりますと、そう急にふえるということには限界がございます。
 そこで、先ほどから申し上げておりますけれども、判事補で三年たちますと簡裁への任命資格が出ます。そういう三年たって四年目、五年目あたりですと、まだいわゆる職権の特例というのがつきませんで、判事と同じ仕事をするわけにはいかない、単独の事件ができないわけでございまして、その四年目、五年目ぐらいの判事補の人を簡裁判事に任命いたしまして、もちろん判事補の資格も兼任で持っておりますけれども、そういう方に簡裁で仕事をしてもらうということで簡裁の戦力の増強を図っているわけでございます。
 こういう人たちが簡裁で仕事をするということは、簡裁判事に法曹有資格者をふやすべきだという方向にも沿うと思います。これは、一つには判事を六十五歳で定年退職した後の方、定年まで五年ございますので、こういう方にもなっていただくというのももちろん大きいわけでございます。それもやっておりますが、判事補で三年過ぎた方にやっていただくというのも一つの方法で、これはいろんな意味で、簡裁でそういう若い人が新しい感覚で訴訟担当を張り切ってやるというふうなことでいい面もございますし、判事補としての非常に経験にもなる、いろんな面でいい面もあるというふうに考えております。
○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) 設置箇所についても御質問がございましたので、御説明申し上げたいと思います。
 裁判所では昭和六十三年に、交通の便、交通事情がどういうふうに変わってきているかということとか、あるいは簡裁の管内の人口がどう変動してきているか、あるいはまたそれまで取り扱っていた事件数がどの程度あるか、今後見込まれる事件数はどのようになるか、そういうところを総合的に勘案いたしまして、全国規模で簡裁の所在地を改めて見直し、適正配置を行ったところでございます。
○中村敦夫君 私が聞いているのは、もっとふやす、絶対量が必要なんだから、もっとふやす気があるかと。適正に配置したかどうかということではないんです。
○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) 委員御指摘のような事情を勘案して、昭和六十三年に適正配置を行ったところでございますが、今後とも同様な視点を持って検討は続けていかなければならないというふうには考えております。
○中村敦夫君 物には程度というものがあるんですよ。この簡裁判事の増員あるいは設置箇所の増加についても、現実があって、それが困っているわけですよ。いろいろそういう判事を育てるのは難しいとか、それは事情の話なんですよ。この現実に対して対応する気があるかどうかということが今は問題なんであって、質問の骨子というのはそういうことなんです。
 ですから、事情の説明を聞いているんじゃなくて、今後、簡裁判事をふやす、積極的にやる気があるのか、そして設置場所をふやす、そういう積極的な意思があるのかということをはっきりとお答えいただきたいんです。
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) 先ほど申し上げましたように、特任の簡裁判事、試験で採用される簡裁判事につきましてはなかなかふやすのが難しいという状況にはございますが、その面では、できるだけその中でも多くの人を採用して充実していきたい、こういうふうには思っております。
○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) 国民から使いやすい簡易裁判所のあり方、このような観点から、今後とも検討は進めてまいりたいと思っております。
○中村敦夫君 余りふやしたくないような印象しか受けない言葉なんですね。
 次の質問なんですけれども、最高裁判所事務総局規則というものがありますね。それによりますと、事務総局の各役職は、裁判所事務官、場合によっては裁判所技官をもって充てる、こうなっているわけです。
 また、司法行政上の職務に関する規則というのもあります。ここでは、「司法行政に関する事項の審議立案その他司法行政上の事務を掌る職のうち、最高裁判所において指定するものは、判事又は判事補をもつてあてる。」、こういうふうになっています。
 ここの「最高裁判所において指定する」という意味なんですけれども、これはどうしても判事、判事補でなければならない、事務総局の中で例外的な部分であるというふうに当然読み取れるわけですね。
 ところが実際は、事務総局の事務次長、全局長、二十九の課長のうち、二十二を裁判官が占めておるわけです。このほかにも多くの裁判官が局付として事務総局にいるわけです。これだけの数の裁判官が裁判もしないで長期間事務をやっているという必然性は到底考えられないんですね。
 これらの人々を最高裁が指定する、その指定の根拠というのは一体何になっているんですか。
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) お答えいたします。
 裁判所の司法行政事務の中には、裁判に密接に関係する事務がございます。裁判官人事もそうでございますし、裁判所の施設等もやはり裁判事務と非常に密接な関係がございます。それから、最高裁判所規則の立案等、非常に法律知識を必要とするという仕事も最高裁の事務総局の中には少なくないわけでございます。
 こういう事務につきまして裁判官の資格、経験を有する人が企画立案等の事務に当たるということで初めて司法行政事務が円滑にいく、そういう根拠から、司法行政の重要事項の企画立案等をつかさどる職には裁判官を充てる、こういうことになっているわけでございます。
○中村敦夫君 漠然としたお話なんですね。
 二十九人の課長のうち、二十二人裁判官がやらなきゃいけないかどうか、何で施設なんかを裁判官がやらなきゃいけないのか、非常に疑問なんですよ。ですから、この二十二の課長さんたちは、具体的にどんなことをやっているのかということを情報公開していただきたいと思うんです。
 それから、これは、最高裁ばかりじゃなくて全国八カ所の高等裁判所事務局長にも裁判官が充てられているわけですね。高裁の事務局長が裁判官でなきゃならないという理由と、これは大体地方の方ですから、一体どんな仕事をしているのか、簡単にお話しいただきたいんです。
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) 高等裁判所の事務局は、やはりそれはそれで裁判に関係する事務を取り扱っております。
 特に、事務局長の場合、裁判官の人事につきましても、高等裁判所長官の命を受けまして、いろいろ管内の実情を調査したり最高裁判所や管内の所長との連絡調整に当たったり管内裁判官の配置の調整に当たるというふうなことがございまして、やはり裁判官の経験がある人でないと困るという面があるわけでございます。
○中村敦夫君 今のお答え程度の仕事だったら、別に裁判官の経験がなくても十分できるような感じがありますので、その辺のところも、具体的にどんな仕事をしているのか、情報公開をしていただきたい。
 これは最後の質問ですけれども、平成十年十月八日の参議院法務委員会で、裁判官の号俸別在職状況、つまり給与の各級別の定数についての質問について、金築人事局長は情報公開を拒否したわけです。その理由は、裁判官に無用の影響を与えるといけないという妙なものであったわけなんです。
 どの年俸に何人いるのかというのを公開するのは予算検討上不可欠のことだと思うんですね。しかも、個人名が特定できる資料ではありませんから、裁判官同士のねたみだとか心理状態だとかを資料公開拒否の理由にするのはちょっとナンセンスだというふうに思っておりました。そして、今回もその要求をしましたが、けさになって初めてこの内容の報告書をいただいて、大変びっくりすると同時にありがたいというふうに思いました。
 裁判所の透明化、民主化というのはどうしても必要なことであり、これは裁判所のためにもなると思いますので、今後もこれでストップしないでどんどん情報公開されることを期待しまして、質問を終わります。
○委員長(風間昶君) 他に御発言もないようですから、本案に対する質疑は終局したものと認めます。
    ─────────────
○委員長(風間昶君) この際、委員の異動について御報告いたします。
 本日、吉川芳男君が委員を辞任され、その補欠として久野恒一君が選任されました。
    ─────────────
○委員長(風間昶君) これより討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
○委員長(風間昶君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(風間昶君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 午後四時に再開することとし、休憩いたします。
   午後零時十二分休憩
     ─────・─────
   午後四時開会
○委員長(風間昶君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 株式の消却の手続に関する商法の特例に関する法律の一部を改正する法律の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に証券取引等監視委員会事務局長舩橋晴雄君及び大蔵大臣官房審議官木村幸俊君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(風間昶君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
○委員長(風間昶君) 株式の消却の手続に関する商法の特例に関する法律の一部を改正する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 まず、発議者衆議院議員太田誠一君から趣旨説明を聴取いたします。太田誠一君。
○衆議院議員(太田誠一君) ただいま議題となりました株式の消却の手続に関する商法の特例に関する法律の一部を改正する法律の一部を改正する法律案について、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。
 平成十年三月三十日に株式の消却の手続に関する商法の特例に関する法律の一部を改正する法律が公布、施行されたことにより、平成十二年三月三十一日を期限として、公開会社は、資本の欠損に備えるための法定準備金を超える資本準備金を財源として自己株式の取得・消却ができる特例措置が認められました。
 本法律案は、会社をめぐる最近の社会経済情勢にかんがみ、なおこの特例措置を維持するため、公開会社について、資本準備金をもってする自己株式の消却を行うことができる期間を二年間延長し、平成十四年三月三十一日までとするものであります。
 なお、この法律は、公布の日から施行することといたしております。
 以上が本法律案の趣旨であります。
 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願い申し上げます。
○委員長(風間昶君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。
 これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○小川敏夫君 民主党・新緑風会の小川敏夫でございます。
 今、概略御説明いただきましたけれども、この制度の目的とするところをもう少し平たく御説明いただくようお願いいたします。
○衆議院議員(太田誠一君) 自己株式の消却は、それによって株主資本利益率のような株主にとっての有利さを示す指標の改善による投資対象としての株式の魅力の向上、株式の需給のタイト化に資するものとして、株式の持ち合い解消の受け皿ともなるわけでありまして、株式市場の活性化に大きな役割を果たすものであります。
 また、経済構造の観点からいいますと、従来は企業の成長ということが重視されておりましたけれども、それのみならず、近時においては財務の内容というようなことが重視されるようになってまいりました。財務内容を重視するという観点からも、この自社株、自己株式の取得というのは有用な手段になるわけでございます。
 また、成熟した産業でもって十分に資金があるというところに資金が固定をされたままでいるということよりも、成熟した産業、企業から投資家の方に一たんお金が戻って、そして投資家はむしろ新しいベンチャービジネスのようなところに投資ができるように資金の最適配分に資することになるであろうということがあるわけでございます。
 なお、近年のことに限って申し上げれば、バブルの時期に大量のエクイティーファイナンス、いわゆる株式の時価発行などがなされて、その時価発行がなされたものが資本準備金としてそういう企業の手元に滞留をしておるわけでございまして、一方では資金はそういった企業の手元に滞留しておって、一方で株式市場では大量の株式発行がなされたわけでありますから、株式の過剰状態が続いていたわけでございます。これを何とかしようということで、このような企業内にある資本準備金を財源として市場に過剰状態になっております株式を引き揚げる、そして消却するということを認めることといたしたわけでございます。
○小川敏夫君 それで、実際にこの法が適用されていた大体この二年間で、実際に消却を実施した実施状況といいますか、ここら辺は把握できていますでしょうか。
○衆議院議員(太田誠一君) この二年間について申し上げれば、おととしの九八年度においては二千二百五十九億の自己株式消却が行われております。昨年度については一千四百六十八億となっております。そしてまた、それを実施した会社の数でありますけれども、おととしが百十六社、そして昨年は八十社でございます。
 いずれも、これは全体の三割弱ということになっております。という意味で、これは自社株取得・消却の中心的な手段になっておる、その資本準備金を使う株式消却の割合というものが中心になっておるということが言えようかと思います。
○小川敏夫君 この制度の目的として、例えば持ち合い解消で出た株を吸収する役割もあるというようなことでしたが、現下の株式市場の情勢は大分持ち合い解消の売りもこなして、幸いにして順調に株価もある程度回復しているように思うんですが、なおさらにまた二年間これを延長するというような必要性についてはどのような状況でございましょうか。
○衆議院議員(太田誠一君) 現状はどうかと申しますと、去年にこれだけじゃなくて自社株の取得・消却をやった会社が全部で三百社、おととしが四百社でございます。その前の三年前であれば数十社しかなかったわけでございまして、この二年間で飛躍的に自社株消却をする会社がふえたということでございます。
 そして、経営者の方がどういうときに自社株取得を決断するかといいますと、一つはやっぱり安定した状態でなければやらない、それからいわゆる配当財源があるという、中間配当財源のときにはできませんので、業績がある程度よくなければいけない、将来に対してもそういう見通しが立たなければならないということでございます。だから、単に資本準備金が十分な巨額の資金が積み上がっていたからといって直ちに決断するものではないわけでございますので、この二年間の間にやりたいと思ったけれども実行をまだしていないというところはたくさんあるわけでございます。そういう希望があるというふうに理解をしております。
 なお、この自社株を取得するという動機があるいは来年の春に向けて強くあるであろうということがもう一つ予測されるのは、新しい会計基準が導入されて、来年の三月期の決算にはその新会計基準で決算がなされることになりますが、それを目指して株式の、保有している株式は時価評価に変わるわけでございます。時価評価に変わるということになれば、今持っておる株は資本の損失もあるわけでございますから、早目に処分をして決算に備えるということが起こるであろうと。持ち合い株式というのは大体そういうものでございますので、持ち合い株式の持ち合い解消というのはさらに来年にかけて進むということが予想されるわけでございます。そうすると、一層自社株を取得して、対抗して買うという必要が経営者の方には生ずるというふうに予想されるということであります。
○小川敏夫君 この消却は会社の方針で行うことになるんでしょうけれども、一方、株主に何らかの不利益が及んだりしないか。例えば株を購入するために会社の資金が流出するわけですが、そういったことも含めて、株主に対する利益、不利益の取り扱い、特に不利益がないようにこの法案では考えられているのかどうか、その点についてお聞かせください。
○衆議院議員(太田誠一君) この法律でもってどういうことが起きるかというと、資本準備金によって自己株式の消却を行うことによりまして発行済み株式総数が減少するわけでありますので、なお持ち続けている株主にとっては一株当たりの価値が高くなる。特にROEといいますか、株主資本利益率というのは向上することになりますので、保有しておる株主にとっては利益がある。それから、売ってしまった株主、そのときに自社株を買うということに対して応じた株主にとっては、それは売ったのだから売らないよりはハッピーになっておるということでございます。
○小川敏夫君 何かお話を聞いているといいことずくめのような気もするんですが、株主という面ではなくて、今度は債権者から見ると、会社の資金が流出するわけですから、株価が上がるか下がるかということは別にして、債権者の立場から見るとそこら辺のところはいかがでしょうか。あるいは何らかの保護策は講じてあるのでございましょうか。
○衆議院議員(太田誠一君) 債権者に対しては、これは資本充実の原則ということが直ちにそこにあるわけでありますが、債権者に不測の損害を与えないように配慮するというために、資本準備金を財源とする株式の取得・消却については合併の場合と同様に債権者保護手続を経ることを要することにいたしております。
 債権者保護の手続は、取締役会の決議で決める場合には、その二週間以内に債権者に対して資本準備金をもってする株式の消却に異議があれば一定の期間内にこれを述べるべき旨を官報でもって公告し、かつ知れている債権者に対しては各別にこれを催告するということにいたしております。
 債権者が異議を述べたときには、会社はその債権者に対して弁済、担保の提供、または財産の信託をしなければなりません。ただし、株式の消却をしてもその債権者を害するおそれがないときは弁済などをすることを要しないということになっております。
○小川敏夫君 最後の質問で一つ確認いたしますが、この法が施行されている間に証券市場でマザーズという新しい市場ができたんですが、これはこの消却の規定、公開企業の中に入るんでしょうか。
○衆議院議員(太田誠一君) 東証マザーズも、これはもうスタートをしておりますので、これは上場会社というふうにみなされるわけでございます。だから、東証マザーズに上場する企業は当然ディスクロージャーを求められますし、有価証券報告書も出さなければなりません。そういたしますと、上場会社、公開会社たる要件を満たすことになりますので、当然これは東証マザーズの上場会社も本制度の対象になるということであります。
○小川敏夫君 終わります。
○橋本敦君 きょうは提案者の諸先生、御苦労さまです。
 まず最初にお伺いしたいのは、この資本準備金による自己株消却という問題は、商法本来の会社資本の充実という原則からいって問題があるという指摘がなされてきたわけでありますが、そういう指摘のもとでこれは緊急例外的、時限的措置としてつくったということで、本来時限立法だというように私どもは説明されたと理解しておったんですが、その点はいかがですか。
○衆議院議員(太田誠一君) おっしゃるのはそのとおりでございまして、時限立法として二年前に通していただいたわけでございます。
 今時点でどうかということになりますと、先ほども答弁を申し上げましたように、まだ問題が終わっていない。特に、バブル期に発行した大量のエクイティーファイナンスによって積み上がった資本準備金の額は三十五兆ぐらいに東証一部、二部だけでなっております。資本金が同じく三十五兆ぐらいでございますので、資本金の額と資本準備金の額が同額ぐらいになっておるという一つの情勢がございます。
 それから、先ほど申しましたように、経営者が二年間のうちに決断ができなかったということもありますので、引き続き要望が強いということであります。
○橋本敦君 それでは、その実態に関してですが、小川委員からも質問があったことに関連しますが、自己株式消却金額、九六年、九七年度に比べて九八年度以降はどういう趨勢になっているというように理解されていらっしゃいますか。
○衆議院議員(太田誠一君) 自己株式の消却の金額は、九六年度においては二千六百二十八億、九七年度においては三千九百五十二億、九八年度においては九千四百四十二億、九九年度においては五千五百十二億となっておりまして、九六、九七年度に比べて九八年、九九年度は大きく自己株式消却が行われているということでございます。
○橋本敦君 それに関連して、自己株式消却実施会社数はどういう傾向になっておりますか。
○衆議院議員(太田誠一君) 自己株式消却実施会社数は、九六年度においては十三社、九七年度においては六十九社、九八年度においては三百九十七社、九九年度においては二百七十八社でございます。大きくふえているということでございます。
○橋本敦君 景気動向の態様からいくと、景気が厳しい中でこういう状況が進んできているということが一つは私は注目する指標であるというように思っているんです。
 もう一つの側面からお伺いしたいんですが、資本準備金による自己株式の取得というのが実質的には出資の払い戻しに当たる事実上の減資だという説がございまして、私もそう思うんですが、そういう面から見ると、債権者保護手続、これがどうなるかということについて慎重に対処しなければならないということですね。
 商法四百十二条による債権者保護手続、これがあるわけですが、この問題については平成九年の合併制度の改正に際して緩和された規定でありますから、要するに債権者異議のための公告を官報によって行う場合には知られたる債権者に対する各別の催告を要するけれども、しかし公告を官報のほかで日刊紙等に掲載するという手続をとった場合には各別の催告は要しない、こうなることですね。
 そうなりますと、債権者保護手続が十分なのかどうかという点で私は問題があるのではないかと思うんですが、提案者としてはこの点はいかがお考えでしょうか。
○衆議院議員(太田誠一君) 資本準備金は、それ自体が資本ではないわけであります。その性質は非常に近いということでありますが、資本金ではないということでございます。言ってみれば資本の外堀に当たる部分でございます。したがって、減資の場合とはやや違うという認識でございます。
 その意味で、株式消却の前後で資本の額に変動を生じない資本準備金をもってする株式消却は、資本そのものを減少させてしまう資本減少に比較して債権者に与える影響は少ないであろうということでございます。だから、必ずしも減資手続と全く同様な債権者保護手続とは言えないのではないかということでございます。そこで今言ったような手続になっておるわけであります。
○橋本敦君 その点は学界でもいろいろ議論があって、出資の払い戻しの実質を有する事実上の減資だという見解があるわけで、そういう見解に立つと今の御説明だけでは納得できない部分があるように思うんです。
 次の問題に移りますが、そもそも自己株消却の目的というのは、いろいろ提案理由でおっしゃっていますけれども、実質的には株価対策ではないかということが言われているわけです。
 例えば、早稲田大学の上村教授はジュリストの中で、資本準備金を使って株式を消却し、利益は使わなければ、一株当たりの利益、ROEですが、これは上がり、株価対策に貢献するというのがこういった法案の提出された意図であろうというように指摘をされておりまして、資本準備金による自己株消却というのは株主資本という分母を減らすことによるROEの上昇をねらう、こういう事実上の結果を伴うものですから、結局これは株主を重視し、株価対策だということでその実質は変わらないというように指摘をされておるんですが、こういう見解に対してはどういう御意見をお持ちでしょうか。
○衆議院議員(太田誠一君) これは何がノーマルな状態であるのかという考え方の問題だと思います。ある時期非常に金融が緩んだということでしょうか、株式の時価発行をした、そして大量の株が市場に出た、その状態がノーマルとするのか。それとも、資本準備金がそれだけ手元に積み上がっていて、例えば余分のお金が現金とか預金とかになっているということであれば、そして株の方は大量にあるということであれば、それは買い戻した状態がノーマルと見るのか。私などは、そういうことならば投資家の方に返す方が株式市場は正常な姿になるんだというふうに考えておりますので、そのことはおかしなことではない。
 ただし、インサイダー取引の可能性は常にあるわけでありますので、それについては証取法上も手当てをして、重要事実、すなわちその事実が世間に公表されてみんなが知るようになるまでは会社関係者は株を取得してはならないというようなことがございますので、そういうインサイダーに対する手当てはちゃんとしておかなくちゃいかぬことだと思います。
○橋本敦君 私は、その次に今お話しの株価操縦やインサイダー取引といったことをどうチェックするかということを質問しようと思っていたんですが、今お話しがありましたので、これは省略をいたします。
 いずれにしても、例えば平成十一年十一月二日の日経金融という新聞がございまして、こう言っています。「自社株買いは株主資本利益率や一株利益などの指標を改善する効果がある。店頭株市場が低迷していた昨年は、軟調な株価をテコ入れし、投資家にアピールする狙いなどから自社株買いが増えた。自社株買いは市場のテーマになり、主力株を中心に株価が上昇する銘柄も目立った。」、こう言っているんです。
 だから、私がさっき指摘したように、景気の低迷ということの中で株価対策という実態がやっぱりこれは実態としてはあるということをこの日経金融でも示している、こう思うんです。
 いただいた「自己株式消却実施の意義について」という提案者からの資料ですが、これによりますと、「自己株式消却は、自社株の株価に対する経営者のメッセージとなる。」、こういうことがございます。「株価が低迷している時ほど、少ない原資で有効な消却を行なうことができる。従って、自己株式の買付消却は自社株の株価に対する経営者のメッセージとなる。」、こういう文言がございます。
 これは、私が指摘するように株価対策ということをそれは正直に踏まえていらっしゃる、そういうことだと理解しておるんですが、間違いないでしょう。
○衆議院議員(太田誠一君) 株価対策ということの観点から言えば、自社株買いをやるということになれば結果として株価が上がるであろうということは予想されるわけであります。それは悪いことではない。また、そういうことを経営者が予測することも別にこれは悪いことではない。同時にほかにもたくさんのメリットが先ほど申しましたようにあるわけですから、そのことをもって批判されることではないというふうに考えております。
○橋本敦君 悪いことじゃない、株価が上がるのは批判されることではないとおっしゃいますが、そういう株価対策が資本準備金を充当するということを通じて会社法の大事な原則である資本の充実ということとの関係で問題が出てくるという考え方が基本にあって、こういうのは問題ですよということを学界も指摘してきたし、私も言っているわけです。だから、そこのところの見解がちょっと違うわけです。
 時間がありませんので最後に伺いますけれども、こういった商法の基本原則にかかわる問題は、本来的には御存じのとおりの法制審議会で十分な審議をするのがやっぱりルールではないだろうか。このことは前回の改正の際にも指摘をされた問題であります。そしてまた御存じのとおりに、ストックオプション制度が導入されたときにも、東京大学の江頭教授や京都大学の森本教授を初め多くの商法学者の皆さんが、こういった商法の根幹にかかわる問題については、これはやっぱり法制審議会の審議を経るというルールをとってもらうのが常道ではないかという御批判もございました。
 今回もまたこういった手続については法制審を通らないわけですが、その点についてはどうお考えでしょうか。
○衆議院議員(太田誠一君) これは、昨年の夏に省庁改革の十七本の法案を可決成立させていただきましたが、その際の閣議決定において、審議会をもって立法機関のように思うことは望ましくないと。すなわち、法律の提案は我々国会議員が行うか、それでなければ議院内閣制たる内閣の提案権でありまして、行政官が直接提案をすることはできない、憲法上もできないわけでありますし、まして学者の方々が提案をするわけでもないわけでございます。すると、あくまでも審議会の審議は参考意見なのでありまして、いかに権威のあると言われる法制審議会といえども参考意見でありますので、立法は責任を持って国会議員ないしは国会議員が中心となる内閣が行うことだろうと思っております。
 そういう参考意見を聞くことは積極的にやらなければなりませんので、これはできれば十分時間をかけて審議をするということは望ましいに決まっているわけでございます。
 ただ、これは、前回のことで言いますれば、かつてない資本準備金が積み上がったということに対して時間を置かずに反応するということが立法府としては必要ではないか、そういう判断で時限立法でお願いしたということでございます。
○橋本敦君 前回はそういう緊急性があったということですね。今回はあらかじめ議論していればいい話ですから、そういう緊急性も私は認められないと思うし、今御答弁があった法案提案者がだれであるかというのは、これは自明のことで、法制審という長年にわたるルールの中で審議を尽くしてきたというルールをそう軽々に軽視してはならないという立場から私は質問しているわけで、これは御理解いただけると思うんです。
 今度の場合、本当に今度は時限立法として始末ができるのか、処置できるのか、その点の見込みはいかがですか。今度二年間延長しますが、その後。
○衆議院議員(太田誠一君) これは議論のあるところでございまして、二回にわたって時限立法で延長していくというのは余りよいことではないという意見は提案者の中にも多いわけでございます。
 衆議院においては附帯決議が行われまして、三度目の延長は望ましくない、どちらかに白黒つけるべきであると、恒久化するのかそれとももうなくしてしまうのかということの、衆議院の意思表示が附帯決議としてなされました。
○橋本敦君 今、私が質問したのは、それを心配しているんですよ、恒久化を。
 というのは、恒久化というのは、これは経団連が「国際競争力ある資本市場の確立に向けて」という意見書の中で、恒久化してくれと言っているんですよ。もともとこの問題も財界の要望から出てきた話だということがはっきりしているんですね。だから、時限立法だということで、本当に時限立法にしますよと、その後どうするかということになったときに、今おっしゃったように恒久化ということも考えるとなれば、ますますもって財界言いなりの方向に行ってしまうんじゃないかという指摘を私はせざるを得ない、こういうことから質問したわけです。
 だから、今の御答弁によって私は一層心配せざるを得ないという印象と感じを持ったということを申し上げて、時間が来ましたので、質問を終わります。
○衆議院議員(太田誠一君) それは、恒久化というのは何か陰謀のようにおっしゃいますが、私などは恒久化をした方が、ここには多数の共同提案者がおられますので、全体として、代表してそうは言いません。私などは恒久化した方がいいと思っております。
○福島瑞穂君 社民党の福島瑞穂です。
 なぜこのような制度が必要だったのかということに関して、ほかの委員も質問されましたが、低迷している株価を引き上げるためというのも一つの理由だったのでしょうか。
○衆議院議員(太田誠一君) そういう言い方もできるかもしれませんけれども、株式が過剰な状態にあるということが明らかであったということがございます。
○福島瑞穂君 この法律は、財界の要求が強くあったのでしょうか。
○衆議院議員(太田誠一君) 言うまでもなく、私どもは注意深く株式市場の様子を見て、その株式市場、株価形成にかかわるさまざまな要因は国会、立法府の立場としては常に注視をしていなければなりません。そういう中で、もちろん商法の対象となっているのはほかならぬ経営者あるいは株主でございますので、株主や経営者の世界からそういう政策要望が出てくるというのは当然のことだろうと思います。
○福島瑞穂君 この法律のスピード成立はある意味でとてもうらやましいぐらいで、民法改正もこのスピードでぜひお願いしたいと思うのです。
 経団連が一九九八年一月二十七日、「自己株式消却に関する緊急要望」というのを出しております。「最近の金融システムの動揺と株式市場の低迷等を背景に、景気停滞色が強まっている。このまま株式市場の低迷が続けば、わが国経済は深刻な状況に陥ることが懸念される。」として、緊急要望が出たのが一月二十七日です。三月九日には議員立法で提出をされ、三月三十日には参議院本会議で成立、しかも即日施行という、極めて短い期間内にこの法律は成立をしております。
 先ほどもちょっと質問があったんですが、念のために、なぜこんなスピード成立になったんでしょうか。
○衆議院議員(太田誠一君) 内容について大体合意ができるという見通しになりました段階で、どうせやるなら最初の株主総会に間に合うようにやった方がいいというふうに判断をいたしまして、こういう緊急の立法手続となったわけであります。
○福島瑞穂君 先ほど法制審議会の一般的な議論はお聞きしましたが、なぜこの立法に関して基本法たる商法を法制審議会にかけなかったのかについて教えてください。
○衆議院議員(太田誠一君) 先ほど申しましたように、立法権は私ども立法府の議員にあり、それからまた、内閣は議院内閣制であるがゆえに法律を提案することができるわけであります。
 その中で、内閣を構成する国務大臣の中の法務大臣が参考意見を求めるために審議会をつくるわけでございます。法制審議会はそういう性格のものであります。
 したがって、これは法務大臣がどのぐらいの期間、あるいは何について参考意見を法制審議会に聞くかということは大臣の責任において行うことでありまして、我々立法府にいる者があえて法務大臣がどうするかということを待つという意味は余りないかと思うのでございます。
○福島瑞穂君 なぜ資本準備金を使うのか、利益準備金を使わないのかについて答弁をお願いいたします。利益準備金と資本準備金は、御存じ制度が違います。資本準備金には利益準備金のように資本の四分の一に達するまでという積み立て制限の制度は設けられていないので、資本準備金の積み立て過ぎということは考えられません。なぜ重要とされる、資本により近い側の資本準備金を消却し、利益準備金に手をつけなかったのかということについて答弁をお願いします。
○衆議院議員(太田誠一君) 利益準備金は、これは配当可能な利益のうちから資本金の四分の一に至るまでは十分の一ずつ積み立てていかなくちゃいけないという制度でございますので、本来はその原資たる、財源たるものは配当に回すということが第二番目の優先順位になるわけでございます。
 そういたしますと、配当に回すことに優先順位のあるものを自社株取得・消却に使うということは、それはややその後の方になる、後回しになるというのはやむを得ないんじゃないかなと思います。
○福島瑞穂君 ただ、この形で株式消却をすれば株価が上がる可能性があるわけで、株主にしてみれば、利益配当という形で得るのか、あるいは株価が上昇するかということでいえば、私はより安定性を必要とされる資本準備金を崩すことには若干問題があるやに思いますが、いかがですか。
○衆議院議員(太田誠一君) 利益準備金は経常的な利益から生ずるものでありまして、それが配当の原資になる。資本準備金は、いわばアドホックな、常に日常的に起こることではなくて、一つの、株式の時価発行というのをやたらにやることもこれは問題なわけであります。めったにないこと。それから、株式会社が合併したり、あるいは株式の交換をしたりするような、形態そのものが変わるときに初めて資本準備金が新たに生ずるわけでありますので、そういうアドホックな財源というものがこの自社株取得のような場合に充当されるというのがむしろ自然ではないか。
 今おっしゃった、株主にとって、財布は違うんだけれども同じ企業のお金と考えれば、配当としてもらうのがいいのか、それとも自社株を買ってもらう、その会社の株を買ってもらう、あるいはその株式の価値が上がる、ではどっちが得かというのは、これは税制も関係がございますし、その比較の仕方はいろいろあると思います。しかしながら、財源ということから見れば、配当は利益準備金の部分から出てくる、そして自社株取得の方は資本準備金の方から出てくるというのが非常に自然な組み合わせではないかと思います。
○福島瑞穂君 資本準備金が気がついてみたら減ることに問題はあると思いますが、次の質問に移ります。
 自己株式取得規制がどんどん法律によって緩和されております。一九九四年改正、一九九七年改正、一九九八年改正とどんどん例外が拡大をしているわけですが、自己株式取得は今まで日本では大変規制がありました。資本維持の原則に反する、株主平等の原則に反する、インサイダー取引が行われる、会社支配権の維持に利用される、会社荒らしを助長するなどということが言われていたわけですが、一九九七年の商法改正に際して参議院法務委員会は附帯決議をつけております。附帯決議についてその後どのような配慮がなされているかについて若干お聞きをしたいというふうに思います。
 例えばこの附帯決議の中には、「ストック・オプションを付与するに当たっては、株主総会の現状にかんがみ、株主の正当な利益を保護するため、株主総会の運営及び経営監視体制について適切なルールの確立を求め、その適正な運営に努めるとともに、情報の開示を促進させること。」というのがあります。アメリカのように株式市場が大変透明性が高いところでは自己株式取得もいいと思うんですが、日本の場合は株式市場は非常に不透明です。こういう段階で、この附帯決議のこの部分などについては、透明性あるいは適正な運営のために情報の開示というのは促進されたのでしょうか、法務省お願いします。
○政務次官(山本有二君) 御指摘の附帯決議、平成九年、参議院法務委員会の決議でございますが、「株主総会の運営及び経営監視体制について適切なルールの確立を求め、その適正な運営に努めるとともに、情報の開示を促進させる」ために、次のような措置を講じたところでございます。
 まず、株主総会を形骸化し会社運営の健全性を害する存在でございます総会屋に係る犯罪に厳正に対処するため、商法及び商法特例法の一部を改正する法律が第百四十一回国会におきまして平成九年十一月二十八日に成立し、十二月二十三日から施行されております。
 第二に、商法の一部を改正する法律、いわゆるストックオプション関係でございますが、及び消却特例法の成立を受けまして、法務省令である計算書類規則を改正いたしまして、ストックオプション等に関する情報開示の充実が図られました。特に、貸借対照表の見直しだとか営業報告書の見直しがございます。
 さらに、株主総会の適正な運営がされるよう、関係団体を通じまして、また出版物等によりまして、会社関係者に対し周知徹底を図ってきたところでございます。
 今後ともなお一層の周知徹底に努めてまいりたいと存じます。
○福島瑞穂君 一九九八年三月のときの附帯決議もあります。株式の消却の手続に関する商法の特例に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議、参議院の法務委員会なのですが、ここでもこういうものがあります。「株主、債権者等の保護並びに企業経営の健全化を図るため、会社の業務及び会計に関する情報の開示制度の充実・改善に努めること。」。それから「インサイダー取引など不公正取引に対して、証券取引法の厳格な適用を行うとともに、監視体制を充実強化するよう指導に努めること。」。この決議はどのように生かされたのでしょうか。
○政務次官(山本有二君) まず、本委員会での附帯決議第一番、法改正の趣旨の周知徹底、法の円滑な施行、これにつきましては、各種出版物等におきまして法改正の趣旨及び内容を紹介するなどの広報活動を行っており、改正法の円滑な施行が図られたものと考えております。
 次に、附帯決議二、会社の業務及び会計情報の開示制度の充実等につきましては、計算書類の開示義務の重要性につきまして出版物等を通じてかねてより広報活動を行ってきたところでございますが、これに加えまして、平成十一年には商法の改正により、監査報告書の記載事項の充実と計算書類、株主総会議事録等の開示の対象者を拡大し、会社のディスクロージャーの一層の充実を図ったところでございます。
○政府参考人(舩橋晴雄君) お答え申し上げます。
 先ほど先生御指摘の九七年五月の参議院法務委員会における附帯決議及び九八年三月の附帯決議、いずれにおきましても、インサイダー取引などの不公正取引に対してはもっと厳しくやれという御指摘をちょうだいしております。
 私ども証券監視委員会におきましては、日々マーケットの異常な値動き等の監視を行ってきておりますが、九七年五月以降におきましては五件のインサイダー事案について告発をいたしております。ただ、いろいろなインサイダーがございまして、この五件の中には自己株式の消却に関するものはございません。しかしながら、御指摘のように大変重要な問題でございますし、証取法におきましても、この自己株式の取得については重要事実ということになっております。
 私ども、これらにつきまして今後とも一層厳正な対応をしてまいりたいというふうに考えております。
○福島瑞穂君 提案者にお聞きします。
 この法律ができたために株価は上がったんでしょうか。
○衆議院議員(太田誠一君) 因果関係はそれははっきり証明できるものではないと思いますが、結果としてこの二年の間に、正確にはわかりませんが、株価は一万五千円前後から二万円ぐらいに上がっておりますので、そのうちの一つの重要な柱になったのではないかというふうに思っております。
○福島瑞穂君 先ほどの参議院の附帯決議で周知徹底ということがあり、これは限時法ということで恐らくこのようなスピード成立も賛成をしたのではないかと思いますが、ほかの委員も聞かれましたが、これをなぜ再びしなくてはいけないのか。恒久化するという考えはおありなんでしょうか。
○衆議院議員(太田誠一君) 恒久化するというのは、本日の提案者の中の一部、例えば私はそう思っております。だから、一般的にはそうは言えないわけでございますが、そういう意思の者はおります。
 なぜあと二年間やることになったのかということでございますけれども、それは、まだ依然として巨額の資本準備金がそこにある、そして株式の持ち合いの解消も進みつつあります。例えば二年前の時点で株式の持ち合いとみなされる金額は、一部、二部の上場企業の発行価額の二十数%であったものが、今は一六%まで下がっております。低下傾向はこれからも続いていって、特に来年の三月の新しい会計基準の導入を目指してさらなる株式の持ち合いの解消が進むと思われますので、そういう意味での必要性があるということでございます。
○福島瑞穂君 限時法で成立をしているので今回二年更新するとしても、やはりこの法律はそもそも限時法としてスタートしたので、これは個人的なお願いですが、恒久化されないようによろしくお願いします。
 それから、先ほど附帯決議の問題に関してそれぞれ法務省と証券取引委員会の方から御説明がありました。ディスクロージャーに努めているということに関してはぜひ今後も努力をお願いしたいと思う次第なんですが、日本の企業は圧倒的に情報開示はおくれていますし、ほとんどされていないと思います。
 名前を出すのはちょっと気の毒ですが、例えば山一証券やさまざまな自主廃業に追い込まれたり倒産した会社は、その直前まで、倒産あるいは自主廃業するまで、株主や債権者には、その会社に問題がある、あるいは何か数字を操作しているということなどを第三者にはわからない形で粉飾決算という形で行われていた会社が多い。つまり、うちの会社は問題があるというような情報開示はほとんどどの会社も全くされていないのが実情です。
 ですから、株式市場が透明であるところにおいては自己株式取得はかなり健全になるとは思いますが、日本のように株式市場が極めて不透明な段階では隠れたインサイダー取引なども多く横行すると思いますので、ぜひこの点については監督官庁などの監視を引き続きよろしくお願いしたいと要望を述べた上で、私の質問を終わります。
○委員長(風間昶君) 他に御発言もないようですから、本案に対する質疑は終局したものと認めます。
 これより討論に入ります。
 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
○橋本敦君 私は、日本共産党を代表して、本改正案について反対の討論を行います。
 本法案は、株式消却手続に関する商法特例法改正法が二年の時限立法となっているのを改正して、資本準備金で自己株消却ができる期間をさらに二年間延長しようとするものであります。
 株主の有限責任を基本とする株式会社制度において最も重要な原則は、会社の社会的信用の保持、株式会社の取引相手たる債権者の利益を守るため、資本の維持と充実であることは言うまでもありません。
 ところが、規制緩和を求める財界等の要求にこたえて、九四年には自己株取得の一部緩和、九七年には法制審にも諮らないまま議員立法で株式の消却の手続に関する商法の特例に関する法律、前回九八年には、配当可能利益の範囲内に限られていた原資を資本金への組み入れか欠損補てんにしか使えなかった資本準備金にまで広げて、手続も取締役会の決議だけで行う特例を設けるなど、専ら財界の要望に沿った改正を行ってきたところであります。
 今回の改正は、持ち合い株を時価評価する会計基準が再来年三月期から始まることを見越して、今後も持ち合い株の売却が進むとして、株価対策等のため財界からの強い要望にこたえ、緊急対策としての時限立法だったとする答弁をも翻して、今回また法制審の審議に諮らないまま二年間延長するものであります。この恒久化を要求するなど、財界の強い意向に沿って商法の本来の基本原則を軽視することは許されないと思います。
 以上で私の反対討論を終わります。
○委員長(風間昶君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。
 これより採決に入ります。
 株式の消却の手続に関する商法の特例に関する法律の一部を改正する法律の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
○委員長(風間昶君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 この際、竹村泰子君から発言を求められておりますので、これを許します。竹村泰子君。
○竹村泰子君 私は、ただいま可決されました株式の消却の手続に関する商法の特例に関する法律の一部を改正する法律の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・自由国民会議、民主党・新緑風会、公明党・改革クラブ、自由党の各派並びに各派に属しない議員中村敦夫さんの共同提案による附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。
    株式の消却の手続に関する商法の特例に関する法律の一部を改正する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  株式会社制度における資本に関する原則等の重要性にかんがみ、政府は、次の諸点について格段の配慮をすべきである。
 一 資本準備金をもってする自己株式の消却については、二年間の特例措置である趣旨を関係者に対し周知徹底すること。
 二 資本準備金をもってする自己株式の消却については、今後二年を目途に、その運用状況を踏まえ、資本準備金制度の趣旨及び社会経済情勢の変化等を考慮して、具体策を検討し、必要な措置をとること。
   右決議する。
 以上でございます。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
○委員長(風間昶君) ただいま竹村君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
○委員長(風間昶君) 多数と認めます。よって、竹村君提出の附帯決議案は多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 ただいまの決議に対し、臼井法務大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。臼井法務大臣。
○国務大臣(臼井日出男君) ただいま可決されました附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。
○委員長(風間昶君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(風間昶君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後四時五十五分散会