第147回国会 法務委員会 第13号
平成十二年五月十一日(木曜日)
   午前十時四分開会
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   委員の異動
 五月九日
    辞任         補欠選任
     千葉 景子君     角田 義一君
 五月十日
    辞任         補欠選任
     橋本  敦君     林  紀子君
 五月十一日
    辞任         補欠選任
     江田 五月君     櫻井  充君
     角田 義一君     千葉 景子君
     林  紀子君     橋本  敦君
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  出席者は左のとおり。
    委員長         風間  昶君
    理 事
                北岡 秀二君
                塩崎 恭久君
                竹村 泰子君
                魚住裕一郎君
                平野 貞夫君
    委 員
                阿部 正俊君
                岩崎 純三君
                岡野  裕君
                竹山  裕君
                服部三男雄君
                松田 岩夫君
                吉川 芳男君
                江田 五月君
                小川 敏夫君
                櫻井  充君
                千葉 景子君
                橋本  敦君
                林  紀子君
                福島 瑞穂君
                中村 敦夫君
       発議者      江田 五月君
       発議者      小川 敏夫君
       発議者      竹村 泰子君
   国務大臣
       法務大臣     臼井日出男君
   政務次官
       法務政務次官   山本 有二君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局総務局長   中山 隆夫君
       最高裁判所事務
       総局人事局長   金築 誠志君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        加藤 一宇君
   政府参考人
       司法制度改革審
       議会事務局長   樋渡 利秋君
       法務省刑事局長  古田 佑紀君
       法務省矯正局長  鶴田 六郎君
       厚生省健康政策
       局長       伊藤 雅治君
   参考人
       中央大学総合政
       策学部教授    宮澤 浩一君
       弁護士
       日本弁護士連合
       会犯罪被害者対
       策委員会副委員
       長        高原 勝哉君
       武蔵野女子大学
       人間関係学部教
       授
       精神科医     小西 聖子君
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  本日の会議に付した案件
○刑事訴訟法及び検察審査会法の一部を改正する
 法律案(内閣提出、衆議院送付)
○犯罪被害者等の保護を図るための刑事手続に付
 随する措置に関する法律案(内閣提出、衆議院
 送付)
○犯罪被害者基本法案(江田五月君外二名発議)
○政府参考人の出席要求に関する件

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○委員長(風間昶君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 去る九日、千葉景子君が委員を辞任され、その補欠として角田義一君が選任されました。
 また、昨十日、橋本敦君が委員を辞任され、その補欠として林紀子君が選任されました。
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○委員長(風間昶君) 刑事訴訟法及び検察審査会法の一部を改正する法律案、犯罪被害者等の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律案及び犯罪被害者基本法案を一括して議題といたします。
 本日は、三案の審査のため、お手元に配付の名簿のとおり、三名の方の参考人から御意見を伺います。
 本日御出席をいただいております参考人は、中央大学総合政策学部教授宮澤浩一君、弁護士・日本弁護士連合会犯罪被害者対策委員会副委員長高原勝哉君及び武蔵野女子大学人間関係学部教授・精神科医小西聖子君でございます。
 この際、お三方の参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。
 参考人の皆様方から忌憚のない御意見をお聞かせいただきまして、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 議事の進め方でありますけれども、まず宮澤参考人、次に高原参考人、そして小西参考人の順に、お一人十五分程度で御意見をお述べいただきまして、その後、各委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。
 なお、念のため申し上げますが、御発言の際は、その都度、委員長の許可を得ることとなっておりますので、御了承いただきたいと思います。また、各委員の質疑時間が十五分と限られておりますので、御答弁は簡潔にできましたらお願いしたいと存じます。
 なお、参考人の方々の意見陳述、各委員からの質疑またそれに対する答弁とも、お座りのままで結構でございます。
 それでは、宮澤参考人からお願いいたします。宮澤参考人。
○参考人(宮澤浩一君) おはようございます。
 ただいま御紹介賜りました中央大学総合政策学部の宮澤です。
 私は、中央大学に移る前は約四十年ほど慶応義塾大学で刑事法の講義を担当しておりました。実はこの被害者の問題、これは私のライフワークでありまして、慶応義塾の助手二年目のときにハイデルベルクに留学をいたしまして、そこで被害者学という学問に出会ったわけであります。それ以来、被害者学あるいは被害者支援というものについて、一九五八年でありますからもう三十年以上この問題に取り組んでまいりました。
 一ページ目、これは背景事情ということで、逐一お話をすることは控えます。
 犯罪被害者に対する対応というのは、実は歴史は新しいようでやはり古いわけであります。一八九〇年当時、犯罪原因、特に社会的な環境的な原因というものを研究していた人たちが、犯罪被害者をそのままにしておくと貧困のために、あるいは家族の崩壊といったようなことのために犯罪の新しい原因になる、そのようなことがあってはならないので対応する必要があるのではないかと、これはガロファロというイタリアの犯罪学者でありますが、問題提起をし、そのままそれは進まないで終わっております。
 今世紀といいますか二十世紀の二〇年代前後に、ヨーロッパでは十九世紀型の刑法を改正する動きが盛んになりまして、その改正作業とのかかわりで被害者の問題というのが扱われました。
 例えば、日本の制度でいいますと起訴猶予とか執行猶予、そういうものの条件として被害者に対して損害を賠償せよという、そういう命令と絡んだ被害者救援あるいは罰金金庫というのをつくって、そこに加害者の受刑中の作業に対する報奨金といいますか賞与、それを三分の一プールさせる、三分の一は寄附を集める、三分の一は国庫から支出する、そういうものでもってそのお金から被害者に支援をしたらどうだというようなことがありましたが、十九世紀の終わりも今世紀の二〇年代もこれらの制度は社会保障的なものが全然進んでいない。あるいは第一次大戦、第二次大戦といったような戦争のはざまでありましたために、各国はこういう社会福祉的なものにお金を出す余裕がなかったということでありました。
 そのようなことでありますので、第二次大戦後に被害者に対する問題というものが取り上げられ、かなり充実してきたというのは、それはそれぞれの国が社会問題に対する真剣な取り組みといったようなものを行うその状況とのかかわりがあるわけであります。
 理論的には被害者学というのが最初にありました。その被害者学の学問的性質をめぐる議論に次いで、イギリスで被害者に対する国費による補償という問題が出てまいります。これがイギリス、英語圏、ヨーロッパ、そして我が国の犯罪被害者等給付金支給法といったようなものになっております。
 そして、このような被害者に対するいろいろな問題、これの国際的な流れというのは、ここにありますようにエルサレムで開かれた被害者学シンポジアムというものが非常に大きな影響を及ぼしております。実は、この第一回のシンポジアム以来私は全回出席をしております。
 このシンポジアムでもって次のテーマとして出てきたのが、刑事裁判あるいは警察の事情聴取等から始まるのでありますが、特に女性の被害者の精神・心理的な傷という問題が扱われるようになりまして、これが第二次被害者化の問題ということになるわけであります。そして、裁判に至らない前段階でもって公開の法廷等々による被害者化、これを恐れた被害者が悶々のうちに自分で心の傷を我慢するといったような問題が起こります。それによって、被害者の中には自滅するような人もあれば、他人に自分の気持ちを転嫁するために新たな犯罪者になるといったような問題があります。そういう心の傷をいやすための被害者支援、精神・心理的な支援という問題が第三次被害者化というものとのかかわりで出てまいります。
 この被害者学シンポジアムに集まった専門家たちが一九七九年に世界被害者学会というものをこしらえまして、私は推されて副会長にそのころなりました。この世界被害者学会が国連あるいはヨーロッパ評議会に働きかけまして、このdというところに書いてありますように、一九八五年のミラノにおける第七回国連犯罪防止会議に、犯罪と権力乱用の被害者に関する司法の基本原則というものをまとめるのに、世界被害者学会のプレッシャーグループがそれをつくったのを認めてもらったわけです。そして、これが幸いにも同年、八五年十一月の国連総会における原則の採択ということになる。さらに、ヨーロッパ評議会では、一九八七年に閣僚委員会が被害者に対する支援と被害者化の予防に関する勧告というのをまとめ、この勧告によって加盟諸国の刑事法制というものを整備するように努力するというようなことが行われたわけであります。
 以上のような経過から、私自身は被害者に対する権利の法的確立あるいは犯罪被害者に対する国及び民間団体の整備といったようなものがなされることを希望し、かつ積極的にそのための働きかけをいたしました。日本被害者学会というものを創設したこともその一つでありますし、そのメンバーによって日本の被害者の実態調査というものを行ったのもその成果の一つであります。
 そして、日本における被害者支援というものが非常に進みましたのが、一九九〇年に犯罪被害者等給付金支給法施行十周年の記念の会合のときに、被害者から被害者の精神・心理的な悩みに何とか対応してほしいという発言、これを受けまして実態調査の必要性というものを認識し、かつそれを実現するのに我々が実態調査委員会をこしらえてやったわけです。
 そういうことで、被害者に対する精神的な支援というものについては、警察そして検察庁は去年の四月から全国レベルでもって犯罪被害者等に対する通知制度というものを発足させておられまして、我々実態調査委員会の実態調査で出てまいりました、参考人等々で随分いろんな目に遭っているのにその事件がどうなったかということについて一切その後連絡がないのは非常に困るというようなことから、その不備に対する対応ということでこのようなものができたわけです。
 そして、最後に私たちが希望しておりましたのが、まさに刑事手続法における今の現状に対して被害者に目を向けた規定を置くというその問題であります。
 これにつきましては、今から三年前にドイツの「白い環」という犯罪被害者の支援団体の責任者が参りまして支援の話をしたときに、実はドイツでは証人として被害者が出た場合の証人に対する保護というものに真剣に取り組んでいるんだという話を聞きました。同じ年の秋に、オーストリアの「白い環」の会長である、エッペンシュタインというのがドイツの人でありますが、ウド・イェシオネクというウィーン上級裁判所の長官、この方をお招きして、特にオーストリアにおける被害者の証人、これをどのように保護しているかということについての話を伺いました。
 その間、日本被害者学会にイェルク・マルティン・イェーレというゲッティンゲン大学の犯罪学の教授を呼びまして、ドイツにおける被害者証人の精神・心理的な傷を拡大しないようなためにこういうような方式で、法廷にテレビを持ち込んでこういうふうにやっておるというような話をしてもらったことがあります。これらが実は写真でありますが、一つはウィーンの上級少年裁判所で採用している少年被害者を別室に置いて、そこでいろいろな発言をさせ、それをテレビで法廷に送るというその写真であります。もしよかったら御回覧願いますでしょうか。
 それからもう一つの方は、これはadoというドイツの制度でありまして、各地方の州の司法省の予算をもとにし、被害者に対する相談、助言等を行うと同時に、そのセンターのある区裁判所、日本で言う簡易裁判所あるいは地方裁判所あるいは検察庁から要請がありますと、その被害者を法廷にエスコートする、そういうサービスなども行っているのであります。これはヘッセン州という限られた州の写真でありますけれども、どういうセンターをつくり、どういう雰囲気でもって被害者と対応しているかということがそこでわかると思います。
 いずれにしても、私自身この被害者支援の問題というのに長らく携わっておりました関係で、法制審議会の被害者に関する審議などでも自分の経験を積極的にお話しし、この考えができるだけ法改正に反映するよう努力をしてまいったわけであります。そのような立場でありますので、この資料としていただきましたもの、あるいは法案などを拝見してまことに時宜を得たいい法案であるというふうに今考えております。
 ただ、私本人として少し加えたいと思いますのは、被害者に対して、裁判所に別室を設けて自分の番が来るまで、下手をすると加害者の家族と一緒のところでうろうろするようなことになったり、あるいはあいている法廷のところで待っているといったようなこともあるようでありますので、そういう事態は避けていただきたいものだなというふうに思います。これはイギリスの被害者憲章に基づく対応ということで私どもが本で読みました問題であります。待合室をつくるということであります。
 それから、外国の制度を日本に入れる場合の問題として気をつけなければいけないのは、例えばヨーロッパの場合ですと、どうしても日本の当事者主義とは違う訴訟構造でありますので、裁判官が中心になって別室にいる子供あるいは女性の被害者にいろいろな質問をするということであります。日本の場合はやはり当事者主義ですから、その発言というものは裁判官がすべて取り次ぐというのではなくて、弁護人あるいは検察官が少年にいろいろ質問をするというようなことになると思います。そういうわけで、そういう大陸法的な職権主義モデルで行われている、別室にいる被害者証人に対する尋問のやり方等々について工夫が必要ではないかなというふうに考えているわけであります。
 差し当たって私の存じ寄りはその程度にしまして、御質問に答える形でさらに補足したいと思います。どうもありがとうございました。
○委員長(風間昶君) ありがとうございました。
 次に、高原参考人にお願いいたします。高原参考人。
○参考人(高原勝哉君) 高原でございます。
 本日は、発言の機会を与えていただきまして心から感謝いたしております。
 私が被害者問題に初めて取り組みましたのは、今からわずか三年前でございます。以後今日まで、被害者の心の傷の問題に無知、無理解であったこと、二次被害、とりわけ弁護士みずからが二次被害の加害者であること、日本の被害者支援が欧米に比べ二十年以上も立ちおくれていること、こうした一つ一つの問題を自覚し、反省しながら活動を続けてまいりました。同時に、弁護士という肩書きを持った一人の人間として、あるいは日弁連全体として、被害者支援の問題に真剣に取り組まなければいけないということを心を新たにいたしているところであります。
 また、お手元に犯罪被害者に対する総合的支援に関する提言、少年事件手続への関与等に関する規定、単位会の取り組み状況、この資料がございますが、これはここ三年間の日弁連としての活動を取りまとめたものであります。御一読いただければ幸いでございます。
 ところで、政府御提出の二法案についてでございますが、これは実質、法務省が約三年間、被害者問題に真剣に取り組んでこられた、加えて法制審で集中的かつ本音で議論がなされたいわばそのエッセンスであります。刑事公判手続という限られた範囲の改善策ではありますが、これが成立しないと次へ進まないという状況でありますので、ぜひとも今国会で成立していただきますようにお願いいたしたいと思います。
 問題は、今後の運用面にあると思います。裁判官、検察官、弁護人という法曹三者が個々の事件においてこの法律の趣旨、精神をどれだけ生かすことができるか、犯罪被害者に対し敬意と共感をどれだけ持って接することができるか、運用面でのチェックが肝要であると考えております。
 また、刑事弁護という観点から考えた場合に、否認事件、これは全く別でありますけれども、初めから有罪を認めている事件、こういう事件においては、加害者である被告人が被害者と直接向き合う、自分の行為によって被害者がいかに傷ついているかを自覚し真摯に謝罪する、そして被害者の立ち直りのために何をすべきかを考える、こうした作業をサポートすることが刑事弁護人の重要な役割となるのではないかと考えております。被害者に対する謝罪と弁償なくして加害者の更生はあり得ないのであります。その意味で、日弁連が提唱しております被害者加害者和解あっせんプログラム、被害者・少年等協議プログラムが今後少しでも多く実践されることを願っている次第であります。
 次に、犯罪被害者基本法についてでありますが、衆議院の法務委員会において一、二の参考人が、現時点における立法政策としてはまず各論から始めるのが妥当であるという趣旨の発言をしておられます。そこで、私といたしましては、この御意見を踏まえながら基本法の早期制定の必要性について意見を述べたいと思います。
 まず、各論からという御意見についてですが、実は昨年十一月に犯罪被害者対策関係省庁連絡会議というのが発足して、ことしの三月に報告書をまとめておられます。非常に精力的に会議を重ねられたものでありますけれども、残念ながらその内容は、従来から警察庁と法務省が推進してこられた施策を取りまとめただけで、新しい前向きの施策はほとんど見当たらないというのが率直な感想であります。こうした会議に内在する限界かもしれません。だからこそ基本法制定の必要性を訴えたいのであります。基本法が時期尚早だと言われるのであれば、いつ、だれが、どのような項目についてどのようなスケジュールで施策を策定、実現しようとされるのか、これを明らかにされる必要があるのではないかと考えます。
 また、慎重論の根拠の一つとして、刑事手続における被害者の当事者性についての複雑な問題があること、犯罪以外の被害者や被疑者、被告人の人権とのすり合わせが必要であることを指摘しておられます。さらに、ある委員の方は、基本法をつくるときにはマスコミ規制の議論が出てくるんだろうと発言しておられます。
 私といたしましても、これらのテーマの重要性については率直に認めたいと思います。しかし、これらが決着しないと基本法がつくれないのか、答えはノーであります。鶏と卵の論争かもしれませんが、要は基本法の内容、骨格に何をどのように盛り込むのかであります。
 私は、次の四点があれば必要かつ十分ではないかと考えております。
 第一は、被害者支援の総合的な施策を策定、実施することが国及び地方公共団体の責務であることを明記すること。第二に、犯罪被害者には敬意と共感を持って接すること、そのプライバシーを尊重すること、こういう基本理念を明記すること。第三に、具体的な施策についての指針を示すこと。第四に、政府の中に支援対策に関する審議会を設置することであります。衆議院における山上参考人とほぼ同じ意見であります。
 次に、基本法の制定は犯給法の抜本的な見直しにつながるのではないかという議論がありますので、この点について触れたいと思います。
 御承知のように、犯給法は昭和五十五年に制定されましたが、当時、国の予算を使ってなぜ補償するのかということについて活発に議論が行われたようであります。例えば、国の保護義務違反を根拠とすると、こうした考え方を初めとして多くの議論がなされましたが、これらの意見は、被害者が補償をされる権利を持っているんだということを前提にした議論でありました。しかし、現行の犯給法はむしろ恩恵だ、見舞金なんだという前提でつくられました。その後二十年、犯給法が不備、欠陥を持っている、これが目立つようになってきておるのではないか。
 例えば下関事件、これはJR下関駅構内で起きた通り魔事件でありまして、犯人は乗用車で構内に突っ込み通行人を次々にはねた。その後、包丁を振りかざしてホームで電車を待っていたお客の胸やわき腹を刺した。そのうち、車ではねられ死亡した方がお一人、重軽傷者が六人、包丁で刺されて死亡した方がお一人で重軽傷者が六人でありました。ところが、車ではねられたグループは自賠責保険の適用がありましてかなりの金額は支給されます。一方、包丁で刺されたグループには犯給法の適用しかない、場合によってはその適用さえなされない人もおるということで、両方のグループの金額の格差というのは極めて大きいものがあります。
 しかも犯給法では、加害者から損害賠償を受けたときにはその限度で給付金がカットされるということになっております。そのため、犯人側から弁償金の提供の申し出があったようでありますけれども、被害者弁護団とすれば果たしてこれを受け取っていいものかどうか、仮に受け取っても両方のグループにどのように分配すればいいのか、非常に今悩んでおるというお話を聞いております。
 問題は、こういう現実、これを国民が納得するかどうかだろうと思います。私は、犯給法制定後二十年たった今日、その給付内容を含めて抜本的に見直しをする時期に差しかかっているのではないかと考えております。
 さらに、財源論についても一言触れたいと思います。
 これは犯給法に限らず、被害者支援に必要な資金をだれがどの程度負担すべきかという問題であります。国のお金、地方公共団体のお金及び民間の寄附金の振り分けであります。犯給法の財源、民間支援団体への援助金、こうしたものをだれがどの程度負担するか。それに関連しまして、国のお金を使う場合であっても、これを一般予算から出すのか、その原資を特定の財源に求めるのか。
 今回の法制審で犯罪被害財産の没収、追徴の制度、これが事務局から提案されたわけですが見送りとなりました。これは犯罪によって得た財産をその事件の被害者に還付しようとするものでありました。これも一つの考え方だろうと思います。他方、これを犯罪被害者支援基金としてプールし、被害者全般の支持に使うという考え方があってもよいのではないか。
 例えば、アメリカ司法省の中に設置されているOVC、犯罪被害者対応課、これの九六年度の予算額は五億二千八百万ドルであり、その九〇%は犯罪者が支払った罰則金の中から出ているということであります。こうしたシステムも我が国の今後の方向性を示しているのではないかという気もいたします。
 犯給法を考える場合に、法理論としての論争も大切でありますけれども、私のような実務家の立場からすれば、今指摘しましたような事柄を実証的に調査研究する、そして日本に最も適したシステムを開発していくことの方が肝要ではないかと考えております。
 最後になりましたが、朝日新聞の次の社説を引用し、すべての政党の皆様が一致協力して被害者基本法をできるだけ早く実現していただきますようお願いいたしたいと思います。
 「犯罪によって心身に傷を受けた人や、残された家族の気持ちをくみ、立ち直りに向けて手助けをする。 そのために、私たちの社会は何ができるのか、何をなすべきなのか。」。
 以上であります。
○委員長(風間昶君) ありがとうございました。
 次に、小西参考人にお願いいたします。小西参考人。
○参考人(小西聖子君) 私は、一九九三年から、東京医科歯科大学の犯罪被害者相談室におきまして最初は室長としまして犯罪被害者の精神的援助に当たってまいりました。去年からは武蔵野女子大学に移りまして、こちらでも心理臨床センターという名前で犯罪被害者の精神的援助をする場所を設けて実践活動をしております。
 私は、前のお二人の方と違いまして法律の専門家ではございませんので、法案そのものの法的なことについて何か申し上げるというのは難しいんですけれども、ふだんから犯罪被害者の方の話を聞くというのが私の仕事でございますので、直接聞いたことあるいは問題と思うことをお話ししたいと思います。
 それからもう一つは、やっぱり性暴力被害者についても今回その法案の中で扱われていますけれども、こういう人たちについては、まず弁護士さんも女性じゃないと嫌だ、それから精神科医も会うのだったら女性でなくてはとてもできないというふうにおっしゃる被害者の方も多いわけで、そういう女性の立場からの問題というのも少しお話しできればというふうに思います。
 レジュメとしてちょっと資料を、全部資料なんですけれども、資料をお配りいたしましたけれども、資料の一は私が今やっていることはどういうことかということをちょっと御説明しようと思って持ってまいりました。
 大体九三年から変わらずやっておりますが、対象としておりますケースは、そこに書いてありますように殺人事件や交通事故による遺族あるいは強姦やその他の性暴力の被害者、それからドメスティック・バイオレンスの被害や児童虐待の被害者、最近ではストーカーの被害などもたくさん相談が参っておりますけれども、そういうケースを扱っています。
 医科歯科大学の犯罪被害者相談室をやっていたときも、一九九七年ごろからは年間千件を超す相談をいただくようになっておりまして、今回そちらは残ったままで新しくまた大学でセンターを立ち上げたんですけれども、実質上は半年で電話相談と面接を含めて七百件の相談を最初から受けております。これはどちらかというと、電話線が一本というところで制限されていたり相談員の数が足りないというところで制限されておりまして、もしもっとサービスができればニーズは非常にたくさんある。いつもお断りしてどこに紹介しようということで悩んでいるというのが現状です。
 こういう相談を始めましたころは、現在のような通知制度もなく、それから性暴力に対する関心というのもほとんど社会になく、それからPTSDという言葉も知っていらっしゃる方はほとんどありませんでした。その中ではたくさんの二次被害の話を聞きまして、その二次被害の中ではやっぱり司法の過程における二次被害というのは非常にたくさんあるわけです。
 これは話せばもう切りがないのですけれども、例えば殺人事件の遺族の方なんかは裁判の過程に全く自分が排除されている、何もできない、こんなに何もできないならば、いっそ加害者とすれ違ったとき、大体そういうところですれ違うということが非常に負担なんですけれども、すれ違ったときに実は包丁を隠し持っていた、だれもやってくれないなら私がここで刺そうかと思ったということをおっしゃる方もおられました。
 これは特別な方ではなくて、ふだんは遺族の方はそういうことはおっしゃいませんけれども、話しても大丈夫だと思うまではたくさんの方がそこまで強い怒りをやはり持っていらっしゃいます。
 それから、周りの人に対する不信感、だれも助けてくれない、私のことはわかってくれないというような孤立感というのが非常に強くて、まずお話を聞けるようになるまでに何カ月もかかることも少なくありません。
 それから、性暴力の被害者の方も、むしろこちらの場合は司法に乗っていく前の段階でたくさんの問題があります。実際に、これはみんな相談で聞いた話ですけれども、痴漢の被害に遭ったと、非常にショックだったので警察に行ったら、私が四十代だったために、さわってもらえてよかったじゃないかと言われて帰されたとか、本当に実際にそういう話はたくさんあるんですね。
 それから、性的虐待の被害者の場合に、ようよう何とか周りの人が加害者から被害者、子供を離すことができても、例えばやっぱりこれから先の不安のために、あるいは加害者から再び虐待される恐怖のために子供が戻ってしまう、自分から戻ってしまうということ、これはよくあることなんですね。むしろそこにこういう性的虐待の病理があらわれているわけなんですけれども、それを周りの人が、ああやっぱり親子の情があったね、よかったねというふうに評価したというふうな話も聞きます。
 そういう点では、犯罪被害者の心理とか犯罪被害者の持っている傷に対する無理解というものが非常に被害者を傷つけてきた。今回の法案で扱われていることは、私にとってはその一部と思われるわけですけれども、その一部でもきちんとした文章になってすべての人にそれが行われるということは非常にいいことではないかと思っております。
 今でも実際に電話を聞いているわけですが、電話を聞く対象の方というのはもうごく普通の、普通の被害者というのは変な言い方ですけれども、例えばマスコミに登場したりそういうことのない被害者の方が多いわけですが、そういう方の話を聞くと、今非常に個人差というか、ケースによって差が大きいというふうに思います。
 時には、例えば警察でも理解のある警察官に当たった、それから弁護士さんも理解のある人に当たった、裁判の中でも尊重されたというふうに言われる方が、今までゼロだったのが出てきたということは確かにあります。ただ、たくさんの方は、やはり以前と同じように、警察で心ないことを言われて、また弁護士さんのところに行って、あんたそれは勝てませんよと一言で終わりにされた、それから裁判でもやっぱり私は無視されたということをおっしゃる方も多いわけですね。世の中の関心が被害者に向いてきたために、一部では随分よくなっているところもあるんだけれども、全体としてはまだまだ平均点としては上がっていないところもあるというのが私の印象です。
 ちょっとPTSDのこともお話ししたいと思いましたが時間がありませんので、もしあれでしたらまた後で御質問いただければと思います。
 実際に、例えば性暴力の被害者が今回告訴する期間が撤廃されましたけれども、直後の被害者というのは、これは性暴力だけではなくてさまざまな犯罪の被害者が非常に特異な精神状態に陥る、これはもうショックの余りなわけですけれども、ということがございますので、具体的に例えばどういうことがあるかというのを少しだけ御紹介したいと思います。
 資料三のところです。真ん中辺のところですけれども、「精神的援助の概観」と書いたものがございます。これは、臨床精神医学の本の中に私が犯罪被害者のPTSDの治療について書いたところから持ってきたものですけれども、事件の最中から被害者の感覚というのは非常に変わるんですね。
 例えば、もう強姦の途中から、その次のページにあります非現実感、起こっていることが現実でない感じ、自分のことではない感じ、それから意志がなくて自動的に体が動いているような感じというのを味わう人、これはたくさんいます。
 それから、時間感覚が変容する。急に時間がゆっくりになって、例えば五分ぐらいを一時間ぐらいに感じたりする、そういうこともありますし、それからその下の方にありますが、記憶がなくなって飛び飛びの記憶しか残っていないこともあります。
 それから、非常にたくさんあるのが、その次にあります感覚、感情の麻痺ですね。例えば、暴力の被害にずっと遭い続けているときに途中から痛みを感じなくなってしまうというようなこともあります。痛覚が麻痺するわけです。それで、ヒルマンというのは、これは研究者ですけれども、刑務所の暴動の際に人質になった看守に、これは十四人の看守さんの研究なんですけれども、無痛が見られたというふうにしています。
 また、感情の麻痺も頻繁に見られまして、恐怖や怒りの感情がなくなってしまったということも多い。これが捜査の方たちには、被害者には怒りがない、訴える気がなくて相手に怒ってもいないという非常に誤解を与えることがたくさんあるということをこれまで経験してまいりました。
 このような感情の麻痺は、殺人事件の遺族の方に起こってくることもございますし、性暴力の被害者にはかなり頻繁に見られます。直後にお話を聞きますと、非常に淡々と冷静にお話をされて、この人はこんなに冷静で事件のことを本当に怖がっていたのかしら、それからショックだと思っているのかしらというふうに感じることがあります。これはもうこのことを知っていない限り絶対わからないと思います。どこも知能が下がったり見当識が落ちたりするわけではありませんから、名前を聞けばちゃんとお話しされますし、それからどうしたいですかと言えば起訴しますと言われますけれども、感情がないんですね。
 ほとんどの人に、周囲の人に聞きますと、こういう状態の被害者を見て、元気だ、冷静だというふうに答えられます。ところが、本人はショックの余り麻痺しているわけですから、こういう人の予後は実は余りよくないんですね。この段階では心理的にもあるいは日常的な生活の援助も必要なことがたくさんあります。
 今、直後と申し上げましたけれども、人によってはこういう状態が何カ月もあるいは何年も続く方もおられます。そういう場合にやはり六カ月というような期限がありますと、本人自身がとても合理的に考えて告訴をするというようなことができないこともある。それから、もっとわかりやすいケースではやっぱり怖いからできないというようなこともたくさんあるわけですね。
 性暴力被害というのは非常に精神的なショックの大きい被害の一つであります。これは精神医学的な研究の中でいつも言われていることですけれども、さまざまな暴力被害の中でPTSDを発症させる率というのは強姦が一番高いです。殺人事件の遺族の方にもかなり高率で発症します。この二者が多分一番多いであろうというふうには思います。
 こういうことがわからないと、なかなか援助というのが適切に入ることがないだろう、あるいはこういう状態にある人がそのまま裁判の中に出されて、すごく素人の言葉で申しわけないんですけれども、裁判というところは本人がイエスと言えばこの人は本当にはいと思っているとか、あんたはどう考えているんですかと言われたときに私はこう考えていますと表面上言うと、そのままこの人はそう思っているだけ、ほかには何も問題がないんだと思われるところのように私には見えるんですね。
 犯罪被害者の場合には思ったことを言えない人がたくさんいます。実際に私が持ったケースで、ドメスティック・バイオレンスと、監禁、強姦が全部まじったような被害を受けた方のこれは二十代の女性のケースですけれども、そういう方が裁判に出られたことがあります。
 被告が三人、目の前に並んでおりまして、本人は治療のセッションの中では、相手を罰したい、私をこんな目に遭わせた人に何とか責任をとらせたいということを言っていたんですけれども、もう行く前から非常に安定感を失いまして、会ったら怖い、私は自分がどうなってしまうかわからないというふうに言っていました。それでも悩んだ末に行って証人台に立ったんですが、行った途端に目の前に三人いるのを見て非常に怖くなって、何もなかった、それから相手を罰してほしいということも言えなかったし、何もなかったと彼女は言ってしまったというふうに戻ってきてから泣きながら話をしていました。
 実際に被告人に対するということは非常に難しい。犯罪の被害を受けて恐怖を持っていて、さまざまなトラウマに対する反応を持っている人にとっては非常に大変なことなんです。やっぱりそれが外からなかなか見えないものですから、非常に気の毒な状態に置かれることが多いというふうに感じます。
 最後に、一番最後の資料四のところですけれども、これはランセットというアメリカの医学雑誌ですけれども、そちらに日本の女性への暴力被害の状況について精神医学的なところから見て書いてくれと言われたので、それを書いたものを、ちょうどつい最近のものでしたのでそれを日本語にしたものをまた少し変えて持ってきました。今回の法案について、その上に私が思うことがあるとしたら、やっぱりこういうところだと思うのでちょっとお話しします。
 日本での潜在的な被害の数とその後の被害者の状況というのは、性暴力については非常にこれが多いわけですね。数年前までそれを推測するための材料さえなかったわけですが、私どもが一九九五年から強姦の被害率について調査を繰り返してまいりました。九九年には男女共同参画審議室の方でなさった調査も出ましたし、最近一、二年で幾つか大規模な調査が出ております。
 その中では、成人女性における意に反する性交の被害経験率というのはほぼ一定して数%というところにあります。これは諸外国と比べて決してけた違いに低い値ではありません。私たちの行った東京における乱数標本調査では、四百五十九人の成人女性のうち八・五%に、少なくともこれまでに一回以上の意に反する性交の被害経験がありました。一方、犯罪白書では、一九九七年の強姦及び強姦未遂の認知件数は千六百五十七件、十万対一・三であります。こちらの数はほかの先進国の犯罪統計と比べると極めて低い数なんです。例えば、米国では強姦既遂の生涯被害率は一四・八%というふうに調査がなされておりますけれども、同じ年における司法機関に報告される強姦の数は十万対三十九・三です。ですから、三十九・三と一・三の場合と八・五と一四・八、これをなかなか直接比べることは難しいですけれども比べますと、日本ではどれだけたくさんの人がまだ何も言えていないか。少なくともこの法案で保護される前の段階にあるんだということが言えると思います。
 ですから、今回の被害者保護関連の法というのは、私はぜひ実現していただきたいと思っているんですけれども、むしろこれらをきっかけにして、もう一つ外側の社会を変えていくとかあるいは発見のシステムを変えていくということをしないと、本当の犯罪被害者援助ということができないのではないかなというふうに思っております。
 以上でございます。
○委員長(風間昶君) ありがとうございました。
 以上で参考人の方々の意見陳述は終わりました。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○江田五月君 民主党・新緑風会の江田五月でございます。
 三人の先生方、きょうは本当に私どものためにお越しいただいてありがとうございます。それぞれの皆さん方から大変貴重な御意見をいただきました。
 最初に私自身の経験を申し上げますと、私は国会議員になってもう二十年を超える年月がたってしまっておるんですが、その前は裁判官をやっていまして、刑事の裁判官をほんのちょっとだけやったことがあるんですけれども、高原さんは弁護士ですから法廷を御存じと思いますが、御存じどころか私よりよっぽど御存じかと思いますけれども、刑事の法廷の中で何だか被告人がこの世の中で一番立派な人だというような感じにつくり上げられるようなことがあるんですよね。検察官の方はいかに悪質かという立証はそんなにしません。弁護士の方はもういろいろいいことを並べ立ててと。そんな中で、まあいいけれども、ちょっとこれは被害者の人から見たらこんなことをやっていたらどう思うんだろうかななどと思ったことはしょっちゅうあります。そんなことで私の刑事の判決はどうもちょっときつ過ぎるというような傾向があったのかもしれませんが、そんなこと。
 それから、二十数年の間にちょっとバッジを外していたことがありまして、弁護士をすることができるものですから弁護士で食いつないだんですが、その当時に、少女に対する痴漢の事件があって、検察官は、起訴をしたくない、告訴をしている母親と弁護人、示談をしてこい、こういうわけで、つらかったですね、こういう形で江田先生とお会いするなどとはなんと言われまして。しかし、現実に強制わいせつですから、起訴されますと、もし調書が否認されると、罰金はありませんから略式というわけにはいかないので、法廷に女の子が出てこざるを得ない。これもやっぱりそういうことを理由に、これ以上むごい目に遭わすな、示談をしろというのは何としてもつらい話だったので、そんな体験を踏まえております。
 一九八〇年に犯給法ができましたが、一九七七年に私は初めて参議院議員に当選をさせていただいて、全くミニ会派だったものですから一人で、委員会というともうこの法務委員会ぐらいしかなくて、今の中村さんと同じ立場ですが、その中で何かやらなきゃならぬというので、私は、犯給法というのは私がつくったというとおかしいですが、プロモーターの先頭に立っていたような気がしますが、その当時の議論を思い起こしたりいたします。
 犯給法をつくったときに、とにかく小さくても芽を出さそうと。ところが、小さな芽がなかなか育たない。二十年たってまだこのざまというわけですから、今回のこの犯罪被害者関係二法、政府提案の法律も、これが小さな芽でこれから大きな体系をつくっていくんだといっても、やっぱりそう簡単には育たない。だから、さっき高原さんおっしゃったように、もしこれから大きくしていくんだというならだれがいつどこでやるんだということを示してくれというお話は、全くそのとおりだと思っております。
 前置きはその程度で、順次伺ってまいりますが、もうおっしゃっていただいたことは全部そうだそうだということばかりで、鋭い追及は得意なんですが、どうもなかなかそうもいかないので、宮澤先生、さっき、これ私の聞き間違いだったでしょうか、ペーパーの2の被害者政策の展開のcのところの、第三次被害者化とおっしゃいましたか。
○参考人(宮澤浩一君) それは、被害者学の議論でそういうことがあります。
 第一次というのは、要するに犯人から受けることで被害者になるわけですね。
 第二次の方は、その事件を処理する過程で、警察による事情聴取、それから検察で、果たして本当にこれ最後まで、告訴をし、被害を受けたことに対する応報的な、そういう意志を貫徹するような人であるのか、これは日本というよりはむしろ欧米の議論なんです。そういうことで、本当にしっかりした、最後までちゃんと、殊に陪審の場合に、陪審員の前で取り乱すなんということがないだろうなというようなことをチェックするために、非常に検察官が厳しく、本当に犯人の側に責任があるんだろうかどうだろうかというようなことを追及するわけです。そうしますと、付き添ってきた夫だとか親だとかボーイフレンドとか、そういうのが、犯人でもないのに何でそういう厳しいことをやられるのかという、そういうようなこと、それも第二次被害。それから、公開の法廷でもって被告弁護側から厳しく反対尋問される、こういうのを第二次被害というわけです。
 これに対して、第三次被害の方は、親だとか身の回りの者が、やめておけ、傷つくのはおまえだというようなことで、非常に被害を受けたことが内向して、それで、さっきのお話じゃありませんけれども、被害者が、やってくれないんだったら自分がやるというようなことで、あるいは犯人になったり、あるいは世の中をすねて社会生活が何にもできなくなるようなそういう心理状態になるというのを第三次被害者化と、こういうふうに我々は言いまして、今の小西先生のおっしゃるような問題に対応するのは実は第三次被害者化に対する対応というふうなことで考えております。
○江田五月君 ここでお書きの、刑事司法の過程で深い痛手を負う、ですからこれは第二次でよろしいんですね。
○参考人(宮澤浩一君) そういうことです。
○江田五月君 その後のことが今度は第三次だと。マスコミによる被害などもですね。
○参考人(宮澤浩一君) ええ、もちろんそうですね。マスコミの方はむしろ第二次かもしれません。
○江田五月君 第二次。
 先生の今のお話の中で、言葉じりというわけではないんですが、最後が刑事手続法だと。ずっと今まで犯罪被害者のことをやってきて、いよいよいろんなことが進んで、最後の仕上げが刑事手続法の関係で今回出されているものだというような御発言……
○参考人(宮澤浩一君) その最後という意味は、そういう第二次被害者化を回避するという意味で、これまで警察は御案内のとおり九六年あたりから対応しています。それから検察は九四年から対応していますね。
 ところが、刑事訴訟法がやっぱりきちんと変わりませんと裁判所としては動きがとれないんじゃないか。もちろん裁判所の方と議論をしますと、そういうことを一番気にしながらきちんと処理しているのが裁判所だと言われるんですが、先ほどのお話にあったように、やはり公開の法廷で自分を攻撃した者と面と向かってやり合うというのはとても耐えられないことだし、殊に子供にとっては非常に深い傷を負うんではないかと。だとすれば欧米でやっているようなと、こういう議論になりまして、それを法的にきちんと根拠づけないと、別室にその人に対するテレビを置いてどうのこうのというのができないだろうと思うんですね、運用でも。
○江田五月君 いや、私どもはもちろん今回の内閣提出の両法案は賛成でございますし、これは大切にしていかなきゃならぬと思いますが、これのさらに先に、先ほどの高原さんあるいは小西さんのお話のとおり、社会全体がやっぱりもっと変わっていかなきゃならぬと、犯罪被害者の社会的な支援、経済的に心理的にという面も含めて。
 したがって、私たちの考え方は、刑罰権が国家によって独占されて、そして復讐は禁止をされるわけですから、その分やはり被害者は社会から支援を受ける権利があると。そういうことで、その権利というものをはっきりさせて支援体制をつくろうというのでこの犯罪被害者基本法案というものを出しておりまして、先生のペーパーの最後の方に参考資料としてこの基本法案についての見解を書いていただいておりますが、一向に構わないというお書きぶりですが、これはやっぱりこういう法案にこれから向かっていかなきゃいけないんじゃないかと私たちは思いますが、いかがでしょうか。ちょっと簡単にお願いします。
○参考人(宮澤浩一君) 実はさっき時計を見ましたらもう制限時間なので慌ててはしょってしまったんですが、やはり私、法律家の一人として、こういう問題というのは、まず被害者憲章とかあるいはこういうようなものがあって、そしてそれに基づいて現行法を手直しするというのが、論理的な筋としてはその方が正しいと思います。ただ、今度の提出されているものとこの基本法との間にきちんとした論理的な詰めができますとさらにいいな、そういうことでこういうことを書かせていただきました。決してあってもいいよという意味じゃありません。
○江田五月君 ありがとうございました。
 時間がだんだん来ておりまして、高原参考人、遠方から本当にありがとうございます。
 ちょっとあまのじゃく的質問なんですが、刑事司法の中で、否認事件は別だけれども、有罪を認めている事件の場合には、被害者の立場も考えて、加害者と被害者が向き合ってそして和解をしていく、そのサポートが刑事弁護人の任務だと。そうなると、刑事弁護人の被告人のいいところを最大限引き出していくという立場はどうなっちゃうんでしょうか。あまのじゃく的質問で済みません。
○参考人(高原勝哉君) もちろんおっしゃっているような面も大事であることは、これは申すまでもないと思います。
 ただ、私が先ほど申し上げましたのは、これまでの刑事弁護で全く欠落していたと。その部分についてもっと目を向けていかなきゃいかぬということを言いたかったわけであります。
○江田五月君 私は、刑事司法の手続の中に、今回、証人として出てもらうこととかあるいは被害弁償のこととかいろいろ取り組んでいますが、刑事手続の中で被害者救済を経済面であれ心理面であれ果たすというのはしょせんやはり場が違う。刑事司法の方は、やはり被告人の人権をちゃんと保障しながら適正手続で行っていって、それともちろん関連はするんだけれども、別建てで被害者補償の方は、被害者支援の方はしっかりしたものをつくる、そういう被害者支援の方がしっかりしていれば刑事司法の方で被告人の権利をしっかり守っても大丈夫だと、そういう感じがするんですが、どうでしょうね。
○参考人(高原勝哉君) 私も江田委員と基本的には同じ考え方です。
 例えば、ドイツなどではむしろ被害者が第四の訴訟当事者という形で刑事手続にも参加をしていっているわけですね。あるいはそこまで行かなくても、いわゆる附帯私訴だとか損害賠償命令とか、要するに刑事司法の中で刑事も民事と一遍に解決しようという仕組みがあります。
 今回の内閣の二法案も、だから今回の法制審の審議も、被害者は事件の当事者ではあるけれども訴訟手続の当事者ではないんだと、そういう中間的な地位、これでとりあえずやろうということになったわけですけれども、さらに今後どうあるべきかということになると、やはりもうちょっと冷静な議論が要るんじゃないかと思っております。
○江田五月君 ありがとうございます。
 小西参考人、本当に私どもが気がつかないことをいろいろ教えていただきましてありがとうございます。
 私どもが提案をしている犯罪被害者基本法案、もうごらんいただいていると思いますが、今のお話で、例えば警察の無理解、警察の本当に心ない言葉で余計に傷つくといったことが恐らく日本じゅうしょっちゅういっぱいあるんだろうと。最近の警察不祥事なんか見るとその感を非常に強くするんですね。私は、やっぱりこういう警察だけじゃなくて社会一般もですが、犯罪被害者の立場についての啓蒙啓発、教育、こうしたことは本当にきっちり取り組んでいかなきゃならぬ。そんなことも含めて、私どもの基本法案の中に書き込んであるんですが、そうしたことについての御意見を最後にいただければと思います。
○参考人(小西聖子君) 非常に大事なことだと思っています。
 警察はむしろ組織としてはかなり早くから被害者援助に取り組んでこられているわけですが、それでも末端ではやはりなかなか変わらないところもあるわけですね。それは、多分司法にかかわる裁判官、検察官、弁護士、すべての方がやっぱりそうであろうというふうに思います。そういう直接犯罪被害者にかかわる方のかなり集中的な啓蒙活動とか教育というのも必要だと思いますし、もう一つは、犯罪被害者の人がかかわるのは司法の専門家ばかりではなくて、例えば福祉事務所の窓口とかお役所の窓口とか、そういうところもたくさん行くわけですね。そういうところでもかなりひどい扱いをされていることがたくさんあります。そういう広く一般に被害者と接する方たちへの啓蒙活動も大事だと思っています。
○江田五月君 終わります。
○魚住裕一郎君 公明党・改革クラブの魚住裕一郎でございます。
 きょうは大変貴重な御意見をいただきまして心から感謝いたします。
 何点かお話を承りたいと思いますが、まず宮澤先生にお聞きしたいんですが、今回のいわゆる閣法は主要な問題点をほぼ網羅しており評価できるというふうにコメントをしていただきました。
 法制審議会に対する諮問というのが去年ですかあって、九項目にわたりますが、最後の「被害回復に資するための没収及び追徴に関する制度の利用」についてはどうかという、この部分については今回は法制度上落ちているんですが、この点について先生の御意見はいかがですか。
○参考人(宮澤浩一君) これは、実は日本だけではなくて各国ともに非常に悩んでいる問題であります。よくアメリカの例などを出してきて、アメリカでは非常に金銭的にたくさんのものが取れてそれでどうのこうのということがあるんですが、御存じのとおり、日本はどちらかというとアメリカ型の法制度ではなくて、大陸型の、つまり法治国原理というようなものがきちんとあってそれで対応する、そういう国でありますので、目的のためなら何でもできるというふうな制度をつくることの許されないそういう国柄であるとすれば、じゃどうすればいいかというと、私は非常に狭い専門領域で、ドイツ、スイス、オーストリアというこの三つのドイツ語圏でどういうふうにやったんだろうかというのを見ますと、スイスの場合は、これまで非常に狭かった没収の制度をいじくってというふうなやり方をしました。
 これに対して、ドイツの場合は、新しい資産刑というようなものをつくりまして、それで例えば、本来ならばその行為は六年の懲役である、だけれどもそれを三年にして、そのかわり残りの三年の分、お前からこれだけ剥奪するというような制度にしたんですが、これは憲法裁判所によって大分たたかれました。そして、実際上の運用としてはほとんど骨抜きみたいになってしまったようです。
 そして三番目に、オーストリアで不当利益の収奪、アプシェッフングという言葉でありますが、これを考えたんです。スイス型でもないドイツ型でもない中間的な考え方。ところが、この間スイスでミルカウさんという司法省の参事官に会いまして、機能していますかと言ったら、いや全然だめだということなんですね。つまり、やはりそういう何というか、犯罪者からかなりの金額を没収してそれを被害者にという場合の根拠が、財産権の不当な侵害をしちゃいかぬという憲法上の要請とのかかわりで、警察サイドの要求でもって法律ができても司法がどちらかというとそれに歯どめをかけるというふうな、どの論文を読んでもそういう感じが起こるわけですね。
 ですから、その場合、日本で一体どうしたらいいかということで審議でも随分いろんな意見が出ましたけれども、これはいわゆる財産に対する刑罰的制裁の根幹にかかわる問題で、それをやっているととても時間が足りないというようなことから、一つの、何といいますか内部的な諮問というものはあったんだけれども、それが煮詰まらなかったということで、残念ですけれども、これはやっぱり委員の間でのコンセンサスが得られるようなことになりませんと、これはちょっと難しいんじゃないんでしょうか。
○魚住裕一郎君 ありがとうございました。
 ただ、パブリックコメントでは賛成論が強かったというふうに理解をしておりまして、さらに私どもも議論を深めていきたいと思います。
 それで、高原先生に何点かお聞きしたいんですが、一つは、先ほど基本法をつくった方がいいのではないか、四つの要素があればいいのではないか、四つ目に審議会というような言葉が出てきました。日弁連でおまとめになった要綱案ですか、ここでは審議会というのは載っていなくて、被害者支援会議という形になっていて、国が広く国民から会議をつくろうよと、しかもこれは内閣、総理大臣に報告するのはやめて国会に報告しようというような形になっています。
 今、国の全体の流れの中でむだな審議会をつくるのはやめようよというふうなことは当然の流れでございますけれども、それを受けての日弁連のこの案だと思うんですね。すると、今の先生のコメントといいいますか意見とちょっとそごがあると思うんですが、その点はいかがなっていましょうか。
○参考人(高原勝哉君) 正直言いまして、御指摘のように余り厳密に両者を分けて発言しなかったものですから、ちょっと正確を欠いたかもしれません。
 ただ、基本的に私が言いたかったのは、先ほども言いました関係省庁連絡会議、非常によく頑張っておられたんですけれども、結果的には限界があったということになると、まず一つは、被害者だとかあるいは学識経験者だとか、そういう生の声を何かの形で反映していくというシステムが要るんじゃないかということと、もう一つは、各省縦割り型ではなくてもっと総合的な形で審議する場が要るのではないかと。先ほどの省庁連絡会議では大蔵省が入っていないんですよね。
 だから、要は、今なされているのはお金がかからないことは一生懸命頑張っているんですけれども、ちょっとお金が要りそうだというのがどうも入り口のところでとまってしまっている状況にあるものですから、そうしたことをひっくるめて総合的な支援対策を進めていくための何かの組織という意味で申し上げました。
○魚住裕一郎君 それからもう一つ、被害回復の件なんですが、先ほど江田委員に対する中で、附帯私訴ですか、そういう話も出ましたけれども、日弁連のこの被害回復の中ではそこまでは書かれていないといいますか、きょうもらった解説を読んでみても。
 その点については、英米法ではもっと違った形で、刑事司法の手続の中で賠償の命令ができるようにしていくというようなことも考えられているようですが、こういう点はいかがでしょうか。
○参考人(高原勝哉君) 私は学者ではありませんので理論的なことはわかりませんが、少なくとも今の日本の実務家、裁判官を含めてですけれども、そこまでやられちゃうと、何もかも一緒になっちゃって自分たちではちょっと対応し切れないというような何か遠慮といいますか、ちゅうちょがまず一つあるのではないか。それから同時に、附帯私訴については、日本も一回法律はできたんですけれども、これがうまく機能しないでそのままとまってしまっていますね。
 そういうことから考えますと、これまでのように民事と刑事、加害者と被害者を峻別するというのは、それは確かによくない。もう少し近づけなきゃいかぬとは思うんですけれども、一挙に附帯私訴だとか損害賠償命令だとかを取り込んでやってしまうのがいいのか、それとも両者を一応分けた上で緩やかに融合させていくというか、その方向を目指すべきがいいのか。これは学者の方も実務家もいろんな人が入ってもっと詰めた議論をしていかなきゃいけないんじゃないかというふうに思っています。
○魚住裕一郎君 先ほど御紹介あった一九八五年十一月の国連の総会決議の中で、基本原則の宣言というのがありますね。その被害回復の部分では、政府は他の刑事的な制裁に加え刑事事件における判決の選択肢として損害賠償を検討するよう運用規則及び法律を見直すべきであるというようなことが載っていまして、それはもちろん議論をしっかりしなきゃいけませんけれども、今確かに弁護人が民事事件の被告代理人をやるのは大変つらい部分があるわけですけれども、やはり積極的に日弁連としてもこの部分について新しい制度も提言すべきではないかなと思うんですが、この点いかがでしょうか。
○参考人(高原勝哉君) 個人的には、少なくとも初めから頭から拒否してしまうのではなくて、おっしゃっているような制度も一つの選択肢だ、メニューの一つなんだというやわらかい気持ちでもって積極的に調査研究していく、そういう中で日本に一番適したものを求めていく、そういう姿勢が大事だろうというふうに思います。
○魚住裕一郎君 小西先生、ケースごとの大変貴重な御意見をいただきました。
 今回の閣法の中では、特に性暴力を配慮した取り組みという形で、証人尋問の際の負担の軽減ということ、これは大阪でやったような証人尋問の際に遮へい物をやるというような形でありますとか、あるいはビデオリンクで別室でというような形、あるいは性犯罪の告訴期間の撤廃という形になるんですが、先ほどのお話を伺うと、本当に深刻な心理状態に置かれている被害者の方々への配慮として、大きく分けて二つですが、これで間に合うのだろうかというような思いをしてきたんですが、もっとそういう部分について配慮すべき点というのがあれば、今の証人尋問の負担の軽減と告訴期間の撤廃、それ以外にもっと何かあればお教えいただければと思います。
○参考人(小西聖子君) それは刑事訴訟法の中でということですよね。
 もちろんこれだけで十分とは思えないんです。付き添いというのも今回の法案の中には入っていますけれども、例えば、来る前にどういうことが起こるか説明する。それから、終わった後に今度はそれに対してサポートする。どんなふうにしても、やっぱり出て証言するということはそれだけで非常にインパクトがあることでありまして、実際に治療していましても、期日に合わせてぐあいが悪くなるのを見越していろいろ治療方法を変えたり、その直後に治療を入れたりとか、そういうことをしているわけです。でも、それは多分私が専門だからできることで、普通に精神科にかかられていたり心理カウンセリングにかかられている場合にはまず無理だと思うんです。
 そうしたら、多分そういうケアなんかも一緒についてくればもう少し楽かもしれない。あるいは今お話をそういうふうにいただいたように、こういうお話を知っていただければ、ああ、もうちょっとそういうことも配慮しなくちゃいけないんだと今思っていただいたわけですから、そういうことをやはりもっとたくさん知っていただくことで周辺部のケアもかなりできてくるんじゃないかなというふうに思います。
 あともう一つは、復讐がやっぱりすごく怖いんです。実際に強姦で告訴して殺されてしまった被害者もおりますよね。いつ出てくるかということについてはすごく神経質になっている。多分、司法関係の専門家の方はそれほど再犯率は高くないからとたかをくくっていらっしゃるような場合でも、被害者本人は非常に怖いんです。そういうことに対するケアももうちょっと必要ではないかというふうに思います。
○魚住裕一郎君 ありがとうございました。
○林紀子君 日本共産党の林紀子でございます。
 きょうは、三人の参考人の方々、おいでいただきましてありがとうございました。
 まず、宮澤参考人にお伺いしたいんですが、我が国の被害者支援対策といいますのは、現状ではどうしても警察が中心になっているんじゃないかと思うわけです。でも、警察というのは本来は捜査機関ですから、その後にわたって被害者を支援していくということはなかなか、ずっと後までというのは難しいと思うわけです。ですから、日本でも公的機関やNGOというのが主体となっていくということが、先生がお触れになりました「白い環」というんですか、そういうようなものにも倣って、日本でもそういうものが主体になっていくということが必要じゃないかと思いますが、その辺はどういうふうにしていったらいいとお考えになりますでしょうか。
○参考人(宮澤浩一君) 実は私、実態を調べるまでこんなことが起こるとは思わなかったという状況がドイツにあるんです。それは何かといいますと、「白い環」、あれは設立されたのが一九七七年、マインツで七人の学者と実務家がつくったんです。その実務家の二人でしたか、警察の、日本でいいますと県警本部長クラスの人ですか、そういう人。
 それから、今度は実際にボランティアとして二千人ほどの人が約四百カ所に分かれて対応しているんですが、驚いたのは、現職の警察官がボランティアとしてやっているんです。そして、いわゆる連絡所というのは個人の家を提供して、その地域のボランティアがそこに集まってというふうに、その個人の家というのもいわゆる現場の警察官の家を提供したりするという例があるんです。日本でそんなことは起こるわけがないだろうと。というのは、エッペンシュタイン氏が慶応に参りましたときにその話が出まして、警察庁の方がそのセミナーに参加されたときに、日本の警察官にはそんな暇がないという話になったんです。
 では、どうしてそんなことができるかというと、日本と違ってドイツの警察官というのは捕まえて二日か三日で手放してしまいますから、そんな日本みたいに精密司法のための材料づくりなんというようなことは全然ないです。そして、州によって非常に州民からの意見を大事にする。そういう州では現職の警察官がパートタイムで支援をやっているというようなことは非常に住民たちから評価されたりする、そういう土壌があります。日本だったらそういうのは交番だとかなんとかということで、本来ならば、交番の機能というのは、一つの、ドイツでいう「白い環」活動、ボランティアでやっているあの警察官の姿とどうもイメージとしてダブっちゃうんですけれども。
 そんな関係で、今御質問にありましたように、警察の場合は確かに余り最後まで対応できないだろう、そのとおりだと思います。その対応するのがまさに民間の人たちの組織している被害者相談というところになると思うんですが、御案内のとおり今、日本では五十都道府県の中でわずかに十三しかその支援がありません。今年中にあと二つふえるとは言われていますけれども、どこもみんなお金がないんです。
 そんな関係で、今度東京都の都民支援センターができまして、私は理事長をやっているんですが、主たる役目は、どうも金集めに僕を使うらしいということのようなんですが、そんなわけで、先生方にお願いしたいのは、ぜひこういう問題に国費を使うのに余り節約を考えないでいただきたいと思います。やはり被害者というのは全部選挙民でもあるわけですし、その人たちがどういう目に遭っているかということを非常に同情の目で見ている住民というのもみんな選挙民でありますので、そういう意味で、そういう民間が育つということにぜひ御協力願いたいと思います。
 それからもう一つ、確かに警察の場合は各都道府県の本部に相談室ができたり、あるいは、びっくりするんですけれども、北海道が非常に充実しているんですね、その相談体制。そういう五つある本部じゃないところでも女性の警察官が非常に熱心に被害者と相談するということがあります。ただし電話の本数などが限られているものですから、恐らく小西先生はそう言えば賛成していただけると思いますが、被害者というのはやっとの思いでダイヤルを回す。ところがいつもお話し中だということになればめげちゃうわけですね。そういうことを補足するのが民間の支援団体だということになるわけですが、その民間の支援の組織でも電話の台数というとそうないんです。東京都の今度の支援センターは四台か五台あるらしいので、ほかの都道府県の支援の組織よりはお話し中でめげるようなことが少しでも少ないんじゃないかなと思っております。
 ただ、とにかく被害者というのはやはりすがる気持ちでもっていろいろ長話をするので、警察だとそれは苦手になっちゃうんじゃないでしょうか。ところが民間の支援ですと本当に、それこそ東京医科歯科大学や小西先生たちの指導でそういう民間の支援の人たちが、ボランティアが相談員としての資格が与えられたりするので、いろいろ御努力なさっておられる影響が出まして、非常に熱心に親切に被害者からの相談に答えておられます。そういうことです。
○林紀子君 ありがとうございました。
 小西先生に今の続きというような形でお伺いしたいんですけれども、先生も雑誌の対談でやはり警察の捜査とそれからカウンセリングは違うものだということを発言なさっておりまして、私も全くそうだなというふうに思ったんです。
 今NGOの優位性といいますかそういう話もあったわけですが、先ほど先生のお話の中にも、特に強姦被害の女性というのは日本では八・五%、アメリカでは一四・八%だけれども、届け出たというその数は全く大きく違うというお話があって、たくさんの女性が、警察にはもちろん言わないんだけれども、だけれども本当にそのつらい思いを抱えて、じゃ、どこに相談したらいいか、どうしたらいいかと悩んでいる方がもう本当に山ほどいらっしゃるとこの数字は示しているんだと思うんですね。
 そういうことでは、今、宮澤先生からもお話がありましたけれども、例えばNGO、また公的な機関でも、どういう状況になったらそういう女性が本当に一番安心してといいますか相談してみようという気になるのか、その辺は、体制や運営も含めてどういう状況になったらいいのかということをお聞きしたいと思うんです。
○参考人(小西聖子君) 通報率というのも最近幾つか調査されていますが、どの調査でも、性犯罪というか性暴力被害ですね、性暴力被害の通報率が一〇%を超えているものはありません。ほぼ、大体これも数%程度ですから、十数件に一人ぐらいしか警察には通報していない。通報したものが、通報というのはこれは被害者の方が言っていることですから、きちんと取り上げられているかどうかもわかりません。ですから、そういうものが重なってこの数字の差になってくるんだというふうに思います。
 実際に被害者の方に聞いてみると、やっぱり訴えられるものならするんだけれども、言ったときの二次被害が怖い、あるいは、やってみても実際に結局役に立たないんじゃないか、要するに私が思うようなことは何も起こらないんじゃないかというようなあきらめの気持ち、それからやっぱり明るみに出るのが怖いということ、そういうようなことがとどめる大きな原因です。
 今おっしゃったように、警察の中の被害者援助とあるいはNGOで行われる被害者援助とやっぱりその目標とするものが当然違ってきますし、守備範囲も違ってくるものだと思うんですね。NGOの中でもかなり専門的な被害者援助をするところ、例えば法的な被害者援助なんかでも専門的なものというのは当然ありますし、それからもっと、まず窓口的なゼネラルな被害者援助をするというところもあって、これはやっぱりそれぞれ多様でないと、どこかへ行けば全部済みますというところはまずつくり得ないと思います。ですから、多様に必要だというのがまず一つ言えると思います。
 どういう状況なら受けられるか。これは、やっぱり特に性暴力被害については受ける方が本当に被害者の権利とかジェンダーについての偏見ということについて意識化できているかどうかというようなことがやっぱりとても大きいと思うんですね。本当に被害者の方というのは敏感というか、ある意味では過敏なくらいに言葉の一つ一つ、それから話し方の一つ一つに反応されて、ちょっとでもこれは怪しいと思うと、怪しいという言い方はあれですけれども、もう二度とかけていらっしゃらない。でも、かけてこないことは受けている方には消極的にしかわかりませんから、なかなか伝わりにくいんですね。
 そういう点では、今どういう状況ならかけられるのかとおっしゃいましたが、一つは、やはり特に性暴力に関しては性の偏見ということについてしっかり意識化できる、トレーニングをするというようなこと、それからもう一つは、やっぱりお金が足りないと宮澤先生がおっしゃったのはもう本当にそのとおりで、お金がないために二十四時間のホットラインを持てるところがほとんどないんですね。夜になるとぐあいが悪いのになぜ夜かけられないんだということをよく相談者の方はおっしゃるんですが、やっぱりそれはとても、費用と人とトレーニングの、そのトレーニングする方の専門家を必要とすることなんですね。そういうことがやはり足りない。これは多分経済的な問題なんだろうと思います。
 もう一つ私の立場からいいますと、今圧倒的に訓練をする者が足りない。例えば、さっきいろいろな啓蒙活動が大事だと江田先生のときに申し上げましたが、じゃあんたそこに全部行ってくれるのかいと言われると、とてもそういう人員がいないんですね。ですから、いろんな人にトレーニングができる、例えばジェンダーについてもそうでしょうし、私の守備範囲のトラウマの分野についてもそうでしょうし、法的な分野もそうでしょうが、そういうことをトレーニングできる専門家の人材を育てるということが非常に今急務になっているというふうに思います。
○林紀子君 その人材を育てるということなんですが、小西先生なんかも随分御努力をなさっていると思うんですが、しかし、やはり民間というところでは限られたというところもあると思うんですね。そうしましたら、公的な部分でどういうことをやっていったら、その訓練ということも含めまして、NGOに対するお金ということは先ほど宮澤先生からお話がありましたけれども、その訓練をするためにそこにどういう公的な努力ができるのかということはどういうふうにお考えになりますか。
○参考人(小西聖子君) 今までの公的な施設というのは、NGOがあったときに、同じことをとってやろうとするようなところがかなりあったと思うんですけれども、この分野に関してはNGOをつぶしたらきっとできないと思うんですね。NGOに効率的に援助して、NGOがうまく動くように持っていくということが非常に大事だと思うんです。そのために、公的機関としては、そういうところに援助したりトレーニングしたりすることができるような公的機関を設けていただけると非常にいいんじゃないかなというふうに思います。
 ですから、センター、公的に国が持っていらっしゃるようなセンターを一個例えばつくって、その中でトレーナーをトレーニングするとか、あるいは各地からNGOの人の研修を受け持つとか、そういうようなことを専門にやるところがあればかなり進むのではないか。国のお金を実際に被害者に当たるところにまで持っていくのは多分もう今の経済状況では不効率というか進まないと思うんですね。ぜひNGOの力を上手に利用するというようなことをやっていただければいいなというふうに思います。
○林紀子君 最後に高原参考人にお伺いしたいんですけれども、先ほど犯給法との関係でもお話がありましたが、被害者に対する補償といいますか手当てといいますか、そういうものの財源です。
 被害者には今のようにケアをしていくということもありますけれども、すぐすぐ救急救命士のお金まで払わなくちゃいけないとか、医療もすぐ受けたとき払わなくちゃいけないとか、もうすぐ即座のお金も犯給法には引っかからなかったら全部自分で負担しなくちゃいけないということがありますね。
 先ほど、没収とか追徴は今回見送りになったけれども、それを基金としてプールしたらというお話もありましたが、そこに、犯給法との関係もありますけれども、国のお金というのをもっと、加害者から取ったお金ではなくて、それ以外にももっとないとこれを賄い切れないんじゃないかなというふうな気もするんですが、厳密に何対何とかということはなくても、その辺の基本的な考え方はいかがでしょうか。
○参考人(高原勝哉君) 今、実は日弁連の被害者対策委員会の中で、やっぱり犯給法を抽象的に批判したりということではもう間に合わないのではないか、だから実際にこういうふうに制度を変えたときに幾らお金がかかるんだろうかという作業を始めているところでありまして、何とかこの秋ぐらいまでには発表できればいいなと思っているんですけれども。
 ただ単に日弁連だけではなくて、それぞれの部署で今のような実証的な作業を進めていただいて、それからどうするかという決断をしていくといいますか、そういう時期に差しかかっているのではないかと思います。
○林紀子君 どうもありがとうございました。
○福島瑞穂君 社民党の福島瑞穂です。
 きょうは本当にありがとうございます。
 まず、宮澤参考人にお聞きします。
 外国のことなどを本当によく御存じで、被害者学の権威でいらっしゃるのでお聞きをしたいんですが、リストラティブジャスティス、回復的司法についての外国での取り組みについて教えてください。
○参考人(宮澤浩一君) これは耳学問です。というのは、このリストラティブジャスティスをやっているのはオーストラリアとかカナダとか、どちらかというと英語圏ですね。私の聞いているところでは、要するに犯人の家族、被害者の家族、そして住民代表、これが、大体司会をするのは警察らしいんですけれども、相寄り相まってこの事件をどう解決したらいいのかということをみんなで話し合いをするというようなことで、そして住民代表が、ただ単に非難をするだけではなくて、自分らにできることは何なんだろうかというようなことで犯した犯罪者を立ち直らせるために話し合いをしている。
 そのアイデアというのは、実は日本の昔の、昔というとあれなんですけれども、地域社会でもって、地域社会の中に落っこちた者を、いわゆる顔役みたいな者が中心になって何とかおさめていこうというような発想であるとか、あるいはフィリピンとかインドネシアにあります、地域の人たちの間で事件を解決させていくという地域社会の連帯がこういうようなものの発想のもとにあるんだということを聞きました。だから、アジアの知恵を要するにヨーロッパの人が見直そうということなんですね。
 ところが、残念ながら我が国はむしろ地域社会が崩壊しちゃいましたから、それをまねして果たしてできるのかなということはあります。
○福島瑞穂君 どうもありがとうございます。
 次に、高原参考人にお聞きをします。
 日本弁護士連合会二〇〇〇年三月の少年事件被害者の少年事件手続への関与等に関する規定という意見書の中で、少年事件協議について日弁連がまとめているんですが、これも一つのリストラティブジャスティスだと思うんですが、このことについてちょっと話をしていただけますでしょうか。
○参考人(高原勝哉君) 最近、少年が非常に凶悪な犯罪を犯す。マスコミも取り上げる。さあそうすると少年法の改正だというような論議が起きてくるわけですけれども、私自身が今考えておりますのは、これまでの少年法というのは、加害者を全部除外したというか切り離したところで、家裁あるいはその後の少年院その他の施設がどうやってこの子を更生させることができるかという、いわば純粋培養みたいな形で更生を図ってきたと思うんですけれども、そういう時代ではなくなったんではないか。やっぱり少年にも自分がやったことの重みというかそれを率直に理解していただきたい、そういう中でこそ本当の意味の更生が図られるんではないか、そういう考え方が日弁連の中でも生まれてきまして、その上での御提案ということでありますけれども、じゃ実際に、具体的にどうするのかということになると、まだ抽象的な提案にすぎませんので、これからもっと煮詰めていかなきゃいかぬというふうに思っています。
○福島瑞穂君 もう一つの、一九九九年十月二十二日、日本弁護士連合会の犯罪被害者に対する総合的支援に関する提言の中でも、「被害者加害者間の和解あっせん」プログラム案と、それから先生の属していらっしゃる岡山弁護士会が関与しているんだと思うんですが、少年間の集団暴行事件につき被害者、加害者間の和解が成立した事案の報告がありますが、被害者のいやしの問題と加害者の更生とを両方両立させるという、あるいは場合によっては両方、本当にケースによると思いますが、加害者が被害者と向き合うことがもしできればかなり更生していくこともあるだろうと思うんですが、このプログラム案などについて話をしてください。
○参考人(高原勝哉君) 実は、岡山仲裁センターの報告事例の仲裁人は私でございまして、それはともかく、このプログラムは何を目的にするのかということになると、私はやっぱり直接向き合う、対話をすることが目的じゃないか。それ以上に、被害者のいやしのためにと言ったところで、恐らく多くの被害者の方は、少々謝ってくれたっていやしになんかなりませんよというふうに多分言われると思うんです。その意味では、被害者のいやしというのを目的にするというのはある意味ではおこがましいんではないか。逆に、加害者の更生を目的にするといっても、おのずからそこにも限度があるわけでありまして、だから当面の目的というのはやっぱり対話にある。その中でお互いが感情をぶつけ合ったりいろんなことをする中で何かを発見するというか、つくり出していくことができれば、場合によったら被害者にいやしにもなったり更生にもなるんじゃないかというふうに考えます。
 同時に、このプログラムが全部の事件に該当するとはとても思っておりませんので、両方が同意をするという中で進めていくべきものだと思います。
○福島瑞穂君 小西参考人にお聞きいたします。
 法務委員会の多くのメンバーはよく人権教育などについて質問をするんですが、例えば、被害者の感情にセンシティブになってほしい、そのための教育をやってほしい、あるいはジェンダーセンシティブな警察官、検察官、弁護士、裁判官、保護司、ケースワーカーになってほしいという、そういう人権教育についてよく質問が出るんですけれども、小西さん自身が警察に対して研修などに行っていらっしゃいますよね、どんな感じの研修でどの規模でどういうことをやっていらっしゃるか、ちょっと教えてください。
○参考人(小西聖子君) 私だけではなくて、私のグループというか大学から何人も派遣していろんなところに行ってやっていますが、一回限りの講演みたいなものもこれも意味があると思うので、それはあちこちいろんな県警に行ってやりますけれども、組織的にやっているのは、警察学校の中で、一つは被害者対策の専門の人たち、婦警さんもいますしそれから心理専門職の人もいますけれども、そういう人たちに対してほぼ一週間ぐらいの研修がある中のかなりの部分を受け持っています。それからもう一つは、少年相談をしている人たちの研修の中のやっぱりかなりの部分を受け持っています。
 そういうふうに時間がある場合には、比較的実践的に、概念としてわかるのではなくて、実際にケースに当たったときにどういうふうにすればいいのかとか、それから警察の中で、幾ら頭でこういうのがいいといっても、警察はすごいおかたい組織ですから、その中で人権を守るというようなことはなかなか難しいところもあるわけですね。じゃそういうときに実際にどういうふうに対処していけばいいのか、そういうことを教えたりもします。
 ですから、知識とスキルとディスカッションみたいなものを全部組み合わせた形で、これは何年かやってきて、そういう形じゃないと意味がないだろうと。
 もう一つ言いますと、例えば管理職クラスの警察の現役の警察官の方たちというのが私どもにとってはかなり攻めあぐねる対象であるわけですね。ジェンダーセンシティビティートレーニングみたいなことをやろうとしても、一遍にそういうことを話してもとても受け入れてもらえない。そういうときには、ちょっとぐっと我慢しまして、まず被害者心理について知ることが実際に警察にどう役立つかということもお話ししつつ、少しずつやっぱりわかってもらうというふうにしています。言いたいことを全部一時間なんかで言ってしまいますと結局何もわかってもらえないということが多いというのを実際にいろんなところへ行って思っておりまして、いろんな方法をとっています。
○福島瑞穂君 少しは人権教育は効果があるというか、ふえてきているんですか。
○参考人(小西聖子君) これが人権教育というふうに位置づけられるのかどうか、私は余りそういうふうに思ったことがなかったのでわからないんですが、例えば被害者の心理についてもっとわかってもらいたい、それから女性の性的な被害についてわかってもらいたいということについては、私どものスキルもあると思いますが、行けばかなりな方が、むしろ非常にナイーブに、こういうことがあるのを知らなかった、女性の被害というのはこんな大変なのを知らなかったというふうに書いてくださる方も必ず感想の中にあるんですね。そういう点では手ごたえは感じます。
○福島瑞穂君 加害者のケアあるいは加害者のカウンセリングなんですが、例えば性暴力をする人はかつて性的な虐待を受けていたり、あるいは非常に性差別的だったり、他人との距離感がおかしかったり、理由はいろいろだと思うんですが、何か傷か何かを抱えていることも多いと思うんですね。難しいけれどもそこに手を触れないと、結局は同じことを繰り返すかもしれない。加害者のケアや加害者へのカウンセリング、あるいは刑務所の中でもう少しそういうことがいい形でもっともっと行われたらいいと思っているんですが、それについての御意見をお聞かせください。
○参考人(小西聖子君) 本当に防犯ということを考えたら、これは加害者のケアというのは、特に累犯の多い性犯なんかでは非常に大事なことになってくるわけですが、これは本当に手間もお金もかかる、やっぱり決意がなくてはなかなかできないものであるということはまず知っていただきたいと思うんですね。
 被害者のケアさえ、本人がよくなろうと思っていてさえ時間がかかってすごく大変なんですね。加害者はいろんなことに直面すればするほど自分の責任を感じなくてはいけないわけですから、ある意味ではモチベーションが被害者よりも低いわけですね、最初の段階で。そういう人たちにカウンセリングしていくというのはやっぱり並大抵のことではない。ただ、そういう試みは諸外国では特に最近いろんな形で行われていまして、金がかかり過ぎてだめだと言っているところもありますけれども、本当にまだ一生懸命やっているところもあります。
 ぜひこれは取り入れてもらいたいんですが、もしやるとしたら、やはりこれはある程度半強制のあるところで始めないと、つまり例えば刑務所の中とかそういうところで、これをボランタリーに受ければこういういいことがあるんだというような、そういう強制をもって始めないと多分難しい。
 それからもう一つ、メディエーションの話が大分出ましたので言いたいのですが、被害者のいやしと加害者の矯正を一緒にできるというのは甘いというのは私も本当にそう思います。そういう言い方をすると多分被害者の人はついてきません。
 加害者のカウンセリングとか矯正というのは、現在のところ、本人が自分がどうしてこういうところに立ち至ったかをよく知るというところで十分だというふうに思われている気がします。本来は、その先もう一つ進んで、私がやったことは何なのかということを知ってもらいたいと思うのですけれども、そこのところをやることは非常に難しいので、行ってないんですね。
 余り長くしゃべっちゃいけないかもしれませんが、ついこの前ストーカーに関する、ストーカーの加害者がテレビで、私は今までとても寂しかったんだ、だれも話を聞いてくれなかったからこういうことをしたんだということを話していらして、そこまでカウンセリングができたという例が挙がっている。それはカウンセリングとしてはそれは成功例だと思いますが、被害者の立場からすればそれでは非常に不十分ですね。じゃ私はどうして相手に被害を与えて相手はどれぐらい苦しかったのかということを知って初めてそのカウンセリングが完了するんですが、私がコメントでそういうことを申しましたら、加害者から私にファクスが、お前のような者は失望したというファクスが来て、そういう点では非常にやっぱりこれは難しいし、やるんだったら真剣にやらなくちゃいけないというふうに思います。
○福島瑞穂君 高原参考人、うんうんとうなずいてくださっていますが、私は五十四分までが持ち時間なので、ちょっとあと一分ぐらい、そういう、何か思っていらっしゃることがあったら話してください。
○参考人(高原勝哉君) 今、小西さんがおっしゃったことが非常に大事だと思います。
 ただ、そうは言いながらも、トライするということをあきらめちゃいけない。本当にうまく成功するとそれはすばらしい成果を生んでいる、これは恐らく坂上香さんが報告されたかもしれませんけれども、アメリカでもたくさんの成功例もありますので、希望を持ちながら取り組んでいきたいと思っています。
○福島瑞穂君 私自身は、例えば今三千円ぐらいしか受刑者がもらっていないと。せめて例えば三万円、十倍といっても三万円ですよね、サラ金だって毎月一万円ぐらいずつしか返済なかなかできませんから、一万円でも例えばずっと被害者に送り続けるのであれば、要するに申しわけなかったというのは言葉で言うか気持ちで言うかお金で言うしかないわけで、そういうことももっと取り入れたら、被害者もとにかく相手は何かの犠牲を払ってくれる、思ってはくれているというふうに思うのじゃないかと思うのですがいかがですか。
○参考人(高原勝哉君) 全く同感であります。特に経済的被害の回復ということになると、もう加害者は無資力が多いんですよね。ですから、受刑中に働いたその対価を被害者にお払いするんだと。まあそれももともとは国民の税金かもしれませんけれども、やっぱりそこで加害者が頑張って得たものをお渡しするんだということで、そういう意味ではやっぱり被害者にとってのいやしにも幾らかはつながるのではないかと思っておりますので、非常にいいことだと思います。
○福島瑞穂君 以上です。
○委員長(風間昶君) 宮澤参考人、一言あれば。
○参考人(宮澤浩一君) 今の問題に一言。
 平成十一年版の犯罪白書に出ておるんですけれども、刑務所と比べて少年院の場合、被害者に対する、指導というのは非常に最近充実してきているということがあります。全部の施設でそうであるかどうかはそれはわかりませんけれども、少なくとも実態調査のデータでは、とにかく少年院で単なる犯人だけが社会復帰するというようなことではなくて、被害者に対してきちんとした、自分のやったことの愚かしさと、それがいかに被害者に大きな影響を与えたかということについて教育をしているということを一言言わせてください。
○福島瑞穂君 ありがとうございました。
○参考人(小西聖子君) 私もそのメディエーションを否定しているわけでは全然ありません。難しいということを知らずに安易に言われるのが危ないと思っているだけです。済みません。
○委員長(風間昶君) 参考人同士で後日やってください。
○福島瑞穂君 どうもありがとうございました。
○中村敦夫君 よろしくお願いします。
 まず最初に、宮澤先生と高原先生に同じ質問をさせていただきたいと思います。
 今回の内閣提出の二つの法案に関しましては、これは遅過ぎたぐらいだなと、当然のことであるということで基本的に異論はない立場なんです。
 しかし、犯罪被害者を本当に国と社会が救うという大きな意思を示しそれを実行するためには、この法案が通ったからといって何ら根本的な解決にはなっていないと思うんですね。一番の重要な問題はアフターケアの問題であって、これは大きく分ければ精神的被害あるいは肉体的被害、経済的被害という三つに分かれるのではないかなというふうに考えておりますけれども、これに対する法律としては犯給法しかないわけです。しかも第四条、遺族給付金と障害給付金というものの二つ。大体これが実施された被害者たちの意見などを聞きますと、まあ三百五十万円前後、一時金的にばっと払っていく、それで何か済んじゃったという感じなんです。そうすると、これは国としては余りにも基本的人権ということに関して疎過ぎるというんですか、そういうふうに思わざるを得ないわけです。ですから民主党提出のような基本法、これをつくるということは必要なんですが、これも政府や担当官庁が余り積極的ではないという、ここが私は非常に不思議なんですね、これは。
 しかしながら、これができないと何もできないということではないと思います。なぜかといえば、その基本法に書かれているような大きな精神というのはもう憲法で明確に定義されているわけですから、そうなりますと、実をとるという意味でこの犯給法というものを大幅に改善していく、改正していくというふうな形で一歩前進することができるのか。
 つまり、問題は予算の問題だと思いますね。これを犯罪者から没収するのを合わせてとか、それはいろいろな手法がありますが、基本として予算のパイが今のような状況であってはこれは身動きとれないと思うんです。この三つのアフターケアの基礎的な人材育成とか設備とかだけ考えたってかなりの覚悟が要る予算になるんではないかなと。しかし、そうはいっても、人口比にすれば被害者の数などというのはたかが知れているわけです。だれも必要だと言っていないようなダムを三百もつくる、一個つくるのでも一千億円とかいう単位で予算が組まれている段階で、一つダムをやめれば十分にできるような国の財政運営になっているわけですよ。そういう意味では、どうなんでしょう、実をとるということで、この犯給法の改正ということへ全員がよく検討して進んでいくということに関して御意見はございますでしょうか。お二方にお願いしたいんですが。
○参考人(宮澤浩一君) これは国会議員同士の話し合いの問題じゃないかなという気がしますけれども、我々はもう当然のこととして、それを言えと言えば、今おっしゃったことをただオウム返しに言うというぐらいしかないと思うんです。
 この問題について一言申しますと、私、実は専門委員という立場で制度が始まったその年から今日までやっているんですが、一つの発想としては、過失犯が除かれているというのは果たしていいのかなという問題であるとか、それから家族内の、同一家族内の事件も初めからこれ適用しないというようなことも、かなり適用してみると矛盾を感じたりすることがあると思います。発想としてもう少し社会福祉的な発想を入れた方がいいんじゃないかなとか、当事者、三人いる専門委員の、いつも我々が議論するのはそういうことなので、そういうのは国会で決めていただかないと幾ら言ってもしようがないですよね。
 それと、やはりどうでしょうか、日本の制度に対しての批判がよく金額が少ない金額が少ないってあるんですが、ドイツとかオーストリアというのは現金が被害者や遺族に渡るというのは実は例外で、ほとんどが国から出るお金が保険に行ったり組合に行ったりという、そういうふうな形でやっているんです。要するに、支払ったその分を国が肩がわりしてあげようということで。ですから、イギリスだとかアメリカみたいに、大統領令だとかあるいは内務省の莫大な予算を使うというようなことで対応するようなところは例外として、ほかの国でやっぱり平均して三百万現金が行くというのはそんなに多い例ではないんじゃないかなと私は思います。それが一つです。
 それから、やっぱり被害者にとって犯給法というのは経済的な対応ですから、やっぱり精神的な傷というようなものも犯給法の対象にするというようなことも必要かもしれません。
 ただ、これがまた、小西先生に後で話していただきますが、これ一例あったんです。何か強姦未遂でもって、自動車の例のがくんとくるやつ、むち打ち症状になって、それを言ってきまして、幾ら議論してもなかなかそれがわかりません。というのは、最終的にわかったのは、医者がおどかされて診断書を書いたという事実だったりするんです。
 そんなわけで、犯給法、確かにもう施行されて十五年近くになりますから見直しすることは大事なんですが、ぜひそれは国会の先生方でやっていただきたいと思います。
○中村敦夫君 ちょっとそのお答えいただいて、私は犯給法の第四条のところだけ力点を置いたために、遺族にあるいは被害者に幾ら渡るかという話だけに限られましたが、やはり精神的な被害や肉体的な被害に関してはただお金を渡してもだめなわけです。それを受け入れてくれる施設なり人材というもののプールが必要なんです。そうしたものも含んで、法を改正するということが必要かどうかという意味も含んでおります。
○参考人(宮澤浩一君) それですと、立法例としては台湾が非常におもしろいんです。犯罪被害人保護法という法律でして、前半は日本や韓国と同じようにお金でやるんですが、台湾の違うのは、民事部でしたか何かの二つの、政府の二つのあれがそういう保護に対してエキスパートを養成し、その養成したエキスパートが危機介入をするというようなことが条文の中にきちんとありまして、ですから犯給法もそういう形でいじれるんだったらいじれるんじゃないかなという感じがいたします。
○参考人(高原勝哉君) ことしの一月二十三日に犯罪被害者の会というのが旗上げをされました。私は参加したんですけれども、そこで出てきたお声というのはもう怨念のようなものです。これまでは被害者の方は声を上げることができなかったんです。今はそれをやっと上げ始めた。だけれども、今の日本の被害者の支援というレベルから見ると、いろんな問題が山積していてなかなか自分の思いをぶつけるところがなかったという、そんな状況なんです。
 ですから、二十年前というのは恐らく被害者の声なんか聞かずにおつくりになった法律だと思いますので、ここで改めてそういう被害者の声をよく受けとめていただいて、どうすればいいかということを考えることが大事じゃないか。
 それから、時々、じゃ地震の被害者とどう違うのかという話もあるんですけれども、よく考えてみましたら、もともと近代国家が生まれる前は被害者は自分で復讐しておったわけです。それを、近代国家ができる過程の中で復讐権を取り上げて全部国がやるようになった。で、民事と刑事は別だということで分けてしまったわけでありまして、そういう意味からいうと、やっぱり基本的には犯罪が起きた責任は国にあるんじゃないか。それが守れなかった以上、国でちゃんとした補償をすべきだというのは、これはある意味では常識ではないかと私は思いますので、もう一度そういう観点からお考えいただきたいというのが一つです。
 それからもう一つは、よく被害者の多様性とか被害感情の多様性というのが言われています。そういうことから言えば、それぞれの被害者の方が何をしてほしいのかというニーズも非常に多様なんです。そういうことからすると、お金をごそっと渡すだけで済むのかということではなくて、それぞれのニーズに対応できるようなメニューを用意してあげる。場合によったら一つ一つのメニューは金額的には少ないかもしらぬけれどもその被害者にとっては非常に大切なことだということもあるわけでありますので、私は犯給法の改正をするときに、ただ単に支給範囲の拡大だとか金額の増額とかということだけではなくて、給付の内容そのものをもうちょっときめ細かく検討していくことも必要ではないかというふうに思っています。
○中村敦夫君 小西先生にお伺いします。
 いろんなアフターケアの仕方がある中で、経済的被害とか、肉体的被害は医療、それは比較的予算額的には計算しやすいと思うんです。精神的被害というのは非常に難しいだろうというふうには思います。そして、単に予算だけあって、被害者に渡すということだけでは絶対だめなんであって、受け入れ先を充実しなければいけないわけですから、その意味の法律も別につくるべきか犯給法の中でつくるべきかというような問題はございますけれども、特に、日本の精神医学とか心療医学というもののパイとか質というものが欧米先進国なんかと比べてみると社会的には非常にまだ小さいんじゃないか。ですから、特にいろんな問題が起こっても、人材そして教育機関というものは圧倒的に足りないだろうなと。特に、今先進国病で実は需要はほかの病気にまさるとも劣らないほど大きいものになっているという認識があるんですけれども、しかし、仮に予算が計上されたとしますよね、その場合に、やはり被害者が一番行きやすいというような基本的な構造で、精神医学の医学部のある大学を拠点にするというようなことはどういうふうにお考えでしょう。
○参考人(小西聖子君) それは精神的なケアについてということですね。
○中村敦夫君 そうですね。いや、ほかにどんな施設とかあるのか。警察へ飛び込んでも、それは警察官も多少教育してもらわなきゃいけませんが、ちょっと無理だと思うんです、実際問題として。
○参考人(小西聖子君) 被害者の方は自分が精神障害であると思われたらすごく嫌だという気持ちで、精神科には行かない人が多いです。が、ニーズとしては、本当は一度やはりちゃんと医師の診断を受けて、自分にどういう治療が必要なのか知りたいという気持ちを持っていらっしゃるのも確かなんです。
 今、大学病院と言われてちょっと私が言いよどんだのは、現在日本の精神医学はやはり圧倒的に生物的精神医学の方に偏ってというか、もうそちらの方が主流になっておりまして、私のような精神療法を専門にする医者というのはむしろ少ないわけです。大学の中はさらにやはり生物的な精神医学が主流になってきつつありまして、そういう中で今例えばPTSDの患者さんが大学病院に行かれて適正なサービスを受けられるか。これはなかなか難しい。むしろ、どこにもパイが少ないというのは確かです。東京なんかにはかなりそういうソースはありますが、そういうところは非常に値段が高い。保険の診療でできないということがあります。アメリカなんかの話を聞きますと、無料のカウンセリング券を例えば十回発行するとか、そういう形での給付が行われていたりすることもあるようですけれども、日本で今それがうまく動くかというと、おっしゃったとおりなんですけれども、サービスを出す側の問題がある。そちらから教育を始めなくてはいけないというところにあるというのは現状だろうと思います。
○中村敦夫君 ありがとうございました。
 質問を終わります。
○委員長(風間昶君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
 宮澤、高原、小西参考人の方々には、本日はお忙しいところ大変貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。本委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。
 ありがとうございました。(拍手)
 午後三時三十分に再開することとし、休憩いたします。
   午後零時十一分休憩
     ─────・─────
   午後三時三十九分開会
○委員長(風間昶君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 本日、林紀子君及び角田義一君が委員を辞任され、その補欠として橋本敦君及び千葉景子君が選任されました。
    ─────────────
○委員長(風間昶君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 刑事訴訟法及び検察審査会法の一部を改正する法律案外二案の審査のため、本日の委員会に司法制度改革審議会事務局長樋渡利秋君、法務省矯正局長鶴田六郎君及び厚生省健康政策局長伊藤雅治君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(風間昶君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
○委員長(風間昶君) 休憩前に引き続き、刑事訴訟法及び検察審査会法の一部を改正する法律案、犯罪被害者等の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律案及び犯罪被害者基本法案を一括して議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○竹村泰子君 御苦労さまでございます。
 今、委員長がおっしゃったとおり、閣法とそして私どもの出しました犯罪被害者基本法と双方の審議を続けているところでございます。
 犯罪被害者がこれまで大変無権利状態と申しますか、非常に悲惨な、悲惨なと言ったらちょっとオーバーなのかもしれませんが、でもさまざまなこと、愛する肉親を奪われたり大きな障害を負わされたりと、そういう中で本当に私たちの想像以外の御苦労をいろいろ背負わなければならない羽目に追いやられていらっしゃる。
 そういう中で、少なくとも同等の権利保障を得る必要があるのではないかということで、私どもは、個別の施策ではしょせん継ぎはぎになる、そして、計画的、総合的な取り組みにはなかなかなっていかないのではないかということで基本法をお出ししているわけでございますけれども、政府が基本法案を策定しないその理由をお述べいただきたいと思います。
○国務大臣(臼井日出男君) 犯罪被害者のための基本法といった立法の手当てを検討することは意義あるものというふうに考えておりますけれども、まずもって私どもは、具体的、現実的な施策を講ずることは肝要であるという立場で、基本法の必要性は具体的な施策を講じていく中で総合的な見地から検討するのが適当であり、またその内容につきましても、被疑者、被告人の防御、その他の刑事司法制度の適正な運用に与える影響などの種々の観点からの慎重な検討が必要であると考えているのでございます。
○竹村泰子君 そして、私どもの出しました民主党案で強調いたしました中に、基本理念として、すべて犯罪被害者等は、個人の尊厳が重んじられ、犯罪被害の状況等に応じた適切な処遇を受ける権利を有する、何人も、犯罪被害者等の名誉及び生活の平穏を害してはならないと高らかにうたったわけでございますけれども、この被害者の権利を明確化しなかった理由をお教えいただきたいと思います。
○国務大臣(臼井日出男君) 被害者の法的な権利につきましては、これまでも、犯罪による権利の侵害に対して損害賠償請求権、刑罰権の発動を求める権利などが定められているところでございます。
 今回の法整備は、このような被害者の立場を尊重し、これに配慮するため、刑事手続に関連をいたしまして早急に対応が求められている措置として個別具体的な制度を導入するのでございまして、このような法整備により、被害者に刑事手続上他の者とは異なる配慮を受ける地位にあることが明らかにされたことになると考えておるのでございます。
○竹村泰子君 今、大臣がおっしゃったことが被害者の権利を保障することになるかどうか、それは私はちょっと思い入れがお過ぎになるのではないかという気もいたしますし、そういうふうに明文化する、あるいはそういう権利なり保障なりというふうなことを法律の中に書き込むことについてやはり抵抗がおありになったのでしょうか。
○国務大臣(臼井日出男君) ただいま委員御指摘をいただきましたように、法律の中に条文として書き込むことによりまして種々の影響が出てくる、こういうことを考えまして、先ほど私が申し上げましたように、事実上そうした尊敬を得る地位を得る、こういうふうな形の法案にさせていただいたのでございます。
○竹村泰子君 ちょっと済みませんが、食いついて申しわけないですが、例えばどんなことが起こり得ると心配していらっしゃるんでしょうか。
○国務大臣(臼井日出男君) 例えば、ある被害者の権利というものを明文化することによって、それに対するいわゆる反対請求権といいますか、そうした事実というものが出てくる、こういうことになるわけでございまして、私どもとしては、犯罪被害者の地位というものを明確に法律上うたうということはなかなか難しい、このように考えておるのでございます。
○竹村泰子君 いまだにちょっと私はよく理解できないんですけれども、それはまた次の質問にもかかわってきますので、質問を続けさせていただきたいと思います。
 精神的支援、経済的支援を含めた総合的な犯罪被害者支援のための法律案ということにはせずに、被害者の保護を図ることにとどまっていると私は見ますけれども、その理由は何でございましょうか。
○政務次官(山本有二君) 今回の法整備は、被害者の置かれた立場を尊重し、これに配慮するため、刑事手続に関連し早急に対応が求められている措置として個別具体的な制度を導入するものでございます。
 もとより、犯罪被害者に対する保護、配慮のあり方は多岐にわたるものであるところでございまして、法務省では、今回の法整備に盛り込まれた以外の点につきましても今後とも検討を行い、議論が熟したものから適切に対応してまいりたいと考えるものでございまして、決して被害者の保護にとどめたというものではないと考えております。
○竹村泰子君 被害者の方たちは、もう本当に大変な御苦労の中で、先ほど私申し上げましたけれども、突如として起こった環境の激変、あらゆること、金銭的にも精神的にも大変な状況に陥れられて、そういう中で耐えておられる。それが戦後長く続いているわけでありますけれども、政務次官の言われる機が熟さないとおっしゃる意味は、一体どうなったら機が熟すんでございますか。
○政務次官(山本有二君) 機が熟すというよりも、具体的に訴訟、法廷の場でこのようにした方がいいという提案やらあるいは考え方がしっかりした段階で法として醸成できるものであろうというように考えておるところでございまして、機の熟するのを単に漫然、手をこまねいて待つという姿勢ではなくて、さらに具体的に被害者の地位あるいは権利を確保できるものがあれば積極的にこちらも対応していくという所存でございますので、誤解のないようにお願いしたいと思います。
○竹村泰子君 では、少し聞き方を変えましょう。
 犯罪被害者等が受けました被害の回復、社会復帰に対する精神的、経済的な支援、これを含めた総合的な犯罪被害者対策、これをいわゆる縦割り行政ではなくて関係省庁の横の密接な連絡、連携のもとで推進する必要性があると考えますが、大臣はどうお考えでしょうか。
○国務大臣(臼井日出男君) 犯罪被害者の保護に関する問題は多岐の分野にわたるものでございまして、関係省庁の密接な連携のもとでその施策を講じていく必要があることは委員御指摘のとおりでございます。
 政府におきましては、昨年十一月に、犯罪被害者対策に係る問題につきまして、関係省庁の密接な連携を確保し、政府として必要な対応を検討するため、内閣に犯罪被害者対策関係省庁連絡会議を設置いたしまして、既に一定の施策を講じ、さらに今後行うべき施策を検討しているところでございます。
 法務省におきましても、同会議において行われる犯罪被害者対策推進のための取り組みにつきましてできる限り協力してまいりたいと考えております。
○竹村泰子君 犯罪捜査における犯罪被害者の人権と申しますか権利と申しますか、心身の状況等に理解を深めるためにその捜査段階でどのような具体的な方法をとろうと思っておられるでしょうか。
 これまで私どももいろいろと聞き取り調査をいたしました。そういう中では、特に少年たちとか少女たちが非常に弱い立場にいらっしゃる、そして取り調べを受ける、捜査を受けるという段階でもう既に萎縮してしまって、思考能力も低下してしまってもう何が何だかわからなくなっている、そういう人たちに自白を強要するかのような捜査状況もある。これはクロだと少年が信じていても、シロだっただろうと言われて誘導されればシロでしたと答えざるを得ない、そういう捜査状況もあります。
 そういう中で、この法律が成立をした暁には具体的にどのように現状を変えていこうとしておられるのでしょうか。
○政務次官(山本有二君) 捜査段階における被害者保護の問題につきましては、捜査に流動的な要素が多く、必ずしも法律による規律になじまないものでございまして、適正な運用による対応が可能であり、かつ相当であると考えております。
 検察庁におきましては、従来から捜査の過程で被害者と接する際にはその心情に対する十分な配慮を払ってきていると承知しておりまして、また職員に対する各種研修の機会に被害者の心理や被害者との接し方等を周知させるための措置を講じているところでございますが、今後とも被害者に対する適切な配慮を行うよう努めるべきものと考えておるところでございます。
○竹村泰子君 政務次官も法律家でいらっしゃいますから、そんなだれかが書いたものをお読みにならないで、法律の現場で裁判、捜査の段階でどんな現状が起きているか御存じでしょう。そんな模範解答を私聞きたくありませんので、ぜひここをこういうふうに直したいんだとか、これはよくないとかねがね思っていたけれどもこうしたいんだとか、何かもし政務次官がお答えくださるのでしたらそういうお答えをいただきたいです。いかがですか。
○政務次官(山本有二君) 法務省の所管ではありませんが、一次的な犯罪捜査における現場への急行等において、例えば性犯罪では、警察庁と相携えまして、まずはその性犯罪において被害者が女性であれば女性の捜査官に急行してもらって被害者の精神的安定を図ってもらうというようなことをお願いしたりしておりまして、現実にもうここ数年実効を上げているというように聞いております。
 さらに、供述調書をとる段階におきましては、検察庁内部でございますが、一般の取り調べ室からより安定的な、精神的な安定感のある部屋に移したりあるいはその家具調度等について配慮をしたり、細かな対応をしているということを今のところ承知しているところでございます。
○竹村泰子君 刑事裁判手続における被害者の保護と被疑者、被告人の権利の保障、これは相矛盾する場合もありますし、裏腹の場合もありますし、そこのところはどのようにお考えでしょうか。
○政務次官(山本有二君) 現行の刑事訴訟法におきましては、例えば証人尋問中に証人が被告人の面前で圧迫を受けるときには被告人を退席、退廷させることができることとされておりますが、被告人を退席、退廷させた場合には、証人の供述終了後、被告人に証言の要旨を告知し、その証人を尋問する機会を与えなければならないとされております。
 他方、今回御審議いただいています犯罪被害者保護のための二法案におきましては、例えば証人の過度の心理的精神的負担を軽減するために、証人への付き添いの措置、証人の遮へい措置、ビデオリンク方式による証人尋問を導入することとしております。
 証人への付き添いの措置につきましては、証人付添人には、証人の尋問や供述を妨げたり供述の内容に不当な影響を与えるおそれのない者のみがなり得るものとしております。
 証人の遮へい措置につきましては、被告人と証人の間を遮へいするのは弁護人が立ち会っている場合に限ることとしております。
 ビデオリンク方式による証人尋問については、モニターやスピーカーを通じてではありますが、弁護人等の訴訟関係人が証人の証言及び表現その他の状況をリアルタイムで見聞きしながら尋問を行えるものとしております。
 また、訴訟記録の閲覧につきましては、被告人の防御活動に不当な影響が生じるおそれがある場合や、そのプライバシーを不当に侵害するおそれがある場合には、これを認めないこととしております。
 このほかにも、ビデオリンク方式によって行った証人尋問の結果に対する証拠能力の付与、被害者等の意見陳述に関して被告人の防御権等が不当に侵害されることがないよう配慮しているところでございます。
○竹村泰子君 なかなか現実がそうなっていないことが余りにも多いので私はあえて質問をしているわけでございますけれども、今後に期待をいたしましょう。ぜひ大臣そして政務次官御在任中に思い切った改革をきちんとしていただきたいというふうに思います。
 きょうは司法制度改革審議会にもおいでいただいております。お忙しいところ、ありがとうございます。
 被疑者、被告人の権利を保障しながら、事件の真相を解明して治安、法秩序の維持を図っている現行の刑事司法に犯罪被害者支援の観点を加えることは、我が国の刑事司法の抜本的な改革であると私は考えております。その点につきまして司法制度改革審議会における御論議がございましたでしょうか。
○政府参考人(樋渡利秋君) 司法制度改革審議会事務局長の樋渡利秋でございます。
 司法制度改革審議会は、昨年の十二月に「司法制度改革に向けて 論点整理」というものを決定、公表いたしまして、検討すべき論点項目を明らかにしておるところでございます。その中で、一の「制度的基盤」の中に「国民の期待に応える刑事司法の在り方」というものを論点項目として挙げております。
 当審議会におきましては、本年中の中間意見の公表を目指しまして、各論点につき現在国民的見地に立った調査、審議を進めているところでありまして、来年七月には最終意見を取りまとめる予定でございます。
 ところで、御質問の中のことでございますが、国民の期待にこたえる刑事司法のあり方につきましては、今後本格的な審議が予定されているところでありますが、これまでの審議におきましても、国民が刑事司法に期待するもの、すなわち刑事司法の使命、役割といいますものは、一としまして実体的真実の発見による適正かつ迅速な犯罪者の処分、二、適正手続の保障、三としまして両者の調和による国民の安全な生活の確保、四、犯罪者の改善更生、そして五としまして被害者等の保護であると考えられ、これらはいずれも重要であり、その一部にのみ重きを置いて他を軽んじるようなことでは真に国民の期待、信頼にこたえる刑事司法を実現することなど到底おぼつかない。それぞれの使命、役割の重要性に思いをいたし、その間の適正なバランスを追求していくことが求められるという指摘がなされているところであります。
 したがいまして、今後、審議会におきまして、国民の期待にこたえる刑事司法のあり方につきましては、委員御指摘の観点も含めまして十分な議論がなされるものと考えておりますが、事務局といたしましても、委員御指摘の点も含め、本日の委員会も含めた国会における御論議を適切な形で審議会の委員に伝えていくことにしたいというふうに思っております。
 以上でございます。
○竹村泰子君 私もこれを拝見いたしました。そして、確かに触れてはいらっしゃるんですけれども、まだまだ議論というところまでは行っていないようでありまして、これはやはりこの司法制度改革審議会において余り重きを置かれていないのではないかな、そう思って拝見をしていたのですけれども、いかがでしょうか。
○政府参考人(樋渡利秋君) 当審議会におきましては、いろいろな論点がございまして、論点整理に掲げました論点につきましてそれぞれこの一月から審議を開始しているところでございます。
 刑事司法の論点を決して軽んじているのではありませんでして、順番的にこのしかるべき五月、六月ごろには入るんではなかろうかというふうに事務局としては考えておりますが、必ず議論をされるということは確かでございます。
○竹村泰子君 どうぞこの委員会の中の審議状況、また司法制度改革審議会に対する私どもの期待、そういったことも含めてお伝えをいただきまして、ぜひいい御議論をしてくださいますようにお願い申し上げておきます。
 ありがとうございました。結構でございます。
 では、次の質問に移りたいと思います。
 被害者の地位につきまして、一九八五年に犯罪及びパワー乱用の被害者のための司法の基本原則宣言、いわゆる被害者人権宣言と言われておりますのが国連において採択されました。その中では、被害者はその尊厳に対して共感と尊敬の念を持って扱われなければならないことがうたわれております。
 この被害者人権宣言の影響を受けて、欧米諸国では一九八〇年代に犯罪被害者支援システムの整備が急速に進んだと聞いております。ですから、我が国の犯罪被害者支援は欧米諸国から二十年おくれているということになりますけれども、諸外国において被害者の地位が明確にされている立法例を御紹介いただきたいと思います。
○政務次官(山本有二君) アメリカ連邦法におきましては、公正並びに被害者の尊厳及びプライバシーの尊重をもって処遇される権利等の被害者の権利が規定されておりますが、これらの権利は訴訟事由または抗弁となるものではないとされているものと承知しております。
 他方、ドイツやイギリスなどにおきましてはこのような立法はありませんで、刑事訴訟法等において被害者保護のための個別具体的な制度が導入されているものと承知しております。
 私が極めて驚きましたのは、イギリスにおいてるるその法律があるのかと思いましたら、犯罪被害者基本法に相当する法律がなくて、これに近いものとしては被害者憲章というものがございます。ただし、この被害者憲章とて内務省の一文書であるということを知らされて驚嘆したという次第でございまして、制度が古いとはいえ、英米の判例法だからかもしれませんが、成文法がないというところが少し驚きでございました。
○竹村泰子君 そういう世界の状況も私たちもよくよく見ながら進めていかないといけないと思います。
 法務省が昨年夏実施されました刑事手続における犯罪被害者等の保護に関する意見募集、パブリックコメントを求められたと思いますけれども、その中の項目の一つに被害者の地位を法的に明確にすることが掲げられていました。その項目の意見募集の結果を教えていただきたいと思います。
○政務次官(山本有二君) 犯罪被害者の刑事訴訟手続上の地位に関しましては、検察官と被告人、弁護士を訴訟当事者とする現行刑事訴訟法の基本構造を前提とする限り、犯罪被害者に検察官や被告人、弁護人と同様の手続上の当事者たる地位を認めることは困難でございます。また、刑事手続のさまざまな場面におきましてどのような対応が図られるべきかは一律に決することができません。
 とは申しましても、犯罪被害者は刑事手続が対象としている事件によって直接の被害を受けた者でございまして、被害に係る刑事事件の審理の状況及び内容につきまして深い関心を……
○竹村泰子君 答えが違うんじゃないの。私が聞いていることと違う。
○政務次官(山本有二君) 賛成が三十九件、反対が一件でございました。
 大変失礼しました。
○竹村泰子君 よくわかりませんでした。
○政務次官(山本有二君) パブリックコメントに掲記した項目に関する主な意見の中で、被害者の地位を明確にしてほしいというのが、賛成が三十九件、反対が一件でございます。
○竹村泰子君 わかりました。
 法務省として、被害者の地位の明確化が必要であると認識していたために項目に挙げられたのだと考えますし、意見募集も賛成が圧倒的多数ですね、三十九対一ですか。
 しかし、昨年十月の法制審議会への諮問事項には被害者の地位の明確化が盛り込まれておりませんでした。
 法制審議会への諮問は法務大臣が行われるのでありますから、大臣、その理由を御説明いただきたいと思います。
○国務大臣(臼井日出男君) 先ほど、政務次官が多少申し上げたわけでございますが、犯罪被害者の刑事訴訟手続上の地位に関しましては、検察官と被告人、弁護士を訴訟当事者とする現行刑事訴訟法の基本構造を前提とする限りにおきましては、犯罪被害者に検察官や被告人、弁護人と同様の手続上の当事者たる地位を認めることは困難でございますし、また、刑事手続のさまざまな場においてどのような対応が図られるべきかということは一律に決せられないのでございます。
 とはいえ、犯罪被害者は刑事手続が対象としている事件によって直接の被害を受けた当事者でございまして、被害に係る刑事事件の審理の状況の内容について深い関心を有するとともに、その被害の回復には困難を伴う場合があることから、これに相応した適切な保護、配慮を受けるべき立場にあると考えております。
 昨年十月に法制審議会に諮問するに当たりましては、被害者保護のための個別具体的な制度を導入し、そのような法整備により被害者に刑事手続上他の関係人や一般の人とは異なる配慮を受ける地位にあることが明らかにされることになることから、被害者の地位の明確化については諮問事項にあえては含めなかったのでございます。
○竹村泰子君 ちょっとよくわからないお答えなんですけれども、ほかの人とは違う特別な類型に属する人たちだから諮問に盛り込まれなかったというお答えですか。ちょっと私、よく理解できなかったんですが。最後の方。
○国務大臣(臼井日出男君) 諮問をするに当たりましては、犯罪被害者というものは刑事手続上他の関係人や一般の人とは異なる配慮を受ける地位にあるということが明らかにされる必要があるということで、結局、現在の刑事手続におきましては犯罪加害者と国との関係というのが中心でございまして、どうしてもその犯罪被害者というのはその両者の間に明確な地位を明記するということがなかなか難しいということもございまして、そうした他の関係人や一般の人とは異なる配慮を受ける地位にあるということが明らかにされることになるということから、あえて諮問に含めなかったのでございます。
○竹村泰子君 その地位が特別な地位だから、ほかの一般の人とは違うんだ、だからもう諮問してわざわざ言う必要もないと。それは別格に扱うんだということですか。
 何となく私は、そういうふうに特別な人なのだろうかと。私たちもいつ被害者になるかもしれないわけですから、そういったことで全く別格に扱われる、諮問の課題にすらならないというのは、だから被害者は無権利状態に置かれ続けたのではないかというふうに思いますが、何かございますか、お答えが。
○国務大臣(臼井日出男君) ただいま私が申し上げましたとおり、被害者になったということによりまして他の一般の方々とは違う特別の地位が明確化されるということであるので、あえて諮問事項には入れなかったということでございます。
○竹村泰子君 よくわからないけれども。
 それでは、国連被害者人権宣言においては、犯罪被害者による司法へのアクセスの権利が盛り込まれております。
 この内閣提出の二法案については、公判における証人の保護の措置、意見の陳述、公判記録の謄写等の措置が講じられていますが、これらには権利性があるのでしょうか。
○政務次官(山本有二君) 刑事手続における犯罪被害者保護のための施策につきましては、被告人の防御権を含む刑事司法の適正かつ円滑な運用や、裁判の公開の要請、被告人を初めとする関係者の名誉、プライバシーの保護などの種々の利益との調整を図る必要がございまして、刑事手続に関する事項についていわゆる法的な意味での権利性を認めることは困難があると考えておりますが、御指摘のあった各施策は、被害者の方などに裁判所に対し一定の措置を求めることができる地位を付与したと解釈しているところでございます。
○竹村泰子君 権利性はないけれども、地位は付与したということなんですか。何かちょっと逃げ道をつくっているというふうな感じがしないでもない、権利とは言いたくないという感じもいたします。
 それでは、保護が公判段階に限られていることについてお伺いいたしたいと思います。
 内閣提出二法案による犯罪被害者保護、これは公判段階に限られています。起訴前の段階の保護についての法的な措置は検討されているんでしょうか。
○政務次官(山本有二君) 従来から、捜査の過程で被害者と接する際には心情に対する配慮を行うということとか、各種職員研修、検察官や副検事研修の機会に被害者の心理や被害者との接し方を周知させるための措置を講じたりして配慮をしているつもりでございますが、今後さらに、先生御指摘のようにより充実させる必要があろうというように考えておるところです。
○竹村泰子君 被害者等に対して不起訴記録を開示する旨検討されているそうですけれども、その制度の実施時期あるいは概要を御説明願いたいと思います。
○政務次官(山本有二君) 不起訴記録につきましては、被害者の方々が民事訴訟などにおきまして被害回復のため損害賠償請求権その他の権利を行使するために必要と認められる場合に、捜査、公判に支障を生じたり関係者のプライバシーを侵害しない範囲内で代替性のない客観的証拠を開示することとしまして、本年二月上旬にその旨を法務省から全国の検察庁に文書をもって通知したところでございます。
 この運用は、従来と比べまして、第一に、開示対象となる事件の範囲を交通事故にかかわるもの以外の事件に拡大するとともに、第二に、開示対象となる証拠の範囲を写真撮影報告書、検視調書などの客観的証拠でかつ代替性のないと認められるものに拡大し、そしてさらに第三に、被害者やその親族からの請求またはその代理人たる弁護士からの請求についても開示に応ずることといたしました。
 これらの点で不起訴記録の開示の範囲を拡大したものでございます。要は、請求があればお見せできる、こういうことでございます。
○竹村泰子君 それはこれまでに比べれば大変な情報公開であるということになるかと思いますけれども、裁判確定後の問題として、犯人の服役場所あるいは服役態度、出所時期、出所後の住所、これは難しいのかもしれませんが、等の事項についての通知制度がないと、被害者は安心して生活できない。いつ出てくるんだろうか、私を襲った犯人はいつどうやってどんなに心を悔い改めて出てくるんだろうかとか、もういろんな心配がたくさんあるわけでございますが、裁判確定後の情報提供については検討されているんでしょうか。
○政務次官(山本有二君) 先生御指摘のように、お礼参りだとか報復措置が実際事件でございました。その点を考えますと、犯人の受刑態度などから被害者への報復の危険が認められる場合には、その釈放に先立って刑務所から警察等の関係機関に通報するなどの対応をしているものと承知しております。
 受刑態度の情報提供一般につきましては、受刑者のプライバシーにかかわるところでもございますので、慎重な検討が必要でございます。
 犯罪被害者に対し犯罪者の刑務所等からの釈放に関する情報を提供することにつきましては、犯罪者の改善更生やそのプライバシーに与える影響をも考慮しつつ、そのような情報を知りたいという被害者のお気持ちにもこたえることができるよう、情報提供の要件、提供する情報の内容、関係機関の間の連絡体制などにつきまして現在鋭意検討しているところでございます。
○竹村泰子君 鋭意検討してくださっているのですが、それはいつごろどのようになりますか。
○政務次官(山本有二君) 時期は具体的には申し上げられませんが、近々実行したいというところでございます。
○竹村泰子君 そうすると、二年後か三年後かわからないけれども、近々というのはどのぐらいでしょうね。これはもう現在もそういったさまざまな事件が既に起きておりますし、ぜひ今の政務次官の近々というお言葉を本当に緊急に変えていただいて、ぜひ実現をお願いしたいというふうに思います。
 時間がなくなってきましたので、経済的支援についてちょっとお伺いいたします。
 先日の参考人質疑において犯罪被害者の御家族から、葬儀費用を初め医療費、引っ越し、休職、転退職、もう収入の不安、莫大な経済的な被害をこうむっている、ある方は医療費だけでも一千万を超えているというふうなお話をしてくださいました。
 犯罪被害者に対する十分な経済的なバックアップが必要であると思いますが、政府の検討状況をお伺いしたいと思います。
○政務次官(山本有二君) 犯罪被害者保護の問題は多岐の分野にわたるものでございまして、御指摘のような被害者に対する経済的支援の問題も重要なところでございます。
 今回の法案では、被害回復に資する措置として、民事上の争いについての刑事訴訟手続における和解の制度を盛り込んでいるところでございますが、被害回復につきましてはさらに広い観点から検討することとしております。
 なお、犯罪被害者の被害の緩和を目的として、犯罪被害者等給付金支給法によりまして、人の生命または身体を害する犯罪行為により不慮の死を遂げた者の遺族または重障害を受けた者に対し国が犯罪被害者等給付金を支給する制度がございます。
 同制度の充実につきましては、警察当局におきまして、諸般の事情を考慮して適切に対応されているものと承知しております。したがいまして、今後、まだまだ先生御指摘の点充実させる必要がございますので、検討を重ねてまいりたいと思っております。
○竹村泰子君 国連被害者人権宣言では、犯罪者及び結果に責任のある第三者は被害者に被害弁償しなければならないとされています。
 加害者から弁償させるような仕組みを検証していくことについてはいかがでしょうか。
○政務次官(山本有二君) 原則的には民事事件で損害賠償請求をするということが大原則でございます。
 しかし、これにすべてを任せることによりまして、先ほど先生が例を挙げられたような医療費等、困難な場合も出てまいるわけでございますので、そのことからしますと、加害者にすべて被害者の損害を補てんさせることに加えて、何かもう一つワンクッション置いて被害者に一時的に仮払いする等の制度が求められるところでございますが、いまだ具体的なことになっておりませんので、アイデアを出しつつ、政府間、特に関係省庁の大臣、政務次官等でやりとりをしているという段階でございます。
○竹村泰子君 国連被害者人権宣言では、加害者からの弁償が十分でない場合には国は経済的な補償に努めなければならないというふうになっています。
 現在、示談をしても加害者の無資力等により賠償がなされないことが多くあります。国による補償の必要性が訴えられているわけです。
 さらに、将来的には犯罪被害者支援のための公的な基金をつくり、重障害を負った被害者には一種の年金制というふうなものも取り入れるべきではないかと考えますが、そのお答えを伺って、私の質問を終わります。大臣いかがですか。
○国務大臣(臼井日出男君) 犯罪によりまして被害者が負う経済的負担というものは、今、委員御指摘をいただきましたように大変なものがあるわけでございますが、私どもといたしましては、現在、加害者である犯人がその賠償に努めることが原則であるというふうに考えておりまして、民法上の不法行為による損害賠償責任を直接被害者に対して負うものとされていること、犯罪とその被害者には多種多様なものがあること、さらに犯罪とされない民事上の不法行為につきましても被害者との均衡などの事情がございまして、委員御指摘の方策については慎重な検討を要するものであると考えております。
 先ほど政務次官からもお話をいたしましたけれども、いわゆる一時払い的なことも将来考えたらどうだということで、ただいま省庁間でもっていろいろ話し合いを進めているという状況にございます。
○竹村泰子君 終わります。
○魚住裕一郎君 公明党・改革クラブ、魚住裕一郎でございます。
 何点か質問をさせていただきます。
 今回、被害者保護ということで何点かにわたって行き届いた配慮をしようということで制度を新たにつくるわけでございますが、その中で、例えば証人尋問の際の配慮、付き添いでありますとか遮へい、あるいはビデオリンク、特に性暴力の被害といいますか、そういうようなときには特に厚く配慮をするわけであります。確かにきょうの参考人質疑でも本当にそうだなと思ったんですが、性被害者の恐怖と屈辱といいますか、あるいはいろんな心理的状況等を考えたらそういう配慮も必要だなというふうに思うところであります。
 ただ、多くの場合、性犯罪というのは多分密室なんだろうと思うんですね。そうすると、加害者と被害者しかいないというか、そういう状況であって、そういう場合に、多くの場合は自白事件だとは思いますが、否認事件になった場合、やはり証言というのは大変な重みになってくるわけでございます。証人尋問をやる際に、その事実があるかないかというのは、やはり被告人の反対尋問をしっかりやった上でその真偽というものを確かめていく必要がある、この要素ももちろん必要だと思うんですね。その辺の調整というのは非常に難しいのかなと。
 特に、何も証人にプレッシャーを与える必要は全然ないんですが、事実の問いかけに対するいろんな表情でありますとか態度というものも証言の信用性という点において大事な要素になるわけでございまして、その点をどういうふうにお考えになっているのか、それをちょっとお聞きしたいなと思います。
○政府参考人(古田佑紀君) ただいま御指摘の点は私ども大変重要な問題だと考えている次第でございます。
 ところで、今回、証人尋問に関しまして、証人の負担軽減の措置として御導入を願っておりますことは、一つは、例えば被告人との間につい立てを立てて被告人からは直接見えないようにする、あるいは別室に証人にいていただいてテレビを通じてお互いに状況がわかるようにしながら尋問するというこの二つでございますが、この遮へいをする措置の場合には、これは弁護人からは常に見えているという状態を確保することにしております。したがいまして、主として反対尋問をされる方は弁護人ということになるわけで、弁護人の方は証人のいろんな表情あるいは動作その他、当然ながらこれはつぶさに見えるわけでございます。それからまた、ビデオリンクの場合も、これは確かに眼前に直接いるというわけではございませんけれども、テレビモニターを通じまして実際にリアルタイムに、証言している表情でありますとかその場合の挙動、こういうのは十分観察できる仕組みになっているわけでございます。
 そういうことからいたしますと、証人がどういうような雰囲気で証言をしているのかとか、そういう点について、弁護人あるいはビデオリンクの場合には被告人も含めてですけれども、これは十分観察することは可能でございまして、御指摘のような御懸念というのは考えられないというふうに思っているところでございます。
○魚住裕一郎君 特に反対尋問をする弁護人それから裁判官にじかにその場の雰囲気というものを知ってもらうというのが一番大事かと思うんですね。ビデオリンクの場合、裁判官は証人が別室ですから余計に遠くになってしまうなというふうに思うんですが、その点はいかがですか。アメリカ方式でも裁判官は別室のようでございますけれども。やはり私は、裁判官が判断するわけですから、その部分、証人の雰囲気等を含めて見てもらうというのが一番大事かなと思うんですが、いかがでしょう。
○政府参考人(古田佑紀君) 先ほどは弁護人あるいは被告人がテレビモニターを通じて十分観察できるということを申し上げたわけですが、これはもちろん裁判所は当然見ていると。裁判所も当然テレビモニターを通じて十分観察しながら証人尋問の進行を見ている、そういうことでございまして、そういう点で今御指摘のような御心配はないものと考えております。
○魚住裕一郎君 今先行の理事から質問がありましたけれども、けさほどの参考人の話の中からも出てきましたが、性暴力の被害者の、犯人がいつ出てくるのかというか、出所時期さえもわからないというような制度で、確かにお礼参り等を含めると、単なるお礼参り以上に、自分の名誉と身体の保全というか、そういうことまでかけて出所情報というのは非常に大事になってくるかなと思うんですが、この点についての見通しについてもう一度ちょっと御答弁いただけますか。
○政府参考人(古田佑紀君) 先ほど政務次官からも御答弁申し上げましたとおり、現在、当局のほか、矯正局及び保護局、関係当局でこの出所情報を提供することについて生じ得る問題点、あるいはその場合にじゃどういう範囲で提供すべきなのかということを鋭意詰めている最中でございます。その時期については、一年とか二年とかそういうことではなくて、ここ二、三カ月以内には結論を出したいと考えているところでございます。
○魚住裕一郎君 二、三カ月ですね。わかりました。
 それで、あとパブリックコメントでちょっとお聞きしたいんですが、被害回復に資するための没収及び追徴に関する制度の利用について、これはどういうような意見概要であったんでしょうか。
○政府参考人(古田佑紀君) 没収、追徴のための保全制度を利用した被害回復については、これは御賛成の意見がほとんどでございました。
○魚住裕一郎君 これをあえて今回の法案の中に盛り込まなかった理由はどういうことですか。
○政府参考人(古田佑紀君) 法制審議会の刑事法部会におきましてこの問題についてもいろんな角度からの議論が行われたわけでございます。その基本的な考え方自体について特に御反対の意見はなかったわけでございますが、ただ没収あるいは追徴のための保全の制度というのが本格的に導入されましたのがことしの二月に施行されました組織犯罪対策法でございまして、現実問題として捜査機関がその運用にまだまだ習熟していないという面もあるわけでございます。その運用がどういうふうになっていくか、やはりもう少し慎重に見守った方がいいのではないか、こういうような御意見。それからもう一つは、法制審議会に諮問いたしましたこの利用は財産犯を対象としていたわけですが、そうなると、例えば殺人でありますとかそういう生命身体犯の被害者の方との均衡をどういうふうにすればいいのかとか、あるいは多くの被害者の方がいらっしゃる場合に、刑事の手続としては必ずしも全事件を起訴する必要はない、そうすると起訴をされた事件の被害者の方とそうではない被害者の方との間の不均衡が生ずるというような問題も出てくるのではないか。そういうことから、さらに検討を十分した上で結論を出すのが相当だという御意見が大勢を占めたわけでございます。
 したがいまして、そういうふうな問題を含めまして、現在より広い観点から検討を続けている、そういう状況でございます。
○魚住裕一郎君 わかりました。
 それで、先ほども引用されましたが、国連総会の基本原則の宣言という中で、損害賠償の項目で、刑事的な制裁に加え、刑事事件における判決の選択肢として損害賠償を検討するよう運用規則及び法律を見直すべきである、そういう項目が入っております。確かに、民事、刑事分かれているというような制度が近代法制の中でずっと進展してきたわけでありますが、余りにも分離し過ぎるとかえって使いづらいというか、被害者保護という観点からいかがなものかということでこのような八五年の宣言になったんだろうというふうに理解をするところでございますが、この刑事手続における民事的解決、各国の主要国の法制度は簡単に言うとどういうふうになっているでしょうか。
○政府参考人(古田佑紀君) 外国の状況を全部存じているわけではございませんけれども、主要な国のことを申し上げますと、大きく分けましてアメリカ、イギリスの英米法系の国におきましては、裁判所が刑事判決を言い渡す際に賠償を命令するということができるという仕組みがあると承知しております。一方、ドイツあるいはフランスの大陸法系の国におきましては、刑事訴訟が起こった場合に、被害者の方がそこにいわば民事的な訴えをあわせて起こすという附帯私訴という制度が採用されているというふうに承知しております。
○魚住裕一郎君 今回のこの立法作業の中で、附帯私訴とかあるいは民事的解決の手続、これは特に議論されなかったんでしょうか。
○政府参考人(古田佑紀君) 法制審議会の議論としては、これは諮問事項には入っておりませんでしたのでございませんが、この問題につきましては従来からいろいろな形での御意見がございまして、検討を事務当局としてはしてきたわけでございます。
 例えば、附帯私訴について申し上げますと、これは例えば刑事の裁判の手続の中で損害賠償額の算定とか、あるいは民事上のいろんな、言ってみれば抗弁事由でありますとか、いろんな問題、民事的な法律問題も処理していかなければならない、そのための立証とかそういうことについてかなり大きなエネルギーが必要になってきて、刑事裁判の遅延の問題とか、あるいはいろいろな意味で刑事裁判に影響が起きやすいと。例えばの話ですけれども、ドイツなどでも附帯私訴の制度というのはあっても、必ずしも活用されているわけではないというふうに承知しているところです。
 一方、例えばアメリカあるいはイギリスのような損害賠償命令の制度につきましても、これもやはり損害額がどの程度であるかとか、民事的にはどういうふうな法律問題があるかとか、いろんな問題がどうしても伴うわけでございまして、これもまた一つのアイデアとしてはもちろんあり得るわけですけれども、やはり運用上、刑事裁判に対する影響というのは相当問題になるわけで、このあたりを慎重に判断しないと結論は出ないということで、現時点ではやはりまだまだ慎重な検討が必要な問題だというふうに考えているところでございます。
○魚住裕一郎君 いろんな犯罪がありますし、各個別事案ごとに考えなきゃいけないことはいっぱいあると思いますが、ただ、やはりこのような刑事手続の中において民事的解決ができるということは、より被害の救済に資する、そういう観点から積極的にぜひ今後議論を検討していただきたい、このように希望して質問を終わります。
○橋本敦君 最近、高速バスのハイジャック事件、さらには豊川における殺人事件という十七歳の少年による衝撃的な事件が起こりまして、これはもう本当に大変な問題だというように考えております。こういう事件について、まず何よりもその犯罪少年、その動機、原因が何か、そして自己の犯した重大な行為の責任をはっきり自覚させる、そしてそれなりにその責任をとり、更生の道を歩むということが非常に大事であることを改めて痛感するわけです。
 今回の豊川の事件あるいは高速バスハイジャック事件、いずれも十七歳の少年、こう言われておりますが、この少年について、現在の法手続の中で刑事責任の究明という、あるいはその責任の解明という点はどういうように進められるのか、概略をまず刑事局長、御説明いただけますか。
○政府参考人(古田佑紀君) 御指摘の事件につきましては、現在、検察庁におきまして警察当局とも連携の上、必要な捜査を遂げているものと承知しております。
 この事件についてどうなるかということではなくて、一般論としてどういう仕組みがあるかということを申し上げますと、いずれにいたしましても、犯罪があった場合につきましては、まずは警察及び検察官におきまして捜査を遂げることになるわけでございまして、その結果によって犯罪の嫌疑があると認められるときは家庭裁判所に送致をされることになるわけでございます。家庭裁判所に送致されました後は、これは家庭裁判所の御判断になるわけですが、十七歳以上の少年につきましては、保護処分に付する場合と刑事処分が相当ということで検察官の方にいわゆる逆送の手続がとられる。逆送の手続がとられましたときは、検察官は犯罪の嫌疑がある限りは公訴提起の義務を負うということになっているわけでございます。
○橋本敦君 今お話しになったことは、現在の少年法でも第二十条、それからさらに第四十五条ということで決められているわけですね。
 だから、したがって、家庭裁判所の判断の結果によっては検察官送致、さらには、今お話しの四十五条によって、公訴を提起するに足りる犯罪の嫌疑があると検察官も思料すれば公訴を提起しなければならない、こうはっきり書いてありますから、刑事責任の究明が行われることになる。その場合、裁判所の判決の結果によっては、当然その刑事責任の追及としては、死刑はこれはできないけれども、少年法の五十一条によって、十八歳に満たない者に対しては、死刑をもって処断すべきときは無期刑を科すということですから、死刑はできませんね。しかし、懲役刑をもって処断するということで、刑事責任をとらせるということは今の少年法でも手続的に可能であるということは間違いありませんね。
○政府参考人(古田佑紀君) 十七歳の少年につきまして、一般的な仕組みとしてはおっしゃるとおりでございます。
○橋本敦君 私がこの当然のことを指摘しましたのは、私は少年に自分の責任をはっきり自覚させるということが必要だ、それは更生のためにも必要だということが一つあるんですが、同時に、今回の十七歳の少年の事件に社会が大きな衝撃を受けていますから、これで現在の少年法の改正を大いに進めなくちゃならぬというように世論を誘導している向きが一部のマスコミ等にも見られることを私は心配しているわけです。
 一部のマスコミでは、少年法によって保護主義が徹底して刑事責任を十分とらせられないんじゃないかということから、そういった意見が出てくるという意味で、それは、現在の少年法のもとでも刑事責任の究明それ自体はできるということを一部十分理解していない面があるのではないかというように思うから指摘をしたわけです。
 それと同時に、そういった犯罪少年に自己の行為の責任を自覚させ再び犯罪を起こさないようにするために少年院や刑務所における処遇や教育ということが非常に大事ですが、同時に、不慮に偶然にも大変な被害を受け亡くなられた、障害を受けられた、こういう方に対する犯罪被害補償というのがいよいよ真剣に社会全体として考えなくちゃならぬ問題だというように一層明確に浮かび上がってきていると思うんですね。
 その点で、先ほどから竹村委員からも議論がありましたけれども、現在の我が国の法制としてはそれは十分になされる状況になっているだろうかということを改めて考えざるを得ないと思うんです。現在行われている被害者に対する給付金制度というのは、いわゆる不慮の死、重度障害ということを中心にして一定金額ということになっていますが、これで果たして十分だろうかという問題を我々としては十分に議論しなくちゃならないと思うんですね。
 先ほどからも議論がありましたけれども、第九十六回国連総会において、犯罪及び権力乱用の被害のための司法の基本原則の宣言が採択されたのはもう十五年も前ですね。それ以来今日まで、我が国の現状を見てみますと、まことにおくれているんじゃないかという思いを痛感せざるを得ないわけです。
 例えば、前回の参考人の質疑でも、サリンの被害者を代表して御苦労なさっておる高橋シズヱさんのお話がありました。あるいは、我が子を不当な暴力でそれこそほとんど再起不能に近い状況に長年置かれて苦吟されている山本さんの話もございました。そういった事件について、果たして今の我が国の政治及び法制度で十分な被害弁償がなされてそれができているのかという点になりますと、私は現在の先ほど指摘した給付金制度だけではこれはもう十分ではないというように思わざるを得ないんです。高橋さんのお話でも、その給付金制度を受けられたのは亡くなった方あるいは重度障害を受けたというごく限られた人だという範囲にとどまっておるわけですから、圧倒的多数の被害者はそれによって給付あるいは補償されていないという実情にある。
 こういう実情にあるということについては、大臣もそういう実情であると、そのこと自体は御認識いただいておりますか。
○国務大臣(臼井日出男君) そのとおりでございます。
○橋本敦君 それでその問題について、さらに犯罪被害者に対する被害補償というのは、一番大事なのは生活あるいは医療給付ということが中心でありますけれども、それがなぜできないのかと。なぜ国の責任でもっと進めるということができないのかということは、一体どこに原因があってこんなにおくれているのかと私は思わざるを得ないんですが、その点について、どこにネックがあってそれができないのか、大臣の御所見がもしありましたらお聞かせください。
○国務大臣(臼井日出男君) 私ども、日本の刑事司法のあり方につきましては、犯罪被害者に対する補償というものはすべからく加害者が受けるべきものであるというふうなことが基本にございまして、こうしたことの基本の中で、こうした問題については判断が推移をしているということによるものだと思います。
○橋本敦君 そのことが限界がある、そのことによって十分補償されない、そういう状況を踏まえて十五年前に国連の基本原則宣言が出されているわけです。この間、高橋さんのお話にもありましたように、あのサリンの被害を受けた方々のうち多くの皆さんが損害賠償裁判を起こされた。訴訟では勝ったわけです、加害者に対して。大臣が言われるように加害者が払えと裁判所は命令された。
 ところが、実際どれだけの給付がなされているかといいますと、国がオウム財団に対する債権を放棄までして少しでも被害者に損害賠償が行くようにという配慮もしていただきましたよ、ここでも議論しました。結局、その結果、損害賠償請求の二割程度の補償しかなされていないという現状にあるんです。これはお話があったとおりですし、管財人がはっきり言っておりますから、それは間違いないわけですね。
 それで、毎日の生活の不安に追われる、こういう現状にあると。だれに責任があるか。それだけの被害を受けた人には何の過失も責任もないという現状ですから、加害者に対する請求で裁判で勝っても回復できないという場合には、犯罪というのは社会現象として起こってくるんですから、やっぱり我々としては国の責任で補償制度を確立するということにもっと前向きに検討していかなきゃならぬし、そういうことも含めて総合的な犯罪被害救済することを含めた基本法の制定というのはやっぱり我が国としては今後検討すべき重大な課題だという思いを強くするわけです。
 先ほどから、今後もいろんな面で個別的には、仮払いというお話もありましたが、検討していきたいというお話がございましたが、抜本的な医療、生活保障、あるいは心的ケアあるいはその他いろんな面を含めた犯罪被害の総合的な対応として、個別あるいは諸制度を総合的にまとめた上で展望して道を開いていくという意味で、基本法の制定に向けて国の方も積極的な検討を、いつの時点かはともかく、先ほどいつの時点かという話もあって速やかにということで、いつからかというお話がありましたが、本気になって検討していくことを私は法務大臣として積極的に提起をして御検討いただきたいと思うのですが、御見解はいかがですか。
○国務大臣(臼井日出男君) ただいま委員御指摘をいただきました犯罪被害者保護の問題につきましては、まずもって個別具体的な施策を講じることによって対応することが肝要である、このように考えております。
 経済的支援につきましても重要な問題と認識をいたしておりますが、その必要性に応じて個別具体的な施策の一環として検討されるべきものと考えております。
○橋本敦君 もうこれ以上時間がありませんから、個別具体的対応というものも大事ですが、それだけでは十分でないという状況がありますよということを指摘しておるのですから、よくその点は踏まえておいていただきたいと思います。
 そこで、地下鉄サリン事件の被害者の問題で、厚生省にわざわざお越しいただいておりますので一言お聞きしたいんですが、この間も高橋参考人からカルテの保存期間の問題がございました。カルテの保存期間は医師法では五年となっておると。しかし、サリンの被害で苦しんでいる人たちが今、治癒しているように見えても、いつどこで再発するかもしれない。あるいは結婚をなさって子供にそういったサリンの被害状況が出てこないという保証もない。まさにサリンという凶悪な犯罪に未経験な状況ですから、医学的にもまだまだ解明されていない。したがって、カルテの保存期間が五年でもう保存がされなくなって廃棄されてしまうということになれば、医療の対応としても十分でないという不安を持っていらっしゃるというわけですね。
 被害者支援に当たっております民間団体に、サリン事件等共助基金というのがありますが、そこの調査によりますと、被害者の治療に当たった二百六十五医療機関のうち、現在までに七十八医療機関が今後もカルテは保存する予定ですというように言っておられる。一方、三十三の医療機関が五年目で廃棄予定という返事をなさっていることが明らかになりました。ですから、多くの医療機関でもやっぱり保存しておかなきゃならぬなというお考えで、七十八機関が保存の予定だということもおっしゃっているわけですが、一方、三十三機関がもう廃棄しますということで、一層不安を与えているわけですね。
 この問題については、私はカルテは今後の長期にわたるケアのために重要な資料として保存される方がいいというように思っておるんですが、厚生省のお考えはいかがでしょうか。
○政府参考人(伊藤雅治君) お答えをいたします。
 カルテの保存期間につきましては、医師法で五年間の保存期間が定められているわけでございますが、この地下鉄サリン事件の被害者の方々のカルテなどのように、継続的な治療ですとか、今後の経過観察などのために医学的に必要と判断される場合には、医療機関におきまして五年間の保存期間を超えても適切に保存されているものと考えているわけでございます。
 今、アンケート調査の御指摘ございましたが、最近、特に医療機関におきましては、患者さんからの要望によりましてカルテの開示に積極的に取り組んでいる医療機関がふえておりますので、もし仮にそのような御懸念があれば、被害者の方々から該当の医療機関に御自分のカルテのことにつきましてそのような御要望をしていただければ、一層五年間でこの保存が終わっても廃棄をされるというようなことはなかろうかと存じております。
○橋本敦君 今のお話で一定の方向が見えたかと思うんですが、患者さんが治療機関に対して、今後長期にわたって心配があるからカルテを私に見せてほしい、あるいはコピーが欲しい、あるいはカルテそのものが欲しいと、こう言えば、一応現在では治療が終わっているという状況の場合でも、その患者さんに医療機関がカルテを渡してあげるという処置をとること自体は、これは医師法上だめだとか違反だとか、そういうことにならない。厚生省としても、そういう扱いを医療機関が患者との話し合いによってやっていただくことについては、それは結構だというように考えるというように理解したんですが、それでよろしいですか。
○政府参考人(伊藤雅治君) そのとおりでございます。
○橋本敦君 そういうことで医療機関も協力をしていただくということで、私はぜひ患者さんの不安をこの点でもなくしていくような方向が出てくることを期待しておるわけでございます。
 それで、このサリンの問題について関係各省庁で実態の調査、健康被害の調査ということについて厚生省も警察庁もやっていただくということでやっていただきましたが、一番切実な生活の窮状の実態、これについてどういうような状況になっておるかということについては、これはどこが責任を持って御調査していただけるか。これは関係各省の会議があるはずですが、そこのところで積極的にサリン被害者の五千人に及ぶ人たちの現在及び将来の生活実態とその不安解消のためにどう対応するかという調査は、政府として改めて、五年たった今日、ぜひやっていただきたい。法務大臣にそのことについて、閣議で関係各省でまとめてそういう方向での調査を改めてやるということについて御尽力いただきたいと思うのですが、もう時間がなくなりましたのですが、最後にそのことをお願いして、御意見を伺って質問を終わりたいと思います。
○国務大臣(臼井日出男君) ただいま委員御指摘をいただきました地下鉄サリン事件等の被害者というのは、大変長い間御苦労して苦しんでいらっしゃる方も多いわけでございまして、私どもといたしましても、各省庁しっかりと連絡をとって対処をしていくということを心がけてまいりたいと考えております。
○橋本敦君 それはわかっているんですが、今私が言った、現在の病状その他の実態だけでなくて、生活実態そのものについて調査をするということも含めてやっていただけますかと、こういう質問です。
○国務大臣(臼井日出男君) 具体的にどういうふうになるかはっきり見通しはついておりませんが、今、委員から御指摘をいただきましたので、そのことについて検討するようにいたしたいと思います。
○橋本敦君 終わります。
○福島瑞穂君 社民党の福島瑞穂です。
 裁判所に人権教育の問題を聞く前に、五月二日の日に最高裁の山口長官が記者会見した中身について質問をいたします。
 最高裁長官は、少年法改正案について、「国会で実質的な審議に入っていない現状については、「第一線の裁判官の要望におおむね沿った内容と思っており、一日も早い成立を望んでいる」と語った。」と報道されていますが、これで大体よろしいでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) お答え申し上げます。
 ただいまの新聞記事は、記者の方から、少年法の改正案については継続審議中となっており、具体的な審議はまだ一回も開かれていないけれども、どのように考えているかという質問に対してなされたものでございます。
 今のような御質問でありますから、その際の長官の発言を具体的に正確に申し上げますと次のようなものでございました。
 「少年法改正案については、家庭裁判所の実務の第一線にあられる裁判官方のご要望に概ね沿った内容が取り込まれているように承知しています。もちろん、その当否について種々のご議論があり、改正の動きがあるということも承知しておりますけれども、概ね、実務の裁判官の意見にかなったものが盛り込まれているように承知しています。それだけに、一日も早い成立を待ち望んでいたわけでございます。国会におかれましては、また種々のご事情等もあろうかと思いますので、法案の処理につきましては、私からのコメントは控えるのが適当ではないかと思います。」というものでございました。
 御指摘の点については、最高裁長官において実際に少年事件を担当している裁判官の多数が非行事実認定手続の適正化の観点から早急な立法的手当てを望んでいるという事実認識について言及されたものであり、国会における少年法改正案の処理についてコメントは控えるのが適当であるというふうに明らかに発言されているものでありますから、政治的な発言をしたものではないというふうに私どもはとらえております。
○福島瑞穂君 おおむね実務の裁判官のニーズに沿ったものであるというふうにおっしゃったそうですが、なぜそう言えるんですか。アンケートでもとられたんでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) 協議会、研究会における議論や法制審の審議の過程で聴取した各庁の意見等から今回の改正案がおおむね実務の裁判官の要望にかなったものと認識しているというわけでございます。
○福島瑞穂君 具体的に賛成が何%、反対が何%、どういう結果になったか、結果について教えてください。
○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) 賛成が何%というようなところまでこちらも把握はしておりませんけれども、項目ごとに申し上げますと、裁定合議制度の導入、検察官及び弁護士たる付添人が関与した審理の導入、観護措置期間の延長、検察官に対する事実認定及び法令適用に関する抗告権の付与、保護処分終了後における救済手続の整備等については、協議会、研究会で裁判官からの要望が強かった事項でございます。
 また、被害者等に対する審判結果等の通知につきましては、各庁に対する意見照会で賛成が得られたものでございます。
○福島瑞穂君 各庁に対して意見照会をしたのであれば、その結果を教えてください。
○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) 今申し上げたところが私が今承知しているところでございます。
○福島瑞穂君 反対意見はなかったのでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) 基本的に賛成が多かったということから御判断いただきたいと思います。
○福島瑞穂君 基本的にということはどういうことでしょうか。反対意見があるとすれば、反対の理由は何でしょうか。
○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) 本日、そこまでの準備はしてきておりません。
○福島瑞穂君 そのアンケートの結果については、また後日統計を出して教えてください。
 最高裁判官が最高裁長官という立場でこのような発言をすることについて私は問題があると考えます。賛成意見、反対意見、両方あるわけです。少数意見だとしても、その少数意見の理由には根拠があるというふうに考えます。
 先ほどの庁ですが、家裁の担当者の裁判官に聞いたのでしょうか、それとも、そうでなく一般的に裁判所に聞いたのでしょうか。それを教えてください。
○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) 家裁の裁判官に対してのものでございます。
○福島瑞穂君 少数意見がどのようなものであるかということも必要ですし、最高裁長官がこう言うことはどうでしょうか。
 次にお聞きします。
 寺西裁判官は、盗聴法の集会に出て、パネリストに自分はなれない、なる予定だったけれども自分はなれないというふうに言ったことが、仙台高裁におきまして、言外に盗聴法に反対を言った、応援するものであるとして彼は戒告処分になりました。それは、最高裁において戒告処分は有効という判断が出たんですが、お聞きします。
 盗聴法反対と寺西裁判官は言ってさえいないんです。言外にという事実認定のもとに戒告処分を受けたんですが、少年法改正賛成の発言であればよくて、盗聴法反対、言わないんですが、言外にあったということで戒告処分を受ける、この整合性はどうでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) 寺西判事補が懲戒処分を受けましたのは、特定の法案を廃案に追い込むことを目的とする団体の党派的運動を積極的に支援するような行動をしたことが理由である、これは最高裁決定でそういうふうに述べております。
 したがいまして、今回の長官の発言は、先ほど総務局長が申し上げましたように、そういう政治的な発言ではないわけでございますので、事柄が別であるというふうに考えております。
○福島瑞穂君 全くナンセンスだと思うんです。
 人は発言をする自由があります。私は裁判官にも市民的自由があると思いますから、その人が市民的自由にのっとって発言することはいいと思います。どうして盗聴法反対だったら懲戒処分を受け、なぜ少年法改正賛成だったら発言は全く自由で問題ないんでしょうか。
 つまり、法案についての賛成、反対はさまざまな意見があります。賛成の人もいれば反対の人もいるでしょう。それぞれ理由があると思います。なぜ、こういうふうに違うのか、全く納得できません。
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) 今申し上げましたのは、法案がどういう法案であるかということだけで違うということではございませんので、その点だけ先ほどの答弁に補足させていただきます。
○福島瑞穂君 ある人がある発言をするのは、何かを応援するというより自分の発言でやるということがあると思います。最高裁長官の記者会見の内容は、逆に言うとじゃ少年法改正賛成のグループを励ますものだと明らかに言えるじゃないですか。どこが違うんですか。
○委員長(風間昶君) 質問ですか。
○福島瑞穂君 はい、質問です。
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) その点につきましては先ほど総務局長からお答えしたとおりでございます。
○福島瑞穂君 全く答弁になっていません。
 ある人のある発言は人を励ますこともあればがっかりさせることもある、そういうことじゃないですか。法案についての意見は、賛成もあるが反対もある。いろんな意見がある。裁判官の中にも賛成もあれば反対もある。いろんな意見があるということで、私はもっと問題なのは、寺西裁判官は一個人としての発言です。しかし、最高裁長官は組織を代表して、おおむねニーズに沿っていて賛成である、しかも一日も早い成立を望んでいると発言しています。
 寺西裁判官は法案についての賛否は述べませんでした。にもかかわらず、反対の意見、言外に応援しているということで懲戒処分を受ける。一方、最高裁長官は明らかに少年法を成立させる方向に元気づけていながら、なぜ懲戒処分を受けないんですか。
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) これは寺西判事補の大法廷の決定においても述べておりますけれども、委員もお読みいただいていると思いますので詳しくは申し上げませんが、裁判官が法案について立法作業に関与するとか、賛成、反対の意見を述べる行為というのも一定の場合には許されるということを述べておりまして、その上で、「しかし、本件において抗告人が行ったように、特定の法案を廃案に追い込むことを目的とする団体の党派的運動を積極的に支援するような行動をすることは、これらとは質の異なる行為であるといわざるを得ない。」というふうに述べているところでございます。
○福島瑞穂君 全く理由になっていないと思います。
 法案について意見を述べることもでき得るとしてなぜ、廃案に追い込む、彼自身は、繰り返し言いますが、決して意見を述べていません。それがなぜ懲戒処分で、最高裁長官が長官という立場でこういうふうに述べることがなぜ全く問題にならないのか、明確な答弁を求めます。
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) これは、決定を全部読みません、省略いたしましたけれども、一定の方法で法、立法について述べたりすることは差し支えない、それと寺西判事補の行為とは異なるということを明確に述べております。繰り返しになりますが、そこのところで御理解、御判断いただきたいと存じます。
○福島瑞穂君 最高裁長官の発言は、これは少年法改正促進にはならないんですか。
○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) 先ほどもお答えいたしましたけれども、最高裁長官は少年法の改正案について直接的にコメントされたわけではなく、全国の裁判官の多数が非行事実認定手続の適正化の観点から早急な立法的手当てを望んでいるという、そういう客観的な事実認識について言及しただけでございます。
○福島瑞穂君 先ほど、答弁で、一日も早い成立を望んでいるとおっしゃっているじゃないですか。ちゃんと言っているじゃないですか。
 やっぱり頭に来るのは、なぜ廃案に追い込むことについて発言できないとすら言った裁判官は懲戒処分になって、長官という立場で少年法改正を一日も早く望んでいると言うのが本当に文句なく言えるのか。私は、裁判官にも市民的自由があると思います。いろんな人がいるし、いろんな意見があっていいでしょう。多様化した意見が反映させることは当然です。しかし、このように恣意的なことをされることが問題である、整合性は全くないというふうに考えます。
 ただ、ちょっと答弁が繰り返されているので、これについては今後もまた引き続き追及していきたいというふうに考えておきます。
 金築さんにいつも人権教育のことを聞くんですが、きょうも参考人からも出ました、被害者の感情にセンシティブである、それからジェンダーセンシティブであるための人権教育というのはどのようにされていらっしゃるでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) 今、被害者の気持ちがわかる教育、それからジェンダーという言葉もありました。一般に、人権に関する教育は、前からここで御答弁させていただいておりますように、司法研修所において各種の研修の機会に取り上げております。
 具体的にジェンダーとか被害者の関係のことを取り上げたのが、今具体的な内容としてはどういうものがあるかわかりませんが、いろいろな研修においてそういうことは取り上げられて、研修の内容になっているというふうに理解しております。
○福島瑞穂君 研修所のみではなく、現役の裁判官でもそのような、きょう被害者救済法が議論されておりますけれども、ぜひそういう研修がもっともっとなされることを要望します。
 金築さんにまたお聞きします。
 国連人権セミナーの問題に関して外務省と話をするということでしたけれども、その後どうなっているでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(金築誠志君) お尋ねの件は、バグワティ氏が最高裁においでになってお話しになった件に関するものかというふうに思いますが、バグワティ氏の方から私に対して国際人権規約に関する裁判官のワークショップについて話がございました。日本でもそういうものをやるのは意義があるのではないかというお話でございました。
 私の方では、全くの初めてのお話でございまして、どういうものか内容もよくわかりませんので、それでは資料をお送りいただきたいということで、送りましょうということで、まだそのままの状態で向こうからは特にございません。外務省の方からも特にお話はございません。
○福島瑞穂君 外務省から話がなくても、最高裁としてはぜひ積極的にそのような取り組みをしてください。向こうから話がない限り着手しないというのでは消極的だと思いますので、ぜひ積極的に取り組んでください。
 では、次に、法務省にお聞きをいたします。
 少年院などでは、例えばロールプレーや演劇をやる中で自分の感情に気づいていくとか、さまざまな教育、啓発、援助などがされているというふうに聞いておりますし、そういう部屋があったり、かなりきめ細かにやっているような気はしております。
 ところで、刑務所の方でそのような何か教育などをされていらっしゃるのか、その点について教えてください。
○政府参考人(鶴田六郎君) お答えいたします。
 少年院と比べて刑務所等の行刑施設の場合には、特に刑務所の場合には、懲役刑を執行するという刑の執行の機能も有するところですので、そういった意味では、一方で規律の保持ということもあるわけですが、そういった中でいろいろな処遇、教育処遇を工夫しているわけです。
 その一つとして、この前も、類型別処遇というようなことで、例えば覚せい剤の乱用者とか、あるいは暴力団の場合も多いわけですけれども、その離脱指導とか、またこの前も御説明しましたけれども、被害者の視点を入れました贖罪教育、あるいは生命のとうとさを教える生命尊重教育、そういったようなことを施設内処遇という制約の中で施設の特質に応じてやっておるというのが実情で、その中にどういう技法を用いてやっているかというのは、中には集団討議というのもやっているところもありますし、VTRを利用しているところもいろいろあるわけですが、ただ率直に申し上げまして、少年院の教育ほどは活発ではないということはそのとおりでございます。
○福島瑞穂君 いろいろ工夫や苦労をされてやっていらっしゃると思うんですが、別に少年院がよくて刑務所がだめと言っているわけではもちろん全然ないのですが、ただ少年院の方がかなり工夫しているのではないかと思うんですね。ですから、大人でもやはりロールプレーをやったり演劇をやったり、いろんな形で自分の感情や人の気持ちがいろいろ理解できるというようなことは、少年院でなされていることはかなりノウハウは実は刑務所でも生かせるのではないかというように思っておりますので、ぜひ今後、今取り組んでいらっしゃることのほかにさまざまな処遇あるいは訓練や教育があるのではないかということについて、ぜひ積極的に取り組んでくださることを要望したいと思います。
 午前中に参考人の方からの意見があって、私自身もそのとおりだと思うんですが、今、これは場所によっても計算によってもさまざまですが、受刑者の一月のもらうお金は約三千円と言われています。非常にやっぱり安いわけですよね。もちろん懲役だからということはあるかもしれませんが、三千円と極めて安い。私は、十倍にしても三万円なわけで、例えば被害者の人に対して一万円ずつでもきちっと支払いを続ける、被害者にしても、お金が何とかというわけでは全くないにしても、きちっと払ってもらい続けるということは、やはり一つのいやしになっていくだろうというふうには思います。もちろん、相手方の気持ちもありますけれども。
 ですから、そういう意味でも、被害者のため、それから受刑者が、いつも犯罪を犯した人が多くの場合無資力でほとんど被害者に対して何もできない、刑務所に入れば満足にお金がもらえませんからその被害も払えないということを改善するためには、刑務所の作業賞与金を引き上げるということが一つあると思いますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(鶴田六郎君) 作業賞与金というのは、委員も御承知のとおり、刑法で定める懲役刑の内容として刑務作業があるわけですが、それに従事した受刑者に支給されるというもので、その性質につきましては、やはりそういう懲役の内容をなしているものですから、労働の対価ということよりも、むしろ刑務作業を奨励し、かつ釈放時における当座の生活維持や就職準備等の更生資金として役立たせる、そういった性質のものだろうというふうに考えておるわけですけれども、それはそれといたしまして、そういった作業賞与金の性質等も踏まえながら、毎年、矯正局では、財政事情もいろいろあるものですからなかなか引き上げが難しい面もありますが、昭和五十六年以降、毎年二%ずつ単価の引き上げを行っておりまして、適正な水準の維持にこれまで努めてまいりましたので、引き続き作業賞与金の持つ、作業賞与金が受刑者の改善更生に資するという面もございますので、引き続きそういった形で適正な水準の維持に努めてまいりたいというふうに考えています。
○福島瑞穂君 終わります。
    ─────────────
○委員長(風間昶君) この際、委員の異動について御報告いたします。
 本日、江田五月君が委員を辞任され、その補欠として櫻井充君が選任されました。
    ─────────────
○委員長(風間昶君) 他に御発言もないようですから、刑事訴訟法及び検察審査会法の一部を改正する法律案及び犯罪被害者等の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律案に対する質疑は終局したものと認めます。
 これより両案について討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 まず、刑事訴訟法及び検察審査会法の一部を改正する法律案の採決を行います。
 本案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
○委員長(風間昶君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 次に、犯罪被害者等の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律案の採決を行います。
 本案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
○委員長(風間昶君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 この際、竹村泰子君から発言を求められておりますので、これを許します。竹村泰子君。
○竹村泰子君 私は、ただいま可決されました刑事訴訟法及び検察審査会法の一部を改正する法律案及び犯罪被害者等の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律案に対し、自由民主党・保守党、民主党・新緑風会、公明党・改革クラブ、日本共産党、社会民主党・護憲連合及び参議院クラブの各派並びに各派に属さない議員中村敦夫君の共同提案による附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。
    刑事訴訟法及び検察審査会法の一部を改正する法律案並びに犯罪被害者等の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律案に対する附帯決議(案)
  犯罪被害者等が、個人の尊厳が重んぜられ、それにふさわしい処遇が保障されるよう、犯罪被害者等に対する支援を更に充実するため、次の諸点について格段の配慮をすべきである。
 一 政府及び最高裁判所は、犯罪被害者等の保護及び配慮が喫緊の課題であることにかんがみ、両法律の趣旨を広く周知徹底すること。
 二 政府及び最高裁判所は、両法律の施行に当たっては、犯罪被害者等の保護に十分に配慮するとともに、反対尋問権の保障を含む被告人の権利を不当に制限することのないよう、刑事司法の適正な運営の確保に努めること。
 三 政府は、犯罪被害者等の権利に関する国民の関心と理解を深めるための教育及び啓発に努めるとともに、犯罪捜査に従事する者に対し、犯罪被害者等の人権、心身の状況等に関する理解を深めるための研修・訓練を行うこと。
 四 政府は、犯罪被害者等に対する経済的支援の必要性にかんがみ、犯罪被害者等給付金支給制度の拡充に努めるとともに、被害回復に資するための新たな支援制度について検討すること。
 五 政府は、犯罪被害者等が受けた被害の回復及び社会復帰を支援するため、犯罪被害者等に対する相談・カウンセリング体制の整備、犯罪被害者等の安全・生活の平穏の確保、民間の被害者支援組織等への援助等精神的・経済的支援を含めた総合的な犯罪被害者対策を、関係省庁の密接な連携の下に推進すること。
 六 政府は、犯罪被害者等支援の観点から、司法制度改革審議会の審議結果等を踏まえ、検察審査会制度の在り方について検討すること。
   右決議する。
 以上でございます。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
○委員長(風間昶君) ただいま竹村君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
○委員長(風間昶君) 全会一致と認めます。よって、竹村君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 ただいまの決議に対し、臼井法務大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。臼井法務大臣。
○国務大臣(臼井日出男君) ただいま可決されました附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえまして、今後とも努力を重ねてまいりたいと存じます。
 また、最高裁判所にも本附帯決議の趣旨を伝えたいと存じます。
○委員長(風間昶君) なお、両案の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(風間昶君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後五時二十三分散会