第153回国会 法務委員会 第9号
平成十三年十一月二十二日(木曜日)
   午前十時開会
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   委員の異動
 十一月二十日
    辞任         補欠選任
     山下 英利君     片山虎之助君
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  出席者は左のとおり。
    委員長         高野 博師君
    理 事
                市川 一朗君
                服部三男雄君
                千葉 景子君
                日笠 勝之君
                井上 哲士君
    委 員
                青木 幹雄君
                岩井 國臣君
                佐々木知子君
                陣内 孝雄君
                中川 義雄君
                三浦 一水君
                江田 五月君
                小川 敏夫君
                角田 義一君
                浜四津敏子君
                福島 瑞穂君
                平野 貞夫君
                柏村 武昭君
   国務大臣
       法務大臣     森山 眞弓君
   副大臣
       法務副大臣    横内 正明君
   大臣政務官
       法務大臣政務官  中川 義雄君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局民事局長
       兼最高裁判所事
       務総局行政局長  千葉 勝美君
       最高裁判所事務
       総局家庭局長   安倍 嘉人君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        加藤 一宇君
   政府参考人
       人事官      小澤 治文君
       警察庁刑事局長  吉村 博人君
       警察庁交通局長  坂東 自朗君
       法務省刑事局長  古田 佑紀君
       法務省矯正局長  鶴田 六郎君
       厚生労働大臣官
       房審議官     鈴木 直和君
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  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○刑法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議
 院送付)
○刑事訴訟法等の一部を改正する法律案(内閣提
 出、衆議院送付)

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○委員長(高野博師君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 去る二十日、山下英利君が委員を辞任され、その補欠として片山虎之助君が選任されました。
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○委員長(高野博師君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 刑法の一部を改正する法律案及び刑事訴訟法等の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に人事官小澤治文君、警察庁刑事局長吉村博人君、警察庁交通局長坂東自朗君、法務省刑事局長古田佑紀君、法務省矯正局長鶴田六郎君及び厚生労働大臣官房審議官鈴木直和君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(高野博師君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
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○委員長(高野博師君) 刑法の一部を改正する法律案及び刑事訴訟法等の一部を改正する法律案を一括して議題といたします。
 両案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○佐々木知子君 おはようございます。自民党の佐々木知子でございます。
 まず、刑法改正についてお伺いしたいと思います。
 私も、長い検事経験を通しまして、これでも本当に過失犯か、これはもう故意犯ではないかと言えるような無謀運転で致死傷という結果を引き起こしたというような事件を何度も扱いました。昭和四十三年の改正以前は、業務上過失致死傷というのはわずか三年以下の懲役または罰金にしかならなかったわけですけれども、遺族の被害者に言わせれば、飲酒運転で自分の息子は殺されたというふうにはっきり断言されておられる方も何人もおりまして、今回、悪質、危険な自動車運転による重大な死傷事犯に厳正に対処するためこのような改正案が提出されたことはまことに喜ばしいことと考えております。
 ただ、この処罰を特別法ではなく刑法で、かつまた業務上過失致死傷の罪の項ではなくて第二百八条の二、つまり暴行の項に新設することになった経緯や理由について、まず法務大臣にお伺いしたいと思います。
○国務大臣(森山眞弓君) 本罪は、人の死傷の結果を生じさせる実質的な危険性を有する自動車の運転行為を故意に行い、その結果、人を死傷させた者を処罰しようとするものでありまして、現行刑法の暴行の結果的加重犯としての傷害致死罪に準ずる性格を有する犯罪と考えております。
 このように、本罪は、個人の生命、身体を保護法益とする基本的、一般的な犯罪であるとともに、今日における自動車の普及状況等に照らしましても国民の日常生活に極めて密接な犯罪でございますから、特別法ではなくて刑事の基本法である刑法に規定することが適当であると考えたわけでございます。法制審議会における審議におきましても、そのようなことを考慮されまして、基本法典である刑法に規定することが適当であるとする意見が多かったというふうに聞いております。
 また、単なる不注意による過失犯ではなくて、危険な運転行為を故意に行った結果、人を死傷させる犯罪でございまして、暴行の結果的加重犯としての傷害の罪に準ずるという性格があると思われますので、刑法第二十八章の過失傷害の章にではなく、刑法第二十七章の傷害の罪の章の暴行罪の次の条に規定を置いたものでございます。
○佐々木知子君 この二百八条の二をざっと見ますと、二輪車が対象外とされているということが目につくわけですけれども、二輪車もいわゆる暴走族が共同危険行為でよく摘発されておりますが、非常に危険な運転をしてやはり致死傷という結果が生じるということは間々あることなのですが、二輪車が今回対象外とされた理由についてやはりお伺いしたいと思います。
○国務大臣(森山眞弓君) 危険運転致死傷罪は、過失犯の枠組みで処罰することが相当でない悪質、危険な運転行為による死傷事犯について、傷害致死に準じた重い法定刑によりまして処罰しようとするものでございます。ですから、対象となる運転車両についても、重大な死傷事犯となる危険性が類型的に高いものに限定することが相当であると考えられたわけでございます。
 二輪車は、原動機付自転車はもちろんのこと大型の自動二輪車につきましても、四輪以上の自動車に比べますと重量において格段に軽く、走行安定性が劣りますので、本罪に当たるような悪質、危険な運転をして重大な死傷事犯を生じさせる危険性が類型的に少ないというふうに言えます。実際に、二輪車による死傷事犯につきましては、本罪に該当するような悪質、危険な運転行為による重大な死亡事犯の実態が乏しく、対歩行者などの場面では死傷事犯も生じますけれども、真に悪質、危険な事案につきましては傷害致死罪による対応も可能でございますし、それ以外につきましては業務上過失致死傷罪等をもちまして対応することも十分可能な実情でございます。
 仮に、二輪車による死傷事犯を本罪の対象といたしますと、軽傷事犯が類型的に多く含まれるということになりますので、本罪を設ける趣旨に反するということになるのではないかと思うわけでございます。このようなことから、本罪の対象は、重大な死傷事犯を生じさせる危険性が類型的に高い四輪以上の自動車に限定したものでございます。
 なお、共同危険行為の多くはいわゆる迷惑運転でございまして、必ずしも死傷の結果を生じさせる危険の高い行為とは認められないというふうに考えております。
○佐々木知子君 危険な類型ということで二輪車はとりあえず外したということで、今後、そういうことも危険だということになれば恐らくは考えていただけるのではないかというふうに思いますけれども、今回の二百八条の二、よくわからないような条文が並んでおりますが、四つ、これはどうやら危険類型ということで挙がっているようでございます。
 一般に交通三悪ということで故意にも匹敵すべき危険な運転態様としては、飲酒運転それからスピード違反による運転、それから無免許運転ということが挙がっておりますけれども、今回の改正はこの四つの危険運転とされる類型を抽出したということについての理由についてお伺いしたいと思います。
○政府参考人(古田佑紀君) 今回御提案申し上げております危険運転致死傷罪につきましては、基本的な考え方は、現在の死傷事犯の実態等に照らしまして重大な死傷事犯となる危険性が類型的に高く、行為態様においても反社会性が強い運転行為を選ぶという、そういうことでございます。
 今回御提案申し上げておりますこの類型以外の運転行為につきましては、事案の実態等に照らしまして一般的に重大な死傷事犯となる危険が類型的に高いということまで必ずしも言いにくい場面も多いわけでございます。したがいまして、実態としては業務上過失致死罪の法定刑をもってしては対処は困難であるというふうな重大な致死傷事犯が認められない、あるいは行為態様におきまして反社会性が極めて強い行為とは認められない、そういうふうなことから、今回は、今御指摘のようなそれ以外の類型については法整備は行わないということとしたものでございます。
○佐々木知子君 実際に起こった非常に悪質な交通事犯の態様をいろいろリストアップしてこの四つを抽出したというふうに伺ってよろしいですか。
○政府参考人(古田佑紀君) おっしゃるとおりで、重い刑を言い渡されている事案について調査をした結果でございます。
○佐々木知子君 実際に刑法を扱ってきた者にとりますと、これはちょっと何となく書き方が普通じゃないのかなという感じがいたします。というのは、法定刑は同じでありますのに一項と二項と設けております。そして、一項の中の前段後段、二項の中の前段後段、普通はちょっと質が違うようなものを設けているはずなのに、何か羅列されているような感じ、なぜこれが四類型、一号から四号ではなく一項と二項で二つずつにしたのかということも一目瞭然ではよくわからないんですけれども、これは何か理由がございますでしょうか。
○政府参考人(古田佑紀君) この処罰規定の類型を考えるに当たりまして、もともとは二類型を考えていたわけです。その一つは、現在一項になるわけですけれども、要するに車両の走行のコントロール自体が困難なそういう運転行為、例えばその典型が泥酔運転である場合とかそういう場合です。もう一つは、車両の運転の、車両の走行のコントロール自体はもちろんちゃんとできるわけですが、非常に危ない割り込みでありますとかそういうふうな行為、その二つの類型に分けて検討したわけでございます。一項が、先ほど申し上げましたように、走行のコントロール自体が困難な状態で運転する行為、二項が、走行のコントロール自体は保っておりますけれども、ある時点で非常に危険な運転をする行為と、大別するとそういうことになっているわけです。
 そのそれぞれの中でさらに二つに分かれておりますのは、これは率直に申し上げまして結果的にそうなったわけで、一項につきましては、これを全部一文に書いてしまいますと非常にわかりにくいこととなる、また要件的にも若干の差があると。二項につきましても、前段は例えば妨害の目的というのを要件としておりますが、後段はそういう要件をかける必要がない、そういうものから、わかりやすさと立法技術的な面でさまざまこういうふうに分かれたということでございます。
○佐々木知子君 刑法は一般人にとってのマグナカルタというようなもので、こういう行為をしたら、こういう運転行為をしたらこの罰条に該当するということが私はある程度というのは、ある程度じゃなくてもうかなり明確に、一義的に定まるようなものでなければいけないのではないかと思っておりますが、残念ながら法律家の私が読んでもちょっとわかりにくい文言が並んでいるように感じてなりません。
 まず、一項の前段ですけれども、これは飲酒運転と薬物運転というふうに考えてよろしいかと思います。「アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態」とございますけれども、これは道路交通法による酒酔い運転、「アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態」というのはどういうふうに違うんでしょうか。
○政府参考人(古田佑紀君) ここで「アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態」と申しますのは、これらの影響によりまして道路及び交通の状況等に応じた運転操作を行うことが困難な状態、心身の状態をいうものであります。したがいまして、単に正常な運転ができない可能性があるというだけでは足りず、例えば酒酔いの影響によって前方の注視が困難になったり、ハンドル、ブレーキ等の操作等を意図したとおり行うことが困難になる、現実にそういう運転操作を行うことが困難な状態になっているということが必要だということでございます。
 一方、道路交通法上の酒酔い運転罪につきましては、これは御案内のとおり、アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態で車両等を運転した場合を処罰するものでございますが、これはアルコールの影響等により正常な運転を期待し得ないおそれが顕著な状態ということでございまして、その認定につきましては、飲酒によるアルコールの影響によって車両を正常に運転する必要な注意能力を欠くおそれがあると認められる状態にあれば足り、実際にその能力を欠いたり、あるいは失ったというふうな状態に至るまでのものではないと、そういうことでございまして、要するに、おそれの段階の話か、実際にそういう正常な運転ができない、あるいは困難な状態というところまで必要とするかという違いということでございます。
○佐々木知子君 正常な運転が困難な状態であると運転者本人が認識しているかどうかということに、その立証はどうするのか、あるいはそういう認識の要はないというふうに考えておられるのか。実務において道路交通法における酒気帯び・酒酔い運転もそれは同時に立件するのか、もしそうだとすれば、その罪数関係もお伺いいたします。
○政府参考人(古田佑紀君) これは、基本的行為が故意によって行われるということが前提でございますので、正常な運転が困難な状態にあることについての認識は必要でございます。
 ただ、正常な運転が困難という評価自体を本人がしていると、そこまでの認識が必要だというわけではなくて、そういう困難であるということを基礎づける事実を認識していれば故意としては十分であると考えております。
 その具体的な例としては、例えばしばしば居眠りしてしまうとか、あるいはしばしば目がかすんで見えなくなる、あるいはハンドルを思うように操作できなくてしばしば蛇行する、そういうふうな状態になってきている、そういうことを本人が認識していれば足りると。そういうことの立証につきましては、もちろん走行の形態が非常に大きな要素になるわけですが、その前の飲酒量でありますとかそういうようなことから総合的に捜査をして判断をして立証していくということになると考えております。
 また、罪数関係についてのお尋ねですが、これは酒酔い運転あるいは酒気帯び運転の一部を完全に取り込んだものでございますので、そういう意味ではこの本罪に当たるような事故を起こした場合には、本罪の事故との関係で酒酔い運転あるいは酒気帯び運転の罪は本罪に吸収されると考えております。
○佐々木知子君 続きまして、一項の後段なんですけれども、これはスピード違反による運転か、または未熟運転という態様かと思うのですけれども、まず、「進行を制御することが困難な高速度」というのはどのような意味ですか。スピードが出ていて、かつ致死傷という結果が生じる事故が起きた場合にはそう認定するということではないんでしょうか。運転手本人の認識というのはどのようにとらえておられますか。
○政府参考人(古田佑紀君) 「進行を制御することが困難な高速度」と申しますのは、先ほども申し上げましたとおり、第一項につきましては要するに車の走行のコントロールが困難な、そういう状態で運転しているということをとらえようとするものでございますので、速度が非常に速くて、そのために道路の状況に応じて進行するということが難しい状態になる、そういうふうな速度を意味しているわけでございます。
 具体的には、例えばカーブでそこを曲がり切れないようなスピード、あるいはそういうスピードで走っていれば車の走行性能などからもちろん当然予想されることもあるでしょうし、あるいはちょっとしたわずかのハンドル操作の誤りとかそういうことから自車を進路から逸脱させると、そのような速度ということでございます。
 そういうふうな速度についての認識ということはもちろん必要なわけでございますが、結局、例えば客観的に見てそういうスピードで走っていればこういう急カーブは曲がり切れない、それは当然であろうというようなスピードが出ているというふうなスピード自体の認識、あるいは本人が例えばハンドル等の操作でちょっと誤ったらすぐ自車が逸走してしまうという危険を感じながら運転している、あるいはハンドル等がぶれて的確にその進路を保持できないと、そういうふうな状態を認識している、そういうようなことから判断をしていくということになると考えております。
○佐々木知子君 「進行を制御する技能を有しない」ということは書かれてありますけれども、これはどういうことを想定しておられますか。いわゆる無免許運転でこういう事故を起こしたという場合には恐らくそういう認定がしやすいかと思いますけれども、進行する技能を有しないというのはあくまでも技能に注目したもので、一々技能を持っているかどうかということを認定するということでしょうか。
○政府参考人(古田佑紀君) これも先ほど申し上げましたとおり、自動車の走行のコントロール自体がおよそ困難だというふうな場面を前提としているわけでございまして、したがいまして、「進行を制御する技能を有しない」というのは、単に無免許ということではなくて、ハンドル、ブレーキ等の運転装置を操作する、どうやって操作するか、あるいはそれを操作した場合にどうなるかというようなことについての基本的な技能、そういうふうなものも持っていない、大変、言ってみれば運転、自動車の走らせ方というのをほとんど知らないというふうな、そういう未熟な状態のことをいうわけでございます。
 したがいまして、実際に判断する場合には、運転免許を有していないことは当然のことでございますが、それまでの車両を扱った経験あるいは実際の、特に重要なのは、運転状況などということなどを総合的に考慮して判断するということになると考えられます。
○佐々木知子君 二項はスピード違反を書いておるようですけれども、「重大な交通の危険を生じさせる速度」とございます。これは、一項にいう「進行を制御することが困難な高速度」とはあえて違った書き方をしておりますが、これはどちらがどういうふうに速いのか、どういうふうに認定をするのか、それについてお伺いいたします。
○政府参考人(古田佑紀君) 一項の「進行を制御することが困難な高速度」というのは、車の走行自体のコントロールが難しい、そういう速度をいうわけでございます。一方、第二項の「重大な交通の危険を生じさせる速度」というのは、これは進行のコントロール自体はできる場合も含むわけで、しかしながらその速度で事故を起こせば、これは重大な結果を生じさせると、そういうふうな速度ということでございます。
○佐々木知子君 何だかやっぱりよくわからないんですけれどもね。
 この二項の後段に赤色信号を殊さらに無視とありますが、殊さらかどうかというのはこれまたどのように認定するのですか。
○政府参考人(古田佑紀君) 赤色信号を殊さらに無視というのは、およそ赤色信号に従う意思がないというふうなことを意味するものと考えております。これは殊さらに無視したかどうかというようなことにつきましては、これも走行形態で、信号におよそお構いなしに走っている、典型的には例えば警察官に追われて信号に全く関係なく走っている、そういうふうな場合などがあるわけですけれども、そういう運転の態様、それが主として判断の基礎資料となるものと考えております。
 いずれにいたしましても、もちろん本人がどういうつもりで走っているかとか、そういうこともあるわけですが、いずれにいたしましても走行状態を含めた関係証拠によって判断をされるものと考えております。
○佐々木知子君 法定刑につきまして、人を負傷させた場合は十年以下の懲役、人を死亡させた場合は一年以上の有期懲役となっておりますが、この理由について法務大臣にお伺いいたします。
○国務大臣(森山眞弓君) 本罪は一定の危険運転行為を行い、その結果、人を死傷させた場合について、暴行による傷害罪あるいは傷害致死罪に準じて処罰しようとするものでございます。
 ところで、傷害致死罪が暴行あるいは傷害の故意により暴行に及んだ結果、人を死亡させた場合であるのに対しまして、本罪の危険運転行為につきましては、重大な死傷の結果を発生させる危険が類型的に極めて高いもの、しかし行為者の認識といたしましては特定の人や車に直接衝突させる意図までは有しておらない、人に対する暴行そのものとは認められない場合をも含んでいるわけでございますので、すべて傷害致死罪と同様の懲役刑を科するとすれば事案の実態に即しないということになる場合も考えられるというところで、法定刑の下限は傷害致死罪よりも下げて一年以上の有期懲役としたものでございます。
○佐々木知子君 諸外国におきましてもこうした悪質交通事犯は処罰が重いと私も認識しているんですが、例を挙げていただけますでしょうか。
○副大臣(横内正明君) 主要先進国である英、米、独、仏について調査をした結果をかいつまんで申し上げますが、アメリカにおきましては、州によって差がありますけれども、例えばミシガン州では飲酒運転致死罪が十五年以下の自由刑というふうになっております。イギリスにおきましては飲酒運転致死罪が十年以下の自由刑というふうになっております。ドイツの場合には五年以下の自由刑とされている過失致死罪以外には特段の加重類型はありません。フランスにおきましては、過失致死傷罪が酒酔い運転とともに犯された場合には、その法定刑を二倍とするということになっておりますので、酒酔いで過失致死を犯した場合には十年以下の自由刑ということになっております。
○佐々木知子君 諸外国と比べますと日本の今度の改正はかなり重いぐらいになっているかというふうに思いますけれども、故意の傷害罪に準ずるとすれば、傷害罪には罰金刑も御案内のとおり定められております。本罪には罰金刑はございません。これはどのような考え方に基づいておるものでしょうか。これも副大臣にお伺いいたします。
○副大臣(横内正明君) 委員の御指摘のとおり、傷害罪の法定刑としては十年以下の懲役のほかに罰金刑があるわけでございますけれども、傷害罪一般については重さの程度が千差万別でございまして、凶器を用いるような非常に重要な事案だけではなくて、素手で殴るというような比較的軽微な危険性しか有しないものもあるわけでございます。
 これに対して、本罪の場合には、自動車運転というのは、自動車の重量や速度に照らして、衝突すれば非常に大きな衝撃を発することになりますので、この自動車運転による事犯というのは重大な死傷事犯になる危険性が類型的に極めて高いということがあります。
 同時にまた、行為の態様につきましても、酒酔いとか著しい高速運転というようなことになりますと、極めて反社会性が強い運転行為になるわけでございます。したがって、本罪のそういう自動車運転に伴う危険性とそれから反社会性、その二つに照らしますと、被害者に生じた傷害結果がたまたま軽いものであっても懲役刑をもって臨むのが相当であるというふうに考えて、罰金刑を設けないことにしたものであります。
○佐々木知子君 ところで、せっかくこうした加重対応の処罰規定を新設いたしましても、実務に携わっていた者といたしましては、構成要件もかなり難しそうだし、立証が困難かもしれないというふうに考えれば、わざわざこれでやらずに、もともとの業務上過失致死傷罪、これは五年以下ということで、道路交通法違反と併合罪とかにすれば七年六月まで行くこともございます。それで立件しようかというふうにやはり安易な処理がなされるのではないかということをまず憂えていることと、警察の方はそういうことで立件しようというふうに送ってきても、検察庁の段階で、ちょっとこれは裁判の段階では立証に困難が生じるかもしれないから、やはり二百十一条の業務上過失致死傷でいいんじゃないかということで落とすということが多々考えられるのではないかと思っているわけです。これについていかがでしょうか。
○政府参考人(古田佑紀君) 委員御案内のとおり、いかなる犯罪で処理をするかということは、結局現実に集められる証拠によってこれは決めざるを得ないわけでございまして、そういう点で、今回の危険運転致死傷罪につきましても、それを認定するに足り得る証拠が、これが収集ができない、収集された証拠からはそれに該当するという認定をすることは困難だというふうな場合におきましては、これは業務上過失致死傷罪で処理をするということも、これもあり得ることだと考えております。
 しかしながら、証拠上本罪に当たるというふうなことでありますれば、それはやはり業務上過失致死傷罪ではなくて本罪で処理すべきものと考えております。
○佐々木知子君 今の質問とも関連するわけですけれども、検察官には広範な訴追裁量権があります。ですから、幸いに極めて軽傷にとどまった場合や被害者の落ち度も相当大きいような場合には罰金処理の方が妥当かなという選択肢もあるのではないかと思われます。
 このような場合、危険運転致死傷罪ではなく、業務上過失致死傷罪として処理ができるのかどうか、それについてお伺いいたします。
○政府参考人(古田佑紀君) この危険運転致死傷罪は、非常に危険性、反社会性が高いと思われる行為類型について設けたものでございますので、証拠上本罪に当たるということでありますならば、やはり本罪をもって処理すべきものと考えております。
○佐々木知子君 ということは、罰金では済まされないので起訴猶予にするということですか。とてもこれは軽いので、ちょっと公判請求すると重いかなというような場合は起訴猶予になるということですか。
○政府参考人(古田佑紀君) もちろん、例外的にそういう場合が全くないとは申しませんけれども、先ほども申し上げましたとおり、その運転行為が非常に危険でかつ反社会性が高いというふうなものでございますので、起訴猶予で処理が可能となるようなケースというのは実際上はまれではないかというふうに考えます。
○佐々木知子君 ちょっと実務に携わっていた私としては納得しかねるお答えでございまして、実際問題、公務執行妨害などは、これはもう検事、皆知っていると思いますけれども罰金ございませんので、ちょっと重いかな、起訴猶予にするのはなんだしというのは傷害に落として罰金ということの処理は実際しておりますし、それは結局きっと妥当な結果というところから、恐らくそういうようなある意味ではフレキシブルな処理というのがきっとなされるのではないかというふうに推察しております。
 次に、刑の裁量的免除の規定について御質問いたします。
 これは、遺族の方々などからこれについて批判が出ていることは御承知かと思いますけれども、犯罪一般ではなくて本条のみにこれを設けた趣旨をお伺いいたします。これは副大臣、お答え願います。
○副大臣(横内正明君) 現在はだれしも自動車を運転する時代でございまして、自動車運転による業務上過失致死傷というものは多くの国民が日常生活の中でわずかな不注意で犯しかねないという状況になっております。また、委員も御案内のように、保険金の支払いの手続というようなこともあったりして、事故の届け出が必要とされるものですから、一般の犯罪であれば届け出もされないような軽微な事案であっても刑事事件として争訟処理がなされているということでございます。
 そのために、現に軽傷事案の中には、到底悪質と言えないようなわずかな不注意による事故であって、本人も十分反省をしており、また被害者も犯人の処罰を望んでいないと、そういうような事案も相当数ありまして、そういうものは情状に照らしてすべて刑が言い渡されるということはちょっと適当ではないかと、そういう判断がございます。
 そこで、このような自動車運転に係る業務上過失致死傷事犯の特徴に照らしまして、軽い傷害にとどまるものについては、情状によっては刑の言い渡しをしないことができるという旨を明らかにしたというものでございます。
○佐々木知子君 刑の免除というのは、犯罪としての成立は認めるけれども刑を免除するものということで、有罪判決の一種であります。刑事訴訟法に書かれておりますが。
 実務におきましては、そのような場合は検察官の訴追裁量によって実際問題は起訴猶予処分にするのであって、あえて公判請求して刑の免除をとるということはちょっと考えられないんですが、あえてこうした規定を設けた必要性というのは何なんでしょうか。
○政府参考人(古田佑紀君) 御指摘のとおり、不起訴にする場合の裁定主文はこれは起訴猶予になるわけでございます。そういう意味で、訴追裁量の一環で処理されるのがこれはもう通常であろうと考えております。
 そこで、なぜこういう規定を設けたかということでございますけれども、ただいま副大臣からも御答弁申し上げたとおりでございますが、いま一つは、あえてつけ加えるといたしますと、非常にいわばほとんど大多数というか、事故の申告義務あるいは保険の支払いの関係などからほとんどが把握される、ほかの場合であれば、日常生活上看過されるような場合であっても刑事手続というかそこに乗ってくる、そういう性質があるわけでございまして、こういうケースにつきましては、軽傷事犯であっても情状がいいもの、これについては刑の免除が可能であるということを明らかにしておくことによりまして、事案の実態に即したよりきめ細かな事件処理に関する基本的な指針を法律上示し、明らかに処罰する必要がないような事案におきましては例えば捜査書類の作成の簡略化等、捜査の合理化、効率化を図って、真に罰すべき事犯の捜査を充実させると。そのことによって交通事犯全体の取り締まり及び撲滅に資するということが適当であると考えたということでございます。
○佐々木知子君 起訴猶予で、あえて、今までも恐らく傷害の程度が二週間ぐらいであれば全部起訴猶予で落としているということで、余りこれを設けた意味というのは実際問題はないような気がいたしますが、被害者の方からの要望というのでは、この刑の裁量的免除というのは、ありふれた大多数の交通事故、いわゆる軽微業過を全般的に減刑がされるおそれがあるということで要望書が来ております。今回、危険運転致死傷罪を設けたのは非常に喜ばしいことだけれども、これは全く余分であるというような要望書が来ておりますので、一般の国民から見て、簡単な業務上過失傷害だからとか、けがが軽いからどうも捜査がおざなりになっているというようなこと、そういう疑念を決して持たれることがないような運用のほどを私は切に願いたいと思います。
 ちょっと今回は、矯正局長にもお伺いしたいんですけれども、これは暴行、傷害や傷害致死に準ずる故意犯ということでございますので、収容は分類処遇に従って一般の刑務所に入ることになるのか、あるいはあくまでも交通事犯だからということで交通刑務所に収容されるのでしょうか。この点、お伺いしたいと思います。
○政府参考人(鶴田六郎君) 交通事故を起こしまして懲役または禁錮に処せられた受刑者をどの刑務所で収容して処遇するかということは、ただいま委員が御指摘になりましたように、入所時の分類調査に基づきまして、犯罪傾向の深度が軽微であり、また心身の状態等にも特段の問題がないと認められる者につきましては、市原刑務所のような交通刑務所、いわゆる交通刑務所に集禁して処遇しているという取り扱いをしております。
 今回、危険運転致死傷罪というのが新設され、暴行、傷害等の故意犯と同じように重く処罰されるということになりましたけれども、自動車運転に伴って犯される犯罪でありますし、矯正としては、できる限り個々の受刑者の特性に応じた矯正処遇を行うという立場でございますので、今回の危険運転致死傷罪を犯した受刑者につきましても、入所時の分類調査におきまして、その者の資質あるいは犯罪歴等の特性を十分調査いたしまして、その調査結果に応じまして、一般の刑務所に収容するのか交通刑務所に収容するかということを判断したいと考えております。
○佐々木知子君 あくまでケース・バイ・ケースというようなことでございますが、どのような矯正教育が想定され、社会復帰の際のフォローアップ体制はどうなるのか、もしつけ加えることがございましたらお願いいたします。
○政府参考人(鶴田六郎君) 交通事犯受刑者に対しては、特に遵法精神とか責任観念が欠けている者が多いわけですので、道義的な反省を促し、交通法規を守り、人命を尊重し、安全第一を信条とする社会人に育成することを目的として交通安全教育等を徹底して行ってきたわけですけれども、今回、こういう法改正がなされましたらば、今までの教育の実績を踏まえながら、改正の趣旨も勘案いたしまして、アルコールや薬物に依存する者等に対する矯正処遇のあり方について、より効果的なプログラム、教育プログラムの構築とか、より有効な教材の開発等を行って、その充実に努めてまいりたいと考えております。
○佐々木知子君 続きまして、刑事訴訟法の関係に参りたいと思います。
 今回、裁判の執行に関する公務所等に対する照会に関する規定が新設される運びになりましたけれども、この改正を今回、刑法改正とともに提出した理由をこれは大臣にお伺いいたします。
○国務大臣(森山眞弓君) この改正は、罰金刑、懲役刑等の裁判の執行に当たりましては、その執行を受ける者の所在や資産等の調査を行う必要がございますが、現行法はこれらの調査に関する権限の規定を欠いておりまして、調査に際し、その相手方から照会の根拠規定がないことを理由に協力を拒まれるなど、裁判の執行に困難を来している例が少なくない状況にございますので、刑訴法等の一部を改正したいと考えたものでございます。
 ところで、有罪の裁判のおよそ九割は自動車運転に係る事犯でございまして、裁判の適正な執行が図られない状況を放置することは、これらの犯罪に対する制裁としての刑そのものの力を失わせるということになります。自動車運転に係る死傷事犯について厳正に対処するという観点からも適当ではございません。
 そこで、今回の悪質、危険な運転行為に関する処罰規定の整備の機会に、裁判の執行に関する照会権限についてあわせて規定の整備を行いたいと考えたものでございます。
○佐々木知子君 ここに公務所及び公私の団体というふうにありますが、これとして想定されているものはどんなものでございましょうか。
○政府参考人(古田佑紀君) 公務所と申しますのは、国あるいは地方公共団体の機関ということになろうと考えます。公私の団体は、法人格の有無を問わず、組織あるいは団体としての性格を持っているそういう存在をいうわけで、具体的には例えば銀行でありますとかそういう企業などが私の団体ということになろうと思いますし、公の団体と申しますと、公法人の性格を持っているような団体、そういうふうなものが含まれると考えております。
○佐々木知子君 これ、残念ながら強制力を伴わない規定になっておりますが、その効果はいかほどだというふうに考えますか。
○政府参考人(古田佑紀君) 確かに強制力は伴わないわけでございますが、実情を見ますと、法律上の根拠がないということで照会しても回答を拒否されるという例がしばしばあるわけでございまして、そういうことからいたしますと、法律で明文の根拠規定を設けた場合に、そういう理由による回答の拒否というのは、これは恐らくなくなるものと考えられますので、そういう意味では実効性が期待できるわけでございます。
 それを超えて何らかの強制力を持たせるかということになりますと、これはさまざまなほかの分野との関係などもあるわけでございまして、その調査権限、設けるにしてもどの程度を認めるべきか、そういうことについてはさらにいろんな角度から検討を要することでございまして、今後、必要に応じて検討してまいりたいと考えております。
○佐々木知子君 時間が参りましたので、これで終わります。
○江田五月君 刑法改正案と刑事訴訟法等の改正案、同僚委員から極めて専門的な質問がございまして拝聴をしておったわけですが、私はまず、条文の質問に先立って、今の刑事法を取り巻く状況全体について若干の包括的な概観をしておきたいと思っております。
 昨年の十一月二十八日、ほぼ一年前、改正少年法が成立をしまして、ことしの四月一日から施行となりました。ちょうど八カ月が経過をしたということですが、この施行後の状況を検証しておきたいと思います。
 当委員会で、これも先日、同僚委員から御質問がありまして、幾つかの統計的な数値については既に御報告をいただいておりますが、まず施行後の概況、数字は先日聞いておりますが、概況について、これは最高裁、お答えください。どういう特徴的な事態が生じておるかといったことですね。
○最高裁判所長官代理者(安倍嘉人君) 御説明申し上げます。
 少年法改正によって幾つかの関係から改正が加えられたわけでございますけれども、その中の幾つかの観点、例えば検察官関与、裁定合議、あるいは観護措置期間の特別更新といった観点について若干見てみたいと思うのでございます。
 本年四月一日施行されまして、九月末までの間の実情について調査をした結果でございますが、九月末までに終局決定があった事件のうち、まず、検察官関与決定がなされた事例は十七件でございまして、その内訳といたしましては、殺人二件、殺人未遂一件、傷害致死七件、監禁致死一件、強盗一件、強盗殺人二件、強姦二件、準強姦一件でございます。
 また、裁定合議制の導入に伴いまして合議体による審理が行われた事例は合計十一件でございまして、その内訳は、殺人二件、傷害致死三件、業務上過失致死一件、逮捕監禁一件、監禁致死一件、強盗一件及び強盗殺人二件でございます。
 また、観護措置期間につきまして四週間を超える特別更新がされた事例につきましては合計十八件でございまして、その内訳といたしましては、殺人一件、殺人未遂一件、監禁致死一件、業務上過失致死二件、傷害一件、強盗一件、窃盗等三件、恐喝一件、恐喝未遂一件、強姦三件、準強姦一件、強要一件及び公務執行妨害一件でございます。
 以上が概況でございます。
○江田五月君 裁定合議とかあるいは検察官関与とか、特別更新もそうですが、少年の事件が非常に、例えば多数がかかわって、証拠関係が錯綜して事実認定が非常に困難であるというような事件がふえてきていると。ということで、検察官に関与させて、そして検察官から見た証拠の判断などについて検察官の意見もしっかり聞きながら審理をしないと適切な事実認定ができにくいと、そういうようなことを理由に挙げておられたと思うんですが、今伺いますと、そうした事案錯綜、証拠関係複雑といったことよりも、むしろ事案重大、悪質、そういうことに着目して裁定合議や検察官関与がなされているように見受けられますが、これはちょっと運用が違うんじゃないですかね、どうでしょう。
○最高裁判所長官代理者(安倍嘉人君) 具体的な事例につきまして、例えば検察官関与決定がされた理由、あるいは裁定合議決定がされた理由について、その詳細は承知しているわけではないのでございますけれども、検察官関与決定につきましては、御案内のとおり、一定の重大な事件に絞られているところでございまして、一つの類型といたしましては、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪と、二つ目といたしましては、死刑または無期もしくは短期二年以上の懲役または禁錮に当たる罪が対象となっているところでございまして、このような事件について非行事実が争われ、非行事実の認定上問題がある事件について証拠の収集、吟味における多角的視点の確保でありますとか、あるいは裁判官と少年側の対峙状況を回避する、こういった必要が生じた場合に関与決定がされているものと考えているところでございます。
 また、裁定合議につきましては、これは対象事件は限定されていないわけでございますが、現在のところ、今、委員が御指摘のように、結果の重大な事件において裁定合議決定がされているという実情にあるようでございますけれども、裁定合議制度自身は複数の裁判官による多角的視点からより慎重に審理をしようと、こういうものとして導入されたものでございまして、これらの事件においてもそういった観点から合議体による審理が適当と判断されたものと考えているところでございます。
 以上でございます。
○江田五月君 もちろん、今のこの数字だけではちょっと何ともわからないんで、それ以上ここで議論するわけにもいきませんが、やはり重大事件であるから検察官にも関与させて、三人の裁判官で重みを持たせて、少年を、どういいますか、法の権威で威圧を加えて、そして恐れ入ったかとやるという、そういう趣旨ではないわけですから、ですからここはやっぱり運用をよく注意をしていただきたい。これで見ると何かやっぱりそういう感じがちょっとするんで、もちろんそうでなければいいんですけれども、我々が裁定合議あるいは検察官関与というものを認めた趣旨に合致した運用になるように一層の注意をひとつお願いをしたいと思います。
 それから、今のは事実認定手続適正化ということですが、処分のあり方等の見直しで原則検察官送致というものを入れているわけですね。これについては数字は、殺人が合計四件ですべて逆送になっている、傷害致死が合計二十九件でそのうち十九件が逆送、保護処分十件、強盗致死が合計で四件で全部逆送、そういう数字と、これはこれでよろしいんですね。
○最高裁判所長官代理者(安倍嘉人君) さようでございます。
○江田五月君 十六歳未満の少年については逆送事例はないと、これも確認しておきます。
○最高裁判所長官代理者(安倍嘉人君) 九月三十日までに終局した事件については仰せのとおりでございます。
○江田五月君 この法、半年で十六歳以上の少年の殺人事件四件と、随分少ないなという感じを受けるんで、これは少年法改正を主張された皆さんからすると、それごらん、厳しくしたらやっぱり少なくなるだろうと、こういうふうにひょっとして言われるのかなという気がしますが、これは少ないという感じがありますか、ありませんか、法務大臣、どんな感じですか。法務省の中でどういうふうに見られていますか。
○国務大臣(森山眞弓君) まだ半年でございますので、もう少し長い目で見ないといけないかと思いますけれども、四月一日以降九月三十日までの間に、少年の殺人事件六件を家庭裁判所に送致しまして、うち四件の逆送を受けているわけでございます。
 少年事件の発生につきましては、規範意識の低下とか、あるいは家庭の教育機能、地域社会の非行犯罪防止・抑制力など、多くの要因がございまして、その法改正が直接関係あったかどうかということはにわかには何とも申しようがないわけでございますが、多少はその効果もあった可能性もあるというふうには思います。
○江田五月君 まだどうであったかの結論を出すには余りにも早過ぎますよね。五年で見直しということがありますので、ずっと状況をよくひとつ経過観察を怠りなくお願いをいたします。
 それから、被害者に対する配慮の充実ということがあって、これは数字はどういうことになっていますか、最高裁。
○最高裁判所長官代理者(安倍嘉人君) 被害者に対する配慮の制度といたしましては三本の手続が認められております。
 一つは、閲覧、謄写の関係でございますが、これについては同様の期間の数字でございますが、認められた事案が二百五十三人、認められなかった事案が六人でございます。
 また、被害者の意見聴取の手続でございますが、これについて認められた事案が六十七人、認められなかった事案が三人。
 最後に、審判結果等の通知でございますが、認められた事案が二百三十六人、認められなかった事案が七人でございます。
○江田五月君 その認められなかった事案というのはどういうことなんですか。なぜ認めないんですか。
○最高裁判所長官代理者(安倍嘉人君) 三つの類型、それぞれ多少違いはございますけれども、これらの事案を通しまして見たところでは、その相当性によって認められなかったのではなくして、むしろその申し出をされた方が適格の要件を欠いていたとか、あるいは審判が終わった後であったとか、いわばこういった外形的な要件の問題での否定の判断だというふうに承知しているところでございます。
○江田五月君 なるほどね、要件を欠いていればそれは認められないのも当たり前と。これも運用を適切に行っていただきたいと思います。
 改正少年法の成立に当たって、私たち民主党は原案の一部修正をした上で賛成ということにしたわけですが、参議院の法務委員会としても八項目の附帯決議をいたしました。
 さて、その附帯決議が半年少々、八カ月か、ちゃんと守られているかどうか、これを確認をしていきたいわけですが、「次代を担う少年の健全育成に関する総合的な施策を充実、強化するとともに、本法の施行に当たっては、次の諸点について格段の努力をすべきである。」という書き出しで始まって、これは十分注意しますという趣旨のたしか大臣の御発言、前の大臣でしたか、がございましたが、まず法務大臣、これは今後とも附帯決議に沿った施策の充実に御努力いただくと、改めてここで確認しておきますが、それはよろしいですね。
○国務大臣(森山眞弓君) 前大臣であったかもしれませんけれども、法務省の責任者としての言葉でございますから、私もその気持ちを引き継ぎまして、御趣旨を体して守っていかなければならないと考えております。
○江田五月君 そこで、第二項めに「刑事処分可能年齢を十四歳に引き下げることに伴い、少年受刑者の教育的観点を重視した処遇に十分配慮し、矯正処遇の人的・物的体制の充実・改善に努めること。」と、こういうことがあるんですが、これはどういうことになっていますか。
○国務大臣(森山眞弓君) 少年受刑者の矯正処遇につきましては、少年受刑者を収容する矯正施設を改築いたしまして、少年受刑者独自の処遇メニューを設け、改正法の趣旨を踏まえた職員研修を実施するなどの教育的な観点を重視した人的・物的体制の整備を図って努力いたしております。
○江田五月君 その言葉に期待をしたいんですが、実は昨日、これは私のホームページの掲示板にある少年院の職員の方から書き込みがございまして、なかなか切々たる書き込みなんですが、ちょっと冒頭部分だけ読んでみますと、「今、多くの少年院は過剰収容に悩んでいます。収容するだけで精一杯、矯正教育を施すという状況にありません。職員はあまりの勤務環境の悪さにバタバタ辞めています。ベテラン職員は「命が大事」と言って辞め、新採用職員は少年からの愚弄行為等により精神的に追い込まれ辞めていきます。辞めていった職員の補充を、また新採用職員で行うという悪循環に陥っているのです。残った職員も精神的・肉体的に疲労しきっています。」ということでずっと書いてこられました。
 私は、これはやっぱり現場の本当に切実な声じゃないかという気がするんですが、法務大臣、どう思われますか。
○国務大臣(森山眞弓君) 確かに、少年院の平成十二年の新収容者の数は、その五年前の平成七年と比較いたしますと、約一・六倍という状況になっております。しかし、そのような状況のもとにおきましても、少年一人一人の問題性に応じた適正な処遇を実現するべく一生懸命に努力をしております職員も多数、ほとんどの人がそうだというふうに私は信じておりまして、きめ細かな矯正教育が行われているというふうに考えております。
 当然ながら、教官一人当たりの相当量の業務負担増は避けられない状況でございますほか、被収容少年の生活環境維持にも相当の努力が必要でございまして、私どもの立場といたしましても、環境の改善に予算面その他の措置で改善の努力を続けていかなければいけないというふうに思っております。
○江田五月君 私は昔、少年事件を裁判官として担当していた当時に、お隣の角田先生の御地元の榛名女子学園に行ったことがあるんですけれども、広い施設で女子少年が本当にわずかというとおかしいですが、定数よりずっと少ない人間しかいないという状況の中で、職員と被収容者とほぼ似たぐらいな数でやっていたと。確かに、それでもなお矯正処遇というのは大変困難なんですが、しかし何か心を通わせるように一生懸命やっているなと。子供たちも、そういう中で大変ではあるんですが、はぐくまれているという感じがしたんですけれども。
 きのうちょっと伺いますと、あの榛名女子学園でも、過収容にはなっていないけれども、それでもかなり定員ぎりぎりのところまで来ているという話で、この書き込みでいくと、「現在の職員数では、我々職員は矯正教育どころか少年を「逃がさない、殺さない(自殺させない)、怪我させない」といった保安面のみの仕事しかできません。」という書き込みで、誇張があるかもしれませんけれども、しかしやっぱりそういう面が出てきているという気がします。
 ぜひ、これは附帯決議にあるとおり、本当に「教育的観点を重視した処遇に十分配慮し、矯正処遇の人的・物的体制の充実・改善」、これはここでひとつ頑張るという約束をしていただきたいと思う。
○国務大臣(森山眞弓君) 御指摘のような過収容の部分も相当数あるということは私承知しておりまして、今回の補正予算あるいは来年度の予算要求等についても特段の力を入れて努力しているつもりでございますが、おっしゃいますような目的が十分果たせますように、今後も一生懸命やってまいりたいと思います。
○江田五月君 本当にくどいようですが、矯正教育どころか保安面の仕事しかできないという状況では、少年が立ち直るどころか、むしろ心はすさんでいくので逆効果になってしまうので、本当に重要なことだと、お願いをしたいと思います。
 附帯決議の四項目に、「公的付添人制度の在り方については、国選による制度や法律扶助制度等を勘案しつつ、鋭意検討すること。」となっていまして、これは鋭意検討はどうなっていますか。
○国務大臣(森山眞弓君) 少年審判における公的付添人制度のあり方につきましては、司法制度改革審議会意見におきまして、少年に対する公的付添人制度導入の積極的な検討が必要であるという御指摘を受けたことを踏まえた検討を継続しております。
○江田五月君 継続の結論を出していただきたいと思いますが、第七項では、これは「少年事件における家庭裁判所の役割が重要であることにかんがみ、調査体制の充実等その機能の拡充に努めるとともに、少年問題に関する地域的ネットワークの構築等にも努めること。」と、こうあります。
 最高裁、最高裁は附帯決議を尊重しという御発言はあるいは附帯決議したときにいただいていないかと思いますが、いかがですか。
○最高裁判所長官代理者(安倍嘉人君) 家庭裁判所における調査体制の充実という観点の御質問かと思われるわけでございますが、この点につきましては、家庭裁判所における家事事件及び少年事件の事件数の動向でございますとか、あるいはその複雑困難化の状況を踏まえまして、平成十二年度と平成十三年度にわたりまして家裁調査官五人ずつの増員をお認めいただいたわけでございます。さらに、引き続きまして平成十四年度につきましても同様に五人の増員要求を行っているところでございます。
 このように、家裁といたしましては、裁判所といたしましては、家庭裁判所がその特色である科学性あるいは後見性といったものを十分に発揮して的確な事件処理ができるように、その充実に努めているところでございまして、今後とも、改正の趣旨を十分に踏まえて、適正な事件処理が可能となるよう必要な体制整備に努めてまいりたいと考えているところでございます。
○江田五月君 第八項目に修復的司法ということを書いてあるんですが、これは、法務大臣、いかがでしょう。
○国務大臣(森山眞弓君) 被害者の保護につきましては、多岐の分野におけるさまざまな施策が必要でございまして、政府において犯罪被害者対策関係省庁会議を設置いたしまして既に一定の施策を講じるなどしておりますほか、修復的司法に関し外国制度の調査等の研究を継続しております。
○江田五月君 あのときの審議を思い出すんですが、修復的司法という言葉が、恐らく国会審議の中で初めてそういう言葉が出てきたんだと思いますけれども、諸外国で行われておると。そういう諸外国の状況をしっかり把握をしながら、我が国でもそうしたことの導入をひとつしていこうという、そういう思いを込めてこの附帯決議をつけていますので、ぜひこれも、きょうこここでもう少し聞いてもいいんですがやめておきますから、どうぞしっかりと諸外国の調査などもし、我が国でも導入できるような環境を整えていただきたいと思います。
 きょうは改正少年法成立一年でちょっと取り上げてみましたが、私たち民主党は司法制度改革でも特に家庭裁判所の飛躍的充実強化を強く求めておりますが、これは法務省もあるいは最高裁も、ここで問題だと言っているんではなくて、むしろ我々は応援しているんですから、ひとつ本当に、国会でもそういうことが聞かれた、これは大変だということで、財務省その他に対する働きかけも大いにやっていただいて頑張っていただきたいと、格段の努力をお願いしたいと思います。
 次に、十一月十六日に発表されました犯罪白書、これを伺います。概要を御説明ください。
○国務大臣(森山眞弓君) 十一月十六日に発表されました平成十三年版の犯罪白書では、平成十二年における我が国の犯罪動向等について分析しているものでございます。
 平成十二年における我が国の犯罪動向について簡単に申しますと、まず第一に、刑法犯の認知件数が十一年に引き続き戦後最高を更新したということ、それから第二番目に認知件数の主たる増加分が窃盗罪と交通犯罪であること、第三番目は検挙率が戦後最低を更新したこと、第四番目に行刑施設における受刑者の収容率が一〇〇%を超えたというようなことの特徴が認められるわけでございます。
 一般の刑法犯では、強盗、傷害、強制わいせつ及び器物損壊等の暴力的な色彩の強い犯罪が著しく増加しております。窃盗では五十歳代以上の中高年齢層の検挙者が増加しているところでございます。
○江田五月君 なかなかショッキングな犯罪白書なんですね。平成十二年、刑法犯検挙率が四二・七%、前年比七・九ポイント低下、戦後最低、特に窃盗は一九・一%しかない、五人に一人しか検挙されていないと、こういうことにこれなるのかどうか、ショッキングな数字なんですが。
 窃盗について一九・一%というのは、五人に一人も検挙できていないというこういう意味なんですか、どうですか。これは大臣よりも、どなたが答えてくれますか。刑事局長。
○政府参考人(古田佑紀君) 警察の現場における検挙のことでございますので、警察御当局、もしよろしければ、いらっしゃっているようでございますので。
○政府参考人(吉村博人君) 窃盗犯の認知件数でございますが、平成十二年、昨年は二百十三万件余りでありまして、窃盗犯で見ますと検挙率は一九・一%であります。これを多少ブレークダウンしますと、侵入盗が検挙率三六・八%、乗り物盗が九・二%、非侵入盗が二一・二%という数字になっております。
○江田五月君 驚いたことなんですが、急落、その前に私がちょっと聞いたのは、これはどちらからでもお答え、警察の方がよくおわかりでしょうかね、窃盗犯人が五人に一人とかあるいは十人に一人ちょっとしか検挙できていないというんじゃなくて、一人の人間が幾つも窃盗したりすると。それで、一つは確かにちゃんと捜査ができるけれども、そのほかの余罪までなかなか捜査がいかないというので、件数としては余罪も含めた全件で、そのうちの一九・何%だけれども、人間としてはそんなにみんなが野放しになっているわけではないんだというような説明も聞いたんですが、その辺はどうなっていますか。
○政府参考人(吉村博人君) ちょっと概括的な説明もあわせてやらせていただきたいと思いますが、犯罪白書は、実は昨年の刑法犯三百二十五万件の認知になっておりまして、警察ではこのうち交通事故に係る業務上過失致死傷は除いて刑事部門で議論しておりますので、母数はしたがいまして平成十二年中の刑法犯認知件数は二百四十四万件余りということになります。これを基準にしますと、昨年は検挙件数がかなり減っておりますが、検挙人員は三十万九千六百人余りということで、ほぼ横ばいの数字になっております。
 ちなみに、これはことしの一月から十月までの統計が既に数字が出ておりますが、それで見ますと、依然として交通業過を除く刑法犯の認知件数がふえております。それから、検挙件数は残念ながら減少しておりますが、この中にあって検挙人員は、実は昨年同期比、多少ふえております。ということは、今、先生がおっしゃったように、ある人間を捕まえてきて余罪捜査をやるわけですけれども、その余罪捜査が十分でない部分が検挙件数の減になってあらわれているのではないかということは推測をされるわけです。
 それで、それじゃ一体どういうことが原因になっているんだろうかということになるわけでありますが、一つは、認知がどんどんどんどんふえておりますから、窃盗犯に限らず。そうすると、初動捜査に対応しなきゃいかぬということで、いわば次々に事案発生して人が出ていくということになりますと、じっくり取り調べで余罪を出していくという過程がいささか時間不足になっているのではないかということが一つあります。
 それから二番目に、どうもこれは感じの問題で恐縮なんですけれども、外国人、特に来日外国人を捕まえた場合に、彼らは現行犯でも否認をするというような状況が強いものですから、なかなかこれは余罪がどんどん出てこないということになります。反面、最近、自動販売機でありますとか、あるいは自転車もそうですけれども、それから器物毀棄の中でも、例えばマンションや家にスプレーで落書きをされると、これはマンション保険等で補てんをするがために警察に被害届が出ます。
 したがって、どんどん認知件数がふえるんですが、先ほど申しましたように、検挙件数ということになりますと、人員はまあまあカバーしながらも検挙件数は伸びが悪いということで、結果として、認知件数分の検挙件数が検挙率でありますから、これがどんどん下がってきているということになっているのではないかというふうに推測をされます。
○江田五月君 本当に背筋が寒くなるような状況があると。余罪捜査までなかなか手が回らない、それが数字にすると検挙率の低下になっているということで、犯人を野放しにしているわけではないとしても、それでもかなりひどいですよね。
 しかし、平成十二年に検挙率が急落したというのは、やはりそこに何か重大な原因があるという、今の、人間はちゃんと捕まえているんだというだけではなかなか済まない原因、理由があると思いますが、そして、これはその原因をきわめたら、今度はそれに対して対策を立てなきゃならぬと思いますが、法務大臣、どういう態度で臨まれますか、この状況について。
○国務大臣(森山眞弓君) 今の検挙そのものについては警察の方で今御説明くださいましたようないろいろな事情があるのだろうと思いますが、したがって警察の方でも努力をしていただいていると思いますけれども、法務省もそれに関連する例えば検察現場の検察官の人数の手当てであるとか、あるいはその補佐をする事務官の増員であるとか、そのようなことも大変重要なことではないかというふうに考えておりまして、この件については来年度の予算要求において何とかしたいというふうに今努力をしようとしているところでございます。
○江田五月君 警察庁の方は、検挙率低下、どういう原因でどう対策を考えようとしておられますか。問題意識をどういうふうにお持ちですか。
○政府参考人(吉村博人君) 先ほどのちょっと補充で恐縮なんですが、強盗事件を見ますと、これは平成元年と平成十二年を比較した数字なんですけれども、全国で強盗罪で検挙した人員が平成元年は千四百四十四人でありました。これが昨年は三千七百九十七人捕まえておりますから、結構これは数字は上がっておるわけです。ところが、強盗の認知件数が平成元年千五百八十六件でありましたのが、昨年は五千百七十三まで上がっているんです。ですから、これは検挙件数、検挙人員がかなりどんどん落ちていて認知がふえているというんだったら、これはもう典型的に問題なんですけれども、それなりに一生懸命やっているということは御理解をいただきたいと思います。
 先ほど申しましたように、余罪捜査が十分でないということは、これは突き詰めていきますと、やはり警察官の配置を含めて当方の体制の問題があるわけでありますので、犯罪発生実態に即した体制をとっていく必要があると思いますし、それから、もちろん質的な面で警察官の捜査官としての育成もこれは長期的にやっていかなきゃいかぬ等々。あるいはまた、科学捜査力の強化ということもありましょうし、在日外国人犯罪捜査の問題については、関係機関ともいろいろ連携をしながらやっていく、あるいは共同合同捜査もやっていくということで、問題意識は十分に持っておりますので、何とか検挙実績を向上すべくやってまいりたいと思っております。
○江田五月君 特効薬みたいなことはないと思いますが、いろんな手だてを講じながら検挙率急落という状況の実態というものをしっかりつかんで、やはり本気で取り組んでいただきたいと思います。
 小泉改革も我々も応援をしたいと思いますけれども、しかし一方で世の中がこんなにすさんでくると、これは困りますよね。頑張ってください。応援をします。
 過剰収容の問題、これももう一つ今回の犯罪白書の大変ショッキングなポイントだったと思いますが、行刑施設収容率が昨年末で一〇三・六%。きのう伺いますと、速報値が一〇六パーとか一〇八パーとかという、上がってきているということのようですが、これは実態はどうなっているのか。数字をいろいろお教えいただくこともありますが、施設のタイプごとに、特にこういうところがこんなことになっていて大変だという御説明いただければと思います。
○国務大臣(森山眞弓君) おっしゃるとおり、大変行刑施設の収容人数というのはふえておりまして、平成十年以後、特に急激な増加が続いております。ことしの十月末には約六万四千八百人、収容率一〇〇・二%ということでございまして、先ほど少年院のお話がございましたけれども、少年院は全国的に見るとまだ一〇〇%を超えてはいないんですね。しかし、行刑施設、大人の方の刑務所等は全国的に見て一〇〇%を超えております。
 特に、既決被収容者だけで見ますと、収容率は一〇八・七%となっているわけでございます。このような収容人員の急激な増加は、主としてこれまでに受刑した経験のない初めて入るという新受刑者が急にふえているということでございまして、そのほか女子の受刑者、外国人の受刑者、高齢受刑者の増加も大きな要因となっているわけでございます。
 このために、各行刑施設におきましては、居室の定員を超えて被収容者を収容したり、集会室とか倉庫などを改造して収容居室や工場に転用するなどの応急措置をして何とかしのいでおりますが、幸い財政当局もこの問題を大変深刻に受けとめていただきまして、今般の補正予算におきまして約三千二百人程度の収容増を図る措置をしていただきました。
 行刑施設は法秩序の最後のとりでということで、国民が安心して暮らせる社会をつくっていくために大変重要であると思いますので、今後とも収容対策の充実強化に努めていきたいと考えております。
○江田五月君 ひとつぜひ力を発揮してください。
 この犯罪白書で窃盗の検挙人員では五十歳代以上の中高年齢層の増加、どうもこれも何かわびしいことですよね。ここばかり質問していても、幾ら時間があっても足りませんのでこの程度にして、本題の刑法改正の方に入ってまいります。
 まず法務大臣、私は、なぜ一体こんなにこの法案の提出がおくれたのか、これをひとつ、ぜひ法務大臣、ちょっと反省の弁が要るんじゃないかと思うんですよ。危険運転に対する世間のいら立ちというものが非常に高くて、私どももいろんな人の声を聞き、実は特にプロジェクトチームまでつくってさきの通常国会に私どもは、危険な運転により人を死傷させる行為の処罰に関する法律案、こういうものを四月五日に衆議院に提出をしました。これは与党の皆さんの賛同を得られず否決をされた。ここで与党の皆さんに聞くわけにもいきませんが……(発言する者あり)衆議院だからね。衆議院の与党が悪い。だけれども、政府の方ももっと早く本当なら出すべきだと。
 いや、民主党の皆さんありがとうございます、皆さんの御努力の積み重ねで今回出すことができましたというねぎらいの言葉ぐらい一つ民主党にあってもいいんじゃないかという気もするんですが、いかがですか。
○国務大臣(森山眞弓君) 確かに、この問題はかねて重大なことだというふうに認識しておりましたのですが、あわせて交通事故の被害者の方や遺族の方々の強い御要望も相次いでおりまして、それらを受けとめたという形でございます。
 交通事件の実態とかこれに対する社会の認識の変化も踏まえまして、国民の日常生活に密接にかかわる問題であるということにも配慮いたしましてできるだけ早くということで検討を加えまして、ようやく今回出させていただいたというわけでございますが、この法律が施行された後、円滑に運用される必要がございますので、そのためには関係者との意見の交換、専門的見地からの検討も重要でございました。そのために多少の時間を要したということはまことに申しわけなかったんですが、ぜひ御理解をいただきたいと存じます。
○江田五月君 まあ理解しましょう。
 もともと国民の声は、業務上過失致死傷の法定刑がちょっと軽過ぎるんじゃないか、この法定刑をもっと上げてくれというところから始まっていたと思うんですが、それを、そうではなくて、こういう危険運転致死傷罪という新たな罪を新設したと。その理由はどういうことですか。
○政府参考人(古田佑紀君) 確かに、そういうふうな声もあったということは承知しているわけでございますが、ただその内容をよく分析しますと、要するに現在交通事故に適用されておりますのは業務上過失致死傷罪であるということを踏まえての御意見で、要は悪質な交通事件についての量刑がどうも軽過ぎるんじゃないかということではなかろうかと考えられるわけです。
 それともう一点、そういう声の中の、これもよく分析いたしますと、非常に危険な運転行為をあえてやっていてそれが過失というのはおかしいのではないかと、こういう声というのも実は中に含まれているわけでございます。
 そういうことからいたしますと、そういう御要望と申しますのは、結局、悪質でかつ危険な運転行為をしてその結果、人を死亡させた場合に、今の過失犯ということで処罰すること自体疑問があるし、刑も軽過ぎる、こういうことであろうと私どもとしては理解したわけでございまして、その理解に従ってこういう危険運転致死傷罪を新設するということとしたものです。
○江田五月君 そうですね。軽過ぎるという感じというのはなぜ起きるかというと、車は走る凶器で、殊さらにその走る凶器をおもちゃに使ったような運転をしながら事故を起こす、あんなものはもう落ち度があったなんという話じゃないよという素直な国民の気持ちがある、それをそのまま受けて新たな罪をつくったと、こういう理解ですよね。法務大臣、そうですよね。
○国務大臣(森山眞弓君) おっしゃるとおりでございます。
○江田五月君 刑法改正案としてお出しになった。私どもは、昨年公表したのは特別法として考えてみたと。道交法の改正という、そういう考え方もあったかに聞くんですが、これはこの手法で、これは刑事局長だと思いますが、それぞれどういうメリット、デメリットがあってこの刑法改正という方法を選ばれたのか、これを説明してください。
○政府参考人(古田佑紀君) まず、道路交通法につきましては、そこに取り込むということも全くあり得ないわけではないとは思いますけれども、御案内のとおり、基本的には道路交通法は交通のルールを定めるものということになるわけでございまして、被害者あるいはその遺族の方の声にありますような一種の自然犯的な処罰を求める、そういうものの受け皿としていかがなものかというところが多少あるわけでございます。
 次に特別法、これはもちろん選択肢としては考えられるわけでございますけれども、一つに、特別法というのは、何といいましてもやや目に触れにくいところがございます。こういう悪質な交通事犯、これは現在の自動車の普及状況から見まして国民生活の広い範囲で非常に深いかかわりを持っていることで、言いかえますと国民それぞれが非常に深いかかわりを持つ。したがいまして、そういうふうな罰則で、自然犯と考えていいようなもの、こういうものにつきましては、やはり基本法である刑法典の中に規定することが適当であると考えたわけでございます。
 先ほど大臣からも御紹介を申し上げたところですけれども、法制審議会の中でも、一方で、確かに特別法である程度技術的な要素も盛り込みながらやるという考えもありましたけれども、やはり先ほど申し上げました犯罪の性格にかんがみまして、基本法である刑法で規定するのが適当だという意見の方が多かった状況でございます。
○江田五月君 なるほどね。危険運転、一定の類型があって、それは本当に殊さらにそういう行為を行っている、その結果として傷害とか死亡とかということが起きている。よく見ると、刑法の中に、暴行というのがあって傷害というのがあって傷害致死というものがある、そういう一つの構造を持った犯罪類型がある。それと似ているといいますか、その類推でこれは考え得る、そういう類型であると。これは私はなかなかうまいところへ目をつけたなと思いまして、私どもいろいろ考えたんですがなかなかそこまで思い浮かばなかったんですが、実は。
 そうすると、それは今のような発想でこういう罪の形態をつくったと、これはよろしいですね。
○政府参考人(古田佑紀君) 御指摘のとおりです。
○江田五月君 そうすると、刑法では暴行というのが一つの犯罪類型としてあるわけで、なぜ、暴行類似行為で危険運転をとらえるのなら、危険運転罪というものをつくらないんですか。
○政府参考人(古田佑紀君) 確かに、考え方として、一般的な危険運転罪というのももちろん考えることは可能なわけでございますけれども、ただ、その一般的な危険運転ということとなりますと、これは非常にいろんな場合が含まれまして、なかなか構成要件的に限定的なものというのをつくるのはかなり難しいという問題があるわけでございます。
 それともう一点、これは実質的なことでございますけれども、危険運転行為の中に含まれている行為と申しますのは実質的には道路交通法違反になるのが通常でございまして、そういうことから、その部分につきましては少なくとも道路交通法では実質的な処罰をしているということも考え合わせまして、そこであえてその一般的な危険運転罪というようなものは設けなかったということでございます。
○江田五月君 余りにも一般的過ぎて罪刑法定主義から疑問が出てくるというのはよくわかりますが、しかし暴行罪の暴行というのもこれもいろんな類型がありますから、危険運転と、こう言えばある程度浮かび上がってくるとも言えなくもない。
 それでも、それは別として、今回、四類型決められているわけですから、四類型の運転をした、それをそのまま罰するという、そういう発想はとれないんですかね。
○政府参考人(古田佑紀君) そういうふうなお考えもそれはあろうかと思うわけですけれども、先ほど申し上げましたとおり、道路交通法におきましても例えば酒酔い運転等は非常に重く処罰されている、そういうことでございまして、一般的にあえて現時点でそういう規定を設ける必要まではないのではないかと考えたということでございます。
○江田五月君 暴行、傷害、そういう犯罪類型と類似した犯罪類型として危険運転致死傷罪を考えられたということになりますと、その四種類の危険運転、これは故意犯で、これはさっき質問ありましたから確認ですけれども、四種類の危険運転行為について故意があれば、致死傷のところまで過失がなくても結果的加重犯で因果関係さえあればあとは罪は成立すると、そう考えてよろしいですか。
○政府参考人(古田佑紀君) 御指摘のとおり、結果的加重犯の構造に類似したものでございますので、そういう意味で結果発生についての認容等はもちろん要らないわけでございます。要するに、こういう危険運転行為がその死傷の原因になっているということが必要であるということでございます。
○江田五月君 結果発生に認容があったら殺人罪になりますから、あるいは殺人未遂になるからそれはまたそれで別の犯罪で、結果発生についての結果予見義務とそれの回避義務ということを問う必要はないね、原因、結果という連鎖があればよろしいですねと、こういうことなんですが。
○政府参考人(古田佑紀君) 基本的にはおっしゃるとおりでございますけれども、要するに、この危険運転行為と全く別な要因によって結果が起きるというような場合は除かれるということでございます。
○江田五月君 それは結果と言えないんでしょうね、普通なら。危険運転をやっていたと、隣に乗っていた人が突然クモ膜下出血で死んじゃったというのは別に運転と関係ないから、運転の行為とその結果の間に別に因果関係はないので。まあ、いいです。
 その四類型だけにした、ほかにも危険運転行為はいろいろあるように思いますが、これは特によくお調べになって類型化したということなんでしょう。そうすると、今までこういうものも業務上過失致死傷罪として処断をしておって、そうすると、全体に業務上過失致死傷罪がずっと軽いものから重いものまである、その重いところを取り上げてこういう重罰化すると、今度その一番重い業務上過失致死傷が抜けちゃうわけですから、抜けた残りの一番重いところの刑が法定刑最高のところまで行って全体に業過の量刑が重くなるということにつながるということはあるんですか、ないんですか。
○政府参考人(古田佑紀君) 現在の業務上過失致死傷罪の法定刑が昭和四十三年にいわゆる交通三悪に対応するために引き上げられたわけで、そういう中に今回御提案しておりますような危険運転行為による致死傷の結果がかなり含まれているということは事実でございます。
 したがいまして、その点について重い処罰規定を新たに設けるということになりますと、今、委員御指摘のような間を埋めるという意味ではないんですけれども、やはり交通事故の実態に即した悪質性、それを考慮して懲役五年以下という法定刑の範囲内で量刑というのが考えられていくことになるであろうと。そういう意味で申し上げますと、軽い方にはさほど影響はないと思いますけれども、やはり悪質、重大と思われるような過失事犯につきましてはやはり量刑も変わってくるものではないかと考えているところでございます。
○江田五月君 そういうことはあるでしょうね。こんなひどい交通事故、それでも業務上過失致死は五年だから、それは五年と。とすると、これもひどいけれども、あの五年のやつよりはちょっとは軽いかなというので四年半にするとかというのが、こんなひどいというのが危険運転の方に行くわけですから、これはひどいというのは四年半が五年になるというようなことは、まああるんでしょうね。
 道交法との関係、さっきちょっと言われましたが、例えば赤信号を殊さら無視と、殊さら無視と道交法の信号無視と、この関係はどうなるんですか。
○政府参考人(古田佑紀君) この場合は、赤信号無視という道路交通法上の罰則の構成要件を完全に取り込んで、それを構成要件としているものでございますので、本罪が成立する場合には本罪に吸収されて、別途、道交法違反によって処罰されることはないと考えております。
○江田五月君 吸収。道交法には安全運転義務違反という類型があるので、言葉だけを見ると危険運転と安全運転義務違反は同じように思いますが、これはかなり違うんですか。
○政府参考人(古田佑紀君) 確かに、安全運転義務違反は言葉だけ見ると委員のおっしゃるような感じもいたしますが、安全運転義務違反と申しますのは非常に広い概念で、一般的に何らかの交通の安全を害するような、そういうふうな運転行為をするということが対象になっているわけでございます。
 一方、こちらの方はまさに非常に重大な危険を生じさせる、そういうふうな場合を類型化したものでございまして、安全運転義務違反との関係で申し上げれば、安全運転義務違反のうちの非常に極端なものということにはなろうかと思います。
○江田五月君 共犯の関係についてちょっと伺いたいんですが、致死傷という点は、これは結果的加重で、しかし危険運転のところは可罰的にできていないわけですから結果的加重犯とはちょっと違う。だけれども、危険運転については、これは共同加功は成立しますよね。二人で乗っていて、それ行け、おい、赤信号幾つぶっ飛ばした、それまたやれというような運転をしていたら、それで致死傷の結果が起きたら、これはこの二人は共犯になりますか。
○政府参考人(古田佑紀君) 一般的に申し上げまして、基本行為は故意でございますので、いわゆる共犯規定の適用はこれは当然あるわけでございます。共同正犯、これは典型的には二つの車に分乗してこういうようなことをやるというような場合には恐らく共同正犯になることは間違いないであろうと。
 それ以外に、同乗者との関係でということになりますと、これはいろんな場合があるわけで、ちょっと一概には申し上げにくいかと思います。
○江田五月君 そうですね。一概にというのは、つまり共犯ということは共同正犯も教唆も幇助もそれはあり得るということだと聞いておきますが、仮にボスがいて、運転をとにかく無理やりに信号無視などさせて、この人間がもうそれを嫌だと言えないような状態でやらせたというようなことをすると、今度は間接正犯というような処罰の方法も出てくるわけですよね。
○政府参考人(古田佑紀君) 御指摘のとおりだと考えております。
○江田五月君 没収はどうですか。
○政府参考人(古田佑紀君) 犯罪行為として危険の一部として危険運転行為は定められているわけでございますので、したがいまして一般的には犯罪供用物件として車両等が没収される可能性は、これはあり得ると思います。
○江田五月君 刑法二百七条、同時傷害、これは類似ですから適用があるとまではなかなかいかないかもしれませんが、適用はないんですか、あるんですか。
○政府参考人(古田佑紀君) 御案内のとおり、同時傷害の規定は暴行が前提となっているわけでございまして、これは暴行に準ずるという法的評価はしておりますけれども、暴行としているわけではない。したがいまして、そういう意味では同時犯の規定の適用というのは考えられないのではないかと。ただ、もちろん暴行に当たるような場合も本罪には含まれるわけで、そういうようなケースはあり得るかと思います。
○江田五月君 ちょっと今よくわからなかった。危険運転自体が暴行と評価できるような危険運転のときに、そうするとそれは傷害なんですか、それとも危険運転致傷なんですか。
○政府参考人(古田佑紀君) 本罪につきましては、現行刑法上暴行に当たると認められるようなケース、これも自動車の危険運転として評価できる場合には本罪によって処断するという考えでございます。
○江田五月君 そうすると、その場合は二百七条の適用もあり得るということですか。
○政府参考人(古田佑紀君) 今申し上げましたように、まさにそれが暴行というケースに該当するというような場合であれば、少なくとも刑法の文面上適用が排除されるということにはならないのではないか。ただ、実際問題としてこれは自動車で高速で走っている話ですから、そういうことからいえばほとんど問題になる余地はないのではないかと考えているということです。
○江田五月君 私は、二百七条類似のことはやっぱり一遍検討した方がいいかなという気もするんです。例えば、今の二台の車が競争で信号無視を始めた、その間の二人は別に相談してやっているわけでも何でもない、そして事故が起きた、どっちの車ではねられたかがわからない、被害者は、というような場合は二百七条ぐらいのものがないとなかなか困りますが、そんなことを考えるつもりはありませんか。
○政府参考人(古田佑紀君) 実態の問題として妨害の意図とか、こういうようなものが全く意思の連絡なしに走行しているさなかで、それぞれが、二以上の車が持つというような事態というのがどの程度想定されるかということになるんだろうと思うんですけれども、全く論理の問題として考えますと、仮にそういう場面があり、なおかつそれが当該自動車に乗っている人に対する暴行に刑法上当たるというような場面が万一あるとすれば、それは二百七条の適用がある場面もあり得るというふうには思っております。
○江田五月君 今聞いたのはそうじゃなくて、二百七条のような考え方を危険運転致死傷罪でも検討して、そしてもし必要だということになれば、そういう二百七条ではすぐ無理ですから、暴行に当たるというようなことでない場合には。二百七条類似のような規定を設ける必要がありはしないかということを言ったんです。
○政府参考人(古田佑紀君) どうも失礼いたしました。
 御指摘の点、いろんな二重轢過その他の事故もあるわけでございまして、そういう点からすれば傾聴に値する御指摘だとは考えますけれども、御案内のとおり、同時傷害の規定につきましては、結局どちらかに本来の責任以上の刑を、罪責を問うことになるおそれがあると、そういうふうな問題も指摘されておりまして、やはり慎重に検討していかなければならない問題と考えます。
○江田五月君 そういう心配もあるでしょうから、すぐつくれということを言っているわけじゃありませんが。
 実は、私の経験でいえば、これは民事の話ですけれども、車がすれ違ったんですね、それで、すれ違った後でその間で人が死んでいたという、どっちがはねたかわからないという。これは刑事では両方無罪というか、起訴して無罪になったのかな、あるいは起訴できなかったのかな。しかし、民事ではこれはやっぱり損害賠償を認めないわけにいかないというようなケースに遭遇したことがありまして、やっぱり危険運転が二台すれ違って、間で人が死んでいたなんということが起こり得るなということを心配いたします。
 この辺になると、もう専ら法律家しか興味のない、かなりおたく的な質問にだんだんなっていっているんですけれども、もうちょっとおたくでいきますと、一項、二項があって、それぞれ前段、後段ありますよね。これはそれぞれ別罪になるんですか。両方に当たったらどういう関係になるんですか。併合罪になるんですか、観念的競合になるんですか、それとも一罪なんですか。あるいは、一項にも二項にも当たるようなむちゃくちゃな運転をして人が三人死んじゃったら、これは罪数はどうなるんですか。
○政府参考人(古田佑紀君) いずれにいたしましても、一個の運転行為でございますので、一項、二項のそれぞれの構成要件に同時に当たるという場合には、これは併合罪になることはない。観念的競合かあるいは包括一罪か、それは多少いろんな考えはあるかと思いますが、いずれにせよ一罪ということになろうかと思います。
 また、複数の方がそのことによって死傷の結果が生じたと、そういう場合も、結局これは一個の行為によるものでございますので、観念的競合ということになると考えております。
○江田五月君 裁判所が考えるでしょうけれども、立法者、立法者というのか提案者の方では、観念的競合か包括一罪か、その辺の検討はされていないんですか。
○政府参考人(古田佑紀君) これは、危険運転という行為を幾つかに類型化したということで、大もとの問題としては要するに危険な運転行為ということでございますので、この類型化したのは、ある程度の物事の整理、あるいは立法技術的な面というのが大きく影響しているわけでございます。そういうことからいたしますと、基本的には両方の構成要件に同時に当たるというような場合は包括一罪と考えることが適当ではないかというふうには思っております。
○江田五月君 私もそう思いますね。
 法定刑ですが、十年というのはこれは傷害との比較でわかるんですが、一年以上というのは傷害致死と比較すると、二年以上が一年以上というのは、半分というのか、半分とはならないのか。いずれにしたって、なぜこれは軽くしたんですか。
○政府参考人(古田佑紀君) こういう危険な運転行為が暴行に準じるものであるということから、傷害致死の刑に準じて法定刑を考えたわけでございますが、暴行に準じると申しましても、暴行そのものではない。そうなりますと、ケースによっては、どうもやっぱり人に対する暴行ということで法定刑を定めてしまうと、どうもやや重いケースが出てくる場面もあるのではないか。そういうことから、端的に申し上げますと、暴行までは至らない、そういうケースについての事案の実態に即した刑を定めるために一年にすることが適当であると考えたということでございます。
○江田五月君 刑法改正については、ほかに免除のことも随分聞かなければいけないし、それからもう一つ刑事訴訟法の方も聞かなきゃいけないんですが、来週ありますので、そのときにまだ伺うとして、この二項なんですが、「人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他」接近し、かつ危険な「速度で四輪以上の自動車を運転し、よって人を死傷させた」と。車というのと、自動車というのと、四輪以上という、三つのものが入ってくるんですね。
 自動車というのは、これはたしか私の記憶では、ちょっと今調べていないんですが、道路交通法に定義があるあの自動車でいいんですか。
○政府参考人(古田佑紀君) 自動車とは、原動機によりましてレールまたは架線を用いないで道路上を走る、そういう車両をいうと。それに対しまして、車と申しますのは、例えばリヤカーでありますとか、そういういわゆる軽車両と呼ばれているもの、そういう道路上を通行する車全般ということになるわけでございます。
○江田五月君 車というのは特に何か定義規定はなかったかと思いますので、社会通念上車というものだろうということで、そうすると、直前に進入するという、進入する相手は自動車ですから、二輪車でもいいということになりますか。
○政府参考人(古田佑紀君) おっしゃるとおりでございます。
○江田五月君 そして、通行を妨害する目的の、その妨害される方の車というのはリヤカーでもいいと。
 あれはどうですか、お年寄りが買い物バッグみたいな、あれ何と言うんですか、ずっと押して歩いていますよね。あれは車ですか。
○政府参考人(古田佑紀君) 妨害の対象となりますのは、歩行者も含めてすべて道路上を通行しているものが対象になるわけでございます。
 バギーは確かに車輪がついているものではありますけれども、むしろこういうのは歩行者と一体となっているものと考える方が自然な場合が多いであろうと思います。
○江田五月君 バギーだけが動いているということは普通ないですから。
 きょうはこの程度で終わります。
○委員長(高野博師君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。
   午前十一時五十九分休憩
     ─────・─────
   午後一時開会
○委員長(高野博師君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、刑法の一部を改正する法律案及び刑事訴訟法等の一部を改正する法律案を一括して議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○日笠勝之君 公明党の日笠勝之でございます。
 質問も三番手になりますと、用意した質問の半分ぐらいは既に出ておりますが、重複するかもしれませんが、質問の組み立て上、ひとつ御容赦いただきたいと思います。
 まず、今回の危険な自動車運転による致死傷罪を厳罰化ということで刑法改正でございますが、イギリスはこういうふうな危険な運転の罰則は道路交通法で、危険運転致死罪ということで道路交通法でこれは盛り込んでおるようでございますが、日本の場合は刑法改正と、こういうことになりました。また、被害者の方からいろいろ法務大臣に対して罰則強化での要請、陳情、署名などがありまして、世論もこれあり、罰則強化しようと。
 こういう中で、道路交通法改正でいくんだという警察庁と、いやいや、これは傷害致死傷罪の一種だから刑法でいくんだと、何か法務省VS警察庁という何かさや当てがあったとかなかったとかいうことを聞きますが、イギリスはそういうふうに道路交通法でこれを定義しているということですが、なぜ今回この危険運転致死傷罪が刑法改正になったのか、お聞かせいただきたいと思います。
○政府参考人(古田佑紀君) まず初めに、警察庁と法務省との間の対立があったかのようなお話でございますけれども、対立ということではなくて、どういうふうに考えていくのかということでいろいろ検討をお互い協議をしていたというのが実情でございますので。
 それから、ただいまイギリスの例をお出しになったわけでございますけれども、御案内のとおり、イギリスはもともと日本みたいな法典がある国ではございません。したがいまして、一般的な刑法典というのを持たない国でございます。その内容に応じて比較的小さな法律などをたくさんつくっていくという、そういうような国でございますので、若干イギリスとはそういう意味で法体系が違っているということを御理解いただきたいと思います。
 今回、危険運転致死傷罪を刑法の改正により行うこととしたのは、結論的に申し上げますと、暴行に準ずるような危険な運転行為で人を死傷させる、そういう人の生命、身体に対する基本的な犯罪の一種である、そういう考え方からやはり刑法典というのがふさわしいのではないか。また、もう一点は、非常に広く国民生活に関係するものであると、そういう意味からも基本法である刑法によることが適当ではないかと、こういうふうな考えでございまして、これも先ほど申し上げたとおり、法制審議会等の審議を通じてそういう意見が強かったということでございます。
○日笠勝之君 次に、元検察官の方は、交通三悪に見られる故意犯的な無謀で悪質な犯罪に適用するのには無理がある、こうした事犯に対しては刑法百九十九条の殺人罪を適用すべきだと、こういう元検察官の方の御意見もございますし、昨日のある全国紙の投書欄には、全国交通事故遺族の会の理事の方は、酒飲み運転は未必の故意と言ってもよい、死亡事故を起こしたら殺人罪を適用してもよいくらいだと、こういうコメントをしているというふうな記事も出ております。
 今回は、そういう意味では有期懲役刑一年以上と、こういうことでございますが、こういうふうな方々、被害者の方々から見れば厳罰じゃなくて軽減されたんじゃないかなと。傷害致死の場合は二年以上の有期懲役刑と、こうなってもおりますし、そういうふうな声もございますが、これに対してはどのようなお考えをお持ちでしょうか。
○政府参考人(古田佑紀君) いろいろな御意見があることは承知しておりますけれども、やはり殺人ということになりますと、実際に生命を奪うという結果をこれは認容といいますか、要するにそうなってもいいやと思っているとでもいいましょうか、最低限度そういうことが必要でございまして、それを一般的に酒酔いやあるいは酒気帯びであるからといってそういうことまで認定するというのは、これは実際上極めて困難なわけでございますし、また、一般的にそういう意思を持っているということも、これはちょっと現実の問題としては言いがたいのではないかと思うわけです。
 また、傷害致死と比較して死亡した場合の下限を一年ということにいたしましたのは、これは先ほどからも申し上げておりますとおり、暴行に準ずると申しましても暴行そのものではないケースというのも非常に多いわけでございまして、いわゆる暴行の場合とは違った類型というのもあるわけでございます。そういうことを考慮いたしますと、傷害致死と全く同じ二年以上ということにするについては、やや事案の実態に即さない場面が出てくるというふうな考えで一年にしたわけでございます。
 ですから、典型的に想定されることで申し上げれば、もちろん傷害致死と同じように評価されるのが通常であろうと考えております。
○日笠勝之君 次に、「人を負傷させた者は十年以下の懲役に処し、」云々と条文に出ていますが、この負傷といったっていろんな負傷があるわけですね。いわゆる骨折のように治るような負傷もあれば、私がここで問題にしたいのは、全国に今四カ所ございます交通事故によって療養されている、受け入れている療護センターというのがございます。
 これは自動車事故対策センターが運営をしておりまして、自動車事故によって脳に損傷を生じ、極めて重度の精神神経障害が継続する状態にあるため、治療及び常時の介護を必要とする者を収容し、その社会復帰の可能性を追求しつつ、適切な治療及び看護を行うという目的のために四カ所設置されております。
 この入院要件は、自力移動が不可能、自力摂食が不可能、ふん尿失禁状態、眼球は辛うじて物を追うこともあるが認識は不可能、声を出しても意味のある発言は全く不可能、簡単な命令には応ずることもあるがそれ以上の意思の疎通は不可能という方が俗に言う入所されておるわけでございます。
 こういう方々が、今現在、十月三十一日現在で百二十一名受け入れていらっしゃるようでございますが、それでも申し込みをしてもなかなかその順番が来ないと、こういうことだそうでございます。
 ですから、この負傷といっても植物状態患者と、このようにも言われておりますけれども、こういうふうな負傷させて障害を与えるという人でも十年以下の懲役と、こういうことですよね。そうですね。どうぞ。
○政府参考人(古田佑紀君) 御指摘のとおりです。
○日笠勝之君 そうすると、最高刑十年なんですかね。だけれども、これはもう植物状態患者で、一年間にこの患者一人当たりに年間二千三百万の費用が要るというんですよね、一年間。数年でどうかといったら、だから一億円ぐらいのこの方々には費用がかかっている。五年が大体めどだそうでございます。
 しかし、その方は、一人ならず、もし二人でもこういうふうな負傷をさせて植物状態患者というんですか、こういうふうにした場合でも十年以下と、こういうことですよね。
○政府参考人(古田佑紀君) 傷害にとどまっております限りは、御指摘のとおりでございます。
○日笠勝之君 ですから、果たしてこれが厳罰になったのかなというふうな気がいたすわけでございます。
 確かに、五年が十年になったんだよと、こう言いますけれども、その負傷の程度によるわけですから、これは同じ条文に二つは書けないんでしょうね。人を負傷させた者は十年以下の懲役または有期懲役刑一年以上というのは書けないんでしょうけれども、しかし、場合によってはそちらの方を選択してもいいようなこともあり得るのではないか、すなわち重過失があるように重傷害というか、というふうなこともあり得るだろうと思うんですが。
 どうもこの辺が療護センター、私も、岡山にございますし、かつて視察したこともございます。それはもう大変な介護でございまして、患者五十人に対して看護婦さんが八十人ですよ。そういうふうに負傷させて障害を及ぼしていながら十年以下というのもいかがかなと、こういうふうに思いますが、その辺のところを、この療護センターなどがあって、そういう交通事故によって、先ほど申し上げました、入院要件を言いましたね、そういう方もいらっしゃるということを当然知った上で十年以下と、こういうふうになったんでしょうか。
○政府参考人(古田佑紀君) 御指摘のとおり、例えば植物状態になってしまうとか、そういう例があるということは私どもとしても承知はしているわけでございます。ただ、現在の刑法上、傷害の場合は、これは御案内のとおり十年で、一般的な場合で、植物状態になったとしてもやはり十年ということになるわけでございます。
 そういうことで、いろいろそういう問題については検討をしなければならないという点はあろうと思ってはおりますが、命を失わせるということと、そういう状態になったにしても傷害にとどまるという点については、やはり質的な差というのはある程度これはあると言わざるを得ないのではないか。あるいは、先ほど申し上げました現在の刑法の体系との関係ということもございまして、そういうことから今回は傷害の場合には十年ということにしたわけでございます。
 いずれにいたしましても、御指摘のような問題については、これは十分検討をしなければならない問題ではあろうと思っております。
○日笠勝之君 次に、危険運転の四類型というものが明示されておりますが、先日でしたか、道路交通法が改正になりましたですね。この道路交通法改正の、悪質、危険な運転行為に対して罰則が引き上げられたわけでございますが、これは十三違反行為というものがそれぞれ強化をされたわけでございます。
 その中で、これはどうして今回刑法改正には、その類型の中に入らなかったのかなと思われるものがございます。それは、一つは過労運転、同下命容認ですね。それから酒酔い、酒気帯びの下命容認ですね。これは道路交通法改正では相当厳しく強化をされております。それから、もう一つは共同危険行為ですね。これらのものがなぜ四類型以外に例示として入らなかったのかということをお聞かせ願いたいと思います。整合性がないんじゃないかなということを言っているわけです。
○政府参考人(古田佑紀君) 今回、ここで類型化した行為は、非常に危険であるとともに反社会性が強いということで、実際の事犯の実態も調べた上でこのような御提案をするに至ったわけでございます。
 そこで、今お尋ねの点でございますけれども、過労運転につきましては、これは実は原因は非常にさまざまでございます。中には強い非難には値しないというふうなケースも少なくなくあるわけでございますし、またいろんなことが複合的に作用して過労状態になるという場合もあるわけで、そういう点からいたしますと、過労運転につきましては、およそ一般的に反社会性が極めて強い悪質、危険な運転行為とするのはこれはいかがなものかということで、本罪におきます正常な運転が困難な状態になったことの原因には含めないこととしたものでございます。
 それから、酒気帯び運転の下命容認という点でございますけれども、これは単なる酒気帯びということであればそれ自体が直ちに常に非常に危険が高いとまでは言い切れないと。ただ、これが非常に酒酔いの程度が高くて、どう考えてもこれは正常な運転はできないであろうというようなケースの場合を想定いたしますと、それをやらせたり、あるいは知りながら車を貸したりということになれば、これは共犯が成立する場合があると考えております。
 それから次に、共同危険行為でございますが、これは二項の、例えば割り込みでありますとかあるいはあおりのような直近を妨害する意図ですれすれに走っていく、こういうふうな類型に当たるような共同危険行為というのは本罪の対象になるわけでございます。
 しかしながら、それ以外の共同危険行為につきましては、これは確かに運転する方にとっては非常に不安なわけでございますが、事故の実態から見ましても、そういうことで重大な事故が起きるというケースというのは私どもの調査した結果ではなかなか見当たらないと。それ全体がここで、本罪で考えておりますような非常に危険な行為と言えない場合も多いということから、共同危険行為という形ではとらえなかったということでございます。
○日笠勝之君 ちょっと本題から外れるかもしれませんが、この共同危険行為でございますが、暴走族が今、いろいろと根絶をしていこうということで全国百二十余の自治体が条例をつくって今取り組んでおるところでございますが、実は、たまたま私が続けてここ二回テレビを見た関係で申し上げるのでございますが、日光のいろは坂でドリフト族という、もう急カーブ、ヘアピンカーブを乗り回す暴走族、これを二回連続でテレビで見まして、どうしてこういうのが取り締まり、これは警察庁でしょうが、取り締まりができないのかなと。一回テレビ見ただけでこれは恐らく、地元警察を初め警察庁の方にもどうして取り締まりができないのか、そういうふうな恐らく電話なんかはあったと思いますよ。私、二回続けて見ましたよ、日にちは違いますけれども。
 激しい、ドリフト族という、スピードと、カーブを急ブレーキをかけて行くわけですね。まさにF1レースみたいな感じでした。こういうものを、市民の安寧を保つのが警察の使命だと思うんですね。こういうのが二遍も三遍もテレビに出ていると、一体警察は何しているのということでございます。
 ですから、きょうここで私は要請しておきます。日光のいろは坂でのドリフト族が二度とテレビなんかで、報道で取り上げられないぐらい壊滅、絶滅を、決意を聞きたい。
 以上です、これは。
○政府参考人(坂東自朗君) 委員御指摘のように、栃木県のいろは坂というところにおきまして、通称いわゆるドリフト族と言われる暴走族がカーブなどで車両を横滑りさせるなどの危険な運転行為を行って一般ドライバーの方等に御迷惑をかけているといったような報道がされていることは、私どもも承知しているところでございます。
 そこで、このいろは坂を所管いたします栃木県警察におきましては、ドリフト族が走行する週末、毎週末に速度違反取り締まりとか、あるいは検問によるドリフト族の排除に努めているところでございます。
 さらに加えて、道路管理者にも要請をいたしまして、ドリフト行為をしにくくなるような道路の舗装を、ちょっとでこぼこを持たすような薄層舗装といったようなものも実施していただくとか、あるいはドリフト族そのものを見に来る若者、これを通称ギャラリーと呼んでおりますけれども、そういったギャラリーの路側駐車を防止するために路肩へのブロックの設置などを行ってその防止に努めているというところでございます。
 私ども警察におきましては、暴走族に対しまして一一〇番を非常に多く寄せられておるところでございますので、栃木県のみならず全国の警察におきまして暴走族の走行排除に向けた取り締まり等の総合的な対策を推進してまいりたい、このように考えております。
○日笠勝之君 ギャラリーというお話が出ましたが、期待族とも言うんだそうでございまして、愛媛県ではその期待族も抑止していこう、そういう条例をつくろうという動きもあるようでございます。
 どうかひとつ、警察庁におかれましては、日光いろは坂のドリフト族が二度と報道されないように、絶滅したと、恐竜は絶滅しましたけれども、ドリフト族も絶滅するようにしっかりと対応していただきたいと要請を強く強くしておきたいと思います。
 なぜかならば、この道路交通法改正の共同危険行為の試案に対して、警察庁の試案に対してパブリックコメントがされましたね。そのときに三百五十三の、共同危険行為についてどう思うかというパブリックコメントの回答がありましたうちの百九十件は、もっと厳しくやれと。こういう庶民、世論の声がちゃんとパブリックコメントにあらわれておるわけですから、それらを踏まえながらも、ぜひひとつ対応のほどをよろしくお願いを申し上げたいと思います。
 それから、またもとへ戻りますが、危険運転の具体例四類型、こういうことでございますが、ちょっと考えただけでも私がこれから申し上げるようなものも危険運転じゃないのかなと思うんです。ですから、ちょっと申し上げます。
 例えば、逆走というのがありますね。一方通行をとにかく逆走して大きな事故を起こすとか、高速道路を逆走したという例もございますね。パトカーかなんかに追われて、また検問を突破して慌てふためいてということもあるのかもしれません。逆走なんかはまさに、これはもうこういうところへ行っちゃ大きな事故が起こるということをわかっていながらやったということにもなるのではないかと思いますし、それから不正改造車、それから過積載、こういうものも、いわゆる運転の制御は坂道であったり雪道は厳しいなということを知っていながら、不正改造車で運転したり、また過積載等々のトラックなどなどによる事故が起こった、これはやっぱり危険な運転というふうにならないのかなと、こう思いますが、四類型プラスアルファ、今申し上げたようなものはならないのかどうか、どうしてならないのか、お聞かせ願いたいと思います。
○政府参考人(古田佑紀君) 確かに御指摘のように、今挙げられたようなものを一般的に取り込んではいないわけでございます。と申しますのは、一つは非常に多様な場合がありますので、類型化が難しいということでございます。
 ただ、例えば逆走のケースを申し上げますと、これはいわば高速道路を反対側から走ってくるということは、これは相手の正常に走っている車両の自由な走行を妨害することになるわけでございまして、当然そうなる、そういうつもりでやっているケースが一般的には多かろうと。そうなりますと、著しく車両に接近して走行している場合に当たるケースも考えられるわけでございます。
 それから、不正改造車等あるいは過積載車、こういうものにつきましては、これは主としてスピードとの関係が問題になろうかと思うわけですが、到底そういう車でこういうスピードを出せばこれは車両の走行のコントロールが困難になるというふうな、そういう事態であれば一項の進行の制御が困難となるような高速度ということに当たるケースもあろうかと思われるわけです。
 したがいまして、今御指摘のようないろんなケースにつきまして、真に危険で悪質なケースというのは本罪の対象になる場合も少なくないと考えております。
○日笠勝之君 次は、俗に飲酒運転でございます。
 今回、アルコール及び薬物ということで危険運転ということに、致死傷罪になれば、アルコールを摂取しておればそういうことになるということでございますが、人事院、来られていますか、人事院にちょっとお聞かせ願いたいと思います。
 地方公務員の方は、いわゆる飲酒運転をして免職になる、高知県が九七年十一月からこういう規定を設けました。四年間で五人ほどが免職になったようでございます。当初は厳しいんじゃないかと言われておりましたが、公務員としてより倫理を守っていくということは当然だということで、もう当然だという雰囲気だそうでございます、高知県においては。飲酒運転で免職はかわいそうだというよりは、当然だと、こういうふうになっておるようでございます。
 また、秋田県も、九九年四月から停職、減給に免職規定も導入したようでございまして、今、県は当然ながら、秋田県九市のうちの五市、六十町村のうちの二十九町村が同じくこの免職規定を導入したようでございます。残りの市町村も今見直しを検討している、こういうことでございます。
 地方の方は、この飲酒運転の絶滅に向けて、免職規定まで地方公務員、設けてやろうと、こういうふうにしておるわけでございます。
 ちなみに、秋田県は、この免職規定を入れてから、公務員の飲酒運転摘発率が二・一%から一%に激減、半分になったそうでございます。
 何が言いたいかというと、じゃ、一体、国家公務員はどうなるかということでございます。国家公務員の飲酒だけです、事故がありません、飲酒だけの場合はどういうふうな標準がありますか。
○政府参考人(小澤治文君) 減給、それから戒告でございます。
○日笠勝之君 停職すらありませんよね。事故を起こせば、傷害とか致死であれば別ですが。
 ですから、地方はこのように、まず地方公務員が、地方の公僕でありますから、もって垂範で公務員倫理、また交通事故、飲酒運転をやめさすということの抑制力で免職、停職というものが入っている市町村があるということを申し上げたわけでございますが、このたびこういう危険な運転の罰則が道路交通法でも強化されました。そういうことから見まして、今後、公務員のいわゆる飲酒運転の標準、今のところは減給と訓戒だけでございますが、停職とか免職とかそういうようなことも今後検討する用意があるかどうかをお聞かせ願いたいと思います。
○政府参考人(小澤治文君) 先生御指摘のように、地方公務員が飲酒運転をした場合の処分ですが、各地方自治体ごとに取り扱いが異なっておる、一部の自治体におきましては厳しい運用が行われておると。
 さらに、本年六月、道路交通法の一部改正、それから今般の刑法改正というように、飲酒運転などの悪質な運転行為に対しましては刑法上対応も厳しくなっているという認識を持っております。
 人事院といたしましては、各府省が懲戒処分を行う場合に、懲戒処分の指針というような参考になるのを出しておるわけですが、その中で、飲酒運転、それから飲酒運転による死傷事故、これにつきましては標準的な処分量定を示しているわけですが、この飲酒運転等に対する法令改正があるわけで、それを考慮いたしまして今後適切な見直しを行っていきたいというふうに考えております。これによりまして、各府省の懲戒処分が厳正に行われるように指導、助言していきたいというふうに考えております。
○日笠勝之君 秋田県に国家公務員の方もいらっしゃいますね、多分。高知県もいらっしゃいますね。同じ公務員で、片一方は免職、片一方はだめだよと訓戒かもしれません、減給かもしれません。同じ公務員で同じ地域に住んでいてえらいこれは不平等じゃないか、こういう声も出てくるわけですから、よく今後、こういう罰則が強化されたことも踏まえまして、バランスのとれるようなひとつお考えを、お考えというかその対応をお願い申し上げたいなと、こういうふうに思うわけでございます。
 そこで、法務省でございますが、法務省の職員の懲戒は、これは法務大臣がやるわけですね。その中で、平成十二年度省庁別の交通事故、交通法規違反関係で見ますと、二十七人の方が処分されておるわけですね。恐らく飲酒運転があったとしても、先ほど申し上げた国家公務員の場合ですからまあ減給か訓戒だろうと思いますが、まず法務省こそ法律を最も守り遵守しなきゃいけない省だと思いますよね、当然、法務大臣ね。そういう意味では、今回こういうふうに危険運転は、道路交通法でも悪質、危険運転は罰則を強化したんです。事故を起こせばそれは刑法に行くんですが、道路交通法でも悪質、危険な運転は大体倍ぐらいを強化したと言ってもいいかもしれませんですね。
 ちなみに、例えば飲酒を言いましょうか、酒酔い、飲酒の場合は、現行二年以下の懲役または十万円以下の罰金が三年以下の懲役または五十万円以下の罰金に強化されたわけですね。そういう意味では、この交通法規違反の中で例えば先ほど申し上げました飲酒なんかがもし法務省職員の中で出てきた場合は、今までとは、ちょっといきませんよ、今までのような訓戒とか減給じゃなくて停職、免職もあると、こういうふうなお気持ちはあるんでしょうかどうか、お聞かせ願いたいと思います。
○国務大臣(森山眞弓君) 公務員として飲酒運転をするというようなことがあってはならないということは、もうおっしゃるとおりでございます。厳しく責任を問われなければいけないと私も考えますが、具体的な懲戒処分の処分量定を決定するに当たりましては、ただいま人事院の方からお話がございましたようなお考えを参考にさせていただいて、さらに動機とか態様及び社会に与える影響などを総合的に考えまして対処してまいりたいというふうに思います。
○日笠勝之君 人事院、結構でございます。ありがとうございました。
 続きまして、今度は反対に軽微な事故における刑の免除の方に行きたいと思います。
 この軽微な事故というのはどうも各県警によって違うんじゃないかというふうに言われております。ある県警は四日、五日ぐらいの傷害は軽微だと、いやいや三週間以内なんだと、いやいやそうじゃありませんよと、人身事故はすべて送検だから軽微じゃない、全部これはもう徹底的に捜査をするんですという県警もあるようです。ですから、軽微な事故に対して捜査がきちんと行われないんじゃないかというおそれがあると。
 発生した場所、県警ですから県単位によって、隣の県は四、五日、こっちの県は三週間と、こういうようなことになったのではいかぬと思いますが、県警の場合、こういう軽微な事故というものの何か標準というか統一基準というか、そういうものがあるんでしょうか。警察庁、お願いします。
○政府参考人(坂東自朗君) 私ども、交通事故が発生した場合におきましては、実況見分あるいは関係者に対する取り調べ等の捜査を行いまして事故原因を究明して、捜査を終了したものにつきましては速やかに送致するということにしているわけでございますが、私ども交通警察にとって非常に大きな課題は、もちろんこれはもう事故防止でございますけれども、もう一つは、そういった諸対策を講じながらも、やはり事故が非常に増加しているといったような状況にございますので、そういった増加する事故に対して捜査力というものをどのように配分するかということもこれ一つの大きな課題でございます。
 そこで、こういった交通事故事件の増加に対処いたしまして、限られた捜査力を適正かつ効果的に運用するという観点から、重大な道路交通法違反がある事件あるいは被害者の負傷程度が重い事件、さらには被害者等が法的制裁を求める事件等、このような事件のように迅速に捜査を遂げる必要がある事故事件というものを優先的に捜査するということにしているところでございます。
 このために、交通事故事件の一部につきましては関係の資料、捜査資料というものを確保しながら、他の捜査を優先するという措置をとっている県もございまして、この基準は委員御指摘のように都道府県によって多少の差異が生じているということは私どもも承知しているところでございます。
○日笠勝之君 ぜひひとつ、発生場所によって差異がないようにある程度の標準というか、統一基準というか、こういうものをやっぱり考えていただかないといかぬのじゃないかなと思います。
 それから、軽微な交通事故という場合の捜査中断というのは、これは、そのときは軽微と思っても、今トラウマなんて言いますね、後遺症、精神的後遺症、それから体の後遺症もありますね。そういうことが後であるやもしれませんですね。そういう意味では、軽微、軽傷の交通事故、軽い、軽微な交通事故もやっぱり捜査は中断せずにきちっとやり上げておかないと後々いろいろ支障が出てくるんじゃないかなと、こう思いますが、この点、捜査の中断ということについてはどのようにお考えでしょうか。
○政府参考人(坂東自朗君) ただいま御答弁申し上げましたように、重大な事故事件というものを優先して、そしてそれ以外の一部の事件につきましては関係の捜査資料を確保しつつ、先ほど言いましたように、重大な事故事件捜査というものを優先するという措置を、これを多分中断というような形で呼んでいるんじゃないかと思います。
 この言葉からも御理解いただけますようにあくまでも中断でございますので、委員御指摘のような形で、当然ながらやはり、さらに重傷事件に発展したといったような場合におきましては必要な捜査を、補充捜査等を尽くして、捜査を尽くして終了した場合におきましては検察庁の方に送検するというふうにしているところでございます。
○日笠勝之君 次は、じゃ刑事訴訟法の一部を改正する法律案に対して何点かお聞きしたいと思います。
 このたび、調査権限を付与したということでございますが、これ平成五年の法制審の「財産刑をめぐる基本問題について」という報告が出ておりますが、今からもう七、八年前から言われていることですよね。なぜ突然今ごろこういうものが出てきたのかな、刑法改正にあわせてこれも一緒にと、こういうことかもしれませんが、おくれた理由ですね。
 それからもう一つは、スピードはスピードでも悪いスピードじゃなくて、こういう早く、いいことはスピードを上げて法律化、立法するなり改正するなりということがまさに必要なわけですね、今の改革もスピードが必要と言われておるわけですから。なぜおくれたのか、このことをお聞きしたいと思います。
○政府参考人(古田佑紀君) まず御理解いただきたいのは、この財産刑小委員会、これは財産刑のあり方全般をめぐって御意見を伺うということで、これ自体直ちに立法のための諮問というものではなかったものでございます。その議論、御意見を伺う中の一環として、財産刑の執行上の問題として調査権限をつくることが必要だということには異論がなかったということでございまして、考え方としては、財産刑一般のいろんな問題を整備していく過程の中でこういう問題も対応するということであったわけでございます。
 そういう機会といいますか、そういうことで適当な機会を見てということで今日まで至ってきているわけですが、近時、いろんな情報保護の問題とか、そういうことから、照会について法的根拠がないことを理由に協力を拒まれる例、そういうのも増加する、そういうような状況も踏まえまして、特に罰金刑の言い渡しの多い交通業過、あるいは同項に関係する今回の交通事犯についての実体法上の整備にあわせてお願いするということになったものでございます。
 そういうことで、いろんな事情から若干おくれてきていたことは間違いございませんけれども、基本的にはそういう考えで今まで検討してきていたということでございます。
○日笠勝之君 次に、強制執行。資産があると見れば強制執行ができるわけですね。
 その前に、罰金を例にとりますと、罰金の未済件数と金額をちょっと教えていただけますか。平成十二年度で結構です。それにあわせて、平成十二年度、罰金の裁判を受けた者に対する強制執行件数ですね。どうぞ。
○政府参考人(古田佑紀君) 平成十二年で罰金の未徴収といいますか、につきましては、件数として二万一千百七十件、それから未済金額、これは百四十八億九千八十四万二千円ということになっております。それから、強制執行の件数でございますが、平成十二年度で十一件でございます。
○日笠勝之君 平成十二年の未済件数が二万一千百七十、金額はちょっとおいておきますが、強制執行した件数は十一件。ちょっとこれどうなのかなと。国税なら恐らくこの程度じゃないと思いますよ、国税なら、税金なら。こう思います。
 それで、じゃ国税債権の徴収とこの罰金の徴収というんでしょうか手続と、何がどう違うんですかね。わかりますか。国税徴収の手続と罰金の徴収手続、何がどう違うかというのが一つと、それから、例えばその際に時効だとか延滞料だとか、こういうものがどう違うのか。おわかりになれば、おわかりでなければ私の方で言いますが、おわかりになればどうぞ御説明ください。
○政府参考人(古田佑紀君) まず最初に御理解をいただきたいことがございます。
 罰金の未済件数及び金額というのは、徴収手続中のものがもちろんたくさんあるわけで、基本的には任意に納付されるという形でもちろん罰金の徴収が行われていくわけでございます。ただ、事務手続の都合その他から翌年に繰り越すということがあるという、そういうことでございます。
 それから、ただいまお尋ねの国税債権の徴収との比較でございます。私も国税債権の徴収について詳細を承知しているわけではございませんが、基本的な違いとしては、まず、国税債権とそれから罰金等のいわば制裁、懲罰から生ずる債権、これは国税債権は優先債権とされておりますが、罰金等はこれはそういう扱いにはなっていないということになっております。
 それから、延滞金のお尋ねでございますが、延滞金は債務不履行による損害賠償ということでございます。ただ、罰金につきましては、これは債権という形はとっておりますけれども、もともとが刑の執行ということで、純然たる民事的な、あるいは純然たる債権債務との関係とはやや異なる面があるわけで、そういうことから罰金については延滞金という制度はございません。
 それから、国税債権の消滅時効につきましてはこれは五年となっておりますが、罰金の時効は三年、これも刑罰ということと国家財政の基盤としての国税ということとの相違であろうと考えているわけです。
 概略、その程度でございます。
○日笠勝之君 何が言いたいかといいますと、同じ国税、税の世界と罰金というのは質が違うのかもしれませんけれども、時効も、罰金は三年、国税は五年ですね。延滞料は、罰金はない、国税の方は、今、公定歩合プラス四パーですか、四・五%ぐらいだそうでございます。それから、国税の方は質問検査権というのがあるんですよね。質問検査権を拒否した場合は十万円の罰金があるんです、罰金が。罰金の罰金みたいな話ですけれども。
 要は、何が言いたいかというと、これだけ未済が百四十億も五十億もあると。後で言いますが、遁刑いうて逃げている人もいると。裁判でせっかく罰金の判決出しても、後は全然、全然とは言いませんが、何かざるみたいな感じになっちゃっている。これ国税ならそうはいきませんね。徹底的にやりますよね。そういう意味では、私は国税債権の徴収手続と罰金の徴収手続とほぼイコールフッティングにすべきじゃないかなということを申し上げているわけです。
 これも先ほど刑事局長おっしゃいましたね、財産刑をめぐる基本問題についての審議の検討経過及び結果について、法制審の刑事法部会が平成五年三月十六日にそれらのことを議論されていますね。検察官に国税徴収法百四十一条が規定するような質問検査権を認めるべきではないかという提案をなされた、また罰金に優先債権性を認めるべきではないかという意見もあったと。せっかく平成五年で議論されておるわけでございます。そのときの未済金額は恐らく相当違うんだろうと思うんですよ。多くなっていると今思いますね。平成五年ですと八十億、九十億ぐらいですよ、未済が。今が百四十ですから。
 そういう意味では、これは今後法制審において罰金の徴収手続について議論をし、結論を出し、きちっとした立法化をするというふうなお考えがあるかどうかをお聞きしたいと思います。これは大臣、お願いします。
○国務大臣(森山眞弓君) 国税債権につきましては、国家の財政収入の大部分を占める国家活動の基礎であるというものでございますし、国税徴収が国家の財政力を確保する上で最も重要なものであるということから、一般の債権とは異なりまして、優先性、自力執行権等が認められているわけでございます。
 これに対しまして、罰金はあくまでも司法上の制裁として科せられるというものでございますから、これに優先債権性と自力執行権を認めるかどうかということにつきましては、先生も御指摘ございましたように、何度かいろんなところで議論はされてまいったんでございますけれども、他の一般債権者の保護の必要性とか、自然人については労役場留置によって換刑処分がなされ得ることなども考慮しなければなりませんし、慎重に検討していく必要があると考えております。
○日笠勝之君 これはでもぜひ検討をしていただきたいと思います。
 労役場のことを今、大臣おっしゃいましたけれども、いろいろ聞いたレクチャーの範囲でいきますと、大体一日五千円ぐらいを見積もっているそうですね、一日以上二年以内。これは明治四十三年以来、最高の二年も変わっていないんだそうですね。最近は罰金の金額が大きいものですから、何千万、億という人もいらっしゃるそうですね。そうすると、計算すると、一日五千円としても、一年間でまあ二百万あるかないかですよね、休みがありますから。二年間で三百万、四百万ぐらいですよ。億単位がそれで罰金がチャラになるわけですよ。そういうことでございまして、労役場があるあると言ってみたって、きちっと罰金相当分が取れるかどうかということもあるわけですから、それらを踏まえてだから御検討をお願いをしたいなと、こう申し上げているところでございます。
 最後に、時間も来ましたので、この問題について最後、遁刑者対策についてどういう対策がとられておるのか、具体的な対応策をお聞きしたいと思います。
 それから、これは公表とか公開手配とかそういうものが可能なのかどうか。できればホームページか何かで、ウオンテッドで、ホームページか何かでやっていただければかえって抑制力も働くんじゃないかなと。ビンラーディンは、何か三十億ですか、ウオンテッドされているようでございますから、ホームページか何かでこれを載せて、以上の方々は遁刑者だと、見かけた方は御一報くださいと、こういうことも抑止力になるんじゃないかな、抑制力か、ということを思いますが、まず具体的な対応をどうされていますか。公表とか公開手配などは可能かどうか、特にホームページなんかにそういうことが載せられるかどうか、以上、お聞きします。
○政府参考人(古田佑紀君) 刑の執行を免れて所在不明になっている、こういう場合に、具体的にどういうふうな措置をとっているかと申し上げますと、一番常にやっておりますことは、その本人の最後の住居地、ここに対する照会でございます。それから、家族あるいは友人などが近辺に在住しているときにはそういうところからのいろんな情報の聞き込みなどもやっております。それと、さらに、これはいろんな方法があるわけですけれども、例えば携帯電話の契約がないかどうか、こういうようなこと、それから同一人物が今度ほかの事件で捕まってくるということもよくあるわけです。そういうことから、各警察あるいは検察庁に遁刑者のリストを配って、それで発見に努めていると、そういうふうなことを実際上やっているわけでございます。
 それで、遁刑者についてこれを公開することはどうかというお尋ねでございますけれども、一般論を申し上げますと、刑の言い渡しを受けているということにつきましては本人のプライバシーに非常に深くかかわることでございまして、そういう意味で、これはある意味ではどのような事案によるかということも影響するかと思いますけれども、一般的にはなかなかちょっと公開とかそういうことにはなじみにくいものではなかろうかと考えております。
 また、重大な犯罪になりますと、これはほとんどの場合が実は逮捕、勾留して裁判になることが多いものですから、こういう場合には通常、遁刑というような問題は起きていない。したがいまして、実際に遁刑という問題が起きるのは、比較的軽い、逮捕、勾留するまでもなく、いわゆる在宅で起訴する事件とか、あるいは罰金と、こういうようなことが多いわけです。
 そういうことからいたしますと、犯罪の重さということとのバランスでも、プライバシーの保護をどこまで考えるかということについて、これはやっぱり慎重な配慮が必要であろうというふうに考えている次第です。
○日笠勝之君 終わります。
○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 最初に、私ごとで恐縮なんですが、ちょうど参議院選挙前の六月に、小学校一年生の娘がおるんですが、交通事故に遭いました。幸い、骨折はしましたけれども、命に別状はなかったんですが、病院に運ばれたという第一報を聞きまして、状況がわかるまでというのは最悪の事態も頭の中を駆けめぐりまして大変な思いをいたしました。ましてや、悪質な交通犯罪で肉親の命を奪われた家族の皆さんの思いというのは本当に察して余りあるものがあります。
 そういう皆さんの、悪質危険な運転による事故事犯を過失犯罪としてのみ処罰するのは軽過ぎる、こういう世論が広がる中で今回の法案が出てきたと思います。これまで、どちらかといえば軽んじられてきたと言われてきた被害者の皆さんの声が生きていくということは大変重要だと私は思っております。
 法務省は当初、本音のところ、こういう規定を入れると刑法が汚れる、ですので、恐らく特別法でというような発言もされてきたかに聞いておりますが、なぜ量刑の引き上げや特別法ではなくて危険運転致死罪にしたかという経緯についてはきょう何度か御答弁もありました。いずれにしても、厳罰化ということになりますので、構成要件を厳格にする必要があるというのはさまざまな角度から質問もされておりますし、乱用があってはならないということであります。
 私からも何点かお聞きをするんですが、一つ、一項前段の危険運転の問題です。薬物とは何を指すのか、これは確認ということになるんですが、睡眠薬、風邪薬とかアレルギー性鼻炎の薬など、眠気を誘ったり、精神を高揚させる興奮剤なども入っていますし、薬によっては運転しないでくださいと書いてあるものもあるわけです。治療用の薬とか医薬品などは、本人は当然危険運転をしようという故意を持って服用するわけではないのだから、これは適用されないと思うんですが、麻薬や覚せい剤など、そういう違法な薬物のみに限定すると、こう考えてよろしいでしょうか。
○政府参考人(古田佑紀君) ただいまのお尋ねにお答えする前に、法務省が刑法が汚れると考えていたんではないかという御指摘がありましたけれども、決してそういうわけではなくて、犯罪の性質からして、仮に、非常に技術的な点を多く含むとすれば特別法というようなことも考えなければいけない、それと、過失犯という構成である限り、法定刑としてどこまで引き上げが可能なんだろうか、そういうふうなさまざまな問題を検討していたということでございます。
 ただいまのお尋ねでございますが、ここで申します薬物というのは、今御指摘のような麻薬でありますとかあるいはシンナーでありますとか、そういうようなものが典型ではありますけれども、そういうものに限らず、およそ運転者の精神的、身体的能力を低下させて、正常な運転が困難な状態を生じさせる可能性がある薬理作用がある薬、これは全部含まれることになりまして、睡眠薬等も当然含まれるということになるわけです。
 風邪薬等、これは、実は私も今風邪引いておりまして、ついさっき風邪薬を飲んだばかりで、そういう意味ではやや答弁機能が低下しているかもしれませんが、一般的に風邪薬はそんなに強い眠気を誘うものでもないというようなことで、一時的に多少眠くなるようなことがあるにいたしましても、それが正常な運転が困難な心身の状態にまで陥るということは、通常はちょっと考えられないというふうに思っております。
○井上哲士君 眠くならないような質問を続けたいと思います。
 一項の後段の高速走行ですが、当初、「著しい」というのが入っておりましたけれども、法案との違いというのは、これはあるんでしょうか、ないんでしょうか。
○政府参考人(古田佑紀君) 実質的には意味の差はございません。この「著しい」という言葉が最終段階で削られた理由につきましては、「進行を制御することが困難な高速度」、つまり車の走行をコントロールすることがもうできないぐらいの大変な速度ということであるので、その言葉の中に当然著しいというのは含まれている。そうすると、それはダブっているのではないか。ダブっているように思われる言葉をつけ加えると、それは一体どういう意味かというふうに、逆に理解の混乱を招くおそれもあると、そういう議論が大勢を占めまして、「著しい」という文言は加えないということにしたわけでございます。
○井上哲士君 「制御することが困難な高速度」ということについて、これまでの審議の中では、道路状況等によっても違うというようなこともございました。
 プロであるとかライセンスを持っていらっしゃる方と初心者などの運転技能という問題もあるかと思うんです。速度が速過ぎて車のコントロールが難しいという認識を持つかどうかという点も本人の技能によって随分変わってくるわけですね。往々にして、プロだとかライセンスを持っている方は、自分は大丈夫だということで高速度でカーブに突っ込んだりもするわけですが、そういう技能という問題などをどう考えるんでしょうか。
○政府参考人(古田佑紀君) 車両の走行のコントロールが困難になるかどうかということについては、基本的にはその道路状況に合わせて速度が客観的に非常に速い、したがって道路状況に合わせた運転というものが難しい、ちょっとしたミスですぐ飛び出してしまうとか、そういうふうな客観的にもおそれが認められるようなスピードということになるわけでございますが、それを本人がどう認識しているのか、そこの問題でこれは、自分は大丈夫だというのはいわば評価の問題でございます。したがいまして、自分は大丈夫だという中に、恐らく、これは本来そういうスピードなんだけれども自分が運転を誤ることはないから大丈夫であるとか、恐らくそういうことになっていくんだろうと思うわけです。そうすると、通常、客観的にそういう速度であれば危険が起きる、そういう速度で走っていると、そういう認識があれば犯罪の行為としては十分であると考えているということでございます。
○井上哲士君 次に、当初、赤信号に従わずにというのがあえて「殊更に」というのが加えられた経過についても幾つか御答弁がありましたが、故意による赤信号の無視の中でおよそ赤信号に従う意思がない行為と、こういう答弁だったと思うんです。
 例えば、確認のために次のような事例なんですが、早朝の仕事である市場関係のトラックとか新聞の配送車とかあります。毎朝通る交差点、ほとんど人通りがない、車もいないと。ざっと見渡してきょうもいないようだということで、信号が赤でも特にスピードを緩めずに信号を無視して運行したと。こういうような場合というのはどうなるんでしょうか。
○政府参考人(古田佑紀君) 具体的なその場の状況などの事実関係というのが相当影響することでございますので、なかなか一概に申し上げることは難しいと思いますけれども、その交差点が通常、割と交通量の多い交差点でありますとかであるような場合とか、そうじゃない場合など、いろいろなケースがあると思われるわけで、そのときにざっと見渡したというような場合が、これもいろんな程度の場合があると思われるので、結論的に申し上げますと、言ってみればほかの車が来ようが来まいがどうせ来ないだろうからと、しかし来ようがあるいは来まいがそれは構わないと、そんなような感じで走っているというふうなケースであればこれは本罪に当たる。
 そうではなくて、ざっとというよりはそれなりに、確かにそのくらい見ればおおむね状況を把握できるなというようなことであれば、それはまたあえて他人の危険を顧みることなく赤信号を無視したというところまでは至らない場合が通常であろうと考えているわけです。
 どうも具体的な場面でいろいろなことが起こり得るので、端的に申し上げることはできません。そこは御理解をいただきたいと存じます。
○井上哲士君 二項前段の妨害行為という問題ですが、これもいわゆるあおり行為などのことも言われておりましたが、例えば本人は、運転手は妨害をするという意図はないけれども、結果としては妨害になるんじゃないかなという思いは持ちつつ、極めて急いでいるときなどにかなり強引な割り込みをしながら一定のスピードで走るというようなことがあると思うんですね。タクシーなどが客にせき立てられてそういうことをやるということもあろうかと思うんです。こういうようなケースの場合はどういうふうに判断をするんでしょうか。
○政府参考人(古田佑紀君) 「人又は車の通行を妨害する目的」と申しますのは、相手方に自車との衝突を避けるため急な回避措置をとらせるなど、相手方の自由かつ安全な通行を妨げることを積極的に意図するという場面を想定しているわけでございます。ですから、例えば割り込みあるいはあおりみたいな現象が起こったにいたしましても、自分もその後ろからあおられたとか、あるいはとっさに衝突を自分が回避するために割り込まざるを得なかった、こういう場合には、結果的には相手の車両の走行を妨害することにはなるんですけれども、そういうときには妨害の意図があったとは認められないと考えております。
○井上哲士君 そうすると、こういう今言ったようなものの場合は、妨害しようという意図はないわけですから適用にならないということで考えていいんでしょうか。
○政府参考人(古田佑紀君) 御指摘のとおりです。
○井上哲士君 厳罰化ということで刑法を改正をするわけですが、やはりこれが生きるかどうかというのは適切な捜査にも大きくかかわってくると思いますし、そのことはいろんな民事の問題についても大変大きな問題になってくるかと思うんです。
 最高裁にも来ていただいておりますけれども、交通事故による損害賠償請求訴訟で、裁判官はどういう証拠を事実認定に用いることが多いんでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(千葉勝美君) 裁判官としましては、交通事故による損害賠償請求訴訟においても、当事者が提出した証拠に基づいて事実認定をするということは変わりがないわけでございますが、その際、当事者が実況見分調書などの交通事故に関する刑事裁判の関係書類、こういったものを証拠として提出をして、それを事実認定の基礎にするという場合は当然あり得るということでございます。
○井上哲士君 次のような交通事故による損害賠償請求訴訟があったと聞きますけれども、それに間違いがないかなんですが、平成八年の十二月の東京地裁の判決です。
 幹線道路から細い道に右折しようとしていた被告の自動車と、細い道から幹線道路に出ようとした原告の二輪車が衝突したと、こう認定をされ、反訴を認めて、原告に対して被告に約三十万円の支払いをすることを命じたと。ところが、平成十二年三月の東京高裁の判決では、幹線道路から細い道に右折しようとした被告の自動車と、その幹線道路を反対方向から直進してきた原告の二輪車が衝突したと認定をして、本訴を認めて、被告に対し原告に約六千万円の支払いを命じたと、こういう訴訟があった。これは確認できますか。
○最高裁判所長官代理者(千葉勝美君) 委員御指摘のような判決があったということは間違いございません。
○井上哲士君 読んだだけではわかりにくいわけですけれども、これは後藤さんという方の事件なんですね。
 九三年の十一月の二十日の朝に大型バイクで出勤中に二トントラックと衝突をすると。重傷を負って意識不明のまま病院に運ばれます。ところが、一カ月後に意識を取り戻してみますと、自分がふだんの通勤とは全く違う道を通って加害者になっていたと。しかし、警察は退院後も後藤さんから調書もとらない、保険会社も後藤さんに重い過失があるということで自賠責保険すらカットするという中で途方に暮れまして、この方は民事裁判を起こしたわけですけれども、一審では敗訴をします。それでもあきらめずに控訴をする中で、いろんな世論の広がりもありまして、再捜査も行われて、時効の二日前にこの加害者の方が起訴をされ、その中でこの後藤さんの主張を認める科学捜査研究所の鑑定結果も出されるということで、刑事事件では加害者に有罪判決が出たわけです。民事でも二審で、この刑事裁判の捜査関係書類が有力な証拠になりまして、二審では逆転勝訴をする。要するに、一審と二審で加害者と被害者が全く入れかわったという民事裁判だったんですね。
 結局、事故発生から六年半もかかったわけです。やはり捜査機関の資料というのは、刑事はもちろん民事でもこういう大きな役割を果たしていくわけで、最初からきちっと事情聴取とか証拠の検証があればこういう事態にならなかったんではないかと後藤さんは言われているわけですが、警察としてはこの経過をどう反省をし、こういう事態が起こらないような点はどうお考えになっているんでしょうか。
○政府参考人(坂東自朗君) 委員御指摘のその民事裁判の判決につきましては私ども警察としてはコメントする立場にはございませんけれども、刑事事件そのものにつきましては、委員御指摘の東京高裁の民事判決以前の平成十一年十二月に、東京高裁民事判決で認定された事実と同一事実によりまして、刑事事件としては有罪判決が言い渡されたというように承知しているところでございます。
 そこで、警察といたしましては、かねてから交通事故事件捜査を適切に推進していくために、特に第三者たる目撃者が得られないような事故とかあるいは当事者の言い分が違うような事故等のように事故原因の究明が困難なケースにつきましては、警察署に対する現地指導を行う事故捜査指導官というものを警察の本部に配置するといったことの対策を講じておりますし、さらには警察本部の交通鑑識体制の整備を促進するなど、いわゆる警察署の交通事故捜査に対する指導、支援体制の強化を行っているところでございます。あわせて、科学技術を活用した捜査支援システムの整備にも努めているところでございますので、警察庁といたしましても、今後とも適正かつ迅速な交通事故事件捜査の推進に向けて都道府県警察を指導してまいる所存でございます。
○井上哲士君 最高裁、結構です。
 適切かつ迅速と言われましたけれども、今も言いましたように、意識不明で入院をしていて、意識を取り戻しても事情聴取はなかったと。そして、結局もう時効の二日前まで起訴がされなかったということになっているわけですね。私は、これはやっぱり今の適正、迅速というのとは随分離れた状況になっていると思うんです。
 さらに、ことしの八月の二十四日に、栃木の氏家署ですか、交通事故の遺族の告訴を八カ月間放置していたという事件があったと報道をされています。処分をされているようですけれども、少し事実経過について、なぜこういうことが起こったのか、お願いします。
○政府参考人(坂東自朗君) 委員御指摘の本件についてでございますけれども、平成十二年の九月二十二日に、署の担当者が死亡した被害者の御両親の方から被疑者の厳罰を求める告訴状の提出を受けていたにもかかわらず、その告訴状を失念いたしまして検察官への送致を怠っていたというものでございまして、本年の六月の八日に至りまして、検察官からの問い合わせによりまして告訴状を検察庁に追送致したという事案でございます。
 そこで、栃木県警察におきましては、本年の六月の二十二日に被害者の御両親の方から氏家警察署の対応についての苦情申し立てがなされたということも受けまして、県公安委員会と県警察本部長にそういった苦情申し立てが出されておりましたので、同県警察におきましては事実関係の究明に努めまして、七月の二十四日に被害者の御両親に対して県警幹部が謝罪するとともに、八月の二十四日にはこの事故事件捜査を担当していた交通課長、県地域課長ら三人を戒告処分等としたほか、監督責任者として当時の署長、次長を本部長訓戒の措置というようにしたものと承知しているところでございます。
○井上哲士君 本当に起こってはならないことだと思うんですね。けさの朝刊でも、千葉の県警で重傷事故の通報があったのに放置をして、それを上司にとがめられてこの警官が失踪したという報道がされておりました。
 もちろん、多くの現場の警察官の方が熱心にやられている姿については見ておりますけれども、しかし、やはりあってはならないこういう問題が起きている中で、やはり国民の今の捜査に対する厳しいまなざしというのは見ておく必要があると思うんですね。
 その中で、今回、この刑の免除規定というのが新設をされますが、そのメリットとして、捜査に関する事務処理を効率化をし、その結果生じた余力を真に処罰すべき事案に振り向けると、こうあります。遺族の方などからは、効率化の名のもとに、先ほど来挙げたようないろんな捜査の問題が指摘される中で、いわゆる手抜きが行われるんではないかと、こういう不安の声が上がっているのは再三指摘をされてきました。
 まずお聞きするんですが、自動車等による業務上過失傷害の起訴率、いただきました資料ですと、昭和六十一年には七二・九%だったのが、以降急速に下がりまして、平成五年には一五・七%、平成十二年には一〇・九%と、こうなっていますが、急速に起訴率が下がったその理由は何でしょうか。
○政府参考人(古田佑紀君) 起訴率が低下した理由につきましては、これは昭和六十二年に全国の検察庁におきまして業務上過失傷害事件の処理のあり方が見直されたことによるものでございます。
 その趣旨は、現在、一般市民が日常生活を営む上でこれだけの自動車が普及した社会になりますと、一般市民が犯しやすい事件である、非常に多くの方が犯しかねない事件である。そういう中で、傷害の程度が軽微で特段の悪質性も認められず被害者も特に処罰を望まないと、そういうふうな事案も多数あるわけでございますので、そういうものにつきましては起訴猶予処分の弾力的運用を図ると。そういうことにする一方、重大ないし悪質な事案について厳正に対処すると、そういうことから交通事犯の適正処理ということで起訴率が変わってきたということでございます。
 したがいまして、実質的に起訴率が低下しておりますのは、事案が軽微で被害者も特に処罰を望まないと、そういうふうな業務上過失傷害事件に限られておりまして、例えば業務上過失致死事件、これらについては起訴率は特に低下しているわけではございません。
○井上哲士君 昭和六十二年以降そういうことになったということですが、ちょうどその経過の中で、警察庁交通局の交通指導課理事官の方が「法律のひろば」という雑誌の一九九四年一月号にこう書かれております。
  年間六〇万件を超える交通業過事件を送致する負担は、処理方式の一部について簡易なものとすることによっても過大なものがあり、しかも、その内僅か一八・七%しか起訴されていないという現状は、交通事故捜査に従事する警察官の勤務意欲にも影響しかねないものとなっている。
と、こう言われているわけですね。
 確かに、熱心に仕事をしてもこれが起訴されないということがこの意欲の影響ということになるのかもしれませんが、そうしますと、刑の免除ということになりますと、一層その意欲に影響するんではないかと思うんですが、その点どうでしょう。
○政府参考人(坂東自朗君) 警察といたしましては、被害程度が軽微な交通事故でございましても、その事故原因等を明らかにするために発生現場における実況見分を初めとする所要の捜査を行いまして検察庁に事件送致をするとともに、あわせまして必要な例えば運転免許の取り消しとか停止等の行政処分というものも行っているところでございます。
 したがいまして、起訴率いかんにかかわらず、現場警察官の勤務意欲が低下するといったようなことはないというように私どもは考えているところでございます。
○井上哲士君 必要な捜査は現場でしっかりするんだということでありましたが、事件送致の捜査書式として、基本書式に加えまして、昭和五十年に特例書式、平成四年から被害者の傷害の程度がおおむね二、三週間以下の軽微の交通関係業過事件には簡約特例書式というのが導入をされているかと思います。
 結局、繰り返し捜査の効率化ということが指摘をされているわけですが、この簡約特例書式というやり方が一層簡単なものに変わっていくというふうに理解したらよろしいんでしょうか。
○政府参考人(古田佑紀君) 具体的に送致の手続、これをどういうふうにするか、どういう送致書類にするか、これは警察御当局とも十分相談して決めていかなければならない問題とは考えておりますけれども、本当に軽微な事件で被害者も処罰を望んでいないし悪質な情状もない、こういうふうなものにつきましてはやはりそれなりに捜査書類あるいは送致手続を簡略化して、そういう負担、意欲ということもおっしゃいましたけれども、現実問題としては相当な負担になっていることも事実と私どもは認識しておりますので、そこら辺をできるだけ軽減するようにしたいとは考えております。
○井上哲士君 簡易な方法で送致をされた場合に、先ほどの民事訴訟のこともありましたけれども、後から争いになって事実解明が必要なときに支障を来すんじゃないかという不安もあるわけですね。ですから、要するに、実況見分から送致までの間に、どの部分はきちっとやって、そしてどういう資料をしっかり残して、そしてどの部分は効率化をされていくのか、これをわかりやすくお願いします。
○政府参考人(坂東自朗君) 私ども現場を預かる交通警察といたしましては、先ほども御答弁いたしましたように、交通事故がございましたらば捜査は捜査としてしっかりやるということでございます。
 ただ、どこまでのものを捜査書類としてまとめるかということは、先ほど法務省の刑事局長さんからのお話もございましたように、どういった捜査書類にするかということは、検察庁等の御指示も受けながら今言ったような形で、先ほどの御答弁あったように三種類の捜査書類があるということでございますので、いささかも現場の捜査においてそういった形で手抜きが行われるとかそういうことはあり得ないということでございます。
○委員長(高野博師君) 時間です。
○井上哲士君 運転手の中には軽微な事故が刑免除されることによって大したことないんじゃないかという、モラルハザードが起こるんじゃないかという不安もあります。その点で、そういうことが起こらないような、大臣の御決意を最後、お願いをしたいと思います。
○国務大臣(森山眞弓君) 刑の裁量的免除の規定というのは、自動車運転による軽傷事犯に対して一律に適用されるものではございませんで、過失の内容や被害者の処罰意思、本人の反省の程度、その他諸般の情状を考慮いたしまして刑の言い渡しを要しないと認められるものに限って適用されるわけでございます。軽傷事犯でありましても情状の悪いものについては厳正に訴追、処罰がなされるのは当然でありまして、処罰されるべきものが刑を免れるようなことはございません。
 また、現に多数発生する軽傷の業務上過失傷害事犯の中には刑の言い渡しを要しないような事案が少なからず含まれているという事情がございます。このような実情を前提といたしますと、このような刑の言い渡しを要しないような軽微事案について刑の免除ができることを刑法上明らかにするということは、この種事案についての取り扱いを合理化して、その分、悪質、重大な事犯に力を注いで厳正な処罰を行うということを可能にするものでございまして、総合的に見て交通事故の撲滅に資するものと考えております。
○福島瑞穂君 社民党の福島瑞穂です。
 まず、危険運転致死傷罪についてなんですが、年間にどれぐらい適用されると想定をされていらっしゃるでしょうか。
○政府参考人(古田佑紀君) 本罪はこれは新設でございます。したがいまして、これまでそういう観点からの捜査というのを実際の事例でやっていないわけで、実際にどの程度適用があるかというふうなことはそれぞれ事案ごとに決まっていくということで、今一概にその数を予測するということは困難でございます。
 ただ、現状の交通事故事犯を前提といたします限り、今回の立法、法案の作成に当たりまして重い刑が言い渡されている事例等を調べたわけでございますが、そういう事例に照らして、さほど多数に上るということはこれは考えられないと思っております。
○福島瑞穂君 悪質な運転行為により被害が軽微だった場合の取り扱いなどはどうなるのでしょうか。先ほどから議論になっているように、危険な運転行為そのものは処罰をしなくて、それから発生した致死傷を処罰するという形態をとっておりますので、被害が軽微な場合はどうなるのでしょうか。
○政府参考人(古田佑紀君) 被害が軽微というのもいろいろなケースがあり得るとは思いますけれども、非常に傷害が軽いというようなのが典型かと思います。非常に傷害が軽くて日常生活上看過されるようなそういうふうな事案というふうなことを想定いたしますと、場合によっては道路交通法違反ということになる場合ということで処理されることもあるかとは思います。
 ただ、一般論として申し上げますと、自動車事故で何らかのけがをした場合にかなり重いけがになっているのが普通でございます。もちろん、かなり重いと申しましても数カ月とかそういう意味ではなくて、二、三日とかそういうけがということは通常ないという意味で申し上げているわけですが、そういうことからいたしますと、一般的にはやはり本罪に当たるような場合は被害の程度というのもそれ相当の場合がむしろ通常で、やはりそういうときには本罪によって処理をすべきものと考えております。
○福島瑞穂君 今度の新設の規定を見ておりますと、故意犯とは何だろう、過失犯とは何だろうということを本当に思うわけです。刑法の中の暴行、傷害、傷害致死、暴行をやるつもりだったが傷害になってしまった、傷害をやるつもりだったけれども運悪く亡くなってしまった傷害致死。殺そうと思った、あるいは死ぬかもしれないが構わないと思った未必の行為は故意犯ですから、故意犯と過失犯は根本的にやっぱり違う面もあると思うんですね。
 今回の危険運転致死傷罪は、危険運転そのものは犯罪に当たらない、しかしそれから致傷が発生すると処罰をする、これは結果的加重犯に当たるのでしょうか。あるいは、本罪は刑事罰に服されないんだけれども、それから致傷が発生すると処罰をされるようなほかの類型、ほかの例などはあるのでしょうか。
○政府参考人(古田佑紀君) 御指摘のように、刑法の中で基本行為を処罰しないで死傷の結果を生じさせた場合に処罰するというのはいわばこれが初めてでございます。
 したがいまして、そういう意味では従来の刑法犯からはやや異質なところがあることは間違いございませんが、基本的な構造としては従来の結果的加重犯と同じ構造を持っている。ただ、基本行為は刑法自体では犯罪とされていないという点で違っている。しかし、さればといって基本行為がおよそ処罰されない行為を前提としているかというと、それはそうではなくて、道路交通法違反という形ではありますけれども、刑罰の対象になっているものの中の特に悪質なものを取り上げている。そういう類型の犯罪であると御理解いただきたいと思います。
○福島瑞穂君 法務省が危険な運転行為そのものを処罰しない立法をしたというのは一定程度理解はできるんですね、何をどう認定するかというのが、故意犯になってしまうわけですから。とは思うのですが、もう一度お聞きします。危険な運転行為そのものを処罰しない、これは、犯罪とはしなかった理由は何でしょうか。
○政府参考人(古田佑紀君) 先ほど申し上げましたように、言ってみますと、現に実質的に処罰されている行為の中の特に悪質なものということになっていく、それを前提としているということがあるわけでございますが、今、委員のお言葉の中にもありましたとおり、危険の発生という段階で処罰をするということになっていきますと、これは構成要件的にかなり絞り込みが難しい場面も出てくる。それから、特にある特定の場面に限るとしても、そうすると今度は道路交通法との関係とでどういうふうに考えていくか、そういうところでまた難しい問題が起こってくる。
 そういうことなどを総合的に考慮いたしまして、いわば暴行に準ずるような行為というふうな評価をするわけですが、暴行自体の段階では刑法としては処罰をせず、それによって一定の結果が生じたときに処罰をする、そういうふうな考え方をとったということでございます。
○福島瑞穂君 危険運転致死傷罪はおっしゃったとおり結果的加重犯的でありながら、危険運転の本体そのものは犯罪に当たらないと。ですから、初めてやっぱりこういう立法が出てきたので、先ほどの江田委員の方からもあったように、何となくちょっと、私たちも何かすとんと落ちないようなちょっと戸惑いが大変、初めてということで、あります。
 道路交通法と、しかし危険運転の行為は全く重なるものではないですよね。
○政府参考人(古田佑紀君) もちろん、御指摘のとおり全く重なるわけではありませんが、ただ危険運転行為として挙げられている今回類型化したものは、それ自体どれかの道路交通法の法規には違反する。例えば、あおりとかそういうことにつきましてもこれは安全運転義務違反と、先ほど安全運転義務違反との関係についてお尋ねがありましたけれども、少なくとも何かの道路交通法違反になるという関係にはなっていると思います。
○福島瑞穂君 第一項の「アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態」の意味なんですが、道交法の酒酔い運転との比較ではどうなりますでしょうか。
○政府参考人(古田佑紀君) 本罪で「正常な運転が困難な状態」と申しますのは、現に車の走行のコントロールが困難な状態になっているということを要するということでございます。一方、道交法上の酒酔い運転につきましては、正常な運転ができないおそれがあれば足りるわけでございまして、実際に正常な運転ができない、あるいは困難になっているということまでは要しない、そこが違うということでございます。
○福島瑞穂君 警察官は現場において酒気帯び、酒酔い、本罪を視野に入れて具体的にどのような方法で証拠を集めるのか。現場では、要するに酒気帯び、酒酔い、本罪、どうするか混乱は生じないのでしょうか。どうなるのでしょうか。
○政府参考人(古田佑紀君) 事故が起きまして現場に警察官が駆けつける、そこでお酒を飲んでいる疑いがあるということになれば、当然ながら警察官としては呼気検査等、どの程度の酒気を帯びているか、あるいはその事故がどういう状況で起きたかというようなことをまずは現場でいろんな形で証拠を確保するということになるわけでございます。
 その一方で、酒気、お酒を相当飲んでいるということになりますれば、それが原因で事故に至ったということになりますれば、恐らく本罪の適用ということを念頭に、飲酒量の確定とかそういう、あるいは目撃者あるいはその他の関係者の供述などの確保その他の証拠収集をしていく。その結果として、本罪に当たるような証拠関係が認められれば本罪によって立件送致をする、あるいはそこに至らなければ業務上過失事犯及び酒酔いないしは酒気帯び運転として立件をしていく、そういうような過程になるのではないかと思います。
○福島瑞穂君 酒気帯びと酒酔いの方は呼気を出させてアルコール濃度が幾らかということで判定ができるわけですが、本罪ですと、お酒を飲んでいるかどうかということももちろん最低条件ですが、「アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な」という立証が別途加わるわけです。
 そうすると、私が思うには、お酒を飲んで運転すると、多くのケースはやはり正常な運転が困難な場合になっているからこそ交通事故が起きるのだと思うんですが、そうしますと、現場の警察官は、今までですと、酔っぱらっているんじゃないかと思ったら、はあっと言いなさいと言って濃度を調べればよかったわけですが、これからは様子とか、それから時間がたてば正常な運転ができたかできないかとか非常に難しいでしょうし、目撃証人といっても周りの車は通り過ぎていくわけですから、実は非常に立証が困難ではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(古田佑紀君) 実際に「正常な運転が困難な状態」になっていたかどうかということについては、もちろん客観的な走行形態等が把握できればそれはそういうのが有力な証拠になりますし、また事故が起きる状況、起きた状況、こういうような客観的な要素、それから本人の飲酒量、それから本人が運転をしている最中に実際にどういうようなことを本人として認識していたのか、そういうふうな事柄を総合して判断をしていくということになるわけでございます。
 そういう意味で、もちろん事故が起きてからかなりたってからということになるとそのときの本人の状況というのは把握はしにくいわけでございますが、そういう場合でありましても、例えば飲酒量でありますとかあるいは走行状態、事故の状態等からそういう証拠を総合して判断が可能な場合も少なくないであろうと考えております。
○福島瑞穂君 酒気帯びと酒酔いと本罪は端的にどんな関係になるんでしょうか。酒気帯び、酒酔いだけれども本罪が当たらない場合、酒気帯び、酒酔いにも当たらないけれどもこの危険運転致死傷罪が成立する場合というのがあるのか。この上下関係というか吸収関係というのはどういう関係になるのでしょうか。
○政府参考人(古田佑紀君) 専らアルコールの影響による場合ということのお尋ねだと思いますが、まず現行法上、酒気帯びと酒酔いの関係は、酒気帯びは正常な運転ができないおそれがある事態までは至っていない場合になるのは御案内のとおりで、それを超えて正常な運転ができないおそれがある状態になれば酒酔い運転になっていくわけです。
 本罪の場合には、アルコールの影響ということが大前提でございますので、酒酔い内、恐らく通常は酒酔いまで至っているというのが当然だろうと思いますけれども、処罰の関係で申し上げれば、本罪が成立するときには別途酒酔い運転で処罰されることはないと考えております。
 一方、逆に酒気帯びあるいは酒酔いにも当たらないでこのアルコールの影響下ということが起こり得るのかということになりますと、これは逆にそういう事態は考えられないと思います。
○福島瑞穂君 「その進行を制御する技能を有しないで」ということについてお聞きをいたします。
 これは衆議院の議論では車庫から出てすぐぶつかったような場合は当たるという答えがあるんですけれども、「その進行を制御する技能を有しないで」というのの判定は結構難しいんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
 つまり、ある人が事故を起こした。そこで運転しなさいといって警察でまさか運転させるわけにもいかないでしょうし、その人の本当の技能というのは、あるいはその時点におけるその人の本当の技能というのはどういうふうに判定するのでしょうか。
○政府参考人(古田佑紀君) 衆議院の御議論、ちょっと私も正確に覚えておりませんが、要するに車庫から出たとかそういうことではなくて、全く、言ってみれば自動車というものの運転というのにほとんどなれていない人がたまたま車を買ってそういう事態を起こしたらどうなるかというようなお尋ねだったと思うんです。
 それはそれといたしまして、ここで言うその運転の技能、「進行を制御する技能を有しない」というのは、これは自動車の走行のさせ方ということについての基本的な知識、初歩的な知識を欠いていると。一番典型的に起こるケースをお考えになっていただくと少しイメージがしやすいかと思いますが、特に少年に多いんですが、車を盗んで、全然運転したこともない、しかし見よう見まねでとにかくやってみて、いろんな暴走事故を起こすとか、そういうようなケース、こういう場合が典型的に当たる。
 したがいまして、本人がそこまで、その時点までに運転というのを現実にしたことがあるのか、あるいは初めてであるのか、したことがあるにしてもそういう基本的な操作あるいは操作の知識というものを全く教えてもらったこともない、あるいは本人が実際にそういうことで練習したこともない、そういうふうないろんな状況を捜査した上で決めていくということになろうと思います。
○福島瑞穂君 言い逃れやひき逃げがふえるのではないかという点についてはいかがでしょうか。
○政府参考人(古田佑紀君) そういう御懸念を示される方もいらっしゃることは承知しておりますけれども、もちろん現在の法定刑でありましても、酒に酔って事故を起こす、そうすると、これは実際問題としては相当重い刑が科されるようになっているわけでございます。その上にひき逃げがつけばなおさらでございます。そういうことからいたしまして、法定刑を引き上げるという、今回こういう法定刑の引き上げをしたからといって、そのことが直ちにひき逃げを誘発するとかそういうことにはならないと考えております。
○福島瑞穂君 先ほど、酒気帯び、酒酔い、本罪の関係はどうなるのかというふうにお聞きをしたときに、例えば目撃証人や走行方法やというふうにおっしゃいました。運転技能についてもかなり限定的に考えていらっしゃるというのはわかったのですが、例えば警察で、あなた目の前でちょっと運転してみなさいといって運転させて、どれぐらいの本当に技能があるかどうかをチェックすることは、やはり非常に実は困難ではないかと思うんですね。そうしますと、被疑者の自白が偏重されるおそれはないか。
 つまり、もし逮捕された段階で、自分はすごく運転は上手なんだけれども、たまたま少しだけお酒を飲んでいたとか、いかようにでもというか、その自白が、どんな自白がとれるかによって、この危険運転致死傷罪が成立するかどうか左右されるのではないかと。これは衆議院の参考人の方からも出ておりますけれども、これは認定に困難が伴うという点から出てくる懸念ですが、いかがでしょうか。
○政府参考人(古田佑紀君) 確かに、本人は自分の状態をどういうふうに認識していたか、実際にどういうことが起こったかということについての本人の供述というのは重要な役割を果たすことは、それはそのとおりだろうと思います。
 ただ、今例として挙げられたようなケース、これは実際に捜査の段階でどうなるかということを確定的に申し上げることも難しいとは思いますが、どうしても必要であるならば安全な場所で、例えば本当に危険なことが起こるようであればいつでもそばに乗っている者がとめられるような自動車、教習所の自動車みたいなものを想定すればよろしいかもしれませんが、そういうものでそのテストをしてみるということも、これはあり得ないわけではなかろうと思うわけです。
 そういうことで、基本的にはやはりいろんな客観証拠、特に事故の状況、事故前の走行状況、可能な限りそういうことについての証拠資料を収集するということが必要でございまして、自白ということもそれはそれで重要ですけれども、やはり客観的な状況と矛盾するようなものであってはならないわけですから、そういうふうな捜査が行われるものと考えております。
○福島瑞穂君 本人の言い分によって変わるとか、自白の偏重にならないようにくれぐれもお願いいたします。
 ところで、これ以上被害を生じさせないために、運転している本人自身に問題があることも極めて多いでしょうが、一方でプロのドライバーの人たち、トラックやタクシーという人たちの過重労働の実態もあります。
 例えば、二〇〇〇年の十一月十六日、乗務中に心筋梗塞で死亡したタクシー運転手の遺族が、原因は過労だとして雇用主のタクシー会社社長を業務上過失致死容疑で大阪地検に刑事告訴したというケースもあれば、運転手の人に関して物すごい長時間労働で、トラックの運転手さんなんですが、過労死の認定、労災として認定されているケースもあります。
 つまり、もちろんお酒を飲んでというのは論外なんですが、非常に運転手さんたち、特にプロのドライバーの人たちの過重労働、過労死の事件が起きていますから、きょうは厚生労働省に来ていただいていますので、例えば自動車運転者の労働時間等の改善のための基準があったり、先日、道交法の改正によってドライバーに酒酔い・無免許運転等を命じたり容認する行為については法定刑が引き上げられていますが、もう一歩踏み込んで、会社に対して過重労働がされないようなことを厚生労働省はもっと踏み込んでやっていただきたいんですが、いかがでしょうか。
○政府参考人(鈴木直和君) 自動車運転者につきましては、労働条件の確保それから事故の防止、これは極めて重要と考えております。したがいまして、今御指摘がありましたが、労働基準法等の関係法律はもちろんでございますが、同時に指摘のありました自動車運転者の労働時間等の改善のための基準、これを告示として制定をしております。この中身は、単に労働時間というものだけではなくて拘束時間あるいは最大拘束時間、運転時間、そういったものを具体的に決めてそういったものを守っていただくということでございます。
 これにつきましては、そういった自動車運転者を使用している企業、そういったところを監督するに当たりましてはこういったものは必ず見るという格好でやっておりますし、それからそれぞれの地域の事情を踏まえながら、関係事業主あるいは荷主等に対してもいろんな要請をしているところでございます。引き続き、こういった活動を積極的にやっていきたいと考えております。
○福島瑞穂君 運転する人に問題があることももちろんあるでしょうが、とにかく被害を起こさないために、企業に対する指導などを厚生労働省もこれからぜひぜひ積極的によろしくお願いします。
 では次に、刑事訴訟法の一部改正についてお聞きをします。
 強制執行の実情についてなんですが、給料の差し押さえなどは具体的に今どれぐらいというか、行っていらっしゃるのでしょうか。これについてお願いします。
○政府参考人(古田佑紀君) 罰金等の徴収の強制執行は、これは御案内のとおり特別な規定があるわけではなくて、すべて民事執行法の規定によるわけでございます。
 したがいまして、民事執行法上、給与債権につきましては、これは差し押さえについて一定の制限がございますが、その制限の範囲内で強制執行をする場合に給与の差し押さえをするということもございます。
○福島瑞穂君 それで、給料の差し押さえをすると、現場の会社員の人たちだと会社にいづらくなるということも実際的には非常にあると思うんですね。
 例えば、私たち弁護士も、養育費を払ってください、でなければ給料を差し押さえますと言って、実は給料を差し押さえてしまうと、会社によっては何か非常に会社の中にいづらくなって、本人がやめてしまって逆に養育費が取れないということもあるので、差し押さえますよとは言うけれども、できたら自主的に払ってくださいみたいなことをやるわけですが、実際、給料を具体的に差し押さえているような、もしわかれば、ちょっと質問通告が実情と現状についてという漠然とだったので申しわけないんですが、もしわかれば教えてください。
○政府参考人(古田佑紀君) 強制執行、過去五年間で言いますと四十七件強制執行の手続をとっております。そのうち実際に強制執行まで至ったものは三十四件で、この中には給与債権に対するものも含まれておりますが、二件でございます。
 実際問題としては、今、委員がお話しになったとおり、強制執行するということで任意弁済というか任意の徴収が行われているケースもかなりの数に上ります。
○福島瑞穂君 百九十七条二項、捜査のための照会についてなんですが、プライバシーに配慮した運用のルールなどはどのようになされているか教えていただけますでしょうか。
○政府参考人(古田佑紀君) 裁判の執行との関係での照会でございますので、先ほども申し上げましたとおり、本人のプライバシーというのは十分考えなければいけない話で、基本的には、官公庁でありますとかあるいは銀行でありますとか、そういうところに照会はいたしましても、それをいわば公表するとかそういうことはしておりませんし、また先方の方でもそういうことを外に漏らすというふうな事態というのはこれまで私どもとしては承知していないわけで、そこら辺はできるだけプライバシーの保護に配慮した形でやっているわけでございます。
○福島瑞穂君 もちろん、払わない人の方が問題なわけですが、給料の差し押さえをしたりするとやはり、あるいはプライバシーの配慮がなされないと現実には別の被害が生ずることもあるので、プライバシーに配慮した運用のルールはぜひぜひよろしくお願いします。
 次に、刑事訴訟法の改正の中に、過料の裁判を検察官の命令によって執行することを定める法律についてという部分がありますけれども、過料というのは、例えば戸籍、例えば住民票を移して次に移転したのに出さなかったとか、出生届を二週間以内に出さなかったとか、さまざまな過料の制裁があるのは、割とうっかりしてしまったとか、例えば外国人の人が余りちょっとよくわからなくて出生届を出すのがおくれてしまったとか、すべてこれも過料の制裁があります。
 ですから、この過料への準用の必要性、つまり過料が命ぜられているケースというのは、うっかりという場合もあるし、物すごくひどいということではないことが多いので、このことについて準用の必要性が果たしてあるのかという点はいかがでしょうか。
○政府参考人(古田佑紀君) まず、基本的な考え方といたしまして、刑事訴訟法で、過料の裁判の執行について、これまた検察官の執行指揮で行うことになるわけでございます。それにつきまして調査権というか照会権がかかることになるわけでございます。そういたしますと、ほかに検察官の命令で執行すべき過料の裁判というのが幾つかありまして、これを別異に扱うというのはこれは逆に合理性を欠くわけでございます。そういうことから、検察官の命令によって執行すべき過料の裁判に限って同様の手当てをする。
 おっしゃるとおり、実際問題としては、住民登録を忘れてしまったとか、あるいはしばしばあるのが商業登記で役員の変更手続を怠ったとか、そういうふうなのが多いわけでございますが、いずれにいたしましてもこれらの過料というのはそう多額ではございません。したがって、実際問題としては任意納付されるケースも大変多いわけでございます。
 ただ、また逆に、およそ無視される方もいらっしゃるわけでして、そういうときにはやはりそれなりの強制執行ができるための照会権というふうなものを用意させていただく実益というのはあると考えております。
○委員長(高野博師君) 時間です。
○福島瑞穂君 過料について、くれぐれも乱用に、乱用というか、ならないようによろしくお願いします。
 以上です。
○柏村武昭君 皆さん、こんにちは。無所属の柏村でございます。
 十時から質問を待っておりまして、本日は刑法及び刑事訴訟法改正法案につきまして質問をさせていただきます。皆さんのような法律の専門家ではございませんので、私は国民の皆さんの目線に立った、共感とは何かを考えながら、質問を簡略にさせてもらいます。
 今回審査の対象となっております刑法及び刑事訴訟法改正法案につきまして、まず刑法では、第一に、飲酒運転やスピードの出し過ぎ、乱暴きわまる運転などによる悪質な交通死傷事犯について、国民感情にも十分配慮しながらその重罰化を行い、その一方で、日常生活の中でわずかな不注意から起こってしまうような軽度の交通傷害事犯については情状による刑の免除を認める、次に刑事訴訟法では、刑事裁判の執行に関して必要となる調査権限につき新たに根拠規定を設ける、以上のように承知いたしております。
 私は、今回、主に悪質な交通死傷事犯の重罰化という点に注目しまして、それに関連した形で、政府の交通安全対策全般につきましても当局の御見解を伺いながら、改正法案について質問をさせていただきます。
 まず、今回の刑法改正における最大の柱、悪質な交通死傷事犯の重罰化についてお伺いします。
 私は、ことしの春先まで八年間にわたり地元広島の民放局で夕方の社会情報番組のキャスターを務めてまいりました。八年というとちょうど二千回余りになるんですが、月曜から金曜までの間、地元のニュースだけではなくて全国各地から送られてきますビビッドな映像を毎日、生放送でお茶の間にお届けしてまいりました。その間、数多くの衝撃的な事件や事故を番組で取り上げたんですが、今でもやりきれない思いで心の中に刻み込まれている出来事があります。それが、あの全国的にも注目を集めました東名高速道路飲酒追突事故でございます。これは覚えていらっしゃる方も多いと思います。
 この事故の事実関係については委員の先生方も皆さん御承知のことと存じますが、たった一人の不届きなドライバーの軽率な振る舞いから、幸せに満ちあふれていた家庭が突然崩壊し、後に残された遺族にははかり知れない悲しみを与えたというものでした。
 この事件が一つのきっかけとなって、こういった悪質な交通事犯に対しては厳重に処罰を行うべきであるという国民的な合意、共感が生まれたものと理解しておりますが、そこで、この事件がどのようなものであったのか、そして判決が確定するまでどのような経過をたどり、判決ではこのような事犯に対する立法の必要性についてどのような指摘がされたか、改めて確認しておく必要があると考えますので、その点を法務当局よりお答え願います。
○政府参考人(古田佑紀君) 御指摘の事件につきまして、まず事案の概要を申し上げますと、大型貨物自動車の飲酒運転を常習的に行ってきた被告人が、平成十一年の十一月二十八日、東名高速道路のサービスエリアで多量のウイスキーやチューハイを飲むなどいたしましてお酒に酔い、足元がふらついて蛇行運転をするなど正常な運転が困難な状態で大型貨物自動車を走行させ、しかも料金所の係員からふらついていることが指摘されるなど、自分も正常な運転を行うことが困難な状態だということを十分自覚しながら高速道路を時速六十キロないし七十キロで走り続けた。その結果、前方注視が困難になって、自分の前を走っておりました普通乗用車に追突してその乗用車を炎上させ、これに乗っていた三歳及び一歳の女のお子さん二人を焼死させてしまうという、そのほかに五人の方を負傷させた、大変悪質かつ重大な事件であったわけでございます。
 この事案につきまして、東京地方裁判所は平成十二年六月八日に懲役四年の判決を言い渡し、検察官がこれにつきまして量刑不当を理由に控訴いたしましたけれども、東京高裁におきましても、平成十三年一月十二日、控訴が棄却されて判決が確定するに至ったという経過でございます。
 その中で、いわゆる立法措置に関しまして、東京高裁は判決の中で、軽々に裁判所が立法について意見を述べることではないがとした上で、処罰の公平性に考慮をしながら、かつ一方で国民感情にこたえるためには飲酒運転等により死傷事故を起こした場合に関する特別類型の犯罪構成要件の新設等の立法的な手当てをするのが本来のあり方であるように思われるということを述べております。
○柏村武昭君 また、この事例については後ほど触れたいと思うんですが。
 今お答えいただいたような判決の指摘、さらには、何よりもその背後にある国民の声を受けて今回の刑法改正への流れが生じたものと私は理解しておりますが、こうした一般には厳罰化と言われる動きに対しては、それで果たして実際に悪質な犯罪を防止できるのかとの見方もあるように思います。
 そこで、法務大臣に聞きたいんですが、今回の刑法改正は厳罰化で多発する悪質交通傷害事犯を抑止できることを前提とするものでありますが、これまでに厳罰化を行ったケースについて御紹介いただいた上で、それぞれのケースにおける抑止効果、具体的には抑止対象の犯罪の発生件数に顕著な減少が見られたのかどうか、明確にお知らせ願いたいと存じます。
○国務大臣(森山眞弓君) 我が国におきましては、昭和四十三年の刑法の一部改正によりまして、刑法第二百十一条の業務上過失致死傷等の罪の法定刑のうち、三年以下の禁錮とあった部分が五年以下の懲役または禁錮へと引き上げられましたが、これは当時、交通事故事犯が数の上で激増しただけではなくて、質的にも高度の社会的非難に値するいわゆる無謀運転による悪質重大な事犯が続出していたことからでございまして、これに厳正に対処する必要性に基づくというものでございました。
 これとほぼ同時期に交通安全対策基本法が制定されまして、交通安全施設の整備、交通安全活動の強化など総合的な交通安全対策が国、地方公共団体等によりまして総合的に推進されました結果、交通事故の発生件数や死傷者数が昭和四十五年から五十二年にかけて大幅に減少し、その後もしばらくの間低い水準に抑えられるなど、交通事犯の抑止に効果があったと考えております。
 今回の刑法の改正も、悪質かつ危険な運転行為による死傷事犯に対し、これにふさわしい処罰を可能とするものでございまして、悪質危険な運転行為を行う者に対する一般予防的な効果が期待できるなど、交通事犯の抑止に資するものと考えております。
 件数の変化を申し上げますと、昭和四十五年、交通事故死亡者数は一万六千七百六十五人でございましたが、五十二年には八千九百四十五人と減少しております。また、交通事故の発生件数は、昭和四十五年には七十一万八千八十件でございましたが、昭和五十二年には四十六万六百四十九件と大幅に低下しております。
○柏村武昭君 ありがとうございました。
 私も厳罰化にはおおむね賛意を表するものでありますが、しかしそれで果たして事態は解決するのか、問題の本質はもっとほかのところにあるんではないか、私にはそのように思われて仕方がありません。
 厳罰化は確かに必要ではありますが、刑罰を重くしただけでは再びあのような悲劇的な事故が起こってしまうのを防ぎ切ることはできないんではないか。もっと大事なことは、同じような事故を起こさないようにすること、それから被害者や御遺族の方々に対して手厚い保護の手を差し伸べること、この二つが大事ではないかと思います。
 そこで次に、こうした突然の悲劇を生み出している交通人身事故の発生状況について、その具体的内容をお伺いしたいと思います。簡単にお願いします。
○政府参考人(坂東自朗君) 事故の発生状況につきましてはただいま法務大臣の方からも御答弁がありましたが、特に私の方からは昨年中の交通事故の発生状況について御答弁申し上げたいと思いますが、発生件数は約九十三万二千件ほどでございます。死者数は九千六十六人、そして負傷者数は約百十五万六千人ということでございまして、これを十年前、平成二年と比較いたしますと、死者数は約〇・八倍ということでして、八〇%に減少してきていると。ただ一方、発生件数あるいは負傷者数というものは一・四倍という形で増加しているということでございまして、こういった傾向は本年に入りましてもほぼ同じような傾向を示しております。
○柏村武昭君 被害者や御遺族の皆様方に思いをめぐらせますと、ただただ悲しくてお気の毒であると言うほかないのが現実なんですが、こうした悲惨な交通犯罪を起こさせないために警察はいかなる対策を講じておられるのか、具体的にお願いしたいと思います。
○政府参考人(坂東自朗君) 交通事故を減少させるためにということで、ことしに入りましてからも政府におきましては第七次の交通安全基本計画というものを定めているところでございますので、私ども警察におきましても、そういった第七次の交通安全基本計画に従って諸対策を講じていくということでございますが、具体的にというお尋ねでございますのでもう少し敷衍して申しますと、警察におきましては、自治体、関係機関、団体との連携を図りながら、交通事故を科学的あるいは総合的に分析した上で、交通事故に直結する飲酒運転、著しい速度超過等の悪質危険な交通違反に対する指導、取り締まりの強化とか、あるいは信号機の改善、大型標識の設置等の交通安全施設の計画的な整備、さらには幼児から高齢者までを対象とした段階的、体系的な交通安全教育、さらに加えて、各種の広報媒体を活用した広報啓発活動等の安全対策を積極的に推進しているところでございます。
 今後ともこういった対策を各界各層と連携して強化してまいりたいと考えております。
○柏村武昭君 私、先月の法務委員会におきまして質問を行った際に、これからのIT社会における刑事法のあり方として、事後的な規制よりも予防的な規制に重点を置いていくべきであるとの提言を行ったんですが、法務大臣にもその旨御了解をいただいたと認識いたしております。
 悪質な交通人身事故の防止に限らず、犯罪予防一般について、法務省及び警察庁は両者ともどもしっかり連携協力して国民生活の安全のためにその持てる力を十分に発揮してもらいたいと思うわけでございます。
 さて、犯罪の予防という点に続きまして、今度は犯罪の検挙という点について質問を行いたいと思います。
 最近ふと気がついたんですが、以前ほど交通一斉検問というものにお目にかからなくなったという、私はそういうふうに感じるんですが、気になるのは駐車違反の取り締まりだけで。どうなんでしょう、私の友人に聞いても、二十年前はいっぱい交通一斉検問があったけれども、最近は全然ないなと。
 この間、私、広島の流川で久しぶりに酒を飲みに行ったら、駐車場が満杯でございます。酒を飲んだ人が全部その車に乗って帰っているとは言えないまでも、あの駐車場の前でやると全部一斉検挙になるんじゃないかと思うんですが、それすら何もやっていないという。これは大きな交通犯罪の小さな芽ではないかと思うんですね。
 各都道府県警察において交通一斉検問をどのように実施しているのか、当局に伺いたいと思います。
○政府参考人(坂東自朗君) 飲酒運転というものはやはり重大事故に直結しやすいということでございますので、この飲酒運転の取り締まりということにつきましても警察としては力を入れているところでございます。
 そこで、お尋ねの一斉検問についてでございますけれども、本年に入りましてからも、全国一斉検問というものを七月の初旬に、これはやはり飲酒運転を重点的に行いました。それからまた、十一月の、本月の初旬にはいわゆる自動車検問を実施したところでございます。そしてさらに、今後年末に向けて増加が予想されます飲酒運転を重点とした全国一斉検問というものを予定しているところでございます。
 それからまた、これは警察庁が主導している全国の一斉検問でございますけれども、各管区警察単位の一斉検問というものも行われておりますし、あるいはまた、県警単位あるいは署単位ごとにそれぞれ管内の実態に応じて一斉検問あるいは一斉飲酒取り締まり等を実施しているものと、このように承知しております。
○柏村武昭君 こういったことをまめにやらないと、我々は飲みに行っても必ず代行運転とかタクシーとか、正直者は一生懸命やっているわけでございますが、もうふらちなやからはあんなもの絶対大丈夫よと言って飲んで帰っているという、非常に危険な状態になるんではないかと。だから、もう私は抜き打ち一斉検問の方が効果があると思いますけれどもね、どうなんでしょう。
 話は戻りますが、例の東名高速道路飲酒追突事故の事例では、被告人であったトラックのドライバーが飲酒酩酊の状態で料金所を通過したこと、それからサービスエリアでどんどんと飲酒をしておりました。また、高速道路路上を蛇行運転していたことなどが目撃されていたようですが、結果としては、そのトラックをとめさせることはおろか確保することもできなかった。これは極めて重大な問題であると指摘したいんです。そこで確保していれば、あんな悲劇は起こらなかったわけです。
 今後、このようなケースが発生した場合に一体どのように対処していくのか、この点について当局にお伺いします。
○政府参考人(坂東自朗君) 委員御指摘のように、この交通事故につきましては、事前に一般の方から一一〇番通報を受けているところでございまして、そして道路公団の協力を求めて捜索活動を実施いたしましたけれども、そういった実施結果にもかかわりませず、事前に発見に至らなかったというように報告を受けているところでございます。
 そこで、通常、このような通報があった場合におきましては、通信司令室からの指令を受けて直近の警察車両が現場に臨場して事故を防止するための措置をとることとしているところでございますけれども、こういった事案を踏まえまして、道路公団等の関係者との連携をさらに強めまして、迅速かつ的確な措置を行って、この種事案の再発防止というものに努めてまいりたいと考えております。
○柏村武昭君 高速道路における交通違反の検挙対策についても聞きたいんですが、交通関係の犯罪、中でも高速道路で発生する交通違反には検挙に際してなかなかの困難があると思いますが、そうした厳しい環境の中で今後どのような対策なり改善策なりを講じていくおつもりなのか。高速道路用の対策、改善策を当局に伺いたいと思います。
○政府参考人(坂東自朗君) 委員御指摘のように、高速道路での交通取り締まりというのは、当然ながら一般道に比べて高速で走行しているということでございますので、やはり高度の運転技術が要求されているというところでございます。
 そこで、警察庁といたしましては、自動車安全運転センターというところがございますが、そこの安全運転中央研修所における委託教室として、高速隊員への教養訓練を行っている、さらには隊員の運転技術の向上を図る、そういった形で隊員の運転技術の向上を図っているというところでございます。
 そのほかに、今、機械での取り締まりといいましょうか、速度違反自動取り締まり装置といったような高度な装備資機材を整備するというふうなことによりまして、飲酒運転や速度超過などの重大事故に直結するおそれが高い違反の取り締まりを推進してまいりたいというふうに考えているところでございます。
○柏村武昭君 サービスエリアで飲酒などをやって、当然、出発していく場合にチェックできないことはないと私は思うんですが、こういったことも含めてしっかりと対策を立ててもらいたいと思います。
 これまでは交通犯罪の防止という観点からお話をさせてもらいましたが、さきにも申し上げましたとおり、万が一にも不幸な交通事故が発生してしまった場合、深い悲しみのどん底に落ち込んでしまわれた被害者や御遺族の方々に対して我々はいかなる手を差し伸べることができるのか、これが最も気になる点でございます。単に犯罪者を重い刑で懲らしめたとしても、生活そのものを破壊された被害者やその御遺族の方々にとっては実は何の解決にもならない。失われた生活の平穏をどのようにして再建していくのか、そしてこれからの生計をいかにしてはかっていくのか、これこそが最も大事なことではないかと思います。
 そこで、交通事故の被害者を含めた犯罪被害者に対してはいかなる配慮がなされているのか、また今後どのような取り組みを行う予定であるのか、そして今後の個別の事件処理に当たって被害者や御遺族の心情にはどのように配慮していくのか、法務・検察及び警察のそれぞれから説明をちょうだいしたいと思います。どうぞ、法務省からいきますか。
○政府参考人(古田佑紀君) 一般的に、犯罪の被害に遭われた方あるいはその遺族、こういう方々の保護あるいは配慮という点につきましては、平成十二年五月にいわゆる犯罪被害者保護二法を成立させていただきまして、被害者の方々などに公判記録の閲覧、謄写や、公判手続におきます意見陳述を認めるという制度が設けられました。また、被告事件に関する民事上の和解、これを刑事の公判調書に記載すればこれによって強制執行ができるようにするなど、損害賠償等の権利の実現ができるだけ容易になるような配慮をしてきたところです。
 一方、そういう法律上の問題、法制度の整備のほか、検察当局におきましても、事件の適正処理に努めると、これはもう当然のことといたしましても、いろんな情報の提供の御要望などもあることを踏まえまして、被害者等通知制度を発足させ、あるいはいろんな御相談に応ずるための被害者支援員制度などを実施しているところでございまして、今後ともこういうようないろんな制度及びその運用を充実させていきたいと考えております。
○政府参考人(坂東自朗君) 警察におきましても、犯罪被害者対策というものにつきましては非常に重要視して力を入れてやっているところでございまして、また交通事故の被害者につきましても、損害賠償制度の概要とか、あるいは各種相談窓口等をわかりやすく紹介したパンフレットを作成あるいは配布するなどの取り組みを行っているというところでございます。
 そしてさらに、ひき逃げ事件の被害者、あるいは交通死亡事故の遺族等に対しましては、当初の、先ほど申しましたような事案概要等の説明に加えまして、その後の捜査結果について連絡するなど、適切な被害者連絡に努めているというところでございます。
 今後とも、被害者あるいは遺族の方々の要望や心情に配慮した適切な被害者対策が行われますように、都道府県警察を指導してまいりたいと考えております。
○柏村武昭君 ありがとうございました。
 遺族にとってはやっぱり、加害者に対して確かに厳罰をお願いするという人もいっぱいいらっしゃいますが、たちまちの生活費が欲しいと、そういうふうな方もいっぱいいることをどうぞお忘れなく、しっかりとアフターケアの方も気にしていただきたいと思います。
 おしまいになりましたが、締めくくりとして、キャスター時代のこれも癖でございまして、まとめをしたいんでございますが、今後の交通犯罪対策の課題につき法務大臣の御所見をお伺いして、終わりたいと思います。どうぞ。
○国務大臣(森山眞弓君) 先生が先ほどもおっしゃいましたように、交通犯罪の減少、撲滅のためには、法律を改正したというだけではもちろん十分ではございません。交通に関する行政上の規制、制裁を初め、道路及び交通安全施設の整備、交通安全教育、その他各種の行政的な施策の充実を図るということもあわせて大変重要でございます。しかし、刑事的制裁の面におきましても、重大な事案や悪質な事案に対して厳正に対処するということも非常に大きな役割を持っているというふうに思います。
 そこで、この法律案をできるだけ早期に成立させていただきたいと考えておりますが、この法律案の成立、施行後は、今回の改正法を的確に運用することによりまして、交通安全に関する行政上の諸施策と相まちまして、交通事故及びその被害ができる限り少なくなるように最大の努力をしていきたいと思います。
○柏村武昭君 どうもありがとうございました。
 本日は、刑法及び刑事訴訟法改正法案について、厳罰化に関する点に関心を集中させまして幾つかお伺いいたしました。
 法務省及び警察庁におかれましては、交通犯罪の防止、そしてその鎮圧に向けまして今後とも万全の対応をしていただき、国民各層の期待に十分こたえていかれるよう大いに期待しております。
 近年、我が国の犯罪検挙率が急速に下がっている、先ほどちょっと事例がありましたが、それを考え合わせますと、この分野には十分な人員や予算の措置が必要であると思います。いかなる理由があっても犯罪検挙には万全を期さなくてはいけません。この点につきまして関係当局において適切に対応されることを要望し、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。
○委員長(高野博師君) 両案に対する本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
   午後三時二十一分散会