第154回国会 環境委員会 第8号
平成十四年四月十六日(火曜日)
   午後一時開会
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   委員の異動
 四月十五日
    辞任         補欠選任
     小泉 顕雄君     片山虎之助君
 四月十六日
    辞任         補欠選任
     片山虎之助君     小泉 顕雄君
     谷  博之君     藤原 正司君
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  出席者は左のとおり。
    委員長         堀  利和君
    理 事
                大野つや子君
                佐藤 昭郎君
                清水嘉与子君
                福山 哲郎君
                高橋紀世子君
    委 員
                愛知 治郎君
                小泉 顕雄君
                山東 昭子君
                西田 吉宏君
                真鍋 賢二君
                江本 孟紀君
                小宮山洋子君
            ツルネン マルテイ君
                藤原 正司君
                加藤 修一君
                福本 潤一君
                岩佐 恵美君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        山岸 完治君
   参考人
       独立行政法人森
       林総合研究所東
       北支所地域研究
       官        三浦 愼悟君
       野生生物保全論
       研究会事務局長  坂元 雅行君
       みどりのコンビ
       ナート研究所主
       宰        村尾 行一君
       獣害総合研究所
       代表       高木 直樹君
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  本日の会議に付した案件
○鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律案(
 内閣提出)

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○委員長(堀利和君) ただいまから環境委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 本日、谷博之君が委員を辞任され、その補欠として藤原正司君が選任されました。
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○委員長(堀利和君) 鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律案を議題とし、参考人から意見を聴取いたします。
 本日は、本案の審査のため、参考人として独立行政法人森林総合研究所東北支所地域研究官三浦愼悟君、野生生物保全論研究会事務局長坂元雅行君、みどりのコンビナート研究所主宰村尾行一君及び獣害総合研究所代表高木直樹君の四名に御出席をいただいております。
 この際、参考人の皆さんに一言ごあいさつ申し上げます。
 皆様には、大変御多用のところ本委員会に御出席いただきまして、誠にありがとうございます。参考人の皆様には忌憚のない御意見をお述べいただき、本案の審査の参考にさせていただきたいと存じますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 本日の会議の進め方でございますが、まず、三浦参考人、坂元参考人、村尾参考人、高木参考人の順序で、お一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。
 なお、御発言は、意見、質疑及び答弁とも着席のままで結構でございます。
 それでは、まず三浦参考人にお願いいたします。三浦参考人。
○参考人(三浦愼悟君) 独立行政法人森林総合研究所三浦であります。意見を述べさせていただきます。
 今回の、鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律を鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律へと改定する案に対して、私は、野生動物保全と管理の観点から、基本的に賛成の立場からの意見を述べさせていただきます。
 御承知のように、現在、我が国には野生動物と直接にかかわる法律が三つあります。一つは天然記念物を対象とする文化財保護法、希少な野生動植物を対象とする絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律、通称種の保存法、そして今回改定案が提出されている鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律、通称鳥獣法です。このうち、鳥獣法は、一、普通種を含む最も多くの野生動物種を対象とすること、二、人間と野生動物の多様な関係を保全と管理という二つの側面から包括的、総合的に取り扱うことの二点において、人間社会に対しても野生動物に対しても、最も強い影響力を持つ法律と位置付けられます。
 今回の改定は、大正七年に制定されたこの法律の片仮名書き文語体条文を国民に分かりやすい法律とするために平仮名書き口語体条文に改めるとともに、一、狩猟免許にかかわる欠格条項の改定、二、鉛散弾の使用制限区域の設定、三、捕獲手続の合理化など、時代の要請にこたえる改正となっています。そのうち、私は主に農林業被害の軽減と野生動物の保全、管理という視点から意見を述べたいと思います。
 さて、今回の改定には目的条項が含まれています。御承知のように、これまでは、鳥獣の保護増殖、有害鳥獣駆除及び危険予防を図り、もって生活環境の改善及び農林水産業の振興に資することを目的にするというように、この法律の目的を極めて限定的にとらえていました。それに対して、改定案では、「鳥獣の保護を図るための事業を実施するとともに、鳥獣による生活環境、農林水産業又は生態系に係る被害を防止し、併せて猟具の使用に係る危険を予防することにより、鳥獣の保護及び狩猟の適正化を図り、もって生物の多様性の確保、生活環境の保全及び農林水産業の健全な発展に寄与することを通じて、自然環境の恵沢を享受できる国民生活の確保及び地域社会の健全な発展に資することを目的とする。」と述べているように、一、農林水産業との共存を図るということ、二、鳥獣保護や保全を生物の多様性の確保、その一環として取り組むこと、三、国民の共有財として位置付け、自然環境や野生動物の保全への国民の強い要望などを積極的に取り入れていることなどの点で、その目的を極めて広い観点からとらえているという意味では極めて評価できると思われます。
 また、これに伴って、これまであいまいであった鳥獣を、広く鳥類及び哺乳類に属する野生動物と定義するように、海生哺乳類を含めすべての野生動物がこの法律の枠組みの中で保全と管理が展開されることが期待されます。それは、生物多様性の確保や希少種の保全、保護という点からも極めて重要と思われます。
 これらのことは、一見農林水産業との結び付きがより希薄になったり、保護にシフトした内容と受け取られがちですが、農林水産業の振興と生物多様性の保全、野生動物の保護とはそもそも矛盾し対立するものであってはなりません。
 生物多様性条約と、最近閣議決定された生物多様性国家戦略では、野生動物や多様な生態系を保全し、持続可能な利用を進めていくことが豊かな生活や文化の根源であり、将来世代への責務であることが強調されています。その意味では、鳥獣法が果たしてきた、野生動物を保全しつつ、一方では農林水産業被害を回避するという役割は一層重要で、このために野生動物保全と管理を行政の体制や制度として作り、定着させることが何よりも求められるのです。
 野生動物による被害問題を軽減するには、さくや電気さくなどといった防除手段の普及を図ることが最も大切です。例えば、エゾシカの被害は平成九年度には約五十億円の被害金額に達しましたが、その後、北海道は間伐材や形状記憶合金などを使用したさくを公共事業ベースで積極的に導入し、個体数調整の施策とも相まって、被害を大幅に減らしつつあります。この点では、農林水産省や文化庁と連携して、被害防除の施策を引き続き進めることが必要です。
 しかしながら、こうした被害防除だけの対応では個体数や分布域を急速に増加させつつある動物個体群を放置したままであること、さくをすべての地域に設置することは面的にも量的にも限界があること、そして、そもそも農林業は張り巡らされるさくの中で展開されるべきものではないことといった点で、対症療法にすぎないことが指摘されてきました。
 したがって、一方では増加しつつある野生動物の生息数や密度、分布、それらを科学的、計画的に管理していくことが極めて大切で、この点では前回の鳥獣法改定で導入された特定計画制度、これは野生動物管理の制度導入として大きなステップであったというふうに考えられます。今後も、シカやイノシシなどの加害哺乳類、一部地域では希少化したり保護獣と位置付けられ、なおかつ多大な被害を引き起こす猿やクマなどにはこの制度を適切に運用していくことが極めて大切であると考えられます。
 しかしながら、この計画制度は平成十三年度末で二十五都道府県、計二十九計画が策定されています。また、この制度によってこれまで目標達成が図られた地域は今のところありません。計画数が多いか少ないか、この現状が妥当かどうか、評価は分かれるところでありますが、私は、この制度の革新性、そしてそれまでの経緯を考慮すれば、決して少ない数ではなく、進展しつつある状況にあると位置付けたいと思います。
 その理由と、改善すべき点の幾つかを挙げてみたいと思います。
 大きな一つとして、この制度は何よりも野生動物管理を目的にした我が国では初めての制度で、まだ十分には理解が進んでいないこと、そして行政の整備が浸透していないことであります。
 この内容としては、一、特に科学的調査や説明責任を求めている点では専門性や施策の継続性が重要で、専門家の配置が進んでいないこと。この間、北海道や岩手県では、十分とは言えないものの研究機関を創設し、神奈川県、兵庫県では準備段階に入っていると聞いています。今後も多くの都道府県に広がることが期待されます。二、これに伴って十分な経験や知識を持つスペシャリストの行政官が必要でありますが、残念ながら、一、二年程度で交代してしまう機械的人事の弊害により育成されにくいこと。また、被害防除と個体数管理の施策は統合的、総合的に進めていくことが必要でありますが、往々にして農林部局と環境部局との連携が非常に行われにくいことであります。
 大きな二番目としては、これは私たち研究者の責任でもありますが、野生動物管理に関する技術や研究がまだ不十分で、緒に就いたばかりであること。特に、生息数の把握、あるいは適正密度や被害の許容密度の水準、これを明確にすること、あるいはまたフィードバックをどうするのかといったその手法あるいは被害評価、それから、より優れた防除や捕獲技術など、こういった分野ではこれまでほとんど蓄積がなく、研究と技術開発が待たれるところです。
 これらは、欧米の知見に大いに学びつつも、例えば猿類が先進国には全く生息していないという状況からも分かりますように、日本の条件や種類に合わせてこれから独自に開発していくことが必要であります。制度が先行しても、これから歩きながらの開発が求められますが、この点でもやはり研究者の数が絶対的に不足しています。野生動物の保全や管理を教える大学の数は極めて限られ、調査研究機関で働くこの分野の研究者の数はどんなに多くに見積もっても全国で百人に足りません。それは、この分野の体制が整備されているアメリカに比べ、優に数百倍の開きがあるのです。
 このように様々な問題点や課題があり、その改善を念じてやみませんが、鳥獣法とこの特定計画制度をより充実し、確実に定着させていくことが農林業と野生動物を共存させる唯一の選択肢であるというふうに考えられます。この点では、今後とも環境省、農林水産省、関係各省の特段の努力と配慮をお願いする次第です。
 これに関連して、幾つかの要望を述べたいというふうに思います。
 一つは、野生動物関連の法律には調査員の制度が書き込まれています。鳥獣法の中にも鳥獣保護員という制度があります。鳥獣保護員は密猟の取締りなど重要な役割を担っていますが、特に特定計画とのかかわりでいえば、加害動物の現状把握、個体数調整に伴う生息状況の変化、そしてその効果、そういった分野では大きな役割が期待されています。しかしながら、この鳥獣保護員制度は委嘱制度であり、ボランティアベースに依存している点では限界があります。私は、この機会に是非、鳥獣保護員制度を正式に位置付け、地域の野生動物に責任を持つプロの管理者として機能させていくことが必要と考えます。我が国は、自然環境や野生動物の調査や保全に情熱を持った若者や高い専門知識を有しながらも職を得ていない優れた人材がたくさんいます。こうした方々にふさわしい職を作り出すことが今求められているのです。
 もう一つは、特定計画や野生動物管理を展開していく上でハンターの役割は引き続き重要です。
 御承知のように、ハンターの人口は昭和四十五年をピークに年々減少し、現在ではピーク時の半数以下、約二十万人になっています。しかも老齢化が進行しています。ハンターは生態学的に見れば正に絶滅危惧種に当たります。このハンターの役割を将来だれが担うのか。公設個体数調整の組織の創設などが論議されていますが、まだ明確な展望はありません。しかし、少なくとも過渡的な措置としてハンターを減らさない行政的な配慮や努力が求められるところです。この点では、今回の改定では欠格条項の見直しとともに捕獲報告の整備がなされていますが、今後とも、免許の種別化、登録税の優遇措置など更に検討していく必要があります。
 このほかにも、生物多様性の確保と整合性を持つ鳥獣保護地域の設定の在り方の問題、外来種の排除や輸入規制の課題、更には放鳥事業の見直しの課題など、鳥獣法は今後も時代や社会の要請とともに見直され、改定されていく必要があります。これらの点については、時間の制約上省かさせていただきます。
 最後に、この機会にもう一点御検討をお願いしたい問題があります。今後、特定計画が定着し、科学的、計画的に個体数調整や個体群管理を進めていけば農林業被害の問題は抜本的に解決できるだろうかという大きな問題です。
 我が国の鳥獣による農林業被害の動向を振り返ると、昭和四十年代のカモシカ林業被害から始まり、それは昭和五十年代になるとシカの林業被害に取って代わり、昭和六十年代以降は、シカに加えてイノシシ、猿、そしてクマなどの農業被害が合流し、拡大の一途をたどってきました。端的に言えば、一種から多数種へ、林業から農業へ、山から里へとの構図が描けます。
 農林業被害が増加する理由には様々な要因がありますが、この中に、中山間地域における過疎化と老齢化、それに伴う人間活動の全面的な撤退という社会的要因は無視できません。昭和六十年代から現在までの二十年の間に、人口減少や担い手不足から全国市町村の約三〇%以上で集落が消失しています。この結果、耕作地の放棄や林地への転換が進み、多くの地域が野生動物の生息地にそのまま置き換わっていると言っても過言ではありません。しかも、放棄された農耕地や果樹園は野生動物にとっては格好のえさ場であり、生息数は更に増加し、被害を拡大し、被害がまた更に生産意欲と居住意欲を奪い、過疎化を進行させるとの悪循環が作られています。
 かつて中山間地域には総人口の約四割が生活し、そこには旺盛な生産意欲と人々の活発な活動に満ちあふれていました。農業生産は里山や森林と結び付き、野生動物との間にも強い緊張関係が存在していました。しかしながら、今日、こうした状況は完全に崩壊し、野生動物の攻撃を跳ね返す主体や力量は大幅に消失しつつあります。このような現状を基本から見直し、立て直すことなしに被害問題は本当の意味で解決できる展望はありません。
 野生動物保全や管理の課題には、生物多様性や生態系の保全の課題とともに、農林業の在り方そのものが問われていることを強調し、意見を終わらさせていただきます。
 最後に、野生動物保全の課題が国会の中でこのように広く議論されることに心からの敬意と感謝を表明しつつ、終わりたいというふうに思います。
 御清聴ありがとうございました。
○委員長(堀利和君) ありがとうございました。
 次に、坂元参考人にお願いいたします。坂元参考人。
○参考人(坂元雅行君) 野生生物保全論研究会の坂元です。
 私は、野生生物の実効的な保全という観点から、本法案には基本的に反対の立場で意見を申し述べさせていただきたいと思います。(OHP映写)述べたいことは多々ありますが、時間の関係上、大きくは三点意見を申し述べさせていただきます。
 まず一点目は、狩猟の定義に関してです。本法案の第二条にこの点が規定されております。この狩猟の定義にはこの法律の在り方をどうするかという大変基本的な問題が含まれております。私はここで、被害防止のための駆除を担うべき者はだれかという問題設定をいたしました。
 これまで、狩猟というものはもう明治のころから職猟、つまり肉や皮を取ってそれを販売するなど、それを生業とする職業としての猟と、それから遊猟、スポーツハンティングに区分されてきました。しかし、明治の中ごろにはもうこの職猟というものが成り立たなくなってこういう区分は廃止をされます。いわゆるまたぎなども消滅して職猟というものはなくなっていったわけです。その一方、スポーツハンティングの方は、ブームなどもありまして狩猟者人口は増えてまいりました。しかし、それも一九七〇年代の後半をピークとして狩猟者は減少し、趣味としてのスポーツハンティングも凋落していったわけです。
 ただ、その中で農林業被害などを防止するための駆除というものをだれがどう行ってきたかですが、基本的には本業ではなく、こうした私的なスポーツハンターたちが言わば片手間に行ってきたというのが実態であります。それが、今日にもその体制が引き継がれております。
 では、今日これから被害防止のための駆除の担い手はだれであるべきなのでしょうか。
 被害問題というものは、生物多様性の保全と産業発展の両立という公共政策の問題です。そうであるとすれば、基本的には、そうしたことは民間の狩猟者ではなく公的機関が担うべきだと考えます。
 その実質的な理由を二点ほど申し上げたいと思います。
 一つ目は、被害防止のための駆除は本来、遊猟、スポーツハンティングの片手間に行えるようなことではないということです。被害防止のための駆除の目標としては、まず野生鳥獣の地域個体群の保全が掲げられなければなりません。また、被害に対する対応というものが、単なる応報ではなく効果的な被害防止が目標とされなければなりません。これらは、いずれも高度に計画性や科学性が担保されたものでなければなりません。
 理由の二番目です。
 これまで被害防止のための駆除というものが遊猟者にゆだねられてきたために、私的に商業利益を得るために、有害鳥獣駆除の名の下、非狩猟鳥獣、狩猟の対象にはなっていない鳥獣を遊猟したり、あるいは狩猟期間外に鳥獣を遊猟するということがまかり通ってきました。その具体例の一つがニホンザルです。これは非狩猟獣を実質狩猟してきた例として挙げられます。実験動物として転売することを意図しつつ、有害鳥獣駆除がなされてきたわけです。もう一つの例はクマです。これは、猟期外の遊猟の例として挙げられると思いますが、クマの胆のう、クマノイですとかユウタンとか呼ばれますが、それを取ること、そして売ることを意図しつつ有害獣駆除がされてきたというこれまでの経過があります。
 こうした問題意識から今回の改正案の定義を眺めてみますと、そこに大きな問題があることに気付かれます。それは、この狩猟鳥獣と狩猟の定義を見ると、狩猟というものは肉や毛皮を利用する目的だけではなく、農林水産業や生活環境の被害を防止する目的の捕獲、さらには生態系に対する被害を防止する目的の捕獲も狩猟に含めてしまっているわけであります。これは、被害防止のための駆除について、民間狩猟者への依存体制を今後も温存するものと言わなければなりません。また、このように今回の改正で定義を付けてしまうことは、科学性、計画性、そして適正さを担保する公的機関による捕獲システムへの将来の移行の芽を摘んでしまうのではないかと強く危惧されるわけであります。
 そこで、私としましては、狩猟、狩猟鳥獣の定義は限定的にされるべきだと考えます。端的に言いますと、狩猟というものは遊猟に限定し、被害防止の目的の駆除というものはこの定義からは外すべきだと考えております。
 二点目のお話をさせていただきます。
 それは、高度に商業利用される鳥獣の効果的な保護をどう行っていくかという点についてであります。
 ここで、クマの例を挙げさせていただきたいと思います。現在、クマについては過剰な捕獲が進んでおります。その典型的な例として、東北地方などでは春グマ猟という猟の仕方が伝統的に行われて、今日にも続いております。これは、春、クマが冬眠から覚めた後、クマが出没すれば恐らく農林業あるいは人身への被害があるだろうという予測の下に、予察駆除という名前で、クマが冬眠から覚めて間もないころ、冬眠穴の近くまで山に入り込んでクマを撃つというやり方です。これは猟期外でありますので、有害駆除ということで行われているわけです。また、イノシシなどを有害駆除するためにくくりわなという、手足などをワイヤーでからめ捕るわなが仕掛けられますが、このくくりわなに相当数のツキノワグマが混獲されております。これが一定の割合で掛かるということは、ハンターの間ではこれはもう周知のことであります。
 その結果、現在、日本では北海道にヒグマ、本州以南にツキノワグマが生息しますが、合わせて約一万頭のクマのうち年平均千七百五十頭が狩猟あるいは有害獣駆除で捕殺されております。先ほどお話ししました混獲されたものはここのデータに現れておりませんので、これを含めればそれ以上ということになります。
 この過剰なクマの捕獲の背景には、先ほども触れましたクマの胆のう、ユウタンの高い商業価値があるわけであります。このユウタンは、このように殺されたクマを切って、腹を切って取り出されるわけです。そして、それがこのように乾燥されます。乾燥されたユウタンは、その原形のままで漢方薬店で医薬品として販売もされます。また、この乾燥ユウタンの中から取り出された結晶状あるいは粉末状の胆汁、これもユウタンと呼びますが、このユウタンもその姿で漢方薬店で販売されます。しかしさらに、多くの量のユウタンというものは日本の製薬業者の製薬原料として使用されており、それが含有された製剤が漢方薬店で広く販売をされております。
 日本におけるユウタンの潜在的な需要は、年間二百キログラム程度と言われております。これは少ない数字に見えもしますが、しかし、これは実はクマ約一万頭分の量に当たります。クマ約一万頭といいますと、日本のクマの全生息数にも匹敵する数になります。
 野生生物保全論研究会では、国内におけるユウタンの流通について調査を行いました。皆様のお手元に配付してあるレポートはその調査結果でありますが、この調査結果によりますと、漢方薬店、これはこの円グラフの左側ですが、漢方薬店で流通しております先ほどの原形や粉末のユウタンの三三%は日本の国内のクマが供給源になっていることが分かりました。それより大きい緑側の部分は、これは海外の野生のクマのものです。それから、更に大きな量を使う製薬業者の方でも一二・三%は国内の野生のクマのユウタンが使用されていることが分かりました。
 国内の野生のクマが殺されまして、そこから取り出されるユウタンが一体どのぐらいの値段で取引されているかですが、これは物によって大きさが異なりますので幅がありますが、数十万円から百数十万円でハンターから漢方薬店などに取引されるということです。しかし、問題は、これらのユウタンの取引に対して、現行法上、全く規制がないということであります。
 そこで、今回の改正案の条文を見ますと、そこに販売禁止鳥獣についての規定がございます。そこでは、販売されることによりその保護に重大な支障を及ぼすおそれのある鳥獣であって環境省令で定めるものは販売してはならないとあります。これは、これまでヤマドリについて適用されてきた条文ですが、適用対象が一般的に鳥獣に広げれられたこの機会に、クマ、そしてやはり商業利用されるニホンザルについてこそ適用されるべきだと考えます。この販売禁止鳥獣のこの規定をいかに実効的に使うかについては、時間の関係上ここでは省かせていただきますが、御質問いただけば、その点についても申し述べたいと思います。
 三番目の問題です。それは、鳥獣保護法が保護する鳥獣の範囲についてであります。
 鳥獣ですから、これは鳥と哺乳類ということになりますが、従来は明確な規定もなしにモグラ類、ネズミ類、そして海生哺乳類を法律の対象から除外してきました。今回の改正案では、この除外の仕方に段階を付けた上でこの点を明文化しております。この中で、特に本日申し上げたいと思いますのは、法律の適用自体を丸ごと除外する、この八十条に関してであります。特に、海生哺乳類について適用除外が広く認められてしまうのではないかという危惧を私どもは持っております。
 この規定の該当部分を見ますと、「他の法令により捕獲等について適切な保護管理がなされている鳥獣であって環境省令で定めるもの」と規定されております。この趣旨を考えますと、ある種の法律が適用されていれば、本法律の目的、つまり鳥獣の適切な保護管理ということですが、これが達せられるので本法律を重ねて適用する必要はないと、こういう趣旨の規定だと思います。
 そこで、この鳥獣保護法における適切な保護管理とは一体何であろうかということであります。この点、本改正案一条の目的規定から考えますと、少なくとも農林水産業の健全な発展に寄与しつつ生物多様性の確保を図る観点からの保護管理と、このように理解されなければなりません。そこで、海生哺乳類について考えますと、海生哺乳類は陸生哺乳類よりも絶滅のおそれのある種の割合が高い点で極めてその保護については問題が大きいものです。
 この点について扱っているのは水産関連の法律ですが、従来の水産関連法の中でこの海生哺乳類がどう扱われているかを見てみたいと思います。
 まずは、肉などとして消費される資源として、あるいは専ら有用漁業資源への害獣として扱われております。後者の場合には、それ自体の資源管理については顧みられることはありません。そして、実際にその水産関連の法律の目的を見てみますと、まず水産資源保護法という法律がありますが、そこには、水産資源の保護培養を図り、漁業の発展に寄与すると書かれてあります。また、漁業法という法律があります。漁業調整機構の運用によって水面を総合的に利用し、もって漁業生産力を発展させるとあります。これを見ますと、生物多様性確保の観点からの野生鳥獣の保護管理は望むべくもないと言わなければなりません。法律の目的は全く異なっております。
 実際、海生哺乳類の具体例を見ますと、沖縄で有名になりましたジュゴンや鯨の仲間のスナメリなどについては水産資源保護法で捕獲が規制されているのみ、トド、そして鯨・イルカ類になりますと漁業法で捕獲割当て数が定められているのみ、ましてアザラシ類になりますと何らの法的対応もなしという現状であります。
 その中でも具体例として御紹介したいと思うのは、トドについてであります。これは、今緊急の問題となっております。皆様のお手元に、北海道海獣談話会というトドやアザラシ類の研究者団体が昨日、緊急声明を出しておりますが、それを配付してございます。鳥獣保護法からトドを除外することに反対するという趣旨の声明であります。
 この声明の内容を中心に、その概要をごく簡単に御紹介したいと思います。
 千島列島及び北方四島で繁殖しているトドは、一九六〇年代には二万頭いると言われておりました。ところが、その後の四十年間でそのわずか四分の一、五千頭にまで数を減らしております。環境省でも水産庁でも、それから研究者団体の日本哺乳類学会でも絶滅のおそれがあるという評価がここでされております。
 このトドについては、特にこの適用除外の規定に当たって、本改正案が適用されないということがないようにここで強く訴えさせていただきたいと思います。このトドの問題に関しても、御質問もしいただけるようでありましたら少し具体的に申し述べさせていただきたいと思います。
 ありがとうございました。
○委員長(堀利和君) 次に、村尾参考人にお願いいたします。村尾参考人。
○参考人(村尾行一君) 村尾でございます。
 私は、七〇年代の末から、初めは文化庁の委託で、次いでは被害者団体の依頼でカモシカによる森林の被害の実情、経済的損失、そして対策に関する調査と提言を行いました。そして、最近では、三浦参考人と御一緒に、本年三月まで林野庁の森林に対する動物被害対策調査検討委員会の委員を仰せ付かっておりました。また、二度にわたる留学で、ドイツ、スイス、オーストリーでの森林を舞台とする人間と野生鳥獣の付き合い方を見てまいりました。こうした経験を踏まえ、今回の鳥獣保護及び狩猟法改正に基本的に賛成の立場から、同法改正についての私なりの意見を申し上げます。
 基本的に賛成ということは、部分的には異論があるということでございまして、それはおいおい申し上げますが、まず最初に申し上げたいことは、改正法案の第一条にあります生物の多様性の確保ということに疑義があるということです。
 生物の多様性とは何か。これは概念として熟してはいません。様々な解釈が可能であります。分かったようで分からない用語です。一番常識的なのは生物の種類の多様性でしょうが、これは熱帯、亜熱帯、せめて暖帯までは言えても、温帯、亜寒帯、寒帯、更には砂漠等の乾燥地帯がこの概念からはこぼれてしまいます。特に日本じゅうの少なからぬ地域が外れてしまうのです。三浦参考人が言われたように、人間との関係の多様性なら私にはある程度理解できます。
 いずれにしても、法律、とりわけ本法案のような実体法に入れ込めるほどに熟した用語ではないのです。極論すれば昔の治安維持法での国体のようなものです。しかも、治安維持法より悪いのは、第二条以下でこの生物の多様性の確保を受けた条項がないのです。概念が熟していないものは立法後独り歩きを始めます。後世の行政官が恣意的に解釈して運用する危険性なしとしません。概略、以上のような理由から、私はこの文言には賛成できません。
 また、おいおい申し上げるその他の疑問点の背後にある私の立法観を先に申し上げます。それは、具体的、詳細的な事項であっても極力法律で明定すべきであって、政令、省令といった行政命令、ましてや通達とか行政指導とかに任せるべきではないということでございます。こうすることは実質的に立法権を行政府に渡してしまうからでございます。そういう意味で、本法案は大いに法律で明定しておられるという姿勢が見え、私は大変結構なことだと思っております。
 委員の先生方には先刻御案内のとおり、野生鳥獣による農林業被害はゆゆしい状態にあります。そのための第一の対策は個体数調整、すなわち狩猟であります。鳥獣の保全と狩猟とは一見対立するもののように思えますが、実はそうではありません。鳥獣の保全並びに狩猟と、森林の保全並びに利用とは原理を同じくしています。すなわち、両者とも保続、保ち続けることですが、これが大原理であります。ですから、ドイツ等では林業と狩猟、森林の適正な利用と野生生物の適正な管理はほとんど同一のものとして扱われてきております。この保続とは、まず適正資源量を押さえて、その適正な量の資源が増殖する分、金融でいえば元本と利息の関係ですが、利息分だけ利用する、つまり伐採する、狩猟するということです。野生生物等の適正な資源とは、最低ではそれが絶滅に瀕しない量であり、最大ではそれによる被害が人間にとって我慢できる程度の量であります。
 こうすると、資源、元本は減りません。昨今流行している表現を使えば、持続可能な利用、持続可能な狩猟であります。そのためには、適正資源量とそれからの増殖量を計測し、確定しなければなりません。これは、改正法案の第一条はもちろんのこと、第二章及び第三章の基礎ないし基準となる数量であります。具体的に言えば個体数調整の根拠となるものですから、今後、大いに調査研究が推進されなければなりません。それを法律で担保しておくべきです。
 今回の法改正の眼目は四点だと思います。
 第一が、文章の平仮名書き、口語文化でして、法治国家では万民が法律を理解しておかねばなりませんので、分かりやすい法律にすることは大賛成です。むしろ遅きに失したうらみがあります。
 第二は、狩猟免許の欠格事由の明確化でして、できるだけ多くの障害者の社会参加を促進すべき今日、誠に結構なことであります。これまた遅きに失した感があります。
 第三は、指定猟法禁止区域の設定です。環境省の説明資料によりますと、水鳥の鉛害、鉛の害を防止するために、鉛の散弾による狩猟の規制が具体的、実際的目的です。これはこれで至極当然でありますが、対象を水鳥に対する散弾だけに限定してよいものか。
 前回の法改正の際、平成十一年四月二十日の本院国土・環境委員会での堂本委員と真鍋環境庁長官との質疑応答で、この鉛弾が問題になったのはオオワシ、オジロワシ、ワタリガラス、ツル、エゾシカでした。長官は堂本委員の意見に対して、「先生のお考えと全く同一でございます。」と明言され、さらに、その対処も二年以内、できたら一年で事を進めさせていくよう指示いたしますと答弁されています。この答弁によりますと、早ければ平成十二年、遅くとも十三年の春には立法等、施策が講じられているはずであります。
 第四が、捕獲鳥獣の放置の禁止であります。これももっともなことでありまして、公衆衛生上も鳥獣死体の放置はゆゆしき問題であります。
 実は、この問題でも前述の委員会で、堂本委員の質問に対して真鍋長官は、「大臣が二年以内ということで一年以上のところでも頑張ってやっていこうということを命じると言ったのでありますから、」、大臣を信用してもらわなければならないと答弁されています。
 この死体放置は、決して搬出困難という物理的、経費的な事情からだけ行われることではありません。現在はいざ知らず、私がカモシカの被害にかかわったころは、個体数調整のために射殺したカモシカはその場に埋没という名の放置が当局によって指示されていました。カモシカは天然記念物であると同時に、価値の高い天然資源でもあります。その肉や毛皮はもちろんのこと、角もしっぽもつめも使用価値が高いのです。しかし、当局は個体数を調整したカモシカの利用を禁止しました。鯨の場合は、調査用捕鯨で捕獲した鯨の肉等は商品化されておりますのに、当局、さらにはカモシカ保護団体の論理は理解不能でした。
 シカにいたしましてもイノシシにいたしましても、単に有害鳥獣の次元に閉じ込めてしまうのではなく、天然資源の高度利用という次元でも把握する必要があります。集約的で多様な商品化を推進することです。つまり、個体数調整と高度な活用とは同じことの裏と表の関係にあるのだと私は思います。これは、改正法案の第一条の具体化の一環であると思います。
 この点に関しては、日本はまだ粗放かつワンパターンです。それが端的に表れているのが野生鳥獣料理のお粗末さです。野生鳥獣に係る食文化の先進国であるドイツ、スイス、オーストリア、イタリア、そしてフランスに大いに学ぶべきところがありまして、このことにかかわる施策の策定と、その強力な推進が待たれます。それが死体放置の動機を大いに弱め、またハンターの減少に歯止めを掛けることになります。
 次に、鳥獣の生息環境の適正な管理についてお話しいたします。これは、森林施業と直接関係するものです。
 結論的に申しますと、第一に、木の種類の多い混交林を造成保育すること。現状から申しますと、広葉樹の多い森林を造成保育することです。ですから、第二に人工造林と天然更新とを併用することです。第三に、いろいろな背の高さと様々な年齢の木から成る複層林を造成すること。第四に、伐採するまでの年数を長くすること。私は、標準として百年プラスマイナス二十年を提案したいのです。それ以上が長伐期でして、これまた賛成でございます。そして、第五に抜き切りを頻繁に行うこと。第六に、施業単位を小さくすることです。
 こうしたコンセプトの森林施業は、今日、林野庁が推進しているところで、私は大変結構なことと喜んでおります。しかし、これの実施は経営的に負担が大変重くなります。ところが、財務事情の苦しい国有林が、例えば生態系保護地域設定、これは私、委員として参画いたしました、また、緑の回廊の設定等、大いに努力していることは涙ぐましいほどです。私有林に対しては、財政的に特段の助成が講じられねばなりません。
 とはいえ、こうした森林施業は、結局は産業としての林業にプラスになることです。この点は特に力説しておきます。経済対公益という対立軸で理解すべきではありません。
 最後に、環境省に要請したいことがありますので申し上げます。前回の法改正の際に本院で附帯決議された事項の幾つかが、今回の改正案には盛り込まれなかったことです。このことを含めて、残された課題には対策を早急に検討していただきたいとともに、特定鳥獣保護管理計画の実施など野生鳥獣の保護管理に当たりましては、林野庁を始め農林水産省との連携を従来に増して密にしていただきたいものであります。
 以上で私の意見陳述を終わります。御清聴ありがとうございました。
○委員長(堀利和君) 次に、高木参考人にお願いいたします。高木参考人。
○参考人(高木直樹君) 高木です。よろしくお願いします。
 私は、獣害総合研究所というのを、この名前で約十年やっていまして、こういった名称を聞いたことが皆さんないと思いますが、農林業の被害対策の研究をずっとしております。主に猿、イノシシ、クマの被害を研究してやってきました。これまで行政とのかかわりとしては、被害防除システムの開発とか、あとは特定鳥獣保護管理計画の策定の助言とか、実際の現場の調査等をやってきました。
 今回、私がこの法案で何を話すかといいますと、違法捕獲について話をしていきたいと思います。いろいろとこの法案の中ではお話ししたいこともあるんですが、ニホンザルの違法捕獲について話をさせてもらいます。
 前の方のスクリーンを見ていただきたいと思います。(OHP映写)ここからずっとスクリーンをパワーポイントでやっていきたいと思います。
 まず、どんなにこの鳥獣保護法に、こういう許可を取らなきゃいけないとか、被害がなければとか、特定計画で定めなければと書いてあっても、農家の方というのはそんな法律は基本的に知りません。役場の方もほとんど知りません。ですから、憎しみ捕獲と言って、生産者ですね、猿やイノシシ、クマの被害に遭っている方が独自にくくりわな、これは兵庫県篠山市ですが、この先にわなを仕掛けてありますと堂々と書いています。これ見つかったら、これは捕獲行為で摘発されなきゃいけないんですが、知っていて、だれもこんなものは摘発しません。役場も鳥獣保護員も知っています。
 こちらは、徳島県でミカン農家が猿やハクビシンの被害に遭っているということでトラ挟みを、ホームセンターで手軽に買えるのも問題ですが、捕まえて殴り殺すというようなことをやっている状況です。こういうのを憎しみ捕獲と言います。
 次、お願いします。
 今度は、こういった有害駆除の歴史は長くて、許可の制度だとかいろいろ変わってきていると思うんですが、憎しみ捕獲はどんどんどんどん地域では習慣となります。私はそういうものを習慣捕獲と言っていますが、ここは地元の方が、この方が捕獲したわけですが、実際は狩猟免許も持っていない。このおりはまた別の人ですが、このおりの所有者も狩猟免許を持っていない。これは何のおりかというと、猿を捕まえるためのおりで、長年使っていると。私のところ、私がこういうのを発見しましたので、現場に行って本人に聞いてみると、無許可で何が悪いというようなことです。捕まえた猿をどうするのかといったら、当然殺すぞというようなことを言っているわけです。猿は非狩猟鳥獣ですし、これを捕まえるためには学術研究であるとか特定計画であるとか有害鳥獣駆除の許可が必要なんですが、そんなものは関係ないというのが現場の実情です。ですから、今警察が取調べしておりますが、かなり開き直っている状況です。これは三月の状況です。
 次、お願いします。
 次に、猿は食べたりとか一般個人の方は販売したりということは考えていません。基本的に愛玩でやっています。これは、これもホームセンターで売っているちょっと大きめのおりですが、こういったものを買ってきて、何の許可も得ずに捕まえると。捕まえて飼育して、大きくなったら手に負えないので山に放すというような現状があります。こういうのも堂々と道端でこういったおりで飼っていますので皆さん知っているわけなんですが、全く摘発されることはありません。これは三月の十四日の状況です。
 次、お願いします。
 続きまして、これは要望捕獲というふうに私は言っているんですが、有害駆除では物足りないということで、予察駆除ですね、有害駆除の中の予察駆除、被害が起こることが予想されるのでどんどん捕らせろというような地元の考えですが、これは役場ぐるみですけれども、たくさん猿はいるんだということを証明するために実績を上げようということで、被害がなくてもどんどん捕獲をしていると。これは四月の状況です。これはもちろん許可ないですから、放獣させています。
 次、お願いします。
 これは二月の状況ですが、これは密売捕獲というふうに言っているんですが、これは、違法捕獲の中には実験施設への譲渡とか、そういったものがあるんですが、日本には、二年ぐらい前に騒ぎになりましたが、二か所、ニホンザルを販売している業者がいます。そういったところの一つが岐阜県、もう一つは熊本県ですが、岐阜県にありまして、その周辺の地域ではどういうことが起こっているかというと、このおりも全く許可は得ていません。ここに辛うじて付いていた、上に許可証を張り付けてありますが、これはほとんど字が読めませんが、十四年に猿が捕獲されたんですが、許可証の標識の許可期限は平成十一年度のものであるということで、許可なんかもう関係ないと。役場も一緒に分かっていてやっています。
 更に良くないのは、捕獲された猿を一頭一万円で買わないかというようなことで業者に連絡していると。たまたまこのときは岐阜県の業者が連絡がつかなかったということで、何を思ったか私のところに連絡してきたものですから、すぐに摘発ということになりました。これは密売目的の小遣い稼ぎの捕獲ということになります。
 次、お願いします。
 次に、これ結構多いんですが、無目的捕獲というふうに私は言っています。これは役場というのは、役場、市町村ですね、おりを被害があるときに購入するわけですね、猿でもイノシシでもクマでも。そういうものを使わなきゃどうするんだというような地元からの意見がありまして、被害がなくても毎年恒例で現地に置いて捕獲を続けるということです。市町村が今現在、有害鳥獣駆除の許可を出せるようになっていますので、市町村の担当者というのは、いつでも出せるやということで、おりが一年じゅう開いていても何も気にしないわけですね。ですから、これもそうでしたが、四月七日、この間ですが、猿が捕まったということで、よくよく調べたら許可をだれも取ってなかったということで、県や市町村、それから警察等が行って放獣したということになっています。
 次、お願いします。
 次に、組織的な違法捕獲。これは、医学、猿を利用している実験、猿を利用した実験をやっている大学等が近くにある場合、こういったものが習慣となってやられています。これはこの後新聞で、新聞記事をお見せしますが、滋賀県の例です。
 滋賀県には滋賀医科大学というところがありまして、そこはニホンザルを実験に利用しています。それをいいことに、引き取ってくれることをいいことに、市町村は生け捕りをどんどん行いまして、そのたびに大学に持っていって引き取ってもらうということをやっているわけです。このときには何が違法なのかというと、有害鳥獣駆除というのは、これは滋賀県の場合ですが、おり捕獲は県の権限です。銃の許可は市町村です。銃だとたくさん捕れないわけですね。手間も掛かる。だから、おりを使ってたくさん捕ろうとする。でも、おりを使って捕ろうとすると、被害がない時期には許可が下りないということで、これは今までで初めてだと思うんですが、学術研究を申請して許可を得て医学実験に回しているというふうな状況、たまたまこれを私発見しまして、その日に県と相談しまして、すぐに警察に通報し、この捕まっていた三頭はその日のうちに放獣しました。
 次、お願いします。
 更に余罪があるだろうということで、今度大学側を調べてみたところ、この町からだけで五頭が行っていた、五頭が入っていた。大学側は、無許可で捕獲したものを飼育する場合は飼養許可は出ないわけですが、それがないことを知っていて半年以上にわたってこういったものを飼育していると。何で飼育していたんですかというと、いや、しようがないから預かっていたと。そんなの通じるわけないだろうというふうに私は思うわけです。そういうのが発覚しましたので、二月にその猿たちを元の群れに帰すということで一か月、二十日ですか、掛けてリハビリを行って、三頭とも無事群れに帰しました。無事に群れに帰ったということです。
 次、お願いします。
 こういったものは新聞に出るのは一部ですが、こっちはいつかな、十三日の新聞ですね、こっちは二月かな、こういったものは結構地方では出ていますし。
 次、お願いします。
 私は、全国の各自治体から被害対策であるとか保護管理の調査を受けていますので、現場に行くと平均して週に二回か三回は違法捕獲に出会います。通り掛かりで見るだけで違法捕獲がある。だから、今回、本当はこの法律案の中の罰則がどうだとかいろいろ細かいことを話すところだとは思うんですが、私はどんなに細かいことをやっても、現場が法律を知らないんでは話にならぬやろうというところからちょっとこういった現場の話をさせてもらっています。
 今、特定鳥獣保護管理計画を策定し始めていますが、地元というのは、猿やイノシシやクマは害獣です。あるいは金になる動物というふうに考えていますので、これは岐阜県の三月二十日の例ですが、猿が捕まっていた形跡があるんですが、それは何者かに持ち去られている。三重県でも三月にありました。滋賀県でもあります。これは完全に事業の妨害になっていると。これは警察の鑑識が調べていますが、ほとんど摘発というか、犯人を捕まえることはできていません。
 次、お願いします。
 これは四月の十三日ですね。数日前に起こった事件ですが、特定鳥獣保護管理計画を策定するための動物に電波発信器を付けますが、そのために大人雌を捕まえていますが、学術研究で捕まえているおりに入った猿を地元住民が殺害したと。これもよくある話なんですが、殺した理由は何でかといったら、いや、捕まえている理由が分からなかったから殺しておいたと言うんですけれども、そういうことが通っているわけですよね。で、何の反省もない。
 ちょっと前の新聞にありましたが、こういうことをやっているのを見ると、やはり私の立場からいうと、やはり警察に届けたり、県に指導を仰ぐわけですが、そうすると嘆願書を出して、結局はだれも何の罰則も受けていないと。この法律は何なんだというふうに私は思うわけです。
 次、お願いします。
 ニホンザルというのは、集落とか市町村では一体どういう扱いをされているのかといったら、一頭当たりの報奨金が幾ら幾らと、農業被害があるからということで、猿というだけで、イノシシというだけで、クマというだけで捕獲がされている。たくさん捕れば被害がなくなると思って、この五十年から六十年やってきたわけで、全く被害はなくなっていない。もっと冷静に科学者も考えれば分かることで、猿を捕ろうがイノシシを捕ろうが、そんなに被害は減らないものです。それについては、質問があれば答えたいと思います。
 これは通称地獄おりと言われている群れ捕獲用の大型囲いさくですが、これも集落の方がお金を出し合って建てます。しかし、許可を得ずに猿をどんどん捕まえている。こちらが、最近は余り見ませんが、猿かかしといって、捕まえた猿を首をつって、これで大きい猿をやればほかの猿は来ないだろうというようなことが通っている。いかに動物のことを知らない人たちがこういうことをやるかと、その犠牲になっているのは動物たちであるということです。
 こうやって捕獲されている猿は、私がずっと見てきている中で、今度は捕獲した、適法に捕獲したとしても、それを飼養する場合には飼養許可とかが必要なわけですが、例えば、これは昨日現場で見付けてきたもので、現場で猿の数を数えたら十三頭いると。その中で、こういったゼロ歳、一歳、二歳という非常にかわいい猿ですね。お客さんが集まりそうな猿が全体の半分を占めていると。親の数からいってもこれが繁殖個体なわけではないのに、飼養許可数は四頭しか出ていないんだと。これは明らかにもう調べれば分かるんですね。違法ですよね。DNAを調べたりしたらもう簡単に分かる話なんですが、そういうことはだれも県は知らない。知らないというかやろうとしない。それは地元の中でトラブルを避けているというようなことがあるかと思います。
 それで、二年前の違法捕獲の疑いが掛かったときも、すべて繁殖個体であるというようなことを言い切られてしまって取り締まれなかったということがありますので、今後、こういった無許可の、飼養許可を得ずに飼っているものについて個体管理をするためには、マイクロチップを入れていくとか、DNA鑑定をするとか、入れ墨を入れるというようなことが、そこまでやらないと駄目、飼養許可を取らなきゃいけないですよと言っても、それは繁殖個体と言ってしまえば終わりなんで、そういう抜け道がいっぱいあるんだというようなことであります。
 私の時間はあと、もうないですか。じゃ、以上です。ありがとうございました。
○委員長(堀利和君) 以上で参考人の皆様からの意見聴取は終わりました。
 それでは、これより参考人に対する質疑に入ります。
 なお、各参考人にお願い申し上げます。
 御答弁の際は、委員長の指名を受けてから御発言いただくようお願いいたします。また、時間が限られておりますので、できるだけ簡潔におまとめ願いたいと思います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○清水嘉与子君 自由民主党の清水でございます。
 今日は四人の参考人の先生方、本当にありがとうございました。大変いろんな御専門の分野から御指摘いただきましたこと、大変参考になりました。
 幾つかの御質問をさせていただきたいと思いますけれども、まず、三浦参考人に対しまして、三浦参考人は三年前のこの法案の改正のときにも参考人として御出席賜ったわけでございまして、真鍋先生も環境庁長官としておられましたし、何人かのメンバーはそのときにも一緒に加わって審議させていただいたと思います。いろんな御示唆をちょうだいいたしましたわけですけれども、前回の改正は、地方分権に伴います鳥獣法の自治事務化、あるいは鳥獣保護管理計画制度を導入するというようなことで、特にこの野生生物管理の制度化については先生大変高く評価をしてくだすっていたわけでございます。
 しかし、さはさりながら、その実効を上げるためには、やはり例えばちゃんとした人の確保の問題でありますとか、研究体制の問題でありますとか、いろいろな御心配な点もおっしゃってくだすったわけでございまして、そうした審査の結果、この委員会では、三年後に、計画的保護管理が適切に行われるということを担保するために三年後の見直しをしようというふうなことを付けたわけでございますね。もう三年目になりました。
 しかし、今回の改正では、そこのところは出てこないわけですね。これはもう少しまだ先送りになりまして、今回は、特に優先して改正されなきゃいけない問題だけを今回出てきたというようなことでございます。
 先生からもそのときからのいろんな御指摘がございましたけれども、実際問題、この三年間、この法を、前回の改正があって、あったことの成果といいましょうか、三年たっての成果、計画の幾つか、二十五都道府県、二十九件できたとかいろんなことがございましたけれども、この三年間、前の改正をしたことの、つまりこの計画的保護管理という考え方を導入したことだとか、そのほかのことについての成果というものをどんなふうに評価していらっしゃるか、お伺いしたいと思います。
○参考人(三浦愼悟君) 三年前のことを覚えていていただけて大変光栄であります。
 それで、その三年後の成果ということについては、数字上では確かに二十五都道府県、二十九計画ですが、私も、幾つかの都道府県でその策定の動きはもっと広がっているし、それと策定するに当たっての基礎調査を今順次進めているという県も多数あることを知っております。
 それで、これ、県の取組といいますか、そのとらえ方が随分と違う。それで、非常に典型的には、例えば北海道や岩手で見られますように、この制度をやはり野生動物のきちんとした管理の体制として位置付けていこうという、そういう認識レベルの高い県と言うと語弊がありますが、そう言わさせていただきますと、そういうところはやはり調査を先行し、それに伴う人の配置、それから一部ですが専門研究者の配置を担保しつつそういうものに取り組もうという、そういう流れがありますので、私自身は、今は確かにまだ十分ではない、それから成功しているところもない、これは成功しているところもないというのは、やっぱり三年前がスタートが少し遅過ぎたんではないかというふうに思いますね。
 それで、その管理をしていく、あるいは目標頭数に持っていくのに、やはりシカ等の個体群のサイズが非常に莫大で、これは数が少なければ少ないほど管理がしやすいことは当然なんですが、もう既に気が付いたときには、行政がそう認識したときには、これがやはり非常に高いレベルの個体群のサイズになっていてそれへの取組は非常にこれはやっぱり時間が掛かるというのが、これは野生動物管理、生態学的に当然のことでありまして、そういう状況にあって、私自身はこれからもそういう制度をどんどん採用していくようにお願いしたいというふうに思っています。
○清水嘉与子君 それから次に、ハンターの指導者の問題なんですけれども、先生も、三浦参考人もおっしゃいましたし、坂元参考人、もうそれぞれの専門家が、参考人がこのハンターの問題、おっしゃったわけでございますけれども、今おっしゃるように、数も減ってきたし高齢化が進んでいるという中で、どのような社会的な役割をこれ担ってもらうのかと。坂元参考人の方からは、これはもう今のように民間にお任せしているんじゃなくて公的なものにしなきゃいけないんじゃないかという具体的な御指摘もございましたけれども、このハンターの社会的な役割というものについて、さはさりながら、その公的な役割というのはなかなかこれ難しいかなという感じも個人的にはするんですけれども、今の二十万人のハンターたちに、あるいはもうこれからのことでもいいんですけれども、ハンターのこれからの役割、社会的な役割、この鳥獣保護法にかかわる役割について四人の方から是非一言ずつでもお伺いしたいと思います。
○参考人(三浦愼悟君) 私自身は、坂元参考人の御指摘の点は、確かに共有財としての公共信託論の立場からいうと、それをプライベートで収穫していいかという問題があります。
 ただ、現実の問題として、これは世界的に見ても、例えばアメリカを例に取りますと、有害駆除の役割といいますか農林業被害の軽減についてはやっぱりハンターに依拠しているというところが、これは被害の補償の面でもハンターに依拠しながら展開しているということはアメリカの例でも変わらないということを御指摘したいというふうに思います。
○参考人(坂元雅行君) 私の基本的な考え方は先ほど申し上げたとおりでありますが、やはり狩猟というものは元々私的な任意な行為であります。したがって、そこにこうした公共性のある役割をやっぱり無理に負わせていくのは、特に狩猟者人口が減少している中でやはり無理が来ている。ここでそろそろバトンタッチといいますか、考える必要があるというのは私の考えです。
 今、三浦参考人からアメリカの例も御指摘もありましたけれども、一番重要な点は、スポーツハンティング、私的なスポーツハンティングとこうした公共目的の駆除を区別するという点です。アメリカの場合は、この点の区別は私はしっかりしていると思います。結果的にハンティングがそうした農林被害防止に効果を上げているということはあったとしても、その前提として制度としては区別されている。この点が重要です。ここが区別されない限り、先ほど高木参考人の示された実例にもあるような問題のある事例が終わることはないと考えます。
○参考人(村尾行一君) 私は、野生鳥獣の適正な保全という上でハンターの役割は大変大きいものがあると思っております。ただ、実情として、いわゆるハンターの数が減っておりますに加えて、これは三浦参考人がおっしゃったように、個体数のスケールが大きくなっている、そうなるとそろそろ、例えばこれはドイツの営林署にいるんですけれども、直訳しますと職業的狩猟官という公の資格を持った者を日本でもそろそろ考えなければいけないのかなと思っております。
 以上です。
○参考人(高木直樹君) ハンターが野生動物保護管理の担い手になるというのは、まず無理だろうというふうに思います。ハンター、私も狩猟免許は持っていますが、簡単な試験をして、それで捕獲器具を取り扱えるというだけの話であって、数も減っておりますし、そんな方々にこれ以上負担を掛けるのは無理だろうということと、野生動物に関する知識が全然ないわけですから、野生動物保護管理の担い手というのはやはり専門官が必要ではないかというふうに思います。専門官とは言いません、ハンターではまずできないだろうというふうに現場を見ていて私は思います。何も期待はしません。
○清水嘉与子君 それでは、また四人の方にお願いしたいんですけれども、いろいろ皆様方からも御指摘がございましたが、鳥獣行政の問題でございます。
 体制をきちんと整備しなきゃいけないんじゃないかということは皆様から御指摘もいただいたわけですけれども、本来は現場での指導でありますとか監視体制をきちんとしなきゃいけないというふうに思うわけでございますけれども、実際問題として、野生生物に対します生物学的な知識からあるいは農業被害対策まで、いろんな分野で知識、技術も持っていなきゃいけないというような人たちが求められるわけでございますけれども、ただそういうことを考えますと、ただただ人の数を増やせばいいというのではないんだろうというふうに思うんですね。しかも、一方において、今日のように地方自治体を含めまして行政組織をスリム化しようという動きの中で、これを、人を増やしていってどんどんちゃんと監視体制もしようとか指導しようとかというようなことを実際にできるかと、現実問題考えてしまうわけですね。
 そうしますと、なかなかこれは難しい問題もあるわけでございますけれども、アウトソーシングなんかも含めまして、どのように鳥獣行政を強化していったらいいのかというようなことに、もしアイデアがございましたら、四人の方に教えていただきたいと存じます。
○参考人(三浦愼悟君) これについてはやはり原則論を言いたいと思いますが、基本的にはスリムの方向にさせるべきだと思うんですが、その中でも、やはり地域の自然を保全するといったような問題、野生動物を管理していくといったような問題、これについては地域ごとにその筋の専門家といいますか、ワイルドライフバイオロジストといいますか、そういう人たちがこれはやっぱり地域に責任を持つ人間として、私は先ほど鳥獣保護員を全部それに切り替えろと言ったんですが、市町村で全部それに切り替えるといったらこれは大変な数になりますけれども、平均的に見れば、各都道府県の中で、北海道は除いたとしても、四、五人のゾーンごとのワイルドライフマネジャーといったような人が、これはこういう部分については、やっぱり野生動物のこれからの定着、保全ということを考えていった場合には基本的に必要な項目なんではないか、必要なジョブなんではないかというふうに私自身は思います。
 ありがとうございます。
○参考人(坂元雅行君) ただいまの三浦参考人の御意見に私も同意をいたします。
 若干加えるとすれば、ワイルドライフマネジャーの役割といいますのは、立案された保護管理の計画の実施を実際に行い、そしてそれを監視していく役割だと思うんですが、それとは区別された役割として取締りの問題があります。
 現在、取締りに関しましては、鳥獣関係の取締担当職員が都道府県に置かれることになっております。また、それを補助する鳥獣保護員、先ほどから出ております非常勤の職員がおります。この鳥獣保護員の制度の改善だけではなくて、取締担当職員と鳥獣保護員の役割分担とか、いかに機能的に連携するかということ、それと地元の都道府県警察との実質的な連携をどうするか、これを全体で見て取締りの強化を考えていかなければいけないと思います。
○参考人(村尾行一君) 村尾です。
 基本的には三浦参考人と同じ意見でございます。
 付け加えますれば、森林関係の官公吏それから森林組合の職員、こういう人たちに野生生物の、野生鳥獣の保全ということに関してよく研修をしてもらいまして、その一翼を担ってもらいたいということでございます。
 終わります。
○参考人(高木直樹君) 高木です。
 野生動物の問題、取り締まったり現場へ行く人間というのは、利害関係者では適正な判断ができないだろうというふうに思いますので、今、村尾参考人が言われたように、そういった林業や農業に従事する者への研修は重要だとは思いますけれども、それとは別にそういった方が必要なんではないかというふうに思います。
○清水嘉与子君 ありがとうございました。
 終わります。
○小宮山洋子君 民主党の小宮山洋子でございます。
 時間が限られていますので、四人の参考人の方皆さんには伺えないかもしれないことをまずお断りしておきたいと思います。
 今日は、それぞれのお立場からいろいろありがとうございました。
 初めに、坂元参考人に何点か伺いたいと思います。
 一点は、九九年の鳥獣保護法改正のときに三年を目途に見直しをするということを、そういう意味合いの附則を付けて成立しているわけですけれども、今回、その三年後である今年九月の直前にこうした形で、平仮名書きとか欠格条項の見直しという形で、法改正を含む見直しとは違う観点の改正案が出ていることについてはどういうふうにお考えになるでしょうか。
○参考人(坂元雅行君) その点は非常に残念に思っております。
 三年前にこの鳥獣保護改正案が議論された際に、私どもは三年後にはこの鳥獣保護法が野生生物、野生動物保護の核となる法制度として大きく生まれ変わることを期待いたしました。そして、実際その際、様々な附帯決議も付きまして、その実現を含めて改正案に期待をしたわけであります。
 私は、これから期待したいことは、前回付いた附帯決議の実施、それから今回の改正案で提起された問題点を含めて、次回のできるだけ早い時期にもっと抜本的な野生生物保護法と脱皮するような法改正が提案されることを期待しております。
○小宮山洋子君 個別に伺いたいんですが、坂元参考人に。
 二十三条と二十四条にあります販売禁止鳥獣等とその販売許可の規定などについてなんですが、医学実験のためのニホンザルの販売ですとかユウタンと呼ばれるクマの胆のうの販売、そのために密猟が後を絶たないというお話を聞いています。実効性が担保できる飼育規制や譲渡規制、これについて具体的なお考えがあれば伺いたいということと、もう一点、クマのユウタンが日本で広く流通しているということは先ほどのお話にもありましたけれども、海外のクマの保護ですとか国際条約との関係でも問題だと思うんですけれども、その点はいかがでしょうか。
○参考人(坂元雅行君) まず、販売禁止鳥獣それから譲渡や飼養の規制の点についてでありますが、まず先ほど申し上げましたように、高度に商業利用されている鳥獣については販売禁止のこの規定を最大限活用すべきだと考えております。
 ただ、この二十三条の後に二十四条という規定がありまして、ここでは、都道府県が許可した場合には、これは学術研究目的など一定の目的の下に許可ですけれども、これがあれば販売禁止鳥獣であっても販売が可能となっております。したがって、この二十四条の例外規定を厳格に解釈しませんと販売禁止はしり抜けになってしまいます。
 特に、この学術研究目的ですけれども、ニホンザルの問題で提起されておりますように、ニホンザルは脳神経医学等の研究に使われるためにこれは販売をされるわけですから、ここの二十四条の学術研究目的にこうした脳神経医学等の研究目的は含まれないということを明確にする必要があります。つまり、学術研究目的とは鳥獣の生態、習性、行動、食性、生理等に関するものであることを法律に明記すべきだと考えます。
 また、この販売禁止の規定に関しまして、もう一点御指摘させていただきたいと思いますのは、今申し上げました例外的な販売許可というものは原則都道府県知事が行うことになっておりますけれども、改正案の七十九条二項に見られますように、都道府県はこの事務を市町村に委任できることになっております。しかしながら、実験目的のニホンザルや、それからクマのユウタンの流通というものは全国規模であります。また、先ほど高木参考人の意見の中で紹介されたように、市町村レベルで不祥事が絶えません。こうしたことを考えれば、販売規制は実質的に全国スタンダードであるべきであります。そこで、この七十九条二項の運用に当たっては、政府としては都道府県にこの点問題がないように徹底をする必要があると考えます。
 また、販売禁止にならない鳥獣に関して、これは飼養と譲渡の規制がやはりあるわけですが、先ほど高木参考人が言われたように、捕獲してきたものから繁殖したものもその飼養の規制の対象にするのでなければ、問題点が指摘されたときに、これはここで生まれたものですと言い訳をしてすべて免れてしまうということになりますから、そこの点を明確にすることが必要だと考えます。
 それから、二点目の御質問の世界のクマの保護の件ですが、野生生物保全論研究会が行った調査によりますと、国内の野生のクマ由来のユウタンも流通しておりますが、海外の野生のクマ、それから中国で、これは一種の牧場が経営されておりまして、そこで飼育されたクマの腹を切開して生きたまま胆汁を搾り取るということが行われております。そうしたユウタンが日本に入ってきて、広く流通をしております。
 我々が調査したところでは、調査した漢方薬店百二十八店のうち二十一店がワシントン条約上輸入が禁止されているクマしか生息していない国のユウタンを扱っておりました。製薬業者についても、調査した五十業者中二十三業者がそのようなユウタンを扱っておりました。また、中国クマファームのユウタンといいますのも、ここで飼われております九七%のクマは輸入が禁止のツキノワグマですので、この輸入もワシントン条約違反となりますが、これを扱っていた漢方薬店、製薬業者も非常に多数に上っております。これは、日本のユウタンの需要や取引が世界のクマの保護、グローバルな生物多様性の保全、そしてワシントン条約の責任ある効果的実施を大きく損なっていることを示します。
 そこで、私としましては、確かにユウタンの中には例外的にといいますか、ユウタンの一部は合法に輸入できるものもあります。多くは輸入禁止ですが、合法なものもあります。そこで、合法なものも一定量は国内でどうしても流通します。そこで、合法に流通するユウタンをきちんと管理をすることで違法なものを排除する、こういう仕組みが必要です。この仕組みは現行法、種の保存法にもこの仕組みは現にあります。これを適用すればよいだけです。
 それに加えて、それぞれの供給源の制御が必要です。海外の野生のクマのユウタンに関しては税関の対応能力を強化することが必要ですし、中国クマファームのユウタンについては今後とも輸入の禁止を継続してやはり税関で徹底をする、国内の野生のクマに関しては、先ほど申し上げましたように販売禁止鳥獣としてその流通を制御すると、こういうことであります。
○小宮山洋子君 次に、もう一点、坂元参考人に伺いたいんですが、八十条の適用除外で、「他の法令により捕獲等について適切な保護管理がなされている鳥獣であって環境省令で定めるものについては、適用しない。」とされているわけですね。先ほどもお話にありましたように、水産資源保護法では海生哺乳類のトドなどは保護をされないと、ですから今回のこの鳥獣保護法の中で国際的絶滅危惧種でもあります生物多様性の観点からもトドは保護をすべきじゃないか、適用すべきじゃないかというお考えだと思いますが、その点について、先ほど質問があればもう少し詳しくとおっしゃったので、お願いをしたいと思います。
○参考人(坂元雅行君) 先ほど、トドが絶滅のおそれがあるという評価を受けていて事態が深刻だというお話をいたしました。少し具体的に申し上げたいと思います。
 なぜトドがこのように減少してしまったかということです。これは、トドが有用な水産資源や漁網を破損する害獣だということで大量に捕獲されて殺されてきたからであります。一九五八年から一九九三年の間に合計二万二千頭以上ものトドが無制限に捕獲をされてきました。そして、現在も捕獲は続いているわけであります。
 では、現在、何の手も取られていないかと言えば、そうではありません。先ほど具体的には申し上げられませんでしたが、漁業法による捕獲割当てだけは設定をされております。しかしながら、この捕獲割当て百十六頭、年間百十六頭というこの設定ですけれども、これには何らの科学的な根拠もありません。過去五年間の陸揚げ頭数の八掛けをしたというだけのものであります。また、射殺されて、これはライフルで撃たれるわけですけれども、射殺されてすぐ水に沈んでしまった水没個体についてはこの捕獲頭数に計上されておりません。水没個体がどのぐらいあるかについての予測は、かつてこれが報告されていたことがありまして、そのときの報告では水揚げの二倍は水没個体がいるということですから、現在もその程度あるだろうと考えられます。
 また、このトドの捕獲に当たっては海域ごとの群れの性別やそれから年齢構成の区別なく一律に駆除されております。また、捕獲の影響のモニタリングがされておりません。これだけ殺して、それで翌年どう良くなったのかという検証がないわけであります。こうした状況ではこのトドの問題が解決できるはずはないと思うわけであります。
 このトドの問題を総括いたしますと、結局、生物多様性保全策と水産業被害対策をいかに併せ行うかというすべての鳥獣の問題に共通する問題点をクリアに表しております。生物多様性の確保と農林水産業の健全な発展を目的とするこの鳥獣保護法の正に適用場面であると考えます。現行の漁業法では解決は不可能です。
 具体的に鳥獣保護法で、じゃどういうことができるのかと申しますと、九九年の改正の際に設けられました、先ほど三浦参考人からも詳細な御報告があった特定鳥獣保護管理計画制度がございます。この計画制度をトドに適用することで事態は改善する見込みが大いにあると思います。
 この計画制度の下では科学的調査に基づく計画の立案や実施がされますし、駆除以外にも、生息地保全、被害防御策など多様な施策展開が可能であります。また、先ほどの現状と違いまして、実施状況のモニタリングとより効果的な実施のためのフィードバックがされる仕組みになっています。また、手続も透明化が図られていて、一定の市民参加が保障されております。この点でも、この制度を大いに活用してトドの保全を図っていくべきだと考えます。
○小宮山洋子君 もう一点、高木参考人に今度は伺いたいんですけれども、ニホンザルなどの捕獲や飼育の許可権限、現在は市町村にあるわけですが、以前、県にあったものが変更されているのに現場では徹底していないということが先ほどお話にあったいろいろな場面でも出ているのかと思いますが、この点はどうお考えでしょうか。
○参考人(高木直樹君) 高木です。
 猿に限らず、イノシシ、シカ、クマなど大型哺乳類は広域に動いています。ですから、各市町村境で行動を阻止するようなものではないので、まず適正な保護管理はできない。
 次に、市町村側から見た被害をなくすための捕獲としての有害駆除の効果についてですが、その地域の地形図を見ていただければ分かりますが、この部屋を山だとすると、この山にいろんな動物がたくさんいます。その中で、田んぼや畑の面積というのは恐らく一個一個はこれよりも小さいものであると。そういったところで、先ほど私ハンターのことを言いましたが、ただ捕獲することができるよというような人が山にちょこちょこ行ったり被害がある場所で捕っていくような有害駆除というのは基本的に効果はないだろうと。この広い、自由に動き回れる山の中を動いている野生動物の被害を止めるのであれば、捕獲という方法を取るよりは、限られた農地を囲っていった方が農家にとっては早いんではないかというふうに思います。
 また、先ほどもうさんざん言いましたが、捕獲許可が県にやはりないと、いつでも出せるぞというようなことで、実際捕獲が行われた後に、県に報告する段階でさかのぼって捕獲許可を出しているのがかなり目立ちますので、市町村に許可権限を下ろしたのは間違いであろうというふうに私は思います。大体、市町村の担当者が鳥獣保護法を知っているわけがありません。実際に知りません。
 以上です。
○小宮山洋子君 終わります。
○福本潤一君 公明党の福本潤一でございます。
 今日は、四参考人から、学識、また現場の経験も踏まえて、様々我々啓蒙いただきましたけれども、今日は具体的に質問さしていただく法律改正に基づく参考人でございますので、法律中心にはなりますけれども、背景の物の考え方についても若干お伺いさしていただこうかなと思います。
 特に、私、一見ユニークだなと思わしていただいたのに、生物多様性の確保というのが目的にあるけれども、村尾参考人の方からありました、まだ確定されていない概念でありますし、これはまた、立法というものにこれを入れるほど確定した概念ではないと。
 そこで、熱帯、亜熱帯、温帯等々の知識、披露していただきましたけれども、この生物多様性という問題、今、にわかには大変大きな話題になっておるわけではございますが、我々、環境問題を扱っていますと、環境と自然破壊という対立概念がよくテーマになってまいります。ですので、是非とも、生物多様性はまだまだ定着した概念ではございませんが、環境保護と自然破壊、これの現実の行政の上でのバランスの考え方をどういうふうに考えたらいいかと、これをお伺いしたいと思います。村尾参考人。
○参考人(村尾行一君) 村尾です。お答えいたします。
 今、福本委員がおっしゃったことは少し大きな問題でございますが、言うならば、産業か公害かというような議論、あるいは公害が更には自然環境保全ということになっておりますが、これが対立軸であったときはもう過ぎていかなきゃいけないんじゃないか。つまり、産業が持続可能な経営であろうとすればするほど環境に対する配慮というものが重要なものになってくるだろうと思う。言い換えれば、今までは追加された負担と、経済的負担と思われていたことが、むしろ当然の経費概念に入ってきていると。これは自動車一つ見てもお分かりいただけようかと思います。つまり、排ガス規制というものが言わば余分の負荷だったものが、今では当然のコストの中に入っているんだということでございます。
 それから、御指摘の背景にありましたことで申しますと、繰り返しになりますが、私は、その狩猟ということと、それから野生鳥獣の保全ということは同じことの裏表だろうと思っております。
○福本潤一君 ありがとうございました。
 そこで、今回、三年前にある意味では大変大きな法律改正ということで特定鳥獣保護管理計画制度入ってきたわけでございますけれども、そういう中で具体的に、あの三年前の時点は、それまで鳥獣が大量に発生、また大量に生まれているということで、その保護管理をする必要が、ドイツ的にもワイルドライフマネジメントということをやられているのを日本でも取り入れようということで、法律が中の柱として入ってきたわけでございますが、先ほどの四名の御意見を聞いていますと、この個体数の量が多い場合、なかなか管理また保護というのは難しいということもございました。
 ですので、ドイツでワイルドライフマネジメントを具体的に推進している状況を見ておられる村尾委員、また三浦参考人にもお伺いできればと思いますけれども、具体的に、こういう具体的な実態をするためにどの程度のそういう職業的な狩猟官、また林野を管理する人が、日本の現状から更に増やしていく場合、そういう監督官は要るのかというのも教えていただければ。
 これは、何年たったらか、具体的な数値が捕獲数等々出てきて、今後の運営に参考になるということもございましたけれども、実態で、私ども委員会で質疑して聞いたのは、一九九九年時点でイノシシが十五万頭、シカが十三万頭、猿が一万頭という数値がある意味で実態把握として出てきておるだけで、今後日本がそういう保護管理計画をするためにはまだまだそういう専門官が要るんだろうなと思いますので、村尾参考人と、三浦参考人に補足でお願いできればと思います。
○参考人(村尾行一君) 私から申し上げますか。
 これは、頭数のことになると三浦参考人の方がお詳しいと思うんですが、ドイツの例で申しますと、先ほど申し上げたような、まず適正な資源量というものを押さえると。その適正な資源量からの増殖分について個体数調整をするというのが原則でございまして、そのためには資源調査ということをよくよくやっております。
 ただ、ここで一つだけ申し上げておきたいことは、一見、事は自然科学的な現象のように見えますけれども、先ほど申しましたように、適正資源量の最大限というのは、人間がどれだけ我慢できるかということにかかわってまいります。これは、公害の安全基準でも同じことで、亡くなりました武谷三男先生がよくおっしゃっていることでございましたけれども、要するに、今どの程度の頭数までだったら我慢できるのかと。そのときに、これは高木参考人もおっしゃいましたけれども、さく張りをするとか、そういうやり方をするかしないかによって我慢できる規模が違ってまいります。ですから、その点についても国会で十分議論をしていただきたいものだと思っております。
○参考人(三浦愼悟君) これは、例えばアメリカで言いますと内務省の野生生物局がヘッドになりまして、各カウンティーレベルでも野生動物の専門家、これはほとんど学位を持っているレベルの人ですが、そういう方が配置されております。この方々が、今、村尾参考人の御指摘のように地域個体群に対して責任を持つということで個体数の把握、それから一部被害補償も含めてその現状の把握を行いつつ、現状の個体群が全体として密度過剰でダウンサイジングをしていく必要があるのか、それから現状維持をしていく必要があるのか、あるいは資源管理としてハンティングのゲームアニマルとして持続させていくのか、それぞれのオプションに応じてこれはやっぱり捕獲の仕方が違うんですね。
 例えば、時間もありませんが、多くは言えませんが、全体に個体群をダウンサイジングさせる、これは農業被害との関連で言えばそういうことが必要なんですが、これは今の特定計画制度の中でもそのことが展開されておりますが、やはりこれは雌を中心に効果的に捕っていくということで、繁殖力を低下させるといったようなこと。それから持続可能な利用という点ではMSY、いわゆる持続可能な一番適正なレベルというのが、これが想定されますから、そのレベルの雄を捕っていくといったような、それぞれの選択肢をやっぱりこれは科学的、計画的に生態学的な知見を基に意思決定していくということが必要であります。
 こういう人たちの、言わばキーパーソンと意思決定の下に各ハンターがそれに動員されていく、あるいはその年の適正な個体数の設定等を踏まえてタグを売る、捕獲した場合のタグを売る。一種の入猟税ですが、そういうものを販売するといったようなことが行われていくわけですから、こういう制度的な配置が、これは各市町村、各県というよりも、私は、一番末端はハンターも含めて鳥獣保護員の展開できるレベルと、それから県、場合によっては県を越えた、これは県境をまたがる地域個体群の管理なんかが前回の鳥獣法改定の中でも特定計画制度の中で要請されていますけれども、そういうレベルでいうと、ブロックごとにそういう専門の人たちが、配置が、これは大型哺乳類とそれから鳥なんかの場合は大いに生態が異なりますから、それは十分に吟味しておいた上で何人かのやっぱり適正な配置がこれは不可欠ではないかというふうに思います。
 ありがとうございました。
○福本潤一君 どうもありがとうございました。
 先ほど、このワイルドライフマネジャーのことがございましたけど、若干、最後に時間があったらもう一回戻らせていただきますけど、その前に、坂元参考人と高木参考人、現場で現実に捕獲しているときの様々な問題点、御指摘ございました。特に高木参考人の方からは、違法の行為、かなりの状況で発生しているというお話がございましたので。
 現場が法律を知らないという、違法行為が現実に行われているという場合、法律を、立法でどういう中身にするかということとともに、この法律がいかに徹底されているかということがもう一つの条件で大きな話だと思います。ですので、これ、現場が法律を知らない状態で起こる、そういった行為に対してどういう形での環境庁はこの認知を進めていくかという問題に関して、坂元また高木参考人にお伺いできればと思いますが。
○参考人(坂元雅行君) これは非常に難しい問題であります。これはもう理屈の問題ではないところがあります。
 しかし、まず一つは、この現状を前提に物事を組み立てるということであります。ですから、重要な捕獲許可権限などをだれに持たせるかというところで、都道府県が市町村にそれを下ろすときにはその現実を踏まえてしなければいけません。また、都道府県がそのような判断をするよう、国としては都道府県にそこを徹底する必要がやっぱりあると思います。その上で、やはり個別の市町村レベルの理解を深めていく努力はしなければいけません。
 そこで、やはり先ほど三浦参考人からもお話があったように何らかの形で専門官を配置していく、これがどのぐらいの規模でというのは段階があるかもしれませんが、やっぱりその努力は必要ですし、そういう担当者を集めた研修の充実などを図っていかなければいけないと考えます。
○参考人(高木直樹君) 高木です。
 先ほど具体的事例を挙げて言いました岐阜県が一連の事件後にどういう対応をしたかについて具体的に言いますと、まず関係市町村の担当者を振興局ごとに集めまして、そこで有害鳥獣駆除の手続であるとかそういったものについて説明がありまして、その後に県から提案がありまして、鳥獣保護法の本が出ておりますが、あれを各市町村に常備するようにということで、平成十四年度からその方向で動いています。
 また、各市町村から今度末端の住民に対してですけれども、各市町村の広報紙がありますが、その広報紙に必ず、猿の生息している、イノシシの生息している地域の市町村は、鳥獣保護法、特に捕獲はむやみにやってはいけないとか、そういったことを書くということで、期限は七月までということで実際に動き出しているということです。
 また、各市町村の担当者や県の担当者の中でも、やはり事務的な担当者の方は、その法律だけではなくて野生鳥獣の生態等についても知らなきゃいけない、被害防除対策についても知らなきゃいけないということで、これは私が思うには、県や国でもっと研修会等を開いて合同で勉強していく必要がある、質を保つためにはそういった研修が必要だと思います。
 以上です。
○福本潤一君 どうもありがとうございました。
 もう時間も押し迫っていますので、じゃ最後に四人の方に簡潔にお話聞かしていただければと思います。
 ワイルドライフマネジャーという方向性で、今後、日本国も一つの方向性を出す方向がいいという中に、取締りの役割と鳥獣保護員という役割、二種類の役割、この特性があると、この二つを分けていく方向がいいんではないかということで、次の法運用の改正も含めて、にらむようなお話がございましたので、この二者、分けていく方向性と今のように一体化していく役割、どちらがいいかということだけを最後に、短時間でございますが、四人の参考人にお伺いしたいと思います。
○参考人(三浦愼悟君) にわかには難しい問題だと思いますが、私自身はやはり統合的にやっていくのが効率的ではないかというふうに思います。
 というのは、そのほかにも環境関連の法律、それから調査事業は、これは様々な人がやはり底辺にいて、その集約で例えば動物の分布調査等々がこれまで展開されているわけですが、そういうのも、何といいますか集約も、つまりその地域の多様性や野生動物に責任を持つという点では、そういう方たちが集約の責任者となってもらって調査事業を進めるといったようなものも一つのウイングとして、それからもう一つは被害防除、それから個体数の状況、それから密猟取締りといったものを、これはかなり幅広い分野だと思うんですが、そういう人材として入れ込むことは可能ではないかというふうに思います。
○参考人(坂元雅行君) そうですね、ワイルドライフマネジャーの役割、今お話のあった調査ですとかそれから実際の保護管理事業の実施、この仕事と、それとこういう法律違反の取締りについては、できれば私は体制を分けることが望ましいと考えております。
 これを現実に実施していく場面を考えますと、これは非常に大変なことであります。先ほど申し上げましたように、取締りについては実際上警察との連携等も非常に必要になるからですね。
 ただ、段階的にそれを整備していくときに、ある程度一つのユニットの中でこのすべてを行って、徐々にその担当を分けていくということももちろんあると思います。
○参考人(村尾行一君) 村尾です。
 私は、結論的に言いますと、両者は統合されるべきだと思っております。
 これでいいでしょうか。それとももうちょっと申しましょうか。
○福本潤一君 いえ、時間がないんで結構です。
○委員長(堀利和君) よろしいですか。簡潔に。
○参考人(村尾行一君) じゃ、ちょっと付け加えさせていただきます。いや、簡単にということだったものですから。
 やはり個体数が、何といいますか、減り過ぎるというような事態のときに取締りというのが出てくるわけでございますから、だから、要するに健全なハンティングというものを維持していこうと思ったら、それは今申しましたように、過剰ないし違法な行為に対する取締りも同時にその人が行えるんじゃないかということでございます。
○参考人(高木直樹君) 高木です。
 鳥獣保護員の質を上げて本当に取締りができるようになるんであればそのままでいいとは思いますが、現実的には無理だろうというふうに思います。
○福本潤一君 ありがとうございました。
○岩佐恵美君 日本共産党の岩佐恵美でございます。
 今日は四人の参考人の皆様には、お忙しいところありがとうございました。
 まず最初に、三年前にもいらしていただきました三浦参考人にお伺いをしたいと思います。
 先ほどのお話で、保全と管理が鳥獣保護法によって展開されることが期待されると言われました。二十五都道府県二十九計画、これが多いか少ないかどうかというのはいろいろ判断があるであろうと言われましたけれども、私は、数もさることながらその中身を、ちょっと委員会質疑の中でやり取りをしているうちに、これでいいのだろうかということに疑問を持ちました。
 例えば、二十九の計画のうち、捕らねばいけないということが主であるシカが十八なんですね。今、地域個体群で絶滅が心配されているクマについては三つ、猿については一つということでございます。ですから、そういう点で計画の中身も問題があるのではなかろうかというふうに思います。これが、結局は法律の定義というところから出発しているんだろうというふうに思っているわけです。
 先ほど、いろいろ言われた中で、鳥獣保護員制度の役割は重大であるというふうに言われました。それと同時に、外国の保護の在り方ですか、いろいろ農業被害をどう防いでいるかとか保護をどうしているかという在り方の研究も必要だし、それから猿については日本に独特だから、そういうところの研究も必要であろうということも言われました。
 そういうことで、最初に、やっぱり保全と管理ということが本当に調和していっているのかどうかという問題と、じゃ保護の面について、どこにどういう問題があってどうしていけばいいのかということをどう考えておられるか、お聞かせをいただきたいと思います。
○参考人(三浦愼悟君) たくさんのことを望みたいというふうには私は思いますが、現状の問題で言いますと、例えばクマについてでありますが、まだ特定計画を作っているところは非常に少ない。
 私の住んでいる東北地方で言いますと、秋田県が今年の春からスタートさせました。それで、先ほど坂元参考人の方から御指摘がありましたが、これは予察駆除という格好で春グマの駆除が一定数の枠で行われております。実際に被害もまだ出ていないのにという格好で、この計画については私自身も憂慮しております。
 ただ、もう一方で、例えば東北地方で言いますと、マタギ等々のこれは捕獲がありまして、私自身は、マタギの伝統的、文化的な狩猟というのは、これは非常に大切な側面があるだろうというふうに思います。だから、予察駆除という格好で位置付けるのではなく、これはやっぱり特定計画制度として位置付けるといったような、その中で伝統的、文化的な狩猟も維持させていくという選択肢は一方で重要なんではないかというふうに思います。
 だから、その辺の特定計画の作り方がまだまだ各都道府県で、保護の方向に向ける必要はあるんですが、十分理解されていないというところがあるし、例えばクマの専門家といったような人が、東北地方全体で言っても大学の教官が一名程度いるという状況ですから、こういう人たちがそういう制度整備にかかわるということが物理的に時間でもう制限されていますから、やはりそういう点では、もうちょっと専門家が、東北ブロックで言えばやっぱり十名単位ぐらいの専門家が配置されていくということがもう前提条件になるんではないかというふうに思います。
○岩佐恵美君 先ほど、高木参考人から捕獲の様々な実態があるということが示されました。憎しみ捕獲とか要望捕獲、今の予察駆除ですね。それだとか密売捕獲だとか、非常に私は衝撃を受けました。改めてこういうことがあってはならないというふうに思いました。
 問題は、こういう捕獲を許しておくというか、それが日常茶飯事というのは動物にとっても非常に良くないですし、私は人間社会にとってもやっぱり良くないというふうに思うんですね。猿を残虐に撲殺をするということが子供の教育上も良くないんじゃないかということを何か思いました。
 それで、高木参考人は、無差別な猿の有害駆除が猿害を増やしているんじゃないか、もっと猿に接する接し方があるのではないかということを言っておられるというか、ちょっと私どもの参考資料として、これは調査室からいただいた資料の中に高木参考人の活動のそういう面の紹介がありまして、大変そこの点に私は興味を持ちました。
 やはり、先ほども三浦参考人から言われましたけれども、猿は日本独特であるとすれば、日本でそういう猿にどう接していったらいいのかということをもっともっと深めていく必要があるだろう、共通認識にしていく必要があるだろうというふうに思うので、高木参考人からその点についてお伺いできたらと思います。
○参考人(高木直樹君) 高木です。OHCをお願いします。(OHP映写)
 有害鳥獣駆除をやると被害が増えるというのは、事実としてはあるんですが、全部ではありません。増え方とか、被害の増え方、被害地域の増え方、いろいろありますので、それについてちょっと説明させてもらいます。
 レーザーポインターが壊れているようなので前に行かせてもらいます。済みません。
 まず上の図を見てもらいたいんですが、これは有害駆除を実施する前のそれぞれの群れの行動範囲です。そこで、このミカンのマークがあるところでミカンを作っています。猿はミカンが大好きです。一度そういうものに執着すると毎年食べに来るわけです。当然被害があるということで、このCという群れの地域で有害駆除がほかよりもたくさん行われてきた。その結果が、猿の群れというのは五十頭とか百頭、一つの群れでいます。
 自然状態で十二頭なんてあり得ません。これはどういうことかというと、有害駆除によってこのC群という群れが極端に数が減った。B群を見ると二十八頭、A群は八十八頭、これが普通です。ということは、C群の数が有害駆除によって減ってくるとその群れの縄張が守れなくなって隣接群がこの群れの範囲に侵入してきます。そうすると、今まで食べたことのないミカンの味を覚えるがために翌年も出てくる。そうすると、ここでB群の数が減る。B群の数が減るから今度A群が、スライドと言うんですが、群れの行動範囲をスライドしてきて、またミカンの味を覚える。結局、十年間で百頭を超える頭数を撃っていますが、被害額は増えている。ここだけで一億五千万のミカンの被害があるということで、必ずしもたくさん捕ればいいというものではない。これは、被害量は一か所で増えたという例です。
 もう一例だけ言います。
 こちらは有害駆除、先ほどの質問で無差別な駆除が被害地域を拡大するというのの例ですけれども、猿は集団、群れで生きています。それぞれの群れには縄張があります。
 これは、L8というのは、数字が大きければ大きいほど悪い性質を持っています。L2はL8に比べていい群れです。L8は非常に被害を出しますので集落の被害は深刻です。ところが、L2については、レベルと言いますが、レベル2は余り被害がありません。ここは猿がいません。こういったところで、この年から県は有害駆除にお金を出し始めました。
 四年間に八十二頭の駆除をしたところ、被害地域が四倍に広がりました。これはどういうことかというと、ここにいた群れはレベル8と言って、人を見たらすぐ逃げてしまう悪い群れ、こちらは余り被害出していませんので、まともにライフルや散弾で撃たれてしまうということで、ここにいた猿の群れの数が減って、こっちが、増えてはいませんが、頭数が変わらないために群れがスライドして、今まで、これ川ですが、猿が渡れなかった川を渡って反対側に行ったということで、被害地域が拡大している。
 こういうことが分かったのは、これは九一年のデータですが、十年ぐらい前からの話です。それまでは電波発信器がなかったがために殺せば減るだろうと思っていましたが、今、猿の研究者の中で、猿を殺して被害が減るということを言う人はまずいないと思います。ただし、被害量は減っています。被害地域は増えましたが、猿の数は減っていますので、全体の被害量は減っている。
 問題は、一軒一軒の農家を救済するために防除施設とかを建てていくわけですが、防除施設は高いものです。一集落当たり二千メーター設置すると、猿さくで言うと大体一千万掛かりますので、四十集落で四億掛かるわけです。四億というのは、年間の被害額の何十年分にもなる、もう何十年じゃない、百年分とかになるわけですから、こういう政策は被害対策としては間違いであろう、農家も救われないだろうということの事例です。
 以上です。
○岩佐恵美君 ありがとうございます。
 今、市町村にその被害対策とか保護管理が移行しているわけですけれども、そういう中で先ほどの、被害が目の前で起こるわけですから、私も、今住んでいる東京の三多摩の地域というのは猿害とかイノシシ害とかがあってすごくみんな大変だという思いを日常的にしているものですから、やっぱり何か憎しみ捕獲とか、どうしてもそういうところに流れてしまいがちです。
 やはり、それではなかなか大変で、当面、市町村に下ろしていくと、今お話があったような、こういう違法捕獲というのがなくならないのではないだろうか。それを何とか現状でなくしていくために法律的にどうしたらいいのかということについて、坂元参考人にどう考えていったらいいのかということをお伺いしたいと思います。
○参考人(坂元雅行君) やはり、使うツールとしては、今法律にある特定鳥獣保護管理計画に着目すべきだと思うんですね。
 ただ、先ほど議員の方から御指摘があったとおり、現在、策定されているのがわずか一つと。これはなぜかと言いますと、とにかく、シカのようにたくさん捕りたいものについてはそれなりの誘導措置が法律に組み込まれております。厳しい、特定計画を立てれば厳しい規制を都道府県の判断で緩和できるからです。これに対して、猿やクマのような種については、この策定を動機付けるような仕組みが法律上ありません。特定計画は任意の制度です。これが一つですね。
 そして、特定計画を動機付ける仕組みを作った上で、やはり特定計画の内容づくりの面で、今、高木参考人から御示唆のあった非常に興味深く効果的なそういう知見を、すべての都道府県でこれを集約することができるような役割を政府は果たすべきだと思います。
○岩佐恵美君 時間があと少しありますので、ちょっと今日出なかったんですけれども、移入種対策について、自然保護グループの皆さんがこれは提案をされていると伺っているんですけれども、移入種対策をどうしていったらいいのかということについて、余り時間がないんですけれども、坂元参考人にお話をいただきたいと思います。
○参考人(坂元雅行君) 大きな問題ですが、できるだけ短く申し上げたいと思います。
 移入種の問題というのは、影響が明確な種ももちろんたくさんおりますけれども、多くについてはどの種がいつどのような影響を与えるのか、まだ知見が十分でないものが多いわけであります。したがいまして、一体どのような影響が生じ得るのかというリスク評価がまず第一歩となります。
 そして、このリスク評価の仕組みを作った上で、それと結び付ける施策としてどのようなものが重要かということですが、やはり一つ重要なのは、国外からの侵入を防ぐ輸入の規制であります。これは実際にそれをやるのは税関あるいは検疫といった場になりますけれども、やはり専門性と体制をどう整備していくのか、これはもう特別な専門官の配置など、かなり大きなことを考えないといけないと思います。移入種の候補になるような生物種は莫大な量が日々日本に入ってきております。
 それから、入ってしまったものの分散をいかに制御するかという点も重要だと思います。これは本当にメニューがたくさんあると思いますけれども、日本に入れることは認めるけれども、その利用方法とか利用する場の制限が重要だと思います。
 それから、やはり流通の管理もある程度のものを考えないといけませんし、野外への放出ですとか、それから個人でペットで飼っているものなんかについては、動物の愛護及び管理に関する法律等を強化してそこに対処していく必要があるだろうと考えます。
○委員長(堀利和君) 時間が来ました。
○岩佐恵美君 時間になって、済みません、村尾参考人には伺うことができなかったのですが、これで終わりたいと思います。
 ありがとうございました。
○高橋紀世子君 今日、村尾先生の著書の中にあることを私は質問したいと思います。
 その先生の著書に、「人間にとって「自然」とは何か」という題の中に、昨今、人間と自然との共生ということがしきりに叫ばれています。中には、人間と自然との共生を求めてとか、来るべき二十一世紀は人間と自然との共生の時代にとか、人間と自然との共生は可能かとかいった問題提起をする人が多いと書いてあります。そのような問題提起を裏返してみると、人間は自然と共生していなくても生きていられるという考えがあることを暴露していると書いてあります。だから、こうした立場は大きな間違いであると書いてあります。
 我々人間は自然と共生していなければ一瞬なりとも生きていられない。可能も不可能もない。人類発生以来人類は毎日自然と共生をしていて、今後ともそうであると書いてあります。
 そして、私はこのことについて質問したいと思うんですが、鳥獣法の中に、「この法律の規定は、環境衛生の維持に重大な支障を及ぼすおそれのある鳥獣又は他の法令により捕獲等について適切な保護管理がなされている鳥獣であって環境省令で定めるものについては、適用しない。」と書いてあります。
 しかし、私は思いますに、環境に、人間の住む生活に影響を与えない環境というものは一つもないのではないかと思うんです。自然と人間の共生する社会を作る、自然と人間の共生しない社会があり得るという発想、人間と自然は不可分の関係であり、そもそも人間が共生しない社会などはないと思うんです。
 それについてどう思われるでしょうか。どなたかお答えしていただけますでしょうか。村尾先生、お願いします。
○参考人(村尾行一君) 村尾でございます。
 大状況的な話を申しますと、共生というのは、別々に存在しているものがただ単に一緒に住んでいると、生存しているというふうなとらえ方になるんじゃないかと。仏法用語で申しましたら、二つにして二つにあらずというような関係が人間と自然との関係ではなかろうかと。とりわけ、環境というふうに自然をとらえ直していきましたら、それはその主体にとっての環境ですから、主体抜きにした環境というのはないわけです。今の話で言えば、人間が主体なんだと、その環境として自然があるのだということでございます。これがまず第一です。
 第二番目には、この二つにして二つにあらずとは言いながら、両者の間には緊張関係があると思うんです。その緊張関係をより賢明に解決していくというか、緊張関係をある意味で持続、いい方に持続さしていくというようなことが、例えて言うならばワイルドライフマネジメントなんかじゃないだろうかと思っておりますけれども。
 もし追加の御質問がございましたり、あるいは言い忘れがございましたら、御指摘いただければ幸いと思います。
○高橋紀世子君 環境が人間に対していいとか悪いとかと、そういうことでは私はないと思うんですね。やはり人間の方が、例えばカラスが来る、そしていろんなものをつつき回すといっても、人間が食べ物を散らしておいたからカラスが来るようになったというふうに思いますので、人間に悪いとかいいとかと、この誤った自然観はもう一つの幻想を生み出したと思うんです。それは、環境について善い悪い種が存在するというのは、やはり私は虚像だと思います。そもそも自然は善か悪かといった価値判断とは別の次元で機能しているため、この発想を持ち込めば持ち込むほど人間にとっては敵対せねばならぬものになると思うんです。それが人間自身のバイタリティーを弱めていくような気がするんですけれども、私は現在の法制度そのものがこの誤った自然観の上に立っていると思います。その典型が鳥獣法であると思います。
 例えば、八十条の適用除外の規定には、環境衛生に支障のある鳥獣という規定がありますが、それは暗に環境維持のために悪い生物が存在し得るという虚像を支持しているにすぎないように思うんです。その悪い種さえ除けば良い環境を作ることができるというのは、これは誤った自然観に基づいた法案だと思うんですけれども、村尾先生、この点についてどうお考えか、ちょっと伺えますでしょうか。
○参考人(村尾行一君) 村尾でございます。
 お答えいたします。
 繰り返しになりますけれども、大状況的に申し上げれば、環境というのはあくまで主体にとっての環境でございますから、人間にとってそれがプラスであるかマイナスであるかというその評価から議論は始めなければいけないと思っております。それが、言うところのヒューマニズムだと思うんです。
 ただし、今、先生御指摘になったようなカラスとの関係とか、それから坂元、高木両参考人が御指摘になりました違法な自然に対する行為というものは、これは愚かしいことでございますから、だから、具体的にどういうふうな付き合い方をしていいのかということになりますと、話を具体的な場に下ろして議論していかざるを得ない。その点については、高木参考人、坂元参考人から大変示唆のある御発言をいただいておりますが、愚かしいことを人間は常にするんだよということが前提にあるからこういう立法措置が講じられているわけだと思います。
 そして、違法行為がなかなか減らないということについては、今回の法律のようなものが実行される担保が大変弱くなっていると。その担保の仕方としては、一つは罰則の強化というのが一方ではあろうかと思いますが、他方では言わば無法状態に近いことになっております。これはただひたすら啓蒙ということと、それとそれを指導していく人材の養成ということに尽きるんじゃないかと思っておりますが、いかがでしょうか。
○高橋紀世子君 そうですね。
 では、またこのことについて、ほかの先生の御意見もちょっと伺えますでしょうか。
○参考人(三浦愼悟君) 確かに鳥獣が、単純な害益区分といったような価値判断でやるべきではないし、そこにはやっぱり多面的な価値があるだろうというふうに思います。振り返ってみますと、やはり我が国は、自然や野生動物に対してはやっぱりどっちかからいえばこれまで過酷であったんではないかというふうに思います。それで、全体として私は、今の現状を、これまで自然や野生動物に対して産業法、それから経済法を中心にして展開してきたものが、大きく転換する過渡的な過程にあるんだろうというふうに思います。
 それで、最初に戻りますが、坂元参考人と私の意見は対立しましたけれども、私は今回の改定もそういう大きなステップと、鳥獣法の改定がですね、位置付けられているんではないかというふうに理解いたします。
 ありがとうございました。
○参考人(坂元雅行君) 人間と環境の問題、これは共生ということなども言われますが、本来は共生ということ自体がおかしい問題であります。人間はその生活のために自然を改変しながら自らの環境を作り上げてきたわけです。そして、人間はどんどん自然を改変する度合いを強めて、ますます人工化をしてきているわけですね。その人工化した自然、これを我々の人間環境としてそこで暮らしているわけです。
 しかし、これがどこまでも進んでいった場合、果たして人類にとって幸福な未来が訪れるんだろうか。我々は、やはり自然というものが我々にとってどういうものであったかを考えるべきだと思います。そのときにやはり人工化し尽くさない、人が手を入れ尽くさない部分を残しておいて、そして、将来、我々が自分たちの環境の在り方を考えるときにそれが残っていて、違う選択肢を選べるようにしなきゃいけない。そこに自然保護の考え方が生まれるんだと思います。
 野生鳥獣というのは自然の大事な構成要素です。この野生生物の種をやはり一種たりとも絶滅させてしまうことは、この大きな課題に対する大きな損失となると、このように考えます。
○参考人(高木直樹君) 高木です。
 最初の委員からの質問とは、だんだん私いろんな参考人の話を聞いて変わってきたんですが、最初の質問に関しては私が答えられる範囲ではないなというふうに思いました。
 ただ、坂元参考人の話を聞いていて、私はこの被害の問題を中心に考えて言いますが、野生動物の被害はここ五十年の話です。これまでも地球ができて人間がこのように生活をしてきて、野生動物もともに同じ大地を息づいてきているわけですから、この五十年、又はこの一年間の被害の統計がどうこうではなくて、野生動物というのを次の世代に残すことが必要だろうというふうに、絶対に絶やしてはならないというふうに私は思います。
 ただ、今現在、我々も生きているわけであって、その中の共生という具体的なものの一つは被害対策であろうと。被害対策は感情で野生動物を憎いとか、そういうものでやるんではなくて、殺すか守るかではなくて、被害をなくすという一点に集中して論議して、実際にまじめにやっていかないと、農家は救われないだろうというふうに思います。動物を絶やしてはならないというふうに思います。
○高橋紀世子君 やはり環境というのはいずれにしろあるわけですから、それを全部環境が悪いと言うのではなくて、人間の生活も多分反省していかなければならないんだと思います。
 ありがとうございました。
○委員長(堀利和君) 以上で参考人に対する質疑は終わりました。
 参考人の皆様に一言ごあいさつ申し上げます。
 本日は長時間にわたり貴重な御意見をいただきまして誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後三時十九分散会