第155回国会 経済産業委員会 第11号
平成十四年十二月五日(木曜日)
   午前十時開会
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   委員の異動
 十二月四日
    辞任         補欠選任
     野上浩太郎君     魚住 汎英君
     舛添 要一君     片山虎之助君
     鶴岡  洋君     加藤 修一君
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  出席者は左のとおり。
    委員長         田浦  直君
    理 事
                魚住 汎英君
                加納 時男君
                松田 岩夫君
                木俣 佳丈君
                平田 健二君
    委 員
                小林  温君
                近藤  剛君
                斉藤 滋宣君
                関谷 勝嗣君
                藤原 正司君
                若林 秀樹君
                加藤 修一君
                松 あきら君
                緒方 靖夫君
                西山登紀子君
                広野ただし君
   衆議院議員
       修正案提出者   田中 慶秋君
       修正案提出者   河上 覃雄君
   国務大臣
       経済産業大臣   平沼 赳夫君
   副大臣
       経済産業副大臣  高市 早苗君
       経済産業副大臣  西川太一郎君
   大臣政務官
       経済産業大臣政
       務官       桜田 義孝君
       経済産業大臣政
       務官       西川 公也君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        塩入 武三君
   参考人
       財団法人原子力
       安全研究協会理
       事長
       前原子力安全委
       員会委員長    佐藤 一男君
       全国原子力発電
       所所在市町村協
       議会会長
       福井県敦賀市長  河瀬 一治君
       東京大学大学院
       工学系研究科教
       授        班目 春樹君
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  本日の会議に付した案件
○理事補欠選任の件
○電気事業法及び核原料物質、核燃料物質及び原
 子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律
 案(内閣提出、衆議院送付)
○独立行政法人原子力安全基盤機構法案(内閣提
 出、衆議院送付)



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○委員長(田浦直君) ただいまから経済産業委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 昨日、野上浩太郎君、舛添要一君及び鶴岡洋君が委員を辞任され、その補欠として魚住汎英君、片山虎之助君及び加藤修一君が選任されました。
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○委員長(田浦直君) 理事の補欠選任についてお諮りいたします。
 委員の異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。
 理事の選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(田浦直君) 御異議ないと認めます。
 それでは、理事に魚住汎英君を指名いたします。
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○委員長(田浦直君) 電気事業法及び核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案及び独立行政法人原子力安全基盤機構法案の両案を一括して議題といたします。
 政府から順次趣旨説明を聴取いたします。平沼経済産業大臣。
○国務大臣(平沼赳夫君) おはようございます。
 電気事業法及び核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案及び独立行政法人原子力安全基盤機構法案につきまして、その提案理由及びその要旨を御説明申し上げます。
 初めに、電気事業法及び核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。
 原子力発電所の自主点検作業に係る不正な記載や、原子炉格納容器の定期検査における不正な操作は、これまでの原子力の安全確保に対する国民の信頼を大きく損なうものでありました。
 本法律案は、これらが生じたことへの反省に立ち、原子力の安全確保に万全を期し、国民の信頼が得られるよう、関係の法律において所要の措置を講ずるものであります。
 次に、本法律案の要旨を御説明申し上げます。
 第一に、電気事業法の一部改正であります。この一部改正におきましては、事業者の自主的な点検を定期自主検査として位置付けた上で、事業者に対し、当該検査を実施すること、必要な場合には設備の健全性についての評価を行うこと、これらの結果を記録し、保存すること及び定期自主検査の実施体制の審査を受けることを義務付けることとしております。また、原子力発電所の保守点検を行った事業者に対する報告徴収又は資料の提出の要求を可能とすること、原子力安全規制に関するダブルチェックの実効性を向上させるため経済産業大臣が原子力安全委員会に対し規制の実施状況の報告を行うこと、罰金額の引上げ、懲役刑の付加及び法人重課の導入を行うこと等の措置を講ずることとしております。
 第二に、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部改正であります。この一部改正におきましては、原子力発電所以外の原子力施設についても、原子力施設の保守点検を行った事業者に対する報告徴収を可能とすること、罰則の強化を行うこと、原子力安全規制に関するダブルチェックの実効性を向上させるため主務大臣が原子力安全委員会に対し報告を行うこと等の措置を講ずることにより、電気事業法の一部改正と同等の内容を確保することとしております。
 続いて、独立行政法人原子力安全基盤機構法案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。
 公益法人に対する行政の関与の在り方の改革実施計画において、国と公益法人との関係の適正化を図りつつ、原子力安全規制の更なる効率的かつ的確な実施を図るため、原子力安全規制の実施を目的とする独立行政法人を設置し、国の原子力安全行政部門の事務の一部及びこれに関連する公益法人への委託実施事務を当該独立行政法人に移管して実施する旨が決定されたところであります。
 また、今般の原子力発電所の自主点検作業に係る不正な記載等が、原子力の安全確保に対する国民の信頼を大きく損なうものであったことから、その実施体制を整備し、原子力の安全確保に万全を期し、国民の信頼を回復することが必要であります。
 本法律案は、これらを踏まえ、原子力安全規制の実施を目的とする独立行政法人を設立するため、必要な規定を整備するものであります。
 次に、本法律案の要旨を御説明申し上げます。
 第一に、独立行政法人原子力安全基盤機構は、エネルギーとしての利用に関する原子力の安全の確保のための基盤の整備を図ることを目的といたします。
 第二に、本機構は原子力施設等に関する検査等を行うとともに、原子力施設等に関する安全性の解析及び評価等の業務を行うこととしております。
 以上がこれらの法律案の提案理由及び要旨でありますが、電気事業法及び核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案につきましては、衆議院において修正が行われたところであります。
 何とぞ、慎重御審議の上、御賛同くださいますようにお願いを申し上げます。
○委員長(田浦直君) 次に、電気事業法及び核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案の衆議院における修正部分について、修正案提出者衆議院議員田中慶秋君から説明を聴取いたします。衆議院議員田中慶秋君。
○衆議院議員(田中慶秋君) ただいま議題となりました電気事業法及び核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案に対する衆議院における修正部分につきまして、その趣旨及び概要を御説明申し上げます。
 本法律案の衆議院における審査におきましては、原子力施設立地地域の住民を始めとした国民の信頼回復を第一義として、事業者の自主的な保安活動の在り方、安全規制体制の在り方、安全上の技術基準の在り方、申告制度の在り方について、参考人から意見の聴取を行うなど、原子力施設の安全性の向上及び国民の信頼回復に向けて、慎重な審査を行いました。
 その中で、規制行政庁と原子力安全委員会におけるダブルチェック体制の強化が重要であること、定期自主検査の実施は事業者の責務であることを明確にすることが重要であること、設備の健全性評価の結果については客観性を高めることが重要であること、より多くの者からより容易に申告を行うことができる環境の整備が重要であること等、認識が一層深まったところであります。
 衆議院においては、こうした経過を踏まえ、以下の修正を行いましたので、その概要を御説明申し上げます。
 第一に、電気事業法の一部改正についてであります。
 その一は、経済産業大臣が原子力発電工作物に係る認可等の実施状況について原子力安全委員会に行う報告は、四半期ごとに行うものとするとともに、経済産業大臣は、当該報告のほか、この法律の施行状況であって原子力発電工作物に係る保安の確保に関するものについても、原子力安全委員会に報告するものとすることであります。
 その二は、原子力発電工作物を設置する者等は、原子力安全委員会が経済産業大臣の報告に係る調査を行う場合においては、当該調査に協力しなければならないものとすることであります。
 その三は、「自主検査」を「事業者検査」に改めるものとすることであります。
 その四は、定期事業者検査を行う特定電気工作物を設置する者は、当該事業者検査の際、原子力を原動力とする発電用の特定電気工作物であって一定のものに関し、一定の期間が経過した後に技術基準に適しなくなるおそれがある部分があると認めたときは、一定の事項については、これを経済産業大臣に報告しなければならないものとすることであります。
 第二に、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部改正についてであります。
 その一は、製錬事業者等がこの法律又はこの法律に基づく命令の規定に違反する事実がある場合においては、その従業者は、その事実を主務大臣に対するほか、原子力安全委員会に対しても申告することができるものとすることであります。
 その二は、文部科学大臣、経済産業大臣又は国土交通大臣が保安規定等の認可等の実施状況について原子力安全委員会に行う報告は、四半期ごとに行うものとするとともに、文部科学大臣、経済産業大臣又は国土交通大臣は、当該報告のほか、この法律の施行の状況であって核燃料物質若しくは核燃料物質により汚染されたもの又は原子炉による災害の防止に係るものについても、原子力安全委員会に報告するものとすることであります。
 その三は、精錬事業者等は、原子力安全委員会が文部科学大臣、経済産業大臣又は国土交通大臣の報告に係る調査を行う場合においては、当該調査に協力しなければならないものとすることであります。
 第三に、原子力委員会及び原子力安全委員会設置法の一部改正についてであります。
 原子力安全委員会は、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の規定により受けた申告について調査し、関係行政機関の長に対して必要な措置を講ずることを勧告することができるものとすることであります。
 以上が本法律案に対する衆議院における修正部分の趣旨及び概要であります。本修正は、原子力施設の安全性の向上と国民の信頼を回復する上で意義のあるものと考えておりますので、何とぞ、慎重に御審議の上、委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
 以上です。
○委員長(田浦直君) 以上で両案の趣旨説明及び衆議院における修正部分の説明の聴取は終了いたしました。
 速記を止めてください。
   〔速記中止〕
○委員長(田浦直君) それでは、速記を起こしてください。
 本日は、両案の審査のため、参考人として財団法人原子力安全研究協会理事長・前原子力安全委員会委員長佐藤一男君、全国原子力発電所所在市町村協議会会長・福井県敦賀市長河瀬一治君及び東京大学大学院工学系研究科教授班目春樹君の三名の御出席をいただいております。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 皆様には御多忙中のところ御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。
 皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の両案の審査の参考にいたしたいと存じます。よろしくお願いいたします。
 次に、会議の進め方について申し上げます。
 まず、お一人十五分程度で順次御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えをいただきたいと存じます。
 なお、参考人の方々の御発言は着席のままで結構でございます。
 それでは、まず佐藤参考人にお願いをいたします。佐藤参考人。
○参考人(佐藤一男君) 着席のままで失礼いたします。佐藤でございます。
 まず、今回の法律改正の契機になりましたのは、これはもう御存じのとおり、東京電力の自主点検記録の不正などでございました。
 自主点検の記録を改ざんしたり抹消したりするというのは、実はその後の保守管理の作業を著しく困難にしてしまう可能性がございますので、技術的にもどうも私、一介の技術屋としてはこれちょっと理解し難い行為なのでありますが、法令上は、これは必ず国に報告しなければならないとかなんとかというようなものでは必ずしもなかったというふうに理解しております。もっとも、その後判明したもので明白に法令違反というものもございましたけれども、当初発見されたものはそういうものではなかったのであります。
 しかしながら、こういうものを公表もしない、むしろ隠ぺいしあるいは抹消してしまうというようなことは、ジェー・シー・オー事故でその重要性が強調されたセーフティーカルチュア、安全文化というものにもとる行為であると申し上げてよろしいと思うんです。
 このセーフティーカルチュアというものを提唱したのはIAEAのINSAGというグループなのでありますが、そのグループが作った解説文書には、まず組織のトップは安全の問題に組織がどう取り組むかという基本的なスタンスを明らかにしなきゃならぬ、そこではいろいろな要件があるんですが、その要件の一つとして、安全に関することは組織は進んでオープンにするという態度が必要だと、そういうことがうたわれているわけであります。
 そういう目で見ますと、今回のそういう不祥事というものはセーフティーカルチュアの欠如と、それから技術倫理というものの退廃が形となって現れたものだというふうに私などは理解するわけでございます。
 しかし一方、国のこういう様々な、今回は法令違反というものでは最初は必ずしもなかったんですが、技術基準などは、これはいったん制定されますとその後の技術の進歩を反映して適時的確に改定をしていくというようなのは、これは必要だということはだれしもそう言うんですが、実際問題としてはかなり難しいのであります。中には、もう時代後れになっちゃったというようなものもないとは申せません。これでもって規制される方の立場に立ちますと、これは何とも納得しないまま、お上が言うから仕方がないということで表面だけで取り繕っておけというような、そういう風潮が生まれかねないのであります。それがいいとはもちろん申しませんが、生まれかねないということも事実でございます。
 したがって、今回の法改正等も踏まえまして、国の基準等の絶えざる見直し、最新の技術的知見を十分に取り入れたものにしていく努力というものが必要でございまして、これには民間の規格、民間の基準というのを適切に上手に使っていくと、国が、そういうことも必要なことかと思います。現に、例えばアメリカでよく言われますASMEのコードでございますとかその他、これはみんな実は民間規格でございます。
 さて、原子力の施設にはその安全を確保するために様々な構築物、系統、機器等が設置されておりまして、その中には国の法律、技術基準ないしは審査指針などで明白にこれは設けなければならないというふうに決められているものもございますし、そうではなくて、直接的な要求はないけれども、設計者ないしは事業者の判断、裁量でもって付けた方がいいだろうということで付けてあるものもございます。また、そういう設備については、例えば定期検査等によりまして国が直接検査に関与するものもあるし、事業者の言うならば自主的な活動に任されているものもございます。
 実は、これはアメリカの例なんですが、アメリカの原子力規制委員会、NRCと申しますが、このNRCが、今申しましたように規制当局としてこういうものを付けなきゃならぬと義務付けているもの以外に事業者が付けたもの、その事業者の判断で付けたものをのけて、これでどのぐらい安全が確保されるかということを解析した論文がございます。それで見ますと、例えば炉心が重大な損傷を受ける頻度あるいは大量の放射性物質が環境に放出される頻度ないしはその周辺の公衆に対する影響等が数倍から物によっては数十倍も跳ね上がるという、そういう論文が出ております。このことからも分かりますように、実はそういう施設の安全というものを確保するに当たっての事業者の活動というのがいかに重要かということであります。当然、この活動の中には自主的な検査等も含まれるわけでございます。
 こういうことから、今回の法改正では、私ども承っておりますところでは、事業者がこれまで言うならば自主的に行ってきた検査等の一部につきまして、全部ではたしかないと思いますが、一部につきまして、これを定期的に実施し、記録を保存し等々のことを義務付けるというような趣旨のことが入っているということが、私そのように理解しておりますが、これは現在当面の措置としては適切なものだろうと私は考えております。
 ただ、これから、後でもまた申し上げますが、国が直接関与する範囲はどこまでなのか、事業者が責任を負う範囲は本当にどこまでなのか、それが技術的に見て最も合理的な線引きはどういうものなのかということはかなり抜本的にこれから検討していく必要があるんじゃないか。今回のこの法改正はその方向に向かった第一歩であるというふうに私は考えております。
 我が国の原子炉を始めといたします原子力施設の許認可の制度というのは、これはもう先生方も御案内のとおりでございますが、一つの特徴として、例えば設置許可というものには期限がないんです。無期限でございます。その代わり、建前としては厳重な基準を設けて、その基準を満足しなくなったらもう取りやめだという、そういうものなんですね。アメリカなんかでは、これは許可には期限がございます。
 ところで、我が国の現在の技術基準というようなものは、実は施設を造りますときの工事計画の認可でございますとか使用前検査などというのを頭に入れた基準でございまして、言うなれば相手は新品でございます。施設を運転していって時間がたってくると、もう必然的に様々な変化、いわゆる経年変化が生じます。そういうものが生ずるというようなものは現在の基準を幾ら読んでも浮かび上がってこないんです。そういう点をきちんと取り入れた本当の意味での維持基準というもの、これは何も使用を始めたそういう設備の合否の判定基準を甘くするなどというようなものではございません。これはもうあくまで工学的な、言うならば常識に基づいた合理的に正しいようなものでなければならないわけでございます。
 このような維持基準が現在まで事実上我が国に存在しなかった。というのは、これはどうも運転開始後にこういう検査といったようなものがどういう意義があるんだということについての認識が、規制当局も、あるいは事業者の方も、さらには学界の方もその認識が不十分だったのではないかというふうに私は考えます。この点につきましては、私もその一端に加わってきた者といたしまして深く反省しているところでございます。
 今回の法改正が実現いたしますと、事業者が行う検査等につきまして、その所見に基づいて健全性の評価というのをすることになっているわけでございます。その評価の手法や判断基準等については、当面は民間規格等も活用するという方針だというふうに承っておりますが、国が早急にこれを整備するということはもちろん必要なことでございまして、今となってはいささか遅きに失した感はございますけれども、その方向で努力するというのは誠に適切な方策であろうと考えます。
 なお、これらにつきましては、外国でも相当な経験等を有しているところがございますので、そういう知識や経験に学んでいくということも大切なことかと存じます。
 ただ、将来にわたりましては、こういう運転開始してずっと時間がたってくるような場合にどういうことをどういうふうにやっていかなければならないのか、何がどれだけ重要なのかということをきちんと明確にしていく必要がございます。それを技術基準、維持基準等に十分に反映させる、国の役割、事業者の責任等を論理的にきちんと明確にしていくということが是非必要なことかと思います。このためには、実はリスク情報というものに基づいた様々な考察が極めて有効であり、また必要なことでございます。
 実は、平成十一年度版の原子力安全白書におきましては、リスク評価の概念に基づく安全確保を目指すという基本的な政策がちゃんと書かれているところでございます。その方向に向かって是非合理的な検査の方法等が策定されていくべきだというふうに私は考えます。
 さらに、こういうものをやっていくについては、例えば検査をするにしても、それを判断するにいたしましても、専門的な知識というものは必要であり、経験も必要でございます。そういう関連する核技術分野につきまして十分な知識と経験とを持った専門家の集団というものを、国も事業者もこれは育成し、維持していく必要がございます。私が見ますところ、現在の国の制度というのは、こういう専門家集団を自分の組織の中に育てるというのはそれほど簡単なことでないように見えます。そういう意味から、今度、原子力安全基盤機構といったような、そういう言わば専門家集団の組織というものを有効に活用していくということも大変有益なことではないかというふうに考えます。
 どうもありがとうございました。
○委員長(田浦直君) 次に、河瀬参考人にお願いいたします。河瀬参考人。
○参考人(河瀬一治君) 今日は、経済産業委員会の大変貴重な時間の中で、参考人としてお招きをいただきまして、私ども原子力発電所を持っております地域の実情でありますとか、また、その考え方を聞いていただくということでありますので、大変うれしく思っておる次第でございます。感謝を申し上げます。
 私、全国に原子力発電所が二十七の自治体に立地をしておりますけれども、そこの立地と周辺の準立地の地域がございまして、その自治体で構成をいたします全国原子力発電所所在市町村協議会という大変長い名前でございますので、これからは全原協というように略させていただきますけれども、その会長を仰せ付かっておるところでございます。
 先般、東京電力株式会社によります自主点検作業記録の不正につきましては、国民の原子力に対します信頼を根底から覆すものでありまして、大変遺憾なことだったというふうに思っております。また、国におきましても公表に約二年要する等々、原子力安全・保安院の対応は極めて不適切であったと言わざるを得ないところでもあります。
 私ども全原協といたしましても、今回の不祥事に対しまして、九月二日、十月三十一日と二度にわたりまして申入れを行ったところでございます。
 その申入れの中身は、信頼回復のために国に対しまして、総点検の実施、維持基準や自主点検の在り方などの制度化、原子力安全・保安院と資源エネ庁を独立的関係に見直すとともに、安全規制体制の大幅な拡充、情報公開や透明性の確保、内部告発制度の適正化などを要望したところでございます。
 また、敦賀市といたしましても、日本原子力発電株式会社と核燃料開発機構、御承知のとおり敦賀市には日本原電の一、二号機がございますし、「もんじゅ」、「ふげん」も来年の三月で廃炉になりますけれども、核燃料サイクル機構のそういう施設がありまして、四つございます。敦賀は少し特殊でありまして、すべて型の違う炉を四つ持っているような地域でございます。
 そういうことで、総点検の指示を行いました。そして、先月の十一月十五日に各電力から総点検の中間報告がなされたわけでございます。その中間報告の中では、日本原電株式会社一号機のシュラウドのひび割れの兆候を報告をしていなかった等、品質管理上改善すべき事項があったわけでありますけれども、不正また技術適合義務違反、報告義務違反に係る事実はないとの結果でございまして、福井県とともに立入りの調査を行いました。そして、中間報告が妥当であるという旨も確認をしたところであります。
 この問題につきましては、国民の信頼を回復するために、国及び事業者におかれては厳正なる調査と再発防止など、適切な処理を取っていただきたいというふうに考えておるところであります。
 そこで、今回、電気事業法及び原子炉等規制の一部改正の案ということで今審議がなされている最中でございますけれども、やはりこれは再発防止というその反省の上に立ったことで、国として法律をもってしっかりやろうという表れでございまして、私ども立地地域にとりましては安全をより確保できるものだということで大変喜んでおるところでございます。
 そういうことで、この検査制度改善の一環として検討されております電気事業法及び原子炉規制法の一部改正、また独立行政法人原子力安全基盤機構法案につきましての全原協の会長としての立場で、また敦賀市長という立場で意見を述べさせていただきたいというふうに思います。
 電気事業法及び原子炉等規制法の一部改正案におきましては、自主点検の法的位置付けの明確化、国によります確認など検査の実効性の向上、設備の健全性評価の義務化、罰則の強化などが盛り込まれております。この法改正によりまして再発防止がなされることをやはり期待をするわけでありますけれども、より国民の視点に立った規制になるようにということを考えております。
 そういう中で、定期事業者の検査というのがございますけれども、この全原協におきましても自主点検の在り方を制度化することを要望を、先ほど言いましたけれども、しておりまして、現行の自主点検を法令上の定期事業検査と位置付けまして、検査結果を記録、保存、報告を義務化をしているということは私どもの要望に即しているというふうに思っております。
 しかし、法定点検の一部、定期事業者検査につきましては、原子力安全基盤整備機構が実施するということになっておりまして、決してこれは他人任せにならないように、国としても責任のある厳正な監督できる体制にしていただきたい、このように要望いたします。
 また、健全性の評価の義務化でございます。
 これにおきましては、その評価の手法につきまして民間規格の活用を含めまして省令で整備するとしているわけでありますけれども、安全性の後退を懸念する声もございます。要するに、新品同様ですとこれは安全性は高いわけでありまして、それを少し古くなってもという基準を作ることによって、要するに今までの安全性よりも少し後退しているなというふうに感じられる部分がございます。
 そういうことで、やはり技術的な検討をしっかりと行っていただきまして、その必要性でありますとか、また科学的な根拠を示すことによりまして、またそういうことが国民の理解を得やすいというふうに思いますし、得るための一つの前提でなかろうかなというふうに考えております。維持基準につきましてはそのような考えを持っておるところでもあります。
 また、罰則ということで、大変重い罰則ということのようでございまして、確かにその強化を行うことによりまして、法令違反等の抑止力として働くものというふうに考えるわけでございます。併せまして、法令違反等の指摘がどちらかといいますとマスコミの方から出てくるというような、また極めて、原子力批判の立場の方々から出るんじゃなくて、やはり保安院自身によって確実に行われるような厳しい運用をお願いしたいというふうに思っておるところでもございます。
 また、独立行政法人原子力安全基盤機構法案でございますけれども、この法律、この基盤機構を設置をいたしまして、原子炉の検査、設計の安全性の解析及び評価、原子力安全確保のための基盤の整備を行うということであります。
 特に、電気事業法でありますとか原子炉規制法に基づきます使用前の検査、定期検査の一部に加えまして、今般の再発防止策として盛り込まれました定期事業者検査の審査につきましても、原子力安全基盤機構が実施をしているというふうになっておるわけでありまして、先ほども申し上げましたけれども、決してその安全規制が後退することがないように、原子力安全基盤機構は厳正な検査を行うことのできる機関でなければならないというふうに思っております。
 今般の問題で国民の信頼が著しく失われております。原子力安全基盤機構におきましては、業務に責任を持って、国民が信頼し、そして安心して任せられるような、そのような規制組織になっていただきたいというふうに願っております。
 また、原子力等々の技術、大変高度でございますし、なかなか一般の国民には説明しても分からない部分が恐らく多くあるというふうに思いますし、私自身も細かい部分で説明を受けますと難しいなということを感じます。そういうところで、やはり原子力の安全、じゃ、どのように分からぬものを理解するんだということございますが、もちろん今の情報公開、より分かりやすい説明は当然でありますけれども、例えば法律ですとやっぱり弁護士さん等々、車の整備ですと整備をする人とか、また行政書士とか、要するに代わりにやってくれる人が私どもの社会にはいられるわけでございまして、やはり国民の立場に立って、国民が安心して信頼をして任せられる、そういう組織というのは私は必要だというふうに思っております。
 代理人というようなことで、松井選手も何か代理人を決めたというようなことで、なかなか自分では対応できないことがあるというようなものでございますので、是非原子力の世界においてもしっかりとした代理人を立てて、国民が安心をするという、そして国民が安心して任せられる安全の代理人がやはり原子力安全・保安院でなければならないというふうに考えております。この法律によりまして、原子力安全規制が大幅に強化されることを大きく期待をいたしておるところでございます。
 特に、私ども日本人の国民性だと思うんですけれども、隠すとかうそを言うというのは非常に嫌う私は人種といいますか民族じゃないかなというふうに思っておりまして、そういうことが分かった後の批判というのは、私も思うんですけれども、「もんじゅ」もちょうど平成七年の十月に事故ございましたけれども、あのときにビデオ隠しとか改ざんがなかったら恐らく「もんじゅ」はもっと早く動いていたんじゃないかなというふうに思うわけでありまして、やはり国民の皆さん方に隠し事をする、またうそをつくということはもう一番いけない、特に日本社会においてはいけないことだというふうに思っていまして、それと情報公開でございます。情報公開をしっかりと行いながら、やはりより透明性を高める、当然私ども行政としても今そのような形で運営もさせていただいておりますけれども、特に原子力の世界は先ほど言いました信頼関係というものが一番大事でございますので、そういうことにやはりしっかりと取り組んでいただきたい、このようにも思っております。
 最後になりましたけれども、私ども地域振興も大切でございまして、もちろん安全、安心は一、二でありますが、やはり地域振興がございませんと地元としても大変つらいものもございます。平成十二年の十二月に議員立法によりまして先生方のお力で原子力発電施設等周辺地域振興特別措置法を制定いただきまして、その中で私どもも地域振興にいろいろと頑張っております。
 やはり原子力発電所があってよかったなと言われる、そういう地域になることも大事でありまして、その基本はやはり安全、安心がありませんと到底成り立たないことでもございます。私どもも全原協の中ではやはり原子力発電所とともに共存共栄をしていこうというスタンスの中でいろいろと活動もいたしておりますけれども、やはり一番身近に発電所を抱える自治体でございまして、悩みも多いことも事実でございます。また今後とも諸先生方のいろんな御指導、御支援をいただきながら私ども頑張ってまいります。
 特に、地域振興の諸問題の中では、市町村の核燃料税の創設等々、小泉総理が地方は地方で頑張れと、自分たちのアイデアを出せということを言っておられますし、私ども二十七しか、三千二百以上の自治体、今度合併で減ると思いますが、二十七しかない地域でございますので、一つの発電所を持っているということを特徴付けてこれからも努力していきたいと思っておりますので、今後ともよろしくお願い申し上げまして、終わらさせていただきます。
 ありがとうございました。
○委員長(田浦直君) 次に、班目参考人にお願いいたします。班目参考人。
○参考人(班目春樹君) 東京大学の班目でございます。
 総合資源エネルギー調査会の原子力安全・保安部会、検査の在り方に関する検討会の委員長という立場と、それから日本機械学会の発電用設備規格委員会の委員長という立場から意見を述べさせていただきたいと思います。
 まず最初に、今回の東電問題なんですけれども、これは原子力を専門とする人間にとってはもう非常にけしからぬことだと思っておりまして、是非とも厳罰に処するべきだということで、一切弁護する気はございません。
 ただ、行政の方、規制行政の方にも全く問題がなかったかというと、やっぱりそうでもないと思うんですね。それは、ちょっと建前にこだわり過ぎて、ややもすると規制の実効性という意味でいかがなものだったか、あるいは科学的な合理性の追求というところで、今の規制、本当にいいのかとか、それから国民に対する説明責任ということでいかがか、そんなところです。
 例えば、パンフレットで原子力発電所は国が定期的に検査しているから安全ですなんという文章を書くのはやっぱりとんでもないことで、実はあの複雑なシステムのごくごくわずかしか国は直接見ていないんですね。事実、シュラウドなんか見ていないわけです。となると、そういうのをきちっと見ているのは事業者なんですね。だから、事業者にしっかりやらせる。それをむしろ監査する。だから、国が直接見るということもそれはしかるべき、あっていいんですが、もっと監査の方向に持っていかなきゃいけない。どうしてもああいうものですから小さなトラブルはしょっちゅうあります。そういうのから学んで大きな事故だけは絶対起こさないようにやっていく、こういうのを一種の品質保証活動と言いますけれども、そういうのをしっかり事業者にやらせると同時に、それをきちっと国が見れるようにする、それがまず大事だと思います。
 それから、今の定期検査ですと、決められたものを決められた手順で検査するんで、日々の事業者の保安活動は国はよく分からないわけですね。だから、例えば抜き打ち的な手法なんかも使って、どういうふうに活動しているのというのをもっと検査できるようにする、当然だと思います。
 それから、科学的合理性というのは非常に重要でして、今の知見からいくと、どの部品は非常に大事だというのが定量的に分かるんですね。そういう定量的安全指標みたいなものを使って、より重要なものをしっかり検査する、そういう考え方も必要ですし、それから、ちょこちょことしたトラブルしょっちゅう起こすプラントと、それから非常に成績いいプラントと同じように見るというのもこれもナンセンスな話で、そういうところで差を付けるということもあってしかるべきだと思います。
 そういう科学的合理性を追求するのと同時に、国民に対する説明責任というのも非常に大切です。
 例えば、今回のでどういうぐらいの大きさのトラブルだったら国に報告するかという基準というのも結構あいまいだったんだなということが分かってきてしまったんですけれども、それもそれで非常に問題なんですけれども、ちょっと維持基準の方がより話題になっていますので、維持基準に絞らせて説明させていただきます。
 維持基準の必要性は佐藤参考人も述べたとおりで、私から言うまでもないんですが、作った当初は、当然、その後多少の傷は付くということを見込んで余裕を持って作ってあるわけです。それに対する設計・建設段階での技術基準というのがあるのにもかかわらず、維持基準というのを作ってこなかった。現在の電気事業法からいきますと、別途省令で定める技術基準に従って維持しなきゃいけないというふうに書いてありますから、維持基準というのがないと、明らかに設計、建設のための技術基準を維持管理段階でも使わなきゃいけないという非常に変なことが起こっています。
 実際は、非常にナンセンスなことになるから、どうやっているかというと、特認といいますか、特別認可という形ですり抜けているのが実情なんです。甘くするというだけじゃなくて、もっと問題なのは、一度何か見付かったらやたら厳しいことになるんですけれども、じゃ、いつ点検するのというのは、これは今一切そういう紙に書かれた基準ないんですね。実際にはもちろん行政指導でやっているわけですけれども。維持基準がないと、そういうことになっています。
 さらには、不遡及の原則というのがありまして、原子力発電所ができたときにどういう技術基準があったか、それでずっと縛るということになっているんですね。そうすると、シュラウドに関して技術基準がないときに作られちゃったプラントは、今どうやって維持管理したらいいか、何にも書かれたものがない。もちろん行政指導でやっているんでしょうけれども、説明責任ちっとも果たしていませんねと。そういう状況にあるので、維持基準は是非とも必要だと思っております。
 ただ、こういう技術基準を国が細かく定めるということは、これはうっかりすると関税外貿易障壁になるおそれがあります。したがって、WTOのTBT協定とか、そういうことからも余り好ましくないこととされています。
 そういうことから、日本機械学会ではこういう規格作りというのをずっとやっておりまして、既に維持規格というのも二〇〇〇年、二〇〇二年版と次々と発行しております。機械学会の発電用設備規格委員会というのは非常に中立、公正、公開の原則を守って運営しています。どういうことかというと、例えば傍聴したいという方はちゃんと申し出ていただければいつでも傍聴できるようになっています。それから、規格を定めるときには公衆審査というのにかけます。要するに、広く意見を求めて、反対意見があればとにかく何でも言ってくださいと、それに対して、委員会の方では誠意をもってどうするかを決めますというシステムでやっています。正に学会というところの機能を最大限に生かして、日本全体の英知を結集した形で定めているのが学会の規格で、民間だから下だと思われないで、是非そういうものを規制行政に活用していただきたいと思います。
 現在、実は機械学会のそういう委員会に行政の側の方も委員として来ていただいているんですけれども、規制行政の専門家ということではいろいろと有益な意見をいただいているんですが、細かい技術的な話になりますと、やっぱりちょっと御意見なかなかいただけないというところもありまして、是非今度は国にもそういう技術の専門家をもっともっと育てていただいて、是非学会基準作りなんかにも参画し、規制行政にも使っていただきたいと思う次第であります。
 それから、ちょっと話が変わるかもしれませんが、今の制度というのは、内部告発といいますか、申告でもなければ国の方は不正が行われたか行われていないか分からないようなシステムになっちゃっているんですね。ある意味では内部告発を待つしかない。これ、そうじゃなくできるんです。
 例えば、機械学会では、維持規格を定めてこれを行政に使ってもらえれば、検査する人間の資格認証認定のようなものも考えようと思っています。そういう制度ができれば、できたら第三者機関がいいんですけれども、第三者機関にそういう検査員を配置する、ちゃんと資格を持った検査員を配置する。検査員が検査したところに何かあったら、これはもう電力会社の社員じゃないんですから、当然国の方にも報告する。そういう形にすると不正が起こり得なくなるんですね。だから、システムとしてそういうものも擁さなきゃいけない。
 ちなみに、こういうところも何でもかんでも国がやればいいじゃないかとおっしゃられるかもしれませんけれども、ちょっと違うんですね。というのは、最初に申しましたように、国がすべてのものを何もかも見ますというのは、これはやっぱりとてもじゃないけれどもできません。実際、掛けている人手だって、会社の方が何百倍も多い人手を掛けてやっているわけで、その分だけ国が大きくなりゃいいじゃないかと、これ、とてもじゃないけれども許されることじゃありません。
 となると、国はやっぱり監査だと。そうすると、こういうのは第三者機関か何かがちゃんと物を検査して、それを国はちゃんとやられているかどうかを監査する。監査するのには、しかし当然検査する人間以上に専門家でなければこれはちっとも監査にならないんで、是非とも今度できます独立法人の方にはそういう専門性を有した方を配置していただきたいなと思っている次第です。
 私の申し上げたいことは以上でございます。
○委員長(田浦直君) 以上で参考人各位の御意見の陳述は終わります。
 それでは、これより参考人に対する質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
○加納時男君 自由民主党の加納時男でございます。
 三人の参考人の方には、大変貴重な御意見をいただき、ありがとうございました。
 まず、佐藤参考人にお伺いしたいと思います。
 冒頭おっしゃったように、一連の原子力の記録の不正事件、これは原子力の安全文化の欠如であり、許し難い行為であるとおっしゃるのは、全く同感でございます。これはあったことでその後の保守管理の作業をやりにくくするとおっしゃったのも、非常にこれまた実務面まで行き届いた御配慮のある発言だと承っております。けしからぬ、企業はなっていない、改めろということ。それからまた、その企業の経営者が責任を取ったというのも事実でございます。二つ目の問題として、行政の不作為と言ったら言い過ぎかもしれませんが、行政にも問題があるということは三人の参考人の方から言われました。
 佐藤参考人に伺いたいんですが、この福島の第一原子力発電所の格納容器の問題を別にしますと、たくさん出てまいりました記録の、自主点検の記録の不正というのは、安全性を脅かすものであったとお考えかどうか。これは非常に地域の方からは心配が訴えられております。そこをお願いします。
○参考人(佐藤一男君) これ、安全に何がどの程度影響があるかというのは、大変難しい判断のところもございます。私、あるところで例に引いたんですが、原子炉の運転をする人が朝出掛けに奥さんとけんかしたということだって、それはもう気分むしゃくしゃして仕事をすると判断を誤ってしまうというような可能性だってないとは言えないんです。
 ですから、私、よく申し上げるんですが、安全性に関係がないことなんていうのはありませんと。けれども、これはおのずと物には軽い重いがございます。そういう目で見ると、この当初出てまいりました、東京電力からはたしか二十九件だったと思いますが、これは安全上、少なくとも技術的に見たときに、非常に深刻で重大なものだというものはございません。言ってみれば、ささいなものであったと言ってよろしい。ただし、それは技術的な判断であり、また法律上の判断であると。それと、そういう不正をしたという倫理の問題とは混同してはならないということは大切なことだと私は考えております。
○加納時男君 ありがとうございました。
 社会的な倫理の問題、経営責任の問題と、それから技術的な安全性とは別だというのは、そのとおりだと思っております。
 そこで、技術的な安全性で見た場合に、ささいなものというふうなお話があったんですが、INESというのがございます。地震で言う震度を見ているように、震度一から震度七まで、原子力の世界でも、先生御専門でございますが、最も低いレベル一からレベル七まであると。チェルノブイリはレベル七で、とんでもない激震というか烈震であると。弱震というのが、言わば地震というのはレベル一と国民的には理解しているわけですが、そういうレベルから見ると、一から七というレベルから見て今回のはどの程度のレベルかということを伺いたいと思います。
○参考人(佐藤一男君) 一つ一つ、実は、そのINESのこれ国際スケールと申しますが、当てはめて判断してはいなかったんでございますが、ざっと申し上げれば、いずれもレベルゼロという、ゼロマイナスというやつかもしれません、その程度でございます。
○加納時男君 ありがとうございました。
 次に、一つを除くとさっき申し上げたんですが、福島第一原子力発電所一号機の原子炉格納容器の漏えい率の事前テストの結果、いい数字が出なかったというので空気を送り込んで不正操作をしたと。これは、私の理解では明らかに電気事業法違反、そしてまた原子炉等規制法違反でありまして、明確な法令違反であると思います。これについては厳罰で臨むべきだというのが政治家としての私の意見でありますし、事実、原子力安全・保安院では一年間の運転停止の処分にした、当然だと思っております。
 私は、ここではそういう法令違反でけしからぬということはしっかり押さえた上で、佐藤参考人に質問いたしますが、先生は立地審査基準やなんかに非常にお詳しいわけでありますが、立地審査基準なんかで見ますと、何かLOCAと言っておりますけれども、冷却材を喪失するような事故が起こって格納容器の中にずっと放射性物質があふれちゃってそこから外に出て何かあったときにも大丈夫なように基準を決めています。その基準というのは五ミリシーベルト、年間という数字が出ていると思うんですが。私は、定性的なお話で結構なんですが、それに対して保安規定というのはかなり厳重にテストの数字も決めていると。今〇・五%だと思うんですが。そういうことで考えると十分に、例えばこれが二%とか二・五%ぐらいであっても十分に裕度のある話なのか非常にクリティカルな話だったのかというのは、非常に住民の方から私も質問を受けたんですが、もしお分かりでしたらお願いします。
○参考人(佐藤一男君) これも私、直接ちゃんと計算したわけではございませんが、実はお尋ねの立地指針による判断基準では、周辺の公衆、これは距離がいろいろあるんですが、例えば全身に対して二百五十ミリシーベルト、甲状腺に対して例えば三シーベルトといったような数字が出ている。これはもう全然問題ございません。
 そのほかに実は安全評価審査指針というのがございまして、そこではいわゆる設計基準事象としてこの冷却材喪失事故その他の事故が取り扱われております。そこでの判断の基準というのは、周辺の公衆に対して著しい放射線のリスクを与えないというのが判断基準でございますが、その目安といたしまして、御指摘の五ミリシーベルト、これは事故一回当たりでございます。事故一回当たり五ミリシーベルトという数字がたしか引用されております。
 恐らく、私、直接計算しておりませんが、恐らく言われている程度の漏えい率であればその数字にはとても届かないというふうに考えております。
○加納時男君 ありがとうございました。
 福島第一原子力発電所の一号機では、もうそういうことで法令違反のため一年間停止が当然だというところでございますが、それ以外のものについては、先ほどのお話伺うと、十分に国が安全だということを確認した上で、地域の納得も得て運転再開すべきだという意見がありますが、先生のお考えいかがでしょうか。
○参考人(佐藤一男君) これは、法令違反でないようなものについて国が停止を命令するというようなことは、これはできないものと私は理解しております。だからといって、もちろん事業者は好き勝手やってもいいということでは決してございません。
 先ほども申しましたように、現在いろいろ言われております事例は、いずれも技術的にはさほどシリアスなものではないのでありますが、問題は、そういうものを引き起こした職場倫理という、技術倫理の退廃の方がむしろ問題ではないかと。そうしますと、そういうものをきちんと立て直していくのが、これは事業者の責任でありますし、それと運転を止めるかどうかということとは必ずしも直接結び付く話ではない。法令違反でなければ、もちろんこれは、今言ったようなところについては事業者の判断というものは非常に重要でございますけれども、運転を妨げる理由はないと私は考えております。
○加納時男君 ありがとうございました。
 佐藤参考人は、原子力安全委員長をお務めになられました。原子力安全委員長と行政府と、行政庁との関係についてお考えを伺いたいと思っています。
 よくダブルチェック機能の強化というんですが、ダブルチェックというのはちょっと誤解が多い言葉でして、同じようなことを二つの機関がやるんだと。私は、全然それじゃダブルチェックとは言わないんで、それは無駄なチェック、無駄だというか無駄手間のチェックであります。やっぱり行政がしっかりと見る、それを今度監視するという、言わばそういうことが大事だろうと。元々の事業者が一番、終始二十四時間触れている設備でありますから、事業者が責任を持って自分で点検をしていく、それについて国が監査型の検査をしていく、それに対して原子力安全委員会がもっと高い立場から、原子力安全を担当している行政庁のやり方が的確であるかどうかを高い立場から、さっきのお話でいうと、より専門性の高い高度な知識をお持ちの方が高い立場から指導される。
 だから、ダブルチェックというのは同じことをやるんじゃなくて、違った立場から、一方の検査を片方が更に監査するというふうに理解したんですが、先生のお考えはいかがでしょうか。
○参考人(佐藤一男君) 正に御指摘のとおりというふうに考えます。
 これは原子力に限りませんで、すべての産業活動ないしは社会活動に共通した原則がございます。それは、そういう活動の安全確保の責任は事業者が全面的に負うというのが世界共通の大原則でございます。では国は何をするか。これは、規制当局は事業者が自らの責任をきちんと果たしているかどうかを監視し、監督し、指導し、時に矯正するというのが、これが規制でございます。
 それで、我が国の原子力の分野では、世界でもちょっと珍しい構造でございますが、更にその上に、安全委員会が国の規制が的確かどうかということをより高い立場から、言うなれば監視し監督するという、そういう仕組みになっております。
 おっしゃるとおり、同じことを二度やるというのは、これは全く二度手間で無駄なことでございまして、ダブルチェックというのはそういう意味ではない。私、必ずしもダブルチェックという言葉が適当なのかどうかさえ疑問に思います。正に、加納先生御指摘のとおりと考えます。
○加納時男君 ありがとうございました。
 この関係で、班目先生に是非伺いたいことがございます。
 先生は、原子力安全・保安部会だと思いますが、の検査の在り方検討会の委員長を務められたと先ほどおっしゃいました。それからまた、機械学会でもそういった委員会のキャップを務めていらっしゃると伺っております。
 そこでお伺いしたいと思いますが、その検討会では、国の検査は事業者保安のプロセス全体を監査する体制を目指すというふうな趣旨のことがあったと私何となく記憶しているのでございますが、基本的には検査型から監査型へ移行するものとして理解していいのかどうか。先ほど先生のお話を伺うと、品質保証活動、これは事業者がやることだよと。それに対して国がしっかり監査していくんだ、それがこの事業者の責任と国の責任との仕分だよというようなお話がありました。だとしますと、今回の法案では、先生のお考えはかなり盛り込まれているのかどうか。
 そしてまた、もう一つの質問は、検査型から監査型へ移行していくということは、法文上は何か定期事業者検査という名前に今度なっているんですが、いわゆる自主検査ということですが、ここに適用するとあるんですけれども、当然私は国の定期検査にもこういった考え方が適用されるべきじゃないかと思うんですが、その辺いかがでございましょうか。
○参考人(班目春樹君) 正に加納先生がおっしゃるとおりでございまして、検査の在り方検討会の中間報告書というのが七月に出てございますが、その結論というのは別に東電問題があったからといって何ら変わっていないというふうに考えております。したがいまして、最初に私が申しましたように、国ができることというのはやはりある程度限界があると。したがって、物をすべて見ている事業者がどういうふうにやっているのかというのをむしろ監査する方に重点を移していく、これはもう必ずしなきゃいけないことだと思っていまして、今回、事業者定期検査でしたか、が法令に盛り込まれたということはその趣旨だというふうに私は理解しております。
 それから、定期検査についても同様だというふうに私理解していまして、これは多分、法令の段階ではなくて、もうちょっと省令とかあるいはもっと先の段階になるんだと思うんですけれども、私申し上げたような抜き打ち的な手法を取るとか、そういうようなことは実施段階で反映されるべきものだというふうに考えております。
○加納時男君 ありがとうございました。
 先生がおっしゃるとおり、法律に書くというのも一つの方法ですけれども、省令段階で実はこれから決まってまいりますので、正に今日の参考人の御意見は、これからの省令作成についても非常に御示唆に富んだものだと思います。私どもは、そういった議論をこれからも国会の場でも是非していきたいと思っております。ありがとうございます。
 先ほど先生は維持基準が日本ではできるのが遅れた、当然あるべきだとおっしゃったんですが、例えばさっきお話があったように、アメリカでは国の方ですべての基準を作るんじゃなくて、機械学会、ASMEのセクション11ですか、あれではこの維持基準というものを明確にしている。これを使うことをNRCが認めているということでございますけれども、日本でなぜこんなにこの適用が遅れたんでしょうか。
○参考人(班目春樹君) 本当の実情はよくは分かりませんけれども、恐らく原子力の分野でいろいろとトラブルが引き続いたために、多分、行政庁の方でも作らなきゃいけないと思いつつも、じりじりじりじりと今になってしまったんではないかというふうに思っています。ただ、国が事細かくこういう基準を定めるということは、これは私申しましたように、WTOのTBTに引っ掛かるかもしれないし、それから著作権の問題でもちょっと今もうできないんじゃないか。つまり、実は今、日本の規制というのはかなりアメリカの機械学会、ASMEが定めたものを使ってやっているのが実情です。
 しかし、国の例えば告示とか、そういうものになりますと著作権がないですから、日本政府がアメリカの機械学会に著作権を払って何か運用するというと非常に変な形になります。だからこそ、民間規格というのを機械学会なら機械学会が作って、それをちゃんと審査して国が使用する、こういうのが世界共通の考え方でして、ちょっと私なんかが反省しなきゃいけないのは、機械学会なんかもそういうのに取り組むのは一九九七年からだったという意味で、大変遅れたなということで反省しているところです。
○加納時男君 ありがとうございました。
 最後に、河瀬参考人に一つお伺いしたいと思います。
 河瀬参考人は、原子力発電それから原子燃料サイクル施設の所在地の首長として、また全原協の会長として、国策としての原子力発電、原燃サイクルの推進と地域の住民の福祉、安全、安心、こういったことを両立するように大変御努力なさっていらっしゃることに深く敬意を表するものでございます。先ほどのお話を伺うと、まず今回の事件をしっかり解決することが大事だ、そのための品質保証を始めとする企業に対する安全文化の再構築、それから行政に対する今までの不作為の反省の上に立った法令の整備、正に今それをやっているわけでございます。そしてまた、立法府に対する御注文、いろいろございました。
 その上に立っての質問でありますが、そもそも原子力発電とか原子燃料サイクルの推進路線についてはどのようにお考えでしょうか。今回の事件があったから、立地地点では御意見が変わったのかどうか、これも非常に我々知りたいところではございますが、お伺いしたいと思います。
○参考人(河瀬一治君) 先ほども触れましたけれども、私どもの悩みというのが正にその部分でありまして、私どもの地域ですと、もう昭和三十年代に計画ができて、昭和四十六年の万博の灯が原子力で送られたというようなことから始まりまして、非常に地域と原子力の関係が深うございます。働いている方もたくさんいらっしゃいますし、関連の企業もあります。
 そういう中で、やはり共存共栄をしたいというスタンスでやっておりますけれども、反面、トラブルとか事故がありますと非常に立地地域に対しての冷たい目といいますか、冷ややかな、やっぱり敦賀とかあんなところは危ないところやなと、こういうふうな感じで、極端な話が、昔のバスというのは窓が開いたものですから、窓を閉めなさいとか、それも敦賀を通ると。要するに、全然関係ないことですけれども、もうイメージがずんと下がるものですから。特に、こういうトラブルで隠し事があったというと、いや、うちのところも一緒かと。何か隠して、何で隠しておるのやと。やっぱり悪いことをしておるので隠すと、そういうことで非常にイメージで影響を受けるものですから、こういうことがありますと非常に頭の痛いところは事実であります。
 しかし、今回のように、また法律等しっかりやっていただいて、しっかりと国が責任を持って対応していただけるなら、やはり従来どおりの形で行きたいという気持ちは持っておりますし、恐らく多くの立地地域はそのような気持ちだと思っております。
○加納時男君 力強いお言葉、ありがとうございました。私も、同じ福井県人の東京支部におりますので、御一緒に頑張ってまいりたいと思います。ありがとうございました。
 終わります。
○藤原正司君 民主党・新緑風会の藤原でございます。
 参考人の先生方には、大変お忙しいところ御出席いただき、また貴重な御意見をお聞かせいただきまして、ありがとうございます。とりわけ河瀬参考人には、わざわざ遠く敦賀から来ていただきまして、ありがとうございます。
 そこで、まず、河瀬参考人にお尋ねをしたいわけでございますが、原子力政策の推進は、国民、とりわけ立地地域の皆さん方の信頼がなくしては絶対に成り立たないと。特に、立地地域の方々は、今回のことのみならず、これまでも大変ある意味では電力の消費地の者には分からない様々な御労苦があったというふうに考えているわけでございまして、先ほどの御意見の中でも様々なお考えを聞かせていただきました。
 そこで、全原協の会長として、今回の事案を踏まえて一応要望というか要請をされた内容の中で、原子力安全・保安院と資源エネルギー庁、エネ庁を独立的関係に見直していく必要がある、こういうお考えも出されているわけでございます。これは、私ども民主党としましても、原子力安全規制部門の独立性の強化ということを主眼に置いて、既に議員立法で、実際は審議させてもらっていないんですけれども、議員立法として提出をいたしました原子力安全規制委員会設置法案、これにも相通ずる部分があるのではないかと、このように受け止めているわけでありますけれども、こういう考え方、規制部門のより独立性の強化ということが出てくる地元の背景と、皆さんはどういうお考えに基づくものか、この点につきましてお考えがございましたら聞かせていただきたいと思います。
○参考人(河瀬一治君) このことにつきましては、やはりいろいろ先ほどからの議論がございましたように、取り締まる側との関係の中で、特に保安院の場合、二年間の公表がなかったと、そういうような調査もあったんだというふうに思いますけれども、そういう中で、どうしても今、原子力安全・保安院というのは資源エネルギー庁の下部組織というふうに位置付けられまして、形的にあるものですから、そうするとやはりプルサーマルのいろんな問題もございますから、それがあるので、ひょっとすると下部組織がゆえにそういうことがあったかなという不信を惹起するといいますか、そんなような原因にやはりなっておるんじゃないかというふうに私ども思いまして、やはりこれは、やはり今、原子力委員会と原子力安全委員会、こうやっていますけれども、やはり推進と規制を明確といいますか、そうした分離の、今の形ではそういう精神にもそぐわぬのじゃないか。やはり独立的な関係にやはり見直しをして、推進する側と規制する側がしっかりとうまく機能すればこういう問題というのは起きないんじゃないかということで、是非私どもの要望のような形で検討してほしいなと思いますし、特に原子力安全・保安院がより独立をした役割を果たすようにというふうに期待をしております。
○藤原正司君 ありがとうございます。
 次に、先ほども大分話になりました維持基準の考え方について、河瀬参考人あるいは班目参考人にお尋ねしたいと思うんですが、まず河瀬参考人にお尋ねしたいわけですが、先ほど参考人のお話の中でも、今回維持基準という考え方を導入するということについて、原子力の安全水準を引き下げるものではないか、あるいはなぜこの時期に維持基準なのか、こういう御意見もあったというふうにお聞きをいたしておるわけでございまして、今回、先ほど参考人の御意見とすれば、早期に維持基準を導入してほしいんだと、こういう御意見もあったわけですけれども、こういう一般の皆さんから安全に、維持基準の導入が安全にとってマイナスではないのかといういわゆる不安ですね、そういうものと、そして今回の全原協としてまとめられた関係についてお考えを聞かせていただきたいと思います。
○参考人(河瀬一治君) この維持基準につきましては、先ほども触れましたが、要するに全くいいもので、これがシュラウドとしますと、丈夫なもので新品同様でやっておれば間違いなしに安全性はより高いでありましょうが、やはり現実問題といいますか、それがあるばっかしに、いや大丈夫ですよというふうに隠してしまう場合が出たし、報告もせぬでいいということですから、こういう問題も出ましたし、だから私どもとすれば現実問題とすれば物を使えば劣化もしましょうしある程度のことはある、しかしそれははっきりと安全ですよという明確なそういう説明があったりすれば安心しますので、それをやることによって安全の後退にならぬように、なることも可能があるというふうに考えまして、やはり基準というのは何でも基準というのがございますので、その基準に照らし合わせてそれも情報公開で出す、そういうことをしっかりと対応すれば、やはりこの維持基準というのはやっぱりないのが不思議かなというふうに思っています。
○藤原正司君 ありがとうございます。
 そこで、班目先生にお尋ねをしたいわけですけれども、先ほども言いましたように、今回維持基準を入れるということがタブルスタンダードを作ることではないかと。例えば、安全設計上三センチの厚みが必要だというものを二センチの基準を作るようなものではないかという誤った論議もあるわけでございます。
 私自身は、原子力設備というのは安全基準を満たすように設計制作をすると。しかし一方、金属を始め材料というのは、必ずそのときの環境あるいは条件に従って劣化をしていくと。問題は、この劣化をしていく過程の中でどれだけ安全サイドを見込めるかということについて、きちっとしたチェックが必要だと。そして、そのチェックをする方法、そして計測をして、そしてそれがどういう原因でなったのか、あるいは将来、今後この傷はどう進展していくのかという評価、そしてその結果、取り替えなければならないのか、監視をしなければならないのか、修理でいくのかというこの三つがセットになってこの安全基準が確保されるというふうに思っておりますし、これは単にチェックによって現在運転している設備の安全を確保するということのみならず、むしろ得られた知見データを更に次の制作あるいは設計に回して、何といいますか、サイクルを回していくということによってより安全な機器の製造につなげていく。その意味で、二つの大変大きな意味があると。
 だから、むしろこの、何といいますか、設計基準というものと今考えられておる維持基準というのは、もう一体不離即の関係というか、不可分の関係であって、むしろ今までその片側の維持基準がないということの方が、工学的に考えれば、次の新しい材質は次の新しい機器を開発していくためにも実際に使った上での知見というものが大変大事だし、それをいかに生かしていくかというその意味においては、大変今までの方が非科学的な規制を行ってきたというふうな思いがするわけでございますが、こういう理解でいいものかということを含めて、お考えを聞かせていただきたいと思います。
○参考人(班目春樹君) 藤原先生のおっしゃるとおりでございます。
 まず、ダブルスタンダードじゃないかということですけれども、明らかに設計・建設段階と維持運転段階ではやはり違いがあって当然です。アメリカ、我々がよく使っておりますASMEの方の規格でもセクション3というのが設計・建設規格であり、セクション11というのが維持規格でありまして、もう一九七〇年代からアメリカの方ではこの維持基準というのが当然必要だということで使われてきているわけでございます。物が何か、要するに原子力に使うものは無傷でなきゃいけないというのはこれは建前としては言えるんですけれども、現実にそんなことはあり得ないんですね。
 建前ばっかりこだわるとどういうことになるかというと、傷があるんだ、じゃ、上をまたちょっと溶接か何かして直しておけとかなんとかになるかもしれませんけれども、これは構造工学の方の専門の人間から見るととんでもないことで、むしろ、そんなことをしたらかえって材料を傷めるかもしれないんですね。だから、科学的合理性というのは、場合によっては傷があっても十分問題がないと証明できたらばもうそれでよしとする。そうしないと、建前ばっかりにこだわるとかえってとんでもないことになる。
 で、藤原先生おっしゃったように、正に運転中にどういうことが起こっているのかというのもちゃんと調べて、それをこれからの知見として活用して、科学技術の進展にも資するという姿勢こそが必要だと思っておりまして、藤原先生のおっしゃること、正にごもっともだというふうに思います。
○藤原正司君 引き続いて、班目先生にお尋ねをしたいわけですが、今回のような事案が発生をしてまいりますと、もっと国の安全規制を強化しなさい、電力事業者というのは信用できないんだから、もうあらゆるところまで国がすべてチェックをしなさい、規制をしなさい、こういう声が強まってくるわけでございます。
 これ一面、そういう国民の皆さんの声が出るということも、これは理解できないわけではございません。ただ、冷静に考えた場合に、国のチェックというものが、特にこの安全規制に関して直接的に細かく深く深く入っていくことが果たして真の安全につながるのかどうかということについては、これはある意味では安全重要度に基づいた正しい意味での差別化ということが本当に必要ではないかというふうに思うわけでございます。特に、これをやらないと、結果として、本当に大事なものに、大事にして検査を強化しなければならないというものに対する意識を、逆に何もかも同じという感じで意識を薄めてしまう。あるいは軽易なものに時間や労力を割くために、本当に大事なものが逆に制約を受けてしまう。あるいはまた、安全の規制さえ守ればいいと。
 結局、規制に頼る余り、自らが安全を築き上げていくんだという事業者の積極的といいますか、能動的な安全文化の向上というものを逆に阻害はしないのかということを懸念するわけでございますが、この点につきまして、お考えをお聞きしたいと思います。
○参考人(班目春樹君) これも正におっしゃるとおりでございます。
 私も申しましたように、今は定期検査というのを国が直接やっているからいいんですというような言い方はもう本当に建前にすぎなくて、あれだけ複雑なシステムですから、それを全部見ているのはしょせん事業者ですね。ですから、建前はやめて、全部見るのはそれは国はできませんと、だけれども電力事業者が責任を持ってちゃんと見ていることはしっかりと監査させていただきますよ、正にそこに重点を置かなきゃいけないと思っております。
 ただ、そうだとなると、じゃ、国はもう物の検査しなくて監査だけしていればいいかというと、やっぱりちょっとそれは私もどうかなと思うところがありまして、安全上本当に重要なものは国が見るということも、これからもやっぱりやってしかるべきだと思います。
 そこで、これとこれを見るよというのは、何となく昔決めたからもうずっとそのままいくよというのは、やっぱりこれ建前主義で良くないんであって、おっしゃるように定量的な安全評価指標みたいなのを使いまして、重要なものをちゃんと選び出してそれを見るようにするし、決められたものだけを見るというんではなくて、もう本当に抜き打ちで、今回はちょっとチェックでこれも見ましょうとか、正に弾力的な運用をするようにしないと、なかなかこういうチェックの実効性というのは上がらないというふうに思っております。
○藤原正司君 次に、河瀬参考人にお尋ねをしたいわけですけれども、要は、トラブルとか不具合が発生したときの報告基準あるいはルールの在り方についてお尋ねをしたいというふうに思うわけです。
 今回の事案によりましても、原子力設備におけるトラブルとか不具合にかかわる報告基準あるいはルールというものが、法律があり通達があり解釈レベルと、かなり多岐にわたっておりまして、その運用が非常に複雑あいまいといいますか、そういうことがある意味では国民の皆さんの不信を招いた一つの大きな要因ではないかというふうに思うわけでございます。
 この原子力施設の安全性に対して極めて関心の高い地域の皆さんにとりまして、この安全性の信頼を担保する上で、あるいは報告などのルールの在り方について、今現在、立地地域の自治体等の間では安全協定というのが別途定められているわけでして、トラブルのときの通報の仕組みなどが規定をされているわけですけれども、今回の事案を踏まえまして、この報告ルールというものの在り方について特に何か特段の御意見があるかということですが、私自身の考えとしては、要は、この情報というのがこの安全に対してどれだけの重要度があるのかというのをまずはっきりさすことが一番大事だというふうに思っておりますし、中身を見てすぐ分かりやすいということも大事なことだというふうに思っているわけです。
 そういう点を含めまして、お考えございましたら聞かせていただきたいと思います。
○参考人(河瀬一治君) 私ども、確かに安全協定に基づきまして、いろんな情報を入れたり、私どもは、ちょうど敦賀市、ケーブルテレビが九九%家庭に普及しておりますので、そのチャンネルでそういう報告がありますと流します。例えば「ふげん」でこういうことがあって今は止まっていますというようなことで、情報はなるべく流したりしておりまして、確かに細かいやつも流します。それが流れっぱなしになることもありますから、そこで基準を作って、ここまでならお知らせしましょう、これはというそういうやつもやはりもっと明確にすべきかな。かなり私ども細かく実はそれ今対応をしていただいておりますので。
 これは敦賀市の例でございます。ほかの自治体はまだそこまでちょっと私どもは把握していないところもございますので、今のそういう安全協定の中での報告等には、今の私どもの地域は問題はないというふうに考えておりますが、またこれ全原協全体として、その辺りのそれぞれの実地の状況などもまた調べながら、基準的にまとめられるようなことがございましたら、これから私どもの全原協の研究課題みたいなものにも上げて、いろいろ情報交換をしたいと思っております。
 また先生のアイデアをひとつよろしくお願いします。
○藤原正司君 時間も参りましたので、最後に佐藤先生に、参考人に、この申告制度について一点お伺いをしたいというふうに思っております。
 今回は、炉規制法に申告制度というものが設けられて、初めて実際にこの法に基づく対応がなされたわけですけれども、ところが、大変大きな問題が、次々とこの法の運用をめぐって問題点が出てきたということではないかというふうに思っております。
 この申告制度につきましては、我が国の風土の中でなじむのかなじまないのかという論議もあることも事実でございますけれども、この申告制度についてきちっとルール化をしてオープンにしていく、国民の皆さんにオープンにしていくという方が、むしろ事業者におきましても経営上のリスクマネジメントの一環として法令遵守体制の確立を促すという、ある意味では良き緊張感を与え、そのことが結果として内部努力による不正事案発生を未然防止するという、そういうことにもつながっていくというふうに思うわけですけれども、問題は、この運営に当たって何を考えてきちっとやらなければならないのか、この点について、お考えございましたら聞かせていただきたいと思います。
○参考人(佐藤一男君) 全く実はたまたまでございましたが、昨日、保安院のこの申告の調査委員会というのが開かれまして、私、その調査委員会の委員長を務めておるところでございます。
 これは、先生もただいま触れられましたように、特に原子力の世界でこういう申告制度というのは、これまで決してなじみの深かった、少なくとも日本ではなじみの深かった制度ではございませんでした。したがって、これをどういうふうに運用をしていけば最もその効果が上がるのかということについては、現在、非常に正直に申し上げますと手探りをしておるというところでございます。これは、極めて正直なところそうでございます。実は運営要領、その調査委員会の運営要領などというのも、調査委員会はたしかこれまで三回開いたと思いますが、既に最初の案が改定されておるわけでございます。
 私、それにしても、この制度をどう生かし、これから何を我々得ようとしているのかというその理念は極めてはっきりしておるということでございますので、若干の試行錯誤はやむを得ないかもしれませんが、一日も早くできるだけいいものにしていこうということにしております。
 現在、これを運用しております際に、非常に私ども気を遣いますのは、申告者の保護ということでございます。これは、法律上は確かに申告したことをもって不利益な扱いをしてはならぬと書いてあるんでございますが、それだけで本当に十分かというような多少問題点の御指摘等もございまして、申告者の立場というのをできるだけ守るということに非常に配慮をしているわけであります。
 その配慮は当然しながらも、一方では可能な限り速やかに申告事案を調査し公表するというのが、これは基本的な姿勢として今日まで貫いてきたつもりでございます。ついでながら、今年八月以降、実際には九月になってから七件の申告がございました。これ調査審議をしておりまして、昨日、たしか五件、まだ調査完了していないのもあるんですが、五件公表に踏み切ったところでございます。たしかゆうべ辺り保安院から情報が出たんじゃないかと思いますが、その辺は多少事務手続等もございますが、今そういう状況でございます。
○藤原正司君 運用に当たっては、やっぱり外国の例も見ながら我が国に最もマッチする運用ができるように、やっぱり絶えずチェックを入れていく、見直しをしていく必要があるというふうに思っております。
 以上で終わります。ありがとうございました。
○加藤修一君 公明党の加藤修一でございます。
 今日は、参考人の三人の方々、委員会の方においでいただきまして誠にありがとうございます。非常に参考になりました。ありがとうございます。
 私たち公明党としては、こういった今回の問題を極めて重大視、当然のことながらしておりまして、我々としては原子力についてどういうふうに考えているかといいますと、安全性を大前提にしなければいけないと、言うまでもない話だと思うんですね。それから、二点目としては、原子力はつなぎのエネルギーであるという、そういう認識ですね。つなぎのエネルギーである以上はつながれるエネルギーを考えなければいけないと。そういうことは、私は、政策としてある以上は政党としてつながれるエネルギーをどう考えるかということについては大きな責務があると、こういうふうに考えておりますので、やはり石油代替的なエネルギーも含めて大きな柱を別に作っていく必要もあるかなと、こんなふうに考えているところでございます。
 それで、最初に河瀬参考人にお尋ねしたいわけでありますが、全原協でしょうか、の会長をおやりになっているということで、恐らく関係庁、関係自治体の方々と今回の問題についても様々な角度の議論があったと私は思います。
 それで、例えば柏崎市長、西川市長でありますけれども、こういうふうに言っているわけなんですけれども、どのようにとらえていらっしゃるか、お聞きしたいと思います。市長は、これまでの原発の技術的なトラブルとは明らかに異質であり、意識、行動、仕事に取り組むシステムなど根本的な問題を含んでおり、根は極めて深いと、こういう表現をしているわけなんですけれども、これはどういうふうに皆さんの中で話し合われているのか。要するに、会長としてはどういうふうにこういう言葉をとらえていらっしゃるか、ちょっとお聞きしたいと思います。
○参考人(河瀬一治君) 先ほどもお話しした中で申入れをしたわけでありますけれども、その前に役員集まりましていろいろと話合いを行いました。確かに西川市長のおっしゃるとおりでもございます。非常に信頼また信用、そういう面をとらえる上では非常に根が深いものもあるというふうに私どもも感じておりますし、その部分をいかにすきっとした形にしていくかというのがこれからの話題であります。
 立地地域もそれぞれいろいろ状況も違うところもございますし、私どもみたいに集中している、私たちは十五基ございますから、そういう地域もありますし、一基、二基しかないところもございます。柏崎も東電の、ちょうど当事者といいますか、東京電力のそういうサイトがある地域もございまして、その辺りに少し思いの違いはございますけれども、共通認識としては大変遺憾であるという、そういう根の深い一つの事件であったんじゃないかというように思っています。
○加藤修一君 ありがとうございます。
 佐藤参考人と班目参考人に同じ質問でありますけれども、お聞きしたいと思います。
 先ほど来から維持基準の話が出ておりますけれども、もちろん技術基準の関係も安全性にかかわる極めて重要な話だと思います。今回の法案の中では、この維持基準の中身が明確になっているわけではないわけで、十分議論が当然今後必要なわけで、その維持基準ということについては、先ほどどなたか参考人の中から余裕があるからいいんだというような話があったように私は受け取ったわけですけれども。
 今の日本の原発は技術的にも法律的にもアメリカを手本にしていると。恐らく維持基準についても何らかの参考になるという、そういったスタンスで今後考えていくんではなかろうかなと思っていますけれども、このASMEの維持基準を考えていく、あるいは設計基準を考えていく場合に、もちろん材料力学的なあるいは材料強度学的な意味では理論的であるということを当然基本にしていると、言うまでもない話だと思うんですね。
 ただし、この理論的ということについてはいろいろ議論がありまして、必ずしも安全性だけではないと。それを含みつつ、さらに機器の強度を純理論的に検討するということが当然あるんですけれども、その場合は、原子力圧力容器の余肉ですか、これ余裕があるとかないとかいう話に当然なってくるんですけれども。
 これは、安全性と多少外れるか、ある意味では経済性の方に行く話かもしれませんが、要するに機器の軽量化を図る、あるいは工場での製造とかあるいは運搬、輸送ですね、そういった環境を考える、さらに設置サイトの建設を容易にすると、そういった意味で見るならば経済性という話になってくると思うんですけれども、アメリカで導入されたこういった理論主義というのは、恐らく当時普及し始めていたコンピューターの使用、そういったことも非常に支えになっていると私は思うんですね。これも言うまでもない話だと思う。ただ、構造設計用のアルゴリズムというのは、これ、一九六〇年代、一九七〇年代に作られてきているわけで、このアルゴリズムの組立て方は、私は非常に注意を要するんではないかなと思うんですね。
 といいますのは、先ほど材料力学的なあるいは強度の関係を含めて、構造的な分野だけでなくて、やはり私はもっと十分なチェックをするというか、構造計算のことを十分考えなければいけないと。その場合に、例えばの話でありますけれども、原子力の発電の中においては非常に高い温度があるところもあるし低い温度の水が流れているところもあると。そういった場合は、流体力学なんかの考え方を持っていきますと乱流現象が当然生じているわけですよね。だから、乱流解析を当然しなければいけない。
 この辺について簡単に言いますと、高サイクルの熱疲労が伴う複雑な現象も生じることも当然あり得ると。これは当然、構造体につながっている話でありますから、熱応力の繰り返しが頻繁に生じる。あるいは、製造という加工のときの段階で残留応力なんかも残っているわけでありますから、そういったものと相まって熱疲労によるクラックは、割れが、ひびが生じるということは十分考えられる。そういったことの影響としてシュラウドの話も当然出てくるかもしれないと思うんですね。
 そこで問題なのは、こういう乱流現象とかそういう解析手法の在り方、私、先ほどアルゴリズムという話をしましたけれども、ここが私は一つは大きな問題になっているんじゃないかなと思うんですね。といいますのは、モデル化するとかあるいは平均化をした系を基にして計算するわけですよね。平均化したということは、平均化した結果の値しか出てこないということなんです。実際に動いている現象というものをそのままシミュレーションをしているわけでは私はないと思うんですね。平均化のモデルなんですよ、ある意味では。モデル化というのは、ある意味では単純化するということですからね。ですから、そういった面について、やはりもっともっと十分に構造的な面での議論、流体力学的な面での知見の積み重ねが必要であると。
 それで、その場合にまた、もう一つは、普遍的でない経験的な定数をモデルの中に付け加えてやるケースだってあるわけなんですね。だから、現象を的確に把握した構造計算等々になっていない可能性が十分あり得る。ということは、逆に言いますと、古いアルゴリズムでやっているということが言えなくはないと思うんですね。
 その辺について、やはり私は、これは技術基準の作り方とかあるいは維持基準の作り方、こういった面について、非常に基本的なものになるということですから、改めて私はそういったところから見直しをする必要が十分あり得ると、こう考えていますけれども、どうでしょうか。
○参考人(佐藤一男君) 私、必ずしも構造解析が専門でございませんので、今、先生の御指摘にどこまできちんとお答えできるか少々自信のないところもございますが、若干、門外漢ではございますが、一技術者としてこういう問題をどう見ておるかということをまず申し上げたいと思います。
 現在、いわゆるASMEのコード、設計基準でございますが、こういうものが、これは日本だけではございませんで、世界的に非常に大きな影響を与えております。現在使われている、例えばセクション3といいますが、これは考え方の上でそれまでの設計手法から大きな変革があったんです。一つは、それまではデザイン・バイ・スペシフィケーションからデザイン・バイ・アナリシスという、そういう考え方の変化があった。それから、同じく構造強度を評価する考え方で、それまでの最大主応力説から最大剪断応力説というものに切り替わるんです。
 そういう非常に大きな変化が現在のセクション3が定められたときにあったんですが、これだって、そのときの思い付きでこういうことが決められたわけではなくて、それまでの非常に多くの経験、解析その他の知識からそういう新しい基準になったわけでございます。
 それで、現在でもこのASMEにはたしか常設の委員会があって、新しい知見をこれに取り込む、現在の基準に取り込んでいくという活動を連続的に行っております。今御指摘の解析の手法その他についても、非常に様々な研究発表やら何やらございまして、それはもちろん日進月歩と言ってよろしい。先ほどちょっと平均化という御指摘がございましたが、それは全くないとは言いませんが、例えば現在のあれは有限要素法なんかですとかなり局所的な応力まで解析できるようになっていると、私、自分でやっているわけではございませんが、というふうに聞いております。
 ただ、問題は、こういう技術の進歩というものを、これも先生から今御指摘がございましたように、いかに速やかに適時にそういう基準等に取り入れ、反映していくかということが極めて大切なことであって、そういうことができるような仕組みにしておかなければならないということでございます。そこが非常に大切なことかというふうに考えます。
○参考人(班目春樹君) 佐藤参考人の方から大体答えが出てしまったので付け加えることは大してはないんですが、基本的な考え方は、やっぱりデザイン・バイ・アナリシスというやつでして、それまでは要するに分からないところは大きなマージンを取っておけばいいでしょうということで設計していたわけです。それが、ある程度解析できるようになったから、そういうときはしっかり解析させる代わりに安全率というやつ、裕度を切り下げていってもいいでしょうと、そういうことでだんだん詰めてきております。
 しかしながら、やっぱりそうはいっても人知を超える何かがあるかもしれない、こういうのもちゃんと余裕として見ていると、そういう形です。例えば、現実にあった話としては、「もんじゅ」で温度計が折れたということがございました。あれなんかも、実はもうあのときまでにASMEの方ではマンデタリーな、強制的な規格ではないんですけれども、ノンマンデタリーな規格としてはこういうふうにしなきゃいけないよというのをもう既に規格の中に入れ込んでいたんですね。
 それがしかしながら日本の技術者に伝わるのが遅れたというようなことがあったわけでして、実はそういう技術者、何といいますかそういう研究は日本でも盛んに行われているわけですから、正に民間基準、学会みたいなところで最先端の知見というのをいつも集めて、ちゃんと規格の形にしておく、それを直ちにやっぱり規制行政に反映するということにした方がそういう問題も避けられるということで、是非そういう方向を考えていただきたいと思っております。
○加藤修一君 先ほど有限要素法の話が出たりなんかしましたけれども、いかに反映しているかどうかというその仕組みが大事であるというのは佐藤参考人の話だと思うんですね、正に私はそう思うんですけれども。
 それから、班目参考人の方から、分からない分がある、あるいは裕度を切り下げてくるという話がありましたけれども、人知を超えた何かがあるかもしれない、確かにそうなんですけれども、それ以前の段階のところで、いわゆる最先端の科学的な成果をいかに導入してやっているかということについては必ずしもまだ最先端の話じゃないんです。
 先ほど佐藤参考人が平均化の話をしておりましたけれども、この問題だって平均化それ自体が問題であるわけですから、物によってはですよ、扱うところのシミュレーションにしてもですよ。だから、ここの部分については、私は、全体的な維持基準を作るという話に仮になった場合、もう本当に基本的なところから改めて計算し直すというぐらいのことをやらないとそれはなかなか分かりづらい話だと思うんですよ。この辺についてはどういうふうにお考えでしょうか。
○参考人(佐藤一男君) これは誠におっしゃるとおりで、私、構造解析ではございませんが、若いころ解析の仕事を随分やらされたものでございます。
 そういういわゆる解析屋として言わせていただきますと、解析というのはしょせん計算です、つまりは。ですから、実際にあるものを完璧に表現、再現するということはできません。ですから、そういうことも踏まえて、幾ら詳細に解析しても必ず何がしかの安全余裕をそこに入れておくというのがこれは工学の常識でございます。
 そういうことで仕事をしていくということでございまして、ただ、基準ということになりますと、それを使って実際に仕事をすると、余り分かりにくいことが書かれたんでは基準にならない。そこで、大事なことは、実際に実行できるような基準を作るに当たって、その基になるところの徹底的な解明、現在の最新の知見を動員した解明をして、そして、さらにそれに先ほど申しました適切な安全余裕を組み込んだものが基準という形になるものというふうに私は考えております。
○加藤修一君 佐藤参考人のそのお話は分からなくはないんですけれども、やはり最新の知見というところをどういうふうに反映させるかというのが極めて重要だと思います。やはり現象をどうとらえるかという場合には、平均化の考え方というのは私は局所的にはすべきでないと思っておりますので。
 それと話が、もう三分ぐらいしか時間がございませんので別の話に行きたいんですけれども、代替的な話の関係を考えて、エネルギーの考え方を示していきますと、さきの国会でエネルギー政策基本法というのが成立したわけなんですね。その中で、私は太陽・水素系の経済社会をどう作っていくかということが極めてこれからの長期的な中で大事であるというふうに主張してまいりました。また、答弁者も正にそのとおりだと、そういうふうにこの基本法の中味を読んでいただきたい、取っていただきたいと。実際に第三条にもそういうふうに記述してあるので、加藤さんの言うとおりのことですよという話がございました。
 時間がないので、端的にちょっと河瀬参考人の方にもお聞きしたいんですけれども、こういう水素エネルギーを含めた形での長期的な社会の作り方ということについてどのようにお考えかということで、手短に、佐藤参考人そして河瀬参考人ということで、よろしくお願いします。
○参考人(佐藤一男君) これは大変に難しい御質問をいただきました。私もうまく答えられるかどうか分かりません。しかしながら、これは水素に限らず、将来何がエネルギーの主流になるべきか、あるいはなり得るかというのは随分慎重に考えなきゃならない。少なくとも、例えば、現在のところ、水素を使うといってもその水素を生産するためには別なエネルギーが必要なんです。そういうところをちゃんと解決していかないといけないということでございます。
 ただ、申し上げたいのは、我が国のエネルギーの自給率は二〇%、その中の、二〇%の中の一三%が原子力なんです。そういう状況を考えますと、日本、現在はあれかこれかなんて言っていられない状況で、あれもこれも可能なものは全部一生懸命追求していかなきゃならない、そういう状況ではないかというふうに私は考えております。
○参考人(河瀬一治君) 私どもも、エネルギーを供給している地域ということで非常にエネルギー問題にも関心もございますし、私個人としてもやはり原子力は先生と同じ考えなんです、つなぎであると。これはもうずっと続くわけがないし、やはりもっともっとすばらしいものが必ず、人類というのはいろいろもうこれからも勉強していきましょうし、いろんな発見もありましょうし、発明もありましょうから、私はもう原子力をはるかに超えるすばらしいエネルギーができるという確信をしながら、しかし現実問題として今しばらくはこれは原子力は要る、そのために国策としてやるということで私ども地域は協力をさせていただいている立場でありまして、やはり原子力に代わるいいものができることを信じながら、今は安全、安定に原子力発電所をやってほしいなと思っている一人です。
○加藤修一君 どうも参考人の皆さん、大変にありがとうございました。
○西山登紀子君 日本共産党の西山登紀子でございます。参考人の皆さんにはお忙しいところを本当にありがとうございます。
 私、九九年九月三十日のジェー・シー・オーの事故の当時、当委員会の委員をしておりまして、事故の真相究明、再発の防止、そして原発事故の避難対策などの審議に参加をした一人でございます。佐藤参考人は当時、原子力安全委員会の委員長としても御出席いただきましたし、また河瀬参考人も実は出席をなさって私も質問をさせていただきました。本日もよろしくお願いいたします。
 当時は、政府も事業者も、あれは核燃料施設の問題だと、原発は安全だ、大丈夫ですよというふうなことを終始言っておりまして、相変わらず原発安全神話に終始をしていたと私は記憶をしております。ところが、あれから三年たって、日本の原子力行政の正に根幹を揺るがすような、東電を始め電気事業者による今回の未曾有の原発の不正事件が起こったわけです。
 私たち、日本共産党の国会議員団は、該当する原発を始め、全国一斉に原発の地元の調査にも参りまして、実は私、地元は京都ですけれども、河瀬参考人の敦賀の日本原電にも調査もさせていただきました。立地地域の住民の皆さんや国民の不信と怒りというのはジェー・シー・オーの事故とは比較にならないもの、非常に大きいものを感じました。初めはうそではないかと絶句したとか、原発の安全神話は崩壊した、東電と国にだまされた、裏切られたというような声は共通して出されておりました。あれから三か月ちょっとたったんですけれども、残念ながら真相解明の国民の願いとは遠く、幕引きの動きすら感じるという、私は大変な危機感を持っております。
 まず第一に、河瀬参考人にお伺いしたいわけですけれども、今、食品の偽装工作など国民の厳しい批判にさらされている分野もございます。会社の存在にかかわる重大な事態になっている企業も出ているわけです。今回の東電などの不正事件というのは、放射能被害の危険性に関する非常に重大な問題でございます。ところが、東電の二十九件については厳重注意でおとがめはなしと、格納容器の問題では原発が運転停止になったわけですけれども。私が思いますのは、そもそも原発の安全にかかわる検査をごまかすだとか、隠すだとか、こういうふうにして原発の安全問題について国民をだますという、そういう事業者は危険な原発を扱う資格がない、それほどまでに私は厳しく考えておりますけれども、これは率直に言って立地住民の皆さんの率直なお声ではないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○参考人(河瀬一治君) そうですね。やはり西山先生のおっしゃるとおり、東電の事件の発覚したときには信じられぬというふうな言葉も飛び出しましたし、私どもの地域においてもそういうような本当に不信の声、また私ども市会の方に四名の共産党の先生方がいらっしゃいまして、いろいろ頑張っていただいていますけれども、本当に不信感を持ったことは事実であります。
 といって、気持ちはそうですけれども、それじゃあの施設をふろしきに包んですぐどこか持っていけるものか、実際に止めてしまっていいものか、これはやはり地域としても議論をせざるを得ないところもございまして、先ほども言いました、非常にもう困ったことはするし、といって全部なくなるわけでもないしというのは、また必要性は必要性、そして不況の中で大変景気の悪い中でのそういうものが相まってといいますか、そういうことで、非常に複雑な思いでありますけれども、基本的に先生おっしゃるとおり、とんでもないことであるし、そういうことはもう今後二度とないようにする、そういう姿勢を取るべく今いろいろ議論されておると思いますので、気持ちはやっぱりそうであります。
○西山登紀子君 とりわけ立地住民の皆さんの、本当にこれは日々日常の問題として非常に苦悩があるということは私もよく分かります。
 次に、佐藤参考人にお伺いしたいわけですけれども、参考人はジェー・シー・オーの事故のときには原子力安全委員会の委員長をなさっていらっしゃって、今回は東京電力の点検記録等不正の調査に関する評価委員会の委員長を務めていらっしゃるわけですね。今回の事件に関しては、国民の皆さんは、東電だけではなくて政府が一緒になって申告隠しをやっていたじゃないかと、不正隠しをやっていたじゃないかということで、国民を危険にさらしていたということに対する政府に対する怒りと不信というのはまた非常に強いものでございます。
 この問題というのは、エネルギー政策の根幹にかかわる重大な問題でございますし、この安全性が、たった一人の労働者の善意と勇気によって告発され、申告され、辛うじて担保されたという驚くべき事態になっているわけでございます。今回の不正事件を教訓にして、きちっとここで一度立ち止まってきちっとした検討をしないと、私は重大な事故が起こるんじゃないかという懸念を強く持っております。
 そこで、東電の報告書はもとよりなんですが、十月二十八日の評価委員会の中間報告、十月三十一日の原子力安全規制法制検討小委員会の中間報告などなど読みましたけれども、また委員会でも取り上げてまいりましたが、率直に言って肝心なところが解明されていない、こういう疑問を持っております。
 これは私だけではなくて、十一月の二十日に、実は原子力発電関係団体協議会ということで、十四の知事さんが参加をしていらっしゃる協議会が原子力発電等に関する要望書というのを出していらっしゃる。十一月の二十日です。その要望書はかなり詳しくいろんなことが書かれておりますけれども、こういうのがありますね。
 東京電力の自主点検作業記録等の不正記載、格納容器漏えい率検査における偽装工作の事実関係の徹底した調査を行い、責任の所在を明らかにするとともに、すべての原子力発電所の安全性を確認することと。それから三つ目のところで、今回の不正問題に関連し設置された二委員会において厳正かつ徹底的な調査検討を行い、その結果を関係自治体に対し十分な説明を行うとともに情報公開を徹底すること、こういうような要望内容も出ているわけですね。
 さらにもう一つ、私が大変注目いたしましたのは、原子力学会の倫理委員会が実は提言を出していらっしゃいまして、この提言は、不祥事の責任を組織全体だけにあるという認識が定着すると、かかわった個人に免罪符を与えることになると厳しく批判をしておりまして、実行者自らの行為のどこに問題があったのかを真摯に反省し、それを公表することで再発防止を誓うべきではなかろうかということで、言わばだれがどういう形でその不正にかかわったのかということをきちっとやらなければ、そしてまた国民に公表しなければ、むしろ処分された幹部というのは組織の犠牲者として美化されて貢献者ということにもなりかねないというふうなことを指摘をしていらっしゃいます。
 やはり、これは実行者がどのような状況でどのような行動を取ったのかを分かりやすく説明するようにすべての原子力事業者に求めるという、そういう内容の提言が出されておりまして、これは大変私も注目をいたしましたけれども、佐藤参考人はこの二つの指摘あるいは要望、こういうことについてどのようにお考えか、それにどのようにこたえていくおつもりかどうか、ちょっと。
○参考人(佐藤一男君) 今の先生の御質問の中で、まず保安院が申告隠しをしたという御指摘があった。これは私が知る限りそういう事実はございません。申告そのものは隠しておりません、私が知る限り。
 それはともかくといたしまして、今、様々な御意見等の御紹介がございました。私それぞれにもっともだと思います。そういうことをこれからきちんとやっていかなきゃならない。
 何より、私、冒頭に御指摘申し上げましたように、この問題の根底にあるのは本当に一人一人の倫理の退廃だと、これをどうやって立て直していかなきゃならないかというものが根底にある。そのために様々な方策があろうかと思います。それらを、これがいいと思う方策を一つ一つ粘り強くやっていくということが是非必要なことだと思います。
 ついでながら、信頼というようなものは、これは失うのは一瞬で足りますけれども、これを手に入れるのは物すごく時間が掛かるし、いったん損なわれたものを取り戻すというのは不可能に近いぐらい困難なことです。でも、やらなきゃいけないことだと私は思います。
 ついでながら申し上げますが、私が直接関係いたしました評価委員会、この評価委員会というのは必ずしも事実の究明をする委員会ではございませんで、保安院がやってきたのが適切であったかどうかということを見ていた委員会でございます。
 その中では、例えば申告者が特定できるような情報を不用意に外へ出しているなどというような指摘も随分しておるんですが、何よりも強調しているのは、安全の問題というのは単に技術的な問題ではないと。これは国民に信頼されないと意味がないんだと。そういう視点と申しますか、物を見る角度がこれまでの保安院にはなかったんじゃないかという指摘をしているところでございます。
 さらに、ただいま情報の公開というお話もございましたが、例えばこの申告の問題についても基本的なスタンスは、今言った申告者の保護というようなことには配慮しながらも、可能な限り速やかにこれを公表していくというのが基本的なスタンスであるべきだということも、その評価委員会の報告書で強調しているところでございます。
 そのほか、私、直接タッチしていなかったところもございますので、それらについてすべて論評するわけにはまいりませんが、タッチしていたところについては以上のとおりでございます。
○西山登紀子君 今、保安院が申告隠しがなかったとおっしゃいますけれども、私は違うと思います。申告があってから二年間公表されておりませんし、大臣にも報告がされていなかったという事実を私、当委員会でも質問しておりますので、その点について私の方からそういうことを申し上げ、時間がありませんので次の質問に移らせていただきますが。
 河瀬参考人にお伺いしたいんですけれども、この今の事件を契機といたしまして、やはり規制と推進の機関を分けるべきだというのは、これはもうそれこそ世論になってきていると思いますね。
 参考人は十一月の「エネルギー」で、雑誌ですけれども、保安院を経済産業省から分離、独立して国民の真の代理人として防災も含めて一元的に安全管理に努めてもらいたいという提案をされております。私たち日本共産党は七〇年代からそういう分離を主張しておりまして、市長の地元の福井県議団、敦賀市議団もその立場で今日まで奮闘してきたところでございまして、ようやく意見が一致してきたかなということで意を強くしているところなんですが、しかし、私たちもいろいろ質問なんかしておりますと、実はジェー・シー・オーの事故のときと、それから今こういう東電の不正事件が起こったときと、政府の答弁というのはほとんど変わっておりません。それは、私、痛感いたします。
 小渕総理がジェー・シー・オーのときは私の代表質問に答弁をなさったわけですけれども、そのときから、やはり推進側であります経済産業省、通産省の下に規制の機関を置いて、そして原子力安全委員会とのダブルチェックだから有効なんだと、私にとってはまるでお題目のように同じような答弁が繰り返されております。
 今回の事件を見ましても、まず第一義的にこの保安院、名前が変わって保安院になりましたけれども、保安院がこの二年間全く機能が、規制の機能が果たせていないということはもうはっきり、事実としてはっきりしておりますし、あるいはその前のエネ庁時代の機能が発揮されていないということもはっきりしてきておりますし、またダブルチェックという、安全委員会とのダブルという問題ももう実態的に破綻をしているということは明らかなんですけれども、まだそういうダブルチェックで有効なんだということを繰り返し答弁されているので、私は当委員会で平沼大臣にも申し上げたんですけれども、余りそういうことに固執すると、かえってそのことが癒着体質だよというふうに見られますよというふうなことも率直に申し上げましたし、アクセルとブレーキというのは同時に踏めないものだし、白と黒を混ぜたら灰色になるんだから、安全性は限りなく灰色になるというようなことで厳しく私も言わせていただいたわけですけれども、今なお政府がこういう態度を取っているということについて、立地自治体の住民の皆さんが本当にこういう説明で納得できるか、市長の立場としてはどのようにお考えでしょうか。
○参考人(河瀬一治君) その「エネルギー」の雑誌の方に出たわけでありまして、私もインタビューを受けました。そして、そういう気持ちといいますか、やはり立地自治体というのは安心、安全がありませんと、これはもう本当に近くに住んでいまして、一番近い人なんかはもうそのサイトから直線で行けば、もう二百、三百メーターから四百メーターのところに人が現に住んでいますし、そういう意味で、当然誘致したときにも、安心、安全、これが第一ですよと。その後、一に安全、二に安全、三、四が安全で、五に地域振興ということでいろいろ言っておりますけれども、これも必要でありますのでどうしてもいつも言わせていただきますが。
 それで、安心、安全をいかに確保していくかということでの、実はこれ全原協としての要望は先ほど言いました独立的ということでありましたけれども、ちょうどまだ総会の前に取材がございまして、まだちょっと決定してないということで、総会の中では、やはりいろんな立地の状況もございまして、こういう形で独立的にやってほしいと、しっかり、基本的にはどういう形であれ、安全で安心なものであれば私どもは結構です。私どもの地域は安全で安心なものであれば、形がどういう形で、国が一元的に私は原子力については責任を持ってやってくださいということでお願いしていますから、立地地域としてはそういう気持ちでありますので、これは独立的な関係でいい形で安心、安全で結んでいただければいいというふうに私は思っています。
○西山登紀子君 最後の質問になるわけですけれども、河瀬参考人にお伺いしたいと思います。
 十一月七日の当委員会の実は私は質問で、一九七七年に、当時、田中大臣の通達というのが出ておりまして、これは関電のそういう不正事件というのに端を発して、田中大臣の通達が出されて軽微な故障でもすべて報告をしなさいという、そういう通達が出ているんです。ところが、八八年に室長通達というのが出まして、それがかなり骨抜きの中身になったと私は思っているんですけれども。
 そういう二つの通達の経過がありまして、実は、私こういうグラフも作りまして、七七年のこの大臣通達のとき、出てからは大体年間四十五から四十一、四十五という形、ぽんとこれトラブルの報告が上がっているんです、これ公表されているものですけれども。ところが八八年の室長通達が出て、事故につながらないようなものはいいよというような形になりますと途端に報告が減って、こういうふうにずっと減って、原発の数は倍に増えているんだけれども。今や現実のトラブルの公表された報告というのはもう一けた単位におっこっちゃっているということで、正にそこで政府と事業者との間での非常に甘くするという関係があるんじゃないかということで、やっぱりそういうことにきちっとメスを入れなきゃ駄目じゃないですかという質問をさせていただいたんですね。
 そこで、質問なんですけれども、お伺いしたいんですけれども、やっぱり七七年の大臣通達というのは今余りポピュラーじゃないようになっているようですけれども、今も生きているということを大臣は若干答弁なさいました。七七年の大臣通達の原則に立ち返って、軽微な故障でもすべて報告をして、そして公表すると、そして住民に安全管理上の説明責任を果たすべきだというふうに私たち思うんですね。
 だから、公表してトラブルがあることは問題じゃなくて、これはトラブルはあったけれども、安全ですよとか、そういうふうに説明をしていただければ、別に隠しているよりはちゃんと公表していただくということの方が、私は安全に、むしろ信頼にもつながるというふうに思うわけですね。こういう不具合、トラブルがやっぱり情報公開されませんと、全国にある原発の次の事故の防止だとか安全対策だとか技術の向上にやっぱり生かされないというふうに思うんです。
 ところが、この公表ということについて今、政府はまだまだやっぱり徹底しておりません。今度の法案の中でも非常にあいまいな部分でございます。ですから、私はやはり軽微な故障でもやっぱり地元の自治体としてはすべて報告をしていただくということが必要じゃないかなと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○参考人(河瀬一治君) 私ども、安全協定に基づいて各サイト、発電所のいろんな報告は今受けておるようでありますし、特にやはり隠す、先ほど言いました隠したりするのは一番もういけないことでありますので、特に私ども役所では情報公開ですからすべて公開もしていますし、やはり発電所においてもそういう公開をもっとしっかりやって、先生おっしゃっていただいたように、こういうことありましたけれども、こうでこうですよという説明があると、案外人というのは、多少そこにそういうトラブルがあったり傷もそうですが、あっても、言って説明さえしてくれれば安心しますから、是非そういう体制を確立することによって私ども立地地域の安心、安全につながっていくと思っていますので、是非もっともっと公開できるものはすべて公開しても私はいいんじゃないかと思っています。
○広野ただし君 自由党・無所属の会、国会改革連絡会の広野ただしです。
 しんがりですが、もうしばらくの間よろしくお願いいたします。座って質問させていただきます。
 先ほど佐藤先生もおっしゃったんですが、私はエネルギー問題、日本人、すぐのど元過ぎれば熱さ忘れるで、石油ショックのことをもうすぐ忘れてしまっておるんですが、やはりエネルギー全体の問題というのは経済問題、経済と私たちの暮らしに密着しておりますから非常に大切で、しかし石炭も石油も原子力もそれぞれ短所もあれば長所もあると、そういうものだと思うんですね。ですから、よく大臣にも話しているんですが、エネルギーのベストミックスという形でやっていかないと、これはもう日本の経済安全保障の観点からいってもなかなか解決できないんじゃないかと、こういうのが基本的な考え方であります。
 そういう中で今回の原子力の問題、先ほど河瀬市長もおっしゃったとおり、日本人の場合、隠すとかうそをつくということには最も厳しい態度で臨まれるわけで、しかも先ほどお話がありましたとおり、信用は積み上げるのは本当に大変ですけれども、一瞬にして壊れてしまう、失われてしまうと、こういうことで今度の問題は本当に原子力全体にとっても大変な大きな重大な問題だったなと、こう思っておるわけなんですが。
 ところで、なぜ隠したりうそをつかなきゃいかぬかっただろうかと、ここのところなんですね。そこのところに、私は今まで行政なりあるいは事業者が原子力の安全神話というものをどうも作ってきたんではないのか。絶対安全だ絶対安全だと、そう言わないとなかなか立地が認めてもらえない、こういうやはり現実があったんではないかと思うんですね。しかし、人間の作るものですから絶対安全なんというものはまずない、あり得ないと。こういうところで、そこのところをやはり、先ほど河瀬市長は非常に松井ゴジラの例を引かれて、PRエージェントといいますか、PRの分かりやすくやる代理人といいますか、そういうものが必要なんだと、こうおっしゃっていましたけれども、私はもう正にそのとおりで、そういう中で地元あるいは地元民の人というのはやっぱり賢くて、絶対安全ですと言われたって何かあるだろうとはやっぱり思っておられると思うんですね。
 だけれども、そこのところをまあ故障といってもこういう程度のものであれば安全ですよとか、そこを本当に分かりやすくやっぱり説明をして了解の上で進めていく、こういうことが一番大切なんじゃないかと思っておるんですが、先ほどからも何回もおっしゃっていますが、河瀬市長にその地元の立場からお話をいただきたいと思います。
○参考人(河瀬一治君) 特に今までの、私も市会議員になったのはちょうど三十一歳のときでして、それまでおやじもやっていましたので結構こういう世界に長く入っているんですけれども、本当に昔は絶対安全に近い立場でこう原子力をやってきたもので、例えば原子力防災訓練などは、あんなのとんでもないと、そんなもの起こらぬものに訓練する必要がないというぐらいにそういう姿勢であったこともやっぱり事実だと思います。
 ジェー・シー・オーの事故を契機として、そういう防災もしっかりやろうという取組ですけれども、やはり世の中に絶対ということはないということは、これは皆知っていますので、その辺りを今までちょっとそういう進め方がまずかったんかなと。やはり危ないものは危ない、しっかりやれば大丈夫という、そういうようなPA活動なども少なかったようでして、その辺り私たちやっぱり立地をして誘致をしてきた経緯のある自治体も反省もしながら市民の皆さん方にはもう極力分かりやすく。
 ただ、その説明するのもなかなかこの原子力のことについては難しいもんですから、パンフレットを配っても、それを見ても分かるか分からぬかという問題等がございまして、取りあえず、例えばストーブなんかでもガソリン入れたら危ないと書いてありますね。確かに、間違ったらもう大変なことになりますから。そういう意味で、危ないことはちゃんと認めて、広報の中にも、こう起こったら危ない、こうやっていけば安全という、やはりすべてを分かりやすく広報した方が、どちらかというと安全ですよ。例えば、今また環境問題にですよ、あれですよ、この正の部分といいますか、いい部分ばっかりをPAしがちですけれども、やはり負の部分もしっかり広報することによって、人々というのはもっと理解をしようというふうに思いますから、是非そういうふうな形でやってほしいなということも思っているところです。
○広野ただし君 おっしゃるとおりで、私も昔、大学時代は工学部におって技術屋の端くれなんですが、しかし原子力といったらやっぱり物すごく難しいんですね。どの部品をシュラウドだとか言われてそれはどこですかと、こうやっぱりなるわけで、一般の人はですよ。
 ですから、専門家は専門家として、ごまかしちゃいけないですけれども、例えば自動車でいえば、いろいろと事故が起こるでしょうと。例えばこすったりペイントがはがれる、このようなもので、例えばこれは運転にも何ら問題ありませんよと。しかし、これはバンパーが曲がったものだと、あるいはこれはワイパーが取れたものだと、しかしワイパーとなりますと、これはやっぱり運転に非常に問題が出てくる。あるいは、エンジンがトラブったと、こうなればやっぱり大変な問題になるんで、先ほどいろいろとありましたけれども、ランク付けとこう言われても、もうひとつやっぱりぴんとこないんですね。やっぱりそこのところを、役所も硬い言葉を使うし事業者も硬い言葉を使う。私は、これでは本当に一般の人にはやっぱり分からないんだと思うんですね。
 だから、非常に分かりやすく、例えば漫画なんかも使って、それぐらいのことをやらないと安全、安心という問題はなかなか得られないんじゃないかと。そういう意味で、河瀬参考人の先ほど松井代理人の話は非常に感銘深かったんですが、もう一度よろしくお願いしたいと思います。
○参考人(河瀬一治君) 本当に、ちょっと私も表現の仕方が下手なものですから何と言っていいか分からない部分もございますけれども、分かりやすく、代理人というのはやっぱりお任せすると思うんです。私はこういうこと分からぬで、交渉をやってください、例えば原子力について安全をもっとチェックしてください。
 今、既に保安院がそういう、国民の代わりにしっかりとチェックをしたり安全管理をしていただく組織になってほしいという期待を持っておりまして、そういう意味での代理人は私は保安院がやるべきだというふうに今も考えていますので、そういう組織になるように、また先生方のお力をお願いします。
○広野ただし君 それと、先ほど佐藤先生、班目先生もおっしゃった維持基準等についての科学的合理性という、ここのところは私もやっぱり非常に大切だと思っておりまして、例えば車に例を取りましても、じゃ、新車が本当に安全かというと必ずしもそうでもないんですね。やっぱりある程度運転をして、これ、慣らし運転、なじみが出るという、えも言われぬ言葉なんですが、それをやった後のものがざっと運転はいいわけですね。場合によって三年目に車検を取ると、へえ、今まで非常に運転しやすかったのに車検をやったらトラブっちゃったと、すぐに。そういう例はあまたある話で、そういう面では非常に何というんですか、維持基準というのも非常に私はいろんな問題がやっぱりあろうと思っております。
 そして、その中で例えば変な話なんですが、十年物、十五年物あるいは二十年物、二十五年以上たつ物と、そういう古い経年変化をしていく原子炉とあるいは原子力発電所と、やっぱり私は経年変化によって随分違ってくるんだと思うんですね。その点を佐藤先生と班目先生にお伺いしたいと思います。
○参考人(佐藤一男君) 実は、先ほどちょっと例を挙げようかと思っていた例を、今、広野先生に出されてしまいました。
 これは、自動車も新車というのは意外にトラブルが多いんです。ですから、新車をお買い求めになりますと、これディーラーやメーカーによって違いますが、例えば一か月後に無料で点検します、六か月後に無料で点検します、そこから先はというふうな、こういうことをやるわけです。これは、こういういろいろな設備や機械なんかの共通したある特徴がございまして、いわゆる初期故障というのが多い時期があって、それから今おっしゃいましたなじんでくると故障がずっと少なくなる、いよいよ年を取ってくるとまた故障が増えてくる、これは通例でございます。
 私、実は経年変化というような言葉、あるいは私どもの言葉で申しますと高経年化というようなことを言うんですが、これは必ずしも劣化を意味しません。劣化する部分もございますが、やはり逆にかえって良くなる部分もございます。ですから、そういうものをきちんと見極めて、そうしてそれこそ科学的、合理的にそういうものをどう維持管理していったらいいのかというものが維持基準であるべきだというふうに考えます。
 必ずしも、そういう意味では、今例えば一年に一回ばらしているのは、あれはかえって故障のもとだというようなものもあります。そういう意味では、私は前々から電力屋さんやそれから規制当局にもお願いというか申し上げているんですが、日本では原子炉にしろ何にしろ定期検査という制度がありまして、それで国に報告される検査内容だけでもその記録の量は、蓄積量は莫大です。にもかかわらず、これをシステマチックにきちんと整理分析した形跡がない。そういうところから手掛けて、ここはこうすればいいんだというのが実証データをもって示されるというのが非常に大切なことではないかというふうに私は考えております。
○参考人(班目春樹君) ちょっと維持基準のことで、せっかくなので少し補足させていただきたいと思うんですけれども、今現在は維持基準がないからめちゃくちゃをやっているというわけではなくて、ある意味ではすべて、そう言っちゃあれなんですけれども、裁量行政といいますか、要するに何となくお役所の中で密室で決まっているというような感じが我々なんかですらするわけです。
 この問題というのは、それは原子力は非常に複雑なシステムですからだれしもが簡単に分かるものじゃないんですけれども、例えば技術者だったら物がどうしたら壊れるかなんていうのは分かるわけですね。それについては事細かく書いて、だれが読んだって、なるほど、こういうふうにしていれば壊れないようになっているねと、そういうものを書き記したものが技術基準なんですね。今までどうも行政が建前主義でやっていたのは、すべてそういうのは行政の方の裁量に任せてくれ、任せてくれればちゃんとやるよということで、ちっとも細かいことを示してくれない。だから、一生懸命勉強する気になったら、少なくても書き記したものを見れば、なるほど、そうやっているのかというのが分かるようにしていただきたいというのが維持基準を決めるべきだという主張でございます。
○広野ただし君 それともう一つ、すべて人間、人材の問題なんですが、これだけ少子化社会になっていきますと、原子力工学ですとか電気工学とか機械工学とかあるいは土木建築の部分から、そういう原子力の方、原子力発電の方に行く、元々もう理工離れと、こう言われているわけですよね。そういう中で、しかもメーカーの方に行く人たち、そしてまた電気事業者の方へ行く人たち、また検査の方あるいは官庁の方で検査に当たる、いろんな人材が必要なわけですよね。
 ところが、なかなかそういう理工離れですとか、いろんなあるいはそれぞれの組織における待遇の問題ありますよね。そういうことからいって、なかなかその何といいますか、十分な人材が果たして供給されるんだろうか、供給という言葉は悪いですけれども、育成されてくるんだろうかというようなことを非常に私、心配をいたすわけなんですが、佐藤先生も班目先生も大学あるいは研究所におられましたので、その点、御意見をいただければと思います。
○参考人(班目春樹君) 東京大学は原子力工学科がシステム量子工学科に変わって、今、更にシステム創成学科に変わったということで、大分ちょっと怒られているところもございますが。
 原子力に関する人材供給ということからいきますと、一通りかなり原子力発電所というのが普及して、技術者の役割というのが、どちらかというと建設なんかよりはよっぽど保守だとかそういうところに移りつつあるというのが実情です。そういうことを担当する人間はもちろん原子力を知っていなきゃいけないんですが、それ以上に機械だとか電気だとかそういうものの専門家でもあった方がいいということから、実は旧原子力工学科の卒業生も実際、原子力分野だけじゃなくていろんなところに散らばっておりますし、逆に原子力産業界の方を見てみれば、原子力工学科を卒業した人間だけが働いているんではなくて、非常にいろんな分野の人間が集まって働いているということでございます。
 全体的な理工離れとなると、ちょっと私もどうしたらいいかというのは非常に分からないんですけれども、今でもそういう意味では結構、私なんかが指導している学生は、やっぱりこれから原子力ですと言っている学生いますし、捨てたものじゃないというか、ちゃんとした技術者が供給されているものと考えております。
○参考人(佐藤一男君) 確かに現在、理工離れというようなことが言われております。ただ、私がそれでは学生だったころに理工系はどれだけもてはやされただろうというと、これは申し訳ないんですが、法学部の卒業生より工学部の卒業生の方が給料が安いというのはあちこちにありました、実は。必ずしも、例えば給料上げてやるよぐらいのだけではこういう問題というのは解決しないんじゃないかという気がいたします。
 それよりは、やはり私、理工系に志す若い人たちにとって一番大切なものは何か、それは知的好奇心というものをちゃんと刺激してやることだと。そういう知的好奇心がなければ、理工系の学問なんというのはどれを見たって砂かむようなものですね。ですから、なぜこうなのか、これはどうなっているのかという、そういう好奇心を刺激してやるような教育をする必要がある。
 ここの場で申し上げるのがいいのかどうか分かりませんが、そういう意味では、私、現在のお国の教育の在り方というのは大分首をかしげるところがございます。
○広野ただし君 どうもありがとうございました。
○委員長(田浦直君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
 参考人の方々に一言お礼を申し上げます。
 参考人の皆様には、長時間にわたり有益な御意見を述べていただきまして、誠にありがとうございました。(拍手)
 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
   午後零時三十五分散会