第156回国会 本会議 第31号
平成十五年六月九日(月曜日)
   午後一時一分開議
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○議事日程 第三十一号
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  平成十五年六月九日
   午後一時 本会議
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 第一 労働基準法の一部を改正する法律案(趣
  旨説明)
 第二 主要食糧の需給及び価格の安定に関する
  法律等の一部を改正する法律案(趣旨説明)
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○本日の会議に付した案件
 議事日程のとおり
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○議長(倉田寛之君) これより会議を開きます。
 日程第一 労働基準法の一部を改正する法律案(趣旨説明)
 本案について提出者の趣旨説明を求めます。坂口厚生労働大臣。
   〔国務大臣坂口力君登壇、拍手〕
○国務大臣(坂口力君) 労働基準法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。
 我が国の経済社会を取り巻く状況が大きく変化をし、産業・雇用構造の変化が進んでいる中で、我が国の経済社会の活力を維持向上させていくためには、労働者一人一人が主体的に多様な働き方を選択できる可能性を拡大するとともに、働き方に応じた適正な労働条件を確保し、紛争の解決にも資するよう、労働契約や労働時間など働き方に係るルールを整備することが重要な課題となっております。
 このため、労働契約や労働時間に係る制度について、多様な働き方に応じた実効あるものとするための見直しを行うこととし、この法律案を提出した次第であります。
 次に、この法律案の内容につきまして、概要を御説明申し上げます。
 第一に、有期労働契約に関する見直しであります。
 雇用形態の多様化が進展する中で、有期労働契約が労使双方にとって良好な雇用形態として活用されるようにしていくため、有期労働契約の契約期間の上限を一年から三年に延長するとともに、高度の専門的な知識等を有する者や満六十歳以上の者については、その期間の上限を五年とすることとしております。
 また、有期労働契約の締結時及び期間の満了時における労働者と使用者との間の紛争を未然に防止するため、厚生労働大臣が、使用者の講ずべき労働契約の期間の満了に係る通知に関する事項等についての基準を定めるとともに、使用者に対して必要な助言及び指導を行うことができることとしております。
 第二に、解雇に係る規定の整備であります。
 解雇をめぐる紛争が労働条件をめぐる紛争において大きな割合を占め、また増加している現状にかんがみ、このような紛争を防止し、その解決に資するため、使用者が解雇権を濫用した場合には無効となることを内容とする規定の整備を行うこととしております。
 また、解雇を予告された労働者は、解雇前においても当該解雇の理由について証明書を請求できることとするほか、就業規則の必要記載事項に解雇の事由を含めることとしております。
 第三に、裁量労働制の見直しであります。
 裁量労働制が多様な働き方の選択肢の一つとして有効に機能するようにするため、企画業務型裁量労働制について、その導入の際の要件、手続を緩和するとともに、裁量労働制が働き過ぎにつながることのないよう、専門業務型裁量労働制においても、健康・福祉確保措置等の導入を必要とすることとしております。
 なお、この法律は、公布の日から起算をしまして六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとしております。
 政府といたしましては、以上を内容とする法律案を提出いたしましたが、衆議院において、第一に、解雇に係る規定について、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」ものとすること、第二に、一年を超える一定の有期労働契約について、一年経過後、労働者はいつでも退職することができるものとすること等を内容とする修正が行われております。
 以上がこの法律案の趣旨でございますので、何とぞよろしくお願いを申し上げます。(拍手)
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○議長(倉田寛之君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。浅尾慶一郎君。
   〔浅尾慶一郎君登壇、拍手〕
○浅尾慶一郎君 私は、民主党・新緑風会を代表して、政府提出の労働基準法の一部を改正する法律案に関して、小泉内閣総理大臣に対する質疑を行わさせていただきます。小泉総理、どうぞよろしくお願いいたします。
 さて、申すまでもなく、法改正は政策実現のための手段であり、改正そのものが目的となってはいけないということは自明のことと思われます。
 総理お得意のキャッチフレーズに改革なくして成長なしというものがありますが、私も構造改革が今の日本に必要であることを疑いません。しかし、改革は手段であって目的ではありません。目的は、理想とする社会の実現、目指す国家像の実現ではないでしょうか。そして、そのための手段として改革があるのではないでしょうか。
 どうも、総理の言動を拝聴いたしておりますと、改革そのものが目的となっているのではないかと思えてしまいますので、確認させていただきます。目的なき改革は破壊でしかありません。
 そこで、まず総理にお伺いいたします。
 総理は、一体どのような日本をつくろうとされているのですか。総理の理想とする日本の社会はどのようなものですか。
 そして、本日の法案との関係で特に大切な総理の理想とする雇用労働ビジョンを伺いたいと思います。労働は個人の自己実現と密接にかかわる分野でありますが、総理の理想とする雇用労働のありようはどのようなものですか。また、そうした総理の雇用労働ビジョンの実現のために今回の改正はどのような役割を果たすのですか。この点は、今後の法案審議と最も関連するので、是非、官僚の作文ではなく、御自身の言葉で国民に直接語り掛けていただきたいと思います。
 次に、労働基準法についてお伺いいたします。
 総理は、政府原案に修正が施された本日の法案についてどのように評価されますか。私は、最高裁判所の判例で確立された解雇権濫用法理がより正確な形で法律に明記されるなど、労使双方の立場に立ったより良い法案になったものと考えますが、総理の御所見を伺います。
 また、法案の提出のタイミングについてお伺いいたします。なぜ今国会に法案を提出をいたしたのでしょうか。
 この法案の提案理由を読みますと、この法案は昨今の厳しい経済状況により企業経営が厳しい状況にあることを踏まえて提出されています。ところが、総理は、景気は回復するんだ回復するんだと言い続けておられます。来年、再来年と景気が良くなるのなら今回の改正は必要ないでしょう。総理は自分の言っていることに自信がないから法案を提出したのではないですか。御所見を伺います。
 次に、有期労働契約について、その契約期間の上限の原則を一年から三年に延長することについては、労働コスト削減のために正社員から契約労働へと置き換えが進んでいる現状では、常用雇用の代替を更に加速させ、不安定雇用労働者を増大させることになりかねないと考えますが、総理の御所見を伺います。
 また、裁量労働制の対象労働者の範囲については、いたずらな拡散を招かないための拡大防止策は万全が期されているのか、また、裁量と責任を持って仕事をする方々が成果志向の結果、オーバーワークに陥ることがないような歯止め等は十分なのかについても総理の御所見を伺います。
 さて、リストラがよく行われるアメリカの方に雇用不安はないか聞いたことがあります。彼の答えは、今の勤務先以外に同条件の仕事がすぐ見付かると分かっていればそういった不安はないというものでありました。
 だとすれば、政府の最大の責務は雇用をつくることではないでしょうか。あわせて、勤労者が職を見付けやすくなるようにエンプロイアビリティーを高める、つまりは職業能力の開発に力を入れることではないでしょうか。そして、すぐに民間で職が見付からないような時期こそ雇用保険を拡充することが必要ではないですか。総理の御所見を伺います。
 こうした指摘をいたしますと、財源がないのにどうするんだと言われるかもしれません。しかし、財源のことまで考えるのが本当のリーダーシップを発揮する姿勢ではないかと私は思われますが、いかが考えますか。
 以下、雇用対策及びその財源との関連で、公務員の人件費の問題を取り上げたいと思います。
 本論に入ります前に、一点、政府の情報管理について、総理にお伺いをいたします。
 私が本日の質疑の通告をいたしましたのは先週の金曜日ですが、その日のうちに、これから述べます私の意見に対して反対ということで、ある公務員の方からメールをいただきました。意見に対しまして賛否があるのは当然のことでありますけれども、少なくとも、国民の前にこれから申し述べ、総理の御答弁をいただくことについて、その質問の前の週の金曜日の段階で情報が漏れ、質問者の私に反対の意見が来ているということは、明らかに公務員の守秘義務に反することですし、情報管理の点でも問題があると思いますが、この点について総理の御所見を伺います。
 さて、政府の統計資料によりますと、現在、産業別で一人当たりの人件費が最も高くなっているのが公務員であります。人事院に確認いたしましたところ、給料のみの比較で見ても、公務員は民間でも最も高い金融よりも高くなっているそうです。
 私は、公務員の人件費が全産業で比較して最も高くなっているという点について、二年前、その感想を予算委員会の質疑の中で総理に伺ったことがあります。
 現在、国家公務員と地方公務員を合わせて約四百万人の方の人件費が約四十兆円、一人当たりに直すと約一千万円です。もちろん、人件費に手を付けることは国家の経営者として最後の最後にすべきことは申すまでもありません。国、地方の財政の無駄をなくすことにまず力を入れることは当然であります。しかし、一方で、三百八十五万人の失業者がいるという危機的な事実を目の当たりにすれば、総理自ら頭を下げて公務員の皆様にも協力を求めていくということを考えてもよいのではないでしょうか。
 仮に、一割の削減に協力をしていただければ、四百万円の年収で百万人の雇用を生み出すことができます。もし、二割の削減に協力をいただければ、三百八十五万人の失業者全員に月額十五万円の生活補助のお金を出しながら、同時に、一人当たり二十八万円の予算で職業能力の開発の場所を提供できることができます。皆で少しずつ痛みを分かち合う、これがワークシェアリングではないでしょうか。日本型のワークシェアリング、パブリックワークシェアリングについて真剣にそろそろ検討すべきだと思いますが、二年前の質問以降、この点について総理として考えられたことはありますか。こうした考え方に対する総理の御所見を併せて伺います。
 もちろん、経済全体が拡大し、新たな雇用が増え、結果として失業者が減るというのが理想です。しかし、ここ数年の雇用情勢が悪化の一途をたどるという現象を見れば、緊急避難的に雇用の需給ギャップを埋める、そのために政策として考えられたことがありませんかという趣旨の質問であります。
 私の質問は、何も直ちに一割や二割引き下げろと言っているのではありません。将来の引下げ、段階的引下げが可能となるなら、そのことを担保に今国債を増発して、必要な職業能力開発等の事業ができるではありませんか。そうしたことも含めて、もし検討しているというならば、なぜいまだに基準財政需要の算出に当たり、人件費は全国一律で国家公務員準拠なんですか、また、退職金についても同様なのでしょうか。総理の御所見を伺います。
 今の制度を維持することは、民間でできることは民間でと言いながらも、地方に行けば最も良い人材を県庁なり市役所が集められるように財政上も国が保障していることになります。私企業ですけれども、NTTの例を挙げれば、都道府県ごとに地域の実情に合わせて賃金改定を行っております。少なくとも、基準財政需要の人件費の項目について、都道府県の人件費の実情を反映した補正係数を入れるべきだと考えますが、総理の御所見を伺います。
 一方、同時に、公務員の方々に不利益変更をお願いしていかざるを得ないとするならば、私は、国、地方の公務員の方々に労働三権を完全に付与すべきであり、その上でお願いすべきだことだと思いますが、総理の御所見はいかがですか。
 さて、労働基準法の改正法案及び関連する問題について総理の基本的な考え方をお伺いしてまいりました。しかし、そもそも経済の状況が現在のように悪くならないならば、今回の法改正は必要なかったのであります。もし、景気が上向いてくるのであれば、解雇ルールなど定めなくても使用者の方は解雇を思いとどまるでしょうし、公務員の方だって賃金を下げずに済むわけです。
 私は、我が国景気回復のかぎは我が国の明確な意思、国家ビジョンを示せるかどうか、そしてその方針を踏まえて民間側が設備投資をし、あるいは将来不安がなくなったらからといって消費が上向いてくるかどうかという点にかかっていると思います。
 一つだけ例を挙げれば、例えばきれいな環境を次世代に残すということで規制を環境分野で強化すれば、逆に設備投資を誘発することができるのではないでしょうか。つまり、国民が持っているウオンツ、欲求を引き出す方向で国として目指すべき方向性を示すことが民間の設備投資を呼び込むことにつながり、結果として景気回復につながると考えます。
 しかし、残念ながら、小泉内閣からは我が国が目指す方向性が余り見えてきません。この観点から我が国の外交を見ても、やはり問題があるのではないかと思います。
 北朝鮮問題について見ますと、昨年成立いたしました北朝鮮による拉致被害者支援立法においては、拉致事件は国家による未曾有の犯罪と位置付けられております。とすれば、拉致事件はテロであると認識いたしますし、先日の衆議院本会議で総理自身そう答弁されております。テロであるということを考えれば、現在の外為法の枠組みの下でもテロ組織に対する送金を禁止する国連決議がありますから、北朝鮮に対する日本からの送金を止めることができます。そうした送金を止めることは、テロという憎むべき犯罪に対する我が国の意思を明確な形で示すことにつながると思いますが、総理の御所見を伺います。
 さらに、付け加えて言いますと、私といたしましては、国連決議がない場合でも、我が国の意思を更に明確に表すために、外為法を改正して、必要があれば我が国単独でも送金を停止できるような体制をつくっていくことも必要かと思いますが、その点についての総理の御所見を伺います。
 さて、労働基準法と関連する諸問題について、特に日本として目指すべき方向性と国家の意思ということについて総理の見解をお伺いしてまいりました。総理には、是非とも率直なお言葉でお答えいただきたいと思います。
 なお、小泉総理大臣の御答弁が十分に納得できない場合には再質問させていただきますことをあらかじめ申し添えさせていただきまして、取りあえず私の質問を終わらさせていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 浅尾議員にお答えいたします。
 日本社会の将来像についてでございますが、小泉内閣が目指すのは、簡素で効率的な政府の下に、自らを助ける精神と自らを律する精神、いわゆる自助の精神、自律の精神、この精神によって、国民一人一人や企業、地域が持っている大きな潜在力を自由に発揮できる、活力ある民間と個性ある地方が中心となった豊かな経済社会の実現であります。今後とも、国民の理解と協力の下に構造改革を進め、自信と希望に満ちた活力ある豊かな経済社会の実現を目指してまいります。
 雇用労働のビジョンと今国会に法案を提出した理由についてでございますが、私は、だれもが安心して働ける労働環境が整備された下で、良好な労使の関係を維持しつつ、個々の労働者が自己の個性や能力を十分に発揮し、企業活動自身、ひいては経済全体が活性化していくことが望ましい雇用労働の在り方であると考えております。
 産業構造や企業活動、労働者の就業意識等が大きく変化する中、我が国の経済社会の活力を今後とも維持していくためには、労働者一人一人が主体的に多様な働き方を選択できる可能性を追求、拡大していくとともに、働き方に応じた適正な労働条件を確保していくことが重要な課題となっているとの認識の下に、今般、労働契約のルール整備を行うなどの労働基準法の改正を行うこととしたところであります。
 以上のような政府としての本法案についての考え方は趣旨説明の際において明確に申し上げたとおりであり、今回の法案はまさしく我が国経済の再生に向けた改革の一環として位置付けられるものと考えております。
 衆議院での本法案の修正についてでございますが、政府原案における解雇についての規定の新設は、最高裁の判例で確立しているものの、これまで労使当事者間で十分に周知されていなかった解雇権濫用法理を法律上明確にすることにより、解雇をめぐるトラブルの防止、解決につなげることを意図していたところであります。衆議院においては、政府原案のままでは使用者に解雇が自由にできるという誤解を与えるのではないかとの強い意見があったことを踏まえ、与野党の間で真摯な議論がなされた結果、こうした懸念を払拭するための修正が行われ、これにより民主党も修正に賛成されたものと承知しております。この修正により、当初の目的が一層効果的に果たされることになるものと考えております。
 有期労働契約についてでございますが、有期労働契約の上限の延長により、現在よりも長期の雇用も可能となることから、労働者の雇用の選択肢が拡大し、雇用の安定につながるものと考えます。
 各企業における常用労働者と有期契約労働者の構成については、企業の事業戦略等の一環として、人員構成、配置、キャリア形成の在り方など種々の観点を総合的に考慮して定まるものであり、今回の改正により、常用雇用の有期雇用への代替など、懸念のような事態を直ちに招くものとは考えておりません。
 裁量労働制についてでございますが、裁量労働制については、事業経営に関する企画立案の業務など、成果等が必ずしも労働時間の長短に比例しない性格の業務を行う労働者が増加する中で、このような労働者が主体的に多様な働き方を選択できる可能性を拡大するために、その選択肢の一つとして有効に機能するようにすることが必要と考えております。
 このため、今回の改正においては、労使の十分な話合いに基づくことを前提とした裁量労働制の基本的枠組みを維持しつつ、その導入、運用に当たっての要件、手続を緩和することとしたところであり、裁量労働制の無限定な拡大や長時間労働につながることはないものと考えております。
 雇用のセーフティーネットについてですが、厳しい雇用情勢の中、国民の雇用面の不安を払拭するために、雇用のセーフティーネットに万全を期すことは重要な課題であると認識しております。
 このため、政府としては、様々なサービス分野において規制改革を進めるなどにより、いわゆる五百三十万人雇用創出を目指して新規雇用の創出を図るとともに、大学、企業等の民間機関を活用した効果的な訓練を実施するなど、きめ細かい職業能力開発、再就職支援策を行っているところであります。
 なお、雇用保険制度については、安定的運営を確保する観点から給付の見直しなどを行ったところですが、その安易な拡充はかえって失業者の滞留などを招きかねず、適切ではないと考えております。
 公務員の給与削減によるワークシェアリングの推進についてでございますが、ワークシェアリングについては、厳しい雇用情勢に配慮し、労使双方が協力してその取組を進めることが重要であると考えております。このため、私より、ワークシェアリングの推進を使用者、労働者側双方に要請し、この結果、ワークシェアリング推進のための取組を進めていただいているところであります。
 私は、公務員の人件費の見直しは重要な課題であると考えており、定員の抑制や退職金の見直しなどを進めているところであります。
 一方、その給与水準は、国家公務員の給与については人事院の民間準拠による勧告に基づいて決定され、また地方公務員の給与については、全国一律ではなく、地域の民間企業の給与水準を踏まえ地域ごとの実情等に応じて決定されているところであり、御提案のような公務員の給与削減によってワークシェアリングを実現することは問題があるものと考えております。
 また、公務員の労働基本権については、国民全体の利益の保障という見地から制約を免れないものであり、御提案のように労働三権を完全に付与することは困難と考えております。
 なお、地方一般財源としての交付税算定の基礎となる基準財政需要額については、仮に人件費について実績を反映することとなれば、実績の多い団体ほど有利となり、不公平な結果をもたらしかねないことなどを踏まえ、全国標準的な経費を算入しているところであります。
 ただいまの答弁に関連し、議員の質問に対する抗議メールが来ていたとのお尋ねがございました。
 御指摘の点については、事実とすれば遺憾なことと考えますが、まずはその事実関係を確認すべきものと思います。
 北朝鮮への送金停止に関してですが、テロに関する国連安保理決議一三七三は基本的にはテロリストである個人及び団体等を対象とするものであります。
 いずれにせよ、現在、問題の平和的解決のために外交努力を継続しており、現時点で北朝鮮に対する経済制裁を行うことは考えておりません。ただし、今後、北朝鮮が更に事態を悪化させた場合には適切な措置を実施していく考えであります。(拍手)
○議長(倉田寛之君) しばらくお待ちください。──ただいま理事が協議中でございます。しばらくお待ちください。
 浅尾君から再質疑の申出があります。これを許します。浅尾慶一郎君。
   〔浅尾慶一郎君登壇、拍手〕
○浅尾慶一郎君 三点、再質疑をさせていただきます。
 総理の御答弁で、有期労働契約については、常用雇用との代替が起きないというふうに御答弁をいただきましたけれども、それは現在の実情からするとなかなかそんなことではないんではないかと思いますけれども、総理からの確認の答弁、決して日本の民間企業で代替が起きないという確認の答弁を、まず第一点、いただきたいと思います。
 二番目は、情報管理についての質問でありますけれども、もし事実とすればということでありますが、それでは事実確認を政府としてされるのかどうか、その点を確認をさせていただきます。
 それから三番目は、基準財政需要の人件費の話を質問をさせていただきましたけれども、私の質問の趣旨は、現在の基準財政需要で人件費を計算するに当たっては、これは基本的には全国一律の基数を使っております。それが地方交付税の算定の根拠となっておりますけれども、実際の地方自治体の人件費は各地の人事委員会が決めているかもしれませんが、その実績を反映しろということではなくて、基準財政需要の算定に当たって、全国の各地の人件費の実情を反映した補正係数を入れた方がいいんではないかという質問の趣旨でありますので、その点について伺わさせていただきます。(拍手)
   〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 浅尾議員の再質問に答弁いたしますが、いずれも私は答弁したつもりでございます。
 まず、常用雇用と有期雇用ですが、懸念のような事態を直ちに招くものとは考えておりませんと答弁しておりますし、基準財政需要額につきましても、私は、地方一般財源としての交付税算定の基準となる基準財政需要額については、仮に人件費について実績を反映することになれば実績の多い団体ほど有利となり、不公平な結果をもたらしかねないことなどを踏まえ、全国標準的な経費を算入しておると答弁しております。
 また、議員の質問に対する抗議メールについても、事実とすれば遺憾なことだと、まずはその事実関係を確認すべきものと、いずれも答弁しております。(拍手)
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○議長(倉田寛之君) 小池晃君。
   〔小池晃君登壇、拍手〕
○小池晃君 私は、日本共産党を代表して、労働基準法の一部改正案について、小泉総理大臣並びに厚生労働大臣に質問をします。
 労働基準法の目的は、労働者の最低の労働条件を定め、使用者の行為を規制し必要な義務を課すことにより、使用者に対して弱い立場にある労働者を保護することにあります。ところが、当初政府が国会に提出した法案には使用者の解雇権が明記されていました。労働基準法の立法趣旨を根底から覆す政府案に対して、国民や労働団体、法曹界が挙げて反対したのは余りにも当然のことでした。
 その後、衆議院において、使用者は労働者を解雇できるとの表現が削除され、解雇は客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められない場合は権利濫用として無効と修正されました。この結果、今まで判例法理とされてきた解雇権濫用規制が法制化されることとなったのです。
 日本共産党は、不当解雇の横行をなくすため、二〇〇一年に解雇規制法案を提出し、労働基準法への解雇ルールの明記を要求してまいりました。今回、野党四党が一致して要求した修正が実現したことは、国会の役割が発揮されたものとして高く評価したいと思います。
 そこで、総理に伺います。
 本法案は、そもそも総理が就任直後の一昨年五月、解雇しやすくすれば企業が安心して人を雇うとして解雇法制の制定を指示したのが始まりでした。しかし、使用者は解雇することができるという条文は削除、修正をされ、総理の解雇しやすいルールという考え方は国会で完全に否定されたのです。このことを一体どう受け止めているのですか、まず答弁を求めます。
 さらに、三月に再改定が閣議決定された規制改革推進三か年計画では、法案に盛り込むことすら拒まれた金銭賠償方式の検討が挙げられています。裁判で解雇無効とされてもなお金銭で解雇できるような方式は、解雇ルールが修正された経緯も踏まえ、この際、潔く撤回すべきではありませんか。
 解雇ルールが修正されても、ほとんどの労働者がその適用とならない不安定雇用とされるのでは、せっかくのルールを生かせません。本法案が衆議院で可決された際の連合事務局長談話でも、有期契約の契約期間の上限延長、裁量労働制の手続要件緩和など、多くの問題が残されていることが指摘されています。いずれも労働者と国民の生活に深くかかわる大問題であり、参議院での審議の役割は極めて重要であります。
 そこで、ただしたいのは、有期雇用の期間の上限を一年から三年に延長する問題です。
 最新の総務省労働力統計では、失業率は五・四%、失業者は三百八十五万人と、最悪で深刻な状況が続いています。パート労働者などの非正規雇用労働者は全体の三割を超え、とりわけ女性では五一・二%と、ついに過半数を超えました。
 青年の実情も深刻であります。先日、内閣府が発表した国民生活白書によれば、フリーターと呼ばれる若年不安定雇用労働者が九五年の二百四十八万人から二〇〇一年には四百十七万人に激増しています。フリーターの七割が正社員を希望している一方、二十四歳までの正社員は同期間に二百四万人も減り、しかも、六十時間以上の長時間労働を強いられる青年正社員が四十九万人増えています。さらに、今後新規学卒者の採用を拡大すると答えた企業が九%にすぎないのに対し、派遣労働者の拡大と答えたのが三七%、臨時、パートの拡大が三八%です。白書では、こうした企業戦略が若年の雇用の悪化を招いていると指摘しています。
 衆議院の審議で、有期雇用計画期間を三年に拡大すれば常用雇用の代替が進むのではないかとの質問に対して、政府は、企業の戦略から総合的に判断されるので懸念はないと苦しい答弁を続けました。しかし、国民生活白書が指摘をしているように、非正規雇用の拡大が企業の戦略である以上、歯止めなく拡大するおそれは十分にあります。三年まで有期で雇用できることになれば、新規学卒者は契約社員として採用され、三年でふるい落とされ、仮に更新できても使用者都合で数年で雇い止めされかねません。
 総理、これでは新規学卒者の採用の在り方が激変するのではありませんか。中高年の大規模なリストラに利用されるのではありませんか。そうならないというなら根拠を示していただきたい。
 ILO百五十八号条約では、あくまで常用雇用が原則で、有期雇用は例外とし、解雇制限を避ける目的で有期雇用を利用することは許されないとしています。日本は政労使一致で同条約の採択に賛成しながら、いまだに批准していませんが、有期雇用の期間延長で常用代替を進めることはILO百五十八号条約に背くものではありませんか。
 国民生活白書では、フリーターの増加が生産性を低下させ、経済成長の制約になるおそれがあるとしています。総理は閣議決定した白書の指摘に責任を持ち、フリーターの増加を促進する有期、派遣労働の規制緩和という政策をきっぱり改めるべきではありませんか。明確な答弁を求めます。
   〔議長退席、副議長着席〕
 有期雇用や派遣労働などの不安定雇用労働者を更に拡大していくことは、社会保険制度の未加入者を増やし、社会保障制度の土台を揺るがすことになるのではありませんか。また、白書が指摘しているように、フリーターの増加は未婚化、晩婚化、少子化を深刻化させます。これもまた、年金制度などの基盤を掘り崩すことになるのではありませんか。少子化の克服や持続可能な社会保障制度というなら、不安定雇用の拡大に歯止めを掛けることこそ求められているのではありませんか。併せて伺います。
 パート労働者など非正規労働者と正規労働者との均等待遇が盛られていないことも大問題であります。
 昨年、雇用能力開発機構が三菱総研に委託して行われた調査によれば、正規従業員とパートタイムの賃金格差を縮小することで正規従業員は五年間で百十九万人増加し、経済全体の所得、消費が増加するためコスト負担増は相殺され、その上、正規従業員の労働時間は一人当たりの残業が削減されるとの結果が出ています。いいことずくめではありませんか。
 日本共産党は本院にパート・有期労働者均等待遇法案を提出しています。総理、賃金や労働条件の格差を放置したまま有期雇用などの非正規労働者を拡大するのではなく、均等待遇の法制化を図ることこそ雇用情勢を改善し、日本経済を活性化させるのではありませんか。
 さらに、裁量労働制の問題です。
 これは、幾ら働いても労使が決めた時間しか働いたとみなさないもので、サービス残業を合法化し、命と健康を破壊し、まともな家庭生活を不可能とするものにほかなりません。前回法改正時に、我が党は、こうした働き方は国際基準から見て異常だと批判しましたが、その後、世界で裁量労働制を導入した国はあるのですか。裁量労働制の拡大は厚生労働省が進めるサービス残業根絶にも逆行するのではありませんか。厚生労働大臣に伺います。
 過労死を生む日本の長時間労働は、国連社会権規約委員会の最終見解でも、過大な労働時間を容認していることに重大な懸念を表明すると厳しく批判されています。この勧告について、二〇〇六年六月までに回答が求められていますが、検討は一体どこで行われ、どこまで進んでいるのですか。総理は、日本に課せられた、労働者の実態を正確に掌握し、労働時間を短縮する国際的責務をどう果たすつもりですか。裁量労働制の拡大で労働時間を実態より短く見せて国際的批判をかわすことなど断じて許されません。総理は裁量労働制の拡大を進めるような国が国際社会で信頼を得られるとでも思っているのですか。
 そもそも、小泉内閣は歴代内閣が閣議決定してきた年間総実労働時間千八百時間の達成をいまだに閣議決定していません。なぜ閣議決定しないのですか。総理は十五年たっても実現しないこの最低限の目標すら投げ捨てようというのですか。
 以上論じてきたように、労働基準法の改悪の問題は解雇ルールの修正だけで解消できるものではありません。衆議院の参考人質疑でも、裁量労働制や有期雇用契約の延長に多くの懸念が表明されました。本院において、こうした意見を真摯に受け止め、労働者保護をうたう労働基準法によって労働者が不利益を被ることなど決してないよう、徹底審議を求めて、質問を終わります。(拍手)
   〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 小池議員にお答えいたします。
 解雇についての規定に関するお尋ねですが、政府原案における解雇についての規定の新設は、最高裁の判例で確立しているものの、これまで労使当事者間で十分に周知されていなかった解雇権濫用法理を法律上明確にすることにより、解雇をめぐるトラブルの防止、解決につなげることを意図していたところであり、解雇を促進するという意図は誤解であります。
 衆議院においては、政府原案のままでは使用者に解雇が自由にできるという誤解を与えるのではないかとの強い意見があったことを踏まえ、与野党の間で真摯な議論がなされた結果、こうした懸念を払拭するための修正が行われたものと承知しており、この修正により、当初の目的が一層効果的に果たされることになるものと考えております。
 解雇の金銭的解決制度についてですが、解雇の金銭的解決制度については、その申立ての要件や金銭の額等の在り方について労使から様々な意見が出されたことから、今般の改正法案には盛り込まないこととし、引き続き検討することとしたところであります。
 いずれにしても、金銭的解決制度の導入については、労使の意見を十分に踏まえた上で対応することが必要と考えております。
 有期労働契約の上限の延長により常用代替につながるのではないかとのお尋ねでございます。
 今回の有期労働契約期間の上限延長は、雇用形態の多様化が進展する中で、有期労働契約が労使双方にとって良好な雇用形態として活用されるようにするという観点から行うものであります。
 企業における常用労働者と有期契約労働者の構成については、企業戦略、人材戦略の一環として、長期的視点に立った企業内能力開発、労使間の協調的な信頼関係の育成といった点を含め、人員構成、配置、キャリア形成の在り方など種々の観点を総合的に考慮して定まることとなるものと考えております。このため、今回の改正により、常用雇用の有期雇用への代替など、御懸念のような事態を直ちに招くものとは考えておりません。
 なお、御指摘のあったILO条約については、我が国としては批准しておらず、その違反の是非についてコメントする立場にはありません。
 有期労働契約、労働者派遣事業の見直しに関し、フリーターの増加や社会保障制度の維持についての御指摘がありました。
 有期労働契約の上限の延長は労使双方にとって良好な雇用形態として活用されるようにする観点から行うものであり、現在より長期の雇用も可能となることから、雇用の安定化につながるものと考えます。また、労働者派遣事業の見直しは、雇用のミスマッチ解消に向け、派遣労働者の雇用の安定等に配慮をしつつ行ったものであります。
 いずれも、いわゆるフリーターの増加を促進するとの意図は全くありません。また、現状においても、有期契約労働者については、二か月以上の健康保険等の被保険者となる期間で雇用されている者がその多くを占めている点や、派遣労働者についても派遣元事業主に対して社会保険に加入させてから派遣を行うことなどの指導を徹底していることを踏まえれば、これらの改正により社会保険制度の未加入者が増大するといった事態を招くものとは考えておりません。
 なお、今後の日本経済を担うべき若年者に職業意識や能力が十分育っていないフリーターが大幅に増加し、未婚化、晩婚化を通じた少子化の深刻化の一因となっていることについては、政府としても重要な課題と認識しております。
 このため、若年者トライアル雇用による雇用の促進や職業訓練の充実など、産業界や教育界とも連携したきめの細かい若年者の雇用対策が講じられるよう、関係大臣間で協力して取り組んでいくこととしているところであります。
 均等待遇についてですが、パートタイム労働者の増加など就労形態が多様化する中で、だれもが安心して働くことができるような労働環境を整備していくことは重要な課題であると考えております。
 労働者の待遇は職務内容などに応じて決定されるものであり、常用労働者とその他の労働者との間で待遇の均等化を一律に図ることは困難と考えておりますが、政府としては、パートタイム労働者について、通常の労働者と同様の職務を行い、人材活用の仕組みや運用等が通常労働者と同様の実態がある者については同一の処遇決定方式を用いるなど、通常の労働者との均衡を考慮した公正な処遇を確保する方策を検討しているところであります。
 労働時間短縮及び裁量労働制についてでございますが、労働時間の短縮に取り組むことは重要な課題と考えております。このため、小泉内閣においても、年間総実労働時間千八百時間の達成、定着に向けて取り組むことを平成十三年八月の閣議決定において明確に定めているところであります。
 政府としては、御指摘のあった国連社会権規約委員会の勧告も踏まえ、こうした目標の達成、定着に向けて引き続きその進捗状況の把握に努めつつ、年次有給休暇の取得促進と所定外労働の削減に重点を置いた取組を着実に進めてまいります。
 また、今回の改正においては、裁量労働制について労使の十分な話合いに基づくことを前提とした制度の基本的枠組みを維持しているところであり、裁量労働制が長時間労働につながることはないものと考えております。
 なお、裁量労働制の制度自体について国際的な批判があったとは承知しておらず、今回の改正も国際社会で認められるものと考えております。
 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
   〔国務大臣坂口力君登壇、拍手〕
○国務大臣(坂口力君) 小池議員から裁量労働制についてのお尋ねがございました。
 ただいま総理からも御答弁をしていただきましたので、若干重複をいたしますが、御答弁を申し上げたいと存じます。
 企画業務型裁量労働制につきましては、労働者が主体的な多様な働き方を選択できる可能性を拡大するために、その選択肢の一つとして導入したものでございます。今回の改正は、この制度がより有効に機能するよう、同制度の導入、運用についての要件、手続を緩和しようとしたものであります。
 今回の改正後におきましても、導入に当たりましては、労使の十分な話合いを必要とすることなど制度の基本的な枠組みを維持することから、今回の改正が御指摘のようにサービス残業の合理化につながるものとは考えておりません。
 また、前回、平成十年の労働基準法改正の後に諸外国においてこの裁量労働制を導入した国があるかどうかというお尋ねでございますが、それは承知をいたしておりません。
 いずれも、労働委員会の決議によりまして、みなし労働時間の適切な設定も含めまして、今後とも裁量労働制の適正な運営が確保されるように指導を徹底しますとともに、賃金不払残業につきましては、労働基準法に違反する、あってはならないものでございますから、厳しく対処をしていきたいと考えているところでございます。(拍手)
○副議長(本岡昭次君) これにて質疑は終了いたしました。
     ─────・─────
○副議長(本岡昭次君) 日程第二 主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律等の一部を改正する法律案(趣旨説明)
 本案について提出者の趣旨説明を求めます。亀井農林水産大臣。
   〔国務大臣亀井善之君登壇、拍手〕
○国務大臣(亀井善之君) 主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律等の一部を改正する法律案の趣旨につきまして御説明申し上げます。
 米は国民の主食であり、稲作農業は我が国農業の礎となるものであります。しかし、米をめぐる情勢は、需要の減少、生産調整の限界感、強制感の高まり、担い手の高齢化など、正に閉塞状況に立ち至っております。
 このような状況を打開し、水田農業の未来を切り開くため、消費者重視、市場重視の視点に立って米政策を抜本的に見直し、生産構造対策、需給調整対策、流通制度等に整合性を持って取り組んでまいる所存であります。
 このような改革を実行する一環としてこの法律案を提出した次第であります。
 次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。
 第一に、現在の基本計画に代えて、米穀の需給及び価格の安定を図るため、需給の見通し、備蓄運営の方針等を内容とする基本指針を策定することとしております。
 第二に、米の生産関係者の主体性を重視しつつ安定的な生産を確保する観点から、生産調整の円滑な推進に必要な措置を講ずることとしております。
 具体的には、政府が生産調整の円滑な推進に関する施策を講ずるに当たっては、生産者の自主的な努力を支援することを旨とするとともに、関連施策との有機的な連携を図りつつ、地域の特性に応じてこれを行うよう努めることとしております。また、生産出荷団体等が定める生産調整方針を国が認定する制度を創設し、国及び地方公共団体が生産出荷団体等に対し必要な助言、指導を行うよう努めることとしております。
 第三に、米の流通関係者の主体性を重視しつつ適正かつ円滑な流通を確保する観点から必要な措置を講ずることとしております。
 具体的には、現在の計画流通制度を廃止するとともに、米穀の安定供給の確保を支援するため、過剰米処理に係る無利子資金の貸付け、安定供給の確保に資する売買取引に係る債務保証等の業務を行う指定法人制度の創設等を規定することとしております。
 以上、主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げた次第であります。(拍手)
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○副議長(本岡昭次君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。発言を許します。信田邦雄君。
   〔信田邦雄君登壇、拍手〕
○信田邦雄君 民主党・新緑風会の信田です。
 ただいま議題になりました主要食糧法の一部改正案について、民主党・新緑風会を代表いたしまして質問いたします。
 私は、北海道の東部、オホーツク海側の北見市で息子夫婦と四十ヘクタールを耕作する百姓です。米十ヘクタール、小麦、てん菜、バレイショ、野菜などの畑作物三十ヘクタールの主要食糧を自ら耕作し、国民である消費者に供給してきた者として、主要食糧法は日本国民の命の尊厳である食糧に関する大切な法律であります。国内的にも国際的にも極めて重要であることが本院すべての皆様の共通認識であることを勝手に確認いたしたいと思います。
 さて、食糧は国民の命であり、国家の安全保障であります。平和の原点であります。そして、環境、文化、伝統、健康、教育、地方を守る礎であります。食料を守れない国は国民を守れない、国民の幸せも平和も国土も守れない。有事法制より重要な国家安全保障なのです。したがって、主要食糧法では、日本国民の命の尊厳である食糧を国内自給することを基本に、国民のために安定供給できる政策を確立することが国家の責務であります。
 国民に安定供給するには、まず自分の国で生産する、すなわち自給が基本になります。そのために最も大切なことは、言うまでもなく、私のように国民のために食糧を生産する農民が我が国に安定して存在しなければなりません。そして、村に、里に定住し、持続しなければなりません。持続するためには、平和で安定した暮らしが保障されなければならないことは言うまでもありません。さらに、農民として、国民として誇りを持ち、当然ながらすべてが農民として平等でなければなりません。例えば、北欧のある国では、農民の所得は公務員の所得を下回ってはならないとその国の農業基本法に明記し、農民の地位を法律で定めています。
 そこで、大変まじめで実直、多分実行力があると思いますが、亀井農水大臣にお伺いをいたします。
 現在、国際化が進む中、自由貿易と市場原理に基づくWTOの農業協定、農業交渉が激しい対立の中で進められ、我が国は厳しい状況にあります。しかしながら、市場経済圏で生きる日本として、自由貿易を進め、国際協調を図りながら国民の命を守るためには、EUやアメリカのように食糧を生産する農民自身に直接支払う政策へ大転換すべきであると思いますが、大臣のお考えをお伺いいたします。
 現在、日本の農産物価格は、国民、消費者、加工食品などの実需者が負担する価格を基本としております。この価格は消費者にとっては国際価格より高く、不満です。一方、生産者にとっては国際競争に弱く、食糧の輸入が急増する事態を招いております。そのため、農業経営を悪化させ、農民の所得を著しく低下させています。しかも、食糧自給率四〇%という先進国としては恥ずかしい結果となっています。正に、自民党農政の失政であると言えます。
 自給率が低いということだけが問題ではありません。食糧を生産する能力と自然環境を持ちながら、生産調整や不耕作を行い、農民の意欲と希望を失わせていることは、国力を低下させていることと同じことと言えます。国家的損失であります。しかも、全世界から食糧を買いあさり、貧しい国が食糧を買うこともできずにいます。食糧を分け合って世界から飢餓を撲滅しようという国際宣言をした世界食糧機関、FAOの精神に背き、戦争犯罪より重いと国際社会から非難されているような有様です。すなわち、食糧の大量輸入は国際的に見れば飢餓の輸出なのです。日本国民が知らない間に、人類に対して食糧戦争を起こしていることになるのです。
 今回、提案されています主要食糧法の改正に当たっては、自民党農政の行き詰まりの結果として、生産調整の見直しという単純な法改正だという認識ではなく、国民にとっても農民にとっても、そして地球や人類にとって重要な食糧問題であると強く自覚をした上で、今後の日本農業の再生として考えなければなりません。
 そこで、まじめで実直な農水大臣にお伺いをいたします。
 安全、安心のできる食糧を安定して国民が手にすることができるためには農民の所得を保障するべきと先ほど申し上げましたが、生産する農民の生活を保障せずに減反を迫っても、それを選択する農民には不安のみが広がり、耕作意欲がなくなり、減反選択の不安定となり、国民に対して食糧の安定供給が約束されない結果となります。主要食糧の需給と価格の安定という法の目的が達成されず、中途半端な法改正と私は言わざるを得ないと思っているところであります。
 米の需給調整については、国が独立国として、食糧自給の理念に基づき、生産、消費、備蓄、国際貢献などを含め総合的な政策を確立した上で、農民が自主的な判断で選択できるシステムでなければならないと考えていますが、大臣のお考えをお伺いいたします。
 さらに、食糧政策は消費者政策でもあり、農村政策でもあるべきなんです。それでこそ国民のための主要食糧政策と言えるのではないでしょうか。こうした観点から考えれば、政府案の米政策は、条件の不利な地域については米の耕作を放棄し、又は他の作物への転換を促進させるものです。一方、耕作条件の良い平場や意欲のある農民の間では競争が激しくなり、需給調整は政府の考えどおりには進まず、生産と消費の安定という法の目的は達成することはできないと私は考えます。また、価格の暴落や、農民の間で競争が強まり、WTOの関税引下げと相まって、米作農家を中心に深刻な問題を発生させることを想定されております。
 私ども民主党は、地方を疲弊させ、農民を苦しめ、国民に不安を抱かせる本改正案を断じて認めることはできません。
 そこで、私どもはこの政府案への対案を衆議院において発表いたしました。その内容は、国民に主要食糧を安定供給するために、その生産を行う農民の所得を補償することを基本としております。それは、あくまでも国民のための安全、安心できる食糧の安定供給であり、決して農民のための所得補償という性格のものではないことをまず強調しておきます。
 具体的には、WTO農業交渉でも日本が主張し、OECDでも評価されている農業に対する多面的機能として、国民、国土全体、そして地球に対して果たしている役割に着目した環境支払、いわゆる外部経済効果としての所得補償であります。これは中山間地等を含めてすべての耕作者に対応することにしております。また、国際的に市場動向に対応するために、EUやアメリカのように、一定規模の耕作者を対象として、その規模に着目した補償を設けております。同時に、安全、安心を望む消費者からのニーズに着目した有機栽培の支援のための支払を行うとともに、農民自らも災害や価格急落に対応するための収入保険制度の導入など、経営を安定させ、農業の持続を図るものに支援すべきものと考えております。
 そこで、まじめな、そして実直な農林大臣、私どもの考えについて御賛同いただけるものと考えておりますが、いかがでしょうか。業界や団体ではなく、農民への直接支払という所得補償を中心とした政策に反対ということであれば、なぜなのか、明確にお答えをいただきたいと思います。
 次に、政府案について質問いたします。
 政府案の食糧備蓄に対しては、極めて不十分と言わざるを得ません。食糧の備蓄については、なぜなのか、だれのためなのか、何のためにといった備蓄目的が明確になっていません。これでは、国民、農民の理解を得られるはずがありません。何といっても、国際的な水の問題や地球環境、飢餓、途上国の食糧事情などを踏まえたものとして考えなければなりません。
 私どもの考えた案の中では、どんな食糧事情になっても、国民に、そして何よりも国際社会、とりわけ途上国に迷惑を掛けないことを理念として備蓄を行うことを明確にしております。二度と平成五年のときのように我が国が国際的な米の買いあさりを行わないことを誓っているのであります。
 しかも、政府案では、備蓄方法として回転備蓄によっておりますが、この回転備蓄ですと、何よりも味が落ち、その味の悪くなったものを国民に食べさせるということは大変失礼でもあり、また食糧政策としても間違っております。生産者側から見ても、備蓄米が市場に出回ることで、米価下落の要因にもつながるため、需給調整の見通しが立たず、生産調整の判断を難しくしてしまいます。私どもの考え方は、棚上げ備蓄として、有事に備えて一部を味の落ちないもみ貯蔵として、国民においしい米を供給できることを重点としております。
 また、我が国は米以外の食糧を大量に輸入しなければならない現状にあります。常に国際社会の動向に左右されております。したがって、食糧の不足に悩んでいる国があれば、これまでの国際社会からの食糧供給に感謝し、この備蓄米を利用することで国際貢献をする必要があります。国内的にも国際的にも、食糧の有事にあっては、米以外に頼っていた輸入食糧やエネルギーへの代替として利用することは当然であり、先進国の我が国としては当然の行為と考えますが、棚上げ備蓄という方法について農水大臣はどのようにお考えでしょうか。お答えをいただきたいと思います。
 私どもの案に対して、その実行を担保する予算について懸念される方が随分おるようであります。しかし、予算は十二分にあると考えております。使い方の問題です。政府案では、米生産に関する予算の大幅な削減のようでありますが、私どもの案では、これまでの補助金や消費者負担、実需者による間接負担、公共事業として計上されている予算の凍結や削減など、これまでの農業関係予算の全面的な見直しで十分賄える金額であります。
 特に、農林水産関係の公共事業に対しては、無駄と言われているものが多く、これには国民的な世論も厳しいものがあります。しかも、この硬直した公共事業の予算が農業政策の転換に大きな障害となっております。農業用のムダ、間違いました、ダム、道路、港湾などの公共事業としての整備は、先進国では農業予算としてはほとんど計上されておりません。
 日本はWTOに規定されているいわゆる緑の政策として多額の予算を計上しております。しかし、農業基盤整備、すなわちインフラに幾ら投資しても国際競争には勝てません。日本農業の将来を描くことはできないのです。しかも、農林水産業の公共事業については、その予算が政官財の利権構造の温床になっていると国民から強く批判されております。これは農業政策の転換へのブレーキとなり、それは地方再生を根底から揺るがすものへとつながっているのであります。
 農業再生と地方振興を図るためにも、これまでの公共事業予算を農民への直接支払へ政策転換することが、国益にかない、国民にとって最良の選択と考えます。いま一度、まじめで実直な農水大臣に、農民への直接支払に対してお考えをお伺いいたします。
 最後に、私は、日本の再生は地方の復興と農業の再生しかないのではないかと考える一人であります。二十一世紀の我が国は、豊かで、すなわち心の豊かさを求められていると思います。そのために必要なのは、伝統と文化をはぐくんできた豊かで平和な村、里の再生、持続です。そこから生産される命の尊厳である食糧と農民の心が日本再生の原点となると思います。
 主要食糧の真摯な論議で、与野党を超えた、正に国民が求める日本再生につながる結果を強く願って、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣亀井善之君登壇、拍手〕
○国務大臣(亀井善之君) 信田議員の御質問にお答えをいたします。
 農業経験、御家族で農業と、こういう体験を生かしての六問の質問をちょうだいをいたしました。お答えをさせていただきたいと存じます。
 まず、農業の国際化対応として、農業者に直接支払う政策への転換をすべきではないかとのお尋ねでありました。
 御指摘のとおり、EUや米国の農業政策におきましては、直接支払の手法が導入されております。欧米諸国においては、担い手のシェアが高いなど、既に望ましい農業構造が確立されている現状にあると思います。我が国農業、特に水田農業の現状は、担い手の生産シェアが著しく低く、また需要と供給のミスマッチ等が大きな問題となっているところであります。諸外国とは異なる背景事情を有しており、政策手法だけをとらえて諸外国と同様の政策を導入するということにはならないと考えております。
 次に、国が食料の理念に基づき総合的な政策を確立した上で、米の需給調整を農業者の自主判断で選択できるようにすべきではないかとのお尋ねであります。
 政府としても、農業者、農業者団体が主体的判断に基づきまして需要に応じた生産に取り組むことを通じて需給調整が行われる体制を確立し、これによりまして自給率の向上等を図ることを目指しておるわけであります。そのためにも、需給調整対策、流通制度、関連施策等の改革を総合的に実施することが必要と考えております。特に、米の需給調整につきましては、平成二十年度までに農業者、農業者団体が主役となるシステムを構築するため、当面、客観的な需要予測に基づく生産目標数量の配分、生産調整実施者に対する適切なメリット措置等を講ずることとしておるわけであります。
 次に、所得補償を中心とした野党の御提案についてのお尋ねでありますが、我が国の水田農業については、需要に対応した生産体制の構築や規模拡大等の加速化が必要な状況の下で、野党提案のように関係補助金の整理により農業者の所得を直接補償するような措置を講じる場合には、現状の農業構造が固定化され構造改革の支障となるんではなかろうか、需給事情等を反映した主体的な経営努力を阻害する、このような問題があることから、産地づくり推進交付金と担い手経営安定対策と過剰米短期融資制度を一つの政策のパッケージとして改革を進めることが最も適切であると考えております。
 次に、棚上げ備蓄方式についてのお尋ねでありますが、米の備蓄につきましては、学識経験者、生産、消費及び流通の関係者によります備蓄運営研究会におきまして議論が行われてきたところであります。
 その結果、棚上げ備蓄については、不作等による備蓄放出の機会がない場合、援助、飼料用に処理せざるを得なくなり、結果的に多大な財政負担を要することに加え、買入れが数年に一度となれば、在庫更新時に生産の一時的な拡大が必要となり、生産調整規模の急激な変動をもたらすなどの問題が指摘されたところであります。
 このようなことから、備蓄運営につきましては、現在の回転備蓄により行うことが適切であると考えております。
 次に、公共事業予算を見直し、農業者への直接支払にすべきではないかとのお尋ねであります。
 農業農村整備事業は、その効果が食料の安定供給や多面的機能の発揮など多くの国民全般に及ぶことから、公共事業として実施しているものであります。
 今後とも、経営・生産対策等のソフト施策と密接に連携をしつつ、事業の効率的かつ効果的な推進を図ってまいりたいと、このように考えております。
 所得補償の導入の提案につきましては、先ほども述べましたとおり、現在の米をめぐる状況の下では、現状の農業構造を固定化する、需要に応じた生産を阻害する等の問題があると認識をいたしております。
 最後に、心豊かな日本の再生についてのお尋ねであります。
 農業と農村は、生命をはぐくみ、自然環境を保全する大きな役割を持っております。正に国の土台であると、このように認識をいたしております。農業と農村を健全な姿で維持発展させることが真に豊かで安定した国民生活を実現する基本であります。また、食や農業は、家族や文化、すなわち心の原点であるとともに、最近、都市住民のしゅんの農作物への思いや市民農園での農業体験を通じまして、農村に対する認識も新たになってきていると感じております。
 こうした基本認識に立ちまして、消費者の観点を重視しつつ、生産、消費双方が共存共栄できる社会、二十一世紀の食料・農業・農村づくりに全力を挙げてまいりたいと考えております。
 どうぞよろしくお願い申し上げます。(拍手)
○副議長(本岡昭次君) これにて質疑は終了いたしました。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後二時二十一分散会