第156回国会 法務委員会 第24号
平成十五年七月二十二日(火曜日)
   午前十時一分開会
    ─────────────
   委員の異動
 七月十八日
    辞任         補欠選任
     大仁田 厚君     藤井 基之君
     世耕 弘成君     片山虎之助君
     西銘順志郎君     野間  赳君
     脇  雅史君     佐々木知子君
     風間  昶君     浜四津敏子君
 七月二十二日
    辞任         補欠選任
     片山虎之助君     陣内 孝雄君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         魚住裕一郎君
    理 事
                荒井 正吾君
                市川 一朗君
                千葉 景子君
                荒木 清寛君
                井上 哲士君
    委 員
                岩井 國臣君
                柏村 武昭君
                佐々木知子君
                陣内 孝雄君
                中川 義雄君
                野間  赳君
                藤井 基之君
                江田 五月君
                鈴木  寛君
                角田 義一君
                浜四津敏子君
                平野 貞夫君
                福島 瑞穂君
   衆議院議員
       発議者      塩崎 恭久君
       発議者      太田 誠一君
       発議者      石井 啓一君
       修正案提出者   山花 郁夫君
   国務大臣
       法務大臣     森山 眞弓君
   副大臣
       法務副大臣    増田 敏男君
   大臣政務官
       法務大臣政務官  中野  清君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局民事局長
       兼最高裁判所事
       務総局行政局長  園尾 隆司君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        加藤 一宇君
   政府参考人
       法務省民事局長  房村 精一君
       厚生労働大臣官
       房審議官     青木  豊君
       厚生労働省雇用
       均等・児童家庭
       局長       岩田喜美枝君
       国土交通省総合
       政策局長     澤井 英一君
   参考人
       早稲田大学法学
       部教授      山野目章夫君
       日本弁護士連合
       会副会長     内田  武君
       UIゼンセン同
       盟政策局長    逢見 直人君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○商法及び株式会社の監査等に関する商法の特例
 に関する法律の一部を改正する法律案(衆議院
 提出)
○参考人の出席要求に関する件
○政府参考人の出席要求に関する件
○担保物権及び民事執行制度の改善のための民法
 等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院
 送付)

    ─────────────
○委員長(魚住裕一郎君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 去る十八日、風間昶君、大仁田厚君、世耕弘成君、脇雅史君及び西銘順志郎君が委員を辞任され、その補欠として浜四津敏子君、藤井基之君、片山虎之助君、佐々木知子君及び野間赳君が選任されました。
 また、本日、片山虎之助君が委員を辞任され、その補欠として陣内孝雄君が選任されました。
    ─────────────
○委員長(魚住裕一郎君) 商法及び株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本案に対する質疑は終局いたしておりますので、これより討論に入ります。
 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
○井上哲士君 日本共産党を代表して、商法等一部改正案に対する反対討論を行います。
 この間の商法改正は、商法の根本原則を変革するものでありながら、経済界の目先の意向に従い、議員立法という形で進められ、商法学者から異例の批判声明も出されました。
 そもそも、日本経済の基本構造を規定する重要な商法の改正を行うときは、当然に法制審議会において十分な議論を行い、慎重な検討を重ねるべきであります。それが、このように拙速に改正を進めることは断じて認められません。
 以下、反対理由を述べます。
 その第一は、本改正が、自己株取得方法の緩和により、債権者保護のための資本充実・維持の原則を一層形骸化し、株主平等の原則の例外を作るなど商法の原則を崩し、相場操縦、インサイダー取引のおそれを増大させるものだからであります。
 本法案審議のさなかに、自社株取得情報を知り得る立場にあった大手パソコンメーカーの社員が、当該情報に基づいてインサイダー取引をしていたと証券取引等監視委員会に告発されました。今回の改正で自己株取得が定款の授権による取締役会決議で可能になれば、こうしたインサイダー取引を助長することは明らかです。
 反対理由の第二は、中間配当限度額の計算方法の見直しが、株価対策を目的に極めて拙速に進められた二〇〇一年商法等改正案のミスを糊塗するものであり、法定準備金の取崩し額等を中間配当の財源にすることをできるようにするなど、資本充実・維持の原則を形骸化するものだからであります。
 以上、反対の理由を述べ、討論を終わります。
○福島瑞穂君 商法及び株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律の一部を改正する法律案について、社民党を代表して、反対の立場から討論を行います。
 主な理由は二点あります。
 まず第一に、自己株式の取得が商法の極めて重要な大原則である資本充実の原則の例外に当たるものであるからです。自己株式の取得について近時、商法の改正でどんどん緩和をされ、この資本充実の原則の立場から極めて問題点があります。
 第二に、取締役会の決議で決まることの問題点です。株主総会と取締役会と比較をすれば、取締役会はディスクロージャーが基本的に働かない会議です。インサイダー取引、株価操作の危険性も委員会の中で指摘をされました。今回の改正によってこのインサイダー取引、株価操作の危険性は増大すると考えております。
 金融庁の充実、インサイダー取引、株価操作の危険性を是正する、監視するシステムを作ってから後に商法改正が行われるのであればまだ一理ありますが、そのような体制がまだ極めて不十分な中での今回の改正案は、将来、問題を生じ得る危険性が極めて高いと考えます。
 よって、この改正案、法律案に関して反対の立場からの討論を行います。
○委員長(魚住裕一郎君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。
 これより採決に入ります。
 商法及び株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
○委員長(魚住裕一郎君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(魚住裕一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
○委員長(魚住裕一郎君) 参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 担保物権及び民事執行制度の改善のための民法等の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に早稲田大学法学部教授山野目章夫君、日本弁護士連合会副会長内田武君及びUIゼンセン同盟政策局長逢見直人君を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(魚住裕一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
○委員長(魚住裕一郎君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 担保物権及び民事執行制度の改善のための民法等の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に法務省民事局長房村精一君、厚生労働大臣官房審議官青木豊君、厚生労働省雇用均等・児童家庭局長岩田喜美枝君及び国土交通省総合政策局長澤井英一君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(魚住裕一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
○委員長(魚住裕一郎君) 担保物権及び民事執行制度の改善のための民法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 政府から趣旨説明を聴取いたします。森山法務大臣。
○国務大臣(森山眞弓君) 担保物権及び民事執行制度の改善のための民法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。
 抵当権等の担保物権の内容及びその実行手続については、社会経済情勢の変化への対応等の観点から早急に見直す必要があるとの指摘がされております。また、民事執行制度については、司法制度改革の一環としても、権利実現の実効性を確保する見地から強化する必要があるとの指摘がされております。
 この法律案は、これらの指摘にこたえるため、民法、民事執行法等の見直しを行うものであります。
 この法律案の要点を申し上げますと、第一は、抵当権と利用権との調整に関する民法の規律の見直しであります。
 現行の短期賃貸借制度については、執行妨害に濫用されており、賃借人保護の制度としても合理的に機能していないとの指摘がされておりますことから、これを廃止する一方、保護すべき賃借人に合理的な範囲で確実な保護を与えるため、抵当権者に対抗することができない建物賃借人に対して三か月間明渡しを猶予する制度及び抵当権者の同意により賃貸借に対抗力を与える制度を創設しております。
 第二は、民事執行法上の保全処分の強化であります。
 占有屋等による執行妨害に対処するための保全処分について、不動産の価格減少の程度が著しい場合でなくても発令することができるようにするなど、その要件を緩和するとともに、保全処分の相手方である不動産の占有者を特定することが困難である場合には相手方を特定しないで発令することができることとして、占有者が次々に入れ替わることなどによる執行妨害にも対処することができるようにしております。
 第三は、強制執行の実効性の向上のための新たな方策であります。
 まず、間接強制の適用範囲を拡張し、直接強制又は代替執行の方法によることができる債務についても間接強制の方法による強制執行を認めることとしております。また、金銭債権についての債務名義を有する債権者等の申立てにより、裁判所が債務者に対し財産の開示を命ずる手続を創設しております。さらに、扶養義務等に係る定期金債権に基づく強制執行においては、弁済期の到来していない将来分の債権についても、一括して債務者の将来の収入に対する差押えをすることができる制度を導入しております。
 以上がこの法律案の趣旨でございます。
 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに可決くださいますようお願いいたします。
○委員長(魚住裕一郎君) この際、本案の衆議院における修正部分について、修正案提出者衆議院議員山花郁夫君から説明を聴取いたします。衆議院議員山花郁夫君。
○衆議院議員(山花郁夫君) ただいま議題となりました法律案に対する衆議院における修正部分について、提出者を代表して、その趣旨及び概要を御説明いたします。
 原案では、現行の短期賃貸借制度を廃止する一方、抵当権者に対抗することができない建物賃借人に対して三か月間明渡しを猶予する制度を創設しておりますところ、競売による建物の売却によって突然に生活、営業の本拠からの退去を求められることにより建物賃借人が被る不利益をより少なくするため、明渡し猶予の期間を六か月に改めるとともに、これに伴う所要の修正を行うものであります。
 以上が本法律案に対する衆議院における修正部分の趣旨及び概要であります。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
○委員長(魚住裕一郎君) 以上で趣旨説明及び衆議院における修正部分の説明の聴取は終わりました。
 これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○千葉景子君 おはようございます。民主党・新緑風会の千葉景子でございます。
 今日は、担保・執行法にかかわる質疑をさせていただきたいと思いますが、冒頭、一言だけ意見を述べさせていただきたいと思います。
 と申しますのは、この法務委員会も本当に、それぞれの委員の皆さんも含めまして、休みなく精力的な審議を続けておりますが、いかにせん今回のこの担保・執行法に関しましても、今、趣旨の御説明をいただきまして直ちに質疑を始めなければいけない、こういう異例の状況でございます。本来であれば、しっかりとした趣旨をお聴きをした上で準備をさせていただき、そして中身の濃い議論を重ね、後から悔いの残らぬような、そういう議論をすべきところではないかというふうに思っております。
 これも、一つは、今、大変大きな問題になっております司法制度改革、これが急ピッチで進められているということも大きな問題であろうと思います。民主党は、この司法制度改革についても積極的に、そして本当の意味で市民が主人公であるための司法、この確立に向けて先頭に立たせていただきたいと、こう考えているところでございまして、そういう意味で、法務委員会での議論を決しておろそかにしたいと思っているものでは決してございません。
 ただ、今回の法案は、その司法制度改革にも関連はいたしますが、これは司法制度改革本部ではなくして法務省からの取りまとめの法案ということにもなり、今後これらの問題が、もう本当に今大きな時代の転換ということも含めて、大変な状況になっていくのではないかと思いますし、そしてこの委員会でも、そして国会全体としても、刑務所にかかわる行刑問題なども重要課題として一貫して議論がなされてまいりました。
 そういう状況でございますので、やはり今後も、司法制度改革、そしてそれぞれの各重要な論点を含む法案、この委員会のみならず、やはり市民にとっても、こんな法律ができたのかと、自分の暮らしにこんな影響がある法案がもうこんな急ぎ成立をしていたのかというようなことになりませんように、やっぱりふだんから私どもにもいろんな情報を提供をいただきまして、やはりきちっとした議論の積み重ねが本当にできますように、是非それを私は願うところでございます。
 この法案につきましても、そういう観点で、私もできるだけ多くの皆さんが心配をなさるような部分について中心に議論をさせていただきたいというふうに思っておりますけれども、本来であれば、論点は相当な部分に上りますし、そしてかなり抜本的な制度の改革ということにもなりますので、逐条的にも詰めていかなければいけない、本来、法案であろうかというふうに思っております。
 そういう視点を持っているということをまず前提にさせていただきたいというふうに思いますので、今日、議論をいたします部分だけで十分だと必ずしも思っているわけではございませんので、そこを是非御承知おきをいただきたいというふうに思っております。
 ちょっと前提を置かせていただきました。それでは、この法案の中身に入らせていただきたいというふうに思います。
 まず、第一点、今日は私の大きな論点といたしましては、一つは、担保物権にかかわる問題で、先取特権、特に働いている皆さん、労働債権にかかわる部分が大きな一点。それから、これもう一つ、短期賃貸借の廃止。これは本当に今の賃貸借関係に大きな影響を及ぼすということでもございますので、ここをもう一点。そして、少額定期給付債権の履行確保にかかわる点。この三点を大きな問題点にしながら、多少それにかかわるあとの論点も含めて質疑をさせていただきます。
 まず、担保物権の先取特権についてお尋ねをいたしますが、今回の改正で、いわゆる民法上、雇人の給料の先取特権と言われておりましたこの先取特権が拡大をされることになりました。これで実体法上は商法の規定とほぼ統一されたということになるのかなというふうに思っておりますけれども、今回の法改正、これまでも大分、働いている皆さんの、特にやっぱり労働債権にかかわるところは是非拡大や、あるいは見直しをという声も強かった部分でございます。
 今回の改正のまず趣旨につきまして、雇人給料の先取特権の拡大の趣旨につきまして御説明をいただきたいと思います。
○政府参考人(房村精一君) ただいまの御質問にありましたように、労働債権の先取特権による保護につきましては、現在、民法の三百八条と商法の二百九十五条が規定しておりますが、その内容がいささか違っております。
 まず、商法の関係ですが、これは株式会社の使用人の債権、労働債権を保護するということでございまして、保護の範囲といたしましては、「会社ト使用人トノ間ノ雇傭関係ニ基キ生ジタル債権」と、こういう具合に規定されております。これに対しまして、民法の先取特権による保護は、「雇人カ受クヘキ最後ノ六个月間の給料」と、こうなっております。その結果、まず対象が、商法が株式会社の使用人に限られるのに対して、民法はそれ以外の法人あるいはその他の会社の使用人ということになります。また、保護される対象が、民法の、雇人が受くべき給料というのは、雇用契約に基づく給料債権と解されておりますが、商法の、雇用関係に基づき生じたる債権の中には、雇用以外の請負あるいは委任のような契約形態を取っても実質的に雇用関係と認められる場合には含まれると、その範囲が広く解されております。また、その範囲も、民法が最後の六か月分と、こうなっておりますのに対し、商法ではその限定もございませんし、また給料債権以外の、例えば身元保証金の返還、こういった債権も入ると、こういうことで商法の方がその範囲が広くなっております。
 少なくとも、現時点においては、債務者の方の企業形態によりましてこのような保護の範囲の差を設けるということは合理的ではないと思われますので、今回の担保法制の見直しに当たりまして、狭い民法による先取特権の保護の範囲を広い商法の範囲に一致させる、こういう考え方から今回の改正をお願いしたわけでございます。
○千葉景子君 今、御説明をいただきましたように、今回の法改正によりまして労働債権の保護の範囲というのが拡大をされて、やっぱり多くの働く皆さんにとっては一定の前進であろうというふうに思っております。
 ただ、一体これで本当に十分なんだろうかという議論が残ります。これまでも労働債権につきましては、抵当権それから租税債権との関係で、やっぱり働いてその対価として生活の糧にしているものであるので、それを先に国が租税という形で持っていっちゃう、ようやくその残りで働いた対価が保護されるというのはいかにもひどいではないかと、こういう意見もございました。私も、やっぱり国がそういう働いている皆さんの生活の部分を尊重するという姿勢があってもいいのではないかというふうに思っております。
 この労働債権については、法制審議会の中間試案などでも、一部の担保権に優先させるような制度を採用すべきでないかというような意見もございました。残念ながら、今回は一定の前進ではございますけれども、そういう議論というか、そこまでは法案としては取りまとめがされなかったということですが、この点についてはどんなふうに法務省としてはお考えになっておられるのか、お聞かせください。
○政府参考人(房村精一君) 御指摘のように、労働債権、労働者にとって生活の基盤を成すものでありますので、その保護を図る必要があるということは一般に広く認められているところでございます。そのようなことから、この担保・執行法制の見直しの中間試案におきましても、労働債権の一定の範囲について、何らの公示手段も要さずに最優先の効力を認め、特定の財産の上に存する抵当権等の担保権にも優先するものとすべきであると、こういう意見があるという意見の紹介をさせていただいたところでございます。
 ただ、この点につきましては、そういう保護を与えますと、労働債権の保護としては非常に強いものとなりますが、逆に申し上げると、登記をして対抗力を有する抵当権を持っているにもかかわらず、その後、発生した労働債権に優先されてしまうということで抵当権者が不測の損害を被るおそれもある、あるいは、それをおもんぱかって抵当権者が融資をする際に十分な融資をしない、与信額を引き下げてしまうということも懸念される、そういう御指摘もあるところでございます。
 中間試案のこの意見の紹介に対しまして寄せられた意見といたしましては、もちろん労働団体からは賛成という御意見をいただいておりますが、それ以外の御意見は、やはり圧倒的にそういった懸念を示す意見が多かった。
 こういうことから、法制審議会におけるその後の審議においても、やはりそのような何らの公示手段を要さずに後発の労働債権が優先するというのは無理だろうということから、今回、採用するには至らなかったわけでございます。
 また、公租公課との関係につきましても、やはり公租公課の実体法上の優先権はそれぞれの法律で決まっているところでありますが、公租公課が優先債権とされております理由は、国家等の財政の基盤を成すものであり、非常に公益性が高く、公平かつ確実に徴収されるべきものであると、こういうことから、原則として商法上の債権に優先するとされていると。そういう事情を考えますと、その順番を変更するということについては相当慎重な検討が必要ではないかというようなことから、今回は、先ほど申し上げた点に限って改正をするということになったわけでございます。
○千葉景子君 御説明と、確かにいろんな理由あるいは御意見があることは私も承知をいたしております。しかし、法律を作る、あるいは制度を作るということは、やっぱり一つの言わば理念、あるいはどこに視点を置いて何を保護し、そして、いくのかということがきちっとしていれば、やっぱり今御指摘がありましたような問題があることは承知をいたしますが、そこを、逆に言えば、どう懸念を少しでも緩和していくのかという知恵も出てくるわけでして、これまでの、何というんでしょうね、問題点があるからできないのだという姿勢は、やっぱり私は非常に消極的な姿勢ではないだろうかなというふうに思います。
 この問題は、国際的にはILO条約、特にILO百七十三号条約では、労働債権は租税とかあるいは社会保険料債権より高い順位を与えるべしと、こういう国際的な条約がございます。日本は、残念ながら、今御説明をいただいたような法的な状況でございますので、この百七十三号条約の批准ということには至っておりません。これもやはり多くの皆さんから、この百七十三号条約の批准を求める声、そしてそれをきちっと念頭に置いた法整備ということが求められているわけでございます。
 そういうことでお聞きをいたしますが、厚生労働省に今日は来ていただいておりますが、このILO百七十三号条約の批准、そしてやっぱり労働者の救済、保護、そういうことを主たる仕事にされておられる労働省ですから、この点について一体どんな見解や見通しをお持ちであるのか、お聞かせをいただきたいというふうに思います。
○政府参考人(青木豊君) ILO百七十三号条約、今、委員御指摘したとおり、労働債権の保護について定めたものであります。平成四年、一九九二年に採択をされております。
 これは、正にお話の中で御指摘になりましたように、この条約の中では第二部と第三部と分かれておりますが、第二部においては労働債権の保護について、我が国における各種債権の優先順位というのは国税徴収法とか民法等の一般実体法により定めておるところでありますけれども、この条約が二部において求めておりますのは、三か月以上の労働債権の優先順位を国税等の特権を付与された他の大部分の債権より高いものとするということになっております。ということで、大変な労働債権を高い順位の保護にしているというところでございます。
 厚生労働省といたしましては、賃金を始めとする労働債権は、労働者及びその家族の方々の糧である、生活の糧であるということでありますことから、労働債権の保護ということは大変重要であるというふうに認識しております。
 法制審議会で破産法等、倒産法制の見直しの一環としてこの優先順位の在り方について議論がなされるということでありましたので、平成十一年から研究会を開催しまして報告書を取りまとめ、その法制審でも、研究会の報告なども御紹介をしながら法制審議会における対応も行ってきたところでありますが、今回の改正に当たりましては、先ほどからのお話もありますように、なかなか、我が国の国内法制との整合性との観点からILO条約の批准がなかなか難しいということでありますが、しかし厚生労働省といたしましては、今後とも、労働債権を保護するという観点から、このILO百七十三号条約の批准に向けた環境整備というものを含めまして、適切な対応に努めていきたいというふうに思っておるところであります。
○千葉景子君 難しい難しいと言っていたのではまだ前へ進むというわけにはいかないので、やっぱり一つの大きな方向性を持ちながら、それをどうやっぱり前進させるために、何が問題で何を整備をしなきゃいけないのかということをきちっと整理しながら、やっぱりこれは積極的に進めていただきたいというふうに思います。
 ちょっとこれはお知らせしていなかったかもしれませんが、大臣、大臣も労働法制等にも大変もう造詣が深い大臣でいらっしゃいます。こういう問題につきまして、是非、法務省そして厚生労働省、大臣同士でも積極的に協議をいただいて、やはり多くの皆さんが期待をする、そういう展望を見せていただきたいというふうに願っておりますが、ちょっと御感想ございましたら、お聞かせいただきたいと思います。
○国務大臣(森山眞弓君) おっしゃる気持ちはよく分かりますし、私も同感の部分もたくさんございますけれども、いざ正式に批准ということになりますと、日本の場合は常に日本の国内法との整合性ということを非常に重視いたしておりますので、その部分について問題が解決しないと、残念ながら批准という運びにはならないということは私も承知しているところでございます。
 多くの働く人々が期待しているとおっしゃいましたが、正にそうかと思いますので、そのようなことで、今後も関係各省と相談しながら、できるだけ努力していきたいというふうに思います。
○千葉景子君 それでは次に、少し短期賃貸借にかかわる部分についてお尋ねをしたいと思っております。
 現在の我が国の賃貸借、特に建物賃貸借というのはどういう状況かと私も考えてみますと、普通、民間の賃貸のマンションとかアパート、それから賃貸のオフィスビルとかテナントビル、こういうものの物件はまずほとんど抵当権が設定されているというケースが多いというふうに思います。最初から借金もせずに、あるいは借入もなくこういう物件を建築するということはもう到底今どき考えられませんので、ほとんどに抵当権が付けられていると、設定されていると言っても過言ではないというふうに思っております。
 そういう物件に、今度は大多数の市民あるいは企業を営む皆さんがそこに賃借りをするわけです。そういう意味では、生活の基盤あるいは事業活動などの基盤、こういうものが、今申し上げたような抵当権がほとんど設定されている物件の上に存在をしているという実態ではないかというふうに思います。そして、更に申し上げますと、その大部分は二年とか、長くても三年程度の契約期間、それを更新をしていくということが通例でございまして、そういう意味では正に短期賃貸借として成り立っているということではないかというふうに思います。
 そうなりますと、今回の改正、その是非もありましょうけれども、今回の改正というのは、やっぱり抵当権に後れる賃貸借がこれまでと異なりまして一律に対抗できないという形に改正されるわけですので、これまでそういう物件の上でもやっぱり安心して生活を、あるいは事業を継続をしていたという、その根底をある意味では大きく変更すると、大きく変えていくということにもなろうかというふうに思います。
 そういう意味では、今日、冒頭に申し上げましたように、本当にこの議論がきちっと不安とかあるいは問題点等、あるいは今後の賃貸借の在り方等々を含めて本来は検討をしておきませんと、施行をされたと、ああ、こんなことだったのか、こういう混乱とかあるいはいろいろな問題を生ぜしめることになるのではないかと、そういう危惧はやはり私も否めないところでございます。
 やっぱり賃貸借のこれまでの市場の大体通常の形態、こういうものに大きな混乱が生ずるのではないかと、こういう御意見もありますし、それからやっぱり一人一人の賃借り人ですね、特に生活の基盤としている、そういう皆さんにとっては本当に不安が増大をする。何か、すぐやっぱり生活の基盤が不安定になるのではないかと、こういう声は随分私も聞かせていただいているところでもございまして、そういう意味で、是非この短期賃貸借については十分なやはりこれからの検証、あるいはこの制度のもたらす問題についてのいろんな環境整備、こういうものも併せて考えていく必要があるのではないかというふうに思います。
 そこで、こういう大きな変更を加えるということになりましたが、その理由としては、言わば占有屋と言われるような、そういうものを何とか解消する、排除していくということが大きなこの法改正の理由になっております。
 そこで、どうなんでしょうか、この短期賃貸借制度のそういう弊害ですね、正常なものを覆してでもやっぱり変えなければいけないと、そういう実情に本当にあるんだろうか。ほとんどはやっぱり正常なというか、正当なといいますかね、やっぱり生活の基盤として賃貸借を、契約を活用しているということだと思うんです。そういう意味で、そんなに、こういう形で法律を変えなければいけないほどの弊害ということが現状としてあるのかどうか、その辺のちょっと実情をどういうふうに把握、それから認識されているのか、お聞かせいただきたいと思います。
○政府参考人(房村精一君) ただいまの御質問にもありましたように、この短期賃貸借、これは立法当初からその濫用による弊害が指摘されていたところでございます。
 元来、抵当権は、その抵当権が設定された時点での対象物の交換価値を把握するということになりますので、その後の賃借権の設定がありましても、これは対抗できないというのが原則でございます。ただ、民法は、ごく短期間のものであれば抵当権者に対する負担も小さい、あるいは競落人の負担も小さいということから、この三年以内の、建物についてでございますが、ごく短期間の賃貸借については対抗できるものと扱うという特例を設けたわけでございますが、もちろんこれによって保護される正当な賃貸借も多いことは間違いないと思いますが、しかし同時に、これを濫用いたしまして、悪化した段階で所有者と通謀して短期賃貸借を設定する、あるいは所有者がいなくなったすきに勝手に入り込んでそういったものを偽造、書類を偽造して主張すると、こういうような形で短期賃貸借を主張いたしまして、自己の占有権原を正当化し、そのことによりまして競売等の手続の円滑な執行を妨げる、こういうものが設定されますと当然その競売物件の価格が低下いたしますので、それを利用して安く競落することを目指す、あるいは占有権原を主張いたしまして立ち退き料を要求する、こういうような執行妨害の形態が非常に多く見られるわけでございます。
 警察等も現在この執行妨害対策には力を入れておりまして相当数を検挙していただいておりますが、警察の調べでは、その大半においてこの短期賃貸借制度がその手段として悪用されていると、こういう実態がございます。
 もちろん、裁判所の方も、この仮装の賃貸借を何とか適正な形で処理したいということで努力をされておりまして、非常に高額の敷金が設定されている、あるいは賃料全額が前払になっている、譲渡、賃貸の、転貸の特約がされていると、こういうような通常のものに比べて異常な条件が付いているようなものにつきましては、これは仮装である、あるいは執行妨害目的であるということを積極的に認定をして引受けしないものと扱うというような対応策も講じておりますが、そういう対応策が講じられますと、今度は濫用する方も、そのぎりぎりに裁判所が認定できないような範囲で敷金等を設定するとか、そういう、手口がどんどん巧妙になってきております。
 そういうことから、ある意味ではイタチごっこでありまして、一生懸命対策を講ずれば、またその裏をかいてこの短期賃貸借制度を悪用していくと、こういう形が見られるわけでございます。
 御指摘のように、もちろん正当な短期賃貸借というものもたくさんあるわけでございますが、一番の問題は、それと濫用されているものを完全にきちっと見分けられるのかと。これが見分けられれば、もちろん正当なものは保護し、異常なものを排除するということでいいわけですが、結局、その境というのは常にあいまいでありまして、どうしてもなかなか難しい問題が残ってしまう。そういうことから、従来からこの執行に関与する者の間では、何とかこの短期賃貸借の問題を解決してほしいと、これを解決しなくては執行妨害というのを減少させるのは難しいと、こういうことが言われていたわけでございます。
 それともう一つは、今度は、いわゆる賃借人の保護として現在の短期賃貸借制度が合理的なものかという問題もあるわけでございます。これは、先ほど申し上げましたように、元々、抵当権者に本来的に対抗できないものを、ごく短期間に限ってその保護を与えようと、こう考えたものですから、必ずしも長期間使うことは想定しておりませんので、例えば五年というような賃借権の設定を行いますと、これは全く保護されないということになります。それから、三年内の短期の賃貸借でございましても、この三年の期間の満了が競売の手続の途中である、要するに競売開始決定がされてから競落されるまでの間にその賃貸借の期間が満了してしまいますと、その段階で更新は認められませんので、全く保護を受けない、対抗できないことになってしまいます。そういう非常に偶然的な事情で保護が認められたり認められなかったりと、こういうことになりますので、現状で申し上げても、相当数がそのような期間満了によって保護の範囲外になってしまう。したがいまして、そういう人たちにとっては、競落をされますと直ちに明け渡さなければなりませんし、敷金についても従前の貸主に請求するしかないと、こういう形になっております。
 そのような非常に濫用されるという、されやすいということと、賃借人の保護にとっても必ずしも合理的な制度ではないという、この二点を考え合わせまして、今回、思い切って短期賃貸借は廃止すると。ただ、その代わり、保護すべきものは保護しなければなりませんので、明渡し猶予期間を一律に認める、あるいは、新たに抵当権設定後、その抵当権者の同意を得て賃貸借の登記をすれば抵当権者に対抗できると、こういう新たな制度を作ってその賃借権者の保護を図ると、こういう形を考えたわけでございます。
○千葉景子君 今、お話がございましたように、確かに、いわゆる占有屋、不当なものと、濫用と、そして正当なものとの、なかなかその区別というのは付きにくいと、これもあるかと思います。
 それと、言わば賃貸借契約の在り方。一定の短期の賃貸借を保護をするというような法制を取ってきたわけですけれども、本当にそういうことが今の実情に合うのかどうかということも含めて、本来であればこれは賃貸借契約の在り方というんでしょうかね、それをやっぱり本当はもっと詰めて議論をしておかないといけないのかなという感じがしております。今回はちょっとそこまで議論を詰めることができませんが、是非そういう視点も今後も引き続き念頭に置きながら制度の運用などをしていかなければいけないなというふうに思っております。
 ところで、この法案、衆議院の方で明渡し猶予期間を延長する修正がなされております。この修正の趣旨について、修正の提案者からちょっと理由を御説明いただきたいと思います。
○衆議院議員(山花郁夫君) 原案では、抵当権者に対抗することができない賃貸借に基づく抵当建物の占有者に対し、建物の競売による売却のときから三か月間は建物を明け渡さなくてもよいこととしております。これは、競売による建物の売却によって、突然に生活であるとか営業の本拠から退去を求められることによって賃借人が被る不利益を避けるためなんだろうと推察をされます。
 ただ、今、千葉委員からも御指摘がございましたように、価値権と利用権の調和ということで、どの辺で調整をするかというのは大変難しい問題でありまして、普通、マンションなんかは二年間ぐらいで契約するじゃないかという御指摘については、個人的には、ああ、なるほどと思うところもあるんですが、こうした、合意ができましたのは六か月というところが衆議院側のところでございます。
 と申しますのも、衆議院で参考人の質疑などを行ったときに、確かに健常者であるとか若年であれば三か月ぐらいあれば引っ越しの準備をしたりとか、そういった転居先を求めたりとかいうことは十分可能なのかなという反面、お年寄りであるとか、あるいは特にシングルペアレントの方、子供を育てながら離婚をされているケースであるとか、当初より法律婚にない方であるとか、そういったシングルペアレントの方などでは、実際、保証人を求められて、よもや別れた夫の方を保証人に立てるわけにもいきませんし、お父さん、お母さんを保証人に立てると、今度は、この人はちゃんと収入あるのかというようなことを聞かれて、なかなか家を、転居先を見付けるのも容易なことではないというようなお話も伺いまして、そうであるとすると、生活の本拠から退去を求められることによって賃借人が被る不利益を避けるという趣旨を全うするためには、猶予の期間を三か月ということではいささか不十分ではないかということで、これを六か月と修正することによって、建物、競売建物の賃借人が被る不利益をより少なくすべきであると考えたためであります。
 ただ、一方、価値権の方も無視することはできませんが、明渡し猶予期間中は、競売建物を買い受けた者はその建物を自ら使用することができないこととなります。ただ、六か月という程度であれば、競売物件を買い受けようとする者の意欲減退によって円滑な売却が阻害されるという問題も生ずるおそれが少ないものと考えまして、したがいまして修正案の方では、明渡し猶予の期間を買受人の買受けのときから六か月としたものでございます。
○千葉景子君 今、修正の趣旨が御説明をされました。先ほどから申し上げますように、やっぱりこれだけ大きな抜本的な制度の変更が加えられるというときに、やっぱりいろいろな意見を聞き、そして議論を積み重ねることによりまして、やっぱり一定の、お互いここならという納得点みたいなものというのも、衆議院でのこのような修正で見られるように出てくるわけですよね。そういう意味では、やっぱり議論を積み重ねたり、あるいはいろんな多角的な意見を聞くということが大変大事なんではないかなというふうに思っております。
 そういう意味で、最初は三か月ということだったんですが、本当にこれは十分な、こなした上で三か月というのが出されたのかなと、いささか疑問を残すところですけれども、やはり是非こういう、更に前進できるような議論というのがこれからも必要だろうというふうに思います。
 これ、私もちょっと、なるほどなと思ったんですけれども、この明渡し猶予期間、これ、今度は明渡し猶予期間ということになりますので、賃借り人とそれから競落人との間というのは、何というんでしょうね、正当な占有権原というか、賃貸借契約が継続するわけではないんですね。言わば、何ともはや、確かに猶予期間なんだというだけですので、この間が結局、不当利得のような法律関係になるということでございます。
 それで、どうもそこを、何というんでしょうね、整理をするために、衆議院の方でもまた更に六か月に延長したということとの関係で三百九十五条の二項というのを修正で新たに新設をしたということになるんですけれども、これはどういう意味を持つんでしょうか、御説明をお願いします。
○衆議院議員(山花郁夫君) 御指摘がございました三百九十五条第二項を新設する趣旨でございますが、御指摘がありましたように、明渡し猶予期間というのは、これは本当に明渡しを猶予する期間ということであって、賃貸借契約が継続しているということではありません。したがって、建物を使用している者は、建物について賃借権その他の占有権原を有することにはなりませんから、その猶予期間の満了まで明渡しをしないことが許されるというにとどまるものでございます。
 そして、その間、占有者は、明渡し猶予により無償で建物を使用するということができることになるわけではありませんで、建物所有者となりました買受人に対して、建物の使用の対価ということで賃料に相当するであろう額の不当利得返還義務を負うということになります。賃料相当額というのは、これは推定でありまして、実際の不当利得に当たる額が幾らになるかというのはまた具体的事情に照らして決せられるものだと思います。
 建物使用者が明渡し猶予期間中の使用の対価を買受人から請求されても支払わないというケースも出てくるかと思いますけれども、こうした場合に六か月の期間が満了するまで建物の使用を許すとすることは、建物所有者、買受人になりますけれども、こちらの権利をこの場合は不当に害するということになるんであると考えられます。
 そこで、修正案にございますように、民法三百九十五条に第二項を加えまして、買受人が建物使用者に対して相当の期間を定めて一月分以上の使用の対価の支払を催告をしたにもかかわらず、その期間内に建物の使用者がその支払をしない、こういった場合には、その期間の経過後は買受人は建物使用者に対して建物の引渡しを求めることができる、こういった手当てをしたものでございます。
○千葉景子君 ありがとうございました。
 時間が本当に限られておりまして、本当、これで、これだけでこの法律を、私も議論を私自身として終えちゃっていいのかなと本当に思うんですけれども、時間でございますので大臣に最後にお聞きをしたいんですけれども、今回の、少額定期給付債務の履行の確保が認められることになりまして、特に養育費の支払ということについて一定の本当にこれは前進であろうというふうに私も思っております。
 ただ、正直申し上げまして、本当にこれだけでこれまで御苦労なさっていた養育費を何とか確保しようという方に十分期待にこたえられるかなと思いますと、まだまだこの先があろうかというふうに思います。外国の法制などでも、国なり行政が立替えをしながら、それをまた相手方から償却をしていくというような制度があったり、いろいろこの養育費の支払確保には知恵を絞っているということもございます。
 大臣、いかがでしょうか。今回、前進であることは私も大変うれしく思っているところですけれども、今後もやっぱり、大臣も多分関心をお持ちの部分ではなかろうかというふうに思いますので、養育費の支払の確保などにつきまして更なる法整備などに向けて是非イニシアチブを発揮していただきたいというふうに思いますが、大臣の御見解をお伺いをして、終わりたいというふうに思います。
○国務大臣(森山眞弓君) 養育費の支払の確保というのは非常に私どもも多大な関心を持っておりまして、かねてから改善が必要だということを度々いろんな機会に話してきたところでございます。このたび、本法律案によりまして養育費等の履行確保のための民事執行手続の改善が実現するということは、私としても大変うれしく思っているところでございます。
 もっとも、養育費の支払の確保の方法につきましては外国の法制にも様々なものがあるようでございますし、これらを参考といたしまして、他の省庁におきまして更に検討が行われる際には、法務省におきましても民事基本法制を所管する立場からできる限り協力をしてまいりたいと考える次第でございます。これが改善の第一歩だというふうに思いまして、今後とも関心を持ってやっていきたいと考えています。
○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 担保・執行法制について質問しますが、大変法案内容は多岐にわたっておりまして、しかも国民の権利に大変大きな影響を及ぼす法案であります。与党からは今日にも採決というようなお話もありましたけれども、その中身から考え、そして本委員会の国民に対する責務から考えますととんでもない話でありまして、十分な質疑を最初に求めておきます。
 多岐にわたる中で最も重大なのが短期賃貸借制度の廃止です。全国四千四百万世帯のうち、民間借家が千二百万世帯、うち九百二十八万世帯が集合住宅や賃貸マンションに住んでおります。借家住まいの約七八%、国民の約二一%が賃貸マンションに居住していると推計をされます。この短期賃貸借制度の廃止は、こうした賃貸マンション居住者を始め、賃借人の生活基盤に大きな影響を与えるおそれがあります。
 まず、大臣にお聞きします。これ、通告していないんですが、そもそも政府の政策決定の在り方として、国民が安全に安心して住める、住み続けることができると、この観点から制度設計を行うことが非常に重要だと思うんですが、大臣はこの重要性についてはどのような認識をされているでしょうか。
○国務大臣(森山眞弓君) 国民が安全で安心して暮らせる社会というのは理想、我々が理想としているところでありまして、そのような社会が確保されるということが政治の目的であろうというふうに思います。
○井上哲士君 八〇年代の前半から急増した賃貸マンションの建設は、大半は住宅金融公庫などの公的資金の融資を受けたものです。そして、バブル時期になりますと、民間の金融機関が土地の高度利用と投資を目的に大規模な不動産投資を行って賃貸マンション建設を更に急増をさせました。これらの建物は、完成した直後に抵当権が設定をされ、その後、賃貸契約により賃借権が設定をされると。これらの賃貸マンションに居住する善良な賃借人が、この改正案によって安心して住み続けることができなくなるんじゃないかと。どのような影響を受けると大臣はお考えでしょうか。
○国務大臣(森山眞弓君) 現行の短期賃貸借制度では、賃借人の受ける保護の有無及び内容が、賃貸借契約の期間の満了・更新の時期と競売による差押えの時期との先後、競売手続に要する時間の長短等の偶然の事情に左右されておりまして、賃借人にとって一定の保護を確実に期待できる制度とはなっておりません。
 そこで、この法律案では、現行の短期賃貸借制度は廃止する一方で、保護すべき賃借人には合理的な範囲で確実に保護を与えるという観点から、建物賃借人に対する明渡し猶予制度及び抵当権者の同意により賃貸借に対抗力を与える制度を創設するということでございます。
 建物賃借人に対する明渡し猶予制度によりまして、正常に賃借していた者は、競売手続中に賃借期間が満了しても売却から三か月、修正案によりまして六か月ということを言っていただいていますが、は建物の明渡しを猶予されることになるわけでございます。また、抵当権者の同意による賃貸借に対抗力を与える制度の要件を満たす場合には、売却後も常に賃貸借の存続が認められるということになります。
 したがいまして、この法律案は、現行法と比べまして正常な賃借人をより合理的な枠組みで保護するものであるというふうに私は考えております。
○井上哲士君 より合理的に保護される、確実に保護されるというお話もありました。
 しかし、確実に保護が後退される人が出てくるわけですね、たくさん。確かに、短期賃貸借は賃貸借契約と競売開始決定の時期によって権利保護に大きな差がある、これ自体は問題です。しかし、この問題は、この制度を廃止するのではなくて、むしろ賃借人の居住を安定的にする見地からすると、フランスとかドイツのように抵当権に後れる賃借権の保護を更に徹底する、こういう方向でこそ改善をすべきだと思うんですけれども、その点はいかがでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) 御指摘のように、現在、賃借物件のほとんどについて抵当権が付いておりますので、その抵当権と抵当権の付いている物件に対する利用権、これの調整というのは検討課題だろうと思います。
 現行の短期賃貸借制度が必ずしも合理的なものでないというのは先ほど大臣が申し上げたとおりでございますが、それを見直す場合に、御指摘のように、抵当権設定後の賃貸借を一律に保護する、こういう考え方もあり得るだろうと思います。
 ただ、これは法制審議会でも議論されましたが、現在の日本における執行妨害の実情を見ておりますと、抵当権設定後に設定された賃貸借に一律に抵当権に優先する効力を与えるということは、これは現在の短期賃貸借制度ですらこれだけ執行妨害に利用されている、そういう指摘がいろいろなところでされているわけでございますので、これを一律に、例えば長期間、十年、二十年の賃貸借でも優先するんだと、こういうことになりますと、どのような執行妨害の濫用があり得るかということを考えますと、これは日本で採用するのは難しいのではないかと。そのようなその後の賃貸借の設定によって損害を被るということを考えますと、抵当権者としては与信額を相当大幅に引き下げるということになりかねませんので、そういうことを考えますと、無条件に、無条件にといいますか、抵当権設定後の賃貸借に一律に優先する地位を与えるというのは難しいだろうと、こういうことから、しかしながら同時に、抵当権設定されたものについても安心して利用できる制度を考える必要がある、こういうことから今回、私どもは、抵当権者の同意を得て対抗力を付与する、こういう制度を考えたわけでございます。
 これでございますと、抵当権者とすれば予測可能な範囲で賃借権に同意を与えることが可能になりますので、自分が全く予測しないような賃借権が設定されて不測の損害を被るということは防げますし、また同意を得た賃借人の方は競売が実行されても安心して賃借権を主張できると、こういうことになりますので、そのようなことから同意に基づく対抗力付与という制度を考えたわけでございます。
○井上哲士君 一律に保護するということもあり得るけれども、今日の濫用の状況を見ればこういうことを選択をした、こういう答弁でありました。
 しかし、濫用されやすいと言われますけれども、法制審に参加をされていた大学教授やその他の先生方の論文を見ましても、短期賃貸借のほとんどは正常な賃借人だと一致して述べておられます。
 例えば、抵当不動産上の賃借権として存在しているのはほとんど濫用型だと言われるが、それは犯罪者を捕まえている人が人間はほとんど犯罪者だと言うのに等しいと、こういうことを言われている方もありました。
 局長は衆議院で、不動産執行妨害の実態として短期賃貸借が相当濫用されていると、こういう答弁をされていますが、これは短期賃貸借のほとんどが濫用型だと、こういう意味ではないわけですね。
○政府参考人(房村精一君) もちろん、御指摘のように、正常な短期賃貸借が相当数あることは事実だろうと思っております。
 ただ、濫用がほとんどないというかというと、それはそういうことはないのではないか。執行妨害等、執行の現場に関与する人間にとっては短期賃貸借の濫用が常に問題だという認識は持たれていたわけでございますので、事の性質上、いわゆる濫用されている短期賃貸借がどのくらいの割合かというのは正確な数字で把握することは非常に難しいとは思いますが、相当数あることは事実だろうと思っています。
○井上哲士君 執行実務に限ったとしても、私は今のは違うんではないかなと思うんですね。
 いろんな論文も出ております。例えば、東京地裁の判事補の方が、「東京地裁執行部の実務からみた短期賃貸借制度の現状と課題」というのを書いておられますけれども、そこでもはっきりと、執行実務上正常なものがかなりの程度存在をするということは留意すべき点だというふうに言われております。
 衆議院で、相当濫用されているのは執行にかかわる者にとってある意味では常識と、ここまで言われるのは、やはり現場の皆さんのこういう声からいいますとかなり違うんじゃないかと思うんですが、その点いかがでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) これはどの程度を見るかということですが、例えば裁判所では現在、異常に高額な敷金が設定されているとか賃料が全額前払されている、あるいは譲渡転貸自由の特約がされている、あるいは占有の実態がないというような、明らかに濫用されているというものについてはもう引受けをしないという扱いをしているところでございますが、これが大体二割近くあるわけでございます。裁判所が積極的に明らかに濫用と認定できるものに限っても二割近くあるということは、なかなかその境界でできないものも相当数あるだろうということを推測されますので、相当数の短期賃貸借が濫用されているということは、これは言えるだろうと思っています。
○井上哲士君 とにかく、先に短期賃貸借制度廃止ありきで、そこに議論を結び付けていきたいと、こういうような感じに私は受けるんですね。
 いろんな中で、例えば実務を行っている裁判官の人たちのほかの論文もありますが、九〇年代からの相次ぐ民事執行法の強化によって濫用型短期賃貸借権に基づく占有屋をより迅速に排除することが可能になっていると、こういう指摘もあります。それから、商工中金の法務室長も、民事執行法の数度の改正と判例の蓄積で十分に抵当権者の救済措置は取られている、短期賃貸借の廃止論議は実務家として実感に乏しいと、こういうふうにも言われております。それから、仙台地裁の判事の論文も見ましたけれども、この制度の廃止ないし見直しを考えるより執行妨害に対し保全処分や引渡命令によってどのように対処していくかを検討する方が正道ではないかと、こうも述べておられます。
 こういう考え方についてはどうお考えでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) これはいろいろな立場の方がいろいろな御意見を述べておられますので、それはそれぞれの方の経験に基づいて述べられているものと思いますが、しかし同時に、この短期賃貸借の廃止について、例えば中間試案で御意見を求めましたが、寄せられた意見のやはり多くは短期賃貸借制度を廃止に賛成する、こういう御意見でございまして、裁判所の現場においても短期賃貸借に廃止する意見の方が多いのではないかと思っておりますが、ですから私どもとすると、やはり短期賃貸借の濫用というのはそれなりの実態があって、そういうものに対して適切な対応手段というのはなかなか取りにくいと、こういうことが実情ではないかと思っております。
○井上哲士君 寄せられた意見を見ましても、やはりこの廃止を求めるのは、圧倒的に経済界からの声が多いわけですね。
 悪質な占有屋に対する対処というのは徹底的に行うべきだと思います。それは、やはり短期賃貸借の廃止ではないと。廃止をしても占有屋はなくならないというのもまた常識なわけですね。例えば、住宅金融債権管理機構は全国の警察と密接な連絡を取りながらこの債権回収の妨害対策を進めておりますが、その管理機構の弁護士さんも論文を書かれています。債権回収妨害対策で最も厳しく、かつ将来への予防効果を持つものは刑事責任の追及だと、こうも言われているわけですね。こういう指摘こそ私は本質をついていると思うんですが、その点いかがですか。
○政府参考人(房村精一君) 御指摘の、例えば短期賃貸借を廃止したら、じゃそれで占有屋が一切なくなるかという点については、私どももそれは、短期賃貸借制度を廃止したからといって、それだけで占有屋、いわゆる執行妨害がなくなるとは到底思えません。
 ただ、これは、執行妨害に対応していくためには、ただいま御指摘の刑事責任の追及、あるいは例えばその排除のための保全処分の充実、引渡命令の拡充、それからさらに濫用されにくい実体法の整備と、こういう各方面にわたる対策を総合的に講じて抑え込んでいくと、こういうことが必要だろうと思います。
 これだけ長期にわたり執行現場にいわゆる暴力団等が資金源として介入してきているというのを、単独の、一つの対策だけで根絶するというのは、それはとても難しいと思いますが、これを少しでも減らすためにあらゆる対策を総合的に講じていくということが必要なんだろうと思っています。
 そういう観点から、私どもは、今回も、保全処分についても新たな制度をお願いしておりますし、そういうものと併せて、濫用されにくい実体法の整備も図って、こういうものを総合して少しでも執行妨害を少なくしていくと、こういうことを考えているわけでございます。
○井上哲士君 この短期賃貸借制度の廃止だけでこの執行妨害がなくなるとは思わないと、こういう答弁でありました。
 確かに、総合的な対策を進めることは必要なんです。しかし、その中で、この執行妨害をなくすということを理由にしてこれが行われて、その結果、やっぱり善良な賃借人の権利が奪われるという、このことを私たちは問題にしているんですね。
 結局、全く落ち度のない者が追い立てられて住み替えをさせられると、これが住宅政策のありようとしていいんだろうかということが問われています。住民が自ら良い住まいを求めて住み替えるんではなくて、強制的に立ち退かされると。学校に行く子供を持つ世帯は子供の転校を余儀なくされます。高齢者は住み慣れた環境を離れることにより、とりわけ強い不安を持つと思います。引っ越し費用も自分で払わなくちゃならない。敷金の返還請求権も承継されないと。
 こういう一連の問題によって、この改正案が賃借人の権利を著しく奪うと思いますけれども、改めて大臣、その点いかがでしょうか。
○国務大臣(森山眞弓君) 先ほども申し上げましたように、正常な、正当な賃借人に対する保護も合理的に行われるということによって、現状よりも改善されると思います。
○井上哲士君 全く本当に今の国民、賃借人の実態とは懸け離れたことだと思うんですね。実際、どのような状況になっているか。今回、先ほども言いましたように、この廃止を要求したのは多くが経済界でありました。土地の流動化、土地の再開発ということを優先をして、善良な賃借人の権利が奪われる。
 この改正案が成立しましたら、重大な変更が行われるわけですね、賃借人の権利に。その点は、じゃどういうふうな周知徹底を法務省としては図ろうとされているんでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) 御指摘のように、短期賃貸借制度を廃止いたしますと、従前とは相当、賃借人の地位が変わってまいります。そういうことを考えまして、この法案では、現在存在しております賃貸借には新法の新しい制度を適用しない、現在既に設定されております賃貸借については従前どおりの扱いとするということをまず第一にしております。
 したがいまして、この新しい制度が適用されますのは、今後、新法施行後に設定されます賃貸借契約に限られると。そういうことから、私どもとしてはこの新法施行に向けてその周知をできるだけ図っていきたいと、こう考えております。私どもとしても全力を挙げますし、また他省庁にも協力を求めて、このような賃貸借、新しい制度の周知をできるだけ行いたいと、こう考えておるところです。
○井上哲士君 具体的にはどういう方法で周知をされるんでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) これは、政府広報を利用したり、パンフレットを用意して法務局あるいは地方自治体の窓口に置かせていただく、講演会を行う、その他可能な方法をいろいろ考えてみたいと思いますが、そのような方法を考えております。
○井上哲士君 賃貸マンションを借りる前に法務局に寄る人が一体どのぐらいいるのだろうかと私は思いまして、それで周知ができるとはとても思えません。
 ちょっと資料を配っていただけますでしょうか。
   〔資料配付〕
○井上哲士君 実際、今この賃貸マンションなどの契約の現場でどういうことが行われているのか。これは業界の大体共通様式の重要事項の説明書でありますけれども、ちょっと大臣に聞きますけれども、この書類の中で抵当権があるなしというのはどこに書かれるか分かりますかね。
○国務大臣(森山眞弓君) 非常に細かく欄に分かれている紙で、一目見ただけではなかなかよく分かりませんでしたが、上の方の右の「その他の権利」というところに書かれるのではないかというふうに思われます。
○井上哲士君 私も初めて見たときにはすぐ分かりませんでしたし、今、委員からも、ううんという声も何人かから聞こえました。実際、分かりにくいんですね。
 しかも、実はこれは大阪でいただいてきたんですけれども、このマンションには抵当権は設定されていたんです。ところが、この「その他の権利」のところには特になしと書かれているんですね。実際には、大半の今、賃貸マンションは建設後にほとんど抵当権が付いているということで、この書類のように、本来義務付けられている重要事項説明書にも記載されていないというのがかなり多いというのが実態なんです。
 ましてや、抵当権の設定後の賃借権は新しい所有者に対抗力がないと、こういうようなことはほとんど説明をされておりません。ですから、借り手側は全く抵当権と賃借権の関係については無知のまま借りているというのが多くの実態なんです。
 ちょっと国土交通省にお聞きをいたしますけれども、大きなこの賃借人にとっての権利変更になるわけで、宅地建物の取引業法を所管をする省庁として、この改正案がこの賃貸借市場にどのような影響を与えると、こういうふうにお考えでしょうか。
○政府参考人(澤井英一君) 今回の改正の影響という御指摘でございますけれども、先ほども法務省の方からも御答弁ありましたように、私どもとしては今回の改正の内容につきまして、法務省の方で行います周知徹底措置と併せて、不動産業団体等を通じて個別の不動産業者の事務所に例えばその趣旨を示した書類を備え置くこと等の周知徹底措置は図ってまいりたいと思っております。そういうことによって対応してまいりたいと思っております。
○井上哲士君 先ほど言いましたように、現状では、これは重要事項説明書にあっても違うことが書かれていたり、中身も含めてほとんど説明をされていないというのが実態なわけです。今後、抵当権の実行によっては立ち退きを迫られるだけではなくて敷金も返ってこないという非常に大きな変更があるわけですね、今までとは全く違う事態になってくると。
 そうしますと、先ほど書類を置くというようなお話もありましたけれども、やはりこの重要事項説明で抵当権の有無をしっかりやるということを徹底するだけでなくて、この改正によってどのような権利の変更があったか、その中身も含めて一人一人しっかり契約時に説明をさせていくと、こういうことまで必要だと思うんですけれども、そこまでやれるんでしょうか。
○政府参考人(澤井英一君) まず、現在の重要事項説明でございますが、当該個別物件についての情報ですとか、あるいは取引の条件ですとか、そういう物件に固有の情報について、これに違反すると、例えば場合によっては免許の取消しを含むというような厳しい監督処分を担保とした上で、最低限の説明を不動産業者に、宅地建物取引業者に義務付けているというものでございます。
 したがって、今お配りいただいた資料で、これは本当は抵当権が付いているんだけれども、抵当権が付いていないように記載しているというのは、これは大変な重要事項説明義務違反だと思います、仮にそうであれば。それ以上に、例えば一般的にいろんな関係法令ありますが、この個別の物件を離れて、法令の改正一般をこの説明の中で監督処分を担保として義務付けるということは、一般的に今の宅地建物取引業法では取っておりません。
 したがって、今回の場合につきましても、最初に申しましたように、一般的な周知措置は講じたいと思っています。あわせまして、個別の物件について、抵当権があれば抵当権が付いているということをきちんと説明をするという指導も徹底したいと思います。ということで、御理解を賜りたいと思います。
○井上哲士君 抵当権あるやなしやということは、多分、今後もこの書類では変わらないと思うんですよ。問題は、その抵当権が付いているということが、持っている意味が全く変わるわけですね。その中身まで踏み込んで周知しなかったら何の権利保護にもならないわけですね。
 大臣、どうでしょうか。こんなことでしっかり周知がされ、賃借人の権利が、善良な賃借人の権利が今後も保護されるとお考えでしょうか。
○国務大臣(森山眞弓君) 法律がもしお認めいただければ、その趣旨をできるだけ徹底して周知したいということは、法務省もまた国土交通省もお答え申し上げておりますが、できるだけ最善の努力をいたしまして、多くの人によく分かってもらえるようにPRをしたいと、それが唯一の方法であるというふうに思います。
○井上哲士君 法務局にパンフを置くだけだとか、とにかく事務所に書類を置いているだけではなくて、現実の賃借人の方に中身が説明されると、そこまでやらなかったら、これだけの大きな改定をしながらこれは無責任のそしりを免れないということを指摘をしておきます。
 最後に、養育費の問題についてお聞きをいたします。
 今回の履行確保については非常に改善であり、賛成でありますけれども、いかに実効あるものにするかが重要です。最近では、NPO法人のウィンクの調査でも離婚時の養育費の取決めとか養育費の支払の実態は非常に不十分だということも出されております。改正案は一歩前進ですけれども、自営の場合、それから職を転々とした場合にどの程度使えるものなのかということもあるわけですね。この法案の継続的給付につきまして、判例では医師等の診療報酬とか弁護士の顧問料なども挙げられていますが、いわゆるその他の自営業者の場合はどういうふうに当てはまるのか、具体的にお願いします。
○政府参考人(房村精一君) 自営業者でいいますと、例えば継続的商品の供給契約を結んで継続的に商品を供給し、その代金が入ってくるというような場合には、ここで言っている継続的な債権に入る場合があるのではないかと思っております。ただ、単発のものはやはり難しいかなと思いますが、そういった工夫はできるのではないかと思います。
○井上哲士君 特定の、例えばスーパーなどに毎月幾らとかいう形で卸ということを継続してやっている、こういう場合もこれに当てはまる、そういう解釈でよろしいわけですね。もう一回お願いします。
○政府参考人(房村精一君) はい、御指摘のとおりでございます。
○井上哲士君 そういう点でこの養育費の確保について一定の前進をするわけでありますけれども、やはり我が国の実態は他国と比べますと大変後れております。離婚時に養育費の取決めをしなくても手続上は問題ありませんし、公的機関による養育費の立替払制度もない。やはり、子供の生活を保障していくという社会福祉的な観点から見ましても、いろんな制度を作ることが急務だと思うんですね。
 最後に、厚生労働省来ていただいていますけれども、公的機関がやはり債権者に代わって取立てを行う、こういう制度をそういう社会福祉的観点からも作るべきだと考えますが、その点いかがでしょうか。
○政府参考人(岩田喜美枝君) 諸外国の例を見ますと、立替払や代理徴収の仕組みによりまして行政機関などが養育費を強制的に徴収する制度を導入している国が確かにございます。ただ、こういった国は、離婚そのものが裁判の手続にのみよって行うことができるとか、あるいは子供の養育費の取決めも裁判の手続の中で行われるのが一般的であるというふうに伺っております。
 一方、我が国の現状を見ますと、裁判所が関与しない協議離婚というのが離婚の中の九割を占めておりますし、また母子家庭の中で養育費の取決めをしたことがあるという回答を寄せる母子家庭は全体の約三五%ということが現状でございます。このような状況を踏まえますと、我が国におきまして直ちに行政機関などが強制的に養育費を徴収する制度を導入するというのは困難かというふうに思いますけれども、まずは養育費の支払について、それが社会的に常識になるように社会的な機運を醸成をすると、そしてその結果、養育費を取り決め、それが確実に履行されるという方向に進むということが重要であるというふうに考えております。
 昨年、母子寡婦福祉法の改正がございましたけれども、その中で初めて養育費の支払の義務について規定をさせていただきましたので、そのことの周知、あるいは厚生労働省としても養育費の手引などを作成いたしまして、養育費支払の社会的な機運の醸成に努めてまいりたいというふうに思っております。
 委員御指摘の点については、中長期的な課題としては今後勉強してまいりたい、検討してまいりたいというふうに思っております。
○委員長(魚住裕一郎君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。
   午前十一時二十七分休憩
     ─────・─────
   午後一時開会
○委員長(魚住裕一郎君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、担保物権及び民事執行制度の改善のための民法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本日は、本案の審査のため、お手元に配付の名簿のとおり、三名の参考人から御意見を伺います。
 御出席いただいております参考人は、早稲田大学法学部教授山野目章夫君、日本弁護士連合会副会長内田武君及びUIゼンセン同盟政策局長逢見直人君でございます。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。
 参考人の皆様方から忌憚のない御意見をお聞かせいただきまして、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 議事の進め方でございますが、まず山野目参考人、内田参考人、逢見参考人の順に、お一人十五分程度で御意見をお述べいただきまして、その後、各委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。
 なお、念のため申し添えますが、御発言の際は、その都度、委員長の許可を得ることとなっております。また、各委員の質疑時間が限られておりますので、御答弁は簡潔にお願いしたいと存じます。
 なお、参考人の方の意見陳述及び答弁とも、着席のままで結構でございます。
 それでは、山野目参考人からお願いいたします。山野目参考人。
○参考人(山野目章夫君) 早稲田大学の山野目でございます。
 本日は、このような意見開陳の機会を与えていただきまして、誠にありがとうございます。
 本日御審議の法律案は、既に衆議院の審議において明らかになっておりますとおり、極めて多岐な論点を含むものであります。改正される法律の形式の面から見ましても、民法と民事執行法の両方にわたり多くの規定の改正ないし重要な制度の導入を内容とする規定の追加がございます。
 また、法律案の内容を政策という面から見ますと、一方におきましては、社会経済情勢の変化への対応等の観点から抵当権などの担保物権の改正が一つの大きな柱を成しており、これは現下の経済情勢の下で抵当権の実行による債権回収を円滑ならしめるという要請を背景に持つことは申すまでもございません。
 しかしながら、今般の法律案は、このような色彩の政策のみを追求するものではなく、加えて、労働債権の保護の在り方など生活者の視点から広く問題をとらえた素材も含まれております。また、司法制度改革審議会の意見書に盛り込まれた民事司法の改革にかかわる事項も見落とすことができません。
 そこで、以下におきましては、大きく抵当権にかかわる制度改革とそれ以外のものと、それぞれについてお話をさせていただきたいと考えます。
 まず、抵当権につきましては、何よりも従来の抵当権のイメージを大きく改めることになる改革として担保不動産収益執行の制度が導入されようとしていることを指摘させていただきたいと思います。
 ビルのテナント料やアパートの賃料を債権回収に充てたいとする要請は合理的なものでありますし、これにつきましては、平成元年の最高裁判所判例により、賃料債権を物上代位として抵当権者が差し押さえることが認められてまいりました。しかしながら、賃借人の入れ替わりがあるときに第三債務者を誰何することの困難や、あるいは空室が生ずる際に新しく賃借人を入れる必要など、物上代位で賄うことができない問題もございます。裁判所が選任する管理人が不動産を管理する担保不動産収益執行の制度は、こうした問題の克服を可能とするものであります。
 また、抵当権につきましては、常に執行妨害という悩ましい問題がございます。今般の法律案に含まれる幾つかの提案、すなわち執行妨害に用いられてきた嫌いのある滌除につきまして、増価競売の制度を廃止するとともに、現代語化の一環として名称を抵当権消滅請求と改め、また、競売実務上のいわゆる件外建物の問題などへの対処として民法三百八十九条の一括競売権を拡張するなどの措置を盛り込んでおります。また、抵当権に基づく担保不動産競売に加え強制競売も視野に入ってまいりますが、競売妨害を画策する者に対し機動的に占有移転禁止の保全処分を発令することができるようにするため、一定要件の下で相手方占有者を特定しないでする発令を可能とするなど、民事執行法に基づく保全処分の制度の強化を図っております。
 これらが抵当権に関係する主要な点でございますが、冒頭にも指摘をさせていただきましたように、今般の法律案に含まれる要目はこのようなものに限られるものではありません。
 抵当権のほかの課題といたしましては、何よりも労働債権の保護の問題がございます。
 労働債権を担保する先取特権は、御高承のとおり、民法三百八条と商法二百九十五条において規定されているところでありますが、これらの現行の規定内容は一致しておりません。先取特権の担保する債権の種類、さらに範囲は、民法三百八条は雇人が受くべき最後の六か月間の給料としており、これに対して商法二百九十五条は、会社と使用人との間の雇用関係に基づき生じたる債権であります。そういたしますと、労働者は、ひとしく使用者の倒産という事態に直面するに当たり、どこに勤めているかにより、例えば株式会社に勤める人は月数の制限がなく保護されるのに対し、公益法人の場合には六月に優先弁済が制限され、さらに、同じ中間法人でも、有限責任中間法人は株式会社と同じに扱われるのに、無限責任中間法人は民法の六月の制限に服するということになります。こうしたそごに合理性があるとは到底考えられません。そこで、民法の規定を改正し、商法の内容に合わせる方向でこのそごを解消する提案がなされております。
 また、労働債権の保護との関係では、このように担保する賃金債権の範囲を広げるとともに、現実に先取特権を効率的に実行することができるようにすることも望まれます。不払をする使用者企業の財産を労働者が把握することができないということでは困りますから、今般法律案は、新しく設ける財産開示制度を活用することができるものとして一般先取特権者を含ましめることとしております。財産開示制度は、司法制度改革審議会が提唱した市民のための民事司法改革の一環でありますが、この制度を労働者が使えなければ一体何のための市民のための民事司法改革であるか、大きく意義が損なわれるということにもなりかねません。この点で、一般先取特権者の処遇を適切に考えたところは、今般法律案の中でもひとつ御注目を賜りたいところであります。
 また、同様に生活者の視点から位置付けを与えるべき論点として、一定の定期給付債務の履行確保のための予備的差押えの制度の導入がございます。
 例えば、父母が離婚し、子が母の下で育てられることになった場合に、毎月十五日に母に子の養育費を支払うことになった父が毎月二十五日に給与が支払われる事業所に勤めているというときに、五月十五日に養育費の支払を受けることができなかった母は、同日以降であれば、同月、五月二十五日に支払われる予定の父の給与を差し押さえることができます。しかし、五月分の養育費を滞った父は、蓋然性として六月分も滞るおそれが大きいのですが、六月分の養育費債権の執行としての六月分の給与の差押えは、現行法では六月十五日を待ってしなければならない煩わしさがございます。これを五月十五日の時点で可能とするのが予備的差押えの制度であります。
 なお、経済再生の要請と国民生活の観点の両方から注意を払っておかなければならない論点として、短期賃貸借保護制度の廃止がございます。抵当権の目的とされた建物などの賃借人を保護する制度として短期賃貸借保護の制度がございますが、執行妨害に用いられることも少なくなく、弊害が指摘されておりました。
 今般法律案は、不時の退去などを余儀なくされる賃借人の保護は端的に明渡し猶予の制度にゆだね、従来制度を廃止するという提案を取ることといたしましたが、その明渡し猶予の期間は、政府原案で三月でありましたところを衆議院において六月とする修正をいただきました。月数の選択は難しい判断を要する問題であり、法制審議会でも議論がありましたから、衆議院での御修正は国民生活への配慮の観点から一つの見識ある御判断をお示しいただいたものと受け止めております。
 このように、いろいろ指摘させていただきましたとおり、今般法律案は経済政策的な観点からも重要な課題への対処を少なからず含んでおりますが、それに尽きるものではなく、国民の個人としての生活にとって重要なものも多く含まれております。何分にも担保・執行法制は社会経済の多様な要請を踏まえて検討しなければならない分野ですから、今般の法律案が現下の諸課題への完璧な解答になっているとは申せませんし、残された諸課題につきましては、このたびの御院及び衆議院における審議で明らかになった論点などを十分に勘案し、政府などにおきまして今後も所要の施策の立案検討に努めるべきことはもちろんでございます。
 そのことを確認させていただきました上で、繰り返しになりますが、国の経済にとって、そして私たちの暮らしのために大変に緊要な諸施策を数多く盛り込んでおります今般法律案を是非とも成立させていただくことが適切であることを結論として強調させていただき、所見の開陳とさせていただきます。
 ありがとうございました。
○委員長(魚住裕一郎君) ありがとうございました。
 次に、内田参考人にお願いいたします。内田参考人。
○参考人(内田武君) 日本弁護士連合会副会長の内田武でございます。本日は、意見陳述の機会をいただきまして、ありがとうございました。
 まず、今次改正の概要とこれに対する総合的意見を申し上げ、次に、個別案件のうち三点に絞って意見を申し上げます。
 平成八年、十年の民事執行法の改正などにより、濫用的な短期賃貸借に基づく不法占有者は、競売手続上、より的確かつ迅速に排除することが可能となり、平成十一年十一月二十四日の最高裁判所大法廷判決は、抵当権の効力として抵当不動産の不法占有者に対する妨害排除請求権の代位行使を認めるなど、抵当権者及び買受人が取り得る手段が広がってまいりました。
 そして、司法制度改革審議会意見書は、さらに、権利実現の実効性を確保するという見地から、債務者の履行促進のための方策、占有屋などによる不動産執行妨害への対策など、民事執行制度を改善するための新たな方策の導入及び養育費等少額給付債務の履行確保のための制度整備を求めております。
 これを日本弁護士連合会は真摯に受け止め、国民の期待にこたえる司法制度とするため、司法制度をより利用しやすく、分かりやすく、頼りがいのあるものとするため、より公正で適正かつ迅速な審理の下、実効的な事件の解決を可能とする制度を構築するとの会内意見を取りまとめ、平成十四年五月十日付け、担保・執行制度の見直しに関する要綱中間試案に対する意見書及び本年三月十四日付け、短期賃借権の廃止に反対する意見書を作成するとともに、法制審議会において弁護士会推薦委員を通じ積極的に意見を述べてまいりました。
 今回の改正は、民法を改正し、司法制度改革審議会意見書で提言された権利実現の実効性を一層高めるための民事執行制度の見直しが担保・執行制度の多岐にわたってなされ、特に次のとおり注目すべき改正がなされております。
 一つ、主として担保物権の規定の合理化策として、雇人給料の先取特権の範囲の拡大、担保不動産収益執行手続滌除制度の見直し、短期賃借権の見直し、一括競売の見直しなどがあります。二つ目に、不動産執行妨害への対策といたしまして、民事執行法上の保全処分の要件緩和、明渡し執行の実効性の向上が図られております。強制執行の実効性の確保といたしましては、三番目になりますが、間接強制の適用範囲の拡大、財産開示制度の創設、扶養義務等にかかわる金銭債権に基づく強制執行の特例などであります。
 これらの改正については、日本弁護士連合会としては十分な評価をしております。関係各位に対し深甚なる敬意を表する次第であります。しかしながら、次の三点については、弁護士会としては反対ないしその運用については危惧を持っております。第一点は短期賃貸借制度の見直しについて、第二点は内覧制度、第三点は財産開示手続、この三つであります。
 第一点、短期賃貸借制度について申し上げます。
 改正案は、執行妨害の一手段として濫用的な短期賃貸借が利用されているなどの理由から、短期賃貸借制度を廃止し、総抵当権者の同意による対抗力付与の制度、二つ目は建物明渡し猶予制度を創設しようとするものであります。建物明渡し猶予期間は衆議院において三か月から六か月とされた点、そして引渡命令の期間については九か月と修正された点については評価はいたします。また、買受人が買受けのときから使用の対価について相当の期間を定めて一月分以上の支払を催告し、その相当期間内に履行のない場合には適用されないことと修正されました。しかし、この点については、十分な周知徹底がなされない限り、賃借人に無用な不安を与え、また新たなトラブルを生じさせるおそれが大きいものと考えます。
 日弁連は、濫用的短期賃貸借による執行妨害弊害については、短期賃貸借制度自体を廃止しなくとも執行妨害は排除可能であることなどによりまして、一貫して反対してまいりました。短期賃貸借制度は、一部濫用事例が見られるとしても、そのほとんどは正常な賃貸借であります。制度それ自体を廃止することは妥当ではなく、執行妨害者による短期賃貸借制度の濫用対策は、今般の執行法の見直し、例えば保全処分の執行緩和だとか相手方不特定の保全処分等による保全処分の実効性の向上などや執行妨害罪の刑罰の強化、刑事摘発などによるべきであると考えます。特に、正常な賃借人に敷金、保証金などが返還されない可能性が大であります。執行されている賃貸人にその返還の期待はできないからであります。したがって、問題は大きいものと考えております。
 そもそも、上記のような制度を創設せざるを得ないところに短期賃貸借保護制度の廃止の問題が露呈するものであります。自らの債権回収について必ずしも積極的ではなかった抵当権者を賃借人という第三者の犠牲の下で保護しようとすることの妥当性に重大な疑問が残るわけであります。このような抵当権制度の改革が国民生活に与える影響を慎重に見極める努力が十分にされておらないおそれがあります。
 この改正案でも国民の理解が得られるかは疑問であります。少なくとも、建物賃借人に対する明渡し猶予制度及び抵当権者の同意により賃貸借に対抗力を与える制度の内容について広く国民に周知されるようにしなければならないことは明らかであります。また、賃借人が差し入れた保証金、敷金返還請求権の保護を図る制度を検討するほか、抵当権と賃借権の権利関係の調整については本法施行後の状況を勘案し、引き続き必要な検討を行う必要があると考えております。
 次に、競売不動産の内覧制度の創設について申し上げます。
 情報提供という点から開かれた競売手続を実現するためには、内覧制度の創設は望ましいことではありますが、占有者の生活権、プライバシーなどにも配慮した制度設計及び運用をすべきであると考えております。特に、当初の議論では執行官保管がなされている場合に限られておりましたが、不動産の占有者が差押債権者に対抗できる占有権原を有する場合で、当該占有者が同意しないときを除き内覧が実施できることになるという点については注意を要します。この点は、当初の議論の方向に戻すべきではないでしょうか。
 また、占有者の内覧の実施に当たりましては、不特定の第三者が建物内に立ち入ることから、物品の紛失、毀損等の事故が起きないよう、また占有者が仕事を休んで内覧に協力するような場合、執行官は占有者に不利益とならないよう格別の配慮をするなど、運用は慎重にされるべきと考えております。今後、その運用状況に十分注意し、占有者のプライバシーを配慮した内覧制度となるよう見直しをする必要があると考えております。
 第三点、財産開示手続について申し上げます。
 司法制度改革審議会意見書は、債権者が金銭債権についての勝訴判決を得ても、執行対象となり得る財産の所在不明あるいは債務者による隠匿により強制執行ができない場合があるとの指摘をしております。この指摘にこたえるためには、債務者の財産について銀行等第三者に照会する制度も考えられるとしておりましたが、適切な第三者を想定することができないなどとの理由からこの制度は見送られましたが、真剣に第三照会者制度、すなわち第三者に対し債務者財産に関する照会をする制度の導入を検討すべきであると考えます。
 この財産開示制度には期待も大きいけれども不安も大きいわけであります。特に、善良、弱小な債務者のプライバシーが不当に侵害されることがないよう、適正な運用がされるよう配慮するとともに、財産隠しを当然とするような悪質債務者の財産の隠匿や不当な処分によって資産が散逸されることがないよう、運用される必要があると考えます。
 その他の問題でございますが、一つ、扶養義務などにかかわる金銭債権強制執行の特例について。扶養義務にかかわる金銭債権を請求する場合における強制執行の特例が養育費等の履行確保のために創設されたものであります。このことにかんがみ、その特例の内容及び強制執行の申立てに必要な手続について広く国民に周知徹底し、適正な運用が行われるなど格別の配慮がなされるよう是非ともお願いを申し上げる次第であります。
 最後に、本改正の目的を考えれば、改正後の民事執行手続が適正かつ迅速に運用されるよう、裁判所の人的・物的体制を拡充し、その整備に配慮されなければならないことは明らかであります。裁判所施設の整備拡充や、裁判所事務官、執行官の大幅な増員が伴われなければ、本案を実効的なものとすることは著しく困難と考えられるところでございます。
 以上をもって陳述を終わります。ありがとうございました。
○委員長(魚住裕一郎君) ありがとうございました。
 次に、逢見参考人にお願いいたします。逢見参考人。
○参考人(逢見直人君) UIゼンセン同盟の逢見です。本日は、意見陳述の機会を与えていただきまして、感謝申し上げます。
 UIゼンセン同盟は、昨年九月に統合された産業別組織でございまして、組合員七十八万名の労働組合でございます。UIゼンセン同盟は、製造業、流通サービス業を中心に、個人消費に密接にかかわりのある生活関連産業をカバーしております。私は、そこで企業倒産や合理化の問題の担当の責任者をしておりますが、昨今のデフレ経済あるいは長期不況の下で企業倒産あるいは合理化問題が多発しております。私は、そこで経験したことから、倒産法制の見直しの必要性を痛感しておりましたが、その意味で、現在、国会におきまして一連の倒産法制見直しが行われていることにつきまして強い関心を持ち、また法制審議会等におきましても、連合を通じまして、各種意見を申し述べてきたところでございます。今回の担保物権及び民事執行制度改善のための民法等改正案につきましても、大きな関心を持って見てまいりました。本日は、こうした観点から、主として労働債権の先取特権の問題について絞りまして意見を申し上げてみたいと思います。
 まず第一は、雇人給料の先取特権の範囲の拡大についてでございます。
 改正法案は、民法三百八条の先取特権の範囲を商法二百九十五条と同一とするという内容でありますが、この考え方については賛成であり、その成立を希望するものであります。我が国における企業倒産の現状は、法的整理が最近やや増加傾向にあるとはいえ、依然としてその三分の二は任意整理であります。任意整理においては早い者勝ちの処理になることが少なくないとされ、債権者会議の招集などの任意整理の手続が行われる場合であっても、不公平な配当が行われている等の問題が指摘されております。零細企業に働く労働者にとっては、法的知識に乏しいこともございまして、任意整理の場合は労働債権の弁済の程度が相当程度低くなっているというふうに言われております。
 こうした任意整理における各種債権間の優先順位は、民法、商法及び国税徴収法等の一般実体法によっております。労働債権については、御承知のように、民法等により一般先取特権が認められ、一般の債権者に先立って弁済を受けることができることとされておりますが、優先順位としては抵当権等の被担保権や租税債権の後に位置付けられております。また、一般先取特権の範囲についても、現行法では商法等が適用される労働者は全額であるのに対し、民法が適用される労働者は最後の六か月に限定されていたため、公平、公正という見地から見て、これは望ましいものでなく、民法と商法の同一化を図るべきことがかねてより指摘されておりました。今回、ようやく民法の規定を商法に合わせるという形で同一化が図られることは、私たちにとりまして長年の懸案の一つが解決されることになると思います。
 ただ、残された問題として、事実上は労働債権でありながら、先取特権の扱いがなされないものが存在するということであります。例えば、請負契約に基づく労務の提供であります。建設業等では多層的な請負契約によって労務を提供する例が多く見受けられます。また、製造業におきましても、生産ラインの一部を請負契約にしているものが見られます。また、今般の労働者派遣法の改正によりまして、物の製造についても派遣が認められるようになるなど、派遣労働が今後一層増加することが予想されます。また、製造業だけでなく、営業外務員等でも雇用契約ではなくて請負契約になっているケースもございます。
 こうした請負や委任により労務を提供する者であって、労働組合法三条に該当する労働者とされる者の労働債権についても先取特権の範囲に加えるべきであります。また、労働者派遣契約によって労働に従事していた者が派遣先の経営破綻によって賃金の未払が生じたケースにつきましては、これも労働債権の先取特権の範囲に加えるべきであります。今後、これらの点の改善を求めてまいりたいと思いますので、御理解をお願いしたいと思います。
 次に、労働債権が抵当権等の非担保権や租税債権よりも劣位に置かれているという問題であります。
 最近の倒産事例では、労働債権が担保抵当権より劣位にあるために労働債権に充当できず、支払われないというケースもあります。労働債権は労働を提供して初めて発生するものであり、あらかじめ担保権等の設定が困難であるという性質を持っております。賃金等の労働債権は労働者にとって生活費であり、家族を含めましてそれが得られなくなると直ちに日常生活に支障を来すものであります。労働債権のうち、一定限度は抵当権等の担保権や租税債権より優先すべきものとすべきであります。
 連合では、一定限度の労働債権、これは生活費として欠かせない範囲のものという意味でございますが、これをスーパー債権として担保権よりも優先すべきという考え方を提示してまいりましたけれども、他の債権者間の利害にかかわる問題であることもございまして、関係者の理解を得ることができず、今回の改正に盛り込むことができませんでした。私どもとしては、これからもこうした点を主張してまいりたいと思っております。
 第三に、先取特権の行使要件の緩和についてでございます。
 企業倒産時における労働債権の確保は、スピードと公平性が求められます。任意整理の場合は正に早い者勝ちであり、他の債権者に先んじて行動しなければ労働債権も確保できないことになります。いざ倒産となったときに、労働者個人個人の行動には限界があり、我々の経験では、労働組合が重要な役割を担っております。先取特権の行使をするのは債権者である労働者個人ですが、個人で未払債権額を確定し、その差押手続をすることは事実上困難であります。当該労働者を組織する労働組合が弁護人に依頼して委任手続を取って、先取特権に基づく差押手続をすることになるわけですが、五人、十人の零細企業ならすぐに委任手続が取れますけれども、従業員数が数十人、数百人となりますと、委任手続だけで時間が掛かってしまいます。労働組合が当該企業に働く労働者の労働債権の先取特権を一括して行使できる、そのようにすべきだと思います。
 労働債権の先取特権に基づく差押えについては、手続上求められる証明書類、例えば担保権の存在を証明する文書、あるいは一般の先取特権の存在を証明する文書、これらを労働者が執行裁判所に提出しなければなりません。最近は、裁判所の運用はかつてに比べるとある程度柔軟に改善されてきていると言われてはおりますが、証明文書として何が必要かを例示するなどして、通常の労働者であれば特段の努力を必要とすることなく差押えが可能な要件とすべきであります。
 また、一般先取特権行使に時間が掛かり過ぎるという問題がございます。これは裁判所の運用にかかわる問題でございますが、事件が多過ぎて担当する裁判官がなかなか記録を検討できないという問題もあるようですが、一刻を争う企業倒産時において差押命令が出るまでに何日も掛かっているということであれば有効に機能するはずがありません。運用の改善を求めたいと思います。
 第四に、ILO百七十三号条約、これは労働者債権の保護に関する条約ですが、日本はこれがまだ未批准でございます。この批准の点に触れたいと思います。
 このことは国内法において労働債権の租税公課からの優先を定めることを意味するものであります。最近の倒産事例では、公租公課以外に弁済できる財源がなかったため労働債権が払えなかったというものもあります。ILO百七十三号条約の第二部第八条では、国内法令は労働者債権に他の大部分の優先的債権、特に国及び社会保障制度より高い順位の優先権を与えるということが定められています。つまり、国税や社会保険料よりも労働債権が優先的に扱われることを義務付けているわけであります。日本はまだこの条約を批准しておりませんが、早期に国内法、すなわち国税徴収法を見直して、労働債権を租税公課より優先したものとすべきであります。
 以上、幾つか意見を申し上げてまいりましたが、最後に強調しておきたいことは、企業倒産の実態からすれば、公租公課あるいは担保抵当に入っている物件を除きますと、労働者が未払労働債権として確保できるものは在庫品あるいは売掛金等であります。在庫品は、いったん倒産するとその価値は著しく低いものとなります。そのために、未払労働債権が支払われなかったという例も少なくありません。そういう場合には未払賃金の立替払制度があるではないかという指摘もあるかと思いますが、この未払債権の立替払制度は対象とする労働債権の範囲が狭く、またその上限金額が低いこともありまして、全額保証されるということにはなっておりません。実体法上の優先権が幾ら認められるといいましても、その実現手続が困難を伴うものであればその実効性はなきに等しいものと言わざるを得ず、とりわけ、その実現に迅速性を要する労働債権については、より使いやすい手法が取られるべきであります。市場競争激化の時代にあって、労働債権の先取特権といいますのは、正にこれからはセーフティーネットとして使うべき制度、より使える制度でなければならないというふうに思います。
 この問題についてより一層の御理解をいただくことをお願いして、私の意見とさせていただきます。
 ありがとうございました。
○委員長(魚住裕一郎君) ありがとうございました。
 以上で参考人の意見陳述は終わりました。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○佐々木知子君 自民党の佐々木知子です。今日は三人の参考人の先生方、本当にありがとうございました。
 今回の改正は多岐にわたっております。まず、担保物権に関する改正の中から、短期賃貸借について、山野目参考人にお伺いしたいと思います。
 賃貸用の建物については、競売があっても賃借人が安定して使用を続けられるような制度が必要だという意見があることは先生もよく御承知のことだと思います。今回、登記した賃貸借は、これに優先するすべての抵当権者が同意をし、その同意について登記がされたときは、当該抵当権者及び競売における買受人に対抗することができるという制度が創設されますが、この制度はそのような要請にこたえるものと考えてよろしいでしょうか。
○参考人(山野目章夫君) 今般、法律案に盛り込まれておりますこの抵当権者の同意に基づく賃貸借の対抗力付与の制度に御関心をいただきましてありがとうございます。
 この制度を導入しようとしていることの趣旨でございますけれども、議論を始めたときにイメージの中心にありましたのは、居住用の建物というよりは、むしろ比較的大規模な建物について、それを抵当権設定登記後に賃借する者が、しかし、必ずしもちゅうちょすることなく資本投下などをすることをできるようにしようという配慮に基づいて、そのようなニーズを意識しながら導入の立案が進められたものでございます。
 しかしながら、この制度がそのような事業用建物にだけ機能領域が限定されるかというと、そうではないというふうに考えられます。規定の形式の上からも、建物の種別が事業用に限られているわけではございませんし、居住用の建物にもちろん理論上も適用が可能であります。加えて、実態の予測というのは困難な部分がございますけれども、例えば区分されていない建物などを不動産事業者などが一括して賃借いたしまして、これについて先行する抵当権者の同意を得て、その同意があった旨の登記をするということをしておきますと、その不動産事業者から転借をした最終的な建物使用者であるところのアパートの賃借人などが、転借人それ自体については賃貸借の登記をしていない場合でありましても、原賃貸借、原っぱという字を書く原賃貸借ですが、原賃貸借についての抵当権に対する対抗力の恩恵、利益が享受されるという仕方で、そのような居住のエンドユーザーに対してもこの制度による保護が与えられるというふうな機能も期待しておるところでございます。
 議員の御指摘のような居住の用の面でのこの制度の活用ということも重要であるというように考えますので、特に強調させていただきたいと考えます。
 以上でございます。
○佐々木知子君 続きまして、民事執行制度に関する改正についてお尋ねしたいと思います。
 また山野目参考人に対してでございますけれども、司法制度改革審議会の意見書でも、占有屋等による不動産執行妨害への対策を導入すべきであると指摘されておりますが、これまでも執行妨害対策を目的とした民事執行法の改正が行われてきたにもかかわらず、なぜ執行妨害はなくならないのか、そしてまた今回の改正によってその要因はどの程度解消されるとお考えでしょうか、お答え願います。
○参考人(山野目章夫君) 御指摘のように、この執行妨害対策というものは非常に長く我が国の法律実務を悩ませてきた問題であると同時に、近時の経済状況の中で喫緊の解決が求められているテーマでございます。
 議員御指摘のとおり、民事執行法の累次の改正によりまして様々な対処が図られてきたところでございますけれども、何分にもこれは、何と申したらよろしいんでしょうか、イタチごっこといいますか、あるいはモグラたたきみたいなような部分がございまして、非常に執行妨害をする方々は、変な言い方ですけれども、頭のいい方が多くて、また法律をよく勉強しておられる方が多くて、何か法制上の手当てをいたしますと、更にそれをかいくぐってまたいろんなことをなさるという部分がございます。
 しかしながら、そのように感心ばかりもしておられないわけでありまして、民事執行法の改正で対処をしてきたところからうまくいかなかったということで今回のこの法律案の立案、策定の検討に入りました。
 今までの民事執行法の改正と違っているところは、今回の法律案でも、御案内のとおり、占有移転禁止の保全処分の強化など、民事執行法それ自体の改正に係る提案も盛り込ませておりますけれども、何と申しましても強調させていただきたいことは、実体法、民法に踏み込んだ改正の提案を今回はさせていただいたということでございます。短期賃貸借保護制度の廃止だけではございません。滌除の制度の合理化、さらに名称の変更を伴って抵当権消滅請求となりますが、さらには一括競売権の拡張など、繰り返しますが、実体にも踏み込んだ改善を試みようとしているところでございます。
 議員からお尋ねでございますが、これで執行妨害がなくなるのかという見通しを述べよというお話でございますが、これはなかなか難しい面がございまして、先ほどのようにモグラのような方々というか人々がおりますので、皆無になるということはございませんし、またそれが絶対劇的に減るだろうというようなことをこの段階で予想申し上げることはできないわけでございますけれども、相当の効果はあるだろうというふうに期待しております。
 また、政府におきましては、今後、この法案にとどまらず、例えばちまた、執行妨害に用いられていることなどの指摘がある予告登記の制度をこのまま存続させることがよいのかといった問題についても検討を続けているものでございますから、是非とも今般法律案の成立をお認めいただいた上で、今後の更なる執行妨害対策についても立法府の御関心をお持ちいただきたいものと考えます。
 以上でございます。
○佐々木知子君 ありがとうございます。
 同じく執行妨害対策について内田参考人にお伺いしたいんですけれども、先ほど山野目参考人の方から、執行妨害をする人は非常に頭がいいということで、実際、近時、執行妨害の手口が巧妙化しているということが言われておりますけれども、実務に携わる参考人の立場からの実感としてはどんなものでしょうか。なお、今回の改正におきまして、そのような執行妨害への対応の観点から効果を期待されるのはどのような点でございましょうか、お答え願いたいと思います。
○参考人(内田武君) お答えいたします。
 御指摘のとおり、今、山野目先生がお述べになったことと同様と思います。執行妨害につきましては、平成八年、十年、それで今回の改正。ある手続ができますと、当然そこの細かいところを研究して抜け道を探してくるのがこの人たちの仕事でございまして、そういうものに対処するには、やはり裁判所の方で迅速に対応していただくと。それはやっぱり執行官や何かの質を高めることも必要だと思います。
 今回の改正は大変に結構なことだと一面では思っております。
○佐々木知子君 では、執行妨害対策について三人の参考人の先生方すべてに同じ質問をしたいと思います。簡単にお答え願いたいと思います。
 本法案では、民事執行法上の保全処分の要件緩和や相手方を特定しないで発令する保全処分の手続の新設など、相当実効性が上がりそうな改正が行われておりますが、それにより、相手方となる者の権利が不当に害されるおそれはないと考えてよろしいでしょうか。
○参考人(山野目章夫君) 裁判所の運用に期待したいところでございますけれども、基本的には、立案段階の考え方の整理としては、今、議員御指摘のような心配がそれほど深刻なものではないというふうに考えますし、また深刻なものになってはいけないという心構えで運用がなされなければいけないものと考えます。
 お挙げになった素材の中で、相手方を特定しないで発令される占有移転禁止の保全処分にいたしましても、最初の発令時に相手方が分からないときに一定要件の絞りの下でそのような発令が可能となるものでございますし、その後の手続の展開の中では、一定の段階から先は相手方が特定されていなければ手続の続行が許されないというふうな取扱いがなされるものでございますから、そのような趣旨に立脚して法律運用がなされるべきことを希求するものでございます。
 以上でございます。
○参考人(内田武君) 先生おっしゃられるとおりだと思います。
 それで、実際にはやはり妨害をしている人たちがほとんどだと思いますから、先生が御懸念されるような事態は少ないものではないかと思います。
 ありがとうございました。
○参考人(逢見直人君) 私は余りそういう問題について専門的知見を持ち合わせておりませんが、そこに働く従業員の立場で相手方の特定ができないものというのは大体妨害行為だというふうに思っておりますので、それらに対する適切な執行が必要だというふうに思っております。
○佐々木知子君 では、内田参考人にやはりお伺いしたいんですが、養育費のことでございます。
 本法案で養育費等についての強制執行の特例が創設されることにより、これまでは手続に手間が掛かり過ぎたために泣き寝入りをしていた人たちが権利の実現を図りやすくなるというふうに思われますが、これについていかがでしょうか、お答え願いたいと思います。
○参考人(内田武君) 御指摘のとおりと考えます。
 今までは、正に先ほどの言葉でありませんけれども、順繰り順繰りにイタチごっこに手続を取らなきゃならなかったですけれども、今回の改正により、相当程度改善されるものと考えます。
○佐々木知子君 少し早めですが、これで終わります。
 ありがとうございました。
○千葉景子君 民主党・新緑風会の千葉景子でございます。
 今日は、三人の参考人の皆さんに大変分かりやすくお話しをいただきましてありがとうございます。
 今回の法案の改正、大変盛りだくさんでございまして、論点も、そしてこれからの運用等でいろいろと知っておかなければいけない、そういうところもたくさんあろうかというふうに思います。限られた時間ではございますけれども、それぞれ御指摘をいただいた点などを中心にしながら質問させていただきたいと思いますので、よろしくお願いをしたいと思います。
 それでは最初に、お三方あるいはお二人なり、先生方で共通するような問題もございましたので、その辺りからお聞きしたいと思いますが、一つ、今回の改正で、労働債権先取特権の部分で改正がございました。私も一歩前進を果たしたものであろうというふうに思っております。
 ただ、逢見参考人からもお話がございましたように、前進は前進と申しながらも、例えば今、実態としては労働契約という形ではなくして、請負契約であるとか、あるいは委任契約という形で労務の提供が行われ、結局そこは法案の外になってしまう、こういう御指摘などもございました。また、あるいは個人でなかなか、債権者といっても、この手続を取るというのは相当困難もございます。そういう際に、労働組合というような形で手続を取るような、そういうこともやっぱり必要になってくるのではないか、こういう指摘などもあり、私も大変よく分かる、理解ができるところでございます。
 今後の大きな課題だというふうに思いますけれども、その一番の目標といいましょうか、それはやはり今御指摘がありましたようなILO百七十三号条約、この趣旨をやはり私どもも受け止めて、そして日本の法整備なども進めていかなければいけないというふうに思うわけですけれども、改めまして逢見参考人に、このILO百七十三号条約の批准の問題と、それから先ほど御指摘いただきましたような問題点、国際的にはどうなんでしょうか、かなり解消されているというか、いろんな法的な整備がなされているものでしょうか。先ほど言った委任契約とか請負契約のような形での労務提供などについても、やっぱり労働契約と同様な保護が与えられているのでしょうか。その辺り、もし御存じでございましたら、それを含めて、今後の取組あるいは今後のあるべき労働債権の保護などについてもう少し詳しく御意見いただければというふうに思います。
 また、同じILOの問題については山野目参考人もちょっと御指摘のところもございます。是非、今後の方向性などについて御意見ございましたらお聞かせいただきたいと思います。
○参考人(逢見直人君) お答えいたします。
 ILO百七十三号条約でございます。これはたしか一九九二年に採択されたんではないかと思いますが、三者構成の会議でございまして、そのときの総会で労働者側はこれに賛成の意を表しました。経営側は反対、日本政府は棄権という対応をしたわけでございます。日本政府が棄権の態度を取ったということの理由としては、国内法の整備ができていないということが理由でございました。そういう意味では、国内法が整備されれば賛成に回ってもいいはずなんですが。
 他の先進諸国では、特にヨーロッパでは、EU指令によりましてこうした労働者債権の保護に関する保護手続が、このILO百七十三号条約の採択を契機にして進んでいるというふうに理解しております。そういう意味では、日本は、条約が採択されて十年たつわけですが、この間、ほとんどこの点については議論が進んでいないように思います。
 そういった意味で、ILO百七十三号条約の、これは一部、二部、三部と三部構成になっていて、それぞれ部分的に批准することができるわけですが、特に我が国におきましては、第二部の優先順位の問題について、これは国税徴収法の改正が必要ということになっております。この国税徴収法は財務省の所管でございまして、財務省はこの議論についてはほとんど理解を現在示しておりませんので、これについて国会の中で、この労働債権の重要性、そして国際基準であるILO条約の批准ということを是非強く訴えていただきたいというふうに思っております。
○参考人(山野目章夫君) 議員御指摘の一九九二年に成立いたしましたILO百七十三号条約というものは、今後の労働債権の保護の在り方を考えるに当たっての一つの重要な素材になるという意味で、大変に大切なものであるというふうに考えます。
 既に御案内のとおりであると思いますが、この条約の第二部が、最低三月分以上の賃金について、租税債権にも優先する優先権を与えなければならないとしており、また第三部におきましては、倒産局面に限定せず、支払保証機関が賃金を保証するという制度を骨格として提示しているという内容を持っておりますが、このいずれについても、我が国が直ちに批准をすることにつきましては、国内法制との関係で整備を要する問題がございます。
 それぞれについて指摘させていただきますけれども、第二部との関係におきましては、先ほど来より逢見参考人も御指摘のとおり、租税債権との関係がございます。
 この問題につきましては、税制を預かる当局と議論をいたしますと、どうしても、それは租税対労働債権の問題であるという以前に、私債権秩序の内部の問題として、抵当権等と労働債権との調整をした上でなければお話を承る立場にないというふうに冷たく突き放されることが多いわけでございます。
 この点、なかなか、政府部内の省庁間のやり取りで意見調整をしているのでは事柄が進まない部分がございます。その私債権云々ということを言われ出すと、それで話が止まってしまう。また、そこで止まってしまって、何となく、それでよいというふうに関係者が思っているわけではないのでしょうけれども、それ以上議論を続けるエネルギーがなえてしまうという部分がございます。
 ひとつ立法府において、この点、そのような政府による政策形成を後押ししていただくような形で御関心をお持ちいただきたいものであるというふうに考えます。
 第三部の支払保証機関との関係につきましても、我が国の現行の賃金の支払の確保等に関する法律が持っている制度の問題点を精査の上、更に改善を進めて、条約に対応するような努力がなされるべきものと考えます。
 午前中の本委員会の審議におきまして、青木政府参考人より、この条約の批准に向けての環境整備が重要であるという答弁が得られたところでございますけれども、私も全くそのとおりであるというふうに考えると同時に、その環境整備というのは、必ずしもお役所言葉的な、そういう通り一遍の話ではなくて、これはかなり本気に、労働者の生活のための賃金債権の保護という観点から、今後、今般法律案の後に残された課題として追求されなければならないものであると考えます。
 以上でございます。
○千葉景子君 ありがとうございます。
 それでは、内田参考人に聞かせていただきたいと思います。
 先ほどの御意見の中で、今回の短期賃貸借、この撤廃、廃止につきましてかなり厳しい御意見でございました。私も今の賃貸借契約のかなり根幹を大きく変えることになろうかというふうに思いますので、いろいろ今後の運用等、それから今の、何か言葉、同じようになってしまいますが、環境整備ということではございませんけれども、やっぱりそういう点について十分に措置をしていかなければ混乱を招く部分があるのではないかと、そんな感じもいたします。
 そこで、今回は、それに伴って敷金返還義務が買受人に承継されないというような問題もございますので、やっぱり賃借り人にとってはいろいろ心配事が増えるのではないかというふうに思われます。そんな点で、この改正に伴って注意すべき点、あるいは今申し上げたような環境整備といいましょうか、そういう点等でやっぱり実務家として御指摘の点がございましたら、よろしくお願いをしたいと思います。
○参考人(内田武君) お答えいたします。
 確かに、先生御指摘のとおり、今回の改正によりまして敷金、保証金、これは買受人には承継されません。したがいまして、短期賃貸借権に従って利用している賃借人はその部分は保護されないことになります。こういうことがございますので、実は日弁連でも反対の意見が強いんでございます。この点については引き続き御検討いただく必要があろうかと考えております。
 以上でございます。
○千葉景子君 ありがとうございます。
 私も敷金返還義務が承継されないということになると多分、取りあえず一定の賃料の支払を拒んでおいて、それと後から相殺をするような、そういう手法が結構多くなってくるのかなと、そんな感じもいたしますが、まさか賃料支払を拒んでおけばいいのでないですかと勧めるわけにもいきませんで、なかなかこれはやっぱり当事者に対して十分に理解をもらっておくということも大事なんだろうなという感じもしたりいたしております。
 あと、限られた時間でございますので、今回、山野目参考人、内田参考人、逢見参考人に一言ずつお願いをしたいと思います。
 今回、大きな前進として、養育費の支払確保について一定のやっぱりこれは私も前進だというふうに思っております。ただ、これだけで十分かというとなかなかまだ厳しい面もございまして、今後のこの養育費の確保について、例えば行政側が立替払をして、それでまた本人に返還を求める等々、諸外国でもいろんなやり方があるようでございますけれども、もし養育費の確保について御意見等ございましたら、今後の何かこんな手だてはどうだろうかということも含めましてございましたら、それぞれお一言ずつよろしくお願いをしたいというふうに思っております。
○参考人(山野目章夫君) 養育費の問題、これもまた重要な問題であるというふうに思います。
 議員の皆さんも御記憶でいらっしゃるかと思いますが、衆議院における本法律案の審議におきまして、衆議院の法務委員会で新川参考人から、今般、法律案が提示している予備的差押えの制度の導入に対する評価として小さな一歩であるという言葉をいただきました。正に、本日のこの御審議の成果としてこの小さな一歩を法律案の形でお認めいただきたいというふうに思うと同時に、それが小さなものであるという指摘を受けているところが具体的にどういう部分なのであるか、また、それに対してどういう技術的な立法上の対処が可能であるか、議員御指摘のとおり、今後の課題として検討されなければいけないことであるというふうに思います。
 今般の予備的差押えの制度は、担保されるべき債権の、保全されるべき債権の弁済期にかかわる督促の範囲に機能の範囲が限定されてございます。例えば、第三債務者の勤め先が分からないといったような場面で差押えをするといったような面では依然として困難が残されております。これらの問題につきましては、家庭裁判所が行う履行勧告ないしは履行命令の制度の現在及び今後の運用実態を精査し、さらに、今度人事訴訟の手続が改革されまして、離婚に関する訴訟が家庭裁判所の管轄に移される方向になってきておりますから、そのような制度改革の成果なども更に見据えて検討していくべき課題であるというふうに考えます。
 議員が御示唆なさったこの公的機関による取立てといったようなものもその制度の導入の適否、導入した場合のメリット、ないしはその理論的なその根拠付けの面で問題点がないかといったような問題を今後検討していくべきであって、政策のメニューとして記憶されるべきものであるというふうに考えております。
 以上でございます。
○委員長(魚住裕一郎君) 簡潔に、内田参考人、どうぞ。一言どうぞ。
○参考人(内田武君) 養育費の、失礼しました、労働者の……
○千葉景子君 養育費。
○参考人(内田武君) 養育費の方でございましたか。
 これは私どもも一歩前進と考えております。更に検討される必要がある部分もあろうと思いますけれども、債務者が会社を辞めたり、あるいは勤め先を辞めたりいたしますと、これは当然またやり直しをしなくちゃならないという問題があります。ですから、これですべてだというふうに申し上げるわけにはいかないと思います。
 以上でございます。
○参考人(逢見直人君) この点について私は余り専門的知識を持ち合わせておりませんので一般的な印象論になりますが、今回、予備的差押え制度が入ったということは前進だと思いますので、これの運用実態を見て、そこで更に問題があれば次の手段を考えるということであろうかというふうに思います。
○千葉景子君 終わります。ありがとうございました。
○荒木清寛君 まず、山野目参考人にお尋ねをいたします。
 短期賃貸借につきまして議論がされております。本法案では、短期賃貸借が濫用的に用いられるケースが多いということにかんがみまして、これを廃止をいたしまして、その代わり建物の賃借人に対する明渡し猶予制度を設けたわけでございます。
 そこで、今もこの賃借人の敷金返還請求権が買受人に承継されなくていいのかという議論もございましたが、そうしたことも含めて、今回の法改正におきます正常な賃借人の利益保護が十分なのかどうか、参考人の御意見を改めてお聞かせください。
○参考人(山野目章夫君) 短期賃貸借保護制度の廃止に関連して、正常な賃借人の保護が果たしてこの法律案が提示している内容で十分であるのかというお尋ねでありまして、ごもっともな御心配であるというふうに考えます。
 この点に関しましては、既に御案内のとおり問題が大きく分けて二つあります。
 第一に、正常な賃借人の建物使用それ自体の保護というものが適切な範囲で一定の限度では競売の後にあっても図られなければいけないのではないかという問題がございますし、二つのうちのもう一方の大きな問題領域を形成しておりますのが、ただいま議員御示唆がありましたとおりの敷金返還請求権の問題でございます。
 それぞれについて申し上げますと、建物の使用それ自体にかかわる保護に関しましては、今般法律案で六月の明渡し猶予がお認めいただけるという方向で検討が進んでいるところでございまして、これが正常賃借人の保護のために適切な内容ではないかということは、先ほど冒頭の意見陳述でも所見として申し上げましたとおりでございます。
 それからまた、もう一つの問題領域であります敷金返還請求権の問題でございますけれども、これは地域によっては、又は案件によってはかなり高額の敷金が差し入れられていることがございますから、御指摘のとおり大変に悩ましい問題であることは確かでございます。
 しかしながら、敷金返還請求権が引き継がれるという取扱いをいたしますと、これはやはり買受人にとって相当なダメージであるというふうに考えられる要素となりますので、競売に基づく抵当権の効力発現に対して影響するところが大きいというふうな観点から、立案の過程で法制審議会の審議等におきましても大変に悩んだところでございますけれども、やはり引受けとはしないという扱いにした上で、よってもたらされる敷金返還請求権の確保の問題につきましては、これは例えば競売開始等によって敷金返還請求権の弁済期が到来するものとするような特約慣行が当事者間に形成されることを期待いたしまして、そのような特約がある場合には競売開始以後、賃料等、敷金の相殺の可能性に道を開くといったような対処を講ずることによって賃借人の保護を考えていくべきではないか、かように考えている次第でございます。
 以上でございます。
○荒木清寛君 次に、内田参考人にお尋ねいたします。
 財産開示手続の創設につきましては賛成である、そういう意見の開陳でございました。勝訴判決を得ましても、実際に債務者から回収ができませんと絵にかいたもち、泣き寝入りということでありますから、私も画期的な制度の創設だと思います。
 ただし、参考人も、このレジュメの中で、また陳述の中で、善良な債務者の財産上のプライバシーに配慮することといったことをお述べになりました。私も、唯一この制度について心配しますのは、今も多重債務の問題ですとかありまして、いわゆるやみ金業者なんかは論外ですけれども、普通の貸金業者であれ、あるいはクレジット業者であれ、こうしたことはもう債務者が何も持っていないことを承知の上で嫌がらせ的に使うというようなことも相当これは債務者にとっては精神的な圧迫になるわけですね。
 そういう事態が起きないかということを若干心配するんですが、参考人がここで運用上の配慮として考えていらっしゃることはどうしたことがございますか。
○参考人(内田武君) ただ、どうなんでしょうか、現在の財産がどれだけあるかという質問だけならいいんですが、当然、申立人にしてみれば、現在の財産がこれしかなくなっちゃったのはどうしたんだという過去のことの質問があるいはされる可能性が高いと思います。あるいは、御本人が知らないもの、例えば古い相続や何かがありまして、東京の方に出てきていて、田舎に山の相続が終わっていない財産などがあった、こういうものを隠していたんじゃないかというふうなことを言われると、これは大変な問題ではなかろうかと思います。
 ですから、この運用は、法律が定めたとおり現在の執行をしても完全な債権の実現ができない、あるいは現在の財産では無理である、こういうことの厳格な認定とともに、裁判所の方の質問のさせ方、やり方に工夫が必要ではなかろうかと考えております。
○荒木清寛君 最後に、逢見参考人にお尋ねをいたします。
 先ほど、いわゆる倒産企業の現場の話に基づくお話はよく分かったといいますか、非常にこうした経済状況の中で勤労者の方が苦労されていることがよく分かりました。
 そこで、そういう倒産をした場合の労働者の最後のよすがというのが在庫品かあるいは売掛金債権であるというお話がありました。恐らく、在庫品なんかですと仕入先がある場合にはイの一番で引揚げに来るんではないかというふうに思いますし、そうなりますとますますもって先取特権があってもどうかという議論も生じようかと思うんですね。
 そこで、最後に、逢見参考人がより使いやすい方法を考えてもらいたいというようなお話もございましたが、何か具体的に今後更なるそういう改善といいますか、あるいは何か運用上配慮を求める事項があればお聞かせ願いたいと思います。
○参考人(逢見直人君) これは民事執行法に基づく証明書類、これが一体何と何をきちんとそろえれば裁判所がすぐ通してくれるのかということがまだあいまいなところがありまして、他のヨーロッパなどでやっていることで、例えば穴埋め方式にして、必要な書類はこれとこれとこれですよと、それについて労働者が必要な書類を添付して出せばすぐに差押命令が出してもらえるという、より簡素な、証明書類をより使いやすくするような手続を、これは民事執行法の改正が必要なのかもしれませんが、そういう形で使える制度にしていただきたいというのが私どもの意見です。
○荒木清寛君 終わります。
○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 今日は三人の参考人の皆さん、ありがとうございます。
 まず、短期賃貸借制度の問題で山野目参考人と内田参考人にお伺いをいたします。
 内田参考人の方から、執行妨害者による濫用対策というのは保全処分の強化や刑事摘発によるべきだ、こういう陳述がありました。また、山野目参考人からは、この制度を廃止することによって執行妨害がなくなるわけでもないんだ、こういうようなこともございました。
 そうなりますと、内田参考人からありましたような、第三者の犠牲の下に抵当権者の保護をするということへの疑問ということも出てくるわけで、むしろやはり保全処分の強化や刑事摘発によって問題を解決する。同時に、逆に正常な賃借人の保護強化という観点からいえば、フランスやドイツなどで行われているように、基本的に賃借人が抵当権者よりも強い、こういう制度にするということが必要ではないかという、こういう議論がありますが、それについてそれぞれからお願いをいたします。
○参考人(山野目章夫君) 短期賃貸借保護制度の廃止に関して、先ほど内田参考人から御指摘があった今般の改正に対する評価に関連して、ただいま議員の方から御指摘をいただいたものだというふうに受け止めております。
 実は、今回のこの短期賃貸借保護制度の廃止に至った法制審議会及び政府部内における立案の経過におきましても、明治以来ありましたこの制度を廃止するということに関しては、そういう結論を取るのか、そうではない別のやり方があるのかということについて大変に悩んだところでございます。最終的には一つの策に絞らなければいけないわけでございますから、法律案の内容策定としては、今般政府より提出申し上げているような内容になっておりますけれども、大変に悩んだ経過でこのような結論に達しているのだということは議員にも御理解を賜りたいところでございます。
 私も、先ほど内田参考人の方から御指摘があった刑事摘発やあるいは民事執行法上の様々な制度の改革によって対処すべきではないかという、あの御指摘なさっておられることと思いは全く同じでございます。紙一重違って、結論が短期賃貸借保護制度の廃止に向かった、あるいはそうではないというところで、結論はもう一〇〇とゼロのように分かれておりますけれども、思いはそんなに大きな隔たりのあるところではございません。
 その上で、今般の短期賃貸借保護制度の廃止に関連いたしまして、この廃止の提案が二つの側面を持っているということを強調申し上げたいと思います。
 一面は、もちろん言うまでもなく執行妨害対策という側面でございます。しかしながら、衆議院の審議においても明らかになりましたとおり、もう一面見落としてならないのは、賃借人の競売に際しての保護についての合理化を図るのだという側面、むしろ前向きの側面もあるのだということを、そちらも強調させていただいた上で、それぞれについて若干コメントをさせていただきたいと思います。
 まず、この執行妨害対策の面なんですけれども、先ほど内田参考人がおっしゃったように、刑事罰の強化ないしは民事執行法制上の処置の強化で進めるべきではないかというお話でございますけれども、それが大変よく分かると同時に、しかしながら、今日の御質疑でも指摘がありましたとおり、累次の民事執行法の改正等によって執行妨害に対してミラクルな改善ができたかというと、そうではなかったわけでございます。我が国、現下の経済情勢の中で、更にこの問題に対して抜本的な思い切った対処をしていかなければならないということを考えますと、繰り返しになりますけれども、実体法に踏み込んだ改正が必要なのではないか、こういうことが考慮の際に重要な要素を占めたところでございます。
 議員御指摘のとおり、いや、短期賃貸借保護制度を廃止したら執行妨害がなくなるんですかというお尋ねを受けますと、それは全くなくなりますということは申し上げられないはずでありますし、また激減しますかというお尋ねに対しても、いや、ここで絶対激減しますというお約束は事実の予測の問題でございますので申し上げかねるところでございますけれども、立案の段階の考え方の整理としては、執行妨害の画策の一つの手段を提供しているものを排除したんだという観点からこの政策の施策の立案に当たったということを強調させていただきたいというふうに考えます。
 もう一点の、賃借人保護の合理化ということに関しても指摘をさせていただきたいと思います。
 どうもこの短期賃貸借保護制度の廃止に関連いたしましては、正常賃借人の保護があるにもかかわらず、短期賃貸借保護制度を廃止するのかというふうなお尋ねを受けることが多うございます。にもかかわらずという言い方は、正常賃借人はどうなってもよいというニュアンスがやや含まれる部分がございまして、穏当を欠く部分があるのではないかというように私は受け止めております。正常賃借人の保護にもかかわらず廃止するのではなくて、正常賃借人の保護のためにも廃止をし、新しい制度による賃借人保護を考えるのであるということが今般提案の内容でございます。
 午前中の対政府質疑におきましても政府参考人より指摘があったことでありますけれども、例えば五年の賃貸借で建物を居住している者は、じゃ競売になったら有無を言わさず追い出されてよいのかというと、そうではないはずでありまして、やはりそのような建物に居住していた賃借人についても、中には高齢者がいたり、病気で伏せっている人がいたり、出産が間近であったりする人がいたりするのではないでしょうか。
 そのようなことを考えますと、やはりその期間の長短あるいは賃貸借契約の内容にかかわらず、政府原案では三月でございましたが、今般の御修正で六か月の明渡し猶予を与える、一律に与えるという今般改正は、議員御指摘の御心配も大変よく分かりますけれども、一つの意見としては成立可能なのではないかというふうに受け止めております。
 以上でございます。
○参考人(内田武君) 先ほど意見陳述の中で申し上げたとおりでございますが、ちょっと千葉先生が質問の中で口ごもったわけでありますけれども、保証金、敷金の確保をするために債務不履行を奨励するようなそういう形が起こるんじゃないか、あるいはそういうふうにして防御したらどうだという御意見がありますが、弁護士としてはなかなかそういうふうにまで明確に申し上げることはちょっとはばかるのでありますけれども、ただ、期間の定めのない賃貸借におきましては、先ほど山野目先生のお話にもありましたように、最高裁昭和三十九年六月十九日判決とお書きになっておりますが、要するに、解約の申入れができる、その場合の正当理由になるんだというふうに最高裁の判例が述べております。
 それと絡み合わせますと、今の三か月から六か月になった、六か月になったというのは、猶予期間が延びたということは相当配慮されているのではなかろうか、このように考えるわけでございます。
 それから、廃止とするか存続させるかにつきましては、これは先生方の政策の御判断の結果によるものと思います。
 以上でございます。
○井上哲士君 次に、逢見参考人に先取特権の拡大の問題でお伺いをいたします。
 任意整理の場合、早い者勝ちで、なかなか法知識が少ない労働者の下で必ずしも確保されないというお話がありました。私も、労働組合関係者に聞きますと、余りこの先取特権というものを今まで活用した例もないような、少ないというようなこともお聞きするんですが、現実で、そういう必ずしも周知されていないことによって十分に債権確保できなかったような、そういう具体例など、状況などがありましたら、ちょっとお教え願いたいと思います。
○参考人(逢見直人君) 私がかかわったものでこの先取特権行使したのはたった一つだけ例がございますが、これは、正に中小零細企業で経営者が夜逃げ同然になってしまってどうしていいか分からないというときに、まあ事実上倒産するんだけれども、その場合に賃金が入ってこないという相談を受けました。
 このときに、私どもの顧問弁護士に相談したら、これは先取特権の行使をすべきだということで、たまたま売掛金がどこに幾らあるということが分かったものですから、その売掛金に対して、かつ、従業員数が二十人ぐらいと非常に少なかったので、委任手続を取って、それで先取特権行使の申立てをした。それでも、中四日ぐらい掛かりまして差押命令が出たんですが。
 これは他の債権者よりも行動が早かったことがうまく使えたことだと思うんですが、しかしながら、これが、ほかとの早い者勝ちの争いによってほかの人たちが取りに来ていたときにこれが機能できたかどうかということについては、後から考えると非常に難しかったなと。非常に、そういう意味では、使えたという、条件が整っていたケースでありまして、それ以外のところはなかなか使えない。
 使えないという意味は、まず必要な書類をちゃんとそろえられるか。賃金明細が手に入らないというケースもあるわけですね。それから、差し押さえるべき債権の特定ができるかどうか。それから、果たしてその差押申立てをして裁判所が何日で出してくれるかと。この条件が整わないケースが多くて、それ以前に差押手続を取らない形で終わってしまうというケースが圧倒的に多いのではないかと思います。
 以上です。
○井上哲士君 先ほど一般先取特権の行使に要する証明文書として何が必要かが不明確だというお話がありましたけれども、これは必ず必要とされる、これはそうでもない、そのグレーゾーンで、明確にしなくちゃいけないものが何か特定できるのであれば、これもお教え願いたいと思います。
○参考人(逢見直人君) これは、今回の改正によって、民法の場合は雇人の給料ということでしたが、これが商法になったことによって雇用関係によって生じたすべての債権ということになりますので、その範囲が拡大されます。
 そうすると、給料については給与明細があればいいと。退職金は退職金規定ですが、退職金規定に基づいて個々の退職金額の明細が付いていなきゃいけないと。これは大体我々も理解しているんですが、あと、じゃ例えば解雇予告手当はどうするのかとか、有給休暇の未消化分はどうなるのかとか、それ以外の労働に係る債権をどうやって証明するのかと。そうなると、まだ非常に不明瞭なところが非常に多いわけですね。これについては、やはり早くその整備をする必要があるのではないかと思います。
○井上哲士君 最後に山野目参考人にこの問題でお聞きしますけれども、今回、民法の先取特権の保護を受ける範囲が拡大をしたわけでありますが、やはり同じ現場で同じように隣で働いている人が倒産という現実に直面したときに、その雇用の形態によって全く違う保護になってしまうという問題はまだまだ残るわけで、先ほど逢見参考人からは労働組合法でいうところの労働者について保護が全部できるように広げるべきだという意見もございました。これについて御意見をお聞かせください。
○参考人(山野目章夫君) 従来の民法の三百八条の規定が雇人が受くべき給料という仕方で規定をしておりましたところ、今般提案申し上げております改正におきましては、六か月という制限を取り払うということだけではなくて、既に御案内のとおり、どのような債権を持つどのような主体が行使するものであるかということにつきましても修正、改正が行われるわけでありまして、これはもちろん狭める方向での改正ではなくて、拡大する方向での改正であるというふうに私は受け止めております。
 この点、衆議院における審議におきまして、私、必ずしも政府を弁護する立場にありませんけれども、政府参考人からも繰り返し明確に御答弁を申し上げているとおり、この雇用関係に基づき生じたる債権というものは労務の対価に当たると実質的に判断されるものを広く含めるものとして解釈すべきであるということが明確に述べられているところでありまして、今般、この本院及び衆議院における審議の過程で、このような新しい賃金の民法上の先取特権の範囲についての確認が立法府においても広く定着、確認していただければ、今後の法律運用にとって大変によろしいのではないかというふうに考えております。
 その上で、この労務の対価に当たるというふうに実質的に判断されるものを広く含むという一般的指針は、申し上げましたとおりそれでよろしいと思いますけれども、さあ何をもって実質的にというべきなのかということでございますけれども、これは何分にも、その具体の事案が上がってきたときにそれを扱う裁判所の認定判断を待つしかない事柄でありますから、画一的、一般的な方針のようなものを立法府の御審議において御確認いただくことは難しいのではないかというふうに考えますけれども、一般的な指針として、私自身は次のように考えております。
 まず、重要な要素として、報酬が時間給、日給、月給など時間を単位として計算されている場合には、これはそれが従属的な労務の提供に対する報酬としての性格を持つものであるということを疑いないというふうに解釈させる重要な要素になるものだというふうに考えます。
 もう一点添えますと、しかしながら、反対にそのような要素がないものは、今度は給料ないし労務に対する報酬としての性格付けを与えられないのかというと、そうではなくて、例えば、様々な非正規雇用の形態で、出来高で賃金が計算される場合もございますけれども、出来高であるからといって、必ずしも給料ではない、あるいは雇用関係に基づいて生じた債権ではないという解釈が取られるべきではない。
 あわせてまた、労働の現場におきましては、とりわけ建設業などの様々な局面においては、労務者の方から、労働を提供する者の方から請求書を提出させて報酬の計算をするような事例も見られるところでございますが、そのような場合も、請求書の提出を要求するからといって、直ちにそれが雇用関係ではない、全く純粋の請負的なものであるというふうに解釈されるべきことも適当ではないということを明確に申し上げた上で、この段、今般の御院における質疑の過程などにおきまして確認されれば大変よろしいのではないかというふうに考えるものでございます。
 以上でございます。
○委員長(魚住裕一郎君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
 参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、大変お忙しいところ貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。当委員会を代表して厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。(拍手)
 速記を止めてください。
   〔速記中止〕
○委員長(魚住裕一郎君) 速記を起こしてください。
 これより質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○鈴木寛君 民主党・新緑風会の鈴木寛でございます。
 担保物権及び民事執行制度の改善のための民法等の一部改正法律案について質疑をさせていただきます。
 冒頭に厚生労働省にお伺いをさせていただきたいと思いますが、午前中の同僚の千葉委員からの質疑の中でもございました、正に労働債権と租税債権あるいは担保債権との関係についての御質疑を受けて、更に質問をさせていただきたいというふうに思います。
 御答弁は、これは例えばILO百七十三号条約などにもあって、その批准、それに伴う国内法の整備といったものと絡んでくるわけでございます。この重要性については、この委員会の質疑の中で、政府側も含め共通の理解が得られたとは思いますけれども、しかし、今回の改正案の中に盛り込まれてないことは事実でございます。そして、この労働債権のいわゆる劣後問題については、ただいまUIゼンセン同盟政策局長の逢見参考人からも強く再考を求める御意見がございました。そうした御議論を踏まえまして、私は再度質問をさせていただきたいと思いますが。
 今回の法律の提案理由説明の中に、正に社会経済情勢の変化ということがうたわれてございます。昨今のこの経済情勢の大変に厳しい、そしてその中でいわゆる賃金の不払というものが行われていて、そしてそれが実質的に解消できないと。こういう、正に社会経済情勢の変化というものを抜きにこの問題は論じられないんだというふうに私は思います。そういう意味で、いわゆる広義のということで御理解をいただきたいわけでありますが、要するに、一生懸命働いて、汗水垂らして働いたその対価がもらえないと。これを取りあえず今日の議論では賃金不払の実態と、そしてそれが解消されないということも含んでお話をさせていただいているわけでございますが。
 この正に倒産あるいは経済、経営状況の悪化に伴う賃金不払の状況というものについて、厚生労働省は今どのように把握をしておられるのか。正に社会経済情勢の悪化の状況について御説明をいただきたいと思います。
○政府参考人(青木豊君) 賃金不払の状況でございますけれども、必ずしも倒産に伴う賃金不払ということではございませんけれども、賃金不払全体で、平成十年から平成十四年までが一番新しい数字ですが、を見ますと、平成十年、一万六千件強でありましたのが、平成十四年では二万三千三百五十六件ということでございます。対象労働者にしまして五万四千余でありましたのが、平成十四年には七万二千三百六十一人ということになっております。不払賃金額が、平成十年には二百三十八億円余でありましたのが、平成十四年には二百七十六億五千五万七千円というようなことになって、増加しているという状況でございます。
○鈴木寛君 ありがとうございました。
 正にこの四年間の中で、間で、件数で見ても対象労働者の数で見ても、正にこの救済すべき実態というのはいろんな意味で一・五倍ぐらいになっていると。この経済情勢の急速な変化というものをやはり我々はきちっと認識をすべきだというふうに思いますし、その点を踏まえて、正に午前中議論となりましたILO百七十三号条約の批准、そしてさらには、この国内法制の再整備ということについては、引き続き我々はこの国会でも、あるいは関係御当局にあられても更なる検討を継続をしていただきたいし、更に深めていただきたいというふうに思いますが、厚生労働省、いかがでしょうか。
○政府参考人(青木豊君) 今御質問のありましたように、百七十三号条約も大変、労働債権の保護という点では十分議論され、大変重要な問題だというふうに思っております。様々な議論がある中で、こういったことも踏まえまして、厚生労働省におきまして、専門の学者から成ります研究会を組織いただいていろんな議論をしていただきました。かなり深く御議論いただいたと思っているわけでございますが、まだ更に議論を深める必要があるという結論でもございましたし、私どもとしては今後とも、労働債権保護の方策とか問題点、必要に応じて研究し、勉強していきたいというふうに思っておるところでございます。
○鈴木寛君 これ、是非与党の委員の先生方にも御認識をいただきたいと思うんですが、これは労働債権の定義いかんだとは思いますけれども、例えば個人事業者とか中小零細業者とか、とにかく一生懸命働いて、そして労務を行って、そしてその対価が解消されないという事態に対してどういうふうに取り組んでいったらいいかという問題でございますので、正にこの委員会を挙げて、この問題については引き続き、是非更なる御検討をお願いを申し上げたいというふうに思っております。
 厚生労働省、もう結構でございますので。ありがとうございました。
 引き続き、この労働債権関連で御質問をさせていただきたいと思いますが、これも午前中の審議で、何が変わったのかという御答弁の中で、商法と同じようになったと、こういう御答弁でございましたが、商法と同じというのは何が同じなのかということで、今回、正に雇人の給料といったものがより拡大をされたということでありますけれども、少し、何が増えていったのか、外延がどう広がっていったのかということについて二つの観点から御説明をいただきたいと思います。
 その一つは、給料というものがもう少し広がったということが恐らく一つあるんだと思いますし、それから雇人というところが、このいわゆる対象とされる当事者が広がったと、この二つの観点があると思いますが、それぞれの観点について、今回の改正で何が具体的に広がっているのかということについて御説明をいただきたいと思います。
○政府参考人(房村精一君) 御指摘のように、同じ労働債権に係る先取特権でございますが、商法と民法ではその保護の範囲が異なっておりまして、商法では会社と使用人との間の雇用関係に基づき生じたる債権と、こうなっておりますのに対して、民法では雇人が受くべき最後の六か月間の給料に関して先取特権が認められると、こうなっております。
 今回、この民法の規定を商法の保護の範囲に合わせるという改正をしたわけでございますが、まず第一に違ってまいりますのが、その人の範囲でございます。
 これは民法で現在雇人と書かれておりますことから、一般的にはこれは、民法の典型契約である雇用契約に基づいて雇われている人、その人が対象だと、こういう具合に理解されております。これに対しまして商法の、会社と使用人との間の雇用関係と、こういう定義でございますので、これは、雇用契約に限らず、委任あるいは請負と、こういうような契約形態を取っていてもその実質が雇用関係と認められれば先取特権の保護が与えられると、こういうことが言われておりますので、今回、商法に合わせて、この雇用関係ということで広い範囲に一致させたということでございます。
 それから次に、その債権でございますが、これが民法では給料と、こうなっておりますので、給料債権、解釈で、退職金についてこれは給料の後払いだというようなことで六か月分認めるという解釈がなされておりますが、いずれにしても給料債権に限られております。これに関しまして、商法では雇用関係に基づき生じたる債権ということですので、もちろん給料が中心ではございますが、例示されております身元保証金とか、必ずしも給料に限らず雇用関係に基づいて生じた債権であれば広く入ると、こういう性質上の差がございます。
 それともう一点、民法では最後の六か月間という期間の限定がございますが、商法では雇用関係に基づき生じた債権であればその全額が保護の対象になる。
 以上の点が今回の差でございます。
○鈴木寛君 正に実質的ないわゆる雇用関係に注目し、委任あるいは請負という契約形態であっても含むんだというのは、大事なといいますか、重要な改正でありますし、望ましい改正だというふうに私も評価をいたします。
 それで、実質的な判断は後は裁判所だと、こういうことかもしれないんですけれども、やはりもう少し御議論を深めさせていただきたいというふうに思っております。
 最近のいわゆるリストラクチャリングといいますか、経営革新の手法の一つといたしまして、例えば課長さんとか部長さんとかといった管理職、総務をやったり営業部長さんをやったり経理部長さんをやったりという方を、いったんこれ、社員ではなくて独立をさせまして、形式上、そして会社を作っていただいて、そして、その会社の経理部門を元の経理部長さんが新しく作った会社にアウトソーシングをするとか、あるいは元の営業部長さんが作った会社に営業委託をするとか、こういったことが、経営学ではこれ、アウトソーシングという言い方で割とポジティブに、もちろんポジティブな面もないわけではないわけでありますけれども、非常に盛んに行われ始めております。
 例えば、これは仕事の実態からいたしますと、正に経理部長に引き続き経理部長の仕事をしてもらう、経理課長に引き続き経理課長の仕事をしてもらう、あるいは営業部長は営業課長に引き続きその営業の仕事をしてもらうということで、仕事の内容あるいは指揮命令系統、もちろんリスクの負担とか若干違ってくるかもしれませんが、こういうケースがございます。
 例えばこういう場合は、新しく改正されるところのこの雇用関係に該当するのでしょうか、どうでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) 御指摘のような場合ですと、形式的には契約の当事者は法人、新たに設立された会社ということになります。ただ、御指摘のような、実質的には、その会社の主体である人が、個人が労務提供している、指揮命令系統も従来と変わらない、いわゆる雇用関係と同じような指揮命令がなされている、あるいはその報酬の対価の定め方も労務提供の場合と基本的には変わらないと、そういうような事情があれば、これはあくまでも、法形式ではなくて、その実態に即して雇用関係に基づく債権という認定がなされ得ると考えております。
○鈴木寛君 ありがとうございました。
 この点については、恐らくいろんなケースがこれから出てまいろうかと思います。そういう意味で、現場、いろんな現場がございます。裁判の現場、あるいはさらに、その前段階の様々な正に労務を提供しているという現場に混乱を招かないように、いろんな形でこの解釈あるいはこの法律改正の趣旨については徹底をさせていただきたいというふうに思いますので、是非よろしくお願いを申し上げたいと思います。
 それでは次に、次の論点に移りたいと思いますが、今回の改正ですね、大変に多岐にわたる改正でございます。その中の大きな柱の一つに、本当に大きな柱がこれまた幾つもあるわけでありますけれども、大きな柱の一つに、不動産競売手続がいろいろな方の存在によって、なかなかいわゆる健全な権利の実現というものが行われていないという実態を踏まえて、この不動産の競売手続をより、何といいますか、ワークするものにしていこうという改正だというふうに私は理解しておりますが、その前提といたしまして、最近の不動産競売手続、あるいは不動産競売の件数とか額とか、これがどういうふうな動向にあって、そして最近の競売はどういう特徴があるのかという、まず実態についてお教えをいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○最高裁判所長官代理者(園尾隆司君) 不動産競売の件数、それから金額についてのお尋ねでございますが、債権額については裁判統計として把握してございませんので、不動産競売の件数についての御説明をいたします。
 不動産強制競売事件と不動産担保権実行事件の合計数を不動産競売件数として御説明いたしますが、民事執行法の施行以来昨年までの二十二年間の不動産競売件数は、最も少ないときで約四万一千件、最も多いときで約七万八千件となっております。最も少なかったのはいわゆるバブル期である平成二年でございまして、最も多かったのは不良債権処理が活発化いたしました平成十年でございます。平成十年に最多の申立て件数となって以来昨年までの五年間は、不動産競売件数は七万件台という高い数値が持続しておりまして、昨年、すなわち平成十四年の不動産競売件数は七万七千六百七十四件となっております。
○鈴木寛君 正に今回の改正の理由の一つが、いわゆる悪質な競売妨害というものがその理由の一つだというふうに思っておりますが、悪質な競売妨害が、これ増えているというのがなかなかこれ把握がしづらいとは思うんでございますが、世の中の方に、いかにこの競売妨害というものが問題化しているかということについて、何か御説明をしていただけるデータなり実態なりがございましたら、よろしくお願いを申し上げたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(園尾隆司君) 競売妨害につきましては、執行官からの報告というようなことで裁判所としては把握するということでございますが、現状を申しますと、競売妨害には二種類のものがございまして、競売妨害はかつてからあったわけですが、なお大変厳しい状況にあるということでございます。二種類のうちの一つは粗暴な行為による妨害でございまして、もう一つは第三者の占有による妨害というものでございます。
 粗暴な行為による競売妨害の事例といたしましては、例えば暴力団の看板を掲げまして建物内に暴力団員を出入りさせる、敷地内に大量の土砂や産業廃棄物を運び込む、それから建物をペンキなどで汚損するというような事例がございます。また、建物の敷地内にドーベルマンなどのどうもうな犬を放し飼いにする、あるいは最近の事例では建物内にワニを飼育するというような事例もございます。
 次に、第三者の占有による競売妨害の事例といたしましては、看板や表札を掲げて占有を仮装するということに始まりまして、占有屋が自ら住み込み、あるいは占有屋の配下の第三者を住まわせるというような形態の妨害もあります。あるいは、事情を知らない外国人などの第三者に物件を占有させるというものもございます。最近の特に悪質であると思われる事例といたしましては、身寄りのない老人を連れてきまして、競売建物に住まわせて執行妨害をするというようなものもございます。
○鈴木寛君 私も執行官の方々の大変な御苦労について勉強をさせていただきました。本当に大変だなというふうに思いましたし、今、最高裁の方からも非常に生々しい御報告をいただきまして、十分この立法、必要性があるなということを確認をさせていただいたわけでありますが、正にこの法務委員会、あるいは国というものは正義の実現というのは極めて重要だというふうに思っております。正にそうしたけしからぬ事態に対して我々断固取り組むんだと、こういうことで今回の改正案を御提出をされているんだと思いますし、我々も審議をさせていただいているんだというふうに思います。
 そういう中で、正に日本の正義を実現をする森山法務大臣、是非この改正についての、特にそうした悪質な競売妨害に対して断固臨むんだと、そういう姿勢について御答弁をいただきたいと思います。
○国務大臣(森山眞弓君) 大変恐縮でございます。
 不動産競売手続に関しましては、平成八年と平成十年に民事執行法が改正されまして、執行妨害対策の強化などが図られてきたところでございますが、その後も、今お話がございましたような思いも寄らないやり方をいろいろと使いまして、いわゆる占有屋等による執行妨害がなくなっておりません。更なる対策を講ずべきであるというふうに指摘されております。
 そこで、この法案におきまして、民事執行法上の保全処分の発令要件を緩和するとともに、保全処分の相手方を特定しないで発令することができるようにするなど、不動産執行妨害への対策を強化することによりまして権利実現の実効性の確保を図りたいと考えております。
○鈴木寛君 どうもありがとうございました。
 今回の、正にこの不動産競売手続の改正でございますけれども、関係条文が非常に多岐にわたってございまして、要は実務制度上、今までと今後とどういうふうに違うのかというのはかなりこれ複雑な規定になっておりますので、民事局長にお願いをしたいんでございますが、正に不動産競売手続というものが今後どういうことになるのかということを、実務のこの段階、順を追って御説明をいただきたいというふうに思います。
   〔委員長退席、理事荒木清寛君着席〕
○政府参考人(房村精一君) 今回の不動産競売手続の改正、委員も御指摘のように多岐にわたっております。そういうものを総合して何とか執行妨害等に対する対応をしていきたいと、こう考えておるところでございます。
 順次改正内容を御説明させていただきますと、まず第一に、執行妨害で不動産の、不動産といいますか、目的物件の価格を下げるような行為、先ほどもありましたが、暴力団の看板を出したりいろんなものを運び込むと、こういうものに対応するために現行法でも保全処分が認められております。しかし、この保全処分は不動産の価格を著しく減少する行為という要件を満たした場合に発令できるとなっておりますが、最近の妨害の態様が非常に巧妙化して、なかなか「著しく」ということを立証するのが困難だという指摘がございました。それを入れまして、今回、「著しく」という要件を落としまして、不動産の価格を減少する行為を行っていれば保全処分が発令できると。これによりまして、相当程度に対応が可能になるのではないかと思っております。
 それから次に、そういう法的手段を取りましても仮に裁判所の命令を取っても、その現場に行くと占有者が既に替わってしまっている。占有者がくるくる替わっておりますと、結局そのために手続を一からやり直さなければいけないと。こういう手口で免れておるという指摘がございましたので、今回は、そういう占有者が具体的に特定できない場合には占有者を特定しないまま裁判所の命令を発令する、その命令を持って現場に行って執行するその段階で占有者を特定すればいいと、こういう新しい制度、従来の手続に比べますと相当思い切った制度でございますが、こういったものを工夫いたしました。
 これを活用していただければ、今暴力団が盛んに行っておりますそういう占有者がくるくる入れ替わることによって法的手続を免れていると、これに対しては対抗できるのではないか、こう思っております。
 それから、そもそもそういう占有している人がだれであるかを特定するために執行官が調査に赴くわけでございますが、これに対して質問に答えないというような事例が間々ございます。現行法では過料の制裁しかありませんので、これを、罰則を強化いたしまして、その制裁の強化によって適切な質問権の行使をして、これによって占有者の特定を図っていくと、こういうことも考えております。
 手続的には以上のような工夫をしているところでございますが、更に進みまして、いわゆるそういう執行妨害をする人たちに濫用されにくい実体法の規定を整備すると。こういう観点から短期賃貸借制度について思い切った見直しを行って、これを廃止すると同時に、保護されるべき占有者を保護するための明渡し猶予制度、あるいは抵当権者の同意を得て対抗力を与える制度と、こういった新しい制度を作ることによりまして、より合理的な抵当物件についての利用権の保護、こういうものを図っていきたいと、こう考えているところでございます。
○鈴木寛君 どうもありがとうございました。
 今御説明のございました新しい不動産競売手続のそれぞれ幾つか懸念されることについては、午前中の千葉委員の質疑の中で明らかにされましたので、私は少し違う観点から御議論をさせていただきたいと思います。
 今も局長の御答弁の中にありましたように、今回、私は日本の法制史に非常に残る改正だというふうに思っております。それはいろんな観点がありますが、民法本体に手を付けたと。これは先ほどの参考人の御質疑の中でもございました。もちろん、成年後見法の改正はございますが、いわゆる民法の財産法の絡みで言えば、昭和四十六年以来三十年ぶりに民法本体に手を付けたということでありまして、恐らく来年からの大学の民法の講義の中ではこのことは必ず触れられるんだというふうに思います。
 加えまして、私は、今回、不特定の者に対して様々な処分、命令を出せるということに踏み切られたと。これは正に執行の現場あるいは権利実現の現場の状況にこたえてといいますか、正に悪質な占有屋と称せられる方々の不正行為に対する措置として、今回の改正の内容については私は基本的には賛成をいたしております。
 むしろこれは、私は発展的な議論をという意味で議論を提起させていただいているわけでありますが、これも、日本の民事訴訟法というのは、およそ請求は当事者、請求の趣旨及び原因によって特定されなければならないということを民事訴訟法の一番最初の授業で教わるわけですね、これ。
 今回の、もちろん訴訟法あるいは執行法、保全法、何か所か出てまいります、民事執行法の五十五条の二、民事執行法の二十七条、民事保全法の二十五条の二などに。要するに相手方を特定しないでという条文が幾つか出てまいりまして、正にこのことはエポックメーキングなことだというふうに、私はポジティブに申し上げているわけでありますが、いうふうに思います。
 それで、ちょっと話は飛びますが、この三十年間、民法あるいは民事訴訟法をめぐっていろんな学説あるいは判例の積み重ねによって議論になっていた、あるいは懸案として積み残されている問題というのは幾つかありますですね。今回、強制執行における間接強制の補充性の御議論には今回立法でもって決着を付けたということで、非常に今までの議論がすっきりしたということで、これは私は正に立法がきちっと今までの学説とか判例のいろいろな議論の積み重ねの上に、しかし最後に決着をさせたという意味でいい事例だというふうに思っております。本当は時間があれば、こちらの方もきちっと御議論をさせていただきたいわけでありますが。
 そういう中で、正にこの訴訟物の抽象性といいますか、特定の基準というものも本当にこの何十年間か、学説、判例というものが様々に割れてきた、あるいはそうしたものの積み重ねが行われてきた分野だというふうに思います。正に、請求の特定と、それによって連結される執行の可否というものをどういうふうに考えたらいいのかという基本原則を、正に清水の舞台から飛び降りて、一歩ジャンプをして新しい事態に対応していこうと、こういうことだというふうに思うんでございますが。じゃ、これ、私の問題意識は、どういう方針でどれぐらいジャンプするのかと、こういうことがやっぱり、これは明らかに日本法制史の新たなページを開く立法例になるわけですね。今回は正に係争物が不動産であると。
 それから、ここはちょっと御議論を深めたいわけでありますが、訴訟のところをいじっているのか執行のところをいじっているのか、どこの部分を、その清水の舞台を飛び降りたのかということについてのちょっと御議論をいただきたいわけでありますけれども。
   〔理事荒木清寛君退席、委員長着席〕
 幾つかの限定があります。限定がありますけれども、この立法例が次なる立法に多大な影響を与えると思いますので、その辺り、何のどういう点について踏み込んだのかという、大英断を下したのかという、日本法制史に残るであろう民事局長からの御答弁をいただきたいと思います。
○政府参考人(房村精一君) 確かに御指摘のように、大学で訴訟法等を勉強した身からいたしますと、相手方を特定しないで裁判所が命令を出すというのはほとんど信じ難いような思いもするわけでございます。
 ただ、この問題が起きましたのは、もちろん実際の必要性があるからではありますが、同時に、なぜ、では訴訟手続等、保全も含めてですが、当事者を特定しなければならないのかということを考えますと、大きく分ければ二つの理由があるだろうと。
 一つは、裁判所の命令が効力を生ずる相手が決まらなければ全く意味がないわけですので、そういう意味で、その効力が生ずる相手をはっきり決めなければいけない、それが一つでございます。それからもう一つは、その手続内で裁判によって不利益を仮に被るとすれば、自らの地位をきちんと防御できなければならない、そういう意味で、手続としては当事者が特定していないといけない、この二点だろうと思います。
 今回、問題になっております部分を見ますと、現実にくるくる替わって困っているということは当然前提としてあるわけですが、もう一つは、そういう執行のレベルで申し上げると、保全処分の効果の相手は執行の時点で特定すれば、効果の相手方としては正に一番必要な人をそこで捕まえられるわけでありますので、そういう裁判の効果を帰属させる相手を特定するという観点からすれば、現に執行する段階で特定すれば足りるということはまず言えるわけでございます。
 次に問題になりますのは、じゃ、そうしたときにその人の権利が不当に害されないのか、防御の機会が与えられなくていいのかということになるわけでございますが、これは正に保全処分の密行性という観点から、現実には相手方を審尋したりするということは一切いたしません。相手方に知らせないままに審理をいたしまして、発令をして、送達も執行と同時でいいと。正に、事前に知らせますとくるくる替わられてしまうという、そういうことがあるので、現実の保全処分等の発令というのは密行性が要求されております。その保護はどうやって図るかといいますと、それに対する執行抗告を認めると、こういう形で保護が図られております。
 したがいまして、実際の今の実務の運用に照らしても、発令段階で相手方を特定して防御の機会を与えなくても、それは発令後、特定された者が執行抗告の機会がきちんと保障されていれば、それは今特定して発令している場合とほとんど大差がない、そういうことがございます。
 したがいまして、特定をしなければならないという二つの要求に対しまして、いずれもその執行の段階で特定をすれば満たせると。あくまで、この当事者の特定というのはアプリオリに要求されているわけではなくて、今申し上げたような必要性があるから認められているわけでございますので、現実のそういう困難が生じているということと今のような事情を併せ考えますと、今回やりましたような思い切った制度というものも決して従来の制度を本質的に変えたわけではない、従来なかった新しい制度ではありますが、従来考えていた当事者の保護というものは十分図られていると、こういう具合に考えております。
○鈴木寛君 今回の正に考え方については、今整理していただいて分かったわけでありますが、実は私は、つい最近まで、この物中心社会のルールメーキングあるいはそのエンフォースメントから、正に情報中心社会といいますか、情報社会におけるルールメーキングとそのエンフォースの問題というものをいろいろ考えてきた者なわけでありますけれども、現実的要請といいますと、一つ例を、このジャンプはいろんなところに使えるという一例として御紹介を申し上げるわけでありますが、ソフトウエアのいわゆる不正利用といいますか、これは大変な社会問題の一つであります。正に、先日まとめられました知的財産の、知財本部の閣議決定、計画ですか、そこでも、知財立国の中の極めて重要なポイントの一つは正に知的財産権を有するソフトウエア、その侵害という問題でございました。
 これは、恐らくソフトウエアが不正に利用されている事案というのは世の中にもうあまた存在しているだろうということは大いに予想が付くわけでありますが、しかし、この侵害者を特定をして、そして更にその侵害を差し止めるとか、あるいは侵害をさせないと、正に知的所有権に基づく、財産権に基づく妨害排除請求とかあるいは妨害予防請求というのは極めて難しいと、これが正に知財にかかわるルールメーキングとエンフォースメントの本質的な悩みなわけであります。
 今回、正に不動産であります、係争物は。それから、請求内容は占有移転の禁止とか明渡しとかと、こういうことでありますけれども、そもそもこうした制度の目的は、一定の侵害結果を生ぜせしめないためにどういう制度設計をするかということでいろんなことがなされているんだと思います。
 そのときに、その反対項の悪影響といいますか副作用が最小化されていればいいんだと、正に最小化されているという御答弁だったというふうに今の御答弁は思うわけでありますが、そうしたときに、しかも、本件は担保物権に基づく請求でありますけれども、今の例えば知的財産権でも、フルサイズの要するに所有権に基づく請求権、物権的請求権でありますから、そういう意味では、例えばこの場合も正に特定することが極めて難しいという事情、ある意味ではもちろんこのままそっくり活用できるとは思いませんけれども、しかし、今まではこんなことはおよそやってくれないだろうと、法務省はと、世の中思っていましたが、それ以外の方法論でもっていろんな知恵を絞ってまいったわけでありますが、こういうこともいわゆる現実的ニーズがあればやるんだということは、正に世界各国でそういうリーガルエンジニアリングといいますか、新しいその法技術を革新をして、それを、実務をより新しいニューオーダーを作っていこうという人にとっては大変なメッセージなわけでありますけれども、そういったことについても、是非、今回の改正を機にこの民法、民事訴訟法のそもそも論ですね、民法は作られて大体百年たったというふうに理解をしておりますけれども、物中心社会から情報中心社会の中で、恐らくこの民法典、民事訴訟法と、体系というものも抜本的に作り直さなければいけないと思うんですが、そういう検討、あるいはそういう視点というものについて、局長はどのように御理解をされ、どのように取り組んでおられるのかということについて御答弁をいただきたいと思います。
○政府参考人(房村精一君) 裁判手続の場合は、原則はやはり両当事者がその手続内でお互いに攻撃、防御の方法を尽くして、その上で裁判所が判断をするというのが原則だろうと思っています。したがいまして、そういう原則からすれば、当然、訴え提起の段階あるいは申立ての段階から当事者を特定するということが望ましいことだろうと思っております。
 ただ、今回お願いしましたような、なかなか当事者を特定して手続を開始するということが困難な場合があるというのも事実だろうと思います。そういう場合にどういう方法が取り得るかということは、そのいろんな実情によってまた違うと思いますが、一般的に申し上げれば今回のような考え方というのも十分あり得るだろうと。どうしても当事者を特定して裁判をするということが困難であり、しかも特定しないで行ってもその相手方の保護に欠けることがないというようなそういった事情があれば、それはそういうものにふさわしい手続を工夫する余地はあるだろうと思っております。
 が、現在の段階で、私どもとして民事法の分野でほかにあるかと言われますと、それは具体的に思い当たるところはありません。しかし、必ずしも今回のこの手続に限らず、今後手続等を見直すときには、その手続の要求している各要件についてその根拠までさかのぼり、かつ実態の必要性、こういったものにも配慮をして検討はしていきたいと、こう考えております。
○鈴木寛君 もちろん、これ、大変な改正といいますか、大原則の変更を提起をさせていただいておるわけでございますので、直ちに今日それ以上の御答弁をいただけるということは、今の御答弁でも非常に踏み込んでいただいて有り難く思っているわけでありますが、しかし、非常に大事な話ではあるというふうに思っております。
 今は知的財産権についての御議論をさせていただきましたが、これもまた延々続いている議論といたしまして、例えば生活妨害の差止め請求という話についても、結局、この抽象的請求権をめぐって、あるいは特定の基準をめぐってずっとこの学説あるいは判例というものが割れてきました。しかし、要するに今回のことは、およそ権利者の権利というものをきちっと実現をしていこうという基本に立ち返って、もう一回法制といいますか、あるいはその執行も含めて、訴訟、その立法と訴訟と執行と、この三段階をきちっと見直しましょうと、こういうことだというふうに思っておりますので、そういうこの何十年間積み残されている問題に対して、是非、この分野以外にも果敢に私は、少なくとも検討は取り組んでいただいたら有り難いと思いますし、これはなかなか司法改革だけの議論では済まない議論だと思います。
 およそ今後の正に立法府が行う立法というものの基本的な考え方というものをどういうふうにデザインをしていくかという根本論にも立ち返りますので、今私が申し上げていることは、もちろん民事局長にお願いするとともに我々の問題として受け止めなければいけないというふうに思っておりますが、正に民事局長が平成の梅先生になれるかどうかというところにも懸かっておりますし、是非法務大臣にお願いを申し上げたいのは、民法典ができるときは伊藤博文は必ずその会議に出席をしていたという事例もございますので、正にそうした意味でも、政治家がイニシアチブを取りながら専門家の方々と協調して新しい法体系を作るその端緒に今回の改正がなることを祈念をいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
 どうもありがとうございました。
○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。労働債権の先取特権についてお聞きをいたします。
 先ほども厚生労働省が把握している賃金不払の実態の質問がありましたが、対象労働者数そして不払賃金額、十年前と直近の数字の比較をいただけるでしょうか。
○政府参考人(青木豊君) 十年前の賃金不払額、平成五年でありますけれども、対象労働者四万三百七十九人、平成十四年、直近の数字が七万二千三百六十一人ということでございます。
 それから、不払賃金額は、平成五年、百二十五億でございます。そして平成十四年が二百七十六億五千五万円ということでございます。
○井上哲士君 今ありましたように、不払賃金は十年前の倍に急増をしております。この中で、破産に伴う不払が発生をしたときに、労働現場では全く同じ労働をしていても、契約の形の違いでその債権の取扱いに非常に大きな差が生じます。特に建設業の現場のことを中心にお聞きをするんですが、いわゆる手間請、それから一人親方と言われる請負的就労者が建設業界はたくさんいるわけですが、見掛け上は請負契約だ、しかし、ということで、債権は工事代金とされまして一般債権扱いをされてしまい、使用者企業が倒産した場合にはほとんど配当を受けられないということがあります。
 今回の改正でこの部分の保護を広げるということでありますけれども、その改正の考え方、精神というのはどこにあるのか、そしてそのことによってこういう請負的就労者にとってどういう法的な効果が及ぶのか、まずお願いいたします。
○国務大臣(森山眞弓君) 現行法の下では、株式会社における使用人の労働債権の先取特権につきましては商法第二百九十五条が、それ以外の雇人の労働債権の先取特権については民法第三百八条がそれぞれ規定しております。
 これらの先取特権の対象となりますのは、商法では雇用関係によって生じた一切の債権でありますが、民法では六か月間の給料に限定されております。また、先取特権の主体も、商法では会社に対して労務を提供して生活を営んでいる者であれば委任、請負等の契約に基づく者も含まれますが、民法では雇用契約に基づく者に限られております。
 しかし、先取特権による保護の範囲にこのような差異を設けますことは必ずしも合理的だとは言えないわけでございまして、このような差異はその保護を拡大する方向で解消することが相当だと考えられます。そこで、この法律案では民法第三百八条の内容を商法の規定と同一内容にまで拡大することとしております。この改正によりまして、手間請などの請負的就労者についても、その就労者が債務者に対して労務を提供して生活を営んでいる者であれば民法第三百八条の適用を受けるということになりまして保護が図られることになると考えております。
○井上哲士君 広い方に合わせたわけですから、労働者の保護を拡大しなくちゃいけないと、こういう考え方があると、こういうことでよろしいですね。
○国務大臣(森山眞弓君) おっしゃるとおりでございます。
○井上哲士君 請負的就労者であっても、実態から判断をして、実質的な雇用関係があれば民法の先取特権の保護対象としていくということは大変な前進です。このとき重要になりますのは、じゃ労働者性をどう判断をするかということになると思うんです。
 一九九六年に旧労働省の労働基準法研究会労働契約等法制部会労働者性検討専門部会報告というのが出ておりますが、この中で労働法にかかわって労働者性の判断を示しております。この報告をまとめた基本的な考え方、この点どうでしょうか。
○政府参考人(青木豊君) 労働基準法の労働者かどうかというのが言わば労働法上の保護を受けられるかどうかということで、極めて基本的なことでございますので、大変大切な概念であります。それにつきましても、今御議論ありましたように、その名称にとらわれず、その実態により判断するということとしてずっと来ております。
 ただ、具体的事案については、大変労働者かどうかということが難しい場合も出てまいりますので、今お話にありました一九九六年、平成八年に、労働者性の判断について特に問題となる事例が多いと思われます建設業の手間請の労働者とそれから芸能関係について、平成八年にその労働基準法研究会労働者性検討専門部会において一般的な判断基準というのをより明確化しまして、具体的な、具体化した労働者性の判断基準を示しました。
 そこで示しましたのは、一般的な使用従属性に関する判断基準として、指揮監督下の労働にあるかどうかとか、労働者性の判断を補強する要素があるかどうか、事業者性の有無がどうかとか、専属性があるかということについて具体的な事例なども挙げながら判断を示しているということでございます。
○井上哲士君 要するに、実態、形式だけじゃなくて実態で判断をして、労働者として保護されるべき者は保護されるようにしなくちゃならないと、こういう考え方でよろしいでしょうか。
○政府参考人(青木豊君) おっしゃるとおりでございます。
○井上哲士君 労働債権の保護という観点から、これを広げるということから労働者性を判断をするという点で、この報告書とそして今回の改正案の考え方というのは共通をしているわけですね。さらに、実態として債務者に対して労務を提供し、そして給料を得て生計を立てているかどうかという実態に着目をしていくというこの間の答弁は、先ほどのこの専門部会報告とも共通をしております。
 これは労働法の判断であるわけですが、今後のこの民法の労働者性の判断についてもこの専門部会の報告というのが土台に置かれると、こういうふうに考えてもよろしいでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) 私どももこの報告いただきまして拝見いたしましたが、非常に詳細に検討をされておりまして、民法の先取特権の保護の対象となる雇用関係の実質を判断する際にも、この部会報告で掲げられているような各事項は非常に参考になると、こう考えております。
○井上哲士君 この報告では、労働者性の判断基準の大きな柱として、使用従属性に関する判断基準、それから報酬の労務対償性と、二つの柱になっておりますが、それぞれにもう少し具体的な中身、判断の基準を御説明いただけますか。
○政府参考人(青木豊君) 実は、平成八年に示されました部会報告は一般的な判断基準の具体化を図るということでございます。私ども、その前に、昭和六十年にもやはり報告をいただきまして、一般的な基準というのを作って検討してもらいました。
 今お話ありましたように、労働者性の有無というのは、使用されるかどうかということで、指揮監督下の労働という労務提供の形態、それから賃金支払という報酬の労務に対する求償性によって判断するということで、この二つを総称して使用従属性ということにしまして、そこで、労働者性の判断基準においては、指揮監督下の労働に関する判断基準として、一つには具体的な仕事の依頼、業務に従事すべき旨の指示などに対する諾否の自由の有無がどうかということ、それから二つ目は、業務の内容及び遂行方法に対する指揮命令の有無がどうかということ、それから三つ目は、時間的、場所的な拘束性の有無がどうかということ、それから四番目に、報酬の労務対償性などを総合的に勘案して個別具体的に判断するということとしました。
 その平成八年の、お話の平成八年の報告におきましては、建設業の手間請従事者につきまして具体化をしたわけですが、その業務の性格に着目しまして、設計図でありますとか指示書などによって作業の指示がなされている場合でありましても、この指示が通常注文者が行う程度の指示等にとどまる場合には、直ちに指揮監督関係の存在を肯定する要素にはならないということ、あるいは勤務時間の指定とか、あるいは管理をされていることについては一般的には指揮監督関係を肯定する要素となるということ、それから報酬が例えば一平方メートル単位とするなど出来高払で計算する場合でありますとか、手間請従事者から請求書を提出させる場合であっても単にこのことのみでは使用従属性を否定する要素とはならないことなど、具体的な場合ごとの詳細な判断基準を示したというものでございます。
 以上でございます。
○井上哲士君 先ほどの参考人質疑でもこの点の御指摘があったわけですが、今の点、参考人からも、時間給の場合はこれはもう間違いなく労働者だろうと、出来高払であってもこれは使用従属性を否定する要素にならないということがありましたが、今回の改正でもほぼこの判断を参考にすると、これはよろしいでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) 最終的には各事情を総合して雇用関係と言えるかどうかということだろうとは思いますが、御指摘のようにそれぞれの業態に応じてまた違うんだろうと思います。
 ですから、この具体的な建設関係について、厚労省においてこういうような具体的な検討を行って、その中で単に出来高であるからといってその使用従属性を否定する要素とはならないと、こういうことが言われているというのは、今後、使用従属関係を判断する際には極めて参考になる判断だろうと思っております。
○井上哲士君 請求書を労働者の側から出した場合にでも、これは使用従属性を否定する要素とはならないというのもありましたが、この点も確認できますか。
○政府参考人(房村精一君) ですから、これはあくまでそれぞれの職場の特性というものもあるわけでございましょうから、その専門部会で検討されたこのものについてそういう判断が示されているというのは非常に参考になると思っておりますが、これは最終的にはそういった各事情を総合して裁判所において実質的な雇用関係かどうかということを判断していただくことになろうかと思っております。
○井上哲士君 要するに、判断は裁判所がやるわけでありますけれども、今聞いた例えば出来高払のときも、それから労働者の側から請求書を出す場合も、それで労働者性が否定されることはならないんだと、こういうことでよろしいですか。
○政府参考人(房村精一君) 少なくともそういうことがあるからといって否定されるということではないというのがこの部会報告の意味だろうと思いますので、それはそういうことではないかと思っております。
○井上哲士君 もう少し具体的に聞くんですが、この請求書を出す場合に、屋号を使っていると労働者性をいささか弱める要素だというのがこの報告書にはあります。
 ただ、最近のいろんな例を見ておりますと、例えば二〇〇〇年ですが、住宅リフォームの大手である東京のリモテックスという会社が倒産したケースですが、これは裁判所と破産管財人の協議の上で個人で屋号を使っていた二十六人についても労働者性を認めて、未払賃金に対する国の立替払が実施をされたということで大変注目をされたケースなわけで、屋号使用者であっても広く労働者性を認めるというのが流れに私はなっていると思うんですが、この点もこの民法の先取特権の保護の対象という点でいうと重要な要素になるかと思うんですが、いかがでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) 一般的に申し上げれば、屋号というのは多分営業の主体であることを示す表示ということでございますから、屋号を使っている場合には営業主体だということが言えようかとは思いますが、先ほどから申し上げておりますように、この雇用関係というのは、あくまでそういう形式ではなくて実質でございますので、正に指揮命令関係であるとか、あるいは報酬の定め方であるとか、そういったものを総合して雇用関係が認められる場合であれば、屋号を用いている場合であってもこの先取特権の保護の対象になるということは言えようかと思います。
○井上哲士君 実際には自分だけで働いていても、例えば私の場合、井上工務店とかトラックにも書いてあると、日常的に使用している場合は十分あるわけですね。
 さらに、これは衆議院での審議での答弁で、法人であっても、その実態によればその先取特権の保護が及ぶということは十分にあり得ると、こういう答弁をされております。
 例えば、グループや家族などで法人格を取得して経営して、みんなで就労している工務店などよくあるわけですね。お父さんが社長でお母さんが専務とか、実際には家族みんなで現場に行っていると。こういう場合についての判断というのはいかがでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) これも、形式的には法人が契約主体となっております場合には法人との間の契約関係ということでございますが、ただいま御指摘のあったような、実態が個人がそれぞれの労務を提供しているという場合と異ならないということであれば、その実質に着目をしてこの先取特権の保護が及ぶということだと思っております。
○井上哲士君 今回の法改正の精神である、できるだけ広く労働者保護を図っていくという立場での運用が行われるように是非求めたいわけでありますが。
 これもやはり、昨年の九月にアフター興業という建設会社の破産がありました。このときには、破産管財人が裁判所の許可を得て、下請業者への工事代金も実質的に労務費だと認めて優先債権として確定債権額一〇〇%支払ったという例も出てまいりまして、この点でも広く認めるという流れがあるわけですから、是非そういう運用が行われることを改めて求めたいと思います。
 ただ、現状は、先ほどの参考人質疑でもありましたけれども、大半の労働者というのはこの先取特権の保護対象者だという知識がないわけですね。ですから、機敏に先取特権の実現のために使用者の総財産に対して差押えをするというようなことができないと。知識もないままに、結局、一般債権同様に扱われて、言われる前の配当率で泣き寝入りをするというケースも、特に中小の場合大変多いという実態があります。やっぱり、現場で働く請負的就労者の皆さんがこの権利を活用できるように周知をする必要があると思うんですが、この点はどのようにお考えでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) 御指摘のように、今回、株式会社の使用人以外の法人であるとか他の会社の使用人についてこの先取特権を広げたわけでございますので、私どもとしてはこの先取特権が広がったということをできるだけ多くの方々に知っていただいて、必要があればそれを行使していただくということが必要だと思っておりますので、各種の周知の努力をしていきたいと、こう思っております。
○井上哲士君 これも午前中の審議じゃありませんが、法務局にパンフを置くとかじゃなくて、現場の労働者にやっぱり伝わるということを厚生労働省とも協力をして是非やっていただきたいと思います。
 今回の改正で、実態に着目をして判断をするというところは大変大きな前進でありますけれども、このままでは不払事件が起きたときに個々の事例ごとに請負的就労者の皆さんが労働者性を認めてもらうというこの必要性については変わらないわけですね。汗水流して働いた報酬であるという点ではほかの労働者と一緒なわけですから、基本的にこの請負的就労者の債権についてはすべて労働債権にしていく。労働組合法と基準をそろえるべきだという要望もあるわけでありますが、こういうふうに更に広げていくという点でいかがでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) 請負的といいましても、その実態が様々でございます。本当に独立の営業主体として請け負っている場合も当然入っているわけでございます。
 そういうことから、そういう場合であればこれは雇用関係とは言いにくいことは明らかでありますが、ただ、実態として請負契約という形式を取っていても実態が雇用関係と変わらないと、そういうものを何とか保護したいということから実態に着目して判断をするという考え方を取っているものですから、逆に、形式的に一律にということになりますとそもそも請負が入らなくなってしまうおそれの方が高いのではないか。やはり実態に即して保護すべきものをできるだけ保護するという観点からしますと、やや手間は掛かりましてもそういう個別の実態に着目して判断をするというやり方の方が、最終的には保護が十分行き届くのではないかと、こう思っております。
○井上哲士君 多くの労働者は、その現場に遭遇して、じゃ自分の労働者性を証明するためにどうしたらいいのかということに途方に暮れるというのが実態なわけでして、やっぱりできるだけ広くこれを保護するということで更なる検討をいただきたいと思います。
 その上で、破産における労働債権の保護の問題について更にお聞きするんですが、この間、法制審の倒産法部会で議論が進んでおります。六月二十七日にも会議が行われているかと思いますが、そこで出されている提案と、今後の検討の目途についていかがでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) 御指摘のように、現在、法制審議会の倒産法部会におきまして破産法の全面的見直し作業をしておりますが、その中で労働債権の保護の強化を検討しております。
 現在検討されております内容といたしましては、破産手続開始前三か月間に生じた給料債権及び退職前三か月間の給料の総額に相当する額の退職手当の請求権、これについて財団債権とする、最も優先する債権ということになりますが、そういう方向で検討が進められております。
 この今後の手順でございますが、七月二十五日に倒産法部会が予定されておりまして、特に御異論がなければ、今言ったような方向で倒産法部会の要綱案が取りまとめられる。その後、総会を経まして、臨時国会開催されるかどうかということはありますが、もし開催されれば、臨時国会への提出を目指して作業を進めたいと、こう考えているところでございます。
○井上哲士君 法制審の審議の中でも、財団債権化する労働債権の期間について会社更生法並みの六か月にするべきだと、こういう議論もあったと思うんですが、なぜ今の提案では三か月ということになったんでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) 御指摘のように、会社更生手続では手続開始前六か月間の給料債権が共益債権とされております。これは、会社更生法というのは再建型の倒産処理手続、要するに会社の営業を継続して何とか再建を図るということでございますので、労働者の協力が不可欠でありまして、その労働者の労働意欲を確保するためにも給料債権を共益債権として保護する必要性が高い。また、そういった労働債権の保護によって再建がなされますと総債権者にとっても利益である、そういう言わば共益性があるということから、その保護の範囲が広く認められているわけでございます。
 これに対しまして破産の場合には、基本的には破産した法人等の全財産を清算いたしまして、破産者との間の雇用関係はすべて終了する、できるだけ平等な清算をするということが言わば破産の手続の特色となっているわけでございます。
 そういうことで保護の範囲がやや違うということと、もう一つは、労働債権を財団債権とすることによりましてこれは最優先で弁済がされますので、余りその額が増えてしまいますと財団不足によって破産手続そのものが廃止されてしまうと、こういう懸念もございます。そのような実態等を踏まえまして、今回、破産におきましては開始前三か月ということに限定をさせていただいたわけでございます。
○井上哲士君 退職金の扱いについてはどういう検討になっているでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) 退職金についても基本的には同じような考え方で、やはり会社更生の場合、特に再建を目指す会社更生の場合には、ある意味では辞めていただく方の場合、これは再建のために通常は労働者を減らさなければならないというような前提もあって辞めていただくことが多いというようなことも踏まえて、その退職金についてもできるだけ保護の範囲を広げるということが要請されているわけでございますが、破産の場合にはそういう事情にないということが一つと、それから、退職金を余り大幅に保護いたしますと額が相当高額にわたるということもありまして、先ほども申し上げた財団の廃止に至ってしまうことが増えてしまうだろうと、こういう懸念もありまして、やはり清算型の倒産処理手続である破産については三か月程度ということで議論が進んでいるわけでございます。
○井上哲士君 確かに会社が存続していくのかどうかということの違いはあるわけでありますが、労働者にとってみれば暮らしは会社があろうがなかろうが続いていくわけでありまして、その原資が賃金である労働債権なわけで、やはり暮らしを保障していくという点で、なるべくやっぱり広く私は会社更生法並みの取扱いがされるべきではないかと思うんです。
 さらに、今朝方から議論になっています租税債権の扱いも案が出されているかと思いますが、それはどうなっているでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) 租税債権につきましては、現在、原則としてその全額が財団債権となっておりますが、これは、破産手続開始前の一年間に法定納期限が到来したものに限って財団債権とする、それ以前のものについては財団債権とはせずに優先破産債権とするという方向で検討が進められております。
○井上哲士君 一年以内ということであります。ある程度範囲を限定するというのはこれ一歩前進ではあると思うんですが、限定するとはいえ、やはり相当の額になりまして、一年分とはいえ、それによってかなり労働者の労働債権が圧迫をされるということもあり得ると思うんですね。
 限られた財団債権の中で競合した場合、労働債権とこれはどういう扱いになるでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) 財団債権としてその全額が払われる場合には租税債権も労働債権も当然それぞれ財団債権化された範囲では弁済を受けられるわけでございますが、仮に財団債権全額を支払うのに足りない場合という御質問だろうと思いますが、この場合は、租税債権と労働債権は同順位としてその額に応じて案分されると、こういうことになります。
○井上哲士君 そうなりますとやはりかなりの額になりまして、結局、労働債権に回るものが随分減ってくるということが起こり得るわけですね。ですから、やっぱり今回の案は一定の前進かとは思いますけれども、労働者の生活を守るという観点からいいますと、労働債権はやっぱり租税債権の、優先しておくという考え方が必要かと思うんですが、その点はいかがでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) 労働債権の保護を図るという観点からはそういう考え方もあり得ようかとは思います。ただ、同時に、租税債権、これは国家の財政の基盤で、公益性も高く、公平かつ確実に徴収されるべきであると。また、実体法の分野で申しますと、一般の債権に先立って徴収するということが地位として与えられておりますので、そういったことを前提といたしますと、破産手続の中でその労働債権の保護を図るという観点からは、今回の改正がある意味では私どもとしてはぎりぎりのところではないかと、こう思っているところでございます。
○井上哲士君 フランスなどでは一定部分の労働債権は上位に置くということでやっているわけでありまして、やはりそういうものも、ぎりぎりと言わずに更に検討していただきたいと思うんです。
 といいますのは、確かに租税というのは大事でありますけれども、ほかからもいろいろやりくり補てんができることです。しかし、労働者にとってはもうそれしか生活の糧はないわけですね。しかも、多くの場合は、実際には賃金から天引きを源泉徴収でされているということでありますから、自分は払ったつもりなのに、さて労働債権の場になりますと、会社が入れていないということでそれを差っ引かれると。事実上の二重払いになるわけですから、私は、やはり労働者の暮らしを守るという点で更なる保護という点での検討を強く求めまして、質問を終わります。
○福島瑞穂君 社民党の福島瑞穂です。
 今回の改正案は、扶養義務等に係る金銭債権を請求する場合における強制執行の特例が養育費等の履行確保のために創設をされたということが大変意義が大きいというふうに思います。
 養育費は、残念ながらなかなか支払がされないということがありますので、このことが離婚した場合に非常に負担を軽減するのではないかというふうにも思います。具体的に、どういう手続の下に養育費の確保が具体的に行われるのでしょうか。分かりやすく教えてください。
○政府参考人(房村精一君) 今回創設いたします養育費に関する特例でございますが、これは、養育費を定期的に支払う義務を負っている場合に、その支払を一回でも怠りますと、その養育費の将来分も含めて差押えができるということでございます。そして、差押えの対象は給料等の定期的な収入でございますね、そういうものを差し押さえる。したがいまして、一回支払を怠りまして、その将来分も含めて強制執行の差押えの申立てをいたしますと、それが送達されて、将来分についても差押えの効果が生ずる。その将来の養育費の支払日が到達をいたしまして、その後に給料の支払日が来ますと、その段階でその給料から要求分を差し引くということになるわけでございます。
○福島瑞穂君 これ扶養義務等に係る金銭債権ということで、別居中の婚費分担はどうなるのでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) 扶養料、それから今言った婚費分担、そういうものも入っております。
○福島瑞穂君 諸外国における養育費支払確保の制度はどうなっているでしょうか。
○政府参考人(岩田喜美枝君) 諸外国の例を見ますと、行政機関などが立替払やあるいは代理徴収という形で強制的に養育費を徴収する制度を導入している国があると聞いております。
 例えば、アメリカですと州政府、イギリスは児童扶養庁、フランスは家族手当金庫、ドイツは州政府、スウェーデンは社会保険事務所、こういったようなところが何らかの形で養育費の徴収にかかわっているというふうに聞いております。
○福島瑞穂君 父親又は母親がサラリーマンである場合は、給料債権をいったん差し押さえれば、それから毎月毎月やらなくても徴収ができるということなんですが、自営業の場合などはどうなるんでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) 自営業の場合であっても、例えば特定の者との間の継続的な商品の供給契約、こういったものが結ばれて、その対価として定期的に収入があるということであれば、それは差押えの対象になり得ると思っております。
○福島瑞穂君 この制度ができますと、離婚するときにはきちっと家庭裁判所なりで養育費の調書を作ってもらって、そして一回必ず差押えをやって、そうすると毎月必ず徴収できるわけですから、随分養育費の取立ての様子が変わると思うのですが、このようなことは国民にきちっと啓発、周知する必要があると考えますが、どのようなことを考えていらっしゃるでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) もちろん、法務局の窓口あるいは自治体の窓口においでいただくということと、それから今出ました家庭裁判所においても当然御協力いただけると思いますが、そのほか政府広報など、あらゆる機会を使って私ども広報したいと思っておりますし、また関心のある方々にそういった知識を広げるということでの御協力をいただければと、こう思っているところでございます。
○福島瑞穂君 これは、知っている人は知っている、知らない人は知らないということですと、実はかなり有効な制度なので、是非広範囲に周知徹底してくださるように心からお願いします。
 ところで、離婚、再婚を繰り返すなどして複数の子供に支払義務を負った場合の調整方法などはどうなるのでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) 例えば、最初の第一子について扶養料の取決めをして、その後、第二子についてまたやったと、その場合に、まず第一に問題になるのは、二番目の子供にも払わなければいけないので、最初の子供について、申し訳ないけれど少し額を下げてほしいと、こういう調整がまず問題になろうかと思いますが、これは基本的に家裁で申立てをして調整をすることが可能になっておりますので、そういった方法を取っていただく。これが仮に、逆にもう既に差押えがされてしまっていて、その後そういうことで家裁で額を下げてもらったと、こういう場合には請求異議の申立てを起こしていただいて、その額を上回っている分、その減った分については取消しをしていただくと、このような形で調整が可能だと思っています。
○福島瑞穂君 じゃ、次の質問に行きます。
 労働債権の先取特権の実行手続について質問が続いていますが、私もそれについてちょっと質問をしたいと思います。
 正規雇用労働者だけでなく、労働組合法上の労働者にまで労働債権の保護の範囲を広げ、請負的就労、派遣、委託労働、下請労働者等の非正規不安定雇用労働者の未払賃金などの労働債権にも先取特権を与えるべきではないでしょうか。いかがでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) 今回の改正で、労働債権の先取特権の保護の範囲は、形式的な雇用契約ということではなくて実質としての雇用関係にあるかどうかということによって保護の範囲が画されるということになりましたので、ただいま御指摘のようないわゆる正規の社員でない者であっても、また契約形態が請負とか委任であってもその実質が雇用関係であれば今回の先取特権の保護の範囲に含まれるということになります。
○福島瑞穂君 昨年の十二月五日に、参議院法務委員会で会社更生法案の審議が行われました。ここでも労働債権の問題が審議をされました。ここで、労働形態が多様化しているとき、できるだけ保護、会社更生手続に入った結果、下請、労働派遣、そこでの労働者が切り捨てられるのではないかという危惧を持っていると質問をしたんですが、参考人、宗田参考人、弁護士からは、下請や労働派遣の労働債権について労働債権の範囲の中にすべきだと、これを要望意見として法務省にも出しているが、まだ結論が出ていないと述べています。また、古川弁護士は、九八年のILOの審議の中でもコントラクトレーバーの条約、契約労働と訳されたり請負労働と訳されたりしているが、その中で下請企業の従業員について賃金支払に連帯保証しなければならないというような条約の審議も行われたと。ただ、日本政府はそれに反対をしてつぶれてしまったなどの参考人から意見が出ています。
 今日質問をしたいのは、実質的に労働者性があるということを現場が立証しなければならないということは、実はやはり非常に大変であると。つまり、不払や労災が起きるたびに破産管財人や労基署等に労働者性を認めさせるということになりますから、それは非常に大変なのでそこを何とか、例えば雇用関係の中には建設産業の請負的就労者、手間請、一人親方等など自己の労働の提供者が含まれるというふうなことで改善はできないかというのはいかがでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) 確かに雇用関係にあるということの立証というのが負担になる場合もあろうかとは思いますが、ただ、おっしゃっているような例えば請負的な就労形態を取っている場合に、その実質が本当に営業の主体として請負をしている場合と、それから形式は請負契約であるが実質は雇用関係だと、こういう場合と両方が含まれているということだろうと思います。
 そういう中で適切な保護を図ろうと思いますと、やはり個々の実態に着目をいたしまして、実際に雇用関係と言えるものについては雇用関係にふさわしい先取特権の保護を与えると、こういう考え方を取る以外には適切な対処法がないのではないかと。そういうことからいたしますと、今回もそういう形でできるだけの保護は図っているつもりでございます。
○福島瑞穂君 この会社更生法案が参議院の法務委員会で成立をするときに附帯決議が採択をされています。九項めに、「労働債権の確保については、多様化する労働形態に対応して十分な配慮がなされるよう周知徹底に努めること。」という文言が入りました。どのような工夫がその後されているのでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) 一つは今回の改正でございます。正に従来入らなかったものを入れるということにしたわけでございます。
 それから、これは法務省として従来から民事基本立法に当たりましては労働債権の保護を常に念頭に置いて、その時点で可能と思われる改正をして改善を図ってきたところでございます。
 先ほども申し上げました現在検討中の破産法においても労働債権の保護を図るということを行っておりますし、今後も私どもとして民事基本立法の見直しを行うときには労働債権の保護ということを常に念頭に置いて対処したいと、こう思っておりますし、また改正内容につきましてはできるだけ国民に広く周知をしてその利用をしていただけるようにと、こう思っております。
○福島瑞穂君 確かに、今回の改正案が一歩前進であることは確かにそのとおりです。しかし、やはり弱いのは、現実に現場で労働者性の立証をやはり労働者側が、労働者側といいますか、負わなくてはいけないと、そうしますと大変なときに資料収集やらなくてはいけないと。
 これについては、例えば労働者自らが存在を証する文書を提出することが困難であるということにかんがみ、工夫はできないのでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) 基本的に、先取特権での保護を求める場合には、その先取特権が存することを証する書面を裁判所に出していただく必要があります。
 これは会社の正規の雇用契約を結んで雇用されている者であれ、非正規の言わば請負とか委任のような形態を取っている者であれ同じでありまして、最終的に提出された書面を見て裁判所が実質的な雇用関係を認定できるかどうかと、こういうことでございますので、やはりそれはそれぞれの個々の実質に応じて裁判所に御判断いただくということにせざるを得ないと考えております。
○福島瑞穂君 是非、雇用関係の中には建設産業の請負的就労者、手間請、一人親方等など自己の労働の提供者が含まれると、こういうことはできないでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) 先ほども出ましたが、そういう建設関係について、そういう契約形態が請負あるいは委任であっても実質がその雇用関係であるという者がいるということは比較的広く知られているところではないかと思いますし、当然、裁判所もそういう事実を踏まえて先取特権の判断をしていただけるのではないか。
 また、その参考としては、先ほど厚労省の部会報告等もありましたが、そういった蓄積もありますので、そういったものを適切に活用していただければ保護は図れるのではないかと、こう考えております。
○福島瑞穂君 実は、実際どれぐらい回収できているかを調べたときに、実際調べたときに、やはり非常にやはり回収ができていないという実態も出てきました。それはやっぱり、現場で一々立証しなくてはいけないので労働者性が認められない、あるいは認めにくい、実際は取れないという問題が起きていると思います。
 是非、この点は迅速な権利実現ができるよう周知徹底を図っていただきたいのですが、いかがでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) なかなか、会社の状況が悪化した場合でございますので十分な回収をすることが困難な場合もあろうかと思いますが、確かに迅速に対応ができれば確保できる額に違いが出るということもあり得ると思いますので、私どもとしても、できるだけ多くの方に今回の改正内容を知っていただいて必要な場合には迅速に対応していただけるようにと、こういうことはできるだけの努力をしたいと思っています。
○福島瑞穂君 現実的な働き方を見ても委任契約に見えたり、請負契約に見えたり、契約を結んでいるように見えても実質的には労働者性が高い場合が非常に多いので、是非よろしくお願いします。
 会社更生法から一歩前進しているんですが、もう一歩、是非将来的には前進をしていただきたいと思います。ちょっと答弁お願いします。
○政府参考人(房村精一君) 先ほども申し上げましたが、法務省としては、民事基本法の改正を検討する際には労働債権の保護ということは常に念頭に置いてきておりますので、今後もそういった観点から努力は続けたいと、こう思っております。
○福島瑞穂君 よろしくお願いします。
 ところで、短期賃貸借、これは今回の一番問題点になるのかもしれませんが、短期賃貸借を廃止した場合、正当な賃借人が安易に競売にさらされ、明渡しを要求されることが頻発するおそれはないか。短期賃貸借を廃止した場合、収益管理制度で賃貸借を設定しても当該抵当権に劣後する結果、結局、賃借権としては弱くなるおそれはないでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) まず、短期賃貸借を廃止した場合に競売が安易になされるのではないかということですが、これは、債権者としては債務者が債務の履行を怠った場合にその履行のために抵当権を実行するかどうかということを考慮するわけでありまして、短期賃貸借が廃止されたからそれを理由に抵当権を実行しようということではないのではないか。したがって、今回の廃止をしたから直ちに競売申立てが頻発するということはないのではないかと思っております。
 それから次に、収益管理制度との関係でございますが、これは逆に申し上げると、一般的に言えば、抵当物件を競売しないでその賃料収入から優先弁済を受けて抵当権者が満足を得れば競売がないわけですので、賃借権もそのまま保全されるわけでありますから、収益管理制度が設けられるということ自体は賃借人にとっても利益ではないかと思っております。
 また、この収益管理制度で管理人が賃貸する場合には、これは当然、競売になれば終了するという前提で賃貸をするわけでございますので、管理人の方ではその事情を説明し、かつ競売までの期間を考えて賃貸をするということになろうかと思いますので、これは短期賃貸借制度の廃止云々にかかわらず、そういった性質の賃貸借でございますので、この点もその運用いかんということではないかと思っています。
○福島瑞穂君 競売不動産の内覧制度なんですが、居住者やプライバシー保護の点から問題はないのかという点についてはいかがでしょうか。あるいは、そうならないための周知徹底についてはどうお考えでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) この点については、競落をする、競売に参加する者からいたしますと、自分が買おうとするものについて中を見ないで買うというのはこれは非常にリスキーですので、やはりどうしてもそういう人たちに実情を見ていただいてその上で競売に参加していただくと、こういうことを考えて今回、内覧制度を設けたわけでございますが、同時に、見られる方にとっては確かにプライバシーの侵害ということを招くおそれがございますので、そうならないような配慮を幾つかしておりまして、まず第一に、内覧につきましては裁判所が執行官に命じて実施をする。買受け希望者が勝手に行って勝手に見るということではなくて、あくまで執行官が責任を持ってその内覧を実施する。内覧を実施する場合に、例えば行った者がその内覧の円滑な実施を妨げると、こういうようなことがありますと執行官がその者を退去させることができる、こういう配慮をしております。
 また、いったん内覧の実施命令を出しましても、その希望者等を見て明らかに円滑な実施が見込めないと、こういうような場合には裁判所がその内覧の実施命令を取り消すということも可能にしております。
 また、占有者の方に例えば病人がいるとか、そういう正当な事由がある場合にはこれは内覧を拒絶しても制裁は科さないと、こういうことになっておりますし、内覧の実施について執行官が強制権限を持って強引に実力で入ると、こういうこともないような制度にしておりますので、そういう意味ではできる限り円滑な内覧が実施できるように配慮をしたつもりでございます。
○福島瑞穂君 財産開示手続についてお聞きをします。
 これを開示した場合に、例えばいわゆるサラ金業者等による濫用がないかとか、公正証書を得た者も含むのかという点についてはいかがでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) まず、財産開示手続でございますが、これは債務名義の種類を限っております。御指摘のような公正証書あるいは督促手続あるいは仮執行宣言付きの場合、こういったものに基づいて財産開示の手続の申立てはできない。基本的には確定判決ということでございます。それが一つ。
 それからもう一つは、この財産開示の手続を一回行いますとその者に対しては以後三年間は財産開示の申立てができないと、こういうことにしておりますので、例えば貸金業者がこの財産開示を頻繁に申し立てて圧力を掛けると、こういうようなことは防げるのではないかと、こう思っております。
○福島瑞穂君 開示すべき財産の範囲の妥当性を確保するにはどうするのでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) まず第一に、差押え禁止財産についてはこれはもう開示する必要がありませんので、通常の身の回りのものはほとんど開示の対象とはならないだろうと思っております。
 それから、原則は財産開示期日の時点で債務者が有している積極財産のすべてということでございますが、例えば債権額が非常に小さいというような場合には、その債権の弁済に十分であるというところまで開示をすれば裁判所の許可を得てそれ以上の開示をしないで済むということもできますし、また開示の申立てをした人の同意がある場合にはやはり一部の開示で済むと、こういうような手当てをしているところでございます。
○福島瑞穂君 罰則による開示強制の是非についてはどうお考えでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) 確かに、裁判所に呼ばれまして、宣誓をして自分の財産を開示するというのは相当な負担でございます。ただ、これは前提としては、その者に対する金銭支払の債務名義が確定していると、にもかかわらず任意に支払わないというのが前提でございますし、申立ての要件として、強制執行をしたけれども奏功していないということも要求しておりますので、そういった事情の下で、本来、支払義務を負っている方に財産の所在等を明らかにしていただくということも、これはやむを得ないのではないかと、こう思っております。
 また、それを担保するためには、やはり一定の制裁、裁判所に出頭しないとか、うそを言うということに対しての制裁も用意しなければ実効性が確保できないだろうと。そういうことをしませんと、良心的に話していただける方は不利益を被って、無視をした人が何の制裁も受けないということではやはり困るだろうと。こういうことから過料の制裁の罰則を定めさせていただいているわけでございます。
○福島瑞穂君 倒産企業の職場占拠からの労働者や労働組合の排除、そういうことが出てこないかと。何か昔の映画じゃないですけれども、ドキュメンタリーなどで倒産というと組合がばあっと占拠して自主清算とか、そういうのも自分たちで自主的に清算をするとか、そういう職場占拠というのもあったと思いますし、現在もありますけれども、この法案によって倒産企業の職場占拠からの労働者や労働組合の排除、抵当権者たる金融機関による競売などの強引な債権回収を優先的に支援をしたり、労働者や下請業者の債権確保が難しくなるおそれはないのでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) まず、労働組合の活動との関係でございますが、これは民事執行法に保全処分を設ける段階から議論がされたところでございますが、その立案の段階から御説明申し上げているのは、あくまでこれはいわゆる執行妨害を念頭に置いた規定、措置でございまして、正当な労働組合活動がこの保全処分の対象になるということはないということを申し上げておりますし、その後の運用においても、正当な労働組合活動に関してそのような問題が生じたということも聞いておりません。
 今回、その要件を、著しく価格を低下するという、著しくを取りますが、そのことによって本質的な保全処分の性格が変わるわけではございませんので、従前どおり、正当な労働組合活動がこの保全処分の対象になるということはないと考えております。
○福島瑞穂君 今の答弁で大変安心をしましたけれども、現場では不安もあるかもしれません。その周知徹底などについてはどうお考えでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) この問題につきましては、裁判所においてもそういう国会での審議を踏まえて御理解をいただいているところと思いますが、改めて私どもも、今回の改正が決して労働組合活動に対して、念頭に置いてなされたものではない、いわゆる執行妨害を念頭に置いてなされたものであると、正当な労働組合活動がそのような対象になるものではないということは周知をしていきたいと考えております。
○福島瑞穂君 ちょっと質問が戻って申し訳ないのですが、少額定期給付債務の履行確保に関して、公的機関による差押えの代行及び債務者への請求などに関する法整備の必要性はないでしょうか。つまり、少額ですとなかなか差押えをするというのが極めて負担なわけですから、そういうことの法整備の必要性についてはいかがお考えでしょうか。
○政府参考人(岩田喜美枝君) 少額定期給付債務の中で養育費を例に挙げてお答えしたいというふうに思いますが、諸外国については先ほど答弁いたしましたような状況でございます。これが諸外国において可能なのは、離婚が裁判によってのみしか認められないということ、そして養育費の取決めも裁判の手続の中でなされるのが通例であるということが背景にあると思います。
 一方、我が国の現状を見ますと、離婚の九割は協議離婚ですし、母子家庭で養育費の取決めをしたことがあるという母子家庭は全体の三五%にすぎないという状況でございます。そういうことで、今すぐそういう仕組みが我が国に導入できるというふうには思われません。
 今やるべきことは、昨年の母子寡婦福祉法の改正でやらせていただいたんですけれども、養育費の支払の義務について規定させていただきました。このことをよく周知をして、離婚をすれば養育費の問題を取り決めるということが社会の一般的な慣習になりますように、世の中の関係者に対して情報提供なり社会的な機運の醸成に努めてまいりたいというふうに思っております。
 中長期的な課題としては、そういう仕組みについても今後検討したいというふうに考えております。
○福島瑞穂君 是非よろしくお願いします。
 それから、ちょっと余分ですが、養育費はお父さんが、お母さんがですが、お金があると割と取れる。例えば養育費三十万もらう人もいれば、二十万、十万、五万、四万、三万、二万、一万とか、要するに資産に応じて物すごく養育費も変わるということもあり、是非児童扶養手当や児童手当の充実も、厚生労働省来ていらっしゃいますから、是非よろしくお願いしたいと思います。
 答弁されますか。
○政府参考人(岩田喜美枝君) 児童手当についても様々な議論がございまして、本当に子育て支援のために現金給付がいいのか、それとも現物給付がいいのかといったような抜本的な議論もございますけれども、先進諸外国、特にヨーロッパ諸国と比べまして今の我が国の児童手当は、その水準においてあるいはまた対象となる子供の年齢において大変差がございます。
 そういうことで、実は昨年、税制改正との関係で、配偶者特別控除が廃止されるということとの関連で、十六年度の予算措置におきまして児童手当制度の拡充を図る、支給対象の引上げを中心とした児童手当制度の見直しを十六年度の予算の中で行うという与党の合意もございましたので、それに向けて十六年度の制度改正を行ってまいりたいというふうに思っております。
 児童扶養手当、これは離婚をした母子家庭の母に払われるものでございますが、これを今後どう考えるかということは、児童手当制度との関連もございますし、先ほど委員が御質問なさいましたような、公的な機関が強制的に徴収に介入するといったような仕組みとのまた兼ね合いといいましょうか、それとの関係もあるというふうに考えておりますので、そういったことも含めた今後の検討になるというふうに思います。
○福島瑞穂君 最後に、先ほど井上委員の方からも租税とそれから労働債権の徴収のことがありました。一九九二年に採択されたILO百七十三号条約では、国内法令は労働債権に、他の大部分の優先的債権、特に国家や社会保険料よりも高い優先権を与えると定めております。このILO条約の批准についてはどうお考えでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) 条約の批准そのものはちょっと法務省としてはあれなんですが、法務省として今私どもができることは、そういった、一番労働債権と租税債権が対立をするというか、どちらが優先するかが問題になる倒産の場面で、その労働債権の保護をどこまで高めることが可能かと、こういうことを考えて倒産法の改正作業を進めているところでございます。
 現在考えている、私どもの法制審議会で考えている内容が直ちに条約を満たすかどうかということは何とも申し上げられませんが、少なくとも私どもとしては、日本の実情の許す限り、許す範囲内でできる限りの労働債権の保護を図っていきたいと、こういう思いで立法作業に従事しているところでございます。
○福島瑞穂君 百七十三号条約の批准に向けて是非努めてください。
 以上で終わります。
○委員長(魚住裕一郎君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
   午後四時十九分散会