第156回国会 厚生労働委員会 第18号
平成十五年六月三日(火曜日)
   午前十時一分開会
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   委員の異動
 五月二十九日
    辞任         補欠選任   
     角田 義一君     朝日 俊弘君
 五月三十日
    辞任         補欠選任   
     鴻池 祥肇君     有村 治子君
     中原  爽君     野上浩太郎君
     藤井 基之君     岡田  広君
 六月二日
    辞任         補欠選任   
     有村 治子君     鴻池 祥肇君
     岡田  広君     藤井 基之君
     野上浩太郎君     中原  爽君
     谷  博之君     藤原 正司君
 六月三日
    辞任         補欠選任   
     朝日 俊弘君     角田 義一君
     藤原 正司君     谷  博之君
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  出席者は左のとおり。
    委員長         金田 勝年君
    理 事
                武見 敬三君
                中島 眞人君
                浅尾慶一郎君
                山本 孝史君
                沢 たまき君
    委 員
                狩野  安君
                斎藤 十朗君
                中原  爽君
                藤井 基之君
                宮崎 秀樹君
                森田 次夫君
                今泉  昭君
                谷  博之君
                堀  利和君
                風間  昶君
                井上 美代君
                小池  晃君
                森 ゆうこ君
                大脇 雅子君
                西川きよし君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        川邊  新君
   参考人
       社団法人日本人
       材紹介事業協会
       専務理事     今井房三郎君
       日本労働組合総
       連合会雇用労働
       局長       中村 善雄君
       名古屋大学大学
       院法学研究科教
       授        和田  肇君
       神奈川県立高等
       学校進路指導協
       議会会長     小島喜與徳君
       社団法人日本経
       済団体連合会常
       務理事      紀陸  孝君
       弁護士
       NPO派遣労働
       ネットワーク理
       事長       中野 麻美君
       大阪経済大学経
       済学部教授    大橋 範雄君
       首都圏青年ユニ
       オン委員長    名取  学君
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  本日の会議に付した案件
○職業安定法及び労働者派遣事業の適正な運営の
 確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関す
 る法律の一部を改正する法律案(内閣提出、衆
 議院送付)

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○委員長(金田勝年君) ただいまから厚生労働委員会を開会いたします。
 職業安定法及び労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本日は、本案について八名の参考人の方々から意見を聴取することといたしております。
 まず、午前は四名の参考人に御出席をいただいております。
 参考人の方々を御紹介いたします。
 社団法人日本人材紹介事業協会専務理事今井房三郎君、日本労働組合総連合会雇用労働局長中村善雄君、名古屋大学大学院法学研究科教授和田肇君、神奈川県立高等学校進路指導協議会会長小島喜與徳君、以上の方々でございます。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用中のところ、当委員会に御出席をいただき、誠にありがとうございます。
 参考人の皆様には忌憚のない御意見をお述べいただきまして、本案の審査の参考にさせていただきたいと存じますので、よろしくお願いを申し上げます。
 次に、議事の進め方でございますが、まず参考人の皆様からお一人十分で順次御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えをいただきたいと存じます。
 なお、意見の陳述、委員の質疑及び参考人の答弁とも発言は着席のままで結構でございます。
 それでは、まず今井参考人から御意見をお述べいただきます。今井参考人。
○参考人(今井房三郎君) では、お手元に資料をお配りしてありますが、二点についてちょっと意見を述べさせていただきます。
 一つは人材紹介業界の現状、二つ目は今回の安定法改正、これ、紹介関連ですが、それについての意見という二つのパラグラフで意見を述べさせていただきます。
 まず、現在の人材紹介業界の現状ですが、それに入る前に、私らのこの社団法人日本人材紹介事業協会の概要について簡単に御説明したいと思います。
 実は、これは十二年五月に設立されまして、その前にも民間有志の会はあったんですが、正式に設立されまして、現在の会員数は三百六十六社でございます。ここら辺の資料は、添付されております資料1が大体協会関係の資料になっておりますので。それから、会員資格は、この紹介の場合はいろいろジャンルがございまして、私らの場合には、専門的・技術的職業、それから管理的職業、それから事務的職業、販売の職業、俗に言うとホワイトカラーの層が多いんですが、その層を対象にしております。
 この三百六十六社の内訳ですが、大体系列系が七〇%、独立系が三〇%ということになっております。系列系と申しますのは大手企業の子会社とかそういう関係です。それから、独立系は創業社長が始めているという会社でございます。それから、大体この三百六十六社で事業所は約千ぐらいございますので、現在約、許可を得ているところ、このホワイトカラー関係では四千事業所ございますので、その二五%をカバーしていると。ただし会員の、大手が多いので、売上げでは大体七割ぐらいカバーしているという状況でございます。それから、やはりこの紹介産業というのはどうしても都市型産業なので、首都圏が七〇%を占めております。あと、大阪、名古屋、福岡と、そこら辺が主要な店のあるところになっております。
 それから次に、人材紹介業界の現状ですが、約四点申し述べたいと思います。
 一つは、まだ非常に若い産業であるということです。しかし、平成九年以降、いろいろ規制緩和が行われまして急速に業者が増えていると。下にちょっと書いてございますが、例えば私らのやっていますホワイトカラー関係でも、平成九年度は四百九十五事業所だったのですが、平成十四年度には三千九百五十八事業所というふうに飛躍的に増えております。これが一つの特徴でございます。それから二つ目は、派遣業界とか経営コンサルタント業界、あるいは再就職支援業界、そこら辺の関連業界からの参入が非常に増えているということになっております。
 それから次に、第二点としまして、業者の増加もありまして、業界全体のお世話した就職件数も増えているということが言えるかと思います。資料2の最後のページに、ちょっと申し訳ない、ちょっとやや細かいんですが、そこに書いてございますが、例えば平成九年度二万八千三百四十四名の紹介をいたしましたが、平成十三年度には五万九千四百三十一名と、約倍増と申しますか、そういうことで順調に伸びていると。しかし、経済がなかなか最近厳しいこともありますし、それから業者が非常に増えていることがありまして、個別業者の経営というのはかなり厳しい状況にあります。
 そういう状況で、ちょっと最近の紹介業界の動向どうかということで三点ほど下にまとめてございますが、一つは、やはり大手の企業その他でリストラがいろいろありますので、再就職支援事業ですね、これが非常に増えているということです。
 それから二つ目は、求人案件がやはり減っておりまして、それから求人企業の要求が非常に厳しくなっていると。即戦力でいい人じゃないと採らないということで、ミスマッチが非常に増加しているという状況です。
 それから三番目は、特に五十歳以上の中高年の再就職は極めて困難になっていると。三、四年前まで私やっていたんですが、三、四年前はかなり五十二、三でも結構案件もあって決まったんですが、現在もう五十一、二歳でもかなり厳しくなっていると。それから、年俸も私がやっていたころは大体七百から八百万だったんですが、現在は五百から六百万にダウンしております。したがって、五十歳以上の方は非常に御苦労されているという状況です。
 それから三番目に、業務内容の高度化が非常に進んできていると。特に業者の大きいところは総合化、登録紹介もやれば派遣もやれば再就職支援もやるという総合化が進んでいると。一方、小さいところは専門化が進んでいるという状況でございます。それから、業界のITの利用が進んでいるということも言えるかと思います。
 それから、二ページに入りまして、では今後の人材紹介業界の課題ですが、三点挙げられるかと思います。一つは、この日本経済の構造変化とか雇用構造の変化、被使用者の意識変化、そこら辺にどういうふうに適切に対応して紹介業界の機能、役割を向上して、できるだけ多くの方を紹介できるかどうか、そこら辺がかぎではないかと思います。それから、やはりいろいろ状況動いておりますので、それに適応した法令、省令等の見直しを是非お願いしたいという二点です。それから三点目は、官民連携による雇用対策の推進が必要であると。最近、再就職支援の民間委託ということが厚生労働省始められましたので、非常にいいことだと思いますので、そういう官民連携を是非お願いしたいと。
 それから、二番目の今回の安定法改正についての意見ですが、職業紹介関連については、先ほど申しましたように、平成九年の労働省令改正以降抜本的な規制緩和が行われまして、非常に業者の参入も増えておりますし、活動も活発化しております。したがって、今回改正もこの職業紹介業界の効率化にはかなり役に立つと思いますので、多少、いささかなりともその雇用問題の解決に私らも貢献できるかと思いますので、今回の改正については賛成という意見を持っております。
 それから、なおその改正の一つにございました地方公共団体の無料職業紹介事業の運営については、民間業界の活用、これも是非御配慮いただきたいというふうに思っております。
 簡単ですが、私の意見とさせていただきます。
○委員長(金田勝年君) ありがとうございました。
 次に、中村参考人にお願いいたします。中村参考人。
○参考人(中村善雄君) 日本労働組合総連合会で雇用関係の政策を担当しております中村でございます。
 現在の雇用状況に対する私どもの認識を中心に、国の労働市場政策、職業安定法改正案についてここでは意見を述べさせていただきます。
 現在の五%半ばに達する厳しい雇用失業情勢、特に中高年を中心に労働者の責めによらないリストラ等の失業が増大しているという質的な変化、不良債権処理の加速化を含む今後の構造調整策を背景とした雇用動向見通し等から見て、中長期的にセーフティーネットとしての高失業時代に対応する行政インフラの整備、改革を行っていくことが重要である。これはいわゆる市場原理に頼った労働市場だけの改革だけに頼ることだけでは難しく、ある種キャリア形成あるいは能力開発等も含め構造的な対応が必要なのではないかというのが基本的に私どもの見解でございます。
 お手元に一応雇用状況の資料といたしまして私どもが行った調査も含めて現在の深刻さを示す資料をお配りさせていただいております。時間的な関係もありますから細かく御説明できませんので、お読み取りいただければ非常に有り難いと思っております。
 一言で申し上げますと、現在の雇用失業状況については失業率そのものが高いというのが非常に問題でありますけれども、質的に極めて深刻化の傾向にあるということでございまして、特に中高年を中心に倒産、解雇等の理由による失業が急増をしておる、また、これらの人々は再就職が容易でないことに加え、生計維持面で中心であった人々が多く生活問題に直結しているということでございます。
 一ページ目に直近の労働力調査の失業統計の資料をお示ししておりますが、いわゆる非自発的失業者が百五十三万人、これはいわゆる自発的失業者の一・五倍に達するということでございまして、しかも年齢階層別に見ていただきますと、これは正しく中高年層に集中をしているということでございます。特に、いわゆる定年とかそういうのをのけて、勤め先というか、いわゆるリストラに近いと思いますが、につきまして見ますと四十五歳から五十四歳層が二十七万人とこの年齢階層の中ではトップを占めるところまで来ているわけでございますし、また通常定年が多く入ります五十五歳から六十四歳層におきましても、会社都合というのが定年の数を上回って発生をしているという実態でございます。
 続きまして、参考2で、二ページから九ページのところに私どもが連合傘下の組合に実施をいたしました雇用動向の調査を付けてございます。概要のところ、二ページのところに書いてございますように、倒産、解雇等リストラによる失業が大幅に増え続けているというのが明らかになっておりまして、希望退職の募集を中心に大幅に雇用調整が進行しておりまして、見ていただきますとお分かりになりますように、三割の企業で事業規模が縮小し、この一年間で半数近くの四六%の企業で何らかの雇用調整を実施をし、しかも雇用調整の中でも人員削減、失業等に至る解雇、希望退職が一割を超える企業で実施をされており、その規模も従業員数の一割を超えるような大規模な希望退職となっているということが報告をされております。
 九ページのところで若干補足の表を付けておりますが、雇用調整の実施につきまして金融機関からの融資条件とするなどの動きの中で、いわゆる解雇、希望退職がなされているという傾向も見られております。このような動き等を見ますと、やはり倒産、解雇、リストラによる中高年などの失業がこれからの失業問題の一つの大きなポイントになってくると判断せざるを得ません。しかも、中高年を中心にこのようなリストラ等で離職せざるを得ない人々の再就職は容易ではないというのは御案内のとおりでございます。
 連合では、この二年間で三回にわたり全国の主要ハローワークの前で失業者、求職者の声を直接聞き取るというアンケートをさせていただきました。その結果、三度目の結果を中心に十ページ目以降から紹介をさせていただいておりますが、中身的には六か月以上の失業者が四割以上を占め、短期的にも失業期間の長期化が進展をしている、四十代、五十代の中高年者は平均で八か月程度の失業実態にある、また失業期間の長い者ほど解雇や希望退職などリストラで失業したケースが多く、これらの人々は再就職は非常に厳しいという実態が明らかになっておりまして、再就職できない理由につきまして、いわゆる賃金など労働条件のミスマッチというよりも、基本的にまず募集における年齢制限の壁というのが主要要因、またそもそもこのような状況下で職がないというのが非常に厳しい現在の実態なのではないかというふうに思います。
 したがって、国の市場政策ということにつきましては、やはり基本はこのような個々の失業者の特性に着目して、キャリア形成の支援、あるいは能力開発と再就職に結び付く職業紹介が連動した、いわゆる特に地域、現場等の体制の支援をする体制ということをこれからの高失業状況に備えて行政インフラ等を整備していくことが、地味ではありますけれども、一番の重要課題なのではないかということに考えております。その間のどういう仕組みを組んでいくか等につきまして、正しく実態から体制を整えていくことが必要なのではないかと思います。
 それから、雇用問題でもう一つ、若年失業の問題がいろいろと争点になってございます。この若年失業の問題につきましても、中高年の失業、再就職促進が非常に、いわゆる地味ではありますが、インフラ政策が重要になるという同様のことが言えるのではないかと思っておりまして、やはりこの基本はキャリア形成の支援や能力開発、更に申し上げるといわゆるトライアル雇用等の施策を非常に精密に作っていく、を中心としたいわゆる構造的な対応の整備を図っていくことが重要であると考えております。
 現在の若年失業が増加をしているという問題につきましては、全体的雇用状況は厳しいということもありますけれども、やはり一つ見逃してはならない根っこには、いわゆる企業経営を含めた経営のスタイルが全体的に即戦力志向というものにシフトをする中で、やはり若年者を採って育てていく長期育成型の経営行動が薄らいできているという変化、さらに、それに関連していわゆる学校教育を含めたキャリア形成の在り方、あるいは本人たちの意識等のミスマッチという受け手側の要因が重なって現在の大きな問題が出てきているのだろうというふうに考えております。基本のベースに手を付けていくことが重要であろうと考えております。
 職業安定法全体の見直しにつきまして、いわゆる民間の需給調整機能の促進というのが非常に重要なことであります。けれども、同時に、今申し上げましたように、企業における人材育成機能を強化するような政策、また、いわゆる短期の即戦力志向に対応するマッチング機能強化だけというのではなくて、やはりキャリア形成も含めて中長期的な構造課題に対応できるいわゆる官民協力のインフラ整備ということに是非全力を挙げていただきたいというふうに思っておりますし、また、民間需給調整機関におかれましても、いわゆる労働力は商品でないという自らの本質的に持っている性格というのを十分に自覚した上で、いわゆるビジネス拡大のみではない、いわゆる公共的役割も自覚をした行動を行っていただきたい、そのような条件整備を図っていただきたいというふうに思っております。
 最後に、職業安定改正法案のいわゆる求職者からの手数料徴収の考え方というのが出ておりまして、いわゆる求職者の利益になるということで範囲を拡大しようという方向でございます。
 これにつきましては、基本的にILO条約の考え方、いわゆる労働は商品ではない、同時に、いわゆる求職者から手数料を取るということは基本的に禁止をされておって、例外的に求職者の利益になるという範囲で合意の下に認めていこうというのがいわゆる人材ビジネスを扱うILO国際基準の基本的な考え方でございます。
 この考え方を押さえた上で、やはり求職者の利益になるということが、結果的に再就職に結び付けば利益になるというようなことではなく、やはり根本的に、いわゆる求職者とそれからいわゆる紹介会社、これは雇用関係とも類似でありますが、そこにはやはり本質的に、いわゆるパワーバランスと申しますか、圧倒的な力の差がある。正しく求職者は職に就かなければ生活の道を絶たれるわけでございまして、そういう意味では非常に、同じ条件を判断するにしても、対等な立場に立ち難い、そこで当然そのバランスを図るということが出てくるわけでございますし、そういうことの上では、やはり、求職者からの手数料徴収という考え方につきまして、いわゆるある種対等な力関係がある中でそれなりの保護を図ることができる、そういうような枠組みを含めた、枠を考えた上で求職者の利益になるような考え方について御判断をいただき、今後しっかりと議論をしていただきたいということを要望いたしまして、陳述を終わらせていただきます。
 どうもありがとうございました。
○委員長(金田勝年君) ありがとうございました。
 次に、和田参考人にお願いをいたします。和田参考人。
○参考人(和田肇君) 今国会で労基法改正、職業安定法及びいわゆる労働者派遣法の改正等が審議されておりますけれども、本日は私は、労働者派遣法改正を中心に、労働法政策の在り方について意見を述べさせていただきたいと思います。
 昨今、急速に雇用の多様化が進んでおり、それにさお差すような法改正が何回か繰り返されてきました。その際に理由付けとされてきたのが、高失業問題の解決、雇用のミスマッチの解消、産業構造や生活環境の変化と多様な雇用に対するニーズの出現、新時代の日本的経営の推進といったキーワードでした。しかし、雇用問題を考える際にもう一つの重要な視点、つまり雇用の安定、長期的な視点での人材の確保育成、職務内容に合った適正な処遇、労働者のニーズに合った雇用の提供といった視点はどちらかというと後衛に退けられてきたのではないかと思われます。
 二十世紀型雇用モデル、日本では第二次大戦後の約五十年の間に形成されてきた雇用のモデルでありますけれども、幾つかの重要な特徴を有していました。一つに、使用者と指揮命令者の同一性、あるいは中間搾取の排除、つまり直用原則であります。第二に、期間の定めがない契約で定年まで雇用されるいわゆる終身雇用制であります。第三にフルタイム労働、第四に工場のブルーカラー労働、いわゆるフォーディズム型労働、そして第五に男性の雇用、しかも一人働き雇用というのがこうした特徴です。二十一世紀にはこうしたモデルは大きく転換するだろうと言われており、その新たな方向性が今どこの国でも模索されているところであります。
 誤解されがちですが、二十世紀型雇用モデルがすべて悪いというわけではありません。例えば、労働者派遣法が制定された当初の理由付けは、専門職の育成が困難であり外部から調達する必要がある、あるいは恒常的ではないポストでの採用といったものでした。それはそれなりの合理的な説明であり、ここでは直用原則の哲学というのはまだ生きていました。しかし、それがネガティブリスト化等の法改正によって次第に希薄化され、現在では、雇用のミスマッチの側面、人件費の削減、雇用調整の容易さといった側面しか説明の論理として残されていなくなっているのではないかと私は考えております。
 労働者派遣につきましても、全体として人材育成に寄与していると言われるかもしれませんけれども、登録型派遣制度を認めている限り、同じことが指摘できます。
 今国会では有期労働の期限に関する労基法十四条改正も検討されておりますけれども、これについては先ほどの第二の特徴の変更になると思います。理由付けの中に、労働者にとっても雇用期間が延長されることが有利だというふうにありますけれども、私は、むしろ長期的に存在する職務に有期契約労働が雇用されるという可能性、つまり解雇権濫用法理の適用を回避する型の雇用が増大する危険性が高くなる、その意味で雇用の不安定化が進んでいくと考えております。
 雇用の安定や長期的な人材育成、労働者の側からいうと長期的なキャリア形成ということに大きく貢献してきた二十世紀型雇用は、プラスの側面を持っておりましたけれども、こうした形で次第に浸食されていく可能性が、危険性があると思います。
 二十世紀型雇用モデルというのは、しかし他方では多くの問題を含んでおりました。
 例えば、フルタイム労働モデルというのは、パートタイム労働者の差別を合理化しておりました。男性・一人働きモデルというのは、雇用機会均等法の制定、改正、育児休業法、介護休業法の制定、改正によって大きく修正されざるを得ませんでした。あるいは、最近では社会保険制度や税制の在り方の面からもこの点が議論されております。
 この点について私は、雇用形態の違いが実態の違いに比べて労働条件や雇用自体に余りにも大きく反映し過ぎている、それを支えている現行法制が大きな問題だと考えております。パートタイム労働法がその典型でありますけれども、労働者派遣法にもそうした要素が含まれていると思われます。
 先ほど、二十一世紀型雇用モデルが今現在模索されていると言いましたが、皆さんのお手元にあります図がその一つであります。
 これは、ドイツのある経済理論学者が描いているものでありますけれども、ヨーロッパに最近の共通のコンセプトとして認められているものであります。詳細は時間の関係で説明できませんけれども、簡単に言いますと、全体を貫いているのは、真ん中にある労働市場というドメインとその周りにあるその他のドメインが非常に垣根が低くなり、架橋が簡単になり、それぞれの移行が容易になるというモデルであります。
 真ん中にあります@について言いますと、正社員と契約社員、標準的な労働関係と非典型的な労働関係といった垣根は次第に低くならざるを得ません。労働者の生活態度の変化に対応した雇用の多様化を促進していかざるを得なくなり、そのための支援策が現在必要になっているということです。正社員と派遣労働者を比較しますと、後者の多くは女性ですし、フルタイム労働者とパートタイム労働者を比較しますと、同じく後者の多くも女性です。労働条件の大きな違いというのは、契約形式の違いのみでしか説明されておりません。一九九五年に当時の日経連が提起しました「新時代の日本的経営」をそのまま推し進めていきますと、こうした傾向が一層顕著になっていきます。
 これに対して、新たなモデルでは、すべてが正社員として扱われ、たまたま所定労働時間に違いがあるにすぎない、あるいは雇用の全ステージの一時期に所定労働時間が短くなっているにすぎないといったようなことになります。ここでは、雇用形態の違いは、雇用の質を左右する違いではなく、労働条件の量的な違いを生む差異にすぎなくなります。
 ワークシェアリングの問題も、雇用対策の面から考えますと非常に重要だと思いますけれども、この@に関する雇用政策の問題としてとらえるべきだろうというふうに考えております。
 以上、若干抽象的な説明であったかもしれませんけれども、二十一世紀の始まりの現在の段階で、新しい視点を積極的に盛り込んだ雇用対策法規あるいは労働関係法規の改正に取り組んでいただきたいというのが私の希望であります。
 以上です。
○委員長(金田勝年君) ありがとうございました。
 次に、小島参考人にお願いをいたします。小島参考人。
○参考人(小島喜與徳君) 私の方からは、新規高卒者の就職状況の厳しさを職場代表ということで話させていただきます。資料の方は用意できませんで、申し訳ございませんでした。
 まず、高校現場の方で最も深刻な状況だというのはやはり求人数の激減です。
 全国で一〇・一%減少、また神奈川では一七・七%減少なんていう話があります。求人数が減ったと、そのときによく求人倍率という話が出ますけれども、全国で一・二一倍、神奈川で一・六二倍、これは前年度より〇・〇五から〇・一七ポイント下回っているという状況です。求人倍率ですから一倍あれば一人一社あるというふうに普通には考えられるわけですけれども、実際のところ、例えば私の勤務する学校、求人票の件数でいきますと三百九十件ございます。就職決定者三十五名です。そうしますと、就職決定者の十倍はあるという現状にはあります。
 ただ、元々私の勤務する学校は全日制普通科の進路先多様校です。そのような状況で、当初百名ぐらい希望者がいるところを、どんどん絞り込まれていって、最終的に決定したのが三十五名と。途中で脱落していく者がかなりの人数出ているわけです。
 その中身としまして、求人票が例えば三百九十件あったとしましても、実感として一倍ないというのが現状の認識です。それは職種ですとか業種の偏りが出てきている。サービスと技能工が主体で、生徒が一番希望するような、生徒に合った販売、それから事務職が非常に減っている。それから、生徒が魅力を感じるような企業がほとんどないんですね。本校ではアルバイトをしている子が非常に多いんですが、アルバイト先と同様の勤務先というんでしょうかね、そういったものが非常に多い関係で、生徒の方が求人票を見て引いていってしまう、そういう現状があります。ですから、単純に数ではどうもうまくいかない。実際には求人票の内容と質というんでしょうかね、生徒のニーズに合っているかどうか、その部分で今非常にうまく合っていない。
 特に、高校生のフリーター化の問題なんかのときに、高校生はわがままで自発的にそうなっているなんというお話がありますけれども、大人が仕事を選ぶ際にもやはり自分に合ったものを探しているわけです。高校生も自分なりに考えている状況があります。ですから、自発的にしているというのも言い過ぎではないかと。むしろ非自発的にそうならざるを得ない状況もあるのではないかと。まず、その点で求人数の内容的なものの言わば生徒とのミスマッチというんでしょうか、それが非常に大きく感じられます。
 それから、内定率の件なんですけれども、内定率、全国で九〇・〇%、これ〇・三%上昇と言っています。神奈川九五・〇%、これは〇・三%下降です、前年度比ですけれども。ただ、これも数値的なトリックがいつもあるといつも私は思っているんですけれども、就職希望生徒に対する就職決定者の割合です。ですから、就職希望生徒が就職希望を下ろしてしまえば内定率は上昇するわけです。ですから、途中でリタイアする子たちの数というのが正直言って表面には表れてこない。就職内定が九〇あるというと非常にいいような数字に見えますが、途中で下りている子たちが非常にたくさんいる。
 私の所属しています進路指導協議会の方でちょっとデータを取ったことがあるんですが、昨年十月末現在百八十四校あるうち百七十九校から回答をいただきまして、十月末の状態で、就職希望だったけれどもフリーターへ切り替えた子、男女合わせて二百人、就職から進学へ切り替えた子、二百六十四人、これ十月の末現在ですからそれ以降どんどん増えていきます。この四百六十四人という数字は、簡単に言いますと二校分ですか。それから、元々フリーター希望、最初から求人票を見てあきらめちゃうですとか、かなり早い段階からあきらめている子、九百四十名います。ですから、十月末現在でかなりの数がもうフリーター若しくは進学へ切り替えていくという状況があります。
 もっと具体的な数字で申しますと、私の勤務校では、実績で申しますと、大学、短大に行くのが三十名強、専門学校等が六十名、就職三十五名、その他と、これがほぼフリーターなんですけれども五十七名程度です。この子たちの動きなんですが、春の就職説明会のときには大体百名程度就職説明会に参加してきます。夏前になって約六十名程度。実際に夏休みに入って企業見学に入るのが五十五名でした。最終的に三十五名。途中でどんどん減っていってしまうという状況があるんですね。
 どうも、経済的にゆとりのある家庭の生徒は進学へ変更ができます。ただ、一番の問題は経済的にゆとりのない生徒で、そのゆとりのない生徒は高校時代にほとんどがアルバイトをしています。本校の生徒はほとんどアルバイトしています。十時以降やっている子もかなりいます。問題はあるんですが、そうせざるを得ない状況があるようです。そういった子たちは、やはりアルバイトに専念していますから学校の方では成績が良くない、欠席が多くなる、そういった状況があります。企業に学校が推薦する際、やはりどうしても成績が良い子、欠席が少ない子というふうになります。そういう現状がありますから、そういった経済的にゆとりがなくてアルバイト経験のある子たちはどうしてもそこからふるい落とされていく。
 さらに、そのアルバイト経験が、アルバイト先の正社員を見て非常に同じ仕事をしていて余り楽しそうではないな、そんなところを見ている関係で、そのアルバイト経験が逆に正社員離れを起こしているのではないかと、そんなふうにも感じます。
 今どきの子ですけれども、よく企業の方からは、高校生の資質の問題、礼儀を知らない、基礎学力が不足している。ただ、はっきり申しますが、全日制普通科で就職者のいる学校というのは基礎学力を徹底的に学ばせようとしているんですが、それができない状況にあるんですね。その子たちが就職を希望していくわけです。ですから、最初から即戦力というふうに言われましても、全日制普通科でそこを卒業した子が即戦力になるかというと、これは正直言って困難な話です。ですから、それに対応する形で、最近ではインターンシップですとか進路学習なんというような、出口指導ではない、キャリア形成の支援ということで、そういった教育がどんどん入ってきています。これはある意味非常に効果的だと思います。一年生、二年生のときからやっていけば効果が出るだろうと。
 ただ、一年次でやったところで、三年で即効性で効果が出るかというと、このキャリア形成支援というのは時間が掛かるものだと思いますので、二年やれば三年のところですっきりいくかと、これはまず難しいんじゃないかと思うんですね。将来を見通した上では非常に重要なことだと思います。ただ、三年で卒業させる段階では非常に難しい。
 さらに、今、就職慣行の見直しということが進んでいます。高校の一番の問題だということで一人一社制というのがよく言われます。一人の生徒が一社を受ける。それは、校内選考で成績のいい子、欠席の少ない子を選んで、その子の希望する企業をあてがうような形のシステムです。これがあるから成績の悪い子たちはふるい落とされて未内定になる、フリーターになるというところがよく強調されているわけですが、ここのところで慣行の見直し、関東でもかなり入りました。複数応募というようなことで、一人一社ではなくて一人二社というような形の話がかなり入ってきています。
 ただ、これは正直申しまして、従来の進路指導で、例えば本校ですと金髪、茶髪の指導、それから生徒全員の個人写真を撮らせる、マナービデオを見させる、模擬面接をやる、履歴書を書かせる練習をする、作文指導をする、それから適性検査の練習をする、そういったことを頻繁にやりながら、複数応募ということになりますと複数見学、これは去年辺りから行われていることですが、そういったものと絡めて事務量が非常に多くなる。結局のところは個々人の生徒との進路相談の時間が失われているという現状が実はあります。
 生徒にどういうふうにして対応していくかということなんですが、就職支援員等の配置はできていますが、そういった下の方の学校で就職を希望する子たちというのは、信頼関係のある人でないとなかなか相談しに来ないという現状があります。ですから、制度的によそから持ってこられた人に相談ができるかというと、それはなかなかうまくいかない。
 それから、生徒の個人情報を分かった上で話ができなければいけません。そうすると、どうしても教員じゃなきゃまずいんですね。そうすると、就職支援員という外の人を連れてくるのではなくて、むしろ教員の時間的措置みたいなものを取っていただいた方が、生徒の進路相談等には非常に時間が割けるのではないかと。
 学校現場は往々にして教務部と生活指導部重視で大体動いています。進路指導部は予算措置も割かし低くて意見の力も少ないというのが実は実情でして、その辺りの県への指導ですとか、そんなところもある程度、進路指導が非常に重要なんだというところを実はいろんなところで言っていっていただけたらと。
 私としましては、まず生徒に有効な求人数をいかに確保できるか、それから進路相談のできる教員への時間的な措置、それから、先ほどお話が出ましたけれども、即戦力だけを言うんではなくて、企業も社内で人材を育てるということを積極的にしていただきたい。それからあともう一つなんですが、経済的に苦しい家庭の子が、例えば専門学校に行って就職できるような奨学金のシステムというのがどうしても今必要かと思います。高卒でどうしても働かなきゃいけないというと、もう仕事が限定されてしまうんです。生徒に夢がないのが現状です。ですので、そこのところを考えていただけたらと思います。
 以上です。
○委員長(金田勝年君) ありがとうございました。
 以上で参考人の方々からの意見の聴取は終わりました。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○藤井基之君 自由民主党の藤井基之でございます。本日は四名の参考人の方々から貴重な御意見陳述を伺わせていただきました。今後の法案審議の参考にさせていただきたいと存じます。時間が限られておりますので、皆さんに御質問できないことをお許しいただきたいと存じます。
 まず、今井参考人にお伺いいたしたいと存じます。
 御案内のように、我が国では、かつてといいましょうか、今でも続いていると思いますが、終身雇用、長期雇用という、そういった雇用慣行の下に安定した雇用関係ができていた。そして、この安定した雇用関係を基に、日本人労働者の勤勉さといいましょうか、あるいは家族的な愛社精神、そういったものがはぐくまれて、企業の生産力、技術力を高めて日本経済の成長に大きく貢献したと、こういうふうに言われているわけでございます。
 ところが、最近の非常に厳しい経済状況、特に我が国の雇用失業状況というのは、関係者の真摯な努力にかかわらず非常に厳しい状況が続いているわけです。そして、雇用をする側、また働く側、各々の意識がいろいろと変わってきておりまして、正に多様化という言葉で表されているわけでございますが、今井参考人にお伺いしたいんですが、今井参考人は、この日本のこういった雇用形態が多様化しているこの進展、これは当然国民の生活基盤にも影響を与えるし経済にも影響を与えるわけですけれども、日本の社会の将来の雇用というものをどのような形にあることが望ましいとお考えなのか、御意見がありましたらお伺いしたいと思います。
○参考人(今井房三郎君) 基本的には、私も実は終身雇用、年功序列の社会で育ってきたので、非常に安定感はあるんですが、正直言いますと、これだけのグローバリゼーションの市場経済化が進んでいる世界でこれを維持するというのは、実際上は不可能だと思います。したがって、将来の姿としましては、やはり契約を基本として、それから、かつ個人の自立といいますか、そういう自分でキャリア形成ができるという人たちを育てると。
 そういう社会に持っていくのは、例えば、私、たまたまシンガポールにいたんですが、シンガポールの人は、大学を出まして就職しますと、三十五ぐらいまではかなり動きます。それで大体三十四、五になりますと、大体その中で自分の適性は何かということを見付けて定着するということで、日本に比べますと非常に柔らかい構造といいますか、それで市場経済にうまく適応していっているということがありますので、やはり今後の姿としては、今までの、要するに会社へ入ればもう一生面倒見てくれるという考えじゃなく、個人も自立した考えを持って自分のキャリアを形成して、それから企業との関係も契約をベースとしてやるという、そういう方向に進まざるを得ないと思います。
○藤井基之君 ありがとうございました。
 同じ質問を中村参考人にもお伺いしたいと存じますが。
○参考人(中村善雄君) 日本の雇用の将来の姿でありますけれども、やはり今まで日本が持ってきた良いものをいかに、これは産業の競争力とセットでまさしく日本が作ってきたすばらしいものだと、それをどう変えていくかということが非常に重要なんだろうというふうに思っておりまして、やはり人材育成というものを、特にキャリア形成の支援を、これは社会的な枠組みを含めてどう整備し得るかということの中で選択ができるまさしくシステムを作る、終身雇用ではなくて、いわゆる完全雇用に基づいた中で個人が選べる仕組みを作っていくということが在り方だろうと思います。
 そのために、やはり均等待遇ということも含めて、そういう多様な働き方に対する公正な労働あるいは対価の枠組みというルールをしっかりとしていくということが非常に重要なことなんだろうというふうに考えております。
○藤井基之君 ありがとうございました。
 現在の状況で、このような、雇用が多様化しているといいましょうか、そして非常に雇用失業状況、厳しい状況で、本当に政府としてもどのような対応を取るべきかということで、今回の法案審議もその一環に位置付けられていると私は考えております。
 この状況にありまして、今回の職安法等の改正において紹介されております例えば民間の職業紹介事業所という、こういったものの活用等々も今回予定されているわけでございますが、今井参考人にお伺いしたいんですけれども、この民間の職業紹介事業所の役割、これをどのように、まずどのようなところにその役割があるんだと、どうお考えになっているかということが一点。
 それからもう一つは、今回、職業紹介事業というものの許可の仕組みといいましょうか、これが事業所単位の許可から事業主単位というふうに、俗な言葉で言いますと規制緩和という形になったと思いますね。この種の、これ以外にも規制緩和になっている状況はあるわけでございますが、こういった規制緩和というものが雇用の促進という観点からどのようなメリットをもたらすというふうにお考えでしょうか。
 この二点についてお伺いしたいと思います。
○参考人(今井房三郎君) 役割ですが、俗な言葉で言いますと、やはり結婚するといいますか見合いといいますか、私ら紹介する場合にやはり重要なのは、求人企業と一つはやることは、求職者の能力がどういう特色があるか、そこら辺のキャリアですね。それと、その方に、あなたのキャリアでしたら今、世の中では大体収入として期待できるのはこの程度ですよという、ここら辺のすり合わせをやりまして、それから企業の方に、求人企業に対しましても、大体この程度の能力でしたらこれくらいの給与でなければ無理ですよという、そこら辺のコンサルテーションと申しますか、それをかなりやりますので、それをうまくやりませんと、正直言うとなかなか就職が決定しないと。それから、仮にそれを無理して決めますと、就職決定した後、一、二か月ですぐ辞めちゃうと、こういう問題ができますので、一件一件かなり労働集約的な時間の掛かる作業なんですが、これをやることによって、求職者が本当に自分の合った会社に勤め、そしてしかも、それをできるだけ長く勤められるという、その役割が極めて大きいかと思います。
 それから、今御質問の二点の事業主ごとの許可にするという問題ですが、今は実は事業所ごとの許可になっておりまして、例えば本店が東京にございまして、名古屋とか大阪に事業所を開きたいというときには、またもう一回新たに申請をしなきゃならぬと。これはやはり三、四か月掛かりまして、膨大な資料が要求されるということで、これが今回の改正のように事業主が一遍許可を取れば大阪でも名古屋でも適宜届出だけでできるということになりますと非常に機動的にできますので、業務の効率化に進んで、それがひいては雇用の改善の方に力を注げるということかと思います。
○藤井基之君 こういった雇用の多様化に対応して、例えば、労働者派遣法は一九九九年の改正において、いわゆるそれまで限定して認められた業種というのが原則自由化という形になっているわけですね。
 ところが、現在の提案されております法律の中でも、四条においては、派遣が適当でないと認められる分野というのを幾つか指定しているわけでございます。例えば、医療分野なんというのは指定しているわけですね。
 例えば医療分野のことを考えますと、現在、政府の総合規制改革会議においては、医療従事者についてもその派遣を緩和を検討するべきだと、そういった方向で議論がなされておりますが、この派遣制度というものに対して、ある幾つかの分野においては派遣にふさわしくないと、こういう現行法制で規定がなされているわけでございますけれども、このいわゆる規制の、妥当でないと認められるこういう規制が残っていること、あるいはそれらについてお考えを中村参考人にお伺いしたいと存じますが。
○参考人(中村善雄君) 派遣法の関係でございますけれども、医療分野を含めて、要するにそこを除外しているということについて、規制であるかどうかという部分の判断のところ、これは正しく派遣法そのものの生い立ちを含めて、常用代替あるいは産業における秩序、そういうことの中でいかに調和を図っていくかということも正しく実態を踏まえる中の検討の中で徐々に解禁というか幅が広げられてきたものだろうというふうに思っておりまして、やはり現在残っている部分にそのまま派遣を入れるということになると、それなりの問題というか、クリアしなければいけないものがあるんだろう、これは慎重に労使含めて議論しているところだろうというふうに思っております。
 医療分野のところにつきましてお話がございました。これは正しく、いわゆる働く者のほかに、いわゆる医療提供における体制がいかにいわゆる安全、安心を図っていくかということの部分で、従来、チーム医療という考え方を軸に、連携が非常に必要である。どの仕事でも連携は当然必要なわけですけれども、とりわけそれが安全問題、特に昨今のように医療過誤を含めた部分の中でそういうものをいかに担保できるか、そういう仕組みをきっちりと議論する中でどう考えていくかということの中で、やはり医療の部分でいくと議論があるんだろうというふうに思っておりまして、派遣を使うことによって、それは企業の自由であり、したがって責任も企業が取るんだからという考え方と、現場での実際の実態を踏まえた安全体制の確立あるいは担保ということについてどういうような議論が行われるかということであるというふうに承知をいたしております。
○浅尾慶一郎君 民主党・新緑風会の浅尾慶一郎です。
 今日は、四人の参考人の方々に大変有意義な御意見を伺うことができまして、ありがとうございます。
 そこで、皆様方の御意見を伺って、大きく問題が二つあるのかなという認識をいたしました。一つは、中高年の再就職の厳しさ、併せて若年の労働者のそもそもの雇用の厳しさということなんではないかなというふうに思っておりますが、まずその若年労働者の方から伺ってまいりたいと思いますけれども。
 小島参考人に伺わしていただきますが、例えば十年前、五年前と比べて、高校生の就職、進路指導に当たって就職が厳しくなっているということなんだと思いますが、具体的にどういうふうに厳しくなっているかということを、できれば例を交えてお話をいただければ有り難いと思います。
○参考人(小島喜與徳君) 五年前、十年前ということの五年スパンということではなかなかちょっと思い付かない部分があるんですが、一番分かりやすいのは、バブル期の高卒の状況というのは、毎日企業の方が学校の方に訪れまして、就職部の者がその対応に当たります。面会所みたいなところがあるんですが、そこに長蛇の列が実はできてしまう。結局、ほかの授業ができない状況に実はなるんですね。
 求人票の方も、そのころ普通科高校で千を超えちゃいます。実は、その千を超える求人票を四部ずつコピーしまして生徒の閲覧用の資料を作るという状況がありまして、枚数四千枚ぐらいになるわけですかね、そういったものを全部整備して生徒それぞれに見せて、面談をしながら実は動かしていた。
 ただ、そのとき、確かに事務量はすごく増えたんですが、前年度の求人票を基に生徒はどんな企業がいいのかなということを考えることができました。その企業が今年も来たら私はそこに行きたいという腹積もりでいろんなことを考えていたんです。
 ところが、ここのところの状況というのは、毎年来るかどうか分からないんですね。つまり、以前の求人票を見て、参考にして自分はこんな方に行きたいなというふうに考えることすらできなくて、七月の一日から求人票が公開されますけれども、そのときに来ているのは本当にちょっとです。その中で自分の行きたい企業を決めるというのが非常に難しくなっている。一番感じるのは、そこの部分の難しさです。
○浅尾慶一郎君 ありがとうございます。
 先ほど、生活環境の厳しい方にも特に専門学校等に行けるように奨学金というようなお話もありましたが、そのことと絡みになるかもしれませんが、経済環境が変われば、今おっしゃったように、また求職状況が変わってくるのかなというふうに思いますが、その観点から、もし御存じであれば、バブル期に就職をされた教え子の方々は、そのままその企業にとどまっているケースが今と比べて長いのかどうかと。もし御存じであれば、就職環境のいいときに就職した人は、そのまま社内でいろんな訓練も受けられてとどまっているケースが多いかどうか、御存じであれば教えていただきたいと思います。
○参考人(小島喜與徳君) 最近、七五三とよく言われますよね。大学出て就職した子が三年ぐらいで離職する割合が三割、高校で五割、中学で七割ですか、よくそんな七五三なんという言い方をしますけれども、これは昔から変わっていないと思います。
 バブル期に卒業生を出して、就職した子たちも転職は相当しています。労働条件が厳しいのかなというのは正直思います。勤務地を精選した上で自分の家から近いところに就職をした。だけれども、二年後に全然遠いところに回されちゃうというケースが非常に多いんですね。
 それから、求人票に記載されている勤務時間と違うんですね。お店を開ける前に掃除をしろ、一時間前に来いとかというのは必ずあるんですね。それが彼ら、彼女らからしてみればなかなか、勤務時間は何時からです、しかも、残業手当が付いているんだか付いていないんだか分からないような勤務時間外の遅い労働も含まれてきますので、そうすると、自分が働いていて、例えば上級学校に行っている子たちと会ったときに、さて、自分の今の仕事はどうなんだろうかということを考えてどうも動いていってしまう、そんなところがあると思います。
○浅尾慶一郎君 時間の関係でほかの方々に伺えなくて申し訳ないんですが、最後になると思いますが、中村参考人と小島参考人に伺わしていただきますが、先ほど中高年の雇用の状況は厳しいというお話がございました。その中高年の雇用の状況は厳しいということを、今の高校生、自分たちの親の状況を見ているんではないかなと。
 私の質問は、そうした状況を見ることによって、中村参考人及び小島参考人が分かる範囲で、どういう影響を若年の就職に対する気持ちの上で与えているか、もしお分かりになれば教えていただきたいと思います。
○参考人(中村善雄君) 現実には個別にいろいろあると思いますが、これ、通常に見られることというのは、やはり一つの会社のところで一生懸命やってもらおうという意欲自身が最初から非常にそがれるということを見ているというのが通常の見方ではないかというふうに思っておりまして、これは過去経験がございまして、実はオイルショック後のところに、直接学生ではないのですが、オイルショック後のときに、いわゆる円高も含めた部分のところで、一斉に希望退職の募集、さらには個人の希望によって退職を優遇する制度というのが特定の業界で集中的に行われたことがありました。その後の経過を見ていると、そのときに、当時中高年をターゲットに肩たたきをされたわけですが、その後の部分のところの若手というか、今は中堅になっている人たちの部分に著しくモラルダウンを起こした。これは幾つかの労働経済関係の文献でも詳しく実態的な調査がなされていると思いまして、個人の高校生の感覚でも、やはり見方としては、正しく切実たるそういうことが大きな影響の一端になっているんだろうというふうに思っております。
○参考人(小島喜與徳君) 実際、本校の生徒の話をすれば、自分の父親がリストラに遭っている、それから離転職を繰り返している、そういう状況を実際に子供たちはよく見ています。そのよく見ている状況から、教育費用もそういう状況で掛けられないわけですね、子供に。ですから子供たちも現実的に実は生きてしまう、親と同様に。ですから、五年スパンで物事を考えないというのはもう最近特に感じることです。二年先も考えてないです。それこそ一週間どうしようかというようなニュアンスで動いてしまう。
 ですから、要するに目の前のことだけをやっていくから学習意欲もそがれるなんというのはあるんですが、ですから、それが今のフリーターの部分にどの程度かかわっているか。かなりの部分影響はあるんじゃないかと思います。
 ですから、今どきの若い子たちの働く価値観というんですか、職業観といったら変なんですが、今望ましい職業観というので上の方からの職業観が押し付けられていますけれども、今フリーターの子たちは、楽しくゆっくり過ごしたい、楽しく過ごすために仕事したい、ですから、頑張って無理して稼いでどうするのという感覚がどうもあるように思います。
 以上です。
○浅尾慶一郎君 ありがとうございました。
○沢たまき君 公明党の沢たまきでございます。
 四人の先生方、本当にありがとうございました。
 最初に、続きみたいなことで小島参考人に伺いたいんですけれども、働き方の、若年者、高校生といいましょうか、今おっしゃったように意識が変わってきているんですね。賃金だけではない、ほかのもの、よく言えば夢を持ちたい、それで希望を持ちたい、で、楽しくという。そういう感覚でいきますと、フリーターもその若年者にとっては意味のあることなんだろうと、このように思うんですが、しかし、もう本当に、もう私どもの年代から見ますと、それで本当に日本は大丈夫かなと大げさに考えてしまいまして、そんなところで、高校生、若年者の雇用の対策としてマッチングの機能を強化して何とか就職してもらいたいと思うのが年寄りなんだろうと思いますし、また先生方もそういうお気持ちの先生も多いんだろうと思いますが、けれども、そのいろんな多様な働き方をもう認めてあげて、正社員であろうとパートであろうと、あるいは派遣労働者であろうと均等に待遇して、若年者がどんな働き方をしても不都合が生じないと、こういうような環境を整備をしてあげるという、そういう方法もあるのではないかなと考えております。
 当然、小島先生のように現場の先生はどう思うかお分かりになりませんが、しかし、こういういろんな働き方を認めて、どんな働き方をしても均等に待遇をしていくという考え方について、現場の先生としてどのような御意見がおありでしょうか、伺わせていただきたいですし、また、同じような質問を今井参考人、人材派遣をなさっている先生にも伺わせていただきたいと思います。
○参考人(小島喜與徳君) 私はすごく賛成なんです。
 今、例えば正社員に入った人たちが例えばワークシェアリングで働く時間を狭められて、以前の右肩上がりの給料表じゃなくなっているという話がありますよね。以前、私、外の方でキャリア研究会というところにちょっと出ているんですが、民間企業の経営者の方たちがよく集まっているところなんですが、そういったところでも、話の中に、一人が一つの会社で飯を食っているという状況がいつまで続くのか、例えば一人で正社員として一つの会社で働いていて、そこで給料が少なくてそれ以外にアルバイトをしている、つまり二つの職業を重ねていくようなそういう時代がいずれ来るかもしれないよねという話を聞いたことがあります。そうしたときに、いろんな状況で正社員で給料が上がっていかないということであれば、給料を上げるためにはもう一つアルバイトをすると、実際そういう御家庭もありますので。共稼ぎだってある意味それに近いことですよね。ですから、そうやって見ていくと、フリーターだって実は同じかなというふうに私は思えるんですよ。
 今、高校生で私の教えている子で三つアルバイトをやっている子がいます、一日に。学校ではふらふらです。だけれども、それをしないと言わばもたないんですね。ただ、その子が卒業をして、そういった状況に例えば慣れていて、それで三つのアルバイトをこなしていけるんであれば、それも一つの生き方かもしれないなというふうに思う部分があります。いろんな税制の面ですとかそういったところでどういうふうにされるのかまでは分かりませんけれども、そういういろんな働き方があってもうやむを得ないんじゃないかなと。
 そういう子供たちがどんどん増えていますので、その子たちにある程度すり寄るというのもおかしいことだとは思います。ただ、価値観を変えていく、恐らく僕と同じ世代の親御さんがいて、親御さんの価値観も多少ずれているんですね。その価値観から子供に影響が行っていますから、子供の価値観を変える、その上の親御さんの価値観も一緒に変えないと実はうまく変わらないので、ある意味、そういった多様な形態を考えていっていただけたらいいかなと個人的には思っています。
○参考人(今井房三郎君) 先ほど、将来の雇用の姿と申しますか、やはり契約及びその自立と申しますか、そういう方向ということでお話ししたんですが、その観点からいって、やはりいろんな多様な働き方があるんで、能力に応じてその待遇といいますか、それをお支払していくと、そういう形。従来の社会というのは、どっちかといいますとタイトル、課長だから幾らとか、そういうのはやはりちょっとおかしいのであって、今後は、やはり能力に応じてという形が浸透していきますと、究極的にはやはり余り派遣だから低いとかそういう問題がなくなっていくと思いますので、やはりそういう方向に行けばいいかと思います。
○沢たまき君 ありがとうございます。
 あと、十二分までもう一問できると思います。
 和田参考人にちょっと伺いたいんですけれども、労働者派遣法の問題点として、派遣契約の中途解約という問題が前回の改正時の審議の際に随分と議論をされまして、それを受けて、現在、派遣先が講ずべき措置として中途解約に関する項目が設けられたわけですが、今日はもう時間がありませんのでその内容については詳細に申し上げられませんが、指針もちょっと持ち合わせてないんですが、一応、労働者保護に関して詳細な指針が定められたのかなと、こう認識をしているんですが、和田参考人は、こうした中途解約防止に向けた指針についてどのように評価されているんでしょうか。また、その効果はどの程度あるとお考えでしょうか。
 また、派遣元と派遣労働者の間の契約の期間を短くして何度も更新が行われて、派遣元の何となく都合のいいような契約に、派遣元の都合のいいときに契約を打ち切ってしまうという反復更新の問題が最近取りざたされているわけですけれども、この反復更新について和田参考人はどのようにお考えになっていらっしゃるでしょうか。
○参考人(和田肇君) まず第一点目の中途解約の問題ですけれども、これは、自由にできるけれども損害賠償か何かをすればいいというふうになっておりますけれども、契約の期間が決まっておりますから、やはり簡単に契約の期間に途中で切れないような方策がむしろ必要だと。それから、派遣先も例えば一年間派遣労働者を派遣してもらうということを計画するんでしたら、そこの段階できちっとやっぱり計画はしておかなきゃいけない。途中で解約するということについては、私自身は厳しく、もっと厳しく規制すべきだろうというふうに考えておりますし、中途解約の効果については、残念ながら分かりません。
 それから、反復更新の問題につきましては、ちょうど有期契約の反復更新と全く同じ問題が出てくるだろうと思います。有期契約の場合には解雇権濫用法理の類推適用となっておりますけれども、派遣の場合にはこういうことについて何らかのやっぱり対応策を講ずべきであろうと。今度、派遣期間が長くなってきますとやはり同じような問題が出てくる、そこの点については何らかのやはり規制が設けられるべきであろうというふうに私自身は考えております。現行の契約期間の上限規制というのはそれなりに妥当性を持っているというふうに私は考えております。
○沢たまき君 終わります。
 ありがとうございました。
○井上美代君 日本共産党の井上美代でございます。
 私は、初めに中村参考人と、そして和田参考人に質問をしたいと思います。
 まず中村参考人に、派遣、特に登録派遣の問題がありますが、雇用契約期間の短期化だとか低賃金化が進んでいることがありますけれども、それについてどういうふうに考えておられるのかということを中村参考人、これは和田参考人にもお聞きしたいというふうに思っておりますが、お願いします。
 そして中村参考人には、派遣労働の範囲を製造業にまで拡大することになるわけなんですけれども、既に請負会社などでやられて、違法と言われておりますけれどもやられている。言ってみれば、今度の法改正が合法化することの一面を持っているんじゃないかというふうに思いますけれども、中村参考人の連合ではその辺についてはどのように考えておられるのかということを聞きたいと思います。
 和田参考人には、中村参考人の最初の質問ともう一つ加えて、女性が登録型に非常に多いんですね、八割から九割ですから、そういうふうにもなっておりますけれども、こういう点で、この登録型についてどういうふうに考えておられるのかということと、和田参考人には、EUなどの諸外国でこれは禁止されているんじゃないかというふうに思いますけれども、その点についてもお聞かせを願いたいと思います。よろしくお願いします。
○参考人(中村善雄君) 登録型派遣の実際上が先生御指摘のように短期化が進んだり低賃金化という、市場状況の中で進んでいるというのは、これはそのとおりだと思っておりますし、連合としても大いに問題を感じているところでございます。
 そもそも派遣労働というのは、多様な働き方という議論がありますが、いわゆる通常の直接雇用と非常に違う形態というのを本質的に持っておりまして、これが、とりわけ登録型という局面において、そこで働く者の条件に対して非常に悪影響というもの、市場条件等によっては大きな悪影響を及ぼす。したがって、派遣先に対する行為ということにつきましても、単に契約ということではなくて、正しく人を使うという部分が絡んでいる以上、責任の強化並びに、更に言うと均等待遇ということも含めた直接派遣先への規定というのが非常に重要になってくるということだろうというふうに思っております。
 それから、製造業への範囲拡大の問題について、極めて現状、アウトソーシングを含めて違法な請負というようなものが進んでいるという現状の中において、なおかつ経済のグローバリゼーション化の中で、一方でいわゆるコスト削減のための生き残りということが進められている現在の状況下において派遣労働について拡大をするということについては非常な懸念を持っております。
 当然ながら、現場での非常に、とりわけ製造現場において違法な請負状態的なものの整理というものは進んでいる局面のところをきちっと整理をした上で行うということが職場の秩序維持も含めて重要なのではないかと考えております。
○参考人(和田肇君) 登録型派遣の御質問ですけれども、まず私自身は登録型派遣については認めるべきではないというふうにずっと前から考えております。それは、登録型派遣の場合には、やはり非常に雇用が不安定だということと、保険等の関係で非常に煩雑であるいは脱法的な形態になってしまう危険性があるというようなことがその理由であります。
 それから、女性の問題ですけれども、これは何も派遣の問題に限らず、パートの問題等々にもすべてかかわる問題でありまして、均等の問題というのは新しいステージに入ってきているのは、正にこういう問題について、均等法の改正だけではなくて派遣とかパート等についての側面からの均等保護をどう図っていくのかというのが今の課題になってきているだろうというふうに思います。
 それから、EUにつきましては、私はすべて知っているわけではありませんけれども、二つのタイプがありまして、フランスのように登録型を認めている国と、それからドイツのように登録型を認めていない国があるものですから、グローバルスタンダードがどこにあるかということは私には分かりませんけれども、日本の派遣法の一つのモデルになりましたドイツの派遣法というのは、恐らく午後にも議論になると思いますけれども、日本でもこういう派遣を認めるということについての規制の在り方を非常に重要な示唆を与えてくれているのではないかというふうに私自身は考えております。
○井上美代君 それでは、小島参考人、よろしくお願いします。
 何しろ、親も教師も、新卒で就職するのにやはり正社員になってほしいという、そういう願いというのは非常に強いというふうに思います。しかしながら、派遣労働で既に高等学校から派遣会社にやらざるを得ないという、こういう実情が出ているということを私聞いておりまして、アンケートなども見たりしているんですけれども、やはり神奈川県でもそういう例があるのかどうか。
 そしてまた、新規の高校卒業生が派遣会社を通して就職しているんじゃないかというふうに思うんですけれども、指導、就職指導をやっておられる先生の立場として、派遣会社に子供をやらなければいけない思いと、そしてまたそれが就職してすぐ辞めるとかということもあるんだろうと思いますけれども、その辺の割合だとか状況が分かれば是非教えてほしいというふうに思います。それは過去、最近になって出てきているのか、ずっと徐々にあったのかどうかと。今度このように改正がやられますともっとそれが進むんじゃないかというふうに思っております。
 もう一つは、もうちょっと大きい立場から見まして、派遣法が改正され、改悪されると私は思っているんですけれども、改悪によって派遣が今度原則自由化されるというふうに思うんですね。そうなりますと、当然、新卒業者の正規雇用というのが減っていくことになるというふうに思います。そうなりますと、青年層の正規雇用が減っていって、そして派遣などの低賃金の不安定雇用が増えていく、こうなった場合に、一体、日本の社会とか日本の経済の将来とかをどういうふうに考えていくかということがあると思うんですね。私は、質の問題も問われておりますけれども、大きなやっぱり日本の将来にかかわる問題になっていくのではないかということを大変心配しております。そういう立場から、将来ある子供たちを送り出している先生が進路指導担当としてどのようにその点を感じておられるのかということをお聞きしたいと思います。
○参考人(小島喜與徳君) 派遣ですとか有期雇用の関係の話題が出てきたのはこの二、三年のところです。それ以前にはほとんど話題にも上っていません。
 話題に上り始めてからというところでは、派遣はちょっとなというのが就職指導担当者の実感です。ただ、ここのところで、生徒のニーズに合った求人がないという状況で、いずれやむを得ずそこにも送らざるを得ないかなという実感を持っています。ですから、有期雇用でもやむを得ないかな、そういうふうな部分も、その辺りは就職指導担当者の方でも今話題に上っているところです。
 ただ、データとしてどの程度かというのは、まだ積極的に送ろうというような形には現場はなっていません。ですから、なるべく避けているというのが現状だと思います。
 それから、将来のことを考えるとということなんですが、先ほど離職者の話をしましたけれども、三年間で半分辞めちゃうという状況を考えてみますと、フリーターの二年間というのはまだ何とかなるんですね。小杉礼子さんというフリーターの研究をされている、JILの方ですけれども、その人の研究の方でいきますと、二年間ですと正社員より給料いいんですね。そういう実態が、生徒にもその辺りは分かっちゃっている。
 ですから、例えばフリーター二年間、つまり若い、早いうちならフリーター二年間でも何とかなる。ただ、その後が実はうまくいかなくなるので、やはり生徒たちもいずれは正社員だというのはあります。中退していく子でも言いますので。ですから、正社員に、目指したいというのはどの子にも必ずありますので、そこの部分は大丈夫だとは思うんですが。
○委員長(金田勝年君) 時間ですので短くお願いします。
○井上美代君 じゃ、お一人、今井参考人に簡単に。
 民営職業紹介事業にかかわる指導監督件数が出ていて、文書指導件数が八十九、改善命令件数が十九、指導・処分件数が一件と出ていますけれども、今後、指導強化についてどのように考えておられるか。強化していかれると思いますけれども、その点を一言。
○委員長(金田勝年君) 今井参考人、時間が来ておりますので簡単にお答えください。
○参考人(今井房三郎君) 協会でもいろいろ研修会とかそういうのをやっておりまして、その方向で今後対処していきたいと思っております。
○井上美代君 ありがとうございました。
○森ゆうこ君 国会改革連絡会(自由党・無所属の会)の森ゆうこでございます。
 先生方、今日は本当にありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 まず、小島参考人にお聞きしたいんですけれども、先日発表されました国民生活白書におきましては、フリーターの、今ほども大変議論になっておりましたけれども、フリーターの問題、若年者の新卒無業の問題等、かなりのページを割かれて結果が、調査結果が載っております。
 よくこの委員会でも話題になることが若い人たちの就業観の育成ということについてなんですが、この点について、今現場にいらっしゃる先生として、子供たちの就業観、現在どのようなものになっているか、そしてまた、学校で今後そのような、これからの時代に合った就業観の育成ということについては対応が可能なのかどうか、その点についてまずお答えいただきたいと思います。
○参考人(小島喜與徳君) 就業観、今の現状でいきますと、まずやりたいこと、何をやりたいかということがまず優先をしちゃっているような感じがします。ですから、我慢をしてやるですとか高い給料ならいいとかって、そういう発想はないですね。ともかく自分の興味、関心に基づいて動きたい、もうそれがともかく前面に出ているという感じがします。
 あと、その後の指導方法というんでしょうか、学習の方法なんですけれども、先ほどお話の中に進路学習というお話をしたんですけれども、いろいろなワークシートを作りまして、例えばそれによって職業を考えさせる、それから、例えばいろんな働いている人の事例を持ってきて、こういう価値観で働いている人たちがいるですとか、さらには職業人の講話、それからインターンシップもある意味それに近いものだと思うんですが、そういったものが学校現場ではかなり普及しているのが現状ですから、いずれ効果は出てくるんではないかと。まだ始めたばかりですので、そうすぐには成果は出ないのではないかと思っています。
○森ゆうこ君 ありがとうございました。
 次に、今井参考人に伺います。
 今回の法改正につきましては、規制緩和ということで評価されているということだと思うんですけれども、規制緩和、私も賛成です。ですけれども、規制緩和ということには、当然事後チェック、自己責任ということがセットとして付いてくるわけでございまして、その意味において、協会としての自主努力ということについて今後どのような対応を取られるおつもりなのか、お聞かせいただきたいと思います。
○参考人(今井房三郎君) 一つは、協会で倫理綱領というのを作っておりまして、かなり厳しい内容にしておりまして、それを守ってもらうということは常にやっております。
 それからもう一つ、その時々の状況に応じて研修会を開催しておりまして、大体一回やりますと百人から百五十人ぐらい集まるんですが、そこで例えば倫理の問題とか法改正の問題とかそれから個人情報の問題、個人情報は今月またやるんですが、そういう法律に関連した問題の研修会をやっておりまして、それによってかなり対処できるかなと思っております。
○森ゆうこ君 ありがとうございます。
 ただ、先ほどの御説明ですと、協会に参加されている事業主というのは大手の方が多くて、業界全体の二五%をカバーしていると。じゃ、残りの七五%の、協会に入っていないからと言ってしまえばそれでおしまいなんですけれども、一応業界を代表する団体として、その会員以外の企業に対しても何か自主的に努力を促すようなことは必要ではないかと思われますが、その点につきましてはいかがでしょうか。
○参考人(今井房三郎君) その点、実は苦慮しておりまして、一応、今、大体毎月一回ぐらい新規に許可を取った業者に対しまして業界説明会というのをやっておりまして、そこでもう分け隔てなく、こういう状況にあるから、例えば個人情報の問題、そこら辺を説明しておるんですが、できれば協会に入っていただきたいということにしておりますが、なかなか経営上の問題その他ございまして、そういう形で、できるだけ多くの人に入っていただくと。
 それから、そういう個人情報や何かのときには協会以外の人にも案内は出しております。そういうことで対応しております。
○森ゆうこ君 ありがとうございました。
 次に、和田参考人に伺いたいと思います。
 私は、これからの新しい二十一世紀の日本におきまして、今までは終身雇用制度というのが最大の言わば社会保障という意味がありまして、社会の安定に寄与してきたわけですが、外の要因もありますので今後変わらざるを得ない部分もあると。労働市場の流動化と、そして雇用の安定、労働者の保護ということを両立していくという非常に困難な問題に直面しているんですが。
 先ほど、表をもって新しいモデルということでお示しいただいたんですけれども、先生の方で何か政策的な御提案がございましたら、是非お願いいたします。
○参考人(和田肇君) 労働市場の流動化というときに一つ注意していただきたいのは、これはどこの国でも同じなんですけれども、中高年齢者のところには余りその市場の流動化というのは及んでいないと。若いところは、比較的流動化したり新しい職選びをしたり自分的職を選ぶということをやるんですけれども、やはり中高年のところは、例えばヨーロッパを見てみましても、むしろ先任権制度というのがありましてこういう人たちには非常に厚い保障をされている。これは恐らく、中高年はどこの国でも非常に新しい仕事を見付けづらい。例えば、半分に賃金が減ってしまうような仕事でもあれば就くかというと、やはりそういうわけにいかないだろうという、この点を一つ労働市場の流動化の点については御注意していただければというふうに思います。
 それから、ある程度私は、流動化する、雇用形態が多様化するということは恐らく今後進んでいくだろうというふうに思っておりますけれども、その流動化する垣根をどれだけ低くするか、あるいはしやすくするか。流動化しても余り社会保障等々について不利益が及んでいかないような、あるいはできるだけ労働者の意思が尊重されるような、そういう仕組みというのが恐らく今後は必要になってくるだろうと。
 先ほどヨーロッパモデルというのを示しましたけれども、そういうことを今向こうの方では一生懸命模索している。これは労働政策だけではなくて、社会政策も含めた新しいモデルじゃないかというふうに考えています。その一つのタイプとして、例えばフルタイム労働者とパートタイム労働者がどういうふうに自分の生活スタイルに合わせて移行できるかというふうなことが一つあるのだろうというふうに考えております。
○森ゆうこ君 ありがとうございました。
 それでは、最後に中村参考人にお聞きしたいんですけれども、私も、今ほど和田先生の方から御指摘がありました。要するに、今の日本においてはフルタイムとパートそれから派遣、これらは身分格差という部分にもなっているわけで、これが一番の問題だと思うんですね。これを解消していくために、もちろん政府としても法整備でそれをやっていかなければいけない、そしてまたそこには労働団体の御協力もいただかなければならないというふうに私は思っておりますが、今後、今のような垣根を取っていく、雇用形態の差は単純に労働時間の量的な差であるというふうな方向に持っていくということについて、労働団体としての今後の取組について伺います。
○参考人(中村善雄君) 多様化の中でフルとパートの均等待遇の枠組みをいかにしていくかと、これは基本は全体の政治的な枠組みも含めてありますが、当然ながら労使関係ということが非常に重要であります。特に、派遣のようにネガティブリスト化をされて、いわゆる業務限定ではなくて、いわゆる通常の労使という、同じところに、職場に就いている、これが派遣が進められいる。今回改正は長く延びるということは、通常の職場において通常労働者、派遣労働者、更にはパート労働者が混在をしていく、その中で、これは企業の生産性、職場秩序も含めてどう高めていくかというのは、これは実に非常に重要な課題であります。そういう意味で、派遣先の労使関係が持っている割合というのは非常に重要な問題であるというふうに思っております。
 やはり、そこのところの協力がすべてこれは日本企業の生産力のベースであるというふうに認識をしておりますので、やっぱりそこのところがきちっといくような取組というのを、これはチェックも含めて進めていくという必要があるというふうに思っております。
○森ゆうこ君 ありがとうございました。
○大脇雅子君 四人の参考人の方々には、貴重な御意見、ありがとうございました。
 和田先生にまずはお伺いいたしたいんですが、先生は非常に各様々な雇用形態等についての垣根が低くなったと。正規、非正規の垣根、あるいは育児や介護休暇などライフステージにおける変化における男女差、あるいは緩やかな引退、こういった形で垣根が低くなった場合に必要な法律規制、今、日本の法制で、そういう状況の中でどういう法規制が一番重要だと考えていらっしゃるんでしょうか。
 それからもう一つ、有期の場合も一年が三年になり、一時的・臨時的であったという派遣も三年になり、この三年に今雇用期間が延びたということに対する労働契約に対する影響というか、そういうものをどんなふうにお考えでしょうか。
○参考人(和田肇君) 前半の問題につきましては、様々なところにこれから法改正が及んでくるだろうというふうに考えております。例えば、パート労働法は残念ながらまだ法改正がされておりませんけれども、パート労働法のとりわけ三条、私は改正というのが、法改正が必要だろうというふうに思っております。
 それから、育児休業、介護休業につきましては、育児休業ももう少し、これはヨーロッパではかなり長期化しておりますけれども、もう少し長くなって、かつ男性が取ることを支援する、あるいは場合によっては強制するということも必要なのかもしれませんけれども、そういう形のものが必要になっていると思います。
 それから、保険につきましては、先ほど登録型のことを言いましたけれども、場合によっては社会保険の一本化というようなことも将来的には必要になるかもしれません。
 それから、緩やかな引退過程のところにつきましては、私は定年の問題を現在の六十歳でいいと思いますけれども、年金の支給との連動性をどういうふうに保っていくのか、部分年金の制度とそれからパート、高齢者パートの制度をどのようにうまく組み合わせていっていくのかということがこの点についての法改正では必要になってくるだろうというふうに思っております。
 それから、三年という期間についてでありますけれども、この三年というのは意外と有期契約の更新のときに非常に重視をされておりまして、三年以上更新すると解雇が厳しくなるというような、公務員についてはそういう規制がされています。大体、三年というのが恐らくめどになっているんだろうと。
 しかしながら、職場自身は存続する、ずっとあるわけでありますから、そういう職場にどうして有期を雇うのかということにつきましては、もう少し合理的な私は理由を求めるべきではないかと。今、全く契約の自由でありますけれども、有期契約が存在しないということはないと思います。必要になったら出てくると。しかし、どういう場合にその有期の雇用をするかということについては、きちっとやっぱり説明をして納得をして雇用をすると、そういうシステムが必要だろうというふうに思っております。
 期間については一年、一年を超えた場合には、やはりそのポストというのはずっと存続するものですから、そこについてはできれば無期あるいは正社員の雇用ということを積極的に進めていくような、そういう法政策が必要だろうというふうに考えております。
○大脇雅子君 ありがとうございました。
 この派遣法の改正の中で、結局企業が即戦力を求めるということで、そうすれば長い目で見て人材育成ということが日本の労働市場でどういう形で実っていくべきであるかという点について、まず今井先生と、それから中村さんと小島さんに、現況の中で人材育成ないしは職業教育の在り方についてどういうふうに思っていらっしゃるか、お尋ねしたいと思います。
   〔委員長退席、理事中島眞人君着席〕
○参考人(今井房三郎君) 最近、人材関連の業界では教育という部分がかなり強く出てきておりまして、例えば貿易実務とか、そういう二、三か月基本を教育すれば現場へ行ってかなり、現場でOJTでかなり能力がだんだん上がるということについては、人材業界全体、かなり教育という面をやっております。
 ただ、おっしゃるように、非常に高度な場合はなかなか短期の研修では無理だと思いますので、そこら辺はやはり今までの企業内教育というんですか、そこら辺が重要になってくるかと思いますが、一応業界としては短期の研修で可能なものについては、いろいろ教育研修というのをやっておりますので、それが一つの今後の雇用形態への対応なのかなというふうに考えております。
○参考人(中村善雄君) 先生御指摘のように、人材育成どうするというのは、この国の在り方に非常に重要なところだと思いますし、それに対する整備をどうするか、今に流動化が進んでいる中で社会的な支援体制をどうするかというのは、これは多様な雇用形態を通じて非常に重要な課題だと思っております。
 ただ、労使関係の現場から見たときに、いわゆる即戦力で志向された、例えば派遣のような形、紹介でもいいんですが、いうことで、一定のレベルの部分のところというのは求められて即戦力でいくだろうと思っているんですが、やっぱり根本はそれが入ってきた後、いわゆる派遣先の部分においていかにきちっとした育成ができるかということが究極的にはいわゆる生産力、生産性としての勝負どころだろう。短期的にその部分だけ使った後はいいという考え方だけでは企業はもたないというふうに思いますし。
 人材育成という面で、派遣労働を選びたいという人の人材育成の面から考えると、やはり派遣先を通じた部分できちっとした職業能力が身に付けられる、しかもそれが使い捨てではなくて本人の職業選択の過程の、生涯を通じた職業選択が選べるという過程の中で、一定期間派遣でしても、当然臨時的・一時的な枠を超えた以上はいわゆる直接雇用に移って、そこできちっとした働き方で生産力を高めていく、そういったような枠組みとしての位置付けが非常に重要なのではないかと考えております。
○参考人(小島喜與徳君) まず、即戦力に見合うような形での人材育成ですとかそういった方向では、まず高校ではほとんど無理です。専門高校、工業高校辺りでも、例えば技術訓練をするんですが、産業界の方からではそのレベルでは駄目だというふうに言われるケースがよくあります。ですので、即戦力という点では、まず高校段階では期待できないというのが実感です。
 そうした場合にどうするかというと、やはり職業技術校ですとか専門学校ですか、そちらの方にどうしても移行せざるを得ない。ですから、私の率直な言い方をすれば、今就職、高校生で就職を考えない方がいい、むしろできるならば専門学校に行って技術を身に付けてから就職した方が広くなるというような形で話すような場面も結構出てきています。ですから、上級学校に行って技術なりを身に付けざるを得ない。ですから、高卒で就職する場合には、やはりこれはもう社内でやってもらうしか道はないかなというのが率直な意見です。
○大脇雅子君 和田先生、この点についてはどんな御見解、お持ちでしょうか。
○参考人(和田肇君) 職業訓練については、やはり二つの側面で考えていくべきだろうと。
 一つは、オン・ザ・ジョブ・トレーニングというのはやはり依然として非常に重要な要素だというふうに思っていますけれども、もう一つは、最近非常に増えてきているのは、自分で学校に行きながら新しいキャリアアップを目指すというシステムですね、こういうものについての支援策というのが今まだ十分整っていないものですから必要だろうと。例えば奨学金制度とか、それから時間を保証するとか、あるいは場合によっては一年間、二年間休んでもまた戻ってこれるようなそういう仕組み。特に後者の面が今のキャリア形成の中では重要な要素になってきているのじゃないかというふうに私は考えております。
○大脇雅子君 ありがとうございました。
○西川きよし君 御苦労さまでございます。私が最後になりますが、よろしくお願いいたします。
 まず、職業紹介事業の許可制についてお伺いをいたします。
 この許可制については、前回の改正後も、規制緩和委員会などが再三にわたりまして届出制にするようにと指摘があったわけですけれども、審議会の建議では、原則として許可制を維持することが必要と、こういうふうにされたわけですけれども、この点につきまして、例えば無料職業紹介事業の場合はその大部分は社会福祉法人だとか公益法人、労働組合等々なんですが、こういった団体などについては届出制の範囲、拡大されてもいいのではないかなというお考えもあるわけですけれども、こういった点についてまずお伺いしたいんですが、今井参考人、中村参考人、和田参考人にお伺いをいたします。
○参考人(今井房三郎君) 私らの今の感覚としましては、私の場合には有料職業紹介ということですが、やはりまだ、いろいろ業界が成熟するとかそういう点考えますと、やはりまだ許可制がいいかなと。もう少し業界が成長しまして、暁には、例えば届出制にするとか、そういうやはり段階的なあれが必要かなというふうに判断しております。
   〔理事中島眞人君退席、委員長着席〕
○参考人(中村善雄君) 職業紹介の許可の問題でありますが、やはり基本的には人を扱うという部分でありますので、きっちりとした保障の仕組みを含めて担保が必要だというふうに考えております。
 そういう意味で、いわゆる許可制から届出制という流れがあるわけでありますけれども、当然ながら流れは、許可をした、届出をした、何か問題が発生をしたというときに、きちっとしたトラブル処理も含めて救済の仕組みができるということのセットで当然出てきているわけですが、現状のところの判断をする限り、そういう仕組みが到底整備をしているとは言えない。また行政的にも多大なコストを算出しなければならない。
 ある種、事前的な許可制のシステムというのは、そういう意味では事前の部分のところでスクリーニングを掛けようということですから、いろいろと行政指導とかがちょっと過大だとかいうような御意見もありますが、それは正しく指導のやり方を含めていわゆる全体、行政としてのコストをどういうふうにするか、それから保護の配分をどう図っていくかということの中で議論がされてきただろう。したがって、基本的に、原則として許可制を維持ということは、そういう議論の中で出てきたものと認識をいたしております。
 そういう範囲で、無料の職業紹介部門はお金取らないからいいんじゃないかという議論はいろいろあるんですけれども、やっぱり根本は、やはりそこで行っている団体がいわゆるそういう職業紹介ということに対して本来的に果たし得る機能とか、そういう部分の性格というものを見極めた、見極めたというか、いうことを確認した上で、合意の中で少しずつ検討されていくということではないかというふうに考えております。
○参考人(和田肇君) 私も、今まで、お二方と同じでありまして、やはり人の派遣というのにつきましては、物を売買したり紹介したりするのとは違った側面があって、国の一定のコントロールの下に置くべきだろうというふうに思います。
 ただ、理論的には恐らく届出制というのはあるかもしれませんけれども、その場合には事後チェックとか行政指導とか、そういう仕組みもきちっとやはり組み込んでおかなければ弊害が出てくる。例えば、最初は無料派遣だったんだけれども、その後、有料派遣をするようになったとか、そういうような問題が、法違反の状態が出たときの問題に対応しておく必要があるというふうに考えております。そういうものができれば理論的にはあり得るというふうに考えております。
○西川きよし君 許可制を維持するというその背景には、不適格なといいますか、業者の参入を排除すること、こういうふうに言われているわけですけれども、その不適格な業者とはその実態がどのようなものなのか、またそれは届出制にした場合に排除することができないものなのかというふうに考えるわけですが、その辺りを今井参考人にお伺いしたいと思うんですが。
○参考人(今井房三郎君) 不適格というのは、これいろんな面がございますので、なかなか正直言いまして、要求された書式、それに従って届出だけという場合には、やはりそこで問題業者が入るという懸念もございますので、今現在、審議会で議論、審議して、それで許可を下ろしているというあれですが、やはりそういうプロセスを踏んでいただく方がいいんではないかと思っております。
○西川きよし君 ありがとうございました。
 引き続き、中村参考人にお伺いをしたいと思います。
 この労働者の派遣法の中で、物の製造の業務が適用対象となった点についての評価なんですけれども、それから安全衛生面等々の今後の課題について是非お伺いをしたいなと思うんですけれども。
○参考人(中村善雄君) 現在の違法な、先ほど申した請負等も含めて十分な整理できていないところでの問題については非常に問題があるだろうというふうに思っております。
 制度として考えたときに、製造業でやっぱり大きな焦点は安全衛生の問題だろうというふうに思っております。
 この部分のところは、やっぱり当然派遣先のところで安全衛生管理というのは基本的に事故が起きないように行われているわけですけれども、そこに対する、そういう起きない体制をどう作っていくかというのが非常に重要なところで、今の派遣法は、入れるけれども、基本的に責任の分担は基準法も含めて派遣元、派遣先でやった上で、一応何か起こったときの責任の所在だけは明確にしているんですが、それを起こらない、元々の予防するための安全衛生体制をいかにどうするかということについてはまだ十分詰まっていないところがあるだろう。
 これは、派遣元・先に安全衛生責任連絡担当者というのを置いて、そこで密接に連絡を取ってやるというのが一応形ではなっておりますけれども、特にそういうことがどうしたらうまく実行して本当の保護が図れるかということについては十分議論していただいて詰めていく必要があると思いますし、それからもう一点、製造業にはいわゆる危険有害業務の関係がございます。
 当然ながら、危険有害業務というのはそれなりのプロがやって、それに対応していく。そのために、当然、直用労働者であれば、危険有害業務に就かせる部分の就業制限はもちろん、研修、教育も含めてきちっとやるということになっているわけですけれども、そこに派遣ということが入ってくる。当然、前段で派遣労働者は、そこの教育、派遣先におけるそういう密接な教育もきっちりと受けるということが必要だと思いますし、また派遣労働者自身の立場にとってみると、同じ製造業に派遣される場合においても、そもそもそこが危険有害業務であるということ自身が事前にきっちりと通知をされて、それを了解をした上で、それに対する適切な保護策、対処策も含めてやった上で派遣をされるというようなことが、特に製造業問題では非常に安全問題で重要、懸念というか重要だと思っておりまして、ここのところをおろそかにやっていい加減に派遣をして、何か危険有害業務で事故が起きちゃったなんということが決して起こらないような体制というのを是非組んでいただきたい、やるからには組んでいただきたいと思います。
○西川きよし君 時間の関係で最後になりますが、和田参考人にお伺いします。
 兼業禁止規則についてお伺いをしたいと思うわけですけれども、これについては、根拠となるILO勧告が撤回されたので撤廃する意見と、それからやはり悪質な事業者、例えばサラ金ややみ金など、多重債務者を性風俗営業者に紹介するといったことがあり得ないか、そうした懸念から兼業禁止規定にはこれは意味があるのではないかと、そうした意見があるわけですけれども、この点につきまして最後に和田参考人にお伺いいたします。
○参考人(和田肇君) 兼業禁止規定につきましては、依然としてやはり重要な意味を持っているだろうというふうに思っております。今御指摘があったような事例があるかと思います。よろしいでしょうか。
○西川きよし君 分かりました。
 時間が来ましたので、ありがとうございました。
○委員長(金田勝年君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
 参考人の方々には、長時間にわたりまして貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしましてお礼を申し上げます。
 午後一時まで休憩といたします。
   午前十一時五十分休憩
     ─────・─────
   午後一時三分開会
○委員長(金田勝年君) ただいまから厚生労働委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、職業安定法及び労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律の一部を改正する法律案を議題とし、参考人から意見を聴取いたします。
 午後は四名の参考人に御出席をいただいております。
 参考人の方々を御紹介いたします。
 社団法人日本経済団体連合会常務理事紀陸孝君、弁護士・NPO派遣労働ネットワーク理事長中野麻美君、大阪経済大学経済学部教授大橋範雄君、首都圏青年ユニオン委員長名取学君、以上の方々でございます。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多忙中のところ、当委員会に御出席をいただき、誠にありがとうございます。
 参考人の皆様には忌憚のない御意見をお述べいただきまして、本案の審査の参考にさせていただきたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。
 次に、議事の進め方でございますが、まず参考人の皆様からお一人十分で順次御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えをいただきたいと存じます。
 なお、意見の陳述、委員の質疑及び参考人の答弁ともに発言は着席のままで結構でございます。
 それでは、まず紀陸参考人から御意見をお述べいただきます。紀陸参考人。
○参考人(紀陸孝君) 御紹介賜りました日本経団連の紀陸と申します。
 本日は、職安法、派遣法の改正につきまして、私どもの考え方を述べさせていただく機会を賜りまして、先生方に改めて御礼を申し上げます。
 今回の派遣法、職安法の改正の評価を申し述べたいと存じますが、その前に、人材派遣であるとか職業紹介であるとか、いわゆる労働力の需給調整システムの機能、これが広い意味での雇用創出に非常に大きな効果を持つ仕組みであるというふうに私ども考えております。
 これらの制度を利用する企業におきましても、生産性の向上であるとか、あるいは創造性のあふれる組織づくり、こういう仕組みづくりに非常に有効な仕掛けでありまして、当然ながら、企業の国際競争力の強化につながるものであるとも考えます。また一方、働く人、労働者にとりましても、働き方の多様化が非常に進んでおりまして、それを受け止めるための選択肢拡大、これにつきましても、この制度の大きなシステム見直しというものが重要不可欠な問題になっているかというふうに存じます。
 こういうような労使双方のニーズを受けて、私ども、従来から、この労働力需給調整システムの様々な規制の撤廃を要望してまいりまして、広い意味での選択肢の自由を拡大すべきことを訴えてまいりました。
 いろいろ御指摘がございますが、現実には派遣法の運用につきましては余り好ましくない事例がある、そういうことは私ども十分承知をしているつもりでございますが、大多数の派遣会社あるいはそれを受け入れる派遣先の企業、ここでは、きちんと法律を遵守して派遣スタッフをきちんと戦力として使おうと、そういうような運用をしている点を十分御留意をいただきたいというふうに存じます。
 今回の派遣法あるいは職安法の改正は、様々な面でこの規制改革の方向に一歩踏み出しているというふうに私ども評価しております。派遣期間の制限であるとかあるいは派遣対象業務の制限、さらには事業の許可制、事前面接の禁止、こういうような諸規制を撤廃しようとしている内容が盛り込まれておりまして、私ども評価したいと思っております。
 ただ、雇用情勢はこれからますます厳しくなりますし、いろいろな意味での労働力需給のミスマッチが非常に多い現実でございます。先行き、この需給のミスマッチは更に広がっていく可能性がありますので、それを食い止めるためにも、できるだけ民間の活力を利用するという意味で、今般の改正を早く実施できるように先生方の御尽力をいただきたいというふうに存じます。
 将来的に、様々な制度運用に関する人たちができるだけこの制度の運用に支障がないようにお願いしたいというふうに存じますし、今般の改正で、より一段運用上の複雑化というのが増してきているとも存じますので、その複雑さが増さないように、先生方の御配慮をお願いしたいというふうに存じます。
 特に、派遣期間の延長に伴いまして、派遣先の過半数労働者への意見聴取の義務というのが盛り込まれましたが、こういうような運用につきましても、なかなか企業では運用がしにくい面もございますので、制度運用の困難をできるだけ回避するような方向での改正をお願いしたいというふうに思っております。
 さらに、製造業における派遣が、一年間でございますけれども導入されてまいりましたけれども、これも非常にニーズが多いものですから、できるだけこの面も運用がしやすいような御留意を賜りたいというふうに存じます。
 また一方で、派遣で働きたい、そういう就労ニーズをお持ちの方々がたくさんおられますので、派遣で働きたい方々が仕事がしやすいように、様々な利用しにくさという面を解消していただきたいというふうに存じます。
 最後でございますけれども、一部の派遣会社等がいろんな不祥事を起こしている点につきまして、私どもこの問題につきましては真摯に受け止めております。
 私ども日本経団連といたしましては、企業活動の基本、これは言うまでもなく社会と市場の信頼と共感にかかわっているというふうに考えておりまして、法律違反によって社会の信頼と共感が失われれば産業の発展はないというふうにも考えております。
 さらに、今般、日本人材派遣協会で問題の重要性を十分認識されて、つい昨年でございましたか、日本経団連は企業行動憲章というものを作りましたが、その憲章を基に日本人材派遣協会憲章というものを制定されて、会員企業の行動を律していくというような方針を出されております。
 私どもといたしましても、派遣という仕事が、業としてきちんと社会の信頼を得られるように、ともに協力して発展に協力してまいる所存でございます。私どもの申し上げたい趣旨、十分には御理解いただけない点もあるかもしれませんけれども、先生方のよろしく御尽力を賜りたいというふうに存じます。
 御清聴いただきまして、ありがとうございました。
○委員長(金田勝年君) ありがとうございました。
 次に、中野参考人にお願いをいたします。中野参考人。
○参考人(中野麻美君) 貴重な時間を与えていただきまして、ありがとうございます。
 私の方からは、まず派遣労働をめぐる状況について若干かいつまんで話をさせていただいた上で、本法案についての意見を述べさせていただければと思います。お手元に資料がありますので、それに沿って話をさせてください。
 まず、九九年の法改正以降、どのような事態が進行しているのかということなんですが、第一点目には、派遣元事業主の市場への参加が進んだことと併せてその質が問われるようになりました。とりわけ労働関係法規の遵守と派遣スタッフへの対応において深刻な問題が発生しているということが言えます。二つのケースを挙げておきました。
 社会保険、雇用保険に加入を要求しましたところ、加入してもいないのに、本人負担分について債権取立て会社に債権譲渡するけれどもいいかという内容証明郵便を送り付けてきたというようなケースがあります。
 また、派遣会社に登録した際に、絶対に仕事が就けると、そういう講習に特別に選ばれたから、本来百二十万円を支払うべきところを、あなたについては六十万円で良いと、こういうことを言われて六十万円支払って講習を受けましたが、何も仕事に就けないというような詐欺的な講習に関する事件がありました。
 第二点目に、九九年法改正以降、違法派遣が更に広がったということがあります。
 特に、請負委託を偽装した違法派遣が目立ちまして、違法状態に法の網をかぶせるとして規制緩和をこの間行ってきたわけですけれども、そうすればするだけ違法派遣も拡大してきたという傾向が顕著に見受けられます。
 そして、二十六業務の専門型の業務では、従来から本来業務以外の附帯業務によって、あるいは契約対象業務の不履行によって実質的には違法派遣になってしまうというケースが多かったわけですけれども、そういった事態が依然として続いているということです。
 そして、三点目に、非常に顕著なことは、人員調整後の派遣活用が目立ち始めたということです。例えば、派遣労働ネットワークに相談があった事例では、あるクリニックで、院長に労働条件の改善を求めたスタッフを次々と解雇した後に、看護師を含む違法派遣、これは偽装を、請負を偽装したものですけれども、これを受け入れて活用しているという実態があります。
 そして、大きな三番目として、競争関係が非常に激化することによりまして、賃金等労働条件のダウンが著しいという傾向があります。
 まず、賃金なんですけれども、派遣労働ネットワークが九四年に取りましたアンケート調査、これは首都圏一千名のスタッフを対象にしておりますけれども、九四年のデータによりますと千七百四円、時給です、九八年には千六百六十円、二〇〇一年には千四百六十円と二百円強賃金水準がダウンしてきている。
 そして、雇用の短期化、細切れ化というのも顕著でありまして、今ではもう一年という契約期間で働くというケースはごくごくまれになってきております。三年に期間を延長するというのがスタッフの雇用安定のためだというふうに言われてまいりましたけれども、現実に市場で進んでおりますのは雇用期間の短期化ということでありまして、この点は政策的にも大きな課題であろうというふうに思います。
 また、このように雇用期間を短期化することと併せまして、その期間内に仕事のノルマを設定しまして、厳しい管理を行う、ノルマの水準に満たなければ次の契約は更新しないといったような中で、スタッフの労働時間の長期化も極めて過酷になってきているという実態があります。古くは、残業がなくてそして自分の技能を発揮して働けるという市場でしたけれども、今日においては仕事に好き嫌いは言っていられない、そして残業にも応じるような態勢でなければ仕事に就くことはできないと。そういう派遣労働のイメージは一新されているという実態があります。
 そして、女性たちが多く働く登録型ですけれども、この分野においては出産、育児のための権利は実質的に否定されていると言っても過言ではなくて、妊娠したことを告げたら契約を解除されるといったようなケースが依然として少なくないということです。
 それから五点目に、これは資料も付けておきましたけれども、常用雇用労働者以上の男女間の格差と性差別が顕著であるということです。
 政府統計を見ましても、男女間賃金格差は常用労働者で六五ポイント、これは小数点以下を切り捨てております。派遣労働者で見ますと五三ポイントでありまして、派遣労働者の方が男女間格差が大きい、女性の賃金水準は低いということを示しています。男女平等政策をこの分野にも意識的に適用するということの必要性が痛感される資料となっております。
 また、依然として若い人優先の選別をうかがわせる実態が常態化しておりまして、女性は三十五歳を過ぎると仕事が減少すると。依然として事前面接による性差別的な選別が一般的に行われているということをうかがわせております。
 こういった実態がある中で、現状の法制度のままでは規制緩和には問題があるというふうに私は考えます。
 違法派遣が常用代替とともに拡大しておりまして、派遣労働の低賃金、不安定化が進むという、こういう要因には四つの原因が考えられます。
 まず第一に、人材派遣業者に対する監督の不徹底。第二番目には、関係企業の労働関係法規遵守に関する責任が不徹底であるということ。三番目には、違法派遣を受け入れた派遣先の責任が規定されていないということ。四番目には、派遣労働者が同じ職場で働く同じ人間であるということを基礎とした権利の保障が、派遣元業者に対する関係ではもちろんのこととして、派遣先との関係においても確立されていないということ。これらの要因に起因しております。こういった構造がそのままである限り、これ以上の規制緩和は労働者及び労働市場に深刻な影響を及ぼすというふうに考えます。
 改正法においても、違法派遣が行われたときの法律関係と労働者の権利保障は定められておりません。
 その具体的な内容については資料に示したとおりでありますが、期間制限を超える場合の雇用申込義務、これでは実効性は余りにも少ないというふうに考えます。適法な基礎を欠いた労働者派遣関係においては、直接雇用関係を推定するという必要があり、また派遣労働者の雇用にかかわる制裁措置については、派遣労働者に対して交付する就業条件明示書あるいは派遣労働契約の中に明記をするというような形を通じて確実なものにしていく必要があるのではないかと思います。
 また、契約上の対象業務を超えた派遣、そして適用除外業務による派遣、許可届出を受けない派遣元事業主からの派遣についてはこういった制裁措置の対象からは除外するという扱いになっておりますが、これでは違法派遣を押しとどめることが不可能だというふうに従来からの実態から痛感されるところであります。
 また、請負を偽装した違法派遣に対する現状の取扱いは極めて問題がありまして、こういったことでは違法派遣をなくすことはできない。この枠組みをどう整備するのかということが大きく問われております。
 そして、大きな二番目として、改正法では常用代替を促進する危険があります。三つの分野でそれを指摘することができます。
 まず第一に、製造業務それから社会福祉施設の医療業務の派遣の解禁であります。これについては基本的に賛成できないという立場であります。現状では、違法派遣の場合には、臨時的・一時的派遣の場合の期間制限違反に伴う雇用責任は問えないということが言われておりますけれども、この違法派遣の拡大はこういったことが継続する限り解決されるとは考えられません。また、医療については、公共サービスの質にも関係する国民生活上の問題になってまいりますが、そういった現状、今違法派遣が極めて多く行われてきておりますけれども、この現状を把握してその結果を慎重に検討することなく既成事実を追認する形で拙速に結論を出すということについては到底承服することはできません。当面、社会福祉施設ということになっておりますけれども、これが医療全体に広がってくるとなれば非常に大きな、患者の権利としても大きな問題であるというふうに考えます。
 また、二番目の特定日派遣についてであります。
 これは業務繁忙対策のために活用される危険が非常に大きく、現状のままでは承服することはできません。検討が今までの議論の中で行われていないに等しいものでありまして、以下の条件について慎重に検討する必要があると思われます。
 この点については本国会においても是非御議論をいただきたいというふうに考えるところでありますが、まず第一に、業務の繁忙対策や人員整理後の対策として活用するということを除外できるかどうかということであります。常用代替をしない、そのために用いないということを明確にしていただきたいということであります。そして、当該日以外は行われない業務であるということを明確にする必要がありますし、あくまでも業務単位の規制であって人単位ではないという原則も踏まえて、そのような業務の発生する範囲を具体的に例示も含めて枠付けることができるのかどうかということが問われるのだと思います。
 そして、通常の労働者とは既に当該職場で働いている労働者のすべてをいうとすることが重要でありまして、また所定労働日数が相当程度少ない日数というのは、そういった通常の労働者の所定労働日数の四分の一以下でかつ三日以下などというきちんとした規制を置くということが求められます。
 そして、三番目に、臨時的・一時的派遣の期間制限緩和でありますが、そもそも一年を超える場合には臨時的・一時的活用と言えるかどうかということが疑問があり、それを当該事業場の個別の事情に応じてこれを意見聴取し、そして臨時的・一時的派遣として活用していくという制度的な枠組みが取られているものと考えます。そうだとすると、この過半数代表の意見聴取は本来的には協議、同意であることが不可欠の要素になるはずでありまして、少なくとも一定の、確実に臨時制、一時制というものを担保する意見聴取であるのかどうかということが問われるはずであります。
 このほか、派遣スタッフの権利保障としては、雇用安定化に向けた義務付け規定、これを明確にすること、あるいは三年後への雇用申込義務について更に強力なものとすること、均等待遇保障についても、努力義務ではなく明確な義務として定めていくことなど多くの課題を抱えていると思います。
 以上の課題についてきちんとした法整備がなされない以上、今日の派遣法の規制緩和については基本的に反対であるということを申し上げたいと思います。
 以上です。
○委員長(金田勝年君) ありがとうございました。
 次に、大橋参考人にお願いいたします。大橋参考人。
○参考人(大橋範雄君) 大阪経済大学の大橋です。
 私は、ドイツの労働法理論と日本の労働法理論との比較法研究に関心を持ち、その一環としてドイツの派遣法の研究に従事している者です。日本の派遣法は、その制定に際してドイツの派遣法を参考にしたと言われていますので、本日はドイツ法との比較において今回の法改正の問題点について指摘したいと思います。
 そもそも派遣労働関係というのは、いわゆる雇用と使用が分離した労働関係ですから、派遣労働者は、契約上の使用者である派遣元の下でその指揮命令に従って労務を提供するというのではなくて、第三者である派遣先の下で派遣先のためにその指揮命令に従って労務の提供を行うわけですから、通常の労働関係における労働者よりも不安定な身分に置かれています。
 したがいまして、派遣労働関係においては、まず第一に、派遣労働者の保護が通常の労働関係にある労働者以上に必要とされます。そのためには国家による厳格な監督が必要とされます。すなわち、派遣元が真に使用者としての責任を負える実態を有している必要があるからであります。
 第二に、派遣労働者は、派遣先にとっては雇用することなく自己の労働者として使用できるわけですから、とても安上がりで便利な存在となります。ですから、派遣先は正規従業員の代替として派遣労働者を利用しようとするでしょう。そうなりますと、派遣労働者が正規従業員の職場を奪うおそれが出てきます。そこで、派遣労働者が常用雇用の代替として利用されるのを防ぐ必要が出てくるのです。そのためには派遣期間の長さがまず問題となるでしょう。
 さらに、派遣労働者と派遣先の正規従業員との均等待遇原則の実現、これが必要でしょう。均等待遇原則の派遣法への導入は、派遣労働者の労働条件に寄与するというのみならず、派遣労働の常用雇用の代替としての利用の防止という点からも重要であります。
 といいますのも、均等待遇原則を貫徹すれば、派遣先は派遣元に高額な派遣報酬、これは派遣先が自己の労働者に支払う賃金プラス派遣元の利益分も支払うことになりますから、そういう高額な派遣報酬を支払わなければならなくなり、派遣先としては低賃金労働力として派遣労働者を利用するメリットはなくなります。その結果、派遣先は本当に一時的・臨時的に労働力が不足した場合にしか派遣労働者を利用しなくなると思われます。
 次に、派遣元が使用者としての実態を有していないときや違法派遣を行ったときに派遣労働者の保護をどうするのかということが問題になると思います。したがいまして、派遣労働を経済的要請として無制限に拡大し、認めていくということには賛成できません。派遣労働を各種の理由から認める場合にも、厳格な要件と適用の下で限定的に認めるという立場を取らざるを得ません。
 以上のような問題関心から、今回の法改正の問題点をドイツ法との関連で述べてみたいと思います。
 我が国では、業としての派遣を行うに際して、いわゆる常用雇用型派遣は届出制、登録型派遣は許可制というように二本立てとなっております。しかも、派遣元が違法派遣を行った場合の派遣労働者と派遣先との関係についても何ら規定を有していません。この点、ドイツにおいては、一九八〇年代半ば以降、労働法の弾力化が進行する中で派遣法も随分弾力化しましたが、その成立当初より一貫して変わらないことは、業としての派遣を営もうとする者は連邦雇用庁、これは我が国で言う職安に該当すると考えていただけばいいんですが、の許可の取得を条件としているということです。ドイツでは一九七二年に派遣法が制定され、翌七三年から施行されていますが、これは制定当時から今日に至るまで一貫して変わらない原則です。もちろん、この間の一連の派遣法の弾力化の中で、許可取得義務を免除される派遣も存在するようにはなりましたが、これはあくまでも例外です。これは、ドイツでは一九六〇年代までは派遣は私的職業紹介であるとして禁止されていました。それを一定の条件下で認めるというふうにした歴史的背景に由来しているものであります。
 派遣法制定当時は、労働組合や学者を中心として、派遣労働は人身売買であるという極めて厳しい批判が存在しました。これは基本的に今日もそうでありまして、連邦議会への報告書においてもその点が触れられています。ですから、立法者といたしましても、派遣労働関係は派遣労働者と派遣元との間にのみ労働契約関係が存在するのであるから、派遣元が真に使用者責任を負い得る実態を有している場合にのみ認める、その保障として厳格な許可制度と、さらに常用雇用の代替として派遣労働が利用されることがないようにとの保障として臨時的労働としてのみ派遣を認めるとして、派遣期間の上限を当初三か月に限定する、そういうことによって世論の理解を得ようとしたのでありました。
 派遣期間の上限規制につきましては、その後、八〇年代半ば以降です、延長され続け、今回の改正、これは二〇〇三年一月一日施行で、経過措置がありまして二〇〇四年一月一日から完全実施されますが、この改正派遣法により派遣期間の上限については撤廃されることになりましたけれども、しかし許可制につきましては依然として存続しています。
 この厳格な許可制と一体のものとして無許可派遣、これは途中で派遣許可を喪失した場合もそうですが、に際しては、派遣元と派遣労働者との間の労働契約は無効となり、代わって派遣先と派遣労働者との間に労働契約関係が成立するという規定が存在しています。したがいまして、いわゆる偽装派遣の場合にもこの規定が適用されますので、派遣労働者の保護と、間接的にではありますが、違法派遣の防止にも貢献しているものと考えられています。
 すなわち、派遣先が派遣元と派遣契約を締結する際に無許可の派遣元と契約締結をした場合には、派遣先は派遣労働者を雇用することになりますので、派遣先はそのようなリスクを回避するために派遣元が許可を取得しているか否かを確認するようになる、そういうことから業としての派遣を営もうとする者は許可の取得に努めるようになるからです。
 さらに、今回の改正で、ドイツでは派遣先の正規従業員と派遣労働者との間の均等待遇原則が導入され、派遣元がこの原則に違反したときには許可が取り消されるということになりました。我が国の派遣法は、今回の法改正によってもこの点については全く考慮されておらず、問題であると思われます。
 このほか、問題と思われる点につきまして、若干触れてみたいと思います。
 紹介予定派遣についてですが、これは二〇〇〇年十一月から施行されておりますが、確かに派遣労働者に常用雇用への道を開いたという点もあるでしょうが、他方、従来の正規雇用であれば、入社後試用期間があり、その後本採用という形で就職していくわけで、その際に、判例及び学説の通説によれば、試用期間中は解約権留保付きではありますが、労働契約が成立したとされていましたが、紹介予定派遣の場合には、この試用期間に代わる役割を果たすものですが、その間派遣先との間に労働契約関係は存在しませんから、それが一年間あるとすると、その間労働者は常に不安定な状態に置かれ、組合活動等も実質的にはしにくくなり、また権利主張をすれば採用されないのではないかとの不安から我慢するようになる可能性が極めて高いと思われ、問題であると思います。
 その他、臨時的派遣の期間を三年としていますが、三年が果たして臨時的と言えるか大いに疑問です。また、三六協定の締結が派遣元となっていますが、これで果たして有効に機能するか大いに疑問が残ります。
 このように見てまいりますと、今回の法改正は経済的要請が中心となっており、リストラが横行していることと結び付けて考えれば、派遣労働者の権利のみではなく、正規従業員の権利をも侵害する可能性が極めて高いと言わざるを得ません。
 これで私の参考人としての陳述を終わりにいたします。
○委員長(金田勝年君) ありがとうございました。
 次に、名取参考人にお願いいたします。名取参考人。
○参考人(名取学君) 首都圏青年ユニオン委員長の名取学と申します。
 最初に、首都圏青年ユニオンについて説明させていただきますと、青年ユニオンは、今日急増するフリーターあるいは派遣労働者など非正規雇用労働者で働く青年を組織している労働組合です。そういう労働組合の活動を行っている者としての意見を申し上げます。
 労働者派遣法は、本来派遣労働者の権利の擁護と労働条件の向上に資することが目的であるべきだと思っています。しかし、残念ながら現在の労働者派遣法はそのような趣旨から照らしてみて甚だ不十分であると言わざるを得ません。今回、提案されている派遣法の改正案について言えば、派遣上限期間の延長の問題にしろ、あるいは物の製造業務に対する派遣の解禁にしても、使い勝手の良い、労働者の側からいえば不安定な雇用の拡大になりかねません。是非、派遣労働者の権利の擁護と労働条件向上に資するような派遣法の改正を望むものです。
 さて、派遣法を改正する必要として、派遣期間の延長によって雇用が安定するという議論がしばしばなされているかと思います。しかし、東京都産業労働局の調査によっても、派遣期間について制限緩和の要望は確かに強い、しかし、個々の派遣労働者との契約期間を見ると短縮傾向にあるという結果が出ています。実際に相談事例などを見ても、派遣期間はだんだんだんだん延長していく、しかし個々の派遣労働者との雇用期間は全く短期化していくということが挙げられます。
 派遣期間について言えば、法に違反して一年を超えている、そういうケースはしばしば見受けられますが、雇用期間の方は逆に二か月、中には一か月と短縮化され、更新を何回も繰り返しながら一年、二年派遣として働いている、そういう実態にあります。今回の法改正がこうした実態を更に加速させる、そういうものであるということについて危惧をしています。
 幾つか事例について紹介させていただきます。
 これはある携帯会社、携帯電話の会社に派遣されている労働者のケースですけれども、営業の仕事で派遣される、当初派遣元の担当者からは一年以上働いてほしい、長期に働いてほしいという説明を受けていたけれども、一年未満の段階で、中途でこれでおしまいですよというふうに更新を拒否される。慌てて契約書を見てみると、確かに派遣期間、それから雇用期間双方とも一か月というふうな短期間になっている。そういうことで困って労働相談に来たんですけれども、担当者、派遣元の担当者をつかまえてさりげなく聞いたところ、確かに長期でお願いした、そういうような言質が取れた。たまたまこのケースではそういう、担当者が確かに長期でお願いした経緯があるということを認めてしまったために比較的スムーズに解決に結び付いたケースですけれども、こうしたような事例が実際に発生している。
 あるいは、大手の派遣会社から、二十六業務、三年派遣できる二十六業務として派遣されていたケースについて言えば、これは四十代から大体五十代の女性のケースだったんですけれども、二か月の雇用契約になっている、それを繰り返し更新し、二年半ほど勤続していたと。派遣元と派遣先の派遣契約がなくなったということを理由にして雇い止めされました。ところが、実際のところ、どうもそうではないと。本当の理由は、年齢が四十代と高いことから、もう年齢の高い方は要らないということで、派遣先がそれで契約を打ち切ったと、そういうことらしいということですね。
 交渉に出てきた、これは組合で交渉を当然したんですけれども、交渉に出てきた会社側の弁護士も、書面上確かに二十六業務となっている、しかし実態としては二十六業務以外の業務についても行っているということを認めざるを得ない、そういう違法な派遣、しかも脱法的に派遣を長期にわたって利用していた、そういうようなケースが明らかになっています。
 こうした契約当初に説明されていた期間、例えば一年間お願いする、三年間お願いする、そういうことを言っていたにもかかわらず、それよりも短い期間で派遣契約が行われ、雇い止めされる、そういうケースは後を絶ちません。派遣契約の打切りの理由、こういったものは全く合理性に欠けるものが多く、中には電話の受け答えが悪かった、そういうことで雇い止め、そういうケースもあります。直接雇用の労働者であれば、そのような雇い止めあるいは解雇ということは到底考えられないんですけれども、派遣労働者についていえば、そのような理由で雇い止めをされるということですね。
 いずれのケースも、派遣先のユーザーが短期の派遣契約を希望していたとは到底考えられません。幾つか派遣を受け入れている企業とも直接労使交渉を持っていることがありますけれども、通常、派遣先、派遣を受け入れている企業は、しばしば派遣法の定めに違反するような長期の、三年であるとか五年、そういうような長期の派遣受入れを希望しているケースが見受けられます。そうであるのになぜ派遣期間、雇用期間の双方が短期化しているか。これは派遣元である派遣会社の側が積極的に短期化する、派遣労働者の雇い止めをやりやすくするためにそのようにしている、そういうことが背景にあるとしか思えません。
 少なくとも、派遣期間が実態として長期にわたっている場合について、雇用契約について、派遣元と派遣労働者の雇用契約についても同等の期間とするべきで、合理的理由のない雇い止めを強力に規制する必要があります。既にパートタイマー、アルバイトなどの有期雇用労働者の雇い止めについて、実態として更新を繰り返しているケースでは、雇い止めをする際に際して相当の事由がなければ雇い止めすることができない、そうした判例が確立しております。このような判例などを参考にしながら、派遣労働者の雇用の安定化を図る、より実効性のある措置を講じていただくことを求めます。直用化の努力義務だけではなく、最低限雇い止め、解雇を防ぐ措置を講じていただく必要があると思っております。派遣労働者の側からしてみれば、直用化されなければ解雇が待っている、そういう絶望的な状況を避けること、そのことが第一の優先的な課題になっています。
 さらに、派遣労働者からの相談の事例を紹介させていただきます。
 この労働者は二十三歳の女性で、短大卒業後、派遣として数か所の職場で働いてきています。派遣労働者が置かれている立場、気持ちがよく分かる事例ですので、少し相談のメールから引用させて紹介させていただきます。
 平成十三年四月から派遣事務として働きました。派遣先の女性社員からは聞こえるように派遣の悪口や嫌みや愚痴を言われました。胃がすごく痛くなって、その職場は辞めました。その後、彼女は別の派遣会社で平成十四年二月から働き始めます。ここでもなかなか厳しいような状況でして、クーラーがきつく、ひざ掛けなどで対処しましたが、それでもめちゃくちゃ寒くて、いつしか自律神経が乱れてしまいました。過呼吸症候群になり、今でも呼吸がしづらかったりしています。頭もぼおっとします。そんな日々が続きましたが、職歴がどうしても欲しかったので我慢して我慢して働きましたと。
 先ほど紹介したように、正当な理由もなく短期間で雇い止めされる、そういうことが労働者にどんな悪い影響を与えるか、想像してみていただきたいと思います。職場では孤立に悩みながら仕事を続けようと努力する。場合によっては、いじめの対象になりながらも、耐えながら、そのことに耐えながら仕事をしているわけです。ところが、いったん雇い止めとなると、こういう努力をしていたかいもなく、大した合理的な理由もないままに雇い止め、解雇される、そういうことを繰り返すわけです。このことによって、そういった経験を繰り返すことによって精神的にも肉体的にも追い詰められていく、これが派遣労働者の今日の実態であると私は思っております。
 特に、私ども青年層を組織しておりますが、青年層にとってみれば、こうした経験を繰り返すことがどういうことになるか。これは雇い止めの経験を結果的に繰り返すことによって、仕事をまじめにしても長期で働けない、すぐ辞めさせられる、そういう経験だけが蓄積していくわけですから、なります。これでは、今日、若年雇用対策としてしばしば若者の就業意識やあるいは職業能力を育てること、それが重要である、そういうことが言われておりますけれども、そういったものが育つはずもありません。かえって就労意欲を低下させる結果にもなりかねません。是非、派遣労働者が短期間で雇い止めされることのないよう、所要の法改正をお願いするものです。
 今回の派遣法改正は、既に直雇用の労働者の雇用を脅かしています。特に自治体職場においてその影響が出ています。
 これは都内の中央線沿いのある区のケースですけれども、これまで長期にわたって保育の非常勤、保育現場で非常勤という形で労働者を雇っていました。ところが、この長期にわたって働いてきた保育の非常勤五十名全員を来年三月で解雇する、そういう提案が現在この区で行われています。その後はじゃどうするのかというと、区の検討の中では派遣労働者を入れるんだと、今度三年になるんだから自由に使えると、そういうことで区としても派遣労働者を使う、そういう考えです。
 こうした事例は枚挙にいとまがありません。やはり都内の区ですけれども、都内北部にあるB区ですけれども、ここでも保育の職場に派遣労働者を導入する、非常勤職員については雇い止めをしよう、そういうようなことが検討されています。
 また、自治体において、図書館の窓口業務や学校給食など様々な現場で違法な委託が進んでいます。本来、委託では具体的な指示、命令を委託先の労働者に対してすることはありませんけれども、実際に現場で起きていることは、指示、命令がなされている。こうした委託というのは正に偽装請負に当たるんですけれども、ところが実際には都内でそういう委託がどんどんどんどん導入されている。こういう導入が行われるときには、非常勤職員、長期にわたって働いてきた職員が解雇される、そういう事例がしばしば発生してきました。中には、ある自治体ですけれども、数百名規模で一挙に解雇する、そういうことも珍しくありません。
 今回の法改正は、こうした違法な自治体における民間委託を派遣という形で合法化するもので、さらに多くの職場、自治体において長期に勤続してきた職員の解雇、雇い止めを引き起こす可能性があります。今回の法改正が常用代替を引き起こすことは、今申し上げたような事例からも明白です。常用代替を防ぐためにも、意見聴取義務の導入だけでなく、より強力な規制を行うことが最低限必要だと思います。
 長くなりました。ありがとうございました。
○委員長(金田勝年君) ありがとうございました。
 以上で参考人の方々からの意見の聴取は終わりました。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○藤井基之君 自由民主党の藤井基之でございます。
 本日は四人の参考人の方々から非常に貴重な御意見陳述をいただきました。本当にありがとうございました。
 御案内のとおり、現在、日本経済低迷から、特に雇用失業状況、依然として厳しい状況が続いております。関係者の方々が真摯な努力を続けているにもかかわらず、あるいは皆さん方に非常に建設的な御意見をいただいているにもかかわらず、残念ながらまだ失業率が非常に高いというふうに、非常に今時点不幸なことだと思っております。お互いに英知を出し合ってこの状況を克服したいと考えております。
 限られた時間でございますが、少し質問をさせていただきたいと存じます。
 御案内のように、我が国では、雇用の問題といいますと、日本型雇用とでも申しましょうか、二十世紀の雇用といいましょうか、終身雇用、長期雇用というそういった雇用慣行の下において安定した雇用関係が築かれてまいりました。この安定した雇用関係というものが、我が国の日本人労働者の勤勉さとまた家族的ないわゆる愛社精神というようなものをはぐくみまして、企業の生産力でありますとか技術力を高めて日本経済の成長に大きく貢献してきたと言われております。日本の終身雇用は、これは先進諸国からも高く評価されてきたものでございました。
 ところが、現在の状況はどうなっているかというと、正に雇用環境は大きく変わりつつあります。これは雇用する側のサイドの変化もありますし、逆にまたもう一つ、働く側、そちらにおける変化というものもあろうと思います。各々の意識あるいは認識、価値観あるいはニーズ等により多様化していると言えます。こうした雇用形態の多様化が進むということは、これは当然のことながら国民の生活基盤に対する大きな影響を与えてまいります。
 そこで、まず、時間が限られておりますので、限られた参考人の方にお伺いしたいんです。まず紀陸参考人にお伺いしたいんですが、我が国の産業界のいわゆる方向性を指し示すリーダー役であります経団連の方としまして、これから先の我が国の将来の雇用というものを、どのような形態というものが我が国産業にとって、我が国国民にとって、我々価値観にとってふさわしいとお考えで、どういった方向にそれを持っていこうとされているのか、それについてまずお尋ねしたいと存じます。
○参考人(紀陸孝君) 藤井先生から貴重な御質問を賜りまして、御礼申し上げます。
 私ども経営側としては、一つの言葉として雇用ポートフォリオという考え方を提唱しておりますが、一言で言うならば、最小の人件費負担で最大の経営効率を上げる、そのためのそれにふさわしい雇用形態を組むということであります。
 基本的には、今、先生おっしゃられたように、年功序列の終身雇用的な形態というのは徐々に形態としては狭まってくるというふうに思いますけれども、でもそこは、企業として基幹労働力の部分にはそういう者を置いておかないとやはり会社の継続的経営というのは難しいであろうと。したがって、その核になる部分については基幹的雇用形態を置いて、その周りに様々な雇用のスタイルを組み合わせるという格好でいくんだと思うんですね。その場合に、業種なりその会社の仕事の遂行にふさわしい形を組み合わせていく、そういうことになろうかというふうに思います。
 かつ、そういう社会では、恐らくいろいろな形で専門的な能力を求められるはずなので、ある程度ある会社でそれができた人は違うところのもっと高い処遇を求めるための労働移動というものも起こってくる。そのために、会社としては、人の出入りがあるということを前提にして、中途採用にも対応できるような、あるいは余計柔軟な雇用管理システムというのも会社の中に組み込んでいく、そういうような雇用管理をしていくのが将来企業者が考えている方向性ではないかというふうに思っております。
○藤井基之君 今お話がありましたように、雇用形態がどんどん今流動的にある方向に動いているというふうに認識していいんだろうと思うんですが、といいますのは、例えば今いろいろ議論をいただいております派遣労働者というもの、この現在の登録者数というものはもう百四十万人だというふうに厚生労働白書は言っているわけですね。このような流れというのはある意味で時代の要請でもあろうかと存じますが。
 先ほど参考人の方々の御指摘にもありましたが、この制度というのは、新しく導入されて今動いている状況でございまして、ですからこの制度は本来の趣旨に従って円滑に運営をされていかなければならない。そのためには、今、参考人から幾つか御指摘ありましたように、派遣労働者の保護措置でありますとか、派遣期間の制限であるとか、派遣対象業務の制限等々いろいろなルールというものを守っていかなければ、このルールというのは、ルールというか、この派遣労働の仕組みというのはうまくいかないんだろうと思うんですね。
 そこでお尋ねしたいんですけれども、経団連の中におきましては、将来できるだけ自由な雇用環境を創生して選択の自由を拡大すべきだというお考えだというふうに伺っております。この派遣労働者を使用するその派遣先であります事業主の団体として、本制度の定着とか円滑な運用のためのルールの遵守ということを、これ、先ほどもちょっと、短いコメントでしたがちょっと言及されましたけれども、もう少しこの点について御説明いただきたいと思いますけれども。
○参考人(紀陸孝君) 私どもは法の遵守というのは非常に大事だというふうに考えておりまして、様々な形で、従来から法の解説であるとかいろんな機会で講演会を催したり、私ども、各都道府県に一つずつ経営者協会というのがございます。その経営者協会を通じて、あるいは業種団体を通じて、様々の形でその傘下にある企業さんに法の内容なり法の適切な遵守なり運用の適切化をお願いしてまいっておりますし、今回の改正の趣旨も、いろいろ運用上複雑な面もございますので、今まで以上にPR方、遵守方の徹底を図っていきたいというふうに考えております。
○藤井基之君 今回のいわゆる派遣労働者のこの法律の改正の流れというのは、前回の一九九九年の改正がありまして、その後、いわゆる規制緩和というお言葉で何人かの参考人の方がお話しになったんですが、正にそういった方向に流れているんだろうという感じがいたします。
 この規制緩和の在り方につきましては、特に中野参考人から資料も用意していただいて、幾つかの問題点の御指摘をいただいたわけでございます。
 御案内のように、いわゆる労働者派遣法の第四条で、対象の範囲として派遣が適当でない事業分野というものが規定されているわけでございます。例えば医療従事者については、これを派遣というのは非常に政令等で制限をされているわけでございます。これについて、現在、政府の総合規制改革会議、御案内のとおりでございますけれども、医療従事者の派遣労働の規制というのを緩和すべきじゃないかと、そういった方向での御議論がなされております。
 私ども、これは中野参考人のこの資料で言いますと、公共サービスの質にも関係する国民生活上の問題である、だから問題じゃないかと、こういうような御指摘を受けているわけでございますけれども、医療の従事者の派遣というものは必ずしも自由化になじまないんじゃないかという感じを私も持っておりまして、中野参考人に、この国民生活上の問題になるというところをもう少しかいつまんで、もう少しブレークダウンして御説明いただけませんでしょうか。
○参考人(中野麻美君) 現在行われております医療での違法派遣の実態は、医療の知識を持ち合わせない派遣元責任者、そしてコーディネーターがマッチングにおいて非常に大きな問題をもたらすような形で労働者を配属しているという現状があるわけです。そして、片や医療の方では、患者との信頼関係の確立、そして安全な医療サービスの提供ということが大きなテーマになっておりまして、これを臨時的・一時的な形で派遣労働者によって対応するということが大きなミスマッチを生じるということにもなっております。
 労働者がそういったはざまの中で働くということになりますと、チーム医療に必要な信頼関係の確立ということに大きな支障が生じてまいりますし、何よりも、労働条件上の格差の中で、そういったしっくりとした有機的なチーム医療の組織というものができ上がるのかどうかということに大きな懸念もございます。そういったところで、患者の権利の側面からも大きな問題があるのではないかというふうに考えております。
○藤井基之君 ありがとうございました。
 終わります。
○山本孝史君 民主党・新緑風会の山本孝史でございます。
 今日は四人の参考人の皆さんには大変お忙しい中お越しをいただきまして、ありがとうございました。
 紀陸参考人に、済みません、ちょっと顔が見えにくくて恐縮でございますが、お伺いをさせていただきたいと思います。
 先ほど紀陸参考人も御自身お触れになりました日本経団連あるいは日経連の雇用ポートフォリオという、これから二十一世紀型の雇用がどうなっていくのかというときの考え方なんですが、これから先も派遣労働は増えていくんだろうか、そこはどんなふうにお考えですか。
○参考人(紀陸孝君) 私どもは、結論から申し上げますと、いろいろな雇用形態の進む中で、派遣という形も広がっていくんではないかというふうに考えております。
○山本孝史君 実は、この委員会で度々厚生労働省の認識と私あるいは私たちの認識の違いがありますのは、常用雇用の代替になっていないんだと、こうおっしゃる部分と、あくまでも派遣労働は臨時的・一時的な雇用であって、これはそれ以上のものではないというふうにずっと繰り返しおっしゃっておられるんですね。現場の姿は、でも、そうではないわけで、今も紀陸参考人はこれからも増えていくだろうと、こうおっしゃいました。
 実は、坂口労働大臣はその点を突かれて、派遣労働が増えているのは今の経済状況だからであって、十年もすれば元に戻ってくるだろうと、この委員会でこうおっしゃったんですが、そういう御発言について紀陸参考人はどんなふうに受け止められますか。
○参考人(紀陸孝君) 私ども率直に考えまして、常用正規の労働者の方が何というか幸せで、そうでない非正規労働者は不幸せだと、何となくそういうような仕切り分けがございますね。でも、将来を考えますと、確実に労働力供給は減ってまいります。どう考えても今の二十代とか三十代の人たちは、二〇〇〇年のレベルから比べるとはるかに減ってまいりまして、今の労働力の、会社の中に労務構成の延長線上で先行き仕事ができるとは思っておりません。ですから、派遣労働者の方も減りますし、逆に正規従業員の人も減ってしまうと。だから、比率の面では恐らく大臣が言われるようなものかもしれませんけれども、労働力供給が減る中では様々な形で多様な労働力を活用していかないといけない。
 そういう意味で、今現在の法律の建前では確かに臨時的・一時的な形での派遣という組立てでございましょうけれども、将来は果たしてどうか。
 ただ、その場合に大事なことは、できるだけ処遇の面できちんと扱えるような形を作っていくということだと思うんですね。今、悪い面ばかり強調されておられますけれども、実はだんだんそうでなくなるだろう。専門性の高い派遣の方なりパートの方、契約期間も長引くとなると、レベルの高い方を会社の中できちんと活用するようにしないと会社自体の経営がもちませんから、少しずつそういう方向に変わっていくんであろうと。将来の話ですけれども、だんだんだんだんそういう形の労働市場になるんだというふうに私ども思っております。
○山本孝史君 企業というものを一つのシステムとして考えれば、御指摘されたようにできるだけ利潤を上げていくというのが一つの目的ですから、人件費をできるだけ抑制したいという流れはいつの時代であっても私は変わらないだろうと思います。
 そのときに、やはり日本社会の活力ですとかあるいは安定ですとか、さらには将来世代の育成というようなことを考えたときに、雇用がしっかりとしたものでなければならない。そのとき、今、参考人として陳述なさいました言葉の中にもあったと思うんですが、私は働き方が多様化しても、たとえ短時間で働いていても、それはやはり均等待遇がされているということが前提なんじゃないだろうか。短時間正社員という考え方、私は自民党の皆さん方もほとんど同じ考えを持っておられると思うんですが、なかなか、企業はそうなっちゃ困ると、こういう思いなんだと思いますけれども、均等待遇を実現するということについての御意見はいかがなものでございましょうか。
○参考人(紀陸孝君) 私どもも同一価値労働同一賃金という考え方は否定しません。否定できるものではないと思うんですね。
 ただ、問題は、同一価値というような物差しをどういうふうに作るか。派遣の方と正社員、あるいはパートの方と正社員、あるいは正社員の中でもですね。それぞれの中、あるいは比べる相手の中でどういうふうな同一価値労働になるのか、その物差しをきちんと企業が運用できるようになって、それで働く人もそれに納得できるような形に持っていかなければいけない。
 ただ、今は正社員の方は言ってみれば長期安定雇用で、言葉はあれですけれども、職能資格制度みたいな形で運用されておる。パートの方は職務給ですね。だから、物差しが違うんですね。その物差しが違うものを無理やり合わせようとするのはちょっと無理でしょう。ここはやっぱり時間を掛けて調整しないといけない。できるところから少しずつ広げていって、その物差しを労使できちんと作っていくことが先だというふうに私ども思っております。その先に同一価値労働同一賃金という世界が少しずつ広がっていく、そういうふうに考えるべきではないかというふうに私どもは考えております。
○山本孝史君 ありがとうございます。
 中野参考人と大橋参考人に同じ質問をさせていただきたいんですけれども、午前中の参考人からの御指摘もありました、日本の派遣法がドイツを先例にして作られていると。その中で、私、聞いておりまして、決定的に違うものが二つある。一つは、登録型の派遣を認めるか認めないかということです。それと、反復雇用がなされていく中で一定のやはり上限制を設けるか設けないかというところで、先ほども大橋参考人もお触れになりましたけれども、そういう観点から見ていると今回の法律は少し物足りないのかと思いますが、この状態が、皆さんは現場をよく御存じだと思いますが、今回の改正法が施行される中で、これから先、雇用の現場は派遣労働というものをめぐってどういうふうに動いていくというふうに見通しをされますか。中野参考人と大橋参考人にお聞きをします。
○参考人(中野麻美君) 現状からいたしますと大変厳しい状況にございまして、従来一年であったこの雇用期間というのが、一年が大勢を占めていたものが、現在は一か月とか二か月とかという、非常に短期化をしていると。そして、三十五歳を過ぎるとなかなか仕事のマッチがないというような状況がありまして、業界の側ではやはり登録型でないと経営的にも大変になってくるという状況なんだろうと思います。
 しかし、派遣労働者の側からいたしますと、親も定年退職して、そして自分の将来が見えるというような、大体三十五歳を過ぎたときから御自身の雇用の安定と、そして未来の生活がどうなるのかということで、一番切実なニーズとして感じ始める時期でございまして、そういった意味では、登録型というよりは常用型への転換というものを強く求めるということになろうかと思います。そして、三十五歳を過ぎますと、もう派遣プロパーで働いておられましてもずっと継続的に自分自身の生活を築いておられるという方でありまして、実態的にも常用型ではないのかという方々が大変多うございます。
 これらの人たちをあくまでも登録型ということで、雇用の安定化というものを進めていく非常に大きな壁になっているということは大変重要な問題だというふうに考えておりまして、今回の改正法の中の雇用安定化措置というのはもう少し実のあるものであってほしいというふうに考えております。
 以上です。
○参考人(大橋範雄君) 私はドイツ法のことについてお話し申し上げますが、確かにドイツ法の特徴といたしまして登録型派遣は禁止されておりましたが、ドイツでも御多分に漏れず規制緩和が行われまして、法律がぼんぼん変わるんですが、二〇〇二年一月一日に変わりまして、かと思いましたら次また二〇〇三年一月一日から変わったんですが、この法律によりまして、従来は、向こうは登録型という言い方はありませんが、派遣期間と労働契約とが一致する契約をこれは禁止していたんですが、これはこの禁止は解けたわけですね。ですから、理屈からいえば登録型でもできるわけです。ただし、厳格な許可制というものがありまして、これは崩れていないわけですね。
 先ほど言いましたように、許可と無許可の派遣、つまり違法派遣というのは無許可派遣ですね、その無許可派遣になった場合の派遣労働者の保護という点、これは規制緩和によっても変わっていないということですね。ですから、今御質問にありました登録型派遣は、確かに禁止はずっとされていましたが、今年、これは正確に言いますと二〇〇二年一月一日からの前回の派遣法の改正でそれはなくなりました。
 それから、数もついでに言いますと、やっぱり一九九三年と二〇〇〇年とを比べますと派遣労働者の数は大体三倍加しております。ドイツでは大体、日本よりは少なくて、三十六万人ぐらいの派遣労働者がいるとされています。
 以上です。
○沢たまき君 四人の参考人の先生方、ありがとうございます。
 中野参考人のお話を伺っていて、午前中に来ていただければよかったなというような感じがいたしました。
   〔委員長退席、理事中島眞人君着席〕
 人材派遣の質のこともおっしゃっていらっしゃいましたが、一つ、最後の方にちょっと参考人がおっしゃっておりましたが、女性が出産あるいは妊娠と言った途端に解雇をされる。これは昨日、おとといかなんかのNHKのラジオを聴いていましたときに、これは派遣労働法ではなくて、解雇のトラブルのほとんどが、女性が、苦情を受けたのがそれが百二十件以上あるというような、記憶が確かじゃないけれども、朝のラジオで聴いていたんですが。
 この派遣労働者になられる方は、割と女性が多いような気がしております。正社員になれなくてというのではなくて、実際には派遣労働を選択している方も多いんだろうと、このように思っております。そういう意味で、派遣労働者に女性が多いということは、うなずいていらっしゃいましたが、そこで派遣労働者の実態に詳しい中野参考人にお伺いいたしますが、女性の派遣労働者の現状、現在はどのようになっているか、また女性ゆえに被っている不利益はどんなものがあるのか、あるとすればどういう不利益を被っているのか、お教えいただきたいと思います。
○参考人(中野麻美君) まず、派遣労働の世界は、一〇〇%仕事ができて当たり前というそういう世界でありまして、病気で休みを取るスタッフは要らないということで契約が解除されるという世界であったわけです。それが妊娠、出産ともなりますと、これはもう大変な事業主側の負担がある、労働法上の責任も加わってくるということで契約を解除するということが多く行われておりまして、通常の労働者のトラブルもそういった形態での解雇になるというようなトラブルが多いんですけれども、派遣労働者はそれに増して多いという実態があります。
 それから、現行法では、労働者を特定してはならない、派遣先が特定してはならない、女性であることや容姿であるとかあるいは若さということを理由にして選別しないようにということでそういった規制が行われていますが、これがなかなか効力を発していないという、非常に差別的な選別が行われているという実態でありまして、入口からそういうことでありますので、派遣先で働き始めて以降も、やはり同じような構造の中で被害がトラブルとして現われてきています。
 一番典型的なのは、やはりセクシュアルハラスメントです。派遣先の上司によるセクシュアルハラスメントというのは、通常の男女の力関係ということと併せまして、派遣先の取引先としての力というものを誇示して行われる。そして、それについて苦情を派遣元の責任者に言ったところが、派遣元責任者の方も教育が徹底されていないで、取引先なんだから我慢しなさいということで被害を余計に多くしてしまうというような、大変に今大きな問題になってきているわけです。そういったところが賃金の格差などにも反映するという場面がありまして、これはもう派遣先、派遣元含めて改善が求められるところだというふうに思います。
○沢たまき君 ありがとうございました。もう何か大変ですね。
 それでは、紀陸参考人に伺いたいんですが、この大変厳しい失業の情勢の中で、労働・雇用分野について規制改革を実行して経済の活性化の道筋を付けていくということは大変重要だろうと思っておりますが、労働者派遣制度の拡充が不安定雇用を増大させるだけだという御意見も根強いものがありますが、こうした意見に配慮するためには、労働と雇用分野の規制改革によって着実に経済の活性化が必要で、景気を回復してその実績を積み上げていく必要があると思っておりますが、紀陸参考人にお伺いしますが、今回の法改正が経済の活性化と景気の回復にどのような影響を与えるとお考えでいらっしゃるか、ちょっと伺わせていただきたいと思います。
○参考人(紀陸孝君) 景気の回復に私ども一番大事なのは、雇用不安とかあるいは社会保障の将来不安、そういうものをなくしていくことが大事だと思います。
 それで、特に雇用の創出の面で、こういう形で雇用形態の多様化を促進する一つの手段だと思うんですね、こういう派遣法の改正はですね。現実問題としていろんな分野で雇用の機会の創出をするというのは非常に難しいわけでありますが、形として新しい働き方を広げていくということによって結果的には雇用機会の創出が実現できる。そうすると、それはやはり冒頭に申し上げましたように、それが働き口が増えていけば個人の財布のひもも緩まって消費需要の喚起にもつながる。それはストレートというわけじゃありませんけれども、そういうことがじわじわと、こういうような法改正、規制改革によって景気てこ入れにつながっていくものではないかというふうに私どもそのつながりを考えております。
○沢たまき君 ありがとうございました。
 じゃ、次に大橋参考人に伺いますけれども、ドイツ、先ほどちょっと済みません、聞きそびれたかなと思ったんですけれども、ドイツの公共の職業安定所の中に人材派遣センターみたいなのがあって、PSAというんですか、があって、そこが、いわゆる公共の職業安定所にそういう公的あるいは民間のPSAという人材サービスセンターが何か附属に設置されていて、失業者がそこに登録してその人材サービスセンターが失業者を雇用して企業に派遣するという制度があると、こう伺っているんですが、このPSAのように労働者の派遣事業の長所を利用して雇用の促進を図るというこういうのは大変いいことだろうと思っておりますし、我が国でもこの政策が選択肢の一つにならないのかなと考えておりますが、大橋参考人はどうお考えになっていらっしゃるか。あるいは、ドイツのこのPSAというもののメリットとデメリットがもしあるとすれば教えていただきたいと思っております。
○参考人(大橋範雄君) 私、今時間がなかったものですから、これは、人材サービスエージェンシーというものについては何も触れなかったんですが、これは今できたばっかりなんです。今できたばっかりと言いますとあれですが、今までなかったもので、これは派遣法ではなくて社会法典の三十七条にくっ付けまして、社会法典第三編三十七条Cというところで、これはこの間の一連の規制緩和の方向で、今もドイツいろいろやっていますが、あの中でハルツ委員会というのがありまして、あれが規制緩和の方向を出したわけです。それに基づいて、日本で言う職安の中に、各職安に一つずつ今言われたようなPSAを設けなさいと。
 これは一般の派遣とは違いまして、要するに失業者を、ドイツは御承知のように失業がすごく高くて、今四百五十万人ぐらいですか、間もなく五百万人行くんじゃないかということで危機感を持っています。とにかく失業を減らせと。派遣を派遣として使うのではなくて、元々ドイツは派遣というのは私的職業紹介だとなっていたわけです。だから、失業者をこのPSAで再教育し職業訓練し、そしてまず派遣として送り出して、そこから正規雇用に持っていくという意味での、そういうものをその職安の中に設けなさいということなんですが、これはまだできたばっかりですからどうなっているか、実態や何かはよく分かりませんが。
○沢たまき君 はい、ありがとうございました。
○小池晃君 四人の参考人の皆さん、ありがとうございました。
 最初に名取参考人にお伺いをしたいんですが、青年の多くがフリーターということになっている、そういう中で、五月三十日に発表された国民生活白書では七割の人が正規労働者になりたいというふうにも答えているんですね。一方で、今回この派遣法の改正に当たって、その理由として政府の中で言っているのはニーズだと、やっぱり労働者側から派遣労働にニーズがあるんだと、多様な働き方というニーズがあるんだということが挙げられております。
   〔理事中島眞人君退席、委員長着席〕
 その点で、青年労働者、派遣労働者の多くが青年なわけで、その青年の中で労働組合の幹部もされて相談活動にも当たってこられて、もう実際にその青年の本当の思いというのは一体どうなのかと。この今回の派遣法ということで働くルール緩和されていくことが、青年の未来あるいは日本の国の産業の将来などにとってどういうふうに作用していくというふうにお考えになっているか、最初にお伺いしたいと思います。
○参考人(名取学君) 今、青年労働者の多くがなかなかやはり正規雇用に就けない、そういう実態にあるのは現状としてやはり否定できないものがあります。特に、更にその上に、正規雇用になってもなかなか、例えば残業代が払われないで長期に違法な状態に置かれて長期の時間労働させられる、そういう状況にあるわけで、そうした中でより安定した働き方をしたい、そういうところは青年労働者、相談を受けているケースの中からそういう声ははっきり出てきています。
 今、派遣に対してのニーズがあるというふうにおっしゃる議論も多いかと思いますけれども、これはやはり、それよりより質の悪い例えばパートタイマーであるとかアルバイト、そういうものに比べたら時給がいいわけ、いいというふうに見えるわけで、そういう意味での要求は高いものはありますけれども、やはりなかなか正規労働者に就けない、そのことが一番大きなネックになっているのかなというふうに感じております。
 やはり、長期に安定して働ける、そういうような雇用を創出していくことが今一番大切なことではないかというふうに考えております。
○小池晃君 ありがとうございました。
 続いて、中野参考人と大橋参考人と、名取参考人にもう一度お聞きしたいんですけれども、派遣の問題点はいろいろと、先ほどもお話ありました中途解約、面接強要とか二重派遣、違法な業者が労働者を食い物にしているという話もよく聞くわけであります。
 派遣法改定に当たって、こういった問題をどう解決していくのか。行政の監督の在り方、先ほど中野参考人の御意見の中にも監督不在だというような、不徹底だという御指摘もありましたけれども、審議の中では厚労省は、今度ハローワークに今まで分掌していた指導監督を都道府県労働局に集中するんだと、専門的に対応するんだというようなことを答えているんですね。しかし、これで本当に改善されていくんだろうかと。
 是非、現場から見てどうこの点、指導監督を徹底させていくために何が必要なのか、あるいはドイツではその辺がどうなっているのか、その点、三参考人にお伺いしたいと思います。
○参考人(中野麻美君) まず実態から申しますと、違法派遣の拡大等を見ておりますと、監督体制という以前にその監督体制がどのような権限を持つのかということが非常に大きいというふうに思います。
 私がドイツを訪ねさせていただいたときに、違法な派遣を受け入れた派遣先に制裁措置を科するのは当たり前であると、これは贓物を故買する者を処罰せずして泥棒はなくならないということを行政担当者はいみじくもおっしゃっていまして、私はこのことが日本の派遣法、そして監督体制に最も強く当てはまる言葉であるというふうに考えております。
○参考人(大橋範雄君) 今、中野参考人が言われたことと基本的に同じです。監督をする場合に、どこが監督してもいいわけですが、どういう権限を持っているかということですね。
 ドイツの場合は、これは日本と決定的に違いますところは、派遣というのは非常に問題があるということで反対が強かったわけです。これはキリスト教まで反対していたわけですね。それで、それを納得させるために、さっき言いましたように臨時的であるとか違法派遣の場合には派遣先が雇用主になるとか、と同時に、当初、二年に一度、連邦議会に連邦雇用庁は、連邦政府は派遣の適用状況について報告をする義務を課せられたんです。それがその後四年に一度になりましたが、その中でもかなりの数、摘発それから科料があります。
 それから、何といいましても、私が言いましたように、派遣を監督する場合に一番強力なのは許可の取消しあるいは更新延長の拒否なんですね、これをしますと、許可なしで派遣をすれば違法派遣になりますから。で、この数はかなり多いです。
○参考人(名取学君) 一つは、労働局に監督権限を集中するという話ですけれども、今の労働局で果たしてきちんとした監督が行えるのかどうかというのは疑問を持っております。男女雇用機会均等法に基づくような監督についても非常に解決率が低いというふうに私は見ておりまして、そういう中では、やはりもう少し監督する側の体制を充実させていかないと厳しいのではないかなという感想を持っております。
○小池晃君 最後に、これは中野参考人と名取参考人にお伺いしたいんですけれども、この問題をどう解決していくかという上で、労働組合の存在というのは極めて重要だろうというふうに思っているんです。しかし、通常のこの雇用形態の中でも今大変な情勢にある中で、使用者と雇用主が違う派遣労働者の場合に、労働者団結していく上で何が必要なのか、その点で何か行政に望むもの等あれば是非お聞かせ願いたいというふうに思うんですが、よろしくお願いします。
○参考人(中野麻美君) どうして団結が必要なのかといえば、使用者と対等に話し合って自分の雇用と労働条件を決めていけるような力というものを持つということが必要だからだと思うんですが、一つは派遣先に対して対等な話合いというものを挑んでいけるのかどうかという点では、派遣先の団交義務というのがもっともっと普遍的に明らかにされる必要があるのだろうというふうに思います。
 また、派遣労働者の団結を促進するという意味では、派遣元事業主はその団結権に対して更に配慮を行うべきだというふうに思います。フランスの例で見ますと、派遣労働者は各派遣先事業所に散っておりますので、派遣労働者が通信を行うに当たって必要な費用を派遣元事業主が負担したりとか、そういった就労形態に伴う構造的な負担について事業主が責任を負うというようなルール化もなされておりまして、この点の責任というものをどのように具体化していくのかということが大きな課題だと思います。
○参考人(名取学君) 例えば東京都の例でいいますと、東京都は労政事務所というのを持っております。ここでは労使のトラブルが起きたときに、例えば、労政事務所でどうしても難しい場合、労働組合を紹介するとか、そういうことを行われているんですが、果たして国レベル、労働局レベルでそういうことをきちんとやっていただいているのかどうかというのは常々疑問に思っておりまして、そういう労働者の団結権の問題を含めた教育、そういうところは行政がこれから更に力を入れてやっていただきたいなというふうに思っております。
○小池晃君 ありがとうございました。
○森ゆうこ君 国会改革連絡会(自由党・無所属の会)の森ゆうこでございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 まず、先ほど紀陸参考人の方から、同一価値労働同一労働に関しまして物差しということについての御発言がありましたけれども、この物差し議論というのがいつもそこで解決せずに終わってしまっているんですけれども、先ほどは紀陸参考人からの御意見、実際に使えるものにどうやってしていくのかという御提案ございましたけれども、この件に関しまして、中野参考人、そして大橋参考人に伺いたいと思いますが。
○参考人(中野麻美君) 均等待遇保障というのは、同じ人間であるその人の働きに対して公正に報われるというルールがどれほど徹底されるのかということが基本にあると思うのですけれども、まず派遣労働の世界で申しますと、同じ職場に働いている同じ人間として、福利厚生であるとか教育訓練であるとか、そういった機会というものを均等にというのが非常に強い要請でございました。これについては、現在の改正法で努力義務として盛り込まれるようになったというのは大変評価しておりますが、努力義務ということは問題だというふうに思います。
 そしてもう一つ、派遣労働者に対して非常な長時間労働であるとか、ローテーション勤務が過酷な部分を割り当てられてきているという側面がありまして、これは、労働時間等についてはあるいは安全衛生も含めて、派遣先にその責任が、労働法上の責任があるところでございます。この同じ責任を負うのであれば、同じ職場で働いている派遣先労働者と派遣労働者に対して均等な業務指揮権の行使というものがルール付けられてしかるべきではないのかというふうに思うわけであります。これはもう教育訓練も含めて徹底を求めていきたい部分であります。
 そして、賃金です。この賃金につきましては、例えば有給で保障される休暇というのがどう保障されるべきなのかというようなところからきちんと積み上げていく課題であるというふうに思っております。
 いずれにいたしましても、その格差がある中で、労働者が就労するということになりますと、意欲がそがれる、そしてチームワークも余りうまくないということで、生産性にも大きな影響が与えられるというところですので、経団連の方もこれに前向きに取り組んでいかれるということであれば、是非そういった一つ一つの積み上げというものを具体化していただきたいというふうに思う次第です。
○参考人(大橋範雄君) 同一労働同一価値ですか、確かに厳密に言いますと、日本の場合、これ賃金だけに関して言いますならば、ドイツ辺りだと職業教育制度がありまして、例えば旋盤工でも何でもそうですけれども、資格があるわけですね。それに従った、対応した賃金というものがこれは産業別の労働協約で決まっているわけですから、派遣労働者として行って同じ資格で同じ仕事しているのに賃金が違うという場合は明らかにこれはおかしいじゃないかということになりますが、日本の場合は、先ほど紀陸参考人の方からもありましたように、なかなかその辺のところが正規雇用の場合はあいまいとしていて必ずしも対応するところがないんで、ぴたっと賃金について言えるかどうかは分かりませんが、しかし、大体それに類似するような、あるいはほぼぴったりするのもあるでしょうし、賃金面だけで言いましても、仕事が全く派遣先の正規従業員と同じ仕事をしている、だけれどもこっちは派遣でこっちは正規だというのもあるでしょうし、類似するような、その場合に賃金が極端に違うというのはやはり問題だろうと思います。
 それから、賃金だけではなくて、その他の労働時間や福利厚生施設等々の問題でも差別的取扱いについて行われるのはやっぱり問題があると思います。特に、派遣労働者やパートでもそうですけれども、正規従業員に対して非常に肩身の狭い思いをするのは、賃金が安いということはもちろんありますが、それだけではなくて、そういう身分的な、特に日本の場合はそうです。ヨーロッパの場合はパートタイムであろうと派遣であろうと、そういう点では基本的には労働時間に対応した賃金ですから、年金でもそれでもリンクしています。日本の場合はそれがありませんから、そこがやっぱり極めて問題があると思います。
 ドイツの具体的なあれについてあればまた、時間があればお答えしますけれども、一応私はそういうふうに考えております。
○森ゆうこ君 ありがとうございました。
 それでは、紀陸参考人に次に伺いたいと思うんですけれども、私は今の経済状況、そして新しい時代が始まったと、これからの時代にもう後戻りはできない、やはり雇用の多様化というものも進んでいく。その意味で、規制緩和も必要な部分はあるかと思います。でも一方で、規制緩和をするのであれば自己責任、企業の方の責任というものは更に強まると。
 そういう意味で、企業の方の人を雇うというその企業責任について、いま一度企業団体としてきちっと考え直すべきではないかなと思っておりますが、その辺の取組について伺いたいと思います。
○参考人(紀陸孝君) どうもありがとうございました。
 私ども、雇用多様化を進める場合には、やはり会社の中に多様な就労形態ができるわけでありまして、多様であればあるほどそのそれぞれについてきちんとした雇用管理なり人事管理の仕組みを作っておかないとまずいと思うんですね。雇用形態を多様化するといいながら、きちんとした管理を放棄するような形では、結局一番目的であるアウトプットの効率向上ということすらできなくなりますので、非常に難しい問題なんですけれども、これからやっぱり企業は時間を掛けて雇用形態の多様化の仕掛け作りを、雇用管理の多様化と申しますか、そういう面で労働組合さんなり従業員の方々と協議しながら、できるだけ早く成果が上がるように取り組んでいく必要があるかというふうに思っております。
○森ゆうこ君 ありがとうございました。
 次に、中野参考人に伺いたいんですけれども、資料の中にもございました派遣労働の自分の時間を大切にして自分のスキルを生かせるという一番の利点というものがもう余りないと、様変わりしてしまったというようなお話がありました。
 厚生労働省の方では、今回のこの法案の提出に際しまして、現場で派遣労働者の側から今回のような法改正を望む声も強いんだというふうなお話があるんですけれども、それについて、私の方では現場のところはよく分かりませんので、現場をよく知る中野参考人からその反論といいますか、ございましたら是非お聞かせ願えればと思います。
○参考人(中野麻美君) 恐らく、派遣労働者のニーズが強いというふうに言われておりますのは、期間制限の緩和の部分だろうというふうに思います。
 その点で見ますと、派遣労働者の側には雇用の安定を望む声は大変強いものがあります。この雇用の安定は人間として普遍的なものでありまして、未来の生活を見通すことができるような、そういう雇用を求めるというのは、これは当たり前のことで、これを基本的人権というふうに私どもはとらえております。
 そういう視点から見て、この期間制限を緩和するということが、そのニーズに本当にマッチするような政策であるのかどうかということをもう一度検討する必要があるだろうというふうに思っております。
 現行法では、労働者派遣契約と、それから派遣労働契約とが別々に設定されるということになっておりまして、雇用契約期間を短期的に設定してリスクをヘッジしていくというようなやり方によって労働法上の責任を免れる、あるいは労働者派遣法上の責任を免れるというようなことがまかり通ってきているわけです。その矛盾をスタッフの方が受けているということがあるからこそ、期間制限緩和をしたとしてもその利益というものが派遣スタッフに還元されないという関係が依然として続くということなのだろうと思います。
 したがいまして、私は、一番こういったスタッフのニーズにこたえていくためには、期間制限を超えた場合には派遣先において安定的な雇用というものを保障していくと、あるいは、派遣先に雇用されるということを望まないのであれば常用型の派遣としてきちんとした安定的な雇用というものを保障していくということなのだろうと思います。この期間制限緩和のみによって対応するということについては大きな問題があるというふうに思います。
○森ゆうこ君 もう時間になりましたので、ですね。時間ないですね。じゃ、これで終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
○大脇雅子君 今日は、四人の参考人の方は貴重な御意見をどうもありがとうございます。
 まず、大橋参考人にお尋ねをしたいのですが、先ほど森議員の方から均等待遇の原則についての質問がありましたが、ドイツ法との比較、法的観点からですね、均等待遇の原則、我が国においてあるべき法則についてもう少し付言していただけるでしょうか。
○参考人(大橋範雄君) 均等待遇原則についてですが、先ほど余り詳しくできませんでしたが、若干詳しくといいますか、御説明申し上げますと、ドイツ、この均等待遇原則も今回、二〇〇三年一月一日施行の改正派遣法によって初めてドイツでは均等待遇原則が導入されたんです。ほかのヨーロッパ諸国ではもう既に均等待遇原則というのは当たり前になっているところが多かったんですが、ドイツはこれ、なかったんですね。
 これはもう少し詳しく言いますと、私、先ほどから何回もお答えしていますように、許可制度ですね、それから無許可の場合に派遣先との間に直接労働契約関係が成立するという、この二つの法規定がドイツの特徴になっているわけですが、これとの関係で均等待遇の原則というのは極めて重要なものになっているわけです。
 例えば、三条に、これはドイツ法ですが、その三条は、派遣の、向こうは有期と無期の許可がありまして、基本的には一年ごとに更新、それを三年続けて問題がなければ無期、期限の定めのない契約、許可をもらえるわけですが、その許可の更新をするときに、派遣元が、派遣先への派遣期間中、派遣労働者にその派遣先事業所の派遣労働者と比較し得る、比較可能な労働者に適用されている賃金をも含めた重要な労働条件を保障していないという場合には許可、駄目になるんですね。駄目になれば当然無許可派遣になりますから、自動的に派遣先と雇用関係が成立するというふうになります。
 それで、それに関する規定が九条の二号ですか、ここにも、均等待遇違反の約定、契約を派遣元が派遣労働者と結んだ場合に、それは無効ですよと。無効となった場合には、派遣先との間に契約関係が成立しますよという規定があります。
 そして、じゃ、実際にその派遣先の労働条件というものがどんなものか、本当に派遣労働者が分からないわけですから、じゃ、どうするのかというと、これも新たに十三条というところに規定を設けまして、派遣に際して派遣労働者は派遣先の自分と比較し得る労働者の賃金も含めた重要な労働条件についての情報を派遣先に請求する権利を有するという規定が入っているわけですね。
 つまり、均等待遇といいましても、お題目みたいにぽんとするのじゃなくて、それを有機的に結合して、しかも派遣労働者が本当に、何といいますか、派遣先の正規従業員と均等待遇に扱われているのかどうかを知る、知るためにはこれは基本的には派遣先に問い合わせなきゃいけないわけです。ところが、派遣先はそれは駄目だと言ったら分からないんでは困りますから、法律で派遣先は情報提供義務を負うという、そういう規定を入れている。
 ですから、私は、この均等待遇の原則にしても、ドイツは規制緩和をして派遣期間の上限規制撤廃したりした代わりに、派遣労働者に不利にならないようにこういう点で規定を設けて、それを実質化するためのいろんな、もっと言えば幾らでもありますが、時間がありませんからもうやめておきますが、そういう措置を取っているという点ですね、この点がやっぱり見習うべき点ではないかというふうに思っております。
○大脇雅子君 具体的な御指摘、非常に啓発されました。ありがとうございました。
 それで、今も、要するに違反をしたら派遣先との契約関係が締結されるということで、中野先生の御指摘によると非常に現場が条件が悪化していると。今度の法制では三年を超えた場合の雇用の申込義務というのが入りましたが、これの実効性というのはいかがでしょうか。雇用の安定に役立つでしょうか。それとも、役立つためにはどうしたらいいんでしょうか。
○参考人(中野麻美君) 実は、申込義務というのは、申込みの意思表示をしなければ労働契約の締結ということには相ならないということですので、そうすると、義務付けをされて、その後それを履行するためにはどのようなプロテクションというのが掛けられているのかということによって大きくその効果が違ってくるということだと思います。
 これに制裁措置を加えるかどうかということについて、その企業名の公表なりなんなりというのが非常に効果的に行われるのかどうかということが問われるのだろうというふうに思います。
 司法上の権利としてどのような救済措置があるのかということを、それと併せて解釈をきちんと確立をしておく必要があるというふうに考えておりまして、私は個人的には、その適法な基礎を欠いた労働者派遣においては、その派遣先と労働者との間で雇用関係は推定されるべきだと。これは、違法な労働者供給というものの中から労働者派遣法によってわざわざ合法的な範囲でこの種のタイプを認めたということからすると、こういった解釈論というのは当然ではないのか。それからしますと、雇用の申込義務というものを履行しなかったとしても、雇用をする意思はないのだという抗弁を立てられないということによって民事上の雇用関係を成立させていくというような解釈論というのは可能になってくるのではないかというふうにも思います。こういったことが可能になるのかどうかということが大きなポイントだろうというふうに思います。
○大脇雅子君 重ねて大橋参考人にお尋ねしますが、今度紹介予定派遣というのが導入されまして、これは民法に言う試用期間がなし崩しにされるのではないかと。先生のお考えでは、この制度の意義とか問題点についてはどのようにお考えでしょうか。
○参考人(大橋範雄君) 今、大脇委員の御質問のことですが、紹介予定派遣の場合は、私ちょっと若干触れましたけれども、一つにはそれで正規雇用の道につながるということも確かにあると思います、それは。そういう点ではいいんでしょうが、ただ、これを、つまり新規雇用に際しても全部これを使いますと、本来、これは採用する側にとってみたら非常に都合がいいわけで、一年間使ってみてこれはいけると思ったら採用すればいいわけですが、今のように、私もゼミ生や何かありますが、就職しますわね、就職して三か月なり半年なりの試用期間が経て本採用されるわけですが、試用期間中は一応労働契約が成立したというふうに今の場合なっていますから、そう簡単には本採用拒否、つまり解雇できなくなります。
 しかし、この紹介予定派遣ですと、解雇することなく、実質的解雇ですわね。そうしますと、一年ぐらい紹介予定期間をしますと、使用者は確かに都合がいいと思いますが、労働者にとってみますとこの一年間というのは極めて不安定なんですね。だから、例えば相当厳しい労働条件であっても文句を言ったら採用されないんじゃないか、それから当然の権利として保障されている団結権も行使できない、そういう状態に置かれますので、どうでしょうか、使い方によっては余り好ましくない使われ方をするのではないかというふうに思っております。
○大脇雅子君 ちょっと時間超過しておりますが、紀陸さんはこの紹介予定派遣というのは現場ではどんなふうに使われていくと考えられるでしょうか。
○委員長(金田勝年君) 時間が参りましたので簡単にお願いいたします。
○参考人(紀陸孝君) 派遣労働者の方が会社との合意で正規社員の道に進まれるということですから、これはうまく運用すれば好ましい形態ではないかと思っております。両者の合意がある限り、非常に好ましい形態になっていくのではないかというふうに考えます。
○西川きよし君 私で最後でございます。よろしくお願いいたします。
 労働者派遣のこの基本的な考え方をまずお伺いしたいんですけれども、時間が短いのですぐにお伺いしますが、経済官庁系の政策提言の中には日本的雇用システムからの脱却が必要ではないかと。先ほど紀陸参考人はそのとおりだと、これからはそういうふうに変えていかなければいけないというふうにおっしゃったわけですけれども、まず紀陸参考人とそして中野参考人に、これからの日本の雇用システムのあるべき基本的な考え方をどういうふうにお持ちか、お伺いしたいと思います。
○参考人(紀陸孝君) お答えをいたします。
 私どもは、例えば日本的雇用慣行の柱である、従来から言われている終身雇用、ああいうものが全部なくなっていくというものではなくて、長期安定雇用的なものが柱になってそのほかにいろいろな雇用形態が組み合わさる、そういう働き方が普通の社会が来るだろうと、将来的にはですね、思っております。決して今まであったものが全部なくなっていいというものではなくて、いいものは残して変えるべきものはどんどん変えていく形で労働市場の柔軟化が進んでいくんではないかというふうに思っております。
○参考人(中野麻美君) 産業社会を支えるのが働き手であると、その働き手に一定の雇用というものが保障されなければこの産業社会に未来はないというところからすると、以下のような条件というのは満たされる必要があると思います。
 一つは、直接雇用責任、自分が労働を提供する相手に対して直接雇用責任を負わせていけるという、そういう雇用形態であるということが原則だということです。そして、未来の生活というものを見通すことができるという意味では、雇用の安定というものが極めて重要だということと、それから、意欲を損なわれないで働き続けるというためには、差別なく均等な待遇が保障されなければいけないということだと思います。
 この三点というものがどのようにして徹底できる雇用であるのか、日本型の雇用であるのかそうでないのかということもさることながら、この原則に基づいて雇用というものが形成されていくということが最も肝心なことだというふうに考えます。
○西川きよし君 せっかくですから、今の御質問、大橋参考人、名取参考人、続けてお答えいただけますか、基本的考え方。
○参考人(大橋範雄君) 基本的には中野参考人が言われたとおりだと思います。
 やはり、確かに働き手の側のニーズですか、全部フルタイムは行けないけれども好きなときにしたいとか、いろいろそういうのはあるでしょう。その場合でも、私は基本的に、ヨーロッパなんかよく例に出されますけれども、基本的にフルに対するパートですから、つまりそれ以外は一緒なんですね。つまり、それ以外一緒なんですねというのは、一日八時間がフルだとすれば、一日、簡単に言えば六時間だったらその六割、いや、八分の六ですか、の給料なり年金なり、有休もその労働時間の長さ等々によって決めればいいと思いますが、つまり基本的には労働時間の長さによってだけ賃金等々の違いが来る。身分に反映するような多様化はやはりこれはまずいと思います。それは、身分に反映するような雇用形態を取れば、中野参考人が言われたような、意欲もなくなるだろうし将来の希望も展望も持てない、ローンも組めませんからね。ですから、私はそういうふうに思っています。
○参考人(名取学君) 基本的に私も同じ、中野参考人と同じ意見でして、やはり一つは、雇用が安定している、将来にわたって安定しているかどうかということが一つやはり重要なことになるということと、それから待遇面で差別化されていない、そういうことが非常に重要なのではないかなというふうに思っています。それは、例えば有期雇用労働者であっても雇用の安定化を図ることはできると思いますし、そのようなことをしていくことがまず第一であるというふうに考えております。
○西川きよし君 次に、この派遣期間の制限についてお伺いしたいんですけれども、例えば日本人材派遣協会の調査では、期間制限の撤廃あるいは緩和を支持する意見が派遣スタッフの六割弱を占めているわけですけれども、その理由の一つとしては、一年では必要な業務知識をちゃんと身に付けることができない、そして一年たてばそれが、派遣が終了する、仕事ができない。派遣労働者自身の利益をどういうふうにこれから調和をしていくか、これは今後の最も大きな課題だと思うんですけれども、中野参考人にお伺いしたいと思います。
○参考人(中野麻美君) このニーズにこたえていくためには、派遣で一定期間働いた後は派遣先で雇用されるということをシステム化する必要があると、これ以外に解決の道はないということだと思います。
 そして、先ほど申し上げたように、雇用の原則というのは、労働力を提供するユーザー企業に対して直接雇用の責任を負わせることができると、これが原則だというふうに申し上げました。そして、期間の定めがないという雇用の安定が前提であるということも申し上げました。そういう雇用のあるべき姿に戻していくということ、何年働いても派遣ということではなくてノーマルな形態に戻ることができるという、その権利を確保するということが最も重要だというふうに思います。
○西川きよし君 本当に難しい問題ではないかと思います。
 次に、物の製造の業務についてお伺いしたいと思うんですけれども、これも名取参考人と中野参考人にお願いをいたします。
 この業務につきましては、これまでの対象外となっていただけに、労働の安全衛生、この問題が大変課題になっておりますし、指摘をされておるわけですけれども、この点についてお願いいたします。
○参考人(中野麻美君) 現行法では、教育訓練そして安全衛生に関する責任が派遣元と派遣先に分離されております。そして、連帯して責任を負うという分野が全くなくて、全く分離されているという状況にありまして、派遣労働者の健康であるとかあるいはそれを守るための教育訓練措置というものが整備をされていないという状況にありますので、この点についての法的な整備というのがまず最も重要であろうと。
 そして、労災を発生させた際の責任関係、あるいはその労働時間についても、三六協定は派遣元で適用されるけれども、派遣先は三六協定については何らの責任も負わないというような状況もありまして、これらの責任関係というものをきちんと整備することがこれらの分野に労働者派遣を認めるということの前提条件だというふうに私たちは考えてきたわけです。今回の法改正で若干の考慮が行われているというふうには思いますけれども、非常に不十分だということで、大変残念に思っております。
○参考人(名取学君) 物の製造業への派遣をどう見るかということですけれども、既に違法な委託というような形で行われているケースが多いんですが、やはり労働相談等で通じて分かることですけれども、安全衛生で、例えば労災に遭った、そういうようなときにどのような回復が取られるのかということは、今は委託先の会社に交渉を申し入れて解決していくと、そういうことができておりますが、それでもやはり、労災、実際にもう災害を受けた後の事後的な措置としてしか救われないわけで、それを要するに事前にどのように安全衛生をきちんと確保していくのかというのは、現在、そういう派遣という形でやられたときにそれは本当に確保できるのかどうかということについては非常に疑問を持っております。事前に派遣先にどのような規制を掛けていくのかということは今後検討していかなきゃいけない課題だというふうには考えております。
○西川きよし君 最後の質問にさせていただきます。
 大橋参考人に、医療関係業務について今後どういった視点からの検討が必要であるか、最後にお伺いして終わりたいと思いますが。
○参考人(大橋範雄君) 医療分野につきましては、ドイツでは基本的にはどの分野でもいいんですが、建設業の一部を除いては開放されていますが、日本の場合、私が考えますのは、やっぱり医療分野ということになりますと、例えば主治医とかいろんなありますわね、医者の場合、継続的に患者を診て、それが途切れる可能性が極めて強いんじゃないだろうかと思います。そうしますと、患者と医者との信頼関係という点からおいても、やはり問題があるんじゃないでしょうか。人の命に関係するような分野はやっぱりちょっと問題があるというふうに思います。
○西川きよし君 ありがとうございました。
○委員長(金田勝年君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
 参考人の方々には、長時間にわたりまして貴重な御意見をお述べいただきました。誠にありがとうございました。委員会を代表いたしましてお礼を申し上げます。
 本日はこれにて散会をいたします。
   午後二時五十五分散会