第159回国会 法務委員会 第1号
平成十六年三月十一日(木曜日)
   午後零時十分開会
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   委員氏名
    委員長         山本  保君
    理 事         松村 龍二君
    理 事         吉田 博美君
    理 事         千葉 景子君
    理 事         木庭健太郎君
    理 事         井上 哲士君
                青木 幹雄君
                岩井 國臣君
                小野 清子君
                鴻池 祥肇君
                清水 達雄君
                陣内 孝雄君
                中川 義雄君
                今泉  昭君
                江田 五月君
                角田 義一君
                堀  利和君
                倉田 寛之君
                本岡 昭次君
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   委員の異動
 一月十九日
    辞任         補欠選任
     清水 達雄君     野間  赳君
 一月二十三日
    選任          樋口 俊一君
 一月二十七日
    辞任         補欠選任
     井上 哲士君     富樫 練三君
 一月二十八日
    辞任         補欠選任
     富樫 練三君     井上 哲士君
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  出席者は左のとおり。
    委員長         山本  保君
    理 事
                松村 龍二君
                吉田 博美君
                千葉 景子君
                木庭健太郎君
    委 員
                青木 幹雄君
                岩井 國臣君
                陣内 孝雄君
                中川 義雄君
                野間  赳君
                今泉  昭君
                江田 五月君
                角田 義一君
                樋口 俊一君
                堀  利和君
                井上 哲士君
   国務大臣
       法務大臣     野沢 太三君
   副大臣
       法務副大臣    実川 幸夫君
   大臣政務官
       法務大臣政務官  中野  清君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局経理局長   大谷 剛彦君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        加藤 一宇君
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  本日の会議に付した案件
○国政調査に関する件
○法務及び司法行政等に関する調査
 (法務行政の基本方針に関する件)
 (平成十六年度法務省及び裁判所関係予算に関
 する件)
 (派遣委員の報告)
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○委員長(山本保君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 去る十二月二十六日、福島瑞穂君が委員を辞任され、去る一月二十三日、当選されました樋口俊一君が本委員会委員に選任されました。
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○委員長(山本保君) 国政調査に関する件についてお諮りいたします。
 本委員会は、今期国会におきましても、法務及び司法行政等に関する調査を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(山本保君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
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○委員長(山本保君) この際、実川法務副大臣から発言を求められておりますので、これを許します。法務副大臣実川幸夫君。
○副大臣(実川幸夫君) 昨年の十一月に法務副大臣に就任いたしました実川幸夫でございます。
 法務行政が抱えております諸課題が、これまでで比べますと質量とも比較的に大きくなっております。この時期に法務行政を担当することになり、その職責の重大さを痛感しております。中野法務大臣政務官とともに野沢法務大臣を補佐しまして、法秩序の維持、また国民の権利の保全という法務行政の基本的使命をより良く果たすために全力を傾注したいと考えております。
 委員長を始め委員の皆様方から一層の御指導また御支援を賜りまして重責を果たしてまいりたいと考えておりますので、何とぞよろしくお願いいたします。
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○委員長(山本保君) 法務及び司法行政等に関する調査を議題といたします。
 まず、法務行政の基本方針について、野沢法務大臣から所信を聴取いたします。野沢法務大臣。
○国務大臣(野沢太三君) 委員長を始め委員の皆様方には、平素から法務行政の運営について格別の御尽力を賜っており、厚く御礼を申し上げます。
 私は、昨年九月の就任以来、司法・法務が抱える様々な課題に微力ながら精一杯取り組んでまいりましたが、引き続き、皆様方の一層の御理解と御支援の下、司法制度改革を始めとする諸改革を推し進め、国民の期待と信頼にこたえ得る法務行政の実現に向けて、全力を傾注する決意でございます。
 それでは、所信の一端について申し述べさせていただきます。
 第一は、司法制度改革についてです。
 国民にとって身近で頼りがいのある司法制度を構築するため、政府を挙げてその改革の実現に取り組んでまいりましたが、本年は、司法制度改革推進本部にとって改革の総仕上げの年であり、今国会には、次のような数多くの法案を提出しました。
 まず、国民が全国どこでも法律上の紛争の解決に必要な情報やサービスの提供を受けられるようにするため、総合的な法律支援体制を整備する総合法律支援法案、広く一般の国民が裁判官とともに刑事裁判に関与する裁判員制度を導入する裁判員の参加する刑事裁判に関する法律案、そして、この裁判員制度の円滑な実施を担保し、あわせて、刑事裁判をより充実させ、かつ迅速なものとするため、新たな準備手続を創設するとともに、公的弁護制度の整備等を行う刑事訴訟法等の一部を改正する法律案があります。
 民事裁判等の分野では、知的財産高等裁判所の設置を定める知的財産高等裁判所設置法案、知的財産に関する訴訟の一層の充実と迅速化を図るため、その手続等を整備する裁判所法等の一部を改正する法律案、行政訴訟制度について国民の権利利益のより実効的な救済手続を整備する行政事件訴訟法の一部を改正する法律案、裁判所における個別労働関係事件の簡易迅速な解決制度として労働審判制度を導入する労働審判法案、及び一定の場合に弁護士等の訴訟代理人の報酬について敗訴者の負担とすることを可能とする民事訴訟費用等に関する法律の一部を改正する法律案があります。
 さらに、判事補及び検事が弁護士となってその職務を経験することを可能とする判事補及び検事の弁護士職務経験に関する法律案、及び一定範囲の大学の法律学の教授等の職にあった者に対する弁護士資格の特例措置の見直しを行う弁護士法の一部を改正する法律案を提出したところです。
 いずれにつきましても、速やかに成立させていただきますようお願い申し上げます。
 第二に、小泉総理が施政方針演説でも述べられましたとおり、世界一安全な国日本の復活が急務であります。
 我が国は、かつては世界有数の安全な国と考えられていましたが、昭和の時代に比べ、刑法犯の認知件数は著しく増加し、他方、検挙率は極めて低い水準にとどまっているところであります。特に、社会の耳目を集める凶悪重大事件や不法滞在外国人等による組織的犯罪も少なからず発生するなど、治安情勢は極めて憂慮すべき状況にあり、国民の治安に対する不安は増大しております。
 このような状況を打開し、安心して暮らせる社会を取り戻すべく、政府として、昨年来、犯罪対策閣僚会議を発足させ、犯罪に強い社会の実現のための行動計画を決定するなど、治安回復に向けた総合的な取組を積極的に推進しております。その中でも、犯罪対策の基本は、早期に犯人を検挙し、厳正な処罰をし、さらに、犯罪者に対し改善更生教育を施して、その円滑な社会復帰を図るという、刑事司法システムが十全に機能することにあり、法務省の果たすべき役割は重大であると考えております。
 今後も、刑事事件について、関係機関と連携しつつ、法を適正に運用し、事案の真相解明と厳正な処分を図ることはもとより、法務省として、各種法令等の整備を図るとともに、刑事司法の中核を担う検察及び治安関係部局についてより強固な体制を整備し、安全な社会を早急に回復できるよう最大限の努力をしてまいりたいと考えております。
 法整備につきましては、今国会に、国際捜査共助法及び組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律の一部を改正する法律案、及び犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案を提出しました。前者は、日米刑事共助条約の締結に伴い国内法を整備するもの、後者は、さきの衆議院解散に伴い廃案となった犯罪の国際化及び組織化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案の内容に加えて、ハイテク犯罪に対処するとともにサイバー犯罪に関する条約を締結するための法整備を盛り込んだものです。いずれにつきましても、速やかに成立させていただきますようお願い申し上げます。
 また、少年非行対策として、先般策定されました青少年育成施策大綱を踏まえ、触法少年の事案における調査権限の明確化や保護処分の多様化のための法整備、保護観察を効果的にするための措置について、関係省庁と協力しながら検討を進めてまいります。
 治安維持の観点から特に問題なのは、矯正施設の過剰収容状態が依然として深刻であるということであります。とりわけ行刑施設においてはその傾向が顕著であり、被収容者に対する適正な刑の執行と改善更生のための処遇が極めて困難になるなど、刑事司法の最後のとりでとしての矯正処遇に多大な影響を及ぼしかねない厳しい状況にあります。
 先般成立いたしました平成十五年度補正予算、及びただいま御審議をいただいている平成十六年度予算案においては、関係各方面の御理解を得て、被収容者五千人を超える刑務所の増設などに要する経費やPFI手法を活用した刑務所等の新設のための事業調査費などが盛り込まれました。法務省といたしましては、予算の効果的な執行を図ることはもとより、矯正施設の被収容者が今後も増加するものと予想されることから、関係各方面の御理解と御支援をいただきながら、引き続き体制の強化に努めてまいります。
 なお、過剰収容の一因となっている中国人受刑者の母国への移送の道を開くため、日中間における受刑者移送条約の早期締結等に向けて積極的に対応することとしており、外務省とともに、中国との協議を進めていきたいと考えております。
 再犯を防ぐ最後の支えは更生保護です。その機能強化を図るため、保護観察官や更生保護施設等の体制を一層充実させてまいります。
 外国人犯罪の温床と指摘されている不法滞在者問題の解決も、喫緊の課題であり、さきに述べました犯罪対策閣僚会議の行動計画においても、不法滞在者を今後五年間で半減するとされています。
 本年はその目標に向かう最初の年であり、入国審査及び在留資格審査の厳格化や、積極的かつ効果的な不法滞在者の摘発の実施など、不法入国・不法滞在者対策のより一層の推進に努めてまいります。
 そのような取組の一環として、今国会に、不法滞在者に対する罰則の大幅な強化、出国命令制度の新設等を内容とする出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案を提出しました。なお、この法律案には、さきの衆議院解散に伴い廃案となった法律案の内容に加えて、昨年末に出入国管理政策懇談会から提出されました最終報告をも踏まえ、難民不認定処分に対する不服申立て手続に有識者を関与させる制度を新設することを盛り込んでおります。速やかに成立させていただきますようお願い申し上げます。
 国連やG8など、様々な枠組みにおける反テロの取組強化にもかかわらず、国際テロは、依然として国際社会における大きな脅威となっております。また、国内においても、イラク復興支援のための自衛隊派遣に反発する国際テロ組織等によるテロが発生する可能性を否定できません。そこで、公安調査庁におきましては、テロ対策部門の拡充強化を図るとともに、内外の関係機関との連携を強化するなどして、情報収集・分析の一層の強化に努めてまいります。
 北朝鮮の問題につきましても、引き続き、関連情報の収集・分析等を通じて問題解決に積極的に貢献してまいります。
 オウム真理教につきましては、本年二月二十七日、東京地裁におきまして、無差別大量殺人行為の首謀者である麻原彰晃こと松本智津夫に対し死刑判決が言い渡されました。教団は、現在もなお、麻原の強い影響下にある上、麻原回帰の指導を強めるなど危険な体質を保持しております。公安調査庁におきましては、引き続き、観察処分を厳正に実施するとともに、教団の動向の把握に努めてまいる所存です。
 第三は、行刑改革についてであります。
 行刑運営の抜本的な見直しを図るべく、昨年三月末に民間の有識者により構成された行刑改革会議を立ち上げ、精力的に検討を重ねていただいたところ、昨年末に、国民に理解され、支えられる刑務所を作ることを主眼とする画期的な内容の提言をいただきました。
 監獄法の改正など、行刑改革の実現に向けての課題は山積みとなっておりますが、私は、この提言が国民の求める行刑のあるべき姿、方向性を示したものであるとの認識に立ち、これを真摯に受け止め、不退転の決意をもって改革に取り組んでまいりたいと考えております。
 第四は、民事基本法の見直しについてであります。
 現下の最大の課題である経済構造改革を支える一環として、これまで倒産法制、会社法制等の見直しを精力的に進めてまいりましたが、今国会においては、破産手続の迅速化、合理化等を図るため、現行の破産法を全面的に見直すことを内容とする破産法案及びその関連法案を、また、商法関係につきましては、株式会社等がインターネットにより公告を行うことを可能とすること等を主な内容とする電子公告制度の導入のための商法等の一部を改正する法律案を提出しました。
 さらに、民事訴訟手続等における申立てをインターネットを用いて行うことを可能にするとともに、不動産競売における最低売却価額の売却基準価額への変更などを主な内容とする民事関係手続の改善のための民事訴訟法等の一部を改正する法律案、及び不動産登記についてオンライン申請を可能にし、規定を現代語化するなど、現行の不動産登記法を全面的に見直すことを内容とする不動産登記法案及びその関連法案を提出したところです。
 また、裁判所に関する法案といたしまして、判事等を増加することを内容とする裁判所職員定員法の一部を改正する法律案、及び裁判所書記官研修所と家庭裁判所調査官研修所を統合して新たに裁判所職員総合研修所を設置することを内容とする裁判所法の一部を改正する法律案を提出しました。
 これらにつきましても、速やかに成立させていただきますようお願い申し上げます。
 このほか、登記所備付地図の全国的な整備やアジアの国々に対する法整備支援の推進、さらには、今日なお後を絶たない人権に関する諸問題への対応など、多方面にわたる法務行政上の諸課題に積極的に取り組んでまいります。
 このような課題の多い時期に当たり、委員長始め委員の皆様方のなお一層の御理解と御指導を賜りながら、法務大臣としての重責を果たすべく、実川副大臣及び中野大臣政務官とともに全力を尽くしてまいる所存ですので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
○委員長(山本保君) どうもありがとうございました。
 次に、平成十六年度法務省及び裁判所関係予算について順次説明を聴取いたします。
 最初に、実川法務副大臣、お願いいたします。
○副大臣(実川幸夫君) 平成十六年度法務省所管の予算につきまして、その概要を御説明申し上げます。
 まず、法務省所管の一般会計予算額は六千七十二億五千六百万円であり、登記特別会計予算額は一千七百四十五億八千六百万円でございます。そのうち一般会計からの繰入額が七百十八億六千万円でありますので、その純計額は七千九十九億八千二百万円となっております。
 この純計額は、前年度当初予算額七千百五十三億一千二百万円と比較しますと五十三億三千万円の減額となっております。
 次に、重点事項別に予算の内容について御説明申し上げます。
 まず、定員の関係でありますが、平成十六年度の増員は、新規九百二人と部門間配置転換によります定員化二人を合わせ、合計九百四人となっております。
 その主な内容を申し上げます。
 刑務所等保安業務、収容少年教育、観護体制等の充実強化のため四百五十一人、出入国管理体制の充実強化のため百六十八人、検察体制の充実強化のため、検事五十六人を含め二百三人、保護観察事務処理体制の充実強化のため二十四人、朝鮮総連・北朝鮮調査の充実強化のため二十一人、訟務事件処理体制の充実強化のため十六人等々となっております。
 他方、平成十二年七月十八日の閣議決定に基づきます平成十六年度定員削減分等といたしまして五百四十三人を削減することになっており、増員との差引きによりまして、前年度定員と比較いたしますと純増三百六十一人となっております。
 次に、主要事項の経費について御説明申し上げます。
 第一に、法秩序の維持確保につきましては三千八百五十五億六千六百万円を計上し、前年度当初予算額と比較しますと八億八百万円の増額となっております。
 その内容について申し上げますと、まず検察関係でありますが、検察活動の充実を図る経費といたしまして一千三十一億七百万円を計上しており、この中には、特捜・財政経済事犯対策経費、外国人犯罪対策充実強化経費等が含まれております。
 矯正関係でありますが、刑務所等矯正機能の充実を図る経費といたしまして二千百二十一億九百万円を計上しております。この中には、過剰収容緊急対策経費、医療体制緊急整備経費等が含まれております。
 更生保護関係でありますが、保護観察活動の充実を図る経費といたしまして百九十一億八千六百万円を計上しており、この中には、保護司活動の充実等社会内処遇機能の強化経費、心神喪失等医療観察法対応経費等が含まれております。
 入国管理関係では、出入国管理業務の充実を図る経費といたしまして三百三十九億五千四百万円を計上しており、この中には、出入国審査体制充実経費、不法就労特別対策経費等が含まれております。
 第二に、国民の権利保全の充実につきましては、登記特別会計を含めまして一千九百八十七億六千九百万円を計上し、前年度当初予算額と比較しますと四十四億八千九百万円の減額となっております。
 その内容について申し上げますと、まず登記関係でありますが、登記事務処理の適正迅速化のための経費といたしまして、登記事務のコンピューター化経費、表示登記事務処理体制の充実経費等を中心にいたしまして一千七百四十五億八千六百万円を計上しております。
 民事法律扶助関係でありますが、法律扶助事業費補助金等の拡充を図るために経費といたしまして四十億三百万円を計上しております。
 さらに、人権擁護活動の充実を図るための経費といたしまして、人権啓発活動の充実経費を含め四十二億六千四百万円を計上しております。
 第三に、施設の整備につきましては、過剰収容の解消に向けた刑務所等矯正施設の拡充整備等のために、法務省施設費といたしまして二百八億四千三百万円を計上しております。
 以上、平成十六年度法務省所管の予算の概要を御説明申し上げました。
○委員長(山本保君) 次に、大谷最高裁判所事務総局経理局長。
○最高裁判所長官代理者(大谷剛彦君) それでは、平成十六年度裁判所所管歳出予算について御説明申し上げます。
 平成十六年度裁判所所管歳出予算の総額は三千百五十六億二千七百万円でありまして、これを前年度当初予算額三千百七十八億三千百万円と比較いたしますと、差引き二十二億四百万円の減少となっております。
 次に、平成十六年度歳出予算のうち、主な事項について御説明申し上げます。
 まず人的機構の充実、すなわち裁判官、書記官及び家裁調査官の増員であります。
 司法制度改革を推進するに当たり、裁判所の人的充実が強く求められていることを踏まえ、増加し、かつ、複雑困難化している民事関係事件等の適正かつ迅速な処理を図るため、裁判官五十二人、書記官五十二人、家裁調査官五人、合計百九人の増員並びに振替による書記官百四十人及び家裁調査官十人の増加をすることとしております。
 他方、平成十六年度には四十七人の定員を削減することとしておりますので、差引き六十二人の純増となります。
 次は、裁判事務処理態勢の充実に必要な経費であります。この経費として総額二百七十三億三千三百万円を計上しております。
 その内容について申し上げますと、第一に、知的財産権関係事件の事務処理態勢の充実を図るための経費として七千六百万円を計上しております。この中には、専門委員経費、専門研究経費等が含まれております。
 第二に、民事関係事件の事務処理態勢の充実を図るための経費として百十一億三千万円を計上しております。この中には、民事調停委員手当、専門委員経費等が含まれております。
 第三に、刑事訴訟事件の事務処理態勢の充実を図るための経費として九十億六千五百万円を計上しております。この中には、国選弁護人報酬等が含まれております。
 第四に、家庭事件の事務処理態勢の充実を図るための経費として六十九億八百万円を計上しております。この中には、家事調停委員手当等が含まれております。
 第五に、裁判運営態勢の強化を図るための経費として一億五千四百万円を計上しております。この中には、調停官経費、地方裁判所委員会及び家庭裁判所委員会の経費等が含まれております。
 さらに、裁判所施設の充実を図るための裁判所庁舎の新営、増築等に必要な経費として九十二億六千四百万円を計上しております。
 以上が平成十六年度裁判所所管歳出予算の概要であります。
 よろしく御審議のほどをお願いいたします。
○委員長(山本保君) 以上で法務大臣の所信並びに平成十六年度法務省及び裁判所関係予算の説明聴取は終了いたしました。
 法務大臣の所信に対する質疑は後日に譲ることといたします。
    ─────────────
○委員長(山本保君) 次に、去る一月十四日及び十五日の両日、本委員会が行いました委員派遣につきまして、派遣委員の報告を聴取いたします。松村龍二君。
○松村龍二君 先般行われました委員派遣につきまして、その概要を御報告申し上げます。
 去る一月十四日及び十五日の二日間、司法行政及び法務行政等に関する実情調査のため、静岡県及び愛知県を訪れました。派遣委員は、山本委員長、吉田理事、千葉理事、木庭理事、井上理事及び、私、松村の六名でございます。
 まず、一日目は、浜松市のスズキ株式会社を訪問し、外国人労働者の受入れ状況について概況説明を聴取した後、工場内の視察を行いました。スズキ株式会社においては、従業員一万七千七百三十四人のうち外国人は千八百七十人で全体の一一%、工場勤務者に限ると二〇%を占めております。外国人の九一%は日系ブラジル人が占め、勤務年数は、三年未満が八五%で、長期就労者は少ないとのことであります。作業現場では、安全教育には特に力を入れており、従業員に対する研修の実施とポルトガル語、中国語、韓国語など各種言語によって、作業や注意の表示を徹底していることなどの説明を受けました。
 続いて、スズキ株式会社の鈴木会長及び北脇浜松市長と外国人労働者受入れに伴う企業及び自治体の対応と課題等について意見交換を行いました。鈴木会長からは、外国人労働者は勤労意欲が高く、今や我が国の製造業にとって欠かすことができない存在であること、外国人労働者は人材派遣会社を通じて受け入れており、賃金は同じ労働であれば日本人と同額であること等の説明を受け、受入れに伴う子供の教育や社会保障等の諸課題には国が総合的に取り組んでいく必要があるとの意見が述べられました。
 北脇市長からは、外国人に対する市の取組について説明を受けました。浜松市の外国人登録者数は、昨年四月現在、二万二千二百十九人で市の人口の三・七一%に達しており、地域経済においても重要な地位を占めております。市においては、外国人の定住化の傾向を踏まえ、居住外国人を積極的に市民として位置付け、外国人市民とのコミュニケーションを深め、他国文化との活発な交流を通じた共生社会作りを目指して施策を推進しており、その具体例として、外国人市民の意見の市政への反映や地域課題の解決等のための各種会議の開催、外国人の子供たちの就学促進のための日本語とポルトガル語による学習サポート教室の開催等の説明がありました。
 質疑応答では、外国人労働者の雇用形態と賃金、社会保険未加入者が多い実情、日本人の失業率が高い現状と外国人労働者受入れとの関係等について意見交換を行いましたが、両者からは、近年、外国人市民の定住化傾向が顕著であることから、ブラジル人学校などへの公的支援を可能にするための規制緩和、健康保険と年金制度への加入の分離の必要性、外国人登録手続の改善等の諸課題について国に積極的な施策を求める意見が述べられました。
 次に、名古屋高等裁判所を訪問し、同裁判所のほか、名古屋地方裁判所、名古屋家庭裁判所、名古屋高等検察庁及び名古屋地方検察庁から、それぞれ管内の概況説明を聴取いたしました。
 裁判所からは、名古屋高等裁判所管内では、少年の道路交通法事件などを除いて各種事件とも増加傾向にあり、特に破産事件及び簡裁の調停事件の増加が顕著であり、次いで刑事訴訟事件及び家事事件の増加が目立っていること、名古屋地方裁判所では、破産事件の九〇%、不動産執行事件の七〇%が一年以内に終局していること、刑事事件の平均審理期間は三・二か月で、近年、外国人の通訳を要する事件の増加や児童虐待に関する事件も幾つか係属していること、また、簡裁の特定調停事件の平均審理期間は三か月となっていること、名古屋家庭裁判所では、長引く不況の影響もあり、生活費の額をめぐって激しく対立するなど近年の社会情勢を反映した複雑かつ困難事件が増えていること等の説明を受けました。
 また、検察庁からは、名古屋高等検察庁管内では、景気の低迷や混沌とした社会情勢を背景に犯罪が複雑・多様化、凶悪化の傾向を強めていること、名古屋地方検察庁では、イラン人やブラジル人による覚せい剤等薬物密売事犯に対する集中摘発を行ったこと等の説明を受けました。
 質疑応答の際には、検察庁の人的体制の充実強化、中国人窃盗団に対する刑罰の在り方と刑罰全体の引上げの検討、本年四月からの人事訴訟事件の家庭裁判所への移管に伴う体制の整備、司法制度改革、特に裁判員制度の在り方等について意見交換を行いました。
 次に、愛知県における司法サービス、更生保護の実情と課題について、弁護士会、司法書士会、土地家屋調査士会、保護司会連合会との意見交換を行いました。
 弁護士会会長からは、司法制度改革の理念を実現するためには、司法ネットの充実、国選弁護の報酬引上げ、裁判所の充実強化が必要であること、司法書士会会長からは、司法書士がいない奥三河山間地域での相談会の継続的な開催、高校生や高齢者に対する消費者問題等法律教育に取り組んでいること、土地家屋調査士会会長からは、平成十四年十月に全国初となる「あいち境界問題相談センター」を立ち上げて土地の境界紛争解決に当たっていること、保護司会連合会会長からは、保護観察活動や犯罪予防活動を十分に行うには保護司の活動費の充実強化や研修の充実、地元自治体の理解と協力が不可欠であること等の意見が述べられました。
 質疑応答の際には、司法過疎への取組における弁護士と司法書士との関係、保護司に対する十分な予算措置の必要性、愛知県における個人破産の推移、司法予算の充実強化、法律扶助予算の現状等について意見交換を行いました。
 二日目は、まず、名古屋刑務所を訪れました。名古屋刑務所においては受刑者の相次ぐ死傷事件が明らかになり、今日の行刑改革論議の契機となりましたことは、委員御案内のとおりでございます。本刑務所は、二十六歳以上の犯罪傾向の進んだ刑期八年未満の者を収容するとともに、名古屋矯正管区内における分類センター及び医療センターとしての役割も担っております。現在、事件後の事務処理に伴う収容調整により収容人員は定員まで若干の余裕がありますが、府中刑務所や大阪刑務所といった他の大規模収容施設に比べ独居房が少なく、昨年十一月、二百人規模の独居収容棟が新たに完成し、処遇困難者や勉学に取り組む者等処遇上の配慮が必要な者に対応しております。続いて、所内の視察を行い、新たに作られた保護房は、以前に比べて面積が広く、壁も木で作られ、被収容者の安全に配慮した改善が加えられているほか、被収容者の動静を二十四時間カラー録画するようになっております。また、革手錠に代わる新たな手錠は、従来のものに比べて腰部のベルトがない分、腹部への圧迫感が解消されており、本委員会における審議や行刑改革会議における議論等を踏まえ、行刑の在り方について改善が図られつつあるとの印象を受けました。
 次に訪れた瀬戸少年院は、十四歳以上二十歳未満の長期処遇の少年が収容されております。昨今の矯正施設の過剰収容が大きな問題となっている中、本院も例外ではなく、収容定員百六十名であるところ、昨年の一日平均収容人員は二百三名と過剰収容が極めて深刻になっております。このため、居室に収容し切れない少年は、夜間、折りたたみ式ベッドによって集会室で就寝せざるを得ない実態にあります。収容棟の増築等施設整備が急務であることを痛感いたしました。院長からは、個々の少年の特性に応じた個別的処遇計画を作成し、それに基づく教科教育や職業能力開発等適切な処遇に努めていること、また、本院には名古屋矯正管区内で少年院送致が決定した日系ブラジル人の少年も収容されており、外部から定期的にカウンセラーが来院し、彼らの心のケアをしていること等の説明を受けました。
 以上が調査の概要であります。
 最後に、今回の調査に当たり、御協力をいただきました関係各位に対し、この席をおかりして厚く御礼申し上げ、報告を終わります。
○委員長(山本保君) 以上で派遣委員の報告は終了いたしました。
 本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
   午後零時四十四分散会