第159回国会 法務委員会 第7号
平成十六年四月一日(木曜日)
   午前十時開会
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   委員の異動
 三月三十日
    辞任         補欠選任
     吉田 博美君     木村  仁君
     角田 義一君     北澤 俊美君
     堀  利和君     高嶋 良充君
 三月三十一日
    辞任         補欠選任
     木村  仁君     吉田 博美君
     北澤 俊美君     角田 義一君
     高嶋 良充君     堀  利和君
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  出席者は左のとおり。
    委員長         山本  保君
    理 事
                松村 龍二君
                吉田 博美君
                千葉 景子君
                木庭健太郎君
    委 員
                青木 幹雄君
                岩井 國臣君
                鴻池 祥肇君
                陣内 孝雄君
                中川 義雄君
                野間  赳君
                今泉  昭君
                江田 五月君
                角田 義一君
                堀  利和君
                井上 哲士君
   国務大臣
       法務大臣     野沢 太三君
   副大臣
       法務副大臣    実川 幸夫君
   大臣政務官
       法務大臣政務官  中野  清君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局民事局長
       兼最高裁判所事
       務総局行政局長  園尾 隆司君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        加藤 一宇君
   政府参考人
       内閣府政策統括
       官        大田 弘子君
       法務省民事局長  房村 精一君
       法務省人権擁護
       局長       吉戒 修一君
       国税庁徴収部長  徳井  豊君
       厚生労働大臣官
       房審議官     大石  明君
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  本日の会議に付した案件
○理事補欠選任の件
○参考人の出席要求に関する件
○政府参考人の出席要求に関する件
○破産法案(内閣提出)
○破産法の施行に伴う関係法律の整備等に関する
 法律案(内閣提出)
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○委員長(山本保君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 理事の補欠選任についてお諮りいたします。
 委員の異動に伴い現在理事が欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。
 理事の選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(山本保君) 御異議ないと認めます。
 それでは、理事に吉田博美君を指名いたします。
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○委員長(山本保君) 次に、参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 破産法案及び破産法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の審査のため、来る六日、参考人の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(山本保君) 御異議ないと認めます。
 なお、その人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(山本保君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
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○委員長(山本保君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 破産法案及び破産法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の審査のため、本日の委員会に内閣府政策統括官大田弘子君、法務省民事局長房村精一君、法務省人権擁護局長吉戒修一君、国税庁徴収部長徳井豊君及び厚生労働大臣官房審議官大石明君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(山本保君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
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○委員長(山本保君) 破産法案及び破産法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案を一括して議題といたします。
 両案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○松村龍二君 自民党の松村でございます。
 自民党の委員各位の御了解いただきまして、私、質問をさせていただきたいと思います。
 破産法というと非常に難しい法律だということでございます。先ほども、廊下で昔から知っている委員部の方にお会いしましたら、今日は破産法の質問をするんだと言ったら、ああ、難しいですねという一言がございました。これは、弁護士の千葉先生、角田先生、江田先生というふうな御専門の方からしますと非常に手になじんだ法案かと思いますけれども、私どもは本当に生まれて初めて見るような法律でございまして、それについて質問をするというのはいささか消極的な気持ちになるわけですが、勇気を奮い起こしまして、一時間質問をさせていただきたいと思います。
 法律にはなじみがないとはいえ、我々、新聞を見ておりますと、サラ金が戦後非常に盛んになりまして、若い人が前後の見境なくこれに手を染めていく、あるいは家庭の主婦がちょっと生計費を役立てるためにサラ金等に手を染めていって抜き差しならない状態になる。そして、そのサラ金の回収が非常に過酷を窮めて、自殺者が出るとか、いろいろな厳しい時代がございました。
 そのうちに個人倒産を、破産をすればそういうことから逃れられるというふうな知識もまた広がってまいりまして、いとも無造作にすべてを投げ出して破産してしまう、個人が破産してしまうというふうな時代を迎えているわけです。全体の倒産件数の八割、九割がそういう倒産であると、こういうことであります。
 それから、私も念のため地元からどういうふうな県内の倒産の状況であるかということを聞きましたところ、昨年はゴルフ場の倒産が二件ございました。そして、もう中央においてはゴルフ場の倒産なんというのは十年前の話かなと思っておりましたら、我が県には景気にしろ不景気にしろその風が吹いてくるのが遅いので、今ごろゴルフ場が倒産だというふうな話がありましたので、それではそれを終わってから景気の波が届いてくるのかというと気が遠くなるほど先ではないかということを言いましたら、いや、景気が少し上向きになっている、風もややそよ風が吹き始めているというふうな話も聞いたわけであります。
 公共事業が非常に削減されておるということもありまして、何といいましても建設関係の倒産が三割から四割というふうな数であります。それから、ショッピングセンター、これが我が県においては、大企業が大型店舗を進出する前に予防して、予防線を張って、零細商店が共同して組合を作ってショッピングセンターを作り、これが一時期はよかったわけですが、より大きなショッピングセンターができる、あるいは大型専門店が来るということによりまして大型ショッピングセンターがつぶれていくというふうなことがございます。このようなことで、我々も、自分の親しい中学、高校時代の友人が酒屋さんをやっておりまして倒産したとか、選挙のときに一生懸命応援していただいていた中小企業の方が倒産した、もう指折り数えても本当に近い方が十人ほど倒産したというふうな状況も見るわけでございます。そういう意味においては、この倒産という、破産法というのは決して人ごとではないと、こういうふうに感じます。
 そして、このような現象に対しまして、今ようやく破産法を全面的に見直して、ほとんど全面的な改正をしたということでございまして、時宜を得た提案かというふうに思います。この前配られました資料を持ってまいりましたけれども、この厚さを見ましても、いかに御苦労されてこの法案の改正に到達したかということを知るわけでございます。
 そこで、質問に入りますが、今回の破産法の改正は倒産法制全体の見直しの一環として行われたものと承知しておりますが、このように倒産法制の全面的な見直し、会社更生法とか民事再生法と、いろいろあるようですが、このような倒産法制の全面的な見直しを行うこととしたのはなぜか、法務大臣にお伺いします。
○国務大臣(野沢太三君) 倒産法制の全体的な見直しを開始しました平成八年十月の時点では、我が国の倒産法制は破産手続、和議の手続、会社更生手続、会社整理手続及び特別清算手続から成っておりましたが、これらの五つの制度につきましては、大正十一年に制定されました破産法を始めとしまして、制定の時期が異なるだけでなくて、立法思想や時代的背景をも異にしていたものでございます。
 また、これらの制度については、昭和二十七年に成立した会社更生法等により導入されました破産手続に付随して免責制度が採用され、さらには昭和四十二年に主として乱用防止の観点から会社更生手続の見直しがされたほかは実質的な見直しがされておりませんでした。破産法は、皆様御承知のとおり、まだ片仮名の法律になっておる状況にございます。
 他方で、いわゆるバブル経済崩壊後、景気の停滞状況が長期化したことによりまして、法的倒産処理手続の利用件数は増加の一途をたどっております。倒産件数、この平成十五年度だけでも二十五万約二千件近い件数が上がってきておるところでございます。また、社会経済の複雑化、多様化に伴いまして、大規模倒産事件や国際倒産事件等その処理には困難な問題を含む事件の増加も顕著となっております。
 このような事態は破産法等の制定時には想定されていなかったものでありまして、消費者の倒産、中小企業等の再建、国際倒産事件への対応等を中心にして制度の不備が指摘され、倒産法制の抜本的な見直し、立法的な手当てを求める意見が強まってきたところでございます。
 このような状況の中で、平成八年十月から、法制審議会において倒産法制の全体的な見直しが行われることとなったのでございます。
○松村龍二君 近時の経済情勢の影響から破産事件が急増している状況にあると認識しておりますが、近年の破産事件の申立て件数の動向はどのようになっているのか、また個人債務者と会社との割合はどうか、最高裁判所にお伺いします。
○最高裁判所長官代理者(園尾隆司君) 破産事件の申立て件数は過去十年間ほぼ一貫して増加し続けておりまして、十年前である平成五年には四万六千二百十六件でしたものが、平成十五年には二十五万一千七百九十九件となっておりまして、十年間に五・四倍に増加しております。
 そのうち、個人の破産申立ては、十年前に四万三千八百十六件であったものが、平成十五年には二十四万二千八百四十九件となっておりまして、十年間で五・五倍に増加しております。また、個人以外、すなわち法人の破産申立て件数は、十年前に二千四百件であったものが、平成十五年には八千九百五十件となっておりまして、三・七倍に増加しております。
 このように、個人、法人とも事件数は大幅に増加しておるという状況でございます。
○松村龍二君 先般、委員会で民事局長は、東京地裁の民事二十部ですか、地裁二十部の責任者であったようなお話で、この地裁二十部というのは、破産再生部と別名言われるような、破産した人にとってもうすべての最後のとりで、救いの神であるという場所だそうでございまして、そこを一手にやっておられたということから、非常に実務にたけて、またいろいろな実情に精通しておられると思いますが、この質問で、答弁によりまして国民に分かりやすくこの法案を理解していただくという点で、少し砕いて、どのような、以前と比較してどのような特徴を持った事件が増えているのか、教えていただきたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(園尾隆司君) 過去十年間での破産事件の移り変わりという点について御説明いたしますと、私は十年前である平成五年に東京地裁の破産事件担当部の裁判官をしておりまして、その後、平成十年から平成十五年一月まで同じく東京地裁の破産事件担当部の裁判官をしておりましたが、その経験からいたしますと、十年前であります平成五年当時には、いわゆるバブル崩壊の直後でありまして、洋服や靴をたくさん買ったとか、あるいは海外旅行に何度も行ったというような、いわゆる浪費型の個人破産事件がたくさんございましたが、最近ではそのような浪費型の事件は余り目立たなくなっておりまして、それに代わりまして、収入減少型といいますか、職を失ったりあるいは給料を大幅に切り下げられたというようなことで、収入面で問題が生じて破産の申立てをするという人の割合が増加しておるというように感じております。
 また、法人でいいますと、平成五年当時は大企業が立て続けに倒産するというようなことは考えられなかったわけでございますが、最近では一部上場の大企業あるいは銀行、証券会社のような金融機関が倒産するということも珍しくはなくなっておりまして、これに伴いまして多数の関連する会社が破産の申立てをするというような現象が生じておるというように感じております。
○松村龍二君 非常に厳しい経済状況であると。IT関係あるいは輸出関係で非常に突出して景気がいい、また中国も最近金持ちが増えてきて、そういう面、あるいは中国がどんどん生産することによって設備をするということで潤っておる日本の企業とそうでない企業、あるいは公共事業等の低減によりまして、非常にそういう収入低減型といいますか、厳しい状況にあるというふうなことがよく分かりました。
 景気対策そのものがどうであるかということは本委員会の主眼ではないと思いますので触れませんが、このように近年破産事件が急増している原因として、法務当局としてどのようにお考えなのか、把握しておられるのか、お伺いします。
○政府参考人(房村精一君) 御指摘のように、破産事件の申立て件数、非常に増えております。この原因としては様々な要因があると考えられますが、まず御指摘のように、消費者金融市場が拡大しているということは背景にあろうかと思います。特に近年につきましては、バブル経済崩壊後の長期にわたる景気低迷、これに伴って企業倒産が増大しておりますし、また企業においてリストラあるいは解雇等も増えております。そういった給料の減免あるいは雇用不安、こういったものが主な要因となって近年の破産事件の増加につながっているのではないかと、こう思っております。
○松村龍二君 私も先ほど申しました、倒産したある友人といいましょうか、県庁所在地の方からお伺いしたんですけれども、日本人には日本人の資本主義というのがある、それがグローバリズムということで、アメリカ流のドライな経済の在り方をアメリカから強制される、また金融庁はそれの先頭に立ってそういう方針を進める、これが金融機関に検査の内容を押し付けることによって、現場においては貸しはがし、貸し渋りというふうな現象が起きておるということをその方は嘆いておられました。
 剣道をするのに、日本人は羽織はかまをして竹刀をして剣道をしたいのに、アメリカから、そんな羽織やはかまはみっともない、もっと足下をすっきりしろといってフェンシングのスタイルさせられて、それで、入ったか入らぬか、一本が入ったか入らぬか分からぬような審判じゃ駄目だ、電気がつくようにやれといって、剣道も、線引っ張って剣道をやるというふうなことを日本の資本主義に対してやられるとたまったものでないと。
 日本の企業家は借金をするのに、この前お話のありました根保証の問題とか、あるいは親戚縁者から金を借りる。アメリカのようにドライに破産してまた立ち上がるということができないような、親戚縁者に迷惑を掛けたことによって雲隠れしないといかぬ、あるいは首をくくらぬといかぬというふうな状況にあるところを、日本は日本でいい慣行で資本主義を切り回しているのに、余りにアメリカのドライなやり方を追求されてはかなわないということを言っていたことを思い出すわけですが、いずれにいたしましても、安定した経済社会を築くには、駄目になったときの破綻処理を迅速に行うことが必要であるわけであります。この点について、大正十一年に制定された古い破産法では大量事件処理に対応できていないのではないかと考えていたわけでございます。
 急増した破産事件を適切に対処するためには破産法の改正が必要であると考えておりますが、破産法をもっと早く国会に提出することはできなかったのか、お伺いします。
○政府参考人(房村精一君) 先ほど大臣から御説明いたしましたように、平成八年から倒産法制の全面的な見直しを行っているわけでございます。
 当初は倒産法制全体を一括して改正するというつもりで作業を始めたわけでございますが、非常に不況が長期化して倒産事件が増加するということから、全体を一括してといいますと相当期間が掛かりますので、緊急性の高い課題からまず実現をしていくということに方針を転換いたしまして、平成十一年に民事再生法をまず成立をさせていただきました。その翌年の平成十二年には個人再生を中心といたしまして民事再生法を改正をする、また同時に外国倒産処理手続の承認援助に関する法律を制定いたしまして、国際的な倒産に対応できるようにいたしました。そして、平成十四年十二月に会社更生法を全面改正いたしまして、大規模な株式会社の再建を容易にするということを実現したわけであります。
 残る課題のうち、最大のものがこの破産法でございましたが、これは何分、倒産法制の言わばかなめ、基本を成す法律でありまして、検討課題といたしまして、労働債権、租税債権等の各種債権の破産手続における優先順位、あるいは利害関係人の権利や利益に重大な影響を及ぼす事項が多数あるということから、なかなか検討に時間を要しておりまして、何とかこの国会にお願いをするようになった次第でございます。
○松村龍二君 今回の破産法案は、破産手続の全般にわたって数多くの見直しを行っていると承知しております。
 そこで、手続の基本的な流れを確認する意味で、破産手続の大まかな流れを説明していただきたいと思います。
○政府参考人(房村精一君) 基本的に破産手続と申しますのは、支払不能あるいは債務超過に陥りました債務者の財産を適正かつ公平に清算をすると、こういう目的の手続でございます。
 その基本的な流れといたしましては、まずは債務者あるいは債権者から裁判所に対して破産手続開始の申立てがなされます。そうしますと、これを受けて裁判所は破産手続開始の原因となる事実があるかどうか、すなわち支払不能あるいは債務超過という事実が認められるかどうかということを審理をいたします。この審理中に債務者の財産が散逸してしまうと、こういうことになりますと適正な破産手続が遂行できませんので、そういうおそれがある場合には強制執行の中止命令など各種の財産保全の措置を講ずると、こういう仕組みになっております。
 その審理を遂げまして破産原因があるということになりますと、破産手続の開始の決定がなされます。従来はこれを破産宣告と呼んでいたわけでございますが、これと同時に破産管財人が選任をされまして、破産手続開始時に債務者が所有している一切の財産、破産財団でございますが、これについて管理処分権を掌握いたします。その上で、破産管財人は、その破産財団に属する財産を換価いたしまして現金にする、それと同時に債権者がどのような範囲、どのような額かということを確定するための債権調査の手続が行われます。その確定した債権者に対して、換価し現金化したお金を配当をすると。この配当が終了いたしますと、裁判所が破産手続の終結を決定いたしまして破産手続が終わると、こういうことが大きな流れでございます。
 ただ、配当を行うに足りる現金が得られればよろしいわけですが、換価してみたけれども到底配当まで回らないという場合もございます。そういう場合には、その段階で破産手続を廃止するという廃止の決定をいたしまして終了をするということになります。
 このほか、破産者が個人である場合には、その破産手続に付随して免責手続というものがございまして、破産手続に従って配当をして、言わば一切の財産を投げ出した場合に、残余の債権についてこれを免除するという免責の手続も併せて行われております。
○松村龍二君 ただいまの流れの説明を聞きますと、本当に今回の法案がそれぞれの箇所において非常に重要な取決めをしておるということが分かるわけですが、破産法案の目的であります手続の迅速化、合理化について、それを重視する余り、債権者の利益をないがしろにしないかという視点を含めまして、自民党でございますので、そんな観点も持ちまして、以下質問をいたしたいと思います。
 まず、現在の実務上、手続の迅速性が問題となるのは、主として債権者が多数存在する大規模な事件であると聞いております。
 そこで、債務者が破産手続開始の申立てをするに当たって、破産法案ではこのような大規模な事件についての管轄についてどのような対応がされているのか、お伺いします。
○政府参考人(房村精一君) 御指摘のように、破産事件の中には、債権者が数百名あるいは時に千名を超すというような大きな事件がございます。これだけの事件になりますと、これを迅速適切に処理するためには、裁判所の方も相当の体制を組み、かつそういった事件の扱いに慣れている人たちがいるということが望ましいわけでございます。
 ただ、全国各地の裁判所で、すべての裁判所でそのような体制を取るということは到底不可能でございますので、今回の破産法案では、そういった大規模な事件につきましてはそういった体制を整えられているところに起こせるようにということを考えました。
 まず、債権者数が五百人以上の事件につきましては、その現行の破産法が定める管轄裁判所の所在地、原則としてその破産者の営業所所在地を管轄する地方裁判所ということになりますが、そういう裁判所と併せまして、その地を管轄する高等裁判所の所在地を管轄する地方裁判所、ですから例えば東北地方で申しますと、例えば青森の所在で、そこで倒産をしたというときに高裁所在地である仙台の地裁にも起こせると。これは裁判所の体制からいたしますと、やはり高裁所在地の裁判所というのは人的・物的体制の整備が進んでおりますので、そういうところに起こすことによって迅速に手続を処理できるようにということを考えております。
 さらに、債権者数が増えた、一千人以上ということになりますと、これだけの事件を適切に対応する能力を持っている裁判所としては、やはり東京地裁と大阪地裁、これが最もふさわしい裁判所でありますので、本来の管轄裁判所と併せまして、全国どこからでも東京あるいは大阪に破産の申立てができるようにと、こういうことを考えております。
○松村龍二君 債権者数が千人以上の大規模な事件については、全国どこからでも東京地方裁判所あるいは大阪地方裁判所に申立てができるようにするなど、管轄を拡大しているとのことでありますが、このように大都市に事件を集中させますと、地方の債権者にとっては、遠く離れた裁判所で破産手続が行われることにより、かえって現在より破産手続に参加しにくくなるという心配はありますが、その点についてはいかがでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) 確かに、御指摘のように、一か所に集中をいたしますと、特に地方の債務者の破産事件につきまして債権者が破産手続に参加しにくくなるというおそれはあろうかと思っております。
 この法案では、そういうことも考えまして、まず債権者の破産手続への参加の方法を一般的に柔軟かつ容易にするということをしております。これは、例えば破産債権の調査でございますが、現行法におきましては債権調査期日を開きまして、そこに出席をして意見を述べると、こういうことが必要になっておりますが、これを書面による破産債権の調査の制度ということにいたしまして、破産裁判所まで行かなくても書面で意見が述べられるという仕組みにいたしております。
 また、債権者集会の議決権の行使にいたしましても、現在は出席をしてその議決権を行使するということが必要でございますが、これを、書面等投票の制度というものを新たに導入いたしまして、やはり自ら赴かなくても書面で議決権を行使できる、こういうような仕組みを考えております。
 さらに、高等裁判所所在地の地方裁判所、あるいは東京あるいは大阪に破産事件が係属することによって著しい損害又は遅滞が生ずると認められる場合には、破産事件を破産者の主たる営業所の所在地を管轄する地方裁判所に移送することができる、こういう損害を避けるための新たな措置も講ずることといたしております。
 このような措置が適切に機能いたしますれば、そのような特に破産手続に参加しにくくなるということは防げるのではないか。また逆に、こういう、集中することによって手続そのものが迅速適切に進行するということで破産債権者の受ける利益もあろうかと思いますので、御懸念のようなことは防げるのではないか、こう思っております。
○松村龍二君 だんだん専門的な質問になってくるわけですが、債権者が破産手続に関与する機会として、現行の破産法では債権者が一堂に会する第一回債権者集会を必ず開催しなければならないとしておりますが、ところが破産法案では、この第一回債権者集会の開催を任意化しておりますが、その趣旨は何でしょうか。
○政府参考人(房村精一君) 現行法では、破産宣告をすると同時に、その宣告の日から一か月以内に第一回債権者集会の期日を定めてこの集会を必ず開くということとしております。この第一回集会におきましては、一定の事項について決議を行うだけではなくて、破産者の財産状況その他情報開示の場としての意義を有しておって、非常に重要なものだという具合に考えられております。
 ただ、中には、破産債権者の数が非常に多くて一堂に会して集会を開くということが物理的にも困難であるというような場合もございます。また逆に、債権者が非常に少ない小規模の破産事件でありまして債権者集会を開いてもほとんど出てこない、時には全く債権者が出てこないというようなことも間々あるということが経験から指摘されているところでございます。
 このような様々な事件が破産事件の中にあるということを考えますと、債権者集会が非常に重要なものだといたしましても、一律にこの開催を義務付けるということは不必要にコストを掛けるという面もあるのではないか。そういうことから、今回の破産法案では、原則として、現行法の第一回債権者集会に相当する財産状況報告集会を招集しなければならないといたしておりますが、そうした上で、知れている破産債権者の数その他の事情を考慮して財産状況報告集会を招集することを相当でないと認めるときには、これを招集しなくてもよいということで任意化いたしております。
 これは、先ほど申し上げたような、債権者数が非常に多過ぎて開くことが困難である、あるいは非常に少ないということで逆に開くまでもない、そういうような個別の事情に応じて裁判所が適切に破産手続を進行できるようにと、こういうことを考えたものでございます。
○松村龍二君 実務に合わせてそのような法改正をすることは理屈に合っているかと思いますが、このように債権者集会の開催を任意化しますと、破産手続に関して大きな利害関係を有する債権者が手続に関与する機会を失うこととなってしまい、問題になるという心配はございませんか。
○政府参考人(房村精一君) 先ほども申し上げましたように、この第一回債権者集会は特に破産に関する情報を開示する場として非常に重要な機能を営んでおります。今回、それを、その開催を任意化いたしたわけでございますが、そういう面で、仮に開催をしない場合にはそれに代わる措置を講ずる必要があるだろうということで、集会が開催されない場合であっても、破産管財人といたしましてはその集会に報告すべき事項と同一の事項を記載した報告書を裁判所に提出しなければならないものとしております。
 したがいまして、破産債権者は、この裁判所に提出された報告書について閲覧、謄写等の請求をすることによりまして破産者の財産状況を把握することが可能となっております。また、これは最高裁規則にかかわる事柄でございますが、規則において、この財産状況報告集会が開催されない場合には、破産管財人は財産状況等に関する報告書の要旨を利害関係人に送付するなどの情報提供のための適当な措置を取るというようなことを設けることが検討されていると承知しております。
○松村龍二君 債権者は、破産手続において配当を受けるために自己の債権を裁判所に届出しなければならないわけですが、債権者が届出をした債権の額を管財人が認めなかった場合に、債権の額がどのように決められるかは債権者にとっては重大な関心事であります。
 そこで、破産法においては、このように債権者と管財人との間に争いがある場合について、破産債権の額はどのような手続で決められることになるのか、お伺いします。
○政府参考人(房村精一君) これは、破産手続にとりまして、破産債権者であるかどうか、あるいはその破産債権の額が幾らであるかということは決定的に重要でございます。そのため、現行の破産法では、この破産債権につきまして債権者と管財人とで争いがある場合には、破産債権の確定の訴えを提起してそれを確定するということを予定しているところでございます。
 そういう意味で、訴えですと非常に慎重でよろしいわけですが、ただ同時に、どうしても時間が掛かります。そういうことから、この破産債権の確定の訴えに時間を要するために、破産手続全体の迅速な進行が阻害されているという指摘がございます。そういうことから、今回、この債権の確定手続の合理化及び迅速化を図る観点から、まず第一次的に、裁判所が決定手続という、訴訟手続、訴えの手続に比べますと迅速に処理できる決定手続で破産債権の額を判断いたしまして、その裁判所の判断に不服がある場合に初めて訴訟手続でその確定をする、こういうことにいたしております。
 債権調査で破産管財人が認めなかった破産債権を有する者は、まず破産債権の査定の申立てというものをしていただきます。この査定の申立てがありますと、裁判所は決定手続でその判断をいたしまして、この裁判所の裁判に不服がある場合に、これに対して異議の訴えを提起する。この異議の訴えが確定いたしますと、その破産債権の内容は判決のとおりに確定する、こういう手続にして迅速化を図っております。
○松村龍二君 次に、破産法案のもう一つの目的であります破産手続の実効性及び公正さの確保との関連で質問いたしたいと思います。
 まず、破産手続開始の申立てがされてから手続の開始決定がされるまでのいわゆる保全段階において破産者の財産が散逸する事態が生ずることがあると聞いております。このような事態が生じないようにするために、破産法案においてはどのような見直しが行われているのか、お伺いします。
○政府参考人(房村精一君) 御指摘のように、破産手続開始の申立てから開始決定までの間に破産者の財産が散逸してしまいますと、結局債権者の満足が十分得られないということになりますので、これを防ぐ必要がございます。
 現行法では、破産宣告前の保全処分として、破産財団に関し、仮差押え、仮処分その他の必要な処分を命ずることができるという規定がございますが、具体的にどのような保全処分が可能かということについては法律に細かい規定がございませんので、解釈にゆだねられているという面がございます。
 そこで、この法案では、保全段階における債務者の財産の散逸の防止、あるいは債権者間の公平を図る観点から、法律で多様なメニューを用意して保全処分を充実するということにしております。まず第一に、強制執行手続等の中止命令、こういう制度を設けまして、個別に債権者が強制執行して満足を得てしまうということを許しますと債権者間の公平な配当ができませんので、これを中止することができるようにしております。
 こういう個別的な中止命令だけでは足りない場合もございます。非常に強制執行の申立てが多いというような場合がありますので、そういう場合に備えまして、個別の中止命令では破産手続の目的を十分に達することができないおそれがあると認めるべき特別の事情がある、こういうようなときには包括的にそれを禁止する包括的禁止命令というものも用意いたしました。また、法人につきまして、その財産の管理及び処分が失当である、例えば経営者が財産隠しを図っている、こういうようなおそれが認められるときには、決定前に保全管理人を選任いたしまして、その保全管理人に財産の管理をゆだねると、こういう保全管理命令というものも用意いたしました。このようなことで保全段階の処分を充実をさせております。
○松村龍二君 ただいま御説明がありましたが、包括的禁止命令の制度を新たに設けたということでありますが、この包括的禁止命令とはどのような制度であるのですか。
○政府参考人(房村精一君) 先ほども申し上げましたように、破産債権者が個別に強制執行をして満足を得てしまいますと、債権者に対する平等の配当ということが実現できませんので、個別的なそういう強制執行を中止することができる中止命令の制度を用意いたしておりますが、同時期に多数の強制執行の申立てがされるということもあり得るわけでございます。そういうときに、それぞれにつきまして個別に一つ一つやらなければならないというと非常に事務負担が膨大となりますし、完全に全部に対応し切れないとなると、中止命令が間に合わなかった人が個別に満足を得て債権者間の公平が害されると、こういうことにもなるわけでございます。
 そういうことから、そのような例外的な場合にはそういったものすべてを包括して中止を、禁止を命ずることができると、こういうことでこの包括的禁止命令の制度というものを考えたわけでございます。
○松村龍二君 この包括的禁止命令が発令されますと、債権者は会社の財産に対する強制執行等を一律に禁止されることとなり、重大な影響を受けますが、債務者がこの包括的禁止命令を乱用する危険はありませんか。
○政府参考人(房村精一君) 確かに、包括的に禁止するわけですので、非常に強力な手段でございます。
 そういうことから、乱用を防止するために、まず第一に、要件を非常に厳しくいたしておりまして、強制執行等の手続の中止命令によっては破産手続の目的を十分に達することができないおそれがあると認めるべき特別の事情があると、こういう場合に限って発令できるという具合にしております。
 また、このような形で権利行使を包括的に禁止をしておきながら破産者の財産が処分できるということでは破産債権者の権利が十分守れませんので、この包括的禁止命令を発令するためには、事前又は同時に債務者の主要な財産に関する保全処分、保全管理命令をしたこと、これが発令の要件となっております。
 さらに、この保全処分だけを使って一時的に支払を免れようと、そういうような乱用を防ぐためにこの包括的禁止命令を発令いたしますと、それ以後は裁判所の許可がない限り破産手続開始の申立ては取り下げることができない、破産が進行していくと、こういうことにいたしまして乱用を防止することとしておりますし、またこの包括的禁止命令そのものに対しまして利害関係人に即時抗告権が与えられておりますので、このような諸方策を講ずることによって乱用されるおそれは防げると、こう考えております。
○松村龍二君 また、破産法案では、先ほど御説明あったかと思いますが、保全管理命令の制度を新たに設けたとのことでありますが、この保全管理命令とはどのような制度でありますか。
○政府参考人(房村精一君) これは、主として法人、主としてといいますか、法人を対象にした制度でございますが、債務者の財産の管理又は処分が失当であるという、会社の経営者が会社財産の隠匿を図っているというような場合が典型例でございますが、こういう場合に債務者の財産を確保するためには個別の処分では足りませんので、破産手続が開始されるのを待つことなく、債務者の財産の管理処分権を包括的に移転させる保全処分を発令すると、こういう実務上の必要性は高いと考えられております。
 そこで、この法案では、債務者の財産の管理及び処分が失当であるとき、その他債務者の財産の確保のために特に必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、破産手続開始の申立てについて決定があるまでの間、債務者の財産に関し、保全管理人による管理を命ずる処分をすることができると、こういうことといたしまして、この保全管理人が財産の管理処分権を有するものとしているわけでございます。
○松村龍二君 最高裁判所に伺いますが、保全管理命令によって保全管理人が選任されますと、会社の財産の管理処分権は保全管理人が有することになります。そうすると、債権者にとってはだれが保全管理人に選任されるのかということが重大な関心事項となりますが、裁判所は保全管理人としてどのような者を選任することになるのでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(園尾隆司君) 保全管理人を選任する事例はそれほど多くはございませんが、債権者が破産申立てをしていて、破産原因があるかどうかを審理するのに一定の期間が必要だという事情がありまして、しかもその間に財産隠しがされたり、あるいは財産が散逸してしまうというおそれがあるというような事案について、債務者の財産を厳格に管理しながら破産宣告をするかどうかを審理するということになるわけでございますので、保全管理命令を発する事件は一般に大変難しい破産事件だということになります。
 したがいまして、保全管理人には、難しい破産事件の管財人を経験したことがあるベテランの管財人の候補者の中から適任の者を選んでいくというようなことになるというように考えております。
○松村龍二君 あと二つばかり会社の破産の場合についての御質問をいたします。
 次に、破産手続開始の決定がされた場合には、破産者がどのような事情で破産に至ったのか、またどのような財産を所有しているのかということは、破産者の財産から配当を受ける立場にある債権者にとっては重大な関心事項であります。したがって、破産者にはこのような事項について十分に説明をさせるべきであると考えますが、破産法ではこの点についてどのような手当てがされているのでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) 御指摘のように、破産に至った事情あるいはどのような財産を所有しているかということを破産者に説明をさせるということは、破産手続を円滑に進めるためにも必要なことでございます。
 そこで、この法案では、破産管財人等の請求があったときには、破産者は破産に関し必要な説明をすべき義務を負うものといたしております。この点は現行法と同様でございますが、更にこの説明義務を強化する観点から、破産手続開始の決定後遅滞なく、その所有する不動産、現金、有価証券、預貯金その他裁判所が指定する財産の内容を記載した書面を裁判所に提出すべき義務を課しております。このことによりまして、破産者の有している財産の状況を把握しようということでございます。
 かつ、この書面の提出義務に関しましては、この義務に違反して提出を拒み、あるいは虚偽の書面を提出したというときには刑事罰を科すという制裁も用意いたしまして真実性を担保しているところでございます。
○松村龍二君 また、会社が破産した場合に、破産手続によって債権者は債権額に比較して少額の配当しか受けることができないのが通常でありますが、このこととのバランスから考えても、違法な行為によってそのような事態を招いた破産会社の経営者の責任は厳格に追及されるべきであると考えますが、この点については破産法では新たな手当てがされたのでありましょうか。
○政府参考人(房村精一君) 御指摘のように、経営者に違法な行為があって倒産に至ったというような場合には、当然その経営者に対する民事上の責任の追及が必要となります。
 そこで、従来は、そういう場合には訴えを起こして損害賠償の額を確定していくということが必要でありましたが、今回の破産法案では、破産手続を迅速に進行させるという観点から、訴訟手続よりも簡易迅速な決定手続によって経営者が破産会社に対して負担する損害賠償請求権等の内容についての査定決定をすると、こういう制度を設けております。裁判所がこの査定決定をいたしまして、この査定決定に不服がある場合に異議の訴えを起こすことによって最終的に確定をすると。これによりまして、経営者の責任追及がより容易かつ迅速に行えるようになるのではないかと思っております。
 また、こういうことを前提といたしまして、経営者が会社に対して負担する損害賠償請求権等を保全するために経営者の財産に対する保全処分というものを新たに設けているところでございます。
○松村龍二君 次に、破産事件の大部分を占めます個人債務者の破産事件に適切に対応することも極めて重要であると考えます。
 そこで、個人破産事件に関連して質問いたします。
 会社の経営者は、会社が破産した場合には、その債務について保証しているため一緒に破産する場合が多いのであります。その後、破産した経営者が再び事業を起こそうとしても資金的な元手がないためあきらめている事例も多いと聞いております。アメリカでは四〇%ぐらいがまた企業を起こす。ところが、日本では十数%しか立ち上がれないと。
 この点について破産法においては、個人債務者が破産した場合には、破産してもその手元に残る財産、いわゆる自由財産が認められていると聞いております。破綻した会社の経営者の再起を促すためにはこの自由財産の範囲を見直すべきであると指摘されておるわけでありますが、破産法案ではどのような手当てがされておりますか。
○政府参考人(房村精一君) 御指摘のように、個人の破産者の場合には、その生計を維持し、あるいは再起のために一定範囲の財産を手元に残すことができる自由財産の制度が認められております。
 現行の破産法におきましては、強制執行において差し押さえることのできない財産を自由財産としております。このうち特に現金について申し上げますと、従来は標準的な世帯の一か月間の必要生計費を勘案して政令で定める額、これが自由財産とされていたところでございます。ただ、民事執行法の改正及び政令の改正に伴いまして、この四月一日、今日からでございますが、差押禁止の範囲が拡大されまして、標準的な世帯の二か月間の必要生計費を勘案して政令で定める額と、従来の一か月が二か月になっております。また、政令の額が、従来二十一万円であったものが二か月で六十六万、一か月で直すと三十三万円に増えております。
 ただ、従来の扱いでいきますと、したがって破産法ではその範囲が現金としての自由財産ということになるわけでございますが、個別執行の場合に比べますと破産は全財産の管理処分権を失うと、そういう状況で生活を送らなければならないということでございますので、生活に必要な資産を確保することが個別執行の場合に比べて一般に困難であると、こう考えられますので、この破産法案では、破産の場合の自由財産といたしましてはその個別執行の二か月の場合を更に増やしまして三か月分といたしております。したがいまして、額としては九十九万円が自由財産ということになるわけでございます。
 また、併せまして破産者の生活の状況や破産者が収入を得る見込みの有無などの個別の事情に応じまして裁判所が自由財産の範囲を拡張することができる制度、これを新たに設けることといたしました。
 このような自由財産の拡張及び拡張の裁判の、拡張できる制度ということによりまして破産者の生活の維持を図るとともに、その再起に資するようにということを考えているわけでございます。
○松村龍二君 今回の見直しでは、自由財産となる金銭の額をおおむね百万円程度に引き上げ、さらに破産者の個別の事情に応じて自由財産の範囲を拡張する制度を設けたとのことでありますが、破綻した会社の経営者の再起を促すという観点からは、先ほども外国の例で申し上げましたが、十分とは言えないんではないでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) 確かに、会社を起こす、会社を再起するということを考えますと、なかなか、九十九万円で十分かと言われますと十分とは言い切れないとは思っております。そういう点で会社の、経営者の再起を促すという観点からすると自由財産としてはなるべく多くの額を確保した方がよいということになろうかと思いますが、しかし同時に、自由財産の範囲を拡大するということはその分が破産債権者への配当に充てられないということになるわけでございますので、破産債権者の利益が害されるということになるわけでございます。
 また、そういうことを恐れてかえって融資が行われにくくなるというようなことも懸念されるわけでございますし、また破産者のモラルハザードを招来するおそれがあるのではないかということも考えないといけないだろうと思います。
 そういうことから、今回の破産法案におきましては、その両者の調整を図る観点から、必要生計費の三か月分に相当する額ということでおおむね百万円を手元に残すということといたしたわけでございます。
 同時に、さらに破産者の個別の事情において拡張することができる制度を創設いたしまして、この制度によりますと、破産者が例えば当分の間、就職の見込みがなく収入の当てがない、あるいは扶養すべき者を多数抱えていると、こういうような個別事情に応じて自由財産の範囲を拡張することができるわけでございます。
 一般的に申し上げますと、サラリーマンのように定期的な収入が破産後も確保できている人と比べますと、中小企業の経営者のように、事業そのものが失敗してしまいますと当分の間収入の当てがない、あるいは再起のための準備期間が相当期間掛かると、こういうような場合にはこの自由財産の拡張をする要素として当然考慮できることになろうかと思っております。
 そういうようなことを考えますと、今回の破産法案、必ずしも十分なものとは申し上げられないかもしれませんが、全体的な破産債権者の利益も考慮した中で破産した会社の経営者の再起にも相当程度配慮したものとなっていると言ってよろしいのではないかと思っております。
○松村龍二君 先ほども話題に挙げましたが、会社の債務についてはその経営者だけでなく経営者の家族や親戚も保証していることが多く、会社が破産した場合には保証債務を支払えず、これらの者も破産に追い込まれることが多いと聞いております。
 このような事態が生ずる原因の一つとして保証の取り方が包括的である点などが問題視されているようでありますが、ちょっと時間もありませんので、この点につきまして法務省は今後検討する課題であると認識しておられるのかどうか、手短に御返答をいただきたいと思います。
○政府参考人(房村精一君) 御指摘のように、保証について問題があるということは法務省も認識しておりまして、去る二月十日に法制審議会に、保証契約の内容を適正化するという観点から、根保証契約を締結する場合に限度額や保証期間を定めるものとすることなどについて諮問をいたしておりますので、そういう点を含めて今後検討していきたいと、こう考えております。
○松村龍二君 次に、質問を三つほどまとめて行いますが、個人債務者は免責許可の決定を受けなければその債務から解放されないため、その経済的再生を図るには破産手続とともに免責手続を行わなければならないわけであります。この免責手続については破産法案によってどのような見直しが行われておりますか。
 また、このような免責手続の見直しは個人債務者にとっては使い勝手の良いものになると思われますが、逆に安易に免責を認めることにつながり、破産者のモラルハザードを生じさせることにはならないのでありましょうか。
 また、破産者のモラルハザード防止の一環として、破産者に対して裁判所又は破産管財人が行う免責に関する調査に協力する義務を設けたことは評価できますが、その具体的な義務の内容はどのようなものか、まとめて御返事いただきたいと思います。
○政府参考人(房村精一君) まず、今回の法で改正した点でございますが、従来は破産手続と免責手続を別個に申立てをしなければいけないと、こういうことになっておりましたのを一体化いたしまして、原則として破産の申立てをすれば免責の申立てをしたということに扱うこととしております。
 また、従来、破産手続が終結してから免責決定が確定するまでの間は強制執行が自由にできた。これを防ぎまして、免責決定が確定するまでの間の強制執行を防ぐことによって免責を申し立てる人の再起の妨げになることを防ぐと、こういうこととしていることが大きな内容でございます。
 それから、御指摘のモラルとも関連するわけでございますが、確かに免責制度が乱用されますとモラルハザードを招くと、こういうことから免責不許可事由についても見直しをいたしまして、不誠実な破産者が免責を受けることのないようにということで充実をしておりますし、また、保護を図るべき扶養義務等の請求権、これを非免責債権とすることなどの変更も加えているところでございます。
 それから、調査の点でございますが、やはり免責につきましては破産者の種々の事情を十分把握しなければなりませんので、裁判所に対する調査義務を破産者に課しまして、それに十分協力をしない場合にはこれを免責不許可事由とすることによってその真実性の担保を図ると、こういうような改正をしているところでございます。
○松村龍二君 最後に、今回の改正は国民生活にも重大な影響を与えるものであります。施行期日は公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとなっておりますが、施行時期は具体的にはいつごろを予定しておりますか。
○政府参考人(房村精一君) 法律の成立時期にもかかわるわけですが、私どもとしてはできるだけ早くやりたいと、こう思っておりますが、ただ、関係政省令あるいは最高裁規則を制定する必要がありますので一定期間はどうしても掛かりますので、現在の段階では、できれば来年の一月一日から施行したいと、こう考えているところでございます。
○松村龍二君 以上で終わります。
 どうもありがとうございました。
○角田義一君 民主党・新緑の角田義一でございます。
 今、松村先生から非常に的確な、簡にして要を得た御質問がございまして、私はそれを、大変申し訳ないんですけれども、引き継ぐ形で質問をさせていただければというふうに思っております。
 破産法の条文のいろいろな問題について入る前に、若干、前提条件として幾つか事実関係についてお尋ねしておきたいと思います。
 最高裁の民事局長さんは、先ほどお話があったとおり大変な実務の大家で、破産法の神様と言われているというふうに聞いていますが、東京地裁にお勤めのときに、自己破産について、すべての事件について弁護士さんを付けるようにという御指導をされて、東京地裁では自己破産についてはすべての事件について、原則というか大方もう弁護士さんが付いておるというふうに聞いております。
 法律扶助での弁護士さんが約三三%法律扶助で付いておる、あとの六七%は言わば私費というか私の金で弁護士さんを雇いながらも、すべての自己破産については弁護士さんを付けさす、付けさせると言ってはちょっと語弊なのかな、付けるようにあなたが御指導をされて、そのとおり東京地裁は今やっておられるというふうに私、聞いておりますが、なぜ弁護士さんを一〇〇%付けるような御指導をされたのかということについて、まず御説明をしていただきたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(園尾隆司君) 破産事件というのは、法律上、それぞれについて大変難しい問題を含んでいるものでございますので、できる限り法的な観点からしっかり検討されるのが望ましいということで、弁護士会の方々ともいろいろ協議検討したわけです。
 例えば、破産状態にあるというように言いましても、利息制限法違反でもって債権を引き直し計算をしてみると実は破産とは言えない状態であったというような事例も出てくるというようなことがございまして、それぞれの破産事件で、個人であれ法人であれ、いろいろ法的に研究を要するということから検討をしたわけでございますが、幸い、東京の三つの弁護士会で合同の法律相談所という、常設の法律相談所というものを平成十年の秋に設けまして、平成十一年には更にもう一か所に広げるというようなことで、積極的に法的な援助を債務者に与えるというようなことをやっていただきました。
 そういう中で、更に援助を与えるというような方法はないだろうかということで一生懸命検討したわけですが、まず、弁護士会では、弁護士に支払う費用について分割で受けてもいいから相談に来なさいというような、そういうお勧めもしていただきまして、裁判所としては、そういうことであれば、できる限り法律相談所を開設している弁護士会の方でよく相談をしてもらうということになれば破産手続が円滑に進むであろうということで、特に、弁護士が付いて破産事件について申立てをするものについては十分な法的な検討がされているという前提の下に、例えば、即日に面接をして破産宣告ができるならばもうその日のうちに破産宣告をしますよというような、申立てのその日のうちに破産宣告をしますというようなこともやってきたところでございます。
 このような方法で法律的な援助を与えていただきました結果、年々、破産申立てについて代理人が付くという事件が増加してまいりまして、七、八年前ということを取ってみますと、代理人が付く事件というのは八五、六%というようなところだったと思いますが、最近では九九%の事件に代理人に付いてもらえるというようなところまで進んできておるというように最近の実情について承知しております。
 そのような形で、できる限り広く法的な専門家の援助を与えながら破産手続を進めていくというのが円滑な破産手続の進行につながっていくだろうというように考えて検討してきたということでございます。
○角田義一君 よく分かりました。
 大変な御苦労をされて指導されて、また弁護士会の理解も得ておやりになったようでございますが、承ると、あれだそうですな、一日二百五十件も免責やるそうですな。単純に八時間労働でやると、あれですよね、一時間で三十ですから二分ぐらいでやっちゃうわけでしょう、免責を。
 というのは、あなたが今おっしゃったように、相当弁護士さんを信用されて、申立てがあったときすぐやっちまうというのは、相当これは弁護士を信頼して、弁護士のチェック機能というのを信頼しているから一回二分でやっちゃう。お医者さんが三分、三時間待たされて三分というのがあるけれども、よく国立病院なんかで。ちょっとそれとは少し違うかもしれないけれども、何しろ二分でやっちゃうというのは、これはえらいことだと思うんですよ。どういうことで二分でやっちゃうんですか。
○最高裁判所長官代理者(園尾隆司君) ただいま御指摘のような方法、実はこれは弁護士会と協議をしまして、私もその中に加わって始めたわけでございますが、私が破産事件を担当しておった当初の平成十年当時といいますのは、東京地裁民事二十部に五千件を超える破産申立てがありましたが、その後一万件を超えるというようなことになりまして、最近では二万五千件に及ぶというようなことになっております。
 しかし、これをできる限り適正に、しかも迅速な救済を与えるというためには工夫に工夫を重ねなければいけないということで、御指摘のように、弁護士が代理人に付く事件というのは一定程度の水準の検討、法的な検討がなされていて、しかも債権者からの個別の質問などについて代理人が説明をしてくださっておるという前提でもって手続を進めていくというような協議をいたしました。
 この前提を守れない申立代理人というのは、これは弁護士会の方で徹底的に研修をするあるいは個別に御指導いただくというようなことで、言わば役割の分担をしたわけでございます。その結果、御指摘のような免責審尋の手続というのも、代理人が付いた事件では例えば一件について二分程度でやれる。
 これはどういうふうにやるかといいますと、まず破産者の人定の質問をする。何々さんですねということで破産者が出頭しておることを確認した上で、債権者のその期日までの反応状況を説明するということで、そういうことで債権者が特に問題点を指摘していないけれども代理人の方はそれについて何か付け加える点はあるだろうかという質問をして、特になければそれで免責審尋を終えるということになります。
 しかし、中には、債権者が出席をして異論を述べるという事件もあります。このような事件についてはほかの事件に少し待っておいていただくということになるわけですけれども、十分前後をかけて債権者の言い分を十分言ってもらって、反論もしていただく。反論をし切れない部分については、後に債権者に詳細な事実調査及び反論書を送付してくださいというようにお願いをして、その反論書の送付を受けて、なお言いたい点があれば債権者は裁判所に書面を出してください、それを見た上で免責を認めるかどうかを決定いたしますというように、難しい事件についてはそのような時間を設けて審理をするということで、全体として大量の事件が迅速に進むというような体制を考えたわけでございます。
○角田義一君 えらいことですな。よく工夫をされて、大変なことをおやりになるんですね、今は。昔と大分違うんですな。
 同時に、先ほど民事局長がおっしゃっていたが、弁護士さんを付ける、法律扶助で付けるのは約三三%ぐらいしかない。東京はずば抜けて高いんですよね、法律扶助。ほかの県を見ますと三%とか五%とかということで、全国でならせば一一%ぐらいしかない。要するに、百件のうち法律扶助で弁護士さんが付くのは、自己破産で一割程度ということですね。なぜそうなるのかということでございますが、これは人権擁護局長が法律扶助の大家だと言うから聞くけれども、どうしてそんな全国で一一%ぐらいになっちゃって、東京は三三%だけれども、どこにネックがあるんだね。
○政府参考人(吉戒修一君) ちょっと数字の方を少し御説明させていただきますけれども、平成十四年度の民事法律扶助の実績でございますが、これは今委員御指摘のとおり、援助開始決定の件数が合計で三万七千六百九十件ございます。そのうち、自己破産に対する援助が二万五千六百四十五件でございますので、こういうふうな推移でございます。これが、十四年度の自己破産の全体の申立て事件数が二十二万六千件でございますので、やはり全国の自己破産事件の中で扶助が付いているのはやはり一一%、一〇%ちょっとというふうな数字になっております。これは東京と、東京方式と言われるんでしょうか、そういう方式と地方の裁判所で違うやり方をおやりになっていると思いますけれども、いずれにしても、全体の扶助の予算額が年々増えてはおりますけれども、三十億から三十五億と、今年度は四十億という形で推移しておりますが、その中でやりくりしておるというような状況でございます。
 実際申し上げましても、十四年度のベースで申し上げますと、扶助の全予算のうちの、失礼いたしました、扶助の決定いたしました中の六八%が自己破産事件でございます。これは一つの見方として、法律扶助の在り方として七割近くなるような自己破産についてだけの扶助がいいのかどうかという議論もあろうかと思います。もっとほかの普通の事件にも扶助をすべきではないかなという議論もあるところの中で、現在の経済情勢の中では自己破産事件がこれだけ増えているということで、年々増やしておるという状況でございます。
○角田義一君 人権局長、もうちょっと頑張ってくださいよ、あなた。あなたに釈迦に説法だから申し上げることないけれども、あれでしょう、日本は法律扶助四十億ですよ。でも、えらい金が増えたと、昔に比べれば増えたですよ。だけれども、よそ様のことを言ったってしようがないけれども、イギリス百四十億余ですよ。人口は日本の三分の一強ですよ。イギリス百四十億法律扶助に金出しているわけだ。
 さっきの、こちらの民事局長さんの、最高裁の民事局長さんの御苦労を見れば、それは本人の救済を含めて、弁護士さんが付けば非常に迅速にやれるし、免責をもらって再生するわけでしょう。免責によって再生するとはどういうことかというんだよ。あなたね、大体サラ金にいじめられて、いじめられたことないから分かんないと思うけれども、大体、変な話だけれども、厳しい生活状況の中で十五万ぐらいで生活するんですよ、免責をもらうと。免責をもらうと今までのサラ金で払っていた金ぐらいで何とか生活してしまう、我慢してやっちゃうんですよ。だから、免責というのは非常にある意味では自己破産した人たちにとってはほっとするし、今までサラ金で払っていたもので何とか飯を食って、出られる、こういうことなんです。
 そうすると、これは大臣にも関係するんだけれども、小泉さんのやり方が、ここはちょっと予算委員会じゃないから余り申し上げたくないけれども、強い者はどんどん生きて弱い者は切っちゃっている、こういうある意味でやり方なんです。その弱い人たちを救うためにも、四十億ではどうにもならないわけだ。これが例えば三倍ぐらいになれば、法律扶助で三倍になれば救われる人一杯いるわけですよ。
 だから、そういう意味では法律扶助に対して、自己破産者を救うということは社会経済的に見ても非常に意義があることなんだ。そういう認識を持ってもらって、人権局長か、あなたも頑張らなきゃ駄目だよ。四十億ぐらいでへいへいしていたんじゃ駄目だ。これは三倍ぐらい要求して、大臣もだね、三倍ぐらい取るということでないと、何とかネットワークというのを今度作るらしいけれども、それだってそういう弁護士さんを配置して、あれでしょう、国民が使いやすくして国民を救おうということじゃないんですか。
 これは民事局長からまずちょっと事務的なことを答弁願って、大臣の所信を聞きたい。
○国務大臣(野沢太三君) 大変、委員大事なところを聞いていただきました。
 御指摘のとおり、この法律扶助制度というのが弱者救済という意味では大変意味がありながらも、予算の面からの制約を受けまして、申込みの数の方に対して十分なお手当てができないということで、大変現場では苦労しておるということもよく伺っておるわけでございます。
 今厳しい予算の中ではございますが、この制度を更に拡充することによって、いわゆるセーフティーネット、またそこでの再起可能な立ち直り、これも十分見込めるわけでございますので、委員の御指摘を踏まえまして、今後とも同事業の適正な在り方を見据えながら充実に努めてまいりたいと。けたが少し、一つ違うんじゃないかというイメージを持っておりまして、今後とも努力をしてまいるつもりでございます。
○角田義一君 これは大臣にも認識してもらいたいと思うんですけれども、法律扶助の場合は後で返さにゃならぬという、資力があれば返さにゃならぬということになっておるんですが、弁護士さんは大体法律扶助でも十五万ぐらいの程度でこの破産事件を規定上やっておられる。
 しかし、三万とか四万とか、極端なことを言えば二万、要するに手付金じゃないけれども、事前の償還金を持ってくれば何とかやってやるよと、そこまで弁護士さんが言っておるわけですよ。そうすると、何も規定どおり十五万払わぬでも、最初の手付けの三万とか四万を払ってもらって、そして弁護士さんに頼んで、あとはちびちび払ってもらうとかいろいろな方法があるわけです。そうすると、お金を増やしても、今言ったようにうんと有効に使えばこの倍にも三倍にも生きるわけですよ、お金が。それでうんと多くの人が救われるわけ。そういう創意工夫を現場でもやっているわけだから、大臣、ここは一つ踏ん張ってもらって、法律扶助の費用をやっぱり上げていくということで奮闘してくれませんか。どうですか。
○国務大臣(野沢太三君) 誠に大事なポイントであろうと思います。これから総合法律補助の制度もスタートする中で、委員御指摘のような形で、官側だから低額でどうのこうのということではなくて、民間の皆様のそういった献身的なサービス、それから各党がそれぞれ取り組んでおられるような制度もございますので、何としても今委員御指摘のような形で、実のある形で心のこもったサービスができるようにと、弁護士諸団体の皆様の絶大なまたこれは御協力も必要かと思いますので、私としても精一杯努めてまいるつもりでございます。
○角田義一君 それから、大臣に是非御認識をいただきたいと思うんですけれども、先ほど最高裁の民事局長が、当初バブルはじけたときには洋服を買うとか靴を買うとかという浪費乱費型の自己破産が多かったけれども、このごろは生活苦というか、非常に深刻な状態で自己破産があると。
 例えば、法律扶助協会が出しております平成十四年度事業報告書というのを見ますと、自己破産事件で援助を受けた人の状況というところで、あれですな、再就職困難であるとか、あるいは高齢であるとか、あるいは病気、障害があるとか、さらには生活保護を受けておるが破産に追い込まれるとかいろいろ、これを弁護士さんは悲惨型と言っているそうです。浪費型じゃなくて悲惨型。えらい名前だな、悲惨、悲惨型という。ずばり言っているんですよ、悲惨型。その悲惨型に追い込む一つの事由に、銀行のやり口、やり口というのがある。
 先ほど松村先生からもお話がありましたけれども、例えばですよ、政府関係でありますと国民金融公庫とかあるいは信用保証協会とか、そういう国民の税金でいろいろ運用している。だから、税金で運用しているから回収しなきゃならぬという気持ちは分かるけれども、非常に高利貸し並みの厳しい取立てをその国民金融公庫や信用保証協会がやっておるのが現実だというふうに、このこちらのいろいろやっている弁護士さんは皆さんそうおっしゃいますよ。
 そういうことを聞きますと、これはちょっと、これは予算委員会じゃないからあれだけれども、やっぱり法務大臣としても、政府関係の機関が追いはぎまがいの取立てをやってそして破産に追い込むというようなことは、これは私はいささか考えなくちゃいけないんじゃないかと。だから私は、そういう指摘が法務委員会でもあったということを、それは国民金融公庫の総裁なり信用保証協会の理事長なりに言ってもらって、それは限度、何事も程度問題だと私も世の中思うんだけれども、余り過酷なことをやらない方がいいんじゃないかということをあなた、あなたなんて言っちゃいけない、大臣、言ってくださいよ。どうですか。
○国務大臣(野沢太三君) 経済再生そしてまたこの国民の皆様の生活の確保、向上のためにいろんな施策をやっておりますが、そういった中で私も発言の機会、あらゆる機会を見て御趣旨のようなこの発言、繰り返して努めてまいるつもりでございます。
○角田義一君 それで、分かりました。じゃ、是非その辺をお願いをいたしたいと思います。
 先ほど松村先生から例の自由財産のことについてちょっとお尋ねがありましたが、これは最高裁の民事局長はその辺の大変経験が豊富だと聞いておりますんですけれども、これは平均して三か月になって九十九万というあれでしたけれども、現ナマで九十九万あれば結構だと思うんですけれども、必ずしも現ナマが九十九万あるわけではない。
 あるいは、例えば私、群馬ですけれども、群馬なんか自動車がなければこれは全然もう動き取れないんですよ。公共交通うんと後れていて、日本一自己の車が多いところなんです。そうすると、そういうところでは、やっぱりこれは再生するためには、もうぽんこつでも何でもいいけれども車がなきゃ生きてられないというのがあるわけです。そういうものとか、いろいろあるじゃないですか、生活必需とか。本当にもうやっていかなきゃならぬ、そういうものを全部つっくるみでですよ、つっくるみというのはちょっと上州弁であるんだけれども、ふろしき包むようなんで、全体でという意味だな、つっくるみで九十九万ということなんでしょうか。今言ったような自動車とかそういうものはまた別に算定してやるんでしょうか。その点、ちょっとあなた、どっちでもいいけれども、じゃ、まず実務から。
○最高裁判所長官代理者(園尾隆司君) ただいまの破産者の生活にどうしても必要なものといいますものにつきましては、現在もまだ法改正前でありますが裁判所でいろいろ知恵を絞っておるところでございます。
 現実には、例えば東京地裁や大阪地裁でいいますと、破産者の生活に必要である自家用車で、しかも評価額が二十万を下回るというようなものについてはそのまま保有を認めるというような管財人の管財事務の基準を設ける。あるいは、家屋の住宅の敷金、これについて、すべて処分をするということになりますと住むところがなくなるというようなこともありますので、居住用住宅の敷金については管財人にこの処分まではしないというような指針を与えるというようなことで、現金以外のものについても運用上の工夫をしておるところでございますが、この点については、新しい法律でもって自由財産の拡張という裁判ができるということを明瞭に認めていただきましたので、そのような運用を大変しやすくなるというように考えておるところでございます。
○政府参考人(房村精一君) まず、九十九万でございますが、これは現金で手元に残せる額ということになります。したがいまして、たまたま現金が少なければその少ない範囲ということになります。
 ただ、この点は、自由財産の範囲を拡張する裁判がございますので、その裁判でその破産の開始決定時の自分の手持ちの現金がこの額であるということを考慮いたしまして、例えば預金債権の一部を自由財産にするというような判断を裁判所がすることはあり得ようかと思います。それから、例えば車がその破産者にとって必須であると、こういうような場合には当然その自由財産の拡張でその車を自由財産とするということは認める可能性があろうかと、こう思っております。
○角田義一君 もうちょっと、もう一つだけちょっと、個人の破産の問題についてもう一点だけ聞いておきますけれども、現行の破産法の下では、破産者が破産直前に財産を隠匿すると、こういう行為については破産犯罪の対象とされているというふうに理解をしておりますけれども、債権者の中にはまあ法律もへったくれもないと、おれは取るんだと、取ればいいんだということで悪質に取立てをやってくると。それで、破産者はもうそれに押されて、脅かされて払わざるを得ないというようなことになっていくと、これは非常に本人が立ち直るにも私は阻害されるというふうに思うんですね。
 これらについて、破産法では、今言った悪質な取立てですな、これに対してはどういう手当てを破産法ではして、今度の破産法ではしておるのか。特立てにしてない、普通の刑法の脅迫だとか恐喝だとかいろいろとあると思いますけれども、そういう一般法で処理をするのか、ちょっと説明してくれますか。
○政府参考人(房村精一君) 御指摘のように、現行法の破産法では、債権者が破産手続開始後に違法な取立て行為をしたというようなことを破産犯罪として処罰はしておりません。
 ただ、御指摘のように、正に法を無視した破産債権者が破産者やその親族等の関係者に対して違法な取立てを行うということがしばしば見られるという御指摘がございます。このような行為は、破産手続の開始によりまして、すべての破産債権者が自らの権利を直接行使することを制約されているそういう状況の下で、実力をもって自分だけの債権の満足を図ろうとする行為でありまして、破産債権者間の平等を害することはもちろんでございますし、また破産者の経済的再起を妨げると、こういうことで、これを防止する必要が非常に高いと、こう思われます。
 そこで、今回の破産法案では、二百七十五条で破産者等に対する面会強請等の罪というものを新たに設けまして、破産手続開始後に破産債権の弁済等をさせる目的で個人である破産者やその親族等の関係者に対して面会を強請し又は強談威迫の行為をした場合を破産犯罪の対象といたしまして、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金又はこれを併科すると、こういう新しい犯罪を設けることといたしております。
○角田義一君 一つの特別法で処理するということですな。分かりました。
 それと、もう一つだけちょっと聞いておきましょうか。
 破産になりますといろいろな資格を喪失するということですね。法務省の御見解は、個々の法律で、個々の法律に破産になった場合にはこういう資格を喪失するんだと書いてあると、それでいいんだということのようなんだけれども、自分がもし破産になった場合にどういう資格が奪われちゃうのか。例えば、例えば免責をもらってこれから再生をしようとするときに、復権にならなきゃ資格が取れないのかどうかという問題もあると思うんだけれども、どういう資格は取れないのか、どういう資格は失うのかということは、これ親切なら一覧表か何かにして、裁判するときにこういうことですよというのをやるそのサービス精神だよ。法律にここに書いてあるからといって、法律全部見るわけにいかないんだよ、破産者だって。
 そういうそのきめの細かい配慮というのは法務省はないね。どうするの。
○政府参考人(房村精一君) 御指摘のように、現在、破産をいたしますと種々の資格制限が設けられております。これは免責を受けて復権をすればその制限もなくなるということではございますが、ただ、この制限はそれぞれの法律、例えば弁護士に関する制限であれば弁護士法の中に規定がございます。
 破産法そのものとしては、できるだけ懲罰的な色彩をなくすということで、現行法におきましても、それから今回の法案におきましても、破産宣告に伴う資格制限を定めるということは一切いたしておりません。そういう意味では、この破産に伴う資格制限というのはそれぞれその資格を定めている法律の考え方ということになろうかと思います。
 ただ、御指摘のように、確かに、破産宣告を受けたときにどのような資格制限を受けるのかということについて国民から見て非常に分かりにくいというのは正に御指摘のとおりだと思います。これは、私どもとしても、破産法の周知徹底を図るときに、併せまして破産宣告を受けたときにどのような資格制限があるのかというようなことについての周知も心掛けたいと思います。
○角田義一君 心掛けたいというのは、お役人の言葉でどういうふうに翻訳したらいいのかな。やるということになるんかい。その心掛ける、気持ちだけそう思っているということなのかな。日本語、もうちょっと分かりやすい日本語で話してくれぬかな。
○政府参考人(房村精一君) 例えば、破産法のパンフレットの中に、どのような資格制限を受ける、あるいはどのような場合にはその資格制限が復権するというようなことを記載する、あるいは、そういう、外で説明をする機会にそういう点についても触れるということでございます。
○角田義一君 それでは、ちょっと話題を変えますが、今度の破産法では利害関係人の権利の調整ということが大変大きなテーマというか課題になっていますな。特に、賃貸借契約については賃借人を保護するということが明文化されておりまして、幾つか問題があるんですけれども。
 五十六条には、賃貸人が破産した場合でも、賃借人が賃借権について、建物賃貸借の場合は引渡しですな、これ対抗要件を備えていれば賃貸借契約は解除されないということですから、安心して住んでいられるということで、これは画期的なことではないかと私は思います。
 それで、そのときに、敷金という問題の返還についてこれどうするかという問題でありますが、従前のこの敷金の問題についての取扱いと、今回の新しい破産法ではこれはどういうふうに違っているのかということについて分かりやすく説明してくれませんかね。
○政府参考人(房村精一君) まず、敷金の取扱い、従前の考え方でございますが、従前はこの敷金の返還義務、破産に伴いまして賃貸借契約が終了してしまう場合には敷金が具体的な請求権になるわけですが、継続する場合にもこれは停止条件付きの破産債権ということになりますので……
○角田義一君 ちょっと、条件付きと言っても分からない、我々には。分からない。ちょっと専門語分からない。具体的に話してください。
○政府参考人(房村精一君) はい、済みません。
 敷金というのは、要するに賃貸借契約を締結するときに差し入れをして、その賃貸借契約が終了したときに未払賃料とかあるいは補修を要する費用があれば、それを差し引いた上で賃借人に返還されると、こういう性質の金銭です。したがいまして、賃貸借契約が終了して、かつそういったものを控除して残額がある場合に初めて請求できる権利、そういう意味で、そういった条件付きの権利ということになります。
 破産においては、そういう条件付きの権利でありましてもやはり破産債権として現在額に評価をいたしまして、そして割合的な弁済をするということになるのが原則でございます。
 ただし、賃貸借契約を、例えば管財人がその賃貸物件を他人に譲渡いたしましてそのまま賃貸借契約が引き継がれると、こういうことになりますと、その新たな貸主に対して敷金も受け継がれますので、賃借人といたしましては、新たな貸主との間で終了したときにその人から敷金を返還してもらえると、こういう形になります。したがいまして、譲渡されましたときには言わば満額が保証される。一方、そういうことがない場合には割合的な弁済しか受けられない、これが従来の考え方でございます。
 そういうことに対しまして、やはり賃借人保護の観点から敷金返還請求権をもう少し保護すべきではないかと、こういう指摘を受けていたところでございます。
 今回、この敷金返還請求権につきましてこの法案ではどういうことにいたしましたかというと、敷金返還請求権を持っている者が破産後になお賃料を、継続して使用している場合には賃料を支払います。そのときにその賃料を寄託をする。直接払って配当されてしまうわけではなくて、寄託をいたしまして預けておく。要するに、敷金返還請求権、敷金の額に満つるまでは寄託ができまして、現実にその敷金返還請求権を行使ができる明渡しのとき、そのときにその寄託分から敷金分を取れる、したがって優先的に回収できる、こういう仕組みにしております。
 これは、先ほどの申し上げた条件付きの権利、これ一般について、破産では、普通、その条件付き権利を、双方が債権を持ち合っている場合には相殺で、言わばチャラにするということができるわけですね。ところが、一方の権利がそういう条件付きですと、その条件が成就するかどうかによって権利があるかないかが決まりますので、そのままでは相殺できない。そういう場合に備えまして、破産法では、停止条件付きの、そういう条件付きの請求権を持っている者は、その破産者に対して債務を弁済するときにその債権額の限度で寄託ができるという仕組みがございます。これは現行法でもありますが、今回の法案でも残っています。
 そういう場合、その条件付きで、今すぐはチャラにはできないけれども、将来、条件が成就すればお互いに、双方対等に相殺してチャラにして、本来払わなくて済むはずだと、そういう場合に備えて支払うときに寄託をしておく、預けておくわけですね。将来、条件が成就して自分も取り立てられるようになったら、その段階で寄託しておいたものでお互いチャラにして済む。条件が成就しなければ、それはもう仕方がありませんから払うわけですが。
 そういう仕組みがありますが、これを敷金返還請求権と賃料の間にも用いるということを明文で書いて保護を図ったわけでございます。
 なかなか分かりにくい説明で申し訳ございませんが。
○角田義一君 大学の講義聞いているようなわけにはいかないので、よく我々庶民に分かるように話してもらいたいんだけれども。
 要するに、じゃ寄託するというのはだれに寄託するの。だれが金を持っておくわけ。法務局かどこかへ供託するんですか。あるいは管財人が持っているわけ。別の通帳にでも入れておくんですか。
○政府参考人(房村精一君) 管財人に寄託をいたしまして、寄託されたものについては、それこそ別口座に保管をして、配当の原資とはしないと、こういうことになっております。
 それは破産裁判所の方が監督をしておりますので勝手に処分をされることはないと、こういう仕組みでございます。
○角田義一君 それは、だけど、破産やっていて、手続やっていて、寄託するだけの銭がありゃいいわな、管財人はさ。なきゃどうするんですか。
 そうしたら、その賃料払う人は、その賃料払うたびに、管財人に、悪いけどこれは将来の、何というかな、敷金のために、あんた、一般のあれに入れちゃわないで、こっちへ、わきへ置いておいてくれというということを、指図というのかな、してやるんですか。
○政府参考人(房村精一君) 御指摘のとおりでございます。賃料を払うときにその賃料を寄託してもらうと。そうしますと、普通の賃料ですと管財人はそれを受け取って財団に組み込めるわけですけれども、寄託をしてくれということになりますから、管財人としては配当原資には充てられずに別口座に取っておく。で、将来、条件が成就するかどうかを見て、それで最終的には処分を決めると、こういう形になります。
○角田義一君 時間の制約もあるから少し飛ばします。
 税金との関係についてちょっと聞いておきますけれども、よく、まあ私ももう二十五、六年前にちっちゃな会社の管財人やったことがあって、あのときも随分税務署とけんかしたなというのを今でも思い出すんだけれども、国家権力が、まあ国家権力なんと言うとちょっとオーバーな表現になるんだけれども、要するに、一生懸命管財人が集めるわけですよ、金を。集めて、そうしたら税金が、うんと俗っぽい言い方をすると、おれが最優先だよと言って皆持っていっちゃうわけだ。
 ところが、しかし考えてみれば、あれでしょう、国家は、例えば滞納処分があったときに、何も破産になる前だって、破産をされた人の財産からそれは取れるわけですよ。あるいは分割でもああいうのを回収できるわけですよ。そういうことを余りやらないでおいてだよ、破産になったら、これ幸いだ、みんな管財人が一生懸命集めてくれるから、それをまずおれが最優先で取っちまうと、こういうことでは、管財人は何のためにやっているんだか、税務署のあれだ、召使みたいなものだ、になっちゃうでしょう。それは今までうんと問題になっていたと思うんですよ。
 それが今度、じゃどうなったんだ、国家権力を背景にしてだね、どうなっちゃったんだよ、どうなっちゃったというか、どうしたんですか。もっと分かりやすく説明してくださいよ。専門用語使わないで、私のように、こういう質問だから私のように答えてください。
○政府参考人(房村精一君) 済みません。
 御指摘のように、税金というのは国あるいは地方公共団体の一番重要な財源でございますので、実体法上も最優先、普通の債権に優先するという地位が与えられておりますし、それを反映して、破産の中でも財団債権として最優先の扱いを受けているわけでございます。ただ、御指摘のように、そういう税金が全額、財団債権で最優先なものですから、管財人の方が一生懸命集めてもそれが皆税金に取られてしまって手続費用すら賄えないということで廃止せざるを得なくなると、こういうことが言われているわけでございます。
 一方、税金については、正に御指摘のように、国税徴収法等に基づきまして自力執行権、税務当局の力によって税金の実現を図るということが法律的に認められているわけでございます。そういうことからいたしますと、自力執行権を持っている国が合理的期間内にそれを行使せずに税金がたまっていたと、そういうときに、破産手続が始まったときに、正にそのたまっていた税金全部を最優先で自分に払えというのはいかがなものかと、こういうことは確かに御指摘のとおり従来から言われていたわけでございます。
 この点を今回の法案でも考えまして、税金のうちでも納期限が一年を経過したもの、ですから言わば古い税金ですね、それまでに自力執行をしようと思えばできていたにもかかわらず、していなかったもののことをいうことになろうかと思いますが、そういったものにつきましては、財団債権として取り扱うことをやめまして優先的破産債権とすると、こういうことにいたしております。
○角田義一君 税務署、税務署というのは割かしこすいところもあるんだよね。全部の人がこすいっていうんじゃないですよ。それは国のために回収しようという意欲に満ちあふれていて、今度はこれをやったって、あれですよ、税務当局が今度はこの改正を受けて悪用しようと思えばさ、思えばさなんて、悪用しようと思えばですよ、納期限から一年を超える直前にぶわっと駆けてきて持っていっちゃうということだってやりかねない。これはちょっと国税庁いないから余り……。そういうことを平気でやるんです、あそこは。それに対する歯止めはどうするんですか。歯止めはないんですよ。
○政府参考人(房村精一君) これは、繰り返しになりますが、やはり税金というのは国又は地方公共団体を支える最も重要なものであることは間違いないわけでありまして、これについては、基本的にはお支払いいただかなければならない性質のものだろうと思います。
 で、今回見直しをいたしましたのは、やはり御指摘のような、自力執行権を持っている、与えられている税金について、その自力執行権の行使が合理的期間内になされていなかった場合にまで破産手続の中で最優先の地位を与えるのは相当ではないだろうということで見直しをしたものでございますので、これは、税務当局においてその税金の実現を図るためにどのような対応をされるかということは私どもとしてもよく分かりませんけれども、今回の見直しの趣旨は今申し上げたとおりでございます。
○角田義一君 これはやっぱり、むしろ大きな私は課題だと思うんですね。そうすると、この法律が成立した後、やっぱりそれは国税当局と、この破産法の趣旨というものを殺すようなえげつないことをやっぱりやっちゃいけないと、やらないでほしいと、やるべきでないということは、これは、大臣、どうですか、国税ともやっぱりちゃんと話して、筋の通ったことをちゃんとやるようにということは言っていただいた方が私はいいと思うんですけれども。ほっておけばえげつないことをやりますよ。
○国務大臣(野沢太三君) 今回の見直しの中で、やはりその債権の扱いについて大きなやっぱり変化があったということは大事なポイントだと思います。税金の部分を一部格を下げるとか、あるいは労働債権を逆に格上げをするとかいうことで、現在の社会情勢、国民の皆様の御要請にできるだけ沿った形で扱いを考え直しているという点で御趣旨に沿ったものと考えておりますが。
○角田義一君 時間の関係もありますので、ちょっとあっちへ飛んだりこっちへ飛んだりして申し訳ないけれども、時間を見ながら、いいところで打ち切るというふうに言われていますから打ち切らなくちゃいけないんだけれども、まだ大丈夫だね。
 破産財産の中に不動産がある場合に、今の法律でも恐らく、任意売却をする場合には裁判所の許可があれば管財人は任意売却できると思うんです。しかし、私のつたない経験で、抵当権が一杯付いていますよね。任意売却をしようとするとその抵当権を全部切らないかぬですよ。俗に言う、世間様で言う判こ代ってやつがあるんだ。一番でかい、銀行が大体一番いいところ持っているんだよ。二番とか三番とかっていうのは高利貸しだとか、まあいろいろ何かこう、極端なこと言ったら四番、五番も付いている。そういう四番、五番付いているのに判こ代をもらってこれ消したいと思うわけ。だけれども、うんと言わないわけです、なかなか。言わないのもいるんですよ。そうすると、任意売却できないという経験も私もあって、えらい苦労して、何回も足を運んでそれ判こをもらって、それできれいにして、銀行に返すべきものは返して、そして少しでも余裕があればそれは財団に入れて配当に回すと、こういうことをやるわけでしょう。
 今度、破産法の中では、今私が申し上げたような、現実に破産管財人が苦労するわけです。裁判所の許可ももらいたいんだけれども判こを押さないと。こういうことについて、これが非常に任意に売却ができやすくするというのが私は実務からいって本当に大事だと思うんですけれども、その辺についてはどういう手当てがこの破産法の、新しい破産法にはできているんですか。
○政府参考人(房村精一君) 担保権消滅の制度を新たに設けておりますが、御指摘のように破産管財人が例えば土地を処分をして換価をするわけですが、このときに、競売手続によりますとどうしても任意売却の場合に比べると売れる値段が低くなってしまう。そういうことから、管財人としてはできるだけ任意売却をして少しでも高く売る。そのことによりまして、競売手続の場合に比べて相当高く売れる努力をしたから、その売却代金のうちの幾分かを破産財団に繰り入れてほしいということを担保権者と協議をいたしまして、担保権者も、黙って競売したよりは高く売れるわけですから、その高く売れた分のうちの幾らかを言わば管財人が努力をしたそのお礼として破産財団に繰り入れると、こういうような扱いが現実にされているわけでございます。
 そのときに一番問題になりますのは、御指摘の、担保権者がたくさん付いていて、下の方の担保権者の場合、競売してもおよそ配当が行かない。それが明らかであるにかかわらず、任意売却のときにその抵当権の登記を抹消しようと思いますと同意を得なければなりませんので、そのための判こ代が要ると。こういうことによって任意売却が妨げられる、あるいは判こ代の負担が掛かると、こういう指摘が従来からあったわけでございます。
 今回、それを、裁判所の許可を得てそういうことをできるようにしよう、担保権の消滅という制度を新たに作りまして、管財人の方で任意売却をすることを検討いたしまして、幾らでだれに売る、その売った中から幾らを破産財団に組み込むと、こういう計画を立てます。担保権者がそれで同意してくれればもちろん一番よろしいわけですが、必ずしも同意がない場合もあります。そういうときに、裁判所にそれについての許可を求めて、その裁判所が許可をいたしますと、担保権者が同意をしなくてもそれを実現できる。で、その許可を得て売却をして、そうしますとその売却代金が裁判所の方へ入りますので、その中から担保権者には配当をしていく、そしてその繰り入れる額については破産財団に繰り入れて債権者の配当に充てていくと、こういう仕組みにしたわけでございます。こうしますと、およそ配当の可能性のない者の同意を得るための判こ代というようなものは不要になりますので、従来に比べればそういう任意売却が非常に容易になる。
 ただ、担保権者といたしますと、自分の了承なしに言わば破産財団に組み込まれてしまう、一部がですね、というわけですので、対抗措置を講ずる必要があるということで、その担保権者の方で異議があるときには、自らその担保権を行使する、あるいは破産管財人が任意売却する額よりも五%以上高い額で直接自ら買い受ける、あるいはそれを買い受ける人を探すと。そういうことをすれば管財人の任意売却の申出は却下されまして、担保権者の方はその繰入額を払わずに全額が配当に回るという仕組みになっております。
 ただ、破産管財人が相当苦労をして相当高額に売れるということをした後、更に高い額で買ってもらえる人を探すというのは、これはなかなか大変ですし、競売手続に掛けた場合には任意売却よりは普通は低い額になってしまいますので、多くの場合は、管財人が適正な努力をして、かつ組入額を適正な額にしていれば債権者の方も、失礼、担保権者の方も同意をするということが期待され、従来に比べれば任意売却がより容易にできるのではないか、またこのことによって配当原資も増えるのではないかと、こう思われます。
○角田義一君 ちょっとそれに関連して一、二、聞いておきますけれども、先ほど、破産管財人が任意売却をしようとするときに高順位の抵当権者が一杯いるわけです。そのときに一番の、恐らく銀行なんかが一番で持っていると思うんだけれども、その計画というのは、例えば銀行が仮に額面一千万あったとしても、おたくは悪いけれども八百万にしてくれ、我慢してくれと、要するに別除権をある程度制約してしまうわけですね。一千万取れるのを八百万にしてだよ、そして、普通だったら取れない三番とか四番にもこの際、昔でいえば判こ代だけれども、十万でも二十万でもこの計画の中に入れて、そしてやるという、そういう計画は駄目なんだ。それはもうできない、それはやっちゃいけないんだ。そうすると、余りあれだね、一番抵当の人が全部取るということになるわけ、そういう計画ですか。
 その計画の作り方だよ。私なんか発想が豊かだから、何もそんな一千万、一番の銀行が取らないで、八百万やって、そしてこれはもう二十万、三十万でも判こ代、昔の判こ代でも涙金でもいいからやって、そして売って、これでもう財団の方に入れるという発想になりますよ、管財人は。それは裁判所は認めないんかい。えらい頭固いな。
○政府参考人(房村精一君) 今回の制度としては、要するに管財人としては、この人にこれを幾らで売る、そのうち幾らを財団に組み込むと。そうしますと、その売れた売却代金から繰り込み額を除いたものが、言わば競売でいえば競売代金、競落代金になるわけです。したがって、それを裁判所は配当しますので、配当はそれは担保権の優先順位に従って配当されますから、その上位者に満額行けば下位者に行きますし、上位の者が全額取ってしまってそれで終わりであればその下の者は配当にはあずかれないと、こういうことになります。──いや、これは実体法上の権利としてそういうことになっておりますので、それは裁判所が行う配当としては当然そうなるわけでございます。
○角田義一君 非常に難しい問題なんじゃないかと思うけれども。私なんかはそれは弁護士の端くれだけれども、余り法律にとらわれないからね、とらわれないでやるということになれば、私が今申し上げたような形であればほとんどの人は皆了解をするだろうし、それは、あなたが言うそれは同意を取ればいいということか、同意を取れば裁判所は別段何も言わないということだな。なるほど、同意を取ればいいんだ。
○政府参考人(房村精一君) 私の申し上げたのは、今回破産法で設ける制度、担保権者が同意をしなくてもできる制度を御説明しているわけでございますので、すべての関係者の同意に基づいて任意処分がされるということについてはまた別でございます。
○角田義一君 そこで、その同意をもらえれば、それは問題、今だってできるわけだけれども、同意をしなくても、破産管財人の一つの考えによってだ、こういうふうにすればこれは売れるしということは駄目なんだね。今度の制度でもそこまでは柔軟に認めないわけだね。私が言っているのは、分かるでしょう、適当に二十万とか三十万くれるわけですよ、そういう計画を立てて裁判所へ許可もらうわけだ。それは認めないわけだ。
○政府参考人(房村精一君) 今回の制度は、先ほども申し上げましたけれども、売却代金から財団繰入額を除いたものは通常の配当の手続に従って配当されるということを前提としております。
○角田義一君 分かりました。ちょっとそれは、運用でどうなっていくかちょっと見たいと思いますけれども、法律の内容というのは分かりました。
 あと、ちょっと質問をさせて、お許しをいただいて質問をさせていただきますが、先ほど破産の予納金のことについてちょっと、個人破産のことについて聞きたいんですが、個人破産の場合の予納金は大体官報に掲載をする金額だから、一万五、六千円かな、二万円程度だというふうに聞いていますけれども、法人だとか、それから悪質な全国をまたに掛けてやるようなマルチ商法のようなのがあるじゃないですか、ばあっといって全国に被害者が一杯出る。そういう債権者がたくさんいて、しかもそのような人たちが零細な金をそこへつぎ込んで、それを回収を図ろうとするときに、予納金が、金額が総体として大きくなるから、債権の金額は。そうすると、裁判所はその総体の債権の金額に応じるというか、それを参考にしながら予納金を決めていくというふうに聞いております。
 そうなりますと、だまされてもう少しでも回収したいという人たちがみんな寄っ付くらってその予納金を作るのだって、これは私は大変だと思うんですね。その場合に今度の法律では、そこのところ、そういう多数の例えば悪徳な業者に損害を受けたような一般消費者が最終的には破産手続によって少しでも取り戻そうといったときにどういう配慮がされていますか。ちょっとそこを説明してくれますかね。
○政府参考人(房村精一君) 特に御指摘のようなそういう具体的事案を想定しているわけではございませんが、予納金の扱いにつきまして、現在、債権者が破産の申立てをするときの予納金の納付につきましては、仮に国が支弁するという仮支弁の制度の適用はないということになっております。
 仮支弁の制度の適用は債権者申立てにはないわけでございますが、今回の改正によりまして、破産手続が債権者又は債務者を始め様々な利害関係人の利益を調整するとともに公益的な要素をも含む手続であることに着目いたしまして、例外的に、裁判所が申立人の資力、破産財団となるべき財産の状況その他の事情を考慮して、申立人及び利害関係人の利益の保護のため特に必要と認めるときは費用を仮に国庫から支弁することができると、こういう規定にいたしましたので、御指摘のような債権者申立ての場合にも、このような要件が認められますと、その仮支弁ということが適用される可能性はございます。
 ただ、今後の運用でございますので、具体的事案にもよりますし、どうなるかということは確言はできませんが、そういった法律の改正をいたしております。
○角田義一君 その仮支弁というのはどういうことなんでしょうか。予納金を、最終的には被害者である一般の消費者、そういうのを、まあ払わなくてもいいということになるんでしょうか。それとも、回収された財産の中で余裕があれば、それは最優先に予納金は取られちゃうのかどうかということが大事なんですよね。
○政府参考人(房村精一君) 予納を命ぜられます破産手続の費用、これは本来、破産財団の負担に属するものでございます。それを仮に予納させているわけでございますので、債権者申立ての場合には、破産財団が整えば、財団の資力があれば予納した費用は返ってくるわけでございます。
 これをあらかじめ予納させずに国が言わば費用を負担して手続を進めて、その費用を破産財団の方から支払わせるというのが仮支弁の制度ということになりますので、債権者申立てで仮支弁の制度が適用されますと、少なくとも申立人は直接それを負担する必要はないということになります。
○角田義一君 切りのいいところで、もう一つだけちょっと質問をさせてもらいます。
 破産手続のいろいろな実務に携わった人から聞きますと、この破産財産の中に、不動産ですよ、不動産の中に、まあ普通の正常な不動産であればいいけれども、例えば重金属で汚染をされた土地だとか、あるいは不当投棄されて使い物にならない土地だとかいろいろ入っていると。これらについてとても換価もできないし、さりとて、これ処分に困ると。その場合に、もう破産管財人とすれば、そういうものを、言わば破産者、そういうことをやってきた、まあ私に言わせれば悪質な業者なりに任せちゃって、それを、その不動産をほっぽり投げて放棄しちまうというようなこともあるやに聞いております。
 これは、恐らく破産管財人にすると、本当に悩まれるところだと思うんですね、その立場に立ってみれば。しかし、影響するところは多いでしょう。もちろん、その関係者というのは、地域の住民もおるし、せっかく破産になって管財人さんがおるにもかかわらず、それが放棄されて、従前の人たちが勝手に気ままにやっているということになれば、これは破産法を悪用されてそういう悪徳の業者を助長することにもなりかねないわけだから、そういう問題も幾つかやっぱり現場、現実に起こっているわけですよ、しゃばでは、社会では。
 これらに対しては、今度の破産法では特段のそういう問題については配慮がないというふうには私には思えるんだけれども、この点については今の現実ではどういう対応をしているのか、それから今後この新しい破産法ができてそういう問題については何かいい決め手があるのかないのか、この点についてちょっと聞いておきましょうか、最後に。午前中にちょっといいかな。
○政府参考人(房村精一君) 御指摘のように、土壌汚染とかそういったものが破産財団の中に含まれていて、管財人として非常に困っているということがあるということは私どもも承知しております。ただ、これは破産管財実務の運営の問題でございますので、従来の破産法におきましても、また今回の破産法案におきましても特段の手当てはされていないところでございます。
 一般的に考えますと、破産債権者の満足ということを最優先に考えますと、放棄をしたいと、こう管財人が考えるのも無理からぬ面もございますし、しかしまた同時に、御指摘のように、周囲に与える影響、住民に与える影響その他もございます。そういうことから、仮に放棄をするといたしましても、破産財団で賄える限りの措置を講ずるように努力をし、所轄官庁や地方自治体に必要な措置を取るよう協力を求めた上で放棄をするというような運用がされていると承知しております。
 非常に困難な事案ではございますが、今後ともこの種の事案については破産管財人及び裁判所の努力によって適正な運用がされると、こう考えております。
○角田義一君 ちょっと大臣、もうちょっと我慢してください。お昼になるけれども、大臣、ちょっと我慢してくださいね。もうちょっと、じゃ皆さんのお許しをいただいて、もう少し続けさせていただきます。
 今回の破産法で、改正で、やっぱり否認権の行使とか相殺権の行使というのは条文を読んでみても非常に難しいんですよ。我々、読んでもよく分からない。
 まず、原則的なことをちょっと最初に聞いておきますが、今度の破産法案では言わば否認、否認権の要件に関して、安く売っちまうと、債務者が、破産者が安く売ってしまうと、要するに廉価売却というふうに言うんでしょうが、安く売ってしまったその行為は言わば詐害行為ということで、そういうものと、それからおまえさんだけには返してやろう、弁済してやろうといって、金払ってやるというようなこのへんぱ、偏るということでへんぱ行為と、こういう二ついろいろあったんですけれども、今回この詐害行為、それからへんぱ行為、この否認のことについて、要件についてある程度分けてその規定をしているということなんです。
 ただ、これ大学の講義と違いまして、こういう場で説明してもらうのも私ちょっと大変だなとは思うんだけれども、うんと分かりやすく、みんなに分かりやすく説明してくれませんか。
○政府参考人(房村精一君) どこまで分かりやすく説明できるか心もとないんですが、御指摘のように、破産債権者を害する行為としては二つの類型がございます。
 一つは、今御指摘の詐害行為、要するに破産財産の土地を例えばただでやってしまうとか安く売ってしまう、そうなりますと、配当原資が減りますので破産債権者に払えるお金が全体として減ってしまう、言わばすべての破産債権者が害を被る、こういう形のものが一つございます。
 それからもう一つは、破産債権者の間の平等を害する。破産というのは破産債権者すべてに平等に扱って平等に配当していくと、こういうことでございますが、そのうち特定の人にだけ優先的に払ってしまう、そうなりますと、ほかの人は例えば破産の配当率で一割しかもらえないのに、特定の債権者だけ十割払ってもらえる、これは破産でやった全員に平等にという考え方に反します。これがいわゆるへんぱ行為と言われているものでございます。
 で、現行法では、このいわゆる詐害行為、財産を減らす行為と、それから特定の者にだけ優先して払うへんぱ行為、この二つについて特に要件の差を設けていないわけですが、この二つはやはり違いがございます。
 といいますのは、債務が超過するような状態になっている場合に、自分の財産を安いお金で売る、あるいはただでやるというのは、これはどう考えても合理性を欠くわけでございまして、こういったものは当然禁止をしなければならないわけですが、要するに債務超過状態にありさえすればそういった行為を禁止されても、その破産者としてもあるいは取引の相手方としてもそうおかしなことはないだろうと思います。
 ところが、一部の債権者に例えば優先的に弁済してしまうと、こういう行為について言いますと、経済活動を行っていればこれは債務を払わなければ取引してもらえないわけですから、債務超過の状態にあるときに、ある債務者に払ったことが、後になって、いや、それはへんぱ行為で否認をすると、こういうことを言われるとおちおち債務の支払もできない。経済活動そのものが困ってしまうということがあるわけです。
 したがって、こういったへんぱ行為につきましては、単に客観的に債務超過にあるというだけではなくて、もう少し外形的な事実、そういったものが分かった段階で禁止をするということにしないと、債務者として安心して債務の弁済ができないということになります。
 そういうことから、今回は原則的な考え方といたしまして、そういう財産を減少する行為については、債務超過の状態にあればいつなされたかを問わずに否認できるということにいたしておりますが、一方、そのへんぱ行為、一部の債務者に対する弁済が債権者を害するということを言うためには、単に債務超過では足りずに、やはり支払不能、要するに総債務をもう払えないと、全体の債務をもうみんな払えないような状態になっているときに一部の人に払うというのは、明らかに一部の人を優遇して他の人に害を与えるわけですから、そういうことを要求しようと。
 もちろん、その支払不能というのはなかなか分かりにくい点もありますので、その外形的な行為である支払停止、いわゆる不渡りとか夜逃げとか、そういうことがあれば支払不能の状態にあるということを推定する規定も置いておりますので、そういった外形的な事実があった後、一部の者に払ったらそれは否認できると、こういう違いを設けることによって、言わば債務者あるいはその取引の相手方に安心して取引をしていただくということを考えているわけでございます。
 また、そのほか要件として、詐害行為、そういう安く売るというようなことについては、やはりこれは証明責任を相手方に負わせてもおかしくありませんが、へんぱ行為については、言わば通常の債務の弁済ではなくて明らかにへんぱなんだということについて証明責任を破産管財人の方に負わせるというような違いも設けております。そういうことによって、行為の性質に応じた扱いをしているということでございます。
○角田義一君 もうちょっと。今否認、否認の、減少行為ですけれども、この今度の法律の中には、例えば会社なら会社がやりくりしながら生き延びているわけですよ、現実には。私も随分中小企業の相談受けますけれどもね。そうすると、最終的にはつぶれちゃうんだけれども、つぶれる前に何とか生き延びようとして、自分の持っている財産の、不動産だとかそういうのを売って運転資金に充てるとかなんとかというのは、もう火の車の状態になっていてもやるんですよ。それを余りとがめることもできないわけで、これをみんな詐害行為だと言ってどんどん否認の対象にしていくと、本来うまくやれば生き延びれたかもしれない中小企業なりあれが、それも今度はできなくなるということになれば非常に困るわけです。
 そこで、今度の破産法の中には、その辺の現実の世の中の動きというものを考えながら、その辺のことをある程度、寛大にと言っちゃおかしいけれども、寛大というのは法律語じゃないから、余りそこのところを厳格にしないで、金銭の調達もできるようにして、否認を許さない、否認の対象にしないというような制度を設けているということもあるんだけれども、どういうことなんでしょうか。これは分かりやすくちょっと説明してくれますか。それで終わります、午前の部というのは。
○政府参考人(房村精一君) 御指摘の点は、いわゆる不動産等を適正な価格で売却した場合に否認の対象になるかという問題だろうと思います。
 これは、例えば一億の土地を一億で売るということであれば不動産が現金に換わるだけで、本来、財産は減らないわけですが、しかし、土地というものは残っていますのでそう簡単に隠せませんが、現金になってしまうと非常に隠匿が容易になる。そういうことから、従来の破産法の下では、そういう土地を適正な価格で売却しても、非常に隠匿しやすくなるというようなこともあるので否認の対象になる場合があるという具合に言われておりました。ところが、この要件が必ずしも明確でないために、正に御指摘のように、企業が経営が困難になった段階で資金調達のために適正な価格で売ろうと思っても、相手方が後になって否認をされたのでは困るということでなかなか買ってもらえないと、そういう事態が生じていた。
 それを受けまして、今回、この時価による適正な価格による売却について規定を設けまして、御指摘の、従来から指摘されているようなおそれがありますので、そういう場合には否認できる、しかしそうでなければ否認できないということを明確にするということで、まず否認の要件を、破産者が不動産の売却等によって取得した売買代金等を隠匿したり他人に贈与する等の意思を有しており、かつ取引の相手方も当該行為の当時そのことを知っていた場合でなければ否認することができないと、こう明確にいたしました。
 したがって、正に運転資金の調達のために売却をするというようなものはこれに当たりませんし、また買い受ける方がそういう隠すつもりで売っているということを知らなければそれは保護される、かつ、相手方がその知っていたということの立証責任を破産管財人に負わせるということといたしましたので、これによりまして、適正な価格で買い受けるという場合には、原則的に相手の意図を知っている場合以外は保護されるわけでございますので、従来のような萎縮効果はなくなる。これによって運転資金の調達も容易になるのではないか、こう思っています。
○角田義一君 今の立証責任は管財人の方にあるわけですか。挙証責任はどうなるんですか、挙証責任は。ちょっとそれ説明してください、立証責任と挙証責任の関係を。
○政府参考人(房村精一君) したがいまして、管財人が否認をしようと思いますと、まずこの売った方ですね、破産者がこういう意思を持っていたということを主張しかつ立証するそういう証拠を出さなければいけない。それと同時に、相手方、買い受けた方がそのことを知っていたということまで管財人の方で主張しかつ立証をしなければいけない、そういうことになります。ですから、真偽不明だと駄目なわけですね。これ知っていたか知っていないか分からないということでは足りない、知っていたと積極的に認められない限りは否認ができない、こういうことになります。
○角田義一君 裁判所は、あいまいであれば管財人の言い分は取らないということですね。そういうふうに理解していいんですな。
○政府参考人(房村精一君) はい、御指摘のとおりでございます。
○角田義一君 終わります。
○委員長(山本保君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時三十分まで休憩いたします。
   午後零時十七分休憩
     ─────・─────
   午後一時三十分開会
○委員長(山本保君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、破産法案及び破産法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案を一括して議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○今泉昭君 民主党・新緑風会の今泉でございます。
 私は全くの法律につきましては素人でございまして、条文を理解するのを英語を翻訳するよりも難しいような気持ちでこれまで接してきたものですから、質問の内容も多少とんちんかんなところがあるかもしれませんけれども、御了解を賜りたいというふうに思っております。
 大正十一年からの久々の、八十二年ぶりの法改正ですか、だというふうに聞いておりまして、最近のこの破産者の増大、そして破産の内容のかつての状況から大きく変質している状況を受けまして、迅速にこの破産案件を処理しなきゃならない、合理的に処理をしていかなきゃならないという社会的な背景からこの法案が恐らく策定されたのではないかというふうに私なりに理解をしておりますが、今日私がお尋ねするのは、特に労働債権を中心としてお伺いをしたいというふうに思っております。
 まず、最初にお伺いしたいのは、我が国も経済的にも政治的にも先進国の一員として今世界でのそれなりの地位を占めているわけでございますが、世界的な法制度の中におきまして労働者の労働債権というものがどのように取り扱われているのか、世界の先進国の状況をちょっと教えていただけますか。
○政府参考人(房村精一君) 各国の倒産法制における労働債権の扱いでございますが、まずアメリカでございます。これはアメリカ連邦倒産法でございますが、これによりますと、申立て日等の前九十日以内の稼働による給料等で四千ドルを限度として第三順位とされております。それに先立つものは、手続費用あるいは非自発的申立て事件において申立て後救済命令があるまでの間の取引によって生じた債権、これが上位二つの債権でございまして、それに次ぐ地位が与えられております。
 それからドイツ法でございますが、ドイツにおきましては労働債権に優先権は認められておりません。ただし、労働債権については立替払制度というものがありますので、そちらで保護が図られているということになります。
 それからイギリスでございますが、イギリスでは、四か月分の給料等が優先債権とされて、第五順位の優先権が付与されております。先立つものは、管財人の報酬あるいは固定担保付債権、清算人の報酬など、こういったものがこの給料債権に優先するとされております。
 それからフランス法でございますが、フランスにおきましては、六十日分の給料等について超優先権が付与されておりまして、租税等を含むすべての債権に優先すると。また同時に、六か月分の給料につきまして一般先取特権が付与されておりますが、この部分は租税債権には劣後すると。
 以上が大体主要先進国の労働債権に関する扱いでございます。
○今泉昭君 各国によってそれぞれ差があるから一様に比較はできないとは思いますけれども、国際的な労働基準の中心的な存在であるILOにおきましては、言うまでもなく、第百七十三号条約ですか、この条約におきまして労働者の労働債権の保護が実は示されているわけですが、我が国におきましてはまだこの条約が批准をされていないというふうに理解をしているんですが、なぜ今日までにこれがまだ批准をされていないのか。
 そして、実はちょっと調べてみますと、百五十六国会のこの参議院の法務委員会におきまして、平成十五年の七月二十二日ですか、この問題の同様な質問がありまして、これは厚生労働省の審議官の答弁でしたけれども、それなりに批准ができるように努力をしていくというような答弁があったように承っておりますが、その後、我が国において批准に向けてのどのような取組がなされているかどうか、お聞きしたいと思います。
○政府参考人(大石明君) ILO百七十三号条約につきましては、これまでのところ我が国においては批准されていないのは御指摘のとおりでございます。
 これまで批准できていない状況、理由と申しましょうかにつきましては、やはりこの条約が求めておりますところ、例えば、主要な部分であります第二部において特権による労働者債権の保護というところがございますが、ここでは、条約では三か月以上の労働者債権の優先順位を国税等の特権を付与された他の大部分の債権より高いものとするように求めているという状況がございます。これは、今般の破産法におきましても含めてでございますけれども、そういった点では、なおその国内法との間におきまして条約との間では厳密な整合性が取れていないということで、これまでILO条約の批准に当たって完全な整合性を取れたものを批准していくという基本姿勢に、必ずしもそういった点からまだ批准に至っていないと、こんな状況でございます。
○今泉昭君 十五年からまだそう時間はたっていないんですけれども、ひとつ早急に批准の実現ができるように各法制との整合性を調整をして、積極的な批准に向けての努力を更に期待をしたいというふうに思っております。
 それから、このILOの条約によりますと、実は今回の労働債権は賃金と退職金にのみ触れているわけでございますね。一定の財団債権としての地位を、全部ではありませんけれども、一部今回の場合は取り入れたという意味では前進であったと思うんですが、ILOの場合のこの基準によりますと、条約によりますと、賃金、退職金以外の問題も取り上げているわけですね。例えば、有給休暇、休日手当等々にも触れているわけであります。有給休暇をどのように所得の一部として評価するか、非常に難しいところでございますが、しかしながら買上げ制度というのも当然今の労使関係の中には定着をしているような状態でもあります。これが、日本の場合の賃金というのが一時金を含むかどうか、これは分かりませんけれども、三か月という意味合いは。休日手当の中にはその種の一時金的な意味合いのものを含めているわけでございまして、条約に盛られているような、このような労働者債権の範囲を増やしていくというような検討がなされてきたのかどうか、その点についてちょっとお聞きしたいと思います。
○政府参考人(房村精一君) 今回保護しておりますのは、いわゆる労働者がその労働の対価として受ける給与等の賃金債権を財団債権として保護しているわけでございます。そのほかの関係になりますと、破産手続の場合には、金銭債権のみならず、非金銭債権につきましてもこれを金銭に評価して破産債権として扱うと、こういう全体の仕組みになっております。
 したがいまして、労働者が給与債権以外の何らかの債権を会社に対して持っている場合には、その債権が現金化をされまして破産債権になるという場面はあろうかとは思いますが、具体的にどのようなものがあるかということは、ちょっと私も現時点で想定が難しいかとは思っておりますが、一般的な仕組みとしてはそういう形で保護が図られるということになります。
○今泉昭君 というのは、あれでございましょうか、一般的な優先債権とは別に優先的に財団債権として認められている三か月の中にもそれが考えられるというふうに考えてよろしいですか。
○政府参考人(房村精一君) 財団債権になりますのは、正に労働の対価として受け取る賃金等の給与債権、これの三か月分でございます。それを超える分の給与債権は、従来と同じように優先破産債権として、破産債権として優先的な地位が確保されている。それ以外に、いわゆる給与債権以外の債権を仮に持っている場合に、その扱いがどうなるかということについて申し述べたわけでございます。金銭債権であれば金銭債権として扱われますし、非金銭債権を持っている場合にはそれを金銭に評価して破産債権として扱うという形になろうかと思います。
 これは、どのような債権を持っているかということによりまして個々別々になりますので、一般論としては以上のような説明になろうかと思っています。
○今泉昭君 各種の債権が存在していて、いろんな順位が定められておりますけれども、今回の改正によりましてどのような順位に変わっていったのか、ちょっと説明してください。
○政府参考人(房村精一君) 今回の改正で一番大きく変わりましたのが労働債権それから租税債権でございます。
 まず、従来の扱いについて御説明申し上げますと、租税債権はその全額について最優先の財団債権とされておりました。一方、労働債権につきましては、これが優先破産債権として破産債権の中で優先される地位として扱われていた。したがって、租税債権はその全額について労働債権に優先したわけでございます。
 今回はこれを見直しまして、租税債権のうち納期限が一年以上前のもの、これにつきましては財団債権から外して一段下の破産債権、優先破産債権とするということといたしました。一方逆に、労働債権のうち一部のもの、先ほど御指摘のような賃料の未払の三か月分あるいは退職金の三か月分、これを財団債権として繰り上げたということになります。
 したがいまして、この改正法案の下での順位といたしましては、財団債権として納期限が一年より近いものあるいは将来のもの、これの租税債権と労働債権の三か月分とが全く同一順位ということになります。
 次に、破産債権になりますと、労働債権も租税債権も優先債権ではございますが、実体法上の優先順位で租税債権の方が労働債権に優先しておりますので、優先破産債権の中では租税債権が優先、労働債権に優先するという形になります。
 したがいまして、財団債権で認められている租税と労働債権は同順位、それから破産債権の中で租税債権があり、それから労働債権があり、そしてその下に一般の破産債権があると、こういう順番になります。
○今泉昭君 今財団債権を中心にして御説明いただきましたけれども、その上に最優先の別除権というのが存在していますですね。なぜそれと同等にこの労働債権というものが取り扱われないのかどうか、一部でもいいから。
 御存じのように、労働者の生活というのは労働の提供によってもらっている賃金が唯一の収入でございまして、それでもってのみ実は生活をされているわけですね。ところが、別除権の中に入っているものはいろんなものがございまして、その別除権を得ることによってのみその人たちが経済活動をしているわけじゃなくて、いろんなところからの収入があるはずなんですよ。にもかかわらず、唯一の収入源である労働債権を何で別除権よりも低位に置かなきゃならないのかと、この理由はどういうことですか。
○政府参考人(房村精一君) 御指摘のように、別除権、典型的なものが抵当権でございますが、抵当権の付いている債権につきましては、破産債権、財団債権に優先してその抵当物件からの弁済を受けられると、こういう地位が保障されております。
 これは、実体法上、その抵当権を付けた抵当権者はその対象物を換価してその代金の中から最優先で弁済を受けられると、こういう地位が保障されております。そのように保護することによって、正に安心して融資ができる。万が一返済が滞った場合に、その抵当物件を競売することによって債権の回収が図れると、そういう安心があるからこそ金融が成り立っているという側面がございます。
 そういう意味で、その抵当権で幾らの抵当権が付いているかということは、不動産については登記事項として公示をしております。したがいまして、取引をするときには常に抵当権を確認して、先順位の抵当権がこれだけある、さらにその後、まだ余剰があれば更に抵当権を付けると、そういう予測の下に経済活動がなされているわけでございます。
 ところが、御指摘のように、例えば労働債権の一部が抵当権に優先するということになりますと、抵当権者からしますと、抵当権設定後に生じた事情によって自己に優先する支払がその抵当物件からされてしまう、その分自分の債権が満足に得られないということになりますので、抵当権者にとっては言わば不測の損害を被るおそれがあるということになります。
 また同時に、そういう事態が起こり得るとすれば、従来融資した額より少なめに融資をするということにならざるを得ない。その危険負担を考えて、どうしても与信額を下げるという行動に走ることが容易に予想されるわけであります。そういたしますと、かえってそのことによって企業が資金調達に困難を生じ、場合によれば企業の経営自体がおかしくなるということも懸念されるわけでございます。
 実は、御指摘のような担保権等にも優先する言わばスーパー先取特権と申しますか、そういうようなものを日本でも設けてはどうかということは、昨年の通常国会に提出いたしました担保物件及び民事執行制度の改善のための民法等の一部を改正する法律、これを検討する中で、法制審議会の場でも検討されたわけでございます。
 ただ、今申し上げたような指摘がいろいろなところから出まして、やはり現段階でこれを日本で採用することは難しいのではないか。また、そういったスーパー先取特権を含めた試案をパブリックコメントに掛けまして広く御意見を伺いましたが、もちろん労働団体は賛成という御意見をいただきましたが、それ以外はやはり反対が非常に強うございまして、そうしますと、日本の経済全体に与える影響を考えると、現時点ではやはり難しいのではないかということで見送った経緯がございまして、今回破産法を検討するときにもやはり法制審でその問題が取り上げられまして、委員の大勢の方は、その前年の担保・執行の際に議論したことと基本的に変わっていないのではないか、そういうことで今回はその点についての手当てをすることは見送ろうと、こういう経緯でございます。
○今泉昭君 今、とにかく貸し渋りはありますけれども、実質的にはもう資金は潤沢にあってあふれているような状態ですよね。
 外国においてその状態がどうなっているかということが非常に私も気になるんですが、例えば別除権などというのが最優先にやっぱり外国でもなっているんですか。外国の金融機関も、そういう意味で補助、援助されているのか、支援されているのかどうかということが一つと、仮に労使関係で賃金を最優先保障の条件を入れた場合には同じように別除権の抵当と同じような取扱いがされるのかどうか、そういうことは考えられませんか。
○政府参考人(房村精一君) 抵当権のような物的担保と言われるものについては、おおむねこれはもう最優先で弁済を受けられると。正にそれが権利の本質でございますので、一般的な制度としてはそういう仕組みになっているところがほとんどでございます。
 後半の質問、ちょっと趣旨がよく分かりませんでしたので、申し訳ありませんが、もう一度おっしゃっていただけますでしょうか。
○今泉昭君 いわゆる最優先特権というものが、例えば融資のときには前提としてそれが一札入れられているわけでしょう、金を貸すときには。それと同じように、労働、労務を提供するときに、労使間の労働契約の中にそれを最優先特権だというふうな形での協約を入れた場合の取扱いというものが同等に取り扱われるかどうかということであります。
○政府参考人(房村精一君) 今の不動産の抵当権で最優先の支払を受けられるという点は、当然利害関係を持つ者が多いわけですので、その人たちの予測を害さないように抵当権登記をするということによって公示をして、それで周りの人もそういう権利が設定されているということが分かるわけでございます。
 御指摘の、労働債権について最優先の権利を確保するという仕組みを考えたときに、抵当権と同じような公示の仕組みをどうするかということがまず最大の問題になるのではないかと思っておりますが、これをどうするかというのはなかなか簡単には出てこないのではないか。法制審で議論されたときも、やはり労働債権を最優先で保護すると周りの人に不測の損害を与えるのではないかと。ですから、不測の損害を防ごうと思えばどういう形で公示をするのかということが問題になってくるわけでございます。
○今泉昭君 意味は分かりました。内容は不服でございますけれども、意味は分かりました。
 そこで、ちょっと教えていただきたいんですけれども、去年、民法が改正になりましたですね。これまで民法の三百八条では六か月という保障がございました。商法では、二百九十五条におきまして全額という位置付けでございました。もちろん、そういう中から一部が今度は財団債権に格上げされた三か月というのがあるんですけれども、あわせて、この三か月という意味はどういうところから算出されたのかどうかということが一つと、それからいろんな倒産の種類がございます。一つは和議というやり方もあるでしょうし、民事再生法があったり会社更生法があったり破産というものがありますけれども、これらのそれぞれの中におきましてこの労働債権の取扱い方というのは差があるのかどうか、あったらどういうふうになっているのか、教えてください。
○政府参考人(房村精一君) それでは、労働債権の取扱いで違いが一番はっきりしておりますのは、民事再生法あるいは会社更生法、いわゆる再建型の手続、これと今回の破産法と思いますので、その点を中心に御説明をさせていただきます。
 今回の破産法では、先ほど申し上げましたように、未払給料の三か月分、それから退職金の三か月分と、これを財団債権としております。これに対しまして会社更生法、これでは未払給与の六か月分、それから退職金については六か月分又は三分の一、退職金の三分の一ですね、のいずれか多い方と、これを共益債権として破産法の財団債権と同じ最優先の債権としております。一方、再生手続におきましては、労働債権は優先債権としてそもそも手続の中に入ってこない、再生債権になりませんので、言わば財団債権、共益債権と同じ扱いに、随時に弁済を受けられる権利ということになっております。
 このような違いが生じている理由でございますが、まず第一に、民事再生法におきましてはできるだけ迅速に再生を図るという観点から、優先債権をその手続内に取り込むことをあきらめまして、一般債権の範囲で迅速に再生を図っていくと、こういう制度設計にしたわけでございます。そういうことから、労働債権については再生債権に入ってこない。また、考え方といたしましても、再生を図る以上、労働者の協力を得る必要がありますので、その債権については随時弁済をしていく必要があろうということも背景にあったかと思います。
 それから次に、会社更生法でございます。会社更生法の共益債権というのは本来は共益目的のものに限られるのが原則でございますが、そこを政策的に労働債権を共益債権にしているわけでございます。
 その理由といたしましては、一つは、まず、会社を再建するという会社更生の目的のためには労働者の協力を得ることが何よりも必要であると、そういうことから、労働者に労働意欲を持って再建に協力してもらうためには労働債権をできるだけ保護する必要があるということが考慮され、また同時に、そういう形で労働者の協力によって会社の再建ができるということになれば他の債権者もそのことによって最終的に自己の債権の満足が得られると。こういう意味で、労働債権を優遇することにそれなりの共益性があると。こういうことから、先ほど申し上げたように、六か月の範囲で共益債権として最優先の地位を保障しているわけでございます。
 これが破産ということになりますと、基本的には会社を全部清算をしてしまう、雇用関係についても終了するということが想定されているわけでございます。その中で、労働債権を最優先で保護をするということになりますと、例えば退職金にいたしましても、全雇用が終了するということになりますとその総額は相当大きなものになります。そういう形で労働債権がすべて財団化、財団債権化されてしまいますと財団債権の範囲が非常に膨らみますので、破産財団で財団債権すら賄えない、およそ破産の手続費用が賄えないと、こういう事態が非常に増加することが予想されるわけでございます。そうなりますと、そこで破産手続は打ち切らざるを得ないわけでございます。
 ところが、仮に破産手続に入って破産管財人が一生懸命財産を探し、売掛金を回収し、あるいは否認の手続を取って不当に処分されていたものを回収するというような形で破産財団を増やしていくということは十分あり得るわけでございます。ですから、破産手続を進めていればもっと破産財団が膨らんで多くの人に払えたものが、余りにも財団債権が膨らんだために結局そういう財産の回収が思うに任せずに多くの人に配当ができなくなってしまうと、こういうことが起こることも予想されるわけでございます。また、先ほど申し上げたような、労働者の協力を得るという観点から労働債権を優遇することに共益性が認められる会社更生手続と違いまして、主として清算を目的とするという破産手続において同じような共益性を考えるのはなかなか難しいだろうと。
 こういうような理論的な問題あるいは実際的な配慮、これを考えますと、やはり更生法と同じ六か月という保護を与えるのは難しいだろうと。余りにも破産の現場に与える影響が大きくなり過ぎるということが懸念されまして、そういう中から、三か月分程度であれば一定の保護が図れ、かつ現在の破産実務に与える影響も許容できる範囲にとどまるのではないかと。このようなことから三か月ということになったわけでございます。
○今泉昭君 更生法、民事にしろ、民事再生法にしろ会社更生法にしろ、どちらかといえば大企業が対象になりますよね。大体対象になっているのはそうだと思うんですよ。中小企業、中小零細企業というのは更生よりも破産整理の方に走ってしまいますよね、周辺が。そうすると、将来の労働者の会社再生に向けて期待度というものは、大企業の労働者にだけしか掛けられていないということになるんですよ、実態は。そういう意味で、この破産の場合は、いつも泣くのは中小零細で働いている人たちなんですよね。そういう意味でも、実は債権の順位をもっと多く上げてほしいというのが中小に働く人たちの願いではないかと思うんですよ。まあこれは一挙にというわけにはいかぬでしょうから、今後検討の材料にしていただきたいというふうにお願いを申し上げておきます。
 それから、御存じのように、最近は非常に社会のいろんな仕組みが変わってまいりました。人の働き方もいろいろ変わってまいりました。私も長いこと厚生労働委員会に所属をしておりまして、いつも厚生労働大臣と意見のやり取りをする場合に、厚生労働大臣は新しい働き方ということをもう何回となく言われるわけです。そういう意味で、労働者のタイプというのがだんだん変わってきているわけですね。
 実は、前のアメリカの大統領、クリントンさんのスピーチライターをやっていたダニエル・ピンクという人がいるんですが、この方が書いた「フリーエージェント社会の到来」という本があるんですが、この本をざっと見てみますと、アメリカの社会の中では一つの組織に雇用関係を結ぶと、組織に帰属をして生計を立てるとかという人たちがだんだんだんだん少なくなっている。個人という形での働き方、これは任意的な意味での契約を結ぶものもあるでしょうし、労働契約という形での契約の仕方もあるでしょうし、そういう方々がもう既に四千万近くにもなっているということです。
 日本の社会を考えてみても、今それに倣ったような実は働き方の新しいタイプがどんどんどんどん増えてきている。実は、先国会でもそういう流れを受けまして、派遣労働法が改正をされたというのも一つのそういう流れを受けてなんでしょう。もう働き方はいろいろあるわけであります。
 こういう中におきまして、実は建設関係におきましては、まあこれは御存じだと思うんですけれども、手間請労働というものがございまして、この人たちが労働者という形で受け止められているかどうか。これによって、この倒産の場合も、その労働債権としての保護がもらえるかどうかということが非常に関心が高まっているわけであります。どういう形態の人たちを労働者とするのか、その人たちの、労働債権として認められるのか、どういう範疇を考えていらっしゃるか、ちょっとお聞きしたいと思うんです。
○政府参考人(房村精一君) 破産法で考えております使用人というのは、これは昨年改正していただいた民法三百八条の使用人と同じでございまして、基本的に労務を提供して、その対価を受け取ることによって生活を営んでいる人、この人を使用人と、その持っている債権を労働債権あるいは給与債権と考えているわけでございます。
○今泉昭君 厚生労働省にお聞きしたいんですが、先ほど申し上げましたように、派遣労働者の法制化がいろんな意味での規制緩和がなされていって、請負とも言わず、派遣労働者とも言えない労働者群が大変増えているわけでございます。そういう意味で、今の我が国の基準法なり労働法の仕組みというのは、どちらかといえば製造業におけるところの正規の労働者と企業との関係の中に組み立てられてきた法体系なんですが、そのように新しい時代にどんどんどんどん新しい労働者のタイプが出てきた場合に、これらを保護されるような、例えば今お話がありましたような労働債権が保障されるような仕組みを全体的に作り変えていく必要がある時代に来ていると思うんですけれども、これについてどういうふうにお考えになっています。
○政府参考人(大石明君) 先生御指摘のように、現在の経済社会の非常な変化の中で働く人たちの形というのも極めて多様なものになってきているのはそのとおりだろうと思います。
 労働関係法制というものが、実態の中のものを幾つかのそれぞれの目的に応じて法律を作っておりますので、そのボーダーラインといいましょうか、そういった方たちがどうしても出てくる、運用上なかなか難しい部分というのが出てくるのはもうおっしゃるとおりだろうというふうに思っております。
 現在の私どもの、法律を運用していくに当たりましては、例えばそれぞれの労働関係の法律におきまして、それぞれの例えば労働者の定義規定というようなものもございますけれども、これはあくまでそうした趣旨に沿って個々具体的に判断していくと。例えば労働基準法であれば、やはりその使用従属関係に基づいて賃金を払われている、そうしたものによって生活している労働者について当事者が、あるいは一方の当事者が、これはいわゆる労働契約ではないという主張があったとしても、それは私どもとしては実態を判断して使用従属関係がある、あるいはこれは賃金であると、こういった観点から必要な保護というものは現在においても図っているわけでございます。
 そうした形で、変化の激しい中ではありますけれども、真に保護すべき方々については必要なものを対象としていくという姿勢で臨んでいるわけでございますが、ただ、社会の変化というのは本当になかなか予想も付かないことも起きてくるのも事実でございまして、そうした点については今後ともアンテナを張ってまいりたいと思っておりますし、これまでの法律の在り方というものが、一定の前提をどこかで考えている、例えば比較的長期間の雇用を前提にして考えている部分とか、あるいは製造業が非常にウエートが高かったときに、製造業のことを念頭に置いて、それだけを念頭に置いたわけではないにしても、それの影響力がかなりあった中での法律の体系であったというようなこともあるでしょうから、そういったものを常に見直しながら今後とも検討していきたいと、こんなふうに思っております。
○今泉昭君 法務省にお聞きしたいんですけれども、手間請労働者、一人親方的な意味で、ある意味では請負的な意味での仕事を一人で請け負って自分の腕でもって大工をするという人たちが、お客さんが倒産してその手間賃をもらえなくなった場合、これはここで言うところの労働債権というふうに受け止めてよろしゅうございますか。
○政府参考人(房村精一君) これは、その実態によるわけでございまして、少なくとも、先ほど申し上げたように、労務を提供してその対価を受け取ることによって生活を営んでいるという、実態として、実質として雇用関係ということが認められるのであれば、その契約形態が委任であろうと請負であろうと、これはこの労働債権として保護されるということは申し上げられます。
○今泉昭君 昨年の民法の改正のときにもそういう答弁をいただいておりますから、これはもうそういう意味での裏付けになっているというふうに受け止めさせていただきます。
 時間がなくなってしまって申し訳ないんですが、ちょっと先を急がさせていただきます。
 実は、私自身も労働組合時代に幾つかの中小企業の倒産を取り扱ってきた経験がございます。大体、破産をするというときに、破産を実際しているんじゃなくして、その前からその兆候が分かっているわけですよ。これは危ないなというのを、いち早くこれを見つけるのが実は銀行なりそのお得意先なんですよね。破産宣告しないうちにそういう人たちはもう先を争って物を押さえてしまうわけです。そうしますと、結局、破産整理をする場合に労働者の債権なんというのはほとんど残っていないというのが実態なんですね。それはいけないということで、労働組合もばかじゃないんですから、同じようなことを、もう大体企業の動きや社長の動き見れば分かるものだから、先に売り掛け債権だとか半製品を押さえてしまうという作業を行うわけです。実際上、破産が始まる、整理が始まる時期にはもう空っぽになっているのが実態なんですよ。
 しかも、一九九八年十月に施行されました債権譲渡特例法というのがございまして、これに基づいて特に銀行やいろんな意味での取引先がもう真っ先に、一番敏感ですから、押さえてしまうということがありまして、実際上この債権の配分なんというのは意味がなくなってしまうような事態があるんですが、これに対しての対応策というのは検討されたことあるんですか。
○政府参考人(房村精一君) これは、会社の経営が危なくなったときに、そういう意味で我先にと回収を図るということが見られるのは多分御指摘のとおりではないかとは思っております。
 これが正当な権利の行使であればよろしいわけですが、中には破産の手続の否認の対象になるような、債権者の公平を害するような行為もあろうかと思います。こういうものに関しましては、否認の制度を使って適正な原状に回復していくということが管財人に権限として与えられておりますし、今回の破産法案におきましては、そういった否認権の行使を前提とした保全処分、こういった新しい類型の保全処分も用意されております。こういうことを活用することによって、そういった債権者の公平を害するような行為には対応していけるのではないかと、こう思っています。
 それからもう一つですが、実はそれと裏腹な関係で、会社が言わば危なくなったときに、もう少し早く融資が受けられればつぶれないで済んだ、あるいは、これは再生を担当する管財人の方から聞くんですが、再生を始めたときに早期に融資が得られれば再生が軌道に乗ったのに、それが得られないばかりに結局は清算せざるを得なかったと、こういうことも現実にあるわけでございます。
 そういう場合に、全くの担保なしに融資をするというのは、これは現実的ではありませんので、そういったやや危なくなったとき、あるいは再建を図りたいと、こういうときに適切な方法で融資が受けられるような制度的仕組み、こういったものを考えていくということも、特に中小企業の現在の状態を考えますと社会的に必要だろうと思われます。
 先ほども御指摘がありましたが、社会全体から見るとお金が相当あるのに、必要とされる中小企業になかなか資金が回らないというのが実態ではないか。そういう場合に、従来のように不動産の交換価値に着目した不動産融資、こればかりでございますとなかなか中小企業にとって融資が受けにくいと、こういう仕組みになっております。また、それを補うために人的保証に頼りますと、保証人が過酷な責任を負うという問題も生ずるわけでございます。
 そういった状態を考えますと、特に中小企業の現在の資金調達の困難さを解消するための新たなそういった担保の仕組みということも検討していく必要があるだろうと思っています。
 債権譲渡というものについては、いろいろな御指摘もありますが、そういった新しい融資の受皿としても債権譲渡の仕組みというのは使うことが十分可能なわけでございます。そういう観点で、法務省におきましても、債権譲渡の在り方というようなものについては現在検討を進めているところでございます。本日受けました指摘も踏まえて、更に債権譲渡の登記制度の在り方についても検討をしていきたいと、こう考えております。
○今泉昭君 もう残り時間一分になってしまいました。最後の一問だけ。せっかくお呼びした内閣府の方もいらっしゃいますし、できましたならば、大臣からもちょっと一言お聞きしたいと思うわけでございますが。
 破産件数が二十五万件近くにも上っている。倒産件数だけでも相当な数に上っているわけでございまして、この倒産というものの国民的な損失というのは大変なものだろうと思うわけです。二十五兆とも二十三兆とも言われるぐらいの、実は倒産によるところの国民経済のマイナス面が出てきているわけであります。しかも、これは企業倒産だけではなくして、破産の、個人的な破産も入れますと、これは国民経済の損失というのはすごいものだろうというふうに思うわけですね。例えば、そのことによりまして、倒産や個人破産が増えることによりまして国民経済の成長率が低下をしていく、これはもう当然のことでありましょう。
 そういう意味で、一体、これだけの多くの破産が起きている、倒産が起きている、このマイナスというものは国民経済的に、GNPに比べますと何%ぐらいになるんだろうかということを考えざるを得ないんですね。もし、それだけ倒産が起こるとするならば、この倒産を防ぐために金を使ったならば、財政不如意の現在でありますけれども、財政不足の現在でありますけれども、これはプラスに向いていくはずでございます。
 そういう意味では、構造改革を掲げて今日のような財政運営をやってきた果たして小泉的な手法が、小泉総理的な手法が、本当の意味で我が国の経済にとりましてプラスになっているのかどうか。別な意味でもっと積極的な財政支出を行って、倒産による被害を防ぐことによって経済の打撃を防ぐ方が良かったんじゃないかなという気もするわけでございますが、これにつきまして一言。
○国務大臣(野沢太三君) この倒産の問題を今のような総合的な立場から御検討いただくことは極めて大事なことだと思います。まずはやはり基本として、経済の活性化を図るということが最もそのベースとして大事なことは御指摘のとおりだと、私も全くそれは同感でございます。
 ただ、それを、いわゆる財政の措置、例えば公共事業を増やすとか、そういったことで拡大的にこの規模を増やす中で救えるかどうかという点については極めて議論の多いところでありまして、小泉総理は日ごろから構造改革なくして景気回復なしということで取り組んでまいりまして、おかげさまで昨今の経済情勢はいささか小春日和というところまで何とかこぎ着けたかと思います。
 しかし一方では、今ここで私どもが議論しておりますような破産を含みますやっぱり経済のマイナス面が非常に大きく出ているために、やはりそのためのセーフティーネットを併せ整備しながら、両者相まっての経済の活性化であり、立て直しでなければならないと、かように考えております。
 これにつきましては引き続きまだ様々な御議論があろうかと思いますので、それを注意深く見守りながら活性化並びに破産の救済と、その双方の面から経済の立て直しを図りたいと、かように思っております。
○今泉昭君 終わります。
○木庭健太郎君 破産法の質疑を朝からやっているわけでございます。何か破産法の質疑というと暗い、破産という名前自体が暗いなという感じがするんですけれども、ある意味ではこういった法体系をきちんと整備することによって、そういった方々のある意味では再生、再出発へ向かっての新しい法制度の審議だと、こう思えば、これは大事な議論だろうと、こう思うんです。
 午前中から議論になりましたが、特に最近の自己破産件数の増加の問題の話がありました。件数も御紹介があって、中身の変化についても最高裁からお話があったわけでございますが、まず基本的なことをお尋ねしておきたいんですけれども、個人が債務超過状態になったときの正に再起手段というのは、今回のこういう破産法、それから平成十二年、改正されました民事再生法、また特定の調停というのもありますし、あるいは任意整理といった方法も、いろいろあるわけでございますが、それぞれメリット、デメリットもあります。
 そこで、それぞれのメリット、デメリットについてお伺いもしたいし、また一部の報道を見ておりましたら、自己破産の伸びが近年物すごく伸びていたんだけれども、昨年は緩和したというようなことも報じられておるんですけれども、これらの利用状況について、最高裁からこの点はお伺いをいたしておきたいと思います。
○政府参考人(房村精一君) では、各制度のメリット、デメリットについて法務省の方から説明させていただきます。
 御指摘のように、個人が債務超過状態に陥った場合、破産それから民事再生、特定調停あるいは任意整理と、こういった手段がございます。
 このうちの破産は、何といいましても厳格な手続で公平、透明に処理がされるという点が一番大きなメリットであろうかと思います。逆にその分、多少時間は掛かるという面はあるかもしれません。また、それと同時に、破産の場合には、自由財産を除く財産をすべて投げ出して弁済に充てる、その代わり、それ以上の債権については免責を受けて、そこで再出発をする、言わば裸一貫になってやり直すと、こういう仕組みになっております。
 これに対しまして、民事再生法は、同じ個人の場合、やはり目的を再建、例えば個人の事業を営んでいる人の場合ですと、破産手続を利用した場合には財産をほとんど失ってしまいますので事実上事業を続けることは不可能でありますが、再生手続を利用した場合には、その事業を再生する、事業を続けることが可能になるということがメリットの大きなものでございます。また、個人にとって、例えば住宅資金貸付債権に関する特則、いわゆる住宅ローン債権、これを民事再生で扱う場合には家を失わないで何とか済むと、そういったような違いが破産の場合と、生ずるわけでございます。そういう再建を目的とする場合には、やはり民事再生を使うということが望ましいことではございます。また同時に、これは法律上の手続で裁判所の関与の下になされておりますので、ある程度の時間と費用が掛かるということはやむを得ない実態だと思っています。
 次に、特定調停でございます。
 これは民事調停の一類型でありまして、専門的な知識、経験を有する調停委員が債務者と債権者との間に入って賃金カットとか弁済の繰延べの合意の形成を図るというものでございます。これはあくまで当事者間で合意が成立しないと効果がない。民事再生あるいは破産の場合でありますと、債権者等の反対がありましても実現が可能なわけでございますが、この場合にはすべての当事者が合意をしないと成立しないということになります。そういった意味で、協力的でない債権者がいるとか、関係者が著しく多数に上るという場合にはなかなか利用が困難でございます。ただ、非常にそういった調停でございますので柔軟、迅速な解決が図れる、また費用も低廉であるというメリットもございます。
 最後に、任意整理でございますが、これは法律上の制度ではなくて正に当事者が任意に話合いで解決をするということですので、柔軟、迅速、費用も低廉というメリットはございますが、しかし裁判所も関与しないということから、ややもすれば公平性や透明性に欠けるという、そういう面もあるということは否定できないことではないかと。
 以上が、ごく簡単でございますが、御説明でございます。
○最高裁判所長官代理者(園尾隆司君) 事件数について御説明を申し上げます。
 個人の自己破産の申立て件数は過去十年間ほぼ一貫して増加し続けておりまして、平成十五年には二十四万二千三百五十七件というようになっておりまして、十年間に五・五倍の増加ということになっておるわけですが、ただ、先ほど御指摘がございましたとおり、昨年十月ころから伸びが止まったといいますか、前年とほぼ同数ということが続きまして、今年に入ってからは、これは仮集計の数値でございますが、前年より一割ほど少ないというような数値になっております。今後の動きをよく見守っていきたいと思います。ただ、少ないと申しましても、そもそも基礎的な申立て件数が大変多いわけですので、今後の動向をよく見守っていきたいと思っております。
 次に、特定調停事件の申立て件数でございますが、この制度が施行されました平成十二年には二十一万八百六十六件でしたが、その後大幅に増加しまして、平成十五年には五十三万七千七十一件となっておりまして、三年間で二倍以上の増加というようになってございます。この特定調停事件につきましても、昨年の十月ころから急激な伸びが少し和らぎまして、若干の伸びというような状況になっておりまして、これも今後よく見守っていきたいと思っておるところでございます。
 個人再生事件の申立て件数は、この制度が施行されました平成十三年四月以降、十三年十二月までの九か月間で六千二百十件でしたが、平成十五年には二万三千六百十二件となっておりまして、これまた二年間で二倍以上の増加となっているところでございます。これについても、特定調停事件と同じように最近伸びが大変緩やかになっておるという状況にございます。
○木庭健太郎君 何でこれと、ちょっとまあ理由、なかなか分析難しいんでしょうけれども、最近の動きをどんなふうに感じられています、これ。
○最高裁判所長官代理者(園尾隆司君) この理由は、推測になりまして大変難しいわけですが、景気と関連して議論がされるということがあるわけですが、ただ、それぞれの裁判所の担当者に聞いてみますと、それぞれの地方で目に見えたような景気の回復があるというようにも認識をしておりませんので、それと直ちに結び付けるということは難しいのではないかというように思われます。
 ただ、いわゆるやみ金融といいますか暴力金融といいますか、そのようなものの取締りが功を奏し始めておるというようなことが昨年の秋以降言われておりまして、そのような貸金業者の新規登録件数も、例えば東京都内などでは激減しておるというようなことも言われております。
 それから、個人に対して信用供与をする、そのような信用供与量というのが縮小してきておるというようなことも、これは新聞報道などで耳にしておりまして、そのような様々な要因が重なり合ってただいまのような数値になったのではないかというように思いますので、これはなお慎重に今後の動向を見守っていかなければいけないというように思っておるところでございます。
○木庭健太郎君 まあそうはいっても、先ほどおっしゃったように、少しは減るというか平準化したとしても、元が非常に高いわけですから、そこはまだ、ある意味ではいろんな、今回の破産法もそうでございますが、いろんな法整備含めて、また体制作りやっていかなくちゃいけないということ、認識は変わらないんですけれども。
 今回のこの整備法案の中でも、この民事再生法についても改正がありまして、個人再生手続などについての見直しもあったようでございますが、どのような点が変わったのか、利用条件はどのように拡大されたのか、局長から御返事いただきたいと思います。
○政府参考人(房村精一君) 今回の破産法案の、破産法の改正に伴いまして、民事再生法にも併せて改正を幾つかしております。中には、管轄のように、破産法と合わせたという部分もございますが、特に御指摘の個人再生手続、これの利用条件を変えております。
 これは、個人債務者の破産事件が急増しております現下の状況に対応いたしまして、破産に至らずに簡易迅速に経済生活の再建を果たすことができる手段、これが個人再生手続でございますので、これの利用を更に拡大しようと、こういうことでございます。
 内容といたしましては、現行の民事再生法では、無担保の再生債権の総額が三千万円を超えないと、こういう場合に限って個人再生手続の利用を認めているわけでございますが、この三千万を超えてしまいますと手続的な負担の重い通常の再生手続ということになりますので、この点については従来からもう少し大きな債務まで個人再生手続を利用できないかということが指摘されておりましたので、今回、三千万円を五千万円ということにいたしまして、五千万円までは個人再生手続を利用できるということとしております。
○木庭健太郎君 本当、これらの問題、どの手続をどんなふうにというのはなかなかこれ、実際に個人にとってみて、どう迫られたときにどうすればいいんだというのは本当はなかなか難しいところはあるんですよね。
 ただ、いずれにしても、今回私は、この破産法そのものが、第一条、明文化の中で、「経済生活の再生の機会の確保」という大目的を明確にしていただいておりますし、その意味では極めて大きな前進だと、こう評価をしておりますし、是非そういったことに基づいてのいろんな整備を行っていかなければならないと思っておりますが、一つ一つ中身の中でお聞きしたいことが幾つかあるんでございますが、まず、例えばこの破産申立ての際に、先ほども御議論ありましたが、破産費用の予納ということが必要になるわけでございますが、この破産費用の金額というのはどれくらいのものなのか、実際現場で、現状どうなっているのかを最高裁から伺いたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(園尾隆司君) 破産事件の中で、換価すべき財産が何もないというために管財人を選任しないで手続を進めます個人の同時廃止事件につきましては、二万円程度の予納金でもって破産の申立てをすることができるということになっております。
 しかし、法人の破産事件あるいは財産の調査などのために管財人を選任することが必要な個人の破産事件の場合には、個人の場合で五十万円、法人の場合で七十万円を最低額として、負債額によってはそれ以上の金額の予納金が破産申立ての際に求められるというような運用が五、六年前までは通例でございました。
 しかし、それでは破産の申立てをして債務の整理をしたいという法人や、あるいは管財人を選任しなければならない事情がある個人が破産の申立てをすることができないということになりますので、手続を簡素化した上で、およそ二十万円の予納金で破産管財人を選任するという少額管財手続というものが平成十一年に東京地方裁判所において考案されました。この手続は、その後徐々に各地の裁判所に広がってきておる状況にございます。
 少額管財手続の場合には、管財人を選任しましても、負債額にかかわらず二十万円程度の予納金で破産の申立てをすることができるということになります。
○木庭健太郎君 実際に東京地裁においてこの少額管財手続、随分スタートして好評だともお聞きしておりますが、現状を一応お伺いしておきたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(園尾隆司君) ただいまの東京地裁におきましては、現在八千件前後の少額管財手続に付するというような利用状況になっておりまして、全破産事件が二万数千件という中でのその件数でございますので、かなりの割合についてこの手続が使われておるということになります。
 この少額管財手続といいますのは、管財手続を徹底的に簡素化をするということで、低額の予納金で破産管財人を選任するという手続でございますので、ただいま御指摘のありましたとおり、このような手続がほかの裁判所でも採用できないだろうかというような申出がいろいろなところからございました。しかし、それぞれの裁判所にそれぞれの事情がありますので協議を重ねていくというようなことになったわけですが、その後、一庁また一庁というような具合にこの手続を採用する裁判所が出てまいりまして、昨年夏の時点では十庁を超える裁判所に広がっておりまして、今年の三月に調査いたしましたところでは三十庁、全国三十地方裁判所を超える裁判所に広がりを見せておるというような状況でございます。
 これまで、法人について破産申立てをする場合には様々な調査をしていかなければいけないということでございまして、その場合に、零細な企業の破産の場合であっても、破産管財人選任のための予納金が百万円前後必要だというようなことになっておりました関係上、大変要望が強いということでございますが、それぞれの地方の実情、それから手続がまだ十分簡素化のための配慮できるような仕組みになっていないということから、徐々に広がっておるというところにとどまっておりますが、今回の新破産法案で破産管財人の無用な労力を省くことができるような様々な工夫がされておりますので、恐らくこの法律が成立いたしますと、更に少額管財手続類似の手続を採用する裁判所が増加していくものというように考えております。
○木庭健太郎君 今おっしゃったように、私、そこまで広がっていると知りませんで、まだ広がりが、是非こういった制度を全国どこの裁判所でもできるような仕組みを作っていただきたいと、こうお願いするつもりでおりましたら、予想を超えて三十庁というお話もいただきました。
 正に、今回のこの破産法が成立いたしますと、よりその方向で使いやすい形に間違いなくなっていくと思いますし、最高裁の方としてもいろいろ御相談ありましたその体制作りのためにお手伝いいただいて、どこの裁判所でも、全国の、ある意味ではこういう少額管財手続というものが利用できるということが、ある意味では悩み抱えながら、どうすりゃいいのという、この行こうとする行き足を止めていた部分を、ある意味ではきちんとした形で、完全にもうおしまいになって悲惨な目に遭う前に正に裁判所へ行くことができるという仕組みになると思うので、そこは是非これから全国へ広がるように御努力もいただきたいと思いますが、何かありますか、一言。
○最高裁判所長官代理者(園尾隆司君) 私自身も全くそのような気持ちで見守っておるところでございまして、なお一層力を尽くしたいというように思っております。
○木庭健太郎君 次は、今回の破産法案見ますと、手続の迅速化という観点から、従来、裁判官の職務とされていた事項見さしていただきましたが、かなりこれが裁判所書記官の権限となっておるわけでございますが。
 そこで、まず、この書記官の権限とされていた事項、どのようなものがあり、どう変わってきたのかという点、簡潔に御説明いただければ有り難いと思います。
○最高裁判所長官代理者(園尾隆司君) 今回の破産法案の中で、従来、裁判所の権限として規定されておりましたものを裁判所書記官の権限にゆだねたという事項といたしましては、例えば申立書の審査、補正を命じる処分、それから簡易配当の許可など、幾つかの項目がございます。これは、従来、裁判所書記官が実質的に行っていた事務を明文化したということでございまして、これによって書記官の職責は重いものになってまいりますけれども、事務量の面のみからいいますと、必ずしも増加をするというものではないというようには考えております。
 ただ、今回の破産法案が成立いたしますと破産手続がより利用しやすくなるということでございますので、事件数が増加するということは十分考えられるわけでございまして、これによって書記官事務が更に増加していくだろうというように考えられるところでございますので、今後、この点についてよく研究をしていきたいと思っております。
○木庭健太郎君 おっしゃるように、増えた仕事というか、今まである意味では書記官の皆さんが携わっていたような部門がきちんとある意味では移ったというようなところもございますから、おっしゃるような御指摘だろうと思うんですけれども。
 ただ、やはりこれに併せて、例えば、この前もこれは裁判官のときに議論をいたしましたが、例えばこの書記官の研修の充実の問題であるとか、さらに今回法律をしまして書記官増員いたしましたが、さらにこういった問題、いろんな対策が要るだろうと思います。こういった言わば裁判所の人的、物的の体制整備、これについてどういう見通しを持っていらっしゃるのか、お伺いしておきたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(園尾隆司君) 今回の破産法案が成立いたしますと、書記官の職務の重要性が一層高まるということで、また事務量も増加するというように予想されておりますので、本年度も裁判所全体として大幅な増員が認められておりますが、その中から適切に対処するとともに、また研修についても重点を置いて実施していきたいというように考えております。
 今回の破産法案は、書記官事務という観点から見ますと、例えば法人破産の場合に法人所有のすべての不動産に破産登記をしておりましたものを登記を不要とするということにしましたり、あるいは検察官に破産宣告の通知をしておりましたものを、実質の機能を考えてこれを不要とするというように、不都合を感じておりましたすべての点について適切な改善案が盛り込まれているというように認識をしておりまして、この法改正は書記官自身が待ち望んでおるところであるというように認識をしております。
 したがいまして、このような士気が高まっておるところというところをとらえまして、研修というようなことも徹底して行っていきたいというように思っておりまして、体制は万全に整えていきたいというように思っております。
○木庭健太郎君 話変わりまして、今回の法案、もちろん大事なことは手続を迅速化していこうというようなことを一つの柱にしておりまして、破産債権の届出という問題につきましても、破産手続に参加しようとする破産債権者は債権届出期間内に必要な事項を裁判所に届け出なければならないとしているようでございますが、同時に、破産債権者がその責めに帰することができない事由によって一般調査期間の経過又は一般調査期日終了までに破産債権の届出をすることができなかった場合はその事由の消滅後一か月以内に限り届出をすることができるというふうに、これは百十一条一項の規定でございますが、そんな規定になっているようでございますが、迅速化という観点から、まずこの債権届出制度というのが今回の法案でどのような見直しが行われるのかと、具体的に教えていただきたいと思います。
○政府参考人(房村精一君) 破産手続の場合には配当をすべき破産債権を確定しなければなりませんので、期間を定めてその破産債権を届け出ていただいて、調査期日を開いて問題がないかどうかを調査して確定していくと、こういう手続を取っております。
 現行法におきましては、ただいま御指摘になりましたように、定められました債権届出期間内に破産債権の届出をしなければならないと、こう法律に書いてあるわけでございますが、実は、この期間を経過してもなお現実に届出ができる。しかも、その経過後の届出をした場合、経過後に届出をしますとそのために特別にその債権調査をする期日を開かなければならなくなるわけですが、その債権、特別の調査期日のための費用を負担すれば、経過後であっても届出をして調査を受けて届出期間内に届け出ていた人と同じように配当に参加できると、こういう仕組みになっております。
 また、債権届出期間の経過後であっても、一般の債権調査の終了前に届出をしますと、破産管財人とか他の破産債権者が異議を言わなければ債権届出期間内に届出がされた破産債権と全く同様の取扱いが受けられると。
 こういうことで、法律で届け出なければならないという定めはあるのですが、実際にはそれより遅れてもそれなりに配当を受けられると、こういう仕組みになっております。このため、実務上、債権届出期間経過後に五月雨式に債権の届出がされまして配当手続の実施に支障を来し、結局は破産手続全体が迅速に処理できなくなっていると、こういうことが指摘されておりました。
 そこで、この法案では、先ほど引用されましたように、一般調査期間の経過又は一般調査期日の終了後の債権の届出を制限すると。この調査期間の終了までに届け出ていただくと。ただ、例外的に、破産債権者がその責めに帰することができない事由によって届出ができなかったと、こういう場合にはその事由の消滅後一か月以内に届出をするということで救済を図る、これによって手続を迅速に進行させるようにしようと、こういうことでございます。
○木庭健太郎君 ただ、その責めに帰することのできない事由というのがある程度はっきりしなきゃ、今までと何か変わらないんじゃないかというようなことが起きてくるんじゃないですか。したがって、その責めに帰することできない事由というのは、どう絞り込んでどうするのかということもちょっとはっきりさせておいていただきたいと思います。
○政府参考人(房村精一君) 御指摘のように、この責めに帰することができない事由を余り緩やかにいたしますと従来と変わらなくなってしまうということになりますし、かといって余り厳格に解しますと、これは届出ができませんと最終的には配当が受けられなくなってしまいますので、そのバランスを取らなければいけないということだろうと思います。
 一般的に、こういう手続等で責めに帰することができない事由によって届出ができなかったという場合に想定されておりますのは、地震、火災、洪水などの不慮の天災、事故、こういうことで届出ができなかった、あるいは本人が病気になった、あるいは長期の海外出張等があって届出ができなかったと、こういうような場合には責めに帰することができない事由に該当すると理解されております。
○木庭健太郎君 何かこれ、その事例みたいのは、例えば、法制定後、一覧列記して皆さんに分かるようにするとかいうようなことをするわけですかね。
○政府参考人(房村精一君) これは、従来の会社更生法とかあるいは民事訴訟法等で同様の事由の規定がございますので、そういった場合に認められた先例とそれからこの破産法の手続の特質といったものを考慮しながら裁判所が最終的には御判断になると思いますが、今後、私どもも解説を書きますし、またいろいろなところで解説が出てくる、そういう中でおのずから該当するような事例というのは明らかになってくるのではないかと、こう思っております。
○木庭健太郎君 次に、破産管財人のことについてお聞きしたいんですけれども、今回の法案では、この破産管財人、法人でもなれるということになったようでございます。
 なぜこれ管財人資格を法人にも拡大したのか、その趣旨を御説明いただきたいと思います。
○政府参考人(房村精一君) 破産事件にも様々なものがございますが、中には非常に大規模で複雑な破産事件も増えておりまして、そういう事件については、処理をするために、法律的知識、会計上の知識、さらには財産の管理処分に関するノウハウと、こういったような様々な知識が必要とされる事件がございます。
 このような各分野について一人の人がすべての知識を持っているというのは、なかなかそういう方を探すのは困難でございますので、逆にそういう専門家を擁する法人を破産管財人に選任することによってそういった各種の専門知識を活用して適切に管財業務を遂行していただくと、こういうことを可能にするために管財人の資格を法人に拡大したわけでございますが、なお、民事再生法と会社更生法では既に法人を管財人に選任できるとしておりますので、それに合わせるという面もございます。
○木庭健太郎君 そうすると、具体的にはどんな法人を想定されていらっしゃるのかと、こう思うんです。確かに、大規模、複雑な事件に対応しようとすればもちろんこういった仕組みも入れなければならない、ほかの法律横並びも分かるんですけれども、じゃ、具体的にどんな人が、どんな法人ですか、想定されるのかと。
○政府参考人(房村精一君) そういう意味で、先ほど申し上げましたようないろいろな知識経験を持っている方を擁する法人ということになりますと、現段階で最も可能性が高いのは弁護士法人ということになろうかと思います。あるいは、監査法人等もその事案によってはふさわしいということもあるかもしれません。
 そういった点については、今後、運用に当たる裁判所において各法人の特質と事件の性質を踏まえて判断をしていただけるのではないかと、こう思っております。
○木庭健太郎君 じゃ、最高裁に聞いておきますけれども、この法人という問題、要件とか欠格事項、そんな問題はこれは規則等で定めるようになるんでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(園尾隆司君) 現在までのところ、破産事件の処理で法人を破産管財人にするというような検討がまだされておりませんで、どのような事例でそのような必要性が生じるのかというようなことは、いろいろ御意見も伺いながら研究を重ねていくという必要がある事項だというように思っております。
 現状から申しますと、破産事件につきましては法的に検討すべき事項が大変多いということで、実務経験の豊富な弁護士の中から当該事件に適切な人選をしておるという現状でございますが、その内容について更に的確に幅広く人材を求めるという方法は何かということを今後検討していきたいというように思っております。
 ただ、その内容について規則で定めることを考えているかどうかといいますと、現在、まだその段階まで至っていないということでございまして、余りに形式的に、使うという可能性が低いようなことを形式的に考えてみても仕方がありませんので、いま少しその点は研究をしていきたいというように思っております。
○木庭健太郎君 私も即座に規則で決めろと言っているわけじゃなく、そういったものを実際にどうなるのかということに対して、今度は弁護士法人になるのかどうなのか分かりませんが、そこは一体、参加するときの問題、何を基準に考えればいいんだろうかという問題が起こってくると思うんで、今おっしゃったように、よくこれからそういった問題が出てきた場合の対応、お考えいただいて、御対応お願いしたいと思います。
 それから、これはもう午前中も議論になりましたが、もう一度再確認の意味でお聞きをしておきたいと思うんですけれども、これは債務者の自由財産の範囲の拡大という問題でございます。
 私も今回の破産法案見まして、この債務者の自由財産の範囲がある意味では拡大されたということは私は大きな前進だと思っているわけでございますが、まず、この自由財産の範囲を拡大した趣旨について実川副大臣からお伺いしておきたいと思います。
○副大臣(実川幸夫君) 現行の破産法につきましては、御承知のように、強制執行におきまして差し押さえることのできない財産を自由財産といたしております。
 この差押禁止財産でありますけれども、従来は、金銭については標準的な世帯の一か月間の必要生活費を勘案して政令で定める額とされておりましたけれども、さきの通常国会でされた民事執行法の改正によりまして、この四月一日、今日からですけれども、二か月間の必要生活費を勘案して政令で定める額とされております。
 しかし、破産者におきましては、その全財産の管理処分権を失った状態で生活を送らねばならないことから、個別の財産について強制執行を受けた場合に比べまして生活に必要な資産等を確保することが一般的に困難であると言うことができます。
 そこで、今回の破産法でありますけれども、破産者の生活の原資を確保するために、標準的な世帯の必要生活費の三か月分に相当する額の金銭を自由財産として、破産者の経済的生活の再生の機会を確保することといたしております。
○木庭健太郎君 先ほど民事局長、御答弁で三か月、自由財産としての金額九十九万というお話をされました。何か三か月で九十九万ということになると思うんですけれども、九十九万という根拠、何でしょうか。また、これ別に諸外国と合わせろというわけじゃないですけれども、諸外国、もし分かるのありましたら、よそは一体どんなふうになっているのか、その辺も含めて、なぜ九十九万円かという御説明をいただきたいと思います。
○政府参考人(房村精一君) まず、この九十九万の額の点でございますが、これは先ほど申し上げましたように、民事執行法におきまして、その執行を受ける者の生活を確保するということから差押禁止財産の範囲が定まっております。その差押禁止財産の範囲といたしまして、その標準的な世帯の必要生計費の二か月分を勘案して政令で定める額と、こうなっているわけでございます。それが先ほど言ったように六十六万円ということ、一か月に直しますと三十三万円ですが、この一か月の必要生計費を算定するに当たりましては、直近の統計資料である平成十四年度の家計調査年報、これに掲げられました勤労者世帯の一世帯当たり年平均一か月間の消費支出の額を参考にいたしまして、その他必要な調整を加えて三十三万円という額を算出したわけでございます。
 この改正前の政令ではこれが二十一万円となっておりましたが、その政令の算定も同じような方法でやったわけでございます。当時のように物価上昇傾向にあったときと現在のように下降傾向にあるときでは完全に同じ方法というわけにはまいりませんが、ほぼ同じような形でその必要生計費を計算いたしまして、それに基づいて額を算出しております。
 これを三か月分にしたのは、先ほども申し上げましたが、個別執行で二か月分を必ず手元に残してあげないと困るという場合、また個別執行の場合ですと執行を受けてない財産もほかにもあるわけでございますが、破産の場合には言わば全財産を投げ出す、手元に残るのはその自由財産だけということでございますので、やはり生活を維持させる、あるいは再起を図るということになりますと、個別執行で二か月分を確保させるのであれば、やはりそれより一か月分程度は増やさないと当事者に酷であろう、こういうようなことで三か月分といたしたわけでございます。
 それから、諸外国でその自由財産がどうなっているかということでございます。
 これも国によって様々でございますが、一番私どもにとって身近なアメリカを例に取りますと、これはアメリカでは倒産につきまして、アメリカの連邦倒産法と、それから各州法がございまして、また州によって連邦倒産法の適用を排除したり重畳的であったり、いろいろ様々で非常に複雑でございますが、例えば例を挙げますと、一般的に自由財産の範囲が最も狭いと言われておりますメリーランド州法、これで見ますと、動産については、生活必需品である衣類、寝具等のほか、三千ドルですね、仮に一ドル百十一円としますと三十三万円ということになりますが、それ以内の現金が自由財産で、不動産は自由財産とならないと。倒産後の新得財産はこれは自由財産となる。これは日本と同じでございます。それから、自由財産が最も広いと言われておりますテキサス州法になりますと、六万ドル、ですから六百六十六万円ですか、これを超えない範囲で破産者が選択した任意の動産、債権、住宅、宅地についてはそのうちの一つが自由財産となるということでございますので、そのアメリカの中でも相当開きがございます。
 それから、ヨーロッパ諸国は一般に自由財産の範囲はアメリカに比べますと相当狭いと言われております。
○木庭健太郎君 その額が本当に適切なのかどうかというのは議論も分かれるし、また本当にその個人の再生ということに主眼を当てた場合に、本当にこの三か月九十九万という数字が妥当だろうかという思いは正直にあります。ただ、そのときに、先ほどもこれ御答弁の中でありましたが、一つはこういう形で自由財産を認めるとともに、もう一つ必要なものということであれば、その自由財産の今度は範囲の拡張という制度を、今回の法体系の中ではあるんだと、こういう御答弁もありました。
 その意味で、この自由財産の範囲の拡張という考え方を取り込んだ理由、並びにこの拡張ということは、これは裁判によってどのような財産が自由財産となり得るか、例示でも結構でございますが、先ほど車のお話もあったようでございます。そういった形のお話も是非いただきたいし、またこの自由財産の範囲の拡張はどのような場合に認められるのかと、この拡張という問題について、ちょっと整理をして御答弁をいただいておければと思います。
○政府参考人(房村精一君) 先ほども申し上げましたが、自由財産というのは基本的にその破産者の生活の維持あるいは再起のために認められているわけでございますが、これは破産者の生活状況というのは様々でございます。非常に家族も多くて扶養のためにお金が掛かるという方もいらっしゃるでしょうし、サラリーマンとしてそれなりの収入を破産後も確保できているという方もいらっしゃるでしょう。そういう様々な中で、一律にその自由財産として確保できる部分を余りにも大きく取りますと、これはその自由財産を拡大すれば債権者が配当を受けられる額は減るわけでございますので債権者にとって酷なことになる。そういうようなことから、自由財産の範囲を一律に定める場合には最小限度必要と思われる範囲にとどめまして、あとは個別的な破産者の状況に応じて、必要がある場合にはこれを拡張すると、こういう仕組みにしたわけでございます。
 この個別に破産者の事情によって広げていくということになりますので、例えばその土地の状況から生活のためにどうしても自動車が必要である、あるいはその人が個人で事業を行っていて、そのためには車がなければ、あるいはこういう機械がなければ仕事ができないと、こういうような事情が認められれば、そういった自動車であるとか設備のようなものを自由財産として認めるということは十分あり得ようかと思います。
 また、先ほども申し上げましたが、非常に家族が多くて扶養のために費用が掛かる、あるいは病気等で働けないということであれば、それを考慮した自由財産の拡張ということも考えなければならないと思いますし、中小企業を経営していて会社の倒産に合わせて自分も破産してしまったというような場合に、次の生計の手段を見付けるまでの期間がやはりサラリーマンとして継続的な収入がある方に比べれば当然長くなるわけでありますので、そういった要素も自由財産を拡張する一つの要素になるのではないかと、こう思っております。
 そういった個別の事情を考慮いたしまして裁判所が判断をするわけでございますが、ただ、自由財産を拡張いたしますと、結局拡張された分は破産債権者の配当に回らないと、常にそういう利害の対立がございますので、その状況をよく見極めまして裁判所において適切に判断をしていただけると、こう思っております。
○木庭健太郎君 本当にどう双方に配慮するかという問題も含め、またモラルハザードという面もあるでしょうし、その一方でやはりこういったせっかく法を変えるときは、これまである意味では非常に再建というか再起に対しては難しかった面がようやくこの法律でできるということもこれはこれで一つあって、なかなか難しい判断になるとは思うんですが、是非そこはせっかく作った制度、一つは自由財産の位置付け、さらにこの拡張という制度まで設けたことの意味合いを勘案しながら手続をいろいろ行っていただきたいと、このように思うものでございます。
 次は、免責の問題でお伺いをしておきたいと思います。
 もうこれも、要するに個人の経済生活の再生という点から考えるならば、その後の免責手続というものが非常に重要だというのは、これは論をまたないと思います。
 しかし、これまではどうだったかというと、この免責の決定というのは、一年とか二年掛かったって、それはそんなこともあるんじゃないのというようなことも言われたように、時間が掛かっていると。今回、その手続の迅速化の観点から、この免責についても、これは東京地裁で行われている方式に倣ってある意味では迅速化が図られるというようなこともお聞きをしておりますが、じゃ、そこで、破産手続、申立てから免責が得られるまでの期間はどのくらいになる見込みなのか、御説明を最高裁からいただきたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(園尾隆司君) まず、現状から御説明をいたしますと、破産申立てから免責の決定までに掛かる時間につきましては、事件によって違いが大きいという事情はございますが、四、五年前までの通常の認識としましては、多くの場合五、六か月掛かるというような認識が一般的だったように考えております。
 しかし、その後、裁判所と弁護士会の協議が重ねられるというようなことがございまして、運用の改善についてそれぞれの裁判所で努力が払われておりまして、その結果、最近では四か月以内に免責決定がされるという事件が極めて多くなっておるというような日弁連の調査の結果も出ておるところでございます。
 さらに、東京地裁や大阪地裁では、即日面接といいまして、破産申立ての当日に裁判官が申立代理人と面接をするというような迅速な方法も考案されておりまして、その中で特に問題点がないと判断されました事件については、申立てから二か月半程度で免責決定がされるという事件も相当数出ているところでございます。これが現状の最も早い手続ということになります。
 そういたしますと、全国の破産申立てから免責決定までの審理期間というのが、最も早い手続に比べてもかなり早くなっておるというところでございまして、これはもう最後の詰めの段階に入っておるというような状況で認識をしておりまして、とにかく工夫できるところはあらゆる工夫をしてやっていこうというようなことで、全国の各地でもそのような検討が現在されているところでございます。今までの検討の延長線上で、更に努力がされるというように認識をしております。
○木庭健太郎君 これもまあ一応聞いておきます。
 免責手続中に債権者が破産者に対して強制執行することで再起が阻害する例が多いというお話もありましたが、この点について見直しがなされたか、確認しておきます。
○政府参考人(房村精一君) 御指摘のように、現行の破産法におきましては、破産手続が終了してしまいますと債権者の個別的な権利行使を禁止する効力が失われますので、その後、免責許可の決定が確定するまでの間に強制執行がされますと弁済をせざるを得なくなると、こういう事態が生じております。
 今回、破産法案におきましては、この免責許可の申立てがなされている場合には、破産手続が終了いたしましても、免責許可の申立てについての裁判が確定するまでの間、強制執行を禁止するということとしておりますので、そういった個人の再生の機会が妨げられるということはなくなると思っております。
○木庭健太郎君 もう一つこの免責の中で、養育費債権が非免責権とされたのはなぜなのかという点と、その関連でお伺いしておきますが、債権者が破産に至る前でも養育費債権の保護の必要性は高いと思うんですけれども、今回の民事執行法の改正、四月一日施行されます、養育費を払わない相手にはどのような方法が取れるようになったのかと、併せてこの点御答弁をいただいておきたいと思います。
○政府参考人(房村精一君) 免責の場合は破産債権の支払を免除されるということになるわけでございますが、債権の中にはそういった支払わなくていいとすることが相当でないものがあるわけでございます。そのようなものとして、現行法では、租税債権もそうでありますし、あるいは労働者に対する給与債権というようなものも非免責債権とされまして、免責許可決定があってもなお残るわけでございます。
 扶養請求権、これにつきましては、やはり扶養を受ける者の立場からすればその生活上の必要性は非常に高いわけでありまして、保護をする必要があろうかと思います。そういう点では、労働者の給与債権と基本的に変わらないのではないかと。そういうことを考えまして、今回免責制度を見直す中で、この扶養料請求権につきましても非免責債権とするということといたしました。
 なお、執行の関係でございますが、昨年の民事執行法の改正で、この扶養義務等に基づく請求権につきましては、これは大体月々生ずる債権でありまして、しかも比較的少額で、それを強制執行する場合に、その都度強制執行の申立てをしていたのでは非常に負担が重いということから、一度でも遅滞、履行遅滞があった場合には将来分の扶養債権も含めまして差押えができる、差押えの対象としては給与等の定期給付の債権を差し押さえると。そういたしますと、一度申立てをして差押えをしますと、その扶養義務の支払日が到来して次に給料日が来ますとその中から支払を受けられるということで、一回の申立て、差押えによりまして毎月扶養の取立てが可能になると、こういう仕組みをせんだっての民事執行法の改正で認めていただいたわけでございます。
 また、この国会に同じく執行法の改正をお願いしているわけでございますが、その中では、今のような強制執行で申立て、差押えをいたしますと、会社側にその差押えの事実が知られまして会社にいにくくなると、そういうことを恐れて差押えができないというような指摘を受けていたものですから、こういう扶養義務につきましては間接強制によって支払を心理的に強制して支払を確保すると、そういうことであれば会社に知られて失職をするという恐れもないと、こういうような改正もこの国会でお願いをしているところでございます。
○木庭健太郎君 もう一点、これも先ほど論議を角田先生がしていましたけれども、破産者の資格制限の問題でございます。
 今回、法改正、法改正というか新たな破産法になるわけですけれども、見る限りは、やはり資格制限というものがかなり幅広にこれはなっていると。もちろん、かなり、先ほども御説明あったように、法律、かなりの法律自体に資格制限の規定は残っているんだからという御説明もいただいたところでございますが、ただ、私が感じるのは、何か我が国の場合、こういった資格制限というのは、例えば破産者というものを見たら、これは懲罰的な考えがあって、破産者イコール駄目という形での広範囲な制限が掛けられているというようなイメージがぬぐえないんですよね。それをある意味では踏襲しているような、せっかく新しい法になりましたが、そのまま受け継いでいるような気がしてならないんですけれども、今回もこういうある意味では広範な資格制限になっている趣旨を伺っておきたいと思います。
○政府参考人(房村精一君) これは先ほども申し上げましたけれども、破産法自体におきましてはできるだけそういう懲罰的色彩を持たないということで、現行法におきましても今回の破産法案におきましても、破産に伴う資格制限等の定めは一切ございません。
 ただ、各種の資格を定めている法律で、破産して、しかも復権を経ていない者について資格制限をしている例が相当数ございます。この理由は、これは各法律によってその考え方は様々だとは思いますが、一般的に申し上げますと、やはり他人の財産の管理等を行う資格に関して、自らの財産をきちんと管理できずに破産した者はふさわしくないと、こういうような考え方が一つあるのではないかと。そういう例としては、後見人であるとか保佐人であるとか、あるいは会社の取締役と、こういった者についてはそのような考え方が背後にあってそういった規制になっているのではないかと思われます。また、依頼者との信頼関係が必要とされると、こういう、特にその仕事が弁護士であるとか公証人であるとかと、そういう場合にも破産、で、復権を得ていないということがその資格制限の理由とされているのではないかと思われます。
 これはそれぞれの法律でのお考えでございますので、私どもとして直接この今回の破産法の改正に当たってどうこうするということではございませんが、一応、現状の考え方は多分そういうことではないか、こう思われます。
○木庭健太郎君 おっしゃるとおりの部分はあると思うんですけれども、ともかく今回の破産法案の趣旨というのは、債務者の財産等の適切かつ公平な清算と同時に、債務者について経済生活の再生の機会の確保を目的とするというために作ったわけですよね。
 確かに、破産した方が弁護士だとか後見人であるとか、それは確かになかなか難しい面はあると思うんですけれども、私は、例えばこの資格制限の中に会社の役員という問題が入ってくると。ここまで本当に活動を制限しなければならないのかと。この法を作ることの目的と、逆に言えば、こういう制限というのが矛盾をしていないかというような気持ちにもなるような面があると思いますし、お聞きしましたら、法制審議会がまとめた会社法制の現代化に関する要綱試案ですかにおいてもこういった問題が取り上げられているというふうにお聞きもしております。
 こういった問題、今後どのような検討を行うつもりでいらっしゃるのか、この問題で説明を伺っておきたいと思います。
○政府参考人(房村精一君) 会社の取締役につきましては、御指摘のように、現在の破産の宣告を受けて復権をせざることということを欠格事由とするかどうかについて見直す方向で検討を行っているところでございます。これは、今後の検討によるわけでございますが、基本的には、取締役にどういう者を選任するかということはそれぞれの株主が判断をすればよろしいことではないかということがその考え方の背後にあろうかと思っております。
 そのほかの点については、またそれぞれの法律を所管するところのお考えになろうかと思いますが、少なくとも破産法においては破産というものを懲罰的にとらえずに、正に個人について言えば、再起の機会という具合にとらえていただきたい、こう思っておりますので、そういった趣旨を踏まえて、各資格制限についても御検討をいただければと、こう思っております。
○木庭健太郎君 私の持ち時間はあと少しでございますので、今後の課題ということで民事局長にお伺いしておきますが、今回の破産法の見直し、新しく作り替えると言ってもいいんですけれども、破産法制の全面的な見直しの作業の総仕上げというふうに思っていらっしゃると思いますが、まだ残された課題、例えば特別清算の問題等はどういう御認識を持っていらっしゃるか、そして今後こういった残された課題についてどんなふうに検討していかれるのか、どうスケジュールを考えていらっしゃるのか、簡潔に述べていただきたいと思います。
○政府参考人(房村精一君) 私どもとしては、今回の破産法の全面見直しで一つの大きな山は越したと思っておりますが、御指摘のように、なお株式会社を対象とする会社整理手続と特別清算手続が残っております。
 この会社整理手続につきましては、もう民事再生法が制定されておりますので、その役割は終わっているものと、こう考えておりまして、いずれ廃止することになろうかと思います。特別清算手続については、なお現在も活用されておりますので、今後これをどういう形で充実していくかということで、現在法制審議会で検討中でございます。これにつきましては、会社法制全般の見直しを現在進めておりまして、これを平成十七年の通常国会には出したいと思っておりますが、会社法制の現代化に合わせまして、この特別清算手続についても検討結果を踏まえた見直しを含めて国会に提出をしたいと考えているところでございます。
○木庭健太郎君 大臣に最後にお伺いします。
 こうやって抜本改正というか、新たに出直す法律もでき、私は大きな前進を見たと思っていますが、その法律はできて、仕組みはできたとしても、一番大事なのは、この悩んでいる側、多重債務者とか、個人、個人破産する人もそうですけれども、要するに、どこに相談に行けばいいのかという、現実は入口のところが本当は一番の悩みなんです。司法ネットの問題ともかかわりはあるんですけれども、正に相談するまでどうなるか、この手続の入口が極めて私は重要だと思っておりますし、これからこういった入口をどうするかという問題が実はある意味では一番の課題だろうと思いますし、これから本委員会で審議する司法ネットの考え方、密接にかかわる問題でもあろうと思います。そういったことも含め、総合的な視点から大臣の所見を求めて、私の質問を終わります。
○国務大臣(野沢太三君) 私も、多重債務を負い苦しんでおります個人債務者の方々に対しまして、破産法等の法的手続を整備することと並びまして、今御指摘のように、適切な手続への道案内を行う相談体制が整備されることが極めて重要であると認識しております。
 これまでも、弁護士会や各行政機関、また各政党におかれましても、それぞれ相談窓口を設けられましてこのような方々のニーズにこたえられてきておりますが、相談窓口の設置あるいは情報の集約整理を更に一層進めまして、取り付きやすい形に整備していかなければならないと思います。
 委員御指摘のこれからの課題となっております司法ネット構想、すなわち総合法律支援構想は、正にこのような要請にこたえる施策として一番今必要なものと考えておりますが、司法を国民により身近なものとするために、民事、刑事を問わず、あまねく全国において法による紛争の解決に必要な情報やサービスの提供が受けられるような総合的支援の実施と体制の整備をしようとするものでございます。
 総合法律支援の中核として新たに設けられる日本司法支援センターにおきましては、関係機関と密接に連絡しながら、相談窓口における受付、情報の提供などの業務を行いまして、多重債務を負う方々も支援センターに相談し、適切な情報を得ることによりまして必要な手続にスムースにたどり着くことができまするよう、これからしっかりと取り組んでまいります。
○木庭健太郎君 終わります。
○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 法案に入る前に、大臣に二点お尋ねをいたします。
 一つは、昨年の大臣就任時にもお聞きをいたしました閣僚の憲法尊重擁護義務についてであります。
 大臣は、三月の三十日に開かれました憲法調査推進議員連盟の総会で副会長に就任されたとお聞きをしております。法務省設置法は、基本法制の維持及び整備、法秩序の維持ということをその任務と明記をしております。その組織の長である法務大臣が、九十九条で、憲法の九十九条で憲法尊重擁護義務を負う閣僚の中でもとりわけ責任は重いと思います。その法務大臣が在任中にこういう改憲論議を進める組織の役職に就くということは、私は、法秩序への信頼を揺るがす重大な問題だと思いますし、これは辞任をされるべきだと思います。
 事実関係と認識についてお伺いをします。
○国務大臣(野沢太三君) 私は、国務大臣を拝命する前には参議院におきます憲法調査会の会長を務めておりました。そのときに、議員連盟の方からの御要望もありまして、御推薦をいただき、ただいま委員御指摘の議員連盟の副会長を拝命しておりまして、これは大臣発令と同時に実は辞めたと思っておったんですが、そのまま実は残っておったようでございますので、これは早急に手続を取りまして辞任をいたしております。
 憲法擁護義務は、委員御指摘のとおり、極めて重要な私の任務でもございますが、あわせまして、現行憲法につきましては、九十六条におきまする改正の手続等の課題もございまして、これからも各政党の御意見、それから衆参両院におきます憲法調査会の議論の成り行き、さらには国民世論の動向等を踏まえまして、法務省としては真摯に取り組んでまいるつもりでございます。
○井上哲士君 辞任をされたということでありました。
 司法制度改革の推進本部の顧問でもあります佐藤幸治名誉教授は、「憲法」という本の中で九十九条に関連してこういうふうに書かれております。「憲法およびその下における法令に従って行なわれるべきその職務の公正性に対する信頼性を損なうような言動があるとすれば、本条の義務に反する可能性があろう。その意味で、閣僚の憲法改正に関する発言には、国会議員の場合と違った慎重さが求められるということになろう。」と、こういうふうに指摘をされております。
 法務大臣としてこの点を改めて肝に銘じていただきたいと思いますが、改めていかがでしょうか。
○国務大臣(野沢太三君) 御指摘のとおり、私も憲法擁護の第一番目のやっぱり仕事をしなければならない立場にあることは重々わきまえておりまして、今後ともそのような取組をしっかりしてまいるつもりでございます。
○井上哲士君 もう一点、無年金障害者に関する訴訟についてお尋ねをいたします。
 三月二十四日に東京地裁が、いわゆる学生無年金障害者について救済措置が講じられてこなかったことは憲法違反だという判決を下しました。私たち立法にも、そして行政に対しても、司法から厳しい指摘がなされたわけであります。
 昨日、超党派の無年金障害者問題を考える議員連盟の総会がありまして、緊急決議を行いました。そして、今国会での法的な措置を講じて障害者年金を支給できるようにしようじゃないかということ、もう一つは、政府に対して控訴の断念を強く希望するということを決議をいたしました。
 ところが、昨日の新聞の朝刊などでは政府がもう控訴をするということを決めたというような報道もされておりまして、大変私は憂慮をしております。無年金障害者の方は障害を抱え、生活苦もある、その上訴訟を闘うということで、三重の困難があるわけでありまして、これ以上引き延ばすということは私は人道問題にもなると思います。
 国の訟務を担当する法務大臣として、これはやはり控訴しないということでイニシアチブを私は発揮をしていただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
○国務大臣(野沢太三君) 控訴をするか否か、これは関係機関と十分協議して進めるべきことということで、その報道があったことは私も承知しておりますが、まだこの問題、これからの取組でございます。
○井上哲士君 ハンセンの訴訟では控訴をしませんでしたし、ヤコブの訴訟では国が和解に応じました。やはり、政府が反省すべきことは反省をするということは、むしろ行政に対する信頼を高めることに現実に私はなっていると思います。そういう点で、人道問題でもありますし、是非御決断を政府に強く求めておきます。
 その上で、法案についてお伺いをいたします。
 今、二極化とも言われる経済状況があります。午前中の答弁の中でも、この間の破産の原因で収入減少型が多いという答弁もありました。それから、破産の裁判を担当されている裁判官の感触として、景気が良くなったという実感はないと、こういう御答弁もありました。
 中小企業を中心に依然として倒産が多発をしているという下でありますが、そういうときだからこそ、労働者、中小零細業者、そして様々な個人、やはり経済的に弱い立場の人への保護というのを強める必要があると思いますが、この改正案の中にはそういう配慮がどのように全体として貫かれているのか、大臣にお聞きをいたします。
○国務大臣(野沢太三君) 正に、今回の破産法の正に全面これ改正といいますか、新しく提案していると言ってもいいわけでございますが、破産手続におきます経済的弱者に対する配慮という観点からどうなっているかということでございますが、まず労働者が有する労働債権のうち、第一に、未払給料債権につきましては破産手続開始前三か月間に生じたものを、また第二番目に、退職手当の請求権につきましては退職前三か月間の給料の総額に相当する額を、それぞれ財団債権として破産債権に先立ち随時弁済を受けることができるようにしております。
 次に、労働債権のうち財団債権とならない部分につきまして、その返済を受けなければ労働者の生活の維持を図るのに困難を生ずるおそれのある場合には、裁判所の許可を得て配当手続の前に弁済を受けることができるようにしております。
 また、破産法案では、中小企業の経営者を含め経済的に破綻した個人の再起を容易にするため、破産者が破産手続開始後も手元に残すことのできる自由財産の範囲を拡大するとともに、個別の事情に応じまして裁判所が自由財産の範囲を拡張することができる制度を創設しておるところでございまして、弱者配慮の点でも十分に御期待にこたえられるものと確信をいたしております。
○井上哲士君 弱者配慮の一番に労働債権の確保のことが挙げられました。私も、何度となくこの委員会で取り上げてきた問題でありまして、大変大きな前進だとは思っております。
 今回、労働債権の一部を財団債権に格上げをし、租税債権の一部を格下げをしたわけですが、その立法趣旨についてまずお伺いします。
○政府参考人(房村精一君) まず、労働債権の格上げの点でございます。
 これは、労働債権は言うまでもなく労働者の生活の基盤となるものでありまして、破産手続におきましてもその保護の必要性は高いということでございます。実体法上、一般の先取特権を与えて他の債権に先立つようにしておりますが、破産法におきましても、現行法の下では優先破産債権としてできるだけの弁済を受けられるような配慮はしているところでございます。
 ただ、現実に租税債権の全額が財団債権とされていることもありまして、労働債権まで配当が行かないという事態が相当数あるという御指摘も受けていたわけでございます。そういうことから、今回、破産法を見直すに当たりまして、このような労働債権の保護を破産法の範囲内でできる限り充実をさせるということを考えたわけでございます。
 破産法の債権の順位というのは、やはり実体法の債権の順位、これを全く無視するわけにはいかない。やはり、実体法で債権について弁済の順位が定まっておりますのは、これはすべての債権が弁済を受けられるのであれば順位を問題にする必要はないわけでありますので、実体法で債権の順位を定めているということは、全額の弁済が受けられない場合にどちらを優先するかということを定めているわけでございます。正にその典型例が破産の場合でございますので、そういう実体法上の債権の順位というものを全く無視した破産手続の在り方というのはあり得ないだろうと思っております。
 ただ、そうはいいましても、やはり破産法独自の判断が可能な部分もございますので、そういった実体法の債権の優先順位を前提としつつ、破産法の範囲内でどこまで労働債権の保護が図れるかという観点から検討した結果、今回のように、未払給料債権については破産手続開始前三か月間に生じたもの、それから退職手当の請求権については退職前三か月の給料の総額に相当する額、これを財団債権に格上げをして最優先で弁済を受けられる、しかも財団債権としての順位は租税債権と同順位ということにしております。
 一方、租税債権につきましては、何といっても国あるいは公共団体の財源として最も重要なものでございますので、これを適正に徴収するということは最大の関心事あるいは重要な事項でございます。
 そういう観点から、現在、その総額が財団債権とされているわけでございますが、先ほども申し上げましたように、租税債権には自力執行権が与えられております。したがいまして、これを適切に行使して自ら租税債権の満足を得る道が用意されている。この自力執行権の行使をある程度怠っていて、そして破産が生じたときにその全額を財団債権として破産財団から持っていくということはやや相当性に欠ける面があるのではないかと、こういうことから、法定納期限一年を経過したものについては財団債権から外しまして破産債権に順位を下げると、こういう改正をしたわけでございます。この両者が相まって、従来に比べますと相当労働債権の保護が図られるということになろうかと思っています。
○井上哲士君 労働債権の保護が拡大をしていくわけですが、じゃ、どれが労働債権になるかという問題があります。
 先ほども議論がありましたし、民法の一部改正のときにも随分細かく議論をいたしましたので繰り返す気はないんですが、民法で言う使用人と同じなんだという先ほどの御答弁もありました。いわゆる手間請労働などの中には、例えば屋号でやっているけれども実際には労務提供の場合、それから法人を名乗っているけれども実際にはもう家族みんなで労務提供をしているとか、こういう場合もこういう労働債権になり得るんだなということで前回もお聞きしたわけですが、そういうことで確認してよろしいわけですね。
○政府参考人(房村精一君) 御答弁の前に、先ほどの答弁で一か所言い間違えましたので、租税債権の範囲につきまして、法定納期限と申し上げたんですが、これは具体的納期限の誤りですので、お許し願います。
 それから、使用人、あるいは破産法で給与債権として保護されるかどうかという点でございますが、これは御指摘のように、法的な契約形態ではなくて実態に着目して判断をするということになりますので、実態がそうであれば入るということでございます。
○井上哲士君 そうやって格上げがされるわけですが、ただ、これの範囲で十分なんだろうかという議論もあります。会社更生法並みに六か月分を上げるべきではないかと、こういう議論もありますが、この点いかがでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) 御指摘のように、会社更生法では給与債権のうち六か月分、また退職金についても六か月分あるいは三分の一の多いものというものを共益債権としております。この今回の破産法案を議論したときにも、法制審議会におきましても、会社更生法並みに六か月分を財団債権とすべきではないかという御意見もございました。
 ただ、これは会社更生法と破産法との性質の違いがまずございます。会社更生法の場合には、これは何といっても会社をこれから再建していくと、そういう意味で労働者に働き続けて再建に協力をしていただく必要がある、そういうことから、できるだけ労働者に労働意欲を持って協力をしていただくために労働債権を優遇すると、こういうことが考えられたわけでありますし、そういった労働債権を優遇することによって労働者が協力し、会社が再建されれば、他の更生債権者にとっても結局自分の債権の満足を得られると、こういう意味で労働債権を優遇することに共益性があると、こういう判断がされております。そういったことから六か月分を共益債権としているわけでございます。
 ところが、破産法におきましては、基本的に会社を清算する、労働者の雇用関係もすべて終了するというのが原則でございます。そうなりますと、特に退職金等について考えますと、これをすべて財団債権に繰り入れていくということになりますと財団債権が非常に増えてしまう。財団債権が増えるとどういうことになりますかというと、先ほども申し上げましたが、財団債権が非常に増えておよそ財団で手続費用すら賄えないということになりますと、そこで破産を廃止せざるを得なくなる。そうなってしまいますと、結局は財団債権になっても十分な満足が得られない、ましてや破産債権者の方は一切の満足を得られないということになります。
 ところが、破産手続を進めまして、破産管財人が適切な努力をして、例えば否認によって財産を取り戻すとか、あるいは債権の回収に努めて相当の債権の回収をすると、あるいは財産を任意処分することによってより多くの資金を獲得すると、こういうようなことが現実に破産手続の中では行われているわけでございますが、廃止になってしまいますとそういうことが一切できなくなってしまう。そういうことを考えますと、やはり余り破産廃止が増えてしまうということは結局は債権者にとってもマイナスになる。そういうことを考えますと、破産手続において会社更生並みに労働債権を財団債権にするとかえって廃止が増えて、債権者にとってもマイナスではないかと、こういう議論がされたわけでございます。
 そういった会社更生と破産の手続の違い、あるいはまた実態の違い、こういうことを踏まえますと、やはり余り労働債権を財団債権に持っていくということも難しいという、その中でぎりぎり労働債権の未払分については三か月分、かつ退職金についてはやはり三か月分と、そういうものを財団債権に繰り上げるということで、可能な範囲でできるだけの労働債権の保護を図ろうと、またこのことによって破産廃止がそれほど増えることはないのではないか、こういうような観点で今回の判断をしたわけでございます。
○井上哲士君 他の債権者との関係などの御議論の中で三か月になったということでありました。ただ、財団債権に三か月、上がったと。しかし、これ自身が不十分なときには、その中で労働債権と租税債権が競合するということが十分に起こります。そうしますと、単純に案分をするということになりますと、結局、労働債権についても三か月分は確保できないということが起こるわけで、今回の改正の趣旨である労働債権の一層の確保ということに必ずしもつながらない場合が出てまいります。
 先ほどの議論の中で、フランスのように、いわゆるスーパー先取特権のようにはなかなか現状ではすぐにいかないということでありましたけれども、しかし少なくともILOの百七十三号条約は、労働者債権については、国内法令により、特権を与えられた大部分の債権、特に国及び社会保障制度の債権よりも高い順位を与えると、こういうふうになっているわけですね。
 今回は同列に並べたわけでありますが、この財団債権の中でそういう競合をした場合に労働債権をこの租税債権よりも優先をすると、こういうやり方も必要だと思うんですけれども、この点はどうでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) 租税債権の扱いということでございますが、現行法では、何度も申し上げますが、やはり国あるいは地方自治体の財源として租税が非常に重要な意味を持っているということから、その租税債権については一般の私人間の債権、私債権に比べて優先する地位が与えられているわけでございます。
 先ほども申し上げましたように、倒産手続の中で債権の順位を考える場合には、そういった実体法上の優先順位を無視してこれを決めるというわけにはまいりません。ただ、倒産手続の特殊性から、ぎりぎりの範囲で一定の債権を優遇するということは可能なわけでありまして、更生債権あるいは今回の破産法案においては、そういう意味で一定範囲の労働債権を共益債権あるいは財団債権といたしまして、租税債権に並ぶ地位にまで引き上げているわけでございますが、これはやはり更生手続あるいは破産手続を円滑に進めるということと労働債権の保護を図るという、そういう政策的判断に基づいてぎりぎり優遇をした結果でございます。
 ただ、これを更に進めまして、実体上優先する地位にあるものを逆転して劣位に置くというのは、やはり法体系を考えますとこれは難しいだろうと思います。そういうことから、今回もぎりぎりのところまで努力をするということで、このような財団債権化をしたわけでございます。
○井上哲士君 労働者にとってはこの労働債権というのは事実上唯一の生活の糧でありますけれども、租税、社会保障の重要性はもちろんでありますが、しかしいろんなまだあるわけですね。そういう点で、私は更に踏み込むことが必要だと思うんです。今ぎりぎり、ぎりぎりというお話がありましたけれども、多分国税庁との関係でのぎりぎりの折衝があったのかなというようなことも聞いて感じました。
 そこで、国税庁に来ていただいておりますのでお聞きをするわけですが、朝の議論でも、今度の法案が通ったことによって、逆に一年を超えた滞納についてむしろどんどん差押えをしたりするんじゃないかと。朝の議論では国税庁というのは何をするか分からぬぞなんという発言もありました。そういう懸念の声も私ども聞くわけなんです。
 そこでまず、こういう租税債権滞納処分の今の考え方、そして手順というのはどのようにされているのか、いかがでしょうか。
○政府参考人(徳井豊君) 国税が納期限までに完納されず滞納となった場合には、五十日以内に督促状による督促を行いまして、その督促状を発した日から十日を経過してもなお完納されない場合には徴収職員は差押えをしなければならないと定められております。
 もっとも、実際の滞納整理に当たりましては、納税者の生計の維持や事業の継続等に配慮することも必要でございます。このため、滞納発生時点におきまして明らかに納税に対する誠意が認められないといった場合を除きまして、通常は、督促後、生計の状況や事業の状況を聞くなどいたしまして納税者の実情をよく把握した上で、分割納付などの自主的な納付を慫慂しております。
 そして、自主的な納付が見込まれない場合や、分割納付の約束が履行されないような、そういった場合には、差押えが必要かどうか判断をした上で、法令に沿った適切な処理に努めているところでございます。
○井上哲士君 事業の継続を勘案してということがありました。先ほどの懸念のように、一年を超えているというものがどんどん差押えをされるということになりますと、正に事業の継続が困難になりまして、本改正の意味が全くなくなるということになるわけですね。
 そこで、今そういう配慮をするということがありましたけれども、こういう改正がされたからといって、そういう今の差押えなどについての運用上を変えると、こういうことはないわけですね。
○政府参考人(徳井豊君) 今回の改正案が施行された場合、破産手続における租税債権の地位が一部引き下げられまして国税の徴収確保という点で影響があると考えられますが、滞納整理に当たりましては納税者の生活の維持や事業の継続等に配慮することは今後とも必要であり、滞納が発生したからといって早期に一律に差押えをするというのではなく、引き続き納税者の実情に即した適切な処理に努めていきたいと考えております。
○井上哲士君 本法の改正の趣旨にのっとった運用を強く求めておきます。
 どうもありがとうございました。
 その上で、更にお聞きをしますが、法案では、優先的破産債権となるべき租税債権について、滞納処分の続行を認めているということになっております。そうしますと、結果的には財団債権と事実上異ならないことになってしまうではないかと、こういう指摘もされております。そうしますと、租税債権を一般優先債権に格下げをする意味が大きく減殺されることになるのではないか、滞納処分については失効ないし中止をするべきじゃないかと、こういう指摘もされておりますが、この点いかがでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) 御指摘のように、破産手続開始前に滞納処分による差押えがされている場合、この法案ではその続行を認めることとしております。
 これは実体上、実体法上、差押えまで進んでおりますと、その後そのものが処分をされましても、差押えに基づく換価処分によりまして最終的に優先的にその租税債権の満足が得られると、こういう仕組みになっております。
 したがいまして、これは他の権利と比較いたしますと、抵当権等の権利が付けられておりまして、それに基づいて優先的な弁済を受けられる、言わば物的担保権者と同等の地位に立っていると評価することができるわけでございます。
 御承知のように、担保権等の抵当権、失礼、抵当権等の担保権を持っている者につきましては別除権者として別途権利を行使するということが破産法上認められているわけでございますので、法律的にそれと同等の地位にあります差押えまで進んだ租税債権について、これを異なる扱いをするということは法律的にはなかなか理屈が通らない、やはりその続行を認めて優先的地位を認めるということがその結論とならざるを得ないのではないかと、こう思っております。
○井上哲士君 別除権については先ほども議論もありました。今回はこの八十年ぶりの改正ということでありますけれども、そういう大きな体系も含めて、今後ともこれは議論、検討をしていただきたいと思います。
 さて次に、債権者集会の問題についてお聞きをいたします。
 午前中も債権者集会について立法者の方について御質問がありましたけれども、私はむしろ運用についてお聞きをいたします。
 改正案では、裁判所の判断で債権者集会を開かないことができるということになっております。しかし、この債権者集会というのは非常に大きな意味を持っていると思うんですね。
 例えば、先ほどありました請負的就労者の場合、自分は請負なので自分の債権が労働債権だと思っていらっしゃらない方というのは随分現実にはいます。そういう方が債権者集会に来る、そして、例えばそういう関係の労働組合の方などが発言をされるのを聞いて、ああ、自分の働き方というのは実は労働債権なんだということを分かって、そういう回収の取組に参加をされるということも随分あるわけですね。債権者集会がなくなりますと、こういう機会が奪われることになりかねないということがあります。
 そこでまず、その現場で運用にかかわってこられた立場から、この債権者集会の重要性についてはどのように認識をされているのか、お伺いをします。
○最高裁判所長官代理者(園尾隆司君) 債権者集会というのは、その事件の債権者全員が出席可能な情報交換の場でございますので、破産手続の中で最も重要な位置を占める手続であると認識しております。管財人が情報を提供する場合に書面を作成して配付するということも考えられるわけでございますが、債権者集会にはそれだけでは賄い切れない重要性があると私も考えております。
 私が破産事件の担当者として債権者集会を主宰してまいりました感想を述べますと、債権者集会というのは、債権者にとって管財人からどのような情報と説明を受けるかということのほかに、その事件に関して自分以外の他の債権者がどのような態度で集会に臨むのか。例えば、出席者が多数で関心が高い事件なのか、余り出席者がない事件なのか、それから多くの債権者が破産者のこれまでのやり方に怒りを感じておるという事件なのか、そうでもないのかというような、破産事件の全体の状況を言わば瞬時に的確につかむことができるというような場であるというように感じるところでございます。
 したがいまして、債権者集会における情報伝達は書面で個別に情報を提供するのとは違った重要な意味があると考えておりまして、債権者集会は破産手続のかなめであるというように認識しております。
○井上哲士君 そうしますと、今回の改正で開催しなくてもいい場合があるということになるわけですが、そういう開催しないのはあくまで例外的だと、こういう運用がされるべきだと思うんですが、その点いかがでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(園尾隆司君) そのような運用がされるであろうというように考えておるところでございます。
 これは、債権者集会の重要性というところから私がそのように考えるということのほかに、先日、高等裁判所所在地の八つの地方裁判所を含む十三の地方裁判所の破産事件の担当者に集まっていただいて意見交換をいたしましたが、どの裁判所も、債権者集会を開くということを手続運営の原則に据えたいという意見を述べております。
 したがいまして、全国的に債権者集会を開くということが原則になるであろうというように考えております。
○井上哲士君 その上で、法案では債権の十分の一以上の要求があれば開かなくてはならないということも付いております。ただ、現行でも非常に巨額の債権を持つ金融機関などがありまして、集会に行って、何十人という集会でこの計画について採決したら一人だけが賛成したけれども、その人が金融機関の代表で、ほか全部反対しても決まってしまったとか、こういうこともお聞きするわけですね。
 ですから、債権額、労働債権の場合に、債権額が十分の一に満たない場合でも債権者としては非常に多いというような場合は、やはり十分の一に満たなくても債権者集会の要求にこたえていくと、こういう運用がされるべきだと思いますが、この点もどうでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(園尾隆司君) ただいまお尋ねのような、多数の労働者が債権者集会の開催を希望するという事件と申しますのは、破産宣告の直前まで営業を継続している会社ということで、しかも賃金の不払が相当額あるというような中小企業の破産事件の場合が通例であろうというように思います。
 そのような破産事件について言いますと、賃金全額を支払うだけの財産を発見することができるかどうかということがまず最も重要な破産管財事務の課題となってまいる事件でございます。そのような事件につきましては、債権者からの情報というのが最も必要である事件だというように分類されると思います。したがいまして、そのような事件ではそもそも一般的に債権者集会が開かれるということになるものと考えております。破産法が改正されましても、そのような事案では、労働者からの要望があるかどうかにかかわらず、一般的に債権者集会を開かないということは考えにくいというように思っております。
○井上哲士君 はい、よく分かりました。
 次に、賃借人の保護の強化の問題についてお伺いをいたします。
 この問題は非常に私も感慨深いものがありまして、実はスーパー長崎屋が破綻をした際に、当時、管財人が、全国三十一店舗、二〇〇二年一月十五日付けで閉鎖をするという発表がされました。私、ちょうど閉鎖の直前に、新潟のこの長崎屋のある店舗に調査に入りました。廃止される店舗のテナントの店主の皆さんが、自分たちはまだ営業したいんだということで、そのお店の前で店主、支配人の方と激しいやり取りをされておられたわけであります。
 こういう破綻に伴ってテナントの皆さんが営業ができなくなるということが長崎屋だけでなくてマイカルでも発生をいたしましたし、営業もできないと、そして敷金、保証金も返ってこないということが大きな問題になりました。倒産時に、長崎屋はグループで千を超えるテナントから百五十億円を敷金、保証金で預かっていたと、それからマイカルの場合は、これは四千七百のテナントがありまして、四百億円を預かっていたというふうに報道がされております。
 これは大問題だということで、二〇〇一年の七月にこの経済産業省にテナント保証金問題研究会というのが立ち上がりまして、そして二〇〇二年の十一月には、この破産法等の見直しに関する中間試案に対する意見というのが経済産業省からも出ておりまして、こういう賃借人の地位とか、そして保証金の法的地位について明確にするべきだという要望が出されている。そういうテナントの皆さんのいろんな運動などがこういう形で出てきているという点では、大変私は感慨深いものがあるんです。
 その上で、この改正によりまして、そういうショッピングセンターなどが破綻をした場合のテナントの地位というのはどうなるのか、破産の場合と会社更生の場合と、まず分けて御答弁願います。
○政府参考人(房村精一君) まず、破産に関して御説明いたしますが、現行法では賃貸人が破産した場合、その賃貸人の破産管財人は賃貸借契約を解除することができると、こういう規定がございます。これは、賃借人としては何の落ち度もないわけでございますので、破産法は基本的にその解除をして債権者に対する弁済を充実させるということを考えたものとは思われますが、賃借人にとっては非常に酷な結果になると、こういうことがかねてから指摘されておりました。
 今回の法案では、賃借人の保護を図る観点から、そういう場合に賃借権を第三者に対抗をすることができるとき、すなわち土地賃貸借の場合には地上建物の登記がされている、あるいは建物賃貸借であれば引渡しがされていると、こういう場合には破産管財人に破産法上の特別の解除権を認めない、賃借人を保護すると、こういうことといたしました。この点は一番大きな違いかと思います。
 それから次に、敷金の関係になります。
 これは、現行の破産法の下におきましては、敷金の返還請求権も通常の破産債権でございますので、停止条件付債権として扱われます。したがって、仮に払戻しを受けるという場合にはその弁済、配当率に従った弁済しか受けられないと、こういうことになっているわけでございます。
 今回の破産法に、破産法案におきましては、まず破産後賃料を支払う、こういう場合に、言わば敷金の額に満つるまではその支払う賃料を寄託することができる。通常支払った賃料は管財人が受け取りまして、そのまま破産債権者に対する配当原資として用いられるわけでございますが、これを配当に回さずに別に保管をしておいてほしいと、こういう寄託の請求ができます。そうしますと、破産管財人はその敷金の額までは受け取った賃料を寄託しておく、その破産手続の最中に例えば賃貸借契約が解除されまして敷金の返還請求権が現実に発生すると、そういう場合に、賃借人の方は既に払った賃料でその寄託がされておりますので、その額から支払を受けられる。したがって、支払った賃料によって敷金返還請求権を確実に回収することができる、こういう仕組みにいたしております。
 それから次に、例えば更生手続について、この場合、更生手続においては、支払った賃料、仮に賃料を支払いますと、その賃料の六か月分までの範囲で敷金の返還請求権を共益債権にする、こういう扱いにしております。したがいまして、この六か月の範囲では敷金返還請求権が確実に返していただけると、こういう形になります。
 仮に、その敷金以外に他の債権を持っているという場合には、その賃料とその債権とを六か月分の範囲で相殺をすることができると、こういう扱いも更生法では定めております。そういう形にしておりますが、概要でございますが、以上のとおりでございます。
○井上哲士君 今、引渡しということが出てまいりましたけれども、これについてもう少しお聞きするんですが、例えば私が行ったその長崎屋の場合も、大きなフロアのスーパーですが、全体に入る入口とは別に全く区切られた店舗になっておりまして、そこに飲食店やパーマなどがありました。そこも含めて入れなくしてしまったということで、自分たちは営業させろということで言われていたわけですが、そういう方と同時に、このフロアの中で一定の場所を区切って営業されているというテナントの方もいらっしゃるわけですね。
 こういう場合に、今の引渡しという要件との関係でいいますと、どういう仕分になるんでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) 建物の一部分を賃借してその引渡しを受けているというときにその対抗力が認められるためには、その引渡しを受けた区画が障壁その他によって他の部分と区画され、独占的、排他的支配が可能な構造、規模になっているということが要求されると思います。
 ただ、これは、具体例ではベニヤ板で周囲を仕切って床板を敷いたというような事案のようでございますので、この独占的、排他的といってもそんな厚い壁ということではなくて、障壁その他、そういった区画がされているということに力点があろうかと思います。また、使用の実態として人と一緒ではなくて自分が独占的に使っていると、それがあれば引渡しを受けたと言えるのではないかと思います。
○井上哲士君 はい、分かりました。
 今、敷金のことについてお聞きしたんですが、実はこのテナントの場合は保証金ということで問題になったわけですね。保証金とか建設協力金とか、いろんな名前が付いているわけですけれども、まあ多い、四十か月から五十か月間分ぐらいを差し入れているということで、金額でいいますと一千万以上というところもあったようであります。
 この保証金の性格が非常にあいまいだというのがこの研究会でも議論がされておりまして、名前は保証金だけれども実際には敷金の場合もある、それから全く金銭消費貸借としての性格しか持たないものもある、両方が混じったものもあるというようなことになっているわけですが、この辺の手当てというのは今度の法案ではどうなっているんでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) 保証金の性格にはいろいろなものがあると一般的に言われておりますが、大きく分ければ、敷金の性格を持っている部分とそれ以外ということになろうかと思います。
 その保証金、メーカーに交付された金銭のうち、いわゆる敷金の性格を持っている部分、これについては、先ほど申し上げた敷金として扱われますので寄託の対象であり、あるいは賃料を支払うことによって共益債権になると、こういう性質になります。
 そういう敷金以外のものにつきましては、基本的に将来返還を受けるということが予定されているだろうと思いますので、将来の債権ということになりますので、破産であればこの将来の請求権は現在化されますので、現在債権として破産債権になりますし、更生手続においては更生債権になると。それぞれ他の債権と平等に扱われるということになろうかと思います。
○井上哲士君 六か月、先ほど更生の場合に確保されるという話がありましたが、全体として非常に賃貸借人の保護は前進をしたと思うんですが、先ほど言いましたように、保証金の実態というのは四十か月とか五十か月というのが随分あるわけでして、会社更生法や民事再生法の場合でもやはり相殺できる範囲は破産並みにすべきではなかったのかと思うんです。
 この経済産業省から出されて法制審に出される意見でも、賃金の十二か月分程度は敷金としての性格が強いと考えられるというようなこともあるわけですが、やはり保護の範囲をこの辺まで広げるべきではなかったかと思うんですが、この点はどうでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) 確かに、更生手続等で六か月分と、こうしております点につきましては、もっと広げられないのかという議論がございました。ただ、これもまた破産手続といわゆる再建型の更生手続との違いになるわけでございますが、更生手続の場合には何といってもその会社を再建していくということになります。
 ところで、そういう多くの店舗を抱えてその賃料で事業を営んでいるというところにとっては、その賃料収入が事業等の再建のための原資になるわけでありまして、それを余り長期間にわたって相殺をされてしまいますと、運転資金にも事欠く状態になって再建そのものが不可能になってしまう。で、そういう事態になりますと、逆に言うと、その店舗を使っている方にとっても決してプラスではない。やはりその会社が再建をされて順調にいけば、逆に言いますと、そういう保証金等についても大丈夫になってくるわけでございます。ところが、原資不十分で会社がおかしくなって、しかも資産そのものが目減りしてしまいますと、結局は配当も受けられないということになりかねない。そこのバランスをどう取るかということであります。
 そういうことで、やはりそういった賃料収入に依存して再建をせざるを得ない会社が相当あるということを考えますと、やはり六か月分程度、一年分丸々されてしまいますと、これはいかにも再建が厳しくなると、こういう御指摘があったということを踏まえましてこの六か月という月数を決めさせていただきました。
○井上哲士君 次に、担保権の消滅についてお聞きをいたします。
 午前中も議論があったんですが、現行法では管財人が担保権の設定された財団資産をほかに売却して破産財団に組み入れようとしますと、担保権を消滅させて売却することについて担保権者の承認を得なくちゃいけないと、同意が必要だということですが、このことの不都合というのはどういうことがあったんでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) その一番大きな不都合は、担保権がたくさん設定されている、どう考えても競売したら配当が回ってこないような高順位の担保権がたくさん付いている。ところが、任意売却をしてそれをスムーズに移転登記をするためには、そういう高順位の担保権も抹消しないと買受人としては困るわけです。ところが、その抵当権抹消のためには抵当権者に一緒に登記申請をしていただかなければいけませんので、そうなると勢い、いわゆる判こ代と言われるようなある程度の金額をそういう人に払わなければいけない。
 通常は、通常はといいますか、競売手続を取られれば配当ゼロでそういう抵当権は抹消されるわけでございますが、任意売却のときにはそんな形で費用が掛かってしまう。そのことは、結局のところ、その配当に回る金額が減るということになるわけでございます。
○井上哲士君 そうしますと、今回の改正で、裁判所の許可をもって担保権者の同意なしに担保権を消滅させてから任意売却ができるということになると、どういう効果が出てくるということになるんでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) 管財人といたしましては、実際上配当にあずかる可能性のある担保権者と十分協議をいたしまして、かつ売却先を見付けて売却金額を決め、そして売却金額のうちから破産財団に繰り入れる額、これについて事実上そういう配当にあずかる可能性のある担保権者の同意を得ると。こういうところまで進めれば、あとこれを裁判所に届け出てその許可を得ますと、配当の可能性のない担保権者等の同意等は全く問題なく、許可が出ればその任意売却ができますので、従来に比べますと、いわゆる判こ代等の不要な費用の負担がなくなる、またそのための手間暇というものも軽減されます。結局、その部分は担保権者の配当若しくは財団の繰入れによりまして、破産債権者にメリットが還元されるということになります。
 また、さらに、担保権者の配当が増えるということになりますと、いわゆる不足額が減少しますので、担保権者が担保権から満足を得られなかった部分について、その破産債権者として配当を受ける額も減りますので、そういう意味では他の破産債権者にとってのメリットは相当あるということになろうかと思います。
○井上哲士君 ただ、実際には担保権者が競売に掛けるということもできるわけですね。そちらが選択することが多くなりまして、この財団債権の組入れの拡大に必ずしもつながらないのではないかということもあるんですが、その点はどうお考えでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) これは誠に残念なことですが、競売手続を利用した場合には、通常の任意売却に比べますとどうしても競落価格が安くなる、大体二割ないし三割程度安くなると、こう言われております。したがいまして、破産管財人が努力をして任意に売却をするという場合は、競売手続に掛ける場合よりは二、三割は高くなると一般に理解されております。
 担保権者といたしますと、そのまま売却した場合に比べて二、三割は高くなると。したがって、その高くなった分のうちの相当部分はその破産管財人の努力に免じて繰り入れてもいいと、それでも競売するよりはずっと自分の受ける利益は増えると、普通はこういうことで話がまとまるわけでございます。
 ですから、破産管財人が探し出した相手に売却する価格がそういった相当な額であれば、あえて競売でそれより低い額で売却することを望む担保権者はそういないだろうと思います。もちろん、担保権者の方で独自に探してもっと高く売れるということであれば、それはその五%以上の買受けという制度を用意してはございますが、そのためにはやはり相当の手間暇を掛けて買っていただける方を探さなければなりませんので、そういう点では、管財人の方が相当の努力をして合理的な案を示せば、担保権者もそれに同意をしていただけるのではないかということを考えております。
○井上哲士君 労働債権などの確保につながるであろうことを強く期待をしておきます。
 もう一つ、免責不許可の問題についてお聞きをします。
 この二百五十二条で免責不許可事由に加わる項目ができました。その中で、給与所得者等再生における再生計画が遂行された場合に、当該再生計画にかかわる再生計画認可の決定の確定の日から七年以内の免責の申立てというのがあります。破産手続を選択せずにこの給与所得者再生手続を選択をし、かつその再生計画を遂行した債務者が、その後、リストラとか病気とかで再び多重債務に陥るということは、今の経済情勢の下では十分にあり得ることだと思うんですね。こういう人の場合も一律に免責不許可とすることはやはり問題ではないかと。
 この免責不許可事由を拡大した趣旨と、そして、こういう計画を遂行した債務者がその後のリストラ、病気などでもう一回多重債務に陥ったと、こういう場合はやっぱり柔軟な対応が必要だと思うんですが、その点はいかがでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) 御指摘、免責不許可事由の場合に、例えばいったん破産免責を受けて、その後十年を経過しないで再び破産をしたと、こういうような場合に安易に免責を認めるとモラルハザードを招くと、そういうことから現行法では破産免責を得てから十年内の場合には免責を与えないということとしております。
 これが長過ぎるのではないかということで今回七年ということにしたわけでございますが、そういう改正の一環として、おっしゃるように、給与所得再生の再生計画を実行した者、これについても決定の日から七年を経過するまで免責を与えないということとしておりますが、これは、やはり債権者の同意なく一部の債権の免除を受けているという点においては給与所得者再生についても同様の性質がございます。再生法自身、その給与再生者、再生を認めるために、前に認めてから七年内のときにはこれを認めていないということがございます。
 そういう意味ではやはり共通する面があって、今回、再生法のその考え方を破産法で変えるということもにわかにし難いということからやはり免責不許可事由に取り入れたものではございますが、ただ、確かに破産免責の場合とは違って、免責は受けておりますが、ちゃんと、ちゃんとと言いますとおかしいですが、残る部分については債務を履行しているわけでございますし、また再びそういう窮境に陥ったことについて同情すべき場合も十分あろうかと思います。
 そういう場合に備えまして、今回の破産免責の見直しに当たりましては、免責不許可事由がある場合にもなお裁量的に免責を許可するということができるということを明文で定めております。これは、従来の解釈でもそういうことができるという具合に言われておりましたが、明文の規定がございませんでしたので、今回そういったものを置いておりますので、御指摘のような場合には正にそういうものの対象として裁判所において審理をした上で裁量的に与えることもあり得るのではないかと、こう思っております。
○井上哲士君 終わります。
○委員長(山本保君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
   午後四時十六分散会