第159回国会 法務委員会 第21号
平成十六年六月一日(火曜日)
   午前十時開会
    ─────────────
   委員の異動
 五月二十八日
    辞任         補欠選任
     平田 健二君     樋口 俊一君
 六月一日
    辞任         補欠選任
     樋口 俊一君     岩本  司君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         山本  保君
    理 事
                松村 龍二君
                吉田 博美君
                角田 義一君
                木庭健太郎君
    委 員
                青木 幹雄君
                岩井 國臣君
                鴻池 祥肇君
                陣内 孝雄君
                野間  赳君
                今泉  昭君
                岩本  司君
                江田 五月君
                千葉 景子君
                堀  利和君
                井上 哲士君
   国務大臣
       法務大臣     野沢 太三君
   副大臣
       法務副大臣    実川 幸夫君
   大臣政務官
       法務大臣政務官  中野  清君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局民事局長
       兼最高裁判所事
       務総局行政局長  園尾 隆司君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        加藤 一宇君
   政府参考人
       司法制度改革推
       進本部事務局長  山崎  潮君
       総務大臣官房審
       議官       田中 順一君
       総務省政策統括
       官        藤井 昭夫君
       法務大臣官房訟
       務総括審議官   都築  弘君
       法務大臣官房司
       法法制部長    寺田 逸郎君
       法務省民事局長  房村 精一君
   参考人
       元最高裁判所判
       事        園部 逸夫君
       日本弁護士連合
       会行政訴訟改革
       等検討委員会統
       括副委員長    斎藤  浩君
       弁護士      菊池 信男君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○行政事件訴訟法の一部を改正する法律案(内閣
 提出、衆議院送付)
○政府参考人の出席要求に関する件
    ─────────────
○委員長(山本保君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 去る五月二十八日、平田健二君が委員を辞任され、その補欠として樋口俊一君が選任されました。
    ─────────────
○委員長(山本保君) 行政事件訴訟法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本日は、本案の審査のため、お手元に配付の名簿のとおり、三名の参考人から御意見を伺います。
 御出席いただいております参考人は、元最高裁判所判事園部逸夫君、日本弁護士連合会行政訴訟改革等検討委員会統括副委員長斎藤浩君及び弁護士菊池信男君でございます。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございました。
 参考人の皆様から忌憚のない御意見をお聞きいたしまして、今後の審査の参考にしたいと存じますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 議事の進め方でございます。まず、園部参考人、斎藤参考人、菊池参考人の順に、お一人二十分程度で御意見をお述べいただきまして、その後、各委員の質疑にお答えいただきます。
 なお、念のため申し添えますが、御発言の際は、その都度、委員長の、私の許可を得ることとなっておりますので、よろしくお願いします。また、各委員の質疑時間が限られておりますので、御答弁は簡潔にお願いいたします。
 なお、参考人の方の意見陳述及び答弁とも、着席のままで結構でございます。
 それでは、園部参考人からお願いいたします。園部参考人。
○参考人(園部逸夫君) このたび、参議院法務委員会に参考人としてお招きをいただきまして意見陳述の機会を与えられました園部でございます。誠に光栄に存じます。
 私は、昭和二十九年に京都大学卒業後、直ちに同大学を始め幾つかの大学で行政法と行政訴訟法を研究してまいりましたが、当初八年間は行政事件訴訟特例法の時代でございました。昭和三十七年から行政事件訴訟法の時代に入りまして、昭和四十五年以後、私は裁判所勤務通算二十五年、行政事件訴訟法を実際に適用する機会がありまして、その長所短所を経験いたしました。今日、行政事件訴訟法のある意味では核心をつく大改正を目の当たりにいたしまして、感慨ひとしおでございます。
 御承知のように、日本の行政裁判は、明治二十三年から昭和二十二年まで六十年近くの間、行政裁判法という法律により、東京の紀尾井町にございました行政裁判所という、司法裁判所とは別個の裁判所によって取り扱われておりました。当時の行政裁判所は全国に一つしかなかったこと、それから司法機関ではなく行政機関の系列に属していたことから、戦後、GHQの占領政策により廃止されましたが、専門的裁判という点では相当の成果を上げていたのであります。
 昭和二十二年から一年間、日本の行政訴訟は、出訴期間を除いて、民事訴訟によって行われておりました。しかし、平野事件を契機といたしまして、昭和二十三年に行政事件訴訟特例法が制定され、同三十七年には現行の行政事件訴訟法となりました。
 簡単に申しますと、行政事件訴訟特例法までは行政訴訟は民事訴訟の系列でありましたのを、行政事件訴訟法は、基本的には民事訴訟からも刑事訴訟からも離れて独立の行政訴訟法の体系の構築を目指したのでございますが、その構想は完全には実現しませんでした。故雄川一郎博士によれば、行政訴訟の将来を展望して新しい時代に対応すべき備えをするという点では不十分なものであったのであります。
 次に、改正法案の意義について申し上げます。
 さて、今回の改正は、司法制度改革審議会の意見書、平成十三年六月、により提案された「国民の期待に応える司法制度」の中の民事司法制度の改革の一環として、司法の行政に対するチェック機能の強化、とりわけ行政訴訟制度の見直しの必要性という観点からの改正作業であったと思います。ただ、同意見書は、「政府において、本格的な検討を早急に開始すべきである。」とのみ提言しましたので、具体的な改革に至るまでにはかなりの時間を要するものと考えられ、今日、一連の司法改革関連法案と相前後して行政事件訴訟法改正法案が審議されることになるとは予想しておりませんでした。
 しかし、司法制度改革推進本部行政訴訟検討会の委員の構成とそこでの検討の熱意を拝見する限り、同検討会の「行政訴訟制度の見直しのための考え方」、これは平成十六年の一月に出ておりますが、これに基づいてこの時期に改正案が国会に提出されましたことは、結果としては良かったと思っております。不適当な言葉かもしれませんが、この機を逃せば、行政訴訟改革は進まず、百年河清を待つのたぐいとなったかもしれません。厳密に申せば、改正案は、行政訴訟法の新たな構築という長期的な観点からは、目先の問題解決という感も免れません。その点についての批判は残ると思います。行政訴訟の将来を展望するという観点からすれば、行政訴訟を将来どの方向に向けて構築するかという基本的な視座は失ってはならないと思います。
 それと、行政実体法の一般的な総則を制定して、実体法の面から行政法の運用と司法によるチェックの準則を設けることにより行政の適正な運営を図ることが考えられてよいと思います。確かに今回の改正により、行政活動に対する形成訴訟、給付訴訟及び確認訴訟の道は広く開けることになりましたが、行政訴訟の多くは個別的な事後救済でありますから、大所高所から、しかもできるだけ早期に公益と私益のバランスを十分に図るための行政活動の総論的な行為規範、行政法総則が法定されていることが、行政手続法の厳格な適用及び行政訴訟法の構築と相まって、行政部門と司法部門のいずれに対しても法の支配を徹底するための指針となると考えます。
 次に、行政訴訟の構造について申し上げます。
 行政事件訴訟法は、行政処分に対する抗告訴訟を中心に置く構造になっております。違法な行政処分を裁判所が再審査する、ジュディシャルレビューするわけであります。制度としては二つの方向がございます。英米のように行政処分そのものを裁判所のような手続で行う、つまり行政委員会や行政審判所を充実し、裁判所は主として法律問題を扱うという方向であります。もう一つは、フランス、ドイツのように、行政訴訟専門の裁判所が行政訴訟法という別の法律体系の下で専門的に裁判をするという方向であります。日本の行政事件訴訟法は、このどちらにも属しない中間的な法律になっております。行政事件訴訟法七条が民事訴訟法の準用をせず民事訴訟の例によるとしているのも、行政訴訟独自の法体系を目指した運用がなされることを期待したものと思われます。
 次に、本改正案の目指すものについて、項目をある程度限定して申し上げます。
 第一に、抗告訴訟でございます。
 そのような状況、このような状況の下で、今回の改正は抗告訴訟の内容について、取消し訴訟や無効確認訴訟、不作為の違法確認訴訟にとどまらず、義務付けの訴え三条六項及び差止めの訴え三条七項及びこれに付随する仮の義務付け及び仮の差止め三十七条の五を公権力の行使に関する不服の訴訟の類型として明確に規定しました。これによって、行政事件訴訟法の行政訴訟法としての性格は、より明確になったと思います。
 同時に、制定法準拠主義を取る日本の実務界では、学説、判例の発展があっても、法律に明文の規定がない限り、いわゆる無名抗告訴訟あるいは法定外抗告訴訟を実務上運用できないという法的な土壌がありますから、今後も更に必要に応じて新たな訴訟類型を明文で追加していくことが望まれるのであります。
 次に、当事者訴訟について申し上げます。
 いわゆる公法上の当事者訴訟につきまして、民事訴訟と類似するが、公法上の権利関係、法律関係に関する訴訟であることを改めて確認し、その例示として、公法上の法律関係に関する確認訴訟を、これは四条でございますが、挙げるなど、この訴訟の意義と有用性を規定上明確にしております。
 公法上の当事者訴訟は基本的には民事訴訟と変わらず、抗告訴訟の規定の準用も少ないのでございますが、行政処分の周辺領域で行政処分と明確に把握できない行政活動について、当事者訴訟の活用が望まれる状況から見て、この改正は大きな前進と評価する次第です。
 なお、国民、住民の権利救済という観点からは、抗告訴訟と当事者訴訟が排他的な関係にあるとされますと、原告にとっては訴訟類型の選択によって起こる不利益を甘受しなければならないことになります。この点は、従来、行政事件訴訟法が固守してまいりました被告適格を行政庁に限定する法制度を改正して、行政主体である国や公共団体にも被告適格、十一条を認めることにしたのでありますから、それと同じ方向で柔軟な解釈運用が望まれるのであります。
 三番目に、当事者適格でございます。
 この問題は、行政訴訟の根本的性格にかかわるもので、実務と学説が相互に、また、それぞれの内部において激しい対立のあった問題であり、また、行政訴訟そのものを行政権と司法権のバランスの中でどのように位置付けるかという根本問題にもかかわることでありますので、一個の条文の改正ということでは収まらないものがあることを、これは容易に想像できることであります。
 改正されない九条一項に一項の解釈適用上の考慮要素として二項を新しく付加しておられますが、法律上の利益の解釈をめぐって、通説、判例の採用してきた法律上保護された利益救済説と、これに対する反論としての保護に値する利益救済説が対立しておりますが、二項を新設することにより、かえって法令解釈上の混乱をもたらすことのないよう、両者が解釈上融合されて、行政訴訟特有の新しい原告適格理論が実務上形成されることを望みたいと思います。
 第四に、釈明処分の特則、二十三条の二であります。
 被告行政主体又は行政庁に対し、当該処分等の根拠法令、当該処分の理由資料の提出を求める裁判所の釈明処分の特則を新たに設けておりますが、従来、実務上、立証責任をめぐってかなりの時間を法廷で費やすことが多かった現状にかんがみ、この特則は審理の迅速化という観点から歓迎すべき法改正と考えます。
 第五に、教示制度、四十六条であります。
 最後に、国民、住民の使いやすい行政訴訟という観点から、取消し訴訟、当事者訴訟について、被告、出訴期間、審査請求前置などを処分等の相手方に対し書面により教示することを義務付けたことは、処分行政庁としてはあるいはいささか気になることかもしれませんが、今回の改正の主要な眼目である行政訴訟をより利用しやすく、分かりやすくするための仕組みという観点からは評価すべきことと思います。その観点からは、出訴期間の延長、十四条についても同様であります。
 第六番目に、管轄、十二条であります。
 改正法案は、国や独立法人に対する抗告訴訟について、原告の普通裁判籍の住所地を管轄する高等裁判所の所在地を管轄する地方裁判所、これは特定管轄裁判所と称しておられますが、にも訴えを提起できることといたしました。これは十二条の四項でございます。
 私は、かねて行政訴訟の専門裁判所の設置を望んでいる者でありますが、特定管轄裁判所の構想を拡大し、公共団体を被告とする抗告訴訟についても、いつの日か全国八か所の特定管轄裁判所の運用や集中専門部の組織が確立することを期待したいと思います。行政訴訟のような専門的訴訟については、国民の要請に応じた迅速かつ的確な審理判断を実現するためにも、専門裁判官による集中的、継続的審理と専門的な判断が望まれるのであります。
 終わりに一言申し上げます。
 検討会の座長である塩野宏教授も述べておられますように、改正案の基礎にある検討会の考え方は、特定の行政訴訟学説に基づいたものでなく、これまでの行政訴訟に内在する多くの課題と行政訴訟に解決を求められている現代社会の課題に当面いかに対応するかという観点から作成されたものであり、関連法案も含めまして、今回の改正準備作業に当たられました政府側としても大変な御苦労があったと思いますが、このたび国会におかれて可決、成立の運びになりますと、昭和三十七年以来初めての大改正となるわけでございますが、問題はこれからの運用であります。国民も期待しておりましょう。司法部も、国、公共団体の行政部も、そしてまた学界も、本改正を真に実効あらしめるための具体的な施策を提案し、実行されることを切に願うものであります。
 御清聴深謝します。
○委員長(山本保君) ありがとうございました。
 次に、斎藤参考人にお願いいたします。斎藤参考人。
○参考人(斎藤浩君) 当委員会にお招きいただきましてありがとうございます。斎藤でございます。
 私は、今述べられました園部先生が助教授でおられたころの若々しい時代に大学で、行政法を同じ大学でかじりましてから、比較的大きな自治体に就職をいたしまして数年間末端の行政運営に触れました後、三十年弁護士をしております。その間、行政事件に細長くタッチしてまいりました。
 他方、この十年ほど、司法改革を提唱いたしまして、法曹人口の大幅増員、日本型ロースクールの設立、裁判官制度改革、弁護士制度改革、行政訴訟改革の五つの分野で、日弁連の中ではそれぞれの課題に消極的な会員諸君と論争し、それらの課題の前進に微力を注いでまいりました。
 平成十一年の国会で司法制度改革審議会設置法が制定され、政府の下に同審議会が設置されるや、平成十三年まで日弁連要員として六十三回の審議会のすべてを傍聴いたしました。この間、審議会の海外調査時には、日弁連の法曹養成制度に関するアメリカ・カナダ調査団の団長として、ハーバード・ロースクールを始め両国のロースクールを調査いたしました。
 また、平成十三年の国会で司法制度改革推進法が制定され、政府の下に司法制度改革推進本部が設置され、行政訴訟検討会が開始されるや、やはり日弁連要員としてこれまで二十七回の検討会のすべてを傍聴いたしました。
 このような立場から、私は、司法制度改革審議会意見書が政府と国民、そして法曹三者に課した課題の中に、今回の行政事件訴訟法の一部を改正する法律案を位置付け直し、この立法への賛意を表明し、その意義を考察するとともに、この分野の残された課題について意見を申し述べてみたいと存じます。
 さて、司法制度改革審議会意見書の司法の行政に対するチェック機能の強化の部分で重要なくだりは、当院の法務委員会調査室発行のこのピンクの表紙の参考資料、非常に便利なものでありますが、二十九ページ、三十ページに要約掲載されておりますので、是非改めてお読みいただきたいと思いますが、意見書のこれらの指摘に対比いたしまして、今回の改正法案がどこまでこれを達成しているのか、残された課題はこれを読めば何かはおのずと明らかになると思うものであります。残された課題につき、行政訴訟検討会での残期間でできる限り具体化していただくこと、そして、その後には国会におかれて、政府のできるだけ高いレベルの機関を新設又は選定していただき早急なる検討をお願いし、立法化していただきたいと存じます。
 さて、今回の改正案についてでありますが、既に審議が進んでおられますし、本日の午後も政府委員との間で質疑が掘り下げられるものと考えます。そこで、私は、改正法についての横断的な意見はやめさせていただき、これを縦断的に評価してみたいと思うものであります。現行法下の幾つかの事例を取り上げて、司法の行政チェックが不十分になった状況を分析し、改正法がその是正に役に立つであろうとの意見も申し述べてみたいと存じます。
 現行の行政事件訴訟法の裁判所の解釈は、余りにも厳密かつ細かい理屈に終始し、国民と行政の位置関係から見ますと、訴えを起こす国民がその厳密かつ細かい議論を突破しないと救済をしないということになり、結果として行政寄りに終始し、国民の立場を忘れたものになっていたものと考えます。この結果を見るに見かねて、前述の司法制度改革審議会の意見書の当該部分は多くを指摘したのであります。その指摘のうちの、今次改正法は必要最小限度の改正と言えるでありましょう。しかし、優れた裁判官たちは、法制定の直後からそのような状態ではありませんでしたし、彼らによると、今次の改正が不要であるかのような柔軟な解釈もしていたのであります。
 今次の改正で四条の当事者訴訟に「公法上の法律関係に関する確認の訴えその他の」という追加はなぜ行われるかということを例に考えてみたいと存じます。
 今次改正法は、司法制度改革審議会の意見書が求める行政処分概念を再検討することには到達しておりませんので、現在の判例を前提とすると行政立法や行政計画そのものを正面から争うことはなお原則としてできませんが、それから出てくる法律関係に引き直してこの当事者訴訟で争えることを条文上明確にしようというのが今次改正の一つの重要な点であります。
 現行法の立法過程でも、通達や告示などの行政立法などを直接対象とする法規範統制訴訟の導入は検討されました。しかし、明確には法定されなかったので、裁判所の解釈にゆだねられたのであります。
 この要請に積極的にこたえた見事な判決が初期には出ております。例えば受刑者の丸刈り差止め事件、東京地裁昭和三十八年七月二十九日判決であります。
 この事件は、現行法が施行された昭和三十七年十月一日の直後である十二月十日に提訴され、この判決が被告を府中刑務所長とする強制剪剃差止めの無名抗告訴訟の適法性を認めたことはつとに有名でありますが、確認訴訟にも言及しているところが重要です。監獄法三十六条、同法施行規則百三条に基づく剪剃実施の差止め請求ですから、事実上、行政立法を直接争うという論点になります。
 判決は次のように言っています。「前記諸条件の下で、行政行為の実行が許されるかどうかについて裁判所が第一次的に判断することがわが憲法下の権力分立の原則に反せず、これが許されるものであると解すべきである以上、行政庁がこの判断に拘束されて未然に行政行為を実行し得ないこととなるのは当然の結果であり、この当然の結果を判決主文に表示する方式として確認(行政行為実施の権限がないこと若しくは不作為義務があることの確認)の形式をとるか不作為の給付の形式をとるかは、いわば、便宜の問題ないしは司法権の行政権に対する用語上の礼譲の問題」、礼儀の礼と謙譲の譲でありますが、「礼譲の問題に過ぎないというべきであるから、原告の訴求するところが不作為の給付の要求であるということだけで、かような訴えがただちに三権分立の原則上許されないとする形式論理は、当裁判所のとらないところである」と判示しております。格調が高く、痛快であります。合議体の白石健三、浜秀和、町田顕というビッグネームが輝いております。
 ここでこの判決は被告のことは直接触れておりませんが、行政庁を被告とする無名抗告訴訟と解しながら、本来、国を被告とすべき確認訴訟でもよいのだとし、これらを詮索することは形式論理だと喝破しているのであります。
 このような判決があるにもかかわらず、その後の判例は概して厳密化、細部化路線をたどり、例えば有名な横川川事件では、昭和六十三年に高松高裁が河川法の制約に服さないという確認訴訟を一般論として認めたものの、被告が国ではなく行政庁となっているから駄目だという形式論に結局は堕してしまい、その上告審である平成元年の最高裁はそのことを検討すらもしておりません。
 今次の改正が四条で確認訴訟の規定を明確にし、十一条で被告を難しい行政庁という概念から国又は公共団体に改正することは、このような現状の判例の状況からいたしますと、実に大きな意義を有します。しかし、裁判所が今述べた昭和三十八年の白石、浜、町田コートのような柔軟な解釈を継続してさえいれば、今のように後れた状況には陥ってなかったと思うのであります。昭和四十年代半ばからしばらくの裁判所の行政関係事件の冷凍状態の原因が現代的な視点、学問的な視点で必要と、冷凍状態の原因の検証が現代的な視点、学問的な視点で必要と思うこのごろであります。
 いま一つ事例を挙げたいと思います。
 今次改正による当事者訴訟の具体化により、行政分野における確認訴訟などが活性化します。確認訴訟は実務的には次のように発想されると考えます。
 例えば行政計画や公共事業の分野では、まず一つは、行政処分その他の公権力の行使に当たる行為に分類できるものはなるべく三条二項の処分に構成して取消し訴訟、そして改正法三条六項に構成して義務付けの訴え、同じく三条七項に構成して差止めの訴えの対象にし、執行停止はやはり改正法三十七条の五の仮の義務付け、仮の差止めを申し立てると弁護士としては思います。次に二つ目は、それらに当たらない行政立法や行政計画については、それらがないことを前提にした権利関係の確認や義務のないことの確認訴訟又は民事の差止め訴訟を起こし、場合によっては仮処分を申し立てます。
 しかしながら、これまでの裁判所の冷凍的な解釈に懲りてきた実務弁護士は、このように考えながらも、裁判所がそのような行政立法や行政計画は公権力の行使に当たると解釈することもあり得るのではないかと恐れて、先ほど整理した二つの道筋を同時に提起するようになるのではないでしょうか。今次改正で被告が改正され難しい行政庁概念が事実上廃止されますから、どの選択も被告は同じになります。同時に提起されれば、裁判所はどちらかで判断せざるを得ません。すべてを却下することは改正法施行後は許されません。心配性弁護士がこのように工夫いたしまして裁判所の解釈を促せば、数年のうちに判例は蓄積され、改正法下での行政分野の民事訴訟、仮処分の射程距離なども定まってくると思われます。
 このように実務派弁護士を過度の心配性にしてきた頂点に昭和五十六年十二月十六日の大阪空港事件の最高裁大法廷判決が位置すると私は思います。住民が公共工事を行政訴訟として争いますと、原告適格を前提にしても、裁判所は行政行為を伴わない公共工事は抗告訴訟の対象に当たらないと言うことが多うございます。それなら民事訴訟で争うことができると裏から論じていることになるのですが、この大阪空港訴訟大法廷判決はこの当然の論理さえも許容しなかったのです。
 大阪空港訴訟判決のこの部分は、要約すれば、空港という営造物の管理権は非権力的な機能で私法的規制に親しむものであることを認めつつ、航空行政全般にわたる政策的判断を不可欠とする国営空港の特質から事を論じております。すなわち、大阪空港の供用が運輸大臣の有する公権力の行使をその本質的内容としない空港管理権と、公権力の行使を本質的内容とする航空行政権という二重の権限総合的判断に基づいた不可分一体的な行使の結果であるとして、住民は、行政訴訟の方法により何らかの請求をすることができるかどうかはともかくとして、民事訴訟の差止めはできないというのであります。論理も理論も捨てて当該住民の差止め請求を却下するという結論だけが先行しておりました。
 この判決の影響は巨大なものでありました。比較的近時の判例でも道路工事の差止めの仮処分を否定している平成四年の広島高裁の判断がございますが、売買契約や道路工事には公権力性はないものと事実上判断しつつ、これらは先行する道路区域決定や区域変更と不可分一体であるから、売買契約や道路工事を仮処分で止めれば事実上行政権の作用が阻止され、その結果、先行の公権力性を有する行政処分の効力を無に帰することになるから仮処分は許されないというのです。その判断手法が大阪空港訴訟判決に大きな影響を受けていることは明らかです。
 もちろん、この大法廷判決の影響力を断ち切っている優れた判決も存在することは、存在することはございます。
 今次改正で九条二項が付け加わり、原告適格の解釈基準が緩和されることにより、大阪空港事件のような場合は、後述の新潟空港事件に倣って乗り入れ許可の取消し訴訟、無効確認訴訟などを構えるか、法律関係に置き換えて、改正法四条の当事者訴訟でいくことになるでしょう。改正法により冷凍判決の影響が徐々に解凍されることを期待しております。
 もちろん、四十年代半ばから約三十年程度続いた全体としての冷凍状態の下でも、個々の裁判では考え抜かれた判決や決定をしている例も多く存在いたします。私が担当し、行政法の教科書にも載せられている判例を二つほど取り上げ、今次改正法との関連を考察してみたいと存じます。
 一つは、義務付け訴訟の解釈基準につながるケースであります。
 要綱による給付行政と不作為の違法確認のケースである大阪高裁昭和五十四年七月三十日判決は、自治体が抽象的な法律を具体化する条例を定めずに要綱で実施していた給付行政につき、一審は、その申請は行政事件訴訟法三条五項の法令に基づく申請に当たらないと冷凍的解釈で却下したのに対し、大阪高裁は、行訴法三条五項にいわゆる法令に基づく申請とされるためには、その申請権が法令の明文によって規定されている場合だけではなく、法令の解釈上、該申請につき、申請をした者が行政庁から何らかの応答を受け得る利益を法律上保障されている場合をも含むと解すべきであり、本件のように、その支給・不支給の決定権限を自らが有するとなす被控訴人が、その給付手続について定めた本件要綱に申請制度を採用している場合においては、右支給・不支給の決定をただの私法上の契約の申込みに対する承諾のたぐいと見るか行政処分としての決定ととらえるかは、単にその規定の仕方が規則、形式にのっとっているかどうかだけで決することはできず、右申請制度を含めた本件給付制度の総体について、その制度の趣旨、目的を探り、そこから該申請に対し被申請人が行政庁として応答をすべきことが一般法理論上義務付けられていると認められる場合においては、本件申請制度は行訴法三条五項による法令に基づく申請となり、これに対する被控訴人の応答、支給・不支給の決定はおのずと処分性を具備するものと解するのが相当であると救済いたしました。今次改正法の九条二項を先取りしているような言い回しであります。
 また、この判例は、補助金交付の拒否決定に行政処分性を柔軟に認めており、今次改正法の三条六項二号、三十七条の三の要件解釈につながるものであります。この高裁のような柔軟な解釈がない限り、今次の改正がなされても義務付け訴訟の積極的効果は十分に発揮されないことは容易に想像できるところであります。
 もう一つのケースは、執行停止や仮の義務付けにつながる大阪高裁平成元年八月十日決定であります。
 このケースは、児童福祉法に基づき半年ごとに反復更新して入所決定をしていたA保育所から、ある期限到来時に行政の都合でB保育所に変更決定されたとき、B保育所への変更決定を執行停止する利益があるかどうかが論点でした。地裁の決定は、新たな決定の執行を停止してみても単に当該入所決定がなされた状態を回復するにすぎず、それ以上に申立人らの希望する保育所を入所先とする入所決定がなされたと同一の状態を形成するものではないから、処分により生ずる回復困難な損害を避けるための有効な手段となり得ないことは明らかであると冷凍的解釈を披瀝いたしました。
 これに対し、大阪高裁は、相手方らのする法二十四条、児童福祉法二十四条による保育所入所措置は六か月の期限付でなされているが、期限の到来した時点でなお保育所入所措置を継続すべき児童については期限の更新がなされることが予定していたものと解すべきで、相手方らは、本件各児童につき保育所の入所措置要件が存続していることを承認して保育所入所措置を継続するとともに、入所措置する保育所をそれまでの保育所とは別の保育所とするとの本件各処分をしたのであるが、本件各処分の効力が停止されれば、本件各処分に先行する保育所入所措置についての抗告人らの更新申請に対する相手方らによる処分がいまだなされていない状態に復帰し、相手方らは右保育所入所措置に付された措置期間の満了後も本件児童を当初保育所で引き続き保育しなければならないというほかないとしました。
 この大阪高裁のような態度であれば、今次改正法の三条六項二号、三十七条の三の義務付け訴訟はあるいは必ずしも必要なく、執行停止の対世効、拘束力により妥当な解決が図られるわけですが、冷凍的解釈を前提とすれば、これらの改正は必要であります。そして、義務付けに加えて、改正法三十七条の五の一項の仮の義務付けを活用し、この新制度を効果あるものとするためには、要件である「償うことのできない損害を避けるため緊急の必要」という条項の柔軟な解釈が必要でありますが、この大阪高裁決定は既にその水準に達しておりました。
 平成に入ってからは最高裁判例に変化が見られ、今次改正の九条二項の解釈基準の基となるような積極的な判決、例えば平成元年の新潟―小松―ソウル間の定期航空運送事業免許取消し事件、いわゆる新潟空港事件判決、また平成四年の原子炉設置許可処分無効確認事件、いわゆる「もんじゅ」判決などが出ておりますが、下級審も含めて全体としての冷凍解釈はそう簡単には克服されておりません。その点で、今次改正への国民的期待は大きいものがあると存じます。
 さて、最後になりましたが、ここまでは私は判例を見てまいりましたが、その冷凍的解釈を打ち破れなかった点では、訴訟を提起する弁護士の側にも努力不足があったことは間違いありません。
 ここで弁護士会、弁護士側の決意も表明させていただきたいと思うのでございます。
 一つには、日弁連は担当委員会で大いに勉強いたしまして、去年三月十三日に抜本的な行政訴訟法案を発表いたしました。これは是正訴訟法案とも略称されまして、学会などでも話題になっております。このピンクの貴重な資料集の百三十三ページにございます東大の交告教授、百五十四ページにあります神戸大学の米丸教授などがこの日弁連案を高く評価しておられるわけでありますが、また検討会でも御意見をいただき、今次改正法案を後押ししたものと確信しております。
 二つは、法科大学院での公法、行政法実務教育であります。
 新司法試験での公法という形での行政法の復権を視野に置いて、各法科大学院で行政法実務教育が実施されるわけであります。昨年、法科大学院協会カリキュラム検討委員会公法系実務教育ワーキング・グループが立ち上げられまして、最高裁、法務省、日弁連、大学研究者の十人で、今年一月三十日に「法科大学院における公法系実務教育のあり方について」の中間報告を発表いたしました。私もその一員でございますが、このグループは、現在、中間報告を最終報告にする努力と、この報告に盛られました実務のシラバスを肉付けして、全国の法科大学院実務教育のための教材を作りつつございます。司法研修所で蓄積されました民事、刑事に並ぶ公法系の教材がもうすぐでき上がる予定です。この教材作りは、法曹三者、学者が執筆分担ではなく、共同討論、共同執筆する予定であり、実務感覚に富む成果が生まれるものと確信しております。法科大学院というかなりの人々が弁護士に育つ教育機関で、今次改正法を踏まえた公法実務をしっかり教えていきたいと考えるものであります。
 三つは、日弁連の取組であります。
 第一に、既存の弁護士への改正法と行政訴訟実務の全国的研修。第二に、各地の行政問題への支援組織作り、これは行政側、住民側を問いません。第三に、実務的学会創立を目指した研究会などを既に開始したり検討したりしております。
 以上、本改正法をてこにし、国民的立場で、グローバルスタンダードに近づく判例の変更への期待、法曹養成での公法実務教育と弁護士の能力開発の決意、そして残された多くの課題への国会に対するお願いを申し述べまして、私の意見を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
○委員長(山本保君) どうもありがとうございました。
 次に、菊池参考人にお願いいたします。菊池参考人。
○参考人(菊池信男君) 菊池でございます。
 本日は、このような場で意見を述べる機会を与えていただきまして、誠に有り難く存じております。
 私は、平成十年三月に定年で退官いたしますまで裁判官をしておりました。任官いたしましたのは昭和三十二年でありますから、行政事件訴訟特例法の時代でした。裁判官になりまして五年たちましたときに行政事件訴訟法ができたということであります。民事事件の、民事裁判の経験は長いわけですが、平成十年に裁判所を辞めましてからちょうど五年間、昨年の春まで帝京大学で行政法の講義をしておりました。しかし、もちろん私は行政法の学者でも研究者でもありません。実務家であります。
 今回の行政事件訴訟法につきましては、私もかねてからいろいろな点での制度の改善が必要だという意見を持っていた一人でありまして、そういう指摘はどんどんいろんな方々からの指摘の形で増えておりましたが、こういう形でこの機会に改正が実現したことは、私としては一種のやっぱり感慨があります。
 この法案を拝見いたしますと、もう細かい改正点を列挙はいたしませんが、大きい四つの項目に分かれておるようでありまして、救済範囲の拡大のための措置、それから第二に、訴訟の審理の充実、促進のための措置、それから第三に、国民の側から見て、行政訴訟をより利用しやすく、分かりやすくするための仕組み、それから第四に、執行停止の要件を整備する、あるいは仮の義務付け、仮の差止めというような制度を設けるということで、広い範囲の規定の整備が図られております。
 行政訴訟検討会で大方の意見の一致を見たとされた内容がすべて取り上げられておりまして、法改正の中身に対しては立場によっていろいろな評価があると思いますが、私としては非常に充実した内容の改正だというふうに考えております。制度の改善を待ち望んできた者の一人として、この法案に対して賛成の気持ちを表明したいと思います。
 次に、全体についてのことはそういうことにいたしまして、特に気が付きました二、三の点について申し上げたいと思います。
 まず、取消し訴訟の原告適格の拡大についてであります。改正の内容のうちで特に大きな意味があるのがこの取消し訴訟の原告適格の拡大だと思っております。
 現在、取消し訴訟の原告適格を有する者というのは、法律上の取消しを求めるについて法律上の利益を有する者というものに限られております。そして、この法律上の利益という言葉の解釈につきまして、最高裁判所の判例が、いわゆる法律上保護された利益説という立場を取ってその判断を繰り返してきたことは御承知のとおりであります。
 しかし、こういう最高裁判所の判例に対しましては、かねてから原告適格を認める範囲が狭過ぎるという批判が強くありました。今回の改正の機会にも、法律上の利益という文言そのものを別な言葉に改めるべきだという提案が幾つも出されていたわけであります。
 検討会の中でも最も論議が重ねられた論点がこの取消し訴訟の原告適格の拡大という問題だったようであります。そして、検討会は、結局のところ、この法律上の利益という文言そのものは変更しないということを前提にいたしまして、原告適格が実質的により広く認められるために必要な考慮事項というものを列挙するという方向を取りました。この法案もそのとおりの内容になっております。
 この一つ一つの、個々の問題について法律的なことがどうとかいうことは私、申し上げるつもりありませんが、私、この原告適格の議論の問題というのは、本質的には、憲法上の司法権の内容でありますとか、三権分立の原則の下での司法権と行政権の関係というような基本問題、憲法上の基本問題と密接に結び付いているということを少し考えてみたいと思います。
 憲法は、司法権は裁判所に属するというふうに定めておりまして、判例と学説上の通説では、この司法権というものは法律上の争訟を裁判する作用だというふうに考えております。また、この法律上の争訟というのは国民の間の権利義務に関する紛争で法律を適用することによって解決できるものというものが、まあ争訟というのはこの場合、手続ではなくて紛争そのもの、争いというふうにとらえられておりますが、そういうものだというふうに考えられております。したがって、この判例と通説の立場からいたしますと、司法権というのは、国民個人の権利義務の救済をその本質的な要素と、当事者の権利義務あるいは法律関係に影響を及ぼさないような争いというものは法律上の争訟に当たらないというふうに考えるわけであります。
 そして、現在の司法に関する法体系あるいは制度全体というものが、こういう判例、通説の取るような司法権の観念を前提にして成り立っているわけであります。裁判官に求められるのがどういう役割なのか、どういう能力か、その資格をどういうふうに考えていくか、法曹の試験をどうするか、法曹の養成をどうするか、裁判所の組織とか権限、あるいは訴訟の手続とか構造というようなものもすべて、こういうふうに考えられた法律上の争訟の裁判ということのために何が必要か、あるいはどういうふうな仕組みが適切かという見地から考えられて組み立てられております。
 行政事件訴訟法もまた同様であります。ですから、取消し訴訟というのは、別な言い方をいたしますと、行政作用に関する法律上の争訟を扱うものであります。でありますから、その本来の目的は個人の権利利益の救済ということになります。そして、そのことを通じて行政の適法性の確保という目的も達成しようとする、そういう制度だということになります。
 この法律上の利益という行政事件訴訟法の九条のこの言葉自体が、判例、通説による司法権の観念、それから法律上の争訟の観念についての今申し上げましたような理解を前提として規定されているというふうに考えられます。
 判例、通説の取るこういうような憲法解釈に対しましては、学説上、少数でありますが、批判的な見解もあります。しかし、ここで考えたいのは、法律の改正ということになるとしますと、その立法を行うに当たっては、最高裁の判例の取る憲法解釈というものから見て、でき上がった法律に疑義が生ずるというような内容であるということはないようにするということは当然求められるんだろうと思います。これは最高裁判所の判例の憲法解釈に賛成するかどうかとはまた別の問題だろうというふうに考えます。
 法律上の利益という言葉自体を変更しようという提案が幾つもありました。そして、原告適格をそのことによって拡大して取消し訴訟の行政の適法性確保という機能を強化すべきだという主張がありました。その中にも幾つものバリエーションがありますが、これらの主張というのは、共通しておりますのが、原告適格に要求される個人的な利益の内容というものを今より軽く小さなものにしようという方向が共通しております。
 しかし、この利益の、個人的な利益の内容というものをより小さくし、より軽いものにしていくというふうになりますと、心配が起きてきますのは、今申し上げた判例の理解する法律上の争訟の観念からは遠くなっていくということであります。ということは、別の言い方をいたしますと、憲法上の司法権の範囲や限界とされるものとの関係がどうなるか、それから三権分立の原則との間で、立法、司法権と行政権との関係という、そういうものがどうなるかということの憲法上の基本問題との関係で微妙な問題が生じてくることになります。
 法律上の争訟という観念から見て、現在の法律上の利益という言葉がこれ以上変える余地のない観念かどうかは別であります。法律上の争訟という観念を前提にして法律上の利益という言葉ができていると思いますけれども、しかし、それよりもっと法律上の争訟という観念から見て適切な言葉があれば、その言葉を変えるということは当然考えられることであります。しかし、これまで検討会のお考えというのは、これまで提案された幾つかの案というものは、現在の言葉よりより適切だというふうに大方の意見が一致しなかったということだろうと思います。
 この法律上の利益というものにつきましては、先ほどのように、その解釈運用、最高裁判所の特に取る解釈運用の実情に対しては批判的な見解が相当あります。しかし、この法律上の利益という言葉そのものは、元々柔軟な解釈によって中身を発展させていく可能性を十分持った開かれた概念であります。決して閉じられた概念ではないと思います。最高裁判所がこれまでの一連の判決の中で、その事案事案の特性に応じて柔軟な解釈運用の態度を取って、原告適格を認める範囲を次第に拡大する判断を示してきている、そういう部分があるということも一般に認められていると思いますが、そういうこと自体が、今申し上げましたこの法律の利益という観念が開かれたものだということの表れだと思います。
 この法案の取る立場は、法律上の利益の有無を判断するに当たっては、規定の文言だけにとらわれることなく、こういうことを考慮すべきですということで四つの項目を列挙しております。これらは、申すまでもなく、最高裁判所が一連の判決、長沼ナイキ基地訴訟、新潟空港訴訟、「もんじゅ」原子炉訴訟の判決において、柔軟な判断を行って原告適格を認める判断をした際に挙げた要素であります。これらの項目が原告適格の判断について必ず考慮すべき事項だとしてすべて並べて法律に掲げられたということは、裁判所が規定の文言のみによらないで、広くこれらの項目にも目を配るということをして、全体的、総合的な見地から合理的な解釈をして適切な判断をするということを法律が期待しているということを明確に示しているという内容だと思います。
 取消し訴訟の原告適格につきましては、私もかねてから柔軟な解釈運用をすべきであるというふうに考えてまいりました。今回、この改正を受けて、その運用に当たる裁判所がこの法律の趣旨に従って柔軟で適切な判断を示していってくれることを私としては強く期待しております。
 それから次に、行政に対するチェック機能というのが今回の改革の中で目指されたわけでありますが、その行政に対するチェック機能ということについて、司法と立法との役割分担というものはどういうふうに考えるべきかということを申し上げたいと思います。
 憲法の取る三権分立の原則の下において、行政に対するチェック機能という面から見ますと、国会は、申すまでもなく行政権の行使をコントロールする立法を行います。裁判所は、法律を適用して、違法と考えられる行政を司法審査によってチェックするということをいたします。行政に対するチェック機能に関する役割は、国会と裁判所によって役割分担が行われているということになります。この立法と司法というのは両々相まって行政に対するチェック機能というものを果たすべきものだというふうに憲法は考えているんだと思います。
 したがって、行政に対するチェック機能の強化ということが十分実効性のある成果を上げますためには、立法と司法がその役割に応じてそれぞれ適切にそのチェック機能を果たすことが必要だということになります。そのためには、司法の担うチェック機能の強化だけではなくて、それと併せて、行政の担うチェック機能の強化の面で考慮すべき点はないかということについても検討されることが必要だろうというふうに考えます。
 行政作用の司法審査について、裁判所が判断することができますのは行政作用が違法かどうかという点だけであります。法律が行政庁に対して一定の範囲で裁量権を与えております場合に、行政庁の処分に誤りがあったといたしましても、その処分が裁量権の範囲内にとどまっていて、その行政庁の判断に裁量権の逸脱だとか裁量権の濫用という違法性を根拠付けるような事由がない限り、その誤りというのは当不当の問題になるわけでありまして、違法の問題になることはないということになっているわけです。したがって、裁判所は、その処分の司法審査において、行政の裁量的判断の当不当の判断には立ち入ることはできません。
 そして、ある処分について行政庁に裁量権があるかどうか、どの程度まで裁量権があるかということは、すべて個々の行政実体法の規定によって定まる事柄であります。法律の規定において、行政庁の裁量権の範囲を広く認めておりますと、司法審査において違法な行政のチェックをすることのできる範囲が狭くなります。行政庁の裁量権を全く認めないか、あるいは裁量権の範囲を狭くしか認めていない、そういう法律の態度が取られているとしますと、司法審査で違法な行政をチェックできる範囲が広くなります。結局、この点での行政実体法の規定の定め方いかんというものによって、違法な行政に対する司法のチェック機能がどこまで働くかということが決定されるわけであります。また、その処分をするについて、法令の上でどの程度関係者等の立場を配慮し、その意思を反映させるための手続規定というものが整備されているかということなども裁判所の違法判断に反映されることになります。
 したがって、違法な行政に対する司法のチェック機能を高めるためには、取消し訴訟の原告適格の拡大など、この法案で行われましたような救済範囲の拡大のためのもろもろの方策、それと併せて、必要があれば行政実体法の規定の見直しを行うことも必要ではないかと思います。何らかの形でそういう見直しの検討を継続的に行っていくような適切なシステムを設けるということが工夫されてもよろしいのではないかというふうに考えております。
 終わりに申し上げますが、今回の改正は、司法制度改革審議会の三年前の意見書で指摘され、問題提起が行われた後、短い期間の検討でこの法案という成果にまでこぎ着けたわけであります。国民の権利救済の実効性の確保という点から見て、私は画期的な内容のものになっていると思います。行政訴訟制度の改革につきましては、なおいろいろな残された課題も少なくありません。それから、五年後の見直しの時期というものも予定されております。それを控えて、法が、この法案のとおりの改正が行われた後の裁判実務の運用がどうなるかということを私もよく見守っていきながら、さらに、今後の改正が実りあるものとして実際の運用の中で結実するように期待をしていきたいと思います。
 この法案の趣旨が広く国民や関係者によく理解されて、その趣旨を生かした運用が行われるということを心から期待いたしまして、私の意見陳述といたします。
 どうもありがとうございました。
○委員長(山本保君) ありがとうございました。
 以上で参考人の意見陳述は終わりました。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○岩井國臣君 自由民主党の岩井國臣でございます。
 今日は、お三人の参考人におかれましては、大変貴重な御意見を賜りまして、誠にありがとうございました。
 司法改革審議会から始まりました一連のこの行政事件訴訟法の改正に関連する動きの中で、最高レベルの、正に核心をついた御意見をそれぞれお三人の方から賜ったものと考えます。
 大変中身が難しいので私もちょっと質問しづらい面がございますが、それなりに質問させていただきたいと思います。
 まず最初に、取消し訴訟におきまして、その対象となる処分に該当しないとして却下されることが非常に現状においては多い、今まで多かったと。そういう点について、市民の権利救済という観点からすると大変問題であると、こういう指摘が大変多いわけでございます。にもかかわらず、今回の改正案では、処分性の問題を現状のまま基本的には据え置いた。なぜ処分性の問題を現状のままとしたのか。この点、不満だと言う人も決して少なくないわけであります。先ほどの斎藤参考人のお話は正にその不満が爆発したものではないかと思います。
 そういう不満があるということについては理解できないわけではありませんが、斎藤参考人の話は大変、私にとりましては大変難しかったということでございまして、せっかくの機会でございますので、菊池参考人と園部参考人に、先ほどの斎藤参考人のお話に対する、別に反論というわけじゃないんですけれども、私はこう思いますということがもしございましたら教えていただきたいと思います。園部参考人と菊池参考人に御質問させていただきたいと思います。
○参考人(園部逸夫君) 斎藤参考人に対してどうこうと申し上げるつもりはございません。
 日本の行政法は法律の中で最も数の多い、それでいて余り表に出ないものでございまして、六法全書に出ているだけではとても判断できないわけですが、この行政庁の処分ということで全部一くくりにしておりまして、この行政庁の処分というのは何かということが基本的な問題であろうと思います。
 これにつきましては、もうこの行政庁の処分とか行政処分という言葉自体がどちらかといいますと古くなっておりまして、今、現にいろいろ問題になっている行政訴訟でのこの抗告訴訟の対象というものは非常に広がっておる、また、そういう広がり方の中で裁判所もいろいろ受け止めているというのが私の認識でございます。
 したがいまして、この行政事件訴訟法に言うところの行政庁の処分という一くくりをもう少し拡大しまして、いろいろな形のこの行政の在り方、行政の活動というものに裁判所が上手に対応できるような規定の仕方もあるのではないか。
 従来の何か、例えば法律行為的行政行為とか準法律行為的行政行為とか、そういう学説上いろいろ言われている事柄については、必ずしも裁判所でこれを正面から受け止めることはできない状況にもなっておりますので、その点についての立法的な解決が必要だということを先ほども私は、言ってみれば行政実体法の総則的なものをやはり国会で議論されることが必要じゃないかと、このように思っております。
○参考人(菊池信男君) 私も斎藤さんの御意見に対して反論ということをするつもりはございませんが、処分性の問題の表現自体を、法律の表現自体をいじるということがどういうことで可能かということは、これは実は非常に先ほどの法律の利益と同じような難しさを持っているんだろうと思います。
 ですから、手続法のそういうレベルでいじるというのが一つの考えでありますが、もう一つは、これは行政処分というのは無数にあります。もう非常に、もう無数と言っていいぐらいあるわけです。一つ一つの性質も違います。そうすると、どういう段階でどういう効果を発生するかということを一律にそれをとらえて、こういう段階になればいいんだというふうに考える原則を立てて、それを適用していくということは必ずしも、一つ一つの処分では難しくなってくるというのがあります。
 私も若いころからもう本当にこんなことでいいのかなというふうに考えておりましたのは、よく皆さんも指摘されることですが、土地区画整理事業、これは、事業計画の決定というのは最初の段階でありまして、それからずっと進んでいって最後、換地処分というところまで行き着くわけです。ところが、事業計画の決定から最後のところまで数十年も掛かる。あるいは数十年掛かってもまだ終わってないというのがあるんです。ところが、事業計画の段階である程度の法律的な効果が出ますが、それはまあ一般的なもので弱いものだと。だから、そこでもまだ処分には当たらないというふうに言われます。ところが、何十年先に、しかしそこの換地処分があるまで待たなきゃいかぬのかと。これはやっぱり行政計画という非常に特殊なもので、長い手続でいろんな段階があります。そうすると、それぞれのどこかの段階でいろんな人の、特に利害関係を持つような人の意見を十分反映させて、それを取り入れるんだったらその段階で、早い段階で取り入れていくということが必要だと思います。これは、やはり一般的な行政事件訴訟法というよりは、個別の実体法の中でそういう手続なんかを置くべきだというふうに考えます。
 ですから、先ほどの、訴訟で争う類型もいろいろ多様化する、それからいろんな手続の行政手続も整備する、それから情報公開ということで、争う場合の材料が行政庁から手に入りやすくなるというようなこと等、先ほど申し上げたことが、これらの裁量の問題は実は処分性の問題と同じことでありまして、やっぱり個別実体法で、無数にある行政処分の必要がある限度で個々の実体法でお書きいただくということがよろしいのではないかというふうに思います。
○岩井國臣君 次に、原告の適格要件の問題についてお聞きしたいと思います。
 取消し訴訟では、法律上の利益を有しない限り原告適格を有しないとして却下されることがあるわけでございますけれども、処分性の問題の場合と同様に、市民の権利救済の観点からすると問題であるという指摘があるわけですね。
 そこで、この問題につきましては、原則的な物の考え方は変えないけれども、解釈条項を新設して実質的に原告適格というものが拡大されたのではないかと。私はここまでが限界でありまして、一部で言われておりますように原告適格を事実上の利益侵害にまで拡大いたしますと、客観的な判断基準があいまいになって、かえって司法の信頼性を損なうのではないかと考えたりするわけです。
 私は長い間行政に携わりまして、水害訴訟ですけれども、ほとんどの水害訴訟、タッチさせていただきました。訴訟代理人もいたしました。多摩川裁判では最後に最高裁から差戻しされまして、それを上告するかどうかというかんかんがくがく議論して、これは上告しても勝てないんじゃないかということで幕を引いたわけでありますけれども、まあいろいろそういう水害訴訟に関係して、いろいろ関係いたしました結果、やはり私はその法律上のその利益に限定されないと行政としても困るんじゃないかという行政の立場でそんなふうに思ったりしておりますが、それはちょっと横へ置いて、私は、司法の信頼性という観点から考えましても、事実上の利益侵害にまで範囲を拡大していくと要するに判断基準が極めてあいまいになってくるのではないか、そんな気がするわけでありますが、そこで、この点につきましては園部参考人に御意見をお聞きしたいと思います。
 先ほど、菊池参考人にはるるお考えをお聞きしまして大体分かりました。園部参考人に、この点についてどのようにお考えなのか教えていただきたいと思います。
○参考人(園部逸夫君) 私は、先ほど申しましたように、この法律上の利益という言葉は、ややもすると、本当に法律の中に規定がないといけないんだというような解釈もかつてはあったわけでございます。
 そうすると、これは非常に狭い範囲になってしまうので、そういうこと、言ってみれば伝統的な古い表現をもう少し柔らかくしてはどうだという意見にも耳は傾けなきゃならないと思いますが、やはりそこのところが、主観訴訟と客観訴訟とございまして、大体、この行政事件訴訟は、基本は主観訴訟でございます。個人の、処分の相手方である個人の利益権利を救済するという意味では主観訴訟でございますが、そういう点を表した言葉として法律上の利益というものをとらえますと、これはなかなか、そこを外しますと客観訴訟に近くなってまいりますのでなかなか難しい問題が生ずる。
 そこで、大変、この二項を付け加えましたことは、塩野座長もおっしゃっていますように、日本法の知恵だとおっしゃっている。これは甚だ、随分苦労して議論された結果そういう言葉が出たのだと思いますけれども、この二項の内容は、私が最高裁でたまたま関与いたしました「もんじゅ」訴訟とか、そういう判例でかなり考えられたところをうまく集約してこの二項に盛り込まれましたので、この二つの、一項と二項とを上手に使って、新しいこの法律上の利益、この原告適格論というものをこれからの判例で是非積極的に前向きに積み重ねていただきたいと、このように思っております。
○岩井國臣君 先ほど斎藤参考人は、今回の法改正、必ずしも十分じゃないけれども、改正せぬよりもした方がいいんだろうし、これをてこにして、今、園部参考人言われましたように、前向きの積極的な判例を増やしていくというところに意欲を持っておられるんじゃないかと思います。
 私もそういうことは極めて大事なことだと思いますが、最後に、斎藤参考人にお聞きしたいのは、司法によらない行政紛争の処理についてでございます。
 いろいろと考えなければならないのではないかと思います。アメリカ型の行政委員会、イギリス型の行政裁判所の設置、行政不服審査機能の充実あるいは公的オンブズマンの設置など、いろいろあると思うんでございますけれども、行政改革会議の最終報告書にも行政審判庁構想なるものが今後の検討課題として出されたと思いますが、何からどういうふうに手を着けていけばいいのか、斎藤参考人のお考えをお聞きしたいと思います。
○参考人(斎藤浩君) 今回の改正を私は高く評価をしておりまして、ないよりはある方がいいというような改正ではなくて、大変高く評価しております。
 しかも、私は、与党の先生方とは継続的な研究会をいたしまして、林芳正会長を会長とする通称国民の会というところでの意見書の作成にも関与し、また、公明党の議員団との継続的な勉強会もさせていただき、民主党の先生方との懇談もさせていただいた上で、検討会で、検討会が行われておりますときは日弁連の抜本的要求と違うじゃないかということをるる言うわけでありますが、できたものは大したものでございまして、今の状況下では大いに私は評価すべきものと考えております。
 今の最後の御質問では、いろいろ私の見解はございますが、司法制度改革審議会の意見書も、専門的な法曹の開発といいますか、それと司法によらない諸機関の工夫なども言われておりまして、私も、そういうところへの研究も是非これから、我々もいたしますが、国会におかれましても是非やっていただいたら大変有り難いというふうに思っております。
○岩井國臣君 終わります。
○角田義一君 民主党・新緑の角田義一でございます。
 三人の参考人の先生方から大変な御高説を拝聴できまして、心からお礼を申し上げます。
 まず、園部参考人にお尋ねいたしますが、最高裁の判事をお務めになった参考人にこういうことを聞いては御無礼かもしれませんけれども、私は、よくまあ日本の国民は今までこんな難しい訳の分からぬ行政訴訟の規定を乗り越えながら闘ってきたな、そして判例を積み上げてきたなという感じを率直に持っておりますが、それにしても、勝訴率というのが一七、八%とかいって、余り原告は勝てない。裁判所の態度というのはどっちかというと行政寄りじゃないか、行政に甘いんじゃないか、国民の権利救済に関してはちょっとその辺の意識が薄いんじゃないかと、こういう指摘もうんとありますね。そして、裁判官は、御案内のとおり、釈迦に説法ですけれども、憲法と良心だけに基づいて判断されればいいと思いますけれども、これだけの行政訴訟事件の改正になったときに、裁判官自身の意識も大分変えていただかぬといかぬのじゃないかなという気持ちが率直にいたすんですけれども、その辺についてはどういうふうにお考えでございましょうか。
○参考人(園部逸夫君) 角田先生とは前橋の地方裁判所以来のお付き合いでございまして、当時、角田先生は大変、行政訴訟のみならずすべての訴訟で大変元気な弁論をなさっておられたのを今でも覚えております。
 それで、当時の経験としまして、前橋地方裁判所のような裁判所で行政事件を扱うというのは正直言って私はなかなか大変だと思います。新任判事補が初めて審理に参画して、そしていきなり行政事件の大体主任裁判官を務めるわけでございまして、私はあるとき、その新任裁判官に、あなたは行政事件、行政訴訟法とか行政法というのは勉強したことありますかと、私はまだございませんと、何によって勉強するんですかと、その判事室にある、たまたま本棚にある行政法の本数冊ありまして、これをただいまから読みますということ、正直なところ、そういうことがこれまでの裁判所の在り方であったと思います。
 しかし、これは決して責めることはできない。民事、刑事の非常にたくさんの事件の中で行政事件をたまに扱うわけでございますから、行政の専門の裁判所ではございませんので。したがって、各裁判官にすべて行政法の知識を持ってもらい、行政訴訟の経験をすべて積んでもらうというのが最も理想的でございますが、これはできません。したがいまして、やはりある程度専門的な裁判所に近いものを設け、あるいは裁判所の中で行政集中部を設け、経験を積ませて、そして行政というものに対する認識を十分持った上で、それで判断をすると、そういう方向がどうしても必要なのでございます。
 八宗兼学と申しまして、裁判官はすべての事件をすべて扱えるという前提にはなっておりますけれども、それでも、やはり裁判官にとっては非常に負担の重い事件、これが行政事件であるということを私も常々考えておりまして、それをいかにするかという方向でしないと、ついつい行政寄りだという発言が出てまいりますが、別に行政寄りだということは私は考えませんが、どうしても知識の不足、訴訟技術上の問題等々でそういうことが起きる可能性がある、行政に寄ることが、行政寄りになる可能性があるということはこれは申し上げざるを得ないだろうと思います。
 以上です。
○角田義一君 斎藤参考人にお尋ねいたしますが、今回の行政事件訴訟法はなかなかよくできておるということでございますですね、高く評価されているんでしょうが、原告適格の言わば枠を広げて、最高裁の判例で積み上げてきた四つの要件といいましょうか、そういうのをこの委員会でいろいろ説明を受けても、私ども素人は頭が痛くなるばっかりなんです。御専門の先生方はこの四つができてよかったと、ああすばらしいというふうにお考えのようですけれども、我々、素人なんと言っちゃ申し訳ないけれども、聞けば聞くほど分からなくなっちゃう。
 そうすると、いろいろ訴訟の類型が大変増えて、それはそれで救済の道は開かれると思うんですが、先ほど参考人がおっしゃった、日弁連が言っております是正訴訟というのは一体どういう位置付けになるのか、この改正等の関連においてどういうふうにこれをもっと発展をさせていきたいというふうにお考えになっておるのか、そこをちょっとお聞きしたいと思います。
 それからもう一つ、集団訴訟のような問題は今度全然触れられていないわけですが、これも今の御時世から見ると私は大事な訴訟の形態ではないかというふうに思っておるんですが、この二つについてお述べいただければ有り難いと思います。
○参考人(斎藤浩君) 日弁連の是正訴訟案は、国民がこの難しい行政訴訟を扱うときに、いろんな理屈を乗り越えて、憲法で保障する裁判を受ける権利というものが保障されるためにはどのようにしたらいいかということで発想をしております。
 先ほどから論議になっておりますこの原告適格だとか処分性で却下されるという問題は、入口に入らずに却下してしまうわけですから、裁判を受ける権利の問題が非常に浮上してまいります。我々は何でもかんでも救済すればいいんだという立場ではなくて、まず土俵に上げて、裁判を受ける権利を十分に受けたなという、国民が納得できる体制にすべきであるというふうに考えるものであります。
 その点で、是正訴訟と名付けましたのは、今までの取消し訴訟中心主義というものをやめまして、こういうことが違法であるから裁判所、救済してほしいということをともかく国民が形にいたしますれば、それを取り上げて中身に入るというための装置でございまして、我々の法案の七条で是正訴訟というのを次のように定義しております。
 「この法律において是正訴訟とは、行政決定の違法の確認を求める訴訟及びその是正のための作為又は不作為を求める訴訟」というふうに非常に広く定義しておりまして、今回のいろんな訴訟の類型が増えました点も含めまして、すべて是正してほしいんだということを国民が言えば土俵に乗ると、こういう発想法で貫きまして、かなり百数十条の条文を作ったわけでありますが、そのような発想でございます。
 それから、第二番目の集団訴訟といいますか、団体への原告適格の問題でありますが、ここの問題が今回見送られましたことが非常に大きな残念な点でございまして、環境団体その他非常にまじめにその問題を研究し実行しているような団体には、仮にその人個人を取ってみれば主観的な利益はないとしても、その団体からすれば、例えば遺跡だとか森を守るべきだとか、野鳥を絶滅させるべきでないというような、いろんな外国で工夫されているようなものを求めるためには、団体訴訟というものをどこかで、この行政事件訴訟法の中に書くか、それとも今各法律で検討されておりますような各法律の中に、限定的に解釈するかはともかく、そういうものを日本の法制度の中に取り入れるべきであるというふうには思っておりまして、日弁連の案にもそれは入れさせていただいております。
○角田義一君 もう一点、斎藤参考人にお尋ねしますけれども、今回の改正の中で、釈明処分の特則という新しい条項ができているんですが、裁判所の訴訟指揮によってこれは実効あらしめなきゃならぬということなんで、別にペナルティーはないわけですね。そうすると、今までのあなたの長い行政裁判の経験の中で、一体、行政庁というか、お役所は意識は変わりますかね、これによって。相変わらず頑迷固陋に出したがらないんじゃないんですか。その辺はどういうふうに感じておられます。
○参考人(斎藤浩君) 私、先ほど意見を申し上げたのは、主としての裁判所のこの三十年、平成以前の三十年ぐらいの問題点を申し上げましたが、その中でも大いに工夫された裁判例もあって、尊敬すべき裁判官はたくさんおられるということをまず述べたつもりでございます。そういう点で申し上げますと、私は裁判所を信頼しておるものでございます。個々の問題ある判決については厳しく批判をいたしますが、基本的な裁判官というもの、法曹の中の裁判官という職種の方々を高く尊敬あるいは信頼している立場でございまして、問題は、最高裁判所の発信機能にあったのではないかと。ですから、なかなか、最高裁が柔軟にお変わりになっても、今まで柔軟でないものに付いてこられていたこの下級審の裁判官の方々がすぐに変わるということはないだろうということを先ほど申し上げたわけでありますが。
 それと同じように、今回は、国会におきましてこの改正法が通りますれば、日弁連は法案になる過程ではいろいろなことを申し上げましたが、私は大きな発信機能、国会から裁判所のまじめな裁判官に対する発信機能は大きいものだと考えるわけです。そういたしますと、九条の問題、あるいは釈明処分の今先生のお尋ねの問題も、重箱の隅をつつけば、こんなものができても、そう解釈しなければしようがないじゃないかということを常に学者の一部でおっしゃる方がございますが、私はそれは違うので、こういう大きな発信が、国会を、それをお作りになった推進本部の努力を多として、国会で発信機能がまじめな裁判官、全国の裁判官に発信されれば、私は、それを受け止めて国民のために頑張る裁判官がたくさんおられるだろうというふうに考えまして、釈明処分について、詳しくは申し上げませんけれども、大きく私は期待をしております。
○角田義一君 最後に、菊池参考人にお尋ねいたしますが、先ほど、行政訴訟事件の対象というのは、行政処分が違法か違法でないかということに尽きるということなんですけれども、我々、国民と接する立場からいうと、違法であればこれはもう問題なく改めてもらわなくちゃならないんだけれども、住民なり一般の国民は、当不当というのを相当重んじるわけですよ。違法でないかもしれぬけれども、不当だと、これについて我慢ならないという感覚なり感情というのは猛烈に強いわけですね。そういうものがやっぱり裁判の対象にはならないのかどうかですね、今後。
 先ほど参考人のお話ですと、行政実体法というものを作っていかないかぬということでございますから、その辺はどういうふうにお考えになるんでございましょうか。我々政治家は国民と接するときに、国民の皆さんはやっぱり当不当というのを相当問題にしているんですね、意識があるんです。その辺はどんなふうにお考えなんですか。
○参考人(菊池信男君) 確かに国民の側から見ますと、それから私どもから見ても、当不当でも違法でも、これ間違っていることなんです。誤りなんです。当不当の方は軽いなんということはありません。どっちかといえば、もっと実質的な間違いであることが多いと思います。ただ、今の裁量というものを法律が認めて、これやっぱり行政裁量というのを認めるか認めないかということは非常に大きな問題で、やっぱり行政の裁量を否定したんでは行政の機動的、弾力的な対応が何にもできませんからこれは当然必要なんだと思います。
 ただ、それを、間違いではありますけれども、裁判所が判断することとされているのは違法な場合だけです。裁判所は武器を与えてもらえないのに戦ができません。ですから、本当にそれが違法と評価していいようなものであれば、法律でそうなるような実体法をお決めいただければ、あるいは手続をこういうふうにちゃんとやっていなきゃ駄目だよということをお決めいただけば違法判断ができる。裁量のままで当不当の判断を裁判所がするというのは適当でもないし、先ほど申し上げましたように大きな問題とぶつかると思いますが、そういうことを申し上げたつもりでございます。
○角田義一君 なるほど。ありがとうございました。
 終わります。
○木庭健太郎君 三人の参考人の皆様、専門的なきちんとした御意見を当委員会にいただきまして、心から感謝を申し上げます。
 それぞれお三人の方にお聞きをしたい点がございます。
 一点目は園部参考人に。こうやって議論をしてきたわけですが、私どもも今回の法改正というのは、正にこれまで行政訴訟を起こそうとしても国民の側からすると起こしにくかった。件数からいっても、先ほど欧米その他の例も挙げていただきましたが、海外と比べると、日本というのは本当に事件数そのものがもう極めて少ないわけですよね。そういう問題が今回の法改正によって本当にこれ改善されるのかなと。改善するために我々こうやって一生懸命法改正するんですけれども、実際に実務も担当された方から見られて、その辺大丈夫なのかなという点を教えていただきたいし、さらにもう一つ、これも委員会で随分議論、原告適格の問題なんです。
 我々からすると、考慮事項を定める、つまり二項を設ける、これ、知恵だとおっしゃいましたが、それをやったことで広がると言われても、我々からすると法律にきちんと書いておかなくて本当に広がるのかいなというような疑問も正直に持つんですよね。この考慮事項、つまり二項を設けたことが、ある意味では裁判官の皆さんに本当に大きな影響を与え、実際の裁判の実務がこれから変わっていくものなのかどうなのかと、そこも裁判官の御経験を踏まえた上での所感があればお伺いしておきたいと思うんです。
○参考人(園部逸夫君) この改正が裁判所にどういうインパクトを与えるかという問題は、私、まず地裁から起こされるわけでございますから、地裁の裁判官がこの改正の意義を十分に理解して、そしてこれに関するいろいろな研修であるとか、いろいろなこういう問題を周知させるための施策が裁判所内部でも起きると思います。恐らくそういう施策が出てくると思いますが、同時に、弁護士の先生方も、どちらかというと行政事件については、斎藤先生のような積極的になさっている方は常にたくさんの事件を引き受けておられるわけですけれども、どうも腰が引けて、行政事件というものを積極的に裁判所に起こしていったって、どうせこんなもの起こしたって今の裁判所じゃ負けるよというようなことになって、余り積極的に行政訴訟を起こされないんじゃないかなという感じもしないではないんです。
 ですから、これからは、これもまだかなり緩やかな規定になっておりますので、依頼人の依頼に応じてどんどん事件を起こしていただいて、裁判所もこれに対する対応の体制を取っていただく。これがまず、最高裁判所も、まず地裁からいろいろな新しい考え方を出してくれと言っているのでございまして、最高裁から出すということは、これは上から指導することになりますから、なかなかしにくいんです。ですから、できるだけ遠慮しないでいろいろな考え方を出していく。ところが、それを、元気のいい判決に限っていろいろと先にたたかれ、批判されて、なかなか元気が出ないというのもこれ問題でございまして、いろんな考え方をどんどん出していただくと、これが非常に重要ではないかと。
 ですから、この九条一項、二項の問題についても、これは確かに考慮要素とか、ちょっと法律の規定としては何かはっきりしない規定であることは間違いございません。考慮してもいいし考慮しなくてもいいのかなと、それでは困るのであって、考慮しなければいけないということがはっきり裁判官に認識されるように、ひとつこれから解釈運用をしてもらいたい、このように思っております。
○木庭健太郎君 もう一点、園部参考人に、将来的には専門裁判所ということをおっしゃいました。私ども、いろんな問題、ここで議論をさせていただく中で、専門裁判所まで行く過程の中で一つ問題になってくるのは、じゃ専門裁判所になってくると、国民の側が起こすときに、そこまでどうやってたどる、ある意味ではそれぞれの地裁で受け付けていただいて、受け付ける場所が近くにあるということが一つの、総合的に何でもできるということが事件を起こすときの一つのきっかけになるというような指摘もほかの問題でちょっとあったものですから、この専門裁判所という問題についてもう少し教えていただければと思います。
○参考人(園部逸夫君) 私はドイツのことをどうしても頭に思い浮かべるんですが、ドイツでは各州ごとに行政地方裁判所、行政高等裁判所という具合に上がっていきます。ですから、地方裁判所のレベルで既に裁判所が違うのでございまして、ここへ持っていけばとにかく行政事件についてはやってくれるという、そういう期待がございます。
 ですから、それはやっぱりその辺りから専門行政裁判所を、将来は、もしこれからこの改正によってたくさんの事件が裁判所に訴えられるということになりますと、やはり受け手の方もそういう受け方をしなきゃいけなくなるんじゃないかと。それで、やはりどこかから始まるということであれば、地方行政裁判所、それから高等行政裁判所、最後はやはり今の憲法の下では最終的な裁判所まで行政裁判所として独立させられませんから、最終的には行政事件についても最高裁判所が扱うわけですけれども、それまでの下級審裁判所を専門的にしてはどうかと、このように申し上げている次第でございます。
○木庭健太郎君 斎藤参考人にお伺いいたします。
 これまでもいろんな実例挙げながらこの問題、我が党も、公明党でございますが、いろいろお世話になってやってまいりましたが、私どもも実は団体訴訟の問題含めて今回の問題考えながら、かなりいろんな部分で大前進をしたとは思っているものの、課題も幾つか我々も残っているという認識はございます。
 斎藤参考人にお聞きしておきたいのは、今後検討すべき課題、幾つも事例を挙げていただきました。その中で、日弁連も含めてですが、今回の改正は改正として、これで判例が確立されたりいろんなことの動きになっていくでしょうが、いろんな諸課題のうち、まずこの法律が通った後、次へ取り組むべき課題、最優先課題は何とお考えになっていらっしゃるのかとお聞きをしたいし、また今、園部参考人からもありましたが、やはりこう法改正になっていくと、今度は弁護士さんの側が行政訴訟を担当するという人たちをどう増やすかというような問題もあると思いますが、その辺の御自身の課題も含めて御発言をいただいておければと思います。
○参考人(斎藤浩君) 司法制度改革審議会意見書が書いております、こういうところを改善しなければならないんじゃないかという点のうちの委員御質問の中で、なかなか優劣というのも難しいわけですけれども、それでも申し上げますとすれば、行政立法、行政計画というものについての争い方、先ほど私はいろいろと工夫をして活性化するということの確信を申し上げたわけでありますが、それはこの改正法のレベルで頑張ろうということの意思表明でありますが、それを直接争える方法を行政事件訴訟法の中か、又は単行法の実体法の中に早く取り入れていただくと。仄聞いたしますと、二つほどの省庁でそういう検討も、そういう検討の機関も加えられて検討が始まっているというふうにもお聞きしますが、それを早く作っていただく。
 その行政計画、行政立法につきましては、先生も御案内のように、行政手続法という非常に大きな法律の、非常に大事な法律を平成五年でしたか作っていただいた、その中にもその二つが抜けておりまして、行政手続法の中での行政計画、行政立法の扱い、そして訴訟としての行政立法、行政計画の扱いを早く道筋を付けていただくことが非常に大事になろうと思います。それから、先ほどから御質問のある団体訴訟のところを是非工夫を早くしていただくということ。
 私は、先ほどの専門裁判所の問題につきましては若干の意見は持っておりますが、例えばヨーロッパばかりでなく、お隣の韓国などでも、訳文はどうか分かりませんが、行政不服審判所のような大きな組織ができておりまして、行政裁判所、要するに訴訟における解決と、そういう不服審査手続の総合庁みたいなところでの解決とで競い合って国民の救済に当たっているという報告を日弁連でも受けたことが、学者から、ございますし、今度実情調査に韓国に行こうかと言っているほどでございまして、そういう、何も裁判所でなくても、先ほど前の議員の御質問にもございましたが、別な工夫の審判手続の中でも国民の権利が回復されればいいわけでございますので、その辺りのことも含めて喫緊の課題ではなかろうかというふうに思っております。
○木庭健太郎君 菊池参考人にお尋ねをしたい点は、ざくっと答えていただいて結構なんですけれども、もう現場経験、菊池参考人も長い経験をお持ちでございますので、やっぱり我々が知りたいのは、やっぱり今回の改正が、実際に裁判実務になった場合、どんなふうに影響を本当に与えていくんだろうかと。きちんとした形で、これまでもある意味では行政訴訟が余り起こりにくかった、やろうとしても難しい問題いろいろあった、その問題に対してどの程度こたえ得るものに本当になっているのかなと。法案のそういう意味での評価をもう一度きちんとお伺いをしておきたいと思うんです。まず、その点についてお伺いしたいと思います。
○参考人(菊池信男君) 今の点でございますが、先ほどからいろいろ出ておりますのは、いろんな使いやすくするための仕組みができました。そういう仕組みと併せて、先ほどの原告適格の問題があります。これ全体として見て、確かに今までよりもどんどん国民が利用しやすく、中に入ってこれるような手続になりました。
 今までの仕組みというのは非常に、私どもから見ても随分硬い仕組みになっているものだなと。そこを通らないと中に入ってこれない。しかも、それが憲法との関係があって決まっているんだと、こういう理屈があったりするものですから、例えば民法なんかの解釈をお考えいただきますと、もう判例というのはどんどん下級審も最高も新しいものを作っていって、規定がないところにいろんな制度を認めていって、法律が後からできるというふうになります。それから、今、不法行為の規定はあれ明治時代にできた規定でしょうが、権利の侵害というふうに書いてある、そのままにして違法性というふうに、もう長い、ずっと前からやっているわけです。
 これは、一般的に言えば、法律の解釈の在り方というのは、実務家としての運用の仕方、そっちの感覚がごく当たり前でございまして、行政訴訟は随分、行政法の理屈もそうなんですが、分かりにくいし、何かともかく窮屈なものだなというふうに昔から私も思っていますが、そう思っている人、多いんだろうと思います。これはやっぱりそこが少しきつくなくなったということで、元々そういうふうに運用を仕付けているわけですから、民事なんかで、私はこれ、広がるんだと思うんです。
 今まで非常に大きな期待を持ったのに裏切られ続けたという感覚をお持ちの方は、同じ裁判官がやっても広がるのかねという、そういうお気持ちよく分かるんですが、私はそれは期待して見ていただけるんじゃないかなという感じを持っております。
○木庭健太郎君 あと一分少々あるみたいなので。いいですか、委員長。
○委員長(山本保君) はい。
○木庭健太郎君 先ほどからちょっとお二人にも、専門裁判所のことについて菊池参考人はどうお考えですか。その点だけ御意見を伺っておいて、私の質問を終わりたいと思うんです。
○参考人(菊池信男君) 私はその点はちょっと、余り専門に勉強をしたことがないものですが、感じの問題ですが、要するに、地裁で普通の裁判官、民事を普通にやっている裁判官が、これ労働事件もいろんなことをやるんですが、労働とか行政とかいろんなことをやるんだというのが、私は、普通の事件の違法判断、いろんな法律の解釈と同じ感覚で、例えば行政庁が裁判所にいろんなことを分からせてくれれば、違法、適法の判断をそれに基づいてやるよと。だけれども、分からせてくれないんだったら、普通だったらこれ違法になるというんだったら違法の判断をするぞという仕組みのように私は思っているんですが。
 私は、だから普通の裁判官に分からせないと行政庁が勝てない仕組みだと私は思っておりまして、行政に対して特別だという感覚は私なんかはゼロで、新憲法しか知りませんので、元々新憲法しか知りませんので、これは、それは当たり前だなと思っているんですけれども。
○木庭健太郎君 ありがとうございました。
○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 三人の参考人の方、本当にありがとうございます。
 まず、園部参考人にお伺いをいたします。
 斎藤参考人の陳述の中で、過去にも様々な柔軟な解釈があったが、昭和五十六年のこの大阪空港事件の大法廷判決というのが大変その後にある意味、悪い意味での大きな影響を与えてきたというお話もありました。その後、平成に入ってからは、様々な住民の立場からの前進的な判決も出されているということもあったわけですが、園部参考人から見て、この昭和五十六年の大法廷判決の持つ意味と申しましょうか評価、そしてその後の変化などについての背景にあるものなどはどのようにお考えでしょうか。
○参考人(園部逸夫君) 最も答えにくい御質問でございまして、大阪空港の事件は私が調査官時代の事件なんです。ですから、あの事件が三年、三年以上掛かりましたかね、毎週毎週、もう今の最高裁でも前の最高裁でも考えられないぐらい審理に審理を続けまして、私はその審理の状況をつぶさに調査官として見てまいりました。
 これはやはり、日本の最高裁だけでなく、日本の裁判所にとっては非常に難しい問題を突き付けられたのが大阪空港の事件でございまして、いろいろな考え方を持つ人が裁判官の中におられる。これはやはり、それと、行政権と司法権の間のバランスをどう考えるかというもう最大の問題にぶつかりまして、もう裁判官の中でも御承知のように意見が分かれまして、また少数意見も付いております。あれが言わば当時の、最高裁の当時の現況でございました。それは私はやむを得ないと思います。
 ただ、しかし、判例は常に多数意見を中心に動いていくのでございまして、その意味で、その後の下級審の裁判に相当影響を及ぼしたことは間違いございません。しかし、同時に、いかにこういう問題が難しいかということも高裁、地裁の裁判官も十分認識したと思います。
 したがいまして、そういう状況の下で、例えば「もんじゅ」の訴訟は、実は私は、これは最高裁の裁判官として関与した事件でございまして、こういう事件を実際に手元で扱ってみたときに、どうすればいいかと。まず何といっても、原告をいかに救うべきかというところから発想を改めていくというのがやっぱり行政事件の在り方かなと私は思っておりまして、そこから行政権とのバランスを考えていかなきゃいけない。まず行政権ありきと公益ありきということではおかしいのじゃないかという考え方を持ちました。
 こういうようなことが、また最高裁でそういう「もんじゅ」訴訟などの意見あるいは新潟空港が出ますと、これがまた地裁、高裁に影響を及ぼすということで、そういうことが何度も繰り返した挙げ句に今度の改正に至ったということでございまして、裁判官も十分、先ほど余り裁判官は行政事件知らないと申しましたが、そうではなくて、いろんな経験もございます。ですから、今度新しい法律ができたときに、これはどういう意味を持つかということは大抵の裁判官は理解できると思いますので、是非その方向で運用をしてもらいたいと、こう思っております。
○井上哲士君 次に、斎藤参考人にお聞きをいたします。
 今のことにも関連をするんですが、過去に受刑者の丸刈り判決などなど、様々な柔軟な解釈をした判決がありながら、これが大きく広がっていかなかったことが指摘もされました。そして、今の大阪空港事件の判決もあったわけですが、一方で、この間、最高裁でもそうですし地裁レベルでも、行政事件についてかなり住民の立場での特徴的な判決も見受けられるようになってきた部分があるかと思うんですが、この辺の、なぜ過去にこうした柔軟なのが広がらなかったのか、そして最近の新たな動きの背景といいましょうか、原因といいましょうか、その辺はどのようにお感じでしょうか。
○参考人(斎藤浩君) 私の考えは先ほどから述べましたが、昭和四十年代の半ばにやはり裁判所をめぐる不幸があったというふうに考えております。
 いわゆる司法問題と言われたわけでありますが、それ以後の最高裁、その指導下にある下級審の裁判官の方々に非常に苦労があったと考えておりまして、それは、今までは弁護士といいますと司法問題族のようなところがずっと批判的に分析して、運動的に分析しておったわけでありますが、私は、もしできますればと思っておりますのは、公法学会にも所属しておりますので、そこで公開論文も募集されておりますので、書きたいなと心に思っておりますのは、理論的な観点から、昭和四十年代の半ばから約三十年間ぐらいはどういうことがあったのであろうかということ、園部元裁判官が今おっしゃったような中でのいろんな検討の真髄に迫って、運動的なところだけではなくて理論的なところからそれを迫りたいと思っておりますが、いずれにいたしましても、昭和四十年代の半ばから二十五年、三十年近くはその不幸の中の呪縛の中で裁判所はお動きになったのではなかろうかというふうに思っております。
 それが、最近、親しい裁判官とお話をさせていただく中で、やはり、例えば今回の新法ができ、改正法ができたときに、四十年代後半型の、私の言葉でありますが、統制的な解釈を下級裁判官に御指導なさるようなやり方ではなくて、今のやり方は非常にフランクに自由に最高裁の勉強会だとか検討会だとか協議会だとかが行われているやに聞いております。そういう時代になったことを私は心から喜びますとともに、その延長線上でこの改正法が大いに活用されて、私が先ほど確信を申し述べましたように、心ある裁判官ばかりでありますから、その方々の心にこの改正法がちゃんと届きますれば私は大きな成果が上がるものだと考えております。
○井上哲士君 次に、菊池参考人にお伺いいたします。
 行政のチェック機能という点で、司法と立法が相まってチェックをすることが大切なんだということが言われました。その中で、裁判官としては行政作用が違法かどうかは裁量権の逸脱、濫用という基準であるわけなので、法律でそれがどのように定められているかが大変大事なんだというお話をいただきまして、立法府に身を置く者としては大変大事なことだと思うわけなんです。
 そういう点で、できますれば、過去のもの、そして今もあればなんですけれども、そういう法律での裁量権の範囲の定め方などで少し、例えば広過ぎて、こういう逸脱、濫用を正すという点で問題があったのではないか。過去、それで改正されたものがあればそうですし、今ももし何かお感じのことがあれば、具体的にいただければ有り難いと思うんです。
○参考人(菊池信男君) 私、今の法律で、法律の定め方でそういう特定の法律について具体的に感想を申し上げるだけの準備がないんですが、ただ、これは例えば、一般的に言えば、行政裁量というものは悪者にばかりすべきじゃなくて、行政裁量がないと行政がちゃんとした身動きをしてくれないわけですから、だから弾力的、機動的な対応もできながら、やっぱり縛るべき、踏むべき手続だとか、それからこういうことを目配りして裁量権を行使しなさいと、いろんなことを書いてあるということはいいことだと思うんです。
 ですから、例えば何か具体的な基準みたいなものを余り書いてしまいますと、基準に当てはまったものはそのとおり判断されますが、それから外れていると今度はもう、外れているものは判断の対象にならないということになっちゃいます。ですから、ちょうど今度のあれみたいに、こういう処分するときはこういうことをよく考えて、その点を考えて審査をしたり処分をしなさいという審査基準、処分基準みたいなものを、最近は法律にもある程度こういうことを考慮してというようなことがぼちぼち出てきているように思うんですが、そういうことをお書きになる。余り、裁量というのが大事なときに、裁量を、いや、ただ縛ればいいというものじゃなくて、ちゃんとして行き届いた密度の濃い裁量をするためにはこういう点目配りしなさいよということを書く、それから手続はこういうことを踏みなさいよという、そういうやり方をするのがいい。それはもう行政処分、無数ですから、やっぱり個別実体法で、その中身に応じて書くということではないかなという感じがいたします。
○井上哲士君 次に、園部参考人と斎藤参考人に同じ質問をいたしますけれども。
 斎藤参考人、最後にグローバルスタンダードという言い方をされましたけれども、今回の法改正でそういうグローバルスタンダードということから見たときに、どの程度までの前進をしたという評価をされていて、かつそういうグローバルスタンダードから見れば更に検討すべき問題幾つもありますけれども、とりわけ優先的にされる問題は何とお考えか、それぞれからお願いをいたします。
○参考人(園部逸夫君) グローバルスタンダードというのは何かということはなかなか難しいことでございまして、私は、将来に向けてこの行政事件訴訟法を全体としてもう少し格好のいいまとまったものにしていくことが必要ではないかと思います。何条の何、何条の何と付け加えてみたり、これは改正案ですから仕方がないんですが、もっと全体として、各章、各節ごとにきちっと、ある程度、何といいますか、これが、これこそ日本の行政訴訟法なのだということが一覧して分かるような、そういうきれいな法律にいずれは変えていただきたいと、こう思っております。
 その中で、グローバルスタンダードと言うときに、一体日本の行政訴訟をどちらに持っていくべきかということも考えていただきたい。先ほど、英米的な行政委員会や行政審判所というものの効用も私は十分存じております。行政審判所、実際に見てまいりましたが、もう二百以上あるわけでございまして、かなり司法的な仕事をしている。アメリカの行政委員会もしかりでございます。これは非常に長所を持っております。それから、同時にまた、行政の専門的裁判所という考え方も、これもまた大変今の日本の実情に合わせてよろしいのじゃないかと思っておりますから、そこでどちらに偏るということなく日本的な行政訴訟法の全体を、全体像というものを描くべきではないか、それがグローバルスタンダードを日本が上手に取り入れる方法ではないかと、このように考えております。
○参考人(斎藤浩君) 私が申し上げたのは、検討会の御努力で、資料で訴訟要件を広く認めるべきかどうかについての判例が十四個ほど選ばれて、日本、アメリカ、フランス、ドイツ、イギリスでは、その同じものがアメリカ、フランス、ドイツ、イギリスで起こされたときには、日本で却下されているものが他の国ではどのように扱われるであろうかという非常に初期の検討会の中でいい資料が出ておりまして、それらを私ども持って帰りましてマル、ペケを付けましたところ、ほとんど日本はバツなんでありますが、大概は、今挙げた十四個の事例を外国でありますと大抵マルになっておりました。
 その日本でバツのうちのどれが救えるかというふうに私がこの衆議院の議論そして参議院の議論を拝聴、拝読しておりまして思いますのは、山崎事務局長がおっしゃるのを聞いておりましても、誤解かもしれませんが、例えば近鉄特急料金については、塩野座長は衆議院で、これは救わなきゃいけないというふうにおっしゃったと思いますが、山崎さんはちょっと分かりませんが、その他環境の問題のいろんな法律が新しくできているのを加味すれば原告適格が広がるというふうに山崎事務局長も随分おっしゃっていました。
 そういう点で、十四個のこの却下事例の中で私はかなりの、却下事例じゃないですね、十四個の事例の中で却下されたものの中のかなりのものは今回の法律案で確認訴訟の形をかみ合わせますればやれていくのではなかろうかというふうに思います。
 そういう点で、グローバルスタンダードというのは裁判を受ける権利をちゃんと保障するということでありまして、何も住民の側の、国民の側の訴えを全部認めるということを申し上げているのではないので、裁判を受けたいという国民にはちゃんと裁判を受けていただいて、それを合理的になるほどという判断を裁判官が自信を持ってやられるという、こういうことを私はグローバルスタンダードと考えております。
○井上哲士君 ありがとうございました。
○委員長(山本保君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
 参考人の方々に一言ごあいさつ申し上げます。
 本日は、大変お忙しいところ貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。当委員会を代表して厚くお礼申し上げます。ありがとうございました。(拍手)
 午前の審査はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。
   午後零時一分休憩
     ─────・─────
   午後一時開会
○委員長(山本保君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 行政事件訴訟法の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に司法制度改革推進本部事務局長山崎潮君、総務大臣官房審議官田中順一君、総務省政策統括官藤井昭夫君、法務大臣官房訟務総括審議官都築弘君、法務大臣官房司法法制部長寺田逸郎君及び法務省民事局長房村精一君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(山本保君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
○委員長(山本保君) 行政事件訴訟法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○江田五月君 このところいろんな仕事が多くてなかなか質問の準備ができておりません。今日の質問についても、先週の半ばにでしたか、質問の通告をしてというようなことで、ぶっつけ質問のところも多くなるかと思いますが、お許しをいただきたいと思います。
 今回の行政事件訴訟法の改正、これは私もある意味では高く評価をいたします。今までの日本の行政事件訴訟の息が詰まりそうな状況に対していろいろ風穴を空けるものがあると思いますが、風穴を空けて本当に国民主権の下で行政に対して司法によるチェックが本当の意味できっちり動いていくかどうか、これは、やはりこれからのこの改正をどういうふうに使いこなしていくか、これに懸かっているし、この改正が意図するところをどれだけ深くみんなが認識をするかということに懸かっているんだろうと思っております。
 そこで、法務大臣、余り細かく詰めた話ではないので是非お考えを伺わせていただきたいんですが、実は行政事件訴訟改革というのは、これは司法制度改革審議会の中では、まあこういうものも検討しなきゃならぬよという、ある種ちょっと先に問題提起をしておきますという、この審議会の終わった後に更に鋭意改革の方向をみんなで詰めて是非改革を実現してくださいという、そういう程度の位置付けだったような気がするんですね、検討対象。しかし、その意見書を受けて今回こういう改正案を出すに至ったと。これは、私はやはり関係者が皆、審議会では時間の関係もあって検討対象として指摘をしておくにとどめたけれども、やはり放置できないと。今の日本の行政事件訴訟の状況というのは、国民から見たら余りにも裁判所による救済の門を閉ざしてしまっていて、これは今のこの段階で大胆なところへ踏み込んでいかなきゃいけないという、ある種の関係者の行政事件訴訟の現状に対するいら立ちとか批判とか不満とか、こういうものがあったんではないかと思っておるんですが、その点、法務大臣、どういう印象をお持ちでしょうか。
○国務大臣(野沢太三君) たしか委員の今御指摘のとおり、これは息が詰まるような行政事件訴訟法のこれまでの状況と、これについては私どももそれはそれなりの認識は持っていたわけでございまして、また審議会の中でも、とにかくこれはやらなきゃいかぬという位置付けではございましたが、この内容審査に当たっては引き続き相当な各方面からの御意見をちょうだいして進めていくことということではございましたが、それぞれの分野の皆さん方は、やはりこれは放置しておけないと、何としてもここをこの際一緒に議論していただいて、各党からの御意見もちょうだいしてまとめようじゃないかと、こういうことでここまでこぎ着けたものと考えております。
 民主党の案も委員からの御示唆もいただきまして早速目を通してまいりましたが、大体その趣旨に沿ってお話を私どももまとめてきたわけでございますが、まだ内容的には相当詰めなきゃいかぬ問題も残っておりますので、今後の行政の在り方、あるいは三権分立との関係、いろいろな分野から検討をした上で、この法律を通していただいた暁には、またしっかりした体制を組み、施行上の問題点、実施上の経験等を踏まえて更なる検討を進めていくべき課題と考えておりまして、行政の在り方については、絶えずやはり立法の面からあるいは司法の面からチェックをしながら、本来の目的が達成できるようにやっぱり進めていく課題と心得ております。
○江田五月君 審議会の意見書は問題点の指摘程度であったが、行政事件訴訟の現状というのは放置できない、一刻も。そこで推進本部としてこの改革、改正を手掛けたと。しかし、これでもう万全というわけではなくて、更にまだこれから先、この法律の施行状況など含めて検討していく課題というのはあると思っておると、こういうことだったと思うんですが、これは推進本部山崎事務局長、いかがですか。
○政府参考人(山崎潮君) ただいまの御指摘のとおり、この意見書においては、確かに具体的などういうことを行うべきかということは書いてございません。総合的な、「総合的多角的な検討を行う必要がある。政府において、本格的な検討を早急に開始すべきである。」ということでございます。これを受けまして、推進計画でもほぼ同じような文言になっておりまして、設置期限内に何らかの措置ですね、これを講ずべきであると、こういう位置付けでございました。
 私、この任に就いてまず考えたことは、この方針がどういうところをどういうふうにしたらいいかと全く書いてないわけでございまして、本当に一体何をすべきなのかということ、非常にそこのところで悩みました。この点につきましては、これ非常にあいまいな記載になっているところから、当委員会におきましても江田委員からいろいろ御指摘もございまして、もう少し具体的に国民の権利という立場から改正を加えるべきではないかといろいろ御指摘もございました。検討会を始めましても様々な、いろいろ御指摘がございました。
 その中で、やはり一つ言えることは、訴訟手続がありましても非常に使い勝手が悪いということ、これはどうにかしなければならないんじゃないかという問題が一つ。それからもう一つは、争おうと思っても道がないという御指摘がかなりございまして、これはやはりきちっとした道は付けるべきではないかと。
 この二つが私ども今回の法案としてお出しする大きな動機ということでございまして、やはり行政事件訴訟法、だれのためにあるかということになれば、これは国民のためだということになるわけでございますので、その視点から考えていったと、こういうことでございます。
○江田五月君 今、使い勝手が悪いということと道がないということ、二つを挙げられたわけですが、ちょっと今回の改正点が幾つかありますよね、それを今の使い勝手を良くすることと道を付けることと二つに分けたら、どれはどれになるんですか。
○政府参考人(山崎潮君) 使い勝手が悪いというのは、例えば釈明処分の特例というものを設けておりますけれども、現在のままではなかなか資料が出てこないと、非常にそこで止まってしまうという使い勝手の悪さがございます。それから、執行停止のところについても若干要件を変えているわけでございますが、これもそういう視点から見たものと。それから、管轄と被告適格でございますね、これについても正にそういう配慮でやったものだということでございます。
 それから、道がないという点につきましては、義務付けの訴えそれから差止めの訴え、これに伴います仮の義務付けと仮の差止めの訴え、これが新たなルート。それから、前からルートはあるんですけれども、これを明確にするという意味で、当事者訴訟の中でその確認の訴訟、これができるんだよということを明文でうたったと。
 それは、言い落としましたけれども、最初の使い勝手の悪さでは当事者適格の拡大ということでございまして、これが一番大きな問題かもしれませんけれども、これもやっぱり使い勝手の問題だと、こういうことでございます。
○江田五月君 なるほどね。今、訴訟というものも国民のためにあるんだから、国民が使い勝手が良く、救済の道が、国民に対して救済の道が開かれていなければいけないということだったと思うんですが、私はこれは評価をします。したがって賛成ですが、にもかかわらず、やはり何かこう、まだ物足りなさといいますか、もうちょっと何とかならぬかということを感じてなりません。
 この司法制度改革審議会の審議の途中でも、今回、行政事件訴訟については問題点の指摘、テーマを指摘をしておくという限度にとどめるということでしたから余り突っ込んだ意見を申し上げていなかったんですが、もし、審議会でもっと十分な議論を煮詰めて改革の方向をきっちり打ち出して、それを実現するという形で推進本部が法案をお作りになるということであれば、我々、もっと突っ込んだことを審議会の段階で言わなきゃいけなかった。何か審議会を、肩透かしを食らわされて、本当にやりたいということを言わせてもらえなかったような、そんな消化不良感というのが残っておるんですけれども。
 そこで、ちょっとこの根本問題、基本問題を少し議論をしてみたいんですが、これは山崎さんと議論をする課題かと思いますけれども、日本の戦前の行政訴訟、これは行政訴訟だけじゃなくて、行政法全体がやはりドイツ法体系であったと思います。その中では、行政に対する司法チェックというのは基本的にはなくて、行政の分野の中で行政のこの是正措置というものが仕組まれていた。ですから、行政裁判所があって、行政裁判所は司法裁判所では基本的にはなかったと、そういう仕組みであって、そういう仕組みの中で戦前の日本の行政法体系というものが作られたわけですね。
 その仕組みは、戦後はこれはどうなったというふうに山崎さんは理解されていますか。
○政府参考人(山崎潮君) 御指摘のとおり、戦前は行政の世界で不服を裁いていたということになりますけれども、戦後はこれは通常裁判所の司法権の下で判断をすると、こういう姿勢に変わったわけでございます。
 したがいまして、その物の考え方というのは、やっぱり行政内部のものと司法で客観的にチェックをするという点では大きく変わったということになろうかと思います。
○江田五月君 私は、そこは大きく変わったなんてもんじゃないんだと、これはもう根本が変わったんだと思うんですね。
 行政についてのこのチェックというのは行政の内部で行うと。そして、行政の内部で自己完結的に行政法というものが、行政法の総論もあります、組織法もあります、作用法もあります。あるいは公務員法もあったり、公企業法もあったり、いろんなものがありますね、警察法もあったり。そして、そういうものの一つとして行政事件訴訟法体系というものもあって、これが行政法総論による行政というものの法的組立て、これを前提にしながら訴訟法の体系を作っていた。しかし、戦後、行政裁判所はなくしました。特別裁判所は禁止になりました。すべてが行政に対するこの不服争訟もすべて司法裁判所、通常の裁判所で行うということになりました。
 ところが、私は、その段階で行政訴訟に関する法規がなくなって、一切通常の裁判所で行う行政を相手にする訴訟については特別の法規範がなかった時代がありますよね。それからしばらくして、出訴期間についての法律ができる、更に行政事件訴訟特例法ができる、そして行政事件訴訟法ができるということになっていったわけですが、全くそういう特別の法規範がなかった時代というのは一体どういうことになっていたと思われますか。
○政府参考人(山崎潮君) 確かに、経緯からいくと、昭和二十二年に出訴期間の特例等を定めた応急処置の法律ができておりまして、二十三年にいわゆる特例法というものができているわけでございますので、その間は、原則は民事裁判のルールで行うと。ただ、いろいろなその解釈の問題はあったと思いますけれども、明確な規範はなかったという状況だろうと思います。
○江田五月君 私ももちろんそう思います。その間何もないんですから、それは解釈でいろんなことはするにしても、基本は民事訴訟法でやる以外にない。それが原則なんだと思うんですね。それが原則なんです。しようがない、やはりまあ行政を相手にする訴訟はやむを得ずいろんな特例を作るけれども、原則はやっぱり通常の民事裁判のルールで行政も一方当事者に立って相手方当事者と平等の関係で訴訟をやるんだというのが、これが原則なんだろうと思うんですよ。それが国民主権の下での行政事件訴訟というものだと思うんです。そこは結構重要なところだと思っています。
 勝手に私の理屈だけをぺらぺらと述べますと、その後に、そうやってそういう原則を実はなし崩し的になくしてしまって、行政については行政事件訴訟法というのが原則なんですよという形で持ってくる。そこに書いてないことはしようがない、民事訴訟法を使いましょうかという形に持ってくる。これによって何が起きたかというと、これによって何が起きたかというと、正に特別裁判所を通常裁判所の中に作っちゃった。司法裁判所とかあって、そこが全部やるような格好だけしてて、実は司法裁判所の中に行政裁判所を特別に作ってしまった。そこのところは、一般の訴訟法規というものは排除をされてしまっている。
 だから私は、裁判官の当時にはそこまで言いませんが、今だったら、ちょっと口を荒らして言えば、これまでの行政事件訴訟というのは実は憲法違反だと、そうまで言ってもいいぐらいなことになっていたんじゃないかと思うんですが、何か反論ありますか。
○政府参考人(山崎潮君) なかなかお答えしにくいんでございますけれども、ベースが民事訴訟法にあると、それはそうだと思う。
 ただ、行政はどうしても一般国民の方々のためにいろいろな行動をするわけでございますので、行政のやっぱり安定性とか、それから、一つ行った処分、それに対する裁判があった場合に、その当事者だけではなくて第三者にも効力を生ずるような、そういうもの、非常に国民の権利救済と安定性、これが求められるということになりますので、そういう意味では、幾つかの特例、これは必要だろうというふうに思います。
 その上で、それは必要なものとして、あとはどういう理解をしていくかということでございますけれども、これはもう基本的には当事者対等、民事の世界と同じになっていくと、こういうことだろうと思います。
○江田五月君 まあ抽象的な議論ですから余り突っ込んでぎりぎりの対決型の論争にはなかなかなりにくいんで、まあそれはそれでいいんですけれども、言いたいことは分かっていただいていると思うんですが。
 私は、大学のときに行政法を取りました。結構面白くて、卒業後、もし大学に残るなら、行政法の助手になって勉強してみたいなとも思ったりしたこともあります。
 その当時に思っていたことは、やっぱり当時の行政法はおかしいということなんですね。戦前から日本は、美濃部達吉さんからずっときて、行政法があったでしょう。その行政法の教科書の一番最初の憲法のところだけ戦前の憲法と戦後の憲法を変えただけで、残りの行政法体系というのは全部戦前のままなんですよね。これは何かおかしいですよ、やっぱり。国民主権の下の行政になったので、天皇主権から国民主権に変わったから、主権のところだけ変えればそれで済むんだと。しかし、それはちょっとどうも釈然としない。
 実定法上、どこにも実は本当のところ、根拠のない行政の優越性というものがまずどんとあって、そこから来て公定力理論があって、そこへずっといろんな総論、各論が全部張り付いていって、そして、そういうものを基礎にして行政訴訟の法理論というものができているわけですから、これはすべてが実は観念のもの、観念上の話であって、正に、何ですか、レヒト・ドグマティークでしたかね、そういう概念法学の所産であって、実際に戦後日本の法体系というものはがらっと変わったにもかかわらず、その部分だけは変わっていないと。
 当時思い出すんですが、いや完全には思い出さないんですが、憲法は変わる、されど行政法は変わらずという法格言がありまして、フェルファスングスレヒト何やらとこう過去分詞が付いて、フェルワルトゥングスレヒト何とかと過去分詞が付くんです。その過去分詞、忘れちゃったから大きなこと言えないんですが。そんな行政法じゃ駄目だと。これは、もし大学に残るなら行政法やろうと、そんなことを思った時期があるんです。正に、もうそういう感じの行政法がずっと来ている。
 そこで、そういう概念法学上ででき上がった行政法体系、これはこれでその法体系に従って行政が行われるというのはまあいいと思うんですよ。非常に緻密な行政法体系で、これは法治国家と、法治主義と。しかし、その法治主義と別に法の支配というものがあるんですね。ルール・オブ・ローというのは、その法治主義とイコールじゃないんで、法律に従った行政を行う、これは法治主義ですが、法律に従っていりゃいいという話じゃない。
 もう一つ、ルール・オブ・ローというのは、これは実は、私は裁判官の当時に最高裁判所から派遣されてイギリスに留学をしまして、そのときのテーマが法の支配、自然的正義ということなんです。自然的正義というのは自然法じゃない、全くイギリス法の概念なんですが、この英国行政法の一番基本の概念というのが法の支配で、この法の支配というのは、法というのは裁判所、裁判所がすべての争訟については支配をします。したがって、裁判所の前へ来たら、王様であろうが庶民であろうが同じですと、そのどちらに対しても同じように法律、裁判所にいう法律がちゃんと適用されていくんですというのがこれ、法の支配。
 ところが今の、戦前の法体系が変わって行政裁判法という明治二十三年の法律がなくなって、民事訴訟法が一般原則になって、そこで行政と私人とが対等の関係で訴訟を行うということになっているのに、そうではない法理をどんと持ってきて、そして今、行政事件訴訟特例法から行政事件訴訟法へと移って今日に至っているということで、私は、やはりこれは実は形だけの法の支配で、法の支配の精神というものが裁判所の中で、裁判の中で生きてこなかったのが今日までじゃないかと、そういうふうに思っておるんですが、いかがですか。
○政府参考人(山崎潮君) ちょっと、なかなか難しい哲学論争でございますけれども、私は逆に、大学のときに二時間ほど行政法の講義出ましたけれども、余りに難しいんで単位を取るのをあきらめたということでございますので、とても議論にならないというふうに思っておりますけれども。
 確かに、今おっしゃるとおり、行政法の教科書を見ますと、これ、先ほど委員がおっしゃったのはオットー・マイヤーさんの、オットー・マイヤーの言葉だと思いますけれども、憲法は滅びる、行政法は存続すると、こういうことでございます。こういう格言があると。それから、我が国では、例えば塩野先生が言われているのは、行政法とは端的に言えば憲法的価値の実現の技術に関する法であると、こういうことを言われております。
 したがいまして、それは、憲法が変わればその下位法法令であります行政法も変わっていくということになるはずでございますが、戦後、確かに非常に時間もなかった点から十分な対応ができないまま、特例法とか、いろいろその手当てがされていったわけでございますけれども、現在から見るとそれはいろんな御批判はあろうかと思いますけれども、やはり制度は変わってもなかなか意識が変わらなかったというような御指摘もあるというふうに承知をしておりますけれども、それが時代とともに、やはり国民の立場からきちっと物を見ていこうということから、順次順次いろんな改正が行われてきていると、こういう流れにあるんではないかというふうに理解をしております。
○江田五月君 まあ、余り趣味の世界に入り込んでうんちくを傾けていてもいけませんが、しかし、やはり言うことだけは言わせていただきたいと思っておりまして、イギリスで行政法の勉強をさしてもらうときに、最初に指導教授が、日本の行政法というのはどうなっているかを説明してくれと、自分も知りたいからということで、それで、いわゆる行政の優越性から公定力理論というのを慣れない英語で一生懸命説明したら、通じないんですね。通じないというのは、つまり行政処分を行う、そうするとこれは、その権限のある者が取り消すまではちゃんと公定力というものがあって、だれもがこれは否定できないんですと、そういう理論が一番根底にありますと言うと、何を言っておるんだと、そんなことは当たり前じゃないかと、別にそんなことを取り立てて行政法の理論でございますとか言われたって有り難くもおかしくも何ともないと。
 私人だってそうですよね、意思表示をしますと、意思表示が、何か特別にそれが取り消されない限りは意思表示はあるわけですから、あればそれは意思表示ですからね。別に行政に特有の法理だなんていうことは、それは違うんじゃないのと。そうではなくて、やっぱり行政法というのは何かというと、いかに国民が司法機能を使って行政をチェックしたり是正したりできるかと、こういう理論じゃないかということなんですね。
 イギリスの場合には、アメリカも同じだと思いますが、行政法で、私が勉強したのはもう三十年ぐらい前のことですから、その後またいろいろ変わっているかもしれませんが、四つほど類型があると。一つが、サーシオレアライといって、行政のところにある権限を裁判所へ持ってきちゃうんですね。移送命令といいますかね、持ってきて、それで裁判所が権限を持ってやると。それから、マンデイマスというのは、これは職務執行を命ずると。それとあと、インジャンクションとプロヒビションですか、差止めと禁止という、これがコモンローとエクイティーとに分かれてこの訴訟類型になっているわけですが、そういう類型で、どういう判決が出て、それはこういう理由で、それでこの理由は、これはいわゆる判例になって、ここのところはそうでもなくてと、そういう仕分をずっとしていって全体の行政法体系を組み立てるという、そんなことをやるわけでございます。
 私は、やっぱり戦後、行政訴訟について特別の規定が何もなかったときは、日本は実はそういう状況にあったんではないだろうかと。戦後の改革で、日本というのは、ドイツ型からやはり英米法型に行政訴訟については変わったと考えた方が本当は歴史的には正しい認識なんじゃないかと。それがまた元へずっと戻ってしまったということなので、だから、今回、司法制度改革に当たって行政訴訟改革もやるとするならば、もちろんそれはその後のいろんな時代の変遷もあります。国際的に社会経済環境も大きく変わってきていますし、いろんな我々経験も踏んだわけですから、昔のままのものを今持ってこいというわけじゃないけれども、しかしそういう英米型の行政に対する司法救済の考え方というのをもっと大胆に取り入れた方が、本当はこの国民主権の下の司法制度改革行政事件版というものができるんじゃないかと思っておるんですが、これも聞いたら何とお答えになるか、ううん、難しいと言われるかもしれませんが、まあ感想をちょっと教えてください。
○政府参考人(山崎潮君) 今回の改正、基本的には従来の枠組みを大きく変えるものではございませんけれども、その中でもやっぱり国民の視点から物を考えていこうと、こういう改正をしたわけでございます。これを超えて、更に骨格自体からもちろん議論をしていこう、こういう御意見も検討会の中、いろいろございました。あるいは行政プロパーの問題、それから行政と司法、あるいは国会を含めた三権にかかわる問題をどうしていくべきかと、こういうような議論もあったわけでございます。
 これを、今回は、その点についてはまた将来課題であると位置付けをしているわけでございますけれども、本当にその議論をしようということであれば、これは英米に限らず、世界でいろいろなルールの仕方があるかと思いますけれども、そういうものをじっくり参照の上で、かなり高い議論といいますか、それを経るべきではないかというふうに私どもは理解をしておりまして、将来どうなっていくか、それはよく見守っていきたいというふうに考えております。
○江田五月君 ありがとうございます。
 今回は骨格、根幹部分を変えるものではないが、しかし将来的にやはりより高い議論が必要であるかもしれないと、そういうお話で、私は必要だと思っておりますが。
 今朝の園部逸夫参考人の話でも、行政事件訴訟法ができたときは、これ、雄川一郎さんの言葉を引用されていますが、行政訴訟の将来を展望して新しい時代に対応すべき備えをするという点では不十分なものであったと。今回の改正法でも、このように早く改正案が提出されたことを評価したい、今後、より総合的な行政訴訟制度の構築と行政法総則の立法化が望まれると。この辺りは正に、そうした私と問題意識を共有されているのじゃないかと思っておりますが。
 私は、ただ、今回の改正でもこの部分、この部分はやはりこれは制度の根幹に実は切り傷を入れた、そういう改正になっているんじゃないかと、あるいはそういう位置付けをする、そういう運用ができるんではないかと思う点があります。それは、一つは義務付け訴訟であり、もう一つが差止め訴訟ですね。義務付け訴訟、差止め訴訟というのは、なぜ一体裁判所が行政に対してできるんですか。私はできると思うんですよ。だけれども、なぜできるかという物の考え方の理解の仕方によって、これがこの行政訴訟の骨格部分にやいばを突き付けたことになるかならないかが違ってくるから、そこを伺いたい。
○政府参考人(山崎潮君) ここのところは、大枠は変えないと申し上げましたけれども、この部分のところは若干、考え方によっては境というんですか、行政と司法の境が少し動いているという評価だろうというふうに思います。
 本来は、行政、今の考え方でございますけれども、行政処分が行われて、それに対して事後的にそれがいいか悪いかをチェックするのが裁判であるということで、裁判が行政の中には入っていかないと、こういうルールでできております。今回の義務付け・差止め訴訟はその境をもう少し中に入ることになります。まだ処分が行われていないものもあれば、こういう処分を行うべきだという判決をするわけでございます。
 したがいまして、本来は、行政が第一次判断権を持ち、あるいは裁量権もあるわけでございますけれども、そういうその第一次判断権、ここに対して司法の方が入り込んでいくと、こういうことでございますので、境が動いたという評価はもちろんできるだろうと思います。
 ただ、根本は、変わっているかと言われると、例えば行政裁量ございます。行政がある種の裁量を持っているところに裁判所が完全に入り切れるかといったら、そこはなかなか難しいということから、この要件にも書かれておりますけれども、ある種の判断の一義性、こういうものがあるものについては裁判所が入っていって判断をするというところまではいいだろうと、こういう限度があるということでございますが、仕切りは動いているという位置付けでございます。
○江田五月君 山までは動かなかったけれども境ぐらいは動いたという、そんな感じかもしれません。私もそれはそうだと思うんですが、そこが重要なことで、山は動いていないんだということを強調するのか、境目が動いたんだということを強調するのか、これはやっぱりその後の運用に違いが出てくるというので、私はやはり従来の司法というのは行政の世界には一歩ももう入り込まないんだということでなくて、やはりそこは国民主権ですから、国民主権の下で司法、行政、立法というものがあって、国民主権をよりいいものにしていくために司法が自らの使命を持って行政のところへじわっと入り込んでいくということは、これはあってもいい。ただ、行政に変わってしまうというわけには、それはいきませんわね、司法ですからね。その辺のあんばいというものが重要なことだと思っています。
 そこでです、そこで、今の義務付け訴訟にしても差止め訴訟にしても、これこれこういう要件でということを書いてありますよね。この要件の解釈の仕方、この要件を解釈するときの基本的な態度なんですね。これは私は、一説によれば、行政がやるべきことをやっていないということは、やらないというある種の判断を行政がしているんだから、そのやらないということが違法であるという判断は、それは司法にはできますよと。その判断をして、もうそこまで行っているんなら義務付けとか差止めとかをやっても、それはあと紙の、首の皮一枚のところだから、そこは行っちゃっていいんだというような理解もあると。しかし、そこまで厳格に言わなくても、一定の要件というのは今のその境目が動いているんですと。したがって、その要件はやっぱり国民主権、国民の司法による救済をより全うせしめるような姿勢でその要件については、この訴訟類型が使いやすいようにその要件を解釈をしていくという、そういう解釈態度が必要だと思いますが、いかがですか。
○政府参考人(山崎潮君) 確かに、例えば義務付けでいうと、申請をして拒否をされたという場合に、取消し訴訟だけではなくて義務付けを行うと。この面では全く要件がございませんので、これはもう当然入り込める余地があると。ただ、一義性の問題もございますので、そこの条件はあるということになろうかと思います。
 問題は、申請権のない方が起こせるかどうかという点でございますけれども、これは、じゃ、だれでも利害がなくて、だれでも起こせるかといったらそういうことにはならないので、そこは法律上の利益があると。それから、やっぱり重大なその影響を受ける、そういう重大性というんですか、そういう点についてはだれでもかれでも何でも言えるという形ではないんですけれども、そういう要件は設けさせていただいていると。
 しかし、やはりきちっと行政が本来対応すべきものについてはそれをチェックをすると、こういう機能が十分に働くようにその要件を解釈していかなければならないと、そういうことでございます。
○江田五月君 もう一つ、義務付けという場合には、行政がそういうアクションを起こさないことが言ってみれば違法だという前提としての判断があるのだと思いますね。そうすると、その不作為の違法確認という訴訟類型がありますよね。それと義務付けという新たな訴訟類型ができている。
 これの広狭の関係というものは、広い狭いの関係というものは、これはあるんでしょうか。
○政府参考人(山崎潮君) 物によってはその不作為の違法確認が行われれば処分が行われるという、事案事案によってはあろうかと思います。ただ、やっぱり行政の態度から、ただ不作為違法確認があっただけではその先のどういう行為が行われるか、これが必ずしも十分ではないというものもあり得るだろうと思います。こういう場合にはやはり義務付けの訴訟を使っていただくと。その事案事案によってルートは幾つかある、これで一番向いたものを利用していただきたいと、こういうことでございます。
○江田五月君 私が広い狭いということを言ったのは、例えば、一定の義務付け判決を求める、審理の結果、そういう義務付けに係るアクションを行政が行えないことは、これは違法であると確認できる、しかしそれを超えてどういうアクションを起こすかについては行政の第一次的判断というものがあるからそこまではいかないというので、義務付け判決を求めて、その一部認容で違法確認を認めて、その残余の部分は請求棄却になるというような、そういう、民事訴訟だったら大体そういう成り立ちになるかと思うんですが、そういう関係はあるんでしょうか、ないんでしょうかということを聞いたんですが。
○政府参考人(山崎潮君) この点に関しましては、不作為違法確認とそれから義務付け、これについては同時に一緒に起こしてもらう、あるいは取消しと義務付け訴訟、これ一緒に起こしてもらうと、こういうような形になっておりますので、それのどちらか、今おっしゃいましたように、違法確認はできる、しかし何かを義務付けるまではいかないというものについては、それは棄却と。それから、違法は確認できるというものについては不作為違法確認をすると、これはできることになろうというふうに思っています。
○江田五月君 もう少しぎりぎり詰めてみたいところですが、こっちも余り準備をしていないんでこの程度で次へ行きますが。
 原告適格ですよね、これはいろいろ広げる方向で努力しておられて結構だと思うんですけれども、これは何か原告適格についての法理と、具体的な考慮の対象はこうこうこういうものを考慮しなさいよ、いや、それだけではなくて、それはもっとほかのことを考慮してもいいですよとか、そういうことはあるんですが、原告適格イコールこういうものという、そういう理論というものがあるんですか。原告適格理論というのがあるんですか。
○政府参考人(山崎潮君) いや、これはあればきちっと法文にも書けるということになるわけでございまして、なかなかすべての場合について書き切れないので「法律上の利益」という文言で代表しているわけでございますが、これを代表していても、余りにも抽象的で一体何を手掛かりにして考えていいか分からないと、こういう状況でございましたので、法理論があるというよりも、今までかなりいろんな判例の集積もございますので、そういうところを分析して、この点については非常に重要であるというようなものをその考慮事項としてこの中に盛り込んで、これについてはすべて、裁判官はすべてこれを判断をしなければならないと。ただ、解釈の余地があるということではなくて、それを常に考えなければならないと。その上にまた解釈ももちろんあるわけでございますけれども、最低限のところをレベルアップしたと、こういうことでございます。
○江田五月君 原告適格についてはいろんな裁判例というのが積み重なってきていて、その中にはよく認めたというものもあるし、もうちょっと認めたらいいのになというようなものもあると思うんですね。
 今回のこの原告適格については最高裁が認めたものを言わば踏襲したんだという、そう聞こえるような答弁も衆議院の方であったやに聞くんですが、やに聞くんですが、そんなことはないですよね。全体にレベルアップしたということでいいですよね。
○政府参考人(山崎潮君) 衆議院で私もしそういうふうに聞こえたんなら訂正させていただきますけれども、そういう趣旨は私の気持ちにはございません。
 いろいろな判例はございましたけれども、今までは、あったって極めて狭く、その後もですね、極めて狭く解釈する判例もございまして、これは解釈だから自由だったわけでございます。これではやはり全体のレベルアップがしないということから、考慮要素を定めまして、これは最低限考えなければならないと、こういうところにレベルアップをしたということで考えております。
○江田五月君 ちなみに、イギリスの訴訟ではビジー・ボディーズ・スーツというのがあるんですね。ビジー・ボディーというのは要するにおせっかい者なんですよ。おせっかい者がちょこちょこやってきて訴訟を起こして、そんなものは駄目ですよという、そういう法理論が、法理論というのか、ありましてね、逆から規定を、規定というか、考えているわけですね。
 つまり、本当に自分自身にとってこのことを判断してもらうだけの合理的な、客観的な、正当化されるそういう理由がある人が来ればそれはよろしいよと。しかし、あんたのは、ちょっとそれはもうそんなにわあわあうるさく言いなさんなという人たちは、これはぽんとはねるという感じでございまして、何かの参考になればと思います。
 被告適格ですが、被告適格をもう国とか、こういう、どんと認めるということなんですが、それでも、被告はそういう表示をしても、求める判決については行政庁を明示して、ある行政庁のある処分を取り消すというような、そういう判決を求めるということになるんでしょうから、そうすると、そこのところを間違ったら結局は同じことかなという気もするんですが、そこの主文の間違いなんというのはどういうふうにするんですか。主文というのは、つまり訴訟、判決の主文じゃないんですよ、訴状に書いてある請求の趣旨の間違い、これはどうするんですか。
○政府参考人(山崎潮君) 今度は被告が国でございますので、当事者としては国を訴えればいいということになりますけれども、請求の趣旨の特定のところで、どこが行った処分なのかと。これは処分一杯ございますので、その処分のしたところとその年月日ですね、これを掲げるということになると思いますけれども、これは、そこを間違った場合は単なる請求の趣旨の訂正ということでございますので、そこは裁判所の釈明をうまく使ってもらいましてきちっと直せばそんなに大ごとになることはないだろうと思います。
○江田五月君 それでいいんですよね。いわゆる訴訟物が変わってしまって何とかかんとか、あるいは出訴期間が守られなかったりとか、そんなことにはならないんでしょうね。出訴期間は大丈夫ですね、処分庁の表示が間違っていても。
○政府参考人(山崎潮君) この規定の中で便宜のために行政庁を書いていただくところございますけれども、ここを書かなくても、それから書き間違っても効力には影響ないということでございます。
○江田五月君 管轄、この管轄の法理論というのがなかなかややこしくてね。被告住所地を管轄する裁判所というのは管轄の大原則なんですが、今回はそうではなくて、原告の居住する土地を管轄する高等裁判所の所在する地方裁判所ですか、ややこしい言い方になっているんですが、そういう管轄理論というのはあるんですかね。
○政府参考人(山崎潮君) これは私より江田委員の方がずっと詳しいかと思いますけれども、別の法律でこういうような管轄の法理を取ったものも当然あるわけでございます。これは議員修正で行われたというふうに承知をしておりますけれども、前例はございます。
 今回考えましたのは、そこで言われているもの、そのとおりかどうかはちょっと別として、私どもは、一つは、国民が起こしていくわけですから国民の利便も考えなきゃいかぬだろうということと、裁判所の専門性の体制をどう組んでいくかということ、この両方のバランスを考えましょうということでございまして、確かにくまなく専門家を全国に配置できるということならばそれでやれることだということになるかもしれませんけれども、なかなかそれを全国にやるということは能率的ではない。それで、大きな高裁所在地の地方裁判所にはある程度集中的に投入できるだろうと。そのバランスを考えて高裁所在地の地方裁判所と、こういうふうに考えたわけでございます。
○江田五月君 これは、おっしゃるとおり、情報公開法のときに議員修正でそういうことをやったんです。国会議員が言うんだから、それは泣く子と地頭には勝てぬという形でやったわけですけれども、理屈からすると、それは理屈はないですよ、そんな理屈はね。だけれども、それはやっぱり東京だけというわけにはいかない、広げろということでそういうことをやったんですが、だけれども、高裁所在地の地裁はその他の地裁よりは格が上だとか、そんな話じゃこれないですよね、格の話じゃない。裁判所の限られた人員をどういうふうに配置をするのが一番合理的かという話であって、そして同時に、国民の皆さんが裁判所にアクセスするのに、自分の県の地裁へ行くのがそれは一番便利いいけれども、そこまでちょっとこらえてちょうだいと。
 じゃ、一地方の中心となる、中心といったって、例えば四国だったら愛媛と香川とどっちが中心かなんて分からないんですよね。裁判所の場合は香川ということになるけれども、そのほかのいろんな行政サービスでは愛媛ということもあるわけですから、分からないんですが、まあいいでしょう、そういうことにして。
 それならば、私たちがあのとき考えたのは、ここは管轄法理と現実の議員修正と違うと。これは言わば活断層、この活断層はいずれ動く、動き出して管轄を全部作り直していく、そういう、そのときにどういう管轄法理になるか、そのときはまだ、我々まだ分からないんですけれども、そんな意味でここに不連続線を入れておこうというような思いでやったんです、少なくとも、私は。
 そうだとすると、今回更にもう一歩進んで、例えば沖縄の皆さんについては、沖縄の皆さんについては那覇地裁、これを管轄裁判所にできない理由はないんですが、できない理由は何かあると思いますか。
○政府参考人(山崎潮君) この問題は情報公開訴訟についてもいろいろ言われているところでございまして、それと軌を一にして考えていかなければならないという問題として理解はしております。
 ただ、もう委員御案内のとおり、この管轄は例えば不動産の所在地にも認められておりまして、それから処分した下級行政裁判所、あっ、裁判所じゃない、行政機関、そこが行った処分についても下級行政機関のあるところで起こせるということになりますので、それで考えますと、かなり沖縄の場合は下りているんだろうと思うんですね、権限が。それから、不動産の関係も多いということになろうかと思います。
 実態は当たっておりませんが、この案を作っていくときに、どうしても沖縄という声は少なくとも私どもは余り聞かなかったということでございまして、また今後の動向いかんで考えていくべき問題だというふうに考えております。
○江田五月君 管轄の問題、今も言いましたとおり、これは言わば行政事件、じゃない、情報公開法でああいう管轄を議員修正で入れているというのは、あそこに地雷をちょんちょんちょんと埋めておいたということですから、今後、いろんな議論のときにこの地雷が小さく、時にはどんと大きく爆発して、管轄というものを大きく考え直すというときがいずれは来るんではないかと思っております。
 時間もだんだん来ておりますが、山崎さん、民主党の行政事件訴訟の改革案というのはごらんいただいたでしょうか。
○政府参考人(山崎潮君) 読んでおります。
○江田五月君 感想はいかがですか。
○政府参考人(山崎潮君) 先ほど申し上げましたけれども、今回はその改正は一部でございます。残された大きな問題、これ徹底した議論も必要でございますけれども、そういう問題について幾つか芽が出ているというふうに理解をしております。
○江田五月君 先ほどの参考人のお話にもあるんですが、いわゆる不当問題ですね、不当問題と言うのは変かな。違法適法、これは司法審査になじむ、しかし当不当、不当は司法審査になじまないと言うんですが、裁量問題について司法審査は本当に及ばないのか。
 これは行政の裁量だから司法は抑制すべきであると言うけれども、さっきも角田委員からの御質問もありましたけれども、違法なんというのは、これはもう当たり前ですよね、だれが聞いたって違法なものは直さなきゃならぬのは当然なんで、しかしだれが見てもこれは不当だというのもありますよね。不当か不当でないかというのは、それは行政庁が判断をすべきものであって、そこで、そこは裁判所はそこまで入り込んで判断をすることは差し控えるということなんですけれども、しかし行政庁が判断したらもうそれで当不当問題はなくなるのかといったらそうでもないんで、行政庁は判断したんだけれども、まあだれが見ても不当だというのが訴訟になるわけでしょう。それはやっぱり裁判所が見たって、ほかの人が見ると同じように裁判所が見たってこれは不当だということは分かるわけですから、そういう不当性を帯びた処分というのはもはや既にそれは裁量の限界を超えて違法性を帯びている、そういう処分になるんじゃないかという、そんな法理もありますよね。いかがですか。
○政府参考人(山崎潮君) 現行法では、当不当は行服法の世界で判断をしていると、それから違法の点については裁判所と、こういう役割でございますが、ただ、この行政事件訴訟法の中にも、裁量権を著しく逸脱した場合、これについては裁判所の方でもその判断ができるという規定もございますので、本当にそこに至るようなものについては判断が可能かなというように思っておりますが、じゃ、それに至らないものをどうするかという問題は、今後、行政手続全体の問題、これをどう考えていくかという問題だろうというふうに思っております。
○江田五月君 先ほど、義務付け訴訟とか差止め訴訟のところでは境目が動いたという話があったわけで、同じことなんですよ。行政不服審査法の世界と行政事件訴訟法の世界のところに境目があって、しかし義務付けや差止めで境目が動いているんですから、これは行政事件訴訟法のところだって行政不服審査法の世界のところへちょっと入り込んでくるということがあったっておかしいわけじゃないんで。
 ちなみに、この場面でもイギリス、まあイギリスの法律ばかり言うと何か嫌らしいですけれども、裁量権を誤ったらやっぱりそれは違法だという、これはもう世界じゅうどこでもそうだと思いますよ。イギリスなんかすごいんですよ。国会の法律があって、その法律に従って行政が何かやったら、裁判所がおかしいと、それは、国会がそんな裁量を認めるはずないから、あなたの裁量はおかしいからこれは法律違反だなんて、そんな理屈付けるんですね。要するに、パーラメンタリーソバレンティー、国会最優先というのと法の支配との二つの原則をくっ付け合わせて、そして行政処分をチェックしていくという機能を裁判所が果たすという。不文法の世界というのは非常に面白い世界でして、まあここでうんちく傾けるのはもうやめますが。
 そこで、私どもは、もう一つ、例えば行政事件というのはやはりある種の主観訴訟ではあるけれども、やっぱり、この主観訴訟、客観訴訟というのも法律の世界の人間しか通じない変な言葉ですが、やはり個人が自分の権利救済を求めるということを超えて行政の過誤を正すという、そういう意味ではかなり公的な性格を持っているわけですよね。そういう、社会、公共のために自分は訴訟を起こすというとちょっと嫌らしい、そんな感じがするけれども、しかし行政訴訟にはそういう面がある。
 ですから、そういう訴訟をあえて起こしたときに、これはなかなか相手は行政ですから勝つのは簡単じゃありませんよね。勝てばもちろん訴訟費用は被告ということになる。勝ったときには、行政訴訟の場合は弁護士費用も被告が持てよと。負けたときは、これは公共のために訴訟やっているんだから被告の弁護士費用を原告に持たせるようなことはやめろよと。そういうような、いわゆる弁護士費用の片面的負担制度というようなことも私たち考えておるんですが、これは今回、全然提案の中にはありませんけれども、山崎さんの感覚を聞かせてみてください。
○政府参考人(山崎潮君) これについては、現在、法案を衆議院の方にお出しいただいておりますが、させていただいておりますけれども、まだ審議をいただいていないという状況の中でこれをお答えするのは非常に難しいわけでございますけれども、ベースがないということになりますけれども、この問題は、じゃこのジャンルだけに限られるのかどうか、それについて本当に、最終的には税金を使うわけでございますので、国民の方が最終的に納得してもらえるのかどうか、この辺のところはもう少しいろいろ検討をしなければならないということで、今直ちにこれについて私どもではいというわけにはいかない問題であるということでございます。
○江田五月君 少なくとも、今皆さんが衆議院の方に出しておられるあの法案よりは、あの法案なんてとんでもない法案で、あれよりは今私たちが提案したものの方がよっぽど何か国民の皆さん、うん、そうだと言ってもらえると思いますよ。
 終わります。
○岩井國臣君 今、江田先生の方から司法の行政に対するチェック機能の話がございました。三権分立の問題というのはなかなか難しい問題かと思います。憲法ではもちろん三権分立ということになっているんですけれども、実態は必ずしもそうはなっていないかもしれない。行政の力が強過ぎるのではないか。したがって、司法がそれに対してしかるべきチェック機能を持つべきではないか。山が動いたのか、ちょっと境目が少しあれしたのかという、震えたのかみたいな話がございましたけれども、やっぱりあれなんですね。私は、司法というのは基本的に法律に基づいて判断されるのが基本だろうということで、物事の境目というのはなかなか微妙なところがありますから、多少のことはもちろんあり得るし、そうでなけりゃいかぬわけでありますけれども、ですから、先ほど司法が行政の世界にじわじわと、今回はじわじわと入り込んでいる、そういう表現もなさったわけでありますけれども、やっぱりちょっと行政が強過ぎますから、私は三権分立の中でやっぱり立法が、立法府がちょっと弱いのではないか、もうちょっとしっかりして、それこそ行政の分野にどかどかと、じわじわじゃなくてどかどかと入っていくべきではないかなと。だから、行政の過誤を正すという話がありましたけれども、いろいろ江田先生の話も聞いておって、私たち立法の方でなければならない問題がやっぱり御指摘いただいておるのかなという感じもしたわけであります。
 そんな感想を持ちながら、これ最終的な確認みたいな話でございますが、幾つかの質問をさせていただきたいと思います。多少今までの質問とダブるようなところがあるかも分かりませんけれども、確認でございますので、御容赦を願いたいと思います。
 先ほど、江田先生のお話に義務付け訴訟、差止め訴訟の話がございました。今回、新しく法定されておるわけでありますが、そういう義務付け訴訟、差止め訴訟がなぜできるのかという御質問であったわけであります。行政に対して裁判所が公権力の行使を義務付けるとか差し止めるということは、やはり司法と行政の役割分担など三権分立の観点からいろいろ難しい問題がある、十分な検討が必要だと。事実、いろんな検討をなされてきたと思います。
 そこで、念のため確認させていただきたいわけでありますけれども、義務付け訴訟と差止め訴訟を法定するに当たり、具体的にどのような事案でこのような訴訟が必要になるとお考えになったのか、その辺の御説明を願いたいと思います。
○政府参考人(山崎潮君) 義務付けと差止めにつきまして、ちょっと具体的例で申し上げたいというふうに思います。
 例えば、義務付け訴訟でございますけれども、これにつきましては二通りございまして、一つは、年金あるいは公的保険などの社会保障給付、こういうものについて法律によって認められるべき申請が拒否された場合。これについて、今まではその拒否が良かったかどうかということのいわゆる取消しというところで終わっていたわけでございますけれども、これについて、取消しのみならず、こういうような、例えば金幾らを給付するという、こういう決定をせよということを義務付けるということでございまして、直截にそこで一気に解決をしようと、こういうタイプのものでございます。
 それからもう一つは、公害防止のための行政の規制あるいは監督権限の発動として是正措置等の処分をすべきであるのにそれがされないというような場合。こういうような場合について、現行法ではそれが明確でないために、こういう訴訟が起こせるかどうかというのが極めて不明確であるということでございまして、例えばある企業が許可を受けて事業を行っていても、そこからいろいろな例えば公害物質が出てきて、そこの辺の住民が非常に健康の被害を被るという場合に、企業に対してその差止めを求めるということも一つの方法ではございますけれども、そうではなくて、行政庁の方にその規制権限の発動を求めると、こういうタイプも認めていくべきではないかということからこれを認めた。これ、現代型のかなり新しいタイプの需要で、訴訟需要であると、こういうことでございます。
 それから、差止めの方でございますけれども、これは行政の規制・監督権限に基づく制裁処分が例えば公表されるということになると、名誉あるいは信用に重大な損害を生ずるおそれがあるというような場合に、それが行われてしまったら取り返しが付かないというような場合にこれを差し止めると、こういう必要性もあるということからこのような類型を設けたということでございます。
○岩井國臣君 今回の改正では、確認訴訟が新しく明示されることとなっております。しかし、確認訴訟はこれまでも可能であったわけですよね。今回、明示することになったわけでありますが、今までどのような場合に確認訴訟が使われてきたのか。幾つかの判例の積み重ねというものもあるのではないかと思います。
 しかし、そうはいいながら、確認訴訟というのが十分に活用されてきたとは言い難い。そういうことで今回の改正につながっているんだろうと思いますけれども、今まで可能であったにもかかわらず十分に活用されてこなかった、そういう理由についてはどのようにお考えになっているのか、お答えいただきたいと思います。
○政府参考人(山崎潮君) 例えば、例で申し上げますけれども、典型的な例、三つほどちょっと申し上げたいと思います。
 これは現実に裁判例があったものでございますけれども、薬局の開設を登録制から許可制に改める、こういう薬事法の改正ですね、これが憲法違反であると主張いたしまして、既に登録を受けている者がその改正後でも許可を受けずに引き続き薬局の営業をすることができるということの確認を求めた訴えというのが起こされまして、これについてはそういう訴えを起こすことは可能であるというのが裁判例でございます。結果は、これは憲法違反ではないということから棄却をされたということになりますけれども、こういうような無効確認という、自分の権利義務関係にあればできるということです。これ、背景には法律があるということでございます。
 それから、日本人の子であるかどうかが争いになっている場合に、日本人の子であることを前提に日本国籍を有することの確認、これを求める訴え、これはよく新聞にも、時々載っているような事例でございます。
 それから今度は、ごみの収集場所をダストボックスに限定した廃棄物処理計画が無効であるとして、従来の場所で市がごみを収集する義務があることの確認を求めた訴えと、こういう訴えもなされまして、これも可能であると、こういう判断であるわけでございます。
 今まで幾つか例はあったんですけれども、これを真っ正面からとらえて、こういう類型の場合には可能なんであるということ、そこの、何というんですかね、その分析、あるいはそれの周知徹底が必ずしも十分には行われていなかったという現状でございます
 今回は、これをもう法文上で明記することにしたわけでございますが、これのきっかけになったのは、例えば今回は取消処分の、取消し訴訟ですね、これの対象を拡大しているわけではございません。いわゆる処分性があるものというふうにしているわけでございますが、この中で、例えば行政計画とか、行政立法、通達、それから行政指導、こういうものについても客観的に争う対象にすべきではないかと、こういう議論が行われておりました。
 先ほど江田委員からもこの指摘がございましたけれども、今回はそこまでなかなか踏み込むわけにはいかないと。しかし、そういうものが前提で、もしそれがあると、自分がその申請をしたときに一定の行為を義務付けられるというような場合もあり得るわけでございます。そうなりますと、自己の権利関係に影響があるわけでございますので、それについてその訴えを起こすことがこの無効訴訟で、無効確認訴訟で起こせるというふうにつながるわけでございます。
 したがいまして、例えばその通達あるいは行政指導によって一定の義務があるとされたものが、法律上そのような義務がないことの確認を求めると、こういう方法でもできるということになりますので、それならば今までと、そういう、今まではこういうことは余り考えられていなかったわけでございますので、これを明確にするために法文上こういう訴えの類型もあるんだということを明らかにして、これを利用、必要な場合には利用してもらいたい、こういう意思表示だということでございます。
○岩井國臣君 今まで余り確認訴訟が活用されてこなかった。不可能というわけではなかったんだけれども、なかなか活用しにくかったというか、されなかった。
 確かに、取消し訴訟中心主義の考え方があったのかなとか思ったりしておりますが、そういう意味で、取消し訴訟の対象となるものはいいんですけれども、それ以外の行政庁の処分につきましては、先ほどの話のように、なかなか国民が争う機会がなかったと。だから、いろいろと問題の指摘もあったわけであります。
 今回の改正は、このような取消し訴訟中心主義の考え方を改めまして、行政訴訟でも国民の権利救済の必要な場合には必要な救済をしていく、そういう裁判所の役割というものが、今までもそういう役割はなかったわけじゃないので、そういう意味で再確認と、こう言っていいのかも分かりませんが、再確認されたと、そういう重要な意義を有しているのではないか。
 行政の分野までじわじわと司法の役割、責任というものが入ってきたということだと思いますが、そのため、しかし今後有効に今回の改正が機能していくためには、やはり弁護士さんや裁判所が従前の発想から確認訴訟の活用も含めて司法権の本来の役割、十分に発揮していこうという、まあ意識改革というか考え方、そういう新しい考え方、今回の新しい考え方、改めて認識していくということが重要ではないか、そういう周知徹底といいますか、ものが極めて大事ではないかと思うわけでございます。とりわけ裁判官の意識が重要かと思います。
 そこで質問ですけれども、最高裁判所としては、このような改革の趣旨を裁判官に対してどのように周知徹底していこうとしておられるのか、お答えいただきたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(園尾隆司君) 今回の行政事件訴訟法の改正法案の趣旨を実現するためには、裁判官が改正法の趣旨を十分に理解するということが重要でありまして、その前提として、裁判官にこれを周知することがまずもって必要であるということは委員御指摘のとおりであるというように考えております。
 そのために、裁判所におきましては、まず事件数の多い裁判所で専門性の高い事件処理に当たっている裁判官に集まっていただいて協議会を開催するということを考えておりまして、その中で法改正の趣旨や問題点について率直な討議をしていただいて、その結果を全国の裁判官に参考送付したいというように考えております。
 さらに、司法研修所におきまして、外部講師を招いて研究会を開催するなどの計画を検討しておりまして、このような方法によって法改正の内容について研究を深めて、併せて改正の趣旨の周知を図りたいというように考えておるところでございます。
○岩井國臣君 先ほど江田先生の話にもその行政の適法性、違法でないと、適法性と、こんなものは当たり前で、それだけじゃなくてもっと行政の自由裁量の部分まで入り込んだ形で適正なものにしていかないといかぬのじゃないか、そういうお話があったわけでありますし、今回もそういう意味で、山が動いたわけじゃないかもしれないけれども、司法による行政に対するチェック機能が強化されたということは間違いないだろうと思いますが、そのこともさることながら、私はやはり行政内部の、行政の中の、行政内部の自己管理というのがやはり大事ではないか、今回のこの法改正に併せて、車の両輪で行政内部の自己管理が大事じゃないかと。
 そこで、大臣に質問させていただきたいと思いますが、行政における国民の権利保護、行政による裁判によらない紛争解決、あるいは行政内部の準司法的な審査機能などなど、いろいろあると思うんですが、行政内部の自己管理機能の強化との関係もやはり視野に入れて国民の権利救済というものにつきましては今後取り組んで、政府として取り組んでいかれる必要がある、政府全体としての検討を続けていただきたいと、こう思うわけでございますが、そのことにつきまして大臣の所感をお伺いしたいと思います。
○国務大臣(野沢太三君) 行政自身が極めて大きくなり、また多機能にわたって仕事をしている。非常にこのバランスがその点で取れなくなってきたところから、こういったやっぱり司法の面から行政をチェックするという必要が更に大きくなったと。これは事実ですが、今委員が御指摘のとおり、行政自身が自己管理ということで自らその在り方を正していくということがまたこれは必要であることはもう言うにまたないことでございます。
 これをやはり、適切に国民の利益をやはり守るという観点からしましても、司法制度と行政の自己管理とが相まってこそ初めてこの本来の目的である国民の福祉の実現という目的が達成される、こう考えているわけでございますが、この行政訴訟制度に関しましては、司法制度改革推進本部の事務局の検討会におきましても多くの論点が指摘をされまして、検討が行われてきたところでございます。
 一方、行政訴訟制度に関する指摘の中には、司法制度改革の枠組みを超える行政の在り方の見直しに及ぶものや、三権分立の視点からの十分な検討が必要な問題も少なくないと考えまして、まだまだこれから取り組むべき課題はたくさんあるんじゃなかろうかということでございまして、私はこの今の法律の状況というのは現在完了進行形ではないかなと、こう思っておりまして、引き続きの工夫と努力、更なる検討が必要であることは論をまたないわけでございまして、今後、成立後も、その成果をやはりできるだけ上げながらも検討は重ねていかなければならないと、かように考えております。
○岩井國臣君 今回の改正案では、審理の充実、促進のために行政庁の資料の提出の制度が新たに規定されました。国民の視点からは、行政訴訟の審理が充実し、迅速に結論が出されなければならないのは当然だと思います。
 そこで、最高裁判所にお尋ねいたしますが、現在、行政訴訟につきましてどの程度の事件数の訴えが提起され、そしてどの程度の審理期間で審理されているのか。私よく分かりませんが、ともかく迅速な審理ということがいろいろ言われております。迅速な審理が行われるようにするため、裁判所では改正後、どのような工夫をしていくおつもりであるのか、お答えいただきたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(園尾隆司君) 行政訴訟の第一審の新受件数は、平成十年に一千七百四十八件であったものが、平成十四年には二千三百二十八件となっておりまして、相当程度増加しております。その間に審理期間がどう変化したかといいますと、平成十年の地裁第一審行政訴訟の平均審理期間は二十・七か月でございましたが、平成十四年には十六・八か月となっておりまして、一定程度短縮されてきております。裁判所といたしましては、今後も行政訴訟の充実、迅速化を図るための努力をしていく所存でございます。
 具体的にどのような工夫をしていくのかといいますと、行政訴訟の迅速化は民事訴訟一般の迅速化と連動しているものでございまして、民事訴訟の迅速化一般について言われておりますと同様に、まずしっかりとした争点整理を実施しまして計画的な審理に心掛けていくということ、それから、当事者にはできる限り早期に主張と証拠を提出してもらうということが重要であるというように考えております。
 今回の改正法案におきましては、民事訴訟の一般原則を更に強めまして、釈明処分の特則として、行政不服審査手続における裁決記録などの提出を求めることができるという釈明処分の制度が新設されることとされておりまして、この制度も審理の迅速化に役立つものというように考えております。これらの手段を適切に使うことができるように研究会やあるいは研修などを充実させていきたいというように考えております。
○岩井國臣君 ちょっと時間がなくなってきましたので、釈明処分のことを一つ質問用意しておったんですが、これはもう割愛させていただきまして、最後の質問、体制の、裁判所の体制の問題について御質問をさせていただきたいと思います。
 行政訴訟につきましては、専門的な体制の整備がやはり必要であろうかと思います。今回の行政訴訟制度の改革で、一層使いやすい行政訴訟制度になるということであれば訴訟の件数も増える、国民の訴えも増えることになると思います。また、これまでのような処分性であるとか原告適格であるとか、訴訟要件が重視され、門前払いが多いという訴訟構造から、訴訟要件に関し門戸を開いて、国民の権利救済の観点から、なるべく裁判所が取り上げるにふさわしい事件はやはり訴訟として認めていこう、そういうことであるわけであります。
 今回の改革はそういうことでございますので、やはり訴訟件数が増え、裁判所の体制というものも極めて大事であると。裁判所の体制強化という観点から、人的にもそして物的にもしかるべき体制が整えられなければならない。裁判所が多くの行政訴訟をがっちりと受け止めて、行政法をしっかり解釈適用できる充実した体制を作っていくことがこれから極めて重要ではないかと思います。
 最後の質問になりますけれども、最高裁にお尋ねいたしますが、今回の行政訴訟改革を受け止める裁判所の体制の強化について現在どのようなことをお考えになっているのか、ちょっと具体的に御説明願いたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(園尾隆司君) 行政事件、行政訴訟事件を迅速かつ適正に処理をするための体制の整備といたしまして、まず、係属する行政訴訟事件数が多い地方裁判所におきましては、行政訴訟事件を専門に処理する部あるいは集中的に処理する部を設けるという方策を取っております。また、専門部、集中部を設けていない小規模地方裁判所におきましては、原則として合議体がその審理を担当して、審理の進め方を工夫するなどしながら事件の迅速かつ適切な処理に努めてきております。
 加えて、司法研修所におきまして、全国の行政事件を担当する裁判官を対象とする研究会を毎年継続的に実施しておりまして、行政法学者の講演やあるいは行政訴訟の実務家による講演を聞いたり、訴訟運営についての共同研究を行うというようなことで集中的な研修を行ってきておるところでございます。
 国民の権利利益の実効的な救済を図るという今回の行政事件訴訟法の改正の趣旨を果たすために、行政事件を担当する裁判官の専門性を強化することが重要であるというように正に私どもも認識しておりますので、今後もなお一層必要な体制の整備に努めたいというように考えております。
○岩井國臣君 もう行政は御案内のとおり、近年大変複雑になってきておるし、専門的にもなって難しいですね。とても難しくなってきておるということでございまして、裁判所の方がそれに十分対応できないとやっぱり困るわけでございます。そういうことで、質的な意味においてもしっかりと体制を整えていただくようお願い申し上げまして、質問を終わりたいと思います。
○木庭健太郎君 行政訴訟法改正の二日目というか、まとめの審議に入っていると思います。今日、参考人も三名、当委員会に来られまして、今回、大改正が行われると、極めて意義深い意味があったというようなお話も午前中三人の参考人からいただきました。残された課題もあるけれども、今回のこの大改正が、正に国民がきちんとした形で行政に対して訴訟をやり得る一つの新たな仕組みのような形ができ上がったという評価もございました。是非、この法案、きちんとした形で仕上げなければならないと思うし、それ以上にやはり御指摘があったのは、じゃ、これをこの法律、この改正をどう本当に運用していくかでこの在り方が決まっていくというようなお話もありました。
 その意味で、今も最高裁からお答えがありましたが、正にこれまで行政訴訟というのは、どちらかといえば、裁判官の皆さんにとってみれば突然ぽつん、ぽつんと起こってくる問題であり、集中的にそうやってやっている裁判所もあるかもしれませんが、普通の裁判所にとってみれば、ほとんど取り扱ったことがない、突然来るというようなことになってくるんだろうと思います。そのときに対応できるかどうかが極めて大事な問題であると思いますし、その意味で、体制作りについて今お話、御答弁がありましたから、是非そういう体制の強化もしていただきたいし、また、やはり行政訴訟に関する裁判官をどう育てていくかということも大事なんだろうと思いますし、今も大分お話ありましたが、この行政訴訟に関する裁判官の養成と研さん、今のお取組、司法研修所のお話もございましたが、今後、それ以上にどんな取組をおやりになるつもりでいらっしゃるのか、その点だけ確認しておきたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(園尾隆司君) それでは、まず体制の点で、専門部あるいは集中部について更に具体的に詳しく御説明申し上げます。
 行政事件の専門部は東京地裁に三か部設置してございます。それから、専門部ではございませんが、行政事件はすべてその部で処理をするというその集中部の体制を取っている裁判所は、大阪地裁、名古屋地裁、横浜地裁など七庁ございまして、大阪地裁には二か部の集中部を設置するという形で体制の整備をしております。このような集中的な処理をするだけの事件数の集積がないという裁判所につきましては、合議体による処理の充実というような方法を考えて実行してきておるところでございます。
 今後の裁判官の養成というような点についての計画でございますが、これまでも行政事件に関しましては、これは専門度が高いということで、司法研修所におきまして全国の行政事件を担当する裁判官を対象とする研究会を毎年継続的に実施しておりまして、行政法学者あるいは実務家の講演をする、あるいはパネルディスカッション形式の討議をするというような方法、あるいは共同研究をしてみるというようなことで、集中的な研修を行っているところでございます。
 今後、このような仕組みを更に利用いたしましてこの裁判官の養成体制を強めていくということになりまして、今回の法改正が成りました場合には、この趣旨をこのような場を通じて周知、裁判官に周知を徹底をする、あるいは研修の場で討議を十分に行うということによって裁判官の専門性を高めまして、行政訴訟に通暁した裁判官をできるだけ多く確保するという努力をしていきたいというように考えております。
○木庭健太郎君 もう一方で、やはりこの行政訴訟の裁判については、もう皆さんが御指摘をされたように、結局、裁判に入る前に門前払いをされてしまうと。その一番大きかったのは、やはり原告適格の問題であってみたり、被告適格の問題であってみたり、そういったことで厳しく解釈をされた上ではねられるというような傾向があったということだろうと思うんです。
 今回、その点も大幅に緩和され、より国民がこの行政訴訟をやりやすい制度に変わったわけですが、じゃ、一体具体的にどういったケースにどうなるんだということが国民分からなければ、例えば私も感じたんですけれども、今回その原告適格が変わる、それは考慮するというそのいろんな点を設けたからだと、こう言う。でも、それだけでは国民には分かりにくいんです。じゃ、どうすればそれが現実に分かるかというと、どんな判例が積み上げられていくかということを国民が知ることが大事だということなんだろうと思います。新たに今度はこの行政訴訟の中に義務付けや差止めの訴訟もできるようになると、じゃ、一体、義務付け訴訟ってどんなケースでどうなったのと。まあ、国会では議論をさせてもらいました。しかし、現実の裁判の中でそれがどんなふうに取り扱われて、どういう結果が出たかが国民に対しては一番の情報であるし、それに勇気付けられて、逆に言えば、この行政訴訟というものをやってみる価値があるんじゃないかという国民の意識にもつながっていくと思っております。
 そういう意味では、是非とも、インターネットなどを通じて、どういう判例がどうだという形が国民に広く定着していく必要があるんじゃないかなと、こう思うんですけれども、こういったインターネットの活用等も含めて、裁判所として今どんな取組がされているのか、また、提供されるこういう判例情報を一層充実させていこうというような考えがあるのかどうか、この点について伺っておきたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(園尾隆司君) 行政訴訟制度を活用する上で判例に関する情報が広く国民に提供されているということが重要であることは裁判所においても十分に認識しておるところでございまして、そのために、従来から判例集を刊行して利用者の便宜に供したところでございます。
 しかしながら、最近では、どこからでも容易に最新の情報が入手できるインターネットで判例に関する情報を入手したいという希望が強くなっているところでございまして、裁判所におきましても、その要望にこたえるために、平成九年以降、最高裁のホームページにおきまして裁判例の情報を公開するという方策を講じてきております。
 行政事件の判例情報について申し上げますと、まず最高裁判決につきましては、従来から刊行物により公表をしてまいりました最高裁判例集をインターネットで公開しておりますほかに、判例集に登載予定の最新の判例も「最近の主な最高裁判決」との見出しの下に公開をしております。現在の登載件数は、民事、刑事を合わせて約七千七百件に上っておりまして、この中には相当数の行政訴訟の判決も含まれております。また、下級裁判所の裁判例、すなわち高裁、地裁の行政事件裁判例につきましても、先例的価値があるというように考えられますものについては最高裁ホームページにおいて公開をしておりまして、現在の登載件数は三千件余りに上っているところでございます。
 今後もこのような判例情報の一層の充実を図っていきたいというように考えておるところでございます。
○木庭健太郎君 是非、午前中の参考人の質疑の中でも、やはり裁判官の意識が変わり、裁判所がどういう体制をきちんとやることができるかどうかが、この行政訴訟がきちんとした形でこの法案で目指す方向が出るかどうかはそこに懸かっているというようなお話もございましたので、是非とも、今おっしゃったような体制の充実、また研修の強化、よろしく御要望をしておきたいと。我々も大事な改革だと思っておりますので、その要望をしておきたいと思います。
 そして、今度は法務省の方に。
 やっぱり行政訴訟制度が活用されてない理由として、やっぱりお上には逆らえないというような国民の意識があるという問題指摘も、これはいろんなものを読みますとあります。しかし、これ、今回のこの法案もそうですが、やっぱり正しい権利は主張するというこの自立した国民づくりということもこの行政訴訟制度を今回改革する前提にあるでしょうし、それだけでなく、裁判員制度もそうです。正に今回の司法制度の改革の前提は、正に国民、自立した国民、法治国家の中においてこの司法というものをどう、本当はきちんと使えるものがあるんだということを認識していただくというのが大前提にあるような気がするんですけれども、そういった意味で、この司法制度改革、行政訴訟制度の改革もそうですが、含めて成功させるためには、一番の基本は国民への法教育の充実の問題であると私は思いますが、法務省としてどのように取り組まれるのか、これもお聞きしておきたいと思います。
○政府参考人(寺田逸郎君) 御指摘のとおり、このたびの司法制度改革は、基本的に、自由で公正な社会活動、経済活動というようなものを司法という基盤がバックアップしていくということでこれまでよりはより公正な社会ができ上がると、こういう発想でできております。そのためには、制度作りもそうでございますけれども、御指摘のとおり、その国民一人一人が自分の権利が何であってどういうふうに行使することができるのかということを承知された上で積極的に正すべきは正すという考え方で、ある意味では意識改革ということにもなるわけでございますけれども、そういったことを実現することも併せて必要ではないかというふうに考えておりまして、具体的には、初等中等教育の段階からこの法や司法という、これまでともすれば縁遠いという感じで受け取られたような事柄を学習機会の充実を図るということで、より身近に具体的に感じられるというような形で将来につなげていくということが必要になるんではないかというふうに考えているわけでございます。
 司法制度改革審議会の意見書におきましても、学校教育等における司法に関する学習機会を充実させることが望まれるという指摘がございまして、私ども法務省といたしましては、昨年七月に、これに倣いまして、従いまして、法教育研究会というものを有識者の方々を含めて発足させておりまして、既に中間的な取りまとめを行っているところでございます。
 今後、更にこの研究会を続けてまいりまして、これを中心にして、具体的にどうすればより効果的に法教育というものを施せるかというようなことを検討してまいりたいと、このように考えているところでございます。
○木庭健太郎君 もう一つは、その行政活動というものと国民の権利利益をどう守るかという問題で言うならば、もちろん、今審議をしておりますこの行政訴訟法、今回の改正でかなり変わってくるわけでございますが、その一方で、単に行政訴訟の法律だけじゃなくて、やはり国民の権利利益を行政活動との関係で守っていくということになるならば、これは個別、行政の実体法の問題、更に行政手続法の問題、様々な問題が絡んでくると私は思っております。
 今日は総務省の方にも来ていただいておりますので、総務省の方から幾つか、今どんな、言わばこの行政の実態、個別法の問題や行政手続法の問題でどんな考え方で整理をされているのか。今回、行政訴訟法については正にもう大改革が行われているわけでございますから、その中でどうお考えを持ちながらしているかという視点で幾つか聞いておきたいんですけれども、まず最初の問題としては行政手続法の問題でございます。
 行政手続法につきましては、五年の見直し時期ですか、そういったことも、十年か、十年の見直し時期だと思いますが、今そういう検討もそろそろ始まっているというふうなこともお聞きしておるんですけれども、この行政手続法、この行政手続法を通じた国民の権利保護、これを充実させようということで現在どのような検討をなさっているのか、まずは御答弁をいただきたいと思います。
○政府参考人(田中順一君) ただいまの先生の行政に対する国民の権利保護という御指摘につきましては、行政手続の定めが行政実務や訴訟の場面で個々の実体法や訴訟法の定めと相まって国民の権利保護に役立つということを十分考えられるものでありまして、行政手続法を所管する私ども総務省といたしましても、行政手続の定めの充実が図られることは非常に重要であるというふうに認識をいたしております。
 そこで、現在、総務省がどういう検討をしておるかということでございますけれども、昨年十二月の政府の総合規制改革会議の第三次答申におきまして、要旨、行政立法手続の法制化等を速やかに検討するという旨の御指摘、答申をいただいております。その実現のため、去る三月十九日に規制改革・民間開放推進三か年計画を閣議決定いたしまして、早速に四月から麻生総務大臣の下で行政手続法検討会というものを開催いたしまして、現在、有識者による専門的な検討を鋭意進めておるという状況でございます。
○木庭健太郎君 検討過程でしょうけれども、どういったところに視点を当てながら、検討、もう三回ぐらいになっているんじゃないですか、会合は、行政手続法についての。どういった一つの、この一番の論議の主点になっているのはどの辺なのかは御説明いただけますか。
○政府参考人(田中順一君) ただいま御指摘をいただきましたように、四月から開催をいたしまして、現在二回開催をいたしまして、実は近々に第三回目を予定をいたしております。
 それで、先ほど申し上げましたように、直接のミッションが昨年の総合規制改革会議の答申の指摘でございましたので、基本的には、現在、行政立法手続の法制化ということを中心に議論を始めてはおりますけれども、それ以外の項目についてもいろいろ意見は出ております。実は、ちょうど次の会議が、論点整理をしていって、今後どういうふうな議論をしていくかということを検討する局面に至っておるということでございます。
○木庭健太郎君 もう一点は、これは行政には行政で不服審査制度というのがございます。行政に対する国民の権利保護のために行政内部でこれやるわけですから、ある意味では、これは簡易な手続でできるというような問題で、これ自体もやはり、じゃ今回行政訴訟法が改正されてやりやすくなったからといって廃止していい問題じゃなくて、これはこれでやっぱり充実していく必要はあるんだろうと思うんです。
 総務省として、じゃ行政訴訟制度と比べてこの行政不服審査というものは国民にとってどうメリットがあると考えられているのか。本当にどう利用されていると思っていらっしゃるのか。さらに、この不服審査についても更なる充実の方法、何かお考えがあるならば御答弁をいただいておきたいと思います。
○政府参考人(田中順一君) まず、行政事件訴訟制度と比べた場合の行政不服審査制度の国民にとってのメリットということでございますが、今先生にも触れていただきましたけれども、一つには、この制度では行政庁の処分その他について、違法だけでなく不当を理由として争われること、それから、手続が簡易迅速であり、訴訟費用等の多額の費用を要しないこと等が挙げられるのではないかというふうに考えております。
 次に、行政不服審査制度の活用状況でございますが、私どもの方で実施をいたしました平成十四年度の行政不服審査法等の施行状況に関する調査、これによりますと、同法に基づく不服申立ては二万八千五百十四件ということになっておりまして、行政不服審査法施行後四十年を経まして、この制度は十分に定着しておるというふうに認識をいたしております。
 それから、御指摘の三点目の行政不服審査制度の充実ということでございますが、これは私どもも重要な問題であるというふうに認識をいたしております。それで、ただいまこちらで御審議をしていただいております改正法案の趣旨につきましては、行政事件訴訟の拡充ということであろうかと心得ておりますけれども、その中で、例えば執行停止の要件の緩和など、同様な考え方でもって行政不服審査制度の充実を図るべき点につきましては、本改正法案の附則において行政不服審査法の規定の改正もお願いをしておるということでございます。
○木庭健太郎君 不服申立てがあった中で、容認されたもの、認められたものは内訳はどれくらいですか。
○政府参考人(田中順一君) 先ほど触れました、私どもで平成十四年度に実施、十四年度の調査した資料によりますと、行政不服審査法に基づくもので容認をしたもの、比率で申しますと、一七・五%というふうになっております。
○木庭健太郎君 お隣から何かパーセンテージが少ないという御意見、今日は質問をしないそうで、一言言っておきたいそうですから、ちゃんとその辺も、やった以上きちんとできる形、どうなのかなと、パーセンテージとしては、容認件数として非常に厳しいものがあるんじゃないかなというようなことを言っておりましたので、お伝えをしておきます。
 もう一点聞いておきたいのは、もう一つの行政における国民の権利保護の観点からいうと、情報公開の問題があると思っております。
 とにかく、争いの当事者間にもう情報格差は、当然行政は膨大な情報を握っている、やろうとする側、もう情報ほとんどないでは、その行政と個人の権利を守るという関係でいくとなかなか厳しいものがあると思うし、やはりその行政活動に関する情報が常に、常時やはり詳細に提供される必要があると思っています。これは、裁判だけじゃなくてですよ。
 したがって、国の行政情報機関において大事なことはこの情報公開の問題だと思っておりまして、この情報公開の法律の所管は総務省でよろしいですね。現在、この情報公開法についても制度運営の見直し作業に入っているというようにお聞きしておりますが、どういうふうな、この今の情報公開制度についてどのような検討課題があり、こういうふうにしなければいけないという面で、検討、どこに論点を絞りながらやっているのか、そして今後いつまでにこれ結論を出すつもりでやっていらっしゃるのか、御答弁をいただきたいと思います。
○政府参考人(藤井昭夫君) 情報公開法の見直しにつきましては、行政機関の情報公開法附則第二項におきまして法施行後四年を目途に見直すべきという旨を定めていただいているところでございます。また、国会審議の過程とか、あるいは衆参両院の附帯決議で今後検討すべき課題というものもいただいているところでございます。加えて、法施行後ちょうど今年で四年目に入るところですが、いろいろメディア等も含めまして、運営上の問題点等も指摘しておられるところです。そういうことを受けまして、政府としましても本格的な調査検討をする必要があるということで、山口総務副大臣開催する情報公開、失礼しました、情報公開法の制度運営に関する検討会というものをこの四月から開催したところでございます。
 それで、現状でございますが、まずこの問題についてはいろいろ両院で御指摘いただいた課題以外にも、まずユーザーである実際の利用者の方々、そういった方々からの問題点をまずお聞きしようということで、この五月の二十六日には第二回目開いているところでございますが、日弁連とかあるいはいろいろオンブズマンとか、中心になっている市民団体の方々、それから新聞協会、そういったところからどういう問題があるのかというような御指摘をいただいたところであるということでございます。
 加えまして、五月の二十四日にはこういった団体の方々だけじゃなしに国民一般からもいろいろこの制度に対する問題、意見をお聞きするということで、総務省のホームページにコーナーを設けまして意見を募集したというところでございます。それで、検討課題の絞り込みにつきましては、今申し上げましたように非常に網羅的にいろいろ今多々あるところでございまして、これからむしろ絞り込んでいきたいというところでございます。
 それから、検討期間につきましては、法附則で四年を目途ということでございますので、今年度中に結果を整理して公表して、また国会でもいろいろ御審議いただかなければいけないと考えているところでございます。
○木庭健太郎君 ところで、この検討会ですか、これは新聞報道で見たんですけれども、その情報公開法の見直しの検討会が情報公開しないというか、何かその冒頭の写真撮影しただけで中身は非公開、何か密室審議だとかいう批判を浴びていたんですけれども、これちょっと格好悪過ぎるんじゃないですか、総務省さん。ここら辺はちょっと、改善しないとちょっと批判に耐えられないようになるんじゃないかなと。だから、その論点整理の段階ではちょっとこういうことでこうなんだと理由をはっきりされて、やはり委員が議論されている場というのはやっぱり公開していかないと、これ、ちょっとこんなことで言われるのはばからしいと思うんですが、いかがですか。
○政府参考人(藤井昭夫君) 私ども、報道を拝見したんですが、若干誤解もございまして、実は審議のされた内容につきましては、若干時期は遅れたんですが、このたしか五月の二十四日には相当詳細な議事内容をインターネットホームページで公開しております。それから、そういう議事の内容だけじゃなしに審議会、失礼しました、審議会じゃなくて会議でございますが、そこに提出された資料、これもすべて公開するということになっています。
 残りますのは、今御指摘いただいたように会議自体を公開するかどうかということでございます。そこは、実は検討会の参加者の中からも御意見がありまして、ただ当面はヒアリングになっていると、ヒアリングのときはやっぱり直接静かなところでお聞きになりたいというふうなこともありまして、その後の取扱いについてはもうしばらく時間をおいて検討しようじゃないかということになっているというのが現状でございます。
○木庭健太郎君 だから、その辺も詳しくきちんと言ってあげて、正に今おっしゃるように、ヒアリングしていろんなことを聞く、ただ本当に意見を闘わせてやるような問題になったときは、こういう内容のものについてはきちんとおやりになられた方が国民、理解を得やすいと思いますので、そこはきちんとやっていただきたいなという気がいたしましたので、ちょっと余計なお話かもしれませんが、是非きちんとやっていただきたいなという思いで御質問させていただきました。
 今、ちょっと幾つか行政手続の問題、不服審査の問題、情報公開の問題、御指摘をさせていただいたんですけれども、こういう行政手続にしてみても、今回改正します行政事件訴訟についても、省庁違ってそれぞれおやりなんですけれども、我々国民の側からすると一本なんですよね。したがって、皆さんは連携してきちんとやることが本当はこういう問題では一番大事だと思いますんで、今度は法務省へ御注文であり、お聞きしたいんですけれども、やはり行政訴訟という問題になれば法務省が責任を持つわけでございますから、今回これだけ法が大改正をされると、こういった趣旨については関係行政機関への周知徹底を図ることも重要であると考えておりますし、今後この行政訴訟の対応について法務省としてどのように考えていらっしゃるか、お聞きしておきたいと思います。
○政府参考人(都築弘君) 国の行政訴訟を担当する法務省といたしましては、改正法の内容を十分に理解し適切な運用に向けた対応がされるように、行政庁に対して必要な働き掛けをしてまいりたいと考えております。
 具体的な対応につきましては今後検討してまいりますが、法施行までの間に行政庁に対して必要に応じた周知措置を取るほか、個別事件を追行する際に行政庁に法の内容を十分説明するなどして周知してまいりたいと考えております。
○木庭健太郎君 最後に大臣に、本当に大改正がなされるわけでございまして、今までは訴訟の入口論で国民が戸惑っていろんな問題があった、それが今回本当に抜本的に改善される。土俵がどれだけ広がったかというのは、ちょっと社会が変わったとか山が動いたとかいろんな議論ありましたが、いずれにしても、そういう意味では極めて大きな意義を持つものだと思っております。
 こういうものも含めて、ただ、委員会で質疑があっていたように、これが別に行政訴訟法の改正の終着点じゃないんだと、出発点でもあると。それは、行政訴訟法だけじゃなくて、行政にかかわる法全体の問題にもかかわってくるその出発点が今回の法改正であると我々は認識しておりますが、今後こういう点を国民に分かりやすくどう伝えていくか。もうとにかく法律だけ読むとむちゃくちゃ難しいですよ、この行政訴訟法というのは。もう読むのも嫌です。そんな感じの中身ですよ。でも、中身はすごいことをやろうとしていると。こういった点を国民にどう伝えていこうとしているのか、大臣に伺って、終わります。
○国務大臣(野沢太三君) 今回の行政訴訟制度の改革につきましては、国民の権利利益のより実効的な救済手続の整備を図るということを目的にしておるわけでございまして、これまで大変しっかり御議論をいただいてまいりましたが、委員御指摘のとおり、救済方法を拡充したり仮の救済の制度を整備するなど、言わば行政訴訟の土俵を広げるということで、被告適格の簡明化、原告適格の拡大、さらには制度を国民に分かりやすく使いやすいものにして権利救済を充実させるということで構成しておるわけでございます。
 この改革が生かされるようにするためには、御指摘のとおり、広く国民の皆様に改正の趣旨が分かりやすく周知され、新しい制度を活用していただくことにすることが大事でございます。したがいまして、国民の皆様に制度を活用していただくため、今後幅広い機会を通じて改正の趣旨の周知徹底を図ってまいりたいと考えておりまして、この改正が終着駅ではなくて始発駅になるというようなつもりで頑張りたいと思っております。
○木庭健太郎君 終わります。
○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 行政事件訴訟法改正案について二回目の質問となりますが、今日はまず情報の偏在の是正という問題について質問をいたします。
 行政機関と個人のように極端に情報量に差がある訴訟で必ず問題になりますのが、情報や証拠の偏在、そして立証責任という問題であります。検討会の中でも、行政訴訟の被告指定代理人になった方が、行政訴訟は民事訴訟法の一般原則が適用されるために、行政庁は一般に自ら不利益な証拠を自発的には出さないと、こういう実態も検討会の中でも出されたとお聞きをしております。
 本改正案では、これに対して処分等を争う場合に、その内容、根拠となる法令、その理由の提出を求める釈明処分の特則が設けられました。ただ、この原告の側からいえば、申立て権のある文書開示命令ないしはそれに類似した制度の方がよいんではないかと、こういう議論も強くあったと思います。なぜ釈明処分という裁判所の職権による制度にしたんでしょうか。
○政府参考人(山崎潮君) 新しい釈明処分の手続を設けたわけでございますけれども、この目的は、やっぱり審理の早期の段階で処分の理由、根拠に関する当事者の主張、それから争点、これを明らかにして、早くその審理の充実、促進を図ると、こういう目的でございます。
 文書提出命令の制度でございますけれども、これは証拠調べでございますので、争点が定まった後にどういう証拠調べをしていくかという場面で問題になってくると、こういう制度でございます。したがいまして、その時点が少し違ってきているということと、その証拠調べの文書提出命令についてはかなり厳格な要件をもって対応すると、こういうことになっているわけでございます。
 これを、じゃ、早期に持ってくると、その文書提出命令を前倒しでやるということになると、もう審理の冒頭から、それを出す出さない、それからその要件に当たるか当たらないかとか、そういうところでかなり時間を使うということと、やはり争点をなるべく早期に集約していくというためにはこの釈明処分という方法でやりまして、これでも十分足りない、足りないような場面に関しては証拠の文書提出命令の制度を使っていくということで、両方、何というんですかね、手段を与えて、その双方をもってなるべく事実を審理の中に出してきちっとした判断をしていくと、そういう役割分担というふうに考えたわけでございます。
○井上哲士君 民事訴訟法上の文書提出命令の運用の状況にもよるというようなことも、見守るというようなことも答弁に過去あったかと思うんですが、今のあれでいいますと、そういう早期の段階での釈明処分と、そして審理が進行した場合の文書提出命令、これを組み合わせていく、必要な法的手当てもしていくと、こういうことでよろしいんでしょうか。
○政府参考人(山崎潮君) 文書提出命令に関しましては、このベースに民事訴訟全体がございますので、そちらの方でどういうシステムを構築していくかという問題と全体で考えていくという問題になろうかと思いますけれども、この少なくとも行政事件訴訟に関しての釈明、これについては特にやっぱりこの事件に関して必要であるということから設けたと、こういうことでございます。
○井上哲士君 これは職権によるものですから、裁判所が必要ないと判断すれば釈明は行われないと、こういうふうになるわけですが、今回の趣旨からいいますと、処分とか審査の是非が問題になるという場合にはこの釈明処分が基本的には行われると、こういう運用がされるということでよろしいんでしょうか。
○政府参考人(山崎潮君) 裁判所もやっぱり根拠とか資料、これがあった方が判断しやすいわけでございますので、こういう根拠があれば、通常の場合はやっぱり釈明処分、この権利を行使、権限を行使していくということになろうというふうに我々は考えております。
○井上哲士君 今回の釈明処分の場合に、処分に関する一切の資料までは提出を求められません。それから、この処分を前提としない義務付け、それから差止めの訴訟の場合などは、そもそも処分等が行われていないということで、使うことができないということになるかと思うんですね。
 そうしますと、やはり提出できる資料の範囲、それから提出を求めることができる場合が狭過ぎるんではないかと、こう思うんですが、いかがでしょうか。
○政府参考人(山崎潮君) 今回の規定の趣旨でございますけれども、やっぱり訴訟に必要な範囲について早くその資料、根拠等を出して審理の迅速化を図るということでございますので、やはりその審理に必要な範囲でというかぶりはどうしても出てくるわけでございまして、じゃそれ以外の資料も一切合財出せということになったときに、それは膨大な資料があって、それが訴訟に直接関係あるかないか、それも分からないまま出すということになれば、かえって非常に混乱してしまう。そのチェックのために相当時間を食うとかそういうことになりますので、そこは事件に必要な範囲でということで考えたわけでございます。
 それからもう一点は、基本的には取消し訴訟についてだけであって、例えば差止め訴訟とかそういう点について適用がないではないかということでございますけれども、この差止め訴訟につきましてはまだ処分が行われていないわけでございますので、そうなりますと典型的にそういうものがあるかどうかということが必ずしも言えないという種類のものであるということからこの規定を置いていないということでございますし、それから義務付け訴訟の中で既に判断が行われているものに関しましては、これは取消し訴訟とともに一緒に起こしてもらうというシステムになっておりますので、その中で当然その釈明処分が行うことができるわけでございますのでそれを利用できると、こういう考え方によるわけでございまして、そのすべてについてこの制度を設ける、そこまでは必要はないと、こういうことでございます。
○井上哲士君 刑事訴訟法のときにも議論になったわけですが、原告側からいえば、どれだけの資料が相手が持っているのか分からないと、何がそのうち必要なのか分からないということがあるわけですね。こういう行政訴訟と同じように証拠偏在が問題になるのに知的財産の関係の訴訟があります。
 今回、この訴訟の改正案も出されているわけですが、この場合は裁判所法の改正で、証拠開示命令に関してインカメラ審査を行う場合に、両当事者に資料を見せて意見を聴けると、こういう制度も盛り込まれております。これと同様に、こういう行政訴訟の場合にも証拠偏在を解決するような何らかの更なる手だてが必要かと思うんですけれども、その点はいかがでしょうか。
○政府参考人(山崎潮君) この知財関係のインカメラ手続につきましては、また近いうちに御審議いただきたいというふうに思いますけれども、これは裁判所がその資料を見る場合に、非常に知的財産関係につきましては高度の技術的な事項が多いわけでございますので、それについてその一方当事者からだけその説明を聴いているということで、本当に果たしてそれが正しいのかどうかと、なかなかチェックし切れない、そういうタイプのものでございますので、そこでそれをきちっと担保するためにこの相手方に、相手方にも見てもらって意見を言ってもらうと、その上できちっとした判断をしましょうと、こういう一つの特例を設けているわけでございます。
 これは、そういう意味では反対当事者にも意見を聴くということになりますが、その前提といたしましてやはり秘密を守っていただかなきゃなりませんので秘密保持命令というものが掛かるわけでございます。これ罰則付きでございまして、将来にわたってある一定のときまでは絶対に漏らしてはならないというようなことになるわけでございます。
 したがいまして、かなりその限定された世界で使っていくような手段だということで例外的にこれを設けまして、これを一般に広げていくというのは、そこまでの必要性があるかという問題と、やっぱり秘密保持命令とかそういう問題が全部掛かってくる。場合によっては法廷も非公開でやるということになりますので、これを一般化しますとやっぱり憲法上の問題にもいろいろ出てくるということから、限られた部分だけに適用があるものだと理解をしているわけでございます。
○井上哲士君 同じ方法をここに当てはめろということではありませんで、今回の法改正で様々な類型などが新たに用意をされて、入口は広がっても、結局やっぱりこの情報の偏在という問題解決されなければ住民側が結果として勝つことができないということになるわけですから、この点でやはり情報の偏在、証拠の偏在などを正す方策というのを更に検討をしていただきたいということを申し上げておきます。
 次に、管轄の問題についてお尋ねをします。
 今回、高裁所在地の地方裁判所に広げるということになりました。専門性の確保などがここに限定をした理由として言われておりますけれども、国の場合は、大体、高裁所在地には出先機関がありますから余り経済的不利益というのはないと思うんです。しかし、高裁所在地といいましても、地方の方にとってはかなり交通費等の負担があるわけでありまして、原告の経済上の利益ということも考える必要があると思うんですね。余りにも多大でありますと、結局、訴訟はあきらめざるを得ないということも出てくるわけであります。
 行政訴訟が基本的に行政庁の処分による原告の権利救済を図るということから考えますと、更にこの管轄を拡大をしていくということが必要かと思うんですが、この点いかがでしょうか。
○政府参考人(山崎潮君) 確かに、今回は利用される国民の方の利便の、そういう要請と、それからそれを判断をしていく裁判所の専門性をどうやって集中していくかという問題、あるいはどうやって分散をしていくかという問題になろうかと思いますけれども、その辺の兼ね合いでこういうような発想を取ったということでございます。
 これで、今までもいろいろやってきた中でどういう声が上がっているかということですね。こういうもの、今後もこの改正に伴いまして、まだいろいろ不十分だというような声が上がるとすれば、またそれはそれとして考えていかざるを得ない問題だろうというふうに考えておりますが、現在はそのバランスのところで御提案をさしていただいていると、またそれは将来の課題であると、こういうことだろうというふうに理解をしております。
○井上哲士君 将来の問題ということなんですが、ただ、今回の法改正によって行政訴訟というのは増えていくことは確実だと思うんですね。それを前提に考えますと、やはり地裁レベルでどんどん行政訴訟に通じた裁判官を増やす必要があります。今でも、処分を行った処分庁の所在地を管轄する地方裁判所に管轄権あるわけですけれども、今回の改正で、今後、訴訟増えていくということを考えた場合に、まずそういう地裁レベルでの訴訟が増えていくわけですから、むしろ、やはり今回のようにとどめずに、もっと地裁レベルでの体制も強化をしていくという流れに沿って広げていくべきかと思うけれども、いかがでしょうか。
○政府参考人(山崎潮君) これは、審査をしていく裁判所の体制の問題もあるわけでございますが、いずれにしましても、これをまず実行に移して、この附則でもその規定が置かれておりますけれども、五年後にいろいろ問題があれば見直していこうということでございますので、とにかく実行に移さしていただいて、本当にどういうような要望が出てくるのか、ニーズが出てくるのか、その辺をちょっと踏まえながら今後検討していく問題だというふうに考えているわけでございます。
○井上哲士君 次に、出訴期間の問題についてお聞きをします。
 出訴期間が延長されたわけですが、これをなくすべきだというような議論もありました。その答弁の中では、法的安定性を重視をしてやはり期間を定めてあると、こういうこともありました。
 ただ、一方で、その事件が第三者に影響を与えないというものについていえば、あえて出訴期間を限定をする必要はないのではないかと思うんですね。例えば、人事の問題など、六か月を超えて、その人事が例えば特定の思想を差別する事件だったというようなことも分かることはあるわけで、こういう場合などは出訴期間をあえて限定する必要はないんではないでしょうか。
○政府参考人(山崎潮君) 理念的には分からないわけではないんですけれども、ただ、行政処分というのはもう様々なものがあるわけでございまして、時代とともにどういうものが出てくるか分からない、こういうような性格のものでございますので、要するに、第三者に影響があるかないか、そういうところの入口の問題で、そこで問題になって出訴期間を徒過したのかどうかということにもなりかねないところがございまして、これを第三者に影響がないものについては出訴期間はなし、それ以外はありと、こう截然と分けることはなかなか難しいということでございます。そういう意味で、ここでそこの仕分はしなかったということで御理解を賜りたいと思います。
○井上哲士君 なかなか仕分は難しいという話でありましたが、じゃ例えば国税の場合、一年を経過しても行政の側からは遡及して更正決定などが行えます。ところが、国民の側からはできないということになるわけですね。ですから、国の側から国民の申請に対して異議の申立てが一年を超えてできるというものであれば、国民の側からも一年を超えて異議の申立てができると、こういうふうにするべきだと思うんですが、いかがでしょうか。
○政府参考人(山崎潮君) ちょっと、その出訴期間じゃない、いわゆるその更正処分ですね、更正処分の期間云々について国側がどのぐらい、あるいは国民の側をどうするかという問題につきましては、その所管するところの、その法律を持っているところのいろいろな立法政策の問題でございますし、ちょっと今私の方からそれをお答えするのは適当ではないというふうに考えております。
○井上哲士君 じゃ、もう一点、間違った教示がなされた場合の出訴期間の問題です。
 例えば、本来六か月とすべきところを三か月と教示をされたと。六か月ぎりぎりになって間違っていることを知ってももう出訴できないと、こういうようなことも起こり得ます。教示の訂正を行ってから出訴期間が進行すると、こういうふうにすべきだったと思うんですけれども、この点はどうでしょうか。
○政府参考人(山崎潮君) それも一つのお考えかと思いますけれども、ただ、教示の誤りがどういう性格のものか、どういう内容のものかということにもよるわけでございますので、これを截然と本当に分けられるかどうかという問題もございます。
 したがいまして、私どもはこの正当理由というところの判断にゆだねようということでございまして、従来はこれ不変期間としておりましたので、よっぽどのことのない限りその期間は延びないということになるわけでございますが、それはやっぱり非常に酷な場合もあり得るだろうということから、その不変期間を今度はやめました。やめまして、期間を過ぎても正当な理由があれば救われるようにしようということでございまして、そういう中で、どんなような対応が出てきても、この正当理由に当たるかどうかということで包括的に判断をしていくと、こういう方がいろんな場合に対処しやすいだろうということからこのような方法を設けたということで御理解を賜りたいと思います。
○井上哲士君 今日の質疑でも、それぞれに今後残された検討課題のことが出されました。今回の改正は、先ほど出発点だというお話もありました。例えば、消費者訴訟における団体訴権などは具体的な検討が行われていると聞いていますけれども、それ以外の団体訴権とか裁量審査の問題、立証責任の問題などなど、様々残された問題があります。これらは具体的検討がされているとは言い難い状況だと思うんですね。
 検討会で議論をされて、今回の改正で盛り込まれていない問題については引き続き検討することが必要なわけですが、まず、これ、推本にお聞きしますけれども、今回、法案は出したわけですが、推本としての期間はまだあるわけで、個々の検討会は引き続き議論をしていくのか、そして議論を積み重ねて、推本が解散する時点において何らかの取りまとめみたいなものを出すのか、どういう、今後議論するとすればどういう形で生かしていくのか、その点いかがでしょう。
○政府参考人(山崎潮君) 御指摘のとおり、まだまだいろんな問題が提起をされております。この問題につきまして、私どもの検討会、今ちょっとお休みをしておりますけれども、この審議が終わればまた再開をしまして議論をしたいと思います。
 この議論の中でどういう問題を本当に取り上げていくか、あるいはこの議論を今後どういうふうにやっていくか、そういう議論の中からいろいろ考えていきたいということで、今私どもがアプリオリに移行したいというものはございません。余りやるとまた事務局主導だということになりますので、十分御意見を伺ってからその将来につなげていきたいと、こう考えております。
○井上哲士君 その上で大臣にお聞きするわけですが、検討会も引き続き議論をされて、そこで今後の大事な問題についても提起がされていくかと思います。今回、四十年ぶりの改正ということになるわけですが、やはり司法制度改革の本部があってこそこういう改正までこぎ着けたと思うんですね。
 今後、この間出されてきた様々な検討課題を一体どこが責任を持っていくのか。果たして法務省ということだけで、この間のような、やはり推本のような体制があってこそここまでこぎ着けたことを考えますと、もう少しいろんな仕組みが要るんではないかと思うんですけれども、その点も含めてお願いをいたします。
○国務大臣(野沢太三君) 確かに、これまで広範にわたる議論を進めてまいりまして、なお検討を要するという課題も幾つか積み残しているということは御指摘のとおりでございますが、取りあえずしかし相当大きな前進である今回の改正を十二分に生かして進めなきゃいかぬ。
 残された問題につきましては、今事務局の方からもお話がありましたように、推進本部に行政訴訟検討会が設けられておりますので、まずはここで方向を打ち出すことが大事かと思います。これが十一月には任期が参りますので、その後の体制につきましては、政府を挙げての取組ではございますが、主体的にはやはり法務省がその中心となって、関係の省庁等も協力をいただきながら、実質的な議論については引き続きの推進を図ることが大事であると思っております。
 先ほども申し上げましたように、ここの議論といいますものは大きな前進ではございますが、終着駅ではなく、出発駅としても大事な時点に今あると考えておるわけでございます。
○井上哲士君 法務省が中心になっていくということでありますけれども、やはりこれまでの議論が広く様々な市民も含んで議論をされてきてここまで来たということになりますと、そういうやり方を何らかの形で是非取っていただいて、残された課題が大きく前進をするということを強く求めておきたいと思います。
 あと、若干時間をいただきまして、先日の法制審議会の保証制度部会から出された保証制度の見直しに関する要項の中間試案についてお聞きをいたします。
 今月からこれパブリックコメントに付されようとしておりますが、根保証ですね、特に包括根保証というのは九九年の商工ローン問題のときに随分問題になりました。少なくとも包括根保証は禁止すべきだというのが運動団体の声でありましたし、私たちも当時、貸金業規制法の改正に関して包括根保証を禁止するという独自の法案を提出をいたしました。しかし、法務省も含めまして非常に消極的な意見もありまして、この基本法のレベル、貸金業規制法でも法制上の規制というのはありませんでした。
 今回、具体的に規制の検討が行われたその理由、そして今後の法案化に向けた日程がどうなっていくのか、お願いします。
○政府参考人(房村精一君) 御指摘の根保証、特に包括根保証でございますが、これにつきましては保証期間、保証金額の定めはないものですから、主たる債務者が破綻した場合、保証人が過大な責任追及を受けて過酷な結果となりがちであると、こういうことで問題があるという指摘がかねてからあったわけでございます。
 これまでにも、過度に保証に依存した融資慣行については関係省庁におきまして実務運用面での改善策等が検討され、また実施されているわけでございますが、倒産が多発する現下の経済情勢を踏まえますと、保証契約の内容を適正化するためのより直接的な措置を講ずる必要があると考えられるわけでございます。
 そういうことから、今回、法制審議会に対しまして、包括根保証契約について、その規制の在り方を検討をするようにということで諮問がなされたわけでございます。
 現在、先ほど御紹介ありましたように、中間試案を公表してパブリックコメントに付しておりますが、今後の予定といたしましては、この意見を取りまとめまして引き続き検討を続けまして、今年の秋には意見を取りまとめまして、できるだけ早く所要の措置を講ずる、法案として国会に提出したいと、こう考えております。
○井上哲士君 被害者が出ておりますし、待たれているものなので、是非取りまとめをお願いしたいんですが、今回の中間試案で具体的にこの根保証を規制をする主な内容というのはどのようになっているんでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) 中間試案の主な内容でございますが、まず第一に、保証契約については書面によらなければその効力を生じないものとすると。慎重に保証契約を締結していただくということを考えております。それから次に、個人が保証人として継続的に発生する不特定の債務を保証するいわゆる根保証契約をするときには保証の限度額を定めなければならないということにしております。それと、保証期間につきましては、例えば五年といった一定の期間内に発生した債務にその保証の対象を限定すると、このようなことを考えております。それから、仮にその期間が長くなる場合、一定の期間が経過する前であっても一定の事由が生じたときにはその保証すべき額を確定する確定請求ができると、このような措置を講ずることも検討の対象になっております。
 その他細かい点は幾つもございますが、今言ったような、主として限度額とそれから期間の点、これを中心に現在の包括根保証に対して制限を加えるということが内容でございます。
○井上哲士君 改善がなされていくわけですが、ただ、上限を定めない契約は無効だということでありますけれども、金額自身の上限は決めないわけですね。
 そうしますと、実際の力関係でいいますと、保証人の能力を超えた限度額を設定をするということもあり得るわけで、そうしますとやはり救済ができないという場合もあるわけで、むしろそういう保証人の能力を超えた設定は禁止だと、こういうような項目も入れるべきだと思うんですが、その点はいかがでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) 確かに、非常に金額、限度額が大きい場合、過酷な結果が生ずることもあり得ないわけではありませんが、しかし、今回、限度額を必ず定めるようにということといたしましたのは、まず、限度額が定まっておりませんと保証契約を締結する時点で自分がどの程度の負担を被るのかということが予測ができない、その結果、その判断に慎重さを欠く場合もあり得ると、そのようなことから必ず限度額を定めて根保証をしなければならないと、そういうことによって適切な判断をしてもらうということを考えているわけでございます。
 御指摘のように、上限額が余りにも大きい場合、過酷な結果を生ずる可能性もないわけではありませんが、しかし、どのような場合に過大な限度額なのかということを法律で定めるというのは非常に困難だろうと思います。従来も、そういう意味では裁判例においてそういう過酷な結果が生ずるような場合に、当事者の合理的な意思解釈であるとか信義則等の一般法理に基づいて救済をしている例もあるわけでございますので、その点については、今回の改正をした限度額については、特段の制約を加えない場合は同様の保護が判例において可能なわけでございますので、そういった形で救済をしていくしかないのではないかと、こう思っております。
○井上哲士君 終わります。
○委員長(山本保君) 他に御発言もないようですから、本案に対する質疑は終局したものと認めます。
    ─────────────
○委員長(山本保君) この際、委員の異動について御報告いたします。
 本日、樋口俊一君が委員を辞任され、その補欠として岩本司君が選任されました。
    ─────────────
○委員長(山本保君) これより討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 行政事件訴訟法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
○委員長(山本保君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 この際、角田君から発言を求められておりますので、これを許します。角田義一君。
○角田義一君 私は、ただいま可決されました行政事件訴訟法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、民主党・新緑風会、公明党及び日本共産党の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。
    行政事件訴訟法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府及び最高裁判所は、本法の施行に当たり、次の事項について、格段の配慮をすべきである。
 一 本法については、憲法で保障された裁判を受ける権利を広く実質的に保障する観点から、訴訟要件を緩和した今回の改正の趣旨を生かした柔軟な運用がされるよう、また、行政訴訟において適用される諸法規の解釈においても、憲法及び法令において保護された諸権利・諸価値が保障されるよう周知徹底に努めること。
 二 第三者の原告適格の拡大については、公益と私益に単純に二分することが困難な現代行政における多様な利益調整の在り方に配慮して、これまでの運用にとらわれることなく、国民の権利利益の救済を拡大する趣旨であることについて周知徹底に努めること。
 三 義務付けの訴え及び差止めの訴えについては、取消訴訟を中心とした訴訟の仕組みを改め、その要件等を明確化し、救済方法を拡充するという今回の改正の趣旨を生かし、柔軟な運用がされるべき趣旨であることについて周知徹底に努めること。
 四 仮の義務付け及び仮の差止めの制度は、行政訴訟による本案判決前の救済を実効的なものとする今回の改正の趣旨を生かし、柔軟な運用がされるべき趣旨であることについて周知徹底に努めること。
 五 公法上の法律関係に関する確認の訴えについては、これまでの運用にとらわれることなく、その柔軟な活用を通じて国民と行政との間の多様な関係に応じた実効的な権利利益の救済を可能にする趣旨であることについて周知徹底に努めること。
 六 政府は、適正な行政活動を確保して国民の権利利益を救済する観点から、行政訴訟制度を実質的に機能させるために、個別行政実体法や行政手続、行政による裁判外の紛争解決・権利救済手続も視野に入れつつ、所要の体制の下で、必要な改革を継続すること。
   右決議する。
 以上でございます。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
○委員長(山本保君) ただいま角田君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
○委員長(山本保君) 全会一致と認めます。よって、角田君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 ただいまの決議に対し、野沢法務大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。野沢法務大臣。
○国務大臣(野沢太三君) ただいま可決されました附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。
 また、最高裁判所にも本附帯決議の趣旨を伝えたいと存じます。
○委員長(山本保君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(山本保君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後三時三十四分散会