第161回国会 法務委員会 第7号
平成十六年十一月十六日(火曜日)
   午前十時開会
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  出席者は左のとおり。
    委員長         渡辺 孝男君
    理 事
                松村 龍二君
                吉田 博美君
                千葉 景子君
                木庭健太郎君
    委 員
                荒井 正吾君
                山東 昭子君
                陣内 孝雄君
                関谷 勝嗣君
                鶴保 庸介君
                江田 五月君
                前川 清成君
                松岡  徹君
                簗瀬  進君
                浜四津敏子君
                井上 哲士君
   国務大臣
       法務大臣     南野知惠子君
   副大臣
       法務副大臣    滝   実君
   大臣政務官
       法務大臣政務官  富田 茂之君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局総務局長   園尾 隆司君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        加藤 一宇君
   政府参考人
       司法制度改革推
       進本部事務局長  山崎  潮君
       法務大臣官房司
       法法制部長    寺田 逸郎君
   参考人
       一橋大学法学研
       究科教授     山本 和彦君
       弁護士
       日本弁護士連合
       会ADRセンタ
       ー委員長     吉岡 桂輔君
       社団法人日本消
       費生活アドバイ
       ザー・コンサル
       タント協会常任
       顧問       柴垣 雅子君
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  本日の会議に付した案件
○参考人の出席要求に関する件
○裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律
 案(内閣提出、衆議院送付)
○政府参考人の出席要求に関する件
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○委員長(渡辺孝男君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律案の審査のため、本日の委員会に一橋大学法学研究科教授山本和彦君、弁護士・日本弁護士連合会ADRセンター委員長吉岡桂輔君及び社団法人日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会常任顧問柴垣雅子君を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(渡辺孝男君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
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○委員長(渡辺孝男君) 裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律案を議題といたします。
 本日は三名の参考人から御意見を伺います。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。
 参考人の皆様方から忌憚のない御意見をお聞かせいただきまして、本委員会における今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 議事の進め方について申し上げます。まず、山本参考人、吉岡参考人、柴垣参考人の順に、お一人二十分程度で順次御意見をお述べいただきまして、その後、各委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。
 なお、御発言の際は、その都度、委員長の許可を得ることとなっております。また、各委員の質疑時間が限られておりますので、御答弁は簡潔にお願いしたいと存じます。
 なお、御発言は着席のままで結構でございます。
 それでは、山本参考人からお願いいたします。
○参考人(山本和彦君) 一橋大学の山本でございます。
 私からは、まず、この法律の前提となっておりますADRの拡充・活性化の必要性という点について確認をさせていただき、次いで、そのような目的を達成するためのこの法律の意義についてお話をさせていただきます。そして最後に、将来に向けた希望あるいは課題といったことについてお話をさせていただければと存じます。
 現在、日本におきましては、ADRというものは必ずしも十分に発展しているとは言い難い状況にあります。ただ、この点については、ADRが極端に発達しているアメリカ合衆国を除けば、どの国もおおむね五十歩百歩というところではないかと思います。私の留学しておりましたフランスなどでも様々な形でADRの振興策を打ち出しているところでありますが、いまだそれが十分に社会に根付いているとは言えない状況にあるようです。加えて、日本の特殊性としまして、特に裁判所の調停が非常に発達しているという点があります。司法型ADRと言われますが、これは特に民間型ADRの拡充という観点から見ればむしろマイナスの材料になるわけです。
 しかし、それでは日本でADRを拡充・活性化する需要がないか、あるいは必要性がないかというと、そういうことは決してないと思います。日本では、それが国民性の問題であるかどうかは議論のあるところですが、紛争を当事者間の話合いで解決したいという需要は相当に大きなものがあると思われます。実際に、訴訟が提起された後も、三分の一近くの事件は訴訟上の和解で解決されているわけです。また、訴訟に比べれば、事件処理の専門性や秘密性、また廉価で迅速な手続といったADRに多様なメリットがあることは間違いのないところです。
 他方、裁判所の調停が発達していることは事実としても、やはり裁判所ということで、一般の人からすると相当に敷居が高いということは否定できません。結局、行き場がなくて泣き寝入りになっているような事件、紛争が現在の日本にはなお相当数あるのではないかと思われるところです。そのような意味で、ADRを拡充・活性化することができれば、そういう紛争がかなり顕在化してくるのではないかと予想しております。
 また、私の専門である民事手続法の理論から見ても、ADRの拡充・活性化の必要性は肯定できると思います。私自身は、民事司法は公的なサービスであると理解しております。つまり、教育や医療などと同じように税金を使って国が国民にサービスを提供しているわけですが、このようなサービスは相当の範囲で民間も提供することができるものだと思います。
 当事者間に合意が成立せずに最終的には権力を用いて解決を図らなければならないような場合には、その権限は国が独占する必要がありますが、そこに立ち至る前に何らかの合意が当事者間に成立するような可能性のある場合には、権力的な契機というものは必然的なものではなくて、民間事業者の参入を認める余地というものは多分にあります。
 私立の大学や病院があるように、私立の紛争解決事業があることは何ら怪しむべきものではないと思います。むしろ、最近の一般的潮流において民間で可能なものはなるべく民間に任せていくという方向があるとすれば、特に民間のADRの拡充・活性化というものは望ましいと考えられます。そして、国の提供している裁判や調停といったサービスも、民間ADRの発展に対応して、それとの競争の中でサービスがより向上していくということが期待できます。それによって、利用者である国民にとって紛争解決のための多様な選択肢が提供され、サービスの幅が拡大し、その質が向上し、結果として社会全体の正義の総量が増大するものと思われるからです。
 このように、ADRの拡充・活性化は、顕在化した現在の需要に対応するというよりも、どちらかといえばむしろ潜在化した需要あるいは将来の需要に対応したものであって、その意味では時代を先取りする意義を有するものというふうに考えられます。
 このように、ADRの拡充・活性化が必要であるとしても、日本においては国が何ら関与せずにそれらが当然に発展していくというわけにはいかないように思います。ADRの発展している米国と日本では、司法、紛争解決を取り巻く事情が大きく異なると思われるからです。
 既に述べましたように、日本には司法型ADRとしての裁判所調停が大変大きなウエートを持って既に存在しているということがありますし、さらに、民事裁判の状況も大きく異なります。特に、そのコストの面あるいは解決結果の予測可能性等の点を取ってみれば、日本の司法制度の現状では、紛争当事者があえて司法による解決を避けてADRによる解決を志向するという契機に欠けているように見えます。しかし、このような日本の司法、裁判所の得ている信頼というものは、司法の容量が従来かなり小さなものにとどまっていたことに守られていた側面があることに注意を要します。
 今後、先般の金融機関の経営統合やあるいはプロ野球の紛争にありましたように、司法がより活発に使われるようになってきたとき、本当に従来と同じようにすべての紛争解決を裁判所が行うということでよいのか、疑問があります。むしろ、ルーチンな紛争、軽微な紛争や専門的な紛争など、ある程度裁判所にゆだねながら、重要な、正に裁判所でなければ解決できないような紛争に裁判所が特化していくということも考えなければならない時代が遠からず来るのではないかと思います。そのようなときには、国が紛争解決に係る政策としてADRにてこ入れする必要が生じてくると思われます。しかし、ADRの機関やその担い手を育てるとしても、必要が生じたからその時点でこれから対応しましょうといっても間に合わない。やはり、将来を見据えて今の段階からできる施策を取っておくということが必要なものと思われます。
 他方、受皿となるADRの現状が現在で十分かといえば、それに疑問のあることは明らかです。
 今回の法整備との関係では、特にADRの信頼性という点と裁判とのイコールフッティングという点が重要ではないかと思います。
 まず、ADRに対する信頼ですが、これはさらにADR一般に対する信頼と個々のADR機関に対する信頼の問題とがあります。
 ADR一般に対する信頼という点では、以前私が企業の法務担当者の方から伺ったお話が大変印象に残っています。それは、企業がADRの利用に踏み切れない理由として、仮にADRを利用して良い結果が出ればそれでいいけれども、悪い結果に終わった場合、その担当者はどうして裁判を利用しなかったかとして責任を追及されるおそれがある、裁判を使って負けたのであれば、それはそれで経営陣にも納得してもらえるけれども、ADRのような訳の分からないものを使って負けたときには担当者個人の責任問題になるというのです。これは、さきに述べました日本における裁判に対する信頼感の言わば裏返しの話ですけれども、実際の企業の担当者や顧問弁護士の方などは、その紛争についていかに優れたADRが実際にあると分かっていても、よほどの成算がない限りその利用には踏み切れないという事情があるのではないかと思います。私がADR基本法の制定を必要だというふうに考えた一つの理由にはそのようなところにあります。
 今回提案されている法律では、その総則規定でADRに関する基本理念を明らかにし、さらに国がADRの利用の促進を図るために必要な措置を講じ、国民の理解を促進する責務があるということが明らかにされているわけです。このような規定がADR一般に対する国民の信頼を確保する意義は大変大きなものがあると考えます。言わば、ADR全体に対する国のお墨付きとも言えるものであります。
 次に、各ADR機関に対する信頼性という点も、従来ADRの利用が低調であったことの大きな理由だろうと思います。
 もちろん、各ADR機関はそれぞれ様々な方法で広報を行うとか、解決内容の情報を公開するとか、利用者の信頼を得るための努力をされてきたことと思います。私も若干お手伝いをさせていただいていますが、金融機関のADRについては、金融トラブル連絡調整協議会という組織が作られ、消費者の方々からの意見をADRの運用に生かしたり、またモデルルールのようなものを作ったりして、共同、連携してADRの信頼の向上に努めているという例もあります。しかし、残念ながら、利用者の目から見ますと、なかなかそのような努力が見えてこないというところが従来あったように思われます。今後もそのような地道な努力が必要であることは間違いありませんが、やはりもう少し目に見える形、分かりやすい形で信頼できるADRというものを国民に示していく必要があるのではないかと思われるところです。今回の法律の定めている認証制度は、そのような需要に適合するものではないかと考えます。
 もちろん、そのような認証、つまり一種の適格認定などがそもそも必要であるのか、また必要であるとしてもそれを国が行うのが適当かという問題はあります。
 私自身、基本的には、ADRの選択、淘汰は市場にゆだねるのが基本であろうと思っています。ADR機関がそれぞれのサービスを競い合い、公正な市場の中で利用者である消費者がそれを選択し、消費者に受け入れられなかったサービスは淘汰されていくという基本的な考え方です。しかし、現段階でそれを完全な形で市場にゆだねることには疑問があります。そもそも、紛争解決のサービスというものはその結果がなかなか目に見えにくく、サービスの質の判定が困難な性格のものでありますし、また国民がADRの提供する紛争解決サービスに十分慣れていない現状においては、やはり専門的な観点からの認証が必要なもののように思われます。
 また、やはり将来的には、そのような認証を国ではなくて民間が行っていくと、民間が一般に承認された基準に基づいて行うということも不可能ではありません。例えば、現在、国際的な平面では、顧客満足のためのADRの基準についてISOという機関が国際的な規格作りを進めておりますが、将来的にはそのような国際規格なども活用しながら民間ベースでADR機関の認証あるいは格付がされていくということも十分あり得る話だろうと思います。
 しかし、制度を今正に立ち上げようとしている現段階では、国がそのような機能を責任を持って担っていくという発想も十分に正当化できるものであり、私自身は現実的にはそのような方向が望ましいと考えております。
 さらに、従来のADRの問題点であり、国が介入する必要があるポイントとして、ADRと裁判との制度的なイコールフッティングの問題があります。従来、日本においては紛争解決事業はほとんど国の独占事業であったわけです。そこに民間の参入を勧奨して民間活力の活用を図ろうというわけですから、その前提として、民間による紛争解決事業と国の紛争解決事業との間でできるだけ競争条件の均等化が必要になると考えられます。
 この点では、ADRの一方法である仲裁については、仲裁法の制定もあって裁判とほとんど変わらない紛争解決機能を持つものとして整備されてきていますが、ADRの主要な他の方法である調停、あっせんについては、この点は非常に不十分なものです。特に、ADRの話合い中にそこで対象となっている債権が時効で消滅してしまうというようなことでは利用者は安心して話合いができないわけでありまして、裁判所の訴訟や調停に比べて民間のADRは著しく不利な競争条件の下に置かれることになってしまいます。
 そのような意味で、今回の法律が、時効中断を始めとして幾つかの具体的な法的効果を規定したことは評価されるべきことであります。これによって、ADRが裁判や調停の言わば競争相手として大いに活躍していただく基礎ができるものと信じます。
 以上、述べてきましたように、私は、今回の裁判外紛争解決手続利用促進法の内容については基本的に賛成しております。当初、ADR基本法というものを私自身が提案したときも、率直に申し上げて、これほどの短期間にここまでのものができるということは想像しておりませんでした。その意味で、是非ともこの法律案を早期に成立させていただきたいというふうに強く希望しております。
 ただ、ADRの将来の発展を願うとき、さらに将来的な課題として指摘しておきたい点が若干ありますので、最後にそれらの点について触れさせていただきたいと思います。
 まず、全般的に、今回の試みが全く新たなものであって、世界的に見ても余り類例のないものであることにかんがみて、法律施行後、その実施状況というものを慎重にモニターして、国会として是非必要な見直しを果敢に行っていただきたいという点であります。
 この法律の施行後、多くのADR機関が実際に設立され、また認証を受けるでありましょうが、それがどの程度実効的なものとして機能するのか慎重な見極めが必要なように思います。また、先ほど少し触れましたが、ISOによる国際規格作りや、またUNCITRALという国連の組織では国際商事調停についてモデル法というものが作られております。そういった内外の状況も踏まえて、是非必要な見直しを臨機に柔軟に行っていただきたいと希望します。
 また、ADRの発展にとって何よりも必要であるのは、人、担い手の育成です。ADRの命は、それを担う人材によって左右されると言って過言でないと思います。このことは、ADR検討会でも異論がなかったところであります。そこで必要とされる能力としては、法律の知見だけではADRの主宰には必ずしも十分ではなく、話合いを促進する能力というものの重要性が確認されていると思います。現段階では、話合いの促進について必要とされる能力やその確認方法等について十分なコンセンサスは得られていないところですが、中期的な課題としては、ADRの専門能力について確認し、国がそれに資格を付与するような方向、そしてそのような専門家の行ったADRについて特別の効力を認めるような方向は十分に検討に値するものと思います。検討会でもADR士という構想が論じられたところです。
 もちろん、その前提としては様々な努力が必要となります。この法律が施行された後、認証ADR等において、ADRの実務運営の在り方について共通の基盤ができていき、また人材育成の面においてもADR機関間で緊密に連携していく、そしてまた、私の所属している大学などの教育機関もそれに協力していくといった方策が必要になると思います。その点で、是非とも国の責務としてそのようなADRの人材養成に関する基盤整備についても御配慮をいただきたいと考えております。そして、そのような基盤整備の進展を前提に、将来的には、先ほど述べたようなADR士といったような方向も真剣に模索すべきものと思います。
 さらに、裁判とのイコールフッティングという観点からも将来的な課題が残されているように思われます。
 この法律は、現在の学界の理解からすれば相当に踏み込んだ措置を取っているということは間違いありませんが、法律施行後の状況を見て更に考えていく必要がある点もあるように思われます。
 二点申し上げれば、第一に執行力の問題があります。
 この点はADR検討会でも大きな論点として議論されたところですが、最終的には時期尚早ということで見送られることになりました。しかし、真の意味でのイコールフッティングを考えるのであれば、執行力というものはやはり大きなポイントになると考えています。慎重論の根拠としては濫用のおそれというものが大きかったと思われますが、法律施行後にそのような濫用的実態が本当に生じるかどうかという点を慎重に見極める必要があります。
 逆に、私などは懸念するのは、せっかく認証制度というものを作ってみても、執行力もなくて本当に実効的に機能するのかという点です。執行力がないと認証制度は実効的に機能しないおそれもありまして、その辺りを施行後十分に見極め、再び将来その当否を判断すべきであるというふうに考えます。私個人は、その対象を相当に限定した形であっても執行力の付与を考えていく必要があると思っておりますが、その付与の手続等について今後更に理論的な検討を進めていく必要があると思います。
 もう一点、法律扶助の対象化という点も将来的にお考えいただく必要があると思っております。
 この点については検討会の内外で余り反対はなかったのではないかと思いますが、今回、主として予算上の問題等もあって断念されたものと考えております。
 しかし、この点は、大きく言えばADRの位置付けにも関係するところがあります。ADRが裁判と並ぶ紛争解決の選択肢として位置付けられるのであれば、多様な紛争解決手段の中で最も適切な手段を選択できる権利を国民に保障する必要があります。そして、適切な解決方法がもしADRであるのだとすれば、それを資力の有無にかかわらず利用できるようにするのは国の責務であるというふうに考えます。
 先般の総合法律支援法の制定によって民事法律扶助事業を担当することになる日本司法支援センターの役割の展開や法律扶助予算の充実も踏まえて、仲裁をも含めてADRに対する法律扶助の拡大につき再検討の必要があると思っておりますので、是非、紛争解決の社会的な意義という高い観点からの御議論も含めて将来的にお考えをいただきたいと希望しております。
 以上、大変つたないものでありましたが、私の意見を申し上げさしていただきました。ADRの研究者の一人として、本法律が一日も早く成立することを祈念しておりますが、私の意見が御審議の何らかの御参考になれば幸いに存じます。
 ありがとうございました。
○委員長(渡辺孝男君) ありがとうございました。
 次に、吉岡参考人にお願いいたします。
○参考人(吉岡桂輔君) 日本弁護士連合会ADRセンター委員長の吉岡桂輔でございます。
 本日は、裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律案について意見を述べる機会をいただき、誠にありがとうございます。
 日弁連ADRセンターは平成十三年に立ち上げられまして、日弁連の各単位会の運営する仲裁センターや紛争解決センターの連絡調整や各種研究、また本日配付させていただきました仲裁統計年報の発行、今回のADR法の検討などを行ってまいりました。
 なお、今回の法律案の名称につきましては、本法案あるいはADR法と略称させていただきますので、よろしくお願いいたします。
 さて、今回のADR法案について、仲裁センターを運営する立場からは、期待する面と懸念する面の両面があります。
 まず、期待する面は、言うまでもなく、ADRが本法案を契機にしてますます活性化し、世の中に認知されて、裁判に並ぶ魅力的な紛争解決制度となることです。紛争は究極的には裁判所による裁判で解決が図られるものですが、調停、あっせんなど、裁判以外に簡易迅速に解決できる制度が充実することは、紛争を早く解決したいと願う国民にとっても利益があります。
 すなわち、民事裁判とADRの目的はいずれも私人間の紛争解決にありますが、裁判は実体法の適用により争いを公権的に解決することを目的とすることから、厳格な要件が必要であり、またそのため訴訟の対象となる紛争の範囲もおのずと限定された一定の要件を充足するものに限られることとなります。
 他方、訴訟要件の審理のみでは必ずしも全面解決できない社会生活上の様々な紛争や、あるいは当事者同士が裁判によらないで紛争を解決する場としてADRが必要であることは申すまでもありません。例えば、少額な紛争、近親・近隣間の紛争、立証困難な紛争、秘密保持の必要な紛争、専門性など、仲裁人に人を得る事件などがこれに該当すると言われております。
 ところで、民間ADRの一つであります弁護士会の仲裁センターは、平成二年に第二東京弁護士会が開設したのを皮切りに、今日では、東京三弁護士会、大阪、新潟、名古屋、岡山、兵庫、福岡、奈良、広島などの十七単位会十九センターで運営されて成果を上げています。そして、昨年の統計では、年間に全国で合計千百十八件の申立てがなされ、解決事件数は年間五百四十件に達しております。
 なお、解決事件の申立てから解決までの期間ですが、全国の平均審理回数は二・七回、平均審理期間は七十二・四日であり、極めて短期間で紛争が解決されています。また、解決に至る紛争の種類も、不動産、請負その他の契約、貸金、不法行為、知的財産権、家族間や職場内での紛争、相隣関係など多岐にわたっております。これらの事実からも、裁判に持ち込まなくても解決できる紛争が多数あること、短期間で解決できる事件が世の中に多いことが見て取れます。
 そして、弁護士会の仲裁センター、紛争解決センターのみならず、ほかにも成果を上げてきたADRがあります。これらのADRにより、紛争解決のチャンネルが広がり、解決できるものは簡易迅速に当事者の満足のいく解決がなされ、どうしてもADRで解決できない紛争が裁判所で争われることとなりますが、裁判もある意味で純化し、本当に裁判で争うべきものが訴訟で争われることになります。国民の利益にも訴訟経済にもかなうことでもあります。
 本法案で時効の中断効など法的効果が認められた点など、様々な裁判との連動の規定は歓迎であり、その運用に大いに期待が持てます。
 次は、懸念される面です。
 司法制度改革審議会意見書は、法の支配がこの国にあまねく浸透することを司法制度改革の根本的課題としています。法の支配の精神からは、裁判外の解決とはいえ、紛争が法的にも正義にかなった適正な解決がなされるべきであり、いやしくも国民の利益、裁判を受ける憲法上の権利を損なうものであってはなりません。ADRについても同様です。
 すなわち、ADRは基本的に当事者の合意による解決制度ですが、紛争の自治的解決という名分の下に、力の強弱による紛争解決、情実による紛争の封じ込め、紛争ざたを嫌う当事者の無知に付け込む安易な解決といった前近代的な紛争解決手段に陥る危険性もはらんでおります。また、反社会的勢力によるADRや特定の事業者団体による消費者の権利を損なうADRは防止されるべきです。
 このような問題に対処するためには、弁護士法七十二条のその立法精神、根本原理は今後とも生かされる必要があります。すなわち、その意義は昭和四十六年七月十四日の最高裁判決が正しく指摘しているとおり、法的知識もなく、倫理的な規律に服することがない者が他人の法律事件に介入することは、当事者その他関係者の権利利益を損ね、法律生活の公正円滑な営みを妨げることになるからです。
 今回の認証制度は、言わば国民に安心できるADR機関を選択する目安となり、この機関における調停手続の実施については弁護士法七十二条の例外として、弁護士以外の者の行う解決が一定の条件で認められることとなります。したがって、万一にも望ましくないADRが認証を受けるようなことがあってはなりません。
 ADRの健全な発展、充実を図るには、ADRの良い面と懸念される面、言わばこれらの光と影の両面に十分注意を払う必要があります。日弁連はこれまでADR法について意見を述べてまいりましたが、それはこの言わば光と影の両面を配慮したADR法案を期待してのものです。
 お手元の配付資料にありますADR機関の自主性の尊重とADR利用者の権利擁護の点もこのバランスを示すものです。
 さて、今回の法案について日弁連としては基本的には賛成の立場ですが、ADR利用者の権利擁護の面から、またADRを運営する立場から、本法案に即して、以下何点か具体的な意見を述べたいと思います。
 まず、認証制度についてです。いやしくも公正適確でない、言わば望ましくないADRが認証制を悪用することのないようにする必要があります。そして、真に国民が安心して利用できる認証制度にする必要があります。
 例えば、高利の金融業者の業界団体がADRを設置し、貸付けの際の金銭消費貸借契約条項に、この契約について紛争が生じた場合にはその業者が指定するADR機関を利用するとの特約条項を入れた上、現実に紛争が生じた時点で、当該ADR機関の手続実施者が金融業者の意を酌んで消費者に不利な和解案でまとめようとする事態がないとは言えません。
 そこで、かような不適切なADRにはそもそも認証がなされないようにするとともに、消費者には広く情報が事前に提供されること、またADR手続からの離脱の自由について十分に周知される必要があります。
 また、ADRといえども、法に基づく適正な解決がなされなくてはなりません。ADR法案の第三条、「基本理念等」の中に法による紛争解決とうたわれていることは、正にこのことを直接的に表現したものでありまして、裁判外であっても法による公正かつ適正な解決が図られなければならないことは言うまでもありません。したがって、法的紛争解決の専門家である弁護士が法の支配の重要な担い手としてADR活動の中心に位置する必要があります。
 このような観点から、手続実施者、すなわち調停人は重要です。正に手続実施者、調停人に人を得てこそADRは生きるものであります。
 手続実施者は、まず各当事者の言い分に公平に耳を傾けて、事実関係を整理し、その紛争の争点をいち早く見いだして当事者間の合意の可能性を探り、それをあっせんする者ですが、その際適用すべき法や判例、学説を検討して、その大きな枠組みの中で、あるいは少なくともそれを意識して解決に導く必要があります。
 このため、弁護士会の仲裁センターでは、例えば仲裁人候補者の資格を弁護士、裁判官などの法曹経験十年以上などとしています。早期に解決するためには、長年にわたり多くの訴訟活動を担当してきた経験豊かな弁護士や元裁判官などの法律家の中から、専門分野や公平性などの見識を加味して適材を得ることが適切だからであります。
 このことは、裁判外の解決であるからといって、法的紛争を、法を度外視して安易に解決してはならないことを意味します。当事者が合意しているならどんな解決でもよいということにはなりません。また、裁判を見据えた法的専門知識を有することにより事件の見通しが立ち、迅速な解決に結び付くことも多いわけです。
 このような観点から、豊かな裁判経験、法的紛争の解決の経験があってこそ公正適確な紛争解決が早期に可能となるのです。
 認証要件の中の弁護士の関与に関する規定として、第六条第五号で、「手続実施者が弁護士でない場合において、民間紛争解決手続の実施に当たり法令の解釈適用に関し専門的知識を必要とするときに、弁護士の助言を受けることができるようにするための措置を定めていること。」と規定されております。しかし、この規定は、弁護士法七十二条の根本原理と国民の権利利益を守る観点からは不安が残ります。
 まず、法文では、「法令の解釈適用に関し専門的知識を必要とするときに、」とありますが、この「法令の解釈適用」という言葉はその文言からは極めて狭い範囲に限定されかねないとの印象を与えることを危惧しております。
 紛争解決にとって、狭い意味での和解内容の適法性、すなわち法律やその解釈に違反していないかということだけではなく、形式的には法律違反でなくとも、法の一般原理である公序良俗や信義誠実の原則に反していないか、当該和解内容が著しく不公正でないか、社会的に相当であるかどうかといった判断が重要となります。
 例えば、申立人の請求が許容できるかのように見えても、相手方を保護する他の法令に反しないか、反対債権による相殺ができないかなどの問題は日常的によく遭遇することであります。
 さらに、最も大事なことは、その合意に関して当事者が自らの権利義務を正確に理解した上でのものか、真意がどこにあるのかということであり、表面上の合意があればそれでよいというわけにはいきません。このように、裁判外とはいえ紛争の最終解決であり、権利義務の変動を生じさせるものであるため、慎重な配慮が必要です。
 そして、弁護士は、単に法令に関し専門的知識を有しているというだけではなく、多くの民事裁判や裁判外の紛争解決業務の経験を通じ、和解内容の適法性だけではなく、当該和解が紛争当事者にとって相当で望ましいものか、また社会的にも相当であるか否かを判断する紛争解決能力を有しております。したがって、弁護士の助言を必要とすべき場面が「法令の解釈適用」の言葉により余りにも狭く解釈されることのないように、国会の審議で明らかにしていただきたいと考えます。
 また、「法令の解釈適用に関し専門的知識を必要とするときに」は、手続実施者の任意的判断にゆだねるべきではなく、国民の権利利益を擁護するために、少なくともADRの最終段階である和解成立の場面においては弁護士の関与は原則として必要的とされるべきであると考えております。
 さらに、法文では「弁護士の助言を受けることができるようにするための措置」とされており、この文言からだけでは弁護士の助言を受けることができる措置さえ定めておればよく、現実の手続の中で必ずしも弁護士の助言を受けるか否かは問わないような規定にも見えます。
 また、弁護士がどのように関与するのか、関与するとしても、その場で当事者の話を直接聞いて助言することができる措置が必要なのか、間接的若しくは事後的に関与するだけで足りるのかなども不明確です。民間のADRにおいても、簡易裁判所の調停のように、調停裁判官が常に待機していて、いつでも当事者の真意を確認できるような体制こそがあるべき姿ではないでしょうか。
 弁護士会仲裁センターの経験からしても、当事者は和解の最終段階において、ADRでの和解案で早期に解決するか、又は裁判に移行して更なる権利救済を求めるべきかについて迷うのがむしろ当然なことであり、しばしば遭遇することでもあります。そのような場面では、訴訟経験の豊富な弁護士の適切なアドバイスが是非とも必要です。
 さらに、本法案第二十四条では、民間紛争解決手続の業務の特性への配慮に関する規定が置かれております。ADRの利点の一つに秘密性、非公開性があります。したがって、認証官庁への報告や検査等の場面で個々の和解内容や手続まで審査されるようなことがあっては、この利点が害され、ADR機関及び手続実施者の自主性、自立性が害されるおそれがあります。
 そこで、少なくとも弁護士会の仲裁センターなど、これまで実績のあるADR機関の認証及び監督に当たっては、この第二十四条の業務の特性への配慮規定を十分尊重して運用していただくことを要望しておきたいと思います。
 最後になりますが、今後我が国はこれまで以上に多様な価値観が共存する社会に向かっていくことになりましょう。ADRに求められる役割は、異なる価値観を有する紛争当事者の紛争解決能力を引き出し、公正中立な紛争解決機関の下、主体的、自立的な紛争解決を支援するものとして、ますます高まるものと考えます。ADRが国民にとって裁判と並ぶ魅力的な選択肢となるためには、公正かつ透明な法的ルールの下で適正かつ迅速に解決される仕組みでなければなりません。本法案は、そうしたあるべきADRの基盤整備に資するものとすべきです。
 また、ADRを運用する弁護士会としても、仲裁センターの全国展開を図るとともに、従来以上にADRを支える主宰者の研さん、研修、担い手の育成などに力を注いでいく所存ですが、今回の法律制度を契機に、国や関係自治体の広報活動や財政面を含めた各種協力も不可欠ですので、これをお願いいたしまして、私の意見といたします。
 御清聴、誠にありがとうございました。
○委員長(渡辺孝男君) ありがとうございました。
 次に、柴垣参考人にお願いいたします。柴垣参考人。
○参考人(柴垣雅子君) 社団法人日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会の柴垣と申します。
 本日は、裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律案について意見を述べる機会を与えていただきまして、ありがとうございます。
 私は、山本先生や吉岡弁護士のような法律の専門家ではない、全くの素人なんですけれども、昨年一年間、それからまた今年も続けてやっておりますが、ADRの実証実験をやっているというところで、今までの経験とそれからその経験の中から見えてきたものについて意見を述べさせていただきたいというふうに思っております。
 皆様のお手元に資料が行っているかと思いますが、それは昨年度私たちが実証実験をやった報告書の中から一部抜粋したものでございます。
 御存じない方が多いかと思いますので、ちょっと簡単に私たちの団体を紹介させていただきますと、私たちの団体は、先ほど申しましたように、社団法人の日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会と申しまして、消費生活アドバイザーとコンサルタントが一緒になりまして昭和六十三年に当時の通産大臣の許可を受けて設立した団体で、現在約四千名近くの会員が北海道から沖縄まで、言わば消費者問題の専門家として活躍しております。どんなことをやっているかについてはここのところに出ておりますので、ちょっとごらんいただければいいかと思います。
 私たちの団体の中で、平成三年からウイークエンドテレホンという消費者相談室を立ち上げておりました。これは、ウイークデーは地元の消費生活センターの窓口が開いているけれども、土日でも消費者被害がないわけではありませんし、土日にしか相談できないお勤めの方なんかもいらっしゃるということで、主にその行政の消費生活センターの相談員をやっている者が中心となってウイークエンドテレホンという電話相談を始めたわけです。だんだん実績を積みまして、現在では、今年の相談は、土日だけですけれども、もう二千件近く相談が入っているというような状況です。
 そういうふうな相談を受けている中で、司法改革の流れの中でADRの検討が始まっている。私たちも、是非私たちの相談室も将来はADRを立ち上げたいという思いがございまして、それにはやはり、先ほどの先生方もおっしゃっていましたように、ADRの担い手を養成しなければいけないんではないかということで、コンシューマーADRエキスパートという講座を昨年二月と六月に行いました。先ほど御意見を述べられました山本先生を始めとして、ADRの専門家の方を講師に招いての勉強会をやりました。
 ちょうどその講座が終わって間もなくですけれども、経済産業省の方から平成十五年度の特定商取引研究調査というのの委託を受けまして、それでコンシューマーADRというのを実証実験を始めたわけです。
 それは、次のページにこういうフローチャートがございますので、それをちょっとごらんいただければと思います。
 実証実験は平成十五年の七月四日から平成十六年の三月三十一日までやりましたけれども、受け付けたのは二月末までで一応終了しまして、受付件数が千六百三十件でした。
 私たちの相談からADRへの流れがここに出ておりますけれども、特定商取引に関する研究調査ということでしたので、まずそれに該当するかどうかというところから始まりまして、特定商取引に関するものであっても自主的に消費者が解決できそうなものについては助言とか情報提供によって自主解決をお願いしています。
 しかし、自分だけでは解決できそうもない、もう非常に、既に消費者が事業者と交渉しているけれども相手が応じないとか、また、契約してから長い経過がたっているとかというような自主解決が困難なものについては私どもがあっせん交渉をしております。ここで合意ができてあっせん解決ができますとここで終わるわけですし、それからまた、不調に終わった場合には、でも、ここで通常は終わってしまうわけですね。今までですと、これでは、不調に終わった場合には裁判所を御紹介するとか弁護士さんへ紹介をするとかで終わっていたわけですけれども、ここにADRという新しい流れができましたので、もう一つ消費者にとってはADRを選ぶという選択肢ができたということになります。
 これに従ってADRを私たちは昨年四回行いました。それに当たりましては、まず、手続実施者という、今回の法律案では手続実施者というふうになっていると思いますが、その調停、裁定をする方をお願いいたしまして、弁護士さん二名と大学の先生お一人と消費者団体の代表の方を入れております。
 調停、裁定は四回やりましたというふうに申し上げましたけれども、事案は九事案でした。九つの事案で当事者は八人です。というのは、一人の当事者が二つの事案を抱えていたということになります。調停、裁定をした結果、ここにありますように、調停、裁定が成立すればそれで終わりですし、それが不成立の場合にはやはり裁判所などの紹介ということになるわけなんですけれども、ここで一番困ったのが、ちょっと後で詳しく申し上げますけれども、事業者がテーブルに着かないということなんですね。消費者の方は是非ADRで解決したいというふうに望みましても、もう一方の当事者である事業者がなかなかテーブルに着いてくれません。今八当事者がいるというふうに申しましたけれども、八人の事業者の中でテーブルに着いてくれたのは一事業者だけです。あとはじゃどうしたかといいますと、一方の当事者である消費者だけが出てきて、調停、裁定の先生方の意見を聞いたということとか、あるいはまた、私どもがあっせんをしていることについて、先生方がこれについてはどういうふうに考えるかというようなことを教示してもらうとか、もう既に解決したものについてこれでよかったかというような、言わば事後検証みたいなことをしたこともあります。
 これがADRかということになるかと思いますけれども、私たちは、これは実証実験だからどんな形でもありでいいんじゃないかということでいろんな形を探ったわけですけれども、その一つの事業者とそれから消費者の両当事者が出てきた案件は、これはその人が二つの契約を一つの事業者からしていたんですけれども、二十五歳の地方公務員で、茨城県の北の方に住んでいる人でしたけれども、足が不自由だということはもう電話で聞いていたんですね。その彼が、百七十六万と百九万の二回、宝石のセット、だからネックレスとかイヤリングとかタイピンとか、そういうものを買ったということなんです。これを解約したい、返品して解約したいというような相談だったわけですけれども、ある場所を借りまして調停、裁定を行ったんですけれども、そのときやってきた青年を見て、私もはっと思いましたし、相手の事業者もはっという顔をなさいました。というのは、足が不自由だとは聞いていたんですけれども、松葉づえをついて、しかし足が下に、両足とも下には着かないんですね。宙ぶらりんなんですよ。松葉づえだけで歩いているというような感じの青年だったんですね。
 やっぱり、そういうふうに現実には、両当事者が同じテーブルに座りますと、言わば障害の程度とか、それから判断力の有無だとか、それから、そういうことがやっぱり現実によく分かりますし、やはり両当事者が向き合って、じっくりとその事情を説明したり話し合えるADRというのの存在はすごく大きな意味があるというふうに思いました。
 ここにお集まりの議員の皆様方はどのようなADRというのを念頭に置いていらっしゃるのかというふうに思いますけれども、例えばBツーB、事業者間、それからCツーC、言わば個人間のような対等の関係の二者のADRに対して、私たちがやっているのはBツーC、事業者と消費者という、非常に情報力とか経済力とか交渉力の間に大きな格差がある当事者の場合なんですね。そういう場合に、法律などにとらわれずに解決に向けて話合いを尽くすだけでいいんだろうかという思いが私たちにありました。
 私たちは、今まで消費者問題の、消費者関連の法律については提言したり、要望したり、いろいろな活動を重ねてきて、その結果実現してきた消費者関連の法律というのがたくさんあります。やはり、その法を守って、公正な合意解決ができる消費者問題に特化したADRが必要ではないかというふうに考えて、これを行ってきたわけです。
 私たちは、相談があったときと、それからもう一つ、私たちの団体のホームページでADRについてアンケートを取っております。それについてはここにちょっと入っておりますので、後でごらんいただければと思うんですけれども、その結果を見ますと、私たちのNACSの会員は、私たちの会員は大体知っている人が多いんですけれども、一般の方にはADRの認知度は非常に低いと言えます。しかし、幾らかお金を出してでも紛争の解決をしたいという人が意外に多いというのが私の印象でした。
 今までのその経験から私たちが感じている問題点を四つほど述べさせていただきますけれども、まず一つは、相談から紛争解決まで一つの流れでとらえることが必要ではないかということです。
 消費者のトラブルは、被害額が少ないことというのが通常ですね。消費者は、トラブルに遭ったとき又は遭いそうになったとき、すぐに紛争解決機関に申し出ようとは考えないと思います。まず、身近な相談窓口にちょっと相談してみよう、いいアドバイスが受けられるかもしれない、いいアドバイスを受けたら自分の力で解決できるかもしれないというふうに考えて、電話でも相談できる近くの消費生活センターとか、あるいは私どものウイークエンドテレホンなどへ相談してくるんだというふうに思います。その相談窓口で解決できなかった場合に、その先に消費者問題に特化した紛争解決にゆだねられる道筋ができていると、そのADRを選択する場合でも安心して選択できるのではないかというふうに思います。
 消費者取引に関する相談から、助言、紛争の解決まで一元化を図ったことによりまして、ADRを知らない消費者にADRという解決方法があることを知らせることができましたし、自分の抱えている問題をどこでどう解決したらいいのか知らない消費者にとっては、相談という形で広く窓口を開けておくことがADRのすそ野を広げることというふうに考えております。こういう点から、相談から紛争解決まで、一つの流れとしてとらえることが必要というふうに思います。
 二番目といたしましては、先ほど申しましたように、ADRに対して事業者がなかなかテーブルに着いてくれないので、是非その事業者をテーブルに着かせるための方策を何か検討していただけないかということです。
 先ほど申しましたように、この事業者をテーブルに着かせるのが一番苦労した点なんですけれども、消費者にADRのことを説明して同意を得て、事業者に同意を求めても、まずほとんどの事業者からは賛同が得られませんでした。自分たちが何でそんなところに行かなきゃいけないんだとか、話合いをしたいならそっちから出向けとか、あるいはまた何の権限があってそういうことをやっているんだとか、まあそういうような言葉を何回も聞かされたわけです。私たちが事業者の方にも、そちらの言い分を十分いただいた上での話合いですからということを伝えても、拒否の姿勢は変わりませんでした。
 両当事者が自主的に紛争の解決に向けて話し合うというADRの理念にそぐわないというお考えがあるかもしれませんけれども、韓国の消費者保護院では、出頭しない事業者に対して事業者名の公表などの措置を取るということを聞いたことがあります。民間の紛争解決手続の利用促進のためにも、是非、消費者問題を取り扱うADRには事業者をテーブルに着かせるための方策を検討していただきたいというふうに思います。事業者がADRのテーブルに着いた方がメリットがある、着かない方がデメリットが大きいというインセンティブを与える何かがないかというふうに考えています。
 三番目は、情報公開の必要性です。
 ADRは、プライバシーとか営業秘密を保持した非公開の解決というふうに言われています。もちろん、これらを守ることは第一義的に考えなければいけないことですが、プライバシーや営業秘密に配慮しつつ、情報の公開が必要であるというふうに考えます。
 ADRには、公正、公平、透明性の確保が求められていますが、情報を公開することによってこれらが担保され、私たちがADRを選ぶときの基準、判断の基準になります。また、ADR同士が情報を共有することによって、他のADRとの役割分担や相互利用ができますし、判例のように情報を蓄積することによってより良い紛争の解決につながっていくのではないかと思います。そしてまた、各ADRが情報の開示をすることによって第三者の評価にも堪えるような解決につながっていくのではないかというふうに考えます。
 最後に、四番目ですが、是非財政の援助をお願いしたいということです。
 前にも申し上げましたが、消費者被害というのは少額、ほとんどが少額なんですね。被害の回復に多額の費用が掛かれば、これは泣き寝入りするということになってしまいます。当事者の一方である消費者に経済力がない場合には、法律扶助がADR利用の促進につながると考えられますし、また消費者問題を取り扱う行政型のADRとして各地の消費生活センターがありますけれども、これは当然無料で相談とかあっせんをやっております。そうしますと、有料の民間ADRで紛争解決を求める消費者がほとんどいないんではないかというふうに危惧しております。民間型のADRの育成のためにも、財政の援助を是非お願いしたいというふうに思います。
 私たちは、この法案に対して、今出されている法案に対して基本的には賛成です。しかし、今申し上げましたように、この法律の四条では、国等の責務として「情報の提供その他の必要な措置を講じ、」とありますので、是非ADRの支援、育成をお願いしたいと思います。
 それからまた、せっかくADRで両当事者の合意が得られたとしても、その合意が履行されないときの執行力が付与されていません。これは検討会でも大きな問題になったと聞いております。この点についても更なる御検討をお願いしたいというふうに思います。
 裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律の名前のように、今後設立されるいわゆる認証紛争解決事業者が国民の信頼を得て、裁判と並ぶというか、いえ、それ以上の魅力のある選択肢になることを望んで、私の意見を終わりたいと思います。
 どうもありがとうございました。
○委員長(渡辺孝男君) ありがとうございました。
 以上で参考人の意見陳述は終わりました。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○荒井正吾君 自由民主党の荒井正吾と申します。
 三参考人に大変貴重な意見を聞かしていただきまして感謝申し上げます。
 立場が違う面もあって、その御意見に少々ニュアンスがあるというふうに感じました。ただ、この今回の法案にはすべて賛成ということでございます。
 まず、山本参考人でございますが、今回の措置を大きな目標に対する第一歩として評価されていると。ただ、理想とされるところはまだ大きいように思いました。共感いたします点は、司法制度は、官に独占されていたのが、官から民と、民の部分があるんじゃないかと。司法制度の市場化というようなのの試みだというふうに、大変共感いたしました。それと、民間主導で、むしろ官がそれを補完すると、あるいは最終の決着の手段として担保すると。民主官従といいますか、民が主で官が従という思想をお持ちであるというふうに御理解いたしまして、大変賛成いたしました。
 そういう観点からいいますと、この法案は少々御不満があるんじゃないかというふうにも感じますが、特に、一つは、この理念の点は、この法案が裁判外紛争解決手続といった市場で多様な紛争解決手続を用意する中で民間紛争解決手続を認証して用意すると、それを基本理念としておると。題が裁判外紛争解決手続と、にもかかわらず民間紛争解決手続のみを記載しているように私は印象を受けるんでございますが、この法の体系について、ちょっと御不満な点といいますか、その懸念がまだもう少しおありになるのであれば、今後のためにももう少しお聞かせ願いたいと思います。
○参考人(山本和彦君) 大変的確な御質問をいただいたかというふうに思います。
 私自身はこのADRというものは、司法制度改革審議会の報告書にありますように、裁判と並ぶ紛争解決のための魅力的な選択肢というふうに考えておりまして、民間でできるものは民間で行って、そしてそれが不可能な場合には公的な裁判所で解決を図っていくと。その両方がしっかりしないと、これはADRばかり頑張ってその裁判所が駄目だということでもそのADRというものがゆがんでいくのではないかというふうに思っておりますので、両方をやはりしっかりと整備していく必要があるのではないかというふうに考えております。
 今回の法律につきましては、御指摘のとおり、認証紛争解決事業につきましてはこれは民間ADRだけが対象になっておりまして、なっているわけですが、総則部分については、私の理解しているところでは司法型ADR、行政型ADRもこの三条あるいは四条の対象には含まれているというふうに理解しておりまして、この三条、四条の規定はそういう意味では非常に重要なものであるというふうに思っております。
 ただ、まだ、この規定を踏まえまして、将来的には私はその民間型ADRのほか、司法型ADR、行政型ADRがそれぞれどういう役割を果たしていくかという全体的な国としてのその政策を立てていくということが必要になっていくのではなかろうかというふうに思っておりまして、その意味でも、この三条、四条はその手掛かりになるものとして非常に重要であるというふうに認識しております。
○荒井正吾君 ありがとうございました。
 この官の提供する司法サービスがマーケットにマッチしなくなってきたと、量、質的にも量的にもというのが世界の潮流だし日本の事情でもあるというふうに理解いたしますが、そのいわゆる質、量の需給のバランスが崩れている原因の一つに、裁判、弁護士法七十二条の非弁護士の活動範囲というのがあると。日本のADR発展を阻害しているという意見が聞こえてくるわけでございますが、この点について山本参考人、どのようにお考えでございましょうか。
○参考人(山本和彦君) そのような御意見はADR検討会でも委員の間から、あるいはヒアリングの際にもるる述べられたところでありまして、そういう面があることは間違いないと思いますし、司法制度改革審議会の意見書でもその点の御指摘があるところです。
 私自身は、この本法案が先ほどのように、認証ADR機関について一定の範囲でその弁護士法七十二条の一種の例外を認めているということは大変評価できるんではないかというふうに思っていまして、ADR、この特にあっせん、調停という事柄は、そのやり方によっては非常に法律的な法の解釈適用を前提として、それに合うようにあっせん、調停を行っていくというやり方もありますし、両当事者のむしろ合意を調達するために、法律とは必ずしも、離れたところで、先ほど柴垣参考人も言われておりましたが、そういうようなやり方もあると。こういろんなやり方があるわけで、それはADR機関ごとに違うんだろうというふうに思っております。
 そういう意味で、この法律の六条五号のように、一定の、この紛争解決事業の一定のところに焦点を当てて、法律の解釈適用について専門的知識が必要となる場合に弁護士の助言を受けるという形で規律するというのは合理的なところであったのではないかと思います。
 ただ、あと、本法律はその仲裁についてはこの適用、その認証との関係では適用除外といいますか適用されていないわけで、そこはなお今後問題が残っているのかなというふうに考えております。
○荒井正吾君 吉岡参考人にお伺いしたいと思います。
 この紛争事案に法律家、とりわけ弁護士の関与の在り方というのは、国によっても違いますし、有効に関与していただくというのはとても重要だというふうには思いますが、お立場もあるからでございましょうが、いろんな紛争に弁護士の関与が必置だというふうに言われたように思うわけでございますが、柴垣参考人の分野のADRについては、その法律的知識より専門的知見と、この法律でいえば専門的知見を活用するというのが大きな柱になっております。
 専門的知見のない弁護士というのは、そういう意味の分野での活動の余地はないように思うんですけれども、そうすると、法律的知見、知識が大きく要るときと、余り要らないときと、これがあるかどうか、全く要らないのがあるのかどうかというようなことですが、その紛争の性質とか事情に応じて介入、関与されるべきだという意見もあろうかと思います。
 あらゆることに、弁護士法七十二条の文言からすればあらゆることに関与せないかぬということでございますが、実際上はなかなかそうもいかないのが世の中であろうかとまあ正直思うわけでございますが、その弁護士さんもいろいろその自分の能力を弁護士活動の中で伸ばす分野といって、こんな複雑になってきたときに、やはり専門的な法律的知識とかを伸ばしてもらった方がその価値が高まるようにも思うわけでございます。医療でいえば専門的医療の方が価値が高まるというようなふうに思う面もあるわけでございますが、弁護士関与の必置という点についてもう少し詳しくお考えを聞かしていただけたら幸いです。
○参考人(吉岡桂輔君) 分かりました。
 紛争には、確かに先生のおっしゃるとおり、必ずしもその法律的知見を必要としないようなもちろんトラブルも世の中に多数あると思います。それからまた、消費者のトラブルにおいても、例えば一定の、国民生活センターなどに相談して、例えばクーリングオフという制度をすら知らない人もいるかもしれない。そういう人にはそのクーリングオフの制度を教えてあげればそこで解決するものも確かにあろうかと思います。
 ただ、私の先ほど来申し上げましたものは、やはり最終的な合意によってその権利の取得、得喪は決まるわけですし、そこでいったん決まってしまえば、後になってそれを覆すというのはなかなか難しいわけですね。ですから、本当に当事者が最終的に和解なり調停なり合意するという場面は、これはやはり慎重にしなきゃいけないと、こういうふうに考えたことでございます。
 それから、その弁護士の専門性の問題。これも正に弁護士としても、これからは例えば法的な問題だけでなくて、例えば人の話を聞くようなその能力であるとかいろんな、例えば心理学的な問題も含めて、これまた日々研さんしていかなければいけないかと思います。ですから、そういう意味では、確かに弁護士の能力を更に高める、また専門性を深めていくということは必要なことだと、こういうふうに思っております。
○荒井正吾君 ありがとうございました。
 吉岡参考人にもう一つお聞きしたいと思います。
 山本参考人が、その紛争解決に必要な能力として話合い促進能力というような表現をされました。紛争解決当事者は余りに紛争がなくなるとマーケットが伸びない、売上げが伸びないものですから、俗にマッチポンプと言われる種類の、政治家でよくマッチポンプと言われることがあるんですが、どちらを持っているか分からない。紛争解決を専ら業とされる人はマッチを持たないようにせにゃいかぬというふうに思うわけでございますが、その話合い解決能力あるいはそれを引き出す能力というのは法律的知識が裏付けで要る場合が多いと思いますが、これは弁護士のみならず、あらゆる紛争解決当事者に、主宰者には要る、あるいは代理人に要ると思うんでございます。それと正義感の裏付けと。
 そういうなのがどのように紛争の解決が行われている現場で達成されるのかというのは、これ、マーケットのメカニズムをうまく作らなきゃいけないと。資格があるから能力があるというのとまた世の中、現実は違う面がある。これ、政治においても公務員においても、あらゆる面で、弁護士だけということではもちろんないわけでございますが。
 すると、もう一つ、その紛争解決の内容、手続、結果についての秘密性が必要だとおっしゃいましたが、これ市場を育てるという意味では秘密性というのは余りない方がいい、透明性の方が求められると、それは柴垣参考人がおっしゃった面でもあるんですけれども。それは、個別のプライバシーに係る分と、このマーケットに提供すべき透明性のある情報、公認会計士も同じような問題がずっと起こってきたわけでございますが、特に、非対称的な立場にある紛争当事者にあって、その模範例となるような、あるいは相場を作るような事例を公開するというのがその四条の中身に入っているかどうか、別途法務省に質問せにゃいかぬとは思っておりますが。
 仲裁センターを主宰されている立場から、その秘密性というのは、まあこういう言い方をしていますので若干抵抗があるとお感じになっておられると思いますが、その点についての再度御意見を。まあ、フィクサー、秘密ならフィクサーというようなイメージがある。フィクサーはどうも、今もう政治でもフィクサーというのは余りはやらなくなっておりますので、司法の場でフィクサーというのは余り、全くそぐわないイメージじゃないかというふうに感じる次第でございます。
○参考人(吉岡桂輔君) 今のプライバシーの問題ですが、これはもちろん事案によりまして、やはり事案によってはどうしてもやっぱりプライバシーの保護を図らなければいけないという面はございます。
 ただ、先生御指摘のように、私ども秘密のままですべてをそのままにしておくということではございませんで、ここはやはりプライバシーを保護しながらも、本日にあります、この統計年報がございますが、その他にも各弁護士会で事例の解決事例集的なものを公表しております。
 それによって、例えばどういう紛争の場合に、例えば慰謝料についてはどの程度取れるのかというようなことについては、当事者のプライバシーが守られる範囲で、例えば仮名にしたり、そういうような形では公表しておりまして、そういう意味では解決機関に頼んだときにどういう解決ができるのかということについては、そこのバランスを図りながら公開していきたいと思っておりますが。
○荒井正吾君 ありがとうございました。
 先ほど秘密性と言われたのを大変真っ正面に受け取ってしまいましたが、今のお言葉でございますと、やはり事例に応じてとか必要な情報を提供するというようなお言葉でございましたので、大変感謝いたしたいと思います。
 柴垣参考人にお伺いしたいと思います。
 いろんなこういう消費者の分野のADRというふうなものを育ててこられたことに大変敬意を表したいと思います。知らないことも多くて感激いたしました。特に裁判で、山本参考人おっしゃった、敷居が高い制度であったと。裁判の敷居というのは余り見たことないんですけれども、目に見えない敷居が非常にあるんじゃないかというふうに思いますが、相談から入って紛争解決に行く、あるいは後ろに裁判所の公権力の仕組みがあるというようなイメージを持っておられまして、特に、被害額が少ない少額紛争の場合の特化されたADR、特色のあるADRという志向がおありになるように思いましたので、大変すばらしいと思います。
 そういう観点から、この法、今回の法律は十分そのような分野のことを意識して作られたのかなと、きめ細かさがもう少し要ったのかなという印象があるんでございますが、この法案は賛成多としながら、いろいろ四つほど要望、あるいは五つ要望されましたが、今回の法律についての貴重な提言だというふうに思いますが、今、他の参考人のお言葉を踏まえて、特に吉岡参考人とちょっとバッティングする面があろうかと思うんですが、法律知識が、法律の素人としてADRをやってきましたという面に大変な自負が表現されているように思ったわけでございますが、吉岡参考人の、弁護士さんというだけではないと思いますが、法律的知識と紛争解決の円滑性というふうについて、もう少しお話をお聞かせ願えたら有り難いと思っております。
○参考人(柴垣雅子君) 私ども、先ほど申しましたように、毎週土日に消費者からの相談を受けているというので、そのためには当然、相談に携わる者は消費者関連の法律について当然勉強しておりますし、それからまた、相談者からいろんな問題、問題点を引き出すための、話術というわけではありませんけれども、手続、ノウハウだとか、そういうふうな勉強もしております。
 そういう点で、言わばこのADRの担い手としては、担い手はできるというふうに自負しているんですけれども、やはり最終的な判断を両当事者で合意をするときに、やっぱり今のところはまだ私たちだけで大丈夫なのかなという危惧があるんですね。それで、先ほど申しましたように、この法律で言う手続実施者には弁護士の方もお願いしているわけなんですけれども、もう少し内部で研さんを積んだり、ADRの経験を踏まえた中でまた検討していきたいというふうに思っております。
○荒井正吾君 ありがとうございました。
○簗瀬進君 民主党の簗瀬進でございます。
 お三人の参考人の大変有意義なお話を聞かせていただきまして、非常に勉強になりました。感謝を申し上げたいと思います。
 さて、先ほど同僚議員の方からニュアンスの違いがあるねというふうな御指摘もありましたけれども、もちろんそういう点もあると思いますけれども、私は、一番最初に山本参考人がおっしゃられた、社会全体で正義の総量を増大をしていくんだと、これが一つの二十一世紀の日本社会の大きな課題であると。この点では恐らく三人の参考人は一致をなさっているだろうと思っております。
 正に、そのADRで様々な関係者が出てくるわけでございますけれども、お互いに対立的に物を見るのではなくて、協調、共同をしながら社会的な正義の総量をいかに上げていくのかと。また、逆から言えば、現在、社会正義の実現ということが、それぞれ、国民の側からとってみると非常に、若干縁遠いものとして感じられている部分もあるので、それをいかに解消していくのかという、そういう共通の問題意識を皆さんお持ちになっているだろうと思うんです。
 ただ、そのアプローチの仕方が若干違う。それは、いわゆる社会の現実、その中で吉岡参考人がおっしゃられた光と影がありますと、その影の部分をどのように解消をして光あふれる社会にしていくのかという、そういう現状認識が様々な施策についての対応というところで違いが出てくるのかなと、私はこのように認識をすべきなんではないのかなと思っておりまして、来年にかけても様々な議論がこのADR法に関して次に起こってくるわけでありますけれども、そのときもやっぱり協調、共同をしながらいかに社会正義の総量を上げていくのかという点で大きな意味での連帯が生まれれば非常にいいんではないのかなと、こういうふうにまず考えてみたいなと思っております。
 そういう観点から質問させていただくんですけれども、まず、いわゆる成果物についての執行力をどう付与するのかということでそれぞれニュアンスの違いがあると思います。山本参考人は、相当に限定した形で濫用のおそれがないという工夫をした上で執行力を付けるべきだと。また、吉岡参考人は、そのように山本さんがおっしゃられたわけでありますけれども、それについてどんなお考えを持たれているのか、失礼いたしました、山本参考人には具体的に、相当に限定した形というのはどのようなものを具体的にお考えになっていらっしゃるのか、それから吉岡さんについてはその執行力全体についての御意見、それから柴垣参考人については、更なる検討というふうな言葉で若干言葉を濁されていたような感じがいたしますけれども、率直な執行力についてのお考え、どうお持ちなのかということをそれぞれ聞かせていただければと思います。
○参考人(山本和彦君) これは検討会でも随分議論になったところでありまして、相当にやはり、時効の中断とかに比べればやはりかなり限定せざるを得ない。執行力というのは、正に債務者が自発的に債務を履行しない場合に強制的に国家権力を行使、直接行使できるということですので、これはやはりその対象を限定せざるを得ないだろうというふうに思っております。まだ私自身は必ずしもそう具体的な案を持っているわけではありませんけれども、例えばその対象となる紛争の範囲でありますとか、特に濫用的なことが起こりやすいような領域を除外するような形にするということですとか、あるいはその紛争の額、やはり非常に大きな額においてそれを認めると濫用が起こりやすいとか、あるいは最終的な結果を作成した手続実施者の資格の問題でありますとか、いろんな角度から限定の方法はあるのではないかというふうに思っているわけですが、この辺りはまだ理論、学説等でも十分煮詰められた議論をされていないところですので、公正証書等あるいはほかの制度等比較しながら今後考えていく必要があるのではないかというふうに思っております。
○参考人(吉岡桂輔君) 確かに調停との対比でいいますと、調停調書の方には執行力があるということになりますと、それはあった方が便利だろうと、私どもの仲裁センターでもそういうふうには考えます。ただし、今回の法案に関しまして、やはり慎重にならざるを得ないということは、やはり濫用の危険ということをやっぱり反面十分考えなきゃいかぬというところで、私は今回の法案に盛り込まれなくて良かったなと実は思っております。
 それで、仲裁センターの経験でいいますと、例えば判決ですと一方的に判決を言い渡すわけですから、相手の履行というのは非常に大きな問題になるわけですね。しかし、仲裁の場合はそこでもう両当事者が確認し合って合意するわけですから、そういう意味では履行のされるケースが非常に高いですね、割合が。両方納得して、やっぱりそこまで納得するからできたということが背景にはございます。ただし、将来の分割払とかそういうことを考えました場合に、私どものやっておりますのは、東京ですと簡易裁判所と協定しまして直ちに即決和解を作るというようなこともやったりしております。それからまた、一遍にもう履行ができる場合は、次回期日にもうお金を持ってきてもらってその場でやるという形で履行の問題を残さないような工夫をしたりしております。
 以上でございます。
○参考人(柴垣雅子君) 私も先ほど執行力のことについては検討していただきたいということでお話ししましたけれども、実は私たちの団体でもどうしたらいいだろうかということでまだ議論が煮詰まっていないんですね。
 ADRというのは本来、両者の合意、当事者間の合意というのが原則ですから、それを執行力という権力行使そのものをすることについては私自身もちょっと疑義があります。ただ、しかも消費者被害というのは少額が多いわけですので、もし一方の当事者が合意を守らなかった場合にそこまで行くのかどうかという点についても、ちょっとまだ議論の余地があるというふうに思っておりますが、やはり両者の合意をやっぱり一方が踏みにじるということは本来あってはならないことですから、そういう点で、本当に限られた、濫用を防ぐという意味での限られたものについては執行力を付けた方がいいんではないかというふうに今のところは考えております。
○簗瀬進君 ありがとうございました。
 次に、吉岡参考人にお尋ねをしたいんですけれども、光と影の影の方のお話で、高利貸しの例を引かれて御説明があったわけでございますけれども、法文の第六条の第四号で、言うならば実質的支配者、あるいは子会社等についての「不当な影響を及ぼすことを排除するための措置が講じられていること。」と、こういうふうな一応の手当てがあるような感じはするんですけれども、これで十分なのか、あるいは更に突っ込んだ、先ほど例えば法曹経験十年というふうな資格の要件等も挙げておったようでございますけれども、こういう不当な影響を排除するための措置として、更に御意見、御提言等があれば聞かせていただければと思います。
○参考人(吉岡桂輔君) 確かに認証制度というものができまして、認証された機関ということになりますと、やはり国民から見ると、これはもう間違いないところだというやっぱり思いをすると思うんですね。ですから、私は、やっぱり認証をきちんと与えるというときにはやはり慎重であってもらいたいなと思ったわけでございます。
 それで、先ほどいろんなことを申し上げたわけですけれども、例えばいろんな団体がいろんなADRを作るということ、それはもちろんいい機関が適正な、適正性が担保されるものがたくさんできることは確かに光の部分でよろしいんですけれども、しかしどこまでそれがきちんとチェックできるのかなというところが、先ほど述べましたとおり認証要件がまだちょっと甘い面があるんじゃないかなと思ったわけでございます。
 それで、弁護士の関与のこと、それから先生おっしゃいました弁護士の方の経験の問題ですね、これも弁護士であればだれでもいいということにもやはりいかないのが実情でございまして、やっぱり特定の団体とつながった弁護士さんがその団体のために動くというようなことはやっぱりあってはならぬなと、こんなふうに思っております。
○簗瀬進君 また引き続き吉岡参考人に御質問させていただきたいと思うんですけれども、第六条の第五号についての解釈がかなり弁護士関与を狭くするおそれもあるよと、こういうふうな御指摘もあったよう思います。
 私も、法令の解釈適用という直接目に見えている部分ではないところで広範に法的なチェックをしなければならないということもたくさんあるだろうかと思っております。そういう意味ではこの第五号の適切な運用というようなものが非常に重要になってくると思うんですけれども、何点かもうかなり細かくお話はいただきましたが、更に付け加えることがあればお聞かせいただければと思います。
○参考人(吉岡桂輔君) 先ほども法令の……
○委員長(渡辺孝男君) 吉岡参考人。
○参考人(吉岡桂輔君) あっ、失礼しました。
 先ほど法令の解釈が確かに狭いんじゃないかと、相当性ということを申し上げました。更に申し上げますと、やはり私たち見て、いてやはり両当事者がどこまで理解してその手続で解決を求めて、またその結果を受け入れるかというところが非常にやはり大事だろうと思うんですね。
 それで、経験的に申し上げまして、やはり単発的にちょっと、例えば電話とかファクスぐらいで相談を受けたぐらいで果たして全体が分かるんだろうかという気持ちは強くしております。ただし、紛争にはいろんなものがございますので、全部が全部ということもまた望み過ぎることかもしれませんけれども、先ほど申し上げましたとおり、ある程度法令の解釈の幅を広げて、そして少なくとも最終段階では当事者の意思をきちんと確認できるような体制は少なくともしていただきたいなと、こういうことでございます。
○簗瀬進君 最後に、山本参考人に御質問させていただければと思うんですけれども、この法案が短期間でできたと、喜ばしいことだと、やっぱりこれも何となく光と影があるような感じがいたしまして、特に影の部分は若干不十分な中身、先ほど執行力の話もございましたけれども、ちょっと若干拙速の嫌いがあったのかなと私は思っております。
 その一つ、これは国際的な部分で、例えば我が国のいわゆる合意されたものが海外でどのような効力を持つのか、逆に、海外でも同種のADR、特にアメリカにはたくさんあると、その海外での効力が我が国に来たらどういうふうに法的効力を持ち得るのかと、こういう一種の渉外規定、これが若干不十分なのかというのが一つ。
 それからもう一つといたしましては、やっぱりこれ、来年に向けての話という形にもなるんですけれども、いわゆる今までの弁護士法七十二条ということで、法曹がかなり持っておった部分を各士業界と様々な調整をしなければならないというふうなことが来年大きな課題として出てくるだろうと思うんです。
 それに持っていくための制度設計として、突然ADR法がぼんと来るということをする前に、例えばそれぞれの法人が横で連携できるような会計原則上の手直しとかあるいは税制上の手直しとか、そういうようなものをしながらそれぞれ連携体制がじわじわと上昇していくような、そういう制度設計が必要であったんではないのかなと。ちょっとそういう意味では、ADR法がぽんと唐突に出てくることによってある意味ではむき出しの調整をしなければならないということになって、そのひずみがいろんなところで出てしまうんではないのかなということを私なんかは非常に心配をいたしております。
 この、今国際の例とそれから国内的な例と二つ挙げさしていただいたんですけれども、それについての御所見を聞かせていただいて、質問は終わりたいと思います。
○参考人(山本和彦君) 委員の御懸念は私も大変よく理解できるところがあります。
 私、短期間でというふうに申し上げましたけれども、確かに従来の学界における理論的な検討、それから実務における試みというものが法律作成に当たるほど十分なものであったかどうかということは確かに疑問のある部分もあります。
 ただ、これ本当に全く新しい試みですので、すべての項目、望ましい項目というのを全部盛り込んで法律にして、完成したものを作るというのはなかなか実際上困難でありますし、また、それが望ましいかといいますと、やはりやってみて、それでその結果を踏まえてまた次の段階に進んでいくという、段階的に整備をし、これは諸外国なんかも、フランスなんかの状況もそうですけれども、段階的に整備をしていかざるを得ない分野なのかなというふうに認識しております。
 御指摘のような問題、国際的な問題、これ非常に難しい確かに問題だと思います。これは国際司法、現在法務省の法制審議会、私も参加していますが、法令の改正というような作業が行われておりますので、そういう合意についてどういうような準拠法に基づいてその正否を判断していくのかというような問題については更に今後やはり議論が必要だと思いますし、御指摘のその国内の問題というのも、これも非常に実際としては難しい問題があるんだろうというふうに承知しておりますけれども、そういう、やはり将来に向けてのまず第一歩であるという観点から、是非これをいい制度にしていっていただきたいというふうに希望したいと思っております。
○簗瀬進君 ありがとうございました。
○浜四津敏子君 本日は、参考人の皆様、大変お忙しい中おいでいただき、また貴重な御意見をいただきまして、大変ありがとうございます。
 公明党の浜四津敏子でございます。
 初めに、山本参考人に御質問させていただきます。
 山本参考人はかなり前からADRの御研究をしておられて、また実際のADRにかかわるお仕事もしてこられたと伺っております。そうしたお立場から、いわゆる今回ADR法が審議されることになったわけですけれども、この審議されるに至ったことについての率直な御感想、御感慨をお伺いできればと思います。
○参考人(山本和彦君) まさしく私自身としては大変、先ほども申し上げました、これほど早く、これほどのものが法案という形になるというのは思っておりませんでした。
 従来の学界の議論の積み重ねというのもそれほど多くはなかったということ、それから実務的にも、私も多少関与しているものありますけれども、従来の試みというのはそれほど活発なものではなかったので、ここでこういうものができたというのはやはり今後に対する大きな弾みということになると思いますし、ただ、やはり理論的に残された課題というのも多々あると思いますので、私自身としても今後更に研究を進めていきたいと、そういうふうに思っております。
○浜四津敏子君 今回の法案では、ADRをADR事業者の申請による国の認証制度としております。その所管は法務大臣ということになっております。つまり、今後、認証されたADRと認証を受けていないADRと両方存在するということになります。認証を受けていないADRも事業ができるということとなっておりますけれども、もっとも認証を受けていなければ法的な効果を受けられないわけですが、こういう両方を認めたということについての評価あるいは御懸念についてはどのようにお考えでしょうか。
○参考人(山本和彦君) この制度は、やはり認証を受けたADRにつきましては一定の法的効果を付与してそれを優遇していこうということ、そういう積極的な面を規定しているわけでありまして、認証を受けていないからといってそれで何らかの不利益な効果というものがもちろん及んではならないものであると。従来どおりの運営ができて、それでこそADRの自由濶達な、それぞれが自らのサービスを競い合っていくということができていくんだろうと思っております。
 ただ、法律の三条の基本理念というものは、これは認証を受けていないADRにも適用があるものでありますので、各ADR機関はこの三条に規定されている、法による紛争解決のための手続として公正かつ適正に実施される、あるいは専門的な知見を反映して紛争の実情に即した迅速な解決を図るということ、これはすべてのADR機関がそれに向けて努力をしていかなければならない、そういう基準を作ったということは私自身は大きな意味があるというふうに思っております。
○浜四津敏子君 先ほど先生のお話では、ADR士の模索を今後していってもいいのではないかという趣旨のお話がありました。
 本法案の六条の二号では、和解の仲介を行うのにふさわしい者を手続実施者として選任できると、こういうふうになっておりますが、この手続実施者として、あるいは先生がお考えになっておられる、将来的にADR士というのを考えるべきだというふうにお考えのようですが、具体的に、例えばどのような専門家の方々をお考えになっておられるのか、御意見があればお聞かせいただきたいと思います。
○参考人(山本和彦君) 必ずしも世界でそういう類例が今のところあるということではないと思いますが、アメリカの一部の州などでは、そういう一定の州からその資格を付与して、その付与を受けた者が行ったADRに一定の効力を結び付けるという制度があるように伺っております。その実情を伺っても、やはりその多くは弁護士の方々が併せてそういうような資格を取っておられるということが一般的なように伺っておりまして、この紛争、和解の仲介を行うのにふさわしいというのは、先ほど申し上げたような話合いを促進する能力と、それからその解決結果についての法的な評価の能力、それからその紛争の各分野についての専門的な知見といったようなことが必要になってくるんだろうと思いますので、やはり法律的な専門家、それは日本においては必ずしも弁護士だけに限らないと思いますが、法律的な専門家をベースにしながら、しかしそういう和解の仲介を専門とするような人が今後出てくるということが望ましいのかなというふうに思っております。
○浜四津敏子君 山本参考人、もう一点お伺いいたします。
 ADRにつきましては、現時点でのニーズもさることながら、将来の発展が強く期待される紛争解決手段ではないかと考えておりますが、そのために国として特にどういうフォローをしていったらいいのか、バックアップをしていったらいいとお考えなのか、御意見をお伺いいたしたいと思います。
○参考人(山本和彦君) 四条に国の責務として規定がされておりますように、まずやはり一つは情報ですね。やはり、利用されていないということの一番大きな理由は、国民がその情報を十分受け取っていないということがあるんではないかというふうに思いますので、そのいろんな手段でADRについての情報、これは教育も含まれると思いますが、今、法教育というようなことも議論されておりますが、そういうような面でも努力をしていただきたいと思いますし、もう一点は、先ほどお話しした担い手、やはりADRの命ですので、この担い手を養成するための様々な努力ということを行っていただきたいと、そういうふうに思っております。
○浜四津敏子君 吉岡参考人にお伺いいたします。
 ADRと裁判というのは共存共栄する側面と競争する側面とがあるというふうに考えておりますが、ADRと裁判の役割分担についてどのようにお考えでしょうか。
○参考人(吉岡桂輔君) 先ほども述べましたとおり、何でもかんでも裁判で解決できない。例えば、近隣の問題であるとか、あるいはやや専門的な問題であるとかというものがありますので、私は両方やはり必要だろうと、こういうふうには思っております。その点ではやはり弁護士の方も、弁護士だけということではなくて、先ほどADR士というお話もございましたけれども、やはり他方面の専門家とやはり弁護士が組んでいくというか、そういうようなものがこれから必要になってくるんではなかろうかと思っております。
 例えば、コンピューターの問題であるとか医療の問題とか、なかなか弁護士だけで手に負えない問題もございます。しかし、そういう問題も、やはり反面、法的な紛争ではあるものでありますので、やはり弁護士とそういう人たちが絡むということが是非とも必要ではなかろうかなと思っておりまして、弁護士会でもそういうことは模索して、また現に実行もしております。
○浜四津敏子君 ADR機関の連携を図るということが第三条に規定されておりますけれども、これは大変重要な課題だと思っておりますが、現実にはなかなか難しい面があると伺っております。この点では、組織的にも能力的にもしっかりしている弁護士会の仲裁センターがリーダーシップを取られることが望ましいと思っておりますけれども、どのように取り組まれるお考えか、伺わせていただきたいと思います。
○参考人(吉岡桂輔君) 現在、東京三弁護士会は、例えば財団法人の東京銀行協会と提携しておりまして、銀行のお客様と銀行とのトラブルについては弁護士会の仲裁センターに付託すると、そして銀行協会はお客様の必要とする申立て手数料、これ一万円なんですが、それと一回目の期日手数料五千円は協会の方が負担しますという制度を始めております。そうしましたところ、その後続々とそういう団体からも提携の申入れがございまして、今解決しているものを幾つか申し上げますと、銀行協会は、例の預金通帳が盗まれて、今は短期間にすぐ判こを偽造できちゃうんですね。それが知らぬ間に下ろされちゃったというのを預金者が銀行に対して、これ裁判するとなかなか準占有者の弁済で難しいんですが、そういうケースが少なくとも東京では数件かかっておりまして、これも見事に解決をしております。
 それから、つい最近、証券投資顧問業協会というところ、これとも提携関係がありまして、これもやはり投資顧問業のクーリングオフの期間を過ぎてしまったものですが、これも扱いまして、かなり満足できるような和解ができた事例がございます。
 ですから、今後とも、こういう各団体と私どもはやはり公正中立な立場で連携していくということが必要かと、こういうふうに思っております。
○浜四津敏子君 同じく吉岡参考人にお伺いいたします。
 先ほどADRの光と影の部分に十分配慮をという明快な御説明をいただきました。日本のADRの問題点として指摘されていることの一つに、裁判所における調停の慣行というものがADRでの紛争解決手続にも強い影響を与えていると。ADRでの紛争解決手続には裁判所における調停の慣行のような、調停の慣行のコピーのような面があると、こういうふうに指摘されているところでございます。
 つまり、裁判所の調停というのは、両当事者の自由な話合いの結果として、和解、合意が形成されるということを手助けするというもの、というよりは、社会における権威者、専門家、権威者によってこれが妥当なんだというふうに考えられた打開策を提示してそれを当事者に受諾させるための説得といった域を脱していないんだと、それが裁判所における調停の慣行の傾向と言えるのではないかという御指摘があります。
 裁判所での調停とはまた違った良さをADRというのは発揮していかなくてはいけないというふうに思っておりますけれども、こうした批判をクリアするために、是正していくためにどういう努力が必要だとお考えでしょうか。
○参考人(吉岡桂輔君) 確かに、調停の係属件数は圧倒的に弁護士会の仲裁センターよりもはるかに多いわけですね。ですから、私たちは民間主導として何とか数も増やしながらやっていきたい。
 一つは、調停よりも優位かなと思われることは、時間的、場所的に、私どもは例えば夜間でもやることができます。それから時間的にも、一回の事案に例えば二時間とか四時間とか、長時間掛けることもできます。やはり、裁判所の調停の方は、やはりどうしても一回一時間以内とかいうことになりましょうし、それから次回期日も、例えば部屋の関係で大分先になるということがありますが、私どもは、例えば次回期日は翌週やりますというようなこともやったりしております。
 そういう形で、やはり依頼される方のニーズに合わせて、私どもは民間の良さをこれからも追求していきたいと、こういうふうに思っております。
○浜四津敏子君 ありがとうございます。
 それでは、柴垣参考人に御質問させていただきます。
 先ほどのお話の中で、ADRになかなか事業者が参加してもらえないことがあると、こういうお話がございました。この事業者をADRに参加させるための方策を考えてもらいたいというお話があったように思いますが、国として、例えばどういう方策を取れば事業者が参加してくれるという、何か具体的な案がおありでしょうか。
○参考人(柴垣雅子君) ADRというのが両当事者の合意という自由なものですから、一方の余り権力的なものについては、やはり私たちもそれにはなじまないというふうに思っております。ですけれども、先ほどちょっと申し上げました韓国の例のような、例えば事業者が参加しないときには公表されるよとか、何かそういう点で、先ほど山本先生はこのADRを市場原理にというようなお話もありましたけれども、そういう情報の公開といいますか、そういう点での何か仕組みがあれば、事業者の方も何かまた違った対応ができるんじゃないかなというふうに考えておりますが。
○浜四津敏子君 ありがとうございました。
 終わります。
○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 今日は三人の参考人の皆さん、本当にありがとうございます。
 最初に山本参考人にお聞きをいたします。
 これによって日本の正義の総量が増えていくというお話がございました。ADRについても司法型、行政型、そして民間型ということが、三つそれぞれに発展をしていくかと思うんですが、その中でそれぞれの言わばすみ分けといいましょうか役割分担というものが大事だと思うんですね。最終的には利用者の選択にゆだねられていくとは思うんですが、どういう役割分担が望ましいのか。例えば、行政型などの場合は、ある程度受付窓口的になって振り分けていくというようなこともあろうかと思うんですが、その辺についてどうお考えか、まずお願いをいたします。
○参考人(山本和彦君) 司法型、行政型、民間型の役割分担というお話で、行政型ADRについて、特に消費生活センターあるいは国民生活センターのようなものがその相談を中核としながら、ADRあるいは訴訟を含めたまず第一次的な受付機関となってそのADRを割り振っていくというような構想というのは十分あり得ることだと思いますし、今般作られる日本司法支援センターもまたそういうような役割を果たしていくということだと思います。
 特に、日本においてはこの司法型、行政型、比較的発展しておりますが、これは要するに国が税金を投入して運営していくわけですので、そこは独自の存在理由というものが説明されなければいけないんだろうというふうに思っておりまして、その行政型ADRであれば、その各行政機関の持っている行政機能との関係でADRを持つということがどういう意味があるのかというような観点などから、慎重に見極めてそれぞれの存在理由というものを考えていく必要があるんだろうというふうに思っております。
○井上哲士君 民間型が発展をしていく上でいろんなことが考えられるかと思うんですが、裁判との関係で、例えばアメリカなどでは受訴裁判所からの回付権限などがあるとお聞きをしておるんですが、そういうことも日本では検討にはなったとお聞きしているが、結果、法案には入りませんでした。その辺の事情とか、それからADRの場合、証拠調べが権限がないということについては、例えば裁判所に依頼をするということなども検討課題かと思うんですが、そういう裁判所との関係というものを今後どう考えていくか、この点もお願いいたします。
○参考人(山本和彦君) 非常に重要な御指摘だと思います。この点は、検討会でも裁判手続との連携の在り方というのは非常に時間を掛けて議論したところだと思います。
 この裁判手続からの回付というのは、これは諸外国において、アメリカのみならず、ドイツあるいはフランス等においてもADR振興の中核的な施策として取られているところなわけですけれども、ただ、日本においては、一つは既に司法型ADRとの連携でいわゆる付調停という制度が存在すると。それに加えて、民間型ADRに回付する必要性ということが問題になりますし、それから当然その当事者は訴えで判決を求めて訴えを提起しているのにADRに回されるということになりますと、これは裁判を受ける権利の問題が出てきますので、その当事者の同意が必要ではないか。しかし、逆に当事者の同意が必要だとすれば、それはどの程度の意味があるのだろうかというような疑問もあったということで、今回は法律の中には取り込まれなかったということだと思います。
 それから、証拠調べの援助につきましては、仲裁については御承知のように既に仲裁法の中に規定があるわけです。それに対して、調停、あっせんというのは最終的に合意によって解決するわけですので、その証拠調べまでやって合意で解決するというのはどうなのかと。そこまで裁判所の協力が必要なものというのは、逆に言えばそういう話合いになじまないものが多いのではないかというような批判もありました。私自身はこれを設けてよいのではないかという意見を申し上げましたけれども、今後の検討課題ということだろうと思います。
○井上哲士君 もう一点、山本参考人にお伺いします。
 先ほど、消費者団体が作ったADRに業界がなかなか来ないというお話がありました。何らかの方策がないだろうかということで柴垣参考人からもあったんですが、山本参考人に何かお考えがあればお聞きをしたいんですが。
○参考人(山本和彦君) この点、これは非常に難しい問題で、柴垣参考人がおっしゃるように、ADRの実効性の成否を左右する問題だと思います。
 業界型ADRの関係においては金融関係のADRでそのモデルルールというのを作りまして、これについては、その業界に所属している企業はそのADRについての応諾義務を負うと、そして正当な理由がないにもかかわらずそのADRに応じなかった場合にはその業者名を公表すると、公表する場合があるというような規律を設けまして、これはその業界団体がやっている、自分たちのところがやっているところだからそういう義務を負わされてもしようがないということが一つあったんだと思いますね。
 それから、先ほど韓国のお話が出ましたが、行政型ADRにおいてはしばしばそういうことをしている、ほかの国にもそういうのは例はあると思います。それは、やはり一種の国家権力の行使としてそういう応諾、これは調停も応諾義務というのは、出てくる義務というのは認められておりますのでそういうことはあり得るんだろうと思いますが、民間型ADRでそこまで強制することができるのかどうかというのは、これはいろいろな副作用とかも考えてみなければならない問題だろうと思いますが、今後の課題であることは間違いないと思います。
○井上哲士君 次に、吉岡参考人にお聞きをします。
 労働分野においてこの民間型のADRを立ち上げていくような果たして必要があるんだろうかという議論があるかと思うんですね。行政型の機関もいろいろ充実をされ、そして労働審判制も作られ、立ち上げの準備がされているという下で、この分野を外したらいいんではないかというような議論もあったかと思うんですが、その点でお考えをお聞きしたいと思います。
○参考人(吉岡桂輔君) 労働分野の事案も実は弁護士会の仲裁センターにもかなりの件数がかかってきております。例えば賃金が払われないとかあるいは退職金が払われない、それから特に退職金の関係ですと、例えば株式会社だといわゆる役員の方で退職して株主総会の決議がない、それでも求めたいというようなときにはなかなか裁判には訴えにくいんですけど、そういうケースが来たりとか、そういうこともあります。ですから、事案によってやはり有効な分野もあろうかと思いますので、一律に労働分野を外すというようなことはちょっと行き過ぎかなという感じはしております。
○井上哲士君 そういう御意見の中には、例えば非常にやっぱり労働紛争の場合に、そういう事案もありますが、多くが解雇とかそういう関係になりますと、いわゆる判例法理の積み重ねがあるじゃないかと、これに外れたような解決がされるんじゃないかと、こういう懸念の声もあるわけですが、これについて、この法律の手当てとの関係ではどのようにお考えでしょうか。
○参考人(吉岡桂輔君) おっしゃるとおりの、失礼しました、おっしゃるとおりのいろんなこれまでの積み重ねられた判例であるとか、そういうものはもちろん外してはいけないと思いますね。ですから、できるADRのやはりその主宰者を含めて、その中身の問題はやはりきちんとしていかなくてはいけないだろうというふうに思います。いやしくもそういう今までの労働者保護の精神が踏みにじられるというようなことがあってはいけないと、こういうふうに思っております。
○井上哲士君 次に、柴垣参考人にお聞きをいたしますが、非常に強弱の力の差があるところについてのいろんな懸念もお話があったわけですが、その点でも非常に説明義務の中身というのが大変大事だと思っています。消費生活の関係でもこの分野でのトラブルが多いわけですが、そういうところの相談を受けるそのADRでその説明義務が十分でないというトラブルもまた起きるということになりかねないと思うんですが、法案の中では一連の手続についての説明ということなだけで、これから中身がいろいろ詰められていくと思うんですが、そういう消費生活、消費相談などにもかかわってきた御経験からいいますと、このADRにおける説明義務の中身については何が必須、ここまでが必要だというのはいかがでしょうか。
○参考人(柴垣雅子君) まだ私たちの団体で検討、この中身についてまでの検討はしていないんですけれども、やはり一番最初に申し出た相談の方が自分の問題を解決する方策をずっと探っていく中で、こういうときにはこういう、今は、最初はこういう状況です、次にそれでこういうふうな状況になったらこういうふうになりますよとかという、その問題を解決する、解決できるまでの手続といいますか、自分が今、自分の状況がどこに置かれているかというようなことをやっぱりきちんと説明できないと、消費者の方にとっては本当に自分の問題が解決できるんだろうかどうなんだろうかというやっぱり危惧があると思うんですね。ですから、その辺の一連の解決に至る道筋、それとその場その場でその方が置かれている状況、それから見通しなどについてはきちんと説明すべきだというふうに思っております。
○井上哲士君 最後、もう一点、山本参考人にお聞きしますが、いろんな論文など読ませていただきますと、このADRの発展のためにADRセンターのようなものを立ち上げるべきだということを何か所かで御提言をされているかと思うんですが、その具体的中身、そしてその必要性など、もう少し詳しくいただければと思います。
○参考人(山本和彦君) 本法律においても、三条二項でADR機関間の連携という、連携協力というものが特に重要になって指摘されているところでありますが、私はやはり従来の日本のADR機関はこの点が余り十分ではなかったのではないかというふうに思っております。
 情報、情報公開というか、広報の面においても、あるいは人材育成の面においても、いろんなところでその各機関がそれぞれやっているのでは非常に無駄も多いし、実効的なことにはならないという部分が非常に多いのではないか。そういったような部分を何かまとめて日本のADR全体が協力してできるようなことができないかというふうに思いまして、そのADRセンターというものを提言した。そういう人材育成とか、あるいは情報開示その他の面において全体で協力していくということが望ましいのではないかということです。
○井上哲士君 終わります。
○委員長(渡辺孝男君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
 参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、大変お忙しいところ貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。当委員会を代表して厚く御礼申し上げます。(拍手)
 午前の審査はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。
   正午休憩
     ─────・─────
   午後一時開会
○委員長(渡辺孝男君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律案の審査のため、本日の委員会に司法制度改革推進本部事務局長山崎潮君及び法務大臣官房司法法制部長寺田逸郎君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(渡辺孝男君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
○委員長(渡辺孝男君) 休憩前に引き続き、裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律案を議題といたします。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○荒井正吾君 自由民主党の荒井正吾でございます。
 法案について質問をさしていただきます。
 法の支配は民主主義に絶対不可欠な大原則だと思われます。また、我が国が取っております自由主義、また多元主義、また市場経済主義においては、法の支配はますます必要不可欠な存在になってきていると思います。
 しかし、法の支配の形態は国によってまちまちでございますし、発展の仕方も違うと思います。法の支配の中核的な役割は当然、司法制度が担うべきであろうかと思いますが、私の印象では、行政がその司法機能をより多く果たしていた。事前規制だとか紛争、行政による紛争予防措置が我が国では非常にポピュラーな裁判外紛争解決手続、言わば駆け込み寺の役割を担ってきた特色があろうと思います。
 一方、司法制度は私はもっと頑張って働いてほしいと従来から思ってきた一人でございます。司法制度の能力、資源に限度がございますので、オーバーフローする紛争は他でやってくださいと、司法はこれだけ、裁判所はこれだけしますからという態度がなきにしもあらずじゃ、ではなかったのかというサプライサイドの原則が比較的司法サービスのマーケットを支配してたんじゃないかなという印象を持つわけでございます。
 しかし、今回、政府から提案された法案は、多様な紛争解決手続を認めて司法制度の枠組みの中に位置付けようとする意味があるように理解いたします。その点を高く評価するものでございます。
 しかし、今回提案された裁判外紛争解決手続は法案を読むだけでは少々分からない点がございます。例えば、既存の司法制度の中で今回の裁判外の紛争解決手続がどのように位置付けられるのか、今回の法案の中で中核となっております手続の民間紛争解決手続の担い手のイメージがはっきり、どのようなものか、また、同手続が実際的で十分機能し、また活用されるものかといった重要な点について、法案上からははっきりしない面がございます。それらについて質問をさしていただきたいと思います。
 まず、本制度の必要性が第一条に書いてあるわけでございますが、その認識、あるいはひいては本法案の作成の動機でございます。
 一条には、内外の社会経済的情勢の変化に伴い、裁判外紛争手続が重要なものとなっているというふうに書かれております。内外の社会経済的情勢の変化というのはどの分野でも使えるような言葉でございまして、全くといって、抽象的で具体的な取っ掛かりを想像できるような言葉がない、このような非常に新しい法案を作る場合の中心的動機を表現する言葉としては少々恥ずかしいんじゃないかというふうに思うわけでございます。
 それで、この際ということでお聞きしたいんですが、ここで言う変化の中で、具体的にどのような変化を認識されておられるのでしょうか。それはまたどのような実証的裏付けをもって判断されているんでしょうか。また、どういう意味で重要だと考えてこのような制度が必要だと考えておられるんでしょうか。その点についてまずお聞きしたいと思います。
○政府参考人(山崎潮君) まず、抽象的な文言だという御指摘で、そのとおりでございまして、恐縮でございますけれども、この中には様々な思いが込められておりまして、これを書き始めますと相当長くなるという性質のものでございますので、私、今、御説明で賄わしていただきたいというふうに思います。
 まず、現在の社会構造の問題でございますけれども、これは政治改革、行政改革等でもいろいろ御指摘があったわけでございますけれども、やはり国の活動、民間の活動は自由にしていこうと、そのためには事前のチェック、こういうものをなるべく少なくしていこうと、そして自由な活動を保障しようと、こういう社会に変わってきているわけでございまして、変わろうとしているのかもしれませんけれども、そういう中で、それじゃ、自由に活動していて、その問題が起こったらどこでチェックをするのかということが当然問題になるわけでございまして、それは透明なルールによって解決をしていこうと、こういう社会を作り上げようということで、透明なルールでチェックをするということは正に司法、最後は司法で決着をしようということでございます。
 そうなりますと、司法の手続が機能しなければならないと、それでないと紛争がたまってしまうと、こういう問題意識でございます。これがそもそもその司法制度改革に向かう大きな動機であるわけでございます。これ以外に、やはり世の中が高度情報化をしておりまして、それに伴う訴訟が増えてくる、あるいは国際化がどんどん進んでおりまして渉外の裁判も多くなる、あるいは国際間の共通ルールで裁判も変えていかなければならないと、いろんな問題が来る、押し寄せてくるわけでございまして、そういうことにきちっと対応しようということでございます。
 そういうことから、今度、司法制度改革というのは進んできたわけでございますけれども、そういう状況の中で、背景を見てまいりますと、例えば訴訟事件もかなり増えております。この十年で増えておりますし、調停事件もかなりの数で増えているということで、紛争はますます多くなってきているというのは現実でございます。
 じゃ、こういうものについてすべて裁判で決着をするということが、これが本当にいいのかどうかという問題も問われるわけでございます。これでいいという方もおられると思います。正にそういう方については裁判で決着をしていただくと、それもある程度そのあんまり費用が掛からないように早く、こうやっていくという、そういうルール作りが必要だということになります。
 もう一方、国民の方々では、裁判ではやりたくないと、もう少し安いコストで早く、それから人に知られずに解決をしたいと、こういう方もおられるわけでございます。正にこのADRは、裁判のように時間を掛けたり金を掛けててはなかなかうまく回らないシステムでございますので、まずそういう特徴を持っている。それから、非公開で行われますので、人に知られずに解決ができると、こういう特徴を持っているわけでございまして、こういうルートを選ぶ方もかなりおられるわけでございます。
 したがいまして、紛争をいろんな手段で解決していけるように、ニーズに合うようにその構築をしていこうと。特にこのADRの関係は先ほど御指摘ございました行政型が非常に先行しておりまして、民間型が弱いという状況でございますけれども、こういう社会の動向を見た場合に、行政型のものだけではチェックし切れないという動向にございますので、民間型を育てると、これから育てていこうと、こういう思いで作り上げたということでございます。
○荒井正吾君 山崎本部長のおっしゃるようには理解いたしますが、その今までの司法制度改革は本当に立派なものであったと私は思っております。司法サービスが期待にこたえるように反応する、市場経済体制下において多様化する民事上の紛争を迅速、公平に処理するという司法の機能はますます重要になっている、またグローバリゼーション、国際的基準との調和という課題も現れてきております。
 山崎本部長がされてきた司法制度、これまでの司法制度改革に比べて本制度はややシャビーな印象があるように思ったものですから、書きぶりその他制度の骨組みが、最初の質問になったわけでございますが、司法制度の中核となる裁判所の機能の改革から裁判外の制度の改革へ足を伸ばされたという点については評価をさせていただきたいと思います。
 しかし、そのような社会の情勢の中で、国家の最重要のインフラストラクチャーであるべき裁判所の機能が、やはりある面自負心が強かったり、サービス精神が余りなかったり、世間のきめ細かい要求や期待にこたえるのに不十分であったという反省もあるように思われるわけでございますが、それがこの法案の文言に十分に表されてないんじゃないかという面がもう一つございます。
 例えば、この裁判外紛争解決手続の必要性を記述した中で、第三者の専門的知見を反映し、紛争の実情に即した迅速な解決を図る手続として重要なものになっているというふうに書かれておりますが、これは裁判外紛争手続に特例のメルクマールというわけではなく、司法制度一般がこのような機能を発揮すべきものじゃないかと思うわけでございます。
 既存の訴訟手続が市場のいろんな要求に、複雑なものに対応する、当事者の知見とか能力が非対称で偏っている、迅速性が要する、国際的基準との調和を要するという市場のニッチの部分に対して、でんと構えた裁判所機能が十分じゃなかったという反省に立ってこのような裁判外紛争解決手続が導入された面もあろうかと思うんですが、そういう認識は裁判所の提供する司法制度改革、司法制度を改善する、改革するという方向に市場の声は十分反映されてきたんでしょうか、あるいはこれから更に反映されるおつもりなんでしょうか。
○政府参考人(山崎潮君) ただいま委員御指摘のとおり、専門的な知見を反映して紛争の実情に即した迅速な解決を図るという点は、これは裁判にも求められる理念でございます。
 私どもは、この司法制度改革、まず裁判機能、これをどうやって充実させるかということを中心に確かにやってまいりました。この観点からは、もうおととしになりますか、法務省から提出していただきましたけれども、民事訴訟法の改正で専門委員制度を導入しているわけでございまして、これも施行されているかと思いますけれども、この点は正に専門的知見を裁判のルールの中に入れて、それでその知恵をかりながら早く解決をしていくと、こういうことを目指したわけでございます。
 したがいまして、この司法制度改革としてそういう専門的な知識を中に入れるということも裁判の制度でも導入をしたと。しかし、裁判だけで解決をしたいという、裁判で解決をしたいという人だけではございませんので、それは裁判以外でその解決をしたいという方もおられますので、そこにもやはり専門的な知見を導入をして迅速に解決をしていくと、両面が必要だということからこのような制度を設けたということでございます。
○荒井正吾君 今次の法案で裁判と並ぶ紛争解決手続を提案しようという意図は理解させていただくところでございます。しかし一方、本法では実態的には認証紛争解決手続のみを規定されているように思います。
 魅力ある裁判外紛争解決手続として今回準備された民間紛争解決手続以外の違った種類の魅力的な手続が将来出現することが予想されるかもしれませんし、それはある面司法の市場化という流れの中で望ましいことではないかというふうに考えます。司法制度に民間活力を導入するという司法機能の市場化を促進するためには、今回の手続以外の手続の育成のために、言わば市場、司法サービスの市場が多様な要求に対応できるような市場の育成の措置がある面必要じゃないかというふうに思います。
 今回の施行の実績を今後よく分析して、一般国民の理解の増進、必要な人材の訓練、教育、司法サービスの提供主体への参入を規制緩和する、あるいは民間活力導入のための環境整備といったような面が公的な機能として充実すべきではないかというふうにも考えられるところでございますが、その面についての司法制度改革本部長の御意見を賜りたいと思います。
○政府参考人(山崎潮君) まず、行政型のADRあるいは認証を受けていない民間型のADRについて、整備等につきまして、今回の法案ではそれは基本理念の中に含まれてその中で対象にはしておりますけれども、最終的に、この法制度につきましてはその認証制度は民間型のものだけに限ると、そういう政策を取っているわけでございます。
 こういう民間型のADRにつきましては、国もこれをいろいろ育てていく、いろいろそういう責務があるという基本理念等を定めているわけでございまして、こういうことで、やはり国の方としても様々なお手伝いをしながら、民間のADRが育つように努力をしていくということの責務があるということでございまして、そういう面でも今後育てるように努力をしていかなければならない、こういうふうに思っているわけでございます。
○荒井正吾君 育てようという気持ちは理解しますが、育てようという内容の準備がまだ十分用意されてないようには思うものでございます。
 さらに、今触れられました三条の基本理念の表現については、そういう意気込みと比べて表現ぶりに不満が少々ございます。三条の表現ぶりは、一般的に裁判外紛争解決手続に当然期待される役割を述べた程度の印象を持っております。また、法一条の目的に書いてあるのと重複しているようでもございます。内外の社会経済情勢の変化を十分認識されて、期待される裁判外紛争解決手続の司法制度全体の中での基本理念、位置付けとしては不十分な面があるんじゃないかという印象を持つ次第でございます。
 また、本法の実質的な内容は認証紛争解決手続のみであるように思いますので、ちょっと皮肉っぽい言い方かもしれませんが、裁判外紛争解決手続という本法の題じゃなしに、認証紛争解決手続法というような題でも実態的にはよかったんじゃないかという、思わざるを得ない面もございます。
 今後、裁判外紛争解決手続を重要だから育てていくと、その利用の促進をする法律だということであれば、三条の基本理念の中には、訴訟手続と比べた裁判外紛争解決手続はどのようなものに位置付けるのか、訴訟手続と異なった紛争解決手続を導入する動機は具体的にこれを国民にどのように示すのか、既存の訴訟制度との役割分担など本法の題名にふさわしい基本理念、基本概念をもう少し記述される方が山崎司法改革として望ましいんじゃないかというふうに考えた次第でございますが、いかがでございましょうか。
○政府参考人(山崎潮君) 確かに、基本理念、三条で言葉が足りないという御指摘でございますけれども、それは私もそういうふうにお言葉は受けたいというふうに思いますけれども、この点については、その位置付け等は先ほど私、申し上げたとおりでございまして、この、ここの法律の面からいくと、やはり訴訟に係ることについてもこの基本の理念の中に入れるというのは法律の性格上ちょっといかないということでございまして、それはアプリオリにもうあるという前提で、その上でこのADRについてはどういう理念でやっていくのかと、どういう責務を負うのかということでございます。先生、そこは御理解を賜りたいというふうに思います。
 それからもう一点、これはADR、認証型のADR法ではないかという御指摘でございますけれども、この構造は、総論のところにつきましては、総則につきましては、これはすべてのADRに係る基本理念でございまして、これは行政型、裁判所型も含め、民間型も含めたすべてのADRに対する基本理念でございます。それから、かつ認証型のADRはあっせん、調停、和解を行うわけでございますけれども、この総論の中には広い意味のADR、言わば仲裁でございますけれども、これも含めた理念としてできておりまして、言わば総論がすべてのADRを含むもの、それから各論の方がその認証型ADR、民間型、こういうものを定めるものという、そういう役割分担で行っているわけでございますので、そこのところがちょっと分かりにくいといえば分かりにくいかもしれませんけれども、そういう趣旨であるということを御理解賜りたいと思います。
○荒井正吾君 手続の内容についてもう少し伺いたいと思います。
 まず、主体でございますが、第一条で公正な第三者の関与ということでございますが、紛争の一方の当事者の属する業界が設立した既存のADR機関と呼ばれるようなものもございますが、そのようなものは裁判外紛争解決手続として業界のためになりがちだと、公正な第三者の関与と言えなくなるというようなことも今朝の参考人質疑でも出ておりました。このようなもの、このような業界団体のものを既存のADR機関として、資料に拝見したようなものも裁判外紛争解決手続として認証される可能性が十分あると考えていいんでございましょうか。
○政府参考人(山崎潮君) 今御指摘のような業界団体が行う手続についてでございますけれども、これは公正な第三者が関与してその紛争の解決を図る手続であるというその限りにおいてはADR手続に該当するものでございまして、それを排除するものではないということになります。いわゆる、業界団体等がADRを行うについても業務の適正性が確保されることが前提でございます。そこをクリアする以上はオーケーでありまして、その専門的な知見を活用して適正かつ迅速な解決が図られれば、紛争の減少を通じて業界を含めた社会の健全な発展に資する面があるということでございますので、あえてそれを除外するわけではないということでございます。
○荒井正吾君 認証紛争解決手続を業として認知する一種の業法の性格は本法持っているように思います。業として行うというのは、ほかの事業法、この世の中たくさんありますが、そのメルクマールはどういうことでございましょうか。反復継続、有償性というのがよくあるメルクマールでございますが、株式会社でありますとかNPO、個人、政治家などは認証を受けることができるんでしょうか。
 また、この認証という言葉でございますので、免許制ではなくて、非営業の業の活動は禁止されていないと考えられますが、タクシーの青ナンバー、白ナンバーの区別がなくて、非認証でも市場で同様の活動ができると。そうすれば、市場で認証事業者と非認証事業者が混在して、それが複雑で十分認識されないというおそれもあるようにも思うわけでございますが、この点についてはどういうお考えでございましょうか。
○政府参考人(山崎潮君) この業としてという意味でございますけれども、反復的に、あるいは反復継続の意思を持って民間紛争解決手続を行うということで、それが業務性を帯びているという状態を言うわけでございまして、有償であるか否かは問わないということでございまして、無償でも構わないということでございます。
 それから、業務として行う者について、原則的にその主体の限定はございませんので、御指摘がございましたような株式会社とかあるいはNPO法人だとか、そういうものの、それから政党をおっしゃられたと思いますけれども、政党でも可能は可能でございます。ですから、そういう意味の限定はないということでございます。
 それから、先ほど認証型と非認証型のものが二つ混在するという点でございますけれども、この点については、認証を受けていないものは現在もあるわけでございまして、その認識が余り知られていないという点はあるかもしれませんけれども、社会的存在であるということはもうお分かりだと思います。
 それから、今度、認証型のものについては、これについてはきちっと、認証を受けたものであるかどうかという表示をきちっとするということと、業務内容等、こういうものについての情報公開をきちっと行う、あるいは法務省、法務大臣としてもそういうものを行っていくということで、情報の提供を通じて一般に知ってもらえるような、そういう状況を作り上げていきたいということでやっていきたいというふうに思っておりますので、そこで混乱はないだろうというふうに考えております。
○荒井正吾君 民間紛争解決手続の業務は、認証を受けた場合、非弁護士でも行うことができるというふうに解されているようでございますが、そうすれば、この認証制度は弁護士法第七十二条の禁止の適用外ということをある程度はっきりさせるという意味があろうかと思いますが、これは、このように民間活力を導入するという法の目的からすれば必要な措置というふうに理解させていただきたいと思いますが、一方、弁護士法第七十二条は、その表現の仕方からすれば、一般の法律事件に関する法律事務の取扱いはおよそ弁護士しかできないというふうに表現上読めるわけでございます。その厳格な解釈が、社会情勢の変化に司法制度が十分対応できなかった一因であるとか、日本のADRが発展しなかった一つの原因になったという意見も聞かれるところでございますが、法務省の御見解としてどのようなものでございましょうか。
○政府参考人(山崎潮君) 今、法務省の御指示がございましたけれども、私の方でよろしゅうございますか。
 ただいまの弁護士法七十二条の点でございますけれども、確かに、今委員が言われましたような意見があるということも一つの事実だろうというふうに私どもも理解をしております。ただ、やはりこれは、最終的には影響を受けるのは国民、一般の国民でございますので、そういう観点からいけば、やはり国民に被害を与えないという意味では、やはり弁護士法七十二条、これが必要であると、両方の側面を持っているだろうというふうに思っております。
 この点につきましては様々意見はございますけれども、私どもは、専門的な知見を活用しながら、国民が迅速で早い、迅速な早い解決が可能になると、こういうこと、これを求めているということから、弁護士以外の方でもこのADRの主宰を原則的に可能にするような、そういうような制度を設けたということでございますが、これは随所に、その例外でありましても慎重に扱うべきであるということから様々な手当てをしていると、こういうことでございます。
○荒井正吾君 本法の認証紛争解決手続が弁護士法第七十二条の適用除外、具体的には、他の法律で別段の定めがある場合ということに該当するというふうに解釈していいんでしょうか。もしそうならば、本法にそのことを明示的に書く必要はないでしょうか。
○政府参考人(山崎潮君) 確かに今御指摘のとおり、弁護士法七十二条はこの法律とそれから他の法律で別段の定めがあれば別であると、こういうふうに規定していると思いますけれども、そういう意味では、今回のこのADR法案についてはその例外を幾つか定めております。ただ、そのことは弁護士法七十二条の、弁護士法七十二条にかかわらずと、そういう文言は置いていないということは間違いございません。ただ、これはほかの法令を見ても、実質的に例外を定めながらそれを書いていないというものも多々ございます。
 一つは、この法案で書かなかった理由でございますけれども、弁護士法の七十二条の例外が何か所にかわたって出てくるわけでございまして、例えばその弁護士法、弁護士でない者が手続者となることを許容するとかあるいは報酬を受けてもいいとか、様々なところに実質的な例外が出てくるわけでございまして、それに一々すべての点についてそれを弁護士法七十二条にかかわらずというふうに記載するのが適当ではないと、全体としてそういう位置付けになるということからあえて明記はしていないというふうに御理解を賜りたいと思います。
○荒井正吾君 また弁護士法第七十二条のことで恐縮ですが、その範囲については、法の表現する範囲は非常に広くてその範囲が具体的にどこまでかという判例もほとんどないということで、違法となる非弁行為の範囲は実際上不明確だという声が聞かれるところでございます。そのために、裁判外紛争解決手続の体系化あるいは国際的基準との調和ができず、ひいてはADRの発展を必要以上に後らせることにはなってこなかったのかという声が、先ほどの質問と同種でございますが、そういう声もございます。もし、そういうこと、さっきは厳格性ということで質問いたしました、今度、範囲の不明確性というグレーゾーンがあるということであれば、弁護士法七十二条に言う非弁行為の範囲を明確にする何らかの努力をしていかないと透明性のある司法制度の確立に資さないんじゃないかという意見もあると思いますが、その点についていかがでございましょうか。
○政府参考人(寺田逸郎君) 先ほども司法制度改革推進本部の方から御説明申し上げましたとおり、この弁護士法七十二条は、政府としては非常に重要な規定であるというふうに理解しておりますが、他方、委員も御指摘が今ありましたとおり、経済的、社会的に非常に複雑な世の中になっているということも背景にあると思いますが、なかなか限界を画すのが難しい事例が出てきておりまして、予測可能性というのを確保する、これが非常に重要な課題になっていると、このように認識はしているところでございます。
 この司法制度改革の中におきましても、昨年の弁護士法の改正において、それまで弁護士法七十二条の例外が弁護士法自体に定められる範囲に限られるのか、あるいはその他のものも弁護士法七十二条の例外として解されるかという疑問があったのに対して、先ほど事務局長も御説明したとおり、ただし書を改正してその他の法律でも例外を定めるということにした措置というのもその一つの例ではありまして、それの枠内に属する者として司法書士、弁理士等に対する訴訟代理権の付与でございますとかあるいはサービサー制度の発足でございますとか、この法案の認証紛争事業者に対する措置、こういうものも例外として位置付けられるように明確に意識されるようになったわけでございます。
 しかし、なお様々な面で不明確な点がございますので、これも司法制度改革の枠内でございますが、この七十二条の中で特に難しい報酬を得る目的という要件と法律事件という要件について解釈指針を示すということで、司法制度改革推進本部に置かれております法曹制度検討会において法務省の側からその解釈を御説明申し上げて、これを公にするという措置を取ったところでございます。
 今後とも、いろいろなやり方があろうかと思いますけれども、それぞれの問題の性質に沿いまして、適当な方法で予測可能性をできるだけ高める方向で検討してまいりたいというふうに考えております。
○荒井正吾君 裁判外紛争解決手続は本法の第一条において、専門家的な知見を反映して紛争の実情に即した迅速な解決を図る手続として重要というふうにされておりますので、紛争の実情に即した専門的知見を有する弁護士以外の者にも裁判外紛争解決手続の参加を認める一方、法第六条第五号において、「法令の解釈適用に関し専門的知識を必要とするときに、弁護士の助言を受けることができる」とされ、特定分野の専門的知見と法令の専門的知識を統合した司法サービス、ハイブリッドな司法サービスを提供する考えであるように見受けられます。
 魅力ある新しい司法サービスを提供するという本法の趣旨に照らせば、紛争解決手続の主宰者だけでなく、紛争当事者の代理人にも特定分野の専門的知見を有すると社会的に認められた人々、例えば社会保険労務士、土地家屋調査士、行政書士、税理士、司法書士、弁理士、不動産鑑定士など隣接法律専門職種と言われる人たちへの代理権付与をすべきとする意見を聞くところでございますが、それについての考え方を聞かせていただきたいと思います。
○政府参考人(山崎潮君) ただいま委員から御指摘のとおり、このADRについては専門性をどうやってこの中に加えていくかという側面で、ADRを主宰する側とそれから代理する側、この双方に専門性を加えていくと、こういう側面があるということ、正に御指摘のとおりでございました。この両方がある程度相まって国民に利用しやすいものになっていくと、こういう位置付けだろうと思います。
 今回の法律案につきましては、このADRの主宰の側についてお願いをしているわけでございます。それが盛り込まれているということでございまして、代理の点については何も盛り込まれておりません。この代理の点については、何も盛り込まれなければ原則として弁護士が行うということになるわけでございます。もちろん、ほかの業種の方で認められているものは別としてですね、そういうような考えになります。
 私どもの方の検討会におきましても分けましたけれども、この後半の代理の点についても検討をしておりまして、現在、先週ですか、顧問会議でも一応の方向を示したと、お示しして御了解を得たということでございます。ここで言われている基本的な考え方でございますけれども、やはり当事者の権利義務を直接に処分するという代理の業務の性格、これを踏まえますと、代理業務を行う者についてはやはり相当高度な法律的能力が必要となるということが基本になるわけでございます。
 そこで、これを付与をするについては、そのADRの代理権を付与する社会的まず要望があるかどうか、要請があるかどうかということ、それからその代理業務を適切に行うために必要な法律的な能力あるいは倫理規律があるかどうか、こういうような観点から職種ごとに個別に検討をしているということでございまして、もう間もなく、この本部がある間にきちっとした方針は立てたいというふうに思っております。
○荒井正吾君 紛争解決手続の内容について少し伺いたいと思います。
 訴訟手続による紛争解決は、その手続が適正に定められ適切に実施されるがゆえに信頼が従来寄せられておりました。民間紛争解決手続においても、弾力的、迅速な手続が要請される、要求されるとともに、公正な公平な手続が適正に実施されている必要があろうかと思います。
 本法における手続の業務は事業者ごとの認証の対象とされ、その基準が定められております。認証紛争解決事業者がその認証紛争解決手続を認証後も適正に遂行することを担保する措置が十分かどうか、お聞きしたいと思います。
 本法におきましては、例えば、業務の認証基準が何々について定めていること、何々手続について定めていること等となっておりまして、定めている内容の程度については直接記載されておらないように読める印象がございます。内規のようなものでもその基準の判断のメルクマールを作成するとか、あるいは標準的な、あるいはモデルとなるような基準の定め方を提示する必要はないのでしょうか。
 また、認証民間紛争解決事業者が認証紛争解決手続に沿った事務を行わなかった場合の担保措置が二十二条の勧告、あるいは二十三条の認証取消しに定められておりますが、普通の業法にありますような認証の一時的な停止、あるいは基準に反する行為をしたときに重大なものとか累犯に及ぶものについて罰則を掛けるとかといった、その認証された基準が適正に認証後も実施されるという担保を準備する必要はないのでしょうか。
 二点、お聞きいたします。
○政府参考人(寺田逸郎君) まず、モデルについての御質問がございましたので、これは実施上の問題でございますので私の方からお答えをさせていただきます。
 法務省といたしましては、行政手続法という基本法がございますので、この行政手続法に従いまして、認証基準がここに示されておりますが、それらの要件について法解釈が当然あるわけでございます。それを前提といたしまして、これを明らかにした何らかの審査基準というようなものを定めるという考えでおります。
 具体的にどのようにするかというのは、それぞれの要件についてなかなか難しい問題がございますので、今後いろいろな方面からまた御意見を伺いながら慎重に検討してまいりたいと、このように考えております。
○政府参考人(山崎潮君) 後段の点についてお答えを申し上げます。
 まず、この法律案では、認証紛争解決事業者がその業務を適正に行わなかった場合には、具体的な事情にもよるわけですけれども、措置の勧告、命令、あるいはその命令に違反した場合には過料の対象になるとか、それからその認証の取消しの原因にもなると、こういう定めをしております。もっと悪質なものについては、当然認証の取消しを必要的に行うとか、刑事罰も用意しているわけでございます。
 ただいま御質問の点で、例えば業務停止等のそういうような措置を取っていないのはどういうことかということでございますけれども、これはやはり個々のADRの特殊性によるわけでございまして、民間ADRの業務自体は認証を受けなくても行うことができるというそういう制度、二つの制度にしているわけでございますので、したがいまして、認証の方で問題があったという形でありましても、その業務自体は、じゃ認証を受けないような形の業務ということをこれは禁止しているわけではございませんので、そこで停止というのはなかなか難しいということでございまして、そういう場合には最終的には取消しをして認証の対象から外すと、こういうことを考えたわけでございます。
○荒井正吾君 実際上の担保、実情に合うかどうかという点がこれから問われると思いますが、今のこの法体系で十分担保されたら杞憂に終わってしまうということだと思いますが、その点、実効について行政サイドをよく監視していただきたいというふうに思います。
 次の質問でございますが、本法の手続は民間事業者による個別の紛争解決手続と位置付けられておりますので、結果や手続の内容は公表を前提としない、公表を前提としていないということでございます。
 しかし、司法制度を民間活力を導入して市場化するということでございますと、それぞれの認証事業者の業務の優劣に対する市場の評価というのはとても重要な機能だと思います。それが十分、秘密の、秘密性がある内容でございますと、十分行われないんじゃないかと。司法制度の中で、中で魅力ある紛争解決手続の選択肢として発展されるためには市場の評価システムの整備は重要なことであろうと考えます。どのように措置されるのでしょうか。第四条の国の責務の中でいろいろ書かれておりますが、このようなことが四条でカバーされるのでしょうか。
 あるいは、更に具体的に御質問いたしますと、個別事業者についての苦情があった場合、一定の手続を経て公表するというようなことが考えられるのでしょうか。あるいは、さらには、認証紛争解決手続に関する認証紛争解決手続のような苦情処理・紛争解決手続が準備しておく必要があるのではないでしょうか。
 あるいは、手続の内容ではないかもしれませんが、午前中の参考人質疑では、業界団体と消費者のような非対称の当事者の場合、業界団体がADRに参加しないというので紛争解決の手続が進まない、そのような場合は業界団体が参加されないということを公表してもらえないだろうか、テーブルに着くということを促進してもらえないだろうかというような話がございました。このような市場が成熟のための情報提供の体系整備というものについて、どのようにお考えになっておるでしょうか。
○政府参考人(山崎潮君) 確かに、これからADRを発展させていくためには、一定の情報をきちっと国民に伝えなければならないということでございます。したがいまして、この法律の中でも、認証紛争解決事業者にその一定の情報を開示するようにということも求めておりますけれども、それ以外に法務省として一定の情報を開示をするという、こういうシステムを作っております。
 これにつきまして、確かに個々の事件につきましてはプライバシーがいろいろございます。そういう点は配慮しながら、その辺を抽象化しながらいって、どんなような種類の事件が多いのか、あるいはその解決率はどの程度なのかとか、そういうような情報はきちっと公表をしていくと、こういうシステムにせざるを得ないだろうというふうに考えております。
 また、その苦情処理についても、それぞれの機関の事業者のところでもそういう制度を持ってほしいというふうに思いますけれども、やはり国の方としてもそういう苦情を受けてどういうふうに処理をしていくかと、こういうことも必要になってくるだろうということで、また運用上の工夫をしていかざるを得ないだろうというふうに思っております。
 それからもう一点の御質問は、今後、先ほど参考人の方で、テーブルに着かないということでお困りになっていると確かに御指摘がございましたけれども、これまあ、ある意味では制度として自主的に話合いをして解決をしていくということでございますので、そのテーブルに着かないということで、その着かない業者がどういう業者かということを公表するというのは、なかなかちょっとそこは微妙な問題もございまして、検討課題であるというふうには思いますけれども、それはちょっと直接やるわけにいくかどうかということは難しいかなというふうに感じております。
○荒井正吾君 統計資料は、私は国家権力の最大の武器だというふうに考えております。適正な情報は市場機能のビタミン剤であろうかと思います。なければ市場が機能しないというふうに本当に思っております。この司法サービスという、これが市場化する中では、情報が適正に必要な人に行き渡るというのは、当事者以外にも行き渡るというのはとても大事なように思いますので、その点について特段の御配慮を心からお願い申し上げたいと思います。
 次の質問に行きます。本制度を利用した場合の、利用促進がどのように図られるかという観点でございますが、本制度を利用した場合の特例として、時効の中断、訴訟手続の中止、調停の前置等の特例が定められております。訴訟手続と一体となった補完的紛争解決手続としての利用促進の特例であろうかと思います。このような特例だけで本法の利用、本法の制度の利用促進が十分かどうかという点でございます。
 本法の手続による和解が成立した場合、その効果が円滑迅速に実現されるための裁判機能の活用、例えば執行力を一定の条件の下に付与するということや、先ほどの質問とも関係しますが、和解の内容や、内容に応じて掛かった時間、費用などについて調査分析をして、標準的なもの、相場になるようなものについて情報提供をするとか、また、午前中の参考人質疑にも提言されました、財政支援を一定の方にする、法律扶助制度の適用対象にするなど、本法の手続について国民の理解が増進され、利用が促進されるような措置をもっと講じないとこの制度が利用されないんじゃないかという心配も一部にあろうかと思います。本法に用意された特例以外の措置についてのお考えを聞かせてください。
○政府参考人(山崎潮君) 先ほど参考人の方々からも御意見ございました。今回は、基本的なものについて合意が得られるものについて法案化をしたということでございまして、例えば執行力の問題につきましては、私どもの事務局に置かれております検討会でも最後の最後まで意見が分かれたわけでございます。
 いろいろ御意見がございましたけれども、最終的にはやはり濫用のおそれ、現在の状況ではまだでき上がっていないわけでございますので、今後でき上がってきたものがどんな形になっていくのかと、そういうことを見ないと、やっぱり濫用のおそれがあるじゃないかというようなこと、それから、非常に自主的な雰囲気とそぐわないというような考え方、そういう様々な意見がございました。
 それから、あるいは執行力を持つことになればコストが高くなりますから、どうしてもそれをやるところとやらないところが出てくるということになると差別につながっていくのではないかと、様々な御意見がございまして、やはりこの問題は、もう少し運用を続けて、その中で本当に大丈夫なのかどうかと、それからどういう点に気を付ければ問題が起こりにくいのかと、そういうことをもう少し検証をした上でやっていかざるを得ない問題だろうということで今回は盛り込むことはしなかったということでございます。
 そのほかもいろいろ検討事項は、これは初めての世界でございますので多々ございます。その点につきましては、この附則で五年後に必要があれば見直すということの規定をわざわざ置いておりますので、その中で、五年間やった実務の中で出てきた問題について本当に必要なものはまた改正を加えて順次いいものにしてまいりたいと、そういう検討課題であるというふうに認識をしているわけでございます。
○荒井正吾君 仲裁制度のように立法を百年も見直さないというようなことが本制度にないように希望させていただきたいと思います。
 最後に大臣にお伺いしたいと思います。
 司法制度に対する社会のニーズ、国民の期待が変化、増大する中で、司法制度改革を推進してこられました法務省に大いに敬意を表するところでございます。
 また、大臣は、これまで社会の弱者、社会の標準的な扱いに適さない人々にも温かい心で法の整備を進め、辛抱強く目立たない努力をされてきたことを私はそばで拝見してよく存じ上げております。
 今回提案のありました法案も、国民が利用しやすい、より信頼される多様な司法サービスを提供されようとする意図は十分理解いたしました。しかし、新しい制度でありますし、代替的紛争解決という考え方自体が国民になじみがないのが実情であります。
 ここまでの質疑を聞いていただいて、人を優しく扱う、一人一人の個性を尊重するといった私が存じ上げております大臣のこれまでの政治姿勢から見て、大臣の本制度に対する考え方、今後、本制度のみならず広い意味での代替紛争解決手続を発展させるために法務省がなすべきこと、司法制度が変化する環境の中で本制度が今後果たすべき役割とその方向性などについて、基本的なお考え、決意などを聞かせていただいて、質問を終わりたいと思います。
○国務大臣(南野知惠子君) 先生、どうもいろいろと御審議ありがとうございました。
 司法制度改革の柱の一つは、国民の期待にこたえる、より利用しやすい司法を実現していくということにあろうかと思います。そのためには、司法の中核である裁判機能の充実に加えまして、ADRにつきましてもその機能の充実を図る必要がございます。これによりまして、国民が多様な紛争解決方法の中から紛争の解決を図るのにふさわしい手段を選択しやすい社会になるものと、そのように考えております。
 司法制度改革につきましては、新しい社会にふさわしい、国民に身近で速くて頼りがいのある司法を作るために重要であると認識いたしております。
 今後とも、国民の皆様の期待にこたえられる司法制度の構築に努めてまいりたいと考えております。
 ありがとうございました。
○前川清成君 民主党・新緑風会の前川清成でございます。
 ADR法案について、大臣始め皆さん方にお尋ねをいたします。
 まず冒頭、私も、荒井議員の質問を聞いておりまして、大臣の出番が少ないなと、こういうふうな感想を持っております。そこで、荒井議員が冒頭、法の支配が私たちのこの国の民主主義や多元主義にとって不可欠なものなんだというような御発言がありました。私も同様に感じております。
 そこで、大臣にこの法の支配についてどのような御認識をお持ちなのかお尋ねしてみたいと思います。
○国務大臣(南野知惠子君) 法の支配と申されるのであれば、法律というのは、我々の生活上それは一番大切な問題でございますので、我々はそれを忠実に守っていきながら生活していくというところにあるのかなと思っております。
○前川清成君 私は、法の支配というのは、ただ単に現在の法律を守るというだけじゃなくて、もっとその奥にある法の精神そのものを大切にする、こういうことが法の支配ではないかなと考えております。また機会がありましたら、大臣とこの点について議論をさせていただきたいと思います。
 それで、荒井議員の質問に対して山崎さんの方から、私たちのこの社会は事前抑制型の社会から事後チェック型の社会に移行しているんだ、そのために今司法改革が必要なんだというような説明がありました。
 そこで、山崎さんにお伺いしたいんですが、なぜ私たちの社会は今事前抑制型の社会から事後チェック型の社会へ向かっているのか、また向かわなければならないのか、この辺の理念というか哲学みたいなところをお伺いしたいと思います。
○政府参考人(山崎潮君) この点は、私が語るのか、政治家の方に語っていただいたのがいいのかという問題がございますけれども、まず、国民はいろいろ人権、いろんな権利を持って自由に活動すべきであるわけでございまして、その活動をきちっとできるような体制にするのが正に国の仕事であるわけで、国会の仕事でもあるかと思います。
 そういう観点から、本来的には国民は自由に活動して、ルールの中で自由に活動して、様々な行動をするということになろうかと思います。ただ、日本の社会は戦後必ずしもそうは動いてなかった面もあるという反省がございます。すべて事前規制をして護送船団に乗っていればそれで無事に過ごせたと、そういうような時代もあったわけでございまして、そういう時代には正にみんなそのルールで動いてきたわけでございます。しかしながら、経済的ないろいろな問題もあったわけでございますけれども、そういうルールではもう動かないという社会に変わってきているわけでございまして、やはり元の姿に戻そうと、こういうような流れになっているんではないかと私は理解をしております。
 そういう中で、じゃ、変わるのは行政だけではなくて、司法もどのように変わっていくのか、変わらざるを得ないのかと、こういう点が問われているわけでございまして、ちょうどこの行政改革が始まりまして事前規制をやめて事後チェック型の社会にしていこうという折にこのやはり司法制度改革の問題が起こってきたわけでございまして、ちょうどそのとき私は法務省の司法法制調査部長でございまして、私はそのときに政治の方から司法改革についてどうかというふうに問われましたけれども、そのときに私も、変わらざるを得ないということでやるべきであるという、そういう決断をしてここに来たわけでございますけれども、私は、この方法、方向は間違っていなかったというふうに思っていますし、今後もこういうことについてはきちっとその時々でフォローをして、それでより良い方向に持っていくということが必要かなと。
 何で五十年もためたのかということになるわけでございまして、今後は、やっぱり五十年もためずに問題がある都度に改正をしていくと、こういうような姿勢が必要かなと、そういうふうに思っているところでございます。
○前川清成君 今、山崎さんの方から回答に先立って、これはむしろ政治家が答えるべきではないかというような御発言がありましたので、もしよろしければ、大臣あるいは副大臣の方で、この事前抑制型の社会から事後チェック型の社会へ移行すると、この私たちの社会が今大きな転換を遂げようとしているわけですけれども、この社会の変革に対する思いみたいなものがあれば御発言いただけますでしょうか。
○副大臣(滝実君) ただいま山崎事務局長からも、御発言で大体すべて尽きているというふうに思いますけれども、基本はやっぱり事後チェック、要するに、行政での細かいところまで全部面倒を見るという社会から事後規制の社会になるということは、やっぱり基本的には国民一人一人が自分の責任で物を考える、その責任は何かといったら、やっぱり法、法というものを自覚しながら自分の判断でやると、こういうことだと思いますね。したがって、いろんな問題や利害の衝突が起きれば、そこでもって初めてこの法というものが表面化してくるということでもございます。
 私は、司法制度改革は、そういう意味で利害関係の調整ということにやっぱり大きな力を出さないかぬ、あるいはその基盤整備をしなければいけない、そういうことの今回の司法制度改革だというふうに思っておりますし、その前提としては、やっぱりこの際、やっぱり法教育といいますか、法務省としても法教育に力を入れなきゃいけませんし、そして、国民一人一人がやっぱりそういうものだということを自覚してもらうPRするだけのものがないと、今までどおりやっていればうまくいくんだという社会ではなくなってきているということをやっぱりもっと知ってもらわないと、この司法制度改革の本当の意味が機能しないように思います。私は、そこが政治として一番力を入れていかなければいけない部分だろうというふうに理解をいたしております。
○前川清成君 続いて、認証制度についてお伺いしたいと思いますが、認証制度はどのような目的で設けられたのか、お答えいただけますでしょうか。
○国務大臣(南野知惠子君) 本法律案につきましては、民間ADR型の業務に関し国民に選択の目安を提供すると、そういうことにおきまして認証型の制度を導入すると。それとともにまた、認証を受けたADRについての時効の中断等、それらの特例を定めることなどによりまして利便性の向上を図っていこうということにポイントが置かれていると思います。
 国民が紛争の解決を図るのにふさわしい手段をいろいろと選択しやすいようにしていくと、国民の権利利益にこれが資するものであると思っております。
○前川清成君 ADRの設立を、許可制でもなくて、あるいは全く規制をせずに自由にするという制度も取らずに、午前中の山本参考人でしたですかね、山本参考人の御説明によると、世界に類例のないこの認証という制度を設けた。その点のねらいというか、その辺りのところをお伺いしたいと、こう思って質問させていただきました。
○政府参考人(山崎潮君) この点につきましては、二つの要素が含まれているというふうに思います。
 一つは、多様なADR、これが作られまして、そこで国民が紛争を解決していくという意味では、ある程度自由に作っていただかなければならないというその命題もあります。しかし、そうなりますと、どういう者がどういう形でやるか分からないというまた不安もあるわけでございますので、そこで、最低限守るべきものはきちっと守ってもらおうと、その上で、そこをクリアする者については自由に活動してくださいという、だから両面見ているわけでございまして、この両面を見た、見るために制度として考えられる一番いいのが認証ということでございまして、これ、認可にいたしますと国の方の自由裁量がかなり強くなるということになりまして、これは支配をするんではないかという御批判もいろいろあるわけでございますので、我々はそういうことをするつもりではございません。しかしながら、やっぱり国民が迷惑をいたしますので、最低限守ってもらうものの基準はきちっと設けると、その上で活動を自由にしていただくということでございます。
 ある方から、従来の法律からいけば、その認証基準というのは政令あるいは省令等に落とすのが多いと言われているんですけれども、その中でよく、十六でしたか、十六も掲げたなと逆に評価もいただいたわけでございまして、かなり法律でその項目をきちっと出していると、そういう特徴を持っているということで、これは世界と比べてそれが例があるかないかと言われると、あるいは例がないのかもしれませんけれども、やっぱり日本特有のやり方であると、こういう理解をしております。
○前川清成君 弁護士法七十二条と認証制度の関係について次にお伺いしたいと思うんですが、その前提として、先ほど山崎さんの方は、弁護士法七十二条は必要だと、こういうふうにお述べになりました。また、寺田さんの方は、弁護士法七十二条は重要な規定だと、こういうふうに述べられました。しかし、山崎さんの方はなぜ必要なのかについては述べておられません、理由については述べておられませんし、寺田さんについても、弁護士法七十二条がなぜ重要なのか、理由については述べておられませんので、それぞれその理由のところ、詳しく御説明いただけませんでしょうか。
○政府参考人(山崎潮君) 私、理由も述べたつもりだったんですけれども、要はその法律、国民の生活活動の中には様々な紛争が起こるわけでございまして、最終的にこれを法で、法律に基づいて解決をしていくというわけでございますので、その結果によっては、国民が財産を失うこともあれば、場合によっては命を失うこともいろいろあるわけでございますので、非常に大きな影響を与えます。したがいまして、きちっとそれに対応できるそういうような能力あるいは倫理、こういうものを持っている者がそれを国民の代理等をして解決をしていく、これが必要なんだと、それから、あるいはそういうことが求められている、これが前提にあるわけでございますので、だれでもかれでもやってもいいというシステムになっていないわけでございます。
 そういう中で、オールラウンドにそういうものを持っているのが正に弁護士でございますので、そういう関係から弁護士が基本的にはそういう業務はやる、しかしそれ以外のところでもきちっとその対応ができる者についてはそこでやってもいいと、こういう法制を作っているわけでございまして、大変重要でもあるし必要でもある、こういうことでございます。
○政府参考人(寺田逸郎君) 今の事務局長の御説明に特に付け加えることはないんでありますけれども、冒頭に委員も御発言になられましたように、法の支配というのが非常にこれから強調されるべき社会になりつつあります。
 また、現に、いろいろと見方はありましょうが、しかし事前規制型から透明なルールに基づく社会運営、より司法、法をつかさどるということの重要性が高まる社会になりつつあります。そういう社会において一体だれがそういう個々人の権利を守ることの助けをしてくれるだろうかということを考えていくのは非常に重要でありまして、その七十二条が現在のままであるかどうか、いいかどうかは別といたしまして、この七十二条をめぐる規制というのはこの社会にとりまして大変重要な一つの焦点だろうと、こういう意味で申し上げたわけでございます。
○前川清成君 山崎さんは、今答えたというふうにおっしゃったけれども、例えば今の答弁の中でも、能力、倫理を持っている者が必要であると、こういうふうにおっしゃったけれども、何に必要かというのはお答えになっていない。今の部分、速記録を見てもらってもいいけれども、そういうのをやっていくって、こういうふうにおっしゃったんだけれども、そういうのというのが何を指すのか分からない。だからお聞きしているんです。だから、能力、倫理を持った者が何に対して必要なのかね。今あなたがおっしゃったそういうのというのは何を指すのか、そこをお答えいただきたい。
○政府参考人(山崎潮君) 若干不正確で申し訳ございませんけれども、私が申し上げているのは、専門的な能力、倫理、こういうものを持っている人たちが国民のいろいろな権利に関する病気、紛争、これに対してきちっとしたアドバイスをして、最終的にその代理をして決着をしていくと、そういう意味で国民の生活にとって重要であると、こういうことを申し上げたいわけでございます。ですから、この社会にとって非常に重要で必要なものであると、こういう理解でございます。
○前川清成君 今の山崎さんのお答えは、法的な知識、能力、倫理を持った人が紛争にアドバイスし、代理することが必要だと、こういうお答えでいいんですね。
 次の質問に移りますけれども、そこでお聞きしたいんですが、この今回設けた認証制度と弁護士法七十二条とはどういう関係に立つのか、お尋ねしたいと思います。
○政府参考人(山崎潮君) この認証の制度と弁護士法の関係でございますけれども、基本的には認証の基準を満たしたADRですね、こういうものに関しましては、一種、全部ではございませんけれども、ある部分ではその弁護士法七十二条の特例的な措置を受けられると、そういう効力があると、こういう位置付けになるわけでございます。
○前川清成君 その特例に関して、具体的には二十八条で、認証を受けたADRについては報酬を取っても構わないと、こういうことなんだろうと思うんですね。その反対解釈として、認証を受けていないADRは報酬を得ることができないと、こういうことだろうと思いますが、そこでお尋ねしたいんですが、じゃ、認証を受けていないADRがこの弁護士法七十二条に違反して報酬を得た場合、手数料を得た場合に、そこで成立した、そこでというのは未認証のADRにおいて成立した和解の効力、これはどのように考えればいいのでしょうか。
○政府参考人(山崎潮君) これはそういうことをやった者が罰せられるかどうかと、これは罰則も弁護士法にございますので、そういう部分は確かにございます。それは罰則の対象になるかもしれません。
 問題は、じゃ、そこででき上がった和解の効力がどうなるかということでございますけれども、それによって、例えば当事者がその内容についていろいろ錯誤があった、あるいは詐欺に遭った、あるいは強迫を受けたというような状態であれば、これは取消しとか錯誤とか、錯誤無効とか取消しとか、そういう一般の民法の対象になっていく事柄だろうと思いますけれども、それに当たらない場合は、その業法違反であっても当事者の合意でございますので、そこで合意が成立をしたということになれば、それは効力には影響はないというふうに考えております。
○前川清成君 それじゃ、その弁護士法七十二条に違反しても私法上の効果には、私法上の効果には影響を及ぼさないと、こういうお答えですね。
○政府参考人(山崎潮君) 私申し上げているのは、必ずしも、必ず影響を及ぼすとは限らないということを言っているわけです。
○前川清成君 その詐欺に当たるとか強迫に当たるとか、ほかの理由、ほかの実体法上の理由については今お聞きしていません。いません。弁護士法七十二条に違反して、違反した機関で和解の仲介が成立した、その和解の仲介に対する私法上の効果についてお尋ねしています。それについてお答えください。
○政府参考人(山崎潮君) これは先ほども申し上げましたけれども、そういう実体上の問題に当たらないということであれば、最終的には合意をしたということになれば、それが本人の意思であるということになれば、それは合意としての効力を生ずるということになろうかと思います。
○前川清成君 法文の六条についてお尋ねをいたしたいと思います。
 六条本文に、認証の要件として、申請者が当該業務を行うにつき必要な知識を有するときは認証しますと、こういうふうに書いています。ほかもいろいろ書いていますが、必要な知識があれば認証すると書いています。そこで、ここに言う必要な知識というのは何を指すのか、お尋ねします。
○政府参考人(山崎潮君) これ、六条の本文でございますので、紛争解決事業者ですね、そこに問われるその必要な知識、能力でございます。したがいまして、ここの意味は、例えばADR手続について知識経験、あるいはその取り扱う紛争分野あるいは種類に応じた関係法令に関する知識等を有する手続実施者ですね、それの候補者とかあるいは職員等が確保される体制を設けているかどうか、設ける能力があるかどうかということが一つ。それから、やはりそれを行うについて客観的でなければならないわけでございますので、必要な執務要領あるいはマニュアル等、こういうものが用意がされているかどうか、そういうことができる能力を有しているかどうかと、そういうことを問うているわけでございます。
○前川清成君 ごめんなさい、今の答えが分からなかったんですけど、要約すると、ここで言う、山崎さんの答えを要約すると、ここで言う必要な知識というのは人材の確保とマニュアル、この二つを指すんですか。
○政府参考人(山崎潮君) いや、私、その職員とかそういう手続実施者、そういうものが確保される体制でございますので、人もそれから手続も含めて、そういうものが運営できるような、そういうような知識あるいは能力を備えているかどうかということを問うわけでございますので、やっぱり運営上それをきちっとやっていけるかどうかと、こういうことでございます。
○前川清成君 今の点に関連して六条の第二号についてお伺いしたいんですが、ここにおいては、手続実施者について和解の仲介を行うにふさわしい者とあります。ふさわしい者というのはどういう者を指すんでしょうか。
○政府参考人(山崎潮君) ここで、今度は手続の実施者の方のふさわしい者ということでございます。これにつきましては、その紛争の種類に応じてこれを解決するのに必要な能力、あるいはその当該紛争について一定の専門的な、一定程度の専門的な知見とかあるいはその紛争解決の手法、それから和解案の定め方、そういうものについて相応の知識経験を有すると、こういうことを言っているわけでございますので、法律の、その分野における法律の知識あるいはそれを、紛争を解決するような知識ですね、こういうものを持っている、それに当たるにふさわしい者と、こういうことでございます。
○前川清成君 第二号で、手続実施者について、和解の仲介にふさわしい者を選任しなければならないと、こう定めていると。今のお答えであれば、和解の仲介を行うにふさわしい者というのはその分野についてそれなりの知識を持っている者なんだと、こういうようなお答えでございます。
 すると、六条の本文については、ADR本体についてだけれども、法的知識を要求する、二号についても、手続実施者についてですが、法的知識を要求する。そうなると、かぶっているんじゃないか、要求がかぶっているんじゃないかなと、こんなふうに思いますが、いかがなんでしょう。
 それと、ADRは実施主体が必ずしも個人に限らずに、例えば各種の業界団体であったり法人である場合も含むわけですから、そこでその法人について必要な知識を要求している。この辺のところをもう少し、ただ体制を整備したらいいんだというんじゃなくて分かりやすく、ここで言う法人である場合のADRについて必要な知識というのはどのような知識を指すのか、お答えいただきたいと思います。
○政府参考人(山崎潮君) この六条の本文の方は、事業者の方ですね、紛争解決事業者、こちらに問われるものでございます。それから、二号の方は、これは手続を実施する、実際に和解調停を行う者に要求されるものと、こういう区分けになっていることがまず前提でございます。その上で、手続実施者の方については、先ほど申し上げましたように、専門的な分野についてその知識、それから解決能力を持っているということが問われます。
 それから、運営の主体の方でございますけれども、これについては、そういう手続実施者を当然手続の中に取り込んでいける体制を持っていなければならないということになります。それから、その手続実施者が実施するだけじゃなくて、それを客観性を持たせるためにいろんなルールを作ったり、それからマニュアル、そういうものを作ったりする、そういう能力も問われるわけでございます。
 これを例えば法人に当てはめますと、法人というのは組織でございますので、結局どこで計るかということでございますと、そこの役職員だろうと思うんですね。そこがそういうようなノウハウをきちっと持っているかどうか、そういう体制でやっているかどうか、そこで判断をすると、こういうシステムでございます。
○前川清成君 続いて、六条の第三号についてお尋ねをいたします。
 六条の第三号で、手続実施者について、利害関係を有する者を排除するというふうには定めずに、排除するための方法を定めていることと、このように規定してあります。これはなぜなのか。利害関係人を排除して公正な手続を確保するためであればむしろ排除すると、こういうふうに明記すべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(山崎潮君) これは法律の構造的なものでございますけれども、これは認証基準を立てて、その認証基準に合致したものについてその認証をすると、こういうことでございますので、ここで一定的なものについてこれはもう排除をするということではなくて、そういうルールを持って運営をしなさいという形を取らしていただいているわけでございます。これは民事訴訟法の手続をちょっと思い浮かべていただきますと、やはり同じような忌避とか除斥とかいう、そういう規定があるわけでございますけれども、そういうようなルールを自ら定めて、その中できちっと自主的にやっていきなさいよと、こういうことを考えているわけでございます。
 したがいまして、実質的にはこれがきちっとした体制になっていなければいけない。例えば、当然もう、その身分関係が分かっている場合、そういう場合にはその手続実施者を外すとか、そういうルール、それから当事者から申出があって調べたら、いろんな身分関係がある、あるいは取引関係があるという場合にはその手続から排除をするというような、そういう制度をきちっと設けていなければ認証はしないと、こういうことになるわけでございますので、そこは御理解を賜りたいと思います。
○前川清成君 山崎さんの方から民事訴訟法の条文を見れ、読めというような御指摘があったんで、僕も実は見たんですね。民事訴訟法の二十三条の第一項は、例えばですけれども、裁判官は次に掲げる場合には職務の執行から除斥されると定めているわけですよね。それとパラレルに考えるんだったらこの場合も排除すると、こう定めたらどうなのかと思ったので先ほどの質問をさせていただきました。で、ここは認証の要件について定めた法の構造上のものなんだと、そう御説明されれば私も理解いたしますが。
 そこでお尋ねいたしますが、じゃ、排除しなかった場合の司法上の効果についてはこの法案の第何条においてどのように定めているのか、お尋ねいたします。
○政府参考人(山崎潮君) 排除をしなかった場合でございますけれども、その場合には、まずそういうような運営をするということになれば、やはり認証の基準を守らないということにもなるわけでございますので、これはその認証の、まあその前に是正命令とか措置命令、こういうものを行いますけれども、それでも従わないという場合には認証を取り消すということにもなろうかというふうに思います。
 それから、またそれとは別にそこで合意ができたという場合を問われているんだろうと思いますけれども、それによってその内容が、例えばそういうことによって一種だまされたと、一緒に組まれてだまされたとか、それから全然内容的にも錯誤ある状態でやらされちゃったというような状況になれば、それはもう民法上の関係で無効、取消し、そういう原因になるということになろうかというふうに思いますけれども、それ以外であれば、あと損害賠償の請求とか、そういうふうな関係もあろうかと思います。そういうふうなことで考えているわけでございます。
○前川清成君 山崎さんから教えていただいたんでお尋ねするんですけれども、それじゃ民事訴訟法においても、本来除斥されるべき裁判官が判決を言い渡した場合、内容が正しければ有効ですと、あとは不法行為の問題ですというふうに定めているんでしょうか。
○政府参考人(山崎潮君) これは定めておりません。
 裁判は最終的に国家権力をもってこれにするって決めるわけでございまして、その強制力が出てくるわけですね。そういう意味では、そこからそういう手続である場合には排除をするということになって、もちろん取消し事由、再審事由等になるわけでございますけれども、ここの場合にはそういうふうに一刀両断に決めるわけではございませんで、最終的には両者がこれでいいという合意、そこで決まるわけでございますので、そこの合意について、その意思表示をしたことにいろいろ問題があればこれはもう全く別でございますけれども、そうでない限りは、そこのところについてはやっぱり合意が成立をするというふうに考えざるを得ないと思います。
○前川清成君 私は、合意に至るプロセスが公正でなければならない、そう考えていますので今のような質問をさせていただいていますが、この点で大臣、ちょっとお付き合いをいただけますでしょうか。
 この法案の第三条でこのADRの基本理念を定めております。で、第三条の文言ですが、まず最初に法による紛争解決の手段であるということ、二番目に──あっ、条文を見ていただいたらと。法による、三条の一項で、最初に法による紛争の解決のための手段であるということ、二番目に紛争当事者の自主的な紛争解決の努力を尊重するということ、三番目に公正であるということ、四番目に適正であるということ、五番目に専門的な知見を反映する、六番目に紛争の実情に即した迅速な解決であると、このように定めておりまして、この六つが私はこのADRの基本理念ではないかと、こういうふうに考えております。
 そこでお尋ねしたいんですが、本来排除されるべき、排除されるべきだというふうに六条の第三項にも規定しています利害関係人がそのまま手続に関与して成立した和解というのが、これが公正なものと言えるのかどうか、お尋ねいたしたいと思います。
○国務大臣(南野知惠子君) それはお互いに合意がなされていればいいのではないかなと思います。
○前川清成君 じゃ、ごめんなさい、大臣は、合意さえ成立していれば利害関係人が関与した和解であっても、和解であっても公正であると、このようにお考えなんですか。
○政府参考人(山崎潮君) 御指摘のとおり、これ、公正にやらなきゃいけないけれども公正ではないことになります、それは結果として。ただ、その手続を、行われた手続が有効か無効かと言われると、公正ではないですね。
○前川清成君 その公正でない手続が、結果として合意が成立したからそれでいいというので済まされていいのかどうか、そのことをお尋ねしています。その合意が成立したというのは分かりました。そんなことは聞いていません。
 しかしながら、法律自身も排除することを前提としている利害関係人が実際に携わって、手続の実施者となって和解を無理やりに成立させてしまった。そんな場合にでも、例えば強迫があれば民法の九十六条で取り消せるかもしれないけれども、多少に、多少強引だったというだけでは民法で取り消すことはできません。それにもかかわらず、この排除されるべき利害関係人が排除されていない和解の効力は有効だというふうに法務省が言い切るんですか。
○国務大臣(南野知惠子君) 理念とそれから司法上の問題と、これは効力といいますか、それは別であろうかと思っております。
○前川清成君 今これから新しい制度を作ろうと、そういう議論をしているわけです。実際にある制度でどうやって後片付けをしようかといっているんじゃなくて、一から新しい制度を作ろうとしているわけですから、理念に沿った形で制度を設計すべきは当然だと考えますが、いかがでしょうか。
○大臣政務官(富田茂之君) 委員御指摘のように、制度設計はそうあるべきだというふうに考えますが、今委員がずっと言われているのは、やっぱり理念と司法上の効力を同一視して質問されているというふうにこちらは思えるんですね。司法上の効力、委員がさっき言われていましたけれども、無理やり合意させたと。この無理やりの合意というのは、民法上、じゃ、これが無効になるのかといったら無効にはなりませんから、そういう意味では司法上の効力は民法によるというふうにしか考えられない、これはやむを得ないと思いますけれども。
○前川清成君 これ、実は同様の定め方が四号にもしています。「排除するための措置が講じられていること。」という表現になっています。あるいは、もう一々繰り返しませんが、例えば五号につきましても、「弁護士の助言を受けることができるようにするための措置を定めていること。」になっています。
 またこれ法律の構造上の問題だとおっしゃるのかもしれないけれども、例えば、弁護士に実際は助言を求めさせなくても、実際は弁護士に助言を、助言の受けるような機会を与えなくても、これ全部有効になってしまったら、せっかく定めたこの認証の要件、あるいはこのような認証の要件を定めた趣旨というのが全く没却されてしまうんじゃないかと考えていますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(山崎潮君) これは五号でも弁護士の助言を受けるということをその認証基準にしているわけでございますけれども、これは主観でやられては困りますので、そういう意味では手続実施者が、この事件について必要かどうかということのみならず、こういう場合には必ず聞くというようなマニュアルとか、そういうものをきちっと、執務要領とかそういうことを定めて客観的にやる必要があるというふうに考えておりまして、それがまずきちっとできているかどうかということをその認証基準で問うということになります。
 それから、現実にその助言が必要なのに、その助言を受けずにやってしまったというこういう御指摘だろうと思いますけれども、これはあってはならないことでございまして、そういうことであれば当然認証の取消しの対象になっていくと、こういう問題を生ずるわけでございます。
 それ以外に、じゃ、今度司法上のその、できちゃったものについてどうかということでございますけれども、これも確かに内容的に問題、民法上の取消しとかそういうもの、無効の原因、こういうものがあれば、それは当然無効なり取り消すということになろうかと思いますけれども、そこに至らないものについてはやはり、結果としてはそれはいいことかどうかは別として、それはできたものについてはやっぱり合意は無効にはならないというふうに考えております。
○前川清成君 ちょっと五号について議論が移りましたので、時間の関係もあるので五号について話をしたいと思うんですが、それじゃここでいう弁護士に助言を、弁護士の助言を受けることができるようにするための措置というのは、定義としていえばどういう措置を指すのか、お答えいただきたいと思います。
○政府参考人(山崎潮君) 例えば、具体的に申し上げれば、必ずその特定の弁護士と顧問契約というんですかね、助言契約といいますか、そういうものを結ぶ必要はございません。それから、じゃその必要、その契約はしなくてもいいけれども、ある例えば事務所とそこのだれの先生でも結構でございますけれども、何かあれば聞けるような体制、これを設けておくことという、そういうイメージでございまして、そういうことでございます。
○前川清成君 それじゃ、顧問契約をしなくてもいいというのは分かりました。それじゃ、ここで言う、五号で言う措置を定めていると評価されるためには最低限これだけの要件は満たしてなければならない、最低限ここまでしておかなければならないということをお答えいただきたいと思います。何かあったら聞けるというんだったら、いつかどこかで街角で弁護士と名刺交換しましたと。その名刺を探してきて電話を掛けることだってできるわけですから、何の縛りにもならない。どの程度のことまでは最低限必要なのか、お尋ねいたします。
○政府参考人(山崎潮君) まあ、いきなり飛び込みでこういうことを助言してほしいというのは現実問題として難しいと思われますので、きちっとした顧問契約までは必要はございませんけれども、その事務所、例えば複数の弁護士さんがおられる場合に、何かあったときにはそのだれかが対応してもらえるというような、そういうようなことをしておく必要があるだろうということでございます。
 ですから、そういう意味では特定の方に必ずそれを常にこういうときに全部対応してもらうということではなくて、そういうような取決め的な話ですね、顧問契約まで至らなくても、何かあったときには連絡をするということで、それでそこで直接立ち会ってその助言をする必要はございませんので、それはメールとかそれから電話あるいはどこかで直接会ってもちろんやることも結構でございますけれども、そこの対応は問わないと、こういうことでございます。
○前川清成君 今日、日弁の吉岡さんという方が参考人にいらっしゃっていたので、まさか山崎さんが今のような答えをされるのであれば、その点について吉岡さんに聞くべきだったと思うんですが、司法制度改革推進本部の事務局長の方がその弁護士会なりの、あるいは弁護士なりの一般市民に対するアクセスについてどのような認識をしておられるのか、僕は今唖然としました、それは五十年前の弁護士だったらともかくですね。
 じゃ、弁護士の知り合いがなかったら、もう弁護士には相談できないんですか。今まで弁護士に相談したこともない人は、例えば交通事故に遭おうがサラ金に金を借りてしまおうがもう相談できない、そういう社会状態なんですか。違うでしょう。弁護士会においても、あるいは個々の弁護士においてもある程度の、例えば飛び込みであっても、職業別電話帳に広告を載せておる人もあるわけですから、飛び込みの相談だって受けていますよね。そうだとしたら、山崎さんの今のお答えであれば、職業別電話帳を机の上に置いていたらもう助言を受けることができるための措置を定めていることになってしまうじゃないですか。その程度の希薄なものでこの措置を定めているということをするぐらいだったら、もうこの五条なんて削除したらどうですか。
○政府参考人(山崎潮君) 弁護士との関係でそれだけを言っているわけではございませんで、先ほど言ったように、どういう場合に助言を受けるべきかという客観的なルールですね、こういうものもきちっと備え、かつ私申し上げているのは、顧問契約とかそういうところまで必要ないけれども、それはやっぱりある事務所と、助言が必要な場合には連絡するからお願いしますというような体制ですね、これは取っていなければならないというふうにそれは思います。ただそれは、基本的に飛び込みでという話になりますと、それは当たる場合もあるし当たらない場合もあるしということになりますので、そういうことを申し上げているわけでございます。
○前川清成君 山崎さんがおっしゃるそういう体制というのは、それは契約を指すんじゃないんですか。それは何なんですか。そういう体制という、そういうというのは何を指すんですか。
○政府参考人(山崎潮君) 顧問契約ということになりますと、常にそれに何かあれば必ず応ずるという形にはなるんでしょうけれども、ただ、この場合にはその先生だけでなくてもいいわけですので、そういう意味では対応できる方がやっていただくと、それは広い意味で契約といえば契約かもしれません、それは。それは私は取決めぐらいだろうというふうに思っておりますけれども、それはまあ契約だと言われれば契約かもしれません。ただ、いわゆる顧問契約って私そんなに、顧問契約もうちょっと重いものというふうに理解をしておりますので、そこまでいかなくてもいいだろうということでございます。
○前川清成君 もう少し、こういう条文を置くのであれば、弁護士の業務態様とかについても研究をしていただいたらどうかなと思いますけれども、仮に顧問契約をしてあったとしても、必ずどんな問題についても答えなければならないというような司法上の義務は発生しないわけですし、顧問契約だから、法務省がされているのかどうか知らないけれども、毎月何百万円も払うとか、そういう経済的にも手続的にも重いものも指さないわけですよね。何かあったら頼みますよという無償の顧問契約だってもちろんあるわけですから。別に顧問契約に限定しなさいと、そう言っているんじゃなくて、当初、山崎さんがおっしゃったように、何かあったら聞けますよという程度であれば、それこそ名刺交換をしただけでも何かあったら聞けます、あるいは名刺交換してなくても職業別電話帳を持っていたら何か聞けます、そこまでいくと余りにも要件として希薄じゃないですかと、こういうふうにお尋ねしているんです。
 そこで、同じ問題ばっかりにちょっとこだわりたくないのではっきりお聞きしたいんですけれども、ここで言う、ここでというのは五号に言う「措置を定めている」というのは、必要最小限度ここまでは定めなければならないということを明確にお示しいただきたいと思います。
○政府参考人(山崎潮君) 先ほどから申し上げておりますけれども、五号については、まず客観的にこういう場合には弁護士に助言を受ける必要があるということを客観化するために、まずマニュアルとかそのルール作りですね、これをきちっとしてもらうと、それができているかどうかというのがまず第一前提でございます。
 それから、それを今度、手続実施者ですね、これに周知しなければならない。周知をするについてどういう教育をするかと、そういうような体制ができているかどうかということが前提になる。その上で、今度、弁護士との連絡体制、これは先ほど私申し上げましたけれども、取決めなのか契約なのかという問題がございます。様々な、それを契約と言うのも、それはそのとおりかもしれませんけれども、そういうルール作りをその弁護士とちゃんとしていると、こういうことですね。これができているかどうか、最低限できているかどうか、これを問うわけでございます。
○前川清成君 山崎さんのお答えは少し二つの場合を合わせて議論をされていて、そのためにちょっと整理がされていないのかなと思います。
 まず、今の山崎さんの答えを要約すると、前提の問題として、当事者があるいは手続がどういう状態に至ったときに弁護士に相談をしなければならないと定めるか、この問題。この点についてマニュアルがどうだこうだと、こうおっしゃいました。もう一つ、後者の問題としては、後者の問題としては、そのADR自体と弁護士との関係、ADRと弁護士との関係で、例えば顧問契約をしなければならないのか、山崎さん一流の表現で言うと取決めでいいのか、あるいは電話帳でいいのか、その前者の問題と後者の問題を同時に今議論されているんじゃないでしょうか。私は、前者の問題は御安心いただいたらまた後でくどくどやりますけれども、今ともかくまず後者の問題について、後者の問題についてですね、山崎さんがじゃ取決めだとおっしゃるのであれば、その取決めの具体的な内容はこれとこれとこれとこれについて取り決めなければならないですよということをお示しいただきたいと思います。
○政府参考人(山崎潮君) 私、申し上げているのは電話帳でいいという意味では全くございませんので、それは契約というか取決めというか、そこはいろいろ形態がありますので、それは委員御指摘のとおり契約かもしれません、そういう位置付けでも結構でございます。
 ただ、やはり、その問うたときに、これを助言を受けたいといった場合にある程度速やかにそれに対応できるような、そういうような決め、取決めというんですか、契約というんですか、それができているかどうかと、それが最低限のチェック項目であるということでございます。
○前川清成君 僕は別に契約であっても取決めであっても名前は何でもいいんです。今の質問をもう一度繰り返しますよ。僕は取決めでもいい。
 そこで、聞くんですが、山崎さんが言うための、山崎さんの言う取決めというのは、これとこれとこれ、例えばこの項目とこの項目とこの項目について合意していなければならないというのがあるはずでしょう。だから、この点についてこうです、あの点についてこうですという、その取り決めすべき項目についてお尋ねをしています。取り決めすべき項目についてお答えください。
○政府参考人(山崎潮君) その取決めの項目は、その事件、紛争ですね、それの和解をするという場合のその法律的な解釈の問題、それからその法律を適用した場合に具体的にどういう問題が起こり得るか。だから、適法性の問題と相当性の問題ですね。こういう問題双方について助言をお願いをした場合に、それについて、例えば話合いの期日がございますので、そういうものに間に合うような助言を受けられるような、そういうような内容の契約、取決めですか、それをすると、こういうことでございます。もう契約で結構です、契約をするということです。
○前川清成君 私は、弁護士というのは辞書でも百科事典でもないと思っているんですよ。ただ単に法的知識を提供すれば足りるというものじゃなくて、その提供した法的知識については責任を負わなければならない場合もあると考えているんですけれども、その、ここで言う、山崎さんがやっと契約にされた、その契約した当該契約弁護士とADRとの関係で、契約弁護士はどういう責任を負うべきなのか、そこまでは取り決めしておかなくていいんですか。ただ単に、極端なことを言うと、今の山崎さんの答えであれば、事件の内容も全く知らない、具体的な背景も分からない、ただし条文の解釈だけを、例えばコンメンタールをファクスで送る、それでも構わないということになってしまうけれども、その程度の希薄なもので構わないのか。そうじゃなくて、もっと事件の具体的な内容も把握した上で、公正で適正な解決であるということを見定めた上での情報提供でなければならないのか、その辺のところまで、踏み込んだところまでお尋ねしたいと思います。
○政府参考人(山崎潮君) 大変失礼を申し上げました。
 その点は重要な問題でございまして、単に、単に法的な解釈を聞くだけではなくて、事案事案によって適用が変わってまいりますので、それはきちっと必要な書類、資料等があれば、あるいはその資料をお示しするか、あるいは事案の概要をきちっと御説明した上で、その具体的事案の中でどういうような解決が妥当なのであるかどうか、これについて助言を受けると、こういう体制でなければならないということでございます。
○前川清成君 そこで、具体的な手続についてお尋ねするんですが、第五号においては、弁護士に相談したかったらできますよというようなことをADRの側から当事者に告知しなければならないんですか。あるいは、告知しなくても構わない、当事者の方から弁護士に相談したいですと言い出した場合に初めて、あっ、それだったらこういう措置を定めていますのでこうしましょうということで足りるのか。その点、お伺いしたいと思います。
○政府参考人(山崎潮君) これにつきましては、選任手続につきましても、まず紛争の解決の委託契約みたいな、契約を結ぶわけでございますけれども、当事者と業者ですね、そのときにどういう選任をするか、それから手続実施者はどういう人であるか、そういうことについてもきちっと説明をすると、こういうことを義務化しておりますので、そこできちっと情報をまず与えて、それじゃこの人はいろんな関係で利害があるじゃないかというような話が出てくれば、それはまたその手続を実施する方できちっと対応していかなきゃいかぬと、こういうことになるわけでございます。
○前川清成君 私、今、弁護士に、弁護士の助言を受けることができるようにするための措置についてお尋ねしたんですが、今の山崎さんの答えは、各認証ADRにおいては、手続開始時に手続実施者から弁護士に相談することができますよという説明義務を課しますと、こういうことで理解していいんですか。
○政府参考人(山崎潮君) 今は手続の実施者ですね、についてどういう選任方法で、どういう方がなるかと……
○前川清成君 いや、そんなの聞いていないんです。弁護士に、弁護士の助言を受けることができるような方法について。
○政府参考人(山崎潮君) 弁護士が助言を受けるようなその方法ですね。これについては、基準で、その認証基準がございますので、そこでマニュアルとかいろいろございます。そういうものについてこういうような手続を設けていると、手続の全体についても説明する義務がございますので、その中で、こういうマニュアルを持っている、必要な場合には弁護士の助言を受けてちゃんとやるんですよということも全部説明をしてもらうということになろうかと思います。
○前川清成君 山崎さん、ちょっとお疲れになっているのかどうか知らないけれども、速記録を見直してもらったらいいと思うけれども、僕、今、実施者のことなんか全く聞いていなかったですよ。
 僕が聞いたのは、弁護士に相談できることをADRの側から当事者に対して告知する必要がありますかということを聞いているんですから、ちょっと気合入れてお願いします。
 それで今のお答えですけれども、語尾がはっきりしなかったんですよ、語尾が。説明することになろうかと思いますというのはどういうこと、どういう意味なんですか。各ADRは手続開始時に当事者に対して弁護士に相談できるということを説明しなければならない、この法律上の義務を負っているということなんですか。
○政府参考人(山崎潮君) ちょっと問題を取り違えて申し訳ございませんでしたけれども、当事者からこういう問題については弁護士に相談をしてくれと、こういう申出があった場合にどう受けるかと、こういうことではない……
○前川清成君 いや違う、そういう質問じゃないですよ。
○政府参考人(山崎潮君) ちょっと済みません、もう一度ちょっと、突然の御質問なんで、ちょっと頭の整理ができていないのかもしれません。
○前川清成君 いやいや、突然の質問じゃないですよ、これは。突然の質問じゃないですよ、全然。さっきから六条五号についてお聞きしていて、その流れの中でお聞きしているし、この五条についてお尋ねするというのは昨日も通告していますから。
 私がお聞きしたいのは、弁護士に、弁護士の助言を受けることができるということは当事者が聞いて、当事者、ADRを利用している当事者が、私、ちょっと分からへんから弁護士に相談したいんですという申出があったときに初めてADR側は説明すれば足りるのか。そうじゃなくて、当事者から質問がなくても、当事者から申出がなくても手続開始時に当たってきっちりと説明しておかなければならないのか、どちらですかという質問です。
○政府参考人(山崎潮君) それは、この手続のルールについてきちっと説明する義務があるということでございますので、やはりその当事者から問われるまでもなく、問題が、高度の法律的な問題がある場合には弁護士の助言を受けてやるんですよという手続はきちっと説明をする必要があるというふうに考えております。
○前川清成君 それじゃ、事前の説明義務について、山崎さんがおっしゃるところのマニュアルか何かに書き込んでおくと、こういうことですよね。
 次に、ちょっと時間がなくなってきましたので、また続きをやりますけれども、定義だけ聞いておきます。
 ここの「法令の解釈適用に関し専門的知識を必要とするとき」と、こうありますが、ここで言う「法令の解釈適用に関し専門的知識を必要とするとき」と、その定義をお聞かせいただきたい。それで私の質問を終わらせていただいて、次回、残りは次回にさせていただきます。
○政府参考人(山崎潮君) 法令の解釈適用でございますので、解釈の方はこの法律についてどういう理解をするかという解釈の問題でございますけれども、一般的な話でございますけれども、その解釈いかんによってはこれを、こういう和解をした場合には違法であるという問題が出てまいります。だから、違法か適法かという問題がまず前提に一つあるということでございます。
 それから、仮に、適法ではあるんだけれども、この和解に、この合意にそのことを適用した場合にそれが相当かどうかという問題、これも具体的な和解にはいろいろ出てまいるわけでございますので、これはその解釈の適用問題として、その場面においてもこれをそのままストレートに適用した場合にはその事案の解決として問題が生ずるという問題についてもやはり助言をきちっと受けるということで、ある意味では広くそこのところは解釈をしていくということでございます。
○浜四津敏子君 公明党の浜四津でございます。
 ADRは非常に歴史の古い存在でありまして、近時、国際的にも急速に脚光を浴びてきております。世界的な潮流となってきていると言われております。例えば、アメリカやドイツなどにおきましては、訴訟の急激な増加によります訴訟の遅延あるいは訴訟費用の高騰などの理由によりましてADRが急速に注目を浴び、発展してきたと言われております。
 それに対しまして、日本では必ずしもそうした背景はございませんで、したがってADRの必要性が広く認識されてきたということもないかと思われます。もっとも、司法型の民事調停やあるいは行政型の消費生活センターなどは利用件数も多く、また認知度が高いと言えますけれども、一般的に我が国においてADRがなじみがあるとは言えません。
 ADRは英語の略称でして、直訳いたしますと、代替的紛争解決手段ということになります。日本語としては、裁判外紛争処理手続とか裁判外紛争解決手段などと訳されております。本法律案でも裁判外紛争解決手続と、こういう用語が使われております。
 いずれにしても、私は、ADRを単に裁判の代替物としてとらえるのではなく、より積極的な位置付けを与える必要があると考えております。司法制度改革審議会の意見書の中でも、裁判と並ぶ魅力的な選択肢としてADRの拡充・活性化の必要性が強調されております。
 国民の皆様の立場からいたしますと、紛争を抱えたときに適正、また迅速、かつ実効的な救済が得られることが必要でありまして、こうした国民の皆様の期待にこたえて、より利用しやすい司法の実現のためには、ADRを含めて多様な紛争解決方法が整備されることが必要と考えております。他方で、ADRの機能の拡充を図ることにつきましては一部で、それによって裁判機能の拡充がおざなりになるのではないかという危惧の声もあります。
 ADRの拡充は、その前提として司法の中核である裁判機能の拡充が図られることが当然と考えておりますが、一連の司法制度改革におきまして裁判機能の拡充についてどのような施策が講じられてきたのかにつきまして、まず事務局にお伺いいたします。
○政府参考人(山崎潮君) 確かに、今回の司法制度改革につきましては国民の側から裁判にどうやってアクセスしやすい方法を講ずるかということでございまして、その観点からはやっぱり裁判機能の充実ということが大変重要なテーマになるわけでございます。それが今回の一つの大きな柱になっていたわけでございます。
 そういう関係から順次いろんな改正をしてまいったわけでございますけれども、まず、裁判の迅速化法で裁判を原則として二年以内に終わらせると、こういうような目標を立ててやろうという問題。
 それから、専門的な事件にどうやって対応していくかということから、専門委員制度を導入したり、あるいは知的財産高等裁判所、こういうことを設けていくというようなこと、あるいはそれに独特の手続を構築をしていくというようなことをしてまいりました。
 それからまた、家庭裁判所の事件を、今地方裁判所と家庭裁判所に分かれておりますけれども、これを家庭裁判所に一本化して利用しやすいようにしていただくということ。
 それから、簡易裁判所の事物管轄を引き上げまして、近くで受件を行うことができると、そういうようなアクセスの改善をした。あるいは、提訴手数料について引下げをすると、こういうようなことをしてまいりました。
 それ以外に、民事調停官あるいは家事調停官の制度、こういうのも導入をしてきたということでございますし、また、労働事件の関係では労働審判手続を導入いたしまして迅速に解決ができるようにという方策を講じていると、こういうような一連のことをやってまいったわけでございます。
○浜四津敏子君 今後は、そうした種々の施策が実を結びますように事務局においても更に努力される、当局においても努力されることを望みます。
 次に、条文に従って、沿って質問をさせていただきます。
 まず、一条と二条の関係でございますが、第一条に「裁判外紛争解決手続についての基本理念及び国等の責務を定めるとともに、」と、こう書いてありまして、またそれに続きまして、「民間紛争解決手続の業務に関し、認証の制度を設け、」云々と、こういう定めになっております。
 裁判外紛争処理の在り方、実態は多様でございます。機構、運営主体で分けますと、裁判所附置型、民事調停あるいは家事調停。また、自治体その他の行政関与型、国民生活センターやあるいは東京都消費者被害救済委員会、公正取引委員会などがございますし、また、弁護士会附置型、日弁連の交通事故相談センター、あるいは弁護士会の仲裁センター等があります。また、業界型に分けられるものといたしましては、日本クレジットカウンセリング協会あるいは交通事故紛争処理センター、不動産適正取引推進機構などがありますし、民間団体型に属するものといたしましては、国際商事仲裁協会とかあるいは日本海事集会所等があります。また、手続処理の方式でも、あっせん、調停、仲裁などがあります。
 そこで、本法律案が対象とするADRについてお伺いいたします。
 なぜ、裁判外紛争解決手続のうちの民間紛争解決手続だけが対象なのか。また、その運営主体及び手続処理の方式というのは、裁判外紛争解決手続の中の民間紛争解決手続ということになるわけですからその一部ということになりますけれども、運営の主体及び手続処理の方式、つまり、あっせん、調停、仲裁、どう違うのか、民間の紛争解決手続というのは何を意味するのかについて確認したいと思います。
○政府参考人(山崎潮君) まず、この法律の構成でございますけれども、総則のところにつきましては、これは民間の紛争解決手続、いわゆる認証型のもの以外に、行政型のADR、あるいは裁判所型のADR、それから仲裁、これもすべて含む広い意味のADRの基本理念を決めているわけでございまして、これはそういう意味では総論とその次の第二章の認証のところでは意味が違ってまいります。
 二章以下のところでございますけれども、この認証手続に関しましては、民間型のADR、これを対象にするということでこういうルールを作りました。じゃ、それ以外どうするのかということであろうかと思いますけれども、裁判所の場合には調停を持っておりますけれども、それは独立の法律を持っておりまして、調停手続は全部そこの中で持っておりますので、そこでどういうようなものをやっていくかというのは、それは独自のやっぱり判断が必要であろうということ。
 それから、行政型のADR、ございます。これについても、それぞれの行政型ADR、それと個別の法律を持っておりまして、そこの政策判断で内容をどういうふうにしていくかという、決めるのが正しいだろうと、そういう在り方がいいだろうということから、今回はここで共通のルールではなくて、これができましたことを受けて、それぞれの例えば行政ADRの中でこういう思想を取り入れるか取り入れないか、これはそれぞれの政策判断でやってもらおうということにしたわけでございまして、そういう意味でそこのところについては何も規定をしていないと、こういう構成でございます。
 それから、民間型のADRについてどういうことをやっていくかということでございますけれども、これは、あっせんから、それからいわゆる最後の調停、和解、これも含めたすべての対応を扱うということでございますので、最終的には合意が成立をするところまで対象にするということでございます。
○浜四津敏子君 次に、第三条、「基本理念等」についてお伺いいたします。
 二項には、「裁判外紛争解決手続を行う者は、前項の基本理念にのっとり、相互に連携を図りながら協力するように努めなければならない。」と、こう規定してあります。
 本日午前中の参考人質疑の中でもお伺いいたしましたけれども、これは連携を図るようにと規定してございますが、現実に連携を図るということはかなり難しい面があるという指摘がございますが、この相互に連携を図るというのはどういう連携を考えておられるのか、お伺いいたします。
○政府参考人(山崎潮君) この連携には二つタイプがございまして、一つは、複数の者が共同して手続実施者としての研修ですね、まとまってみんな研修をやっていこうと、そういうような横の連絡の問題、あるいは広報活動も一緒にやっていこうと、こういう問題が一つございます。
 それ以外に、あるADR、AというADRに事件が持ち込まれたというその場合に、事件と言っちゃいけません、紛争が持ち込まれたということになった場合に、そこではそういう種類のものについては扱わないと、それについてはBというそういう専門のADRが、ADRがあるので、そこに連絡をして紹介をするとか、そういうような連携ですね、こういうものをイメージしてこの条文を書いたということでございます。
○浜四津敏子君 それでは次に、第五条以下の認証制度についてお伺いいたします。
 今回提出されました法律案では、民間のADRにつきまして認証制度を導入することとしておりますけれども、なぜ認証制度を採用したのか、認証制度による効果、メリットをどう考えているのかについてお伺いいたします。
 ADRの特色の一つとして、総体として見た場合に、ADRが多様性を持った存在であるということが挙げられます。紛争の種類や内容、また当事者の性格あるいは立場、適切な解決の在り方等は様々でありまして、これらに応じて紛争解決手続に求められるニーズも多様であると考えられます。特に現代のように社会が複雑化し、価値観も多様化していることを勘案いたしますと、ADRについてもそれぞれのニーズに応じて多様な主体によって多様な手続が提供され、国民の皆様がその中から適切なものを選ぶことができるようにすることが必要であろうと考えております。
 一部には認証制度の導入によってADRのこうした多様性が失われるおそれがあるのではないかという懸念があります。そこでお伺いいたしますけれども、本法律案においては、認証制度の下においてADRの多様性を保持するためにどのような配慮が払われているのか、お答えいただきたいと思います。
○政府参考人(山崎潮君) 今御指摘のように、ADRは多様なものを用意をいたしまして、それで国民の方に利用していただくということに、そういう理念は必要で、大切なわけでございまして、そういう観点から申し上げますと、まず、この認証制度については、すべての者が認証を受けなければならないという法制は取っていないということでございますので、現在行っているADRがございますけれども、そのままの状態で活動をしたいという場合にはそれでも結構ですと、こういうことにしているわけでございまして、いろいろな効力が必要であるというようなことであればこちらの申請をしていただきたいということで、そこでまず多様性を確保するということでございます。
 それから、この認証の中でも認証基準設けておりますけれども、これはその最小限のそういうそのルール、これを守ってもらいたいという基準を掲げているわけでございますので、これをクリアしていただければあとは活動は自由にやっていただくという意味のそういう多様性を確保しているということでございます。
 それ以外に、この中で報告を求めたり、あるいは検査をするというような場面もあるわけでございますが、その場合も、このADRの特質を考えて、「民間紛争解決手続の業務の特性に配慮しなければならない。」と、こういう規定を設けまして多様性を阻害しないようにしていると、こういうことでございます。
○浜四津敏子君 認証制度を採用する場合にも、その具体的な制度設計につきましてはいろんな仕組みが考えられると思います。例えば、民間の第三者機関に認証を任せるとか、あるいは紛争を分野ごとに制度化するなどが考えられます。
 本法律案では法務大臣が認証制度を所管することとしておりますけれども、国が民間のADRを認証することとして所管大臣を法務大臣としたのはなぜか、その理由についてお伺いいたします。
○政府参考人(山崎潮君) まず、民間でやるべきじゃないか、あるいはそれは国でやるべきかという問題が一つございますけれども、この中でそのポイントは、やはり欠格事由を決めておりますけれども、やっぱり暴力団等の参入ですね、そういう点については特段に配慮をしなければならないということでございますので、それを民間の方にそのチェックをしていただくというのはやっぱり限度があろうということでございます。そういう点は、やはり国の方の情報をもってきちっと対応するということからまず国でやると、こういう政策を取ったわけでございます。
 それから、そのなぜ法務省でということでございますけれども、これは国民の権利義務関係、これに大いに影響のある、そういうものでございます。元々そういう点については法務省の所掌であるということ。それから、この中で幾つか特例を定めているわけでございます、時効等の特例とかですね、それから裁判と手続との関連を設けておりますけれども、これは正にその法務省の所掌事務と大きく関係があると。それから、弁護士法の七十二条の例外規定もございますけれども、これもやはり法務省と密接に関係があるということから、法務大臣の方で統括的にこの制度の認証を行いまして、その上で多様な活動をしていただくということにしたわけでございます。
○浜四津敏子君 第五条では、「民間紛争解決手続を業として行う者は、その業務について、法務大臣の認証を受けることができる。」とされております。認証を受けなければならないとはなっておりません。つまり、認証を受けたADRと認証を受けないADRが存在するということになります。しかも、この認証というのは、業として行う者の申請によって行われると、こういうことになっておりまして、認証を受けるかどうかはADR事業者の判断に任せられると、こういう仕組みになっております。
 そこで、認証を受けなければADRの業務を行うことができない制度とはしなかったというのはどういう理由によるのか、認証を受けない事業者もADRの業務を行うことができるという仕組みにした理由についてお伺いいたします。また、認証を受けないADRには何の規制もないのか、そうした事業者が不公正、不適確な解決手続をした場合にはどうするのか、当事者にとって何らかの救済手段があるのかについてお伺いいたします。
○政府参考人(山崎潮君) 確かに、今回の制度につきましては、必ず認証を受けなければならないという法制は取っておりません。
 その理由でございますけれども、現在ADR、そう多くはございませんけれども、一定の活動をしているわけでございますけれども、そのすべての民間紛争解決手続の業務を国の監督下に置かなければならないほど問題が生じているというような実態がまずないということでございます。
 それから、今回この認証制度を設けたことによってそのいろいろな効力が付くわけでございますけれども、そういうような制度がなくても現在のままその活動をしたいという、そういう希望しているところもあるわけでございますので、そういうところについてすべてそれを認証の対象にするということになると、やはり多様化、ADRの多様化、こういうことについての妨げになるということも考えましてこのような制度を取ったということでございます。
 それでは、認証を受けていないADRですね、これについてどうなのかということでございますけれども、これは弁護士法七十二条の規定がございますので、これに違反するようなことであればそれは刑事罰の対象にもなるということでございますし、またいろんな違法な行動があって損害を与えたということになればそれは民事賠償の対象にもなっていくと、こういうことでございます。
○浜四津敏子君 それでは、認証制度の具体的な中身について順次質問させていただきます。
 まず、認証の要件ですが、この点につきましては、第六条で認証の実質的な基準が、また第七条で欠格事由が定められております。特に第六条の認証の基準につきましては、実に十六項目もの定めが置かれております。
 この十六項目を見ますと、紛争解決手続を公正かつ適正に行うためには当然に必要となるものが盛り込まれているという印象を持っておりますけれども、他方で非常に抽象的な表現も含まれておりまして、ADRの事業者が実際に申請する場合、また法務大臣が申請に対する審査をするにつきましては、その意義を明確にしておいた方がよいものがあると思われます。
 まずそこで、六条の二号、手続実施者についてお伺いいたします。
 この手続実施者に人を得ることができるかどうかというのは、ADRが実効的に機能するかどうかということに非常に重要な要素になってくると考えております。この手続実施者、つまり調停人やあっせん人の選任についてですけれども、「和解の仲介を行うのにふさわしい者を手続実施者として選任することができること。」と、こう定められております。これは具体的にどういうことを意味するのか。ここで言う必要となる資質、能力というのはどのようなものを指しているのかをお伺いいたします。
○政府参考人(山崎潮君) まず、このADRの認証基準の六条の一号で、「その専門的な知見を活用して和解の仲介を行う紛争の範囲を定めていること。」というふうになっておりまして、まずは紛争の範囲を定めてやっていただくということでございますので、その紛争の範囲について専門的な知識、能力を持っているということがまず一つの前提になります。
 ただ、その専門的な知識、能力を持っていればだれでもできるのかということではなくて、やっぱりこれは紛争を解決するという場面でございますので、その紛争解決能力も併せ持っているということ、この二つが要請されるということでございます。
 逆に、そのマイナスの点、欠格の点では、当事者と一定の親族関係にあるとか、あるいは公正な職務遂行を期待し難い者、あるいは欠格事由に当たる者、こういう者は駄目だということで排斥をすると、こういうことでございます。
○浜四津敏子君 この六条の五号には、「手続実施者が弁護士でない場合」とあります。つまり、手続実施者には弁護士以外に各種専門家が含まれているということを予定していると解釈できますけれども、具体的にどういう専門家がこれに当たるのか。少し具体的にお伺いいたしますが、例えば不動産関係の紛争につきましては不動産鑑定士とかあるいは土地家屋調査士とか、あるいは近年特に増加しております特許や著作権などの知的財産権をめぐる紛争あるいは不正競争に関する和解の仲介には弁理士がふさわしいと、こういうふうに思われますけれども、こうした専門家の方々をここでは意味していると解釈してよろしいんでしょうか。
○政府参考人(山崎潮君) ただいま具体的な例、御指摘がございましたけれども、そういう弁護士、それから法律専門職種の方々ですね、そういう方々がなっていくという、そういう点もそれはそのとおりでございますけれども、それ以外にも、そういう方でなくても、例えばでございますけれども、消費者関係の紛争であれば消費生活アドバイザー等の資格を有する方でいろいろな紛争の解決に当たっておられる方という方ですね、そういう方でもその対象にはなり得るわけでございますので、必ずしも士族だけには限らないということでございます。
○浜四津敏子君 そうしますと、士族も含まれるし、そうでない者も含まれると解釈してよろしいわけですね。──はい。
 それでは次に、六条の七号要件に移らせていただきます。
 具体的な手続の内容ですけれども、本法律案におきましては七号において、「民間紛争解決手続の開始から終了に至るまでの標準的な手続の進行について定めていること。」と、こういうふうに規定しておりますが、その内容について、その詳細は盛り込まれておりません。この六条第七号のような規定を設けた趣旨はどこにあるんでしょうか、お伺いいたします。
○政府参考人(山崎潮君) これは、当事者がそこで話合いをしていくという場合に具体的な手続の流れ、どういう場合に自分がちゃんとその資料を出してそれを判断してもらえるかとか、あるいはいろいろな問題があるときにどういう場面で自分の言い分を言うことができるか、それから大体どのぐらいの時間が掛かるのか、それから場合によってはどれだけの費用が掛かるのか、そういうようなイメージを持たないでこのテーブルに着くということは非常に不安感が強いわけでございまして、結局、利用してもらえないというおそれがございますので、そういう手続の流れについてきちっとした説明をすると、こういうことになるわけでございます。そのまず手続の流れをきちっと定めているということ、それをその当事者にもきちっと説明をすると、こういうことでございます。
○浜四津敏子君 手続の進行に関する事項に属するものとして九号もあります。この九号には、申請者が紛争の一方の当事者から前項の依頼を受けた場合において、紛争の他方の当事者に対し、速やかにその旨を通知するとともに、当該紛争の他方の当事者がこれに応じて民間紛争解決手続の実施を依頼するか否かを確認するための手続を定めていることと、こういう確認手続を必要としております。このような通知及び確認の手続を必要としている立法趣旨というのはどこにあるんでしょうか。
○政府参考人(山崎潮君) これは、裁判のイメージで考えていただければ、申立てがあって、まず相手方がきちっと知ることということが重要になるわけでございますので、そこでまずはきちっと通知をするという制度を設けているかどうかということを言っているわけでございます。
 それとともに、確認でございますけれども、これは当事者がこのADR手続のテーブルに着いてもらえるかどうか、そこに一種の委任契約、委託契約でございますけれども、その委託をするかどうか、こういうことの意思を確認しないで始めるというのは、やっぱり当事者の気持ちを考えますと、やっぱり後でトラブルのもとにもなるわけでございますので、まずその入口のところできちっとした意思確認、これをできるような、そういうような体制を設けなさいと、こういうことでございます。
○浜四津敏子君 また、第十二号では、紛争の当事者が民間紛争解決手続を終了させるための要件及び方式を定めることとしておりますけれども、この具体的内容はどのようなものか、お伺いいたします。
○政府参考人(山崎潮君) 基本的には、これは話合いのルールでございますので、もうこれ以上話合いをしたくないという場合には手続から離脱することができると、そういう自由があるわけでございますけれども、ただ、この終了の自由というのはいろんなパターンがあるわけでございまして、申立て側から取り下げるという行為、これがあった場合で相手方に通知が行くということでそれで終了をするという場面、それから手続の相手方が今度は出てこなくなっちゃったという場合にどこで終了をするかという問題、それから当事者の手続の終了の合意、こういうものについてもどういうふうにやっていくかということ、こういう点について具体的な定めをしていることということでございます。
○浜四津敏子君 この手続の終了につきましては更に十三号に定めがございまして、手続実施者が民間紛争解決手続によっては紛争の当事者間に和解が成立する見込みがないと判断したときは、速やかに手続を終了しと、こうあります。つまり、当事者は手続を希望している、しかし手続実施者の判断によって手続の打切りができると、こういう措置を定めているのが十三号と解釈されますけれども、なぜこういう規定を設けられたのか、その立法趣旨をお伺いいたします。
○政府参考人(山崎潮君) これは、客観的にもう話合いができないのに主宰者の側でそれを打ち切るような手続をしないと、とにかく合意ができるまで話合いを強要するような形にもなるわけでございまして、そういう関係から当事者もできないものにずっとお付き合いをするということにもなるわけでございますので、それはやっぱり当事者の負担という問題を考えなきゃいかぬということでございます。もしそれができないならば、直ちに裁判を起こすなりのそういうような行動をするべきでございますので、いたずらにそこでただただできないものを引っ張るというようなことはしないように、そこで手続をきちっと終わらせるような、そういうルールを設けていなさいということでございまして、これも、裁判の和解でもできないのを延々とやるというようなことは厳に避けなければならないということでございますので、それと同じような意味でございます。
○浜四津敏子君 それでは次に、十五号要件についてお伺いいたします。
 報酬又は費用が著しく不当でないことという要件をここでは定めております。著しく不当か否かというのは何を基準に判断するのか、お伺いいたします。
 また、考え方によっては、報酬や費用の額やまた算定方法を法令で定めたり、あるいは上限額を設定すると、こういう制度の設計もあり得ると思われますけれども、今回そうした制度を取らずに不当なものを排除するという形にした、そういう制度にした理由及びその具体的な内容についてお伺いいたします。
○政府参考人(山崎潮君) まずはこの費用の、報酬の問題でございますけれども、これについてどういうふうに決めるかということでございますけれども、まず業務の内容がどういうものであるか、それから手続全体がどのぐらいの時間で行われていくかとか、そういうような個別の事情が当然ございます。それ以外に他の実例と比較をするというような、そういうような形、ことを総合的に考えまして、これはこういうような実態の解決をするというものについて余りにも高過ぎると、そういうものについてはチェックをして是正をしていくと、こういうことを考えているわけでございます。
 これを何で、じゃ、その天井を決めてやらないかということでございますけれども、この報酬とかそういうものについて決める場合に一定的なもので決めていくということになりますと、独占禁止法等のそういう影響もございまして、最近はそういうように一律に決めるとか、そういうような形がなかなかできない状況でございます。
 それから、やはり著しく不当でない範囲であればどのように定めていくかは、それぞれのADRのその特徴、それに応じてやっていけばいいということになりますので、それが様々でございますので、それを全部一律に決めることもなかなか難しいということからそういうような体制は取らなかったということでございます。
○浜四津敏子君 次に、第二節、認証紛争解決事業者の業務についてお伺いいたします。
 十四条に説明義務について規定がございます。国民の皆様が紛争の解決を図るのにふさわしい手続を選択することができるようにするためには、一体どういうようなADRがあって、どういう手続を提供しているかということだけではなくて、もっと具体的に、例えば幾ら費用が掛かるのか、手続実施者としてどういう人が登場してくるのか、また手続に臨むについて自分としては何をどのようにすればよいのか、何を要求されるのかというようなことの具体的な情報が必要となってまいります。特に、当事者の方が真に納得する解決を得られるようにするには、その前提としてADRの具体的中身を十分理解する必要があると思われます。
 この点につきまして、この十四条で説明義務が規定されておりますけれども、これは具体的にどのような説明がされることになるんでしょうか。例えば、第一号の手続実施者の選任に関する事項については、具体的な候補者についても説明がされるのか、あるいは第二号の紛争の当事者が支払う報酬又は費用に関する事項につきましても、具体的に幾ら掛かるかということが分かるようになるのか、お伺いいたします。
 また、済みません、もう一点。ついでに、同じく十四条の第四号に前三号に掲げるもののほか、法務省令で定める事項とありますけれども、この法務省令で定める事項とは何を予定しておられるのかをお伺いいたします。
○政府参考人(山崎潮君) まず、ここで言われております手続の説明義務でございますけれども、先ほど来申し上げておりますけれども、やはりこの手続はどういうふうに具体的に行われていくかということ、それからどのぐらいの時間を掛けてやるのかとか、その辺のイメージがないとやっぱり当事者がこの手続をお願いするかどうかという選択に困るわけでございますので、この手続のルールはきちっと事前に説明をするということになるわけでございます。
 それとともに、手続だけではなくて、具体的にどういう者はこの手続の実施者になるかという点についても説明をすべきであるということになろうかと思います。それによっては、あっ、こういう方がおられるならここではやりたくないという方もおられると思いますので、その点はきちっとした情報を設けるということになります。
 それから、その費用についても、これは大きな問題でございますので、まず、報酬ですね、まず最初に払う一定の費用が、手続の、何というんですかね、利用料金というんですかね、利用の対価を払うことになりますけど、例えばそれから、それが成功した場合にはどのぐらい払うかとか、それと、それから実際実費が掛かるわけでございますので、その実費についてもおおよそどのぐらい掛かるのかとか、全体としてどのぐらいの金が掛かっていくのかということが分からないとやっぱり利用する側としては非常に不安でございますので、そこを具体的に説明をすると、こういうことでございます。
○浜四津敏子君 次に、手続離脱の自由あるいは和解をしない自由が当事者にあるのかどうか、具体的にそれが認められるのか、あるいは保障されているのかについてお伺いいたします。
 民間のADRが必ずしもこれまで活発に利用されてきたとは言い難いその理由の一つに、一度手続に入りますとなかなかその後どのようになるかは分からない、あるいは和解案を進められると断りにくいといったような不安感があるというふうに指摘をされております。しかし、基本に立ち戻って考えますと、和解の成立を試みる以上、当事者が和解の成立が見込めないと思えば、それ以上手続を進めるのをやめて他の手続を選択する自由があってしかるべきものと考えます。
 そこで、改めて確認いたしますが、当事者にはADRの手続を自らやめる自由が保障されているのでしょうか、あるいは手続実施者が最善のもの、ベストのものとして進める和解案を拒否する自由があるのかを確認いたします。
 これをお伺いいたしますのは、実は日本のADRの問題点といたしまして、裁判所における調停の慣行がADRでの紛争解決手続にも強い影響を与えているという指摘があるからでございます。つまり、裁判所における調停というのは、どちらかといいますと、当事者よりも一段上に立った権威者といいますか、専門家の人が妥当と認めるそういう和解案の提示、それを当事者に納得させる、受諾させると、そういう説得という面が非常に強いと、こういうふうに言われておりまして、それを受諾しないということが非常に、そういう選択をしにくいという指摘がされているものですから、今回のADRについてその自由が保障されているのかどうかを改めて確認させていただきたいと思います。
○政府参考人(山崎潮君) ちょっと今の御質問に答える前に、先ほど十四条の四号ですか、法務省令で定めるという点でございます、ちょっと答弁しておりませんでしたので。例えば、和解が成立した場合の効力とか、和解が終了した場合、その事後的な処置とか、そういうような点を定めて省令で決めていくと、こういうことでございます。
 それから、ただいまの御質問でございますけれども、裁判所の調停がちょっと上から裁断的というふうに言えるのかどうかは、ちょっと私そこは違う意見を持っておりますけれども、物によってはそういうのあるかもしれないし、そうじゃないものもあるだろうというふうに思いますけれども、このADRにおいては、この離脱の自由という、元々合意の世界で行っていくわけでございまして、これはいわゆる行政型、裁判所型のものとは違うわけでございますので、そこはもう話合い、合意を基礎とするということでございますので、手続の離脱の自由、これは当然にあるということでございます。
○浜四津敏子君 この十四条には、和解が成立した場合、これをどのように書面にするのかという規定が設けられておりません。後々トラブルになってもいけませんので適正な取扱いが必要と思われますが、本法律案においては、当事者間に和解が成立した場合の取扱いはどうなっているんでしょうか。
○政府参考人(山崎潮君) 当事者間に和解が成立した場合、通常は書面にするということになろうかと思います。後で紛争のもとになっては困るということでございます。
 そういう点がまず一つでございますけれども、それ以外に実施者といたしまして手続実施の記録、こういう記録のところにもきちっと書き留めておくと。例えば、書面を作らないという選択もあるのかもしれませんけれども、その場合には手続実施者の記録、そこに合意した内容、これをとどめておいて、将来何かあったときにはそれが使えるようにすると、そういう制度を設けなければならないということでございます。
○浜四津敏子君 今お話がありました手続実施記録につきましては第十六条に規定がございますが、この第二号に紛争の当事者及びその代理人の氏名又は名称を書くと、記載するということになっております。つまり、紛争の手続については代理人を認めているという、当然のことでございましょうが、ADR手続の代理人として弁護士以外にどういう資格の人たちを認めるお考えなのかをお伺いいたしたいと思います。
 先ほどもこれは事業実施者の点について伺いましたけれども、重複になりますけれども、不動産関係であれば不動産鑑定士あるいは土地家屋調査士、あるいは知財、知的財産権やあるいは不正競争に関しては弁理士などのそうした専門職の方々がおられますけれども、こうした専門の方々、具体的にどの範囲の方にこの代理権を認めるのか。これにつきましては具体的な検討が今行われているというやに聞いておりますけれども、その内容について差し支えなければお答えいただきたいと思いますし、今差し障りがあるということであればいつごろその詳細が決まるのか、お答えいただきたいと思います。
○政府参考人(山崎潮君) 基本的には我々の方で議論しておりまして、今、案はもうあるいは外に出ているのかもしれませんけれども、最終的に決まってはおりません。最終的に決まるのは今月の二十六日に、私どもの本部がございますけれども、その本部会合で具体的な案が決まっていくという、そういうステップにあるということをまず御理解いただきたいというふうに思います。
 この代理については、私たちの検討会の中に七つの隣接法律専門職種の方々が参加をしているということでございます。そういう中で議論をしてきたということでございます。
 この代理についての基本的な考え方でございますけれども、具体的には、基本の考え方は、元々ADRについては紛争の当事者本人、これが主体的に参加すべきであるという考え方がベースにあるわけでございます。そうはいっても、自分だけではなかなかできないというところもございます。そこでその代理人が必要になるというわけでございますが、やはり代理人は紛争の当事者本人の権利義務を直接処分できるということになるわけでございますので、相当高度な法律的な能力が必要であるということになってくるわけでございます。
 そこで、まずどういうジャンルで、どういうふうに認めていくかということでございます。その総論でございますけれども、まず紛争の分野を決めてやっていくということでございますので、そうなりますと、その特定の分野についてそういうニーズがまずあるのかないのかということですね、それが求められているのかどうかということが一つあるということでございます。それから、その事案が金額的に低いものかどうかとか、それからそういうジャンルでニーズがあるのかどうかということがまず一つでございます。それからもう一つは、代理業務を行うために必要な法律的な能力あるいは倫理規律、こういうものを持っているかどうかという点ですね。これを総合して考えていくということになろうかと思います。
 ですから、そこの総合でございますので、現在案を考えているところでございますけれども、基本的には現在その訴訟代理あるいは訴訟以外の手続について代理権を持っている職種の方々については、基本的にはADR手続についても代理をすることができる方向で考えているということでございますし、またその紛争性の強い業務ですね、こういうものに長年携わっているという者については基本的にはADRの代理の方向を認めていくというような方向で考えているわけでございますが、そうでない職種の方々については、やはり将来課題ということで、現在の、現時点ではその点については代理権を付与するのは難しいとしても、将来的な課題になっていくということで、このADRができます、できた中でADRの主宰者としていろいろ経験をしていただいて、その経験を踏まえて能力を培っていくと、その上で検討をしていくと、そういうような大きな考え方で構成がされているということでございます。
○浜四津敏子君 そうしますと、現時点までに既に裁判に様々な形でかかわってこられている専門家の方々については基本的に認めていく、またさらに、適正と認められる者についてその範囲を広げていくという基本的な考え方でよろしいんでしょうか。
○政府参考人(山崎潮君) 大きく分ければ、そうですね、現在業務を行っているような方々についてはそのADRの業務を行っていく、場合によってはもうちょっと広く業務を行っていただくという方向、それからそういう業務を経験していないという方々については、もう少し経験をしていただいた上でその後の代理権の付与について検討をすると、こういうことでございます。
○浜四津敏子君 それでは次に、第三章の認証紛争解決手続の利用に関する特例についてお伺いいたします。
 まず、認証紛争解決手続を利用する場合の法的効果の問題についてお伺いいたします。
 この具体な効果といたしまして、二十五条に時効中断の効力、二十六条に訴訟手続の中止、それから二十七条に調停前置事件についての特則と、こういう三つが設けられております。
 このうち、一つ目の時効中断の効力につきましては、当事者にとりましてはまずは身近な認証ADRを利用してみようと、こういうインセンティブを高める上で意義があるものと考えております。時効完成を気にすることなく和解の交渉に専念できるということは、当事者の方が安心してADRに専念できる環境整備の一つと思っております。
 二つ目は訴訟手続の中止でございますが、これまでも実務上の知恵として、例えば訴訟外で和解交渉が進んでいる場合などには裁判の期日を延期したり、あるいは追って指定したりというような対応がなされてきたものと思います。
 そこで、本法律案におきまして、制度として訴訟手続の中止ということを認めた趣旨について確認しておきたいと思います。
○政府参考人(山崎潮君) 委員御指摘のように、現在でも裁判をやりながら話合いを進めるということで運用上で対応しているということもあろうかと思いますけれども、やはりこの制度を設ける以上、この制度を利用していただかなきゃならないと、そういうインセンティブを与えなければならないわけでございまして、これ、裁判とこのADRが両方並行して進むということになると、当事者の負担、結構大変なわけですね。そこで、やはりどちらかにきちっと集中をして、それで話合いなり裁判をやっていくと、こういう体制をきちっとした方がいいんではないかという当事者保護の関係からこういう規定を設けまして、その間はそのADRの話合いに集中してほしいと、こういう趣旨でございます。
○浜四津敏子君 また、二十六条の訴訟手続の中止の規定では、中止期間の延長の規定が設けられておりません。例えば、中止期間が満了しても認証ADRが続いている場合には当事者は訴訟とADRを並行して行うと、こういう必要性が生じるものと思われますけれども、そうなると趣旨が半減されてしまうのではないでしょうか、お答えいただきたいと思います。
○政府参考人(山崎潮君) ここにあえて条文には書いておりませんけれども、必要性があればもう一度申し立てていただければ、それは裁判所がその状況を考えながらだと思いますけれども、それはもう一度中止をするということも可能でございます。
○浜四津敏子君 そうしますと、中止期間の延長の申請はできると、また延長ができると理解してよろしいわけですね。
○政府参考人(山崎潮君) 正確に言うと、延長というか、もう一度決めてもらうということで、どちらでも効果は同じだろうというふうに思っています。
○浜四津敏子君 続きまして、法的効果の三点目、二十七条の調停前置の特例についてお伺いいたします。
 調停前置事件は、それぞれ特別の理由があって訴えを提起する前には調停を申し立てなければいけないと、こういうふうにされているものでありますけれども、この条文では、民事調停及び家事調停とも調停前置の規定を適用しないと、こういうようになっておりますが、これは調停前置事件の理念やあるいは立法趣旨を修正したということになるんでしょうか、お伺いいたします。
○政府参考人(山崎潮君) 結論から言えば、その調停前置主義の内容が変わったわけではないということでございます。
 この調停前置主義、なぜ取っているかということは、例えば家庭事件が典型でございますけれども、やはりまずきちっとした話合いをした上で、それから訴訟に行った方がいいという、こういう政策的な考慮でございます。そういう意味では、この調停に当たるところがADRになるということでございまして、そこで話合いは十分行われたと、行われたけれども結果として話合いができなかったと、そういう場合にはいきなり裁判として訴えてもいいだろうと、それは等質のものだろうということでございます。
 ただ、なおこれでも十分でないという場合には裁判所が調停に付することも可能でございますので、そこで調整をしていただくということになろうかと思います。
○浜四津敏子君 法的効果として関心の高い事項の一つに、執行力の付与があります。本法律案では執行力を認めるという内容にはなっておりませんけれども、実効性という面からいたしますと執行力が必要だろうという意見もありますし、また、執行力は国家権力の発現でありますから、慎重な手続が必要だという意見がまた他方にもあります。
 今回、執行力を付与しないということにした理由はどこにあるのでしょうか、お伺いいたします。
○政府参考人(山崎潮君) 幾つか理由はあるんですけれども、一番やっぱり大きかったのは、ADRというのは任意の話合いで定めて、決めていくという世界でございますので、強力な執行力というある種の武器ですね、武器を背後に抱えて話合いをするというのでは自由な話合いの雰囲気が失われると、こういう意見がかなり強かったわけでございまして、それなら裁判と同じではないかと、ADRの特徴がなくなると、こういう声が相当強かったということ。
 それからもう一つは、これを導入するということになれば、やっぱり法律家がきちっと見ていないと、これは一回執行文作られますと非常に影響力は大きいわけでございまして、それから、作ったはいいけれども執行できないという問題も間々生じるわけでございまして、これは混乱のもとになるわけでございます。そうなりますと、常に弁護士が関与をしていなければならないという法制に、事実上ですよ、事実上そうなってくる可能性が強い。そうなると、非常にコスト高になるとか、いろんな指摘もございまして、そうすると、これを導入していかない、導入しない、認証ADRですね、これも出てくるだろうと。そうなりますと、ここで差別化が起こるんではないかというような指摘とか、あるいは、まだこれからADRがどういうものが出てくるか分からない、そういう状況の中で、いきなり国家権力を発動するような執行力ですね、これを付けるについてはまだ分析あるいは状況、それの調査等が足りないではないかと。やっぱりこれをもう少しよく見ていこうと、その上で検討をしようと、こういう声が三つ大きく分かれまして、もちろん賛成する方もおられました。
 しかし、現時点で導入するのは困難であろうと判断したわけでございまして、この附則で五年後の見直しが入っておりますので、そこの検討課題の一つであると認識をしております。
○浜四津敏子君 今後の検討課題としてこれは大事な課題の一つだと思いますので、制度をスタートさせてから執行力の付与については前向きに検討していただきたいと思っております。
 次に、富田政務官にお伺いいたしますが、ADRの利用促進が図られれば、ADRについて民事法律扶助を希望する者が増えると考えられます。例えば、フランスではADRの法律扶助に関する法律が定められていると言われておりますが、我が国においても、ADRの拡充・活性化のために、本法案において法律扶助についても定めてもよかったのではないかとも思われますけれども、どうお考えでしょうか。
○大臣政務官(富田茂之君) ADRに対する法律扶助につきましては、現在でも、ADRにおける和解交渉が民事裁判等の手続に先立つものであって、特に必要と認められるものであれば法律扶助の対象になり得ると解されております。それゆえ、本法律案においては法律扶助に関する特段の規定を設けませんでした。
 そのような現行制度の範囲を超えて、例えば認証ADRの中の一部を法律扶助の対象とすることにつきましては、認証ADRの運用実態等を踏まえて検討していく必要があるというふうに現段階では考えております。
○浜四津敏子君 最後に、法務大臣にお伺いいたします。
 既に述べましたように、ADRについての国民の方々の理解を深め、また権利利益の実現に資する多様な紛争解決のメニューが提供される基盤を整備するということが非常に重要だと考えております。
 そこで、本法律案が施行された際には認証制度を所管することとなります法務大臣にその決意をお伺いしたいと思います。
○国務大臣(南野知惠子君) 本法律案は、国民が多様な紛争解決法の中から紛争の解決を図るのにふさわしい手段を選択しやすい社会を実現するためということであり、ADRにつきましては、国民の理解の増進を図り、選択の目安の提供の利便性の向上を図るものであります。
 これらによりまして、司法制度改革の柱の一つであります国民の期待にこたえるより利用しやすい司法が実現されるよう、国民に対する適切な情報の提供に努めますとともに、ADRの自主性、また多様性に十分配慮いたしながら、認証ADRの適正な業務運営の確保を図るなど、認証制度の適切かつ円滑な実施に尽力してまいりたいと思っております。
○浜四津敏子君 終わります。
○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 今日、最後の質問ですので、よろしくお願いします。
 これまで余り活用されてこなかった民間型のADRを育てて、国民に迅速、廉価、安心の紛争解決手段を提供していくということは、賛成であります。それを実現をしていく上で、国がこの法案に基づいて認証する上での基本姿勢というのが大変大事になると思うんですね。
 で、自主性、多様性には配慮しつつ、ある程度認証のハードルを高くして、信頼に足るこのADR機関を積み上げていくのか、それとも、ハードルを下げて、そしてたくさん作って、信頼に足るものが淘汰をされていくと、こういう道を選ぶのか。法案はどう考えておるのか。まず、法務大臣にお伺いをいたします。
○国務大臣(南野知惠子君) 先生御質問でございます。
 本法律案におきましては、民間ADRについて、業務の適正性を確保するための一定の基準に適合していることについての認証制度、それを導入いたしております。認証の基準は、業務の適正性を確保する観点から必要とされる最低限のものとしており、これによりまして、利用者にとって信頼するに足りる選択の目安が提供されますとともに、併せてADR事業者の創意工夫による利用者の選択肢の拡充も期待できるものと考えております。
○井上哲士君 どっちなのかということなんですね。こういうことをお聞きしますのは、衆議院での答弁を見ておりますと、これは山崎さんの答弁ですけれども、乱立をした場合は市場原理にある程度任せると、こういう答弁があります。この淘汰される期間中に国民が不公正なADR機関の被害を受けるようなことになったらそれ自体が大変ですし、また、そういう不公正なADR機関などがある程度ありますと、それがまた国民の信頼を傷付けて、この法案が目的としているこの拡充ということにも反するということになると思うんですね。
 認証を任意にしたわけですから、そこで自主性、多様性の確保に配慮をしたということでいいますと、認証に受ける者については、これはやっぱり中立公正という点については厳格に審査をして、やっぱり国が認証したものは信頼できると、こういう目安として大きく広がるという考え方に立つべきだと思うんですが、そういうことでよろしいでしょうか。
○政府参考人(山崎潮君) ただいま委員から御指摘がございましたけれども、これは二つの要請を同時に満たすということを考えておるわけでございまして、やはり多様性、それから国民がこれを利用していただくという意味からは、そこはある程度自由にはしなければならないということになるわけでございますけれども、ただ、それではいろんな問題が生じかねませんので、やはりきちっと備えるべきものは、最低限のものはきちっと備えていただくということでございまして、そのチェック項目を十六掲げたわけでございます。
 したがいまして、最低限のものでございますから、これを満たすかどうかというのはやっぱり厳しく見ていくということになろうかと思います。厳しく見て、それをクリアした者については活動は御自由にと、こういうことでございます。その中でもいろいろな競争が起こるということになろうかと思いますが、それはもう市場の原理だろうと、こういうことでございます。
○井上哲士君 厳しく見ていくと、こういう答弁でありました。
 そこで、この認証の中身が非常に大事になってきますので、具体的にお聞きします。
 まず、朝からも何度か議論になっています六条の第三号の問題ですが、手続実施者の選任について、手続実施者が紛争当事者と利害関係を有する場合の排除規定を置くということになっております。
 これも衆議院の答弁を見ておりますと、この利害関係については、裁判官などの忌避事由などを念頭に置いているということもあるわけですが、具体的に認証する場合には申請者にどの程度の具体的な表現を求めるのか、ある程度列挙するのか、その場合どんなものが書かせるのか。これ、いかがでしょうか。
○政府参考人(山崎潮君) 基本的に、裁判のルールで除斥とか忌避ですね、これ書かれておりますけれども、その辺のところはクリアしてほしいというふうに思います。
 それ以外に、この世界でありますと、やっぱり取引、過去に取引を通じて関係があったとか、あるいはその業務、業務の委託をした、あるいは受託をしたとか、そういうような関係にあるとか、そういうところについてもきちっとチェックをしていかなければ、その関係で不公正な手続が行われる可能性がないわけではございませんので、そういう点もきちっと定めてもらうということでございます。
○井上哲士君 そういう具体的なことについても列挙をさせると、こういうことでいいんですかね。
○政府参考人(山崎潮君) これは、やっぱり具体的にある程度理解できる程度に書いてもらわなければ、抽象的に書けばそれは一体何を言っているのかということが分かりませんので、ある程度具体的にちゃんと書いてもらうということでございます。
○井上哲士君 次に、第四号についてお聞きをします。
 申請者の実質的な支配者、子会社などを紛争の当事者とする紛争について、手続実施者に不当な影響を及ぼすことを排除する規定を設けると、ことを求めているわけですが、この四号の目的というのはどういうことなんでしょうか。
○政府参考人(山崎潮君) この目的でございますけれども、やはりこの紛争解決事業者ですね、これに対していろいろな実質的な支配、支配力を持っている者、あるいはその紛争解決業者が支配力を持っている、そういうところの団体ですね、そういうところについての手続をこの中で行うということになりますと、ある種、双方代理的な話にもなってくるわけでございまして、公正な手続の担保をすることがなかなか難しいということから、そういうような場合には、そういう影響力がないようなシステムをきちっと持っていると、こういうことを問うているわけでございます。
○井上哲士君 そうしますと、午前中の質疑で業界団体がADRを立ち上げるということも可能だということを言われていましたが、そういう場合はこの四号の対象になると、こういうことで理解していいんでしょうか。
○政府参考人(山崎潮君) 通常は、そのままストレートであればその影響力を及ぼすということになりますので、そういう場合にはその及ばないような措置をきちっと設けると、こういうことになって、対象になり得るということでございます。
○井上哲士君 対象になり得るということでありました。
 そうしますと、業界団体としては作ってなくても、例えばエアコンを作っているA、B、C、D、四社があって、それぞれが出資をしてエアコンに関する紛争を扱うADRを作ると、こういう場合はこの四号の対象になるでしょうか。
○政府参考人(山崎潮君) それも、それぞれがみんな利害を抱えているわけでございますので、基本的には一対一の場合とそれは同じ考え方だろうというふうに思います。
○井上哲士君 ちょっとよく分からない。一対一と同じ考え方で、この四号の対象になるという理解でいいんでしょうか。
○政府参考人(山崎潮君) 四号の対象になると思います。
○井上哲士君 分かりました。
 そうしますと、こういう排除規定、三号、四号もあるわけですけれども、実際、運用は認証後のADRに任せ切りということになりますと絵にかいたもちになりかねないわけで、これどう担保をすることになっているでしょうか。
○政府参考人(山崎潮君) これは、手続実施者ですね、手続の実施者がどういうような扱いをしていくかというところに懸かってくるわけでございますので、そこの手続実施者について、そこに不当な影響を及ぼすことのないような、そういう措置をしている必要があるということでございますので、具体的に言えば、例えば公正中立な弁護士が手続実施者になるという、弁護士に限らなくても公正中立な者ということでございますね。それからもう一つは、考え方は、独立した、調停委員会等の独立した権限を持って、その委員会で独自の行動をすると、要するにその組織全体からの影響を排除するような手続をきちっと持っていると、そういうようなことですね。そういうものを設けているということ、そういうようなシステムがきちっとできていることということでございます。
○井上哲士君 この基準に基づいて不公正な運用がなされないような厳格な仕組みとかが、と同時に、やはり利用者がある程度結果を予見できるような情報開示が非常に大事だと思いますし、参考人からもそういう御意見がありました。
 このADRのメリットの一つに非公開性というのがあるわけですけれども、公正性を確保するためにはやはりある程度の透明性が必要だと思うんですね。例えば、事業者対消費者など非常に力関係の違いがある場合に、個人情報とかプライバシーは保護をした上で、この機関が、大体こういうような紛争が持ち込まれて、そしてこういうふうな解決をしてきたという、そういう結果などもプライバシー保護をした上で開示をさせていくということが非常に大事だと思うんですけれども、この点、いかがでしょうか。
○政府参考人(寺田逸郎君) これは運用にかかわる問題でございますので私の方から答えさせていただきますが、一般論といたしまして、このADRについては様々な、プライバシーの問題ですとか業務上の秘密の問題ですとかございますので、そういう他人に秘匿しておかなきゃならない性質の情報ということには配慮しなきゃならないとは思いますが、ただいま委員から御指摘のありましたような、一般的に、抽象的に、どのような事件を扱っており、どのような傾向でこのADR機関としては業務を処理しようとしているのかというようなことは、これは利用者側からとりましては大変重要な情報でもございますので、そのような、統計的といいますか、客観的なデータということをADR機関の方が開示されるということは望ましいものだというふうに考えております。
 この法律には、十一条二項で必要な情報について開示を義務付けるという仕組みがございます。また、三十一条には法務大臣の方で必要な情報を公表の対象とするということがございますが、これらについては今後具体的に法務省令で定めるものですから、その際に今おっしゃったようなことを念頭に置きまして検討してまいりたいと、このように考えております。
○井上哲士君 ADR拡充・活性化のための関係機関等の連携強化に関するアクション・プランというのを調査室の資料でもいただいていますけれども、この中でも解決結果に関する情報の的確な提供の促進というのが非常に強調されているんですね。「国民が適切な紛争解決手段を主体的に選択できるようにするために」「各ADR機関が、利用者の個人情報や事業者のノウハウ等保護すべき情報に配慮しつつ、解決結果に関する情報を適切に提供することができる環境を整備する。」ということが強調もされておりまして、これ、各省が、法務省も参加をしておりますけれども、具体的な施策として速やかに検討開始ということになっているわけですが、これは既に、あれですかね、行政型ADRなどについてはこういう方向で具体化がされていると、こういう認識でよろしいでしょうか。
○政府参考人(山崎潮君) アクションプランでは確かにそのような取りまとめがされているわけでございますけれども、現時点でまだその成果物が出てくるという、その共通の成果物が出てくるということではなくて、それぞれのADR機関でそういう努力をしてもらうと、こういうことで今周知を図っているというところでございます。
○井上哲士君 その上でちょっと先ほどの答弁に返るわけですが、さっきのでいいますと、十一条二項の義務付けなどの項目にこういうことも入れていくことも検討すると、こういうことでよろしいでしょうか。
○政府参考人(寺田逸郎君) 検討の対象にすると、そのようなことでございます。
○井上哲士君 これは是非お願いをしたいし、そのことがやはりADR機関の信頼を持った発展ということにつながっていくと思いますので、是非お願いしたいと思います。
 次に、六条の第五号の問題ですが、いわゆる弁護士の助言が受けることができるようにするための措置ということを定めていますが、これは確認ですけれども、朝からマニュアルの作成ということが言われていますが、これを作成するということがこの措置の中身に入るんだと、こういう理解でよろしいでしょうか。
○政府参考人(山崎潮君) 客観性を出すためにこういうようなマニュアル等の基準を定めているということがその中の措置に入るという理解でございます。
 なお、ちょっと、先ほどの答弁で若干ちょっと足りないところがございますけれども、ちょっとよろしゅうございましょうか。
 六条の四号の実質的支配者のところで、先ほど大ざっぱな形では答弁させていただきましたけれども、この条文の中に括弧内にいろいろ書かれておりますので、例えば省令等で出資比率がどのぐらいとか持ち株がどのぐらいとかいうことで一定の基準を作るということでございまして、全部が全部そういう関係があるから駄目ということではない、そういうような基準はきちっと定めていくということでございます。例えば一〇〇%出資しているとか、そういうことになれば当然対象になり得ると思いますけれども、その持分の比率ですね、これが少ない場合には対象外ということもあり得るということでございます。
○井上哲士君 そうしますと、今の答弁にまた戻りますが、例えば四つの会社が均等に出資をしているというような場合は対象外になると、こういうことなんでしょうか。
○政府参考人(寺田逸郎君) この四条の括弧書きごらんいただきますと、いろんな形でこれが問題になりまして、トータルとしては実質的支配者ということでございますので、その一つとして例えば持ち株比率が問題になるわけなんで、先ほどおっしゃいましたような業界団体が、失礼、業界の加盟社が幾つか寄って一つのグループを作って、そこで申請人を出すというようなときにどういう扱いをするかということは、これは今後検討させていただきたいというふうに思いますが、一般論としてそういう問題もこの中に含まれるということは確かでございます。
○井上哲士君 先ほどの答弁では、そういう業界団体が立ち上げた場合には四号の対象になるんだという答弁だったと思うんですが、今のはちょっと、検討という、どっちなんですか。
○政府参考人(寺田逸郎君) 私の理解は、山崎事務局長の答弁は、そういう問題が性質上ここに問題として取り上げられるカテゴリーに入るということでございまして、集まれば必ずこれに、実質的支配者に当たるということを答弁したのではないというふうに理解しておりまして、私が申し上げましたように、それは、じゃどの程度ならここに入るかということは今後検討させていただくと、こういうことで、省令で定めさせていただくと、こういう意味でございます。
○井上哲士君 朝の参考人でも、消費者団体の方などからありましたように、やはり業界団体が立ち上げて、いろんな業界あると思うんですけれども、やっぱり業界ぐるみでいろんな消費者とのトラブルなんかを抑え込もうというようなことが心配されるようなやっぱり業界もあるわけですね。
 ですから、私は、ここはそういうことがないように、先ほどもありましたように、この条項の趣旨が公正な手段を確保するためだということからいいますと、やっぱりそういうやり方がないようなことにするということがADRの発展にもつながるわけですから、そこは是非厳格にやっていただきたいと思うんですけれども、その点、いかがでしょうか。
○政府参考人(寺田逸郎君) ここは、条文にもありますとおり、あくまでも実質的な支配者ということでございますので、おっしゃるとおり、その厳格にという意味は、実質的にそれを支配するかどうかということを厳格に考えるということではなくて広めに考えろという意味だというふうに理解いたしましたけれども、十分にその点は諸般の情勢を考慮して扱いたいというふうに思っております。
○井上哲士君 是非、消費者や利用者の不安を十分に考慮してやるようにお願いをしたいと思います。
 行ったり来たりしてあれなんですが、そうしますと、このマニュアルが措置の対象になるかどうかということ、もう一回確認で、よろしいですか。
○政府参考人(山崎潮君) このマニュアルの作成はこの措置の中に入ります。それは、手続実施者が個々の事件に関して自らの判断で必要がある必要がないということになるとばらつきがかなり出てくるわけでございますので、そこを客観的に担保するためにこういうものの作成を求めると、こういうことでございます。
○井上哲士君 その際には、そういうものがあるというだけじゃなくて、その中身についてもチェックをすると。取り扱ういろんな紛争によって求められるべき判断も違うかと思うんですが、そういうことも一つ一つきちっと中身も含めてチェックをすると、こういうことでよろしいですか。
○政府参考人(山崎潮君) やはり、どういう場合に弁護士の助言を受けるかという点については、余り粗っぽいものとか、ある助言を受ける場合が非常に例が少ないとかいうことになれば、それはきちっと指導をして、そういうことではならないということで、ある程度最低限のものはきちっとマニュアルとして用意をしていただくということにせざるを得ないと思います。
○井上哲士君 次に、先ほどもありました手続をやめる際の問題についてお聞きをいたします。
 特に、事業者と消費者とか、使用者と労働者とか、構造的に力の格差がある当事者間の紛争解決の場合は、この点が非常に大事になってくると思うんですね。例えば、事前に約款などに紛争があればこのADRで解決するということが書き込まれていた場合に、当事者が言わばその席に着くことなく他の解決手段を最初から選択をすると、こういうことは可能でしょうか。
○政府参考人(山崎潮君) これは、一応約款に入っていても、最終的にはこのADRで任意な、自主性を持って話合いをして合意をするということでございますので、そこについては最終的にそこのADRに出頭をしないで別のところだと言っても、それは自由であるというふうに考えております。
○井上哲士君 そうしますと、自由だということなんですが、六条の十二項では、紛争当事者が民間紛争解決手続を終了させるための要件及び方式を定めていることとありますが、要件と言われますと、何か当事者がこの手続をやめる際に理由を示す必要があるのかとも取れるわけですが、そのような条件が付くということなんでしょうか。
○政府参考人(山崎潮君) 手続離脱の自由がございますので、これは別に理由は要らない、出席しなければそれでもう終わるということになろうかと思います。ただ、たまたま何かの事情があって出席しないということじゃなくて、もう理由もなく出席をしないという場合ですね。それから、自分はやめますというときに、何でやめますと言うことは必要ないということでございます。
○井上哲士君 理由は必要ないということですが、実際にはADRで相談をしている途中に、やっぱりこれはいい結果が出そうにないということで裁判にしようと思っても、何か自分からADRでの解決を拒否をしたらそのこと自体が裁判などで不利になるんじゃないかと、こういうおそれからずるずると行くというケースもやはり消費者の方の中あると思うんですね。こういう自ら手続をやめるといった場合に、そのこと自体が裁判で不利になるというようなことはないということでよろしいですか。
○政府参考人(山崎潮君) それは、結論を左右することはないと考えております。
○井上哲士君 今の理由なくその手続を中止をできること、それから必要な場合は弁護士の助言を受けることができること等々は、これは第十四条で規定する説明義務の事項のうちに「認証紛争解決手続の開始から終了に至るまでの標準的な手続の進行」というのがありますけれども、これに入るのか。で、今の二点以外に典型的にここに入るものといえばどういうことがあるのか。その点、いかがでしょうか。
○政府参考人(山崎潮君) 今御指摘いただいた点については基本的にこの説明の中に入ると、説明義務の中に入るというふうに理解をしております。それ以外に、これ、裁判と同じでございますので、その手続が開始してから終わるまでのある程度イメージがわくようなその手続について説明をすると。それから、先ほども申し上げましたかもしれませんけれども、それだけではなくて、どのぐらいの費用が掛かるかとか、あるいはどのぐらいの期間が掛かるかとか、そういう点についても情報はきちっと説明をして、当事者がここに手続をゆだねるかどうか、その判断に資するような、そういうものについては説明をしていただくと、こういうことでございます。
○井上哲士君 最初に言いました、例えば約款に書き込まれていたということがあった場合などに、今一応手続的には説明をするということなんですけれども、実際上は力関係に差がありますとなかなか拒否ができないということもあって、事実上強制されてこういう和解に至るというようなことの場合に、約款に書いてあったんだからやっぱりやめれないと思ったということで例えば錯誤などの主張で取り消すと、これは可能でしょうか。
○政府参考人(山崎潮君) ちょっと具体的な事案にもよるわけでございますけれども、その内容がその合意に、合意の成立に影響を与えるような錯誤をもたらすというようなことでの民法上の無効原因になるということでございますし、またいろいろ脅かされてそれで最終的に和解をせざるを得なかったということになれば取消しというようなことにもなるわけでございますので、そこは民法上のその効力をどのように考えるかというところで決まってくるということでございます。
○井上哲士君 次に、労働紛争を扱うことについて何点かお聞きをしますけれども、この間、個別労働紛争の解決のために労働審判制度も作られまして、今審判員の選任だとか準備が進められておりますし、労働委員会の制度改善も随分積み重ねてきたということになっているわけで、しかも労働紛争については司法の場で随分いろんな判例が積み重ねられているということがあります。
 こういう、ある程度有効に活用されている、活用される機関が用意をされていますし、しかも新しい労働審判制度が立ち上がっていくというところですから、この分野であえてこういう民間ADRなどを作っていくという必要性が果たしてあるんだろうかと思うんですが、この点はどうお考えでしょうか。
○政府参考人(山崎潮君) 確かに、行政型のADRが労働関係でもございます。それから、労働委員会の方でも委嘱を受ければできるということになっておるようでございます。それから、当然、今度労働審判制度も設けたわけでございまして、様々な解決制度を設けているわけでございます。これについて、そこは利用していただくということにいたしまして、じゃ、それ以外のジャンルで民間で行う労働紛争の解決のADR、これのニーズが全くないかということになりますとそうでもないだろうということでございまして、今後そういうことを計画をしてやっていくと、そういう範囲もあろうかというふうに思いますので、それをあえてこのジャンルだけを除くとかどのジャンルを除くということにしませんで、今後世の中がどういうふうに変わっていくか分からないわけでございますので、そういう点も踏まえまして、あえてこの部分を除外するとか、そういう政策は取らなかったということでございます。
○井上哲士君 世の中どういうふうに変わっていくか分からないということでありますが、そうしますと、現時点でこの分野であえて民間型のADRなどを立ち上げていくような特段のニーズは把握をしていないと、こういうことでしょうか。
○政府参考人(山崎潮君) いえ、私、個別に、本当に具体的にと言われていれば、聞いておりません。
○井上哲士君 まあ、この法案全体そうなんですけれども、どうなるか分からないという部分が非常に多くて審議もしにくいところがあるんですが、私は、現段階でこういう具体的なニーズというのが把握をされていないことになりますと、いろんな知恵を集めてこの労働審判制も新たに立ち上げていくという中ですから、むしろそういうものの発展ということに大いに力も割いていくということが必要かと思うんですが、そういうところと、仮に今後立ち上がるとすれば、そういう民間ADRというのはどういう関係になっていくわけでしょうか。
○政府参考人(山崎潮君) 私、先ほど具体的にはというふうに申し上げましたけれども、個別具体的にはと申し上げましたけれども、そういうような予定もあるという、そういう点は聞いてはおります。ただ、具体的に、本当に個別にそのとおりになるかどうかということではないということでございます。
 それから、労働審判との関係でございますけれども、これは、労働審判はもう最終的には裁判で解決をしていこうというようなその前の前裁きのような事件が中心になっていくんだろうというふうに思われます。そういう点で、そこまで至らないもう少し少額のいろんな紛争等を、これを迅速に解決してほしいという要望もあるわけでございますので、そこはその民間型ADR、労働のADRと、それから労働審判、これの使い分けをしていってほしいと。労働審判は労働審判できちっとした対応をしてこれから立ち上げることになりますけれども、なかなか裁判所には行きたくないと、労働審判でも裁判所ですから、そういう方が結構おられるわけですね。そういうニーズにこたえるために、こういうようなジャンルでも必要性があるということでございます。
○井上哲士君 今年の五月に労働弁護団がADRについての意見書を出しておりますが、労働弁護団などは、この範囲に労働紛争を含めるべきでないという意見を言われております。
 この理由について、労働紛争の主な紛争形態は労働契約の終了、それから労働条件の変更に関することだと。その上で、改正労基法の十八条の二に、解雇権の濫用が条文上明定されたものの、労働契約法が存在しない現状において、その解決基準は判例法理にゆだねられており、かつその判例法理においても合理性、相当性、必要性、濫用性など一般的、抽象的要素の総合考慮によるとせざるを得ず、紛争の適切な解決には高度な労働法の知識と労働紛争実務の経験を要するものであると、これらの資質を欠く者にADR参画を許せば、判例法レベルとはほど遠い安易で妥協的な解決を広げ、労働者全体の権利水準の低下を招く危険があると、こういう指摘をされております。
 労働分野で非常にこういう判例法理の積み重ねがあるわけですけれども、そういう、将来できるとすれば、そういう民間のADR機関の解決とこのいわゆる判例法理、この乖離というのはどういう関係になっていくんでしょうか。
○政府参考人(山崎潮君) 確かにおっしゃるとおり、その身分関係に伴う法理というのは法律上具体的に書いてあるわけではございませんので、判例法理でかなり積み上げられているというのはそのとおりでございます。したがいまして、ここの判例の考え方、これが十分に分かっていなければならないということが当然前提になろうかというふうに思っております。
 したがいまして、この労働関係でADRも設けるとした場合には、やはりその辺の非常に高度な専門的な知識を要する分野でございますので、その事件の大きさにもよるわけでございます、それから軽重にもよるかもしれませんけれども、基本的には、そういう点についてはやっぱり弁護士の助言を得てその上で解決をしていくということにしないと、相当トラブルが発生するおそれもあるということでございますので、特にこの関係でそのいろいろなマニュアル等を作られる場合には慎重を要するだろうということでございます。
 いずれにしましても、判例の流れがほぼ固まっているところに、それと全然違うような解決、それが非常に相当でないというような状況とか、あるいは場合によってはそれは公序に反するというようなものも出てくる可能性もあるわけでございますので、そういうことのないようにしていくようなシステムをここの中でも持っているということで御理解を賜りたいというふうに思います。
○井上哲士君 そうすると、確認ですけれども、先ほどのあった弁護士に助言を求める場合のマニュアルなどで、法令そのものだけではなくて、そういう積み上げられた判例法理などについてもそういう助言などを求めるというふうなことが明記をされていくと、こういうふうに考えてよろしいでしょうか。
○政府参考人(山崎潮君) 具体的にどの程度書くかという問題はございますけれども、基本的な内容としては、その法律の中に具体的に余り書き込まれていなくて判例法理で決まっていくというジャンルについては、やはりその判例の流れとかそういう考え方、これが基本になっていくわけですから、全体としてはやっぱり法律の解釈とあるいはその適用という問題になってくるわけでございますので、これはもうその弁護士の助言の対象になっていくと、こういうことでございますので、そこのところはきちっとしたマニュアルを作成してもらいたいというふうに思っております。
○井上哲士君 この分野は、非常にそういう判例法理の問題、それから複雑な問題も多いわけですので、是非認証に当たっては、先ほど来言われ、ありましたように、こういうものがきちっと守られるように慎重にお願いをしたいと思います。
 最後に、このADRが本当にきちっと広がっていくかどうかについては、紛争当事者にそれぞれ、(発言する者あり)あの、今日の最後ですね、一番合った解決手段をどう示していくのかという、非常に大事だと思うんですね。この紛争は最初から司法で争った方がいいのか、それともADRにおいて和解を試みるのがいいのか、それも行政型がいいのか民間型がいいのか、適切な誘導というのは非常に大事だと思うんですけれども、その点で、今準備、立ち上げ、法律も通って立ち上げつつあるその司法ネットがその点でどういう役割を果たしていくとお考えなのか、その点お願いします。
○政府参考人(寺田逸郎君) 御指摘のとおり、日本司法支援センターを中心といたしまして、総合法律支援の体制を作るということが現在準備されておりまして、平成十八年の春に支援センターを立ち上げ、その年のまあ秋ごろに多分活動が開始されるだろうということを見込んで様々な準備活動を行っているところでございます。
 元々、司法ネットというふうに呼ばれたことからもお分かりになるように、これはまあ日本司法支援センターだけで行えることではありませんで、様々な機関、裁判所を中心とする司法機関ももちろんでありますが、弁護士会、司法書士会その他もございますし、またここのADR機関というのもその重要な一つの役目を担っていただく機関でございます。
 こういう機関が一体どういうことをそれぞれされるかということについて、特にADR機関については民間型のものについて情報が必ずしも現段階では十分でありませんので、司法支援センターの発足前に十分な情報収集を図った上、どのような協力体制を作れるかということを念頭に置いて準備を進めたいと、このように考えているわけでございます。
○委員長(渡辺孝男君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
   午後四時三十九分散会