第161回国会 法務委員会 第10号
平成十六年十一月三十日(火曜日)
   午前十時開会
    ─────────────
   委員の異動
 十一月二十五日
    辞任         補欠選任
     櫻井  充君     江田 五月君
     白  眞勲君     簗瀬  進君
 十一月二十六日
    辞任         補欠選任
     鰐淵 洋子君     浜四津敏子君
 十一月二十九日
    辞任         補欠選任
     井上 哲士君     大門実紀史君
 十一月三十日
    辞任         補欠選任
     山東 昭子君     秋元  司君
     大門実紀史君     仁比 聡平君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         渡辺 孝男君
    理 事
                松村 龍二君
                吉田 博美君
                千葉 景子君
                木庭健太郎君
    委 員
                青木 幹雄君
                秋元  司君
                荒井 正吾君
                山東 昭子君
                陣内 孝雄君
                関谷 勝嗣君
                鶴保 庸介君
                江田 五月君
                前川 清成君
                松岡  徹君
                簗瀬  進君
                浜四津敏子君
                仁比 聡平君
   国務大臣
       法務大臣     南野知惠子君
   副大臣
       法務副大臣    滝   実君
   大臣政務官
       法務大臣政務官  富田 茂之君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局刑事局長   大野市太郎君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        加藤 一宇君
   政府参考人
       警察庁刑事局長  岡田  薫君
       法務大臣官房司
       法法制部長    寺田 逸郎君
       法務省刑事局長  大林  宏君
       法務省矯正局長  横田 尤孝君
       法務省保護局長  津田 賛平君
   参考人
       東京都立大学法
       学部教授     木村 光江君
       弁護士
       日本弁護士連合
       会刑事法制委員
       会委員長     神  洋明君
       龍谷大学法学部
       教授       石塚 伸一君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○参考人の出席要求に関する件
○政府参考人の出席要求に関する件
○刑法等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆
 議院送付)
    ─────────────
○委員長(渡辺孝男君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 昨二十九日までに、櫻井充君、白眞勲君、鰐淵洋子君及び井上哲士君が委員を辞任され、その補欠として江田五月君、簗瀬進君、浜四津敏子君及び大門実紀史君が選任されました。
 また、本日、大門実紀史君が委員を辞任され、その補欠として仁比聡平君が選任されました。
    ─────────────
○委員長(渡辺孝男君) 参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 刑法等の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に東京都立大学法学部教授木村光江君、弁護士・日本弁護士連合会刑事法制委員会委員長神洋明君及び龍谷大学法学部教授石塚伸一君を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(渡辺孝男君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
○委員長(渡辺孝男君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 刑法等の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に警察庁刑事局長岡田薫君、法務大臣官房司法法制部長寺田逸郎君、法務省刑事局長大林宏君、法務省矯正局長横田尤孝君及び法務省保護局長津田賛平君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(渡辺孝男君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
○委員長(渡辺孝男君) 刑法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本案の趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○松村龍二君 自由民主党の松村龍二でございます。
 本日、刑法等の一部を改正する法律案について審議をするわけでございます。トップバッターを務めさせていただきたいと思います。
 今度の刑法等の一部を改正する法律案は、刑の重罰化を中心にし、また公訴の時効を延長するというようなことを主な内容としているというふうに承知いたしております。
 刑法は明治四十年に成立されまして、自来、刑罰について大きく見直しをするということはかつてなかった、絶えてなかったわけでございますが、このたびこの見直しをするということでございます。
 しかし、私もこの質問するに当たりまして勉強いたしましたところ、日弁連等からは、この刑法改正は拙速ではないか、もっと財産犯等も含めて全体的な見直しを待つべきであるというふうな意見があったようなふうにも聞いております。しかし、現実に犯罪の体感と、体で感じる感じといたしましては非常に犯罪が凶悪化しており、毎日毎日いろんなニュースが出てきてもびっくりしないような、一週間前の事件だったのか昨日の事件であったのか分からなくなるような凶悪事件等が続発しているということもありまして、国民感情等からもこの改正に取り組んだということは非常に時宜を得たことではないかというふうに思います。
 また、従来、刑法、法務省法制審議会の刑法部会、刑事部会というのは非常に慎重過ぎて腰が重く、まあ時代に対応するという能力に欠けていたんじゃないかなと個人的にも感ずるわけでございます。かつて、私はストーカー法案を起草する一員となったわけでありますが、そういうような問題に対しても刑法というのが非常に腰が重い、刑法改正が腰が重いというようなことを感ずるわけでございます。
 そういう意味において、今回の改正は時宜を得たものと思うわけでございますが、まず法務大臣に、この刑法等の一部を改正する法律案を提出するに至った背景について、最近の犯罪情勢等も含めましてお聞かせいただきたいと思います。
○国務大臣(南野知惠子君) ただいま先生がお話しになられましたように、本当に重大犯罪というものが続いており、大変な世の中だなということを実感するときもございます。
 先生のお尋ねの件についてのお答えでございますが、近年、人の命や身体に重大な危害を及ぼす凶悪・重大犯罪が後を絶たず、我が国の犯罪情勢は厳しい状況にございます。また、このような犯罪につきまして、現在定められております刑の長さが国民感情に合っていないという指摘がございました。また、昨年十二月に取りまとめられました犯罪に強い社会の実現のための行動計画におきましても、刑事法の整備が求められているところでございます。今回の法案は、そのような状況を踏まえまして、凶悪・重大犯罪に対し適正に対処できるよう刑法等の改正をするものでございます。
○松村龍二君 そのほか、この刑法が定められた明治四十年の日本人の平均寿命は、後ほどまたいろんな議論が展開されると思いますが、もう戦前は五十歳まで生きれば長寿というような時代から、平均七十六、八十というような時代でございます。そんなこともまた背景にあろうかと思いますが、このことについてはまた後ほどいろんな議論が展開されると思います。
 そこで、今回の法改正の中で、私は一番喝采をしたのは、時効が延長されるということでございます。ちょうど何年か前に私の地元におきまして、四国の松山でホステスが殺害された事件につきまして、整形手術等を行って逃亡していた被告人が時効成立まであと二十日というところで福井で逮捕されたと、ちょうど時効が成立する日に起訴された事件があったわけでございます。
 時効という制度は、逃げ隠れした被告人に恩恵を与えるための制度ではないというふうな判決内容もその後この事件について言及されておるというようにも伺うわけですけれども、このような時代に十五年姿を隠しておけば刑罰を、殺人を犯しても刑罰を問われないということは国民感情からすると非常に合わない。これは二十五年にしようということのようでありますけれども、私は今日、警察庁、後ほどいろいろ学者、日弁連の方等に参考意見をお聴きする、御意見をお聴きするわけですが、やはり現場でいろんな犯罪に直面している警察にもお話をいただくということがふさわしいんではないかなと、こういうことに思いますので、今回時効が延長されるわけでありますが、このことに関して警察捜査への影響や、警察はこの時効延長についてどういうふうに認識しているのか、お伺いします。
○政府参考人(岡田薫君) お答えを申し上げます。
 委員御指摘の中にもございましたけれども、重大犯罪の時効期間を延長いたしますのは、被害者やその遺族を含めた国民の平均年齢が延びたこと、あるいは新たな捜査技術の開発によって客観的証拠が確保できることなどの観点からというふうに理解をいたしております。
 この時効延長に伴い、事件発生時により進歩した捜査技術を活用するなどによって証拠等が新たに発見され、それに基づいて未解決であった事件の犯人が検挙される可能性というのは高まってくるのだろうと思います。
 また、警察といたしましては、そうしたことによって、あるいはその他の情勢から、捜査すべき事件がいろいろと増えているわけでありますが、そうした中にあって、組織や人員の効率的運用ですとか、あるいは優秀な捜査員の育成、科学捜査力の強化、さらには関係機関との連携強化などによって捜査体制を整備しつつ、最大限の努力をしてまいりたいと思っております。
○松村龍二君 延びた場合の心構えについて今お話ありましたけれども、時効がこのように延長されるということについては、好ましいことと考えているのか、どういうふうに評価しておられるんですか。
○政府参考人(岡田薫君) もちろん、罪種その他いろいろな条件という要素はあると思いますけれども、基本的には望ましいことであると思っております。
○松村龍二君 最近の新聞報道でも、被疑者が判明したけれども、時効が成立していて検挙ができなかった事件があるような報道もあると思いますが、その事件の概要をお伺いします。
○政府参考人(岡田薫君) 最近の事例で、時効成立後に被疑者が判明した殺人事件の例を申し上げますと、本年一月、窃盗罪で逮捕された男が昭和六十三年十一月に当時四十歳の女性を殺害したことを自供した事件、あるいは本年八月、男が昭和五十三年に女性を殺害したとして警察に出頭したことから発覚した事件などがございます。
○松村龍二君 殺人事件については非常に分かりやすいわけですけれども、ほかの凶悪事件についても時効が延びるということは、警察にとっても、捜査が永続して長期間捜査を継続しないといかぬというような大変な面もあろうかと思いますが、殺人事件以外の重要事件のこのたびの時効の延長については、好ましいとお考えですか、どうですか。
○政府参考人(岡田薫君) そのように考えております。
○松村龍二君 このたびの法律は、殺人罪等、凶悪事件の罰則が殺人罪だけにとどまらず、傷害事件、強姦事件その他一律に罰則が強化される予定でありますけれども、このような事件を現場で取り扱っている警察、また直接被害者等と対面する警察として、このたびの重罰化、罰則を強化するということについては、現場の感覚を踏まえましてどのように認識しているのか、お聞かせいただきたいと思います。
○政府参考人(岡田薫君) 法定刑が上がることによって、すべて個別の犯罪で必ずしも罰則が科刑上重くなるというわけではないのだろうと思いますけれども、様々な事案の中で、現場的な感覚からいたしますと、やはりかなり悪質な事案というのは多いように思いますので、そういったものについて上限が上がること等によって、より適正な科刑がなされるのではないかというふうに思っております。
○松村龍二君 このたびの改正が性犯罪、強姦、あるいはこの前スーパーフリー、どこかの大学の学生の、不良学生がパーティーを行って、そこに集まる女性に対して性犯罪をしていたというような事件等も契機にいたしまして、女性の人権を重く見るという最近の世相の中で、強姦罪等について非常に罰則が強化されるということでございます。
 性犯罪等の被疑者は再犯性が高いというふうに言われておりますけれども、事例的に見てそのような実態があるのかどうか、お伺いします。
○政府参考人(岡田薫君) 具体的な事例で報告を受けているもの、あるいは判決などで見るものなどによりますと、性犯罪については、かなり再犯性あるいは連続性というのは高いのではないかという印象を持っております。
 最近の事例でも、強姦等の性犯罪、前科三犯、それから検挙歴一回、合わせて四回の前科前歴ある者が、刑務所を出所して間がない十三年から十五年までの間に強姦を何件もやはり繰り返して、逮捕されるというような事例もございました。また、統計的に見ますと、平成十五年に検挙された成人、これは成人についてでありますが、同一罪種の前科の有無について取った統計を見ますと、強姦については同一罪種の前科ありというのは八・九%でありました。また、強制わいせつについては一一・五%でありました。それから、同一罪種ということではなくて、何らかの犯罪を犯したとして検挙歴を有する者、これは少年を含んでの統計を取っておりますが、強姦については四九・六%、強制わいせつについては四一・一%でございました。
○松村龍二君 全体を俯瞰する意味で、最近の性犯罪の発生・検挙状況をお伺いします。
○政府参考人(岡田薫君) 性犯罪の認知・検挙状況について最近五年間の状況を見てまいりますと、昨年、強姦事件、これは致死、致傷、未遂を含んでいるわけでありますが、その認知件数は平成十一年に比べてプラス六百十五件、三三・一%増であります。また、検挙件数は二百件、一四・六%の増加となっております。検挙率につきましては、十一年の七三・七%に対し、昨年が六三・五%と一〇・二ポイント減少しております。なお、十月末の統計では、若干対前年比の検挙率は上昇をいたしております。
 それから、昨年の強制わいせつ事件の認知件数でありますが、これについては、平成十一年に比べ、四千六百八十三件でありまして、これはプラス八七・六%と増加し、ほぼ倍増であります。検挙件数は五百五件、一四・九%の増加ということであります。また、検挙率につきましては、平成十一年の六三・四%に対し昨年が三八・八%と、二四%ほど残念ながら低下をいたしております。
○松村龍二君 性犯罪の検挙活動におけるDNA型鑑定の活用状況、これは成果が上がっているのかどうか、お伺いします。
○政府参考人(岡田薫君) DNA型鑑定につきましては、我が国内においてもそうですし、外国においても大変技術が進歩いたしてきております。
 そういう中で、血痕等犯罪現場に残された犯人のわずかな痕跡からでもその分析が可能でありますので、一般的に被疑者の特定に極めて有効であると考えられております。特に、性犯罪捜査におきましては、被疑者が、犯人が精液等を遺留するケースが多うございますので、その鑑定の有効性が高いとされております。実際に平成十五年中に実施されたDNA型鑑定のうち、三分の一強が強姦事件及び強制わいせつ事件の捜査に活用されているものであります。性犯罪捜査における典型的なDNA型鑑定の活用事例といたしましては、犯罪現場に遺留されている精液と被疑者本人のDNAが互いに一致するかどうかを確認して犯人の特定に役立てるといったものであります。
 そうした意味で、犯人特定に大変役立つ面があると同時に、ある事件では、同種手口が六件ほどございまして、ある被疑者が疑われたというケースで、そのうちの一件のDNAの型が違っていたということから、この事件についてはその者は犯人でないということが判明するというように、ある意味で証拠さえそろっていれば比較的早い段階で捜査線上から犯人性を否定するといった形でも有効であると、こういうふうに理解をいたしております。
○松村龍二君 時効が長くなっても、そういうような科学捜査がしっかり発達いたしまして犯人が特定される、検挙されてから取り調べたら証人の記憶が薄くなっていてなかなか有罪性が確定できないというようなことと違う科学捜査の発展というものがあるということを今お伺いしたわけでございます。
 それから、後ほど、今日午後からいろいろな参考人からお話をお聞きするわけですけれども、そういう参考人のあらかじめいただいた資料等を見てみますと、日本の治安というのは必ずしも悪くなっていないと。例えば、殺人事件なんかは昭和三十年、まあ確かに終戦後、戦争に敗れてすべてが混乱した時代に殺人事件その他が多かったわけでございます。そのころの殺人事件の、昭和三十年の殺人事件に比べて、現在の殺人事件の数は四分の一に減っていると、日本ほど殺人事件がどんどんどんどん減ってきた国はないというような指摘をしている学者もいるわけですけれども、警察の方として、そんなような意見もありますけれども、治安が悪化しているのかしていないのか、その辺の御説明を警察の方からお聞かせいただきたい。内閣等に治安対策を立てる場合にはもう壊滅的な治安状況だというような表現も一面であるわけでございますが、警察は現在の治安状況についてどのように把握しておられるのか、お聞かせいただきたいと思います。
○政府参考人(岡田薫君) 恐らく、治安状況全般についての見方というのはいろいろな視点があるんだろうと思います。本日というか、私どもの今の立場からいたしますと、刑法犯の認知状況の変化というような観点から申し上げますと、恐らく罪種なり手口によって随分違うところがあるのではないかと思います。
 御指摘のように、確かに我が国での殺人事件というのは、戦後の数字で見ますと昭和二十年代後半がピークで、三千件ほどの殺人事件がありました。それが現在千五百件ほどでございますので、そういった観点を取ると、その面は良くなっているのではないかという見方が一方では可能です。他方で、殺人事件も平成の初めごろですと千二百件ぐらいでしたから、その時代と比べれば悪くなっているというところがございます。また、強盗のような罪種の場合はどうかというと、戦後の混乱期、非常に多かったわけでありますが、その後ずっと減り続けたものがある時期から急激に増え始めて、そうした戦後の混乱期に近づいてくるというような要素とか、あるいは強制わいせつといったような罪種については、昭和四十一年からしかデータを取っておりませんが、その当時に比べて三倍ぐらいの認知件数になっている。
 そういう意味で、治安の良しあし、客観的な良しあし、あるいは感じ方、様々なとらえ方があると思うんですけれども、丁寧な分析をしていくと、やや個別的になる部分があるのだろうと思います。
 そういう意味では、一部の御意見として必ずしもそんなに悪くなっていないんではないかという意見もあろうかと思いますけれども、何よりも私ども目立つと思っていますのは、例えば強盗に絡んだ致死事件、致傷事件といったものが相当増えてきていると思っております。そうしたことの治安、そうしたことが治安の悪化に感じさせる要因というのは大変大きなものだろうと思いますし、全般的には、特にここ十年、二十年の間の治安状況の悪化というのは際立っているのではないかと、このように思っております。
○松村龍二君 外国人による犯罪、福岡の事件のように、従来の日本人、日本の国内だけの、日本人だけしか住んでいなかった、犯罪にかかわる人が日本人だけであった時代に比べますと、非常に残虐な、また突発的に、あるいは無関係の、怨恨その他の関係のない人がやられるという、被害者になるというような意味で、やり切れなさ、治安が悪いというような体感、感じを持つということもあろうかと思います。
 そういうように、凶悪犯罪がいろいろ、国の治安対策ということは非常に大事なわけでありますが、私の質問の最後に法務大臣にお伺いしますけれども、我が国の治安の回復を図るについて、今回のような重罰化あるいは公訴の時効を延長するということだけで十分と考えておられるのかどうか、法務大臣にお伺いします。
○国務大臣(南野知惠子君) 今回の改正は、治安回復のための基盤整備の重要な一環を成すものであります。しかし、単に罰則を強化するだけで治安の回復を図るのに十分であるとは考えておりません。政府は、昨年十二月、犯罪対策閣僚会議におきまして、総合的な犯罪対策といたしまして、犯罪に強い社会の実現のための行動計画、それを策定し、現在これを推進しているところでございます。
 今後とも、この行動計画の実施に全力を挙げて取り組み、我が国の治安の回復を図っていきたいと、そのように思っているところでございます。
○松村龍二君 以上で終わります。
 どうもありがとうございました。
○松岡徹君 民主党の松岡徹でございます。
 七月の参議院選挙で初当選させていただきました。初めての委員会での質問になりますが、ひとつよろしくお願いを申し上げたいと思います。
 私自身は全くの法律の専門家ではございませんので、我が会派の同僚委員はほとんどみんな専門家でございますから、視点が大分変わると思いますが、今回の刑法等の一部を改正する法律案につきまして今大臣からの答弁もありました。この法律が改正提案された理由として、治安の回復を図るということが大きな目的であると、しかしこれで治安回復がすべて図られるとは思っていないということをおっしゃられました。私も全くその思いでございます。したがって、この参議院の本会議での代表質問もさせてもらったときに拙速ではないかということを申し上げさせてもらいました。そういう視点で、今回の改正案について私なりにいろいろと質問をさせていただきたいというふうに思っているんです。
 今日の日本の犯罪状況について、私自身も憂えている一人でございます。治安回復は今までもそしてこれからも重要な課題であるということは、認識は一致していると思っております。ただ、その方法として、今回のように、刑罰を重くして、それだけで本当に果たして治安の回復が図られるのかどうか、先ほど大臣がおっしゃられました。私も全くそのとおりだと思っています。本当に回復するための課題、取り組むべき施策とは何なのかということを明らかにしなかったら、議論を尽くさなかったら、これは国民の体感治安の悪化を、悪化にこたえるといいますか、そういうことにはならないんではないかというように思っています。そういう視点で、今回提案された内容について幾つか御質問なりをしていきたいと思います。
 私自身は、前提は必ずしも刑罰を軽くすべきだということを言っているわけではありません。そういった議論が全く欠けているんではないかと、いや、不十分ではないかという意味で申し上げています。
 元々、罪を犯した人に対する刑罰を与えるということについては、全くそのとおりであります。しかし、その刑罰の年限が、例えば五年を七年にする、十年にするといったときに、その根拠は何なのかというのが全く分からないんですね。強盗を働いた場合、それに対して与えられる刑罰が何年になるのか、その根拠は一体何なのかというのが、全く国民意識からすればその根拠が分からないんですね。
 そういう分からない中で、いたずらに今の基準が低過ぎるといって重い罰を科すべきだという議論は、被害者の心情や治安の悪化に憂えている国民の感情からすれば分かるんですね。私もそうです、自分の身内や家族が被害に遭った場合、被害者の側に立った場合に、やっぱりそういうことを望むというのはそのとおりです。しかし、それだけで治安回復が図れるのかといえば、そうではないと思うんですね。正にこの国会は、そういった国民の感情にこたえると同時に、治安回復を図る施策を同時に明確に示すことが政治の責任だというふうに思っています。
 今回の提案理由も、治安水準、我が国の治安水準や国民の体感治安が悪化しているということと、凶悪犯罪その他の重大犯罪の増加傾向、先ほどのやり取りにもございました。あるいは、国民の正義観念に合致しているのかどうかということもあります。そして、国民の規範意識にこたえていくという立場で今回提案されています。それについて、先ほど言った観点から幾つか検証してみたいというふうに思います。
 それで、提案理由の一つになっています凶悪・重大犯罪、すなわち犯罪が増加しているということです。とりわけ、凶悪犯罪あるいは重大犯罪が増加傾向にあるとおっしゃっておりましたけれども、先ほど、参考人のそれぞれ学者の皆さん方の意見の中にも、幾つか分かれていると思うんですが、もう一度、本当に増えているのかどうかというのをどう考えているのかを聞かせていただきたいと思うんですね。特に、二〇〇〇年のデータのところで犯罪の件数がいきなり、一九九九年から見ればいきなり跳ね上がっているんですね、すべてにわたって。これはどうも、九六年に起きた桶川ストーカー事件がありましてですね、その事件の対応策として、捜査の仕方あるいは認知、原則すべての被害を受理するという方針に変わったというふうに聞いておるんですね。そういう意味で、そのときにいきなり一九九九年から見れば二〇〇〇年は飛び抜けて増えているんですね。
 そういうことからすると、受理した件数が増えたのであって、全体の犯罪件数としては今までとは変わらない、受理したからこそデータがぽっと上がって増えているというふうに言われているんではないかというふうに思うんですが、その辺についてもう一度、増加しているのかどうかということについてどう考えているのか、ちょっとお聞かせ願えますか。
○政府参考人(岡田薫君) 犯罪が増えているか増えていないかというのは相対的なものでありますが、それについては恐らくいろいろな、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、罪種でありますとか手口によって増えた要因は違うのだろうと思います。今おっしゃった御質問にありましたように、二〇〇〇年に増えた中にいろいろ処理を、きちっと処理するようになったという要因があるんじゃないかというのは、それは私はあり得ることだと思います。
 ただ、やはりその辺、その場合に、罪種ごとで、例えば殺人の場合はどうかとか、殺人のような犯罪ですと恐らくそういった要因というのはまずないだろうと思います。しかし、暴行とか傷害などのケースですと、かつてはお互いの話合いで解決するならそれでいいのではないかという形で処理されたケースの比率の変化といったものはあるのかもしれません。ですから、そういった要因があり得ないということではないだろうと思います。
○松岡徹君 もうちょっと正確に言うてほしいんですよね、こっちも聞いておるんですからね。
 要するに、犯罪の全体の件数としては変わらないけれども、桶川ストーカー事件以降、受理、原則被害届が起きたやつは全部受理するという方法に、方向に変わったと。その途端に、二〇〇〇年の犯罪件数としては、ぽっとデータとして、数としては増えるんですね。すなわち、今まで認知してこなかった、要するに受理してこなかった件数がたくさんあって、それをこの年代に認知したから増えたと。
 そういう意味では、犯罪の総数としては余り変わっていないのではないか。ここで言うように急増しているとか、飛躍的に増えているというふうな認識は皆さん方の集約の仕方で変わっただけで、全体の犯罪件数としては変わらないんではないか。先ほどもあったように、殺人の件数、特に凶悪事件と言われている殺人の件数はそんなに飛躍的に伸びているわけではないんですね。伸びているのは強盗という、その犯罪のところで出ているんですね。そういう意味では、データの集約するときに、皆さん方は自分のちょっと都合のええように集約しているんではないですかというふうな気がするんですね。
 要するに、犯罪というのは、警察が認知、受理したものだけが犯罪ではなくて、国民の側からすれば、受理されたかされてないかは別にしてでも、要するにそれも犯罪なんですね。それで、当事者同士で和解したとしても、それは犯罪として体感しているんですよ、国民は。ですから、データとしてはそれは表れないんです。
 ですから、そこのところを、先ほどお答えになりましたけれども、そういう部分もあると言っているんですけれども、その捜査の方法というか、受理の方針が変わったから数字が上がったということで理解していいんですか。
○政府参考人(岡田薫君) 私が申し上げたのは、そういった面が全くないというわけではないということでございまして、刑法犯の認知件数は明らかに増加しているところでありますし、かなり急激に増加をいたしております。
 その要因につきましては、恐らく、一つには社会の犯罪抑止機能が低下してきていることですとか、あるいは来日外国人問題から日本の社会が比較的無防備であるということが分かってしまったこととか、あるいは景気、経済の低迷ですとか、被害者意識の変化とか、様々な要因が絡んで認知の増加といったことが起きてきているのだろうと思います。
○松岡徹君 ちょっと、質問していることに答えてくださいよ。私は、数字として、皆さん方の提案理由の中に、犯罪の急増と言っているんですから、その急増のデータの中に、皆さん方の事前にいただいた資料の中にグラフで示しているでしょうが、数字も件数も。それを事前に私たちもらっているんですから、ここ十年間の犯罪の推移を、件数、推移を皆さん方は資料として、私たちにいただいているでしょう、渡しているでしょう。私たち、それ見ていますよ。その中で、なぜこの二〇〇〇年だけぽんと飛び抜けて増えているんですかと。それは受理を、原則被害を受理するという方法、方針に変わったから増えたんでしょうと言っているんですよ。その数字のことだけで言っているんですよ。そのことだけ答えてくださいよ。
○政府参考人(岡田薫君) 二〇〇〇年につきましても、数字が増えた要因というのはいろいろあるのだろうと思いますけれども、先ほども申し上げたような幾つかの要因が複合して増加をしていると、このように思っております。
○松岡徹君 複合しているというか、複合してとか、そういう複合した原因というのは今までにもあったんでしょう。ここで言っているのは数字で、数字で言っているんですよ、数字を。何でこんな数字がぽんと伸びたんですかということを聞いているんですよ。すなわち、このときに皆さん方の原則受理をするという方針に変わったから突然これ、数字、データとしては増えたんでしょうと言っているんです。今までからも複合的なとらえ方してきたんでしょうが、このときだけじゃないでしょうが。どっちですか、もう一回、もう一回答えてください。
○政府参考人(岡田薫君) 同じような答弁で恐縮なんですけれども、恐らく刑法犯の認知件数が増える要因というのは様々なのだろうと思います。
○松岡徹君 そんなん聞いてないがな。原則認知という方針に変わったからでしょうと言っているんです。
○政府参考人(岡田薫君) 二〇〇〇年というのは平成十二年でしょうか、十一年から十二年にかけて二百十六万が二百四十三万になっていますから、そういう意味では三十万弱増えていますし……
○松岡徹君 いや、そんなん聞いていない。
○政府参考人(岡田薫君) 十二年から十三年も二百四十四万から二百七十三万余に増えているわけであります。
○松岡徹君 私は、この二〇〇〇年だけが飛び抜けてぴゅっと増え、数字として、件数として上がっていますから、その上がっている原因は何ですかということを私は聞いているんですよ。
 その原因の一つに、原則受理という方針に変わって、被害が届けられたものは原則受理するということになったから、だから件数として、認知件数としては上がったんでしょうと言っているんです、原因を言っているんです。それをイエスかノーかで答えないで、何を、質問していないことを答えるのやめてくださいよ、時間限られているんですから。
○政府参考人(岡田薫君) 繰り返しで恐縮ですけれども、そういう要因がないと申し上げているわけではないのであって、そういう要因もあるのだろう、あり得ると思います。しかし、それだけではないいろいろな要因が複合して認知の増加という結果になっているのだろうと思います。
○松岡徹君 質問だけに答えてくださいよ。その複合的なこと、何も私は聞いていませんよ。
 だから、確かに、明らかにあの桶川ストーカー事件があった後に皆さん方は方針変わったんですよ。すなわち、原則すべて受理するというふうに変わったんですよ。だから、件数が上がっていく、認知件数が上がっていくのは、これは当然なんですよ。そのことは別に私は悪いことだと言っているんじゃないんです。その結果、こういうふうに上がってくるというのは、認知件数が上がったというのは、それはそれで私は駄目だと言っているんじゃないんですよ、原因は、それがね。それでこの説明が付かぬのですよ。なぜ二〇〇〇年、一九九九年から二〇〇〇年のこのデータがいきなり、これ数が増えるのかというのが分からないんですよ。だから、それがあるからでしょうと言うているんですよ。複合的なことを聞いているんじゃないですよ。
 それが一つの大きな原因であるということは、そのとおりでしょう。もう一回これは、もう一回そこだけ答えてください、イエスかノーか。
○政府参考人(岡田薫君) だから、そういう要因もないとは言えないのではないかというふうに申し上げています。
○松岡徹君 先ほどのやり取りの中でも、要するに凶悪と言われている殺人事件はそんなに増えていない。すなわち、横ばい程度なんですね。増えている、件数が増えているということを証明するといいますか、それを根拠にするのは強盗とかそういう犯罪なんですよ。ところが、それが二〇〇〇年のところでいきなり伸びている。
 ですから、これは原則すべての事件を受理するという方針に変わったために認知件数が増えたというふうに私は思うんですよ。そのことは別に悪くはないんですよ。認知件数が増えて、犯罪の数としては別にごまかしているわけではないんですから。しかし、過去十年のところからさかのぼったら、一九九九年以前は認知、原則認知という方針ではなかったですから認知件数としては少ない数でカウントされていますけれども、しかし犯罪の数としては変わらないでしょうと。
 そうすると、急激に増えたという認識はいたずらに不安をあおるだけではないですかと。もっと正確に私は状況判断をすべきだと。そういう意味では、提案理由の一つになっている犯罪件数が急増しているということの、この提案理由は余りにも一方的な側面でしか言っていないんではないですかと。だから、そういうことを私は言っているんです。まあ先ほど言ったように、そういうこともあり得るということですから、それが大きな原因だと私は思っています。指摘したいのはそういうところです。
 ですから、犯罪が減ったとは言っていませんよ、減ったとは言っていない。皆さん方のデータの作り方というのが、まあ極端に言えば、まあ改ざんしているとはよう言いませんが、皆さん方得手勝手に都合のええような部分だけをデータにしているんではないですかというふうに映るんですね。ですから、しっかりとそういう変化も、データが、件数が上がっていった、認知件数が上がっていった一つの背景ですということをちゃんと示さないとあきませんし、そうすると、急激な増加ということにはならぬのではないかというふうに思うんです。
 そこで、凶悪・重大犯罪ということがありますが、もう一つ、犯罪件数が増えているということと同時に凶悪・重大犯罪というのがありますね。この凶悪・重大犯罪とは一体どんな犯罪のことを言うのかというのをちょっと私も聞かしていただきたいと思うんです。
 それは、例えば犯罪白書が出されていますね。そこでは、殺人と強盗いうのを凶悪犯罪と呼んでいると。警察白書では、それに放火と強姦を加えて凶悪犯罪というふうに言っていますね。凶悪犯罪とはどっちなんですか、ちょっと教えてください。
○政府参考人(大林宏君) お答え申し上げます。
 凶悪犯罪の言葉の使い方でございますけれども、今御指摘のとおり、犯罪白書では殺人と強盗を凶悪犯と呼んでおります。今回の改正に際して申し上げている凶悪・重大犯罪とは、凶悪犯罪を中心として、実際には重い処罰の対象にされている犯罪のことを意味するものでございます。
 御指摘のとおり、凶悪犯罪については必ずしも決まった定義があるわけではございませんけれども、今回の改正対象のとらえ方という観点から申し上げますと、人の身体に攻撃を加えて、生命や身体あるいはその他の重要な個人的法益に危害を加えることを内容とする犯罪のことを考えております。それは、この種の犯罪が現実に国民の生命、身体等に重大な危害を加えることにより治安を悪化させるとともに、国民に深刻な不安と恐怖を与えるものでございますので、政府としてまずこの種犯罪への対策を考える必要があるとの認識によるものでございます。
○松岡徹君 その凶悪犯罪の定義というのは、先ほど言ったように非常に難しいんです。ところが、国民の受け方というのは、要するに凶悪犯罪というのは殺人とか、先ほど言ったように著しく身体に危害を加えるとか、そういう表現ではないんですね、理解の仕方としては。強盗殺人とか、その殺人の仕方も、人の殺し方も非常に残忍な手口で、この間、奈良で起きた有山楓ちゃんの事件もそうですね、非常に残忍な殺され方している。そうすると、国民の意識としては凶悪なというふうに映るんですね。私もそれは全く同意ですけれども、その凶悪・重大犯罪の定義がないというのはやっぱりちょっと、国民との意識がちょっと離れているというふうに思うんで、そこで、私も凶悪犯罪についてはそういう認識でありますけれども、その凶悪犯罪が増えた、その中の例えば殺人です。ただ、殺人を見ますと、そんなに件数は増えていないんですね。大体ほぼ横ばいといいますか、大臣が答弁のところでも、一・一倍ぐらいなんですね。
 この殺人を凶悪犯罪、まあ殺人が減らないというのは私も大変重大だと思いますけれども、それを例えば凶悪だというふうに言える殺人事件、要するに殺人事件の中身ですね、内容です。例えば、殺人事件の中に非常につらい事件があります。例えば、介護疲れで子供が高齢の親を殺してしまうとか、障害を持つ子供、我が子を殺してしまうとか、これも殺人なんです。これも殺人の件数にカウントされるんです。これ、凶悪、凶悪犯罪、凶悪事件として認知するのかといったら、ちょっと違いますね。でしょう。しかし、殺人の件数にカウントされるんです。
 私ね、それで重罰化するというのは、これ、本当に我々自身、殺人事件というこういう重大事件を減らしていくような社会にしていかなあかぬということは全くそのとおりでありますけれども、全部重大だ、あるいは凶悪事件の定義というものが非常にあいまいで、しかもその重大・凶悪事件だというふうに定義されている殺人の中には、介護疲れでとかあるいは障害を持つ子供を殺してしまったりとか、こういう悲惨なというか、要するに、もっと違うところに原因があるような事件がありますね。この辺についてどういうふうに考えたらいいのか。
 また、大臣も、どういうふうに、こういった殺人事件の中には、件数の中にはそういった事件も含まれていますよと、それも含めて凶悪という、ここで言う定義の、まだ定義自身があいまいですけれども、いう言い方でそういった事件も入れるべきなのか、件数としては殺人事件ですから入れますけれども、それを凶悪と言えるのか、そのちょっと考え方、見解をちょっと聞かせていただきたいんですが。
○政府参考人(大林宏君) 今の凶悪・重大犯罪の定義といいますか、今委員が御指摘のとおり、殺人についても同情すべき事案というものはございます。
 一応、私どもの今回の法改正でのとらえ方は、構成要件といいますか、犯罪の中でも比較的といいますか、重い犯罪を割合と定型的にとらえております。ですから、今度の定義がすべてだというふうなものではなくて、例えば、先ほど定義の問題でありました、犯罪白書なんかで強盗罪と殺人罪とらえていますけれども、強盗罪の中には、例えば強盗強姦とか強盗殺人とか、要するに犯罪同士がまたがったようなものも当然入るわけでございます。ただ、今回の改正では、必要性、従来の刑が軽いんではないかという指摘されているものですから、そういう大きな枠の中には、全体からすれば一部ではないかと、こういう見方もあろうかと思います。
 もう一点は、今先生がおっしゃるように、その犯罪の中でも軽い形態があるじゃないかと、それを凶悪・重大犯罪と言うのかと、こういう御指摘だと思います。
 ただ、それは、先ほど言いましたように、一つの類型的に比較的重い犯罪で、身体、生命に直接攻撃を加えるようなものを主体と今度はしておりますので、一応それは殺人、同情すべき殺人でも凶悪・重大犯罪には入りますと。ただし、量刑の面で、例えば執行猶予は付けるような形の手当てをしていくという、そういう事案があることはもちろん私ども踏まえておりますので、ただ、呼び方としては一応その類型には入るということで御理解いただきたいと思います。
○松岡徹君 今回の提案の趣旨の中に、重大・凶悪犯罪が増加しているというふうに言っているんですね。その増加のデータとして出されるデータの数の中にはそういう事件も入っておるんです。ちょっと混同しているんですね。
 ですから、それもそういう形でカウントして、だから刑罰を重くするんだという理由でいくと、ちょっと余りにも荒っぽい言い方ではないかというふうに私は思うんですね。そのことだけは指摘しておきたい。だから、データ、この提案理由の中に言っている、一山何ぼ、一把一からげのような議論ではなくて、しっかりと一つ一つの事件の背景とか原因とかというものを吟味しなくてはならないと思うんですね。
 そこで、先ほどもありましたけれども、今回の提案理由では、治安の回復に努めていかなくてはならないと言っています。そして、なぜこう治安が悪化しているのかという原因の中に、犯罪の質の変化というのが先ほどもありましたですね。私も全くそのとおりだと思うんです。
 国民の、体感治安の悪化と感じる国民の意識は、一つはなぜそういうふうに思うのかというのは、非常に、先ほど言ったああいう事件ですね、奈良の有山楓ちゃんのようなああいう事件が、知るわけですね。一つは、そういう意味では、昔からもそういう残忍な事件はあったんですけれども、今はメディアというこの社会の中で、もう寸時にすべての全国の国民がそのことを知る、共有できるんですね、現状としては。まるで身近な問題として体感できますね。
 ですから、一つは、やっぱり体感治安の悪化の原因は、私は、そういった知ることができるようになった、国民が身近にということで、件数ではなくて、そういった事件の、しかもメディアで放送されるのは、そういうそれこそ重大な凶悪な事件をやられますから、ですから大変な関心を持ちますし、そういう事件が報道されると、今日もまたかというようになるんですね。件数としてはそんなには増えてもいないのに、そういうふうに感じてしまうというメディアのことがあると思います。
 それと、もう一つは、発生場所とかあるいは犯罪の質が変わってきます。すなわち、強盗とか、今までは都会で起きていた、集中的に起きてきたものが地方に起きるようになったとか、あるいは最近では、例えば青少年によるひったくりがありますね。体感治安が悪化したと感じているこのアンケートの中にも、六十代以上の人が治安が悪化しているということに感じているという人がたくさんおります。それは、青少年によるひったくりとか、あり得なかった、私ところの地域にはそんなことはなかった、昔はと。うちの村ではかぎも掛けなくてというような、こういう社会の中でもそういう事件が起きるようになったために体感治安が悪化したと感じるというのはあると思うんですね。
 ですから、そういうところもしっかりと分析しなくてはならないと、その上で総合的な対策を打つべきだというふうに私は考えますけれども、どう思われますか、大臣。
○国務大臣(南野知惠子君) 本当、先生のおっしゃること十分理解できると思いますが、犯罪に関する分析といたしましては、例えば法務省の法務総合研究所において毎年作成しております犯罪白書では、平成十四年と平成十五年とにそれぞれ、暴力的色彩の強い犯罪の現在の動向と、現状と動向ということだとか、変貌する凶悪犯罪とその対策ということを特集として取り上げておりますが、そこでは、犯罪の質的特徴として、犯罪が凶悪化、集団化しており、その被害も深刻化していること、また犯罪の主体が一般の人に拡散するとともに、地域性が希薄になりつつあることなどが指摘されております。それは、今先生がおっしゃったように、都会だけじゃなく、地域、田舎にも、かぎも掛けずに寝ていたと、そういうような状態から、やっぱりかぎを掛けて寝なきゃ危ないねという状況まで地域性が希薄になりつつあるというところだと思います。
 また、政府は、昨年十二月、犯罪対策閣僚会議におきましても、各種の分析などを踏まえながら、総合的な犯罪対策として、犯罪に強い社会の実現のための行動計画、これを策定いたしましたが、その中で、基盤整備の一つといたしまして、凶悪犯罪等に関する罰則の整備が盛り込まれております。今回の法整備はこのような分析や検討を踏まえて作られたものというふうに考えております。
○松岡徹君 正に、治安の回復を図るために今回の刑法の重罰化を提案するというのは、私はやっぱりそういうところの議論をしっかりした上で、あわせて、刑罰は何年がいいかという議論にすべきだと思うんです。
 様々なアンケートとか国民の意識を調べたところ、犯罪が増えている原因に、刑罰が低いからだ、刑罰が軽過ぎるからだというのはまだわずか三割なんですね。ですから、治安が悪くなったという原因は、必ずしも刑罰を上げたからといって回復するとは思っていないんですね、国民は、必ずしもね。ですから、そういった、今言った、大臣言われた議論がしっかりと国民の前で明らかになるような手だてを示さなかったら、私は、治安回復を目的とする今回の改正はその目的の半分も達成できないだろうというふうに思います。
 そこで、具体的に今回の提案の大きな動機になったのは、先ほどもありましたけれども、早稲田大学のスーフリによる集団強姦事件とかが大きなきっかけになりました。
 南野大臣は、まだ法務大臣になられる前に、与党のプロジェクトの中で、強姦罪に対する刑が軽過ぎるというので積極的に提案されてということを聞いていますけれども、その強姦罪に対する今回の改正も含め、南野大臣のそのときの思い、ちょっと聞かしていただけますか。
○国務大臣(南野知惠子君) 先生がおっしゃるように、やはり強姦罪、特に話題としました。浜四津先生と与党のプロジェクトを作ってやったわけですけれども、集団的な問題ということも一つ大きなプレッシャーになることがございます。単独よりも重圧化が課せられるわけでございますので、そういうことについても新しく項を起こしてしていただきたいと、そういう要望もございました。
○松岡徹君 私は、大臣のその当時の思いといいますか、それで起こした行動については敬意を表したいと思うんですね。
 ただ、今回の法案でその強姦罪について刑罰を重くしています。今までなぜ軽かったのかということなんですよ。それ、どう思われます。
○国務大臣(南野知惠子君) 先生がおっしゃるように、その問題につきましては、明治四十年に現行法が制定されている過程では、帝国議会での修正により強盗罪の法定刑が引き上げられ、その結果、強姦罪の法定刑の方が強盗罪より低くなったものというふうに承知いたしております。
 これは、その当時の強盗をめぐる犯罪情勢の認識などによるものであろうかと思われますが、その後百年を、百年近くを経過して、御指摘のように刑法においては女性の人権が軽く取り扱われているのではないかと、その御指摘が次第に強くなってきたものと思っております。
 もとより、女性の人権が十分に保護されることが重要であること、当然でありますけれども、強姦罪以外でも暴力的性犯罪においては女性が被害者になることが多く、女性の人権を保護するという観点からも今回の改正は重要なものであるというふうに思っております。
○松岡徹君 今言われたように、その女性に対する人権というものが非常に軽んじられていたと、それが強姦罪の刑罰を低くしている大きな背景にもなっていたというふうに私も思います。ですから、今回強姦罪の刑罰を上げるということは、強姦罪というのは非常に悪質な犯罪ですよということをしっかりと世に意思表示するといいますか、そういう意味では私は大事だと思うんですね。
 ただ、問題は、低かった原因の一方で、女性の人権というものがこの強姦罪というものをどういうふうにとらえていくか。すなわち、強姦罪の刑罰を重くして、そしてこの強姦罪に対する罪を、犯罪を抑えていくといいますか、抑止していくということは当然ねらっていきますけれども、最近でこそ強姦罪の認知件数は増えていますけれども、全体としてはやっぱり低いんですね。すなわち、私は、認知件数自身は氷山の一角だと思うんです。氷山の一角だと思うんです。なぜ氷山の一角になるのか。これ、刑罰を重くしたからといってこの強姦罪、レイプ、これが認知件数として、しっかりと犯罪として抑止していけるような状態を作ることができるかどうか。刑罰だけを重くしたってこの強姦罪が減らない、犯罪が減らないということになっては、これは意味がないんですね。
 ですから、今言ったように、この強姦罪の低かった原因は、一つは女性に対する人権意識が非常に低かったということが一つの大きな背景であるということです。同時に、それが、被害を届けていくといいますか、被害として強姦罪として成立するような状況に行き着かない、正に多くの部分で隠れたままになっていると、そこをどういうふうに今回の改正で引き上げる、引き上げることができるのかどうか。どう考えられているのか、それは。ちょっと聞かしていただけますか。
○国務大臣(南野知惠子君) その問題は大変難しい課題であろうかと思いますが、この前、DV法を作らせていただきました。それによって、DV法がこういうものであるということが国民に認知されることによってその被害者が声を出してくるようになってくると、そういう女性がだんだんと変容していく、そのことも私は期待したいと思っております。
○松岡徹君 そのとおりです。被害を受けた女性がちゃんとその被害を届けていくといいますか、私は被害を受けたということをちゃんと受け止めるまた体制も要ると思うんですね。
 私は、今回のこの強姦罪、要するにあの事件が、スーフリの事件が大きな今回の改正理由の背景の一つ、原因になったということから考えますと、やっぱりその辺の議論をしっかりしてほしいと思うんです。そうでないと今回の改正は強姦罪には余り効かないんではないか、要するに抑止とか、あるいは救済するとかいうことにはならないんではないかと思うんです。
 強姦罪は精神の殺人だと言われているんですね。強姦の被害を受けた人が警察に行く、被害届を出しに行く、それを証明するのに、そこで二次的な人権侵害というのが起きる可能性があるということは昔から指摘されてきたんですね。ですから、このことを併せてしなかったら氷山の一角のままではないかというふうに思うんですね。
 そういう意味では、警察が、強姦罪について昔からそういうふうに言われていますから、例えば女性の警察官を増やしてその被害を聴くのに女性警察官で対応するとか、あるいは専門家のカウンセラーを置くだとか、そういうふうなことは当然されていると思うんですね。その辺の強姦被害について警察の対応としてどの程度考えられているのか、今の現状、簡単にちょっと。
○政府参考人(岡田薫君) 御指摘のとおり、犯罪の中でとりわけ強姦等の性犯罪というのは被害者に対して大きな精神的負担を与えるものだろうと思います。
 そうしたことの軽減を図るため、これまで警察としては、性犯罪一一〇番といった相談電話や相談室を設置したり、あるいは証拠採取に必要な用具の整備、性犯罪捜査証拠採取キットなどと言っておりますが、そういったものの整備も行っておりますし、それから、御指摘ありました女性警察官の性犯罪捜査員の指定のほか、性犯罪捜査指導員、あるいは性犯罪捜査指導係の設置などを行っております。ちなみに、女性捜査員の数につきましては、性犯罪のための女性捜査員の数につきましては、平成十二年三千百五十三名であったものが、平成十六年には四千五百七十二名になっております。
 そのほか、迅速かつ適切な診断、治療、証拠採取等を行うために産婦人科の先生方との連携を強化したり、あるいは、そのほか男性警察官に対しても様々な研修、教育といったものを施しているところでございます。
○松岡徹君 是非その対応を、要するに女性が、よくあるんですけれども、私たちも女性団体からもいろいろ意見聞きますけれども、被害を受けた女性が強姦の被害を受けたということを証明するためには死ぬ気で抵抗せいと言われるんです。すなわち、死ぬ気で抵抗しなかったら強姦罪は成立しない。要するに、ちょっとでも力を緩めたりすると、あなたも同意したんではないのかとか、こういうふうに言われるんです。
 せっかく刑罰を、強姦罪の刑罰を上げることによって強姦罪の罪の重さ、重大さというものを社会に認知さしていくということもありますけれども、しかし、実際にそれがそこに行き着くまでにいかないという現状をどう思うかということなんですね。やっぱり、今回の刑法でこういうふうな視点で強姦罪の刑罰を重くしましょうという意味は、やっぱりそこを救えるような状況をどう作るかということがなければ、何のためにこれ改正するのかということになる。
 それで、今、現状聞きましたけれども、しかしまだまだ、九六年のそういう、警察本部長による犯罪の被害者等に対する援助の実施に関する指針というのが一九九六年に出されていますね。それでずっとされていますけれども、しかし、まだまだ、現状を見ますと、男性警察官が対応するというのがまだたくさんあると思うんです。ましてや、そして精神の殺人と言われている事件でありますから、カウンセラー、とりわけ今問題になっているのがPTSDですね、心的障害といいますかね、それを一番、性犯罪を受けた人、被害者は被っていると。そのPTSDの危険性を重く持っている性犯罪被害者の人たちに、被害届を出して、そして起訴にまで行く、その捜査の段階というのは極めてデリケートな対応が必要だと思うんですね。そうでなかったら、今回のところには行き着かないだろうというふうに思うんです。
 やっぱり現状はまだまだ男性警察官の対応ですとか、そういうカウンセラーも、民間のカウンセラーにも委託をしていると言っていますけれども、必ずしも十分ではないと思うんですが、その辺を強化していくといいますか、そういう考え方はおありなのかどうか。
○政府参考人(岡田薫君) 御指摘のように、確かに警察官の中、まだまだ女性警察官少ないのだろうと思います。
 先ほど申し上げましたように、性犯罪捜査員につきましては、十二年の三千二百名に対して現在その一・四倍程度になっております。また、女性警察官そのものの数につきましては、平成元年が約四千百名で、全警察官に占める割合は一・九%でございました。それが現在は約一万八百名で四・四%となっておりますが、今後も女性の能力あるいは特性を発揮することの重要性というのはますます高まっているのだろうというふうに認識しておりますので、引き続き女性警察官の積極的な採用に努めてまいる所存でございます。
○松岡徹君 もう、ちょっと時間がありませんのでこれ以上聞きませんが、是非、海外の事例、アメリカとかイギリスとかの事例は、結構それはそういう体制整えられているんですね。専門官がいて、しかも、取調べといいますか被害の状況を受けて聴く、事情聴取する部屋を整えたりとか、あるいは専門のそういう精神科医でありますとかいうものもきちっと整えています。ましてや、その被害を受けた女性が警察へ行くことすらなかなか行きにくいと、だから、だれかを付添いで、付いていくとかいうような様々な体制を整えているそうでございます。
 今までやっていることが決して駄目だと言うてるつもりはありませんが、この時期にそういう決意を持たれたんですから、大臣も与党のプロジェクトでこの強姦罪に対する提言もされてきたわけでありますから、そこにもっと力を入れてほしいというふうに思うんですけれども、大臣のちょっと決意を。
○国務大臣(南野知惠子君) 委員からもいろいろな御提案がございました。それらを踏まえながら今後しっかりと検討していき、そういう問題点が提出しやすいような環境を作っていくということが社会的に必要であろうかなと思っております。
○松岡徹君 是非ひとつよろしくお願いしたいと思うんです。
 そして、今申し上げてきたように、今回の法律提案の目的といいますか、犯罪抑止、治安の回復、そして犯罪を抑止していくということだと思うんですね。衆議院の参考人の方の中にもいろいろ言われていました。今回、刑法を重罰化することは一つのメッセージ効果があると言われていますね。抑止していく。本当に抑止できると、抑止効果があるというふうにお思いなのか、どうですか。
○国務大臣(南野知惠子君) 抑止効果については、これも大きな難しい課題であろうかというふうに思っておりますが、犯罪は社会における人の行動であります。そういった刑事法の改正については、自然科学の分野からもそのような効果が計量的に算出できないものでありますけれども、やはり抑制効果と、犯罪を抑止するという機能があるものと私は信じて、この法案の成立及びその後の実行を、行動あらしめたいというふうに思っております。
○松岡徹君 人間だれしもそうですけれども、私たちも子供のころから、人の物を取ったら警察に捕まるよと、刑務所へ入れられるよというてね、そして、社会規範として、犯罪というんですかね、そういう強盗とかそういうふうなことをしては駄目だというふうに習うんですね。しかし、それで必ずしもなくなるんではなくて、そういうメッセージ効果はあると思います、確かにね。しかし、それで犯罪が抑止されるかどうかというその抑止効果から考えると、これだけでは本当に抑止の効果は、まあ先ほど大臣おっしゃったように、それだけではないんだと、治安回復のためには、今もおっしゃられた。ですから、その辺の議論が、今回そういう提案が欠けているというふうに思うんです。重罰だけやって、そのもう一方のその視点、今言った視点ですね、その辺の取組といいますか、政策というものの提案が欠けているというふうに思うんですね。
 今回の法律の目的は正に犯罪の抑止でありますし、治安の回復が目的であります。しかも、国民の正義意識というのは、正義感というのは、必ずしも罪を犯した者にちゃんと罪を償えということだけではないです。正義感というのは、こういった犯罪が起きないようにどうするのかということも同時に国民の正義感としてはあるんです。二度とこんなことが起きないようにしていかなくてはならないというのが国民の正義感の中にはあると思うんですね。そして、その被害を受けた被害者たちを救済しなくてはならないという、これが国民の正義意識、正義感だと思うんです。これにこたえるためには刑罰を重くするだけではちょっと不十分だと思うんです。その辺が欠けているというふうに思うんですね。そういう意味で、抑止効果が本当におありと思っているのかというふうに今聞かしていただいたんです。
 私は、抑止の効果として大事な点は、正に特別予防、すなわち矯正教育とか、再犯率をどう、いかに下げていくかということです。今回の法改正の提案で一つ懸念されているのは、その矯正教育である矯正局、すなわち刑務所の過剰収容状態が問題になっています。そういう意味では、この矯正教育の重要性というものをどう考えているのか。再犯率は今何%か。全体としてはまあ大体五〇%ぐらいですかね、再犯率はね。すなわち、これはずっと横ばい状態ですね。再犯率が下がってない。ですから、罪を重くしても、そして刑務所へ長いこと入れても再犯率は下がらない。すなわち、特別予防という政策、考え方というものをしっかりと議論をしなかったら、罪を重くしただけではこれ再犯率下がらないと思うんです。
 私は、今回の法律の提案の目的である治安回復と犯罪抑止と言うならば、その特別予防、すなわち矯正、再犯率をどう下げていくかということについてしっかりと言わなかったら駄目だと思うんですね。それについて、考え方どうですか。
○政府参考人(横田尤孝君) お答えいたします。
 今委員が御指摘ございましたように、再犯率は横ばいであると。私どもは矯正の立場でございますので、厳密な意味での再犯率ということではございませんで、こういう行刑施設に、行刑施設、刑の執行を終えましていったん社会に戻った人が再び行刑施設に入ってくるかという意味での再入率ということで考えておりますけれども、おっしゃるように、最近の統計によりますと、出所してから五年以内に、全部もうおしなべて言いますと、四五、六%の者がまた刑務所に戻るという現実がございます。
 私どもとしては、何とか矯正の立場において、いったん社会に出た者が再び戻らないように、あらゆる教育訓練を含めて、ならないようにということで努力してまいりましたけれども、しかし、それらの数字が示しますことは、これで十分よしというふうに私どもも考えてございません。
 先般、委員も御存じかと思いますが、昨年、行刑改革会議というものがございまして、提言がございました。そこにおいても、やはり教育の充実ということが提言されております。
 私どもは、今後とも受刑者の特性とか問題性に応じたより効果的な教育プログラムの実施に努めますとともに、その社会資源の活用を推進するなどしての矯正教育の充実を一層図ってまいりたいと考えております。
○松岡徹君 私の申した指摘は大体別に否定できないと思うんですけれども、今申し上げたようにね。だからこそ、例えば今回の法改正で心配するのは、今の日本の刑務所の過剰収容の状態なんです。これで刑法を重罰化することによって過剰収容が今後も予測されるんではないかと。過剰収容の予測というのをどういうふうに考えられているのか、ちょっと。
○政府参考人(横田尤孝君) お答えいたします。
 今回の法改正によって過剰収容が生ずるのかどうか、そしてまたどの程度生ずるのかということにつきましては、率直に申し上げまして、犯罪というのは人の行動で大変予測し難いものであると。それから、何といいましても、この収容といいますのは、犯罪が発生しまして最終的には裁判、有罪判決の確定といいますか、実刑の判決を受けたもの、確定によって決まるものでございますので、そういった裁判も途中に入ることですので、なかなかはっきり言って予測し難いというのが結論でございます。
○松岡徹君 予測できないというのは、数字では言えないかもしれぬけれども、はっきりしているのは過剰収容、要するに収容者は増えるという、これは当たり前ですわ。どれぐらい増えるかというのは数字では今言えないかもしれないですけれども、今でも過剰収容なんです。今回、刑を重くしたら当然更に過剰収容になっていくだろうというのは、これはだれもが予測できます。それは間違いないですね。大臣もそう思われます。
○副大臣(滝実君) ただいま矯正局長から御答弁申し上げましたけれども、基本的には、やはりこの過剰収容というものが減るか減らないかというよりも、そういう現状維持あるいは少し上がってくるということも覚悟しながらやっぱりこの問題は対処していく、そういうような委員の御指摘だろうと思います。
○松岡徹君 時間がないので。
 やっぱり過剰収容になるんですよ。今回の重罰化すれば、過剰収容になるんです。しかし、法律の目的である治安回復とか犯罪抑止ということからすれば、特別予防という取組は非常に大事である。すなわち再犯率を、要するに再入所率ですか、皆さん方の言い方は、我々からすれば再犯率をどう下げるかとかいうことなんです。その役割としては、刑務所での矯正教育というのが非常に大事です。その刑務所が過剰収容になって、そのことが果たせるのかどうかということなんです。
 先ほど言ったように、犯罪の質、中身によって、同じ殺人でも全く違うものがあります。あるいは強盗でもそうです。すなわち、矯正教育というのは極めて大事なウエートを占めてくる取組だと思うんです。だからこそこの手だてをしっかり打たなかったら、そのことと併せて刑罰はどうあるべきかという議論をすべきなんです。私たち自身で、率直に言いますけれども、今まで五年の刑罰やったやつを十年にしたからといって、この十年にする根拠は一体何だ、五年とは何を根拠にしているのか、よく分からないです。刑務所の矯正教育からすれば、例えば十年間の刑が下りたとしたら、その間に刑務所の中で矯正教育するわけですから、正に刑罰の長さによって矯正教育プログラムが変わってくると思うんですね。でしょう。そういう意味では、矯正行政というもの、教育というのを是非重要視してほしいと思うんです。
 それで、本会議でも申し上げましたけれども、名古屋刑務所の豊橋支所で、あれは和姦だと言っていますけれども、そんな和姦なことあり得るはずがない。女性は収容者ですよ。妊娠させた男は看守部長ですよ。しかも、それが豊橋支所内で行われている。それは合意だと、合意の下に、そんなふざけた話じゃないと。私ね、そういうことを見るにつけて、矯正教育が大事であるにもかかわらず、実は今、既存の刑務所の矯正教育を担うべき職員たちのモラルといいますか状況は、大変な状況になっているんですよ。
 だから、刑罰をこれだけ上げる前に、是非そういうことにまず手だてを打って、そして刑罰はどうあるべきか、年数はどうあるべきかということになるべきではないかと。だから拙速だと私は思うんです。しかし、まあ今回出ていますから、しかしそれは是非、そのことについてどう思われるのか、矯正教育、大臣。
○国務大臣(南野知惠子君) 先生仰せのとおりでありますが、省を挙げましてこの行政改革に取り組んでいるこの時期に、行刑改革に取り組んでいるこの時期に御指摘の不祥事案があったということは本当に申し訳ないと思っております。遺憾でございます。
 法務省といたしましては、同事案に対して厳正に対処することは当然でございますが、同種事案の再発を防止すると、そのために必要な措置を講じたところでございますけれども、今後とも被収容者の人権を尊重し、改革の実現に全力を注いでまいりたいと思います。先生の御協力も是非必要であろうかと思います。よろしくお願いしたいと思います。
○松岡徹君 是非、私はそういう視点でこの刑法の重罰化については拙速過ぎるなという指摘をさせていただいたんです。
 私は、被害者の、犯罪被害者の人たちの感情とか国民的な正義感というのは、必ずしも罪を犯した人間に厳罰を求めるだけではなくて、大事なのは、その自ら罪を犯した重大さ、その責任というものを加害者といいますか犯人にしっかりと自覚してほしい、そして、その上で心から被害者に対して謝罪をしてほしいというのが一方の大事な感情なんですね。そして、被害者の方は、なぜこんなことが起きるのか、なぜ我々の子供、身内がこんな被害に遭ったのかというのは、こんな犯罪のない社会にしてほしいという願いなんですね。だからこそ、矯正教育、いうところの修復的司法というような議論がありますけれども、再犯率を下げるためにも極めて大事な課題になってくるのではないかと思います。
 是非ともそのことを、十分確立されることを期待をいたしまして、私の質問をこれで終わりたいと思います。
 ありがとうございました。
○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
 私も性的自由を侵す犯罪、強姦罪や強制わいせつ罪の被害者の方に直接お話を伺う、あるいは、加害者がどんなつもりであったとしても、被害者に対してこのような犯罪がどれほど取り返しの付かない被害をもたらすかということを捜査や裁判の現場で実感をしてまいりました。この性犯罪の法定刑について、かねてから傷害罪や強盗罪との不均衡が問題となってきたわけですけれども、性犯罪の被害者や、あるいはその人生に与える影響の重大性、甚大さを考えるときに、私もこの法定刑の引上げは当然なことだというふうに思っております。
 ですが、刑法の総則の改正について、これがどうして一律に上限が引き上げられなければならないのか、この点について極めて強い疑問を持っておりますので、その点についてお尋ねをしたいと思うんですが、申し上げるまでもなく、この総則の有期刑の上限の引上げをするということになれば、これに該当する罪は刑法典で四十四、特別刑法で六十、百四の罪にこの影響が及ぶというふうに言われております。ですけれども、その罪の一つ一つについてどうしてその長期を十五年から二十年に引き上げられなければならないのかということは明らかにはされていないのではないかと思うんですね。理由として挙げられているのが、今日も同僚議員の質疑の中で触れられてきたわけですけれども、凶悪・重大犯罪の増加傾向が続いているからであるということかと思います。
 そこで、まず警察庁にこの凶悪・重大犯罪と言われる罪名で取り扱われてきている犯罪の認知件数についてその傾向をお尋ねしたいと思うんですけれども、まず、強姦罪と強制わいせつ罪について、平成十一年から平成十二年にかけて急増をしているという状況があると思います。その数字と、そしてその平成十二年以降、統計のあるのは平成十五年までかと思いますけれども、これまでの傾向がどうなっているかという点をお答えください。
○政府参考人(岡田薫君) お答えをいたします。
 私ども警察といたしましては、凶悪犯というのを殺人、強盗、強姦、放火と区分しておりますが、今お尋ねは強姦罪と強制わいせつ罪についてでございますが、強姦罪につきましては、平成十五年の認知件数は二千四百七十二件、平成十一年に比べて三三・一%増加をいたしております。強制わいせつにつきましては、平成十五年の認知件数が一万二十九件、十一年に比べ認知件数は八七・六%増加しているところであります。
○仁比聡平君 もう一回お尋ねします。
 平成十一年のそれぞれの認知件数は何件ですか。
○政府参考人(岡田薫君) 失礼をいたしました。
 十一年の強姦罪の認知件数は千八百五十七件、それから強制わいせつの認知件数は五千三百四十六件であります。
○仁比聡平君 平成十二年の認知件数は、私の方で申し上げますと、強姦で二千二百六十件、つまり、強姦は平成十一年の千八百五十七件から平成十二年に二千二百六十件に急増して、先ほど御答弁ありましたように、平成十五年も二千四百七十二件ということで、平成十一年から十二年にかけて急増をして、その後ほぼ横ばいか微増という状況ではないかと思うんですね。
 強制わいせつに関して言いますと、平成十一年が五千三百四十六件で、十二年に七千四百十二件に急増しています。ですが、その後増加という傾向にあるということかと思うんですね。
 先ほど同僚議員からの質疑の中にもありましたけれども、この強姦と強制わいせつという罪名についての認知件数が平成十一年から十二年にかけてこうやって急増したと。これがどうしてなのかということについて、警察庁としての御見解をお尋ねしたいと思います。
○政府参考人(岡田薫君) 先ほどの御質問にもございましたかと思いますけれども、強姦罪あるいは強制わいせつ罪というのは比較的暗数の多い罪種と見られていると思います。そういう意味で、ちょうど警察といたしましても、平成八年ごろから被害者対策というのを大変力を入れ始めまして、とりわけ性犯罪に対する被害者対策というのはいろいろな施策を先ほどの御質問にもお答えしたように取ってまいりました。そういう状況が一つございます。
 それから、他方で、国民の意識といたしましても、恐らくこの辺の年代、最近もそうでございますけれども、性犯罪に対する被害意識といいますか、やはりきちっと届出をして、新たな犯罪を抑止するという意味からもいろいろな意味の届出といったものが増えてきているという要因もあろうかと思います。それから、実態としても増えてきているという面もあるのではないか、このように思っております。
○仁比聡平君 その犯罪の認知件数というのは今お話があったように様々な要素を含んでいる数字で、犯罪の発生件数とそのままイコールのものではないということだと思うんですね。
 今お話の中にあった、暗数が最も少ないんではないかというふうに言われているのが、罪名でいいますと殺人罪だと思います。認知件数と発生件数の間が極めて近いのではないかと言われている罪種だと思いますが、この殺人罪は平成十一年以降どういう傾向になっているか、お答えください。
○政府参考人(岡田薫君) 殺人罪について十一年以降の数字の推移でありますが、十一年が千二百六十五件、十二年が千三百九十一件、十三年が千三百四十件、十四年が千三百九十六件、十五年が千四百五十二件であります。
○仁比聡平君 減ってはいませんが、微増という傾向として受け取ってもいいのではないかと思うんですね。
 もう一点、傷害罪として認知をされている件数をお尋ねしたいと思います。平成十一年から十二年にかけて何件から何件になったか、そして、その後十五年までどのような傾向になっているか、お答えください。
○政府参考人(岡田薫君) どうも失礼しました。
 お答えを申し上げます。
 傷害罪の認知件数の推移につきましては、平成十一年二万二百三十三件、平成十二年三万百八十四件、平成十四年三万三千九百六十五件、平成十四年三万六千三百二十四件、平成十五年三万六千五百六十八件であります。
○仁比聡平君 この傷害罪に関しても、今お話しいただきましたように、十一年から十二年にかけてこれは一・五倍という急増をしているわけですけれども、その後そのペースで伸びているかというとそうではなくて、平成十三年にかけてもう少し増えていますが、その後はほぼ横ばいという傾向かと思うんですね。
 そうすると、私、犯罪白書の数字を拝見して、こういうことなのかなというふうに思ったのですが、平成十一年から十二年にかけて約一・五倍に件数は増えているんだけれども、白書では、その傷害の結果、どういう被害がそれぞれの被害者にもたらされたのかを分析をしておられます。この中で、重傷の結果を負われた方、軽傷の結果を負われた方という統計を分類されているんですが、そこを拝見すると、十一年から十二年にかけて急増をした、その被害者が増加をしている分の九割を超える数、九三・八%が軽傷者であるというふうに思うんですが、それはその理解で間違いないでしょうか。
○政府参考人(岡田薫君) 十一年から十二年でございましたかとお聞きしましたけれども、十一年から十二年にかけての傷害の急増につきましては、被害者数の増加が一万八百四十八人であります。内訳について見ると、死者が二十人減少、これは傷害致死との関係でありますが、それから重傷者が五百二十二人、二七・三%増、軽傷者が一万三百四十六人増加しているという状況でございます。
○仁比聡平君 今の数字を計算すると、私が申し上げたとおりになるのではないかと思います。
 今お話の中にもありましたが、傷害による死亡被害者の数ですね。これは今の判例でいえば傷害致死と評価をされていると思いますが、この死者は平成十一年以降十五年までどのように変化をしていますか。
○政府参考人(岡田薫君) お答えをいたします。
 傷害致死でお亡くなりになった方の数は、平成十一年が二百一人、十二年が百八十一人、十三年が二百二十二人、十四年が百九十四人、十五年が百七十九人でございます。
○仁比聡平君 今の傷害致死によって命を奪われた方の数を拝見をしても、横ばいか、逆にこれは少し減るという方向もあると思うんですね。今、凶悪犯罪というふうに言われる罪名について数字の変化を少し伺ったわけですけれども、ここからうかがわれるのは、確かに犯罪の認知件数は増加をしていると。だけれども、その罪名によって評価をされる犯罪行為のそのすべてが急激に凶悪化をしているということではないのではないかと思うんです。
 私、例えば傷害で軽傷者と分類をされている件が、これが軽い犯罪だなんて言うつもりは全くありません。どんな結果をもたらすにせよ、重大な侵害行為なわけで、これは許されないわけですけれども、その犯罪統計を少し踏み込んで見たときに、犯罪全体が急激に凶悪化をしているというふうには言えないのではないかと思うんですね。そして、例えば傷害致死で、死の結果に至ったというような数字だけで見ますと、凶悪・重大事件が急増をしているという事実も、あるのかないのかがよく分からないというふうに思うんです。
 この刑法改正の提案者、政府は、重大・凶悪事件、凶悪犯罪が増加傾向が続いていると言うんですけれども、そういう事実を具体的に明らかにできるような統計なりあるいは事実というのがあるんでしょうか。
○政府参考人(大林宏君) 今の認知件数もそうですが、量刑の関係の資料がございます。第一審の科刑状況、これは今度対象としているものですけれども、それをごらんいただきますと、比較的上の方の重い量刑の件数が増えてきているという事実もございます。これも一つの参考になろうかなというふうに思います。
○仁比聡平君 今の量刑、つまり現行の法定刑の枠の中で、裁判所が様々な事情を考慮をして被告人に対して宣告をしている刑ですね。この宣告刑が、今おっしゃるように厳罰化の方向にあるということは私も承知をしております。ですけれども、そのこととこの法定刑の上限を引き上げるということとは、これは別問題ではないかと思うんですね。
 今のお尋ねの中で、具体的に凶悪な事件が急増をしているという数字であるとか、あるいは凶悪犯罪と政府のおっしゃる構成要件、この評価をされる犯罪行為がすべて凶悪化をしているというような、全体として凶悪化をしていると、そういうような傾向を示すお話は私、伺えていないと思うんです。
 今日、質疑の中で、同僚議員の質疑の中でこのことがテーマになっておりますけれども、その事実は明らかにされていないと思うんですね。つまり、抽象的な分析はあるんですけれども、その当該罪名で評価をされる犯罪の全体が凶悪化をしているという事実が示せない中で、一律に有期刑の上限を引き上げるという重罰化に足を踏み出そうとしておられるわけですが、個別の犯罪類型ごとの分析や、それが増加しているのか、していないのか、凶悪化しているのか、していないのかも含めてよく分からない中で、これを重罰化するということがどうして犯罪の抑止に効果があるんでしょうか、お答えください。
○政府参考人(大林宏君) 今委員御指摘のとおり、例えば一つの犯罪、殺人というのは一般的に凶悪と言われていますけれども、傷害罪なんかを取り上げると、それは確かにいろいろな形態があると思います。その一つ一つを見た場合に、御指摘のとおり、いろいろな犯罪というのは諸要素を持っていますので、その結果の重さだけでは判断できない場合もありますし、そういう面でいえば、ここからが凶悪犯罪、例えば傷害罪の中でも、ここからが凶悪犯罪で、この数が増えているか減っているかという分析はなかなかし難いというふうには思います。
 ただ、各資料、それはいろいろな今回の御提案をさせていただいた中では、国民の方々の体感治安、あるいは世論調査の問題もあります。それから、今のような量刑調査で比較的重い刑が出るようになったと。ですから、それは全体として、全体が凶悪化しているという、そういう趣旨ではございませんけれども、非常にそういう犯罪も目立つようになったというようなことから刑の引上げということを考えさせていただいたので、それはいろいろな面から見てということで御理解いただきたいというふうに思います。
○仁比聡平君 よく分からないんですけれども、大臣にお尋ねしたいんですが、大臣はこの総則における有期刑一般の上限を引き上げるという、これマスコミでは重罰化というふうに言われているんですけれども、この重罰化というふうに言われている有期刑の上限引上げという、このことが犯罪の抑止にどういう効果をもたらすんだというふうに考えておられるんでしょうか。
○国務大臣(南野知惠子君) お答えいたします。
 今回の改正は、凶悪犯罪を中心とする重大犯罪について、特に問題となる法定刑の上限等を見直すということによって行為規範としての刑罰、それの機能を強化しようというふうにしているものであります。このような意味におきましては、一定の抑止力がある、ああ、この犯罪はこれだけ重たい刑になったのかというようなことがメッセージとして流れていくということにもなろうかと思っておりますが、もっと、単に罰則を強化するだけで治安の回復を図るのに十分であると、そうは考えているわけではありませんと。
 政府は、昨年十二月に策定されました犯罪に強い社会の実現のための行動計画、これを推進しているところでありまして、今後ともこの行動計画の内容に従って政府全体として治安回復を図るために取組を進めているということでございまして、相応の効果が見られるものというふうに思っております。
○政府参考人(大林宏君) 今大臣からの御答弁は、今度引き上げるものについての抑止効果ということを中心にお話になったと思います。
 そこで、今委員がお尋ねになっているもう一つの問題で、有期刑の上限を一律に引き上げる根拠の問題があろうかと思います。これにつきましては、直ちに抑止効果だけの問題ではございませんで、御案内のとおり、現行刑法における有期の懲役や禁錮の上限が十五年であることにつきましては、明治四十年の現行刑法が制定されてから変更が加えられておりません。その後の約百年の間に罪を犯して刑に処せられる者を含めた国民一般の平均寿命が大幅に延びたことなどもあり、この十五年という期間をもって有期刑に係る法定刑の上限とするのは、国民の刑罰観に係る規範意識に合致していないのではないかと、又は無期刑に処する場合との差が大き過ぎるのではないかとの指摘がなされることなどを踏まえたものでございます。
 したがって、この引上げの趣旨は、特定の罪について、その法定刑の上限が十五年とされているのが低過ぎるからこれを是正するというものではございません。現実にもこの引上げの適用罪種はいずれも重大な犯罪であって、その法定刑の上限にあえて差を設けるべき理由も見当たらないことから今回のような引上げが相当であると考えたものでございます。
 したがいまして、今回引上げの対象となっていないものについても今回の上限の引上げが及ぶということはあります。ですから、そのほかの罪種について見た場合に、例えばその罪種の中には適用件数が少ないものもございます。それが直ちにこの引上げによって抑止という問題につながらない罪種もあろうかと思いますけれども、今のように一律に引き上げるということにしました経緯はそういうことでございます。
○仁比聡平君 自由刑の上限を引き上げることが平均寿命との関係で語られるということについて極めて強い疑問を指摘をする研究者、それも刑法研究者の皆さんが多くいらっしゃるということは法務省も御存じのとおりです。
 例えば、中山研一先生を始めとした刑法研究者の有志の皆さんは、社会復帰の可能性に与える悪影響を考慮をせずに、平均寿命を刑の長期化の根拠とするのは妥当でないと、より重要なのは、人の生物としての寿命ではなく、社会生活における適応限界年限であるというふうに指摘をしておられます。
 何か寿命が延びたから刑期も延びるのは当たり前だというような発想で刑法改正を図ろうとするものではないんだと、そういう政府ではないということを私はせめて信じたいと思うんですけれども、先ほど大臣のお話の中に、犯罪抑止に関しての一般的な規範としての効果といいますか、先ほど行為規範というふうにおっしゃったかと思うんですね。これも特別のといいますか、刑法各則の強姦罪がこうなった、強制わいせつをやったらこうなるぞということであれば、それは分かります。ですけれども、一律に上限を引き上げて、つまり刑は重たくなったぞということで、そういった行為規範としての威嚇効果があるのかということについては極めて強い疑問がここでも出されているということを指摘しておきたいと思うんですね。
 時間がありませんので、もう一点この点にかかわってお尋ねをしたいんですが、先ほど裁判所の宣告刑の量刑のお話がありました。確かに、政府が提出をしておられる資料の中では、世論調査をやって、刑罰の引上げということが国民から求められているという資料を提出をしておられるわけです。
 ですけれども、現実の国民の皆さんの刑事裁判あるいは刑事事件をどこで受け止められるかということを考えますと、それは刑法に定められている法定刑に対して向けられている批判ではなくて、具体的な事件に関しての裁判所の宣告刑に向けて、それも特にメディアで報道されるその事件の中での限られた事実ですね。刑事事件において裁判所が量刑を判断する事実というのがすべてメディアで報じられているとは、私は到底思えません。メディアで報じられている事実が虚偽であるとも思いませんけれども、そうではあってほしくないと思いますが、ですが、そういった限られた、限定されたメディアで報じられている事実に基づいて国民の皆さんがこの刑は軽過ぎると、そういったような思いを持たれていることがこの世論調査に反映をしているのではないかと思うんですね。これがどうして法定刑の上限引上げと結び付くのかというのが私、分からないんですよ。
 つまり、宣告刑がどうあるべきかというのは、これは裁判所の独立と三審制の下で、司法の過程の中で解決をされるべき問題であって、これが法定刑の引上げというのとどうして結び付くんでしょうか。
○政府参考人(大林宏君) 治安悪化の原因及び対策に関する世論調査の結果の中には、御指摘のように、個別の事件の量刑に対する批判を内容とするものも確かに含まれていると思います。しかしながら、各種審議会等における意見や法務省等に寄せられます投書やメールの内容等も踏まえて判断すれば、悪質な犯罪を減らすための今後取るべき方策として法定刑の水準を問題にしている回答者も相当存在すると、こういうふうに私どもは考えております。
○仁比聡平君 そうお考えになるというお話を私、昨日聞いて、世論調査のどこを読めばそうなるのかがよく分からないというふうに思いました。抽象的な質問しかされていませんし、刑罰の引上げを求めますというところにチェックをされる方が、その刑罰という言葉で法定刑をおっしゃっているのか宣告刑をおっしゃっているのか、それは分からないじゃありませんか。
 今政府がおっしゃる上限引上げの根拠、刑罰を引き上げるべきだという国民の声があるんだという前提を受け止めますと、そうすると、その前提として、現在の裁判所による量刑が、あるいは量刑が低いということが体感治安の低下のその要因だというふうにお考えになっているのかなというようなことまで私は思うんですけれども、その点はどうなんですか。
○政府参考人(大林宏君) 今回の刑の引上げのことにつきまして様々な要因があるということを先ほどから申し上げているところでございます。
 委員御指摘のとおり、調査の場合には、その刑が軽いというのは、おっしゃられるように現実的な裁判所の量刑を問題にするのか、あるいは法定刑自体が軽いからこういう結果になるんだという両方が含まれていると思います。ただ、いろいろな審議会の意見等、今度は、もう御承知のとおり法制審議会の委員の方々、労働界の方々、法律界だけじゃなくて各界の方がおられまして、その方々が、出席者全員が今回の引上げが相当であるというふうに、そういう採決をなされたわけでございまして、それは皆さん方において引上げの必要性を、引上げが必要だというふうに考えておられる一つの表れだと、こういうふうに考えております。
○仁比聡平君 今その審議会の皆さんがそうおっしゃったと言うんですけれども、審議会というのは全体で十三時間ですかね、しか審議をされていないと伺っているんですよ。その中で本当に十分な質疑がされたのかなと、意見が、それも国民的な意見が表明されたのかということについても私、強い疑問を指摘をしておきます。
 それで、裁判の現場、つまりこの問題にかかわっていえば、求刑をする検察官の皆さん、あるいは裁判、宣告刑を下す裁判所の皆さんですね、この皆さんのところから、今の、今次の犯罪状況からすると法定刑が制約になっていると、法定刑が今の状況のままだったら、それも有期刑の上限が今の現状のままだったらば自分たちは裁判ができないと、そういう声が上がっているんでしょうか。そういう声がもし上がるような状況なんであれば、そうすれば、宣告刑は、少なくとも先ほどの百四の罪に関していいますと、これは法定刑の上限一杯に張り付いているという状況じゃなければおかしいと思うんですよ。
 だけれども、現実の裁判の実務というのはそうはなっていません。様々な、その一つの罪名についても様々な行為態様があり、結果態様があるわけで、ですからその法定刑の枠の中に様々な形で分布をしているというのが現実の刑事裁判の判決の現状だと思うんですね。ですから、裁判の実務とその今おっしゃっている一律上限引上げの必要性という、ここ、乖離をしているんじゃありませんか、どうですか。
○政府参考人(大林宏君) 御承知のとおり刑の、法定刑の幅というものは、特に上限につきましては、その罪がどういう位置付けになっているか、例えば今度議論になっています強姦罪の位置付けが今まで余りにも低過ぎたんじゃないかと、そういう、何といいますか、先ほど出ている行為規範としてのそういう定型から見た場合に今の評価が正しいかどうかということから刑というのは、法定刑というのは決められております。ですから、裁判の量刑自体をいいますと、一番上の事例というのは本当にまれな、もうそれしかないという形でしか出てきませんので、その量刑が上に、その重い量刑がもうこれ以上できないから上げると、こういうものではないというふうに考えています。
 逆に、今回下げるといいますか、例えば強盗致傷罪を今まで七年以上十五年以下の懲役というものを、短期を六年以下に下げます。これは正に実務上の必要性があって、今まで七年だと、その軽微な強盗致傷罪について執行猶予を付せないと、そのために実務上は、例えば傷害と恐喝とか、別な罪名で起訴して裁判所から執行猶予の判決を得ざるを得ないという問題がありました。
 あるいは、今回、悪質だとして集団強姦等致死傷罪というものが六年以上ということで刑を定められています。これも、本来七年以上という刑もあるわけですけれども、これも同じような形態で、そういう仲間に加わった者の中にやはり執行猶予を付して相当というものが認められるだろうと、こういう形で、最低のところはそういう今の現実の裁判の実情といいますか、あるいは犯人の更生というものを考えてこういう刑の設定をしております。
 ですから、上限の張り付きの問題については、それは先ほど言いましたように一つの犯罪の型を示すものでございますが、下限については実務の要請も含めて今回改正さしていただいたものでございます。
○委員長(渡辺孝男君) 時間でございますので、おまとめいただきたいと思います。
○仁比聡平君 午前の質問、ここで終わらしていただきます。
○委員長(渡辺孝男君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。
   午後零時一分休憩
     ─────・─────
   午後一時開会
○委員長(渡辺孝男君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、刑法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本日は、本案審査のため、お手元に配付の名簿のとおり、三名の参考人から御意見を伺います。
 御出席いただいております参考人は、東京都立大学法学部教授木村光江君、弁護士・日本弁護士連合会刑事法制委員会委員長神洋明君及び龍谷大学法学部教授石塚伸一君でございます。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。
 参考人の皆様方から忌憚のない御意見をお聞かせいただきまして、本委員会における今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 議事の進め方について申し上げます。まず、木村参考人、神参考人、石塚参考人の順に、お一人二十分程度で順次御意見をお述べいただきまして、その後、各委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。
 なお、御発言の際は、その都度、委員長の許可を得ることとなっております。また、各委員の質疑時間が限られておりますので、御答弁は簡潔にお願いしたいと存じます。
 なお、御発言は着席のままで結構でございます。
 それでは、木村参考人からお願いいたします。木村参考人。
○参考人(木村光江君) では、着席のまま失礼いたします。
 本日は、このような機会を与えていただきまして大変光栄に存じます。
 私は、法制審議会の凶悪・重大犯罪の部会に参加させていただいた観点から、若干意見を述べさせていただきたいというふうに考えております。
 大変僣越ですが、簡単なメモを作りましたので、それをお目通しいただきながらお聞きいただければと思います。よろしくお願いいたします。
 その「刑法等の一部を改正する法律案について」というふうに書きました一枚物のメモでございますけれども、それに沿ってお話しさせていただきます。
 まず最初に、「凶悪犯罪と性犯罪―改正の二つの柱」というところでございますが、今般の刑法改正には二つの大きな柱があるというふうに考えております。一つ目の柱が凶悪・重大犯罪に対する対処でございます。そして、二つ目の柱が性犯罪に対する対処というふうに考えてよろしいかと思います。もちろん、性犯罪、特に強姦罪につきましては凶悪犯罪の中に含まれる犯罪でございます。その意味では凶悪・重大犯罪の一部というふうに言えるんですけれども、これまでの議論の流れから見て、一応凶悪・重大犯罪と性犯罪というのは若干別の様相を呈しているというふうに考えられるかと思います。
 まず、凶悪犯罪、(1)の「凶悪犯罪の激増」というところでございますが、凶悪犯罪とは、先ほどもちょっと言いましたが、強姦罪ももちろん含まれますし、殺人罪、強盗罪、強姦罪、放火罪を指すとされております。
 これらの認知件数が、この図でごらんいただくと分かりますように、平成に入り、九〇年代に入りまして加速度的に増加しております。これは単に数の問題だけではなく、余りにも変化が急激であるというところが非常に問題であるというふうに思われます。この事態に直面して、早急に何らかの方策を取る必要があるというふうに考えられます。その意味で、今回の改正で国として凶悪犯罪に対し厳しく対処するという姿勢を示す意義は非常に大きいというふうに考えられます。逆に、この機を逸すると大変なことになるというのが私の認識でございます。
 確かに、その図をごらんいただくと分かりますように、戦後直後は非常に犯罪が多かったというのは一般によく言われることなんですけれども、この図を見ますと、言わば戦後の混乱期と同じような状態になってしまっているというのが現在の状況かと思います。正に危機的な状況だと言っても過言ではないというふうに考えております。
 それが第一の凶悪犯罪の方なんですけれども、図の下の「(2)性犯罪」という方ですが、第二の柱というふうに先ほど申し上げた性犯罪に対する対処でございます。凶悪・重大犯罪の中でも、特に強姦罪、それと、それに加えまして強制わいせつ罪の法定刑の見直しが今次の改正の非常に重要なポイントであるというふうに考えられると思います。
 まず、そこにも書きましたけれども、男女共同参画会議の女性に対する暴力に関する専門調査会が今年の三月に報告書を出されまして、女性に対する暴力について取り組むべき課題とその対策と題する報告書でございます。これは長年の議論の蓄積を経て公表されたものというふうに伺っておりますが、この報告書では、その正に冒頭に、性犯罪を「女性に対する暴力の中でも、最も女性の人権を踏みにじる行為」であるというふうに断じています。そして、その報告書では、性犯罪について特に加害者の厳正な処罰が必要であるということが強調されております。今次の改正の性犯罪に関する部分は、正にこのような表現に代表される社会の要請を受けているということは明らかであろうと思われます。
 さらに、そのような社会の要請があるということに加えて、その延長線でもあるんですけれども、もう一つの、そこにアスタリスクで書かせていただきましたけれども、児童買春等処罰法であるとかストーカー規制法、犯罪被害者保護法、DV防止法等の言わば平成十年以降、特に十一年以降でしょうか、の一連の被害者保護に関する特別法制定の延長線にこの刑法改正は位置付けるべきだというふうに思われます。
 いずれも、この特別法はいずれも、これまで言わば沈黙させられてきた被害者、そういう被害者を救済するために制定されたものと考えられます。今回の改正は、いよいよ刑法典そのものの中に被害者保護の観点を入れるものというふうに位置付けられます。国民の意識を刑法典の中に取り入れるものであって、正に画期的な法改正と言ってよろしいかと思います。
 それが二つの柱というふうに考えられますけれども、次に、2の部分をごらんいただきたいんですが、「2、性犯罪に対する非難―厳格な処罰の必要性」と書かせていただいた部分でございます。ここでは主として強姦罪、強制わいせつ罪の法定刑の引上げについて検討したいと思うんですけれども、(1)の部分、「強姦罪、強制わいせつ罪の認知件数の増加」というところです。
 特に、強姦罪について見ますと、確かに最もいわゆる認知件数が多かったのは昭和三十年代と言われております。強姦のピークは昭和三十九年の六千八百件という非常に多い数ですけれども、そういう認知件数が出された時期がございます。その時期に比較すれば現在の件数は少ないのではないかと、むしろそれと比べれば少ないのではないかという議論もあり得ると思います。また、そもそも性犯罪は、先生方よく御承知のように、いわゆる暗数、表面化しない数というのがかなりあるのではないかと、そうすると、実際の発生件数が増えているからといって必ずしも実態として犯罪が増加しているとは限らないのではないかというような議論もあろうかと思います。ただ、そういうような議論はあることを踏まえた上でも、なお現時点で性犯罪の法定刑を引き上げる理由というのは十分にあるというふうに思われます。
 まず第一に、これはやはり数の問題になってしまいますけれども、(1)の@のところです。平成に入り増加しているということなんですけれども、十年前の認知件数と比較した場合、強姦罪は約一・五倍、また強制わいせつ罪は非常に伸びが激しいのですが、二・八倍に上がっております。これだけの変化を暗数が表面に出てきただけという議論で無視することはできないというふうに思われます。
 次に、二つ目ですけれども、刑法典制定時と現在との相違というふうに書かせていただいた部分ですが、認知件数の増加という側面を離れても、なお現時点で性犯罪をより厳しく処罰する必要性というのは非常に高いというふうに思われます。
 どういうことかと申しますと、女性の権利という観点から見ると、刑法典が制定されましたのは約百年前です。その百年前と現在とでは、女性の地位、女性の権利という意味では全く様相が異なっているというふうにとらえるべきかと思います。言わば、この百年間の女性の地位の変化を全く考慮しないで現行法を維持することは、正に時代錯誤と言われても仕方がないというふうに思われます。
 それを言いますと、刑法全体がもう百年たっていて大きな改正がなされていない、そうすると、そのこと自体が時代錯誤ではないかという御議論もあるかと思いますけれども、その意味では、実際に刑法典で十分賄えない部分については個々の改正がなされております。例えば、コンピューター関係であるとか、カード犯罪であるとか、そういうことは立法的な措置が取られてきているというのが現状です。
 確かに、性犯罪はコンピューター犯罪と違って刑法制定時になかった犯罪ではないじゃないかと、そうであれば、なぜわざわざ今の時点で変えなければならないのかという御議論もあろうかと思いますけれども、その意味では、もうこれも先生方は十分御承知のように、言わば強姦罪とか強制わいせつ罪は条文上は社会法益に対する罪というふうに置かれております。つまり、言わばわいせつ物頒布罪等と同じ場所に刑法典の条文上は置かれているというのが強姦罪、強制わいせつ罪です。言わば、風俗秩序に対する罪というふうに立法時は考えられていました。
 それが現在では、被害者個人、強姦罪であれば女性、強制わいせつ罪であれば男性も含むわけですけれども、その被害者個人に対する罪である、言わば社会法益ではないと、個人法益であるというのはだれも異論を差し挟まないという状況でございます。これだけ考え方が変化しているという犯罪について、しかも被害がこれだけ増えているという、認知件数がこれだけ増加しているにもかかわらず何も手を打たないというのは、正に時代錯誤そのものというふうに思われます。
 「性犯罪に対する非難」の(2)の部分ですが、これは起訴率、量刑の重罰化というふうに書かせていただきましたが、検察の実務でも、また裁判実務でも、性犯罪についてはより厳しい判断がなされてきているということをここで申し上げようと思います。
 まず、検察の方ですけれども、起訴率が例えば昭和五十年代と比べますと格段に高くなっております。強姦罪の起訴率は、昭和五十年代は約五五%前後だったものが近年は七〇%に近くなっております。強制わいせつ罪につきましても、やはり五十年代は四〇%前後だったものが近年は六〇%に近くなっております。起訴率が増加しているということです。検察の性犯罪に対する対応がより厳格なものとなっているということの現れだというふうに申し上げることができると思います。
 裁判所においても同様の傾向が見られまして、量刑について、強姦罪、強制わいせつ罪ともに重くなっております。しかも、実刑率も高くなっているということでございます。裁判官が書かれた量刑に関する書物の中で、かつては、強姦に対して傾向的に刑の軽い裁判官がいたように思われるが、近時、女性の人間としての尊厳を侵害する犯罪として厳しい態度で臨む裁判官も増えてきているというふうに述べられておりました。
 正に、検察、裁判ともに実務のレベルでも非常に厳しい態度が見られると、性犯罪に対する厳しい態度が見られるというふうに思われます。これは単に司法が言わば恣意的に重く処罰するように動いているというものではなくて、国民の意識が検察あるいは裁判を突き動かしているというふうに考えてよろしいかと思います。
 冒頭で述べさせていただきました男女共同参画会議での報告書というようなものも現代の社会を反映しているというふうに思われますし、そのような国民の意識の変化が検察、裁判所の厳格な態度に反映されているというふうに理解すべきかと思われます。
 三番目に、「法定刑の考え方」ということですが、強姦罪、強制わいせつ罪を中心にお話ししますと、強姦罪は下限を二年から三年に引き上げると、強制わいせつ罪は上限を七年から十年に引き上げるという改正がなされようとしているわけですけれども、これに合理的根拠があるのかという議論もあろうかと思います。
 ただ、結論から申しますと、私はいずれも妥当なものというふうに考えております。
 まず、強姦罪の量刑ですけれども、強姦罪の法定刑の引上げについて、法制審議会の議論の中でも、言わば下限に近い刑の言渡しが多くなされているではないかと、そのような状況下で引き上げる必要が今あるのかという御意見が出されていました。
 確かに、強姦罪の有罪判決の約四分の一は三年未満の懲役です。そうしますと、四分の一が言わば下の方、下に張り付いている状態であれば三年に引き上げる、二年から三年に引き上げる必要はないのではないかという御意見があることも確かでございます。
 しかし、このような見解は妥当でないというふうに思います。
 それは、そこに@からBで書かせていただいた三つの理由からなんですけれども、まず第一に、確かに四分の一が三年未満の言渡しではないかというふうに、そういう御意見あるんですが、十年前を見ますと、実に過半数が三年未満の刑だったんです。言わば、十年間で半減しているということになります。
 第二に、そもそも裁判所は現行法の法定刑を前提に量刑判断を行っているわけで、法定刑が変更されれば、当然その変更された法定刑を基礎にして量刑判断が行われることになると。ですから、現在の法定刑を前提とした議論というのは必ずしも妥当ではないのではないかというふうに思います。
 三番目に、これが最も重要な点だと思うんですけれども、「法定刑を維持することの問題性」というふうに書かせていただいたんですが、これはどういうことかと申しますと、現時点で、正にこのように国会で審議が行われるという段階にまでなっていろいろと議論はしたと、しかし、やはり現状のままがいいという判断をすると、強姦はやはりそれほど重大な犯罪ではないんだというメッセージを国民に与えてしまうことになるのではないかと。これは非常に危険であるというふうに思います。
 男女共同参画会議等の議論では、むしろ強姦の下限を三年ではなくて五年に上げるべきだという議論も強かったというふうに伺っております。確かに、急激に下限を二倍以上に上げるというのはやや乱暴な議論だというふうに私なども思いますけれども、その意味で三年の線が出てきたというのは非常に妥当な考え方ではないかというふうに思われます。
 しかし、何より重要なのは、ここで全く上げないという選択をしてしまうというのは国民に非常に誤ったメッセージを伝えることになるということかと思われます。
 次に(2)、強盗罪の比較ということなんですけれども、強姦罪の法定刑引上げについては、強盗罪との比較で軽過ぎるという御意見が強いということは私も十分承知しております。それ自体は確かにそのとおりだというふうに思われるんですけれども、単純な比較はむしろ危険であろうというふうに思われます。
 どういうことかと申しますと、強盗罪の比較で軽いという言い方をされた場合に、では強盗罪を下げればいいではないかという御議論が出てくるからです。法制審議会でも確かにそのような意見が出されておりました。強姦を上げるのではなくて強盗を下げればいいのではないかという御議論です。
 ただ、これは全く受け入れることができないというふうに私自身は考えております。冒頭でお示ししたグラフでも、これ急激に増加しておりますが、実は強盗が三倍に増えているというのが現状です。強盗がこのように危機的な状況にある中で、強盗の法定刑を下げるということはおよそ考えられないというふうに思われます。
 むしろ比較論、単純な比較論ではなくて、強姦罪、強制わいせつ罪の法定刑を上げるということに非常に意味があるというふうに思います。それ自体、強姦罪、強制わいせつ罪、それ自体が非常に軽過ぎるというふうに思われる。また、そのような考え方が法制審議会の部会でも圧倒的多数だというふうに私は理解しております。
 繰り返しになりますが、正に強姦罪、強制わいせつ罪について刑法は厳格な処罰をもって臨むんだということを示す、現在この時点で示すということが非常に重要だというふうに思います。
 先ほども少し述べましたけれども、児童買春等処罰法等の一連の被害者保護の流れをこの今回の改正はくむものというふうに私は理解しておりますので、しかも、これらの法律の制定に当たっては、特に国会議員、女性議員の方々の大変な御尽力があったというふうに伺っております。今回の改正をもし見送るというようなことになりますと、これまでのそのような先生方の御努力が非常に損なわれることになってしまうというふうに危惧いたします。
 そろそろ時間で、傷害罪、傷害致死については余り触れることができませんでしたけれども、やはり傷害罪なども非常に増えている犯罪です。被害者保護という観点からも非常にこの時点で改正するということが要請されているというふうに思われます。
 昭和二十年代の方が犯罪はもっと多かったというような御議論もあります。あるいは、厳罰化したからといって犯罪抑止につながるわけではないという主張もあろうかというふうに思います。ただ、このグラフを示させていただいたのは、実はこのような変化を現時点で何とかして食い止める必要があるということで、今回の改正はその意味で非常に意義があるというふうに思われます。
 少し延びまして申し訳ございません。
 以上でございます。
○委員長(渡辺孝男君) ありがとうございました。
 次に、神参考人にお願いいたします。神参考人。
○参考人(神洋明君) 本日、このような機会を与えていただきましてありがとうございます。今、御紹介いただきました弁護士の神洋明であります。
 私は、御審議いただいている凶悪・重大犯罪に対処するための刑法等の一部を改正する法律案については、基本的に反対する立場から意見を述べさせていただきたいと思います。つまり、私は、今回の法律案のうち、強盗致傷罪の刑の見直しについては賛成でありますが、その余の改正案については強く反対であります。
 まず、冒頭に一点だけ強調させていただきたい、いただきながら本論に入らせていただきたいと思います。
 刑法は犯罪と刑罰に関する基本法であり、刑事訴訟法は国家刑罰権に関する基本法であります。いずれの法律も一人一人の市民の生活と利益に深くかかわりを持つ法律であります。したがって、その改正は、基本的人権の尊重という憲法的価値基準を踏まえ、長期的な視野から検討審議の上、慎重にその方向性が見定められるべきであります。
 ところで、今回の改正案は、刑法に関し約百年ぶりの大改正、すなわち、有期の懲役及び禁錮の法定刑、処断刑の上限を引き上げるという内容を含むものであるにもかかわらず、法制審議会刑事法部会の議論に費やした時間は、五回、合計約十三時間程度にすぎませんでした。とりわけ学者委員の発言が極めて少ないと伺っております。刑事法部会における審議が充実したものであったとは到底言い難いものであります。今回の法律案の重大性からして、もう少し国民的な議論に発展する部会審議が必要であったと思われます。その一方で、法制審議会委員、幹事ではない多くの刑事法学者からの反対意見も寄せられていました。毎日新聞などのマスコミからも安易な一律厳罰化は避けるべきであるとの批判もありました。
 今回の改正案は、国民的議論が尽くされたものとは言えず、拙速に過ぎるものであったと言わざるを得ません。
 この十一月二十八日の朝日新聞の朝刊には、元々法務省としては、現行より重罰化すべきものと軽くすべきものなど、あらゆる罪のバランスの上で再検討した上で、数年先に刑法を抜本改正することを検討していたけれども、この部分だけが前倒しされたという記事が載っておりました。前倒し、前倒しにしても、改正対象となるあらゆる罪の再検討など到底されていなかった。その意味で拙速感は否めないと思っております。のみならず、このような改正手腕は、今回の改正にとどまらず、実は、現在、法制審議会刑事法部会で議論されている次の刑法改正案、人身の自由を侵害する行為の処罰に関する罰則の整備についてにおいても見られるのであります。
 私は、このように、刑法全体を体系的に見て改正するのではなく、小出しの形で改正する手法に対しては大きな危惧感を抱いていることを申し述べておきたいと思います。
 本論に入りたいと思います。
 まず第一点として、立法理由の存否であります。
 私は、まず、今回の刑法等の一部を改正する法律案には改正しなければならない立法理由がないということを強く指摘しておきたいと思います。
 その第一点は、犯罪の重罰化というのは犯罪の抑止力がないという点であります。
 今回の刑法に関する改正案は、有期懲役及び禁錮の法定刑と処断刑の上限をそれぞれ引き上げ、かつ殺人、傷害、強制わいせつ、強姦に関連した罪の下限をそれぞれ引き上げようというものであります。しかし、例えば、殺人を犯そうという者が刑法の法定刑の下限を引き上げられたからといって犯罪を思いとどまるものでないことは、多くの心理学者が述べているところであります。
 ところで、真の犯罪対策は、長期的な視野に立って、犯罪が増えた原因等を調査研究し、その原因を除去するための政治的・経済的・社会的方策が検討されるところから始めるべきであります。犯罪を犯した者に対しては、社会復帰が可能な刑務所における矯正処遇と、犯罪者が社会に戻ってきたときに再び犯罪に手を染めずに済むような、これらの人を受け入れる社会資源も不可欠であります。人権と大きなかかわりのある刑事罰の重罰化は、刑法の謙抑性からしても補充的な形で検討されるのにすぎないものであります。もっと腰を据えた徹底した犯罪対策こそ必要だと言わざるを得ません。
 二点目は、刑法各則の強制わいせつ、強姦の罪、殺人罪の罪及び傷害等の罪の重罰化の実質的な根拠がないことを述べておきたいと思います。
 刑法各則の強制わいせつ、強姦、強姦致死傷の各罪、殺人罪等の罪、傷害及び傷害致死の各罪に関する法定刑の加重に関する改正案についても、日本国憲法制定後今日に至るまでの約半世紀の犯罪統計を冷静に分析したとき、今回提案されているような形で今早急に重罰化しなければならない客観的な状況下にあると言えるかどうかは甚だ疑問であります。
 この点の統計資料の紹介については、さきの衆議院の法務委員会で日弁連の大塚明副会長が平成十二年度の警察白書を引用して述べているところでありますので詳細は省略させていただきますが、凶悪犯罪の認知件数は平成不況下にあったここ十年増加しているとは言っても、戦後から現在までの半世紀にわたる長期的な視野で見ると、ここ十年が特異的に増加しているわけではないのであります。
 岩波書店から河合幹雄さんという学者の「安全神話崩壊のパラドックス」という本が出ています。河合さんは各種の統計データを用いながら、犯罪は実際には増えていない、すなわち治安は悪化していないということを分かりやすく説明しています。河合さんはその中で、一般刑法犯は急増しているが、自転車盗が急増部分であり、それを除外すると微増にすぎない、凶悪犯は、殺人は一九五〇年代から減り続け、この十年横ばいで、強盗は急増しているものの、ひったくりや集団のカツアゲを統計に組み込んだせいであると述べております。
 立法当局は国民の体感不安の悪化などという言葉に惑わされてはいけないというふうに考えるのであります。
 三点目は、立法当局が強調する国民の体感治安の悪化、国民の規範意識、国民の法的正義観念、メッセージ性などという極めてあいまいかつ漠然としたキャッチフレーズには全く理由が、立法理由がないということを述べておきたいと思います。
 まず、体感治安なるものは、先ほど河合さんの本にもありますように、今回対象となっている凶悪・重大犯罪に関するものではなく、誇張され作られた言葉でしかないと考えられます。つまり、国民にそのような不安があるとしても、それはピッキングに代表される空き巣などの窃盗に対する不安とかおれおれ詐欺に、おれおれ詐欺に遭う不安が大部分であるのであります。したがって、今回のような重大犯罪の重罰化の立法理由には到底なり得ないものであります。
 また、国民の規範意識とか国民の法的正義観念に関して言えば、何を言っているのか分からないだけでなく、規範意識の高まりが何ゆえに重罰化に結び付くのかというのも牽強付会で全く理解ができません。今回の改正案に対しては、先ほども述べましたように、マスコミの中にも安易な一律重罰化は避けるべきだという社説が出ているほどなのであります。
 さらに、殺人の下限を引き上げる根拠として、命の大切さを訴えるメッセージ性などという言葉も納得のいかないところであります。
 東京拘置所に長く勤務し、死刑囚のケアをしていた精神科医でもあり作家でもある加賀乙彦さんは、殺人を犯す前に、この行為をしたら死刑になると考えていた者は一人もいなかったという趣旨のことを述べています。この言葉から分かるように、下限を五年以上に引き上げたから、よほどの情状がなければ執行猶予は付かない、だから犯行を思いとどまるなどといったことはあり得ないと言わざるを得ません。
 参議院の先生方には、こうした造語やキャッチフレーズに惑わされることなく、実体を見据えた御議論をいただき、この国の将来に禍根を残すようなことのないような慎重な審議をお願いする次第であります。
 四点目として、以上の結果として、今回改正されようとしている殺人の罪等、傷害の罪等の法定刑の加重は、玉突き論的な刑の均衡論以外に理由らしい理由がないことを述べておきたいと思います。
 法務当局は、強姦罪の法定刑の下限を従来の三年から五年に改正することを提案したことから、強姦罪と殺人罪の法定刑の下限が同じになり、それとの均衡から殺人罪の法定刑を五年以上に引き上げ、引き上げられた殺人罪の法定刑の均衡から今度は傷害致死罪の法定刑の下限を二年以上から三年以上にすることにしています。
 また、傷害罪や危険運転致死傷罪の法定刑は、今回の刑法総則の有期刑の上限の引上げに伴ってそれぞれ引き上げざるを得なくなっています。そして、殺人罪を加重したことによって組織的な殺人罪について加重し、傷害罪を加重したことによって暴力行為等処罰に関する法律の傷害の罪に関する部分について加重しなければならない、しなければ刑の均衡が図れないという構造を作り出しています。
 このような均衡論だけで、言わば玉突き状態での刑の加重をすること以外に根拠のない刑法改正には大いに問題があると言わざるを得ません。
 第二に、具体的な改正案に対する意見を述べたいと思います。
 まず第一点は、有期懲役及び禁錮の法定刑、処断刑の上限の引上げについて。
 ここでは、今回の刑法総則の法定刑、処断刑の上限の引上げは、凶悪・重大犯罪に対処するためという目的を超えて、刑法の全面改正の性格を持っていることを強く指摘しておきたいと思います。
 改正案は凶悪・重大犯罪に対処するためのものとされていますが、刑法総則に関する有期の懲役及び禁錮の法定刑の上限の改正等に関する改正案については、個々の犯罪事実の現状における具体的な実情を一切考慮することなく、かつ、凶悪・重大犯罪とは到底言うことができない犯罪までも含め、すべて一律に法定刑や処断刑の上限を上げようとするものであります。言わば、羊頭を掲げて狗肉を売るがごとき、極めて大ざっぱな改正を提案するものであって、国の基本法の改正の在り方としては到底賛成することができません。
 改正の対象となる犯罪は、実に刑法典、特別刑法を合わせて百四の多くに上る改正であります。その意味で、この刑法総則の改正は、凶悪・重大犯罪に対処するための改正とは言えず、刑法の全面改正の性格を有していることを強調しておきたいと思います。つまり、これらの百四の構成要件一つ一つについて、法定刑の上限を引き上げることの当否が全く検討されていないのであります。
 そのために、例えば、戦後一度も適用されたことがない御璽偽造の罪の法定刑が二年以上十五年以下の懲役から二年以上二十年以下の懲役になってしまい、公印偽造の罪の三月以上五年以下の懲役と大きくバランスを失する形で改正がされることになっています。また、加重収賄罪の罪についても同様のアンバランスが生じています。
 また、このような法定刑の上限を引き上げることによって、それぞれの犯罪についての法定刑の幅が広がり過ぎる結果も生じます。五年後の裁判員制度では国民が量刑に関与することになるのですから、このような幅の広い法定刑が裁判員を惑わす結果になることも見据えた見直しが考えられるべきだったと思います。その意味で、今回の改正案の中で、この刑法総則の改正こそ、最も根拠がなく、かつ、拙速さを表しているものと断ぜざるを得ません。
 次に、このような改正案は、長期の受刑者の社会復帰に重大な影響を及ぼすということを述べたいと思います。
 現在の世界の行刑モデルは、旧来の医療モデルから社会復帰モデルへと確実に変わっております。二十年、三十年、社会から隔離して拘禁施設に収容することは、受刑者の人格破壊につながりかねず、社会復帰にとってプラスにならないことも留意すべきであります。有期刑受刑者の長期収容化は、また無期刑受刑者の仮出獄までの期間を長期化するおそれがあり、無期刑受刑者の社会復帰にも否定的な影響を与えかねません。現在問題となっている過剰収容ともかかわるものでありますので、行刑とのかかわりの検討が不可欠であるのでありますが、その点の検討がなされた形跡がありません。
 三点目は、無期刑に処する場合と有期刑に処する場合の実質的な格差の縮小論については大きな疑問があるという点であります。
 法務当局から、有期刑の上限を引き上げて無期刑との差を縮めることによって、量刑の場面で無期刑と有期刑の選択が迫られた場合に、無期刑でなく有期刑を選択しやすくなるといった趣旨の説明がなされました。
 しかしながら、従来であれば無期刑であったもののどの程度のものが有期刑になるかは明らかになっていません。また、仮に無期刑になる者の少数が有期刑になったとしても、有期刑全体が長期化するなら、差引き長期化するおそれも大きいと思います。
 さらに、前述した法務当局の説明では、法定刑に有期刑とともに無期刑が規定されている罪には該当しますが、有期刑のみが規定されている罪、例えば強盗、事後強盗、御璽偽造などの罪には該当しません。このことは、格差縮小論が一律に有期刑の法定刑の長期を長くする理由になり得ないことを示しております。
 二つ目に、強姦罪等の法定刑の見直しについて述べたいと思います。
 まず、強制わいせつ罪と強姦罪の犯罪類型については、法定刑の問題以前に、その規定の在り方を根本的に見直す必要があることを述べておきたいと思います。
 刑法の強姦罪は、行為主体を男性、客体を女性に限っており、男性が客体となったときには強制わいせつ罪しか成立しません。ところで、性的自由の侵害に係る罪については、世界の趨勢は、男女間に差を設けない方向にあります。フランス、アメリカ、カナダ、ドイツなどにおいて、被害者を女性に限定しない形での法改正が行われており、男性被害者についても強姦罪が成立するようになっています。
 現時点で、刑法の強姦罪等の改正を行うのであれば、まず、こうした世界の趨勢に合わせた性犯罪全般の見直しが行われるべきだと思います。日本において、性犯罪の被害者は女性がほとんどだから現行の規定のままでよいという議論がありますが、これは近い将来の変化を視野に入れておらず、少数者であっても回復し難い精神的ショックを受けた男性の性犯罪に対する差別にもなりかねないものと思います。
 次に、性的自由の侵害の罪の刑を検討するに当たっては、現行刑法の強盗罪等の刑との比較が不可欠であることを述べたいと思います。
 強姦罪は強盗罪との比較で軽過ぎるという意見は以前からありました。しかし、今回の改正においても、強盗罪の関係では依然として低いままになっています。比較法的に見れば、フランスの一年以上十五年以下の自由刑、ドイツの一年以上の有期自由刑と比較しても、日本の強姦罪の法定刑それ自体が不当に低いというわけではありません。強盗罪の下限が五年という刑法の規定と比較するからこそ、現行の強姦罪の刑の下限が低きに過ぎるように見えるのであります。
 その強盗罪の刑の下限が五年というのは、実は欧米諸国と比較しても異様に高いものとなっていることこそ問題があるのであります。そのことを一顧だにせず、強姦罪の法定刑の下限を引き上げることには反対と言わざるを得ません。
 三つ目は、殺人罪等の法定刑の見直しであります。
 まず、殺人罪の性質からして下限を引き上げる理由がないことについて述べたいと思います。
 殺人罪は確執とか情念といった人と人との濃密なかかわりの中で発生するものが少なくなく、その違法、責任の在り方には種々のものがあります。従来、殺人罪の多くは執行猶予付きの判決が言い渡されてきたという事実を想定していただきたいと思います。すなわち、私は、殺人罪にはその性質からして類型的に執行猶予を付すことができる三年の刑に相当すべき事案があるからこそ、現行刑法はその刑の下限を三年以上としていたものと考えております。
 現在の日本社会の実情からしても、執行猶予を付すべき事案は類型的に生じ得ます。例えば、家族中心の介護をせざるを得ない社会状況の中で、長期間介護をしていた夫が介護に疲れた、妻を殺してしまうというような期待可能性の少ない行為類型も当然想定されるところであります。
 事は殺人という犯罪現象の類型的評価にあるのであって、具体的事案において酌量減軽をすれば執行猶予を付すことができるから不都合はないということで済ますこともできる問題ではないと考えます。
 次に、殺人罪の発生率からしても刑の引上げの必要性がないことを指摘したいと思います。
 日本における殺人罪の発生率は世界でも一、二を争うほど低いと言われてきています。戦後半世紀の統計を長期的に見ても、殺人罪の認知件数は、昭和二十九年の三千八十一件をピークとして減少傾向にあり、平成三年の千二百十五件で底を打っております。その後は横ばいに推移し、十一年には千二百六十五件となっており、必ずしも増加傾向にあるとは言えない状況にありません。殺人の検挙率も下がってはいません。最近十年間の殺人の認知件数を見ても、平成六年の千二百七十九件を一〇〇として、平成十五年の一千四百五十二件で一一三・五であり、微増にとどまっています。現状において、殺人の罪の刑の下限を引き上げなければならない犯罪状況にはないと言わざるを得ません。
 次に、傷害の法定刑の見直しについて述べたいと思います。
 まず、傷害の罪の法定刑は、国際的に見ても決して低くはないということを挙げたいと思います。
 世界の立法例を見てみると、傷害の罪の刑は、アメリカのニューヨーク州で二年以上七年以下の自由刑、イギリスで五年以下の自由刑、ドイツで六年以上十年以下の自由刑、フランスで十年以下の自由刑及び十五万ユーロ以下の罰金であって、日本の刑法の十年以下の刑が特に低いというわけではありません。
 また、傷害の罪に比較して、重い刑によって処断すると規定された罪についても問題があります。
 その刑が傷害の罪に比較して、重い刑によって処断すると規定された罪は、ガス漏出等致死傷の罪など刑法典に十二の構成要件が規定されています。こうした規定は特別法にも見られます。これらの罪の個別的な検討なしに、これらをすべて一律に同じ重さに引き上げることには疑問があります。
 最後に、公訴時効の見直しについて述べたいと思います。
 公訴時効の延長が提案されている刑事訴訟法の改正案は、警察を始めとする捜査機関の負担を増大させるだけでなく、刑事訴訟手続にかかわる弁護人の立場からすれば、公訴時効の延長は、時間の経過により、アリバイ証人等の確保や証人の記憶の喚起が難しい現状を一層困難にし、その反面で、供述者の記憶の新しさを理由に過去に取られた調書について、刑事訴訟法三百二十一条一項二号、三号書面の採用を容易にし、その結果、被疑者・被告人の防御権の行使を更に困難にする等の弊害があるので反対であります。
 以上のとおり、今回の改正案に対しては、国家の基本法たる刑法を大幅に改正するものであるにもかかわらず、到底十分な国民的論議がなされたと言うことができないものであるので、これに伴う刑事訴訟法の改正案も含めて、強く反対するものであります。
○委員長(渡辺孝男君) ありがとうございました。
 次に、石塚参考人にお願いいたします。石塚参考人
○参考人(石塚伸一君) 石塚でございます。こういう機会を与えていただきましてありがとうございます。
 既に木村参考人と神参考人からお話がありましたように、今回の刑法の一部改正につきましては種々問題があるというふうに私は考えております。私が今回ここに呼んでいただきました理由の一つには、今日配付されている資料の中に刑法学者の意見を添付されていると思います。この資料の六十七ページ以下に、「刑法重罰化改正に対する意見書」というものを作成いたしまして、刑法学者有志で提出させていただいております。こちらをお読みいただければ私どもの主張は御理解いただけると思いますが、今回の改正案は、ここには最後の七十二ページのところに書いてありますが、百害あって一利なしというやや情緒的な表現を用いておりますが、むしろ現在の司法に対する国民の信頼を損ねかねない、非常にマイナスの点の多い改正ではないかというふうに考えております。で、私どもは、安全で安心して暮らせる社会の実現のために真に必要な施策は何かを、もっと慎重かつ理性的、合理的に検討する必要があるというふうに考えておりまして、こういうような立場から意見を述べさせていただきます。
 また、私は龍谷大学で矯正・保護研究センターというセンターに所属しております。このセンターは、文部科学省の御支援をいただきまして、現在、二十一世紀新刑事政策プロジェクトというプロジェクトを推進しております。二十一世紀における刑事政策は従来の形態とは異なる新たなものでなければいけないというふうに私どもは考えております。その考え方は、これはまだ私の私見ではございますけれども、今日配付させていただきましたこの「現代「市民法」論と新しい市民運動」という本の中にまとめておりまして、百三十五ページに「二つの刑事政策」という形でまとめております。
 百三十五ページの一番下のところに、現代の刑事政策の展開の中で新たな世紀を見据えた刑事政策を選択するとすれば、二つの可能性があるというふうに述べております。
 第一の政策は、治安の悪化を自明のもの、刑罰の一般予防機能を重視して取締りを強化する厳罰主義の政策であるというものです。具体的には、警察官、検察官、裁判官などを増員して大きな司法を目指します。この政策は、刑事司法システムの入口を肥大化させる政策です。したがって、その出口である刑務所であるとか保護観察であるとか、社会復帰のいろいろな部局に後の世代あるいは現在でも影響が及んでしわ寄せが及ぶことは必定です。この政策は大きな刑務所人口を抱えることになるから、刑事司法のコストは膨大なものにならざるを得ない。後ほど、概算ですが数字を挙げて説明させていただきます。
 いま一つの政策は、犯罪の変化を慎重にチェックし、刑罰の特別予防的機能を重視して、ダイバージョン、刑事司法の流れの中から必要のないものを排除していくと、よそにそらすという方法ですが、この手法を活用しながら社会復帰のための処遇を開発する寛刑主義的な政策です。この施策においては、家庭裁判所の調査官であるとか、法務教官であるとか、保護観察官などのケースワーカーを増員して司法の福祉的機能を強化をする。この政策は、刑務所の人口を抑制し、前科者や再犯者の数を減らすから、間接的ではありますが、迂遠のようには見えますが、最終的には司法コストを軽減することができる、そしてそのコストを福祉に回すという施策です。後ほどこれについても説明させていただきます。
 私どもは、後者の方の政策、適正規模の刑事司法を維持する政策の方が妥当であるというふうに考えております。
 それでは、お話をさせていただきます。
 まず、大きな政策を取って失敗した国がアメリカです。なぜ失敗したかについてお話しします。
 アメリカは、一九八五年に約七十万人の刑事施設の収容者を抱えていました。これが二〇〇四年、現在ですが、約二百万人を超す収容者を抱えます。つまり、刑務所であるとか日本の拘置所に類するところで二百万人の人、百万都市二つ分の人たちを養っているわけです。この人たちは労働をしていませんから、この人たちの生活費をすべて国あるいは州が負担しなければなりません。民営刑務所で収容者一人について民営機関が請け負うときの値段が大体一日百ドルぐらいです。それ掛ける三百六十五日のお金が必要になるということになります。膨大なお金です。
 アメリカがなぜこのような三倍近くの収容者を抱えるようになってしまったかということについて説明します。
 アメリカでは、伝統的に刑罰目標というものは、応報と犯罪の抑止とそして隔離、そして社会復帰、この四つであるというふうに言われてきました。伝統的にアメリカは社会復帰政策を重視する、そういう政策を取ってきています。そういう中で、一九八四年、コンプリヘンシブ・クライム・コントロール・アクト、日本語では包括的犯罪統制法というふうに訳されていますが、この法律をレーガン政権の下で導入しました。この法律の目的の中で、刑罰目標は応報、抑止、隔離であって、社会復帰はこの三つの刑罰目標と抵触しない限りにおいて尊重される、そういう規定を設けました。そのために社会復帰は後退したわけです。そのために、厳罰政策が取られるようになります。
 まず最初に始まったのが、ウオー・オン・ドラッグと呼ばれる薬物との戦いです。薬物を自己使用した人たちも厳しく処罰して刑事施設に入れる、そういう施策を取りました。次が、少年裁判所の廃止等に見られるような少年に対する刑事司法の強化です。次が、性犯罪法、取りわけ、メーガン法という名前で御存じかと思いますけれども、性犯罪者に対して厳しい制裁を加え、出所後もその情報を公にするというような法律ですが、これは危険な犯罪者に対する厳しい施策を意味します。そして最後に、重大な一般犯罪を犯した人たちを厳しく処罰する方法です。三振法とかスリーストライクアウトとか呼ばれるもので、重大犯罪を三回犯すと無条件で二十年あるいは終身の自由刑にするというものです。変な話ですが、二回強盗をやった人が三回目に窃盗でピザを盗んだと、そうしたら終身刑になったというような笑い話のような話がよく挙げられますけれども、そういうような状況が生まれてしまいました。
 確かに、多くの人たちが刑務所に入りましたので、犯罪を犯す可能性の高いティーンエージャーであるとか二十代の人たち、そういう人たちは施設の中に入っていますので、外での犯罪は減ったように思われます。
 よく例に挙げられるニューヨークであるとかシカゴであるとか、そういう大都市の犯罪が減った。確かに、私たちも行ってみて、ニューヨークが安全になったというのは体感いたします。しかし、それは多くの人たちが危険な刑務所に過剰に収容されていることによって補完されているという現実を忘れてはなりません。
 また、都市に住んでいた人たちが小さな都市へと拡散していきますから、これはドイツなんかでも行われたことなんですけれども、ベルリンやフランクフルトの駅で、そこでたむろしている人たちを厳しく禁止する、二人以上話していると離れるようにというようなことが通告されることがあります。若い人たちは沿線の都市に行ってその周縁の住宅地域で今度はたむろするようになるという現象が生まれますが、フランクフルトの都市の真ん中、ベルリンの都市の真ん中は確かに体感治安は良くなります。しかし、これは全社会的規模で見たときの治安が良くなったと言えるかどうかということは問題です。
 そういうような失敗をアメリカは犯したというふうに私ども刑事政策研究者は思っています。多くの犯罪学者は、世界的なコングレス、大会に出ますと、アメリカの政策は失敗し、これを今後どうやって直していくかということを考えています。
 日本は、そういう意味では今正にアメリカの轍を踏むのかどうかという岐路に立っていると私どもは考えます。一九九〇年代の前半に、これは国会に諮ることもなく覚せい剤の自己所持あるいは自己使用の人に対する政策は全く、量刑政策は全く変わりました。
 どういう施策を現在取られているかというと、自己所持又は自己使用で量の少ないものを持っていたような人たちは、初犯であれば懲役一年六月、執行猶予二年を言い渡されます。覚せい剤の自己使用者という方は、多くの場合、依存症になっているケースが多いので、ああ釈放された、釈放されたんだと、私は無罪なんだというふうに考えられるのかもしれませんけれども、また再使用をされます。再使用をした場合には、当然また捕まって、覚せい剤の自己使用ないしは所持で捕まります。そうすると、今度は二年の実刑判決が言い渡されます。そうすると、前の執行猶予が取り消されますので三年六月、一番最初で刑務所に入ってくるときに三年六月の刑を持って入ってくるわけです。そうすると、二十五歳の覚せい剤の受刑者の人というのは、三年六月刑務所に入ってなきゃなりませんから、覚せい剤で仮釈放が付くということは難しいので、二十八ないしは九歳まで刑事施設に入っています。若いその時期に施設に入っていて社会に出てきても、働くチャンス、社会に復帰するチャンスは与えられません。したがって、再使用を繰り返していて刑務所と社会の間を行き来する、最終的には病気が進んで精神病院に収容されるというようなケースが増えてくるということになります。
 こういうような悪循環をどういう形で解放するか、解決するかということが今刑事施設の中で非常に重要な課題になっています。そのために刑事施設の中では覚せい剤プログラムを始めていまして、そこにはダルクという自助グループのメッセージが入ったりというようなことが行われていて様々努力をしていますが、現実には、施設の収容状況が一一七%ぐらいの収容状況ですから、九〇%程度が限界だと思いますから、二十数%ぐらいオーバーしている状況になります。そういうような状況の中ですので思うような処遇ができないというのが現実です。
 御存じのように、少年についても、日本は少年法の厳しい適用を求めるような改正が既に二〇〇〇年に行われていまして、現実にも少年院であるとか少年鑑別所に収容される子供たちは増えておりますし、その子たちの社会復帰というのは非常に大きな課題になっております。当然、五年後の見直しの際に先生方の御検討をいただくことになるかというふうに思います。
 もう一つの特徴は、被害者の権利の保障、被害者の権利のルネッサンスというふうに言われていますけれども、先ほども木村参考人からお話がありましたように、とりわけ女性の権利が今まで侵害されてきたことに対してだれも否定はしないわけです。そのために強姦罪の体系的な、刑法体系上の位置付けを考え直して、性的に自由に対する犯罪として理解すべきであるという考え方は学界でも通説になっておりますし、現在の性的道徳秩序に対する罪に位置付けておくことはおかしいということでは一致していると思います。そうであるならば、今回の改正でも、刑を重罰化するということが一つ、これは一つの方法だと思いますし、いま一つ、集団の強姦罪について新たに新設するというのも一つの方法です。より一歩進んで、なぜ親告罪にしておくのか、強姦罪から親告罪を取ってしまえばいいではないかという議論が一つあります。
 いま一つ、先ほどもお話ありました、男女を問わず性的な暴力行為に関しては、これは厳しく対応するということを社会に示すということは重要です。法制審議会の中で言われましたメッセージ効果というものを重視するのであれば、今回、強姦罪についてこういうような対応をしたということを世の中に明らかに示す必要があると思います。そういう観点から見ますと、それと一緒に殺人罪であるとかその他の刑法総則上の刑の上限を十五年から二十年に上げるということはマイナスです。片っ方で強姦罪重くしたよというメッセージを出しておいて、こっちも重くするんだよというメッセージを出すわけですから、当然受け取る側の印象は弱くなります。本当にその被害者の権利を保障するということであれば、一つ一つの犯罪類型についてきちんとした検討をした上で適正な刑罰を示すということが重要なのだというふうに考えます。
 いま一方で、先ほど神参考人からお話ありました立法事実として日本の犯罪が増えているという認識ですが、これも、河合さんのおっしゃることをまたず、我々犯罪社会学であるとか犯罪学の研究者は、今見えているような、統計上表れているような急激な増加はないということで共通認識を持っております。
 なぜこのように増えているかということを言うんならば、これは明白でして、窃盗罪が増えているからです。窃盗罪がこんなに増えているのはなぜかということは、先ほども自転車窃盗のお話が出ましたが、もう一つの、余り指摘はされてませんが、ファクターがあります。これは、一九九〇年代に新たな保険商品が出まして、損失すると、何かを盗まれたというときに警察に行って被害届をもらってきます。それを持っていくとその損害が補てんされるようになりますから、被害届を出すということが損害の証明になるような構造になりました。外国に旅行されると分かると思いますが、何かがなくなった場合には必ず警察に行ってその証明をもらってきます。そうすると、証明書はもらうけれども捜査は望んでいないというケースが増えるわけです。当然、そういう事件については捜査が及びませんので検挙率も下がるということになります。
 類似の例が器物損壊罪であります。器物損壊もこのところ非常に増えている犯罪です。
 この器物損壊と窃盗罪で全体の犯罪の約七〇%、認知件数の七〇%を占めていますので、この部分が増えてくれば検挙率が下がるのは当然なわけです。
 これはカウントをする構造それ自体が変わったので、株式の指標を、ダウ式平均株価を見ていくときに指標銘柄を入れ替えると継続性がなくなるのと全く同じで、同じような比較に合わないことになります。先ほどからお話ありますように、戦争直後と今を比較するのに同じように比較するのは確かに難しいと思います、窃盗それ自体の形態も変わっていますし。それだけを見て言うのではなく、やはり九〇年代に起こった数字のカウントの仕方の構造的な変化をもう少し見ていただければ私の言っていることは御理解いただけるのではないかというふうに思います。
 もう一つ、体感治安の悪化ということが言われます。これは、体感治安というのは、自分は被害者になる可能性があるというふうに一般の方々がアイデンティティーを持つわけです。自分が被害者になったらどうしようというのを体感治安ということになります。
 そうすると、この総理府で行われた調査も、朝日も読売もそうなんですが、調査を見ますと二十歳以上の方に調査されているんですね。つまり、選挙権を持っていられる成人の方なんです。つまり、未成年の人は調査の対象になっていないという事実を頭に入れておいていただきたいと思います。我々も、今の若い子供たちの行動を見て、服装であるとか物の振る舞いを見てちょっと顔をしかめるような行動が目立ちます。そういうものと体感というものが実は結び付いているということが一つ。
 それと、日本はこの十年間に急速に高齢社会になりました。したがって、世論調査をしたときも十年前と比べると高齢の方の御意見が反映しやすい構造になっていますので、これも五年前、十年前と比較しても若干その基になっているロットが違いますので、よく検討し直さなければならない問題です。単純に数字の比較ではできないというふうに思います。
 もう一つ重要な問題は、時間もありませんので限って言いますが、過剰収容問題です。先ほど申しましたように、入口のところを強化するとしわ寄せは出口に来ます。現在、刑事司法の収容者の数というのがどのぐらいあるかということですが、一九九二年、十年前ですと、刑事施設ですね、刑務所とか拘置所に入っている方が四万五千人、一日平均、でした。これに代用監獄と言われる警察留置場に入っている方も足してみると約五万人です。で、二〇〇二年ですね、二〇〇二年の統計でいいますと、刑事施設に入っている人は六万七千人、代用監獄に入っている方が一万二千人いらっしゃって、合わせると八万人ぐらいになります。つまり、六〇%十年間で増えているということです。三万人、六〇%増えているという計算になります。
 で、六万人増えるということは、経済負担でいうと物すごい負担になります。大体、収容者ですね、人件費を除きまして一日平均六千七百円ぐらいの収容費が日本でも掛かっています。これを月に直しますと、これに三十を掛ける、それに三百六十、十二か月を掛けてみると、大体一年間で二百四十四万、二百五十万円ぐらいのお金が掛かります。一万人増えると二百五十億です。これが三万人増えたら七百五十億になります。収容者が増えるというのは、こうこうさように全部の生活を見ることになりますから負担が大きくなります。従来はこれを刑務作業によって補てんするという考え方を取っておりましたので、受刑者については刑務作業で二百億円ぐらいでとんとんだというような考え方を取っていたんですが、未決の人が長期で入っているとかいうことを考えられますと、これは作業では補てんできませんので大きな負担が残ります。
 これを、今回の法案が通りますと、恐らくは重罰化が進むということは当然あると思います。法制審議会の中では裁判官は裁量の幅があるので従来の科刑を維持するんだとおっしゃいますが、立法者がこういう法律を作ったということは重くしなさいというサインを出したのであって、軽くしなさいというサインを出したわけではないですから裁判官がこれで軽くしては困るわけで、やはり重くすると思います。
 量刑相場が重くなれば収容期間も長くなり、財政負担も大きくなることになります。そうすると、当然、現在一一七%と言っている刑事施設の収容状況がより厳しい状況になって、そこでの負担は大きくなるのが一つ。そしてさらに、十年、二十年たったときに、次世代になって、長い刑で社会に戻れない人たちが増えることによって次世代に大きな負担を残すことにつながる。その意味で、今回の法案については大きな問題があるというふうに私は考えます。
 以上でございます。
○委員長(渡辺孝男君) ありがとうございました。
 以上で参考人の意見陳述は終わりました。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○松村龍二君 自由民主党の松村でございますが。
 どうも、非常に貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。また、事前に資料等もいただいておりましたので、読ましていただきまして大変参考になったわけでございます。まず、御礼申し上げるわけですが。
 そこで、神参考人にお伺いするんですが、今申しましたように、非常にこういう見方もあるなという点で参考にはなったんですが、何でもかんでも反対というふうな、よくここまで全部反対というふうに言えるなという、率直に言いまして感じもするわけです。
 例えば公訴時効、死刑の公訴時効が十五年を二十五年にすると。今まで十五年で、逃げ回っておれば殺人をしても罪にならない、公訴されないということが二十五年になったということは、庶民的な感情からすれば歓迎する国民が多いんじゃないかなと想像するんですけれども、ただいまの反対理由を伺っておりますと、そんな十五年も二十五年もたって捕まったところで、その証拠が散逸してしまって余り意味がないでないかというようなこと、あるいは警察もいつまでもそんな事案に殺人事件の本部を作って大変じゃないかと、こういうようなお話かなと思うんですが。しかし、最近、DNAとかいろいろ決定的な証拠を握る方法もできてきておると。科学捜査というものもある。
 また、先般、私の地元の福井県で、公訴をあと二か月で時効になるという人が捕まった松山のホステス殺し事件というのがありましたけれども、その事件当時の証人その他からすれば、犯人であるということが、実行者であるということがいろいろな証拠で確実だったんじゃないか、これも私の想像ですけれども、というふうに思うんですが。
 そういう意味において、時効を延ばすということは何が何でも絶対認められないということではないんじゃないかなと思うんですが、これについていかがでしょう。
○参考人(神洋明君) お答えいたします。
 私が述べている一つは、元々その捜査というのは初動捜査が非常に重要なんであります。ですから、十五年を二十五年に延ばして、なおかつ犯罪者が捕まらないという事態というのはかなり異例な場合だろうと思われます。その年月の経過というのが我々弁護人にとってはやりにくいということが、一つ理由として先ほど述べたとおりであります。
 確かに、DNAとか科学捜査とか、いろんなものがあることも分かります。しかし、私が思うのに、十五年がなぜ突然二十五年になるんでしょうか。ここも分からないんですね。なぜ二十年じゃいけないのか。それから、もう一つは、民事上の除斥期間というのが二十年なんですね。この、要するに民事上は二十年たっちゃうと全く責任追及ができないのに刑事だけは責任追及できる、こういう在り方でいいんだろうかと。
 そういう意味で、私は十分な議論がされていなかったという意味で反対をしているのであります。
○松村龍二君 性犯罪について、欧米では男女、客体が女性だけでないというようなこともこれはあるので、性犯罪について強姦その他の罪を見直すときにはもっと根本から見直したらいいんじゃないかと、神参考人のそんな御意見もあったと思うんですが。この男性に対するわいせつというのは、これは児童買春・ポルノ法によれば、法務委員会ですからこういう発言も許していただけると思いますが、児童買春とは、「児童に対し、性交等」、性交等というのは「(性交若しくは性交類似行為をし、又は自己の性的好奇心を満たす目的で、児童の性器等(性器、肛門又は乳首をいう。以下同じ。)を触り、若しくは児童に自己の性器等を触らせることをいう。」と書いてあります。
 男性に対する強姦というのは、どんなことを言うんですか。
○委員長(渡辺孝男君) だれに。
○松村龍二君 神先生。
○参考人(神洋明君) 男性に対する強姦というのは、男性が要するに客体となって、本人の意思に反してやはりそういうことが起こり得るということで言っているので、本来言われる姦淫とは意味がちょっと違ってくるとは思いますが。
○松村龍二君 よく、物の本によれば、アメリカなんかの刑務所に入ると、気を付けないと収容された日本の収容者が強姦されちゃうというような話はよく聞くんですけれども、日本ではほとんどそんな話聞いたことないと思うんですよ。
 したがって、そういう意味において、物の考え方として、男女の別なく強姦等の性犯罪を男性にも平等に構成要件をするべきであるということは今の日本にはまだ早過ぎる話じゃないかなと思いますが、神参考人、いかがでしょう。
○参考人(神洋明君) お答えいたします。
 今、先生御指摘の問題は日本の刑務所においても起こっております。私も、現実に受刑して帰ってきた者からそういう話を聞いております。したがって、決して日本にないということではないのであります。
○松村龍二君 それでは、今度は木村参考人にお伺いいたしますが、木村参考人は最初のお話の中で凶悪犯罪が激増しているというお話がございました。神参考人、石塚参考人からは凶悪犯罪も増えてはいないと。ただ、先ほどの御説明で平成十一年ごろまでは減っているというようなお話もあったわけですけれども、先ほど木村参考人からいただいた資料によりますと、九〇年ごろから凶悪犯の認知件数が増えておるということでございますが、さっきの体感的治安という話もございましたが、私ども最近、小さな子供、特に女の子を持っている家ではもう集団登校・下校しないとというふうに日本の社会も変わってきたという点においても大分治安が悪くなったのかなという感じもするわけですけれども。
 神参考人、石塚参考人は犯罪は増えていないとおっしゃるし、木村参考人は増えているとおっしゃるわけですが、その辺について木村参考人の御見識をお伺いします。
○参考人(木村光江君) お答えいたします。
 増えている、増えていない、正に逆のような表現になってしまっているんですけれども、窃盗罪を含めた全体の刑法犯というのは、これも実は増えてはいるというふうに私は認識しておりますけれども、先ほどお示ししましたような図のような傾向ではございません。むしろ、これ、きちんとここに書いておけばよかったんですけれども、凶悪犯の認知件数ということですから、強盗罪、強姦罪、殺人罪、放火罪と、それについての言わば一番悪質と考えられる犯罪についてこのような急激な変化が見られると。中でも一番ひどいのは強盗罪なんですけれども、今日のお話の中心であった強姦などでもやはり一・五倍になっております。
 ですから、その意味で、特に凶悪犯についての認知件数がここ十年で極めて厳しい伸びになってしまっているというのが私の認識でございます。
○松村龍二君 また神参考人に伺うんですが、この刑法というのが明治四十年に制定されて百年間改正されなかったと。コンピューターの電磁的記録というようなところで多少改正があったわけですが、ほとんど根本が触られてこなかったと。私も、さっきも申し上げたんですが、ストーカー法案を起草するときに私も一員に加わったわけですけれども、本来、法制審議会の刑事部がもう少し時代に即応しててきぱきと動いてくれれば、国会議員が起案しなくても、議員立法しなくてもできた、できるんじゃないかなと。軽犯罪法にしても、できたらもう一切触らぬということは、余りに関係者が慎重過ぎるんじゃないかなと。
 また、先ほどのお話のように、反対、甲論乙駁、非常に議論が分かれてだれも妥協しないということになると、そういう時代に即応した刑法の改正ということが遅れるんではないかなと。そういう意味においては、今回、御不満かも分かりませんが、一歩前進ではないかなと私は思うんですが、そういう考えについてはいかがお考えでしょうか。
○参考人(神洋明君) お答えいたします。
 確かに時代に即応した刑法の在り方というのは必要だろうと思います。私が問題にしているのは、今回の法律案については、例えば刑法総則の処断刑、法定刑を引き上げるというものについて、個々の犯罪についての実情とか実態を把握せずに一律に上げていくやり方、これが乱暴だということを申し上げているのであります。その意味では、私はやはり今回の改正が一歩前進だとは到底思えません。私が一番この中で懸念しているのは、この刑法総則の法定刑及び処断刑の上限を上げるということについては一番懸念をしているものであります。
○松村龍二君 石塚参考人は矯正の問題について非常にお詳しいということで、近代的なその矯正に対するお話をいただきまして大変参考になったんですが、特に今ちょっとすぐ伺いたいということがございませんので、お礼だけ申し上げまして、私の質問はこれで終わらせていただきます。
○江田五月君 三人の参考人の皆さん、今日は本当にありがとうございます。
 真っ向から激突風の御意見でございまして、何を聞いてみようかなと思っているんですが、神参考人と石塚参考人にまず伺ってみたいんですが、強姦罪などの性犯罪、これについての特に被害者あるいはその周辺の皆さんあるいはこうしたことにかかわっている皆さんのとにかく一日も早く法定刑を強化してくれ、あるいは、もっと言えば、厳罰化してくれという思いは結構切実なものがあるのではないか。その他のこととの兼ね合いということもあるでしょうけれども、そして、私も性犯罪について、この女性を被害者とする強姦罪という規定の仕方に対してもっと工夫があるのではないかという気もしますが、しかしそういう議論をいつまでやっていてもらちが明かぬと。我々国会の責任でもあるんですけれどもね。これはやはり一つ納得し得るんではないかという気がするんですが、その点について、まず神さん、神参考人。
○参考人(神洋明君) お答えいたします。
 確かに性犯罪の被害者という者には非常に精神的なショックといいますか、PTSDのような被害を被るということがありますので、やはり許し難い行為であると私も思います。厳罰化するということについても、私は、現在の法定刑の中で下限を上げなければならないということが理解できないのであります。上限でやることができるのでありますので、そういう意味では下限を上げる必要はない。やはり、実際問題として、昨年ぐらいから問題になっております例のスーパーフリー事件なんか見ていても、それなりの処断がされているということがあるわけです。更にここで引き上げなければならないというふうには私にはとても思えないのであります。
○参考人(石塚伸一君) 私は今回の改正の中で、いわゆる集団強姦罪の部分と、それと強姦罪、強制わいせつ罪の引上げについてはあり得る選択だというふうに思います。ただ、それがどの程度の量刑が適当なのか、法定刑が適当なのかについてはまだ検討の余地はあると思いますが、あり得るというふうに思います。
 ただ、先ほど申し上げましたのは、現実の場面で、例えば下限が二年であろうが三年であろうが、一番今現場で困っていることは、被害者の方が告訴をするということには非常に大きな障害があって、とりわけ御家族の方が、告訴なんかしないでもう忘れたらどうかというふうにおっしゃるような方も、やっぱりその地域のことを考えていらっしゃる。ということは、親告罪にしなければ秘密を守ったままで証言も保障しながら対応ができるのに、そこに一つの女性に大きな負担が掛かっているという現実がありますので、そこを解決した方が法定刑だけに頼っていくよりは望ましいのではないかというふうに考えております。
○江田五月君 はい、ありがとうございます。
 確かに法定刑だけに頼るというわけにはいかない。私ども立法に携わる者も、この間、証人尋問のやり方をいろいろ工夫をするとか、様々な被害者の人に余計な負担を掛けずに刑事司法が進行できるようなそういう手だてを講じてきておりますが、それにしても、以前は私も若干の経験ありますけれども、とにかく傍聴禁止の措置を取るとしても、それにしても余りにも生々しい証言を被害者に法廷で求めていくというようなことでは、それは被害者の方々に二次、三次の被害を与えるということになっていたようなことがあると思うんですね。
 それはよく分かることでありますが、そこで次に今度は木村参考人に伺いたいんですが、さはさりながら、今の強姦罪などの法定刑の引上げ以外の部分について神参考人、石塚参考人のお話というのは結構説得力はあったような気もするんですけれども、まず、神参考人のそのお話の中心部分、一般的に総論で有期の懲役刑を上げるということで個別の罪の法定刑の引上げについて不都合が起きてきている部分があるのではないか。例えば、今たしか言われましたね、御璽偽造罪のように。そういう細かな検討なしにやるのはいかにも乱暴で拙速ではないかという、この御批判はどういうふうに答えられますか。
○参考人(木村光江君) お答えいたします。
 確かにそのような御批判があるというのはよく分かりますし、法制審議会でもそのような御議論が出ていたかというふうに思います。ただ、刑法典の考え方として、やはり有期の上限を設けている罪というのはそれなりにやはり意味がある。刑法典として重い、重く処罰する必要があるというふうに考えているものだというふうに思われます。ですので、それは確かに一律というふうにおっしゃられるかもしれませんけれども、やはり一つ上げて、じゃどれをやめるのか、どれを上げるのかというのを一つ一つ検討するということがそれほど意味があるというふうには私には思えません。
 ですので、刑法典全体として今回やはり重罰化するということであれば、それにそろえて上げるということは非常に合理性があるというふうに私は考えております。
○江田五月君 例えば、無期刑と有期の懲役が十五年というのとの差が余りにもあり過ぎる。そこで、この時代の変化、平均寿命の変化などもあって、そこでこの無期に有期の上限を多少でも近づけていこうというんで二十年にするというそういうことですが、しかし、今の御璽偽造罪には無期刑の選択刑がないんですよね。そうすると、法定刑、有期の懲役刑の十五年という上限は、仮に有期の上限を二十年に上げても、じゃこれだけは十五年でとどめておけば良かったではないかというそういう指摘なんですが、これはいかがですか。
○参考人(木村光江君) お答えいたします。
 確かに、御璽の問題については恐らく戦後一件もないんではないかと思うんですけれども、その点特別に考慮する必要があったじゃないかという御意見は、確かにその側面もあるのかなというふうには思います。ただ、その一件だけを取り上げて、では、じゃ、これ一件についてどうするかというのを議論するということになりますと、余りにもやはり議論が先延ばしになってしまうというおそれがあると思います。
 繰り返しになって恐縮ですけれども、現在何か手を打たなきゃいけないと言われているときにはやはりスピードも非常に重要になりますので、個々の議論というのを余りにも拘泥して全体が崩れてしまうというようなのは妥当ではないというふうには思われます。
○江田五月君 有期刑の上限という一つの評価をして御璽の法定刑を決めたと。その評価といいますか思想といいますか、法定刑を作る、その思想に変化を及ぼそうとするとこれは十五年で止めなきゃいけないけれども、その思想はそのまま維持しながら全体の有期懲役の上限を上げるということですから、そのまま上がったというような理解なのかなと思いますけれども、まあ、ああ言えばこう言うで、いろいろあるという。
 もう一つ、石塚参考人の御意見の中で、厳罰化ではないと、今必要なのは寛刑化なんだという指摘だったと思うんですけれども、これについて、木村参考人、どういうふうにお考えになりますか。
○委員長(渡辺孝男君) 石塚参考人。
○江田五月君 いや、木村参考人。
○委員長(渡辺孝男君) 木村参考人。ごめんなさい。
○江田五月君 もう一度言いましょうか。
 石塚参考人の主張は、厳罰化が今必要なことではなくて寛刑化なんだということだったと思うんですが、それについて木村参考人はどう反論されますか。
○参考人(木村光江君) お答えいたします。
 石塚先生のおっしゃった過剰ということでは、収容人数が増えてしまうという問題が非常に大きいという御指摘だったと思います。確かにその面はあると思うんですけれども、収容人数が増えてしまう過剰収容の問題と法定刑の問題を直接結び付けるというのはやはりちょっと危険かなというふうに思います。法定刑は法定刑として、やはり国としてこれだけの重さの犯罪だという言わば意思表示なわけですから、それはそれとしてきちんと行うと。それにより、まあ、ちょっと先になるかもしれませんけれども、過剰収容が更に問題化するというおそれはあります。
 ですから、それまでの間にやはり十分な手を打つべきだと。それはそれで、やはり、先ほど何百億というようなお話ありましたけれども、お金が掛かるから、じゃ刑務所はやめてしまうという議論ではやはりおかしいはずで、お金が掛かってもやはりやるべきことはやるということなんだろうと思います。
○江田五月君 その点を石塚参考人に伺いたいんですが、この本で言われる重罰主義政策と寛刑主義政策と、この二つの関係なんですけれども、今回やろうとしているのは法定刑の引上げですよね。これは勢い、やはり法定刑が引き上げられて、求刑は前と同じだとか、宣告も前と同じだとかいうことには多分それはならない。やはり、そこは国会としてのメッセージですから、裁判官にそのメッセージを受け止めてもらうとすれば、検察官もですが、求刑も上がっていく、宣告刑も上がっていくということにはなると思うんですが、しかし、法定刑の引上げイコール寛刑主義政策というものは一切もう排除だということではないという気はするんですがね。
 私も、ここでおっしゃる、いわゆる刑務所にあるいは行刑施設に収容することでなくて、いろんな方法で、違ったルートを通って社会へ戻っていく道筋を考えると。そのために家裁調査官やら法務教官は、これは収容機関かと思いますが、鑑別所は法務教官ですかね、あるいは保護観察官、保護司、その他もろもろ一杯あると思うんですけれども、そういうものを最大限生かしていきながら、収容という方法じゃないいろんな道筋が必要だと思うんですが、だから、この法定刑を上げるということは駄目だということにすぐつながるのかどうか、そこはどうです。
○参考人(石塚伸一君) 従来の法定刑の引上げ論というのは、法定刑の上限に実際の量刑が張り付いていて、もう少し上げないと現実に困っているというような立法事実があって個別的に法定刑の引上げをするという形態はあったと思うんです。
 したがって、それは、社会的にもその個別犯罪についての当罰性といいますか可罰性が非常に高いというふうに、社会的には大きいというふうに考えられていたと思うんですが、今回のように一律に引き上げるのは、むしろ社会的な意識に基づいて法定刑を引き上げるんじゃなくて、法定刑を引き上げることによって社会的意識を引き上げていくという、そういう機能を果たすと思うんですね。そのことが、最近よくここで使われているそのメッセージとして果たして現在の社会において妥当なのかどうかということが一つと、もう一つは、先ほど神参考人からもありましたけれども、刑法典の総則の中でそれをするということがめり張りのない法定刑の設定をすることになるので、木村参考人もおっしゃいましたように、やや迂遠で時間は掛かるとは思いますけれども、どれは必要でどれが必要でないのかということをやはり検討する必要があるであろうということが一つあります。
○江田五月君 時間の方が気になっておりますが、法制審議会の木村参考人は委員であられると。神参考人、石塚参考人はいかがですか。
○参考人(神洋明君) 違います。
○参考人(石塚伸一君) 違います。
○江田五月君 じゃ、木村参考人は委員の立場ですからちょっとお話ししにくいかと思いますが、それでもあえて聞きますが。あとの二人には。
 法制審が非公開ですね。法制審の審議記録も顕名主義じゃない。人の名前のところは黒丸だか白丸だかで、出ていないんですね。私は、やはりもう今そういう公開の時代になっていて、とりわけ、最近の例でいうと、司法制度改革審議会が、これがもうリアルタイム公開でやったことがかなりその司法制度改革を前へ進めるのに大きな意味があったと。そして、その後の検討、推進本部でいえば、検討会もかなり公開度の高いやり方やったわけですよね。
 これは、特にこういう刑法というようなものを議論するときに、国民と密接に触れ合う中で、国民とのキャッチボールが十分行われる中でやられることは不可欠であったんではないかと思いますが、順番にお三人の方に伺います。
○参考人(木村光江君) 確かに、御懸念いただいたとおり、ちょっと答えにくいという意味では答えにくいんですけれども、法制審議会の中でも、公開にすべきかと、公開といいますか、少なくとも顕名にすべきかどうかというのは、もちろん御議論があっての上でだったんですが、確かに、将来的には今先生おっしゃったような方向で考えるべきというのは十分考慮の余地はあると思うんですけれども、現時点では、少なくともどのような御意見が出たかということに関しては十分分かるような状態になっているということで、委員の間では了解が取れたというような経緯でございます。私もそれには賛成いたしました。
○参考人(神洋明君) 私は、やはり今、木村参考人もお話ししましたけれども、非公開をやはり公開にして顕名主義であるべきだと思っております。顕名主義にすることによって、公開された議事録を見た場合に、どなたが発言をして、その発言に対してどういう方がどういう反論をしたのかがよく分かる形なんです。残念ながら、私が拝見した限りでは黒丸しか付いておりませんので、全くだれが発言したかは、はっきり申し上げて、法務当局と日弁連の発言したことは分かりますが、ほかのことが全く分からないという、これはやっぱり大きな問題だろうと思います。
 さらに、顕名主義にすることは、自らの立場を明確に発言、自らの意見を発言するということになりますので、責任を持った発言ができるというふうに思います。
○参考人(石塚伸一君) 同じ法務省の所管でも、たしか行刑改革会議の方は顕名でやられて、同時に別の部屋で見られるようになっていたということがあると思います。それで、いろいろな市民の方が集まられる場に委員の方が出てこられて直接御意見を伺ったりするようなことがあったので、私はその顕名の方が望ましいというふうに考えます。
○江田五月君 ありがとうございました。
○浜四津敏子君 公明党の浜四津でございます。
 本日は、三人の参考人の皆様、大変貴重なお時間を取っていただき、貴重な御意見いただきまして、ありがとうございます。
 まず、木村参考人にお伺いいたします。
 参考人からいただいたこの書面によりますと、戦後の凶悪犯認知件数の推移というのは、このグラフによりますと急増をしているということがよく分かります。木村参考人は、この凶悪犯の増加に何も手を打たないのは時代錯誤であると、こういう御発言をされましたが、この凶悪犯が増加していると言われるその増加の原因、背景についてはどのように認識しておられるでしょうか。またもう一点、この凶悪犯の変化が急激だと、こういう御発言もありましたが、その変化とは具体的にどのようなことを指すんでしょうか、お伺いいたします。
○参考人(木村光江君) ありがとうございます。
 お答えさせていただきます。
 この正に原因というのは、非常に難しいというふうに思うんですけれども、一つは、これは余り強調してはいけないんですが、来日外国人犯罪が増えていることは確かだというふうに思います。それとあともう一つは、やはり少年犯罪が増えているというのももう一つ言えることだというふうに思います。特に、この認知件数で、ここに示しました凶悪犯の中でも実は強盗の伸びが極めて顕著なんですけれども、その強盗犯につきましては特に来日外国人が比較的多く、日本人の犯罪者に比べると比較的多く犯している犯罪というふうに言われておりまして、それも一つの原因なのかなと思います。
 それと、犯罪自体が増えていることをどうとらえるべきかという御指摘なんですけれども、先ほどから体感治安というようなお言葉も幾つか出ていると思います。その凶悪犯罪が増えているということを、直接、だからこれを抑えるために、抑止するために法定刑を上げるべきだというふうに、私もそんなに短絡的に考えるべきではないというふうに思っております。もっと言いますと、法定刑を上げたからといって単純に犯罪抑止ができるというふうに考えるのはやはり難しいだろうというふうに思っております。
 ただ、このような事態を受けて国民は非常に不安に思っているということは確かですので、それに対して、刑法を改正することによって何らかの手を打つべきだということを示すということが大事だというふうに思います。
○浜四津敏子君 続けて木村参考人にお伺いいたします。
 今回の見直しのポイントの一つが性犯罪の厳罰化でございますが、この厳罰化には社会の要請があると、こういうお話でございました。
 実は、私ども与党の女性議員を中心といたしまして、昨年九月に与党の中に、ジェンダーと刑事法を課題といたしまして、女性と刑事法という刑事法与党プロジェクトチームというのを立ち上げまして、その中で、性犯罪の厳罰化と集団強姦罪を創設すること、これを取りまとめいたしまして、当時の法務大臣に申入れをいたしました。それが今回、この法案の中に盛り込まれているわけですけれども、私どももその議論の中で性犯罪の厳罰化には社会の要請があるという認識を共通にいたしましたが、木村参考人はこの社会の要請というのは具体的にはどういうものだというふうにお考えでしょうか。
○参考人(木村光江君) お答えいたします。
 具体的にといいますと確かに難しい面あるんですけれども、先ほど、繰り返しになって恐縮ですが、資料の中に挙げさせていただいた参画会議の報告書でありますとか、これは様々な団体からの意見を聴きながら取りまとめられたものだというふうに伺っております。言わば、そのような意見の蓄積の結果がこういう形で表われているというふうに思いますので、象徴的な意味でこれを挙げさせていただいたんですが、先生方の御議論の中でも、もちろんいろいろな法案ができるというようなことも含めて、それが社会の要請というふうに私は理解しております。
○浜四津敏子君 また木村参考人にお伺いいたしますが、私どもはなぜ性犯罪の厳罰化を求めたかといいますと、日本の現行の刑事法では強盗罪の法定刑よりも強姦罪の法定刑の方がはるかに低いと。つまり、女性の性的自由が物よりも軽く扱われていると。これがおかしいではないかというのがその一つでございました。
 その結果、今回、強姦三年以上に引上げということになったわけですけれども、まだ強盗との間には格差があります。これをどうお考えでしょうか、もう一歩見直すべきとお考えでしょうか。
○参考人(木村光江君) お答えいたします。
 確かに強盗との比較という意味で軽いというのはしばしば先生がおっしゃるとおり言われることなんですけれども、やはり二年以上とされていたものを一度に五年以上というのは、やはり刑法の改正としてはちょっとバランスを欠くのかなというふうには思われます。
 で、今度、併せて二百四十条、つまり強盗致死傷罪について七年が六年というような、附帯決議の中で言われているんですけれども、強盗は確かに刑法典全体の中でもかなり重い罪です。これは、実は百年前、約百年前に作られた当時、強盗が物すごい数起こっていたという時代の中で作られたのが現行刑法です。ですから、強盗については特別重く処罰するという意識が非常に強かったんだと思います。ですから、高い。下が五年という、高くなっていますけれども、それに比べて百年前の女性の地位を考えると、強姦罪がこの程度だったと。確かにその間を埋めなきゃいけないという御議論はあるのかもしれませんけれども、単純に物と性的自由とを比べてという議論よりは、やはり二年が三年と、また将来的には上がる可能性もあるとは思いますけれども、一度に五年というのはやはり少しバランスを欠くかなと思います。
○浜四津敏子君 もう一点、木村参考人にお伺いいたします。
 神参考人から、今回の法案の審議は不十分だったのではないかと、国民的議論が尽くされずに拙速だったという御意見が出されましたけれども、これに対してはどうお考えでしょうか。
○参考人(木村光江君) ありがとうございます。
 法制審議会での議論の時間が短かったというようなことを御指摘なのかなと思うんですけれども、もちろん法制審議会は弁護士会の代表の方も出ていらっしゃいまして、そこでは、座長から必ずこれ以上の議論はないかということを確認を取りながら進めております。その中では、特に延長してまで御議論というような御発言はなかったというふうに記憶しております。
 ですから、議論が尽くされないというのは必ずしも、その法制審議会の場で特にそれ以上の御議論がなかったという上でまとめられた意見ですので、その批判は必ずしも当たっていないのではないかというふうに思います。
○浜四津敏子君 ありがとうございます。
 次に、神参考人にお伺いいたします。
 強盗致傷の引上げのみ賛成と、こういうお考えを表明されたわけですけれども、現行法では、今もお話しさせていただきましたが、強姦罪の法定刑が強盗罪の法定刑より軽いと、こういうことになっておりまして、女性の性的自由が物より軽い、このことに対して女性の、多くの女性団体等からも批判の声が上がっていたわけでございますけれども、今回の性的犯罪の、性犯罪の厳罰化についても、これは反対というお考えでしょうか。
○参考人(神洋明君) お答えいたします。
 性的自由に対する侵害について私が問題にしているのは、下限を上げる必要はないということを強調しているのであります。なおかつ申し上げますと、実は法制審議会においては日弁連は刑の引上げについて留保をしております、この意見を。ということは、私どもの中でもこれについては上げてもいいという意見がありました。
 ただ、私は、実際問題として、その下限の域のところではなくて、もうひどい、いわゆる昨年起こったような集団強姦事件のようなものについてはそれなりの処断がされるべきだというふうには考えております。ただ、今ここで下限を上げることがそれにつながる殺人、傷害と連動することを非常に危惧しているために反対と言うのであります。
○浜四津敏子君 神参考人にお伺いいたします。
 先ほどのお話では、刑の厳罰化は犯罪の抑止効果はないんだと、こういう御意見でございました。それでは、法定刑の重さ軽さというのは国民にとって何らメッセージ効果はないというお考えでしょうか。
○参考人(神洋明君) 全くないかどうかと言われると、私も断言はできません。ただ、一般的には、そのことがそれほど重きを占めるものではないというふうに思っております。
○浜四津敏子君 ありがとうございました。
 次に、石塚参考人にお伺いいたします。
 再犯防止あるいは社会復帰のためには特に刑務所内での矯正教育の在り方が最も大事だと常々言われておりますが、日本の現在の矯正教育の在り方の中で一番の問題点、課題はどこにあるとお考えでしょうか。
○参考人(石塚伸一君) お答えさせていただきます。
 先ほども申し上げましたが、日本の刑事施設に収容されている人の特徴は、覚せい剤の自己使用の方が非常に多いという状況です。つまりこれは、まあ依存症というのは一つの病ですので、病を病として扱うという視点を持って彼らに接するにはどうしたらいいかということをまず考える。そのためには、彼らが刑務所の中に収容されているという状況を外すということが重要だというふうに考えます。
 そうしたときに、次に出てくる問題は長期収容者の処遇です。二十年近く収容された方、あるいは無期受刑者の方でもう三十年、四十年収容されている方がいらっしゃいます。そういう方を社会の中に復帰させるということはほぼ不可能です。そのことが、先ほど申し上げました有期刑の上限を三十年にするということ、さらには有期刑の上限が三十年になりますと、無期仮出獄が恐らく三十年を超えてなされるようになるということ、そのためにより長期収容者に対する処遇が難しくなるということを危惧しております。この二点かと思います。
○浜四津敏子君 石塚参考人にお伺いいたします。
 現在の刑法典は百年前に定められたものでございますが、そのときの日本人の平均寿命は約五十年ぐらいだったと思います。現在の平均寿命は八十歳を超えているという、そういう格差があるわけですけれども、それが法定刑の長短には何らかの影響があるのではないかという考えもあるかと思いますが、いかがでしょうか。
○参考人(石塚伸一君) 他方で、明治四十年の時点と今の時点では、自由の重みというのは今の方が重いのではないかというふうに私は考えます。当時、罰金刑の上限が二十円だった時代がありますが、あの二十円というのは、大体大学卒業した当時の学生さんがもらう初任給よりちょっと多いぐらいということでした。しかし、今我々は三か月刑務所に入るのと、失礼、一か月刑務所に入るのと二十万円もらうのとを同等には評価しません。それだけ自由の重みというのは今上がっているというふうに私は考えますので、おっしゃられた意味で、平均寿命だけではなく、自由の価値という観点からも考えなければいけないと思います。
○浜四津敏子君 ありがとうございました。
 終わります。
○仁比聡平君 三人の参考人の皆さん、ありがとうございました。日本共産党の仁比聡平でございます。
 まず、木村先生にお尋ねをしたいと思うんですけれども、この刑法の一部改正案をめぐって今朝も議論をしていたところですけれども、法務省の方も、重罰化による犯罪抑止の効果を示すことは困難という趣旨の答弁を度々なさっておられて、今回の改正が犯罪の抑止に対してどういう効果を持っているのかということについて、更にちょっと先生に一歩踏み込んでお話を伺いたいんですが、先ほど同僚委員の御質問との関係で、単純に抑止はできないと、ただ、不安にこたえる、国民の不安にこたえるという意味で刑法の改正という形で手を打つ必要があるのではないかというお話があったと思うんですね。
 こういう先生のお話というのが、実際の犯罪者、あるいは再犯の可能性を持っている人、一般国民という人たちに対してどういう意味合いを持っているのかという点についてもう少し伺えませんでしょうか。
○参考人(木村光江君) お答えいたします。
 先生おっしゃるとおりで、直接的に抑止に役立つかどうかというのは科学的に立証するのは非常に難しいというふうに思います。
 それはそのとおりだと思うんですが、では逆に役立たないのかということなんですけれども、役立たないという立証もやっぱり難しいというふうに思います。であれば、今かなり危機的な状況ですので、そのような状況を踏まえると、とにかく打てる手は打つべきだというふうに思います。
 その意味で、法定刑というのは必ずしも抑止のためだけのものではなくて、先ほどから御議論あるように、国民に対してこれだけ重大な犯罪なんだということを分かってもらうという意味は非常にあると思いますので、その意味で改正というのは非常に必要だというふうに思っております。
○仁比聡平君 刑のあるいは刑法の一般的な、どういうんでしょうか、メッセージ効果といいますかあるいは威嚇効果と言ってもいいのかもしれませんけれども、そういった効果が効果的に働くのは、例えば公務員犯罪だとか、あるいはホワイトカラー犯罪だとか、あるいは計画的に行われる財産犯、そういった計算をした上でその犯行に臨むような罪種について、それを規制するという効果が語られることは私もあることは承知しているんですけれども、いわゆる激情犯型のものについて、そのメッセージ効果あるいは一般的な威嚇効果というのがどんなふうに働くかという点については、先生、どんなふうにお考えでしょうか。
○委員長(渡辺孝男君) 木村参考人でよろしいですか。木村参考人。
○参考人(木村光江君) お答えいたします。
 先生御指摘のとおりで、激情犯についてどれだけ効果があるかというのは一番難しい問題だというふうに思います。ですから、その意味では、特に殺人なんかに関しまして本当に効果があるのかと。先ほど神参考人でしたか、からもお話ありましたように、殺人のようなパターンについては非常に効果というのは難しいというふうに確かに思います。
 ただ、例えば最近の例ですと、危険運転致死傷罪について、飲酒運転が減っているであるとか、そういう効果はあるわけで、強姦罪が激情犯かどうかといいますと、強姦に関してはやはり考えて行う犯罪というふうに考えられるんじゃないでしょうか。殺人とはちょっとパターンが違うというふうに思いますので、一定の効果は望めるというふうに考えております。
○仁比聡平君 強姦罪を始めとして、性的自由を侵す罪の今回の改正については私も賛成をしている立場なんです。
 そこで、もう一つ木村先生にお伺いをしたいんですけれども、先ほどお話がありましたように、DV防止法やストーカー規制法を始め、この女性の人権を踏みにじってきた行為に対して、この間一定の取組が立法上もなされてきたということだと思いますし、社会全体の中でも、あるいは行政という立場においても、このこれまで沈黙をさせられてきた被害者としての女性の立場に立った救済の手段を取らなきゃいけないという動きは私、強まっていると思います。
 ですけれども、残念ながら、私も弁護士なんですが、相談を直接女性から伺うという機会が減っているかというと、そうではない。後を絶たないというふうに考えてもいいかと思う状況なんですね。その中で、この法定刑の引上げというのが単純に抑止というふうには働かないとすると、とするならば、何らかの対策を更に打っていかなきゃいけないということだと思うんですけれども、その点について先生のお考えをお聞かせいただければと。つまり、政府や社会にとって、今この法定刑の引上げをおいてほかに何かすべきことはないのかということなんですが。
○参考人(木村光江君) お答えいたします。
 先生おっしゃるとおりで、法定刑の引上げですべて終わるということではないというふうに思います。様々な、正にDV法とかストーカー法であるとか、そういうのも非常に重要な法案で、それに伴って女性の、女性相談所であるとかそういうところがどんどん新しい動きを見せているというのは先生もおっしゃるとおりだというふうに思います。
 ですから、あらゆることをやっぱりやらなければいけないというふうに思うんですけれども、その中の一つと、法定刑の引上げもその中の一つというふうに理解しております。
○仁比聡平君 ありがとうございました。
 それでは、神先生と石塚先生に同じ質問でお尋ねなんですが、この刑法の特に厳罰化に関する政府の提案の材料として、国民の世論調査の中で刑罰の強化が求められているというような趣旨の発言があります。
 例えば内閣府の調査で、犯罪に対する刑罰が軽いからというふうに治安悪化の理由をお答えになった国民が二九・八%いるとか、あるいは読売新聞の意識調査の中では、治安が悪くなったのは何が原因かという問いに対して、複数選択ですけれども、犯罪に対する刑罰が軽過ぎるからというのが二六・九%、悪質な犯罪を減らすために今後どのような対策が必要かという点について、犯罪に対する刑罰の強化が必要というお答えが三八・九%というような数字が挙げられているわけですね。
 このようなアンケート、世論調査の結果というのがどういう意味を持っているのかということをよく考えなければいけないと思うんですけれども、現実に国民の皆さんが刑罰の軽重について何か実感を持たれるというのは、メディアの中で報じられる事件について、そのメディアで報じられる限りにおいての事実を知る限りにおいて、自分がそれについて懲役刑が妥当であるかとか、あるいは刑期が何年で軽いのか重いのかという感想をお持ちの部分、つまり宣告刑に対して向けられている感想、感覚というものなのではないかと私は思うんですけれども、まず神先生、それから石塚先生、どのようにお感じでしょうか。
○参考人(神洋明君) お答えいたします。
 まず、その一般の世論調査の中で犯罪に対する不安というのは、先ほども意見を述べましたように、ほとんど多くの方は窃盗とかおれおれ詐欺のようなものについての被害ということを念頭に置いているということがあろうかと思います。その意味で、必ずしも本件のような重大犯罪に当たらないのではないかという感じを持っております。
 さらに、この世論調査というのは、ある意味でマスメディアの影響を非常に受けやすい。したがって、それによってデータに違いが出てくるということもあろうかと思います。例えば、朝日新聞なんかで見ますと、前に大塚参考人が衆議院の方で述べておりますけれども、自分の周りについてどうかと言われると、いや、自分の周りは安全だという感覚を持っている方が非常に多い。すなわち、テレビとか新聞等で報道されている大きな事件を見るにつけ、非常にそれが物すごい悲惨な事件であればあるほど何か不安になったのではないかという、そういう感覚の中で私はできているものじゃないかと思います。
 それから、宣告刑に向けられているのではないかという、宣告刑が軽過ぎるのではないかということで向けられているということに関して申し上げますと、実はその宣告刑が今の刑法典の中の上限に張り付いてもなおかつ軽いと言っておられるのかどうかというと、そうではないと思うんですね。その意味で、やはりマスコミなどの世論調査についても一応参考にはすべきですけれども、そういった分析が必要であろうと思います。
○参考人(石塚伸一君) よく大学で授業をやっているときに、この事件だったらどのくらいの量刑になると思うという話をアンケートで取ったりしますと、一年生は厳しいんです。だんだん法律の勉強をして三年生ぐらいになってくると、大体相場辺りのところを当てるようになってくる。法律家の感覚というのは、一般の方の感覚と比べると若干刑罰について慎重であるというのが現実だと思います。それは、いろいろな要素について頭に入れた上でこれの量刑が妥当かというふうに考えているので、おっしゃるように、裁判で実際に宣告される刑罰がやや軽いかなと思っている方々は多いというふうに思います。
 しかし、意識調査は、注意しなければいけないのは、犯罪一般について重いと思いますか軽いと思いますか、こうすれば犯罪が減ると思いますかという問いは、ある意味では雰囲気を聞いているのであって、今の政治はいいと思いますかというふうに聞いているのと基本的には同じなんですね。個別政策とは無関係なので、その意味でいうと、やはり類型を特定して聞いた方がいいと思います。それと同じ、そういうような調査を実は総理府でもやられていて、覚せい剤取締法違反について、これは殺人に類するとか窃盗に類するとか、どちらが重いと思いますかというような調査をされているのがあります。本当に見直しをするのであれば、そういう調査も参考にしながら、国民の意識はどこら辺にあるのかということを探知する作業が必要なのではないかというふうに考えます。
○仁比聡平君 神先生にお尋ねしますが、先ほど法定刑の上限に張り付けているわけではないというお話があったと思うんですよ。実際に、特に総則によって一律に上限を引き上げると、有期刑の、というような必要がもしあるのであれば、現実の求刑や量刑がその法定刑の上限に張り付いているような事態というのがあっておかしくないというふうに思うんです。強盗致傷罪の下限の問題について、下限の引下げは賛成されるというお話がありましたが、これについては強盗致傷罪の形式的な適用で不正義な事態が起こらないようにということで、検察も裁判所も実際の実務としては配慮をして運用してこられたということがあるわけですね。
 そうすると、有期刑の上限を引き上げる必要があるかという点について、その上限に張り付いているというような実情が刑事司法、刑事裁判に携わられる弁護士の皆さん、あるいは法曹の皆さんの中で実感をされているのかと、具体的にそういう声があるのかということについてお聞きしたいと思います。
○参考人(神洋明君) お答えいたします。
 私たち法律家、少なくとも刑事事件にかかわる法律家の中では、今の判決例が上限に張り付く形で言い渡されるような状態にはまだなっていないというふうな理解をしております。
○仁比聡平君 最後に、時間の関係で一点、石塚先生にお尋ねをします。
 先ほど木村先生の、同僚委員のお話の中で、先ほど犯罪は増えたかどうなのかという問題についての窃盗や器物損壊、この点についての石塚先生のお話、私も大変示唆に富んだものだったと思うんですけれども、これが刑法犯一般のことにかかわっているものなんじゃないのかという趣旨のお話だったと思うんですね。
 凶悪犯罪と言われる強盗、強姦、殺人、放火の激増の傾向というのは、先ほど石塚先生がおっしゃったのとは違うんじゃないのかというのが木村先生からの御指摘のように思うんですけれども、この凶悪犯罪の傾向、特に平成でいいますと、十一年から十二年に急増を確かに認知件数はしているわけですが、この辺り、どんなふうに見ておられるかと、最後にお尋ねしたいと思います。
○参考人(石塚伸一君) 木村先生のおっしゃったように、強盗については、社会的に非常に不況の時期が続いているので説明するには我々はしやすいんですね、この増え方が。要するに、借金を抱えてもう耐え切れなくなった人たちが強盗しているという言い方です。
 しかし、現実には、これ調べてみますと、大阪府警管内で一番最初に行われたひったくりを強盗として、従来窃盗で処理していたのを強盗で処理するということが非常に大きいのが一つ。それともう一つ、先ほどの下限が、強盗致傷の下限の問題ともかかわってくるんですが、大体一か月の治療を要するという診断書が出ると強盗致傷になるという大体の実務的運用があります。そうすると、強盗がより一つ重く強盗致傷で送致されるというケースが増えていたんですね。ちょうどこのころですが、少年法の改正の時期ですが、警察の方から家庭裁判所に、検察の方から家庭裁判所に強盗で送って、それが強盗が認定落ちで窃盗になったケースとか、強盗致傷が強盗に落ちたという認定落ちのケースが非常に増えているんですね。
 それはやっぱり裁判所のレベルでの判断と現場でのレベルとに違いがあった。強盗に対してはやっぱりひったくりが多いのできちんと対応しようという傾向があったので、警察はそういうような形で必要性を感じて対応したんだと思います。そのことがこの急激な変化を生んだんだと。ただ、長いスパンで見たときに、確かにだらだらと強盗が増えていることは気になるので、これをどう処理するかが問題だということは思います。
 もう一つは、先ほど先生からもお話ありました強姦罪については、やはりオーバークリミナリゼーションというふうに言いますけれども、たくさんの事件が起きている状態の中で、被害者の方がいろいろ主張されるようになれば事件は掘り起こされるというのは事実です。その掘り起こされたことが悪いと言っているのではなくて、従来あった犯罪が顕在化するようになったというのが性犯罪に対しての傾向だと思います。
 傷害罪については難しいんですが、傷害罪を凶悪犯と言えるかどうかということは非常に難しいです。暴行と傷害の区別について日本の犯罪構成要件は非常に不明確ですし、一方で傷害罪と傷害致死罪とが同じで処理されるという統計上の問題点もあります。これは裁判員制度が導入されることも含めて、もう少し構成要件を明確にしないと、殺人罪が故殺と謀殺の区別もなく規定されているこの構成要件で裁判員制度は堪えるのかという問題は今後本当に考えていかなきゃならない問題だと思います。
○仁比聡平君 ありがとうございました。
○委員長(渡辺孝男君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
 参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、大変お忙しいところ貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。当委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。(拍手)
 速記を止めてください。
   〔速記中止〕
○委員長(渡辺孝男君) 速記を起こしてください。
 これより質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○松村龍二君 午前中に引き続きまして、ただいまは参考人からこの法案についていろいろ貴重な御意見を伺っていたわけですが、今からこの法案についての本格的な議論を、審議をさせていただきたいと思います。
 「弱き者、汝の名は女なり」と、有名なシェークスピアの言葉で書いたハムレットの言葉であります。しかし、最近は公務員試験をやっても上位の方は皆女性ばかりだというようなこともよく聞きますし、ここにおられる大臣あるいは各党の幹部の方も大変な働きでございまして、果たして女性は弱いのかなというふうにも思います。しかし、昨日、おとつい鳴沢村、山梨県のひなびた全く人の通らぬようなところで樹海をさまよって自殺しようとした願望の男の人が刑務所へ入りたいと、それには女性を、弱い者を殺したいということで殺人事件が起きたと。これなんかは正に肉体的に弱い立場の女性が犠牲者になったと、こういうふうにも思うわけでございます。
 今回の法改正は、社会的弱者と言える女性に対する典型的な犯罪である強姦罪や強制わいせつ罪について加害者の刑事責任を厳正に追及する必要がある、こういう考えに基づいているものと思いますが、もう既に何人かから御質問があった点でもありますけれども、法務大臣の政治家としての考えやこれまでの取組をお伺いします。
○国務大臣(南野知惠子君) やはり私も弱き女の一人でございます。先生の、多くの女性が強くなったということを言われたりいたしておりますけれども、まだまだ心底弱い立場の人間が一杯いるのではないでしょうか。また、生物学的、動物学的にもそういうような要素を持っているということも申し上げられるかと思いますが、私も法務大臣に就任する前から強姦罪などの罰則が寛大過ぎるのではないか、そのような問題意識を持っており、そのため女性と刑法PTの座長としてこちらにおられる浜四津先生たちとともに野沢前法務大臣に罰則の見直しを求める申入れなどを行ってきたところでございます。今回の改正は、このような問題意識を踏まえたものでありまして、私としましては、我々の活動も浜四津先生とともに寄与することができたのかなと、そのような感慨を持っております。
○松村龍二君 女性に対する犯罪という意味では、今回のようないわゆる性犯罪に限らず、人身取引についても問題だと思われます。
 最近、アメリカ等からも日本における人身取引の処罰について不十分なんじゃないかというような指摘があるやに伺っております。自民党内においても、今これらに、条約化にも伴いましてこれらの国内法の制定ということにも今検討しているところでございます。人身取引、アメリカ等においては少年が昔から非常に行方不明になる、さらわれてしまうという事件が多いという話も聞いておりますし、まあ日本だけが責められる話でもないと思いますけれども、一面、外国から日本に来ている女性が暴力団等から人身、売春等を強要されるというふうな意味におきまして、人身取引の問題についても日本も法等を整備しなければならないという事態に至っているわけでございますが、このような人身取引の処罰についてどのように取り組んでいくつもりか、法務大臣の所見をお伺いします。
○国務大臣(南野知惠子君) 委員御指摘のとおり、人身取引につきましては女性や児童が被害者となることが多うございます。これに適切に対応することは、女性に対する犯罪への取組という観点からも大変重要なことであると認識いたしております。
 そこで、人身取引に対する取組を強化するため、本年九月、法制審議会に対しまして刑法に人身売買の罪を新設することなどを諮問しております。同審議会において御審議いただいているところでございます。
 法務省といたしましては、法制審議会の答申を受け、次期通常国会を目途に刑法等の一部を改正する法律案を提出したいと考えております。
○松村龍二君 次に、刑務所の問題についてお伺いしますが、このたびのように重要、凶悪犯罪について刑罰を重罰化した場合に収容者が多くなるのかどうか、必ずしも刑罰を強くしたら裁判官は皆重い判決をして収容者が多くなるというものでもない面もあるかと思いますけれども、これについて数量的な予測ができるものか、数量的予測があれば教えていただきたいと思います。
○政府参考人(横田尤孝君) お答え申し上げます。
 犯罪は様々な要因で発生いたしますし、それから収容人員となりますと、実刑判決というんじゃないんですけれども、量刑、実刑かそうでないかも含めまして量刑というのもまた様々な要因で判断されることございますので、具体的にどのように、どの程度増加するかということにつきましてはなかなか予測し難いというふうに考えております。
○松村龍二君 今回の改正では、一方で深刻化している刑務所の過剰収容の問題を考える必要があると思います。PFIによる刑務所建設というようなことも具体的に計画されているというふうにも聞くわけでございますが、刑務所の過剰収容の実情について矯正当局にお伺いします。
○政府参考人(横田尤孝君) お答え申し上げます。
 行刑施設の収容人員は平成十年以降急激な増加が継続しておりまして、特に受刑者等の既決被収容者にありましては、本年八月末現在の数字で申し上げますと、約六万四千人、収容率にいたしますと約一一七%ということで、その収容状況は一段と厳しくなっております。
 今後の収容人員の増加の見込みにつきましては、犯罪情勢等各種要因に影響されて、確たることは申し上げられませんけれども、最近の収容人員の増加傾向を考慮すれば、なお相当数の収容能力の増強が必要であろうと考えております。
 そこで、既存の刑務所における収容棟の増築等のほか、ただいま委員からも御指摘ございましたように、PFI手法を活用した刑務所を山口県美祢市に整備することとして、平成十九年四月からその収容開始を目指しているところでございます。
 今後も、受刑者の収容動向を見据えつつ、所要の措置を講じてまいりたいと考えております。
○松村龍二君 このように、刑務所の過剰収容問題が深刻化する中で今回の改正を行うとすれば、受刑者の社会復帰に向けての処遇の在り方にはより工夫が必要になるものと思われますが、この点に関する法務大臣の所見をお伺いします。
○国務大臣(南野知惠子君) 行刑改革会議の提言におきましても、教育的処遇等を充実させることとされております。
 過剰収容下におきましても、受刑者の特性や問題性に応じた、より効果的、効率的な教育プログラムの実施や職業訓練の充実に努めるとともに、社会資源の活用を推進するなどいたしまして、円滑な社会復帰ができるよう努めてまいりたいと思っております。
○松村龍二君 最後に副大臣にお伺いしますが、通告はしておりませんけれども、今回、法定刑を重罰化するということは、社会に対して、やっぱり犯罪を行ったら重い刑罰を食らうよと、したがって犯罪をしてはいかぬというメッセージを発するという効果を意識している部分はあろうかと思います。
 このようなことも大事かと思いますが、社会に対する、犯罪をしては大変だというメッセージを発するには、皆国民が口にするわけですけれども、オウム真理教の、あのような悲惨な殺人事件を数々行って、地下鉄に、満員の地下鉄にサリンをまいて五千人近い人間に死傷者を出したという松本智津夫が、いつまでも判決がないということはもう最大の逆の、司法に対する、抑えが利かない、国民が悪いことをしたら大変だというメッセージを、到達していないということになるのではないかというふうに思うんですけれども、副大臣はこのことについてどのようにお考えか。また、この裁判を促進するような方法があるものかどうか、お答えいただきたいと思います。
○副大臣(滝実君) オウム真理教の松本被告に関連する国民の意識としては、委員おっしゃるとおり、何を時間取っているんだろうかという思いは、恐らく同じ意識を皆さんお持ちだと思います。そういう意味では、具体的な言わば重大事件が起きたときに、やっぱり的確にスピーディーな結論が出てくる、あるいはそれに伴って的確な収容をしていくということが最も大事なことだろうというのは、おっしゃるとおりだと思います。私もそういう意味では同じような気持ちで、早くこの問題がきちんと判決が出る、刑が確定する、そういうことを望みたいと思っております。
 しかし、具体的にどのようなことになりますかといえば、これはもう法廷指揮の問題でございますから、恐らく担当判事さんも御苦労されているし、関連する検察側あるいは弁護側もそれなりの御苦労をされているというふうに思いますから、それぞれの中で速やかな結論が出ることをひたすら願っているということだけを申し上げておきたいと思います。
○松村龍二君 時間が少し余りましたけれども、以上をもって私の質問を終わります。
○江田五月君 この夏に参議院の方に三選されまして、また引き続きこの法務委員会に所属をしております。しかし、選挙以来、今回初めての質問ということになりました。なかなかほかの仕事が結構忙しくて、全部同僚委員の皆さんに任せておりましたが、今日は是非南野大臣と政治家としての議論をしてみたいと思っております。
 南野さんは本当に好人物だと思って尊敬をしております。法務大臣として適格であるかどうかというのは、これはなかなか議論があると思いますし、立ち上がりは大分苦労されたと思うんですが、それは私も同じでして、今から十一年前ですが、科学技術庁長官を細川内閣のときに任命されまして、まあ原子力にしてもゲノムにしても宇宙にしても何にしても、それまでそれほど勉強していたわけじゃもちろんありません。高校は理科系だったんですけれども、科目の選択はね、大変苦労しまして。ですから、大臣の苦労はよく分かりますので、それを何かちくちくいじめる的なことは一切やるつもりありませんので、御安心ください。
 私──何だかびっくりしました。
 南野大臣、これまで、男女共生社会、男女共同参画社会への実現の努力とか、あるいは弱い立場、少数者の立場も十分理解してこられた。女性の人権のこと、あるいはDV防止法。そして、私は、一緒にお仕事をしたのは、例の性同一性障害の人の戸籍の性別の変更でしたよね。南野さんが、これは行こうと、こういうことだから、これは大丈夫だというので私も民主党の方を、微力ですが、まとめて、そして法改正までこぎ着けて、やっとそういう戸籍の変更の人が最近出てきた。一緒に仕事をした記憶がございますが。
 そういう南野さん、法務大臣は、さきの委員会での所信をお聞きした限りでは、治安問題を最優先というような印象なんですが、本当は、治安問題ももちろん大切ですからやらなきゃいけませんが、例えば今の弱者のこと、人権のこと、女性のこと、そういう点で法務行政の中に新しい路線を築いていく、それが私は南野法務大臣の大変重要な役目ではないかと、そんな期待で見ておるんですが、御自身はどう覚悟しておられますか。
○国務大臣(南野知惠子君) 先生からいじめられないということの確約をいただきましたので、これは未必の故意ではないだろうなというふうにも思っておるわけでございますが、今先生御指摘の部分でございます。
 本当に治安というものは、出入国管理、それらの中身も踏まえまして、これは人権問題であろうかな、人権問題が二十二文字しかないという仰せもございましたが、やはりそれはその中に包含されている中身で私は御承知願いたいものだなと、そのように思っております。ですから、人権問題、一番大切な課題でもございます。
○江田五月君 人権問題の視点から治安の問題も考えていくという、そういうお答えだと伺っておきます。
 今日は、刑法等の一部を改正する法律案、なかなか議論が、どこをどういうふうに議論をすれば答えがぱっと出てくるかが難しいんですよね。
 さっきも、三人の参考人のお話を伺っても激突をしているんですね。ある人は、もう当然これは法定刑を上げるのはやらなきゃならぬと。ある人は、法定刑などを上げるようなことをやったら日本はもうアメリカの轍を踏んでむちゃくちゃになっちゃうよと言う。ある人は、最近の犯罪の増加傾向は、これはもう本当に危機的な水準だと。ある人は、いやいやそんなことはない、それはこれこれあれこれの理由で全然治安は悪くなっていないんだと。
 そこを何かこうデータでもって、これはこういうデータがあるからこういうことだとなかなか判断しにくい。とりわけこの法定刑というのが、何で十五年なの、何で二十年なの、法定刑。宣告刑はある程度まだ分かるんですよ。法定刑は本当に難しいんですが、大臣はその法定刑というものは何だと、別に刑法の難しい議論じゃなくて、法定刑というものは何だとお考えになりますか。
○国務大臣(南野知惠子君) やっぱり、何か問題が起こった場合、その問題に対する罰則というものが必要であろう。その必要な罰則について、どういう問題であればどれだけとか、そういうふうなことを決めていくわけですが、その決めていくプロセスも含めながら、そのもの自身であろうかなというふうに思っております。
○江田五月君 これはもうお役人の皆さんからよくレクチャーを受けておられると思うんですが、刑法では、法定刑というものが、人を殺したる者は死刑又は無期若しくは三年以上の懲役、これは有期です、無期じゃないものは。それを今三年を五年に上げようとしている。つまり、こういう幅がある。そういうものがあって、そして併合罪だとどうする、何とかだったらどうするとかいうようなことをやって、そうすると具体的な事件で、この幅で刑期を決めますよという処断刑というのが決まる。最後にその中から裁判官がこれはこれですよと言って宣告刑というのが決まっていくので、法定刑というのは、私はこれは国がといいますか、国の下には社会というのがある、国民というのがある、そういう人たちが、ある一定の類型の犯罪についてこれはこういう重さですよということを宣言しているといいますか、メッセージを発しているというか、そういう犯罪の重さについてのある種の枠組みですね、こういうものだと思うんですね。
 そういうものが、確かに時代の変化で変わるということもあるだろうけれども、そんなにくるくる変わるもんでもなかろうと。今回この明治四十年にできた刑法を百年ぶりに見直そうというんですが、なぜ一体、法定刑というもの、社会がこの罪はこんな重さですよという、そういうその格付、格付と言うと言葉は変、まあ何かもっといい言葉があれば教えてほしいですが、それをなぜ今変えなきゃいけないんでしょうか。
○国務大臣(南野知惠子君) 今お話しの有期刑の上限ということにつきましては、明治四十年に現行刑法が制定されたときから変更が加えられていないというのが現状であろうかなと思います。その後の約百年の間に平均寿命が延びたということだけではなく、それに加えて、もちろんこの前は人生五十年と言われたのが、今人生八十年ぐらいになっているわけですから、刑量に、刑に付いた場合のあと残りの人生とのかかわりの中で、刑の期間ということもいろいろとこれありと思いますが、それに加えまして、最近における犯罪情勢又は国民感情の変化、それを踏まえて適切な刑を科すことができるようにするために今回見直していきたいというふうに思いました。これは世間の声でもあろうかなということをキャッチすることも必要であろうかなと思っております。
○江田五月君 今、恐らく三つ言われた。一つは人生が長くなった、二つは犯罪のタイプが変わってきた、三つが国民の意識が変わったと、その三つのことを多分言われたんだと理解したんですが、それでよろしいですか。
○国務大臣(南野知惠子君) はい、そのとおりでございます。
○江田五月君 人生の長さが変わったと、これは確かにそうですね。今、例えば、四十五年ですかね、明治四十年の平均寿命というのが。そうすると、三十で犯罪を犯して、有期懲役の最高限で十五年、すると四十五、これはもう平均寿命でいえば亡くなる年ですから無期懲役と同じになっちゃう。二十歳で犯罪を犯して三十五、あと十年、まあ有期懲役そんなものかなと。無期の場合は四十五。ところが、今ではもう人生がずっと長いから、十五年ではとてもそれは無期との間の差があり過ぎると。
 しかし一方で、時代がこう非常に速く動くようになってきて、人々の自由度も、新幹線はあるわ飛行機はあるわ、いろんなところへどんどん行ける、そういう人生のスピードの速さと比べると、同じ一年が昔と比べて随分、実質的には、実質的には意味の濃い一年になってしまっているから、だからこれは、人生が長くなったからといって、昔の一年と今の一年と、今の方がずっと長いぞという意見があるんですが、これどう思われますか。
○国務大臣(南野知惠子君) それ人々のお考え、感じ方だろうというふうに思いますので、いろいろな意見があってしかるべきであろうと思いますが、例えば自分が罪を犯してある刑期を終えたとします。その後改悛をしながら生活していこうと思うときに、短い人生の残りがある人ともっと長い人生があるという今日のような場合には、その刑とのかかわりの中でそれが平均寿命、人生とのかかわりにつながってくるものだというふうに思っております。
○江田五月君 何か刑罰を余りそんなことで計算してみるのもどうも変な話ではありますが、ありますが、まあ入っている時間が、いや同じ一年なら一年でも昔と比べて随分人生におけるその期間の剥奪感というのは長いぞということになれば、逆に言えば残っている期間も随分長いわけですから、計算上は同じことになるのかなと。そうすると、やっぱり平均寿命が延びているということは重要視しなきゃならぬのかなということですよね。何か私が答えを言っているみたいですけれども。
 無期刑と有期刑の間で、人生がこんなに延びてしまったことによって、十五年というんじゃ差があり過ぎる、したがって無期に近づけるために有期を延ばさなきゃという説があります。一見そのようにも聞こえるし、それが当たっている場面もあります。しかし、無期と有期と両方を法定刑にある刑、つまり例えば、今の殺人でいえば死刑又は無期若しくは三年以上、これは十五年までと、無期と十五年との間に差があり過ぎる。
 しかし、無期の法定刑のない犯罪があるんですね。これはちょっと困ってしまう。御璽偽造罪というもの、御璽というのは、御名御璽、どん、天皇陛下と、こういうのがあって、これは無期ないんです。二年以上の有期懲役に処するというんでしたかね、たしか。そうすると、これはもう無期との関係とかいうこと関係なしに十五年が二十年に上がってしまうことになるんですが、これはちょっと何か細かな話なんで、大臣、もしお答えできれば答えていただきたいですが、どなたか。やってみましょうか、ひとつ大臣。
○副大臣(滝実君) 議事録の問題がございますから、私から便宜答弁をさせていただきたいと思うんですけれども、基本的には、この難しい議論があるだろうと思いますけれども、言わば御璽の偽造等の罪ということは何を意味するかといえば、それは一つの大きな国家的な犯罪だというとらえ方をこの条文でしてきたと思います。今、昔と今とは全然感覚が違うかもしれませんけれども、一つの国家に対する犯罪、そういうようなとらえ方をずっとしてきた、そういう中でのこの御璽等偽造罪があるわけでございますから、単なる公印とは違いますよと、公印罪とは、公印偽造とは違いますという意味で象徴的なものとして置かれているわけでございますから、それなりの言わば重大犯罪だというとらえ方で、言わば無期刑がないあれでございますけれども、上限もそれに合わさせていただいたというのが今回の改正だというふうに理解をいたしております。
○江田五月君 私だったらこう答えます。公印偽造と御璽偽造と差がありますよね。公印の方はそのままで、御璽だけ上げるわけですよ。そうすると、これは御璽を重くするのかという話になるんですが、そうじゃなくて、御璽偽造罪は有期懲役の最高限という評価をしているんですよね。有期懲役の最高限というそういう法定刑の決め方、その思想、これは変えないと。有期懲役全体が上がるから上がるというだけのことで、御璽偽造罪の法定刑を何か特に意識して変えるという話ではないというように私なら答えるんですが、どうですか。だれか。はい。
○副大臣(滝実君) 基本的にはそういう考え方をこの際取っているというふうに私も理解をいたしております。
○江田五月君 その有期懲役の上限を一般的にぼおんと上げるというのはもちろん分からないわけではないし、私どももこの法案は、いろいろ本当に聞いてみると問題たくさんあるんですけれども、後からしまったなと思わぬでもないけれども、まあ賛成なんですが、しかしやっぱりほかの個別の刑の法定刑にどういうふうに跳ね返っていくかを考えると、もう少し細かく見ていただきたかったなという感じがしないわけではありません。
 有期懲役については、これで一般的にこの上限を上げると、そして処断刑の方も三十年まで上げるとか、死刑や無期を減軽する場合のこともちょっとありますけれども、無期とか死刑とかについては今回は議論をしなかったわけですよね。
 私は、死刑についてもやはり議論すべきものではなかったのかなと思うんですが、南野大臣は助産師を経験をされて、その前には戦争の悲惨な状況を見て、命というのが何より大切ということで生命の誕生に立ち会うという崇高な仕事を選んでこられたと。生命というのは、生命としてやはり崇高なんではないか。そして、だれも皆この生命を失うという運命から逃れることはできないんですね。人間みんな、どんな人でも生命はいずれ失う。それはやっぱり人知を超えたところにゆだねるものであって、刑罰という形で、理性が一番働かなきゃならぬ刑罰権の行使のときに生命を奪うということをやるのは心がちくちくするんですがね。南野大臣、どうですか。
○国務大臣(南野知惠子君) 先生おっしゃるとおり、死刑という問題は私の心にも重たいものであります。本当にそれについては逆に、どういうふうに申したらいいのか、自分の全身全霊で当たらなければならないと。自分の課題と、それから死刑を準備、準備といったらおかしいですけれども、今あるわけですから、それについていろいろとそこまで持っていくというプロセスにおいてはみんなが苦労してきたことであろうかなと、そのようにも思います。
 そういう意味で、死刑制度をどのようにするのかということにつきましては、我が国の刑事司法制度の根幹にかかわる重要なものであると、国民世論に十分配慮しながら、社会における正義の実現など様々な観点から、慎重の上にも慎重、更にまた慎重に検討すべき問題であるということはもう実感いたしております。
 そして、国民世論の多数が極めて悪質、凶悪な犯罪について死刑もやむを得ないと考えておられる場合、またそれが多数おられるような場合に対する殺人、多数の者に対する殺人とか、誘拐殺人等の凶悪犯罪がいまだ後を絶っていないということと関連、連動させますならば、その罪責が著しく重大な凶悪犯罪を犯した人に対しては死刑を科することもやむを得ないのではないかというのが今の風ではないかなと。死刑を廃止することは今のこの時点では適切ではないのではないかなと、多くの声がそのようにありますということも添えさせていただきたいと思います。
○江田五月君 死刑の問題というのは本当に悩ましい話でして、一か八かというようなわけにいかない、いろんな角度の議論があるし、私どもも議論をしてきましたし、今のお話の、こういう凶悪犯罪がまだ後を絶たないから死刑を残しておくのがいいのか。逆に、死刑はなくするということによって社会の、どういいますか、その安定度というのを増すということになるのか。これ是非、平安時代に日本では何年、三百年だったかな、死刑がなかった時代があった。保元・平治の乱で世の中が乱れてきて、また死刑が復活したとかいうようなこともあるんですね。いろんな角度の議論があります。
 あるいはまた、日本で裁判の執行というのは、民事事件の裁判の執行は大体裁判所がやるんです。それで、刑事事件の執行は検察官が普通やるんですが、死刑についてだけ特に法務大臣、特に法務大臣の執行指揮が要るんですよね。これは官僚ではできないと。やっぱり、政治家が世の中の流れ、その正義は那辺にあるか、そんなこと、すべてのことを考えながら政治家的な判断をしてくださいというので、官僚の皆さんが下から持ってきたから、はいという話とは全然違うわけですから、ひとつそこは是非本当にじっくりとお考えいただきたいと思っております。しかし、もちろん命を奪われた人たちのことを考えるのは当然です。
 もう一つ、最近若年層の犯罪というもの、これもなかなか大変です、心が痛む。小学生が同級生の子供にインターネットでちょっと何か書かれたからといって殺してしまったと。どこまで本当に殺人ということを意識していたんだろうか、いろいろ考えなきゃならぬところがあるんですが、その十四歳未満の者が行った外形的には犯罪行為に当たるような行為ですね、これ一体どうするのかと。
 今では、これは刑事責任年齢に達していないから、責任能力がないからこれは犯罪じゃないからというので、捜査機関が捜査できない。捜査できないけれども、だけど捜査できないからといって、もちろん身柄の確保などなどはそれはいろんな手続でやるとして、例えば捜索もできない、検証もできない、それで本当に事案が明らかになるんだろうかといったことがある。
 あるいは、十四歳未満の少年は児童自立支援施設にしか収容できなくて、そしてその児童自立支援施設で身柄、つまり人間、その子供の自由を一定の拘束の下に置いて矯正教育をしっかりやるという施設は国立の児童自立支援施設しかないと思うんですが、これ、日本じゅうで女子のものが一つ、男子のものが一つ、二つしかない。これはやはり、一定の場合には少年院の教育というものもそういう十四歳未満の者に与えられるようにした方がいいんじゃないかというようなことも考えている。
 これは、人権という点でいえば、江田五月、おまえ人権派のくせに何言っているなんて言われるかもしれません。しかし、虚心坦懐に今の事態を見たときに、やっぱりそこは何か考えなきゃならぬと思うんですが、これは法制審議会にたしか諮問されているんでしたよね。どういう状況になっているかをお答えください。
○国務大臣(南野知惠子君) 十四歳未満の少年に対する処遇につきましては、法制審議会に対して、例外的に少年院送致を可能とすることなどを内容とする諮問を行ったところでございます。
 私としましては、法制審議会における調査、審議の状況を見守っていきたいと思っておりますが、先生のお話、心にしみて受け取らせていただいております。
○江田五月君 当然ですが、重くすればいいという話じゃないんですよ。もっといろんな、どういうか、少年保護の方法をもっともっとたくさん持つようにしておかないといけないんじゃないかと。私は、ちなみに、刑事責任年齢を下げるということは慎重にしなきゃいけないと、これはそう思うんですよね。
 次に、南野大臣は、大臣になられる前ですよね、この今回の法改正の端緒になったものの一つとして、平成十五年十二月十日の与党の政策責任者会議女性と刑法プロジェクトチーム、これの申入れ書が出されましたが、そのときの座長でしたよね。どういう議論、もうこれだれか聞いたかという気もしますが、どういう議論があって、どういう観点からこの申入れ書というものをおまとめになったのか、その御報告をしてください。
○国務大臣(南野知惠子君) このプロセスにつきまして御報告します前に、与党プロジェクトの中に浜四津先生もおられまして、大きな議論を交わしながらこのプロセスができ上がったということもまず御報告しておきたいんですが。
 御指摘のプロジェクトチームにつきましては、与党の国会議員の有志の人々と協議を踏まえました。昨年十月、与党政策責任者会議の中の一つの組織として設けられたものでありますけれども、それ以前から、議員としての活動を通じまして、強姦被害の悲壮な実態を国民の皆様から伺っておりました。それも、ただ一対一の強姦、またさらに重複の強姦又は対象が多い集団強姦、いろいろな問題点についてもしておりましたし、私がまた病院に勤めておるときからの状況なども一つの資料には、心の資料にはなっております。
 そこで、強姦関係罪に限っての議員立法ということも検討してまいりました。これは与党プロジェクトチームでございますが、最終的には、強姦罪の問題も含めて、より広い観点からバランスの取れた法改正を法務省の方で検討していただけるということでありましたので、それであるならばその方が望ましいと、これは相対的に法をバランスを加えながら見ていただけるということもありまして、昨年十二月に当時の野沢法務大臣にその旨の申入れを行ったものでございます。
 以上でございます。
○江田五月君 その女性と刑法プロジェクトチームでは、例えば会議は何回ぐらいやられたんですか、あるいはどういう人の意見をお聞きになったんですか。アバウトでいいですよ。
○国務大臣(南野知惠子君) 会議を何回したかということは今ちょっと定かではございませんが、時間が合う限りお会いして、いついつねというような形ででも会合を重ねたことはございます。
 メンバーとしましては、自民党、公明党、保守新党の方々とともに話合いをいたしております。
○江田五月君 さっきちょっと聞いたときには、被害者の人たちの赤裸々な話を耳にするにつけというようなことを言われたような気がするんですが、そういういろんな関係者からのヒアリングなどをやられたんですか。
○国務大臣(南野知惠子君) 集団強姦の被害者ということではありませんけれども、強姦という問題については、自分の今までの仕事関係上いろいろな知見がございました。それと、このたびのというか、法案を作ろうというきっかけになった物事につきましては、いろいろな情報を集めながらさせていただいたということでございます。
○江田五月君 今のお話だと、これまでの南野さん御自身の人生経験の中でのことと、それから今回のいろんな人の情報という、そのいろんな説明を関係者からヒアリングという形で聞くとかいうことはされていないんですか。
○国務大臣(南野知惠子君) 私個人としてはしておりませんが、その我々のプロジェクトメンバーには複数おられますので、そういう方々がそれを適切にしていただいている方もおられたと思います。
○江田五月君 いや、だからどうということではないんですけれども、なかなか話しづらいことだということですよね。ですから、聞いていないって言ったって、じゃどうやって聞くのかというのは大変困難なことで、落合恵子さんなんかの話や何か、彼女なんかはもう一生懸命そういうことをあえて話しておられるわけですから、何とかしなきゃいけないというのはそのとおり。
 ただ、今日の参考人の意見の中にあったんですが、確かに女性の性的自由に対する大変な侵害、しかし同時に、性的自由に対する侵害ということになれば、最近は特に男性の方にも被害はありますよという。これはやはりあるんだろうと、あるんだと思いますね。世界的には、そこはもう女性男性と、性ではなくて、性の違いではなくて、すべての人に対する性的な自由の侵害というものを一つの犯罪類型として罰するようにすべきだという、あるいはするという、そういう動きがずっと広がっていて、日本もそうすべきではないかという意見があるんですが、そういうことは検討されましたか、このプロジェクトで。
○国務大臣(南野知惠子君) 男性に対する強姦と、女性側からの強姦、それも想像はできますが、本当にそれがあるのかというのは私、ちょっと分かりません。また、それが同性愛者の間の問題であるのか何なのか、それも私には定かではありませんが、生物学的な観点から見ると、強姦というのはこちらの意思で相手に対するという考えが成り立つのか成り立たないのか、それも私には分かりません。それが刑法でどうなっているのかということは存じておりません。
○江田五月君 あると思います。性的快楽というものを自ら望まないのに、いろいろな形でそういうものをあえて経験させられるということは一つの大きな屈辱になるというようなことが、これは男性の場合もあると思いますよ。是非、性同一障害について理解をぱっといただく南野さんですから、そこはやはり分かっていただきたいと思う。
 ただ、そんな議論をしているうちにずるずるずるずる日がたつとか、あるいはそういう議論をしていて、強姦罪に対する法定刑上げようというのが結局下がるとか、あるいは据え置かれるとか、そういうことになるといけないという意味で、今回あえてここへ踏み込まれたということは、それは評価をします。しかし、そういう議論がこれからあるということ、それはやはり分かっておいていただきたいと思います。
 さて、それから今回、今の殺人について、これは法定刑を下限を五年に上げる。以前は三年。三年なら執行猶予が付く、五年ならそのままでは執行猶予が付かない。
 殺人の形態というのは本当に様々で、これは類型的に見てすぐに刑務所へぶち込むという事件じゃないぞというようなものまで殺人の中に入っているから三年というところにしていたのを五年ということにして、殺人というのはもう一定の処置を取らないと、法的に、執行猶予が付かないということにするのは、これはいけないんじゃないかという、そういう意見があるんですが、どう思われます。
○国務大臣(南野知惠子君) 殺人罪の法定刑を引き上げる改正ということにつきましては、凶悪犯罪の典型とも言うべき殺人罪の刑が、酌量軽減をしなくとも酌量減軽ですね、酌量減軽をしなくても執行猶予を付することができる懲役三年とされているのは、現在の国民の正義感に照らせば寛大過ぎると思われることから、これを引き上げようかということにしたものでございます。
 しかし、現実に発生している殺人事件を見てみますと、執行猶予に付すのが相当ではないかと思われるものもあると思います。このような事案につきましては、酌量減軽の判断を得た上で執行猶予にした方が国民からも分かりやすい司法判断の在り方ではないかというふうに思います。そういう意味では、酌量減軽によって執行猶予に付すことが可能な範囲で法定刑の下限を引き上げるものとしたものでありまして、今回の改正はそのような事案についてまで執行猶予に付することを相当ではないというものではないということでございます。
○江田五月君 殺人というのは人を殺したる者と、まあ簡単に書いてあるんですが、人、これを殺す、命を奪う、そういう故意をもって、そういう違法性があって行う行為ですから、ああ死んじゃったという場合じゃないんですよね。未必の故意だとか冒頭おっしゃいましたが、そういう場合も含めてでありますが、そういう人を殺すという行為ですから、これはやはり人を殺すという行為は、どういう類型のものであれやはり執行猶予というわけにはいかないと、類型的なものは。
 ただ、特にいろんな事情がある場合にはその情状を酌量して、ここは国が刑罰権をあえて、刑務所に収容するという形の刑罰権の行使は遠慮しておこうということにする、それが人の命というものについての社会の評価なんだということで引き上げるということで、まあ考えてみると、これまでの死刑の法定刑、三年以上の有期懲役で、三年で執行猶予を付けた場合、酌量減軽こそしていないけれども、実際には酌量減軽すべきような事案がそういう扱いをされていたんだということで適正化だというふうにおっしゃりたいんだろうと思いますし、それを適正化ではないとまで言うほどのこともないかなと。何か本当に、こっちで答えを言っているのでどうも具合が悪いんですけれども。
 もう一つ、それにしても殺人、死刑又は無期もしくは五年以上の有期懲役と、長い、多いんですよ。それから強盗致傷も、これも今までの七年を六年に下げていますから、そして上限は有期の場合に二十年までですから、これも長いんですよ、そのほかにも随分、法定刑というのが随分幅がある。
 さて、その幅の問題をちょっと伺いたいんですが、これだけ幅があって、その中からいろいろ類型的に、こういう類型はこの程度、こういう類型はこの程度と。ずっと法律家をやっていますと、まあ大体いろんな経験を積んで、こういう類型は、相場がこの程度だから、その中でちょっと重い、ちょっと軽いというので、相場観というのが身に付いてくる。さっきも参考人の方がおっしゃっていました。それはそれで、相場観というのも何か言葉が悪いんで、もうちょっといい言葉がないかなという気はしますが、ある程度類型化というものができて、そして一定のその幅の中に、そんなにむちゃくちゃなもう自由裁量でやるというんじゃなくて、まあ大体こんなところというのが決まってくるんです。
 ですから、殺人と、人を殺したる者という、そういう行為類型の中でサブ類型をいろいろ作って、一定のものがあるから、まあそれはそれでよろしいと。罪刑法定主義という考え方からいっても、罪刑法定主義に違反をすると、刑罰というのはあらかじめ法律で決めておかなきゃならぬということに違反するわけではないと。罪刑法定主義というのは法律で決めておけばいいという話じゃないんですよ。やっぱり、冒頭申し上げました、この犯罪については社会はこういうふうに評価しますという一定の格付ですから、これは法律で決めればいいという話じゃないんで、やっぱりそこに一定のバランスも必要だし、要るんです。ですから、何かぽんと罪を書いて、かなり大ざっぱに書いて、それでぶわっと長い法定刑を書いて、これでも法律で決めているからいいなんということは言えない。
 さて、今の殺人にしても強盗致傷にしても随分法定刑の範囲が広いんですが、そこで、まあプロの法律家がずっと刑事裁判をやるという場合には、それはそれで何とかなる。なってきた。だけど、これから国民の皆さんに刑事裁判に入ってもらいますよね。裁判員という制度がスタートをします。この裁判員の皆さんに、あなた、相場観なんといったって、そんな相場あるわけない。あったらおかしい、かえって。
 そうすると、その裁判員の皆さんに、まあ類型的には、こういう犯罪類型ならこの程度だというようなことが分かるような、そして裁判員の皆さんだけじゃなくて国民的にもやっぱりそういうことがある程度分かるような作業が要るのではないかという、今日、参考人の方もちょっとそんなことをおっしゃいました。私もそういう気がするんですが、英米法では殺人というのが謀殺というのと故殺というのがある。マーダーとマンスローターというのは違うんですね。そのように、同じ殺人でも多少類型化して、これについてはこのくらい、これについてはこのくらいというようなものを、これは法務省の方として何か考えるようなことはお考えではありませんか。
○政府参考人(大林宏君) 今御指摘のとおり、殺人についてそのような類型でされているという先進国、比較的多いと承知しております。
 私どもとしては、今回、法制審議会において附帯決議がなされまして、例えば強盗罪について、軽い類型もあるでしょう、重い類型もあるでしょう、類型化をする必要があるんじゃないかとか、また窃盗罪について、これもまた軽微なものとそうでないものがあります。ですから、そういう類型化といいますか、刑罰の体系の中でどうやっていくかということを見直しをしなさいという附帯決議が付いております。
 ですから、今委員御指摘のとおり、今後そういうものも含めて検討していきたいと、このように考えております。
○江田五月君 是非、是非検討をしてください。法務大臣、そう難しいことじゃないでしょう。
 最高裁は来ておられますかね。
 裁判員制度を導入するということになると、最高裁の方としてもそうした何か類型化を試みるような必要が出てくるんではないかと。もちろん、法制審議会なんかでやって、何か刑法のそうした意味での改正みたいなことになれば、それはそれで立法的な解決ですが、そうでなくて、裁判所の中でそういうことをお考えになる必要はありませんか。
○最高裁判所長官代理者(大野市太郎君) まあ、我が国の法定刑は非常に幅が広いと。その中で、裁判員という方々が入ってこられて、今までですと、委員御指摘のとおり、裁判官がある程度の幅の中に考えておったわけですけれども、そこのところをどうやってこれから適正な量刑判断を確保していくかということについては、委員御指摘のとおり一つの問題があろうかというふうに思っております。
 一つの在り方として、先ほど来出ておりますような法定刑の定め方の問題も今後の検討課題だということで法務省の方からお答えありました。
 裁判所の方からいたしますと、今現在、量刑につきましては検察官の方でまず、ひとまず求刑があります。それから、弁護人の方からそれに対応をする形での量刑についての主張なり事情についての説明があろうかと思います。そういったことを裁判官、裁判員でそれを参考にしながら量刑について議論していくわけですけれども、さりとて、なかなか手掛かりがないということになりますれば、恐らく何らかの形でその量刑的な資料を提示すると。その中には恐らく委員御指摘のようなある程度類型化した、例えば強盗であっても強盗致傷であっても、住居に侵入して刃物で使った強盗もありますし路上での強盗もありますし、いろんな形があるわけでして、そういったものをある程度、現在、その事件でかかわっているものと類似したものを拾い、ピックアップして示していくと。それも一つの参考としながら量刑判断をしていくということになっていくのではないだろうかというふうに思われます。
○江田五月君 私が思い出すのは、これ刑事事件じゃ、刑事じゃないんですが民事の方で、面白いんですよ、これ、法務大臣、交通事故の損害賠償で過失相殺というのがあるんですよね。これはもう一杯図を書いて、交差点の場合で、こっちからとこっちからだとどうとかね、追越しのときこうだとどうとかね、過失相殺全部こう割合をずっと類型化しているんですね。その類型どおりにやっていいかどうかというのはあるんだけれども、それでもやっぱり一つの目安にはなって、大体どこの裁判所でもそういうような過失割合で判断してもらえるということによって一定のその予見可能性も出てくる、安定性も出てくるんですよね。ですから、いろんな方法はあると思っております。
 今、求刑という話が出て、これは法務省の方に伺いたいんですが、やはりこういう法定刑の見直しということになりますと、国会でこういう法律を作ったと、まああれは国会でやっていることだからわしは知らぬわと言って検察官は今までどおりというわけにもいかぬだろうと思うんですよね。やっぱり求刑に一定程度の反映というものが、どの程度かは別としてあるんじゃないかと思いますが、これはどういうふうにこれから先この法定刑が上がりますと求刑の方をされますか。これは局長。
○政府参考人(大林宏君) 御案内のとおり、求刑の問題につきましては、各検察官がそれぞれ捜査、公判を担当しまして、そこで決定されるもの、これが原則でございます。
 確かに、今回の法改正を受けて、それは国民、もちろん国会もそうですし、国民の民意ということでありますから、一定の犯罪については今の量刑でいいのかという批判の問題があります。ですから、そういうものについては量刑として厳しくなる部分もあろうかと思います。
 ただ、他方、今度、強盗致傷罪について、今まで七年で執行猶予を付けられないために実務上かなり苦労をしていた部分がございます。これをそのまま強盗致傷罪で警察から受理し、強盗致傷罪で起訴して、その上でそういう執行猶予を前提とした公判活動もできるようになります。
 ですから、厳しくなる面ももちろんあろうかと思います。それと同時に、今回の改正によって正常化するといいますか、正面からその罪名に向き合って量刑を考えていくという、そういう部分もあろうかと思います。そういう点を私どもとして期待したいと考えております。
○江田五月君 私がちょっと聞きたかったのは、こういう法改正を受けて、例えば検察官会同などをやって、そこでその趣旨の説明をしたり、強盗致傷について六年ということになったのでそういう適切な処理とか、そういうようなこともする機会をも考えておられるかどうかということです。
○政府参考人(大林宏君) 近く凶悪犯罪に関する検察官会同を開くことにしております。引き続き、まあ長官会同といいますか検事正クラスの会同についても、今回の改正は、私ども等にとっても刑法というのは基本法典でございますので非常に重要視しておりますし、大きな関心を抱いています。ですから、これがどのような量刑の今度反映されたものになっていくかということは私どもの関心事でもあります。ですから、会同あるいは研修等についても今回の趣旨を徹底させてその動向を見ていきたいと、このように考えております。
○江田五月君 求刑に変化があれば、当然これは判決にも変化が出てくるだろうと思います。私自身も裁判官として刑事裁判、単独で経験したことがあるんですが、そのときに、例の覚せい剤取締法の扱いががらっと変わって、やはりそういう国会でのそういう、まあメッセージ性というのが最近はやっていますけれども、そういう意思表示を受けて、これは判決の方も相当変えていかなきゃならぬというような判断をしたこともあります。
 そうやって、しかし、刑が上がっていくと、そうでなくても刑務所はもう満杯なのに、これどうするんだということもございます。あるいは逆に、刑務所にただぶち込むだけで本当にいいのかと。法定刑を上げますが、しかし厳罰主義政策だけでいいわけじゃないよと。長く刑務所へ入れておくと、もう刑務所に慣れてしまって、あるいは行ったり出たり行ったり出たりすると、もうそれに慣れてしまってなかなか社会生活できなくなるというようなこともあるんですね。逆に、本当に短かったら、悪いことだけ覚えて困るというのもあったりで、まあややこしい話なんですけれども。
 要は、刑務所にぶち込むばかりが能じゃないと。ですから、それはいろんな犯罪者を更生させる手法というものが、保護観察ということもあるでしょう、家庭裁判所の調査官なんかの仕事もあるでしょう、いろんな方法がありますが、そこは法務大臣、是非これからその検察官会同などをおやりになっていかれるときに、この強い国のメッセージは出しますが、しかしそれは強いメッセージではあるけれども、もうどんどんぶち込めという話じゃなくて、いろんな手法を開発するということも併せて持っておるんだと思いますけれども、いかがですか、大臣。
○国務大臣(南野知惠子君) 委員のおっしゃるとおりだと思います。いろいろな方法を考えながら、更生をしていっていただくというところにも基本を置いて考えていきたいと思います。
○江田五月君 今回、私、一つ非常に残念なのは、この法制審議会が依然として非公開、議事録もいわゆる名前を出さない。黒丸か白丸かな、黒丸ですか。やっぱり司法制度改革審議会、これはリアルタイム公開でやったんですよ。もうみんなの見ている前でやったんです。それが司法制度を変えようという国民の気持ちを喚起することにつながった。そして、推進本部も、まあ今日でいよいよ幕、終わりですけれども、これも検討会をかなり公開度の高いやり方でやってきて、国民との議論、キャッチボールをして、そして司法制度改革という、昨日でしたか、おとといでしたか、NHKの夜中の人も言っていましたけれども、かなりのものをやっぱりやってるということができた。
 犯罪をこういうふうに国としては評価をするんですよと、その評価が変わるんですよというような話を国民の知らないところでやっちゃ、それはいけませんよ。せっかくの機会だから、国民とのキャッチボールでやることで国民の理解も得ながら、なるほど女性に対する性犯罪というのは、これはやっぱり重いんだというようなことを作っていかなきゃ。私は法制審議会というのはこれから先はもう公開にすべきものだと思いますが、大臣、いかがですか。
○国務大臣(南野知惠子君) 法制審議会のこの会令第九条、「審議会の議事及び部会に関し必要な事項は、審議会が定める。」と規定しているようでございまして、法制審議会の議事については、法制審議会自体の御判断に基づき、発言者名及びプライバシーを侵害するおそれのある事項を記載しない議事録を作成し、公開しているところであるわけであります。
 法制審議会における審議内容の重要性にかんがみ、今後ともその適正な運用に、運営に努めていくことが重要であるということでございますので、私もそのように考えてまいります。
○江田五月君 それね、それは形式的にはそういう答えになるんですけれども、だれを法制審議会のメンバーにするかなんというのは、だって皆さんで決めておられるわけでしょうが。私は公開でちゃんと発言できるという人を選んでくださいよ。そんな、私はみんなに聞かれるところでは物をよう言わぬのですというような人ばっかり集めてこの国民の刑罰のあれを決めたって、それはいけませんよ、それじゃ。どう思います。
 もう一遍ちょっと、今の法制審議会で決めることだというのは分かっている。分かっているんだけど、やっぱり大臣として、そこはこういうふうにしてほしいとかいう思いが出てこなきゃいけないと思いますが、いかがですか。
○副大臣(滝実君) 今までの過去の法制審議会でいろんな議論があった中で、やっぱりどうもこの刑法部会ですね、ここで特徴的にいろんな反応が特に強く出てくるというのは過去の例でございましたんで、そういう意味で、今回もかなり顕名にするというのは慎重な姿勢を取られたと思うんです。
 ただ、今委員もお述べになりましたけれども、全般的な今回の司法制度改革の中ではかなりオープンな議論もしてまいりました。したがって、そういうような今回一連の大改革を経験した中でこの問題もこれから今後当然、具体的には当法制審でお決めになることですけれども、当国会における意見、あるいは今までのこの一連の大改革をめぐるいろんなオープンな議論、そういうものを踏まえた上で改めて御議論をしていただくということが一番適正じゃないであろうかというのが大臣の趣旨でございますので、そういう意味でお取りいただければ有り難いと思うんです。
○江田五月君 やっぱり、民主主義というのは有権者、国民に対する信頼なんですよね。国民に知られたら大変だから知られないところでこちょこちょっとやろうということをやったって、ろくなことはないんです。やっぱり、それは国民とのキャッチボール、国民の皆さんの見ている中で議論して、国民も議論に直接間接に参加をしてもらいながら議論をすることで本当の国民的なコンセンサスができていくんだと思うんです。
 行刑改革会議もかなり公開度の高い形でやりましたよね。それで、刑務所の中はやっぱり私は今変わっていくのだろうと期待、まあそれでもまだ変な事件が、今朝も、午前中も議論されたようなことがあるけれども、やっぱり変わってくるんだと思いますよ。やっぱり密室はいけません。
 そこで、今日は何か衆議院の政倫審は密室でやったみたいですが、やっぱりまずいですよ。私はこの事件について、一つ最後にちょっと伺っておきたいんですが、橋本元総理の一億円小切手については、この日歯の関係の人たちは起訴されておりますけれども、政治家については、政治家周辺の、平成研の滝川というこの会計の責任者と、そして村岡兼造さんとが起訴されているんですが、これは刑事局長、滝川氏の起訴は、私聞いているのは、当初は単独の犯罪ということで、しかし途中で訴因変更で共犯関係になったと聞いているんですが、そうなんですか。
○政府参考人(大林宏君) お答えします。
 東京地方検察庁においては、本年九月十八日、御指摘の滝川被告人を政治資金規正法違反の単独犯として東京地方裁判所に公判請求しました。その後、同月二十六日、村岡被告人を同事件の共犯として東京地方裁判所に公判請求するとともに、十月一日、滝川被告人の公訴事実を村岡被告人との共犯として訴因変更請求し、この訴因変更請求は滝川被告人の第一回公判である十一月二十四日、裁判所により許可されたものと承知しております。
○江田五月君 訴因変更をして、わざわざこれは共犯によって犯された、共犯関係で犯された犯罪であるということで、それは検察官の主張として公判手続が進んだと。しかし、十一月の二十四日でしたかね、第一回公判ですべての手続が全部済んで結審して、言渡しは十二月の三日、間もなくですよね。大変、それは早いのは悪くはないけれども、随分手際いいですね。
 ところが、私、新聞報道だと何か簡略型冒陳と書いてあったので、てっきり簡易公判手続でやったのかと思ったらそうじゃなくて、簡略型冒陳というのは何だか全然分かんないんです。分かんないで、皆さんもどうも昨日も聞いたらよく分からぬという話ですが、そういう形でやられて、ちょっと聞いてみると、今のその共犯関係について、共犯の相手になっている村岡さんとか野中さんとかの供述調書は証拠請求をされていないというふうに聞いたんですが、それについて今ここで何とか答えろとは言いません。
 そういうこととか、あるいは捜査の検事を公判の検事に人事異動をさしてやっているとか、そして村岡さんの方は、私ども聞いたんです、民主党で。そうすると、もう本当に細かなところまでお話しになって、私はこれこれこうだから全くかかわっていない、冤罪だと。しかも、それをもう本当に、真実味の本当にこもった話しっぷりでお話しになっているわけで、それを共犯のところをそんなにさらりと過ごして、もうそして滝川氏の事件はそれで全部ふたを閉じてしまって、あと村岡と、こういうのは私は、これはひょっとしたらとんでもない政治的な大陰謀事件のおそれもあるなというような感じがしまして、これは我々はちゃんとこれから監視をしていきますので、そのことだけ最後に申し上げて、私の質問を終わります。
○浜四津敏子君 公明党の浜四津でございます。
 まず、法務大臣にお伺いいたします。
 今回提出された刑法等の改正案につきましては、提案理由の説明によれば、「凶悪犯罪を中心とする重大犯罪に対し、最近の犯罪情勢及び国民の規範意識の動向等を踏まえた上で、事案の実態及び軽重に即した適正な対処が可能になるよう、刑法及び刑事訴訟法等を改正し、所要の法整備を行おうとするものです。」と、こう書いてありまして、これによりますと、最近の犯罪情勢と並んで国民の規範意識の動向等がいわゆる立法事実として挙げられております。
 本日の参考人の御意見の中に、この国民の不安とかあるいは体感治安とかというのは重大犯罪への不安ではないんだと、ひったくりやあるいはおれおれ詐欺と、こういったものへの不安であって、今回の提案理由の国民の規範意識というのは理解できないと、こういう御意見もありました。この国民の規範意識あるいはその動向を今回の法案を立案された法務省としてどのように認識しておられるのかという点につきましては、これまでの審議でも質問があったと思いますし、法制審の審議の中でもこの点に関する議論があったと伺っております。
 そこで、法務大臣に、法務省としてはこの国民の規範意識あるいはその動向等をどのようにして把握されたのか、お伺いいたします。
○国務大臣(南野知惠子君) お答え申し上げます。
 国民の規範意識のありようにつきましては、法務省といたしまして、常にこれを酌み取れるように用意をいたしているところでございます。今回の法案の立案過程におきましても、国会における御議論のほか、各種の世論調査、マスコミ報道、各種の文献や統計類、法制審議会その他の審議会等における出席者の御意見、法務省総合研究所その他の研究機関における研究結果、検察当局からの事件報告、国政モニターの結果、あるいは法務省や首相官邸等に送られてくる投書やメールなど、極めて多様な資料を参照していることは事実でございますが、いずれかに特定の資料等のみによってこれを認定したというものではなく、その意味におきまして、特定の資料を見れば分かるとは言い難いものであることを御理解いただきたいと思います。
○浜四津敏子君 この国民の規範意識というのは、より一般的に言えば民意ということになるかと思います。法律の制定や改正におきましても、基本的にはこの国民の意識あるいは民意、そしてまたニーズといったものに沿ったものであることが求められると思います。
 今の御答弁では、法務省においても日常の業務の中でこの民意の把握に努められていると、こういう御趣旨のことでございますけれども、民意やその動向の把握ということであれば、国民の代表機関である国会も、またその構成員である私ども議員も日常活動の中でしっかり把握しているものと思います。私ども議員は常に現場に入りまして現場の声を聞いております。そして、その中から、今国民の方々が何を求めておられるのか、その民意を受け止めております。そしてまた、その声を集約しているのが政党ということになるかと思います。
 これらの立場においても民意を把握しているものと思いますが、法務大臣、そこで、いったん法務大臣のお立場を離れて、政治家としてのお立場でそのお考えを伺いますが、この点についての御認識はいかがでしょうか。
○国務大臣(南野知惠子君) 御指摘のとおり、私も国民の皆様から選挙によって国会に送り出していただきました一政治家でございますということを認識しておりますが、政治の日常活動を積み重ねる中で、もう本当に浜四津先生は丁寧に積み上げておられることを日々観察させていただいておりますが、そういう機会を通じまして、広く国民の皆様の声にアンテナを伸ばしながら、それを把握し理解すべきものと私も考えております。更にそのように努めているものでございます。これは、私が申し上げるまでもなく、国会議員としての立場においてここにいらっしゃる皆様も同じではないかなと、そのように思っております。
○浜四津敏子君 私が大臣にこのようなお尋ねをいたしましたのは、南野法務大臣が大臣に就任される前に大臣と御一緒に幾つかの仕事をさせていただきました。
 例えば、性同一性障害の特例法、これも与党のプロジェクトチームを作って、南野大臣と私と中心になって法案を作らせていただきました。それもありましたし、また昨年の九月に、大臣が座長をされ、私が座長代理と、こういうことで女性と刑事法の与党プロジェクトチームというのを立ち上げさせていただきました。そこで、性犯罪の厳罰化及び集団強姦罪の創設と、こういったことを、関係者の御意見を伺ったり、勉強会を開いたり、議論をする中で意見をまとめました。そして、昨年の十二月には、南野法務大臣と御一緒に、当時の法務大臣であられた野沢法務大臣に申入れをさせていただきました。
 御一緒に活動させていただいた私が大臣にお尋ねするのもなんなんですが、同僚議員の方にも御認識を共通にしていただくためにも、どういう経緯で、またどういう認識に立って昨年十二月の大臣申入れをしたのか、大臣から御説明をいただければと思います。
○国務大臣(南野知惠子君) 先生御指摘のプロジェクトチームにつきましては、浜四津先生がリーダー格であったとも私は思っておりますし、委員や私を含めました与党の国会議員の有志の方々の協議を踏まえながら、昨年十月、与党政策責任者会議の中の一つの組織として設けられたものでございます。
 当時、集団的な強姦事件がマスコミ等で本当に多く騒がれました。その騒がれたことの中から、我々は、それを問題とされていましたし、問題視することができました。それ以前からも、我々としましては強姦被害の悲惨な実態を聞き及ぶことがございました。また、自分の体験からもそのようなことを承知しておりましたし、また刑法で定められている強姦罪の法定刑などが十分ではないのではないかということを国民の皆様からも方々で伺うことができたということでございます。また、強姦罪以外の凶悪犯罪に対する罰則の在り方や公訴時効の在り方についても問題があるとする国民の皆様方からの声も多数お聞きしておりました。
 そのようなころ、政府の中に犯罪対策閣僚会議が設置されたということもございまして、昨年十二月、当時の野沢法務大臣に浜四津先生共々申入れを行ったという経緯でございます。
○浜四津敏子君 この大臣申入れが昨年十二月十日のことでございました。その後、政府の側において、十二月十八日には犯罪対策閣僚会議が犯罪に強い社会の実現のための行動計画を取りまとめました。さらに、今年の二月には法制審議会への諮問がなされ、そして九月には法制審議会からの答申があり、そして今回の法案の提出となったわけでございます。
 ただ、これは昨年の十二月から急に事態が動き始めたということではございませんで、それ以前にも、国会で民意の推移あるいは犯罪の凶悪化ということを受けまして法整備を求める意見というものがあったと思います。本日の参考人の御意見の中に、今回の法案提出は審議不十分だと、反対意見も多かった、国民的議論が尽くされず拙速だったと、こういう御意見もありました。
 法整備を求める意見としてこれまでどのようなものがあったのか、代表的なもので結構ですので、刑事局長から御紹介と御説明をしていただきたいと思います。
○政府参考人(大林宏君) 犯罪情勢や国民意識の推移を受けて、刑事法を改正すべきではないかとの御指摘はこれまでの国会での御審議でも何度かいただいております。
 最も端的にその趣旨から御指摘をいただきましたものとしまして、例えば、平成十二年三月十三日の衆議院決算行政監視委員会におきまして、公明党の谷口隆義委員から、新潟で発生いたしました極めて長期間にわたる監禁事件についてのお尋ねをいただく中で、明治四十年に現行刑法が制定されたようであるが、時の移り変わり、今の犯罪の凶悪さ等々を勘案すれば刑法の改正が必要なのではないかとの御意見をいただいております。
○浜四津敏子君 そのような経緯も踏まえて今回の法案が提出されたものと私は理解しておりますが、ただいま刑事局長から御紹介がありました我が党の谷口隆義衆議院議員からの質問があったのが平成十二年三月ということでございますので、それからでも今回の法案提出までに約四年経過しているわけでございます。そのときの谷口議員の質問は、刑法の改正については従来から議論があったのに遅々として進んでいないと、こういう指摘をしているものと理解をしております。
 刑法という大変国の重要な基本法について、その改正につきましてはもとより拙速であってはなりませんけれども、現代のような時代の流れが速く、もろもろの問題が次々発生していると、こういう状況におきましては、刑法の改正といえども時機に応じて的確に、速やかに行われるべきものではないかと私は考えております。
 与党PTとしての法務大臣申入れの際もそのような趣旨を大臣、当時の野沢大臣にお伝えいたしました。現在、お立場は変わられて法務大臣となられました南野法務大臣、どのようにお考えでいらっしゃいますでしょうか。
○国務大臣(南野知惠子君) 刑法や刑事訴訟法、これは国の基本法制の一つでございます。それで、この改正につきましては、おっしゃるとおり、慎重かつ十分な検討が必要であるとは思っておりますが、その一方で、議員御指摘のように、これらの法律につきましても時宜を得た改正がなされなければならないものと考えております。
 そういう意味で、プロジェクトチームからの申入れをした際にも野沢大臣にそのような希望を伝えておりますが、現在の法務大臣としていただいたこの立場でも、同じ認識で頑張っているところでございます。
○浜四津敏子君 ところで、今回の法案審議においては、特に法制審議会における審議の経過が拙速であったのではないかと一部で指摘されております。今回の、本日の参考人の御意見の中でもそうした御意見がありました。また逆に、別の参考人は、いや、十分に審議を尽くした、拙速ではなかったんだと、こういう御意見もありました。
 そこで、法制審議会としての最終的な答申が行われた総会での採決状況がどうだったのか、また部会における審議状況等について何か問題にされたのかについて刑事局長にお伺いいたします。
○政府参考人(大林宏君) 法制審議会は、民事、刑事の基本法制に関する法務大臣の諮問機関ですが、諮問内容に関する専門的調査検討は部会において行われますこともあり、総会の委員には、法律の実務家や各法分野の研究者の方々のほか、広範な国民意識が反映されますように、マスメディア、経済界、労働組合などの各方面の方々が含まれております。
 今回の諮問につきましては、部会における審議の経過等につきまして部会長から報告がなされた後に総会委員の審議が行われたわけですが、部会審議の状況が特段問題とされたことはなく、今のような、御指摘のあったような御意見はございませんで、ただいま申し上げたような出席委員全員の賛成により諮問どおり答申すべきことが可決されたものと承知しております。
○浜四津敏子君 次に、法案の内容について具体的な質問に入らせていただきます。
 法案では、有期刑の一般的な上限につきまして、法定刑は十五年から二十年に、処断刑は二十年から三十年に引き上げるべきものとしております。この法定刑二十年への引上げについては行動計画の中でも述べられておりますけれども、国会ではこれまでにこの点に関する議論があったのか、刑事局長にお伺いいたします。
○政府参考人(大林宏君) 有期刑の処断刑の上限の当否に関する国会での御指摘といたしましては、平成五年三月二十九日の参議院法務委員会において、当時の社会党の竹村泰子委員から、有期刑を加重する場合の処断刑の上限は二十年とされているのに、無期刑等から有期刑に減軽する場合の処断刑の上限が十五年とされているのは妥当かとの御質問をいただく中で、そもそもその有期懲役の上限が最高でも二十年に制限されているというのは無期懲役と比べて余りにも差が大き過ぎるとの御意見をいただいているところでございます。
○浜四津敏子君 一般的な法定刑や処断刑の上限の引上げのほか、今回の法案では、幾つかの罪につきましてその法定刑の下限や上限を引き上げるべきものとしております。
 そこで、まず、下限の引上げについてお尋ねいたしますが、刑法の罪で懲役刑や禁錮刑が定められているのを見ても、それぞれの罪の法定刑には下限の定めのあるものとないものとがあります。上限につきましては、明確に定められていなければ国民の立場からいたしますとどれだけ重い刑を受けるのか分からないと、こういうことで、罪刑法定主義の趣旨からもその意味はよく分かりますけれども、下限についての規定があると。例えば、強制わいせつについては六月以上、強姦については今回三年以上、強姦致死傷については今回五年以上と、こういう下限の規定がある、あるというかなされると、こういうことになっているわけですけれども、下限についての規定があるというのはどういう趣旨なのかを刑事局長にお伺いいたします。
○政府参考人(大林宏君) 御指摘のとおり、刑法の罪で懲役刑又は禁錮刑の定めがありますものの中には、その法定刑に下限があるものとないものがございます。このうち、下限の定めがありますものの中には、死刑又は無期刑が選択刑として定められているものや、何年以上の有期刑が法定刑とされているものなど、重要なもの、重大なものが多数含まれております。
 一般に、法定刑の存在意義につきましては、裁判所にその法定刑の範囲内での量刑を義務付けるという裁判規範としての側面と、国民にその罪がどれだけ重大なものかを感銘させて犯罪行為に及ぶことを抑止するという行為規範としての側面とがあると、このように言われているところでございますが、特に法定刑の下限は、その犯罪の重大性に関する国あるいは社会の評価を示すという点に重要な意義があると考えられます。
 法制審議会での議論におきましても、このような法定刑の下限の存在意義が論じられた上で、殺人罪や強姦罪等につきましてはその法定刑の下限を引き上げるべきであるとの結論に至ったと、こういうふうに承知しております。
○浜四津敏子君 次に、法定刑の上限と量刑の関係について刑事局長にお伺いいたします。
 法定刑の上限の存在意義というのは分かりやすいところでございますけれども、この法案の審議の過程でも、また法制審議会の議論を見ても、例えば傷害罪について、今回、法定刑の上限を十年から十五年へ引き上げると、こういうふうにしております。
 しかし、これまでも実際には裁判所が判決で下す量刑というのは、例えば傷害罪を例に取ってみましても、この上限の十年に張り付いていないではないかと、こう言われております。大変凶悪な傷害事件でも十年に届かず、八年というケースも実際に見られました。それなのに、なぜ今回それを引き上げる必要があるのかと、こういう指摘が議論の中でなされております。
 一般に、法定刑の上限と実際の事件における裁判所の量刑とはどのような関係にあると考えられるのか、刑事局長にお尋ねいたします。
○政府参考人(大林宏君) 量刑につきましては裁判所の問題でありますことから、法務当局としては、裁判所が量刑に際してどのような判断をされているかということ自体を申し述べることは差し控えたいと存じます。
 しかし、法定刑を裁判規範として見た場合、その上限あるいは処断刑の上限は、その罪に当たる事案として想定される最悪の事案において適用されると言うこともできますので、犯罪の凶悪化、重大化の傾向等を受けて量刑が重い方に移動していくことはあっても、傷害のような特定の罪についての量刑がその罪について定められた法定刑の上限に張り付くということは、現実問題としては生じ難いのではないかというふうに考えております。
 一つの例を出しますと、これは凶悪事犯じゃありませんが、分かりやすい例としましては例えば詐欺罪があります。詐欺は懲役十年以下とされています。最近、詐欺罪は被害額の多寡というのが非常に問題となります。ところが、御承知のとおり、昔の一億というものは非常に大きな額だったわけですが、最近の一億というのは被害額として必ずしも最大ではないと思います。ですから、私ども、例えば詐欺罪を求刑する際に、被害額がこれからどれだけ伸びるんだろうかと、この求刑をすれば、将来物すごく伸びた最高のときに対応できなくなるんじゃないかと、絶えずそういうことを考えながら来ていますので、そういう極端な張り付くような事例というのは現実にはなかなか生じ難い。
 そういうものを予想しながら、あるいは殺人でも同じだと思います。非常に悪質な、凶悪・重大な事案がある、それよりも起こる可能性があるか、そういうことを絶えず意識してきますので、そういう意味からいいまして、上限に張り付くという現象は非常に少ない、少ないといいますか、普通は生じないものだというふうに考えております。
○浜四津敏子君 今のお話では、傷害罪の法定刑の上限につきましては、傷害罪だけでなく詐欺罪等についても御説明いただきましたが、凶悪、重篤な結果が発生した事案において適正な量刑ができるようにしたいと、こういうことが理由として述べられておりますけれども、現実に発生した事件で、そのような重篤な結果が発生したもので重い量刑がされた事案として例えばどのようなものがあるんでしょうか。関係者のプライバシーとの関係もあるでしょうから、公刊物で公表された範囲で結構ですので、代表的なものを刑事局長から御説明いただきたいと思います。
○政府参考人(大林宏君) 公刊物に登載された事案の範囲内でお答えをさせていただきますと、法務当局として把握しています中で最も重いものとしては、昭和五十三年に第一審で懲役八年の刑が言い渡された、御承知のとおり現行では傷害罪は十年以下でございますが、それに対して懲役八年の刑が言い渡されたものがございます。
 この第一審判決の罪となるべき事実と量刑の理由の項で認定された事実を要約しますと、この事件の被害者は当時二歳三か月の女の子でございます。被告人は、この被害者の母親から借り受けていた合いかぎを使用して母親の外出中に被害者宅に立ち入り、室内にあった約一・九リットル用ポットの中の熱湯を就寝中であった被害者の顔面を中心に浴びせ掛け、被害者の頭部、顔面、両上肢、背部等、全身の約三〇%の範囲に二度ないし三度の熱傷を負わせ、その結果、被害者は一時は危篤状態に陥り、奇跡的に一命は取り留めたものの、頭部や顔面等に一生除去できない瘢痕及び瘢痕の拘縮並びに左耳介欠損という後遺症を受け、皮膚等の成長に伴う機能障害を取り除くため、今後二十数回の手術を繰り返す必要があるものとされています。
 また、この第一審判決によれば、被告人は犯行を否認しており、その他特に被告人のために酌むべき事情も認定されていませんが、この事件では併合罪や再犯という加重事由もないことから、検察官が傷害罪の法定刑の上限であり処断刑の上限でもある懲役十年を求刑したのに対しまして、裁判所は先ほど申し上げましたように懲役八年との量刑をしたものです。
 この事件につきましては、被告人の側が控訴、上告をいたしましたが、いずれも棄却され第一審判決が確定しております。
○浜四津敏子君 確かに、ただいま御紹介いただいたその事件においても、裁判所としては法定刑の上限との関係で具体的な事件の量刑を決めていると。懲役十年という上限の範囲内で判断されたものとすれば、理解できないこともありません。健全な国民感情からすれば、それほど重篤な結果が生じているのであれば、なぜ上限に張り付かなかったのかと、もっと重い量刑でもよかったのではないかと、こういうふうに受け止められるのではないかというふうにも思います。
 同様に、先ほど紹介いたしました我が党の谷口隆義衆議院議員の質問というのも、新潟で発生した事件を踏まえまして、あの新潟の事件というのは逮捕監禁致死傷罪の事件でございましたけれども、その法定刑の上限が十年とされているのが低過ぎるのではないかと、こういう趣旨の質問だったと思います。国民の方々からも、当時、多数同様の意見が寄せられたものと記憶しておりますが、この逮捕監禁致死傷罪の法定刑に関して、今回はどのような手当てをされておられるのか、刑事局長にお伺いいたします。
○政府参考人(大林宏君) 逮捕監禁致傷罪の法定刑につきましては、傷害の罪と比較して重い刑により処断すると刑法に規定されております。これは、逮捕監禁罪により被害者に傷害を負わせた場合には、傷害罪の法定刑と逮捕監禁罪の法定刑とを比較して、その上限、下限とも重い方を適用するということですので、今回の法案が成立しました場合には、上限はより重い傷害罪について規定されることになります懲役十五年が、下限はより重い逮捕監禁罪について規定されています懲役三月がそれぞれ適用されることになり、通じて申し上げれば、逮捕監禁致傷罪の法定刑は三月以上十五年以下の懲役ということになります。これは、現在の刑法における逮捕監禁致傷罪の法定刑が三月以上十年以下の懲役ですので、法定刑の上限が五年引き上げられることになります。
○浜四津敏子君 強姦罪や強姦致死傷罪の法定刑の下限の引上げにつきましては、南野大臣とともに与党PTとしても大臣申入れをしたところでございますけれども、今回の法案におけるこれらの下限の引上げの趣旨につきまして、法務大臣のお立場から御説明いただきたいと思います。
○国務大臣(南野知惠子君) 強姦罪や強姦致死傷罪につきましては、その法定刑の下限が二年あるいは三年とされている点で、暴力的性犯罪に対する現在の国民の規範意識と一致していないとの指摘があります。
 これらの指摘には相当な理由があると思われますために、事案の実態に即したより適正な科刑をなし得るようにするとの観点から、それぞれの法定刑の下限を三年と五年に引き上げることとしたものであります。
○浜四津敏子君 次に、集団強姦罪等についてお伺いいたします。
 与党PTとしては、強姦罪と強姦致死傷罪の法定刑の引上げのほか、集団強姦罪及び集団強姦致死傷罪の新設をも申し入れまして、それが今回の法案にも取り入れられております。もっとも、集団強姦につきましては、現在の刑法におきましても親告罪から除外されるという特別の扱いがなされております。
 まず、集団強姦が非親告罪とされた経緯について、刑事局長から御説明いただきたいと思います。
○政府参考人(大林宏君) 一般の強姦は、犯罪の性質上、起訴によって事が公になりますと被害者の精神的苦痛等の不利益が一層増大するおそれもあるため、被害者保護の観点から、告訴がなければ訴追できないという親告罪とされているところでございます。
 昭和三十三年に暴力的集団犯罪対策等として刑法が改正され、凶器準備集合罪や証人威迫罪が新設された際に、強姦のうち二人以上の者が現場において共同で犯した場合、すなわちいわゆる集団的形態の強姦については、暴力的犯罪としての凶悪性が著しく強度であること等の理由により、親告罪の対象から除外されたものと承知しております。
○浜四津敏子君 次に、大臣にお伺いいたします。
 集団強姦は違法性が強いと、こういうことで親告罪から除外されたと、こういう御説明でございました。それが今回、構成要件としても一般の強姦罪とは別の加重類型としての罪として新設されたと、そういう趣旨について法務大臣にお伺いいたします。
○国務大臣(南野知惠子君) 暴力的犯罪としての凶悪性が著しいと、集団による強姦罪の刑が一般の強姦罪と同じであることについても国民の正義感に合わないとの指摘がなされていたところであり、これらにつきまして事案の実態に即したより適正な科刑をなし得る、そのようにするために新たに集団による強姦罪等を設けたものであります。
○浜四津敏子君 与党PTとして、南野大臣とも議論をしながら、集団強姦罪や集団強姦致死傷罪を是非新設するべきだと、こういう結論になりまして、それを申入れをいたしました。また、強姦関係の各罪の法定刑の下限は、最高の、最も重い集団強姦致死傷罪が六年、一般の強姦致死傷罪が五年と、集団強姦罪が四年、一般の強姦罪が三年にと、こういう申入れをいたしまして、今回の法案でもそのとおりになっております。
 一方で、強盗罪の関係で、今回の改正において強盗致傷罪の法定刑の下限を七年から六年に引き下げるべきものとしていることについては、量刑の適正化という意味で、適正な改正と評価したいと私は思っております。
 私自身、実務を扱った立場からいたしましても、強盗致傷というのは情状の極めて重いものから比較的軽いものまで大変幅広いものでございまして、下限が七年ということになりますと執行猶予が付かず、必ず実刑と、こういうことになりますから、実刑に必ずしもそぐわないという事件についても、そのままいきますと実刑ということになりまして、実務の場面ではいろいろ工夫をしてきたところでございます。
 しかし、強盗致傷の下限が六年に引き下げられてもなお強盗罪と強姦罪の間でその法定刑の下限に格差が残ると、強盗致傷だけではなくて強盗罪の罪ともその格差が残るということになっております。この点につきましては、国連の女性差別撤廃委員会などから、女性の性的自由が物より軽く扱われていると、こう批判されているところでございます。
 そこで、今回、このような形になった趣旨、そして今後強盗罪の関係について検討されるべきものは残っていないとお考えなのか、法務大臣にお伺いいたします。
○国務大臣(南野知惠子君) 強姦罪の法定刑の下限は暴行により人を死亡させた傷害致死罪と同じであり、悪質な事件については強盗罪と同じ重い刑に処することもできますので、今回の法改正によりましてより適正な科刑をなし得るものと考えております。
 もっとも、法制審議会の附帯決議において、強盗罪などの罰則の在り方については、近年の犯罪情勢などを踏まえ、更に検討すべきものとされており、これに基づきまして今後必要な検討を行っていきたいと思っております。
○浜四津敏子君 最後に刑事局長にお伺いいたしますが、今回の法律案の要点の第三が、刑事訴訟法を改正して、凶悪犯罪等についての公訴時効の期間を延長することと、こうなっておりますが、この公訴時効の期間を延長することとしたその理由について御説明をいただきたいと思います。
○政府参考人(大林宏君) 公訴時効制度の制度趣旨としては、時の経過とともに犯罪に対する被害者や社会からの処罰感情等が希薄化することなどを根拠とする実体法的な考え方や、証拠が散逸し訴追が困難になることなどを根拠とする訴訟法的な考え方などが唱えられているところでございます。
 最長でも十五年という現在の公訴時効期間が定められたのは現行刑法が施行された明治四十一年のことでありますが、今回の改正では、その後に国民の平均寿命が大幅に延びるなどの事情の下で、凶悪・重大犯罪に対する被害者やその御遺族を含む国民の処罰感情が希薄化する度合いが低下していることや、新たな捜査技術の開発等により、犯罪発生後の相当期間を経過しても有力な証拠を得ることが可能になってきていることなどを踏まえ、これまでの公訴時効制度に関する考え方に従いつつ公訴時効期間を延長することとしたものでございます。
○浜四津敏子君 終わります。
○仁比聡平君 午前中に引き続いてお尋ねをいたします。
 午前中、刑事局長からの最後の御答弁の中で、強盗致傷罪の下限の引下げについてお話がございました。私は、この致傷罪の法定刑下限の引下げが、これまで刑法関係者あるいは法曹関係者がこの形式的な適用によって不正義な事態が起こらないようにと様々な工夫がなされてきたことは先ほど御答弁のとおりでありまして、そういう下限を引き下げるという法定刑の改正についての立法事実が正に裁判所の現場にあるというものとして私は賛成をするものです。ですが、御答弁によっても、一律に有期刑の上限を引き上げなければどうしてならないのかということは、具体的な事実が明らかにされたとは私には思えません。
 一方で、午後の質疑の中で、この法定刑の引上げという改正が裁判所にとっての、あるいは刑事司法関係者にとっての選択の幅を広げるものなのだということが法務省の方からは提案理由として説明をされてきたわけですけれども、ですが、それぞれの委員の皆さんの中から、やはり重罰化、宣告刑の厳罰化、重罰化を求めるメッセージなのであるという発言が幾つかあったかと思うんですね。ですけれども、あくまで、この改正がどうなるかということは別として、裁判所の刑事裁判の判決、量刑というのは、それぞれの訴訟関係者と裁判所に専権的にゆだねられているものであると、裁判の独立と三審制の中で解決をされるべき問題であるということを強く指摘して、次の質問にさせていただきたいと思います。
 この有期刑の上限の引上げを始めとした重罰化と言われる改正が自由刑の長期化を結果としてもたらすのではないかという懸念が今日も何人かの皆さんから語られました。先ほど同僚委員の質疑への答弁の中で、本年の受刑者が六万四千人、そして一一七%という、いわゆる過剰収容という状況になっているという点のお話があったわけです。
 私、この点で、この実態が一体どんなことになっているのかということを矯正の関係の方にお尋ねをしたいと思うんですけれども、平成十三年の九月十九日付けの朝日新聞がこんな記事を書いています。「「塀の中」は定員オーバー」というタイトルなんですが、定員六人の十畳前後の雑居房に七、八人が詰め込まれたり、三畳ほどの独居房に二人が入れられたりすることがある、各施設では教室や集会室の模様替えや、空き地に舎房を増設するなどの対応で急場をしのいでいると、こういう記事があるわけですね。
 全国各地の刑務所でこういう状況が現実にあるのか、その点についてまずお尋ねをいたします。
○政府参考人(横田尤孝君) お答えいたします。
 先ほど委員から御指摘ございましたように、本年八月末でいいますと、収容率一一七%という数字が出ております。おっしゃいましたように、大変今厳しい状況にございまして、刑務所によりましては、今おっしゃったように、六人の定員の部屋に七人あるいは八人というような状況のところももちろんございます。そういうことがございますので、私どもといたしましては、この収容場所の、施設の拡充等に今努めているところでございます。
○仁比聡平君 今お話しのように、刑務所の過剰収容と言われる事態というのは大変深刻だと思います。これが、行刑の理念が、特別予防の観点も含めて、受刑者の社会復帰、更生という点にあるということはもういろんな方から今日も御指摘があったところですけれども、同時に、受刑者を拘禁をしておくという施設であるという側面がもちろん厳然としてあるわけですね。ですけれども、拘禁施設である、ですから事故などは絶対にあってはならないわけですが、三畳の狭い空間に二人がずっと日常的に一緒にいなければならない、独居であるべき受刑者が雑居をしているというような状況では、その拘禁施設としての機能すらが危ぶまれているという状況に私はあると思うんですね。
 そんな中で、先ほど同僚委員の質疑の中で、山口県の美祢にPFIで新設が図られているというお話があったと思いますが、私伺いますと、ここでの収容人員の予定というのは千人規模というふうに伺っているわけです。現在の刑務所の収容定員というのは全国で五万五千しかなくて、そこに六万四千来ているわけですから、九千とか一万というオーダーでオーバーフローしていて、それで一一七%という過剰収容の状況になっているわけですよね。
 こういう事態を改善できるという見通しがあるのか、増新設という形によって。見通しがあるのかということについてお尋ねしたいと思います。
○政府参考人(横田尤孝君) 今委員御指摘のPFIによる刑務所の新設、これも一つの例でございますけれども、そのほかに、ここのところ、数年、毎年、中の増築だとか改築だとか増設であるとか、そのような形で鋭意この収容能力の拡充に努めているところでございまして、私どもといたしましては、この過剰収容をできるだけ、もちろん解消が一番大事ですけれども、緩和、解消に向けて鋭意努力しているということでございます。
○仁比聡平君 なかなかはっきりした見通しをおっしゃることはできにくいということだと思うんです。
 私、大臣にここでお尋ねをしたいんですけれども、こういった事態を解消する努力をしながらも見通しがなかなか付かないと。国家財政もちろん逼迫をしているわけですけれども、目の前でこういう事態を放置することはできないわけですから、是非、この刑務所やあるいは、刑務所といいますか、刑務所を含む矯正施設ですね、そしてそこで働く皆さんのそういった人員の確保も含めて、是非財政当局に強い姿勢で臨んでいただきたい、来年度予算の編成に当たっても強くその点要求していただきたいと思いますが、いかがですか。
○国務大臣(南野知惠子君) それはもう就任したときから、今いろいろとお願いしているところでございます。
○仁比聡平君 この過剰収容という事態がもたらしている現状について、私、もう一点、大変心配しているのが、矯正施設としての本来の機能が奪われていっているのではないかということです。
 我が国の刑務所処遇での二本柱というのは、御存じのように、分類処遇と累進処遇というふうに柱立てがなされています。分類処遇というのは、その受刑者の犯罪性などの特性によって受刑者を分類して処遇をすることで、それぞれの受刑者のタイプに応じた処遇施設に移送をしていくということがその処遇の前提になっているわけですね。累進処遇は、受刑者の処遇内容に幾つかの段階を設けて、各段階ごとにそれぞれ異なる優遇措置や、あるいは重い責任を付与をして、その受刑者の行刑成績に応じて順次上位の段階に引き上げていって、最終的に仮釈放という形になるわけですが、一一七%という逼迫状態だと。ある報告によりますと、その分類処遇のための待機期間、つまり裁判所で、刑が有罪が確定をした、だけれども、どういった分類を受けてどこの刑務所に行くのかということそのものが決まらずに待機をしなきゃいけないという時間が延びているという報告があります。
 こういった状況では、実際の分類処遇だとか累進処遇の本来の効果を果たせないんじゃないかと思うんですが、この点、どうお考えでしょうか。
○政府参考人(横田尤孝君) お答えいたします。
 先ほどの収容能力の増強について、一点だけちょっと具体的に、言い落としましたので付け加えさせていただきたいんですが、収容能力の増強に関しまして、平成十七年度の要求といたしましては、現時点では受刑者二千八百十二人に相当する二百四十七億円の要求をしているということを一言付け加えさせていただきます。
 それから、今、いわゆる待機期間の問題でございますけれども、委員御指摘のとおり、その刑務所が過剰収容状態にある場合には、拘置所から刑務所への移送の待機期間が長期化するということは、これは考えられるところでございます。ただ、当局といたしましては、現在、全体としてどの程度移送までの期間が長期化しているかどうかについて数値を把握しておりません。
 いずれにいたしましても、新たに確定した受刑者につきましては速やかに処遇施設への移送を行い、受刑者の特性に応じた適切な収容及び処遇が円滑に行えるよう、刑務所における収容能力の増強を図るなど、過剰収容解消に向けた所要の措置を講じてまいるように努めまして、委員御指摘の御懸念のないように努めてまいります。
○仁比聡平君 是非、その待機期間の実情もつかんでいただいて、対応を強くお願いをしておきたいと思います。
 もう一点、釈放後の更生保護の関係について、これが一体どうなっているかと。
 かつてから、この更生保護の施設の数が、元々釈放される受刑者に対して受け入れる体制が十分でないということは指摘をされてきたことかと思いますが、これが実際に受刑というか、刑務所が一一七%の過剰収容状況になる中でどう推移しているのかということを御紹介いただきたいと思います。
○政府参考人(津田賛平君) 全国の更生保護施設の数でございますけれども、現在百一でございます。
○仁比聡平君 今の更生保護施設の百一という数字は、実は私が十数年前に刑事政策の勉強を司法試験の受験の中でやってきた時代と同じ数字なんですよ。
 私、それ聞いて、もう昨日本当に驚いたんですが、加えてもう一点、その施設の中でどんな人数が収容されているかと。その人数は、刑務所の過剰収容ということは結局受刑者が増えているわけで、釈放される人も、平成十五年の数字で、仮釈放で一万五千七百八十四人、満期釈放で一万二千三百八十六人、合わせて二万八千百七十人が釈放されていると聞いています。この二万八千を超える受刑者の、出所者の、この出所者のうち、希望をする人はこの施設は入れる状況にありますか。
○政府参考人(津田賛平君) 現在の収容定員でございますけれども、二千二百五十八人ということでございまして、先ほど、今お尋ねのように、平成十五年におきまして刑務所を出所している者の約六人のうちの一名、それから仮出獄者について申し上げますと、四人について一名が更生保護施設に入っておるという状況でございます。
○仁比聡平君 我が国の刑事政策、刑事司法を考えるときに、犯罪抑止のための法の存在そのものの効果というのは私も否定をいたしません。ですけれども、現実にその刑罰権が発動されて個別の被疑者あるいは被告人、受刑者が社会復帰をしていくという過程においては、法の存在だけではなくて、捜査や起訴や裁判、そして矯正や保護、いずれの段階もがきちんとしたバランスを取って運用をされなければ全体としての犯罪の抑止ということは、これは不可能だと思うんですね。
 だからこそ、今の過剰収容のような状況をある研究者の方はこんなふうに指摘をしています。過剰収容が社会の犯罪不安や厳罰化によってもたらされると。この過剰収容による処遇システムの崩壊は、受刑者の社会復帰をより困難なものにし、再犯率を上昇させ、その結果、更なる犯罪不安と厳罰化の原因となるという、犯罪不安、厳罰化、過剰収容、処遇環境の悪化、再犯の増加、犯罪不安の増大といった皮肉な連鎖を生み出しかねないという危険性をはらんでいると指摘をされているんですね。この点が、刑法研究者の皆さんの意見書の中でも、この改正がむしろ日本社会の安全を悪化するおそれすらもあると考えるという指摘がされているところだと思うんです。
 こういう反対の声に対して、大臣、どんなふうにお答えになりますか。
○政府参考人(横田尤孝君) 私の方からお答えさせていただきます。
 要するに、その今委員御指摘の点は、過剰収容によってその社会復帰に向けた矯正処遇がうまく機能しなくなると、で、再犯率上がるんじゃないかということでございますけれども、刑務所の受刑者の再犯防止につきましては、矯正施設における処遇のみで達成されるものではございませんで、社会全体で取り組むべき問題であるというふうに考えておりますけれども、昨年十二月に出されました行刑改革会議の提言において教育的処遇をより充実させることとされておりまして、既に当局といたしましては、社会資源の活用やカウンセリング等により教育的処遇の充実を図るための施策を実施しているところでございます。
 過剰収容下におきましても、更に対象者の特性や問題性に応じたより効果的な教育プログラムを実施するとともに、保護観察所等との連携の一層の充実強化を図ることによりまして、受刑者の円滑な社会復帰ができるよう鋭意努力してまいりたいと考えております。
○政府参考人(津田賛平君) 先ほどの委員からの御質問の際に私、若干御質問の趣旨を取り違えたところがあろうかと思いますけれども、希望した者が必ずしも入っているのかという御趣旨のお尋ねでございましたので、ちょっとそういう形でのお答えができるかどうかと思いますが、仮釈放者に限って申し上げますと、その帰住先がどのようになっているかということを申し上げますと、約六割か七割に近い人たちは父母であるとか配偶者でございます家族あるいは知人等の下に帰住しておるわけでございまして、約四分の一の人たちが更生保護施設に入っておるということで、ほとんどの方がそういうようなところで帰住等をしておるということでございます。
○仁比聡平君 最後に一点、犯罪被害者の権利保障の問題にかかわって一つだけお尋ねをしたいと思います。
 犯罪被害者がその受けた打撃から立ち直って憲法によって保障される幸福な生活を追求できるようになるために、犯罪被害者の権利を確立をし、社会全体で犯罪被害者を支援するという体制を作るということは、これは国と社会の責務だと思うんですね。その観点から、刑事訴訟での配慮や、あるいは不起訴記録の開示の問題や、一定の取組がされてきたところですけれども、今日、一点だけお尋ねをしたいのは、そういった被害者の、殺人等の重大事件の犯罪被害者が捜査や裁判所、メディアに対する対応等に関して弁護士の支援を受ける、その費用について公的援助を受けるということを可能にする制度を創設をしてほしいという要求はかねてからあるわけです。この問題についての法務省の今のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
○国務大臣(南野知惠子君) 現在におきましても、犯罪被害者が経済的事由から弁護士に依頼して損害賠償などの民事的な被害回復を得ることができない場合には、民事法律扶助制度によりまして弁護士費用の立替え等の援助を受けることができます。
 先般成立しました総合法律支援法に基づきまして、今後、日本司法支援センターが設立されることになります。支援センターは、被害者支援団体などと連携協力いたしまして被害者の方々に有益な情報の提供などを行っていくものであります。また、支援センターは各地の弁護士会や日弁連と連携していただき、犯罪被害者問題に精通した弁護士を紹介する体制を整備するということが予定されております。
 支援センターは民事法律扶助制度の実施主体にもなります。したがいまして、犯罪被害者に対しましては、同制度をも活用していただきながら、事案に応じて適切な弁護士から必要なサービスが受けられるようになるなど、支援の充実が一層図られていくと思っております。
○仁比聡平君 その点でのより一層の力強い支援をお願いして、質問を終わります。
○委員長(渡辺孝男君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
    ─────────────
○委員長(渡辺孝男君) 委員の異動について御報告いたします。
 本日、山東昭子君が委員を辞任され、その補欠として秋元司君が選任されました。
    ─────────────
○委員長(渡辺孝男君) これより討論に入ります。
 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
○仁比聡平君 私は、日本共産党を代表して、刑法改正案に対する反対の討論を行います。
 まず、我が党は、強姦罪など性犯罪の法定刑の引上げや、集団強姦罪の新設などにかかわる性犯罪の重罰化については賛成であることを申し上げておかなければなりません。この問題についてはかねてから傷害罪や強盗罪との不均衡が問題となっていたのであって、性犯罪被害や被害者の人生に与える影響の重大さにかんがみれば、法定刑引上げは当然だと思います。
 また、強盗致傷罪の法定刑の下限を引き下げる点も一度の減軽では執行猶予を付することのできない不正義を解決するものであり、さらに、公訴時効の延長は、被告人の防御権に与える影響も無視はできませんが、犯罪被害者の実態に照らして必要であり、賛成をするものです。
 にもかかわらず、この法案に対して反対をする第一の理由は、本法案が刑法総則の改正によって、個々の罪一つ一つについては何の検討も抜きに、反対の声を押し切って百四にわたる罪の有期刑の上限を一律に引き上げるものになるからであります。
 現行刑法は制定以来百年が経過をしており、社会の変化に伴って必要な改正がなされることは当然です。一方で、刑法の謙抑性の要請から、犯罪の防止、犯罪との均衡など具体的立法事実について慎重な検討を行った上で、国民の納得を得て行われなければなりません。
 政府は、提案理由の説明で重大犯罪への対策を強調をしながら、一律の重罰化による犯罪抑止の効果を示すことは困難と答弁をされるなど、本院の質疑の中でも今回の一律の重罰化の立法事実やその効果を何ら示し得ていないと思います。この点、日弁連や刑法研究者などの単純な厳罰化は犯罪減少につながらず矯正にも悪影響を与えるとの反対意見や、マスコミが指摘する重罰化が犯罪防止につながるのかとの懸念に全くこたえるものになっていません。
 第二の理由は、殺人罪等、また傷害罪等の法定刑を引き上げるからであります。
 殺人罪が重大犯罪であることは疑いありませんが、日本社会の実情を見れば、殺人罪であっても執行猶予を付することが適当な事案がある。これが酌量減軽なしには執行猶予を付することができないようにすべきではありません。傷害罪一般の引上げを必要とする立法事実もないまま、有期刑の上限一律引上げに伴って行われるのも容認できないからです。
 以上です。
○委員長(渡辺孝男君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。
 これより採決に入ります。
 刑法等の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
○委員長(渡辺孝男君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 この際、千葉景子君から発言を求められておりますので、これを許します。千葉景子君。
○千葉景子君 私は、ただいま可決されました刑法等の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、民主党・新緑風会及び公明党の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。
    刑法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。
 一 犯罪を抑止し、国民の不安を解消するため、捜査体制の充実・強化、捜査関係機関の連携強化等治安対策の一層の推進に努めるとともに、刑罰体系の在り方等について多角的観点から積極的に検討すること。
 二 有期刑の法定刑及び処断刑の上限が引き上げられることにかんがみ、深刻化している行刑施設の過剰収容状況を早期に解消し、適正な収容を確保するため、行刑施設職員の増員や施設の拡充を推進するとともに、長期受刑者については、円滑な社会復帰が妨げられることのないよう、更生を促すための教育の充実・強化等処遇に十分配慮すること。
 三 強盗等の盗犯に係る罰則については、近年の犯罪情勢等を踏まえ、財産犯全体の罰則の在り方を視野に入れつつ、罰金刑を選択刑として導入するなども含めて、さらに検討すること。
 四 性的自由の侵害に係る罰則の在り方については、被害の重大性等にかんがみ、さらに検討すること。
 五 公訴時効期間が延長されることにより、迅速な捜査処理に支障を来すことがないようにするとともに、その趣旨を踏まえ、捜査技術の開発向上等に一層努めること。
   右決議する。
 以上でございます。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
○委員長(渡辺孝男君) ただいま千葉君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
○委員長(渡辺孝男君) 全会一致と認めます。よって、千葉君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 ただいまの決議に対し、南野法務大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。南野法務大臣。
○国務大臣(南野知惠子君) ただいま可決されました刑法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。
 ありがとうございました。
○委員長(渡辺孝男君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(渡辺孝男君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後五時二十分散会