第162回国会 法務委員会 第7号
平成十七年三月二十九日(火曜日)
   午前十時開会
    ─────────────
   委員の異動
 三月二十二日
    辞任         補欠選任
     井上 哲士君     大門実紀史君
 三月二十三日
    辞任         補欠選任
     蓮   舫君     江田 五月君
     大門実紀史君     井上 哲士君
 三月二十九日
    辞任         補欠選任
     尾辻 秀久君     秋元  司君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    理 事
                松村 龍二君
                吉田 博美君
                千葉 景子君
                木庭健太郎君
    委 員
                青木 幹雄君
                秋元  司君
                荒井 正吾君
                山東 昭子君
                陣内 孝雄君
                関谷 勝嗣君
                鶴保 庸介君
                江田 五月君
                前川 清成君
                簗瀬  進君
                浜四津敏子君
                井上 哲士君
   国務大臣
       法務大臣     南野知惠子君
   副大臣
       法務副大臣    滝   実君
   大臣政務官
       法務大臣政務官  富田 茂之君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局総務局長   園尾 隆司君
       最高裁判所事務
       総局人事局長   山崎 敏充君
       最高裁判所事務
       総局民事局長
       兼最高裁判所事
       務総局行政局長  高橋 利文君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        田中 英明君
   政府参考人
       内閣官房司法制
       度改革推進室長  本田 守弘君
       金融庁総務企画
       局参事官     大藤 俊行君
       法務大臣官房司
       法法制部長    倉吉  敬君
       文部科学大臣官
       房審議官     徳永  保君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内
 閣提出、衆議院送付)
    ─────────────
   〔理事木庭健太郎君委員長席に着く〕
○理事(木庭健太郎君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 去る二十三日、蓮舫君が委員を辞任され、その補欠として江田五月君が選任されました。
    ─────────────
○理事(木庭健太郎君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に内閣官房司法制度改革推進室長本田守弘君、金融庁総務企画局参事官大藤俊行君、法務大臣官房司法法制部長倉吉敬君及び文部科学大臣官房審議官徳永保君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○理事(木庭健太郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
○理事(木庭健太郎君) 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○吉田博美君 自由民主党の吉田博美でございます。
 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案についてお尋ねをいたします。
 昨年も同じことを申し上げましたが、平成十三年四月の司法制度改革審議会に対し、最高裁からシミュレーションの結果として、現状の審理期間を半減させるためには、事件数が現状のとおり推移するとして今後十年間で約五百人の増員が必要とされ、更に事件数が増加すると想定されますと三百人から四百人の増員が必要であるとの見解が報告をされたわけでございますが、一方、平成二十一年からは裁判員制度が導入予定であり、裁判迅速化の体制整備には裁判官はまだまだ大幅に増員することが必要だと考えております。それらの点を踏まえ、幾つかの質問をさせていただきます。
 まず、この改正案は司法の人的基盤の充実により裁判の迅速化等を期待する国民の声を反映したものと思いますが、裁判の迅速化のためにどのように取り組んでいくつもりでございましょうか、お聞かせいただきたいと思います。
○国務大臣(南野知惠子君) お答え申し上げます。
 司法を通じまして国民の権利利益が適切に実現されることは極めて重要なことであろうかというふうに思っております。裁判が公正かつ適正で充実した手続の下に迅速に行われることが不可欠であると考えております。先生の御指摘のとおりであると思っております。
 司法制度を管轄する省庁の責任者といたしましては、司法の人的、物的基盤の充実強化が適切に図られる必要があると思っております。最高裁判所の行う裁判の迅速化に係る検証の結果をも踏まえながら、必要な施策を実施し、国民にとって身近で信頼される司法制度の構築に全力を挙げて取り組んでいく決意でございます。
○吉田博美君 大臣の決意で、身近で信頼されるという、何か司法というのは遠いような感じがするものですから、大臣のような本当にこう身近なイメージの中でやっていただきたいなと思っているところでございます。
 今回の増員は、判事四十人、判事補三十五人、裁判官以外の職員が十人とのことですが、それぞれの増員理由についてお聞かせいただきたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(園尾隆司君) 今回の増員は、下級裁判所における事件の適正かつ迅速な処理を図るということを目的とするものでございまして、その中でも、まず第一に、新受件数が高原状態にあります民事訴訟事件、中でも特に早期処理が求められております知的財産権事件、第二に、新受件数が極めて多く、また大型事件が相次いで係属しておる状態にあります倒産事件、第三番目に、新受件数が引き続き増加傾向にあり、特に重大事件の早期解決が求められております刑事訴訟事件という三つの類型の事件につきまして、適正かつ迅速な処理を図るということができるように態勢を強化いたしますとともに、あわせて、裁判員制度の円滑な導入を図るために人的態勢を整備するということを目的とするものでございます。
 このような目的を達成するために、裁判官につきましては、判事補及び司法修習生からの任官者の数の見込み等を踏まえまして、判事及び判事補を合計七十五人増員するほか、裁判所書記官を百九十人、家庭裁判所調査官を五人増員するとともに、他方におきまして、事務を簡素化して効率化するということ等に伴いまして裁判所事務官等を百八十五人減員しまして、これらを通じて裁判官以外の裁判所の職員を十人増加しようとするものでございます。
○吉田博美君 今お聞きしたんですけれども、そこで、今回の改正は前年にも増して大幅な裁判官の増員となりますが、人材の供給源に問題はないのでしょうか。供給源の多様化が必要だと聞いていますが、何か対策を講じておられるのでしょうか、お聞かせいただけますでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(園尾隆司君) 裁判所といたしましては、より一層迅速で充実した裁判の実現をいたしまして、現代社会において司法に期待されるニーズにこたえるべく、それにふさわしい資質能力を備えた必要な人数の人材を確保していく方針で努力を重ねておるところでございます。
 人数面でいいますと、判事については本年四月において百十人程度、判事補につきましては本年十月において百二十人程度をそれぞれ補充する必要がございますが、判事につきましては本年四月に判事の任命資格を取得する判事補等から、判事補につきましては本年十月に司法修習を終える者等からそれぞれ採用することによりまして、いずれも増員後の定員が充員される見込みでございます。
 これを資質能力の面から見てみましても、裁判官の指名に当たりましては、平成十五年五月に設置されました学識経験者等から成る下級裁判所指名諮問委員会が裁判官にふさわしい人材であるかについて審議を行うこととされておりまして、その審議を経ることにより資質能力の確保が十分に図られるというように考えております。
 次に、供給源の多様化についてでございますが、裁判所としましては、司法修習生からの採用に加えて弁護士からの任官も積極的に推進しておりまして、弁護士から裁判官に採用する場合の採用条件等について柔軟に対処しておるところでございます。
 また、これに加えまして、平成十三年十二月、最高裁判所と日本弁護士連合会との間で、裁判官へ任官しやすくするための環境をより一層整備するという観点から、裁判官選考要領に関する合意を取りまとめてきたところでございます。
 その結果、平成十五年度は十人、平成十六年度は八人の弁護士を裁判官に採用いたしました。これはこの合意が成立する前の十年間の年間平均弁護士任官者数である約四人を上回る人数でございまして、今後もこのような努力を継続していきたいというように考えております。
○吉田博美君 張り切って御答弁をされていたわけでありますが、ただ、弁護士から登用されると言うが、弁護士も数が少ないんですね、元々が。だから、そのためにロースクールをつくったんですから。どんどんロースクールから合格者をたくさん出すように心掛けていただきたいと、そのことをお願いをするところでございます。
 今回の増員理由の一つに、先ほど答弁がございましたが、裁判員制度導入のための態勢整備があると聞いておりますが、裁判員制度導入に必要な人的整備は今後どのような段階を経て進められていくのでしょうか、お聞かせいただけますでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(園尾隆司君) 裁判員制度の導入は裁判所にとって極めて大きな制度改革でございまして、制度が実施される平成二十一年までの四年間に裁判員の参加に堪え得るように審理の充実と迅速化を徹底していくという必要がございます。そのためには、合議体を構成する裁判官を始めとする人的態勢を整備していくことが不可欠でございますが、特に裁判官につきましては、厳格に資格が制限されております官職ということでございますので、計画的な増員が不可欠でございまして、そのために、制度導入の四年前である平成十七年度から増員を図っていくという方針を取っております。
 今後、裁判員制度が施行されるまでの間に継続してこのような増員のための努力を行いますとともに、法務省、日弁連との間で協議を重ねまして、刑事訴訟規則の改正その他の裁判員制度の実施のための手続的な準備も並行して行いまして、制度の導入時までには裁判員制度が円滑に実施できるだけの体制を整備していきたいというように考えております。
○吉田博美君 次に、最近裁判所に持ち込まれる事件の件数はかなり多くなっていると思うんですけど、どのようになっているのでしょうか。また、事件そのものが複雑かつ多様化しているやに聞いておりますが、その動向及び傾向についてお伺いをしたいと思います。先ほど民事が多いとか知財が多い、刑事訴訟が多いとかというようなことでございますけれども、その辺についてお聞かせいただけますでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(園尾隆司君) それでは、最近の事件の動向について御説明いたします。
 まず、民事訴訟事件についてですが、地方裁判所に提起される民事訴訟事件の新受件数は平成三年以降増加の基調にございまして、平成十六年には四月から人事訴訟が家庭裁判所に移管されたということの影響で新受件数が減少いたしましたものの、ここ数年は過去最高の水準域を上下しているという状況にございます。しかも、内容的にも、医療訴訟あるいは知的財産権訴訟のように専門的な知見が必要な専門訴訟に代表される複雑困難な事件が増加しております。
 次に、倒産事件についてですが、長引く景気の低迷を反映いたしまして倒産事件は激増しておりまして、特に破産事件の新受件数は平成十五年には過去最高の件数である二十五万一千八百件を記録いたしました。平成十六年には新受件数が落ち着きを見せて約二十二万件となりましたものの、今後の事件動向について予断を許さない状況にございます。さらに、事件数の増加に加えまして、複雑困難である上に迅速処理が要請される大型事件についての法的整理の申立てが毎年相当数に上っておるという実情にございます。
 次に、刑事訴訟事件についてですが、地方裁判所に提起される刑事訴訟事件は平成五年以降増加傾向にありまして、平成十四年には十万人を超えるということで、平成十六年には約十一万三千人に至っております。また、殺人、強盗殺人等の凶悪事件、組織犯罪、外国人事件等の複雑困難な事件が増加しておる傾向にございます。
 次に、家庭関係事件である家事事件及び人事訴訟事件はここ十年来一貫して増加傾向にありまして、特にここ数年は史上最高数値を更新し続けております。また、内容面でも、親族間の感情的対立が激しい事件等、家庭裁判所特有の解決が困難な事件が増加しておる状況にございます。
 以上のような状況でございまして、いずれの事件も高い水準の申立てが続くとともに、その内容は一層複雑困難なものになっておるという状況にございます。
○吉田博美君 事件数は増えていき、また複雑かつ多様化しているという現状の中で、その中にありながら、大臣の先ほどの御答弁にございましたように、国民の皆さんが裁判所を信頼し安心して利用できるよう適正かつ迅速な事件の処理が重要だと考えますが、裁判の審理期間はどのように推移しているのでしょうか、また外国と比べるとどうなっているのでしょうか、お聞かせいただけますでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(園尾隆司君) 我が国の裁判の現状を平均審理期間について見てみますと、平成十五年の地裁民事第一審通常訴訟事件の平均審理期間は全体で八・二か月でございまして、ここ十年間で見てみますと徐々に短縮化していっております。また、平成十五年の地裁刑事通常第一審事件の平均審理期間は全体で三・二か月でございまして、この十年間、三か月台で順調に推移をしておるところでございます。
 諸外国との比較についてですが、諸外国についての統計資料は限られておりまして、また裁判の制度や手続が大きく異なっておりますので数値の比較をすることは極めて難しいわけですが、ごく大ざっぱに申し上げますと、アメリカの場合、二〇〇三年の連邦地方裁判所における民事訴訟事件の平均審理期間は九・三か月、刑事訴訟事件は六・二か月となっております。また、アメリカの州裁判所では、事物管轄が我が国の地方裁判所にほぼ等しいと思われます例えばニュージャージー州上位裁判所を取ってみますと、二〇〇三年の民事訴訟事件の平均審理期間が約十一・五か月、それから刑事訴訟事件の平均審理期間は約五・八か月となっております。
 一方、ドイツでは、二〇〇一年における地方裁判所民事第一審の平均審理期間が約七か月、刑事第一審の平均審理期間は約六・一か月となっております。ただ、ドイツの民事訴訟の審理は裁判所による職権進行主義が取られておりまして、弁護士強制主義及び弁護士費用敗訴者負担主義の下で弁護士費用が法定されるというようなことで、弁護士の訴訟活動は定型的であるというように言われております。
 このように見てまいりますと、我が国の現時点における裁判の審理期間は、民事事件、刑事事件とも国際的に見まして遜色のない水準にあるというように考えております。
○吉田博美君 国際的に見て遜色のないということでございますが、ただ、裁判所を利用する方々は現状で満足することなく、より充実かつ迅速な裁判の実現を求めていると考えますが、訴訟の審理期間を将来的な目標として具体的にどの程度まで短縮しようと考えているのでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(園尾隆司君) 裁判は多種多様な理由から申し立てられるものでございまして、その事件類型も多種多様であるということから、あるべき迅速な審理期間はどの程度かということにつきまして画一的な数値目標を掲げるということは困難でございますが、迅速な裁判の実現という国民の司法に対するニーズにつきましては、司法が組織を挙げて全力で取り組む課題であるというように考えておるところでございます。
 なお、平成十五年七月に施行されました裁判の迅速化に関する法律の第二条によりますと、裁判の迅速化は、第一審の訴訟手続については二年以内のできるだけ短い期間に終局させるということを目標として、充実した審理を実施すること並びにこれを支える制度及び体制の整備を図ることにより行われるものとすると規定されておりまして、個別の裁判の数値目標としてではなく制度の枠組みや体制整備の目標としまして二年間という数値が示されておりますので、私ども司法行政の任に当たる者といたしましてはそのような努力を重ねていきたいというように考えております。
○吉田博美君 そこで、裁判官の質の問題もあると思うんですよね。質を確保するためには、優秀な人に裁判官になっていただくことはもちろんですが、裁判官となった後も継続的に研さんを重ねることが私は大切だと思うわけでございますが、裁判官に対してどのような研修を実施しているのでしょうか。また、社会情勢に即応した情報提供を行っているのでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(園尾隆司君) 判事、判事補に対しましては、経験年数に応じまして、判事補に任官した直後に最初の研修を実施いたしまして、その後、任官二年後、それから三年後、それから六年後、その後、判事に任官した直後というようにそれぞれ研修を実施しておるところでございます。また、テーマ別の研修といたしまして、これに、先ほどの各経験年数ごとの研修に加えまして、民事、刑事、家事、少年、行政及び労働等の各種法律分野につきまして、その時々のニーズに応じたテーマを設定して実務研究会を実施しておるところでございます。さらに、部総括裁判官、支部長等を対象とする組織運営関係の研修を実施しておるところでございます。
 これらの研修におきましては、法律実務家、大学教授等を講師に招きまして、近時の立法の動向や最近の法律上の問題点に関する研究、討論、情報提供等を行っておりますほかに、第一線の社会での活動をしておられます民間企業の経営者、報道記者、自然科学の研究者などの外部の講師を招聘いたしまして、様々な分野における最新の動向に関する情報を裁判官に提供いたしまして意見交換をするなどしておりまして、社会情勢に即応した情報提供という観点についてもできる限りの意を用いておるというところでございます。
○吉田博美君 そこで、我が国の地財立国を実現させるためにも知的財産の保護は重要な課題だと考えておるところでございますが、今年四月に設立予定の知的財産高等裁判所の準備の進捗状況についてお聞かせいただきたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(高橋利文君) お答え申し上げます。
 四月一日に発足する知的財産高等裁判所の準備状況について御説明申し上げます。
 まず、知財高裁の組織体制についてでございますが、知財高裁には現在の東京高裁の知財部が移行する形で大合議部一か部を含む五か部を置くこととし、十八人の裁判官を配置する予定でございます。また、知財高裁の所長室、裁判官室、事務局等の知財高裁の執務室は東京高地裁の合同庁舎の十七階に集約させまして、これを知財セクションとする予定でございます。現在、最終の仕上げの工事を行っている段階でございます。そこには大きな表示板、知財高等裁判所を表示する大きな表示板を設ける予定でございます。
 知財訴訟の審理の一層の充実の観点からは、技術分野の専担化、細分化に対応することが必要でございます。その観点から、平成十六年に導入されました専門委員制度につきましては、必要に応じ専門委員を追加任命しているところでございまして、本年の四月の任命予定者を加えますと、東京、大阪の裁判所に百七十三人の専門委員が所属することになります。知財高裁の発足後も、引き続き専門的な知見が知財訴訟に的確に反映されるように専門委員制度を積極的に活用していく予定でございます。
 さらに、知財高裁におきましては、国内外を含めて積極的に情報発信をしていきたいと考えております。そのために、新たに知財高裁独自のホームページを開設いたしまして、我が国の知財訴訟制度や裁判内容について情報発信を行うことを予定しております。三月の二十二日には知財高裁ホームページの準備ページを日本語版と英語版でアップしたところでございますが、知財高裁の発足後もホームページの内容を逐次拡充して知財高裁をアピールしていく予定でございます。また、リーフレット等も作成して広く配布する予定でございます。
 裁判所といたしましては、知財訴訟を適正かつ迅速に処理するために、その中心的な役割を果たすべき知財高裁の裁判機能の充実強化に今後とも努めてまいりたいと考えております。
○吉田博美君 もう時間が大分なくなりましたので、もうこれで最後になると思いますけれども。
 知的財産関係事件の、今御答弁がございましたが、適正かつ迅速な処理のためにやはり専門部の果たす役割は大変大きいと思われるわけですよね。それで、この専門部というのは、特に文科系を中心とした裁判官でありますから、技術的ないろんなことの中でのこの知財というものが非常に多くなるわけでありますから、その専門部が果たす役割、大変大きいんですが、この専門部は現在有効に機能しているのでしょうか、また事件の処理状況等はどうなっているのでしょうか、お聞かせいただけますでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(高橋利文君) お答え申し上げます。
 東京地裁には四か部、大阪地裁には二か部の知財の専門部が設けられております。これらの東京地裁、大阪地裁の六か部の知的財産専門部を実質的な知財の専門の裁判所として機能させるという観点から、民事訴訟法の改正によりまして、これらの裁判所への管轄の集中が図られてきたところでございます。実際にも、これらの裁判所では、平成十六年におきまして全国の知財訴訟全体の七七・五%、約八割の事件を取り扱っております。専門部のある東京、大阪の各裁判所への訴訟の集中が、知財訴訟の集中が進んでおります。
 東京、大阪の知財専門部における事件処理の状況を見ますと、東京、大阪の各地裁の平均審理期間は、新民訴法が施行をされるその直前の平成九年の時点では二十四・八か月、平均審理期間は二十四・八か月でございましたが、平成十六年、これは昨年の概数値でございますが、集中化による事件増にもかかわらず十二・九か月、約一年というふうに大幅に短縮化しております。
 この間、東京、大阪の両地裁を除く全国地裁の平均審理期間も同様に短縮化しておりまして、東京、大阪への、各地裁への、その両地裁への知財事件の集中とその迅速な処理が全国の知財事件処理に良い影響を与えているものと考えているところでございます。
○前川清成君 民主党の前川清成です。
 この通常国会では、法務委員会、初めての質問をさせていただきます。国会議員一年生ですが、南野大臣の胸をおかりして二十一世紀のあるべき司法について議論をさせていただきたいと、こんなふうに思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 まず、今日、裁判官の入口になる司法試験についてお伺いしたいんですが、昨年十月と今年の三月、司法試験の合格者数が発表されました。平成十八年度の司法試験の合格者数について発表されました。昨年十月の段階では現行試験八百人、新試験八百人、今年の三月の発表では新司法試験九百人ないし千人というふうな発表がありました。
 私は、このニュースを聞いて、試験をする前に、すなわち受験される方のレベルが分かる前にこっちの試験は何人というふうに決めるのは試験の公平性を害するんじゃないかな、どちらか一方の司法試験を優遇してしまうことになるのではないかなと、こんなふうに心配したんですが、大臣、この点、御配慮いただいているんでしょうか。
○国務大臣(南野知惠子君) 先生のおっしゃること、本当にごもっともだと思いますが、我々が持っております司法試験委員会におきましては、平成十八年から新旧司法試験が並行して行われるということのために、法曹を目指す方々が進路を選択する上での手掛かりとするというところに一つのポイントがあろうかなと思っております。別個に合否判定が行われる両方とも試験でございますので、それが円滑に実施するために各試験における合格者の一応の目安が欲しいという御意見もございます。それを概括的な数字で示されたものと承知いたしております。
 したがいまして、この数値は的確なものとして決定されたものではないということで、確定的なものとして決定した数字ではありませんということでございますが、実際の試験結果に基づきまして当然変動し得るものでありますので、新旧司法試験の公平性を害するということはないものというふうに存じ上げております。
○前川清成君 新旧司法試験の合格レベルについて同じレベルになるように、司法試験に当たって、新旧司法試験の実施に当たって御配慮はあるんでしょうか。
○国務大臣(南野知惠子君) 先生の御懸念、もっともだと思いますが、司法試験は法曹になろうとする方の必要な学識及び応用能力の有無を判定することを目的とした国家試験であると、これにはもう間違いないわけでございますが、その合否は、新旧いずれの試験でありましても、実際の試験結果に基づいてそのような学識や応用能力を有しているかどうかの判定をするということでございます。
 新旧司法試験の実施時期又は試験内容が異なります、当然教育の在り方が違いますので。そういった意味では、両試験の合格者のレベルを直接比較すること、これは大変難しいことだろうというふうに思いますけれども、司法試験委員会におきましては、司法試験の目的を踏まえまして、いずれの試験におきましても公平中立を旨としてこれを実施いたしますことにより、公平な結果が得られるものと理解いたしております。
○前川清成君 今の点なんですが、それぞれの試験で、そのそれぞれの試験、新試験の中、旧試験の中で公平だというのは十分承知しておるんですが、私が確認をさせていただきたいのは、新試験を受ける人は、例えばですけれども、八十点で通るけれども、旧試験であれば百点でなければならないとか、そういう両試験の間でレベルが同じになるかどうかなんです。
 新聞の報道なんですけれども、旧司法試験を受験し続けている方が、法務省は現行司法試験組に不利にならないと、こういうふうな説明をしていたのに、この新司法試験が九百人ないし千人になれば新司法試験が有利になって、旧司法試験、現行司法試験が不利になるんじゃないかなというような心配をされているんです。
 また、法科大学院に行っておられる方は行っておられる方でいろんな心配があると思うんですけれども、その新旧両試験の間で、大臣おっしゃるように、試験が違いますので技術的に難しいと思うんですが、目標として、あるいは政策的な誘導としてどちらかを有利に扱う、不利に扱うというのをするのか、そうじゃなくて、新旧両司法試験、同レベルを目指すのか、技術的に完全には無理かもしれませんが、その方向みたいなところをちょっとお伺いしたい、そういう質問だったんです。
○政府参考人(倉吉敬君) 申し訳ございません。試験の技術的なところにわたると思いますので、事務当局からの答弁、御容赦願いたいと思いますが。
 おっしゃるとおり、まず時期が違います。試験の内容も全然違うわけです。ですから、両者を比較して、その両方の試験のこの人たちが一番下だなと思われるところが全く一緒かどうかというようなことを比較することはもう恐らくほとんどできないだろうと思います。ただ、同じ、先ほど大臣からも御答弁ありましたが、法曹になろうとする者の資格、応用能力、そういった者の資質を見ようという試験であるということで各司法試験の考査委員も採点をいたします。
 それから、これは一つ、これからロースクールを中心とする、中核とするプロセスとしての法曹養成が始まるということで、司法試験の受験生、法曹になろうと志している方がロースクールの方に流れてきているということもございます。確かに、今非常にたくさんの数を取っている現行司法試験が今度数がだんだん減っていくだろうということは見込めるわけでありまして、その過程では旧司法試験の方が少しつらいかということがあるかもしれませんが、ただ、新司法試験におきましてもあれは目安でございますので、物すごく例えばできの悪い人が多いということになればその人数は取れないというようなことにもなるだろうと、これもうあくまでも仮定の話でございますが、そういったもろもろのことを考えて、できるだけ公平になるように配慮していくというのが今の司法試験委員会のお考えであろうと承知しております。
○前川清成君 司法試験の理念として、統一、公平、開放というようなことがうたわれます。統一試験というのは、裁判官になる者も弁護士になる者も検事になる者も一つの資格試験ということです。公平というのは、皆さん点数だけで平等に評価するということです。開放というのは、例えばですけれども、今大阪市の助役をしておられる大平光代さん、あの方は中学校のときにいじめに遭って、たしか高校に進学なさらなかった。暴力団の奥さんの、妻になったけれども、頑張って司法試験に通って弁護士になられた。そういうふうにだれにでもチャンスが与えられるという意味で開放性と。この三つを言われています。是非、現行司法試験だけじゃなく、新司法試験におかれましても、この統一、公平、開放という三つの理念、これを大切にしていただきたいな、こんなふうにお願いをいたします。
 それで、法科大学院に関してのお尋ねなんですけれども、先日、少し前ですが、民主党の法務部門の勉強会にもそのロースクールの方々がいらっしゃいました。自分たちは、ロースクールに行けば七、八割は合格すると、こんなふうな説明を受けていたんだと。それなのに、その合格者が九百人ないし千人であれば、およそ五〇%しか通らないんだと。これは自分たちは、そういうラジカルな表現はされませんでしたけれども、だまされたんだみたいなことをおっしゃっていました。
 そこで、まず、法務省におかれまして、新法科大学院に行けば七、八割の合格、これは保証されていたんではないのかと。そうであるとすれば、この千人という数字が多いのか少ないのか。その前提として、ロースクールの定員の数が多過ぎたんじゃないかなというようなこともあると思うんですけれども、ちょっと、その法科大学院生の不満、その七、八割の合格を保証していたんじゃないかというような点について、法務省はそのような説明をされていたのかどうか、御説明をお願いしたいと思います。
○国務大臣(南野知惠子君) お尋ねでございますけれども、司法制度改革審議会の意見におきましては、法曹となるべく資質又は意欲を持つ人が入学して、厳正な成績評価及び修了認定が行われるということは、これは不可欠の条件でございます。また、法科大学院では、その課程を修了された方のうち相当程度、これは例えば七、八割という文字がそこに出てくるわけでございますけれども、新司法試験に合格できるように充実した教育を行うべきであるというのが、これが心でございます、などとされておりますけれども、これは法科大学院におけます教育内容及び教育方法に関する記述でございまして、新司法試験において法科大学院の修了者の七、八割が合格するということを記述したものではないということでございます。
 この点につきましては、法務省といたしましても、従前からそのような御説明をしてまいっておりますということを御報告させていただきます。
○前川清成君 確かに大臣おっしゃるように、審議会の最終意見書も、例えば七、八割の者が新司法試験に合格できるよう充実した教育内容を行うべきであると、こういうふうに記載されておりますので、大臣の御説明のとおりかなとは思うんですが、これは法務省になるのか文部科学省になるのかちょっと分かりませんが、法科大学院に進学しようとする人たちが、そのような誤解かもしれませんが、誤解を持っていてはいけませんので、きっちりと説明をする、広報する、そういう必要があるんじゃないかなと思うんですが、いかがでしょうかね。
○国務大臣(南野知惠子君) 先生おっしゃるように、しっかりと広報をしてまいりたいというふうに思っておりますけれども、よろしゅうございますでしょうか。頑張ります。
○前川清成君 先ほどの大臣の御答弁にありましたが、新司法試験に七、八割の者が合格するような教育水準を目指すと、こういうことであれば、現在、法科大学院でどのような教育が行われているかというのが大変重要になると思います。
 そこで、文部科学省にお尋ねしたいんですが、その法科大学院、各法科大学院における教育内容についてどのような検証をされているのか。その検証の結果、例えばですけれども、不十分な、残念ながら不十分な法科大学院があった場合にどのようになさるのか、御答弁いただきたいと思います。
○政府参考人(徳永保君) お答え申し上げます。
 今回の司法試験の結果につきましては様々受け止め方ございますけれども、おおむね法科大学院関係者の要望を踏まえたものと思っております。
 先ほど大臣の方からも御答弁ありましたように、この試験合格者数については変動し得るものということでございますから、私どもといたしましては、各法科大学院が教育内容の一層の充実を図って、そしてその上で厳格な成績評価や修了認定を行って、その実力を示した上でできるだけ上限の数字が確保できるように期待をしているところでございます。
 今御質問ございました内容ということの検証でございますが、まず、今回、さきに、二十五日に発表したところでございますけれども、文部科学省の方では、大学等の設置認可の際には、その学年進行の完了までは、これはアフターケアと称しまして、設置認可の際に出した計画がそのとおり実行されているかどうか、これを検査することとしております。すべての、今回、法科大学院につきまして書面で審査を行いました。
 また、設置認可申請の際に留意事項が付された大学については、これを実地調査を行いました。その結果、更にその時点での改善すべき事項があれば、その上で留意事項といったものをこれ個別の大学ごとに発表したわけでございまして、私どもとしては、その各大学院がこの留意事項を踏まえて更に改善するように期待をしているところでございます。
 ただ、この留意事項の中でも、多いというのもございますが、実地調査の結果では、各法科大学院ではおおむね少人数教育によるきめ細かい履修指導体制が取られているという総評がございましたことは申し添えておきたいと思います。
 また、この学年進行が終わりました後も、実は十六年から大学につきましては認証評価制度というものが始まっておりまして、これは二つの団体、日弁連法務財団、それから学位授与評価機構、これが既に法科大学院の認証評価団体になっておりますが、ここにおいてきちっと五年に一遍大学のそのものの内容を確認していくという作業になっております。
○前川清成君 今の答えがよく理解できなかったんでもう一度聞くんですが、今回の決定は法科大学院の要望を踏まえたものだとお話しされましたけれども、それは何のことをおっしゃったんですか。
○政府参考人(徳永保君) 基本的に、法科大学院の方からは要望が出されておりまして、特に新司法試験について千人程度以上、また十九年度以降につきましては新司法試験合格者数を多くしていただきたいという要望がございました。
 こういったことにつきまして、私どもの方からも、こういった法科大学院関係者の要望を踏まえて適切な決定をしていただきたいというふうにお願いしたところでございますが、そういったものをある程度踏まえたものというふうに法科大学院関係者は受け止めております。
○前川清成君 それで、その文脈でおっしゃった上限の数字というのも新司法試験の数の上限にしてほしいと、こういうことですよね。
 それは、ちょっと余りにもこの新司法試験であるとか法科大学院をつくって法曹養成を行うという理念を理解しておられないんじゃないかなと。これは文部省、文部科学省と法務省の利権争いじゃないですよ。分かっておられるんですか。
○政府参考人(徳永保君) 私どもといたしましては、具体的に単にその数ということではなくて、先ほども御答弁申し上げましたが、各法科大学院がきちんとした教育を行って、その上で厳格な成績管理を行う、その上で、その実力を示すことによって言わば、先ほど先生が御質問の中でございましたように、言わばその実力においてその精一杯の上限の数字を確保できるような教育をしていただきたいということでございます。
○前川清成君 それじゃ、今、文部科学省、どなたでしたかね。
○政府参考人(徳永保君) 徳永です。
○前川清成君 徳永さんにお尋ねしますけれども、新司法試験の合格者数は法科大学院の要望で決めるんですか、あるいはそれ以外のもので決めるんですか。それ以外のもので決めるとしたら、その基準は何ですか。
○政府参考人(徳永保君) その合格者数につきましては、法務省の司法試験委員会の方で様々な御事情、司法制度改革というその趣旨を踏まえて御決定されたものと考えております。
 ただ、私どもといたしますれば、その法科大学院が今後新しい法曹養成制度の中核機関であるという、こういう趣旨を踏まえて、この上で適切に御決定いただきたいということを再三これまでもお願いをしてきたところでございます。
○前川清成君 このロースクールの問題が、法科大学院の問題が、法務省と文部科学省の権益争いにならないように、お誓いいただけますか。
○政府参考人(徳永保君) 私どもといたしましては、決して法務省と文部省の権益争いということでございません。あくまでも、司法制度改革の理念にのっとりまして、法科大学院がその制度改革の趣旨に沿ってきちっと教育を行っていきますよう、そしてまた、立派な法曹養成人材機関として国民の信頼が得られますよう、これは努力をしていきたいと思っておりますし、そのような意味で法務省とも十分連携を取っていきたいと思っております。
○前川清成君 そうしたら、司法改革の理念は何ですかと聞いたらいいんだけれども、時間の無駄だろうからやめます。
 先ほど徳永さんの御説明で、私が徳永さんに対して本来お尋ねしたことは、法科大学院の教育内容を検証しておられますかと、こういうことをお尋ねしました。それについて、書面で審査をしましたと、少人数教育をやっていますということはお答えいただきましたけれども、中身については一切触れていただいていません。
 私がお聞きしたいのは、書面審査の結果何が分かったのかと、法科大学院にどういう教育がされているかということをお答えいただきたかったんです。中身のところをお答えください。
○政府参考人(徳永保君) 法科大学院の教育課程の基本的な部分、言わばどういった科目群で構成をするのか、そういう法律専門科目、基礎科目、そういった、発展科目といったことにつきましては文部科学大臣の告示でこれを決めているわけでございますが、具体的な教育内容、授業内容につきましては各大学院がそれぞれその告示に沿って編成をしているということでございます。
 私どもといたしますれば、その言わば具体的にどのような授業が行われているかと。これは言わば大学の自律性にゆだねているところでございますが、先ほど申しましたように、大学設置認可申請の際に、どのような教育課程を編成をするのか、実際どういう形で教育をするのか、そういったことについて確認を行うために書面審査を行ったところでございますし、またその設置認可の際に留意事項を付した大学については実地に実地調査を行いまして、その上で確認をしたわけでございます。
 ただ、その具体的な授業の内容そのことについては大学の自治にゆだねておるところでございます。
○前川清成君 それじゃ、文部科学省としては、大学の自律性にゆだねるので具体的な教育内容は調査しないという御答弁でありますから、将来、認証機関から法科大学院の設置許可について結論が出たときに文部科学省としていちゃもんは付けないと、こういうことでいいですね。
○政府参考人(徳永保君) 認証評価制度におきましてそれぞれ認証評価団体の方から勧告、そういったものが出されるわけでございます。その認証評価を受けて、その上で、私どもとしては、すべての大学が認証評価をきちっと受けていただきたいと、その上で一定のその評価を受けていただきたいと思っておりますけれども、そういった意味で、認証評価団体の認証結果と、評価というものは私どもとして十分尊重していきたいと思っております。
○前川清成君 ちょっと時間があれなんで先に進めさせていただきたいんですが。
 私は、今の徳永さんの話のように、文部科学省が法科大学院のしり馬に乗って利権争いをして新司法試験の合格者のレベルがどんどん下がってしまうと、こういうことになると一番損害を受けるのは国民であるから、是非プロセスとしての法科大学院の教育を重視してもらって、レベルを維持すること、より高いレベル、より高い水準を目指していただくことが大事だと、こんなふうに思っています。
 その関係で、五十七期ですか、昨年秋に司法修習を終了されたおよそ千二百名の司法修習生のうち四十六名が不合格になったと。私は四十二期でした。およそ五百人が終了しましたが、ゼロでした。私の前後もほとんどゼロです。ところが、この四十六名というのは非常に多い数字で、二回試験で四十六名も不合格になるというのは大変多い数字で実はびっくりしているんですが、これについて、最高裁になるんですかね、原因あるいはその分析されているのかどうか、お伺いしたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(山崎敏充君) ただいま議員が御指摘になられましたとおりでございまして、昨年九月に行われました五十七期司法修習生考試におきまして、考試に合格できなかった者四十六名出ました。
 内訳を申しますと、合否の判定を留保された者が四十三名でございまして、不合格とされた者が三名でございます。合否の判定を留保された者につきましては、いわゆる追試を行いまして、その結果、四十一名が合格いたしまして、二名が不合格となりました。したがいまして、最終的な不合格者数は五名ということでございます。
 ところで、その原因のお尋ねでございます。この五十七期、先ほど議員おっしゃられたとおり、千二百名になりまして、その前の期が千人であったことから、数が増えたということが一つございます。
 これはなかなか難しいところがございまして、非常に一般的に申し上げますと、修習生の人数が増えますと、その中には能力、意欲に懸念がある者というのが入ってくること、これはあり得ることだろうと思っております。現に、五十七期の修習生につきましては、力不足の者ですとか意欲が足りない者が多いというような話が教官、司法研修所の教官でございますが、その教官の間から出ておったようでございます。
 しかし、一方では、修習を始めた時点でちょっと力が足りないという者が後に力が伸びていくというようなこともございますし、その逆もあるわけでございますが、そういったことも教官からよく聞いているところでございますものですから、先ほど申し上げましたこの期の修習生が千二百人になったそのことが直接の原因となってこういう不合格が多くなったという、そこまではちょっと断定できないんではないか。私どもとしては、もうしばらく様子を見た方がいいんではないかというふうに考えておるところでございます。
○前川清成君 この点は実は通告してないんですが、ゆうべ、弁護士の友人から電話がありまして、その五十七期についてですが、本来は百名ぐらい不合格、不合格って、合格留保になる予定だったんだと。ところが、ちょっとそれじゃ余りにも困るんでげたを履かしたんだと、そういううわさがあるんですよと、こういうふうに聞いたんですが、それはもう根も葉もないことなんですか。
○最高裁判所長官代理者(山崎敏充君) 考試というのは非常に、国家試験ということで非常に厳格、厳正に行われておりまして、法曹となるべき最低の水準を満たさない者については、当然それは不合格の判定をするなり、先ほど申し上げました合格留保の判定がされるものでございますので、げたを履かせて甘くして通したというような状況ではないというふうに私どもは信じております。
○前川清成君 今、五十七期が千二百名ということですが、これから千五百名になって、将来的には三千名になっていきます。そのときに、国の税金を使って司法修習させた者が五十人、百名不合格ということでは困りますので、是非、最高裁になるのか、司法試験管理委員会あるいは法務省になるのか、文部科学省にも責任があると思いますが、連携をしていただいて、合格者のレベル、法曹のレベルということをお考えいただきたいと思います。
 それで、裁判官の増員について、ちょっと時間が少なくなってきましたので結論を申し上げますと、私はもっと増員しなければならないんじゃないかな、この程度の増員では足らないんじゃないかなと、こんなふうに思っています。
 例えば、私は四十二期でしたが、正確に言いますと、四百八十九人司法修習終了しまして、八十一名が判事補になりました。五十七期は千百七十八名で百八人です。修習生が七百人増えているんですが、裁判官になる者は二十人しか増えていない。もっと大幅なペースで増やしていかなければならないのではないかなと、そんなふうに思っています。
 千五百人になれば何人増やすおつもりなのか、三千人の時代になれば何人増やすおつもりなのか。これは、恐らく自民党の皆さんも、この後される共産党の皆さんも、与野党一致して、公明党の皆さんも、裁判官を増やせということで一致していると思うんです。ところが、最高裁の方が遠慮をされているのか何か理由があるのか分かりませんが、私たちの目から見ると増員に、裁判官の増員に積極的でないように思うんです。文部科学省の先ほどのような厚かましさを見習えとは言いませんが、もう少しどん欲に裁判官の増員をお考えになられたらどうなのかなと、こう思いますが、いかがでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(園尾隆司君) 裁判所ではこれまで裁判官の増員を着実に行ってきたというつもりでございますが、これは、裁判所が適正かつ迅速に事件を処理するという観点から、事件動向及び事件処理状況等を踏まえて事件処理のための陣容を考えていくべきであるという観点から行っておるものでございまして、司法修習生が増加するということから直ちに裁判官の増員が必要となるわけではないというように考えておるところでございます。
 しかしながら、法曹人口の大幅増加に伴いまして裁判所に係属する事件数が増加することも予想されるところでございまして、このような場合には、より適正かつ迅速な裁判を実現し専門事件への対応を強化するために裁判官の増員が必要となる可能性が高いというように考えておるところでございます。
 平成十七年度の増員につきましては、現時点の事件動向等の下での訴訟事件の審理の迅速化、専門化に対処するとともに、充員見通しを踏まえつつ、判事、判事補合計七十五人の増員をお願いしておるところでございまして、これは戦後の一時期を除き過去最大の規模の増員となっております。
 今後とも、必要な態勢の整備に努めてまいりたいというように思います。
○前川清成君 その最高裁がおっしゃる過去最大というのがちょっとスケールとして小さいんじゃないかなと、こんなふうに思っています。
 園尾さんは、破産処理に関して革命的な方法を発明されたというふうにこの中公新書の「ドキュメント裁判官」にも書かれている方で、少数の裁判官でたくさんの事件を処理するというのが裁判所における伝統的な人事評価の基準なのかなと、こんなふうに思っているんです。
 当然のことですけど、裁判官に独立性がありますから、判決内容等について人事評価をされていないんじゃないかと。そうなると、どれだけ件数処理するかということで裁判官の人事評価が決まるというのであれば、当事者の満足だとかいうことは考えずにただただ数を処理すると、それが優秀な裁判官なんだというふうに誤った認識が最高裁にあるのであれば、この機会に是非改めてほしいなと。裁判の迅速化というのは大変重要なことですけれども、早かろう悪かろうでは困るわけで、当事者の満足を得られるような裁判制度を得るためには、裁判官の増員、そして裁判官の余裕というのも重要なんじゃないかなと、私はそんなふうに思っています。
 裁判官というのは学説をよく知っている、判例をよく知っている、そういう意味で大変優秀な人たちだと私は考えていますけれども、私は以前、五、六年前ですが、アイフルの社員が取立てに当たってその債務者を殴ったと、そういう事件の一審判決で、大阪地裁で、一発ぐらいだったら権利の行使の範囲内だというような判決をもらって腰を抜かしたことがあります。もう少し大きな人間力といいますか教養といいますか、人間の幅をつくるために、余裕を持って事件を処理すると。そのためにももっともっと裁判官を増やしてほしいな、こういうことを申し上げて、質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 裁判所の職員の中で、速記官の皆さんの問題について質問をいたします。
 昨年の質問の際も、今の裁判でも、そして将来の裁判員制度の下でも、速記官の皆さんの技術や意欲を大いに生かすべきだということを求めました。その際に、速記用の反訳ソフト「はやとくん」のインストールを官支給のパソコンにもできるようにするべきだということを求めたんですが、十二月に実現をしたとお聞きをいたしました。その経過について、まず御報告をお願いします。
○最高裁判所長官代理者(園尾隆司君) 通称名「はやとくん」と言われております反訳ソフトは、速記官自身が開発したものですので、これを官支給のパソコンにインストールするには、当該ソフトが裁判所内の標準的なシステム環境に影響を与えないということについて検証を行う必要がございましたが、昨年六月にこの検証を実施するということを決定いたしまして、全国の速記官の意見や執務の実情等を踏まえて検証対象とするソフトを特定いたしました上で、十月に検証実施に着手いたしました。
 検証の結果、「はやとくん」ソフトが裁判所の標準的なシステム環境に影響を与えない旨の報告書が提出されまして、インストールについて問題がないということが明らかになりましたので、十二月上旬にそのインストールを許可したものでございます。
○井上哲士君 私、これまでは、この「はやとくん」の有用性について検証すべきだということを質問いたしますと、そういう今おっしゃったようなセキュリティーの問題があるので有用性の検証ができないんだっていう御答弁をいただいてきたんですね。
 今の経過でいいますと、セキュリティー等の問題についてのみ検証をしたということになりますと、この有用性っていう問題は、局長は地裁時代にもごらんになっているんだと思いますが、その速さ、正確さっていうことについてはあえて検証するまでもない、有用性が高いと、こういう判断だということでよろしいんでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(園尾隆司君) 速記官は、この「はやとくん」ソフトを自ら開発いたしまして、それからその改良ということにつきましても様々な努力を重ねておるというところでございますので、その有用性につきましては、速記官が自らがそのような使用形態を取っておるというところから、言わば外から見て観察をして検討しておるということでございますが、その点も踏まえまして今回のインストール許可ということに踏み切ったというわけでございます。
○井上哲士君 速記官や関係者の皆さん、大変喜んでおられます。昨年の裁判所法の一部改正の際に、当委員会で全会一致で、将来的に不安定な状況に置かれることのないよう十分な配慮をすべきという附帯決議も付けましたけども、そうしたものも生かしていただいたんだと思うんです。
 こういう附帯決議に基づく職務環境の整備という点では、必要な研修をしてほしいっていう声も聞くわけですね。今、速記官の皆さんの研修制度というのはどうなっているんでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(園尾隆司君) 裁判所速記官は、民事裁判や刑事裁判等に立ち会いまして、証人等の供述を録取して速記録を作成するということによって適正迅速な裁判の実現に寄与する職種でございまして、その研修といたしましては、現在、中堅の速記官に対しまして、裁判所が当面する諸問題に関する理解を深め、中堅の速記官としての役割を認識してもらうとともに、速記事務等における執務能力の向上を図るための中堅速記官研修を実施しております。
 また、中間管理職の地位にある速記官に対しましては、職務遂行に必要な識見及び管理技法を習得させ、職務意識の高揚と管理能力の向上を図るための中間管理者研修を行っております。
○井上哲士君 ですから、中堅研修終わりますと、中間管理職にならない限り研修としては終わりということになるようです。お聞きしますと、他の職種については、最近様々な法改正もありますので、その対応も含めて、自庁研修など随分いろんな研修が行われている中で、速記官についてはほとんどないということで、自分たちは言わばこれ以上の向上をする必要がないのかなという思いに駆られるという声もお聞きをいたしました。
 是非、これは職員の皆さんの御意見を聞いていただきたいんですが、この「はやとくん」のインストールに当たりまして、これまでDOSV版でやっておられた方がウィンドウズに変えてインストールをする場合など、いろんな難しさもあるようです。特に、地方で一人庁の方などは大変困難もあるということですので、これまでは職員の皆さんが自主的な研修、交流をされてきたわけですけれども、このインストールを機会に、この「はやとくん」にもかかわったような関連の研修を、例えば高裁単位でやるとかいうことも是非必要だと思うんですけれども、その点いかがでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(園尾隆司君) 「はやとくん」は速記官が自ら開発したソフトでございまして、裁判所当局にはノウハウがございませんので、そのインストールや使い方等に関する研修は行ってきておりませんが、速記官が自主的に勉強会等を行う場合には、裁判所の業務運営に支障がない範囲で、当該裁判所において場所の提供等を行うなどの便宜を供与しておると聞いております。
 今後とも、職員及び職員団体の意見を聞きながら、執務環境の整備ということに努めてまいりたいというように思っております。
○井上哲士君 せっかく、インストールという決断がより一層生きるように是非御検討をお願いしたいと思います。
 この間、この速記官制度というのが裁判員制度の下でも大変重要だということを何度か質問をしてきたわけですが、今日はバリアフリーという観点からお聞きをしたいと思います。
 司法におけるバリアフリーについて、とりわけ障害を持つ人々が裁判に参加をしていく権利の保障について、どのようにお考えでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(園尾隆司君) 障害を持つ方の司法参加につきましては、裁判所施設にアクセスできるということがまず基本でございますので、庁舎の新営、増築等に際しまして、いわゆるハートビル法と呼ばれております高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律や、あるいは各地方自治体ごとに制定されております福祉のまちづくり条例等に基づきまして、身体障害者用エレベーターの整備や点字ブロックの敷設等、施設のバリアフリー化を努めておるということでございます。
○井上哲士君 今専らハードの面での御答弁だったんですが、ソフトの面なんですね。特に聴覚障害者についてお聞きをするんですが、聴覚障害者の方がかかわる裁判で手話が必要な場合というのは、どのように今手当てをされているんでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(園尾隆司君) 聴覚障害者が裁判を受ける場合の措置につきましては、具体的な事件を担当する裁判体が判断するということになりますが、一般的には訴訟法上定められております手話通訳、それから筆談、これは書面尋問というようなことの規定がありますが、このような方法によることができるというようにされておりまして、各裁判体が事案に応じまして、ただいま御指摘の手話通訳を使う、あるいは筆談を採用するということによりまして適正な訴訟手続を行うように配慮しておるというように認識しております。
○井上哲士君 民事の場合はこの手話通訳の費用は当事者が持つということになりますから、やっぱりいろんなハードルになっているわけです。しかも、この手話による裁判そのものにいろんな制約というものがあります。
 ある学者さんで、この手話通訳の裁判を傍聴したときのお話をお読みしたんですが、黙秘権の告知というのが非常に難しいんだと言われておりました。観念的、抽象的なことを手話で伝えるのは非常に難しいと。人さし指を口に当てて言うなとか答えるなというのは表現できるけれども、言いたくないことは言わないでいいという抽象概念を伝えるのは非常に大きな困難が伴うと。そして、この黙秘権が伝わらなかったら裁判を進められないので、ある刑事裁判ではいつまでたっても裁判が進まなくて、たった六百円を盗んだことで何年も被告人のままの立場で過ごして、そのまま人生を終えた人もいると、こういうお話も聞きました。
 また、聴覚障害者の方が裁判を傍聴するということも非常に難しいという問題があります。また、聴覚障害者の方が自分が手話で表現したことが果たして正確に伝わっているのかということも確認できないという困難もあると。
 こういう様々な問題というのはどのように認識をされていますか。
○最高裁判所長官代理者(園尾隆司君) そのような御指摘のような聴覚障害を持たれる方を対象とする審理、あるいは、最近数は非常に多くなっておりますが外国の方、特に少数言語の理解しかできないという方の審理ということなどにつきましては裁判体で様々な工夫を考えておるというところでございますが、この手話通訳のほかにどのようなことを考えるかということでございますが、ただいま申し上げましたとおり、各裁判体の判断によって現状ではそれぞれ適正に対応しておるものというように考えておりますが、一般的に、聴覚障害がある者が裁判を受ける場合の裁判への実質的な関与をより一層高めるために様々な観点から検討を要するというように考えておりまして、司法における障害者等に対するバリアフリーという視点につきましては、今後も引き続き検討していかなければならないという認識でございます。
○井上哲士君 是非、その中でこの速記官の皆さんの技術を活用もして、このリアルタイム速記による字幕表示ということを位置付けていただきたいと思うんです。途中から難聴とかになったり、いわゆる聴覚障害を持った人などは手話が十分にできない方がいらっしゃいます。そういう人たちも文字なら理解できると。逆になかなか文字の理解が乏しい方もいらっしゃいますから、それぞれの条件はあろうかと思うんです。最も有効な方法を選べるようにするべきだと思います。これは聴覚障害の皆さんが、傍聴も含めた司法参加にとっても非常に大事だと思います。
 一九九九年に、東京地裁の八王子支部が、障害者が、聴覚障害者がひき逃げされ死亡した事件の公判で、傍聴席の同じ障害持つ人たちにパソコン通訳を認めたという例を新聞で見ました。当時の記事を読みますと、被害者の聴覚障害を理由に裁判が不利に進められないように、遺族らでつくる支援する会が傍聴に手話とパソコンを使った通訳の許可を求めた。通訳者が打ち込むと、画面に約一・四センチ四方の大きな字を表示。被告が起訴事実を認め、遺族が証言すると、キーをたたく音とともに法廷内にすすり泣きが響いたと、こういう記事が出ておりました。普通の人なら当たり前にできることが、こういう手だてがないと傍聴もできないという事実があるわけですけれども、私は、このとき法廷内にすすり泣きが響いたということですが、そういう裁判のいろんな困難のためにあきらめる方もいらっしゃると。法廷外ですすり泣きをされている方も随分いらっしゃると思うんですね。
 そういう方にとって、私は、このリアルタイム速記による字幕表示というのは大変大きな意味を持つわけでありまして、そのための技術や能力も今随分あるわけですから、是非これは前向きに活用していただきたい、検討いただきたいと思うんですけども、改めていかがでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(園尾隆司君) ただいま御指摘のような様々な事態に対処するために、各裁判体ではいろいろ工夫もし、検討もしておりまして、また、当事者双方とも相談をして、どのような方法が最も適切かということについての意見を伺うというようなこともやっておるわけでございます。
 私ども司法行政の任に当たる者といたしましても、そのような裁判体の意見なども聞きながら、今後も引き続き検討していくという所存でございます。
○井上哲士君 終わります。
○理事(木庭健太郎君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
    ─────────────
○理事(木庭健太郎君) 委員の異動について御報告いたします。
 本日、尾辻秀久君が委員を辞任され、その補欠として秋元司君が選任されました。
    ─────────────
○理事(木庭健太郎君) これより討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
○理事(木庭健太郎君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○理事(木庭健太郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午前十一時十一分散会