第162回国会 財政金融委員会 第9号
平成十七年四月七日(木曜日)
   午前十時開会
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  出席者は左のとおり。
    委員長         浅尾慶一郎君
    理 事
                中島 啓雄君
                山下 英利君
                平野 達男君
                若林 秀樹君
    委 員
                金田 勝年君
                田村耕太郎君
                段本 幸男君
                野上浩太郎君
                舛添 要一君
                溝手 顕正君
                尾立 源幸君
                大久保 勉君
                大塚 耕平君
                富岡由紀夫君
                広田  一君
                広野ただし君
                峰崎 直樹君
                西田 実仁君
                山口那津男君
                大門実紀史君
                糸数 慶子君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        藤澤  進君
   政府参考人
       金融庁検査局長  西原 政雄君
   参考人
       日本銀行総裁   福井 俊彦君
       日本銀行副総裁  武藤 敏郎君
       日本銀行理事   小林 英三君
       日本銀行理事   白川 方明君
       日本銀行理事   稲葉 延雄君
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  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○参考人の出席要求に関する件
○財政及び金融等に関する調査
 (日本銀行法第五十四条第一項の規定に基づく
 通貨及び金融の調節に関する報告書に関する件
 )
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○委員長(浅尾慶一郎君) ただいまから財政金融委員会を開会いたします。
 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 財政及び金融等に関する調査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、政府参考人として金融庁検査局長西原政雄君の出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(浅尾慶一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
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○委員長(浅尾慶一郎君) 参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 財政及び金融等に関する調査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、参考人として日本銀行総裁福井俊彦君外四名の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(浅尾慶一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
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○委員長(浅尾慶一郎君) 財政及び金融等に関する調査を議題とし、日本銀行法第五十四条第一項の規定に基づく通貨及び金融の調節に関する報告書に関する件について質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○舛添要一君 おはようございます。自民党の舛添要一です。
 まず、福井総裁、四月一日にペイオフが全面解禁になりましたけれども、一週間たちました。その状況について、預金口座間の移動、金融機関間の移動、こういう資金のシフトを含めてどういう状況なのか、で、今の状況は、総裁、予想されていたとおりなのか、そういう認識についてちょっとお伺いしたいと思います。
○参考人(福井俊彦君) 今日は、日本銀行の通貨、金融に関する半期報を御審議いただくことになりまして、誠にありがとうございます。よろしくどうぞお願いいたします。
 ただいまの御質問でございますけれども、ペイオフ全面解禁、四月一日以降、私ども、金融機関及びマーケット周りの動きを非常に注意深く見てまいりました。その結果、現在の時点では個別の金融機関あるいはその業態をまたがる資金シフトということは見られておりません。金融機関の資金繰りも個々に見まして引き続き極めて安定的に推移しているというふうに思っております。また、短期金融市場も総じて落ち着いた状況を保っておりまして、銀行の株価もどちらかといえば堅調に推移しているという状況でございます。
 このように、年度替わりを挟んだ預金者や金融市場の動きは落ち着いたものとなっておりまして、ペイオフの全面解禁は当初の想定どおり円滑に実施に移すことができたと、取りあえずそう判断いたしております。
○舛添要一君 個々人の立場から見て、金融資産だけ取って、ポートフォリオの選択をどうするかというときに、まあ今業態間の移動はないということなんですけれども、例えば外貨預金とか有価証券であるとか先物の商品であるとか、そういうことへ顕著な移動というのはこのペイオフの影響で見られることはございますか。
○参考人(稲葉延雄君) お答えいたします。
 ペイオフ解禁後の預金を含むそうした預金者の資金の動きに関しましては、これは銀行あるいは取引先である信用金庫に対して聞き取り調査をやってございますけれども、預金に関しましては、例年四月上旬に見られるような季節的な動き、これは年度末に借り入れた資金の返済のために預金が落ちるとか、それから進学・入学資金のための預金の引き落としとか、あるいは春の行楽資金の引き落とし、そういった季節的な動きによる預金の引き落とし、こういうのは見られたところでございますけれども、それを除きますと、特別変わった動きというのは出ていないということでございます。
 新たに導入されました決済用預金、これはペイオフ解禁後も全額保護されるわけでございますが、これに対する乗換えといいますか、これも金融機関によりますと内部の普通預金から乗り換えると、こういった動きが大宗のようでございまして、全体として金融機関の資金繰りというのは平静な状況だというふうに見ております。
○舛添要一君 ありがとうございました。
 過去二回、この延期をこのペイオフ全面解禁についてはやりました。例えば平成十四年、この流動性預金、当初小泉総理がどうしてもやれということだったんですけれども、我々は党の方の金融調査会で議論を重ねて、私自身もこれはちょっと時期尚早であるということで二年延長いたしました。なぜ時期尚早だったかというと、いろんな理由はあるわけですけれども、不良債権の処理とか金融システムの不安定、我々はまだ、全面解禁までにはちょっとまだ条件整っていないと、そういうように見ておりましたけれども、今回、今総裁、理事のお話のように安定して推移しているということは、そのような条件が、我々が危惧した条件がなくなったということの証左だと思うんですけれども、そこのところはどういうふうに評価していらっしゃいますでしょうか。
○参考人(福井俊彦君) お答えいたします前に、先ほど舛添委員、外貨預金その他へポートフォリオの変換の意味で預金者などが動き始めているかというふうなお尋ねもございました。これはむしろこれからのことだというふうに思います。本当に金融システムの安定ということが、預金者がしっかり確認し、そして預金者自身がこれからの生活設計のためにお金の使い方、お金の置き方等々を前向きに考え始めてそういう動きが出てくるというふうに思います。そういう動きがむしろ前向きに出てくることを我々は期待しているというふうな状況でございます。
 で、今のお尋ねでございますけれども、日本の金融システムの状況を見ますと、非常に、幸いにも大手の銀行だけでなくて地域の銀行でも不良債権比率が着実に低下をしているということでございます。また、過大だというふうに目されておりました株式の保有でございますが、この保有額につきましても、日本銀行の株式買入れスキーム、政府の方で御用意していただいたスキーム等を活用しながら、大手の銀行全体でもうティア1を大きく下回る水準まで削減が終わったということでございます。
 信用リスクや株価変動リスクが減少したということで、結果として資本制約が大きく緩和されていると、つまり銀行が自由に動きやすくなっているということでございまして、金融機関の経営姿勢が正にそれに比例するように、姿勢が次第に積極化してきているという状況でございます。こうした状況の下で、株価あるいは格付に見られますとおり、金融機関に対する市場の評価も上がってきているということでございます。
 不良債権問題への対応が進み、今般ペイオフ全面解禁を円滑に実施することができた。改めて整理してみますと、一つは、金融機関が不良債権の経済価値を適切に把握して、早期に引き当て、償却を行う体制を整えてきたこと、これが一つです。もう一つは、産業再生機構などの活用を図りながら民間金融機関における企業再生への取組が進んだと、これが大きな背景ではないかと思っています。
 また、一見目立っておりませんけれども、こうした取組と併せて、日本経済の構造変化を踏まえた金融面のインフラ整備、つまり会計とか税制とか倒産法制などに関する諸制度、諸慣行の見直しがかなり進められた、これも重要な下敷きになっているというふうに考えています。
○舛添要一君 それと、一般の預金者に例えばペイオフ全面解禁しても大丈夫ですよと言うときに、私なりに易しい、平易な言葉で言えば、まあ預けて危ないような金融機関は全部つぶしましたと、ないしは統廃合しましたと、したがって今存在している金融機関というのは当面心配ないところまで行きましたよと、そういうふうに言えば非常に分かりやすいかと思うんですけれども、表現が不適切かもしれませんが、分かりやすく言うとそういう認識でよろしゅうございますか。
○参考人(福井俊彦君) おっしゃるとおり、この不良債権処理の過程で問題銀行というものがかなり合併、再編等によって整理されてきたということは確かだと思います。個々の金融機関を見て、まだ全く隅々まで問題が残っていないかというと、それはそういうことまでは言えないと思いますが、少なくとも、今後、経済とか市場にある程度のショックが加わっても金融全体に不安感がさっと走るというふうな、あるいはそれを防ぎ切れないというふうな、そういう心配は全くなくなった、日本銀行としては責任持ってシステミックリスクを防ぐと、そのことが断言できるところまで金融システムは健全になってきたというふうに言えると思います。
○舛添要一君 是非、今後とも金融システムの安定ということに引き続き御留意願いたいと思います。やっぱり、とらの子を預けている国民の立場から見ると、いつ金融機関がつぶれるか分からないというのは非常に困ったことなんで、それはよろしくお願いいたします。
 それで、次の問題に移りたいと思いますけれども、昨日の政策委員会・金融政策決定会合で、日銀、今までどおり量的緩和政策を三十兆から三十五兆という当座預金残高、これを維持することを決めました。私は基本的にこの政策に賛成ですし、元々この量的緩和をもっと拡大しろと。まあ私が参議院議員になったころは四兆から六兆円ぐらいの規模だったので、隔世の感があります。
 しかし、一方、今、まず、その前に数字だけ明確にしておきたいんですが、買いオペの限度額は今幾らでしょうか、国債。
○参考人(白川方明君) お答えいたします。
 買いオペの限度額でございますけれども、日本銀行の金融調節そのものは、潤沢な資金供給ということで、現在三十から三十五兆円を目標に実行しております。
 買いオペのうち、国債、長期国債オペということでございますと、これは銀行券の発行残高を上限として買入れを行うということでございます。
 一方、短期のオペレーションにつきましては、そのときの市場の状況を見ながら適宜手段を選択しているということでございまして、限度というものは設けておりません。
○舛添要一君 ただ問題は、昨日も政策決定会合で一人反対だったと、この量的金融緩和のこのままのレベルでの、水準での維持をということが報道されていますけれども、片一方で札割れ状況が起こっている。
 まず、どの程度の札割れが起こっているのか、直近のデータをいただきたいと思います。
○参考人(白川方明君) 札割れでございますけれども、ちょっと御質問にお答えします前に、札割れが起こる状況でございますけれども、金融市場におきまして財政資金の揚げが大きいとか、あるいは銀行券の発行が大きい等々、資金需給上の不足が大きくなってくるというときに日本銀行がオペを行って資金を供給するわけでございますけれども、そういうときに札割れが時として、今起きておるということでございます。
 その札割れの起き方でございますけれども、今手元に月々の数字はございませんけれども、大きな感じで申し上げますと、去年の十二月ぐらいから札割れが増え始めまして、特に今年に入りまして、二月から三月の初めにかけまして札割れが非常に頻発するという状況になってまいりました。その後、三月の半ばから末にかけましては、これは年度末ということでありまして一時的に札割れは緩和しておりましたけれども、また四月、期明けになりましてオペを行いまして、これが何回かもう既に札割れを起こしておるという状況でございます。
○舛添要一君 十五か月ぶりに全員の一致じゃなくて一票反対が出たということの原因は今言ったような状況にあると思うんですけれども、その札割れが起こるというのは、ある意味で金融機関の資金の需要がない。なぜないかといったら、それは借りてくれるところがない、ある意味で、というふうに見ていいのか。つまり、企業サイドからいうと、金融機関サイドからいうと、企業がまだバランスシート、毀損されたバランスシートの回復ということに力を注いでいて、特定の業界、例えば中国向けの輸出が非常に好調な業界なんかはどんどん設備投資をやっていく。しかし、中小企業も含めていうと、資金需要がそこまでないのかなと。片一方で、量的緩和政策ということで一生懸命オペをやる、しかしそれに応札できないと、こういう状況が札割れの原因だと見ていいのか、そのほかの要因があるのか、それをお答え願います。
○参考人(福井俊彦君) 過去かなり長い年月にわたり一言で言えば日本経済は体力がかなり疲弊した、つまり活力が乏しくなった経済で、企業の資金需要というものは非常に影を潜めた状態で推移してまいりました。それでも日本銀行が大量に流動性を供給することに久しく札割れということは起こっていなかったわけであります。
 ということは、今もなおデフレが続いている。これまでもデフレが続いていた。そのデフレの中身として、少なくともこれまでは金融不安ということを大きく内包しながら、つまり非常に金融不安という悪い種を抱き抱えながらのデフレが続いたということで、その金融不安ということを深く心配する、特に金融機関は自己防衛のために、ショックに耐えるために流動性を厚めに持っておくと。この需要と日本銀行の供給する大量の流動性とがある意味でマッチしていたと。
 ところが、こういうふうにペイオフが平穏に実施に移すことができると、その程度にまで金融不安の問題は解消したということでありますので、デフレは続いているけれども金融不安というものを内包する度合いがもううんと減ったということで、したがって市場の中では流動性需要が後退してきているということであります。
 しかし、日本銀行はあくまでデフレ脱却というものを目標にして今の量的緩和政策をしているわけですので、金融機関が法律上必要とされる所要準備額を大幅に上回る流動性を供給し続けるというこの基本のスタンスは、そのデフレ脱却の目標が達成できるまでは断固堅持する、ここは変わりないことでございます。
 しかし、デフレの中身として、金融不安の度合いが後退し、市場において現実に流動性需要が落ちている部分に技術的な意味でどの程度対応する必要があるかどうか、この点についても慎重に見極めていこうというのが今の大勢の意見でございます。しかし、ここのところは、余りそこを無視すると日本銀行の行動が市場の実勢と大きくずれが生じて、かえってこの量的緩和の枠組みを維持することができなくなるんではないかと、こういう心配のことを議論し、昨日、そのことを強調される一人の委員が反対投票をされたと。
 現状を率直に申し上げれば、そういうことでございます。
○舛添要一君 よく分かりました。
 ただ、私自身は、やっぱり今の段階で当座預金残高を例えば五、六兆引き下げるということは、マーケットに対するメッセージとしてはちょっとまだ早いかなという感じがしますので、今おっしゃったように、基本的に生鮮食料品を除く消費者物価が継続的に、前年、ゼロ以上になるというところまで続けていくというスタンスは変わらないわけですね。
○参考人(福井俊彦君) 去年の十月に三つの条件に分解しながら改めて今の緩和のフレームワークを維持する、そのお約束を固めたわけですが、このお約束は断固最後まで守るということでございます。
 今出ております意見も、繰り返し申し上げますけれども、日本銀行の方から主体的に流動性の供給をカットしていこうという考えではなくて、市場の需要が後退している部分に受け身でかつ必要最小限どれぐらいの調整が要るかというふうな極めて慎重なアプローチでの議論でございます。
○舛添要一君 よく分かりました。
 それで、片一方でどうしても出口論というのは先行していくと思いますけれども、くれぐれもそれは慎重に量的緩和のスタンスをお守りいただきたいと、私の立場からそれを申し上げておきたいと思います。
 さて、そこで、日本経済の外的な要因から一番の攪乱要因というのは原油高だと取りあえず思っています。昨日も、レギュラーガソリン、リッター百二十二円まで上がったと。それで、運輸業界を含め、非常に大きな打撃になると思いますけれども、これはイラク情勢とか様々な国際政治上の情勢がございますけれども、日銀としてこの原油の価格動向を今後どういうふうに想定なさっているか。そしてまた、不幸にしてこの原油高が続くような場合にはどういう手だてをお考えになっているのか、もし政策手段があるとすればですね。そういうことについてお伺いしたいと思います。
○参考人(武藤敏郎君) 委員御指摘のとおり、原油高、大変最近また騰勢を強めておりまして、既往ピークの状況にあります。米国、中国等の需要の拡大というのがその背景にあるというふうに考えております。
 こうした原油価格の高騰が続きますと、エネルギー多消費国におきましては当然のことながら実質購買力の低下というようなことを通じまして成長が鈍化する可能性もありますし、先進国におきましては、いわゆるインフレ予想の上昇、さらには長期金利の上昇といったような国際金融・資本市場に影響を及ぼすということが考えられるわけでございます。
 我が国の場合には、既にオイルショックを経験した上でエネルギー効率が非常に高くなっておりますので、相対的に見ますと原油高が経済に及ぼす影響というのは、直接的な影響というのが比較的、相対的に小さいということではあるんですけれども、最近我が国が特に依存しております中東、ドバイの価格というのが五十ドル近くにまで非常に上がってきておりますので、その影響、それがまた海外経済を経由した間接的な影響も含めまして、一段と注意深く見ていかなければならないというふうに思います。
 委員の御関心は、それが我が国の物価にどういう影響を及ぼすかということもあろうかと思います。国内企業物価は確かに上昇をしておるんでございますけれども、いわゆる消費者物価を見ますと、まだ小幅のマイナスが続いております。原油価格の上昇に伴いまして、石油製品の価格、ガソリンを始めといたします石油製品の価格は確かに前年比プラスという状態になっているんでございますけれども、一方、企業の生産性の上昇でありますとか賃金が抑制された状態にあるといったような中で、規制緩和の効果なども大体現れつつありまして、御承知のとおり、電気代あるいは電話料金の引下げというようなことも行われております。そういうこともありまして、消費者物価は前年比小幅のマイナスということで推移しているわけでございます。一言で言いますと、デフレ的な状況がまだ依然として続いておるというふうに考えております。
 したがいまして、この日本銀行の金融政策が、この物価というものの安定というために我々日々いろいろ考えておるわけでございますので、その原油価格の動向、それが日本経済及び我が国の物価にどういう影響を及ぼすかというのは常に注意深く見ていきたいというふうに思っております。
○舛添要一君 今のその原油高の状況もインフレ要因の一つになるんですけれども、先ほど総裁、デフレからの脱却というか、一番我々の大きな懸念事項ですけれども、私は若干注目しているのは、ペイオフで、先ほど金融資産の話しかしませんでしたけれども、金融資産から実物資産へのマインド的に資金シフトが起こるのかどうなのか。そうすると、資産デフレの解消に少しはプラスになるかもしれない。
 それから、これはたしか篠原三代平さんがどこかで書いておられたと思うんですけれども、ゼロ%以上というより、やっぱり先進国の戦後経済を見たら、二、三%ぐらいの上昇で行くのが一番経済的にいいんじゃないかと。そうすると、我々ずっと言い続けていたようなインフレターゲット的なことは、実際はもう日銀おやりになっていることなんですけれども、引き続きゼロ%以上を一、二に上げるかとか、まだちょっとその政策をどうすればいいかというのはいろいろ我々も考えあぐんでいるんですけれども、原油高でインフレ方向に行っちゃ困るわけですけれども、ちょっと今のその、補足的に、私が今申し上げたようなことについて何かお考えございますか。
○参考人(福井俊彦君) いろんな角度からの議論が可能なんですけれども、舛添委員今御指摘のその油の高騰というふうなことを出発点として考えましただけでも、この構図の描き方というのは相当精緻にやっていかなきゃいけない。つまり、去年油が、あるいは資源価格が非常に上がりましたときに、世界経済、少し調整すれば一過性のものに終わるかもしれないという見方がありました。しかし、今年になってまた資源価格が上がり、高値で続いていると。しかし、世界の成長速度は若干下がっているわけですね。それでもそうだということは、まだ何も断定できませんけれども、やっぱり世界の人々が、世界経済が高成長を続けることはベリーハッピーだけれども、しかし資源制約ということを何がしか頭に置きながら全体の経済を運営していかなきゃいけないんじゃないかというふうなことを考え始めているに違いないと思います。
 それだけでなくて、例えば中国経済、これも高成長を続けてこられることは世界経済にとって非常にいいけれども、しかし資源を余り非効率に使いながらの高成長はそっちの面から余り有り難くないなとか、そういうふうに世界経済の成長率とかあるいはその資源の再配分とか資源の使い方なんかについてもっと議論を深めていく必要があると。そうでなければ個々の国の経済政策を考える前提条件を正しくセットできないなと、こういう感じがあると思います。
 かつ、今度は日本の国内に持ってきた場合も、デフレから脱却すると、これはもう緊要な課題でありますけれども、その先の望ましい経済の姿にいかにつなげていくかと。委員の問題意識もしっかりそこに持っておられることを今感じました。この場合に、やっぱり日本経済の場合非常に重要なことは、イノベーションの力を企業がしっかり発揮していってくれることだというふうに思います。国際的な情勢がいかに変わろうとも、そして日本にとって競争条件がいかに厳しくなろうとも、この点が非常に重要だと。
 取りあえず日本銀行は、ペイオフ解禁が円滑に移行することができたということで、我々、金融機関に対するアプローチの姿勢はここで百八十度変えることにしました。つまり、危機対応型から金融高度化をサポートしていくと。金融高度化をサポートしていくというのは、企業がそういう意味でイノベーションの進展を始め一番大事な仕事をやっていくことを、金融機関はしっかりそこに金融的な資源を割り当てていってほしいという意味であります。ここのところをしっかりやっていこうと。で、マクロの金融政策は、デフレを脱却した後どういう望ましい中立レートを目指して、あるいはどういう望ましいこの流動性の供給という概念を目指して、改めて再設計したいというふうに思います。今の段階で単純にインフレーションターゲティングを入れればすべてうまくいくというふうに考えるには、その前提条件がまだ余りにも欠落しているというふうに考えています。
○舛添要一君 よく分かりました。
 今、少し中国経済の話も出ましたけれども、簡単に、我々の経済に大きな影響を与えるアメリカ及び中国の経済の動向についてどうごらんになっているか、御説明願いたいと思います。
○参考人(白川方明君) お答えします。
 一言で申し上げますと、アメリカ経済、中国経済はともに着実な景気拡大を続けており、世界経済の牽引役となっているというふうに認識しております。
 アメリカ経済でございますけれども、家計支出や設備投資などの国内民需が着実に増加しておりまして、また雇用面、雇用の面でも改善経過をたどるなど、景気は引き続き拡大しているということでございます。
 物価でございますけれども、エネルギー等、それから食料品を除きましたコアベースの消費者物価上昇率は、景気拡大に伴う需給改善などを背景にしまして緩やかに上昇しております。この間、先ほど御質問のございましたエネルギー価格上昇の影響でございますけれども、現在までのところ、最終財価格への影響は比較的限定的というふうに考えております。
 こうした中で、アメリカの中央銀行でありますFRBでございますけれども、昨年夏以来、慎重なペースで金利引上げを行ってきております。今後も適切なマクロ経済政策運営がなされていけば、インフレなき持続的な成長が期待できるというふうに思います。ただ、原油価格が高騰していることでもございまして、そうした影響も含めて注意深く見ていきたいというふうに思っております。
 一方、中国でございますけれども、二〇〇四年の実質GDP成長率がプラス九・五%と高い伸びを記録しております。特に、輸出と並びまして大きな牽引力となっています固定資産投資、設備投資につきましては、当局の過剰過熱抑制措置により、ひところに比べますと幾分緩やかになっておりますけれども、引き続き非常に高い伸びを示しておるということでございます。
 この間、不動産や建設関連など一部の分野では過熱が懸念されるということでございまして、こうした投資の過熱は原油などのエネルギーや資源需要の増大につながっているという面がございます。このため、電力業などでは供給が追い付かず、ボトルネックが生じるということで、部門間のアンバランスも目立っております。
 中国当局は、こうした情勢を踏まえまして、成長がよりバランスの取れた持続性の高いものとなりますよう、インフラ整備などの投資は引き続き促進します一方で、過熱感の強い分野での投資については抑制措置を講じているというふうに考えています。
 日本銀行としましては、中国当局による一連の政策対応が所期の効果を上げることを期待しつつ、今後の帰趨を注意深く見守っていきたいというふうに考えております。
○舛添要一君 ありがとうございました。
 我々、政治の立場から、中国の都市部と農村部の格差、中央と地方の格差、いろんな、公務員の汚職、こういうことで、胡錦濤政権の行方がどうかということとも絡みまして、中国のバブルというか、そういうことにならないで、うまく安定的に成長していける状況を探りたいというふうに思っています。
 最後に、福井総裁、先般、三月十八日に平成十七年度から二十一年度の中期経営戦略を発表なさいましたけれども、この発表の意図を最後にお述べいただいて、私の質問を終わります。
○参考人(福井俊彦君) お答え申し上げます。
 一般の民間の企業では極めて常識的なことかもしれません。中期経営計画というふうな形で、資源再配分を図りながらいい経営をしていこうというのは常識化していると思いますが、日本銀行で今までそういうことをやったことはございませんで、実は今回初めて中期経営戦略というものを作りました。そのきっかけはやっぱりこのペイオフ完全解禁、ここが非常に大きなターニングポイントだという認識が実はございます。
 やっぱり、何と申しますか、一九八〇年代以降、世界経済の大きな潮流変化に日本経済全体が適応するのに大変苦労してきた、一言で言えばそういう時期だったと思いますが、その様々な苦労を経てようやくこのペイオフを全面解禁をするところまでこぎ着けたと。ここから先が大事で、ここから先、本当に前向きにすべての我々の力を結集していいものをつくっていかなきゃいかぬという時期なので、日本銀行も中央銀行サービスを前向きにかつ質の高いものとして築き上げられるだけの体制をつくっていきたいと、こういうことが趣旨なんでございますが。
 先ほどからもお答えしておりますように、日本銀行、金融政策、それから個々の金融機関に対する業務上のアプローチ、そしてそれを支える内部管理体制、実は三層構造で我々マネジメントやっています。その一番上のマクロの金融政策はデフレ脱却するまでは我々はスローアプローチだと、あくまで粘り強く後押しの力を続けると。もちろんマーケットは危機対応モードからだんだん前向きに変わってきているわけなんで、そこに対して我々は全く目をつぶるわけにはいかぬかもしれないが、我々のスタンスはあくまで後から付いていくと。しかし、二番目の個々の金融機関に対するアプローチは、先ほども申し上げましたように、ここでがらっと変えますと。これはもう明らかに金融の高度化を積極的に進めてもらわなきゃいけないので、変えますと。そして、それら全体を支える内部管理の体制は、やはり少し長い目で見て何が我々が本当に戦略的に必要な仕事か、そこに我々の持てる人的、物的資源を集中的にうまく移動させながら仕事をしたいと、これが基本的な趣旨でございます。
 なぜ初めて中期と、五年というふうな刻みにしたかといいますと、やっぱり人的にも物的にも限られた資源をどういうふうに割り当てていくかということを毎年毎年度のこの業務計画でこれまでやってきましたけれども、やっぱりこれでは、じゃ来年はどうか、再来年はどうかということが分かっていないと資源の移動だって極めて抵抗が強いんです。この人間をこちらに移したいといったときに、今年だけの話なのか、五年先までにらんでもそうなのかというんで、うんと内部の人間の頭の中の構造が変わってこないとこれできませんので、そういう意味で役職員の目的意識をやや長いタームでしっかりとそろえていくと。
 そして、何分にも今の時代ですから、日本銀行の仕事全体としてIT投資でしっかり抱えています。そして、人間はいつも再教育を施しながらでなきゃできないようになっています。IT投資とか人間の教育というのはやっぱり一年計画では何事も達成されません。少し長い目の計画を立ててやっていこうと、これが基本の趣旨でございます。
 そして、毎年毎年の業務計画は、その五年計画のある部分を取り出して今年はやるという形のアクションプランという形にし、かつ年度が終わったら必ず後でレビューをして評価をすると。で、その評価の結果はまたレポートにして世間にお示しして、少しずつでも私どもの仕事に対する御理解と、でき得れば信頼をかち取りながらと、まあこういったことを考えているわけでございます。
○舛添要一君 終わります。ありがとうございました。
○広野ただし君 民主党・新緑風会の広野ただしです。
 今日は、日銀総裁始め日銀の幹部の方々が見えておられますので、できるだけ国民の皆さんに分かりやすい言葉で、財金では時々もう専門的なことが非常に多いものですから、分かりやすいことでまたお話しいただきたいと、こう思うわけであります。
 現下の経済情勢をいろいろとお話をする前に、今、戦後六十年という大きな節目であります。ですから、この戦後六十年を振り返って、政府あるいは日銀の経済政策というものを、あるいは金融政策というものを私なりに分析しますと、敗戦から立ち上がった最初の十年というのは、ある意味では大混乱の中からよくあの短期間に私は収拾した、そして日本経済の基礎をつくったと、こう思います。
 そして、昭和三十年代の高度経済成長、そして昭和四十年前後に山一の破綻ですとかありまして、これはある意味で第一次金融危機のあれもあったんじゃないかと思いますが、日銀の特融等もあって見事に乗り切ったと。で、昭和四十年代、ドルショックもございました。そして、第一次オイルショックということで、昭和五十年前後。そしてまた、昭和五十四年、五十五年、八〇年前後のところでは第二次オイルショックと。こういうものを見事にある意味では私は乗り越えて日本の発展の基礎をつくってきたと思うんです。
 ところが、最初の三十数年は良かった。だけれども、八五年、一九八五年から、プラザ合意の後、バブルの、バブル景気というもの、これのところの日銀の政策、そしてまたバブルが終わった後の急速な引締め、これは特に三重野総裁の私は責任というのは物すごくあるんじゃないかと、こう思っておりますが、その後、自民党を中心とする政権による、特に橋本内閣の大変な経済政策の失敗で大変な金融危機にまで陥ってきたと。その後始末を今ずっとやっているんだろうと思うんですね。そういうことで、特に後の十数年、私は非常に政府とまた日銀の大きな責任があるんではないのかと、こう思っているわけです。
 ところで、そのことについてのコメントはまあいいんですけれども、現状、先ほどもいろいろとありました。踊り場だということですけれども、この踊り場から階段を更に上がるのか下がるのか、極めて今難しい状況にあるんだと、こういうふうに私は認識しておりまして、特に先ほどからもありましたデフレの脱却がなされているのかどうなのかというところですね。デフレに対してどうなっているのか。今まではデフレスパイラルということで、その危機的なところは防いだということでありますけれども、なお、名目成長率と実質を比べますと、実質ではなかなかいかないという状況になっているところを考えますと、デフレというものについて現状をどう認識しておられるか、日銀総裁に伺います。
○参考人(福井俊彦君) デフレの状況は今なお続いていると。デフレの状況が続いているということは、人間の体温に例えれば体温がまだ少し低いということですから、日本経済の基礎的な体力の回復は課題がまだもう少し残っていると、まあ端的に言えばそういうことだろうと思いますが、もう少しこのデフレの中身について子細に物を考えませんと、委員おっしゃったとおり、どういうふうに脱却していくかというところの姿が見えないわけでございます。
 バブル経済崩壊の後、かなり長い期間、少なくとも一年半ぐらい前までの間はやっぱり需給ギャップが非常に大きいと。過剰な供給圧力、そして需要の異常な減退、このはざまで物価が非常に下がったんだというふうに思います。そのときに、先ほども申し上げましたけれども、金融不安というものを大きく内包していましたものですから、人々が悪く予想すればもう限りなく悪く予想できるというふうな状況であったと思います。
 そういうふうなデフレと比べますと、今はデフレの中に金融不安という大きな悪性の種というものをかなり程度を低くして見れるようになったということと、それから過剰な供給圧力、それから異常に低い需要のレベル、この問題も最近の緩やかな景気回復の歩調の中でかなりそのギャップが縮まってまいりました。企業のリストラが進んで、過剰設備の調整が進んで供給圧力が減っているというほかに、やはり着実に景気が回復しつつある中で需要も緩やかに回復してきているということからそれが進んできているということであります。しかし、なお若干の需給ギャップが残っているという点が一つでございます。
 しかし、もう一つは、より前向きの要素もありまして、やはり将来に向かって、企業が最近設備投資もかなり行っておりますけれども、そのイノベーションの力もかりながら、生産性を伸ばす力が徐々に付いてきていると。一方で、中国その他、厳しい海外からの競争に打ちかっていくために国内では引き締まった経営をしていくと。特に賃金コストの抑制というふうなことで、企業はその努力の手綱をかなり強く締めたまま経営を進めているというふうなことがありまして、これは生産性の上昇といい、賃金の抑制といい、いわゆる単位当たり労働力コストを下げるということからデフレが続くというふうな要素が来ております。
 これは、結局、その最終的なゴールは景気の持続的な回復力がより強まると、潜在成長能力よりも少しでも高めの成長率が安定的に実現できるというふうなことになりますと、残りの需給ギャップは完全に解消する。そして、賃金を抑えっ放しというわけにはいきませんで、賃金についてもある程度上がってくると。既に日本の賃金の動向を見ていますと、ほぼ下げ止まりと、下げ止まりになったことは確実だと、これから少しずつ上がっていく可能性の方が強くなってきている。
 そういうふうに、やはりデフレ脱却の筋道というのは、今の経済を今のこの踊り場局面から脱却させ、その後そんなに高い成長でなくても着実な成長軌道に乗せていくということと裏腹の関係でデフレからの脱却の道筋が明確に見えてくるだろうと、こういうふうな筋立てで今考えているところであります。
○広野ただし君 そこで、石油の問題ですが、先ほどもありました。しかし、この石油のものが非常に限定的だと、こうおっしゃっておるんですが、一次エネルギーにおける石油の役割というのはぐっと下がってきましたけれども、相変わらず五〇%あるんですね、原子力等を全部入れましても、あるんです。
 ですから、私は石油のことはやはりなかなかゆるがせにできない問題だと思っておりますが、デフレ脱却という観点から、どうも日銀筋では割と価格上昇、石油価格上昇容認論なんじゃないだろうかと。それはデフレ脱却にある程度好影響をもたらしているというふうに見ておられる節はありませんか。
○参考人(福井俊彦君) 我々の頭の構造もそれよりはもう少し複雑にできているんではないかというふうに思っております。
 もちろん、単純な物価の動きとしては、石油価格が上がったときに国内で川下段階の物価にどういうふうに波及し、計数としての消費者物価指数がどういうふうに上がるだろうかということは、もちろんその物価の分析、物価のその数字の分析としてはいつもやっていることであります。
 しかし、この点は、最近までの状況を見ましても、原油価格がかなり上がっても、先ほど申し上げましたとおり、企業においては国際的な競争を強く意識して、単純に最終段階の物価を引き上げるというふうな企業行動に出ないと。また、出なくても、単位当たり労働力コストが下がっている等々のリストラ効果によってこれを吸収できている、あるいは生産性上昇によって吸収できているというふうなことで、そういう意味でのデフレ脱却というふうなこと、それに大きく依存しなければデフレ脱却できないというふうなシナリオということを想定していないわけでございます。
 むしろ油の値上がりについては、日本はエネルギー効率のいい国でありますけれども、世界全般を見てみると、効率の悪い国は明らかにこれは成長減速要因になるわけですし、そうでなくても、アメリカのようにエネルギー効率のいい国でも、これがインフレリスクというふうに出てまいりますと当然市場金利が上がる、あるいは場合によっては政策金利も上げなきゃいけないというふうなことになりますと、これまた経済全体をある程度シュリンクさせる要因になります。
 そういうふうに、国際的な経済環境が変わりますと、日本経済がデフレから脱却していくために持続的な成長軌道にこれを早く乗せようというこの動きに対してもブレーキになるわけでありますので、油の値段が物価指数の単純計算上、仮に消費者物価指数を上げる方向に多少働くとしても、世界経済を通じて経済のスピードを減速させるようであれば、これはデフレ脱却を遅くする要因になります。
 そういうふうに複雑な構造を計算しながら我々はデフレ脱却の推移を見ているわけですが、単純に油の値段が消費者物価を上昇するだろうという経路よりは、世界経済全体の成長経路に悪い影響がないかどうか、そちらの方により重点を置いて見ているということであります。
○広野ただし君 それと、デフレといいますか、その大きな要因で対外要因といいますか、これは隣の中国ですとか、そういう、BRICsと言われる非常に人口の多い、労働力の多い国々が今台頭をしてきている。これはかなり長くそういうところが台頭を続けるんではないかという中で、そちらに投資が取られるとか、あるいは非常に人件費の安い国々ですから、そういうところが足を引っ張るというか、このデフレ脱却の足を引っ張るというような要因もあるんではなかろうかと、こう思うわけなんですが、その影響をどういうふうに見ておられますか。
○参考人(武藤敏郎君) 御指摘のとおり、このBRICsを始めといたしますエマージング諸国の世界経済に占めるウエートというのは近年非常に高まってきているわけでございます。
 ただ、長期的に見ますと、国際分業が深まっていくということを通じまして、これらのBRICs等の発展というものが、ひいては我が国の生産や設備投資の拡大という形で好影響を及ぼす可能性が十分にあるというふうに考えておるわけでございますが、確かにその過程では、御指摘のとおり、輸入品との競争が国内の既存産業との間で発生すると、こういうことがあるわけでございまして、それが総需要を弱めたり、あるいは物価が下落する要因になるということが観察されるわけでございます。事実、九九年から二〇〇〇年にかけまして、繊維製品中心でございますけれども、廉価の製品が中国から輸入されまして消費者物価を大きく下押ししたというのは事実として御承知のとおりでございます。
 ただ、最近ではもう少しこの国際分業というものが深まりつつ、いわゆる深化しつつありまして、我が国の製品がより付加価値を高めまして、輸入品とのすみ分けといいますか、分業を進めていくと。そういう形で貿易が輸出輸入両面で拡大していくということ、そういうことが起こりつつあるのではないかというふうに思っておるわけでございます。そういう意味では、輸入品と国内品との間の競合という問題は確かにもちろんあるわけでございますけれども、ひところと比べますと大分薄れてきているのではないかというふうに考えております。
 こういうエマージング諸国の工業化というものが我が国経済にどういう影響を及ぼしていくのか、我が国の物価にどういう影響を及ぼしていくのかということは、これ、これからも十分に注意深く見ていかなければならないというふうに思っております。
○広野ただし君 それで、超緩和政策、これが、先ほどありましたように、当座預金残高三十から三十五兆と、こういうのをずっと物価上昇がゼロになるまで続けると、こうお約束をされている。こういうことでありますけれど、ここのところで、そういう緩和政策を取っていくことについて今金融危機対応という面はかなり薄れてきたと。これからはデフレスパイラルを、デフレから脱却をするという側面というものが非常に大きくなってくるんだろうと思うんですね。
 ところで、その対外要因というものが非常にあるときに、本当にその緩和政策でデフレ脱却に行けるのかどうかという点について、総裁、どう思われますか。
○参考人(福井俊彦君) BRICsと言われている国々、なかんずく中国を先頭に、やはり先進国の経済に対して、先進国のあるいは企業に対して大変厳しい競争条件を突き付けてきていると。したがって、日本だけではなくて、先進主要国において、なかなか、企業の段階でいえば最終製品の販売価格を非常に引き上げにくい状況になっている、国の経済全体としてはかつてに比べてインフレというものが起こりにくい経済になっているということだと思います。したがって、そういうエマージング諸国の競争圧力からくる物価へのプレッシャーというのは、ある意味で先進国共通だというふうに私は思っています。
 ただ、日本はそういうプレッシャーの一番強い中国を含むアジア諸国に一番近い距離にいるし、経済的な取引関係も一番濃密だという意味ではそのプレッシャーをより強く受けているということは否めないと思いますが、少なくとも共通の現象だと。そういう共通の現象の中で、先進国の中で消費者物価指数が今なおマイナスのゾーンで走っているというのは日本経済だけだということも我々はしっかり認識しておかなけりゃいけないので、少なくともその部分はまだ日本経済自身が前に向かって進む活力がいま少し欠けていると、こういうことだというふうに思います。
 これから将来に向かってその活力をいかに培養していくかということになりますと、人口の伸びが既に止まっている、これから減るというふうなことも前提に考えれば、ますます企業がイノベーションの力を強く付けて生産性を上げていく、この力を太くしていく以外にないわけですが、それは、その力を培養しながら日本経済をより持続的な回復のパスに乗せていくということと同じでありますし、そのことがまた同時にデフレからの脱却の道と裏腹の関係になるということも先ほど申し上げました。
 したがいまして、これからの過程は、確かに、委員おっしゃいますとおり、信用不安を含むデフレスパイラルの心配のためにということではなくて、デフレ脱却からの最終的な仕上げ局面として企業の前向きな活動を金融面からサポートしていく、そのために金融機関に対する我々の姿勢はここでがらっと姿勢を変えて積極的に高度化をサポートしていくと、こういうふうに切り替えたというふうに申し上げました。
 マクロの金融政策はあくまで慎重に、金融機関に対しては強力に後ろから拍車を掛けたいと、こういうふうなことでございます。
○広野ただし君 なかなかこのBRICs諸国との、何といいますか、投資の、資源のある意味で配分について、どうしてもBRICs諸国に投資が回って国内投資にはなかなか回ってこない。特に、そういうことがまた地方に、非常に日本の国内地方に大きく影響を及ぼしていると私は思っております。ですから、なかなかこのデフレから脱却するということは非常に難しい状況で、景気は良くなってきているけれども、なかなか大変なものがずっと根っこに残っているということだろうと思います。
 それで、先ほどもペイオフの話、解禁の話がありました。そういう中で、私はやはり大きな懸念材料というのは国内の地方だろうと思っております。地方の中小企業を始め、あるいは地方金融機関、信用金庫等が合併をして体質改善等をやっている。その努力もよく分かるわけでありますけれども、なかなか、金融政策あるいは経済政策の恩恵といいますか、そういうものがなかなか地方に行っていないと、こういうことだろうと思っております。
 そういう中で、私は、日銀がもう少し地方に対しての力の入れ方、これをしっかりまだやっていかなければならないんではないかと、こう思っておるわけなんですけれども、各地方に支店があります。支店がありますが、これは三十二支店ですか。そのほかに、県に事務所も置いておられると、これは十四事務所ということであります。
 きめ細かく各地域金融機関あるいは地方の経済というものを見ていくときに、金融庁というのは余り手足を持たない、財務局はありますけれども、手足がないんですね。そういうことからいうと、日銀がしっかりとそういうことをやってもらいたいと、こう思うんですが、この地方事務所というのがまた地方銀行の有力銀行のところに間借りしているようなことをやっているんですね。これではどうも、信金さんからいろんな相談を持ち込もうとか、信金さんの実態をよく分かってもらおうとか、そういうことにはなかなかならないんではないのかと、こう思うわけですが、地方について日銀がどうまた取り組もうとされているのか、また、そういう事務所というものについて間借りしているというのはいかにもおかしいんではないのか、ちゃんとしたところを借りなさいと、こういうふうに思いますが、その点についてお伺いしたいと思います。
○参考人(稲葉延雄君) お尋ねの地域金融に対して日銀はどのような役割を果たしているかということについてまずお答え申し上げたいと思います。
 日本銀行は、支店におきまして、取引先である地域金融機関との間で当座預金取引とか、それから国庫金の授受とか、あるいは銀行券の受け払いといった業務を行っておりまして、これは地域金融における欠くことのできない言わばインフラを提供していると、お金の流通、決済のためのインフラを提供しているというふうに考えております。
 一方で、支店それから事務所も、職員もそうですけれども、考査あるいはオフサイトモニタリングといったことを通じまして金融機関の経営実態の的確な把握ということに努めておりまして、こうした地域金融機関が地域における金融サービスを適切に供給する、そういった取組をサポートしているということでございます。
 今後の展開でございますけれども、地域金融機関においても今後は地域の顧客、企業、家計のニーズに適切にこたえながら創造的な業務展開というのを図っていく必要があると思いますし、そういった形で地域経済を支えていくということになると思います。また、そのためには、地域金融機関自身がリスク管理の強化とか経営管理の強化を図っていくと、こういうことが重要だろうというふうに思っておりますが、日銀としても、考査あるいはモニタリングといったようなものを通じましてこういった地域金融機関の努力をサポートする、そういうことで地域における金融サービスの向上に向けて貢献していきたい、こういうふうに思っております。
○参考人(小林英三君) ただいま、金融機関の関連につきましては、今、稲葉理事から申し上げましたとおりでございますが、私ども、地域におきましては、地域に根差した中央銀行サービスの提供ということで今度の中期戦略の中にも掲げておりますし、そういったモニタリング以外にもいろいろなサービスを提供しておるわけでございます。
 そういう中の一つに、私どもの非常に重要な業務の一つといたしまして、私どもの日本銀行券を、支店のない地域におきまして、事務所の所在しております地元の有力な金融機関にお願いして、円滑な銀行券の流通ということを図っているところでございます。具体的には、そういう金融機関の金庫の一部をお借りしているというようなこともございますので、そういうようなことを安全、効率的にやっていくためにはそういった事務所を、私どもの事務所をそこの金融機関にお借りするというようなことを現在やっているところでございます。
 ただ、ただいま先生御指摘のように、そういったことと私どもの地域へのサービス、あるいは考査、モニタリングといったようなことは、これは峻別してやっていく必要がございますので、そういったことにかかわらず、厳正、公正にやっていきたいと、このように考えております。
○広野ただし君 それと、準備金制度の対象にしている信金さんは預金残高が千六百億超になっていますよね。今、地方の信金さんを考えると必ずしもそこまで預金残高行っていないようなところもあるんですね。ですから、ペイオフ解禁というようなことを考えると、もう少しきめ細かくしていいんじゃなかろうかと思いますが、総裁、どうですか。
○参考人(白川方明君) お答えいたします。
 先生御質問の件は、準備預金制度、金融機関が法律に基づきまして日本銀行が預かります当座預金の金額、この比率についてのお尋ねというふうに理解いたしました。
 現在、先生御指摘のとおり、信用金庫について千六百億円というのが一つの基準になっております。これは、これまでも経済、金融の状況に応じまして預金準備率の区分を設定する際の資金量を見直してまいりました。現在、私どもこの資金量基準で適切であるというふうに考えておりますけれども、今後、経済、金融の状況に応じてどういう水準がいいのかというのはこれからも考えていきたいというふうに思っております。
○広野ただし君 特に地方の中小企業向け金融ということを考えますと、この信金というのは非常に大きな役割を果たしているんですね。中小企業金融がずっと下がってきていて、昔三百五十兆ほどあったのが今は二百九十兆ぐらいになっているんです、八十兆ぐらいになっている、公的金融機関も入れてですね。そういう中で、信金さんは二割から二割五分ぐらいまでやっているんですよね。そういうところに対するちゃんとした目配りというものをやっていきませんと、地方を大切にするとか言っていてもなかなかなっていないと、こういう点がありますので、そこを是非しっかりとまたやっていただきたいと、こう思います。
 それと、ペイオフについて、先ほどもありましたが、外国銀行の在日支店というのが、これが対象外に現在なっております。これが七十一店あるんですかね、現在日銀さんと取引をしておられる。これは対象外になっておるわけですね、今ペイオフでは。そこのところは将来どういうふうになるのか。私は内外差別のないようなものにやっぱりしていかなきゃいけないというふうに思いますので、将来、やっぱりこれは、ペイオフ自身は日銀さんとのことでは直接的ではないと思いますけれども、どういうふうに考えておられるか、どなたかございますか。
○参考人(稲葉延雄君) お答えいたします。
 預金保険の制度の問題だろうというふうに思います。
 日本では外国銀行の支店におきます外貨預金は預金保険の対象外ということになっておるわけでございます。こういう下で金融システム全体の安定を図っていこうというのが現状の考え方であろうと思います。
 ここのところについてどう見直すかと、いろんな論点があろうかと思いますが、それは現状そういうものだというふうに前提としまして、一方で外国銀行の支店の役割というのも日本経済において大事でございますので、日銀としてもそういった支店での業務あるいは金融サービスの提供の状況はどうかというのは考査等を通じて逐次点検しているところでありまして、今後ともそうした形で見守っていきたいというふうに考えております。
○広野ただし君 それでは、ちょっと論点を変えまして、日銀の財務というような観点から質問をさせていただきたいと思います。
 日本銀行の資本金というのは現在一億円ということになっております。そして、その五五%を政府が持っておると、こういうことでありますが、この一億円というのは私は余りにも過少資本なんではないかと、こう思います。
 これは、アメリカのFRBは九千六百億円、ドイツ連銀は三千五百億円、そしてフランスは若干あれですが六百四十億円、イングランド銀行は少しあれですが、それでも三十億円、こういうことであります。日銀さんは、いや、引当金とか剰余金があるんだからいいんだと、こうおっしゃるんだけれども、どうも私はこんな過少資本なのはやはり中央銀行としておかしいんではないか。
 これは、法律でこうはしておりますけれども、やはりしっかりとした資本金を持って、例えばこれから数年のうちに二けた台、数十億円にします、その次は数百億円にします、その後は数千億円にしますとか、何らかの自己資本をしっかりとすると、資本金を。自己資本比率の問題と別ですけれども、これはもう一つ後でもう一回聞きますけれども、資本金についてどういうふうに思っておられるか、伺います。
○参考人(小林英三君) ただいま先生から御指摘のように、日本銀行の資本金は今一億円ということで、これは法律でそのように定められているということでございます。
 中央銀行の資本金の在り方につきましては、確かに諸外国も含めまして様々でございますけれども、私どもといたしましては、財務の健全性という意味では、独り資本金ということだけではなくて、全体としての私どもの内部の留保というものとの関係でどうかと、そういうような観点で見ていくのが適当ではないかと考えております。
○広野ただし君 じゃ、この自己資本比率のことに入りますが、今、日銀の自己資本比率は七・何%ですよね、七・四パーか。それで、日銀の会計規程においても、自己資本比率は一〇%になることを目途として、おおむね上下二%の範囲になるように運営すると、こう会計規程でも書いてあるんです。そして、ほかの金融機関に対して、特にBISのところについては八%以上、あるいは一〇パー、十数パーと、こういう形で政府なりやってきている。日銀は、自分はどうなんだと、これは。これはちゃんとやるべきじゃないのかと私は思いますが、いかがでしょうか。
○参考人(小林英三君) 日本銀行におきましては、その財務の健全性というものを判断する指標といたしまして、先生がただいまおっしゃられましたような自己資本比率というものを算定しております。この自己資本比率というのは、日本銀行の場合には、資本金、法定準備金あるいは債券等の引当金というものを分子といたしまして、それを銀行券の残高で割ると、こういう格好ではじいておりまして、必ずしもリスクアセットベースでやっております民間金融機関と全く同じというわけではございませんけれども、いずれにいたしましても、そういうような格好で自己資本比率を算定しておりまして、その運用の目標値といたしましておおむね八%から一二%と、こういうようなことで運営しているところでございます。
 私どもの自己資本比率は平成十五年度末の時点で計算いたしまして七・三三%ということでございまして、ただいまお話がございましたように、その目標値を若干今下回っているという状況にございます。こういうような状況でございますので、私どもといたしましても今後ともこの自己資本の充実というようなことについては努めてまいりたいと、このように思っております。
○広野ただし君 それは是非早急に是正をして、そして、何といっても中央銀行なんですからね、銀行の中の銀行なんですから、そういうものをしっかりとしてもらいたいと思います。
 それともう一つ、財務の中で国債ですね、国債の保有が非常に多くなってきている。これは財政規律にも非常に大きく影響する問題でありますが、現在、長期国債で六十七兆ですか、短期国債三十二兆、百兆円近くの国債を保有をしている。百五十兆の資産のうち、そういう状況であります。
 現在、金利が安いし、こういう状況ですから、まあまだですが、いつ何どき金利が上がって国債が暴落をすることになるか分からない。そうしますと、日銀の財務を毀損する。現在は確かに含み益でどれだけかあります、国債は四千五百億ですか、昨年の九月末で含み益出ています。だけれども、これは政府の方でもそうなんですが、金利が一パー上がると金利支払が十兆円にもなるという大変な状況になります。ですから、国債が暴落をするというようなことになりますと日銀の財務が毀損すると、こういうことになろうかと思うわけですが、その点について、いかがでしょうか。
○参考人(白川方明君) お答えいたします。
 現在、日本銀行は量的緩和政策の下で資金を潤沢に供給をしております。その際、金融市場から資産を買い入れる必要がございますけれども、その際、流動性が高くて安全確実な金融資産ということでどうしても国債が多くなってくるということでございまして、金額につきましては先生御指摘のとおりでございます。
 中央銀行としまして適切に政策を遂行していく過程におきまして、財務面で何がしかリスクを負うということはどうしてもこれは出てまいりますが、一方で、先生御指摘のとおり、財務の健全性は、これは中央銀行として適切な政策運営能力を維持し、また国民の通貨に対する信認を支える上で非常にこれ重要であるというふうに考えております。
 したがいまして、日本銀行としましては、政策運営に当たりまして財務の健全性確保という点にも十分配慮を怠らないようにしておりまして、御質問の保有国債の価格変動リスクにつきましても的確にこれを把握しつつ、適切な引き当てを実施するなど、手当てを講じておるところでございます。
 いずれにしましても、先生の御指摘の問題意識は十分に踏まえて業務運営に当たっているということでございます。
○広野ただし君 ところで、今日は日銀の幹部の方々が見えておりますので、私は、円の国際化、やはり円、通貨の国際化ということを非常に大事なことだと、こう思っておるわけであります。
 私は、やはり国際通貨として円がちゃんとした決済手段として、今貿易でいきますと全体のうち日本は一五パー、一四、五パーを占めております、国際的には。ところが、円建てあるいは円決済ということでは七、八パーです。半分ぐらいです。ですから、もっとこの円の通貨、国際通貨としての役割を高めなきゃいけない、こう思っておるわけなんですが、そういうときに、やはりドルとの関係あるいはユーロとの関係を取りましても、要するに一けたでないと駄目だと思うんですね。今は百円でこうやる。三けた。あるいは、こういうことでは、やっぱり新円というものを出して、新円、新しい新円が一ドル、あるいはユーロと一・一だとか一・二だとか、こういう形になって、国際通貨としての信認を上げていくということが非常に大切だと思っております。ある意味ではデノミなんですね、デノミだと思っておりますが。
 そういう中で、それをやって日本はアジアにおいてアジア経済圏というものをつくっていくと。まあユーロだってずっとこうヨーロッパの方で大変な経済圏をつくってきている。ですから、日本も新円によって通貨圏をつくっていく、アジアにおいてつくっていくということが非常に大切なんではないかと、こう思っておりますが、デノミの決定プロセスについては日銀さんがすぐに、直接関与するわけではありません。だけれども、どういうような状況においてデノミが可能であるのか、また、そういうことについて日銀としては、まあなかなか日銀全体としてのお話というわけにはまいらないと思いますが、個人的な見解でも結構でございますから、日銀総裁、お話しいただければと思います。
○参考人(福井俊彦君) 委員のお言葉でお許しを得て、私の個人的見解ということになろうと思いますけれども、確かに、例えば円とドルとの関係を見ましても、一ドルに対してこちらは三けたの数字で今対応していると。一けたの数字で対応した方がより分かりやすいではないかというのはおっしゃるとおりだと思いますし、したがって、日本におきまして時々デノミの必要性についての議論が繰り返されてきているということは、そういうところにあるというふうに思います。
 ただ、一方で、私ども、国民の皆さんが本当にこの問題についてどれぐらいの切実性を持って感じておられるかということもずっと伺っているわけなんですけれども、実際にこの一ドルに対して三けたの数字で日常取引をしていて、非常に日常生活で差し迫った不便があるとか、あるいは内外の取引で非常に大きな支障があるというところまでのお気持ちもないというふうなことで、なかなかこれが喫緊の課題として浮かび上がりにくい状況が続いているのではないかなというふうに思います。
 実際にデノミを行おうといたしますと、意外に経済生活に対して大きな影響がありますし、それを実施するための社会的なコストというふうなこともありますので、将来にわたってそうした点を十分検討を尽くしていく必要があるんだろうというふうに思います。
 委員のお尋ねは、同時に円の国際通貨としての役割をもっと強めていくという最終的なねらいを持って今お話をいただいたわけでありますけれども、その点につきましては、私ども通貨当局として責任の大きな一端を担わせていただいております立場からは、これは私どもも強い意識を持って考えているところです。
 ただ、こちらの方のアプローチは、あくまでやはり日本を中心とした国際的な経済関係の相互依存性、特にアジア経済との間の相互依存性をもっと自然に強めていくと。余りにも米国の市場に大きく依存した経済というところから、アジア経済と日本経済との相互依存関係がもっと強まっていくということが第一の条件だと思っています。しかし、これはかなり進んでいます。十年前に比べますと、日本の全世界に対する貿易のウエートはやっぱり対アジアのウエートが物すごく急速に大きくなっています。今後もこの傾向はしっかり続いていくだろうということが間違いないというふうに思いますし、その中で円の価値についてやはり十分信認を得ること、そして円のお金、そして円の取引が主として行われる日本の金融・資本市場の使い勝手の良さと、こういったところをしっかり磨き上げていくということがおのずと円がより広く使われる道に実態的に通じやすいんではないかというふうに思います。
 デノミというのも、その途上で国民の皆様方のその必要性についての認識が高まっていけば、一つの要素として入ってくる可能性は確かにあると思いますけれども、デノミだけで円の、何と申しますか、国際通貨としての機能を高めていくという推進力そのものはデノミだけではそんなに大きくならないかもしれないというふうにも思っておりまして、やっぱり実態的に経済の相互依存関係を強める、円の価値をしっかりさせる、そして円の使い勝手を良くする、最も地道な努力からもっと成果を上げていくべきだというふうに思っています。
○広野ただし君 円のやはり決済性というか、信認というか、そういうものを非常に高めていって、やっぱり経済の実態に合ったそういう円の流通性というものを、国際性というものを持たせなければならないと、こう思っております。そうしませんと、いつもせっせせっせと働きながらドルをためても、大変なドルの暴落で大損をこくということを繰り返しておるわけで、やはりしっかりとした円をつくっていかなきゃいけない。そのことは、私は、特にデノミをやるときは物価が極めて安定的なときに行うのがいいことだと、こう思っております。今は金融関係、危機的な状況を脱したばっかりですけれども、物価は超安定であります。こういうときにこそデノミの論議を深めていかなければならないと、こういうふうに思っております。
 それでは終わります。
○大久保勉君 民主党・新緑風会の大久保勉です。
 まずは、私の地元、福岡県西方沖地震で災害に遭われました被災者の皆さん、そして今もなお避難所にいらっしゃる皆様に、一刻も早い復興をお祈りしております。
 それでは、まず日本銀行の政策に対して質問させてもらいます。
 日本銀行の量的金融政策は五年目を迎えました。この間、金融危機、デフレスパイラルを回避することができましたので、このことは非常に有効な政策であったということで、日本国内、そして海外でも高く評価されております。
 この政策というのは、ゼロ金利でどんどん資金を出す、じゃぶじゃぶ資金を出すということで、非常事態の政策としては有効かもしれませんが、平常時の政策としては様々な副作用があると考えています。また、この政策を長く続けましたら、実物景気を底上げすると、こういった目的も、別の目的、それは日本国債のファイナンスを低利で安定的にやると、こういった政策の転換がなされているか、こういった思いです。
 私は、量的金融政策をこのままずっと続けましたら、いわゆる日銀のフォアグラ政策、こういったことを行っていると思います。
 福井総裁は、フォアグラ、お好きですか。恐らくは、パリ駐在もう長いということで、またパリ駐在事務所の存続のために尽力をなされているということで、お好きじゃないかと思っております。実際、フォアグラといいますと、実はガチョウに無理やりえさを食べさせる、無理やり口にえさを入れて、これでもかこれでもかと詰め込む、そして肝臓を肥大させると、それがフォアグラです。
 実は、このことこそ、今、日本銀行が行っていることじゃないかと思われます。つまり、資金をゼロ金利でどんどんどんどん供給する、札割れを起こしても供給すると。ガチョウというのは日本経済若しくは金融です。もう要りませんと。五年前でしたらやせ細っていましたからえさは必要でした。ところが、もうこのガチョウは肥満しています。じゃ、このフォアグラ、だれのためか。これはフォアグラを愛する政府、財務省だと私は思っています。
 つまり、低金利で国の財政をファイナンスする、これが最大目的で、そのために様々な副作用が出てきているんじゃないかと。例えば、年金生活者、これは低金利で年金財源が破綻しています。五・五%の予定利率、これが実質金利が一%でしたら、相当の逆ざやです。これを十年間続けることによって年金財源が破綻したんじゃないでしょうか。また、利子生活者、こちらの収入が減ると。こういう形で国民は消費を増やすことができないと。こういった副作用に関して是非とも今回の討論で日銀の意見を聞きたく思っています。
 私は、是非やりたいのは金融の正常化です。また、脱金融社会主義、このことに関して議論します。じゃ、既に舛添委員、広野委員の方から日銀のバランスシートに関しては質問がありましたので、非常に個別的なことを質問します。端的にお答えください。
 まずは、長期国債買い切りオペの残高、これは端的に言いますと日銀の国債引受け金額です。この残高を日銀券発行残高より低く抑えるという政策を今後も堅持し続けるか。また、現在、月一・二兆円の国債買い切りオペの金額、これを将来引き上げることはないのか。是非これは福井総裁に、個人的な意見でも構いません。中央銀行の総裁としての思いも伝えてください。イエスかノーでお願いします。
○参考人(福井俊彦君) 私もフランス勤務の経験がありまして、率直に申し上げて、フランス料理は大好きですけれども、その中ではフォアグラというのはそんなに好きじゃないんです。
 量的緩和を継続するために確かに大量の資金供給をしなければいけませんのでオペレーションをフルに動員していると。その中で、長期国債の買入れというのも一つの重要な道具として使い続けてきております。
 これは、しかしながら、あくまで、フォアグラとおっしゃいましたけれども、本当に必要以上に、あり余るほどの流動性を供給するための手段としてやっているということでございます。あくまで政府の資金繰りのファイナンスを円滑化するためという趣旨から離れて、純粋に流動性を供給する目的でやっているということでありますけれども、やはり日本銀行のバランスシート、大きくなっておりますが、大きくなったバランスシートの中でも十分そのポートフォリオの組み方には工夫を凝らして、将来いかなる方向にも金融政策が機動的に転換し得るような備えというのはやっぱりいつもしていかなきゃいけないと。そういう意味で、長期国債の保有残高にはある限界を設けながらということでやっておりまして、それがいわゆる銀行券の天井ルールというやつでございます。
 日本銀行としては、今後とも、金融調節面での十分なその対応能力、機動性というものを確保し、経済の健全な発展のために貢献したいということで、この銀行券の保有ルールというものは堅持していきたいと、こういうふうに考えています。
○大久保勉君 もう一つの質問は、月一・二兆円の国債買い切りオペの金額、これは堅持されるということでよろしいでしょうか。
○参考人(福井俊彦君) この毎月毎月の買いオペの額というものも政策委員会での了承の下でやっておりますけれども、私、今のポストに就任いたしまして以来、この額は増やさないでずっと続けてきております。恐らく、これは増やさなくて今後ともやっていけるんではないかというふうに考えています。
○大久保勉君 最近、例えば二〇〇五年二月の数字をチェックしました。日銀券の発行残高が七十二・二兆円、長期国債の残高が六十六・六兆円。先ほどの総裁の公約どおりになっています。しかし、実際はトリックがあります。今期短期国債の再乗換え債が六・八兆円あります。これを合計しましたら七十三・四兆円。つまり、逆転しているんです。つまり、日銀券よりも国債の残高が大きいと。
 この再乗換え債という定義なんですけれども、これは、二年前に長期国債が償還しました。で、一年待ってほしいと。これが乗換えです。更にもう一年待ってほしいというのが再乗換えです。ですから、これは事実上二年債を購入しているのと一緒なんです。
 ですから、長期国債プラス再乗換え分六・八兆、足したら日銀券残高を超えているんじゃないですか。このことに関して、私は、実態はこの公約をしり抜けしていると。つまり、財務省の圧力でこういうことをせざるを得ないと。もちろん、財務省の方は二〇〇八年の償還問題があるからということでおっしゃっています。
 そこで質問ですが、この再乗換えは来年やらないか、再来年もやらないか、このことを是非、中央銀行の総裁の良心として、思いも伝えてもらったら有り難いです。また、短期国債の残高が急激に増えています。この辺りに関しましても何らかの上限を考えるおつもりはないか。このことに関して端的にお答えください。
○参考人(福井俊彦君) 昨年十二月の政策委員会におきまして、平成十六年度に乗換え引受けを実施したTBの一部について、この十七年度においてTBに再乗換えを行うということを決めたということは御指摘のとおりでございます。
 政府の方のお話は過去の国債発行にはこぶがあると。したがって、それが償還期日が来た場合に国債の償還の集中ということがあるので、これは平準化したいという、こういうお考えでございました。
 日本銀行といたしましては二つの考え、一つは、この政府のお考えについて日本銀行はどう受け止めるかということでありますけれども、市場のこぶをならすということは、日本銀行としてもそれは十分意味のあることだということであります。こぶを抱えたままの市場というのは、やはり金融調節あるいは金融政策を円滑に行っていく場合に必ずしも好ましい条件ではないということであります。
 しかし、それならば、こぶをならすためには際限なく我々はそれに対する乗換え等々、応ずることができるかというと、そこがまたそうはいかないということがありまして、先ほども申し上げましたとおり、円滑な金融調節の遂行のために必要となる資産の流動性というのが自分のポートフォリオの方で十分確保できているかどうかと、ここは慎重に検討しなきゃいけないと。その点を十分検討した上で、昨年十二月は例外的かつ時限的な措置としてこれを実施するというふうに政策委員会で決めたわけであります。来年以降のことは全く今のところは白紙でございます。
 いずれにしましても、毎年度、問題の必要性が生ずれば政策委員会において慎重に審議したいということでございます。
○大久保勉君 こちらは、政策決定会合といいますよりも、日銀総裁としてどういう意向かと。つまり、日銀のバランスシートをどうしたいかと、こういった大きな問題だと思います。
 もしこれ、民間企業でしたら、貸出しの期限を一回延長します、もう一回延長します、これでしたら、金融庁の方は、これは破綻懸念先とか、そういうふうに考えるんじゃないかと思います。ですから、日本国といいましても、健全なる規律が必要と思います。特に、通貨の番人として、是非とも福井総裁の良心を期待しております。
 続きまして、日本銀行は、この数年、金融政策運営として、先ほど何度も出ましたけれども、当座預金目標を少しずつ切り上げまして、現在は三十兆から三十五兆円になっています。しかし、今年、今月の六日の政策決定会合では全会一致ではなかったということ、これは舛添委員の指摘のとおりなんです。
 そこで、質問です。今後、当座預金目標三十兆円を割ることがあるとしたら、日本銀行の政策転換、すなわち金融引締めを意味するのか、いや、これは技術的なものであるか、こちらに対する質問です。これはイエス、ノーで答えられると思いますので、お願いします。
○参考人(福井俊彦君) まず、その三十兆円を割るとしたらという前提には非常にお答えしにくいわけでございます。私どもは今三十兆から三十五兆円程度という流動性供給をし続けるということを基本のスタンスに今市場に対して臨んでいるということであります。かつまた、先々にわたっても、CPI、消費者物価指数の前年比変化率が安定的にゼロ%以上となるまで基本的にこの流動性を大きく、多量に供給し続けるという枠組みは維持すると、この前提の下での議論にならざるを得ないと思います。
 昨日の政策委員会で出ました意見も、この枠組みは変えないという大きな前提の下で、しかし、金融市場の中で金融不安の静まりとともに流動性需要が後退してきていることに対して、これに対して日本銀行は受け身で最小限の調整をする必要がないのかどうか、した方がかえってこの枠組みを長く維持するためにうまく作用するのではないかと、こういう筋の議論でございます。
 したがいまして、この先のことは、経済・金融情勢の変化と市場の変化、なかんずく流動性需要の更なる変化がどう出るかということを見極めないと判断できないわけでありますけれども、仮に今申し上げましたような筋合いで当座残高目標というものを数字の上で何がしかの調整をするといったような場合には、引締めということではなくて、実態的な緩和はそのまま維持しながら、この枠組みを長もちさせるための言わば技術的とも言えるアジャストメントであるというふうに理解されなければならない性質のものであり、我々がもし万一そういう措置をとる場合には明確にそういうふうに御説明申し上げなきゃいかぬというふうに思っております。
○大久保勉君 はっきり発言してもらいまして、よく分かりました。
 実際、過去に、二〇〇一年から当座預金目標を切り上げておりますけど、いろいろ分析しましたら、二〇〇二年に十兆円なんですけど、これは恐らくは日本経済の景気の底が二〇〇二年の初頭ということで実体経済対策かなと想像できます。また、二〇〇三年六月にはりそな銀行の公的管理ということもありまして金融危機対策だなと。この残高が十五兆なんですね。それから、今三十兆から三十五兆、倍増しているんです。どうしてかということに関して日本銀行はなかなか説明を、ちゃんとした説明がなかったんじゃないかと思われます。
 そこで、いろいろ調べてみましたら、ちょうど政府は二〇〇三年から二〇〇四年の三月まで十五か月為替介入を行っています。円売りドル買い介入等で約三十五兆円の介入をしています。そのときに日銀が打ち出した政策が非不胎化政策、つまり残高は増えてもそのまま維持しましょうと。ですから、これ自然に当座目標金額が切り上がっているのであって、これは技術的ですから、これを引き下げたとしましても金融引締めじゃないというのが私の理解なんですけど、これでよろしいんでしょうか。
○参考人(福井俊彦君) 量的緩和の推進、具体的には流動性の量的目標値の切上げの過程は一貫して一つの目標でございます。物価が継続的に下落することを防止し、持続的な経済成長のための基盤を金融面から整備するということ、それ以外にはございません。
 その時々の政策決定会合の判断の中に様々な事象の変化を考慮して考えますけれども、その場合、毎回のように厳しく点検しましたのは金融システム面での不安要因の高まりということであります。今日も何回も申し上げましたけれども、日本のデフレの中には金融システム不安という大きな不安要因を内包しながらの大きな心配であったということでありますので、りそなのケースも含め、常にその点は重要な点検材料であった。しかし、重要な点検材料であり、それを内包したデフレのリスクということが決定的な判断要因であります。
 二〇〇四年一月のときは既に景気が少しいい方向に向かっていたということであります。そのいい方向に向かっている景気の動きをより確実にするために、日本銀行の姿勢をここでほぼ最終的に姿勢を明確にしようというのが当時の趣旨であったというふうに思います。
 委員おっしゃいましたとおり、たまたま政府におかれましてはそのとき為替市場においてかなり大量の介入政策が取られていたということでございますが、それはたまたま時期的に一致していたというふうに御理解いただくのが正しいと。もしあのとき為替市場において介入措置の必要がなかったケースであっても、日本銀行はあのときの緩和措置を必ずやったであろうということは疑いのないところでございます。
○大久保勉君 次に、かなり技術的な話なんですけど、先ほど金融危機は遠のいているということで、実際にジャパン・プレミアムというのは急速に解消しております。これまでジャパン・プレミアムが発生しましたら外銀がドルを供給する、その結果言わばマイナスの金利で円資金を調達しています。それを日銀にそのまま預けると。昨年でしたら、それが六兆円とか、そういった金額です。金融危機がなくなったということは、もうそういった金利裁定の余地がなくなりますから、五兆か六兆ぐらいあったものが、もしかしたら今年の三月末、現時点ではかなり減っているんじゃないか、その分日銀の当座預金残高が下げ圧力になっているんじゃないか、ですからなかなか三十兆を維持しようとしましても技術的に難しいんじゃないかと、こういう考え方があります。
 そこで、質問なんですけど、外銀の当座預金残高、昨年二〇〇四年三月末と今年二〇〇五年三月末の残高を教えてください。
○参考人(白川方明君) お答えいたします。
 外国銀行が日本銀行に預けています当座預金の残高でございますけれども、昨年三月末が五・四兆円、本年三月末が二・八兆円でございます。したがいまして、この一年間における変化幅としましては二・六兆円の減少ということになります。
○大久保勉君 といいますと、二・六兆円当座預金残高が減っていますから、二・六兆円資金を供給しない限りは残高が減ってしまうと、そういうこともありまして、札割れをしながら何とか資金供給オペをしていたと、こういう実態じゃないかと思われます。
 また、ペイオフが、まあペイオフの影響は五月、六月になくなると考えられますし、また税上げの影響で五月末から六月末、相当資金は減っていきますから、こういった季節的な影響を考えましたら、もうそもそも三十兆円の当座預金残高維持というのは難しいんじゃないかと思われますけど、この点に関しまして日本銀行のお考え方を教えてください。
○参考人(白川方明君) 先行き五月の半ばから六月の上旬にかけまして税上げあるいは国債発行など財政資金の動きに伴います大幅な資金不足が見込まれております。したがいまして、この面からオペによる資金供給を増やす必要があるということは事実でございます。
 委員御指摘の、御質問の日銀当座預金の残高目標でございますけれども、この点につきましては、今後の金融政策決定会合におきまして経済・物価情勢や今後のオペの状況も含めた金融指標の状況を踏まえまして決定していくと、こういうようになってまいります。いずれにしましても、市場動向を十分に見極めつつ、きめ細かな金融市場調節を行っていきたいというふうに考えております。
○大久保勉君 それでは、極めて重要になってきますのが資金供給オペ、これがどの程度実現できるかと。現在、資金供給オペの期間、一年未満ということになっております。実際に札割れを起こした場合に期間をどんどん長くしながらゼロ%の資金を供給していると。当然ながら、一か月のゼロ%の金利よりも一年のゼロ%の資金の方が魅力ありますから期間を延ばしていくと。じゃ、無理やり資金を供給するためにこの期間を一年未満から二年、三年と延ばしていくことはないんでしょうか。これはもちろん政策決定委員会のマターと思いますけど、こういった考えに関しまして福井総裁の考え方を是非教えてください。
○参考人(武藤敏郎君) 御指摘のとおり、金融機関の流動性減少という下で札割れが発生しておりまして、そういう事態の下にあるわけでございますけれども、まあいろいろの金融市場調節手段を活用することによりまして三十兆から三十五兆円程度という当座預金目標残高は現在維持できているということであります。現在のところ、この今御指摘のありました手形買入れ期間を一年超に延ばすという必要性はないというふうに考えております。
 今後、仮に当座預金残高目標を維持することが困難になった場合にそれをどう考えるのかという御質問かと思いますけれども、これは先ほど来るる総裁の方から御説明のありましたような今後の量的緩和運営にかかわる事柄でありますし、また、今後の経済・物価情勢あるいは金融市場の動向といったような、そういうデータの推移にもよるわけでございまして、そういうものを見ながら、今後、政策決定会合の場でこれも十分議論をした上で判断をしていくということになろうかと思います。
○大久保勉君 続きまして、いわゆるフォアグラ政策の副作用ということで、いろんな問題があります。
 一つは、先ほど申し上げましたように、利子生活者若しくは年金に影響すると。それ以外に、問題点としましては、いわゆる資産市場の過剰流動性発生の可能性、また為替の円売り介入、ドル買い介入と相まちまして、世界的な過剰流動性を日本銀行の政策がつくり出しているんじゃないかと、こういった懸念がございます。
 この点に関しまして、今月六日の政策決定会合でも議論されたと聞いておりますし、また二月二十八日の内外情勢調査会におきまして、福井総裁自ら、量的金融緩和の継続により、最近、信用スプレッドの縮小、イールドカーブのフラット化が行き過ぎていて、市場のリスクに対する認識が希薄化しているといった意味合いの発言をされております。具体的に解釈しますと、これは、信用スプレッドが縮小して、投資先に困った銀行、保険会社がREIT市場に資金を投入する、またアパート向けのノンリコースローンに投入する、実際これは行われております。こういった言わばバブルが発生しているんじゃないかと。
 また、このことを通じまして都市部に資金が流れ、都市の地価は上昇に転じていると。実際、これは、最近発表されました公示地価が大都市圏で底打ちが鮮明になって、また東京都心五区では地価が上昇に転じていると、こういった現象があります。
 これは景気をてこ入れするために重要なことだと思いますが、ところがこの政策によりまして、東京はいいんです、ところが地方の方は切捨てにならないか、こういった懸念がありまして、この辺に関しまして、現在の量的金融緩和による過剰流動性の発生の問題、若しくはもし発生していた場合に、東京と地方の影響、この辺りに関して日本銀行の御所見をお教えください。
○参考人(福井俊彦君) まず、量的緩和政策の効果の方を改めて確認さしていただきたいと思いますけれども、やはり消費者物価指数を基準とするこの約束に沿った量的緩和政策を堅持しているということの効果の面、効果の面としては、その潤沢な資金供給が金融市場の安定とか、あるいは緩和的な企業金融環境の維持という点に寄与し続けておりまして、民間の経済活動を金融面から支援していると、この役割はしっかり果たし続けているというふうに考えています。
 また、明確な約束と申し上げましたが、この約束があるということで市場金利が安定し、その下で企業が引き続き低利での資金調達が可能となる環境が整えられている。これからデフレ脱却へ向けて非常に大事な局面にあって、企業の前向きの行動、そしてこれからはペイオフ解禁を終えた金融機関の前向きの行動が平仄の合う形でいい効果を出していくように、この今の政策はより強い効果を示していくであろうと、こういうふうに考えています。そう申し上げました上で、日本銀行といたしましても、量的緩和については効果の面と副作用の面、常にその両面をよく点検しながら行動し続けてきているということでございます。
 今委員御指摘のとおり、様々なことをこれ点検し続けなければいけないわけですけれども、すぐ目の前に浮かぶことだけでも、家計等の利子収入が減っている、あるいは年金などの機関投資家の運用難が厳しく続いているというふうなことがありますし、短期金融市場での取引の減少とか市場機能の低下といった副作用の問題が現実に指摘されているわけですので、それがどの程度のものかということは絶えず私どもも気にしながら検討を続けているということでございます。
 そのほかにも様々なこと、金融市場全般として少し楽観的な空気が流れ過ぎていないかというふうなことは、これは日本だけでなくて、今世界的に一つの懸念材料になっているということでありまして、日本銀行におきましてもその点は今後とも注意深く見ていきますけれども、今御指摘になられましたような過剰流動性がいろんな面で問題を起こしていないか、これはむしろ世界経済全体としての共通の点検事項として今後ともチェックが繰り返されていくだろうというふうに思います。むしろ、この点につきましては、特に一次産品市況などへの影響等につきましては、流動性の問題もあるでしょうけれども、基底的には世界経済の高成長との関係ということも十分吟味しなければいけない点だというふうに思います。
 不動産価格の動きにつきましても、今後、将来に向かっては我々もなお入念にチェックしていかなきゃいけないというふうに思っておりますが、現状におきましては、日本においては不動産価格下落にようやく歯止めが掛かり始めているというふうな状況ではないかと。不動産価格の形成のされ方についても、バブル期とはもう根本的に変わって、やはり収益還元価格による不動産価格の認定ということが行われるようになってきておりますし、そうした価格をベースに様々な新しい取引が展開され始めているということでありますので、このこと自身は日本経済の将来にとって方向性は合っていると。それが行き過ぎたところまで行くかどうかということはこれからの重要なチェック項目だというふうに思っています。
○大久保勉君 続きまして、時間がありませんので次のテーマに行きたいと思います。
 金融危機終えん後の日本銀行の役割に関しまして是非とも教えてもらいたい点があります。特に、金融の検査、考査、こういった問題に関しまして、言わば金融庁の役割、日銀の役割、市場の役割、こういったことに関して質問があります。
 まず金融庁に質問しますと、金融危機回避又はペイオフ解禁に当たり、法制度の充実、預金保険制度の整備、そして金融庁における検査体制の充実がなされています。そこで、金融庁の現在の検査体制、また、その検査体制でカバーできない分野があるのか、日銀考査がないとカバーできないと、こういった点がありましたら御指摘ください。よろしくお願いします。
○政府参考人(西原政雄君) お答えいたします。
 現在、我々、金融検査をやっておりますが、体制整備に向けて日夜取り組んでいるところでございます。やはり新たな金融取引、そういったものもどんどん出てきておりますので、そういったことにも目を向けていかなければいけないと、こういうようなこともございまして、金融機関の業務の健全性と適切性、これを確保するという観点から、我々としましては、非常に厳しい定員事情ではございますけれども、検査体制の整備のためのいわゆる定員の確保、こういった点について取り組んでいると同時に、一方ではやはり新しい金融業務、こういったことについての専門家、これも中途採用をしていくというような対応等々を取って今やっているところでございます。
 そこで、金融検査とそれから考査、この点についてちょっと触れさしていただきますと、委員御案内のとおり、我々の検査と申しますのは銀行法等に基づいて行われるわけですが、信用秩序の維持あるいは預金者保護等々の観点から、各金融機関の業務の適切性あるいは健全性、これを確保するためにやっておるわけですが、リスク管理体制、そういったものの全般、あるいは法令等遵守体制、コンプライアンスということですが、そういったことの検証を行っているということでございます。
 一方、日銀の方で行う考査でございますが、これは日銀法に規定がございますが、取引先の金融機関との契約、これに基づいて行うと。それで、決済システムの安定を確保する等の目的として、言わば金融機関に対する最後の貸手機能の発揮といったような日銀の業務、これを適切に実施するためにこれを行っていると、こういうことでございます。その際に、銀行等の財務の健全性を確認しつつ、特に流動性のリスク、こういったことを中心にリスク管理の状況について調査するものというふうに理解をいたしております。
 そこで、今申し上げましたように、我々の検査というものと考査、これについては、法的な位置付けあるいは目的、それから検証の分野というのは必ずしも同一ではございません。そういうようなこともございまして、それぞれ完全に代替するということは、これは難しいのかなというふうには思っております。
 ただ、共通性のある検証項目、こういったものもございますので、こういった点については我々よく連携を取りながら、例えば検査、考査の実施時期の調整とかいった点で重複をなるべく避けるような工夫、こういったものをやっておるわけでございます。今後ともそういった点で意思疎通を図っていきたいと、こう思っております。
○大久保勉君 よく分かりました。
 それでは、日本銀行の方にお尋ねします。
 こういった金融庁の検査体制に対して、日本銀行は何を目的に考査をするのか。その場合に、現在百名の日銀考査に関する人がいらっしゃいます。その陣容を増やすつもりか、若しくは減らしていくのか。
 さらには、金融機関の立場から考えましたら、日銀考査はある、若しくは金融庁の検査あると、本当に効率的な市場でしたら一つの検査でいいんじゃないかと。また、重複する部分に関しましては委託するとか。
 日銀考査に関しましては、市場重視でしたら、格付機関の格付を利用しまして、やっぱり非常に格付が悪くなる若しくは市場で流動性危機等の個別の問題が発生すると、こういった場合にのみ考査をする、こういった効率化というのは考えることができないのか。この点に関しまして所見を伺います。
○参考人(稲葉延雄君) 日本銀行の考査に関しましては、先ほど金融庁の方からのお話もありましたが、決済の安定の確保を通じまして信用秩序の維持に貢献すると、こういう役割になっておりまして、その際に、その必要に応じて最後の貸手機能等を適切に発揮する、そのための手段として考査を活用してきているということでございます。言ってみますと、日本銀行が最後の貸手としてぎりぎりの判断をするときに、やはり日本銀行の目で金融機関の実態をしっかり認識し、その機能を適切に発揮するということが必要なんだろうというふうに思っております。
 そういうことで、今後とも考査を活用しながらやっていきたいと思いますが、先ほど金融庁からお話がありましたように、検査との比較において申し上げれば、流動性のリスクとか決済のリスクといった管理の体制をよく見るとかいう面でも大きな作業がありますので、必ずしも一元的にやるということはなじまないと思いますが、他方で共通の作業というのもございますので、これなどはうまく配慮しながら金融機関の負担軽減に配慮してやっていく必要があると思います。例えば、貸出し資産の査定などといったような面におきましては同じマニュアルに準拠してやるといったような作業、配慮が必要かと思っております。
 いずれにしても、そういうことで、日銀法に規定されているそういった日銀の役割を果たすために考査は不可欠な手段でありまして、それをしっかりやるということで日銀としての役割を果たしていきたいというふうに考えております。
○大久保勉君 これで終わります。ありがとうございました。
○委員長(浅尾慶一郎君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。
   午前十一時五十五分休憩
     ─────・─────
   午後一時開会
○委員長(浅尾慶一郎君) ただいまから財政金融委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、財政及び金融等に関する調査を議題とし、日本銀行法第五十四条第一項の規定に基づく通貨及び金融の調節に関する報告書に関する件について質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○西田実仁君 公明党の西田実仁でございます。どうかよろしくお願いいたします。
 午前中も様々な議論がございまして、私の方はまず日銀短観につきましてお伺いしたいと思っております。
 総裁からも、午前中、賃金につきまして下げ止まりという御指摘もございまして、これから上がっていくのではないかというような御指摘もあったと記憶しておりますけれども、まず、今回のこの日銀短観における労働市場、特に雇用判断DI、これを見ていくと、全産業ベースでバブル崩壊後初めてこの雇用判断DIが過剰から不足へと転じたということが非常に大きな特徴の一つかというふうに思っておりますが、まず総裁の方、この現下の労働市場の需給につきまして、こうした雇用判断DIを見ながら、どのような見方をされているか、お聞かせ願えますか。
○参考人(福井俊彦君) グローバル化が著しく進展しております先進国の経済の特徴として、景気が回復したりあるいは拡大してもなかなか雇用面の改善に過去と比べればつながりにくい、こういう特徴を引きずりながら動いていると思います。日本経済も全く同様でございます。
 現在の景気回復の局面におきまして、企業部門で生産が増え、企業所得が増え、そして次の企業投資が増えるという、この一つの好ましい循環メカニズムのほかに、もう一つは、やはり雇用が増え、そして雇用者所得が増え、消費につながるという、もう一方の循環メカニズムもしっかりしてくるということが非常に重要な要件であります。
 したがいまして、この後の点について私ども非常に注意深く状況を見守ってまいりましたけれども、少し後ればせではございますが、やはりこういった雇用面の改善、着実に進展し始めている。委員御指摘のとおり、短観の雇用過剰感というのはごく小幅ながら、約十二年ぶりだったかと思いますが、不足超に転じたというところに典型的に表れていると思います。
 雇用だけでなくて、雇用者所得の面でも明確に下げ止まったと、これからは緩やかに上がっていく可能性の方が強いと見ておりますので、現在の景気の踊り場状況を脱し、着実な景気回復につながっていく上の一つの重要な条件が今回の短観で、この場所において確認されているというふうに思っております。
○西田実仁君 今後についてでございますけれども、今御指摘の景気循環的な意味での雇用の需給の、まあ逼迫というほどではないでしょうけれども、過剰から不足へと転じたということは、循環面でもございますけれども、同時にその構造的に、生産年齢人口がこれから急速に、団塊の世代の引退ということも現象的にはあるわけでございますけれども、生産年齢人口の急速な高齢化ということを背景にした労働市場のこれまでとは異なる面もあろうかと思いますが、今後について、この労働市場の今後についてどのような見方を現在されていますでしょうか。
○参考人(福井俊彦君) 日本の労働市場は、ずっと以前の段階で大方が認識しておりましたその労働市場の硬直性という点は、実際、事態の進展の中で、意外に日本の労働市場は弾力的あるいは流動的な面があるということが次第に確認されてきたと思います。今後、人口動態の変化、特に労働力供給態様の変化ということが今後の日本経済の成長経路あるいはダイナミックス形成の上で非常に重要なポイントだと、御指摘のとおりでございます。
 高齢者に対しても様々な形で新しい労働機会が提供されていかなければならないということが一方であると思いますが、若年労働者に対しては、より生産性が上がるように、技術的な、あるいは、単に技術ではなくて、より広く知識、創造が可能になるようなイノベーションを身に付けるというふうな労働者教育ということが非常に重要になってくるというふうに思っております。
○西田実仁君 この労働市場の変化に加えて、物価を見る場合には特殊要因も見なきゃいけないだろうと思いますけれども、一つ、CPIが一部注目されているというか、そこに着目して金融政策を取っているわけでございますけれども、この特殊要因ですね、特に公共料金等の引下げがこのCPIに与えている影響、これについてはどのように見ておられますでしょうか。
○参考人(福井俊彦君) 最近では、委員御指摘のとおり、電力料金とか電話料金とかいうふうなところが言わば特殊要因という形でCPIを押し下げる要因になっております。
 特殊要因ということではございますけれども、これは規制緩和を背景とするものでございます。日本経済がこういったグローバル化進展の下での厳しい環境の中できちんと力を発揮していくために必要な規制緩和、その結果として起こる、従来硬直的であった物価項目が動くようになって下がるということは、これ全体を含んで実勢としての物価水準を我々は把握しやすくなったということだと思います。
 したがいまして、特殊要因だからといってこれをいたずらに除外して判断するというよりは、むしろこれを含んで実勢の物価の動きがどうかというふうに認識していくのが基本ではないかというふうに考えています。
○西田実仁君 そうすると、特殊要因であるからそれは省いて、この特殊要因分を除いて物価の基調がどうなっているかという見方はしていないということでしょうか、確認ですけれども。
○参考人(福井俊彦君) 物価全体の水準としての実勢を見る場合には、余り特殊要因だからといってこれを排除しない方がいいというふうに私は思いますけれども、刻々と物価の、変化という意味では、特殊要因が介在してきますと、そこで屈折が起こります。したがって、変化としての趨勢はどうかというふうな場合、それを見ようとするような場合には、取りあえず一時的な屈折をもたらす要因というのは除外をして、実勢としてのトレンドがどういうふうに変化しているかというふうに判断するのも一つの価値ある見方でありますので、その点では両様用いなければならないというふうに思っています。
○西田実仁君 この四月、今月二十八日には展望レポートが発表されるわけでございますけれども、短観以降のいろんな指標を加味しながら検討していかれるんだと思いますけれども、この展望レポートにおきましては、やはり、今、冒頭御指摘申し上げました労働市場が発するシグナルというものは大変重要ではないかと私は見ておりますけれども、総裁、いかがでございましょう。
○参考人(福井俊彦君) 昨日発表いたしましたけれども、この四月の末から私どもが発表いたします展望レポートにおきましては、これをカバーする期間が、単に二〇〇五年度だけではなくて、二〇〇六年度、これから二年度にまたがった展望を出そうということになりました。
 したがいまして、そういうふうな労働市場の構造的な変化も含むこれからの変化をきちっと織り込みながら、景気循環的な回復の動きがどうなるかということもしっかりとした土台の上に展望を描くことが可能になったのではないかと一応思っています。そういうふうに努力をしたいと思っています。
○西田実仁君 続きまして、午前中も議論ございましたけれども、札割れ、いわゆる札割れの意味するところにつきまして改めてお聞きしたいと思います。
 これ、総裁の言葉をおかりして、午前中のお言葉をおかりしますと、金融システム不安を内包したデフレーションというのが収まってきつつあるんではないか、だけれどもデフレそのものは続いていると、こういうお話だったと思いますが、札割れそのものについては量的緩和政策の限界と指摘する声もある一方で、その実態を見ますと、やはり個々の銀行や金融機関が市場で独自に資金を調達できるようになったと、いわゆる金融システム不安が払拭されたということを意味しているんでありましょうし、金融機関同士での相互不信が解消に向かって、不測の事態に備えてそれほど積まなくてもよくなったと、このように理解しているわけでございますけれども、こうした理解でよろしいんでしょうか。
○参考人(武藤敏郎君) 正に委員御指摘のとおり、札割れというものの背景には、金融システム不安の後退という状況の下で金融機関の流動性需要が減少している、金融市場に資金の余剰感が強まっていると、そういうことが背景だというふうに思います。
 したがいまして、そのこと自身は決して悪いことではなくて、むしろ金融システムをめぐる状況というものが大きく改善しているということの結果でもありますので、前向きに、そういう意味で前向きに受け取ることができるのではないかと思います。
 もっとも、その札割れというものがこの量的緩和の当座預金目標残高維持というものに対して何がしかの影響を与えるわけでございますけれども、ただ、その観点から見ましても、今のところこの量的緩和の三十兆から三十五兆円という維持には支障がないと、そういう状況であるというふうには認識しております。
○西田実仁君 そうすると、そうした金融システム不安からくる様々なデフレーションというものは払拭されつつあるという基調からしますと、これは、こうした札割れは今後も増えるというか、札割れが生じるということは、今の基調でいきますと今後もあり得るということでしょうか。
○参考人(武藤敏郎君) 今後の状況につきましては、今申し上げましたその札割れの背後にある金融システム不安の後退、流動性需要の減少というものがどのように推移していくかということに懸かっているわけでございますが、現時点で見る限り、基本的に改善の方向に向かっているというふうに考えておりますので、その意味では札割れの現象というものが、これは頻度なり、それから起こるタイミングというのもいろいろ、必ずしも常時起こるということではないわけでございますけれども、そういう状態は続くということが十分あるというふうに考えておくべきことであろうと思います。
○西田実仁君 この札割れ現象の本当の意味ということで今お聞きしたわけでございますけれども、一言で分かりやすく言えば、非常時対応の量的緩和政策というのはその解消の機会をつかみつつあるというふうに理解しておりますけれども、総裁はそれでよろしいでしょうか。
○参考人(福井俊彦君) 金融システム不安を内包したデフレないしデフレリスク、そういう局面が変わりつつあるということは確かでありますが、一方で、これから本当にデフレを脱却していくために大事な経済全体としての前向きの動きが十分強まるかどうかと。強まりつつあると思いますけれども、まだ十分でないということでありますので、ここは現行の枠組みは維持しながら、民間部門の動きをしっかりサポートしていく必要はまだ大きく残っているというふうに思っています。
 したがいまして、札割れ現象というものに対しては、場合によって何がしかの対応が必要になるかもしれないということではございますが、大量に流動性を供給し続けるという基本的なフレームワークは断固崩さないでデフレ脱却の目標を達していきたいと、こういう姿勢でございます。
○西田実仁君 では、午前中これも議論ございますが、量的緩和政策の功罪というのが当然あるわけで、功につきましては今いろいろお話しありました金融システム不安というものが払拭されてきたと、これは非常に一番大きなことだというふうに思います。
 一方で、その副作用につきましても様々な指摘も既にあるわけでございますが、まず具体的な数字としては、この日銀の国債保有残高の直近値をまず確認をさせていただきたいと思います。
○参考人(白川方明君) 三月末、本年三月末の国債の残高でございますけれども、九十九兆一千億円、概数でございますけれども、九十九・一兆円でございます。
○西田実仁君 まあ百兆円に迫りつつあると、こういうことだろうと思いますが、これも確認ですけれども、結果的にこの日銀法が禁じている国債引受けにこれがつながっているんじゃないかというような指摘もあるわけですけれども、これについてはそうではないという、どういう説明になるんでしょうか。
○参考人(白川方明君) 現在、日本銀行は物価安定の下での持続的な経済成長の実現を目指しまして量的緩和政策を実行しております。短期国債を含めまして、長期国債の買入れは、そうした目的を達成するために、日本銀行の自主的な判断と責任の下、金融調節の一環として円滑な資金供給を図るべく今行っているものでございまして、これは財政ファイナンスを目的とするものでは、これはございません。したがいまして、日本銀行が多額の国債を保有しているということが例えば財政法の趣旨に反すというものではこれは全くございません。
 それから、特に長期国債の買入れでございますけれども、これは中央銀行として先行きの金融調節面での十分な対応能力を確保するという観点から、日本銀行の長期国債の保有額が銀行券発行残高を超えない範囲でこれを実施しているところでございます。
○西田実仁君 三月末に日経新聞の「経済教室」にも須田委員が論文を書かれておりまして、危機対応モードを脱すべきときだという、脱すべきときというよりも、それを視野に入れるべきだという、そういう趣旨の論文を書かれておられますが、ここで量的金融緩和につきまして三点に着目をされて論文が展開されておりました。
 私の理解の範囲でまとめますと、三つの異常が今起きているということを指摘されたんだと思っております。一つは、今ございましたとおり、資産規模が非常に異常に膨らんでいると、日銀の資産規模が異常に膨らんでしまっていると。二つ目には、長期金利が異常に低くなってしまっていると。そして三つ目には、コール市場が異常に縮小してしまっていると。須田先生はそのように、特に三つの異常とか言っていませんけれども、私が理解した範囲で言いますと、この三つの異常が今起きてきていると。
 これをどう正常化していくのか、またそのときにどうコストを考えて、調整コストを中長期的にも見なければならないのかという御指摘だったかというふうに思っておりますけれども、一つ目のこの資産規模の異常な膨らみにつきましては今お話しいただきました。
 二つ目のこの長期金利というのは、いろんな意味合いありますけれども、私の理解では、将来の期待収益率というものを示している長期金利が限りなくゼロに近づいているということは非常に異常であるというふうに思っているわけでございますけれども、その背景にはこの短期資金の供給オペ期間が大変長期化する、こういう中で長期金利も限りなくゼロに近づいてきている。欧州なんかに比べるとかなり長いということも指摘されているとおりでありますけれども、こうした長期金利の異常な低さということは、やはり総裁、これは量的金融緩和政策の一つの副作用のゆがみの一つとして考えていいものなんでしょうか。
○参考人(福井俊彦君) 債券市場の動きを見ておりますと、御指摘のとおり、長期金利の水準がかなり低くなっている、それから国債とその他民間債、あるいは民間債の中でもいろいろな信用度の違う債券の利回り格差というものを見ましても、その格差が小さくなっている。まあスプレッドが小さくなっているという言い方をしておりますが、そうした特徴的な現象が今市場に出ていることは確かでございます。
 私どもの判断でございますが、今こうした相場形成あるいはスプレッドの動きを即異常な形成のされ方がされているというふうに即断はいたしておりません。まだ、それだけ日本経済の将来を多くの方がごらんになったときに、将来の期待成長率あるいは将来の期待インフレ率というものがそんなに高くない、むしろまだかなり低いんだと。したがって、そうした人々の多くの実勢判断というものを反映した相場形成という枠内にこうしたもろもろのイールドカーブの形成ないしはスプレッドの形成が行われているというふうに判断しております。
 私どもの量的緩和政策、特にこれをCPIが安定的にゼロ%以上まで続けるというこのコミットメントが一番期間の短い金利からやや長めの金利に至るところまで下方に抑止力を持っているということも確かでございます。それがずっと長い長期金利にまでどれぐらい影響が及んでいるかは必ずしも検証できませんが、ある程度長い金利にまで下方に抑止力を持っているということは確かでございますが、私どもが注意しなければなりませんのは、そうした、何と申しましょうか、市場の金利の形成のされ方の中に、市場関係者の心象風景として、つまり心の底で、やっぱり刻々と変化する経済の動きが着実にこの市場に表出していくという市場本来のビビッドな動きを、これを鈍らせるような何か過剰な安心感を与えてはならぬと。この点だけは今後ともよく注意していかなければいけないということでございまして、現在ただいまの金利形成が異常だというふうな判断は必ずしも持っていないんでございます。
○西田実仁君 今後につきましては、一つはアメリカの金利が非常に上昇傾向にあると。また、日本におきましても、その長期の金利が期待収益率を表すとすれば、今政府が取っておる政策が成長をしていくということを前提とすれば、人為的に金利を低くして、長期金利もまあ結果的に低く抑えていくということもかなり難しくなるのではないかということも考えるわけですけれども、いかがでございましょうか。
○参考人(福井俊彦君) 長期金利は、日本経済自身の将来の期待成長率、将来の期待インフレ率の変化を正直に表すでしょう。そのほかに海外の金利の変動の影響も受ける。長期金利はかなり連動性を持って動くところがございます。そういうことがございます。しかし、私どもが注意しなければいけないのは、そうした実勢に基づく金利の形成のほかに、人々の期待が乱れてリスクプレミアムが大きく付くことによって長期金利の形成にゆがみが生ずるということをいかにうまく避けていくかということだと思います。
 そういう意味では、日本銀行の金融政策姿勢、物の考え方、そして政策姿勢というものに対して、常に市場関係者に正しい理解を持っていただくということが大事でございますし、特に長期金利はそのベースに長期国債の利回り形成ということがございます。委員御指摘のとおり、日本におきましては大量の国債発行残高があるという状況ですので、財政規律が確固たるものであり続けるということがリスクプレミアムが不必要に大きく増大しないもう一つの非常に重要な欠かせない条件だというふうに思っています。
○西田実仁君 これも午前中に大久保委員からの御指摘もありましたが、今総裁が言われた市場に正しい理解をしてもらうということが非常に大事なわけですが、札割れが一時的に、まあ結果的に生じて、もうそれは技術的なものであるということがあって、その残高目標の下げは決して引締めではないんだという確認がたしかあったと思いますが、市場に正しく理解してもらうということになりますと、そういうふうに引締めだというふうに受け取ることもないとは言えないんじゃないかと。
 そこで、そうした残高目標の下げを引締めと誤解されないために、むしろ物価安定目標を設けた方がいいんじゃないかというような指摘もございます。当時、もう御存じのとおり、アメリカのCEAの次の委員長バーナンキさんはインフレターゲット論の急先鋒というか、ということでもありますし、またグリーンスパン議長も、来年六月でしょうか、退任後につきましては、分かりやすい指標で金融政策を取っていくという傾向にアメリカは今あるわけでございますが、今申し上げました正しい金融当局の、当局の金融政策の意図を市場に知ってもらうために量的緩和政策から物価安定目標に分かりやすく変えていくという、こういう提案は幾度となくされておりますが、改めてまた総裁にお聞きしたいと思います。
○参考人(福井俊彦君) 目先、量的ターゲットの引下げということを具体的に考えているわけではありませんので、ただいまの御質問には非常に答えにくいんですけれども、仮にそういう市場の流動性需要の実勢的変化を余りにも無視し続けることがかえって量的枠組みの堅持ということと矛盾してくるというふうな場合に何がしかの調整をしなければいけない可能性というのは否定できないと思いますが、それはあくまで日本銀行が積極的に流動性を切り詰めていくということではなくて、市場実勢の変化のうち、何がしかを後追い的に調整させていただくというふうな極めて受け身の、何といいますか、後ろ回りの措置だと、そういうことを明確にしながらやらなきゃいけないだろうということが一つでございます。
 それと同時に、足早の引締めということを感じさせるリスクというふうなことがもし御指摘のようにあるとすれば、将来にわたっての我々の政策経路ということをやはりより明確にしながらやっていく必要があるということは確かでございます。
 その場合に、インフレターゲティングというのがどうかというのは、これまた私どもの感覚からいきますと即座にはお答えしにくい非常に難しい問題でございます。我々は、将来にわたる政策経路について予測可能性を強める、そういう意味でのコミュニケーションのやり方の工夫ということはこれまでもやってきておりますが、これから将来にわたっても幾重にもその工夫は積み重ねていきたいと思っております。
 ずっと将来まで考えますと、インフレーションターゲティングというのは一つの選択肢かもしれませんけれども、今のところインフレーションターゲティングを入れるだけの諸条件が整いつつあるというふうには判断していないのでございます。もっともっと手前に様々な条件整備があるということで、今回も展望レポートのカバーする期間を一年から二年に延ばしたと。そういうふうに長い見通しの上に立って日本銀行がこの先の金融政策運営をどのようにしようとしているかということが、経済の見通しと我々の政策姿勢と両方重ね合わせてごらんいただけるようにしたいということでございまして、これは一例でございますが、今後ともこういうふうに我々の政策経路の予測可能性を高めていただくための工夫は重ねていきたい。将来、いずれかの時点で本当にインフレーションターゲティングが選択肢の一つとして浮かび上がるかどうか、今のところはまだ予断を許さないという状況だというふうに思っています。
○西田実仁君 最近、日銀のレポートでも、物価の予測をどうとらえるかという指標が諸外国と比較したレポートがございまして、拝読させていただきましたけれども、今総裁が言われたことは、将来の政策経路の予測可能性ということの条件整備がなされていないと。その具体的な条件整備の条件とはそういう指標類のことをおっしゃっているんでしょうか。何をおっしゃっているのか、ちょっとひとつ理解が足りないんですけれども。
○参考人(福井俊彦君) これまでも、例えば、もう端的な例は、CPIが安定的にゼロ%以上になるまで今の枠組みを続ける、しかもその安定的にゼロ%以上とは何かということは三つの条件に分解して御説明している、これらは一つの道具立てであります。さらに、そうした過程は、余り、経済が回復を続けても、物価上昇が起こりにくい経済という、そういう条件が続く限りにおいては、我々の金融政策の枠組みの変化に至る過程あるいは枠組みの変化に着手し始めた以降も余裕を持って対処できるという言い方で今までのところは御説明申し上げております。
 普通、金融政策というのは、何かの変化に対しては先取り的、予防的にやっていくというのが原則でございます。この原則とは逆に、余裕を持って対処するという言い方で、我々は何か慌てて先回りして皆さんを驚かせるような緩和修正措置をとるわけではないという言い方をしておりまして、これもまたある意味でコミュニケーションツールを一つ幅広くさせていただいているわけであります。
 将来の物価目標的なものを設けるかどうかということになりますと、我々としては、取りあえず消費者物価指数がマイナスの領域で動いているのをプラスの領域に持っていきたいと。中間目標かもしれませんが、非常に重要な目標で、この目標すら通過していない段階で先々のインフレターゲット的なことを掲げることに、実践としての金融政策を行っていく上のコミュニケーションツールとしては少し飛躍があるというふうにまだ判断し続けている状況です。
○西田実仁君 最後に、今総裁がおっしゃった、余裕を持って対応するということを言われました。これは大事なことだと思います。ただ、一方で、当然のことながら、余裕を持って対応したことによって調整コストがそれだけ高まると。こういうことも把握した上で余裕を持って対応していただき、メリットを大きくすることが必要になってまいります。
 そういう意味では、あえてお聞きしますけれども、余裕を持って対応した場合の調整に伴うコストにどういったものがあるのか、これ最後お聞きして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
○参考人(福井俊彦君) もう典型的なものは、やはり市場機能をある意味で封殺しながら量的緩和政策を続けているということであります。この犠牲は時間が、距離が長くなればなるほどやっぱり積み重なっていくだろうというふうに思います。
 そういう意味では、我々としては、早くこの量的緩和政策が枠組み修正ができるところまで実体経済を強くしていかなきゃいけない。したがいまして、金融政策はゆっくりなんですけれども、金融機関に対する対応は一挙に我々は姿勢の変化を危機対応から金融高度化支援というふうにモードチェンジをして、企業と金融機関の歩みの呼吸合わせが前向きにそろうようにというところから進めたいとしているわけであります。
 世界経済、先進国の経済を見ておりますと、やっぱり最近はインフレになりにくい経済になっているんですが、その割にやっぱり資産価格が早めに、まあ緩和された金融条件あるいは低めの金利に対して反応しやすい状況になっている。日本の場合はまだそこまで随分距離があると思いますが、やはり日本の場合にも将来的にはいわゆる伝統的なインフレ率と資産価格との間にギャップが生じないか、問題になるほどギャップが生じないかというふうなことをやっぱり注視していきたいと思っています。
○西田実仁君 終わります。
○大門実紀史君 大門でございます。今日は御苦労さまでございます。
 今日、中国の人民元についてお聞きをしたいというふうに思います。
 なぜ人民元かというと、ちょっと話すと長くなるんですけれども、お手元に資料をお配りいたしましたけど、各国の米国債保有高の推移です。この問題は何度もこの委員会でも予算委員会でも取り上げさせていただきまして、この前の予算委員会では民主党の峰崎議員も取り上げられました。つまり、要するに、日本が円高介入をする、それでドルを買う、で、外貨準備が増えてこういう米国債を購入すると、こういうことがずっと増え続けてきている問題ですね。これ、今日民主党の広野先生からありましたとおり、ドルが急落したら大変な為替差損を生んで、かつてそれで大損したことがありますけれども、結局は巡り巡って国民負担になりますから、そういうリスクがもう目の前にあるという問題でございます。
 これに関して財務省には何度も質問してきたわけですけれども、最近、ヨーロッパは、この載っておりますイギリスを除いて米国債から引き揚げ始めております。アジアは、引き続き東アジアは保有しているんですけれども、東アジアも外貨準備という点でいくとドルだけに集中しない方向に今なりつつあるという話も聞いております。
 そういう中で、二番目に米国債を持っている中国がこれからどうなるかと。中国も米国債から引き揚げていくということになると、何度も指摘しているように、日本がその分また買わなければいけない、買わされるというふうな状況になるというリスクがあるという意味で、その人民元の動向に大きく左右されると思いますので、その点をお聞きしたいと思うわけですけれども。
 せっかくの機会ですので、まず総裁、絶えず円高介入のためにドル買いやるわけですけれども、この円高というのは、かつての円高不況のときと違って、今随分いろんな環境が変わっていると思うんですけれども、そんなにセンシティブにすぐ円高介入しなきゃいけないというほど今円高というのは全体として悪いことなのかどうかですね。総裁のお考え、もし、お聞かせいただければと思います。
○参考人(福井俊彦君) 日本経済の力が強くなり、そして日本経済の運営あるいは政策運営に対する信認が高いという状況の下では円の国際的な評価が上がると。つまり、円高という言葉が本当にいいのかどうか分かりませんが、とにかく市場の評価として円が強くなるということは当然ある傾向ですし、そのこと自身は、国民的な努力の成果として経済全体が良くなっている、政策運営がいいということの結果ですので、好ましいことだということだと思います。
 実際、日本経済、過去数か年、趨勢を見ますと、緩やかな円高傾向は進んできているわけですね。最近油の値段が非常に上がっていますけれども、日本の通関輸入価格をドル建てと円建てで見ますと、円建てで見た場合の油の値段の上がり方は非常に少ない、それは要するに通貨高の好影響を受けていると。そういうふうに、通貨が高くなるということは何も悪いことばかりではないということは委員御指摘のとおりです。
 それから、個々の企業の関係から見ましても、従来のようにとにかく輸出オンリーというふうな企業はだんだん減ってきています。一つの企業が非常に輸出もしていれば輸入もしている。なぜ輸入しているかというと、中国を始め海外に生産拠点を設けて、そこに投資もし、結果としてそこから輸入していると。あるいは、そのほか、全く、中国その他アジアの企業から輸入しているというふうに、貿易関係もワンウエーではなくてボースウエーというふうに変わってきていますので、そして投資行動ということまで含めて考えますと、為替相場が変化した場合の影響というのは、従来のように単純に円高すぐ収益減というふうにはなりにくいところがあります。それもまた事実でございます。
 しかし、さはさりながら、やっぱり非常に短い期間の間に為替相場がいずれかの方向に大きく振れる、しかもその先の方向がいわゆるボラティリティーが増したということで乱高下を繰り返すということになりますと、いかなる態様のビジネスモデルを持っている企業にとってもやっぱり事業計画というものをきちんと立てにくいと。事業計画を立てたとおりに決算が出てこないというふうなことでは、やっぱりその企業の経営に対する評価というものがなかなか安定しないということになりますし、やっぱり経営上は非常に大きな問題だということになります。
 それは、積み重なると経済全体の、景気の動きにも不確実性を増すということになりますので、やっぱり過度の変動をなるべく避けるという点は世界共通の重要な課題と、したがってG7等でもしばしば真剣な議論が行われるというのはそういうところにあるんじゃないかと思っています。
○大門実紀史君 基本的に私もそういうことだというふうに思いますが、今財務省は、何といいますか、もう外貨準備巨額のを持っていますから、ドルが下がることそのものが外貨準備の目減りということで、もう買わざるを得ないと、ドルを買い続けなきゃいけないというような、自縄自縛といいますか、もうドル買いのわなにはまっているんじゃないかということを再三指摘をさせていただいてきたところですけれども、ちょうど、通告しておりませんけど、武藤副総裁、かつてその財務省を指揮してこられましたけど、今どういうふうにお考えですか、その円高介入については。
○参考人(武藤敏郎君) 今、日本銀行の副総裁ということでありますので、財務省のいろいろ施策に余りコメントを直接加えるのはいかがなものかなとまず基本的に思います。
 そういうことをお許しいただいた上で、先ほど総裁から為替についていろいろお話がありましたけれども、私は、この為替レートというものが経済のファンダメンタルズに沿っているということが大事なのであって、どのレベルが高いか低いかというのを直接議論するのは適切でないといいますか、いかがなものかなというふうに思っております。したがって、経済が強くなっていくに従って為替が変動するということは、これはマーケットにおいて通常起こり得ることでありますので、そういうことだと思うんですが。
 しかし、実際のマーケットはしばしば思惑とか、そういうことによってオーバーシュートすることが起こるわけでありまして、それが今度は逆に実体経済にマイナスの影響を及ぼすということは、これは何とか避けたいということかと思うわけであります。
 そういう意味で、今まだ我が国経済、少しずつ回復軌道に乗ってきてはいるわけですが、なお脆弱な状況の中で、仮に実体経済を反映しない急激な円高ということであれば、それは安定的な為替レートを維持するために介入というのは政策手段として許されているのではないかと。
 ただ、その結果、御指摘のように、いろいろ問題が起こるというのは事実でありますけれども、やはりその兼ね合いといいますか、安定的な為替レートの実現ということはやっぱり非常に重要なことでありますので、それとの兼ね合いにおいて、これは正に財務大臣において御判断さるべき事柄であろうと、そういうふうに理解をしております。
○大門実紀史君 そういう日本の状況が続いている中で心配されるのは、人民元がどうなっていくかということを心配しているわけですけれども、お手元の資料にあるとおり、中国は二番目に米国債を保有していて、これが引き揚げていくのかどうかということなんですけれども、外貨準備も中国は今日本に次いで六千百五十五億ドル、日本が八千三百五十二億ドルですから、世界で二番目の外貨準備を持っているわけですけれども、この中国の動向が、先ほど言いました、ヨーロッパも引き揚げていく、アジアも引き揚げていく、中国も引き揚げていく、日本が、アメリカが赤字を垂れ流しているわけですけれども、その穴埋めをさせられるということがますます強まるんじゃないかという点で、人民元の問題ですけれども、人民元というのはなかなか私もまだよく分からないところがありまして、分かりにくい通貨でありますけれども、基本的にドルペッグといって、ドルと連動させる、ドルに固定させるような、言ってしまえば固定相場制、ドルに対して固定相場制みたいなところであります。したがって、その中国がドルと元とのレートを維持しようとすると、どうしてもドルを買わなきゃいけないということが、中国当局の介入が続いて、先ほど言いました中国の外貨準備が積み上がり、米国債をこうやって買うというふうになってきたんだというふうに思います。
 その中国が、今人民元を切り上げるべきだというふうな話があちこちから、おととしですかね、アメリカのスノーさんですか、財務長官がいろいろ言及されてから特に話題になっておりますけれども、最近はちょっと鎮静化しているのかどうか分かりませんが、いずれにせよ、人民元切上げという話がかなり出ておりますし、私も去年中国へ行きまして、中国の財務省の方とずっと何日間か一緒でお話しすると、それは考えなきゃいけない方向ではあるということで、いろいろ今検討しているんだというお話もありましたけれども。
 まず、その人民元が、ちょっと時間がないのでかいつまんで質問させていただきますけれども、人民元が切り上がっていくとすると、当然、通貨と通貨との関係で考えますと、ドルを買わない方向に、人民元とドルとの関係でいくと、人民元が切り上がるとドルを買わなくていい方向に基本的な理屈として進むんじゃないかと思いますが、その辺、簡潔にちょっとお答えいただけますか。
○参考人(福井俊彦君) 委員御指摘のとおり、今の中国の為替制度というのは、厳密な意味での固定平価というよりは、一九九四年に採用された管理変動相場制、ごくわずか動いていいよということなんですが、実際には動いていないという意味で事実上の固定平価相場、一米ドルが八・三元というところで固定されている。その固定するために中国の政策当局は市場で大量の介入をしているということですので、これを少し動かすということになれば、その動かしていい部分だけ介入の必要性が下がると。したがって、その部分は外貨準備の積み上げ方が減るということは確かだと思います。
○大門実紀史君 ですから、切上げするかどうかというのも非常に難しい議論があるようです。
 いずれにせよ、単純な切上げだけやるといろんな副作用が起きると。例えば、中国の方にお聞きしますと、今投機マネーが相当中国に入っていると。人民元切り上がるだろうということを見込んでかなり入ってきていて、この間の外貨準備の半分は投機マネーじゃないかと言うエコノミストの方もいらっしゃるぐらいでございます。そうはいっても、中国当局も、単に切上げじゃなくて、為替制度そのものの柔軟化を考えているというふうな話も聞いたりしているんですけれども。
 具体的にいつごろからそういうことになるかという点でいくとすると、これは一つの私の勝手な推測で、御意見聞きたいんですけれども、九九年にアメリカとWTOの加盟交渉で、中国は二〇〇七年から外資の銀行に対して開放するといいますか、ということを約束していると思うんですけれども、外資系が中国に入ってくると、今のドルペッグ、固定相場というのはかなり、それだったら入ってこないという可能性もあったりして、かなり、二〇〇七年という約束らしいですけれども、二〇〇七年までには為替制度の柔軟化あるいは切上げも含めたそういう動きをしなければいけないような一つの目安になっているといいますか、そういう客観状況になってくるんじゃないかと思いますが、その辺は、総裁、どういうふうに見ておられますか。
○参考人(福井俊彦君) 介入によって固定相場を守っている状況から、介入を緩めて相場を少し動かすと投機マネーが誘発されやすいというのはおっしゃるとおりですね。投機マネーというのは、一体どこまで為替が動くものかということが分からない限りは限りなくアタックしてくる。したがって、中途半端に相場を動かし始めると、かえって投機マネーを呼びやすいということはもう当然だと思います。
 普通は必ず相場というのは経済の均衡点を求めて動くわけですから、市場関係者は相場が均衡点に近づきつつあると思ったら、それ以上の投機は絶対しないですね、もう自ら損をするようなものですから。ところが、中国の場合に、人民元を操作することによって市場が自ら均衡為替相場レートを見いだしやすい条件にあるかというと、そこがなかなか難しいんですね。WTOに加盟したといっても、中国経済の実態は国内的にはまだ多くの規制を残している。資本移動も部分的な自由化はしたといっても、まだ多くは不自由である。それから、金融システムもお金を最も有効に流すような機能度の高い金融システムになっていないとかいうふうに、様々なことがございます。
 したがって、今中国政府が本当に苦しんで懸命になって検討しておられることは、人民元を技術的にどうするかということよりは、むしろそうした国内の様々な規制、資本移動、金融システム、こういったものをいかに整備しながら、人民元を動かしたときに、その人民元の為替相場が言わばファンダメンタルズといいますか、均衡レートを見いだしやすいような条件を国内的にいかに整えるかということの研究の方がきついんじゃないかと思っています。
 今おっしゃいました二〇〇七年、外資系の金融機関に門戸を開放するというふうな話は非常に重要なファクターですが、それだけでは私はやっぱり、中国当局の検討対象としては一つの重要な課題でしょうが、それ以外のもっと広範囲な、規制緩和とか資本移動、金融システム絡みのことを総合的に検討しておられるんじゃないかと。したがって、タイミングについてなかなか中国当局がおっしゃりにくい状況というのは、そういう問題の幅の広さ、根の深さにあるんじゃないかというふうに思っています。
○大門実紀史君 いろんな条件がもちろん必要だというのは私も思いますが、一つは、やっぱり二〇〇七年が一つの大きな変化のときになるんじゃないかなというふうに思いますし、切上げも含めてですけれども、特にこのドルが急落したら為替差損を生むという点では中国も同じでありまして、ドルが一割下がると中国のGDPの三・五%に匹敵する為替差損が生まれるという試算もありますから、中国は米国債から、ドルから、ドルにこれからもっと入るんじゃなくて、引く方向になるのは、私、二〇〇七年に向けて間違いないと思うので、日本の財務省もそれに合わせて、さっき言ったきちんとした日本の判断を持たなきゃいけないときが来ているというふうに思います。
 最後に、そういう中国の、今、日本銀行と中国人民銀行でいろんな意見を交換をされていると、私は大変いいことだなと思っておりますので、もしお話しできる範囲で、どういうふうな意見交換されているか、最後にお聞きして質問を終わりたいと思います。
○参考人(福井俊彦君) 日本と中国の間には、公的部門、民間部門を問わず、年々この関係強化を図る動きが進められているということは、私ども金融政策を行います立場からも、周辺の環境が進んでいるということで好ましい状況だと受け止めています。
 日本銀行自身は、中国の中央銀行であります人民銀行と、もうかなり古い時期から、ずっと以前から親密な関係を持っています。ただ、単に心情的に親密というんではなくて、実務面を中心にした実務的な交流というものを非常に深めてきております。
 人民銀行、日本銀行、それぞれが金融政策とか金融機関に対する対応の仕方など、実際にどうやっているかというふうなレベルから、正確な情報を持ち合うということをやってきておりまして、これはもう大変長い歴史を持っています。三十年以上、まあそんなにはなっていないと思いますが、かなり長い間やっていると思います。実際、総裁以下様々なレベルでのより広い交流ということになりますと、もう三十年以上の歴史を持っています。
 そして、円と人民元とを交互に融通し合う日中間のスワップ協定というふうなものも、これは非常に特色あるものでございますが、持っていると。そして、人民銀行は東京に事務所を開いていますが、我々も北京に事務所を開いているというふうに、これはもう中央銀行間の関係としては、まず足らざるところがないぐらいに緊密な関係を結んでいます。
 したがいまして、為替相場をめぐる議論についても、日本の過去の様々な経験について中国は真摯にこれを知りたいというふうなこともあります。私どもも十分情報提供を差し上げていまして、非常にそういう意味から人民銀行は真剣に検討しておられるということは承知しております。
 だけれども、具体的にどういうふうな内容になっており、かつ、いつごろ、どんなことをやりそうなというふうなことは、これは政策的秘密でありますので、そこまではお互いにジェントルマンとしてタッチしないと、こういうことでございます。
○大門実紀史君 終わります。
○糸数慶子君 無所属の糸数慶子です。どうぞよろしくお願いいたします。
 まず、この三月に沖縄で開かれました第二回沖縄金融専門家会議について総裁にお伺いいたしたいと思います。
 昨年もこの委員会で福井総裁にお伺いいたしましたが、総裁には今年もテレビでこの会議に参加していただきました。その中で、地方銀行主導のCLO市場の創設や電子手形取引の実証実験などを取り上げられて、全国に先駆けた取組であると同時に、金融サービス業やあるいは金融市場の将来の発展において大きな意義を持ち得る試みと評価をいただいておりまして、大変心強く思いました。
 改めて総裁に沖縄金融専門家会議におけるその取組について御所見を最初にお伺いいたします。
○参考人(福井俊彦君) 委員御指摘のとおり、今年も第二回目の沖縄金融専門家会議、ビデオを通じて参加をさせていただきました。本当は今年こそ現地にお訪ねして参加したかったわけですけれども、なかなか公務が許してくれませんでかないませんでしたが、参加をさせていただいて、私は非常に喜んでおります。
 今御指摘のとおり、振り返ってみますと、第一回の会議では、グローバル化、金融イノベーションの潮流にマッチして沖縄の地域特性も生かし得る金融サービスの可能性を探るということで数多くの提言がなされたと。今回の会議では、これらの提言がごく短期間のうちに、驚くほどの速さと私は思っておりますが、具体的なアクションとして結実しようとしている姿が示されたと。沖縄のスピード感というのを私は強く感じました。
 今おっしゃいましたとおり、全国版のCLO市場の創設とか電子手形取引の実証実験というふうなレベルまでも進んでいまして、いずれもこれは全国に先駆けた取組だということでございます。金融サービス業や金融市場の将来にとって大きな意義を持ち得る試みだというふうに思っています。
 今後、金融高度化支援ということで日本銀行は更に全国的な金融機関の支援をしていきたいと思っておりますけれども、沖縄で先進的に進められていること、実務的に更なる大きな展開を示していかれることを期待しております。
 IDBの総会が行われて、私も沖縄を訪問することになっておりますが、時間の余裕をなるべく見いだして現地をちょっと訪問してみたいなとも思っております。
○糸数慶子君 ありがとうございました。
 IDB会議は世界四十六か国から参加ございますので、是非お待ちをしたいと思います。
 今総裁がおっしゃいましたように、この新しい取組が成果を上げつつある中で、沖縄の実態的な経済、金融面を見ていきますと、まだまだ十分でない部分があります。総裁も新しい地域活性化、あるいは金融活性化のモデル、沖縄モデルとおっしゃっておられますし、その萌芽が見えつつあると言っても過言ではないということもおっしゃっていらっしゃいますが、残念ながら、いまだにその萌芽が見えつつあるという段階にとどまっています。
 実は、昨年、私が質問いたしました際にも、総裁はシーズを作り出していくという言い方をされましたが、その種から芽が見えつつあるというのであれば少しは進んだ方向に行っているかもしれませんが、いまだに実を結ぶまでには至っておりません。
 今後、沖縄で実態的に経済、金融が活性化していくために更に何が必要なのか、日銀の御協力を是非とも今後ともよろしくお願いをいたしまして、ペイオフについてお伺いしたいと思います。
 ペイオフ、今回の全面解禁に際しましては、一部に地域金融機関の健全性の問題と併せて地域金融機関の預金シフトを懸念する声も識者からは示されましたが、また、破綻が懸念されたりあるいは健全性に対して疑問のある地域金融機関からの預金流出が進むといった形で地域から預金が流出してしまうという指摘もあったわけですが、実際のところはどうなのでしょうか。
 私の地元沖縄では、預金は堅調な伸びを示しており、ペイオフ全面解禁を迎えた動向でも、投資信託などの預り金資金へのシフトや決済用預金への預け替えが若干増えているものの、全体とすれば落ち着いた動きだというふうに見られています。
 このような動向について、地域によって違いなどはあるのでしょうか。地域別に見た場合の預金動向について、どのように判断されていらっしゃるのか、お伺いいたします。
○参考人(稲葉延雄君) お答え申し上げます。
 ペイオフ解禁後の預金動向でございますけれども、全国的に見まして銀行あるいは信用金庫等の預金動向でございますが、四月の上旬という時期、ペイオフが解禁されました四月の上旬という時期は若干預金が引き出される、例年そういう時期に当たっております。これはまあいろんな資金需要で引き落とされるわけですけれども、その動きは大体例年並みの姿を示しておりまして、これは地域別に特に違いがあるという状況ではございませんで、特段預金の動きに特段な変化はないということでございます。また、個別金融機関の間の資金の大幅な移動とかあるいは業態の間の資金の移動というのも、全国見てみましたが、さして大きな動きになっているという状況ではございません。
 投信とか、いろんな預金以外の資金運用の動きというのは少しずつ活発になってきていますが、また金融機関自身も、顧客のニーズに合わせたサービスということで、こういった商品の販売等にも努力をしてございますが、これが、単に金融機関が心配だからといってそちらの動きに資金がシフトしていると、そういう状況ではなく、むしろこれからは運用の多様化という形で出てくるんではないかというふうに思っております。
○糸数慶子君 ありがとうございました。
 次に、総裁が先日の当委員会の説明の最後に触れられましたが、平成十七年度から五年間の中期経営戦略を見ましても、地域に根差した中央銀行サービスの充実という戦略が示されています。この中では、地域に根差したサービスの提供という観点も重視しながら、現在の支店、事務所網を有効に活用して、各種のサービス提供等それぞれの地域に貢献していくというふうにされています。
 日本銀行の地域への貢献というのはなかなか見えにくい部分がありますし、昨年度までの業務運営方針では余り触れられていませんでした。地域経済報告を発表されるとも聞いていますが、新たな地域への貢献として具体的にどのような取組をされていくのか、お伺いいたします。
○参考人(福井俊彦君) 今御指摘いただきましたとおり、今回から新しく始めました中期経営戦略、その中で八つの重要な戦略を挙げておりますが、その一つが地域への貢献ということでございます。
 私ども、全国に本支店、事務所、その拠点を構えておりまして、現地で、金融機関だけではなくて、多くの事業会社、それから地方公共団体の方々、そのほか一般庶民の方々ともコミュニティー的なネットワークを形成させていただいております。私も支店長を経験しておりますが、本店で仕事をしております場合に比べて、地方におきましては本当にコミュニティーの一員として受け入れていただいて、金融だけではなくて、様々な地元での新しい、何と申しますか、発見といいますか、将来につながる新しい価値の発見みたいなところに参加をさせていただいて、これを組み立てていくのに金融面からどんな知恵を出していけばいいかというふうなことでいささかの貢献をさせてきていただいているということでありますが、こうした動きをこれからの時代に向けて一層強化していこうということであります。
 沖縄におきましても大澤支店長は恐らくそういう気持ちでいろいろ努力をしていると思いますが、こういった動きを全国的に展開したい。そして、地域経済報告という新しいレポートを発表して、その中で地域ごとの経済の特色が分かるようなレポートを出して、全国的な日本経済一つの動き、それと同時に地域ごとの動きというのが分かるようにしていきたいというふうに思っております。何をすればいいかということは、むしろ地域のコミュニティーにまず我々が溶け込んで、地域の方々から本当に何がしたいんだという気持ちを吸い取らせていただきながら我々のできる支援を差し上げていきたいと、こんなふうな仕組みでございます。
○糸数慶子君 ありがとうございました。
 地域のそのコミュニティーの一員ということでありますならば、大澤現支店長も前内田支店長も大変沖縄には貢献をしていらっしゃいますし、例えば沖縄の文化面での、三味線を弾いて歌を歌われたり、あるいはまた、もちろんそれが直接日銀のお仕事だとは思っておりませんけれども、コミュニティーの一員として大変いろんなところで活動していらっしゃいます。内田支店長は沖縄の金融特区に関する著書もありますし、そういう意味では大変な貢献をされたというふうに高く評価いたします。
 次は、コンプライアンスについてお伺いしたいと思います。
 これは、コンプライアンスに関して一つ気掛かりな点を申し上げたいと思います。
 例えば、平成十七年度の業務運営方針を見ますと、コンプライアンス会議については、「同会議の下で、個人情報保護法に基づく適切な情報管理等に関する体制の整備・充実を図る。」とされています。しかしながら、日銀のコンプライアンスの問題ということであれば、昨年の十一月、十二月に発覚した新札のすり替え事件についてもしかるべき対応を定めるべきではなかったでしょうか。これは少なくとも日銀のコンプライアンスの問題として、運営方針に現場におけるコンプライアンス確保のための措置に関する記載がないことは納得がいかないのですが、いかがでございましょうか。
○参考人(小林英三君) ただいまお話のございました昨年十二月におきます銀行券の不適切な取扱いということにつきましては、私ども中央銀行の立場といたしまして誠に遺憾なことでございまして、改めて深くおわび申し上げます。
 その件につきましては、関係者につきまして厳正に処分をするということをやっておりますし、また再び、そういったことが二度と起こらないようにということで、昨年十二月の段階におきまして、銀行券の取扱部署の事務処理だとか監督体制の見直しあるいは研修の充実といったようなことを骨子といたします再発防止策を取りまとめまして発表したところでございます。
 若干具体的に申し上げますと、改めて支店の幹部に対しまして規律ある業務運営の徹底を指示するということを行いますとともに、銀行券の取扱関係者に対しまして私物現金を厳に持ち込まないようにというようなこと、あるいは問題のある取扱いを具体的に整理して周知徹底するというようなこともやっております。また、その取扱いの状況につきましては、私どもの検査部署におきまして検査で入念にチェックをしておりますほか、コンプライアンスに関する職員の職場相談窓口というのも新たに設置いたしまして、広く職員からの相談を受け付ける体制も整備したところでございます。また、外部の専門の先生を招くなどいたしまして、職員全般にわたりましてコンプライアンスの研修も実施しております。
 こういうようなことを行いながら、私どもも今度の、ただいま先生のお話のありました中期戦略におきまして、規律ある組織運営ということで、この中期戦略上のこれを基本理念ということにいたしまして、再発防止策について継続的に取り組んでまいりたいと、このように考えております。
○糸数慶子君 この問題に関しましては調査が不十分であったのではないかと思います。過去にも同様のその事件があったにもかかわらず、それにふたをしたのではないかとの指摘もあります。また、その処分の軽さについて、刑事告発を含めて対応すべきであったとの声も聞かれます。
 真に国民に信頼される日銀を確立していただくためには、やはり過去のうみはしっかり出す、反省すべきは反省し、将来に向けた適切な対応体制を準備することが重要だというふうに考えます。今のその後の取組を伺いまして、是非ともそのようなことを進めていただきたいと要望いたします。
 次に、組織改革などの各種課題への取組について伺います。
 今回の中期経営戦略を見ますと、新たな戦略の下で各種の組織改革にも取り組まれているようでございます。福井総裁は、就任以来、組織活性化に向け各種の取組を展開されておられますが、今回新たな中期経営戦略にも入っておりますが、信用秩序維持政策を担当するセクションの整理統合や新たな業務調整会議、コンプライアンス会議を設けられるといったその取組について、これらの組織改革のねらいをお伺いいたします。
○参考人(武藤敏郎君) 日本銀行は中期経営戦略を推進するために、御指摘のような組織改編を行うことといたしました。
 まず第一は、この四月に業務調整会議とコンプライアンス会議という二つの会議を設置したことであります。業務調整会議は、この日本銀行の戦略の推進あるいは経営資源の配分といったような課題につきまして、とかく組織縦割りというその枠の中にとどまりがちなという問題がございますので、積極的に組織横断的な対応ということを検討、推進していこうというものでございます。コンプライアンス会議は、今もちょっと話題になりましたけれども、規律ある組織運営というものの実現に向けまして、法令遵守と公正な業務遂行の徹底を図るための会議でございます。
 第二は、この七月を目途に信用機構局と考査局を統合いたしまして金融機構局というものを新たにつくるということであります。日本銀行は、金融システム面での対応を、御承知のような金融システム不安ということを背景として、危機管理重視、危機管理モードといいましょうか、そういう対応をしてまいりましたが、ペイオフ全面解禁を契機といたしまして、これからは公正な競争を通じた金融の高度化支援、平時の支援に切り替えていくということでございます。そういう意味で、金融機構局というものを中心に推進していきたいというふうに思っております。
 第三は、やはり七月を目途に新たに決済機構局というものを設置することとしております。我が国の金融市場あるいは金融ビジネスというものの将来を切り開いていく上で、これからますます金融システムの高度化あるいは災害時の業務継続、また最近偽造紙幣でありますとかキャッシュカードの問題とか、いわゆる通貨・金融セキュリティーの問題というのが注目を浴び、重要性が増しておるわけでございます。こういう課題に積極的に取り組んでいくために決済機構局というものを創設したいということであります。二局を統合して一局を新設するということでございますので、局の数は増えることはございません。
 これらの新しい組織を活用して、中期戦略をしっかりと推進していきたいというふうに思っております。
○糸数慶子君 ありがとうございました。
 ほかにもまだ通告をいたしておりますが、時間の関係もございますので、また次のチャンスにお伺いをしたいと思います。
 以上で終わります。
○委員長(浅尾慶一郎君) 本件に対する質疑はこの程度にとどめ、本日はこれにて散会いたします。
   午後二時八分散会