第164回国会 外交防衛委員会 第7号
平成十八年四月四日(火曜日)
   午前十時開会
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   委員の異動
 三月三十日
    辞任         補欠選任
     喜納 昌吉君     白  眞勲君
 四月四日
    辞任         補欠選任
     遠山 清彦君     西田 実仁君
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  出席者は左のとおり。
    委員長         舛添 要一君
    理 事
                浅野 勝人君
                山本 一太君
                榛葉賀津也君
                柳田  稔君
                高野 博師君
    委 員
                愛知 治郎君
                岡田 直樹君
                金田 勝年君
                川口 順子君
                小泉 昭男君
                福島啓史郎君
                浅尾慶一郎君
                犬塚 直史君
                今泉  昭君
                佐藤 道夫君
                白  眞勲君
                西田 実仁君
                緒方 靖夫君
                大田 昌秀君
   国務大臣
       外務大臣     麻生 太郎君
   副大臣
       外務副大臣    金田 勝年君
   大臣政務官
       防衛庁長官政務
       官        愛知 治郎君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        泊  秀行君
   政府参考人
       内閣府政策統括
       官        東  良信君
       外務大臣官房審
       議官       長嶺 安政君
       外務大臣官房参
       事官       佐渡島志郎君
       外務省欧州局長  原田 親仁君
       外務省中東アフ
       リカ局長     吉川 元偉君
       財務大臣官房審
       議官       加藤 治彦君
       国税庁調査査察
       部長       松川 忠晴君
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  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○所得及び譲渡収益に対する租税に関する二重課
 税の回避及び脱税の防止のための日本国とグレ
 ートブリテン及び北アイルランド連合王国との
 間の条約の締結について承認を求めるの件(内
 閣提出)
○所得に対する租税に関する二重課税の回避及び
 脱税の防止のための日本国政府とインド共和国
 政府との間の条約を改正する議定書の締結につ
 いて承認を求めるの件(内閣提出)
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○委員長(舛添要一君) ただいまから外交防衛委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 去る三月三十日、喜納昌吉君が委員を辞任され、その補欠として白眞勲君が選任されました。
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○委員長(舛添要一君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 現在、本委員会に付託されている条約の審査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、政府参考人として内閣府政策統括官東良信君外六名の出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(舛添要一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
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○委員長(舛添要一君) 所得及び譲渡収益に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とグレートブリテン及び北アイルランド連合王国との間の条約の締結について承認を求めるの件及び所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とインド共和国政府との間の条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件の両件を一括して議題といたします。
 両件の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○山本一太君 まず、日英の租税条約について御質問をさせていただきたいと思います。
 我が国が今までいろんな国と締結した租税条約、たしか四十五か六だったと思いますし、国でいうと五十か国を超える範囲をカバーしているというふうに記憶をしております。これは経済のグローバル化の進展に伴って、国際税制の分野でも新しい国際社会の流れに対応する調整が必要だと、こういう中で、今、日本政府としてもこの租税条約の改正とかあるいは新しい租税条約の締結に取り組んでいるというふうに理解をしております。
 改正するにしても、随分古くて、一部新しくしなきゃいけないところもあるし、もう全部やめて新しく締結しようというところもあるんですが、いずれにせよ、基本方針というのは、投資所得、投資収益、投資所得でしょうか、投資所得に対する源泉地国の課税を大幅に軽減をすると。これは恐らく手数料とか配当とか利子とか、そういう関係だと思いますが、これを軽減することによって日本と租税条約を結んでいる国との間の投資交流を促進をしようと、こういう基本方針で日本政府はこの問題に取り組んでいるというふうに理解をしております。
 新しい条約でいうと、たしか二〇〇四年にアメリカとの間で結ばれた条約が最初だったと思いますが、今回のイギリスとのこの新しい租税条約の締結というのは二番目になると思うんですが、まず最初に、今回の日英租税条約の意義について簡単に御答弁を求めたいと思います。
○政府参考人(原田親仁君) ただいま先生御指摘のとおり、現行の日英租税条約は、一九七〇年に発効いたしまして、その後、八〇年、一部改正がございましたけれども、相当の期間が経過しているということで、日英両国間の緊密な経済関係の現状にそぐわなくなってきております。また、二〇〇三年には日米新租税条約が署名されたことを受けまして、日英間においても一層の経済関係の緊密化を図るため現行条約の改正が必要になっております。
 お諮りしている本条約は、現行条約の内容を全面的に新しくするものでありまして、日英両国間の緊密な経済関係を反映して積極的に投資交流の促進を図るため、配当、利子及び使用料の支払に対する源泉地国課税を大幅に軽減することとしまして、特に使用料、一定の親子間配当及び一定の主体の受け取る利子については源泉地国免税としております。また、こうした減免措置の拡大と併せて、租税回避の防止のための措置をとることとしております。
 この条約が締結されることによりまして、両国間の二重課税の排除、相手国における課税関係の明確化、両国の税務当局間の協力体制の整備等を通じて日英両国間の投資交流が促進され、両国の経済関係が一層緊密なものになることが期待されております。
○山本一太君 租税条約が結ばれて投資所得に対する源泉地国の課税が大幅に軽減されるということになると、大体こういう特典が出てくると必ずこれを悪用しようとする人々が出てくるのが世の常だと思うんですが、私は、国際税制専門家じゃないんですけれども、とにかくその租税条約とかいう話を聞くと、もうこの間のホリエモン、ホリエモンじゃない、失礼しました、ライブドアの堀江社長の事件じゃないんですが、複雑な仕組みを使って何か資産隠しをするんじゃないかとか、いわゆる租税回避とか、タックスヘーブンとか、そういうことがすぐ連想されてしまうんですけれども、この条約の中にこの特典の濫用みたいなものを防ぐ措置、条項があるのか、あるとしたらその中身はどういうものなのか、これも簡潔に御答弁をお願いします。
○政府参考人(原田親仁君) 先ほど御答弁したとおり、この新条約の場合、投資所得に対する源泉地国課税を大幅に減免したということから、日英以外の第三国居住者が条約の特典を濫用する可能性が増大すると予想されます。
 このため、源泉地国課税を大幅に減免した日英新租税条約では、日米新租税条約と同様に、一定の要件を満たす相手国居住者、すなわち個人、政府、上場会社あるいは公益法人などですが、に限って条約の特典を与えることとしました。これは第二十二条で規定しております。
 また、第三国居住者が日英いずれかの締約国において設立したペーパーカンパニーを介して条約の特典を濫用する取引を行った場合に、当該取引にかかわる投資所得については条約特典を与えないことにいたしました。関連の条項として、十条、十一条、十二条あるいは二十一条がございます。
○山本一太君 租税条約の目的というのは、基本的に言うと、国際的な二重課税を回避するとか、あるいは経済的、人的交流を促進するとかいうことなんだと思いますが、特に近年は、今おっしゃったようないわゆる租税回避、国際的な租税回避とか脱税行為ですかね、こういうものを防止するという重要な役割もあるということなので、いわゆるその特典の濫用についての手当てというのは、是非きちっとまた対応していただきたいということだけ申し上げておきたいと思います。
 もう一本、インドとの租税条約、こちらは改正議定書だったと思いますが、そちらの方についてもちょっと一つ御質問させていただきたいと思います。
 このインドとの条約も、たしかかなり古くて十何年ぐらいたっているということで、これは新しい条約じゃなくて古い部分を手直しをするということで、改正で対応するということになっているようなんですけれども、インド経済は大変な目まぐるしい進展を見せておりまして、特にIT産業なんかは大変な伸びを示しているということで、私がお聞きしたいのは、このインドとの租税条約の中の大きなコンポーネントの一つが、例のみなし外国税控除ですか、これの廃止ということなんですけれども、このみなし外国税控除は、簡単に言うと開発途上国に投資が行きやすくするということなんだと思うんですが、すなわち企業とか投資が入りやすくするための、開発途上国に、環境整備をするための控除というふうにとらえているわけですが、今回、このインドとの租税条約改正で、このみなし外国税控除ですか、これを外す理由はインドが発展してきたからなのかどうなのか、そこの背景についてこれも簡単に御答弁をいただければと思います。
○政府参考人(加藤治彦君) 御指摘のとおり、みなし外国税額控除、これは条約の相手国が租税を優遇すると。外国税額控除というのは、基本的には、我が国の企業が海外で所得を上げようが国内で所得を上げようが、とにかく居住地国である我が国が基本的な課税権を行使するというのが原則です。
 ただ、外国で一回、源泉地で租税を納税している場合には、二重課税の調整ということでその分は本国で納めることを免除する、これが外国税額控除の趣旨なんですが、このみなし外国税額控除は、実は、今先生御指摘のように、具体的なある国で、本当は普通だと法人税を取るんだけれども、投資優遇のためにその企業からは法人税は取りませんと。そうすると、反射的に取らない分は本国の課税権が生きてくると。それを相手国に協力して、相手国の投資促進を支えるために支援するということで、自国の課税権の行使を制限しているわけです。
 我が国は、二国間のいろんな関係を総合的に考えて、やはり相手国のそういう投資促進・企業立地政策を支援する必要があると総合的に判断した場合にはこの制度を導入しております。ただ、この制度自体は、最終的にやはり自国の課税権を相手国の政策のために制限を掛けていくということですから、やはり本来の租税の在り方として好ましくない。OECDなんかでも、この制度についてはやはり限定的に考えるようにというのが主流でございます。
 で、そういうことを考えて、ただ、これはやはり是々非々で個々の実情に応じてきちっと議論をしていくわけですが、今回インドとの関係においては……
○山本一太君 簡潔にお願いします。
○政府参考人(加藤治彦君) はい、失礼しました。
 インドとの関係においては、やはり総合的な経済交流、それから我が国の、逆に言えば我が国の国内の企業立地の問題等も総合的に勘案して、今回はインドとの関係においてはこの制度を存続する必要がないという判断に至ったものでございます。
○山本一太君 そうだとすると、この今回の控除の廃止というのは、インドが経済発展を遂げて、いわゆる今までのようなシステムから脱却しつつあるという理由でやるというわけではないということですね。
○政府参考人(加藤治彦君) インドの御判断、これは条約交渉の結果でございますから、インド当局の御判断の中にどういう部分があるかというのは実は完全に熟知しているわけではございませんが、基本的にはインドがこの考え方で合意したということの背景には、インド側にそういう認識もあったのではないかと考えられます。
○山本一太君 分かりました。
 私の質問時間、あと七、八分しかないんですが、この二つの租税条約の件を少し離れまして、日中関係について、外務大臣に幾つか御質問をさせていただきたいと思っています。
 大臣御存じのとおり、先般、先月のたしか三十、三十一辺りだったと思いますが、橋本元総理を団長とする日中友好七団体が北京を訪問したと。で、この日中友好七団体が胡錦濤国家主席、小泉総理とは相当長い間会っていないんですけれども、この胡錦濤国家主席と会談をしたと。その席で胡錦濤国家主席が、A級戦犯を合祀している靖国神社に日本の指導者たちが再び参拝をしなければ、日中首脳会談をいつでも行う用意があるというふうに発言をされました。この件について、麻生大臣、あちこちメディアでは御発言をされていますが、改めて委員会の席で、これについてどう見ておられるか、大臣の見解を伺いたいと思います。
○国務大臣(麻生太郎君) 胡錦濤さんが、少なくとも訪中をされた日中友好七団体のときに関して、まあその点がやたら、今また山本先生が言われた部分が多くメディアを飾りました。それは事実です。しかし、同時に日中友好の重要性というものについても語っておられるというのも事実でして、日中関係の改善に向けた姿勢はきちんと出しておられるという点も、これほとんど書いてありませんでしたけれども、これも事実であります。
 しかし、今回の発言の中で、日中関係の改善はこれはもうすべての責任が日本だけにあるかのごとき発言は私どもとしては受け入れることはできないと、そう思っております。少なくとも、両国の指導者というものが問題点を解決するためには、会わないというんじゃ先に進みませんから会う、その上でどうするという話になっていくのが基本的な考え方だと、私は基本的にそう思っております。
○山本一太君 私も大臣の意見に全く同感でして、まあ靖国神社の問題は中国側にとっても極めて政治的に難しい重要な問題だとは思いますけれども、靖国神社の問題一つがあるから首脳会談をやらないと。一つの問題で首脳会談のハードルにするという国はやっぱり余り見られないんじゃないかという気がしております。
 そこで、これに関連して、胡錦濤国家主席の指導者たちという言葉は、これは当然ポスト小泉の有力候補者の方々に向けられていると。当然、麻生大臣もそのお一人になっておられるわけですけれども、私は昨今、特に、中国政府から招請をされる場合もあるし、自分からむしろ働き掛けて行く場合もあるとは思うんですが、中国に政府とか党の要人が次々と訪れていると。で、私はこれは余り適切ではないというふうに思っています。
 それはなぜかというと、胡錦濤政権は、もう胡錦濤政権の政府高官が何名かはっきり言明をしているように、小泉政権下での日中関係の修復というものはほとんど見限っている、あきらめているんだ、我々はポスト小泉の指導者とビジネスをやるということをはっきり言っていると。さらには、六か月以内に日本の次の総理を決める、ポスト小泉の総理を決める、実質的には、総裁選挙が行われるという状況の中で、中国政府が現政権とはビジネスをしないと言っているにもかかわらず、いろいろ日中関係を心配して行かれる、そういうお気持ちなのかもしれませんが、行って、今回のように、とにかく靖国参拝は困ると、次の指導者は靖国参拝をしないでほしいということを言われるということは、例えば、行かれている方々にそういう気持ちがなくても、よっぽど気を付けないと分断作戦に引っ掛かると。
 それは靖国も日中の外交ゲームの一つだとすれば、高度な、やはり私はこれを思うつぼ訪中というふうに呼んでいるんですけれども、麻生大臣は、外交政策の面から見て、こうやって今の時期にどんどん政府とか党の幹部が行かれるということについてはどういうふうに思っておられるか、率直に御意見を伺いたいと思います。
○国務大臣(麻生太郎君) 日中友好というのは、やっぱり日本にとりまして最も重要な二国間関係の一つである、はっきりしていると思います。したがって、いろんなレベルの方々がいろいろ努力をしていただくというのは誠に喜ばしいことなんであって、上が避けているからみんな下も避けようとか、上が会わないから下も、こっちも会わせることがないとかいうようなものよりは喜ばしいと思っております。
 しかし、御存じのように、今言われましたように、これは、基本的には友好のために国益を損なうというのは順番が違っておると思います。したがって、日中共益、共通の利益、日中共益でないと具合が悪いんだと思います。したがって、日中間の友好関係が促進すると同時に、日中両国の国益が拡大する、促進されるという面をおなかに収めて対応するというのが肝要だと思います。
○山本一太君 率直なお答え、ありがとうございました。
 大臣、私は、日中関係を今考えるときに、よく昔使われた対中政策におけるタカ派とかハト派とか、そういう極めて単純な色分けは適切じゃないと今思っております。いろいろ国際、戦略的国際協調主義者とかニューリアリストとか、適当な言葉を、適当じゃありませんが、考えた言葉をいろいろ今発信しているわけなんですけれども、やっぱり何が実はみんな分かっているようで分かっていないかというと、七八年か九年にトウ小平が改革・開放路線を始めたと、その当時の日中関係と今の日中関係はパラダイムが違うということに、みんな分かっているようで分かってないんじゃないかと思うんですね。
 やっぱり八〇年代の初めは、中国の国家的大規模プロジェクト、ダムでも道路でも、多分橋でもそうだと思うんですが、二割ぐらいはほとんど日本の借款を含む援助で賄われていた。この巨大な途上国、被援助国、政治大国ではあったんですけど巨大な被援助国、巨大な途上国中国と、援助供与国、有数の、先進国日本という構図が既に東アジアの二つの経済大国の競争と、こういう構図に実は移っているということをみんな分かっているようで分かってないんじゃないかと。だから、タカ派とかハト派とかいう単純なアプローチになって、もっと戦略的なアプローチが必要だというふうに思うんですが。
 これが最後の御答弁になると思いますが、あと一、二分だと思うんですけれども、大臣のそこら辺についての、対中政策の基本理念を簡単に伺えればと思います。
○国務大臣(麻生太郎君) そうですね、日本と中国の場合、今、日本のGDPが約四兆数千億ドル、中国は約二兆ドルちょっとかな、そんなものだと思いますが。基本的に、八〇年代と違って急激に経済というものが大きくなった中国、今までもうずっとこのところ悪い悪いと言いながら約四兆ドルを維持している日本というものは、同じアジアの地域の中にあって両方とも経済力が大きくなれば、当然のこととしてその地域で争うことにならざるを得ないと。これはいつの時代でも、どこの国であっても、その同じ地域に同じような経済大国が出れば経済の覇権は争わざるを得ないと、これはもう避け難いところだと思っておりますんで、今言われたように、認識をきっちり新たにした上で、その上でさらに両国はどういう組合せをすれば両国の利益が、共益、共益というか両国の利益が拡大するかという観点は一番肝心なところなんであって、何となくただただ一方的に支援するとか援助するとかいう関係は終わっているという認識はもう絶対に持っておかにゃいかぬところだと思います。
○山本一太君 ありがとうございました。
 終わります。
○榛葉賀津也君 民主党・新緑風会の榛葉賀津也でございます。
 本日は、日英、日印租税条約について大臣並びに参考人の皆様にお伺いをしたいと思いますが、今同僚の山本先生からお話がありましたとおり、この条約は、国際的な二重課税を回避して二国間の投資交流を促進していくと同時に、やはり国際協力をしながら脱税を防止をしていくという思いがあると思うんですが、日英租税条約が最初に発効されたのが昭和四十五年、先ほどもございました。五十五年に一部改正されて、今回は三十年ぶりの新しい条約という形になります。他方、日印の租税条約も、平成元年に発効されて十五年ぶりの改正ということになるわけでございますが、当然日米の新租税条約というものが一つのターニングポイントになっているということは分かるんですが、日英、日印ともにこれだけ時間が、やはり新しいその枠組み、国際投資間における国際協力並びに促進をしていこうという流れにこれだけ時間が掛かったというのは一体どういう背景があったんでしょうか。
○政府参考人(長嶺安政君) お答え申し上げます。
 ただいま榛葉委員、正に言われたとおり、二年前に日米の新租税条約が全面改定ということで締結されました。この日米の新条約が結ばれたのが正に一つのターニングポイントになりまして、それが一つの要因ともなって今回英国との間の新条約締結ということが促進されましたし、またインドとの租税条約の一部改正議定書につきましても、方向といたしましては双方の投資促進という目的に沿っていこうということでこれまた交渉が加速されてきたと、こういう事情がございますので、今、全体としましては日米新条約によってつくられた新しいその枠組みといいますか、方向性に向かって今後検討していくと、こういう流れになっております。
○榛葉賀津也君 先ほど山本委員から、六十以上の相手国との現在租税条約を結んでいるという御発言があったんですが、私が把握している限り、現在締結している租税条約の数が四十五条約、五十六か国というふうに把握をしているんですが、日英、日印の議論に入る前にこの現状をまず確認したいんですが、この数字でよろしいんでしょうか。
○政府参考人(長嶺安政君) 我が国は、現在五十六か国との間で租税条約を締結しておるところでございます。この租税条約につきましては、本数といいますか、件数という意味では四十五条約でございます。これは同じ条約を複数の国が適用しているということがございます。
○榛葉賀津也君 では、特に、アジア諸国とのこの条約の締結状況というのはどんな形になっているんでしょうか。
○政府参考人(長嶺安政君) お答えいたします。
 先ほど申し上げました五十六か国でございますが、このうちアジア大洋州諸国が十五か国でございます。その内訳として、ASEAN諸国が六か国含まれておるということになっております。
○榛葉賀津也君 加盟国間の経済の自由化というものを考えますと、一つEUという枠組みが私たちのモデルというか、現在あるわけでございますが、このEU加盟国間の課税状況というか、それはどんな形になっていますか。
○政府参考人(原田親仁君) 先生御承知のように、EU域内におきましては、単一通貨ユーロの導入を含む経済統合あるいは市場統合が行われて投資交流に資しているという状況にございます。物、人、サービス、資本の自由移動を可能とするような市場統合、通貨統合などを内容とする経済統合でございますけれども、その一方で税制に関しては、依然として国家主権の根幹にかかわる問題としての意識が加盟国間においても強いために、その面での統合はまだまだ限られたものになっております。
○榛葉賀津也君 次に、投資促進の効果について若干議論をしたいと思うんですが、先ほど言いましたように、この条約の目的というものは、二重課税を排除しながら二国間の投資を促進させるというものなんですが、外務省からの資料によりますと、日本進出の英国企業は現在約二百八十社という数字が出ていました。また、日本進出のインド企業がどれくらいかというと約八十社ということでございますが、現在、このイギリス、インドの法人が日本国内で課税されている配当であるとか利子、使用料は大体幾らぐらいになるんでしょうか。
○政府参考人(加藤治彦君) 今お話しの個別の企業の把握というのは、私どものレベルではちょっとできておりません。正に、外国税額控除の適用関係とかいうのは、国別じゃなくてグローバルな全体で今やっている一括方式というのを採用しておりますので、ちょっと国単位での調整の関係が明確にはなっておりません。
○榛葉賀津也君 ということはあれですか、条約発効によって我が国にどれぐらいの税収の変化があるかということも財務省とすると把握をされてないということですか。
○政府参考人(加藤治彦君) 当該個別の二か国間の条約によってどの程度の税収の変動があるかについては私どもちょっと、若干推計の方策がございません。
○榛葉賀津也君 ということは、その反対もそうなんでしょうかね。例えば、今、日本企業がイギリスに行っている会社の数というものは約八百四十というふうに把握をしているんですが、インドには約三百の邦人企業が行っていらっしゃるということで、この租税条約によってどれぐらい日本の企業が恩恵を受けると言ったら変ですが、減免される額というものは、これも把握できないということですか。
○政府参考人(加藤治彦君) 税務当局の統計上、外国税額控除を幾ら適用しているかとかそういうのはトータルの数字は出ます。ただ、国別の、この今の外国税額控除制度が国別管理ではなくて全世界一括管理なものですから、当該国の分がどれだけという把握が現在のところできません。
○榛葉賀津也君 なるほど。じゃ、投資ですね、この日英、日印、この投資がどれぐらい増加するかというのは、そういった推測もできないんですか。
○政府参考人(加藤治彦君) それは正に税務上の統計以上に、私どもそこを、その企業行動の将来予測ということ、かつ、直接投資の場合は税制のみで判断するということはほとんどなくて、いろいろ雇用関係とかインフラとかいろいろありますので、今回の問題は、一つの投資交流のいわゆる円滑化に資するということはもう明言できますけれども、具体的な効果ということを推測することは難しいと思います。
○榛葉賀津也君 若干具体的な話で恐縮なんですが、例えば、配当若しくは利子、使用料が引下げになっていると。例えば日英の場合は、一五%、一〇%が一〇%、五%、そして免税という形ですね。そして利子については、一〇%が一〇%、免税という形になってくる。そして日印の方も、配当は一五%が一〇%に等々、利子については、銀行一〇%、その他一五%なんですが一律に一〇%に引き下げられるというような、それぞれ、使用料についても引下げ幅が一〇%程度それぞれあるわけでございますが、この引下げの幅の率というものはどういう根拠でこういう数字が出るんでしょうか。
○政府参考人(加藤治彦君) 最初にお話ございましたが、これは正に二重課税の調整でございますので、結局、源泉地国でゼロになった分は今度は本国地でまとめて課税すると。二重課税というものを排除する方法として、我々、条約のない国は外国税額控除でやっています。ただ、その絶対額が仮に同じだとしても、控除のタイムラグとかそれから赤字法人は取られっ放しになるとかそういういろんな状態あるので、なるべく二重課税を排除するためにその源泉地国課税を遠慮してもらっています。
 あと、そういう精神からいくと、なるべく源泉地国の課税をゼロに近づけていく、これが二重課税の防止から望ましいと思います。
 ただ、ここで、今先生おっしゃいましたように、なぜ違いが出るのか、なぜこういう結果になるのかということですが、それは、それぞれの各国のやはり租税の源泉地国としての租税政策、租税の確保の必要性、これは率直に申しまして発展途上国の方がより強うございます。したがって、その国の状況に応じてどうしても率が変わってくる。我々としては、ポリシーとしてはやはり二重課税排除を、特に日本のような経済大国でございますので、やはりそこは大きな意味ではまずゼロを目指して、そこからスタートしているというのが実情でございます。
○榛葉賀津也君 次に、日英租税の回避行為についての対応についてお伺いをしたいと思うんですが、条約を濫用して、今、山本先生からもおっしゃったように、課税から逃れようとする者の対策というものが必要でございまして、減免の適用を受ける適格者の基準が正に適切でなければならないと思うんですが、これ、具体的にどのような措置をとられるんですか。
○政府参考人(加藤治彦君) 結局、租税条約の濫用という形での租税回避をする目的は、先ほど申しましたように、仮にその源泉地国課税を免れても、正常な関係ですとその分は本国で課税される形になるわけです。それで、当該条約相手国同士の間ではそれはきちっと守られますが、最終的にはその当該条約締結国じゃない国の、第三者の国の人が実はイギリスの居住者を装って免税を受ける。それで、その第三国の本国地課税が十全に行われていない、例えばその国が国外所得非課税の国であれば、完全に源泉地国でも免税の特権を受け本国でも免税になるという、これが一番私ども恐れている、懸念しているわけです。したがって、結局、居住性の認定のところをきちっとチェックをしていく、これが条約の濫用防止ということの一番大事なことで、そういうことを特に日英の関係では明確にしている。その程度は、そこまで、免税までいかないところはまたその程度を少し下げてもその実害が小さいと、こういう関係にございます。
○榛葉賀津也君 今の御答弁に一部もう回答が入っているのかもしれませんが、例えばこの条約で対応し切れない租税回避措置というのはあるんでしょうか。
○政府参考人(加藤治彦君) 今の条約による租税回避は、今御説明しましたように、その居住性の有無の問題で行われるわけですが、その居住性の有無の認定をきちっとすることによって租税条約による課税回避は防止できると思います。
 ただ、最終的には本国の課税の方で、当該条約締結国の本国に税法の欠缺なんかがありますと、逆に言うと、そこはもう相手国の、私どもの基準から見るとそれはちょっとおかしいんじゃないかと思っても、それは相手国の国内法制でそういうものは課税にする、非課税にするということを決めておられるとすると、その部分についてはその条約の濫用防止規定では排除できないというか、対応できないということはあると思います。
○榛葉賀津也君 二〇〇五年十一月二十一日の日経新聞に「脱税防止、五十五カ国と連携」という見出しで記事が実はございまして、記事によりますと、政府は、二〇〇六年度中に、ヨーロッパ、アメリカ、アジアを中心とした五十五か国と脱税を防止する新しい枠組みをつくっていくということで、海外税務当局との要請で国税庁が日本の法人や個人を強制捜査できるようにして、海外への送金を通した不正な所得の貯蓄を各国と連携して摘発していくというような趣旨の記事が出ていて、若干注目をしていたんですが、これについてもう少し詳しく、今後の動き、現状について御報告願えますでしょうか。
○政府参考人(加藤治彦君) この話は租税条約、御指摘の話は租税条約とはちょっと別の枠組みで、OECDでこれは進められているものでございますが、要するに、各国の税務当局間が相互に協力して、自国の居住者の課税、海外における、海外を利用した租税回避を防止していこうということで、いわゆる情報交換の充実ということがねらいでございます。
 具体的に申し上げますと、例えば我が国の国内で海外系の企業が何らかの脱税行為に加担する行為があった、そういう場合に、我が国の課税権の侵害には当たらないけれども、例えば外国からすると課税権の侵害のおそれがある。そういう場合は我が国の課税当局に、これは主権の行使ですから、あくまでも我が国の国内では我が国の当局が行う必要があるわけですが、協力の要請があれば、そういう協力の要請に従って外国の課税権の行使のために我が国が協力するということによって、それは相互主義ですから、逆の場合は向こうが協力してくれる、そういうネットワークをきちっとしていこうという動きでございまして、これは、先般来、国内法制の整備とともに、国際的なそういう枠組みの中で我が国も協力体制の準備が整いつつあるということでございます。
○榛葉賀津也君 次に、日米租税条約、二〇〇三年に署名されたこの条約と日英租税条約との相違点についてお伺いしたいんですが、日米租税条約、新しい二〇〇三年のこれがあって、先ほど長嶺審議官もおっしゃったように、これがベースになって日英租税条約が締結交渉が始まったということなんですが、この日米と日英の相違点というのはどういうところにあるんでしょうか。
○政府参考人(長嶺安政君) お答えいたします。
 今回の日英条約でございますけれども、これは、委員御指摘のように、日米新租税条約を踏襲したものであると。したがいまして、基本的な骨格としては日米新条約と同様の内容になっておるわけでございます。
 相違点を申し上げますと、一つは、日米の方では住民税が対象となっておりませんけれども、これは日本の対象税として住民税が対象となっておりませんが、今回の日英租税条約ではこれが対象税目となっていること、あるいは日米条約ではいわゆる教授、大学教授等についての条項が置かれておりますけれども、今回の日英の条約ではそのような規定が置かれていない等、細部にわたりますと差異があるということでございます。
○榛葉賀津也君 そういう違いが出るというのは、日米との関係と日英との関係、経済的、社会的相違から出るのか、それとも、日米が更に進歩してこういう形になったのか。その辺はどういう背景なんでしょうか。
○政府参考人(長嶺安政君) そのどちらが進化といいますか、先に進んでいるかという比較は難しいかと思います。むしろ日米と日英はその面においては軌を一にしているということで、細部における差が出てまいりますのは、これは交渉事でございますので、先方の取っている租税条約締結に当たっての方針、それから我が国の方針、その二つの間で交渉、協議を行った結果というふうにお考えいただいた方がよろしいかと思います。
○榛葉賀津也君 今後のこの日英条約のためにお伺いしておきたいんですが、二〇〇三年に日米の新租税条約が締結されて、問題点というものは発生していないんでしょうか。つまりは、我が国にとって不利益になるような状況があったかどうか、それについてお伺いしたいと思います。
○政府参考人(加藤治彦君) 私どもの立場で今そういう話は聞いておりません。
○榛葉賀津也君 日米租税条約が締結されてこの日英になったわけですが、日米租税条約が締結されるまで、イギリスの方から条約に対する申入れとか、そういったものは動きはなかったんでしょうか。アメリカがあってこの日英の話が動き出したのか。
○政府参考人(長嶺安政君) 先ほど来申し上げておりますように、やはり日米協定が結ばれたことがこの今回の日英協定の締結交渉を始めるに当たって大きなインセンティブといいますか、になったということがございます。
 ただ、英国も先ほど来申し上げています新しい投資促進型の租税条約の締結には取り組んでおりますので、そういう意味では日本と英国との考え方が方向性において一致したもので、今回この締結に至ったということでございます。
○榛葉賀津也君 イギリス以外に、この日米租税条約をベースにして今後租税条約を改正していこうと、そういう動きはあるんでしょうか。
○政府参考人(長嶺安政君) 現在の租税条約についての締結交渉の状況でございますが、現在、フランス及びオランダとの間でそれぞれ交渉を行っておりまして、これらは、日米、日英のこれらの条約と基本的な方向性を一にしたものにしていこうという方針でございます。
○榛葉賀津也君 大変細かい話で恐縮ですが、この日米新租税条約では、親子会社間の配当所得の免税に必要な要件というものが日米租税条約の規定に比べると若干緩和された条件に、十二か月が六か月になっているんですが、こういう内容になっているんですが、その理由というのは何なんでしょうか。
○政府参考人(加藤治彦君) 私どもの、何というんですか、理解では、やはり相手国との交渉のいろんなやり取りの中でそういう経緯、その結果が生じたというふうに伺っております。
○榛葉賀津也君 次に、日印の租税条約の根本的な、具体的な話で申し訳ないんですが、日英は日米の新条約をベースにされたと。この日印の租税条約というのはどんなものをベースにされて交渉されたんでしょうか。
○政府参考人(長嶺安政君) 若干交渉の経緯に関することになりますけれども、日印の今回の改正議定書につきましては、当初は、我が方といたしましては、日英の租税条約と同様に日米新租税条約をベースとした全面改正を目指して交渉に当たったものでございます。他方、インド側が、自国の税収確保等の観点から、源泉地国課税の大幅な減免につきましては慎重な立場を取ったということもございまして、結果として、今回、投資所得条項に対する源泉地国免税等は盛り込まない一部改正の議定書という形で日印間で折り合ったという、そういう経緯でございます。
○榛葉賀津也君 次に、私この租税だとかそういった問題は素人なものですから若干的外れな質問になるかもしれませんが、この条約締結して、事務手続というものがそれぞれの改正で煩雑になるんじゃないかなというような懸念もあるんですが、そういった弊害というものはないんですか。
○政府参考人(加藤治彦君) 先ほどから御議論のあります租税回避濫用防止ということを念頭に置いた一定の手続というのは、やはりどうしても不可欠だと思います。ただ、なるべく手続の合理化、簡素化というのは御指摘のように非常に各企業、民間の経済活動に重要なので、私ども手続面でなるべく負担の小さい形でそういうチェックシステムを構築すると、これは大いに心掛けておるところでございます。
○榛葉賀津也君 次に、先ほど課税権という話も出ましたが、いわゆるこの課税権というのは国家主権と密接に結び付いている話でございまして、我が党はこの二つの条約、賛成の立場で議論をさせていただいておりますが、あえてこういう質問をさせていただきますが、当然、二国間の連携は密接にして、脱税も阻止をしていかなければいけません。しかし、この国家の主権たる課税権というものを考えると、課税の免除というのは当然課税しないということですから、課税権の放棄というような議論が若干、机上の議論かもしれませんが、そういった観点からはどのような議論があったんでしょうか。
○政府参考人(加藤治彦君) 正におっしゃる点、非常に課税権という意味の持つ重みということだと思います。
 それで、私ども正に先ほど申しました課税権、二つございまして、要するに居住者に対する課税権と、それから非居住者でも国内、源泉地国、我が国が源泉地国である場合の課税権と二つの課税権がある。これは各国共通で持っているわけで、そうすると、どうしても居住者に対する課税権は全世界課税ですから源泉地国課税とバッティングする。このバッティングするのを調整するというのは、やはり課税権の適切な行使の前提という意味では決して課税権をないがしろにするものではないと、そういうふうに私ども考えております。
○榛葉賀津也君 分かりました。
 それともう一点、先ほどこの条約締結によって具体的にどういうプラスマイナスがあるか、また数字が出るかということが分からないというふうにおっしゃいましたが、単純に考えて、イギリス、インドと比べますと当然我が国の経済規模というのは大きいわけでございますから、トータルで考えると、課税の免税というものは英国、インドに比べて日本にとって若干経済的損失になるんじゃないかなと思うんですが、その辺はどうなんでしょうか。
○政府参考人(加藤治彦君) この租税条約は、どちらかというと要するに源泉地国の課税権の放棄を、放棄というか縮減を目指しておりますから、実はインドから日本に対する投資よりは日本からインドへ対する投資の方が多い。というのは、インド側が逆に言えば課税の行使にこだわったという形になります。ですから、日インドの関係でいけば圧倒的にこちらの方がメリットが大きいと思います。
 イギリスとの関係は、これは非常に行ったり来たりで成熟した関係ですので、どちらが得とかと、そういうことはないと思いますけれども、これはお互い本国地課税に純化していこうということで了解をしているということでございます。
○榛葉賀津也君 政府は今後この租税条約、積極的に推進するということなんでしょうが、日印の場合がこの代表例、今後途上国との関係が更に交渉が進んでいくと思うんですが、いわゆる途上国の中には法制度が未整備な国がたくさんあるというふうに把握をしているんですが、今後この途上国との交渉、これをどんなふうに進めていかれる方針なんでしょうか。
○副大臣(金田勝年君) 今後の租税条約の締結に当たりましては、一般的には経済関係中心とします二国間関係、そして相手国の税制、それから他国との租税条約の締結状況といったようなものを総合的に勘案の上、交渉相手国と決めていくということになるわけでありますが、途上国の場合につきましては、自国の税収を確保するといったような観点から源泉地国課税の大幅な軽減には慎重であるということが一般的に言うことができるわけであります。したがいまして、我が国としては、これら途上国側の事情にも配慮をしながら、合意できる範囲で租税条約の締結を進めていくという考え方になろうかと思います。
 しかし、租税条約というのは、二重課税の排除を通じまして投資交流の促進を図るということで、両国が中長期的に経済を活性化させるということを目的としたものでありますので、そのような租税条約の利点を相手国に理解をしてもらえるようにできる限りの努力を行っていきたいと、このように考えておるわけであります。
○榛葉賀津也君 やはりこの租税条約というのは適切に税を徴収するとともに、お互いの信頼醸成して交流を促進し、また脱税も防止をしていくという側面がある反面、やはり外交ツールとして、私はこの租税条約の交渉というものを、今後ODAなどの技術協力であるとかFTAだとか、そういったものとセットとして、やはり後進国のキャパシティービルディングを視野に入れながら租税条約の交渉もしていくというような、言わば全体像を見据えた租税条約の交渉というものが、とりわけ途上国に対してはそういった取組、戦略性もあってもいいんじゃないかと思うんですが、この点についてはいかがでしょうか。
○国務大臣(麻生太郎君) 榛葉先生、今言われた話は誠にごもっともな話なんで、私どもとして一番この種のことでお役に立つというところは、多分徴税官、税金を徴収する税務署の職員というものの訓練、そういったようなものが、国によっちゃ税のなかった国があるわけで、ちょっと名前を挙げると具合悪いので、ちょっとこの間お見えになった方も、地方税という意味も分からなきゃ、地方議会とか地方分権の全然分からぬ人にゼロから教えるというのはちょっと、おまえ、おれのところに来る前にもうちょっとやってから来たらどうと言って、総務大臣のときに言ったことがあるんですけれども、そういう話のレベルですから、ちょっと今言われましたことは、私どもとして国をつくっていく上で大事な一つの技術支援の一つだと存じます。
○榛葉賀津也君 ありがとうございます。
 我が党はこの二つの条約に賛成でございます。
 それでは、議論を、残余の時間をパレスチナ情勢について若干外務省と議論をしたいと思うんですが、先日、新聞で民主党の支持率が四〇%を超えたと。えっと思ったんですが、アメリカの民主党でございました。四〇%を超えてすごいなと思ったわけでございますが、やはり今、大分ここ数年でアメリカの世論、国内情勢変わってきているなと思うんですね。
 私は、基本的に余りブッシュさんの政策と一〇〇%自分の政策、考え方とマッチするということは多くはないんですが、他方、このコミットしたイラクを失敗してもらっては困るんです。ブッシュの揚げ足取ったり、アメリカ何やってるんだと言うのは簡単なんですが、この日本の国益、イラクというのはアフリカの貧困国であるとか破綻国ではございませんから、極めて裕福な国だった。この国に成功してもらわなければ困るというのは、我が国与野党超えた同じコンセンサス。その手法であるとか具体的な政策は様々あると思うんですが、基本的にはアメリカに成功してもらわないと困るんですね。
 ところが、やはり大分今厳しい状況で、米兵の死者数が先月の十二日で二千三百人を超えて、まあ二千三百九という数字も出ているんですが、ブッシュの支持率も、九・一一直後が九〇%あったのが、イラクの開戦時に七〇%、そして先月の数字ですと三五%まで落ち込んできている。そして、戦争を不支持といったのが、開戦当時は二五%なかったのが現在五七%に増えてきているという。これは戦費の問題であるとか国内情勢であるとか、この秋に向けたいわゆる中間選挙等と様々な国内事情もあると思うんですが、確かにブッシュが、今アメリカがイラクに相当なウエート、そして神経を集中しているというのは、まあ火を見るより明らかというか、現実そうなんだと思います。
 しかし、このイラク、私、早く、一日も早く安定してほしい、そのために世界として何ができるかということを、アメリカが勝つ負けるという短絡的な基準ではなくて、この世界の安定のためにどうするかという議論が大事だと思うんですが、このイラクの不安定化によってイラン、そしてパレスチナに実は多大な影響を与えている。どうしてもイラクだけ見がちなんですが、このイラクの不安定というのが実はその他の懸案している中東案件に大きな実は不安定要素を間接的に与えているのが現状で、私はイランとかパレスチナ問題というのはその最たる例だと思っています。
 よく、日本でこのパレスチナ問題を議論しますと、パレスチナ問題は中東問題の核だから大事だというんですが、私、これはうそばっかりだと思っております。パレスチナ問題が解決したからってイランの問題も解決しませんし、スーダンの問題もシリアの問題も全然解決しないんです。パレスチナ問題が中東問題の根っこだというと、何か分かりやすいようなすっきりした、中東和平さえあれば中東が平和になるかといったら、もうほとんどそれぞれ違う問題で、それぞれのアラブ諸国のそれぞれの問題もパレスチナ問題を理由にすると言いやすいものですからこういう議論になりがちなんですが、私はそうじゃないんじゃないか。しかし、他方、このパレスチナ問題がエルサレムの問題含めて、またイスラエルという国の存在を含めて、アメリカ、ロシアを巻き込んで極めて重要な問題であることもまたこれ間違いのない事実でございます。
 この三月の二十八日、二十九日と、日本の国内の民主党も大変な出来事があったんですが、他方、海の向こうの中東でも、この二十八、二十九というのが大きなターニングポイントでございました。文字どおり、日本にも昨年来日されましたオルマルトさんが、オルマルト率いる新党カディーマが二十九議席取りまして勝ちました。これはもう労働党、リクードのいわゆる二大政党制の政権交代の時代から、三十年ぶりにカディーマという新党が政権与党になったという、これは大きないわゆるターニングポイントで、ただ、シャロンの後のオルマルトのカディーマが勝っただけではなくて、イスラエルの内政そのものの大きな転換点。
 他方、ハマスが二十九日には単独内閣を発足して、ハニヤが新首相になってザハルが新外相になった。これ、大変な状況に今パレスチナ来ていると思うんですが、外務大臣、この今のパレスチナ情勢をどのように御認識をされて、一連のこの出来事をどのようにごらんになっていらっしゃったんでしょうか。
○国務大臣(麻生太郎君) 一月の二十五日でしたか、いわゆるパレスチナの選挙というのが立法評議会選挙で、今言われておりますハマスが第一党と、予想していた方は余りおられなかったと思うんですね、世界じゅう。しかし、少なくとも開かれた選挙というのできちんとして選挙をやられておった上での話ですから、少なくともイスラエルとの間に、第一党を取られた以上は、今までのいきさつはいろいろあるんだとは思いますけれども、少なくともイスラエルとの何らかの形で共存共栄を目指すという方向でいわゆる政策をしてもらわないと、これは不毛の戦争とか争いが続くことになりますんで、共存共栄の道を歩んでもらうということを日本としては最も期待をいたしております。
 日本としては、これはとにかく和平プロセスというのが一応、ロードマップみたいなものが一応ありますんで、そういったものをきちんと踏んでもらった方向で進むのか否かというのを見極めないと何とも先は言えないというところですけれども、私どもとしては、まあいろんな方がいろんな話をされておられますんで、ちょっと今この段階でどうかということを確信的に言えるわけではございません。
○榛葉賀津也君 それぞれ勝ったオルマルト・カディーマの党首、それからハマスの新内閣、日本の外務省として、若しくは日本として、何らかのメッセージはこの門出に際しまして送られたんでしょうか。
○政府参考人(吉川元偉君) まず、イスラエルの今回のオルマート首相代行がトップを取りましたカディーマが第一党を取ったということに対しまして、首相、総理から、小泉総理からはオルマート首相に対して、第一党となったその勝利に対してのお祝いのメッセージを送っております。榛葉先生御指摘ありましたように、オルマートさんは副首相当時、日本政府の招待で去年の四月に来日をし、小泉総理とも会っておられます。
 パレスチナの立法評議会、一月二十五日の選挙の後でございますが、この選挙が終わりました直後に中東特使をやっております有馬龍夫大使が現地を訪問しております。その際、アッバス大統領を通じまして、先ほど外務大臣から御答弁申し上げたように、パレスチナの新しい政府がその責任を十分自覚してイスラエルとの共存共栄の道を歩むことを強く期待しているんだということを、アッバス大統領を通じてお伝え申し上げました。また、これと同じことはもう一度、先週でございますが、有馬特使がスーダンで行われましたアラブ首脳会議でアッバスさんと二回にわたって会って、その後の状況についてもメッセージを伝えております。
○榛葉賀津也君 アッバスを通じてお祝いを申し上げたと、極めて適切な対応であったと私は思います。
 先ほど外務大臣からロードマップという言葉が出ましたが、先ほどいらっしゃった、今どこか行っちゃいましたけど、川口さんの当時からこのロードマップの話があったんですが、ヨーロッパ、アメリカは実質上このロードマップは破綻したと言わざるを得ないという、私は報道ベースでしか分かりませんが、議論がされているやに言います。日本としても、このロードマップはもう破綻したという認識でよろしいんでしょうか。
○国務大臣(麻生太郎君) ロードマップそのものと言われますと、今言われましたように、まあ相手がごろっと変わっておりますし、こちら側の方も、こちら側とは、イスラエル側の方も向こう側も、両方ともかなり主役というか担当者が変わっております。
 したがいまして、日本として、今ロードマップを含む過去の諸合意というのは長々あるんですけれども、今出ておりますのはいわゆるカルテットと言われるアメリカ、EU、国連、それからロシアという国々の中で人道支援の継続はそのまま促す一方、その新しいパレスチナのハマス率いる自治政府に対して、とにかく暴力、テロはやめてもらいたいと、それからイスラエルは承認と、そしてロードマップを含みます過去の諸合意というのがありますんで、それを受け入れることを新しいパレスチナの自治政府というものに求めております。これの、今申し上げた三つの条件というものが満たされなければ、これはパレスチナの、いろいろ直接支援をしておりますから、そういった支援に影響が出てくることは避けられませんということも伝えております。
 そういった意味で、私どもとしては、パレスチナの立場に立ちますと、今度は逆に外部の圧力に屈してそういうのを認めたというのはなかなかこれはメンツの話もありますんで、そういった意味では、これは自発的に自分たちの方からやったというのが望ましいんであって、わあわあわあわあ言うのはやめた方がいいんじゃないかと、もう基本的には条件は知っているわけだからという話をしております。
○榛葉賀津也君 大変分かりやすい御答弁、ありがとうございました。
 恐らくハマスは、対外的にもそうですが、恐らくハマスの中のパレスチナ外の圧力というものが非常に強いわけでございまして、理想論からいえばやはりイスラエルせん滅のこの憲章のいわゆる、言葉が適切かどうか分かりませんが、基本方針というもの、それから武力闘争等々、そして過去の交渉を認めないと、これ恐らく今までのままですとハマスがこれを破棄しないと思うんですね。ここが問題でございまして、今後、日本のパレスチナ支援というものをどう考えていくかということが大きなテーマだと思うんですが。
 日本はいわゆる九三年のオスロ以降現在までに、私ちょっと数字が把握、定かでないんですが、恐らく八億ドルを超えた対パレスチナ支援をされているというふうに認識しているんですが、日本の場合は約七割をUNDPであるとかUNRWAといった国際機関経由、残りの三〇%を直接、草の根も含めまして、そういう支援をやっているんですが、いわゆる三つの基本方針がありました。それは、緊急人道支援であり、国づくり改革であり、信頼醸成についての方針だということなんですが、このハマスが政権を取ったことによりまして、日本は他のいわゆる先ほどおっしゃったそのカルテットとは違うアプローチをずっとしてきて、イスラエル、パレスチナ双方から、これお世辞ではなくて、物すごい期待をされ、また信頼もされている。ここのところを踏まえて、今後パレスチナ支援をどういうふうにしていくんだろうということが一つのパレスチナ側にとったら大きなポイントになると思うんですが、この辺について大臣、どうでしょうか。
○国務大臣(麻生太郎君) おっしゃるとおり、これまた適切な表現かどうか知りませんけれども、余り黄色い東洋人の顔って見たことない人たちですもんね、はっきり言って。青い目と金髪と白いというのにいじめられた記憶がやたら強いから、我々に対する寄ってき方はすごいですよ。それはもうはっきりしています。
 伊藤信太郎大臣政務官を選挙のときに送りましたけれども、それは何だか知らないけどえらい人が寄ってくるっていうぐらい、見たことない顔と言っちゃ変な言い方ですけれども、珍しく寄ってくるわけですよ。それで、何だ何だって、行ったやつは、みんな余りよく意味が分からぬから、とにかく物すごく期待される。それはもう事実です。とにかく全然違う顔した先進国というのはそこに初めて登場するわけですから。これイスラエルに行っても同じです。パレスチナに行っても同じです。これは経験がありますけれども、確かに見たことない人がそこに出てくるわけですから、非常に噂だけは聞いていますから、えらく期待されることは事実です。
 私どもとしては、こういった国に対してやっぱりやるべきことの一つとして、あのトマトの話がいい例だと思いますけれども、少なくとも入植地辺りでトマトを栽培して輸出していた国々というのは、撤退をさせられた途端にそのトマト畑がなくなるわけだ。それで、あとのパレスチナ人では維持できない。結論、あのイタリアに輸出されたトマトの輸出は全部止まった。
 私どもは、日本としてやるべきこと、基本的にはやっぱり貧困というのが非常に大きな理由で、四割ぐらいがいわゆる失業者ということになっておりますんで、そういった意味では、食えるようにいろいろ経済的に指導してやる、農業指導含めまして、そういったようなことは最も得意としているところではないかということがありますんで、私らの考え方としては、とにかくぶつかって入っているのと全然違うのが入ってきて、いや、ちょっとまず飯食えるようにしようやという話やら、アプローチの仕方はこれはいろいろあるんだと思いますんで、伊藤信太郎大臣政務官が行ったときにもほぼ同じ提案をして、とにかく、貧困がすべてのテロの温床になっているということも一つの大きな理由なんだから、これを食べられるようにするためにどうするかというのが日本の知恵の出しどころだという話も既に向こうにいっておるというんで、西洋とは違うアプローチの仕方があろうという御意見に関しましては賛成であります。
○榛葉賀津也君 いわゆるイスラエルと今のハマスの状況で、ロードマップが破綻した、せっかくここまで来たのに何でこんなになっちゃったんだと、いわゆる悲観的に見る方がほとんどでございます。
 しかし、私、ここで冷静になって見る必要があると思いまして、各国、日本もそうなんですが、極めてサカスティックに、皮肉な表現で、交渉なき和平だとか、和平なき安定だというような論調で、これからどうなるんだということなんですが、交渉なき和平であっても、和平という言葉がこの状況において出てくるようになった。そして、和平はないかもしれないけれども、安定という言葉が各国から出るようになった。これは様々批判もありますけれども、やはりカディーマそして労働党も一部そうですけれども、交渉あるなしは別にして、極めて評判の悪かったあのフェンスを造って物理的に和平をつくっていこう、若しくはテロをなくしていこうと。物すごいバッシングもありました。しかし、今カードがなくなった段階で、このハマスとカディーマの今後という問題は私は極めて超政治的に見ていく必要があるんじゃないかなと思っています。
 というのは、実は両方とも大きな妥協をしてきているわけですね。例えば、カディーマなんというのは、エレツ・イスラエルという言葉がありまして、イスラエルの土地、イスラエルの国という、いわゆる大イスラエル主義というものをカディーマは捨てたわけでございます。これはもう安全保障を考えても、極めて、イスラエルの骨格である一つの理念を捨てるというような大きな決断でございます。それから、イスラエルの建国の理念であるシオニズムという観点からも、この西岸というのはジュデア・サマリアといって極めてシオニズムにとっては大事な土地、これをパレスチナに国家として認めていくと、これ恐ろしい譲歩なんですね。
 他方、ハマスも、パレスチナ人は決してそのハマスの武闘派勢力を支持したわけではなくて、いわゆるファタハに長年続いてきた不正であるとか停滞感、これに嫌気が差して、その新鮮な、テロ組織ハマスではなくて、やはり慈善事業もし、私たち庶民のことを分かってくれている部分のハマスに協力してきた。他方、ハマスも、外圧もあります、そして、ハマスの中の正に大臣おっしゃった建前、大義名分もあるでしょう。しかし、他方、停戦をしてもいいよ、またそのカルテットにボールを投げてみたり、冷静に見るといろいろ問題はあるけれども、ここまで今来ているんだなという思いがいたします。
 そして、今ほとんどのパレスチナ人がイスラエルとの平和的関係を望んでいるのが実情でございまして、他方、イスラエルもこのままずっといきますと、人口的にパレスチナ人の方が、ユダヤ人国家なんですが、合法的に、民主的にアラブ系の首相が出る可能性も五十年後先には現実問題あるわけでございまして、そういった問題を考えると、今破綻しそうなこの中東和平ですが、極めて建設的かつ重層的なアプローチが求められている。
 アメリカは今、正直、手一杯で、極めてこのオルマルトが当選した際も儀礼的なメッセージで終わっています。
 私はここで、地味かもしれませんが、日本の外交が何らかの形でこのパレスチナ問題に一石を投じていく。具体的に何ができるかという問題は多々あると思いますし、外務大臣、そして吉川中東アフリカ局長始め様々な戦略があると思うんですが、是非、イラクそしてイランの陰に隠れがちなこのパレスチナ問題、今後是非フォローをしていただくようにお願いをして、私の質問を終わりたいと思います。
 もし一言、大臣あったら、よろしくお願いします。
○委員長(舛添要一君) 麻生外務大臣、簡潔にお願いします。
○国務大臣(麻生太郎君) 今、榛葉先生がおっしゃいましたように、アメリカもちょっと手一杯のところはもう確かだと思いますし、今までとは少し状況が、両方ともいよいよ追い込まれて、これはもう話し合わなきゃしようがないというところまで来たかなという感じも、私どもも率直にそう思います。どういう方法が一番効果的かというのは、ちょっともう一回見直してみなきゃいかぬところは一杯あろうと思いますので、検討させていただきたいと存じます。
 ありがとうございました。
○高野博師君 それでは、租税条約に関連して、この二つの日英租税条約それから日印租税条約、これは賛成であります。この関係で、イギリスとインドについて、ちょっと何点か質問をしたいと思います。
 そもそも、イギリスという国はどういう国なのか、イギリスのアイデンティティーというのは何なのかと。これはもういろんな見方があると思うんですが、例えばざっくりと言えば、フランスだったら文化立国だと、アメリカだったら自由と民主の国だと、北欧だったら福祉の国家だと、中国は中華思想。そういうことも含めて、もう少しイギリスのこの本質的な部分についてどういう認識をされているのか、お伺いしたいと思います。
○国務大臣(麻生太郎君) 一番の、日本で見ていて分からないのは、あそこはやっぱり連合王国というのが正式の国名であって、イギリスというのは国名ではありません。イングランド、スコットランド、ウェールズ、それと北アイルランドというような国から構成をされております連合王国ということになりますので、日本の大使の名刺も連合王国駐箚大使と書くことになっております。
 したがって、そこが一番、連合してできた王国というのがやっぱり一番の大事なところだと思いますが、この間もオーストラリアのメルボルンでコモンウエルス大会というのをやっておりましたけれども、そこへ行くともうとにかく、イギリスはイングランドだけ、あとはスコットランドのラグビーチーム、ウェールズのラグビーチーム、みんなそうやってやってきているというんで、そういった意味では英語を唯一に公用語としている大会なんだと思います、ほかの言葉は全然認めませんから。
 そういった意味で、立憲君主制の下に、近代議会発祥の地であり、最も古く民主主義が根付いて、少なくとも、総理大臣が替わると後の総理大臣が前の総理大臣を逮捕とか私財没収とかいうような話でなく、交代が自然と行われていくというのが最も早く根付いた国でもありますし、また、国連安保常任理事会、G8のメンバー等々、国際社会で重きを成しているというのが、私どもが見たイギリスという国と外交をするときに頭に入れておかねばならぬところではないかというように感じます。
○高野博師君 八〇年代の初めに、アルゼンチンとフォークランド紛争、マルビーナスの戦争があったんですが、その戦争直後に僕はアルゼンチンに行きまして、アルゼンチンの特にブエノスアイレスの市民は、イギリスが本当にミサイルを撃ち込んでくるんではないかという、あるいは核を使うんじゃないかという、そういう恐怖感が物すごく強かったということを言っていました。
 これは私は、イギリスというのは、国益、領土というのはもう最たるものだと思うんですが、そういうものを守るためには最終的には武力行使も辞さない国かなと、これはアメリカと本質的に余り変わらないところがあるのかなという印象を持ちました。
 今、大臣の方からコモンウエルスの話がありまして、そこのところをちょっとお伺いしたいんですが、八一年に独立をした中米のベリーズという国に私は八〇年代の後半にメキシコ側から車で入りました。そのときの印象は、道路等のインフラが物すごく良くできている。それから、もう大きなトラクターが走っていまして、大規模な農業経営もやっているのかなと。それから、警察は騎馬にというか馬に乗っていましてイギリスよりもイギリス的な感じがしたんですが、整然としていてちょっと驚いたんですね。で、インフラも整備されている。
 それから、七〇年代の初めにカリブ海のイギリス領ガイアナにも行ったことがあるんですが、当時はアフリカ系とインド系の国民が対立していたという中で国民の統合というのが最大のテーマだったんですが、そういう中で関係のない中国人を大統領にして、うまくまとめたと。これはベリーズほどではなかったですが、比較的インフラ等も整備されていたと。
 私はイギリスの植民地政策というのが、やっぱりこれは多文化主義を取ったのかどうかよく分かりませんが、一つは先ほど大臣がお話ししたように英語という言葉を残したと。それから、イギリス的な社会システム、制度というのをこれを残したという意味で、特に言葉の英語というのはこのグローバル化の中で大変重要な言葉ですので、かつての植民地、被植民地の国はイギリスにはある意味で感謝しているという面があるのではないかと。
 しかも、このコモンウエルス諸国とイギリスの関係は極めて良好な関係にあるというところでありますが、これに反して日本というのは、そのかつての占領したアジアの国々との関係は必ずしもうまくいっていない部分もあると。どこが違うのかなと。これは多文化主義と同化主義、あるいは福利、福利の向上と差別、搾取、そういうことでも必ずしもないのかなと、同じようなことをやったのかなと思うんですが、独立した後のフォローの仕方が違うんではないか。イギリスは非常にうまいのではないかと思うんですね。この辺はどう認識されておりますか。簡単で結構ですが。
○国務大臣(麻生太郎君) 日本も、高野先生御存じのように、少なくとも京城大学は名古屋大学より、大阪大学より先につくられた。台北大学も同じく大阪大学、名古屋大学より先につくられております。そういった意味では、当時の方々はそれなりの努力はしておられたんだと存じます。
 二つ目。イギリスの場合は、シンガポールを見てもどこを見てもお分かりのように、まずは政府が出ていってそこに政府をつくり、学校をつくり、競馬場をつくり、ゴルフ場をつくり、何をつくり、かにをつくりして、はい、イギリス人いらっしゃいというのが、やっぱり富の蓄積の度合いが全然違ったのに対して、日本は在留邦人が何万人いるから大使館をというのと全然順番が違っていたというのも大きな、当時、時代背景も違うと存じますが、そういうのも大きな影響を与えたと思いますが、いずれにしてもイギリスの植民地、全部が全部うまくいったわけじゃございません。
 私の住んでおりましたシエラレオネなんていう国は、二年いましたけれども、ここはなかなか今でも難しいぐらいのところですから、国によって随分違うと思いますけれども、総じてイギリスの植民地政策としては今、高野先生御指摘のように、うまくいった大きな理由というのは、やっぱり現地との関係において、少なくとも宗教を押し付けていることもありませんし、いろいろな形で植民地政策としてはうまくいったというのはそういったところではないかと存じます。
○高野博師君 コモンウエルスは一九六九年から二年ごとにサミットをやっている。それから、コモンウエルス・ゲームズというか英連邦スポーツ競技大会、これも開催している。コモンウエルス・デーというのもあると。この英連邦、コモンウエルスが五十三か国あって、総人口が十八億人、地球全体の三分の一、三割近い人口を擁しているという。ここでも、これも勢力圏もアジア、アフリカ、中南米でありますが、そのコモンウエルスには、例えばモザンビークのようにイギリスとは違う国に支配されたというか植民地であった国もこれに加盟していると。そういう意味で、非常に緩やかな連邦体というか、コモンウエルス、連合体をつくっている、ある意味で親睦クラブみたいなもの。
 しかし、イギリスは、そのかつての歴史のマイナスの遺産というものを逆にうまく利用しながら外交のすそ野を広げているんではないかとも言われていまして、サミットがあっても拘束力のある決め方はしない、それに加えてアメリカ抜きだと。だからイギリスの求心力があるとも言われていまして、そして、エリザベス女王がそのコモンウエルスのシンボル的な存在でもあると、人によっては大英帝国は死なずと、こういうことを言う人もいるわけですが。そういう意味では、例えば去年のG8のサミットでも、テーマは、アフリカとか気候変動というのをイギリスがこのテーマを決めたわけですが、これもやっぱり決め方非常にうまいなという感じがいたしますが。
 アメリカが、このアメリカを好きだという国が今どんどん減っていると、世界的に見ると、という中で、日本は日米同盟だけ、こういう関係だけでなかなかある意味では孤立化しやすい状況があるんではないか。そういう意味で、日米同盟だけに頼っている日本ではなくて、もう少しすそ野を広げるという努力をする必要があるんではないかと。昨日テレビで、この日米同盟は病んでいるとか空洞化しつつあるというような評論家を見ましてちょっと驚いたんですが、まあ、日米同盟については改めて別の機会に議論させてもらいたいと思いますが。
 そういう意味で、イギリスとの関係、新しい日英関係というのを構築するというのは非常に意義が大きいんではないかと思いますが、かつては日英同盟も結んだような関係もありますし、もう一回、日英のグローバルパートナーシップあるいは戦略的パートナーシップというようなことで、当然価値観も共有していますし、貧困とかテロとかあるいは地球環境問題等でこの関係を強化していくと、そしてグローバルに対応していくということは十分あり得ると思うんですが、そこはどのように御認識でしょうか。
○国務大臣(麻生太郎君) 日英関係をきちんと再構築すべきという御意見に関しましては、私も全く異論はありません。少なくとも、ともに皇室を掲げておりますし、大きな大陸の隣にある島国、このユーラシア大陸の東の端と西の端にある等々いろいろな地理的条件というのも似ておりますし、私どもとしては、イギリスという国はいろんな意味で明治維新のとき大いに見習った国でもあり、日本の海軍はほぼイギリスを見習ってつくられたとも言われておりますし、いろんな意味で長い歴史を有しております。したがいまして、今イギリスとの関係というものをもう一回大事に見直すべきではないかという御意見は全く私どもも賛成であります。
 したがいまして、今イギリスというのは、G8、EUの中にあって、きちんとEUの中にありながら独自性を維持している等々、私どもとしては今後大いに参考にしてしかるべきところもあろうと思いますんで、イギリスとの関係をきちんともう一回、どこが再評価すべきところなのか等々きちんと整理をして、頭の中を整理しておくべきではないかということだとも存じますんで、間違いなくそういうことだと私どももそう思います。
○高野博師君 あと五、六分の時間ですので、インドについてお伺いしたいと思いますが、これも同じようにインドというのはどういう国かと、インドのアイデンティティーは何かと。いろんな人に聞いたんですが、なかなか明快な答えはない。一言で言えませんというのがほとんどなんですが、一人だけ、ある学者、もう三十何年インドとパキスタンに住んでいる方がいらっしゃいまして、この前パキスタンでお会いしました。一言で彼は、インドのアイデンティティーというのはヒンドゥイズムだと、こう言われました。ヒンドゥイズム、ヒンズー教だと。パキスタンのアイデンティティーというのは反インドだと、それでしか表現のしようがないと、これはもう明言しておりました。ああ私もこれはすばらしい表現だなと思ったんですが。
 そのインドのアイデンティティー、まあヒンドゥイズムというのは別な言葉で言うとまた多様性ということかなと。何でもある国、そういう多様性が特徴であるというふうに思いますが、大臣はどのように認識されておりますか。
○国務大臣(麻生太郎君) 今、多神教の国で大きな国というものは、日本以外ですと多神教の国はインドぐらいかなという感じがいたしますんで、ヒンドゥーを例に引かれましたんで、その意味ではなるほどなという感じが正直いたします。
 世界最大の民主主義国家でもありますし、また最近、いわゆる情報通信技術によって経済成長も著しいという感じでもありますんで、私どもとして見ていても価値観というものを多くの点で共有していると思っております。今、東アジア共同体等々、東アジア・サミットというのをやらしていただきましたけれども、地域的にもいろんな意味で私どもとして今後戦略的なパートナーとして組むべき重要なアジアの国、そういった具合に理解をいたしております。
○高野博師君 もう少し時間がありますんで。
 アジアの大国としてIT産業、医療関係、もう相当進んでいる国でありますし、今大臣おっしゃったように世界最大の民主主義国家だという、まあ価値観を共有していると。そして、人口も五四%はもう二十五歳以下だと、若い国だと。で、中産階級が多いから国内市場が大きいと。教育レベルも非常に高いと。十九掛ける十九まで暗算していると、昔は三十九掛ける三十九までやっていたそうですが、もう数字でけんかをしたら負けると。議論しても負けると。こういうインド。まあ、ちなみにゼロも発見したと。実は、ゼロの発見、ゼロの概念というのは中米のマヤの方が早かったんですが、あちらは閉鎖的な社会だったものですからそれは広がらなかったと。
 こういうインドの、将来性のあるインドとの関係で、インドと中国の貿易というのは日本の四十倍だと、インドと韓国も日本の十倍あると。もうそういう意味では日本というのはインドに対して出遅れたかなという感じがいたしまして、二月に私も党の派遣で行ってまいりました。大臣と同じようにデリーメトロも乗ってまいりました。
 いろんな意味でインフラの整備というのは非常に重要な、正にそこに日本のODAの戦略的活用というのは十分あり得るんではないかと思いますし、インドあるいはパキスタンの地政学上の重要性というのもありますんで、これからの東アジア共同体のパートナーとしての関係を強化する、あるいは外交カードとしてインドもある意味では使えるかもしれない。
 そういうことで、是非これは日本が積極的にこのインドとの関係を強化するということをやっていただきたいと思いますが、最後に大臣の御意見をお伺いして、終わります。
○国務大臣(麻生太郎君) アジアという地域は歴史的な大変化を遂げつつあるというのが今、現状だと思います。その中にあって、先ほど申し上げましたように価値観を共通しております国でありますが、日本はこの地域に出るのが遅れた、私もそう思います。
 昨年でしたか、インドに八月、選挙真っ最中に、当時まだ総務大臣でしたけれども、NTT始め通信関係百十何社と一緒にインドに行き、昨年の四月に小泉総理が行かれ、以後、経団連、関経連、同友会、いろいろ大きなミッションがざあっと出始めておりますので、おかげさまで、このところ急激にインドに対して国民の意識が変わりつつある、企業の意識も変わりつつあるというように思います。
 いずれにいたしましても、戦略的な観点から考えましても、これはもう日印関係というのは強化するというのは非常に重要な外交だと思っておりますので、私どもとしては、今後、EPAの可能性含めまして、私どもは積極的に検討していく考えであります。
○高野博師君 ありがとうございます。
○緒方靖夫君 今回の二本の条約は、源泉地国課税の撤廃を含めた大幅引下げが特徴になっていると思います。租税条約の第一の目的というのは、二重課税の回避のために課税権の調整を先進国や途上国と分け隔てなく行う、そこにあるんだろうと思うんですね。
 そこで、お伺いしますけれども、今回のイギリスとインドのこの条約での国際課税の引下げという点で、経済的あるいは税制のメルクマールをどこに置かれたのか、お伺いいたします。
○政府参考人(加藤治彦君) 正に御指摘のように、私ども、課税権の調整ということがこの条約の目的でございますので、結局、源泉地国課税と居住地国課税の両方の課税権、どちらに統一していくかということで、今の租税条約の考え方、これは世界共通ですが、極力居住地国に課税を集約していくと、それによって源泉地国課税を少しずつ制約していくというのが私どもの基本的な考え方でございます。
○緒方靖夫君 提案されている二本の条約は、日本の企業のイギリスやインド進出にどういう貢献をしていくというふうにごらんになっているのか、お伺いします。
○政府参考人(加藤治彦君) いわゆる国際的な経済活動の交流の中で、税制というメルクマールがどの程度ウエートを持っているのか、これは各企業の御判断もあると思います。ただ、ですから、逆に言うと、むしろ雇用関係とかインフラとかその当地における需要とか、いろんな要素の中の一つだと思います。
 特に、この二重課税の排除ということは、逆に言えば、これは完全に税を減免するわけじゃなくて、源泉地国で納めるものを、そこはやめる代わりに本国で納めるということですから、率直に申しまして物すごく大きなメリットが、得をするということじゃない。ただ、資金繰りの面ですとか、それから赤字法人なんかは二重課税の調整が外国税額控除ではできないということですので、そういう意味では交流の促進の一助になる、それは一つの、何というんですか、円滑な材料になる、こういう私どもは認識をしております。
○緒方靖夫君 政府は、二〇〇四年の日米租税条約審議の際に、源泉地国課税の大幅引下げを内容とする新条約をモデルとして今後アジア諸国と交渉していきたいという、そういう考えを述べられておりました。その点について、今回のインドとの交渉では、源泉地国課税の引下げをなぜ求めたのか、その具体的な理由は何かという点をお伺いいたします。
○政府参考人(加藤治彦君) 正に私どものポリシーは、極力課税を居住地国に集約していくということで、先ほど外務省の方からもお話ございましたが、インドに対しても同じようなことで、それぞれの居住地国に課税を集約していったらどうかということで交渉に臨んだわけでございます。
 ただ、やはりこの問題は、それぞれの各国の課税に対する考え方が異なって、インドの場合にはやはり我が国のそういう方針とはやや異なって源泉地国での課税、特にインド国内における課税権を確保したいという御要請が若干強かったということで一部引下げという段階的なプロセスを取ったということでございます。
○緒方靖夫君 インドとの交渉がどういうように行われたかということにもよるんですけれども、インドとの改正議定書を見ますと、結果的に源泉地国課税の撤廃を含むような内容にはなっていないということがあるわけですね。そこには当然インドの主張があったと思うわけですけれども、インド側のこの点についての主張はどういうものだったかをお伺いいたします。
○政府参考人(長嶺安政君) インド側の主張ということでございますが、これは交渉におきましては、インド側からも当初から、この投資所得に対する源泉地国課税につきましては限度税率を引き下げるということについて基本的には同意をしておりました。他方、インド側は、インドが締結した租税条約におきまして、投資所得について一〇%未満の限度税率を定めたものはこれまでにないと、また自国の税収を確保するという観点等もありまして、一〇%より一層低い税率への引下げには応じられないという主張をした経緯がございます。そういった交渉の経緯をたどりまして、結果として、限度税率につきましては一〇%まで引き下げるということで双方の合意に達したものでございます。
○緒方靖夫君 今答弁にありましたように、インドとしては一定の課税権の確保をしたいという、そういうことだったのかなと思います。また、あるいは大幅の引下げにはやはりちょっと抵抗感があったということなのかなというふうに理解いたしますけれども、インドの対応を見ますと、やはり途上国にとっての課税権がやはり大きな問題になるなということを感じるわけです。
 配当、利子、使用料による利益というのは、源泉地での事業活動がなければ生じないものであって、そこでの利益についての源泉地での応分の負担が求められるのは当然ということになるわけですね。とりわけ途上国での課税権の確保ということを考慮することは、我々にとってもその点の配慮ということが必要なのかなと、そういう感じがするわけです。
 先ほど、政府は、オランダ、フランスと改正交渉をしているという話がありましたけれども、今後、この租税条約についてどんな国との交渉を予定されているのか、お伺いいたします。
○政府参考人(長嶺安政君) お答えいたします。
 先ほど御答弁申し上げましたが、現在、我が国は、オランダ及びフランスとの間で租税条約の改正交渉を行っております。また、フィリピンとの間で租税条約の改正交渉に向けた準備を行っておるところでございます。
 一般論につきましては、先ほど副大臣からも申し上げましたが、今後の租税条約の締結に当たりましては、経済関係を中心とする我が国との二国間関係、相手国の税制及び租税条約の締結状況等を総合的に勘案した上で交渉相手国を決めていくと、こういう方針でございます。
○緒方靖夫君 今後、アジア諸国とも交渉なわけですけれども、インドと同じように、まあインドは経済大国になりつつあると思いますけれども、それよりも発展度が低い途上国が相手の交渉ということになってくるという場合もあると思います。その場合、アジアの途上国側の課税権の交渉、課税権の権利を交渉の中で尊重していくということについてどういうお考えなのか、お伺いいたします。
○政府参考人(長嶺安政君) お答えいたします。
 一般論として申し上げれば、ただいま緒方委員が御指摘になりましたように、アジアの途上国の場合には、自国の税収確保というような観点から、源泉地国課税の大幅な軽減には慎重であるということが一般的には言えるかと思います。したがいまして、我が国としては、これらアジアの途上国側の事情ということも配慮しながら、合意できる範囲内で租税条約の締結を進めていくということになろうかと思います。
 他方、租税条約につきましては、これは二重課税の排除を通じて投資交流の促進を図るということになりますので、中長期的には両国の経済の活性化という目的を、ねらいをしたものであるということもございますので、そういう租税条約の利点ということも相手国にはよく理解していただけるようにしていきたいと考えております。
○緒方靖夫君 日英租税条約案について聞きますけれども、そもそも英国の有限責任パートナーシップ、LLPに対する課税の考え方が日本側のものと異なっていると思うわけですけれども、条約上の事業体課税と構成員課税の規定ぶりをどう整理されているのか、そして、日本側の課税の方針はどうなっているのか、お伺いいたします。
○政府参考人(加藤治彦君) 日英新租税条約におきましては、今御指摘のように、課税上の取扱いが両国で異なる事業体につきましては、それぞれその事業体及びその構成員が取得する所得、これに対する居住地国の課税の取扱いに従って条約の特典が及ぶようにするというふうに原則を、適用関係を定めております。
 例えば、英国のLLP、リミテッド・ライアビリティー・パートナーシップ、これは英国の税法上は、LLPは納税義務がございません。そして、LLPを構成している構成員それぞれに課税するという構成員課税ですが、一方、日本の制度から見ますと、英国のLLPは法人格がありますので、日本の税制からいくと、法人格を有する英国のLLPをそのものを納税義務者として認識するという形になる。したがいまして、もし、そのイギリスのLLPが日本を源泉とする所得を取得するような場合、居住国である英国においてはLLPの構成員である英国の居住者が納税者なんですけれども、日本においてはLLPが納税義務者であるために、構成員に対する条約の特典が普通では受けられないと。これを今回措置しまして、要するに構成員が、英国のLLPの構成員が英国の居住者である場合には、きちっと構成員の段階で課税の恩典が受けられるように、こういう配慮をしておるわけでございます。
○緒方靖夫君 その点について、国際課税をしていく上での多国間の情報交換等、実態調査は経済のグローバル化に応じて膨大な作業になるというふうに思うわけです。条約あさりという租税の回避手法が問題になっておりますけれども、日英租税条約では、例えば配当に関する導管取引の禁止規定がありますけれども、この規定はどういうものか、簡潔に説明してください。
○政府参考人(加藤治彦君) 結局、配当の受取人は条約の締結国の居住者でも、実は第三国の人とまたその居住者が別途優先株等々の契約を結んで実際的な配当の経済的利益が第三国の人に及ぶような、こういう措置を防止するというのが今回の導管取引等々の防止、濫用防止規定の趣旨でございます。
○緒方靖夫君 ケイマン諸島などは日本と租税情報を交換する条約を締結しておりませんけれども、租税回避としてケイマンとかあるいはパナマとか、よく利用されるのはなぜですか。
○政府参考人(加藤治彦君) 結局、その地域で実は居住者が課税をされないという状況を利用するわけですね。ですから、源泉地国で課税されないと、その本国でも課税されなければ、そこに本店を所在すれば両方の税金を免れる。
 我々、今行っているのは、相手国との関係で、相手国もちゃんと課税をするという前提の下に二重課税防止の条約を結んでおるわけですから、そこはケイマンとかそういうところを利用して、第三国でそういう今正に御指摘のようなことがないように、あくまでもこの条約の適用関係は当該条約締結国同士の居住者に限ると、それを私どもはこの協定の中で担保しようとしておるわけでございます。
○緒方靖夫君 日本側は国際租税の違法行為などに対してタックスヘーブン税制で課税しておりますけれども、いわゆる租税回避行為や脱法行為を発見し対応する上で実務上の課題、これは何でしょうか。
○政府参考人(松川忠晴君) お答え申し上げます。
 御指摘ありましたように、各国の税制の違いなどを利用して不当に税負担を逃れようとする国際的な租税回避行為が散見されるわけでありますけれども、こうした事態に対しましては、税務調査などを通じまして事実関係を的確に把握した上、適正な課税を行うこととしております。
 この国際的な租税回避の形態は実に様々な形態があるわけでありますけれども、いずれにつきましても、その取引が海外に及んでいるということがございます。また、パートナーシップなどの外国の事業体や新たな金融手法、スワップ取引でありますとかオプション取引などの金融手法でありますが、これらを駆使しました複雑なスキームになっていることなどから、その取引実態の把握には困難な面があることも事実でございます。
 このように大変難しい環境の下ではございますが、課税当局といたしましては、適正な課税の実現をする観点から、国際的な課税問題を専担する調査官の増員でありますとかプロジェクトチームの設置など、調査体制の充実を図りますとともに、租税条約に基づく情報交換の積極的な活用や海外への資金の流れの把握など、あらゆる機会を通じて課税上有効な資料情報の収集に努めているところでございます。
 今後におきましても……
○委員長(舛添要一君) 答弁は簡潔に願います。
○政府参考人(松川忠晴君) 国際的な租税回避に対しましては、国税組織の総力を挙げて厳正に対処いたしまして、制度、執行の両面に十分連携を図りながら、その防止と適正、公平な課税の実現に努めてまいりたいと考えております。
○緒方靖夫君 時間になりましたので、終わります。
    ─────────────
○委員長(舛添要一君) この際、委員の異動について御報告いたします。
 本日、遠山清彦君が委員を辞任され、その補欠として西田実仁君が選任されました。
    ─────────────
○大田昌秀君 日英租税条約と日印租税条約の締結には基本的に賛成ですが、何点か質問させていただきます。
 最初に、財務省にお願いいたします。
 日英租税条約では、営業者が匿名組合員から出資金を集めて運用する匿名組合契約に基づく利益の分配について二〇%の源泉所得税を課税するとあります。これは、過去、匿名組合を悪用して租税逃れをしたケースがあって、それを避けるための措置ではないかと思いますが、これまでイギリスの投資家などによる我が国の匿名組合を利用した租税回避事例がどれくらいあったのか、大まかで結構ですので教えてください。
○政府参考人(加藤治彦君) 私ども、そこのところの具体的なケースについては特に把握はしておりません。
 というのは、この匿名組合を利用する租税回避というのは、結局、匿名組合の課税が今居住地国に、もう現行の制度上、源泉地国で、要するに日本の課税はしないで相手国、居住地国で課税するという制度になっていますので、居住地国の課税制度がちゃんとしていれば、これは先ほど言いましたように、むしろ二重課税がない状態なわけです。今までいろいろ新聞報道の何かで出ていたケースは、この匿名組合の本国地課税が十分でない国、オランダなどが指摘されているわけですけれども、そういうので幾つかの具体例が散見されました。
 イギリスは、今私どもが聞いている限りでは、かなりの部分が課税、本国地で課税になるような、いわゆる事業所得的に課税されておりますので、イギリスに限って言えば、この問題というのはそれほど大きなウエートはないというふうに考えております。ただ、やはりこの匿名組合というのが非常に特有の、日本の特異な制度ですので、やはりきちっとこの課税の問題を整理しておくことが必要ということで今回条約上明記したものでございます。
○大田昌秀君 外務省にお願いします。
 私の誤解かもしれませんけれども、日英租税条約と日印租税条約との間で税率の引下げ幅が若干異なっているように思われます。日英租税条約の場合、配当は一〇%から親子間では免税又は五%、その他で一五%から一〇%に引き下げられるほか、使用料は一〇%から免税になっています。一方、日印租税条約の場合は、配当及び利子は一五%から一〇%に引き下げられるものの、使用料は二〇%から一〇%の引下げにとどまっています。そのような違いは、両条約の税率の引下げ率は同じという意味でしょうか。
○政府参考人(佐渡島志郎君) お答え申し上げます。
 先ほど来御議論をいただいておりますけれども、我が国の場合には、インドに対しても租税条約の改正という意味で一番主眼を置いておりましたのは、両国間の投資交流を促進するという点でございます。したがって、配当とかほかのいわゆる投資所得に対する源泉地国課税の限度税率を引き下げると、これをなるべく引き下げたいというのが私どもの目標でございました。
 他方、インドの方は、下げましょうということはよろしいということだったんですが、交渉を重ねるうちに、先方の説明によりますと、インドが自分で結んでいるほかの国との条約で、租税条約については一〇%未満の限度税率を定めたものはないということで、かつ自分のところの税収の基盤をしっかり確保していきたいという主張をしまして、一〇%というところが一つの基準になったわけでございます。
 最終的には、私どももなるべく下げた方がいいという主張をしましたが、一応インド側も途上国として自国の課税権を確保したいというところの折り合いで、最終的には一〇%ということになったものでございます。
○大田昌秀君 財務省にお伺いします。
 日英租税条約や日印租税条約の締結の意義は、その趣旨説明によりますと、関係企業が投資先からの受取に対する税の減免となり、両国相互間での投資の促進に資するということであります。
 それでは、この条約の締結によって、日本の関係企業全体にとっておおよそどれくらいの減税となる見込みなのか教えてください。
○政府参考人(加藤治彦君) 先ほど来お尋ねがございますが、私ども、この条約がない場合はいわゆる外国税額控除制度ということで外国で支払った分を控除すると、その分が減収になるわけですが、今の制度自体は全世界の分を一括して外国税額控除をするということで、その数字自体はございます。約四千億ほどをしております。
 ただ、二か国間に当てはめてそれをどういうふうに分類するかについては、これは全世界課税を、調整をしているという関係上、国別の統計はございませんので、そこのところは御容赦いただきたいと思います。
○大田昌秀君 いま一つ財務省にお願いいたします。
 開発途上国との租税条約では、日本の企業が相手国の租税減免の優遇措置を受けた場合、租税条約に基づいて減免された税額を外国において納付したものとみなし日本での課税を軽減するように措置する、いわゆるみなし外国税額控除制度が適用されています。しかし、日印租税条約改正議定書では同制度を廃止するとありますが、それによって課税の軽減措置が見直されるとどれくらいの税収増につながるのでしょうか。
○政府参考人(加藤治彦君) これも先ほどお話ございましたが、今、国別にみなし税額控除、外税控除の統計はございません。ただ、全体でみなし外国税額控除で我が国が認めて税額控除をしている金額は、約二百八十億円程度ございます。
 インドとの関係におきましては、まだインドとの、元々インドとの交流自体が現段階では小さいわけで、そういう意味では、今の段階では余り大きな影響はない、ただ今後拡大するということを前提にすれば、その分が事前に防止できるという意味は大きいかと思います。
○大田昌秀君 外務大臣にお伺いいたします。
 去る三月、米国は、インドに対してインドの原子力エネルギー開発に協力することを表明しました。インドは、一九九八年に核実験を行い、かつ核拡散防止条約には未加盟であります。したがって、米国の核技術の供与が民生用に限られるとしても、またその際に国際的な査察を徹底するとしても、結果的にインドの核開発が促進され、挙げ句、軍事転用への懸念が出てまいります。
 我が国はこのインドの核開発問題に対してどのように対応していかれるのか、御説明ください。
○国務大臣(麻生太郎君) インドの戦略的重要性、また急激に今インドは経済成長をし始めておりますので、エネルギー需要というものが急激に増大をしていくために、手当てをしておいてもらわぬと石油の強烈な争奪戦になり得るという点等々を考えて、インドの戦略的重要性とか需要の増大に関しては理解をしておりますが、他方、今、大田先生が言われましたように、NPT、核不拡散条約、あれに対して非加盟の国でありますんで、少なくともこのNPTという条約を礎として、基礎として、国際的な軍縮とか核不拡散体制というものを私どもやっておりますんで、その意味でここのところは注意深く対応せにゃいかぬというところだと思いますが。
 いずれにいたしましても、今回の米印の基本的な合意によって直ちにインドへの原子力協力が行われる可能性があるかと言われれば、これは国際的な議論をいろいろ踏まえていかにゃいかぬところだと思っておりますんで、日本としてもその種の議論に対して参加すると同時に、よく見極めて対応していかねばならぬものだと考えております。
○大田昌秀君 いま一つ外務大臣にお願いいたします。
 去る三月三十日付け日本経済新聞は、イラクにおける本格政権の発足がずれ込んでいるが、イギリスはイラクの兵力削減を予定どおり五月をめどに実施する方針だと報じています。
 イラク・サマワで自衛隊の警護に当たっているイギリス軍が撤退することになると、自衛隊の警護をどうするかという問題が生じます。イギリス軍の撤退に際して、自衛隊の警護問題についてイギリス側との外交ルートで何らかの協議をなさっておりますか、御説明ください。
○副大臣(金田勝年君) イラクにおきます自衛隊の活動に関しましては、我が国はイギリスを始めとします多国籍軍の関係国との間で常日ごろから緊密に連絡を取りまして意見交換を行ってきております。イギリスは、今後の多国籍軍の在り方につきましては今後の現地情勢を踏まえる必要があると、あらかじめ具体的なタイムスケジュールを設定することはできないという立場を一貫して維持をしているわけであります。
 いずれにしましても、今後とも、イギリスを始めとする各国との間で、多国籍軍の活動等に関しまして緊密な連絡を取ってまいる方針であります。
○大田昌秀君 内閣府にお願いいたします。
 去る三月三十日の本委員会において、沖縄復帰後の返還軍用地の跡地利用の現状等についてお伺いいたしました。ところが、内閣府の東政策統括官は、跡地の利活用はどうなっているのかはっきりしていない、よって承知をしていないという趣旨の御答弁でした。
 しかし、返還軍用地の跡地利用の国の責務について、二〇〇二年四月一日施行の沖縄振興特別措置法の第九十五条では、「国、沖縄県及び跡地関係市町村は、密接な連携の下に、沖縄の均衡ある発展及び潤いのある豊かな生活環境の創造のため、駐留軍用地跡地の有効かつ適切な利用を促進するよう努めなければならない。」とうたわれています。
 この規定からすると、内閣府として跡地利用の現状も把握していないというのは、国の責任を放棄しているのではありませんか。お伺いします。
○政府参考人(東良信君) 跡地利用につきましての国の責任ということでございますが、今先生からお話ありましたとおり、沖縄振興特別措置法において規定されているわけでございます。
 これは、基本的には沖縄の均衡ある発展及び潤いのある生活、豊かな生活環境の創造のため、跡地の有効かつ適切な利用を促進しなさいということでございますし、これにつきまして、この基本原則にのっとって、この促進のために必要な財政上の措置もしなさいということでございます。私どもは、これにのっとりまして、これまでも政府と地元との調整機関である跡地対策協議会等々の支援もやっているというところでございます。
 今、先生が跡地利用についてどうなんだということでございますけれども、やはり跡地利用というのは、結果として地権者の方々が自らの土地利用をされた結果ということでございまして、私どもは跡地がどういう状態になっているかということまでは把握をしていないという趣旨で御答弁したということでございます。
○大田昌秀君 関連して、いま一つお伺いします。
 一九九九年十二月二十八日の閣議において、政府は普天間飛行場の移設に係る政府方針を決定しましたが、その際に、駐留軍用地跡地利用の促進及び円滑化に関する方針を決めています。具体的には、跡地利用の促進及び円滑化のための措置として、国と沖縄県と関係市町村の協力の下、跡地利用の計画の具体化促進を図るため、関係市町村などとの間で調整機関を設置するとあります。
 この間、沖縄県や関係市町村との間でどんな調整機関を設置し、どのような協議をしてきたか、簡潔に御説明ください。
○政府参考人(東良信君) 国と、それから県それから地元自治体ということで跡地協議会というものを設けまして連携をやっているということでございます。
○大田昌秀君 九八年十二月二日付け沖縄タイムスは、社説の中で軍用地跡地利用制度の見直しについて論じ、返還軍用地に関する調査によると、返還から事業認可までに平均六年七か月、事業完了までに平均十四年も要していると指摘しています。これは、沖縄県軍用地等地主会連合会の返還軍用地の公共事業施行に関する遊休化状況に関する調査によるものですが、内閣府はこのような状況さえつかんでいないというのは極めて問題だと思います。
 跡地利用の状況把握に直ちに取り組むべきだと思いますが、いかがお考えでしょうか。
○委員長(舛添要一君) 質疑時間が終了しておりますので、簡潔にお答え願います。
○政府参考人(東良信君) これは、やはり跡地利用というのは地権者それから地元の意向によるものだというふうに考えております。ですから、地元の市町村等々がこういうことを利用したいということであれば、いろいろなところでそういう跡地利用の状況も調査をしながらやっているということでございます。これに対しての国の支援もやっているということでございます。
 以上でございます。
○大田昌秀君 終わります。ありがとうございました。
○委員長(舛添要一君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
 これより討論に入ります。
 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
○緒方靖夫君 私は、日本共産党を代表して、英国との新租税条約とインドとの租税条約改正議定書に反対の立場から討論を行います。
 両条約は、二〇〇三年に日米間で締結された新しい租税条約に倣い、配当、利子、使用料による所得に対する源泉地国課税を撤廃し、大幅に引き下げるものであります。このような措置は、二重課税回避にとどまらないものです。すなわち、締約国双方の企業が相手国での事業や相手国企業との取引によって得た利益に対し、その利益の基となる事業活動が行われた相手国が持つ課税権を大きく制限するものとなっており、進出先での事業収益についてのその国での応分の税負担を損なうということになります。
 海外への投資が促進される今日、海外で事業活動を行い、収益を上げれば、その国において収益に応じた税負担をすることは当然です。特に、途上国と課税権を調整する場合、源泉地国課税の確保は重要です。それを過度に軽減することは問題が多いと考えます。
 以上で討論を終わります。
○委員長(舛添要一君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。
 これより採決に入ります。
 まず、所得及び譲渡収益に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とグレートブリテン及び北アイルランド連合王国との間の条約の締結について承認を求めるの件の採決を行います。
 本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
○委員長(舛添要一君) 多数と認めます。よって、本件は多数をもって承認すべきものと決定いたしました。
 次に、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とインド共和国政府との間の条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件の採決を行います。
 本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
○委員長(舛添要一君) 多数と認めます。よって、本件は多数をもって承認すべきものと決定いたしました。
 なお、両件の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(舛添要一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後零時四分散会