第166回国会 本会議 第8号
平成十九年三月九日(金曜日)
   午前十時一分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
○議事日程 第八号
    ─────────────
  平成十九年三月九日
   午前十時 本会議
    ─────────────
 第一 平成十九年度における財政運営のための
  公債の発行の特例等に関する法律案及び所得
  税法等の一部を改正する法律案(趣旨説明)
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 一、議員辞職の件
 一、中央選挙管理会委員及び同予備委員の指名
 以下 議事日程のとおり
     ─────・─────
○議長(扇千景君) これより会議を開きます。
 この際、議員の辞職についてお諮りいたします。
 本日、荒井正吾君から議員辞職願が提出されました。
 辞表を参事に朗読させます。
   〔参事朗読〕
   辞 職 願
 この度一身上の都合により議員を辞職いたした
 いので御許可下さるようお願い申し上げます
   平成十九年三月九日
          参議院議員 荒井 正吾 
  参議院議長 扇  千景殿
○議長(扇千景君) 荒井正吾君の議員辞職を許可することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(扇千景君) 御異議ないと認めます。
 よって、許可することにいたしました。
     ─────・─────
○議長(扇千景君) この際、中央選挙管理会委員及び同予備委員の指名についてお諮りいたします。
 内閣から、中央選挙管理会委員五名の任命について、本院の議決による指名を求めてまいりました。
 本委員を指名するときは、併せて同予備委員を指名することになっております。
 よって、これより中央選挙管理会委員及び同予備委員各五名の指名を行いたいと存じます。
 つきましては、中央選挙管理会委員及び同予備委員の指名は、いずれも議長に一任せられたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(扇千景君) 御異議ないと認めます。
 よって、議長は、
 中央選挙管理会委員に坂田桂三君、谷合靖夫君、足立良平君、後藤茂君及び鳥居一雄君を、
 また、同予備委員に元宿仁君、今井正彦君、西川洋君、尾崎智子君及び長谷雄幸久君を、
それぞれ指名いたします。
     ─────・─────
○議長(扇千景君) 日程第一 平成十九年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案及び所得税法等の一部を改正する法律案(趣旨説明)
 両案について提出者の趣旨説明を求めます。尾身財務大臣。
   〔国務大臣尾身幸次君登壇、拍手〕
○国務大臣(尾身幸次君) ただいま議題となりました平成十九年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案及び所得税法等の一部を改正する法律案の趣旨を御説明申し上げます。
 まず、平成十九年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案について御説明申し上げます。
 平成十九年度予算においては、税収が増加する中においても徹底した歳出削減方針を貫き、多くの経費を平成十八年度当初予算より減額し、一般歳出の増加をできる限り抑制いたしました。
 この結果、新規国債発行額について、平成十八年度当初予算に比べ、過去最大の四兆五千四百十億円の減額を実現しましたが、我が国の財政状況は引き続き厳しい状況となっており、特例公債の発行等の措置を講ずることが必要であります。
 本法律案は、厳しい財政事情の下、平成十九年度の財政運営を適切に行うため、同年度における公債の発行の特例に関する措置及び年金事業等の事務費に係る負担の特例に関する措置を定めるものであります。
 以下、その大要を申し上げます。
 第一に、平成十九年度の一般会計の歳出の財源に充てるため、財政法第四条第一項ただし書の規定による公債のほか、予算をもって国会の議決を経た金額の範囲内で公債を発行することができることとするなどの特例措置を定めております。
 第二に、平成十九年度において、国民年金事業、厚生年金保険事業及び国家公務員共済組合の事務の執行に要する費用に係る国等の負担を抑制するため、国民年金法、特別会計に関する法律及び国家公務員共済組合法の特例を設けることとしております。
 次に、所得税法等の一部を改正する法律案について御説明申し上げます。
 本法律案は、現下の経済・財政状況等を踏まえ、持続的な経済社会の活性化を実現するためのあるべき税制の構築に向け、減価償却制度、中小企業関係税制、住宅・土地税制、組織再編税制、信託税制、納税環境整備等につき所要の措置を講ずるものであります。
 以下、その大要を申し上げます。
 第一に、我が国経済の成長基盤を整備し、国際的なイコールフッティングを確保する観点から、減価償却制度の抜本的見直しに係る所要の改正を行うこととしております。
 第二に、中小企業関係税制について、中小企業の財務基盤の強化を図るため、特定同族会社の留保金課税制度の適用対象から資本金一億円以下の中小法人を除外する等の見直しを行うこととしております。
 第三に、住宅・土地税制について、税源移譲に伴い住宅ローン減税制度の政策効果の小さくなる中低所得者に配慮して、その控除期間の延長等の特例を創設するとともに、住宅のバリアフリー改修促進税制の創設等を行うこととしております。
 第四に、組織再編税制について、会社法により三角合併が可能とされることに伴い、親法人株式を対価として交付する場合にも課税繰延べが認められるよう、適格合併の要件を見直すこととしております。また、信託税制については、新信託法による新たな信託類型等に対応した税制を整備することとしております。
 第五に、納税環境整備として、電子証明書を有する個人の電子申告に係る所得税の税額控除制度の創設等を行うこととしております。
 その他、所得税の寄附金控除の控除対象限度額の引上げ、企業の子育て支援に係る特例の創設、移転価格税制に係る納税猶予制度の創設、上場株式等の配当等及び譲渡所得等に対する税率の特例の一年延長を行うこととしております。また、農用地利用集積準備金制度の廃止等、既存の特別措置の整理合理化を図るとともに、住宅用家屋に係る所有権の移転登記に対する登録免許税の特例等の期限の到来する特別措置について、その適用期限を延長するなど、所要の措置を講ずることとしております。
 以上、平成十九年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案及び所得税法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げた次第であります。(拍手)
    ─────────────
○議長(扇千景君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。発言を許します。大塚耕平君。
   〔大塚耕平君登壇、拍手〕
○大塚耕平君 民主党・新緑風会の大塚耕平です。
 ただいま議題となりました二案について質問いたします。
 初めに、所得税法等改正案に関連して伺います。
 マスコミで上げ潮路線と言われている安倍政権の経済政策は、企業減税優先で経済を成長軌道に乗せようという考え方です。私自身は、GDPの五割以上を構成する個人消費対策、家計対策の充実こそが持続的な経済成長につながるとともに、将来不安、生活不安の軽減に伴い、少子化傾向にも変化をもたらす適切な経済政策だと考えています。企業減税の有効性を否定するつもりはありませんが、ただいま申し上げた観点から言えば、今年度の所得税法等改正案は家計への配慮を欠く内容であると言えます。この点に関する財務大臣の所感を伺います。
 また、安倍首相は成長なくして財政再建なしというキャッチフレーズを使っておりますが、これは故小渕首相が提唱していた経済成長と財政再建の両方を達成可能とする二兎論と同じであります。しかし、現実にはその後も財政悪化が続き、二兎論は失敗しました。今回は成功するという論理的根拠を五日の予算委員会で安倍首相にお伺いしましたが、明快にはお答えいただけませんでした。そこで、再度この点を内閣全体の政策の方向性をかじ取りしている官房長官にお伺いいたします。
 家計対策という観点から言えば、税金と社会保険料という政府の定義による国民負担では家計の実情は把握できません。医療、介護、年金、雇用、教育などに関する支出を含む実際の国民負担をベースにした検討を行う必要があります。この点についても予算委員会で首相の考えをお伺いいたしましたが、やはり答弁があいまいでした。再度、官房長官に、実際の国民負担に関する調査検討を行う意思があるか否かをお伺いいたします。
 昨年に続いて今年も高齢者の確定申告件数が増加しております。公的年金等控除と最低控除保障の引下げ、老年者控除の廃止を行った平成十六年度税制改正の影響です。これらの変更によって年金受給者の課税最低限が大幅に低下したため、新たに課税対象となった高齢者が医療費控除等による還付を期待して確定申告を行っています。
 そこで、財務大臣に伺います。昨年度の確定申告書提出者の一昨年度対比の増加数及び今年度の昨年度対比の見込みを伺います。また、当該対象者の納税による昨年度の増収はどの程度だったでしょうか。税制改正時の予想値と実績値をお答えください。
 年金収入を補うために細々と働いている高齢者にも余波が及んでいます。課税最低限が低下したため、従来と同じ給与所得しか得ていなくても新たに課税対象になる人が発生しています。わずかな所得しか得ていない高齢者が急に課税対象となることは、高齢者の勤労意欲を低下させる蓋然性が高く、少子高齢化時代の政策の方向性として間違っているのではないでしょうか。財務大臣にお伺いいたします。
 この改正に加え、定率減税全廃など、税や社会保険料、高齢者を中心とした医療費の負担増が続いています。厚生労働省の試算によれば、六十五歳以上の年収三百七十九万円の夫婦モデル世帯の場合、税、社会保険料、医療費は二〇〇一年度の九十六万円から二〇〇七年度には百五十五万円になり、五十九万円の負担増、実に一・六倍であります。また、所得が三百万円未満の六十五歳以上の高齢者の割合は二割強。今後はもっとその割合が多くなり、高齢者は現役よりも世代内格差が大きいと言われています。高齢者を一くくりにすることなく、勤労意欲を低下させない仕組みを考えるべきだと思います。官房長官の見解を伺います。
 そもそも、年金に対して所得税を課すのはいかがなものでしょうか。年金収入は所得税法三十五条で雑所得に含まれていますが、働いて得た収入でないことをかんがみますと、年金課税を行う場合には、所得税とは別途の根拠と体系を明確にした年金税制をつくるべきではないでしょうか。財務大臣に伺います。
 家計対策の次に考慮すべきは、日本経済を支えている中小企業対策です。
 昨年度の税制改正時に突如決定された同族会社の役員給与の損金不算入については、その後の厳しい批判に窮して、今次改正案で適用除外基準を八百万円から一千六百万円に引き上げました。八百万円、一千六百万円、それぞれの場合の想定対象企業数、税の増収はどの程度でしょうか。財務大臣に伺います。
 本件は、同族会社役員の経費処理の適正化を企図したものと説明されていますが、所得税と法人税の論理を混同した不見識な対応と言えます。経費処理の適正化は企業の会計処理の際に行うのが本来の対応であると考えます。適用除外基準引上げに伴って対象企業はわずかになったという財務省の抗弁を聞きますが、そうであるならば、この際、損金不算入制度自体を撤回してはどうでしょうか。財務大臣に伺います。
 本件に対する批判をかわすもう一つの対策として、留保金課税制度の見直しが盛り込まれました。資本金一億円以下の中小企業が留保金課税の適用除外となりますが、対象企業数と減税規模について財務大臣に伺います。
 なぜ資本金一億円以下としたのか、その理由も伺います。企業の財務体質強化が課題であることをかんがみますと、内部留保が促進される施策を行うべきです。内部留保が恣意的に用いられることなく、企業経営や配当に適切に使われているかどうかをチェックするのが本筋であり、資本金によって制度的な格差を設けるのは適切ではありません。財務大臣の見解を伺います。
 次に、公債発行特例法案についてお伺いいたします。
 公債発行額を前年度当初比四・五兆円削減したことが来年度予算案の安倍首相の自慢の種となっているようですが、財政再建が重要な課題である現状をかんがみれば、言わばそれは当然のこと。予算案自体が評価に値する内容であれば、その財源不足を補うための公債発行も是認できることとなりますが、そういう視点からお伺いしたいと思います。
 そもそも、骨太の方針二〇〇六では、今後五年間の財政再建シナリオを示し、二〇一一年度までに少なくとも十一・四兆円の歳出削減が必要としたにもかかわらず、来年度予算案の一般歳出は三年ぶりに増加しています。骨太の方針二〇〇六に反するのではないでしょうか。官房長官にお伺いいたします。
 新規国債発行額の前年度当初比減少分と地方交付税特別会計からの借入金返済分の合算額が税収増加分より少ない上、税収増加分には定率減税廃止に伴う上積み分が含まれることを勘案しますと、来年度予算案の歳出削減は不十分と言えるのではないでしょうか。官房長官にお伺いいたします。
 特に、公共事業関係費は前年度当初比マイナス三・五%と、前年度の前々年度当初比マイナス四・四%に比べて縮小しています。前年度よりも削減率が少なくなった理由は何でしょうか。財務大臣にお伺いいたします。
 社会保障費は、前年度当初比五千六百七十億円の増加です。財政健全化のためには、今後の予算全体の増額は社会保障費の増分程度に抑えるというのが一つの考え方だと思われますが、いかがでしょうか。財務大臣にお伺いいたします。
 財政健全化に関連して、個別事例について見解を伺います。
 来年度予算案では、外務省の旅券電子申請システムに関する支出を廃止したそうですが、このシステムは過去三年間に百三十三件しか使用されておらず、財務省が旅券一枚の発行経費が約一千六百万円と指摘したと聞きます。民間企業であれば、このような失敗プロジェクトを担った管理者はそれなりの責任を取るものです。このシステムの開発の経緯、受注業者選定の経緯、総コスト、責任の所在について外務大臣に伺います。
 また、農水省は、政府の進める攻めの農業推進に関連して、各国の貿易制度調査のために二十三億円の予算が計上されています。調査は役所本来の職務であり、そのために別途の予算が付くというのは理解に苦しみます。本件の内容について農水大臣に伺います。
 また、農水省に限らず、本来業務と思われる職務に改めて予算が付くという不可思議な対応が散見されますが、こうした予算要求は徹底して排除すべきものと考えますが、財務大臣の見解を伺います。
 最近の企業の業績好転は、人件費削減等の合理化努力が寄与しています。財政収支改善は国民の負担増が寄与しています。超金融緩和も業績好転や財政収支改善に寄与していますが、金融緩和コストは間接的に国民が負担しています。国民の金利収入の目減りは、財政金融委員会における日銀総裁の答弁によれば、九三年から一昨年までで百八十兆円。その後の分も含めますと二百兆円を上回るでしょう。こうした事情を勘案すれば、税収増加分は合理化に貢献し、金融緩和コストを負担した勤労者や家計に還元すべきだと思います。また、家計対策を考えると金利を適切な水準まで戻すべきと考えます。いずれも財務大臣に見解を伺います。
 ところで、過去三十五年間の税収見積りの誤差はGDPの〇・〇四七%程度です。長期的には税収の上振れと下振れは相殺されることから、今年度の増収分は今後の減収分に対応してプールすべきという考え方もありますが、いかがでしょうか。財務大臣に伺います。
 国と地方を合わせた長期債務残高が過去最悪を更新する中で、金利上昇に伴う国債金利負担増のリスクが高まっています。金利一%の上昇に伴う金利負担増はどの程度でしょうか。また、税収増加分はこうした負担増に備えてプールするか、あるいは国債の消却に用いるべきではないでしょうか。財務大臣にお伺いいたします。
 金利水準の調整との関連でお尋ねいたします。
 日銀法第四条には、日銀の金融政策が「政府の経済政策の基本方針と整合的なものとなるよう、常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない。」と規定されています。現在の日銀の金融政策は政府の国債管理政策や経済政策と整合的と考えてよいでしょうか。そうであれば、なおさらのこと、今後の金利上昇に備えて税収増加分はプールすべきではないでしょうか。いずれも官房長官にお伺いいたします。
 ところで、日銀法第四条は義務規定でありましょうか、それとも努力規定でありましょうか。法制局長官にお伺いいたします。もし義務規定であるとすれば、同法第十九条に定める政府による議決延期請求権の行使あるいは議決延期請求権そのものが第四条と抵触するのではないでしょうか。法制局長官にお伺いいたします。
 一月の金融政策決定会合の際に、事前報道が随分行われました。議事の方向性について、日銀関係者か政府関係者がマスコミにリークしているものと思われますが、情報漏えいに対する処罰の枠組みの現状と今後の在り方について、官房長官にお伺いいたします。
 また、その際の利上げ有力との事前報道の根拠になったのが総裁の講演や記者会見での発言内容です。しかし、現在の金融政策決定会合は正副総裁三人を含む九人の政策委員の合議制であります。総裁の講演や発言が市場をミスリードしないためにも、九人の政策委員の露出度、発言回数を同等にすべきではないでしょうか。定例記者会見や国会での日銀半期報告にも、政策委員全員が出席すべきではないでしょうか。情報発信面で九人の政策委員を公平に扱うべきと考えますが、官房長官の見解を伺います。
 最後に、安倍首相の経済政策のキーワードである生産性について官房長官に伺います。
 二月二十七日の経済財政諮問会議で、今後五年間で日本の労働生産性の伸び率を一・五倍にするという数値目標が示されました。その算定根拠と伸び率を上昇させる具体的方法についてお伺いいたします。並びに、一月十八日の経済財政諮問会議において、全要素生産性を今後五年間で〇・九%程度から一・五%程度に引き上げるとしたこととの因果関係、整合性についてもお伺いいたします。
 上げ潮路線という表現は、米国のケネディ大統領が自身の経済政策を説明する際に述べたア・ライジング・タイド・リフツ・オール・ボーツという発言の主語、ア・ライジング・タイドからどなたかが引用したものと思われます。ケネディ大統領はオール・ボーツ、つまりすべての国民を豊かにするために、企業減税とともに大規模な家計減税など、家計の負担を軽減する施策も行いました。残念ながら、安倍首相の経済政策はその名に値しないと言わざるを得ません。
 政府が政策目標として掲げた労働生産性は、家計の負担や将来不安が軽減され、国民が安心して気持ちよく働ける環境が提供された結果として上がるものであり、国家が数値目標を国民に課すことは本末転倒と言えます。国民に生産性向上の数値目標を課す前に、国民に働きやすい、暮らしやすい環境を提供するために、安倍首相は自らの政策の生産性と創造性を向上させるべきであることを指摘して、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣尾身幸次君登壇、拍手〕
○国務大臣(尾身幸次君) 大塚議員からの御質問にお答えいたします。
 所得税法等改正案における家計への配慮についてのお尋ねがありました。
 経済がグローバル化する中で、どの国に企業活動の拠点を置くかを企業が決める時代、すなわち企業が国を選ぶ時代になっております。そういう中で、税制においても少なくとも国際的なイコールフッティングを確保することが重要であり、十九年度税制改正において、我が国経済の成長基盤を整備する観点から、減価償却制度について償却可能限度額を廃止するなどの見直しを行うこととしております。
 我が国経済は企業部門の好調さが持続しており、これが家計部門へ波及し、国内民間需要に支えられた景気回復が続くと見込まれる状況にあり、こうした中で経済活性化により企業の体質強化や競争力強化を後押しすれば、家計部門にも好影響があるものと考えられます。また、我が国中小企業の資本蓄積を促進するため、留保金課税制度の適用対象から中小企業を除外することや、税源移譲後も中低所得者の減税額を確保するため住宅ローン減税の特例を創設するなど、国民生活等に配慮した改正を行うこととしております。
 こうしたことを踏まえれば、今回の税制改正が家計への配慮を欠くものとの御指摘は当たらないものと考えております。
 平成十六年度改正の高齢者に対する影響についてのお尋ねがございました。
 年金課税の見直しに当たりましては、夫婦世帯で標準的な年金額約二百八十万円以下の年金だけで暮らしている高齢者世帯に対しては、基本的に税負担が生じないこととしております。この年金課税の見直しにより、税負担が増える又は新たに税負担が生じる方は約五百万人程度、年金受給者全体の約五分の一と見込み、平年度の増収額を約二千四百億円と見込んでいたところです。
 お尋ねのありました申告書提出者の増加数や申告納税額の実績値については、高齢者に限った数値を集計していないためお答えできないことを御了解願いたいと思います。
 年金課税についてお尋ねがありました。
 年金課税の見直しは、二〇〇四年度税制改正において、現役世代と高齢者世代との間の税負担の公平を図る観点から、年齢のみを基準として高齢者を優遇する措置である公的年金等控除の六十五歳以上の者の上乗せ措置及び老年者控除を廃止したものであります。この際、夫婦世帯の標準的な年金額である年間二百八十万円以下の年金だけで暮らしている高齢者世帯には、基本的に税負担が生じないこととしております。また、年金を受給する高齢者世帯の税負担は、同じ収入の給与所得を得ている現役世帯に比べて基本的になおかなり軽くなっております。
 年金課税に対する根拠と体系についてお尋ねがありました。
 個人所得課税は、様々な経済活動による所得に対して、税を負担する能力の大きさに応じて累進的に税負担を求めるものであります。公平かつ適正な課税を確保するためには、すべての方の様々な所得を漏れることなく、できる限り広く包括的にとらえることが必要であります。年金に係る収入につきましても所得であることに変わりがなく、公平かつ適正な課税を確保するためには、所得税の体系において例外なく課税ベースに含めるべきであると考えております。
 特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入制度についてお尋ねがありました。
 今般の改正前における本制度の適用対象企業数は約五ないし六万社、税収額は約二百九十億円と見込んでおりましたが、改正の結果、適用対象企業は約二ないし三万社、税収額は約百六十億円となるものと見込んでおります。
 また、税理論の混同ではないかとの御指摘ですが、法人が支配する役員給与については、法人税法上、従来から不相当に高額な役員給与等について損金不算入とするなど課税上の弊害を防止する対応を講じているところであり、本制度も、いわゆる一人オーナー企業の役員給与の支給について、経費の二重控除に相当する部分を損金不算入とすることで課税上の弊害を防止するものであることから、従来からの法人税制の考え方に沿ったものであり、御指摘は当たらないものと考えます。
 むしろ、中小企業の平均的な所得水準を超える所得があり、なおかつ、経営と所有を実質一人で行っている企業についてまで経費の二重控除による節税メリットを放置することは課税の公平上適切でないことから、本制度を撤回することは適当でないと考えております。
 特定同族会社の留保金課税制度についてのお尋ねがありました。
 今般の改正により、留保金課税の対象外となる中小企業は約一万社、減収額は約二百七十億円と見込んでおります。
 法人税制においては、従来から、資本金一億円以下の中小企業について軽減税率を適用するなど、企業の規模に応じた特性を踏まえた措置を講じているところでありますが、今般の留保金課税の改正につきましても、外部からの資金調達が難しい状況にあるといった中小企業の特性を踏まえ、中小企業全般を適用対象から除外したものであり、適切な対応であると考えております。
 平成十八年度と平成十九年度の公共事業関係費の削減率についてお尋ねがありました。
 平成十八年度予算の公共事業関係費の削減率は四・四%となっておりますが、これは三位一体改革に伴う補助金改革と税源移譲の影響を含むものであり、この影響を除くと平成十八年度の削減率は三・一%となり、平成十九年度の削減率三・五%はこれよりも実質的に高い削減率となっております。
 予算全体の増額を社会保障関係費の増額程度に抑制すべきではないかとのお尋ねがありました。
 債務残高の増加に伴う国債費の増加など、予算の増減要因は様々なものが考えられ、今後の予算全体の増額を社会保障関係費の増額にのみ結び付けて考えることは適当でないと考えております。
 いずれにいたしましても、今後とも、社会保障関係費を含め、各分野での歳出改革の取組を計画的に実施し、財政健全化を着実に進めてまいります。
 本来の業務に改めて予算を計上すべきではないとの御指摘がありました。
 新たな事業を行う場合には、同様の事業との重複を避け、あるいは既存事業を見直しながら予算を効率的、効果的に活用する必要があると考えております。
 税収の増加分の取扱いと金利についてのお尋ねがありました。
 我が国経済は息の長い景気回復を続けております。引き続き経済活性化の取組を進め、景気回復を持続させることによって家計部門にも好影響が及ぶものと考えております。
 他方、我が国の厳しい財政状況を踏まえれば、税の自然増収については、安易な歳出等に振り向けず、将来の国民負担の軽減に向けることが重要であると考えております。
 また、金融政策については、現在の景気回復を持続的なものとするため、経済を金融面から支えていただくことが重要と考えておりますが、金利水準など具体的な金融政策運営については日銀にゆだねられており、政府からコメントすべきではないと考えております。
 税収の変動への対応についてのお尋ねがありました。
 税収見積りと実績の乖離は、主として景気変動の影響を受けやすい法人税の増減に起因するものであり、税収見積りに当たりましては、政府経済見通しによる経済諸指標を基礎として、直近までの課税実績、企業収益の動向等を勘案し、今後とも見積りの精度向上に努めてまいります。
 いずれにしても、税の自然増収は安易な歳出等に振り向けず、新規国債発行額の抑制を図ることが重要であると考えており、平成十九年度予算もそのような考え方に基づき編成しているところであります。
 金利の上昇に伴う利払い費の増と、それに備えた税収増加分の取扱いについてのお尋ねがありました。
 五百兆円を超える国債残高に対して、既発行の国債金利に比べ、その借換債の金利が一%高くなった場合、利払い費は中期的には五兆円程度かさむものとなります。
 税収増加分の取扱いについては、毎年度の予算編成を国債発行に大きく依存している現状において、税の自然増収を安易な歳出増等に振り向けず、まずは新規国債発行額の抑制を図ることが重要と考えております。このことは、国債残高の増加抑制を通じ、将来の金利負担の増加を抑制することにつながるものと考えております。(拍手)
   〔国務大臣塩崎恭久君登壇、拍手〕
○国務大臣(塩崎恭久君) 大塚議員にお答えをいたします。
 まず、小渕元総理のときの経済政策が今回成功するのかという点についてのお尋ねがございました。
 御指摘の小渕元総理の時代においては、民間需要の回復力が弱い状況の下で、景気回復に全力を尽くすとの考え方に立って公共事業等に十分な対応を行い、景気を本格軌道に乗せた上で財政再建に取り組むという方針だったと承知をしております。こういった取組が結果として債務残高の増大につながったことは事実でございます。
 一方、安倍内閣においては、息の長い景気回復の続く中で、安易な財政出動に頼らない安定的な経済・財政運営を行い、経済成長と財政再建の両立に努めることとしております。その際、経済成長を高めるためには、財政出動によるのではなく、生産性を向上させ、成長力を強化していくこととしております。また、財政再建に向けましては、経済成長を維持しつつ、歳出歳入一体改革に正面から取り組んでまいります。
 このように、御指摘の時代と現在を比べると、置かれている経済状況も政策の基本的スタンスも大きく異なるものであると考えておるところでございます。
 次に、家計の実情を把握するための国民負担の指標についてのお尋ねがございました。
 政府として発表しています国民負担率の国民負担とは、家計のみならず企業を含めた経済全体を念頭に置いて、政府が提供する行政サービスや社会全体の制度を支えるために義務として支払われる税、社会保険料の大きさを示すものであります。将来に向けて、我が国の経済・財政運営を考えるに当たっては重要な指標であると考えております。
 一方で、御指摘のように、家計を念頭に置き、その負担を考えるという発想については、一つの考え方であると思っております。しかしながら、義務教育以外の教育費や医療、介護の自己負担、個人年金の保険料等は家計がそれぞれの目的に応じてサービス等の対価として支出を行うものであり、税や社会保険料と同じような意味での負担と考えることはできず、さらに、どこまでの支出を家計の負担として考えるべきかについては様々な議論があり得ると思います。貯蓄のうち、どの程度が老後の備えのための貯蓄であり、どの程度が余裕資金としての貯蓄であるかの境界線があいまいであること、こういったことを考慮いたしますと、御指摘のような指標が意味のあるものとなるかは議論のあるところでもあり、また実際に作成することも容易ではないものと考えております。
 次に、高齢者の勤労意欲等についてお尋ねがございました。
 我が国の高齢者は勤労意欲が高いことから、今後、少子高齢化や人口減少が進む中で、その経験や能力を発揮していただくことができる社会を構築していくことは重要な課題であります。税制や社会保険料、医療、介護における自己負担については、世代間及び高齢者間の公平性を確保する観点や制度を持続可能なものとしていく観点から、高齢者にも応分の負担をお願いすることとしていますが、激変緩和や所得の低い水準の方々に配慮する措置も講じているところであります。
 また、高齢者の方々の勤労意欲を十分に発揮していただくため、高齢者雇用の促進、退職した団塊世代の活躍等を推進する再チャレンジ支援総合プランの推進などを行っているところであり、今後とも高齢者が生き生きと元気に暮らせる社会の実現に努めてまいりたいと思います。
 次に、十九年度予算が基本方針二〇〇六に反しているのではないか、あるいは歳出削減が不十分ではないかと、こういう御指摘がございました。
 十九年度予算では、税収については、電源開発促進税収を一般会計経由で必要額を特別会計に繰り入れる特別会計改革による影響を除けば、実質七・二兆円の大幅な増加を見込んでおります。
 一方で、政策的な経費であります一般歳出については、社会保障について制度、施策の見直しによる二千二百億円の抑制や公共事業についてマイナス三%を上回る削減など、徹底した歳出削減方針を貫いております。その結果、先ほど申し上げました特別会計改革の影響を除けば、高齢化等に伴う社会保障の自然増がある中で実質的に〇・三兆円、三千億円の増加にとどめているところであります。こうした歳出改革の取組は、基本方針二〇〇六に定められた歳出改革の内容を着実に実施するものであると考えております。
 また、一般歳出が三年ぶりの増加となっているのではないかと御指摘がございましたが、十七年度及び十八年度当初予算においては、三位一体改革における税源移譲に伴う影響があることから前年度比マイナスとなっておりますけれども、これを除けば、高齢化等による社会保障の自然増等により、十七年度の一般歳出は実質的に八千億円の増加、十八年度は三千億円の増加となっております。したがいまして、十九年度予算は実質七・二兆円の大幅な税収増を見込む一方で、一般歳出を三千億円の増加にとどめており、歳出削減が不十分であるとの御指摘は当たらないものと考えているところでございます。
 次に、日銀の金融政策と政府の政策の整合性についてのお尋ねがございました。
 政府と日本銀行の間では日ごろより様々な機会をとらえて十分な意思疎通を行っているところであり、マクロ経済運営に関する基本的視点など認識を共有した上で各々の政策が実施されているものと考えております。
 次に、今後の金利上昇に備えて税収増加分をプールすべきではないのかというお尋ねがございました。
 毎年の予算編成を公債発行に大きく依存しております現状においては、税収増を安易な歳出増等に振り向けずに、十九年度予算のようにまずは新規国債の発行を縮減すること、これが重要だと考えております。このことは、国債残高の増加の抑制を通じ、金利が上昇した場合の将来の金利負担の増加を抑制することにつながるものであると考えております。
 次に、情報漏えいに対する政府、日銀の処罰の枠組みについてのお尋ねがございました。
 一月の金融政策決定会合前の報道がどのような取材に基づくものかは承知しておりませんけれども、守秘義務に違反するような行為はなかったものと考えております。
 なお、守秘義務違反があった場合は、国家公務員については国家公務員法により懲戒処分の対象となるほか、一年以下の懲役又は三万円以下の罰金に処せられることとなっております。一方、日本銀行の役職員につきましては、守秘義務に違反した場合、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処せられるほか、役員については解任されることとなっております。
 今後とも、国民の信頼を損なうことのないよう政府として国家公務員の秘密保持に万全を期してまいりたいと考えており、日本銀行におかれても同様の取組を期待しております。
 次に、日本銀行の情報発信の在り方についてお尋ねがございました。
 日本銀行の九名の政策委員が金融政策等について対外的に発信する機会をどのように設けるかについては、日本銀行においてお決めになるべきことと考えておるところでございます。
 最後でございますが、労働生産性の伸び率を一・五倍にするという目標の算定根拠と具体的方策並びに「日本経済の進路と戦略」参考試算との整合性についてのお尋ねがございました。
 人口が減少する中で我が国経済が安定的な成長を続けていくためには、生産性を上昇させなければなりません。このため、経済財政諮問会議において、生産性向上と成長力強化に向けて生産性加速プログラムを本年四月をめどに策定することとしたところでございます。
 同プログラムに関連して、二月二十七日の経済財政諮問会議において、大田議員より、生産性の伸びについて今後五年間で五割増を目指すとの提案がなされました。これは、過去十年の労働生産性の伸び率であります一・六%を二〇一一年度までに二・四%程度に高めることを意味しております。同プログラムの具体的な内容については現在検討中でありますが、成長力強化の三重奏として、人材能力の形成等、人材への投資を促すための成長力底上げ戦略、IT革新等、サービス産業等の効率性を向上させるためのサービス革新戦略、成長分野開拓等、未来への投資を図るための成長可能性の拡大戦略を柱として、今後五年間で生産性の伸びを五割増加させることを目指してまいりたいと考えております。
 なお、この数値は、「日本経済の進路と戦略」参考試算における新成長経済移行シナリオで示された経済の展望と整合的なものであります。すなわち、成長力強化のための政策効果が十分に発揮される場合には、全要素生産性伸び率が徐々に上昇すること等により、今後五年間のうちに実質成長率が二%台半ば程度に徐々に高まっていく姿が描かれておりますが、これは労働生産性の伸び率が二%台半ば程度に高まることに対応するものでございます。
 以上でございます。(拍手)
   〔国務大臣麻生太郎君登壇、拍手〕
○国務大臣(麻生太郎君) 大塚議員より一問ちょうだいをいたしております。
 旅券電子システム停止についてのお尋ねですが、このシステムは、平成十三年に策定されましたe―Japan重点計画におきます行政の情報化及び公共分野における情報通信技術の活用の推進の一環として申請・届出手続の電子化に掲げられたことに伴い、同年から検討、開発を開始いたしております。
 翌十四年において、行政の情報化として旅券などを担当する地方公共団体の取組を支援するとされたことを踏まえまして、引き続きシステムの開発を進めまして、平成十五年、一般競争入札を行い、受注業者を決定いたしております。
 このシステムは、平成十五年度末に岡山県において運用を開始して以来、十二県において導入をされております。昨年九月末に本システムによる申請受付を停止するまでの間、約四十億五千万円の経費が支出をされております。
 外務省といたしましては、本システム導入後、利用率向上に向けた広報を行ってまいりましたが、期待したほどの効果がなく、その後、翌年三月に、御存じのように、旅券事務の市町村再委託が可能ということになりました。ここが一番大きく違ったところだと存じますが、申請が市町村窓口で行うことができるようになりましたことから、最終的に旅券電子システムの利用率向上は困難との判断をしております。
 そうした経緯を踏まえまして、本システムをやむを得ず停止することといたしましたことにつきまして、御理解をいただきたいと存じます。(拍手)
   〔国務大臣松岡利勝君登壇、拍手〕
○国務大臣(松岡利勝君) 大塚議員の御質問にお答えいたします。
 農林水産省の二十三億円の予算についてのお尋ねでありますが、これは、海外における常設店舗の開設、展示商談会への出展、輸出先国の検疫・流通制度などの調査、さらには意欲ある事業者への支援などを含む輸出促進対策として計上しているものであります。
 なお、調査費につきましては、外部の専門性を有する調査機関を活用することが効率的かつ効果的であるとのことから計上いたしているところでございます。
 各般の輸出促進対策を総合的に講じることによりまして、民間による輸出の取組を後押しし、農林水産物等の輸出額を二〇一三年までに一兆円規模に拡大することを目指しております。
 以上であります。(拍手)
   〔政府特別補佐人宮崎礼壹君登壇〕
○政府特別補佐人(宮崎礼壹君) 日銀法第四条の規定の意味と議決延期請求権との関係についてのお尋ねがございました。
 日本銀行法は、御指摘の第四条におきまして、「常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない。」と規定しており、日本銀行に対し、文字どおり連絡を密にし、意思疎通を図ることを義務付けているものと考えます。
 他方、御指摘の議決延期請求制度につきましては、平成九年五月二十八日、参議院本会議において当時の橋本総理大臣が、「この議決延期請求権は、政府と日本銀行の政策の整合性を確保するという観点から、政府として、政策委員会の議題について一定の期間の検討や政策委員会に対し十分な説明を行う機会を確保するために必要な仕組みとして考えたもの」であると述べられたと承知しておりまして、この議決延期請求の制度ないしその行使が日本銀行法第四条との関係で矛盾を生ずるというものではないと考えております。
 以上でございます。(拍手)
○議長(扇千景君) これにて質疑は終了いたしました。
 本日はこれにて散会いたします。
   午前十時五十二分散会