第169回国会 法務委員会 第9号
平成二十年五月八日(木曜日)
   午前十時開会
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   委員の異動
 四月十五日
    辞任         補欠選任   
     金子 恵美君     今野  東君
 四月十六日
    辞任         補欠選任   
     川口 順子君     舛添 要一君
 四月二十三日
    辞任         補欠選任   
     松浦 大悟君     榛葉賀津也君
     舛添 要一君     岸  信夫君
 四月二十四日
    辞任         補欠選任   
     榛葉賀津也君     松浦 大悟君
     松野 信夫君     佐藤 公治君
 四月二十五日
    辞任         補欠選任   
     佐藤 公治君     松野 信夫君
 四月二十八日
    辞任         補欠選任   
     岸  信夫君     舛添 要一君
 五月七日
    辞任         補欠選任   
     鈴木  寛君     大島九州男君
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  出席者は左のとおり。
    委員長         遠山 清彦君
    理 事
                千葉 景子君
                松岡  徹君
                山内 俊夫君
                木庭健太郎君
    委 員
                小川 敏夫君
                大島九州男君
                今野  東君
                前川 清成君
                松浦 大悟君
                松野 信夫君
                青木 幹雄君
                岡田 直樹君
                丸山 和也君
                山崎 正昭君
                仁比 聡平君
                近藤 正道君
   国務大臣
       法務大臣     鳩山 邦夫君
   副大臣
       法務副大臣    河井 克行君
   大臣政務官
       法務大臣政務官  古川 禎久君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局民事局長
       兼最高裁判所事
       務総局行政局長  小泉 博嗣君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        山口 一夫君
   政府参考人
       内閣官房消費者
       行政一元化準備
       室長       松山 健士君
       内閣府大臣官房
       審議官      堀田  繁君
       内閣府犯罪被害
       者等施策推進室
       長        殿川 一郎君
       警察庁長官官房
       長        米村 敏朗君
       警察庁長官官房
       審議官      井上 美昭君
       警察庁刑事局長  米田  壯君
       警察庁交通局長  末井 誠史君
       総務省自治行政
       局選挙部長    久元 喜造君
       法務大臣官房司
       法法制部長    深山 卓也君
       法務省民事局長  倉吉  敬君
       法務省刑事局長  大野恒太郎君
       法務省保護局長  西川 克行君
       法務省人権擁護
       局長       富田 善範君
       法務省入国管理
       局長       稲見 敏夫君
       防衛大臣官房長  中江 公人君
       防衛省運用企画
       局長       徳地 秀士君
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  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○法務及び司法行政等に関する調査
 (携帯電話フィルタリングサービスによる人権
 侵害に関する件)
 (厳罰化による少年凶悪犯罪の抑止効果に関す
 る件)
 (自衛隊イラク派遣に関する名古屋高裁判決に
 関する件)
 (志布志事件における違法取調べの実態に関す
 る件)
 (違法行為による被害回復・救済対策に関する
 件)
 (外国人単純労働者受入れ問題に関する件)
 (取調べの可視化に関する件)
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○委員長(遠山清彦君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 昨日までに、金子恵美君、川口順子君及び鈴木寛君が委員を辞任され、その補欠として今野東君、舛添要一君及び大島九州男君が選任されました。
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○委員長(遠山清彦君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 法務及び司法行政等に関する調査のため、本日の委員会に内閣官房消費者行政一元化準備室長松山健士君、内閣府大臣官房審議官堀田繁君、内閣府犯罪被害者等施策推進室長殿川一郎君、警察庁長官官房長米村敏朗君、警察庁長官官房審議官井上美昭君、警察庁刑事局長米田壯君、警察庁交通局長末井誠史君、総務省自治行政局選挙部長久元喜造君、法務大臣官房司法法制部長深山卓也君、法務省民事局長倉吉敬君、法務省刑事局長大野恒太郎君、法務省保護局長西川克行君、法務省人権擁護局長富田善範君、法務省入国管理局長稲見敏夫君、防衛大臣官房長中江公人君及び防衛省運用企画局長徳地秀士君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(遠山清彦君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
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○委員長(遠山清彦君) 法務及び司法行政等に関する調査を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○松浦大悟君 おはようございます。民主党・新緑風会・国民新・日本の松浦大悟でございます。
 こちらの会派に入らせていただいて初めての質問となります。今日はどうぞよろしくお願いをいたします。
 まず、法務省に伺いたいと思います。
 法務省は人権問題を所管されておられますが、法務省の人権問題に対する役割の確認をさせていただきたいと思います。
○政府参考人(富田善範君) 法務省の人権擁護機関は、国民の間に広く人権尊重思想が普及徹底するよう各種の啓発広報活動を行うとともに、具体的な人権に関する相談や人権侵犯事件の調査、処理を通じて被害の救済及び予防を図る役割を担っております。
○松浦大悟君 法務省が人権問題を啓発するために行っている人権週間などでは強調すべき主な人権問題がうたわれているというふうに聞いております。どのようなものか、簡潔に教えてください。
○政府参考人(富田善範君) 法務省の人権擁護機関では、平成十九年度の第五十九回人権週間において、女性の人権を守ろう、子どもの人権を守ろうなどと並んで、性的指向を理由とする差別をなくそう、性同一性障害を理由とする差別をなくそうなどを強調事項に掲げ、性的指向や性同一障害を理由とする偏見、差別をなくし、理解を深めるための啓発活動を実施しております。
○松浦大悟君 では、法務省といたしまして、企業が人権侵害をした際にどのように指導を行うのか、またどの程度行っているのか、教えてください。
○政府参考人(富田善範君) 法務省の人権擁護機関では、人権相談などを通じて企業による人権侵害の疑いを認知した場合は、人権侵犯事件として速やかに調査を開始し、両当事者のあっせんをしたり、調査の結果、人権侵害の事実が認められれば、当該企業に対し勧告や説示等、当該事案に即した適切な措置を講じているところでございます。
○松浦大悟君 では万が一、例えば人権週間でもうたわれている、被差別部落は有害だと、あるいは障害者は有害だということを言っているような企業があったとした場合に、法務省としてはこれは指導を行うということでよろしいでしょうか。
○政府参考人(富田善範君) 具体的な事案を検討してみる必要がございますが、それが具体的な特定の国民に対する人権侵害であるという場合には、先ほど申し上げましたような説示、勧告等の措置をとります。また、それが差別を助長する行為であると認定した場合にも、例えばインターネット上の記載であればその削除を要請したりといったような活動をしております。
○松浦大悟君 では、万が一に、同じく人権週間でうたわれている、性同一性障害は有害だだとか同性愛は有害だというようなことを言っている企業があるとするならば、法務省としてはこれも指導を行うということでよろしいですね。
○政府参考人(富田善範君) 一般的な発言が直ちに人権侵害に当たるかどうかということについては、それは具体的に検討してみないと申し上げられないところがあります。具体的な差別が生じるおそれがあると認められる場合にそういう指導を行うということでございます。
○松浦大悟君 何が言いたいかといいますと、実は現在、携帯電話会社各社は、子供に対して違法、有害なサイトから子供を守るためとしてフィルタリングサービスの提供を行っています。有害サイト規制については去年十一月の当委員会においても少し質問させていただきましたけれども、去年の十二月に増田総務大臣の要請によりまして、未成年者の携帯には原則これが適用ということになりました。また、民主党でも、私も議論に参加させていただいているんですが、フィルタリングについての法制化を検討しており、また与党でも法制化を検討していると報道で聞いております。
 このように、現在、急速に未成年者の携帯電話へのフィルタリングの適用が進んでいるのですが、実はここで一つ指摘しておきたいことは、現在のフィルタリングの一部が性同一性障害者や同性愛者といったセクシュアルマイノリティーの人権を侵害しているということなんです。
 どういうことかといいますと、携帯電話会社四社のうち大手を含め二社では、フィルタリングで排除するカテゴリーにライフスタイルというのを設けているんです。このライフスタイルというのがどういうものかといいますと、ゲイ、レズビアン、トランスジェンダー、いわゆる性同一性障害などの生活スタイルに関する各種情報の提供ということになっているんですね。
 このフィルタリングというのがどういうものであるかというと、説明のところには、有害サイトなどへのアクセスを制限というふうに掲載されています。つまり、性同一性障害は有害なので排除をすると、同性愛は有害なので排除をするというふうに受け取られても仕方がないわけです。
 ここで一つ、誤解されるとまずいので付け加えさせていただきますが、同性愛のポルノは、これはアダルトカテゴリーの中に入ってアダルトとして規制の対象になっているんです。ですから、私、今言っているのはポルノの話ではありません。同性愛の十代の子たちを支援するNPOのサイトであったりだとか、あるいは一般の同性愛者の方たちが、何月何日どこどこ公園に何とか君とデートに行ってきましたというような日記サイトであったりだとか、そうした健全なサイトさえも今、有害サイトとして規制の対象になっており、見られない状態になっているんです。私は、これは人権上非常に問題があるのではないかというふうに思っています。
 民間企業であるとはいえ、今や携帯電話会社はかなり公共性の強い事業であり、社会的影響の大きさからいってかなり問題のあるやり方ではないかというふうに思うのですが、法務省としてこうした企業に対し指導すべきだと思いますが、その辺りのお考えをお聞かせください。
○政府参考人(富田善範君) 携帯電話事業者が提供しているフィルタリングサービスによって排除されるものの中に同性愛や性同一障害に関するウエブページが含まれているということでございますけれども、それにつきましては、業者がどのような内容に関する事項についてどのような趣旨で排除しているかなどの詳細は現在のところ承知しておりません。
 先ほど申し上げましたように、具体的なサイトにつきましてフィルタリングで排除されたウエブページの管理者等が人権侵害であるとして携帯事業者等を相手方として親告した場合には、その内容につきまして検討をし、その理由等を調査した上で、それが人権侵害に当たるかどうか、適切な措置を講ずることになると考えております。
○松浦大悟君 私が今申し上げているのは、同性愛や性同一性障害そのものがカテゴリーとして排除をされているということ自体が差別であるということを申し上げているんです。
 例えば、松岡先生は被差別部落の問題について長年取り組まれてこられました。このフィルタリングに被差別部落が排除の対象となっていた場合に、これは差別だと怒りますよね。今野先生はクルド人の問題についてこの委員会で取り上げました。クルド人についての情報がフィルタリングサービスによってすべて排除されているとすれば、これは差別だというふうに怒りますよね。これと同じなんです。同性愛がカテゴリーとして排除をされている、これを差別と認識しない人権擁護局というのは何なんでしょうか。答弁をお願いいたします。
○政府参考人(富田善範君) このインターネット上の違法・有害情報に対するフィルタリングの在り方につきましては、現在、総務省のインターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会において検討されていると承知しております。
 私どもが承知している限り、このフィルタリングを利用するかどうか自体をこれを利用者の選択に任せる、どのようにやっていくかといったようなことも含めて検討されると承知しておりますので、そのような形が直ちに一概に人権問題になるということにつきましては、具体的な事案を見てみないとまたそこは申し上げられないということでございます。
○松浦大悟君 今この審議は、インターネットテレビを通じて全世界に流れているんです。これが日本国の人権擁護局の態度だということでよろしいんでしょうか。カメラがあなたをとらえているんですよ。今の発言を全世界に流しているんです。同性愛を排除していることが差別である。今現在においてそうなんですね。将来この企業がどういう対応を取るとかそういう話ではないんです。今現在において人権擁護局はどう対応を取られるのか、それを伺っているんです。お答えどうぞ。
○政府参考人(富田善範君) 先ほど申し上げましているように、差別的取扱いに当たるのかどうか、あるいは差別助長行為に当たるのかどうかということは、具体的事案においてどういう理由でどういうふうな形でそのサイトが見られないということになるかによって異なってまいります。
 したがいまして、それが、保護者がそのフィルタリングを選択して子供に見せていないのかどうかといったようなことも含めて検討しませんと、そこを一概に人権問題、人権侵害であるということは言えないと考えております。
○松浦大悟君 女性がカテゴリーとして排除されていたら、これは差別ですよね。お年寄りが排除されていたら差別だと私は思うんです。同じことなんです。
 大臣、今のこのやり取りでお分かりになったとおり、この国のセクシュアルマイノリティーに対する偏見というのはかなり根強いものがございます。こうしたセクシュアルマイノリティーを排除するような思想を人権擁護局そのものが持っているということ自体が私は問題だと思いますが、大臣はこうした根深い偏見をいかに取り除いていかれるおつもりなのか、所見をお伺いしたいと思います。
○国務大臣(鳩山邦夫君) 本来、男性と女性が引き付け合い、雄と雌がそれぞれフェロモンで引き付け合うというのが自然界の当たり前の現象ではありますが、実際に同性愛とか性同一障害の問題がございますね。
 これは、性同一障害と戸籍の関係で子供がいてはいけないとかという随分議論が今進んできているようでございますが、実際に同性愛の方がおられ、性同一障害という、障害という言い方は何かかわいそうな気がしますね。何か、あなたは今セクシュアルマイノリティーとおっしゃったけれども、むしろそういう言い方の方がいいので、性同一性というのは障害なのか、むしろ当たり前の、ややマイノリティーではあるけれども、当たり前の何らかの発現なんだろうと、そう思うわけですね。
 そうしますと、同性愛の方や性同一云々の方の人権というのも、それは立派に守っていかなければならない。松浦さんが先ほどからおっしゃっていることの論旨は、私は決して間違っていないと思います。ただ問題は、そのフィルタリングして有害情報を排除したいというのは国民全体の願いだろうと思います。むしろ、だから性同一障害とか同性愛というのはおかしいんだ、おかしいんだというめちゃくちゃな書き込みがあれば、そういうページこそ本当は除外をしたいということですから、あくまでも中身の問題ということになるわけでしょうが。
 今後フィルタリングの問題が本格化してくる。現在総務省で、今年の秋までにはインターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会が結論を出そうとしている。その結論を受けて携帯電話やインターネットの会社に対してどういうフィルタリングを求めていくかということになっていくんだろうと、こう思います。ただ、そういう中で、性同一の問題あるいは同性愛の方々の問題を、これは明示的にフィルタリングするようなことがあれば、これはあってはいけないことでございますから、人権擁護の観点で我々は物を言わなければならないだろうと。それは、人権局長はなかなか苦しい答弁をしておりますけど、私はその辺はある程度は割り切ってもいいのではないかと、こう思っております。
 ただ、内容が問題ですからね、本当は。内容は一つずつ本当は大問題なんだけど、一つずつフィルタリングするということはこれは絶対不可能ですから。そう考えた場合に、一つの概念として性同一の方の情報をフィルターに掛ける、あるいは同性愛の方々のことをフィルターに掛けるということは基本的にはあってはならないことと思っています。
○松浦大悟君 今、性同一性障害の方のお話が出ましたけれども、十代のこうした性的マイノリティーの方たちの自殺率というのは非常に高いんですね。性同一性障害の十代の子が二十歳になったら個別の性別の変更ができるということで、何とかその日まで一日一日生き延びていこうということで、そういうNPOのサイトを見ながら自分を鼓舞しながら一生懸命生きている、そういう姿を応援していきたいんです。
 私は、保守であればこそ、こうした人たちを困っている国民の一人として応援していくべきだというふうに考えています。そうした観点からも、是非こうしたフィルタリングで性的マイノリティーを排除している会社に対しては指導していただければというふうに考えています。
 五月十七日、来週の土曜日ですが、国際反ホモフォビアデーなんです。これはIDAHOと言われていますけれども、五月十七日は同性愛が病気じゃなくなった日というふうに言われています。WHOの精神疾患のリストから同性愛の文字が消えた日なんです。これ消えたのが実は一九九〇年、つい最近のことなんです。私たちの一つ一つの活動がこうした差別からマイノリティーの人たちを守っていくことにつながっていくのだということを強く訴えさせていただきたいと思います。
 さて、続きまして、来年の五月から裁判員制度が行われますが、その裁判員制度が行われる、始まるということで、よし、いよいよ市民参加型の司法制度になる、期待したいと思う反面、本当にこれで大丈夫なのかというような事件が相次いでいます。今日はそのことについて質問させていただきたいと思います。
 大阪の澤野事件というものが最近テレビで報道されました。大阪、澤野事件。これは交通事故なんですが、八年前の交通事故です。右折する乗用車と直進するバイクが衝突をいたしました。バイクに乗っていた澤野祐輔さん、当時十八歳の方が遷延性意識障害、いわゆる植物状態という重い障害を負いました。バイクで直進していた澤野さんが赤信号で交差点に進入したときに車にぶつかったと、澤野さんの方に重い過失があるとされたんですが、実はこの裁判の過程でその証拠となる目撃証言調書に大きな疑惑が浮上しています。目撃証言調書の捏造について大きく報道で取り上げられているんです。
 当局に伺いますが、なぜこのような報道につながったとお考えになっているでしょうか。この事件についてどうとらえていらっしゃるでしょうか。
○政府参考人(末井誠史君) お答えを申し上げます。
 本件につきまして、報道があり、また今般御質問をちょうだいいたしましたので、大阪府警察に確認をいたしましたところ、証人として出廷をした警察官、当時の事件そのものについての記憶がないということで、高等裁判所におきましていろいろな証人尋問の際にそのやり取りの中でいろんな御指摘を賜ったものと考えております。ただ、大阪府警察において調査をいたしましたところ、供述調書の作成を含めまして捜査は適正に行われたものであるとの報告を受けているところでございます。
○松浦大悟君 記憶がないということでありますから、それが捏造されたものであるかどうかということも分からないということでよろしいんでしょうか。
○政府参考人(末井誠史君) お答え申し上げます。
 作成の事実と捏造の事実ということには分けられるとは存じますが、それぞれについて、例えば事件の記憶がない、ただしかし、公判廷において提示を受けました調書を見ると当該警察官本人の署名、押印があるということであれば、これは私が作成したものであるというようなやり取りがあったと報告を受けておりまして、直ちに、記憶がない、したがって、例えば捏造したということもそれではあったのかもしれないがそれさえも分からないのではないかと言われると、それは直ちにそのようなこともないのであろうと。それぞれの事実について確認をする必要があると存じます。
○松浦大悟君 目撃証言をされた方がテレビでも証言されているんですが、現場で事故を目撃したとされる三人のうち二人が調書を捏造されているというふうに言っているんですね。現場で実況見分に立ち会っていない、事実が逆、目撃位置が違う、調書の日付に警察に行っていない、さらには手書き一、二枚の調書にサインしたのにワープロ書き五枚の調書に変更されていると、こういう証言を法廷でされていると伺っているんですが、警察庁、これは事実でしょうか。
○政府参考人(末井誠史君) 大阪府警察の人間が本件について確認をしたところ、そのような御主張があるというふうには私ども報告を受けております。
○松浦大悟君 一般論で構わないんですが、手書きの調書にサインをさせて後でワープロ書きに変える、その際にはサインした方には知らせないというようなことは日常行われているんでしょうか。
○政府参考人(末井誠史君) 一般論というよりも、当然、調書については御本人に読み聞かせをいたしまして確認をしたもので作成をするものでございまして、後で云々というようなものではないというふうに私は考えております。
○松浦大悟君 目撃者の方々は、言うまでもなく、両当事者とも利害関係の全くない善意の第三者なんですね。そのような方々が複数、法廷で宣誓をして調書を否定するというのは非常に重いのではないかと私は思っています。
 調書が捏造されるようなことはないというのでしたら報道がおかしいのだなと私も安心できるんですけれども、過去、これまで調書が捏造されたということは多々あるというふうに伺っていますが、そういった例というのはどれぐらい把握をされているんでしょうか。
○政府参考人(末井誠史君) ただいまその数字を手元に持っておりませんが、懲戒処分に至って、きちんとその処分をし再発防止策に努めていることはございます。
○松浦大悟君 昨日、質問取りにいらっしゃって、私、こういう質問しますよということでお話をさせていただきました。そのときに、どれぐらい捏造された調書というものがあるのか把握されているはずだからそれを出してほしいということを言ったんですね。そうしたところ、いや、松浦さん、ちょっとそれは聞かないでくださいと言うんです。なぜかというと、いや、これから各県の県警に電話して調べるのはちょっとと言うんですね。つまり、把握をされていらっしゃらないんだと思うんです。
 私は、ガバナンスとしてどうなのかと。こういう実態をまず調査し、分からなければ何の対策も立てられないし、善処のしようがないですよね。本当に把握をされているんでしょうか。
○政府参考人(末井誠史君) 先ほど申し上げたとおり、懲戒処分の中身として交通事故事件捜査の適正に反するものというものについては数字はございますので、それについて確認をいたしますが、私ども、全くそのような現場の実態について無視をして仕事を指導しているものではございません。監察というものを行っておりますが、監察項目の中にも、交通事故事件捜査の適正、そして交通事故処理についての適正さというものについても項目を入れておりまして、毎年そのようなものは監察をしておるという実態がございます。
○松浦大悟君 そうすると、昨日質問取りに来られた部下の方は仕事をサボられたということでよろしいんでしょうか。
○政府参考人(末井誠史君) どのようなやり取りをされたのかということについてつまびらかにしておりませんが、もしそのようなことを申し上げたとすれば誠に申し訳ないと存じます。直ちにそのような数字を調べた上で御連絡を申し上げるべきとは考えます。
○松浦大悟君 仕方ないから、私インターネットで調べましたよ。そうしたら、もう出てくるわ、出てくるわ、雨後のタケノコのようでございました。もう百、二百という単位じゃないんですね、ちょっと調べると分かると思いますけれども。
 このような調書が捏造されるという状況が日常茶飯事であるというような状況では、私は冤罪はなくならないというふうに思うんです。こうした冤罪を防止するために民主党が提唱しているのが取調べの可視化でございます。
 実は、アメリカ・イリノイ州では現在取調べの可視化が行われているんですが、この可視化法案の立て役者となったのが、現在アメリカ大統領予備選で民主党の最有力候補である、最有力者である当時イリノイ州議会議員のバラク・オバマ氏でございます。これはイリノイ州議会のホームページにも載ってございます。
 イリノイ州の可視化も、きっかけは冤罪事件だったんですね。イリノイ州では一九七六年に死刑執行が再開されたんですが、死刑判決を受けた死刑囚のうち十三人が冤罪が判明したとして釈放をされました。これを受けて、二〇〇〇年に当時のジョージ・ライアン州知事が死刑執行の一時停止を命じました。そして、ライアン・レポートという有名な刑事司法制度改善のためのレポートを出しまして勧告を行いました。ライアン知事は任期満了の二日前、二〇〇三年、イリノイ州すべての死刑囚百六十七人を減刑し、終身刑にいたしました。このことが議論を起こしまして、ライアン・レポートの中で指摘されていた取調べの可視化の立法化へとつながったということなんです。現在は、テキサス州やワシントンDCでも州法で可視化が義務付けられています。
 それで警察庁は、この可視化の法案が通ると被疑者との関係の上に信頼が築けなくなるというふうに主張しているんですが、アメリカではそうした混乱というのは生じているという話は私は伺ったことはないんですが、実際のところどうなのか、調査研究はしているでしょうか。どうでしょうか。
○政府参考人(大野恒太郎君) アメリカのイリノイ州におきまして殺人関連犯罪について取調べの録音、録画が行われているということは私どもも承知しております。ただ、外国の実情に関する事柄でありますので、その結果イリノイ州において捜査に具体的にどのような影響が生じているかについてまでは、詳細承知しておりません。
 ただ、この関係で申し上げたいのは、アメリカ合衆国におきましてはいわゆるミランダ・ルールというものがございます。一九六六年のアメリカの連邦最高裁判所の判決でありまして、これが州も含めてアメリカの刑事実務を大きく規律しているわけでございますけれども、このルールの下では、被疑者が弁護人の立会いを求める場合、あるいは供述を拒む場合には取調べを打ち切ることとされているわけでございます。したがって、取調べが証拠収集方法としては重視されていない、あるいは警察が実際のところ被疑者を取り調べる機会は極めて限定されているということが申し上げられるのだろうというふうに考えております。
 その一方で、つまり取調べが非常に限定されているその一方で、取調べ以外の様々な捜査手段が活用されているわけでございます。例えば、刑事免責とか司法取引、あるいはおとり捜査、潜入捜査、通信会話傍受等が非常に活用されているというように聞いております。それと同時に、起訴自体が我が国と比べますと極めて緩やかな基準で行われておりまして、相当数の事件が無罪になっておるわけでございます。否認いたしまして公判に付された事件につきましては、これはイリノイ州ということではございません、アメリカ全体でありますけれども、二〇%を超える事件が無罪になっているというふうに承知しているわけでございます。
 したがいまして、アメリカの刑事司法と日本の刑事司法とは極めて異なっているところがございますので、取調べの録音、録画による影響につきましても我が国と単純に比較するわけにはまいらないだろうと、こういうふうに考えているわけでございます。
○松浦大悟君 そうすると、アメリカで次から次へとこの取調べの可視化が行われているという状況をどう考えればいいんでしょうか。
 今御答弁では、取調べの可視化は余り重要視されていないというようなお話でしたけれども、それでも次から次へとこれに踏み切る州が増えているわけですよね。その必要性というのはどんなふうに分析をされていますか。
○政府参考人(大野恒太郎君) 確かにアメリカの一部の州、あるいはほかの外国の中で取調べの録音、録画等を義務付けている国はあるわけでございます。ただ、先ほども申し上げましたように、それらの国の捜査構造自体が我が国と相当異なっているという点について申し上げたいというふうに思います。
 先ほども申し上げましたように、取調べ以外の様々な捜査手段が認められている、それから被疑者が供述を拒む場合には、それ以上供述をするように説得をしないで取調べを打ち切るわけであります。さらに、起訴基準自体が極めて緩やかで相当数の事件が無罪となる。つまり、我が国と刑事司法の在り方が大きく異なっている国々になるわけであります。
 そこで、もう少し具体的に申し上げたいわけでありますけれども、例えば暴力団の組長が暴力団員に指示して殺人事件を犯したというような場合にどういうふうに事件を解明するかということでございますけれども、日本の場合には、やはり取調べにおきまして組長の関与を出すということになるわけであります。しかし、アメリカ等では取調べによらないで……
○委員長(遠山清彦君) 大野局長、簡潔な御答弁をお願いします。
○政府参考人(大野恒太郎君) はい。例えば通信傍受、会話傍受あるいはおとり捜査等のやり方によってやっているわけでありまして、したがって、我が国と諸外国とのその捜査構造の差を捨象して、一概にアメリカがやっているから日本がこうだということは申し上げられないというふうに考えるわけでございます。
○松浦大悟君 大臣、今の答弁を聞いてもお分かりになるように、こういうことを繰り返すから裁判員制度に対して国民の不安が高まるんですよ。何にも実りのない答弁でございました。
 まあ、イリノイ州では捜査がしやすくなったという声もかなり聞かれていますので、それを受けて日本はどう考えるのかということを伺いたかったわけでございます。
 次に参りたいと思います。
 裁判員制度を前に多くの国民は大変冤罪を恐れています。なぜなら、それは自分が量刑を判断しなければならないからだというふうに私は思うわけです。民主党は、この参議院に取調べの可視化法案を提出しているので、これについては委員長に一刻も早い審議入りを要望したいと思います。
 それで、裁判員制度を前にもう一つ気になる事件がございました。それは、あの山口県の光市の事件でございます。
 あの光市の判決も、もし自分がこの裁判にかかわっていたらと感じながらテレビを見ていた国民の方は多かったのではないでしょうか。光市事件を犯した犯行当時十八歳一か月の元少年に対し、広島高裁において死刑判決が下されました。その判決に対する大臣の感想をまずはお聞かせください。
○国務大臣(鳩山邦夫君) 山口県光市の母子殺人事件につきましては、四月二十二日、最高裁からの破棄差戻しを受けた広島高裁において、被告人を無期懲役とした原判決を破棄し、死刑とする判決が宣告されたことは承知いたしております。
 感想と申し上げましても、判決の内容について法務大臣の私が口を挟むというか、司法判断を批判をしたりあるいは賛成したりというようなことはできないことでございますので、是非そこは御理解をいただきたいと思っておりますが、実際十八歳とちょっとのときにこの凶悪犯罪が起きているわけでありまして、十八歳未満の場合は、死刑をもって処断しようとする場合はこれを無期懲役とするという規定は存在をいたしておると、十八歳を超していたのでそれは適用されていないわけでありましょうが、そういう厳しい判断が示されたんだなというふうに思っております。
 また、被害者二名のお父さんであり夫であった御遺族の方が、同事件の審理において、いわゆる平成十二年の改正によって新設をされた意見陳述権を行使されたということを承知いたしております。
○松浦大悟君 被害者の御遺族であられる本村洋さんは、我が国において犯罪被害者の権利がほとんど守られていないということを痛感して、犯罪被害者の権利確立のために様々な活動をされてこられました。本村さんを始め犯罪被害者とその御遺族の活動が犯罪被害者等基本法などの成立につながり、法廷への参加など犯罪被害者の権利確立が進んで、先日この委員会においても審議され成立した被害者国選弁護法にもつながったのではないかと思います。
 犯罪被害者、御遺族が立ち上がるまで、私は、司法、法曹界あるいは国民、そして我々政治家も犯罪被害者に目を向けてこなかった、このことは改めて率直に反省すべきではないかというふうに思います。そこからすべてが始まるのだというふうに私は思っていますが、大臣の見解をお聞かせください。
○国務大臣(鳩山邦夫君) 全くおっしゃるとおりで、一番大事なことは犯罪をなくすことでありますけれども、その次に大事なことは、被害者の方々あるいは御遺族をどのようにして救っていくか、あるいは精神的に救っていくか、そういう問題、もちろん経済的にも救わなければならないわけでありますけれども、これは政府を挙げて、あるいは国会挙げて取り組んでいかなければならない重大問題だと思っております。
 そんな関係で、今、松浦委員御指摘のように、例えば被害者の裁判への参加、証人尋問、被告人質問、あるいは論告的なことを裁判の最後の段階で行うことができるという新しい仕組みがこれから始まっていくわけであります。そういう中で裁判員の参加ということが実現をしていくわけでありますから、今後司法制度は随分大きな変化をしていくんだろうと、こう考えております。
 先ほど、質問、前の質問なのかと思いますが、あえて使わないと言った言葉を使いますと、冤罪というのはあってはならない、絶対にあってはならないことであります。それと同時に重要なことは、犯罪の取り逃がしというんでしょうか、要するに被害者が泣いて、あるいは被害者の遺族が泣いて、犯人が逃げ切って陰で笑っているような、そういうことは同時に絶対あってはならないと。この両面を追求しなけりゃならないものでありますから、刑事司法制度というのはなかなか難しいと思いますが、今後、様々に考え工夫を凝らして、全力を尽くしていかなければならないと思っております。
 そういう意味で、今先生御指摘のように、被害者や被害者の遺族の問題は今まで軽く見過ぎてきてしまったという政府あるいは国会の責任というものがあろうと思いますので、しっかりやりたいと思っておりますので、少年法の改正もどうぞよろしく御理解をお願い申し上げます。
○松浦大悟君 大臣おっしゃったように、被害者遺族の感情を十分に酌み取っていかなければいけない、そのとおりだと思います。
 ただ、一方で、我々政治は今回の判決を冷静に考えなければいけないとも思います。メディアでは、増え続ける少年犯罪を抑止するために厳罰化はやむを得ないというような論調での発言もありますけれども、じゃ、実際にデータをちゃんと我々の議論のベースにすべきだというふうに思うんです。
 少年による殺人、強盗、婦女暴行を働いた凶悪犯というのは年々減少をしており、暴行、傷害、恐喝などの粗暴犯は戦後最低との統計もあります。今後、少年法改正の審議も行われますが、まずはこの正確なデータを改めて警察庁に確認をしたいと思います。
○政府参考人(井上美昭君) お答えいたします。
 警察庁では、殺人、強盗、放火及び強姦を総称して凶悪犯とし、昭和二十四年から統計を取っておるところであります。
 少年による凶悪犯の検挙人員については、戦後、昭和三十四年の七千六百八十四人をピークにほぼ一貫して減少してまいりましたが、平成二年の千七十八人を底に増加に転じ、平成九年から十五年までは二千人を超える状況で推移をしておるところでございます。その後、平成十五年以降は四年連続で減少をしておりまして、平成十九年中の検挙人員は前年比一〇・九%減の千四十二人となっておるところでございます。
○松浦大悟君 少年犯罪はどうしてこんなに減っているんでしょうか。少年犯罪が減少しているということは確認できましたけれども、どうして減っているのか、その要因を警察庁はどのように分析をされているのか、聞かせてください。
○政府参考人(井上美昭君) 先ほど申しましたように、少年による凶悪犯の検挙人員は平成十五年以降減少をしております。これは凶悪犯だけの傾向ではありません。犯罪少年の検挙人員全体が平成十五年以降同様の傾向にあるところでございます。
 その要因について明確に申し上げることは困難でありますが、少年の人口自体が減少をしておること、平成十五年にそれまでの少年の深刻な非行情勢を受けて青少年育成施策大綱を取りまとめ、政府全体として対応を進めてきたこと、不良行為少年の補導活動などの犯罪に至る前の段階での対応の強化を図るとともに、特に万引きなどの初発型犯罪の非行防止やひったくりなどの街頭犯罪の防止対策に地域と一体となって力を入れてきたことなどが背景にあるのではないかと思われます。
 また、近年の凶悪犯の約七割から八割を占める強盗について見ますと、検挙人員ベースで平成十五年が千七百七十一人、昨年が七百五十七人でありまして、その減少は顕著であります。警察と地域社会が一体となった街頭犯罪抑止対策の効果が現れているのではないかと考えておるところでございます。
○松浦大悟君 少年犯罪が減少しているにもかかわらず、少年法を厳罰化すべきだという世論だけが暴走しているという状況だと私は思うんです。ただ、この厳罰化による犯罪の防止効果というのはどうなのかと、極めてそれに疑問符が付くということも指摘しておきたいと思います。
 厳罰化による犯罪の抑止について、国連の調査データでは、厳罰化による犯罪抑止効果が統計上認められたのは、軽犯罪と強姦殺人を除く性犯罪のみと指摘しております。
 今回、永山基準と言われる一九八三年最高裁による九項目の基準を超え、厳罰化は進んだとも言われていますが、私はこれ少年犯罪の抑止という面では余り効果がないのではないかというふうにとらえています。
 そこで、今回は死刑という判決が下されましたけれども、死刑と無期懲役という、最高刑と第二の刑の間の差が大きいのではないかという声が常々指摘されております。刑法二十八条では十年以上服役すれば仮釈放できるようになっていますが、実際に十年という例はほとんどないようで、二十年から三十年で仮釈放されると言われています。この大きな差を埋めるために仮釈放のない終身刑を創設すべきではないかという議論が起きていますが、それについての大臣の見解を聞かせてください。
○国務大臣(鳩山邦夫君) 私も、死刑と無期懲役の間には差があり過ぎる。これは、特に殺人事件が起きたときの遺族の方々の思い、殺人事件で家族が亡くなった、裁判が行われた、やっぱり遺族としては死刑、極刑を望む。死刑であれば納得する、無期懲役だと結局出てきてどこかで出会うんじゃないか、この差が大き過ぎるという思いを抱かれるようでございまして、私はそのことはよく分かるわけでございます。
 今回、議員の連盟だか懇談会か分かりませんが、仮釈放のない終身刑を実現しようとする議員のグループができたやに承っておりますが、これ、いつも申し上げますように、両方の、死刑を廃止すべきだという考え方、死刑を廃止してその代わりに重無期刑というか終身刑を置くという考え方と、死刑は置いておくんだが無期懲役だと軽過ぎるからその間に仮釈放のない重無期刑を置くんだと、こういう両方の考え方の方が集まっておられるようでございますが、私は、いつも申し上げておりますように、我が国において死刑というものは必要だと、もうこれは今更理屈は申し上げませんけれども、そう考えております。ですが、死刑と無期の間に差があり過ぎるという点については十二分に納得する部分があると思っております。
 ただ、仮釈放の絶対ない重無期刑というのは、徐々に死刑を執行していくようなすごく残虐な面があるかもしれない、あるいは一生拘禁されることによって人格が完全に破壊されていくという意味では、かえって人道的でないんではないかというような考え方があります。
 また、諸外国で重無期刑というんでしょうか、仮釈放のない無期懲役、終身刑を採用して、やっぱりまずいといってこれをやめた国もあるようでございますので、そういう問題点は幾つかあると思います。ですが、差が大き過ぎると、だから間に一つという考え方は私も十二分に考慮しなければならないと思っております。
○松浦大悟君 ただその点も、アメリカではアミティというようなNPOのセクターがありまして、刑務所の外からだけではなく刑務所の中にも入って、加害者あるいは被害者を面談をさせたりというような、そうする中で加害者の気持ちをほぐしていくような、そういう支援を行っているNPOがあるわけでございます。残念ながら、日本にはそうしたものはないとは言いませんけれども、かなり層としては薄いという状況があります。
 もちろん、大臣おっしゃるように、重無期刑のようなものをつくるのであれば、同時にそうした市民の側のセクターもつくっていかなければならないということは当然のことでございますが、是非これも検討をしていただきたいというふうに思っております。
 本村洋さん、まあ被害者、御遺族の悲痛な訴えが世論を動かして政治を動かしました。私は、被害者の方たち、御遺族の方たちが被害を受けただけでもおつらい立場なのに声を上げなければならなかったと、こういう社会はやはりおかしい社会だというふうに思います。私たち政治家あるいは法曹界、国民が今まで被害者遺族の感情をないがしろにしてきた、このような状況において世論が厳罰化に向かうのは仕方がないというふうにも思いました。しかし、政治は冷静な判断を、議論をしていかなければなりません。
 それで、これから裁判員制度が始まるなど日本の司法が大きく変わっていきます。その中で国際的に批判の強い死刑制度の問題も議論されていくものだというふうに思っています。犯罪被害者支援とこの死刑制度廃止の問題というのは車の両輪として私は考えていかなければならないというふうに思っているんですが、もし市民社会が成熟をして、おりの中の加害者の方たちを支援していくようなサポートをする部分ができたならば、こういう重無期刑についても大臣のお考え変わるのかどうか、お聞かせください。
○委員長(遠山清彦君) 鳩山法務大臣、松浦委員の質疑時間は終局しておりますので、簡潔にお願いします。
○国務大臣(鳩山邦夫君) こうした問題は、特に死刑という制度につきましては、私の考え方はいつも申し上げておりますが、これは世論がとても大事でございまして、私は凶悪重大な犯罪に関しては死刑もやむを得ないというのが今の国民の世論だというふうに思っておりますから、その方針、その世論に従って行動している場合が多いわけでございますが、世論がまた大きく変化すれば、それは例えば死刑は執行すべきじゃないと、世論の六割、七割がそういう意見を示せば死刑の執行だってしないという可能性も十分あるわけでございます。
 ただ、私自身は、死刑という制度は現在は日本には必要だと思っていること、また執行は粛々とすべきであると思っていること。ただ同時に、再犯の率が物すごく高いですから、言わば、何というんですか、途中で成績優秀というか、行状がいいからといって出所された方の再犯率が五年間でやっぱり四割弱ぐらいあると、満期出所の場合は六割近くあるという状況を考えますと、とにかく保護、更生保護ということにこれからは全力を尽くさなければならないとつくづく思っております。
○松浦大悟君 以上で質問を終わります。
 ありがとうございました。
○松野信夫君 民主党の松野信夫です。
 まず初めに、公職選挙法違反の例について御質問したいと思います。
 御存じのように、四月二十七日に山口県の第二区の衆議院の補欠選挙がありまして、民主党の平岡秀夫さんが当選をされ、自民党公認の山本繁太郎さんが落選をした、こういう選挙結果でありました。
 その選挙のさなか、四月十四日の日に公明党の北側幹事長が山口に来られて、有権者の約二百人ぐらいに対して、勝たせてもらったら岩国空港の民間再開を与党の責任で実行する、こういう発言をしておられます。私は、これは公職選挙法違反の利害誘導罪、これ公職選挙法二百二十一条一項二号、これに該当するのではないかなという疑いを持っております。
 この利害誘導罪というのは、一定の有権者に対し、その者と関係のある団体に対して一定の寄附などの特殊の直接利害関係を利用して投票を誘導する、こういう場合に成立するというふうに理解をしておりますが、まず総務省の方にそうした理解でよろしいか、この利害誘導罪の趣旨あるいは成立要件等、御説明をいただきたいと思います。
○政府参考人(久元喜造君) 今、委員が御指摘になりましたこの利害誘導罪、これは幅広い意味での買収罪に当たるわけでありますが、その趣旨は、本来、選挙人の自由な意思の表明により行われるべき選挙を不正、不法な利益の授受によって歪曲しようとする行為を禁止して、選挙の公正を期そうとするものであります。
 一般論として申し上げますと、この利害誘導罪は三つの要件で成立すると考えられておりまして、一つは、特定の候補者の当選を得しめるなどの目的をもって誘導行為がなされること、二番目が、誘導行為が選挙人又は選挙運動者に対してなされること、三番目が、誘導行為が選挙人又は選挙運動者自身の特殊の直接利害関係を利用して、あるいは選挙人又は選挙運動者と関係ある団体の特殊の直接利害関係を利用してなされるものであると、こういうことを要件として成立するものであると考えられているところでございます。
○松野信夫君 利害誘導罪の要件、今三つほどお話ありましたけれども、どうも私は、そういうふうに言われるならば、この三つとも今回のは該当するんではないかなというふうに言わざるを得ないと。
 私は、別に北側幹事長に個人的に恨みも別に何もあるわけじゃありませんで、純粋に法律論としてお聞きしているわけで、実際にこの適用をやる警察庁の方にもお伺いをしたいと思いますが、今申し上げたように、この三つの要件、今回の北側幹事長の発言というのは、まさに与党の責任で実行する、しかも与党の幹事長です、前の国交大臣でもあるわけですね。そういうような立場の方が、岩国空港民間再開、これは確かに山口の方ではそれを希望しておられる方がたくさんおられる。そういう人たちに対してやりますよということをやるのはこの利害誘導罪に該当するのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(米田壯君) 警察といたしましては、刑事事件として取り上げるべき事案につきましては法と証拠に基づいて適切に対処したいと考えておりますけれども、個別の事案がそういう今おっしゃいました犯罪に該当するか否かといったことについては答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
○松野信夫君 またつまらない答弁で、もう。
 実際、総務省の方から要件は三つ言われたわけで、もしこれに当たらないというのであれば、こうこうこういう理由でこれはどうも当たらないんだというふうにもっと端的にあるいは具体的におっしゃっていただきたいと思うんですが、その点はどうでしょうか。
○政府参考人(米田壯君) 犯罪の成立、それぞれ現場の個別の事情に応じて検討しなければならないわけでございますし、またその犯罪が成立して捜査をするかしないかといったことは、これは実際に私どもが立件するまでは申し上げることはできないというものでございまして、したがいまして、答弁については差し控えさせていただきたいということでございます。
○松野信夫君 これはかなり具体的に北側幹事長は発言をしております。
 それで、私も調べたんですが、これは昭和三十一年七月十一日に最高裁の判決があります。この最高裁の判決の事案というのは、これは有罪が確定したわけですが、これは市会議員の選挙で、ある議員の候補者が地域の人たちに対して、自分が当選させてくれたら一定の道路を舗装してあげますよと、そうすると。もし不可能な場合は私財を投じても舗装すると、こういうのを発言して、これが直接利害関係を利用して選挙人を誘導したことに該当する、これが最高裁の判決であります。
 ですから、この最高裁の判決の事案とある意味よく似ているわけですね。勝たせてくれたら舗装するというのじゃなくて、岩国空港再開、民間空港再開やりますと、これはもうぴったりかんかんじゃないかなというふうにも思うんですが、どうですか、警察庁の方は。
○政府参考人(米田壯君) どういう状況でそういう発言があったか、あるいはその利害というのがどの程度その個別の直接の利害にかかわるのか、あるいはその他もろもろのいろんな状況がございます。
 そういう中で、個別の事案につきましては、私ども、それが犯罪に該当するとかしないとかといったことは答弁を差し控えさせていただきたいということを申し上げているわけでございます。
○松野信夫君 どうもあくまで個別だということで答弁が先に進まないようですけれども、しかし余りこういうことが、犯罪に該当するかどうかさておいても、余り選挙でこういうような形で、勝たせてくれたら選挙民が喜ぶようなことに誘導をする、これが余りエスカレートするというのは決していいことではない、選挙の公正公平というものに対して疑惑を抱くものではないかなというふうに思っております。
 この点について、まさにこういう適切、公平、公正な司法をつかさどる法務大臣はどのようにお考えでしょうか。
○国務大臣(鳩山邦夫君) 北側幹事長の御発言につきましては、実際にどういうふうに言い回されて、言い回しで、どのような発言があったかどうか承知しておりませんが、ただ、これが選挙違反だということであるかどうか、これは選挙違反も犯罪でございますから、犯罪の成否は個別具体的な事件において収集された証拠に基づいて判断されるべき事柄でございますので、私としては答弁は差し控えなければならないということだろうと思っております。
 ただ、私も選挙制度調査会長を自民党で長くやりまして、多少は選挙法に通じているし、久元さんとも随分久しくやってきたわけでございますが、この利害誘導罪というのはかなり具体的なときに、本当に直接的にだれかに利益が行くというときにのみ適用されるのではないかなと。私が当選したらガソリン一リットル二十五円下げますよというのは、これ多分ならないわけですよね。
 これ、非常に演説難しいんで、私も、実はこれ見てぎょっとしたんですが、利害誘導罪、こう書いてあるんですね。「当選を得若しくは得しめ又は得しめない目的をもつて選挙人又は選挙運動者に対しその者又はその者と関係のある社寺、学校、会社、組合、市町村等に対する用水、小作、債権、寄附その他特殊の直接利害関係を利用して誘導をした」、そういう場合だというふうになっているんですね。
 私は、二年半前に福岡に選挙区を変えて、大木町という町と大刀洗町という町がありまして、そこ両方とも中学校がひどく老朽化しておりましたから、私が当選すれば、元文部大臣やっておりましたので、この改築の予算は私は取れる立場にあると思いますよという演説したわけですね。でも、そうすると、それが利害誘導罪かというと、やっぱりそのことで直接だれかが利益が得るというものではなくて、一般的に利益を得ることだろうと思いますので、そういった意味では、この利害誘導罪というのは、一般論的に言えば、相当直接だれかに利益が行く場合というふうに解釈するのかなと私は思っております。
○松野信夫君 いや、今私も初めて聞きましたが、大臣が自分の選挙区でその学校の話をされているんです。それも、どうも私は利害誘導罪の疑いが極めて濃厚ではないかというふうに言わざるを得ない。要するに、例えば学校を良くしてあげます、そうすると、その学校に通う人にとっては非常にプラスになる、だけれども、それ以外の人たちはそうではないという、こういう不公平、不平等なところも出かねない、そういう問題だろう。この問題については更にまた議論をさせていただきたいと思います。
 次に、防衛省の方にお聞きをしたいと思いますが、名古屋の高等裁判所が去る四月の十七日、航空自衛隊のイラク派遣について、これはイラク特措法に違反する、憲法九条一項に違反する行為がなされている、こういうような判決を言い渡されました。これは後に確定もいたしました。そうしましたところ、航空自衛隊の、これはタモガミトシオと読むんでしょうか、航空幕僚長が判決の翌日、十八日の記者会見で、この名古屋高裁の判決に対して、そんなの関係ねえと発言をしたと報じられております。
 いろいろ立場はあると思いますが、これはもう制服組のトップでありますから、そういう制服組のトップが、いやしくも高裁の判決ですから厳粛に受け止めると言うならばいざ知らず、そんなの関係ねえという全くふざけたような発言をする、これはとんでもない話だというふうに言わざるを得ない、極めて不謹慎だと思っておりますが、この点、防衛省はどのように確認し、やっているんでしょうか。
○政府参考人(中江公人君) お答えをいたします。
 委員御指摘の点につきましては、四月十八日の記者会見におきまして田母神航空幕僚長が、名古屋高裁の判決の後にイラクの部隊等と話をしたのかという記者の質問に対しまして、非常に純真な隊員については一部心を傷つけられている者がいるかもしれませんが、大多数はほとんど影響がないと、そんなの関係ねえという状況でありますと述べております。
 本件発言につきまして、同空幕長はその後、四月二十五日の記者会見におきまして、航空自衛隊は国会で決められた法律に基づき政府の命令によって派遣をされていて、これによって直ちに我々の行動に関係をしないという意味であったとした上で、発言の一部はお笑いタレントと同じような表現になり、不適切であったというふうに述べているところでございます。
 また、四月二十五日の衆議院の安全保障委員会におきましても防衛大臣の方から、発言は慎重の上にも慎重であらねばならぬということは当然であると、発言がいささかも誤解を与えることのないように自重自戒をせねばならないというふうに答弁をしているところでございます。
○松野信夫君 発言が慎重にというのはある意味で当たり前の話で、問題なのは、この名古屋高裁の判決が出た、それをどこまでお読みになったかはそれは知りませんけれども、関係ねえという、こういう意識が私はやっぱり問題であって、それは、自衛隊のイラク派兵についていろいろ賛否両論がありますけれども、それについてやっぱりしっかり冷静に受け止めていただきたい、そういうふうに思います。
 やっぱりこういう発言するというのがだんだんエスカレートすれば、シビリアンコントロール、そんなの関係ねえと、大臣の言うこと関係ねえと、制服組の方が偉いんだと、ある意味ではそんなふうにまでどんどんとエスカレートしかねない。あるいはもしかしたら、おれたちの方が偉いんだと、そういう意識をやっぱり心の中で持っているのではないか、こういう疑いすら私は抱かざるを得ない。
 やっぱりこれは、こういうことを発言しているというのであればそれなりの処分が必要だと思いますが、何か処分はしているんでしょうか。
○政府参考人(中江公人君) 先ほど申し上げましたように、田母神航空幕僚長が先ほどの記者会見におきまして、今回の発言の一部の表現が不適切であったという認識を示しているところでございまして、防衛省として特段の処分を考えているわけではございません。
○松野信夫君 それはいかがなものかなと。こういうのがだんだん、放置しておけば今申し上げたようにエスカレートしていって、シビリアンコントロールも関係ねえと、現場の方が偉いんだと、こういうふうにだんだんだんだんなりかねないわけで、ここはしっかり一定の処分をするぐらいの私は事件だというふうに思います。
 それで、防衛省じゃありませんが、法務省を預かる法務大臣が、例えば法務省の職員が、一定の判決が出て、それに対してそんなの関係ねえというふうなことでも出てきたら、これは大変な問題だと思いますが、大臣はこの事件についてどういうふうにお考えでしょうか。
○国務大臣(鳩山邦夫君) 発言や表現について私も自信のある方ではありませんけれども、ただ、それは志布志の方等には不愉快な思いをさせてしまったわけですから、それは真摯に謝罪を国会の場でいたした経験があります。
 しかしながら、私は、そのときはそう考えて物を言って、信念に基づいてというわけではありませんが、自分の考え方を申し上げて、それが後から物議を醸したということが幾つかあって、おわびしたことも一度あるわけですが、私は極めてまじめにお話をしてきているんですが、関係ねえというのは下品だと思いますよ、一言で言えば。こういう下品な表現はやっぱりしてはいけない。松野先生おっしゃったように、それはエスカレートする可能性もありますし、私はもちろん防衛省のことについて口を挟む気持ちもありませんが、関係ないという、そんなの関係ねえという表現は下品なんですよ。私が言ってきたことは決して下品ではないんです、幾つかあったけど。そこには大きな違いがあると思うんです。
 じゃ、なぜかというと、つまり、この判決について私は論評はいたしませんけれども、三つの請求が出ているわけですよね。その二つを却下して、一つは、損害賠償の方は棄却をしていると。国側の全面勝訴ですね。その判決の結果を、結論部分を導くいわゆる本論ではなくて、その傍論の部分で、傍論の部分でその違憲の話が出ているのだから、今回の判決によって直ちに空自の活動等に影響が出るものではありませんというのが政府の基本的な考え方であり、法務省の考え方であり、私の考え方なんですね。だから、それをきちんと言わなければいけないところ、関係ねえということで全く全部が関係ないように誤解を与える下品な発言は慎むべきだと思いますね、下品な発言は。
○松野信夫君 余りここでそう長々この問題をやるつもりはありませんが、ただ、今大臣の方から判決の傍論の部分だというふうに御指摘がありましたけど、その点は私は違うというふうに、これは指摘させていただきます。
 私の手元にもこの名古屋高裁の判決の理由の要旨ありますが、まず最初に自衛隊のイラク派遣の違憲性について、それから二番目のところに平和的生存権についてという憲法の議論をして、そこをまずしっかり判断した上で、平和的生存権に具体的権利性がある。で、違憲だと。そこをちゃんとクリアをして、ただし、それはそうなんだけれども、例えば損害賠償の請求については民事訴訟上の損害賠償請求において認められるに足りる程度の被侵害利益がいまだ生じていないということで負かしているんです。ですから、傍論のように最後にちょっと付け足して、念のためにちょっと言っておきますよというような流れではないんです。その点だけはしっかり指摘をさせていただきたいと思いますので、決して傍論ではない、判決のまさに理由の中の重要な部分になっているということを指摘しておきます。
 それでは次に、志布志事件について、今大臣も言われましたが、これについてお聞きをしたいと思います。
 既に何度か当委員会でもこの事件は取り上げられて、いろいろと検証もされているわけです。最高検察庁の方も昨年十九年の八月には問題点等についてという検証の報告書が出され、また警察庁の方でも警察捜査の問題点等についてということで、今年の一月に報告書が出されております。それなりにこういう事件について報告書が出されたということは評価はできるかと思いますが、しかし、この書類の中身を見ますと、残念ながら、この事件の真相にぐっと迫って、解明をした上でこういう問題点、反省すべき点があるというふうにはなっていない。さらりと、例えば長時間、長期間にわたる取調べが良くなかったとか、追及的、強圧的な取調べが悪かったというような程度がこの報告書の中で述べられているわけで、具体的に当該取調べ官がどういうような言動をして取調べの相手方に対してやっていったのか、どういう捜査の問題点があるのか、そこについての肝心かなめなところが残念ながらこの報告書では触れられていないというふうに言わざるを得ないんです。
 やっぱりこれだけの事件ですから、起訴された十二人が全員無罪になるというこれだけの事件ですから、私は、やっぱり具体的に取調べ官がどういうような言動を行って取調べをしていったのか、その点をしっかりやはり検証していかなければ駄目だ。やっぱりこういうような事件を二度と起こさない、二度と起こさないというふうに反省するのであれば、具体的にどういうやり取りが警察段階あるいは検察段階でなされたか、これはやっぱり徹底して解明をしなければならない。
 まず、一般論としてはそういうふうに言えるのではないかと思いますが、大臣もそういうようなお考えではありませんか。
○国務大臣(鳩山邦夫君) やはり真剣な反省が必要だと思いますし、その反省は抽象論ではいけないので、できる限り具体的に実態、何があったかを解明をして具体的な反省をしませんと、将来に生かすことができないのではないかと思います。
○松野信夫君 私もその点は全く同感で、具体的にやっぱりやっていかなければいけない。
 その具体的な点について少し踏み込みたいと思いますが、まず、どういう違法な取調べがなされていたか、ここをやはり徹底して解明しなければいけないと思います。
 まず、これはもう既に民事の方の国賠訴訟、今年の三月二十四日の判決で明らかになっていますが、接見交通権を侵害した取調べをしている。要するに、被疑者、被告人と弁護人が接見をした、すぐその後に捜査官が、弁護人とどういう内容のやり取りをしたのか、それをしゃべれということで調書に取っているわけで、全部で七十六通も取っているということであります。
 それで私が調べたところでは、これはまさに検察ぐるみでやっていた。そうすると、当時の鹿児島地検のトップは麻生興太郎検事正でありました。どうもこの麻生検事正がトップに立って指示をして、こういう違法な接見交通権を侵害する捜査を検事、副検事、警察官にやらせていたように思われますが、警察の方もそういうふうにはお考えではないでしょうか。
 まず、ごめんなさい、検察、法務の方で。
○政府参考人(大野恒太郎君) 今委員から御指摘のありました接見交通の中身を聴取したことにつきましては、既に民事の国家賠償判決が確定しているところでございます。
 この確定した判決の中で、この捜査の過程におきまして検察官の方から警察官に対しまして、供述の変遷あるいはその任意性、信用性を明らかにするというような観点等から、弁護側の働きかけによって自白が否認に転じたと認められるような経過等につきまして聴取をするというようなことを話した経過があるというふうに認定されているところでございます。
   〔委員長退席、理事山内俊夫君着席〕
○松野信夫君 これは裁判の判決でも出ているように、組織的にされている。ならば、もう組織のトップは今申し上げた検事正ではないかなと思います。
 さらに、本当に私も愕然とする思いでけしからぬというふうに思っているんですが、私も警察の内部資料を入手していることはせんだっての三月二十七日の当委員会での質疑にも明らかにしましたが、例えば平成十六年十月二十六日付けの磯辺一信という警部が報告している報告書によれば、これは、地検と警察とで証人テストも含めどういうふうに裁判に臨むかというようなことを協議して、それを赤裸々にこの磯辺警部が報告書としてまとめている書類でありますが、これによりますと、もう接見調書、七十六通も作っているわけですが、この接見調書の作成に係る指示についてということで報告をしているんです。それで、要するに否認した場合に調べろというふうに指示が出ているというその点が一つ。
 それからもう一つは、弁護士に対する懲戒請求との関係についてという項目があります。要するに、弁護士を、国選の弁護士だったので懲戒申請しようということを、どうもこれによると検察庁が自ら言い出している、指示をしているというふうに考えざるを得ないんです。この磯辺警部の報告書によると、検察庁がそういう弁護士に対する懲戒申請を指示出したということは承知しているが、懲戒申請のために弁護士の悪性を引き出したということは口が裂けても言えないと、こういうやり取りをしているわけですね。要するに、これは弁護士は悪いやつだというようなことを立証して、裁判所を使って国選の弁護士を解任させようと。
 そこまでやるのか、検察はという、私も本当にもう唖然とする思いですが、そういうような事実は法務省の方は確認していますか。
○政府参考人(大野恒太郎君) 今回のいわゆる接見国賠判決におきまして、捜査の過程で主任検事から警察官に対して、自白と否認を繰り返す被疑者が否認した理由が弁護人の違法な弁護活動にあると認められる場合には調書化してほしい、場合によっては懲戒処分請求も考えられるという指示がなされたことが認定されておりまして、当時の担当検察官といたしましては一定の場合に懲戒処分請求することも念頭に置いていたものというように承知しているところでございます。
○松野信夫君 一定の場合にというよりか、七十六通も調書を作って、それでこの磯辺警部の内部文書によれば、弁護士の悪性を引き出す、それを目的にやっているという、だけどそれはさすがに口が裂けても言えないと。まあとんでもないことをやっているなというふうに言わざるを得ないんで、これはやっぱり徹底して追及して、検察内部でもこういうことが行われているかどうか、これはやっぱりしっかり調査をしなければいけないと思います。
   〔理事山内俊夫君退席、委員長着席〕
 実際、この平成十九年八月付けの最高検の報告書にはそういうことは一言も書いてない、一言も書いてない。大変な問題だというふうに言わざるを得ないと思います。
 それから、この警察、検察の報告書に全然取り上げられてないんですが、うそを告げて取調べをしているということがかなり暴露されております。うそを告げて取調べると。
 例えば、中山信一さんという方がこの事件では元県議で中心人物だというふうに言われて、三百九十五日も拘留された方ですけれども、この中山信一に対しては、妻のシゲ子はもう既に自白したぞと、だからおまえも早く自白しろと、ということを告げてやっている。ところが、妻のシゲ子の方は完全否認を押し通している。(発言する者あり)まあ、よくある手口というふうに今わきから話がありましたけど、いや本当、そういうような夫婦辺りに対して、一方はもう自供した、だれだれは自供したからおまえも自供しろというようなうそを告げてやるということは、そもそもこれはこれだけで私はもう違法捜査だというふうに言わざるを得ないんですが、残念ながら最高検と警察庁のこの報告書にはそのことも一言も触れてない。
 そもそもこういうのは、うそを告げて自白を迫るというのはこれだけで私は違法ではないかと思いますが、どうでしょうか、法務省。
○政府参考人(大野恒太郎君) 最高裁の判例におきましても、被疑者に共犯者が自白したという虚偽の情報を与えて、自白して、今度はその自白を示して共犯者にも自白させるという、いわゆる切り違え尋問の事案につきましては、偽計によって獲得された自白で、虚偽の自白を誘発されるおそれもあるということで任意性に疑いがある、したがって証拠として採用することができないという判断が昭和四十五年に示されているところでございます。
 したがって、これは抽象論でありますけれども、被疑者に虚偽の情報を与えてそれによって自白を得た場合には、その取調べについて違法の問題を生じ得るものというように考えるわけでございます。
○松野信夫君 だから、結論は、その最高裁の判決は私も知っていますからそんなことは別に聞いてないんで、こういうふうに夫婦に対してうそを告げてやるというのはこれだけで違法だというふうに言えるんじゃないんですか、どうですか。
○政府参考人(大野恒太郎君) 済みません。検察当局といたしましては、今言われたような違法な取調べが行われたという認識は有しておらないわけでございます。つまり、切り違え尋問的なものがあったというようなことは私どもとしては把握していないわけでございます。
 なお、この志布志事件の判決におきましても、自白の任意性自体は肯定されているというように理解しております。
○松野信夫君 そうすると、今の法務省の方の答弁ですと、切り違え尋問あるいはそれ的なものがなされたということは認識していないということ。そうだとすると、もうこの最高検の報告書というのは全く上滑り、その表面だけしかやっていないということではないかと思いますよ。
 それじゃ、警察庁の方にお聞きしますが、そういうふうに、例えば中山信一さんのケースでいうと、奥さんはもう自白したからおまえも自白しろと、こういうふうな取調べはしていたことは確認していますか。
○政府参考人(米田壯君) 御指摘のような事実が一般に一部流布されているという話は、当然私どもも把握しておりまして、調査に当たりましてはそういう点からも調査をいたしました。
 私どもの調査によりますと、そのような事実はなかったということでございます。
○松野信夫君 ああ、そうですか。それじゃ、もうこれは徹底してこの点についてだけでもやらざるを得ないですよ。(発言する者あり)
 じゃ、今、小票という声も、話がありましたが、私の手元に六月二十九日付けの取調べ小票、中山信一さんの取調べ小票が私の手元にはあります。是非、こういう、この中山さんだけの小票ではなくて、ほかの全部の小票と、それから何度も言っている磯辺警部の報告書、これ全部この委員会の方に出していただいて、それで徹底して審議しようじゃありませんか。
 委員長、是非そういうお取り計らいをお願いしたいと思います。
○委員長(遠山清彦君) ただいまの松野委員の御提案につきましては、後刻理事会で協議をいたします。
○松野信夫君 それで、じゃ、ついでに申し上げておきますと、中山信一さんの取調べ小票、私はたまたま入手したんですが、これは磯辺警部が取調べを行って、取調べ小票が作られております。
 その中身を見ますと、磯辺警部が中山信一さんに対して、責任を取れ、責任を取れというふうに追及をしております。問いとして、どんな責任を取るのかというふうに書いてあるんですね。それに対しては、私は行っていない、やっていないということを言い続けてきた、しかし、シゲ子がこのようなことを言っているということは私の責任ですと、家内がもしこのようなことをしていたなら私も責任を取りますというような記述になっているんです。つまり、シゲ子がこのようなことを言っている、ということは、要するにシゲ子がまあ言うなら買収をやっていると、買収の資金配っているということを言っているから私の責任で、私が責任取りますと、こういうふうにしか読めないわけです、この取調べ小票というのは。
 ところが、現実にこの取調べ小票とその後作られた供述調書というのは食い違っているわけで、取調べ小票に書いてあるようなことが現実の供述調書には出てきていない。かなりの食い違いがあるわけですが、こういう食い違いがある、取調べ小票に書いてある内容と現実にできている供述調書が食い違っているということは警察庁は確認しておりますか。
○政府参考人(米田壯君) 個別具体の小票の内容については申し上げられませんので、そういう意味では、今委員が御指摘になったその小票とその後作られた供述調書の違いということについてはちょっと答弁を差し控えさせていただきたいと思いますが、一般論で申せば、鹿児島県警において当時作られておりました小票というのは捜査員の手控えのメモであると、当然そのときそのときにいろんなことを書き込みますが、供述調書というのはこれは公判廷での立証に使うものでございまして、当然、その立証の事実をどのようにするか、そしてどこを重点に置くかといったことで取調べ官の言わば取捨選択が入るものでございます。
 そのように一般に理解されておるわけでございまして、それはそのメモとでき上がった供述調書が違うということは、むしろこれは当然のことであるというように考えております。
○松野信夫君 ああ、そうですか。そうすると、取調べ小票と調書が違っていることは一般的だというお話ですが、それなら、あくまで具体的なことは言えないと、一般論でしか言えないというんなら一般論で結構ですけど、警察庁が今年の一月に公表した報告書作成に当たって、こういうような取調べ小票と供述調書との食い違い、違っているのが一般的だと言うから違っている。じゃ、なぜ違っているのか。肝心なところのポイントが違っているか、あるいは枝葉末節なところの違いだからさして気にすることはないんだということなのか。そういうようなチェック、検証、これは一般的にされたんでしょうか。
○政府参考人(米田壯君) 一月の検証を行いますに当たりましては、取調べ小票のうち入手できるものについても参照をして検討したものでございます。
○松野信夫君 参照した結果、その取調べ小票にはこう書いてあるけど、例えば、取調べ小票では否認というふうになっているけれども、供述調書では立派に、お金をもらいました、あるいはお金を配りましたというふうになっている、そういうような例もあったんではありませんか。
○政府参考人(米田壯君) 個別のことについては、先ほども申し上げましたとおりちょっと申し上げられませんけれども、一般論で言いますと、被疑者の供述状況というのは刻々変わります。そのときそのときにメモを取りますと、例えば殺人事件でありますと、否認することもありますし、あるいは殺して東京都の山の中に埋めたということも、次の日になりますと、いやそれは長野県の山の中だというようなこともございまして、それはいろいろ変遷をいたします。
 そういう中で、これが真実であると思うものを供述を整理して供述調書というものは作成されるわけでございまして、当然、小票と供述調書というのが、まあ一致する場合ももちろんあるんでしょうが、一致しないということもこれは一般的にあり得ることだと考えております。
○松野信夫君 分かりました。いずれにしろ、やっぱり小票と供述調書あるいは磯辺警部の報告書、これやっぱりしっかりチェックをしないと、本件の事案の正確な解明というのはできないというふうに考えるところでございます。
 それから、もう一点指摘しておきますと、私も元被告人の人たち何人かからもお話も聞きましたし、とにかくひどい取調べを受けたということを皆さん口々におっしゃる。恫喝から威迫から、うそ、ごまかしから、もうとにかくひどい取調べを受けたと。例えば、認めればすぐにここから出してやる、認めないと地獄に行くぞと。おまえは何回もうそを言うから、何回も逮捕すると。選挙違反なんというのは交通違反と一緒だから、金さえ払えばいいんだと。正直に言わないと親兄弟も逮捕すると、こういうような。それから、うそつきやろう、認めないのは外道だと。それから、中山県議に対しては、県議でありながらこんなことが分からないのか、ばかやろうと、殺すぞと、こういうことまで言っているということを私は元被告人の皆さんから聞いております。
 ところが、最高検や警察庁での報告書を見ますと、そんなことは全然書いてない。単に威迫的な取調べはよろしくないと。それは、威迫的な取調べがいいなんという人はだれもいませんから、具体的にどういう言動をやったのかと、そこまで踏み込んでやらなければ、表面だけなぞったってどうにもならないというふうに思いますが、そういう具体的な言動まで警察庁の方は踏み込んで、この報告書を作成するに当たっては調べたんでしょうか。
○政府参考人(米田壯君) 警察庁のこの報告書の十一ページから十二ページにかけてこの取調べのいろいろ問題点を挙げております。
 十一ページの終わり、下の方に、追及的、強圧的な取調べとありますが、ここで、体調の悪い人を簡易ベッドに横にならせながら約七時間にわたって取調べを続けたことでありますとか、それから、取調べ官が、被告人が取調べの最中に指遊びをしていたとして厳しく叱責し、机の上に両手を載せる姿勢を取らせたままの状態で取調べを強いているというようなこと等々。
 あるいは不適切な言動として、判決で、本件を軽微犯罪であると強調し自白を引き出す意図でなされたものと考えられると。あるいは、認めないと長く掛かる等と話した被告人の主張について判決がいろいろ論評しているといったこと、このようなことを挙げまして、このような不適切な取調べの絶無を期したいということで、取調べ適正化指針につなげていったわけでございます。
○松野信夫君 今言われた十一ページ、十二ページ、私も見ております。
 だけれども、実態はこんなものではないと。これはまさに表面だけなぞったにすぎないというわけで、是非やっぱりこういう表面なぞるだけじゃなくて、実際の現場、どういう調べをしていたのか、ここにまで踏み込まなければ全く意味がない。私はやっぱり、こういう実際の現場の取調べがどこまでやっていたのか、ばかやろう、このやろう、殺すぞというところまで本当にやっていたのかどうか、これはやっぱりビデオでちゃんと録画しておけば、後からこういう委員会で言ったの言わないのと、そういう問題にならないわけですよ。是非、やっぱり可視化を進めることで、ある意味では言うた言わない、したしない、そういう無駄なやり取りをする必要もなくなるわけです。
 私は、やっぱり元被告人の皆さんの言っていることが正しい、まさに身につまされるお話でしたのでそう思いますが、ただ、それをしっかりチェックするのは客観的なビデオの録画、録音だということでありますので、是非そういう方向でこの委員会も審議を進めていただくよう強く要望して、質問を終わります。
 ありがとうございました。
○木庭健太郎君 今、福田内閣の下で消費者行政、消費者を主体とした行政へということで様々な動きが始まっておりまして、私たち公明党はもちろんですけれども、与党の自民党さんも、そして野党の民主党さんたちからも求められた一つの消費者行政の一元化という問題が今大きく進んで、福田総理自ら消費者庁構想というものを打ち出されている。
 今、そういう意味では消費者問題というのがひとつ大きく動いているときだけに、当委員会にもかかわるような消費者にかかわる問題、どちらかというと被害者をどう回復していくかという問題が一つの大きなテーマに当然なってくるだろうと思うんです。特に、当委員会が消費者行政、消費者行政一元化も含めて取り組むときの一つの課題は、違法行為による被害の回復、救済、これをどうしていくかという対策の問題が一つの大きなテーマとして、私は一元化までの間に横たわる問題だと思うんです。
 つまり、私ども法務委員会では、平成十八年には被害回復給付金支給法という新規立法をいたしました。組織犯罪処罰法の改正もそのときいたしておるんですけれども、いわゆる一定の犯罪に関する犯罪被害者については、没収、追徴された犯罪被害財産を被害回復給付金として被害者に給付するという新しい法制度ができまして、一定の被害回復ができるように一つのシステムができ上がったわけですけれども。
 一つのシステムなんですけれども、この法律でできるのは組織犯罪にかかわるものである、財産犯の問題である、そういうことになってしまうと、財産犯以外の、組織犯罪にかかわらないような犯罪については今は対象外でありますし、また犯罪被害といっても、身体・精神的損害は対象とならないというような問題がいろいろあるわけで、実際これまでの大きな事件を見ると、豊田商事事件とか、最近ではリフォーム詐欺とかありましたけれども、いわゆる悪徳商法です。この被害者は刑事手続では被害回復が不可能、民事手続で損害賠償請求しようと思ってみても、証拠収集の問題もなかなか大変で、また訴訟の費用の問題も考えると、現実的には泣き寝入りをしているというのが今の実態でございまして、行政庁がじゃ何かできるのかというと、これは行政指導や行政処分の権限はあっても、直接救済に結び付くという権限は行政にも与えられていない。
 アメリカ辺りにどんな制度があるかというと、米国では行政である連邦公正取引委員会とか州政府の司法長官が被害者に代わって原告となって違法業者、つまり犯罪者です、に対して損害賠償請求訴訟を提起することが可能だと。言わば行政の側が裁判を訴え出て、違法収益を業者から取ってきて、それを被害者に配賦するというふうな仕組みが現実にでき上がっているわけでございます。
 私ども、これ法務委員会、衆参ともでございましたが、先ほど述べたこの支給法を制定する際、附帯決議で実は、犯罪被害者を含む違法行為により被害を被った者の被害回復を国等の関与により容易にする制度の導入を含めて、新たな被害者救済の仕組みについて、諸外国の立法例や損害賠償請求に関する諸施策等も勘案して速やかに所要の検討を行うことというような、これ附帯決議が当時なされているわけでございまして、そういう意味では、今まさにこの消費者行政が大きく動こうとする今、私どもの党としてみても、私個人もそうですが、是非とも本格的なこの被害者の救済の仕組みづくりというのを今まさに取り組むべきときであって、特にその中でも、いわゆる違法収益の剥奪制度である、またいわゆる父権訴訟の導入の問題である、こういったことに取り組むところになっていると思うんですが。
 そういった意味で、まず法務省にお伺いしたいのは何かというと、我が国の法制度として、この米国のような言わば行政が被害者に代わって原告となって違法業者に対して損害賠償請求訴訟を提起することを可能としてという、こういう導入の問題ですが、これについてどういう見解を持っているかと。これについては、正確を期して、法的にはいわゆる違法収益剥奪制度、それと被害者に代わって訴訟を提起、遂行する父権訴訟制度、これは峻別すべきだというような意見もあるんですけれども、両制度をひとつ一体化するものとして、言わば消費者、被害者というものを主体とした形でこういう制度を我が国へ導入することについて、まず法務省の見解を伺っておきたいと思います。
○政府参考人(倉吉敬君) 委員の御指摘、父権訴訟制度と違法収益剥奪制度を一体のものとしてということでございますが、かなり議論されているところは様々、多様に及びまして、それぞれのところの問題点をちょっと指摘させていただきたいと思います。
 まず、父権訴訟制度であります。これは父親の父に権利の権と書く父権訴訟というわけですが、国が親代わりになって消費者の代わりに訴訟を起こすという、こういう制度というイメージであります。この場合、言うまでもありませんが、被害を受けた消費者は事業者に対して損害賠償等の請求権を持っています。そこで、行政が被害者から個別の授権なくして被害者に代わって損害賠償請求訴訟を提起することができることとし、かつ行政が敗訴した場合にその判決の効力を個々の被害者に及ぼすと、こういうことにいたしますと被害者の裁判を受ける権利を侵害するおそれがあると、まずこの問題点がございます。
 他方で、そうすると、じゃ行政が勝訴した場合にのみ個々の被害者に判決の効力を及ぼすと、こうすればいいではないかということが考えられるわけですが、そういたしますと、今度は、事業者は行政との間の訴訟に勝訴したとしても個々の被害者から再度訴えを提起されるおそれがあると、こういうことになりますので、事業者に過重な負担を強いることになりはしないかという問題点があります。
 また、我が国の不法行為に基づく損害賠償制度は被害者に実際に生じた損害をてん補するということを目的としておりますから、各被害者の損害額を個別に主張を立証していく必要があるわけです。ところが、各被害者からの個別の授権がなければ、個別の損害額の集積である全体の損害額を算定するというのは困難な場合が多いと思われます。かといって、個々の被害者の損害から離れた抽象的な被害者全体の損害といったものを観念するというのは、我が国の損害賠償制度とはいささか整合しないのではないかと考えられるところであります。
 さらに、個別の授権を受けないことといたしますと、国が代表する被害者の人数を確定することができません。しかも、個々の被害者の損害額が一律とは言えない場合が多いということも考慮いたしますと、行政が回収した損害賠償金の分配、これをどのように行うかということについて困難を来すということが予想されるわけでございます。
 父権訴訟については以上のような問題点があるかなと、このように考えております。
 続いて、違法収益剥奪制度でございますが、これについては、どのような制度が念頭に置かれているのか必ずしも明らかではないところがありますが、事業者が消費者関係法規に違反する行為をしたというそのことの一事をもって常に当該事業者の資産全体が違法収益であると見ることは困難であります。したがいまして、現行の民事保全制度や民事執行制度を超えてその資産全体を凍結するような制度を導入するとするならば、財産権の侵害の問題が生ずるだろうと思われます。
 また、被害を受けた消費者の損害賠償というのは、これは私益、私の利益でございますが、こうした私益の確保のために行政機関による捜索、押収のような制度を設けるとすることは、そのほかの私益の救済の場合と異なる扱いをすることになりまして、これを区別する合理的な説明が難しい。ひいては住居の不可侵という憲法上の保障を害することにもなるおそれがあるのではないかと、現在のところはこのように問題点があると考えております。
○木庭健太郎君 おっしゃることを承知の上で、そういった我が国特有の法制度の問題もある。ただ、国際社会の中の問題を見ていくと、米国の例を話しましたが、それとともに、例えば平成十九年の七月十二日ですけれども、これはOECD理事会の勧告です。
 消費者の紛争解決及び救済に関する勧告でございますが、これはどんなことを言っているかというと、消費者保護執行機関が消費者のための救済を行い、又は促進するための仕組み、具体的に言うと、行政による民事又は刑事の手続で裁判所に救済命令を請求する権限や、救済を求める訴訟において代表として行動する権限を設けるよう加盟国に要求すると、こういったこともあっているわけであって、そういった意味では、こういったことも踏まえながら様々に私は取り組むべきときだと思っているんですが、内閣府にこの勧告、経緯とか内容について簡潔に御説明をいただいておきたいと思います。
○政府参考人(堀田繁君) お答えいたします。
 まず、経緯ですけれども、OECDにおきましては、消費者紛争の解決及び救済の重要性にかんがみまして、国境を越えた紛争も含む事業者との取引から生ずる消費者の経済的損害に関する紛争解決を図る仕組みについて共通原則を示すため、二〇〇五年十月から検討に着手しております。主に消費者政策委員会、CCPという場で議論が行われまして、二〇〇七年七月に先生御指摘の消費者の紛争解決及び救済に関するOECD理事会勧告というものが採択されたところでございます。
 内容でございますけれども、五つのパートから成っておりまして、第一が紛争解決及び救済の国内枠組み、第二が国境を越えた紛争、第三が民間部門の協力、第四に消費者の苦情情報の収集と分析、さらに第五としまして教育及び啓発という五つの項目から成っております。
 それで、その中の国内枠組みにつきましては、個人で提起します消費者のための紛争解決の救済の仕組みといったものとか、あるいは消費者団体のような集合的に提起する多数の消費者のための紛争解決などを定めておりますけれども、先ほどから議論になっております行政機関、すなわち消費者保護執行機関が消費者のための救済を行い、又は促進するための仕組みとして、民事又は刑事手続で裁判所に救済命令を要求する権限や救済を求める訴訟において代表として行動する権限といったものを例示しているところでございます。
 以上でございます。
○木庭健太郎君 さらに、ちょっと内閣官房にもう一点伺っておきますけれども、四月二十三日、内閣として政府として、消費者庁、これ仮称ですけれども、創設に向けてという六つの基本方針がございます。この六つの基本方針のうちの第三は何を言っているかというと、被害者救済を視野に入れた新法の検討を進めるということを明確に四月二十三日の段階では言っていると。
 じゃ、これ消費者救済を視野に入れた新法というのは一体どういうことになってくるのかと。ある意味では、具体的意味について何を言いたいのかを是非内閣官房に確認するとともに、やっぱり私は、いろんな困難はあることはございます、日本の法制度の在り方の中で。しかしその中でも、やはり米国の法制度を始め、ひとつそういったものを新たな仕組みをつくらなければ、消費者、被害者の救済というものがなかなかできない現状にあるんだという中から議論が起きてきていると思うんですが、私自身確認するとともに、内閣官房に、ではこの被害者救済を視野に入れた新法の制定に向けて今後どう取り組むおつもりなのか、お聞きしておきたいと思います。
○政府参考人(松山健士君) お答え申し上げます。
 委員御指摘のとおり、四月二十三日の消費者行政推進会議におきまして、福田内閣総理大臣から六つの基本方針が示されました。その中で、すき間への対応や被害者救済を視野に入れた新法の検討を進めるという方針が示されたところでございます。
 先ほど来御議論がございますように、消費者救済のための仕組みにつきましては、例えば国民生活審議会が本年四月に公表いたしております意見におきまして、父権訴訟制度の導入でございますとか消費者団体訴訟制度の損害賠償請求への拡大、またいわゆる違法収益の吐き出し、こういったことにつきまして提言を行っておりますけれども、同時に、これも先ほど答弁の中でございましたけれども、それら制度の法制上の困難な点、そういった点についても言及をされているところでございます。
 政府といたしましては、こうしたこれまでの御議論を参考にしつつ、今後、被害者救済のための仕組みにつきまして鋭意検討を行っていくと、そのように考えているところでございます。
○木庭健太郎君 是非大臣、答弁は求めませんが、是非ともそういった、内閣としてこの被害者救済を視野に入れた新法という問題を改めて問題提起は総理からされているのであって、やっぱりここは念頭に置きながら困難性はあっても何ができるのかという問題に是非挑戦をし続けていただきたいなと、こんなことを願っておりますので、よろしくお願いをしておきたいと思います。
 そして一つ、その問題とはちょっと離れるんですが、被害者の皆さんは精神的、経済的損害を受けたときに、行政では十分に対応できない場合、メンタルケアとか一時保護とか付添いとか、こういったことを被害者支援の民間団体に頼まれることがございまして、こういう、実際民間団体が被害者のいろんなニーズにこたえてやっていらっしゃる例もあるんですが、ただ、民間団体ですから資金面も脆弱ですし人材育成も困難と。そういう意味では、いろんな形の少しサポートをどうしてあげればいいのかということが課題の一つになっているんです。
 こういう民間団体から要望を受けて、内閣府における被害者支援に係る検討会では、是非こういった民間団体についてどう助けていくかというようなことも検討課題として進めていただいて、最終取りまとめももう発表されているようでございますけれども、どんなふうにこの民間支援団体をこれからサポートしていくのかと、それとともに、今実際どういうふうな現状にあるのかということも含めて、これ内閣府から簡潔に御説明をまたいただいておきたいと思います。
○政府参考人(殿川一郎君) 民間団体への援助につきましては、政府の検討会で昨年最終取りまとめを行ったところでございます。その過程におきまして民間団体の現状についても一定の把握をしたところでございますけれども、まず、民間支援団体の活動内容ということで申し上げますと、電話・面接相談、付添い、家事支援など被害者に対する直接支援サービスを行っているところ、あるいは犯罪被害者の自助グループに対する支援を行っているところ、また広報啓発活動を行っているところなど、団体によって重点を置く活動は異なっておりますけれども、いずれも被害者が被害回復を図る上で非常に重要な機能を果たしていると考えております。
 また、それらの団体の人的、物的体制につきましては、今御指摘もございましたとおり、多くの団体が財政面の脆弱さや人材育成の不十分さ等の困難も抱えているというところでございます。
 これらの民間支援団体の現状を踏まえまして、この検討会におきましての一つの結論としまして、犯罪被害者等の早期援助団体等につきましては更にこれらに対する援助を拡充をしていくということ、また全国的な団体であります全国被害者支援ネットワークへの援助を行うこと、また地方公共団体全体の援助の取組の促進というようなものが盛り込まれたところでございます。そういった検討結果を踏まえまして、平成二十年度におきまして、関係省庁において先ほど申し上げましたような援助の拡充等々に関する所要の予算措置が講じられたところであります。
 今後とも、国の基本計画や最終取りまとめの着実な推進を行いまして、政府を挙げて民間支援団体への援助の取組を進めてまいりたいと、このように考えております。
○木庭健太郎君 法務省にちょっとこれ伺っておくんですけど、それは何かというと、実はそういう民間団体への援助の問題なんですけれども、もちろんいろんな形で拡充もしていただきたい、国としての取組もしていただきたいんですけれども、先ほど申し上げた平成十八年に通した法律ですね、いわゆる被害回復給付金支給法を見ると、被害者に支給されずに残る給付資金というのがもし出た場合は一般会計に繰り入れることというふうになっているわけですね。ただ、もし残額が残ったとして、これは元をたどれば被害者のものであって、それが厳正にあるものですから、何か国にそれを帰属させるということじゃなくて、やはり何か被害者支援のためにできるだけ役立てていくというのが元々の趣旨じゃないかなというようなことを本当に思いますし、実はこの考えに基づいて、そのときのこれはまた附帯決議なんですけれども、あのとき参議院でどんな附帯決議を付けているかというと、一般会計の歳入に繰り入れる給付資金に関しては、まあ両法というのは支給法を始め二つの法律ですけど、施行後の状況を勘案し、これを新たに判明した犯罪被害者等に支給することができる制度や犯罪被害者支援団体等の経費に充てることができる制度など、犯罪被害者等の支援に直接利用できる方策について引き続き検討することという附帯決議を付けたわけです。
 検討することと附帯決議は言っているんですが、法務省、どんな検討をされているのか、説明いただきたいと思います。
○政府参考人(大野恒太郎君) 御指摘の被害回復給付金支給制度でございますけれども、これは、没収、追徴の対象となった当該の財産犯等の犯罪行為だけではなく、これと一連の犯行として行われた財産犯等の犯罪行為の被害者についても広く給付金の支給対象とするものであるということで、被害者の範囲が広いということ、それから、いったん残余金が生じた場合におきましても、この法律の中で特別支給手続というのが設けられておりまして、更にこの財産をまだ申請を行っていない被害者に対する給付金の支給に充てることが可能な、そういう制度になっているわけでございます。
 したがって、基本的に給付金の支給後に残余金が生ずるという可能性はそれほど高くないのではないかと思われるわけであります。それでも、被害者等に被害回復給付金を支給した後に残余金が生ずる場合はあり得るわけでありまして、そうした場合の取扱いも含めまして、犯罪被害者等の経済的支援の在り方につきましては、政府が行う被害者保護、支援のための施策全体の中で検討をされるべきものであるというふうに認識しております。
 法務省といたしましては、今御指摘のありました附帯決議の内容にも十分留意いたしまして、引き続きそのような検討に協力してまいりたいと考えております。
○木庭健太郎君 そういう意味では、いよいよこの被害回復給付金支給法によって初めて適用されるような事例がそろそろ起こりそうと。つまり、旧五菱会事件でございますが、スイス政府と日本政府とのいわゆるやみ金収益の返還交渉がまとまって、我が国に三十億円が返還されると報道もあっておりました。まあこれで、被害者があのときは数十万人とか十万人超えたとか、被害総額は何千万とかいうようなこの事件だったんですけれども、いわゆるこれについて初めてこの被害回復給付金の支給手続が開始されるという可能性が出てきていると。ただ、この事件に関しては被害者の特定自身がなかなか難しいと、だれが被害者か、被害者自身も気付かないようなケースも多いというような指摘もあっているわけであって、だれが申請可能か、手続がどうなるかとかいろんな問題がこれから起こってくるんではなかろうかと思うんです。
 そこで、今日はこの周知徹底の方策についてだけちょっと伺っておきたいと思うんですけど、申請可能者に対する周知方法、警察庁と密接に関係して把握できる被害者に個別に通知したり、ホームページ使うというようなこともあるんでしょう、マスコミに働きかけることもあるんでしょう。いろんな形でともかく積極的に行わなければならないと思うんですけど、具体的にどのような方法で周知徹底をするつもりなのか、積極的に被害者をどう掘り起こすつもりなのか、具体策を説明してもらいたいし、どのような日程で行われるかも、もし分かれば御説明をいただいておきたいと思います。
○政府参考人(大野恒太郎君) 今御指摘のありました五菱会事件につきまして外国譲与財産の支給手続を行うわけでありますけれども、御指摘のありましたとおり、できるだけ多くの被害者の方々に申請の機会を確保するために周知に全力を挙げたいと考えております。
 検察当局におきましては、そのための具体的な方策といたしまして、まず、もちろん官報への公告、それから検察官において把握している被害者の方々への通知を行うことは当然でありますけれども、そのほかにも検察庁のホームページへの公告事項の掲載を予定しておりますし、またそれ以外にも、被害者団体等の関係機関に公告事項等の情報提供を行い広報を依頼するなど、できる限り多くの被害者の方々に支給手続を知っていただくための方策を検討しているというように承知しております。
 今後でありますけれども、検察当局におきまして弁護士である被害回復事務管理人を選任いたしまして、また支給対象犯罪行為の範囲を検討することになります。そして、その上で可能な限り早期に支給手続開始決定を行うことになります。その際に、支給対象犯罪行為の範囲等を公告いたします。また、検察官において把握している被害者に対しては、個別に通知を行って支給申請を促すわけであります。
 そして、支給申請期間内に被害者からなされた支給申請につきまして審査をいたしまして、支給の当否の裁定等の手続が行われます。そして、原則としてすべての裁定費用等が確定した段階で被害者の方々への支給が行われるということになるわけであります。裁定された被害総額がスイスからの譲与財産を上回る場合には、各被害者の被害額に応じて案分してこれを支給することになるわけであります。
 検察当局におきましては、できる限り早く、かつ多くの被害者の方々に被害回復給付金が支給できるよう努めているものというように承知しております。
○木庭健太郎君 もう時間がなくなって、あと外国人労働者の問題、ADRの話も聞きたかったんですけれども、最後にちょっと大臣に一問だけ、その外国人労働者の問題で、導入部としていわゆる単純労働者の問題ですね、外国人の。
 長勢法務大臣は受入れ方向でということである程度、私案ですけど作られたと。それに対して、鳩山法務大臣になった途端に、それはちょっと余り良くないんじゃないかみたいなことで否定されたというような話があって、どういう方向でやろうとされているのかがちょっと分かりにくくなってしまっているんじゃないか。
 少なくとも今大事なことは何かというと、少子高齢化の中で、職場によってはやっぱり外国人に単純労働でもお願いしなくちゃいけないような時代というのは早晩迎える危険性あるんじゃないかなと私ども、もちろん専門的な技術者とかそういう問題は正式な受入れのシステムをつくることは大事ですよ。その一方で、やっぱり単純労働者についても、単に労働不足でとにかく入れろと言うだけじゃなくて、いろんな条件を付けながら、例えば治安対策もいろんなことでやりながら、なおかつやっぱりそういう、部門によってはどうしても単純労働者を入れなくちゃいけないときは、その総枠の制限の問題とか在留期間の問題であるとか、そういう検討を今やっぱりやっておかなくちゃいけないんじゃないかなと、単純労働者についても。そう私は思っているんですけれども。
 その長勢大臣の私案について全く否定されて、まあいろいろあったものですから、この際、大臣の単純いわゆる外国人労働者についてのお考え、受入れの在り方の問題についてお聞きしておいて、質問を終わりたいと思います。
○国務大臣(鳩山邦夫君) 私、長勢私案を全面否定しているわけではないのですが、確かに木庭先生おっしゃるとおり、長勢前大臣の場合は単純労働者でも受け入れていく方向をお持ちであったかのように思う部分があるわけでございます。
 少子高齢化で労働者が不足する、あるいは企業等が比較的安い労働力を欲するという傾向はあるわけですが、結局そうなってきますと行き着くところは、日本は移民というものを認めるのかどうかというところまで考えないといけない、日本という国の将来の形まで国民である程度合意できないと、この問題は私は明快な結論が出ないような気がするのでございます。
 ですから、現在、研修・技能実習制度というものはこれはもう国際貢献であると、技能の海外への移転なんだというふうになってはおりますが、実際には労働力を欲しているという部分がある。それがまた途中で、途中でとかあるいは任期が終わってから消えてしまって不法滞在になるというケースも非常に多いと。そんなことを考えますと、この問題は、変数の物すごく多い関数というんでしょうか、非常に解きにくい数学の大問題のような気がいたしますので、今後も尊敬する木庭先生の御意見を私どもにお寄せくださいますようにお願いをいたします。
 率直に申し上げて、私の頭の中にはまだ確定的なものが固まっておりませんし、私の頭の中だけで固まるような話ではありませんし、国としてあるいは国会として、政府として取り組んでいかなければならない大課題なんだろうと思います。
○木庭健太郎君 終わります。
○委員長(遠山清彦君) 午後一時に再開することとし、休憩いたします。
   午後零時十一分休憩
     ─────・─────
   午後一時二分開会
○委員長(遠山清彦君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、法務及び司法行政等に関する調査を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
 数えてみましたら、志布志事件の徹底検証と取調べの可視化というテーマで私が本委員会で質問させていただくのは今日で五回目ということになりまして、まだまだやらなければならないなと、今日午前中の当局の答弁を伺っていて思っておりますし、幾らでもやる準備があるということを申し上げておきたいと思うんですが、今日は松野先生とテーマはほぼ同じでございます。
 まず、三月二十四日に鹿児島地裁で原告勝訴の判決が出されて、検察、県警、国、県とも控訴を断念して確定した接見国賠訴訟についてお尋ねをしたいと思います。
 お手元に判決の基本的な判断の部分を私の方で引用した資料をお配りしましたけれども、この判決は、被告人らが弁護人から有効かつ適切な援助を受ける上では、双方に自由な意思疎通が捜査機関に知られることなくなされることが必要不可欠であり、接見内容が捜査機関に知られることになれば、これをおもんぱかって被告人らと弁護人の情報伝達が差し控えられるという萎縮的効果が生まれ、被告人らが実質的かつ効果的な弁護人の援助を受けることができなくなるというふうに述べた上で、刑事訴訟法三十九条一項は、およそ接見内容について捜査機関はこれを知ることができないとの接見内容の秘密を保障したものであり、原則的には接見後その内容を捜査機関に報告させることも許されないと判断をしたわけでございます。
 この基本的な立場に立って、判決は、捜査機関が被疑者、被告人の弁護人との接見内容を聴取し調書化した、そのそれぞれの行為を詳細に事実認定をした上で、それらが接見交通権の重要性に配慮なく安易に行われ、被疑者、被告人とその弁護人との間に構築されるべき信頼関係を破壊したということを断罪をしているわけですね。
 そこで、まず法務省刑事局長にお尋ねをしますが、この国賠訴訟の対象となった供述の録取及びその調書以外に志布志事件で捜査機関が接見内容を聴取したということはあるんでしょうか。
○政府参考人(大野恒太郎君) 志布志事件の接見国賠訴訟で賠償請求の対象となった供述調書があるわけでありますが、それ以外に弁護人等との接見の具体的内容について録取した調書が志布志事件の、刑事事件の証拠として公判に提出されたことは承知しておらないところであります。
○仁比聡平君 私がお尋ねしているのは、調書がここ出されているが、それ以外に録取をしたことはあるのかということなんですけれども、お答えがないんですよね。
 全部で、先ほど松野先生からもありましたけれども、七十六通の調書が作られている。これだけ執拗な接見内容の聴取が行われて、私が知る限りそのすべてが調書化されたのではないか。ですから、今刑事局長のお答えのように、他に調書があることは承知していないという、そういうお話になるんじゃないんでしょうかね。接見内容を執拗に録取してそのすべてを調書化するというのは一体どういうことなのかと。特に、自白、否認の変遷を繰り返した藤元いち子さんと弁護人との接見内容の録取は、これは二十九件に上っております。全部で七人の被疑者、被告人に対して、起訴がなされる前の捜査段階、そして起訴後、公判が開始された後も繰り返して接見内容が聴取されているわけですね。
 この判決の意義や射程について今日は論ずる時間はありませんけれども、私が今日聞きたいのは、こういった捜査が何を目的として行われたのかという点でございます。
 判決文は、〇三年の五月二十一日ころに、主任検事を務めていた龍造寺検事が、弁護人との接見後、自白していた被疑者が否認し、その後再び自白に戻った場合には否認した理由を聴取して調書化するように、その際、接見交通権の問題があるので聴き出し方に注意することと指示し、五月二十二日、翌日の夜、志布志警察署において弁護人が被疑者に対して圧力を掛けているようだ、接見後、自白していた被疑者が否認に転じ、その後再び自白に戻った場合には否認の理由を聴いて調書化する、その理由が弁護人の違法な弁護活動と認められる場合も調書化してほしい、場合によっては懲戒処分請求も考えられると指示したという事実を認定しております。
 さらに、五月の二十六日、鹿児島県警の松元警視が龍造寺検事からそのような指示を受けていることを受けて、県警本部での捜査会議において濱田警部補に対してこれを指示するとともに、接見交通権との関係もあるので聴取の仕方に注意する旨指示をしたと認定をされていて、捜査機関は接見した弁護士の名前と日時が分かる一覧表を作成することまで指示をしているというわけですね。
 この判決は、捜査機関としても組織的に、場合によれば接見内容を調書化しようとしていたことが認められるというふうに言っていますけれども、こうした形で捜査機関が被疑者、被告人と弁護人との間の接見の内容を組織として組織的、網羅的に聴取するんだ、それを調書化するんだという方針を持ってそのための体制を取ったというのは、それ自体私は極めて異様なことだと思います。どうしてこういうことをやったんですか。
○政府参考人(大野恒太郎君) ただいま委員から判決の該当部分についての御指摘があったわけでありますけれども、そこに記載されたところからも明らかなように、当時の担当検察官といたしましては、被疑者が否認していた理由が弁護人の、当時は担当検察官側からの理解では違法な弁護活動にある場合、あるいは弁護人からの否認の働きかけにもかかわらず被疑者が自白を維持しているような場合には、自白供述の信用性担保等の捜査上の必要性があるというような判断から、一定の場合における接見状況の調書化を指示したものと承知しております。
○仁比聡平君 違法な弁護活動がある場合などというお話が、この接見国賠訴訟を通じて捜査妨害的行為という言葉で議論になっているわけですよね。この検察官ないし鹿児島地検あるいは鹿児島県警が弁護人による捜査妨害的行為が行われていると判断した具体的な根拠は何ですか。
○政府参考人(大野恒太郎君) それは、自白した被疑者が否認に転ずる経過等につきまして、その供述の変遷理由を聴取する中で弁護人からの話があったというようなことを知って、それを当時の検察官は捜査妨害的行為であるというように考えたということだと理解しております。
○仁比聡平君 弁護士がその職務と専門性、立場において否認を勧めたら捜査妨害ですか。
○政府参考人(大野恒太郎君) そのようなふうには理解しておりません。
○仁比聡平君 だったら、なぜ捜査機関はその体制を取って、網羅的に、弁護人と被疑者が接見をしたらその内容を調べなさい、調書化しなさいと。何でそんなことをする必要があるんですか。
○政府参考人(大野恒太郎君) 先ほども申し上げましたように、組織的な選挙違反事件ということで捜査を進めたことからそのような判断をしたものでございますけれども、それ以上の詳細につきましては、個別の供述等にもかかわりますので、お答えを差し控えさせていただきたいと思います。
○仁比聡平君 個別の供述にかかわるって、実際やっているのは、捜査機関として主任検察官が指示を出し、県警の主任もこういった組織としての指示を出して、本部会議で徹底してその体制を取っているわけでしょう。
 一体何でこんな体制を取る必要がありますか。こんな体制を通常すべての事件で検察はやっているんですか。
○政府参考人(大野恒太郎君) 警察については私どもの方から答弁する立場ではないというふうに考えますが、検察につきましてこのような捜査が行われたということは極めて異例といいましょうか、私も承知しておらないところでございます。
○仁比聡平君 であれば、なぜこんなことがこの事件において行われたのかということを徹底して検証しなければ、私は、刑事局長、申し訳ないけど、秋霜烈日が泣くと思いますよ。
 警察庁、どうですか。
○政府参考人(米田壯君) この接見内容の録取は、実は一番最初は、これは警察におきまして、五月の十八日、先ほど委員が御指摘になった三日前でございますけれども、今おっしゃった被告人の方の供述が変遷をするということから、供述の任意性、信用性を担保するために、供述の変遷、いわゆる否認の理由を明らかにするために調書化をしようということが一番きっかけでございました。その後、担当の検事にその旨を相談をして、担当の検事から、以後のやり取りは委員の御指摘のとおりのことが、まあ判決では事実認定がされているということでございます。
 これは、こういう非常に多数の被疑者が絡みます。そしてまた、供述ということが大変重要な事件の中で、私から見ましてもこれは異例のことだと思いますけれども、そういう中で供述の任意性、信用性をどのように立証していくかという、そういう問題意識からこのようなことがなされたものではないかというふうに考えております。
○仁比聡平君 この判決は、弁護人の捜査妨害的行為など一切否定し、逆に弁護権の行使として当然のことであるという認定をしているわけですね。捜査妨害どころか、捜査機関の描いた構図こそがあり得ない虚構だったんですよ。
 指示が出された五月下旬、今警察庁刑事局長の御答弁に図らずも出てきたんですけれども、この五月下旬というのは、志布志署が当初描いた四月中旬ころからのビール口、焼酎口という構図が、川畑氏への踏み字の強要をやったり、中山県議の関係者や四浦の集落の方々を次々に長時間の強圧的な取調べを行っても形にすることができずに中山さんの逮捕に至らないという中で、後に起訴した買収会合事件の構図を描いてたたき割りを行っていったという時期ですね。無罪判決は、その過程、この期間に行われたことをとらえて、ありもしない事実がさもあったかのように一つに収れんされていったというふうに述べました。
 大臣にお尋ねしたいんですけれども、こうした時期、先ほど警察庁刑事局長は供述が大事な事件だというふうにおっしゃいましたけれども、この時期に、接見の秘密交通権を侵害してまで、侵してまで執拗にこの接見内容を録取し続けたと、これは何のためだというふうに思われますか。
○国務大臣(鳩山邦夫君) 一言で言えば、接見交通権、立会なくして接見交通できるという権利、これは被告人、被疑者あるいは弁護人の権利とも言えるんだろうと思いますが、接見交通権に対する理解が不十分だったとしか思えない、私はそう思います。
 今先生が読まれた接見交通権の保護に値しないような事情、判決文の中にあるわけですね、そういう事情、特段の事情がない限り、言わば被告、被疑者と弁護人が秘密に接見交通できる権利というのは保障されているわけでありますから、その接見交通権に対する理解が不足していたとしか私には思えません。
○仁比聡平君 その判示の言っている、判決の言っている特段の事情というのは一切認められていないわけですよね、この件について。
 私が大臣に尋ねたのは、なぜそんなことが行われたんでしょうかというその捜査機関の目的、意図、ねらいですよ。私は、無実の人々を犯人と決め付けて、科学的で地道な捜査で客観的な証拠を固めることよりも自白を取ること、そして無実の人々から無理やり引き出したありもしない供述相互のつじつまを合わせることに狂奔して、その邪魔になる弁護人との秘密交通権を侵害して信頼関係を破壊する、言わば被疑者の外界への連絡を一切絶ってたたき割りの対象として純化すると、それが目的だったと言わざるを得ないと思います。
 最高検の検証は、その点も含めてどのように自白が取られていったのか、代用監獄を利用した長時間取調べや細切れ逮捕、起訴による長期の身柄拘束、取調べ室での偽計や誘導、そういった自白の採取過程、取調べ過程について何らの検証も行っていないわけです。その検証なしに、検察、捜査機関に対する信頼の回復など私はあり得ないと思いますけれども、大臣、再度検証をするべきではないですか。
○国務大臣(鳩山邦夫君) 先ほど、松野先生の御質問であったかと思いますけれども、私お答えいたしましたのは、様々な反省をしているし、それはまた文書になっていると思いますが、その反省が真摯なものでなければいけないと思うし、具体性のあるものでなければいけないというふうに思っているわけで、ただ抽象的な反省をするだけでは事足りないというふうに私は思っております。ですから、ただいまの接見交通権の問題についても真摯に反省をすべきだと思います。
○仁比聡平君 別の角度で聞きますけれども、続けて。
 この判決文の中に、百六十六ページになりますけれども、藤元いち子さんという元被告人の方が弁護人に対して、〇三年の六月十一日の午前九時十分ころ、つまみはオードブルということになっている、だれかが刺身も出したと言っているらしい、刑事に料理は玉垣から取ったと話した、きっと刑事が調べているだろうから、またうそを言ったら怒られるに違いないなどと話したというくだりが認定をされているんですね。藤元いち子さんはこのような取調べを六月十一日までに受けて、それを弁護人に話している。
 このオードブルというのは、買収会合のつじつまを合わせる上で捜査機関が重要な一つのポイントとしてきた点です。県警の松元参事官は、平成十六年の十一月三日に行われた検察庁と県警との協議、私が内部文書というふうに申し上げてきた文書ですけれども、この中で、オードブル調査をしていたら、その情報収集段階で予約帳を見て発覚したのではないかと記憶していると発言をしています。発覚したのではないかというのは、中山県議が第一回会合が開かれたとされた二月八日にホテル玉垣で開かれた同窓新年会に出席していたという事実、つまりアリバイの前提事実のことなんですね。つまり、遅くとも〇三年の六月十一日よりも前に鹿児島県警はオードブル調査の過程でアリバイ成立の前提事実を認識したんじゃないんですか。警察庁、いかがです。
○政府参考人(米田壯君) これは以前にも御答弁申し上げたと思いますが、このアリバイ成立といいますか、アリバイの可能性が高い事実を突き止めましたのは、この中山さんの起訴が平成十五年七月十七日でありますが、その一週間後の七月二十四日でございます。このときにいろんな補充捜査をしている過程で聞き込んだ話が基になっておりまして、翌七月二十五日にホテル玉垣に裏付けを取りに行ってその事実が判明をしたというものでございます。
○仁比聡平君 そのような答弁をこれまで警察庁はしてきたわけですけれども、捜査機関は六月四日に、中山県議を逮捕したその日に同窓会名簿を押収しております。これは事実でございます。買収会合に中山県議が自ら出席したというのが捜査機関の構図ですから、その証拠の分析は重要だったと考えるのが当然だと思いますけれども、この点で朝日新聞が去年の十一月二十日に重要な報道をしております。
 ここでは、そのホテル玉垣の経営者が、県議が逮捕された直後、六月四日の直後、捜査員が何回もホテルに来た、その際、その両日は中山県議が同窓会などに出席していたと証言し、台帳を任意提出したというふうに述べているんですね。これは我が党も直接調査をして確認をしましたけれども、そのようにおっしゃっております。そして、この玉垣の元経営者の方は、七月二十五日付けの預かり証を後になって持ってこられたんだが、台帳を渡したのは六月中旬よりも前なのになぜなんだろうというふうに思ったというふうに私どもに語っているわけですね。
 刑事局長は、その七月二十五日付けの預かり証に基づいてそのような答弁をされているのかもしれないが、実際に任意提出をされたのは六月の四日の中山逮捕直後なのではないのか。どうしてそれが七月下旬というような話になるのかということについて、この朝日新聞の報道で当時の捜査関係者の告発がございます。同窓会などの情報は〇三年六月上旬には把握し、指揮していた警部、これは磯辺警部ですが、に報告されていた、ホテル従業員らに台帳も提出してもらったとした上で、アリバイがあれば地検は起訴しないので報告は起訴後になったというふうに述べているんですね。
 つまり、五月に弁護人との接見まで妨害をしながら、たたき割りの中で買収会合事実がさもあったかのようにつじつまを合わせていって、六月四日に中山県議を逮捕したが、その直後、遅くとも六月上旬には少なくとも二月八日のアリバイを知りながら、それを握りつぶして起訴をしたという重大な告発なんですよ。
 私は警察庁に、この任意提出を受けた日時、これについて調査の上、この委員会に報告をしていただきたいと思いますが、いかがですか。
○政府参考人(米田壯君) 個別にどういうものを押収したあるいは任意提出を受けたということにつきましてはちょっと申し上げかねるところでございますが、同窓会のその名簿というのは、単に住所録ということではなくて、今委員御指摘の日時におきます出席者名簿のことではないかと思いますが、それを鹿児島県警が入手いたしましたのは、先ほど申しました七月二十四日にこのアリバイが成立する可能性のある事実に気付いた後でございます。
○仁比聡平君 それは違うという重大な証言があり、警察官の内部告発まであるわけでしょう。こういった事実がある以上、そんなあやふやな答弁でこの委員会が終わるわけないじゃないですか。
 委員長、この点について警察庁に、改めて調査の上、報告を委員会にさせることを是非御協議をいただきたいと思います。
○委員長(遠山清彦君) ただいまの仁比委員の申出につきましては、後刻理事会で協議をいたします。
○仁比聡平君 大臣、こういったアリバイの認識時期、そして自白の採取過程、接見妨害の問題も含めて再度調査し、検証をし直すべきでございます。
 最後に指摘だけしておきますが、資料に平成十九年の十二月二十五日の最高裁決定を引用しておきました。これは、証拠開示命令に関して警察庁が捜査員の個人的なメモだとした手控えについて、犯罪捜査規範に基づき作成した備忘録であって、取調べの経過その他参考となるべき事項が記録され、捜査機関において保管されている書面は、個人的メモの域を超え、捜査関係の公文書と言うことができるとして証拠開示を命じたものでございます。本件の取調べ小票も、国家公安委員会規則に基づいて作成され、取調べの経過、内容が記録され、現に鹿児島県警において保管されているということは、これまでの私や松野議員の質問への答弁で明らかであります。これでも捜査員の個人的なメモだと言うのかと今日お尋ねしたいと思いましたけれども、もう時間がございませんので答弁は求めませんが。
 こういった状況の中で検証を拒むということは、私はもうあり得ないと思います。取調べ小票そして内部文書の提出を委員会として改めて求めること、そして、事件の真相を私どもとして受け止めるために、参考人として志布志事件の元被告人、被害者の方々、そして氷見事件の被害者を少なくとも呼んで話を直接伺うべきだということを提案をしたいと思います。
 この点も理事会の御協議を求めて、私の質問を終わりたいと思います。
○委員長(遠山清彦君) 仁比聡平君のただいまの御提案につきましても、後刻理事会で協議をいたします。
○近藤正道君 社民党・護憲連合の近藤正道でございます。
 最高裁の方、来ておられますでしょうか。最初に最高裁にお尋ねしたいというふうに思っています。午前中も四月十七日の名古屋高裁の航空自衛隊のイラク派兵違憲という件について質問がございました。私も最初にこの質問を最高裁に対して行いたいというふうに思っています。
 この判決は三つから成っておりまして、一つは違憲確認の事件、もう一つが差止めの請求事件、そして三つ目が国家賠償の請求事件と、こう三つありまして、最初の二つは却下、そして最後の国賠につきましては請求棄却、こういうことでございます。そういう意味では、結論的には被告の国側の勝利ということでありますが、判決要旨の中に、私、判決の要旨文を入手したんですが、その要旨の八割は、イラクへの航空自衛隊の派遣、これが違憲、違法であるということが書いてある、大部分それが書いてあると、こういう判決文でございます。
 しかし、この判決文に対して、傍論、傍らの論という主張が政府の方からなされているわけでございます。社民党の辻元清美議員が質問主意書を提出をいたしました。これに対して政府は、本件判決の違憲判断の部分は判決の結論を導くのに必要のない傍論にすぎず、政府としてこれに従う、従わないという問題は生じないと、こういうふうな答弁をされております。先ほども鳩山大臣も同趣旨の答弁をされております。
 そこで、私、傍論とは何かということで辞書を引いてみました。内閣法制局が編集をしておりますものでありまして、法令用語研究会というところが出しておりますね。これによりますと、傍論とは、「判決における裁判官の意見のうち判決理由を構成しない部分。判決に直接必要のない法律問題に関する意見をいう。後の判決に事実上影響をもつことが少なくないが、判決理由と異なり、判決の先例としての拘束力をもたない。」。内閣法制局の法令用語研究会編集の有斐閣法令用語辞典はこういうふうになっているわけでございますが、最高裁、今ほど私が読み上げましたこの傍論に関する法制局見解、皆さんの見解はいかがでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(小泉博嗣君) お答え申し上げます。
 今委員御指摘の内閣法制局法令用語研究会編には委員がお述べになられたとおり定義がされているところではございます。ただ、いわゆる傍論につきましては、法令などで定められた概念ではないというふうに認識しておりまして、その意味するところについては、いわゆる確たる定義というんでしょうか、法令で定められたと、そういうものがあるものではないというふうに認識しているところではございますが、一般的には判決の結論を導くために論理的に不可欠でない説示を指すものというふうにして用いられている言葉であるというふうに承知しているところでございます。
○近藤正道君 先ほども申し上げましたけれども、私は、判決の原本と判決の要旨、両方とも入手をしました。判決の要旨につきましては、さっきも言いましたように、要旨の約八割はイラクへの航空自衛隊の派遣が憲法違反、イラク特措法にも反していると、こういうこと、あるいは平和的生存権が具体的な権利であるということが書かれている、それが要旨の八割。そういう量的な判決要旨のまさに大部分を占めているということが一つと、もう一つは、少なくとも国賠、国家賠償請求では、行政の違法性と、それと被侵害利益の程度、被侵害利益が一体どの程度のものなのか、これ両方とも重要な、まさに結論を導き出す言わば構成要素、要件事実とも申しましょうか、こういうふうに一般的に言われております。
 そこでお尋ねをいたしますが、この判決の違憲判断の部分は傍論に当たるんでしょうか、本論なんでしょうか、どちらなんでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(小泉博嗣君) お答え申し上げます。
 今御指摘の名古屋高裁の判決でございますけれども、このような個別の事件の判決についてのお尋ねでございますので、最高裁事務当局としての回答は差し控えさせていただきたいというふうに存じております。
○近藤正道君 そんなことない。
 一般論として申し上げますけれども、さっきも言いましたように、この判決要旨は八割が違憲について論じているわけですよ、イラク派遣は違憲だと。その論旨をずっと展開しているわけ。逆なら分かりますよ。一割ぐらい使って傍論を述べたというなら分かるけど、これは八割強このイラク派遣について触れているわけですよ。こういう圧倒的にイラク派遣に触れている論理展開がなぜ傍論なのか。
 もう一つは、まさに国家賠償における重要な要件事実じゃないですか。行政の違法性、そして侵害されている利益、この二つはまさに重要な要素じゃないですか。まさに判決の主文を導き出す重要な要素、一般的にはそういうふうに理解すべきなんじゃないですか。もう一度お答えください。
○最高裁判所長官代理者(小泉博嗣君) 先ほど答弁させていただきましたけれども、最高裁事務当局といたしましては、司法行政を預かる身でございます。個別具体的なまさに民事訴訟の判決の内容にかかわる点、この内容の解釈にかかわる点についてでございますので、コメントするのは裁判の独立という観点から差し控えさせていただきたいというふうに存じます。
○近藤正道君 一般論としてお聞きするんですよ。国家賠償において行政の違法、それと被侵害利益、これは重要な要件事実ではないですか。どうですか、最高裁、もう一回。一般論。
○最高裁判所長官代理者(小泉博嗣君) お答え申し上げます。
 個別の具体的な判決についての判断についての要件、どのような事実が要件となるかということについてのコメントでございますので、先ほど申し上げた裁判の独立、司法の独立という観点から、司法行政の事務局としては、事務総局としてはお答えするのは控えさせていただきたいと存じます。
○近藤正道君 ひどいと思いますね。私は、その要件事実の一般的な教科書を確認した上で、一般論として、国賠の場合は行政権力の違法性、これはもう判決を書く場合の重要な要素ではないですかと、これは判決の主文を導き出すものとは関係ないということは言えないではないかと、そのことを聞いているわけですよ、一般論として。一般論として国賠の要件事実ってどうなんですかと聞いているわけですよ。重ねてお尋ねします。
○最高裁判所長官代理者(小泉博嗣君) お答え申し上げます。
 一般論としてというふうにお尋ねでございますが、個別のイラクのこの判決についての具体的な要件事実は何になるか、また判断についてどのようにするかと、その要件事実の個別のものについてどのように判断するかというのはまさに裁判の判断についてのことでございますので、回答の方は差し控えさせていただきたいというふうに存じます。
○近藤正道君 再三にわたって要件事実の一般論を聞いているにもかかわらず、それもお答えにならない。極めて私は、それこそ最高裁としていかがなのかなという、そういう思いがしてなりません。
 ところが、政府はこの裁判の一方の当事者、被告であると同時に行政府としての側面も持っております。裁判の一方の当事者としては、この裁判にいろいろ不満があるということでいろいろおっしゃる。それは表現の自由ということで分からないわけではないけれども、しかし、政府は一方で行政府を構成しているわけですね。この行政府を構成している人たちがこれは傍論だというふうにいろいろ言うということは、私は司法の独立という観点から問題があるんではないかというふうに思うんですよ。
 そこで、最高裁にお尋ねをしますけれども、傍論であるか否か、これはだれが判断するんですか。
○最高裁判所長官代理者(小泉博嗣君) お答え申し上げます。
 判決の特定の部分が傍論かどうかということ、何が傍論かどうかということについては、先ほど申し上げたとおり、法律上確たる定義があるものではございません。また、傍論に当たるか否かについて確定する手続というのも特段あるというわけでもないというふうには理解しているところでございます。
○近藤正道君 それはしかし、裁判の拘束力という観点で最終的にはこれ裁判所が決めるんじゃないんですか。だれが決めるか分からぬみたいな、定義も不明確だ、だれが決めるかも分からない、そんな答弁はないと思うんですよ。これ裁判所が決めるんじゃないんですか、どうなんですか。
○最高裁判所長官代理者(小泉博嗣君) お答え申し上げます。
 判決の特定の部分がいわゆる判決の中の傍論であるかどうかということについては、公的に確定するという機能を持つ制度というのは定められているというものではございません。今回の判決についてもいろいろと御意見があるところではございますが、判決の結論を導くために論理的に不可欠なものであるかどうかという点についての御意見が出されているというふうに認識しているところでございます。
○近藤正道君 全然答えてないじゃないですか。私も質問時間が短いんで、もっと適切な御答弁をいただきたいんですよ。
 これは最終的には、判決の拘束力との関係で個々の裁判所が決める、私は行政府が決めるべきものではないと、こういうふうに思っているんですよ、仮に本論、傍論という議論があるとしても。にもかかわらず今回は、行政府がもう勝手にとにかくこれは傍論だと、判決要旨の八割以上を占めるものについてこれは傍論だと、関係ないと。中には、関係ないと言って無視をする、そういう品のない人たちもいますけれども。こういう行政府が勝手にこれは傍論だと決め付けるやり方というのは、これはおかしいんじゃないんですか。
 最高裁、もう一回御答弁ください。
○最高裁判所長官代理者(小泉博嗣君) お答え申し上げます。
 いろいろ述べられておられる意見の詳細をすべて承知しているわけではございませんけれども、今回の判決に関する行政府の方々の御指摘、主として判決理由中の特定の部分が判決の結論を導くために論理的に不可欠であるか否かということについての認識が述べられているというふうに考えているというふうに認識しております。
○近藤正道君 全然分からない。
 だからさっきから言っているように、判決要旨の八割、そして国家賠償では行政の違法性そして侵害利益の程度、この二つが重要な要件なわけですよ。
 今回の判決文の中では、これはもう明らかにイラクの航空自衛隊の派遣はそれは違憲でありますと。イラク特措法の範囲を、レベルを超えています、外国軍隊と武力は一体化しています、違憲ですと。そして平和的生存権も、裁判を起こす具体性を、具体的な権利としてのあれを持っていますと。しかし、もう一つの要件の被侵害利益、これはいまだそこまでまだ達していませんと。だから、二つのうちの一つは満たしているけれども、もう一つがまだ足りませんということで述べているわけですよ。まさにこの二つから判決が導き出されている。読めば、だれが見たってそういうふうにしか読めない。
 ところが、前者のまさに八割を占めている部分をこれ傍論と言って切り捨てる、こういうやり方というのは、これは司法の結果を、確定判決を尊重する行政府の態度として私はおかしいんではないかと言っているわけですよ。もう一回答弁ください。
○最高裁判所長官代理者(小泉博嗣君) 判決についての様々な御意見、御指摘をいただいているというのは議員御指摘のとおりというふうに認識しているところでございますが、個別の判決の内容について事務当局としてコメントをするというのは、先ほども申し上げましたけれども、司法の独立という観点から、回答については差し控えさしていただきたいというふうに存じております。
○近藤正道君 先日、新聞に、最高裁が例の砂川判決のときに司法の独立を侵害するような、そういう事実があったんではないかという大きな新聞報道がなされておりました。それと今回の事件を重ね合わせて見るときに、私は大変やっぱり危機感を覚えるわけでございます。行政としては、やっぱり三権分立です。それも、この判決は確定をしているわけであります。これはやっぱり重く、しっかり真摯に受け止める、そういう態度をやっぱり持つべきであって、この判決に従って、これから会計の上でも財政の上でもいろんな議論が出てくるというふうに思いますけれども、イラクの自衛隊、来年の七月に期限が切れるわけでありますけれども、それに向けての真摯なやっぱり検討を始めるべきが筋であって、傍論、傍論と言ってこれをおとしめるような、そういう態度は私は慎むべきであるというふうに指摘をさせていただきたいというふうに思っています。
 次に、今日、言わば冤罪事件の集中審理のような様相を呈しました。昨年から志布志事件あるいは富山の氷見事件、そして先般は北九州引野口事件というんでしょうか、これが行われまして、この憲法と刑事訴訟法という大原則の下で今もこういうことが繰り返されているのかということで、本当に愕然とするばかりでございます。
 今日は、松野委員あるいは仁比委員から委員長の方にいろいろと要求がありましたけれども、実はこの志布志の国賠につきましては、事件については刑事事件が確定をいたしまして、踏み字もありましたし、接見の国賠もありましたけれども、本体の国賠が今裁判にかかっておりまして、私もこの訴状を読まさせていただきました。刑事の判決文とはまた違って、本当にここまでやるのかということがまさに具体的に赤裸々に述べられておりまして、これ見ますと、本当に取調べ過程のでたらめぶりがこれでもかこれでもかという形で出てまいります。
 それで、これに対して国やあるいは県がどういう答弁をしているのかなというふうに思って、いろいろつてをたどって聞きますと、答弁書は出されたけれども、刑事事件で認定されたものについては認めているけれども、刑事事件で認定されていないそれ以外の取調べ過程の様々な違法、今日も切り違えの尋問だとか、あるいは脅迫だとか脅しだとかうそを言うとか様々な話が出てまいりましたけれども、そういうことはいっぱい書いてあるけれども、刑事事件で認定された以外のものについては基本的に否認と、そんな事実はないというふうに答弁をされているというふうに聞いておりますが、そういう答弁をしているということでよろしいんでしょうか。警察と法務の方にお聞きをしたいというふうに思っています。
○政府参考人(大野恒太郎君) 志布志事件の起訴等をめぐる国家賠償請求訴訟が現在係属中でございます。今委員の方から御指摘がありましたように、訴状が出され、これに対して国側がまず答弁書を出した段階だというふうに承知しているんですけれども、国側の主張は今後準備書面に整理して出すというふうに聞いておりますので、この段階では具体的なことをお答え、差し控えさせていただきたいと思います。
○政府参考人(米田壯君) 御指摘の訴訟は、警察としては、これは鹿児島県において対応していることでございまして、現在その訴訟中ということもございまして、答弁は差し控えさせていただきたいと思います。
○近藤正道君 私は、これから捜査の可視化、いつこの可視化法案の審議が始まるのか楽しみにしておりますけれども、その前に、現に起こった、まさに違法取調べのデパートとも言うべきこの志布志事件等については徹底的にやっぱり検証をすべきだというふうに思っております。
 今日も、これについて委員会に提出を願いたいと、これについては報告を求めたいと幾つかありましたけれども、そういう個々の話をされるんなら、むしろ今の国賠訴訟で違法取調べというのが全面的に言わば原告の方から出されているわけです。それに対して皆さんは答弁されているわけですから、主なものについて論点整理をして、これ出していただけませんでしょうか。むしろ、その整理を見ながら、先ほど来、松野先生からもあるいは仁比先生からもいろんな要望があった。全体を見た上で、その中で今のお二人から出されている問題がどういうふうな位置にあるのかと、そういうことを見ながら、私ども、是非この点については集中的に議論をしたいというふうに思っておりますので、是非、委員長、取調べの様々な違法、いろんな類型があるんですけれども、これをある程度類型化して、そして論点を整理して一覧表みたいな形にしてこの委員会に出していただくように委員会でお取り計らいを私いただきたいというふうに思いますが、よろしくお願いいたします。
○委員長(遠山清彦君) ただいまの近藤委員の申出につきましても、後刻理事会で協議をさせていただきます。
○近藤正道君 その上で、あと時間がもう五分切りましたけれども、お尋ねをいたしますが、今、警察の方であるいは検察の方で取調べの一部可視、一部録画という考えを打ち出されてこれから実行されるようでありますが、お尋ねをしたいというふうに思っています。
 志布志事件、これも藤元いち子さんほか四、五名の方の自白を土台に事件がずっと始まっていったわけでありますけれども、一部録画、つまり自白をしたらその部分を中心に録音、録画する、こういうやり方だと、志布志事件だとかあるいは富山事件、この冤罪は防止できたんでしょうか。あるいはまた、この志布志事件について言えば、今ほど来議論がありました踏み字事件がありましたし、また接見妨害の調書作成という問題がありました。この踏み字の現場だとかあるいは調書の作成、こういう場面はこれは録音、録画されるんでしょうか。お答えいただきたいと思います。
○政府参考人(大野恒太郎君) 検察のやっております取調べの録音、録画の試行の関係でお答えいたします。
 これが志布志事件のときに採用されていればこうした事態を防止できたかというお尋ねですけれども、これは仮定の質問ということになります。
 検察の録音、録画の目的は、裁判員裁判における自白の任意性の立証というところに主目的があるわけでございます。ただ、最高検が一年半にわたる試行の検証報告書を明らかにしているわけでありますけれども、その中で、いわゆる一部の録音、録画であってもそれまでの取調べの状況等が当該の録音、録画場面に反映される、そのことによって間接的に、録音、録画されていない取調べにつきましても適正化を促す効果があるというようなことを述べているところでございます。
○政府参考人(米田壯君) 警察におきましては、これはまだ実施をしておりませんけれども、今年度中に一部録音、録画の試行を開始したいと考えております。これは、裁判員裁判をにらみまして、自白の任意性の効果的、効率的な立証に資するためにいかなる方策が有効であるかということを検討するためになされるものでございます。
 志布志事件あるいは富山の氷見事件に対しましては、こういうものだけではなくて、今年の一月に警察捜査における取調べ適正化指針を策定をいたしまして、警察庁次長を長とする適正化施策推進室を設置して全庁挙げてこの指針に挙げた施策をただいま実行中でございまして、これによりまして、こういう深刻な無罪事件、取調べに係る非常に問題の大きい事案の絶無を期していきたいというふうに考えております。
○近藤正道君 一部の録音、録画ではかえって問題が分からなくなる、かえっておかしなものになる、私はそんなことであるならしない方がいいと、こういうふうに思っています。
 志布志事件あるいは富山事件の被告人の皆さんの話を聞く機会が何度かありましたけれども、皆さん口々にこもごも、調書を取られた後、その後の録音、録画であればかえって問題だよということをおっしゃっています。私もやっぱりそう思います。問題は、それを取られるまでの様々な密室の中でのやり取りが一番問題なんで、そこのところを全部ネグっておいて、調書を取った後、あるいはその前後だけをやっぱり取るというのは私はかえって問題を分からなくさせる、これ大変問題だというふうに思っています。
 最後に質問でありますが、国連の拷問禁止委員会に対する日本政府の報告書が今年の五月までに……
○委員長(遠山清彦君) 近藤委員、質疑時間が終局しております。簡潔にお願いいたします。
○近藤正道君 はい。出されるというふうに聞いております。本当に五月の末までにそれが出されるのかということと、この際、言わば代用監獄だとかあるいは取調べの可視についての報告を日本政府はしなきゃならないんですが、この志布志事件だとかあるいは富山だとか、あるいは今回の北九州のこういう本当にとんでもない事件、これはきちっとその報告の中に盛り込まれるんでしょうか。そのことを最後にお聞きをして、質問を終わります。
○委員長(遠山清彦君) 答弁も簡潔にお願いいたします。
○政府参考人(大野恒太郎君) 日本政府が国連の拷問禁止委員会に行う情報提供の内容でありますけれども、これは現在、政府部内で協議、準備中でありますので、この段階で具体的な内容について答弁することは差し控えさせていただきたいと思います。
○近藤正道君 いや、それはもう是非入れてくださいよ。入れなけりゃおかしいでしょう、それは。
○委員長(遠山清彦君) 本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
   午後一時五十六分散会