第171回国会 外交防衛委員会 第19号
平成二十一年六月十六日(火曜日)
   午前十時開会
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   委員の異動
 六月十一日
    辞任         補欠選任   
     相原久美子君     谷岡 郁子君
     米長 晴信君     石井  一君
 六月十二日
    辞任         補欠選任   
     加藤 修一君     山口那津男君
 六月十五日
    辞任         補欠選任   
     藤田 幸久君     松浦 大悟君
 六月十六日
    辞任         補欠選任   
     岸  信夫君     西田 昌司君
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  出席者は左のとおり。
    委員長         榛葉賀津也君
    理 事
                浅尾慶一郎君
                一川 保夫君
                白  眞勲君
                木村  仁君
                小池 正勝君
    委 員
                石井  一君
                犬塚 直史君
                風間 直樹君
                谷岡 郁子君
                広中和歌子君
                松浦 大悟君
                岸  信夫君
                佐藤 正久君
                西田 昌司君
                山本 一太君
                浜田 昌良君
                山口那津男君
                井上 哲士君
                山内 徳信君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        堀田 光明君
   参考人
       国連開発計画武
       装解除・動員解
       除・社会復帰(
       DDR)担当シ
       ニアアドバイザ
       ー        デズモンド・
                ジョン・マロ
                イ君
       拓殖大学海外事
       情研究所所長・
       同大学院教授   森本  敏君
       東海大学海洋学
       部教授      山田 吉彦君
       日本アジア・ア
       フリカ・ラテン
       アメリカ連帯委
       員会全国理事
       東京外国語大学
       アジア・アフリ
       カ言語文化研究
       所共同研究員   高林 敏之君
           (通訳 大野 理恵君)
           (通訳 澄田美都子君)
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  本日の会議に付した案件
○参考人の出席要求に関する件
○海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する
 法律案(内閣提出、衆議院送付)
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○委員長(榛葉賀津也君) ただいまから外交防衛委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 昨日までに、米長晴信君、相原久美子君、加藤修一君及び藤田幸久君が委員を辞任され、その補欠として石井一君、谷岡郁子君、山口那津男君及び松浦大悟君が選任されました。
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○委員長(榛葉賀津也君) 参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律案の審査のため、本日の委員会に国連開発計画武装解除・動員解除・社会復帰(DDR)担当シニアアドバイザーデズモンド・ジョン・マロイ君、拓殖大学海外事情研究所所長・同大学院教授森本敏君、東海大学海洋学部教授山田吉彦君及び日本アジア・アフリカ・ラテンアメリカ連帯委員会全国理事、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所共同研究員高林敏之君を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(榛葉賀津也君) 異議ないと認め、さよう決定いたします。
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○委員長(榛葉賀津也君) 海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律案を議題といたします。
 この際、参考人の先生方に対し、本委員会を代表して一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、公務御多端な中、本委員会に御出席を賜り、誠にありがとうございます。
 皆様からの忌憚のない御意見を拝聴し、今後の審査の参考にさせていただきたいと存じますので、よろしく御指導のほどお願い申し上げます。
 それでは、議事の進め方について申し上げます。
 まず、マロイ参考人、森本参考人、山田参考人、高林参考人の順にお一人十五分程度で順次御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えをいただきたいと存じます。
 御発言の際は、その都度委員長の許可を得ることになっておりますので、御承知おきください。
 また、参考人、質疑者とも発言は着席のままで結構でございます。
 それでは、まずマロイ参考人にお願いいたします。マロイ参考人。
○参考人(デズモンド・ジョン・マロイ君)(通訳) 御紹介ありがとうございます。議長、委員会の各委員の皆様、私、アイルランド・ダブリン出身のデズモンド・ジョン・マロイと申します。
 私の経験というのは、主に軍縮そしてまた動員解除ということで、平和維持活動そしてまた国連の開発計画ということでソマリアそしてまた中央アフリカ共和国となっておりまして、それ以前はアイルランド軍に二十年以上勤務しておりました。
 本日は、私の個人的な見解を披露させていただきます。私は、どの組織とも、特に帰属しておりませんので、私の体験として、この数日間、国連のソマリア政治担当、そしてまたソマリアの国連の開発担当、そしてまた市民団体各位でソマリア中南部等で活動している団体から聴取した意見、ソマリア人の意見も踏まえてお話ししたいと思っております。
 ソマリアの領海の海賊行為の問題というのは国際海運に対する攻撃としてとらえられておりますけれども、これは、ソマリア国内の様々な機関が今全く機能していないということを切り離してとらえることはできません。
 三つの組織があります。これは国際的に認知されておりませんけれども、まず南中央、それからプントランド、これは南中央と関係があります。それからソマリランドがございまして、ソマリランドはソマリアのほかの地域から独立していると言っています。この三つの組織のうち、ソマリランドしか正統な法の支配がその領土内に浸透している組織はございません、国家機構としてです。
 継続的な支持がソマリアのTFG、連邦暫定政府に国際社会から与えられていることは、ソマリアの現場の現実と多少違っていると思います。TFG、暫定連邦政府というのは、ほとんど統治能力を持っておりませんし、また、ソマリア領海そしてまたアデン湾における海賊行為に対して一切コントロールを持っておりません。このことは、一連の国連の決議千八百七十二号、直近の安保理決議におきましても無視されておりまして、このTFG、連邦暫定政府というのは、青年原理主義勢力のアル・シャハーブから多大なる圧力を受けていることを無視しています。
 最近出したペーパーで私が打ち出した考えというのは、ソマリアにとりましては中央政府は必ずしもベストオプションではないのではないかと。しかし、これはまた別の機会にお話ししたいと思います。
 このTFGというのは、ソマリアに正統な統治を提供しているというよりも、むしろ派閥政治を行ってその派閥中心の利害にかかわってきました。TFGに対して海賊対策として与えられた資金というのは、オフショア口座に結局行き着いてしまうことになってしまうでしょう。
 海賊行為でありますけれども、ソマリアにおける海賊行為は五つの地域を活動の拠点としております。ボサッソ、アルーラ、これはカルーラという名称も持っております、エイル、この三つの地区はプントランドに所在しておりまして、ソマリアの中南部にはハラデレとホビョがございますけれども、これが五つの海賊の拠点ということで国際海運に対して攻撃を加えています。ソマリランドには中央の拠点というのは海賊に関しては存在しておりません。
 また、もう一つ留意していただきたいのは、この五つのうち、プントランドからの活動拠点についてはダルード氏族が統治しております。ギャロウェの、プントランドの首都の統治をつかさどっているのがこのダルード氏族になっています。中南部ということで海賊にかかわっている主な氏族というのはハウィエ氏族となっておりまして、これはTFG側、反政府側含めてすべての勢力が含まれています。
 海賊行為というのは同族事業のようになっておりまして、この主な軍閥は海賊行為に対して大々的な投資を行っています。
 現在、国際社会が主な抑止力として国際対策部隊を派遣していますけれども、これは大した影響を及ぼしておりません。唯一例外は海賊の母船。これは海賊が使っている小型船の母船の役割を果たしているんですけれども、実際に乗船しているのは漁民なんでありますが、その母船等を実際管理しているのは非常に富裕な人たちです。ですから、海賊、現場で個人を拘禁してもそれほど抑止的な効果は望めません。漁民たちから見ると、海賊行為で金持ちになる可能性とのトレードオフとしては、地元で貧困にあえぐよりも国外の拘置所で手厚く扱われることをあえて選ぶからであります。
 海賊発生に寄与している要因で国際社会が余り認知していない要因が幾つかあります。海賊のリクルートというのが、二重の略奪行為により生じた経済的な影響を挙げることができます。
 ローカルな漁業というのが不法かつ報告も規制もされていない国際的な商業漁業によって破壊されているからです。東西の資本、日本も含めて、年間で三百万ドルもの魚の資源を不法かつ報告も規制もされていない資本によって略奪されています。国際対策部隊の活動というのは、海賊行為への直接的な取組ではなくて、これらの不法な漁業の事業活動を守るためのものと地元のソマリア人はとらえています。
 また、いろいろな報告を見ていますと、過去、一貫して先進国によって産業廃棄物を、組織立った不法投棄をソマリア領海内に行ったことによって、ソマリアの沿岸部におきまして、特に数年前の津波以降は著しい環境、健康上の影響が見られているという報告があります。
 国連安保理決議に基づいた国際対策部隊、そしてまたクアラルンプール会議、コンタクトグループ会合を含めて無数の国際会議において、この略奪行為、実際の漁業資源の略奪、そして産業廃棄物の不法投棄が取り上げられていないということ、そしてまた国際対策部門の任務に地元漁業の保護とか不法投棄の阻止が含まれていない、このことは、ソマリア本土においては、ソマリア領海が既得権益によって資源を略奪し搾取するための隠匿行為としてみなされているわけです。
 不法投棄や漁業権に関する許諾というのは、国際資本と地元の軍閥たちの取決めで行われて相当な金額がやり取りされていますが、その利益は一切地元のコミュニティーは全く還元されておりません。これは、コミュニティーベースの市民団体が盗人たちの密約と言っているゆえんであります。犯罪組織がこれらの活動を理由に地元の不満を集めて、海賊の動員に利用して海賊行為を行わせています。
 この海賊行為というのは、TFG側、そして反政府側双方の勢力が熟知しているわけです。現在の国際対策部隊に関しては、日本もすばらしい活躍を見せていただいていますけれども、ソマリア領海内での海賊行為をある程度軽減する上で一定の効果を出していますが、海賊たちは更にソマリア沖から一千キロ以上も遠洋に出ることでこれに対応しています。これは公海の方までということですね。これだけ海洋の範囲が広がってしまいますと、国際対策部隊は海賊対策としてなかなか効果を発揮することができません。しかし、大々的な陸上、海上の行動というのは必ずしも必要ありません。情報活動、そして警察活動に有効な形で行うことが効果的であると思います。
 それでは、法案を起草して、ソマリアに関する海賊行為に対する法律を策定するに当たっては、一時逃れの介入ではなくて、問題の根本解決を目指す中期的な抑止力となるような斬新かつ頭脳的なアプローチが必要です。
 市民団体で私が連絡を取っている団体から次の点が提案されています。まず、海賊行為にかかわる主要なアクターがだれかということを注意深く把握するということです。それからまた、国連、そしてまた西側諸国が軍閥指導者等主要な加害者たちを刑事的に訴追するということ、それから氏族等が不法に蓄積した資産、海外に置かれている資産を没収するということです。ほとんどの主要な氏族は二重国籍を持っていて、資産を西側諸国に置いています。また、国際社会もソマリア領海内における漁業資源の略奪、そして廃棄物の不法投棄を認知して、これらの不法な活動にかかわる者に対して制裁を実施しなければいけません。
 また、コミュニティーベースの交渉をこの破壊行為について実施するべきです。これは、コミュニティーのキャパシティービルディングを行うことによって、その非常にイシュー指向の市民団体に投資することを通じて行わなきゃいけません。私が実際にかかわっている市民団体、そしてソマリアの現場、モガディシュと中央ソマリアで活動している組織であります、私の情報源はSAACIDオーストラリアという非常に小さなNGOでありますが、SAACIDソマリアという姉妹組織を通じて、首都のモガディシュと中央ソマリアで活動しています。
 私の提言は以上でありまして、書面で皆様のお手元に配付されていると理解しております。お役に立ったことを期待しております。(拍手)
○委員長(榛葉賀津也君) 次に、森本参考人にお願いいたします。森本参考人。
○参考人(森本敏君) この機会に当委員会の参考人として所見を述べる機会が与えられたことは、大変光栄に考えます。
 冷戦期の安全保障というのは、要するに自己陣営の利益のために同盟を機能させるという状況があったわけですが、冷戦後における安全保障は、むしろ多国間協力や同盟協力というものによって地域の安定あるいはグローバルな安全に寄与することにより、結果として自国の安定と繁栄に寄与するということがむしろ重視される状況になりつつあると思います。日本の安全保障も、自国の防衛だけではなく、地域の安定、グローバルな安全のために、その固有の防衛力やあるいは冷戦期を通じて培ってきた同盟協力をどのように機能させるかということが安全保障政策あるいは防衛政策の中心的課題になりつつあると思います。
 そもそも日本がこういった同盟協力や地域協力を進めなければならない理由は、日本という国の国家の繁栄あるいは国家の安定というものが主として資源や経済関係を外国との関係に依存しているということであり、その意味において日本は、自分の国だけを守ることによって自分の国の平和があればよいというのではなく、むしろ地域の安定やグローバルな安定というものを維持するために必要な役割を果たすということが特に重要な意味を持っているという、そういう特殊な国の状況にあるというふうに考えます。
 このソマリア沖の海賊もまさにその典型的な例でありまして、私は今回御審議いただいているこの海賊対処法が速やかに成立をして、これに基づいて、我が自衛隊の現地における活動がより効果的に効率的になる、速やかになることを期待しているわけであります。
 今日は限られた時間の中で、日本の安全保障にとってこの現地における海賊対処の活動が現在及び将来にわたっていかなる意味を持っているかということを要点を尽くしてお話をしたいと思いますが、レジュメに沿ってごくごく簡単に御説明申し上げたいと思います。
 一つは、言うまでもなく、今回、日本とジブチの地位協定といいますか、実際は地位協定とは言っておらず、交換公文を双方が交わして統合任務部隊を現地に展開させているわけですが、思えば、日本の戦後の自衛隊の活動で、ホスト国とのこの種の地位に関する交換公文、協定を結んで統合部隊を展開させる言わば初めてのケースであり、これは今後の日本の自衛隊の海外における活動の非常に良い例といいますか、になりつつあるんだなということを強く感じるわけであります。特に、この交換公文の中で、すべての刑事裁判権を日本側にゆだねているという、大変日本に有利な地位協定の内容になっていることに私は一種の感慨を覚えるものです。
 日米地位協定というのは、御承知のとおり、いわゆる在日米軍が日本でいろいろな刑事事件にかかわった場合の裁判権については、双方が争うケースの場合、原則として公務執行中の作為若しくは不作為によるものについてはアメリカが第一次裁判権を持っていますが、それ以外については日本側が、ホスト国が持っているわけで、今回のこの交換公文によって日本側が刑事裁判権のすべてを責任を負うという形になっていること自身が、日本の自衛隊が特にこのホスト国によって大変重く扱われているということの証拠ではないかと考えます。
 二点目に書いてあることは特に強調したい点で、これは有事というのではなく平時から非常に広域の海洋における我が国の活動が諸外国の活動と協力をする、その活動に従事して、特に地球の言わば半分を占める広域なアジア太平洋における情報収集や日本の国益を直接守るための活動に従事することができ、その結果として日本のシーレーン防衛にも貢献し、かつ多国間と各種の協力ができ情報交換もできるということが、結果として日本の国益に大変大きな役割と貢献を果たしているということではないかと思います。
 そのために、我が方はセントラルコマンドのタンパに連絡将校を出している以外、バーレーン、ジブチにそれぞれの連絡官あるいは支援要員を出しているわけで、これによって得られる情報が我が国との間に航行する船舶及び現地で活動している部隊にとって大変重要な情報をもたらしているということも留意をすべきであると考えます。
 加えて三番目に、現地において多くのアジアの諸国が海軍の艦艇を派遣しているわけですが、この種のアジア諸国との共同活動を通じて、アジアにおける多国間の海洋安全保障のための協力活動の基礎ができているということも、これは今後のアジア諸国との協力関係を考えた場合に非常に重要な貢献で、ここで日本が抜けているということは今後のアジア太平洋の多国間協力から見ると少し考えられないわけで、その意味で、特に中国やインドの海軍が現地で活動しているのといろいろな対話や情報交換をやっているということも今後の日本にとっての重要な貢献になるのではないかと思います。
 もちろん、現地において今回初めて海上自衛隊と海上保安庁が各種の共同活動を通じてお互いに相互理解を深めているということも今後にいろんな資産を残すのではないかと考えております。
 今、北朝鮮との関係でいえば、船舶検査法を各党で御検討いただいていると理解をしておりますが、いずれにしても、海上自衛隊と海上保安庁が緊密な共同活動をすることによって我が国周辺の海域の安全を維持するということは不可欠な活動でありますので、そういう意味でも、今回、海上保安庁の担当官が海上自衛隊の艦艇に乗り組んで共同活動をし、お互いに毎日いろいろな意見交換をしていることは今後に重要な役割を持つのではないかと考えているわけです。
 加えて、この海域は特にアジアと中東湾岸とアフリカの接点を占める重要な戦略地でありますが、この地域において活動することが、将来アフリカや中東湾岸諸国の地域を安定するための協力に日本がどのようなかかわり方ができるかという意味において、ジブチにおける展開は大変重要な根拠基地として使えるのではないかと、かように考えているわけであります。
 先ほど、一番最初に参考人としてデズモンド・マロイさんのお話を伺ってみるとつくづく思うことに、ソマリアの情勢はドラスチックな改善がほとんど期待できないという状態が今後も続く限り、我が海上自衛隊とこの海上保安庁の現地における活動が相当長期にわたるということを我々は覚悟せざるを得ず、その間、不測の事態もあり得るわけで、この不測の事態に対して、常に国民に長期にわたる理解と支援が是非とも必要ではないかと考えるわけであります。
 本委員会並びに国会の非常に重要な役割を果たしていただいている各党及び議員の先生方に我が国の国民と我が国の国益を代表して現地で活動している部隊に対し深甚な理解と御協力をいただきたいと、かように考え、この法案に対して全面的に支持をし、かつ速やかにこの法律案が成立することを期待して、これが日本の安全保障にどのような意味合いを持っているかという点について特に述べたわけでございます。
 委員長、以上でございます。
 ありがとうございます。
○委員長(榛葉賀津也君) ありがとうございました。
 次に、山田参考人にお願いいたします。山田参考人。
○参考人(山田吉彦君) 本日は、海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律に関します意見を述べさせていただきます機会を与えていただきまして、大変ありがとうございます。
 私、一九九八年から十年以上にわたり現代海賊問題を研究してまいりました。それに関しまして私の思うところを本日お話をさせていただきます。
 私は、二〇〇八年三月まで日本財団に勤務いたしまして、主に海洋問題に携わってまいりました。北朝鮮工作船のお台場、船の科学館における展示の企画運営の責任者、あるいは沖ノ鳥島、一番南の沖ノ鳥島の有効活用を考える民間調査団の事務局長など、日本の海洋安全についての事業を担当してまいりました。先ほど申し上げましたように、海賊問題に関しましては一九九八年より、特にマラッカ海峡の海賊問題に関しまして、現地の視察を始め、研究を進めてまいりました。
 今回の海賊対処法は、世界に先駆けた海賊に対処する法律でありまして、各国から非常に注目を集めております。国連海洋法条約では、すべての国は可能な最大限まで公海その他いずれの国の管轄権にも服さない場所における海賊行為の抑止に協力すると書かれております。しかし、この国際法に基づいて国内法を整備しているという国は少なく、海賊を増長させる一つの原因となっております。
 国連海洋法条約には、公海の自由、公海における航行の自由が認められております。公の海に対するナビゲーション、船を動かす自由が認められております。公海の自由こそ、貿易量の九九%を海上交通に依存する海洋国家日本の根幹になっているものです。公海の自由があるからこそ国民が豊かに幸福に暮らすことができるのだと考えております。公海は、何人たりとも自由に利用することができる反面、その安全を守る義務を負う者がいないという欠点がございます。今まで公海の安全に目を向けてこなかったのが現実です。
 昨今、今回のテーマとなっております海賊、この公海を海賊が脅かしております。昨年だけでも二百九十三件の海賊事案が報告され、特にソマリア沖海域におきましては現在も十四隻の船が海賊により抑留され、二百十名ほどの乗組員が人質として拘束されております。
 海賊の出現は、公海の安全をだれかが守らなければならないことを知らしめました。公海の安全はこの公海の利用による恩恵を受ける受益者こそがその能力に応じて責務を負うべきであると考えます。まさに海洋国家日本は、海洋の恩恵を受ける受益者の代表格であり、率先して公海の安全に寄与しなければなりません。そのためにも今回の海賊対処法案は意義のあるものであると考えます。
 日本の海賊対策は、二〇〇〇年以降、世界をリードしてきました。特にマラッカ海峡において日本が進めてきました海賊対策は、世界的な成功例として高く評価されております。そもそも日本は、マラッカ海峡の支援に対しまして、既に四十年間、航路標識の整備、灯台の整備等、常に世界に先駆け、率先してやってまいりました。マラッカ海峡の海賊の制圧は確実に成功したと言えます。二〇〇〇年、マラッカ海峡で起きました海賊事案は八十件、それが二〇〇八年には八件まで減少しております。実に十分の一に制圧されたことになります。
 マラッカ海峡の海賊対策、まず第一は沿岸国の意識を高めるということにあります。IMO等の国際機関からの指導、あるいは現地で行います国際的な海賊セミナーの開催。二〇〇〇年、東京で海賊対策国際会議が開かれましたが、実はその準備会合はあえてシンガポールで開かれております。海賊が多発するマラッカ海峡に最も近い、しかも現地に最も近い場所で各国のスタッフに集まっていただき、会議の準備に入りました。
 また、沿岸国機関の警備、取締りの強化、これは沿岸国の問題意識の向上に伴って行われるものですが、その中でも日本は人材育成の面を中心に協力してまいりました。具体的には、日本の海上保安大学校へ各国の留学生を受け入れるというような、あるいは研修、セミナー、海賊セミナー等の開催をしてまいりました。
 また、民間の立場としましては、日本財団及び海洋政策研究財団では、IMOの運営いたします世界海事大学に留学する世界各国の若者に奨学金を支給してまいりました。奨学金を受けた学生は延べ四百人を超えております。既に卒業生のネットワークもつくられ、常に情報交換を進めております。その中には海上安全にかかわる者も多く、フィリピン・コーストガードだけでも実に二十五人、インド・コーストガード六人、そのほかマレーシア、インドネシア、バングラデシュなどの沿岸警備機関も含まれております。もちろん日本からも計七名の海上保安官が留学しております。このような形で、人的ネットワークの上に国際協力は成り立っております。決して一朝一夕でできるものではございません。
 その国際協力の必要性なんですが、マラッカ海峡におきましては、海賊は国境線を利用し活動しておりました。インドネシア側で犯罪を犯した海賊はいったんマレーシア側に逃げる、あるいはマレーシア側で犯罪を起こしました海賊はインドネシア側に逃げるというように、国家の主権である国境線を利用し活動しておりました。そのためには複数の国の情報協力、そして取締りの連携が必要不可欠です。
 また、船舶の自主警備、船が自分自身で自分の船を守るということはこれは鉄則です。自分なりに船を守る準備、対処マニュアルの整備、そして沿岸国の警備機関と常に連携を取れる体制ということが船に求められております。その点におきましても、船主の責任というのも非常に重要になっております。
 アジアの海賊対策におきましては、日本が中心となり、ReCAAPと言われるアジア海賊対策地域協力協定が結ばれております。アジアの警備機関相互の協力体制がそのために確立しております。この協定により設立された情報共有センターが各国の海賊対策をサポートしております。その結果、アジアにおける海賊は激減したと言えます。
 マラッカ海峡と異なり、ソマリア海賊の出没海域は広範囲にわたっております。マラッカ海峡の多くがいずれの国の領海であるのに対し、ソマリア海域は公海になります。ソマリア海賊対策としては公海の管理能力が求められております。
 船舶の管理責任は旗国主義、フラッグを持った国、船籍を置いた国が責任を取る、持つということになっております。しかし、便宜置籍船制度が広がり、また多国籍船員の混乗化が進み、船舶にとって国家の責務があいまいになっております。船の自主的な警備、海賊対策は当然のことでありますが、ソマリア海賊に対処するためには船を一隻一隻守るだけではなく、海域ごとを守る必要があります。そのためには警備に参加する各国の連携が必要です。ソマリア版ReCAAPの創設が必要と考えられます。
 また、ソマリア海賊への武器の供給ルートを遮断し、ソマリア海賊の受け取った身の代金をマネーロンダリングさせないためにも、沿岸国の海上警備能力の向上が必要です。日本はマラッカ海峡における成功例を応用し、ソマリア沿岸部における海賊対策の中心的な役割を果たすことが期待されております。
 本法案は警察権にかかわる法案であります。一義的には海賊対策は海上保安庁が担当するべきものであると考えます。しかし、日本の海上保安庁はわずか一万二千人の陣容で、三万四千キロの海岸線、四十三万平方キロの領海を守り、世界で六番目に広い四百四十七万平方キロの排他的経済水域を監視しております。海上保安庁は、年間二千件近い海難事故に対処するとともに、北方領土、尖閣諸島周辺海域や北朝鮮問題を持つ日本海の警備において気を抜くことができません。
 また、海洋環境の保全も海上保安庁の役割であり、更なる海上保安庁の充実が求められているところです。ソマリア海域は余りにも遠く、沿岸警備を主な役割とした海上保安庁では装備面での不安もあります。
 欧州諸国はカリブの海賊の時代から海軍が海賊と戦ってまいりました。欧米諸国と歩調を合わせ機能的に行動するためには、情報連携、艦艇装備の面も含め、海上自衛隊が派遣されるのが望ましいと考えます。
 日本は短期的に警備艦艇を派遣し、船舶を護衛するとともに、中長期的には沿岸国の警備能力の向上を支援し、長期として最終的にはソマリアの治安回復に向けた援助を行っていくことが望ましいと考えます。
 海賊の発生の原因は貧困です。貧しい人々の手に武器が渡ったとき海賊化していきます。そして、二〇〇〇年ごろのマラッカ海峡もそうでありましたが、海賊に犯罪集団が加わっていきます。それが組織化し、大々的な海賊事件、今回のようなソマリア海賊が多発するような状態になってまいります。
 海賊が発生しない社会づくり、貧困からの脱出、そして武器の流通の阻止、反政府組織対策、テロ対策等、海賊を抑止する方法というのがあります。そして、公海上の安全の確保、公海上の安全を守るための新しい社会システムづくりが求められております。国際協力による警備体制の構築、便宜置籍船制度の改善、そして多国籍船員の混乗への対応、やらなければならないことはたくさんございます。
 今回、航空機を使った警戒が始まります。これはマラッカ海峡におきましては最も効果的な海賊抑止の手段の一つでございました。海賊は早く発見し、早く沿岸警備機関が対応するということが最も望ましい対処方法であると考えます。
 今回、総合海洋政策本部を中心に新たな海賊対策が始まりました。このことは海洋基本法の精神が生かされてのことだと思います。今回の法案は、各省庁、民間も含めた各機関が連携協力し、日本を支える公海の安全を守るスタートであると思います。海に守られた日本から海を守る日本へ変わるときが訪れているんだと感じました。
 以上です。
○委員長(榛葉賀津也君) ありがとうございました。
 次に、高林参考人にお願いいたします。高林参考人。
○参考人(高林敏之君) 高林でございます。
 本日は、このような意見陳述の機会をお与えいただき感謝申し上げます。ありがとうございます。
 本件法案に関しましては、明らかにソマリア周辺海域における海賊問題を理由として提起されているにもかかわらず、肝心のソマリアやアフリカ地域の事情、歴史的背景をめぐる議論が余りにも乏しいのではないかということが一連の審議資料からうかがわれます。アフリカ地域研究者の一人としてその目から見ると、このような形でアフリカの一国に対する警察行動であるとか自衛隊派遣なりが決定されんとしていることは極めて憂慮すべきことであると考えております。
 私自身は本件法案には賛同はしかねるという立場でありますが、以下、論拠を四点に要約して陳述させていただきます。意見陳述というふうに書いてございます予稿の方に沿いながら、はしょりつつ進めます。もう一つの方は参考資料ということで、また後ほどでもお目通しいただければ幸いでございます。
 第一に、歴史に深く根差した外部勢力の介入に対するソマリア人の歴史的不信感、これを十二分に考慮すべきであろうということであります。
 元来、ソマリ民族は遊牧民であってアフリカの角地域を広く生活圏としていたわけでありますが、一八八〇年代以降の列強の進出により二十世紀初頭までに四つの征服者、つまり、イギリス、イタリア、フランス、エチオピアによって都合五つの地域に分断されたわけであります。そのうちの一つ、フランスが支配した地域が今拠点となろうとしているジブチであるということは指摘をしておきたいと思います。
 これに対して、歴史的にはサイイド・ムハンマドという人物が指導する二十一年間続く強力な抵抗運動が起こるなど、その後、ソマリ民族の統一と解放を求める大ソマリア主義というものがソマリア・ナショナリズムの悲願となり、結果的には一九六〇年の七月一日、南部のイタリア信託統治領と北部のイギリス保護領が統一する形で現在のソマリアは建国をされております。
 以後もこの大ソマリア主義を掲げて、ソマリアは、特にエチオピアのオガデン地方というところですね、隣接する、回収を求めて国境紛争を繰り返し、七七から七八年にはいわゆるオガデン戦争にも発展するわけでありますが、このように、欧米列強及びエチオピアによる植民地分割こそがソマリアとアフリカの角地域の混乱の原点であるということに留意する必要がございます。
 いずれにしても、ソマリアは旧植民地の境界を超えた民族統一の根強い運動が先ほども申し上げたように存在いたしました。また、今となっては忘れられかけていることでありますが、独立から九年間、この国は曲がりなりにも複数政党制民主主義が機能していた国であるということに留意いただきたいと思います。既にこの当時、アフリカの大半の独立国が一党独裁、軍事独裁の下に置かれていたときに、選挙による首相や大統領の交代も行われていた国であるということは特記するべきであろうと思います。ソマリアは氏族対立を伝統としているわけでは必ずしもなく、統一・民主的な国家となり得る力を有している国なわけであります。
 このようなソマリアを破綻に導いたのが、一九六九年から九一年まで約二十二年間独裁体制をしいたシアド・バーレ大統領であったわけであります。この一党軍事独裁体制と自らの近親者や出身のクラン、氏族を極度に優遇する政治手法を取った独裁政権を支え生き延びさせたのは、当初はソ連でありました。そして、オガデン戦争後はアメリカ合衆国の軍事援助であったわけです。
 冷戦下での両超大国によるアフリカの角地域での援助競争やオガデン戦争とその後の内戦の過程でこの地域には大量の武器が流入し、やみ市場が成長していくことになったと言われております。こうした武器を使ったバーレ政権の弾圧とこれに対する武力抵抗が、氏族に依拠した武装組織の乱立といった現状へと導いていったわけであります。つまり、冷戦下における超大国の援助競争こそがバーレ独裁を長期化させ、ついには破綻国家へ導いていったと言わなければならないと思います。
 こうした無政府状態の出来に対して、一九九〇年代前半にアメリカが主導する形で国連史上初の平和強制活動が実施されたことは御承知のとおりと思いますが、しかし、これもアイディード派という一つの軍閥を敵として選別しその武力鎮定にはやった結果、かえってそれにより傷つけられたソマリ人たちをアイディード支持に走らせ、一九九五年には無残な撤退に追い込まれたことも御承知のことと思います。
 二〇〇六年十二月にアメリカから海空支援を受け介入したエチオピア軍の軍事介入も、二〇〇八年末までに事実上の失敗のうちに撤退に追い込まれたわけであります。
 独裁体制崩壊後の軍閥抗争により崩壊した法秩序をイスラーム法により再建し大衆的支持を得て勢力を拡大したのが、いわゆるイスラム原理主義と呼ばれるイスラーム法廷同盟、UICでありました。しかし、これを外部勢力が一方的にアルカイーダと結んだテロリストというふうにレッテルを張り、そして歴史的な侵略者というふうにソマリア人からみなされがちなエチオピア軍を動かし、しかも爆撃を含む暴力で無理やりに駆逐した結果として、かえって一般ソマリア人の反発を惹起し、本来なら少数勢力でしかない急進派イスラミストの活動激化へと導いたわけであります。
 結局、特定集団を自らの価値判断で恣意的に敵として選別し暴力で鎮定しようとする先進諸国、国連の介入こそが、ソマリア人から外部の不当な抑圧として反発を受け、情勢を悪化させる失敗を繰り返してきたわけでございます。
 以上のような歴史的過程と多大なる犠牲の結果、ソマリア人は国連を含む外部、とりわけ大国の介入に対する根深い不信感を植え付けられております。海賊対策もまた、ソマリア人にとってそのような不当介入と受け止められる危険があるものと言わざるを得ないわけであります。
 と申しますのも、第二点になりますが、海賊対策はソマリア人を元々救うために計画されたものではなく、外国船舶の保護、貿易ルートの安全、まさに国益といった諸外国の利益のために行われるものであって、むしろソマリア人の目から見れば抑圧にほかならないからであります。
 政府の資料、答弁も一覧いたしましたが、その中でも繰り返し指摘されておりますように、海賊に動員されているのは、先ほどもマロイ参考人からも指摘ございましたように、諸外国の有毒廃棄物投棄や水産資源乱獲などによって、更に自然災害によって生活の基盤を奪われたソマリアの一般民であります。
 これについては先ほども説明がありましたので私の方では繰り返しませんが、国連環境計画や国連食糧農業機関のレポートなどにおいても、こちらがその国連環境計画のものですが、これらのことは詳細に指摘されており、特に、海賊の有力拠点と見られているプントランドにおける水産資源の甚だしい枯渇が数値も挙げて指摘をされておるところであります。
 また、二〇〇五年六月十六日に国連安保理に提出されたソマリア情勢に関する事務総長の報告書の中でも、一部の外国漁船がソマリアの漁民を攻撃しそのボートや装備を破壊しているという、そういう事実が指摘をされておるわけであります。これこそある種の海賊行為みたいなものとも言えるかもしれませんが、このような違法な漁獲が、暫定連邦政府、TFGなどの収入を大きく損なっているという批判も行われております。最近では、アブダッラー国連事務総長ソマリア特別代表が、昨年七月、欧州及びアジア諸国からの船による膨大な違法操業と有毒廃棄物の投棄を厳しく非難していることを想起するべきでありましょう。
 ソマリアは内戦によって国家、公共サービスが崩壊し、相次ぐ自然災害のため福祉、就労などもままならない状況にあります。現在でも合計百万人近いソマリア人が難民、国内避難民となっておる状況です。そのようなソマリアで、諸外国の船によるかかる違法活動は海岸部住民を始めとする一般民の生活を更に追い詰め、海賊活動に追いやっていることを十分に認識すべきでありましょう。すなわち、厳しい言い方をすれば、ソマリア人にとって外国船は決して無辜の民などではなく、そればかりか、ソマリア人の資源を奪い、生活を脅かし、災厄をもたらしたというふうに認識されるものなのであります。
 したがって、自らの船を守るためにソマリア人たちを排除し処罰しようとする諸外国海軍の海賊対処行動は、彼らにとっては不当な戦争行為とみなされても仕方がないものであります。これは国際法的な意味ではなく、感じ方としてということですね。
 本件法案の最大の問題は、ソマリア人海賊を日本の法により拘束し処罰する、しかも最高刑として死刑もあり得ることが明記されていることであると考えます。追い詰められたソマリア人にとってこれは、ソマリア人の理解でということですが、搾取者による弾圧以外の何物でもないと受け止められても仕方がないわけであります。
 政府は本件法案の根拠を海洋法条約に置いておりますが、しかし、海洋法条約は、領海や排他的経済水域に対する沿岸国の主権の保障、海洋資源の保全、投棄を含む海洋環境汚染の防止をより大きな目的として掲げております。したがって、海洋法条約に従うのであれば、マロイ参考人もおっしゃられたように、日本を含む諸外国政府は、まず諸外国のソマリアにおける不法な乱獲と投棄を処罰する、つまり、自らの国の船による不法行為を取り締まる法整備と活動をこそ行うべきであり、ソマリア人処罰を先行させることは本末転倒であると言わざるを得ません。
 第三点に移りますが、海賊問題の根本的な解決のために必要なことは、言うまでもなくソマリア紛争を解決し、人々が海賊に走らずとも安心して生活できる統治機構と社会を再建することであります。
 ソマリア紛争では、アフリカの角地域の国際機構であるIGADとアフリカ連合、AUが国連事務総長特別代表の支援を得ながら粘り強く調停努力を続けました。二〇〇九年一月に発足した現在のTFGも国土の大半に実効支配を確立できないのが現実でありますが、ソマリランドを除くと、イスラム急進派を除くほとんどの勢力を実際には糾合していると言えるものであります。その点、AU、IGADの取組は私は評価できると考えております。
 しかし、何ゆえそのTFGがイスラミスト急進派に圧迫され実効支配を確立できないのであろうか。冒頭に述べたとおりの外国の介入がTFGとアフリカのイニシアチブに対するソマリア人の信頼を損なった側面を指摘できると思います。
 AUやIGADは、ソマリア再建のためにイスラミストを和平に組み込まなければならないことは理解しておりました。そして、実際に二〇〇六年後半にはUICとTFGの間で二度の和平協議も行われております。そして、このUICの統治下で一九九五年以降初めてソマリアの空港と港が再開されるなど治安が大幅に改善し、海賊行為もいったん厳しい措置の下で実質上停止していたことも伝えられております。もしこの段階で和平が成就していれば、二〇〇七年以降激化していった今日の海賊問題の悪化はなかったのではないかと思われます。
 しかし、このプロセスを破綻させたのが、二〇〇六年末のエチオピア軍によるソマリア侵攻だったわけであります。いずれも、ソマリアにとって因縁あるエチオピア軍が米軍の支援を受けて侵攻したことによって、TFGそのものの信頼性も大きく傷ついたわけであります。しかも折あしく、既に派遣準備されていたアフリカ連合ソマリア派遣団、AMISOMがその直後にソマリア入りしました。このことは、AUやIGADまでがエチオピアの手先、米国の手先という宣伝にさらされるには十分でありまして、AMISOMまでもがイスラミスト急進派の攻撃にさらされるという現状を招いております。アメリカやエチオピアのこうした恣意的な介入は、アフリカ地域機構による解決努力を阻害する役割を果たしたと考えます。
 それでも、ジブチ合意や拡大TFGの実現ということによって、イスラミストをソマリア和平の枠組みにようやく組み込んだAU、IGADですが、その努力もソマリア一般民を圧迫する海賊対策と同一視されれば、水の泡になりかねません。ソマリアの統治機構や経済、社会が再建されない現状で海賊行為のみを鎮定しても、生活の糧を求めるソマリア人は麻薬や武器密輸など別の違法行為に走ったり、あるいは圧迫への怒りからイスラミスト急進派にますます動員されるおそれが高いです。そうなれば、AUやIGADによる和平努力とAMISOMの活動は、更なる危機にさらされるでありましょう。
 しかし、こういうアフリカのイニシアチブは弱体で期待できないのではないかという御見解もあるでしょうが、しかし、地域主導の枠組み以外に信頼されるソマリア問題解決の枠組みはありません。
 まず、冒頭で述べたとおり、外部勢力介入へのソマリア人の不信感は非常に根深いものがあります。また、AUは国連PKO派遣を求めていますが、国際社会は非常に消極的で、めどは立っておりません。かといってソマリアの自主的解決に任せていたのでは、軍閥抗争も激化しかねない。だとすれば、日本を含む国際社会は、AMISOMが全面展開できる環境を醸成できるよう、本来の規模、八千人のですね、アフリカ地域の和平努力とAMISOMの側面支援に徹するべきであると思います。諸外国が表に出ることは、かえって地域イニシアチブへの疑念を生じさせることにつながると思います。ソマリア問題の解決を国際社会がアフリカにゆだねるのであれば、恣意的な介入でアフリカの和平努力の足を引っ張るべきではありません。
 最後の第四点は、もう簡単に申し上げますが、例えばソマリアの海賊対策のために自衛隊派遣が熱心に議論されておりますが、一方で、同じアフリカで一九九一年以来西サハラの住民投票監視のために展開している国連西サハラ住民投票派遣団には、文民要員はもちろんのこと、停戦監視のための自衛隊要員派遣の議論も起こりません。その反面、西サハラを占領するモロッコとは緊密な友好関係を築き、そのタコや燐鉱石などの資源が公然と輸入されている状況もあります。ソマリアでは日本船舶の利益のために自衛隊を派遣し、西サハラでは経済・資源権益のために放置する、このような姿勢で日本がアフリカから真の信頼を得られるのか、そのことを重々考えて議論をする必要があるのではないかと考えております。
 取りあえずここで陳述を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
○委員長(榛葉賀津也君) ありがとうございました。
 以上で参考人の意見陳述は終わりました。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○白眞勲君 民主党の白眞勲でございます。
 四参考人におかれましては、御多忙中のところ当外交防衛委員会の方に参席くださり、御意見を披露してくださいましたことに関しまして、我々民主党としましても感謝を申し上げたいというふうに思っております。
 四参考人にいろいろのことを聞きたいなと、こう思っておるわけなんですけれども、まず、マロイ参考人にお聞きしたいというふうに思います。
 参考人のこの資料を見ますと、やはり海賊対処には限界があると。と同時に、何かゴキブリ退治の効果のみというふうにも書いてありまして、日本語ではモグラたたきという言葉があるんですけれども、確かに私たちも、まずは問題の根本解決をしていかなければ、その表面的な解決だけではなかなかうまくいかないんではないんだろうかと。私も実は韓国ともいろいろゆかりがありまして、韓国ではスイカの皮なめという言葉がありまして、スイカの表面だけ皮をなめても中の味が分からないじゃないかと。まさに、今の日本の海賊対処というのはそういう部分が私はあるんではないんだろうかというふうに思っております。
 そういう中で、これは高林参考人もやはり同じように根本的な解決を示さなきゃいけないという部分では私は御意見同一だと思いますし、また、山田参考人におかれましても、ソマリア版のReCAAPを作るべきだという部分においては、やはり国際的な連携。また、森本参考人におかれましては、若干別な意味での国際的な連携を図るべきであるということだと私は思いまして。
 その中で、まずマロイ参考人には、今海賊がどんどん遠洋にも出てきているということらしいんですね。つまり、モグラたたきじゃないんですけれども、何ていうんでしょうね、その地域だけでは、やっぱり取締りが強化されるとそれはどんどんどんどん別のところにどんどん行っていくんではないんだろうかと。外務省でもそういう警戒情報みたいなものが今度出されましたけれども、そういう中で、具体的にどういう国際連携というものがあったらいいんだろうかというのをちょっとお示しいただきたいというふうに思います。
○参考人(デズモンド・ジョン・マロイ君)(通訳) ありがとうございます。
 私が申し上げたかったポイントというのは、例えば国際対策部隊の規模を急拡大してもそれほど効果が発揮できないということです。というのは、公海における対象地域が非常に拡大しているということで、コスト効果が期待できないわけです。したがって、ソマリアの海賊ということに関して言えば、その多国間の協力が、マラッカ海峡などの場合は日本に非常に効果的だったんですが、ソマリアの場合には、海賊の根本でありますところの資金源に対処する必要があるということです。
 また、私の別の提言として、アプローチを切り替える必要があるということで、ソマリア人のコミュニティーが国際介入に持っている受け止め方を改善する必要があるということです。法案自体について申し上げているわけではないんですけれども、新しい斬新的なアプローチがソマリアの海賊には必要であり、艦艇の派遣はうまくいかないということで、実際にソマリアのコミュニティー、沿岸地域におけるコミュニティーに直接手を入れる必要があるということであります。
○白眞勲君 その中で、一つ、今度は山田参考人に、今ソマリア版のReCAAPという中で、やはりマロイ参考人はその資金源を断つべきではないんだろうかというお話がありましたけれども、その件につきましてはどのようにお考えになりますでしょうか。
○参考人(山田吉彦君) 当然、資金源、入った資金自体を使わせないということも重要であると思います。ただ、今回ReCAAP、ソマリア版ReCAAPというのは、やはり沿岸国が自分たちの能力の向上をしていくことで取り囲んでいくと、当然対岸、イエメン側、あるいはオマーン、ジブチ、ケニアなどがしっかりと沿岸をガードしていくことでソマリア自体を孤立していく、そこで資金の封じ込めということも含めて考えられると思います。
○白眞勲君 ありがとうございます。
 そういう中で、今マロイ参考人は、自衛隊が行くことに対する疑義ということをお話しいただいたわけなんですけれども、山田参考人はその件についてどのようにお考えになりますでしょうか。
○参考人(山田吉彦君) 私、陳述の中でも申し上げましたように、協力というのは一朝一夕にはできません。あしたにも、いや、今日にも船は襲われる可能性がある状況です。まずは日本の艦艇を出し、警備を怠らず行っている間に側面的に環境を整え、マロイ参考人がおっしゃるように資金源を断っていくと。それまでの時間、決して海賊たちは時間を与えてくれません、守る必要があるというところから艦艇の派遣が必要であると考えます。
○白眞勲君 そういう中でもう一度山田参考人にお聞きしたいんですけれども、欧米諸国はカリブの海賊の時代から海軍を派遣していたんだということだったと思いますが、確かにそうだと思うんですが、当時は、カリブの海賊は沈めるために海軍が行っていたんじゃないかなと思いまして、今は取り締まるための部分であるならば、当然これは海上保安庁が第一義的に仕事をするべきだろうというふうに私は思っているんですけれども、今回はやはり海上保安庁ではなくて海軍、いわゆる海上自衛隊じゃないといけないというふうにお思いでしょうか。
○参考人(山田吉彦君) 私も、第一義的には海上保安庁が海賊対策を取るべきだと考えております。
 しかし、先ほど申し上げましたように、海上保安庁の実情を考えますと、今、日本の周辺海域はそれほど安全ではありません。海上自衛隊が装備的な面でも、あるいは他国の協力の面でも、今現在では自衛隊の方が海上保安庁よりも望ましいと考えております。
○白眞勲君 高林参考人にお聞きしたいんですけれども、先ほどマロイ参考人から、山田参考人と同じ質問なんですが、やはり資金源を断つべきであるということに関しましてどのような御所見を持っていらっしゃいますか、ちょっとお聞きしたいと思います。
○参考人(高林敏之君) 軍閥等々の資金源を断つということは国際的な連携の取組としては重要であると思いますが、それこそそういうことを国連安保理などの決議に基づきながら行うべきことであろうかなと考えております。
○白眞勲君 逆に、今度は国連安保理の話が出たんですけれども、じゃ、ちょっとマロイ参考人にまたお聞きしたいと思うんですけれども、国連安保理がやはりそういった面では新たな決議を出すべきでしょうか。それとも、やはりあの辺りにおける、何というんでしょうね、関係国というんでしょうか、日本も含めて、つまり海賊に襲われる可能性がある国々が連携した方がいいと、その辺はどのようにお考えなんでしょうか。
○参考人(デズモンド・ジョン・マロイ君)(通訳) 国連安保理と総会は、主権を保護すると、ソマリアの領土の整合性ということについて、存在していないのにそれを守り過ぎるということで、TFG、暫定連邦政府の主権と言っているんですけれども、これはほとんど存在しないような存在なんです。だから、新しいアプローチを取らなければいけないと思います。インド洋そしてその海域において艦艇を派遣するというよりも、軍閥で加害者の人たちに対応する必要があると思います。この人たちが、まさにTFG、暫定連邦政府を、そして反政府勢力、両方を掌握しているんですね。ですから、政府が問題対処するといっても、政府自体が加害者だと海賊行為の取締りにならないわけです。
○白眞勲君 森本参考人、お待たせいたしました。
 ジブチ協定についてお話を聞きたいんですけれども、日米地位協定との違いということを御指摘いただいたわけですけれども、これは、恐らく政府・与党、野党問わず、日米地位協定についてはよりどんどん、より日本側の地位、日本側のやはり有利なと言ってはなんですけれども、やはり普通の協定にしてほしいというのが我々の意見なんですね。今でもやはり相当な差別的な私は協定になっているんではないのかなというふうに思うわけなんですね。
 そういう中で、このジブチ協定が逆の立場になっているわけでして、そういう面でいうと、今後、アメリカに対して日米地位協定の改定というのを求めていったときに、このジブチ協定との関係で、おまえらダブルスタンダードではないかというふうに言われかねないのではないのかな、そういう懸念はどうでしょうか。
○参考人(森本敏君) 基本的に、日米地位協定と日本がジブチと締結をした交換公文との最も重要な差というのは、もう先生御承知のとおりで私があえて申し上げる必要はないと思いますが、いわゆる合衆国軍隊が日本に駐留することに係る日米地位協定は、合衆国軍隊が日本を防衛するために必要な特権を享受するための地位を日米協定で決めてあるわけです。
 日・ジブチ協定というのは、何も日本の自衛隊がジブチの国家の防衛をするために駐留するための地位協定ではありませんで、そこで便宜を供与していただいて、周辺地域の海賊に対処するために十分な活動をする言わば根拠基地としての便宜を供与してもらうということであって、この協定の中にジブチが何かあれば日本の自衛隊がジブチを守るなどということになっておれば話が全然別ですけれども、その基本的な、基礎的な要件というものが相当違うのではないかと、このように考えます。
○白眞勲君 確かに要件は、もちろんそれぞれの協定というのはそれぞれの国家によってそれぞれ要件は違うかとは思うんですけれども、外形的に見た場合には、やはりその辺の裁判権とか何かについては果たしてどうなんだろうかという部分についてはいかがでしょうか、森本先生。
○参考人(森本敏君) 御承知のとおり、その日米地位協定の出来方というのは、地位協定第十七条で刑事裁判権の管轄について、先ほど申し上げたように、在日米軍人が起こした事案、刑事事案というものが公務執行中の作為若しくは不作為の場合に原則としてアメリカ側が第一次裁判権を取る、それ以外の場合にはホスト国である日本が第一次裁判権を取るという仕切りになっているわけです。
 先ほど冒頭申し上げたとおり、そうではなくて、この日・ジブチの交換公文というのは、いかなる場合でも自衛隊員がジブチに駐留する場合に起こした事件についての刑事裁判権というものを日本がすべてその責任を負うということになっているのは、たとえ公務執行中でない事故が起きたとしても、裁判権を日本の国内法に基づいて日本が裁判権を取るということになっているのは、日米地位協定との関係において日本が特権を享受している、つまりそういう意味では日本が有利である。
 もっと簡単に言ってしまうと、そういうことは考えにくいのですが、仮に自衛隊員が現地で勤務中以外の場合に町に出ていて、現地の人と傷害事件を起こして、その裁判権を争うというときに、この協定は、にもかかわらず、ジブチ側が協力をして日本が刑事裁判権を全部行使できるようになっている。それは、在日米軍基地において、つまり在日米軍が日本で享受できる特権よりもはるかに日本にとって有利な協定になっているのではないかと。そして、そのことは今後日本が海外に駐留するときに、この協定をモデルにして各国と協定が結ぶことができるというのであれば、非常に良い地位協定の基礎ができたのではないかという趣旨を申し上げた次第でございます。
○白眞勲君 もちろんその趣旨は十分に分かりますし、それはやはり、外国のというよりは、日本に裁判権が及ぶのが我々にとってみたらそれは有利なものであるわけなんですけれども、片や在日米軍の問題についてどうなんだというところに絡んでくるときに、どうなんだというところがちょっと私としては疑問になるというか、ちょっとアメリカから言われちゃうんじゃないかなという、そういう心配がありまして、その辺ちゃんと論理武装していく必要があるのではないんだろうかという感じはいたします。
 それともう一点、森本参考人にお聞きしたいんですけれども、海上自衛隊との国際連携が今回こういったことによってより深まっていくことは非常に日本近海の防衛においてもいいことではないかという御趣旨だと思いますけれども、そうしたら、やはり日本近海、今ちょうど北朝鮮のこういった問題、イシューとして今大きな問題になっている中での海上保安庁の位置付けというのも大きい部分がありまして、第一義的には、これもう政府も答弁で言っているわけで、海上保安庁がこのソマリア沖の海賊対処はしなければいけないんだという観点からすれば、単に海上自衛隊の艦船に日本の海上保安庁の要員が乗るだけではなくて、海上保安庁の艦船も、彼らは物理的に出れるんじゃないかと言っているんですけれども、出ていって、きちっと他国との間の連携を図るべきではないのかなというふうにも思えなくはないんですけれども、その辺についてはいかがでしょうか。
○参考人(森本敏君) これは、私は海上保安庁の実態を余りよく理解せずにお答えするので非常に怪しげな答弁になるのですが、まずソマリアの案件というのは、あくまでこれは警察活動なので、原則として海上保安庁におやりいただくのが国際法上も国内法上も正しいと私は思います。しかるに、先ほど山田参考人のお話に私は同意するものですが、相手方海賊の持っている武装の内容とそれから各国の海軍との連携動作というこの二点にかんがみ、海上保安庁よりもソマリアについては海上自衛隊に、出て活動した方がはるかに望ましいと。
 ところが、日本の周辺というのは、言わば日本の周辺海域の安全を維持するというこの警察活動は、やはり海上保安庁に主たる任務を負ってもらうという必要があり、もっとはっきり申し上げると、世界中の警察活動に海上保安庁が出ていくという能力は、今の海上保安庁には少し無理な面があるんであろうと。しかし、日本の周辺海域が海上保安庁によって警察活動を十分にできないというのであれば、それは海上保安庁の持っている要員や装備に恐らくもっと考慮とか配慮をしないといけないということだと思うんです。
 これを結論付けると、非常に単純に申し上げると、日本海域におけるこの種の警察活動は、海上保安庁が、たとえ装備が足らないというのであれば新しく装備をしても、海上保安庁に一義的にやっていただくというのが本義であって、はるか遠方の海域に、しかも相手が海上保安庁では対応できそうにない武装を持っていて、しかも各国の海軍が出ているときに、これを海上保安庁にやってくださいというのはいささか実態として無理があるのではないかと。
 したがって、ソマリアについては海上自衛隊が主体に、日本周辺海域においては、原則、主体的に海上保安庁がやっていただき、必要な場合には海上自衛隊がこれを補う、補佐する、共同活動する、そういうのが海上保安庁の在り方として適切なのではないかと考えているわけです。
 以上でございます。
○白眞勲君 いわゆる遠くは海上自衛隊にやらせたらどうだということかもしれませんが、今の実態として、テロ特措法、新テロ特措法でインド洋で補給活動をしている海上自衛隊の船が二隻、それから今回ソマリアで二隻。
 実際問題、これは山田参考人にもお聞きしたいんですけれども、年間二千隻通っている中で二五%しか守っていないという状況なわけですね。つまり、それ相当なやっぱり限界があるという中で、どういうこれから選択肢があるか分かりませんけれども、海上自衛隊の船が現在だけでも四隻、当然待機している船とかドック入り、当然帰ってきてドック入りすると、合計すると約八隻の艦船がこういった対処で外に出ていってしまっているという中で、山田参考人とそして森本参考人に、もう本当に時間がだんだん短くなってきたんで手短で結構なんですけれども、果たしてこれ、海上自衛隊の船、これ足りるのかなと。
 日本海で今後どういう状況になるか分かりませんけれども、今八隻出ている。なおかつ、もしかしたらまた別のところでお呼びが掛かった場合また二隻出るということは、二隻待機ということになってまた四隻ということになると、この四の倍、倍増というんですかね、四掛ける何乗になるという状況の中で、日本近海どうするんだという部分については、じゃ山田参考人の方からちょっとお話聞いて、その後、森本参考人にお聞きしたいと思います。
○参考人(山田吉彦君) そもそも日本の海上保安庁は沿岸警備に、特に二〇〇一年以降、北朝鮮工作船事案以降、新しいタイプの船は、小型、高速、小型といっても千トン、二千トンクラスの高速艇を用意してございます。それでは決してインド洋まであるいはソマリアまでマラッカ海峡を越えていくほどの能力はございません。やはり森本参考人がおっしゃいますように、近く、沿岸域はあくまでも海上保安庁の警備力、警察力をもって守るべき。確かに、海上自衛隊厳しいとは思いますが、日本の艦船を守るためにも、現在限定して、足の遅い船、あるいは舷の低い船という形で守るべき船を選定しながら警備している状況です。厳しいですが、海上自衛隊、今頑張って、そして日本、公海を、公の海を守っていただきたいと考えております。
○参考人(森本敏君) 先生御指摘のように、海上自衛隊が持っている艦艇は極めて限られているので、その中でこのように法律に基づいて新しい任務が与えられるというのは大変やりくりに厳しい面があって、とてもダブルで配置はできない。
 例えば、この法律が通りましたら、この法律に基づいて新しい訓練を行った部隊を現地に出さないといけないんですが、そういうことができるのかどうか私にはよく分かりません。現地における部隊に新しい武器使用等の法律上の根拠を与えて作戦を継続するということだってあり得るわけで、ダブルで現地で勤務するなどという余裕は私はないと思います。
 しかしながら、P3Cを出して広範囲の哨戒を行い、情報収集を十分にやれば、海上自衛隊の艦艇を効率的に動かすことができるほか、バーレーンその他の地上で、いろんな守らなければならないこちらの一般船舶の情報を十分に把握しておれば、彼らを守って活動するということですから、どこから出没するか分からないというのとはいささか違うので、その点では地上におけるテロ活動と少し海域は違うんだろうと思います。
 私は、将来のことを考えると、インド洋とこのソマリアの活動が長期に及べば、両方で出している海上自衛隊の部隊を統一指揮する形にして相互運用するということでなければ限られた艦艇を効率的に運用することができないのですが、予算の仕組みと法律の仕組みがインド洋とソマリアとでは全く違いますので、どのように相互運用するかということがなかなか難しい面があるんだろうと思います。部隊は確かに一つの指揮下にあったとしても、例えばインド洋での給油は給油として与えられた予算を海上自衛隊に十分給油するなどということは法律上はできないわけですから。
 しかし、日本の海上自衛隊が共に出しているわけですから、部隊を現地で統合運用するというもっと効率的なやり方をすれば、少しは限られた艦艇を効率的に運用できるのではないかと、このように思います。
○白眞勲君 時間も大体限られてまいりましたけれども、四人の方に今日は本当にすばらしい御意見をお聞きさせていただきました。
 何といっても、やっぱりこのソマリアの事態の海賊の根っこをどうするかというところからの議論をしていかなければならない。そして、今海上保安庁にしても海上自衛隊にしても、非常に装備面においても限られているという中でやはりやりくりを、まあやりくり上手なんという言葉が最近非常にはやり言葉になっていますけれども、物理的にもできないものもあるわけですし、そういったことを考えますと、やはり根っこをどうするかというところの議論というのをもっと深めていく必要があるんだなということを感じさせていただきました。
 今日は、どうも四人の皆さん、ありがとうございました。
○木村仁君 四人の皆様に大変貴重な御意見をお伺いして、心から御礼を申し上げたいと思います。
 まず、基本的な質問を四人の参考人の皆様にお尋ねしたいのでありますが、日本は、ソマリア・アデン湾において公海上で違法な海賊行為が行われている、ともかくこの行為を阻止するのでなければ日本の二千隻を超える船舶が安全に航海することができないと、こういうことから、まずは自衛隊法第八十二条に基づく海上警備活動を海上自衛隊に実施させたわけでございます。ところが、それでは日本関係船舶だけしか守ることができない、国際協力ができないと。あるいはまた、緊迫した条件の中で武器の使用に、これは国内の武器の使用と同じ条件でありますから、非常に制約があると。そういうことから、新しい法律、制度を作らなければいけないということで、この海賊対処法案を準備したというのが政府の立場であります。
 四月三十日から警護の活動を行っておって、なるほど言われるように、二千隻のうちの二五%ぐらいしか守っていないではないかということも言われますけれども、この二か月半にいやしくも日本の関係船舶が海賊に襲われて被害を被ったということはなくなったわけでありますし、また、日本の関係船舶だけでなくて、法律上理解できる関係では他国籍の船等も守ってあげております。
 こういう成果によって、少なくともこれまで日本の関係船舶の安全を守ってきたという実績があると思いますけれども、これをそれぞれの皆様はどのように評価しておられますでしょうか。
○参考人(デズモンド・ジョン・マロイ君)(通訳) おっしゃるとおり、この数か月、海賊行為の度合いは大幅に減少しております。その際には、部隊が増えております。ソマリアにおいて、並びに国連のソマリア政務事務所におきまして、元々は悪天が原因であると考えております。沿岸地域の悪天により海賊行為ができなかったのであり、部隊の管理よりは悪天だと考えられております。
○参考人(森本敏君) 先生の御指摘のように、四月の末に海警行動で派遣されて以来、現地において海上自衛隊が行っている実績というのは大変良いものであり、限られた、かつ厳しい条件の中で大変効率的に部隊が指揮され、また必要以上の成果が上がっていると思います。
 しかしながら、いろいろな先生御指摘の制約要因があって、恐らく現地では大変厳しい状況下で指揮官が苦労して活動していると思いますので、一日も早くこの新しい法律を通して、必要な訓練を行った部隊を現地に派遣して現在の部隊と交代をさせることが必要なのではないかというふうに考えます。
○参考人(山田吉彦君) 二五%というのは少ないかという御質問で、私は多いのではないかと考えております。
 といいますのは、海賊に襲われる船というのは、まず十五ノット以上のスピードで走行できる船はなかなか襲われない。そして、舷の高さ、海面から甲板までの高さが十メートル以上あるものは襲われないということで、逆に守るべき船舶というのが対象が絞られてまいります。
 そういう観点から考えましても、今現在、可能な範囲で最大限効率よく船舶を守っているということが言えようかと思います。
○参考人(高林敏之君) 二五%ですか、その現象というのをどう評価するかというその評価は控えますけれども、いずれにしても、かなり多くのケースが結局のところ続いているという状況には変わりはないであろうというふうに評価します。
 また、衆議院での船主協会長、船長協会長などの方の参考人陳述というのも拝見をしましたけれども、例えば自動車とかLNGとか一般雑貨などの運ぶ船は高速船であるから特別の措置を講じることは必要ないという御証言でありましたし、鋼材やケミカルなどを運ぶ船は最初から当該海域を航行を回避するというような対応をその船主協会長の会社の場合であればやっていらっしゃるというような話でありました。
 こういうふうに、自主的対策が可能であるという状況があるのであれば、それがどれだけ自衛隊派遣の成果によるかというのはもう少しこれはデータ的にも慎重に見極める必要があるでしょうし、こういう自主的対策が可能であるのならば、逆に本件法案を成立させないと国民生活や経済活動に多大な影響を及ぼすという理由がどうも私には理解しかねるというところがございます。
 私は、喜望峰ルートやパナマ運河ルートを使い、当面ですね、そしてむしろAUの和平イニシアチブを再建していく側面支援をやること、そのことが急がば回れの道であろうと考えております。こうするとコストが上がるという意見もありますが、しかし、実際には衆議院の参考人陳述でもどれだけコストが増えるのかという具体的なデータは全く示されておらぬわけであります。危険海域は避ける、それは一つの方策であろうと私は思っております。
○木村仁君 この海上警備行動、そして次に行われるであろう海賊対処活動というのは、国連海洋法条約及び累次の国連決議の趣旨に沿うものであると私どもは考えておりますし、また日本国の憲法にも趣旨に沿うものであると思っております。さらに、その性質上、ソマリアの主権を侵害することは全くないと私どもは思っておりますが、この点についてマロイ参考人はどのようにお考えでしょうか。
○参考人(デズモンド・ジョン・マロイ君)(通訳) ソマリアの主権について、先ほど申しましたように、ソマリアの主権は作り物です。存在しておりません。TFG、暫定連邦政府は幾つかの通り、モガディシュのところ、大通り以外は権限を持っておりません。ソマリランドはTFGの管轄権を拒否しております。プントランドは検討している段階です。最近、選挙があり、プントランドでは引き続き連邦関係を希望しております。
 主権については問題が存在します。いかにして国際的なレベルで対応するべきか、私には分かりません。しかし、個人的な観点から、また私の経験からは、主権が存在しているというときには自らを守ることができる場合です。暫定政府TFGは、自国あるいは自らの主権を守ることができる能力を持っておりません。今必要とされているのは、より広範な広いコーディネートされた国際的なアプローチです。申しましたように、それに対応するためには国際警察活動が必要であり、まずは活動に対する資金源をたたく必要があります。
 さらに、ソマリア一般の人たちの気持ち、格言です。沿岸諸国の心とマインドを勝ち取らなければなりません。大きな部隊を広範な公海に出すのではなく、一般の人の心を奪うことです。
○木村仁君 私が申し上げる主権という意味が、恐らく理解が違うんだろうと思いますからそれ以上のことは申しませんが、このソマリアという、国になっているのか国になっていないのか、日本は認めておりませんけれども、そういう国の利害を直接侵害するものではないと私どもは思っておりますが、森本参考人、どういうふうにお考えでしょうか。
○参考人(森本敏君) 先生御指摘のように、日本を含む各国が現在ソマリアで行っている活動は、国際法から見ても合法的であり、国連安保理決議の趣旨に従ったものであり、かつ、私はソマリアの主権を侵害してはいないと思います。
 むしろ、ソマリアの国民ができるだけ早く自らの意思を表明をして確立された行政府をつくり、自ら統治をし、統治された政府が自らの手で領海内における海賊を自ら取り締まるという活動がまずあってしかるべきであり、先ほどから各参考人の御指摘にあったように、我々は非合法な活動を外からこれを是正するためにいろいろな措置をとっているわけですが、ソマリア自身も、ソマリアそのものが自らの国民の意思を表明をして政府をできるだけ早くつくり、自らの治安を自分の手で解決するために、アフリカの組織、アフリカ統一機構などが、できるだけ早くアフリカの政府が樹立をされ、そして自らの主権を自らの手で行使できるように外から支援をし援助してやるという手だてが必要なのではないかと、このように考えます。
 いずれにせよ、現在、国際社会はソマリアの主権を侵害はしていないという点については先生の御指摘のとおりであると思います。
○木村仁君 新法ができますと政府は恐らく三十日の猶予を持ってこれを海賊対処行動に切り替えていくと思いますが、それと同時に、世界各国の船舶を警護しなければいけない立場になります。そのことは国際貢献としていいことであると思いますけれども、キャパシティーの面でどうだろうかと。今だけでも相当厳しい勤務を強いられている海上自衛隊員が、更に難しい仕事をしなければならなくなるのではないかというふうに考えられます。そのためにP3C二機を派遣しており、かつジブチに協定でもって基地を確保しているところでありますけれども、山田参考人、その辺りの展望について御意見をお聞かせいただきたいと思います。
○参考人(山田吉彦君) 今回の法律、あくまでも公海上、公の海での海賊の取締りということで、日本は海洋国家であります。日本だけでなく公の海すべての、世界の共通の財産である公海を守るということに海洋国家である日本が責務を果たす必要というのはあろうかと思います。
 ただ、確かに現状、海上自衛隊勢力ではすべてをカバーすることはかなり厳しいとは思いますが、周辺にいます他国、あるいは他の勢力との情報交換等の連携、そしてまた、先ほども申し上げましたように、航空機により早い段階で海賊船舶を特定し、発見し、情報連携により海賊に襲われない体制をつくるということで、少ない戦力、戦力といいますか、少ない勢力をカバーし切れるのではないかと考えております。
○木村仁君 指摘されておりますように、東アジア地域協力枠組み、これは日本の海上保安庁がリーダーシップをかなり取って、そして日本も資金的にも支援しながらつくり上げた沿岸諸国の組織であって、このために海賊活動が非常に急激に減ったということが言えると思います。恐らくソマリア・アデンにおいても、究極的にはそのような体制をつくっていくことが必要であり、ソマリア自身の統治体制がまだできないとしても、周辺の地域の、確かにシンガポールやあの地域の諸国よりはレベルは低いかもしれませんけれども、ReCAAPのようなものをつくっていくのが日本の仕事であろうと思います。
 これについてまだほとんど、努力は始まっておりますけれども実が上がっていないと思いますけれども、山田参考人にその点の展望についてお伺いしたいと思います。
○参考人(山田吉彦君) マラッカ海峡の海賊も実は九五年ぐらいからどんどん増え始め、一九九八、九九年と日本関係船が襲われたことで直接日本が支援をするようになってまいりました。ですが、八年掛かって九年目にようやくほぼ制圧のめどが付いてくると、本当に少ない発生件数で済むようになってきたと。
 人材育成という面では多少時間が掛かります。今以上に、マラッカ海峡以上にソマリアは掛かるかもしれませんが、それは将来のことを考えましたら非常に財産になります。日本人だけではなく欧米の方々も含め世界が協力し沿岸部の人々の教育に当たる、そして公海、公の海の安全を世界が協力し守っていく、それにおきまして日本のこれまでやってきました経験というのが生きてくるんだと考えております。
○木村仁君 そのような枠組みができていく過程においては、やはり自衛隊よりは海上保安庁がいろいろな技術指導をしながら進めていき、かつ最終的には海上保安庁自身のキャパシティーも充実されてあのような地域でも海上保安庁が活動することが好ましいと私は考えております。
 私自身はバングラデシュに消防のヘリコプターを派遣した記憶がありますが、そのときには他の、全世界から集まっている軍隊と非常によく協力をして、成果を上げたというふうに理解をいたしておりますので、そういう方向が望ましいのかなと私は思っておりますけれども、御所見をお伺いします。山田参考人がよろしいかと。
○参考人(山田吉彦君) 海上警備に対する人材育成という面では、やはり海上保安庁の今まで培ってきた経験というのは有効に機能するであろうと考えます。
 海洋基本法を作りまして、総合海洋政策本部をつくりまして、今は総合的に日本の力でどれだけのことができるのか、海上保安庁がやれる、能力を持っている部分は最大限、海上保安庁の能力を生かし、そしてより能力を高めていく、そこまで足りない部分は、あるいは違う力を持っている自衛隊の能力をまた遺憾なく発揮して日本の総合力として公海、公の海を守っていけたら望ましいのではないかと思います。
○木村仁君 日本はソマリアの国家としての存立の基盤を確立し、地域と秩序を回復するというか、創出するために日本なりの支援をしてきているところであります。国境管理能力の向上を図るために、国際移住機構、IOMを経由して百万ドル、また治安維持強化として国連開発計画、UNDP経由で四百万ドル、ソマリアに対しても過去二年間で六千七百万ドルの支援を実施いたしておりますし、それから、ソマリア治安機構、アフリカ連合ソマリア・ミッション、AMISOM支援に関するブリュッセル会議にも参加をいたしました。そして、二十一年度予算では、海事機構を通じて十四億円、ソマリアに対し二十二億円を計上したところであります。また、国際海事機構、IMOソマリア周辺海賊対策地域会合にも参加させていただいて、韓国で行われたハイレベル会合にも参加をいたしております。
 このような日本なりの努力について、高林参考人に御質問いたしますが、こういうことは全く評価されないものでありましょうか。それとも、こういう努力を続けていって、将来はソマリアに有益な貢献ができるのではないかと考えますが、いかがでしょうか。
○参考人(高林敏之君) ソマリア支援のこれまでの日本政府の努力そのものをもちろんこれは私は否定するものではありません。そういうことの取組の必要性は当然認めるところであります。
 ただし、例えば、今度平成二十一年度の補正予算において、ソマリア海賊対策費として実際にどれだけの金額が計上されているかというのをいただいている資料で見たところでは、百八十二億三千八百万円ですか、そのようになっておるところであります。それでは、この二年間、それは今年度の補正予算ですが、先ほどのソマリアへの支援ということでありますけれども、答弁で常に出てきているのは、過去二年間で総額六千七百万ドルの対ソマリア人道及び治安向上への支援ということであります、二年間で六千七百万ドルです。ということになれば、この金額は、およそ六十七億ぐらいだと思いますが、今年度の補正予算だけでのソマリア海賊対策費に比べても三分の一程度の額でしかない。私は、これは非常に不足ではないかと思っています。
 しかも、これらの支援の中には、例えば食糧支援であるとか難民、国内避難民に対する支援というのがすべて含まれている状態です。これはもちろん大事な支援でありますが、しかし、食糧支援や難民支援というのは、あくまでも重要ではあるけれども起こっている事態に対する対症療法であって、ソマリアそのものの立て直しに対する支援ではないわけですよね。その意味では、実質的なソマリアそのものに対する立て直し支援というのはもっと少ない状況になる。
 しかも、警察支援、国境管理支援といいましても、残念ながらTFGというのがまだ十分な機能を果たしていない状態ですね。どれだけのそれが有効性を持つのかということは疑問視されると思うところがあります。
 むしろ、ですから、AMISOMに対する財政支援をもっと強化すべきであるというのが私の考えです。
○木村仁君 最後に、マロイ参考人にお尋ねいたしますが、三百万ドルを超える海の資源が略奪された、あるいは違法な投棄が行われたというようなことが言われます。それは事実でありましょうけれども、それは諸外国の船がソマリア海の領海まで侵入していってやった犯罪なんでしょうか。それをちょっと確かめておきたいと思います。
○参考人(デズモンド・ジョン・マロイ君)(通訳) 私が伺った情報では、外国船舶でソマリアの領海を侵入していて、三百万ドル辺りの漁業資源を略奪していると私は情報を受けております。
○木村仁君 その数字には日本の漁船が行った行為も含まれておりますか。
○参考人(デズモンド・ジョン・マロイ君)(通訳) その数字の中は総額です。すべての略奪されている漁業資源です。ソマリアの領海から捕られているものであり、日本による不法漁業も含まれております。
○木村仁君 終わります。
    ─────────────
○委員長(榛葉賀津也君) この際、委員の異動について御報告いたします。
 本日、岸信夫君が委員を辞任され、その補欠として西田昌司君が選任されました。
    ─────────────
○浜田昌良君 公明党の浜田昌良でございます。
 本日は、四人の参考人の皆様、貴重な御意見を賜りまして、ありがとうございました。
 私、最初にマロイ参考人と高林参考人に御質問したいと思いますが、私の意見としては、やはり海賊対策、対処というのはやるべきであると。しかし、それだけではなくて、やはり中長期対策、沿岸国の海上警備能力の向上であれ、さらにはソマリアの国づくりというのは重要と思っております。
 その観点から三点ほどお聞きしたいと思いますが、今も同僚の木村議員からもお話ございましたいわゆる漁業資源が不法に乱獲をされた、また産業廃棄物の投棄という問題もあったという話でございますけれども、これらをどうやって防いでいくのかという話なんですが、面白い、興味深い表現がありましたのは、実は高林参考人の資料では、いかなるライセンスも得ずに操業すると、こう書いてあるんですが、一方では、マロイ参考人の資料では、不法投棄や漁業権に関する許諾は国際資本と地元の軍閥たちの間の取決めで行われる、相当な金がやり取りされるにもかかわらずこれらの利益は地元コミュニティーには全く還元されないということが書かれておりました。
 そういう意味では、全くライセンスをしていないわけじゃなくて、何らかはしているんだけれども、している対象が国でないがゆえにその利益がうまく行き渡っていない、またその許諾自体の条件が不十分であるということが起きているんじゃないかと思うんですね。
 こういう状態をじゃいかにこれは防げるのかという問題で、それはやはり国自身ができ上がってこないとできない問題なのか。例えば、産業廃棄物であればロンドン・ダンピング条約なんという条約もあるわけですね、国際取決めが。そういうものを適用することによって防げるのか、その点についてまず第一点、お聞きしたいと思います。
 二点目には、先ほど高林参考人からもございましたように、ソマリアの歴史については非常に同情に値するといいますか、非常に我々がお聞きしても悲惨な歴史があるわけでありますが、だからといっても、じゃそれでは海賊という行為は明らかに国際法上の違反行為でありますね。人類の敵として海賊というのは処罰されなければならない。逆に、処罰されないがゆえにそういうものによってお金をもうけようという、そういう若者が出てくるかもしれない。いわゆる不処罰の蔓延という問題ですね、インピューニティーの蔓延と。
 こういう問題の観点からも、私は、中長期対策をするにしても、海賊対策としてやはり海賊は取り締まるということが国際的には取り組むべきじゃないかと思っていますが、この点についての御意見を聞きたいというのが二点目でございます。
 三点目は、それでは、そういうことを含めまして国連としては何をすべきなのかと。確かに、今までのソマリアへの介入につきましては国連は失敗をしてきたのかもしれませんが、過去は過去としながらも、これからのソマリアの将来に向かって国連としての役割。
 これらの三点につきまして、それぞれマロイ参考人また高林参考人の順番でお答えをいただきたいと思います。
○参考人(デズモンド・ジョン・マロイ君)(通訳) それでは、質問の一番と三番について私の方からまとめて申し上げたいんですけれども、不法漁業と産業廃棄物の不法投棄、どう対処したらいいかということなんですけれども、既に大規模の国際部隊がソマリアの海域に展開しているんですけれども、それでも不法漁業ないし不法投棄を阻止できないでおりますので、実際、警戒措置をこの国際部隊が行うということが一案だと思います。
 それからまた、漁業、不法漁業ですけれども、これは盗みの行為なんですけれども、この漁業資源のマーケットがどこでの漁獲なのかということを掌握するべきです。GPS、私、東京都内で歩いていても分かるので、漁船に関してもGPSを使えばどこで漁業をしているかというのが分かると思います。
 ですから、そういった漁船について管理して、アイルランドの海域でも同じような問題がありますので、漁業資源の保護をしなければいけないということがありますので、大規模な国際対策部隊がせっかく展開しておりますので、責任を負うことができればと思います。そうすれば漁業資源並びに不法投棄の問題を阻止することができますし、また地元の住民にとっても国際社会が支援しようとしている気持ちが伝わると思いますし、ソマリアの国民に訴えることもできると思います。
 それからまた、二番目の質問に次に掛かりたいと思いますけれども、国連の役割ですけれども、海洋法ということで非常に複雑でありますし、そういった支援を調整することは難しいと思うんですけれども、海賊に対する国連の決議案というのは非常にがっかりいたしました。クアラルンプールの国際会議そしてコンタクトグループの会合につきましても失望させられました。それは、根本的な原因で私が既に言及したものに対処しようとしなかったからです。その意味で、国連はまさに根本的な原因に、国際的な警戒そしてインターポールを通じて対処し、海賊の資金源を根絶やしするべきだと思います。
 ありがとうございました。
○参考人(高林敏之君) まず第一点でありますけれども、いかなるライセンスもないというのは、これはUNEPの報告書の表現を取ったものでありまして、逆に国連安保理に出されている報告書の中では、偽のライセンスの取得などのために軍閥や腐敗した閣僚に金を払うことによって、それが内戦状況を持続させているという、そういう指摘が含まれております。それはいろいろなパターンがあるんだと思います。
 私は、資源乱獲、産廃投棄こそが、やっぱりこれは最も根本的に対策すべき問題でありまして、もちろんその国際的枠組みということは重要なのでありますが、まず何よりもそれぞれの国が、日本自身も含めて、こういった問題に対処するための実態調査と国内法整備をそれこそ行うべきであろうと、それも厳しいものを行う必要があるだろうと。海賊対策というのなら、まず自分に対して厳しいという姿勢を示さない限り世界に対しては説得力はないというふうに私は考えます。実際にまた、暫定連邦政府の閣僚の方でも国際的な実態調査の要請というのはやっておるわけでありまして、それにやはり率先してこたえようという努力を日本の側がしてこそ、環境立国と言うにふさわしいだけのものを整えられるのではないかと思います。
 二番目に、海賊は国際法違反である、それ自体はおっしゃるとおりであろうと思いますけれども、しかし、これは繰り返しになりますけれども、海賊という行為になぜ人々が走らなければならないのか、なぜそれが軍閥などに利用されるのかというその根本原因を断ち切らない限りは、幾ら国際法違反だからといって海賊対処をやったところで、それはまさに森本参考人なども言われておりましたように長期化するばかりであると。そのために年間百八十億円ですか、コストを掛け続けるつもりなのでありましょうか、この財政難の折にです。
 三番目に、国連は何をすべきなのかということです。もちろん国連の役割は重要だと思います。ただし、いわゆる平和執行活動でソマリアに非常に大きな損害を国連のPKOがというか、PKFですね、与えてしまった事態というのは、終わったのは一九九五年です。まだ十四年ほどしかたっていない状況です。その記憶というのは非常にまだ根深いものがあります。その中でやはり国連ができることというのは、今UNEPやWFPなどが地場で行っているような人道支援のレベルを超えることはなかなか困難であろうかなと思います。ですからこそ、アフリカの地域イニシアチブがより力を発揮できるように国連の場で支えていこう、個別のレベルでも支えていこうという努力の方を日本は優先すべきであろうというのが私の考えです。
○浜田昌良君 ありがとうございました。
 今、海賊の処罰だけでは長期化するという御意見も高林参考人からいただいたわけでございますけれども、幾つかのドキュメントも見まして、ソマリアの子供たちが海賊をするんだと言っている、将来はですね。そういうのを見ながら、中長期的な対策、国づくりはしながらも、やはり海賊という行為は良くないんだということはしっかりと教えていく必要がある、それは是非御理解を賜りたいと思います。
 続きまして、マロイ参考人にお聞きしたいんですが、この資料の中で、この中で提言として、国連及び西側諸国による主要な加害者たちの刑事訴追とか、氏族等により不法に蓄積された海外資産の没収というのがあるわけですが、これをもしやろうとした場合の国際法上の根拠ですね、非常にこれ難しいんじゃないかと思うんですが、こういう国連等で活動されていますマロイさんから見られて、どういう国際法上の根拠を置くことによってこの二項目が実現できるとお考えなのか、お聞きしたいと思います。
○参考人(デズモンド・ジョン・マロイ君)(通訳) 私は国際法の分野に関しては従事しておりませんでした。国際法の専門家ではないんですけれども、確かに国連のアプローチといたしましては、国際法の観点でアプローチする必要があります。それに加えて、不法に蓄積された資産の没収に当たらなければいけないと思います。実際、犯人引渡法ということが、実際、軍閥が二重国籍を持っていて、資産を蓄えている国に関して適用できるかもしれません。最近、ガボン大統領の口座がフランスで凍結されました、この二、三か月でですね。このような形のことが協調的に二国間ベースでできると思うんです、国際法以外に。それがその法律の専門家の間で検討してもらえればと思います。
○浜田昌良君 ありがとうございます。
 それでは続きまして、山田参考人にお聞きしたいと思いますが、マラッカ海峡における海賊取締りの今までの経緯を御説明いただきまして、周辺各国のいわゆる沿岸警備の能力向上というのが重要だとのお話を賜りました。そういう意味では、今回のこのいわゆるアデン湾における周辺各国の能力向上の見通し、つまり、現在はなかなか能力が十分じゃないので日本からいわゆる海自を派遣するというのは必須になっておるわけですが、できれば周辺国の能力が上がってきてそうしなくても済むような事態が望ましいわけだと思っておりますけれども、それはどの程度の時間掛かるものなのかと。そういう見通しについてお考えをお持ちであればお聞きしたいのが一点でございます。
 もう一点は、現在、海賊といいますとこのマラッカ海峡の問題とソマリアが例に挙がるわけでございますけれども、世界全体を見渡していただいて、もし、日本が今後かかわるであろう海賊対策というのはこの二か所以外にもこういうところが出てきそうだというようなことが、御知見がございましたらお答えいただきたいと思います。
○参考人(山田吉彦君) アデン湾における海賊対策の周辺国の能力向上なんですが、確かに道は険しいものであろうかと思います。
 一つ、五年、十年というポイントを設けて、今までマラッカ海峡沿岸国に行ってきたと同様な教育訓練というのを施していく。そうすることによって今以上に確かに、確実に数年先には日本の負担は軽くなってくる、日本だけじゃなく各国の負担は軽くなってくると考えられます。
 もう一点、このアデン湾、マラッカ海峡以外、実は今年に入りましてから南シナ海における海賊事案というのが五件ほど続けて起こっております。その他、日本ではほとんど報道されておりませんが、アフリカ西岸での事件、ナイジェリアを中心としました事件というのが多く起こっております。
 日本が今後対策を講じなければいけないのは、一点、この南シナ海、そして残虐な事件が時折起こりますフィリピン海域、この二点というのは注視していかなければいけないと考えております。
○浜田昌良君 今、南シナ海とフィリピン海域での海賊というのが出始めているという話がございましたが、その対応というのは、いわゆる海上自衛隊の対応が必要なものか、海上保安庁で対応ができるものなのか、どのようにお考えでしょうか。
○参考人(山田吉彦君) 南シナ海におきましてもフィリピンにおきましても、これは沿岸国の能力がある程度整ってまいりました。日本、海上自衛隊よりも海上保安庁が出ることによりまして沿岸国が今までの流れから考えますとスムーズに機能すると。日本が少し手を貸すだけで自助努力で、フィリピンにしても、南シナ海に、マレーシアあるいはベトナム、インドネシアにしても動いてくることが考えられます。
○浜田昌良君 それでは、森本参考人、また山田参考人に共通してお聞きしたいと思いますが、一つは、この法案につきまして民主党から修正案が出ております。その内容に関してでありますが、いわゆる今回の、国会との関係で、この法案につきましては、国会への報告ですね、内閣総理大臣が計画を承認する際には報告をすると、こうなっているわけですが、それを、国会の事前承認ということが必要かどうかと。
 御存じのように、この活動自体は、いわゆる普遍的管轄権がある海賊という問題に対して、我が国の個別立法によって日本の管轄権を設定し、その犯罪の取締りという形態を取っている、自衛隊が行くにしましても。そういうものでありますが、それについて、国会の関与についてどのようにお考えかというのが一点であります。
 もう一点は、これも修正案にありますが、いわゆる海賊対処本部というものをつくる必要があるかどうかであります。確かにPKOの場合につきましては、これは内閣府にPKO本部をつくりまして、関係各省の参加を求めた上で派遣をしたりするという体制を取ったわけでありますが、この海賊につきましては、その必要性等につきましてどのようなお考えかにつきまして、森本参考人、山田参考人の順番でお答えいただきたいと思います。
○参考人(森本敏君) 民主党の方からどのような正式な修正案が出ていたのかということを必ずしもつまびらかにしませんが、この法案を作成するプロセスの中で自民党と民主党がいろいろな党と党の協議が行われ、その協議のプロセスの中で先生御指摘の二点を含め幾つかの問題が民主党から提起されたと承知しております。
 第一点目の国会承認については、やはりこの法律に基づいて我が国が行う活動というのは、基本的に国会の事前の承認は要らないんだろうと私は考えます。もちろん、事後に国会で、どのような活動が行われたのかということを立法府たる国会できちっと報告が行われることは必要であるというふうに思いますが、このような活動、既に海警行動で部隊が出ていっているこの活動に新しい法的根拠を与えるというこの法律に事前の承認を一つ一つ求めるということは、事態の性格にかんがみ不必要なのではないかと考えます。
 一方、この本部というのは、一つ一つ海外で行う活動に本部をつくるというのは、本当にそれがシビリアンコントロールを効率的なものにするかどうかという観点から考えざるを得ないんで、いかなるこの種の活動でも、途中の指揮の結節が多ければ多いほど現地における部隊の指揮権というのはなかなか難しい状態にあるわけで、今回は、冒頭の陳述で申し上げたように、統合幕僚監部が直接作戦統制をして、しかも自衛艦隊司令部と直接宇宙通信で通信系をつくって、現地で行っている活動が言わば自衛艦隊司令部に手に取るように分かるように初めから艦艇の中に宇宙通信の指揮通信機能を整備をして部隊を出したわけで、内閣その他に本部を別途つくり、例えば現地に出ている要員を本部の職員という形に兼務の任務を発令するというようなことをやると、いろいろな地域でいろいろな活動をやるたびにある種の本部ができるというのは、非常に運用上指揮の結節が多くなって私は効率的ではないんだろうと思います。
 もし、そういうことをやるというのであれば、本来、領域の外に自衛隊を出す場合、いかなる部隊であっても、一般法という形で基本的な基準の法を作り、その一般法に基づいて、PKOであれPKO以外の活動であれ、内閣が本部をつくってそこが統幕をコントロール下に置いて指揮するというのであればよろしいんだろうと思います。
 確かにこの一連の活動は法的にも、特に武器使用等で難しい局面があるわけですが、どこの部隊も、どこの国の軍隊もそうですが、軍隊を出すときには法的な手続をきちっとして、出した部隊については現地の指揮官にその指揮権を任せるというのが軍事活動としての言わば国際通念でありますので、できるだけそれを守っていただくのが必要なのではないかという観点から、この二つについて所見を申し上げた次第です。
 以上でございます。
○参考人(山田吉彦君) 国会の関与に関しまして、私も原則といたしまして森本参考人の御意見に賛同しております。これ警察法でございます。速やかに対処するためにも速やかな行動が基本かと思います。国会への事後報告という形で国会の方でチェックをしていただき、行動が適切であるかということを検証していただきたいと考えます。
 また、海賊対処本部に関しまして、海賊対策はある種、海の上の行動、プロの世界の流れでございます。対処本部を作成するよりも、海上保安庁及び海上自衛隊の中に海賊対策の、もう既に海上保安庁はございますが、専門機関を設け海賊対策を常に念頭に置いた行動を取っていれば、特に海賊対処本部を設ける必要はないかと思います。
○浜田昌良君 終わります。
○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 今日は、四人の参考人の方々、貴重な御意見をいただきましてありがとうございます。
 それぞれの陳述の大きな柱に、この問題を海からのみではなくて陸から見る、ソマリア人の側から見るということの重要性の御指摘がありました。
 まず、この問題について高林参考人にお聞きするんですが、今のソマリアは破綻国家というふうに呼ばれたりもするわけですが、そもそもソマリアには、氏族による分裂国家であって自ら国家を統治する能力がないという議論に対して、ちゃんと統一民主的国家になる力があるということも陳述で述べられたわけでありますが、今のソマリアが、ソマリランド、プントランド、そしてそれ以外の地域というふうに分かれて、ソマリランドなどは比較的行政組織なども整っているように見えるわけですね。その辺の比較もいただきながら、改めて、ソマリアがきちっとしたやっぱり国家となり得る力を持っているという辺りを御説明いただきたいと思います。
○参考人(高林敏之君) 先ほども陳述で指摘しましたように、ソマリアには、独立当初九年間ですけれども、議会制民主主義をきちんと運営した実績というのはあるわけです。確かに一定程度の氏族的な論理が持ち込まれた派閥抗争などありますけれども、しかし、大統領、議会、首相の政権交代というものもちゃんと行われた実績がある。しかも、そのころは氏族単位のソマリアではなく、元の植民地の枠組みも超えて民族として統一しようという動きでもって結集力さえあったわけであります。そのことを考えれば、何が分解をもたらしたのかというその要因を分析して、それをフォローしていくことが必要であろうと。
 やはりこれは、氏族単位の動きに解体していったのは、やはりバーレ政権の時代に非常に自分の氏族を偏重する政治を行い、しかもそれに対する政権交代のメカニズムがなかったということが非常に大きいわけであります。となれば、民主主義のメカニズムをいかにこのソマリアに立て直していくかということが優先的努力であり、そのことが私がAUなどの取組の支援ということで再三申し上げていることの意味であります。
 三つの地域に関しましては、旧イギリス領であったソマリランドが非常に安定した統治を行っております。世界どこも承認をしておりませんけれども、当初数年間内紛があったことを除けば、選挙もきちんと行われ、非常に安定した民主的統治を行っているということで広く評価されており、AUの中でもそろそろ実態として認知する必要があるという議論も起こり始めているわけです。
 プントランドは、より軍閥的な基盤にのっとっている権威主義的な体制でありますので、これを一概に評価することはもちろんできません。
 ただし、ソマリアには、今のソマリランドも含めて実際にこれだけの民主的統治の実績があるということになれば、環境を整えていく、民主的統治を行える環境を整えていくための国際的支援ということが行われていけば、そしてまた特定の勢力、かつてのバーレ政権などと同様に肩入れしていくようなことが行われなければ、あるいはテロ対策の名の下に特定の軍閥に武器が注ぎ込まれたようなことなどもありましたが、そういう形での外部の干渉を行われなければ、自力で統治を回復していく芽というのは十分にあるというのが私の考えです。
○井上哲士君 次に、マロイ参考人にお聞きしますが、今あったように、ソマリアがそもそもきちっと国家としてやっていく力があるのに、これが今日のような事態になっていることに対して、国際的な介入に対する反発というようなことも高林参考人の陳述でもありました。マロイ参考人の陳述の中でも、一連の国際的な様々な介入がイスラム穏健派と原理主義の間に越え難い溝をつくったということも言われておるわけですね。
 そこで、参考人はPKOとかにもかかわってこられたわけですけれども、このソマリアに対するこういう国連及び国際的な様々な関与、特に国連の行った関与についてどのように評価され、どこに問題があったと今お考えでしょうか。
○参考人(デズモンド・ジョン・マロイ君)(通訳) 私の見解というのは一般的な国連の見解と随分食い違っておりますので、特別代表がソマリアにおいてPKOが必要だと言っていることに必ずしも賛同しません。
 ソマリアは中央政府の実績を持ってはおりますけれども、中央政府がソマリアにとっては自然な状態なのかどうかということは疑問視しております。ソマリアの近代史における最も安定した時代というのはイスラム法廷が統治していた時代でありまして、エチオピアが侵略して、国連の支持の下でイスラム法廷が崩壊したことによって法の支配というのが崩壊してしまったんです。これがソマリアの中南部において国民が非常に拒絶しているところです。だからこそ、TFGに対する支持もないんです。
 国連が果たしてきた役割というのは非常に難しかったと思います。国連の代表がモガディシュに、昨年の七月に暗殺されました。私がプントランドを訪問していたときには救済されなければならなかったんですね。ギャロウェという主要都市の中心街だったんです。ですから、状況は非常に不穏です。国連のソマリアにおける足跡、プントランド中南部において非常に良くないということで、ナイロビまでほとんど国連は撤退しています。国連本部はナイロビにあるわけです。国連のUNDPについても同じです。ハルゲイサにおいて唯一UNDP、国連開発計画の事務所があったんですけれども、二週間ほど前、私が出た後に攻撃されて二人死亡者が出ました。ですから、非常に困難なんです。国連の足跡は軽いものでなければいけないと思います。
 私の提言というのは、国連の足跡をもっと軽いものにしなければいけない、コミュニティーベースのものにしなければいけない、そして余り目に見えないような形でコミュニティーグループに対して支援するという形でなければいけないと思います。直接、国連に勤務している人たちというのは、ソマリアの中で殺害されたりしています。パチュイック、これは女性団体を通じて活動しているんですけれども、本当に目に見えないような形で、側面支援というような形でやる必要があると思うんです。
 ソマリアに対する国連の法の支配、安定化などに関してはこういう形でやるべきだと思っておりますし、これが私が国連の提言に対して行った提言ですし、このDDR、武装解除、動員解除、社会復帰に関してもそのように言っています。
 国連がソマリアに果たす役割は非常に困難で、今後も困難であり続けると思います。アル・シャハーブというのが非常に強力でありまして、モガディシュから出る難民の数というのは増えておりますし、圧力も高まっております。ですから、国連が近い将来何ができるかということは静観しなければいけませんけれども、非常に困難だということは間違いありません。ですから、政権移行は夢にしかすぎないかもしれません。ですから、ソマリアの中でナチュラルオーダーというもの、自然の秩序というものを育てるべきであり、部隊を派遣するという形ではないと思います。
○井上哲士君 そこで、今のTFGが様々なそうした国際的な関与などを背景にする中で必ずしもまだ全体としての統治の能力を持っていないという御指摘もあったわけでありますが、そういう国際的なやはり関与が改善されればこのTFGが力を持っていくというような展望についてどうお考えか、そのためにはどういうことが必要か。これは、マロイ参考人それから高林参考人、それぞれにお聞きしたいと思います。
○参考人(デズモンド・ジョン・マロイ君)(通訳) 最近の選挙、新しい大統領の当選にもかかわらず、そしてジブチ・プロセスということで前向きな言葉が聞こえてきますけれども、現場のモガディシュ等サウスセントラルにおける受け止め方というのは、TFGのプレゼンスは限られているということで、ジブチ・プロセスは成功しないということなんです。ですから、再考する必要があると思います。現実を真っ向から見る必要があります。
 リアリティーチェックという題を私のプレゼンテーションには付けたんですけれども、国際社会のアプローチ、TFGを支援しようということは、現実とは逆の動きであり、非生産的である、逆効果だと思っております。
○参考人(高林敏之君) 現状からもう率直に言えば、TFGというのが実効支配を持ち切れていないということは、もうこれははっきりしていることであります。また同時に、そのTFGというのがやはりソマリア国民の中でなかなか人気というのが上がってこないのは、私が説明した事情もありますが、同時にこの十数年、やはりソマリアを混乱させてきた多くの軍閥たちが実際にその中に包含されている状況にあるということがあると思います。そのことがTFGのイメージをやはりよろしくないものにしているという実情があると考えております。
 しかし、ならば、現在AUやIGADなどの地域的な取組でこうやってTFGというのがつくられているわけですが、それに取って代わるような枠組みを、じゃ、つくり得るのかどうかということは疑問だと思います。現実に、例えば長老層であるとか、現在であれば軍閥であるとか、そして現在の大統領はかつて法廷同盟の議長であった穏健派のイスラミストでありますが、そういうふうな勢力を幅広く結集できる取組というのは現在のところアフリカのイニシアチブしかなく、そしてその結果生み出されたのがTFGなわけであります。とすれば、やはり問題は、そういう言わば大同団結的な形でつくられたTFGが何ゆえ力を持ち得ないのかということなんですね。検討が大事であると思います。
 端的に結論を言えば、やはり現在戦っている急進派イスラミスト勢力とTFGとの間のもう一度対話をアフリカ主導でやっていった上で、更に幅の広い連合政府をつくるということでなくしては解決はないと私は思います。先ほども指摘がありましたように、法廷同盟が統治していた時代というのが一番秩序が立っていましたし、その時期には海賊も激減していた。その現実は受け止めて、我々の感覚でイスラム原理主義というのはよろしくないというようなことでやっていたら、かえって問題を混乱させると考えております。
○井上哲士君 高林参考人は、まさにこういうソマリアがきちっとなるようなことへの支援こそ優先されるべきだと、こういうお話がありました。
 そこで、森本参考人と山田参考人にお聞きするんですが、一方、日本は自衛隊の派遣ということをしてまいりましたし、国際的にもそれぞれが海軍を派遣するということが行われてきたわけですが、今年になってむしろ各国が海軍派遣して以降、海賊の事件が増えているし、しかも広域化していると、こういう事態があります。ゴキブリ対策という話もありましたが、単に移動するだけじゃなくて非常に増えているという、逆行しているという事態があるわけですが、このことの評価と原因についてそれぞれどうお考えでしょうか。
○参考人(森本敏君) 各国が対応をしているにもかかわらず事案が増えているというのは、裏返して言うと、各国の対応が非常に厳しくなって、それがどのようなものであるのかということが、例えば、そういう言い方は余り表現が良くないですが、海賊をしてお金もうけをしてやろうといって考えている人々に正しくインフォームされ、それが抑止になっているというのであればそれは良いと思いますが、そのような正しい情報が彼らにことごとく、きちっと各国がやっている対応と、どれぐらいの人が拘束をされ、どのような裁判を受け、どのようなことになっているのかということが正しく彼らに伝わっているかどうかというのは私は分からないんです。分からないということは、各国がやっていることが抑止の機能を果たしているかどうかということが立証できない限り、案件がどんどん増えているということとの相関関係を一概に一対一対応で論じることは少し無理があるなと思うんです。
 一方、何となく、やる方については分かっていると思って出ていくと追っかけられるということなので、海域がどんどんと広がっている、というよりかアフリカ東海岸の南の方にどんどん広がっているということですから、何となく外側からじわじわと包囲網が広がっているということは考えられるのではないかと思うんです。
 一方、しかしながら、それは公海上の活動なので、自分たちの陸地まで入ってこないということですから、やらなければ被害を受けない、拘束されることはないということなので、それが本当に今申し上げたように抑止になっているかどうか分からず、かつ、周りに例えば人質を取って大変多額の身の代金を手に入れた人というものが目の前に起こると、リスクを負って、あちらからは取締りが出てきているけれども、しかしながらリスクを負って海賊をやろうという人が出てくるということは、この地域の人々の自然な感情として別にそう不思議ではないなと思うんです。
 だから、必ずしも外側からきちっと対応しているから抑止が効いていて案件が減っているはずなのに増えているのはいかなる意味かということを、今申し上げたように、原因と結果を論理的に論じることは少し難しいのではないか、もう少し長期的に見ないといけないんではないかと、このように思います。
○参考人(山田吉彦君) 件数自体確かに増えております。ですが、今、私手元に数字を持ってきてないんですが、成功率に関してはかなり、誘拐の成功率というのは非常に低くなってきております。確かに、警備が厳しくなった分、海域は延べ三千キロほど広がっておりますが、成功率という観点からいうと前年よりかなり低くなっております。
○井上哲士君 政府もソマリアのやっぱり陸の問題の解決が必要だということは繰り返しは言うわけですが、しかし現に起こっている、解決まで時間が掛かるのを待つわけにいかないと、こういう議論がされるわけです。
 高林参考人にお聞きしますが、先ほど急がば回れということも言われたわけでありますけれども、そういう解決まで待つというのは迂遠過ぎると、こういう議論についてどうお考えでしょうか。
○参考人(高林敏之君) そのような迂遠だという反論というのは必ず予想されることであろうと思います。
 しかしながら、繰り返しになりますが、ソマリアが再建されない限りはソマリア人が海賊その他の違法行為に走ること自体は止めようがないと思います。つまり、海賊対策ということで進んでいって、仮にそれができなくなったとすれば、今度は麻薬の密輸であったり、あの地域はカートという麻薬の原料などもあるわけですけれども、麻薬の密輸であるとか武器の密輸とか、そういうことに走るかもしれない。あるいは、生活の糧、追い込まれた、くそ、もう頭にきたというような感じで、かえってイスラム急進派のプロパガンダにあおられて、それこそテロ活動に走っていくなどということだって起こるかもしれない。
 政府の見解や参考人の方々の見解を聞いても、長期的に時間が掛かるということが前提になって話が進んでいるように思われますけれども、もう既に海賊対策そのものが長期の時間が掛かるということが言われているにもかかわらず、ソマリア紛争解決の取組を待っているのは迂遠というのは、これは論理的に私は整合性がないと思っております。
 それだけ長期的、繰り返しになりますが、今年度補正予算の海賊対策費だけでも百八十億円以上を消費するというのに、それを長期的に毎年毎年、もっと減るのかもしれませんが、掛けているような余裕は日本の財政にあるのかなというふうに一有権者としては疑問に思っているわけでして、それよりは、アフリカ連合などの取組を支援して、できるだけ早くソマリアの民主的秩序を回復する努力をする方がよりコストは低いのではないかと思います。そして、実際に、現在アフリカ連合などの支援に掛けられているコストというのは、先ほども指摘しましたが、今年度の補正予算の百八十億円より随分少ないなというのが私の率直な印象でございます。
○井上哲士君 海賊被害というのはこれまでもいろいろあったわけですが、このソマリア沖・アデン湾で急増したということもありますが、国連の安保理の対応強化も急増ということにとどまらない非常に動きがあったなと私は見ているんですが、その辺はどうお考えでしょうか。高林参考人、お願いします。
○参考人(高林敏之君) 済みません、もう一度お願いします、安保理の。
○井上哲士君 国連安保理が、ずっといろんな海賊問題が世界中にあったにもかかわらず、ここ一年、半年ぐらい急速に様々な決議を上げている、この辺の背景をどうお考えかということです。
○参考人(高林敏之君) これについてはなかなか判断は難しいところはあると思いますが、ただ、一つ指摘したいのは、ソマリアの海賊問題というのは必ずしも近年突然起こってきたわけではないということは政府側の答弁資料からも分かると思います。端的に言えば、ソマリアが無政府状態に陥ったときから既に存在はし始めておった話なわけであります。
 しかし、やはりこの問題が急激に議論されてきたのは、私が配っている年表式の資料の中でも出てくることですけれども、エチオピアの侵攻がかなり厳しい状況になってきたことによって穏健派イスラミストとの和平を進めなければならないというジブチ和平プロセスというのが進められていきます。そのジブチ和平プロセスが成就してジブチ和平協定が結ばれようとしていたその二〇〇八年の前半になって急激にこの議論が起こってきているということが安保理においても国内においても指摘されると思います。
 なぜ、それまで議論が十分に起こらなかったのか。
 実は、ソマリア問題を追ってきている専門家などの中では、エチオピアを使ったソマリアにおけるテロとの戦いの失敗から目をそらすためにソマリアの海賊という、かつてであればアイディード将軍というのが敵であったわけですが、新たな敵というのを想定してそちらへ目を向けようとしているものだという指摘がなされているという状況があることは踏まえておいていいと思います。ただ、それははっきりと確たるものとして断言できるわけではありません。ただし、そういう時期の符合があることは指摘しておきたいと思います。
○井上哲士君 今回、やっぱりソマリアへの対応というのは、日本のアフリカ政策といいましょうか、対応の問題点も浮き彫りにしていると思うんですが、残り一分半程度ありますが、アフリカ研究者としてその辺で感じていらっしゃること、最後述べていただいて、高林参考人、お願いします。
○参考人(高林敏之君) ソマリア問題への対応。
○井上哲士君 アフリカ全体。
○参考人(高林敏之君) アフリカ全体ですか。
 アフリカ全体ということでありますけれども、アフリカ連合にアフリカ統一機構が転換したのが二〇〇二年ですから、まだそれから七年ほどしかたっていない状態であります。
 アフリカ連合というのは何しろ最貧国が非常に多く集まっているということもあって、資金なども不足しておりますから、やはりどうしても限界が多い。ダールフールやソマリアでの活動でも、現状では十分な力を発揮できていないということは指摘されております。しかしながら、そういう限界の中にあっても、この数年、アフリカ連合というのは、地味ではありますが、着実に実績を上げているということは私は指摘できると思います。
 例えば、アフリカ諸国で以前であれば多くのクーデターが起こっていたわけですが、こういうクーデターを抑止するために、クーデターを起こした政府に対しては、資格を停止して、制裁を掛けるというようなことを例えば実行しております。この結果、客観的に見てもアフリカのクーデターの件数が減っているばかりでなく、起こった場合でも早期の民政移管が図られるという状況が起こってきている現状がございます。それは、現在の例えばギニアであるとかモーリタニアのケースであってもそうであります。
 あるいは、選挙監視などが行われていく中で、こういうスーダンとかソマリアのような問題になっている国は別として、かなりの国で複数政党制民主主義と選挙による政権交代というのが定着をしてきました。これもAUが民主主義を進めるということをスローガンとして掲げてきた実績というのは、もちろん国際的な支援もありますが、かなり大きいと思っています。
 私がAUの取組、地域の取組というのを何よりも重視すべきであると申し上げているのは、このようなAUがアフリカ各地で積み重ねてきた実績を端的に評価し、それをきちんとソマリアでも実践されることがアフリカ自身の自立にとっても望ましいと考えるからです。もしこれを、ソマリアの沖合でソマリア人を攻撃することによってAUの取組自体が信用性を失ってしまったら、それは、現在AUが進めている地域の民主化や安保の取組そのものにも影響をもたらしかねないものであるということを私としては申し上げたいと思います。
 以上です。
○井上哲士君 ありがとうございました。
○山内徳信君 私は、四名の方にそれぞれ一点ずつお伺いしたいと思います。
 最初に、マロイ参考人のお仕事に私は大変興味を持って読ませていただいております。大学で平和構築・紛争予防講座を担当していらっしゃると、まさに今必要なやはり参考人だろうと、こういうふうに思いました。しかも、レジュメを読ませていただきますと、本当に生き生きとした、民衆の立場に立ったレジュメに私は感動しております。
 そこで、お伺いいたしますのは、ソマリア海賊問題を構造的、立体的に説明され、説得力がありました。平和憲法のある日本政府として今一番力を入れてほしいのは何でございますか、一点お伺いいたします。
○参考人(デズモンド・ジョン・マロイ君)(通訳) ありがとうございます。
 もちろん、おっしゃってくださいましたように、私は、学生、そして紛争と平和を教える教師の目から書いております。であるからこそ、日本の平和憲法を深く尊重しております。第九条を大変尊重しております。
 日本はこれまで劇的に進展をすることができておりまして、仮に憲法九条で制約をされていると思われる分野においても日本は前進してきました。日本の自衛隊が二十五万、そして年間予算は四千二百万を超えております。平和憲法にもかかわらず自衛隊がそのような規模で存在しております。私は、平和憲法は英語で勉強しておりますので、日本語で読むよりは柔軟な解釈になるのかもしれません。しかし、自衛隊の規模は小さくありません。日本政府は、引き続き今なさっていることを続けるべきだと思います。
 実は最近、私論文を書いておりまして、第九条を維持しながら、それでも日本の政府及び日本の自衛隊が国際平和維持活動に参加ができる方法を書いております。アイルランド出身でして、中立国を承知しております。アイルランドは憲法の中で中立性を掲げております。しかし、それにもかかわらずアイルランドは国際的な名声を勝ち取っております。国防軍については九千名、そして予算はわずかです。およそ国防費の五〇%未満が国連活動若しくは訓練、演習に使われております。
 アイルランドは、我々が言うところのトリプルロック、三つの壁を設けることによりまして、海外の平和維持活動のルールを定めた上で三つの壁を乗り越えなければなりません。第一は、国連安全保障理事会が承認をした活動でなければならない。第二のルールですけれども、閣議の承認が必要であり、第三、下院の承認が必要である、このような話題が出ていたことを承知しております。これをトリプルロック、三つのかぎあるいは三つの制約と呼んでおります。二か国間のアプローチあるいは超党派のアプローチを取り、海外に部隊派遣することができるわけです。普遍的な承認を得る方策です。アイルランド国民は誇りに思っております。初めて一九六二年にコンゴに出かけて以来、大変誇りに思っております。
 また、場合によっては犠牲を受け止めなければなりません、海外の活動については。一九六二年から六三年に関しましては、コンゴで人命を失いました。それ以降も人命を失っております。当然のことながら、日本は大変リスク回避度が高い国民でおられます。時には、専門兵士にとりまして十分に理解がなく、時には命を失う必要がある、国際平和のために血を流す必要があるということは専門兵士にとっては侮辱かもしれません。
 脱線いたしました。
 日本政府は、これからも更に名声を高める方策があると思います。引き続きソフトパワー、すなわち、各国、全世界に対して影響力を発揮し、アジアに影響力を発揮し、九条を維持することは両立可能だと思っております。
○山内徳信君 ありがとうございました。
 次に、森本参考人にお伺いいたします。
 昔の中国や日本の歴史書を読みますと、問題解決をして生き残るためにすごい戦略、戦術を駆使していることが分かります。要するに、知恵を絞っておるということであります。
 今回、ソマリア海賊対処として陸海空の自衛隊を派遣をしております。そして、統合拠点を築きまして、そこから海賊に対応していこうと。これは、戦後、日本の自衛隊の海外出動の中で極めて大きな動きだろうと思います。したがいまして、こういう自衛隊の派遣は、現在の平和憲法の下で慎重でなければいけないと思っております。目の前の実力部隊を安易に決定をしておるという印象を国民は受けております。海の海賊の取締りはやはり海上保安庁が基本でなければいけない。距離も遠い、海上保安庁の装備、機能では対応できないから、最初、防衛大臣も慎重であったわけですが、いつの間にか与党は海上自衛隊を出そうと、こういうふうな動きになってきたわけであります。
 そこで、参考人にお伺いいたしますことは、憲法の精神を生かしながら、国民的知恵を生かした対応策があると、私などはそういうことを考えるんです。したがいまして、目の前に実力部隊があるからといってそれを安易に派遣しようという政治の流れに対して、私たちはやはり警戒をしなければいけない。これが日本の自衛隊が海外への出動、派遣の大きな曲がり角になってしまったと言われますと、やはり後世から今回の決定あるいは海賊新法はこれは大きな問題として指摘をされるわけであります。
 そこで、参考人の憲法的知恵をお伺いしておきたいと思います。簡潔でよろしゅうございます。
○参考人(森本敏君) 今の憲法の基本的な精神は、やっぱり前文の中にあるように、国際社会の中で本当に信頼できる国に日本がきちっとなるということであり、しかし信頼を受けるに足るにはそれなりのコストとリスクを払うという必要があると思います。コストもリスクも払わずに人から尊敬を受けるはずがありませんので。
 日本は、日本の国のためだけのことを考えるいわゆる一国平和主義ではなく、地域の安定、グローバルな安定のためにその範囲の中で、つまりその範囲とは憲法の趣旨の範囲の中で、決して血を流すことなく、武力を行使することなく必要な国際協力、地域協力を進める、そのために国民の税金を使って長きにわたって訓練をしてきた自衛隊に活躍してもらう、これは国家として国民として当然やるべきことであるというふうに、かように考えております。
 これが日本の自衛隊の今後の活動に重要な曲がり角であるとは私は思いません。曲がり角であるともしすれば、先ほど先生御指摘のように、初めて地位協定を結んで統合部隊を出すということになったことは、今後の自衛隊の海外活動の非常に重要な貢献の基礎というものがここでできたのだなと思います。個人的なことを申し上げると、私が防衛大の学生のときには想像だにしていなかったことだというふうに、かように考えております。
 以上でございます。
○山内徳信君 ありがとうございました。
 次に、山田参考人にお伺いいたします。
 参考人の著書を読ませていただいております。その本の中に、彼らの貧しさは、海賊や密輸、密航などの海上犯罪が頻発する原因であると、こういうふうに述べていらっしゃいます。参考人のレジュメを読み、また御意見を伺っておりますと、自衛隊による対処策を強調されておられます。ソマリアなどの人間の安全保障とか国の治安とかあるいは生活の再建への国際的な取組が必要だと思いますが、その観点のいわゆる人間の安全保障からの御意見を少し賜っておきたいと思います。
○参考人(山田吉彦君) まず一点、今回、私、レジュメ等を御用意させていただきましたのは、あくまでも海賊に対する法制度、新しい公海の法制度に関しまして準備をしてまいりました。
 当然、私、マラッカ海峡、島を回ってまいりました。そこで生きている人々、本当に漁師の延長線上、ある日きっかけで海賊になってしまうという姿を見てまいりました。その中で、当然のことながらソマリアにおいても人々の生活を守るということ、新しい生活を始めるということも重要でございます。しかし、今現在、公海上で船は襲われ続けてきているわけです。今年既に百三十一件ソマリア沖で襲われて、二十九件が誘拐されるという事態があります。まずは、公海上の少なくとも世界の人々の生活を維持している積荷を運ぶ船を守るということも一つ重要な任務であると思います。決してソマリアの人々の生活がこのままでいいということではございません。ですが、世界的に見て、今、海の安全を守るということは急務であるということは言えようかと思います。
○山内徳信君 ありがとうございました。
 最後に、高林参考人に二、三お伺いいたします。
 日本には世界に誇る平和憲法があります。外国勢力の抑圧に翻弄されたソマリアなど、周辺海域の海賊行為者を根本的に立ち直らせる方策と自衛隊派遣以外の方策をお伺いしたいわけですが、この自衛隊派遣以外というのは、自衛隊を派遣したことによる国の予算と、少し遠回りかもしらないが喜望峰を迂回するとか、あるいはマラッカ海峡の海賊問題には幾多の教訓を日本は残してきたわけであります。
 したがいまして、そういういろんな教訓を生かしながら、あるいは知恵を生かしていかなければ、今、ソマリアの海賊は、国益だ、今、日本の商船がとかいう、そういうことを強調しながら、そして既存の法律の範囲で自衛隊を送って、自衛隊を送って後、法律を作るというのも、これまた珍しくておかしな、本末転倒といえば本末転倒であって、やはり向こうが大変だから法律は後回しと。そして、出した法律案によると、国会の審議も何も要らない、後で報告すればいいと。こういうふうに国会を軽視をしながら、知恵も戦略も戦術も絞らない、目の前の自衛隊を派遣すれば国際社会の一員としてと、こういうふうなことではやはり国の将来は危ういと、そういうふうな思いをしております。
 そういうことで、高林参考人に先ほど申し上げた二点を最後にお伺いして、私の質問は終わります。
○参考人(高林敏之君) 根本的に海賊行為の行為者を立ち直らせるためには何をすべきかと。まず、立ち直らせるという以前に、行為者がこうした行為に走らなくても済む、つまり安心して食っていける、安心して働ける、安心して生活できる、そういう状況を再建することが第一である。
 だれも海賊とか犯罪をやりたいと思ってやっているということは、少なくとも動員をされている一般の人々の中にはないと思います。やらざるを得ないから動員されてしまっているというところがあります。これはソマリアの現在の国家崩壊の中で、例えばもう政府も公共機関も機能せず、例えば公務員に雇うということすら難しいという状況にある中では、これはある意味、犯罪というふうに糾弾することは簡単ですが、事実犯罪ではありますが、じゃどうしたらいいのというのがソマリアの海賊に駆り立てられた人たちの一般的な思いであろうと私は思っています。
 ですから、まず立ち直らせるためには、まず彼らが安心して食って生きていける状況を立て直させること。端的に言えば、ソマリアの平和を回復すること、それが最も近い道であることは言うまでもないと思います。また同時に、その安定を前提とした上でですが、当然教育活動というものが必要であります。例えば、他の国、内戦を克服した国においても、例えば少年兵として動員された人々への再教育というような活動などは盛んに行われておりますけれども、こういったものというのも必要になってくるでしょう。
 こうしたことにきちんと資金を投下し、支援していくこと、さらには、ソマリアの和平に向けて、日本はアフリカ開発会議などでもアフリカの平和の定着のために支援するとうたっているわけですから、その支援のためにソマリア紛争の自ら政治的な仲介の方に乗り出していくこと、これこそが国際社会の信頼を得るために日本がリスクを取ること、汗をかくことではないかというふうに思っております。自衛隊派遣以外の方策ということでいえば、私にはそういう点しかやはり思い浮かびません。
 海上保安庁を派遣すればいいというふうな議論は私は取りません。なぜなら、この法の問題は、そういう追い詰められたソマリ人たちを日本の刑罰で罰する法律であるからです。そのことが私は根本的な問題だと思っています。
 ですから、急がば回れというふうに申し上げましたが、まずソマリア問題を解決することに全力を日本は傾注すること、そのための国際的努力を結集すること、それまでは他のルートを通るコストを甘受することは私は必要だと思います。で、他のルートを通ることはコストが掛かるという具体的な根拠は、以前の参考人陳述でも、衆議院での、全く示されておりません。本当にコストが掛かるのか、そのことはやはり申し上げておきたいと思います。
 以上です。
○委員長(榛葉賀津也君) 山内徳信君、よろしいですか。
○山内徳信君 終わります。
○委員長(榛葉賀津也君) 参考人に対する質疑はこの程度にとどめます。
 この際、一言お礼を申し上げます。
 参考人の先生方には、長時間にわたりまして大変有意義な御意見を賜り誠にありがとうございました。本委員会を代表して厚くお礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)
 本日はこれにて散会いたします。
   午後零時五十一分散会