第177回国会 法務委員会 第15号
平成二十三年六月九日(木曜日)
   午前十時開会
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  出席者は左のとおり。
    委員長         浜田 昌良君
    理 事
                中村 哲治君
                前川 清成君
                金子原二郎君
                桜内 文城君
    委 員
                有田 芳生君
                江田 五月君
                小川 敏夫君
                今野  東君
                田城  郁君
                那谷屋正義君
                丸山 和也君
                溝手 顕正君
                森 まさこ君
                山崎 正昭君
                木庭健太郎君
                井上 哲士君
   国務大臣
       法務大臣     江田 五月君
   副大臣
       法務副大臣    小川 敏夫君
   大臣政務官
       法務大臣政務官  黒岩 宇洋君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        田村 公伸君
   政府参考人
       法務大臣官房司
       法法制部長    後藤  博君
       法務省刑事局長  西川 克行君
       外務大臣官房審
       議官       武藤 義哉君
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  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○情報処理の高度化等に対処するための刑法等の
 一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付
 )
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○委員長(浜田昌良君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に法務大臣官房司法法制部長後藤博君、法務省刑事局長西川克行君及び外務大臣官房審議官武藤義哉君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(浜田昌良君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
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○委員長(浜田昌良君) 情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本案の趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○田城郁君 民主党・新緑風会の田城郁です。よろしくお願いをいたします。
 情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律案、いわゆるサイバー法について御質問させていただきます。
 今回の法改正は、国連のサイバー犯罪防止条約の批准に向けた準備でもありますが、憲法が保障する表現の自由、集会、結社の自由を侵害することがあってはなりません。また、通信の秘密を守り、プライバシーと人権が守られなければなりません。
 この法案で国民が不安に感じることは、この法律が捜査当局によって濫用されてしまうのではないかという危惧です。私の事務所にもパソコンというか電子メールに多くの市民の方々から危惧する意見が寄せられております。一例を紹介いたします。
 プロバイダーは通信履歴の保全が義務付けられ、警察や検察は令状なく、誰がどのようにサイトにアクセスしたかやメールの送受信の記録、メールの内容をも自由に監視できることを可能にする悪法です、冤罪や不法逮捕も可能になる非常に危険なものです、治安維持法です、言論規制法です、こんな悪法が通ったら日本が民主主義国家とは言えなくなります。このようなメールがそれこそ連日寄せられております。これが全て正しいと私は言いませんが、このような不安が国民の間に広がっているという事実があります。
 冤罪が多発し、捜査機関の信用性が著しく損なわれている現在、デジタル情報は目に見えないだけに、警察や検察が作り上げたストーリーに基づいた捜査が行われ犯人にされてしまうのではないかという強い危惧が国民の間に起きるのも当然です。
 例えば、ある団体が組織的犯罪を行っているのではないかと疑われるような事態が生じた場合、捜査当局はあらゆる手段を使って疑いに足り得る証拠を集めようとします。ストーリーをあらかじめ幾つか想定した上で証拠を集めることがこの間明らかになった捜査手法ですけれども、しかしながら、証拠が見付からないままに初期に作られたストーリーに拘泥すると証拠の改ざんや強制的な自白によって冤罪が生み出される、そういう危惧もございます。
 組織犯罪が疑われるケースの捜査過程では、冤罪の発生を回避するためにどういった原則が適用されるのでしょうか。表現の自由、集会、結社の自由を守る、あるいは個人の通信を守るという立場、さらに冤罪を起こさないという立場から明確なお答えを大臣にお願いいたします。
○国務大臣(江田五月君) 委員の御指摘になるような心配のメールは私のところにも随分やってまいります。もちろん、その都度お答えをメールで出すのもなかなか大変で出しておりませんが、多くのメールをいただいて、これに私も必要な限度ではございますが目を通している、そのことはこの場で申し上げておきたいと思います。
 今委員もおっしゃいましたが、その指摘が全て正しいわけではないと。確かに、令状なく様々なそうしたネット上の通信を監視することができてしまうという、そうでもないんで、保全の要請はありますが、これはそこから先へ進んでいこうとすると、やはりそれは令状が要ると。こういうことはきっちり歯止めを付けているわけですが、しかし多くの国民の中にそうしたことが十分周知されずに心配を与えているということは大変私どもも注意しなきゃならぬし、国民がそれだけ心配になっている、すなわち国民の皆さんが表現の自由や内心の自由あるいは結社の自由など、通信の秘密、こうしたものを大変大事に思っていると、このことは貴重なことだと思っております。
 その上で、しかし、現在コンピューターネットワークというのがもうお互いの市民社会においてもあるいは経済活動においても、国内だけでなくて国際的にもこれが一つの社会的基盤、インフラストラクチャーになっているというのも事実で、これに対する信頼も非常に大事だということで、この両面をどう調整しながら国家の刑罰権を適正に、抑止的に行使をしていくかというのが重要なところで、ただいま御指摘の表現の自由その他の人権保障、これは憲法の大原則でございますから、そうしたことに抵触することのないよう、手続的にも十分な整備を図っていると思っておりますし、また裁判官による適正手続の保障の仕組みもつくっていると思いますが、それでも今委員御指摘のように、捜査機関が必ずしも常に適正に捜査機関の権限を行使しない場合があるという、これもまた遺憾ながら事実の点でもありますし、そうした捜査当局、これは法務省が所管をしているものも国家公安委員会が所管しているものもありますが、そうした現場に十分に、表現の自由など憲法上の原則は守っていかなきゃいけないと、このことを周知をして間違いのないようにしていきたいと思っております。
○田城郁君 ありがとうございました。十分運用面での監視というものは意識してやっていかなくてはいけないというふうに思っております。
 記録媒体の差押えに関して御質問いたします。
 他人の情報を盗んだり相手に危害を加えることを目的としたサイバー犯罪が許し難い行為であることは言うまでもありません。しかし、そうした犯罪者のためにインターネット環境を提供するプロバイダーが保有する記録媒体が差し押さえられた場合、業務に大きな支障を来すのは当然です。
 このプロバイダーにも様々な業務形態があります。大手通信会社が経営する巨大なプロバイダーもあれば、小さな会社やコミュニティーの対象としてパソコン一台で運用しているような例もあります。大手の場合は代替装置を稼働させることができますから、そういう有利さもありますけれども、小さなプロバイダーの記録媒体が差し押さえられた場合には、事業全体を停止せざるを得ない、そういう状況にも追い込まれます。捜査対象人物のIPアドレスによって相手を特定することさえできれば、デジタル時代ですから、証拠物は記録媒体からの複写で十分事足りる例が多いと思われます。
 善意の第三者であるプロバイダーやネットワーク提供者の業務を阻害せずに捜査を行うということ、指導監視を是非行っていただきたいと思いますが、大臣の御所見をお願いいたします。
○国務大臣(江田五月君) 現行法でいえば、この捜査の方法あるいは証拠収集の方法ですが、電磁的記録、つまりデータ、これをどうやって収集するかといいますと、電磁的記録が入っている記録媒体それ自体、これを差し押さえる、これは現行法にもあるわけでありますが、しかし今委員おっしゃるとおり、記録媒体が非常に大型のサーバーである場合もある、あるいは小さなプロバイダーがいて、サーバーをどんと押さえられてしまうともう業務ができないというような場合もある、いろんなケースがございまして、私も特に詳しいわけじゃありませんけれどもその程度のことはこれは想像が付くわけで、記録媒体の差押えを、なるべく記録媒体自体を差し押さえることは回避をしたいというそういう事情があると、このことはよく認識をしなければいけないと思っております。
 一方、今度、差押えをする側からも、サーバー自体を差し押さえるという大掛かりなことまでやる必要まではないんだと、そうではなくて、サーバー自体ではなくても特定の電磁的記録、これを取得することができれば差押えの目的は達成できると、こういう場合もあるわけでありまして、そういう記録媒体自体の差押えに代えてその記録媒体中にある電磁的記録そのものを取得をするということを可能にする、これができるならばそれはそれで合理的なことだと考えられます。
 そこで、今回、差し押さえるべき物が電磁的記録に係る記録媒体であるときには、その差押えに代えて、記録媒体に記録された電磁的記録を他の記録媒体に複写などした上で、他の記録媒体、つまりその電磁的記録が複写された記録媒体を差押えをして電磁的記録を証拠として収集すると、そういうことができるようにいたしました。
 もちろん、強制処分に当たって、受ける者に不必要な負担を生じさせないよう、これを捜査機関が十分配慮すべきであることは刑事訴訟法の下で当然のことでありますので、そうしたような方法で捜査目的を達成し得ると判断されるときには刑事訴訟法の百十条の二の処分を行うことになりますので、今回の改正によってプロバイダーに過大な負担を課さないことに資する、こういうことは言えるものと思っております。
○田城郁君 ありがとうございます。
 フリーソフトウエアのバグの問題に関して質問いたします。
 今回のサイバー法に関して国民の多くが心配しているのは、フリーソフトのバグによってパソコンが機能しなくなった場合に、フリーソフトを作成した者が罰せられるのではないかというおそれです。
 フリーソフトは国民があまねく自由に利用しているものであって、バグによっては自分のパソコンに不具合が起きても自己責任であることを承知の上で利用しているというものも現実あります。しかし、先般の衆議院法務委員会で大臣が、フリーソフトに他人のパソコンに重大な影響を及ぼすバグがあることが発見され、作成者はそのことを知らずに流布し続けた場合、未必の故意によって罰せられる可能性があるというふうに答弁をいたしたと聞いております。
 これは冤罪を生む温床になるのではないかと危惧をいたしますが、私の聞き間違いというか、伝え聞くところに間違いがあったのかもしれませんが、そこをひとつお願いいたしたいのと、フリーソフトというものは善意の作成者が他人の便宜を考えて無償で配布しているものであって、有料ソフトの何十倍もの数が出回っており、中には有料ソフトにも負けないほどの機能で人気を博しているものもございます。しかし、その配布は不特定多数の人々に及んでいることから、作成者自身が自作ソフトに相手の機器に重大な影響を及ぼすバグがあることを知るのも困難であると。したがって、本人が無自覚な中で未必の故意に問われる危険性が十分に想定をされます。そのために、フリーソフトを作る人々、あるいは有料ソフトを作ることをなりわいとしている人も含めて、今回の法案について大きな不安を訴えております。
 そこで、伺います。
 苦労して作ったソフトに相手の機器に重大な影響を及ぼすバグがあった場合、それが未必の故意と認定されて罰則の対象になる事例はどういった場合があるのか。ソフト制作者が安心して働けるような、そのことを具体的に明示していただければと思います。
 よろしくお願いいたします。
○国務大臣(江田五月君) 御指摘の私の答弁というのはございました。
 これは、衆議院の委員会の質疑の際に、バグの関係について質問がありまして、質問もいろんな前提付きだったんですが、時間の関係もありまして、ただ一言あり得るということを答えたら、2ちゃんねるなどで大変な心配が寄せられて、私も、ああ、こんなに多くの皆さんに心配を掛けてしまって本当にこれは申し訳なかったと思い、その後衆議院の段階でも更に詳しいことは申し上げたので、まあ御疑問は氷解しているんじゃないかなと思いたいところなんですが、改めて申し上げますと、今委員が御指摘のような御懸念、これはないとはっきり申し上げておきますので、どうぞ御安心いただきたいと思います。
 今委員が御指摘のように、フリーソフトウエアの世界というものが確かにあって、これはもちろん、無料ですからいろんなソフトウエアがその中にあるわけです。そのフリーのソフトウエアの世界というのをよりいいものにしようといろんな人がそこへ入って様々な努力をする。たまたまそこにいろんなバグというんですか、bug、虫ですか、こういうように表現される不具合の部分があって、それがいろんな不具合を起こす。時にはそれは、私も自分のホームページがフリーズしてしまうなんてこともそれはありますが、ある意味そういう許された危険といいますか、そんなものを承知の上でフリーソフトウエアの世界というものがだんだん開発され、よりいいものになっていっているわけで、そういうことをみんなが努力することは貴重なことでこそあれ、これに何らかの法的な規制を加えようなどという意図は毛頭ないし、そんなことはあってはいけないと思っております。
 バグというのは、確かにプログラムを作っていく過程で不可避的に発生するものですから、通常随伴するものが基本的に不正指令電磁的記録に当たることはないと、このことをまず申し上げておきますし、また作成罪、供用罪、共にこれ故意犯でございまして、故意という限りは未必の故意もそれはありますけれども、不用意にというようなものが未必の故意に当たるということはないので、未必の故意も故意の一定の類型ですので、普通にやっている分には故意にも欠けると。
 したがって、基本的にそうしたものは犯罪としては成立しないということでございまして、仮に、仮に、仮に、仮に、いろんな仮定を付けて、それでもなおこんな場合にも成立しないのかということになれば、例えば、プログラムのミスなどの偶発的な要因が重なって、そのまま実行すると使用者の知らないうちにハードディスク内のファイルを例えば全て消去してしまうようなプログラムが意図せずできてしまったと。まあそんなことはほぼ考えられぬと思いますが、そういうような希有な事態が仮に生じて、その場合に、そういうようなプログラムであるとの認識を欠いたままこれをインターネットの上に公開したと。
 そうすると、誰かがそのプログラムを見て、そしてこれはなかなか悪さをするぞという、そういうことが分かって、それを奇貨として、これをひとつはやらせて、はやらせてというか送ってみんなを困らせてやろうというような考えで、何か妙な、計画停電情報というような題名でも付けて、通常のワードの文書ファイルであるかのように装ってインターネット上に公開して、そして事情を知らぬ人をあえてだましてダウンロードさせて感染させて困らせてしまったと。
 仮にそんなような、もういろんな条件が重なって、不正な電磁的記録、要するにコンピューターウイルスをまき散らすようなことになってしまうことをあえて認識をしながら、それを認容して行ったというようなときには、まあそんなこともそれはあるかもしらぬなあというようなことでお答えをしたわけでありまして、こんな例外的な事情について一言で答えてしまった点は私の落ち度であったとおわびをしますが、もう一度言いますが、もうそういうことは基本的にはそれはあり得ないんだということをあえて申し上げておきますので、どうぞ国民の皆さんにも安心していただきたいと思います。
○田城郁君 江田法務大臣のようなお人が懸念はないと、安心していただきたいと言うこと、それは重く受け止めますが、しかし、江田大臣のような方ばかりがいれば安心なんですけれども、そうではない現実がある中で非常に不安は解消されないままではないかと私は思います。
 先日、今野委員から、サイバー社会基本法のようなものを制定してはどうかと、まずそういうものが先行されるべきではないかというような御提案もございましたが、その点について、大臣、どのようなお考えでしょうか。
○国務大臣(江田五月君) サイバー社会基本法についてということですが、その前に、私のような者ばかりというと、私も足らざる人間ですから決して十分と思っておりませんが、今ここは法案の審査をやっておりますし、私は提案者でございまして、提案者の責任者がそういう今のようなことを言っているわけですから、これは、法律の解釈についても運用についても私がそういうことを申し上げたということは、この法律の解釈、運用の指針として私は十分にこれはみんな尊重していただかなきゃならぬし、私としてもこれは全ての者に尊重させるべき責務を負っているものだと思っておりますので、そこはどうぞ皆さんもそういうことで心配なさる方々には是非解説をしていただきたいと思っております。
 その上で、サイバー社会基本法という、先日も御提案といいますか問題提起ございましたが、確かにサイバー空間というものが市民社会の空間あるいは経済社会の空間とまた違った形でいろんな機能を果たしているに至っているということは事実でございますが、しかし、これは全く別のサイバースペースが独立してあるんじゃなくて、やっぱりそこは経済社会にも市民社会にも相互に関連をしながら動いているわけであります。したがって、市民社会や経済社会の規律、これをちゃんと守っていく上にもサイバーというものに私ども一定の刑罰も含む規制を掛けていかなきゃいかぬと思っておりまして、どちらが先にという話になりますと、これは十分検討をしなきゃいけない。
 サイバー社会基本法というのを頭の中で一生懸命考えたいと思いますが、法務省だけで対応できるものでもございませんので、必要性も含め多角的な検討が必要なものであろうと思っております。
○田城郁君 ありがとうございます。
 質問を変えます。六月七日、布川事件の無罪判決に対して水戸地検は控訴断念を発表いたしました。杉山さん、そして桜井さんの無罪が確定をいたしました。お二人は四十三年ぶりに晴れて自由の身になりました。大変喜ばしいことだと思います。
 先日、杉山さん御夫妻にお会いをする機会がありました。杉山さんは次のようなことを訴えておりました。誰が見てもおかしいと分かるこの間の誤判に対し、裁判所はその非に一切言及していない、その点が不満です、昔の証拠でも無罪であると裁判長が言った、だとしたら、裁判所の判断ミスであり、謝罪するべきではないのかと憤慨しておりました。そして、こんな年になってしまった、あと何年あるか分からないが、残りの人生を精いっぱい楽しみたいとも話をしておりました。私は、無罪の喜びとともに、何とも言いようのないやるせなさ、憤りを覚えました。人生で一番輝くべき二十歳から六十四歳までを国によって殺人犯に仕立てられ、苦悶する日々を強いられたのです。
 私たち国会議員は、あるいは政府の皆さんは、この人たちにどうこたえていかなければならないのか、大臣、そして政府参考人の方にお聞きをいたします。特に、政府参考人の方は生きた言葉で、自分の言葉で答えていただきたいと思います。よろしくお願いします。
○国務大臣(江田五月君) 布川事件についての御指摘でございますが、私も全くの個人ということになればいろいろと申し上げたいことがないわけではありませんが、これは、やはり法務大臣としてということになりますと、個別の事件で個別の裁判所の判断でございますし、そこには検察の立場も弁護側の立場も裁判所の立場も、立場といいますかそれぞれの訴訟活動があり、それぞれの判断があるのでありまして、これについて法務大臣としての見解は差し控えさせていただきたいと思います。
 検察当局の方は法務省が所管をしているわけでございますが、検察当局もいろんな議論をしたと聞いておりますが、その上で再審無罪判決が確定したわけで、これを厳粛に受け止めているということは申し添えておきます。
○政府参考人(西川克行君) 個別事案ですが、あくまで一般論としてお答え申し上げますと、まず、犯罪を犯していない人を起訴し服役させるということはあってはならないというふうに考えております。
 したがって、検察当局においてはこれに対する防止策というのが最大の課題ということになるわけでございますけど、これはもちろん個々の捜査、公判に万全を尽くすという意味でございますけど、その中で特に留意すべきは、自白、供述等を偏重することなく、客観的な証拠の収集それからそれに対する分析、これを積み重ねていって、いわゆる罪を犯していない人に対して処罰をするようなことをできるだけ避けていくというのが第一点。
 それから第二点として、今法務大臣から検察改革ということで方針が示されており、私も検察当局もそれに取り組んでおります。これに全力を尽くしていきたいと、こういうふうに考えております。
○田城郁君 ありがとうございます。
 二度とこういうような冤罪が起こらないために、本当に私たちは努力をしていかなくてはいけないと思います。そういう意味で、努力とは具体的でなければならないと思っております。
 時間がありませんからまとめてお聞きいたしますが、この布川事件でも証拠の開示性というものが問題になっております。録音テープの十一か所のストップとか、あるいは毛髪を全然他人のものを二人の、桜井さんと杉山さんのものにしたとかですね、そういうようなこと。あるいは、足利事件でも証拠が、ないないと言ったものが最終的には出てきたとか、いろいろあるわけです。
 ですから証拠物を、いろいろな広範にわたるものですからある程度の限定的になると思いますが、重要なものについては、改ざんやあるいは隠蔽などが行われないような、証拠を第三者機関が預かると、そして必要によっては弁護士がアクセスし、そして弁護士自身が鑑定もできる、そのような第三者機関があればというふうに私は思います。その必要性について一点。
 それと、布川事件でいえば再審にこぎ着けるまで四十二年、足利事件で二十年掛かっているわけです。長過ぎます。私は、よりスムーズに再審にこぎ着けられるそういう、例えばイギリスのCCRCのようなもの、そういうものをイメージして日本にもつくるべきだというふうに考えますが、大臣の御所見をお願いいたします。
○国務大臣(江田五月君) 二点の御質問で、簡潔に答えなければならないと思います。
 証拠物の管理に関する第三者機関の設置、設立ということでございますが、これは現在検察庁においても法務大臣訓令、証拠品事務規程を定めて、証拠品の適切な保管、管理に努めておりまして、また開示についても平成十六年法改正によって大幅に拡充されているということもございます。そうしたことを踏まえながら、第三者機関をつくった場合に、例えばどの程度のものが必要になってくるかとか、捜査の迅速性、密行性にどういう影響が出てくるかとかというようなことを考えますと、これはやはり慎重な検討が必要なんだろうと、済みませんが思っております。
 それから、再審についてのイギリスのCCRCのようなものは考える必要があるんではないかということでございますが、イギリスではクリミナル・ケースィズ・レビュー・コミッションですか、これは、イギリスは陪審で、陪審に対する見直しというのは、それまで内務大臣だけが有していた確定有罪判決を再度控訴院に付託をして再審理を求める権限というものがあって、これは行政機関が控訴院に、コート・オブ・アピールに申し立てた、これを第三者機関に移したということでありまして、日本と訴訟構造が違いますので、やはりこれは、イギリスはイギリス、日本は日本ということにならざるを得ない。
 ただ、再審に大変な時間が掛かり、再審で確定判決の過ちを正すというのが人々に大変な困難を強いているというのはございまして、これは、裁判所が再審の適切な運営というものに意を用いていただけるものと思っております。
○田城郁君 ありがとうございます。質問を終わります。
○丸山和也君 自民党の丸山和也です。
 今日は、大臣並びに政府関係者の方に、非常にややテクニカルな要素もたくさん入っている改正案といいますか法律案が出まして、これについてお聞きしたいんですけれども、まず、いろんなところで大臣ももう既にお答えになっていて法案の趣旨とかあるんですけれども、まあ質問の最初ですから、改めてこの時期に今回の法律案の提案をなさったそこら辺の意義といいますか必要性といいますか、そこら辺についてお聞きしたいと思います。
○国務大臣(江田五月君) これは、これまでいろいろ話しているところですが、簡潔に言いますと、一つは、現代社会におけるコンピューターネットワーク、これが社会のインフラになっていて、しかし、これはウイルスによる攻撃というものに弱いことがあるから、これを何としても防いでコンピューターネットワークの社会的信頼を保持していかなきゃいけないということが一つです。
 それからもう一つは、このコンピューターネットワークというものが今国際的な広がりを持っていて、国際社会で共同してこの信頼を守っていかなきゃいけないということがありますが、その目的で作られましたサイバー犯罪条約、これが我が国は平成十三年に署名をしてもうかなり時間がたっているんで、これはやはりちゃんと批准をするための法整備を整えていかなきゃいけないということがもう一つあると。
 まあ、この二つのことから、今もうこの時期には作らなきゃいけないという判断に政府として至ったということで、さらに、現下の状況を考え、強制執行妨害事犯がなおいろいろありますので、この際、その二つ、サイバーの関係と強制執行の関係、これを今回提案をさせていただいたということでございます。
○丸山和也君 分かりました。
 それで、今サイバー犯罪条約のことが、既に平成十三年にですから、これは署名されたわけですか、それから随分時間がたっているという関連性をお述べになったんですが、もう一つの国際組織犯罪防止条約ですか、これの関係性は全く念頭に今回の法案提出とは、念頭にないということなのか、そこら辺についてあえて付言されなかったのか、御説明いただきたいと思います。
○国務大臣(江田五月君) 確かに委員おっしゃるとおり、もう一つ組織犯罪防止の条約がありまして、これはもう国会で承認をされている条約でございますが、私どもが政権を担当する以前に、もう委員よく御承知のとおりですが、この組織犯罪防止の関係も国内法手当てが必要だということで、いわゆる共謀罪というものを今提案をしている法案にもう一つ加えて提出を政府としてさせていただいたことがございます。国会でいろんな議論をいたしました。私も議論をし、その共謀罪の部分についてはこういう懸念があるということで大変反対をしたわけでございますが、この前の法案というものは結局廃案になったわけです。
 そこで、組織犯罪防止条約についての国内法の手当てはどのようなものが必要なのかと、これは関係省庁ともっと更に協議をしてこれから検討してまいらなければなりませんが、今回はその部分はちょっと脇へ置いて、今、冒頭申し上げたこのサイバー条約の関係のところを手当てをしようということで出しているわけでございまして、もう一つの条約というのがないわけじゃありません。しかし、今回はそれとは関係ないということです。
○丸山和也君 御説明は分かるんですが、もう一つの条約と言われましたこちらの方は、国内法の手当てという視点からも、既に政府の方から国会に提案され、随分審議も議論もなされた経過もあるわけですね。それの方は今回すっぽり抜けてしまってというか、外に置いていてということで、今回このサイバー関係の観点からの法案を出されているということにやや今までの経過も含め奇異な感じがするという、あるいはもうそういうのは必要ないという本心がそういうところでされているのか、あるいは非常に難しい問題だから先送りしておこうという、そういう発想から取り組まないで今回こういう法案になって出てきているのか、ここら辺の本当の意図といいますか、これは大臣個人もありますでしょうし民主党政権ということもあるんでしょうけれども、政府としてどういうそこら辺の立ち位置にあられるのか、やや非常に分かりにくいんですね。
 これは将来どうなるのかということも含めてお聞きしたいと思っていますので、よろしく。
○国務大臣(江田五月君) これは、国際組織犯罪防止条約批准のためには以前提出をされたような共謀罪の法整備が必要だという意見もあります。これは当然ある。しかし、それは、あの犯罪類型というのはちょっとこういう問題がいろいろあって、この条約自体は国会で承認をしたものですが、あの法整備はいかがなものかという意見もあるわけです。
 これは両方の意見があって、しかもこれは旧政権と今の政権と政権の違いということも関係しているわけでして、今にわかにこれについて結論を出すということはちょっと難しいということで、これは更に関係省庁ともよく協議をしていく。しかし、サイバーのことについてはもう待っていられない時期になってきたので、今回、サイバー条約の締結承認のために必要な法整備ということで、この部分は切り出してサイバー法案をお願いをしたということでありまして、組織犯罪の方は共謀罪と関係が今回の法案あるというような意見もありますが、そうじゃないんで、これは立法者の私が申し上げているので、そこは是非、この部分についてはもうしばらく検討を続けさせていただきたいということを申し上げておきます。
○丸山和也君 よくお言葉ですがという言葉を使うんですが、それは私好きじゃないんですけれども、質問させていただきたいのは、けんけんがくがく大変な議論が幅広いスパンの中で行われていることは私も概略知っているんですが、その意見の中には、いや、もうそもそも国内法の整備はできているんだという一部意見もあったように思うんですね。だから、新たに共謀罪、あの共謀罪、かつて出されたような共謀罪が問題というよりも、そもそも要らないんだという意見も一部にはあったと思うんですね。それと、もちろんあの共謀罪という意見からありまして、大臣がそのときどういう御答弁をなさったか私詳しく分かりませんけれども、あの共謀罪に対してはたしか断固反対という、断固という言葉も付いていたと思うんですね。それはまあ党としての意見だったかも分かりませんけれども、大臣としても、一政治家としてそれをおっしゃっていたと思うんですね。
 しかし、衆議院でのいろんなやり取りを若干見ていますと、非常に微妙な答弁はたくさん出るんですけれども、恐らく大臣の、私が見ておったところでは、あの共謀罪については今もやはり断固反対ですと、しかし、国内法の整備という意味で共謀罪と言うかどうかは別にして、まあ共謀罪としましょう、何らかの形でそういう共謀罪的なものを国内法的にも整備する必要性はあるんじゃないかという御見解のように思うんですが、あるいは間違っているかも分かりませんので、そういうことももう必ずしもそうでないと、もう予備罪とかいろんな刑法の規定もあるし、そういう対応ができているんだと、だから、あの条約を最終的に批准するについても国内法も必要でないとも考えられるということなのか。
 そこら辺の大まかなお考え、どのようなものか、お聞きできたらと思っています。
○国務大臣(江田五月君) 前の共謀罪を含む法案は、まあちょっと前のことになりますので私も全てを記憶しているわけじゃありませんし、また、当時の記録を十分見返しているわけじゃありませんが、衆議院段階で廃案ということになりました。参議院には来ていないので参議院で私がその点で質問に立ったことは多分ないと思いまして、まして当時は野党ですから答弁に立ったことも当然ございません。
 しかし、民主党という政党は当時存在はもちろんしておりまして、その民主党の党議を決定をいたしまして、その党議ではこの共謀罪に関するこういう疑問があるので反対ということを決めていたのは事実でございます。
 その当時に、あのときの共謀罪が、日本の法体系というのは、単に相談しただけではこれは可罰的な行為とはしないと、そうじゃなくてそれが何らかの形に現れる必要があるんだと、その何らかの形というのは何なんだろうかというような議論をいろいろしたことを覚えておりまして、まあそんなことを考えれば、あの条約が言っている共謀罪であるか参加罪であるかどちらかをつくりなさいという共謀罪が、あれではいけないけど何か要るんだという考えも一つあり得る。だけど、今委員おっしゃったように、いやいや、もう日本の法律はこれだけのものがちゃんとできているから、それはあの条約で言っている、これを処罰できるようにしなきゃいけないということは日本ではできているという意見もあるので、そのどちらなんですかおまえはと言われましたら、私としてはまだそのどちらかということを答えるほど十分検討は進んでいないと、これは各省庁とも検討して更に結論を得る努力はしなきゃいけないということしかちょっと今の状態ではお答えできないということでございます。
○丸山和也君 そういうことですか。やっぱり聞いておいてよかったんですけれども。私は、今回国会の衆議院の答弁よりもやや、更に慎重になられたような、後退されたような感じを受けるんですけれども。まあ全体としてはこれから検討だということは常々おっしゃっている、そこはよく分かるんですが。何らかの手当ては必要だとは思うんですけれどもその内容についてはまだこれから検討とおっしゃったように衆議院段階では思うんですけれども、その手当てが必要かどうかについてもまだ考えるということで、江田法務大臣というのは絶対答弁でミスを出されない、前の広島の大臣と随分違いまして面白くはないんですけれども、つつきにくいといいますか、答弁の面から見ると非常に分かりにくい点がありまして、それであえて私しつこくお聞きしているんですけど。
 実は私も前に出された共謀罪に一〇〇%賛成していたわけじゃありませんので、そういう意味で非常に批判的な目で見ていた一人としてあえてお聞きしているんですね。そのことをはっきりしておきまして。
 それと、一方、日本はちまたではスパイ天国だと言われて、もう冷戦のころからですけど、スパイ天国だと言われて、あるいは犯罪天国だと、国際的な犯罪も含めて天国だと言われて、非常にそこらの、組織的な、あるいは国家も絡んだようないろんな盗聴も含めた犯罪行為あるいはスパイ行為について非常に無防備状態であるとも言われているんですね。だから、これがどの程度本当に無防備なのか、諸外国と細かく比較というのはこれ自身が性質上非常に難しいんですけれども、どうやらそういう法整備が非常に遅れていると。
 一方では、市民の通信の自由とか表現の自由、結社の自由、いろんな行動の自由を守らなきゃならないという憲法の大原則もあり、これを非常に理念的に重んじるということは大事なんですけれども、一方、やっぱり犯罪行為とかあるいは国家の絡んだテロとか、あるいは拉致もそうですけれども、いわゆる犯罪的行為に対してはやっぱり国家ぐるみで厳しく対応しないと、要するに日本が一つの食い物にされていると、ある側面において、こういう現実が僕はやっぱりあると思うんですね、今も。ですから、そういう意味では、あのままの共謀罪が必要かどうかは別にして、やはりもう既に、とっくにそういう必要性が叫ばれて十年あるいは二十年、もっと過ぎているんじゃないかという気はしているんですね。
 ですから、大臣におかれましても、非常にこれは議論があって難しい問題だと、各省庁とも検討してやっていきたいと、一般論としてはまさにそのとおりだと思うんですよ。でも、やっぱり難しいから検討をと言われると、ある意味じゃ難しいから先に延ばすということにもつながりますので、ここはやっぱり、何といっても歴代にない法律のプロ中のプロが幸いにして法務大臣になられているわけですから、英断を持って、また勇気を持って日本の刑法体系になじむというかそぐうような、こういう言葉を大臣よく使われていると思うんですけど、日本の刑法体系にそぐうような形でやはり共謀罪と言われるようなものについてももうそろそろというか、やるという方向で決意を固めていただきたいと思うんですけれども、いかがですか。
○国務大臣(江田五月君) 決して私は法律のプロ中のプロでも何でもないんで、丸山委員はまさにプロ中のプロだと思いますけれども、しかし法律をある程度かじった者同士でなければできない議論というものはすべきであろうとは思っております。
 その上で、私どもも随分長く野党にいました。私自身は、その間、ほんのちょっと与党であった九三年の細川内閣というのはありましたけれども、大部分が、政治家の人生ほぼ全て野党で、そのときには、やはりそれは政府あるいは国家、これが権限を行使する場合に濫用があってはいけないと、この観点から鋭くいろんなことを追及をさせていただいたような面もございます。
 しかし一方で、やっぱり国家を運営するという立場に立つと、そこはまたおのずと違った場面があって、もちろん日本は国民主権ですから国民が主人公としていろんなことをやると。その国民の主人公としての権利が害されてはいけないことは当然ですが、同時に、国民からいろんなことを預かって、そして負託を受けて国家が国家の刑罰権その他の権限を行使しているという面もありますから、その立場に立って、そこはやはり両方の立場をわきまえながら一定のものをつくっていくということは必要で、今の組織的犯罪防止条約についても、これは条約が要請している法的な手当てというものはどこにあるかというのを真剣に、何か条約に要請されているものをちゃんと手当てしなければいけないと、手当てがもう済んでいるという立場ももちろん含んでですが、手当てをすることは必要なことなんであるという、そういう前提でいろんなことを考えることもまた私たちに求められていることだということは今思っております。
 ただ、御指摘の、この組織犯罪防止条約加盟のための共謀罪か参加罪かどちらかの手当てが国内法上できていなければいけないということについて、いや、もうできているか、あるいはできていないけどこれで済むか、あるいは前の共謀罪のようなものになるか、そこは大変恐縮ですが、今まだ私に答える準備ができていないということでございまして、是非お許しいただきたいと思います。
○丸山和也君 民主党政権を中心にした今の政府も、この大震災、原発、それから党内の、二分するような、党内に党があるような状況ですから、なかなか大臣としても一致団結してそういう方向に進むというのは難しいと思うんですけど、これは私、内容は別としてもこういう手当てはやっぱりやらないと、国際社会に対しても、もちろんそういうスパイ事件を扱っているわけじゃないですけど、いろんな外国人の犯罪に絡むような事件も幾つかいろいろ扱ったことがありまして、日本の法のそういう側面が非常に弱くて、そこをなめられていると言うと変ですけれども、荒らされているといいますか、やりたい放題をやっているというようなことがかいま見えるときが時々あるんですね。
 それで、これはやはり日本人の割かしそういうことに対する取締りなり規制に対する一種のアレルギー反応もあると思うんですよね。それはやっぱり、かつて戦前の時代に一部において過酷な、良心の自由、表現の自由を、あるいは身体の拘束も含めて弾圧された歴史がありますから、非常に事前にそういうことに端緒を与えるような恐怖感というのがあると思うんですね。だから、そういうことに対する健全なアレルギー感というのもあると思うんですけど、一方ではやっぱりそうやって暴力的に違法に害されている面もあるんで、ここは功罪両方あってもやることはやらなきゃならぬというやっぱり決意が大事だと思うんですね。
 そういう意味で、重ねて言いますけれども、そういう姿勢を、これもやっぱり法治国家としての在り方だと思うんですね、一部非常に弱い部分、法的に弱い部分、国際的に見ても弱い部分にある状況に対しては、やはり日本の法治国家としての姿勢を海外に示すという意味でも是非真剣に取り組んでいただきたいということを再度お願いしておいて、少し法案の中身について一、二点お聞きしたいと思います。
 まず、コンピューターウイルスの作成が今回犯罪となるわけですけど、これは大臣が言われた、何らかの日本の法体系は行為といいますかそういうのがないと処罰されないのが原則であり法体系であると。今回、コンピューターウイルス作成ということは、これどういうふうにその行為があるというふうに端的に判断する、それだけの問題なんでしょうか。それ自身が思想、良心の自由に侵害しないかという議論もなされているんですが、この点についてはどのようにお考えなんですか。
○国務大臣(江田五月君) これは、もう明らかにコンピューターウイルスを作成するというのは行為ですから、その行為の結果コンピューターウイルスができているという結果が生ずるわけですから、そのできたコンピューターウイルスがこのコンピューターの世界というものを攪乱するというものですので、是非ひとつそこは御理解いただきたい。
 コンピューターネットワークの世界が攪乱されたという結果を罰するんじゃないんで、そういう結果をつくり出すおそれのあるものを作り出す行為、つまり作成という行為を罰しているわけで、決して何の行為もないのに心のうちを罰するというようなものになってしまう、そんなことは毛頭ありませんので、是非御理解いただきたいと思います。
○丸山和也君 例えば、例えばと言うと変ですけど、いろんなコンピューターいじる人が非常に趣味的に、まあオタク的という表現もありますけれども、そうじゃなくても趣味としていろんなソフトを作られる、ウイルスも含めて、あると思うんですね。そういうものを例えば実験的に作っただけでも、すると処罰の対象になるんでしょうか。
○国務大臣(江田五月君) これはなりません。目的犯ということにもなっていますし、また正当な理由がないといったようなことも加えておりますし、故意犯でもございますし、人のコンピューターに悪さをするという、そういう意図を持って作るものでございますから、自分の趣味でいろいろ面白い挙動をするコンピューターソフトを自分で開発して楽しむといったことを処罰するというようなことは毛頭ございません。
○丸山和也君 そうなってくると、実際の捜査の運用において、そういう目的があったのか、故意があったのか、正当な目的なのかどうかという、いわゆる内心の問題ですね、そこにまさに入っていくわけですね。
 すると、もちろんそういうのを大量に作って使用した前歴があると今回もそうだろうという認定されやすいと思うんですけれども、そうでない場合とか、たまたま過去に一回あったけれどもあとはもうやっていないとか、しかしまた作っていると、こういう非常にある意味じゃ微妙なラインが出てくると思うんですが、そこら辺は捜査の実際としては支障がないのかあるいは懸念がないのかという、国民側から見てですね、恐怖を与えないのか、ここら辺はどのような手当てをお考えなんでしょうか。
○国務大臣(江田五月君) 今委員がおっしゃったような懸念が指摘をされているというのは私も存じております。
 しかし、これは、例えば証拠を集めるのに、保全の要請というのはあるけれども要請だけで証拠を集めることはできないんで、ちゃんと令状主義はそこで徹底させているとか、いろんな手続面の規制もございますし、また恐らく実際の事例では、コンピューターが不具合を起こしてしまった、さあこれは一体なぜかというのをずっと手繰っていくとどこかにウイルスが見付かったと、その周辺を見てみるとほかのウイルスもあったと、そして例えばその作成者がほかの人といろいろやり取りをしているメールなどでこれはやっぱり一定の意図があったことがそこから分かると、そういうようなことで犯罪の捜査というのが進んでいくのだろうと。だろうというとちょっと無責任かもしれませんが、そういうことだと思っておりまして、何もない状況で人のコンピューターへとっとことっとこ入っていってウイルスはないかないかというような、そういうことができるはずもないと思っております。
○丸山和也君 是非、そういう実務的にといいますか、安心できるような運用が必要だと思うんです。
 それと、今大臣のお言葉の中に保全要請ということがありましたけれども、これについて若干私がお聞きしたい、ちょっと疑問に思うところがあるんです。
 保全要請をするということは、あらかじめ相手方に捜査機関がやるんでしょう、これは裁判所のあれじゃありませんから。すると、それによってかえって記録があるいは抹消されてしまうとか破壊されるとか、その保全要請自身が、そういう強制力はなく、しかもこういうふうに事前に法的に導入された意図といいますか効果をどこに狙っているのか、これについて少し御説明いただきたいと思います。
○国務大臣(江田五月君) 保全要請というのは、通信履歴をとにかく、これすぐに消そうと思えば消えるものでもありますが、やはりその通信履歴の中に捜査に必要ないろんな情報がある場合もあるのでとにかくこれは消さないでください、一定の期間だけということをとりわけこれは書面で要請をするわけでございまして、一定のそれは、それに応じた保全をやってもらう義務は負っていただくということにはなるにしても、それに罰則が掛かるというものでもありませんので、しかも実際にそれを証拠として取得するには差押えをしなきゃいけないわけで、差押えの必要がなければこれはもう保全要請は、済みませんでした、取り消しますということにしなきゃいけないということにもなっていますので、そういうある種の準備段階での要請だと考えております。
○丸山和也君 そうすると、その保全要請があれば保全されるという、割かし従順な日本国民の特性から見て、お上からそういう要請があればこれ従うということを期待されているんじゃないかと思うんですけれども。
 それともう一つ、その保全要請の中には通信の内容そのものも含まれるんでしょうか。それとも、内容を除いた、誰から誰に、何月何日とか、そういう記録、事実だけなんでしょうか。
○国務大臣(江田五月君) これは事業者が、事業者の作業で一定の通信に付する送信者、受信者、日時、そういう履歴でありまして、例えば送信者がタイトルを付けますよね、これは事業者が付けるものじゃありませんから、そこはもう通信の内容に入ってしまって、そこまで保全しろと言っているわけじゃありません。あくまで通信の履歴の保全ということで、内容は、それは内容も残っておれば、今度、差押えのときにその内容を取得するということにはなりますが、内容を保全してくれということは一切要請するものではありません。
○丸山和也君 質問は尽きないんですけれども、少し、一点、通告はさせていただいていないんですけれども、専門の大臣でありますし、専門的な事柄でも必ずしもないんですけど。
 いわゆる、平成十八年だったかな、自殺対策基本法というのが制定されました。それで、日本は非常に自殺大国だということで、特に先進国の中ではもう断トツであるということで、年間、ここ十数年、もう三万人以上の自殺者が出ていると。この前、三月でしたか、何か統計見ても、今年もやっぱり一月に三千人以上の自殺者があると。これは、政治を預かる我々あるいは政府としては、やっぱり非常に負の側面といいますか、悲しい出来事だと思うんですよね。自らの手で自らの命を絶っていく人が三万人以上もいると、毎年毎年出ていると。
 これは、僕、ふと考えてみたら、今回の大震災で一万五千とか二万人の方が亡くなられたであろうと、それと比べてもはるかに多いんですね。あるいは倍ぐらいいると。仮にあの震災が千年に一度、あるいは百年に一度としても、倍だとすれば二百倍の大きさなんですよ。二百年に一度起こるか起こらないことが毎年毎年起こっているということです。これはまさに、本当の国の危機というのは日常の中にあるんですね。だから、ああいう大災害というのは確かにショッキングですから、大変だ大変だ大変だと、もちろん大変なんですよ、決して大変じゃないって、大変なんですけれども、国を挙げて全部がそれに大変なんだと、ほかに大変なことがないように錯覚するんですけど、本当の危機はふだんの日常の中にあるんですね。こういうところに政治はやっぱりしっかり目を当てていかないといけないと思うんですよ。
 特に、今回の災害復興の予算も、あるいは十兆だと二十兆だと言われているかもしれませんけれども、これだって一つの政策、子ども手当を完全に二万六千円ずつですかやっていけば、やっぱり二、三年でそれくらいの金額になるわけですよ、恐らく数年で。それくらいのやっぱり日常の施策というか、日常の出来事が大きいんですね、本当の意味では。災害は目を引かれるから大きく見える。これは解決しますよ、やっぱり。ある程度の予算と、十兆、二十兆、それからある程度の期間がたてば解決しますけれども、年金の問題、子ども手当、いろんな政策もありますし、それから自殺者の、言いましたですね、これなかなか減らないと、法律作っても減らないと、むしろ増えている。
 こういうことについて、やっぱり法務大臣としてというか、あるいは閣僚のお一人として、僕はこの自殺問題というのは時々いろんなところで取り上げているんですけれども、日本の最も反省しなきゃというか取り組まなきゃいけない点だと思っているんですよ。内乱もない、今回、災害ありましたけれども、そういう中で、戦争もないのにこれだけの人が自ら亡くなっていくということは、もう根本的な国家あるいは社会の仕組みの問題、あるいは心の在り方、全てを含めて大変な問題が横たわっていると私は、日常の中にですね、思うんですけれども、これについて大臣のお考えをお聞きできたらなと思って、私の質問とします。
○国務大臣(江田五月君) 通告をいただいていないテーマと委員御自身もおっしゃったことで、私も突然の御質問で、しかも、法務省がどこまで所管しているかもよく分からないんですが、しかし大変重要な問題だと思っております。
 年間三万人を超える人が毎年毎年毎年自ら命を絶っているというのは、これはやはり社会としては重要な問題で、しかもその自殺が、経済的な原因のものもある、あるいは病気もある、様々な原因がありまして、防げない自殺もあるいはあるかもしれないけど、防げるものもいっぱいあるわけですね。自殺をすれば、やっぱりそこに本人も悲劇あるいは周辺も悲劇、そういうものがいっぱい生まれてしまうので、これは何としても防いでいかなきゃいけないと思います。
 実は、今委員の御質問で私、ちょっと忘れかけていたのを今また思い出したんですが、昨日、私の地元から連絡が来まして、中学のときの同級生が亡くなったと。昨日が通夜で今日が葬儀だと弟さんから涙声で電話があって、一言電話掛けてやってくれと言うので掛けたんですよ。そうすると、本当に僕らは仲のいいグループといいますか友達同士で、もう六十九、七十ですが、会うと本当に心のほのぼのする、そういう、亡くなったのは女の子だったんですが、どうしたのと言ったら、自殺をしたと言うんですよ。えっ、本当に知らなかった。すぐ同じ仲間に電話して、おまえ知っているかと、いや、聞いてないと言うので、いや、自殺だというので余りみんなに言い触らして葬儀を大変盛大な葬儀にするのがいいのかどうか心配だし、ちょうど十一時で、今、葬儀やっている最中なんですが、私、帰れないので、ひとつよろしくと伝えたんですが。
 なぜ自殺をしたのかというと、うつ病だったというんですね。六十九、七十です。うつ病の自殺のサインはあったのかというと、あったというんですよね。僕らは友達同士として、なぜあのときにもうちょっと我々が関心を持って何か手を差し伸べることができなかったのかと本当に、今、多分葬儀をやっている最中、私もここで悔やみながら手を合わせておきたいと思いますが。
 そういうような個人的経験もありますし、自殺については、これを防止するという国家としての強い決意を持っていかなきゃいけないと。これは、がん対策基本法と自殺対策の基本法、山本孝史君が自らの病をあえてみんなに報告をしながら本会議で訴えたテーマで、御党の、今は副議長ですが、尾辻さんが本会議で追悼の言葉を述べてくれた、そういうきっかけでございますので、委員があえて質問通告なくてもここで問題を提起していただいたのは私と同じような気持ちが通じたのかなと、そんなことを今思っているところでございます。
 ありがとうございました。
○丸山和也君 時間もなくなりましたのでこれで終わりたいと思うんですが、やはり何か事が起こると、やっぱり全てにそれが、目が奪われてしまって、本当のやっぱり危機といいますか、長期的に潜んでいる危機ということがやや忘れがちになって後回しにされてしまうという、それこそまさに危機だと思いますので、現政権において税と社会保障の一体、一元的解決の問題とかいろいろあると思うんですけれども、全てやっぱりそういう日常の施策の中に本当に大事なものがあるということを是非、この自殺の数の減少しないということを例に挙げて指摘させてもらいましたので、どうか、一番最初に言いました共謀罪の検討も含め、長年懸案になっている問題について是非とも取り組んでいただきたいということを申し述べて、私の質問を終わらせていただきます。
○木庭健太郎君 刑法改正の質疑に入る前に、一問だけお尋ねをしたいと思います。
 先週、地元の福岡で、司法修習生に対する給費制の問題についてのシンポジウムが弁護士会の主催で、実は地元福岡で開かれました。この給費制の問題につきましては昨年本委員会でも質疑いたしましたが、貸与制への移行を一年間猶予すると、つまり一年間はこの給費制を続けるという法改正がなされて、そしてこれをどうするのかということを今年議論しようということになっている、こういうテーマでございます。
 シンポジウムに出て、様々な御意見ありました。大震災で大変なときに給費制の問題、本当に出してもいいんだろうかというようなお話から始まって、ただ、今司法修習生たちがやはりこの給費制という問題に対して、法科大学院を始めかなりの費用が、結局物すごいお金が掛かっている、司法修習する前の段階で四百万とか五百万、こんな借金を抱えた形で次へ進む、そういう現状がありますとか、やはり質のいい法曹養成といいますか、公の立場で仕事をするんだという、そういう意味合いを込めるならばこの給費制の持っている意味は大きいんではないかとか、様々な議論がございました。
 私自身は、やはりこの給費制が果たした役割というものは大きなものがあったし、司法制度改革の中で一旦はこれをやめようという議論をしたことは事実です。しかし、法科大学院の問題を始めこういった改正の中で、やはり質のいい法曹養成のためにはこの給費制は存続すべきではないかという考えを、私自身また私どもの党としては何とか継続はできないかという思いは持っております。
 大臣において、これは法務省というか全体で、法曹養成に関するフォーラムというのを今開いて政府としていただいているということも承知しております。是非この問題について、私どもとしては継続してもらいたいという強い気持ちを持っている、そういった方向でまとまらないかなという気持ちも持ちながら、大臣として、現時点でこの給費制という問題にどういうお考えをお持ちか、そしていつごろまでにこの問題を整理しようとされているのか、これについて冒頭お伺いしておきたいと思います。
○副大臣(小川敏夫君) 法曹養成フォーラムに私が担当して出席しておりますので、私から答弁させていただきます。
 委員御指摘のように、昨年秋に一年間給費制が延長されました。したがって、今年の秋にはそれが切れるわけでございます。その一年延長する際、衆議院の法務委員会から決議をいただきまして、司法修習終了者の経済的な状況等を勘案した措置の在り方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずること、それから、法曹の養成に関する制度についても検討することという決議をいただきました。これを受けまして、法務省、それからロースクールですので関係する文科省、様々な関係省庁等も出席いただいて、それから有識者にも出席いただきまして、法曹養成フォーラム、これを立ち上げたところでございます。
 そして、その法曹養成フォーラムにおきましては、まず一つとして、個々の司法修習終了者の経済的な状況等を勘案した措置の在り方ということでございますが、具体的にはこの給費制について検討するということになっておりまして、先般第一回会議が開かれました。そこで確認されましたことは、八月末までにこの給費制の問題を一つのまとめた一次案を出そうということになっております。当局としましては、そのいただいた案を基に検討していきたいと、このような状況でございます。
○木庭健太郎君 大臣が発言すると予断になるとかいろんな話もありますが、給費制についての大臣の考え方がもしあれば聞いておきたいと思います。
○国務大臣(江田五月君) まさに法曹養成フォーラムで議論をしていただくということで、今関係大臣合意でスタートをさせ、小川副大臣に担当してもらっていますので、それ以上のことを申し上げると予断を与えてしまうことになりますが、昨年、委員ともいろいろ議論をして、司法修習生というのはこんなに大切な仕事、仕事というか、これからの未来を担っていくんだから、その養成はやはり社会でひとつ経費的な負担もしようじゃないかというような議論をしたのは事実で、そしてそのときに法案が出てきて私も委員の一人として賛成をしたのも事実でございます。
 そこで止めておきたいと思います。
○木庭健太郎君 それでは、本題に入りたいと思います。
 先ほどもいろいろ議論がありましたが、まず今日は一回目の質疑ということらしいので概括的なことをお尋ねしておきたいんですけれども、一つはいわゆるウイルス作成罪等の新設の問題でございます。
   〔委員長退席、理事金子原二郎君着席〕
 確かに今の現状では、ウイルス被害というものに対して何なりかの方法があるかというと、なかなかこれについての対応ができなくて、結局、著作権法違反とか器物損壊ですか、そんなことで摘発をするしかないというような現状があった中で、やはりコンピューターウイルスの作成、配布に対する法整備というのは何か要るんだろうという中で今回のこの法案が出てきたんだろうということは認識をしております。
 しかし、法案を見ると、例えばウイルスの定義についてはどうなっているかというと、人が電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える電磁的記録、これがウイルスだそうでございます。そうすると、ウイルスの定義における意図に沿うとか反するとか、ある意味ではちょっと抽象的な表現になっていないかなという心配をするわけで、またこの第一項を見ると、実行の用に供する目的というような規定もございます。
 そういった意味でいくと、ウイルス作成罪が適用されるとした場合、さっきもちょっと御懸念があったんですけれども、そのプログラムがウイルスかどうかという判断というのは結局はこれ捜査側に委ねられているということになるんだろうと思います。だから、ある意味では、余り抽象的な条文になってしまうと、結局ウイルス作成罪というのは捜査機関による恣意的な検挙のおそれがあるというような、こういう話とつながってくるというような一面、危惧を抱いている人が極めて多いということにもなるんじゃないかなと思うんです。
 大臣に是非、この条文が分かりにくいというような問題、つまりウイルス作成罪が捜査機関による恣意的な検挙のおそれがあるという、そういう指摘をする方が多いわけですが、そういう人たちに対して、大臣としてどうなんですよという見解を、先ほどもちょっと申されてはおりましたが、もう一度再確認で聞いておきたいと思います。
○国務大臣(江田五月君) ウイルス作成罪とその作成したウイルスの供用罪と、これはもちろん違うわけでございまして、今委員が挙げられたのは作成罪。作成罪というのは、これはまず正当な理由がない、そして人の電子計算機における実行の用に供する目的、これは自分の計算機の中だけでじゃなくて人の計算機にこれを送り込んで何かの悪さをさせるという目的、そして次に掲げるものを作成すると。次に掲げるものというのは、人が電子計算機を使用するに際しその意図に沿うべき動作をさせない、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える電磁的記録と。これは全部それぞれこの要件であって、そして当然、故意犯ですから、それぞれの要件について構成要件的故意が必要なわけですよ。
 ですから、何か知らぬ間にできちゃったというのはそれは故意がないわけで、先ほどもバグについてちょっと田城委員の質問にお答えいたしましたが、何かできちゃったというのは、これは故意がないんですから作成罪に当たるはずがないんですね。たまたまできてしまったのを、これを奇貨として、さっき言ったようないろんなもうあれやこれやあれやこれやいっぱい条件を付して何かやると、それは供用に当たることがひょっとしたらあるかもしれないということを言いましたが、作成には当たりっこないので、今一々申し上げましたような一つ一つのことについてきっちり構成要件的な認識と認容がなければこれは故意罪として成立しないということでございまして、是非そこは御心配のないように願いたいと思います。
○木庭健太郎君 今も大臣からまさに御指摘があったそのバグの問題なんですね。
 これについても、一旦おっしゃって、衆議院のこれ質疑をちょっと読ませていただいたんですけれども、最初に我が党のこれは大口だったと思うんですけれども、バグのあるフリーソフトを公開し続けた場合は、それを知った時点で少なくとも未必の故意があって、ウイルス提供罪が成立するという可能性があるかという、こういう質問だったと思うんです。そのとき大臣は一言で「あると思います。」と、最初こうおっしゃったわけです。
 その後の質問に対してどうおっしゃったかというと、そういうバグが非常に重大な影響を及ぼすようなものになっていて、しかもこれが、そういうものを知りながら、故意にあえてウイルスとしての機能を果たさせてやろうというような、そういう思いで行えば、これはそういう可能性がある、そういう限定的なことを一言で申し上げたというような、補足答弁になるのかどうか分かりませんが、そういうお話をされた。
 でも、最初の「あると思います。」という一言で、それが議事録にも残っているわけです、最初の段階は。そうすると、やっぱりソフトウエアの流通とか開発の中では、その「あると思います。」という一言は結構大きなインパクトがあったんですよ、これ、それはそれで。
 したがって、もう一回、衆議院でも、また今もちょっとおっしゃっていただきましたが、ソフトウエアの開発や流通に関して影響を生じないようにこうなっているんだということがあれば、きちんと御説明をもう一度、重なるようになるかもしれませんが、いただいておきたいと思います。
○国務大臣(江田五月君) 衆議院での質疑を今委員が引かれました。
 委員と同じ公明党所属の大口委員が、もう大口委員の持ち時間の最後のころだったと思うんですけれども、この問題について御指摘をされたので、余り答弁に長々時間を掛けても申し訳ないので、もう一言、可能性について申し上げただけだったんですが、もちろんこれはいろんな条件付で、しかも、今も申し上げたとおり作成罪というようなことはあり得ないわけで、供用罪というのがいろんな条件付で、たまたまそういうウイルスの機能を果たしてしまうようなものがあったときに、これをウイルスとして機能させてやろうというようなことで供用すると、それは供用罪に当たる場合があるかもしれないと可能性を述べたということでございまして、「あると思います。」と、七字、丸、これがあれほどの影響を与えてしまったということについては、私のこうした皆さんの心配についての感度がちょっと鈍かったかなと思っておりますが。
 あえてもう一度繰り返しますが、そういうことはどうぞ御心配なく、ソフトウエア、フリーソフトウエアの世界で大いなる自由な闊達な活動を私は全く歓迎こそすれ、それを阻害しようとするような意図は毛頭ありませんので、是非御理解いただきたいと思います。
○木庭健太郎君 それと、これも衆議院の答弁において大臣が、もし時間がありましたら、この条文の一語一語について細かなコンメンタール的な解説は必要かと思いますという御答弁もいただいております。
   〔理事金子原二郎君退席、委員長着席〕
 ただ、この法律、「公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。」ですから、時間的余裕がなかなかない。ただ、冒頭申したように、やはり言葉の定義自体も非常に一般の人には分かりにくい。また、それがどういうものをどう規定していくかというのもなかなかこれ分かりにくい。
 さっき大臣は、まさにこの委員会のやり取りでやっていることが一つのお答えだということはおっしゃっておりました。それは議事録を見れば、ああ、こういうことなのかなということは分かるかもしれません。でも、私はやっぱり、そのコンメンタール的な解説、後でまとめられて出すことも大事ですが、やはりこの法律が通ると、これについてはやっぱり解説的な、条文の細かいところまで行くかどうか、それをどうオーソライズするかという問題はあるんですが、やはり何らかの形で、例えば施行期日までに迅速に周知を行う方法はないのか。それは法務省のホームページ、見られているかどうかはいろいろ議論はありますが、例えばそういうものも使いながら、何かこの問題については、新しい法律であり、新しい一つの体系をつくるのであり、そういった意味ではそういう解説が必要だと思うんですが、この点についての大臣の見解を伺っておきます。
○国務大臣(江田五月君) 法案が衆参の御理解をいただいて成立をするとこれは法律になって、そうすると施行ということになっていくわけですが、是非とも法務省としても関係機関にもしっかり周知をしていきたいし、また国民の皆さんにも十分御理解をいただく努力をしていかなければいけないと思っております。解説書などがどういうふうになっていくのか私は知りませんが、そうしたこともあるいはあるかと思います。
 それと、先ほどの七文字プラス丸、これがあれほどコンピューターの世界で話題になるということですので、是非、今、例えばバグについて私がこれだけいろんなことを申しましたが、これが提案者の意図であり、同時に、国会で立法者の皆さんでこの議論をしている中身だということ、これはコンピューターの世界の皆さんにはもう瞬時にして伝わるのかとも思いますが、間違いなく周知をさせていきたいと思います。
○木庭健太郎君 これからは少し細かい条文についてのお話を当局との間でやり取りをしたいと思っております。
 一つは、わいせつ物頒布罪における所持と保管という意味の問題でございます。
 現行の刑法の百七十五条では、写真、雑誌、DVDなどを想定して、わいせつな文書、図画その他の物を頒布し、販売し、公然と陳列する行為を処罰の対象としておりましたが、今回の改正法百七十五条一項では、わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布しと、わいせつ物の中にわいせつな電磁的記録に係る記録媒体が含まれることとしたわけです。その一方で、後段では、電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も同罪とするというふうにしており、これはわいせつな画像を添付した電子メールを送り付ける業者などを取締りの対象にするものだというふうにお聞きはしました。
 私が最初に聞きたいのは、この百七十五条一項で、わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布しと一項では規定したにもかかわらず、その後段でわざわざ、電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も同罪とするというふうに規定していると。これ、結局、現行法ではわいせつ物と規定している以上、情報としての画像データまで物に含めることができないということなのか、その点について当局から伺っておきたいと思います。
○政府参考人(西川克行君) まず、現行法のわいせつ物概念というのはやはり有体物という概念にとらえておりまして、この点、有体物以外の電磁的記録が含まれるかどうかについては判例が分かれておりました。今回、その点を明らかにするということで、電磁的記録、これもわいせつ物の中に明記をしたと。それで、わいせつ物の有体物については所持という概念、それから電磁的記録については保管という概念でとらえているということでございます。
 それから、電磁的記録の頒布する行為についても新たに処罰対象に含めることにしたということと、有償でこのような行為を行う目的でわいせつな電磁的記録を保管する行為、これもわいせつな有体物を販売する目的で所持する行為と同様の処罰価値のあるものでございますので、これも併せて規定をしたと、こういうことでございます。
○木庭健太郎君 続いて、刑法の改正百七十五条の二項の問題です。この二項において、「販売の目的」を「有償で頒布する目的」に変更されています。その理由、及び「前項の物を所持し、又は同項の電磁的記録を保管した者」と、「所持」に加えて電磁的記録の保管を追加した理由について当局から伺います。
○政府参考人(西川克行君) これにつきましては、所持は有体物の所持と、それから、電磁的記録については保管という概念を使っているということでございます。
 それから、頒布の概念でございますけれども、例えばリース等で有償でその他に広く広げるというものについては必ずしも販売の概念には当たりませんが、そのものについても同様の処罰価値を有するということで付け加えているというものでございます。
○木庭健太郎君 続いて、刑事訴訟法の関係なんですけど、刑事訴訟法の改正案では第百十一条の二において記録媒体の差押状の執行を受ける者等への協力要請を新設されているわけですね。この規定における必要な協力の具体的内容を法務当局から確認しておきたいと思います。
○政府参考人(西川克行君) ケース・バイ・ケースということでございますけれども、例えば、電磁的記録に係る記録媒体を差し押さえる場合に電子計算機の操作を行うこと、これは法律に明記してありますが、のほかに、コンピューターシステムの構成やシステムを構成する個々の電子計算機の役割であるとか機能であるとか操作方法を説明すること、それから、差し押さえるべき記録媒体や複写すべき電磁的記録が記録されているファイルを指示すること、これが差押えの現場では想定されるというふうに思われます。
 また、検証の場合につきましても、コンピューターシステムの構成であるとかシステムを構成する個々の電子計算機の役割、機能、操作方法等を把握することが必要になりますので、被処分者の教示等の協力を求めるということが予想されるということでございます。
○木庭健太郎君 そして、その改正案の九十九条の二、これ、記録命令付差押えですね。それから百十条の二、記録媒体の差押え。これ、プロバイダー業者等が受託しない場合、罰則は今回の改正案では規定されていないということでよろしいんでしょうか。
○政府参考人(西川克行君) 委員のおっしゃるとおり、罰則については規定されておりません。
○木庭健太郎君 ただ、その協力が得られない場合、捜査機関自らが電磁的記録の差押えを行ったり、コンピューター装置や記録媒体一切を物理的に押収されるわけですよね。そういうことが予想されたら、まあプロバイダー業者にとっちゃこれはもう、その業務はもちろん、利用者、プライバシーに甚大な被害が及ぶということが予想されるならば、実際はこれは半強制的に協力せざるを得ないような状況になってしまうんじゃないですかね。これ、どうお考えですか。
○政府参考人(西川克行君) 実際、この記録命令付差押えの命令の相手方というのは、協力していただける方、これを想定して記録命令付差押えを実施するということでございまして、今現在はまだこのようなシステムはございませんけど、実際、例えば携帯電話の業者等から通信の記録、これを取得したいという場合については、事前に連絡をいただきまして御協力をいただいてそれを捜査機関が差し押さえていると、こういう扱いになっております。これをきちんと法律上明記をして、そういうやり方をするということですので、ほとんどの業者については御協力いただけるものというふうに考えているということでございます。
 罰則等もないので、強制ではないというふうに思っております。
○木庭健太郎君 それで、これは大臣からちょっとお伺いしておきたい項目の一つなんですが、五月二十七日の衆議院の法務委員会、これもうちの大口が質問しているんですが、日本に本社があって海外の支店のコンピューターの中に電磁的記録がある場合について法務大臣はどうお答えになったかというと、海外の記録媒体のデータに直接アクセスして複写することは、当該他国の主権を侵害するおそれがある、明らかに別の国にあるという場合は捜査共助などによる要請が望ましいという見解をこのときは示されておるんです。
 ただ、この記録命令付差押えの規定ですね、これを見ると、どうなっているかというと、「電磁的記録を保管する者その他の電磁的記録を利用する権限を有する者に命じて必要な電磁的記録を記録媒体に記録させ、又は印刷させた上、当該記録媒体を差し押さえることをいう。」というふうになっているわけです。つまり、差押えをする対象データがどこにあるかというのは、法文そのものを見ると特に制限がないという気がするんですが、この大臣の見解でよろしいんでしょうか。
○国務大臣(江田五月君) 記録命令付差押えというのは、これは我が国に現にいる者に命じて本店のコンピューターにつながっている海外の支店のコンピューターにひとつアクセスして、リモートアクセスというんでしょうか、そこにあるものを取ってきて、それを記録媒体に複写して差し押さえて証拠として収集するというようなことでございまして、国境を越えて、リモート、遠くにある、海外にある記録媒体にアクセスする人間は国内にいるわけですから、その者に記録命令を出すと、これは罰則も付いておりませんし、そこはできると。
 しかし、捜査機関が国境を越えて何か海外にあるコンピューターにアクセスして一定の電磁的記録を証拠として押さえるというのは、やはりこれは国境を越えるということがございますので、共助等の配慮が必要だということを言っているわけでありまして、そこに矛盾はないと思っております。
○木庭健太郎君 そうなると、今おっしゃる話は、外国にサーバーがあるというような場合は、これはリモートアクセスでは確かにいろんなことの問題が起きやすいのでそれは難しいかもしれないけど、国内にいるプロバイダー業者さんがきちんとやればいい話であるというお話につながってくると思うんですが、そうなると、やっぱりプロバイダー業者等への記録命令付差押えですか、これで可能だというのであると、これ、プロバイダー業者に対する負担というのは物すごく重くなるんじゃないかなという気もしてならないんですが、この点についての大臣の見解を伺って、今日は終わりたいと思います。
○国務大臣(江田五月君) そこは、今当局の方も申し上げましたが、記録命令付差押えで記録をしていただくのはあくまで、もちろん記録命令ですが、義務付けはいたしますが、しかしその罰則等を伴ってやるということではございませんので、これはいろいろ協力をいただけるプロバイダーだと、業者だということであって、いや、そういう協力というのは期待できないというときには、それはまた別途この記録命令付差押えではないやり方を取っていかなきゃいけないので、そこのところは業者の皆さんにも御理解をいただける場合にできるんだということでございます。
○木庭健太郎君 終わります。
○桜内文城君 質問に入ります前に一言申し上げておきますと、私のところにもこの法務委員会の理事ということでたくさんのメールをちょうだいしておるところでございます。
 ただ、その中にはやはり、今日先ほどからずっと議論されておりますように、やや事実誤認といいますか、特に、コンピューターウイルス作成罪に関して故意犯であることが十分周知されていない、あるいは保全要請につきましても、相当程度要件が限定されておるところなんですけれども、それも十分周知されていない。こういったところから、誤解に基づくものも多々あるのかなというふうに感じておるところでして、是非、法務省といたしましても、きちんとインターネット上あるいはその他の広報等で今回のこの法案につきましてその内容を周知徹底していただくのがよろしいんじゃないかなというふうに考えております。これは意見として述べておきます。
 さて、特に本日は、私幾つか大臣に質問させていただきたいと思う中で、特に記録命令付差押えについてお尋ねしたいと考えております。
 私はこの記録命令付差押え、特に電子メールですとか、昨今ですとスカイプなど音声情報についてもインターネット上でほぼ電話と同じように通信がなされる、そういったことになっておるわけですけれども、そういった意味で、通信の秘密との関係で、この記録命令付差押えが本当に国民の通信の秘密を侵害するおそれがないのかどうか、ちょっとざくっとした質問ですけれども、まず大臣の所見をお伺いいたします。
○国務大臣(江田五月君) 通信の秘密というのが憲法上国民の基本的人権の一つとして守られなきゃならないと、これは当然のことでございます。しかし、これも絶対的なものということではなくて、犯罪の捜査のために例えば裁判所が発する令状でこの証拠物を収集すると。その証拠物の中には、当然それは、例えば差押令状に特定された場所へ行って、これはどうも関係あると思ったものの中に人の手紙があると、こんなことは当然あり得るわけで、そうしたものは、手紙だったら差押えできないというようなことは、これはあり得ないわけですよね。
 したがって、今回の場合にも、現行法の下でも、現在でもですよ、捜査機関は裁判官からの差押許可状の発付を受けてプロバイダーのサーバー等に記録されているメールの電磁的記録を取得することは、これは可能なわけでありまして、それをさらに、より侵害的でない方法で電磁的記録を記録媒体に記録させた上で差し押さえるようにするとか、そうした手当てを講じているのであって、これはあくまで裁判官の司法審査の下で行われるということもあり、もちろん濫用があっちゃいけませんが、問題生じないように実行していくということで、そこは調整が取れているものと思っております。
○桜内文城君 今のこの改正案、刑事訴訟法上の文言を見ますと、やはり捜査機関の運用に委ねられているところが多々あります。むしろそこに私は懸念を抱いておりまして、例えば、今大臣もおっしゃいましたメールなり音声データかもしれませんけれども、その記録として差し押さえる対象物の限定、特定といいますかというものが、この百七条ですとか改正案等を見ておりますと、やや不十分ではないかという懸念を抱いております。
 例えば、通信相手、送信元ですとか通信先を特定しろという限定もない、それから通信の日時の特定もない。逆に言えば、これ通信記録といいますけれども、言わばメールなり音声の通話がインターネット上で仮に行われた際に、リアルタイムのそういった通信の記録を、それなりにプロバイダーのサーバーの中に残っているとして、それが後で差押えするときは、リアルタイムでないとしても一定の期間、将来にわたる期間についてもし特定がなされたならば、リアルタイムでの通信の傍受といいますか、これとほぼ同じ捜査になってしまうんじゃないかと懸念するわけですけれども、その点に関して、大臣、どのように差押えの対象物の限定、特定という観点から運用がなされるべきかという点でお考えになっているか、お聞かせください。
○国務大臣(江田五月君) 現に、現に通信が行われている、そこへ脇から入り込んでいってこれを傍受をして、そして証拠として収集するというのは、これはこの差押命令では不可能だと思っております。これはあくまで通信傍受という方法で罪種も限定されますし、また様々な要件をクリアした上でなければできないもので、記録命令付差押えが濫用されれば通信傍受になるということはないと思っております。
 そして、記録命令付差押状には、記録させ若しくは印刷させるべき電磁的記録が具体的に特定されて記載されると。これも、裁判官に令状の発付を求めるときにはやはり特定をきっちりして、しかもその特定されたものについての差押えの必要、これをちゃんと具体的に疎明をして令状発付をいただくわけでありまして、そこのところは、裁判所の令状の審査がいろいろ物議を醸すテーマであることは私も知ってはおりますが、しかし、これはあくまで裁判所がやることでありまして、私ども、裁判所を、裁判官の判断というものを信頼をしていきたいと思っております。
○桜内文城君 ちょっと細かいので今のに関連して刑事局長にお尋ねしたいんですけれども、今大臣は、リアルタイムの通信の記録というものは通信傍受法の範疇であって今回のこの差押えの対象にはならないというような趣旨でお答えになりましたけれども、この辺の区別ですね、条文を見ておりまして、例えば百七条ですとかの差押えの対象物の特定の要件といいますか形式的な要件から見まして、リアルタイムのものを絶対にこれは含まないとはなかなか読み難いんですけれども、その点、どのようにお考えになっているのか、確認させてください。
○政府参考人(西川克行君) まず、内容を取得する場合、リアルタイムでですね、これは当然のことながら通信傍受という手続によらざるを得ず、差押令状でできることではないと。差押令状は、これはあくまで差し押さえるべき物、既に存在しているものを前提にして、それに対してなされるわけでございますので、通信傍受とはすみ分けができていると。
 それから、通信履歴をリアルタイムに取得したいというときには、現在でも検証令状、これを取得して検証という形で実施することは可能でありますが、これは差押えではないということになります。
○桜内文城君 確かにそのような区別はあると思うんですけれども、何を私懸念しておるかといいますと、例えばインターネット上で音声通話がほぼ電話と同じように今現在実際やられておるわけです。また、それが、あるいは動画の記録もそうなんですけれども、リアルタイムで通話なりして、それがサーバー上に記録としても同時に残っていくということが実際になされているわけです。例えば、動画といいますか、音声も含めてですけれども、ユーチューブですとかユーストリームですとか、そういったものというのは中継とか行うわけですけれども、中継が終わった瞬間からもうデータがまた別途記録として見れるようになるというようなインターネットの技術からしますと、差押えの対象は記録であるからリアルタイムのものではないと、確かにそのとおりかもしれないんですけれども、リアルタイムのそういった通信の記録がそのままもう端からどんどんと記録として蓄積されて差押えの対象になっていく。
 このような現実がある場合に、おっしゃった通信傍受法の対象の範囲と今回のこの記録命令付差押えの区別というのがどこまでできるのか。やはり、インターネットの技術の進展に併せてその区別というものも曖昧に実際にはなっているのではないかというふうに考えるわけですけれども、大臣か刑事局長、いずれかお願いいたします。
○政府参考人(西川克行君) 委員のおっしゃられている疑問は恐らく記録命令付差押えの問題ではなくて、差押えとリアルタイムの取得、通信傍受の関係の話だというふうに思うわけですけれども、あくまで通信傍受の対象となっているのは現に行われている通信の内容、それ自体を捜査機関が取得することができるかどうかという問題でございます。
 その内容がその後何らかの形で保管されていて、それを見たいということであれば、それは今度は差押えの問題になっていって、これは別に無限定ではなくて、一般の被疑事実との関連性があるかどうかということの裁判所のチェックを受け、かつ特定をされた上で令状を取得して、それで初めて取得ができるということになっているというふうに理解をしているということでございます。
○桜内文城君 おっしゃるとおりの区別だと思うんですが、何でこうやって食い下がって言っているかといいますと、今回、先ほども挙げましたように、百七条での差押えの対象物の特定の形式的な要件というものが非常にざっくりとしておるという点の指摘であります。
 要は、今刑事局長おっしゃいましたけれども、例えば通信傍受法との対比が適当かどうかはありますけれども、申しますと、やはり対象犯罪の限定があるのかないのか、そしてまた対象の特定の仕方、通信日時であるとか、あるいはその送信元あるいは送信先を特定して、その上で通信傍受を行うというそういう立て付けになっているわけですけれども、今回のこの記録というものが端からどんどんインターネットの場合はサーバー上に記録されていくわけですよ。それを差押えする場合に、これほど要件が異なっていて公正、公平と言えるのか、こういった疑問であります。お答えください。
○国務大臣(江田五月君) なかなか委員の問題意識に沿ったお答えしにくいんですが、私も、裁判所に差押令状の発付を求める場合に、この記録媒体にこれから先こういうものが記録されるであろうからひとつ差押令状を出してくださいといって裁判所が差押令状を出すかなと思うんですけれども、そこはまだ、やっぱりそういう場合ですとこれはもう通信傍受の世界になってしまうから、裁判所としては、将来出てくる電磁的記録を今差押令状でやらせてくださいといっても、裁判所は、うん、それはいいことだとはちょっといかないんじゃないかと。もしそれができるんなら、それこそ通信傍受なんてどこか行っちゃうわけで、私の知る限りではちょっとそういう裁判実務というのは難しいという気がいたしております。
○桜内文城君 大臣がおっしゃるのが実際の実務の取扱い、運用だと思うんですが、何で私がこんなことを言っていますかといいますと、まさに条文上は差押えの対象物の特定の方法が比較的、言い方は悪いんですけれども緩いものですから、将来にわたっての通信日時の特定のところでそれを必ずしも排除していないわけですね、この条文上は。
 ですので、そういった意味で、現在のインターネットの技術のようにリアルタイムで記録を取得しようがしまいがその記録がどんどんと積み重なっていく、そういった意味で、そこに対して差押えの対象として実際捜査機関が差し押さえていくということが、通信傍受法の適用の場合の要件と余りにも違い過ぎるんではないのかという問題意識を申し上げている次第であります。
 そういった意味で、立法論として申しますと、もうちょっとこの記録命令付差押えに関して、令状請求の形式的な要件というものを厳しくすべきではなかったのか、もうちょっと限定すべきではなかったのか、明文でですね、そのような問題意識を抱いております。
 そうでないと、憲法三十五条の令状主義、これは当たり前の、当然の非常に重要な原則ですけれども、そこがこの通信傍受法と違うからという、法律上はそのように言えるんだと思うんですけれども、インターネット技術の発展の中で、そこの区別が余り付かなくなっている中で令状主義というものがややないがしろにされているんではないかという懸念、疑問でありますけれども、これについて、大臣、もう一度お答えお願いします。
○国務大臣(江田五月君) 通信傍受の方は、条文上も犯罪と関連するような通信が行われるべき場合にということで、要するに将来行われるであろうということを前提にその通信傍受の許可を求めるわけで、したがって、罪種も特定をし、あるいはその他のいろんな厳しい要件を付しているということで、この差押えの場合は、差し押さえるべき物というのは、将来生ずる、存在に至るかもしれないものというのはやっぱり差し押さえるべき物には入らないんじゃないかと。
 確かにインターネットの世界というのはもう日進月歩、日々どんどん進んでいるのでございますが、裁判実務というのはそんなにどんどんどんどんなかなか進んでいっておらないんで、もっと裁判所もしっかりしろというところはあるかもしれませんけれども、恐らく、恐らくといいますか、私の今知る限りでは今委員の指摘されるような御懸念というのはいささか恐縮、失礼ですが、杞憂にすぎないと言っておきたいと思います。
○桜内文城君 杞憂であればまさにいいんですが。
 もう一つだけこれに関連して懸念申し上げておきますと、今回、何で私がこうやって通信傍受法との対比とか言っているかといいますと、今この令状の名あて人がプロバイダーなわけですね、実際にデータがある。その通信を行っている被疑者といいますか、まだ捜査の段階ですので、その者が、この令状が請求されて、出されて通信記録が差押えされているということを気付かない可能性が非常に高いわけです。
 それは、先ほど大臣が手紙も犯罪に関するんであれば捜査のために必要であれば差押えすることができる、もうおっしゃるとおりなわけですけれども、通常、手紙とかであれば、自分の手元にあるとか、犯罪に関するんであればどこかに隠しているんで、令状が出て捜査に来れば、ちょっとこれどうしようかなとまず考えるというか、防御権といいますか、決して犯罪者の防御権というのが、ないがしろにするつもりもありませんけれども、せめて今回のこの記録命令付差押令状の場合、被疑者の防御権というものの関係からも、令状主義といいますか、先ほどから何度も言っていますけれども、通信傍受法と似たような関係になるんではないかなという懸念を抱いておるんですけれども、この防御権の観点からどのように大臣お考えになりますでしょうか。
○副大臣(小川敏夫君) 委員は通信傍受法との関係で比較して手続の相違点を指摘されていると思うんですが、私が考えるところ、この通信傍受というのは、言わばこれから来る通信を待ち構えてその通信を聞くわけでございますが、そうすると、ありとあらゆる通信を聞いてしまうわけでございます。すなわち、犯罪に関係する通信を待ち構えておるわけですが、待ち構えているときに犯罪と全く無関係の通信もこれは当然聞いてしまうわけでございます。そうした意味で、非常に犯罪捜査に必要であるといっても、なおプライバシーを侵害するという場面も十分にあり得ることから、より慎重な、厳格な手続を設けているということにあると思います。
 そして、本件のこの差押えは、これから来るものをずっと待ち構えていて幅広く受け取るというのではなくて、やはりその令状発付の時点でたまっているものの中で犯罪に関係するものに限定してこれを差し押さえるということでございますので、やはり通信傍受法とは違って、つまり通信傍受法が全てを待ち構えていて犯罪に関係しない通信まで入手してしまうという要素がないと考えられますので、やはり手続的には通信傍受法が求めるようなところまでの要件は規定していないのではないかというふうに思っております。
○桜内文城君 副大臣がおっしゃることも分からないではないんですけれども、実際に法務省の方にこの記録命令付差押えの令状の請求を行う際どんな形になるのかということをお伺いしたところ、やはり捜査の段階ですのである程度広めに通信記録の特定を行うのはやむを得ないと、そうしますと、メールなりをプロバイダーの場所なりにおいてその記録を差し押さえる場合に犯罪と無関係なメールが含まれることも否定できませんというお答えでした。
 そういった意味では、やはり差押え対象の限定ですとか、そこがまさに、先ほどから申していますように、捜査機関の運用に委ねられている部分が非常に大きい場面ですので、そこが、杞憂と言われるかもしれませんけれども、私は懸念を抱かざるを得ないということを申しておきます。
 あと一つ、時間がないので、これに関連してお聞きしておきたいのが百九十七条三項で、今回新たにできます保全要請ですけれども、この保全要請については非常に要件厳しくといいますか限定的に今回の案ではなっておりまして、そこは評価するところではあります。
 ここでお聞きしたいのは、この保全要請の法的性質といいますか、これは行政指導なのか行政処分なのか、そしてまた、これによってまた変わってくるかもしれませんけれども、不服申立てができるのか否か、この点について、ちょっと細かいので刑事局長にお尋ねいたします。
○政府参考人(西川克行君) 保全要請は、保全要請という制度でございますので、法的には義務付けをするということになりますが、これに違反しても罰則等はございませんので、実際の実質的な強制力が行使されるというそういう類いのものではないと、そういうことでございます。
 それから、もう一点は……
○桜内文城君 不服申立て。
○政府参考人(西川克行君) 不服申立ての手続についてはございません。
 というのは、これはあくまでそれまでの通信の履歴が保存されるというだけのことでございまして、もし期間を経過するとそれはその後消去をされる、もし捜査機関が必要であれば別に令状請求をして差押えをしなければならないと、こういう手続になっておりますので、それ以外の不服の申立ての手段はございません。
○桜内文城君 今の立て付けがそうであるとしても、立法論としては、やはり捜査機関がプロバイダー等にこうやって協力を求めていくものである以上、公権力の行使、国家刑罰権の行使といいますか、捜査権にかかわることですので、やはり何らかの不服申立ての手続、手段というものは、立法論として申し上げますけれども、準備しておくべきではなかったのかなということを御指摘申し上げて、時間がなくなりましたので、今日はこれで終わります。
○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 人に被害を与えるいわゆるコンピューターウイルス、その被害はなくさなくてはなりません。しかし、この法案には、内心の自由とか通信、表現の自由にかかわって、様々国民や関係者から疑問が寄せられておりますし、衆議院の議論を聞いておってもこの本院での議論を聞いておりましても、与党の皆さんからも様々な、かなり根本的な疑問も出されておりまして、慎重審議を是非求めたいと思います。
 そこでまず、法案は、いわゆるコンピューターウイルス、不正指令電磁的記録について、実際のウイルスによる被害が生じていないのに、その前の予備的行為を最も早い作成という段階で処罰をするというものになっております。予備的行為が処罰される例は、銃刀法違反とか劇薬、毒物等の不法な入手、所持などがありますが、いずれもそれ自体が人の生命や身体に危険を生じさせるものであります。この間の答弁では、コンピューターのプログラムは社会生活の重要な基盤だと、この信頼性を確保するために危険犯として、通貨偽造や文書の偽造、有価証券偽造などと並ぶ形で作成罪としたと、こういうふうに言われております。
 しかし、このウイルスの作成が通貨偽造と同等であるということで、作成段階で処罰をするような社会的な合意やそういう要請が果たしてあるのか私は疑問なんですが、いかがでしょうか。
○国務大臣(江田五月君) 委員おっしゃるとおり、コンピューターネットワークの社会的信頼というものをしっかり確保していかなきゃいかぬという、そういう社会的法益、これに対する侵害という意味では、コンピューターウイルスを作成する行為というのは社会的法益への害悪の根源をつくり出すということでございますので、当罰性は十分あると。
 作成罪というのは、現に被害が発生していないのになぜ当罰性があるんですかという指摘がございましたので、通貨偽造の場合でもその他のいろんな偽造の場合でも、作成という行為で既に当罰性はあるんだということを言ったわけで、もちろん通貨偽造の場合とウイルスの作成の場合と、それはそれぞれ違うのは当たり前、しかし、どちらも言ってみれば危険犯であり、社会的法益に対する侵害という点では共通していると思います。
○井上哲士君 そういう要請や合意があるのかということを私は聞いたんですが。
 この作成罪がなければコンピュータープログラムへの社会的信頼を保護できないということでこの作成罪の創設を含む刑法改正案が提出されたのは、もう二〇〇四年なんですね。これは七年過ぎております。じゃ、それだからといって、この間コンピュータープログラムへの社会的な信頼が失われたかと。個々にはいろんなウイルスの事件ありました。しかし、むしろコンピューターの利用は広がっておりますし、携帯電話などはもう電話機能付きコンピューターという状況に今なってきているわけですね。
 もちろん、だからこそウイルスの被害についてきちっと実際に被害を生んだ者を処罰する法整備は必要だと思います。しかし、それを超えて、被害が生じていないのに、どんな被害になるのか分からないのにそういう作成段階から処罰する必要性があるのかと。それをやらなければコンピュータープログラムへの社会的信頼性が崩れるというような立法事実が果たしてあるんでしょうか。
 もう一度お願いします。
○国務大臣(江田五月君) コンピューターネットワークについて、私も自分のウエブサイトを開設をしてかれこれもう十年ちょっとになるかと思います。活動日誌を毎日更新しているので、時にフリーズしたりして困ることがあって、私なんかそんな技術もありませんからお手上げになってしまうんですけれども、しかし、今からもう、そうですね数年前ですか、コンピューターウイルスというのはなかなか大変だと、これはもうどうにもならぬと、アメリカの軍事技術からスタートしたコンピューターネットワークの世界だけれども、やっぱりこれはどこかでもう崩れてしまうんじゃないかと言われたような時期もございました。そういう時期を経て、しかし、やっぱり多くの皆さんが、コンピューターウイルスもどんどん進んでくる、それに対するいろんな対抗策もどんどん進んでくる、私なんかも、何といいましたかね、トレンドマイクロといいましたか、そんなようなものを入れたりとか、そのほかのアンチウイルスのソフトを入れたりとかいろんなことをやって、そして今のこういう時期になってきているので、やはり私はウイルスとの闘いというのはずっとこれからも続いていくんだろうと思います。
 そんな中で、やはりそういう社会的な信頼というのを守るに際して、その根源を作り出してしまう、社会的信頼を壊す根源を作り出してしまうコンピューターウイルスの作成というところに焦点を当てて、これに当罰性を持たせるということは必要なことだと思っております。
 ただ、コンピューターウイルスがどこかにあるんじゃないかといってどんどんどんどん捜していってというようなことができるかというと、それは捜査のいろんな手法についての司法チェックというのもあるわけですから、何かコンピューター監視のためにどんどん人のコンピューターの中へ捜査機関が入れるようになってしまうとかいうようなことはありませんし、また作成罪も、現実に摘発する場合には、それは一定の、コンピューターの不具合がいろいろ出てきたような場合に捜査の端緒をつかむというようなことがまあ一般的ではあろうと思います。しかし、やはり作成罪も当罰性があると思っております。
○井上哲士君 恣意的捜査の問題は後ほど聞きますけどね。
 通貨偽造というのは印刷物としての偽造紙幣が例えば現に誕生するわけですね。誰が見てもあると。偽造一万円札使ったら一万円の被害が出るのはこれはっきりしているんです。しかし、コンピューターソフトの開発というのは、その人の表現の自由にかかわる問題でもあるわけですね。作成作業というのは、言わば内心の自由の枠内で作っているわけです。コンピューターの中の作業でとどまっている段階というのは、やっぱり自分の頭の中での作業に等しいわけですね。我々だって、頭のキャパシティー低いですから、自分で文書を作って、取りあえずそこで保存して、しばらく忘れておいて、また開いてぱっと思い出すということはあるわけですね。
 つまり、そういう自分の頭の中にある、まだ外界との接触はない、こういう段階を処罰の対象とするということは、やはり内心の自由、表現の自由に踏み込むということになるんじゃないでしょうか。
○国務大臣(江田五月君) そういう心配ももちろんあるので、したがって、当然、故意犯であり、あるいは目的犯であり、更に正当な理由がないというような要件も付けて、そうしたチェックポイントについて、これもやはり、そういうチェックポイントに対する構成要件的な故意も当然それは故意犯ですから必要なわけですから、いろんなそういう要件を付け加えて今回の作成罪の規定になっているわけでありまして、濫用の危険を防止するための要件というものは十分に付け加えたと思っております。
○井上哲士君 これからウイルスが社会に出ていくその元を作り出す行為だというような話もあるわけですが、しかし出ていくかどうかというのは分からないわけですね。仮に作成を始めた段階ではこれをばらまいてやろうと考えて始めたけれども、作っているうちに心が落ち着いてきて、やっぱりそれはやめておこうと、言わば自分の自己満足の範囲で作るということだってあり得るわけですね。そういう様々な問題があると。
 つまり、そういうまだ社会と接触していない、そこでとどまっている段階をも処罰をするということがやはり内心の自由に踏み込むということになるんじゃないかということなんですが、どうでしょうか。
○国務大臣(江田五月君) 正当な理由がないと、これも、自分で正当な理由がないということは当然分かってないといけない。そして、人の電子計算機における実行の用に供する目的と、自分のコンピューターの中でじゃない、他人のコンピューターにおける実行の用に供する目的と、これもやっぱり自分の心の中にちゃんとそういう目的がなきゃならぬ。その目的というのは、もちろん、今、捜査の可視化の問題など確かに議論になっておりますが、やっぱりこれは、何か例えば友達同士のメールであるとか、あるいは自分のいろんなメモであるとか、そういうものによってこうしたことも判断できなきゃいけないということでございまして、そうしたものをちゃんと用意をしていますので、自分でいろいろコンピューターウイルスというのはなかなかどうやったらできるのかな、ちょっと試してみようという程度では作成罪にはならないわけですから、そこは是非御理解いただきたいと思います。
○井上哲士君 内心の自由を侵すというおそれということについて、今の答弁では私は納得できません。
 実際にはどういうことが懸念をされるのか、具体的にちょっと当局に聞きますが、作成というのは、当該電磁的記録について、その作成に着手した段階か、それとも作成途上でもいいのか、完成した段階か、どれをもって作成と言うんでしょうか。
○政府参考人(西川克行君) 作成ということですが、これは、当該電磁的記録等を新たに記録媒体上に存在するに至らしめるというところまで必要であるというふうに考えております。したがって、そのような指令として機能するに十分な内容のプログラムを新たに記録媒体上に存在するに至らしめると、その段階が作成に当たると。もっとも、この中にはプログラム自体以外にソースコードが完成した段階、これも入っておりますけれども、要は、そういうものが存在した段階で作成になるというふうに考えております。
○井上哲士君 コンピューターの中身も本人の頭の中も外からは知ることはできないわけですね。だから、その人が作っているプログラムが、プログラムとしては完成はしていないけれども、しかしウイルスとしての機能を持つようになれば、もうそれは作成ということになるということだと思うんですが、そういうことはどうやって捜査機関は知ることができるんですか。
○政府参考人(西川克行君) それは、捜査の端緒という問題ですので一概には言いづらいと思いますが、一番多い例としては、例えば不正指令電磁的記録供用罪、これが実際に行われて被疑者を検挙した場合、捜査を進めた結果コンピューターウイルスを作成していたと、このような場合が比較的多くなるというふうには思われますが、ただ、供用罪の検挙が先行しない場合であっても、例えば不正アクセス禁止法違反が先行して、その結果コンピューターウイルスを作成していたというのが新たに分かるとか様々な場合が考えられるというふうに思っております。
○井上哲士君 つまり、何らかの実害が出て、それを端緒に遡ってこの作成に行くんだという御説明だったと思うんですが、どうも話が違ってきていると思うんですね。
 例えば、サリンなんかばらまいて被害が出る前に検挙しなくちゃいけないと、それと同じだなんということを随分言われたもんですよ。つまり、実害がまず出ていなくても、とにかくまだ作成をしているという段階からやる必要があるんだということをうんと強調していたのに、今になったら、その実害が出てから遡ってやるというお話は、どうも私は納得しないんですよ。逆に言えば、実際に害が出ていない段階でその作成を摘発し、処罰するということが普通の捜査手段ではなかなか難しいということを逆に認めているようなことだと思うんですね。やはり、この作成段階を問うということは捜査機関の恣意的な捜査とか見込み捜査、こういうものを生む可能性が強いんじゃないですか。いかがですか。
○政府参考人(西川克行君) 必ずしもその供用罪が先行するというわけではありませんで、例えば不正アクセスだけは実施されていると。ところが、本人の方をよく調べてみると、その後、その不正アクセスした後に何らかのパスワード等を取得するためにウイルスの開発をしていたと、こんなような場合も考えられるわけでございますので、必ずしもその供用が先行するというわけではないというふうに思います。
 それから、この法案自体については、もちろん電磁的記録の差押え等について、それの、電磁的記録というものの態様に応じた差押え等の導入はされておりませんが、特別な捜査手法を導入しようというものではございません。捜査機関については、通常の令状主義の下で刑事訴訟法に基づいて対応するという以外の手段は許されていないわけでございますので、そのように対応することになろうというふうに思っております。
○井上哲士君 これまでも捜査機関のいろんな違法、不当な捜査というのはこの委員会でも問題になってきたわけですね。
 例えば、国家公務員の人が休日に自分の居住地で政党機関紙まいただけで逮捕されたという事件もありました。これ、一年間も公安警察は内偵捜査していたんですね。裁判所に出た証拠だけでも、二十九日間連続、延べ百七十一人の捜査官を投入して、歯医者に行ったとか友達と劇を見に行ったと、そういうものを全部ビデオで記録していますよ。
 こういう監視的な手法がますます合理化をされると。そして、見込みでコンピューターを差し押さえるというふうなことだって現に起きてきているから多くの人たちは懸念を持っているんですね。今の状態でもあるんですよ。だから、何か懸念はないようなことを言われてもこれは払拭できないんです。やっぱりそういうものを、口実を更に与えるというようなことは私はやるべきでないと、こう思うんですね。
 しかも、ウイルスの定義が非常に広いということがそういう恣意的な運用を可能にするということが関係者の不安と萎縮を招いているんですね。サイバー条約では犯罪化を求める対象を絞っております、幾つかの犯罪について。ところが、この法案は、先ほど来ありますように、非常に幅広く処罰をしております。サイバー条約よりも広いということは法制審でも認めていらっしゃるわけですが、なぜ犯罪を行うためのものというふうに限定せずに幅広く処罰対象としたんでしょうか。
○国務大臣(江田五月君) 確かに、サイバー犯罪条約では、二条から五条まで、これが行為が類型化されていて、そして六条でこれを可罰化しろということになっていますが、この法案は、その二条から五条までのものに更にプラスアルファして今の若干のものを付け加えているのは事実でございます。
 その点ではサイバー条約より広めという御指摘はそのとおりですが、しかし、ここは、私ども考えて、サイバー条約六条のように、一定の犯罪を行うために使用されることを意図してこれらの犯罪を主として行うために設計された装置を製造したというふうな構成にしますと、主観的要素に力点を置いた構成要件ということになってしまいますので、本件のように、むしろ客観的な行為というものを摘示して、これを構成要件にするという方が適切であると、こういうことで、社会的法益に対する犯罪ということで今回のような立法にしたところでございます。
○井上哲士君 このくくりの方がうんと主観的なものにしか私には見えないんですが。やはり幅広くて曖昧な定義というのは捜査機関に広い裁量を与えてしまうということになると思うんですね。
 この定義にある、意図に沿うべき動作をしないというのはどういうことを言うのか。例えば、あるプログラムを開いたら商業ポップアップが出るようになったとか、さらに、例えば非常に不愉快なポップアップが出るようになったとか、コンピューターとしては止まることまで至らないけれども非常に速度が遅くなったとか、これ、それぞれこの意図に沿うべき動作をしないということに当たるんでしょうか。
○国務大臣(江田五月君) ポップアップ広告のことを指摘をされましたが、まあポップアップ広告というのはインターネット利用者が通常予想し得る動作をするにすぎないと。しかも、これは社会的に許容されているものであると考えられますので、インターネットでいろんなサイトにアクセスするとそうしたものが出てくることもあるというのは皆分かっておることでございますから、ポップアップ広告が不正指令電磁的記録に当たるとは考えておりません。
○井上哲士君 当局に聞きますけど、いわゆるネットを開いたら出るだけでなくて、特定のプログラムを開いたら、その後ほかのを開いたときにもポップアップが出てくることがありますよね。そういう場合はどうですか。
○政府参考人(西川克行君) その場合でも、通常、そういうことは間々あるという場合であるとすると、その不正なもの、不正な動作に当たるかどうかという点で消極に解されることが多いというふうに思います。
 ただ、程度問題というのはあるかなと。例えば、ポップアップの中身が非常に反社会的なものであるとか、そういうものについては、社会的に許容されない場合もあり得るのかなという感じはいたしますが、これは個々の事例の判断だと思っています。
○井上哲士君 衆議院の答弁では、プログラムの具体的な機能に対する一般に認識すべきことと考えられていることが基準だと、その判断に当たってはプログラムの機能の内容や機能についての説明内容等を総合的に判断するということになっているんですね。特定のプログラム開いたら後ほどどんどんポップアップが出てくるというのは、少なくともその機能ではないと思うんですよ。許容されるということを言われましたけど、ここでもちょっと判断が、基準がどうも答弁ごとに変わっているというふうに私は思えてならないんですね。
 こういう構成要件の曖昧さがバグをめぐる問題で非常に浮き彫りになりました。今日もずっと議論があるんですが、衆議院の二回目の答弁で大臣が言われた、非常に重大な影響を及ぼすようなものになっている場合、それと知り得てやったら可能性はあるということを言われていますが、この非常に重大な影響というのはどういうものでしょうか。
○国務大臣(江田五月君) バグというものは、元々バグがコンピューターウイルスということはないんだと思います。しかし、バグとウイルスとの定義の仕方なんだろうと思うんですけれども、バグがあれこれあれこれ操作されて何か大変重大な影響を与えるような、コンピューターの中身を全部外へ出すとか全部消去するとか、そんなものに変質したときに元々バグから始まったんだからウイルスではないというようなことにはやっぱりならないんじゃないかと。もうこの段階になったらウイルスということになっちゃったと。それは作成には当たらないんですが、しかしそのなっちゃったものをあえてウイルスとして機能させようというので、これを使ったらこれは供用罪になるということを言ったわけでございます。
○井上哲士君 先ほども今も供用罪と言われたんですが、衆議院での質問は、バグがあるということを指摘されて知りながら、そのまま公開を続けた場合には提供罪になるのかという質問だったんです。で、あり得るという答弁をされました。ここでもう一回されているんですね。
 ところが、先ほどの答弁は、そういうものを知ったほかの人がばらまいたら、これは供用罪に当たり得るという、ちょっと違う答弁を私はされていると思うんですね。バグを持つプログラムを作った本人が、それを知りながら公開し続けていた場合というのは提供罪に当たるんですか、当たらないんですか、本人の場合。
○国務大臣(江田五月君) バグが入っていることを知っていながらそれを公開し続けたということが、これは供用か提供かという言葉をちょっと混乱したかもしれませんが、百六十八条の二の第二項に当たらないということは先ほども申し上げたとおりです。
○井上哲士君 提供罪には当たらないんだということが今答弁がありましたが、つまり、そもそもバグがそういうウイルスとしての機能を持ったと。つまり、バグというのは機能じゃないんですね。機能と言った段階でもうバグでなくなるんだろうと思うんですが、どうもその辺が聞いていてもよく分かりません。
 衆議院の参考人質疑のときに、今井参考人が、バグがこの百六十八条二の第一項一号に当たることは否定できない、その不正な動作がどの程度かが問題だという言い方をされたんですね。ですから、バグの程度によってそれがウイルスになるかどうかというような言い方をされました。これもいろんな疑問に拍車を掛けておるんですけど、法制審の部会の当時の幹事もされたような方がこういうことを言われ、大臣もいささか訂正をされるような答弁をされるぐらい、私は非常にやっぱりこの定義、構成要件が分かりにくくて曖昧で広いということがこういうことをつくり出していると思うんです。やはり、きちっと類型を挙げるなどの構成要件を具体的にして絞り込むということをやらなければもっともっと萎縮効果はあるでしょうし、様々な濫用というおそれもあるというふうに思いますけれども、そういうふうにもっと構成要件を絞り込むべきじゃないでしょうか。
○委員長(浜田昌良君) 小川法務副大臣、簡潔に答弁お願いします。
○副大臣(小川敏夫君) はい。
 バグというのは一般的には当たらないと思います。ただ、学問的、観念的な話で、あるいはバグの定義の中で、バグといったっていろんなものが、様々なものがあるけれども、もし万が一この構成要件に当たるようなバグが存在したと、した場合という観念的な世界で、した場合のことで、それまで絶対に、もう全て一〇〇%完璧にならないよという意味ではなくて、まさにバグの中のごくごく極端な例で、観念的な世界の中で構成要件に当たるものがあれば、それでそれを知っていて使えば供用罪になるよという、そんな話だというふうに私は理解しております。
○委員長(浜田昌良君) 井上哲士君、おまとめください。
○井上哲士君 終わりますが、構成要件に当たり得るバグがあり得るということも、私は大変今聞いて疑問を深めました。次に質問したいと思います。
 以上です。
○委員長(浜田昌良君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
   午後零時三十一分散会