第177回国会 法務委員会 第17号
平成二十三年六月十六日(木曜日)
   午前十時開会
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   委員の異動
 六月十四日
    辞任         補欠選任
     青木 一彦君     森 まさこ君
     石井 浩郎君     溝手 顕正君
     金子原二郎君     松下 新平君
     渡辺 猛之君     丸山 和也君
 六月十五日
    辞任         補欠選任
     江田 五月君     難波 奨二君
     今野  東君     松浦 大悟君
     溝手 顕正君     藤川 政人君
 六月十六日
    辞任         補欠選任
     難波 奨二君     白  眞勲君
     松浦 大悟君     今野  東君
     藤川 政人君     磯崎 仁彦君
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  出席者は左のとおり。
    委員長         浜田 昌良君
    理 事
                中村 哲治君
                前川 清成君
                森 まさこ君
                桜内 文城君
    委 員
                有田 芳生君
                小川 敏夫君
                今野  東君
                田城  郁君
                那谷屋正義君
                難波 奨二君
                白  眞勲君
                松浦 大悟君
                磯崎 仁彦君
                藤川 政人君
                松下 新平君
                丸山 和也君
                山崎 正昭君
                木庭健太郎君
                井上 哲士君
                長谷川大紋君
   衆議院議員
       法務委員長代理  階   猛君
       法務委員長代理  辻   惠君
   国務大臣
       法務大臣     江田 五月君
   副大臣
       法務副大臣    小川 敏夫君
   大臣政務官
       法務大臣政務官  黒岩 宇洋君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局家庭局長   豊澤 佳弘君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        田村 公伸君
   政府参考人
       警察庁長官官房
       審議官      田中 法昌君
       金融庁総務企画
       局審議官     居戸 利明君
       金融庁総務企画
       局審議官     森  信親君
       金融庁総務企画
       局参事官     遠藤 俊英君
       法務省民事局長  原   優君
       法務省刑事局長  西川 克行君
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  本日の会議に付した案件
○理事補欠選任の件
○政府参考人の出席要求に関する件
○情報処理の高度化等に対処するための刑法等の
 一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付
 )
○東日本大震災に伴う相続の承認又は放棄をすべ
 き期間に係る民法の特例に関する法律案(衆議
 院提出)
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○委員長(浜田昌良君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 昨日までに、青木一彦君、渡辺猛之君、石井浩郎君、金子原二郎君、江田五月君及び今野東君が委員を辞任され、その補欠として森まさこ君、丸山和也君、藤川政人君、松下新平君、難波奨二君及び松浦大悟君が選任されました。
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○委員長(浜田昌良君) まず、理事の補欠選任についてお諮りいたします。
 委員の異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。
 理事の選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(浜田昌良君) 御異議ないと認めます。
 それでは、理事に森まさこ君を指名いたします。
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○委員長(浜田昌良君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に警察庁長官官房審議官田中法昌君、法務省民事局長原優君及び法務省刑事局長西川克行君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(浜田昌良君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
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○委員長(浜田昌良君) 情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○中村哲治君 おはようございます。民主党の中村哲治です。
 いわゆるフリーソフトを始め、パソコンで使われるアプリケーションソフトには、いわゆるバグが付き物です。しかし、これまでの質疑では、バグが今回の改正案で創設されるコンピューターウイルス罪に該当し得るという答弁がなされています。
 そこで、改めてバグについて、ウイルス罪、すなわち不正指令電磁的記録に関する罪は成立するのでしょうか、確認をいたします。
○国務大臣(江田五月君) バグとは、プログラミングの過程で作成者も知らないうちに発生するプログラムの誤りや不具合をいうもので、一般には避けることができず、そのことはコンピューターを扱う者には許容されているものと理解しています。逆に、このようなものまで規制の対象としてしまうと、コンピューターソフトウエアの開発を抑制する動きにつながり、妥当性を欠くと考えています。
 その上で、バグとウイルスに関する罪との関係について簡潔に述べると、作成罪、提供罪、供用罪のいずれについても、バグはそもそも不正指令電磁的記録、つまりウイルスに当たりませんので、故意や目的を問題とするまでもなく、これらの犯罪構成要件に該当することはありません。
 この点、私の衆議院における答弁は、バグと呼びながら、もはやバグとは言えないような不正な指令を与える電磁的記録について述べたものであり、誤解を与えたとすれば正しておきます。
○中村哲治君 今までの大臣の答弁から、重大なバグがウイルス罪に当たるのかが論点となってまいりました。今伺った御答弁では、重大なバグであっても不正指令電磁的記録に関する罪は成立しないということでよろしいでしょうか。
○国務大臣(江田五月君) バグは、重大なものとはいっても、通常はコンピューターが一時的に停止するとか再起動が必要になるとかいったものであり、バグをこのようなものと理解する限り、重大なものであっても、先ほど申し上げたとおり、不正指令電磁的記録には当たりません。
 他方、一般に使用者がおよそ許容できないものであって、かつソフトウエアの性質や説明などからしても全く予期し得ないようなものについては不正指令電磁的記録に該当し得るわけですが、こうしたものまでバグと呼ぶのはもはや適切ではないと思われます。
 もっとも、一般には、そのようなものであっても故意や目的が欠けますので、不正指令電磁的記録に関する罪は成立しません。すなわち、作成罪であれば作成の時点で、提供罪であれば提供の時点で故意及び目的がなければそれらの罪は成立しませんし、そのプログラムを販売したり公開した場合でも、その時点で重大な支障を生じさせるプログラムであると認識していなければ供用罪は成立しません。
○中村哲治君 アプリケーションソフトの中でも特に問題として挙げられてきたフリーソフトのバグについて伺います。
 フリーソフトを作成してウエブサイト上で公開していた者が、当該ソフトウエアについてバグの存在を指摘されたものの、そのまま公開して第三者にダウンロードさせた場合、不正指令電磁的記録供用罪は成立するのでしょうか。今までの大臣答弁では、ハードディスク内のファイルを全て消去してしまうようなものもバグとしてウイルスに当たる可能性があるとの御趣旨でしたが、その点についてはいかがでしょうか。
○国務大臣(江田五月君) フリーソフトの場合、特に使用者の責任において使用することを条件に無料で公開されているという前提があり、不具合が生じ得ることはむしろ当然のこととして想定されており、一般に使用者もそれを甘受すべきものと考えられますので、不正指令電磁的記録には当たりません。
 他方、例えば文字を入力するだけでハードディスク内のファイルが一瞬で全て消去されてしまうような機能がワープロの中に誤って生まれてしまったという希有な事態が仮に生じたとすると、そのようなものはフリーソフトの使用者といえどもこれを甘受すべきとは言い難いので不正指令電磁的記録に該当し得ると考えられますが、もはやこのような場合までバグと呼ぶのは適当ではないと思われます。
 もっとも、この場合でも、先ほど申し上げたとおり、作成罪は成立しませんし、供用罪も、重大な支障を生じさせるプログラムの存在及び機能を認識する前の時点では成立しません。
 そして、そのような問題のあるプログラムであるとの指摘を受け、その機能を十分認識したものの、この際、それを奇貨としてこのプログラムをウイルスとして用いて他人を困らせてやろうとの考えの下に、あえて、本当は文字を入力しただけでファイルを一瞬で消去してしまうにもかかわらず、問題なく文書作成ができる有用なソフトウエアであるかのように見せかけ、事情を知らないユーザーをだましてダウンロードさせ感染させたという極めて例外的な事例において、故意を認め得る場合には供用罪が成立する余地が全く否定されるわけではありませんが、実際にはこのような事態はなかなか想定し難いと思われます。
 このように、私が申し上げているのは、極限的な場合には供用罪が成立する余地がないわけではないという程度のものでございますので、御安心いただきたいと思います。
○中村哲治君 終わります。
○有田芳生君 サイバーテロというものはリアルなテロと同じものであるという時代認識に基づいて、去年の五月ですけれども、アメリカのオバマ大統領は軍にサイバー司令部をつくるという方針を発表いたしました。さらには、昨年の十月には本格的な始動をさせるに至りました。それは、アメリカ政府あるいはグーグルなどがサイバーテロによって攻撃をされたということを根拠といたしましたが、さらに、アメリカ政府は、今年の五月に国際サイバー空間戦略というものを発表いたしました。
 何だか、国家と国家、あるいは国家と大企業の戦いであるということは事実ではあるんですが、私たち日本人も含めた暮らしに大きな影響があるというのは、皆さん御承知のように、ソニーのプレイステーションネットワーク、そこにハッカーが入り込んで、全世界七千七百万人の使用者情報が流れていった。これはスペインやトルコでも逮捕者が出ておりますけれども、そのソニーのネットワークエンタテインメントのティム・シャーフ社長が今年の五月二日にアメリカの下院で行われた公聴会でこのように発言をしております。サイバー攻撃の脅威を避けられない最近の現状を思い出してください、ビジネスや政府機関、公的機関、個人は全て犠牲者になり得るのですと。つまり、国家と国家、あるいは国家対企業のサイバー上の戦いというだけではなくて、それは個人にも大きな影響を及ぼすんだというのが現代社会の、とても大きなネット社会の負の側面だろうというふうに私は考えております。
 もう少し具体的に言いますと、アメリカのセキュリティー対策大手のRSA、RSAセキュリティという会社がありますけれども、そこの主力商品の一つである使い捨てパスワード端末、ここにハッカーが不正に入り込んで、四千万台の端末を替えなければいけない可能性が出てきている。これは、端末としては日本の金融機関や企業でも使われている。つまり、国会の中の銀行などに行っていただいても分かるんですけれども、今や使い捨てのパスワードというものが結構流通しているんですよね。そういうものがハッカーによって侵入をされて悪質な利用がされる可能性が出てきているというだけではなくて、既に防衛産業であるロッキード社にも不正にこのハッカーが入り込んでいるという現状、つまり私たちの暮らしにさえ大きな影響を与えるというのが現代社会の負の側面だろうというふうに思います。実際に、インターネットバンキングを通じて、これまでにも数十万円あるいは多いときには数百万円のお金が自分が知らないうちに他人の口座に流れていってしまっている。
 そういうのがネット社会の便利な側面の反対側の負の側面だと私は考えておりますけれども、この日本社会においても、私たちの暮らしに大きな影響を与えるネット犯罪というものがどのように推移してきているのか。恐らく増えているんだと理解をしますが、その中でも、ただ数だけではなく、具体的に私たちの暮らしにどういう影響を与えているのかという、そのことについて、まず警察当局にお聞きをしたいと思います。
○政府参考人(田中法昌君) 平成二十二年度中のサイバー犯罪の検挙件数を見ますと六千九百三十三件でありまして、前年と比べると二百四十三件の増加となっております。平成十二年に統計を取り始めましたが、それ以来一貫して増加傾向にあります。
 身近なサイバー犯罪も数多く発生しておりまして、例えば七都県の銀行のネットバンクに次々と不正アクセスし、自分の銀行口座に合計二百十四万円を不正送金したという事件で、昨年十一月に三十三歳の男を不正アクセス禁止法違反及び電子計算機使用詐欺等で検挙した事例もあります。
○有田芳生君 つまり、今の御指摘にも明らかなように、ネット犯罪というのは、大きな企業あるいは国家に対する犯罪行為だけではなくて、ネット社会においては私たちの暮らしにとても深く知らないうちに影響を与えるものであるというふうに考えますと、オバマ大統領のサイバー司令部という大きな課題がありますけれども、このネットテロ時代と言っていいんでしょうか、サイバーテロ時代における時代認識を大臣の方からお聞きをしたいと思います。
○国務大臣(江田五月君) 現代社会において世界的な規模のコンピューターネットワークが形成されて、コンピューターが広く社会に普及して日ごろの社会生活上のインフラとして欠かせないものになっていると、これは本当にそうだと思います。
 プレイステーションの例を委員最初にお出しになりましたが、私も報道でしか知りませんが、プレステ何とかというのが本当に大勢の人の日々の暮らし、暮らしというか遊びなのかもしれませんが、遊びであってもそこへいろんな個人の情報が入る、それがウイルスによっていろんなところへ飛び散って悪用される心配があるというようなことが、しかもそれが膨大な件数になっている。スペインでは逮捕者が出た。しかし、これはどうも関係なかったというようなことでありますが。
 そのようなことで、こういうプレイステーションのようなことだけでなくて、金融機関における決済システムであるとか、あるいはいろんな情報通信の世界であるとか、もう様々なところで今こうしたコンピューターネットワークというものが生活のインフラになっているのは事実。それだけ便利になってきたと同時に、それだけ脆弱性も増えているということで、便利な側面はこれはもちろん生かしていかなきゃならぬが、脆弱性の側面は極力抑えていかなきゃならぬということで、しかも、今の例でも分かるとおり、こういうコンピューターウイルスによる攻撃やコンピューターネットワークを悪用した犯罪、こういうサイバー犯罪、これが多発をしてきていて、これに対処するための法整備が喫緊の課題であると同時に、そうしたネットワークというのは、これはもう世界に広がっていて、犯罪も世界に広がっていると。
 そこで、サイバー犯罪条約、これを締結をしていかなきゃならぬと。日本は署名をいたしましたが、まだ入るに至っていないというような状況であると認識をしていて、こうしたものに対する対処、もちろんこれは非常に濫用されるんではないかという指摘もされておりまして、そのことに十分注意をしながら、しかし、やはり適切な法整備は早急に進めていかなければいけないものだと思っております。
○有田芳生君 いわゆるサイバー刑法について、これは大臣にお聞きをしたいんですが、これは大震災のどさくさ紛れに通過をさせようとしている悪法であるというような御指摘をなさる方もいらっしゃいますが、私の認識では、これはたしか三月十一日の午前の閣議で決まったものであって、もっと遡れば、サイバー犯罪条約の批准とか、あるいは更に言えば自民党政権時代からずっと議論してきた課題だというふうに理解をしておりますけれども、そこのところはいかがなんでしょうか。
○国務大臣(江田五月君) 確かに、一部に東日本大震災のどさくさ紛れでやろうとしているというような批判をされる方がおられますが、大変残念に思っております。
 事実は、今委員がおっしゃるとおり、震災発生前の三月十一日午前の閣議で決定をされ、大変残念ですが、その日の午後二時四十六分に震災が発生したと。まさか、閣議決定したから地震が起きたというようなことを言う人は、よほどためにする議論をする人でもそうは言わないだろうと思うんですが、そういうことでございまして、実際の国会への提出は、確かに閣議決定はしましたが、そういういろんなことがあって今年の四月一日ということになりましたが、これは閣議決定に基づくものであって、決してどさくさとかいう話ではございません。
 さらに、今委員おっしゃるとおり、平成十七年に国会に提出した法案の内容をベースとしながら、国会でのいろんな議論、さらに各党間のいろんな議論も踏まえ、与党の皆さんともいろいろな協議もさせていただいて今この法案として提出しているわけでありまして、是非とも早期に成立させることが重要だという点を御理解をいただきたいと思っております。
○有田芳生君 意図して他人のコンピューターに入り込んでそれを動かす、そしてそれが外部に流出をして問題が発覚して、そこを遡って摘発をするということは、それはあり得る、仕方がない当然のことであるという理解ができるんだけれども、ウイルスを作成しただけで罰せられるのかどうか、そういう不安もあるわけですよね。
 実際、震災の時期を通じても、各都道府県警などがサイバーパトロールというものを行って、公序良俗に反するものであるとか、そういうものをプロバイダーにチェックをしてもらうというケースが全国で四十一件ありましたけれども、果たして、実際に使われていなくてもウイルスを作っている人がいるんじゃないかということで、日常的に都道府県警察などがサイバーパトロールなどをやっていくのかどうか、そこのことを一つお聞きをしたいのと、そしてそれに関係して、サイバーパトロールというのはこれまでどのような形で行われてきているのか、そしてまた、この法律が通った場合に新しい組織体制をつくるのかどうか。
 それは、さっきオバマ大統領のサイバー司令部のお話をいたしましたけれども、アメリカでは千人のサイバー戦士というものがつくられまして、あるいは北朝鮮でも千人のそういう部隊がいる、あるいは中国でも電子戦団というようなことで、日常的にそういうチェックをするような組織ができていて、アメリカではこれから二万人から三万人にそういうサイバー戦士を増やすという方針を出しているんですよね。
 だから、この法律ができたときに、日本でもそういう不正なウイルスを取り締まるために新しい組織ができて日常的にパトロールをするのかどうかということについて、具体的に警察当局からお聞きをしたいと思います。
○政府参考人(田中法昌君) サイバーパトロールのやり方についての御質問でございますけれども、警察におけるサイバーパトロールというものは、警察の職員、警察官もおりますし、技術者もおります。また、警察から委嘱を受けた者がインターネット上に公開をされておりますウエブサイトや電子掲示板などを閲覧するということであります。これによって違法情報あるいは有害情報というものを把握するわけでありまして、他人のパソコンに侵入して保存されているデータを閲覧するというようなことは行っておりません。
 次に、体制についてのことでありますけれども、都道府県警察におきましては、これまでもサイバーパトロールあるいはサイバー捜査のため、IT企業の専門家などをサイバー犯罪捜査官ということで採用をいたしておりまして、専従のサイバー捜査体制を整備、構築をしてきたところであります。新設されますコンピューターウイルス罪も含めて、あらゆる法令を適用しまして今後サイバー犯罪に対処をしていきたいと考えておるところであります。
 体制につきましては、今後のコンピューターウイルス罪の発生状況などを踏まえまして、増加傾向にあるサイバー犯罪に適切に対処してまいりたい、そのための捜査力の強化にも努めてまいりたい、このように考えております。
○有田芳生君 もう一度確認をしておきますけれども、不正なウイルスを作っているのではないかという推測に基づいて他人のコンピューターに入り込むことはないという理解でよろしいんですね。
○政府参考人(田中法昌君) サイバーパトロールというのはあくまで公開された情報を見ておるわけでありまして、今委員のおっしゃったようなことはやりません、やっておりません。
○有田芳生君 そうしたら、作成をしているかどうかというのを確認するのは、その作った者が供用をしたときに発覚をして、そこで摘発をされるという、そういう理解でよろしいんですね。
○政府参考人(田中法昌君) ウイルスがあるかないかということにつきましては、いろんなケースがあるかと思います。
 例えば、おっしゃるように、ウイルスによって被害が生じる、被害者の申告がある、そこで差押令状等を取って、そのコンピューターを差し押さえ、検証した結果、やはりウイルスがあったという場合もあるかと思います。また、例えば、不正アクセス行為をやる、これによって、犯罪でありますのでこれの捜査をする過程でやはり捜索差押令状を取って検証をする、その結果コンピューター内にウイルスがあることが発覚するという場合もあるかと思います。
 いろんなケースはあるかと思いますが、ウイルスがあるかないかを見るためだけにサイバーパトロール等によってやるということはないと思っております。
○有田芳生君 その見るためだけにという、だけ以外のことで何か捜すことはあるんですか。ひょっとして、情報が入った、この人が不正なウイルスを作っている可能性があるという情報が入った、そのときに、その特定個人のところに入り込んでいくことはなさるんですか。
○政府参考人(田中法昌君) あくまで、裁判所の検証令状等があればそういうことも可能かとは思います。しかし、何といいましょうか、任意で勝手にやるというようなことはございません。
○有田芳生君 先ほど、震災が起きてから四十一件、都府県警から、公序良俗に反する遺体写真であるとか様々な不適切な情報について、プロバイダーにメールを通じて何とかならないかという、そういう口頭注意が警察庁から都道府県警に行ってプロバイダーに行っているんですけれども。
 やはり、この法案について危惧される方々の中には、幾らいい法律であっても、現在、法執行機関への不信感というものが広がっている状況の下で、何か恣意的な運用がなされるんではないかという危惧だというふうに思うんですよね。だから、サイバーパトロールで四十一件問題があるというときに、私はどうかと思ったんだけれども、今回の大震災というのは地震兵器によってある国が起こしたものであるというような、そういうネット上の文章があるんだけれども、それもチェックされるわけですよ。そこはもう言論の戦いで鎮静化させていくべきだと思うんだけれども、そういう恣意的な運用というものがこの法律でなされないかというところで、今お話しいただいたように令状がなければやらないんだという、そこのところをきっちり歯止めを掛けていただきたいと思いますが、そこのところの説明の強調がないと、何かパトロールやって怪しいなというところに入っていくというふうに理解されてしまいますので、そこのところをきっちりしていただきたいということに触れまして、時間がありませんので次に行きたいと思います。
 あと、裁判所の令状なしに本人にも知らせずに通信履歴を六十日間保全する、これに対してもネット検閲社会になるんではないかという指摘があるんですけれども、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(江田五月君) 保全要請という制度でございますが、これは電気通信を利用した犯罪において、犯人の特定等のためにやはり通信履歴を確保するという必要性は大きいと。そして、一般には通信履歴は短期間で消されてしまう場合が多いというようなことから、この迅速な保全ということで、必要な場合に捜査機関が通信事業者等に対して特定の通信履歴の電磁的記録を消去しないでおくように求めるということであって、取りあえず通信事業者のところで消さないでくださいねという要請をすると。
 そういう要請の制度でございますから、その要請を受けた事業者に一定の義務を課すということにはなって、したがって、その事業者が要請を受けた履歴を消去しないでおくことがその事業者にとって違法な行為になるということではないという。しかし、それを従わないからといって罰則があるというところまでの制度にはしておらず、さらに、保全された通信履歴はそのままで三十日とか、通じて六十日とかという期間の制限ありますが、そのままで置いていたらこれは捜査機関に別に捜査資料として取得されるものではなくて、それを今度取得しようとすると、ここは令状が要るというような縛りになっております。
 そういうようなことなので、これでコンピューター監視社会になってしまうんだというような濫用は生じないと思っておりますが、しかし不必要にどんどん保全要請をするというようなことがあっては困りますので、そこは必要な場合に限ってやれるんですよ、あるいは要請できる者はこういう人だけなんですよ、主体の方ですよね、書面でやらなきゃいけないと、そういうことは十分周知をしていきたいと思っております。
○有田芳生君 あと一点大臣にお伺いしたい点は、一枚の令状で、端末もサーバー情報、リモートアクセスなどの押収し放題ではないかと。これは憲法三十五条、捜索、押収の制限の規定、令状主義に対して、このままでは崩壊してしまうんではないかという指摘がありますけれども、それについてはいかがでしょうか。
○国務大臣(江田五月君) このリモートアクセス、私も本当にこうした分野、そう詳しくないんですが、例えば、私のパソコンがあります。私のパソコンの私のウエブサイトを開けばいろんな情報がそこにあるんですが、その情報の中には私のパソコンのハードディスクに入っているものばかりとは限らないんだろうと思うんですね。外の方のいろんなところに私の情報を置いておいていただいて、そこへアクセスして取ってくるというような、あるいはそれを私が操作をして作成をしたり、あるいは訂正をしたり、あるいは消去したりできるというようなものがあると。
 私のパソコンからは更に普通に一般に公開されている情報にアクセスすることもできるが、これについては私のパソコンで何か操作をするというようなことはできないというような仕組みなんだろうと思っておりまして、令状でリモートアクセスできる場合というのは、そういう私のパソコンに令状がかかると。その場合に、一定の令状上の記載に基づいて私のパソコンで作成したり変更したりできる電磁的記録を差押えの対象とするということでございまして、リモートアクセスだからどんどんどこまでも広がっていくんだというようなものではないと。あくまでそういう限定付きのものであって、憲法三十五条の令状主義をきっちりと満たすものであるというふうに認識をしております。
○有田芳生君 もう時間ですのでやめざるを得ませんけれども、先ほども指摘をしましたけれども、法執行機関に対する国民の間の広い不信というものが残念ながら広がっている状況の下で、やはりこの法律に対する危惧というものを表明される方がいらっしゃるというふうに思います。
 二〇〇六年四月二十八日、江田五月当時は議員ですけれども、サイバー条約に対する対応をやっていかなきゃいけないと。だけれども、いろんな危ない面もあるということを今からもう五年前ですけれども江田当時は議員が語っていらっしゃいますけれども、それから時間がたって今のお立場になってきておりますけれども、いわゆるこのサイバー刑法についてはきっちり歯止めが掛かっているんだという理解でよろしいですか。
○委員長(浜田昌良君) 江田法務大臣、おまとめください。
○国務大臣(江田五月君) きっちり歯止めが掛かっていると認識をしておりますし、私どもが与党として政権を担当する限り、この間説明してきたような歯止めはしっかりと守らせていくと申し上げておきます。
○有田芳生君 終わります。
○藤川政人君 自由民主党、藤川政人でございます。
 この法案は三月十一日、まさに東日本大震災が発生したその朝、閣議決定をされ、その日のうちに国会に提出されるという予定が、今般、今回まで延びたということであります。
 この法案について、まさに震災とは切っても切れない三月十一日という日に提出をされる予定であった。そういうことを踏まえて、本題に入る前に若干震災関係についてお尋ねをさせていただきたいと思います。
 まず、私からも、今回の震災で被災された方、お亡くなりになられた方に心からの哀悼の意を表したいと思います。
 今回の震災では、御遺体が発見されていない、いないが被災の状況からお亡くなりになった方と思われる方が多数いらっしゃいます。戸籍法に基づく死亡届の事務が市町村職員にとってかなり負担になっている、今こういう声が上がっております。もちろん、自治事務としての住基、そして法定受託事務としての戸籍、それは役所で基礎自治体が同じ、ほぼ戸籍係と住基の係が隣同士に並んでいるケースが多いんですよ。国民にとって、県民にとって、市民にとって、基礎自治体の窓口でその件についていろいろな事務を今行っているところであるんですけれど、今回の震災における戸籍法に基づく死亡届について、いわゆる法定受託事務について、現場の実態を踏まえて手続を簡略するなど、どのような対策を講じられておられるのか。これは、これからまだまだ死亡が確定、死亡届が確定しないと解決できない、それぞれの家庭の問題、それぞれ個人の問題、いろいろ発生すると思いますが、まずその件についての対応をお尋ねをさせていただきます。
○国務大臣(江田五月君) 死亡届の扱いについてということでございますが、御承知のとおり、死亡届は、死亡診断書であるとか死体検案書であるとか、そういうものを添付しなければこれは死亡届として扱えないということになっていて、一般には、死亡届が左側で、同じ紙の右側に死体検案書というのが付いて、検案した医師なら医師の記載がそこになされるというようなことになっております。
 しかし、今回、大変痛ましいことであり残念なことでございますが、行方不明という人たちが今朝の新聞で見てやっと八千をちょっと切ったぐらいになったでしょうか、まだかなりの数の人が行方不明と。行方不明といっても、どこかで生きていてほしいという思いを家族の皆さんなどお持ちになるのは、それはもうよく分かるわけですが、しかし、いろんな状況から、勤めに出ていた場所が津波でやられて、しかもその津波が来る直前までそこで仕事をしていたことがよく分かっていて、この三か月ほど全く行方知れずということになっていて、その現場はもう津波で本当に洗われてしまっている、どこからどう見てもこれは納得せざるを得ないという遺族の皆さん方の、そして諸般の事情でこれは届けを出さなきゃいかぬという、そういう思いというものがあるわけで、これにはやはりちゃんとこたえていかなきゃいけないと私ども思いました。
 そこで、死亡届に添付をする書類を簡素化するという、これを何とか是非制度として設けておきたいということで、市町村役場の担当の皆さんとも十分協議の上、先般これは通知を出しまして、マークシートでチェックをしていただく、それに若干の資料を付けていただくことで、市町村の役場の方でこれでよろしいということならそれでいいし、もし判断に迷うことがあったら法務局に聞いてください、そうするとちゃんと判断をして死亡届として受理できるようにいたしましょうということにいたしました。
 もちろん、遺族の皆さん、遺族といいますか御家族の皆さんが、そういうことはまだしたくないとおっしゃる皆さんにまでそうしろということを言っているわけではないので、是非ひとつそこは御理解をいただきたいと思います。
○藤川政人君 今大臣がおっしゃられた取扱いについては六月十日に出された法務省の各自治体への通知だと思いますが、各々それぞれ内容については、目撃者情報、いろいろ家族等々の確認でそれが確定できるということになっておりますが、先般の新聞の状況によりますと、死亡届自体が受け付けない自治体も多いと。
 陸前高田市においては、原本も流失をしたり復元作業に追われていて、死亡不明者の届出はまだ受け付けられる状態じゃないと。これは先般のすぐまだ近々の情報でありますけれども、福島県の原発事故に遭われた地域の人たちにとっては、住民自体が散り散りになっていて、もうとにかく自治体がその掌握もできない。そして、死亡届に添付する書類には、今大臣おっしゃられたように、本人の生存を最後に確認したのはいつかなど項目への記載が求められていますけれども、こうした行方不明の根拠となる目撃情報さえ集めるのが難しいという福島県浪江町のお言葉も今紹介されております。
 ここで問題になるのは、この取扱いが緩和されたといっても、申請主義の枠をやっぱり出ていないんですよ。やはりこれを職権に基づいて全て認めろとは私も言いませんし、それに基づいて自治体の行政の方の無限責任に陥るということは避けたいところだということは思うんですけれども、そこで一つ伺いたいんですが、昨年問題になった高齢者の所在不明問題、厚生労働省や総務省の監督責任が大きく報じられました。戸籍制度を所管する法務省も相当なこれは当事者であったと思います。
 法務省は、百二十歳以上で戸籍に住所の記載がない場合、削除できるなどの対応を取ったところでありますけれども、その後、市町村からの法務局への削除の申請の進捗状況はどのようになっているか、伺いたいと思います。
○国務大臣(江田五月君) これは、戸籍の実務上、戸籍簿の付票に住所の記載がない場合に、百歳以上の者で、そうしたいろんな調査をしても所在などが分からないという場合に、これは戸籍の整理として職権で消除できるということにしていますが、しかし、なかなか進まないんで、百二十歳以上であれば、いろいろ調査をしなくても、もう付票に記載がないというだけでできるようにしようということでこの処理の方針を示したところでございますが、今の通知を発出した平成二十二年九月六日から本年の三月三十一日までに六万六千二百八十人分の戸籍について市区町村から地方法務局長に許可の申請がなされまして、そのうち六万四千百八十人分の戸籍について職権の消除が行われております。
 職権消除された戸籍のうち、六万九百五人が百二十歳以上の高齢者の戸籍でございまして、三月三十一日現在で把握している百二十歳以上で戸籍の付票に住所の記載がない者、これは八万九十四人ということになりますので、約七六%の消除を実施をしたというのが現在のところです。
○藤川政人君 今、職権に基づいて事務が行われたということであります。それについては、百二十歳以上の高齢者が多分いないだろうと、いても、それに対する相続が発生する、そういう問題が生じないということに基づいてそういうことができることだと思うんですけれど、今回の事例においては、やはり相続という大きな問題というのは戸籍の確定がないとできないということであれば、やはり今、こういう申請主義で幾ら緩和してもでき得ないことが多いと思います。
 そういうことだとすれば、今、現政権で行っている番号制の問題についても、従来型の申請、プル型からプッシュアウトにどんどん変えていくという流れであります。これから、行政が持ち得る情報をやはりこちらから住民、国民の皆さんに対して厚い手を差し伸べるというのが時代の流れでありますので、これからまだまだいろんな問題が出てくると思います。
 戸籍制度の在り方についてもやはりいろいろ問われるところがあると思うんですが、やはりこれは世界中でも日本の本当に誇るべき制度であるというのは間違いないと思いますが、今回被災をされた方々、本当に、今大臣おっしゃられた八千人をやっと切るぐらいの不明者になったといえども、まだまだ冷たい海の中や瓦れきの下で苦しまれている方々、そして、それをどういう形で本当に納得をして次の一歩を進もうとされている遺族の方々、そういうことに対して、この戸籍という情報について非常に重要だと思います。
 そういう中で、選挙人名簿は住基に基づいてやります。どちらを優先するかという問題が必ず出てくるんです。そういうときに、隣同士の課で住基情報に基づいて戸籍の確定をしていくのかどうか、いろいろまたそれぞれ自治体に対しても考え方があります。自治事務と法定受託事務でいろいろ戸惑う基礎自治体の姿が私には見えてなりませんので、是非率先垂範して、法務省としてのしっかりとした被災対策、被災者の皆さんに対しての温かい姿を、これはすぐに職権主義で全て先ほど言ったように百二十歳以上はできるわけですよ。それを職権に全て基づいてこの事務を、これを全てやりますという答弁はもちろんいただけるものではないということは理解していますけれど、しっかりとした大臣の姿勢を示してさしあげていただきたいと思います。
 それでは、この法案についての質問に移らさせていただきます。
 本法案は、平成十七年に提出された法案から組織的な犯罪の共謀等の行為についての処罰規定を除いて提出されたものでありますが、平成十七年提出法案から修正点としての条文の手直しを行った程度と承知をしております。
 本法案は、平成十五年に提出されたときから三回廃案になって、今回の法案で実に四回目の提出となっております。この法案が何度も廃案になった経緯、もちろん組織的な犯罪の共謀等の行為についての処罰規定が含まれていたためという理由もあると思いますけれど、民主党がこの法案に強く反対していたという経緯を考えると、政権交代後に法制審議会で議論をしたり、パブリックコメントを行う必要はなかったのか。そういうことを除いて今回法案提出に至った、そのことに対しては疑問を禁じ得ません。
 大臣の見解を伺いたいと思います。
○国務大臣(江田五月君) 前の法案については、これは今委員御指摘のとおり、私ども民主党、反対をいたしました。
 これは、大きく言うと三つの類型のものがあって、一つは組織的犯罪に対処するための条約に対応するいわゆる共謀罪の創設、それとサイバー条約に対応するためのサイバー刑法、それと強制執行の関係というものでございますが、私どもが反対をしたのがこの共謀罪のところでございまして、それも組織犯罪防止の条約と共謀罪の創設とがどういう整合性があるのか、全く要らないのか、あるいは一部要るのか、あるいは前政権が提出していたようなものでなければならないのかなどの議論がかなりございまして、こうした議論はこれから更に関係省庁とも十分に協議をしていこうということで、今回は、そういうものではなく、サイバー犯罪の関係と強制執行の関係とを法案として取りまとめて提出をいたしました。
 この部分については、もちろん法制審議会の審議もちゃんと経ており、またパブリックコメントもいただいた上で、さらにその後の国会の審議やあるいは与党との様々な協議を踏まえた上で提出をしておりますので、改めて法制審の審議等は必要がないと考えているところでございます。
○藤川政人君 それでは、本法案がサイバー犯罪に関する内容を追加して提出されたのは平成十六年二月でありますが、その後、約七年もの年月が経過しております。この間にもサイバー犯罪は、手口の高度化、巧妙化、多様化に加え、最近は組織化、もちろん巧妙化の傾向も非常に強まっているということは承知をしておりますが、このような厳しい犯罪情勢に対処するためには、平成十七年に提出された法案をほぼそのまま提出するのではなく、最近の状況により対応した法案とすべきだったのではないかなということも考えております。
 例えば、警察庁では、企業のホームページなどを装うなどしてインターネット上から他人のパスワードやクレジットカード情報を得るフィッシングによる犯罪被害に対処するために、専門委員会を設置して不正アクセス禁止法に盛り込む方向での検討を開始しているとのことであります。
 もう本当に日々日々進歩し、巧妙化し、多様化するサイバー犯罪等々に含めても、新たなことをどうこの法案に反映してきたのか、これからいくのか、そういうことを抜本的に今見直して提出する必要もあったのではないかなということも考えます。そういうことを含めて、大臣からいま一度答弁をいただきたいと思います。
○国務大臣(江田五月君) 御答弁の前に、先ほどパブコメのことをちょっと申しましたが、パブコメは前の法案のときにも掛けておりませんので、そのことを訂正しておきます。
 その上で、コンピューターネットワークが形成されて、これが広く社会に普及して社会生活上のインフラとして欠かせない、しかし一方でサイバー犯罪が多発して事犯に適切に対処するための法整備は喫緊の要請と、これは変わっていないということでございまして、しかしコンピューターネットワークの進歩も、あるいはそれに対するウイルスといった犯罪の態様もどんどん変わってきているのは事実でございます。
 この現在の状況をしっかり踏まえて、現在の状況にぴたっと合うものを出せという御趣旨は分からないわけではないんですが、しかしやはり今準備をしているこれをまずは一日も早く成立をさせていただいた上で、さらにその後のいろんな状況に応じた対応というものを図っていくべきものかと思っておりまして、とりわけサイバー犯罪条約はもう平成十三年に署名をしているわけですから、以来十年近くたっておりますので、やはりそれへの対応も一日も早くやっていかなきゃならぬということだと思います。
 最近、いわゆるフィッシング等の新たな事案が起きてきているというようなこと、これももちろん私どもは気になることではございますが、これは法務省だけで対応できるものでもないので、他省庁とも十分協議をしていきたいと思っております。
○藤川政人君 先ほど有田議員からもアメリカの状況等いろいろお話がありました。これも先般、北朝鮮が、ハッカー部隊六倍増、五百人から三千人にして、秀才クラス、もうとにかくトップの人間を平壌に呼び寄せ、サイバー戦争は既存の戦争に比べ掛かる費用が少ない、金正日総書記は戦力差を挽回できる画期的な方法と見てハッカー部隊を増強している、こういうことが新聞にも報道されております。そして、アメリカは、サイバー攻撃には武力報復をいとわないと、そういうような強い姿勢を出しております。
 先ほど大臣も答えられておりましたけれども、決して手を緩めることはしないとは思いますけれども、日進月歩の中で、もうこういうような恐ろしい状況の中で日本は取り囲まれている状況ですので、今回この法案を出すに当たってはやっぱり強いメッセージ性が私は必要だったと思うんです。それを我々は否定するわけじゃないものですから。
 とにかく海外は、どうであれ、このような武力報復に対応するんだと、そして、それに対して北朝鮮は、とにかくハッカー部隊を六倍にして国内の秀才を集めてでもこれに対するテロ行為、まさにそういうこととして大きくメッセージを出しているんであれば、我が国としてもこの法案を出すに当たって、やはり、内容も必要ですけれども、強いメッセージ性、抑止性を求めるための法律にするということも必要であったと思います。
 今の、署名から実効性を持つためには国内法を整備する中でこの法律が必要であったということでありますが、この中でもアジアは日本だけです。中国、韓国はもちろん署名もしておりませんし、起草委員国でもないというのは分かっておりますけれども、その件について、これは外交的な努力も必要なんでしょうけれども、大臣として、このアジア圏の中で中国や韓国にもいろいろ情報を共有していく必要があると思いますが、所見を伺いたいと思います。
○国務大臣(江田五月君) おっしゃるとおり、サイバー犯罪に対処をする国際的なコンピューターネットワークというものをしっかり守っていく、これは国際社会の共同の責務であると思っております。アメリカの動き等も今御紹介になりました。
 そんな中で、日本の近隣諸国、中国、韓国は条約を締結していないというのは事実でございます。しかし一方で、締結済みの国が三十一か国、署名済みの国は十六か国。とりわけG8では米英仏独伊五か国は締結済み、カナダと日本は署名済みというような状況ですので、やはりこれは私ども、早くこういう整備をして、そして条約にも入らなきゃいけないと。
 その中で、韓国や中国をどうするんだということはございますが、大変申し訳ないけれども、これは法務省マターとはちょっと違うんでございますが、しかしやはりそういう国際社会の共同の対処が必要だという、これは私どもとしても考えておりまして、日本はこうなっているので近隣の皆さんも是非ひとつというような態度は示していきたいと思います。
○藤川政人君 是非、大臣、しっかりとしたメッセージを送っていただきたいと思います。
 それでは、最後の、捜査体制の強化についてちょっと伺いたいと思いますけれども、今回の改正によって罰則が整備されるコンピューターウイルスに関する犯罪の捜査は、今後一義的には警察が行うことになると思いますけれども、今回の改正案の施行日は公布の日から起算して二十日を経過した日とされており、本法案が成立してから施行までさほど時間的な猶予があるわけではありません。
 それで、本改正案が成立した暁には、まずコンピューターウイルスに関する罰則が整備されたことや、その内容を都道府県警察等も含め警察内に周知することが喫緊の課題になるのではないかと思いますが、この点について警察庁に伺いたいと思います。
○政府参考人(田中法昌君) 今審議中であります情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部改正案につきましては、既に全国の警察実務担当者を集めた会議におきましてこの概要を説明をしております。また、法案の成立後は、国会における御審議の状況を踏まえまして、その内容について全国警察に速やかに周知徹底をしていく予定でございます。
○藤川政人君 もう一点は、マンパワーの問題であると思います。これに対する技術、見識をしっかり有した警察官の育成というのもこれからますます重要になってくると思います。このような点も含めて、警察としてこのコンピューターウイルス犯罪、そしてサイバー犯罪に関する捜査体制の強化にどのように取り組んでいくのか、そして犯罪抑止とプライバシーの保護、保全というのは二律背反的な側面を持っている中で、これを捜査に移していかなくちゃいけないということはやはり大きな、まあ矛盾ではないんでしょうけれども、難しいところだと私は思います。
 そういう面も含めて、捜査当局が目に見えた効果を上げていくためには、やはりいろいろな課題もあると思います。こういう問題に対してどういうノウハウを現在蓄積をしてみえるのか、人としてどういう育成を行っていくのか、その点についてお考えを伺います。
○政府参考人(田中法昌君) サイバー犯罪につきましては、大変広域にわたるということがございます。被害者が各都道府県にわたっている場合が非常に多うございますので、そのようなケースにつきましては都道府県警察で情報交換をいたしまして合同捜査というものを推進しております。
 また、捜査体制の面におきましても技術的な知識というのが不可欠でございますが、この最新の技術的知識を確保するためにIT企業等のシステムエンジニアをサイバー犯罪捜査官として中途採用するというようなことで、質的なあるいは技術的な捜査力を高める努力をしております。また、捜査員数という量の面でも徐々に強化を進めてきたところでございます。
 これからも、今申し上げました都道府県間の連携の強化という点、それから捜査官の技術的あるいは人的な質の強化という点に留意をいたしまして、この改正されました法案及び各種の法令を十分適正に駆使をしてまいりたいと、このように考えております。
○藤川政人君 ちょっと通告してありませんが、警察官の定数は警察庁が決定し、その運用は、従来、配置等々についても地域警察、都道府県警察が決定していたと思うんですが、今回のその中途採用とか人を雇うに当たって、その定員管理の側面と自治体の都道府県警察が行う範疇の中で、定員の適正配置に対しての指示もこれから警察庁として行っていく考えなんですか。
○政府参考人(田中法昌君) 警察官の定員はあくまで階級別の定数でございまして、その枠内でどのような質的なものを取っていくかというのは各都道府県警察に任せられております。したがいまして、各都道府県警察において、自県内における犯罪の発生状況等を勘案をいたしまして各種の、例えばサイバー犯罪捜査官だけではなくて各種外国語をしゃべれるような捜査官を採用するとかということで工夫をしているところでございます。
 今後、サイバー犯罪への体制強化、質的、量的な強化というのは必須だろうと思いますので、我々生活安全局としては、このサイバー犯罪対策の捜査力の強化ということを部内的にも訴えていきたいというふうに考えております。
○藤川政人君 是非、地理的条件や距離的条件も飛び越えた上でこういう犯罪対策をしていかなくちゃいけませんので、しっかりとした見極めの下で定数等々の配置を行っていただきたいと要望しておきます。
 それでは最後に、サイバー犯罪を減少させるためには警察等によるサイバー犯罪に対する厳しい取締りの姿勢を検挙で示すことも重要なんでしょうけれど、他方で、国民がサイバー犯罪の被害者にならないように、各民間企業や政府などによる広報啓発活動等によって国民がサイバー犯罪に関する防御知識をしっかり得て犯罪に巻き込まれないようにするのも大変必要なことであると思います。周知の方法、そして抑止力を高めるためにこの法律をより有効なものにしていくお考えを大臣に最後に伺いたいと思います。
○国務大臣(江田五月君) コンピューターネットワークがいかに私どもの生活にとって重要であるか、これはもうこれまでるる申し上げてまいりました。国内でもそうですし、国際的にもそうで、これをこうしたウイルスによる攻撃から守るために、今回は犯罪類型を新たにつくって、あるいはそれに対する捜査のやり方、まあ令状ですが、そうしたものを整備をして対処していこうということで、これはそうした任に当たる者に最大限頑張っていただくと。もちろん適切、的確でなきゃいけませんが、頑張っていただくということでございますが、同時に、これはコンピューター犯罪に限らず、どのような犯罪でも、やはり国民みんなが犯罪を予防していこう、人を犯罪の誘惑に駆られないようにしていこうということは大切なことでありまして、私自身の反省も含めて、コンピューターを自分でいろいろ使いながら思わぬ間違いをしていることがあるのではないかと。例えば、写真を載っけます。そうすると、いや、私はそんな、人に顔を見られるのは嫌なんだという人の写真もつい載っけてしまうようなこともあるわけで。
 そうしたことも含めて、やはり一般の国民が、コンピューターを守っていくんだ、コンピューターの安定した、安心できるネットワークを維持していくんだと。そのために捜査機関もいろいろと努力をしている、それに対する理解も持っていただいたり、あるいは、私たち一人一人も思わずコンピューターネットワークを害するようなことにならないように一つコンピューターの使い方について慣れていくということも大切だと思っております。
 新たなコンピューターというネットワークに支えられた私どもの安心できる社会をきっちりつくっていきたいと思っております。
○委員長(浜田昌良君) 藤川政人君、おまとめください。
○藤川政人君 アナログ人間の私としたら、大臣と共感するところ多いと思います。しっかりメッセージ性を伝えていただくよう強く要望して、終わります。
○木庭健太郎君 最初は、複写等による電磁的記録の差押えの際に電磁的記録の同一性を担保する方法ということについてまずお伺いしたいと思います。
 今回の法改正は、電磁的記録、つまり電子データが記録された記録媒体、例えばサーバーとかハードディスクそのものの差押えに代えて、差し押さえるべき記録媒体に記録されている電子データを他の記録媒体に複写した上で当該他の記録媒体を差し押さえるとの手続が定められているわけです。しかし、やっぱりこのような方法で電子データを差押えする場合は、どのようにして元の電子データと複写、差し押さえたデータが同一かということを担保するというのは、具体的方法についてはこの法律上は規定はされていないわけでございます。つまり、電子データが本当に同一性が担保されるのかというような疑問が出てくる懸念もあるわけです。
 そこで、このような方法で差押えを行う場合には、実務上、どのようにして元の電子データと複写等をして収集した電子データの同一性を担保するのか、まずこれをお伺いしたいと思います。
○国務大臣(江田五月君) 捜査機関が押収した証拠物、これに変更が加えられてはならない、変更が加えられていないかどうかなど、同一性が問題になると。
 これは、電磁的記録に係る記録媒体の場合だけではなくて一般に全ての証拠物についてそういうことが言えるわけでございますが、電磁的記録の場合に、刑訴法百十条の二の処分として、今委員おっしゃるとおり、相手方の記録媒体に記録されている電磁的記録を別の記録媒体に移転したり複写したりするということをやります。その場合に、例えば移転や複写の過程をきっちり記録をしておくとか、あるいは電磁的記録の利用及び保管に際して書き込み防止措置をとるとか、これは技術的にとれるわけだと思いますが、このようにして電磁的記録の改変や消去がなされないような方策を講ずる、そして同時に適正な保管を行う、こういうことで同一性というものをしっかり担保することができると考えております。
○木庭健太郎君 今、大臣二つおっしゃった。私は、まず最初の問題点は、サーバーにあるやつを本当に同じ形できちんと複写できるのか、それを担保するためにどうすればいいかというお尋ねをしたわけですが、それについては過程をきちんとしておけばできるんじゃないかというお答えをいただいたと。もう一つが、今大臣もお答えに少しなりましたが、問題は何かというと、そのデータがきちんと保管、同じもののままにできるのかという問題です。これはなぜこんなことが問題になるかといえば、それは大阪地検の証拠改ざん事件があったからです。それは、普通のものももちろん改ざんされるという可能性はあるという問題も、同様の問題がほかの問題でもあると。ただ、なぜこの問題が特に指摘されるのかというと、普通のそういう物と比べてみて、やっぱりこういうデータというやつは改変が容易にされやすいという問題なんですよね。
 だから、この問題は、もう以前一回、大阪の事件に伴って質問もさせていただきました。そして、最高検の検証報告書の中にもこの問題について触れていただきまして、平成二十三年四月から順次、電子データの証拠物を押収した場合は、停滞なくその複写物を作成した上で、その原本を封印、保管する取扱いをするとか、そして四月六日には次長検事名で、特捜部におけるフロッピーディスクなど電磁的記録媒体の証拠品の取扱いについては、一つは、封印して保管し、開封する場合はその封印経過報告書を作成、内容を精査、検討する場合は原則として複写したデータを利用すると、これは六月一日から施行しているようでございます、この通達が出されたものと承知しております。
 ただ、これでも問題が指摘されている。最高検の検証報告書を見ると、同時に、直ちに警察等からの送致事件を含む全ての事件に関し、かつ全ての電磁的記録媒体を対象にして実施することは実際上困難ということも触れてあるわけですよね。でも、全てのものに含めてやっぱり事件ということを統括する検察として見れば、やはり全部のものでいくと、その保管、管理の体制という問題についてはまだまだ今から取り組まなければならない点があるような気がしてならないんですが。
 特に、今回の場合は、この電子データの証拠収集手続というものが更にある意味では増えてくるというものがあるわけですから、検察において、現状、先ほどおっしゃっただけでまず始めるわけですが、さらにこの整備というものでこんなことも進めなくちゃいけないなというような更に検討すべき点があるかどうか、お考えがあれば伺っておきたいと思います。
○国務大臣(江田五月君) 今委員御指摘いただいたとおり、昨年十二月のいわゆる厚生労働省事件等の検証結果、最高検による、これを受けて四月六日に通達で様々なことをいたしましたが、これは委員御承知のとおり特別捜査部が独自に押収したものについてだけということになっております。確かにその点はそうなっております。これは、警察とか国税庁とかで押さえたものを事件の送致に伴って検察に持ってくる場合には二重のチェックになっておりますからということもありますが、同時に、やはりそこまでまだ体制が整わないというようなことも一つありまして、したがって、これから電磁的記録媒体の適切な保管や管理のために必要な知識と技術を有する職員の育成とかあるいは研修とか、あるいは複写物等の作成に必要な機器やソフトウエア等の整備とか、このような措置を、これまでも講じてまいりましたが、今後も適宜そうした措置を講じてまいりたいと思っております。
○木庭健太郎君 今おっしゃったのは、現状の体制の問題のほかに、おっしゃっていただいた人的な問題ですね、これも非常に大切な問題だろうと思います。
   〔委員長退席、理事森まさこ君着席〕
 これについて、こういう電子データの取扱いとか、こういう問題についての例えば専門委員会の設置の問題とか、韓国の大検察庁というんですか、デジタルフォレンジックセンターみたいな例が触れてあるんですが、つまり、これは検察の在り方検討会議の提言です、我が国でも、検察庁においては、電磁的記録等の客観的証拠の収集、分析等を専門的に行い、科学的な捜査に対応することができるような体制整備を行うべきという指摘があるわけです。
 今も若干大臣からお答えはいただいたような気もいたしますが、つまり、やはりこの体制とともに人的な整備ということも併せて、そして、それに対する、ここでは専門委員会の設置まで踏み込んでいるわけですが、こういった一つの組織づくりみたいなものも含めてやはり検討はなさった方がいいのではないかと思うんですが、いかがでしょうか。
○国務大臣(江田五月君) 委員御指摘の検察の在り方検討会議の提言で、検察庁において、電磁的記録等の客観的証拠の収集、分析等を専門的に行い、科学的な捜査に対応できるようにする体制整備を行えと、そういう指摘がなされておるのは事実でございまして、これに適切に対処するために、専門的な知識、技術を有する職員の育成とか、先ほどもちょっと申しましたが、そうした体制の整備に努めてまいりたいと思います。
 委員が今ちょっとお触れになりました韓国のデジタルフォレンジックセンター、こうしたものを設けることも検討の対象にはなるかと思いますが、今後、証拠品の収集、分析、あるいは保管等の運用の状況を見つつ、更なる検討を進めてまいりたいと思います。
○木庭健太郎君 こういう法律が今回通るわけですから、それに合わせた形でも、ある意味ではいろんな方々の御心配を取り除く意味でも、やはり体制強化という問題については是非取り組んでいただきたいと要望をしておきます。
   〔理事森まさこ君退席、委員長着席〕
 続いて、刑事訴訟法改正案における保全要請の必要性の判断の問題についてお聞きしたいと思います。
 今回、この保全要請、主体を検察官、検察事務官又は司法警察員に限定して、つまり司法巡査を主体から除くというようなことをなさっている。また、差押え又は記録命令付差押えとするため必要があるときはと、保全の必要性の要件を付したこと。また、その期間の短縮とか、保全要請を書面で行うこと、こんな問題が従前から比べると追加修正されております。これについては私どもも評価をしたいと思います。
 しかし、結果的に、この保全の要件、つまり差押え又は記録命令付差押えをするため必要があるときとしたこの保全の要件は、結局、捜査機関側が必要性の判断をすることになるものですから、つまり、差押えに至らなかった場合、当初の判断、必要性の判断が誤っていたのか誤っていなかったのかと、これは誰もある意味では判断することができないというような問題があるのではないかという指摘がございます。これについての見解をお伺いしたいと思います。
○国務大臣(江田五月君) 保全要請自体の不服申立てとかあるいは事後的チェックとかというお話かと思いますが、これは保全要請が、通信履歴の電磁的記録、これを証拠として取得する必要があると、取得するためには差押えとかあるいは記録命令付差押えをしなきゃいけないわけで、そういう令状請求の前段階として今やっておかなきゃという必要を検察官、検察事務官、それから司法警察職員の中でも特に司法巡査を除いて司法警察員に限定をして判断をさせるという限定をちゃんと付けて、さらに期間の限定であるとか、あるいは罰則はないとか、あるいは通信事業者の負担も考慮して適切にというようなことを考えておりますので、しかも、令状をもし仮に請求するならその段階で令状審査というものがありますから、この段階で事後的チェックとか不服申立てとかという制度は取っていないということでございまして、是非御理解いただきたいと思います。
○木庭健太郎君 やはり、結果的にいろんなことはやってあるんですけど、つまり、通信の秘密の制約となり得るこの保全要請という問題が、結局任意捜査になってしまっているために、捜査機関による濫用という問題がどうしても少し引っかかりながら今も残っているし、何らかの歯止めが必要じゃないかという議論がいつになっても絶えないところは実際にあるわけでございまして、したがって、一つのこの委員会でも御指摘があったんですが、例えばその保全要請の件数、それから差押許可状の発付に至った件数とか、保全要請にかかわる罪名、通信手段の種類、逮捕した人員等について、どういったものをやるかはいろんな考え方はあるでしょうが、つまり、こういったことをきちんと国会に報告するなどして公表し、情報開示していくというようなのも一つの在り方としてあると思うんですが、これについての法務大臣の見解を伺いたいと思います。
○国務大臣(江田五月君) 御指摘のような御懸念あるいは対応の仕方というものについて、私どももいろいろ検討をしてまいりました。
 今の、主体を限定するとか、期間のこととか、あるいは罰則はないとか、いろいろなことがありまして濫用ということにはならないと思っておりますのと、もう一つは、書面でするということにはいたしましたが、その書面がどういう流れになるかをずっと考えてみますと、保全要請を書面でする、そのままで終わるときにはこれそのままで終わるわけで、これが次に差押えまで行くと、恐らく差押えの令状の請求の記録にこの保全要請の書面は編綴されて、現実に差押えに行っていろんなものを押さえてくる、その記録全体にそれが移って、次にどうなるかといいますと、起訴猶予等の不起訴になれば、それはそのまま一つの記録の中へ入って検察庁に保管される、起訴が行われたら裁判所に移す記録は出てきますが、恐らく保全要請の書面などは裁判所に移すというんじゃなくて、多分使われなかった記録の中で保管をされていくというような流れがずっとまず頭に浮かぶわけで、そうした頭に浮かぶ過程の中で、この保全要請の書面をどういうふうに集約するかというのはなかなか実務的には大変だなというような感じがしまして、その懸念というのは是非皆さんにもお分かりいただきたいとは思いますが、さはさりながら、これは立法府の皆さんの御懸念なり御要望なりということも私ども、これはもちろん重視していかなきゃならぬということで、という辺りで今、率直に言って悩んでいるところでございます。
○木庭健太郎君 確かに、通信傍受の場合の報告と違って、おっしゃるように、どれをどうやって報告させるかというのはなかなか難しいところがあるという面は理解はいたします。でも、やっぱりこういった新たなものを始めるときは、それはよくそれこそ法務委員会とも御相談もさせていただいていいぐらいで、何を中身で報告させるかという問題については今後いろいろあると思うんですが、少なくともこれを実行する以上は、始めてから当面の間は悩まずに報告する方向で、その報告する中身をどうするかということは検討させてもらいたいということで結構ですよ。でも、やっぱりこういった保全要請にかかわる問題での国会への報告ということについては是非前向きに検討してもらいたいと、こう思いますが、いかがですか。
○国務大臣(江田五月君) 委員の御指摘は重く受け止めておきたいと思います。
○木庭健太郎君 それから、先ほども大臣自らおっしゃいましたが、この通信履歴の保全要請、実際にデータを保存するという、探して、これは作業はプロバイダー、業者がやるわけですね。そういった意味では負担になる。ただ、この負担についても様々な面で、三十日以内が原則の保全要請期間、特に必要があるときは更に三十日の延長ということで六十日と、過度の負担にならないようにとここも配慮はされているんですが。
 これはどう考えるかですが、経費の負担等までには残念ながら踏み込んだものにはなっていないと。そういう意味で、プロバイダー業者等に対する負担軽減これだけでいいのか、更にその負担軽減について何か取り組む課題は残されていないのかと、これについての大臣の見解を伺っておきたいと思います。
○国務大臣(江田五月君) 実際にこうした制度を運用していく中でプロバイダーの皆さんにどういう負担を掛けているかということには十分意を用いて、プロバイダーの皆さんの声をしっかり聞くということにしていきたいということと、もう一つ、やはり保全の要請はしたけど、すぐにこれは、あっごめん、必要なくなったというケースもあるだろうと思いますので、その場合に、期間が経過するまで放置をするというんではなくて、やはり適切に取り消すようなこともやっていかなければいかぬと思っているところです。
○木庭健太郎君 最後に、この法案、様々ないろんな問題点なりも指摘もされました。そういった意味では、どう運用されていくかというのは非常に大切な課題になるとともに、やはりコンピューターの世界の日進月歩というか、そういうものが極めてあるという中で、今後、いろんな問題があればやはり更なる見直し、更なる改正というような問題にもつながっていく面もあると思うんですが、これについての更なるそういう今後の課題というか、見直しの問題とか含めて大臣から最後に見解を伺って、もうあとちょっとしかないので一言で結構でございますが、意見を伺って終わりたいと思います。
○国務大臣(江田五月君) この法案についていろいろな懸念が寄せられておりまして、ひとつそうしたことに謙虚に耳を傾けながら、規定の解釈あるいは運用を適切に周知を図っていきたいのと同時に、今後のいろんな変化がございますから、これについてはやはり刑罰法規を適正、迅速に適用、運用していくという要請と、もう一方で基本的人権の保障、これも大切ですので、そこを十分に考えながら今後の行政に当たっていきたいと思っております。
○木庭健太郎君 終わります。
○桜内文城君 みんなの党、桜内文城です。
 まず、今回の刑法改正案につきまして、ウイルス作成罪の条項、百六十八の二につきましてお尋ねいたします。
 前回の当委員会での公聴会におきまして、人の電子計算機における実行の用に供する目的の解釈についていろいろと懸念も示されたところでございます。これを参考人の方は、広く解することもできれば、むしろ法の趣旨からすれば不正指令電磁的記録を作成する目的というふうに限定的に解釈すべきじゃないかという意見が出されたところでもございます。
 ちょっとやや細かいところですので刑事局長にお尋ねいたしますけれども、立法論として、文言の書きぶりからしまして、この百六十八条の二、一項ですけれども、例えば、現在、「正当な理由がないのに、」、その次ですね、「人の電子計算機における実行の用に供する目的で、」という文言がぽんと出てきておるわけですけれども、こういう順番ですと確かに広く解釈されてしまうこともあろうかと思います。
 例えば、若干文言の順番を変えるだけで、「正当な理由がないのに、」、ちょっと飛ばして、「次に掲げる電磁的記録その他の記録を」、ここから先ほどの「人の電子計算機における実行の用に供する目的で、」というふうに順番を変えるだけで十分解釈を限定してウイルス作成罪におきます懸念を払拭することもできたと思うんですけれども、何でこういうふうな今の文言になったんでしょうか。
○政府参考人(西川克行君) まず、この解釈論についてはこの間の参考人への質問の中にも出ていましたが、まさに今先生のおっしゃるとおりで、これはただ単に電子計算機における実行の用に供する目的でというふうに読むのではございませんで、不正な指令を与える電磁的記録であることを認識、認容しつつ、電子計算機の使用者にはこれを実行しようとする意思がないのに実行され得る状態に置くと、こういう読み方をするということでございますので、その点ははっきり申し上げておきたいというふうに思います。
 あと、法律的な技術論ということになりますが、この百六十八条の二の書き方でございましても、人の電子計算機における実行の用に供する目的で、次に掲げる電磁記録その他の記録を作成しと、こういうふうになっております。
 当然のことながら、これは一号、二号、この両方を読んで、こういうものを作成し又は提供した者ということになるわけでございまして、その一号、二号の中にはまさに今申し上げましたその「人が電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える」と、これを認識、認容しながらというのが当然のことながら含まれておりますので、解釈論としても、この条文で今先生がおっしゃったような意味内容を表しているという言い方はできるというふうに思っております。
 もしこれをだらだらと一号、二号を併せましてそれで平文で中に入れると、これもまた相当読みづらいという話になりますので、これで書きぶりとしては分かるのではないかと、適切ではないかというふうに考えているということでございます。
○桜内文城君 内閣提出法案ですので、立法者の側の、立法者と言えるんでしょうか、法務省の刑事局長がそのような御答弁されたということは高く評価したいと思います。是非そのような解釈をするべき旨をきちんと周知徹底を今後していっていただきたいというふうに考えます。
 そして、二つ目にお尋ねいたします。
 記録命令付差押えについて当委員会で私も何度も質問させていただいてきたところでございますが、この記録命令付差押えの令状だけの話じゃないとも思うんですが、検証令状も含めてですけれども、令状主義という観点からしまして、特に通信の秘密というものも絡んできますと、現在インターネット上のメールの記録というのはどんどんと蓄積されていっているわけですね。特にグーグルのGメールなんというのは、そもそも削除したりすることを想定していない仕組みになっておりまして、日々来るメールがどんどんと蓄積されていって、それを検索して日々の業務に役立てるというような使い方がされておるところなんですが、前回も一遍お尋ねしたことがあるんですが、やはりそのような記録命令付差押えですとか検証令状によって通信の内容をもちろんきちんと特定した上で差押えしていただくのはいいんですが、しかし、その令状の名あて人というものがプロバイダーでありまして、実際にその通信を行った者に対しては全くそれが知らないところで差し押さえられてしまう。
 防御権の問題を、前々回ですか、一度取り上げさせていただきました。そのときの御答弁もありはするんですけれども、やはり防御権なくして、全く防御の機会を被疑者に与えることなくこのように通信の内容を差押えなりしていく、こういった点、やはり問題が大きいと考えております。
 もちろん、るる私も何度もお尋ねしたり、答弁いただいておる盗聴法といいますか通信傍受法との違いというのは確かにあるとは思うんですけれども、防御権という観点から、防御の機会が一切与えられることなく差押えなりがされてしまうということについて、刑事手続上の問題として、これを大臣、どうお考えになるか、御見解をお聞かせください。
○国務大臣(江田五月君) 刑事手続における当事者主義というのが、公判段階ではこれは公訴提起をした検察側と弁護人の側、これが対等に公判手続で攻撃、防御を行うと。一方、捜査手続でどこまで当事者主義が貫徹できるかというのはなかなか難しいところで、一方では捜査の密行性であるとか、こういう要請もあるのだと思います。
 被疑者を例えば取調べをするときに、被疑者というのは一方で取調べの対象であると同時に刑事手続において対立する相手であるというような側面もあって、これをどういうふうに防御権を与えていくかということで黙秘権の告知であるとかそういうことをやっていくわけですが、差押えの場合には、現行でも、例えば手紙などを差し押さえた場合に、現にその手紙を保管している者を名あて人として令状を出して差し押さえる、その手紙の差出人にまでそういう通知はしない、あるいはその手紙によってうかがわれる犯罪の容疑を掛けられる者に通知をするということはとりわけしないということで、現在でも今のこの立て方と同じでございますが、やはり令状が必要とされている理由を考えますと、直接的な不利益を受ける、つまりそれを今保管している者、これに裁判の内容を了知させるということで足りるのであって、それ以上にいろいろな手だてを講ずるのはなかなか困難であろうと思っておりまして、今、通信傍受との違いのことはもう委員お触れになりましたからそれ以上言いませんが、私は、これで防御権とかあるいは適正手続という観点から問題なく制度設計をされているものと思っております。
○桜内文城君 前回といいますか前々回も同じような御答弁だったと記憶しておりますが、あえて今日これを持ち出したといいますのは、例として従来もということで、手紙が保管されている場所あるいはその者に対して令状を裁判所に対して請求してこれを執行していくということが実際に取られているわけですけれども、やはり、今回のこの刑法の改正案ですけれども、サイバー刑法というふうに別名呼ばれたりするぐらい、やはりインターネット社会というものがどんどん広がってきて、それに対応するという趣旨でもちろん改正案を出されているわけですけれども、そういった意味で、今まさに通信というものが、手紙というよりも電子メールであるですとかあるいはインターネット上の通話ですとか、そういったものにどんどん置き換わっていっているわけです。
 手紙であれば、特に昨今であればそんなに手紙書く人もいないというか、全然ないわけじゃないんですけれども、そこに証拠として差押えが必要なものについては保管しているところに対して令状を執行していく、これで十分結構だと思うんですけれども、私なんかも仕事上、ほとんどの通信というのはメールあるいは音声の通話、これは今までどおりのNTTなりを介したものもあれば、あるいはインターネット上での通話というのももちろん、仕事上ほぼそれが全てであります。
 そういうふうに、通信の仕組みがまさにインターネットにもう大半依存しているようになってきている今の現状において、従来手紙の差押えなどについてこうだったから今回の刑法改正案でも同じように被疑者に対する防御の機会あるいは防御権を与えなくてもよいという点は、やはり私は立法者の意思としても理由が十分あるのかなと考えざるを得ないわけでございます。
 ここで大臣に何度お聞きしても恐らく同じ答弁となるでしょうからこれ以上申し上げませんけれども、こういった点でも、やはり今回の刑法については、特に今後運用について十分慎重に配慮して行っていただきたいという要望は述べさせていただきます。
 そして、三つ目でございますけれども、先ほど木庭委員からも保全要請の在り方について御質問されました。また、衆議院の法務委員会議事録見ておりますと、五月三十一日に同じく法務委員会で、衆議院の方の法務委員会ですけれども、自民党の柴山議員から、保全要請について、国会に運用状況について報告すべきじゃないかという質問がされております。大臣の御答弁としては、迅速かつ機動的な捜査に支障が起きるのではないか、捜査現場の負担というような文言を用いて答弁されておるところでございます。柴山議員からも反論されているところでありますけれども、そんなに負担なのかということであります。今回のこの条文の立て付けからしますと、保全要請につきましては書面で求めるということになっておりますので、これについて、書面の枚数まず数えればすぐに件数は分かるわけであります。
 さらに、先ほど木庭委員の御指摘にもありましたように、この要請する権限を有する者が検察官、検察事務官又は司法警察官に限定されているとはいえ、その必要性について誰が判断するのかというところで、前々回でしたっけ、やはり私お尋ねしましたが、不服申立ての手段が全く用意されていない制度でありまして、結局、その必要性についてやや疑義があったとしても、それがそのまま通ってしまうということがございます。
 ですので、これも運用については十分慎重に行っていただく必要があるということを御指摘申し上げたいということと、それから、やはり私も国会に対して、大変懸念されている新しい保全要請制度でもありますので、何らかの形で国会への報告というのは必要だと考えておるところでございます。
 これについて、大臣の方から、同じような答弁だと思うんですが、一言御見解をお願いいたします。
○国務大臣(江田五月君) 保全要請は書面で行うということになっておりまして、その保全要請をした書面自体はその後どういう経緯をたどるかということを考えますと、いろんなところへ行くわけで、あるものは不起訴記録の中に入る、あるものは起訴した、そして公判で裁判所に出した残りの記録の中に入る、あるものはそこまでも行かずに、あるものは差押令状の請求まで行かずにというような、いろんなところに行くわけなので、そのことをちょっとこう頭で想像してみるだけでも、これを何件というのを集めるのはなかなか大変かなとは思うんですが。
 しかし、例えば、正本に更に副本を取ってそれだけ別途集めるとかやれば数は分かるかなと、しかし数だけでいいのか、やっぱりそこが、後に差押令状の請求までつながったかどうか、つながっていないものが余りにも多いと濫用されているんじゃないかというような心配、恐らくそうしたことまで委員の皆さん、やはりそれは報告しろということになるんではないかと思いながら、しかし、もちろん立法府、これはもう国民を代表する機関でございまして、私どもは立法府の皆さんの御意向にしっかり沿わなきゃいけないと思っておりますので、これは先ほどの木庭委員の御質問にもございましたが、しっかり受け止めさせていただきたいと思います。
○桜内文城君 質疑通告していないんですが、今大臣が立法府の意向も踏まえながらというふうにおっしゃいました。
 ただ、残念ながら今回、法務省の職員の方が、今回の法案につきまして附帯決議について各会派で議論している中で、言わば行政機関の職員がその内容について介入してきたということがございました。非常に遺憾なことだということで、その職員に対しては私から申し伝えたところでございますが、三権分立というのがやはりあると思います。
 これまでも私、自分自身の経験としまして、議員立法について、私がまだ議員になる前ですけれども、衆議院の法制局と、ある議員の方と一緒に法案の準備をしておりました、財政制度改革の内容の法案でしたので。ところが、この衆議院法制局の中に財務省からの出向者がおりまして、財務省にその法案の内容が事前に流れていきまして、財務省の方でその法案を潰すといいますか、当時その議員は与党にいたんですけれども、それさえも潰していこうとしたことがありました。
 また、この間、決算委員会では、国会図書館に外務省のOBの方がいて、これは井上先生が御指摘されていましたけれども、外務省に対して国会議員の言動等について報告を行っていた、こういった外交文書が明らかになっております。
 私は、法務省というものは、まさに江田大臣が所信でもおっしゃいましたように、法の支配ということを旨とするその最たる役所だと考えておりますけれども、残念ながら、附帯決議という国会がまさに立法機関として行っていることについてあろうことか介入してきた、このことについて、大臣の監督の責任なりについて御所見を最後お伺いいたします。
○国務大臣(江田五月君) 行政府の職員が立法府の動きに介入したというように言われますが、これは附帯決議であろうが法案の審査のプロセスであろうが、立法府の皆さんが立法府として会派間あるいは個々の議員の皆さんで相談し、折衝し、動かしていただくということに私ども介入するとかということはないと思っております。
 ただ、例えば附帯決議であれ、あるいはいろんな答弁であれ、行政府として、こういうような立法府の意思が表明された場合にそれにどうこたえられるか、こたえられないかというような参考意見を申し上げるようなことはあろうかと思いますし、それから、今回の附帯決議につきましては、私も、議員の皆さん、委員の皆さん方の折衝について逐一報告も受けておりまして、それなりに職員を通じて法務省としての考え方も、まあ与党を通じてということになるのでありますが、しんしゃくしていただけるような努力はいたしているつもりでございまして、それを私が監督不行き届きだとお叱りいただいてもちょっと困ったなと思います。
○委員長(浜田昌良君) 桜内文城君、おまとめください。
○桜内文城君 もう終わりますが、自由な議論は行政府であれ国会であれ必要だと思いますが、やはり、お互いのりをわきまえて、つかさつかさで仕事をやっていかせていただきたいと思っております。
 以上です。
○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 今日の議論でも、この質疑が拙速でないかという国民の皆さんからのお声があるということが出ておりました。震災を受けて閣議決定したかのような誤解は、それは誤解だと思いますが、しかし、やはりこの間の国会の中で十分な議論がされてきたのかといえば私は極めて疑問であります。
 衆議院の場合も、不信任決議などの動きがあるという中で、これ早く上げようじゃないかということを相談をしたというようなことも自民党の方が新聞紙上でも語っていられるということがありますし、衆議院での答弁が今日の段階で言わば解釈をめぐることについて法務大臣が再答弁をするというふうなことなどを見ていましても、私はやはりそういう批判を免れ切れないと。更に慎重議論をするべきだということをこの間申し上げてきましたけれども、改めて冒頭申し上げておきたいと思います。
 その上で、今日は保全要請のことについてまずお聞きしますが、これと憲法二十一条に定められた通信の秘密との関係です。
 大臣は、通信内容だけでなく通信履歴もこれは秘密の保障の対象になるということを認められた上で、こう答弁されております。通信内容は通信そのものなので憲法の規定がずばり適用されるけれども、通信履歴となると、憲法の保障の対象ではあるけれども、やはり公共の福祉の観点から一定の限度というものはあるだろうと言われておりますが、なぜ履歴については憲法上の通信の秘密の保障について一定の限度があると言えるのか、その根拠は何でしょうか。
○国務大臣(江田五月君) 一般論として、憲法に規定している基本的人権、それぞれございます。それぞれにどういうふうにこれを保障していくかというのはいろんな場合があるので、公共の福祉との兼ね合いというような言い方もあるかもしれませんが、例えば居住、移転の自由とあるいは内心の自由と同じ保障ということではない。やっぱり居住、移転の自由であれば、おのずといろんな公共の福祉からの、あるいは本人にとってのいろんな制約というものもあると、これはもう一般論としてそういうことでございます。
 通信内容は、これはもう通信そのものですから、通信の秘密は侵してはならないということなので、そこを何かの制約を加える場合には、制約といいますか、そこに捜査の手が伸びるときにはよほどの必要がなければできない。それでも、必要があれば通信内容にも捜査の手が伸びることはありますが、通信履歴というのはやり取りをしたという言わば外形的事実ですから、その外形的事実を捜査機関が把握をして、そこからいろんな捜査手法を使って犯罪に迫っていくということは、私は、内容よりもそれは外形的事実なので、より基本的人権としての保障が徹底される場面というのが制約されてくるということはあり得る話だと思っております。
○井上哲士君 一般論ではなくて、やはり個別の問題なんですね。履歴には犯罪容疑とは無関係なものも当然含まれてまいります。捜査対象者と通信をしていたと、その相手は自分が知らない間に通信していたという事実が捜査当局の手元に行くというおそれがあるわけですね。私のところにもマスコミ関係者の方からメールいただきましたけれども、一体どういう人と自分が接触して、どういう人から取材をしているのか、その事実自身を我々は隠す必要があるんだと、だから、誰といつ通信したということが明らかになること自身が取材源の秘匿を困難にし、そして報道の自由を侵すことにもなりかねないと、こういうメールも来たんですね。
 これ、どうお考えでしょうか。
○国務大臣(江田五月君) それは、報道の皆さんからすると、自分がどういう人に接触をして取材をしているかということは、取材源を秘匿するという観点から非常に重要なことだと思います。
○井上哲士君 ですから、中身は重要だが履歴は少し限定をされてもいいということに私はならない、こういうケースだと思うんですね。
 そもそも、いつ誰と通信したかというのはまさに通信の秘密、重要な憲法上の問題です。ですから、だからこそ通信履歴というのは通信が終われば基本的には速やかに消去されるべきものなんですね。通信事業者が一定期間通信履歴を保持しますのは、料金請求とかそういう課金のための業務上必要最小限度、そういうときなどに許されるものだと思います。
 例えば郵便事業の場合は、誰と誰のところに郵便のやり取りがあったか、江田法務大臣のお宅に毎月毎日どれだけの郵便が届いた、こんなことは一切記録に残しませんね、特別の場合を除いて、配達証明とか。なぜかといえば、切手を張って投函をした段階で既に課金ということでいえば終わっているわけです。
 じゃ、電話はどうかといいますと、通信時間によって料金が違いますし、市内、市外、国際電話で料金違いますから、請求する際にどういう番号に何分掛けたかということは残しておかないと請求の根拠がありませんから、これはその必要の範囲で通信履歴は残します。しかし、それも必要なくなれば、やはり消去されることになるわけですね。
 じゃ、ネットの場合はどうかと。今、大体通信時間で料金が発生する従量制か、ないしは幾ら使っても一か月の料金が同じという固定料金ですから、従量制の場合も、その接続している時間さえ把握をすれば別に請求はできます。ですから、一体いつ誰と通信をしていたかということを課金のために残す必要は基本的にないわけですね。ですから、ネットの場合も通信履歴というのはやはり速やかに消去をされているということなわけですよ。
 ですから、履歴といえども、を残すということ自体がやはり通信の秘密とも非常にかかわりのある問題でありますから、これを捜査機関からの要請だからといって事業上の必要性以外の目的で保持をさせていくということが果たして正当なのかと。私は疑問なんですが、いかがでしょうか。
○国務大臣(江田五月君) 今委員が御指摘のような観点というのは、私は否定するものではありません。そういう観点というのはあり得る話だと思います。
 しかし一方で、このコンピューターネットワークというものが今国際的にも広がりを持ち、そして社会的に重要なインフラになっていて、それに対してサイバー攻撃、ウイルスの攻撃があって、これが重要な混乱を起こしているというのも、そしてそれを防いでいかなきゃいけないというのもまた一つの大きな要請だと思うんですね。
 ですから、そこのやはりそれは兼ね合いの問題であって、通信内容はこれは相当な根拠がなければそこへ踏み込むことはできないけれども、通信履歴について、しかもこれは結構早く消去されるものであるから、状況を見ていてこの部分についてはちょっと消去を待ってくださいということで一定の保全の要請を、しかも一定の限られた人間が行うと。そして、やはりそれは必要なかったらもうそれはもちろん取り消すこともあるし、また期間の経過によって消去されるということもあるけれども、必要があるという場合には令状を請求をして司法審査を経た上でその通信履歴というものを捜査機関が取得をして、これの解析によって犯罪に迫っていく、被疑事実に迫っていくということですから、私は、客観証拠を重視していくというような今の時代の流れからいうと、やはりここは、その兼ね合いでこの限度で一定の制度をつくることはこの適正手続にも、あるいは通信の秘密を守るという憲法の要請にも合致をするものだと。そして、これについてはもちろん濫用があっちゃいけませんから、そこは立法府の皆さんのいろんな御注意にもこたえながら適正な運営をしていきたいと思っているところです。
○井上哲士君 当委員会でも取調べの捜査メモのことを問題にしたことがありますけれども、プライバシー保護のためには速やかに必要ないものはもう捨てなさいというか、もう消去しなさいということを言っていましたよね。ですから、やっぱり秘密の保持ということのためには、必要ないものはもう残さないというのが一番の問題なんですね。それをさせるということは、やはり憲法で保障された通信の秘密にかかわる問題ですから。もちろん一方で捜査の必要性というのはあります。ですから、差押えの必要性がまだ明らかでないうちに令状もなしに捜査当局の要請でそれを可能にするというのは、これはやはり私は問題だということを思うんですね。
 しかも、今内容とは違うんだということも言われましたが、衆議院の答弁で大臣こういうふうに言われているんですね。受信メールの本文についても、プロバイダーの利用者においてダウンロードすればプロバイダーのサーバーから削除されるというものと承知しており、通信履歴についてプロバイダーに対し保全要請を行うことによって電子メールの本文について保全されるということには必ずしもならないと、こういう言い方をされました。
 複数のパソコンを使っている場合に、ダウンロードしてもサーバーから削除されないというふうな設定にしている方はむしろ多いんじゃないかと思うんですね。ですから、残っているんです。必ずしもないという言い方をされたという答弁は、内容が保全される場合もあるし、その際は今後差押えの対象に履歴とともに保全されていた内容もなると、こういうことなんでしょうか。
○国務大臣(江田五月君) メールの内容がダウンロードされれば消えてしまう場合と、そうでなくてダウンロードされても残る場合と、それは設定の仕方で両方あると。しかし、ダウンロードされれば消えてしまうような設定の仕方もあるんだということを言ったわけで、しかし、そうでない場合には、それは履歴が残っている場合に内容も残るという場合は当然あるわけです。
 しかし、今保全を要請するのはこれは履歴であって、内容まで要請しているわけではないけれども、同時に内容も残ってしまうということはあり得るだろうと。だけれども、あくまでその内容についてこれを捜査機関が取得をしたいと思えば、通信履歴の差押えによってだけではそこまで行くことはできないので、これはまた新たに何か手続を取ればそういうこともあり得るという話であって、そういうことを述べたと御理解ください。
○井上哲士君 ということは、履歴の保全要請をした、その中には内容が保全されている場合もある、それも含めて令状を取ればそれも差押えの対象になることがあり得ると、こういう理解でいいんですか。
○国務大臣(江田五月君) そういう令状が別に得られればそれはそういうことはあるでしょうが、その場合には司法審査は別途行われるものと思います。
○井上哲士君 そうしますと、この間問題になってきたような事実上のリアルタイムの傍受のようなことに近いものになってくるんじゃないか、私は大変問題だと思います。これまでの答弁ぶりとも少し違うんではないかという疑問を呈しておきます。
 もう一つ、差押えの件についてでありますが、電磁的記録のある記録媒体そのものを差し押さえることができるのが大前提で、被差押者がどの程度協力してくれるかなどなど、いろんな事情で執行方法もいろいろで、現場での捜査機関の判断に委ねるのが適切という答弁でありました。今回、電磁的記録の性質に着目して法整備をしたということでありますが、コンピューターの特徴は、やはり被疑事実とは関係のない膨大な記録が入っておりまして、それそのものが差し押さえられますと業務等にも支障があるということから、他の記録媒体に複写をして差し押さえることができるという法整備したわけですね。そうであれば、やはり他の記録媒体に複写差押えができるという場合には原則としてそうするべきであって、記録媒体そのものの差押えはできないという運用にするべきだと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○国務大臣(江田五月君) これは両方の場合があると。そして、それぞれそれは令状が別ですから、そこは令状審査が両方あり得るという話で、どっちが本体ということになりますとなかなかお答えしづらいんですが、捜査をやっていく場合に、記録媒体自体に残っている様々な情報というものが捜査に有益という場合もあるんだと思います。
 したがって、記録媒体を押さえることは例外であって中身の複写などが本則だといっても、やはり捜査機関としてはこれは記録媒体を押さえて迫っていきたい、いく必要があるという場合があって、そのことをきっちり明示をして、その資料を付けて令状請求をしたら、そこは司法審査の結果そういうことも出てくるので、どちらが本体、本則というわけにはいかないと思います。
○井上哲士君 私はなぜこういうことを言うかといいますと、やはりコンピューターそのものを差し押さえられますと大変なことになりますから、実際には他の媒体に複写して差し押さえる場合でも、コンピューターそのものを押さえるよということを言わば圧力にしていろんな供述の強要とか起こり得るんじゃないかということをやはりこの間の事態を見れば思うわけです。ですから、そこはもっときちっと、原則は今言われたような特別な理由がない限りは複写して差し押さえるべきだと、こういう運用をやはりもうちょっと明確にするべきじゃないかと思いますが、改めていかがでしょうか。
○国務大臣(江田五月君) 繰り返しのお答えで恐縮ですけれども、そこは捜査機関の捜査手法というのは様々あって、電磁的記録そのものということもある、しかし電磁的記録等が記録されている記録媒体の属性というものをしっかり把握したいという場合もある。その辺りについて、どちらが本則でどちらが例外というのはなかなか捜査機関の立場に立つと難しくて、もちろん捜査機関の立場だけが全てではありませんが、コンピューターネットワークの保全ということを考えるならやはり捜査機関も一定の捜査手法がなければそれはいけないんで、この辺りが一つ調整のよく利いた制度設計ではないかと思っております。
○井上哲士君 差押え自身をやめろと言っているんじゃなくて、複写してできるんであればそれを原則にすべきだということは私は国民の立場に立ったやり方ではないかなと思います。そういう運用を強く求めておきたいと思います。
 最後、ウイルス作成罪に関してなんですが、今日も冒頭、バグに関しての少し整理した答弁がございましたけれども、前回の質問のときに、重大なバグを指摘をされながら公開をし続けた場合に、提供罪についてはどうなるのかという質問を私いたしました。元々衆議院でもそういう質問でした。その際に大臣の答弁は、百六十八条の二の第二項には当たらないと、こう言われましたので、私はそれを聞いて、提供罪には当たらないという答弁があったというふうに引き取ったんですが、百六十八条の二の第二項というのはこれは供用罪なんですね。供用罪に当たらないと言われるとまた少しこの間のとも違うと思うんですが、改めて聞きますけれども、そういう重大なバグを指摘されながら、その作成した人がそれを知った上で公開をし続けた場合というのは、これは提供罪に当たるのか当たらないのか、明確な答弁をいただきたいと思います。
○国務大臣(江田五月君) その不正指令電磁的記録の場合に、作成罪と提供罪と供用罪というのがあって、一項は作成罪と提供罪を書いてある、二項は供用罪を書いてあるという、そういう整理の仕方で、一項の提供罪というのは、これは言ってみれば、提供する側とされる側がある意味意思の疎通といいますか共通の認識があるような場合で、ですから、偶然できたウイルスを向こうも、提供を受ける側もそれを知っていてそして受ければ、むしろ自分で作成するんじゃなくて、人が作成したものを自分で今度それをいろいろ利用できるようになるわけですから、その場合は提供を受ける側が情を知っていると、悪意であるということが想定をされていて、供用罪の場合には、これは供用される相手がまさにそういうものだということを知らないわけですから、これを実際に活用することによってコンピューターの中がむちゃくちゃになっちゃうということでございまして、そういう仕分があると、そういう切り分けになっているということでございます。
○委員長(浜田昌良君) 井上哲士君、おまとめください。
○井上哲士君 時間ですので、じゃ、終わります。
○委員長(浜田昌良君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
 これより討論に入ります。
 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
○井上哲士君 私は、日本共産党を代表して、情報処理の高度化等に対処するための刑法等一部改正案に反対の立場から討論を行います。
 コンピューターとそのネットワークが広く社会に普及している中で、利用者に重大な被害を及ぼす不正なプログラムの広がりに対処することが求められております。しかし、本法案は、そのような対処の必要性によってもおよそ正当化し難い内容のものであります。
 第一に、いわゆるコンピューターウイルスについて作成段階で犯罪化することは、実際の被害発生前の行為を処罰しようとするものであり、刑法の原則に反するものであります。重大な犯罪の予備的な行為が処罰される例としては、銃刀法違反や劇薬、毒物等の不正な入手、所持の処罰などが挙げられますが、いずれもそれ自体が人の生命や身体にかかわるものであり、コンピューターウイルスについてこれらと同じように処罰の早期化の必要性を認めることはできません。
 また、被害が発生していないにもかかわらずプログラム作成者のコンピューター上で行われる作成行為を処罰及び捜査の対象とすることは、プログラムを行う者の内心の自由、表現の自由を脅かすことになりかねません。仮に、被害発生前の摘発になるとすれば、見込み捜査で追いかけていないとできないことから、対象者を継続的に監視するといった捜査手法を招くおそれがあります。
 第二に、ウイルスの作成、供用等の罪の構成要件が極めて客観性に乏しく、全く明確ではありません。被害発生以前の目的犯であることもあり、外形的に処罰の範囲を限定することは困難であります。曖昧な規定を当局が運用して対処することは、プログラムの作成を行う人々の活動の萎縮をも招きかねません。ウイルス被害に対処するためには、本来のコンピューター機能を損なったという実際の被害に着目した類型をつくるべきであります。
 第三に、通信履歴の保全要請は、憲法上保障されている通信の秘密を侵害するおそれがあります。一般に、通信の秘密は、通信の内容のみならず、通信の事実そのものも秘匿の対象とされるべきものです。法案は、本来であれば一定の時間の経過とともに消去されるべき履歴について、捜査対象者が通信を行った相手方である他の利用者に対して何ら通知も行われないまま、それと知られずに履歴を保全するものであります。さらに、裁判所の判断を得ることもなく当局による要請が可能とされていることは、令状主義に反するものであり、当局側の濫用を招きかねないものであります。
 以上、三点申し上げまして、反対討論とします。
○委員長(浜田昌良君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。
 これより採決に入ります。
 情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
○委員長(浜田昌良君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 この際、桜内君から発言を求められておりますので、これを許します。桜内文城君。
○桜内文城君 私は、ただいま可決されました情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律案に対し、民主党・新緑風会、自由民主党、公明党及びみんなの党の各派並びに各派に属しない議員長谷川大紋君の共同提案による附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。
    情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、本法の施行に当たり、次の事項について特段の配慮をすべきである。
 一 不正指令電磁的記録に関する罪(刑法第十九章の二)における「人の電子計算機における実行の用に供する目的」とは、単に他人の電子計算機において電磁的記録を実行する目的ではなく、人が電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせない電磁的記録であるなど当該電磁的記録が不正指令電磁的記録であることを認識認容しつつ実行する目的であることなど同罪の構成要件の意義を周知徹底することに努めること。また、その捜査等に当たっては、憲法の保障する表現の自由を踏まえ、ソフトウエアの開発や流通等に対して影響が生じることのないよう、適切な運用に努めること。
 二 記録命令付差押えについては、電磁的記録の保管者等に不当な負担を生じさせることのないよう十分留意するとともに、当該記録媒体を差し押さえるべき必要性を十分勘案した適切な運用に努めること。
 三 通信履歴の保全要請については、憲法が通信の秘密を保障している趣旨に鑑み、その必要性及び通信事業者等の負担を考慮した適切な運用に努めること。
 四 サイバー犯罪が、容易に国境を越えて行われ、国際的な対応が必要とされる問題であることに鑑み、その取締りに関する国際的な捜査協力態勢の一層の充実を図るほか、捜査共助に関する条約の締結推進等について検討すること。
 五 本法の施行状況等に照らし、高度情報通信ネットワーク社会の健全な発展と安全対策のさらなる確保を図るための検討を行うとともに、必要に応じて見直しをすること。なお、保全要請の件数等を、当分の間一年ごとに当委員会に対し報告すること。
   右決議する。
 以上でございます。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
○委員長(浜田昌良君) ただいま桜内君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
○委員長(浜田昌良君) 多数と認めます。よって、桜内君提出の附帯決議案は多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 ただいまの決議に対し、江田法務大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。江田法務大臣。
○国務大臣(江田五月君) ただいま可決されました情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。
○委員長(浜田昌良君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(浜田昌良君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 午後二時に再開することとし、休憩いたします。
   午後零時十分休憩
     ─────・─────
   午後二時開会
○委員長(浜田昌良君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 本日、難波奨二君、松浦大悟君及び藤川政人君が委員を辞任され、その補欠として白眞勲君、今野東君及び磯崎仁彦君が選任されました。
    ─────────────
○委員長(浜田昌良君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 東日本大震災に伴う相続の承認又は放棄をすべき期間に係る民法の特例に関する法律案の審査のため、本日の委員会に金融庁総務企画局審議官居戸利明君、金融庁総務企画局審議官森信親君、金融庁総務企画局参事官遠藤俊英君及び法務省民事局長原優君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(浜田昌良君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
○委員長(浜田昌良君) 東日本大震災に伴う相続の承認又は放棄をすべき期間に係る民法の特例に関する法律案を議題といたします。
 提出者衆議院法務委員長代理階猛君から趣旨説明を聴取いたします。階猛君。
○衆議院議員(階猛君) ただいま議題となりました東日本大震災に伴う相続の承認又は放棄をすべき期間に係る民法の特例に関する法律案について、提案の趣旨及び概要を御説明申し上げます。
 本年三月十一日の東日本大震災によって甚大な被害が発生し、多くの被災者はいまだ生活再建の見通しが立たず、混乱状況が続いております。
 このような中、現行の民法では、相続人は、自己のために相続の開始があったことを知ったときから三か月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならないと規定し、家庭裁判所で伸長の申立て手続を経ない限り、単純承認したものとみなされております。
 しかしながら、このような被災地の現状においては、民法に定める三か月の期間中に相続の限定承認、放棄、期間の伸長の申立て手続等を行うことは困難な状況にあり、相続人が相続の承認又は放棄をするかどうかの十分な熟慮期間を確保する必要性が指摘されております。
 そこで、この法律案は、東日本大震災の被災者であって平成二十二年十二月十一日以後に自己のために相続の開始があったことを知ったものについて、相続の承認又は放棄をすべき期間を、平成二十三年十一月三十日まで延長するものであります。
 なお、この法律は、公布の日から施行することとしております。また、一定の場合を除き、この法律の施行日前に民法第九百二十一条第二号の規定により単純承認をしたものとみなされた相続人についても適用することとしております。
 以上が、本法律案の提案の趣旨及び概要であります。
 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
○委員長(浜田昌良君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。
 これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○前川清成君 民主党の前川清成でございます。
 この法案は、民主党の復興ビジョンチーム、その二重ローンチームの中で階さんとも議論をしたものでありますし、あるいはこの委員会で木庭先生からも御指摘があったものでありますので、私も一日も早くこの法案が成立することを期待をいたしております。今日はそのような趣旨で、若干必要性を確認するような質問をさせていただきたいと思います。
 今の提案の理由の中にもありましたけれども、震災による生活の混乱の中で相続放棄の熟慮期間が徒過してしまって、被災者に予期しない債務を負担させてしまうことなどを回避するべくこの法案が提案されておりますけれども、三か月の熟慮期間については、家庭裁判所は利害関係人あるいは検察官の請求によって延長することができるというふうに定められています。正しくは伸長でしょうが、分かりやすく、延長することが定められています。延長の請求をすることで熟慮期間が徒過してしまう不利益は回避できるはずですが、実際に被災者の皆さん方が個別に請求をすることは実態として不可能でしょうし、仮に不可能でないとしても極めて困難あるいはまた酷ではないかと、私もそんなふうに思います。
 それでは、この民法の条文は、利害関係人だけではなく検察官も延長の請求をすることができると、こう定められておりますので、検察官が公的な役割としてその請求をすればいいのではないかと思うんですが、法務省にお尋ねしたいんですが、検察官が延長の請求をするということは予定しているのでしょうか。
○政府参考人(原優君) お答えいたします。
 法律上、検察官も公益の代表者として、利害関係人が何らかの事情によって伸長の請求をできないような場合にはこの伸長の請求ができるということになっておりますが、現在までの実務からしますと、検察官の請求が行われた件数というのはほとんどないんではないかというふうに把握しております。
○前川清成君 私も、原民事局長ほどの知識はありませんが、私が知る限りでも、この条文に限らず、例えば民法二十五条の一で不在者財産管理人の選任、これについても検察官にありますし、あるいは民法八百三十五条で親権の喪失の請求も行うことができるというふうに定められています。これはいずれも、検察官が本来、公益の代表者として後見的な役割を果たすべく規定された、そんな条文であるかと思うんですが、実際のところ、検察官がこれら法律に定められた役割を果たしていないのはどうしてでしょうか。
○政府参考人(原優君) これは推測でのお答えということになりますが、民法で、今先生がお話しになりましたように、いろんなところで公益の代表者として検察官が役割を果たすべきことが規定されておりますが、それぞれの場面においてほかに請求権者がおりますので、その請求権者にやっていただくということで余り検察が表に出てこなかったんであろうというふうに推測しております。
○前川清成君 大臣、ちょっと聞いていただきたいんですが、私、この検察官が請求することができると書いてある条文、これは、日本法が外国で翻訳されたときに、日本でもちゃんと後見的な役割を国が果たしているんだなと、そういう言い訳のためにあるのではないだろうと思っているんです。検察官が、今局長がおっしゃったように、実際のところ後見的な役割を果たすことができないのであれば、もう条文を削ってしまうか、あるいは、本来、法が理想とするところの後見的な役割を検察官が果たすように検察官に働いてもらうと、どちらかが必要ではないのかなと。建前としての請求権だけ置いておくのはいかがかなと、こういうふうに思っておるんです。
 きっと、これについて大臣と議論もさせていただいたことがありませんので、突然のお尋ねで恐縮かと思いますが、感想程度で結構ですが、いかがでしょうか。
○国務大臣(江田五月君) 突然の御質問でお答えをする準備はできておりませんが、検察官というのが公益の代表者であるという、これは単なる建前ではなくて、やはり重要なことだろうと思います。最近はますますその重要性は増してきているというか、強調されなければならない。刑事手続においても、検察官が単に自分が有罪判決を無理やり勝ち取って自分の検察部内の地位のために頑張るという、そういうことは良くないんだと。そうではなくて、やはり公益の代表者として行動することが求められていて、そういう検察官の公益代表者という立場をいろいろなところで法に書き込んでいるということだろうと思っておりまして、確かに民法の規定の中で検察官がこういう立場で登場する場合が多々見られるわけですが、その建前は建前として、やはり重視をしていかなければいけないと。
 突然の御質問ですが、そのように一応お答えをしておきます。
○前川清成君 ありがとうございます。私もそのように思っております。
 それで、提案者に次にお尋ねしたいんですが、今、江田大臣のお答えもありましたように、九百十五条で延長の手続もあるけれども、実際には検察官がその後見的な役割を果たしていないということもあって、この種、提案がなされただろうと思います。
 ただ、その九百十五条の起算点となりますところの「自己のために相続の開始があったことを知った時から」と、これについては判例の積み重ねもあります。私も弁護士のときに、相続開始後三か月以上たって相続放棄の申立てをしたこともありまして、親の借金を無理やりに子供に引き継がせないために、私は現在の裁判実務というのはうまく運用されているというふうに感じていました。
 例えばですが、御案内のとおり、最高裁判所の昭和五十九年の四月二十七日の第二小法廷の判決は、その九百十五条の起算点について、「熟慮期間は相続人が相続財産の全部又は一部の存在を認識した時又は通常これを認識しうべき時から起算すべきものと解するのが相当である。」と、こういうふうに言っています。
 現にこの判例の延長線で、大阪高裁の四十一年の十二月二十六日の判決、これは、相続人が相続債務を知っていたものの放棄等手続を何ら取っていなかった、その後に債権者から履行請求を受けたので放棄の申立てをしたケースにおいて、熟慮期間は債権者から請求を受けたときからスタートすると、こういうふうに判示をしています。
 そうであれば、今回、被災者の皆さん方が震災によって生活が混乱しておられる、その結果として、自分に例えばお父さんがお亡くなりになって相続が発生したことは認識していたけれども、お父さんから債務を相続したことは、承継したことは認識していないというようなケースにあっては、まだ三か月の熟慮期間がスタートしないことになります。そんな裁判実務を前提としてか、木庭先生の質問に対しても法務省は、この法案と同種の提案について余り緊急性や必要性を肯定しない答弁をしておりました。
 そこで、提案者の皆さんにお尋ねをしたいのは、今私が申し上げたような裁判実務を前提として、この御提案はどのようなケースを射程に入れておられるのか、お尋ねをいたしたいと思います。
○衆議院議員(辻惠君) 委員御指摘の判例の趣旨というのは、熟慮期間の認定に当たって非常に柔軟に実務上運用されているということ。やはり、相続財産が全く存在しないと信じていたのに、そう信ずるにつき相当な理由があるのに実は違った事情があるというような場合に、熟慮期間を後ろに延ばして救済を図るという柔軟な対応がなされていると。
 しかし、本件は、生活の混乱の中に多くの被災者があって、その上に個々に熟慮期間を伸長を求めたり、また裁判所や家事審判でそういう主張をするというのは大変な負担を掛けることになるということで、確実に熟慮期間を確保する必要性が高いという意味で、一定の範囲の被災者について一律に熟慮期間を延長する必要性があるんだというふうに考えております。
○前川清成君 提案者のお答えに特に異論を差し挟むつもりはないんですが、若干私の感想めいたことを申し上げますと、これまでの裁判実務を私は柔軟にというふうに表現するのはいかがかなと。柔軟にというのは、もう右も左も両方曲がるから柔軟なんですが、判例は一貫して債務奴隷にしない、親の借金を自らの意思に反して無理やりに背負わせることはないという方向で柔軟に運用されてきたので、その方向性自身は私もこれからも大切であろうかと思いますし、この法案も、いつまでも延長するわけにいかぬわけですので、これからの実務においてもそのように運用していただきたいと、そう思っています。
 それと、もう一つ、私の方から答えめいたことを申し上げるつもりもないんですが、これまでの裁判実務から申し上げれば、相続は発生したことは知っていましたと、しかし借金があることを知らなかったら三か月間はスタートしないので、被災者の皆さん方であってもこの法理によって救済されるであろうと思います。
 しかし、被災者の方々の中には、相続が発生したことも被相続人に多額の借金があったことも十分認識しておられる、しかし毎日の厳しい生活の中で、例えば裁判所に行ったりすることができないと。そんな方々を救済するために、つまりは、これまでの判例法理でも救済されないような方々を特に、特に救済するために提案されたというふうにお答えいただく方が私は親切かなと思うんですが、いかがでしょうか。
○衆議院議員(辻惠君) 的確に、正確に、委員のおっしゃるとおりだというふうに思います。
○前川清成君 それで、次に、この点は原民事局長にお尋ねしたいんですが、日本民法は熟慮期間を三か月と定めています。この三か月というのは、諸外国の法制度に比べて、こんなもんなんでしょうか、あるいは短いんでしょうか。
○政府参考人(原優君) お尋ねの相続の熟慮期間につきましては、十分な知識を持ち合わせておりませんけれども、手元の文献等で把握している範囲内でお答えいたしますと、まず、相続法制、諸外国を見ますと、大陸法系と英米法系で大きく分かれております。英米法系の場合には、死亡によってまず遺産相続人や遺産管理人、これが清算の手続をするということで、その清算を経て、残った財産が相続人に分配されるということですので、こういう法制であれば熟慮期間という制度はないんだろうと思います。
 これに対しまして、大陸法系の場合には包括承継主義が取られておりますので、死亡によって被相続人の財産が相続人に包括的に移転すると。したがいまして、熟慮期間制度というものが設けられているようでございます。
 我が国の三か月と同じ法制を持っておりますのは、お隣の韓国でございます。これに対しまして、短い期間を定めておりますのはドイツでございまして、ドイツは六週間としております。それから、フランスはちょっと変わっておりまして、財産目録の調製期間を三か月、その後の熟慮期間を四十日というふうに定めておりますが、ただ、これらの期間を経過しても単純承認したものとみなされない、その後も限定承認とか相続放棄ができるということになっておりますので、やや変わっているわけでございます。
 このように少ししか承知しておりませんので、諸外国と比較して我が国の三か月が短いのかどうか、お答えできない状況でございます。
○前川清成君 親族が亡くなって、悲しみの中で三か月というのはあっという間ではないかと私は思います。それでも現行法が三か月というふうに定めているのは、一方においては早期に法律関係を確定する、そういう要請もあるからではないかと思います。
 ところが、今回の法案におきましては熟慮期間中の相続についても適用することになりましたので、平成二十二年十二月十一日に発生した相続であれば、二十三年十一月三十日まで、およそ一年間法律関係が確定しないことになります。これは余りにも対象が広過ぎるのではないかというふうな考え方もあろうかと思いますが、この点いかがでしょうか。
○衆議院議員(階猛君) 今、前川委員が御指摘になった点は、これは立法をする上で非常に悩んだところでございます。震災で亡くなった方を相続する方たちだけを対象とするのか、それとも、震災前に既に亡くなっていた方の相続人であっても、生活が混乱している中で熟慮期間を徒過してしまう、そういう危険性がある人たちも保護すべきか、これを悩んだんですが、やはり後者を取りまして、今回は、熟慮期間中に震災に遭った、こういう相続人の方たちも対象にしました。
○前川清成君 今、階さんがおっしゃったように、今いろいろな御苦労もあって御努力をいただいたのかと思いますが、私、一点不満を申し上げれば、この特例法の条文が一読して分かりにくいという点であります。対象者については、東日本大震災の被災者とした上で、二重の括弧があって、二重の括弧があってもまだ範囲が特定されなくて、結局のところは災害救助法が適用された災害救助法二条に規定する市町村の区域に住む人たちという意味であって、一体誰にこの法律が適用されるのかと。もう多少アバウトであっても、岩手、宮城、福島、被災三県にお住まいの方々というふうな定め方もあってもよかったのではないかなと、そういうふうに思っています。
 なぜならば、この法律というのは、法律に詳しい階さんや辻さんのような弁護士とか江田先生のような裁判官だけが利用する法律ではなくて、被災地で困っておられる被災者の皆さん方が、相続放棄というのはすぐにしなくても十一月の末までにやったら何とかなんねんなと、そう分かっていただくことが大切ではないかなと。その意味において私はこの文言についてはすこぶる不満を持っておるんですが、この点について、もし、感想めいたことで結構ですが、いかがでしょう。
○衆議院議員(階猛君) 委員からは大変重要な御指摘をいただいたと思います。確かに、幾ら法律で熟慮期間の延長を定めたとしても、対象となる方がそれを理解してもらわなければ致し方ないわけでございます。
 そういった中で、私どもとしまして、誰を対象にすべきか、そしてそれをどうやって分かってもらうかということは非常に重要な問題だというふうに考えまして、最終的な結論としては、まず特定非常災害の被害者の権利利益保全法という法律がございまして、その中で民事調停の手数料を免除される地域というものが定められております。その地域と今回同一の地域をまず指定した上で、その上で、そこに住んでいる方々で相続された方ということを対象にしました。
 問題は、それをどうやって分かりやすく伝えるかということでございますが、具体的に列挙するとなると、岩手、宮城、福島というものとはちょっとはみ出すわけです。先ほどの民事調停の手数料を免除される地域は、はみ出す部分があります。
 そこで、そういった地域も含めて具体的に列挙していくとすると、合計六十六の市町村を列挙する必要があるということでございまして、そこは、それでもなお書くべきかどうかという御議論もあるかと思うんですが、最終的にはそこは法文上は今回のような表現にしまして、これから広報をする上で重々留意していきたいと思っております。
○前川清成君 是非被災地の皆さん方でお困りになっている方に情報として届くように、政府においても御尽力をお願いできたらと思っています。
 それで、実は階さんとは復興ビジョンチームの二重ローンチームで今も様々な作業を続けているわけですが、私はこの被災地の二重ローンの問題については、この法律だけにとどまらず、更に様々な法律が必要ではないかな、そういうふうに思っています。
 それで、これは江田大臣に通告させていただいている質問なんですが、全国の皆さん方から善意が義援金として寄せられています。この義援金を例えばサラ金が借金のカタで差し押さえてしまう、これは何が何でも我々の法感情が許すところではないだろうと思います。あるいは、被災者生活支援法に基づいて支給される支援金についても同様で、金融機関等が債権差押えの対象にするべきものではないだろうと思っています。
 その点について、新たな立法の必要を私たちは考えておりますが、大臣としてはどのような御見解でしょうか。
○国務大臣(江田五月君) 議員の御指摘は、現在、今委員お話しのとおり、与党において検討されている義援金と被災者生活再建支援金、それと、今お触れにはなりませんでしたが、弔慰金についての差押禁止措置であると思いますが、これは、まず被災者生活再建支援金等を所管する省庁というのが実は法務省ではないんでございまして、その支給の目的や金額の多寡を考慮しつつ、その所管する省庁がこうしたものを考慮しつつ検討していただくというのが適切かと思っております。
 もっとも、これらの金が被災者の生活支援等のために支給されるものであって、債権者が支払の原資として期待しているものとはこれは到底言えないということでございますから、各所管府省又は立法府においてそうしたことを検討することは当然合理的であるし、私どもも必要な情報提供などは当然していきたいと思っております。
○前川清成君 ただ、私、民事執行なりあるいは破産管財の実務なりを一番よく知っているのは法務省なので、その辺のコントロールタワーとして法務省がもう少し積極的な役割をお果たしいただいてもいいのではないかなと、そう思っています。これは今、民主党の中のチームで作業をやっておりますので、是非、木庭先生、またその際は御協力をお願いを申し上げたいと思います。
 あと、二重ローンに関してもう一つお尋ねをしたいのは、住宅ローンに関連してでありますけれども、仮にですが、例えば津波で住宅が流されたとしても住宅ローン自体はなくなりません。ところが、住宅ローンというのは金かさが大きい上に、相場として申し上げれば、おおむね一四・六%の遅延損害金が付いています。もうあの震災から三か月がたちました。被災者の皆さん方御苦労しておられる中で、住宅ローンの毎月の返済金、滞っておられるという方も多いだろうと思います。
 じゃ、その金融機関が、返済が滞っているということを理由に期限の利益を喪失させて、その残債務全額について一四・六%の遅延損害金を課すことが正義にかなうのかと。私はそうではないだろうと思います。先般、党内の会議で銀行協会の方が説明されるところでは、当面の間は期限の利益も喪失させませんと、当面の間は遅延損害金を請求しませんと、こういうことでした。しかし、その当面の間がいつまでなのかというのがよく分かりません。
 今日は金融庁にもお聞きいただいているんですが、お越しいただいているんですが、この点、住宅ローン等の遅延損害金あるいは期限の利益の喪失、この点についても、私は、金融機関の自主的な措置に委ねるのではなくて、行政指導、さらには一歩踏み込んで立法的な作業も必要ではないかなというふうに感じておりますが、この点、いかがでしょうか。
○政府参考人(遠藤俊英君) お答え申し上げます。
 金融機関では、金融円滑化法の趣旨を踏まえまして、債務者からの返済猶予の申出に対してそれを受け入れる方向で、前向きに受け入れる方向で全力を挙げているということでございます。先生御指摘のように、そういった過程におきまして、基本的には遅延損害金は現在徴収していないということでございます。
 それで、今後どうなるのかという話でございますけれども、基本的には、被災地の金融機関は、こういった金融円滑化法の趣旨、あるいは三月十一日の金融庁、これは金融担当大臣と日銀総裁の連名による要請でございますけれども、その趣旨を十分に踏まえまして、被災者の立場に立って機動的かつ前向きな対応をしているというふうに理解しております。住宅ローンを借りている被災者につきましても、金融機関はその被災者の生活再建に向けた今後の道筋を踏まえた対応を取ろうとしているというふうに理解しております。
 したがって、足下が極めて厳しい被災地の状況が改善し、将来の具体的な展望が見えてくるまでは、金融機関において被災者の便宜に最大限配慮した対応がなされるものだというふうに期待をしておりますし、金融庁としましても、そうした適切な対応が確保されるように指導してまいりたいというふうに考えております。
○前川清成君 今の、漢字が多くてちょっと私理解できなかったんですが、それでは、今、いつまで金融庁としては被災者に対する取立てなり期限の利益の喪失が行われないものと適切に指導していくのか、時期をお答えください。
○政府参考人(遠藤俊英君) なかなか、被災者の個別の事情を踏まえた金融機関の対応ということでございますので、一律にいつまで対応すべきであり、それについて金融機関に対して金融庁が一律にここまでとにかく対応しろといった指導は難しいんでございますけれども、先ほど申しましたように、金融機関は、金融円滑化法という法律の趣旨に基づきまして、被災者の生活再建に向けた今後の道筋を見ながら自分たちの債権であります住宅ローンの対応ということを考えております。
 いろいろと個別にヒアリングいたしますと、申出があった例えば三か月とかあるいは六か月といった段階で自分たちの生活再建というものを是非全力を尽くしてやってみてくれと、またその時期が来たら住宅ローンの状況というものを見ながら協議しようねといった形で、かなり個別に機動的な対応を取っているというふうなことを、我々ヒアリングの結果認識しておりますので、そういった被災者の状況を十分に踏まえた金融機関の対応が引き続き取られているかどうかということについて、我々ヒアリングを通じて指導監督していきたいというふうに考えております。
○前川清成君 残念ながら時間が残り少なくなってきたんですが、今お答えになったように、債務者の個別の事情いかんであって、一律に時期を画するというのは難しいだろうと思います。ただ、そもそも金融機関と住宅ローンの債務者とは立場が違う、利害が相反する関係にあるわけです。それにもかかわらず、今の御答弁は余りにも金融機関側のというか、金融機関の肩を持ったお答えではないかなと私は思っています。
 金融機能円滑化法があって、その趣旨を踏まえて適切に対応してくれるというふうに言いましたけれども、金融機能円滑化法というのは、結局のところ、資本を積み増ししてやると、積み増ししてやるんだからその分余りひどい取立てをするなよと。結局のところ金融機関の善意に頼っているわけですが、しかし、その金融機関の善意にだけ頼ってきた金融行政が本当に間違っていなかったのか、私は是非この機会に見直す必要もあるのではないかと、そんなふうに思っています。
 今日は最高裁にもお越しをいただきました。限定承認という手続があって、その手続が安上がりで簡単に使われたならば相続放棄の延長の手続も要らなかったのではないかなということを対比するためにお越しいただいたんですが、時間がなくなりましてお尋ねすることができませんでした。そのことをおわび申し上げて、これで私の質問を終わらせていただきます。
 どうもありがとうございました。
○森まさこ君 自由民主党の森まさこでございます。
 今回の相続の熟慮期間の延長でございますけれども、自民党としては従前より政府に申入れをしていたところでございますが、なかなか御対応いただけなかったものですから、国会では初めて私が六月七日のこの委員会で指摘をさせていただきまして、強く大臣の方に要請をいたしましたが、そのときには大臣からは否定的なお答えをいただきましたところでございますが、本日、議員立法で法案を出していただきまして本当に良かったと、被災地の議員として感謝をしております。
 法案の質問に入る前に、別件で法務大臣に一言苦言を申し上げたいことがございます。これは被災地の治安についてでございます。
 三月二十四日以降、何回か大臣の方に質問をさせていただいている被災地の治安でございますけれども、私、先日土曜日、六月十一日に大熊町に許可を得て入ってまいりまして、原発から一キロ以内まで立入調査をしてまいりましたが、その際、大熊町の一時帰宅の方々も入られておられました。バスに乗って入られておられましたけれども、お話を伺いましたら、盗難が非常に多いと。一時帰宅をしたときにそれを発見するということで、それについては随時被害届を出しているということでございましたので、私の方で警察庁に統計を求めましたところ、三月一日から五月三十一日までの統計しかまだないんですけれども、双葉署、南相馬署、田村署という、この原発の二十キロ以内に掛かっている警察署の三署の合計で、窃盗犯の発生件数が三百五十二件報告をされております。今全く人が住んでいない地域で既にもう三百五十二件の窃盗が報告をされているということでございます。
 私も震災後、二週間後の三月二十四日に大臣にこの点を指摘させていただきました。と申しますのも、私もいわき市に帰りました折、小名浜というところに、ら・ら・ミュウという魚市場があるんですけれども、津波に遭って壊滅いたしましたけれども、私、そこの状況を見に行きましたら、シャッターが壊れていたんですが、そのシャッターの壊れているすき間から人が出てきたので、私はてっきりこの魚市場の経営者の方が自分の店の被災状況を見に来たのかと思って、あの、お店は大丈夫でしたかと駆け寄ったら、手に持っていた缶詰を戻して逃げていったということがありました。中にはレジ等もあったと思いますので、私はすぐ警察の方に届けましたけれども、なかなかこれが人数が少なくて警備もできませんというような、以後気を付けますというようなお答えをいただいていたんですが、三月二十四日の法務委員会で、そのとき警察庁とそれから法務大臣にこの件について御意見をいただいて、そのとき法務大臣は、「被災地域であっても犯罪が起きないように、治安が守られるように、これは大変大切なことでございますので、責任を持って対処していきたいと思います。」とお答えをいただきました。
 ところが、その後の報道で、福島地検の管内で被疑者を三十一人も処分保留のまま釈放したことが判明したんです。その釈放された容疑者の中には、暴力団組員も含まれていたことが発覚しました。釈放されたのは三月十一日から十六日の間であり、私の質問は三月二十四日ですから、質問をしたときにはもう既にその三十一人が処分保留のまま釈放されていた。そのときに、法務大臣が先ほどのような頑張りますという答弁をいただいていて、地元での不安感を思うと地検の対応について私は大変疑問を感じますし、こういった盗難が先ほどのような件数が報告をされているということを考えますと、犯罪者に誤ったメッセージを与えたのではないかというふうに大変危惧をしております。
 三月二十四日の質問の後、三月三十一日には検察の在り方検討会議からの提言が出され、検察の信頼回復に向けて取組を始めようということが報告をされました。ただ、このような福島地検の対応を考えますと、検察改革を進めていけるのか、大変疑問に感じます。
 この検察の在り方検討会議は千葉景子元大臣が座長でありまして、村木厚子さんの冤罪事件の検察特捜検事によるフロッピーディスク改ざん事件、これを契機につくられた在り方検討会議ではありますけれども、これについて、やはりこの冤罪事件のもととなったフロッピーディスクの改ざん、これを特捜の部長が証拠隠滅した当時の大臣が座長であるということで、人選が大変疑問であるということも私から柳田当時の法務大臣に意見を申し上げていたところではございます。そのような三十一日の報告書がなされても、福島県においては被疑者釈放がなされていたということで、本当に検察が改革をしていけるのか。これについては、警察の方がこの釈放について、逮捕した警察の方に十分な相談がなかったというふうに、この検察幹部の自分の判断が間違っていないか批判的に見詰める真摯な姿勢、これがないということは、この村木厚子さんの事件と同じ問題を組織的に抱えているんではないかということを指摘をしています。
 福島県内で釈放された三十一件の中には窃盗が十三件含まれておりまして、それ以外に強制わいせつ犯の釈放もありました。これは独り暮らしの女性の寝込みを襲って手錠で羽交い締めにしてわいせつ行為を続けた計画犯でございますけれども、こういった被疑者に対して、留置場等が大変混乱しているというような、そういう理由で簡単に釈放してしまったということで、被害の女性は再び被害に遭うのではという恐怖で大変おびえたという報道がされております。また、釈放されたうちの一人はその後また再犯をすぐに起こしたということも報告されております。すぐにコンビニの事務室に侵入し、建造物侵入容疑で再び捕まったということでございます。
 法務省は中村福島地検検事正を五月十六日に交代をさせるということを、更迭をしたようでございますが、トップを変えただけでこのような組織内の体質が改善されるのかどうか、大変疑問でございます。それどころか、福島地検のいわき支部はこの問題が行われた後、何と三月十六日以降、庁舎を閉鎖し、福島地検郡山支部で業務をしておりました。その理由は関係者を呼び出して取り調べるのが困難となったというふうに言っておりますけれども、警察の方は動いております。警察、いわきの中央署では原発地域の双葉地方で逮捕された被疑者もそちらの方で引き取って捜査を続けておりましたけれども、地検の方はいわき支部を閉鎖して郡山で業務をし、さらにその後、四月になりましたら、検察官五人は転出して、残る検察官は支部長と副検事の二人のみとしたということで、四月からはずっと二人しか検察官がいわき管内にいませんでした。
 いわき市というのは二十キロよりも外でございまして、特に避難区域ではありません。普通に住民が住んでおります。さらに双葉地域の被疑者がいわき市内に勾留されていると、そういう状況の中で検察が数を減らすということで大変治安と住民に与えた不安というのは大きかったというふうに思います。
 五月九日になって、やっと検事一名、副検事二名の三名が補充になりまして、現在五名体制ですけれども、従前の七名体制よりもまだ少ない体制が取られております。通常であれば被災地は増員しなければならないような状況の中で、なぜこのように人員を減らすのか。私は、三月二十四日に治安について責任を持って取り組みますと法務大臣がおっしゃったことに逆行するようなことが行われているのではないかというふうに思いますけれども、法務大臣の御見解をお聞かせください。
○国務大臣(江田五月君) 多岐にわたる問題点を御指摘いただきました。それぞれ検察の判断、法務当局の判断というのもございますが、全体として見て、地域の皆さんにいろんな御心配をお掛けをしたということは大変申し訳なく思っております。
 決して、何かその場のその場しのぎで治安のために頑張るということを言ったわけではありませんが、現実に今、例えば検察官が一時いなかったとき、あるいは二名であったときがあるというような御指摘もございまして、これからも間違いのないように頑張ってまいりたいと思っております。
○森まさこ君 法務大臣は、福島地検が先ほどの三十一人の釈放をしたときに、釈放をした理由、これは、別の刑事施設に移送する余裕がなかったので釈放の理由は十分にあったと思っているというふうに答弁されておりますけれども、今でも釈放の理由は十分であったというふうにお考えでしょうか。
○国務大臣(江田五月君) 個別に、それぞれの事案ごとに勾留の理由、勾留の必要性を判断して、あるいはその地域の状況、捜査の状況などを判断して検察官が釈放の指揮をして、その指揮自体が違法であるということにはなっていないと。これは今もそう思っておりますが、全体として、関係機関との協議が十分でなかったこともあるとか、あるいは地域の皆さんに不安を与えたことも事実でございまして、全体状況としては、これは申し訳なく思っていると言わざるを得ません。
○森まさこ君 申し訳なく思っているという御答弁でございますけれども、この釈放の問題のその後に検察官の数が減らされております。
 私は、震災直後の三月二十四日のこの委員会で、法務大臣の質問の前に、警察庁に被災地の治安はどうなんですかというふうにお聞きしたときに、警察庁は、基本的には大きな問題は起きていません、むしろ件数自体は減少しています、不審者を見たという一一〇番が実際に多くを占めています、それで、その都度警察官が現場に向かって確認をするんでございますが、実際にはほとんど不審事案ではございません、そのような、現場と全く違った答弁をしているんです。
 警察がこのような認識で、さらに検察の方がどんどん釈放をして、さらに検事の数も減らしていて、被災地の治安はどうやって守れるんでしょうか。福島県は、地震、津波、そして原発事故、風評被害と、四重被害を背負って、それでも頑張って暮らしています。そこで治安も守ってもらえなかったら、本当に住民は安心して復旧復興に向かって進んでいけないんですね。
 先ほど、本当に不審事案ではございませんというような警察庁のお答えが当時ありましたけれども、その三月当時は警戒区域でございませんので、立入禁止ではございますが、許可を得て御遺族の遺体捜索に入る者、家畜に餌をあげに行く者、住民が出入りをしていました。そのときには入口は何も警備をされていないし、擦れ違うトラックが県外のナンバーで、その荷台にいっぱいテレビやエアコンの室外機が積まれていくと、そういったことがボランティアさんからも報告をされています。
 このような警備の薄さ、そして検察官も数を減らすということでは、やはりこれは先ほどのような窃盗件数、これが、一時帰宅がこれからどんどん進んでいって町内の方に入っていきますが、もっと多くなると言われています。その盗まれた住民の財産は政府の無策によって盗まれてしまったと言っても過言ではないというふうに思うんですけれども、法務大臣、そこのところは責任を感じていらっしゃいますか。
○国務大臣(江田五月君) 一々のことについてあれこれ弁解はしたくありませんので、本当に申し訳なく思っているとしか言いようがございません。
 ただ、確かにいろんな事例があると思います。思いますが、現場で努力をしている警察の皆さんも、私どもはいろんな苦労をしながら警察も頑張っているというふうに聞いていますので、そこはひとつ、警察の御苦労、御努力がどういうものであるかというのは警察の方に是非聞いていただきたいと思いますし、また、検察というのは一般的には警察から送致を受けて活動するわけで、送致を受けた事件数でいえば、今現在のところ、いわき支部は五名体制でやっておりまして、その体制で事件処理ができる体制になっておりまして、この後更に事件が増えてくる、あるいはまた一時的に必要があるということがあればそれはちゃんと対応していきたいと思います。
 本当に御心配を掛けていることは申し訳なく思っております。
○森まさこ君 今大臣から改善策について御答弁いただきましたので、しっかりとお願いをしたいと思います。
 それでは、法案についてでございますけれども、先ほども申し上げましたように、六月七日の当委員会においてこの点を指摘させていただきました。まだ十万人に近い避難者が福島県内外にいます。また、福島第一原発の事故は進行中ですので、生活再建の見通しも立たない中、混乱状態が続いておりますので、こういった現状を考えますと、この相続放棄の熟慮期間、延長をしていただいたということには大変感謝をしていますし、評価を申し上げます。
 ただし、私は、この始期が、始まる時期が早過ぎるということを指摘させていただきたいと思います。先ほど前川議員の方からも同様の指摘がありましたけれども、私が質問をしたときには、震災で亡くなった方の相続について大変混乱をしておりますし、熟慮期間を延ばしてくださいということを申し上げました。
 ところが、本法案では、震災で亡くなった方のみならず、震災前に亡くなった方の相続人まで保護の対象になっております。ですので、例えば十二月十一日というのが本法案の始期でございますけれども、十二月十一日、震災前の年の十二月十一日にお亡くなりになり、ほぼ三か月間その被相続人の債務やら財産やらそういったものを調査もし、相続人間で話合いもし、いろいろなその熟慮期間を経てあと一日となったときに三月十一日の大震災が起きたと、そういう方についても、あと一日だけではなく、八か月以上一年近くですね、十二月十一日から十一月三十日までですので一年以上もこれが延びていくと。三か月たった時点から八か月延長して、全体でいえば、お亡くなりになってからいうと一年以上も後の十一月三十日まで熟慮期間を延長するというのは、これは長過ぎるのではないかということを指摘をさせていただきたいというふうに思います。
 と申しますのも、私の六月七日の質問に対して、法務大臣が、それはできませんという答弁をなさったときに、その理由をこういうふうにおっしゃいました。相続の効果の帰属が不確定な状態が続くというのは、やはりほかの相続人や利害関係人の利益を害したり、あるいは法律関係の早期安定についての公的な要請に反したりするおそれがありますと。ですので、法務省としては、やはりこの法的安定の要請といったこともまた無視できないということもございますというふうにおっしゃっておられました。
 私は、その理由は理由でやはり一つあろうかなというふうに思っております。被災者の保護ということと、やはり私ども法律家は、一方で利益を保護したらもう一方の方の利益を害しないかというところまで目配りをしなければいけない。そういった利益衡量をしていかなければならない。やり過ぎちゃいけないというふうに思うんです。債権者さんたちもいらっしゃいます。
 この法案は、本当に広い範囲で保護を掛けていて、最小不幸社会を目指す民主党さんらしい法案だとは思います。しかし、最小不幸を目指していく余りに、見えない方の方が最大不幸、これをつくってしまうというのではこれはいけませんので、私はこの始期については、例えばあと一日でということであったならば、一定期間の落ち着いたときから一日というふうに、足りなかった日数だけを足していくという方が公平の観点に資するというふうに思うんですけれども、提案者の方の御見解を伺います。
○衆議院議員(階猛君) 森委員からは大変重要な御指摘をいただいたと思っております。
 私どもも、今回、熟慮期間の延長をする対象となる相続人の範囲、どこまでにするか、これもまさに熟慮に熟慮を重ねたわけであります。そういった中で、やはり確かに先生が先ほど例示されました、もう十二月十一日ぐらいに相続を知って、ほぼ三か月相続人間で議論してきましたと。で、たまたま三月十日までに意思表示をしないで三月十一日を迎えたような方々、こういった人たちについては、もはや制度も周知していますし、たまたま一日意思表示のタイミングが遅れたというだけで救う必要があるのかと、自己責任ではないかと。これも一つの考え方だと思います。
 しかしながら、先生も弁護士ですから多分よく御存じだと思いますけれども、この相続放棄の熟慮期間三か月ということが一般の方がどれだけ御存じなのかどうか。恐らく、私の印象では九割以上は御存じじゃない。そして、三か月たまたま過ぎて、今までは三か月過ぎても、被災地の方々、ほとんどの方はそんなに借金を相続することはなかったと思うんです。ところが、今回三月十一日を境に、それまでは財産と借金、ネットすれば、足し引きすればプラスか、マイナスであったとしてもごく僅かなものだったものが、今回財産全部流されて借金だけという方が多数いらっしゃるんではないかと思っております。しかも、そういった人たちは、仮に十二月十一日から熟慮期間がスタートしていたとしても、自分たちは三か月以内に意思表示をしないとそういう借金を背負うことになるということは恐らく分かっていなかった。したがって、熟慮期間進行中の方についても、三月十一日の震災にその途中で遭われた方については救わなくてはいけないんではないか。
 ただ、その反面、先ほど申し上げたとおり、ちゃんと前々から分かった上で準備していた人、この人たちは過剰救済というそしりは免れないと思います。ただ、大多数の人を救うために、やはりその不利益といいますか、不都合というものはこの際甘受しなくてはいけないんだろうかということで、我々はそういうことを熟慮した上で、こういった法案にした次第でございます。
○森まさこ君 今、過剰救済のそしりは免れないというふうに言っておられましたけれど、そのとおりだと思うんですね。あと一日だったという方も、その一日でプラスの財産がマイナスの財産になってしまったかもしれないので、救済をしなければならないという必要性があるのは分かりますが、その救済は先ほど私が言ったような方法でも救済できると思うんですね。
 例えば、民主党さんの考えだと、八月末に仮設住宅がほぼできると考えて、そこから三か月の十一月三十日なんでしょうけれども、八月末から足りなかった分の一日を足すということでもこの救済の要請にはこたえられるんです。そうしないで、なぜこの十二月十一日の方は最大で一年以上も熟慮期間を与えて、それに比べてですよ、それに比べて一番短い方は、三月十一日にお亡くなりになったとして六月十一日ですか、この方が一番短いかな、ちょっと分かりませんが、例えば三月十一日にお亡くなりになった方は、六月十一日に熟慮期間が通常であれば満了する方に対して十一月三十日まで延ばすとすると、延ばされる期間は六月十一日から五か月余りと短いわけなんです。
 震災当日に亡くなった方は短くて、それより前に三か月間、相続間の話合いも済んで、財産と借金について調査は済んでいて、それがプラスになったかマイナスになったかはその震災当日、一日で状況が変わるとしても、何と何があるかというものまでは調査ができる期間は過ぎていた、その方の方が一年以上も延びているという不公平があるという事実は、これは変わらないというふうに思うんですね。
 やはり私はそれで考えると、三月十一日以降にお亡くなりになった方の方の期間が短いのではないかというふうに申し上げました。私は、六月七日のこの委員会で御提案を差し上げたときは、三月十一日以降にお亡くなりになった方は一年間延期してくださいというふうに申し上げたんですよ。八月末に仮設住宅ができるというふうにはとても思えませんし、仮設住宅の建設完了だけが生活が落ち着く条件ではございません。まだまだ福島県は原発が収束をしていなくて、原発地域内の財産の状態さえ把握できないという状況にございますので、そうしますと、終わりの方が短過ぎて始まりの方がとても長過ぎるというふうに考えるんですけれども、これについてはどのようにお考えになりますか。
○衆議院議員(階猛君) 今の御質問、二つに分けて答えさせていただきたいと思います。
 まず、三月十一日以前の相続人の方たちに対して、仮に救うとしても期間は長過ぎるんじゃないかと。例えば、熟慮期間の持ち時間残り一日だった方は、八月末プラス一日ぐらいでいいんじゃないかという御指摘でした。もう一つの御質問というのは、三月十一日以降に亡くなった方の相続人について十一月末というのは逆に短過ぎるんじゃないかと、こういう二つの質問だったと思います。後段は辻先生からお答えしていただくとして、前段の方は私から答えさせていただきます。
 我が国の相続放棄の熟慮期間の起算点なんですけれども、これも先生はもう御承知だと思いますが、被相続人が死亡したときという客観的な時点を起算点としているわけではなくて、自己のために相続が開始したことを知ったときという主観的な起算点になっております。
 といいますとどういうことになるかと申し上げると、三月十一日以前に相続の開始を知ったということを、その熟慮期間がどこからスタートしたかということを証明しなくてはいけないということになるわけです。ところが、三月十一日津波が来て、相続開始したのをいつ知ったかという資料が多数流されてしまったかもしれない。そうしたところも加味しますと、仮に十二月十一日に本当は知っていたという方でも、いざ立証しようとしたときにそれを立証するすべがなかったりします。したがって、これは熟慮期間が進行中の方についてはもう一律に十一月三十日を満了日ということにしまして、確かに理論的には、先生のように、持ち時間に応じて一日あるいは一か月、二か月というふうにきめ細かくやった方が公平にはかなうかもしれません。しかし、それはやはり津波という被害を考えたときに必ずしもそれはうまく回らないんじゃないかということで、これも悩ましい判断でございましたけれども、このような一律な扱いにさせていただいているところでございます。
○衆議院議員(辻惠君) 確かに、例えば日弁連の意見書によりますと、応急仮設住宅が供給されるのに加えて、いろいろ土地買取りや債務免除等の立法措置が講じられたり、現実に施行されるまで相当期間が見込まれる可能性があると、したがって一年ぐらいの延長が望ましいんではないかという意見書が出ておりますけれども、先ほど森委員もおっしゃられたように、結局は利益衡量というか、比較考量の問題でありますから、被災をされた相続人の皆さんの窮状を救うということと、一方で法律関係の早期安定をやっぱりどこかの時点で図らなければいけないという、その双方の比較考量の問題だろうと。
 確かに、いろんな財政措置とか援助措置が政府からとられてはいないとしても、八月の末までの間、更に例えば熟慮期間を再延長しようとか、そういうことも含めた熟慮自体は八月末で一段可能ではないかというふうに考えられるので、そこをぎりぎりの利益衡量の折衷点として考えたということでございます。
○森まさこ君 ありがとうございます。
 前半の部分については私はまだ腑に落ちないんですけれども、あと一日という方で津波でその立証資料が全部流された方というのが一体どのぐらいいるのか、まあレアケースであろうと思います。そういう方ももちろん救済をしなければならないんですけれども、それについては八月末プラス一日であと二か月とちょっと時間を与えてあげて、更にそれで間に合わなければ伸長の申請ということもあるわけでございますので、そういったレアケースの救済にこだわり過ぎる余りに、一方の要請である法的安定性を害するということがいかがなものかという意見は申し上げておきますが、やはり全体的な趣旨、被災地の被災された方々が知らない間に大きな借金を背負わないようにというこの目的自体は同じでございます。
 それから、後半の方は、これこそ利益衡量ということでございますが、私ども自民党はあくまでも一年間の延長が望ましいという御意見は申し上げておきます。
 最後に、あと一分ほどでございますので、お願いを法務大臣の方に申し上げておきますけれども、この相続の関係の広報でございますが、先ほども同じ質問が出ておりましたけれども、被災地の人間、全国各地に避難しております。ですから、この周知というのは、一般論だけでなく、相当ないろいろな具体的な工夫が必要になってくるだろうと思います。どうぞ、この相続の熟慮期間、この延長、新しい法案通りましたら、その周知徹底に努めていただきますようにお願いを申し上げまして、時間になりましたので、質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
○木庭健太郎君 今日は、この相続の問題で熟慮期間を延ばすという、ある意味では自民党さんも検討なさっていた、民主党も検討なさる。
   〔委員長退席、理事森まさこ君着席〕
 現場に行けば、そして今、ある意味では現場の方たちが最も悩んで、どうすればいいんだということで法律相談に行けば必ずこの話題が出るというような課題だったわけですから、それに対して民主党としてもきちんとまとめていただいて、具体的に会期内にきちんと法案を出していただき、衆議院も今日、本会議で通過したということでございます。心から発議者の皆さんにも感謝を申し上げたい。
 とともに、私ども参議院も、今日、本当は衆議院の本会議を通ったわけです。発議者の皆さんがよくお分かりでしょうが、衆議院で通ったばかりの法案をどの党もつるすことなく、当参議院の法務委員会に直接かけさせていただいて、発議者の皆さんには御苦労いただきました。昨日、多分質問通告が突然行って今日答弁しろということになっているわけですから、その意味では御苦労をいただきますが、被災者の皆さんには私たち与野党関係なく、本当にこの法務委員会としては一日でも早くこういった被災者のための法律は通したい、この強い気持ちを持って、当委員会を一旦、本当は今日はサイバー関係の法律を通して、それで終わっているはずの法務委員会を午後再び開かせていただいてやっていると。この点も是非発議者の皆さんにも私たち参議院の思いも知っていただきたいと、こんな思いがあるということでございます。
 今日は質問通告したとおり、基本的なことについて、もう既に答弁があっている問題もあるんですが、きちんとした整理をするという意味でお聞きをしたいと思います。
 まず、法務省にお尋ねをいたしますが、先ほど前川委員も御質問になっておりましたが、民法の九百十五条一項で相続の熟慮期間が三か月と規定されている趣旨について、海外との比較というよりは、むしろ私がお聞きしたいのは、なぜ民法の九百十五条一項というのは三か月になっているんだと、その意味は何なんだということを教えていただければと思います。
○政府参考人(原優君) 民法が相続につきまして熟慮期間を定めて、その期間内に限定承認や相続放棄の意思表示がされないときは単純承認をしたものとみなすことにしてはおりますが、これは相続が発生してもその効果がいつまでも不確定な状態が長く続きますと、結果といたしまして、他の相続人や利害関係人の利益を害したり、法律関係の早期安定についての公共的要請に反したりすることがある、こういうことが考えられて規定されたものというふうに考えられております。
○木庭健太郎君 そういう趣旨があるにもかかわらず、まあ我々もそう考えたんですが、発議者の皆さんにお尋ねするのは、こういった問題について、民法ではこういう規定があるけれども特例措置を設けたと。しかも、その特例措置はどんなふうになっているかというと、これも議論が分かれるところだと思います。我が党でも随分分かれました。十二月十一日からでいいのかと、三月十一日以降とした方がいいのではないか、様々な意見がありました。
 でも、私どもは、発議者のお気持ちというのは多分、被災者に本当に幅広く、どうすれば、被災者になっちゃうわけですから、十二月十一日以降の人についても。被災者に幅広くどう考えるか。また、被災者の皆さんが、もちろん今の現状はもう全国に散っているわけですから、そんな中でこういった作業ができるというのは非常に困難だという状況の中でお考えになったんではなかろうかと推測はしつつ、ただ、せっかくの質疑の機会でございましたから、是非、こうやって対象の期限で、区切ったことによって東日本大震災前に相続が生じても特例法の適用対象となることの当否について、どんな議論があってこういう結果になったか、再度簡潔に御答弁をいただいておけばと思います。
○衆議院議員(階猛君) 木庭委員を始め参議院の法務委員会の皆さん、また参議院の全議員の皆さんに対して、この場を借りて改めてこの法案を迅速に審議にかけていただいたことに感謝を申し上げます。
   〔理事森まさこ君退席、委員長着席〕
 さて、御質問のお答えですけれども、なぜ、三月十一日より前に相続があり、そして、それを相続を知り、熟慮期間が現に進行中だった方についても救済の手を伸ばすのかということでございますが、もう木庭委員が先ほど御指摘になったことがまさにそのとおりでございまして、震災発生前に既に熟慮期間が開始されていたものであっても、発生日以後にその期間が掛かるものについては、震災発生後に熟慮期間が開始したものと同様に、震災による生活の混乱により当該熟慮期間中に相続の限定承認や放棄の判断が困難であろうということを考えまして、被災者救済の見地から救済の対象とさせていただきました。
○木庭健太郎君 そして、これも御論議があっておりましたが、本来ならば法律、つまり民法九百十五条第一項ただし書を見ますと、利害関係人又は検察官による個別の申立てによる熟慮期間の延長というのがあるのはあるわけですよね。でも、これでは多分十分でないと御判断なさったんだろうと思いますが、その点についても発議者の皆さんから御意見を伺っておきたいと思います。
○衆議院議員(階猛君) 平時であれば、まさに委員御指摘のとおり、家庭裁判所に相続人の方が出向いて必要に応じて熟慮期間の伸長の申立てを行っていただく、これが大原則であろうと考えております。
 しかし、震災の後、家庭裁判所に行くにもその足がない被災者の方々、避難所で暮らされて家庭裁判所に行くどころか近くのコンビニにもスーパーにも行けない、そういう方がたくさんいらっしゃいます。そうした方たちに家庭裁判所に行って伸長の申立てをしろというのは余りにも酷ではないかということで、我々は、この伸長の申立てとは別に、自動的に十一月三十日まで熟慮期間を延長することによって被災者の救済に役立てるというふうに考えた次第であります。
○木庭健太郎君 これも確認の意味でお尋ねしておきますが、二十三年十一月三十日まで熟慮期間を延長する理由について、明確にまたお答えをいただいておきたいと思いますし、この点につきましては、先ほどあったように日弁連等、長い期間という問題も出ている。
 したがって、ここはちょっと二つ、十一月三十日まで延長する理由をお聞きした上で、まあいろんな状況もまた出てくるかもしれません、つまり、何をもう一つお聞きしたいかというと、今後これを再度延長するようなことが起こり得るのかどうか、まあこんなところも含んで御答弁を発議者からいただいておけばと思います。
○衆議院議員(辻惠君) 八月三十日というのは、一つの区切りとして、被災地における仮設住宅の必要戸数がある程度完成する見通しであるということがあり、そうすると、まあ一段、生活の、復興の先の見通しとかいうのはともかくとして、日常的な生活が一段安定をするわけでありますから、自分自身にかかわる問題についてある程度精神的に余裕を持って熟慮していただくことが可能になるのではないかということがあります。
 一方で、二重ローンの問題とか債務免除の問題とかいろいろな立法措置が講じられる可能性があるので、それがそれまでに間に合わないということもありますけれども、一方ではやっぱり法律関係の早期の安定という要請がありますので、なお熟慮をした上で再度もう少し熟慮期間が欲しいという場合には、個別の延長をしていただくことが可能であろうというふうに考えたわけであります。
 その場合に、制度として再延長の制度を認めるべきかということがありますけれども、やはり利益衡量としては個々の御判断でお願いを申し上げるということでも十分足りるのではないかというふうに考えました。
 以上でございます。
○木庭健太郎君 ということは、やっぱり被災者の立場に立つならば、もうこの熟慮期間の延長というのは、まあある程度もうちょっと長い方がいいというような形になるんですが、やっぱりその熟慮期間を延長することによってかえって不利益を被るというケースも起こり得る。それは被災者という意味じゃないですよ、全体を考えるとあるというような観点があったのかどうか。つまり、お聞きしておきたいのは、熟慮期間を延長することによってかえって不利益を被ることになるのかならないのかという視点を、発議者と法務省から、じゃ、それぞれお伺いして。
○衆議院議員(階猛君) 今委員が御指摘になった点は、議員立法にこの法案がなった経緯に大きくかかわっております。
 と申しますのも、私ども与党でございますから、当初は法務省さんにお願いして閣法でこの法案作ってくれないかと言ったときに、法務省が何と言ったかというのが今委員の言われたことでございます。法務省がペーパーを出してきまして、熟慮期間を自動的に延長することについてどう考えるかということに対する答えなんですが、被災した相続人について個別の考慮をすることなく一律に自動的に熟慮期間を伸長することについては、他の相続人や利害関係人の利益を害したり、法律関係の早期安定についての公共的要請に反したりするおそれもあることから、慎重な検討が必要であると。まあ、慎重な検討が必要であるというのは役人用語ではやらないということでございますけれども、こういうことを言ってきたわけです。
 ところが、私ども考えました。そういう債権者あるいは共同相続人の利益を害さないかどうか。
 まず債権者についてですけれども、そもそも債権者は、亡くなられた方の財産を当てにして債権を回収しようと思っていたはずでございます。ところが、相続という言わば偶然の事情によって相続人からも回収できるようになっている。したがって、そういう偶然の利益というものについては被災者の救済という一方の利益の前では一歩下がってもいいのではないか、こういう価値判断。また、熟慮期間を仮に延長し、その間に相続人の方が延長した期間で放棄をしたという場合を考えてみましても、債権者にしてみれば、元々当てにしていた亡くなられた方の財産からは回収できるということで具体的な不利益は少ないのではないかというようなことで、債権者については利益は守られる、少なくとも害される程度は極めて小さい。
 また、共同相続人の利益ということについていえば、仮に相続財産が財産の方が多いと、ネットしてプラスであると、こういう場合については、熟慮期間が延びたとしても、相続人間で協議して早く承認した方が得ですよと、こういうことになって、熟慮期間延びることで他の共同相続人の利益が害されるということはないだろう。また逆に、ネットしてマイナス、借金の方が多い場合については、これはむしろ熟慮期間を延ばしてもらった方が他の相続人についてもプラスではないか、利益になるのではないかということで、いずれの点におきましても法務省さんが言っていたことは必ずしも妥当しないというのが我々の立場でございます。
○政府参考人(原優君) お答えいたします。
 既に発議者の先生から法務省の立場を紹介していただきましたけれども、本法律案によりますと熟慮期間が一律延長されますので、したがって、相続をめぐる法律関係が早期に安定しないということで他の相続人や利害関係人、債権者等でございますが、その利益を害するおそれがあるんではないかと、そういうことを懸念しまして慎重な立場を取っていたわけでございます。
 ただ、他方におきまして、今回の大震災により生活の混乱が続いている被災地の被災者の皆さん方、これは大変な状況にございますので、そういった被災者の救済も十分考慮しなければいけないということですので、言わば法律関係の安定の要請と被災者の救済の要請、このバランスをどう取るかということでございますので、多少の不利益が生じても一定の期間内に被災者の救済ということにウエートを置くということにはそれなりの合理性があるものと考えております。
○木庭健太郎君 私はあと残り五分ぐらい本当はあるんですが、先ほど森委員お聞きになられて、大臣から答弁というか、要望で終わっちゃっていますから、私は要望じゃなくて大臣から答弁をいただいておきたいんですけれども。
 つまり、それは何かというと、この特例法を、是非法務省においてこの内容を周知徹底していただきたい。先ほど申し上げましたが、例えば福島県は四十六都道府県に被災者がいらっしゃる、宮城も一緒だそうです。岩手が四十何県か、ちょっと忘れました、済みません、四十県以上です。全国に散っています。そういう意味では、この法律、特例法、是非被災者残らず知れるように、あらゆる手段を使って周知徹底を、法務省として徹底していただきたいんですが、法務大臣から御決意を伺って、質問を終わります。
○国務大臣(江田五月君) 今、提出者、それから法務当局のやり取りがございましたとおり、元々この制度は、相続に伴う法的安定ということで三か月、しかし個別具体的な妥当性を図るならば家裁に申し立てて伸長と、そういう制度になっていて、それで一応のバランスが取れていると私ども考えまして、この一律の延長ということには消極的な姿勢を示していたのですが、しかし、被災地の現状などを十分配慮されて提出者が衆議院でこういう議員立法と、これはしかも委員会で、委員長提案で参議院に送って今ここへ来ているということですので、これは法務省としても、そういう立法を立法府の方でなされるなら、もちろんこれは何の異存もないところでございまして、この特例法で円滑な、そして本当に被災された皆さんにしっかり寄り添う、そういう運用がなされることは、これは努力をしていかなければいけないと思っております。
 今回は、相続人の皆さんの地域の限定はありますが、それもかなり広いし、しかもそれは相続の開始の時点でしたですね、たしか。今はそこへいる人ばかりとは限らない、全国に散っているという状況もありますので、相当周知には意を用いていかなければいけないと思っております。法務省もそれほど周知の方法をたくさん持っているわけではありませんが、ホームページであるとか、あるいは法務局、地方法務局を通じるであるとか、あるいは法務省以外にも内閣としていろんな周知の方法ございます。法テラスといったこともあったり、あるいは地域での新聞あるいはラジオといったこともありますし、様々な方法を駆使して周知の徹底に努力をするつもりでございます。
○木庭健太郎君 終わります。
○桜内文城君 みんなの党の桜内文城です。
 まずもって、発議者の皆様、このように復旧復興のために必要な法律案、委員長提案で提出していただきまして、もう本当に尊敬に値するといいますか、大変いい仕事をされていらっしゃると敬意を表したいと思います。
 日ごろ私、弱小野党でもありますし、民主党政権の在り方、なかなか法律による行政というものがなされていないんではないかという批判もさんざん繰り返してきたところではございますけれども、今回、嫌がる法務省と言ったら失礼かもしれませんけれども、従来の法の枠内を超えてこのように本当の意味の政治主導でこういった法案を提出されてきたこと、大変重要だなというふうに感服しておる次第でございます。今、大連立というお話もありましたけれども、仮に連立しなくても、こういったまさに国家国民のために必要な法律は、今日、このように委員会でも大変スピーディーに審議がなされる、これから採決もあるということですので、そういった意味で国会議員が力を合わせるという一つのいい事例になったんではないかというふうに考えております。
 さて、質問に入らせていただきますけれども、私も昨日、書面で発議者に対しまして質問の要旨を出させていただいております。それに沿って、既に質問が相当重なっておるところではございますけれども、なるべく簡潔に質問させていただきたいと思っております。
 まず、今回の法案の趣旨といいますか、目的についてお尋ねしたいと思います。
 といいますのは、今回の法律案、非常にスピーディーに作られたということもあったかと思うんですけれども、通常法律案にあります目的条項がない、非常に技術的な条文の立て付けになってございます。これはこれで非常に明快な、趣旨というのはこれまでの質疑を通じましても明らかになっておりますので今更という感じもありますけれども、ただ、やはり目的、趣旨というのが十分認識されているのか、やや疑問に思うところがないわけではありません。
 といいますのは、先ほどから何度も議論になっておりますけれども、熟慮期間を延長するのは非常に良いことだと思うんですけれども、それを遡って平成二十二年十二月十一日以降に相続の開始があった場合にまで拡張していると。その是非についてはやはりいろいろと御意見があるところだと思います。それは、私が思いますに、やはりこの法の趣旨、目的というものが、それをどう考えるのか、その立場によって意見が変わってくるのではないかと思っております。
 例えば、今回の法律の趣旨を、大震災で亡くなった方の御遺族の方の救済を図るということであれば三月十一日以降ということに恐らくなったでありましょうし、恐らくこの法案の御趣旨、目的というのは、それに限らず被災地に住所を持っていらっしゃる方々の熟慮期間をなるべく広めに延ばしていこうと、そういう御趣旨だと思うんですけれども、その趣旨、目的について、まさに発議者、立法者としてどのような経緯でお考えになってこのような条文になっているのか、その辺について御説明をお願いいたします。
○衆議院議員(階猛君) 桜内委員にお答えします。まずもって、先ほどは過分なお褒めの言葉をいただきまして、ありがとうございました。
 さて、御質問の法の趣旨ということでございますけれども、ここは確かに目的規定というものを置けばもう少しスムーズにこれは御説明できたのかなと思うところでございます。
 私どもとしましては、まず相続が発生したのが地震、津波の、今回の震災の前であるか後であるかを問わず、すべからく被災地の相続人につきましては熟慮期間というものを民法九百十五条の三か月という制限にかかわらず一律に延長しましょうというのがこの法の趣旨でございます。そのことによって、生活が混乱しているであろう相続人の方々、家庭裁判所には到底行くことは望むべくもない、また相続放棄をするのか、あるいは単純承認をするのか、そういう資料を集めるのも難渋するであろうこういった被災地の相続人の方々が安心して、期間を長く持つことによって、十一月三十日までの間に生活が落ち着き、そして相続するかどうかということを判断していただけるようにしよう、こういう趣旨でございます。
○桜内文城君 ありがとうございます。
 これと関連いたしまして、これも事前に書面で提出したものでございますけれども、平成二十二年十二月十一日以降に相続の開始があった場合、既存の制度によりましても、まさに相続放棄の期間の伸長を家庭裁判所に対して申し立てることができたと。それが、例えば三月十日までにそのような機会が与えられていながらもそれをあえてしなかった方がそれ相当にいらっしゃると思うんですけれども、そのような方にまで、要は既存制度の中でも相続放棄の期間の伸長の機会が与えられていながら自らそれを行使しなかった人に対してまで今回のように一律に熟慮期間を延長するということのその妥当性について、やはり疑問が生ずるところではありますけれども、その点については発議者としてどのようにお考えになって、どのような利益衡量の下にこのような立て付けにされたのか、これまでの質疑とも重なりますけれども、再度御説明をお願い申し上げます。
○衆議院議員(階猛君) 今の御指摘は森委員の御指摘とも重なるところがあるかと思います。
 確かに、残り一日というところで津波の被害に遭われた方、ほぼ丸三か月近く熟慮期間があったわけでございます。こういった人たちについても一気にその熟慮期間というものが十一月三十日まで延びてしまうということが果たして公平なのだろうかどうかということは、多分に検討を要するところでございます。
 一方では、先生御指摘のとおり、その熟慮期間の間に、例えば一日前に単純承認をした人は、たとえその一日後に津波が来て借金だけが残ったという場合でもこれはもう単純承認という事実は動かないわけでございまして、そういった方との公平性をどう考えるかということだと思います。
 自己責任を追及するのであれば、やはりその熟慮期間中に、最後まで熟慮期間中に何も意思表示しなかった人はそれはもう自己責任なんだということかもしれませんが、ただ、先ほども申し上げましたけれども、この熟慮期間三か月という制度、三か月何もしないとたとえ借金であっても引き継いでしまうと、この制度がどれだけ一般の人に理解されているんだろうかどうか、つまり自己責任を問う前提が満たされているのかどうかということも考えなくてはいけないと思っております。
 もちろん、自己責任を問い得るような、しっかり検討されていたような方もいると思います。三か月の間、借金とかを調べていた人もいると思います。ただ、大半の方はそういう制度すら知らなかったということでございますから、そういった方たちの救済ということを優先して、一部、そういう先生の言われるような自己責任という観点から考えた場合、過剰救済ではないかという御批判は受け止めますけれども、最終的には我々は一部の人よりも多くの、大半の人の救済を優先したということを是非御理解いただければと思います。
○桜内文城君 ありがとうございます。
 次に、最後にといいますか、時間も余っていて恐縮なんですけれども、最後にお尋ねいたします。
 立法論といたしましては、例えば債務超過といいますか、資産負債を調査の上マイナスの場合については、例えばそういった場合については限定承認とみなす旨の規定を置くなり、そのような対処の仕方もあるかと思います。
 今日、民事局長が外国の例で、例えば英米法系はまず清算した上で相続するというような制度があるということも御紹介されておりました。それと全く同じにする必要ももちろんないんですけれども、特に今回、特別な立法でもありますので立法論として言えばということなんですけれども、今言ったような債務超過が判明した場合には限定承認したとみなすですとか、そういった立て付けのやり方もあったんではないかなというふうに考えるところでございます。
 もちろん、私ども、こういった復興復旧に関する法案については、先ほど申し上げていましたように是非御協力申し上げたいと常々考えておるところではございますが、弱小野党でもございまして、なかなか事前にこういった協議の場に参加する機会もなくて、今更ながらなんですけれども、こういったやり方もあるんじゃないかなというふうな意見を持つわけですけれども、今言ったような、セカンドオピニオンと申しますか、こういった別のやり方について感想なりをお聞かせいただければ幸いでございます。
○衆議院議員(辻惠君) 相続人の合理的意思を考えたときに、債務超過なのに単純承認するというのは普通はおかしな話ですから、非常にリーズナブルな説得力のあるお考えかなというふうには思います。
 しかし、立法論としては考える余地のある話なのかなというふうに改めて思いますが、今回の立法というのは東日本大震災の被災者の方のための特例的な緊急の立法ですから、やはり民法のそもそもの立て付けの趣旨に遡って限定承認を一律に認めるというようなお話については、緊急の立法ということからすれば、やはり立法論としては将来の課題として非常に傾聴に値するお考えだなというふうに思います。
 今回は、しかし眼前にある、被災者が非常に熟慮期間を十分意識せずに、熟慮するいとまもないようなそんな状況に置かれておられる方を救済をするという、そういう立法でありますから、立法論としてお伺いさせておいていただきたいというふうに思います。
○桜内文城君 ありがとうございます。
 今回の議員立法の大変な御苦労、多としたいと思います。ありがとうございました。
 以上で終わります。
○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 被災地の生活の実態などを見ればこれは必要なものでありまして、賛成でありますし、提案者の御苦労を多としたいと思います。
 この法案は、八月末には被災者の生活が安定するという前提で、九月から三か月間の熟慮期間を設定するという考え方にし、一律十一月三十日まで延長ということになっております。ただ、相続財産を確定するには、被災土地の公的な復旧がどうなるのかとか、債務の免除に関する立法措置がどうなるのかとか、また原発被害に対する補償など様々な問題が解決いたしませんと、相続する財産に一体どれだけの価値があるのかどうかということも確定しないという状況もありますし、生活についても果たして八月末に本当に安定するのかというのは、是非希望はしたいんですが、かなりいろんな問題があろうかと思うんですね。
 そういう点でいいますと、前提である八月末のそういう生活の安定というものが必ずしも確定をしないという中で、十一月三十日までの延長というのが果たして妥当なのかと、もう少し長くしてもいいんではないかという思いもあるんですが、まずその点いかがでしょうか。
○衆議院議員(辻惠君) 既に別の先生からも御質問あった点だというふうに思います。やはり一番の眼目は、被災地におられる相続人の方々が、相続の放棄をするにしても限定承認するにしても単純承認するにしても、判断をするというその精神的な余裕がないし、それどころではないという状況を、やっぱりそこに焦点を当てて救済の方法を考えるべきであろうというところに第一の問題があるというふうに思っておりまして、そういう観点で、取りあえず一応の生活のそこそこの状況の安定というのが、仮設住宅がおよそ完成するだろう八月末が一つの目途として考えられるのではないかと。
 おっしゃるように、債務の免除の立法措置の問題とかそういう問題は更にその後に生ずることになるかもしれませんけれども、他方で、法律関係の早期の安定というのも要請、趣旨としてございますから、利益衡量の点として八月三十日というのは相当程度の妥当な線として許容される範囲内ではないかというふうに思います。
 いずれにせよ、熟慮期間が八月三十日まで延びて、なおもっと熟慮したいということであれば延長の申請ができるわけでありますし、被災者の方は全国に避難されておられますから、こういうそもそも立法がなされたということもなかなか御存じでない方もいらっしゃいますので、各地域で被災者の皆さんを受け入れておられる全国で自治体がいらっしゃいますから、そういう自治体にも周知徹底を図るように、法務省の方からもしっかりと図ることが併せて重要なことなのかなというふうに考えます。
○井上哲士君 十一月三十まで延長した上で、そこから先は個別の延長の申請というやり方があるというお話、先ほどもありました。
 ただ、相当数それが出てきますと、実務的にも大変混乱もあるだろうし、体制も必要だということも出てくる可能性は高いわけですね。
 実は被災地の地方自治体の首長、地方議員の選挙についても、一旦九月二十二日まで延長をしておりますけれども、実際なかなかそこではできないという状況があって、必要な法的措置はその場合で判断して、場合によっては再延長もあるという附帯決議も付けて通しているという経過があるんですね。
 私は、やっぱりそういう状況もあり得るということは選択肢としてはあってもいいんじゃないかと思うんですけれども、これはどうでしょうか。
○衆議院議員(辻惠君) 確かに、そういう要請も無視できないものであるし、合理的な要請であろうというふうに思いますけれども、まあ熟慮期間を個別に延長していただく中でその幅を相当程度長く設定するように裁判所に申請することも可能だと思いますし、やはり一律に再延長を認めるというのは、法律関係の早期の安定ということとの兼ね合いで、必要とされる実数がよほど大きくなればそれはまた別の考慮も必要かと思いますけれども、ある程度の数にとどまるものだというふうに想定した上でこの法律案の内容で御了解いただきたいなというふうに思います。
○井上哲士君 現時点で確定的に言えることではありませんので、やはり被災者の皆さんの生活の現状ということを第一に今後も考慮いただくことが必要かなと思っておりますし、議員立法でありますので、全体でそういうことは考えていきたいと思います。
 既に法定単純承認となっている場合で、相続人が相続した債務について債権者と話し合った結果、既にもう全額返済したという場合、それから分割返済をして、その返済の途中だという場合、それから返済すると取決めはしたけれども、まだ返済は始まっていないという場合、それぞれについて、これ本法案が施行されたらどういう効果が生じることになるんでしょうか。
○衆議院議員(階猛君) 今のケースは、まず法定単純承認となっているということですから、まず三か月は過ぎている話でございます。その上で、この法案施行前に相続人が相続した債務について債権者と話し合って三つのケースに分けて合意が成立しているということでございました。
 それで、既に全額返済した場合、あるいは分割返済を取り決め、その一部を返済した場合、また返済の取決めをしたもののまだ返済をしていない場合というふうに明確に言われましたけれども、多分合意の内容をもうちょっと見ていかないと一概には判断できないというふうには思うわけでございますけれども、もちろんその単純承認に当たる場合も当然あると思っています。そうした場合は、今回は熟慮期間の延長は仮にこの法律が通ったとしてもありません。
 また、一部を返済したというような場合であって、これは相続財産の処分ということになりますから、これも単純承認と同様、この法案が通ったとしても熟慮期間の延長はないというふうに御理解いただければと思っております。
○井上哲士君 一応取決めはしたけれども、まだ返済は始まっていないという場合はどうでしょうか。
○衆議院議員(階猛君) 例えば、取決めはしたけれども、私が申し上げたような単純承認にも相続財産の処分にも当たらないケースがあるんではなかろうかという問題意識だと思うんですが、具体的にそのようなケースを想定してみますと、相続人の固有財産を原資とする返済又は返済の取決めであるが第三者弁済と認められる場合、これは相続とは切り離して考えるべき返済でありますから、この法律が施行されたとしても変更の効果は生じないということであります。
 また、次のケースとして、相続財産を原資とする返済又は返済の取決めであるが、相続財産の管理としてなした場合、これも限定承認や相続放棄とは切り離して考えるべき弁済でありますから、この法律が施行されたとしても変更の効果は生じないということで、これにつきましては、この延長法案が通れば延長はなされるということになります。
○井上哲士君 分かりました。
 関連して若干聞くんですが、金融庁に来ていただいておりますが、この同じ三か月という区切りで被災者に不安を与えておりますのが、債務の支払が遅れて、それがいわゆるブラックリストに掲載をされるという問題です。多くの場合は、入金予定日から三か月以内に何の返済もないと、この信用情報上、延滞情報の登録がなされてしまって、そうなりますと、その後、事実上融資が受けられなくなるという事態になりまして、大変大きな制約があります。
 ただ、東日本大震災という未曽有の災害の中で、家族も住宅も仕事も自動車も失ったというそういう多数の被災者が、既存の債務の支払が遅れて、返済のめどが立つまで一定期間が必要になるという状況がある中で、返済が遅れたからといってそういう延滞情報に登録をされて将来のいろんな生活や仕事に困難が生じるというのは、やっぱり不合理だと思うんですね。それは、やっぱり本人だけではなくて地域全体の復興にも妨げになると思います。
 今、金融機関については、返済そのものも含めて一定の運用上の配慮がされておると聞くんですけれども、まず、それはどういう状況になっているでしょうか。
○政府参考人(森信親君) お答え申し上げます。
 個人信用情報の取扱いに関しましては、全国銀行協会では本年三月二十三日に、今般の大震災を起因とした延滞等の事故情報は、当面の間、全国銀行個人信用情報センターへの登録を行わないなど、被災地域の顧客が不利益を被ることのないよう十分留意する旨を会員金融機関に対して通知しております。民間金融機関においては、これを踏まえまして、顧客の被災状況等に十分配慮した対応を行っているものと承知しております。
○井上哲士君 先ほどの遅延損害金のと同じことになるんですが、当面のところ配慮されていて登録は行われていないということなんですが、しかしこれでは非常に安定性に欠けるわけですね。
 本来、やっぱり債務者には何の責任もない問題で返済不能に陥って、しかもいまだに復旧復興の見通しが立たないという状況を見ますと、やっぱり復旧復興が軌道に乗って生活再建の見通しが立つまでは、こういう延滞情報登録、ブラックリストに載せないということを、やはり政府として民間任せにせずに、指導なり立法措置なり要請なりするべきだと思うんですが、いかがでしょうか。
○政府参考人(森信親君) 我々としましては、地震発生当日の三月十一日に金融担当大臣と日本銀行総裁と連名で、被災者の便宜を考慮した適時的確な措置を講ずるよう民間金融機関に要請を行っておりまして、先ほど申しました対応もこうした要請を十分に踏まえたものとなっていると認識しております。
 委員御指摘のとおり、今後のことでございますが、我々としましては、ローンを抱えた被災者のやはり生活再建というものが何より重要ではないかと思っております。現時点におきましては、金融機関は債務者の元本とか利子の支払猶予など被災者の便宜を考慮した対応を行い、そのローンを延滞としない旨の努力を行っているものと思います。
 今後、生活再建の具体的展望が明確になる段階で、既存ローンの返済、それをどうするかということの検討も進んでいることになると思われますが、我々としましても、現在、金融機関が行っている取扱いが時期尚早に変更されまして、被災した債務者が大きな不利益を被ることのないよう注視してまいりたいと考えております。
○井上哲士君 注視ということではなくてしっかり働きかけて、現実にやはり被災者の皆さんが救われるということで努力していただきたいと思います。
 最後、一点だけ。この間、法務、司法の分野での被災者支援を求めてきたわけですが、法律相談とか民事法律扶助の柔軟な運用など、その一つとして民事調停の申立ての手数料の減免ということも求めてまいりました、先ほどもちょっと答弁の中でありましたが。これが一体どうなったかということと、あわせて、二次補正の策定というのが指示をされております。一次補正に法務関係はなかったわけでありますが、法務大臣としてはどういうことを求めていこうとお考えか、併せてお尋ねして、質問を終わりたいと思います。
○国務大臣(江田五月君) 民事調停については、今年六月一日公布、施行されました平成二十三年東北地方太平洋沖地震による災害についての特定非常災害及びこれに対し適用すべき措置の指定に関する政令の一部を改正する政令という政令を出しまして、民事調停の申立て手数料を免除する特例措置を既に実施をしているところでございます。
 この措置は、この東日本大震災に際し、災害救助法の適用地域、ただ東京都はちょっと除かせていただいておりますが、その地域に住所、居所、営業所又は事務所を有していた者が大震災に起因する民事に関する紛争について三月十一日から平成二十六年二月二十八日までの間に民事調停の申立てをする場合に適用されるということでございまして、既にスタートをしております。
 なお、二次補正につきましてはまだ議論が始まったところで、これから十分に検討させていただきたいと思います。
○井上哲士君 終わります。
○委員長(浜田昌良君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
 これより討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 東日本大震災に伴う相続の承認又は放棄をすべき期間に係る民法の特例に関する法律案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
○委員長(浜田昌良君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(浜田昌良君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後三時五十七分散会