第177回国会 経済産業委員会 第6号
平成二十三年五月十日(火曜日)
   午後一時開会
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   委員の異動
 四月二十七日
    辞任         補欠選任
     姫井由美子君     櫻井  充君
 四月二十八日
    辞任         補欠選任
     櫻井  充君     姫井由美子君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         柳澤 光美君
    理 事
                平山  誠君
                広野ただし君
                増子 輝彦君
                関口 昌一君
                牧野たかお君
    委 員
                加藤 敏幸君
                高橋 千秋君
                直嶋 正行君
                姫井由美子君
                藤原 正司君
                磯崎 仁彦君
                末松 信介君
                松村 祥史君
                松山 政司君
                若林 健太君
                松 あきら君
                松田 公太君
                荒井 広幸君
   衆議院議員
       修正案提出者   橘 慶一郎君
   国務大臣
       経済産業大臣   海江田万里君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        山田  宏君
   参考人
       作家
       評論家      柳田 邦男君
       早稲田大学理工
       学術院先進理工
       学研究科共同原
       子力専攻特任教
       授
       東京大学名誉教
       授        岡  芳明君
       長崎大学大学院
       医歯薬学総合研
       究科長
       福島県放射線健
       康リスク管理ア
       ドバイザー    山下 俊一君
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  本日の会議に付した案件
○参考人の出席要求に関する件
○経済、産業、貿易及び公正取引等に関する調査
 (東日本大震災に係る原子力安全・保安等に関
 する件)
○産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特
 別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出、
 衆議院送付)
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○委員長(柳澤光美君) ただいまから経済産業委員会を開会いたします。
 参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 経済、産業、貿易及び公正取引等に関する調査のため、本日の委員会に作家・評論家である柳田邦男君、早稲田大学理工学術院先進理工学研究科共同原子力専攻特任教授・東京大学名誉教授岡芳明君及び長崎大学大学院医歯薬学総合研究科長・福島県放射線健康リスク管理アドバイザー山下俊一君を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(柳澤光美君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
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○委員長(柳澤光美君) 経済、産業、貿易及び公正取引等に関する調査のうち、東日本大震災に係る原子力安全・保安等に関する件を議題といたします。
 この際、参考人の方々に委員会を代表して一言御挨拶申し上げます。
 本日は、御多忙のところ本委員会に御出席をいただき、誠にありがとうございます。
 参考人の皆様からの忌憚のない御意見を聴取し、今後の調査の参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 次に、議事の進め方について申し上げます。
 まず、お一人十五分程度で、柳田参考人、岡参考人、山下参考人の順に御意見を述べていただき、その後、委員からの質疑にお答えをいただきたいと存じます。
 また、御発言の際は、挙手していただき、その都度、委員長の許可を得ることになっておりますので、御承知おきください。
 なお、参考人、質疑者とも御発言は着席のままで結構でございます。
 それでは、まず柳田参考人にお願いいたします。柳田参考人。
○参考人(柳田邦男君) 柳田でございます。今日はお招きありがとうございます。
 私は、事故と安全の問題について、この半世紀近くにわたって取材し、分析し、研究してきた者でございまして、専門の原子力の学者でも、また放射線の学者でもございませんが、安全の問題を考えるときには、ただ専門分野だけでなく、事故論という特殊な領域ではございますけれど非常に重要な分野からの視点で議論する必要があるんではないかと私は思っております。そういう意味で、今日は発言の場をいただきましたことを大変有り難く存じます。
 今回、東日本大震災の発生とともに東京電力福島第一原子力発電所で大変な事態が起こったということで、いまだにその終結の見通しも立たない状態が続いているわけですけれど、このような事態がなぜ起こったのか、そして今後どうすればよいかということを考える出発点として、事故論の視点から少し私の考えを申し述べたいと思うんです。
 事故当時から、このような大津波は想定外であったということが政府関係あるいは東電関係、さらには技術者関係から出ておりました。この想定外という問題は、安全問題を考える上で非常に重要なキーワードなので、この問題について少し分析的なお話をしてみたいと思うんです。
 若干ハーバード大学のサンデル教授みたいな議論になるかもしれませんけれど、非常にこれ、根源的に考える必要があると思いますんで、以下、お手元に配っていただきましたレジュメを基に進めていきたいと思います。
 何を想定し何を想定外とするかについていろいろと専門家の発言やあるいは研究などを拝見しますと、理学系の方と工学系の方とでかなり違いがあり、さらに行政の立場に立つともっと違っているということが見えてまいります。
 理学系というのは、つまり地震、津波について言えば地震学の領域になるわけでして、これは科学の領域に属するわけですね。そして、どのような規模の地震や津波が発生するかについては、明治初期以来、いわゆる歴史地震の調査というのが膨大な形で行われ、大変な資料が集積され、そして今日に至るまでそれが追加されてきて、古代の地震を含めていろいろな地震の規模の推測というのが行われたわけですね。それと、たまたま一九七〇年代以降に国際的に隆盛してきましたプレートテクトニクス論とかみ合わせまして、日本で一体どれくらいの地震がどこで起こるかということについては地震予知の手前ぐらいのところまでの議論がしきりになされるようになったのがこの四十年ぐらいの歴史であったわけです。
 現実に起こった地震を見ますと、代表的なスマトラ沖大地震、それに伴うインド洋大津波を始め、一九六〇年のアラスカ地震など様々なマグニチュード九前後の地震が何度か起こりまして、特にこの二十一世紀になってからの十年間それが顕著に見られるわけです。こういうことを基に、日本の近海で起こる海洋底の地殻変動に伴う大地震及び大津波については、地震学の分野ではかなり危機感を持って指摘されてまいりました。
 また、津波に関しては地震の規模だけで決まるものではなく、それが縦断層なのか横ずれ断層なのかによって大きく違うし、いろいろと地域の特性もあるわけでして、なかなかとらえどころがないので、そのリスクについてはかなり大きく見ないと何が起こるか分からないというのが津波の領域の問題でありました。
 このように、不確実な要素が様々絡む場合にリスクの最大規模をどう取るかということに関していろいろと議論が分かれるわけですが、理学の立場の方々は考えられる可能性のマキシマム、最大の方に目を向けて警鐘を鳴らすという傾向が強うございます。
 これに対して、工学の方々の視点はかなりまた違っております。ここで一般化すると個別の工学者によっては異論が出るかもしれませんが、あえて大胆に一般化して申し上げますと、建築土木系の工学の方々というのは、非常に経験主義に頼るわけですね。様々な過去の地震による家屋の倒壊などを参考にしながら、力学的な実験をしたりコンピューターシミュレーションをしたりして耐震強度というものを決めていく。そしてまた、そうやって決めて建築基準法などにのっとって建物を建てても、地震が来るとまた壊れる。そうすると、どこに見落としがあったのかということで再三様々な改善が試みられてきたわけですね。私もこの四十年ぐらいいろんな地震災害を見てきて、大きな地震が起こるたびに基準が変わってきたのを目の当たりに見てまいりました。
 そうしたことから、どうしても工学系の人は現実主義に頼らざるを得ない。特に、そこのAの片括弧二に書きましたように、実際に現場で物を作るときには予算枠、建設費の縛りがあるわけですし、どこかで割り切ってこれくらいにしておこうという線引きをしなければいけないし、行政というのもそういう形で、際限なくマキシマムを考えていたら物は作れないというようなことになってくるわけですね。
 ちなみに、原発の安全性についても、二年前の経済産業省における原発の古くなったものについての安全性を見直そうという審議会において、地震学者が貞観地震の規模などから考えるとかなり大きく見なきゃいけないというような津波に対する警告を出しましたけれど、しかしそういう問題については、最終的にまとめられた報告書の中では全く一行も書かれないで無視されてしまったというふうな傾向があるわけです。根拠としては、まあ資料が当時はまだ古くて明確でないとか様々なことがありますけれど、しかもそういう中で、あれもこれもやっていたら物は作れないというふうなことを責任ある立場の人が発言しているわけですね。
 そういう中に、特に最近は効率主義というのが入ってきております。例えば、大正時代に建てられたコンクリートの建物などを見ますと、非常にぜい肉が多いわけですが、逆に関東大震災でも頑丈に生き残ったりしていた。しかし今日は、ぎりぎりの安全性をミニマムのところで取って効率よくすると、やっぱりどこかで物が壊れるというようなことがしばしば指摘されるわけです。法律なりあるいは施行規則なりでそういった線引きが行われますと、現実の業界においては実際にそれがマキシマムになってしまう。本当は最低限これは維持しろというのが、いつの間にかそれを維持すればよいというふうなマキシマムになってしまうという、こういう逆立ち現象が起こってきます。
 そしてまた、そうしたもの全体を取り巻くリスク認識の問題になるわけですけれど、差し当たりこれくらいのところで線引きをしようというところで妥協が行われざるを得ないわけですね。それ以上については極めて確率が低いからあり得ないことにしようということになるわけです。明確にその言葉は使わなくても、現実問題として今回のような地震が起こりますと、想定していた規模の地震、津波より大きかったものは想定していなかった、ゆえに想定外であるということで、あたかも免罪符のような形で見られてしまうわけですね。
 しかし、現実には、理学の立場からいうと、それはあり得ないことではなくて、可能性はあったけれど、確率が低いから考えないでいこうというようなことで横に置いてしまった問題なわけで、かなり人為的なものであるわけです。ここが非常に重要なことなので後にまた議論したいと思うんですけれど。
 こういった傾向を見ますと、(2)に書きましたように、理学系と工学系ではかなり基本的な物の考え方が違っていて、安全問題を考えるときにこれは非常に重要なことではないかと思うわけですね。特に地震学者がしばしば警鐘を発してきたようなことですね。その背景にある考え方は、この地球における地殻変動というようなとても大変な問題についてはそう甘く見られない、想定外などと言っていられないというような考え方が一般的でありますけれど、工学ではそれをやっていたら物は作れないということになってくるわけですね。
 次のページへ参りますけれど、いろいろな基準を決めたり認可をしたりするに当たって行政の立場というのもあるわけです。
 行政が何を基準にしてある線引きをするかというときに、そこに@とAに書きましたけれど、@のウイッシュフルヒアリングというのは、これは事故におけるヒューマンファクター研究で最近しばしば使われるんですが、例えば、滑走路の手前で待機しているパイロットが一八二便だったとします。ところが、別の滑走路で待機している飛行機が一八便だったとします。管制官が、そうすると、一八便の方にワンエイトと言ってクリアランスを出すと、一八二便のパイロットは今か今かと待っている、自分のところにコールが来ないかといって待っている。そうすると、ワンエイトツーと言わなくてワンエイトと言っただけで、自分のものとして、そら来たというわけで滑走路に飛び出して大変な事態が起こると、これをウイッシュフルヒアリングというんですけれど、これと似たような意味で、いろいろな行政施策なり企業が事業展開をする上で、安全性を考える上で、何かこれを通す上で都合のいいような理論なりデータがないかと思っていると、ありましたというと、それに飛び付いてしまう、そしてそれ以外に目を向けなくなるというような傾向がある、それがまた意思決定でもあるわけですけれども。
 ただ、意思決定に関して、私は事故調査をし、特にこの一年半ほど、六年前にありましたJR西日本福知山線事故の再調査をやりました。作家稼業をほとんど休んでそれに没頭し、多いときには一日十時間ぐらい分析会議を開いたりして、また関係者多数ヒアリングをし、様々な事故の背景にあった問題を分析したわけですけれど、そのときに、運輸業界やあるいは国交省の行政担当者の考えを聞きますと、何かリスクを考えて安全対策を立てるとか従来の規則を変えるとかするときには、なかなかそれは容易なことじゃなくて、大きな事故が起こって死者が出ると変えられるということをはっきり申し上げる人が何人もおられました。死なないと規則は変わらないとか、それからもう一つは、統計的なデータ、そこに絶対的と書きましたけれど、統計的のこれミスプリントで失礼いたしました。統計的に有意義なデータがないとなかなか変わらないというようなことがあるわけですね。こういったことが意思決定のパターンとしてあるわけです。
 以上のようなことをずっと見渡しますと、想定外というのは何であるかというと、結局、それ以上のことはないことにしようとか考えないことにしようとしてきた思考様式に免罪符を与えるキーワードではないかというのが私の結論です。そうした意味での想定外という線引き行為は、安全性を保障するものではないし、むしろ安全性を阻害するものではないかと考えるわけです。
 たまたま最近、朝日新聞の読書欄に、社会心理学者がいろいろな基本的な災害問題を論じた文献について論評する中で、こんなことを書いておられました。想定外とは、文字どおり夢想だにしなかったことではなくて、逆に本来身近なことをなかったことにすることではないか、吉村昭さんの「三陸海岸大津波」を読んだ感想としてそう述べ、寺田寅彦の例の、災害は忘れたころにやってくるというあの名著のその先を読むと、要するに想定外とは、事実認識のエラーというよりも私たちの思考の態度に問題があるのだというようなことを述べておられまして、私の考えと一致したので大変興味を持ったわけです。
 時間が来てしまいましたけれど、後ほどまた質疑の中で申し上げたいと思いますが、簡単に目次を見ていただきますと、大きな二のところ、リスク認識の問題点ということは、今申し上げたことを別な角度から指摘しているわけですけれど、重要なのは(3)に書いたことです。導入すべきリスク認識でございますけれど、これは福知山線の事故調査報告書を見ますと、非常に重要なことが書いてあります。
 従来、曲線部において運転手が百キロを超えるような暴走をして脱線転覆するということはあり得ない、プロの運転手がそんなことするわけがないということで、そこにATS―Pを設けるのを急がなかったわけですが、これに対して事故調査官はこう述べているんですね。たとえ発生頻度が小さくても一度発生すれば重大な人的被害が生ずるおそれのあるものについては対策の推進を図るべきである、これは従来の行政になかった考え方です。人が死なないと変わらないという行政がここで初めて、事故調査報告書の中で、たとえ過去に事例がなくても、万一起こったら大変なことになるから、そういう問題についてはしっかりとリスクのレベルを高く見て対策を立てるべきであるということを述べているわけで、これは原子力発電なんかについては特に言えるんではないかと思うわけです。
 次の三ページ目ですけれども、三番目に想定外の二重構造と書きましたが、ある想定外の線引きをしてしまいますと、もう一つ問題が起こる。それは、それ以上のことが起こったときにどう対応するかについての準備まで放棄してしまうということ、今回まさにそれでありまして、想定外のことが起こると、そこでどう起こった事態を抑えるか、あるいは被害者の救援、避難、支援等のマニュアルをどうするかなどについてほとんどないに等しいような状態で、大変な大混乱が起こる。これが想定外がもたらす二重構造として指摘すべきことではないかと思うんです。
 以上が一番重要なところなので、あとはまた後ほど時間ありましたら申し上げますけれども、最後に、五番目に、いかに学ぶべきかというところで事故調査というものの重要性を私は強調しております。
 アメリカなんかの事例見ますと、例えば七九年のスリーマイル島の事故にしても、あるいは八六年のチャレンジャー号の爆発事故にしても、直ちに大統領が特別調査委員会をつくって、利害関係者を一切入れないで徹底的な調査を六か月ぐらいで済ませ、膨大な報告書と徹底的な組織分析を行い、組織の大改革、そして関係者の人員の総入替えなどをやったわけでございますけれども、その報告書というのはまさに事故調査がいかに安全を確立する上で重要かの教科書のようなものでございまして、これらについては私は現地アメリカに行ってあらゆる資料を目を通しました。非常に綿密な調査をしております。
 日本において、しばしば過去において、特に一九六〇年代ごろ、まだ事故調査委員会ができていなかったころの航空事故の次々に起こると、その都度臨時の調査団を大臣がつくって調査しましたが、ほとんど利害関係者、つまり企業の方あるいは行政の幹部の方がメンバーになっていて、被告が裁判席に着いているという批判まで出たぐらいだったわけですね。しかし、七三年に航空事故調査委員会設置法ができて、七四年から活動を始めたわけですが、奇妙なことにもっと安全性を高くしなければいけない原子力の分野においてそういう体制が取られていなかったこと、そしてまた、既に二か月たとうとしているのに、いまだにそうした事故調査体制ができていないということは、やはりこれは日本の特異な側面ではないかと私は思うわけでございます。
 以上で取りあえずの発言を終わらせていただきます。時間をオーバーしまして恐縮でございます。
○委員長(柳澤光美君) ありがとうございました。
 次に、岡参考人にお願いいたします。岡参考人。
○参考人(岡芳明君) 岡でございます。よろしくお願いします。
 資料に基づいて御説明させていただきたいと思います。
 資料の二ページ、一枚目の下に福島第一原子力発電所がございます。御存じのように、一号機から四号機が今問題になっております。四号機は停止中だったんですけれども、一、二、三号機が動いておりました。日本で非常に初期のころの発電所でございます。
 二枚目へ行きまして、三ページですけれども、事故の発生なんですけれども、地震で原子炉は運転していたものは停止をしまして、それで地震は想定していたより大きかったわけですけれども、非常用の設備等は動いております。そういう意味で、耐震設計上のマージンの中で何とか動いたということなんですが、その後、一時間後ぐらいに津波が来まして、海水取り入れ用のポンプとか、あるいは非常用ディーゼル発電機とかが損傷いたしまして、いわゆる全交流電源喪失、ポンプなんかの電源が喪失してしまう、外部からの電源は地震のときになくなったんですけれども。それともう一つ、海水に除去した熱を捨てるシステムになっているんですけれども、それも失われてしまったということで、いわゆる想定を超えた過酷事故という状況が生じました。
 ただ、過酷事故に対しては、運転員等がいろいろなそれ以外の消火系の設備等を用いて対処するということは手順としてございまして、それを開始したということでございます。
 それから、交流電源がない場合に、設備としては原子炉隔離時冷却系という、余熱の蒸気でできる、蒸気を使って蒸気タービンを回してポンプを回すというシステム、あるいは蒸気を配管に導いて凝縮して戻すという、そういうシステムがございまして、これは動いたんですけれど、短いものは半日ぐらい、長いもので二、三日ということで、制御用の直流電源がなくなってしまって止まってしまったということになります。
 こういうことで、水の蒸発しか除熱されなくなりまして、水位が下がりまして燃料が露出をして、燃料と被覆管の相互作用で水素が発生をして、それが建屋にたまってということになってしまいました。今の交流電源喪失と放熱先の喪失は共通ですので、四号機まで危機になってしまったということでございます。
 五、六号機は、非常用電源が動いたということと、電気をお互いに供給するという、これは先ほどの過酷事故対応の手順の一つなんですけど、それを行ったために危機にはなっておりません。
 四ページですけれど、下に沸騰水型原子炉のあれがございますが、今の状況は、上の、原子炉建屋の四階に燃料交換フロアがあるんですけど、これが一号機は水素爆発で吹っ飛んでおります。それから、三号機はもう少し下の方から爆発しているんですけど、それから四号機は右にあります使用済燃料プールに大量の燃料がございまして、これが水位が下がったということでございます。
 それから、格納容器については、原子炉容器の外側に格納容器というものがあるんですけれど、これは、二号機については、下部のトーラスといいますか、ドーナツみたいなところの上の方、基層部といいますけど、ここで損傷があるんじゃないかと言われております。
 それから、原子炉容器については、二号機については底部でリークしているんではないか、そのほかの号機についても、配管等がいろいろありますので、完全にリークタイトにはなっていないんではないかという推測がなされております。
 次の五ページ、六ページでございますが、一号機は爆発後、上の方が吹っ飛んで鉄骨だけになってございます。対策ですけれど、今、注水をして、それの蒸発で冷却をするということでございます。目標は冷温停止といいますか、原子炉を百度C以下に下げるということでございますが、このために格納容器を水で満たして、外部から熱交換器をつないで冷却をしたいという作業が進んでいるということでございます。それからもう一つは、線量低減のために、局所排風機を建物に付けまして、それで低減をしたいということですが、昨日の情報では、まだあの建屋の中に高い線量のところがあるので、放射線遮蔽を使って作業をしたいというふうなことが出ております。ここで、一号機でやっておりますことをほかの二号機、三号機にも適用していきたいというふうに考えていると思います。
 それから、二号機につきましては、原子炉容器の底部がリークしておりますので、冷やした水がそこから流出しているようでございまして、原子炉建屋、それからタービン建屋の方に高い放射能濃度の汚染水が出てしまっているということで、これが問題になっておりました。実施中の方策としては、タービン建屋にたまったその汚染水を、廃棄物処理建屋といいますか、そういうところに移して処理をしてまた再利用をしたいということと、先ほど一号機でやったようなところをやりたい、それから格納容器が損傷しておりますので、これを粘着セメントで補修をしたいと言っております。高い放射線量が全ての作業を遅らせていると思いますけれど、補修がうまくいかなくて格納容器が完全に密閉できないときは、上の写真にありますように、原子炉の建屋自身は大きく損傷しておりませんので、これを格納機能として使うことができるんではないかと思います。
 それから、三号機ですけれど、九ページでございますが、爆発の写真が出ておりますが、上の方に爆発しております。これはよく見ますと、デブリといいましてコンクリートのようなものが一緒に上に飛んでいるということで、右に写真がありますが、かなり上部の、四階だけじゃなくて、ちょっと下の方から爆発したということがあるということでございます。幸い、格納容器は損傷していないんじゃないかというふうに言われておりますので、まず一号機と同様、格納容器を水で満たして冷やしたいと。
 ただ、デブリが高い放射線量、これは原子炉の周りのそういう構造物が吹っ飛んだということで、そこは元々放射化していて線量が高いんだと思うんですが、そういうことでそれを片付けないといけない。徐々に片付けて、特に外に散らばっているものは片付けていると理解しておりますが、中も片付けないといけないんではないかということで、これは建屋に覆いを付けたりをして、全体、最後収める必要があるんではないかと思います。
 それから、四号機につきましては水素爆発があったんですけれど、これは多分三号機側から水素が空調系を通じて回り込んだんではないかと思います。燃料は幸い損傷していない様子でございます。これは初め損傷しているという話で、随分時間を使ったと思いますけれど、損傷していない。使用済燃料交換のときは原子炉容器の上の方にたくさん水がありますので、水で蒸発はしていましたけれどということです。それからあと、プールについては壁が少し弱くなっているので補強をしないといけないということで、今そういうことが行われて、プールについて循環冷却をして、プールの水温を安定化させるという作業が残っていると思います。
 それから、十三ページに行きまして、放射性物質で汚染された水でございますが、汚染水は今は流出は止まって、今度は立て坑を埋めてもっと流出を防ぎたいということで、あと低濃度の汚染水等を含めてバージとかタンクで貯留したいと。それから、サイトの土壌ですけれど、これは飛散しないように何か薬品をまいて、飛散しないような抑制が行われております。
 十五ページでございますが、まとめますと、炉心を注水で冷却継続することが水素の発生と爆発を防止するためにまず最重要でございまして、これが長く続けられていると。次のステップは、熱交換器を持つ冷却系をつなぐということでございます。プールについては冷却系をつないで冷却するということで、時間が残念ながら掛かっているのは、高い放射線量と設備の製作に時間が掛かるためと理解をしております。
 それから、政府の対応に対する所見も申し述べるように言われておりますので、僣越ながら申し上げさせていただきますと、大震災で、初期は交通、外部電源、それから多分通信網、非常に悪かったんだと思うんですが、皆さんよく努力したんだと思います。それから、発電所サイトの事故の収束は、やはり当事者が一番知っておりますし、支援体制もできておりますので、それを支援する体制がいいんではないかと。政府の役割はサイト外、避難地域、それから日本の陸海域、それから海外対応ということではないかと思います。
 十七ページでございますが、政府のおやりになっておられることは原子力災害特別措置法等に沿って行われているということは理解しておりますけれど、もう少し何かやはり、皆同じだと思うんですけど、住民の配慮というのがもうちょっとあればというふうな感じがいたします。例えば、避難しなさいよということではなくて、もう少し避難住民の暮らしの維持というのを何とかならないかなということでございます。
 反省点としては、一生懸命やっているんだけど、事故収束がどうしても遅くなっているということと、情報開示、発信もやはり非常に不十分なところもあるんではないかと。この辺りは、省庁縦割り、お上意識、責任体制と書かせていただいておりますけど、日本の言われております弊害が露呈をしておると。中国、韓国も非常に強い仕組みがありますので、この辺りは、事故だけじゃなくて、日本の課題ということではないかと思います。
 それから、もう一つ申し上げたいのは、再度の大量放射性物質の放出の可能性は非常に低いんじゃないかと思います。今、多分避難を解除する条件として冷温停止というのが求められていると考えている方が多いと、私もそう考えていたんですけど、先ほども住民の方のこともありまして、もうちょっと何かと思いまして考えましたところ、やはり非常に低くなっている。というのは、冷却に失敗をする可能性は非常に低いということと、それから放射性物質はもうかなり減衰しているということで、何かいい方策はないんでしょうかということで、安全側に考えるだけじゃなくて、早く解除できないかとの方向で検討されたことはあるのかどうか、もちろん検討されたことはあるんだと思うんですが、知りませんので、勝手に書かせていただきました。
 それから、避難地域等の除染でございますが、放射線管理の方針、できるだけ合理的に低くという方針に従えば、線量低減を表土の入替え等によって行うのが適当だと思います。こういうことは防災指針にも書かれております。
 それから、避難地域の生活支援策、ちょっと重複しますけど、やはり非常にもう生活が破壊されるということで、非常に申し訳ないお気の毒な状況になっているかと思います。それから、セシウムがまだ残っているわけですけど、昔、大気中核実験というのが一九六〇年代にございまして、大体今の千倍ぐらい濃度がございました。現在も、再浮遊といいまして、黄砂とともに大陸から飛んできます。こういうときの経験、植物への取り込みの経験等ございます。それからチェルノブイリの経験もございますので、何かこういうことにもやはり国は意を用いるんではないかと思います。
 それから、もう一つ申し上げたいのは二十一ページで、安全確保というのは常に安全側に考えることになっております。安全屋さんというのは常にそう考えるんですけれども、これを避難地域に対しても本当にこれでいいのかと思います。というのは、避難による被害の方が健康被害よりも大きいんではないかという感じもいたします。
 放射線障害は山下先生御専門ですけれども、あるレベル以下ではグレーな領域といいますか、低いけれどもなるべく下げた方がいいけれどもというそういう領域で、はっきり決まっていない。ただ、考え方としては直線を引いて、少しの放射線でも害があると考えようということになっている。
 ちなみに、今は二十ミリシーベルト・パー・イヤーを避難の基準になっていますけれども、積算線量として百ミリシーベルトを月でいいと、一年積算しなくていいと言っているオックスフォード大学の教授もおりますので、この辺りはもう既に決めて運用しておられますので云々するべきではないかもしれませんが、そういうグレーな領域ということでございます。
 それから風評被害ですけれども、私は事故の進展しているときはカナダ・バンクーバーにおりましてテレビを見ていたんですけれども、あの爆発を何度も映しまして、はっきり言って言いたい放題といいますか、内閣府の方が出ておられましたけれども、多勢に無勢といいますか、そういうことで、やはり風評被害を含めて外国語での発信が初期は非常に少なかったんだと思います。
 このときに、単に事実を話すだけじゃなくて、低線量健康影響の話とか風評被害防止の観点で、やはりジャーナリズムといいますか、そういう方が御覧になるような視点で専門的に発信される方はやはり、これは原子力災害に限らず必要なんではないかと思います。
 それから、インターネットなんかも普及しておりますので、こちらの方でどういうことだったかということもあるかと思います。
 それから、今後の原子力安全確保対策ですけれども、安全確保の仕組みの抜本的改善が必要だと思います。原子力規制というのは、もう一貫して細かい強化はなされてきましたし、ジェー・シー・オーの後は保安院もできておりまして、仕組みとかそういうのはできているんですけれども、今回はそういうことでは駄目だったと。
 具体的には、大津波、大震災、全交流電源喪失、最終放熱先喪失対策、共倒れ防止対策とかいうことである。さらに、原子炉を開発するとしたら、炉心溶融事故が生じても避難をしなくてもよい原子炉、原子力発電所を設計するとか、そういう課題があるんではないかと思います。
 まとめまして今申し上げましたので、ちょっと時間もございますのでまとめのところは省略させていただきます。
 それから二十五ページでございますが、二十五ページの一番上に書いてありますのは、千年に一回の大津波、貞観津波というのを見落としたということですけれども、やはり全員予測できなかったということではないかと思います。考えますと、東海、東南海・南海の連動というのは、これは警戒しているんでしょうか。浜岡のことだけではないんだと思う。もしこれで中部から関西がやられたら、日本は大変な大災害になって大変なことになると思います。
 それ以外については、既存原発について、やはり主要点に六か月以内ぐらいで早急に結論を出して調査をして、要点について結論を出して調査をして、ちゃんと国がまとめるべきだと思います。
 それから、風評被害の防止は、そういう技術的な対策以外にもっと必要だと。やはり専門家の育成というのも重要だと思います。
 それから、個人的な印象になりますけれども、先ほどの低線量被曝のことから考えますと、やはり非常に大きな影響をこの事故が与えているということは残念でございます。原子力発電というのは、歴史的にも公衆の死亡被害が非常に少ない分野です。今のところチェルノブイリだけということでございます。低線量被曝の健康被害の正しい理解というのは期待したいと思います。
 それから、原子力の役割、最後に書かせていただきましたが、やはり国家安全保障の一環、それから電力の安定、安価な供給という役割があると思います。韓国は原子力発電開始以来、電気料金がほとんど上がっておりません、三十年間。これは、韓国の経済成長を原子力発電が支えたと国際会議で何度も堂々と発表いたします。
 あと、ちょっと話が違いますけれども、ユッケによる食品中毒が問題になるという、これは放射線殺菌で完全に解決できます。米国ではこれを行われております。規制するとかいうことじゃなくて、日本は放射線に対するアレルギーがあってこれなかなか行われていないんですが、これもちょっと改善しないといけないということで。
 原子力発電所は日本人が能力を発揮している分野で、この事故の教訓を生かして高い技術を持って発展してほしいと期待しております。
 以上でございます。
○委員長(柳澤光美君) ありがとうございました。
 次に、山下参考人にお願いいたします。山下参考人。
○参考人(山下俊一君) よろしくお願いいたします。
 私は、資料のほかに参考資料といたしまして医事新報の四月三十日号、これは東日本大震災を振り返って医療の立場から緊急座談会をしたものが一つ。もう一つは、本を二冊準備しました。今日は時間がないと思いましたので、「二十一世紀のヒバクシャ」、今までに放射線被曝をされた方が世界中にどれぐらいいるかということ、もう一冊は「リスク認知とリスクコミュニケーション」ということで御準備させていただきましたので、後ほどお目通しいただければ有り難いかと思います。
 配付資料の一枚目、本日説明の骨子であります。私は、立場上、医療人としてこの福島原発の健康リスクについてお話をさせていただきます。
 まず初めに、広島、長崎の原爆被爆者の長年の疫学調査、この結果が現在の国際放射線安全防護基準に使われています。すなわち、外部被曝一回の長期にわたる発がんリスクへの貢献であります。福島の原発事故で放射線が怖いあるいは放射能が怖いということの一つは、広島、長崎の放射線のみならず、爆風や熱傷による死亡者、白血病、がんということで非常に大きな恐怖感をもたらしていますけれども、今回これとは全く違う原子力発電所事故につきまして御説明したいと思います。
 二つ目は、チェルノブイリの原発事故から二十五年ということで、その教訓が何かというと、これは内部被曝の健康影響、子供の甲状腺がんの激増ということで放射性沃素の問題であります。と同時に、現在まで二十五年間、この地で慢性に微量被曝をしている方々が五百五十万人以上いるという中での健康影響調査の結果をもってお話をさせていただきたいと思います。
 ただ、福島原発、現在進行中でありますし、その現状も十分に解析されていません。健康問題はこれからの大きな課題であります。とりわけ、今日は述べませんが、原発作業者あるいは労働者、自衛隊、消防、警察職員、こういう中に入っている方々の健康問題は今後、被曝を覚悟してあるいは既に被曝をしているという前提からアプローチをする必要があります。一方、避難対象住民につきましては、二十キロ圏外、三十キロ屋内退避、さらには県外移住者等につきまして御説明をいたします。
 おめくりいただきまして、二枚目の上段が長崎、広島の原爆被爆者のデータであります。年次ごとに若いほど被曝によって白血病、その後種々のがんが増えたということで、そのエクセスレート、つまり死亡者数が年間どのくらい増えたかということがそこに示されています。これはすなわち放射線によって細胞の遺伝子に傷が付くということですから、ある意味で確率論的な健康影響になります。誰しもがこれだけの被曝をしてなるというものではありません。
 そこで、リスクの考え方として、こういうことが起こった場合の事象が起きる頻度や確率から集団でリスクを管理する場合、あるいは個人個人にそのリスクを当てはめて個々の感受性あるいは年齢ということなどから考える場合ということで、種々の考え方があります。
 ただし、発がんのリスクは決して放射線だけではありません。また同時に、ゼロリスクというのはありませんので、リスクは単独ではないということから、その方々の健康あるいは命を守るという点では、あるリスクを取るとあるリスクを失う、あるいはリスクを解消することによってほかのリスクが出るというふうなことがあり得ます。
 最大の問題は、福島の原発で、歩いてみてよく分かりますが、正しい情報あるいは正しい情報の伝達があっても、正しく理解するということと判断できるということは大きなギャップがあります。客観的に個々の人々の心の中あるいはそのリスクの認知は大きく異なります。特に、子供を持っているお母さん方についての対応、学校の対応、そういうものにつきましては理論と実践との間に大きなギャップがありますし、最終的には個人の価値観あるいは人間学に集約されるということで、お手元の黒い「リスク認知とリスクコミュニケーション」という中でこの考え方を述べさせていただいています。
 三ページ目に、放射線被曝には、外部被曝、内部被曝あるいは全身被曝等があります。今回は汚染という問題が一つの大きなキーワードであります。
 健康の影響は、確定的な影響と確率論的な影響で、大量に、この場合にはミリシーベルト、身体に表す放射線の影響のレベルをこの単位で表していますが、急性放射線障害が出るのは千ミリシーベルト以上であると。また、百ミリシーベルト以上を超すと受けた線量にがんのリスクが増えるというのが広島、長崎のデータであります。
 これに対して百ミリシーベルト以下、すなわち十から百ミリシーベルトにおきましては、疫学的には発がんリスクを証明できません。
 ということは、被曝群と非被曝群の長年経過を追いましても、広島、長崎では十二万人の方々を六十年近くフォローしていますけれども、それでもってもここはグレーゾーンであります。決してないというわけではありませんが、ここでがんのことを危惧するよりも、他の発がんリスクの要因が非常に大きいということになります。年間一ミリシーベルト、平常時ではそのような状況の中で、被曝の影響を考えるためには正確な被曝線量の評価がないと議論ができません。
 下は、チェルノブイリと日本の今回の福島とを比較した図であります。NHKのワールドニュースで私が話をしたときに使いましたが、御覧のように、千キロ離れたスウェーデンと大体六十キロ離れた福島と同じようなレベルですし、レベル7といっても、チェルノブイリの原発事故と福島とは、規模、それから死傷者は出していないその後の対応の素早さ等で全く異なるということが言えます。
 一つの例として、四ページですけれども、この被災者の中で、二〇〇五年、この除染作業に当たった二十四万人の軍人、それが下で、ずっとロシアでフォローされています。大体平均被曝線量が百ミリシーベルトの方々であります。先日の四月二十六日、キエフで二十五周年のチェルノブイリのいろいろな会がありましたけれども、世界が認めた中で、この方々に明らかな発がんのリスクは上昇していませんので、今後なお長いフォローアップが必要であります。
 また一方、避難できない五百五十万人近い方々も十から五十ミリシーベルトを既に被曝をされていますが、このレベルで唯一増えたのは、次の五ページ目の、これはベラルーシが例として出されていますけれども、子供の甲状腺がんのみであります。この五ページの上段は極めて重要なグラフでありまして、被曝時年齢がゼロ歳から十歳、すなわち事故直後、汚染された原乳、ミルクを飲み続けた人たち、その子供たちが生涯にわたって発がんリスクを負うという一つの証拠であります。
 年間百万人に一人しか出ない子供の甲状腺がんがこの地域では一万人に一人という大量発生しましたが、現在の子供たちで甲状腺がんはいません。すなわち、どういうことかというと、放射性沃素は半減期八日であります。夏までにはほとんど消えてしまいました。その犯人は消えましたが、発がんのリスクがこのように続いているということは、年齢がシフトしているということであります。
 事故当時、我々が九一年、チェルノブイリに入ったときに、ちょうど五歳から十歳の子供たち、すなわちゼロ歳から十四歳の方々に甲状腺がんのピークが出まして、その後、十五歳から十九歳、そして二十歳から二十四歳、現在は二十五歳から三十五歳の方々にそのピークがシフトしています。これは唯一、放射性沃素の食物連鎖による内部被曝がその起因だというふうに言われています。この方々は放射性セシウムが汚染された土壌で現在まで住んでいますが、他のがんの発生は一例もありません。そういう意味では、低線量被曝による発がんのリスクが唯一この現場における将来の不安材料であります。
 では、この放射線を何と比較すればいいかと。がんのリスクを具体的な健康影響の大きさで表すということで、いろんなデータが出されています。ここでは、国立がんセンターの多目的コホート研究の相対である図でお示しします。六ページの上段であります。
 すなわち、放射線を浴びて、あるいは微量を浴びた場合の発がんのリスクを何と比較すれば分かりやすいだろうかということであります。左側に相対リスク、右にそれぞれのミリシーベルト。これは一回被曝ですので慢性低線量とは異なります。はるかに慢性低線量の方が生物学的な影響は少ないということは分かっていますが、基準上は外部一回被曝と同じように積算線量も基準を設けているところであります。例えば、百ミリシーベルト未満では放射線の影響は分かりません。百ミリを超えると初めてリスクが一・何倍上がりますが、それを他の野菜不足あるいは肥満や運動不足、生活習慣病等々、こういう発がんリスクと非常に近似して、あるいは比較して見ることができます。アルコールあるいはたばこ、ウイルスその他とも一緒であります。
 まず、こういう確率論的な放射線による発がんリスクを今の日本国民は全てこの汚染で心配しないといけないというレベルにあるということを御理解いただきたいと思います。
 事故が起こりました三月十一日、そして七ページで見られますように、三キロあるいは十キロ、二十キロということで、想定外というシナリオにない避難がなされたわけであります。この方々の塗炭の苦しみもさることながら、下の図で示しますように、放射性降下物についての汚染ということで、まず一次スクリーニングで約十七万人以上の方々を検査済みであります。これは実はRI、放射性物質の室内の管理基準は六千cpm、四十ベクレル・パー・センチ平方メーターというレベルですので、はるかにそれを超えた段階でここではカットオフが使われたと。すなわち、どういうことかというと、この福島は文字どおり汚染したということであります。
 しかし、直ちにこれが健康影響があるかどうかと、そこが全く重要な点で、私たちは当初、福島県民への健康リスク対応を行ってまいりました。クライシスコミュニケーション、ちょっと字が間違っていますが、それを三月二十日、いわき市から、あるいは二十一日、福島市を皮切りに、四月下旬じゃなくて、五月初旬まで約十五か所、五千人以上の方々と対話し、放射線の正しい知識についてお話をしてまいりました。
 パニックはどうにか抑えられておったと思いますが、種々情報がはんらんし、混乱し、現在は、四月中旬以降は、放射線の真のリスクコミュニケーションということで、ある判断基準に従いまして、積算線量の基準を遵守しつつ、ラジオ等で県民の方々に語りかけているところであります。
 じゃ、客観的にはどうかというと、八ページをおめくりください。福島県内の原発事故後の空間線量の経過がそこに書いてあります。当初、三月十一日、相双、すなわち南相馬等で二十マイクロシーベルト一時間当たりというピークを観測した後、激減し、その後、いわき市、そして緑の破線である六十キロ離れた福島市まで実は放射性降下物が降り注いでいます。これがまさに汚染。
 空気中のレベルがその後激減した理由は、当初は放射性沃素、半減期八日ですから、それが自然となくなっていきます。その後だらだらと低下しない理由は、放射性のセシウム137、半減期が三十年です。これが土壌に降り注いでいます。土壌に積もった。これを今後どうするかというのが大きな問題で、この土壌の汚染を間接的に空間線量として今検出しているわけであります。
 このレベル、すなわち十マイクロシーベルト・パー・一時間を切る、そして更に言うと一マイクロシーベルト・パー・アワーを切るということが実は安全の最も重要なラインでありますが、あに反せんや、八ページの下にありますように、その後、遅れて甲状腺の内部被曝の図がSPEEDIで出ました。これは一歳の子供の甲状腺の内部被曝の予想線量をある条件下で推測したものであります。当然、二十キロ、三十キロ圏を超えたところがあります。今問題になっている計画的な、飯舘村であります。こういうところも含めて、今後発がんリスクが懸念される母集団、あるいは今後、どういうパターンを取ったかということで被曝線量が推測されるだろうと思います。
 その証拠に、九ページ目が現在まで明らかにされている、これは福島県が空間線量率でマップを作ったものであります。風向きあるいは地形と関係し、三月十五日、十六日までの爆発で出たもので、その後はこのいわゆる風向きで、空間線量ではなく、土壌の下として、落ちています。
 官邸でも、九ページの下にあるように、現在それぞれのマップが出ています。多くは一マイクロシーベルト・パー・アワーを下がっていますが、そうでない場所が浪江あるいは北西の飯舘、伊達、一部に、ここに存在しているということが一目瞭然であります。
 大切なことは、最後の十ページ目ですが、このような福島の原発事故の状況は、現在いまだ収束していません。この放射線安全防護の考え方は、平常時では公衆の被曝を一ミリシーベルト以下に抑えると、これは当然であります。また、非常時であってもできるだけ低く抑えるということが我々の常識でありますけれども、事故が発生した後、屋内退避の基準が、そこに居続けると十ミリシーベルトになるというものであり、避難は、五十ミリシーベルトに達するということが予測された場合に避難をさせるわけであります。
 今回も、避難二十キロ、そしてその後に、避難というのは、本来、安全なところに避難するというものでありますけれども、屋内退避の十ミリシーベルトが出たと、しかもそれが解除されることなく続いたということは一つの大きな問題でありますし、収束が見る前に既に学校が始まっていました。
 またそして、その収束を見る前に、どのレベルかというと、実は、ICRP、国際放射線安全防護基準では二十から百ミリシーベルトの年間被曝線量に積算を抑えましょうということで、非常時はここで基準が設けられます。各国にその裁量は任せられています。この基準も、百ミリシーベルト以上では発がんリスクが明らかに増えるが、それ以下では分からないというのが根拠であります。事故が収束しますと二十ミリシーベルト以下に年間被曝線量を抑えましょうということで、これは、暫定的にこの基準値は厳しく下がってくるはずであります。現在、文科省は二十ミリシーベルト・パー・イヤーということでこれが議論されていますが、現在我々が考える範囲では、これも可及的に下がっていくであろうというふうに期待しているところであります。
 今後の展望ですが、これは一刻も早い収束が鍵であります。我々医療人が何をすべきか、そして何ができるかということは、医療、病院が崩壊してはこの方々の健康を守れません。そのために、多少の汚染があっても普通の医療ができることを医療人に周知徹底する。医療者がパニックにならないということと同時に、被曝の現状をきちんと掌握し、継続的な福島県民の健康増進、そして継続的な長期モニタリング体制の整備が必要不可欠であるということで、私の話を終わらせていただきます。
 どうもありがとうございました。
○委員長(柳澤光美君) ありがとうございました。
 以上で参考人の皆様の意見陳述は終了いたしました。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑の進め方でございますが、まず、各会派一名ずつ大会派順に質疑をしていただき、その後は自由質疑といたします。
 なお、質疑の時間が限られておりますので、質疑者及び参考人の皆様にも御答弁はできるだけ簡潔にお願いをいたします。
 それでは、質疑のある方は順次御発言願います。
○藤原正司君 民主党の藤原でございます。参考人の方々に一人一問ずつお尋ねいたします。
 まず、柳田参考人についてでございますが、私は、先生のお話を聞くと、工学的な人間かなというふうに思います。
 その上で、先生のお話を、勘違いしていたら許してくださいね、先生は真の意味での想定外を否定しておられない。問題は、想定外という言葉の陰に意図的に逃げ込んでいると、あるいはその逃げ込んだ結果対策を始めとする思考が停止してしまう、このことの方が問題なんだというふうに言っておられるように私は受け止めた。受け止めたわけでございますが、これからエネルギーをどうするかというのは横に置きまして、仮にです、原子力発電所を造るという場合に、結局は一定のルール、基準に基づいて造らざるを得ない。これは想定外であろうが内であろうが想定内の問題に取り込んで基準を作らざるを得ない。もう好きなように造れよというわけにいかない。その場合にどういう基準を作ったらいいのかというときに、一つには民主的ルールという問題があると思います。
 先生としては、その想定外を想定内に取り込んでルール化していくときの仕組みというのをどのようにお考えか、お聞きしたいと思います。
○参考人(柳田邦男君) 大変正確に御理解いただきまして、ありがとうございます。
 おっしゃるとおりでございまして、想定外を絶対的に否定するものではないんです。人知の限度というのがありまして、これはどうしようもない分野もあるわけですが。
 ただ、現実にこれまで行われてきた様々な産業分野における想定というのは、どこかで、班目さんの言葉を借りれば割り切らないとものができないという、こういう立場だったわけですけれども、その割り切り方が、やはり経済性との関係でかなり可能性のある部分も想定外の方に外してしまっている事例が多い。その辺りはリスク評価というものについての基本的な考え方、評価の方法、それが絡んでくるわけですけれども。
 そういう意味で、これから原子力産業を進めるかどうかということはさておいて、安全性という問題を考えるときには、これは畑村洋太郎先生もおっしゃるように、可能性があるものは必ず起こる、それが事故であり災害であるという、私も経験的にそう思うわけです。ですから、想定の限界というものをかなりスレッショルドを高くしないといけない。
 では、それ以上のものが来た場合どうするかということについては、もしこれが破綻した場合にどういう事態が起こり得るのか、それに対してどう対応すべきか、これについて本当に綿密なシミュレーションをして対策を立てておくべきではないかと。思考停止をしないこと、想定外の事態に対しても対応の方策を可能な限り探るということ、これが不可欠であろうと。
 それから、想定内の問題の安全対策で非常に重要なのが、私は辺縁事故論とか辺縁リスク論というキーワードで申し上げているんですけれど、レジュメにも三枚目の四番に書きましたけれど、あるシステムが安全ですという場合に、よく厳密に審査すると、中枢部分、例えば原子炉の炉心や建屋やいろんなものについては確かにおっしゃるとおりです。だけれど、それを支えている周辺システムが破綻したときにそれが中枢に波及してしまうことがしばしば起こっている。
 具体的に言えば、過去に事例が、インドのボパール事故にしても、あるいはアメリカでカーマギー社の放射性有毒ガス漏れ事故にしても、日航ジャンボ機墜落事故にしても、そういう辺縁部、中核部分じゃないところが引き金になって中核が破綻するということが起こり過ぎていて、原発問題について今回のものを見ても、例えば非常用電源が地下にあって浸水をするような可能性があったとか、あるいは関連施設の設備やパイプなどが路上に張り巡らせていたとか、いろいろと盲点があるわけですね。それは分からなかったのかというと、これは事故論の専門家がもう現場を見れば、えっていう感じですぐに分かる話なんですけれど、設計をしている人はどういうわけかそういうところに気付かなくて、バックアップシステムがあるから大丈夫だということになってしまうと。
 例えば一九六八年に十勝沖地震がありましたときに、当時の電電公社の本州と北海道を結ぶ甲地無線中継所のパラボラアンテナを動かす予備電源が、ディーゼル発電機だったんですけれど、固定が不完全で四十センチずれたために東北電力のメーンの電源が切れた、その上で予備電源は大丈夫だと思っていたらそれが動かなくて、結局本州と北海道の間が二時間にわたって全く通信がなくて、北海道が大災害に見舞われているというふうなデマも流れたというふうな、こういう事態が起こるわけで、そういうふうにその辺縁で起こることがシステムの中枢を破綻をさせるということはしばしばあるわけで、こういう教訓はごまんとあるわけですが、なぜか設計者がそういう教訓を生かしていないという、こういう問題です。
 以上でよろしいでしょうか。
○藤原正司君 岡先生にお尋ねしますが、実はこの震災が起きたときに、三日間は千年に一度と言うていたんです。四日目からは犯人捜しに変わったんです。誰が悪いんだという犯人捜しに変わったんです、四日目から。
 私は、岡さんは私と同族人間だと思っておりますが、そこで、今回の東日本大震災を受けての福島第一発電所の震災を大まかにどういうふうに受け止めておられますか。
○参考人(岡芳明君) 御質問の趣旨は、心理的にでしょうか、専門的にでしょうか。
○藤原正司君 専門的。
○参考人(岡芳明君) 専門的ですか。
 専門的からいえば、やはり全部共倒れになりましたので、それで設計を超えてここまでのことが起こると思っていなかったというのが正直なところでございます。
○藤原正司君 ありがとうございます。
 山下参考人にお尋ねしたいんですが、私は今回の震災をめぐる報道の問題で、報道は正確でなければならない、もう一つは、安心を提供するものでない、不安をあおるものだけが報道とは思わないというふうに私は思います。
 そういう中で、今回は専門的な言葉が多過ぎる。例えば単位でも、ベクレルだとかシーベルト、これにマイクロが付いたりミリが付いたりギガが付いたりテラが付いたり、もうお寺や神社まで付いてきて、結局聞いている人間から見ると、これが本当に危ないのか危なくないのか、どの程度危ないのか全然分からないというのが正直なことでして、山下参考人の専門ではないかもしれませんが、この被曝と線量表示という問題についてどういうふうにお考えか、お尋ねしたいと思います。
○参考人(山下俊一君) ありがとうございます。
 これは唯一、人体への影響はシーベルトという単位に統一をしています。物理学的にはベクレルとかいろいろ出ますので、学校教育も含めまして、これはやはり人体影響についての統一が必要であろうと。ただ、物理学的な単位としてガイガーカウンター、これはcpmというカウント・パー・ミニットで出ます、いろいろな単位が出ます。
 今までの最大の問題は、日本の学校教育、特に理科教育でこういうことを教えてこなかったので、放射線を測るということがなかった。つまり、体重は体重計で測る、あるいは温度は体温計で測る。同じように、測るということが今回初めて日本国民の指標の一つになったということで、私は安心、安全を話をする場合にも、このシーベルトを一つの基準としてお話をさせていただいています。
○藤原正司君 ありがとうございました。
 以上です。
○牧野たかお君 自民党の牧野たかおでございます。お三人の先生方に伺いたいところでございますけど時間がないものですから、私の方はハード面で岡先生だけにちょっと質問を幾つかさせていただきたいと思います。
 まず、今回の第一原発の事故について先ほど御意見の陳述がありましたけれども、時系列で見たときに、三月十一日の十五時四十二分に一号機、二号機、三号機の交流電源が全部止まってしまったと。そして、十六時三十六分に非常用炉心冷却装置が不能になるということがございました。それから、対応をしていく中で、一号機を例に出して言いますと、ベントが始まったのが翌日の午前十時十七分。その後に水素爆発があって、今度、原子炉への海水の注水というのが夜の午後八時二十分ということで、一番最初の電源の喪失から計算しますと、ベント開始が十八時間三十五分後、海水の注入が二十八時間近くたってからということになります。
 こういうことに対してこれまで報道でもいろんな方が指摘しているんですが、初動の対応がどうも遅くてこの事故が深刻化したんではないかという、そういう見方が結構される方が多いんですけれども、その点はどういうふうに思われますか。
○参考人(岡芳明君) 今の御質問は、一号機についてはやはり原子炉の圧力が非常に高くて、これを減圧しないと、今の消火系のラインで注水ができない。この弁を開けるということが必要で、これが七十気圧のままですと低圧の消火系では入りませんので、これに非常に手間取ったんではないかということで、初動が遅かったというよりも、むしろ交流電源が全部なくなって、弁を開ける方策が簡単に得られなかったと、あるいは、数時間で回復して得られると思っていたところが得られなかったというところが今の御質問のポイントで、それが、水位がどんどん下がって、それで炉心損傷に至ったと、その原因だと思います。
 詳しいところは事故調査委員会といいますか、そういうところでないと分かりませんので、今のは全く推定といいますか、データはございますので、初め一号機の圧力とかずっと高いままでございますので、それを減圧しない限りは駄目だということは今公開されているデータから分かります。
○牧野たかお君 そのことの、まあ今後のことで、先ほどのお話の中にもありましたように、結局、循環するその冷却の方法、システムをつくっていかない限りは、要するに元を何とかしなきゃ、要するに原子炉を何とかしなきゃいけないということでありますので、それが最終的な要するに収束に向かっていく大きな手法だと思いますけれども、なかなか、いろんな方に聞くと、口で言うのは簡単なんだけれども、循環型の冷却のシステムというのはそう簡単にいかないよというふうにおっしゃる方がいらっしゃるんですが、先生から見て見通しはどういう感じでしょうか。
○参考人(岡芳明君) 今、格納容器を水で満たしてそれに熱交換器をつないで冷やすという方策は、私はいい方策で、時間が掛かっているのは、やはりこういう大きなものを造るのはどうしても注文生産になりますので、もう既に注文されているとは思うんですけれども、どうしても工場で造るのに一か月、二か月、三か月掛かってしまうというところが残念なところで、冷却はできると思います。
 ただ、非常に時間が掛かるというところ、今のようなことと、もう一つは、線量が高い二号機なんかございますので、一号機もちょっと高かったんですけれども、これが作業を遅らせてしまっていると思います。この高い線量と、造るのに時間が掛かる。一号機、三号機は線量は余り高くないみたいですので、二号機について、余り高ければ原子炉建屋を利用するとか、別の方策を使ってなるべく早く冷却に持ち込んでもらえないかなというのが期待でございます。
○牧野たかお君 そういうことを、私たちももちろん早くそのシステムが稼働してくれればいいなと思っているんですけれども、四月七日に政府の指示を受けて東電の方で収束に向けてのロードマップというのを発表して、第一ステップ、第二ステップと書いてあって、第一ステップが三か月程度、第二ステップがその第一ステップ終わってから三か月から六か月ということですので、二つ合わせると大体最長でも九か月にはこの工程は終わるよというのを示しましたけれども、今のお話にもありましたように、それはもうそういうシステムがちゃんとうまく設置できて稼働してという前提なんですが。
 これもいろんな方がおっしゃっているんですけれども、その一から取りあえず四までにしても、最終的には、圧力容器の中に入っている核燃料棒を冷やし続けて安定した状態になってから運び出さない限り最終的には終わらないわけですよね。それには、冷却するのに、私は実は静岡なものですから、その後で質問しますけれども、中電にも聞いたんですが、一号機、二号機の廃炉にした中で、今七年たって運び出しましたけれども、やっぱり普通で考えると三年から五年ぐらい掛かるというんですが、それが終わるまでは、要するに本当にある意味では収束と言えないんじゃないかと思うんですが、その点はいかがなんでしょうか。
○参考人(岡芳明君) 地元の方に帰っていただけるというのが収束ということで定義すれば、やはり炉心が冷却、低温停止ということでいいのではないかと思います。あるいは放射能がもう既に余り出ておりませんけれども、その影響がないということで。
 そういう意味では、全部燃料を取り出すというところまでは、おっしゃるように非常に時間が掛かるようでございますから、何を収束と定義するかということで、東電にとってはもちろん全部終わらないと終わらない、燃料を取り出さないと終わらないということなんですけれども、社会的なことでいえば今のことでございますので、それを冷却をすれば、安定な冷却ができればということで、既にもう二か月安定、ある意味で、注水という臨時的な方法なんですけれども、冷えておりますのでということを先ほどちょっと申し上げたんですけれども、低温停止ということになれば一応収束といいますか、収束というとちょっと言葉が、地元の人が帰ってもらえるというそういう、ちょっと被曝のことはちょっと別ですけれども、再度また放出がないのでこの円形の範囲を全部エバキュエートしている必要、避難していただく必要はないと、そういう意味なんですけれども、そういうことはできるんではないかと。
○牧野たかお君 最後に、ちょっと昨日の話をしますと、浜岡原発の三から五まで停止をすることになりましたけれども、私が思うに、その事の善しあしはまあ横に置いておいて、運転をしていてもこれは震度二でも震度三でも自動停止しますよね。それと、じゃ、あらかじめ停止している状態と、私はリスクは余り変わらないんじゃないかと思うんですが、要は、これも一応中電に確認しましたけれども、停止しても圧力容器の中には核燃料棒入ったままですし、使用済みの核燃料については今でもプールで冷温状態にしているわけですから、たとえ停止ということになっても、自動停止で止まった状態と停止と、私は、そこから先は全く同じで、そこで、じゃ例えば一週間後とか十日後とか、二か月後でも半年でもいいですが、そこでもし津波が来たら、停止している状態でも、それと自動停止した状態でも同じじゃないかと思うんですが、そこは違うんですかね。
○参考人(岡芳明君) 放射性物質、特に今、放射性沃素は八日でなくなりますので、運転している状態で地震で止まりますと、沃素はなくなるまでに少し掛かるということ、あるいはほかの放射性物質も半減期は短いものは幾つもありますので、そういう意味では、やはり放射能のリスクという意味では、停止してかなりたってからと運転している状態とは違いますし、それから高温高圧の運転状態とやはり低温の、常温に近い冷却状態とは、やはりリスクという意味では大分違うと思いますけれども。
○牧野たかお君 分かりました。
○松あきら君 公明党の松あきらでございます。
 本日はお三人の先生方、まさに日本をそれぞれの分野で代表される先生方に当委員会にお出ましをいただきまして、心から感謝を申し上げます。
 時間の関係でまとめてお尋ねを申し上げますので、後ほど、お一人お一人の先生方、お答えをちょうだいしたいと思います。
 私はかつて経産省とも議論をいたしました。原発の寿命は三十年から四十年と言われておりましたが、安全性が確保されるという大前提で経済性が見合うのならば、つまり六十年程度まで動かせると国、政府は考えているわけでございます。今後、近々に全国の原発総点検の結果が出るようでございますが、今回私は、柳田先生のお話ではございませんけれど、少なからず原発というものを大切なまさに基幹電源と思っておりました私でも、想定外という言葉はやはりこれは使ってはならない言葉だということを今回私はつくづく自分自身もそういうふうに感じました。地震には耐えたけれども津波には耐えられなかった、想定外ではないとこれを考えましたところ、私もそういうふうに思うわけでございます。
 柳田先生には、もちろん航空機事故と今回は全く違うわけでございますが、航空機事故ではヒューマンエラーがしばしば原因として問題になりましたが、今回は、その使ってはならないと思います想定外という、自然災害による原発事故とされております。本質的な違いは何だと、ちょっと漠とした御質問なんですけど、お考えでしょうか。今後私たちが取るべき道というものがございましたら御示唆いただきたいと思います。
 それから、岡先生、無過失責任なのに無限責任を取るという、これは東電がですね、無過失なのに無限責任を取るということについてどう考えられますでしょうか。また、製造物責任、つまりメーカーの責任はないと法律ではなっておりますけれども、これについて岡先生はどういうふうにお考えでしょうか、お聞かせいただきたいと思います。
 山下先生、やはり、つくづく私は正しく怖がるということが必要だと本日も先生のお話を伺って思いました。必要以上に、もちろん放射能というものは怖いものでありますが、しかし、きちんと分かれば、もういわゆる線量によってはこれは被曝に当たらない、その言葉が、私の言葉が正しいのかどうか分かりませんけれど、そうしたことであるということをきちんと国民も知る必要があるし、そして、正しく外国にも本当に広報をしていかなければもう日本はレベル7の大変な国だということになってしまう、これは私は、もう与野党挙げて、きちんと正しい報道の在り方も含めて大事だと思っております。
 また、先生のチェルノブイリの長期分析からいたしますと、飛散は不定形で広範囲にわたるのでもっとモニタリングする箇所を増やすべきではないかというふうにおっしゃっていられたと思いますけれども、これについてと、また、微量であっても長期的に反復継続して被曝する、放射能を浴びるということは大人や子供にとってどのような影響があるのか。また、母乳への微量の放射性物質が検出されたけれども、乳児への影響はないとされましたが、ちょっと、一都四県の二十三人のうち七人から検出された、サンプルとして少ないのではないかなという疑問もございます。
 今後もこの調査は継続して拡大して行われる必要があると思いますけれども、いかがでございましょうか。
 順次、先生方、よろしくお願い申し上げます。
○委員長(柳澤光美君) それでは柳田参考人から順次簡潔によろしくお願いします。
○参考人(柳田邦男君) 航空事故等におけるヒューマンエラーが主たる原因になるケースと原発事故とは違うんではないかという御質問でした。
 私は、本質的には違いはないと思っております。これどういうことかといいますと、英国の事故論の専門家であるジェームズ・リーズン氏が九〇年代に論文を書きました組織事故論というのがありまして、これは今、国際分野では、ICAO、国際民間航空機関が各国に要請している事故調査の方法論、マニュアル、全面的にその理論を採用してそういうマニュアルを作ったわけです、こんな分厚いものでございますけれども。
 それは、ヒューマンエラーであっても、それはむしろ結果であって、その背景にある組織の要因、つまりそれを導いたようなエラーの落とし穴をつくったような組織の要因あるいは背景の問題、あるいは防げなかったバックアップシステムの不備、そういったものをずっと洗い出すと、その組織の抱えている問題が二十も三十も上がってくるんですね。それを調べるときに重要なのは、どういう意思決定過程でそういうシステムをつくり、どういう意思決定過程の中でその防護壁に穴が空いてしまったのか、それを明らかにすることこそが事故調査であるというわけでして、エラーであるのか欠陥であるのか設計ミスであるのか、それは表面的な問題であって、その背景にある組織要因を調べることが重要である。さらには、その組織文化なりそこにおける意識の風土といったものが全体を動かしている、そこまでメスを入れなさいということを勧告しているわけです。
 こういう方法を取って事故調査をすると、今回の福島原発事故についても、何ゆえに想定外というものが生じてしまったのか、何を基準に、どういう場面で誰が意思決定をしたのか、それが非常に重要な問題になってくるわけで、事故調査の目的というのは安全性を確立することです。安全性を確立するためにはどういう欠陥や失敗があったのかということを明らかにして、それに対してリスク要因を潰していくような勧告なり提言をしていくという、このプロセスが大事なわけで、そういう視点から、方法論をしっかりと押さえた事故調査委員会が設立されて徹底的な調査を行う必要がある。そしてまた、そういう中では、関係者が忌憚なく、隠し事なく証言することが重要であると。かなり歴史的に遡る必要もあるわけですから、非常にヒアリングの対象になる方々は多いはずです。
 ただ、ここで注意しなきゃいけないのは、責任論と原因究明は別であるということであって、責任論が表に出てきますと、皆さん、それこそ刑事訴訟法における不利益なことについては黙秘権を行使できるみたいなことが流用されますので、そういうことでなくて、この国の人々の安全、この国の社会の安全のために何をすべきかという観点から、これから事故調査委員会を組織して徹底的な調査をするべきであると。
 先ほど言いましたように、アメリカの場合ですとチャレンジャー爆発事故とかスリーマイル島原発事故なんかの場合は実に見事にその組織分析が行われています。
 そして、最新のICAOの勧告では、組織分析するときには財政基盤、マネーについても調査対象にすべきであるとか、組織文化、安全文化についてもメスを入れなければいけないということが勧告されております。これは非常に重要な問題で、一般性があるのであえて今日申し上げたいと思った重要なポイントの一つでございます。
○参考人(岡芳明君) 御質問は無過失、無限責任ということでしたけれど、これは事業者と国の……
○松あきら君 東電。東電です。
○参考人(岡芳明君) 東電の責任がどうかということでございます。
 この事故は、東電の責任だけということは言えないと思います。さっき、ちょっと専門家もこれを予測、この大きな地震を予測しておりませんし、予測していないというのはそういうことを言った人がいるということではなくて、実際のシステムとして取り入れていないということ。それから、国も安全審査をしておりますし、管理、安全確保の責任もあるので、東電だけの責任ということはないと思います。
 済みません。もう一つ、何でしたっけ。
○松あきら君 製造物責任。メーカー責任についてお願いします。
○参考人(岡芳明君) メーカー責任。メーカー責任は法的には多分随分昔のプラントですから、ない、終わっているんだと思うんですけれど、ちょっと法律屋じゃないのでよく存じませんけれど、ただ、やはりそれで済まないものもあるというふうに理解をしておりますけれど、ちょっと法律屋じゃないので、済みません。
○松あきら君 ありがとうございました。
○参考人(山下俊一君) 正しく理解し、正しく怖がるという意味で、報道の果たす役割は非常に大きいというふうに思います。今回も、当初はかなり混乱でしたが、幸いに専門家との交流あるいは好意的に、国難をいかに乗り切るかということで、できるだけパニックや不安をあおらないという報道に多くの報道機関は協力していただいたというふうに思っています。
 また、低線量被曝の問題、これはこの環境の汚染地図等を見ていただくとよく分かりますが、福島県の浜通りからこの一部は基本的に放射線管理区域に相当すると考えていただいてよろしいかと思います。ですから、ここにおける人々の健康をしっかりと守るためには、環境中のサンプリングはポイント数を増やして必要ですし、当然学校等あるいは子供の遊ぶところについてのデータの回覧は極めて重要になってくると思います。
 先ほどお話があったお母さんの母乳に出たということの御心配、御懸念ですが、これ放射性物質の特色であります。核実験があった一九六〇年代もたくさんの放射性物質が日本にも降っています。そういうレベルと比較いたしましてもこのレベルは非常に小さなもので、かえって母乳をやらない、あるいは不安をあおるということがないことで十分に対応できますので、もし御不安であればサンプル数を増やすということで対応できるというふうに思います。
○松あきら君 ありがとうございました。
○松田公太君 大変有意義なお話、ありがとうございました。
 私が非常に心配していることの一つに、国際的に、日本食品だけじゃないんですが、特に日本食品、これの輸入制限や不買運動がますます深刻化しているということがあるんですね。私、シンガポールやアメリカに経営者の仲間がいるんですけれども、皆さん、やはりレストランを経営されている方々は売上げががくっと落ちてしまって非常に厳しいと。また、小売業の方々も、特に農水産物を扱っているところは厳しいと、日本のものですね、という話があります。これは、本当に日本経済に長期的に大きなダメージを与えてしまうんだろうなというふうに危惧しているわけですが。
 私は常日ごろ、この本委員会でもそうなんですが、日本政府が農水産物の放射線汚染検査をWHOなどと共同で行うべきだと。たしか山下先生はWHOに何年かいらっしゃったというふうにお聞きしておりますけれども、そのように共同で情報発信をしていけば国内でも海外でも信用されて、風評被害が軽減するんじゃないかというふうに言っているんですね。その案についてどのように思われるか、まず教えていただければと、お三方に教えていただければと思います。
 ちょっと、あと時間の関係でまとめて御質問させていただければと思いますが。
 もう一つは、これ、たまたま先日知り合いからいただいた本の中に、ハンフォード原子力施設を対象に実施されましたマンクーゾ報告っていう、マンクーゾ教授によるマンクーゾ報告ということに関する記述があったんですね。お三方は、それについて御存じかどうか。もし御存じでしたら、その中にあるのは、被曝は微量だったとしても長期的に受けてしまったら非常に危ないし、二十年、二十五年掛かってスローデスにつながるんだという、ちょっと怖いレポートだったわけですけれども、何か御意見がありましたら、是非述べていただければと思います。
 あと三つ目の質問。これ、山下先生のみなんですが、たしか山下先生は従来から百ミリシーベルトまでは大丈夫なんではないかという話をされていて、それに対して国が二十ミリシーベルトという基準を出してしまったことによって、ちょっと厳しい立場に置かれてしまったというふうに聞いておりますが、この場で何か説明や反論したいことがありましたら、是非お願いできればと思います。
 以上です。
○委員長(柳澤光美君) 最初に、柳田参考人からお願いします。
○参考人(柳田邦男君) 日本の社会においては、これは行政から一般企業に至るまで情報の扱い方というものについて非常に重視することが欠けていたんですね。アメリカで取材していますと、大きな組織には必ずコミュニケーションズスペシャリストというのがありまして、それからハーバード大学なんかでもコミュニケーションズスペシャリストというのは、例えば医療分野とかあるいは安全分野とか、そういうコースがあるんですね。私が取材しますと、日本で取材するよりはるかに密度濃くいろんな専門家の話を聞けるんです。というのは、その組織のスペシャリストが横に付いていて、もう横でどんどんどんどん専門用語をスペリングを書いたり、論理構造を書いてくれたりして、ぱっぱっぱっぱと渡してくれるんですね。これは見事なもんです。
 その背景にある問題は、やっぱりコミュニケーションということを非常に重要視していて、コミュニケーションは何かというと、やはり必要なときに手際よく素早く提供すること、それから正確であること、それから分かりやすいこと、それから日常からそういう情報を受け取った一般の方々がそれを理解する力を持つような啓発活動が綿密に行われていること。これは、リスクに関することに特に強調したいんですけれど、なるべくリスクは伏せようとするのが日本の社会です。しかし、それでは本当の事実関係や情報を理解することができないので、日常から、先ほど言いましたように、万々一こういうことがあるかもしれないけれど、そういうときはこういうふうな対応をするとかこういう避難体制になるとか、そういうことが啓発されていないといけないし、放射線の被害についても、微量の場合はどうなのかということについて一般の方々が日常から丁寧に説明を受け理解をしているというふうなことが非常に重要なわけで、それら四点ですね、迅速であること、正確であること、分かりやすいこと、日常からの啓発が重要であると、それには背景にコミュニケーションズスペシャリストが必要であるということ。こういう体制を取らない限り、御質問のようなことにこたえる制度なり社会の文化というのは育たないんではないかと、こう思うわけです。
○松田公太君 二つ目の質問、御存じなかったですか。
○参考人(柳田邦男君) ええ。二つ目の質問については、私は答えるだけの材料を持っていませんので、遠慮させていただきます。
○松田公太君 分かりました。ありがとうございます。
○参考人(岡芳明君) 柳田先生おっしゃったことと全く同感でございます。やはりジャーナリズムの専門家でそれぞれの分野のことも理解される方、こういうのを是非政府もあるいは企業も用意していただく。原子力でも是非やるべきだというような話は前からしているんですけど、それはジャーナリズムの専門家で原子力のことをよく御存じの方、実は難しい。両方二つのことをちゃんと理解するというのはすごく大変なんですけど、やっぱりスペシャリストをちゃんと養成しないと駄目だ、米国はもう前からやっておりますので。
 それから、二番目のことは存じません。
 三番目のことは、私は百ミリシーベルトでやっておいて後で下げれば良かったんではと思います。
○参考人(山下俊一君) 最初の食品の不買とか風評被害、これを解決するためにどうすればいいかという御質問に答える前に、全てこういう食品の流通制限をしたという根拠は、命を守る、健康を守るという意味でこの措置がとられたというふうに考えています。すなわち、慢性にそれを食べ続ける、汚染されたものによって起こる病気を防ごうということですから、これは当然、ある意味で健康を守るために風評被害という大きな代償を払ったというふうにも考えられると思います。その意味では、今回の原子力損害賠償においては、この風評被害と精神的影響についてはしっかりと補填していくということを私は望みたいというふうに思います。
 それから、ハンフォードについて、私、その方の論文かどうか分かりませんが、低線量被曝はやはり体に害があるという論文は出ていますし、一部の科学者はそれを支持しています。当然このことについては議論があってしかるべきで、いろんな立場で議論がされていますが、広島、長崎があくまでも基本のデータであります。これで、百ミリシーベルト以下では発がんリスクは証明できませんし、逆に言うと動物実験ではたくさんあります。低線量を微量にやると長生きをするとか、障害が少ない、あるいは防御反応が誘導される。ですから、そういう意味では、人ではこういう実験はできませんので、逆に言うとチェルノブイリが一つの教科書になります。福島でも今後健康管理をしっかりとしていく必要があるということになります。
 最後の百ミリシーベルトに対する御意見ですが、これは我々が当初リスクコミュニケーションした段階では、全く国の指針はありませんでした。ですから、当初こういう混乱の時期ではできるだけ広い範囲で私は安全域を取って話をしていました。当然四月の学校の基準が出た後は二十ミリシーベルト、私は厳しいかなと思いましたが、現在はずっとこのレベルでお話をしています。
 ただし、大切な点は、これが国から一方的に与えられたデータで国民に選択の余地がない、議論の余地がないというのが問題で、計画的避難地域も含めまして、学校も含めて、このレベルは決してすぐ危険だというレベルではありません。これは、このレベルを超さないようにしましょうという基準ですので、当然今後下がっていきますが、これを超えたから危険だとか、五十ミリシーベルト、七十ミリシーベルト、発がんのリスクがあるというわけではないということを私はずっと語り続けています。
○松田公太君 どうもありがとうございました。
○荒井広幸君 荒井でございます。
 岡先生にお尋ねいたします。今日はお話、ありがとうございました。お話、ちょっと私中座したものですから、重複したらお許しいただきたいんですが、私どもは原発というものは、一つ、まずは安全性、二つは、国民そして立地住民との信頼関係と、これを政策としてはずっと基本に置いてまいりました。しかし、結果的にはこうした事態に立ち至っているわけです。そういう意味では、総合的構造というんでしょうか、柳田先生のお言葉をお借りして恐縮なんですが、想定外の二重構造というような意味でいうと、様々な総合的、構造的なものが住民の皆さん、あるいは日本人に今芽生えているんだと思うんですね。例えば、先ほどのような安全ですよ、そして国民の信頼があってこそ成り立つんですよと。こういうことを言ってきたけれども、こういうことになってしまった。これはなかなか技術的には取り返しが付かないことなんじゃないかなというふうに思うんです。この辺は、先生はどのようにお考えになりますか。
○参考人(岡芳明君) 御質問は、非常に国民に影響を与えているので、技術者としてどう思うかと、そういう御質問でございますね。
 全く申し訳ないというか残念といいますか、そういうことなんですけれども、ちょっと想定外ということなんですけれど、その言葉が表していることはいろいろあって、やはり日本のこういう推進構造の中、あるいは日本のこの全体の構造の中で、経済性の問題と安全の問題ということでよく議論されますけれども、ある意味で広い意味のそういう問題といいますか、そういう構造の問題、これは原子力だけ特有、あるいはちょっと顕著なのかもしれませんが、そういう問題だったんです。ただ、こういう問題をちゃんと扱っている国はございますので、透明で独立といいますか、ちゃんと書いてちゃんと議論する。それから、業界と規制側とは下では話をしないとか。いろんなやり方がございますので、そういうことを通じてやると。
 それから、もうちょっと広い意味の経済性と安全性の問題で皆さんがおっしゃっていることは、狭い意味の経済性と安全の問題は私は実は両立していると思っていまして、米国は経済的に非常に自由化で厳しい中、安全性を向上しているんです。ですから、安全性と経済性というのは狭い意味では矛盾しないんですけれども、皆さん、一般の方がおっしゃっているような意味では、確かにそういう推進構造の中で非常に独立性を確保するのが難しかったということはおっしゃるとおりなので、これはもう是非この機会にちゃんとやらないといけないと思います。
○荒井広幸君 ありがとうございました。
 山下先生にお尋ねします。先ほどの校庭の二十ミリシーベルトのお話もあったかと思いますけれども、被曝現状をきちんと把握すると。そして、継続的長期モニタリング体制を整備すると。それはまだまだ不十分であると。こういう御指摘でして、これは大切なんだということでございます。
 そこで、私どもは、子供さんを中心にですけど、国立がんセンターがシール状になった被曝計というのがあるんでしょうか、線量計、そういったものを携帯をさせて、これは安心のためにもずっと継続して測っていこうということで、私もこれを支持し、総理に第一次補正予算で盛り込んだらどうかと、こういうことを申し上げているんですけれども。先ほど来からそうしたお話があったかと思いますけれども、少なくとも子供たちにそうした線量計、これを常備、常帯させるということについてはいかがお考えになりますか。
○参考人(山下俊一君) これはもう測ってみないと皆さん理解しないレベルまで達しています。特に親御さんたち、子供は知識ありませんから小学校は難しいんですが、中学や高校のグラウンドでは、もう線量計で高校生たちがモニタリング始めています。これは非常にすばらしい理科の教育にもなりますし、物質をきちんと掌握できる。今の御指摘は、よく分からない子供たちにそういうのを携行させる、そして実際の被曝線量をチェックさせると、私はこれはすばらしいアイデアだと思いますし、是非これを持って、今述べている積算の空間線量率からきた理論値と実際の線量を測ってその差を見ることによって随分低いということが分かるので、是非それは推奨したいというふうに思います。
○荒井広幸君 ありがとうございました。
 柳田先生にお尋ねさせていただきます。
 放射能の数値という数字と放射能の被曝の数字という数値と、先ほど来からもお話があったんですが、心で感じる数値というのは私は違って当然なような気がするんです。正しく知って正しく恐れるということもさることながら、やはり、何と言ったらよろしいんでしょうか、普通でしたら存在しないものが降りかかってくるわけですから、これを全く害がない、あるいは、逆に言えば、むしろプラスですよという御意見も幅あるわけですよ。それを聞かれて、学会でさえなかなか方向が定まらないものを個人が判断しろと言っているに等しい状況も実はあるんだろうと思うんです。そういう中で混乱を増している、これは私はやむを得ないことだろうというふうに思うんです。
 そこで、私たちの生活の成り立ちや社会の成り立ちというものが豊かさを求めてくる中で、やはり電力というものにひとつ行き着くところもあり、そこに原発というものを私たちも推進してきたわけです。しかし、ここで確かにもう一回ゼロから考えてみようというそういう天の啓示があったような気もいたします。こういう意味で、先生の二重の構造、想定外の二重のことが起きていることはこれは間違いありません。幾ら三十キロ圏は大丈夫だと言っても、子供さんを東京に出したり、あるいは九州の実家にまで出したり、これは実際にあることなんです。こういったことを見ますと、今回のこの事態、まだ収束しておらないということも含めて非常に、何といいますか、人間社会あるいは我々の歩もうとするそういった道に対して非常に考えさせられるなという私は気をしているわけです。
 先生として、こうした原子力というものの抱える原発というものの必要性、こういったものも含めながら、今後原発とどう付き合っていったらいいか、この辺について御見解をいただければと思います。
○参考人(柳田邦男君) 御参考までに、医療分野におけるインフォームド・コンセントなり一般的な説明でありますけれど、よく引用される調査データに、お医者さんは分かってもらえたと思っている方が九割、患者さんの方のアンケート取ると分からなかったという人が九割いたと、このずれというのは現実なわけですね。その人の生活状況や病気の重さや、あるいは幼い子を抱えていたりとか様々な問題あるわけです。
 今回の放射能の影響についても、私の身の回りでも、もう直ちに奥さんと幼い子を京都にやって一か月東京を離れさせていたとか、あるいは、中にはグアム島に一か月奥さんが行っちゃったとか、そういうのがたくさんおられます。それを笑ってはいけないと思うんですね。何でそこまでとか。極端な話、放射能離婚という言葉まで今生まれていますけれど、奥さんは乳飲み子を抱えて、どこか旦那さんに避難させてくれと言うけど、旦那さんはもうそんなこと言ったら仕事ができない、何言っているんだというんで別居どころか離婚まで行っちゃったというような、こういううわさ話もあるんですけれど、でもこれも笑ってはいけないんだろうと思います。そこに放射能の難しさというのがあり、これをどういうふうに国民がこれから理性的にどう受け止めていくか、これ大変な啓発活動が必要だと思うんですね。なかなかこの原発とどう向き合うかという枠組みが広過ぎて答えが出ないぐらい大変。
 ただ、その問題があるということ、そしてそれを皆さんが一生懸命議論することが今問われているし、専門の方々が本当に原発周辺の方々の避難地に行って何時間もそばにいてそういう方々の心理や家族の状況やそういったものに耳を傾けていると、何か考え方のどこかが変わるかもしれません。ただ理念的、理論的に考えてこうあるべきだというんでは、そのうまく説明できたと思う九割のお医者さんと同じになってしまいかねない。
 そういうことを今回の大規模な災害、そして避難の問題というのは突き付けているんではないかと。今日のような高度な技術社会、非常に理解の難しい技術社会の中で普遍的な問題はそこに問われているように思います。
○荒井広幸君 どうもありがとうございました。
○委員長(柳澤光美君) 以上で各会派の質疑が一巡いたしましたので、これより、時間が少し足りませんが、時間どおり午後三時まで自由質疑を行います。
 質疑を希望される方は、挙手の上、委員長の指名を受けてから御発言願います。
 それでは、質疑のある方は順次御発言願います。
○末松信介君 時間がありましたんで、実は準備はいたしておりませんでしたが、先生方のお話を聞きまして大変勉強になりました。ほかにも先生方、質問される方もおられるかもしれませんので、柳田邦男先生に直接ちょっとお話をお伺いしたいと思うんです。
 四月の二十二日に先生のこれ共同通信のインタビューで地元の神戸新聞に出ていたものなんですけれども、お話があったように、想定外、免罪符ではないということに書かれております。私も前回この場所で質問したときに、想定外という言葉が存在したから、福島第一原発の事故があった周辺の瓦れきの処理、いわゆる放射能に汚染された瓦れきの処理が、これを行えないんですよね。というのは、廃棄物処理と清掃に関する法律第二条には、放射能汚染物を除くとなっているんですよ。だから、誰も触れないんですよ。どこに持っていっていいのかも決まらないと。だから、収集作業に運搬、業者も存在しないわけなんですよ、許可業者もないから。だから、全く想定外だったんですよ。
 私は、先生がよくおっしゃる航空機事故は、これは事故があったときというのは残念ながら乗っておられる方は亡くなってしまう。場合によっては航空会社は潰れるかもしれないと。でも、原発事故は、国が潰れてしまうという点では、やはりお話があったように想定外というのは、これはある面でそこで安全性を高めていく、思考停止になってしまうので、これは想定外というのはつくっちゃいかぬという、国が潰れますから。そんなことを痛感しました。想定外という言葉がなければ、ちゃんとその放射能汚染物の廃棄物処理に関する法律というのはできていたはずなんですけれども。
 それで、お尋ねをしたいんですけれども、今後やはり、単純な話でありますけれども、この原子力発電所というのは、上から降ってくるものもあります、隕石が仮に飛んでくるとかいろんなことがあるかもしれません、壊れるものであるという、放射能は漏れていくものであるということを前提にやはり法整備なり、あるいはその体制整備というのをやらなきゃならぬということ、こういうことになるのかどうかということを一点お伺いしたいと思います。
 それと、もう一つだけ。原発は、電力事業者の中で原発のみは国有化をすべきではないかという、一つの企業が事故を起こして自衛隊からアメリカ軍まで出動してくるというようなことは考えられないような事故ですよね。そういった一企業の起こすこの影響、事故を起こす影響等考えた場合に、私は、今の実態を考えれば国有化をすべきじゃないかという、この議論を展開すべきじゃないかと思うんですけれども、柳田先生の御見解を伺いたいんです。
 以上です。
○参考人(柳田邦男君) 第一点でございますけれど、非常に印象に深いのは、最初に水素爆発がありましたときに、テレビの中継で東電の会見も政府の会見も何て言ったかというと、大きな音がして、地響きのようなものがして、そして煙が出たということだけだったんですね。これは、ちょっとした専門的知識があり、過去の事例を知れば大変なことだということぐらいすぐ分からなきゃいけない。
 チェルノブイリの事例を見て、形態は別であっても、原子炉の建屋が壊れるということは当然汚染された構造物が粉々になって飛び散る。そして、後で公表された、当時は四チャンネルだけが中継で映像を映していましたけれど、煙が上っている、あれが水蒸気であったかどうか、いろいろ分析しないと分かりませんけれど、いずれにしても煙が出ているのが映っている。これを見て大変だと、放射性物質がばらまかれたに違いないし、壊れた破片はみんな放射能を帯びている。これ、広島の原爆の後の瓦れきも同じでしたけれど、そういうことを想定できないことが問題だと思うんですね。
 よく想像力不足と言いますけど、想像力というのは単に空想することではなくて、過去の事例から専門的に見たらこれはこうだというのが分かる。例えば、阪神・淡路大震災のときに、夜明けとともにテレビ中継したときに煙が十本ぐらい立ち上っていました。あれを見て大変な災害が起こったと理解した人は極めて少なかったし、当時政府に誰もいませんでした。午前九時からの閣議でどんな会話が行われたかというと、どうも五十人ぐらい死者が出ているようだという会話だけでした。もうあの十本も立ち上がっている地震の広域火災の恐ろしさというのを専門家は分かるんです、すぐに。そういう想像力と現実を知っている人の判断が政府の言わば専門的な顧問として、言わば補佐官として総理の横に絶えずいなきゃいけないと私はもう二十年来言ってきているんですけれど、いまだにそういう専門補佐官がいません、残念でございますけど。
 ですから、ああいう事態に対してそれが想像できるということは、当然、安全体制に関する法規の整備なりマニュアルの整備なりの中に、建屋が壊れたら何が起こるかについて、あるいは水蒸気なり煙が出た場合にそれが当然放射性物質を含んでいるということについて前提の上で対策を立てるようなことが必要ではなかろうかと。事故論の立場からいうとすぐにそう思うわけでございますけど、なぜか原子力工学の専門家がそういうところについて積極的に発言してこなかったということが私にはまだ理解できておりません。
 それから、第二点目でございますけれど、国有化という問題については、これはいろいろ得失がありますので、これは十分議論しないといけなくて、私自身は結論を出しておりません。国有化するとまたそれなりの問題もたくさんございますので。銀行なんかで一時国有化してまた民営に戻したとかいろんな例がありますけれど、それとはまた異質ではないかと思います。ただ、安全性確立という点では相当厳しくこれからいろんな角度から原因究明をした上で立てていかなければいけないとは思っております。
 以上でございます。
○広野ただし君 民主党の広野ただしです。
 本当に貴重な御意見、三先生からいただきまして、本当にありがとうございます。
 そういう中で柳田先生にお話を聞かせていただきたいんですが、私は、先ほど組織文化の欠陥といいますか、そういう点の御指摘もありました。日本軍の失敗の本質というようなこともあります。そしてまた、失敗学を発足された畑村先生ともよくお話もすることもあるものですから。そういう中で、私はもうこの原子力発電、チェルノブイリも、そしてまたスリーマイルも、日本ではそういうことは起こらないんだ、いろんな形で対処をしてまいりましたからね、というような、言わば世界の中で安全基準は一番だというような一つの絶対安全神話みたいなものをどうも作ってきちゃったんじゃないのかなと、こう思うんです。
 日本の場合、謙虚であれば、いろんな形で、自然に対する恐れとか様々な点があれば、本当にすばらしいものをつくっていくんですけれども、何か一旦傲慢になりますと先ほどおっしゃった思考停止みたいのが起こっちゃって、そういう事態が起こるときのいろんな対処の仕方というのはいかにもまずくなってしまっているというふうに思ったりしているんですが、その点、また御示唆いただければと思います。
○参考人(柳田邦男君) おっしゃるように、安全だということが一義的に絶対安全のように受け止められるような政府なり企業のアナウンスというのが余りにも多過ぎたし、関連の機関誌等においてそういうことが絶えず繰り返されてきたわけですね。先ほど申し上げましたように、リスク要因がある場合に、その部分についてもきちんと知らせて、こういう事態のときはどうするかというような問題を全部情報を共有していく、一般の方々が、そういう文化にならなきゃいけないと思うんですね。
 先ほど、事故調査の中で、組織事故という視点からの構造的解明が必要だと申し上げたのは、単なる経営責任を追及するとかそういうことではなくて、組織が抱えている安全に対する判断の背景にあった意識あるいは文化、そういったものについても解明しなきゃいかぬということを含んでおりまして、これはICAOのマニュアルなんかでは、調査官が質問し明らかにすべき項目というのがだあっとこの組織調査について羅列してあります。非常に明快にその辺りがあぶり出されるようになっています。ですから、この事故調査というのはある意味では文化、文明の問題にまで踏み込むような役割を果たすわけです。
 日本が安全に対する一つの妄信してしまうような傾向が一方であり、そしてそれが壊れると逆に全否定的になるというような、こういう白か黒かで揺れ動くようなこの文化の在り方というのを変えていくためには、今申し上げたような、絶えず人間がつくったものにはリスク要因が絡んでいて、そしてそれが破られることもあるということを前提にして様々な情報を共有していく文化、そして万一の場合に理性的に対応するための情報の在り方、そういったことが確立されることが新しい安全社会をつくる上でとても大事ではないかと、私はこう思っております。
○松村祥史君 自由民主党の松村でございます。
 最後の質問になるかと思いますが、簡潔に御質問させていただきたいと思います。
 時間もありませんので、岡参考人に御質問させていただきたいと思います。
 その前に、三人の参考人の皆さん方、本当に貴重な御意見聞かせていただきましてありがとうございました。
 私は以前経営者をやっておりましたときに、リスク管理というのが一番大事だと思ってやっておりました。そのときに、リスク管理に絶対はないと、しかし絶対であるべきために努力をすべきだと、こうやってやってきておった一人でもございますけれども。
 今回このような事故が起きて、福島の原発を除きますと残り我が国には四十四基の原発がございます。この安全確認をいま一度やらねばならないと思っておりますが、やる上でどのような点をいま一度確認すべきか。先ほど、藤原委員の御質問の中で、今回の事故をどう思われますかと岡参考人に質問されまして、そのお答えの中で、設計を超えるような想定外の被害であったと。であれば、設計の問題についてもありましょうし、今後どのような安全確認をした上で、原子力推進の賛否は別としましても、国民の皆さん方に安心、安全をお知らせをし、今後の原子力の問題、そして我が国のエネルギー政策、このことを論じていかねばならないと思っておりますが、どんなスキームで、どの点を注意しながらこの安全確認をやるべきか、御所見があればお伺いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
○参考人(岡芳明君) 今稼働中の原子炉ということですので、実は二十三ページの上から二つのポツのところに書かせていただきましたんですが、やはり重点項目があると思います。全部を網羅的にやる必要は必ずしもなくてということで、やはり大津波対策、大地震対策、それから全交流電源喪失対策、それからポンプがやられましたので、最終放熱先というんですけど、最終放熱先の喪失対策、それに加えて過酷事故の対応、こういう事故が起こったときの対応の、結局さっきバルブが開かなかったお話をいたしましたけど、ああいうのは反省事項ですので、そういうことのないようにということで、そういうことの項目について既存の原子炉についてちゃんと早急にレビューをするべきです。
 それで、もうそれは新しい組織をつくっていったら間に合いませんので、原子力安全・保安院がございますし、安全委員会もございますので、できるだけ早くやって結論を出して、しかも海外から問われると思うんです、サミットとかもございますので。それで、やはりそこでちゃんとしたことを言わないと日本の信用にもかかわりますので、できるだけ早急にそういうこと、今の重点項目についてきちんと対応するべきだと思います。早急に、六か月、年内ぐらいにやるべきだと思います。
○松村祥史君 ありがとうございました。
○委員長(柳澤光美君) 予定の時間が参りましたので、参考人に対する質疑はこの程度といたします。
 参考人の方々には、長時間にわたり有益な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表して御礼を申し上げます。(拍手)
 速記を止めてください。
   〔速記中止〕
○委員長(柳澤光美君) それでは、速記を起こしてください。
    ─────────────
○委員長(柳澤光美君) 産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。海江田経済産業大臣。
○国務大臣(海江田万里君) 産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。
 現在、新興国市場の急速な拡大により、市場競争の舞台は先進国から新興国を含めた世界市場全体に移行しています。これに伴い、競争条件や需要構造が世界的に大きく変化し、企業が様々な形での事業の統合、選択と集中、連携、事業転換を加速しています。このような国際経済の構造的な変化に我が国経済が対応するためには、事業者の迅速かつ機動的な組織再編を促進していくことが必要であり、そのための制度面、資金面での支援措置を講ずる必要があります。また、我が国経済を支えるベンチャー・地域中小企業等の経営の効率化等を促進するため、ベンチャー等の成長企業による新事業展開等への支援措置、地域中小企業の事業の引継ぎによる経営資源の有効活用への支援措置を講ずる必要があります。これにより、我が国産業の国際競争力の強化を目指すとともに、ベンチャー・地域中小企業等の活性化を図るため、本法案を提出した次第であります。
 これらの措置は、昨年六月に閣議決定した新成長戦略や十一月に発表した日本国内投資促進プログラムを早期に具体化していくためのものであります。
 次に、本法律案の要旨を御説明申し上げます。
 第一に、公正取引委員会との連携を強化します。主務大臣は産業再編に係る計画の認定をしようとする場合、適正な競争の確保の観点から、公正取引委員会への協議を行うこととし、戦略的な組織再編に関し、産業政策と競争政策との連携の強化に努めます。
 第二に、組織再編手続の簡素化、多様化のための会社法の特例を措置します。事業者が迅速な組織再編を図ることを後押しすべく、自社株式を対価とする株式公開買い付けの利用促進と完全子会社化手続の円滑化を図ります。
 第三に、事業者の再編に係る長期の資金調達を支援します。事業者が国際競争力の強化を図るために合併や事業承継等による再編を行うに当たり、株式会社日本政策金融公庫から国の指定する金融機関を通じて必要な資金を供給する制度を創設します。
 第四に、ベンチャー等の成長企業による新商品の生産体制の構築を支援します。新商品の生産設備を導入しようとする事業者が行う借入れに対し、債務保証の措置を講じることにより、当該事業者の資金調達を円滑化します。
 第五に、地域中小企業の事業の引継ぎによる経営資源の有効活用を支援します。事業引継ぎを希望する企業間の仲介に対する支援体制の整備を行うとともに、事業の引継ぎに際しての資金調達に対する支援措置及び許認可の承継に係る手続の簡素化を行います。
 以上が本法律案の提案理由及びその要旨であります。
 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようよろしくお願い申し上げます。
○委員長(柳澤光美君) この際、本案の衆議院における修正部分について、修正案提出者衆議院議員橘慶一郎君から説明を聴取いたします。橘慶一郎君。
○衆議院議員(橘慶一郎君) ただいま議題となりました産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法の一部を改正する法律案の衆議院における修正部分につきまして、修正案提出者を代表いたしまして、その趣旨及び内容を御説明申し上げます。
 本修正は、衆議院経済産業委員会における議論を踏まえ、自由民主党・無所属の会の提案により行われたものです。
 修正の趣旨は、戦略的な組織再編に関し、主務大臣と公正取引委員会の連携の強化をより確実にすることにより、産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法の認定手続について、より迅速かつ的確なものにするというものであり、その内容は以下のとおりです。
 第一に、主務大臣は、公正取引委員会との協議に際しては、事業再構築等関連措置が申請を行う事業者の営む事業の属する事業分野における競争に及ぼす影響に関する事項その他の必要な事項について意見を述べるものと明記し、協議における主務大臣からの意見の内容を明確にいたします。
 第二に、主務大臣及び公正取引委員会は、協議に当たっては、我が国産業の国際競争力の強化を図ることの必要性が増大している状況に鑑み、所要の手続の迅速かつ的確な実施を図るため、相互に緊密に連絡するものとしております。
 以上であります。
 何とぞ、委員各位の御賛同を賜りますようお願いを申し上げます。
○委員長(柳澤光美君) 以上で趣旨説明及び衆議院における修正部分の説明の聴取は終わりました。
 本案に対する質疑は後日に譲ることとします。
    ─────────────
○委員長(柳澤光美君) 参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法の一部を改正する法律案の審査のため、来る十二日午後一時に参考人の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(柳澤光美君) 御異議ないと認めます。
 なお、その人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(柳澤光美君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後三時九分散会