第180回国会 社会保障と税の一体改革に関する特別委員会公聴会 第1号
平成二十四年八月六日(月曜日)
   午前十時開会
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   委員の異動
 八月三日
    辞任         補欠選任
     礒崎 陽輔君     石井 浩郎君
     福島みずほ君     吉田 忠智君
     亀井亜紀子君     谷岡 郁子君
 八月六日
    辞任         補欠選任
     大河原雅子君     岡崎トミ子君
     徳永 エリ君     大島九州男君
     石井 浩郎君     赤石 清美君
     小野 次郎君     中西 健治君
     田村 智子君     紙  智子君
     谷岡 郁子君     亀井亜紀子君
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  出席者は左のとおり。
    委員長         高橋 千秋君
    理 事
                大久保 勉君
                櫻井  充君
                吉川 沙織君
                石井 準一君
                衛藤 晟一君
                中村 博彦君
                荒木 清寛君
                中村 哲治君
    委 員
                相原久美子君
                梅村  聡君
                大久保潔重君
                大島九州男君
                岡崎トミ子君
                金子 洋一君
                川上 義博君
                鈴木  寛君
                西村まさみ君
                林 久美子君
                蓮   舫君
                赤石 清美君
                石井 浩郎君
                上野 通子君
                片山虎之助君
                高階恵美子君
                塚田 一郎君
                中川 雅治君
                中西 祐介君
                水落 敏栄君
                宮沢 洋一君
                山崎  力君
                山谷えり子君
                若林 健太君
                竹谷とし子君
                渡辺 孝男君
                姫井由美子君
                桜内 文城君
                中西 健治君
                紙  智子君
                田村 智子君
                吉田 忠智君
                亀井亜紀子君
                谷岡 郁子君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        五十嵐吉郎君
       常任委員会専門
       員        塩見 政幸君
       常任委員会専門
       員        大嶋 健一君
       常任委員会専門
       員        松田 茂敬君
   公述人
       日本労働組合総
       連合会副事務局
       長        菅家  功君
       株式会社保育シ
       ステム研究所代
       表        吉田 正幸君
       株式会社日本総
       合研究所調査部
       主任研究員    池本 美香君
       跡見学園女子大
       学マネジメント
       学部准教授    鳫  咲子君
       東京成徳大学子
       ども学部学部長  永井 聖二君
       日本経済団体連
       合会税制委員会
       企画部会長    中村 豊明君
       駒澤大学准教授  飯田 泰之君
       中央大学経済学
       部教授      長谷川聰哲君
       スリーネーショ
       ンズリサーチ株
       式会社代表取締
       役        植草 一秀君
       東京大学名誉教
       授        醍醐  聰君
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  本日の会議に付した案件
○公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強
 化等のための国民年金法等の一部を改正する法
 律案(内閣提出、衆議院送付)
○被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年
 金保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出
 、衆議院送付)
○社会保障制度改革推進法案(衆議院提出)
○子ども・子育て支援法案(内閣提出、衆議院送
 付)
○就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的
 な提供の推進に関する法律の一部を改正する法
 律案(衆議院提出)
○子ども・子育て支援法及び総合こども園法の施
 行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内
 閣提出、衆議院送付)
○社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本
 的な改革を行うための消費税法等の一部を改正
 する等の法律案(内閣提出、衆議院送付)
○社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本
 的な改革を行うための地方税法及び地方交付税
 法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院
 送付)
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○委員長(高橋千秋君) ただいまから社会保障と税の一体改革に関する特別委員会公聴会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 本日までに、礒崎陽輔君、福島みずほ君、亀井亜紀子君、徳永エリ君、大河原雅子君及び小野次郎君が委員を辞任され、その補欠として石井浩郎君、吉田忠智君、谷岡郁子君、大島九州男君、岡崎トミ子君及び中西健治君が選任されました。
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○委員長(高橋千秋君) 公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律案、被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律案、社会保障制度改革推進法案、子ども・子育て支援法案、就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律の一部を改正する法律案、子ども・子育て支援法及び総合こども園法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案、社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法等の一部を改正する等の法律案及び社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための地方税法及び地方交付税法の一部を改正する法律案、以上八案を一括して議題といたします。
 本日午前は、社会保障制度改革推進法案、子ども・子育て支援法案、就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律の一部を改正する法律案及び子ども・子育て支援法及び総合こども園法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案につきまして、五名の公述人の方々から御意見を伺います。
 御出席いただいております公述人は、日本労働組合総連合会副事務局長菅家功君、株式会社保育システム研究所代表吉田正幸君、株式会社日本総合研究所調査部主任研究員池本美香君、跡見学園女子大学マネジメント学部准教授鳫咲子君及び東京成徳大学子ども学部学部長永井聖二君でございます。
 この際、公述人の方々に一言御挨拶を申し上げます。
 皆様には、御多忙中のところ御出席をいただき、誠にありがとうございます。
 皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の審査の参考にいたしたいと存じております。
 次に、会議の進め方について申し上げます。
 まず、公述人の方々からお一人十二分以内で順次御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えをいただきたいと存じます。
 なお、御発言の際は、その都度委員長の指名を受けてからお願いを申し上げます。
 それでは、まず菅家公述人にお願いを申し上げます。菅家公述人。
○公述人(菅家功君) 連合で副事務局長を務めております菅家です。この度は貴重な発言の機会を与えていただきまして、感謝申し上げたいというふうに思います。
 連合は、働くことで人と人がつながり、誰もが安心して社会に参加できる、働くことを軸とする安心社会を目指し、日々運動を行っております。その働くことを軸とする安心社会を実現するためには、これまで高齢期に偏重しがちであった社会保障制度を全世代支援型にシフトし、若者や働く世代への社会保障を充実させる必要があると日ごろから訴えてまいりました。
 今回政府が進める改革は、連合が目指す全世代支援型の社会保障と方向性は一致しており、その一里塚として確実に実現する必要があるというふうに考えております。本日は、働く仲間を代表いたしまして、一体改革の中で示されております子ども・子育てに関する制度改革に関して意見を述べさせていただきます。
 まずは、なぜ今子ども・子育ての制度改革が必要なのかということについて述べたいというふうに思います。
 これは誰もが共有していると確信をしておりますが、子供は社会の希望であり、日本の未来をつくる力です。日本の社会、未来を明るいものとするためにも、子供が豊かに成長できる社会、誰もが安心して子供を産み、育てることのできる社会をつくる必要があります。
 しかしながら、今、子供の貧困が社会問題化するなど、子供たちの置かれている環境はむしろ悪化しております。子供の貧困率は、OECD平均の一二・四%に対し、日本は一五・七%と高く、とりわけ母子家庭など一人親世帯の貧困率は先進国で最悪の五〇・八%と極めて深刻な状況であります。また、児童虐待の件数も増加しておりまして、昨年度の児童相談所への相談件数は五万六千件を突破し、十年前に比べまして四倍以上に増加しております。親の経済状況や置かれた環境によって、子供たちに健康や教育といった育ちの面で格差が生じるのは不条理そのものであります。
 また、働くことを希望する女性が増える中で、子育て支援に関するニーズも増加、そして多様化しております。しかしながら、妊娠、出産から保育所や幼児教育、学童保育など、切れ目のない支援の仕組みが質、量共に圧倒的に不足しています。結果として、結婚や出産そして育児、またいわゆる小学校一年の壁と言われるように、子供の小学校入学を機に仕事と子育ての両立を断念する女性が少なくありません。こうした問題が、世界に類を見ないスピードで少子化と労働力人口の減少が進行している日本社会でいまだに解決を見ていないことは極めて異常であります。連合の組合員からも、安心して働き続けるために保育の質、量、そしてメニューの拡大を望む声が大変多く上がっております。
 こうした問題意識に立って、連合は、子ども・子育てを社会全体で支えるという理念を基礎に、切れ目のないサービスの提供、財源の統合、子ども・子育てにかかわる政策決定プロセスへのステークホルダーの参加などの会議体の設置など、子ども・子育て支援政策の抜本的な改革を強く主張してまいりました。
 私も、今年一月まで子ども・子育て新システムの基本制度を検討しておりました内閣府の検討会に参加し、今申し上げた問題意識や連合の考え方を積極的に訴えてまいりました。この内閣府の検討会には労使や地方自治体、保育所関係者、幼稚園関係者、学識者など子ども・子育ての関係者が一堂に会し、約二年間掛けて検討を行って子ども・子育て新システムに関する基本制度を取りまとめました。
 政府が三月三十日に提出いたしました子ども・子育て新システム関連三法案は、この検討会がまとめた基本制度に基づくものであり、言わば全ての関係当事者による集大成とも言える法案であります。三党合意という形で修正されたことにつきましては、率直に言って残念な気持ちがございます。とはいえ、修正された法案は、当初の政府案で目指した政策理念や制度の考え方が基本的に維持されており、その内容は連合の考え方にも合致し、それを具体化するものとして確実に成立させる必要があります。
 残された時間につきましては、三法案の中で特に重要であると考えるポイントと課題についてお話をさせていただきたいというふうに思います。
 まず一点目といたしまして、今回の改革で重要である点は、基礎自治体である市町村が実施主体となり、地域のニーズに基づく子ども・子育て支援事業計画の策定を全ての市町村に義務付けること、そして、この計画に基づいて教育、保育、放課後児童クラブといったサービス提供基盤を整備し、全ての子供の育ちを重層的に保障するということであります。
 現在の保育計画は待機児童が五十人以上の市町村にしか義務付けられておりませんけれども、今回の改革によって、計画の策定を全市町村に義務付けるという点は大変画期的だというふうに考えております。ただ、この計画の策定に、単に行政が行うということではなくて、労使や子育て当事者など多様なステークホルダーが参画を保障した上で実施すべきであります。地域の子ども・子育ての仕組みを地域の子供そして子育て世帯本位のものとするためには、やはり当事者自身がこれらの過程に参画することが重要であります。
 これを保障する仕組みが子ども・子育て会議でありますけれども、自治体が設置する子ども・子育て会議につきましては、政府が提出した法案では置くことができる規定でありましたけれども、今回の三党合意によりまして努力義務規定に強化されました。地域の関係者の参画を保障し、地域に根差した子ども・子育て支援の仕組みをつくっていくことは地域主権の考え方からも重要であって、全ての自治体で子ども・子育て会議をしっかりと設置していただきたいというふうに考えております。
 二点目といたしまして、保育の量的拡大のため認可制度の改善を行うことであります。
 大都市を中心に待機児童問題が解消しないことにつきましては、財源不足、そして現行の認可の仕組みなどがその要因として指摘されてきました。そのため、当初の政府案では、財源をしっかり確保した上で市町村による指定制度によって保育サービスの量、質を飛躍的に増大させるということが提起されたところであります。この点、三党合意では、この指定制度の導入を見送り、その代わりに現行の認可制度を改善する、すなわち都道府県と大都市は、欠格事由に該当する場合、サービスが供給過剰の場合を除いて、原則認可を行うことになりました。こうした認可制度の改善は、政府が指定制度で目指した趣旨を踏まえたものであるというふうに理解をしております。自治体にしっかりと財源を保障した上で、質が確保された施設については確実に認可し、保育の量的拡大が達成できるようにしていく必要があるというふうに思います。
 また、認可制度の改善により保育所を増やしたとしても、そこで働く保育士がいなければ実際には機能いたしません。資格を有しているにもかかわらず保育士として就労していない、いわゆる潜在保育士は全国で六十万人に達すると言われております。潜在保育士が増加している理由は、処遇の低さ、仕事のきつさにあるとの調査結果もあります。三党合意によって法案の附則に職員の処遇改善の検討規定が盛り込まれたことにつきましては、連合として高く評価をしております。この附則に基づきまして、保育士、幼稚園教諭、放課後児童クラブ職員の処遇改善がしっかり行われるよう要望したいというふうに思います。
 三点目であります。
 地域型保育給付を創設し、今日まで国の財政支援がない、若しくはあったとしても極めて少額であった小規模保育などについて財源保障を行う、このことについても画期的な改革だというふうに考えております。
 連合は、全国で四十七の都道府県に地方組織がありますけれども、人口減少地域の地方連合会の声として大きいのは、子供が減少して保育所や幼稚園が閉園に追い込まれ、子供や働く親が行き場を失って困っているということであります。こうした窮状に対応するのが今回の地域型保育給付であるというふうに思います。
 もちろん、子供の育ちという観点からは一定数の子供が集まる認定こども園や保育所の対応が基本であるとは思いますけれども、人口減少地域で大規模な施設の維持を行っていくことは極めて困難であります。人口減少地域であっても地域の保育機能をしっかりと保障していくため、地域型保育給付を創設することは重要であるというふうに考えております。
 また、幼保一体化についても触れたいというふうに思います。
 現在、学校教育法に位置付けられる小学校就学前の幼児期の教育は保育所では保障されておりません。しかし、子供の発達や学びの観点から、幼児期の教育とその後の教育が円滑に接続することは、全ての子供にとって重要なことであります。このことを保障する仕組みが当初想定をされていた総合こども園の創設であったわけでありますけれども、三党合意に基づく政府案の修正によって、総合こども園の創設に代わり、新たな幼保連携型認定こども園を創設することになりました。この新たな幼保連携型認定こども園につきましては、単一の施設として学校及び児童福祉施設としての法的位置付けを持つことになり、こうした点は総合こども園の創設で目指した理念あるいは考え方を基本的に踏襲したものというふうに理解をしております。
 一方で、政府案では、保育所については一定期間後全て総合こども園へ移行することが義務付けられておりましたけれども、新たな幼保連携型認定こども園につきましては、移行義務規定は設けず、政策的に誘導するということになりました。こうしたいわゆる手挙げ方式で本当に幼保連携型認定こども園が増えるのかどうか不明であります。限られた財源の中でどのように政策を誘導していくのか、国民に分かりやすい形で示していくことが必要であるというふうに思います。
 これまで保育の量的拡大や小規模保育サービスの充実、幼保一体化などの重要性について述べてまいりましたけれども、これらを実現するためには財源を確保することが不可欠の条件であります。三党合意では、税制改革によって七千億円を子ども・子育てに振り向けた上で、更に一兆円超の財源確保を行うことが確認をされておりますので、与野党の責任で残りの三千億円の恒久財源についてもしっかりと確保し、改革を断行していただくことを強く要望したいというふうに思います。
 最後になりますけれども、子ども・子育ての在り方について関係団体や有識者が一堂に会して議論を行って方向性を取りまとめ、また与野党でも子ども・子育て支援の改革の必要性を共有し、そうした法案が参議院の審議段階にまで至ったということは画期的なことだというふうに思います。そうした意味においても、法案を是非とも成立させる必要があると思っております。
 一方で、社会の希望であり、未来の力である子ども・子育て支援の強化は、今回の改革では完全に達成できるとは思いません。特に今回取りまとめられた制度改革では、未就学児に関する幼児教育、保育についての給付や事業を中心とするものであって、今後は、年齢や障害の有無などにかかわりなく、全ての子供と子育て世帯を包摂するトータルな制度の構築に向けて更に検討を深める必要があるというふうに考えております。そうした点についても、社会保障制度改革推進法案で示されている社会保障制度改革国民会議において幅広く議論し、国民合意の下で更なる改革を進める必要があるというふうに思っております。
 このことを最後に訴えさせていただきまして、私の発言を終わらせていただきます。
 御清聴ありがとうございました。
○委員長(高橋千秋君) ありがとうございました。
 続きまして、吉田公述人にお願いいたします。吉田公述人。
○公述人(吉田正幸君) おはようございます。
 保育システム研究所という民間で幼児教育、保育のいろいろ研究をしております。また、「遊育」、遊び育つという保育専門誌の発行もさせていただいております。
 恐らく今日ここに立ったのは、認定こども園制度をつくるときに、厚労、文科両省で総合施設の合同検討会議が開かれ、少しモデル事業をやってみようということで総合施設モデル事業評価委員会を開き、それから、今回もいろいろ話題に上りました小渕報告と言われる内閣府の認定こども園制度の在り方に関する検討会、いずれの委員も全部務めさせていただいたものですから、恐らく認定こども園の制度設計に一通りかかわったということで、今回の幼保一体化についても少し意見を言えと、こういうことだろうと思います。また、社会保障審議会少子化対策特別部会の委員も務めておりましたので、保育制度改革そのものにも多少かかわっていたと、こういうことだろうと思います。
 今日は、大きく二つお話を申し上げたいと思います。一つは、今回の三法案に関連した全体的なお話、そして恐らく、もう一つは、今回私に期待をされている認定こども園制度がどうやったらうまくいくのかという、この二点だろうというふうに思っております。
 まず、全体のお話としては、特にこの良識の府と言われる参議院においては是非とも、子ども・子育ての理念、哲学を是非この場で御確認をいただきたいというふうに思っています。私の方としては、三つレジュメに書いてございます。一つは、全ての子供の最善の利益ということで、子供の家庭が経済的に豊かであろうと貧しかろうと、大家族であろうと核家族であろうと、あるいは親が働いていようと働いていまいと、体に障害があろうとなかろうと、それは子供の責任ではございませんので、基本的に全ての子供の最善の利益ということを大きな柱にしていただきたい。
 それから、少子高齢・人口減少社会の中でこれから日本は大変厳しい状況に入るわけですが、資源のない日本が、明治維新以降、今日ここまで世界有数の発展をしたというのは、もうひとえに人、人材という質、量共に優れた資源があったからだろうと思っています。これが非常に危機的な状況にあるわけです。そこを、未来を見通していく中で、今生まれ育ってくる、あるいは今いる子供たちがいかに健やかにたくましく育っていくのかということが未来の日本を支える一番大きな要点だろうと思いますので、しかも、最近いろんな研究によって、乳幼児期の子供にいろいろ充実した施策を講じるということが結局将来にわたって非常に有効である、財政投資としても、むしろ早い段階から公費を投入することの方が後から投入するよりも極めて有効であると、そういうことが様々データが出ておりますので、未来への投資という観点で子供たちにしっかりとした公費投入をし、豊かな子供を育むという柱も是非立てていただきたい。
 それからもう一つは、これはもうある意味で答えはもう全部出ていると私は思っておりまして、ただ大事なことは、その部分部分では恐らく正解に近づかない、一つ一つの施策が必ずしも十分でなかったとしても、いろんな施策を総合化をして関連付けることで恐らく初めて成果につながるんだろう、いわゆる部分最適ではなく全体最適を是非目指していただきたいと、こう考えているわけでございます。
 そういったものをトータルして、文字どおり国家戦略としての子ども・子育て支援というものを是非ともお考えいただきたい。それを少し、不十分ですが資料にしたのが、今日御用意いただいたレジュメ、資料のちょうど四枚目のところでございます。真ん中に国家戦略としての子ども・子育て支援政策というのがあって、幼児教育政策であったり少子化社会政策であったり雇用政策であったり、あるいは地域活性化の政策であったり子ども家族政策であったり、様々な政策の側面をいかに総合化をしていくかというところが一番肝要だろうと思っております。これは後ほどまた御覧いただければと思います。
 それから、ついでながら、その前のページ、三ページ目のグラフを御覧いただきたいと思います。
 これはよく目にされているものでございます。戦後から今日に至るまで毎年生まれた子供の数、出生数の推移を表したものでございまして、戦後間もなく御承知のとおり第一次ベビーブームということで、昭和二十二年から二十四年の三年間に八百万人を超える子供たちが生まれています。その子供たちが約二十五年たってちょうど親世代になって、八百万人もいる方々が親になったわけですから、当然またたくさん子供が生まれる。これが第二次ベビーブームで、いわゆる昭和四十六年から四十九年の四年間で八百万人もやはり生まれている。
 普通そう考えると、その後、女性の高学歴化あるいは晩婚化、晩産化、社会進出等々で三十数年たったころにこの第二次ベビーブームの方々が親世代になって、八百万人いるわけですから、当然それなりに子供が増えてよかったはずでございます。恐らく、平成でいえば、平成十四、五年から平成二十年ぐらいの間に第三の波が本来来ておかしくなかったのに、波どころか平成十七年に戦後最低の出生数という谷が来てしまった。これは極めて異常な事態だろうと思います。普通は増えてよかったのに、平成のこの十年、二十年はむしろ子供が増える時代であったのに全く増えなかった。逆に今、第二次ベビーブームの方々は約四十歳でございまして、そうすると、この方々の右に生まれた子供がこれから続々と親世代になっていく。親世代の人口がもう激減をしていくわけですから、普通考えれば、もうどう考えても厳しい少子化が来るだろうということでございます。
 そのときにもう一つ注目しなければいけないのは、下の方に書いてございますが、一九九五年、平成七年にいわゆるエンゼルプラン、あるいは緊急保育対策等五か年事業を講じたわけでございます。恐らく戦後最も本格的な少子化対策であったはずですが、これが結果を生んでいないわけです。ちょうど幻の第三次ベビーブームに間に合うタイミングで総合的な少子化対策を講じたにもかかわらず、普通でも山があっていいのに山が来なかった。結果からいえば、残念ながらエンゼルプランは失敗したと言わざるを得ないのではないかと思っています。
 いろんな要因はあると思います。その中の一つの大きな要因は、仕事と子育ての両立支援をテーマとしながら、まあこれは間違っていないと思いますが、仕事、つまりワーク・ライフ・バランスと言われるような見直しはほとんどせずに保育で全て受け止めようとした。一年間育児休業を取って親が子供と密着して愛着形成をして育てればいいんですが、育児休業が取れないということでゼロ歳の早い段階からの保育が要る。あるいは、子育て中の若い親に残業をさせない、早く家に帰してあげるということをすればよかったんですが、それができないので保育所の延長保育を大幅に広げましょう、あるいは休日保育もやりましょう、子供が病気になっても会社は休めないので病児保育、病後児保育やりましょうということで、いわゆる働き方、仕事のひずみを全て保育に結果的に持っていってしまったのではないか。いわゆる部分最適になってしまって、全体最適ではなかったのではないか。
 しかし、これはもう済んだことですから、今回のこの三法案と言われるものが恐らくラストチャンスだと思っています。もうこれで成果を生まなければ、この国の未来はかなり厳しい状況になると思いますので、是非とも、そういう大変大きな山場に差しかかっている、そんな悠長な時間はない、本当の意味の有効な我が国の全ての子ども・子育て家庭のための施策を是非とも前に進めていただきたいと、こう思うわけでございます。
 その中で、幾つかもうはしょりますが、認定こども園の方のお話を申し上げたいと思います。
 認定こども園が当初は今ごろの時期にはもう二千か所ぐらいになっているだろうと、こういうことが言われておったわけですが、九百か所余り、半分にも達しない。簡単でございます。認定こども園になるメリットが少なくてデメリットが多いということで、当然認定こども園は増えないということだったと思います。
 じゃ、なぜメリットが少なくてデメリットが多いのか。それはレジュメの二枚目に書いてございますが、メリットは子供や子育て家庭、地域社会に対して明らかに総合的な機能を持った施設としていろいろな有効な面がございます。
 例えば、お母さんが一生懸命働いて保育所に行っていた。でも、仕事先を首になった。普通であれば、保育園をやめて幼稚園に子供は転園しなければいけない、仲のいい友達と別れなければいけない。しかし、認定こども園であれば、保育時間は変わったとしても引き続き今までの同じ友達のいる園に通える、あるいはその逆もしかりです。専業主婦で幼稚園に子供を通わせていた。しかし、旦那さんがリストラされた。じゃ、家計を支えるために働こう。そうすると、幼稚園をやめて保育園に行かなきゃいけない。しかし、認定こども園であれば、そのまま行き続けることができる。
 つまり、親が就労状況がどう変わろうとも、子供には安定的な幼児教育や保育を提供できるという辺りが一番大きなメリットなんだろうと思います。実際、利用者の評価も高いということでございます。
 しかし、増えない。それは、一番大きいのはやはり財政的な理由だろうと思います。認定申請が大変だという話はございますが、それは一回限りの話で、実は認定こども園、四つ類型がございますが、やはり認可施設に着目をしていますので、幼保それぞれ両方の認可がないと、一方の認可外的な機能に対しては極めて乏しい財政しかない、それではどうしても経営できないということでございます。また、その幼保連携型にしても、認可の幼稚園と認可の保育所の組合せでやっているわけですが、なぜか運用上、保育所に対する公費投入が減る仕組みになっておりまして、細かいことは申し上げませんが、それぞれ単独で幼稚園、単独で保育園をやっていた方が認定こども園になるよりも財政的にはメリットがある。特に、保育所の方が認定こども園になって幼稚園と一緒になると運営費が減るという極めて不思議な仕組みになってございまして、そうすると、認定こども園になれば運営費が減るわけですから、なかなかうまくいかないということだろうと思います。あるいは、職員の福利厚生等の処遇についても、やはり文科省、厚労省、二重行政の弊害がかなり出ているわけでございますから、その辺のネックがやっぱりかなりあったんだろうというふうに思います。具体的には、レジュメに書いていることを御覧いただければというふうに思います。
 ただ、大事なことは、それでもメリットが少なくデメリットが多いにもかかわらず九百を超える認定こども園が既にあって、そのほとんどがかなり前向きに一生懸命やっている。それは、デメリットを上回るやはり総合施設としての、子供や子育て家庭や地域社会の子育て支援に関する、非常に意味があるから少々のマイナスを受けてもやるんだろうというふうに思っています。
 今、全国認定こども園協会というのがございまして、私も設立からかかわっていろいろお手伝いをしてございますが、ここがいろんな今データを集めております。これから好事例も作る予定にしてございまして、実際に認定こども園で苦労しながら、それでもお金のマイナス以上に子供たちや親のためのメリットがあるというところを一生懸命取り組んでいる、そういう状況をいま一度よく御確認をいただければ大変有り難いというふうに思っております。
 さて、そこで、今後の期待と課題でございますが、取りあえずは施設型給付ということで財源が一元化をされた。恐らく、認定こども園の四つの類型の、程度の差はあれ何らかの財政措置がなされるだろうと思います。また、財源が一元化をすれば会計処理もかなり一元化をされるということで、幾つかの課題はかなり今回でクリアされるだろうというふうに思っています。
 ただ、一番心配なのは、この国会において法律が成立することは大変重要なんですが、実は現場の運用でいうと、政省令を始めいろんな基準とか通知とか指針とか、なかなか国会の議論にのらない部分で、制度の運用で、法律ではそこまで踏み込んでいないけれども運用上うまくいかないと。今の認定こども園制度が現実にそうでございまして、あんな形になるとは私は法律を見たときには思っていませんでしたけれども、その今後の、法律を作った後の運用、具体的な制度設計が極めて重要である。是非、参議院においてもそこまでしっかりといい意味でモニターをしていただいて、しっかりとフォローアップしていただきたいというふうに思っております。
 いずれにしても、この参議院の場において、理念、哲学のある御議論を与野党を問わずいい意味の子供党というイメージでやっていただいて、是非もうスピード感を持って前に進めていただきたい、これが私のお願いでございます。
 以上でございます。
○委員長(高橋千秋君) ありがとうございました。
 次に、池本公述人にお願いいたします。池本公述人。
○公述人(池本美香君) 日本総合研究所の池本と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 私の方からは、今日は一枚物の今日の話の論点のメモとレポートを二点お配りさせていただいております。一つは、基本制度が出た段階のものと、あとは、最近出しました七月二十日付けの待機児童問題に対する新システムの評価というレポートでして、今日は、この二点の内容につきまして、レジュメの方に沿いまして意見を述べたいと思います。
 まず、子ども・子育て新システム関連法案につきまして、今日はまず、評価できる点、それから残された課題という大きく二つのまとまりで話をさせていただきたいと思います。
 まず、法案の評価できる点でございますが、最近まとめましたレポートでも詳しく書かせていただきましたけれども、待機児童問題という非常に重要な問題に対しては一定の効果、かなり積極的な効果が認められるだろうということでございます。
 ここで、私事ですが、私自身、この二月に待機児童になりまして、四月に仕事に復帰できるかという状況に陥りました。そして、二月に子供にスキーウエアを着せて自転車の前に乗せて、そしてもう保育所探しでずっと冬を過ごしたというような状況で、そのときに感じました疑問のことがかなりこの制度によって解決されるということが分かりましたので、そこが評価できる点ということです。
 なぜかといいますと、認可外保育施設というのに対してこれまで全く給付がなされていなかったわけですけれども、そこに対してもしっかり教育・保育給付を付けていくということが打ち出されましたし、また原則認可の方針が出されたということは評価できると思います。
 私が復帰するために見付かったのは二つとも認可外保育施設でしたが、補助金がなかったために、一つは月に十五万円という金額を提示されました。また、もう一つについては、若干保育料が安いので大丈夫かと思っていましたけれども、そこの質がどうなのかを調べてみましたところ、原則、認可外保育施設にしては年に一度自治体なりがチェックをするという仕組みになっているわけですけれども、東京都に確認しましたところ、数が多過ぎてそこまで手が回っていないということで、実際にチェックが行われていないので、保護者としてはその質を確認する手だてがないということもございました。
 最終的に私は、三月末になりまして第一希望の認可園に空きが出て無事復帰できたというところでありますけれども、待機児童になった経験を踏まえますと、まず認可外保育施設に対してもしっかりとした給付が行われるということは非常に重要でありますし、また、きちんと認可をしてそこに給付がなされる、またそこの質が自治体なりできちんとチェックされるということは非常に重要なことだと痛感をしたところですので、それが新システムによって解決できることは非常に喜ばしいことであるというふうに考えております。
 また、もう一点、レポートの方でまとめましたのは、公立幼稚園が活用されていないというところでございまして、事例として、私、千代田区と品川区についてヒアリングをさせていただきましたけれども、千代田区の方は、公立幼稚園のスペースを活用して、そこに認可外保育施設をつくる形で待機児童をゼロにしたということを伺いました。
 まさに、幼保の制度が厚生労働省と文部科学省に分かれているところで、なかなかそこは活用できていなかったと思うんですけれども、公立幼稚園の空き定員が、今待機児童五百人以上いる都道府県の空き定員が十万人ぐらいあるということでして、そこがきちんとこの認可外保育施設への教育・保育給付を活用するなどしてきちんと保育施設に提供されたならば、国基準の待機児童二万五千人は十分解消できる可能性が大きいのではないかというふうに思っています。
 そのようなことで、これまで認可がされなかったというそういうところもありますし、小規模のもの、またそういう認可外のものにきちんとお金が回っていなかったというところの問題がクリアされることで、待機児童問題に関しては一定の効果が見られるのではないかというふうに考えております。
 ただし、残された課題として、そのほかの部分ではまだまだ子ども・子育て新システムという名前からイメージされるような内容にはなっていないのではないかというふうに感じております。待機児童問題という、何か問題が発生してそれに対して対症療法的に対応するという部分については、かなり今回踏み込んだことができたように感じておりますけれども、もっとグローバルな視点で世界が今どういうふうに動いているのかというようなことですとか、先ほど吉田さんからもお話ありましたけれども、いろんな制度の組合せ、総合的にどういった組合せがベストなのかということですとか、またどこに投資をすれば最も効果が高いのかといった、そういった戦略的な検討というのが今回十分なされていないというふうに感じております。
 それについて、五点ほど問題意識を挙げております。
 第一は、教育政策との関係について議論が十分でないのではないかということで、この点につきましてはお配りしております資料二の方のレポートで詳しく論じておりますけれども、諸外国の動向を見ますと、諸外国でももちろん女性の社会進出ということ、また、少子化による労働力活用の必要性ということから保育制度をいろいろと手直しをしているわけなんですけれども、その際に、日本のように厚生労働省中心の就労支援という角度からだけではなく、教育制度体系の一つとして位置付けて、制度自体も教育制度体系に組み込むという国がかなり増えてきているということです。
 今回、ここは社会保障と税の一体改革ということで、社会保障を充実させていくという観点で考えますと、そのときにも、社会保障の充実は何も給付をするだけではなくて、それぞれ個人が自立できるようにする教育を充実させるということも社会保障の中の一つの重要な課題になってきておりまして、さらに、その教育政策を、では良くするためにはどこが今問題かといった場合に、乳幼児期がまだまだやれていないことが多いのではないかということで、乳幼児期への投資を活発化させてきているという状況があります。
 また、幼保一元化という部分につきましても、今回の子ども・子育て新システムの議論の中では、子ども家庭省を設置するなど、そういった形の福祉という形での一元化がイメージされていましたけれども、教育制度として学校教育体系に保育制度を全部組み込むという国が幾つも出てきているということです。またさらに、幼児教育の無償化ということも、各国そういう取組をする国が増えてきております。
 また、学童保育も、日本では厚生労働省所管でございますが、教育制度の方に含めて学校と一元化する国が増えてきているということでして、そういった諸外国の動向も踏まえながら、教育政策との関係を十分に議論する必要があるのではないかと思っております。
 また、今回、教育制度との関係という点では、学校教育への株式会社参入に対する批判が強かったことから、総合こども園法案が認定こども園法の改正という形に落ち着いたような経緯もございますが、この株式会社参入に関しましても、諸外国では学校教育自体に株式会社参入が進んでいる動きというのもございまして、その辺りの動向などもきちんとリサーチをして判断をした上で、教育の方に保育制度を組み込むということを検討していただきたいというふうに考えています。
 また、今回、教育ということでは三歳以上の学校教育という形で議論されることが多かったかと思いますけれども、三歳未満の部分の教育ということを諸外国で議論する動きも出てきている中で、その部分も、学校教育を三歳から区切るのがいいことなのかどうなのかということについても議論が必要かと感じております。
 二点目ですけれども、財源の在り方について。今回、事業主の負担はどこに持ってくるのかということもかなり議論されたということは評価できるんですけれども、先ほど申し上げましたように、保育制度を就労支援ではなく教育制度と仮に位置付けた場合に、そこに事業主が負担をすべきなのかというまた新たな議論も出てくるのではないかと思っております。また、今回、子ども・子育て新システムという、まあ名前はそういう全体的なことを言っていながら、保育制度中心のところに議論が集中して、そこに財源を投入するということに伴いまして、本来、子供の福祉という観点から健全育成の分野などについても積極的な投資が必要なところが、予算が十分に回らないということは非常に心配をしているところでございます。
 それから三点目は、自治体の取組をチェックする仕組みが十分でないというところです。これは、先ほども、市町村の責任を明確化して保育を整備していくという法案ができたことは評価できるんですけれども、果たして自治体が本当に積極的に取り組むかどうかが非常に保護者としては不安なところでして、きちんとそれを自治体が積極的に取り組むようにさせるために、国が例えば待機児童数、あるいは公的施設がきちんと活用されているかですとか、そういったことの情報をきちんと公開をしていく、それによって市民がきちんとそれを把握し、自治体に要望を出せるような形にしていく、そういう形が必要ではないかと思っています。
 それから、今回、供給は、基本的に保育施設の供給を制約しないということではありますけれども、供給過剰の場合は認可しなくてもよいということになっていますが、では、供給過剰とはどういうことなのかということについても慎重な議論が必要だろうと思います。二万五千人という、実際に申し込んで入れない人だけがカバーされればいいという問題ではなく、今の日本の潜在待機児童は八十五万人というような試算もなされていますし、また日本の大学、大学院卒の女性の就業率というのがOECD加盟三十四か国中三十二位という極めて低い水準にあるということで、これからはどんどん女性の力を活用していかなければいけないということをきちんと把握した上で、供給の制約をなくしていくということが重要ではないかと思っております。
 それから、保育の質に関する議論も重要でして、先ほど少し認可外保育施設の質が非常に問題だということについては申し上げたんですけれども、今OECDでは保育への投資を積極化させているけれども、その保育への投資効果がどれだけ大きくなるかというのはその保育の質に大きく左右されるんだという議論から、諸外国、保育の質に関する議論が活発化しているわけでして、日本もこれだけ限られた財源をこれから投資していくに当たっては、それが最大の効果を上げるように、安全、安心という最低限のところだけではなく、教育の効果も十分に考えた上でその成果がきちんと発揮されるように、保育の質に関する、そもそも保育の質、良い質というのはどういうものかという議論も必要ですし、またそれをきちんと第三者機関が評価をし、それを一般の保護者などにも情報公開していくということが必要ではないかと思っております。
 最後の五点目ですけれども、これも先ほど吉田さんの方からお話ありましたけれども、ワーク・ライフ・バランスの議論が今回十分できていないというところです。育児休業制度と育児休業給付と保育制度の関係には極めて密接な関係があると思いますが、そこの整理もきちんとしなければいけないと思っております。
 また、特に日本の場合は、保育所の枠を確保するために、育児休業が取れるのにもかかわらずゼロ歳児から預けるという人が多数いるわけでして、そういう低年齢児の保育の問題、あるいは長時間保育の子供への影響なども検討する必要があるだろうと思います。
 つい最近調べましたところ、日本だけが保育時間に関する統計が整備されていない。諸外国は大体一日六時間で週五日で三十時間ぐらいという、そういった子供にとって負担になっているかというような、子供の権利というか、子供の観点からの議論や情報が整備されていない、そこがまだまだ不十分であると思っております。
 ワーク・ライフ・バランスというと女性だけというふうにイメージされがちですが、男性そして子供のワーク・ライフ・バランスの議論も必要ではないかと思っております。
 以上、少々長くなりまして失礼いたしました。
○委員長(高橋千秋君) ありがとうございました。
 続きまして、鳫公述人にお願いいたします。鳫公述人。
○公述人(鳫咲子君) 跡見学園女子大学の鳫と申します。
 私は、子ども・子育て支援における子供の貧困対策の重要性につきまして、お手元の資料に沿って意見を申し上げます。
 資料一を御覧いただきたいんですけれども、現在、生活保護及び生活保護に準じる就学援助という制度の支援を受ける子供の数が大変増加しています。全国百五十五万人、小中学生に占める割合は一五%を超えております。
 制度の詳しい内容は、めくっていただきまして資料二のとおりで、生活保護の子供を要保護、就学援助の子供を準要保護と呼ぶ場合があります。
 なぜこのように援助を受ける子供が増加しているのかという点につきましては、資料三のとおり、リストラなど就業環境の変化と一人親家庭の増加が二大要因となっております。
 資料四を御覧いただきますと、母子家庭では正社員の母が減りまして、パートなど収入が少ない家庭が大変増えております。
 資料五のとおり、母子家庭の平均所得は二百六十三万円で、子供のいる世帯平均六百九十七万円の四割以下となっております。
 子ども手当創設の際に、給食費、保育料など、子供にかかわる費用の未納が問題とされました。おめくりいただきまして、資料六のとおり、全体の約一%ですけれども、全国九万九千件の給食費未納の問題があります。その主な原因として学校が認識しているのは、半数以上が保護者の責任感や規範意識の問題、約四割が保護者の経済的な問題とされております。保育料の滞納増加につきましても、六五%が保護者の責任感や規範意識の問題、経済的な問題は二割にすぎないと自治体は認識しています。しかし、私は、責任感や規範意識の問題とされているもののかなりの部分に、児童虐待の一種、ネグレクト、養育放棄の疑いがあると考えております。
 資料七は、児童虐待事例における複合的困難を調べたものです。虐待事例の七二%に経済問題があり、八〇%に子供又は親の障害、DVの疑い、五〇%に社会的孤立の状況があります。また、これらが複合している事例が少なくありません。給食費や保育料の未納がネグレクトのサインになっているという可能性を考慮すべきであると考えます。
 一方、経済的な問題があり、生活保護、就学援助の受給対象資格を有しながら申請を行っていない保護者がいます。その理由につきましては、資料八を御覧いただきたいんですけれども、一人親世帯が生活保護を利用しているかしていないか、利用していない場合の理由を収入別に聞いた、そういう調査でございます。年収百万円未満の一人親世帯でも生活保護を利用したことがある世帯は一四%にすぎません。制度を知らないという回答が百万円未満では七・八%もあります。利用の有無はプライバシーの問題との理由で無回答であるという世帯はどの収入階層でも一五%ぐらいずつおります。しかし、生活保護を利用していないがその理由は無回答という結果は収入の少ない世帯に多く、その実態は制度を知らないことに近いと考えられます。すなわち、本来、制度の利用が想定される収入の少ない世帯ほど制度を知らない可能性が高いと言えると思います。
 実際、資料九を御覧いただきますと、就学援助制度についても、多くの市町村では保護者に説明会を実施しておりません。財政上の理由から、市町村などが制度の普及、活用に消極的であるのではないかとうかがわれます。
 おめくりいただきまして、資料十でございますが、御審議中の法案、社会保障制度改革推進法案は、附則第二条に生活保護制度の見直しとして、「生活困窮者対策及び生活保護制度の見直しに総合的に取り組み、保護を受けている世帯に属する子どもが成人になった後に再び保護を受けることを余儀なくされることを防止するための支援の拡充を図る」と、貧困の連鎖の防止について規定しています。しかし、それ以前に、生活保護を利用すべき人が制度を知らないこと、また知っていても制度の利用にちゅうちょする、そういう実態を改善する必要があると思います。
 また、資料十一、十二のとおり、年収三百万円未満あるいは一人親世帯にとっては、家計に余裕がないために日常生活費に子供のための現金給付が使われてしまう可能性があります。
 資料十三のとおり、国連子どもの権利委員会は対日審査の中で、子ども手当の有効性を評価するデータがないこと、不利な状況にある子供を優先すべきこと、子供の間の不平等や格差を是正する行動計画の欠如、子供の貧困を根絶するための資源配分の必要性を日本に対して勧告しております。
 おめくりいただきまして、資料十四でございますけれども、子供の貧困に対応する生活保護と就学援助制度は、その運用の多くが地方自治体に任されております。その結果、資料十四のとおり、生活保護に比較的熱心で子供の要保護率が高い地域と、生活保護には余り熱心ではなく、それを就学援助の準要保護率で補っている地域とがあります。
 資料十五のとおり、一人親の割合は地域によって六%から一二%の二倍の開きがあります。これを県下の市町村の財政力との関係で見ますと、一人親率が高く、子供への支援が必要な県ほど県下の市町村の財政が苦しいという傾向が分かります。
 また、資料十六は県別の就学援助率と県下の市町村の財政力との関係を見ております。全体としては、県下の市町村の財政が苦しくても、一人親が多いなどニーズがある地域では就学援助率も高いと言えますけれども、資料十五ほどは相関がはっきりしていません。
 この結果、例えば給食費未納と就学援助率の関係を資料十七では示しておりますけれども、未納率が高いにもかかわらず就学援助率が低いという地域が少なくありません。
 おめくりいただきまして、資料十八でございますが、学校給食は保育同様、子供にとって重要な現物給付であると考えております。資料十八のとおり、公立中学校で給食を実施していない県というのがまだあります。
 給食がなければ弁当を持参する必要がありますけれども、資料十九のとおり、朝食を余り食べていない子が弁当もなく、ネグレクトの状態に近いということがうかがわれます。給食の有無で栄養状態を比較すると、ビタミン、カルシウムなどの摂取量に差があるという調査もあります。
 以上をまとめますと、資料二十のとおり、子供のための政策として、国及び地方公共団体は子供の生活、就学状況を調査し、シビルミニマム、すなわち最小限度の生活基準を確保するための支援を行うべきであると考えます。例えば、保育料の滞納状況であるとか就学援助の実施に関する市町村データをホームページで公開する、子供への現物給付として公立中学学校給食の全国完全実施が必要であると考えます。
 また、これらの支援を実効あるものにするためには、ニーズに合った適切な情報提供と、学校、福祉、NPO等関係者間の連携、情報の共有が必要であると考えます。例えば、保護者、子供支援関係者への就学援助制度の周知なども必要だと考えております。最低限、親のネグレクトから子供を守る子ども・子育て支援策の拡充を要望いたします。
 以上でございます。
○委員長(高橋千秋君) ありがとうございました。
 次に、永井公述人にお願いいたします。永井公述人。
○公述人(永井聖二君) 永井でございます。
 私からは、子ども・子育て関連法案につきまして、子供の側の視点及び保育、教育の現場を担っております保育士、幼稚園の教職員の視点、またそれを養成しております私ども養成機関の視点から御意見を申し上げたいと思っております。
 まず初めに、一人一人の子供に対してどんな発達環境を保障しようとすべきかについて明確にすべきであるということを申し述べまして、次いで処遇の問題の重要性について申し上げたいと存じます。
 まず、私が問題として指摘したいと考えておりますのは、方向性の重要性ということであります。それが見えてこないということは残念で、そこに問題があるし、今後の危惧も感じざるを得ないということを申し上げたいというふうに思います。
 ここで私が方向性と申しますのは、要は、我が国の子供一人一人に私たちがどんなケアを保障していくのか、あるいはいかなる成長、発達の場を保障することを目指すのかということであります。
 これにつきましては、幼児期の教育及び保育が生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要なものである、子ども・子育て支援の基本というような形で子ども・子育て支援の基本理念は一応示されているわけですけれども、その具体的な方向性が明らかに見えてはまいりません。
 例えば、乳幼児期の子供と母親、まあ母親、家族の多様性ということを前提とすれば、母親に代わる社会を代表する特定の大人であってもいいというふうに言っていいと思いますけれども、母親の場合も多いと思いますが、大人と子供の密度の高い信頼関係というものが乳幼児期に存在する、確保されるということは、人格形成にとって非常に重要なことであると思います。
 これをもし、もしといいますか、是非大切に考えていきたいと思うわけですけれども、これを大切に考えていくということが基本としてはっきり認識されていれば、そこから保育の現場では何が必要なのか、あるいは、ワーク・ライフ・バランスという話も出ておりますけれども、育児休業でありますとか、その間の給付についてはどう考えるべきであるのかというようなこともおのずから明らかになろうかと思います。しかし、抽象度の高い重要性の指摘はあるわけですけれども、こういった肝心な、子供にとって何が必要なのかということは全体を通してはっきりとは伝わってこないわけであります。
 当面の課題として、都市部における待機児童の解消ということがあるということはもちろん分かりますし、それは重要であると思いますけれども、目指すべき方向性、理念についての検討が必ずしも十分ではない。当面の課題に対応することにとどまっているという印象は否めないと思います。それは今後の検討課題とされる、具体的で重要な問題に対する対応の今後についての危惧にもつながるものであります。
 先ほど諸外国の事情又はそれについて教育政策との関連において検討を要するという御意見もありましたけれども、例えばアメリカの幼児教育を私たちが見ますと、アカデミックスキルの向上ということが前提としてあって、それを目指して多様な方法が模索されているように思えます。
 そのこと自身がいいかどうか、その是非はともかくといたしまして、今回私たちが考えていかなくてはならない、今考えていかなくてはならない、子供たちに何を保障していくべきかという方向性というものがもう少し明らかになる必要があるのではないかと思います。それがあれば構造化された整合的な施策を考えていくということにつながっていくだろうと思います。今までの御意見の中にも、お父さん、お母さんの立場のお話が多かったわけですけれども、これももちろん大事ですけれども、それとともに子供の成長、発達のどの部分をどう保障していくのかということについて大事な問題が存在をするということを申し上げさせていただきたいと思います。
 ただ、一つ付け加えておきますと、ここで具体的な方向性と申しましても、それは斉一的で硬直的なものではなくて、質の高い発達環境の確保を目指しながらも、そこに至る手段は選択的で多様であるということを許容することが必要であるということも私が申し上げたいと思っていることであります。その意味では、認定こども園、幼稚園、保育所への共通の給付と、さらに小規模保育等への給付、地域の子ども・子育て支援の充実を目指すとする制度改革の整備の方向には私も期待をいたしますけれども、それがどのように具体化されるのかについては大きな気掛かりがあるということでございます。
 そこで、もう一つ私が強調しておきたいのは、保育、幼児教育の今後は処遇の問題と切り離しては考えられないということであります。
 これは御承知のこととは思いますけれども、現在の保育、幼児教育の世界は若い教員や保育者の犠牲の上に成り立っていると言っても言い過ぎではありません。例えば、私の手元の資料で、私立の幼稚園の女性の教員の四分の三以上は勤続年数が十年未満であります。半数以上は勤続年数が五年未満であります。保育所でも非正規の雇用の方も非常に多いわけであります。つまり、年功序列型の処遇の中で常にコストが安い労働力に偏重している構成を取ることが現状を支えているわけであります。
 こうした状況の下では、しかしながら、質の高い保育、幼児教育を実現するための職能的成長を支えていくことが極めて難しいと言わざるを得ません。この点についての配慮が今後の保育、幼児教育の質の維持向上のために不可欠であることをここで改めて強調したいというふうに考えております。この点については今後の検討課題というふうにされているわけですけれども、最後にお話ししたいと思いますけれども、その点がどのように担保されるのかということが大きな課題になると思っております。
 そして、このことに関連して、せっかくの機会をいただきましたので、もう一つ付け加えさせていただきたいことがありますけれども、それは今日の大学生の苦しい状況についてであります。アルバイトに追われる状況、本来、単位授与には一定の予習時間、復習の時間が前提となっているわけでありますけれども、これがアルバイトのために思うに任せない、こういう例が非常に多い。さらには、経済的な理由で退学していく学生、それを見送らざるを得ない私どもも誠に残念無念な気持ちを禁じ得ません。就職前にこれだけ大変でありますけれども、就職後も恵まれているとは到底言えない。自分の職能についての成長を図るという時間的な余裕がほとんどないというような実態があるということについては、是非御理解をいただきたいと思います。
 大学生は年齢的には子ども・子育て支援の直接の対象とならないということもあろうかと思いますが、向学心に燃えた若者の支援ということも、子ども・子育て支援の希望をともし、アスピレーションを喚起するという意味で、是非配慮が必要であるということをお願いしたいと思います。
 全体として、附則に、政府は検討を加え、必要があると認められるときは所要の措置を講ずる旨の規定が列挙されているわけでございます、修正後の方でありますけれども。これが現実に今後どう具体的に展開していくのかということによって、今回の一連の改革の現実の機能というものは大きく異なってくるものになるのではないかというふうに考えております。
 附則で今後の検討に委ねられていることは大変重要なことだと思います。ここに危惧もあり期待もあるわけでありますけれども、やはり本来は、ここに列挙されているような検討事項については、今日の時点でもう少し検討がなされるべきであると言わざるを得ません。
 私は、法律の文言として、こういう附則で、政府が今後検討をして必要があると認めるときは所要の措置を講ずるというような規定がどのような意味を持ってくるのかということについては、分からないところもありますけれども、率直に申しまして、ちゃんと検討されて前進していくのか、不安な点が多々ございます。
 先ほど、省令、政令も含めて今後のフォローが必要という御発言もありましたけれども、これらについて必要な改善の施策が担保されるよう更なる配慮をお願いをしたい、それが必要であるということを是非主張をして、発言の終わりとさせていただきたいと思います。
 ありがとうございました。
○委員長(高橋千秋君) ありがとうございました。
 以上で公述人各位の御意見の陳述は終わりました。
 これより公述人に対する質疑を行います。
 なお、質疑の時間が限られておりますので、御答弁は簡潔に行っていただくよう御協力をよろしくお願いします。
 それでは、質疑のある方は順次御発言願います。
○林久美子君 おはようございます。民主党の林久美子でございます。
 公述人の皆様、本当に今日はお忙しい中、そしてまた大変示唆に富んだ御意見をお聞かせをいただきまして、どうもありがとうございます。
 それでは、早速ですけれども、時間も限られておりますので御質問をさせていただきたいと思います。
 まず、池本公述人にお伺いをさせていただきたいと思います。
 今回の三法案について、待機児童の問題等々についても一定解決に向けた道が開かれるのではないかということで、御評価をいただいたような気がいたしております。その一方で、今回のこの三つの法案によって格差の是正というものも一つ進むのではないかなと私は考えておりまして、ちょっとこの点についてお伺いしたいんですが。今日もお話の中で、これまでは国の公的な支援がほぼなされてこなかった一定の基準を満たした保育所について、認可外の保育所についても、これから財政的な支援が行われると。それが量的な拡充につながっていくことも当然ありますでしょうし、一方で、これまでは児童福祉法第二十四条で保育に欠ける要件があったので、どうしても正規社員でフルタイムの方が最優先で、そういった方たちが認可の保育所に入りますと。そうなった後で、例えばパートの方とかはどうしても認可外のところになってしまう。でも、収入が多い方の方が保育の公費の負担も多くて、そうじゃない方は公費の負担が非常にない中で、先ほども十万円を超えるというお話もありましたけれども、そういうところを選ばざるを得ないという状況もあったのかなというふうに思っております。
 そうした意味においては、基準を満たしたものについて公的な支援が行われるということは格差の是正、解消にもつながると考えますが、この点についての御評価をお聞かせいただけますでしょうか。
○公述人(池本美香君) 御質問ありがとうございます。
 そこまできちんとレジュメに盛り込んでおりませんでしたけれども、本当に格差、要するに全ての子供にきちんと保育給付を出すという点では非常に公平な制度になったと思います。私自身も日ごろから、保育制度の方も認可と認可外の格差が余りに大きいということで、認可外は保育料も高く、施設も貧弱、保育士も担保されていないというところで、本当にくじに当たるか当たらないかというような非常に格差が大きいところで、そこを解消するということは一つ大きな前進だと思っております。
 あともう一つ、格差の点でいいますと、育児休業の方も、結局取得して給付を受けているのは、フルタイムで育児休業もあってたくさん休める人に給付が支払われるということで、必ずしも公平な制度になっていないと思いますので、ここも含めて格差の是正ということはしっかり考えていく必要があるかと思います。
 ただ、本当に認可外施設で結局就労を諦めてしまった知人も何人もおりますので、そういった人たちもきちんと働けて、結局、そういう所得の底上げをしていくという意味で非常に保育制度は重要な意味を持っていると思っております。
 ありがとうございました。
○林久美子君 ありがとうございました。
 では、続きまして菅家公述人にお伺いをさせていただきたいと思います。
 連合の皆さんは、働くことを軸とする安心社会を目指していこうということで日ごろ御活動いただいておりまして、その実現に向けては、高齢者中心の社会保障を全世代支援型でしっかりと転換していくことが必要なんだと、同時に、制度をつくることと財政措置が重要であるというようなお考えで取り組んできていただいたかと思います。
 そうした意味では、やはり仕事と家庭を両立する、ワーク・ライフ・バランスと、なかなか口で言うほどやるのは簡単ではないということを日々多くの方が痛感をしていらっしゃるかと思うんですが、今回の三法案によってこのワーク・ライフ・バランスにも一定、プラスの成果が見られるのではないかというふうに考えますけれども、この点について公述人の御意見をお聞かせいただきたいと思います。
○公述人(菅家功君) 委員御指摘のとおり、現在でもM字カーブの問題でありますとか、六割強の女性の労働者が働くことを諦めざるを得ない状況といったものがあるわけでありまして、そういう意味で、社会経済の持続可能性を担保するため、あるいは生産年齢人口の就業率を上げていくことは極めて重要だというふうに考えております。その最大の眼目は女性の社会参加だというふうに考えておりまして、そういう意味で、ワーク・ライフ・バランスというものが重要だというふうにも考えているところでございます。
 今回の改革によりまして、そういった保育サービスなどの量的拡大などを行うことによりまして、女性の参画といったことを通じましてワーク・ライフ・バランス社会の実現にも貢献するというふうに考えているところでございます。
○林久美子君 つまり、今回の三法案によって非常に大きな問題となっている格差の是正が解消されていくであろう、あるいは日本が、この少子高齢化が進み、労働力としても、そして能力を発揮するということからも女性の社会への参画が望ましくなってきている世の中にあって、このワーク・ライフ・バランスにも大きな第一歩を踏み出すであろうということの御意見をお二人からいただけたかと思います。
 続いて、また池本公述人にお伺いをさせていただきたいんですけれども、将来への課題ということをお示しをいただきました。グローバルな視点で見たときに、この教育という部分にどういうふうにコミットしながらきちっと進めていくかという話だったかと思います。
 今回の三党合意の中でも、そしてこれまでの民主党の政策の中でも子ども家庭省と私たちは言ってまいりましたし、今回の三党合意では組織の在り方をしっかり考えようということで盛り込んでいただいたわけでございますけれども、これ、子ども家庭省なのか、どういう名前がいいのかというのは別として、働くということ、あるいは保育と教育というものをどういうふうに、どの辺に軸足を置いてつくっていくかという非常に難しい問題なんだと思います。
 ヨーロッパの方でも、最初はそっちの家族政策側にあったものが教育側に動いてきていたりしますので、池本公述人はどういう形が現段階で、今の日本の現状を踏まえて望ましいと思っていらっしゃるのかというのをお聞かせいただきたいのと、もう一点、幼児教育の無償化のお話がありました。
 これは、非常に私も理想的だとは思っています。しかしながら、先ほどの格差の話ともリンクするんですが、今これだけ待機児童がまだいる中で幼児教育無償化をしてしまうと、その保育所なり幼稚園に入れたところのお子さんは税の恩恵を受けて幼児教育、保育を受けることができる、しかしながら待機になって入れなかったところのお子さんは全くそういった機会を奪われてしまうということもあって、やはり最初に大事なのはこの待機児童の問題なのかなというふうに思っているんですけれども、この二点について御意見をお聞かせいただければと思います。
○公述人(池本美香君) 先ほど、所管の問題、御質問ありまして、確かにヨーロッパの場合は、まずは福祉の方に置いてあったものを教育の方に移してきたという経緯がございますけれども、日本はとにかく時間的な、もう待っている場合ではないということがまず一つで、いかに一番効率の良い制度でやるかといった場合に、教育として子供にいい質の教育を与えるかという観点で議論を整理した方が格差の問題も、今は親が働いているか働いていないかということで子供を分けるような形になっていますけれども、全ての子供に質の良い教育を与えるという観点で整理をした方が、結果として女性も外に出れるということになりますし質も向上するということで、私はニュージーランドとスウェーデンの保育政策について調べてまいりましたけれども、ニュージーランドなども、なぜ教育にしたかというと、保育の質と量を両方上げていかないと、結局高学歴の女性は、要するに家庭教育に熱心な人ほど外に出られないということですので、まず子供にいい教育を与えるんだというメッセージを社会として出していくことが非常に重要だという観点からも教育として一元化した方がすっきりしますし、また、そういう子供中心の政策というメッセージも発信できるのではないかというふうに感じております。
 それから、幼児教育の無償化のことで、確かに今、優先順位としてどこかということでは、確かに就労支援で、女性の就業率の低さというところからいいますと、そこは優先的にはあると思いますけれども、やはり一部の人に手厚くというよりは、もう四歳は無償、要するに小学校の義務教育のような、ああいう無償のいい制度をできるだけ下の年齢まで下ろしてくるというのが目指すべき方向なんではないかなというふうに思っております。
○林久美子君 ありがとうございました。時間軸の関係と目指すべき方向性をしっかりとやっぱり踏まえながら我々も取り組んでいかなくてはいけないというふうに思います。
 今、全ての子供にとっての最善の利益が何かということをきちっと踏まえることによって保育の質の改善、量の拡充につながるんだという御指摘をいただきました。そこで、吉田公述人にお聞かせをいただきたいと思います。
 吉田公述人も、全ての子供にとって何が最善の利益なのかということが大事だとお話しいただきました。確かに政府のワーキングでもずっとそのことを原点にこの二年間弱議論をしてきたわけでございますけれども、そうした中で、第二次ベビーブームのお話もありましたけれども、私も第二次ベビーブーム世代で、子供は一人でございまして、やっぱり私たちの世代がもっと子供を産み育てていかないといけないなと思いながら伺っていたんですけれども。
 これは私自身の経験として、実はまだ子供が小さいときに、私もちょっとフリーで仕事をしていたときに、認可外の保育園にしか入れなくて、しかもある年のまだ本当にちっちゃいときのクリスマスに、仕事がちょっと予定より長引いて迎えに行ったら子供が一人で待っていて、本当にもう何か親としてすごくつらい気持ちになったことがあるんですね。きっと親というのは、子供がまだちっちゃいとき、育っていく過程を本当は自分でそばで見たいし育てていきたいという思いはきっとみんなが持っていると思うんですね。
 そうした意味では、やはり企業の理解ということが欠かせないんじゃないかなというような思いがあるんですけれども、この点についてお聞かせをいただいて、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
○公述人(吉田正幸君) 委員おっしゃるとおりだと思います。
 一つ極端な話を申し上げますが、東京二十三区の認可保育所に入ると、乳児、ゼロ歳児の場合、アバウトに約月五十万円公費が掛かると言われております。極端な話というのは、じゃ、五十万円そのゼロ歳の子供の保育にコストを掛けるのであれば、その親に、お母さんに仕事を一年間休んで十万円毎月差し上げて、そして育児休業を出した企業に十万円差し上げて、それでも三十万円残るということなんです。毎月十万円というのは相当大きい金額ですから、これは極端なお話ですけれども。
 そういう意味で、私は、やっぱりワーク・ライフ・バランスということは極めて重要だろうと思いますし、単に企業だけというよりは、もう社会全体がそういうものに対してもっともっと理解を持たなければいけない。社会全体が支えるというのは、もちろんこの消費税も含め、税金も含めですけれども、同時に、お金だけではなくて、心もみんなが支えなければいけないというふうに私は思っています。
 一番肝要なのは子育ての社会化と、さっき時間がなくて申し上げませんでした。一部誤解があって、子供は社会が引き受けるからお母さん一生懸命働いてねというふうにとらえられている方もありますが、私は決してそうは思っていません。元々、昔の我が国農村社会は、子育ては地域社会化をされていたと思っています。もちろん、親が我が子を産んで、乳児の早い段階の愛着形成、アタッチメントというのはこれもう極めて重要でございますが、そのことをベースとしながらも、隣近所とか親戚とか、おじいちゃん、おばあちゃんとか、あるいは兄弟がたくさんいれば、年の離れた上の長女とか長男が一番下の小さい赤ちゃんの面倒を見るとか……
○委員長(高橋千秋君) おまとめいただけますでしょうか。
○公述人(吉田正幸君) はい。
 そういう社会化がもっと逆に現代化した形で必要だと思っています。
 以上です。
○委員長(高橋千秋君) ありがとうございました。
○山谷えり子君 自由民主党、山谷えり子でございます。
 公述人の皆様、貴重な御意見や示唆に富む御意見、ありがとうございました。
 まず、池本公述人にお伺いしたいんですけれども、低年齢児保育、長時間保育の子供への影響を検討すべきと、保育時間に関する統計が日本にはないと、諸外国にはあるからと。
 実はこれ、私も問題意識をずっと持っておりまして、例えばオランダとかデンマークなんかは夕方四時とか五時までですね、長くても。それから、ゼロ歳児保育、スウェーデンはやっていないとか、諸外国でも国策としてゼロ歳児保育をやっている国というのはないと思います。ところが、今回、三党合意に至る前の政府の資料では、今後五年間で、ゼロ歳、一歳、二歳の保育児を五割増しにしていくという、待機児童解消というよりも、極めてずさんな統計の積算で、ゼロ、一、二歳児を人工的に保育園児増やしていくというようなことがあったんですけれども。
 私は、まず統計を取ること、そして低年齢児保育、特にゼロ歳児保育あるいは長時間保育というのがいいのかどうなのかということを、そもそも論を議論すべきだと思いますけれども、ずっと私も厚生省に言ってきたんです。それから、ゼロ歳児の一か月の保育料、公費も含めて幾らですかというのもずっと厚生労働省は出してこなかったんですよ。やっと十七万円と、これうそなんですね。一番財政基盤の弱いところで十七万円、東京都では、今、吉田公述人がおっしゃられたように、五十万円以上掛けているところもあるという。ゼロ歳児、一か月一人の赤ちゃんに平均で三十万ぐらい、多いところでは五十数万、これが適正でしょうかと。
 質のいい保育というのは、実は家庭教育を長時間、家庭で親が愛着の形成できることではないかというような議論、もう一方であっていいと思うんですが、それが全く今まで起きてこなかった。そうしたことに関して様々な思い、池本さんおありだと思いますけれども、まず統計を取ってほしいというようなことを求めたいというような御意見かと思いますが、その辺、いかがでしょうか。
○公述人(池本美香君) 今回、自民党さんの方でゼロ歳児への親が寄り添う保育という言葉を見て、そこから私もいろいろ調べ始めましたら、OECDの三十四か国全部、その保育時間があるのに、多分、日本と韓国だけだったと思います。
 保育時間をそもそも、そこ問題で、漠然とは皆さん思っているんですけれども、きちんとそこを検証してこなかったことは非常に問題で、そこできちんとデータを踏まえた上で、それがいいのか、また諸外国では、長時間の保育と短時間の保育でどういうふうに子供に影響が及ぶのかですとか、そういったことも研究がされていますし、また、コンセンサスとして、ゼロ歳児の保育というのは一般的に子供にいい影響は持たないんじゃないかというコンセンサスがあるという文献もありますし、また、一歳児以上はいいんだけれども、その場合も、時間の問題ですとか、親の仕事が、非常にストレスで親がいらいらしていたりすることは子供に悪影響を及ぼすということで、どういったバランスであれば子供にもよくて、また女性も働けるかというそのバランスが慎重に検討され、それの上に制度が乗っているということがありましたので。
 日本はまず、本当におっしゃるとおり、データもなければそこの議論も研究も進んでいないというところでして、でも現場の幼稚園の先生なりでは、その辺り、現場の経験なりも踏まえていろいろ御発言されている方もいらっしゃいますし、そういったところの意見もきちんと踏まえ、また、何よりも保護者が、恐らく、今女性が働けていない、育児休業があっても結局就業率が上がっていないのは、育児休業が終わったら、じゃ、もうずっと子供と、残業をしてという働き方ではやはり寂しいんだといって辞めていっている同僚も何人もおりますので、程々の普通の人がバランスよくやりたいという理想と、また子供への影響の検証も踏まえた検討が必要かと思っております。
○山谷えり子君 吉田公述人にお伺いいたします。
 エンゼルプラン、新エンゼルプラン、少しも効果がなかったじゃないかと。エンゼルプランといっても、トータルな政策ではなくて、もう保育所に偏って、病児保育とか延長保育とか、そうした待機児童解消とか、そこだけを重点的にやっていったから効果がなかったのではないかとおっしゃられましたが、私も全くそうだと思います。
 子ども・子育て支援政策の総合化、部分最適から全体最適へと、ここをきちんとみんなのコンセンサスを得ながら議論していく必要があると思うんですね。特に、在宅子育て家庭への支援の強化というのをこの資料の中に書いてくださっておりますけれども、人口問題基本調査で国民にゼロ歳から三歳まで子育てに専念した方がいいかどうか聞いたところ、実は二十代、三十代の八割がその方がいいと、四十代から六十代では九割がその方がいいと言っている。つまり、国民の思いというのはそっちなのに、厚生労働省がやっぱり違うところをやってきたのではないかという思いがするんですけれども、その辺はいかがでしょうか。
○公述人(吉田正幸君) お答え申し上げます。
 私は、ゼロか一かという二者択一ではないと思っていまして、恐らく子供が小さいうちにはやっぱり親として私が子供とかかわってという、それは子供のためだけじゃなく、親が親として成長する時間というのは当然必要だろうと思います。しかし一方で、やっぱりせっかく築いてきたキャリアを閉ざしたくない、これもやっぱり本音だろうと思います。
 つまり、一〇〇%家庭に閉じこもるということでもなく、だからといって、じゃ、八時間も十時間も毎日働くかというとそうでもない。まさに、その辺のバランスの取り方だろうと思いますし、子供にとっても四六時中、じゃ、お母さんとばかり一緒にいたらいいのかというと、恐らく決してそうではない。乳児期の早いうちは、これはもう脳科学でもアタッチメントは大事だということにはなっていますが、それ以降については、親を始め、親以外の多様な大人とかかわるということが極めて子供の成長に重要だと、こういう研究もございますので、今その辺が、家族も核家族化して小さくなった、地域コミュニティーもなくなったということで、子育て家庭だけで考えるのではなくて、その子育て家庭を取り巻く地域社会、コミュニティーの在り方も含めて考えなければ恐らく私は答えは出ないのではないかと。基本的にはおっしゃる方向だとは思いますが、やはりトータルの議論が必要だろうというふうに思います。
 以上です。
○山谷えり子君 菅家公述人にお伺いいたします。
 そこで、トータルな物の見方という意味で両立支援法の実現を連合は求めていらっしゃるわけですが、私も大変に共感することたくさんございます。例えば、育児・介護休業制度の周知徹底と制度利用による不利益取扱いを禁止するよう行政指導を強化するとか、短時間勤務は請求権とする、育児については子が中学校就学の始めに達するまで請求できることとするとか、所定外労働の免除は対象となる子の年齢を三歳までから中学校就学の始めに達するまでに引き上げるとか、育児、介護を行う者が請求したとき休日労働、変形労働を免除する措置を設ける等々、本当にこれは大切なことだと思いますけれども、これ、連合としては、これからどのように運動を展開していこうと思っていらっしゃいますか。
○公述人(菅家功君) なかなか難しい御質問だというふうに思いますけれども、やはり労使の話合いも重要でありますし、それから与野党の皆さんに我々のいろんな意見をお願いをする等々、そういった過程を通じながら理解を深めていっていただきたいなというふうに思っておりますし、あるいは、その地域において様々な過程を通じて訴えていく等々、いろんなチャンネルを通じながら運動を進めていきたいというふうに思っておりますし、それから、今、連合として、働くことを軸とする安心社会というキャンペーンを行っておりまして、それを具体的に実現する方策について一生懸命研究を始めておりまして、そういったものを通じまして世の中に訴えてまいりたいというふうに思っております。
 以上でございます。
○山谷えり子君 永井公述人にお伺いいたします。
 今日の御意見の中では御披露いただけなかったんですけれども、ちょっと文献を読ませていただきまして、これからの子供の育ちには多様な人間関係や体験が必要だと、地域社会の中で様々な年齢の方、高齢者との交流も含めて、そうした場をたくさんつくっていくことが大事ではないかというような御意見をお持ちと思っております。
 それで、私、安倍内閣のとき、教育再生担当の総理補佐官をしておりまして、実は学童保育というのは、児童福祉で小学校三年生までで、親が働いているお子さんをということなんですが、そういう時代ではないんではないかと。親が働いていようがいまいが、それから、小学校三年で区切ってしまうんではなくて、小学校六年生まで学校などで放課後、地域の人が参画して、もう実は私が子供を育てた世田谷区では全ての六十四の小学校でそれが行われております。私はPTAの会長と、それから教育委員としてそれにかかわりながら、大変に良いやり方だというふうに思っております。
 それを全国展開したいと思いまして予算を付け始めていたんですね。ところが、それが政権交代でストップしてしまったんですけれども、私は、学童保育で専従者、もちろん専従者は一人いる必要はあると思います。しかし、学童というのは二時とか三時から夕方六時ぐらいまででいいわけですから、時給千円ちょっとで地域の方が、もうたくさん参加したいという方がいらっしゃるので、それもすばらしい方たちなんですね。
 そういうふうにすれば、非常にコストが安く、そしてその地域社会の教育力を高める、それから、大きな家族、どの子も我が子と思えるビッグファミリーというものをつくることができるという意味でいいのではないかというふうに思っているんですけれども、そのような放課後学童とそれから放課後活動の在り方について何か御意見あればお聞かせください。
○公述人(永井聖二君) 今御発言いただいたことに私も基本的にとても大事なことだというふうに賛成なんですが、学童期を中心として、子供同士の関係、あるいは多様な大人とどうかかわっていくのかということが人格形成上、非常に重要なわけであります。
 これについては、これまで従来の社会の中では自然な地域社会の中でそういう機能が果たされていたわけですけれども、その地域社会の状況が変化してきているわけですので、それを補う場として新たに学童保育のようなものを是非つくっていくということ、これをもっと大事にしていくということは非常に大事なことだというふうに思っております。
 おっしゃるように、地域の教育力をいかにしてここに結集していくのかと。ボランティアでいろいろそういうことについて活躍したいというふうに希望してくださる方も大変多いわけでありまして、こういう一つの地域の教育力の拠点として、就労の状態にかかわりなく、子供たちが集う学童保育、また年齢的にも更にそれを範囲を拡大するというようなものが是非今後拡充されていってほしいというふうに思っております。
○山谷えり子君 貴重な御意見、皆様ありがとうございました。具体的な制度設計に生かしていきたいと思います。
 ありがとうございました。
○渡辺孝男君 公明党の渡辺孝男でございます。
 公述人の皆様には貴重な御意見をお聞かせいただきまして、心から感謝を申し上げたいと思います。
 早速、質問といいますか、御意見をちょうだいをしたいと思うんですけれども、まず最初に池本美香公述人及び菅家功公述人にお伺いをしたいんですが、今回の三党合意で市町村の保育に関する責任がより明確になってきたということに対する評価をお伺いをしたいと思います。
○公述人(池本美香君) 市町村ごとにやはり状況が異なっておりますので、市町村には責任を持たせて実際に整備をしていくという形は非常にいいことだと思うんですけれども、やはり先ほども少し申し上げましたけれども、本当に自治体がやるのかやらないか、それを後押しするのがやはり少し足りないんではないかなと思っています。
 海外ですと、先ほどのように情報を公開して、もうそもそも市長ですとか、市民がウオッチしていますので、そういう保育問題などにきちんとやらない市長は市長になれないとか、そういう圧力が海外では働いていて、どんどん自治体に任せても動くような仕組みになっているんですが、日本は、なかなかそこまで情報もないですし、市民がそれをチェックするというところまで行っていませんので、そこを罰則も特にやらないとかといって罰則も設けられているわけではありませんので、もう一押し何か自治体が積極的に取り組む仕組みを盛り込む必要はあろうかと思っておりますが、基本的に市町村がやっていくということについては非常に評価したいと思っております。
○公述人(菅家功君) お答えいたします。
 政府案では、保護者と施設が公的な契約を結ぶことを基本にいたしまして、市町村が利用支援、あっせん、調整、要請、そして措置を行う仕組みということになっておりました。また、待機児童がいる場合につきましては、現行どおり市町村が窓口を担い利用調整を行うと、そういったことを担っていたわけであります。
 今回、さらに、三党合意後の修正によりまして、待機児童の有無にかかわらず、当面は市町村が窓口を担い利用調整を行うこと、あるいは私立保育所については市町村と利用者が契約すること等の修正が加えられたわけでございます。
 こうした修正につきましては、市町村の責務を強化する観点、そして、全ての子供の利用を保障する観点から適切であるというふうに考えております。
○渡辺孝男君 市町村の責任を明確化するということで、先ほど千代田区と品川区の例を池本美香公述人の方から御紹介があったということでありまして、区の方がしっかり取り組むことによって待機児童の解消に非常に効果があったと、今後、こういう取組をほかの市町村あるいはほかの区に広げていくのにどういう点に注意を、注意というか推進をするための何かポイントというようなものがあれば参考にさせていただきたいと思います。
○公述人(池本美香君) 済みません、言い忘れましたけれども、海外の事例なんですけれども、イギリスなどでは、どういうふうに取り組んで待機児童が解消されたかということをほかの自治体が情報をちゃんと学べるようなそういうネットワークをつくるという取組もありました。ですので、私も千代田区に、たまたま千代田区を発見したんですけれども、それがきちんと情報として、あと一番よく取り組んでいる自治体という形でほかの自治体に情報が流せるような仕組みですね、今はちょっとそこだけですけれども。あと具体的に、例えば公立幼稚園を活用されているかとか指標づくりというのもまた必要だと思いますが、イギリスなどにはチェックリストがあって、この部分についてはやっているかやっていないかというようなこともきちんと市民なりに情報公開されるような仕組みになっていたかと思います。
○渡辺孝男君 待機児童解消には保育園の方がいろいろ努力をするというのはこれ当然だと思うんですけれども、公立の幼稚園に関してもそういう努力をすることによって、そういう三歳児以下の子供さんを受け入れる保育所とかそういう方々にいろんな恩恵をもたらすことができるということでありますけれども、その公立幼稚園による待機児童解消に対する貢献という面で、池本美香公述人にお伺いをしたいと思います、そういう事例も資料の中に入っておりましたので。
○公述人(池本美香君) 具体的に千代田区や品川区は何をしているかという細かなことまでお話ししていませんでしたけれども、千代田区の場合は公立幼稚園の中に認可外保育施設をその空き定員の部分で設置をしたということをやっていましたし、それは公立幼稚園の活用で、それを認定こども園とするという方法もあろうかと思います。それから、あと品川区の方で興味深かったのは、保育園の五歳児が小学校で過ごすという、小学校のスペースを活用して、そしてその五歳児がいない部分を認可保育所の方の定員を増やすことにつながるというようなことで、教育施設をうまく活用するということで一つ解決策があろうかと思います。
 そして、その教育施設を積極的に活用できるかどうかというのは、やはりその自治体が両方の、教育分野と福祉分野を取り持つことをしなくてはいけなくて、そこが、千代田区も品川区もその窓口が一元化されていて、そういう保育所の人が小学校の校庭を使えるようにするというような、そういう融通がいかにできるかということが鍵になってくるかと思います。お答えになっているかどうか。
○渡辺孝男君 待機児童の数ということで、政府の方は二万五千五百五十六人ですか、二〇一一年のデータでそのように公表しているわけでありますけれども、しかしそれでは問題が解決しないと、もっと潜在的な待機児童、八十五万人と言われる、そういう潜在的な待機児童がいるんだと、これをきちんと踏まえた対策ということが大事だということでありますけれども、この潜在的な待機児童をどのように受け入れていくのか、その点に関しまして、池本美香公述人、もし御意見があれば菅家功公述人の方からもお伺いをしたいと思います。
○公述人(池本美香君) 先ほども申し上げましたように、日本の女性の就業率、特に子供を持っている女性の就業率が国際的に見て非常に低いということがありますので、やはりそこの部分は、日本の潜在力というんですか、そこを活用することによってまだまだ日本が成長する可能性を秘めていると思いますので、そこをどう引き出していくかということも考えますと、待機児童になった人だけをというよりは、むしろいい保育所をつくって、こんな保育所に自分の子供を行かせたいと思わせるぐらいの保育所をつくって女性の就業を促進するというところまで個人的にはやる必要があるのではないかと思っています。
 最初に調べたニュージーランドでは、まさにそういったやり方で保育の質を上げて、どんどん、供給の制約をせずにもう一気に、もう右肩上がりですごい勢いで保育所が増えていったわけなんですけれども、それによって、もちろん子供の受ける教育という意味でもプラスでしたし、女性の就業率が一気に上昇したということで、ですから、そういった、仕掛けるというのはあれなんですけれども、積極的にもう、ごく普通に保育所があって、子供にいい教育が受けられて親も働けるという環境をつくっていくことをイメージして議論していただきたいなというふうに思っております。
○公述人(菅家功君) 受入れ側の施設の問題も多々あるというふうに思いますけれども、やはり私は何といっても最大のネックは財源問題だったというふうに思っておりまして、そういう意味では、今回の改革によりまして飛躍的な財源を確保するという、そういった合意が与野党の間で生まれているということについては大変いいことだというふうに考えております。
○渡辺孝男君 先ほど池本美香公述人の方から、諸外国では保育制度を教育制度体系に組み込む動きがあるというお話がございました。やはり、日本も見習うべきではないかと、そのように考えるわけでありますけれども。今、保育士資格と幼稚園教諭の免許の一本化、そういう流れがあるわけでありますけれども、池本美香公述人に、こういう資格を一本化する中で、そういう子供さんの、小さなお子様から教育という観点を入れ込んでいくということについて、何か諸外国でのそういう対応といいますか、その資格の、日本においては資格の一元化でありますけれども、どういう点にポイントを置いてそういう資格の統一化を図っていったらいいのか、もしお考え、御意見がございましたらお聞かせをいただきたいと思います。
○公述人(池本美香君) これも限られた例ではあるんですけれども、スウェーデンでなぜ保育が教育になったかというところで調べたんですけれども、先ほど処遇が低いという話がありましたけれども、要するに、学校教員の組合ですとかあるいは保育士の組合というものを一緒にした方が、組合を大きくした方が発言力が強くなるというような、そういった狙いもあって、むしろ現場の人たちが一緒になろうという動きがあったというようなんです。
 日本は教育と福祉というのは何か仲が悪いようなイメージで語られていますけれども、お互い処遇を上げたいと思っていますし、お互い子供の環境をもっと良くしたいと思っていることでは共通しているわけですので、一緒になって数を増やした方が結局政治的なパワーもあるという、そういった戦略的なこともあってもいいのかなというようなことを思っています。お答えになっているかあれですが。
○渡辺孝男君 全ての子供の最善の利益ということで、子ども・子育て新システムもそういう流れで行われていると、そのように考えているわけでありますけれども、今回、三党合意で衆議院において修正が加えられたということは、やはり現場の声を踏まえて現実的な対応という形で進められてきたと、そういうことを私は考えているわけでありますが、その法案が一日も早く成立することを願いまして、質問といいますか、公述人の意見の拝聴を終わります。
 ありがとうございました。
○姫井由美子君 おはようございます。国民の生活が第一の姫井由美子です。
 本日は、各公述人の方々より貴重な御意見を伺うことができまして、ありがとうございました。
 私は、五年前の参議院選挙、このときも格差是正というものが大きなテーマで訴えてまいりました。今回、この社会保障と税の一体改革があらゆる面において格差是正につながるのでしょうか。ある面では格差是正につながる、しかし、ある面では格差拡大につながるという懸念が私の中ではなかなか拭い去れません。そこで、格差ということをテーマに今日はそれぞれお伺いしていきたいと思っています。
 まず最初に、菅家公述人にお伺いいたします。
 社会保障と税の一体改革で、社会保障の面では、今までの高齢者中心の社会保障から全世代支援型ということで、いわゆる社会保障の面では格差是正ということで、現役世代への積極的社会保障を制度にしていく、つまり働くことを側面から支援するということで大きな是正につながるという御意見を言われたかと思います。そして、その制度を支える安定財源ということで、この消費税というものを今評価をされておりました。
 しかし、元々、連合もそうですけれども、この格差社会を生み出した原因というものは、この二十一世紀の日本の経済社会が新自由主義の下で、労働形態、つまり労働の規制緩和が行き過ぎて非正規雇用が急増したことに端を発していたのではないかと私は思っております。そして、この度の消費税の増税ということが、企業側にとって非正規雇用が減少することにつながるのでしょうかというところが私も大変ちょっと心配をしております。労働形態、つまり労働の格差をともすれば広げることで社会保障の世代間格差を埋めるという矛盾も生み出していくような気もするんですけれども、是非、この一体改革で果たして格差は是正されるのか、あらゆる面を含めて総合的にお伺いしたいと思います。
○公述人(菅家功君) お答えいたします。
 委員御指摘のとおり、非正規労働の拡大といったことによりまして、ある意味社会保障を支える基盤が弱くなってきているという側面は確かにあろうというふうに思っております。したがって、その面の改革というものも極めて重要だというふうに考えておるところでございます。
 さらに、将来に対する安心社会という意味では、やはり社会保障に対する国民の信頼というものが欠かせないわけでありまして、そういう意味で、将来の安心を確保するために社会保障改革を行っていくという点は非常に重要だというふうに考えております。そういう意味で、全世代支援型への改革といった観点から今回、改革が行われるということについては評価をしているところでございますし、そのための安定財源を確保するという意味での税制改革も重要であるというふうに考えているところでございます。
○姫井由美子君 ありがとうございます。
 菅家公述人の事前資料を読ませていただきました。その中で、この消費税引上げについては、経済状況の中で引上げ停止も含めて柔軟な措置を、あるいは個別間接税の在り方等も取り組んで検討していくのはどうか、さらには、消費税と同時に、所得税や相続税の累進制の取組、またインボイスの導入、そして簡易税制制度を抜本的に見直せなかったということで、多少、課税への面でも格差を是正し切れていないような発言があったので、ちょっと少し外れるかもしれませんけれども、そこをもう少し詳しくお伺いしたいと思うんですが、よろしくお願いいたします。
○公述人(菅家功君) 税制改革にかかわる御質問でありますけれども、やはり社会保障・税改革の大きな目標といいますのは、やはり所得再分配機能を取り戻すということが大変重要であるというふうに考えておりまして、委員御指摘のとおり、この間、日本はOECD諸国の中でも最もそういう機能が低下をしている国の一つでございます。
 そういう意味で、今回の税制改革というのは、あるいは社会保障改革というのは、そういった大きな目標に沿っているというふうにも考えておりまして、御指摘のとおり、所得税、法人税、資産課税等々、再分配機能を高めていくための改革が不可欠だというふうに考えておりますし、消費税につきましては、益税等々、もう消費税の導入がされて相当期間たっているわけでありますので、ヨーロッパにあるようなインボイス方式の導入であるとか、そういった改革も不可欠だというふうに考えているところでございます。
○姫井由美子君 ありがとうございました。
 先ほど、OECDの中で最もこの所得分配率が低下していると言われましたけれども、池本公述人が事前資料の中でもOECD諸国の中でいろいろな比較をされていたかと思います。そして、今回の、特に保育、子育て、この質と量の向上、つまりは、子供の社会保障環境の格差を是正することがひいては女性の就業、あるいは女性の社会進出、あるいは社会環境の格差も是正されるというようなことを述べておりましたけれども、世界と日本、つまりOECDと日本とのこの格差、これについて、どういったところが原因で、これをどういうふうにしていくかという御意見が、お考えがありましたらお伺いしたいと思います。
○公述人(池本美香君) 先ほどちょっと言い忘れたんですけれども、これまで日本の少子化対策というのは子供の数を増やそうというところにどうしても焦点が行って、それも重要なことなんですけれども、諸外国の議論を見ていますと、OECD全般としては、一人一人の子供からいかに能力を引き出すか、そして、その子供たち一人一人が将来にわたってきちんと収入を得て社会保障のお世話にならずに過ごすことができるかということも考えていますし、また女性も、保育があることによって女性の収入が安定し、例えば母子家庭などになったとしてもきちんと自立できるような経済力を持って、また女性の長い高齢期の自立ということまでも保育制度が支えになるんではないかということが考えられていまして、日本の場合は、何か困っているから助けるというようなこととか、保育をやって子供をたくさん産んでもらうというような、そちらの方に行くんですけれども、いかに今いる女性や子供が格差なくそれぞれがきちんと就労で自立できるかということをもっと日本では議論をする必要があって、そこにこの保育制度というのが非常に大きな鍵を握っているんではないかなと思っております。
○姫井由美子君 ありがとうございます。
 先ほど、池本公述人からスウェーデンの話が出ましたけれども、私も県会議員を二期八年間する中でスウェーデンとデンマークそれぞれ二回ずつ訪問して、特に保育、子育て、見てまいりました。地方分権が特に成熟した社会ですし、そして高負担、高保障・サービスということでありますし、特に、国と国民の政治の信頼関係が強いということで成り立っている面があるかと思いますけれども、ここの市は幼児の医療がいいから六歳まではここに住むとか、小学校はここが教育がいいからとか、あるいは中学校までここがいいからということで、市民がサービスによって市を選んでいくという姿が私も地方分権のいい形かなと思いましたけれども、公述人はそのためにやっぱり高負担というものが必要だというお考えでしょうか。それから、国民が高負担でも国を信頼して税を払うという、その関係をどう見るか、お伺いしたいと思います。
○公述人(池本美香君) 私は、まず高負担が必要だと思っております。そして、ただ、その高負担というのはお金を取りあえず何か使ってしまうというイメージで考えるかもしれませんけれども、保育というのは、そこに投資をして、その投資以上の収益が後で社会に戻ってくるという意味では、今は負担をしても後でそれ以上の効果が戻ってくるという見方が必要なんではないかというふうに思っております。
○姫井由美子君 ありがとうございます。
 そして、最後に、鳫公述人にお伺いしたいと思います。
 特に、国内における子供への支援の格差について詳しく教えていただきました。また、特に児童虐待と経済問題、超を付けていいかどうか分かりませんけれども、超低額所得者との関係でも大変興味深い報告でした。
 所得制限のない子ども手当が新児童手当に変わったことや、生活保護への不正受給の面だけが今クローズアップされているという状況の中で、これからますます援助を必要としている子供たちが増加するのではないかという懸念もあります。子供同士の間に見られる不平等や格差是正をするために、今までも調査が行われていたかと思いますけれども、今後、やっぱり更にどのような調査、子ども手当と新児童手当の変化であるとか、どのような調査、対策、あるいは手当より現物給付がいいのかという面についてお伺いしたいと思います。
○公述人(鳫咲子君) お答えいたします。
 まず現物給付か現金給付かという点なんですけれども、どうしても収入の少ない家庭ですと、子どものための手当ということで給付されたものでも家族全体の生活費に消えてしまうと。そういう中で、今回御提案のような保育サービスであるとか学校給食であるとか、全ての子供にとって欠かせないセーフティーネットに公費を使っていくというのが一つの方向ではないかというふうに考えております。
 それから、地方自治体にその多くの仕事が任されているわけなんですけれども、やはりそれだけでは、必ずしも全ての子供にとってそれが満たされるかどうかというのはチェックが不十分な点もあるかもしれないということで、やはり国として、最低基準が守られているかという点を今後とも監視していただければというふうに考えております。
○姫井由美子君 ありがとうございます。
 特に、ひも付き補助金をなくし、地方交付金という形で地方の裁量に任せるということ、これが基準ではあるんですけれども、先ほど地方自治体によってサービスの質と量も任されてしまうという意味で、地方自治体の力量によって格差がまた生まれ、ひいては子供支援への格差が広がるんではないかと思っております。
 今回は、特に交付金であっても社会保障にという大まかなといいますか、限定があるにしても、それを本当に守るかどうかという意味で更に心配ですので、最後にもう一度お願いいたします。
○委員長(高橋千秋君) おまとめください。もう時間が経過しておりますので、おまとめください。
○姫井由美子君 そうですか。分かりました。
 そういうことが心配ですので、是非、その意味で、更に私もしっかりと皆様と意見交換をして頑張っていきたいと思います。
 どうもありがとうございました。
○桜内文城君 みんなの党の桜内文城です。
 まず、吉田公述人に総合こども園についてお尋ねいたします。
 今回の法案、総合こども園というのはできなかったわけですけれども、認定こども園の拡充といいますか、そういった形になっておるわけですけれども。私自身、公述人のこれまでの著作等を読ませていただきまして、幼保一元化、もうこんなのさっさとやるべきじゃないかなとも確かに思うんですけれども、これが進まない理由について、メリット、デメリットを書かれておりますけれども、その辺についておまとめいただけますでしょうか。
○公述人(吉田正幸君) まず先に結論を申し上げますと、私は幼保は単純な一元化は別にしなくても、いい意味で多元化をすればいいと思っていまして、幼稚園も非常に多様でございますし、保育所も多様である、それを機械的に一元化する必要はないだろうというふうに思っています。ただ、制度、政策、あるいは行政所管という意味では、複雑な仕組みではなくて、やっぱり子供、親、利用者に分かりやすい、利用しやすい仕組みにすべきだろうと。
 その意味で、今回私が最も評価できるのは、今までは幼稚園の国のお金というのは文科省の幼稚園色のお金、保育所は厚労省の保育所色のお金であったものを、一応、幼稚園色、保育園色ではなく子供色のお金にしてこれを市町村に流す、そして市町村がちゃんと積算をしたお金として施設型給付というものを一元的に流す、これは大変、財源の一元化という意味ですばらしいことだと思います。
 施設はそれぞれ多様であっていいと思います。三歳未満児がいる園もあっていいし、いない園もあっていいし、これ、地域事情が全く違いますので。ただ、今までさっき申し上げたような弊害があったので、どれだけそれを取り除くかということがポイントで。
 もう一つは、あとは、先ほど来いろいろ御意見、御質問ございましたように、基礎自治体がどうするかが多分一番大事なところで、恐らく多くの基礎自治体は首長さんの意識によってかなり左右されますので、それを日本中底上げという意味で、基礎自治体のどういう支援、お手伝いができるかということを国と都道府県でやっぱり考えていただく必要があるかなというふうに思っています。
 以上です。
○桜内文城君 財源の一元化というのももちろん大事ですし、ここで、資料で挙げられていますところが、幼保連携型か否か、あるいは認可外施設部分ですとか、あるいは認可保育部分で財政措置が多い少ないですとか、そういった点、やはりここも一元化といいますか、同じような財政支援、必要だと思うんですけれども、その辺についてはどのようにお考えになりますでしょうか。
○公述人(吉田正幸君) 今現在の認定こども園制度においては、認可施設に公費を流すということで、例えば、幼保連携型であれば幼稚園部分に、私立幼稚園であれば県から経常費補助が入り、保護者負担軽減が市町村ベースでなされる。一方、保育所の方は、市町村から運営費、委託費が民間保育所に流れると。全く性格の違うお金が流れて、それ自体が大変ややこしいわけですが。
 今回は、金額、単価の大小は別として、いわゆる保育認定等によって利用者に対して個人給付として保育給付を行う。ただ、それを法定代理受領で施設がもらうということで、最初から施設にぽんと差し上げるお金じゃなくて、保育を利用する子供、親に着目をし、個人給付をすると。それ、現金差し上げるわけじゃなくて、保育を利用すれば引換えにその保育を提供した施設にその個人給付のお金がもらえるという意味では、かなり変わるのではないかなというふうに期待しています。
○桜内文城君 ありがとうございます。
 会計基準が違うというのも変な話ではありまして、もちろん、社会福祉法人あるいは学校法人会計、目的は違うということでいえば、そういう経緯もあったとは思うんですけれども、御指摘されていますけれども、ここも私はやはり統一していくべきだろうと思っております。
 関連して、菅家公述人にお尋ねいたします。
 吉田公述人の資料では、幼保の違いによる福利厚生の差異があるですとか、恐らく組合の在り方にもかかわってくる部分があるかと思うんですけれども、この幼保一元化に関して、簡単に菅家公述人のお考えをお聞かせください。
○公述人(菅家功君) 冒頭の意見陳述で申し上げましたけれども、やはり全ての子供に就学時前の教育、そして保育を保障するということが極めて重要な観点だというふうに考えておりますので、そういう意味では、幼保一体化というのはそういった方向に沿った政策だというふうに理解をしております。評価をしております。
○桜内文城君 次の質問をさせていただきます。池本公述人にお尋ねいたします。
 諸外国の例で、幼保一元化ですとか教育機能に統合していくですとか、そういったお話がありました。我が国もそういう流れに従ってやっていくべきじゃないかなと私自身も思ったりします。その中で、株式会社化というか、株式会社の参入というのが今回の修正の中では株式会社は駄目だというふうな話に結論としてなっているわけですけれども、諸外国では、株式会社の参入といいますか、についてはどんな感じなんでしょうか。
 というのは、私、自分自身の子供、二人おるわけですけれども、大手の、何というんですか、ベビーカーですとかそういった器具メーカーの関連の保育所がありまして、大変良かったなという印象があるんです。情報開示のことを池本公述人はおっしゃっていますけれども、例えばそこの保育所、インターネットで子供の様子が職場にいても見れたりするんですね。何といいますか、そういった情報開示ですとか、顧客といいますか、のことをよく考えて運営もされているなという印象がありまして、株式会社だからいけないとか、必ずしもそうじゃないとも思うんですが、諸外国の例と比較して、池本公述人の御意見、お聞かせいただけますでしょうか。
○公述人(池本美香君) 私自身も株式会社の保育所を幾つか見させていただく中で、非常に、例えばチェーンで展開していることでコストを削減できたりですとか、あるいは寮を、要するに東京では待機児童のために保育士が確保できないということで、東京に寮をつくって、地方から採用して寮をあてて、そして保育所をどんどん展開していくというような、そういった、むしろ迅速にスピーディーに対応するという、むしろプラスの評価ができることもたくさんあると思っておりますので、ただ、要は、株式会社だから社会福祉法人だからいいか悪いかと、そういうことではなくて、きちんとそれが評価される仕組みがないことが問題だと思っています。
 先ほど来何度か言っているニュージーランドなどは半数以上だと思いますが、株式会社という、そういう会社がやっている国もありますが、じゃ、それはなぜそこで平気かというと、全ての保育所がチェックを受けて、その情報は全部インターネットで公開をされていて、そしてまた、何か運営がうまくいっていないのを切り捨てるということじゃなくて、そこにサポートが入ってどうやってその施設を守り立てていくかということまでかなり積極的にやっているということですので、そういった総合的なバックアップ体制、質の評価の仕組みがあれば株式会社をやみくもに批判するべきではないと思いますし、海外などでは、保育の会社が海外進出をしていくというふうなことも起こってきていますし、またそこが倒産した後には次の会社がそれを全部引き受けて経営が替わるというような、そういうことも普通にもう起きている状況ですので、そういったことも日本で将来的にいろんなリスクも考えながら対応を考えることで、株式会社だからいけないということではないと思っております。
○桜内文城君 同じ質問といいますか、株式会社化について永井公述人にもお尋ねしたいと思います。
○公述人(永井聖二君) 私も基本的には、むしろ評価の在り方、適切な評価の在り方をどう築いていくのかということが課題になるというふうに思っておりますので、設置者の問題は第二次的な問題であるとは思います。ただし、安定的な運営等についてやはり特段の配慮が必要なので、その点についてのある程度の縛りというものは当然考えられてしかるべきだというふうに考えております。
○桜内文城君 ありがとうございます。
 最後に、鳫公述人にお尋ねいたします。
 お配りいただいた資料ですと、給食費の未納についても触れられております。実際、児童虐待といいますかネグレクトの疑いが生ずるということもおっしゃるとおりだと思いますし、それによって、現物給付の必要性ということも指摘されております。
 資料を見ておりますと、やはり子ども手当、今度また児童手当に名称変わりますけれども、この資料十一を拝見いたしますと、子ども手当の使い道ですね、家庭の日常生活費とともに、やはり家族の遊興費ですとか、よく生活保護でも同じような問題が指摘されたりしておりますけれども、必ずしも生活に必須とも言えない遊興費に使ってしまうですとか。
 そういった意味で、こういった子ども手当の在り方、あるいは本当に貧困の中でそれに苦しむ子供たちをどう実際助けていくのかというときに、給付の在り方ですね、親に給付すべきなのか、あるいは現物給付にしていくのか、そういった観点あろうかと思うんですけれども、その点どうお考えになりますでしょうか。
 これ最後の質問にします。
○公述人(鳫咲子君) お答えいたします。
 子供に対する給付という視点では、子供はお金を使うことはできませんので現物を充実させていく、今回のような保育サービス、給食サービス等を充実していくということがまず第一だと思うんですけれども、それとともに、家族の生活費に使われてしまうというのは、例えば一人親家庭ですと、そもそも大変収入が少ない一人親家庭の親が非正規労働に就いている場合が非常に多い、そういう雇用上の根本問題があると。そこに関しては、子育て支援としての現金給付、あるいは一人の雇用として、非正規労働ということで、そういう雇用形態が多いということ自体を改善していくということを併せて進めていく必要があると考えております。
○桜内文城君 終わります。ありがとうございました。
○田村智子君 日本共産党の田村智子です。今日はありがとうございます。
 まず、菅家公述人と吉田公述人に同じ質問をしたいと思います。
 先ほど吉田公述人から、エンゼルプラン、新エンゼルプラン、これは失敗だったという指摘をされていて、私もそうだなと思っているんですが、その一つの理由が、やはりワーク・ライフ・バランスをどうしていくかということが完全に先送りにされて、その点でいえば、今回の子ども・子育て新システムや社会保障制度の改革というこの議論の中でも、またワーク・ライフ・バランスについては完全なる先送りになっていると言わざるを得ないと思っています。
 例えば、育児休業がなかなか取れていないと言いますけれども、やっぱり若年層で有期契約の労働者が急速に広がっていて、この入口規制も、菅家公述人も大変御苦労されたと思いますけれども、これ労使の合意にならなかったという問題があります。契約期間がそもそも三か月とか半年という労働者がこれ育児休業取るなんていうのは本当に不可能と言っていいと思いますし、これはもう妊娠、出産、結婚そのものさえも難しいという事態が依然として残されてしまっていると。
 有期契約でない労働者であったとしても、今全体でサラリーマンの平均年収が下がり続けていて、近年の数字で見ても一九九七年の四百六十七万円から二〇一〇年には四百十二万円と、これで育児休業取ったらやはり給与の保障がない、減ってしまうと、これは取れない。こういう条件が全て解決が先送りされているというのは大変問題だと私自身は感じています。
 そこで、非正規雇用の拡大に歯止めを掛けることや、あるいは平均収入が下がり続けるということについては、これは喫緊でやはり何らかの歯止めとなるような法制度が必要になると思うんですけれども、お考えをお聞かせください。
○公述人(菅家功君) おっしゃるとおり、非正規労働の拡大などにつきましては何らかの歯止めが必要だろうというふうに思っておりますし、そういう意味では同一価値労働同一賃金を実現するための様々な取組がこの間行われてきておりますけれども、今回の有期労働法制の改正問題もそうでありますし、あるいはパート労働法の見直しもそうであります。そういったことを通じまして、同一価値労働同一賃金を実現するような、そういった制度、施策というものが極めて重要になっているというふうに考えております。
○公述人(吉田正幸君) 労働分野の専門家ではないので適切なお答えになるかどうか分かりませんが、前回のエンゼルプラン、新エンゼルプランのころに比べると、一応議論のスタートからワーク・ライフ・バランスということを相当強く意識したということは今回事実だと思います。ただ、残念ながら、この関連三法案に至る最後の方で、具体的に、じゃ、ワーク・ライフ・バランスをどういうふうに推進するかという部分については、残念ながら決して十分ではなかっただろうというふうに思います。
 幾つかの私は自治体で次世代育成支援の行動計画策定にかかわりまして、今もフォローアップの協議会がございます。自治体レベルでもワーク・ライフ・バランスということをかなり強く申し上げていますが、どうしても市区町村の段階で企業にいろいろかかわるというのがいろんな意味で難しいという現状も感じております。これはやはり国会の場において、国政の場においてワーク・ライフ・バランスを本気で議論をしていただかなければいけない。
 ただ一方で、非正規雇用、いろんな議論はあるかと思いますが、子育て家庭の母親にとって非正規雇用は必ずしも悪いと私は思っていませんで、フルタイムでずっと働くことの方がどうかという議論もありますので、少なくとも希望する働き方が選択できると、そして、先ほどの同一労働同一賃金ではございませんが、そして条件だけはイコールフッティングを考えるという、これも総合的な御検討をいただくことが大事かなというふうに思っています。
 以上です。
○田村智子君 社会保障制度のやっぱり根幹と言えるのが、どれだけ労働者の皆さんがまともに人間らしく働けてまともな給料を受け取れてということが絶対必要な条件だと思いますので、是非国会でもそういう議論をやっていきたいと思っています。
 次に、池本公述人にお聞きをしたいと思います。
 先ほど、御自身の経験も踏まえて、認可外の保育所を見て非常に質的にどうなんだろうかという不安を持たれたというふうにお聞きをいたしまして、私も非常に共感するところがあります。
 やっぱり保育の質といったときには、職員配置の基準がどうであるか、それから施設の物理的な条件、これがどうであるか、やはり国の最低基準がどうで、それがどう満たされているかということが一つは客観的に求められてくる。それからもう一つは、やっぱり人員配置というだけでなく、そこで働く保育士さんが、教員も含めてですね、経験を積んで働き続けることができるかどうか、これが子供たちに対する保育、教育の質を担保するものだというふうに思っています。
 その点で、現在の日本の保育やあるいは幼稚園のこの国の基準、海外も御覧になっているかと思いますので、どう思われるかということを率直にお聞きをしたいのと、もう一つ、今後、確かにこの新システムの下では認可外の保育施設にも公費が支出されることになって、そこが数が増えていって待機児童にこたえることができるということになったり、あるいは保護者にとっては保育料が、利用料が安くなるという、そういうことが起きてくると思います。同時に、やはり認可外と今なっている保育施設に公的な支出が入る以上は、そこでの人員配置であるとかあるいは施設の基準を引き上げていくために使われなければならないというふうに思っているんです。認可外においてもそこが引き上がっていく、保育の質を引き上げていくために使われるということが担保されなければならないというふうに思っているんです。
 そのときに、先ほど株式会社の話ありましたけれども、私が危惧をしているのは、今認可外となっている保育の施策を担っている施設については、株式会社の使途制限がないんですね。株の配当金にお金を回してもいいことになっているんですね、認可外においては。新システムの下でも、認可保育所や幼保連携のこども園は、それは制限が、幼保連携は元々株式会社は入れないですから、子供のために使われる、使途制限掛かるというふうに思うんですけれども、やはり地域型と言われるところは公的支出を含めてその使途制限がどこまで掛かるんだろうかと、非常に不安なところがあるんですね。
 少なくとも、株式会社においても、今認可外の施設においても、これは使途制限掛ける、子供のために使う、保育の質を担保するということが必要だと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○公述人(池本美香君) 前半の方で職員の処遇のことについての御質問があったかと思うんですけれども、やはり保育の現場というのが女性の職場だったということがまず処遇が低いままとどまってきた一つの背景にあると思っていますが、今保育の現場には男性の保育士もどんどん入るようになってきておりまして、そして、そこで初めて男性の保育士がきちんと収入を得て安定した生活ができるレベルなのかということが問われてきているように思っておりますので、そういった長く働けるという。あと、幼稚園の方も少し、そうやって育児休暇を取って、また戻ってきて、それが教員としての質をむしろ高めているというような評価も少しずつ出だしている状況かと思いますので、そこはもう少し時間を掛けて、また、もちろん給付水準がきちんとここに確保されれば職員の処遇も上がっていく、またそう上がっていかなくてはいけないというふうに思っております。
 それから、株式会社の使途制限については、まだ私自身としてこの株式会社の参入問題についてきちんと諸外国の事情が調べ切れていないのでここでちょっとお答えをすることはできませんけれども、やはり、公費を入れるからには、それがどのような形で使われるかということまでもきちんとチェックして、そこに対する議論も当然必要になってくるんだと思っております。
 以上です。
○田村智子君 永井公述人にも、大変うなずいてお聞きいただきましたので、今の国の幼稚園や保育園の最低基準についての御見解や、株式会社の使途制限について御意見ございましたらお聞きしたいと思います。
○公述人(永井聖二君) 職員配置、施設等ということの問題で、基準の問題ですけれども、それが守られるべきであるということはこれは当然なんですが、同時に、私はもう一つ、基準とは別のところで、文化的な問題といいますか、こういう形で例えば保育士あるいは幼稚園の教員が働き続けることが非常に難しいような慣行があると、この点についても是非御理解をいただきたいと思います。この辺りを含めて総合的に考えていく必要が、質の維持ということのために考えていくことが是非必要なので、先ほど、基本的には評価の在り方の問題ではないかというふうに申し上げたのは特にそういうことでございまして、その辺りについて評価の仕組みというのをきちっとしていくということが非常に大事だろうと思います。
 それから、認可外に対する公的な資金の投入ということで、その場合の使途制限についてですけれども、これはある程度はっきりとした形で報告を受けて明らかにしていく、検討していくということはこれは当然必要なことだろうというふうに考えております。
○田村智子君 最後に、鳫公述人にお聞きをしたいと思います。
 子供の貧困の問題が、この社会保障制度の問題、議論しているときにほとんど議論がなくて、しかも、有効な対策というのが今出されている法案の中でほとんど見当たらないということに私も大変危惧を覚えています。子ども手当、児童手当を給食の滞納分やあるいは保育料として天引きするというふうなシステムができても、これは滞納の解決にはなっても、貧困の解決には全くならないわけですね。ここで国の施策が大変立ち遅れていると思います。
 就学援助の例をお話しいただきました。ここで、私、非常に問題だと感じているのは、準要保護児童についての国の支出がこれまでも足りないと言われていた。それが一般財源化されたことで一層足りなくなった。保育も、公立保育所に対する運営費や建設費は一般財源化されたことで地方自治体の負担が大変重くなった。こういうやり方はいかがなものかというふうに思うんですね。
 国が財政的に果たすべき役割、あると思うんですけれども、いかがでしょうか。
○公述人(鳫咲子君) お答え申し上げます。
 ただいまの一般財源化の問題ですけれども、本当に自治体でそのお仕事に携わっている方は、その自治体予算の中で自分たちの子供にかかわる、特に子供の貧困対策にかかわる予算が取りにくくなったという声をたくさん伺うところです。
 そのためにも、実際の子供にかかわる保育であるとか教育であるとか給食であるとか、ものの支出がちゃんと確保できているかどうか、国としてきちっと監視していただく必要があると考えております。
○田村智子君 終わります。ありがとうございました。
○吉田忠智君 社会民主党・護憲連合の吉田忠智でございます。
 公述人の皆様方には、貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。
 今回の消費税増税関連法案、とりわけ社会保障制度改革については先送りされた課題が多いわけでありますが、子ども・子育て関連三法案につきましてはかなり具体的なものも盛り込まれておりますし、市町村の責任の明確化やあるいは認可外保育所に対する財政的な措置など、前進された課題もございます。ただ、公述人の皆様から御意見がありましたように、検討課題とされた中にかなり重要な課題が盛り込まれておりまして、これが具体化されなかったのは残念な面もございます。
 そこで、そうした検討課題とされた課題を中心に何点か御質問させていただきます。
 まず、菅家、永井公述人にお尋ねをしますが、それぞれの立場で保育士あるいは幼稚園教諭等に対する処遇の改善の必要性が言及をされたところでございます。菅家公述人については連合でございますから、加盟する組合員の皆さんにも、現場で働いている方もおられますし、加盟していない労働者に対しましても処遇改善ということの役割と責任があるわけでございます。
 そこで、具体的にこれからどうすべきなのかということも含めて、御意見をお二人にいただきたいと思います。
○公述人(菅家功君) お答えいたします。
 保育士に限らず、社会福祉関係の労働者の処遇の改善というものが大きな課題になっているというふうに連合としては認識しているところでございます。特に、労働集約型の対人サービスであります保育分野につきましては、労働者のサービスの提供そのものが保育の質になるわけでございます。そういう意味でも、保育労働者の処遇改善ということが極めて重要な課題だというふうに思っております。
 具体的に申し上げますけれども、厚生労働省の調査によりましても、全職種の平均の賃金に比べまして保育士の平均賃金というものは十万円近く低いという、そういった調査結果もございまして、この保育士の処遇改善は極めて重要な課題だというふうに思っておりますし、なおかつ、保育所、幼稚園共にそうでありますけれども、その財源の多くは公費で賄われているわけでありまして、したがって、この公費負担の在り方が処遇に直結するという、そういった面もありますので、今後、税制改革を通じながら量及び質の改善ということが期待をされているというふうに思っておりますので、そういった点での改革の前進を強く求めていきたいというふうに考えております。
○公述人(永井聖二君) 御指摘していただいたことはそのとおりでありまして、質の向上、特に、先ほども申し上げましたけれども、是非、職場での職能的成長というものを保障するという形の職場の環境をつくっていくということが必要だろうと思います。そのことが保育の質の向上というものにつながるわけであります。
 そのためには、一つの重要な基盤としての条件として、希望すれば長く働き続けられるということが担保されるということが非常に大事でありまして、私どもの学部は保育士、幼稚園教諭になって卒業していくという学生を多く出しておりまして、今日のような状況の中でも比較的就職が好調だということで志願者が相対的に多いということがありますけれども、考えてみますと、離職者が非常に多いがゆえに毎年の就職も好調であるということで、素直には喜べないようなところがございます。
 この点について是非具体的な改善をお願いしたい。そのことが我が国の保育の質の向上、幼児教育の質の向上につながるというふうに考えております。
○吉田忠智君 菅家公述人にもう一点お伺いをしますが、これまでなかなか議論されなかった課題で、人口減少地域における保育の質の確保ということがあると思うんです。
 ともすれば、都市部の待機児童の解消ということがどうしても中心的な課題になるわけでありますけれども、そのことはやっぱりこれからの重要な放置できない課題になると思いますが、具体例も含めてこれからどうあるべきだという御意見がありましたら、菅家公述人、お願いします。
○公述人(菅家功君) 冒頭の意見陳述で申し上げましたけれども、人口減少地域における保育保障というものも重要な課題としてあるというふうに考えております。具体的には、子供が減少して保育所あるいは幼稚園が閉園に追い込まれる、そういった事態があるわけでありまして、そういたしますと子供や働く親が行き場を失ってしまうという、そういった事態が人口減少地域においては見られるわけでございます。
 そういう意味で、今回の改革におきまして地域型保育給付というものを創設いたしまして、今まで財政支援がしっかり行われていない、あるいはあったとしても極めて低い水準であった小規模保育などについての財政支援がきちんと行われるという改革が盛り込まれているということにつきましては、大変いいことだというふうに考えているところでございます。
○吉田忠智君 鳫公述人にお伺いをいたします。
 子供の貧困対策についての言及がございました。自治体間の財政の格差やあるいは首長の姿勢が結果的に施策に影響しているという御指摘でもございます。やっぱり生活・就学調査が実際にはなかなかきめ細かく行われておりませんので、それはやっぱり調査をしてデータを開示をすべきだということも貴重な御意見だと思います。やっぱりシビルミニマムの確保というのは国の責任で行わなければならないと思います。
 そこで、重要な議論なんですけど、現物給付と現金給付の在り方について、それから、今日の地方分権の流れの中でやっぱりできるだけ自治体に裁量を付与していこうということなんですけど、それがともすれば自治体間格差の拡大につながるわけでありまして、そういう地方分権、まあ地域主権とも今言われますが、地域主権、地方分権とシビルミニマムのかかわりについてどうあるべきかというような御意見をいただきたいと思います。
○公述人(鳫咲子君) お答え申し上げます。
 特に低所得者層にかかわる子育て支援というのは、なかなか自治体に任せていては進まない面というものが大きいかと思います。そういう点では、まず現物給付としてきちっと、例えば保育所に入りたいけれども入れない子がいないか、あるいは保育料の負担ができないために保育所に入れない、そういう事態がないかどうか、国としてもきちっと地方自治体の現状を調査する必要があると思います。
 もう一つ、現金給付に関しては、実際にはもうその所得レベルであれば生活保護を受けるべきという一人親の方もたくさんいらっしゃいます。しかし、特に地方部でなんですけれども、日本の人口が少ない町や村では、その過半数の町や村で、生活保護を受けている子供がゼロ人という地域が日本の町や村の半数あります。そういう、特に地方部で、例えば都市部で離婚されて一人親になった方が自分の出身のところに戻るというようなケースも多くあるわけなんですけれども、そういった方々の生活実態についてもきめ細かく調査をしていく必要があると考えております。
○吉田忠智君 ありがとうございました。
 続いて、吉田、永井公述人にお伺いをいたします。
 お二人からは、この法律を作った後の運用が大事だという懸念の意見がございました。率直に申し上げて、二重行政の中で、そして今回の修正協議の局面においても、これまでのそれぞれの団体の方々の声をいかにうまく集約するかということで修正協議者も御苦心なされたと思います。もちろん、国会も責任をしっかり担わなければなりません。そのフォローアップをしていくことが大事でありますけれども、実際に運用面においてこの法律の趣旨が生かされるためにはどうあるべきかということについての御意見をいただきたいと思います。
○公述人(吉田正幸君) お答えします。
 今回幸いなことに、しっかりとした形で子ども・子育て会議が設けられます。問題はこのメンバー構成も含めてだと思いますが、こういう幅広い関係者から成る子ども・子育て会議の場において、今委員御指摘のとおりの様々な今後の運用改善の問題についてしっかりと議論をいただき、必要に応じて国会も少しそこに関心を持っていただいて、よりスムーズな運営がなされるような、そこが多分一番今回肝心な部分ではないかなというふうに思っています。
 同時に、地方も地方版の子ども・子育て会議を極力置くようにという努力義務規定になりましたので、地方においても全く同じことが言えるのかなというふうに思っています。
 以上です。
○公述人(永井聖二君) 私は、その子ども・子育て会議というのが、どういう形で具体化していって、どのような機能を果たし得るのかということについては、現在のところちょっとよく分からないということも含めて懐疑的でありまして、むしろ政府が、修正案の附則にありますような、政府がこれについて検討を加えて、必要があると認めるときはその結果について所要の措置を講ずるということが具体的にどういうふうに進むのかということについて、強く危惧を持っているということなんでございます。
 それは、単に子ども・子育て会議の場でその問題が整合的に解決されていくというような形で楽観的に考えていいのかということについては、私はそのようには思っておりません。もう少し具体的な現場のいろんな問題を取り上げるような形でその会議が運営されるような仕組みがつくられるかどうかということを見極めていく必要があると思っております。
○吉田忠智君 これから検討課題とされた事項をいかに実現をできるようにしていくかというのが、まさに運用が大事ということでもございますし、子ども家庭省を何とか設置したいという政府・民主党の思いもございましたし、やっぱりそういう方向で、この二重行政そのものをしっかり一元化をしていくということが大変重要な課題だ、そのように考えております。
 確かに利害がございます。錯綜する利害をしっかり集約しながら、調整しながら進めていく。そういう意味で、今日出席の公述人の皆さん方に、また今後とも是非しっかりした御指導、御助言をいただきますことをお願い申し上げまして、質問を終わりたいと思います。
 ありがとうございました。
○谷岡郁子君 みどりの風の谷岡郁子と申します。
 今日、本当に公述人の皆様方、大変参考になる御意見をありがとうございました。
 最初に、吉田公述人並びに永井公述人にお伺いしたいと思います。
 やはり子供を主体に、子供を中心に、子供の立場からこの子供の社会保障を考えなければならないというお立場を先ほど開陳していただきましたが、であるならば、子ども手当と児童手当、どちらが呼び名としてふさわしいとお考えでしょうか、お答えいただきたいと思います。
○公述人(吉田正幸君) 結論から言うと、私はどちらでもよくて、中身を良くすることの方が大事かなと思っています。あとは、やはり硬い言葉よりは、より国民、利用者になじみのある言葉を工夫すればいいのではないか。繰り返しになりますが、言葉をどうこうやることよりも、より中身を充実させることの議論の方が大事だと思っています。
 以上です。
○公述人(永井聖二君) 中身が大切だということはこれは当然ですけれども、児童という言葉というのは、子供自身はそのように考えては、僕は児童だ、私は児童だというふうには考えておりませんので、子どもという言葉の方が適当であろうというふうに考えております。
○谷岡郁子君 ありがとうございます。
 私もそうではないかというふうに思っていまして、僕、児童と言う子供は今までかつて私もまだ会ったことがないということがございます。
 それで、先ほど永井公述人が、私立幼稚園の四分の三は十年未満だし、二分の一は五年未満の勤続年数しかないというふうにおっしゃったんですけれども、公立はどうなんだろうか。そして、それは私立、公立というところにかかわるのだろうか。もしそうであるのならば、今後、保育所は公立主体、幼稚園はどちらかというと私立主体というときに、果たして、言わば地方公共団体に任せておいて格差は是正されるんだろうかという、そういう疑念があるわけなんですけれども、それについて、永井公述人、どう思われますでしょうか、あるいは吉田公述人にもお伺いしたいと思います。
○公述人(永井聖二君) その点でございますけれども、私の手元に、これ、ちょっと古いかと思いますが、二〇〇七年の文部科学省の調査で、公立、私立の幼稚園教員の経験年数の資料がございますけれども、先ほど申し上げたように、男女ちょっと様子が違いますので女性に限って申しますと、十年未満が、私立の場合は七六%であるのに対して、公立の場合は三五%にとどまっているわけです。ここに大きな格差があるということも当然問題なので、このことが今後の保育士の部分についても当然同じようなことが起こるという危惧があるというふうに考えております。
○公述人(吉田正幸君) 恐らく公立、私立、幼稚園、保育園でかなり状況は違うと思いますが、かつては私立幼稚園あるいは民間の保育所というのは、どうしても厳しい財政の中で、ある程度職員の在職年数をという部分は確かにあったと思います。肩たたきがあった時代もあったと思いますが、今、都市、地方を問わずにかなり人材難の時代でございまして、もうそんなことをやっていては職員を確保できないという、まあ良くも悪くも差し迫った状況の中で、恐らくこれからは平均勤続年数は延びていくのではないか。
 一方で、公立の方は幼稚園も保育所も今は一般財源化をされているということもあって、特に公立の保育所においては正規職員ではなく臨時職員、臨職がかなり多いというふうに聞いております。ひどいところではもうほぼ全員が臨時職員と。臨時職員であればいろんな研修を受ける機会も減るし、どうしてもシフトでしっかり園にいられないということで、保育の質も確かにそこは心配されると思います。
 そういうそれぞれの事情をきちっと精査をした上で、いい意味でトータルに職員の配置であるとか職員の処遇であるとかを含めた人材政策をきちっとやっぱり考えるべきだろうというふうに思っています。
○谷岡郁子君 先ほど池本公述人から、六掛ける五イコール三十時間というようなことが、例えばスウェーデン等も含まれて、OECD各国は考えつつあるということからいいますと、今、九時に始まって三時には帰る、実は幼稚園ぐらいが適当だということが言えるのではないかということを先ほどお聞きしながら思っておりました。
 そうしますと、この間ずっと延長保育、延長保育と言われて、例えば幼稚園がこども園になるとその延長保育ができて、だから親が助かるんだみたいな議論が一般的になされてきたことは、必ずしも子供のためになっていないのかなというふうに考えてしまうんですけれども、その点につきましては池本公述人並びに永井公述人、どうお考えになりますでしょうか。
○公述人(池本美香君) 私も、これまでの保育政策の議論は親の就労に合わせた形で保育政策を検討してきたという流れがありまして、やはりそこは子供にとってどういう影響があるのか、子供がいかにストレスを受けているかですとか、長時間過ごすのであればそれなりの環境がまた必要だと思うんですが、そこまでも議論がされていないのではないかというふうに思っております。
 以上です。
○公述人(永井聖二君) 私も御指摘のとおりで、子供にとって延長保育のような事例がどういう意味を持つのかということ、このことを具体的に丁寧に論じていく必要があると思います。正直言って、その辺りについては必ずしも客観的なデータの形でいろいろ議論されているところまでは行っておりませんけど、親の都合、大人の側の都合によって子供をどうするかという視点が、それだけが独り歩きするということはやはり大きな問題であって、子供の側の視点というものを重視していただきたいというふうに考えております。
○谷岡郁子君 先ほど鳫公述人の方から様々な、子供の貧困とその子供の保育、教育、健全な育成ということにかかわる問題が出されたんですけれども、私は一つには、やはり本を読むような環境というものが、実は、これは永井公述人自身が資料をお出しになっているような内発的な規範意識というようなものを涵養する上でとても大事なことではないかというふうに思っておりますけれども、これについて、例えば本を読む環境ということと子供の貧困がかかわるのかということを鳫公述人にお聞きしたいと思いますし、そして、それ自身が今後重要な課題になっていくかどうかということを永井公述人にお聞きしたいと思います。
○公述人(鳫咲子君) お答え申し上げます。
 特に、貧困の連鎖というような観点からは、元から家庭環境に恵まれない、今おっしゃったように、例えば本を読みたくても本を親に買ってもらったことがない、本を読む機会がないと、そういう子供も現にいるわけですね。そういった中では、これから高齢化社会の中で地域でより支え合っていくような社会をつくるためにそれぞれが市民としての責任を果たしていくという規範意識がなかなか醸成されにくい面があるんではないかと考えております。
○公述人(永井聖二君) 内発的な動機付けの必要性ということは、結局、罰を与えられるからそれを避けたくてということでもないし、それから御褒美をあげるからということでもなくて、自らの中に新しいものを学んでいこうというような姿勢をつくっていくということでございます。このことと幼児期の様々な経験の間に重要な関係があるんじゃないかというようなことも言われているわけですし、特に読書等についてはそのことの関連性を指摘するということがされております。
 かなり親の様子によって子供が違ってくるということもありますし、同時に、それぞれの教育現場であるいは保育の現場でどのように対応するかということによって変わってくるということがありますので、そういうことを含めて保育の質の充実という視点が是非必要であるというふうに申し上げているわけでございます。
○谷岡郁子君 引き続きまして鳫公述人にお聞きしたいんですけれども、子供の貧困ということの中には、母子家庭という言葉が何度も飛び出しました。そして、離婚ということを考えれば、実はどこかに扶養義務のある男性がいるということでもそれはあろうかと思うわけですけれども、そこがちゃんと、扶養義務を怠っているということなのかどうかということをお聞かせください。
 そして最後に菅家公述人の方にお伺いしたいわけですけれども、そうしますと、実はこの扶養義務を果たしていない男性たちというもののその一定部分というのは、多分、連合所属の傘下の方々であるかもしれないということを含めて、各企業だけではやれない問題として、労働運動の問題としても、やはり子供たちに対する扶養というものを社会全体で、もちろん社会全体の、国家のということも大事なんですけれども、そもそも義務のある人たちがちゃんと義務を果たすようにすることが大事かと思うんですけれども、その辺についてはどうお考えになるのかをお二人からよろしくお願いします。
○公述人(鳫咲子君) お答え申し上げます。
 一人親の前には、その前に離婚ということが多いわけなんですけれども、現在、離婚の原因として、ドメスティック・バイオレンスによる離婚というものが非常に増えております。その場合には、正式に離婚が成立していなくて母子共に逃げているという場合も多く、養育費等にとってはそれを確保することが大変難しいのが多くの一人親家庭の実情となっております。また、その額も少ないというのが実情でございます。
○公述人(菅家功君) 委員御指摘のデータを持ち合わせておりませんけれども、やはり子ども・子育てを社会全体で支えるというのが今回の改革の大きな基礎でございますので、連合もそのように考えております。そういう意味では、おっしゃるとおり、親もそういった義務があるというふうに考えております。
○谷岡郁子君 では、菅家公述人、今後そのことを視点に入れて是非連合の政策等をおつくりいただけますでしょうか、最後にコメントをよろしくお願いいたします。
○公述人(菅家功君) 分かりました。
○谷岡郁子君 どうもありがとうございました。終わります。
○委員長(高橋千秋君) 以上をもちまして午前の公述人に対する質疑は終了いたしました。
 公述人の方々に一言御礼を申し上げます。
 皆様には、長時間にわたり有益な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。本委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)
 午後一時三十分に公聴会を再開することとし、休憩いたします。
   午後零時四十四分休憩
     ─────・─────
   午後一時三十分開会
○委員長(高橋千秋君) ただいまから社会保障と税の一体改革に関する特別委員会公聴会を再開いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 本日、谷岡郁子君、石井浩郎君及び田村智子君が委員を辞任され、その補欠として亀井亜紀子君、赤石清美君及び紙智子君が選任されました。
    ─────────────
○委員長(高橋千秋君) 休憩前に引き続き、公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律案外七案を一括して議題といたします。
 本日午後は、社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法等の一部を改正する等の法律案及び社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための地方税法及び地方交付税法の一部を改正する法律案につきまして、五名の公述人の方々から御意見を伺います。
 御出席いただいております公述人は、日本経済団体連合会税制委員会企画部会長中村豊明君、駒澤大学准教授飯田泰之君、中央大学経済学部教授長谷川聰哲君、スリーネーションズリサーチ株式会社代表取締役植草一秀君及び東京大学名誉教授醍醐聰君でございます。
 この際、公述人の方々に一言御挨拶申し上げます。
 皆様には、御多忙中のところ御出席をいただき、誠にありがとうございます。
 皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の審査の参考にいたしたいと存じております。よろしくお願い申し上げます。
 次に、会議の進め方について申し上げます。
 まず、公述人の方々からお一人十五分以内で順次御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。
 なお、御発言の際は、その都度委員長の指名を受けてからお願いを申し上げます。
 それでは、まず中村公述人にお願いを申し上げます。中村公述人。
○公述人(中村豊明君) ただいま御紹介をいただきました中村でございます。経団連では、税制委員会の企画部会長を務めております。
 本日は、社会保障と税の一体改革の税制分野に関する経団連の考え方を御説明させていただく機会をちょうだいいたしまして、誠にありがとうございました。御礼を申し上げます。
 冒頭、我が国の現状に関する認識につきまして申し上げさせていただきます。
 まず、財政につきましては、平成二十四年度末に国と地方を合わせて政府の長期債務残高が約九百四十兆円、それから、GDPに対しますと約二〇〇%に達するという見込みでございます。したがいまして、近年一段と深刻さを増していると認識をしております。
 また、本格的な少子高齢化、それから人口減少社会、これが到来をしており、生産年齢人口の一貫した減少によって現行の社会保障制度の持続可能性に対する信頼は失われているというふうに認識をしております。
 さらに、グローバル競争が激化する中で、我が国の立地条件は、従来から申し上げておりますが、六重苦によりまして年々悪化をしているということで、持続的な経済成長に懸念が持たれております。この六重苦は、御承知のとおり、日本の物づくりにとって耐え難い円高の継続、法人課税、社会保険料の重い負担、諸外国に後れを取る経済連携協定の推進や柔軟性に欠ける労働市場、企業活動の足かせとなる環境規制、電力の供給不足、コスト増であります。
 まさに社会保障と税の一体改革は、成熟した社会に対応した持続可能な社会保障制度の確立、中長期的な財政の健全化を実現するために、また我が国の成長基盤を創出するという上で極めて重要な課題であると認識している次第であります。
 こうした中で、一体改革の関連法案は、民主党、自民党、公明党による法案修正を経まして六月二十六日に衆議院を通過をいたしました。私どもといたしましては、各党の御努力に対しまして大変高く評価をしているところでございます。参議院におきましても、速やかにこの極めて重要な法案が可決をされて成立することを強く期待をしております。
 その上で、政府、与野党におかれましては、社会保障制度改革につきまして引き続き給付の効率化、重点化を推進していただくとともに、成長戦略を着実に実行していただきたいというふうに考えております。また、同時に、徹底した行政改革も必要であります。私どもといたしましては、これらの改革をパッケージで推進をいただくということが極めて重要であると認識をしております。
 一方、消費税法の改正法案では、七条において税制抜本改革の残された課題が記載をされております。これらは現在の国会審議でも議論の対象となっており、また、法案が成立すれば、平成の二十五年度税制改正以降、重要なテーマになるというふうに考えております。
 そこで、主要な論点につきまして、経団連としての考えを述べさせていただきたいと思います。
 まず、低所得者対策について申し上げます。
 法案では、給付付き税額控除に加えて複数税率が選択肢として併記をされました。しかしながら、少なくとも消費税率が一〇%の段階までは単一税率を維持すべきと考えております。複数税率は、軽減税率の対象品目の線引きが非常に困難であること、課税の中立性が損なわれること、高額所得者にも軽減税率の恩恵が及んでしまうこと、徴税側、納税側共に事務負担が増加をすること、税収の大幅な減少を招くといったことが問題として掲げられておりまして、今回の改革に当たっては採用すべきではないだろうというふうに考えております。
 このため、低所得者対策といたしましては、社会保障・税一体改革による給付と負担の全体像を踏まえつつ、消費税率八%の段階では、消費税導入時及び引上げ時の過去の事例も参考にして簡素な給付措置の実施を検討すべきだろうというふうに考えております。また、一〇%の段階では、給付付き税額控除の導入を検討すべきであるというふうに考えております。
 なお、給付付き税額控除につきましては、執行に当たって所得の把握が困難という指摘もございますけれども、番号制度を導入すれば、完全ではありませんけれども、個人のより正確な所得把握、これが実現をするものと期待をしております。複数税率の導入によるデメリットに比べればより弊害が少なく、きめ細やかな給付が可能となる方法であると考えております。マイナンバー法案につきましても、是非今国会中に成立をさせていただきたいと思っております。
 次に、消費税の転嫁と表示について申し上げます。
 消費税の適正転嫁、これは当然のことであります。経団連の会員企業が入会に当たり遵守をすることを誓約しております企業行動憲章におきましても、適正な取引を行うとしておりまして、さらに、その実行の手引きの中では、購入先に対して優越的地位にあったとしても、その地位に乗じて購入先に不当な負担を負わせることは行わないということを明示しております。
 経団連といたしましては、消費税は転嫁されるものであるということを今後とも会員企業に周知をしてまいります。その上で、政府にも、積極的に広報活動など万全の対策をお願いしたいと思います。
 消費税の表示につきましては、外税、内税の議論がございますけれども、企業ごとに意見が異なっておりまして、考え方は一様ではございません。一方で、現行の法令による表示の実務は、消費者、事業者双方に定着をしてございまして、変更すると消費者の混乱、事業者側のシステム対応コストの増加といったことが懸念をされております。したがいまして、消費税の表示につきましては、事業者間取引、対消費者取引共に現行制度の維持が基本であろうと考えております。
 次に、自動車関係諸税の簡素化、負担軽減について申し上げます。
 本件につきましては、昨年、先生方には自動車重量税の軽減やエコカー減税の延長といったことで非常に御尽力を賜りまして、誠にありがとうございました。三党合意におきましても消費税率の八%への引上げ時までに結論を得るとされてございまして、大変心強く感じている次第でございます。
 自動車関連産業の裾野は非常に広く、また我が国の基幹産業でもあります。国内における生産基盤を維持するためにも、消費税率の八%への引上げ時までに、消費税との二重課税となっております自動車取得税、自動車税との二重課税となっております自動車重量税、これを確実に廃止をいただきたいというふうに考えている次第であります。
 また、石油関係諸税につきましても、消費税とのタックス・オン・タックスの解消が重要であろうというふうに考えております。
 次に、住宅につきまして、これは国民生活の基盤となる社会的な資産でございまして、購入価格が高額であること、経済への波及効果や雇用創出効果の高さを踏まえますと、消費税率の引上げに合わせて税負担を増加させないための対策の導入が不可欠であります。三党合意でも十分な対策を実施するとされてございまして、是非ともよろしくお願いを申し上げる次第でございます。
 印紙税につきましては、経済取引のペーパーレス化が進む中で、紙を媒体とした文書のみに課税をするということになってございまして、合理性が乏しくなってきていると認識をしております。消費税法の改正法案から一歩進んで、廃止も御検討いただけないかと考えております。
 最後に、法人課税について申し上げます。
 我が国の立地環境は六重苦、とりわけ重い法人税の負担によりまして年々悪化をしております。相次ぐ企業の海外進出によって、今や日本は根こそぎ空洞化の危機にあると言って過言ではございません。法人課税につきましては、事業環境の国際的なイコールフッティングを実現するために速やかに改革を進めていただきたいというふうに思います。
 法人実効税率の在り方につきましては、現状、復興特別法人税が終了する平成二十七年度以降の検討課題とされております。しかしながら、我が国を取り巻く事業環境を踏まえ、また競合する中国、韓国との一〇%以上の税率差があるこの現実を考えますと、二十七年度以降に検討を開始していたのでは遅過ぎると思います。復興特別法人税の終了を待つことなく、速やかに二五%程度への減税に向けた道筋、これを付けるべきであるというふうに思います。とりわけ、地方法人特別税につきましては税制抜本改革までの暫定措置でありまして、消費税の八%への引上げに合わせて廃止するように平成二十五年度税制改正で成案を得るべきと考えております。
 また、我が国企業の国際競争力を維持していくためには研究開発促進税制を拡充していくことが不可欠であると認識をしております。本年度から総額型の控除限度額が縮減をされまして、復興特別法人税の加算をされるといったことになってございますので、法人実効税率の五%引下げにもかかわらず研究開発に熱心な企業には増税になってしまうと、こういう現実が多数起きてございます。総額型の税額控除限度額は是非とも法人税額の三〇%へ再び戻していただきたいというふうに思っております。
 また、控除し切れなかった額の翌年度以降への繰越しにつきましては、現在は非常に使い勝手の悪い繰越期間一年になってございまして、是非これを三年へ延長、また、繰越控除の要件の廃止もお願いをしたい次第であります。
 さらに、知的財産権に起因する所得に対しまして軽減税率などを適用するパテントボックス制度というものが欧米等で始まってございます。こういった制度の導入済みの欧州諸国の事例も参考にいただきまして、こういった制度の創設を御検討いただきたいというふうに思っております。
 自動車関係諸税の簡素化、負担軽減、また住宅取得に係る負担軽減措置の導入などと併せまして、法人課税に係るこれらの改革を適切に行うことは、消費税率引上げの環境整備となる経済状況の好転にも資するものというふうに確信をしてございます。是非ともよろしくお願い申し上げる次第でございます。
 私からの説明は以上でございます。御清聴ありがとうございました。
○委員長(高橋千秋君) ありがとうございました。
 次に、飯田公述人にお願いいたします。飯田公述人。
○公述人(飯田泰之君) 発言の機会をいただき光栄です。駒澤大学の飯田泰之と申します。
 本日は、まずは結論からお話しさせていただきたいと思います。本日、私のお話の結論は、第一に、財政再建の手段として消費増税は適切ではない、また、消費増税は十分な準備を要するものであり、その十分な準備が現在できているとは言えないというのが私の認識であります。
 お手元の資料の順番にお話をさせていただきたいと思います。
 第一の問いとして、一体改革は何のために行うかと考えますと、これは財政の維持と再建のために行うわけであります。もちろん、この日本の財政状況については後に他の公述人から御議論あるかと思いますが、現在の日本の財政状況が危機的であるという本一体改革の当初の目的といいますか趣旨というのを認めた上で今次の消費税増税関連法案というのを考えてみますと、評価のポイントは一つになるかと思います。それは、この消費増税が財政の維持、再建に対して資するか否かという点です。
 これに関しましては、内閣府経済社会総合研究所による日本経済モデルを使った議論が有用かと存じます。この短期日本経済マクロ計量モデル二〇一一年版の数字に従いますと、消費増税一%、つまりは二・五兆円、GDP比で〇・五%の増税に対して、実質GDPは次年度にマイナス〇・三五%反応いたします。つまりは、五%の増税に対してGDP実質成長率の低下幅は一・八%であります。これは、ほぼ現在の日本経済の成長を全て消し飛ばしてしまう大きさであります。
 また、このような景気への影響を受けまして、消費増税による次年度財政収支の改善は、〇・五%の増税に対して改善幅〇・二八%と、その半分ほどの財政再建の効果しか得られません。現在、財政赤字の対GDP幅は約一〇%であります。これを全て埋めるためにはここから三五%消費税を上げる、これはあくまで単純計算ではありますが、更に三五%の消費増税が必要であるという数値になってしまう。
 ちなみに、注意をしておきますと、このシミュレーションは経路を限定しており、比較的消費増税の影響について甘めに計算した結果であります。
 このように、デフレ下の増税というのは非常に大きな問題を抱えている。といいますのも、過去の消費増税が景気に対して比較的中立的であったという議論がありますが、今次の増税は過去の増税とは異なります。過去の消費増税は直間比率の是正が主なテーマであり、そのため、同時に所得税、法人税等を中心とした減税がセットになっております。その意味で、今次は税負担の純増であるという点で大きく異なっている。
 これに対しまして、消費増税の必要性に対する大きな根拠と言われておりますのが、消費増税によって日本の財政に対する信認が高まり、その信認の高まりによって消費マインドが回復するとの議論であります。
 しかしながら、これは専門的には非ケインズ効果と呼ばれる理論であるわけですが、国際的に実証的な証拠がほとんど見付かっておりません。また、日本に関する実証研究においてもこのような影響経路は認められないとされております。その意味で、余りにも実体がありませんので、これを、ノーベル経済学賞を受賞した経済学者ポール・クルーグマンは、信頼の妖精、フェアリーと呼んでおります。この信頼の妖精を日本経済に対して期待することはできないであろう。
 このように、一般に純増である負担の増加に対しまして景気は非常にネガティブに反応いたします。
 加えまして、消費税による増税にはさらにもう一つの追加的な問題点がございます。それが、現下の経済状況がデフレ状況にあるという点。デフレ下の増税は、通常の消費増税と異なりまして、殊中小企業及び小売業において価格への消費税の転嫁が極めて困難になってしまう。つまりは、消費税が上がったからといってその分価格を上乗せできる事業主というのは極めて限定されています。その意味で、中小企業そして地域経済にとって大きな負担となることが予想される。そして、中小企業、地域経済への負担というのは、失業率、雇用情勢に直結いたします。この雇用情勢の悪化は社会保障負担の増大を招きますので、やはりこれをもっても消費増税によって財政再建というのは非常に難しい、消費増税は所期の目的を達成しないのではないかと考えられるわけであります。
 では、先ほど、冒頭にお話ししましたように、どのようにして財政を維持し、そして再建していくのかと考えましたときに、財政再建は現在の日本財政の問題を三つに分割して考える必要があるかと存じます。
 三つの財政における問題とは、一に東日本大震災に関する復興費用の問題、二に経常経費、既に発生している赤字の問題、そして三に今後増加が予想されるといいますか、ほぼ確実視される社会保障費財源の問題であります。
 これら三つに関しまして、東日本大震災復興に関しましては今次のメーンの話題ではございませんので割愛させていただきまして、まずは、現在既に生じている赤字をどのようにして解決するか。それは、金融政策による名目成長率の回復によって達成するべきである。
 まずは、ごく基礎的なお話をさせていただきますと、税収と名目成長率というのは密接にリンクしております。名目成長率と税収の推移を一九八〇年以降整理いたしますと、名目成長率一%当たり一・四%ほどの税収の増加に結び付きます。また、追加的、限界的にも一・一以上の税収増に結び付くと言われている。
 では、この名目成長率向上のために何が必要か。経済が実質的に成長する、又はインフレ率が向上する、そしてその両者が必要となってくるわけであります。そして、その手段として考え得るのが財政政策と金融政策であります。公債の累増、GDPに対する公的債務残高の上昇というのを食い止めるために必要なインフレ、そして実質成長の数字はどの程度になるだろうか。
 国債の累増を食い止めるためにごく簡単なシミュレーションの結果を提示しております。この実証分析、私自身が推計したものを出してしまいますとなかなか信頼性に欠けますので、ここでは小黒一正氏が推計した、私とは大分意見が違う方が推計した推計式をベースにしてお話をいたします。
 二%インフレと二%成長、ある意味これが日本の目指すべき姿だというのが私の認識なんですけれども、この二%インフレ、二%成長の下では、債務残高伸び率が、政府支出を四%ずつ増やした場合、三%ずつ増やした場合、二%ずつ増やした場合、つまりは歳出抑制をするのではなくて、歳出の伸び率のペースを落としただけでも四年目から五年目に、現在既に発生している分の財政赤字についてはカバーが可能であるというシミュレーションになります。ただし、この二%成長というのが困難である、日本経済は一・五%成長がせいぜいであると考えたとしても、ある程度のソフトな歳出抑制によって同様に五年から七年程度での、現在生じている財政の赤字のカバーというのが可能になるわけであります。
 このような二%のインフレーションを可能にする政策とは何か。一つの可能性が金融、そして為替への働きかけであります。
 第一に、人口減少下なのでインフレは困難であるとの見解、意見をしばしば耳にしますが、人口減少下でもデフレからの脱却は可能であります。そもそも人口増減率とインフレ率というのは、ひいき目に見ても全く影響し合っておりません。これは、二〇〇八年から二〇一七年の人口成長予測と各国のインフレ率平均というのをグラフでプロットした図を見れば明らかなわけであります。反対に、むしろ人口成長率が低い方がインフレ率は高いのではないかという国際比較データもあるぐらいであります。
 そして、我が国が既に経験しております二・一四ショック、日本銀行による疑似的なインフレーションターゲット宣言によって大幅に為替は変化いたしました。このように強いコミットメントも伴う金融政策によって十分インフレーション、そして円高への対策というのは可能であります。そこで必要とされる、財政再建のための政策としても必要とされるのは、多様な資産の買入れによる量的緩和、つまり、外債等を含んだ量的緩和が可能になるように、また数値目標と期限を伴うインフレ目標の提示が可能になるように、そしてそのようにして為替レートへの効果的な介入が可能になるような法的な整備、準備を必要としているかと思います。一方、もう一つのデフレ脱却手段としての財政政策については、少し資料の方にまとめておいたので御覧になっていただければと思います。
 では、このようにまとめますと、消費税増税は不要であるのかというふうに疑問を持たれるかと思いますが、消費増税は必要であるというのが私の見解であります。
 その理由は、一つに消費税というのは大きな魅力を持った税制であることは間違いありません。一つに、簡素で効率的、そして広く薄く徴税が可能である税金である。そして、その結果、安定した財源として考える、カウントすることができる。そのため、直間比率について是正をという方向性については私自身否定するものではなく、ただし、その一方で消費税を増税する場合には、それが逆進性を持つ税制であることを考慮した十分な低所得者への対策と同時に行わなければならない。また、先ほど信頼の妖精というお話をいたしましたが、現下では、消費税増税がいつまで続くのか、そのゴールが見えていない状況であります。社会保障の改革に幾ら必要なのか、そのために何%の消費増税が必要なのかというのを明示した上での消費増税というのが、最も現在税制改革において望まれることなのではないかと考えます。
 これに関しまして、消費増税、その準備として何が必要か。現時点での消費増税は現下の財政状況を改善するという所期の目的を達成いたしません。そのため、現在既に生じている赤字をプライマリーバランス黒字に転換するための金融政策、為替政策が大きなテーマとなるであろう。そして、社会保障の改革によって必要な増税幅を確定させた上で消費増税を行う、この順番を間違えてはいけないのではないかと考えます。そのため、選択肢は、景気回復を見てその上での消費増税を行うというトリガー型の消費増税案、もう一つは増税実施時期までに景気を回復させる、つまり二〇一四年までに景気を回復させる。どちらが現実的でかつ可能な選択肢かというのを考えた上で、今次の消費税増税法案については御考慮、御検討いただければと思います。
 以上です。
○委員長(高橋千秋君) ありがとうございました。
 続きまして、長谷川公述人にお願いいたします。長谷川公述人。
○公述人(長谷川聰哲君) この度、公聴会において私が発言できる機会を与えていただきました委員長始め委員の皆さんに感謝を申し上げます。
 私の本日の議論は、消費税引上げに伴う低所得層の負担増に関して、軽減税率の導入を考えるべきであるという議論をお話しいたしたいと思います。私の議論の内容は、既にお手元に配りましたものを参照していただければと思います。
 初めに、なぜ軽減税率の導入が消費税引上げを行う時点で必要なのかを説明することにしたいと思います。
 収入に対して、生計を営む支出の収入の水準によってかなりの格差が生じております。これは過去、失われた二十年というふうに呼ばれる日本経済の停滞が、ますます雇用環境、それから生活水準の経済の停滞の中での悪化によって損なわれてきているということ、これが私どもにとって十分注意して手当てを講じなければいけない問題であるというふうに考えます。
 皆さんのお手元に配りました二ページ目の表にございますように、平成二十一年時点における世帯当たりの一か月の支出が、年収を一分位から十分位までに示したものでございますが、年間収入の十分位別に収入と支出をこうして比較してみますと、左から二番目に、一番目の分位に分類される年収が百七十四万円以下の平均世帯では収入が消費支出に追い付かず、毎月の収入に対して一・二六倍の支出を余儀なくされているという状況が生じております。世帯として経常赤字が生じている経済主体と言って過言ではございません。また、その所得層の食料支出の消費支出に占める割合は二六・〇九%、全ての所得層の平均と比べて高い支出割合を示していることが分かります。
 消費支出は、基礎的支出と選択的支出に分類することができます。消費支出が一%変化するときに一%以下の変化しかしない支出費目を基礎的支出と呼び、一%以上に変化する支出費目を選択的支出費目と呼んでおります。すなわち、所得の変化にかかわらず、消費水準を切り詰めたり引き上げたりほとんどすることがない生活に密着した支出を基礎的支出と定義することができるわけであります。この基礎的消費支出を保障する制度的枠組みが、我が国ではまだ十分に備わっていないというのが実情であります。今申し上げました基礎的支出と選択的支出に関しましては、二〇〇三年から二〇一〇年までのデータを三ページ目の資料に示しておきました。
 次に、私は、軽減税率導入をした場合、税収にどのような影響が生じるのかという議論をお話ししたいと思います。
 基礎的支出の総消費支出に占める割合を二〇一〇年時点で計算いたしますと、五六・二九%になります。この数字は、現行の五%消費税の課税されている下での水準であります。仮に消費支出がプラス五%引き上げられて一〇%消費税が掛かる場合、平均世帯当たりの消費支出は、二〇一〇年の消費水準を維持しようとする場合、十五万円ほどの家計負担の増加につながります。基礎的支出分の消費税率が仮に五%に据え置かれた場合、すなわち軽減税率の対象を基礎的支出分に対応させるわけでありますが、その負担増は平均的に六万六千円ほどにとどまることになるわけであります。
 次に、今、世帯レベルでお話し申し上げました数字から、家計レベルからの消費水準と課税規模の議論から、マクロレベルでの議論に転じてみようと思います。
 一年間に家計が消費する支出額は、国民経済計算の統計によりますと、一昨年度、平成二十二年度において二百七十七兆円であります。そのうちの食料・非アルコール飲料の消費支出は三十八兆円であり、一三・七六%の支出割合に当たります。これを基準にして、消費税が仮に八%に引き上げられた場合と一〇%に引き上げられた場合について、この費目の消費支出による国の増収は、平成二十二年度の金額を基礎にして試算してみますと、それぞれ一・二兆円と一・九兆円という数字が出てまいります。
 次に、私は、軽減税率導入の実態についての話に移っていきたいと思いますが、いま少し我が国の財政の数字にかかわりたいと思います。
 我が国の国債発行残高は、二〇一一年度末で御承知のように七百八十九・九兆円、七百九十兆円、その対GDP比率は一六二%であります。財政を健全化させ、世界的な規模にまで膨らんだ国債発行残高を削減させ、加えて年金基金を確保し受給者の不安を払拭させようとする改革に向けて皆様が今次国会で取り組んでいるところは、大変評価しているものであります。
 ここでまず、消費税引上げによって生じる低所得層の基本的家計消費の負担増をどう保障し、救済できるか、これまでの施策はどういうものであったかを簡単に整理してみますと、森信茂樹先生の整理したものをお借りします。消費税導入の改革に合わせて、八八年度の補正予算には、臨時福祉給付金等で五百四十三億円、臨時介護福祉金百二億円、そして税制面では、所得税の控除額引上げ、配偶者特別控除引上げ、特定扶養控除の創設、老年者控除の引上げ、老人配偶者控除、老人扶養控除の引上げ、公的年金等控除の創設などによって、高齢者世帯の税負担の軽減措置が採用されているとの説明がなされております。
 また、消費税が三%から五%に引上げが決まった九六年度の補正予算の時点で、臨時福祉給付金、臨時介護福祉金、加えて高齢者・障害者在宅福祉等整備基金への出資金、社会保障措置として、年金等の物価スライド対策、老人介護対策、必要最小限の少子対策に九七年度財源から充当されるということがありました。また、老人介護対策を計上いたしました。これが、九五年度一千億円、九六年度二千億円という数字であります。さらに、所得税少額納税者への基礎控除、配偶者控除及び扶養控除の引上げ、特定扶養控除の引上げ、老人配偶者控除、老人扶養控除の引上げ措置などが盛り込まれてきたと整理されているわけであります。
 そして、今次国会におきまして、社会保障と税の一体改革のための税制の抜本的な改革を行うため、暫定的な又は臨時的措置として、逆進性問題の解消に関連社会保障制度の見直しや所得控除、給付付き税額控除などの再分配施策の導入が盛り込まれているようであります。
 こうした我が国の消費税導入と引上げに当たっての弱者への救済策には、いささか臨時的な対処措置、予算措置に頼りがちであるというふうに考えます。欧米の政策とはその主なる軸足が異なっているのではないかというふうに考えております。
 そこで、税制という長期の仕組みを構築するという議論の中で、その長期的視野から、私はここで、EUの標準付加価値税率の適用に当たって軽減税率が使われている、そしてまた、その軽減税率が適用されるにおいてHS分類なるものが採用されているということについてお話しさせていただきます。
 EUの消費税に当たる付加価値税、バリュー・アデッド・タックスは、次の資料の図表、付加価値税率の国際比較を見ていただきたいと思いますが、この図表は、各国の標準税率、標準付加価値税率を示したものであります。キプロスとルクセンブルグのようなEUの中でも一五%という低い税率を設定している国もありますが、おおむね一九%から二七%に設定されております。フランスでは一九・六%、そしてドイツでは一九%であります。
 低所得層にとっては、所得に対し、また消費総額に対して基礎的消費の占めるウエートが高いことは前述したとおりであります。この標準税率のままでは低所得層にとって負担が大きいことから、基礎的消費の対象となる財貨・サービスには軽減税率が適用されております。
 EUの報告書等に従ってドイツ、フランスの軽減税率の対象財貨・サービスを示すと、以下のような分類となります。例えば、フランスでは標準税率は一九・六%ですが、軽減税率の対象として、食料品、上水道、医薬品、障害者用の医療器具、旅客輸送、書籍、ショー、映画、劇場の文化的サービスの入場料、有料テレビ、ケーブルTV、作家、作曲家等の著作権の提供、住宅の供給、建設、改築等、農業への投入財、ホテルの宿泊、レストラン、ケータリングサービス、廃棄物処理、道路清掃、ごみ収集に五・五%若しくは七%の軽減税率が適用され、さらに、フランスでは超軽減税率として、医薬品、新聞、刊行物等に二・一%が適用されているという現実がございます。
 また、ドイツでは標準税率が一九%で軽減税率は七%という二種類の比較的簡素な税率構造を持っておりまして、先ほどのフランスのように七%に設定した軽減税率の対象にはほぼ同様のリストが並んでおります。
 では、こうした欧州における軽減税率の導入は、それら諸国の税収の圧迫につながっていないのかということに関しましては……
○委員長(高橋千秋君) おまとめいただけますでしょうか。
○公述人(長谷川聰哲君) はい。
 次の表の数字で見たとおりで、我が国以上に消費税収が課税負担の中で高い状況にあるということであります。
 私からは最後に、この軽減税率を適用することによって低所得層の負担を軽減することができるということ、これを長期の税制改革の柱の中に取り込むことが必要であるということを主張して、発言を終わらせていただきたいと思います。
 ありがとうございました。
○委員長(高橋千秋君) ありがとうございました。
 次に、植草公述人にお願いいたします。植草公述人。
○公述人(植草一秀君) 御指名をいただきました植草でございます。
 本日は、社会保障と税の一体改革につきまして、また消費増税につきまして意見を申し述べる機会をいただきまして、深く感謝申し上げます。
 私は、消費増税提案に反対する立場から意見を述べさせていただきます。
 私が今回の消費増税法案に反対する理由は以下の五つでございます。お手元の資料、目次に要約してございますので、御参照いただければと思います。
 第一は、今回の消費増税提案が、二〇〇九年八月総選挙に際して民主党が主権者である国民に約束した政策方針、公約に反しているということであります。
 選挙に際しての公約は絶対の存在ではありません。政策を取り巻く環境は常に変化いたしますので、各時点で最善の政策運営を行うために公約とは異なる対応を取ることが迫られることはあり得るからであります。公約に示した政策方針を絶対に変えてはならないということではございません。しかし、主権者である国民と交わした約束に反する政策を実行する場合には、一、政策変更に正当性があること、二、主権者国民に政策変更を十分説明すること、三、主権者国民が政策変更を了承することのプロセスを経ることが必要不可欠でございます。
 ところが、野田内閣がこの度提案しております消費増税提案に関してこの点を検討してみますと、一、政策変更に正当性はなく、二、主権者国民に対する説明は行われておらず、三、主権者国民の了解を得たという形跡もありません。事実、各種世論調査でも、消費増税提案に反対する意見が多数を占め、とりわけ今国会中の消費増税法案の成立に反対する意見は更に多数を占めております。
 二〇〇九年八月総選挙の際に、現在の野田政権首脳が行った三つの演説がございます。民主党の政権公約を代表する演説ともいうべきものでございます。
 第一は、野田佳彦議員による二〇〇九年七月十四日の衆議院本会議演説。第二は、岡田克也議員による二〇〇九年八月十一日の千葉県柏駅前での街頭演説。第三は、野田佳彦議員による二〇〇九年八月十五日の大阪での街頭演説でございます。お手元の資料、二ページ目から五ページ目に関連の資料がございます。
 野田議員は、大阪での演説で次のように発言しております。鳩山さんが四年間消費税を引き上げないと言ったのはそこなんです、シロアリを退治して、天下り法人をなくして天下りをなくす、そこから始めなければ、消費税を引き上げる話はおかしいんです。この街頭演説の動画は、私が本年一月十五日にブログで紹介した結果として一気に広く流布されたもので、国会でも何度も取り上げられてきております。いわゆるシロアリ演説と呼ばれるものであります。
 野田議員は、官僚の天下りやわたりの根絶、すなわちシロアリを退治せずに消費税を引き上げることはおかしいということを主権者国民に訴え、主権者国民はこの発言をも踏まえて民主党に政権を委ねたわけでございます。
 また、岡田克也議員は、無駄な政府支出を排除することで年間九兆円の財源を調達することについて、五ページでございますけれども、与党はそんなことできっこないと言うが、私たちはそれをやる、一から制度を見直せばできると明言しておりました。
 主権者国民に対するこれらの発言と正反対の政策が推進されていることに対して、民主党に投票した主権者国民の多くが民意を踏みにじられたと感じていることを真摯に受け止めることが不可欠であります。書生っぽい議論であるかもしれませんが、日本の議会制民主主義を正しく機能させていくことを重視するときに、この問題を無視することはできないと思います。
 第二の問題として、政府が現行の社会保障制度は若年層に損失を与える制度であることを強調し、言わば世代間不公平の感情をあおる形で消費増税を推進していると感じられる点についての意見であります。
 その一例を示します。お手元の資料、六ページ目、七ページ目を御覧いただきたいと思います。
 二〇〇四年に厚生労働省が発表しました世代別の年金収支試算は、全ての世代で受け取る年金金額が支払う年金保険料の二倍以上になるということを示しておりました。公的年金は国民に利益を与える制度であり、年金保険料を納付することが促進されました。
 ところが、本年一月に内閣府から発表されましたディスカッションペーパーにおきましては、一九六〇年生まれを含むこれより若い世代の国民は支払う保険料よりも受け取る年金金額が少なくなるとの結果を示しました。
 二つの試算結果が正反対の結論を導いている背景として、二つの恣意的な手法が用いられたことを指摘できます。一つは、支払保険料において、二〇〇四年試算が会社負担を算入しておりませんのに対し、二〇一二年試算はこれを算入していること、単純計算して二〇一二年試算の支払保険料は二〇〇四年試算の二倍になるわけです。いま一つは、受取年金金額を一定時点での金額に換算するための割引率に用いる指標が異なることであります。二〇〇四年試算では年金収支が有利になるように低水準の物価上昇率が使用され、二〇一二年試算では年金収支が悪く見えるように高水準の運用利回りが用いられております。二〇〇四年試算では年金保険料を納付させるために年金が得になるとの数値を示し、二〇一二年試算では現役世代の不平を引き出すために年金が損になる数値が示されたものと解釈できます。
 本年発表されました内閣府のペーパーは、政府の公式見解を示すものではなく、個人名によるペーパーではありますけれども、政府はこうした試算結果をも利用して若年層の損失を緩和するために消費税率引上げが必要との説明を展開しているように見えます。これは、消費増税を正当化する論拠としてはやや品格に欠けるものと言わざるを得ないと思います。現行年金制度の世代間不公平が深刻であるなら、その問題を年金制度そのものの改革によって解消するべきであり、年金で発生する損失を消費税で調整するとの論理の組立ては陳腐であると思います。
 第三の問題は、日本が現状で財政危機には直面していないということであります。
 政府は、政府債務危機に揺れる欧州の事例を提示して、日本もいつ同じ状況に追い込まれるか分からないと主張し、待ったなしの改革を提唱しております。しかし、日本財政を客観的に評価する限り、日本の財政事情が政府債務危機に揺れる南欧諸国等と同列であるとの評価は失当であります。
 財務省は二〇〇二年に格付機関に意見書を提示しておりますが、このときに財務省は日本は財政危機に直面していないことを主張しております。その論拠として提示されました貯蓄超過、すなわち経常収支黒字、そして対外純資産、外貨準備などの状況は基本的に変化しておりません。日本の経常収支黒字基調が今後も持続するかどうかについては警戒論もあり、財政収支の改善は重要課題であるとは思いますが、直ちに日本が政府債務危機に直面するとの危機感を政府があおることは事実に反しており、健全な政府対応とは言い難いと思います。これは九ページの資料を御覧いただきたいと思います。
 次に、十ページの資料に関連いたしまして、日本政府の債務規模は大きいですが、資産規模も膨大であることを見落とせません。
 政府が発表しております国民経済計算統計で二〇一〇年末の一般政府の資産・負債バランスを見ますと、資産超過状態であり、政府債務危機が生じるおそれは極めて低いと言わざるを得ません。また、政府債務に含まれる地方債については、発行時点において債務の償還可能性などについて厳しいチェックが行われております。また、建設国債については、負債見合いの資産が存在しており、赤字国債とは区別して考察することが必要であります。
 第四の問題は、二〇〇八年度以降に急拡大した財政赤字をもたらした要因が循環的なものである点を踏まえることが不可欠であることです。
 安住財務相は国会答弁で日本の財政赤字について構造的問題だと発言しましたが、現下の財政赤字の大宗は循環的なもので、構造的な財政赤字は限定的でございます。
 二〇〇七年度の国債発行額は二十五・四兆円でございましたが、二〇〇七年度歳出には十四・四兆円の債務償還費が含まれておりました。これを差し引いた実質的な財政赤字は十一兆円であり、GDP比でも二%強の低水準でございました。八ページの資料は、ベースは違いますけれども、参考資料でございます。ところが、グリーンスパン前FRB議長が百年に一度の金融津波と表現したいわゆるサブプライム金融危機が、世界経済、金融市場を震撼させ、その結果、日本経済が急激に悪化して財政赤字が急増いたしました。
 十一ページを御覧いただきたいと思いますけれども、つまり、現在の多額の財政赤字を生んだ主因は景気悪化という循環的要因であり、この点を踏まえた財政健全化策を検討することが必要であります。不況で財政赤字が拡大しているときに巨大増税などの超緊縮財政政策を発動すると経済が更に悪化して、減少させるはずの財政赤字は逆に拡大します。一九九七から九八年度、二〇〇〇年度から二〇〇三年度などの事例を見てもこの点は明確であり、現時点で巨大増税を決定する政策対応は正しくないと思われます。
 第五の問題は、日本経済を取り巻く環境、日本の租税調達の実態を踏まえたときに、現時点で巨大な消費税増税を決定することは適正でないという点でございます。
 十二ページを御覧いただきたいと思いますが、日本の名目GDPは過去二十年間増加しておりません。政府の経済成長政策が失敗し続けていることは明白でございます。経済のパイが縮小している中で、年間十三・五兆円もの税金が国民から吸い上げられることの負の影響は絶大であります。
 しかも、消費税の場合、租税負担能力の低い、所得の少ない層における所得に対する税の比率が著しく高くなります。格差拡大が重要な社会問題になっている現状を踏まえたときに、国民的なコンセンサスをも得ずに低所得者を直撃する巨大増税を国会が決定することには慎重でなければならないと思われます。
 十三ページを御覧いただきたいと思いますけれども、かつて消費増税の論拠として直間比率の是正という言葉が用いられておりましたが、この言葉が聞かれなくなっております。事実、一九九〇年の国税収入六十・一兆円に占める消費税収四・六兆円の占有率は七・七%にすぎませんでしたが、二〇〇九年度には、国税収入三十八・七兆円に占める消費税収九・八兆円の占有率は二五・三%に跳ね上がっております。
 零細な事業者は、消費増税分を価格に転嫁できない現実がございます。このとき、零細事業者が税率引上げ分の税額を納付しますと、この消費税においては零細事業者は納税者であると同時に租税負担者になります。経済効果から表現すれば、これは消費税ではなく零細事業者事業者税ということになります。
 十四ページを御覧いただきたいと思いますが、また、一九九七年度に消費増税を実施した前後の家計消費の動向を見ますと、税率引上げ後に消費が減退したことは明白であります。財務省はアジア通貨危機や国内金融不安などの発生に責任を転嫁しておりますけれども、国内金融不安が消費増税に連動する株価急落などに影響されて発生したことなどを含め、この反論には説得力がございません。
 以上、五つの視点から説明をさせていただきました。これらのことから、現在提案されている消費増税法案は否決されるか廃案とされるべきだと考えます。
 以上でございます。
○委員長(高橋千秋君) ありがとうございました。
 次に、醍醐公述人にお願いいたします。醍醐公述人。
○公述人(醍醐聰君) それでは、お手元に配付されております私の資料に沿って意見を述べたいと思いますが、時間の制約上、十八ページまでに書きました三つの論点に限らせていただきます。それ以降の論点につきましては、後ほどの質疑の折に御質問をいただけましたら説明をさせていただきます。
 私の意見の一つ目は附則第十八条二項の解釈についてですが、本院でもこの点が取り上げられております。
 ここでの問題は、附則十八条の二が、消費税は全て社会保障経費に充てるという政府の公式見解と整合するのかどうかということであります。その際、同項でいう税制の抜本的な改革という文言の趣旨は、閣法第七二号法案による消費税法の改正、すなわち消費税増税を指していることは明らかだと思います。とすれば、それに続く同項の財政による機動的対応が可能となるという文言は、消費税増税によって財政的に余裕が生まれるという意味に解するほかないと思います。
 このような前提の下に、附則十八条二の意味を分かりやすく説明するために、資料の二ページに示しました数値例に沿って三つのケースに分けて検討をしていきたいと思います。
 ケースTは、消費税増税分、ここでは十兆円の増税といたします、を含む総計消費税収二十兆円全てを社会保障経費に充てたものの、増税後の社会保障経費が二十兆円を下回ったために消費税収に余裕が生まれ、その分を附則十八条の二に記載された成長戦略、事前防災・減災等に資する分野に重点的に配分するという、そういうケースです。
 このような消費税収の配分が可能となるのは、社会保障経費を消費税増税前よりも削減することを前提としております。このような前提が果たしてあり得るかどうかはともかく、余裕が生まれるという解釈が成り立つ一つのケースとして想定いたしました。
 しかし、このようなケースは、消費税を増税する前からこのような社会保障経費がそれを下回るといったことが想定されるのであれば、消費税の増税を増税後の社会保障経費の見込み総額の枠内にとどめるよう増税額を圧縮するのが道理であります。
 なお、私は、消費税増税それ自体に反対するという立場を取っていることは後ほど申し上げます。
 それはさておきまして、そのような社会保障経費の見込みが消費税増収を下回ることを想定しながら、それを上回る増収とするならば、増税した消費税収が余るので他の用途に配分すると、こういうことになりますが、これは社会保障の安定財源の確保等を図るためという消費税改正法案の法案の題目に偽りがあるということになってしまいます。また、消費税増税分は全て社会保障に充てるという政府見解や政府の国会答弁とも相入れないことになってまいります。
 なお、よもや、この法案の中にある安定財源の確保等を図るためにという条文にある「等」の中に、社会保障の安定財源以外の財源として消費税収を充てることも可とするといった事後的解釈を生むかのようなことは、私はないものと信じております。
 次に、ケースUですが、この場合は、消費増税分十兆円は全て社会保障経費に充てますが、増税後の社会保障経費の伸びを消費税増収分以下にとどめる。ここでは、十兆円増税はしたが、社会保障経費の伸び以下に、六兆円に充てるにとどめるという場合であります。この場合、増税後の財源と使途というストックベースでその財源使途の対応関係を見ますと、消費税合計二十兆円は全て、社会保障経費総額二十六兆円でありますから、充てたという形にはなります。
   〔委員長退席、理事櫻井充君着席〕
 なお、このケースUというのが、二ページに書きました模式図を想定しているものであります。
 しかし、消費税増税分というフローベースで財源と使途との対応を見ますと、増税分十兆円のうち四兆円が社会保障経費以外の経費に充てられるというこの事実は歴然としております。そうなりますと、このケースでも、社会保障の安定財源の確保等を図るための消費税法改正という法案の題目と附則十八条の二がそごを来すことになります。また、消費税増税分は全て社会保障に充てるという政府見解とも相入れないことは、ケースTと変わりがありません。
 最後のケースVは、消費税増税とは別に、新規の財源、例えば国債を増発して財源を調達し、それを附則十八条の二でいう諸経費に充てるという場合であります。
 この場合は、消費税増税分は全て社会保障経費に充てるという政府見解と附則十八条の二がそごを起こすとか起こさないとかという問題は、そもそも議論になり得ないものであります。が、しかし、消費税増税とは無関係な財源を調達することによって、財政的に機動的な対応が可能になるという趣旨の文言を消費税改正法案に、附則に盛り込むということは意味不明であり、法案の文言として失当であると言えます。附則十八条の二がこのケースVを想定しているのであれば、閣法第七二号法案は国語的に瑕疵のある附則を含んだ法案ということになりますので、当該附則を削除するか、法案提出者に差し戻して、文言の再考を要求するのが責任ある国会の審議だと私は考えます。
 とはいえ、文言解釈はどうであっても、附則十八条の二に明記されたような経費、特に世上言われる公共事業に充てるために国債を増発するということを想定しているとするならば、国債残高の累増を根拠に財政再建待ったなしを、これを喧伝し消費税増税を訴えた政府の言動に背反するものであり、国民に対する信義にもとる立法行為であると言わなければなりません。
 次に、私の二つ目の意見は、増税を消費税増税に限定し、所得税、相続税などの他の税目からの増税が全く削除されてしまったという問題です。これは、税の所得再分配機能に照らしても、税の財源調達機能に照らしても、到底容認できるものではないと考えております。
 課税の現状はどうなっているかということを資料の中に示しました。所得税合計所得に対する負担率と相続税の課税状況であります。このうち、所得税の課税状況を見ますと、合計所得が一億円を超える段階から所得税負担率が逓減している、かつ、その負担率は法定税率を大幅に下回っております。こうなる主な理由は、高額所得層において低率分離課税扱いされている株式譲渡所得の占める比重が高いからにほかなりません。
 また、相続税の平均課税価格は所得税に比準すると四〇%の最高税率が適用される水準でありますが、実際の平均負担割合は一一・五%にとどまっております。また、百億円超の課税所得の納税者の場合でも、負担割合は三四・三%にとどまり、法定最高税率よりも約一六ポイント低い状況になっております。こうなる主な理由は、基礎控除が他の所得種類に比べて突出して大きいということにあります。
 政府は、今回の消費税増税法案を提出するに当たりまして、課税の現状を次のように認識しております。それは、今年の二月十七日の閣議決定、一体改革大綱の中に示されております。我が国の所得税については、中堅所得層の負担累増感を解消する等の観点から、昭和六十年代以降、税率構造の大幅な累進緩和を実施してきた。他方で、近年の給与所得者の所得構造の実態を見ると、平成九年以降、構造変化が見られる。すなわち、平均的な所得水準が下落するとともに、その分布についても全体として下方へシフトしている。こうした中で、特に高い所得階層の割合は近年むしろ高まっており、格差が拡大する傾向が見られる。このような所得構造が変化する一方で、税率構造の累進性が低下したままであることにより、所得税による所得再分配機能は近年低下している。次にアンダーラインを引きましたが、今後、消費税率の引上げにより税制全体としての累進性が更に低下することも踏まえれば、所得税については、高い所得層に負担を求めるなど所得再分配機能の回復を図る改革を進める必要がある。私もこのような認識には同感しております。
 しかし、だとするならば、三党合意を経た修正案で、所得税及び相続税の、これも極めて僅かな改革、それすらが全て削除されてしまった。これは税の再分配機能を劣化させるにとどまらず、財源調達機能も劣化させているということを強調する必要があると考えます。このような不条理な税制の修正を経たままで消費税増税オンリーの増税を図るということは、税の正義に全くこれはもとるものだと言わざるを得ません。
 なお、ここで所得税は景気の変動に弱いということがしばしば言われますが、それについての反証を示しておきたいと思います。
 先ほどもございましたが、ピークの一九九一年から二〇一一年度予算の段階で所得税は十三・二兆円減少いたしました。これを称して景気変動に弱いとかいった言い方がしばしばされます。しかし、財務省の資料によりますと、その減収要因の中で、資料に示しましたとおり、九五年の制度減税、累進性の緩和等二・四兆円、九九年の最高税率の引下げ、所得税から住民税へのこれは制度的減収、合計いたしますと五・七兆円になります。これは先ほどの減収額全体の四三・二%です。かつ、この五・七兆円というのは、今回、消費税増税で増収が見込まれているグロスの税収十三・五兆円の四二%、社会保障関係経費等〇・八兆円、それから低所得対策でマイナスになると言われている二ないし三兆円と言われている二・五兆円、それを引いたネットの消費税増収に対しては五六%を占めております。このような所得税の減少を消費税で補うというふうなこういうことが、しかもそれが累進性を劣化させるということを政府自体が認めている、こういう税制を本当にこの国会で通していいものか、私は極めてこれは異議ありと考えております。
 時間がございませんが、最後に転嫁の問題についてですが、既に皆様方御承知のとおり、中小企業四団体が示したアンケート調査によりますと、売上高規模二千万円以下のところでは、ほとんど転嫁できないというのが四〇%を超えております。全て転嫁できると思うというのは二〇%台です。これほどまでに中小企業団体が転嫁を困難だと言っている、かつ、国会でその対策はと問われたら、今のところ手がないという状況です。これを放置して間接税、消費税を増税するということがいかに不条理なものであるかということを是非ともお考えいただきたいと思います。
 時間がございませんので、最後に結びとさせていただきます。
 以上、述べてきました種々の理由から、消費税法の一部を改正する法律案修正案は、多くの重大な瑕疵と不条理を含んでおり、本参議院で採決することには私は真っ正面から反対をいたしますし、かつ附則十八条の二に見られるように、到底重大な瑕疵のある条項について徹底した審議が尽くされてはおりません。
   〔理事櫻井充君退席、委員長着席〕
 よって、私は、本法案を一度まず廃案として、先送りされた所得税、相続税ほか資産課税の抜本的な見直し、国の税源を涵養するという意味をも持つ社会保障と雇用環境の抜本的な見直しを、併せて改めてゼロから集中的、精力的な審議がされることを強く要望して、意見を終わらせていただきます。
○委員長(高橋千秋君) ありがとうございました。
 以上で公述人各位の御意見の陳述は終わりました。
 これより公述人に対する質疑を行います。
 なお、質疑の時間が限られておりますので、御答弁は簡潔に行っていただくよう御協力よろしくお願い申し上げます。
 それでは、質疑のある方は順次御発言願います。
○梅村聡君 民主党の梅村聡です。
 公述人の皆様方におかれましては、今日は貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。
 ただいま今日の皆様からの意見表明ということで、特に消費税の課題を中心に御意見をちょうだいをいたしました。そして、改めて今、今回、社会保障と税の一体改革でありますから、国民負担というもう少し大きなとらえ方をさせていただきたいと思います。
 この質問は五人の方々それぞれ全員の方にお聞きをしたいと思いますが、今、日本の国民負担率、これは国民所得に占める租税とそして社会保険料の割合でありますけれども、これは今約三八%から三九%、近年推移をしております。一方で、いわゆる中福祉中負担と言われるヨーロッパ諸国はこの数字が四五%から五〇%前後と、そういう数字を示しているわけでありますが、公述人の皆様におかれまして、日本が、もちろん今すぐ消費税を上げるかどうかの議論ということもあるかと思いますが、将来的に、中長期的にどの水準を日本として取っていくべきであるのかということに関する御意見をちょうだいしたいと思います。
○委員長(高橋千秋君) 全員でよろしいですか。
○梅村聡君 はい、お願いします。
○公述人(中村豊明君) ただいま梅村先生からお話がありました中でいいますと、私どもの推計でいきますと、国民負担率が二〇一二年で多分四割ぐらいになるだろうというふうに見ておりますけれども、その外にやはり財政の赤字の部分がございますので、これを足すと大体五〇%ぐらいになるだろうと。
 したがって、それが、じゃ、他のアメリカですとか、イギリスとかヨーロッパですね、でいくと、大体これがアメリカは四三%ぐらい、これちょっと過去ですので、今多分五〇超えていると思いますけど、ほかのイギリス、ドイツを比べましても、やはりそこの国民負担率が大体五割ぐらいにあると。
 そうすると、私どもは、赤字を国民が直接は負担はしておりませんけれども、将来の負担というところまで考えますと、実は五割を既に負担していると。ただ、その赤字の部分を将来の世代が返すということになりますので、やはりこれは五割ぐらいになっても仕方がないんではないかと。それが、欧米というのは既に高齢化、高齢化と言ったらおかしいですけど、インドのように国民の平均年齢が二十五歳ぐらいというところと違ってやはり平均年齢が上がっておりますので、そうすると、生産年齢人口が減って受給者が増えていくというようなことを考えますと、そういった既にところに突入している国に急速に私ども追い付いちゃいましたけれども、やはり五割ぐらいというのが必然ではないかというふうに考えております。
○公述人(飯田泰之君) ただいま国民負担率の議論がありまして、こちら、財政赤字による潜在的な負担を含めますと、やはりヨーロッパ諸国とほぼ同程度ということになるかと思いますが、大きな違いは、現在の日本の社会保障制度というのは格差是正に全く役に立っていないという点であります。
 年代別に観察いたしますと、年代ごとで再分配によって日本は不平等指標が上がるほぼ唯一の国であります。この現状で考えますと、一つにはこの再分配を不平等度を縮小する方向に向ける、若しくは国民負担率そのものを下げて再分配の是正そのものを放棄する、これどちらの道に向かうのかは、これは私の個人的な見解としては是非福祉、再分配の充実に向かってほしいんですが、それは今後、国民的な議論が必要な点なのではないかと考えます。
 以上です。
○公述人(長谷川聰哲君) 私は、既に皆さんにお示しいたしました消費税関連指標の国際比較という表に示しましたように、総課税中の消費税の割合をヨーロッパ、OECD諸国、また日本と比較いたしましたときに、日本は二〇〇九年時点で一六・九%であると、OECD平均として三〇%になっていると。これに今、梅村委員の御指摘になりました社会保障の負担という部分を考えますと、日本の場合、高福祉を求める場合に、その負担という部分についてしっかりとした制度を手厚く組み立てていかなければいけないと、そういうふうに考えております。
 その場合、やはり消費税を更に厚いものとして制度を組み立てていくという場合に、その透明性という部分と同時に、今のような形ではなくて、私が提案しましたような軽減税率のような形で弱者を救済するという、そういう税制というのは長期的な視野で組み立てられるべきであるというふうに考えているわけですね。
 それで、あと、収入源に関しましては、ほかの公述人も指摘されていますけれども、簡素さが重要であるということと、それから広く負担を求めていくというような制度で、数字的には、やはり日本は欧米というかヨーロッパの負担から考えますとかなり低い状況にあって、これは近づく努力をしていかなければ高福祉を私たちは求めることはできないのではないかというふうに考えます。
○公述人(植草一秀君) 御質問のありました点について、特定の数字は持ち合わせておりませんけれども、これまでの公述人が発言しましたように、今後の日本の高齢化の進展、それから現在の多額な債務の残高という状況を踏まえれば、当然国民負担率は上昇せざるを得ないと。現状の三八から三九ということを踏まえれば、五〇%近くまで上昇することは避け難いのではないかと思います。
 ただ、全体として言えますことは、最終的には国民の選択で高福祉高負担を選ぶか中福祉中負担を選ぶか低福祉低負担を選ぶかということでございますけれども、私が懸念しますのは、様々な政府支出の無駄を排除しませんと、高負担になったにもかかわらず高福祉が実現しないという、この問題について真剣に考える必要があると。
 それからもう一つは、新たにこの社会保障の制度を設計する際に、税制も含めて所得再分配機能というものをしっかりと充実させるということを念頭に置いた制度の設計が重要ではないかと思います。
○公述人(醍醐聰君) 議員もいろいろこういう国民負担率という関係する文献、御覧になっていると思うんですが、経済学の間でほぼ共通した認識は、国民負担率というものが高い低いを議論することは政策的インプリケーションがないというのがほぼ共通した認識だということは御存じじゃないのかなと思っておりまして、私もそのとおりだと思っております。
 国民負担率という指標から制度設計にどうつないでいくのかということがまさに政治の大事な問題なんですけれども、何らかのそこからインプリケーションが、どういうのが出てくるのか。私に言わせれば、税負担率という場合でも、先ほど少し申し上げましたが、相続税の平均課税価格二億円を超えている層が負担率は一一%です。これは、所得税でいえば課税所得二百万から三百万の方と同じ水準なんですね。こういうことがあっていいのかどうかということを議論することの方が意味はあるんじゃないか。
 それから、先ほど、所得税でも、五十億円を超える段階になると、まあ合計所得ですけれども、その負担率が一三%です。これも、法定でいけば、一三%というのは課税所得四百万から五百万辺りの方々の税率のはずなんですね。それが全く懸け離れているということを議論することの方が負担率の問題を議論するときには意味があるのではないかと考えております。
○梅村聡君 負担率の問題というのは一つの目安ということだと思いますが、それに加えて、いろんな、福祉であるとか再分配の問題を考えていかなければいけないと。そういうことでは、五人の皆様方はそこの部分については一致しているんじゃないかなと思っております。
 その中で、醍醐公述人から、先ほどから不条理という言葉が何回も続いておりますけれども、これは醍醐公述人のちょっとブログを拝見させていただきました。その中で、消費税に負担を求めるのではなくて、この対GDP比で租税負担率を見ると、この負担率が先進国の中で最低水準にある個人所得税こそ最優先の増税候補なのであると、これ日本の現状について述べられているんだと思います。
 一方で、今日いただいた資料の中で、じゃ、それに当たる部分というのがどこかなと考えますと、この二十七ページの資料に、消費税創設時前の所得税の累進性、ここに戻すべきだというふうに書かれておるんですが、こちらでどれぐらいの増収になるかというと、二兆円と書かれています。そうしますと、先進国の中で最低水準を脱するかどうかは別にして、先進国並みに負担をお願いするときは、二兆円ではなくてもう少し規模が大きくなるんじゃないかなと思います。
 そう考えますと、累進性を戻すということも、これは不条理を解消することには大事かと思うんですが、さらに、この五百万円以下の課税所得の、そこのブラケットについても取り組んでいくべきだと、そういうお考えがあるのかどうか、ちょっとお答えいただきたいと思います。
○公述人(醍醐聰君) この二十七ページの説明のところで書かせていただいておりますが、所得税をもっと強化すべきという方々の中でも、これ、私のこの試算は相当低い所得層の方にまで遡っているということはお分かりいただけるかと思うんですね。だから、そういう方々にとってみれば何だという形で、逆に私は批判される可能性もあるというぐらいの覚悟でこれは申し上げたわけですけれども。
 以前に戻すべきというのは、何か一つの基準がないと議論ができないと思うんですよ。多ければ多い方ほどいいと言ったら切りがないわけですね。最高税率どんどん上げましょうといっても、それは、だから、まずは何に基準を求めるべきかということで、この消費税を導入した時点というのを一つの基準とさせていただきました。
 ただ、私も試算しましたが、これでも、相当遡っても二兆円、一・九兆円から二兆円ぐらいが、いろいろ計算しましたけれども、出てくる堅めの数字かなと。これ以上やりますと、やはり所得の再分配機能という面からそごがあるのと、低所得の方にやっても財源調達として多くを望めないということがあるわけです。それだったら、もっと所得の多い方を税率を上げた方が財源調達機能としてははるかにいいだろうという考え方でやりました。
○梅村聡君 そこがちょっと、不条理というものを解消することと、実際の所得税にどれぐらいの割合でお願いするかということ、そこは若干議論する余地が私はあると思いますので、またこれについてはしっかり考えていくべき課題じゃないかなと思っています。
 時間が来ましたので、最後に、長谷川公述人に少し、HS分類を使った軽減税率の導入の作業ということを書かれておりますが、この部分、先ほどの御説明の中でございませんでしたので、この部分に少し説明をいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
○公述人(長谷川聰哲君) 私の資料では八ページ辺りに紹介しておりますが、本来、HSという用語は、WTO、国際貿易機関に対して加盟国各国が関税の上限、譲許税率を報告する、通告するという義務がありまして、その際にこの商品は何%であるというような形で分類された商品コードから成っているものであります。
 このHSコードというものは、一九五二年に世界税関機構というのがまた国際機関としてございまして、そこが言わば国際公共財としての商品の分け方、技術が進歩いたしますと新しい商品などが出てまいります、そういったものを違うコード番号を付与してそれを識別する、国際間で識別すると、そういうためにでき上がったものであります。
○委員長(高橋千秋君) おまとめいただけますでしょうか。
○公述人(長谷川聰哲君) はい。
 これが、日本でも当然国際貿易をする際に輸入、輸出にHSコードというのの何番に当たるかということが使われているというわけで、ヨーロッパではこれが付加価値税率の特定に使われていると、これを使うべきであるということを私は提案しているわけであります。
○梅村聡君 終わります。
○塚田一郎君 自由民主党の塚田一郎です。
 今日は五名の公述人の皆様には貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございます。限られた時間でありますけれども、時間の許す限り、順次御質問をさせていただきます。
 まず最初に、中村公述人に、企業、経済の団体の代表ということでありますので、二点お伺いをしたいわけでありますが、一つ目はデフレ経済下における消費税引上げに伴う価格転嫁の問題であります。
 これは委員会でも何度も議論がございました。残念ながら、デフレ経済、需給ギャップの大きい今の経済状況の中で消費税の引上げが行われると、価格転嫁は恐らく難しいだろうと。これは、前回の引上げ時よりも経済環境は今悪くなっているということでありますが、これに対してもう少し具体的にどういったアプローチを考えておられるのか、御説明をいただければということが一点。
 もう一つは、今回は八%と一〇%と二段階の引上げになっております。これも、企業の側から見ると、その都度この消費税の引上げでコストが掛かってくる局面があると思われますが、この二段階引上げになっていることについてどのように御評価をされているのか。
 この二点について、お願いいたします。
○公述人(中村豊明君) ただいまいただきました二点ですね。
 まず、デフレ経済下における転嫁ですけれども、確かにデフレ下ですので、これは転嫁というのは非常に難しい部分はあるかと思います。ですから、これはなぜ必要かということと、それからどうやって転嫁をすることが大事だということを、それは経済界とそれから併せて政治の面からも普及をさせていくということが大事だと思います。これをいざあしたからやるということではなくて、やはり今検討されているのは二〇一四年の四月からということでありますので、ここまでの間にどうやって転嫁ができるかという仕組みを考えるということが私どもといたしましては非常に大事なことだと思います。
 したがいまして、事業者間の間は、これは今までもう外税で実際にやっておりますので、内税であってもこれは転嫁の仕掛けというのが比較的きちっとやればできると思います。ですから、あとは消費者との間のところの面をどういうふうにしていくかということを考えるということが必要であろうと思いますので、これはやはりその先のことを考えてどうやって転嫁していくかということを考える。
 そのために、ちょうど今回は二段階ということがあります。これは二〇一四年の四月からと、それから一年半掛けた一五年の十月からだったと思いますけれども、この二段階でやるということが非常に私どもは大事だと思います。それを、例えば一四年の四月から一気に五ポイント上げると、こうなりますと相当なインパクトがあると思いますが、やはり三%をまず一四年の四月にやるということ、その先にあとまた二があるということがありますので、したがいまして急な買い控えだとかいうことはないような仕掛けになろうかなと思います。
 ただ、本来ならドイツが昔やったような一%ずつをやるというのが、考えたやつがいいかと思いますが、これはちょっと事務的に言ってかなり難しいだろうということで、やはり二段階でやるということがいいんではないかと思いまして、私どもとしては、この八と一〇と二段階に分けてやるというのは非常に適切なやり方ではないかというふうに認識をしております。
○塚田一郎君 ありがとうございます。
 次に、飯田公述人にお尋ねをいたします。
 まず経済を良くしないと消費税増税をしても財政再建は成らないという御指摘だと思いますが、更なる金融緩和と財政出動が必要だということを言われて久しいわけですが、なかなか実際に経済が上向いてこないという状況もあります。
 具体的にもう少しお尋ねをしたいんですが、例えばインフレターゲットもそうですし量的緩和もそうですが、更なる金融緩和を具体的にどういう水準に設定をすることが必要かということと、財政出動を行うとしたらどういった分野にどういう規模で行うということが適切なのか、これについてまず一点。
 もう一つは、いずれ消費税の増税をする際に経済の好転が条件だということは法案にも書いてあるわけですけれども、実際の目標はまあ目標であって、それは必ずしも実現できなくても引上げはできると、総合的に判断をするということになっております。先生がお考えの消費税引上げができる経済状況というのは、具体的にどのような成長率、物価指数で、あるいはそれがどの程度持続的であれば消費税引上げができる環境か。
 この二点についてお聞かせいただきたいと思います。
○公述人(飯田泰之君) 第一点でありますが、金融緩和の水準又は方法に関しまして私が望ましいと考えていますのが名目四%成長を目標とした金融政策のルール化であります。ただし、これは直後にすぐに達成可能なものではありませんので、やはり当面、当初の目標にすべきは、二%のインフレ率を主な目標としたインフレーションターゲット、そして、そのために必要な手段としましてのより幅広い、外債を含めた量的緩和の必要性ということになるかと思います。
 また、財政出動に関しましては、こちら、私自身の持ち時間の中で説明し切ることができませんでしたが、現在、日本の財政支出、事公共事業に関しては極めて特殊な環境にあります。といいますのも、公共事業費を増やしても建築業界全体の生産量が余り増えない、つまりは公共事業が民間事業を食うという現象が起きております。これは、公共事業また建設土木業界に供給制約がある場合に起きる状況であります。そのため、財政出動を行う場合は、ゆっくりと増やしていく、又は分野を従来のものとは異なるものに振り分けていく必要があるかと思います。
 また、消費増税を行うために必要な経済状態ということですが、複数年にわたって名目三%以上の成長が行われていること、そしてもう一つは、これは数値目標ではありませんが、社会保障改革の姿が見えることによって必要な増税幅というのを示せる、つまり、幾ら掛かるかを示すことができたときというのが条件かと思います。
 以上です。
○塚田一郎君 飯田先生に追加でもう一点お伺いしたいんですが、法案に事前防災ですとか減災のインフラ整備ということが十八条二項にあるわけですが、これはなかなか収益性で判断をできない分野の、しかしながら人の命と暮らしにかかわる重要な投資だということで我々としてはそういう内容を盛り込ませていただいているわけですが、こういった点についてどのように評価されますか。
○公述人(飯田泰之君) 現在、被災地の雇用情勢を見ておりますと、一番多くの問題は、主要都市、具体的に言いますと仙台市近郊以外での大幅な人手不足状態であります。
 といいますのも、今回の復興をめぐる公共事業というのが長年にわたって継続されるとはちょっと思い難いと。その一方で、現在の土木事業はかつてのイメージとは異なりまして高度に技術化された職であります。したがって、三年間限定の職に就くために例えば半年間職業訓練をするという選択を行う労働者は少ない。その意味で、現在日本の土木業界は供給制約状態にあると考えられます。
 そのため、事前防災も含め、土木公共事業によって景気の振興を図るというのは極めて困難な状況にあるというのが私の理解でありまして、その一方で、必要な事前防災を行うためにはかなり長いスパンを掛けてゆっくりと増加させていく、ゆっくりと準備をしていく必要がある。つまりは、土木建設業界の供給能力の上限というのをたたかない形、又は、長期的に続く事業であるため、職業訓練をした上での労働者の参入が見込めるような形で事業を行っていく、やはり数十年単位での事前防災、国土づくりというのを考えなければいけないのではないかと思います。
○塚田一郎君 次に、長谷川公述人にお尋ねをいたします。
 これ、低所得者層への負担軽減策として軽減税率ということの御説明があったわけですが、ほかにも、政府は今、給付付き税額控除、あるいは暫定的に簡素な給付措置といったような方策、先ほど中村さんの方からも御指摘があったわけですけれども、こういうことも今議論の俎上にあるわけですが、そういったものに比べて軽減税率が優れていると、あるいはほかのものについては問題があるといった点について少し御説明をいただければと思います。
○公述人(長谷川聰哲君) 私は、ヨーロッパの付加価値税率の採用に当たって軽減税率が使われていると、これを我が国も導入すべきだということを主張しているわけでありますけれども、我が国は、今、塚田委員が御説明されましたように、給付付きの税額控除という、こういった手法も一つの方法であるということは理解しております。
 しかし、皆様御承知のように、税制というのは長期的な制度のビジョンの中で組み立てられなければいけないと、暫定的という形よりも、今の段階で消費税を厚くしていくに当たっては、軽減税率というような長期的な制度の中にしっかりと組み込む在り方というものが重要であるということで、この段階で私は提案させていただいているわけであります。
○塚田一郎君 軽減税率に関してもう一つ、再度長谷川先生にお尋ねをしたいんですが、軽減税率の場合、試算上も財政負担が一番大きいと、三兆円ぐらいの試算を政府はしているわけですけれども、それがほかの制度に比べて軽減税率を導入しにくい、例えば食品全般に掛けた場合とかですね、どういった形にするかにもよるんですが、そういったことでの議論ではもちろんない部分もあると思いますけれども、その点も含めて、せっかく消費税を上げてもその財政負担が大きくて消費税増税の効果が得られないという議論もありますが、その点についてはいかがお考えですか。
○公述人(長谷川聰哲君) 先ほども申し上げましたように、消費税というものを長期の税制の仕組みとして位置付けなければいけないと。そういった場合に、何と申しましょう、政府が今試算として、財務大臣が先日試算の数値を出しておられましたけれども、これはいろいろな前提の下で数字が変わってきます。私自身も計算したものを出してございますけれども、これはまた後ほどでもお話ししたいと思いますが、その短期的などちらを取るかというような形でこの軽減税率の負担部分を拒むということはやっていただきたくないというのが私の考えであります。
○塚田一郎君 植草公述人にお尋ねをいたしますが、議会制民主主義のデュープロセスに反していると。非常に自民党もそのことをずっと申し上げているわけですが、残念ながらそのことを無視して今こういう状況になっていると。しかし、三党合意でこの法案が成立した暁には、少なくとも国民に民意を問う、解散・総選挙をやるべきだというのが我々の主張ではあります。
 先生もそのことをおっしゃっているわけですけれども、次の衆議院の総選挙でこのことがきちっと公約に各政党が盛り込んで、その結果としてその第一党なりになった場合には、それは国民として理解を得られたというふうに先生はお考えになりますか。
○公述人(植草一秀君) 簡潔にお答えいたしたいと思いますが、選挙の際に明確な選択肢が国民の前に提示されるということは極めて重要だと思います。何が最重要の争点になるかにもよりますけれども、消費税の問題については賛成であるか反対であるか、これを国民が選択し、その選択によって結論が得られる状況が生み出されることが必要だと思いますが、そのような状況が整備されて国民が選択を示した場合にはそれで決定していくと、これは重要な点だというふうに思います。
○塚田一郎君 終わります。どうもありがとうございました。
○竹谷とし子君 公明党の竹谷とし子でございます。
 公述人の皆様、本日は大変貴重な御意見を賜りましたことを心から御礼申し上げます。本当にありがとうございます。
 私の方からは、まず、消費税を増税する場合にこの逆進性の問題をしっかりと解決するための対策を打たなければいけないということで、公明党としては八%の段階から軽減税率もその検討を選択肢として含めることを主張をいたしました。
 この軽減税率、複数税率とも言われるものでありますが、これにつきまして長谷川公述人から先ほどお話がありました。この中で、先ほど梅村委員、また塚田委員の方からも質問をされておられましたが、もし食料品等に軽減税率を適用した場合に非常に税収減になってしまうということで、政府からは、何度かこの参議院の特別委員会の中でも質疑がありましたが、答弁の中で非常に消極的な答弁がなされております。例えば、安住財務大臣は、消費税の引上げに伴う複数税率の導入について、食料品のほぼ全てに導入した場合には、八%に引き上げた際に一兆円台半ばから二兆円程度、一〇%で二兆円台半ばから三兆円程度という試算を挙げられております。
 こちらの長谷川公述人の先ほどの御説明の中で試算がなされていました。この中でこの数字が、安住財務大臣が口にされているものよりも低い試算がなされています。資料の五ページのところにあります、一番上の方ですけれども、それぞれ、八%段階では一・二四四兆円、一〇%段階で一・九〇六兆円、これは食料品と非アルコール飲料ということで幅広い部分に軽減税率を適用した場合の試算だというふうに理解しておりますが、この違いはどこからくるものなのかということをお伺いしたいというふうに思います。
○公述人(長谷川聰哲君) 御質問ありがとうございます。
 どのような推計にも前提条件はあります。消費支出を決める可処分所得が消費税引上げ時に今の水準なのかどうなのかということ、これも影響してまいります。景気が回復して増加しているのかということでありますね。それから、インフレが進んで名目GDPを膨らましているということも考えられます。それによっても数値が変わってまいります。それから、消費性向が変化する可能性も否定できません。また、ある場合は、社会保障の改善によって可処分所得を引き上げ、その結果、消費支出が増えるというようなこともある。そういったものをどこまで入れているのかというその試算を示されておりませんので、財務大臣の数値の根拠は不明確、私にとっては不明確であります。前提次第で税収の数値が変化してまいります。
 ただ、私が示したのは皆さんも納得していただけるような数字であるというふうに思います。五ページの真ん中の表で示しましたように、最終消費支出に対して食料・非アルコール飲料の数値というのは、これは安定した数字が並んでおります。これが五%で来ていたわけですけれども、これが八%になったときにどれぐらいの税収になるか、一〇%になったらどれぐらいの税収になるかというのは、私がここで数値を示させていただいたとおりであります。
○竹谷とし子君 ありがとうございます。
 そして、財務省側がこの軽減税率導入に対して否定的になるもう一つの論拠として、再来年の四月からの導入に間に合うかどうか分からないと、手続面での煩雑性、そういったことを挙げられるわけでありますけれども、これについても、どの対象品目にするんだということで品目の明確化というものが大変だという、一つそういう理由が挙げられるわけですが、これに対しても長谷川公述人から、EUの場合にHS分類コードを使っているという、そういった指摘がありました。これについてもう少し詳しく教えていただけますでしょうか。
○公述人(長谷川聰哲君) 先ほども少しお話しさせていただきましたけれども、HSコード分類、これは既に二十万件以上の商品、サービスに関して番号が付いているわけであります。これをもってEU諸国は課税がどれぐらいのものであるかということを直ちに知ることができます。
 私たちは、輸入、輸出に関してどれぐらいの関税が適用されるかというのを我が国の関税率表をウエブで検索いたしますと、直ちにそれは膨大なリストが登場してまいります。これは無料で皆さんもすぐにアクセスすることができます。この番号というのは国際的に共通な番号でありますので国際公共財でありますね。これをもって、ヨーロッパのこれまでやってきた、多くの諸国が取ってきたノウハウを使って、消費税の改革に軽減税率をセットとして導入していくことは技術上可能であるというふうに考えております。
○竹谷とし子君 ありがとうございます。
 また、消費税を増税する場合に経済の好転が前提条件となるということにつきましては多くの方が、ほとんどの方がそれを肯定されておられます。
 公明党としては、防災・減災ニューディールというものをこの税と社会保障一体改革の議論の前から提案をいたしております。その中の柱というのが、今後の大地震に対する備えということ、そしてもう一つが、高度成長期に多くが造られた道路、また橋、また様々な公共施設等の社会インフラの老朽化対策であります。これが経年劣化していくに当たって、今後、社会インフラの維持更新の需要というのがどうしても出てくると。ここで、事後保全ではなくて予防保全という形で点検をして、そして軽微な損傷のうちに直していく、これをやることによって、トータルのライフサイクルでのコストが下がっていくという、そういった点に着目をして提案をさせていただいております。
 例えば、総務省の試算によりますと、全国の地方自治体が管理する道路橋六十五万橋について、今後五十年間で事後保全というやり方を取っていった場合に四十兆円掛かると、約。それが予防保全に転換をすることで約十七兆円、四割以上削減することができると。これを計画的に行っていく。
 先ほど飯田公述人からも、土木建設においては供給側の制約条件があるので、急に増やすのではなくて、長期的な展望を持って、計画を持ってやっていくべきであるという、そういうお話がありました。
 被災地のお話もありました。私も被災地に何度も足を運ばせていただいて被災者の方と直接お話を伺っておりますが、今大変な、土木建設また電気設備関係の供給側の制約で事業がなかなか先に進まないということと同時に、局所的なインフレが生じている、被災地においてですね、ということを感じます。一方で、地方でお話を伺いますと、同じ土木建設関係のお仕事をされている方でも、やはり不景気であると。一部の方は被災地に行かれている場合もありますけれども、多くの方が地元で仕事をされています。やはり大変な不景気が続いている状況であります。
 地域の産業の中で、やはりこの土木建設関係の仕事というのは非常に大きなウエートを占めております。そういう意味で、今は全国的に土木関係でインフレが生じているわけではありませんので、特に財政的な制約から点検すらできないような社会インフラが今放置されているような状況にありますので、ここに重点的に財政支出を行っていくということは雇用対策という意味からも非常に重要であるというふうに考えておりますが、これについて飯田公述人の御意見をいただけますでしょうか。
○公述人(飯田泰之君) 御指摘いただきましたとおり、現在、被災地の雇用情勢というのは非常に複雑になっております。局所的な人手不足と局所的な仕事不足というのが併存している状況であります。
 ここで、現在、例えば国土強靱化法であったり防災・減災ニューディールであったりといった形で事前防災を中心として公共事業を増やしていこうという考え方、これの大きな方向性としては非常にこの防災、減災、重要かと思うんですけれども、かつてと現在では土木業界、建設業界に必要とされるスキルというのが大きく変わってきたというのが一つポイントになるかと思います。
 過去は、ある意味景気に合わせて柔軟に労働者が土木建設業に移動するというのが可能な土木建設業であったと。ところが、現在の土木建設業はこのような単純労働とは遠く離れてしまったわけです。そのため、こういった長期的なインフラの整備をやる場合は、その雇用が長期において確保されるとの計画、そして、人材のそういった土木建設業界へのスムーズな移動を助ける教育制度というのを充実し、その準備の下でやっていきませんと、やはり、たまたま公共事業が下りてきたところだけ局所的な人手不足になるという状況が日本各地で見られることになってしまいますので、注意いただければと思います。
○竹谷とし子君 ありがとうございます。
 最後に、醍醐公述人に質問させていただきたいと思います。
 今後、日本の経済を好転させていくためにどのように進めていったらいいかという点からお伺いしたいんですが、先生の資料の中で、二十一ページのところで、時間の制約があったので触れていただかなかったと思うんですけれども、非常に貴重な御提言たくさんありました。
 二十一ページのところで、パート労働者、特に総人件費に占める社会保険料拠出額の割合ということで、日本の事業主負担率、また絶対水準でも被用者負担率との対比でも高くはないというような視点でお話をいただいております。また、法人税のことについても触れられています。
 この雇用をしっかり守っていくということ、そして、企業側にも社会保障また人件費の負担をいただくということ、それと産業の成長とどのように両立をさせていくことができるかということについて御意見を伺いたいというふうに思います。
○公述人(醍醐聰君) 御質問、ありがとうございました。
 私も、一言で言えば、民富まずして国富まずと、民富んでこそ国も富むと、これが一体改革の根本理念だと思うんですね。ところが、今回、今提案されているのが、これは素直に見てその方向とはどうも向きが違うのじゃないかなというのが私の率直な感想です。
 今、雇用の問題がございまして、様々な災害地での雇用、これは非常に切実だと思いますが、国全体見回したときに、非正規の雇用の方が男女合計で三五%、女性の場合は五五%。もう一つ非常に強調したいことは、パートというと家計の足しというイメージがあるんですけれども、男性のパート労働の方の四三%が主たる稼ぎ手になっているという、これ余り言われていないことなんですけれども非常に重要だと思います。その女性のパートの八六%が年収二百万円以下の状態にいらっしゃると。
 民の富がこういう状態にあって果たして本当に国が富むのかということを考えていただくのが、是非、議員の皆様方、政治のミッションじゃないかということを、これはもう私、文字どおり党派を問わずに真剣に考えていただきたいと。かつそれが、本当に今、全てができるとは思いませんけれども、やはり事業主の負担の過多、これが負担が大変だということで、パート、非正規雇用の割合がどんどんどんどん、厚生年金加入が減ってしまったわけですね。当初三百七十万行っていたのが結局二十五万まで下がっちゃったわけですね。
 これ、今の、私は、押しなべて事業主負担から見れば可能なところがかなりあると、まず可能なところから是非ともやっていただきたいと。そのことが、結局は企業の業績も上向くわけです。経済学で言う、そういう合成の誤謬に今陥っているんじゃないかと思いますので、経済界の方もそういう意味で合成の誤謬から抜けるための協力をしていただく。これは、決して法人税を上げることだけが、私は経済活性化への経済界の方々の務め、そこだけではないと、雇用に積極的に協力していただきたいと思っております。
○委員長(高橋千秋君) そろそろおまとめください。
○竹谷とし子君 ありがとうございました。
○中村哲治君 国民の生活が第一、中村哲治です。
 まず、飯田先生に伺います。
 この三党合意の議論以降、社会保障と税の一体改革が、社会保障と公共事業と税の一体改革と、まあ三位一体改革になってしまったわけでございますけれども、今日のお話の中で明確に御説明いただきました。土木建設業界の供給能力の問題から十分な波及効果が得られない可能性があるというようなコメントもされております。
 私も同じことを主張しておりまして、十年間で二百兆円とか十年間で百兆円とかいうような数字でカンフル的に公共事業を増やすような政策というのは、土木建設業というその業界の供給能力が、すぐには増やせない、すぐに減らせないという性質から、ちょっとそういうふうなカンフル的な政策というのはもう時代に合わないんじゃないかと申しておりましたので、そのことを先生のお口からはっきりと言っていただいて、今日は本当に胸のすく思いがいたしました。
 そこで、ただ、先生の今日のお話の中で、量的緩和、金融緩和を更に進めるべきだという御主張がありました。四%というあるべき数字はあるんだけど、取りあえず二%台でどうかというようなお話もありました。
 しかし、クルーグマン、今日御紹介もありましたポール・クルーグマン、プリンストン大学の教授が、PHP研究所の「Voice」二〇一二年二月号でこのようにおっしゃっています。インタビュアーが、「最も望ましい財政政策と金融政策のベストミックスはどのようなものでしょう。」と。で、クルーグマンはこのように答えています。「完全雇用に近いかたちにまで経済を戻せるように、かなりアグレッシブな財政拡張政策をとるべきです。さらには次の五年間に二〜三%のインフレ率になるよう、金融緩和を組み合わせなければならない。」、このようにおっしゃっています。
 つまり、金融緩和とやっぱり併せて財政拡張政策を取らなければ、なかなかこの金融緩和の効果としてのインフレ率の上昇というのはなってこないんじゃないかというふうに主張されているわけですけれども、この点についてはどのようにお考えでしょうか。
○公述人(飯田泰之君) 財政政策の効果につきましては、近年の経済学の先端的な研究でありますと、やはりこのようなデフレ状況においては財政政策は大いに有効性が高いという結果が言われております。その一方で、日本においては、財政政策の効果が計量的に見ますと低下しております。一つ私自身がこのパズルを解く鍵だと思っているのがこの供給制約の問題でして、ということは、使い道を変えれば財政政策は有効である可能性は残されているということかと思います。
 そのように考えますと、一つ重要な景気対策又は財政政策の支出先としてあり得るのが低所得者への給付ではないかと。その意味におきましても、今次の消費増税は低所得者に負担を求めます。通常、低所得者の方が消費性向、収入のうち消費に回す割合が高うございますので、通常は低所得者に給付を中心的に行うならば消費を刺激する、逆に高所得者に給付をしても効かないというのがごく一般的な経済学の知識です。その意味におきまして、財政政策を行う場合は、低所得者、経済的な弱者を中心に、そこにお金が回る形、制度というのを考えていく必要があるかと思います。
○中村哲治君 今の御答弁、非常にもっともな御答弁だったんですけれども、更に提案といいますか、ちょっとお聞きしたいんですけれども、人材育成の部分にもう少し政府支出を増やしてもいいんじゃないかと。特に、コンクリートから人へという言葉もありましたけれども、人への投資を増やしていくと。教育、それから子育て、それから医療や介護の部分に関しても、やはり医療クラークを増やしていくとかいう意味も含めて、社会保障分野で、人材のところに政府支出を増やしていくということによって可処分所得を増やして、そして経済を回していくという手法があると思うんですが、こういう視点はいかがでしょうか。
○公述人(飯田泰之君) 人材育成に関しましては、対GDP比で見て教育関連予算が最も少ない先進国が日本であります。また、教育年度におきましても、日本は、先進国の中では非常に高校卒業者、つまり大学に進学しない方の割合が多い国としても知られます。
 しかし、現在、国際的に産業構造が変わっておりまして、比較的、高卒ブルーカラー、長期雇用によって熟練工へというキャリアパスというのがなかなか成立しづらくなっています。この流れというのが数年で転換することは私はないのではないかと。その意味におきまして、高等教育に対する更なる無償化の枠を広げ、現在、高等学校ですら経済的な理由による退学者が急増していることが指摘されている。低所得者が高校そして大学に進学し、十分学ぶことによって、今後の知的な形での主にホワイトカラー労働を中心とした社会体制というのに順応していけるような投資が私自身も非常に重要性が高いのではないかと考えます。
○中村哲治君 飯田公述人に、さらに二十ページのところの記述についてお伺いいたします。
 いわゆる消費税には逆進性が問題となってまいります。先生は、「逆進性への対応としての複数税率化は消費税の第一の利点を損なう」と、この複数税率化に反対をしておられます。ここの理由を詳しく教えていただけますでしょうか。
○公述人(飯田泰之君) 今回の説明資料における中心的な課題としまして、消費税が財政再建に資するかという話であります。その点におきまして、複数税率化といいますか、軽減税率を完全適用いたしますと、非常に、実際消費税による収入というのが減少してしまう、それであると元々の消費税増税の意義そのものが低下してしまうのではないか。そのため、複数税率を提案するのであれば、それであれば元々消費税増税に反対していただきたいというのが一つ。
 もう一つは、複数税率といった形ですと、次に登場するのがその選定プロセスであります。つまり、どの商品は軽減税率、どの商品は軽減税率にしないといった場合に、これは非常に政治の力が強くなり過ぎる。つまり、産業界の今後の行く末を、例えば税制に関する審議会が完全に決めてしまうことができるという数年間がやってきます。この決定プロセスというのが、もちろん透明化に対して大いなる努力されると思いますが、どうしてもグレーな部分が残らざるを得ない。その点において、複数税率というのは政治プロセスが非常に困難なのではないかという意味で私自身は消極的であります。
○中村哲治君 私も複数税率化には反対をしております。
 一つの議論としては、複数税率化すると、政府の試算では、一〇%のときに二・五兆円から三兆円掛かると。同じ財源を使うとこういうことができるんですね。大体所得税の基礎控除の額三十八万円ですから、一人当たり四十万円は消費するだろうと。五%掛けると二万円ですから、二万円を全国民にペイバックすると、これは二・五兆円でできます。そうすると、この軽減税率をするのと同じぐらいの効果、更にもっと、逆進性緩和ということになると低所得者に比率的に厚くなりますから、こういった形で簡素な給付措置を行うということの方が、どちらかを選ぶということであれば、軽減税率よりもこの簡素な給付措置の方が効果的なのではないかと考えられますが、この点についていかがお考えでしょうか。
○公述人(飯田泰之君) もう一つの複数税率への問題点の指摘としましては、例えば食料品に関して軽減税率をしいた場合、食料品を消費しますのは低所得者だけではない、もちろん高所得者も金額の面では低所得者以上に食料品を買うわけでございます。そうしますと、ある意味、もちろん格差是正の効果は有しながらも、余りにも予算規模としてお金が掛かり過ぎるのではないか。つまりは、高所得者も同時に減税しながら減税の幅が低所得者に大きいというのは、ある意味非常に持って回った議論になっているかと思います。それであれば、マイナンバー制を通じて所得把握をした上での直接的な低所得者への給付という形。
 やはり日本の再分配、これまで大きな問題というのが、年齢、地域、職業等のある意味所得以外の要因による再分配方針というのが中心になっておりました。その結果現在生じているのは、再分配の結果不平等度が上昇するという世界唯一の国になっているわけであります。その中で、そういったものを是正するためには、やはり低所得者への対策は所得を基準にするという、最も直接的な方法の方が望ましいのではないかというのが私の見解です。
○中村哲治君 次に、植草公述人に伺います。
 今日のお話は、もうほぼ全て私が民主党を離党した理由そのものを言っていただいたんじゃないかなと思っております。
 そこで、先生のページ、七ページ目のところで、この将来世代、若い世代がこれだけ損をすると、若い世代のために消費増税するんだというような政府の話になっているという、そういうふうな理由付けになっているというお話がありました。私、ここのお話を聞いていて、今回の消費税増税の一番大きなところ、おかしいところはここにあるんじゃないかなと思っているんです。
 つまり、年金生活者の皆さんに負担掛けると言いますけれども、年金生活者の皆さんは、ちょっと物価が上がっても、それ、ちょっと可処分所得が減るぐらいで、後になったら年金の物価スライドもあるのでカバーされると。しかし、若い世代にとっては、将来いつ受け取るか分からない社会保障のために、もうまさに給料が減っている中で、純粋に五%可処分所得が減ってしまう。
 さらに、これ大きな問題なのは、やはり先ほど飯田公述人もおっしゃっていましたように、この消費税の増税というのは中小企業とか地域、すごく影響を受けます。現実的に中小企業がこれはばたばた倒れていくことになると。そうすると、そこで雇用をされている若者世代はもう職を失ってしまう、こういうふうな雇用不安というものとこのデフレ下での消費税増税というのは直結していると思うんですけれども、そういった意味でも、レジティマシーという意味での正統性も今日はおっしゃっていましたけれども、経済学的な必要性という意味での正当性、これもないんじゃないか、むしろ若者にとっては不利な増税なのではないかと考えますけれども、いかがでしょうか。
○公述人(植草一秀君) 望ましい制度の在り方ということを考える際に、やはり基本的な考え方というのはしっかりしていないとまずいというふうに思います。現状の増税案というのは、結局取りやすいところから取る、安定財源を確保するということで、課税の大原則であるいわゆる応能課税というところの視点が欠落していると。
 とりわけ重要な点は、特に二〇〇〇年以降の日本経済を考えますと、これは世界的な経済環境の変化ということも背景にございますけれども、いわゆる分配の格差が非常に広がっていて、とりわけ低所得者層が急激に数として拡大していると、ここに若年層の多くが入ってくるわけでございますけれども。そうした経済環境の激変というものに対応する税制という視点が欠落しているというふうに思います。
 年金制度につきましては、今日も御説明させていただきましたが、二〇一二年に内閣府が出しました試算ということで見ますと、若年層は一九六〇年生まれ以降全て損になると、こういう計算で、それを消費税で調整するというような非常にいびつなロジックになっているわけですが、年金制度のそういう矛盾はやはり年金制度の改革ということを軸に対処すべきでありますし、もう一つ私が懸念しますのは、これは個人名でのディスカッションペーパーでありますけれども、こういうものが公表されますと、結局は、年金に加入すると損になるということを政府が公表したということで、日本国憲法が定めております財産権という規定に照らしましても、こういう制度であれば私は年金保険料を払わないという人が激増してもこれを妨げることが難しいんではないかという気もいたします。
 いずれにいたしましても、特にその若年層の格差の問題ですね、低所得化ということに対応した制度の設計という視点が欠落しているというところを強調させていただきたいと思います。
○中村哲治君 時間が参りました。本当に丁寧な御答弁いただきまして、ありがとうございました。
 終わります。
○中西健治君 みんなの党の中西健治です。
 公述人の方々には、今日は貴重な御意見、どうもありがとうございます。これだけそうそうたる方に来ていただいておりますので、まずは五名の方全員にちょっと質問をさせていただきたいと思いますが、今回の増税、財政再建待ったなしということで行われるということでありますが、実際に今増税が行われますと、政府試算では十三・五兆円国民負担が増えるということになっております。十三・五兆円も国民負担が増えるのであれば、その分幾らかは新規国債発行金額を減らすべきなんではないか、四十四兆円、今、年間、建設国債、赤字国債合わせて発行しておりますが、当然そう考えるべきなんではないかという声が多いと思います。
 皆さんはそれぞれどのようにお考えになるか、簡潔に理由も含めてお答えいただきたいと思います。
○委員長(高橋千秋君) 同じ質問でよろしいですか。
○中西健治君 同じ質問で結構です。
○公述人(中村豊明君) 今お話しいただきました十三・五兆円の国民負担が消費税で増えるということだと思いますが、これは確かに増えるということなんでしょうけれども、今実際に一千兆円、地方と含めて借金があるということですので、これがまた利子で毎年毎年その支払が出ているということでありますので、その中で減らせるものがあれば減らされたらよろしいんじゃないかというふうに思います。
 私自身も、先ほど植草さんが言われた国のバランスシートを久しぶりに見たんですけれども、一千兆円あって純資産が三十六兆しかないということですから、自己資本比率三%ですので、その一千兆円の借金の金利からいくとあと数年で破綻するということにもなりますので、ここを早く、負債は減らした方がいいと思います。
○公述人(飯田泰之君) 十三・五兆円という数字についてお答えさせていただきたいと思うんですけれども、この十三・五兆円増税しますと、先ほど私の資料で示したタイプのモデルですと、消費税で十三・五兆円増税によって、大体六兆円から七兆円そのほかの税収が低下すると。その意味でいいますと、この十三・五兆円の増税と更に現在決まっている使途を付け加えますと、今次の法案が成立し増税が行われることによって財政赤字は拡大しますので、そもそも国債はもっとたくさん発行しなければならなくなるのではないかという理解です。
○公述人(長谷川聰哲君) 私の冒頭の公述におきまして二〇一一年度末で七百九十兆円国債発行残高があるという数字を出しまして、GDP比率で一六二%であると。現在考えられております消費税八%、そしてまた、その後の一〇%と、こういった形で現在の債務残高を減らしていくという、そのタイムスケジュールというものを国民の合意の中で考えていかなければいけないわけでありますけれども、その際に、消費税だけではなくて、ほかの税収の組合せですね、これも総合的な形で将来にわたって考えるべきであろうということで、私から言えるのはそういったところであります。
○公述人(植草一秀君) 国債の発行金額が非常に多いというのは事実だと思いますけれども、まず、なぜ国債発行額が激増したのかと、その原因を考える必要があると思います。
 冒頭の御説明でもお話しいたしましたが、二〇〇七年度には国債発行金額二十五・四兆円でありました。これが急激に拡大したわけですが、その最大の理由は、やはり不況というものであります。サブプライム危機などを背景とする不況というものでありまして、そういう意味からしますと、現在の財政赤字急増のかなりの部分は循環的要因であります。この循環的な財政赤字に対する対応策としましては、これを増税でファイナンスするというのは、政策の選択肢としては私は誤りだというふうに思います。
 長くなりますので簡単にいたしますが、対応の順序として、やはり景気を回復させ、いわゆる均衡状態を取り戻す。それによって循環的な財政赤字を取り除き、その後に残った財政赤字に対し構造的な対応で対応するというのが筋だと思います。現状の日本経済の状況を踏まえますと、これは先ほどクルーグマンの話がございましたが、金融政策がなかなか効きにくい状況でありますので、むしろここは財政政策を活用して経済の均衡を取り戻すという順序が適切ではないかというふうに思います。そういう意味で、現状の赤字を減らすために増税という対応そのものが間違いだと。
 それからもう一つは、現状では増税を行うための成長率の条件などを定めておりますが、むしろこの二〇一四年の四月、一五年の十月ということで、増税をしてデフレ効果が出ますので、そのデフレ効果を緩和するための政策を同時に実行することを検討していくことが重要だというふうに思います。
○公述人(醍醐聰君) 私の資料の二十八ページにお答えになるかなということを書かせていただいておりますので、それに沿ってお答えいたします。
 私は、結論からいいますと、今委員がお話しのとおり、国債の残高を着実に減らしていくということは、日本の今の経済にとって、特に対外的な信認を高めるという意味では重要なテーマだと思っております。
 問題はその財源ですけれども、これは、ここにいらっしゃる蓮舫議員が事業仕分けで国債整理基金特会をなさったときのいろいろの資料を拝見して、そこでも議論になっておりますが、今現在といいますか、二〇一〇年度末現在の特別会計全体の積立金は百八十二兆円ございます。ただし、そのうちの百二十八兆円は年金給付の財源として年金特会ですので、これは手を付けるべきではないと。そうすると残りが五十四兆円ですが、まあこれは全くの仮定ですけれども、その中の四十兆円を取りあえず財源として考えると。それと、もう二〇一一年度の決算が出ておりますが、二〇一〇年度の特別会計の決算剰余金のうち、ここちょっと技術的にややこしいので御説明必要なんですが、決算剰余金のうち歳出が翌年度に繰り越されているものについては、その持参金という形で剰余金も次の年度の歳入に繰り入れると。それから支払備金、これはやはり必要なことだと思うんですね。そうすると、その翌年度に持ち越すべき財源を除いた決算剰余金が二十兆円ございます、二十一兆円ですけれども。その両方合わせた、積立金で活用可能な四十兆円と決算剰余金二十兆円を合わせた六十兆円。やるならば、私は、ある一定程度の大きな規模を思い切ってやるべきじゃないかと。一桁単位の兆円ではなくて、思い切った財源で償還する、繰上償還する。
 その効果なんですけれども、一つは、一定程度これだけのまとまった償還をすることによって、財政健全化に対する取組を国内外にアピールするという意味がございます。もう一つは、その後の国債利払いの軽減ができると。私の試算では、六十兆円によって、金利の水準がほぼ今と変わらないとすれば、〇・九兆円から一・二兆円の一般財源が、これが浮いてくるわけですね。
 これは一過性だと言われますけれども、六十年償還、いっぱいでないにしても、このような形で国債残高を減らすことがフローの利子の軽減につながって一般財源につながると、こういう経路を考えていくべきではないかと思っております。
○中西健治君 飯田公述人にお伺いいたします。
 二%インフレ、二%成長ですとか、消費税増税が本当に財政再建に役に立たないんじゃないか、そういった主張は私と本当に軌を一にするところということで共感するというところでありますが、このレジュメの中で最後に書かれていた消費税増税の準備として、選択肢として、増税実施時期までの景気回復を果たす、若しくはもう一つというふうに書かれていましたけれども、そのためには強力な金融政策が必要というふうにも書かれていました。強力な金融政策が今の日銀のスタンスからするとなかなか期待できないという中でいうと、これを果たそうとすると補正予算とかで無理やり景気を引き上げるということになってしまうかなというふうに思います。
 来年の九月か十月には増税の可否を判断するということになりますから、そのタイミングに合わせてうまく景気が浮揚するようにしなきゃみたいな声がよく聞かれるわけですけれども、そういうかさ上げされた景気、それで判断することの是非、難しさ、そんなようなことについて御意見をお伺いしたいと思います。
○公述人(飯田泰之君) 資料の最後の部分は、ある意味、何というか、修辞疑問文でありまして、要は、二〇一四年までに景気をタイミングよく回復させるというのは不可能であろうという意味で書いております。やはり、そういった一時的な景気対策によって一時的に景気が良くなるのではなくて、持続的な経済成長又は持続的なインフレーションによってこそ財政再建は達成されるかと思います。
 日本銀行の政策手段に関しましては、例えば今次の二新審議委員が主張されている外債の購入、これ自体は直接的に外為市場に影響を与えるものであり非常に大きな効果が期待されますが、現行の制度下では非常に問題が多いとされている。こういった日本銀行がやりたい又はやろうとしていることもできていない現状ですので、やはり必要となりますのは、日銀法改正というと抵抗がある方多いかと思いますが、この日銀法というのを改善していくことによって、十分に信頼性あり、コミットメントの力のある金融政策へとシフトしていくことができる、こういった中長期的な政策フレームそのものを変える議論というのをしていく必要があるのではないかと考えます。
○中西健治君 最後に、植草先生にお伺いいたします。
 先ほど景気回復をさせることが順序として大切なのではないかと、そのためには財政政策もということでございましたが、具体的にはどのような政策を打っていくのか、植草先生の処方箋というものをお聞かせいただければと思います。
○公述人(植草一秀君) 現在、増税法案が審議されているということは、財政事情が非常に厳しいと、こういう現実が存在しているわけでございますので、財政政策を活用した景気浮揚ということを図る際に、その財源ということが当然問題になってくるわけでございます。
 私が提案しておりますのは、現在、日本政府は一・三兆ドルの外貨準備を保有しておりますけれども、この一・三兆ドルの外貨準備を保有するために約百五十兆円の資金が投入されているわけですが、現在の外貨準備の時価総額は約百兆円ということでございますので、五十兆円も損失を生み出していると。
 過去を見ますと、日本政府が外債を購入したきり償還してもらっておりません。ということは、結局、米国に対する上納金というような色彩が非常に濃いということで、日本のように変動相場制を活用しております国がこのような巨額な外貨準備を保有する必然性はございませんので、この外貨準備を円貨に換金して、それをいわゆる今後の構造対策を行う際の日本再生復興枠として、私は五十兆円程度の資金をプールし、これを景気安定化のための資金として活用する、こういうことを提案しております。
 これは、資金の出どころは日銀でありますので、日銀の資金で公共事業等を行うということになりますので、経済効果上は国債の日銀引受けによる財政支出ということになりますので、現行の財政法には抵触するわけですね。何らかの立法措置が必要になるかと思いますけれども、上限を設定してその枠内で事業を行うということであれば、際限のない、歯止めのない対応ということになりませんので、そういう対応が必要と。
 その中身につきましては、いろんな御議論ありますけれども、当然防災あるいは減災ということも重要でありますが、やはり資金の透明性ということで、これが利権的な支出につながらないような工夫と、そういう意味では、国庫から個人に直接給付される、これは民主党が当初提案しておりました子ども手当ですとか、あるいは戸別の所得補償とか、まあ高速道路の無料化などもそれに近いわけですけれども、そういう直接国民の手に渡るような資金、先ほど飯田公述人からセーフティーネットといいますか、低所得者に対する支出といったことが提案されておりましたが、そういうことも含めた対応が必要だというふうに思います。
○中西健治君 どうもありがとうございました。
○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 今日は、公述人の皆様、貴重な御意見ありがとうございます。
 最初に、醍醐先生にお聞きしたいと思います。先ほど時間の関係で全て資料に触れられなかったので、その中で幾つかお聞きしたいと思います。
 まず、この資料の二十ページのところにあります不安定雇用を放置したままの増税というところなんですけれども、先ほど答弁の中でも少し触れられていたんですけれども、非正規雇用労働者が一九八五年に六百五十五万人、それが二〇一一年には一千七百三十三万人と二倍以上増えていて、女性の比率の問題も触れられていましたけれども、この状態で消費税を一〇%に引き上げるということになれば、ますます所得が圧迫をされて、消費支出あるいは税収には結び付くどころか逆行するのではないかと。本来、正規で働いて安定雇用が増えるということにならなきゃいけないんですけれども、逆にこういう状態が続いているということについてもう少し詳しくこの辺りのことを一つお聞きしたいということと、併せてもう一点なんですけれども、この資料の中の二十三ページにありますけれども、肩車型社会論というところがあります。
 それで、この問題については、社会保障の財源に消費税をということで政府がいつも持ち出す議論の中に肩車型社会論と。現在は騎馬戦型で、二・六人の現役世代が一人の高齢者を支える社会から、二〇六〇年には肩車型で一・二人の現役が一人の高齢者を支える社会になって、現役負担が二・二倍になると。
 こういう話をされますと、やっぱりあちこち聞いて歩きますと、消費税増税は困るんだけれども、しかし子供や孫に苦労させるということになるのであれば増税しても仕方がないのかなという人がいたり、あるいは中には、私たちはお荷物なのかということで、子や孫に負担を掛けるんだったらもう長生きなんかしたくないというふうにおっしゃる方もいらっしゃるわけですよね。
 ちょっとこの辺りについてのお考えをお聞きしたいと思います。
○公述人(醍醐聰君) いろいろ御質問、多くございますので、簡潔に。
 まず、こういう非正規の人たちの今の年収レベルで一〇%に消費税を上げたときにどうなるかという、これは私の計算、総務省の家計調査に基づいてやりましたが、二人以上の世帯で非常に多い二百万未満の方の場合、年額十一・九万円で年収の七・五%を占めます。単身世帯の方ですので半分、これは女性の方の場合はむしろ非常に多いわけですが、年収に占める割合が一一・六%。この二桁ということの意味は、私はこれは尋常ではないというふうに思っております。先ほど、低所得対策というのがございますけれども、いろいろ方法を言われて、究極的には、財源調達機能と所得再分配機能が消費税ではこれは両立し難いということを示しているのではないかというふうに私は考えております。
 肩車型社会の問題でございますけれども、今議員の方から御説明がございましたが、この政府の示した統計資料によりますと、これでいくと、現役の負担は現在から二〇六〇年にかけて二・二倍になるということを言っているわけですね。
 しかし、私は、これは二つの間違いがあると考えております。
 一つは、分子の問題です。分子は、養われる、支えられる側ですけれども、これ、老年人口だけなんですね、六十五歳以上。私は、ここで社会的扶養率ということを申し上げているわけです。そうしますと、例えば現役も、自分は何も食わずでお年寄りを支えているわけじゃないし、年少の子供も支えているわけですね、社会的には。ですから、支えられるといったら、自分も含めた全人口とするべきだと考えます。
 分母の方なんですけれども、これは要するところ、分母も分子も自然年齢で輪切りしているわけですね。生産年齢人口というのは二十歳から六十四歳。しかし、まさに先ほどの議論ですが、支える側一人といっても、正規なのか非正規なのかで全く違うわけですね。扶養力というのは、人数ではなくて究極的には所得ですね。その意味で、正規も非正規も全く同じにカウントするというのでは実態を何ら表していないということを申し上げたいわけです。
 そこで、まず一つとしては、分母の支える側、これは自然年齢の生産年齢人口ではなくて労働力率を加味するということが必要になってまいります。これは六十歳前後とか、四十歳から五十歳の女性の労働市場への進出が極めて伸びていくという見通しがあるということです。これでいきますと、まず分子を変えることによって、この変化率は二・二倍じゃなくて一・二六倍です。更に労働力率を加味しますと、一・〇九倍です。やはりこういうデータを使うべきではないかと考えております。
 つまり、先ほどの公述人の方にもございましたが、現役世代の負担を誇張し、誤った統計データを使って将来世代にツケを回さないという理由で消費税増税待ったなしを迫るのは、決してこれは丁寧な説明ではなく、まやかしの強迫的な説明であって、自助、共助、公助という社会保障改革法案にあるその精神の共助に政府自らが水を差すようなさもしい喧伝だと私は思っております。
○紙智子君 続けてお聞きしたいんですけれども、先ほどお話しになっておりました附則十八条の二項の解釈の問題ありました。三つのケース説明されていたんですけれども、この部分というのは衆議院ではほとんど議論がなく、民主党、自民党、公明党の三党で修正協議が行われて、それで加わって参議院に来たということであります。
 それで、国民には、この間、財政危機で待ったなしだと、だから増税をお願いするんだと言って、社会保障以外にはほとんど使いませんということを言いながら、五%税率を引き上げた場合はゆとりが生まれるので、これを成長戦略並びに事前防災及び減災などに資する分野に資金を重点的に配分するということで付け加えて成立させようと、これはどう考えても矛盾しているんじゃないかというふうに思うんですけれども、先ほど非常に厳しい指摘がされていて、とにかくそごがあると、どのケースを見てもいろいろ矛盾をしている、そういう中で十分な議論もないまま成立するということがやられるのかと、差し戻してもう一回やる必要があるんじゃないのかということでは、非常にお聞きしていて、我々一人一人の議員にその責任が問われているという気がしてお聞きしていたんですけれども、これをめぐって更に付け加えたいことがありましたら、お聞きしたいと思います。
○公述人(醍醐聰君) 私は、この附則以前に、十三・五兆円のうちの七兆円を次世代へのツケを回さないために使う、様々言われておりますが、例えば次世代の負担になる国債の償還に充てるとかいう解釈がされている場合ありますが、国債償還、一般論としては、私、先ほど申し上げましたように、必要は否定しませんが、この消費税増税の財源として言うのであれば、この七兆円がそもそも社会保障に全てを充てるという解釈から明らかに私ははみ出ていると考えております。そこへ更にこの附則が来ました。
 私は、減災、防災の投資が必要であるとかないとかということを、特に必要でないということを一律に申し上げる必要はございません。私が今日公述人として来ましたのは、閣法七二号法案の修正案について意見を述べる、法案の審議なんですね。この法案、一体、関係のないことを、もし、国債を増発してというんなら、関係のないことが附則に入った法案を、これを審議したとして、そもそも採決をするということが法案審議として瑕疵はないのでしょうかということを私は議員の皆さんに申し上げたいわけです。
○紙智子君 もう一つお聞きしたいんですけれども、今、消費税増税の前にやるべきことがあるというふうに言う主張もあります。これは、やるべきことをやった後は増税するということになるわけで、私ども日本共産党としては、これ、消費税増税に頼らないで社会保障も充実させるし財源も確保する、その別の道があるんだということで、経済の提言をさせていただきました。
 その中では、社会保障を良くしていくということと同時に、国民の所得を増やす経済改革を同時並行で進めていくと、やっぱり経済を温めていくということをやりながらですね。その財源については、能力に応じた負担ということを原則にしてやっていく必要があると。例えば、年収が一億円を超えるような富裕層や巨大な経済力を持つ大企業にもっと応分の負担を求めていくということでありまして、今はそこがそうなっていなくて優遇されているということがありますので、税制の在り方自体を抜本的に変える必要があるというふうに考えているわけですが、これに対しての御意見を伺いたいと思います。
○公述人(醍醐聰君) 私は、客観的に無駄があるのなら、増税のあるなしに関係なく是非ともやっていただきたいし、やる必要があると思っております。それが何か消費税増税の免罪符のようなと言ったら非常に言葉がきついですけれども、その何か交換条件のように言われているというのであれば、私は非常に違和感を感じております。増税あるなしに関係なく、無駄な経費は削除し、それを有効な財源として活用していただくということは、これは当然必要なことだと思っております。
 私は、消費税というのは、これは、先ほどから逆進性という言葉がございましたが、より深刻なのは、間接税という性格からくるこれは転嫁の問題です。このことがほとんど語られていないのを私は非常に残念に思うわけです。
 経済学の中では、間接税という言葉はもう使わないという方があるんですね、一般間接税は。これは間接税じゃなくて転嫁の問題で、いろんなところに転嫁していく。例えば、病院は損税だということがございます。しかし、それに対して厚生省は診療報酬でそれはケアしていると言います。しかし、じゃ、診療報酬で仮にケアをして、まあなってないとおっしゃっているんですけどね、病院の方々は。仮に幾分かをケアしたとしても、その診療報酬は結局、保険料とか患者負担とかそういうところに転嫁していくわけですね、帰着といって。
 したがいまして、間接税というのは結局、その転嫁の問題が予定したとおりにいかないというこの問題を避けることができないというところが一番深刻ですね。ですから、私は、消費税の増税ということは、これは決して好ましいものではない、かつ、私は資料の最後の方にちょっと書かせていただきましたが、今現在、消費税に代わる財源というものはこういう形で積極的に提言していくべきだし、私なりの案は示させていただいたと考えております。
○紙智子君 それじゃ、植草氏とそれから中村公述人とにお聞きいたします。
 先ほど来お話をしてきたんですけれども、財源の確保について能力に応じて負担をしていただくということで、もちろん全体をみんなが負担しなきゃいけないということは明らかなんですけれども、まずはやっぱり富裕層からふさわしく税金を納めてもらうべきだというふうに考えているわけです。
 海外でもそうした主張が出てきていて、世界でも非常に有名な投資家と言われていますアメリカのウォーレン・バフェット氏ですね、ニューヨーク・タイムズに金持ちを保護する政策はもうやめようということで寄稿したり、あるいはイタリア、ドイツ、フランスなどの各国の富豪家たちが、増税するのであれば富裕層からすべきだというふうに主張されている、そんな流れも出てきているわけですけれども、これについてどのように思われるのかということで、それが一つ。
 それからもう一つは、各地歩きますと、やっぱり消費税増税が景気に悪影響を与えるんじゃないかということで懸念が強く出されています。一九九七年のときに、橋本内閣のときに三%から五%に上がって景気がもう非常に悪くなったということもあり、これが五%上がったら、もう店はやっていけないという声が多々出されているわけですけれども、これについての御意見をお聞きしたいと思います。
○委員長(高橋千秋君) 植草公述人。時間が迫っておりますので簡潔にお願いします。
○公述人(植草一秀君) 前者の問題ですけれども、これはやはり税制をめぐる基本的な考え方についてどう判断するかが重要で、いわゆる応能課税という考え方を取るのか、これは小泉政権以来のいわゆる新自由主義と呼ばれるような弱肉強食化と、どちらの立場を取るかと。私は共生という立場で、そういう意味では能力に応じた負担ということで、それを軸に据えるべきで、課税についても総合課税、所得課税については総合課税化ということが重要だと思います。
 それから、景気につきましては、九七年度ですね、やはり消費税の増税によりまして大きな影響が出ました。今回、税率五%引上げということですので、それ以上の大きな影響が出るというふうに思います。
○委員長(高橋千秋君) 中村公述人。時間が過ぎておりますので簡潔にお願いします。
○公述人(中村豊明君) 今お話のございました能力応分につきましては、ワールドワイドで見まして、どこも個人の所得に対して五〇%というのが最高税率になっておりますので、これに対して更に増やすというのはどうかということと、消費税は世の中で一番低いということでありますので、これに対して能力応分ということよりもグローバルなスタンダードでやるべきであろうというふうに思います。
 景気の浮揚に対して悪いという点は、確かにデフレ化がどんどん進んでいくというときにはそういうことだと思いますが、これをいかに対策するかということを考えることが先決であろうというふうに思います。
○紙智子君 どうもありがとうございました。終わります。
○吉田忠智君 社会民主党・護憲連合の吉田忠智でございます。
 公述人の皆様方には、お忙しい中、出席をいただきまして、貴重な御意見をありがとうございました。
 順次質問させていただきます。
 まず、植草公述人に質問をいたします。
 植草公述人は、マニフェスト違反、あるいは財務省のプロパガンダの誤り、それから日本の財政状況の認識の違いなどを言われまして、消費増税をそもそも提案する前提条件が整っていないというお話をされたわけでありますが、植草公述人の資料の十三ページに主要税目の税収の推移が付けられておりますが、これまでの累次にわたる税制改革についての評価をまず一点お伺いをしたいと思います。
 それからもう一つ、あわせて、今回の関連法案の内容についての言及はなかったわけですが、そのことについての具体的な問題点も含めて、評価についてお聞かせをいただきたいと思います。
○公述人(植草一秀君) お答えさせていただきます。
 資料の十三ページの主要税目の推移ということを御指摘ございましたけれども、御覧のとおり、消費税だけが右肩上がりということで、安定的な財源確保という点から消費税に目を付けるという、これは当然予想されることでございますけれども、逆に所得税、法人税については大幅に減少してきていると、こういう面がございます。
 実は、財政の景気自動調整機能という言葉がございますけれども、不況のときに税収が減ってそれが景気を支える、好況のときには税収が増えてこれが景気を冷やす、これが財政の景気自動調整機能の一つでございますけれども、消費税中心の体制にしますと、そういう機能が働きにくいという側面がありまして、それが不況の下で消費税の巨大増税をすれば景気を著しく冷やしてしまう。そういうことが挙げられると思いますが、そういう意味で、この税制改革の流れそのものが、やはり取りやすいところから取るという財政当局の論理だけが先走っているという側面は否めないというように思います。
 それから、法人税につきましては、二〇〇七年十一月に政府税制調査会が発表しました税制の抜本改革に向けた中期的考え方、ちょっと名称は正確でないかもしれませんが、この文書の中で、日本の法人税負担は国際比較をした場合に必ずしも高いとは言えないと、こういう結論が示されている中で法人税の減税だけ先行して実施されたということも、消費増税を生み出すためのある種利益誘導といったような側面が強いと。そういう意味で、理念よりはとにかく取りやすいところから取るということが前面に出た形になってしまっているんじゃないかと思います。
 それから、関連法案に対する評価ということでございますが、これも詳細にわたる御説明できませんけれども、本来、社会保障制度と税の一体改革ということでありますので、例えば最低保障年金の問題であるとか年金の一元化であるとか、あるいは歳入におきまして歳入庁の創設とか、総合的なものを一括してこれを検討し、それと併せて増税ということを検討するということが建前でございますけれども、主要な項目につきましては全て先送りということで、増税だけを実施するような法案になってしまっている。そこに一番大きな問題があると、このように考えております。
○吉田忠智君 ありがとうございました。
 続きまして、醍醐公述人に質問をいたします。
 附則十八条の二項の問題、それから消費税以外の税目、所得税、相続税の先送り、それから中小企業の負担転嫁の問題、さらに不安定非正規雇用の問題ということで、私もこの間この特別委員会でも取り上げました課題について、今回のとりわけ消費増税関連法案の問題点について端的に御指摘をいただいた、そのように思っております。
 十八ページには、先ほど醍醐公述人からも説明がありましたけれども、対案ということでお示しをいただいておりますが、醍醐公述人が考える理想的な税制というのはどうあるべきなのかということを、この十八ページのことも含めて御説明をいただきたいと思います。
○公述人(醍醐聰君) 私は、やはり税は特に原理原則を大事にする、これは本当に全ての利害にかかわる問題です。だから、信頼をゆるがせにしないためには一過性の議論ではなく、原理原則といえば、税は、これは担税力です。担税力のない課税をしようとすることは、これはやはりどこかに破綻が来る。それが今の損税問題です。
 詳しいことはここで省略いたしますけれども、本来は転嫁していないのに、転嫁していない価格を税込み価格とみなして、それを一・〇五で割り戻した数値を税抜きとして、それに税率を掛けるというのが今の課税のやり方なんですね。いかにも課税技術的なやり方ですけど、幾らそうやってみなしでやってみましても、これは転嫁していない、預かっていないものなんです。それに課税をするということが本当に税の原則、担税力というものにかなっているのかどうかということは、もっとこれは私は真剣に議論していただく必要があるんじゃないかと思うわけですね。
 そういう意味で、私は、担税力、応能のやはり原則というのが、これは憲法でも必要に応じて給付するという考え方に立っているわけですね。これが本当の社会の、誰もがその社会に対して信頼を置ける、そういう状態だと思います。そういう意味で、私は、所得税のよく再分配機能を回復しようと、私もそのとおりなんですが、実は所得税の税率を適正にするということは財源調達機能にもこれつながっているということを感じます。
 それともう一つ、私は、増税だったら何かと議論する前に、増収のときに増税だけなのかと。税外収入にもっと目を向けるべきじゃないか。
 先ほどから特別会計のことを申し上げましたが、過去五年間で、最低の年度でも八兆円の不用額が発生しているわけですね。不用額ということは、予算全体に、これはマクロ的に言えば、ゆとりがあるということなんです。それがどこにどれだけあるかということは、ミクロ的な話はこれはやっていいと思うんです、私も書いたつもりですけどね。この問題をまず着目していただきたいなと思うわけです。
 もう一つ、医療費高騰で日本はとりわけ薬剤費の負担が非常に高いです。これは、私もオブザーバーで参加させていただきました全国保険医団体連合会が試算したところ、二割下げると約〇・九兆円の財源が生まれると。そのメーカーの売上高利益率というのが一四%台です、製造業平均が二、三%のときにですね。それはなぜかというと、売上高原価率です。端的にトップメーカーの武田薬品でいうと、売上高原価率が二〇%台です。こんな業種って普通はないと思うんですね。それだけ仕入れよりも販売が、卸に引渡しする価格が原価から乖離しているということですね。ここにやはりメスを入れるべきではないかという形で、まあ一兆円単位の財源が生まれるところが幾つもあるというのが私の考え方です。
 長くなりました。
○吉田忠智君 ありがとうございました。
 続きまして、飯田公述人に伺います。
 財政赤字の解消のために強力な金融政策による名目成長によってこれを改善をすべきだという主張をされておられるわけですが、なかなか金融政策は難しいのではないかと素人が考えますと思うわけでありますが、飯田公述人は、資料の中では、多様な資産の買入れによる量的緩和、それから数値目標と期限を伴うインフレターゲット、為替レートへの効果的な介入、今の政府、日銀が行っている金融政策について、どのように問題点として把握されておられて、その上でこういう提案をされておられるのか、御意見を伺いたいと思います。
○公述人(飯田泰之君) 現時点の日本銀行の金融政策に関しましては、非常に有名になった図というのが二つございます。一つが、二〇〇七年以降のベースマネー、つまり中央銀行のバランスシートの拡大のスピード、これ、各国、バンク・オブ・イングランドは約三倍、FRBが二・五倍、比較的穏やかなヨーロピアン・セントラル・バンクにおきましても一・五倍以上の拡大、それに対して日本銀行はほぼ一定を保っております。
 また、第二の問題としまして、長期国債の買入れを拡大するといったときに、これは私とイエール大学の浜田宏一先生とともに行った試算でありますが、長期債というのは、通常経済学では一年以上の満期を残している債券のこと、また、それはいわゆる会計上もそうなわけなんですけれども、大体十三から十五か月残の長期国債を主に買い入れているため、それは数か月後には短期債に転換してしまう。このような手法を通して、実際には中央銀行、現在日本は、短期債をごく小規模に買っているにすぎない金融緩和しか行っておりません。これを、世界各国並みに、せめてFRB又はバンク・オブ・イングランド並みにするだけでも現在の大幅な円高状態というのは回避できると考えられます。実際、為替レートの製造業そしてその雇用に対する影響というのは甚大でありまして、現在、輸出、輸入が不利になるという意味ではなくて、工場立地点として世界の中で日本が選ばれるか否かというのが大きな問題になっております。
 今後の日本の雇用を考える場合に、安定的に、例えば現在IMF等が発表する購買力平価レート、つまり海外との物価差がなくなるレートである百円台後半というのを目標に為替政策というのを行っていくことで、長期的な日本の問題、日本全体を支える雇用というのを生み出していくことができるんではないか。そのためには、やはり日本銀行、そして金融政策全体を縛っている現行の日銀法に何らかの改善を加えていく必要があるんではないかというのが私の見解であります。
○吉田忠智君 中村公述人にお伺いをいたします。
 私が読んだ資料では、一九八九年、消費税を導入してから昨年度まで、二〇一一年度まで国民が負担をした消費税は二百三十八兆円、そして、いわゆる地方税も含めて法人三税の減税、これが二百二十三兆円と書かれていました。ある人が、じゃ、消費税で国民が払った分は法人税の減税に大半が回っているんだなという御指摘をいただきましたが、この点についてどのように思われますか。一点。
 もう一点。私は、やっぱり企業の責任というのは雇用と納税だと思いますが、その点についての御意見をお聞かせいただきたいと思います。
○公述人(中村豊明君) ただいまお話ございましたのは、消費税の分が法人税減税に回っているんではないかというようなお話でございましたけれども、私どもの方としては全くそういうような認識がございません。
 これは、日本の中だけで商売をやっているということでありますとそういうことになるかもしれませんが、今、一般的に輸出だけではなくてグローバルに日本企業が海外で拠点をつくって、日本でつくった技術を基に商品を売っているということがございまして、こういったところから考えると、日本の法人税の率は非常に高くて、海外で物をつくって海外で売って海外で再投資するというところと、これは日本でやった場合とでいくと、かなりの差がございますので、そうすると、単に、例えば電機業界で見ても、過去営々と稼いでいた企業があっという間に新興国の企業に投資競争で負けて、ついに会社を畳まなきゃいけないというようなことになります。こういうことは、鎖国をやっていれば別ですけれども、今の世の中ではこういうことはあり得ませんので、国際競争力を稼いで、そして日本の企業が発展をするということが大事だというふうに思っておりますので、そういった面で、法人税を下げるための消費税ではなくて、国が富むためのそれぞれの、消費税は消費税、これは将来の社会保障のための財源でありますし、法人税は企業が雇用を守るために再投資をする、そのために使われるものだろうというふうに思います。
 そうすると、その雇用が守られなければいけないという点は、確かに雇用を確保するということは非常に重要だと思います。ただ、同じ事業を例えば韓国がやって日本もやっているというときに、日本は雇用をして人件費が例えば三割高いと。そのときに法人税も一〇%以上ギャップがございますので、その結果で十年続けるとどういう企業の競争力になるかというのは、これはもうふだんの結果を見ていただければ十分にお分かりいただけると思いますので、雇用を守るためには企業が元気になることだというふうに思います。したがって、企業が元気になるような施策をやっていただくのが重要であろうと思います。
 もう一点言わせていただきますと……
○委員長(高橋千秋君) おまとめください。
○公述人(中村豊明君) はい。
 最後にまとめさせていただきますと、各国が法人税率を引き下げて、世の中では法人税率の引下げ競争をやっておるじゃないかということがございますが、これは何のために各国が法人税率を下げているか。これは各国で各国の国民の雇用を増やすためにやっているわけでありまして、その企業の経営者に給料をたくさん渡すということでやっているわけじゃありませんので、そういう競争の中で私どもはやっておりまして、日本も是非そういった競争で勝つようなインフラをつくっていただきたいというふうに思っております。
 以上でございます。
○吉田忠智君 貴重な御意見をありがとうございました。
 終わります。
○亀井亜紀子君 みどりの風の亀井亜紀子でございます。
 本日は、公述人の皆様、お忙しい中、貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございます。限られた時間でございますので、全員の皆様に質問する時間はないかと思いますので、一部の方に御質問をさせていただきます。御了承ください。
 まず初めに、私は飯田公述人にお伺いをしたいと思います。
 飯田公述人は、今回の消費税増税というのは財政再建の根本的な解決策にはならないので反対であるとおっしゃいました。私も全く同感です。私は、やはり本当の意味での社会保障と税の一体改革が必要だと思っておりまして、今回のこの消費税の増税法案というのは、制度改正とその抜本改革とは全く整合性がありませんので、その意味でも反対です。
 そこで、お伺いしたいんですけれども、まず年金制度です。
 私は、この法案のたたき台となった政府の社会保障改革に関する集中検討会議にずっと出ておりましたから、その過程でどのような論争があったかということはよく存じております。その中で、年金についてですが、賦課方式から積立方式に変えるということについて、前向きな発言は出席者の中からはありませんでした。有識者がどのような基準で選ばれているのかは分かりませんけれども、出席した方から前向きな回答はありませんでした。
 年金については、各団体、経団連ですとか経済同友会、日本商工会議所、連合、それから各新聞社からの案というのを発表していただきまして、それから有識者の発表がありました。そこで印象的だったのは、慶應義塾大学の駒村康平教授ですが、彼は、高齢化社会では積立方式にすれば対応できるというのは神話であって、直ちに持続可能な年金になるわけではない、経済成長がなければ積立方式でも実質的な価値のある年金は給付できないし、成長があれば賦課方式の年金でも持続可能である、賦課方式から積立方式への移行は困難という見解を述べられました。
 こういった意見がベースとなって積立方式に変えるという議論には、そちらの方向にはならなかったんですけれども、飯田公述人は積立方式を推奨されていると私は認識しておりますので、どういうやり方であれば可能なのか、もしあれば教えていただきたく思います。
○公述人(飯田泰之君) 財政再建のための消費増税であれば、やはりその消費増税、何%にすれば何ができるのかというのを示すべきであると。そのために、社会保障に関する不足額というのを明確にするべきだと。その際に、一つの方法が積立方式への転換でありますし、積立方式でありましても、改革前の年金と改革後の年金というのを取扱いを分けることによってほぼ似たような効果は達成できるかと思います。
 これに関しましては、しばしば企業再建、又はJRの民営化の際にも同じような手法を取りましたけれども、旧制度部分というのを会計方式として切り離すこと、これが再生の第一歩になると。その際に、最もすっきりしているのは、このような問題がどのような経済成長においても起きないであろう積立方式への転換でありますし、また、これは同時に主張しているところでありますが、十分な経済成長があれば現行方式の改善でもこれは可能になる、これはどちらの選択肢も排除せずに議論をしていくべきではないかと考えております。
○亀井亜紀子君 ありがとうございます。じゃ、基本的には、改正前と改正後でその会計を切り離すということがまず大事であるということですね。ありがとうございます。
 では、次の質問に進みます。
 醍醐参考人にまずお伺いをしたいと思います。
 先ほどの附則十八条二項のことをおっしゃいましたけれども、この委員会でも随分議題に上がっております。私は、財務省と今まで議論をした結果、財務省はこれを、消費税というのは基本的に一般財源にしておきたいというのが基本でして、目的化か目的税化かということでさんざんやり合ったんですけれども、今でも消費税は目的税であると、社会保障目的に使うと書いてあるのだから目的税であって、それを特別会計とか区分会計すべきじゃないというふうに財務省は言います。
 このことについて、では、社会保障に使うというのであれば、区分会計ですとか、とにかく分けなさいということを言いますと、財務省だけではなくて、業界団体も反対をするところがあります。それは、彼らの言い分は、社会保障の財源として消費税と決めてしまうと、景気によって左右されますから、消費税収が少なかったときにほかから補充をしてもらえないんじゃないかと。なので、そういうふうにくくってしまわない方がいいだろうという意見が聞かれるんですけれども、この消費税の会計処理について、目的化か目的税化か、どのようにお考えでしょうか。
○公述人(醍醐聰君) 結論から言いますと、社会保障改革法の中に、社会保障の主たる財源は消費税にするとありますね。これは、一言こう書いてあることは、今後に非常にこれは重大な問題を投げかけていると私は考えております。
 つまり、言わば私学が学費を上げるのも物価スライドですね。つまり、財源が足りなくなったら、それを補うのは消費税、主たるとは言っていますけれども、消費税ですと。社会保障経費が伸びたら、その財源は消費税ですと。それ以外の財源を充てることは原則考えないということをここで宣言する法案だと私は思っております。これは将来、非常に重大な問題を投げかけると。本当にそういうことを認識の上でやはり法案のこの是非を議論していただく必要があるんじゃないか。私も、議員がどうお考えか分かりませんけれども、縛るべきではないというふうに元々考えております。
 ただ、先ほど、社会保障に全部充てられるのかどうかということは、整合性の問題としてそれを申し上げているというつもりでございます。整合性というのは、政府見解との整合性、法案の題目との整合性ということでございます。
○亀井亜紀子君 私の考えですけれども、ここでの政府見解で社会保障に全て使いますと言ったところで、一般財源に入っている限り、ほかのことに使われてしまうかもしれないので、私は、それは口約束であって意味がないことだと思うんですね、幾ら前向きな答弁を引き出しても。そういう意味で、中が見えるようにするという意味では区分会計にするべきだと思っているんです。ただ、そのときに、ほかからの補充がないということにはすべきじゃないので、そこをはっきりさせたいわけなんですね。
 それはどういう方法がいいかと、どういう書きぶりがいいかという問題なんですけれども、同じ質問、つまり社会保障の財源としてそもそも消費税を充てることが正しいのかということについて、では、植草公述人にお伺いいたします。
○公述人(植草一秀君) お答えいたします。
 先ほど年金制度の収支試算について、二〇〇四年の厚労省試算と二〇一二年内閣府が発表した試算、これ御都合主義ということを申し上げたかったわけですけれども、そのときの目的に応じていいとこ取りをしてしまうという意味で、この消費税による目的税化の議論にも似たような部分がありまして、財源が余っているときにはこれをほかにも使えるようにするということをやりながら、一方で、今も醍醐先生からお話ありました社会保障制度改革推進法案の第二条の第四号でありますけれども、社会保障給付に要する費用に係る負担の主要な財源は消費税を充てると、こういう規定が盛り込まれておりますので、これを拡大解釈しますと、消費税が増えない限りもう社会保障支出は増やさないというような解釈も成り立ち得ると思いますので、私、元々お金に色はありませんので、使途を限定するという立場は取らない方がいいと。ただ、財政事情が非常に厳しいという中で無理して増税するということであれば、それが社会保障の充実のためという名目であれば、そこで上がった税収を他の支出に充てるということは筋が通らない、そこは国会審議において筋を通していくべきと。
 ただ、逆に言いますと、先ほど御指摘のありました、将来足りなくなったときに他の財源を回せるかということについては、それができるということを明確にしておくことが不可欠だというふうに思います。
○亀井亜紀子君 ありがとうございます。
 やはり、今回、社会保障の主たる財源として消費税を充てると書いてあるということは確かに危険だと思います。また、一条のところで財政再建と社会保障を同列に書いていますので、使う方に関しては、財政再建といえば何でも当たりますから使えてしまうということも非常に問題だと考えています。
 次に、軽減税率について私は長谷川公述人にお伺いしたいと思います。
 軽減税率を推奨していらっしゃいますが、先ほど欧州の例も挙げていただきました。欧州の付加価値税と今の日本の消費税というのは、私は別物だと考えています。つまり、単一税率であらゆる財とサービスに掛けるというのは、やはり付加価値税、ぜいたく税的なものですから、それとは私は違うと思っていまして、あと、全体の基幹税に占める消費税の割合ということも非常に気にしております。
 もし、先ほどの御意見ですと、付加価値税を導入して、軽減税率のものもあるけれども、それでも十分税収は上がっているとおっしゃいました。ということは、逆に、日本の今の制度で、単一税率で結構、何というんでしょう、二、三割はその税収の中を占めているわけでして、それを軽減税率なしに、五から一〇%というと倍ですから、そうなったときには、欧州並みというか、それ以上に国民が重税感を持つのではないかと気になるんですけれども、その辺はいかがでしょうか。
○公述人(長谷川聰哲君) 先ほども議論にありましたけれども、福祉を手当てするための財源という場合に、我が国の租税負担率の今の状況というのは、それがもつ水準であるかどうかという問題があります。仮に長期的にそういった部分を考えるとした場合に、多くの国民、消費者、家計の生活をどのようにそれまでの、あるいは現在のような形の基礎的な支出を維持させることができるかということを考えますと、将来の消費税に更に偏るようなことがあるかもしれない、そういった長期の視野の中では、軽減税率という形で基礎的な消費支出を保障するという仕組みが重要だというのが私の考えであります。
○亀井亜紀子君 ありがとうございます。
 最後の質問を、もう一度醍醐公述人にお伺いしたいんですが、価格転嫁の問題です。
 私は、例えば軽減税率でインボイスの導入ですとか、あるいは税が見やすいように内税から外税に戻すですとか、そういう提案をしたんですけれども、これが財務省のみならず中小企業団体からも反対意見が来るんですね。それは事務負担の増大であるとかいろんな理由があるんですけれども、とにかく反対であると。ですから、中小企業に負担が掛かるからと思って提案をすると、当の中小企業団体から反対が来るというような現実なんですけれども、なぜ中小企業が軽減税率、複数税率に反対するのか、なぜ外税方式に反対するのかということについて、もし御存じでしたら、御意見を伺いたいと思います。
○公述人(醍醐聰君) 確たることは分かりませんが、恐らく中小企業者さんといっても、業種によってその軽減税率の線引きが恐らくこれは意見がまとまらないんじゃないのかなと。したがって、業界全体で、そういう中でなかなかまとまりにくいことについては前向きにはなれないというお気持ちと、それから、それ以前に、損税の問題で恐らく頭がいっぱいで、各論になかなか入る気持ちになれないのかなというふうに感じます。
 それから、もう一点、対顧客関係でなくて、私は、下請関係で、先ほど中村公述人から企業間はうまくいっているとおっしゃいましたけれども、私の認識は全く逆でございまして、経産省の指導の仕方は、両者をウイン・ウイン関係でやりなさい、消費税の転嫁だけが問題じゃないんです、その分だけいかにコスト削減できるかを考えなさいと、そういう業界指導的な形なんですね。これをやっぱり改めない限りは、下請関係のところは泣き寝入りで終わっているだろうと私は考えております。
○亀井亜紀子君 ありがとうございました。
 時間ですので、以上で終わります。
○委員長(高橋千秋君) 以上をもちまして午後の公述人に対する質疑は終了いたしました。
 公述人の方々に一言御礼を申し上げます。
 皆様には、長時間にわたり有益な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。本委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)
 これをもって本日の公聴会を散会いたします。
   午後四時五十一分散会