第185回国会 本会議 第3号
平成二十五年十月十八日(金曜日)
   午前十時一分開議
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○議事日程 第三号
  平成二十五年十月十八日
   午前十時開議
 第一 国務大臣の演説に関する件(第三日)
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○本日の会議に付した案件
 一、日程第一
 一、裁判官弾劾裁判所裁判員、同予備員、裁判
  官訴追委員及び同予備員辞任の件
 一、裁判官弾劾裁判所裁判員等各種委員の選挙
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○議長(山崎正昭君) これより会議を開きます。
 日程第一 国務大臣の演説に関する件(第三日)
 昨日に引き続き、これより順次質疑を許します。山口那津男君。
   〔山口那津男君登壇、拍手〕
○山口那津男君 公明党の山口那津男です。
 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました安倍総理の所信表明演説に対して質問いたします。
 初めに、台風二十六号が東京都伊豆大島を中心に甚大な被害をもたらしております。犠牲となられた方々に深い哀悼の意を表するとともに、多くの被災者の皆様に心からのお見舞いを申し上げます。また、政府に対し、行方不明の方々の捜索や被災された方々への支援に全力を挙げるよう求めます。
 公明党と自由民主党との連立政権が発足してから約十か月が経過しました。今夏の参院選で自民、公明の与党が勝利し、衆参のねじれが解消しました。
 改めて、与党を勝利させていただいた民意を振り返れば、安定した政権の下で、着実に日本の内外に山積する課題に取り組んでもらいたいとの国民の願いがあったと思います。それにおこたえするためにも、連立政権発足の際に掲げた経済の再生と東日本大震災の復興の加速など具体的な課題に対し、与党としての重責を果たしてまいります。
 さきに私は、公明党代表として十年ぶりに訪米した折、現地での講演で、公明党は日本政治の安定装置になると申し上げました。ここでの安定の意味には二つの要素があると考えます。国会において公明党は、自由民主党とともに数の安定を保つと同時に、福祉や子育て、環境、中小企業等の国民生活に密接なテーマで実績を積み重ねてきた経験、持ち味を発揮する、言わば質の安定の役割も十分に果たしてまいりたいと考えています。そして、安倍政権の下、自由民主党と協力しながら、力強く政治を前に進めてまいりたい。
 安定した政治状況が生まれた今、公明党として外交にも積極的な役割を果たしていきたいと考えています。さきの党訪米団派遣もその一環です。日米関係の重要性は、アジア太平洋地域の国際的な位置付けを考えれば、一層高まっています。その中で、政府間の関係強化はもとより、政党、議員の交流も欠かすことができません。
 一方、日中関係は厳しい環境にありますが、最近、我が国の言論NPOがまとめた中国との共同世論調査では、相手国にマイナス印象を持つ人の割合がいずれの国も九割に達したものの、日中関係を重要と見る人は双方で七割を超えています。
 公明党は、国交正常化を進めたときから長年にわたり中国と対話を通じた友好的な交流を継続してきました。こうした関係を生かして、日中平和友好条約締結三十五周年の本年一月には、安倍総理の親書を携えて訪中し、習近平中国共産党総書記と会談、九月には、これまでの交流の財産を若い世代の議員に引き継ぐ意味からも青年訪中団を派遣いたしました。
 米国でも、日中関係とともに日韓関係への関心は高かったのが印象的で、私は現地での講演で、韓国は基本的な価値と利益を共有する重要な隣国であり、大局的観点から協力関係を築いていきたいと強調しました。様々な障害があろうとも、あくまで粘り強く対話による日韓関係の改善を進めるべきであると考えます。
 まず、日米関係について伺います。
 去る十月三日、日米安全保障協議委員会が開催され、自衛隊と米軍の役割分担を定めた日米防衛協力のための指針、いわゆるガイドラインについて、二〇一四年末までに見直しを行うことが合意されました。
 宇宙、サイバー空間における新たな脅威や、北朝鮮による核・ミサイル開発など、安全保障環境の変化を踏まえ、アジア太平洋地域の平和と安定のために日米が共同して責任を果たしていくことは重要な課題です。一方、我が国の役割を見直すに当たっては、その内容と必要性について国民への十分な説明と理解を得る丁寧な議論や周辺諸国への配慮が必要です。今後、どのようにガイドラインの見直し作業を進めていくのか、総理のお考えを伺います。
 また、同合意では、在沖縄海兵隊のグアム移転の開始時期や、MV22オスプレイの沖縄における駐留、訓練の削減など、沖縄の負担軽減に資する在日米軍の再編措置が明記されました。本年四月に合意された嘉手納以南の土地返還計画の着実な進展と併せ、沖縄の方々が実感できる負担軽減策を前に進めることが何より重要と考えますが、四月以降の返還計画の進展状況と今後の具体的な見通しについて総理に伺います。
 次に、冒頭述べたことと関連しますが、近隣諸国との関係改善について伺います。
 領土や歴史認識に係る問題が障壁となり、隣国である中国、韓国との関係修復が遅れています。これまでのような内向きの議論の繰り返しではなく、双方が関係悪化の原因を取り除く粘り強い対話努力が必要であり、政権基盤の安定している今こそ、本腰を入れて関係改善に取り組む好機と言えます。
 歴史認識については、これまで総理も、アジア諸国の人々に多大な損害と苦痛を与えた反省に立ち、歴代内閣の立場を引き継ぐ考えであると表明しており、慰安婦問題については、筆舌に尽くし難いつらい思いをされた方々のことを思い、非常に心が痛むわけでございまして、この点についての思いは、私も歴代総理と変わりありませんと述べていらっしゃいます。こうした安倍内閣の立場が正確に伝わるよう、あらゆる場面を通じて丁寧に説明していくことが必要です。総理のお考えをお聞かせください。
 次に、シリア情勢について伺います。
 シリアの化学兵器全廃を義務付ける国連の安保理決議を受け、化学兵器禁止機関、OPCWによる査察が始まりましたが、いまだ戦乱状態は続き、死者や難民の数は増え続け、受入れ国の経済的、社会的負担も増大しています。
 国際社会として更なる支援が不可欠ですが、公明党としても、人道支援等の調査をするため、今月一日から六日にかけ、ヨルダンやイラクなどシリア周辺国に石川博崇参議院議員を派遣し、難民キャンプ等の現状を調査し、関係者の意見を聴取してきました。
 避難者からの切実な声を聞き、喫緊の課題として、水・衛生、保健分野における支援や、子供たちの教育環境整備、妊産婦など母子保健を含む女性支援が重要であるとの認識に至りました。また、キャンプ外で生活する避難民やシリア国内にとどまる避難民への支援も十分ではなく、さらには、受入れ国にあって避難民の長期受入れが深刻な水不足、電力不足を招いている状況など、課題は山積していることが判明しました。
 化学兵器の廃棄が重要であることは当然です。さらに、根本的な情勢の改善には、やはり戦闘状態の終結が必要であり、我が国としても、シリア情勢の平和的、外交的解決を図る更なる努力が必要と考えます。我が国の果たすべき役割について総理の御見解を伺います。
 二〇二〇年のオリンピック・パラリンピック夏季競技大会の東京開催が決定しました。開催成功はもとより、元気な日本社会へと変革する取組をオールジャパンで推進することが重要です。
 その取組の一つとして、文化芸術の振興に力を入れることをあえて強調したい。地方には世界に誇るべき有形無形の文化財があり、多様な文化芸術活動や伝統などがあります。これらの文化芸術を新たな成長分野として、これまで以上に予算と人材を投入し、振興することにより、その他の多彩な観光資源と融合し、世界の人々が行き交う地方をつくり出します。こうして地方の活性化を生んで、日本経済再生につながると考えます。総理の所見を伺います。
 公明党は、かねてより、スポーツ振興政策を総合的に進めるため、スポーツ庁の設置を目指してきました。
 二〇一一年に成立したスポーツ基本法附則第二条にはその設置検討が盛り込まれ、安倍内閣発足の際も、スポーツ庁の創設を含め、スポーツ立国を実現するための諸政策を推進すると総理から下村文部科学大臣に指示されたところです。
 オリンピック・パラリンピック東京大会へ向けて、政府一体でスポーツ振興を力強く推進するとともに、高齢者や障害者も幅広くスポーツと親しめる環境整備を進めるなど、生涯スポーツ社会構築への司令塔としてスポーツ庁の設置を期待しますが、総理の所見を伺います。
 厳しい財政状況の下、一層本格化する少子高齢化、人口減少社会にあって、社会保障の費用を安定的に確保し、将来にわたって持続可能な社会保障制度を維持強化していくことを目的に、昨年、三党合意を受けて立法化した社会保障と税の一体改革に基づき、安倍総理は、法律どおり明年四月一日から消費税率を五%から八%へと引き上げる決断をされました。
 我々も、消費税率引上げ判断の前提となる、経済状況が好転しているかどうか、社会保障の全体像が示されているかどうか、この二点について検討を行い、了承しました。
 経済状況については、対外リスクなど先行きに不透明さがあるものの、四―六月期の実質GDPは年率換算で三・八%に改善、日銀短観における全産業・全規模合計の景況感は五年十か月ぶりにプラスに転じたほか、雇用の面でも回復が見られるなど、本格的な経済成長への好循環に向かう兆しが見て取れると判断しました。
 社会保障の全体像については、消費税の税収は、地方消費税の一部を除いて、年金、医療、介護、子ども・子育て支援の社会保障に全て充てられるということが既に決定されております。また、社会保障制度改革国民会議の報告書を基に、制度の工程を示す社会保障プログラム法案が国会に提出されております。昨年の一体改革の議論の中で、子ども・子育て支援と当面の年金改革については、関係法律が既に成立し一定の方向性が示されました。その上で、残された医療や介護についての基本的な方向性が同法案に盛られており、社会保障改革の全体像はおよそ示されたものと判断をいたしました。
 とはいえ、日本経済の本格的な成長への軌道は緒に就いたばかりであります。特に、我々は、成長の果実を家計へ、地方へ、中小・小規模企業へといかに浸透させていくかが最も重要だと認識しており、安倍政権の一翼を担う公明党として、政府とともに全力を挙げていく所存であることをまず表明させていただきます。
 さて、今回の引上げ決定に際し、税制を含め五兆円規模の経済対策を行うこととなりましたが、三党合意に立ち返りますと、残された課題として消費税の逆進性対策をどうするかという大きな問題があります。
 マスコミの世論調査においても、一〇%段階から食料品を始めとする日常必需品への軽減税率を求める国民の声が七割に及ぶなど、一時的な給付措置ではなく、抜本的、恒久的な対応を講ずべきとする声が高まってきております。
 自民党と公明党は既に消費税一〇%への引上げ時に軽減税率制度の導入を目指すことで合意をしており、与党の税制調査会で精力的にヒアリング調査などを進めているところです。今年末の税制改正大綱作成時に向けて軽減税率の導入の議論を更に加速化し、制度設計の基本を明確にしてまいりたいと考えます。総理の認識を伺います。
 社会保障制度改革等について伺います。
 社会保障制度改革国民会議の報告書並びにプログラム法案については、介護が必要になっても住み慣れた地域で暮らせるための地域包括ケアシステムの構築や医療保険制度の財政基盤の安定化など、社会保障充実のメニューが列挙されていることと並び、注目される施策の一つは難病対策が明記されたことであります。
 公明党はかねてより、難病で苦しむ方々を社会で支える体制を築くべく、対策の抜本改革を主張してきました。
 今般のプログラム法案では、恒久的な医療費助成、対象疾患の拡大、対象患者の認定基準の見直しなどについて、検討の上来年の法案提出を目指すとされ、併せて厚生労働省の難病対策委員会においても改革についての議論が進められております。今後の検討では、患者の方々の実態を踏まえ、真に医療費助成を必要とする方への支援が打ち切られないよう留意すべきであります。
 難病対策は、安定的な財源を確保した上で、医療体制の整備や治療方法の研究促進も含め総合的に推進すべきと考えます。所信表明演説で難病対策はライフワークとも呼ぶべき仕事と述べられた総理の答弁を求めます。
 社会保障制度改革に関連し、少子高齢化が進む日本では、支え手となる人々の雇用拡大は最重要の課題の一つであり、元気な高齢者や若者、女性、障害者など、希望者が能力に応じて働ける全員参加型社会の構築が不可欠です。
 また、社会全体が経済回復を実感し、経済の好循環を生み出すためには、企業収益を賃金上昇や雇用拡大に反映することが必要であり、政労使会議における実りある議論を期待します。
 共働き世帯や単身世帯の増加など、国民のライフスタイルも多様化しており、正社員か非正規かというこれまでの二元的な考え方を脱却し、多様な働き方を選択できる社会の構築が求められています。非正規雇用から正社員への転換が進みにくい状況の中、多元的な働き方の拡大はキャリアアップの一里塚との見方もありますが、働く人の視点に立ち、適切に進めるべきです。
 なお、雇用政策の課題の一つである労働者派遣制度の在り方については、雇用の安定と労働者の保護並びに中小企業等の労働力確保の観点も踏まえて議論すべきと考えます。
 先月、厚生労働省は、若者の使い捨てが疑われる企業への対策として、集中的な監督指導、全国一斉の電話相談、職場のパワーハラスメントに関する啓発などを実施しました。この問題は公明党としてもかねてから憂慮しており、若年労働者などに対して劣悪な労務環境下で仕事を強いる企業への対策強化を訴えてきました。本年六月には、公明党青年委員会が同対策を含む政策提言を総理に直接申し入れたところです。未来ある若者が安心して働けるよう、今回の取組の結果を検証し、更に対策を進めるべきと考えます。
 社会保障の担い手となる人々の雇用を拡大し、日本経済を成長軌道に乗せるべく、多様な働き方を選択できる社会、安心して働ける社会の実現に向け、着実に取組を進めるべきと考えますが、総理の答弁を求めます。
 被災地の方々は、震災から間もなく三度目の冬を迎えようとしています。連立政権の発足から約十か月、総理の強いリーダーシップの下、この間、様々な施策が講じられる中、復興を阻む隘路も徐々に克服され、被災地の方々からは政権交代により復興のスピード感が上がってきたとの声も聞かれるようになり、確かに一部の被災地で企業立地や雇用確保、住宅再建の面などに明るい兆しが見えつつあるように感じます。
 しかし、仮設住宅などで厳しい生活を余儀なくされている被災者の現状や、福島の再生に暗い影を落としている汚染水問題、除染の遅れや災害公営住宅の不足など課題に目を向けるとき、五年という集中復興期間の半ばを経過した今、より一層復興の速度を増し、きめの細かい支援、力強い対策の推進が必要です。
 改めて、復興の加速に懸ける総理の決意をお聞かせください。
 現在、帰宅困難な長期避難者が所有する家屋に対する賠償の上積み額や、避難指示区域の住民への区域解除後の精神的損害に対する賠償期間などについて議論が進められています。いずれも年内に取りまとめ、それらを反映した新たな指針を作る方針と聞いておりますが、一日も早く長期避難者の住宅再建、生活再建への不安が解消されるよう、避難者の実情や要望を踏まえた新しい指針を早期に策定し、新たな賠償を開始すべきと考えます。加えて、被災者から要望の強い、田畑や山林の賠償、自主除染への賠償などの賠償の指針についても、速やかに検討を始める必要があります。総理の見解を伺います。
 公文書管理法の改正について伺います。
 現在、政府で提出を予定している特定秘密保護法案につきまして、公明党の求めに応じ、国民の知る権利や報道の自由、取材の自由を明記すること、取材行為については、専ら公益を図る目的を有し、かつ、法令違反又は著しく不当な方法によるものと認められない限りは、これを正当な業務による行為とするものとするという規定を盛り込むことなどの修正がなされました。また、特定秘密が記録されている文書の取扱いについても、公明党の求めに応じ、他の行政文書と同様に公文書管理法を適用することとなりました。
 この公文書管理法につきまして、公文書等が、国及び独立行政法人等の諸活動や歴史的事実を記録するものであり、健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的財産として、主権者である国民が主体的に利用し得るものであることに鑑み、国民主権の理念にのっとり、その諸活動を国民に説明する責務を全うすべく、より適切な管理を図ることが必要であると考えます。
 そこで、内閣の最高かつ最終的な意思決定の場である閣議や、これに準ずる閣僚懇談会につきましては、その内容を記録し、利用を確保することが公文書管理制度の目的に照らし重要であることから、閣議や閣僚懇談会の議事録の作成を義務付けるとともに、三十年の保存期間が満了した後は、国立公文書館の設置する公文書館に移管し、一般の利用に供することができることを内容とする公文書管理法の改正案を早急に成立させることが重要であると考えます。総理の所見を伺います。
 次に、環境問題について質問します。
 国連の気候変動に関する政府間パネル、IPCCの第一作業部会は、先日、第五次報告書を発表しました。六年ぶりとなった今回の報告書では、様々な批判や懐疑論を踏まえた上で、世界の気候学者らが改めて温暖化の進行と脅威を確認した点で意義が大きいと言われています。
 近年、猛暑や豪雨など異常気象が頻発し、温暖化はもはや現実の脅威です。世界各国が足並みをそろえて温室効果ガスの削減に取り組むことが急務であり、我が国も必要な対策を講じる責任があります。ところが、我が国の二〇二〇年までの削減目標は東日本大震災等により見直しを余儀なくされており、先進国と主要排出国の中で二〇年までの削減目標を示していないのは我が国のみになっています。
 来月にはCOP19が開催され、二〇年以降の温暖化対策の法的枠組みについて、再来年中の合意を目指して交渉がいよいよ本格化します。また、来年九月には地球温暖化に関する首脳会議も開催される予定です。そうした中、我が国の温暖化対策の在り方が厳しく問われてくることは間違いありません。
 政府では、我が国の削減目標について、原子力発電所の稼働がゼロであるという実態の中でどれだけのことを示すことができるのか、環境、経産、外務の三省で議論を進めていると聞いております。
 公明党としては、少なくとも省エネルギーや再生可能エネルギーなどの分野で最大限の努力を行う削減目標を決定し、それを盛り込んだ地球温暖化対策計画を閣議決定しCOP19に臨むべきだと考えますが、総理のお考えを伺います。
 高校授業料の無償化制度は、制度導入のときから様々な問題点が指摘されておりました。
 例えば、無償化以前から授業料が全額免除されていた低所得者層には恩恵が及ばないことや、無償化の財源を捻出するために特定扶養控除が縮減され、元々授業料が安かった特別支援学校や定時制、通信制高校の生徒がいる世帯では負担増を強いられたことなどです。また、私学に進学した高校生の家庭の経済的負担が依然として高く、都道府県によって支援の状況が大きく異なっていることも課題でした。
 施行後三年を迎えた制度の見直しに当たっては、低所得者層への支援や公私間の教育費格差の是正、特定扶養控除縮減への対応など、一層の支援の充実を図るため、それに要する財源と負担をお願いできる世帯の範囲とのバランスを考慮しつつ、自公両党で協議を重ね、所得制限の基準額並びに教育費負担の軽減のための具体的施策を確認しました。その一つとして、公明党が主張してきたいわゆる給付型奨学金の創設も盛り込まれましたが、今回の見直しの方向性について、総理の御認識を伺います。
 経済再生と並ぶ最重要課題として教育の再生を掲げる安倍総理が設置した教育再生実行会議では、これまで三次にわたる提言がなされております。
 第二次提言となった教育委員会制度の在り方については、現在、中央教育審議会に諮問、教育制度分科会で審議されており、去る十月十一日の審議経過報告において、教育行政の執行機関を、現在の教育委員会から自治体の首長とする案と、現行どおり教育委員会とするが、その性格を変えた執行機関とする案が提示されました。
 現在の教育委員会制度は、責任の所在が不明確、委員会の役割が形骸化しているなどの批判も多く、諸課題に対応するためには見直しが必要なことは言うまでもありませんが、見直しの中で、教育の政治的中立性、継続性の確保という教育委員会制度の本来の意義が損なわれるようなことがあってはならないと考えますが、総理の所見を伺います。
 非嫡出子の相続分は嫡出子の半分と定めている民法の規定について、九月に最高裁が違憲判決を下しました。審理に加わった十四人の裁判官全員が違憲と判断しており、司法の強い決意を立法府である国会に対して示したものと言えます。
 また、戸籍法では、出生届に嫡出子か又は非嫡出子であるかを記入するよう義務付けていますが、最高裁は、憲法に違反しないものの、自治体の事務処理上、不可欠とは言えないと指摘しました。関連して、寡婦控除について、婚姻歴のない母親は適用外であるとの問題もあります。
 憲法は法の下の平等を保障しています。民法、戸籍法の改正を含め、こうした差別の解消に取り組むべきと考えますが、総理の答弁を求めます。
 最後に、一言申し上げます。
 公明党は、明年十一月、結党から五十周年を迎えます。公明党は結党以来、大衆とともにの立党精神に立脚して政治に処してきました。その立党精神を更に堅持し、どこまでも深く地域に根差し、国民の皆様の声なき声に耳をそばだて、不安を取り除き、安心と希望の道を示す、それこそが政治に携わる者のあるべき姿であると自らに言い聞かせ、これからも様々な課題に真摯に挑み続けていくことをお誓い申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)
   〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 山口那津男議員にお答えをいたします。
 台風二十六号による大雨でいまだ多くの方々が行方不明となっており、政府といたしましては、関係機関一体となって救出・救助活動、被災された方々への支援等に引き続き総力を挙げて取り組んでまいります。
 ガイドライン見直し作業についてのお尋ねがありました。
 現行のガイドラインは、その策定から既に十六年以上が経過しており、我が国周辺の安全保障環境が一層厳しさを増しているほか、海賊や国際テロ等に加え、サイバーや宇宙空間といった新たな領域での課題への対応が求められています。
 今回の見直しに当たっては、我が国の防衛を日米防衛協力の中核的要素としつつ、先ほど述べた安全保障環境の変化に対応し得る日米防衛協力の指針を示していく必要があると考えています。
 政府としては、御指摘も踏まえ、見直しの意図や方向性を適切に説明しつつ、我が国の防衛を確固たるものとするため、我が国自身の防衛努力を向上させるとともに、このガイドラインの見直しを通じて米国との協力を強化させていきます。
 嘉手納以南の土地返還計画の進捗状況と今後の見通しについてお尋ねがありました。
 本年四月に策定した嘉手納以南の土地の返還計画は、土地の返還時期と返還に向けた具体的な段取りを初めて、かつ日米共同で明らかにしたものであります。
 計画の進捗状況については、まず牧港補給地区の北側進入路については既に我が国への返還が実現しており、さらに、西普天間住宅地区、牧港補給地区の第五ゲート付近の区域、キャンプ瑞慶覧の倉庫地域の一部及び白比川沿岸区域については日米合同委員会において具体的な返還合意を行っております。今回の2プラス2においては、これらの土地の返還が当初予定よりも早く進んでいることを日米間で確認したところであります。政府としては、引き続き、来年度中に西普天間住宅地区の我が国への返還を実現するとともに、その他の土地についても計画を着実に実施してまいります。
 これに加え、今回の2プラス2で確認したオスプレイの訓練移転、米海兵隊のグアム移転などの措置を着実に進め、負担軽減が沖縄の皆様に実感していただけるよう、地元の御理解を得ながら、引き続き全力で取り組んでまいります。
 歴史認識についてのお尋ねがありました。
 歴史認識については、累次の機会に申し上げてきたとおり、我が国はかつて、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えてきました。その認識においては安倍内閣としても同じであり、これまでの歴代内閣の立場を引き継ぐ考えであります。
 戦後、我が国は、その深刻な反省の上に立って、自由で民主的で、基本的人権や法の支配を尊ぶ国をつくり、戦後六十八年にわたり平和国家として歩んでまいりました。今後、我が国は、国際協調主義に基づく積極的平和主義の考えの下に、地域や国際社会の平和や安定により一層貢献していくべきであると考えております。
 慰安婦問題についてお尋ねがありました。
 慰安婦問題についても、これまで累次の機会に申し上げてきたとおり、筆舌に尽くし難いつらい思いをされた方々のことを思い、非常に心が痛みます。この点についての私の思いは、歴代総理と変わりありません。同時に、私としては、この問題を政治問題、外交問題化させるべきではないと考えています。
 これまでの歴史の中では多くの戦争があり、その中で女性の人権が侵害されてきました。二十一世紀こそ人権侵害のない世紀にすることが大切であり、日本としても全力を尽くしていく考えであります。先般の国連総会の演説において、私は、二十一世紀において女性の人権を守るための具体的施策を明らかにしたところであります。
 御指摘のとおり、我が国の考え方を関係する諸国に伝えていくことは非常に重要であり、あらゆる機会をとらえて安倍内閣の考え方を説明していく所存であります。
 シリア情勢についてのお尋ねがありました。
 化学兵器は二度と使用されてはならず、OPCWによる化学兵器の廃棄が重要なのは言うまでもありません。しかし、御指摘のとおり、根本的な情勢の改善には戦闘状況の終結が必要であり、シリアにおける暴力の停止と政治対話の開始、劣悪な人道状況の改善が喫緊の課題となっております。
 私は、先月の国連総会において、化学兵器廃棄に向けた国際社会の努力へのあたうる限りの協力や、難民、避難民及び周辺国への人道的支援として六千万ドル相当の追加的支援を表明しました。
 我が国としては、こうした支援をジュネーブ2を始めとする政治対話のプロセスと並行させ、国際社会と協力しつつ進めていく所存であり、今後とも、シリア情勢の平和的、外交的解決に向け、可能な限り積極的な役割を果たしてまいります。
 二〇二〇年オリンピック・パラリンピック東京大会を契機に、文化芸術の振興を図ることについてのお尋ねがありました。
 二〇二〇年オリンピック・パラリンピック東京大会は、スポーツのみならず、文化芸術を通じて日本の魅力を発信する大きな機会であると考えます。二〇二〇年東京大会に向けて、今後、日本の文化力を計画的に強化し、日本各地の豊かな地域資源を積極的に活用しつつ、日本全体が活力を取り戻す弾みとなるよう、しっかりと取り組んでまいります。
 スポーツ庁の設置についてのお尋ねがありました。
 二〇二〇年のオリンピック・パラリンピック東京大会に向けて、障害者スポーツも含め、スポーツの振興を図ることが重要であり、トップレベルのアスリートや地域スポーツの振興等を図っていきたいと考えています。障害者スポーツについては、来年度からパラリンピックなどに関する事業を文部科学省で一体的に実施する予定としております。
 政府としては、総合的、一体的なスポーツ推進の観点から、引き続き、スポーツ庁の設置について検討を進めてまいります。
 消費税の軽減税率についてお尋ねがありました。
 軽減税率については、対象、財源、中小事業者の事務負担等の課題が挙げられており、与党において関係者ヒアリングなどを通じて精力的に議論が続けられているものと承知しております。
 与党においては、一〇%引上げ時の対応について、関係者の理解を得た上で、本年十二月の税制改正大綱決定時までに結論を得るとされており、今後の議論を見守っていきたいと考えております。
 難病対策についてのお尋ねがありました。
 難病に苦しむ方々の視点に立った政策を進めていくことは、私のライフワークとして考えております。
 難病対策については、公平かつ安定的な医療費助成の制度を確立するために、対象となる疾患の拡大、認定基準や自己負担の在り方などについて検討を進めるとともに、難病の克服に向けた治療研究の推進などを含め、総合的な対策を推進してまいります。
 雇用についてのお尋ねがありました。
 安倍内閣としては、雇用を拡大し、女性も若者も全ての人々が生きがいを感じ、何度でもチャンスを与えられる社会を目指しております。これは、御指摘のように、社会保障の担い手を広げる観点からも重要であると考えております。
 その際には、個人のライフスタイルや希望が多様化する中で、柔軟で多様な働き方を可能とするとともに、労働環境の改善を図っていくことが重要であり、非正規雇用の方々のキャリアアップ等の取組や若者の就労支援などを進めてまいります。
 今後とも、女性、若者を含め、頑張る人たちの雇用の拡大を目指します。
 復興の加速に懸ける決意についてお尋ねがありました。
 連立政権の発足から約十か月がたち、高台移転等は順次着工の段階に移っているほか、福島についても避難指示区域の見直しを完了するなど、復興は新たなステージに移行しつつあります。一方、今も二十九万人の方々が避難生活を送られているほか、福島では除染や汚染水といった課題に直面しています。
 被災地の復興なくして日本の再生なし。今後とも、現場主義の下、住宅再建の加速化や除染、汚染水対策など、復興に全力で取り組んでまいります。
 原子力損害賠償についてのお尋ねがありました。
 原子力損害の賠償については、被災者の方々の一日も早い生活再建に向け、迅速、公平、適切になされることが必要と考えています。
 住宅の賠償や避難指示解除後の賠償などについては、現在、原子力損害賠償紛争審査会において、避難者の方々の実情や要望を踏まえて、年内を目途に指針を策定すべく検討がなされていると承知しております。
 また、田畑や山林、自主除染への賠償については、審査会がこれまで策定した指針に示されており、その内容を踏まえ、現在、東京電力において関係する自治体の御意見を聞きながら検討を進めていると承知をしております。
 公文書管理法改正についてお尋ねがありました。
 閣議の議事録を作成し一定期間経過後に公開するための公文書管理法改正法案については、明治以来、議事録を作成してこなかった我が国の閣議の在り方ともかかわる問題であるため、政府部内で必要な調整、検討を行った上で提出することとしたいと考えています。
 地球温暖化対策についてお尋ねがありました。
 地球温暖化対策については、私からの指示に基づき関係省庁で検討中であります。エネルギーベストミックスが検討中であるという状況を踏まえつつ、我が国として地球温暖化問題に最大限貢献するという観点から検討を行ってまいります。
 かつて私は、美しい星50として、二〇五〇年までに地球の温室効果ガス排出量を五〇%削減することを提唱しました。美しい地球を次世代の子供たちに残すため、技術で世界に貢献をしていく、攻めの地球温暖化外交戦略を組み立ててまいります。
 高校授業料無償化の見直しについてのお尋ねがありました。
 いわゆる高校無償化制度の見直しについては、今国会に所得制限を導入する改正法案を提出をいたします。所得制限を導入することにより捻出される財源については、八月の自民党と公明党の合意で、低所得者支援としての奨学のための給付金制度の創設、公私間格差の是正としての就学支援金の加算、特定扶養控除縮減への対応等に充てることとされたことを踏まえ、今後の予算編成過程で検討してまいります。
 教育委員会制度の見直しについてのお尋ねがありました。
 本年四月の教育再生実行会議の提言においては、教育長を地方教育行政の責任者と明確に位置付けるとともに、教育の政治的中立性や継続性、安定性を確保するための制度上の措置を講ずるとされています。新制度においても、この提言を踏まえ、教育の政治的中立性、継続性、安定性が確保されることが必要であると認識しています。
 嫡出でない子に対する差別の解消等に向けた取組についてお尋ねがありました。
 政府としては、憲法の保障する法の下の平等に反する不合理な差別については、もとよりその解消に向けて真摯に取り組む必要があると考えております。そのような観点から、御指摘の最高裁判所の違憲判決の趣旨を踏まえ、まず、嫡出でない子の相続分を嫡出子の相続分の二分の一としている民法の規定について見直しを検討しているところであります。
 以上であります。(拍手)
    ─────────────
○議長(山崎正昭君) 中西健治君。
   〔中西健治君登壇、拍手〕
○中西健治君 みんなの党の中西健治です。
 みんなの党を代表して質問させていただきます。
 まず冒頭、昨今の台風及び豪雨、竜巻により亡くなられた方々に哀悼の意を表するとともに、被害に遭われた方々に対してお見舞いを申し上げます。今なお行方不明の方々の一刻も早い救出を祈念してやみません。
 みんなの党では、災害対策本部を設置し、被害に遭った現地の視察、ヒアリング等を行った上で、安倍総理、菅官房長官あてに文書で申入れを行っており、是非、政府もこの改善要望を踏まえ対応に当たっていただきますことを改めてこの場をお借りしてお願い申し上げます。
 さて、安倍内閣のこれまでの政権運営は、あらかじめ落としどころを決めておいて、それに向けて小出しに情報を出していき、演出を行っていく。私は、極めて巧妙に描かれたシナリオに沿って運営されていると日々感じています。
 例えば、TPPについて、自民党は昨年の衆院選で聖域なき関税撤廃を前提とする限り交渉に参加しないとの公約を掲げ、政権交代後の二月のオバマ大統領との会談で聖域なき関税撤廃は前提としないという言質を引き出したとして、総理は交渉参加を決めました。しかし、冷静に考えてみれば、交渉事である限り一〇〇%関税撤廃が前提となるはずはなく、大統領はTPP交渉は交渉であるというごく当たり前のことを言ったにすぎません。こうした言質を引き出せることは十二分に可能性が高いと見越していたのでしょう。
 また、これまで重要五分野は守ると言っていたものが、最近では議論の対象を五分野全てから五分野に属する品目へと変えようとしていますが、これも、TPPの関税自由化率の議論が、輸入数量や品目ごとの関税率を加味した撤廃比率ではなく、全九千十八品目中の何品目かという単純品目数の比率であることを十分に見越した上で、輸入数量や関税率が低い品目は落とすという着地点をあらかじめ決めていたと考えれば、これまでの推移が極めて明瞭に理解できます。
 消費税増税についても同じです。
 総理は、最終的に今月一日に来年四月からの増税を決断されましたが、直前になるまで態度をはっきりさせず、あからさまに賛成者を多く配置した六十人にも上る有識者の意見を聞くといった催しを行いつつ、財務省との神経戦の末、復興特別法人税の廃止に道を付けました。これもあらかじめ描いたシナリオに沿っての演出だったのではないでしょうか。
 こうしたシナリオは、これまで対自民党、対財務省では功を奏してきたようですが、全て国会の外で行われてきたことであり、国民的議論はすっかりないがしろにされているのではないでしょうか。
 政権が巧妙に情報操作や演出を行えば行うほど、それをただ真に受けて一喜一憂する国民は、単に踊らされているだけだという思いを強くします。巧みに運営するのも結構ですが、是非、国会では真摯な態度で対応していただきたいと思います。
 みんなの党は、安倍内閣の政策をやみくもに批判することはしません。賛同する政策には賛成し、反対すべきと考える政策には修正案をお示しして修正を求めます。
 最近の総理の発言を聞いていると、自信をお持ちになるのも結構ですが、ともすれば過信となって、実際に苦しんでいる人への配慮が欠落しているのではないかと危惧しています。東京電力福島第一原発の汚染水がコントロールされているといった発言や、水銀水俣条約の採択に関して、日本は水銀による被害を克服したといった発言は、いかにも配慮に欠けているのではないでしょうか。
 今国会での審議を通じて、野党の正論には真摯に耳を傾け、政府の考えたシナリオであっても柔軟に修正を加えていくということを、衆参のねじれが解消された今国会だからこそ、従来以上に丁寧に行っていただくことをまずはお願いし、質問に移りたいと思います。
 まずは、消費税増税に関して質問します。
 これまで、みんなの党は一貫して、増税の前にやるべきことがあると主張してきました。このタイミングでの増税には反対であり、今後、消費税増税凍結法案の提出も視野に入れていきますが、どうしても増税するということであれば、増税によるマイナス面の回避策として、所得税減税、給付付き税額控除、法人税の実効税率引下げ等についても国会論戦において明確に主張していくことを申し上げ、以下、質問いたします。
 まずは、政府が行おうとしている五兆円規模の経済対策についてお伺いします。
 五兆円もの財政負担を伴う経済対策を行わなければならないのに、なぜ増税を行うのでしょうか。財政健全化のための税と社会保障一体改革だったはずです。総理、お答えください。
 五兆円の規模ありきとなっているのはなぜですか。一年に一%ずつ引き上げる案を総理のブレーンである内閣参与が提唱していましたが、よもや、消費税二%に相当する五兆円の経済対策を行えば、三%マイナス二%で実質負担は一%になるなどという安易な引き算に基づいているのではないですか。総理、お答えください。
 財務大臣にお伺いします。
 五兆円の財源はどうするのでしょうか。まさか国債の新規発行を考えているのではないですか。平成二十四年度決算剰余金、平成二十五年度税収上振れ分を充てるとの報道もありますが、財政法の規定では、決算剰余金の少なくとも二分の一は国債償還に充てることとなっています。そのルールを特例で破るということもあり得るかどうか、現時点での財務大臣のお考えを明らかにしてください。
 日銀展望レポートを基に計算すると、これまで一〇〇前後で推移してきた消費者物価指数は、消費税の影響抜きでも二〇一六年度には一〇五・七、消費税の影響を加味すると一〇九・二まで上昇すると推計されます。物価上昇目標と消費税率引上げを同時期に実施するのは、多くの国民に過大な負担を生じさせるものです。大胆な金融緩和に基づく物価上昇目標を採用しているのですから、まずはそれが賃金を始めとした国民生活にどう影響するかを見極めるべきではないのでしょうか。総理、お答えください。
 前回、消費増税が行われた九七年度には、増税後に深刻な景気の停滞によって税収が落ち込み、九八年度以降、九七年度の税収を上回ったことは一年度たりともないという結果となりました。この景気の停滞は、アジア通貨危機や金融危機が同時期に起こったので、消費増税のみによってもたらされたと言うつもりはありません。しかし、アメリカの債務上限問題は暫定的な対応となっており、いまだ予断を許さず、場合によってはリーマン・ショック以上の危機も起こりかねません。発端となったサブプライム問題も、初めは楽観論が大勢でした。総理は、大きな外部ショックがあった場合にも、来年四月の増税は何が何でも行うというつもりですか。
 財務大臣にお尋ねします。
 財務大臣は、再来年十月の消費税率再引上げについて、税収見込みが分からないと予算編成が困難であるとして、一般に想定されていた再来年の四月ではなく、前倒しで来年の十二月に判断すると発言していますが、これから来年四月の増税実施判断について国会審議を始めるタイミングでのこうした発言には、国会軽視の姿勢がありありと見受けられます。しかも、来年七―九月GDPを主要判断材料としてその翌年の十月の経済状況を見通すには到底無理があると思います。予算編成の容易さを増税による国民生活への甚大な影響よりも優先させるということでしょうか。なぜ今一〇%への増税の判断時期前倒しについて言及したのか、真意を御説明ください。
 社会保障財政の健全化のためには、まずは保険料支払の公平化、徴収強化を図っていくべきであり、みんなの党はこれまでに何度も歳入庁設置法案を国会に提出してきています。政府は、年金保険料徴収体制の強化について、歳入庁その他の方策の有効性、課題等を幅広い観点から検討し、実施するとこれまで答弁されてきていますが、政府内の検討は少しでも進んでいるのでしょうか。こうしたことを増税の前に実施しなければ、きちんと保険料を払っている人から見れば不公平そのものです。政府として、徴収漏れの保険料の問題の解決をいつまでにどう図っていくと考えているのか、総理にお伺いいたします。
 公平性の観点でいえば、公務員の共済健保と多くの国民が加盟する協会けんぽの保険料率を同じにするとか、収入の多い人たちの支払保険料の上限を撤廃する等の措置も行うべきと考えますが、政府として検討は行わないのでしょうか。総理に御答弁お願いいたします。
 国家公務員の給与は、復興財源に充てるため二年間七・八%の減額が行われています。増税の前にやるべきことがあるという我が党の主張に関連しますが、今回、消費税増税の決断をするに当たって、当然、総理は、来年三月に期限を迎えるこの特例減額は来年度の予算措置に当たって継続をする、あるいはもっと削減額を深掘りすると腹を固めていることと思いますが、総理の決意をお伺いします。
 次に、公務員制度改革で総理が具体的に言及された内閣人事局設置についてお伺いします。
 これから提出される法案について、自民党が野党時代にみんなの党と共同提出した幹部公務員法案の趣旨を反映しているものと考えてよいでしょうか。つまり、麻生政権時代の法案にある、幹部職員について、一般職員のままで身分を保障し、特例的にしか行わない降格人事でも幹部の枠内にとどまるという内容のものではなく、若手、民間人からの抜てき登用を可能とする観点から、幹部については身分保障の考えを外し、幹部から外れる選択肢を用意するとともに、事務次官廃止、総務省、人事院からだけではなく、予算を握る財務省からの権限の移管をも規定するという内容になっているということでよいでしょうか。野党時代に革新的に取り組もうとしていた改革法案から大幅に後退することはないと、法案提出を前に総理からはっきりと国民に明言してください。
 三つ目に、東京電力関連について質問します。
 まず、福島第一原発における廃炉・汚染水処理についてお尋ねします。総理は、東京電力に任せることなく、国が前面に立って責任を果たしてまいりますと所信表明を行いましたが、東京電力福島第一原発の廃炉・汚染水対策の結果責任は東京電力ではなく国が負うということでよいですか。そうでなければ、前面に立つとは言えないと思われます。総理、お答えください。
 そもそも、汚染水対策を始め事故後の対応が後手後手になってしまっているのは、会計上は何とか帳じりを合わせても、実質的には債務超過に陥っている東京電力という会社をゾンビのように存続させるというスキームそのものに由来すると考えます。今般、政府は汚染水処理のために四百七十億円の国費投入を行うこととしていますが、国が前面に出るというのであれば、そうした小手先の対応ではなく、東電が財務状況を見ながら小出しに事故処理に当たっている現状を変えるため、東電を破綻処理して貸し手・株主責任を明確にした上で、国と東電の役割分担を再整理する必要があると考えますが、総理の見解をお伺いします。
 原発敷地内で作業をしている方々の労働環境改善の必要性については政府も異論はないと思います。みんなの党議員団は、先日、福島第一原発の現場を視察してきましたが、その際、原発の知識や経験を有する社員の絶対数の不足が深刻であることを実感しました。それであれば、今こそ、原発の知識、経験を有する東電社員は、再稼働に向けた申請を行っている場合ではなく、福島第一原発に結集すべきではないでしょうか。つい先日、ようやく東京電力は対応に当たる人員を約八十人増員することとしたようですが、まだまだ全然足りません。再稼働に向けた業務に従事している東電社員あるいは東電以外の電力会社の社員への要請も含めて、再稼働に関する業務は全て中断し、福島第一原発の廃炉・汚染水対策に振り向けるべきと考えますが、経産大臣の見解をお伺いします。
 原発事故後も、政府は諸外国と原子力協定を締結し、原発技術を輸出し続け、今国会でもトルコ、UAEとの協定締結の承認を求める予定としています。
 国会事故調が今回の事故は自然災害ではなく明らかに人災であると指摘し、また地震によって電源が喪失した可能性についても言及し、全電源喪失の真の原因すら究明できていない、加えて事故後の廃炉や汚染水処理についてのめども立たないという厳しい現実に直面している我が国が、幾ら相手国の要請が強いからといって、日本の原発は世界最高水準などと言って、「笑うセールスマン」よろしく原発輸出を続けることが今、日本の取るべき道でしょうか。少なくとも事故が完全に収束するまでは輸出を中断すべきであるとの考えに対する総理の見解をお伺いします。
 次に、新たに創設しようとしている国家安全保障会議について質問します。
 みんなの党も、官邸の機能強化の一環として、こうした機能を官邸に創設することには前向きですが、その実効性を高めるためにも組織形態は重要であると考えています。
 総理は、創設の目的として官邸における外交・安全保障政策の司令塔機能の強化をうたっていますが、なぜ内閣情報調査室等の既存の組織の統廃合を行わないのでしょうか。内閣情報調査室等の既存組織からも直接総理に情報を入れる道を残すのであれば、情報伝達ルートが複数になってしまい、新組織はうまく機能しないのではないですか。総理の見解を伺います。
 司令塔の役割を果たすには情報が極めて重要となるわけですが、国家安全保障事務局が各省庁内にある情報を一か所に集めるだけのための組織になっていて、独自の情報収集機能を持たないのはなぜでしょう。総理、お答えください。
 国際情勢は日々刻々と変化する中、例えばアメリカのNSCを見てみると、地域ごと、テーマごとに省庁間政策委員会が自由に設定され、各省庁横断的な情報収集を行う仕組みが導入されています。今回、なぜそうした形態を採用しなかったのでしょうか。総理の見解をお伺いします。
 次に、政府が提出しようとしている特定秘密保護法案について質問します。
 外交・防衛にかかわる機密を守るということは当然のことですが、運用次第でいかようにも政府の思いのままにできてしまう懸念があることに対して、多くの国民が本法案に危惧の念を抱いています。総理は所信表明演説の中で本法案について一切触れませんでしたが、これだけ重要な法案に触れなかったということは、今国会での法案提出は不確定だということですか、お答えください。
 総理自ら、この法案成立を急ぐ理由として国家安全保障会議の設置を挙げておられますが、なぜ、現行の自衛隊法や公務員法の規定を準用する、あるいは必要に応じて見直すということで対応できないと考えているのか、総理にお伺いいたします。
 政府に都合の悪いものは何でも機密にしてしまうのではないかという懸念に対する抜本的な対処法が示されていないことが国民の不安につながっていると思います。一概にテロと言っても、例えば原子力発電所はテロの標的になる可能性があるからといってその情報が特定機密に指定されることが想像されるわけですが、国民の多くは三・一一の原発事故の際に政府が重要な情報を国民に示さなかったことに対する疑念を持っており、政府としてそのような国民の不安をどのように払拭していくつもりなのでしょうか。第三者委員会が各省庁間の統一ルールを検証するだけでなく、個別の特定機密指定の妥当性についても都度判断するといった仕組みが必要なのではないでしょうか。
 次に、政府の掲げる成長戦略についてお聞きします。
 総理は、所信の中でも、将来の成長が約束される分野で、意欲のある人にどんどんチャンスをつくりますと述べていますが、そもそも政府が成長分野を指定して特定の産業を保護、育成していくといういわゆるターゲティングポリシーは、政府の役割をいたずらに肥大化するものなのではないでしょうか。確かに、医療や介護、農業、教育、電力といった分野が岩盤規制という言葉に象徴されるほどのがんじがらめの規制で成長が阻害されてきたという認識は多くの人が持っていますが、他の分野でも規制を緩和することにより成長が見込まれる分野は幾らでもあると思います。
 成長戦略においてターゲティングポリシーと規制緩和という二つの柱を立てるのではなく、そもそも規制緩和を行えば成長分野は民間が決めていくと考えますが、総理の見解をお伺いします。
 総理は、六月に行った成長戦略スピーチにおいて、私の国家戦略特区に聖域はありませんと述べておられます。国家戦略特区制度における規制緩和の初期メニューは極めて重要です。特区で試さなければ、その先、特区以外に規制緩和は広がらないわけですから、これまで規制を行ってきた主体である各省庁の、これはできる、これは駄目という声を聞いていては何も進みません。医療や雇用における規制緩和について厚労省から強い抵抗があると報じられていますが、是非、総理の強いリーダーシップで岩盤規制に突破口を開けるよう期待しており、総理の決意をお伺いいたします。
 個別の規制改革を進めるに当たっては、基本的な理念が重要であると考えます。現在、多くの規制は、法律ではなく省令や通達で決められているのが実態です。医薬品のインターネット販売規制を例に取れば、この規制は、薬事法ではなく厚労省令である薬事法施行規則で「対面で販売させ、」と規制が掛かっていたのはよく知られています。そうした規制についての官僚依存の構造、考え方そのものにメスを入れるべきと考えますが、総理の見解をお伺いいたします。
 総理は、所信で、競争の舞台はオープンな世界と述べられましたが、まさにそのとおりだと思います。しかし、およそオープンとは思えない問題が起こっています。羽田空港国際線枠の配分問題です。
 民主党政権時に政府主導により進められた企業再生支援機構の活用と会社更生法の併用というスキームによりJALは倒産し、その後、公的支援を受けながら、同時に大幅な人員削減、資産売却、年金カット等による自助努力も行うことにより事業体質が改善しました。が、その結果、全日空の体力との差が生じたとして、先般、国交省が羽田空港の国際線の権益の配分に当たって、全日空に十一枠、JALに五枠という大幅な傾斜配分を行うことによって、今度は全日空にある意味新たな公的支援を行いました。
 公的支援の結果、他の航空会社と体力差が生じたというのであれば、JALが過大に享受した分の利益は、全日空に還元するのではなく、例えば優遇税制措置の見直し等によって国民に還元されるべきものです。加えて、今回の措置により、結果として、羽田とドイツあるいはカナダを結ぶ路線は、国際的な航空連携の枠組みであるアライアンスの観点から見れば、全日空の属する航空グループのみとなり、JALの属する航空グループは成田のみの発着となります。これでは、日本国民のみならず日本を訪ねてくる外国人の利便性をも著しく低下させることとなり、訪日客を増やそうとしている政策の観点からも好ましくないと思いますが、それでよいのでしょうか。国交大臣の見解を伺います。
 JALは、既に借り入れた公的資金は返済が完了しています。同時に、一般的な税制である法人税の欠損金繰越控除と更生手続による特例措置という税制優遇も受けられますが、これは二〇一八年度までの有期限のものであります。仮に競争環境の差を是正する必要があるとしても、企業の今後の経営基盤に大きな影響を与えかねない羽田の国際線発着枠を、それも無期限に傾斜配分することで是正するのは著しくバランスを欠いていると思います。なぜ今回の配分が例えば期間限定の措置になっていないのでしょうか。国交大臣にお答えいただきたいと思います。
 競合他社が是正を求めれば事後的に行政が裁量で市場に介入するということになれば、再生企業の再建意欲をそぐことにもなりかねず、総理の掲げる成長戦略とは逆行する措置ではないのかと指摘し、最後に、一番重要な被災地復興に関連した質問をさせていただきます。
 宮城県を始め多くの県で、農家が原発事故で汚染した稲わらや牧草を家の前で保管し続けています。焼却場の建設のめども今なお立たず、各自治体は保管期間の延長を住民に強いる一方で、殺処分に同意せずに今なお旧警戒区域内で被曝した牛を飼養管理し続けている畜産農家はそうした稲わらや牧草をこの冬の餌として欲しがっています。
 みんなの党は、九月初め、畜産農家の方と一緒に、渡辺代表と私で、両方の農家にとって歓迎される解決策として、こうした牧草等を優先的に旧警戒区域内の畜産農家に回すよう農水大臣に文書で緊急要請を行いました。農水省は、汚染稲わらや牧草の移動は新たな風評被害を生むことを懸念していますが、牧草を保管している現地の市役所に聞いてみると、そんなことは誰も心配しないと言っています。厳重な管理体制をしいた上で移動させることは十分可能です。テレビを見ている牧草を保管し続けている農家、そして一刻も早く牧草を餌として欲しいと訴えている畜産農家の方に向かって、農水大臣、是非前向きな御英断をお願いいたします。
 福島第一原発事故により今なお放射線量が高い区域について、いつまでも除染を前提として結論を先延ばしにするのでは、避難者はいつまでたっても生活設計が築けません。みんなの党が既に国会に法案を提出しているように、所有者の同意を前提に国が土地を買い上げ、あるいは借り上げ、そうした土地を、例えば国際的な放射線研究の拠点とすべく、研究特区として海外も含めて研究機関を誘致し活用していくという考えもあるのではないか、総理の見解を伺います。
 今般、関係方面の御尽力により二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピック開催が決定したことは大変喜ばしいことですが、同時に、これが原因で被災地復興が遅れるということは決してあってはならないということを肝に銘じなければなりません。
 二〇二〇年に向けての公共事業工事が増えるわけですから、被災地復興にかかわる公共事業は、オリンピックのための公共事業が本格化するまでに計画的に実施されていかなければならなくなったと考えていくべきです。
 総理は、所信で、実行なくして成長なしと訴え、今国会を成長戦略実行国会と位置付けました。まさにアベノミクスの成功の可否は成長戦略に懸かっています。成長のために今こそ実行すべきは消費税増税の凍結であり、あるいは消費税増税とのパッケージでの八兆円規模の大型減税であります。民間企業の投資意欲、個人の消費意欲をそいでしまいかねない消費税増税をなぜこのタイミングで行うのか。増税の前にやるべきことがある。消費税増税凍結なくして成長なし。
 みんなの党は、今国会を通じて、最後まで諦めずに、デフレ脱却最優先、ターゲティングポリシーよりも規制改革、配分より活力を、を訴えてまいりますことを国民の皆様にお約束し、質問を終わりたいと思います。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 中西健治議員にお答えをいたします。
 消費税率引上げの理由とこれに伴う経済対策についてお尋ねがありました。
 急速な少子高齢化が進む中、財源を確保し、世界に誇る我が国の社会保障制度について次世代に安定的に引き渡していくため、消費税率を法律で定められたとおり三%引き上げる決断をいたしました。他方、経済政策パッケージは、消費税率の引上げによる反動減を緩和して景気の下振れリスクに対応するとともに、その後の経済の成長力の底上げと好循環の実現を図るために実施するものです。
 新たな経済対策の規模についてお尋ねがありました。
 新たな経済対策の規模は、民間予測で二兆円程度と試算される来年度四―六月期の反動減を大きく上回ることを念頭に、消費税率三%引上げによる影響を大幅に緩和し、その後の成長力の底上げ、成長軌道への早期復帰に対応する観点から、五兆円程度としたところであります。
 物価安定目標と消費増税が国民生活に与える影響についてお尋ねがありました。
 長引くデフレからの脱却を目指し、日本銀行は二%の物価安定目標の早期実現のため、大胆な金融緩和を進めているところです。
 政府としては、三本の矢を着実に推進するとともに、所得拡大促進税制の拡充や政労使の連携を含む経済政策パッケージに取り組むことにより、賃金上昇や雇用拡大を伴う望ましい物価上昇の実現を目指します。さらに、簡素な給付措置や住宅ローン減税などにより、消費税率引上げに伴う家計の負担を緩和することとしています。
 こうした施策を果断に実行すれば、消費税率を引き上げたとしても、賃金上昇や雇用拡大を伴う経済再生との両立は可能であると判断しました。
 大きな外部ショックが発生した場合の消費税率引上げに関する対応についてのお尋ねがありました。
 例えば、リーマン・ショックのような予見し難い事態が発生し、著しく経済状況が悪化するようなことがあれば、その時点で税制抜本改革法附則第十八条に基づき改めて必要な対応を検討することとなります。
 年金保険料の徴収強化についてのお尋ねがありました。
 年金保険料の徴収体制強化等については、昨年成立した税制抜本改革法を受け、内閣官房副長官及び関係省庁政務官による検討が進められ、先般、論点整理が取りまとめられたところです。
 この論点整理においては、歳入庁に関する様々な問題点が指摘されるとともに、年金保険料の徴収の現状分析として、例えば、国民年金については、一部の滞納者に対してしか督促を実施せず、多くの保険料債権を時効により消滅させていることが示されています。したがって、国民年金保険料の納付率向上等のためには、保険料徴収の基本的な考え方を整理し、督促の促進等の対策を行うことが重要であり、組織を統合して歳入庁を創設すれば問題が解決するものではないと指摘されたと承知しております。
 現在、論点整理に示された方向性に沿って、厚生労働省において、年金保険料徴収体制強化等に関する専門委員会を立ち上げて議論を行うなど更に検討が進められており、可能なものから速やかに実施してまいります。
 医療保険の保険料の公平性についてのお尋ねがありました。
 被用者保険においては、自主自立の運営により、保険者ごとに医療費の適正化努力を反映した形で給付に見合った保険料率を設定しているところです。一方、保険料の公平性を担保することは重要であると考えており、今国会に提出した社会保障制度改革の全体像、進め方を明らかにする法律案では、医療保険の保険料について、その上限額を引き上げること等を盛り込んでいます。
 今後、関係審議会における議論の状況等も踏まえつつ、具体的な検討を行ってまいります。
 国家公務員給与の特例減額措置の取扱いについてのお尋ねがありました。
 国家公務員の給与については、臨時異例の措置として、平成二十六年三月までの二年間、特例減額措置を講じているところです。平成二十六年四月以降の国家公務員給与の在り方については、現在、関係閣僚間で国政全般の観点から総合的に検討を進めており、今後、その結果を踏まえ政府として判断してまいりたいと考えております。
 国家公務員の制度改革についてのお尋ねがありました。
 今回の法案では、国家公務員制度改革基本法の趣旨を踏まえ、幹部職員の任用の弾力化、必要な機能を備えた内閣人事局の設置を盛り込み、時代に応じた新しい公務員制度を構築することとしております。なお、基本法においては、必ずしも幹部職員を一般職と別制度とすることや事務次官を廃止することまでは求めていないと考えています。
 廃炉・汚染水対策の結果責任についてお尋ねがありました。
 私が所信表明で、東京電力に任せることなく、国が前面に立って責任を果たしていくと申し上げたのは、今までの後手後手の対応から先手先手の対応を行っていくために、政府として、全体の工程管理や進捗管理、技術的難易度が高い汚染水問題解決のボトルネックとなっている事業の財政措置、予防的かつ重層的な対策の検討、国内外での正確な情報発信などに責任感を持って取り組んでいくという趣旨であります。
 汚染水問題は、管理体制や構造的な要因など様々な要因により生じていると考えられます。今一番重要なことは、誰にその責任を帰するのかについて議論するよりも、関係者が総力を挙げて廃炉・汚染水対策を確実に実施をし、一日も早い解決につなげていくことではないでしょうか。
 東電の破綻処理についてお尋ねがありました。
 現下の優先順位は何かと考えれば、必要なことは、廃炉・汚染水対策を確実に実施し、同時に電力需給の安定に万全を期すことと考えております。
 仮に、御指摘のように東京電力の法的整理を行うこととした場合、被害者の方々の賠償や現場で困難な作業に必死で当たっている関係企業の取引債権が十分支払いできないおそれ、そして直ちに東電と同等の電力供給を行える体制を確保できなくなるおそれ、そして海外からの燃料調達や権益確保に支障が生じるおそれがあります。
 以上を総合的に勘案して、国民に悪影響や負担が及ばないよう、東電は、引き続き民間企業として、損害賠償、廃炉・汚染水対策、そして電力安定供給などを確実に実施していくべきと考えています。
 廃炉・汚染水問題への取組と原発輸出についてお尋ねがありました。
 廃炉・汚染水問題については、既に廃炉に関する長期ロードマップや汚染水問題に関する基本方針を策定しており、今後、これらに沿って対策を実行してまいります。
 原発輸出については、東京電力福島第一原発事故の経験と教訓を世界に共有することにより、世界の原子力安全の向上に貢献していくことが我が国の責務であると考えています。相手国の意向や事情を踏まえつつ、我が国の技術を提供していく考えであります。
 国家安全保障会議の創設と政府の情報機能についてのお尋ねがありました。
 国家安全保障会議については、各省庁等から提供された質の高い情報に基づき、総理大臣を中心として、戦略的観点から日常的、機動的に議論を行う場であり、我が国の外交・安全保障政策の司令塔となると考えています。
 国家安全保障会議の創設に併せ内閣官房に新設される国家安全保障局は、会議を支え、国家安全保障政策の企画立案等を行う機関であり、いわゆる政策と情報の分離の観点から、自らがインテリジェンスの収集等を行うことは考えておりません。
 国家安全保障会議における省庁横断的な情報やテーマの取扱いについてお尋ねがありました。
 我が国の外交・安全保障政策の司令塔となる国家安全保障会議においては、各省庁等に対し必要な情報を要求し、集まった情報を総理大臣を中心とする会議の審議に生かすことになります。また、審議を円滑に進めるため、各省庁等の幹部から成る幹事会をテーマごとに開催するなどして、省庁横断的に連絡調整を行うこととしております。
 特定秘密保護法案の国会提出についてお尋ねがありました。
 政府としては、特定秘密の保護に関する法律案を早急に国会に提出できるよう、現在検討を進めているところであります。
 特定秘密保護法案と現行法令との関係についてお尋ねがありました。
 情報漏えいに関する脅威が高まっている状況や、外国との情報共有は情報が各国において保存されることを前提に行われることを鑑みると、新たに秘密保全に関する法制を整備することは極めて重要と考えております。
 なお、主に服務規律の維持を目的として守秘義務を定める国家公務員法等とは趣旨が異なるため、これらの法令を改正することによることは適当でないと認識しております。
 特定秘密の指定についてお尋ねがありました。
 特定秘密の指定が各行政機関の長において適切に行われるようにすることは重要であると認識しており、特定秘密の保護に関する法律案を提出するに際してしっかりと検討してまいります。
 成長戦略と規制改革についてお尋ねがありました。
 成長戦略においては、中西議員が御懸念のように、政府が成長分野を特定するのではなく、幾つかの将来のあるべき社会像を掲げています。例えば、健康で長生きできる社会、世界に冠たる高品質な農林水産物、食品を生み出す農山漁村社会などです。
 こうした社会像を実現するため、政策資源を一気通貫で投入することとしており、規制改革はその最も重要な手段です。議員御指摘のような二つの柱があるわけではありません。
 国家戦略特区や企業実証特例制度の創設などにより、地域単位、企業単位、全国単位の三層構造での規制・制度改革を推進し、世界で一番企業が活躍しやすい国を目指します。
 国家戦略特区制度における規制緩和に対する姿勢についてお尋ねがありました。
 国家戦略特区制度については、日本の経済社会の風景を変える大胆な規制・制度改革を実行していくための突破口として、居住環境を含め、世界と戦える国際都市の形成、医療等の国際的イノベーション拠点整備といった観点から、特例的な措置を組み合わせて講じ、世界で一番ビジネスがしやすい環境を創出するものであります。
 具体的には、医療、雇用、教育、都市再生・まちづくり、農業等の活用の各分野において大胆な規制改革を行うこととしており、私自身先頭に立って成長戦略の実現につなげてまいります。
 省令や通達による規制についてのお尋ねがありました。
 法律からの委任がないにもかかわらず、省令等の下位規範において規制が行われている実態があるとすれば、それは問題であることから、規制改革会議では、省令等下位規範による規制の実態の分析と見直しについて審議することとしております。規制改革会議から見直しの方向性が示されれば、政治のリーダーシップの下、改革を断行してまいります。
 放射線量が高い地域における国による土地の買上げ、借り上げについてのお尋ねがありました。
 原子力事故により生じた損害に関しては、一義的には東京電力が原子力損害賠償法に基づいて賠償を行うことが適切であると考えます。東京電力が着実に足下の賠償等に取り組むよう、原子力損害賠償支援機構法に基づく枠組みの下で、政府としても進捗状況をフォローし、しっかり支えてまいります。
 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
   〔国務大臣麻生太郎君登壇、拍手〕
○国務大臣(麻生太郎君) 五兆円規模の新たな経済対策の財源についてのお話があっております。
 新たな経済対策につきましては、経済成長による税収の自然増、二十四年度決算の剰余金、二十五年度予算の不用などを最大限に利用することにより所要の財源を確保してまいりたいと考えております。
 国債発行は基本的に避けるべきだと考えております。しかし、景気の腰折れを回避し、成長力の底上げを図るという対策の目的を踏まえつつ、税収の動向も見ながら判断をする必要があろうと存じます。現時点で確たることを申し上げられない点は御理解いただけるものと考えております。
 なお、決算剰余金の取扱いにつきましては、財政法上、御指摘があったとおり、別途の法律によらなければその二分の一を下らない金額は公債の償還財源に充てることとなっております。こうした規定に基づき、適切に判断をしてまいりたいと考えております。
 消費税税率一〇%の引上げの判断時期についてのお尋ねがあっておりました。
 先日の私の発言は、予算編成時には翌年度の税収見積りも併せて行うことになるという予算編成上の事実関係を述べたものであります。
 消費税一〇%の引上げにつきましては、改めまして、税制抜本改革法附則第十八条に沿って、判断時期含めまして適切に判断をしてまいりたいと考えております。また、その際には、予算編成作業との関係についても併せて適切に判断することになると考えております。(拍手)
   〔国務大臣茂木敏充君登壇、拍手〕
○国務大臣(茂木敏充君) 中西議員にお答えをいたします。
 廃炉・汚染水対策にあらゆる力を振り向けるべきとのお尋ねがございました。
 東電にとって現下の最優先課題は、廃炉・汚染水対策を万全の体制で確実に実施し、同時に、三・一一以降のエネルギー制約の下で電力需給の安定に万全を期すことであります。
 先日、九月二十七日、東電の廣瀬社長から私に対して、柏崎刈羽原発六号、七号機の新規制基準への適合申請を行った旨の報告がありましたが、その際、私から、当面の最重要課題である福島第一原発の廃炉・汚染水対策がゆめゆめおろそかになることがないよう、万全の体制でしっかり取り組むよう直接要請をしたところであります。
 炉の設置者であり、現場に精通し、これまで様々な作業に取り組んできた東電には、実施主体としての責任を引き続きしっかりと果たすことが必要であると考えております。
 また、福島第一原発の廃炉・汚染水対策に関しては、現在、他の電力会社やその関連会社、日本原子力研究開発機構等の専門組織に対して、人材を含めた協力の要請を行っているところであります。
 以上です。(拍手)
   〔国務大臣太田昭宏君登壇、拍手〕
○国務大臣(太田昭宏君) 羽田空港の国際線発着枠の配分についてお尋ねがありました。
 日本航空に対する再生のための公的支援は、我が国において複数の航空会社が適切な競争基盤に立ち、健全な競争を行うことが利用者利便の増進に資するという基本的な考え方を前提としております。しかしながら、日本航空が公的支援を受けて再生を進める中で、結果として同社と他の航空会社との間で大きな体力差が生じているということを認識しています。
 この点については、昨年八月に公表した「日本航空の企業再生への対応について」で示しましたように、このような状況によって航空会社間の競争環境が不適切にゆがめられるようなことがあってはならないと考えており、このようなおそれをできる限り払拭するため、幅広い観点から様々な事情を総合的に勘案し、今回の配分を決定したところであります。具体的には、新規路線の開設については、競争環境や再生プロセスに与える影響が大きいことから、慎重に判断するとの考え方に沿って配分を決定いたしました。
 今回の配分によって競争環境が不適切にゆがめられるおそれは一定程度払拭されるものと考えており、これにより、将来にわたって我が国航空業界における適切な競争基盤の確保が図られ、今後の更なる利用者利便の増進、航空業界の発展につながっていくものと考えます。
 羽田空港及び成田空港のいわゆる首都圏空港における航空ネットワークについては、カナダやドイツを含めた北米や欧州に向けて既にアライアンスごとの多様なネットワークが形成されていることから、首都圏空港全体で見れば、今回の配分によってこれらを損なうような大きな影響が生じるものではなく、利用者の利便を低下させることはないと考えております。
 次に、羽田空港の国際線発着枠の今回の配分が期間限定となっていない理由についてお尋ねがありました。
 国際線では、国内線と比較して、一般的に航空機の購入、支店の開設等、多額の投資が必要となります。航空会社における投資回収の期間を考慮すれば、国際線発着枠については、相当の期間、安定的に路線運営できることを前提として配分することが必要となります。
 また、国際航空においては、国際航空運送協会による世界共通のルールに基づいてダイヤ調整が行われます。このルールにおきましては、運航実績の長い航空路線がダイヤ調整の上で優先されることとなっております。このため、自国の航空会社に対する発着枠の配分を期間限定のものとすると、ダイヤ調整の上で他国の航空会社に劣後することとなり、航空行政、国際競争の観点から自国の航空会社を著しく不利にするものと考えます。
 このようなことから、国際的な慣行として、従来から、国際線の発着枠については、原則として期間を設けずに配分してきているところであります。
 さらに、公的支援を背景とした航空会社間の体力差については、税制等の特例措置の終了後も、当分の間、その影響が継続するという点についても留意する必要があるものと考えています。
 以上です。(拍手)
   〔国務大臣林芳正君登壇、拍手〕
○国務大臣(林芳正君) 中西健治議員の御質問にお答えいたします。
 汚染牧草等についてのお尋ねでありますが、飼料の暫定許容値である百ベクレルを上回る汚染牧草等については、畜産物の安全性確保の観点から、飼料としては使用せず、適正に処理することが必要であります。
 このため、農林水産省としては、飼料として利用できない汚染牧草等については、焼却等廃棄処分の体制が整うまでの間、営農上の支障が生じないよう、また風評被害の原因とならないよう隔離や一時保管を推進しているところでございます。
 被曝した牛に汚染牧草等を給与することについては、心情的には理解できるところですが、今後住民の帰還を進めようとしている中にあって住民の理解が得られるのかどうかなど、慎重に対応する必要があると考えております。
 以上です。(拍手)
○議長(山崎正昭君) これにて午後一時まで休憩いたします。
   午前十一時四十三分休憩
     ─────・─────
   午後一時一分開議
○副議長(輿石東君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 国務大臣の演説に対する質疑を続けます。市田忠義君。
   〔市田忠義君登壇、拍手〕
○市田忠義君 日本共産党を代表して、安倍総理に質問をいたします。
 私は、まず、この度の伊豆大島を始め、一連の台風などにより犠牲となられた皆さんに哀悼の意を表するとともに、被災者の救援、被害の復旧、生活の再建に政府が全力を挙げることを求めます。
 消費税増税問題についてお尋ねします。
 来年四月からの消費税率の引上げには、何の大義も道理もありません。何よりも総理は、増税の是非について主権者、納税者である国民の判断を求めたことは一度もありません。税金を幾ら払うかを決める権利は為政者ではなく国民にある、これが議会制民主主義のそもそもの原点であります。ところが、政府・自民党は、さきの参議院選挙でも消費税増税を争点とすることを徹底的に避け続けました。そして、選挙が終わった途端に増税を押し付ける、これは議会制民主主義の根幹を破壊する暴挙と言うほかはありません。
 総理は、三本の矢は、世の中の空気を一変させましたと述べられました。しかし、一九九七年をピークに国民の所得は減り続け、労働者の平均年収は七十万円も減少したままであります。こういう状況は、一変どころかますます悪化しています。労働者の月給は十五か月連続で前年を下回るなど、あなたが総理になった今でも減り続けているではありませんか。今、働く人の三八・二%、二千四十二万人が非正規、その平均年収は国税庁の調査でも百六十八万円です。公的年金の受給者の七五・六%、二千九百万人が二百万円未満の年金しか手にしていません。
 一方、物価だけは上がり始め、暮らしはますます大変になっています。中小企業は、長期にわたる不況の下で、今でさえ消費税を販売価格に転嫁することができません。加えて、円安による原材料価格の上昇分も価格に転嫁できずに苦しんでいます。税率八%で八兆円、一〇%になれば十三・五兆円という、日本国民がいまだかつて経験したことのない史上最大の新たな負担に耐えられる力が一体どこにあるとお考えなのですか。
 空前の大増税で国民から所得を奪い取ったらどうなるか。それは国民の暮らしと営業を破壊するだけではなく、日本経済を奈落の底へ突き落とし、財政危機をも増幅させることは、一九九七年の消費税の五%への引上げの経験を引くまでもなく、明らかではありませんか。それを知っているからこそ、総理も六兆円規模の景気対策を実施するのではありませんか。
 しかし、総理、消費税を増税すると景気が落ち込む、だから景気を支えるために消費税を充てる、これほどばかげた話があるでしょうか。消費税を上げれば景気の落ち込みが心配だというのだったら、消費税の増税をやめればいいではありませんか。
 しかも、経済対策の目玉は、東日本大震災からの復興に充てる財源のうち、大企業の負担する復興法人税だけを前倒しで廃止して、減税してやるというものです。法人税は元々もうかっている企業にしか掛かりません。赤字企業は支払いません。
 総理、あなたが今言うべきせりふは、東日本大震災という未曽有の被害からの復興を図るために、せめてもうかっている企業は負担能力に応じてきちんと税金を負担してもらいたい、この措置を三年で終わらせないでもう少し続けてもらいたいということではありませんか。ところが、安倍政権は、国民には復興特別所得税を二十五年間、住民税を十年間負担させ、その上消費税増税を押し付ける、これを大企業奉仕の政治と言わずして何と言うのでしょうか。
 消費税は、そもそも所得の少ない人ほど重くのしかかる最悪の不公平税制です。日本共産党は、税金は所得や資産に応じて負担するという応能負担の原則に立ち、富裕層と大企業への優遇税制を改めること、そして、国民の所得を増やす経済の立て直しで、税収そのものを増やして財源を確保する消費税に頼らない別の道を歩むべきだと考えています。この道こそ、社会保障の拡充、財政危機、経済危機を一体的に解決する最善の道だとは思いませんか。
 来年四月からの増税は国民生活と日本経済を悪化させることになる、これは、今後の税制の在り方として、消費税の増税が必要だと考えている人々も含めて、日本経済の現状と将来を真剣に考える多くの人々から共通して出されている懸念であります。少なくとも、この四月からの増税を断念することこそ総理に求められている決断ではありませんか。
 総理は、労働者の賃上げのためにも法人税を下げる必要があると言われました。しかし、そんなことを真に受ける国民はほとんどいません。それを言うなら、既に大企業にため込まれている二百七十兆円もの内部留保の一部を賃上げに回せとこそ言うべきではありませんか。
 そもそも、どうして賃金が下がり続けているのか。今年の労働経済白書は、パートタイム労働者比率の上昇等により現金給与総額が減少したと述べています。国税庁の調査でも、正社員の年収は四百六十八万円、非正社員は百六十八万円であります。非正社員の増加が賃金を引き下げていることは歴然たる事実であります。
 ところが、政府は、日本を企業が世界で一番活躍しやすい国にするのだといって産業競争力強化法案を提出し、派遣労働を際限なく拡大するための改悪や労働者を自由に解雇できる特区をつくろうとしています。これでどうして賃上げなどと言えるのか。非正規労働者を減らし、希望する人は皆正社員への道を開くこと、これこそ最も有効な賃上げへの道ではありませんか。
 今、社会的大問題になっているブラック企業の問題も、根底には非正規雇用の蔓延があります。正社員として働きたいという若者の願いを逆手に取って、連日、深夜にわたる長時間労働やパワハラなどでぼろぼろになるまで働かせる、こんな働かせ方の根絶こそ急務です。
 そういうときに、正社員から派遣への置き換えを完全自由化したり、日雇派遣を無制限に復活させる、あまつさえ雇用のルールの治外法権地域、解雇自由のブラック特区の創設など、到底許されることではありません。こんなことがまかり通れば、日本全体の労働条件の悪化をもたらし、日本の物づくりも、企業経営そのものも、そこで働く全ての人たちの生活にも、そして少子化の克服など日本社会の成り立ちそのものにも取り返しの付かない被害をもたらすことになってしまいます。
 我が党は、今国会の開会日十五日に、長時間労働の制限、離職者数の公表、パワハラの禁止などを柱としたブラック企業規制法案を本院に提出しました。こうした立法の必要性についての総理の認識を伺うとともに、是非、各議員、各会派におかれましては、速やかに審議をしていただき、成立させていただくことをこの場からお願いするものであります。
 次に、TPPについてであります。
 私は、今年の二月一日、この本会議場で総理に、TPP交渉についての方針や協議の実態について全ての情報を国会と国民の前に開示すべきだと求めました。総理は、「状況の進展に応じてしっかりと国民の皆様に情報提供してまいります。」と答弁されました。
 そこで、お聞きします。バリで行われたTPP交渉で、日本がアメリカに示した自由化率は九二%と報道されていますが、それは事実ですか。もし事実なら、これまで日本が関税撤廃表明をしたことのない九百二十九品目のうち二百四十品目の関税撤廃を表明したことになります。それはどういう品目か、なぜそうしたのか、しっかりと情報提供していただきたい。
 総理はまた私の質問に、「聖域なき関税撤廃を前提にする限り、TPP交渉には参加いたしません。」とも明言されました。ところが、自民党の西川TPP対策委員長は、農産物の重要五項目を関税撤廃の例外から抜けるか抜けないか検討させてもらわなければならないと述べました。聖域とは、言うまでもなく、手を触れてはならない分野という意味であります。ところが、それを検討の対象にすると。これは既に五項目が聖域でなくなっていることを示しています。それならば、総理は、総選挙、参議院選挙と二度にわたって国民に公約し、本会議場でも明言したとおり、TPP交渉から撤退する決断を行うべきではありませんか、明快な答弁を求めます。
 総理は、TPPへの参加を前提に農業の産業化と民間企業の参入、投資を促されました。しかし、最も肝心な食料自給率の向上には一切触れようとされません。幾ら自由貿易の時代であっても、食料主権を守ることは今や世界の流れです。自給率向上の明確な目標を掲げること、そのために、安全で多様な発展を支えてきた日本の農家を守ることこそ政治の目標に掲げるべきではありませんか。
 福島第一原発の放射能汚染水問題は極めて深刻な現状にあります。総理が、コントロールされている、完全にブロックされていると発言した後でも、汚染水タンクからあふれ出した、パイプの継ぎ目から漏れていた、港湾だけでなく外洋にも直接漏れ出していたなど、ほとんど連日のように新たな汚染の広がりが続いています。東電の廣瀬社長は国会で、モグラたたきのような状態が相変わらず続いているのは全くの事実だと思うと述べ、コントロールとは程遠い状態にあることを認めざるを得ませんでした。
 総理、あなたは、汚染水の現状がどうなっているのか、何が分かり何が分かっていないのか、どこに問題と危険があるのか、国民にはっきりと説明することができますか。それもできないのに、国際社会に対して総理は、日本は原発の安全技術でこれからも世界に貢献していきます、放棄することはありません、福島の事故を乗り越えて世界最高水準の安全性で世界に貢献していく責務があると述べ、原発の再稼働と輸出に異常なほど執心されています。
 目の前で繰り返されている現実、一旦事故が起きたら制御できなくなるのが原発という技術であるということ、しかも発電によって蓄積される放射性廃棄物の処理方法すら確立されていないことを総理は率直に認めるべきであります。
 今、日本の原発は一基も稼働していません。それでも国民生活は維持され、そのことによる経済の破綻もありません。このときをおいて原発ゼロの決断をするときはないではありませんか、いかがですか。
 そして、今直ちにやるべきは、原発への態度や将来のエネルギー政策の違いを超えて、汚染水問題の抜本的解決を最優先に据えるために、再稼働と原発輸出のための準備や活動を中止することではありませんか。
 総理は、先日開かれた水俣条約外交会議に寄せたメッセージで、水銀による被害とその克服を経た我々と述べられました。いまだに悲惨な後遺症に苦しむ方がたくさんおられます。水俣病の症状があるのに、年齢と地域を限られて、救済措置の申請もできずに苦しんでいる患者が数多くいます。被害住民だけではなく、熊本県も、かつて不知火海沿岸に居住したことのある四十七万人の健康調査を求めましたが、それすらも歴代政府は拒否し続けてきました。このどこが被害の克服と言えるのか。総理が今やるべきは、被害の実態調査、健康調査と、一人も残さず患者の救済を図ることではありませんか、いかがですか。
 国の進路にかかわる重大問題である集団的自衛権の問題について伺います。
 集団的自衛権行使容認への総理の前のめりの姿勢に国民は大きな危惧を抱いています。
 そもそも、集団的自衛権というのは、日本の防衛の問題でもなければ、アメリカ本国の防衛の問題でもありません。これまでの歴史で、国連憲章五十一条に基づく集団的自衛権の発動として行われたのは、アメリカのベトナム侵略戦争、旧ソ連のチェコスロバキアやアフガニスタンなどへの侵略など、大国による無法な干渉、軍事介入の戦争でした。総理はこの事実をお認めになりますか。もし否定されるなら、国連憲章五十一条に基づく集団的自衛権が当事国の防衛のために発動された事例を具体的に挙げてください。
 日本の現実の政治で集団的自衛権が問題にされてきたのは、インド洋やアラビア海、イラクやアフガニスタンでのアメリカの戦争へのあけすけな自衛隊の参戦要求でした。しかし、集団的自衛権は行使できないという憲法解釈があったからこそ、非戦闘地域に限るとか武力の行使はできないなど、自衛隊の海外での戦闘行為、戦争行動を禁止する歯止めが働いてきたのです。この歯止めを取り払って、米軍と肩を並べて海外で戦争をする国につくり変える、これが集団的自衛権行使の現実の狙いではありませんか、答弁を求めます。
 憲法九条を変えなければ集団的自衛権の行使はできないというのがこれまでの一貫した政府の公式の解釈でした。その解釈を、まるでクーデターのように内閣法制局長官の首をすげ替えてまでして覆し集団的自衛権の行使を認めるならば、それは実質的に憲法九条改正と同じ効果を持つことになるではありませんか。本来なら衆参両院の三分の二以上の賛成と国民投票における過半数という憲法改定手続を経なければ許されないことを解釈変更の閣議決定だけで実現してしまう。集団的自衛権の是非について、どういう立場に立っていようとも、こんなやり方が許されていいはずはありません。こんなことがまかり通れば、憲法が憲法でなくなってしまう。立憲主義の下で、決して踏み外してはならない最低限のルールを突き崩すこのような行為は断じて許されないと考えますが、総理の見識をただします。
 政府が今国会に持ち出そうとしている秘密保護法案は、憲法が保障する基本的人権を踏みにじり、米軍とともに戦争をする体制づくりの一環と言わなければなりません。その中身は、保護すべき秘密が政府、行政の裁量次第で幾らでも広げられること、国民は何が秘密なのかも知らされず、それを知ろうとした国民もメディアも重罪とされる、国会による秘密の調査も制限されるなど、およそ民主主義にとって最も大切な、国民の知る権利、言論、表現の自由を侵害するものにほかなりません。
 日本共産党は、戦前のように国民の目も耳も口もふさぐ悪法の国会提出は断念するよう強く求めるものであります。答弁を求めます。
 最後に、総理は、さきの参議院選挙の結果、国民から、困難を乗り越えていけと背中を力強く押していただいたと述べられました。しかし、そうした総理の政治姿勢にこそ多くの国民は危うさを感じています。消費税、TPP、原発、集団的自衛権、秘密保護法、どれを取っても国民の意思とは乖離した暴走と言わなければなりません。
 日本共産党は、こうした安倍内閣の暴走に不安と危機感を持つ多くの国民と手を携えて、暴走に歯止めを掛け、国民の暮らしと平和を守り、発展させるために全力を挙げることを述べて、質問を終わります。(拍手)
   〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 市田忠義議員にお答えをいたします。
 台風等による被害に対する政府の対応等についてお尋ねがありました。
 多様な災害が頻発する我が国において、国民の生命と財産を守るためには、防災対策に取り組むとともに、災害発生時には、被災者の救出、救助、被災者への支援、被災地の復旧等を政府の総力を挙げて迅速に行うことが極めて重要です。今後とも、地方公共団体等と緊密に連携しつつ、災害対応に全力で取り組んでまいります。
 消費税率引上げに関し、国民の判断を求めたことの有無についてお尋ねがありました。
 税制抜本改革法は、昨年、公明党、民主党との合意に基づいて、自民党も賛成して国会で成立したものであり、その後に行われた昨年の衆議院選挙においても、自民党は、消費税を含む行財政抜本改革の一層の推進について公約で掲げていました。先般の判断はこの法律の規定に基づいて行ったものであり、私は、さきの通常国会や参議院選挙の際に、本年秋に経済状況等を総合的に勘案して判断するとの考え方を度々明らかにしてまいりました。
 こうした点を踏まえれば、先般の決断について、議会制民主主義の根幹を破壊する暴挙との御指摘は全く当たらないものと考えております。
 消費税率引上げの判断と経済状況との関係についてお尋ねがありました。
 デフレ脱却と経済再生は安倍政権の最優先課題であります。三本の矢によって景気は緩やかに回復しつつあり、先行きについても景気回復の動きが確かなものとなることが期待されます。このような中、簡素な給付措置などの負担緩和策や転嫁対策を含め、経済政策パッケージを果断に実行することにより、税率を引き上げたとしても賃金上昇や雇用拡大を伴う経済再生との両立は可能であると判断しました。
 消費税率引上げとこれに伴う経済対策についてのお尋ねがありました。
 急速な少子高齢化が進む中、財源を確保し、世界に誇る我が国の社会保障制度について次世代に安定的に引き渡していかねばなりません。このため、消費税率を法律で定められたとおり三%引き上げる決断をいたしました。一方、経済政策パッケージは、消費税率の引上げによる反動減を緩和して景気の下振れリスクに対応するとともに、その後の経済の成長力の底上げと好循環の実現を図るためのものです。
 また、今回決定した三%の引上げ分の消費税収は全額社会保障財源化することとしており、これを経済対策の財源に充てることはありません。経済対策の財源については、経済成長による税収の自然増や二十四年度決算の剰余金などを最大限活用してまいります。
 復興特別法人税の前倒し廃止の検討についてのお尋ねがありました。
 復興特別法人税の廃止は、足下の経済成長を賃金上昇につなげることを前提に検討するものであり、企業収益の改善が個人の所得の拡大、そして消費の拡大につながっていく好循環を実現することを目的としています。また、個人に対しては、簡素な給付措置、住宅ローン減税の拡充なども講じることとしております。
 今般の経済政策パッケージでは、これらにより、社会保障の充実や安定などのためにお願いする個人の負担を緩和しながら、同時に、将来にわたって賃金上昇、雇用拡大を実現するための未来への投資を行うものであり、大企業奉仕といったものでは全くありません。
 社会保障の財源確保の在り方等についてお尋ねがありました。
 社会保障の安定財源の確保は喫緊の課題であり、その財源としては、税収が安定し、勤労世代など特定の者へ負担が集中しない消費税がふさわしいと考えております。また、消費税率引上げと同時に、経済政策パッケージを果断に実行すること等により税収の基盤である強い経済を取り戻してまいります。これらにより、社会保障を安定的に次世代に引き渡すとともに、経済再生と財政再建を同時に達成してまいります。
 消費税率引上げを断念すべきではないかとのお尋ねがありました。
 先ほど申し上げたように、消費税率引上げを行いつつ、経済政策パッケージを果断に実行していくことで、社会保障の安定財源を確保するとともに、デフレ脱却と経済再生に向けた道筋を確かなものとし、そして経済再生と財政健全化を同時に達成してまいります。これが熟慮した上での私の判断であります。
 企業の内部留保と賃上げに関するお尋ねがありました。
 これまで企業収益の増加がなかなか賃金につながらなかったのは、先の見えないデフレ状況にあったことが最も大きな要因であったと考えます。次元の異なる三本の矢の政策を一体的に進める中で、景気は緩やかに回復しつつあります。デフレ状況ではなくなりつつある今こそ、企業収益の向上が設備投資の増加や賃金上昇、雇用拡大につながり、消費を押し上げることを通じて、更なる企業収益につながっていく好循環を実現する絶好のチャンスであります。
 このため、今回の経済政策パッケージに、大胆な投資減税や賃上げを促進する税制、さらには復興特別法人税の一年前倒しでの廃止の検討を盛り込みました。政労使の間で経済の好循環実現に向けた共通認識を醸成するための政労使会議も立ち上げました。こうした取組を通じて、企業収益の拡大を賃金上昇や雇用拡大につなげていく好循環を全力で実現してまいります。
 非正規雇用の方々と賃上げについてのお尋ねがありました。
 現在検討中の労働者派遣制度の見直しについては、安倍政権が掲げる多様な働き方の実現を目的としたものです。また、国家戦略特区における雇用改革は、本日整理された検討方針に沿って、雇用条件の明確化などにより雇用拡大を目指すものであります。自由に解雇できる特区などというレッテル張りは事実誤認であり、不適切であります。
 安倍内閣においては、経済の好循環を目指し、三本の矢を着実に推進するとともに、経済政策パッケージを策定したところであり、企業収益の拡大を賃金の上昇や雇用の拡大につなげてまいります。さらに、非正規雇用の方々のキャリアアップ等の取組を進めることにより労働環境の改善を図ってまいります。
 日本共産党提出の労働基準法等の一部を改正する法律案についてお尋ねがありました。
 御党が提出された法案については、国会において御議論がなされるものであると考えております。
 政府としては、若者の使い捨てが疑われる企業は社会的に大きな問題だと考えており、相談体制、情報発信、監督指導等の対応策を強化するなど、現行の労働基準法等の遵守についてしっかりと取り組んでまいります。また、若者応援企業宣言事業を活用するなど、企業の魅力発信や就職関連情報の開示を進めること等により、若者が適切な職業選択ができるよう努めてまいります。
 TPP交渉の自由化率に関する報道についてお尋ねがありました。
 交渉の具体的内容について詳細を述べることは差し控えますが、御指摘の報道内容は事実ではありません。
 TPP重要五品目とTPP交渉からの撤退についてのお尋ねがありました。
 我々が選挙でお示しした公約はたがえてはならないと考えています。政府としては、与党の立場を体し、全力を挙げて交渉に臨んでまいります。交渉はこれから本格化します。守るべきものを守り、攻めるべきものを攻め、国益を追求するという政府の方針に何ら変更はありません。これから交渉が本格化する段階において、交渉からの撤退についてお話しすることは国益の観点からも不適切と考えます。
 食料自給率についてお尋ねがありました。
 食料の安定供給を将来にわたって確保していくことは国民に対する国家の最も基本的な責務であり、国内農業生産の増大を図り、食料自給率、自給力を向上させることは重要であると考えております。このため、TPP交渉いかんにかかわらず、国内の農業の活性化を図っていくことは待ったなしの課題であり、攻めの農業政策の具体的な展開に力を入れていきたいと考えております。
 汚染水問題についてのお尋ねがありました。
 福島第一原発では、貯水タンクからの汚染水漏えいなどの個々の事象は発生していますが、福島近海での放射性物質の影響は、発電所の港湾内の〇・三平方キロメートルにブロックされています。このため、全体として状況はコントロールされております。
 汚染水問題について、現在分かっていることについては、汚染水問題に関する基本方針の中で問題とその対応策を明らかにしております。他方、汚染水問題については、現在の対策では十分ではないリスクがあります。このため、予防的かつ重層的な対策を講じるべく、世界の英知を活用し、汚染水問題の解決に向けた取組をしっかりと進めてまいります。
 原発の安全性と放射性廃棄物の処理についてのお尋ねがありました。
 原発については、安全が最優先であります。原子力規制委員会において、世界で最も厳しい新規制基準を策定したところです。新基準では、東京電力福島第一原子力発電所の事故の教訓を踏まえ、地震や津波に耐える性能の強化に加え、巨大地震や大津波により万一過酷事故が発生した場合に対する十分な準備を取り入れています。
 高レベル放射性廃棄物の最終処分方法としての地層処分については、技術的に実現可能であると評価されています。もちろん、現在も処分地選定調査に着手できていない現状を真摯に受け止めなければなりません。国として処分地選定に向けた取組の強化を責任を持って検討してまいります。
 原発ゼロについてのお尋ねがありました。
 原発の停止によって、我が国は石油などの化石燃料への依存を高めています。このため、三兆円以上の燃料輸入費の増加や電力料金の上昇という形で国民生活や我が国の経済が大きな影響を受けているということを忘れてはなりません。原発を含むエネルギー政策については、引き続き、エネルギーの安定供給、エネルギーコスト低減の観点も含め、責任あるエネルギー政策を構築してまいります。
 この際、今後五年程度の間に再生可能エネルギーの普及と省エネルギーの推進を最大限加速させていくこと、原発の再稼働については世界で最も厳しい安全基準の下で判断していくことに取り組むこととし、原子力比率は可能な限り引き下げてまいります。
 汚染水問題への取組と原発再稼働、原発輸出についてお尋ねがありました。
 福島第一原発の廃炉・汚染水問題への対応がおろそかになるようなことがあってはなりません。その重要性と深刻さに鑑み、異例なことではありますが、東京電力任せではなく、国が前面に出て取り組んでまいります。東電においても、現場で廃炉・汚染水対策を強化するため、二百人の増員を図ることとしています。柏崎刈羽原発の新規制基準への適合性申請に関しても、福島第一原発の廃炉・汚染水対策に万全を期すよう東電を指導しております。
 原発輸出については、福島第一原発事故の経験と教訓を世界に共有することにより、世界の原子力安全の向上に貢献していくことが我が国の責務であると考えています。相手国の意向や事情を踏まえつつ、我が国の技術を提供していく考えです。
 水俣病についてのお尋ねがありました。
 私が水俣条約の外交会議でのビデオメッセージで克服という表現を用いたのは、我が国が水銀のリスクを大きく減らしてきたこと、水俣の人々が環境先進地域を目指して努力してきたことを踏まえたものであります。私は、水俣病は過去の問題であるとは考えていません。ビデオメッセージでも申し上げましたが、改めて、水俣病で亡くなった方々に哀悼の意をささげ、闘病を続ける方々に心よりお見舞いを申し上げます。
 水俣病の被害に関する調査については、引き続き、水俣病被害者救済特別措置法の救済措置の方針に沿って、水俣病被害者の方々などの症状の改善や健康不安を訴える方への支援等に役立つよう健康調査を進めてまいります。
 政府としては、水俣病が発生した地域の全ての方々が安心して暮らしていける社会を実現すべく、高齢化が進む胎児性患者の方などへの生活支援や健康不安を訴える方への相談体制の充実などに全力で取り組んでまいります。
 集団的自衛権の事例についてお尋ねがありました。
 集団的自衛権が行使された事例としては、最近では、二〇〇一年の米国同時多発テロを受け、英国、カナダ、ドイツ、オランダ、豪州、ニュージーランド、フランス及びポーランドが個別的及び集団的自衛権に基づく措置をとる旨の書簡を国連安保理に対して送付したと承知をしております。また、一九九〇年のイラクによるクウェート侵攻の後、クウェート等の要請を受け、米国及び英国がペルシャ湾地域への兵力の派遣を行うことを個別的及び集団的自衛権の行使として説明する書簡を国連安保理に対して送付したと承知をしております。
 集団的自衛権と憲法解釈についてお尋ねがありました。
 現在、安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会において、前回の報告書が出されて以降、我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増していることを踏まえ、我が国の平和と安全を維持するためどのように考えるべきかについて検討が行われています。政府としては、まずはこの懇談会における議論を待ちたいと考えています。
 特定秘密保護法案についてお尋ねがありました。
 情報漏えいに関する脅威が高まっている状況や、外国との情報共有は情報が各国において保全されることを前提に行われていることに鑑みると、秘密保全に関する法制を整備することは喫緊の課題であります。新たに設置される予定の国家安全保障会議の審議をより効果的に行うためにも、秘密保全に関する法制が整備されていることが重要であると認識しております。
 一方で、国民の知る権利や報道の自由についての配慮も重要なことであると認識しており、様々な御意見を伺いながら適切に対応してまいります。その上で、政府としては、特定秘密の保護に関する法律案を早急に国会に提出できるよう努めてまいります。
 以上であります。(拍手)
○副議長(輿石東君) このまましばらくお待ちください。
 答弁の補足があります。内閣総理大臣安倍晋三君。
   〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 原発ゼロについてのお答えの中で、今後三年程度の間にと言うべきところを五年というふうに申し上げましたが、三年に訂正させていただきたいと思います。(拍手)
    ─────────────
○副議長(輿石東君) 西村まさみ君。
   〔西村まさみ君登壇、拍手〕
○西村まさみ君 民主党の西村まさみです。
 私は、民主党・新緑風会を代表して、安倍総理の所信表明演説に対し質問をさせていただきます。
 安倍総理も所信表明演説の冒頭で言及されましたが、この夏、全国でこれまで以上の頻度と強度で集中豪雨や台風、竜巻被害が頻発いたしました。またさらに、一昨日の台風二十六号では、伊豆大島で甚大な被害が発生いたしました。これら自然災害で失われた多くの尊い命に衷心よりお悔やみを申し上げますとともに、被災された全国の皆様に心よりお見舞いを申し上げます。そして、民主党はこの災害復旧に全力を挙げることをお誓い申し上げます。
 自然災害が激甚化しているのではないか、世界規模での気候変動、都市化の極大化など理由は明確化されてはいませんが、国民は肌で感じているのではないでしょうか。気象庁もまた、直ちに命を守る行動を促す新たな警告である特別警報の運用を開始いたしました。このような状況を踏まえれば、国土強靱化の取組にも増して、まさに国民一人一人の防災・免災能力の向上が必要であり、防災・免災教育の徹底、啓発が急務の課題と考えますが、まず安倍総理のお考えをお伺いしたいと思います。
 国民の生活の安心、安定に欠かすことはできない社会保障制度を少子高齢、人口減少社会においても、全ての国民がひとしく負担することで支え合っていこうという国民理解と納得こそが社会保障と税の一体改革を進めるための生命線であるということは言うまでもありません。
 しかし、今私は非常な危機感を覚えています。政府のプログラム法案では、八%増税分は、医療、介護に一千億円など、社会保障充実には五千億円のみを充当とされる一方で、法案には、政府は自助自立のための環境整備に努めると明記され、介護保険の高所得者利用料二割負担化、介護予防事業を保険給付から外すなど、七十から七十四歳の前期高齢者窓口負担の二割への引上げ、高所得者の高額療養費限度額の引上げなど、少なくとも国民目線からは改悪と映らざるを得ない状況となっています。さらに、自民党の主張で、消費税の使い道を社会保障限定から成長戦略や事前防災・減災などの分野に資金を重点的に配分すると、何でもありに書き換えたことも不信の要因と考えざるを得ません。
 もちろん、社会保障制度がいかに重要不可欠といっても、有効性、効率性を無視することはできませんし、制度の不断の見直しは必要です。しかし、そうであるからこそ、国民との認識のギャップが拡大しないように、細やかな上にも細やかな説明と合意形成がこれまで以上に必要ではないでしょうか。
 プログラム法案で新たに設置される政府の社会保障制度改革推進本部で引き続き本部長を務められる安倍総理はこの点いかが御認識か、お聞かせください。
 私は歯科医師であります。近年、特に高齢社会において、歯科医療の果たす役割、歯科医療の有用性が注目されて、健康寿命の延伸問題等に関して多くの研究結果が示されています。それらによれば、例えば七十歳から七十四歳の間で我が国の国民の健康寿命は尽き始め、また八〇二〇運動で目指している八十歳で二十本の歯を残すことに関しても、七十歳から七十四歳の年齢層では平均残存歯、つまり残った歯の数は二十本を切っていくんです。
 このように、七十から七十四歳という年齢は、歯科的観点から健康寿命の延伸に極めて大きく影響する時期であり、この時期に重なる前期高齢者の自己負担二割の本則に引き上げることで受診抑制を招くことがあれば、大切な健康寿命の延伸に影響が出ることを全国の多くの歯科医師や歯科医療従事者が強く危惧しています。
 もし慎重の上に慎重な議論を重ねた上で本則に引き上げることが避けられないのであれば、低所得者への対策等に万全を期し、所得による健康格差をつくらないことがまず絶対原則と考えます。
 その上で、例えば死因第三位まで増大した肺炎に対し、一昨年、民主党政権で成立した歯科口腔保健法も活かし、六十歳以上の歯科検診の充実により、口腔ケア向上と検診に基づく受診勧奨で危険な受診控えと誤嚥性肺炎を防ぐことや、成人用肺炎球菌ワクチン接種実施の充実強化など、予防重視、健康寿命延伸という目標に沿い、費用対効果が極めて高い施策の速やかな制度化が必要だと考えますが、安倍総理はいかがお考えでしょうか。
 治す医療から治し支える医療への転換を含め、在宅生活を支える国民ニーズにこたえ得る医療、保健、福祉の充実や、これまで社会保障の観点から見過ごされてきた住まい問題等々、更に検討課題は山積です。
 また、経済成長と国民若年齢構成を前提とした制度から、低成長、超少子高齢社会を前提とした制度への抜本改革、年齢ではなく所得を基準に公助、共助する仕組みへの再構築、国民の制度理解の障壁となり不公平感、不信感の原因ともなっている分立、複雑な制度の一本化、簡素化、個人単位が実現せず世帯単位にとどまっている制度の是非などの社会保障制度の大きな枠組みの見直しも引き続いての課題です。
 プログラム法案では、社会保障制度改革国民会議の後任組織として社会保障制度改革推進会議を設置されるとのことですが、法制上の措置を進めるとともに、ポスト一体改革というべき残された課題検討をいかに進めるおつもりか、いかにリーダーシップを果たされるか、安倍総理のお考え、御決意をお伺いします。
 消費税増税の一方で、法人税減税は大企業優先だ、経済対策も財界、建設業界といった自民党支持基盤に還流される古い自民党の構図だ、消費の落ち込みを下支えするならば家計支出の下支えこそ必要だ、このような指摘がされています。また、財務省も、法人税減税実施なら更なる歳出の見直しが必要との見解を公表しています。このままでは、社会保障充実も財政再建もかなわないまま消費税率だけが上がっていくことになりかねないという危惧が語られているんです。
 東日本大震災復興における復興特別法人税の前倒し廃止が、全ての国民が力と気持ちを一つにして東日本大震災復興に立ち向かおうとする絆を傷つけると同様、私には、大企業優先の安倍政権の姿勢が、社会保障制度に関し形成されつつある国民理解と納得に水を差し、崩壊に導くのではないかと心配でなりません。
 是非、法人税減税、復興特別法人税の前倒し廃止は撤回していただきたいと思いますが、安倍総理の御答弁をお願いいたします。
 安倍総理は、九月二十六日、国連総会一般討論演説でその大半を女性の人権、社会参加への言及に費やされましたが、その分、今回の所信表明演説では割愛されたようです。
 九月四日、最高裁が非嫡出子の法定相続分を嫡出子の二分の一と定める条項を違憲とする判断を行いました。
 民主党は、一九九八年以降、十六回にわたり婚外子相続差別規定を削除する民法改正案を野党共同で提出してまいりました。本年も、最高裁大法廷回付を受け、緊急改正が必要と考え通常国会に再提出をいたしましたが、与党は審議にさえ応じず、その結果、最高裁違憲判決を待たず立法府の良識を示すことはできませんでした。
 今回の最高裁判断を受け、政府は、婚外子相続差別規定を削除する民法改正案をこの臨時国会に提出し、成立を期すべきと考えますが、安倍総理にお考えをお伺いいたします。
 同じく九月三日には、女子差別撤廃委員会より日本政府が勧告不履行を指摘されたところです。嫡出子、非嫡出子の相続同等化以外にも、男女共に婚姻適齢を十八歳に設定すること、夫婦に氏の選択を求めることを内容とする民法の改正、さらに女性のみに課せられている六か月間の再婚禁止期間の廃止が求められています。これらについての今後の政府の御対応を安倍総理にお伺いします。
 民主党政権は、チルドレンファーストとして何より子供と子育てを支援する取組を全力で進めてまいりました。それは、人口では二〇%も占めない児童だが、我が国の将来は一〇〇%彼ら次第だからです。この説得力ある言葉は、私でも民主党のオリジナルでもありません。イギリスのブレア政権で子供大蔵大臣と呼ばれたブラウン大蔵大臣による予算教書での表現です。二〇%はイギリスで、我が国日本では十五歳未満で約一三%、二十歳未満でも一八%となってしまうのです。
 子供たちの中でも特に特別なサポートを必要とするのは、社会的にも最も弱い、親が養育できない、養育する気がない、養育することを許されない社会的養護に委ねられている子供たちです。しかし、日本の社会的養護は長らく政策的に放置されたような状況でした。ようやく施設基準等の見直しも行われ、大規模施設ケアから家庭的ケアの充実に方向を定め、豊かな社会とのギャップを埋めていこうと進み出したところです。最も社会のサポートを必要とするにもかかわらず置き去りにされてきた社会的養護の充実の加速化について、安倍総理大臣の御見解と御決意をお伺いいたします。
 高校授業料無償化制度に政府は来年度から所得制限を設け、高校生全体の二二%を対象から外すことで得た約四百九十億円を就学支援金拡充や給付型奨学金など中低所得層の支援拡充に回すとのことですが、疑問を感じざるを得ません。子供の学びを社会全体でひとしく支えるという基本理念が損なわれてしまいます。また、そもそも日本の教育予算の国内総生産に占める割合は先進国最低水準で、特にこの高等教育でそれが顕著でした。これでは安倍総理のおっしゃる教育再生への熱意も疑わざるを得ません。
 格差社会が問われる現在、中低所得層の支援拡充は必要です。しかし、同じ高校生を抱える家庭、すなわち大学等への進学も控える家庭にその支援を支払わせることは公平を欠くことです。また、九百十万円という線引きの根拠も不明で、この一線で子供一人当たり高校三年間で三十五万円、二人ならば七十万円もの負担差が出ることは看過することができません。
 一九七九年の批准後も、高校、大学の段階的な無償化を定めた国際人権A規約の適用を留保し続けてきた問題で、日本政府は、昨年九月、ようやくその留保撤回を閣議決定し、国連に通告したところです。この無償化の後退は時計の針に逆行することにほかならないのではないでしょうか。
 子供は親を選べません。だからこそ、全ての子供に平等な機会を保障することは政治の責任であります。速やかにこの所得制限については撤回し、中低所得層の支援拡充を含めた充実を図るべきだと考えますが、安倍総理の御認識をお尋ねします。
 ヒロシマ・ナガサキは原爆の惨禍を伝える世界の共通語です。私たちにとって大変悲しいことに、そんな世界共通語のページに原発事故の惨禍を表すフクシマが追加されてしまいました。同様に、水俣病は史上最悪の水銀禍として世界に知られ、ミナマタは公害の原点として、ノーモア・ミナマタは世界中で掲げられてきました。
 その水俣の名を冠した水銀による健康被害や環境汚染防止を目指す水銀に関する水俣条約が先般、熊本、水俣で行われた国連環境計画外交会議で採択されました。今後は、五十か国以上の批准を経て、二〇一六年の発効を目指すこととなります。多くの国に早期批准を促すためにも、引き続き途上国支援にしっかりと取り組むことが我が国には求められています。
 この条約会議で、水俣病患者代表の緒方さんは、私たちの失敗を失敗で終わらせることなく、教訓として役立ててほしいと世界に訴えられました。私たちは、水俣病問題は決して過去の負の遺産ではなく、現在もなお人間より経済を優先する考えが克服されたとは言い難いということを改めて心に銘記すべきです。
 安倍総理大臣には、今後とも、水俣病患者の皆さんの健康と生活の安定に全力を尽くし、技術的、資金的、人的な途上国援助を進め、水俣条約を実効あらしめ、地上から水銀被害をなくすためのリーダーシップを果たしていただき、水銀被害の真の克服を世界に宣言していただきたいと願います。安倍総理の御所見をお願いいたします。
 九月七日、東京オリンピック・パラリンピック開催決定を受け、安倍総理は早々に下村文科大臣を五輪担当相に任命され、関係府省庁連絡会議も招集、各省庁間の調整などを担う推進室も内閣官房に設置されました。もちろん私たちも、もう七年しかないと、同じ気持ちで大会成功には協力を惜しまない決意でおります。
 皆様も御案内のとおり、FIFAワールドカップ、オリンピック・パラリンピックとともに世界三大スポーツイベントと言われるラグビーワールドカップ第九回大会の二〇一九年日本開催は二〇〇九年に既に決定しております。この大会は、さきに御勇退された森喜朗元総理を先頭に関係者が一丸となって招致に結び付けられた大会であり、アジア地域初開催はもちろんのこと、ラグビー伝統国以外での開催自体が初めて、また七人制ラグビーのオリンピック種目採用から最初の大会として注目を集める大会となります。
 世界的スポーツイベントが二年連続で日本で開催され、世界の注目を集めることとなるのです。是非とも、二〇一九年ラグビーワールドカップ日本大会と二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックを一体的なものとして万全な開催準備に取り組み、三つの大会の大成功で日本の子供たち、世界中の子供たちにスポーツを通して大きな夢を育むことができればと切望いたしますが、先頭に立たれる安倍総理のお考えと御決意をお伺いしたいと思います。
 終わりに、小泉構造改革でいわゆるイザナミ景気がもたらされたとされますが、外需主導の景気は、労働コスト抑制、国民生活の犠牲の上に成立したものでした。小泉構造改革はまた、聖域なき歳出削減を掲げ、社会保障費を年二千二百億円ずつ削減し、その結果、医療崩壊が現実化しました。
 この構造改革で国民の生活が豊かになったとも、国民の生活が幸せになったとも私には到底思えません。これまでの改革が目標を達成できないのは改革が足りなかったから、更に改革の加速が必要などといった乱暴な論法は卒業し、これまでの構造改革を改めて検証、総括するところから始めるべきだと私は考えます。
 私が思い描く頑張った人が報われる社会とは、病に苦しむ人、障害のある人、高齢者、女性、子供、母子・父子家庭などなど、様々な社会的なハンディキャップに直面しながらも精いっぱい頑張っている人々が、社会に支えられ、日々を幸せに暮らすことができるような社会です。しかし、私にはどうしても、安倍総理のおっしゃる頑張った人が報われる社会は、うまく立ち回った人がもうける社会、一握りの人がもうけそのおこぼれを大勢が待つような社会としか思えないのです。
 私たち民主党も、三年三か月、政権与党の貴重な経験を積みましたが、今は非常に厳しいときにあります。しかし、綱領に明記したように、生活者、納税者、消費者、働く者の立場に立ち、その暮らしが少しでも良くなる政策を磨き上げること、女性と子供を最も大切に考える政党として、国民の皆様から再び政権を任せたいと御期待いただけるよう、安倍総理の自民党の政治とは異なる理念、政策を再構築していくことに全力を尽くす私の決意をお示しさせていただきまして、質問を終わりたいと思います。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 西村まさみ議員にお答えをいたします。
 防災教育の徹底についてお尋ねがありました。
 東日本大震災を始め、これまでの災害において、防災教育により住民が適切な退避行動を取ることができた事例が報告されており、防災教育が極めて重要であると認識しています。
 今後とも、学校教育や地域での防災訓練など、様々な機会を通じて防災教育や避難行動に関する啓発活動等を推進することにより減災対策を進めてまいります。
 社会保障制度改革についてお尋ねがありました。
 急速な少子高齢化が進む中、受益と負担の均衡が取れた持続可能な社会保障制度を確立するためには、制度の充実と重点化、効率化を同時に進める必要があります。
 社会保障制度改革の実施には、国民の理解、納得が欠かせません。御指摘の社会保障制度改革推進本部においても、改革の中身がしっかりと国民の皆様に伝わるようにしながら、着実に改革を実施してまいります。
 医療保険における低所得者対策や疾病予防についてお尋ねがありました。
 持続可能な医療保険制度を構築するためには、低所得者への配慮を行いつつ、給付の重点化や利用者負担の見直しを行うとともに、疾病予防対策を進めていくことも重要な課題であります。
 御指摘のあった高齢者の口腔ケアなどの予防対策を含め、健康寿命を延ばし、誰もが健康で長生きできる社会の実現に努めてまいります。
 社会保障制度改革推進会議についてのお尋ねがありました。
 八月に取りまとめられた社会保障制度改革国民会議の報告書を踏まえ、医療、介護を始めとする各分野の改革を着実に進めてまいります。
 また、御指摘の社会保障制度改革推進会議においては、社会保障制度を取り巻く環境の変化を踏まえた長期的な課題について有識者の方々に御検討をいただくこととしており、議論の状況等も踏まえつつ、受益と負担の均衡が取れた持続可能な社会保障制度の確立のために引き続き努力をしてまいります。
 法人税減税及び復興特別法人税の前倒し廃止についてのお尋ねがありました。
 今般の投資減税等は成長力を底上げするためのものであり、また、復興特別法人税の廃止は足下の経済成長を賃金上昇につなげることを前提に検討するものであります。これらは、企業収益の改善が個人の所得の拡大、そして消費の拡大につながっていく好循環を実現することを目的としています。
 復興は内閣の最重要課題の一つです。復興特別法人税の廃止を行う場合であっても、現在二十五兆円程度の集中復興期間における復興財源を確実に確保するとともに、今後も全力で復旧・復興の加速に取り組むこととしております。
 こうしたことについて、被災地の方々を始め国民の皆様の理解を得られるよう、丁寧に説明してまいります。
 嫡出でない子の相続分に関する民法改正についてのお尋ねがありました。
 政府としては、御指摘の最高裁判所の違憲判決の趣旨を踏まえ、嫡出でない子の相続分を嫡出子の相続分の二分の一としている民法の規定について見直しを検討しているところです。
 婚姻適齢の見直しなど、女性に関する民法の規定についてのお尋ねがありました。
 御指摘の点は、いずれも我が国の家族の在り方に深くかかわるものであり、国民の間にも様々な意見があることから、慎重に検討すべきものと考えております。
 社会的養護の充実についてお尋ねがありました。
 親から虐待を受けた子供など、様々な養育上の困難を抱えた子供たちが健やかに成長できるよう社会的な支援を行っていくことは重要な政策課題であると考えております。これまでも、社会的養護を行う施設の職員体制の充実などを進めてきていますが、今後も、消費税財源を含めた必要な財源を確保しつつ、支援体制を整備してまいります。
 高校授業料無償化の見直しについてのお尋ねがありました。
 いわゆる高校無償化制度の見直しについては、高等学校等における教育に係る経済的負担の軽減を適正に行うため、厳しい財政状況の下、限られた財源を有効に活用する観点から所得制限を導入するものであり、今国会に改正法案を提出いたします。
 所得制限の導入により得られる財源の使途については、低所得者層への支援や公私間格差の是正等を内容とする八月の与党間合意も踏まえつつ、予算編成過程で検討してまいります。
 水銀被害への対策についてお尋ねがありました。
 世界のいかなる地でも水俣病のような悲劇を繰り返さない、世界各国がその思いを共有し、水銀を規制する条約を採択するに至ったことは、世界での水銀の被害を根絶する上での大きな第一歩であります。条約の採択を受けて、今後は、その早期発効を目指し、より多くの途上国に条約に参加してもらえるよう、日本が持つ技術と経験を今までにも増して世界に提供してまいります。
 加えて、水銀汚染対策を始め、途上国の環境汚染対策を後押しするため、我が国として、今後三年、総額二十億ドル支援を実施することを外交会議の場で私自らお約束をいたしました。
 また、水俣病の患者の方々が地域で安心して暮らしていける社会を実現すべく、水俣条約の採択を受けて、改めて水俣病に苦しむ方への医療・福祉サービスの提供や生活支援の充実に全力で取り組んでいきます。
 二〇一九年ラグビーワールドカップ及び二〇二〇年オリンピック・パラリンピック東京大会についてお尋ねがありました。
 国際的なスポーツ大会を我が国で開催することは、国民に夢と希望を与えるとともに、世界中の一流のアスリートが競い合う姿を通じ、子供たちにフェアプレーの精神や自らを律する心を養うなど、大変意義深いものであります。二〇二〇年オリンピック・パラリンピック東京大会と併せて、二〇一九年ラグビーワールドカップについても、大会の成功に向け、政府としても必要な支援を行ってまいります。
 以上であります。(拍手)
    ─────────────
○副議長(輿石東君) 宮沢洋一君。
   〔宮沢洋一君登壇、拍手〕
○宮沢洋一君 自由民主党の宮沢洋一でございます。
 私は、昨年、社会保障・税一体改革に関する三党協議に党の交渉担当者として携わり、また、この秋、投資促進税制などを含む与党税制改正大綱の取りまとめ作業にも参加させていただきました。本日は、こうした立場から、自由民主党を代表いたしまして、安倍内閣総理大臣の所信表明演説に対し、質問をいたします。
 安倍総理は、十月一日、社会保障・税一体改革に基づき、来年四月に消費税率を八%に引き上げるという歴史的な御決断をされました。
 私は、三党合意に携わった者として、総理の御決断を高く評価いたします。ただし、これはあくまで財政健全化の第一歩であって、我々が安心できる社会保障制度とその財源となるべき財政基盤を次世代に引き継ぐためには、財政健全化に向けた取組を更に進める必要があります。
 私は、増税なくして歳出削減だけ、あるいは経済成長による増収だけで財政健全化を実現できるとは思っておりません。もちろん、増税だけでその財政健全化も困難であります。増税に加えて、歳出見直しと経済成長による税収増も同時に進めることが肝要であると考えております。
 そこで、まずは経済成長に向けた安倍政権の経済政策、いわゆるアベノミクスについて質問したいと思います。
 昨年十二月に安倍政権が発足した直後から、日本銀行による大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略のいわゆる三本の矢が矢継ぎ早に放たれ、これにより日本経済は復活の兆しを見せております。
 異次元の金融緩和によりデフレ脱却を目指す第一の矢、機動的な財政政策により景気の底割れを回避し、成長戦略につなげるための第二の矢は、それぞれ重要な役割を担っていますが、私は、日本経済を真に再生し、持続的な成長を実現するためには、何より重要なものは三本目の矢、成長戦略だと考えております。それは、成長戦略の成否が、この一、二年はもちろん、五年後、十年後、さらに二十一世紀後半に向けての我が国のありようを大きく左右すると確信するからです。
 私は、成長戦略に期待されているのは日本経済のエンジンを積み替えることであると考えています。
 これまで我々が愛用してきたエンジンは、高度経済成長期に威力を発揮した強い馬力を持つものでした。しかし、残念ながら、燃費は悪いし、環境にも悪いエンジンです。我々は今こそ、燃費の良い、そして環境にも優しい、高付加価値の新しいハイブリッド型のエンジンに積み替えなければならない時期に来ています。
 成長戦略は、新しいエンジン、つまり、新たな成長分野を切り開くための投資を生み出すものでなければなりません。企業が、中小企業も含め、リスクを取って積極的に新しい分野に挑戦する気概を持つような環境を政府が用意する必要があります。
 我々は、既に二十五年度税制改正において、成長に弾みを付ける税制を導入しましたが、さらに先般、十月一日の閣議決定において、思い切った投資促進税制が盛り込まれました。具体的には、生産性の向上につながる設備投資を促進するための税制、ベンチャー投資を促進するための税制、事業再編を促進するための税制措置等が提示されています。是非ともこの税制を活用していただき、中小零細企業も含め、経営者の皆様に経済成長の源となる新しいエンジンを手にしていただきたいと考えています。
 今国会において、産業競争力強化法案が審議されることと承知しております。この関係で総理に伺います。この産業競争力強化法は、具体的にどのように我が国の競争力強化につながるのか。
 また、海外の投資家たちは、矢継ぎ早に打ち出される総理の攻めの政策姿勢に期待を寄せております。この期待にこたえ、更に改革を進める必要があります。次に続く医療、介護の制度改革、雇用規制の緩和、農業の構造改革などの重要分野の改革について、具体的にどのような改革の方向性を描いておられるのか。また、できる限り早く成果を出していただく必要があると考えますが、どのようなスピード感でこれらの改革に取り組んでいくのか、安倍総理の御見解をお聞かせください。
 次に、先般の閣議決定においては、アベノミクスの成功を民需主導の持続的な成長につなげるためのもう一つの手段として、所得拡大促進税制の拡充が提案されています。相当使い勝手の良い制度になったはずです。
 企業経営者の方には、この税制を活用して、新しい成長のための投資だけではなく、是非働き手の人々の賃金を引き上げていただきたい。企業収益の拡大が賃金の上昇につながる、賃金の上昇が消費の拡大に、そして消費の拡大が企業収益の拡大につながるという経済の好循環を実現するのがアベノミクスの成功の鍵だと考えております。
 なお、この賃金引上げに関連して、復興特別法人税の廃止の検討が議論になっております。このことについては様々な意見があると承知しておりますが、その検討に当たって、税収の動向などを見極めて復興特別法人税に代わる復興財源を見付けること、国民の理解、中でも被災地の方々の十分な理解を得ること、及び復興特別法人税の廃止を確実に賃金上昇につなげられる方策と見通しを確認すること等を踏まえた上で、十二月に結論を得ることとされています。
 そこで、甘利大臣に伺います。
 復興特別法人税を一年前倒しで廃止する場合、具体的にどのように賃金の上昇につながるのか、特に、中小零細企業にお勤めの方、非正規労働の方の賃金がどのように上昇していくのか、お聞かせください。
 また、茂木経済産業大臣に伺います。
 経済産業省において、出先機関である経済産業局も活用し、企業に対して賃上げ要請を行うとの報道がありますが、政府の気合だけではなかなか企業の経営者を動かすことは簡単ではないと思います。具体的にどのような働きかけを行って中小企業を含む企業の賃上げが実現すると考えているのか、御見解をお聞かせください。
 第三に、社会保障制度について伺います。
 昨年八月十日、一体改革法の関連法案として社会保障制度改革推進法が成立いたしました。この社会保障制度改革推進法の基本的な考え方は、社会保障制度、特に医療、介護や年金制度を持続可能なものにし、国民皆保険、皆年金という世界に冠たる日本の制度を守ることであります。
 七十五歳になると、病気をされたり介護を必要とする状態に陥られる方の割合が急増すると言われております。これから十年後には、現在団塊の世代と言われている方たちが七十五歳以上となる、いわゆる二〇二五年問題が迫ってきます。さらに、現在の社会保険制度を支えている四十代前後の第二次ベビーブーマーと言われる方たちも、今後二十五年たたないうちに六十五歳を超え、支えられる側に回ります。
 年金についてはこれらを全て計算に入れて制度設計されておりますが、医療、介護については計算されておりません。今の日本の極めて厳しい財政事情を考えれば、医療、介護の制度を守るためには、給付が野方図に拡大していくような状況は厳に慎まなければならず、二十年後、三十年後を見据え、受益と負担のバランスの取れた仕組みをつくり上げていかなければなりません。
 社会保障制度改革推進法では、給付の拡大を防ぐための表現である重点化や効率化、適正化といった言葉について、重点化については二か所、効率化については三か所、適正化は四か所、それぞれ出てまいります。負担の増大を抑制するという表現は三か所であります。それに対して、給付を増やす場合には充実という表現を使うわけですが、この法律の中で充実と書いてあるのは一か所しかありません。
 つまり、社会保障制度改革推進法には、給付の野方図な拡大を防ぐ部分と、給付の拡充につながる部分の両方があるわけですが、その中でも、社会保障制度の持続可能性を高めるため、重点化や効率化に重きが置かれています。
   〔副議長退席、議長着席〕
 このような、長期的には我々の子供、孫の世代の国民のために役立つが、短期的には現世代にとって苦い薬になるかもしれない内容の法案が与野党の協力により三党の合意でまとまったことは、これから生まれてくる将来の国民と、そして世界に誇ることのできるものだと考えております。
 政治は時にやすきに流れ、ともすれば歳出拡大の方向に向かってしまいがちであります。しかし、しっかりとした決意を持って臨めば、長期的な視野に立ち、真に国民のためになる改革を行えることは、我々自身が身をもって証明したところであります。
 そこで、総理に質問いたします。
 働く世代が減っていく中、医療、介護について引き続き必要な改革を行い、持続可能な社会保障制度を構築していく決意についてお聞かせください。
 続きまして、第四に、財政の健全化について伺います。
 日本の財政状況については、既に皆様御承知のとおり、先進国で最悪の水準であり、財政の健全化は待ったなしの課題です。
 この財政の健全化については、責任政党である自民党として、さきの参議院選挙において、国、地方のプライマリーバランス赤字の対GDP比を二〇一五年度までに二〇一〇年度比で半減させ、そして二〇二〇年度までに黒字化し、その後も債務残高の対GDP比を安定的に引き下げるという公約を掲げたところです。
 総理は、この度、消費税率を八%に引き上げることを決断されました。この決断により、持続可能な社会保障制度及び財政構造を確立し、財政健全化目標を達成するための極めて重要な第一歩を踏み出されました。しかし、まだまだ歩むべき道は長いと言わざるを得ません。
 総理に伺います。
 有権者との約束であるプライマリーバランスの赤字半減、黒字化の目標達成に向けた揺るがぬ御決意をお聞かせください。
 より具体的に伺います。中長期試算においても示されていますが、二〇一五年度までにプライマリーバランス赤字を半減するためには、消費税率の一〇%への引上げを含め、社会保障・税一体改革を着実に実施する必要があります。今後三年間、大幅な政策減税を実施するため、経済が相当好転したとしても中長期試算を大きく超える税収増は余り期待できないという点にも留意する必要があります。この点につきまして、総理の御決意をお示しください。
 また、二〇二〇年度にはプライマリーバランスを黒字化することになっております。これについて、総理は具体的にどのように進めていこうと考えておられるのか、併せてお聞かせください。
 また、税制抜本改革法附則第十八条第二項におきましては、税制の抜本的な改革の実施等により、財政による機動的対応が可能となる中で、成長戦略並びに事前防災及び減災等に資する分野に資金を重点的に配分することなど、我が国経済の成長等に向けた施策を検討することとされております。そして、法律上、この措置も踏まえ、消費税の引上げが決定される仕組みとなっております。
 総理は、十月一日に消費税の引上げを決定されるに当たり、この点についてどのような判断をされたのか、そして今後どのように資金配分の重点化を行うのか、総理のお考えを伺います。
 総理、私は、是非長期安定政権を実現していただきたいと考えております。近年、毎年のように総理大臣が替わり、また、与野党のねじれの中で実現しなければならない改革が次々と先送りされてきてしまいました。長期的な展望に立ち、日本の将来にとって真に必要な改革を断行していくためには、長期安定政権を実現することが何より重要であります。ただ、過去の長期政権は、その成立当初から長期政権が約束されていたわけではありません。政権を長らえるためだけに短期的な世論の支持を得やすい政策の実現ばかりに目を奪われることなく、一つ一つの課題について長期的視野に基づく判断を重ねることで、結果として長期安定政権を実現してきました。
 安倍総理におかれましても、是非、我々の子供、孫世代など、将来世代にも安心をもたらす長期的視点を持って、財政健全化を始めとする重く困難な課題に対し、御決断を重ねていっていただきたいと存じます。
 この言葉をもちまして、私の代表質問の締めくくりとさせていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 宮沢洋一議員にお答えをいたします。
 産業競争力強化法、規制・制度改革についてのお尋ねがありました。
 産業競争力強化法では、まず、新たに企業実証特例制度を創設し、あらゆる分野でフロンティアに挑む企業が新たな規制緩和によってチャンスを広げることを支援します。また、企業がグローバル市場に打って出るための思い切った事業再編を促すことや、新たなベンチャーの起業と成長を応援することなどにより、産業の新陳代謝を進め、我が国の競争力強化につなげてまいります。
 成長戦略の目指すところは、世界で一番ビジネスがしやすい環境を創出すること、それによる企業収益の増加を頑張る人たちの雇用拡大、収入増加につなげることです。そのため、医療、介護については効率的で質の高いサービス提供体制の確立、雇用については柔軟で多様な働き方の促進、農業については意欲ある者の規模拡大や参入を促すための方策等、更なる規制・制度改革を実行していきます。
 安倍政権の成長戦略のポイントは、スピードと実行です。今後三年間を集中投資促進期間と位置付け、税制、予算、金融、規制・制度改革といったあらゆる施策を総動員してまいります。
 医療、介護を始めとする持続可能な社会保障制度の構築についてお尋ねがありました。
 急速な少子高齢化が進む中、受益と負担の均衡が取れた持続可能な社会保障制度を確立するため、今国会に、改革の全体像、進め方を明らかにするための法律案を提出いたしました。
 今後、この法案に沿って、地域ごとの実情に応じた医療・介護サービスの充実や低所得者の保険料の更なる軽減などの制度の充実を図る一方、こうしたサービスを支える保険制度を持続可能なものとするため、給付の重点化や利用者負担の在り方を見直すことなど、具体的な改革を着実に実施し、世界に誇る我が国の社会保障制度を次世代に安定的に引き渡してまいります。
 基礎的財政収支の赤字半減、黒字化に関するお尋ねがありました。
 政府としては、本年八月に中期財政計画を策定し、二十六年度及び二十七年度の各年度において、国の一般会計の基礎的財政収支を少なくとも四兆円程度ずつ改善するとの具体的な道筋を定めたところです。
 こうした歳出歳入両面での取組により、国、地方を合わせた基礎的財政収支について、二〇一五年度までに二〇一〇年度に比べ赤字の対GDP比を半減し、二〇二〇年度までに黒字化するとの財政健全化目標の達成を目指します。
 社会保障・税一体改革と財政健全化への取組についてお尋ねがありました。
 社会保障の安定財源確保と財政健全化を実現していくため、今般、消費税率の三%引上げを予定どおり実行することを決断いたしました。また、社会保障制度改革の全体像、進め方を明らかにする法律案を今国会に提出したところであります。こうした取組により、社会保障・税一体改革を着実に前に進めてまいります。
 また、先般決定した経済政策パッケージにおいて、我が国の成長力の底上げのため、中長期試算には盛り込まれていなかった大胆な政策減税を実施するところであります。
 今後、こうした施策の影響も踏まえつつ、二〇一五年度の財政健全化目標の達成に向け、経済再生を進めるとともに、歳入歳出両面で最大限努力を行ってまいります。
 二〇二〇年度の財政健全化目標の達成に向けた具体的な取組については、二〇一五年度における財政状況等を踏まえて経済財政を展望し、その後の五年間について更に具体的道筋を描きます。
 税制抜本改革法附則第十八条第二項についてお尋ねがありました。
 八月に策定した平成二十六年度予算の概算要求基準に示した考え方や、今般消費税率引上げと同時に決定した経済政策パッケージは、税制抜本改革法附則第十八条第二項の規定と整合的なものと考えております。先般の消費税率引上げに係る判断は、こうした点を踏まえつつ、経済状況等を総合的に勘案して行ったものです。
 今般の予算編成過程においては、概算要求基準を踏まえ、民間需要や民間のイノベーションの誘発効果が高いもの、緊急性の高いものなど、真に必要なニーズにこたえるよう、予算の中身を大胆に重点化してまいります。その際、財投資金や民間資金の活用も念頭に置きながら、民需主導の経済成長の達成に真に必要な資金需要に的確に対応してまいります。
 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
   〔国務大臣甘利明君登壇、拍手〕
○国務大臣(甘利明君) 復興特別法人税の前倒し廃止と賃金上昇の関係についてのお尋ねであります。
 現在、法人税納税企業のうち、企業数でいえば九八%が、そして納税額でいいますと約半分は中堅・中小零細企業によるものであります。復興特別法人税の前倒し廃止の効果は、大企業のみならず中小企業等を含め広く及ぶと考えております。
 復興特別法人税の前倒し廃止による企業活動の活性化によって、まず、中小企業等においても賃金を引き上げる企業が増加をすれば、これを契機として賃金水準全体の上昇が促され、また、下請企業支援等が積極的に行われることにより中小零細企業においても賃金引上げ余力が高まり、さらに、これらの賃金上昇等による消費の拡大等を通じた経済の好循環が実現をすれば、タイムラグはあるにせよ、その効果は中小零細企業の労働者や非正規労働者を含めた日本経済全体に及んでいくものと考えております。(拍手)
   〔国務大臣茂木敏充君登壇、拍手〕
○国務大臣(茂木敏充君) 宮沢議員にお答えをいたします。
 中小企業を含む企業の賃上げの実現について御質問をいただきました。
 先日、経済対策パッケージも取りまとめたところでありますが、現在、アベノミクスの成果である企業収益の向上を賃金の上昇や雇用の拡大につなげていくという経済の好循環の実現に向け、中小企業・小規模事業者を含め、経済界に対して賃金引上げ等の要請を行っているところであります。
 具体的には、先週、私から経営者の代表の方々に直接要請をさせていただいたところであり、これからも経済産業省を挙げて、また国を挙げて、あらゆる機会をとらえて働きかけを行ってまいります。さらに、賃金の動向なども調査をいたし、その結果について適切な形での公表をすることも考えております。
 さらに、来年四月の消費税引上げに伴う転嫁対策の適切な実現も図りつつ、宮沢先生にも御尽力をいただき、中小企業にとって大変使い勝手の良いものとなった所得拡大促進税制など、今般の経済政策パッケージの内容について十分に周知をし、中小企業・小規模事業者を含め、幅広く賃上げが実現できる環境づくりに全力で取り組んでまいります。(拍手)
    ─────────────
○議長(山崎正昭君) 野田国義君。
   〔野田国義君登壇、拍手〕
○野田国義君 民主党・新緑風会の野田国義であります。
 七月の暑い暑い参議院選挙から、はや三か月がたちました。やっとやっと安倍総理の所信表明演説に対して質問の機会を得ました。野党の声は国民の声、安倍総理、逃げずに具体的に答えていただきたいと思います。
 まず冒頭に、台風二十六号、豪雨、竜巻でお亡くなりになりました方々に対しまして心から哀悼の意を表します。そして、被害に遭われた皆様方に心からお見舞いを申し上げたいと思います。
 まず最初にお聞きしたいのは、いわゆるアベノミクスの金融緩和政策と成長戦略であります。
 安倍総理は、景気回復の実感はまだ全国津々浦々まで波及していないという認識を示されましたが、景気回復の実感どころか、地元を回っておりますと、地域経済はますます疲弊しているのが実態であります。安倍総理の地元山口下関、そして麻生副総理の地元福岡県飯塚市も同様ではないでしょうか。
 私は、根本的に景気回復そのものがある種のマネーゲーム、バブルであると思います。実体経済は全く伴っていないのではないかと危惧いたしております。景気回復どころか、むしろ円安や原料価格の高騰によって生活必需品が値上げが相次ぎ、賃金は一向に上がらず、生活は一段と苦しくなっているというのが多くの国民の実感ではないでしょうか。株価が上がっても国民の大多数は何ら恩恵を受けることはありません。ましてや年金の支給額も増えるわけでもありません。
 安倍総理は、デフレ対策によって企業の収益が伸びれば、雇用が増え、賃金が上がり、家計は潤うと言いますが、果たしてそうでしょうか。かつて小泉政権時代も戦後最長の景気回復と言われましたが、企業の収益が上がった一方で、給与は下がり、地方はいつか景気回復の恩恵がやってくると期待し続けましたが、何の恩恵もありませんでした。むしろ、社会保障が切り下げられ、雇用は不安定化し、持てる者と持たざる者との格差が拡大しました。
 安倍総理の金融緩和政策が小泉政権当時とどう違うのか、またいつか来た道を繰り返すのではないかと思いますが、安倍総理は景気回復の実感が全国津々浦々にまで波及するのはいつぐらいとお考えになるのか、お答えいただきたいと思います。
 次に、成長戦略についてお伺いいたします。
 総理は、成長戦略において、法人税を減税し、それによって賃上げを実現したいと考えておられるようですが、私はこうした手法には疑問を抱いております。法人税を減税した分が企業の内部留保に回ることなく本当に賃上げに回るかという点もさることながら、法人税を納められない約七割の中小企業には何の恩恵もありません。円安によって大企業の収益は上がっているのかもしれませんが、原材料を輸入に頼らざるを得ない中、円安に加えて燃油の高騰などの影響もあり、むしろ厳しい状況に置かれております。
 格差のない社会をつくり上げていくために、アベノミクスの陰で苦しむ約四百二十万社の日本経済の担い手である各地域の中小企業に対して、政府はどのような仕組みや対策を具体的に構築しようとお考えか、総理並びに茂木経済産業大臣にお伺いをさせていただきます。
 次に、総理が成長戦略の柱と位置付ける国家戦略特区及び規制改革会議での雇用改革に関する提案について御質問申し上げます。
 安倍政権は、安倍政権発足後、企業にとって都合のいいような労働規制を緩和することに躍起になっております。
 六月の規制改革に関する答申では、限定正社員の雇用ルールを整備する方針を示しました。そのような見かけ正社員づくりが行われれば、工場や営業所等の閉鎖に伴って簡単に解雇されるようになってしまうことが危惧されます。
 また、安倍政権は、特区で解雇について特例を設けることを目指しており、他の地域よりも解雇されやすい解雇特区ができてしまうことが懸念されています。さらには、日雇派遣を復活させようとするなど、民主党政権時代の派遣労働に対する規制強化路線から規制緩和路線へと逆戻りしようとしております。
 このようなことが、成長戦略の柱である雇用の拡大に逆行すると思わざるを得ませんが、安倍総理並びに田村厚生労働大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
 私は、平成五年から四期十六年間、地方の市長を務めました。その経験から、総理の所信演説の中にもあった、地域の活性化に結び付く地域主権についてお尋ねしたいと思います。
 安倍政権は、地方交付税を四千億円削減、自治体職員の給与も削減となりました。地方自治体へ財源も権限も移譲することなく国から様々な仕事や要請を押し付け、その一方で地方交付税の削減を図ることは、地域の衰退を招くものであり、自治体の理解を到底得られるものではありません。
 地方自治体がサービスの行き届いた行政を行うことができるよう、あれもこれもできない時代、地方自治体にとって自由度が高く、地域の自主性を発揮できる地方自治体の財源確保についての総理の見解を求めます。
 次に、安倍総理の所信表明演説に対する質問とは離れますが、間近に迫った地域の大きな問題について質問させていただきます。それは、諫早湾干拓問題についてであります。
 既に、平成二十二年十二月の時点で諫早湾訴訟福岡高裁判決は確定しており、政府は、確定判決を履行しないという憲政史上初の不祥事を起こさないためにも、法的義務を誠実に履行し、二か月後の十二月二十一日の期限までに開門をしなければなりません。
 総理は、有明海の再生に向けてどのような方策及びロードマップを検討されておるのか、間近に迫った開門が現実的に可能なのか、御回答をいただきたいと思います。
 最後になりますが、自民党の参議院選挙の公約ではTPP断固反対でありました。安倍総理は、今年二月の日米首脳会談後の記者会見で、オバマ大統領との会談において、TPPでは聖域なき関税撤廃が前提でないことが明確になったと自慢、日本の主張が受け入れられた、聖域を勝ち取った旨の発言をされましたが、十月八日閉幕したTPP首脳会合の結果、聖域であったはずの農作物重要五品目のうち影響がない品目で関税撤廃の検討をすることになったと聞き及んでおります。
 また、総理は、オリンピック招致の最終プレゼンで、福島原発の汚染水は完全にブロック、コントロールされていると発言されました。その後、東電は汚染水が海に流れていると発表をしております。
 安倍総理はうそをついているという声を地元でも数多く耳にいたします。安倍総理は、道徳教育、人間学を重んじられております。私も全く同感であります。しかし、現実とは全く違う偽りを一国の総理、リーダーが発言なさることは、子供の教育上も決して許されることではありません。今こそ、国民の声、市井の声を聞き、アベノミクスが安倍のリスクとならないよう強く申し上げ、私の質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 野田国義議員にお答えをいたします。
 金融政策と景気回復の実感についてのお尋ねがありました。
 私の内閣では、これまで累次の経済対策によっても長年にわたるデフレから脱却できなかった経験を踏まえ、これまでと次元の異なる三本の矢を進めており、日本銀行は二%の物価安定目標の早期実現のため量的・質的金融緩和を導入しました。
 また、私の内閣では、企業収益の拡大が賃金の上昇や雇用の拡大につながり、消費の拡大や投資の増加を通じて更なる企業収益の拡大に結び付くという好循環の実現をしていくことが特に重要であると考えております。このため、経済の好循環に向けた共通認識の醸成を政労使間で図っております。
 昨日の政労使会議において、経済界から、企業収益の改善を雇用の創出と賃金の引上げなどにつなげていくことが重要である、あるいは、業績の改善を報酬の形で還元することを検討したい、そして、報酬に関しては、従来の定期昇給を中心とした賃金の対応を見直すことも含めて検討するなどといった心強い発言をいただいたところであります。
 引き続き、三本の矢を着実に進めるとともに、経済政策パッケージを果断に実行することで、全国津々浦々で額に汗して働く人々に経済成長の実感をできるだけ早くお届けしていきたいと考えております。
 中小企業政策についてお尋ねがありました。
 中小企業・小規模事業者の成長を支援することは、景気回復の動きを確かなものとするためにも重要であります。このため、小規模事業者に焦点を当てた施策の充実、設備投資の促進、個人保証制度の見直しなどに取り組んでまいります。これらの取組を通じ、アベノミクスの三本の矢の効果を地域の隅々まで波及させてまいります。
 雇用改革に関する議論についてお尋ねがありました。
 安倍内閣の基本方針は、成熟産業から成長産業に円滑に人材が移動する失業なき労働移動の実現であります。本日、検討方針が整理された国家戦略特区における雇用改革は、雇用条件の明確化などにより雇用拡大を目指すものであり、解雇特区などというレッテル張りは事実誤認であり、不適切であります。
 また、労働者派遣制度については、派遣労働者の保護や雇用の安定を図るとともに、労使双方にとって分かりやすい制度とする観点から、関係審議会で見直しの議論をお願いしているところです。
 今後とも、若者、女性を含め、頑張る人たちの雇用の拡大を目指してまいります。
 地方自治体の財源確保についてお尋ねがありました。
 地域自らの発想と創意工夫により魅力あふれる地域づくりを進めるためには、地方が自由に使える財源をしっかりと確保することが必要です。そのため、毎年度、地方財政計画において、地方の財政需要を適切に反映して必要な一般財源の総額の確保に努めており、今後とも、地方財政計画の策定を通じて地方の安定的な財政運営を確保してまいります。
 有明海の再生と諫早訴訟についてお尋ねがありました。
 有明海の再生については、有明海及び八代海等を再生するための特別措置法に基づき、再生に向けた基本方針を定め、有識者による有明海及び八代海等の再生に係る評価を行っており、引き続きこれらに基づいて有明海の再生に向けて各種対策を講じてまいります。
 諫早湾干拓堤防については、国は本年十二月までに開門すべき義務を負っており、開門しても被害が生じないよう、長崎県の地元関係者に対策の案を示しています。開門に向けて、地元の理解が得られるよう引き続き努力をしてまいります。
 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
   〔国務大臣茂木敏充君登壇、拍手〕
○国務大臣(茂木敏充君) 野田議員にお答えをいたします。
 中小企業政策について、特に、全国四百二十万の中小企業の約九割を占め景気回復の実感が行き渡っていない小規模事業者の振興を図るため、さきの通常国会で八本の関連法案を一括で改正した小規模企業活性化法に加え、小規模企業に関する基本法の制定を目指します。
 加えて、中小企業・小規模事業者に重点を置いた投資補助金、中小企業投資促進税制の拡充、延長や、個人保証制度の見直しに向けたガイドラインの策定等により、思い切った事業展開を行う中小企業・小規模事業者を支援してまいります。
 このような取組を通じて、アベノミクスの成果を全国津々浦々、地域経済を担う中小企業・小規模事業者まで行き届かせてまいりたいと考えております。(拍手)
   〔国務大臣田村憲久君登壇、拍手〕
○国務大臣(田村憲久君) 野田議員からは、雇用改革に関する議論についてのお尋ねをいただきました。
 産業構造の変化に対応した成熟産業から成長産業への労働移動については、失業なき労働移動の実現で対応する方針であります。
 国家戦略特区での雇用分野の取扱いについては、本日の日本経済再生本部で政府としての検討方針が整理をされました。具体的には、新規開業直後の企業や海外からの進出企業等にとって我が国の雇用ルールが分かりづらいという声にこたえるために、裁判例の分析、類型化による雇用ガイドラインを活用し、個別労働関係紛争の未然防止、そして予見可能性の向上を図るとともに、仮称でありますけれども、特区に雇用労働センターを設置し、雇用管理や労働契約事項についての相談、助言サービスを行うものであり、解雇を行いやすくするためのものではありません。
 また、労働者派遣制度については、派遣労働者の保護や雇用の安定を図るとともに、労使双方にとって分かりやすい制度とする観点から、派遣労働者の方々の待遇改善を含め、労働政策審議会において議論を行っております。
 今後とも、若者、女性を含め、頑張る人たちの雇用の拡大を目指し、雇用対策に取り組んでまいりたいと考えております。
 以上でございます。(拍手)
○議長(山崎正昭君) これにて質疑は終了いたしました。
     ─────・─────
○議長(山崎正昭君) この際、お諮りいたします。
 関口昌一君、藤井基之君及び前川清成君から裁判官弾劾裁判所裁判員を、松村祥史君、西田実仁君及び水野賢一君から同予備員を、岡田広君、小泉昭男君、野上浩太郎君、水岡俊一君及び荒木清寛君から裁判官訴追委員を、福岡資麿君、江口克彦君及び小野次郎君から同予備員を、それぞれ辞任いたしたいとの申出がございました。
 いずれも許可することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(山崎正昭君) 御異議ないと認めます。
 よって、いずれも許可することに決しました。
     ─────・─────
○議長(山崎正昭君) この際、
 裁判官弾劾裁判所裁判員、同予備員、
 裁判官訴追委員、同予備員、
 皇室会議予備議員、
 皇室経済会議予備議員、
 検察官適格審査会委員、同予備委員、
 日本ユネスコ国内委員会委員、
 国土審議会委員及び
 国土開発幹線自動車道建設会議委員の選挙
を行います。
 つきましては、これらの各種委員の選挙は、いずれもその手続を省略し、議長において指名することとし、また、裁判官弾劾裁判所裁判員予備員、裁判官訴追委員予備員、皇室会議予備議員及び皇室経済会議予備議員の職務を行う順序は、これを議長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(山崎正昭君) 御異議ないと認めます。
 よって、議長は、裁判官弾劾裁判所裁判員その他の各種委員を議席に配付いたしました氏名表のとおり指名し、職務を行う順序を決定いたします。
    ─────────────

    ─────────────
○議長(山崎正昭君) 本日はこれにて散会いたします。
   午後三時二分散会