第185回国会 法務委員会 第6号
平成二十五年十一月十九日(火曜日)
   午前十時一分開会
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   委員の異動
 十一月十五日
    辞任         補欠選任
     相原久美子君     江田 五月君
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  出席者は左のとおり。
    委員長         荒木 清寛君
    理 事
                吉田 博美君
                若林 健太君
                小川 敏夫君
                真山 勇一君
    委 員
                石井 準一君
                溝手 顕正君
                宮沢 洋一君
                柳本 卓治君
                山下 雄平君
                有田 芳生君
                江田 五月君
                前川 清成君
               佐々木さやか君
                仁比 聡平君
                谷  亮子君
                糸数 慶子君
   国務大臣
       法務大臣     谷垣 禎一君
   副大臣
       法務副大臣    奥野 信亮君
   大臣政務官
       法務大臣政務官  平口  洋君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        櫟原 利明君
   政府参考人
       内閣府大臣官房
       審議官      杵淵 智行君
       警察庁交通局長  倉田  潤君
       法務省刑事局長  稲田 伸夫君
       法務省矯正局長  西田  博君
       文部科学大臣官
       房審議官     永山 賀久君
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  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○自動車の運転により人を死傷させる行為等の処
 罰に関する法律案(第百八十三回国会内閣提出
 、第百八十五回国会衆議院送付)
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○委員長(荒木清寛君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 去る十五日、相原久美子さんが委員を辞任され、その補欠として江田五月君が選任されました。
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○委員長(荒木清寛君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律案の審査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、法務省刑事局長稲田伸夫君外四名を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(荒木清寛君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
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○委員長(荒木清寛君) 自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律案を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○山下雄平君 自由民主党の山下雄平です。
 自動車による痛ましい事故が依然として後を絶ちません。私も、かつて新聞記者として事故が起こった直後の現場に行ったこともあります。政府として様々な施策を講じて事故を減らしていかなければならない、なくしていかなければならないと思います。今回の法案の意義を改めて谷垣大臣にお伺いしたいと思います。
○国務大臣(谷垣禎一君) 例えば交通事故で亡くなる方の数は、いろんな施策を通じてだんだん抑えられてきていることは事実なんですが、しかし依然として、酒を飲んで酔っ払って運転するとか、あるいは無免許で暴走するとか、悪質、危険な運転行為というのがやっぱりなくなっていくわけにはいかない。やっぱり少なからずは起きているわけですね。
 それで、こういう悪質、危険な運転行為であっても、今まで刑法に規定されておりました危険運転致死傷罪では該当しないと、自動車運転過失致死傷罪が適用されたというような事件がございまして、それを機に罰則の見直しを求める意見が出てきたということがございました。
 今度の法律案は、こういう状況を踏まえまして罰則の整備を行っていこうということでございますが、これにより、まずは自動車運転による死傷事犯の実態に即した対処をすることが可能となっていくのではないかと、このように考えております。
○山下雄平君 私がかつて新聞記者をしておったときも、毎日のように死傷事故の警察発表を目にしてまいりました。また、御不幸にも事故に遭われた家族の方が、何とかもっと厳罰化にならないものだろうかという訴えの声も聞いてまいりました。御家族を亡くされた方々の気持ちを考えると、今回の法案が十分だ、十分に抑止効果があるんだ、一〇〇%の法案だと胸を張って言えるかどうかというのは、立法府に身を置く者としても非常に悩むところではあります。
 しかし一方で、法体系上、ほかの犯罪の法定刑と比較していろいろバランスの問題もあると思います。ただひたすら、どんどんどんどん厳罰化するだけが必要だというわけにもいかないことも十分承知しております。
 重大な事故を起こした者にどのぐらいの罰を科すことが適正なのか、これは非常に難しい問題ではあると思います。今回の法案の法定刑が適正だと、これが妥当なのだという根拠というものを法務省にお伺いしたいと思います。
○政府参考人(稲田伸夫君) 現行法では、自動車運転による死傷事犯は危険運転致死傷罪か、あるいは自動車運転過失致死傷罪で処罰されることとなります。このうち、危険運転致死傷罪は致死の場合が一年以上二十年以下、致傷は十五年以下のそれぞれ懲役、自動車運転過失致死傷罪は七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金が適用されておるところでございます。
 今回の法整備は、先ほど大臣から御答弁がございましたように、飲酒運転や無免許運転などの悪質、危険な運転による死傷事犯であって、現行の危険運転致死傷罪に該当しないものがあったということを契機として、罰則の見直しを求める御意見が見られるようになったことが背景にあるところでございまして、そこで、傷害あるいは傷害致死に準じる危険運転致死傷罪の法定刑や自動車運転過失致死傷罪の法定刑そのものは引き上げることなく維持しつつ、自動車運転過失致死傷罪という過失犯の評価あるいは法定刑で臨むのでは不十分な悪質、危険なものを類型化して、自動車運転過失致死傷罪よりも重い法定刑を設けることとしたものでございます。
 それぞれの法定刑を定めるに当たりましては、他の罪の法定刑とのバランスでございますとか、多くの場合、道路交通法違反の罪と併合罪となることから、この併合罪加重した場合の処断刑とのバランスを踏まえるなどしたものでございまして、事案の実態に応じた処罰を可能にするという点で今回の法律案の法定刑は適正、妥当なものと考えているところでございます。
○山下雄平君 先週の当委員会での参考人質疑では貴重な御意見をお伺いすることができました。その中で、京都の亀岡の事故でお子さんを亡くされた小谷さんが、この法案に対してこうおっしゃいました。僕たちの声が法案に届いたとは思っていない、納得も理解もできないとおっしゃいました。そして、無免許運転に関して更なる厳罰化を訴えられました。
 一方で、無免許運転を危険運転致死傷罪の対象に加えることに関しては、無免許運転が事故の直接的な原因じゃない場合もあるという意見もあります。無免許運転に関して、危険運転致死傷罪の対象ではなく加重した法定刑とする理由に関してお伺いしたいと思います。
○政府参考人(稲田伸夫君) 現行の危険運転致死傷罪は、暴行に準じるような特に危険な運転を故意に行い、その結果人を死傷させた者を傷害罪、傷害致死罪に準じて処罰するものとして立法されたという経緯がございます。
 この無免許運転の取扱いにつきましては、立案に先立って御審議いただきました法制審議会におきましても議論となったところではございますが、無免許運転そのものが暴行に準じるような危険性を類型的に有するとまでは言えないこと、人の死傷という結果との関係で、無免許であるがゆえに人が死傷するという直接的な因果関係が存しないことから、危険運転致死傷罪の対象とはしないこととされたところではございます。
 無免許運転を危険運転致死傷罪の対象とするかにつきましては、危険運転致死傷罪の立法経緯などを踏まえ、なお引き続き検討すべき課題であり、そこで、今回の法律案では、無免許運転中に人を死傷させた事案について、事案の実態に即して処罰できるようにするため刑の加重規定を新設し、無免許であることと人の死傷との原因、因果関係の有無を問わず、従来より重く処罰できるようにすることで対応することとしたものでございます。
○山下雄平君 さらに、今回の委員会でなかなか出てこなかった点なんですけれども、人を死傷させる事故というのは自動車には限りません。むしろ、例えば飛行機だったり鉄道といった事故の方がより多くの人を巻き込む可能性があります。福知山線の事故を始め、鉄道でも悲惨な事故がたくさんありました。飛行機事故も我が国でも経験してまいりました。
 しかし、例えば居眠りをする列車の運転手だったり、コックピットの中で記念撮影をされたパイロット、いろんな不祥事もありました。飛行機や鉄道の運転をされる方にも厳しく自覚を持っていただかなければならないと思います。
 鉄道や飛行機で事故を起こした場合の運転手の法定刑というのは現行法でどういうふうになっていますでしょうか。
○政府参考人(稲田伸夫君) 鉄道や飛行機の操縦による死傷についてでございますが、現在、御審議いただいております危険運転致死傷罪は自動車の運転について定めたものでございますので、この危険運転致死傷罪は鉄道や飛行機の操縦による死傷については適用されません。
 事実関係や証拠関係にもよりますが、通常、業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させたときということに当たりますると、刑法第二百十一条第一項の業務上過失致死傷罪が成立し得るところでございまして、その法定刑は五年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金とされているところでございます。
○山下雄平君 自動車を運転して人を死傷させた場合と鉄道や飛行機の中で大分差があると思います。
 より多くの人を巻き込む可能性のある飛行機や鉄道の方が法定刑が軽くなっているという理由はどこにあるんでしょうか。
○政府参考人(稲田伸夫君) 現行の刑法は、平成十九年の改正によりまして自動車運転の過失致死傷罪というものが設けられました。それ以前は自動車運転による交通事故も通常は業務上過失致死傷罪で処断されていたわけでございます。
 それが、平成十九年の改正によりまして自動車運転過失致死傷罪が成立いたしまして、この自動車運転過失致死傷罪の法定刑は七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金とされておりまして、一般の業務上過失致死傷罪、平成十九年以前は自動車の運転についても適用されておったものでございますが、これにつきまして、これの法定刑は五年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金とされておりまして、自動車運転の方が重い法定刑とされているところでございます。
 これにつきましては、次のような点が考慮されているところでございます。すなわち、鉄道や航空などの公共交通機関につきましては、自動車と異なりまして、運転者等の個人の注意力に依存して事故防止を図るのではなく、機械化、組織化された安全確保システムの整備などによって事故防止を図っているところでございます。一方で、自動車運転による過失致死傷事犯は、その発生を防止するためには基本的に運転者個人の注意力に依存するところが大きく、自動車の運転者にはそのほかの業務上過失致死傷罪の業務者よりも特に重い注意義務が課されているということができることにあるというふうにされておりまして、そのことによりまして平成十九年に自動車運転過失致死傷罪が設けられるようになったというふうに承知しているところでございます。
○山下雄平君 飛行機や鉄道は、管制だったりATSだったり、組織としてシステムとして安全を確保しているということで、自動車の場合はやはり個人に帰すところが大きいということで法定刑が重くなっているという話だったと思うんですけれども。
 それでは、船舶の場合はどうでしょうか、特に小型船舶。私、実は一級小型船舶の免許を持っておりますけれども、海に出るとやはりかじを握っている人に事故防止の責任が非常に重いと思いますし、事故が起こった場合というのは往々にして船長に責任があることが多いと思います。
 法定刑は、現在、船舶に関してはどうなっていますでしょうか。
○政府参考人(稲田伸夫君) 先ほども御答弁申し上げましたように、危険運転致死傷罪は自動車の運転について適用される罪として定められているところでございまして、船舶の操縦による死傷につきましてはこの危険運転致死傷罪は適用されません。
 先ほども申し上げましたように、事実関係や証拠関係にもよるところはありますが、船舶の事故によって人を死傷させた場合につきましては、業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させたと認められれば、刑法第二百十一条第一項の業務上過失致死傷罪が成立し得るところでございまして、この法定刑は、先ほど申し上げましたように、五年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金とされているところでございます。
○山下雄平君 同じように個人に帰すところが大きい船舶と自動車で法定刑に差がある。つまり、自動車の方が法定刑が重いという理由はどこにあるんでしょうか。
○政府参考人(稲田伸夫君) 先ほども御答弁申し上げましたように、平成十九年の刑法改正より前は、自動車運転による過失致死傷事犯も、これは危険運転致死傷罪に該当しないものということでございますが、これにつきましても業務上過失致死傷罪、五年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金が適用されるものでございますが、この罪が適用されていたところでございます。
 しかし、その改正当時までに、すなわち平成十九年当時までに、飲酒運転などの悪質かつ危険な自動車運転による死傷事犯における量刑や法定刑が国民の規範意識に合致していないとして、罰則の強化をこの分野について求める意見が多く見られたこと、それから、業務上過失致死傷罪として処断されるもののうち、自動車運転によるもののみが法定刑でありますとか処断刑の上限近くで量刑される事案が増加していたという実態がございましたことから、事案の実態に即した適正な科刑を行うために、平成十九年に刑法を改正して自動車運転過失致死傷罪を創設し、自動車運転上の過失による死傷事故に限って重い法定刑、これも先ほども申し上げました七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金を定めることとされたところでございます。
 他方で、御指摘の船舶による死傷事犯についてでございますが、このような事情、先ほど申し上げましたような飲酒運転などの悪質かつ危険な運転でありますとか、法定刑の面で見て、刑の分布の状況等で見て法定刑や処断刑の上限近くで量刑される事案が増えているというような事情が認められなかったということから、平成十九年の際には自動車運転についてのみ自動車運転過失致死傷罪という構成要件が設けられたというところでございまして、そういう意味で、当時の考え方として、その法定刑の在り方には整合性があるものと考えていたというふうに承知しているところでございます。
○山下雄平君 法定刑の差はあるにしろ、自動車や船舶、いろんな乗り物で厳罰を科すというのは、やはり重大な事故を犯した方に因果応報、その罪を背負ってもらわなければならないと、そういった点に加えて、厳しい罰則があるということで運転される方に自覚を持ってもらって将来の事故を未然に防がなければならないという目的があるんだと思います。事故に遭われた方の家族の方が厳罰化を訴えられるのも、二度とこういった事故を起こしていただきたくないと、そういう思いから訴えられているんだと思います。
 一方で、罰則だけで、厳しく処罰するだけで事故が全くなくなるとは思いません。免許をどういった方に交付するのか、悪質なドライバーをどうやって取り締まるのか、道路や歩道、そういった道路の整備についてどうやっていくのか、包括的に政府として取り組まなければならないと思います。
 政府としても交通安全基本計画を作って様々取り組まれていると思いますけれども、その概要について内閣府にお伺いしたいと思います。
○政府参考人(杵淵智行君) お答えいたします。
 近年、交通事故による死者数、負傷者数は減少傾向にございますが、依然として多くの方が被害に遭われているなど、交通安全の確保は引き続き我が国において重要な課題と認識しております。
 政府におきましては、交通事故のない社会を目指して、現在、第九次交通安全基本計画に基づきまして、道路交通の安全につきましては、交通安全施設の整備等の道路交通環境の整備、交通安全思想の普及徹底、安全運転管理の推進等の安全運転の確保、車両の安全性に関する基準の改善等の車両の安全性の確保、交通の指導取締りの強化等の道路交通秩序の維持などの施策を掲げ、国、地方公共団体、関係民間団体等と連携して推進しているところでございます。
 今後とも、交通事故のない安全で安心な社会の実現に取り組んでまいります。
○山下雄平君 交通安全基本計画を踏まえて、谷垣大臣としてはどのように交通事故のない社会の実現に向けて取り組まれようと考えていらっしゃるのでしょうか。
○国務大臣(谷垣禎一君) 私は、かつて国家公安委員長を拝命したこともございます。それから国土交通大臣も務めたことがございまして、どちらの役所も、いかにして交通事故を減らしていくか、警察はもちろん、道路交通の体系といいますか、そういうルールですね、そういうことで大きな影響がございますし、国土交通省はいかにして安全な道路環境をつくっていくかというのが大きな課題でございました。そして、この度、法務大臣としてこの法律の立案に携わることになったわけでございますが、少しでも交通事故が、自動車運転による交通事故が減少して、被害に遭われる方がなくなっていくということを何とかして達成したいという思いでおります。
 しかし、この問題は、今もちょっと申し上げたことでございますが、単に、じゃ、今度かなり悪質なものを従来よりも重く罰するというようなことがございますけれども、こういう罰則だけで本当に交通事故そしてその被害者、ゼロにすることができるかというと、そうではございません。今も内閣府の方から交通安全基本計画について御答弁がございましたけれども、やはり総合力でいろんな施策を総合的に講じていかなければならないんだろうと思っております。ですから、行政、それぞれの国家機関ですね、あるいは地方自治団体、さらには民間の方々との協力の下に、きちっとした安全な道路交通の仕組みをつくっていく必要があるんだろうと思っております。
 それで、その上で、今回の法律案でございますけれども、これだけで、今申し上げたように、全てができるわけではございません。しかし、今回の法律で、悪質、危険な運転行為に対して自覚を促すと、そして抑止する効果というのは、これは期待できるのではないかと思っております。しかし、これは、ですから、きちっと御理解を得て、適切な今後この法律の運用を図っていきたいと考えておりますが、同時に、大きなそういう交通安全基本計画の中で法務省も果たせる役割を果たしていかなければいけないと、このように考えております。
○山下雄平君 行政府としても立法府としても交通事故のない社会をつくっていかなければなりません。しかし、毎日、新聞の社会面を開くと、残念ながら交通事故の記事が載っております。なくしていかなければなりませんけれども、不幸にも今後も交通事故が起こる可能性は依然として残っております。また、尊い命を亡くされて今現在でも涙を流されている御家族の方もいらっしゃいます。政治や行政はそうした方たちの気持ちに寄り添っていかなければならないとも思います。
 法務省としては、こうした交通事故の被害に遭われた家族への支援についてどのように考えていますでしょうか。
○政府参考人(稲田伸夫君) 犯罪被害者の方あるいはその御遺族の方の保護、支援につきましては、法務省といたしましても極めて重要な課題であるというふうに考えておりますし、平成十七年に最初に策定されました犯罪被害者等基本計画、さらに平成二十三年には第二次犯罪被害者等基本計画が策定されているところでございます。これに基づきまして、関係機関や団体などとも一体となって犯罪被害者等の保護、支援に関する諸施策を推進してきているわけでございまして、これを更に進めていく必要があると承知しているところでございます。
 法務省といたしましても、このような保護、支援を推進していくことに努めているところでございまして、これまでにも、立法関係で申し上げますと、平成十二年には、刑事手続において被害者などの心身の負担軽減を図りつつ保護、支援する制度、これは、例えば法廷におけます遮蔽でありますとかビデオリンクの利用などでございます。さらに、平成十九年には、犯罪被害者等が刑事裁判手続に直接関与することができる被害者参加制度が創設されるというような法整備を行ってきたところでございます。また、さきの通常国会におきましては、被害者参加人に対しまして、その旅費などを支給する制度を創設する法案を成立させていただいたところでございます。
 この制度につきましては、来月一日からこれを施行するということでおおむね準備を整えてきたところでございまして、いずれにいたしましても、このような制度をしっかり活用しつつ、引き続き犯罪被害者等の保護、支援のための取組を進めていきたいと考えております。
○山下雄平君 私は、交通事故をなくしていくためにも今回の法案は必要だと考えております。
 こうした法整備に加えて私が必要だと思うのは、運転を不安に感じていらっしゃる方、自分は運転すべきじゃないと思っていらっしゃる方が運転せざるを得ない状況に追い込まれることがないような社会をつくっていくことが必要だと思っております。現在、交通弱者の方が非常に困っていらっしゃる。路線バスがなくなり、過疎地や地方ではもう自家用車しか移動の手段がないというところもたくさんあると思いますし、今後も増えていく可能性があると思います。政府としてそうした交通弱者の対策をすることも、交通事故を減らしていく重要な施策だと感じております。
 政府にそうした施策に取り組むことをお願いし、そして、私も立法府に身を置く者としてそういった社会の実現に努力することをお誓いし、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
 ありがとうございます。
○小川敏夫君 民主党の小川敏夫です。
 今日は、初めに、第四条について質問させていただきます。
 この第四条の趣旨は、私なりに理解しますと、飲酒運転をして事故を起こしたという者が、飲酒をしているというと刑が大変重くなる、だから飲酒ということを証明できないようにしてしまおうと思って事故の後に殊更お酒を飲んでしまう、そうすると、飲酒検査をしたときに出たアルコールが事故を起こした時点で体に入っていたアルコールなのか、それとも事故を起こした後に飲んだアルコールの影響なのか判定できない、したがって、そのことによって事故時に飲酒あるいは飲酒の影響が生じていたということが証明できないので結局その罪責を免れるということが許されてはいけないから、そういうことを禁止するということで厳罰に処する規定だと、このように理解して、その理解の上で質問をしていきたいんですが、まず、私の今述べたこの四条の趣旨の点は、これはそういうことでよろしいんでしょうか。念のため御説明ください。
○政府参考人(稲田伸夫君) 第四条を規定することといたしました目的ということでございますけれども、アルコール又は薬物の影響によりまして正常な運転が困難な状態で自動車を走行させて人を死傷させた者には現行の危険運転致死傷罪、先ほど申し上げましたが、死亡の場合は一年以上二十年以下の懲役が適用されるわけでございます。ただ、犯人が逃走するなどした場合、先ほど委員御指摘がございましたように、そのようにした場合はアルコール等による影響の程度が立証できないことがございます。そうした場合には、結果、自動車運転過失致死傷罪と道路交通法の救護義務違反の罪の併合罪、これは処断刑として科し得る刑の上限が懲役十五年ということになりますが、これを適用せざるを得ないこととなります。
 このように、危険運転致死傷罪はアルコールなどの影響により正常な運転が困難な状態にあったことを要件としているところ、その重い処罰を免れるため、人を死傷させた後に道路交通法の救護義務違反の罪を犯してでもその場を立ち去るなどしてアルコールなどの影響が発覚することを免れようとする状況が生じ得ることから、本法律案では、アルコールなどの影響により正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転し、必要な注意を怠って人を死傷させた上、運転時のアルコールなどの影響が発覚することを免れるべき行為をした者に対する罰則を設けることとしたというものでございます。
○小川敏夫君 私が説明した理解と同じだと思うんですが。
 第四条をしかし読みまして、この第四条で言わば処罰される人は前提条件がありまして、条文を読みますと、アルコール又は薬物の影響によりその走行中に正常な運転に支障が生ずるおそれがある状態で自動車を運転した者がというのが、これは要件でございます。すなわち、この第四条に該当する、処罰するためには、その運転者が事故時にアルコール等によって走行中に正常な運転に支障が生ずるおそれがある状態ということを証明しなくちゃいけないわけですね。
 そうすると、そういう状態であることを証明しなくちゃいけないんだったら、逆に言えば、そういう状態であることが証明されるんなら第三条の罪等はこれ成立するので、別に罪を免れたことにはならないと思うんですが。これ、どうなっているんでしょうか。
○政府参考人(稲田伸夫君) まず、今御指摘の点は、アルコールが一定程度、運転に支障を生じ得る程度にアルコールを摂取しているということが立証できなければこの四条の罪はそもそも成立しないのではないかということでございまして、それは全くそのとおりでございまして、ただ、問題はその後のところにございまして、例えば、新たに創設する三条一項が成立するためには、支障を生じる状態で運転を開始し、そして、その結果として正常な運転が困難な状態に陥ったということも要件とされております。
 その部分については、前回も御答弁申し上げましたように、本人の故意として認識する必要はございませんけれども、客観状況としてその部分が立証されなければなりません。そういう意味においては、そこの立証が困難になるという問題がございます。
 それから、元々当時どの程度飲酒していたのか、すなわち飲酒から間がたてばたつほど本来のアルコールの摂取の状況が立証が難しくなるわけでございまして、本来であれば二条の危険運転致死傷罪が立証できる場合もあるわけでございますので、そういう両方の面から考えまして、このような逃げ得を許してはいけないという場合は当然生じ得るものというふうに考えております。
○小川敏夫君 だから、逃げ得を許しちゃいけないという趣旨だということは分かるんですけれども、要するに、逃げ得を許しちゃいけないというけど、この法律の要件は、しかし、この第四条を適用するには、事故時の段階でアルコール等の影響で正常な運転に支障が生ずるおそれがある状態であることを証明しなくちゃいけない、すなわち事故以前にそれだけのお酒を飲んでいたということを立証しなくちゃいけないわけです。
 それが立証できるということは、事故の後に、何だろう、大酒とでもいうのかな、殊更酒を飲んだといっても、そのお酒じゃなくて、事故以前に飲んだお酒によって既にそうしたアルコールの影響下にある状況というものが証明できなくちゃいけないわけで、そうすると、この四条というのは、四条が証明できるんなら特別逃げ得には当たらないんじゃないかなと。逃げ得しようとしたけど、結局、しかし事故前にお酒を飲んでいたことは証明されちゃうわけだから、あんまり逃げ得にはならないかと思うんですが、実際に実効性なんかどうなんでしょう。
○政府参考人(稲田伸夫君) 先ほども御答弁申し上げましたように、アルコールの影響により正常な運転に支障が生じるおそれがある状態と、アルコールの影響により正常な運転が困難な状態とでは違うわけでございまして、その違いが、立証する方法として、一つは、アルコールを体内でどの程度保有している状態だったのかということはやっぱり客観状況として非常に大きなものがあるというふうに思います。その部分について立証できれば、すなわち正常な運転が困難な状態にある状態だったということが立証できればというか、運転時においてはそのことが認定できなければ三条一項も立証できないわけでございますので、その意味においては、この部分について客観証拠の収集という観点から、逃げ得を許してはいけないということは明らかに存在するのではないかというふうに思っております。
○小川敏夫君 まず、その走行中に正常な運転に支障が生ずるおそれがある状態というのと、正常な運転が困難な状態というのがあるわけです。第二条の一号とか第三条のこの陥ったところの部分ですね。まず、支障が生ずるおそれがある状態というのと正常な運転が困難な状態というのとの違いは、ではどういうふうにあるわけですか。
○政府参考人(稲田伸夫君) 正常な運転が困難な状態というのは、前回から御答弁申し上げておりますように、道路及び交通の状況などに応じた運転操作を行うことが困難な心身の状態をいうと考えておりまして、例えば酒酔いの影響により前方の注視が困難であるとか、ハンドル、ブレーキなどの操作の時期や加減についてこれを意図したとおりに行うことが困難であることなど、現実にこのような運転操作を行うことが困難な心身の状態であることをいうと考えております。
 他方で、正常な運転に支障が生じるおそれがある状態は、そこまでは至らないものの、自動車を運転するのに必要な注意力、判断能力、操作能力がそうではないときの状態と比べて相当程度減退している危険性のある状態にあることをいうというふうに考えておりまして、アルコールの影響による場合を例に取れば、酒気帯び運転罪に該当する程度のアルコールを身体に保有している状態にあれば、通常はこれに当たるものと考えております。
○小川敏夫君 何か言葉の説明としては言っている意味は分かるような気がしますが、しかし、現実にお酒を飲んだ酩酊度についてこれを判定するとなると、どこまで明確に区別できるかどうかよく分からないとは思うんですが。
 ちょっと別の聞き方をしますが、先ほど局長の答弁では、第四条の規定がなければ、こうした逃げ得ですか、後からお酒を飲んで責任を免れた逃げ得の場合には、救護義務違反と、何でしたっけ、何かで懲役十五年が限界だというお話でしたんですね。
○政府参考人(稲田伸夫君) 先ほど申し上げましたのは、救護義務違反と自動車運転過失致死傷罪が成立するというふうに考えております。
○小川敏夫君 それで、併合罪加重した刑の上限が十五年になるということですか。
○政府参考人(稲田伸夫君) 最も重い罪が救護義務違反の十年以下でございますので、併合罪加重する場合に一・五倍でございますので、十五年以下というふうに考えております。
○小川敏夫君 例えば第四条の場合、走行中に正常な運転に支障が生ずるおそれがある状態というと、そのことが立証されると、第三条で、正常な運転に支障が生ずるおそれがある状態で自動車を運転したという要件はこれは当然立証されているわけで、そうすると、違うところは、運転をしたときには正常な運転に支障が生ずるおそれがある状態ということだけれども、その後お酒の影響で正常な運転が困難な状態に陥ったと。
 これは要するに、先ほどの具体的な説明に当てはめますと、運転を始めたときは酒気帯び程度だった、しかし事故を起こしたときには大変に運転が不能な、困難な状態に陥ったと、こういうことが、当てはめるとそういうことになるんでしょうけれども。しかし、酒気帯び程度のお酒を飲んでいたという人が、運転中お酒を飲んだわけでもない、追加して飲んだわけでもないのに、事故時に急激にアルコールが増えるわけもないし、運転が困難な状態に陥るということはちょっと考えづらいんですが、そこのところはどうなんでしょう。
○政府参考人(稲田伸夫君) これも前回も御答弁申し上げた中にあろうかと思うんですけれども、一つは、客観的状態として正常な運転が困難な状態でそもそも運転を開始していたんだけれども、認識としては、本人の認識がそこまでなかった場合というのが一つあろうと思います。それともう一つは、今委員御指摘のありましたように、元々最初の段階としては正常な運転が困難とまでは言えない程度ではあったのかもしれないけれども、お酒の酔いが高進していって正常な運転が困難な状態に陥った場合もあり得ると思います。いずれにしても、そういうことは両方ともあり得るものと考えます。
 それと、逃げ得の観点では、先ほども御答弁申し上げましたけれども、確かに最初は正常な運転に支障がある状態で、その後困難な状態に陥ったという場合の立証の問題として、その正常な運転が困難な状態で事故を起こしたということの立証が難しくなるという問題もございますけれども、元々正常な運転が困難な状態でスタートしていたんだけれども、それで事故を起こしたんだけれども、逃げて一日も二日もたったので元々の運転の状態も立証できないということも、これはあり得るというふうに思っております。
○小川敏夫君 逃げ得は許さないと言うと、ああそうだ、逃げ得はけしからぬなと言うんだけど、どうも第四条を見ると、逃げ得にはならない人が処罰されるだけで、本当に逃げ得をしちゃった人は結局第四条では処罰できないから、余り有効な規定じゃないようにも思うんですが、私の感想ということで、そこまでにしますけれども。
 また第四条で、じゃ、別の質問を聞きます。
 要するに、事故を起こした後、更にアルコールを摂取するというのはよく分かります。要するに、事故の後アルコール飲んじまえば事故の前のアルコールかどうか分からなくなるだろうというんで、それは要件として分かるんですけれども、その後、別な要件で、その場を離れて身体に保有するアルコール又は薬物の濃度を減少させることとあるわけです。ただ、これ、何もしなくて寝ていたってアルコールは減少するんですよね。だから、そうすると、ここで言う懲役十二年を科すような行為というのは、このアルコールを減少させることということ、具体的にどういうことを要件とするんでしょうか。
○政府参考人(稲田伸夫君) まず、その場を離れて身体に保有するアルコール又は薬物の濃度を減少させることということにつきましては、具体的に申し上げますと、自動車の運転により人を死傷させた、すなわち事故現場から離れて、例えば比較的離れた場所にある自宅に逃げ帰りまして時間を経過させる、そして長い時間が経過したことによって身体に保有するアルコール濃度が減少し、結局のところ運転時のアルコールの影響が捜査機関に発覚しないようにするという行為がこれに当たるものというふうに考えております。
 それで、今、十二年に当たるような行為というふうなお話がございましたけれども、これは条文でお分かりいただけますように、アルコールの影響で運転に支障が生じる状態で運転をしたというまず行為がございます。さらに、その結果として自動車の事故を起こしたという状態があり、その上で一定の証拠隠滅行為に当たるような、今申し上げました、その場を離れて身体に保有するアルコール又は薬物の濃度を減少させる行為を行ったと、その三つの行為の複合した構成要件として定めているものでございまして、そういう意味で十二年以下の法定刑に該当するものと考えております。
○小川敏夫君 いや、自分のアルコールをごまかそうとして後からお酒を飲んじゃうことは一つの行為として分かりやすいんですけれども。
 じゃ、アルコールを減少させる行為と言うけれども、同じことを言うけれども、何もしなくたってアルコールは減るんですよね、時間がたてば。そうすると、ただ逃げているだけ、捕まるのが嫌だから逃げているだけだって、当然、半日や一日二日逃げていればアルコールは減少する、あるいは体から抜けてしまうわけで、そうすると、逃げているだけでこの第四条に該当してしまうということになると、これは、殊更罪を免れようとした、後から酒を飲むような行為と同視できないような行為、ただ逃げた、逃げるのはけしからぬかもしれないけれども、逃げたというだけで第四条に該当するということになると、これは構成要件の在り方として少し重過ぎる、あるいは不用意ではないかとも感じるんですが、どうでしょう。
○政府参考人(稲田伸夫君) この条文は、御覧のとおりでございまして、運転のときのアルコール又は薬物の影響の有無又は程度が発覚することを免れるという主観的な目的をまず要件としてかぶせた上で、今御指摘のあるような、一定の期間現場を離れてアルコールの影響を発覚することを免れさせる行為を行ったということを構成要件としております。
 確かに、追い飲みをする行為のような具体的な、明白な作為の場合とは異なりますけれども、このような、場所を離れて結局のところアルコール検知等の客観的な証拠の収集を困難ならしめるということは、その限りにおいて必要な証拠の収集を困難にし、実質的に証拠の隠滅を図っているという意味において同程度の悪質さを持っているものと評価され得るものと考えております。
○小川敏夫君 まあ同じことのやり取りしてもしようがありませんが、刑法は、故意だって、故意にもいろいろあって、積極的な故意もあるけれども未必の故意もあるし、何となく、逃げるのが本心で、しかし逃げていればだんだん酔いもさめてくるななんて認識していればそれで故意になっちゃうのかどうかですね、ああ責任が軽くなるななんて思っちゃうのかどうか。
 元々逃げるというのは、全ての犯罪において、捕まりたくないし、刑事責任を逃れたいから逃げるんであって、何もこの事件だけが逃げることがけしからぬということないんで、全ての犯罪において逃げることはけしからぬわけですから。ただ、この第四条だけ、何か逃げることでもう、逃げていれば時間がたってアルコールが減るからといって処罰だ、しかも懲役十二年というのは、この構成要件に照らして、逃げるという行為に着目すると余りにも厳罰過ぎるんじゃないかというふうに思います。また同じ答弁していただいても時間が無駄ですので、指摘するにとどめますけれども。
 また別の観点からお尋ねしますけれども、この第四条で、これは、こうした状態にある者が事故を起こしたということで、一つの身分犯になるわけですよね。それで、一つの例として、では、この行為者を助けることをした共犯者、すなわち、追い酒なら、事情を聞いて、ああ、そんなお酒飲んで事故を起こしてきたのか、大変だと、じゃ少なくとも飲酒だけは免れさせようと思って、さあこれから酒盛りやろうといってどんどんお酒飲ませちゃったというような人間がいた、まあ共犯ですね。この共犯者の処罰についてはどうなるんでしょうか。
○政府参考人(稲田伸夫君) 今の設例は、一定の犯罪行為が既に始まってしまっている、先ほども御説明しましたように、アルコールの影響によって運転に支障を生じる状態で車を運転して、業務上必要な注意を怠って死傷させたというその後で例えばアルコールの追い飲みに参加したと、こういう設例だろうと思います。
 これ、法制審議会で御議論いただきました際にも、この点についてはどうなるんだろうかという議論がございました。基本的にはやはり刑法の総則で言う共犯の中の承継的共同正犯をどの範囲で認めるかということについての議論とかなり連携してくるところがございまして、法制審議会の部会では刑法の先生方にも多数参加していただいておりまして、その中で御議論いただいたわけでございますが、最高裁の従来の承継的共同正犯の考え方についてはいろいろな学説もあるところではございますが、おおむね学者の先生方が一致したところは、やはりこのような構成要件の中で、後から追い飲み等に参加したというかそこで加功した共犯の方について、この四条の罪自体についての共犯の責めを負うのは困難であろうというところで意見が一致したところというふうに承知しております。
○小川敏夫君 それは共同正犯あるいは幇助、教唆も含めての話ですか。
○政府参考人(稲田伸夫君) そのとおりというふうに理解をいたしております。
○小川敏夫君 第四条、確かに、この事故を起こした者に限らず、飲酒運転もそう。この発覚を免れるために追い酒を飲むなんということが、何かそんなことをした人がいるなんということを報道で見たこともあります、大変けしからぬと思うんだけど。実際、どのくらいそういうケースがあるのか。
 今日は警察庁にもお越しいただいていますけれども、実際に飲酒運転あるいは飲酒運転の影響により事故を起こした者がかかる行為によって、特に逃げたというのは別にしまして、いわゆる追い飲みというんですか、によって自分のその飲酒の責任を免れようとしたということが実際はどのくらいの件数で発生しているのか、ちょっと警察庁の方から教えていただきたいんですが。
○政府参考人(倉田潤君) お答えいたします。
 今おっしゃられたようないわゆる逃げ得となるような事件の件数の把握というのはございません。
○小川敏夫君 把握していない。それはあれですか、余り件数的には多くないということなんですか。それすら分からないということなんでしょうか。
○政府参考人(倉田潤君) お答えいたします。
 警察庁として、そうした統計を取っておりませんので、いかほどの件数であるかということについて、ちょっとお答えすることができないということでございます。
○小川敏夫君 じゃ、法務省の方はどうですか。例えば、警察から送致を受けた事件について、こうした追い飲み行為があったことによって飲酒、酩酊の事実が証明できないということで、その点についての起訴ができなかったというような事例はこれは多いのでしょうか、あるいは、件数的に分かるんでしょうか。
○政府参考人(稲田伸夫君) いわゆる逃げ得となるような事件の発生件数でございますとか、起訴件数等について網羅的に把握しているわけではございません。
 そういう意味では、非常に少ないサンプリング調査なのでございますが、今回の立案の過程で危険運転致死傷罪と自動車運転過失致死傷罪のそれぞれ比較的問題になるような事例を、判決書きを取り寄せて調査をさせていただきました。全体では八十九例ということでございますのでさほど多くはございませんが、道路交通法の救護義務違反も合わせて有罪となった事例が二十六件ございます。
 その判決書きの量刑の理由におきまして、いわゆるひき逃げをした動機について言及されている事例が十二例ございました。その内訳を見ますと、例えば、飲酒運転の発覚を免れるために逃走したということを指摘したものが三例、それから恐怖のために逃走したことを指摘したものが三例でございます。このほかにも、無免許運転の発覚を免れるために逃走したことを指摘したものや、職を失わないようにする、刑務所で服役しないようにするために逃走したことを指摘したものなどがございました。
 全体として申し上げましても、件数は少ないということと、救護義務違反が成立していないと、なかなかその辺の事情について具体的に記載していないところもございますので、ちょっとこれ以上のところまでは承知しかねているという状況でございます。
○小川敏夫君 先日の委員会で谷委員が指摘しておりましたけれども、刑法の体系の中で、犯罪を犯した人間が自分の罪責を免れようとする行為は、そういう行為をしないことが期待できないということで不可罰だというのが原則なわけです。
 しかし、この第四条も、自分の言わばそうした一つの事故ですか、これは広い意味で犯罪行為、この責任を免れるために、その罪責を免れるために行った行為について、これについては科罰すると、刑で罰するということで、これまでの刑法体系にはない類型の犯罪の形態を取っているわけですけれども。
 例えば、刑法の中で殺人というのが一番重い典型的な犯罪だと思いますけれども、この殺害行為を行った者が、例えば首を絞めた後、その遺体を引きずって手拭いか何かでドアのノブに引っかけて自殺したかのように装うという行為をやったって、これは不可罰ですよね。あるいは、もっとたちが悪ければ、隣の人間を犯人に仕立ててやろうと思って、その凶器を隣の家の中にほうり込んで、ちょっと犯人らしい人間が隣の家に逃げたよなんてうそのことを言ったって、その犯人そのものは不可罰なわけですね。これはそういうことでよろしいですか。
○政府参考人(稲田伸夫君) ただいまの御質問は、刑法の証拠隠滅罪の成否の問題だろうと思います。
 確かに、御指摘のように、刑法におきましては、自己の刑事事件に関する証拠の隠滅については刑法百四条は成立しないというふうにされているところでございます。
○小川敏夫君 ですから、大変悪質なこうした事故も、飲酒運転、大変悪質で、あってはならないんですけれども、やはり人を殺すという殺人行為のような大変凶悪な犯行においても、犯人が自分の責任を免れようと思っていろいろやっても、それは不可罰だと。しかし、この第四条、この類型に関してだけは懲役十二年だというこのバランスですね。
 刑法の体系を崩すというだけでなくて、もっと凶悪犯罪がもっとあくどい手口で自分の責任を免れようとしたというところで不可罰と。これについては、追い飲みすれば十二年、追い飲みだけじゃなくてただ逃げていただけで、アルコールがなくなるなということを希望しながら逃げていただけで懲役十二年というのは刑のバランスの在り方として大変奇異に感じるんですが、どうでしょう。
○政府参考人(稲田伸夫君) まず第一の点といたしまして、確かに、先ほども御答弁いたしましたように、刑法におきましては自己の刑事事件に関する証拠の隠滅は処罰の対象とされておりませんが、これは一般にいわゆる期待可能性が欠如していることを考慮したことによると考えられているところでございまして、これはもう前回も御答弁申し上げましたけれども、それでは他人に自己の刑事事件に関する証拠の隠滅等を教唆した場合はいかがかとなりますと、これにつきましては証拠隠滅等の教唆罪の成立を肯定するというのが判例でございまして、そのような場合には定型的に期待可能性がないからだというふうに学説では言われているところでございます。
 したがいまして、自己の刑事事件に関する証拠の隠滅行為でありましても一定の場合にはやはりこのように期待可能性がある場合があり、これを処罰の対象とすることも可能と考えられるという一要素がございますし、さらに、道路交通法が規律する交通事故が発生したという状況の下では車両等の運転者等は救護や報告等を行わなければならないと、これを怠ることは刑事罰によって処罰されるということで義務付けられているということでございまして、しかもこのこと自体は広く国民一般の常識になっているというふうに考えられます。したがいまして、そのような非常に厳しく報告、救護を行うべきとされている場面において、自己の刑事事件に関する証拠の隠滅行為を行わないようにすることについての期待可能性は十分あるものというふうに考えております。
 さらに、法定刑についてでございますけれども、これも先ほども申し上げましたが、本罪自体は、単に証拠を隠滅したことのみではなく、酒気帯び運転罪、自動車運転過失致死傷罪、証拠隠滅罪の言わば複合形態の罪でございまして、そういう意味では、十二年以下というのはこれらの罪の法定刑の合算を超えない限度にとどめているものでございます。そういう意味で、この十二年という法定刑が重きに失するということはなく適切なものと考えておりますし、本罪を仮に設けなかったといたしますと、したがいまして自己の刑事事件の証拠隠滅は処罰しないといたしましても、酒気帯び運転と自動車運転過失致死傷罪の併合罪加重により処断刑の上限は十年となりますことから、それと比較しても本罪の法定刑は重きに失するとは言えないものと考えております。
○小川敏夫君 どうも局長の答弁、苦しくなると答弁が長くなるような気がするんですけれども。
 例えば、法務大臣政務官に感想をお尋ねしたいんですけれども、細かい法律論は別にしまして、私は、殺人罪の人間が自分の罪責を免れようとして大変あくどいことをやったって刑事不可罰だと。四条のこの類型では十二年の刑で重過ぎるんじゃないかということをお尋ねして今議論したわけですけれども、局長から答弁をいただきました。法律的な面は説明は結構ですけれども、どうです、感想としてちょっと不釣合いじゃないかなというふうには思いませんか。
○大臣政務官(平口洋君) この法律ができるに至った原因となるような事件、事故、こういったようなものを考え、分析してみますと、妥当な法律ではないかというふうに考えております。
○小川敏夫君 私もこの法律そのものに反対しているわけじゃないんですよ。ただ、一つの法律の審議ですから、しかも刑罰を科する法律ですから、やはり厳格な適用ということも念頭に置いていろいろ議論しなくてはいけないという観点から議論しておるわけですけれども。
 また大臣政務官にお尋ねしますが、一つの仮定の話ですけれども、第四条でいろいろ議論したと、これは仮定の話ですよ、将来これはちょっと憲法に違反するんじゃないかと、これ仮定の話ですから、憲法に違反するんじゃないかというようなことで最高裁から違憲判決が出たというような場合も、それは学問的にはあり得ると思うんですけれども。
 一般的な観点から質問しますけれども、最高裁の違憲判決が出たら、そもそも国会なり国会議員としてはどういうふうに対応したらいいというふうにお考えですか。
○大臣政務官(平口洋君) 最高裁には憲法で違憲立法審査権があるということはよく存じておりますが、その場合の国会の対応というものについては、ちょっと私は法務大臣政務官という立場の答弁に相なりますので、必ずしも国会の対応についてお答えするということはちょっと難しいわけでございます。
 一般的には、違憲立法審査権が認められているところの最高裁判所が法令違憲の判断をした場合には、国会としては、法の支配あるいは三権分立といったような観点から最高裁の違憲判断を尊重するということが求められると、このように思いますし、その趣旨に沿った措置をとるということが期待されるというふうに思料いたしております。
○小川敏夫君 法務大臣政務官として法務省のお立場ということでお答えいただくのではなくて、国会議員としてあるいは政治家としてということの、政務官の政治家としての姿勢という意味で私は聞いておるんですけれども。
 例えば、違憲判決といえば、最近、民法の規定、非嫡出子の相続分が嫡出子の二分の一という規定は違憲だという違憲決定が出されました。何かこれについて、私はその場にいたんじゃなくて報道でしか知らないんですけれども、自民党の法務部会の中では、こんなのは最高裁判決が間違っているんだからこんなことに対応する必要はないと、このような意見を言う人もいたというふうに聞いておるんですけれども、どうでしょう、そういうような考え方については政務官は政治家としてどのようにお考えになりますか。
○大臣政務官(平口洋君) 一般的に、最高裁の違憲立法審査権についての考え方ということは、先ほど申し上げましたように、私はただいま法務大臣政務官でございますので、この場でお答えするのは差し控えたいと、このように思います。
 ただ、確かに民法の規定、これが違憲だという判決が出たことによって、自民党の中もそうですけれども、世間で、巷間いろんな議論がありまして、私もその議論をいろいろと聞いた覚えがございます。それはございますが、やはり最高裁が違憲という判決を出された以上、そのことを尊重した方向で進むのがいいのではないかと、このように考えております。
○小川敏夫君 終わります。
○佐々木さやか君 公明党の佐々木さやかでございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 私の方からは、今回の法案の三条二項、病気の影響による事故が起きた場合の危険運転致死傷罪でございますけれども、この三条二項の条文につきましては、先日の参考人質疑でも参考人から改めて病気の症状という記載にすべきであるというような指摘がございました。何の病気にかかっているかということではなくて、あくまで症状に着目したものであるとこれまでも重ねて答弁がございますけれども、そうであれば、病気の症状という規定の方が答弁の趣旨にも合致するようにも思いますけれども、この点いかがでしょうか。
○政府参考人(稲田伸夫君) 御指摘いただきましたように、確かに法の三条第二項で言っております病気というのは、病気一般を指すのではなくて病気の症状を指しているということはこれまでも累次御答弁を申し上げてきたところでございます。
 他方で、例えばこれまでの既存の法律でございます道路交通法などなどの法律の用語を見ますと、病気というのを具体的な病名だけでなく病状を含む概念として用いられてきているところでございます。例えば、運転免許の拒否等の事由を定める道路交通法の九十条におきましては、「自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるもの」としておりまして、法律上は病気と規定された上で、この法律の規定を受けた道路交通法施行令におきましては、政令で定める病気は、次に掲げるものとするとして、例えば、てんかん、括弧、発作が再発するおそれがないもの、発作が再発しても意識障害及び運動障害がもたらされないもの及び睡眠中に限り再発するものを除く、括弧閉じるなどとして、政令においては、病名を挙げつつ、一定の症状を除いた症状のものに限定されているところでございます。
 本法案の三条二項に申します「自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気」も、道路交通法令において運転免許の欠格事由の対象となるものを参考とさせていただいて政令で定めることとしておりまして、病気という用語につきましても、具体的な病名に限らず症状を含む概念として用いているところでございます。そのため、御指摘のように、病気の症状と規定いたしますと、概念の重複が生じるわけでございますし、また道路交通法等のほかの法律との整合性も問題となる点で必ずしも適当ではないのではないかと考えております。そこで、本法案におきましては、自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気と規定した上で、その具体的内容につきましては病気の症状に着目して政令で定めることが適切であると考えているところでございます。
○佐々木さやか君 病気という言葉の中に病状を含む意味なのだと、こういう御説明でございました。国民に分かりやすい定め方にすることがより望ましいようにも思いますけれども、その趣旨の徹底についてはくれぐれもお願いをしたいと思います。
 今後、この法案が成立をいたしますと、政令で具体的にその病状を含む意味での病気が指定をされるわけでございますけれども、この病気が指定をされますと、指定をされない病気の症状による場合よりも重く処罰をされますので、そうした意味で非常に重大なことでございます。ですから、指定に当たっては、十分な根拠、また立法事実の存在が必要であると思います。この点、三野参考人からは、精神疾患について、統合失調症、また躁うつ病、こういった方々が車を運転する場合に、ほかの病気と比べてとりわけ危険性が高いということはない、医学的根拠には基づかないと、こういった指摘がございました。
 政令を定めるに当たっては、十分な調査の上で慎重に検討を行うべきであると思いますけれども、この点はいかがでしょうか。
○政府参考人(稲田伸夫君) 御指摘のとおり、第三条第二項の自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気を政令で定める際には、これは政令でございますので施行までにということになりますので、仮にこの法律を成立させていただきますと、公布の日から六か月以内ということになりますが、その期間内におきまして、運転免許の欠格事由とされている病気の例を参考としながら、その対象とする病気や症状などにつきまして専門的な御意見も聞いた上で、この罪の対象とすべきものを適切に規定したいと考えております。
 構成要件の一部でございますので、慎重に検討しなければならないというふうに考えているところでございます。
○佐々木さやか君 専門家である参考人から先ほど申し上げたような意見があるということは重要視すべきことであると思いますし、更に幅広く十分な調査を行っていただきたいと思っております。
 次に、道路交通法の話になりますけれども、ある統合失調症をお持ちの方が、これまでは適法に免許も取得をして何の支障もなく運転をしてきたんですけれども、今年の六月の道交法の改正後に免許の更新ができなかったというお話を聞きました。その方が警察署に免許の更新に行きましたら、道路交通法が改正された結果、診断書をお医者さんに書いていただいて提出をしなければならないと、このように窓口で説明を受けたという話でした。
 今年の道交法の改正でこうした手続に何か、手続、運用に厳しくなったようなことがあるのかなと思いまして私も確認しましたけれども、こうした精神疾患などが相対的欠格事由になった平成十三年の道交法改正以降今日まで、特に取扱い、また運用、こうしたことが変わったということはないということでありましたので、今年の道交法改正で何か精神疾患をお持ちの方の免許の更新がしにくくなったようなことはないかと思います。
 その方が警察の窓口で診断書の提出を求められたというのも、恐らく以前から行われている臨時適性検査の診断書の提出のことなのかなと思うんですけれども、この方がその診断書の作成をかかりつけのお医者さんに依頼をしたところ、そのお医者さんは、自分の名前を診断書に書いてしまうともし事故が起こった場合に責任を取らなければならないので書けないと、このように断られたそうでございます。その方はほかの病院にも行ったんですけれども、同じような理由で断られてしまったと。その結果、今回は免許を更新できずに期限も過ぎてしまいまして非常に落胆していると、こういうお話でございました。
 思うに、やはり、鹿沼市の事故ですとか、またそれをきっかけとした道交法の改正の議論の中で、統合失調症ですとか、またてんかん、こうした方の運転がそれ自体危険であるというような誤った認識が広がってしまって、お医者様の中でも、こうした方についての診断書を作成する場合に後で何か責任を問われるのではないかと、こういったことを心配されているお医者さんがいらっしゃるのじゃないかなというふうに思います。
 この臨時適性検査では、病気をお持ちであったとしても薬を服用していることで安全に運転をする必要な能力は欠いていないというふうにお医者さんから診断を受けた場合には免許の更新ができるわけでございますけれども、その診断書の作成時に医学的にきちんとそうした診断を行った上で、その後、仮に病気の症状の影響で事故が起きてしまったような場合に、その診断書を作成したということでお医者さんに責任を問われることがあるのかどうかと、この点について伺いたいんですけれども、よろしいでしょうか。
○政府参考人(倉田潤君) お答えいたします。
 運転免許の付与は、必要により医師の診断を参考としつつ、公安委員会の責任において行うものでございます。医師の責任についてでございますけれども、医師が故意に虚偽の診断書を作成したような場合は別として、医師がその良心と見識に基づき行った診断に基づき作成した診断書について、結果的にそれとは異なる結果が生じたからといって、それを理由に刑事責任が問われるということは通常想定できないのではないかと考えます。
○佐々木さやか君 ありがとうございます。
 ただ、誤解などもあってお医者様から診断書作成を断られてしまった場合に、患者さんというのは非常に立場が弱いですから、断られても重ねてお願いをするとかいうことはなかなかできにくいと思います。また、お医者さんが言っていることはもちろん患者さんは信用しますので、先生が誤解しているというようなところに考えが至らないという方も私はいらっしゃるのではないかなと思います。
 そうした中で、生活やまた仕事に不可欠な免許を失ってしまって苦しんでいらっしゃる方も少なくないのではないでしょうか。こうした道交法の改正だけでも問題が起こっている現状でございます。今回の法改正によって、一定の病気の症状による事故が重く罰せられ、てんかん、また精神疾患などの方々について、その病気自体が危険であるというような誤解がもし大きくなると、こうした方々の社会参加がますます阻害をされてしまうと思います。
 これまでも重ねてお尋ねしているところではございますけれども、くれぐれも関係各所と連携を取っていただいて、そうしたことのないように正しい理解を広め、適切な対応を徹底をしていただきたいと思いますけれども、この点について大臣にお伺いいたします。
○国務大臣(谷垣禎一君) 先ほど警察の交通局長から御答弁がありましたように、道路交通法においてもそうですが、今回御審議をいただいているこの法律についても、医師に過剰な負担を掛けるような、あるいは過剰な法的責任を問うようなことではないというふうに私自身は考えております。
 ただ、そういう、今、佐々木委員が御紹介になったような懸念というものは、これはできるだけ払拭していかなければならないのは当然のことだろうと思います。
 そこで、今度の法案に関して申しますと、まず政令で病気、病気というか、症状に着目してと繰り返し御答弁申し上げているわけですが、政令で定めていくときに、専門家によく御意見を伺うときに、まずこの法の趣旨を十分に御意見を伺う専門家にも御説明をして、そしてどういうふうに規定をしていくかという御意見をいただかなければいけないんだろうと思います。
 それから、あわせまして、その法律の内容、それから適用範囲等々につきましても、広く周知をするということはこれ当然のことでございます。お医者様が何か、例えば診断書を書かれたりなんかするときに、ああ、そういうのを頼まれたけれども法律はどうなっているのかというのをお調べになったときに、法務省のホームページを見ていただけばその辺のことがきちっと書いてあって、余分な御懸念を払拭できるようなことにしていく、そういうこともきちっとやっていかなければならないのではないかと、こう考えております。
○佐々木さやか君 ありがとうございます。
 そのホームページの作成などに当たっても是非分かりやすいような記載をお願いしたいと思います。
○国務大臣(谷垣禎一君) もう一つ、やはり通達でも、今のような観点から、誤解を招かないようなきちっとした通達を出していく。ちょっと言い忘れました。
○佐々木さやか君 ありがとうございます。どうぞよろしくお願いをいたします。
 次に、私は、悲惨な交通事故をなくすためには事後的な処罰ももちろん重要でございますけれども、事故を防ぐための教育も重要ではないかと思っております。免許を取る方は教習所でいろいろなルールなども学ぶわけでございますけれども、それも十分と言えるかどうか疑問もございますし、無免許運転をする人というのはもちろん教習所で学ぶという機会もないわけでございます。そうした意味で、無免許運転を始めとする危険な運転行為をしないという、加害者にならないための教育というものを学校の現場で行っていただくことも重要ではないかなと思っております。
 例えば、オーストラリアの公立高校では交通事故防止プログラムというものがございまして、事故の再現VTRを見たりとか、それから、一つの交通事故が起こった場合にどれだけの人に心配、また迷惑を掛けるのかと、そういった自分が加害者になった場合の重大さという点についても学ぶというふうに聞きました。
 ルールを守る、また事故を起こした場合の重大さ、命の重みというものを学校での教育にも取り入れていっていただくことが重要だと思いますけれども、こうした点についての学校での安全教育の現状、また今後の取組について教えていただければと思います。
○政府参考人(永山賀久君) 学校におきます自動車に関する交通安全教育につきましては、御指摘いただきました加害者にならないという観点から、学習指導要領、それとその解説におきまして、高等学校の保健体育それから特別活動を中心にいたしまして、自動車の特性を知り、交通法規を守り、安全に行動をするということが必要であることを明記をいたしております。それから、全国の学校等に配付しております「「生きる力」をはぐくむ学校での安全教育」、参考資料でございますけれども、その中で運転者の義務と責任、さらに補償について記述をしております。
 これらを踏まえまして、高等学校の保健体育の教科書には、例えば停止距離や内輪差といった車両の特性、生命を尊重する態度と事故の要因を的確に把握し、適切な行動を取る能力、さらには運転者の刑事、民事、行政上の責任等について記述をいたしてございます。
 文部科学省では、これらの内容を含む交通安全教育が適切に行われますよう、都道府県教育委員会が開催する交通安全教室の実施に対する支援等も行っておりますが、今後とも、警察庁等とも連携をしつつ、このような交通安全教育の充実に努めてまいりたいと考えております。
○佐々木さやか君 ありがとうございます。どうぞよろしくお願いをいたします。
 次に、被害者の方の、これも御相談を受けたことがあるんですけれども、交通事故の死亡事故ですとか、そうした重大な事故の場合であっても、刑事処分としては不起訴になるという場合も少なくないというふうに聞いております。そうした場合は、特に遺族の方、被害者の方への不起訴理由の説明というのが十分になされることが大切ではないかと思っております。
 ある事故の被害者の方から、不起訴理由の説明がなされずに納得がいかなかったと、こういったお声を聞いたことがあるんですけれども、この点については現在どのような取扱いをしているのか御説明をお願いいたします。
○政府参考人(稲田伸夫君) 検察当局におきます取扱いについて御説明をさせていただきたいと思います。
 これは交通事故の被害者に限らず犯罪被害者一般に対してでございますけれども、平成十一年から被害者等通知制度というのを始めております。これによりまして、被害者等の御希望に応じまして、一方で関係者の名誉等の保護の要請というのもございますので、そこにも配慮しながらも不起訴処分の内容及び理由を丁寧に説明するようにし、事件についての情報を知りたいという被害者やその御遺族のお気持ちにできるだけこたえられるように努めているところというふうに承知しているところではございます。
 今後とも、被害者保護の要請に配慮し、この通知制度の適切な運用に努めていくものというふうに承知しているところでございます。
○佐々木さやか君 例えば立証の困難の問題などなかなか被害者の方に分かりにくい点もあるかと思いますので、引き続き分かりやすい御説明といったところをお願いをしたいと思います。
 最後に、自転車の事故でございますけれども、この自転車の事故というものも死亡に至るような重大なケースというものも依然多発をしております。歩道を猛スピードで走ったりとか、また信号無視、そういった交通ルールを守る意識に欠けていると言わざるを得ないケースも残念ながら多くございます。
 自転車というのは誰でも気軽に利用できるという意味で便利なものでございますけれども、子供たちだけでなく大人の利用者の方々に対するそうしたルール、また安全教室といいますか、そういった講習の機会がより充実される必要があるのではないかと思いますけれども、この現状についてお伺いしたいと思います。
○政府参考人(倉田潤君) お答えいたします。
 自転車安全教育につきましては、その教育を受ける者の受講人員は増加傾向にありますものの対象に偏りがあるところでございまして、大学生、成人等に対する交通安全教育はまだ十分とは言えないのではないかと考えております。
 また、昨年警察庁に設置をされました自転車の交通ルールの徹底方策に関する懇談会におきましても、特定の年齢層等に偏らない連続的かつ体系的な自転車安全教育を行っていくことが重要であると指摘をされているところでございます。
 警察におきましては、自治体、大学、企業、自転車販売店等との連携を強化し、成人を対象とした自転車交通安全教室の開催、安全運転管理者を通じた事業所における自転車安全利用教育の強化、自転車安全利用モデル企業制度の推進などに取り組んでいるところでございますが、引き続きこれまで交通安全教育が不十分であった成人に対する交通ルールの遵守の徹底に一層取り組んでまいりたいと考えております。
○佐々木さやか君 ありがとうございました。
 以上で終わります。
○真山勇一君 みんなの党の真山勇一です。
 今回のこの法整備というのは、車社会と言われる私たちの日々の暮らしの中で、交通事故それから交通事故の犠牲になる方、こうしたものを減らしていくのに有効であるというふうに思います。谷垣大臣も、飲酒ですとかそれから無免許に対する効果、期待を表明されております。私もまさに今回の法改正というのはそういう意味では大変大きなやはり一つの改正であるというふうに思っております。
 しかし、やはり交通事故というのはまだまだ減らせるというふうに思っています。前回の委員会で参考人の方から意見を伺いました。これで、やはり今回、交通事故をこれから減らしていくために、今抱えているいろんな問題、それから将来やはり変えていかなくちゃいけないことという辺りの大変重要なことが指摘されて明確になったというふうに私は感じております。
 ですので、前回の参考人の御意見などを踏まえて、今日はもうこれ委員会締めくくりになるわけですね。ですから、ちょっと絞りまして伺っていきたいというふうに思っています。一つは病気ということについて、それからもう一つは無免許ということについて伺っていきたいと思うんです。
 まず、病気なんですけれども、もう本当にこの委員会でも繰り返し繰り返し議論され、それから医師の専門の立場などの表明、それから法的にどうかという意見も伺いました。けれども、ここでもう一回伺いたいんですが、第三条二項、病気、病気というふうにはっきりと言葉で書いてあるわけですけれども、やはりこうした病気の方の方から見ると、例えばこれを何とか症状、病気の症状あるいは疾患などというふうに変えていただけないかということも大分意見が出されました。
 この辺り、法務大臣、どうなんでしょう、改める、こういうふうに変えるということはこれからどんなふうに考えていらっしゃいますでしょうか。
○国務大臣(谷垣禎一君) 今の真山委員の御議論は、衆参通じまして、特に特定の病気に対する偏見を助長するようなことにはしないでくれという御議論が多く、また参考人からもそういう御意見が寄せられたことはもう私もよく承知しております。それで、そこで私も度々、あるいはこの参議院でも度々御答弁を申し上げたと思いますが、これは病気そのものに、特定の病気そのものに着目するんじゃなしに、病気の症状に着目するんだということを御答弁申し上げてきました。そこで、今の真山委員の御議論も、それならば病気の疾患あるいは病気の症状と書いたらどうだという御意見ですね。
 それで、今まで道路交通法等々におきましては、その病気という言葉が、特定の病名で言っているんではなく、その症状も併せて表現するものとして使われてきた経緯がございます。一々細かに何はどう言っているということは引用を差し控えますが。
 そこで、本法のこの三条二項に言う自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気というものは、病気という用語についても具体的な病状に限らず症状を含む概念として、今までの病気という、法体系の中で、道路交通あるいはこういうものに関する法体系の中で使われている用語を踏襲して、余りいろいろな使い方をしますと後で解釈等にまた混乱が生ずるおそれがあるということもあると思っております。
 したがいまして、こういう形で進めさせていただいて、そして具体的に政令で決めるに当たっては、よく専門家のお知恵も拝借しながら今のような誤解を生じることのないような施策を、手だてを講じていかなきゃいけないと。その点では、決め方もございますが、同時に広報体制、PRも極めて重要であろうかと思っております。そういう点は手抜かりなくやりたいと考えております。
○真山勇一君 今、大臣から病状、病気じゃなくて病状に着目しているのであるという話と、そういうことで出て、そうなると、なおさら病気というのはやはり言葉で言うと独り歩きしてしまいますね。特定のやはり、あの人はこういう病気だという、その病気ということになっちゃって、どうしても症状とか疾患というところまでなかなか普通行かないと思うんですね。ですから、思い切って、今大臣がおっしゃったように、やっぱり症状に着目するというふうな発想の転換、これも必要じゃないかと思うんです。
 それで、お手元にお配りしてある資料をちょっと見ていただきたいんですが、これ実は、一つは、イギリスというふうに書いてあるのは、これは先日の委員会で久保田英幹参考人が配られた資料、それから一枚紙、裏表になっていますが、これはカリフォルニアの運用指針というもの、これは日本てんかん協会からいただいた資料なんですが、これ見てみると大変興味深いことがあるんです。
 病気、疾患という部分についてなんですが、まず、この二枚つづりのイギリスの届出対象疾患というのを見ていただきたいんです。これ、病気も書いてあるんですが、疾患も書いてあるんですね。例えば、アルファベットのAというところを見るとアルコールプロブレムスとか、アルコールの問題というのがあると同時に、Cのところを見ていただくとキャンサー、がんというものが入っておりまして、それで、一番最後のSというところを見るとスリープネス、エクセッシブデータイム、つまり特に昼間の間何か眠気を催すような症状、疾患ということで、病名も入っているけれども、症状も全部入れて百五十三疾患というのを入れております。こういう書き方で、事故につながる可能性があるヘルスコンディション、つまり健康状態と運転ということでこういうふうな決め方をしている、これも一つの方法であるんではないかなというふうに思っています。
 そして、ちなみに、一番上のところの小さい字で書いてありますけれども、不申告者、申告しない者については千ポンド以下の罰金をすると、事故を起こした場合は起訴される可能性もあるぞというような、そういうことも書いて、これでいくと、一つは、何というんですか、偏見ですとか、それからその病気の持っていらっしゃる方にとっては差別を受けるという感じじゃなくて、病気というのは誰でも突然意識不明になったり、それから体調不良になったりするという要素があるわけですから、こういうような形が一つあるんではないかということと、それからもう一枚の一枚紙の方を見ていただきたいんですが、カリフォルニアのこれは運用指針なんです。
 御存じのように、アメリカは合衆国なので州によって全部違うわけですね。これはカリフォルニア自動車局というところですね、この中に書いてあるDMVというのはそういうことですね、デパートメント・オブ・モーター・ビークルということなので。そのカリフォルニアの運用指針ということを見ますと、こっちなんかもう全然病気特定していないんですね。むしろ、どんな種類の健康状態、メディカルコンディションが安全運転に影響をするかということで、覚醒とか体力とか運動能力、判断力、注意力、知識又は安全運転に必要な能力を阻害するあらゆる不調、症状、ディジーズということじゃなくて、ディスオーダー・オア・コンディションということなんですね。
 つまり、こういう病気があれば日常的にいろんな運転不能になる状態があるんじゃないかということで、具体的には、ちょっと脳卒中ですとか糖尿病症状、アルツハイマーというようなことが出ていますけれども、基本的にはこうした症状で、そして危険な健康状態にある場合はドライバーを再検査いたしますということになっているんですね。
 これどうやって見付けるかというと、その危険運転をしそうな可能性のある、周りの人ですね、お医者さんですとかそれから法の執行機関、多分これは警察じゃないかと思うんですが、それから家族とか知人、あらゆるところから情報を下さいと、その情報に基づいて危険な運転をするかどうかということを再検査していくというふうに言っています。
 そして、先ほどちょっと出ましたけれども、医師が名前出るとそういうことが困るからということが何かあるというふうに伺ったんですけれども、この通報については匿名で扱いますということも一番最後の方に書いてあります、通報者の秘密を守りますというようなことが。こういうような考え方も一つはあると思うんですけれども、これについては、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(谷垣禎一君) 今の、いろいろ症状にも着目しているぞというこの資料を挙げて御説明になりました。実はかなりそれは日本も共通のところがあるのではないかと思っておりますが、例えば、道路交通法を受けまして政令で定める病気という中のその中でございますが、例えばてんかんというのを挙げておりますが、それを、てんかんという言葉は挙げてはおりますが、同時に、その後に括弧書きで、発作が再発するおそれがないもの、発作が再発しても意識障害及び運動障害がもたらされないもの及び睡眠中に限り再発するものを除くというふうに規定しております。これは、ですから、病名も挙げておりますが、同時にその病名、症状で限定をしているという形になっておりまして、そういう意味では、今委員が挙げられたところと全く日本の法の決め方が相反しているものではなく、共通の点が私は、先ほどから症状に着目するということがこういうところにある意味では表れた一つの今例でございまして、思想としては共通のところがあるのではないかと思っております。
 それからもう一つは、法制審議会で御議論いただきましたときに、今回の法律によって従前の罰則よりも重いものを科そうということになると、やはり限定していかなければ、構成要件を明確化していかなければならないという御議論もございました。私は、これは当然の御議論だと思いますが、いかに明確にするかということも同時になければいけない。そういたしますと、今、これから日本でやろうとしている方向は十分理由のある選択肢なのではないかと、こんなふうに思っております。
○真山勇一君 この病気の件は今後の課題ということに私も考えております。
 それから、時間がないんで、もう一つ伺いたいんですが、無免許運転についてなんですが。無免許運転、前回もちょっと伺ったんですけれども、参考人に伺ったんですけれども、無免許運転ということを今の法律の中ではなくて、独立した無免許運転、つまり、私はやっぱり今の法律というのはハンドルを握るということを何か前提にしているような気がするんですが、無免許ということはハンドル握っちゃいけないんだよという、基本的にそういうところがあるわけですね。ですから、分かりやすくするんならば、ハンドルを握る資格を持っていないという、その無免許、免許を所持していないという部分で違反した法律、これ独立した法律として規定するというようなことはできないんでしょうか。
○国務大臣(谷垣禎一君) できないということはないだろうと思います。しかし、今までの日本の法体系は、こういう一般的に無免許や無資格での行為に対する罪というのを規定しているものが幾つかございますけれども、それは皆、その免許や資格について規定している法律においてそういった制度を、それぞれの制度を前提とした上で違反した行為の責任、違法性というものを規定している、こういうやり方で大体やってまいりました。
 それで、こういう無免許等での行為に対する一般的な罰則の在り方からいたしますと、無免許等での行為に対する罰則が刑法に規定される場合と、それから行政による規制を含むその他の法律に規定される場合とでは、当該行為が犯罪であるということの明確性という点において必ずしも差が生じるものではないのではないかと考えております。
○真山勇一君 やはり、私が気になるのは、京都の亀岡市の場合、免許は持っていないけれども運転技術がある、能力がある、未熟じゃないんだという、何かこれ、本質的にはそうなんでしょうけれども、やはり一般的な感覚でいうとどうしても割り切れない。特に、やはり被害に遭った方からは、もう本当に何で免許を持っていない、やはり普通の常識でいえばハンドルを握っちゃいけない人がハンドルを握っているんだから、その運転技術云々の前の問題が多分あるんじゃないか、そういう感情的なものもあると思うんですね。
 ですから、その辺りでやはり、もしできるならば、道交法で言う免許というのは免許を持っている人に対応するものであるんだから、免許を持っていない人というのは別にするという考え方も私はあるんじゃないか。先日のお聞きしたときには、免許システムをきちっとやるまだシステムはできていないというお答えだったんですけれども、やっぱりこれは私はつくるべきだというふうに思っています。
 谷垣大臣もこの京都の事故は御地元ということで大変気に掛けていらっしゃるということもあると思います。本当に事故というのは起きたら人ごとじゃない、やはりもう犠牲になった方にとっては本当に大変なこと。しかも、交通事故は減らせるという、やっぱりそういう考え方でこれからもこうした改革をしていきたい、いっていただきたいというふうに思って、時間になりましたので、済みません、私の質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
 まず、三条の二項について私からも引き続きお尋ねをしたいと思うんですけれども、前回の参考人の皆さんの御意見を伺って、私、大変得心したところがございます。それは、立法の技術的な問題というのは法律家だとかあるいは法務省だとかというところではあるかもしれないが、患者さんや医療者、医師にとっては、この法案のように病気というふうに書かれるのか、病気の症状あるいは病気による症状という記載になるのかという、この違いというのは決定的なのだということなんですね。この病気の症状というふうな修正が可能になるなら懸念は解決をするのでしょうかという私の質問に三野参考人が、大きく改善すると思いますとお話しになりました。
 要点四つほどあると思うんですけれども、一つは、症状という形で、的確に運転に危険を及ぼすような症状にポイントを当てれば、病気そのものが全て危険であるという偏見や差別はなくなると。二点目は、その症状が出れば医療機関に通って、医師との関係あるいは治療関係の中で解決することもできるだろうと。三点目に、患者さん御本人もそれに向けて努力するという、自己管理の中核の部分ですね、ここの努力に向けられるだろうということ。そして四点目に、こういう症状が事故を来すおそれがあるのだから、それは危ないからやめようということが法律で規定されるなら、的確に法が運営されることになるであろうと。いや、それはごもっともだなと私は思ったんです。
 この今回の法案の規定ぶりが法制審などでも議論を経た立法技術的な問題、今日も道交法を始めとした他法で病気という用語がどういう意味合いで使われているかなどのお話があっているわけですけれども、そういう立法技術的な話はあるとしても、現場の患者さんや医師、専門家にとってこの病気による症状という書きぶりに変えれば懸念が大きく改善するというのであるなら、それは十分検討に値すると私は思うんですが、大臣の御感想をお尋ねします。
○国務大臣(谷垣禎一君) 先ほどの真山委員に対する御答弁と繰り返しになってしまうかもしれませんが、私はこういう御懸念があることも参考人質疑を記録を拝見しましてよく存じているつもりでございます。
 しかし他方、今までの法律の書き方ということも一つあることはございますが、もう一つは、重罰を科していく上で、症状ということで、病名でこういう症状が出てきたというような書き方をしないで果たして限定できるのかどうかということがあるんだと思います。それは立法技術的な問題だと仁比委員はおっしゃるのかもしれませんが、私は、そこのところがきちっと明確になっていないと刑罰法規としては欠陥の多いものになってしまうと思います。
 したがいまして、今私が感じておりますことは、そういう前提の下で専門家によく御意見を伺って誤解の生じないような規定の仕方をしていく。症状に着目した表現というのも、当然先ほど御答弁申し上げたように出てくると思います。そういう規定の政令を作っていくということではないかと考えております。
○仁比聡平君 この病気による症状と運転技能や交通事故との関係ということをどう法的にとらえるのかというのは、医学的な知見と、それから今大臣が御答弁にあった構成要件の明確性ということでの法的な観点、立法的な観点ということを併せて解決をしなきゃいけないと。しかも、医学的な知見は日々進歩をしていくということだろうと思いますし、個々の患者さんやその症状ごとに大変多様な現象なのだろうと思うんですね。そうした意味、観点をしっかり持って今後臨んでいかなければならないと思うんですが。
 この法案の仕切りにちょっと沿って今度、刑事局長に伺いたいと思うんですが、先ほど、この政令の定め方についても医師始め専門家の御意見を聞いていくのであるという大臣の御答弁がありました。この政令の定め方についてもというのは、もう少し具体的に言うとどういうふうになりますか。
○政府参考人(稲田伸夫君) 法案の三条二項でありますとおり、その病気、これは症状に着目して定めるものでございますが、この内容を政令で定めなければならないわけでございます。
 これにつきましては、私どもの考え方といたしましては、道路交通法において運転免許の欠格事由の対象とされている病気の例を参考としながら、その症状に着目して自動車運転に支障を及ぼすおそれがあるものに限定することにしておりまして、基本的にはその運転免許の欠格事由を踏まえたものとする予定ではございます。
 ただ、いずれにいたしましても、今後、その政令を定めるに当たりましては、対象とする病気やその症状などにつきまして専門的な意見を聞いた上で、本罪の対象とすべきものを適切に規定したいというふうに考えているところでございます。
○仁比聡平君 道交法の欠格事由にかかわる政令の定めというのは、これはつまり運転免許の申請とその拒否という制度上の問題でありまして、これを参考にするという上で特に注意をしなければならないなと思いますのは、本罪の、法律が政令に委任するというその内容は、重く処罰するという刑事法上の構成要件であるということなのですよね。
 今日も御答弁に少し出てきていますけれども、例えばてんかんについて、この道交法の欠格事由がどんなふうに政令で定めているかというと、てんかんという病名を挙げた上で、「発作が再発するおそれがないもの、発作が再発しても意識障害及び運動障害がもたらされないもの並びに発作が睡眠中に限り再発するものを除く。」という規定ぶりにどうやらなっておるようでございまして、つまりてんかんという診断を受けていると一般的にはどうやら当たるのかなと、欠格事由に。だけれども、今紹介したような症状が出るおそれがないものを特段除くと、そういう規定ぶりになっているんですね。
 これは、道交法上の問題はちょっとおいておきますが、そこに道交法上の運用についての懸念があるのだろうと私は思いますけれども、刑罰法規として考えたときには、この重く処罰される構成要件に該当しないという挙証責任がまさか被疑者、被告人の側、運転者の側に転換されるなどというようなことはあってはならないわけで、これはもちろん処罰をしようとする検察の立証責任なわけです。ここを明確にする形での規定がどうしても必要だと思いますが、局長、いかがでしょう。
○政府参考人(稲田伸夫君) 申すまでもございませんが、刑事裁判におきまして犯罪の構成要件に該当する事実があることの挙証責任は検察官が負っているものでございます。
 本法律案の三条二項に基づく政令におきまして仮にてんかんで道路交通法施行令と同様の定め方をしたといたしますと、先ほどから御指摘のように、てんかん、被告人が罹患していたてんかんのうち括弧、括弧を除くものということになるわけでございまして、そういたしますと、検察官といたしましては、被告人が罹患していたてんかんが、発作が再発するおそれがないもの、発作が再発しても意識障害及び運動障害がもたらされないもの並びに発作が睡眠中に限り再発するもの以外の症状であることをまさに検察官において立証する責任があるということにおいては、これはもう当然そういうふうになるものというふうに考えております。
 この点、ほかの刑罰法令におきましても何とかを除く、何々のほかなどと規定している例はございますが、構成要件に該当する事実は検察官が挙証責任を負うということから、検察官がこれこれを除くという部分に当たることを挙証責任を負っていると考えられてきておりますので、そもそもこれこれを除くと規定することが不適切であるというふうには考えておりません。
 今後、その規定ぶりについては検討していかなければいけないと思いますけれども、例えば今例に挙げておりますてんかんについて、その除かれる症状を規定するという道路交通法施行令の定め方とは異なりまして、三条二項に基づく政令におきまして構成要件に該当することとなる症状を定めていくということにいたしますと、道路交通法施行令の規定する症状と実質的に異なることとならないのかという問題も生じるのではないかというふうに懸念しているところもございます。
 いずれにいたしましても、今後、政令を制定するに際しましては適切な規定ぶりとなるようにしたいと考えております。
○仁比聡平君 規定ぶりについて、除くという形で規定をされていても検察官が挙証責任を負うのは当然であるというのは、それはもちろん当然であると。私がこの法案について特に申し上げているのは、病気による症状という大臣も繰り返し述べられておられる観点が、政令上あるいは法文上明確でないと偏見を助長することになりかねないということなんですよね。
 ですから、その点も含めて医師を始めとして専門家の定め方についても御意見を聞いていきたいというのが、大臣始め法務省の元々の御趣旨、今後の取組の基本姿勢なのではないかと思うんです。その点の確認と、これから施行までおよそ半年という形でこの政令を検討していかれるわけですけれども、これ、その時々において、私ども国会の方で求めれば当然御説明はいただけると思うんですが、二点いかがでしょうか。
○政府参考人(稲田伸夫君) これまでもこの政令の定め方については累次御議論があったところでございまして、その点については私どもも十分踏まえた上で対応していきたいというふうに思っておりますし、その政令を規定するに際しましては、対象とする病気やその症状などにつきまして、運転免許の欠格事由を定める道路交通法令を所管する警察庁と必要な協議を行うとともに、これらの専門家の方などから御意見を聞く必要があるものというふうに考えております。
 それで、この政令の制定の状況につきましては、先ほども御答弁申し上げましたけれども、施行日が公布の日から起算して六か月以内で政令で定める日ということになっておりますので、それまでに当該政令を定めることとなります。それまでに所要の検討を経て制定作業を行うものでございますが、御指摘のような検討状況について国会におきまして御質問がありましたら、その時点における検討状況をお答えしていくことといたしたいと考えております。
○仁比聡平君 時間が迫ってまいりまして、あと一問だけ伺いたいんですが、無免許運転に関する参考人からの御意見への御感想なんですね。
 亀岡の事件の御遺族の方から、運転免許は車を動かす技術と安全に車を運行できる知識があって初めて与えられるものであって、それがないのになぜ法律上技能を有していると評価をされてしまうのか、無免許運転を繰り返せば繰り返すほど重い処罰の対象から外れるというのはおかしいじゃないかと。無法を繰り返せば重い処罰の対象から外れるというのは不条理であるという指摘は、私は受け止めなきゃいけないと思うんですね。
 この点について、法務省としてどんなふうにお考えなのか聞きたいと思います。
○政府参考人(稲田伸夫君) 今御指摘のような無免許運転について、危険運転致死傷罪に該当しない場合についての御指摘を受けているところでございます。
 ただ、これも御答弁申し上げてきたところでございますが、現行の危険運転致死傷罪というのは、あくまで暴行に準じるような特に危険な運転を故意に行い、その結果人を死傷させた者を傷害罪、傷害致死罪に準じて処罰するものとして立法されたものでございます。そういう意味での故意犯でございますし、危険な行為という具体的なメルクマール、客観的に危険な行為というメルクマールについて、故意に認識して行う行為によって死傷の結果を生じるという作りになっているところでございます。
 そこで、無免許運転一般の取扱いについて、今回の法律案の立案に先立って法制審議会でも御議論いただきましたけれども、暴行に準じるような危険性を類型的に有するとまでは言えないのでないかということから、危険運転致死傷罪の対象とすることは現時点では困難な問題もあるのではないかというような御指摘を受けたという結論になったというところでございます。
 ただ、さはさりながら、無免許運転というものが抽象的には危険な行為でもございますし、そのような無免許運転の機会に人を死傷させたという事実は反規範性が極めて高いわけでありますし、その抽象的かつ潜在的な危険が顕在化、現実化したと評価できるところから、その事案の実態に即した処罰ができるようにということで、今回、六条に無免許運転による加重規定を新設し、無免許運転であることと人の死傷との原因関係の有無を問わず、従来より重く処罰できるようにしたところでございます。
○仁比聡平君 今後、議論が必要だと思います。
 終わります。
○谷亮子君 生活の党、谷亮子でございます。
 本日の議題に沿って伺ってまいりたいと思います。
 先日、十一月十四日に行われました参考人質疑におきまして、無免許で車を公道で走行させる行為につきまして、被害者側からの大変切実なる悲痛な訴えがあったと受け止めております。その上で、私は本日、無免許で車を公道で走行させる行為につきまして伺ってまいりたいというふうに思います。
 そして、まず初めに、今回、危険運転致死傷罪の法整備について議論がなされておりますが、私は加害者への罰則の法制化と並行して、悪質で危険な自動車運転によって被害に遭われた方々の被害回復についての損害賠償にかかわる件を見逃してはならないと考えております。
 被害者救済の観点からお尋ねいたしたいと思います。
 被害者救済として、我が国には優れた救済三法と言われております国家賠償法、行政不服審査法、行政事件訴訟法というものがございます。そして、交通事故におきましては、警察庁管轄の犯罪被害者救済法、国交省管轄の政府保障事業や独立行政法人の行う自動車事故対策機構がございまして、さらに強制保険と言われております自動車損害賠償責任保険によって被害者の損害の填補がなされている、実損害填補がなされている現状もございます。
 そしてまた、加害者から被害者に対する損害賠償につきまして、加害者の泥棒運転や車の無断借用使用によりまして惹起される交通事故による損害は、保険によっての適用はこれはなされません。加害者が特定された場合におきましても、民法上の責にあるのは加害者本人とし、保険による損害賠償は代位弁済もなされないことになります。
 第三者による一方的な不法行為に対して、被害に遭われた方々の救済が第一であると考えられます。そして、今申し述べさせていただきましたことは管轄が法務省の方ではないと思われますが、このことにつきましては、警察庁、そして国交省、またさらには内閣府の方で取組が進められているという現状も伺いました。
 そこで、法務省といたしまして、交通事故等で、まず第一義的に行われなければならない被害者救済、この被害者救済というのを第一義的に行わなければならないと思うわけなんですけれども、改めまして、現在の取組ですとか、今後の救済法としてどのような取組をなさろうとしておられるのか、また、なされる予定がないのか、伺いたいと思います。
○国務大臣(谷垣禎一君) 法務行政の果たすべき使命の一つとして、国民の安心、安全を確保するということが挙げられると思います。しかし、そのためには、犯罪被害者の救済、犯罪の被害に遭われた方々やその御家族の気持ちをよく理解しながら真摯に受け止めて、それぞれの立場を配慮しながら物事の処理を進めていくということが必要だろうと思います。
 そして、これに対応する制度は、今、谷委員のお挙げになったように、行政各部がいろんな施策を用意しております。それで、法務省としましては、幾つか今まで、被害者等通知制度あるいは刑事裁判への被害者参加制度、いろんな制度を整備させていただきました。
 それから、さきの通常国会でも御審議いただいて成立させていただいた被害者参加人に対する旅費等の支給あるいは被害者参加人のための国選弁護における資力要件の緩和等々を行った、いわゆる犯罪被害者保護法等の一部改正もさせていただいたわけでございます。
 それから、今後はまた、関係省庁とも連携しながら、犯罪被害者の保護あるいは支援に係るいろいろな施策を推進しなければなりませんが、同時に、検察庁それから更生保護官署あるいは法テラス等の関係機関で被害者保護を図るそれぞれの制度がございますので、要するにその制度をうまく活用していくということ、個々の事案ごとに被害者の心情や立場に思いを致しながら制度を運用していくということが大事ではないかと思っております。
○谷亮子君 谷垣大臣、ありがとうございます。
 やはり、被害者救済の観点から、被害者の保護法であったり救済法であったりというものはしっかりと取り組むべきことであると思いますし、今現在、加害者のみの厳罰化に処する法制化がなされておりますが、今後は、やはり被害者救済の法制化も私、求めてまいりたいというふうに思っております。
 そして次に、運転免許証はその管理監督を国家公安委員会、警察庁交通局が行う国家資格となっておりますが、道路における運転を認める運転免許の取得について、自動車運転免許試験場で行われる運転免許の試験では適性試験、学科試験、技能試験の三種類がございます。学科につきましては、国家公安委員会が作成する交通の方法に関する教則から出題がされまして、技能試験においては、定められたコースを実際に自動車を運転して走行する方法によって行われております。そしてさらに、免許証取得時講習を受講するといった受講義務も課せられております。
 こういったことから、運転免許証とは運転に一定の技量が必要な機械装置や設備の運転に対する免許のことでございまして、免許の保有を証明して交付される公文書でございます。
 また、新規の免許証の交付につきましては、平成二十三年度におきましては百四十万人以上の方が交付を受けておられまして、同年におきましては八千万人を超える方が運転免許を保有されています。身体障害者の方に対する条件付運転免許証につきましては、同年におきまして二十五万一千六百八十五名の方が保有をされております。それぞれの皆様が大変な努力をなされ、そして運転免許証の交付を受けておられるという現状がございます。
 そこで、無免許で車を走行させる行為ということについて伺ってまいりたいと思います。
 今述べさせていただきましたように、免許証を保有するということは、運転免許の試験受験時に相当の知識と技能を有すると判断されまして、適性も試験した上で免許証の交付を受けております。
 そして、無免許で車を公道で走行させる行為についてですが、無免許であること自体は確かにこれは危険なことではありませんが、しかし、無免許で車を運転していくということであれば、これは本罪の要件である正常な運転が困難な状態になると考えられます。
 このことから、公道を走行する無免許者においては、無免許運転という交通違反を繰り返しながら日常的に事故を起こすこともなく公道で車を走行させているので、運転技能においてはペーパードライバーよりもこれは優っているのではないかと認識、認知されまして、健全ではない状態で車の走行を行っているにもかかわらず、無免許で車を動かし続けておりますので、運転技能は正常であるのではないかとみなされるのは、これは見解も異なる上に、疑問も生じるところであると思います。このことに被害者の方々が大変な大きな懸念を示しておられるわけでございます。
 その上で、交通法規、交通の秩序を守るといった観点から申し上げますと、法解釈上、無免許で車を公道で走行させることを無免許運転と限定した表記をすることにつきましては、自動車試験場で定められたコースを実際に自動車を運転して走行するとした技能試験の趣旨とこれは合致せず、運転ということが成り立たないのではないかと思われます。
 そこで、無免許による車の走行と正常な運転との対比についてどのような離合性があるとお考えですか、推察されることがありましたら伺います。
○政府参考人(稲田伸夫君) これは、危険運転致死傷罪に無免許運転が一律に該当しないと、一律に該当するわけではないというところからきている御疑問だというふうに思います。
 危険運転致死傷罪が定めております危険運転行為は、その行為自体が重大な死傷事犯となる危険が類型的に高く、行為態様においても反社会性が強い運転行為であって、重い法定刑により処罰すべきものと認められる類型を規定したものでございまして、暴行に準じるような特に危険な運転を故意に行い、その結果人を死傷させた者を傷害罪、傷害致死罪に準じて処罰するものとして立法されたというものでございます。
 他方で、無免許運転は、反規範的でありますし、危険な運転行為ではありますものの、無免許運転全てが今申し上げた意味において類型的に危険な運転行為であるということは言えないことから、特に危険性の高い、進行を制御する技能を有しない、すなわちハンドル、ブレーキなどの運転操作をする初歩的な技能を有しないような、運転の技能が極めて未熟な状態で自動車を運転させる行為を危険運転致死傷罪の危険運転行為として掲げたというものでございまして、この危険運転致死傷罪を定めた趣旨からいたしますと、無免許運転一般がこれに該当しないとしても、そのことからすぐに運転免許制度を否定しているというようなものではないというふうに考えております。
○谷亮子君 御説明ありがとうございます。
 やはり、今お話ございましたが、未熟運転という表現をされるんですが、やはり私が感じている未熟運転というのは、まだ免許を取りたての方が、初めは乗り心地がなかなかスムーズにいかない、気を付けながら運転していって、どんどん運転免許証を保有した状態で運転をしていくことによって熟練していく運転につながっていくことを未熟運転ということで、この無免許の状態であることを未熟運転という表現が非常に疑問を持ってしまうところでございます。
 そして続けて、そもそも無免許なのに公道で車を走行させているのを無免許運転という表現、表記をなし、無免許でも正常な運転ができているかのようなイメージづくりがなされているために法解釈上の錯誤が生じかねないのではないかと思います。運転免許証が国家資格として存在しているように、無免許運転証があるかのような錯覚を起こしてしまってはこれはいけません。
 ですから、無免許と運転を一緒に合わせることにより、あたかも、無免許で車を公道で走行させることを何度も繰り返していくことで、その無免許の運転技能が向上していくこと、このようなことはあり得ないと考えられます。運転免許証を実際に保有されて法令遵守の上で車を運転されている方と同じように、車の運転を制御する技能ですとか、車を運転する技能があったと並立されることは、私は到底これは受け入れられないのが真意ではないかと思っております。
 車を運転することと単に車を動かすといった行為は全く別のことであろうと考えられます。運転免許証を持っていないから、これは車を動かしてはいけないんだ、車を動かすことはできないんだという、その時点での、認識と制御とそして適性がもうその時点で既に欠けていたのではないかなというふうに思われます。
 ですから、無免許運転という表記につきましても、表記、表現を改めるなど工夫をされまして、無免許で車を公道で走行させる行為などのように無免許と運転を個別にすれば、故意犯たる傷害罪の構成要件を満たすと考えられます。条文の定義の第一条二項で「「無免許運転」とは、」と明記されていることも含めました上で、是非一考していただきたいと考えております。御所見を伺います。
○政府参考人(稲田伸夫君) 今委員御指摘の点につきましては、今後、無免許運転による事故について刑事罰の在り方をどのようにしていくのかということは、この法案のみならず、私どもも、その六条、今回設けました六条の刑の加重規定の運用状況を見ながら検討していかなければいけない課題だというふうに思っております。
 そのような中で、今御指摘のありましたような免許を有しない者はそもそも公道を運転してはいけないんだという、ごく当たり前のことが当たり前に行われなかった場合についてどうするのかという観点から検討しなければいけないと、そういう課題の一つであろうというふうに思っております。
○谷亮子君 やはり無免許と運転を合わせて無免許運転ということにしなければ、より厳罰化が図られないというのであれば、これもまた疑問も生じてくるところもあるかもしれません。
 しかし、この度の附帯決議案の方にも、四、五の方に無免許の運転に対するものをお示しさせていただいておりますけれども、まず、危険運転致死傷罪として第二条は六つに細分化されておりますけれども、これは是非、無免許で車を公道で走行させる行為につきましては七つ目の項目として、無免許で車を公道で走行させる行為について是非新設していただきたいということと、またさらに、その無免許運転という表現、表記の構成が、果たしてこれが、この構成自体が成立するのかといったこともあると思います。
 今後は無免許と車を運転するということは切り離して是非考えていただきたいというふうにお願いを申し上げまして、質問を終わります。
○糸数慶子君 無所属の糸数慶子です。よろしくお願いいたします。
 私、刑事施設内における交通事犯者に対する再発防止のプログラムの充実について一点目にお伺いをしたいと思います。
 再発防止の観点からは刑務所内における処遇もまた重要です。平成十九年の刑法改正に当たり参議院法務委員会は、附帯決議の中で、自動車が移動や輸送の日常的な手段となっていることを踏まえ、交通刑務所等の矯正施設における安全運転に資する処遇プログラムの更なる充実を図る等、再犯防止策の一層の充実強化に努めることを求めていますが、法改正後に充実させた点、再犯防止の観点で効果が認められた点についてまずお伺いしたいと思います。
○政府参考人(西田博君) お答えいたします。
 現在、刑事施設におきましては、被害者の生命や身体に重大な影響を及ぼした交通事犯を起こした受刑者、それから重大な交通違反を反復した受刑者に対しまして、交通違反や事故の原因等について考えさせることを通じまして、遵法精神、責任観念、人命尊重の精神等を涵養することを目的といたしまして交通安全指導という改善指導を実施しております。
 この指導内容でございますけれども、講義あるいはグループワーク等によりまして、飲酒運転の危険性やその防止策、被害者、その遺族への謝罪や賠償の方法等について考えさせるといったものとなっております。
 処遇の充実強化という話がございましたけれども、これにつきましては、新たに飲酒運転事犯者対策としまして平成二十二年から、アルコール依存の問題を抱えている者に対しまして、一部の施設において民間自助グループの協力を得ましてアルコール依存回復プログラムを試行しているところでございます。
 また、交通安全指導の実施施設数でございますけれども、平成十八年度には二十庁でございましたけれども、順次これを拡大いたしまして、現在は五十四庁において実施しているところでございます。
 今後も、交通事犯受刑者に対するこういった指導につきましては充実強化を図ってまいりたいというふうに考えております。
 以上でございます。
○糸数慶子君 今回の法律案提出ですが、これは被害者団体からの要望が契機となっております。これ以上悲惨な交通事故を繰り返さないでほしいという思いが根底にあるからで、やはり刑務所内では特別改善指導として被害者の視点を取り入れた教育が行われていますが、その内容と効果について伺います。
○政府参考人(西田博君) お答え申し上げます。
 交通事犯者のうち、被害者の命を奪ったり、又はその身体に重大な被害をもたらすような犯罪を犯した者につきましては、交通安全指導に加えまして被害者の視点を取り入れた教育を実施しているところでございます。
 この指導は、自らの犯罪と向き合うこと、これは受刑生活を通じても大事ですけれども、犯した罪の大きさや被害者及びその遺族等の心情等を正しく認識させた上で誠意を持って対応していくことを目的として実施しているものでございます。指導に当たりましては、被害者及びその遺族の方々の実情を受刑者に正しく理解させるために、被害者やその遺族の方々、犯罪被害者支援団体のメンバー等をゲストスピーカーとして紹介しているところでございます。
 今後も、そういった方々の理解と協力を得まして、同指導の充実強化を図ってまいりたいというふうに考えております。
 以上でございます。
○糸数慶子君 ありがとうございました。
 次に、自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気を政令で定める際のプロセスについてでありますが、第三条第二項の自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気については、谷垣法務大臣の方から、政令で定めるに当たっては、医学に関する専門家から対象とする病気やその症状等について専門的な意見も伺った上で、対象とすべきものと適切に規定していきたいという旨の答弁がなされています。
 そこで、政令を制定するに当たっては、医学に関する専門家のほかにどのような方から意見を聞くことを想定しているのか、お伺いします。今回の法律案に対しても、患者団体からは懸念する意見が強く、患者団体からも意見を聞くべきであると考えますが、政令の制定のプロセスに患者団体も参加することになるのでしょうか、お伺いいたします。
○政府参考人(稲田伸夫君) 本罪の自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気を政令で規定する際には、対象とする病気やその症状などについて専門的な御意見を聞く必要があると考えております。ただ、現時点でどのような団体の御意見を伺うかまで決めているところではございませんで、今後、政令案の立案と並行して検討していきたいと考えております。
 また、政令の制定に先立ちまして、行政手続法の三十九条一項の定めるところに従いまして、国民から広く意見を募集するいわゆるパブリックコメントを行う予定にもいたしております。
○糸数慶子君 自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気に関しては、一度政令を定めたらそれで終わりということではなく、最新の医学的知見が反映されるよう必要に応じて見直しを行うことが求められます。例えば、本法施行後において、医学関係者や患者団体と意見交換をする場を設けることは考えているのでしょうか。
○政府参考人(稲田伸夫君) 先ほども御答弁申し上げましたように、三条二項の自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気を政令で規定する際には、専門的な御意見を聴取することにいたしているところでございます。この規定に際しましては、運転免許の欠格事由とされている病気の例を参考として定めていきたいというふうに考えているところでございます。
 いずれにいたしましても、この法律は、まさに今回の法律案において初めて導入する類型がこの三条二項の危険運転致死傷罪でございますことから、引き続き、運転免許の欠格事由の対象とされる病気の例を参考としつつ、しかもその運転免許の欠格事由の対象とされる病気の例の動向に留意しながら、本罪の適用状況などにつきましても更に注視をしていきたいと考えております。
 その上で、将来、医学的知見が変化するなどして道路交通法令におきまして新たな一定の症状を呈する病気が類型化され、運転免許の欠格事由に追加され、あるいは現行の欠格事由の一部が欠格事由とされなくなるなどの改正がなされる場合には、それを危険運転致死傷罪の対象とするかを含めて検討してまいりたいと考えておりまして、その際には改めて専門的な意見を聞くことになるものと考えております。
○糸数慶子君 この法律案が成立した場合、発作が再発するおそれがないとして適正に運転免許を取得できる者に対しても、自動車運転への過剰な萎縮効果を与えることになりかねません。一定の病気に起因する悲惨な事故を防ぐための措置が必要であるとしても、そのような事態が生じないよう患者団体に対しては法律の趣旨について丁寧に説明をするとともに、病名による差別、偏見が助長されないよう国民に対しても情報提供を積極的に行っていくべきであると思います。
 患者団体への対応並びに法律の趣旨及び内容の国民への周知に対して、具体的にどのような手法を考えていらっしゃるのでしょうか。谷垣大臣にお伺いいたします。
○国務大臣(谷垣禎一君) 御指摘のような懸念は生じないようにしなければならないわけでございます。まずは、政令等の決め方、専門家等の御意見をよく伺って適切、妥当なものにしませんと、今おっしゃったような懸念が生じてくる可能性がございます。まず差し当たってこれをしっかりやらなきゃいけません。
 それに加えまして、法律の内容あるいはその適用範囲等々につきまして、患者団体を、患者さんを含む国民一般に幅広く、患者さんに知っていただくだけじゃなしに、やっぱり国民一般に、ああ、そういうものなんだという理解をしていただくことが必要であろうかと思います。
 そこで、ちょっと疑問が起こったときには、やはり法務省のホームページにアクセスしていただくと、そこでよく分かりやすい適切な解説が書かれているということをまずしなければいけません。それから、通達等々でも意を用いまして、誤解ないし懸念の生じないように努めてまいりたいと考えております。
○糸数慶子君 ありがとうございました。
 第百八十三回国会におきまして、一定の病気等に係る運転者対策等を内容とする道路交通法の一部を改正する法律案が成立いたしましたが、その際、参議院内閣委員会は、これは附帯決議、平成二十五年の五月十六日の附帯決議の中で、一定の病気等に該当する者の生活実態について十分な把握に努め、一定の病気等に該当する者が社会生活上での不利益や支障を受けないよう、医療、福祉、保健、教育、雇用などの総合的な支援策を充実させることを政府に対して求めています。
 また、去る十四日木曜日に行われました参考人質疑の中で、日本てんかん協会副会長の久保田英幹さんからも、一昨年の栃木県鹿沼市での事故以降、電話相談の件数が大幅に増えていることに言及がありました。相談の中には、免許を取り上げられたら仕事ができなくなるだけでなく、田舎で暮らしていけないといった深刻なものもありました。てんかん患者などが病状を隠して運転免許を取得し自動車を運転しようとする背景には、免許がないと就職できない、免許が取り消されると失職してしまうのではないかといった不安、特に地方においては生活すら満足にできないといった事情もあると思われます。
 高齢者による交通事故を防ぐためにも、今後の超高齢化社会をにらんで、自動車がなくても生活ができる環境の整備を、これを国を挙げて進めるべきだというふうに考えますが、谷垣大臣に改めてこの件についてお伺いをしたいと思います。
○国務大臣(谷垣禎一君) 今、糸数委員がおっしゃったことは私も大変感ずるところがございまして、私のところは水害の常襲地帯なんですが、水害が起きそうだとなると、起こるようなところは、まず車を水のつからないところに避難させます。それは、公共交通機関が発達していない田舎では、車がなくなると後の生活がなかなかできなくなるから、すぐにまずそういう行動を取るということがございます。ですから、今委員が御指摘になりましたように、ある病気を抱えておられるような方が車をうまく使えないと生活していけないというお気持ちは、私も痛いほどよく分かるわけでございます。
 ただ、これは法務省だけでできるわけではございません。公共交通網をどうしていくか、過疎地の例えばバス体系等々をどうしていくかとか、いろんな問題がございますから、政府で衆知を尽くしていかなければいけないことだと考えております。
○糸数慶子君 ありがとうございました。
 交通事故を減らすためには、単に交通法規を重罰化したり処罰範囲を拡大したりするだけでは限界があるというのは、この議論を通して十分に分かるわけですが、平成十九年の刑法改正の際に参議院法務委員会は、附帯決議において、これは平成十九年四月十七日の附帯決議です、自動車事故の防止には、運転者の安全意識のみならず、道路交通環境の整備、自動車の構造改善、運転者の勤務環境の整備、さらに交通安全教育の充実など多面的、総合的に取り組む必要があることに鑑み、本改正と併せて関係機関等の更なる連携の強化を図り、必要な施策が一層総合的に推進されるように努めることということで、政府に対して求めております。
 今回のこの本法案の改正に関しましても、先ほども申し上げました患者団体あるいは被害者団体の広い意見を聴取して、改めてこの法律案に対する議論がなされました。また、私もこの法案に関しましては反対するものではありませんけれども、附帯決議などを通してなお一層のその充実を図ること、改めて政府に求めまして、私の質疑は終わりたいと思います。
 ありがとうございました。
○委員長(荒木清寛君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
 これより討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
○委員長(荒木清寛君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 この際、小川君から発言を求められておりますので、これを許します。小川敏夫君。
○小川敏夫君 私は、ただいま可決されました自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律案に対し、自由民主党、民主党・新緑風会、公明党、みんなの党、日本共産党及び生活の党の各派並びに各派に属しない議員糸数慶子君の共同提案による附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。
    自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。
 一 本法により新たに処罰対象となる罪の趣旨及び内容について、その周知徹底を図ること。
 二 第三条第一項の「走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態」、及びそれに対する本人の認識の程度の評価に関し、民間団体や関係学会・医療関係団体から意見を聴くなどして、その範囲が不当に拡大され、あるいは適用にばらつきが生じることのないよう留意すること。
 三 第三条第二項の危険運転致死傷罪の対象となる「自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるもの」を定めるに当たっては、民間団体や関係学会・医療関係団体から意見を聴くなどして、病気による症状と、運転技能及び交通事故との関係について吟味・検討した上で定めるとともに、本法施行後においては、最新の医学的知見が反映されるよう必要に応じその見直しを行うこと。また、同項の適用は、特定の病名そのものに対してではなく、その症状に着目してなされるものであることに鑑み、当該病気を有する者に対して不当な不利益が生じないよう本罪の趣旨及び内容の周知を徹底し、病気を理由とする差別を助長することがないよう努めること。
 四 無免許運転が自動車運転のための最も基本的な義務に違反した極めて規範意識を欠いた行為であることを踏まえ、第六条の無免許運転による刑の加重については、その施行後の適用状況を検証し、悪質な無免許運転による死傷を危険運転致死傷罪に含めることについても検討すること。
 五 悪質な無免許運転による死傷を危険運転致死傷罪に含めることとする場合には、無免許運転の態様を把握するため、警察の免許管理システムの変更等を検討すること。
 六 飲酒運転後のひき逃げの防止を強化するため、第四条の過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪の施行後の適用状況の検証を行い、その法定刑等の在り方についての更なる検討を行うこと。
 七 過労運転による重大な死傷事故を防止するため、その処罰の在り方や法技術的な観点も含めた総合的な検討を行うこと。
   右決議する。
 以上でございます。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
○委員長(荒木清寛君) ただいま小川君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
○委員長(荒木清寛君) 全会一致と認めます。よって、小川君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 ただいまの決議に対し、谷垣法務大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。谷垣法務大臣。
○国務大臣(谷垣禎一君) ただいま可決されました自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律案に対する附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。
○委員長(荒木清寛君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(荒木清寛君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後零時三十分散会