第185回国会 外交防衛委員会 第9号
平成二十五年十一月二十八日(木曜日)
   午前十時開会
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   委員の異動
 十一月二十七日
    辞任         補欠選任
     清水 貴之君   アントニオ猪木君
 十一月二十八日
    辞任         補欠選任
   アントニオ猪木君     儀間 光男君
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  出席者は左のとおり。
    委員長         末松 信介君
    理 事
                佐藤 正久君
                松山 政司君
                脇  雅史君
                福山 哲郎君
                石川 博崇君
    委 員
                宇都 隆史君
                岡田 直樹君
                小坂 憲次君
                牧野たかお君
                三木  亨君
                北澤 俊美君
                白  眞勲君
                藤田 幸久君
                牧山ひろえ君
                河野 義博君
                小野 次郎君
                中西 健治君
                井上 哲士君
                儀間 光男君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        矢嶋 定則君
   参考人
       東京大学先端科
       学技術研究セン
       ター客員研究員  川島  聡君
       特定非営利活動
       法人DPI(障
       害者インターナ
       ショナル)日本
       会議事務局長   尾上 浩二君
       社会福祉法人全
       日本手をつなぐ
       育成会理事長   久保 厚子君
       日本障害フォー
       ラム(JDF)
       幹事会議長    藤井 克徳君
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  本日の会議に付した案件
○障害者の権利に関する条約の締結について承認
 を求めるの件(内閣提出、衆議院送付)
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○委員長(末松信介君) ただいまから外交防衛委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 昨日までに、清水貴之君が委員を辞任され、その補欠としてアントニオ猪木君が選任されました。
 また、本日、アントニオ猪木君が委員を辞任され、その補欠として儀間光男君が選任されました。
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○委員長(末松信介君) 障害者の権利に関する条約の締結について承認を求めるの件を議題といたします。
 本日は、参考人として、東京大学先端科学技術研究センター客員研究員川島聡さん、特定非営利活動法人DPI(障害者インターナショナル)日本会議事務局長尾上浩二さん、社会福祉法人全日本手をつなぐ育成会理事長久保厚子さん及び日本障害フォーラム(JDF)幹事会議長藤井克徳さんに御出席いただいております。
 この際、参考人の皆様に対し、本委員会を代表して一言御挨拶を申し上げます。
 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。
 皆様から忌憚のない御意見をいただきまして、今後の審査の参考にさせていただきたいと存じますので、よろしくお願いをいたします。どうぞ、気楽によろしくお願いします。
 議事の進め方について申し上げます。
 まず、川島参考人、尾上参考人、久保参考人、藤井参考人の順にお一人十五分以内で順次御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
 御発言の際は、その都度委員長の許可を得ることになっておりますので、御承知おきください。
 また、参考人、質疑者とも発言は着席のままで結構でございます。
 それでは、まず川島参考人にお願いいたします。川島参考人。
○参考人(川島聡君) お願いします。川島と申します。
 私、レジュメを準備させていただきまして、A4で一枚となっております。そして、番号が一から十三まで振ってあります。一番から順番に御説明したいと思います。
 まず、一番ですけれども、この条約は二〇〇六年十二月に国連総会で採択されまして、二〇〇八年に発効しました。日本政府は、二〇〇七年九月にこの条約に署名しました。二〇一三年九月二十七日時点で締結数は百三十八、署名数は百五十八となっております。
 次に、二番目ですけれども、この条約は二つの大きな特徴があります。一つは、医学モデルから社会モデルへの転換となっております。医学モデルというのは、障害のある人々の不利の原因を障害に還元させるという視点です。これに対して社会モデルというのは、障害のある人々の不利の原因を障害と社会との関係の中に求める視点です。特に、社会の問題を強調するというところに社会モデルの特徴があります。
 次に、三番目ですけれども、日本が批准し公布した条約は国内法としての効力を持ちます。そのため、障害者権利条約は、批准されて公布されますと憲法より下位で法律よりも上位の位置にある国内法になります。そうしますと、条約を批准するためには、条約の規定と現行の国内法令との抵触を回避する必要があります。
 そうなりますと、四番目に、日本の国内法はどのように整備されてきたかということが問題になりますが、二〇一一年七月の改正障害者基本法、そして障害者虐待防止法、障害者優先調達推進法、障害者総合支援法、成年後見人選挙権回復改正法、改正障害者雇用促進法、障害者差別解消法、学校教育法施行令の一部改正の政令等、この間非常に多くの国内法の整備をしてきましたので、条約の批准にとって必要な国内法の整備は既に済んでいると私自身は思っております。
 次に、五番目ですけれども、現在日本において障害者権利条約がどの程度周知されているかという調査結果が内閣府から出されています。それによりますと、この障害者権利条約を知っている人々の割合は全国で一八%だということになっております。そして、条約の内容を含めて条約のことを知っている者の割合は全国で二・二%ということになっております。そして、ちなみにといいますか、障害者に対する差別と偏見がまだ日本にあると思う人は八九・二%もおられるということです。つまり、差別は非常に多くあるけれども、条約のことを知っている人はほとんどいないということになっております。
 次に、六番目ですけれども、政府訳の課題ということですが、この条約では、十九条の(a)というところで、障害者が特定の生活施設で生活する義務を負わないという規定があります。特定の生活施設という言葉は日本政府が訳した言葉ですけれども、この英語はア・パティキュラー・リビング・アレンジメントとなっております。この言葉は、私自身は特定の生活様式あるいは特定の生活環境と訳すべきだと思っております。といいますのも、この十九条(a)の規定は、障害者が障害者福祉施設で生活義務を負わないということのみならず、親や家族と生活する義務も負わないし社会的入院のような形で生活する義務も負わないという、広く障害のある人が自由に自分の生活を決めていくことを定めたものですので、施設に入所されないという義務だけじゃなくて、もっとより広い意味内容を含んでいると理解されるからです。
 次に、七番目から八、九、十番目までは、この条約の若干解釈に問題がある言葉の意味を説明したいと思いますけれども、まず、七番目の法的能力、リーガル・キャパシティーという言葉ですけれども、これは十二条二項で書いてあります。この法的能力という言葉は、権利能力と行為能力、両方含んでいるというのが今日では確立した解釈となっております。権利能力は、権利義務の主体となり得る資格で、これは出生の後死ぬまで誰しもが持てるものです。これに対して行為能力は、単独で有効な法律上の行為をなし得る資格を意味しまして、これは行為能力を制限される、取消し権を付与される成年後見人が付いた成年被後見人は行為能力が制限されるということになります。
 次に、八番目の、十九条の見出しの自立した生活、リビング・インディペンデントリーという言葉について説明します。この自立した生活という言葉は、障害のある人々が何ら支援を受けないで生活を独力で行っていくという意味ではなくて、むしろ、必要な支援を受けながら地域社会で生活様式を自由に選択して生活することを意味します。そのため、この自立というのは、日常生活動作を自分で一人でできるとか経済的に自活していくとか、そういう意味で自立した生活という言葉が使われているわけではなくて、ここでの自立は、支援を受けた上で自分なりの生活を築いていくという、そのような自己決定の意味が入っている自立した生活という言葉になっております。
 九番目に入りますけれども、障害者を包容する教育制度という言葉があります。これは英語ですとインクルーシブ・エデュケーション・システムとなっています。インクルーシブという言葉を包容するという言葉で訳しているわけです。この障害者を包容する教育制度の意味ですけれども、これは、障害者のニーズに配慮しないで障害者をただ学校の中に配置する、そのような同化と同じような統合教育をただ意味するのではなくて、それぞれの障害者のニーズを配慮しながら一緒に学べるような普通学校の制度を意味していると解されます。この理解も今では確立した理解だと思われます。
 次に、十番目のあらゆる形態の雇用という文言ですけれども、これは、オール・フォームズ・オブ・エンプロイメントという英語の訳です。この文言は、雇用という言葉があるんですけれども、通常の一般的な就労のほかに福祉的就労という形態も含まれるという理解がされております。
 そして、次に十一番目、報告制度に入りたいと思いますけれども、そもそも国内法とこの障害者権利条約とが完全に合致した上で条約を批准するということは現実にはあり得ません。国連の障害者権利委員会の監視活動などを通じて、絶えず国内法は権利条約に合致するように改善されていくということが本来この条約が予定していることです。そのため、この条約を批准した国は、批准から二年以内に報告書を国連に提出します。その後は四年ごとにこの報告を国連に提出するという形になります。このような継続的な報告制度というものを通じて国内法が少しずつこの条約の内容に合致していく、中長期的な条約実施プロセスというものがこの条約が予定しているものです。
 続いて、十二番目に入りますけれども、この条約の作成過程では、障害当事者参加というものが原則とされていました。これは、有名な言葉ではナッシング・アバウト・アス・ウイズアウト・アスという言葉でして、私たちを抜きにして私たちのことについて決めないでくださいと、そのような意味になっております。そのため、この条約を作る過程では障害のある人々が積極的に参加して、障害のある人々の意見が八割方入った条約が実現しました。そして、この条約の実施過程、実現過程においてもこの当事者参加の原則は非常に重要なものだと条約自体が予定しています。それは条約の四条三項、三十三条三項などで、この条約を実現する過程では障害のある人、障害者団体が積極的に関与しなければならないということが国に義務付けられているわけです。
 そして、最後になりますけれども、十三番目として、先ほど申し上げましたが、批准時の完全な国内法整備は、これはもとより現実的に不可能です。日本の現状を見ますと、先ほど申し上げましたとおり、国内法はかなり整備されてきていると思われます。そして、批准のための最低限の条件はもう満たしたというふうに私は理解しております。そして、この国会で批准を承認した上で、後の二年後、そしてそれ以降は四年後の報告制度等を通じて、当事者参加の下で引き続き国内の法と政策をこの条約に合致させていくという、そういうようなプロセスが現実的に妥当なシナリオではないかと思っております。
 私からの話は以上です。ありがとうございました。
○委員長(末松信介君) ありがとうございました。
 次に、尾上参考人にお願いいたします。尾上参考人。
○参考人(尾上浩二君) どうもありがとうございます。
 私の方では、今日の発題のレジュメとあと幾つか資料をお持ちしております。
 今日、歴史的な機会と言っていいようなこういう場にお招きをいただきましてありがとうございます。私、DPI日本会議の事務局長をしております尾上と申しますが、DPI、名前の示すとおり、障害当事者団体の国際組織、その日本支部でございます。日本国内の身体障害、知的障害、精神障害、そういう障害種別を超えた全国八十八の団体が加盟をしています。そういう立場から、以下述べたいと思います。
 まず、批准に際してなんですけれども、二〇〇九年からの当事者参画による取組、そういう中で、二〇一一年の障害者基本法の改正、そして二〇一二年の総合支援法や虐待防止法の制定、そして更に今年の六月に障害者差別解消法の成立ということで、本当にこの間、当事者を交えた形でこういった法律を作っていただいたこと、これは私ども本当に心より感謝をしております。その上でしっかりと、言わば国際社会に胸を張って批准ができるんだなというふうに思っています。この点、私ども国内のものだけではなくて、ESCAP、国連アジア・太平洋経済社会委員会など、国際的にも評価されているということを御紹介をしておきたいと思います。
 そういう意味で、是非早期の批准をこの国会でお願いをする次第でありますけれども、と同時に、その批准というのは新しいプロセスへのスタートであってほしいなというふうに思うんですね。条約批准を機に、その条約が示している内容、その完全実施に向けて更に更に大きな前進を進めていく、そのスタートラインになるべきだというふうに思っています。
 例えば、この間整備されてきた法制度の中にも、もちろんそれぞれは評価できるわけですが、様々な課題がございます。例えば総合支援法は、三年後見直しをもってしっかりやって初めてその真価が発揮できる法律になっています。また、障害者基本法では、この権利条約が示している社会モデルに基づいて包括的な障害者の定義をしたわけですけれども、まだまだ難病と制度の谷間に置かれている方々の課題が重く大きく残っております。
 そういったことも含めて、是非この権利条約批准ということを機に超党派で、かつ、ナッシング・アバウト・アス・ウイズアウト・アス、障害当事者をしっかり交えた形で、更に更に大きな前進のスタートとして一緒にこれからの歩みをつくっていきたいと思うわけです。その立場から課題を申し上げます。
 障害者権利条約では、たしか三十三回か四回ほど他の者との平等という言葉が出てきます。他の者、障害のない人と平等に、つまり、障害者に特別な権利をということではなくて、障害のない人だったら当然に享受しているその権利を障害者も享受できるようにしようということがそのコンセプトであります。
 その点から、まず一つ目が障害に基づく差別の禁止ということで、差別解消法が成立をし、私ども高く評価をしているところですが、同時に、やはり宿題があるわけですね。
 一つは、紛争解決の仕組みであります。差別事例に関して、本当に差別というのは、もう一刻も早く救済、紛争解決されることが必要になるわけですが、その点、この紛争解決のための機関を設置するということは今後の課題ということになっています。この点、障害者権利条約第三十三条の障害者の権利の促進、保護、監視に関係をしているということを御指摘をしておきたいと思います。
 そして二つ目に、障害を理由とする差別の定義ということで、今回、障害者基本法に定義されているということで差別解消法に定義を設けなかったわけですけれども、当然、この権利条約の批准によって、先ほど川島参考人の方からもありましたとおり、言わば憲法に次ぐ法律の位置を占めるわけですから、この権利条約の示している差別の定義を言わば踏まえた形でやはりこの法律の中に埋め込んでいただきたいということです。
 そして、次のページでございますが、合理的配慮義務ということですが、差別解消法では民間事業者については努力義務ということになっています。ただ、合理的配慮というのは過度な負担を超えないものというふうになっていますので、そもそもそういった規定があるということからすれば、努力義務という形ではなくて義務化をすべきだというふうに思うわけです。これ三年後見直しということがありますので、その中で、この権利条約批准後になるわけですから、是非こういったことを進めていきたいなと思います。
 そして二つ目が、女性障害者についてです。権利条約の第六条では障害のある女性条項がございます。今日、新聞記事やその新聞記事の基になった報告書の概要版をお持ちをしておりますが、これはDPI女性障害者ネットワークの方で、障害を理由にした差別、そして女性差別、複合的差別と申しますけれども、その複合的差別についての調査報告書でございます。女性障害者のお答えになられた三割が性的被害に遭っている。読んでいるだけで本当に身につまされる思い、重たい報告でございます。その複合的差別というのは、障害者差別と女性差別のプラスというよりは掛け算に近い重さだなというふうに思っています。是非、この点、まだこういった形の調査というのは民間団体でしかやっていないですね。政府での調査、あるいは今後の施策ということをしっかりとしていただきたいというふうに思います。
 そして三つ目が、情報コミュニケーションの保障であります。今日も傍聴席の方で手話通訳や要約筆記、そういった形で情報コミュニケーション、情報保障を得て傍聴されている仲間がおられます。この点、権利条約第二条では手話は言語であるということ、そして、障害者基本法の改正で言語の中には手話を含むということが明記されています。それを踏まえた形での今後の施策の整備をお願いをしたいというのが一点です。
 そしてもう一つは、権利条約の第二条にはコミュニケーション、意思疎通についての定義があったり、そして第九条にはアクセシビリティー、建物や交通機関だけではなくて情報へのアクセシビリティーということも含まれています。交通バリアフリー法はあるわけですが、残念ながら、この情報コミュニケーションに関するしっかりとした整備をしていく法律がまだございません。こういったことも今後の課題になっていくかなと思うわけです。
 そして、四つ目に権利条約第十二条、先ほどの法的能力ということですが、その点から見たときに、やはり代理制度となっています成年後見制度を抜本的に見直しをしていく必要がまず一つあります。先日の国会で、この参議院選挙からですね、今年の、成年被後見の方も選挙権が得られるようになったわけですけれども、選挙権が行使できるようになったわけですけれども。ただ、いまだに被後見の方は、例えばNPO法人や社福の理事にはなれません。あるいは公務員試験を受けることすらできないといった状況にあります。そして、そもそもこの権利条約第十二条では支援付きの自己決定ということが言われていますので、言わば支援付き自己決定を可能ならしめるような支援制度を是非検討いただければなというふうに思うところであります。
 そして五番目ですけれども、地域における自立生活、ちょっと時間の関係で六番のインクルーシブ教育、この両方をまとめてお話をしたいと思いますが、地域における自立ということにつきまして、障害のない人と平等にどこで誰と住むか選択できるということで、先ほどもありました特定の生活様式が義務付けられないというふうに、言わば地域で自立する権利を定めた第十九条というのがございます。それからしますと、社会的入院という病院やあるいは入所施設での生活を余儀なくされている障害者の地域移行は国の義務ということになります。
 あるいは、六つ目ですけれども、次のページですが、インクルーシブ教育ということにつきましても、今まで入口を分けていたのが、総合的判断というふうにはなっていますが、まだまだ、これまで障害のある子とない子を分けるということを原則にしてきたことからしますと、大きく転換が求められていくところでございます。特に、全ての障害のある児童が、子供さんが必要な合理的配慮を得ながら、例えば地域の学校で学べるのか、そういった検証が必要になってきます。
 この点、今日の資料の四ページに付けていますけれども、国連人権高等弁務官事務所というところが二〇一〇年に出しましたこの権利条約のガイダンス、モニタリングのためのガイダンスということを出しました。今日も来られています立命館の長瀬さんの仮訳を使わせていただいておりますけれども、例えばどういうことがこの締約国には求められるかということで、四ページの真ん中ぐらいを見ていただきますと、障害のある人は他の者との平等の選択の自由をもって地域社会で暮らす権利を持っているか、そしてそのために、国は、障害のある人が、他の者との平等を基礎として、居住地及びどこで誰と生活するか選択する権利を認める法的保護があるか、あるいは、その次ですが、特定の生活様式を強制されないことを確保されるための法的保護があるか等々、こういった部分、まだまだ欠けております。
 特に、障害者基本法では、地域における共生ということが第三条には明記いただいたんですが、可能な限りという言わば不必要かなと思う条文がいまだに残っております。是非、この点、権利条約の批准と併せて今後見直しをしていただきたいところですし、次の五ページのところ、教育のところも、障害のある人はあらゆる段階におけるインクルーシブ教育が利用できるかということ、そしてその次、法律は明示的にインクルーシブ教育への権利を認めているか、あるいは、一つ飛んでその次ですが、国は障害のある生徒が就学を義務付けられている分離学校制度を維持しているか、こういったことが今後、権利条約の批准に伴ってモニタリング、監視されていかなければなりません。
 そして、それとの関係で、最後ですけれども、七番目、国内実施ということで、権利条約の第三十三条に国内実施機関ということがありますが、とりわけ障害当事者を交えた形での監視、モニタリングというのが非常に重要だろうと思っているわけですが、その点、二〇一一年の障害者基本法の改正で設置されています障害者政策委員会を更に更に充実をさせていただきたいなと。
 いろんな、今は障害者基本計画の議論や差別解消法の基本方針の議論を進めてきておりますけれども、例えば先ほどの障害のある女性の複合的差別、そういったことを明らかにしていくためには、今後更にいろんな統計調査や様々な研究が進められていかなければなりません。そういう調査、統計、そういったこともこの政策委員会でしっかりとそういう報告をいただいて議論ができるような、政策委員会が監視という非常に重要な機能を果たせるような形で、バージョンアップといいますか、活性化をお願いをしたいと思います。
 是非、今回の国会で権利条約を批准をいただき、十年後振り返ったときに、ああ、あのとき批准してよかったなと思えるような展開を、これから私ども、障害当事者団体も共にですが、超党派の皆さん、一緒につくっていただければなということを最後にお願いして、私の発言に代えさせていただきます。
○委員長(末松信介君) 尾上参考人、ありがとうございました。
 次に、久保参考人にお願いいたします。久保参考人。
○参考人(久保厚子君) 本日は、意見陳述の機会をいただき、大変ありがとうございます。
 知的障害者を含む家族の組織であります社会福祉法人全日本手をつなぐ育成会を代表して意見を申し上げさせていただきます。
 冒頭でまず、障害者の権利に関する条約の批准に関して、本会といたしましては強く賛同する立場であることを申し上げます。
 御承知のように、我が国は二〇〇七年九月二十八日の署名以降、署名国という立場で権利条約の実施に努めてまいりました。また、批准の前に条約に沿った方向に障害者施策を進める作業に誠実に取り組んできました。本年六月の障害者差別解消法の成立で条約の実施のための制度改革が一段落したことを受けて、条約締結の条件は整ったと考えております。今後は、締約国という立場で一層国際的な実施の枠組みで更なる条約の実施に取り組むべきだというのが本会の立場でございます。
 本会は、国際的にはインクルージョンインターナショナル、日本語では国際育成会連盟ですが、この国際的な知的障害者と家族のネットワークを通して条約交渉に参加をしてまいりました。本会は国際育成会連盟のアジア太平洋理事国の立場にありますが、同じくアジア太平洋のニュージーランドのロバート・マーティンさんという知的障害のある理事が国連の特別委員会では積極的に発言をしてくださいました。国際育成会連盟の代表として知的障害のある方が発言され、条約の交渉にも大きな貢献をされたことは私たちにとりましても誇りに思うところでございます。
 しかし、それは話ができる知的障害者、コミュニケーションが取れる知的障害者だけが大切ということではありません。自ら主張していくことが難しい知的障害者もたくさんおられます。そうした方々の権利をも守るためにも、知的障害者と家族が一緒になって取り組むというのが本会の基本姿勢でございます。
 障害の違いや軽重を問わず、人として等しく見てほしい、それが親としての私たちの願いでもあります。どのような障害があっても、自らの意思に基づいて他の障害のない方たちと同様の生活を送っていくこと、そうしたノーマライゼーションに基づいた方向性は、私たちとしても、あるいは我が国の福祉施策としても目指すところであり、その流れの中で今回の権利条約の締結も位置付けられるものと考えております。
 なお、家族に対して条約の前文は、世界人権宣言や子どもの権利条約を踏まえて、締約国は「家族が、社会の自然かつ基礎的な単位であること並びに社会及び国家による保護を受ける権利を有することを確信し、また、障害者及びその家族の構成員が、障害者の権利の完全かつ平等な享有に向けて家族が貢献することを可能とするために必要な保護及び支援を受けるべきであることを確信し、」としています。ここで述べられているように、障害者の権利確保のために家族への支援が重要だと条約が述べている点に是非目を向けていただきたく存じております。
 本人と家族の組織として、私どもとしましても、知的障害者向けに条約について分かりやすく解説した書籍を発行したり、知的障害者向けの新聞で取り上げたりするなど、条約に関する周知と理解促進に取り組んでまいりました。こうした分かりやすい情報提供は、差別解消法が求める知的障害者にとっての合理的配慮ともなります。
 様々な障害福祉に関する法制度が整った今、権利条約の批准が待たれますが、しかしながら、条約批准は決してゴールではありません。これからは、批准した国、締約国という立場で、国内そして国際的なモニタリング、つまり実施状況の確認が進められることになります。批准して日本に関して効力が発生してから二年以内に実施状況に関する報告書を出さなければなりません。それに対して、国連の障害者の権利委員会から厳しい審査をしていただくことになります。こうした国際的な指摘にこたえていくことは、一面においては困難を伴いますが、我が国の障害者福祉施策の前進にとっても大きな意味を持つものと期待をしております。
 振り返ってみれば、障害者基本法や障害者自立支援法の改正、障害者虐待防止法や障害者総合支援法、そして障害者差別解消法の成立、あるいは私たちの仲間である知的障害のある女性が原告となって裁判を闘った結果として得られた公職選挙法の改正による成年後見制度の被後見人の選挙権回復といったここ数年の障害者福祉施策における改革は、権利条約の理念を意識して、あるいは結果としてその方向性に沿って行われてきたものです。選挙権の回復については、全国の育成会会員や協力者の皆様から、原告の方々を応援し、被後見人の選挙権回復を願って四十一万筆もの署名をいただきました。この場をお借りしてお礼を申し上げたいと思います。
 この度、権利条約が批准されることとなれば、私たちの子供を含む知的障害のある人たちの生活や権利について、これまでの制度改革も含め、権利条約の理念の中で、我が国の社会あるいは国民の皆様に理解していただいたものとして、より確かに考えることができます。それは、私たち親が、子供が必要な支援を受けて豊かな社会生活を送ること、笑顔で安心できる幸せを感じるという、願う上で大変心強いものになります。先ほどの四十一万人分の署名は、私たち家族や関係者のこうした願いが実現することへの希望の表れではないかとも思っております。
 また、諸外国に向けては、権利条約の批准国として、その理念を受け入れ、障害福祉増進や権利の向上に努めていることを打ち出すことができます。それは、海外の私たちの仲間、知的障害のある人やその家族にとっても一つのよりどころとなると考えます。条約の批准国として国際的な実施の一翼を担うべきであり、一定の責任を果たす必要が出てくると考えております。
 このようなことから、権利条約の批准は、やはりゴールではなくスタートであると考えます。今月公表されました障害者虐待防止法に関する報告によれば、多くの知的障害者が虐待に遭っている状況も見えてきています。これは、障害に対する理解が浸透していないことに加え、特に家族による虐待の場合に言えますが、知的障害のある人や家族に必要な支援がきちんと行き届いていないことの表れでもあると言えます。
 また、近年目覚ましく伸展している障害者の就労については、仕事に就くことだけでなく、その仕事を継続していくための支援が課題となっています。そこには、障害特性に合わせた適切な職業訓練や障害特性を理解した職場の環境整備、あるいは権利条約にも位置付けられている合理的配慮の提供をいかに進めていくかといった問題が横たわっております。
 加えて、成年後見制度自体のありようなど、知的障害のある本人の視点に立った意思決定支援や主体性の担保については、我が国の現状においてより一層の議論が必要ではないかと考えております。知的障害者の主体性を尊重し、その意思決定をどのように支援していくかは、あらゆる障害福祉施策にとっても大きな課題となっています。
 そのほかにも、インクルーシブ教育の実現、住まいの在り方を始めとする地域生活、医療や健康、アートを始めとする文化的な生活など多くの課題があり、それぞれに我が国として取り組んでいくべきものであると考えております。
 今月のことになりますが、本会は年一回の全国大会を大分県で開催いたしました。そこには、韓国と中国からも親や支援者の参加をいただきました。権利条約の実施を通じて知的障害者の権利を守ろうとする仲間です。条約の批准を行い、そうした世界の仲間との協力を一層進めるべきときが来ていると実感しています。
 最後になりますが、条約の実施を更に進めるために、一刻も早い批准、締結を全日本手をつなぐ育成会として求めることを繰り返させていただきまして、私の意見を終わらせていただきます。御列席の委員の皆様方の御理解、御尽力をいただければ幸いでございます。
 御清聴ありがとうございました。
○委員長(末松信介君) 久保参考人、ありがとうございました。
 次に、藤井参考人にお願いいたします。藤井参考人。
○参考人(藤井克徳君) お手元の私の発言の骨子と、それから資料集を参照願います。
 私は、日本障害フォーラム、JDFの立場を代表して発言させていただきます。
 JDFの紹介はお手元の資料にございますので割愛させていただきます。なお、その資料集の中にJDFとこの権利条約との関係についても資料が入ってございます。御覧ください。
 今、この障害者の権利条約の批准が近いという中で、私は二つのシーンが思い起こされます。
 一つは、国連でのこの権利条約の審議の特別委員会の最終日の光景であります。二〇〇六年八月二十五日、この日は金曜日でした。時計の針は午後、二十時をちょっと回る前だったんですけれども、このときに、全会一致で特別委員会としての採択がなされました。その瞬間、大きな歓喜の声、そして足踏み、口笛、これが議場全体を埋め尽くしました。私は目が見えませんものですから、この議場の揺れ動く空気、これを感じておりました。恐らく、そこに居合わせた者の全てが新しい時代の到来を予感したと思います。
 もう一つのシーンというのは、これは二〇〇九年の三月五日の緊迫した一日でした。翌日の閣議決定を目前にして、この条約の締結の承認を求める案件、これをめぐって大きな変化がありました。結果的には、与党の勇断をもって、政府の勇断をもって閣議の案件から外されました。今にして思えば、あの後の障害者政策の推移をずっと見ていきますと、やはりあの判断は誤っていなかったというふうに思います。この場を借りて、当時の関係者の勇断に感謝を申し上げます。
 さて、私はここでJDFを代表しまして改めて申し上げます。それは、今国会において、この権利条約の批准を何としても実現してほしいということを申し上げます。
 無論、今までもありましたように、現行の国内法制が全て条約の水準を達したとは思えません。また、公定訳、この翻訳に関しても問題があるというふうに思っております。むしろ、まだまだ課題がいっぱいあるというふうに考えていいと思います。
 しかし、制度改革のこの間の経緯の中で、私たちは懸命にこの条約とのギャップをうずめてまいりました。そして、むしろこの段階では、条約に法的な効力を持たせていく、あるいは政治的な効力を持たせていく、このことがこの国の障害者政策の発展には近道であるという判断に立ちました。そういう点でいうと、要件を完全に満たしたという意味ではなくて、むしろ期待を込めてこの批准を促進してほしい、これが私たちの、あるいは全国の障害関係者の偽らざる心境だと思います。
 本論に入りますけれども、私は私なりにこの条約の総括的な観点を述べたいと思います。時間の制約もありますので、二つに絞ってこのすばらしい面を述べたいと思います。
 一つは制定過程におけるすばらしさです。
 先ほどもありましたように、ナッシング・アバウト・アス・ウイズアウト・アス、私たち抜きに私たちのことを決めないで、このことを国連の議場で実践したわけです。本来、条約の制定というのは政府間交渉でありますので民間が入る余地はないと思いますけれども、国連の特別委員会は、権利条約の主人公である障害当事者の代表を発言に招いてくれました。この国連の議場にしみ入るようなナッシング・アバウト・アス・ウイズアウト・アス、これは私たち日本の二百人を超える傍聴団、派遣団の耳に響き、これは本物だという実感をだんだん深めてまいりました。
 もう一つ、これは内容面のすばらしさです。
 先ほども尾上参考人からもありましたけれども、他の者との平等を基礎として、このフレーズがしきりに繰り返されます。私の計算では三十四回繰り返されています。そして同時に、このフレーズはこの条約の全体に通底している心棒のようなものだと考えております。この条約には、障害者に特別の権利あるいは新しい権利ということは一言も触れていません。専ら繰り返しているのが一般市民との平等性であります。このフレーズこそがこの条約の生命線であろうと、私たち障害当事者からしても我が意を得たりの思いを強くし、この上ない共感を覚えます。
 この他の者との平等を基礎としてということから見て、我が国の実態を少し考えてみたいと思います。つまり、一般市民とまだまだ格差がある実態について、四点ばかりかいつまんで紹介させていただきます。
 第一点目は、あの東日本大震災において、障害者の死亡率が全住民の死亡率の二倍に及んだことであります。
 あれほどの震災であり、ある程度の被害はやむを得ないでしょう。しかし、二倍というのは余計な数値であります。天災という要因の上に障害での不利益をもう一枚重ねたこの障害ゆえの不利益を、私たちは天災とは区別して人災と呼びたいのです。東海、東南海トラフの中で新しい震災が心配されています。また、異常な大規模台風によって風水害も現実味を帯びつつあります。まず政府はこの二倍という数の検証を進めていただき、条約の発効後、この二倍の不利益がないようにしていくということを求めていきたいと思います。
 二つ目の問題現象、一般の市民とは違う問題現象を紹介します。それは、障害者の所得が異常に低いということです。一つの実態調査を基にして説明させていただきます。
 調査主体はきょうされんであります。全国社会就労センター協議会の協力等を得まして、福祉的就労に従事している者一万人余のデータを集約しました。これによりますと、障害基礎年金、そして作業所の工賃、また親の仕送り、小遣い等を合わせて、全ての年収がこの国の相対的貧困線、百十二万以下という年収ですね、これを割っている者が八五%に上ります。国民全体の貧困率は一六%、これから見ると余りにも低いと言わざるを得ません。
 と同時に、もう一つ深刻なのは、こういう異常な低収入の中で、結局は家族依存、あるいは家族負担で地域生活が維持されている。二十代で九〇%が家族同居、三十代で七七%が家族同居、四十代で六三%が家族同居、五十代にして、もう親も超高齢です、なお三六%が家族同居という状況にあります。これは、先ほど川島参考人が言っていました第十九条の内容と、恐らくこれに抵触すると思います。
 三つ目の問題現象は、社会的入院、社会的入所の問題であります。
 今日は、社会的入院、精神障害者の、これに焦点を当てようと思います。この社会的入院の要因の一つである在院日数、これが非常に長い。お手元の資料でいいますと、お手元の資料の九ページに書かれています。一番新しい厚労省の病院報告の調査によりますと、精神科の平均在院日数は二百八十三・七日、これに対して一般病床、一般病院の一般科の平均在院日数は十六・七日、これを見ても異常に長いことがお分かりかと思います。あのナイチンゲールがかつて言いました、致命的な病気の大多数は病院でつくられると、まさにそういう感じを受けるわけであります。
 さらに、この社会的入院の大きな温床の一つは、やはり病床数が多いということであります。お手元の資料にも、これは八ページになりますけれども、このようにして異常に多い病床数がほぼ横ばいでこの間何十年も変わっていないということであります。これらも第十九条に抵触するのではないでしょうか。
 さらに四つ目には、一般の市民との格差だけじゃなくて障害種別間の格差が、あるいは障害の中での格差があるということであります。これは谷間の障害と言われている問題。高次脳機能障害、発達障害、難病等については、まだ完全には障害者施策には包含されてはいません。難病につきましては、特に医療面では一部障害者施策に入ったとはいっても、また別なコースを歩まざるを得ない状況が近づきつつあります。
 また、お手元の資料の最後のページ、十ページになりますけれども、同じ障害者でも、一般雇用と福祉的就労では二十倍もの工賃、賃金の差があります。さらに、JR運賃等の交通費等の割引制度は、精神障害者等は置き去りにされております。
 こうして、障害の種別やあるいは程度別、男女別の格差がありましたけれども、昨今では年齢による格差がまた顕在化しつつあります。とりわけ十八歳以下の障害児に対しては不十分な面が多いと言われていましたけれども、加えて、六十五歳を超える障害者の問題が深刻化しつつあります。六十五歳を超えますと、障害者政策が消える、高齢者政策に言わば併合させられる、こういう問題も起こってきています。
 以上、こうして述べてきたように、様々な障害者をめぐる問題がございますけれども、こういった問題に対して、近々批准される、あるいは発効後の権利条約がこれにいかに効果的にこたえられるか、これは大きな期待を集めております。
 最後に、この条約の発効後、速やかに取り組むべきテーマを三つばかり述べさせていただきます。
 一つは、第三十一条ですね、条約の。ここには何があるかといいますと、統計、そして資料の収集。この国の障害分野の資料は極端に貧困な状況に置かれています。少なくとも一般市民の生活水準との比較、また、日本と同じような力を持っている、経済力を持っている国の障害者政策との比較、さらには過去との経時的な比較、そして何より障害当事者のニーズとの比較、これらが可能になるような調査あるいはデータの集積を求めていきたいと思います。
 さらに、この国には統計法という法律があります。残念ながら、この統計法に基づく正規の調査は一度も障害分野は行われてはいません。是非、統計法にのっとった正規の調査をこれも行う必要があるのではないでしょうか。
 二つ目は、先ほど尾上参考人が言っていましたように、第三十三条、これは条約の実施及び監視であります。この中で、とりわけ条約履行後の実施の促進、保護、監視、一体これはこの国のどの行政部署が担うんでしょうか。当面は障害者政策委員会、障害者基本法にのっとっています、これの改正を含めて、ここを強化していくことを希望いたします。と同時に、内閣における障害担当部署の予算面と人員面の裏打ちを含めた体制強化を希望いたします。
 三点目、これは条約第三十四条の障害者権利委員会について、国連の権利委員会に日本の代表を送ることです。しかし、これについては選挙でございますので、これは結果は分かりません。しかし、日本の政府と民間を挙げて、また立法府のお力も得ながら、是非とも立候補の条件を早期に整えていく必要があろうかと思います。
 締めくくりに当たりまして一言申し上げます。
 それは、この条約の批准を見ることなく先立たれた多くの関係者への謝意であります。今日のこの日を恐らく非常に喜んでいるのではないか、批准の日を楽しみにしているのではないかと、こんなことを申し加えておきます。
 条約の批准が成った暁には、恐らくこの国は新しいステージに入ると思います。私ども民間の方も、これまでにも増してやはり社会から信頼される存在と活動を続けていこう、そういう決意でおります。その上で、立法府に対して、そしてこの際、政府や司法府に対してもお願いがございます。それは、権利条約に恥をかかせないでほしいと思います。障害者権利条約に恥をかかせないで、このことを訴えて発言を終わります。
 どうもありがとうございました。
○委員長(末松信介君) 藤井参考人、ありがとうございました。
 以上で参考人の意見陳述は終わりました。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○三木亨君 自由民主党の三木亨と申します。
 本日は、参考人の皆様方には本当に貴重なお話を聞かせていただきまして、ありがとうございました。これを参考に障害者福祉の方をしっかりと進めてまいりたいという思いを新たにしたところでございます。
 さて、本日は障害者権利条約の締結という課題でございますので、このことに関して私から皆さん方にお聞きしたいと思います。
 まず、締結後の我が国が抱える課題について皆さん方に各自お聞きしたいと思います。
 本条約といいますものは、既に百三十か国を超えて締結国となっておりまして、我々の国とあと米国辺りが重立ったところで残っておりますけれども、その他の主要な国、EUや韓国、あるいは中国までももう既に加わっているということでございます。我が国は国内法を整備して、その上で条約を締結するんだという、そういった思いの中、今回、国内法、二〇一一年の改正障害者基本法を手始めとして一応整ったということで今回の締結の機が熟したということになるかと思います。
 一日も早く私も締結すべきだと思いますが、ただ、先ほども参考人の方々におっしゃっていただきましたように、これはゴールではなくてあくまでも我々はスタートラインに立ったのだということ、これを認識しなければならないと思います。これから、このスタートラインを手始めとして、我々は国内の障害者政策の更なる推進に努めていかなければならないというふうに思っております。
 その上で、私たちがこの条約の締結後、課題として特に留意すべき点、あるいは重点的に進めていくべき施策というもの、先ほども何人かの方に詳しくお話をいただきましたが、もう一度、そういった点について各四人の参考人の方々からお一人ずつそのお考えというものをお聞かせいただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
○参考人(川島聡君) ありがとうございます。
 批准後の課題としまして、まず二つ、私から指摘したいと存じます。
 一つは、成年後見制度の運用、そして成年後見制度自体の見直しというものが障害者権利条約十二条に基づいてなされる必要があると思います。具体的には、代行決定から支援を受けた自己決定への転換というものが大きな柱になると思いますし、もう一つは、定期的な審査、そして可能な限り短い期間適用される等の、セーフガード条項というものが十二条にありますので、それに沿った見直しが必要になると思います。
 もう一つは、国内実施のシステムです。これは、この条約を促進、保護、監視する枠組みを自国内に設けなくちゃいけないということがこの条約三十三条に書いてありますけれども、促進、保護、監視、それぞれの役割をしっかりと明確にして、これを日本国内で実現する仕組みを明確につくっていく必要が早急にあると思っております。
 以上です。ありがとうございます。
○参考人(尾上浩二君) どうも御質問ありがとうございます。
 私の方では、先ほど重立った課題を述べさせていただきましたけれども、委員御指摘のとおり、この権利条約の批准が新しいスタートになってほしいということで申し上げましたが、特に、ちょっと時間の関係ではしょりました、地域における自立生活、それとインクルーシブ教育のところを少し御説明したいと思いますが、特に地域における自立ということで、障害者基本法や総合支援法ではそういった方向が打ち出されてはいるんですが、まだまだ地域基盤整備ということが遅れていまして、残念ながら社会的入院や入所を余儀なくされている方が多数おられます。
 例えば、この間、入所施設からの地域移行ということは進められてきたんですが、毎年五千人ぐらいの方が出ていかれてはいるんですが、八千人ぐらいの方が新しく入所をしている。あたかも回転ドアのような状態になってしまっている、残念ながらそういった現状がございます。
 同じく、精神病院でも本当に二十年、三十年と長期入院の方がいまだに出れない。そういう中で、もう病院を生活施設のように転換したらいいんじゃないかみたいな、何というんでしょうか、世界にちょっと恥ずかしいような議論なんかも出てきているような状態ですので、是非、地域における自立生活を実現できる法制度を更にもっともっと予算も含めてバージョンアップをお願いをしたいということと、インクルーシブ教育の方も、総合的判断ということにはなりましたが、さらに当たり前に地域で学べる、そして希望すれば特別支援学校も当然選べる、そういった仕組みにより進めていただきたいですし、どの場で学んでも必要な支援と合理的配慮が得られるような仕組みに進めていただきたいなと思います。
 以上です。
○参考人(久保厚子君) ありがとうございます。
 私の方から、先ほども少し触れさせていただきましたけれども、地域の中で生活していく、これからの障害者の生活というのは地域の中で、グループホームとかいろんな部分で地域の中で生活していくということが進められることになると思いますけれども、地域の理解というのがなかなか進んでいないというのが大きな障壁になっているという部分がありますので、そうしたところの、社会的な障害者に対する理解とかそういうとこら辺をもう少し進めなければならないというふうに思っておりますし、もう一つには、知的障害の場合は、自分で自分の意思というか思いというのを自分の言葉として伝えることが困難だという人が大変多くおります。そういう意味での意思決定支援をどうしていくのかというところが、またその本人の心に寄り添い、本人の意思を酌み取りながらニーズにこたえていくという、そういう部分がこれからも大切になると思いますし、是非その辺のところを国内法としてもしっかりと確立していただいて、自分で自分のことを伝えられない、そして、社会の中に出て生活をしたいと思っていても社会の中でどうしても疎外感を受けながら暮らさなければならない、そんな部分を解消していくという意味での課題が生活していく中で大きくあるなというふうに思っておりますので、どうぞまたその部分をよろしくお願いしたいというふうに思っております。
 以上です。
○参考人(藤井克徳君) 三木先生、お答えいたします。
 まず、この条約の批准が成った直後に、やはりこれを全省庁、そして全国民に知ってもらうということ、残念ながらマスコミなどもまだまだ注目が不十分です。もし来週批准になった暁には、マスコミ等も含めて、まずは批准が成ったということを知らしめる、これは是非国会の中も含めて、これを是非お願いしたいと思っています。
 二つ目に、やはり内閣における担当部署、ここの強化だと思います。
 三木先生もお分かりのように、アメリカのNCD、ナショナル・カウンシル・ディスアビリティー、大統領委員会直轄の十五人の委員によるこの力はすさまじいものがあります。是非、それを前提に置いて、そういったものを参考にしていきながら、内閣における行政部署の連絡を超えた、権限を持った体制強化が求められる、こう思います。
 以上です。
○三木亨君 皆さん、ありがとうございました。
 非常に参考になりますし、我々聞いたことのない、聞いたことのないというわけではないんですが、今まで思いもしなかったような視点から皆さん方におっしゃっていただくことというのは、非常に我々にとって大きな価値があると思います。
 時間がございませんので、もうすぐに次の質問へ移らせていただきたいと思いますけれども、次に久保参考人に特にお聞きしたいことがございます。
 手をつなぐ育成会というのは、最初数人のお母様で始められたということをお聞きしております。そして、今では国際的なネットワークにも参加しておられまして、国際育成連盟の正会員としても国際会議にも参加しておられるというふうにお聞きしております。
 我々の国の知的障害者に対する施策というものは、他国、特に進んでいるのはヨーロッパ、アメリカの方だと思うんですが、そういった国と比較して遅れている点とか、あるいは海外が既に取り組んでいるのに我が国はまだ取り組んでいない、一刻も早く取り組むべきだというふうに思われるような点がありましたら、この機会に教えていただきたいと思います。
○参考人(久保厚子君) ありがとうございます。
 三木先生がおっしゃいましたように、ヨーロッパの方が随分と福祉施策というのが進んでいるというところはありますけれども、ある意味では、ケース・バイ・ケースといいますか、進んでいると見るところもあれば、日本の制度の内容の方が本当はみんなが受容していけていいねというような部分も確かにあります。
 ヨーロッパの方が基本にありますけれども、障害のある人たちが、収入がそんなにどうこうというのもありますけれども、随分と本人が本人の収入だけできちんと生活できるというような、そんなシステムにもなっておりますので。日本の方は、本当は本人の収入だけで生活できるという状態にはないという、企業に就職しておられる方はある程度収入がありますけれども、基本的に福祉就労をしている方というのは、工賃が安いですし年金が主な収入でありますので、地域の中でグループホームで生活するとなると、今もって親が仕送りをしているというような現状がありますので、その辺のところは大きく違うところかなというふうに思っております。
○三木亨君 ありがとうございました。非常に参考になりました。
 もう本当に時間がございませんので、本日は外交防衛委員会でございますけれども、内容的には何か厚生の方のお話になってしまいましたが、今回、皆さん方からお話を聞きまして、特に、ナッシング・アバウト・アス・ウイズアウト・アス、つまり障害者の方々に参画していただいて、障害者の方々に自分たちの物事を決めていただくんだという、こういった視点が今世界でも主流にあるし、こういった視点がないと障害者福祉は始まらないし全うできないということを本当に改めて実感させていただくことができました。
 これからも、我々、バリアフリーというものは既に田舎でも大分進んでおりますけれども、心の中のバリアというものはまだまだ我々の中にあると思いますので、心のバリアフリーも進められるような施策を進めてまいりたいというふうに思いますので、これからも御指導の方よろしくお願いいたします。
 これで質問を終わります。ありがとうございました。
○福山哲郎君 おはようございます。民主党の福山哲郎でございます。
 参考人の皆様におかれましては、本日は建設的かつ本当に思いのこもった御発言をいただきましてありがとうございます。心から御礼を申し上げます。
 また、参考人の方々ばかりではなく、障害当事者の皆様、そして御支援をされている皆さん、そしてそれぞれの団体の皆さんの長年の御尽力で権利条約批准に向けてあと一歩というところまで来たことに対して、本当に心から感謝と御礼、敬意を表したいと思います。本当にいろいろありがとうございます。
 私も、御案内のように、二〇一〇年六月二十九日の、いわゆる権利条約に向けての障害者制度改革の推進のための基本的な方向、これは民主党政権でございましたが、障害者基本法の改正や差別禁止法の改正、総合支援法の制定等々を決めさせていただいて、三年半で、先ほど久保参考人からお話がありましたような法律の制定が与野党を超えて成立をいたしました。これはもう本当に、民主党政権で地ならしはさせていただきましたけど、その前の歴史、そしてその後の今の自公政権の中でも御協力をいただいた結果だというふうに思っておりまして、今日、四人の参考人の皆さんがいみじくも、これが出発点だとおっしゃったと思いますが、まさにこの権利条約の批准を出発点に、より良い制度改革に向けて、また今後ともお力添えをいただきたいと冒頭申し上げたいというふうに思います。
 私も今、地元の京都で、京都府身体障害者団体連合会の会長を仰せ付かっておりまして、多くの障害者の皆さんと接する中で、権利条約どうなっているのという声をたくさん聞きます。何とかこの国会でという思いは変わりませんので、よろしくお願いしたいと思います。
 それでは、座らせていただきます。
 多くの皆さんから同様の御指摘がありました。個別の話を聞いていくと切りがないので、若干大きな話をさせていただきたいと思うんですけれども、いわゆる三十三条というのは今後の障害者政策を動かしていくために非常に重要な要素だと思っております。
 まず、いわゆるフォーカルポインツの問題です。政府内の連絡先というものがありますが、これ、いわゆる条約の実施の関連事項を扱うところですが、一般的には条約のことですから外務省になります。しかし、外務省が受け取ってそのまま厚生労働省の社会・援護局に丸投げをしていれば、多分そのままというような事態もたくさん出てくると思います。
 先ほど藤井参考人が言われましたように、内閣による担当部署の強化ということで考えると、このフォーカルポイントは一体どういう機関、在り方として必要だとお考えか、まず藤井参考人、そして川島参考人にお伺いをさせていただきたいと思います。
 同様で申し上げれば、実はそのいわゆる監視の機関ですが、これ条約上の三十三条の二項は難しくて、監視の機関と促進する機関が別々に書かれています。これ、促進、保護、監視というものは、これは皆さん方のイメージでいうと同じ組織なのか別々の組織を考えておられるのか。このことについて、これは、済みません、同じか別々かイメージを言っていただければいいと思いますので、四人の皆さん、それぞれお答えをいただければと思います。
 それから、重要なのは、更に言えばその監視機関でございます。そしてモニタリング機関でございます。モニタリングは、先ほど障害者政策委員会でというお話がありましたが、実際に、じゃ障害者政策委員会がモニタリングをする手足があるのかというと、それぞれの団体の皆さんは頑張っていただけるかと思いますが、それを集約し、先ほど藤井参考人が言われた調査をし、モニタリングとして適切なものを国連の方に報告する場合に、このモニタリングの仕組みは、私は今全く国内は足りていないと思っておりまして、この整備についてはどうお考えをいただいているのか。これも、もう時間ありませんのでこれでやめますが、四人の皆様にお伺いをすることによって次の審議につなげたいと思います。
 最後、これだけ、一個だけお伺いしたいのですが、前文に、障害者の定義の中で、障害が発展する概念であると書いてあります。この発展する概念というのは、非常に我々にとっては目新しい概念で、障害が発展する概念というのはどういうふうにとらえて、これから、例えば一般の、一般のというか普通の、障害者政策にまだ関心を持っていない国民の皆さんに知っていただくために、どういう概念としてこれを伝えればいいのかについて、これは川島参考人に教えていただければと思います。
 いろいろ盛りだくさんで申し上げましたが、短く、恐縮ですがお答えいただければ有り難いと思います。よろしくお願いを申し上げます。
○参考人(川島聡君) ありがとうございます。
 ただいま福山先生からの御質問なんですけれども、まず三十三条一項につきまして、一項は中央連絡先、これを複数形で置いております。そして、一項ではもう一つ、調整のための仕組みというのをこれは書いてあるんですけれども、中央連絡先はこれは必置、必ず置かなくてはいけないものです。そして、調整のための仕組みは一つだけ。これは十分な考慮を払うという形で、必ず置かなくてはいけないというまではいかないわけです。
 そこで考えますと、まず中央連絡先は外務省と、場合によっては内閣府も、複数あってもいいということになると思います。そして調整のための仕組みは、これは内閣府に置いて、そして中央連絡先と調整のための仕組みが同じ機関が担当するということも十分あり得るわけですので、諸外国を見ても同じ機関が担当するところがありますので、そのような形で柔軟に、これは非常に難しいと思いますけれども、諸外国の動向を見ながら検討していくということになるかと思います。
 そして次に、障害が発展する概念というところですけれども、エボルビングコンセプトという、エボルビングというのは、徐々に発展していくとか、まだ完成したわけじゃなくて形成途上にある概念であるということでして、障害というものがまだ人類においては確実に固まった概念ではないと。そのため、この条約では障害の概念は定義できなかったわけですね。しかし、少なくとも基本的な視点というのがこの条約ではそこまでは明確になったと。つまり、障害のある人が社会に参加できない原因というのは、その人が障害があるからだというのではなくて、障害と社会との関係性の中でその人は社会に参加できなくなってしまう、だからこそ社会の障壁を取り除くべきだと。そういったところまでは少なくとも現時点では合意が得られるということで、そういう意味で、今後更なる概念の発展にも期待できるということで、現時点では定義ではなくて概念という形で条約の前文に置いたというふうに理解しております。
 まずは以上を回答とさせていただきます。ありがとうございます。
○参考人(尾上浩二君) 二つ、四人に共通ということで御質問いただいたと思っています。
 まず、三十三条の関係で、促進、保護、監視ということで、とりわけ、先ほど差別解消法の中で、今後の課題ということで紛争解決の仕組みの必要性ということを申し上げました。この中でいう保護、障害者の人権の保護ということからすると、この紛争解決の仕組みというのはやはり別途必要と。これを例えば具体的な形態として言えば、例えば差別禁止部会の意見書に出されている案としては、政策委員会の中に一つのそういうチームをつくるということもあり得るのかも分かりませんが、具体的な形態というのは、政策委員会との関係というのはいろいろあり得ると思いますけれども、基本的な機能として、監視やそういった機能とこの保護というのはやはり違うというか、やはりしっかりと紛争解決の仕組み、保護の仕組みが必要だという意見であります。それが一つです。
 そしてもう一つ、モニタリングについて、福山先生の御指摘のとおりでして、本当にまだまだ不十分だというふうに思っていますが、ただ、同時に、障害者政策委員会は、今の国のレベルで唯一と言っていいのかも分かりませんが、障害当事者が過半数の委員会なんですね。先ほどから申し上げていますとおり、権利条約策定過程から、ナッシング・アバウト・アス・ウイズアウト・アス、私たち抜きに私たちのことを決めないでということで、その私たち抜きに私たちのことを決めないということを体現した組織として、政策委員会をしっかりと監視の機能ができるようにバージョンアップをしてほしいという思いで先ほど申し上げました。
 以上です。
○参考人(久保厚子君) ありがとうございます。
 先ほど御質問にありましたように、私の方も、監視機関とそれから実施促進するというところは別の機関だというふうに思っております。どちらかといえば、監視機関の方は内閣府の方に置いていただいて、そして促進の方は厚労省の方でやっていただくというのが適当かというふうに思っております。
 あとは、おっしゃいましたように、国の方でモニタリングの機構というか機関というか、その辺のところはまだありませんので、是非、障害者団体も含めまして、そういう機関、機構をつくっていただきたいというふうに思っております。
 以上です。
○参考人(藤井克徳君) フォーカルポインツに関しては川島参考人とほぼ同じ意見ですが、一つ考えなくちゃいけないことは、外務省の中央連絡先、加えて内閣府あるいは内閣の方でのそういう調整を含めた強力な体制強化というものがありますけれども、現実的にはやっぱり厚労省の所管する部分が随分多いわけなので、ここも含めた何か工夫が要るのではないかなというふうに考えます。
 それから、先生おっしゃるとおり、ここの第三十三条の実は実質化がこの権利条約の実質化をかなり裏打ちをすると。したがって、これはあるべき方向と当座どうするかということを区分けをしないと難しいだろうと思います。例えば保護に関しては、もっと障害を超えた全体の人権に関するやはり保護を重視する、そういう機構が要ると思うんですね。しかし、それはすぐにはできにくい、そういう点でいうと現状の中での活用と。そういう点では、言われていますように、この障害者政策委員会、障害者基本法第三十二条にのっとっていますけれども、今の障害者政策委員会は障害者基本計画の監視しか実は定められていません。したがって、ここの法改正も含めて、当座はここの強化ということが現実的なのかなと。
 最後に、この発展する概念に一言付言させてください。
 私自身は全く目が見えませんから、恐らく、全盲ですから、前だったら時計は全く分からなかったわけです。でも、今はこうして、(資料提示)このようにして、これがもう普通に販売されています。こういった環境の変化によっては随分と、時報情報という重要な情報、これが私、全く苦にならないと。恐らく、将来、全盲であっても車の運転は可能かも分かりません。その点でいうと、とりわけこの環境要因の中でもこの科学技術の発展あるいは人的なサポートの手厚さ等によっては、相当障害というのはまたとらえ方が変わってくるんじゃないかなと。参考になればと思います。
 以上でございます。
○福山哲郎君 ほかにもたくさんお伺いしたいことはあるんですが、時間になりましたので、大変いい御意見をちょうだいいたしましたこと、また今後の審議につなげていきたいと申し上げまして、私の質疑、終わらせていただきます。
 どうもありがとうございました。
○河野義博君 公明党の河野義博でございます。
 本日は、参考人各位におかれましては、御多忙の中、お越しをいただきまして、大変貴重な御意見を多数承りました。本当にありがとうございます。座らせていただいて質問させていただきます。
 私ども公明党は、これまでの二〇一一年の障害者基本法の改正や、また本年常会での障害者差別解消法の成立に向けて積極的に取り組んでまいりました。同僚の高木美智代衆議院議員や山本博司参議院議員などを中心に、障害者の方々と意見交換を数多く重ねながら一歩一歩進めまして、この度の障害者権利条約の批准に向けた審議に至ったこと、感慨を覚えております。
 各参考人に一問ずつお伺いをさせていただきたいと考えております。
 まず初めに、尾上参考人にお伺いいたします。
 参考人の、静岡新聞に記載をされた御自身の小学生時代の施設の経験から、健常者の中に善意に潜む優生思想というのがあるんだというふうに記述を読ませていただきまして、私は何か胸に突き刺さるような思いがいたしました。障害者権利条約の批准を前にいたしまして、この善意に潜む優生思想、これを克服していくために最も必要なこと、それを、アドバイスを健常者に向けて、また障害をお持ちの方々に向けて、双方に何かアドバイスをちょうだいできればと思っております。
○参考人(尾上浩二君) どうもありがとうございます。
 私がインタビューを受けた記事の御指摘かと思いますけれども、おっしゃるとおりでして、今日、優生思想ということで一つ例を申し上げますと、女性、こちらの方の複合差別調査報告書というものがございますけれども、この中の一番最後、十二ページのところからなんですけれども、一九九六年まで、実は日本では不良な子孫の出生を予防するということで優生保護法というものがございました。言わば法的にも障害者はあってはならない存在だというふうに規定をしていたわけなんですね。そういった法律を根拠にして、意識もそういった、何というんでしょう、悪意がなくても、障害があったらかわいそうだ、仕方ないよねというふうな見方があったんだろうと思うんです。
 その意味で、今回、是非、権利条約をきっかけに、批准をきっかけに国会そして政府から発信をしていただきたいのが、障害の社会モデルということであります。その障害、機能障害があること自身が不幸なのではなくて、むしろ環境との関係、そして社会がもたらす不利益、それを取り除いていけば障害があってもなくても分け隔てなく一緒に暮らせるインクルーシブな共生社会ができるんだ、そういったメッセージを是非、私ども当事者団体としてもお伝えしたいですけれども、国会そして政府からも是非メッセージを出していただければなと思います。
 よろしくお願いします。
○河野義博君 ありがとうございました。
 続きまして、藤井参考人に伺います。
 最後に一言いただきました、権利条約に恥をかかせないでほしいというお言葉、非常に厳粛に受け止めさせていただきました。今後とも頑張っていきたいと思っております。
 質問に移りますと、災害時の障害者支援に関しましてアドバイスをちょうだいをしております。私も地元の自治体を回っておりまして、名簿自体はそろっているんだけれどもこの運用をどうしたらいいのかというのは自治体自身も悩んでいる点でございまして、個人情報保護の兼ね合いから災害時に名簿が利用されにくいという環境が指摘をされております。この点は災害時の高齢者支援にも関連をする重要な問題であるかと思いますが、名簿利用の運用に関してどのように問題を解決していったらいいのか、参考人のお立場から何かアドバイスをちょうだいできればと思います。よろしくお願いいたします。
○参考人(藤井克徳君) 今般の震災でこの名簿問題は大変深刻な状況に陥りました。災対法の改正によって今度は自治体の長が開示できると、こうなっているわけなんですけれども、やはりこれについては、私たちとしては、信頼できるNPO、NGOまで含めて開示をしてほしい。
 今般、東北の百二十八ある市町村のうち名簿を開示してくれたのは南相馬市と陸前高田市の二つの市だけでした。JDFは、この名簿を頼りにして全部の名簿の家を回りました。そういう点において今回多くの実績をつくりましたので、もちろんふだんからの信頼関係だとかあるいは当人の希望によってということを尊重するにしても、事は命なので、命である以上はやはりプライバシーを盾にして云々というのは少しおかしいのではないか。
 是非、今後とも、この問題については更に地元の首長さん、そして地元の団体等を含めて考えていくべきであって、私としては、今日の段階では、やはり命はプライバシーを超えるものであると、こういうことを言っておきたいと思います。
 以上でございます。
○河野義博君 命はプライバシーを超えると、そのお言葉も厳粛に受け止めてまいります。どうもありがとうございました。
 続きまして、久保参考人に伺います。
 二〇一〇年、ドイツで開催されました国際育成連盟の世界会議に参加をされたと伺っております。インクルーシブ教育は目標でなくて途中の取組である、この目標はインクルーシブ教育の旅路を途中として共生社会をつくることであると示唆に富む指摘もございましたが、障害者の共生を目指す中で、他国と比べて我が国日本が特有の問題というのが何かありますでしょうか。先ほど、欧州は一般的には進んでいるけれどもケース・バイ・ケースという御発言もございましたけれども、我が国に何か特有な問題があれば是非教えていただきまして、またその解決に向けてアドバイスをお持ちでしたら承れればと思います。よろしくお願いいたします。
○参考人(久保厚子君) ありがとうございます。
 我が国の今までの障害者福祉の制度からいいまして、保護の下に、ある程度入所施設の方に多くの障害のある方がおられたという経緯がございます。社会の中になかなか障害のある方が参画できていなかったということ自体が、国民の皆さんの障害者に対する理解というものがなかなか進んでこなかったんだというふうに思っています。
 ヨーロッパを始めとして他国の方は、障害のある人がいる社会が当然であって、そして障害のある人に心ないことを言ったり配慮をしないということは恥ずかしいことだというような国民性もありますけれども、我が国の方は、そういう保護の下に、一定の機関のところに皆さんが保護されていた、社会の中になかなか参画していなかったというところで、国民の皆さんに障害者に対する理解、知らないことが不理解につながっているといいますか、そういうことなんだろうと思うんですね。
 要は、国民の皆さんが障害者のことをよく御存じないということが、例えばグループホームをつくるにしても、グループホームにすることは、地域で暮らすことはいいことだ、ただ、自分の隣に来るのは嫌だというような、そんなような議論が今もってあるということは、やっぱり住んでしまえば何ということなく皆さん一緒に地域の中で暮らしているんですけれども、障害者ということを御存じないということが、今の日本の歴史の中でそういう環境にあったんだというふうに思いますし、そこをこれからはもっともっと、障害者は地域に出ていくということも当然でありますけれども、国を挙げて障害のある人への理解というのを進めていただきたいなと。そこが少し他国と、国民性といいますか歴史の中で大きく違うことかなというふうに思っておりますけれども。
 以上です。
○河野義博君 ありがとうございました。
 最後に、川島参考人に伺います。
 国民の関心を向上させるということが一つの喫緊の課題であると思いますが、先生のインタビューの中で、国民の関心を高めるために、本条約を多くの人に知ってもらうために分かりやすい日本語の訳を作るなどの取組が必要だと、そういうコメントもございました。
 学術者というお立場から、国民の関心を向上させていくための、どういうことを取り組んでいくべきか、学術者としての立場からアドバイスをいただければと思います。よろしくお願いいたします。
○参考人(川島聡君) ありがとうございます。
 この条約は、先ほど申し上げましたとおり、日本で内容を含めて知っている人は二%ということになっております。そして、この条約を知らなければ誰もこの条約に即した行動は取れないということですので、おっしゃられますとおり、条約の周知化が必要なんですけれども、具体的には、先ほどの分かりやすい条約、長瀬修さんが作られたような分かりやすい条約の翻訳というのをまず一つ作るのと同時に、私は、一つ、地方自治体が積極的に啓発活動をしていくということが重要になってくると。もちろん、中央の方で啓発活動をするのは、これは不可欠ですけれども、地方自治体の方が現場で分かりやすい啓発運動というのをしていかないと、これは隅々まで条約のことが知れ渡るということはまずあり得ないと、そういうふうに思っております。
 ありがとうございます。
○河野義博君 ありがとうございました。
 参考人皆様から、これがゴールではなくてスタートなんだというお言葉をちょうだいしておりますので、その点を真摯に受け止めて、今後とも、与野党の垣根を越えましてこの問題に取り組んでまいりたいと思いますので、引き続きよろしくお願いいたします。
 今日はありがとうございました。
○中西健治君 みんなの党の中西健治です。
 今日は、お忙しい中、こちらまで足をお運びいただき、そして貴重な御意見をいただきまして、本当にありがとうございます。我々としても、今回、是非これを批准していきたい、承認していきたいというふうに思っております。
 それでは、座って質問の方をさせていただきますが、それぞれ一問ずつぐらい質問させていただければと思いますが、時間の関係もありますので、どこまで行けるかということでやってみたいと思います。
 まず、藤井参考人にお聞かせいただきたいと思います。
 国連での制定過程などもよく御存じということだと思いますが、今回のこの条約のほかに選択議定書というものがあるわけですが、そこで個人通報制度、国連の障害者権利委員会に対して個人で通報できる制度を定めた選択議定書には日本は入っていないということでありますけれども、この個人通報制度についてどのような御意見をお持ちかということについて、まずお聞かせいただきたいと思います。
○参考人(藤井克徳君) 大変大事な御指摘であります。
 本来であったら選択議定書を含めた批准ということが一番好ましいんですけれども、しかし、それはやや現実的には遠過ぎると。
 ただ、この個人通報に関しましては、やはり障害分野は最も矛盾が大きい分野の一つではありますけれども、他の人権侵害、それは女性であったり子供であったり高齢者であったり、むしろ、この国全体として今選択議定書等の問題での批准ができていない問題もありますので、併せてやはりこれについては検討をすべきであろうと。私たちとしては、十分に問題を認識し、そして、いずれの日かそのことが可能になるように、晴れて批准できるようにということを考えていきながら、当座は他の人権部分と連携していきながらこの問題については深めていきたいと、このように認識をしております。
 以上でございます。
○中西健治君 どうもありがとうございます。
 おっしゃられるとおり、日本は他の人権条約でも、こうした個人通報制度、加盟しておりませんので、ここら辺も含めて総合的にやっていくということかと思います。
 続きまして、川島参考人にお聞かせいただきたいと思います。
 お話を伺っていますと、大変言葉に対するこだわりというか、言葉を非常に大切にしているなということに感銘を受けたわけであります。リビングアレンジメント、これについて施設ではなくて様式、環境と訳すべきだと、ごもっともな御指摘だというふうに思います。
 そこで、一つ二つお聞きしたいんですが、このインクルージョン、インクルーシブという言葉なんですが、包容すると日本語で訳すことについて、やはりこれは、単に含んでいるだけであると、包まれるということについては少しおかしいんじゃないかと、こういう意見も、先生もお持ちなのかもしれません。そして、英語でインクルーシブと訳される、そのまま使われるということでありますが、今はかなり一般的になっているかもしれませんが、インクルーシブ教育といっても、まあ分からない人も多いんじゃないかと思います。このインクルーシブという言葉について日本語で言うとしたら適切な訳が何かないのか、こうしたことについてお聞きしたいのが一点。
 あともう一つですが、これは本当に言葉ということでお聞きいたしますが、障害者という言葉の害という字を平仮名で一時期書くことが多かったと思います。それが最近また見られなくなりつつあるのかなというふうに思いますが、そこの言葉についてもどうお考えか教えていただきたいと思います。
○参考人(川島聡君) ありがとうございます。
 今、中西先生からの御質問なんですけれども、一つは、インクルージョン、インクルーシブについてだと思います。これは、最近ではインクルーシブ教育という言葉もちらほら出てきていますけれども、現在の政府訳では包容するとなっていると。これは、インクルーシブは包摂するという訳語もあるわけですよね。そうすると、どの訳語が一番いいかと。私は個人的には、片仮名でインクルージョン、インクルーシブというのが、ノーマライゼーションとかリハビリテーションと同じように日本で定着していくべき言葉だと思っております。
 しかし、今回の条約の政府訳でこのインクルージョンという言葉が入るかどうかというのはちょっと私の中では、本来でそうすべきでしょうけれども、それが可能かどうかというのはちょっと分からないところであるというのが正直なところです。
 次に、先生おっしゃられる障害者という漢字で害の字をどうするかというところですけれども、これは、社会モデルという本日何度も言葉が挙がっていますけれども、社会モデルの考えに即して言えば、まず平仮名の障がい者というのは、個人の障害があるという場合に使うことができると思うんですね。障害を持っているということは必ずしも悪いことではないと。それを害という、有害の害という漢字を使うのはふさわしくないと。そうなると、障がい者というのは、そういう意味で使う場合は平仮名でいいと。しかし、障害物競走のように周りに障害物があって、それによって非常に不利益を被っているという意味で障害物に囲まれている人たちという意味では、障害物競走と同じように、社会の側に害があるわけですから、そのまま漢字で、障害に囲まれてしまっている人々という意味で漢字で障害者とやっても、これはこれで意味は通るわけですね。
 そういう意味では、平仮名にするか漢字にするかというのは、個人か社会、その区別によって使い分けるというのは一つ、これは社会モデルの観点から説明できると思います。
 以上です。ありがとうございます。
○中西健治君 どうもありがとうございます。
 続きまして、尾上参考人にお聞きしたいと思います。
 やはり自立ということのためには就労というのが一つの重要なポイントということになっていくことだろうと思いますけれども、この就労を促進するために、これはちょっと大きなテーマですけれども、何をすべきかということについて、ちょっと広範なテーマでありますから恐縮ですけれども、お考えをお聞かせいただければと思います。
○参考人(尾上浩二君) どうもありがとうございます。
 非常に大切な点を御指摘いただいたというふうに思いますけれども、先ほど藤井参考人の方からも谷間の問題ということで、就労の中で、日本の場合、福祉的就労というもの、いわゆる障害保健福祉部局といいましょうか厚労省の中の障害保健福祉部局がやっているいわゆる福祉施策の中での福祉的就労と、旧労働省といいますか労働行政の中でやっている雇用との間に非常に大きな垣根があるのが日本の障害者の働くということをめぐる政策状況かなというふうに思うんですね。
 実は私、先ほどの二〇〇九年からの改革の中で、総合福祉部会というものを設けまして、その中で五十五名のたくさんの方と一緒に議論をさせていただいて、皆さんの御意見を取りまとめる形で、私、その副部会長をさせていただいて骨格提言というのを一緒にまとめてきたんですが、その中では、言わば福祉的就労と一般就労、雇用との間に非常に大きな垣根がある、それを、その垣根を取っ払っていくためのモデル事業をし、あるいは賃金補填や様々な、先ほどヨーロッパで詰めてきたようなそういった施策を日本でも検討をしていくべきではないか。
 そのために、少なくともまずモデル事業からそういうことをやっていけるように、本当に就労の課題というのは大切な、社会参加という意味では非常に大切な課題ですから。もう福祉的就労へ行くとなかなかそこから一般就労につながらない、今、就労移行と言われているものの、雇用政策の中で雇用に乗る人と乗らない人みたいな形でやっぱり大きな差があったりしますので、その点の連携をどうしていくのかというのがこれから、やはり権利条約批准後、非常に大きなテーマになる、そういう意味でのモデル事業なども是非実施をしてほしいなと思うところでございます。
○中西健治君 モデル事業から進めていくべきと。どうもありがとうございます。
 最後に、久保参考人にお聞かせいただきたいと思います。
 久保参考人は知的障害者の支援を大変熱心に取り組まれているというふうに感じました。先ほどの質問にもありましたけれども、災害時に知的障害者をどういうふうに支援していくのか、天災プラス人災の二倍の災害にならないようにするためにどう支援をしていくのかというようなことについて、御意見をお伺いしたいと思います。
○参考人(久保厚子君) ありがとうございます。
 私ども育成会も、あの三・一一の震災のときには育成会挙げて、現地にも入りましたし、いろいろと支援をしてまいりました。本人が本人の口で自分のことを伝えられないというのが知的障害の大きな特徴といいますか本人の力の弱いところではありますので、どうしても親が代弁をするということもあります。本人を支援するのに、一つにはやはり、障害の特性というのを周りの方は余り御存じないので、親にいろんなことを聞きながら支援をしていこうということなんですけれども、親自身もどうしていいか分からないと、災害のときにですね。どうしていいか分からないときにどうしたらいいですかと聞かれてもなかなか答えられない。
 要は、私たち育成会も支援に入らせていただきましたけれども、何か困っていますか、何が必要ですかと言っても、何も困っていませんというような言い方をされるんですね。だから、要は何をしてもらったらちょうどいいのかというのを御本人も親ももう分かっていないという、そんな状況にありますので、そこら辺のところの、何回も何回も訪れて、どうですか、どうですかと言っている間に本人も親もだんだんと心が解けていって、そして、実はこれが困っている、あれが困っているというのがぽつぽつと出てくると、そんなことが現状としてありました。
 そういう、まあ言えば、親は本人を抱えて、日常でもいろんな部分でいろんな方に御迷惑を掛けたりというような思いが親の中にはある程度ありますので、その上に、皆さんが大勢が集まっての避難所とかそういうところに行きますと、本当に片隅で御迷惑をお掛けしないようにというような、そんな生活をずっと送っている。仮設住宅ができましても、仮設ですから、本当にお隣に御迷惑をお掛けしないかとかそういうことを日々ずっと思って、ストレスを感じながら子供の面倒を見ながら暮らしているというのが現状です。
 ですから、仮設住宅もそうですけれども、障害のある人のその種別というのは特段区別する必要はないのかも分かりませんけれども、やはり聴覚障害の方に手話通訳が必要なように、知的障害の方にも、親や本人のそういう心に寄り添うような、そういう相談に乗ったり支えをしていくというそういう支援がないと、三・一一のときに本当に実感として思ったのが、皆さん本当に心を一旦閉ざしてしまうというような、そんな現状があったんですね。何回も何回も訪れて、やっと心を開いていただいて、困っていることを打ち明けていただく、そして支援に入るというような状況ですので、知的障害の部分はそういうことがあるんだということを御理解いただいた上で、丁寧な、心に寄り添う、そういう支援、相談というのが一番求められていて、その次がハードの部分だとかそういうものになるんだろうというふうに思っております。
 以上です。
○中西健治君 どうもありがとうございました。
 これで質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 今日は、参考人の皆さん、本当にありがとうございます。
 まず、全員に同じ質問をしたいんですが、それぞれの御意見の中で、自立した生活とはどういうことかとか、それから家族への支援の乏しさとかいろんなお話があったと思うんですが、この条約に向けて様々な障害者施策の前進の一方で、例えば社会保障改革推進法などでは、むしろ自助、共助を非常に強調するということも流れとしてはあるわけですが、そういう自助、共助が強調される風潮や施策と、この障害者権利条約で進めていくこの自立の方向と、どういうお考えか、どういう課題があるのか、それぞれからまずお聞きしたいと思います。
○参考人(川島聡君) ありがとうございます。
 自助、共助、公助という場合に、圧倒的に公助が足りない現状で自助を強調するというのは、これはふさわしくないと思っております。公助が十分にある中で共助、自助というんでしたらまだ分かるんですけれども、現状で、障害のある人が社会参加できなくて、公助が圧倒的に足りないので、ここで自助を強調するというのは、これは障害者権利条約の規定に反するようなものだと思っております。
 ありがとうございます。
○参考人(尾上浩二君) ありがとうございます。
 非常に大切な点、こちらもいただいたと思っています。
 この権利条約の第十九条の自立した生活というのは、権利条約でもそうですし、私たち、口幅ったい言い方ですけれども、障害者運動が自立生活運動ということで、自立の概念を変えてきたと。つまり、これまでは人の手を借りないこと、あるいはいろんな支援を得ないことが、独り立ちできることが自立だというふうに言われてきたのが、そうではなくて、障害ゆえに必要な部分の支援を得ながら自己決定をし自分らしい生き方をしていく、それが自立だという考え方になっていったというふうに思っているんですが、その考え方が、まさに支援を得ながらの自立ということで今回の権利条約に埋め込まれたというふうに考えております。
 その点からしますと、具体的には、日本の場合、まだまだ家族依存を前提にした形でいろんな制度がつくられているんですね。私自身、現場で同じ障害を持つ仲間を支援してきた中で、二十五年入所施設に入所されていた方が、学校に行けなくて、夜間中学に行きたい、学びたい、そういう思いを持って五十にして施設を出ようと思ったときに、なかなかやっぱり働く場もない、年金も不十分という中で、そのときにやっぱり生活保護を使おうということになったんですね。ところが、その際、お兄さんに連絡をしたときに、いや、そんな生活保護を使ったり人の手を借りるんだったらもう自立しなくていい、施設にずっといてくれたらいい。悲しいことですけれども、一番最初に反対されたのは御家族でございました。
 やはり、御本人が自立したいと思っているのに、そういう扶養義務や、先ほどのあれでいえば互助ということになるんでしょうか、それがやっぱり強くなると、この権利条約が言う十九条の自立とそごが出てきてしまうところがあるのではないか、それが実際に支援の同じピアというか仲間として支援をしてきた立場からの実感でございます。
○参考人(久保厚子君) 私どもは、やはり一番に公助がしっかりとあるべきだというふうに思っております。その上でお互いが、私たち育成会は本人と家族の会でございますので、お互いに支え合い、そしてどうすれば本人のためにいいのかということを私たちの方から発信するということも含めまして、共助、ピアの部分の共助というふうに思っております。
 今、知的障害の部分では、本当に悲しいことではありますけれども、障害のある、重度の障害のある子を抱えながら自死をするということが今もあります。
 私、滋賀の出身でございますけれども、去年、おととしですかね、やはりお母さんと娘さんとが暮らしておられまして、娘さんを殺して、そして自分も一緒に死のうと思って家に火を付けた、で、近所の人にお母さんは助け出されたというような事実がありますけれども、やはり、それはお母さんと娘さん、重度の障害のある娘さんの暮らしのところにきちんと支援が行き届いていなかったということが大きな理由であったというふうに思いますし、いろんなところで調べられても自助ではどうにもならない、そういうことが大きく立ちはだかっているから、そういうことが実態として事件としてあったというふうに思っております。
 ですから、自助は、自分たちで頑張るということも大変重要ではありますけれども、お互いに支え合う、その前にやはり公助がしっかりと支えられるという、知的障害の場合は、今、福祉の制度は、御本人に対するサービスというか制度はたくさんありますけれども、家族に対する支援のサービスというのがほとんど、少ないというか、ないような状態ですので、そこの家族に対する支援というのをこれからもきちんと公助の部分で構築していただいて、支えていただくことが、そうした悲劇を再び招かない、そういう一つの大きなポイントになると思っております。
 以上です。
○参考人(藤井克徳君) まず、私も先ほど言いましたように、この権利条約というのは障害者に新しい権利や特別な権利ということを一言も触れていません、五十か条の中で。専ら言っているのが、障害のない市民との平等性と。つまり、マイナスをうずめるという、まずこれをきちんとやる。大変控えめな、ある面では主張なんですね。
 あるお母さんが言っていました。障害を持っているだけで鉛の洋服を着ているようなものです、これに自助と言われたら、また山でも登るのか、その服を着て、ということを言われたことがあります。私は、自助という言葉は他者から言われるものでは本来ないんじゃないかと。それは当然、人間ですから自主的に自分でやりたいということはいっぱいあると思うんですけれども、しかし、これはどうもこの公助との関係で言われた場合に意味が変わってくるだろうと、そんな感じを私は持っております。
 以上です。
○井上哲士君 ありがとうございました。
 それぞれの本当に現場の思いを踏まえた御意見ありがとうございました。
 じゃ、個別いろいろお聞きしますが、まず藤井参考人ですけれども、川島参考人の御意見の中で、政府訳の課題として特定の生活施設という訳のことがありましたが、これ以外に条約の訳について、ここはどうなのかというような御指摘があればお聞かせいただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
○参考人(藤井克徳君) 生活施設に関しては全く川島参考人と同じ意見を持っています。
 それ以外に、例えば聾という言葉ですね、今当事者団体のろうあ連盟自身が漢字では使っていません。したがって、ルビを振ったにしても、やはりこの聾は平仮名にしてほしいという言葉であります。
 また、ICTという言葉があります。これはインフォメーション・コミュニケーション・テクノロジーなんだけれども、このテクノロジーを情報通信機器と訳しています。本来は、情報通信技術と訳すべきだと思うんですけれども、これによって随分政策へ影響すると思うんですね、機器と技術では。こういう点もあります。
 同じように、先ほどのインクルージョン、インクルーシブに関しましても、やはりかつてノーマライゼーションが輸入した直後は常態化とか正常化と訳しました。どうもなじまない、むしろ原語を使おうと、そして定着していきました。インクルージョン、インクルーシブも、やはりこれは、最初は難があるかも分かりませんけれども原語でいくべきじゃないか、このようなことが気になります。
 以上でございます。
○井上哲士君 ありがとうございました。
 次に、久保参考人にお聞きしますけれども、成年被後見人の選挙権の回復という点で、私も質問もし、原告の名児耶さんのお話などもいろいろお聞きしてきまして、これは本当に、判決を受けて国会が対応できて、参議院選挙に間に合ったと、本当にうれしく思っております。
 あれを受けて当事者の皆さんの喜びの声などがあればお聞かせいただきたいと思っていますのと、それから成年後見人制度そのものの更に改善が必要だというお話もありました。具体的にはどういうことをお考えなのか、お聞かせいただきたいと思います。
○参考人(久保厚子君) ありがとうございます。
 公職選挙法の改正をしていただきまして、この参議院議員の選挙から多くの人が本当に胸を張って投票に行けたということは、今まではがきが来なかった、選挙のはがきが来なかったけれども、家にはがきが届いたということ自体がもううれしいという御本人の声がたくさん寄せられております。親としても、選挙のはがきが来るという、たったそれだけのことかもしれませんけれども、親としましても、一人前の一人の人間として国が見てくれているというようなうれしさがあります。その中で、みんなが胸を張って選挙に行けたことは本当に有り難いことだなというふうに思っております。
 ただ、公職選挙法は改正されましたけれども、知的に障害のある人の選挙に参加する方法というのがまだまだ不十分だというふうに思っております。要は、候補者の情報を知的障害のある人にどのように分かりやすく届けるかということがありますし、字が書けなくても写真入りの何か、丸を付けるとか印をするとか指さすとかいうような、それで本人が投票するということも可能ですので、そういう投票の仕方みたいなものも今後御検討いただきたいなと思っているところでございます。
 成年後見制度はほかにもいろいろと不都合はありますけれども、先ほどもお話がありましたように、もう一つは、県庁だとか市役所だとかいうところに知的障害のある人が実際にもう職員として働いている方が何人もおられます。ところが、だんだんと年をいかれますと、やはり親としても周りの者としても心配になりますので成年後見を使おうかというふうになりますと、選挙権回復の裁判でもありましたけれども、御本人が物事を判断できないというよりも、計算が苦手だからというので、そこが心配で親が成年後見を付けるというような方もおられました。実際に裁判を闘っておられる方にはおられました。
 計算が苦手なだけで成年後見を利用するというような、本人の言わば所得、財産を守るという意味で成年後見を利用するというふうになりますと、今、行政、県庁だとか市役所に勤めている人たちは退職しなければならないというような事態にもなりますので、そうした欠格条項と言われるようなことを、成年後見制度があるからこそという部分を、今一つは具体的に申し上げましたけれども、洗い出して、そこを言わば私たちは門前払いはしないでほしいという思いがあります。参加できる条件があるけれども、選挙でも、私の息子は最重度ですから、選挙権はありますけれども、字も書けませんし判断ができませんから、選挙には行きません。そういうような状態で、ともかく障害があるということ自体が理由として、一般の方と同じように、他の者と平等でない、門前払いをされるというようなことがないようにしていただきたい、そこを洗い出していく必要があるんだろうというふうに思っております。
 以上です。
○井上哲士君 貴重な御意見ありがとうございました。今後にしっかり生かしていきたいと思っております。
 ありがとうございました。終わります。
○儀間光男君 皆さん、こんにちは。
 今日は、お忙しいところ、おいでを賜りましていろいろ御意見を聞かせてくださること、感謝を申し上げます。維新の会の儀間と申します。時間の範囲内で質疑をさせていただきますが、座らすことをお許しいただきたいと思います。
 皆さんから承ったお話で、規約の批准は賛同されるということは全員一緒で同じ意見で、ある意味ではほっといたしました。なぜかというと、これが採択されてから七年の時間が経過しましたね。これは恐らく、先に締結済みの百三十八か国、これとの日本国内での国内法の整備がバランスに欠けているというようなことを日本国が確認をして、自覚をして、そのバランスを取るために七年間の整備期間、周知期間になったと思うんですね。
 その時間を経て、今日ここに皆さんがおいでいただいて、批准もういいぞ、国内法整備ほぼオーケーだぞと言ってくださったわけでありますが、これはよしとして、ただ現場に、私、実は地方自治を長くやっておりましたから、現場におってみると、最大公約数でいいよといっても、多くまだまだ行き届かぬところが現場にあるんですね。だから、そこへ参加することも大変意義が深いんでありますが、今それぞれお話が出たように、それぞれの障害で、それぞれの現場でいまだ、まだまだというところはいっぱいあると思うんですね。
 例えば、藤井さんにお聞きしたいんですが、さっきちょっとショックを受けましたけど、統計法による統計が全くなされていない、それを国側に望むんだとおっしゃって、先進国で統計国であるはずの日本が、ここを、大事なところに統計法による統計調査が皆様方の中で行われていなかったということに一抹のショックを覚えます。それと同時に、今言ったような批准への一抹の不安もあるわけでありますね。
 その辺、藤井先生のところだけなのか、あるいは御三名のところでもオーバーラップしてそういうのが存在するのかどうか、お聞かせをいただきたいなと思います。藤井さんに先に。
○参考人(藤井克徳君) 私、申し上げましたように、この国において障害者に関する基礎データは極めて乏しいと言わざるを得ません。例えば、先ほど言いましたように、相対的貧困線以下で暮らしている障害者の暮らしぶりがどんな暮らしぶりなのか、あるいはそこにおける家族の負担とはどんなものかということは誰も本当は分かっていないんですね。
 したがって、私は、それは一つの例でありますけれども、恐らく他の方に聞いてもらっても分かるとおり、そういう点でいうと、本当の実相ということは、例えば社会的入院という問題、精神科病院において十年も二十年もいらっしゃると。それはなぜなのかということも、一体、病院の経営問題なのか、地域に受皿がないのか、あるいは家族の受入れ問題なのか、いや、もっと複合しているのか、これも分からない。
 そういう点において、私は、改めて今度の条約の第三十一条の統計及び資料収集、これを精いっぱい活用していきながら、さっきも言いましたように、統計法にのっとって国家としてのやはりデータ収集をしてほしい。なお、三十一条は、単に収集のみならず、そのデータを障害者が使いやすくとも書いています。是非、使いやすさも含めて、これについては立法府としても是非またプッシュをしてほしいと思っています。
 以上でございます。
○儀間光男君 あとの先生方、何かオーバーラップする部分がありましたら。なければ次へ行きたい。
○参考人(尾上浩二君) ありがとうございます。
 先ほど、民間で行いました障害女性の複合差別の調査を御紹介をいたしましたが、なぜ民間団体が行っているかというと、実はそういう政府統計、いろんな統計法以外の障害者実態調査や障害者雇用調査はやられていますが、例えば回答のところで性別記入する欄はあったりするんですが、統計でまとめるとき、クロス集計をするときに例えば性別に着目をせずにしてしまっていると。そもそも、例えば複合的差別が明らかになっていないということが、なかなか今回、基本法のときにはならなかったんですけど、そのための、じゃ実態としてどうなのかという使える言わば統計調査がないんですね。
 是非、今後の政策を前進させていくためにも、まずは、調査なくして政策なしという感じがしますので、是非とも力を入れていっていただきたいなというふうに思います。
○儀間光男君 ありがとうございました。
 今おっしゃるとおり、調査なしに政策があるはずないんですね。そういう意味でも、先進国たる日本がここのところを欠如した、遅れていたということに新たなショックを覚え、参考にしていきたいと思っております。
 それから、地方自治体で、ちょっとレベルは落ちるかも分かりませんが、これを、この福祉行政を担当していますと大変難しい部分がたくさん出てまいります。例えば、施設へ入所する、グループホームへ行って手当てを受ける、そういう機会がある方々はいいんですが、例えば重度の身障者で在宅で介護を受ける、その場合、恐らく家族の方々が手分けして介護をするわけですけれども、お父さんは仕事へ行き、あるいは兄弟たちも仕事へ行き、結局はお母さんが残ってずっと介護をしていくわけですよ。そうしますと、お母さんが四六時中やるわけですから、なかなか体力的に大変だ、介護をしているうちにお母さん自身が要介護に陥ったというケースだってたくさんあるわけですね。
 そういうことを何とか手配していかなければ、ほとんどがこういう方々は在宅なんですけれども、またいろいろ聞いてみますというと、施設へ、あるいは表へ出してみんなで理解してもらってサポートを受けたらどうですかという話があるんですが、やっぱりメンツと誇りもあってのことか、なかなか応じてくれないんですね。
 そういうことについてのサポートの方法たくさんあると思いますが、尾上先生、専門的な立場からどんなようなことが一番いいんだろうかということをお教えいただければと思います。
○参考人(尾上浩二君) ありがとうございます。
 私自身、子供のときから脳性麻痺という障害を持って生まれ育ちましたので、今の話、本当に実感として思います。
 私の子供の時代、もう大分年を取っていますので昔になりますけれども、親の間で、言わば親よりも先に子供が亡くなることを希望するというより、子供よりも先に死ねないという言い方がありました。でも、普通、親より先に亡くなるというのは最大の親不孝と言われますよね。でも、障害がある場合は、言わばこの子を残して死ねないという言い方は、裏返して言えば、子供よりも親の方が生き延びなければ不安で仕方がないという状態なわけです。
 親亡き後の施設という言い方が私の子供のときからずっと言われてきましたが、親亡き後というのは親御さんにとっても本人にとっても非常につらいことなんですね。やっぱり親が高齢になってから本人が自立しようと思うと、もう本人も三十、四十になって環境が変わりますから非常に負荷が掛かります。むしろ親亡き後ではなくて親が元気なうちから自立ができる、この権利条約の第十九条で言う自立した生活ができるような政策への転換を是非お願いをしたい。
 親亡き後から、むしろそうではなくて、親が元気なうちから他の者と平等に成人すれば当たり前に自立ができるような施策へ大きく変わっていってほしい、それが先ほどのおっしゃられる現状を大きく変えていくきっかけになるのではないかと思います。
○儀間光男君 ありがとうございました。
 ちなみに、私どうしたかというと、何名かおられましたが、週二日間は役所から派遣介護で、お母さん方二日間お休みくださいというようなことで手伝いをさせていただきましたが、事ほどさように、現場ではまだそういう細かい手配が必要なんです。
 川島先生がおっしゃっていましたが、これは地方自治体の長でもっていろいろ変わってくるんですよね、全然質と内容が変わってきて。ですから、障害者であっても居住する地域でもってまた差が出てくるというようなのが現場の現況だと思うんですね。
 したがって、それを何とかして、どこへ住んでも同じように、一般の障害を持たない方々と同じように心豊かに生活できる、それには地域の理解が一番大事なんですが、それもなかなか整っていないというようなことなどあるんですが、川島先生、いかが御指導いただけるんでしょうか。
○参考人(川島聡君) ありがとうございます。
 私、今の点につきまして、やはり地域によって余り差が出てしまうというのは、これは非常に問題だと思います。それと同時に、やはり条約とか差別解消法とか、そのような障害のある人の人権について定めた法律があることを地域の人々が知らないというのがもう偏見、差別の温床の一つになっていますので、これは是非、地方自治体、全ての自治体で条約の周知化というものを徹底していくことが必要だと思います。
 ありがとうございます。
○儀間光男君 久保先生にお尋ねしたいんですが、実は昨日、東京都の知的障害を持つ親御さんお二人に会ってきました。いろいろお話を聞いたんですが、今、入所施設で、東京都は施設が八十か所あって収容人員が五千名、地域施設が千百あって五千九百名あるんだそうです。その他グループホーム等があるんですが、その地域施設は軽度者が多くて重度者の入所施設が少ないということであって、幾ら地域施設を増設しても重障者の入所施設がない、これは非常に不具合が生じているというようなことでございました。したがって待機水準が非常に高いと。
 しかも、これも少しショックだったんですが、知的障害者の入所施設、都内に八十か所あるのですが、過去において住民の反対運動に遭いまして都内に設置できず、現在、青森県を始め都外で四十施設をして二千七百名を収容、運営をしているというようなことでございました。しかも、その地域施設みんなとは言いませんが、虐待も発生しているというような状況等もあるという大変心配なことがあるんですが、この実態を何とか国あるいは地方自治体にも訴え、一番大事なのは地域コミュニティーの国民、健常者を含む国民の皆さんにどう理解させていくか、非常に大事なことだと思うんですが、御参考までに御教示をいただければと思います。
○参考人(久保厚子君) ありがとうございます。
 今先生の方から御指摘がありましたけれども、東京都だけではなくて全国的にそういう傾向があると思います。要は、障害が重かったら入所しかないのかというふうに私は思うんですね。どんなに障害が重くても地域で暮らせる、当たり前に地域で暮らすということをやはり目指すべきだというふうに思いますし、その意味では、なかなか地域が、先生がおっしゃるようにまだ安心できるような地域になっていないというのがあると思います。
 また、福祉施策につきましても、特に高齢障害者になられますと地域の中で、グループホームでこのまま暮らし続けていけるのかということを、本当に障害の本人もそうですけれども、家族は本当に心配になって、入所から一歩足を踏み出すということがなかなかできないというのは現状としてあります。
 地域の中にいてもきちんと、グループホームにいてもきちんと支えがあって、そしてそこには医療がきちっと届くと。暮らしの中にどれだけ医療を届けていくかということも大きなポイントになるんだろうというふうに思いますけれども、地域の中で、私たちよく言っているんですけれども、障害のある子に見送られるときが来るというふうに思って活動をしましょうというふうに話をしております。
 そういう意味では、私たちが元気でいる間に障害のある子が、我が子が地域で安心して暮らせる、そういう環境整備をつくっていくという意味で特に今障害者の制度の中で欠けているというふうに思いますのは、高齢障害者の部分だというふうに思うんですね。
 それで、地域の中でも高齢障害者が支えていけるような、そういう意味で、一定の入所施設はそういう二十四時間の支援が必要な人に特化していくんだろうというふうに思います。まだまだ年齢的に対応ができるような人であれば、どんなに重度の人であっても、本人が訓練されてというのではなくて、周りで支援していく者が、職員が、この人にどういう支援があれば地域で暮らせるのかということを学んでいただいて、その支援をくっつけて地域に出るというふうな視点を持って地域生活というものをつくっていくという、そこが大事なんだと思うんですね。
 そういう仕組みがないので、私たちは、先ほども尾上参考人のお話にありましたように、今もって親亡き後、親亡き後ということを言い続けなければならない。どうしても親が安心するために入所を望むという傾向にありますけれども、本当にどうしても二十四時間の支援が必要な人なのかという、親の安心だけで選ぶのではなくてというのが私どもが思っていることでして、地域の中である程度対応できる人はどんどん地域に出ていく、そして二十四時間の支援がどうしても必要な人は入所を利用するという、その循環がないと待機の人がどんどん増えるばかりというふうに思います。
 地域の中で本人が安心して暮らせる、高齢になっても安心してできるだけ長く暮らし続けられるという支援をまずもってつくるということが先決でありまして、その次に、次にといいますか、もう高齢障害者の問題は、今はもうみんなが、障害のある人たちも高齢化になってきていますから問題として認識しているところではありますけれども、そういう意味での、入所というよりも地域の中で二十四時間の支援があって暮らせるというような部分も一定必要になってくるかも分からないと思いますね。障害のある人が高齢化していく、高齢障害者はどんどん増えていきますから、そういう意味で、年齢ということに余りこだわることはないんですけれども……
○委員長(末松信介君) 先生、おまとめいただけますか、時間を過ぎましたので。
○参考人(久保厚子君) はい。そういう入所との関連があるというふうに思っております。
○儀間光男君 ありがとうございました。質問を終わります。
○委員長(末松信介君) 参考人に対する質疑はこの程度にとどめます。
 この際、一言御礼を申し上げます。
 参考人の方々には、長時間にわたり大変有意義な御意見をお述べいただき、誠にありがとうございました。
 参考人の方からいただいた資料で、この条約を知っている者の割合は世論調査では国民の一八%、内容まで知っている方は二・二%ということでありますが、私自身、いろいろと考えさせられるところがありまして、大変勉強になりました。次回の委員会の質疑に参考にさせていただきたいと思います。
 委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)
 本日はこれにて散会いたします。
   午後零時二十九分散会