第186回国会 法務委員会 第20号
平成二十六年六月三日(火曜日)
   午前十時開会
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   委員の異動
 五月三十日
    辞任         補欠選任
     浜野 喜史君     前川 清成君
 六月二日
    辞任         補欠選任
     宮沢 洋一君     長峯  誠君
     森 まさこ君     石田 昌宏君
 六月三日
    辞任         補欠選任
     石田 昌宏君     井原  巧君
     長峯  誠君     堂故  茂君
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  出席者は左のとおり。
    委員長         荒木 清寛君
    理 事
                山下 雄平君
                若林 健太君
                小川 敏夫君
    委 員
                井原  巧君
                石井 準一君
                石田 昌宏君
                堂故  茂君
                長峯  誠君
                溝手 顕正君
                柳本 卓治君
                吉田 博美君
                有田 芳生君
                江田 五月君
                前川 清成君
               佐々木さやか君
                行田 邦子君
                仁比 聡平君
                谷  亮子君
                糸数 慶子君
   国務大臣
       法務大臣     谷垣 禎一君
   副大臣
       法務副大臣    奥野 信亮君
   大臣政務官
       法務大臣政務官  平口  洋君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局家庭局長   岡 健太郎君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        櫟原 利明君
   政府参考人
       法務大臣官房司
       法法制部長    小川 秀樹君
       法務省刑事局長  林  眞琴君
       法務省矯正局長  西田  博君
       法務省保護局長  齊藤 雄彦君
       文部科学大臣官
       房審議官     佐野  太君
       厚生労働省社会
       ・援護局長    岡田 太造君
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  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○少年院法案(内閣提出、衆議院送付)
○少年鑑別所法案(内閣提出、衆議院送付)
○少年院法及び少年鑑別所法の施行に伴う関係法
 律の整備等に関する法律案(内閣提出、衆議院
 送付)
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○委員長(荒木清寛君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 昨日までに、浜野喜史君、宮沢洋一君及び森まさこさんが委員を辞任され、その補欠として前川清成君、長峯誠君及び石田昌宏君が選任されました。
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○委員長(荒木清寛君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 少年院法案外二案の審査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、法務省矯正局長西田博君外五名を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(荒木清寛君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
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○委員長(荒木清寛君) 少年院法案、少年鑑別所法案及び少年院法及び少年鑑別所法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案、以上三案を一括して議題といたします。
 三案の趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○山下雄平君 自由民主党の山下雄平です。今週も質問の機会をいただき、ありがとうございます。
 今回の法案審議を視野に入れて、本委員会では今年二月に千葉県の八街少年院、そして千葉少年鑑別所を視察させていただきました。私個人としても、四月末に地元佐賀県の佐賀少年鑑別所を視察させていただきました。こうした貴重な機会をいただいた関係の皆様の厚い厚い御支援に本当に感謝したいと思っております。
 伺った施設はどこも、問題を起こした少年少女の更生に向けて一生懸命頑張っていらっしゃいました。問題を起こした原因はどこにあるのか、社会に復帰させるためにはどうすればいいのかと、なかなか光が当たりにくい分野ではありますけれども、懸命に努力されておりました。今回の法案の見直しがこうした少年少女の早期の更生、社会への復帰につながること、そして施設の適正運用につながることを願ってやみません。
 今回の少年院、そして少年鑑別所に関する法律なんですけれども、六十五年間も見直しがなかったという話をお聞きしました。一方で、成人が対象になっている刑務所というのは、監獄法が改正されて抜本的に見直されたということです。これまで法案の見直しがなかったということで一番欠けている視点というのはどこにあるんでしょうか、また、それは成人のいわゆる刑務所に関する法制度と、どこが一番劣っているというふうに考えていらっしゃるんでしょうか。
○国務大臣(谷垣禎一君) 成人矯正の分野では、今、山下委員がおっしゃったように、監獄法、これは本当に古い法律でございまして、片仮名で書いてあって明治の頃にできたものではなかったかと思いますが、平成十八年に新しい刑事収容施設法に改正ができたわけですね。それで、そうなりますと、今まで監獄法では、施設運営の透明性であるとか、あるいは被収容者の権利義務が何なのか、あるいは職員の権限はどういうことなのかというような点で、あるいは収容者の不服申立て、こういったことがはっきりしなかったんですが、刑事収容施設法ができるようになりまして、被収容者の人権を尊重しながらその者の状況に応じた適切な処遇を行う、そういう根拠ができてきたということですね。
 これに対しまして現行少年院法は、おっしゃったように、昭和二十三年に制定されて以来、抜本的な見直しがされてこなかった。もちろん監獄法よりはずっとそれは新しいものでございますが、今の刑事施設収容法に比べると、欠けている点が、先ほど申し上げたような点が非常に見劣りがするということになってきたわけです。
 それで、矯正の場合は、やっぱり中に収容されている少年をどう社会復帰に向けて教育していくかというのが大事ですが、少年院法には矯正教育に関する規定は極めて乏しい。それから、少年院に収容される在院者の権利義務関係、それから職員の権限等も明確ではありません。それから、職員が職務を執行する上での根拠や判断基準が必ずしも明瞭とは言えない状況でございました。
 今回の法案は、少年鑑別所について、これを独立した法律を作るということに一つポイントがございますが、それと同時に、少年の特性に応じた処遇と再犯防止対策、あるいは少年非行対策の推進、それから少年の人権尊重と適正な処遇の実施、それから社会に開かれた施設運営の推進といった課題にこれで対応できるようになった。実は、広島少年院で事件が起きましたときに指摘されたのもこういう点でございます。そういったことに法的にも対応できる仕組みになったと。
 それから、少年院における矯正教育の基本的制度の法定化であるとか社会復帰支援の実施、それから少年鑑別所の機能の強化等々、再非行防止に向けた処遇を今度の法律で充実させていくことができる。
 それから、少年の権利義務、職員の権限の明確化、不服申立て制度の整備、適切な処遇の実施、それから視察委員会をつくって社会に開かれた施設運営を推進していく。こういうようなことが今度の少年院法、それから少年鑑別所法でできるようになっていくということでございます。
 ですから、少年の健全育成を図るという少年矯正の理念にふさわしい法的基盤が整備できるというふうに私たちは思っておりまして、これを活用して安心、安全な、世界一安全な日本ということに大きく資することができるのではないかと考えているわけでございます。
○山下雄平君 大臣から法案の意義についてるる説明がありました。
 では、具体的な内容にこれから入っていきたいと思いますけれども、まずは、少年院、そして少年鑑別所に、先ほど大臣からの御説明にもありましたとおり視察委員会を設けると。開かれた運営ということでしたけれども、その意義についてもう少し詳しく説明していただけますでしょうか。
○政府参考人(西田博君) お答えいたします。
 少年院法、鑑別所法案における視察委員会制度の趣旨でございますけれども、施設運営に関しまして広く施設外の方々の意見を聞きまして、国民に開かれた適正な施設運営を実現する、これが大きな趣旨でございます。
 これには、少年院又は少年鑑別所の運営の実情を的確に把握するために、施設の方から情報提供をいたしまして、実際に視察もしていただくと、そういった権限も認められているところでございます。
 以上でございます。
○山下雄平君 さらに、この法案には、各施設の責任者を、監査官ですかね、監査官というものに指名して年一回以上実地監査をするということが設けられておりますけれども、その意義というのはどういうところにあるんでしょうか。視察委員会とまた監査官、その二重に設けられている意味、そのまた違い、役割についてどのように考えていらっしゃるんでしょうか。
○政府参考人(西田博君) お答え申し上げます。
 実地監査の方は、その目的は、法務大臣が矯正行政の監督責任者として新しい少年院法等に違反した運用が行われないことを確保するとともに、訓令等に照らして適切な施設運営が行われるようにすることがその目的でございまして、そのために、法務大臣が、その職員のうちから監査官を指名して実地監査を行わせるというものでございます。
 一方、先ほど御説明しました少年院法案及び少年鑑別所法案における視察委員会制度の趣旨は、先ほど申し上げましたように、施設運営に関して広く施設外の方々の意見を聞き、国民に開かれた適正な施設運営を実現することでございまして、そのために、法務大臣は、少年の健全な育成の観点から、人格が高潔であって、少年の健全育成に関する知見、識見を有し、施設の、組織の運営の改善向上に熱意を有する者のうちから視察委員会の委員を任命するということになっております。
 このように、少年院法案及び少年鑑別所法案におきましては、実地監査と視察委員会と、こういうふうに双方とも適切な施設運営を実現するためのものでございますけれども、実地監査につきましては、当該施設職員以外の法務省の職員によるチェック機能を果たすものでございまして、一方、視察委員会につきましては、外部の方々の視点でこれを実現しようとするものでございます。両者の期待される役割は異なっておりますことから、それぞれ規定を申し上げました。
○山下雄平君 さらに、先に進みたいと思うんですけれども、今回の法案の中には、入っている少年少女が、不服があった場合、法務大臣に対して救済を申し立てる制度が盛り込まれております。この大臣への申出の制度の意義というのはどこにあるんでしょうか、また、これまで不服を持った少年少女というのはどうやって声を発することができたんでしょうか、お聞かせください。
○政府参考人(西田博君) お答えいたします。
 広島少年院におきます不適正処遇事案がございまして、そのときの反省から、収容されている少年がいろんなことが言えるような、不服の申立てができますような制度ということで、これまでも実は少年院長と監査官に対する苦情の申出というのはございました。ただ、今回は、法務大臣に対する救済の申出と、同じくこれまでありました監査官や施設長に対する苦情の申出、その双方を法律化して制度化するということでございます。これによりまして、その各々特徴がございますので、その特徴によりまして、適正な施設運営ですとかあるいは少年の実情についてつぶさに把握ができるようになるんではないかというふうに考えております。
○山下雄平君 先ほどそれぞれの申出人に対する特性があるという話であったんですけれども、いわゆる大臣への救済の申出と、少年院長や少年鑑別所長、監査官への苦情の申出と、二種類あるわけですけれども、それぞれどういった特徴があって、申出できる内容に区別があるのか、手続上どういうふうに違うのか、説明していただけますでしょうか。
○政府参考人(西田博君) お答えいたします。
 大臣に対する救済の申出、監査官や施設長に対する苦情の申出、いずれも申出事項が、自己に対する施設長の措置その他自己が受けた処遇でございまして、その点は共通しております。
 ただ、これらの制度にはそれぞれ特色がございまして、まず、施設長に対する苦情の申出でございますが、これは書面のみならず口頭で直接申出ができますことのほか、他の制度よりも当然、施設内でその施設長に対する苦情でございますので、ほかの制度と比べまして迅速な処理が期待できるというような特徴がございます。次に、監査官に対する苦情の申出でございますけれども、これは施設の職員でない監査官というところが特徴でございまして、それに対して、これも口頭又は書面で直接申し出ることができるというような特徴がございます。
 そして、法務大臣に対する救済の申出でございますけれども、これは、一定の事項については出院後、あるいは少年鑑別所においては退所後も行えること、それから相談員が申出の方法等について相談に応じること、それから違法又は不当な処遇であることを確認した場合においては、必要があると認めるときは法務大臣が当該措置の取消し等を行うことといった特徴がございます。
 このように、相手が少年でございますので、複数の不服申立て制度を用意しまして、少年がこれを適宜選択できるようにすることによりまして、収容少年の権利救済の実効性を確保しようといったものでございます。
○山下雄平君 簡便にできるものから、かっちりした形で、より適正に対応してもらいたいというような方の申出から、いろんな形で声を吸い上げていきたいという意思の表れだと思っておりますけれども、先ほど法務省の方からの説明にもありました、今回のその救済の申出というのは、広島の少年院での事件を契機にという話がありました。広島の少年院で職員の方が少年に対して暴行をするなどのひどい事件があったということですけれども、では、平成二十一年の事件の時点で今回の法整備が仮にできていたとしたら、あの事件はどのようになっていたというふうに想像できるんでしょうか、深刻化を防ぐことができたというふうに捉えてもいいんでしょうか、お聞かせください。
○政府参考人(西田博君) お答えいたします。
 広島少年院におきます不適正処遇事案の問題点としては、職員の人権意識とか服務意識の問題もさることながら、職員による暴行が長期間にわたって反復継続して行われていて、かつそれが、それを疑わせるような情報があったにもかかわらず発覚しなかったことが大きな問題であると考えております。そして、この不服申立ての機能が十分に生かされなかったことや、あるいは施設運営が閉鎖的で第三者の目が届きにくい、届かなかったことが反省点として我々は考えております。
 これらの反省を踏まえまして、今回の法案におきましては、法律の目的規定において人権尊重を明記しているほか、職員に対する人権研修の実施、少年の権利義務関係、職員の権限を明確化すること、法務大臣に対する救済の申出、監査官又は施設長に対する苦情の申出という不服申立て制度の整備、視察委員会制度の導入による施設運営の透明化の確保ということを盛り込んでおります。
 委員御質問ございました、これがもしその当時にあった場合に何とか防げたのか、あるいは深刻化を防止できたかということにつきましては、なかなか複雑な問題もございますのでここで簡単にお答えすることは難しいんですけれども、ただ、今回の法案によりまして、少年の権利等を制限する場合の要件や手続、あるいは規律秩序維持のために必要な措置等に対する職員の権限が明確に規定されましたほか、不服申立て制度の創設とか視察委員会制度を導入することによって、在院者の人権を尊重するという法案の趣旨の徹底はできると思いますし、もしその当時あれば、ある程度深刻化する前に多少は何かできたんではないかというふうに思います。
 加えて、そういった法案の趣旨を実現するためには、やはり運用面においても工夫は必要と考えております。例えば、集団寮における複数指導体制、これは、従来一人で職員が少年の集団を指導していたものを、休日とか夜間に複数の職員がこれに当たるといったものでございますけれども、これを取ることによって、職員同士の牽制にもなりますし、一人が全てをかぶるといったストレスも回避できるといったようなことで、少年への教育についてもいい効果が現れるだろうと思います。
 それから、在院者が少年院長に対しまして、少年院における生活に関する意見を自由に申し立てることができる意見ポストというものを設置するということもやっておりまして、こんなふうに、現在実施している方策とともに、法案の趣旨を生かしまして、不適正処遇の再発防止には毅然として立ち向かっていきたいと考えております。
 以上でございます。
○山下雄平君 多くの職員の方というのは、少年少女の矯正、更生に向けて一生懸命取り組んでいらっしゃると思います。仮に変な方が出てきたときに、そうしたことの芽を早期に気付いて摘み取れるような、運営の方でも頑張っていただきたいというふうに思っております。
 では次に、少年少女が社会に出たときのことにちょっと目を向けて議論を進めていきたいと思うんですけれども、新しい少年院法案の中には帰住先の確保、就労などの支援ということが盛り込まれております。少年少女が少年院を出た後に再び犯罪に走るようなことがないようにするためには、帰る家が必要ですし、また社会に溶け込んでいく必要もあると思いますし、働く場所というのも非常に重要だと思っております。
 我々が視察させていただいた千葉県の八街少年院でも職業訓練に力を入れていらっしゃいましたし、民間の方々と協力されて、犯罪を犯してしまった、罪を犯してしまった少年が、何でそういうふうなことを起こしてしまったのかということに、罪と向き合えるような形に一生懸命努力されておりましたし、人と人間関係をつくっていく、養う力を支援されている姿を見ました。こういうことは非常に重要だなというふうに感じました。
 更に更にそういった分野に力を入れていく必要があると思いますけれども、今回の法案で帰住先の確保、就労の支援ということを明記されたことによって、今後、法務省としてどのように力を入れていくおつもりでしょうか、お聞かせください。
○政府参考人(西田博君) お答えいたします。
 少年院では、これまでも在院者に対する各種社会復帰支援というものは取り組んできたところでございますけれども、今回、少年院法案の第四十四条第一項の社会復帰支援というものがございまして、これを一層進めるためにその法的根拠を、これを付与するというものでございます。
 まず、現状について少し申し上げますと、帰住先につきましては、本人や保護者の希望を参酌して、更生保護官署と連携して確保に努めておりますけれども、適当な引受人がいない在院者につきましては、少年を受け入れてくれる更生保護施設や自立準備ホームへの帰住について調整等を実施しております。
 また、最近特に力を入れておりますのは、障害によりまして特に自立が困難な在院者につきましては、平成二十一年度以降、地域生活定着支援センターと連携した帰住先の確保も含めまして、出院後に必要な福祉サービスにつなげる特別調整を実施しております。
 それから次に、就労の支援についてでございますが、就労を希望する在院者に対しましては、厚生労働省と連携しまして刑務所出所者等就労支援事業というものをやっておりまして、これとか、就労支援スタッフによる個別相談を実施しているほか、協力雇用主の下での住み込み就労、職親プロジェクトを始めとする民間発意の就労支援方策の活用等に努めているところでございます。
 今後でございますが、帰住先の確保とか就労支援等の社会復帰支援が法律に明記されましたので、これらが少年院が行うべき業務として明確化されることになったところでございます。したがいまして、少年院全庁が足並みをそろえまして、保護観察所との連携をより一層進めるとともに、公共職業安定所等の関係機関とか民間企業、それから団体等との協力関係を一層深めていく必要があろうと考えております。これによりまして、新少年院法案施行後も積極的に在院者の社会復帰支援に取り組んでいきたいというふうに考えております。
 以上でございます。
○山下雄平君 法律として職員が当たる業務ということで明記されたということで、更に更に力を入れていっていただきたいと思っております。
 次に、当委員会でも私も取り上げたことがあります矯正医官の問題についてお伺いしたいと思うんですけれども、今回の法案では、少年院、少年鑑別所でも社会一般の医療水準を確保するということが盛り込まれました。私が視察させていただきました佐賀県の佐賀少年鑑別所では、非常勤の高齢の医師の方が週一回来ていただけるという、そういう状況ということでした。この今の医師の方が鑑別所に来られるようになったのも、前の方が辞められるときにどうしようということで紹介していただいて、今来ていただけるようになったんですという話もお聞きしました。
 小規模のところというのはどこも非常勤だと思うんですけれども、なり手がなかなか難しい状況で、この人が辞めてしまった後はどうなるんだろうかと、そういうような状況ではないかというふうに推察しております。また、大規模な施設に関しても常勤の医官のなり手が非常に少ないという話は何度もお聞きしております。定員を割り込んでいるという話です。
 どこも綱渡り状態というような状況ではないかというふうに思っておりますけれども、この矯正医官の問題に関してどのように取り組んでいくつもりか、お聞かせください。
○政府参考人(西田博君) お答えいたします。
 矯正施設の被収容者の健康の保持は国の重要な責務でございますので、医療についてもきちんとした体制整備を図らなければいけないということでございますが、今お話ございましたように、現在、矯正施設に勤務している医師が著しく不足しておりまして、まさに崩壊の危機にあるというような状況でございます。
 このような中、昨年七月に、大臣からの指示もございまして、医師とか弁護士等、外部有識者から成る矯正医療の在り方に関する有識者検討会を立ち上げまして、多角的な見地から検討いただきまして、本年一月、矯正施設の医療の在り方に関する報告書としてまとめられました。この報告書では、矯正医官の待遇改善を図ることはもちろんですが、矯正医療に対する社会一般の認知度を高めて、その業務の特殊性、困難性について国民の理解を得ること、それから、矯正医官へのリスペクトを形成することなどについて提言がなされました。
 その具体化について今鋭意検討を進めているところでございますけれども、今すぐでもできることとして、矯正行政とか矯正医官に関する広報を、大学の医学部を含む各方面に今積極的に御説明をして御理解いただこうということをやっているところでございます。
 少年鑑別所といった小規模施設を含めた矯正施設においてもなかなか医師の確保は難しいんですけれども、非常に重要なことでございますので、施設所在地の医療機関とか医師会と連携を図りまして地域医療機関と共生できるような仕組みを構築して、少なくとも医師が不在にならないように、そんな方策を少しでも講じていきたいと感じております。
 以上でございます。
○山下雄平君 先ほど法務省の方からもありました。医師会を始め民間のいろんな各種団体と連携をしながら、何とかこうした施設での医療崩壊につながらないように是非頑張っていただければと思います。
 最後の質問になります。
 少年鑑別所法案には、地域の非行、犯罪防止への援助が法律上明記されました。この意義についてどう考えるか、お聞かせください。
○政府参考人(西田博君) お答えいたします。
 現在、少年鑑別所は、現行の少年院法の十六条の二第一項の規定によりまして、少年や保護者又は一般の方などからの求めに応じて少年の資質の鑑別等の相談対応を行っているところでございます。ただ、これらの業務は、本来の家庭裁判所の行う少年に対する調査又は審判等のために行う鑑別の業務に支障を来さない範囲において行うことができるとされておりますので、言わば副次的な業務として位置付けられてきたところでございます。
 少年鑑別所というのは、その仕事柄、非行のある少年に対する鑑別の実務を通して蓄積された専門的知識とか技能とかを持っておりますので、こういったノウハウを地域社会の非行及び犯罪の防止に役立てていただきたいということで、こんなこともこれからは少年鑑別所の重要な役割になるんではないかというふうに思っております。また、再犯防止に向けた総合対策におきましても同様な、地域社会における非行、犯罪の防止に寄与することが求められております。
 そこで、今回の少年鑑別所法におきましては、そういったことを本来業務として法律上位置付けることとしたものと考えております。今後は、このような法案の趣旨を踏まえまして、少年鑑別所が有する専門的機能について地域の関係機関等からの御要請にお応えするとともに、そこと連携強化を図ることを通しまして、地域社会の非行及び犯罪の防止に向けて積極的に取り組んでまいりたいというふうに考えております。
 以上でございます。
○山下雄平君 終わります。
○有田芳生君 おはようございます。民主党・新緑風会の有田芳生です。
 少年院法あるいは少年鑑別所法など、今回の問題点、課題というのは非常に重要な意味を持っているというふうに思います。私の理解では、言葉を換えて言えば、少年の育て直し、そのシステムをどのように強化していくか、ハードとソフトなどいろんな課題が山積していると思うんですけれども。
 私、この問題で質問する準備をしていたときに、二十代のときに読んだ本、思い出しました。自由学園をつくられた羽仁説子さんが幼児教育論集という中で、子供たちがとにかく小さい頃、小学生も含めてだけれども、いろんな悪いことをやってしまう、そのときに大人が外から駄目だと例えばたたいたり、いろんな教育の仕方はあると思うんだけれども、それじゃ駄目なんだと。羽仁さんがおっしゃっていたことで非常に印象的なことは、悪いことをしたならば、それがどのように人に迷惑を掛けているのか、どんなにあるいは醜いことなのかということを心の中から理解させなければいけない。これも言葉を換えて言えば、外からごつんと叱るんではなくて、内面から突き破る、そういう教育が必要だと、それが羽仁さんが強調していたことだというふうに思います。
 ですから、今回の法律が施行されて、これから、少年非行に走ったような人たち、鑑別それから少年院などでどのような体制をつくり、子供たちを育て直すのか、そういう課題だろうというふうに思っているんです。
 そこで、最初に、いきなりですけれども、谷垣法務大臣にお聞きをしたいことは、唐突ですが、練鑑ブルースって御存じですか。
○国務大臣(谷垣禎一君) 存じております。
 今でも、青いバスに乗せられて、揺られ揺られて行く先は、その名も高き練馬区の、東京少年鑑別所、歌えと言えば歌えるように頭の中にしみ込んでおります。
○有田芳生君 もう今から五十年以上前に非常にはやった曲で、一言で言えば放送禁止歌、ラジオでもテレビでも放送しちゃいけないよということで、例えば、これは日本民間放送連盟によって要注意歌謡曲取扱内規がありまして、退廃的、虚無的、厭世的言動を肯定的又は魅力的に表現したものは放送しちゃいかぬと、それで網走番外地も放送されなかったし、この練鑑ブルースもそういう対応を取られたんですよね。
 だけど、今一部御紹介いただきましたけれども、これは非常に重い意味があったなというふうに思うんです。いろんなパターンがあって、練馬鑑別所、それから大阪少年鑑別所など、全国各地で少年たちが自分たちの境遇を歌った。元々、調べてみると、昭和十二年に日本が戦争に入っていくようなときに可愛いスーちゃんという曲があって、要するに、陸軍で軍隊に行った人たちが大変厳しい状況になっている、そこから何とか抜け出したいなという思いが、作者不詳なんですけれども、それが戦後になってこの練鑑ブルースなどに変わっていって自分たちの境遇を歌っている。
 人里を離れた寒いとこ、こんなところがあろうとは、夢にも思わぬしゃばの人、知らなきゃおいらが教えましょというところから始まって、身から出ましたさびゆえに、粋なポリコにパクられてと。この粋なポリコというのが別の言葉では嫌なポリコになったりするんですけれども。非常に大事だと思いますのは後の方ですね。三年三月の刑終えて、やっと出ましたしゃばの空、次です、いとしい母さん土の下、かわいいあの子は人の妻、二度と会えない二親と、晴れて会うのは夢の中。
 ここが今回の問題にも非常に重要な意味合いを持っていると思いますのは、先ほどお話がありましたけれども、私たち法務委員会で千葉の八街少年院視察に行かせていただきました。そのとき、廊下に少年たちが自らを歌った詩とか言葉がいろんなところに掲示されていましたよね。そこでいわゆるお母さんに対する思いというのを物すごく表現されています。お母さんに悪いことをしたな、そういう言葉が非常に多かった。中には長い文章が掲示されていましたけれども、ある少年が、どうしてこの世には離婚なんてあるんだろうかと、親は離婚してしまった、そういうことをきっかけにして自分はこんなところに今暮らしているんだと。最後の方で切々と、もうこの世の中から離婚なんというのはなくなってほしい。そういうことをある少年は文章にしておりました、掲示されていました。
 そこで、矯正局にお尋ねをしたいんですけれども、少年院に収容されている少年たちの家族構成、これ統計が出ていると思いますが、たしか母子家庭、父子家庭などなど、その数についてどういう傾向があるんでしょうか、それをまずお示しください。
○政府参考人(西田博君) お答えいたします。
 在院者のうち、保護者が実父母である者の割合は、平成十四年の四八・七%から平成二十四年には三二・六%と減少しております。母子家庭、父子家庭につきましては、保護者が実母のみである者の割合は、平成十四年の二七・五%から平成二十四年は四〇・九%と大幅に増加しているのに対しまして、保護者が実父のみである者の割合は、平成十四年と平成二十四年とも約一〇%であり、同程度となっております。
 それから、祖父母とか雇主、児童養護施設の施設長等が保護者である者につきましては、統計上その他ということでくくっておりますけれども、その割合は、平成十四年の二・八%から平成二十四年には三・八%と増加していると、こういった状況でございます。
○有田芳生君 今お示しいただきましたように、やはり少年たちの中で母子家庭の比率というのは非常に増えている。そこから見えてくるものは、背景に恐らく家庭問題が大きく横たわっているのではないかというふうに思います。
 私は、後でもお話しする機会があれば御紹介したいんですけれども、例えばオウム真理教に入ってしまった若者たち、あるいは霊感商法に関わってしまった若者たち、何百人、これまで御家族含めて会ってきましたけれども、共通してやはり家族問題抱えている人が多いんですよね。
 そういう中で、何が問題なのかということは、いろんな、例えば一つのテーマでいえば、父性の欠如、父親性の欠如、これは父親がいないという問題ではなくて、家庭において社会的価値観をきっちり子供に伝えていくことがなかなか難しいという、そういうことが現れている一つの傾向があるんですけれども、今のお示しいただいた数字を見ても、母子家庭の少年たちの中でそうやって少年院まで行かざるを得ないようなことがあるという、そこにどういう問題点があるかということを、おぼろげながらでもいいんですけれども、谷垣大臣、どのように考えていらっしゃいますでしょうか。
○国務大臣(谷垣禎一君) 委員は、オウム真理教等々の問題、非常にずっと追及をされてこられたので、いろんな経験をお持ちだと思います。
 私自身は、現在も、例えば死刑執行をするときに過去の犯罪の記録を読まなきゃなりません。それから、私、若い頃、若干でございますが刑事弁護もやったことがございます。それから、現在はこういう仕事でございますから少年院を見たり刑務所を視察したりすることもあるわけでございますが、もう委員のおっしゃったとおりだと思います。
 私は、やっぱり育ってきた家庭環境に非常に問題がある。それは、親はしっかりしていても子供が親といい関係を結べなかったという場合もございますけれども、親と申しますか保護者に子供を育てるための意欲であるとか、あるいは資質と言うとちょっと言葉は悪くなるかもしれませんが、十分、しようと思っても、子供を育んでいく能力といいますか、そういうのが問題がある親御さんも私は随分いらっしゃると思います。
 私の祖母はよく言っておりましたが、子供はかわいがって育てれば問題は余り起こさないんだと。実際、それは余りかわいがってスポイルをするということはあるかもしれませんが、やはり、何というんでしょうか、親に愛され、親に受け入れてもらい、親に信頼をされた、そういう経験の有無というのは私は非常に大きいなと思います。
 過去のこういう記録を読み、実際刑務所の収容者と話をしたり、私の経験、少ない経験でございますけれども、そういう親なり近い人に受け入れてもらったということがあるのかどうかというのは極めて大きいのではないかというふうに思っております。
○有田芳生君 子供たちが学校に行って、そこでいじめがあったりする。これは親の世代にしても、働いていても嫌なことが職場であったりする、あるいは国会であったりするというようなことになったときに、やはりそれを支えてくれる友人であったり同僚であったり、しかし最後にはやはり家庭というものが最後の逃げ場所というのか安心できるところだと思うんだけれども、それが戦後の社会の構造変化の中でやはり崩れていってしまっているという問題が一つあるというふうに思うんですよね。
 そこで、刑事局に具体的にお聞きをしたいんですけれども、戦後のざっとした少年事件の発生件数の推移についてまずお示しください。
○政府参考人(西田博君) 私の方からお答えいたします。
 平成二十五年版の犯罪白書によりますと、戦後の少年による刑法犯の検挙人員の推移としまして三つの大きな波があったように感じられます。まず一つは、昭和二十六年の十六万六千四百人余りをピークとする第一の波、昭和三十九年の二十三万八千八百人余りをピークとする第二の波、それから昭和五十八年の三十一万七千四百人余りをピークとする第三の波、こういった三つの大きな波が見られます。それで、その後、昭和五十九年以降でございますけれども、平成七年まで減少傾向にございまして、その後、若干の増減を経て、平成十六年から毎年減少を続けております。
 それから、凶悪事件についてちょっと申し上げますと、強盗については、戦後、減少傾向が続いておりましたけれども、平成八年頃から十五年頃まで増加し、その後おおむね減少傾向にございます。殺人は、戦後、多少の増減はありますけれども、平成十一年度以降減少傾向にあると。おおむねそんなところでございます。
○有田芳生君 確かに、三つのピークがあった中で、少子化も関わって減少をしていく流れはあるんだというふうに思いますが、同時に、現場で子供たちに関わっている人たちが一様に言いますのは、事件の複雑化、もっと言葉を換えて言えば、どうしてこんなことをやってしまったんだろうというような、よく分からない事件というものが増えてきているという指摘もあるんですけれども、そこはいかがなんでしょうか。事件の多様化という意味では何か変化ありますでしょうか。
○政府参考人(西田博君) 今委員おっしゃいましたように、実際に現場の少年鑑別所とか少年院で処遇している職員が言うのは、やはり委員おっしゃいましたように、どうしてこんなことをやったんだろうかというようなことが、犯罪の内容ではなくて、どうしてこの子がこんなことをと、そういったような、なかなか納得できないようなことがあるというふうには私も現場の方から報告を受けております。
 ただ、具体的にどんな非行名がどんなふうに動いているかということをちょっと申し上げますと、平成二十五年の少年鑑別所の新収容者、つまり初めて入ってきた少年の非行名を見ますと、十年前の平成十六年と比べまして多くの非行名が減少しております。ただし、強制わいせつとか同致死傷、これは増えております。また、詐欺、これも増えております。この二つが増えているというのが、はっきり申し上げましてどうしてかということまで分かっておりませんけれども、こういった顕著な特徴がございます。
○有田芳生君 ちょっと、この今日の課題の問題をえぐり出すために一つの具体的な事件について、後ほどの医療の問題なども含めて重要な関係がありますので、これは刑事局になるんでしょうか、一九九七年に神戸で少年事件が起きました。いわゆる酒鬼薔薇事件とマスコミなどは言っています。あるいは少年Aの事件などと報道することもありましたけれども、この神戸の当時の事件についての概要についてお示しください。
○政府参考人(林眞琴君) お尋ねの事件でございますけれども、平成九年二月から五月にかけまして神戸市内において発生した当時十四歳の少年によります、十一歳男児に対する殺人及び死体損壊遺棄、十歳女児に対する殺人、九歳女児に対する殺人未遂、十二歳女児に対する傷害、十二歳女児に対する暴行、こういった各事件でございまして、神戸地方検察庁におきまして、同年であります平成九年七月二十五日にこれらの事件を一括して神戸家庭裁判所に送致し、同年十月十七日、同裁判所におきまして当該少年に対しまして医療少年院送致の決定がなされた事件でございます。
○有田芳生君 当時、新聞、テレビ含めて物すごく大々的な報道がなされる中で、六月末でしたか、少年が逮捕されたときに、十四歳ということで世間を、社会を震撼させた事件が明らかになりました。
 このとき、今審判の結果についてお示しいただきましたけれども、たしか精神鑑定の内容についても社会に対して明らかになったというふうに思うんですが、そこはどういう経過がありましたでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(岡健太郎君) 委員御指摘の点は決定要旨の公表ということかと思いますので、その点について説明させていただきます。
 少年法は、少年の情操を保護し、その健全な更生を図るため、審判を非公開としております。他方、少年事件に関しましても、社会の高い関心を集める事件では情報をできるだけ開示してほしいという要請があることから、各家庭裁判所において、取材の目的や事案の性質等を考慮して相当と考える場合には、少年の更生の妨げにならない範囲において正確な報道をしていただくという観点から決定要旨を公表しているところでございます。
 御指摘の事件に関しましても、当時の神戸家庭裁判所の説明によりますと、社会の注目を集めた事件であり、正確な報道のための資料提供の観点から、少年事件の秘密性及び審判の非公開性の原則に抵触しない限度で決定要旨を公表したものと承知しております。
○有田芳生君 私はいつも疑問に思ってきたことがありまして、例えば、今日はテーマでありませんから詳しくは述べませんけれども、一九九五年の三月二十日に地下鉄サリン事件が起きた。そのことをきっかけにして、坂本弁護士一家殺害事件や松本サリン事件などなど、オウムの犯行が明らかになってくる中で、どういう人たちがそういう組織に入ってしまったんだろうか。それを振り返って分析、検討していけば、どこにでもいるような普通の人たちが、人生のふとしたはざまでそういうオウム真理教に入ってしまい、結果的に、自分の体を治そうと思っていた人がサリンをまいてしまうとか、東大理学部で物すごい素粒子の研究をしていた人が実際にサリンまいたとか、一体何があったんだということが、これは日本社会の共通の教訓としなければいけなかったと思っているんですよ。
 ところが、いまだ菊地直子の裁判などが続いておりますけれども、刑をどうするかというようなところの法律的な判断はなされていくけれども、じゃ、なぜ若者たちがそういうところに行ったのかという分析が社会的な教訓になっていない。それはオウムだけではなく、今お示しいただいたような少年事件についても、一体どういう家庭で何が問題が起こり、そういうとんでもない事件を起こしてしまったのかというのは社会的共通認識になっていないだろうというふうに思うんです。
 ですから、今もう少しお聞きをしたいのは、決定要旨が公表されたということで、それがきっかけにして社会的な議論、あるいは家庭、学校、あるいは国会などで、何が問題だったのかということが教訓化されていければよかったんだけれども、ただ、なかなかそうはなっていない現状があると思うんですよね。そうしたときに、お聞きをしたいのは、その決定要旨が公表されたというのはそれまでにもあったんでしょうか。あるいは、この事件以降、そういう中身に触れるようなことが公表されたという事実はあるんでしょうか。教えてください。
○最高裁判所長官代理者(岡健太郎君) 今の点につきましてはちょっと事前にお尋ねがなかったので、この事件より前に決定要旨の公表というのがあったかどうかというのは今確認しておりませんが、この事件以降、先ほど申し上げたような趣旨で、事案に応じて各家庭裁判所において決定要旨を公表する場合があるというところでございます。
○有田芳生君 この神戸の少年事件の精神鑑定の中で、これは公表された文章にもあるんですけれども、例えば家庭の問題として度重なる体罰の悪循環という表現があるんですよね。あるいは未分化の性衝動と攻撃性の結合。だけど、未分化の性衝動と攻撃性の結合、その攻撃性といったって、ある日突然生まれてくるわけではなくて、家庭環境、社会環境の中で彼の中に育っていったものが事件を起こしたというふうに私は理解しているんですよ。
 もう少し具体的に言いますと、例えば度重なる体罰の悪循環。彼は十四歳で犯罪を犯しましたけれども、小学校に上がったときに弟さんが生まれる。そうすると、お父さん、お母さんは弟さんの方にどうしても愛情が行ってしまう。そのことが気に食わなくてこの少年は弟をいじめる。弟をいじめると、お父さん、お母さんが彼を、体罰を加える。その悪循環ということなんですよね。だから、そういう家庭の問題があった。
 あるいは、そういうことが高じて、例えば、二人の、女子小学生と男子小学生が殺害されたんだけれども、一人目、ショックハンマーで殴られて一週間後にある女の子が亡くなってしまいましたけれども、それがテレビで報道されているとき、彼は神戸市須磨区の二階にある自分の部屋に戻っていく階段を上がるときに、その山下彩花ちゃんが亡くなったというテレビの報道がなされているときにお母さんが、かわいそうにね、本当に、もう亡くなってしまってねということを彼に言ったときに、彼は、階段を上がりながら、何だこいつは、まだ気が付かないのかというようなことを自分で思ったと後に精神科医に語っているんですよ。だから、そういうような母親との関係が生まれていた。
 そういうことを考えますと、私は当時、この問題についても調べたときにびっくりしたことがありました。ここは厚労省にお聞きすることになるんでしょうか。当時、この事件が報道されたときに、じゃ、子供の心の専門医というのは今、日本社会にどれだけいらっしゃるんだろうかということが問題になったんですよ。医療少年院の問題にもなってきますけれども、子供の心の専門医、この神戸の少年について言えば、小学校三年生のときに、親の体罰が余りにひどいもので、ある日突然台所でひっくり返ってしまって、おばあさんがいない、おばあさんがいないというような訳の分からないことを言って、それはもう親は心配しますから病院に連れていくんですよね。それで、軽いノイローゼという診断を受けるんだけれども、もうそれ以降の治療は行われなかった。それが小学校三年生。
 家庭環境というのはその後もずっと続いていくんだけれども、結局あの事件のときに、本当に一部しか報道されませんでしたけれども、この広い日本社会、子供たちもいっぱいいる中で、子供の心の専門医、何人いるのだろうかと思ったら、当時二百人もいないんですよ。子供たちが、少子化といったってまだまだ多くの子供たちがいる、学校のいじめ、体罰なども含めて心の問題を解決しなければいけない、治療しなければいけないという、そういう日本社会にあって二百人もいないのかとびっくりしたことがあるんですが、あれからもう事件から十七年になりますか、今、日本社会で子供の心の専門医、何人いらっしゃるんでしょうか。
○政府参考人(岡田太造君) 御指摘の児童思春期の精神医療を担う医師の数でございますが、これは正確には把握できておりませんで、主な学会の認定医の数をお示しさせていただきたいと思います。日本児童青年精神医学会認定医が二百十八人、日本小児精神神経学会認定医が二百八十二人となっているところでございます。
○有田芳生君 それでは続いて、じゃ、大学の体制というのはどうなんでしょうか。当時調べたときも全国多くの大学、医学部がありましたけれども、例えば児童精神科という講座があるところ、非常に少なかったと記憶しておりますが、今、全国の大学の中で児童精神科、言葉を換えて言えば子供の心の専門家になる人たちを養成する講座というのはどのぐらいあるんでしょうか。
○政府参考人(佐野太君) お答えさせていただきます。
 現在、医学部を持つ大学は全体で国公私合わせて七十九大学、これは全体の数でございます。そのうち、医学部医学科におきまして児童精神医学に関する今先生がおっしゃられた講座につきましては、東京大学、浜松医科大学、名古屋大学、香川大学、北里大学の五大学に設置されているところでございます。これらの講座以外でも、医学部には基本的に精神医学講座や小児科学講座などが設けられておりまして、その中でも児童精神医学に関する教育研究というものは行われているのが現状でございます。
 また、医学教育におきましては、児童精神医学につきましては、医学教育の指針となる医学教育モデル・コア・カリキュラムというものに位置付けられておりまして、全国の七十九医学部全てにおいて児童精神医学に関する教育が行われているところでございます。
 以上でございます。
○有田芳生君 子供の心の専門医として子供たちの治療を本気でやりたいというふうに思ったとしても、今の医療体制の中で子供の心に関わろうとすれば、その子と物すごく密接に関わらなければいけないだけではなくて、やはり両親との関係も深めていかなければならない。そうすると、言ってみれば、生活が成り立たないと率直におっしゃる方々もいらっしゃるという、そういう問題も、この日本社会、解決していかなければいけないというふうに思うんですよ。
 それで、この神戸の少年について言っても、関東医療少年院に送られて結局何が行われたかというと、育て直しなんですよね。育て直しをしなきゃいけない。生まれたときからの育て直しをするということで、恐らく相当なチームが組まれて、母親役まで付けられて、そしてしっかりと彼は更生をしていって、今は日本のあるところで働いていき、今六月ですから来月には三十二歳で、しっかりと働き、被害者御家族には給料の中からお金をためてお渡しをすると、そういう更生が進んだわけですけれども。
 やはり、ここまで極端な事件でなくても、少年院に行かざるを得なかった少年たちが、先ほどお示しいただいたように、母子家庭であるとか父子家庭であるとか、家族の問題を抱えている人たちの一つの傾向があるというふうに明らかになっている以上、やはり家族問題という視点、そして育て直すという視点というのが、この少年院なんかでも、あるいは鑑別所でも必要だというふうに思うんですよ。
 そういう流れの中で、今ざっと家庭問題、家族問題ということを含めて事件の関わりをお示しいただきましたけれども、谷垣大臣、どんな感想をお持ちでしょうか。
○国務大臣(谷垣禎一君) これは全く委員の御議論のとおりだと私は思います。
 少年院でも育て直しというテーマは極めて大事でございまして、やはりそれまで、何というんでしょうか、家庭環境、親子関係等々で、十分な自分の人間性というのかそういうものが、あるいは、もっと、人間性とまで大きく言わなくても、少年院なんかに参りますと、例えば今まで三度食事をする食習慣というものがなかったと。要するに、もう例えばその辺にあるお菓子を適当に親からもらって食べていたとか。
 最近は新聞紙上でもっと、一週間に一度しか食べさせなかったというような甚だしい事例が報道されておりますけれども、そういう中で育ってきた子供たち、いわゆる鑑別の中でしっかりその子供の生育や問題点を明らかにして育て直していくという作業は極めて大事で、そこにやはり少年院の矯正の根本的な問題があると私も思っております。
○有田芳生君 もう一度先ほどに振り返ってもし説明していただければうれしいんですけれども、少年Aの場合でなくてもいいんですけれども、例えば少年たちが少年院あるいは鑑別所にやってくる。この少年について、どこに問題があって、なぜこんなことを起こしてしまったんだろうか、そういう分析、検討、それから今後の方向性ですよね。当然、矯正プログラム作られるわけでしょうから、そこの流れというのは、どのぐらいの体制で、どのぐらいの時間を掛けて、どのような検討がなされるかというのを教えていただけますか。
○政府参考人(西田博君) お答えいたします。
 個々のケースによって差があるものですからなかなか具体的に申し上げにくいんですけれども、一般的には、少年鑑別所においていろいろな資質鑑別する際に、その子の問題性とかあるいは環境上の問題とか、そんなものも明らかになっておりますので、少年院の方に送致されたときに、もう一回そこで、そういった鑑別所からいただいたデータとかで、あるいは少年院に持っているノウハウによって、年齢ですとか、その子の発達の程度ですとか、そんなものを的確に把握をして、各々の個別的、個人的な処遇計画というような言い方をしますけれども、それをやって、どの期間にここまで達成するとか、あるいはこの段階が終わったらこの次はこんなことを目標にして処遇するんだというようなことを事細かに作り上げるのが少年院の処遇でございますので、一般論で申し上げますと、そういったふうにデータを集めて、その子の特質というか問題性というか、そんなものを捉えて、収容期間も見据えながら、各個の処遇計画を作っていくというところでございます。そんなところでございます。
○有田芳生君 大臣にも育て直しの重要性をお聞きしましたけれども、そこで、やはり心の中の問題を解決していくというのは、もうこれは人間が人間に対してどこまでできるのかというのは非常に難しい課題だと思うんですが、そこを突破していかなければならない。そのときに、精神科医、社会福祉士、精神保健福祉士、心理技官など、そういう専門家がもっともっと増えていくことが大事だろうというふうに思うんです。
 大臣も衆議院の法務委員会の中で、極めて大きな問題だと、常勤の医師を得ることが難しくなってきている、そういう現状を率直にお認めになっておられますけれども、今後の方向性としてどのようなことを考えていらっしゃるんでしょうか。
○国務大臣(谷垣禎一君) この矯正医療がまさに崩壊の危機に瀕していると、私、矯正局から報告を受けまして、一番、何というんでしょうか、危機を覚えたのは、日本の矯正医療のある意味で中核は八王子の医療刑務所でございますが、そこで、要するに、充足している医師が定員の半分にも行かなくなるんじゃないかという事態がございまして、その定員の半分を割ることは何とか関係者の努力、御協力で回避をしたわけですが、やはり定員の半分も確保できないとなるともう崩壊してしまうわけですね。
 それで、私も、これは根本的にやはり考えていかなきゃいけないと思いまして、有識者検討会というのをつくりまして、その提言、今年の一月にいただいたわけです。それで、その提言の中身は、かいつまんで申しますと、一つはやっぱり待遇が良くないじゃないかと、給与が低いということもございました。それから、やはりこういう矯正施設ですと、医者としてキャリアを踏んでいくためには研修とか研究の機会が必要ですが、どうしてもこういうある意味で閉ざされたところでやっておりますとその機会が十分ではない研修とか研究の在り方をどうしていくか。それから、それと関連しますと、やはり公務員でありますから兼業規制というものがあるわけでございますけれども、もう少し研究、研修やる機会をあるためには兼業ということも考えないと、閉ざされた世界の中だけでの知見ではどうしても偏ってしまうということもあろうかと思います。そういうことを考えていきますと、結局、地域医療とどういうふうに連携できるかという問題もあるという多面的な御指摘をいただきました。
 今、実は私自身も人事院の総裁や厚労大臣とも是非これは相談に乗ってくれというお話をしまして、今人事院やそれから総務省、厚労省と協議して詰めを行っているところでございます。そうマンマンデーでやるわけにはいきませんから、早くその結論を詰めていきたいと思っておりますが。
 それから、やはり我々も努力の足らないところがございまして、矯正管区長等々が、それぞれの地域にやはり医科大学等ございます、医学部のある大学等ございますので、そういうところへ行って、実は矯正医療はこういうことだと、何とか協力をしていただけないかというようなことを今動かしておりますと、医学部や医科大学でも、なるほど、矯正医療にそういう問題があり、そういう分野があったのかということを医学教育の関係者でも十分御承知でない場合も多かったと。だから、矯正医療の問題というのをもっともっとそういう医学教育の現場に理解していただくような努力がもっと必要なんだなと思っているところでございます。
○有田芳生君 今おっしゃったことは、矯正医療を取り巻く環境というのはもうSOSが出ているんだということだと思うんですが、ちょっと事務方の方に具体的に、例えば矯正医官の定員と現員というのはどういう数字なんでしょう、どのぐらい足らないという認識でいらっしゃるんでしょうか。
○政府参考人(西田博君) 定員が三百三十二名でございます。これ、刑務所、少年鑑別所全てで定員が三百三十二名。それで、直近のデータはまだ分かっておりませんけれども、この有識者検討会を立ち上げたときには、現員は二百六十名ということで二割以上は欠員だというような状況でございました。
○有田芳生君 医官が少ないことに加えて、職員数にも、少ないんじゃないかという現場の声が届くんですけれども、やはり職員、法務教官などが少なければ、どうしても管理ということが前面に出てしまって、教育、更生というところに力を注ぐという、どうしても比重が下がってしまうのではないかというふうに思うんですが、今、少年院、鑑別所の職員不足についてどう認識されていらっしゃいますか。
○政府参考人(西田博君) お答えいたします。
 一時期と比べますと実は収容人員も減少傾向にございまして、一時期ほど過剰・高率収容ではなくなりましたけれども、先ほどからいろいろお話ございますように、少年鑑別所は、それぞれ非常に個別の対応を必要とするような精神障害を有する者、これが増加傾向にございます。それから、言ってみれば、発達障害があったり知的障害と言われるようなお子さんとか増えておりまして、また、非常に、何というか、手間というか時間と手数を要するような年少少年、これの入所も増えているということがございまして、総数では確かに減少傾向にはございますけれども、その中身といえば、非常にこれまで以上に手数が掛かるというか労力を要するというような状況でございまして、決して今の勤務状況は楽ではないということでございます。
 ちょっと具体的に何が分かるかと申し上げますと、少年院及び鑑別所における交代制勤務職員、いわゆる現場の一線の法務教官とか法務技官でございますけれども、この者たちの年間の休暇の取得日数、これを申し上げますと、平成二十五年度の実績で少年院が七・二日、少年鑑別所は六・八日ということでございまして、平成二十四年の国家公務員全体の平均取得日数の十三・三と比べますと非常に少なくて、実際にそれぐらい多忙で休暇が取れていないというような状況がございます。
 以上でございます。
○有田芳生君 非常に重要な課題、人間が人間を変えていく、矯正させるという非常に大切なお仕事であるにもかかわらず、そういう現状がある。しかも、今お話があったように、精神的な問題を抱える少年たちが増えてきた、あるいは谷垣大臣の言葉で言えば、新しいテーマも出てきているということだろうというふうに思います。
 そこで、また具体的な問題に立ち返って、どこにどういう問題点、課題があるのかということをちょっとお聞きをしていきたいんですけれども、これ、刑事局、もし可能であればですけれども、先ほど説明をしていただいた一九九七年の神戸の少年事件、あるいはその数年後、一九九九年から二〇〇〇年にかけて、新聞報道、テレビ報道などの表現でいえば十七歳の犯罪というもの、あるいは今でも記憶に新しい秋葉原無差別殺人事件、七人の方がお亡くなりになりましたけれども、あるいは最近でいうとパソコン遠隔操作事件について、今挙げた幾つかの事件なんですけれども、何か共通点があるというふうにお考えでしょうか、それともそういうものはよく分からないということでしょうか。ちょっとお聞きできればというふうに思います。
○政府参考人(林眞琴君) 今御指摘された各事件の共通点、それがあるかないかということについては、当局としてそういった分析をしているものではございません。実際の感覚としてそういう共通項があるのかどうかということについても、ぱっと見出せるものが見当たらないように感じております。
○有田芳生君 簡単なことから言うと、同い年であります。
 もう少し具体的に、大事な問題なので、新しい問題をこの日本社会は抱えている、矯正においても新しい視点で取り組んでいかなければいけないということで、少し具体的にお示しをしたいんですけれども、一九九七年、先ほどの神戸の少年事件がありました。
 この神戸の少年事件については、医療少年院に彼が行って精神鑑定がなされましたよね。その精神鑑定を、何時間、何十時間でしょうか、掛けて行った精神科医によりますと、神戸の少年事件、これは確実にオウム事件の影響があったというふうに、中井久夫さんという神戸大学の名誉教授、非常に著名な精神分析の大家ですけれども、中井さんが精神鑑定をやった結果、確実にオウム事件の影響があると言うんです。どういうことかというのは、聞いたら、結論的に言うと、少年は、あの程度のことならやってもよかっただろうというふうに認識したというんですよね。あの程度のことというのは何かというと、地下鉄サリン事件であったり、松本サリン事件であったり、坂本弁護士一家殺害事件なんですよ。
 なぜあの程度のことはいいかというと、詳しく聞いていくとテレビの影響なんですよ。テレビを当時小学校六年生の彼は見ていた。事件は二月から五月ですけれども、一月には彼が住んでいた阪神では大震災があった。阪神大震災で非常に驚いて、その後オウム事件が起きる。そのときずっとテレビを見ていたんですよね。テレビを見ていた影響があったというのは、テレビに当時、オウム真理教の幹部たちが出ていましたよ。だけど、世間は地下鉄サリン事件というのはオウムがやったに違いないと多くの人が思っていた。もちろん、警視庁、警察庁なども、神奈川県警も、山梨県警も、熊本県警も、もう警察組織挙げてオウムに狙いを定めていた。社会からいうと、オウムがやったに違いないと思って捜査を進めていた。社会もそう思っていた。少年も思っていたんだけれども、その事件を、あれほどのものを起こした組織の幹部が堂々とテレビに出ている。そのことを、ゆがんでいるんだけれども、あの程度のことはやっても社会は認めてくれるんだなというふうに思ったというんですよ。これは少年が言っているわけです。
 私は、このとき少年が逮捕をされて、神戸市須磨区の彼の家の二階の彼の引き出しから犯行ノートが出てきた、それを見てびっくりしましたよ。何を書いていたかというと、小学生の女の子をショックハンマーで襲って、一週間後に亡くなりましたけれども、その日にこう書いている。愛するバモイドオキ神様へ。バモイドオキというのは片仮名なんです、神というのは神様ね。愛するバモイドオキ神様へ、今日、人間の壊れやすさについて聖なる実験をしましたと書くんですよ、聖なる実験。で、何日も何日も書いていって、いずれ、愛するバモイドオキ神様、バモイドオキという神様、これは彼が後で精神鑑定の中で語っているんだけれども、自分から良心を引いた心、良い心を引いたものがバモイドオキという神様だと、自分が作り上げた神様だといって誇っていた。バモイドオキ神様、これから聖なる儀式アングリを行おうと思う、それが実現した暁には聖なる名前をいただきたいと、そう犯行ノートに書いているんですよね。そして、その後に土師淳君殺害事件を起こし、遺体の頭部を自分が通っていた中学校の門の前にさらすというとんでもないことを行ったわけです。
 だけど、彼の中では、自分が作り上げたバモイドオキという神様に約束をして、今度の事件を起こせば聖なる名前をいただきたい。聖なる儀式アングリ。何かなと思ったんですよ。で、犯行ノートの中には仏像が描かれている、太陽と月が描かれている。当時、ずっと朝から夜までオウム報道が続いている中で、麻原彰晃の仏教的ないろんな儀式、それから仏像みたいなものが出てきた。そういうことの影響があったんですよ。そして、決定的だったのは、これから聖なる儀式アングリを行おうと思う。アングリって何かなと思いました。坂本弁護士一家殺害事件を行った六人の実行犯の一人、岡崎一明、当時の名前ですけれども、彼のホーリーネームっていうのはアングリマーラっていうんです。アングリマーラ、アングリ、関係あるのかななんて思っていたんですけれども、決定的なのは、聖なる名前、これから事件を起こしたら聖なる名前をいただきたいと、自分が作った神様からもらいたいと言った。聖なる名前というのは、当時、皆様方も十分御承知のような、ホーリーネームというのは日本語に直すと聖名なんですよ、聖書の聖に名前の名、そういう影響があった。そして、彼は土師淳君殺害事件を起こしてホーリーネーム、聖なる名前をもらったんです。それが酒鬼薔薇聖斗なんですよね。彼の中ではもう一貫していたんですよ。
 だから、そのことが、問題なのはそこで完結せずに、一九九九年から二〇〇〇年にかけての十七歳の犯罪と言われた、例えば愛知県の豊川で主婦を殺害したその当時の十七歳の青年は、犯行をした後に自分で、その今言ったホーリーネームというのは自分で付けているんですよ。あるいは、大阪で金づちで小学生を殴り付けて逮捕された当時十七歳の少年なんかは、当時の写真誌に出ていた神戸の少年Aの顔写真を自分の生徒手帳に貼っていたんですよね。あるいは、もう一つ別の殺人を犯した十七歳の少年というのは、神戸市須磨区の少年Aの自宅を何回も何回も見学に行っているということが分かった。
 だから、九五年のオウム事件があり、九七年の神戸事件があり、九九年から二〇〇〇年にかけての事件があった。だから、そこら辺やはり共通点があると私は思っているんです、今でも。だから、つまり何が言いたいかというと、やはり心の中の問題というのは本当に、最初に言いましたように、内側から突破していかないと、これ大事な問題がなかなか解決していきにくいと思うんです。
 もう結論だけにしますけれども、例えば秋葉原の無差別殺人をやった男性にしても、家族問題、特にお母さんとの問題抱えていた。象徴的なことで言えば、厳しいしつけがあったから、食事をしているときにもお母さんががあんと怒って、新聞紙の上に御飯をばあっとばらまいてそれを少年に食べさせるというようなことがあった。それが秋葉原の青年につながっていった。パソコンの遠隔操作事件でこの間真犯人だといって墓穴を掘った彼にしても、真犯人メールなんかを読んでいただければ分かるように、VXガスでやるぞというようなオウム事件の表現を取っているんですよね。
 それがどこまで、どれほどの影響があるのかというのは慎重に十分に分析をしていかなければいけない課題だというふうに思うんですけれども、やはりそういった、新しい課題とさっき谷垣大臣言ってくださいましたけれども、そういうことも含めた医官の十分な技量というものを、人数を増やすとともに質の強化というのが大切だというふうに思うんですが、どのようにお感じでしょうか。
○国務大臣(谷垣禎一君) 今、有田委員の酒鬼薔薇事件の分析等を伺って、大変勉強になったなと思っております。
 それで、私も世間の耳目を聳動するような犯罪事件というのは非常に影響があると思うんですね。伝播すると言っては適切ではないかもしれませんが、そういう力を異常な事件というのはしばしば持っているだろうと思います。もちろんその中で、それによって影響を受けて自分も犯罪の道に入っていく者もあれば、そういうことにならずにちゃんと健全に育っていく人もありますから、どこまでどういう影響があるのかは一概に言えないと思います。
 しかし、これは内面の問題で、まさに、何というんでしょうかね、法務教官、これは、犯罪を犯した子供たちは大人や社会に対する信頼感というものを全く持っていないような子供も多いわけですので、まずそれを解きほぐして、大人や世間、社会というものに対する信頼感を取り戻すような、やはりそれは法務教官の人格の力、個別の、それは心理学や何か学問の力も必要でございますが、そういう法務教官は役を果たさなきゃならない、そういう個別のやはり指導というのがきちっとできなきゃいけませんし、もちろん社会生活にまた入っていくためには集団的な訓練といいますか指導というものも必要だと思いますが、先ほど矯正局長が申しましたが、かなり言ってみれば手間の掛かる、レディーメードでぽんぽんとできる仕事というよりも、かなりオーダーメードでやっていかなきゃならない仕事だろうと思います。
 ですから、私もこの人員の確保というのはこの分野では極めて大事なことではないかと思っております。そういったことも中でも十分よく議論をこれから詰めていかなきゃいけないと思っております。
○有田芳生君 谷垣大臣が先ほどから新しい課題にも取り組む必要があるということで、矯正局長に少し御意見を伺いたいんですけれども、端的に言って、映像の影響が物すごく大きいというふうに思うんですよね、先ほどの問題も含めてですけれども。
 谷垣大臣などはもう十分御承知のことですけれども、テレビが日本で放送されるようになったのが一九五三年、昭和二十八年の二月一日からNHKが放送開始をして、その半年後に今でいう日本テレビが放送するようになった。
 だけど、当時はテレビの受信台数というのはたったの八百台しかなかったんだけれども、今や、携帯電話も含めてもう一家に二つ、三つというような、そういう持って歩けるようなテレビ時代になっていますよね。そうしたときに、やはり映像の与える影響というのはとてつもなく、私たちが想像する以上に大きなものがあるだろうというふうに思うんですよ。
 矯正局長に伺いたいというのは、例えば明治時代とか大正時代、大正時代だったら講談本というのがあって、例えば「猿飛佐助」というのを本を読んで、みんなで、じゃ、忍者ごっこやろうかと言って、極端な場合でも木から木に飛び移ろうとして落ちて骨折するという程度だったと思うんだけれども、だけど、想像力がまだ働いていた時代ですよね。
 ラジオの時代だって、昭和二十七年、八年、「君の名は」の擦れ違い物語だって、ラジオから聞こえてくる声を聞きながら、頭の中でそれぞれの人が想像してた。
 だけど、テレビの時代になってくると、例えば皆さん方に今、AKB48でもいいし、もっと言えば、木村拓哉さん想像してくださいと言ったら、ああいう顔でああいう姿だなというのはすぐ分かりますよね。心の中にすぐ入ってくる。
 だけど、そのことがどんな影響を与えるかというのは、あの「三丁目の夕日」の映画を見た方は街頭テレビというのを思い出すと思いますけど、テレビ受信台数がないから、新橋の駅前に何万人もの子供たち、大人たち、おじいちゃん、おばあちゃんが集まって、力道山の空手チョップなんかを見ていたわけですよね。
 あのとき全国で何が起きたかというと、千葉でもそうでしたけれども、全国の小学校でプロレスごっこの禁止というのが起きた。なぜプロレスごっこ禁止かというと、空手チョップをみんな覚えちゃうから、休み時間になってプロレスごっこをやって、ばんと胸ぐらたたいてけが人がいっぱい出たからプロレスごっこ禁止というような社会現象が当時起きた。だから、そういうストレートな影響。
 もっと、最後に一つだけ挙げますけれども、トルコで数年前に事件が起きた。どんな事件かというと、小さな子供たちが高い五階、六階のところからぼんぼん飛び降りた事件があった。当時、トルコの文部省に当たるところが調べてみたら、原因は何と日本のアニメにあった。ポケモン見た子供たちが自分たちにも超能力があるんだと思ってあちこちから飛び降りて、当時、トルコでは「ポケットモンスター」の放送が中止になった。
 だから、そういう新しい課題というのは、これからもっともっと真剣に考えていかなければいけない課題だというふうに思うんですよ。職員も少ない、医官も相当厳しいSOS状況にある。そして、しかし、それを補充していって少年の更生というのをきっちりと進めていかなければいけないという、そういうテーマがあるんだと私は思っているんですけれども、矯正局長、どのようにお受け取りになりますでしょうか。
○政府参考人(西田博君) お答えいたします。
 それよりも、済みません、一件だけ訂正をお願いしたいと思います。先ほど、犯罪の動向の話をしましたときに、新収容人員というところを、私、初めて鑑別所に入ったと申しましたけれども、それはその年に鑑別所に入った少年という趣旨でございます。それをちょっと訂正させていただきますのと、それから、先ほど医官の定員を三百三十二名でというふうに私話をしましたけれども、直近の本年の四月一日現在の定員が分かりましたので、ちょっとそれを申し上げておきます。三百二十七名でございまして、欠員が七十五名の状況でございます。どうも失礼しました。
 それと、先ほどの話に戻りますけれども、非常に難しい少年が入ってまいりまして、当方としても、先ほどおっしゃいました、どういうふうにそういった難しい手間の掛かる子供たちを対応するかというのは、なかなか医師も充足できませんし、専門的医師ならなおさら充足できませんので、やっぱり今できることとして、例えば関東医療少年院と京都医療少年院、二つあるんですけれども、大きな医療少年院がですね、そこに精神保健福祉士を配置するとか、あるいは手間の掛かる少年を収容している少年院に、本来は配置する予定ではございませんけれども、心理技官を、鑑別所の方で相応の経験を積んだ心理技官を配置するというようなことも、やはりそういった少年の動きに合わせてやっていかなきゃいけないんだろうというふうに考えております。
 それから、あと、処遇する体制の問題として、これまで知的障害ですとか発達上の問題を抱えているお子さんたちを収容しているところを、そういった少年院を、今数が少ないわけですので、これをこれからも増やすとか、そんなふうに体制、できることからやっていかなきゃいけないというふうに感じておるところでございます。
○有田芳生君 広島少年院事件について聞きたいと思っていたんですが時間がないので、最後に、少年院の仮退院者の再犯防止の課題についてお聞きをしたいと思います。
 二〇一一年の犯罪白書によりますと、少年院を出た人たちが二十五歳までに四割が再犯という数字を見ましたけれども、これをもう少し詳しく示していただけますでしょうか。
○政府参考人(西田博君) 少し詳しく申し上げます。
 二十三年版の犯罪白書のデータでございますけれども、平成十六年一月から同年三月までに全国の少年院を出院した十八歳又は十九歳の者を対象にいろいろと検討したんですけれども、データを取ったんですけれども、二十五歳に至るまでに刑事処分を受けた者は二百四十八名で全体の三八・五%ということでございます。
 ちょっとそれとは別のデータでございますけれども、今度は、再入院とか刑事施設への入所の状況をちょっと申し上げますと、平成十五年以降の出院者のうち五年以内に少年院に再入院した者の割合は一四・五%から一六・四%の間でございます。それから、また同様に、刑事施設に入所した者の割合は七・七%から九・四%の間で推移していると、そういう実情でございます。
○有田芳生君 少年院から出て、職業がない、無職である、あるいは受け止める友達たちの環境が悪い、あるいは家族の、親子の関係が改善をしていない、まあいろんな課題があるというふうに思うんですけれども、そういうことを含めて、職業あっせんシステム、今でいうと職親プロジェクトという、前川議員がよく御存じのあのお好み焼き屋さんの千房の社長さんなどがやっていらっしゃることを含めて、そういう受入れ体制というのはしっかりとこれから構築していかなければいけないというふうに思います。
 とにかく、少年の人間性回復の課題というのは、ハードとソフト、様々なテーマがありますので、新しい法律ができることによって更に更生システムというのがスピードを上げて進むということを期待しまして、時間が来ましたので、質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
○佐々木さやか君 公明党の佐々木さやかです。よろしくお願いいたします。
 本日議題になっております少年院法でございますが、昭和二十三年に制定されて以来初めての抜本改正ということでございます。時代に合わなくなってきている部分も多くございますし、関係者の皆様からも改正に対する期待を受けているところでございまして、早期の法案成立のために議論を進めていきたいと思っております。
 この改正少年院法一条を見ますと、法の目的規定がございます。在院者の改善更生と社会復帰のための再非行防止に向けました処遇の充実ということがこの法の第一の目的であると思います。
 そして、そのためには、適切な管理運営とともに、在院者の人権も当然尊重されなければなりません。少年院法の改正が検討されました背景の一つに、少年院での不適切処遇事件の発生がございました。熱心に少年の更生のために取り組まれている多くの職員の皆様のためにも、こうしたことが二度と起こらないような体制をつくっていくことが重要であると思います。
 そして、この点に関連しまして、今回の改正の大きなポイントの一つが社会に開かれた施設運営の推進ということで、視察委員会の設置がございます。外部から客観的な目で施設管理運営を見ることで施設運営の透明性の確保を行うものでございます。
 この少年院という施設の性格上、適切な運営がなされているか否かということについて視察委員会の方で判断をするためには、その構成員の方々には、少年の人権に対する理解、また一定の専門知識、こういったことが必要になってくると思いますけれども、この少年院視察委員会の委員の適格性の判断というのは具体的にどのように行われていくのか、またどのように人選されるのか。それから、施設ごとに委員会を設けるということでありますけれども、そうした委員の適任者の確保というのは十分にこれからできていくんでしょうか。この点について伺いたいと思います。
○政府参考人(西田博君) お答えいたします。
 少年施設におきまして、今委員おっしゃいましたように、少年の健全育成に配慮した処遇を行うことが求められてございますので、その少年施設の視察委員会の委員につきましては、人格が高潔であって、少年の健全育成に関する識見を有していて、施設の運営の改善向上に熱意を持っていただける人ということで、法務大臣が任命するということにしております。
 具体的に申し上げますと、視察委員会の委員につきましては、弁護士会ですとか医師会ですとか、そういった関係団体に推薦をお願いしまして、その推薦を受けまして、弁護士、医師、それから地方公共団体の地元の市町村、こういったところの職員などから任命をするということになろうかと思います。そういったことでございますので、適格性につきましては何とか適切になされるんではないかというふうに思います。
 それから加えまして、少年施設の視察委員会でございますので、先ほど言いました少年の健全な育成ということも大事なポイントになりますので、教育関係者ですとかあるいは心理専門職などからも委員を任命するということも予定しております。この適格者の確保に当たりましては、やっぱり同様に関係機関から推薦をいただいたり、あるいは御理解、御協力いただけることが大事になろうかというふうに思います。
 以上でございます。
○佐々木さやか君 この少年院視察委員会といいますのは、少年院外の第三者から見る目でその透明性を確保していくというところに特徴があるわけでありますけれども、しかしながら、逆に言いますと、日常的にはその施設内の状況を見ているわけではありませんので、例えば一日だけ視察に行ったということで本当にその内実が分かるのだろうかというふうに心配をする思いも私はあるんですが、こうした少年院視察委員会の視察などの実効性というのはどのように確保されるような制度になっているのか、お聞きしたいと思います。
○政府参考人(西田博君) お答えいたします。
 そのように視察委員会の、施設の運営状況を的確に把握をしていただかなきゃいけませんので、当然、委員会による不定期の視察ということはもちろんあるんですけれども、それ以外に、少年との面接を実施すること、それから少年から提出された書面を確認すること、どういう内容が書いてあるかということ、それから少年施設の長から、例えば、収容人員の動向ですとか、中で起こりました懲戒をしなきゃいけないようなペナルティーがどんなことがあったのかとか、あるいは病人が出ましたとか、そんなつぶさな情報を提供するということも視察委員会の権限となっておりますので、そういった意味では実効性は確保できるんじゃないかというふうに思っておりますけれども、それに加えまして、視察委員会の方から述べられた意見につきましては、これを尊重して、必要な措置を講じて、大臣においてその概要を公表するというような裏付けも取ろうとしておりますし、そういった意味では実効性というのは担保できているんじゃないかというふうに考えております。
 以上でございます。
○佐々木さやか君 できる限り日常的に連携を取っていただくとか、適切な運営がなされるように期待をしたいと思います。
 それから、この施設運営の適正の確保という観点からいいますと、もう一つ新しくできました制度が在院者自身による救済及び苦情の申出制度でございます。この救済、苦情の申出というのは少年本人がするということでありまして、未成年でありますし、また、理解力とか表現力、自分がこういうことを思っているということをうまく相手に伝えるということも能力も十分でない少年が恐らく多いのではないかなと思います。私も神奈川医療少年院の方に視察に参りましたことは以前も申し上げましたけれども、そこでは特に知的障害ですとか発達障害という障害を抱えた少年たちがおりますので、そういった少年たちにも分かりやすく申立ての方式も教えていただかなければいけませんし、結果の通知の説明についても同様でありますし、こういった配慮についてはどのようになされていくのか、お聞きしたいと思います。
○政府参考人(西田博君) お答えいたします。
 少年院法案における不服申立て制度としましては、法務大臣に対する救済の申出、監査官又は少年院長に対する苦情の申出という二種類ございますけれども、幾つかの配慮と申しますか工夫をしたところでございます。
 まず、いずれの制度につきましても、少年が、これがいい、これが悪いなんていうことを考えなくて済むように、申出事項を限定せずに、自己が受けた処遇全般について申し出ることを可能といたしました。それから、特に法務大臣に対する救済の申出につきましては、申立者が少年であること、それから、少年の場合は短い場合は半年ぐらいで出院する場合もございますので、そういった特性を踏まえまして、簡明性と申しますか利便性、迅速性を重視した制度設計を考えました。
 それから、もっと具体的に申し上げますと、申出先は法務大臣のみとしまして終局処理を迅速に行うこと、それから、少年の希望に基づきまして救済の申出に関する相談に応じる相談員を設置すること、それから、あと、処理期間についても、身体に対する有形力の行使ですとか手錠使用、又は保護室収容に関する申出は六十日以内に、その他は九十日以内という努力義務を課しております。
 こういった配慮をしておりますけれども、これに加えまして、やはり、先ほど委員おっしゃいましたように、この不服申立て制度につきましては、少年が入ってきたときに、そういったオリエンテーションの際に、どうしても理解力、判断力の劣っている子もいますので、それを配慮しながら職員が適切に説明して、かみ砕いて説明をして、それから生活のしおりといった冊子を居室内に備えまして、いつでも見られるようにといったような、運用面でも十分な配慮を行ってまいりたいというふうに考えております。
○佐々木さやか君 いろいろと工夫をしていただいているようでございます。
 今お話にも出ました相談員の制度についてもう少しお聞きをしたいんですが、在院している少年が救済や苦情の申出について相談をすることができると、こういう相談員でありますけれども、しかしながら、やっぱり内部の職員さんですので、この相談を受けたときに適正にもちろん取り扱っていただかなければならないですし、また少年としても、外部の第三者ではなくて同じ少年院の中の職員に対しては少し相談しにくいと思うようなこともあるんじゃないかと思うんですが、こういった点はどのような配慮がなされているんでしょうか。
○政府参考人(西田博君) お答えいたします。
 おっしゃいましたように、在院者の中には判断能力が未熟な者もおります。それで、救済の申出を行う意思があったとしても、それを申し出ることによって、何というか、不利益を被るんじゃないかとか、あるいは文書を作ること自体の能力とかあるいは表現力にも不安があったりする場合がございます。それによって救済の申出を行うことを控えるということがあってはいけないと考えておりますので、そのために考え出したものが先ほど申しました相談員の制度でございます。
 これは、少年院の職員である者を相談員として置きまして、その在院者の希望に基づきまして、あくまで希望でございますけれども、基づいて、救済の申出に関する様々な相談に応じさせることによりまして、救済の申出がその少年にとって扱いやすい、一層利用しやすい制度になるように考えたものでございます。
 それから、相談員を外部から登用することについても、一般的にこれによって少年による救済の申出がされやすい環境を整える方向に作用するのではないかと思われますけれども、一方で、実は、外部登用した場合には、少年院に常駐をさせないと好きなときに相談ができないということから、相談する機会が限定されて速やかな申出の機会を失ってしまう、そうすると迅速な行政救済の機会を損なうということになりかねませんので、こういった制度にしております。それから、外部の方は必ずしも少年院の中の少年処遇というものに詳しくございませんので、ちゃんとした的確な相談業務ができるかといったことについても若干不安がございまして、施設の職員を相談員に充てることといたしました。
 ただ、在院者が相談すること自体をちゅうちょするようなことがあってはいけませんので、相談員には、その相談によって知り得た救済の申出の内容をその少年院の他の職員に漏らしてはいけないというような守秘義務を課しておりますし、また、その相談員には、実際に少年処遇に当たる部門の職員ではなくて、違う系統の幹部職員を充てようと。具体的には次長ですとか事務をやっている庶務課長と、そういった者を充てることを予定しているところでございます。
 いずれにしても、少年が、子供たちが救済の申出をしやすい、相談しやすいような体制を整えたいということでございます。
○佐々木さやか君 不適切処遇の発生を受けてということもあるんだと思うんですけれども、今回の改正法案には、少年院の職員に求められる能力、資質、また研修などの在り方についての定めも置かれております。十四条でございますけれども、能力、資質、高めていっていただきたいと思いますが、特に、やはり人権に対する意識、これが欠けていたことが不適切処遇発生の原因の大きな一つとも言われておりますので、この点についてしっかりと意識をしていっていただきたいと思いますけれども、こういった点についての研修、訓練の充実というのは、これまでと比べて、この法改正を契機にどのように充実をさせていくおつもりであるのか、お聞きしたいと思います。
○政府参考人(西田博君) お答えいたします。
 まず、そもそも少年院の職員の職務というものは、在院者の身体等に対する直接的な有形力の行使をするということがありまして、その性質上、そもそもベースには、在院者の人権に対する配慮が多く求められるものというのが前提でございます。
 そのために、今回お願いしました少年院法案の第十四条におきましては、委員先ほど御指摘ございましたように、在院者の人権に関する理解を深めさせるための研修等の実施について法律上で規定をするということをやったところでございます。現在でも、在院者の人権の尊重を図る観点から、憲法及び人権に関する諸条約を踏まえた在院者の人権に関する講義ですとか、あるいは行動科学的な視点を取り入れた研修を実施しているところでございます。
 そんなことも引き続きやりますし、今回法律上の位置付けとなりましたので、より工夫をして、もっともっと強力に、人権に関する研修を中心に研修、訓練を充実させていきたいというふうに考えております。
○佐々木さやか君 少年に対する処遇の充実というためには、今日もお話にもこれまで出ましたけれども、これまでよりも労力を要するような少年も増えてきていると、こういう指摘もございまして、能力、資質、また志の高い人材を確保していくことが非常に重要であります。
 今は職員の数も不十分と言われておりますし、それぞれの職員の皆さんの個々の負担も大変大きい状況にありますけれども、これからどのように優秀な職員の確保、そして適正配置を実現をさせていくおつもりなんでしょうか、大臣の御所見を伺います。
○国務大臣(谷垣禎一君) 少年院に入ってくる子供たち、先ほど有田委員の表現で使いますと、今まで様々な生育上の問題も抱えている、それに対して言わば育て直しのような作業が必要だということになりますと、かなり密度の濃い矯正教育をやっていかなきゃいけない。
 それで、今の体制ですと、在院者の矯正教育や処遇に直接関わっている職員は、二十四時間体制で交代制勤務を行ってそのような育て直しというか個々の少年と向かい合っていくということをやっているわけですが、おおむね五日に一日の頻度で昼夜間勤務が当たってくるということになっております。
 それで、こういう少年院の職員の平均年次休暇取得日数というのは、平成二十五年度実績で七・二日になっておりまして、国家公務員の全体の平均が十三・三日でございますから、かなり、人員上といいますか、そういう職員の勤務上も、少年院の職員に負担が掛かってきていることがこの数字からも実は出てきているわけでございます。ここをやはり改善していくためには、職員の確保というものが、数量的な確保というものも大変大事でございます。
 それから、少年院の少年たちの教育に当たる法務教官ですね、それはやはり、そういう仕事をしたいという本人の、何というか、志望も必要でございます。そして、それに加えて、心理学であるとか教育学であるとかあるいは社会学であるとか、こういった専門的知識が必要でありますので、今、原則として国家公務員採用試験のうち法務省専門職員の人間科学という分野はそういう方たちを採用するという試験でございますから、その中からやはり優秀な人たちを少年院の職員に採っていくという努力をしなければいけないと、このように思っております。
 やはり、優秀な職員が使命感に燃えて仕事をしてもらうということが何よりも大切でございますので、そういう人員の確保と職場環境の、何というんでしょうか、確保に力を注いでまいりたいと思います。
○佐々木さやか君 時間が限られていますので、ちょっと通告しました次の質問は飛ばさせていただきたいと思います。
 今大臣からもお話がございましたが、一年程度の処遇の間に育て直しをしていかなければならないということで、少年の処遇を効果的で適切なものをつくっていくということは本当に大事だなと感じております。
 そうした意味で、鑑別所との連携というところも今回法改正でございまして、再鑑別の活性化という規定が置かれました。現在の再鑑別については一部の者に対してのみ実施されている状況であると聞いております。しかし、例えば再非行が懸念される者を対象として再鑑別の結果を処遇に生かすなど、より積極的に行っていくべきではないかと、こういう必要性が指摘されているところであります。
 今回明文の規定も置かれたということで、どのように拡充をしていくんでしょうか。
○政府参考人(西田博君) お答えいたします。
 まず、現状を申し上げますと、再鑑別と申しますのは、少年院の長からの依頼に基づきまして、少年院内での適応状況とか今後の処遇方針を検討するなどのために実施するものでございます。
 平成二十五年には、そういった処遇方針の検討のほかに、少年院における収容期間延長の可否の判断等のために、簡易なものは除きまして約千三百件の再鑑別を実施しているところでございます。
 このように非常に活用されているわけなんですけれども、今御審議いただいております少年院法第三十六条の第一項におきまして、現行の再鑑別は今後も引き続き実施することとしておりますほかに、その第二項におきまして、新たに、少年鑑別所に収容して鑑別を行うことが必要であるときは、原則として七日を超えない範囲内で在院者を少年鑑別所に収容して再鑑別を行うことができるということになっております。
 具体的に申し上げますと、在院者を少年鑑別所に収容して何ができるかと申しますと、その行動を綿密に観察できる、行動観察ができるといったこともございます。そんなことがあってより密度の高い再鑑別ができるようになるものですから、そういったことをできるような立て付けといたしたところでございます。
 少年鑑別所の専門的な知見を少年院の処遇に適切に活用する意義というのは、最近の少年非行の状況から見て非常に意義が大きいと考えておりますので、法案の趣旨を踏まえまして、在院者を少年鑑別所に収容して実施する再鑑別を含めまして、再鑑別の積極化に努めてまいりたいというふうに思っております。
 以上でございます。
○佐々木さやか君 鑑別所の役割という点でもう一つ、地域社会における非行及び犯罪の防止に関する援助というものも今回、鑑別所法に明文の規定が置かれました。
 私、八王子の鑑別所の方に視察で伺ったんですけれども、そこでも地域の住民の皆さんを対象にした少年の非行だったりまた家庭内でのいろいろな問題に対する相談というものを受け付けておりまして、お話を聞きましたら、非常に好評で、お父さん、お母さんだけでなくて学校の先生たちも御利用されているというふうに聞きました。
 こういった点は、非行、犯罪の防止というところから是非、鑑別所の方でも積極的にやっていっていただきたいと思いますけれども、こういった点、また先ほど申し上げました再鑑別の活性化と、鑑別所の役割が増大をしていくわけですけれども、人的な体制、そこまでやっていって本来の業務に支障が生じたらもちろんいけませんので、この人的体制というのは十分なのか、今後充実させていく必要があるのではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。
○政府参考人(西田博君) お答えいたします。
 委員御指摘ありましたとおり、少年鑑別所法がもし施行されましたら、今やると私申し上げましたその再鑑別の活性化とともに、地域社会における非行及び犯罪の防止に関する援助ということが非常に求められるようになろうかと思います。
 今現実に非常に親御さんも困っていることがあったり、関係機関の要請も非常にあるものですから、これについても何とか可能な限り応えて、これまで少年鑑別所が持ってきた知見とか技術をそんなところで貢献できればというふうに思っておりますので、これからどんどんどんどん拡大することはあっても縮小することはないだろうというふうに私ども考えております。
 それに対してどう対応するかということでございますけれども、まず一つは、職員のそれぞれのスキルを上げて効率的に御要請に応えられるようなこと、そのために研修とか、専門研修を受けて専門性の向上を図るということも大事だろうと思いますし、それから、一方で、業務の合理化の推進とかをやったり、所要の職員確保を含めましていろんな事情を考慮しまして、全体としてそういったことにお応えできるような体制整備を早急に考えなきゃいけないというふうに考えております。
○佐々木さやか君 時間も残り僅かですので、最後に大臣に一問質問させていただきたいと思います。
 少年院の問題について考えるのに、少年院内での処遇も重要でございますけれども、今回、法改正で明文が置かれました社会復帰のための支援と、帰住の調整だったりその出てからのサポートというものもやはり重要なのではないかと思っております。
 その中で、元付添人といった弁護士の役割についてちょっとお伺いをしたいんですが、付添人活動というのは、審判が終わりましたら通常はそこで終了するものでありますけれども、その活動終了後も少年院の方に面会に行ったりだとか、社会復帰支援のための活動を行っている弁護士の先生もいらっしゃるところでありまして、私は、今後、例えば法曹の活動領域の拡大という観点からも、この刑事司法と福祉の連携だったりとか、また弁護士の活動というものも、こうした分野でもより拡大していくことが望ましいのではないかと考えております。
 少年院においても、こうした元付添人弁護士についても必要に応じてよく連携を取っていただいて、社会復帰の支援のためにはその少年に関わった大人たちがみんなで協力をしていくということが重要であると思いますので、適切な対応をしていっていただきたいと思うんですが、こういった元付添人弁護士などの役割についてどのようにお考えか、お聞かせいただきたいと思います。
○国務大臣(谷垣禎一君) 少年院に入ってくる子供たちの付添人を務められた弁護士が、その後も面会に行かれたり、いろいろと支援を行ったりしていただいている例があるということは私も承知しております。そういう方の中には、それこそ帰住先の確保であるとか、あるいは職場を紹介するとかいうようなことをやって、大いに社会復帰支援をやっていただいている方があるというふうにも聞いております。
 それで、子供たちの社会復帰支援をしていくためには、少年院側としていろいろ考えなければならないことがありますが、一つは、やはり、ずっとこの議論になっておりますような保護者との連携といいますか、これは是非とも図っていかなきゃならない。それから、更生保護官署との連携というのも極めて大事でございますが、子供たちのいろいろな生育や生活環境をよく知っていて、それであと、いろいろな社会資源ですね、帰住先であるとかあるいは雇ってくださる方々とか、そういった情報を持っておられる協力者というものを、何というんですか、大事にしていくといいますか、そういう協力者との関係を強めていくということは私は非常に必要だろうと思います。
 それで、今おっしゃった付添人をやられたような弁護士というのは、この協力者の中で随分役割を果たしていただけるのではないかなというふうに私も思っておりまして、今後とも必要に応じてこういう方々の協力を求めていくということはやっていく必要があるのかなと思っております。
○佐々木さやか君 以上で終わります。
 ありがとうございました。
○委員長(荒木清寛君) 午後一時に再開することとし、休憩いたします。
   午前十一時五十八分休憩
     ─────・─────
   午後一時開会
○委員長(荒木清寛君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 本日、長峯誠君及び石田昌宏君が委員を辞任され、その補欠として堂故茂君及び井原巧君が選任されました。
    ─────────────
○委員長(荒木清寛君) 休憩前に引き続き、少年院法案外二案を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○行田邦子君 みんなの党、行田邦子です。よろしくお願いします。
 現在の少年院法は、昭和二十三年の制定以来、抜本改正のないまま六十五年を経て現在に至っています。内容は非常に包括的、概括的なものとなっているわけでありますけれども、少年院、また少年鑑別所の管理運営や、それから在院者の処遇について、多くの事項につきまして法務省令やまた通達等に委ねられているような法律となっています。
 そこで、まず法務大臣にお伺いしたいと思うんですけれども、なぜ、この現行の少年院法なんですが、多くのことを法務省令やまた通達に委ねて法定化せずに来たのか、その理由をお聞かせいただけますでしょうか。
○国務大臣(谷垣禎一君) 委員のおっしゃるように法務省令や通達によって補われてきたわけですけれども、その理由として、一つは監獄法がなかなか改正ができなかったということがございまして、そういう状況の中でこの少年院等の少年施設の管理運営や少年の処遇について下位規範で補ってきたわけですが、これで実務を運用してきた。このことは、少年院の矯正教育とかあるいは鑑別の実務は、かなり専門的、技術的な、細かなことまでわたるものが多い、専門的技術や知識が要る場合が多いわけですので、また、かなり個別性の強い処遇をしなければいけないという業務もございまして、よく言えば下位規範で柔軟に対応してきたという面がございます。
 そして、広島少年院事件が起こるまでは、度々申し上げておりますように、この権利関係であるとか、それから第三者の目が通りにくい欠陥というようなものが余り浮かび上がってこなくて、あの広島少年院事件が起こって初めてそういう問題点が明らかになってきたと。それまで十分そのことを意識しないで来たという面もあったのではなかったかと、このように思っております。
○行田邦子君 少年の社会復帰、また更生ということを目的としているわけでありますので、それぞれの少年の状況や個別の事情に専門的に対応していくということで柔軟性を持たせていたということだったと思います。
 そして、今大臣からの御答弁の中にもありましたけれども、この少年院法を抜本改正するきっかけとなった大きなものが、やはり平成二十一年四月に発覚しました広島少年院における不適正処遇事件だったというふうに思っております。
 そこで、また大臣に伺いたいと思うんですけれども、この事件、四人の教官が在院者に対して殴ったり、また足蹴にしたりといった非常にひどい暴行を与える、また紙おむつをはくことを強要したりとか、あるいは舌をつかんではさみの刃を押し当てるといった、これはもう信じられないような残忍な虐待行為に及んだということが、百数十件でしょうか、発生しているというようなことでありました。私も当時、報道を聞きまして、接しまして、非常にショックを受けた事件であります。
 この事件がきっかけで今回の法改正に至ったというふうに思いますけれども、この事件がなぜ起こったのか、どのように調査をし、また分析をなされているのでしょうか。
○国務大臣(谷垣禎一君) この事件によりまして矯正行政の信頼は大きく失墜をいたしまして、もう極めて遺憾な事件でございました。
 それで、この原因として、いろいろ中で議論などはしたわけでございますが、原因として、まず、それは職員の人権意識とか服務意識に問題があったということはこれは当然のことなんですが、そういうことがあったわけでございますが、もう一つはやはり、この事実が長年にわたっていたのに表に現れなかったという、それから、何となくそういうことがあるんじゃないかという兆候みたいなものもあったけれども表に現れなかったということが極めて大きな問題でございました。
 それで、結局のところなぜ発覚しなかったのかということを詰めていきますと、一つは、不服申立てというのが現行法にもあることはあるんですが、それが十分機能しなかったということ、それからもう一つは、施設運営が閉鎖的であって第三者の目が届きにくかったということがあったと、総括をいたしますとそういうことでございます。
○行田邦子君 大臣の御答弁のとおり、私も同感しておりますけれども、やはり職員の人権意識というのが欠如していたというふうに、この事件の報告書を見ても思わざるを得ません。また、その教官だけではなくて、施設、少年院の院長を含めた幹部職員のその管理能力といいますか責任感というのも、残念ながら欠如していたのではないかなというふうに思います。そしてまた、少年院という施設が閉鎖的で第三者の目がなかなか行き届かなかったといったことや、あと、院長に対する不服申立てというような制度がうまく機能していなかったことによって、長年こうしたことが行われていることが表面化しなかったということだというふうに思います。
 そこで、そこをいかに改善していくのかというのがこの今回の改正法案、新しい法案の趣旨だと思いますけれども、個々にちょっと質問していきたいというふうに思います。
 まず、第十四条についてなんですけれども、第十四条には、「少年院の職員には、在院者の人権に関する理解を深めさせ、並びに在院者の処遇を適正かつ効果的に行うために必要な知識及び技能を習得させ、及び向上させるために必要な研修及び訓練を行うものとする。」というふうになっているわけでありますけれども、具体的にどのような研修を行うことになるんでしょうか。
○政府参考人(西田博君) お答えいたします。
 少年院の職員と申しますのは、やはり、少年が暴れたり、いろんなことをすることがあることがございますので、直接的な有形力の行使ということも不可避、避けられない場合がございます。ただ、それについて、やはり在院者の人権に対する配慮がないがためにそういった広島事案のようなことが起こったんだろうというふうに考えておりまして、そういった趣旨で、この少年院法第十四条は、在院者の人権に関する理解を深めさせる研修等の実施について法律上規定をするということが大きな意味があろうかと思います。
 それで、現在でも、午前中にも申し上げましたけれども、在院者の人権の尊重を図る観点から、憲法ですとか、あるいは人権に関する諸条約を踏まえた在院者の人権に関する講義とか、行動科学的な視点を取り入れた研修を実施しているところでございますけれども、まず、広島少年院事案について、新たに始めたというか考え出された研修というのが幾つかございますので、それをちょっと申し上げたいと思います。
 こういった広島少年院の暴行事案、暴行等の不適正処遇を行ったことを受けまして、法務教官のうち少年院で一定の勤務歴のある職員を対象にしまして人権意識及び処遇技術の向上を図るための集合研修を実施したと、言ってみれば再研修をやったといったことがまず一個ございます。それから、あと、平成二十二年度からは、他の少年院における処遇の状況等を経験する機会を付与するために他施設との交流研修を新たに実施したと。自分の施設だけではやはり偏った知識とか訓練になってしまいますので、他の施設のそういった実情を見て、そういった訓練を平成二十二年度から始めたということでございます。
 今後ともそういった工夫をしながら、やはり在院者の人権を尊重するそのための研修、訓練というのは必要でございますので、続けていきたいというふうに考えております。
○行田邦子君 是非、この新しい少年院法が成立した後、一層、人権意識を職員に対して強めていただくよう研修を怠らないようにお願いしたいと思います。
 次の質問に移りたいと思いますけれども、先ほどの大臣の御答弁にもありましたけど、少年院という施設の閉鎖性といったものも指摘がなされています。そこで、少年院の運営の透明化ということを図っていく必要が、広島少年院で起きたこのような事件を起こさないためにも必要だというふうに思っております。
 そこで、政府参考人に続いて伺いたいと思いますけれども、この法案では少年院視察委員会を各少年院に置くというふうになっています。なぜ合同で、例えば全国一つの視察委員会を設けるとか、あるいは、幾つかの少年院あるいは少年鑑別所をまとめて合同で視察をするような委員会を設けるとせずに、それぞれの少年院に委員会を置くというふうにしたのか、その理由をお聞かせいただけたらと思います。
 また、さらに、その委員の人選、これが非常に大切かと思うんですけれども、どのように行っていくのか、そして、この委員会が実効性のあるものとして機能するように、その視察などの活動の補助、サポートを誰が行うのか、教えていただけますでしょうか。
○政府参考人(西田博君) お答えいたします。
 まず、各少年院ごとに置くということとした理由でございますけれども、今回の視察委員会制度の趣旨と申しますのが、施設運営に関しまして広く外部の方に見ていただいて、意見を聞いて、透明性を高めた、国民に開かれた適正な施設運営をするということでございますが、少年院、五十二庁ございますけれども、実は全国に、結構へき地にもあったりしたり、あるいはそこで運営されている運営内容が収容している対象少年によって区々にわたるものですから、それで、むしろ幾つかを一緒にするよりも、やはり各少年院ごとに置いて、そうした方がより広く国民の御意見とかあるいは目が入ると、そういったことを考えまして各少年院ごとに置くということとしたところでございます。
 それから、委員の人選でございますけれども、これも、施設運営に関係しております公私の団体、例えば弁護士会ですとか医師会ですとか、そういったところに候補者の推薦をお願いをいたしまして、弁護士とか医師とか、それと、少年でございますので、刑事施設と違って心理の専門家ですとか教育関係者、そういった方から、幅広い分野から推薦いただいて任命をしたいというふうに考えております。
 あと、その活動を補佐するための補助者についての規定というのは特にございませんけれども、施設の運営状況を的確に把握するために施設を実際に視察していただく、それから少年と直接面接をしていただく、それから少年から提出された書面について直接見ていただく、あるいは少年院の長から、日々の収容動向ですとか変わったことがあったかとか、そういったことについて報告をさせると、そういった権限をこの視察委員会に持たせておりますので、また、加えて、少年施設の長は何か要望とかあった場合には必要な協力をしなければならないと定めておりますので、そういった点では適正な運営ができるのではないかというふうに考えております。
 また、この委員会から述べられた意見につきましては、必要な措置を講じまして、大臣がその概要を公表すると、こういった点でもやはり透明性を高めると。どんな意見があって、どこまでやれて、何ができていないかといったことも公表したいということを考えておりますので、適切に機能するための措置は担保できているのではないかというふうに考えております。
 以上でございます。
○行田邦子君 視察委員会制度が十分に実効性のあるものとなるように期待をしております。
 そして、委員の人選については、医師、弁護士、それから心理の専門家、教育関係者だけではなくて、やはり、それぞれの少年院に委員会を設置するわけですので、地域社会との連携といったことも視野に入れて人選を行っていただいた方がよいのかなというふうに思います。
 次の質問に移ります。
 在院者の不服申立て制度について伺いたいと思います。
 広島少年院の事件を受けまして、平成二十一年九月からこの不服申立て制度といったものは訓令によって創設されました。法務大臣及び監査官に対して在院者が苦情を申し出ることができるという制度であります。これ以前にも院長への申立てという制度もありましたけれども、これと並立してといったことに今なっているかと思いますが。
 まず、伺いたいんですけれども、現在の不服申立て制度の件数と、それから今現在のこの制度が抱えている課題をどのように捉えているのかと、そして、今回、法に明文化されるわけでありますけれども、そのことによってこの制度がどのように変わるのか、改善されるのか、お聞かせいただけますでしょうか。
○政府参考人(西田博君) お答えいたします。
 先ほど申しました広島少年院で発生した重大な不適正処遇事案の発覚を受けまして、従来から院長申立て制度というのはございましたけれども、これに加えて、平成二十一年九月から少年院在院者の法務大臣及び監査官に対する苦情の申出制度の運用を開始いたしました。
 このいずれの制度についても、少年院において自己が受けた処遇全般について申し出ることができるとするものでございますけれども、法務大臣に対する苦情は書面で申し出るのに対しまして、監査官に対する苦情は施設の職員でない監査官、これは結構ポイントなんですけれども、施設の職員でない監査官に口頭又は書面で直接申すことができるといったことに、訓令で始めましたこの制度については特色がございます。
 この制度の運用開始以降本年三月末までの申出件数につきましては、大臣に対する苦情が七百三十二件、申出事項数で申しますと八百三十三件、監査官に対する苦情は二百二十二件で、申出事項数にしますと六百十五件に上っております。
 現在もこういった監査官に苦情を申し出る制度というのはございますけれども、やはり、手続や、苦情に対しとる措置等が法律上決められたものではなかったということでございますので、今回、少年院法によって新たに創設されるものにつきましては、法律上これを手続とか制度について明確化をしたということと併せて内容を充実させました。
 これ、どういうふうな充実かと申し上げますと、一つ目がまず、自己に対する施設長の措置その他自己が受けた処遇について苦情を申し出ることができる。つまり、子供が、少年が、これはいい、これが悪いなんて考えなくて、自分が受けたことについて何でも言ってもいいんですよということにいたしました。それから次に、原則として処理の結果は申出者に通知すること。それから、申し出たことを、その秘密申出を保障すること。それから、申出をした、理由とする不利益の取扱いを禁止することを明確に規定をいたしました。それで、これについては法務大臣において誠実に処理をいたしまして、違法又は不当な処遇であることを確認した場合においては、必要があると認めるときは当該措置の取消し等を行うこととし、相談員制度も設けることといたしました。
 これによりまして、少年の権利利益の救済を図るとともに、適正な施設運営にも寄与できるのではないかというふうに考えております。
○行田邦子君 今御説明いただきました法務大臣に対して申し出ることができる救済の申出についてなんですけれども、第百二十三条を見ますと相談員という条文がありまして、ここでは、少年院の長の指名を受けた少年院の職員が相談員として応じることになっています。
 そこでちょっと疑問を感じたんですけれども、少年がいる少年院で、例えば暴行を受けていたりとか、それからひどい待遇を受けていたりということに対して救済の申出をしたいと思っている少年が、その少年院の職員に対して、何というか、心を開いて相談ができるものなのかというのを少し疑問に感じました。
 この仕組みですと、なかなか少年が職員に対して相談をするということが難しいのではないのかなと。つまり、広島少年院で起きたような事件、これはなかなか表面化しなかったわけですけれども、この制度だと、同じように、実際に事件が起きていても、不適正な処遇がなされていても、表面化しないままなのではないかという危惧をするんですが、いかがでしょうか。
○政府参考人(西田博君) お答えいたします。
 確かにそういった危惧がいろいろ言われておりますけれども、在院者が相談をためらうことがないようにどういった工夫ができるかということでございますが、一番の大きな工夫は、どうしてもそういった不適正処遇をやる部門の職員にはそういったことはやらせないと。そうではなくて、少年を実際に処遇する処遇部門の職員ではなくて、それと関係ない系統の職員、幹部職員をこれに充てたいと。
 具体的には、次長とそれから庶務課長というふうな幹部職員を考えておりますけれども、この次長、庶務課長は基本的にはもう処遇にはタッチをしない仕事でございますので、そういった面でちょっと工夫をしたいということと、それから、この職員には守秘義務を課しまして、絶対に秘密を守るような制度とするといったことでこれを補強したいというふうに考えておりますし、それから、何よりも、少年が最初にこの制度をどういうふうに理解をして、どういうふうに使えるのかというのをちゃんと理解をしていないとなかなかうまくいきませんし、相談もあくまで希望でございますので、どういった不服の申立てができるのかというのを、入所したときに、入院したときにオリエンテーションで詳しく説明をして、分かりやすいように説明をして、冊子としてそれも居室に備え付けていつでも見れるような格好にして、そういったことを総合的に考えまして、そういった弊害がないような工夫としたいというふうに考えております。
○行田邦子君 少年が、このような申出をしたらば不利益を被るんではないかといってちゅうちょをするようなことがないように制度を設計し、また運用していただきたいというふうに思います。
 それでは、最後の質問になりますが、大臣に伺いたいと思います。
 少年の更生、社会復帰ということを目的とした少年院法が抜本的に変わります。やはり、少年の再犯防止、再非行防止、立ち直りということにとっては、保護者との連携というのがとても大切だというふうに私は思っております。強化をしていく必要があるというふうに思いますけれども、まず大臣に伺いたいと思うんですけれども、少年の再犯防止のために保護者との連携をこの新しい少年院法においてどのように強化していくのでしょうか。
○国務大臣(谷垣禎一君) 保護者は少年院におります子供たちの権利や利益の擁護者といいますか、少年の社会復帰や更生のために努力をすべき立場の方であると。それから、子供たちの引受人であることもほとんどの場合がそうですね。ですから、少年、子供たちの改善更生、社会復帰のために保護者との連携というのは極めて重要でございます。
 そこで、少年院は、面会等の機会を通じて、子供たちと保護者の、いろんなその関係に問題がある場合がかなりあるものですから、面会等を通じてその関係の改善を図っていくということが大事でございますが、保護者の中には子供たちを監督指導していこうとか、あるいはその意欲が余りない保護者とか、あるいは意欲はないわけじゃないんだけどその能力が余りない方もおられるというのが実際なところでございます。
 ですから、職員が保護者の相談に、どうしたらいいんだろうと相談に応じるということとか、あるいは指導、助言をしていくということは極めて大事でございますし、あるいは保護者会とか親子の関わりをテーマとした講習会、こういったいろいろな活動への参加を保護者に促して働きかけていくということも極めて大事だろうと思っております。こういうことは、今後とも新法の下でも当然やっていかなければならないことでございます。
 それで、今度の少年院法案では、少年院の長が、退院した者やあるいはその保護者の方々から出院後の、例えば昔の悪い仲間とまた付き合っちゃっているとか、あるいは進路をどうしたらいいだろうかとか、そういう、健全な社会生活を営む上で、相談を受ける場合、職員にその相談に応じさせることができるという規定を新たに設けました。これは、こういったことを少年院の付随的業務じゃなしに本来業務に加えていこうと、位置付けていこうということでございますので、こういう規定を活用して保護者との連携というものを進めていきたいと、こう考えております。
○行田邦子君 私の知り合いで、男性ですけれども、奥さんと離婚して、男の子、息子が少年院に入って、それで面会をして、随分更生してきたと。ところが、やはりお母さんに会いたいということをよく言うと。ところが、離婚しているのでなかなか自分からは言えないと。こういった場合も、十七条では、保護者その他相当と認める者の理解を得るとともにとなっていますので、こうしたケースも踏まえて保護者等の協力を得るようなことを期待したいと思います。
 終わります。
○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
 本法案は、広島少年院における深刻な人権侵害事件の反省も踏まえて、およそ六十五年ぶりに行われる抜本改正でございます。そこで、ちょっと通告したかどうかなんですけど、大臣に、この新法の理念、法案でいいますと一条に関わって少しお尋ねしたいと思うんですが。
 今回の法案は、これまで運用で積み重ねられてきた収容に伴う権利義務関係、あるいは矯正教育の法律上の制度化という形で明確にしようとするものだと思いますけれども、その理念について一条に規定がございます。先立って行われた有識者会議の表現をちょっと御紹介をしますと、日本国憲法と子どもの権利条約、そして少年法における少年の健全な育成を期すると。そうした理念、目的を示した上で、少年矯正のよって立つ理念とはというので、こうした表現があります。少年の最善の利益のために、個々の少年の人格の尊厳を尊重しつつ、再非行の防止を図るとともに、社会の健全な一員として円滑な社会生活を送ることができるよう成長発達を支援することであると。
 これはおおむねこの法の理念ないし目的と、そういうふうに理解してよろしいでしょうか。
○国務大臣(谷垣禎一君) 仁比委員のおっしゃるとおりだと思います。
○仁比聡平君 そこで、その少年院が、今現状なかなか大変な、処遇困難な少年に向き合っているというその現状について少しお尋ねをしたいと思うんですけれども。
 現場で少し伺いますと、やっぱり収容される少年の質が激しく変化していると。従来ならば、特に一般少年院を中心に、寮生活や職業訓練などの集団処遇を基本として少年院での生活が行われるんですが、この集団処遇に適応できない少年が増えている。集団に入れない、したがって、個室で入院から出院までずっと生活せざるを得ない。本来、医療少年院での生活が適しているのではないかというふうに思われるような発達障害、様々な少年たちがいると思いますけれども、そうした少年たちも一般少年院に送致をされることが間々あって、そうすると、その子にとっても適応できなくて大変なんですけど、そのほかの子たちにとってみても集団生活が様々な形でひずみが出てくると、そうしたこともよく伺うわけです。
 この有識者会議の最近の少年の特性等という項目では、発達上の問題を抱える少年や虐待被害の体験があるとされる少年が増えているという指摘や、他者との関わりを持つことに困難があり、不適応感を内面に蓄積させがちな少年が目立つようになっているという指摘もある。家庭環境の面では、父母間の葛藤や経済的な苦境などを背景にして家族としての機能が低下をしていて、保護関係の調整に一層の配慮を要する事例が増えていると。そうした指摘がされているわけですね。
 こうした処遇困難な少年が増えているという指摘を踏まえて、今度の法案でいえば三十条だと思うんですが、少年院における矯正教育課程を法務大臣が定めるというふうにされています。現在のG例えば1だとか、VだとかPだとかHだとかというこの分類級と、それから現行のそれぞれの少年院における処遇体制が、今の現状の少年たちのこうした大きな変化に見合っているか。やっぱりそこにちょっと適合しないところもあるのではないか。その中で、本当だったらば医療少年院に送致をした方がいいなということがあるんだけれども、帰住先の近くにないとか、あるいは、先ほど来指摘をされているような医官の皆さんの体制がなかなか難しいとか、様々な事情で一般あるいは中等の少年院に送致をされるというようなことも起こっているのではないか。そうすると、処遇をする少年院にとってみると、やっぱり大変な困難が強いられるといいますか、何にしろ向き合わなきゃいけないということになるかと思うんですね。
 この矯正教育課程をこれから定めていくに当たっては、今日の少年院に入院をしている少年たちのそうした現状をよく踏まえて、どんなコースを設定するのか、あるいは全国各地の少年院それぞれについてどういう体制を整えるべきなのか。これ、理想を追いかけるためには、職員さんたちの抜本増員と、それから医官の皆さんの確保、充実、あるいは施設そのものの近代化といいますか、もう古い建物でどうにもならないというような、こういう人的、物的な充実が私は不可欠だと思うんですよね。
 これからのこの新法を施行していく上での、この矯正教育課程を少年たちの現状にしっかり見合ったものに整えていただきたい。そのための人的、物的な体制を抜本的に整えるべきではないかと私は思うんですが、大臣、よろしければ。
○国務大臣(谷垣禎一君) 確かに、今、仁比委員がおっしゃったように、この頃、少年院に入ってくる子供たちの状況を見ると、もちろん少年院では個別的な処遇と集団的処遇と両方をうまく組み合わせるわけですが、集団的処遇というよりも個別的処遇に重点を置かなければならないような者が増えてきていることはこれは事実でございます。
 一つは、いろいろな精神障害を有する者、それはさっきおっしゃった発達障害のような者、それから年少者も増えてきておりまして、まだ未熟でございますから、その処遇に言ってみれば手間と手数を要するということがあると思います。そのほか、暴行、虐待等によって心を開かないような者とか、非常にそういう子供たちが増えてきていると。
 そうすると、少年院の対応としては、一つは、昼間だけというわけにいかず、やはり二十四時間体制で対応しなければならないその必要性はますます大きくなってきていると言えると思います。それから、処遇プログラムも幾つか練り上げて、例えば覚醒剤であるとかあるいは性犯罪のプログラムというのを作ってまいりましたけど、さらに今後は、暴力等々いろいろプログラムを開発して、適切なきめ細やかな対応をしていかなければならないんだろうと思っております。
 それで、こういった密度の高い矯正教育をやっていくためには、一つはやっぱり人員でございますね。今もうかなり、先ほども御答弁の中で申し上げましたけれども、休暇を取る日数などを見てみましても平均的な公務員より取れていないということは、かなり負担が重くなっているということは、これは間違いのない事実だろうと思います。年次休暇の取得日数が少年院の職員は七・二日、それは国家公務員全体は平均は十三・三日でございますので、かなりそこに負荷が掛かっていることがうかがわれる。それから、施設も確かに老朽化しているものがございます。
 したがいまして、きめ細やかな処遇をする必要がある、増員等これから頑張っていかなければならないと、こう考えております。
○仁比聡平君 そうした入院している少年たちの現状、それから少年院が担う改善更生に向けた職務の重さからしたときに、この少年たちに向き合う法務教官の皆さんの日々の教育的な営み、あるいは無数の、今大臣からも二十四時間というお話がありましたが、二十四時間三百六十五日の少年院生活の中での無数の働きかけの積み重ねということ、つまり、法務教官の専門性あるいは教育力だとか処遇力に少年院の目的が達成されるかどうかってやっぱり負うところが極めて大きいと思うんですね。
 この法案で、確認ですけれども、局長、矯正教育についても、あるいは収容に伴う権利義務関係の明確化の点についても、少年院の長はという主語で記載がされている条文が多数ありますけれども、これはもちろん少年院長さんが一人で全てをやるなんていうのは、これはできるはずももちろんありませんし、少年一人一人に体当たりで向き合っている法務教官の皆さんの教育力ということがやっぱり本当に大切だということを考えても、この現場の法務教官の皆さんの意見、判断というのが十分に踏まえられたものでなければならないと思いますし、少年院長の権限の行使というのは。あるいは、その現場の法務教官の方に言わば委ねられているところもかなりあるのではないかと思うんですけれども、局長、いかがでしょう。
○政府参考人(西田博君) お答えいたします。
 御指摘のとおり、少年院法案におきましては、在院者の処遇に関しては少年院の長の権限により行われる旨の規定が多くございます。
 ただ、これは在院者の処遇について行政組織の長たる少年院長が責任を持って行うという趣旨でございまして、法律上明らかにする趣旨でございまして、現場の第一線で在院者の処遇に直接当たって、体ごと彼らの処遇に当たっているという法務教官などの少年院の職員の持つ専門性を重視することはもう当然でございまして、その専門的知識とか技術、この活用がなければ少年院の運営というものは絶対にできないというふうに私は思っております。
 したがいまして、今おっしゃったように、少年院長がいろんな判断をしたりいろんな新しいことをするにしても、現場の第一線の職員のこれまでの経験とか、当たってきた、実際に、例えば個別具体的な少年に対しての処遇の結果とか、そんなことがなくては少年院の長がいろんな決定ができないというふうに私は思っておりますので、その点は少年院の長といえども、現場の職員が日々やっている処遇とか経験とか能力というのは重視して仕事をしなければ少年院の運営はできないと、こんなふうに考えております。
○仁比聡平君 少し具体的に法案に沿って伺おうかなと思うんですが。
 例えば、三十七条に、在院者、少年たちの日課として余暇に充てられるべき時間帯というのが明記されました。これ、その余暇に充てられるべき時間帯そのものの教育効果ということも私よくあると思うんですけれども、実際に例えば現場で、余暇の過ごし方というのは子供によってそれぞれで、静かに本を読みたい、読書をしたいと思う子もいれば、その隣で、ラジオを大音量で聴かなきゃ気が済まないという子だったり、中には突然大声を出して騒いだりする子なんかがいると。
 これ、余暇なんだから自由じゃないかとか物を言っちゃならないじゃないかというような理解になると、何だか少年院としての目的に沿わないことになりかねない。だからといって、法務教官がその子たちの余暇の過ごし方について何か注意とか指導とかいうようなことをしようとすると、それは少年院長の許可を、一々決裁を得なきゃいけないのかというようなことになったら、もちろん間尺にも合わない。
 この三十七条の三項で言う援助を与えるものとするというのはそういう趣旨ではないのではないかなと思うんですけれども、これはどんなふうに理解したらいいんでしょうか。
○政府参考人(西田博君) お答えいたします。
 余暇時間帯と申しますのは、在院者が何らかの行動をすることが義務付けられていない時間帯というふうな意味でございます。余暇時間帯を含めまして在院者の日課というものを定めておりまして、集団生活でございますので、その日課に従っていろんな活動をさせるということになっております。これは、食事の時間ですとか睡眠の時間ですとか、そんな健康な規則正しい生活をするために必要なものでございます。
 もっとも、先ほど言われましたように、余暇時間帯は何らかの行動をすることが義務付けられていないからといって自由に過ごすことができるものではございません。全く放任されるものではなくて、少年院でございますので、規律及び秩序の維持の観点から生活及び行動に対する制限がなされることは当然でございます。それと、あと、援助ということがございましたけれども、在院者は未成熟であることも多いことから、自ら有意義にその時間を過ごすことが困難な場合もございます。
 したがいまして、少年院の長が適切な援助を与えるよう配慮するというふうにしておりますのは、具体的な援助として申し上げれば、例えば、自主的に行う通信教育の受講の機会の提供であるとか、映画鑑賞会の実施であるとか、球技大会の実施であるとか、そんなふうに、ある程度こんなことをやってはどうかといったことで援助をするということでございます。
 それから、先ほど大音量でという話もございましたけれども、余暇時間帯であっても、個々の在院者の具体的な行動等によっては、教官が適時にかつ臨機応変に指導しなければ矯正教育自体が成り立たない場合もございますので、日課に定められている矯正教育の時間帯以外の時間帯であっても矯正教育を行うことができる旨を三十七条の第二項で規定しておりまして、言ってみれば、生活指導を始め必要な矯正教育は余暇時間であったといえども臨機にしなきゃいけないときはできるということでございます。
○仁比聡平君 そうした法務教官の処遇力というのがやっぱり最前線で問われるんだなということだと思います。
 念のための確認ですけど、四十九条には、今度、できる限り戸外で適切な運動を行う機会を与えなければならないという規定がありまして、これそのものは大事な規定だと私は思うんですが、ただ、実際の少年の生活を考えると、一日、戸外での活動というのはたくさんあるカリキュラムになる場合があります。元々、体育の授業というか時間というのは、別の条文、二十八条で規定をされていますし、職業訓練などでも戸外で活動するという場合ももちろんあるわけですね。
 これ、現場で、例えば、このできる限り戸外での運動ということがしゃくし定規にやられると、一日中外に出しておいて、炎天下というわけにもいかないから、職業訓練の戸外の活動をちょっと割愛してこの運動の時間をつくらなきゃいけないかとか、そういうことも起こっているかのようなお話を伺ったんですが、その辺りは柔軟に考えられるのではないかと思いますが、いかがでしょう。
○政府参考人(西田博君) お答えいたします。
 元々、できる限り戸外で運動を行うということは、行動の自由を制限されております在院者にとって、健全な心身の成長を図る上で適切な運動を行う機会を与えることは重要であるということが前提で考えておりまして、先ほど言われました四十九条はその趣旨を明らかにしたものでございます。
 また、おっしゃいましたように、少年院におきましては、指導の中に体育指導というものがございまして、矯正教育として体育指導の一環として野外活動とか運動競技を行う場合もありますけれども、これも、先ほど言いました適切な運動と同様に、在院者の健全な心身の成長という面においては運動と同じ効果を持つわけですので、これについては、これを運動の機会を与えたものとすることを予定しておりまして、言ってみればタブって運動とか、そんなことは考えておりません。
○仁比聡平君 あと一つ、書籍の閲覧について伺いたいと思うんですけれども、寮に行くと本棚があって、たくさん寄贈されたものなんかも含めて本がありますよね。
 この中で、少年が関心を持って本を読んでいると。すごいじゃないかと、どうやら一冊読んだみたいだと。その感想なんかも聞きながら、だったらこの子にはこういう本も紹介したらどうかということで、例えば教官が自分で持っている本なんかを紹介する。こういうことは法務教官の教育的働きかけとして本当に大事なことなんじゃないかなと思うんですけれども、その一々を少年院長に、この子にこんな本を提供しようと思うがどうかというような許可などが要るものなんでしょうか。
○政府参考人(西田博君) お答えいたします。
 具体的にどういう案件かちょっとつぶさに分からないんですけれども、ただ、個々の少年にとってみますと、少年の方から見ると、あの少年はあの先生からこんな本をもらったとか、あるいは俺はもらっていないのにとかいったことが当然起こると思います。ですので、そういった意味で、許可と申しますか、上司の方にそういった話をして、いいよということでバランスを取るというか、そういった意味でそういった手続はしているかもしれません。
 ただ、先ほど申しましたように、どうしても狭い空間で彼らは二十四時間生活しているものですから、そういった先生からの一言というのは、非常に心強く感じるとともに、やっぱり、あの子にはそういう話があったのに自分にはなかったとか、そういったこともありますので、そういった意味である程度の、上司に相談をしてほしいとか、上司の許可を取ってほしいというのは、そういったことがあるんではないかなというふうに思います。
○仁比聡平君 法務教官の現場でのそうした少年に対する教育力というのを尊重しながらのお話なんだろうというふうに受け止めました。
 信書に関してなんですが、例えば親御さんに手紙を書くと、少年が。だけれども、その表現というのは、当然親と子の関係というのがいろいろ複雑なわけですから、子供のその文章の表現が親には伝わらないんじゃないかと。こういう書き方を、もうちょっとこういうふうに書いたらいいんじゃないかと、そうしたアドバイスを教官が行うというのは、これまでもやられてきていると思うんですけれども、それはこの信書の発受に関する権利義務関係を明確にした中で難しくなるんでしょうか。
○政府参考人(西田博君) お答えいたします。
 親御さんとのそういった信書のやり取りというのは、権利義務関係というよりも、むしろやはり少年にとっても、改善更生とか社会復帰で親元へ帰るといった面から非常に違った意味で有力な矯正教育手段だということも考えられますので、それはただ単に権利義務関係とか、あるいは規律、秩序の維持とかいったことで一律に子供に、その少年に、そんなことを書いてはいけないとか、こんなふうに書きなさいと言うわけではなくて、やはり前向きにその少年の処遇のために、改善更生のために指導をすることはできると思います。
○仁比聡平君 そうした法務教官の、例えば有識者会議でも、それから今日の答弁でも、複数指導体制の導入ということが強調もされているんですけれども、だけれども、現状の人的体制で複数指導体制を全ての少年院に広げていくと、極めてどうなるのかという思いを抱かざるを得ないんですね。
 これまで複数指導体制がつくられたのは六少年院というふうに伺っています。今後、全国にこれを広げていくためには本当に抜本的な増員が必要だと思いますし、現状の現場の様子を伺いますと、既に連続二十五時間勤務といった法務教官のシフトが法務省からいただいた資料でも明らかになっていますし、私が現場で伺うと、例えば朝九時から夜まで働いて、夜の十時から朝六時まで仮眠をした上で翌日の昼まで二十七時間半といった拘束というかシフトを組んでいると。
 先ほど研修というお話もありましたけど、今の職員体制で研修が行われれば、あるいは何らかの事情で出張ということになれば、そのシフトそのものがもう成り立たなくなってしまう。だから、当直は六日に一回というふうなことなんだけれども、実際には、一人が病気で休んだり出張だったりとなれば、三、四日に一度はそうした当直をせざるを得ないという中で法務教官の皆さんが少年たちと向き合って頑張っているということだと思うんですね。
 ちょっと時間がなくなって取り上げられませんが、残念ですけれども、今度独立法ができて、社会的にもその技能が本当に生かされることが期待される少年鑑別所の技官の皆さんの現実もそうだと思います。再鑑別だとか、あるいは保護との関係での鑑別技官の皆さんの役割をもっとという方向が出されているけれども、実際にはそれを実現するには本当に抜本的な増員が必要だと思うんですが、大臣、一言、最後、決意も伺って終わりたいと思います。
○委員長(荒木清寛君) 谷垣大臣、簡潔にお願いします。
○国務大臣(谷垣禎一君) 先ほども御答弁申し上げましたけれども、やはり個別処遇等々、きちっとやっていかなきゃならない領域が増えてきておりますので、増員に向けて努力をいたしたいと思います。
○仁比聡平君 終わります。
○谷亮子君 生活の党、谷亮子です。よろしくお願いいたします。
 現行の少年院法は昭和二十四年に施行されまして六十五年が経過をし、抜本的な改正が今回行われます。今回のこの少年院法は平成二十一年四月の広島少年院の事件を契機として制定されるとも言われておりますけれども、少年矯正を考える有識者会議で十五回にわたる真摯な御検討をまとめられた提言も生かされる改正でもございます。
 また、法務行政の果たすべき使命の一つとして、国民の命、そして暮らし、さらには安心と安全を確保するということが挙げられると思います。そのために、少年矯正教育や更生へ向けての法整備が行われていくと同時に、私がいつも申し上げさせていただいております第一義的に行われなければならない被害者の救済ですね、このことに関しましても、やはり、このような少年院の法整備が行われると同時に、この被害者救済というのも大変重要であるというふうに考えております。また、本人やその御家族の気持ちをよく理解しながら、真摯に受け止めて、今回の少年院法の改正を進めていくということが必要であるというふうに思います。
 そこで、法務省にお伺いさせていただきますが、少年による犯罪の被害者には少年がなる事案が多いということも言われておりますけれども、被害者が成人の場合も含めまして、少年犯罪においてどのような被害者救済措置がとられるのか、お聞かせいただきたいと思います。
○国務大臣(谷垣禎一君) 法務省では今までも被害者支援等々の制度の整備やってきたわけですが、特に少年事件との関連で申し上げますと、一定の重大事件について犯罪被害者等が少年審判を傍聴することができる少年審判の傍聴制度、一般にはこれは非公開でございますが、被害者にはこういう傍聴制度が認められていると。それから、少年院からの仮退院の審理において、犯罪被害者等々の方々から御意見を伺って対応する意見等聴取制度などがございます。
 それから、特に少年被害者、被害者が少年である場合ですね、この場合の施策の運用に当たっては、まだ少年でありますから精神的にも未熟な、未成熟である場合も多い、そういう少年被害者の心情や立場を十分おもんぱかる必要がございます。そこで、例えば、少年被害者が証言をするような場合における保護者の付添いであるとか、それからビデオリンク方式によって証人尋問を実施すると、こういったことが少年被害者の心情や立場に配慮した対応と言うことができると思います。
 それから、少年被害者に対しては、法務省だけではございませんで、他省庁でも、例えば、被害少年が受ける精神的な打撃を軽減するための継続的支援の推進であるとか、それから少年被害者の保護に関する学校やあるいは児童相談所の連携の充実等々の諸施策が講じられているというふうに承知しております。
○谷亮子君 谷垣大臣、ありがとうございました。
 やはり、被害者が少年の場合もあるということで非常にデリケートな部分もありますし、これからさらに、その被害を受けた方たちが社会に復帰していくためにもあらゆる施策がこれは必要になってくるというふうに同時に感じております。
 次に、今回の少年院法の改正に向けた少年矯正を考える有識者会議の提言の中では、少年矯正のよって立つ理念を、少年の最善の利益のために、個々の少年の人格の尊厳を尊重しつつ、再非行の防止を図るとともに、社会の健全な一員として円滑な社会生活を送ることができるよう成長発達を支援することであるということが明らかにされております。また、矯正のための教育に再非行、再犯の防止が盛り込まれております。
 今回の少年院法の制定では、現行法には明確に規定されていなかった矯正教育の目的とその内容が第五章二十三条から四十三条まで定められておりました。二十三条で、矯正教育の目的は、在院者の犯罪傾向を矯正し、並びに在院者に対し、健全な心身を培わせ、社会生活に適応するのに必要な知識及び能力を習得させることと規定をされておりまして、少年院におきましては、まず生活指導、そして職業指導、教科指導、体育指導、そして特別活動指導を行うという項目がございます。
 そこで、お伺いさせていただきたいと思いますが、矯正教育においては、少年の更生と同時に被害者へのこれは贖罪意識の涵養も図られているのか、そしてどのような内容が在院者に教示されるのか、お聞かせいただきたいと思います。
○政府参考人(西田博君) お答えいたします。
 現在、全ての少年院におきまして、被害者の視点を取り入れた教育というものを入院から出院まで全教育期間にわたって体系的に実施しております。
 その内容を少し申し上げますと、在院者が自らの非行と向き合って、犯した罪の大きさや犯罪被害者等の心情等を認識し、被害者に誠意を持って対応していくことを考えさせるといったことが目的とするものでございます。それで、当事者である犯罪被害者や支援団体等の関係者の講話とかグループワーク指導及び少年個々の犯した事案に応じた個別指導を実施しているほか、教育内容を企画するに当たりましては、犯罪被害者団体とか支援団体からの意見を取り入れるように努めているところでございます。
 今後は、先ほどおっしゃいましたように、少年院法第二十四条第三項一号に、犯罪被害者及びその家族又は遺族の心情を理解しようとする意識が低い在院者に対しては、自己の与えた被害を直視させ、非行の重大性や被害者の現状を認識させるとともに、謝罪も含めた償いを具体的に考えさせることを目的とした特別プログラムによる手厚い指導を行う予定でございます。
 やはり、少年院において被害者に対する、被害者を考えた生活というか処遇を受けることというのは非常に重要でございますので、そんなことをこれからもきちっと努めていきたいと思っております。
○谷亮子君 ありがとうございました。
 入院から出院までを一貫してその取組が行われているということで、やはりその罪を犯したことを悔いるその気持ちというのは、自分自身を見詰めて、また見詰め直して、これからの人生を組み立てる上でやはり必要な指標というべきものに私はつながっていくものだというふうに思っております。
 そこで、現在、罪を犯した少年の矯正教育や更生へ向けての法整備、そして施策の充実は進んできているわけでございますけれども、被害者や被害者の遺族の方からの声といたしましては、やはりその量刑が、これは量刑の範囲が狭過ぎるのではないか、またさらには刑罰が軽過ぎると、また、刑を引き上げることは人として生きていくための教育である等々ございまして、このように、加害者と被害者との間には心理的等にも何か懸け離れてしまっている、これはある意味乖離しているところがあるというふうに受け止められるところもあると思うんですけれども、このことにつきまして、法務省におかれましてはどのように受け止め、どのように考えていらっしゃるのかをお聞きしたいと思います。
○国務大臣(谷垣禎一君) 犯罪被害者全般を見渡しての対策をもう少しやっていけというお声は随分あると思います。これは法務省にとって大事な課題であると思います。
 そこで、先般の、少年法改正やっていただきましたが、それもある意味で犯罪被害者の心情にも配慮した対応ができるようにということであったと存じますが、これまで、例えば被害者等通知制度とかあるいは刑事裁判への被害者参加制度、こういったものを始め様々な整備を行ってきたんですが、去年の通常国会で御審議いただいて作っていただいた被害者参加人に対する旅費等の支給あるいは被害者参加人のための国選弁護制度における資力要件緩和を内容とするいわゆる犯罪被害者保護法等の一部改正もその一環でございました。
 被害者の保護、支援に関する諸施策を推進していくためには、もちろん検察庁ともいろいろ協議をしなければなりませんし、更生保護官署、それからあるいは法テラス等々との連携も重要でございます。それで、被害者保護を図るそれぞれの制度を運用するに当たりましては、個々の事案ごとにやはりきめ細かく配慮していかなければいけないと考えているところでございます。
○谷亮子君 ありがとうございました。
 大臣からお話ございましたように、少年法の改正の際にも、やはり被害者の方への対応、また心情に対しての対応、そうしたことも図られてきているということで、着実にその成果を、成果といいますかその取組というのが少しずつではありますけれども進んできているというふうに感じております。
 次に、少年が犯罪を犯さないための、犯罪に至るその手前の取組がとても重要であるというふうに私は考えております。少年の非行防止、また犯罪抑止についての未然の対策というのが、教育の場でも行っていくというのが必要であるというふうに思いますけれども、法務省としては、この未然の対策につきましてはどのように考えて取り組まれていらっしゃいますでしょうか、お伺いいたします。
○政府参考人(小川秀樹君) お答えいたします。
 委員御指摘のような教育としては、学校現場における法教育が挙げられるものと思います。法教育は、国民が法や司法の意義を実感として理解し、法的な物の考え方を身に付けるための教育でありまして、自由で公正な社会を支える担い手を育成するために不可欠なものであると認識しております。
 法務省といたしましては、このような法教育の重要性に鑑みまして、その普及、発展にこれまで努めてきたところであり、学校の求めに応じて法務省職員などを講師として派遣し、法教育事業を実施する取組を行っております。
 近年の法教育事業の実施回数を申し上げますと、平成二十三年度が二千六十六回、平成二十四年度が二千二百六十一回、平成二十五年度、これは上半期だけでございますが、千三百八十二回と、こういう状況でございます。
 これらの事業のうち、非行防止や犯罪防止と関連するものといたしましては、刑事司法に関する講義が相当数行われておりますほか、保護観察所の職員ですとか、刑務所、少年院などの矯正施設の職員による更生保護、あるいは少年の司法に関する講義なども行われているものと承知しております。
○谷亮子君 ありがとうございました。
 やはり、学校での法教育というものの重要性というのが、今お話ございましたとおり大変必要であるというふうに思います。
 それで、やはり、今お話ございましたように、学校の求めに応じてそれが今対応なされているということもあるようでございまして、これはそのほかの取組となるのかもしれませんけれども、非行防止教室というのが平成十七年一月に、これは文部科学省の方でございますが、子供たちに社会のルールや自分の行動に責任を持つこと等の規範意識の醸成を図るとともに、犯罪に巻き込まれないようにスキル等を育成するため、警察庁や関係機関と連携しながら非行防止教室等プログラム事例案を作成し、これにより学校内外において非行防止の推進に努めるとともに、少年の犯罪被害の実情に鑑み、犯罪被害防止についても併せて取り上げていく等々の取組がございまして、このような積極的な取組が、今法務省の方からもお話ございましたように、そのような取組があるからこそ、やはり、少しずつではありますが、この少年犯罪というのが減少傾向にあるとも言われているというふうに思います。
 もちろん、各省との連携というのも同時に必要になってくると思いますけれども、法務省としてやはり独自の、何といいますか、非行や犯罪を防止していく取組というのが児童生徒に対してこれは行われる姿勢があってもいいのではないかなというふうに思っています。
 また、さらには、これから夏休みに入りますし、さらには冬休み、春休みとありますので、そうした学校が休みに入る前の取組として、定期的にではございますが、法務省がやはりそうした児童生徒を対象に、こうした非行や犯罪を防止していく取組というのを法務省独自として是非ともつくっていただければなというふうに期待を申し上げさせていただきたいというふうに思います。
 そして、次の質問に入らせていただきますが、ただいま未然の対策の重要性ということでお話をいただきましたが、同時に、やはり再犯防止の取組というのも大きな課題の一つであるというふうに受け止めております。
 やはり、この再犯防止の取組を行っていくことによりまして、再犯が減ることによって犯罪が減る、また犯罪がなくなっていくということにつなげていくことができるというふうに考えますが、その取組といたしましては、平成二十四年に犯罪対策閣僚会議でまとめられました再犯防止に向けた総合対策もございました。ここでは、数値目標として平成三十三年までに再入率を二〇%以上減少させると、これは政府として決意を持って取り組むということが示されておりました。
 そこで、再犯防止に向けた総合対策の、少年、また若年者についての実施状況について、法務省が御担当されている箇所につきましてお聞かせいただきたいというふうに思います。
○国務大臣(谷垣禎一君) 少年の再非行を防止してその健全育成を図る、これは再犯防止の中でも極めて大事な部分でございます。それで、今おっしゃったように、平成二十四年七月に再犯防止に向けた総合対策ができまして、それに基づいて法務省としては仕事を進めているわけですが、一つは、少年院にいる子供たちのそれぞれの問題性に着目した矯正教育プログラムを開発していくと。薬物非行プログラムを平成二十四年度に作りました。それから、性非行プログラムは平成二十五年から導入をしたと。現在、引き続き、暴力とかあるいは交友関係に問題がいろいろある、それに関するプログラムを作っているところであります。
 それから、少年院を出た後、これが大事なんですが、自立していくことがなかなか困難で継続的な援助を必要とする子供たちがおります。こういう子供たちについて、まず在院中から出た後の福祉あるいは医療的な支援も考えてやっていくと。
 それから、特に義務教育段階にある子供たちについては、今まで在籍していた学校あるいは教育委員会との連携をきちっとして、復学の調整や進学に向けた支援を行っていくと。
 それから、やはり保護者との関係、家庭関係、家でいろいろ問題を抱えている子が多いというのはるる御答弁を申し上げたところでございますが、保護者の、何というんでしょうか、保護者も意欲のない方とかなかなか能力がない方がいらっしゃるのが実際でございますから、保護者に対して助言をしたりあるいはいろいろ指導をするということも様々な取組を展開しているところでございます。
 いずれにせよ、これ、法務省だけでやるというよりも、関係省庁あるいは民間団体とも連携を図りながら実効性のある取組をしていかなければいけないと考えております。
○谷亮子君 谷垣大臣、ありがとうございました。
 やはり非常に幅広いということで、またさらに、その中でも在院中の取組というのが非常に重要なのだというお話をいただいたというふうに思います。
 この再犯防止の取組につきましては、個々の犯罪少年の、これは性質であったり、あとは養育環境等、様々に取組があるというふうに思いますけれども、保護観察所との連携や保護者にも早くから取組を進めていただく等、連携と継続を重ねて得られた実績をまた在院中の取組に生かすということで、その数値目標が早期にこれは達成されることを期待申し上げたいというふうに思います。
 次に、少年院等を出院された方や刑務所で刑期中の方、そしてさらには刑期を終えた方たちの就労支援の状況につきましてもお伺いさせていただきたいというふうに思います。
 このことにつきましては本委員会でも何度か取り上げさせていただいているんですけれども、少年院の出院者の進路ということで、平成二十四年における少年院の出院者は三千四百四十人いらっしゃいまして、このうち三千四百二十一人が仮退院によるものということでございました。
 その中で、平成二十五年の犯罪白書によりますと、そのうち四八・八%が就職を希望している、そして一六%が進学を希望している、そして残りの一%が進路が未定ということで、また、その出院者の進路は、二四・二%が就職が決定している、そして四・八%が中学校へ復学決定、そして三・七%が高等学校復学決定であるというこれは統計が報告されておりましたけれども、この状況につきましては、先ほど谷垣大臣からのお話にもございましたように、民間の方たちの御協力が必要である、また深い御理解が必要である、そしてさらには協力雇用主の方等々あらゆる取組というのが必要であるということでございます。
 そこで、平成二十一年一月に、経済界を中心とした大企業、団体等の協力を求めて、事業者の立場から刑務所出所者や少年院出所者等の就労を支援する全国就労支援事業者機構が、これが中心となって設立をされていらっしゃいますけれども、どのような取組であるのか、御紹介いただきたいと思います。
○政府参考人(齊藤雄彦君) 全国就労支援事業者機構は、今お話のありましたように、平成二十一年一月に経済団体それから大企業等が発起人となって設立されたNPO法人でありまして、刑務所出所者等を雇用する事業主の開拓とか、それから当該事業主に対する給与の一部助成事業、再犯防止に関する広報啓発事業等を実施していただいております。
 法務省ももちろんこの機構と連携しておりまして、大企業等にこの機構の活動を紹介するというようなことなどもさせていただいておりますし、今年の五月十三日には、全国就労支援事業者機構の御紹介によりまして、日本経済団体連合会幹事会におきまして谷垣法務大臣が講演を行われて、会員企業に向けて就労支援を通じた再犯防止施策への協力を依頼したところでございます。
 今後も引き続き連携を強めて、刑務所出所者等の就労支援について更に御理解、御協力が得られるよう努力してまいりたいと思います。
○谷亮子君 ありがとうございました。
 その取組というのは私も今回改めて知ることになったんですけれども、谷垣大臣が、今お話ございましたように、しっかりとそこでいろいろな現状等々をお話しになられまして、やはりそうした非常に強力な協力してくださる力というのも今後加わっていくということで、更に再犯防止への御理解がどんどん広がっていく、また今現在広がってきているということがまさに実感できていることであるというふうに思っておりますので、是非とも、こうした連携が更に再犯防止につながっていく、再犯防止をすることによって犯罪が減る、犯罪がなくなっていくということにつながりますので、またその取組にも期待を申し上げてまいりたいというふうに思っています。
 そこで、最後にお伺いさせていただきたいのですが、これは二〇一三年五月十日の日本経済新聞で出ておりましたけれども、保護観察少年を法務省が雇用をされたという記事でございまして、再犯防止への支援ということでその取組が紹介されておりました。
 そこで、自治体が保護観察少年を雇用する取組の現況と、法務省、また他省庁の実績と今後の方針はどのようなものなのかをまとめてお聞かせいただきたいと思います。
○政府参考人(齊藤雄彦君) お答え申し上げます。
 自治体における対象少年、保護観察少年の雇用は、二十二年八月に大阪府の吹田市が始められたのが最初でございます。このような制度を導入されますと雇用が進むという側面がありますし、さらに、その制度の導入によって国民の皆様に更生保護に対する御理解が進むという面がございまして、法務省としては是非ともこのような制度を全国に広めさせていただきたいというふうに思っております。全国の保護観察所長が保護司会長さんなどと一緒に自治体を回りましてお願いした結果、今年の四月現在で全国の十七の都府県それから市でこのような制度が導入されております。
 法務省におきましても昨年の五月にこの制度を導入しておりまして、さらに他省庁にも働きかけをしておりまして、今具体的に雇用を検討していただいている省もあるということでございます。
 今後も引き続きしっかりやってまいりたいと思っております。
○委員長(荒木清寛君) 谷さん、おまとめ願います。
○谷亮子君 はい。
 ありがとうございました。重要な取組ですので、よろしくお願いいたします。
 ありがとうございました。
○糸数慶子君 無所属の糸数慶子です。よろしくお願いいたします。
 質問に先立ちまして、本日は谷垣法務大臣を始めとして自民党の皆さんにも沖縄のかりゆしウエアを着用していただきまして大変うれしく思います。県民を代表してといいますか、県民の一人として感謝を申し上げて、質問に入りたいと思います。
 まず、少年矯正の基本的理念について質問いたします。
 今回の少年院法の抜本改正の契機となったのは、平成二十一年四月に発覚した広島少年院における不適正処遇の事案であります。今多くの委員の方が質問してくださいましたけれども、少年の健全育成を実現すべき少年院においてこのような事件が発生したことは社会に大変大きな衝撃を与え、少年矯正の在り方に対する抜本的な検討が求められるに至ったというところであります。そこで、少年矯正の今後進むべき方向を考えるに当たっては、その前提として少年矯正の理念について改めて確認をしておくことが重要であるというふうに思います。
 そこで、この少年矯正を考える有識者会議の提言におきまして、憲法十三条のすべて国民は個人として尊重されること、児童の権利条約第三条の児童の最善の利益の考慮、そして少年法一条の少年の健全な育成等を挙げ、少年矯正のよって立つその理念について、少年の最善の利益のために、個々の少年の人格の尊厳を尊重しつつ、再非行の防止を図るとともに、社会の健全な一員として円滑な社会生活を送ることができるよう成長発達を支援することであると言えようというふうにおっしゃっていらっしゃいます。
 そこで、まず、この少年矯正のよって立つ理念について、先ほどもございましたが、大臣はどのように考えておられますか。特に憲法そして児童の権利条約との関係は重要であるというふうに考えますが、谷垣大臣の認識についてお伺いします。また、少年矯正の基本的理念、今回の法改正においてどのように規定されているのか、改めて確認をいたします。お願いします。
○国務大臣(谷垣禎一君) 先ほど仁比委員も議論なさったところでございますが、糸数委員、今引かれましたように、少年矯正を考える有識者会議で提言をいただいて、その中で少年矯正の基本的理念として、日本国憲法第十三条の個人の尊重、それから児童の権利に関する条約第三条の児童の最善の利益等の趣旨を踏まえ、少年の人権を尊重し、少年にとって何を行うことが最も利益になるかを考慮しながら処遇を行う必要がある、こういう認識が示されまして、これは、少年院あるいは少年鑑別所で仕事を進めていく上に当たっては当然の基本的な認識だろうと私も思っております。
 それで、少年法が少年の健全な育成を期すことを目的としていることを踏まえまして、今度の少年院法案第一条はその目的として、健全な育成に資する処遇を行うと規定しております。それから、少年鑑別所法の第二十条は観護処遇の原則として、在所者の特性に応じた適切な働きかけを行うことによりその健全な育成に努めると、こういう規定になっております。したがって、少年院法案、少年鑑別所法案もそれぞれ少年法第一条の趣旨に沿ったものであるというふうに考えております。
 こういうふうに、少年院法案あるいは少年鑑別所法案は、あの提言にいただいた憲法、それから児童の権利条約、さらに少年法の趣旨が反映されているというふうに考えておりまして、今御審議をお願いしているこの両法案が成立しました場合には、この趣旨に沿った適切な運営をしていきたいと考えております。
○糸数慶子君 それでは、少年院法の十五条、処遇の原則の中にございますが、従来の少年院処遇規則においてですが、慈愛を旨としとの文言が二条にあります。パブリックコメントにかけられた少年院法改正要綱素案においても、慈愛の精神をもって在院者に接することが規定されていました。最終的に法案においてはその慈愛の文言は削られておりますが、その理由についてお伺いいたします。
○政府参考人(西田博君) お答えいたします。
 現行の少年院処遇規則第二条に、在院者の処遇に当たっては慈愛を旨とすると規定されておりまして、また平成二十三年十一月に公表しました少年院法改正要綱素案におきましては、在院者の処遇の原則として、毅然とした姿勢と慈愛の精神をもって在院者に接することを掲げておりました。
 少年院法案におきましては慈愛という用語は使用しておりませんけれども、その第一条の目的におきまして、在院者の人権を尊重しつつということ、それで、その特性に応じた適切な矯正教育その他在院者の健全な育成に資する処遇を行うことにより在院者の改善更生及び円滑な社会復帰を図ることを定め、第十五条の処遇の原則としても、在院者にはその自覚に訴えて改善更生の意欲を喚起するとともに、自主、自律及び協同の精神を養う旨定めているところでございます。
 今後とも、最も大事にされておる情操の保護ということについては配慮しながら、適切な処遇に努めてまいりたいというふうに考えております。
 以上でございます。
○糸数慶子君 ありがとうございました。
 毅然とした姿勢というのは次にお伺いしようと思いましたけれども、まとめてお答えいただきましたので、是非そのようにやっていただきたいというふうに思います。
 次に、今回の法案には、施設運営の透明性を確保するために第三者機関として少年院視察委員会及び少年鑑別所視察委員会を設置することとしております。刑事施設及び留置施設には、行刑運営の透明性の確保、施設運営の改善向上、施設と地域社会の連携を目的として、それぞれ刑事施設視察委員会及び留置施設視察委員会が置かれておりますが、今回の法案は少年院及び少年鑑別所についても同様の機関を設置しようとするものであります。
 そこで、お聞きいたしますが、この刑事施設視察委員会が刑事施設の長に提出した意見にはどのようなものがあるのでしょうか、またその意見に対して刑事施設の長はどのような措置を講じているのか、お伺いいたします。
○政府参考人(西田博君) お答えいたします。
 刑事施設視察委員会が刑事施設の長に対して述べた意見及びこれを受けて刑事施設の長が講じた措置の内容につきましては、毎年これを取りまとめてその概要を全件公表することとなっております。平成二十四年度は全刑事施設で五百五十三件の意見をいただいておりまして、そのうち三百五十七件、六四%に当たりますけれども、これについて刑事施設の長が必要な措置を講じ、又は講じる予定としておるところでございます。
 刑事施設視察委員会が意見を述べる事項につきましては刑事施設の運営全般にわたりますので、非常に意見及びそれに対する措置も内容も多岐にわたるところでございますが、ちょっと幾つか申し上げますと、例えば、職員に対する教育研修の充実の必要性について意見をいただき内容の充実や処遇の徹底を図ったもの、それから被収容者の居室に掲示されている地震発生時の心得の内容について意見をいただき内容を見直したもの、被収容者が購入する日用品、いわゆる文房具でございますけれども、この購入方法について意見をいただき改善を図ったものといった例がございます。
 今後も、どんな意見でありましてもこれを真摯に受け止めまして、施設運営になるだけ反映したいというふうに考えております。
 以上でございます。
○糸数慶子君 是非反映をさせていただきたいというふうに思います。
 次に、透明性の確保、それから施設運営の改善向上、施設と地域社会の連携という目的を実現するためには、先ほども出ておりましたが、しっかりした人選が行われるべきだというふうに思いますが、この視察委員に求められる適格性、人選方法の在り方について、運用としてどのようなものを考えているのか。特に、少年が収容される施設ということで刑事施設とは異なる適格性も求められると思いますが、改めて伺います。
○政府参考人(西田博君) お答えいたします。
 少年院など少年施設の視察委員会制度の趣旨は、委員おっしゃいましたとおり、広く施設外の方々の意見を聞いて、国民に開かれた透明性のある適正な施設運営を実現することでございます。少年施設におきましては、特に少年の健全育成に配慮した処遇を行うことが求められておりますので、その視察委員会の委員についても、人格が高潔であって、施設の運営改善向上に熱意を有する者に加え、少年の健全育成に関する識見を有する者ということを付けておりまして、こういった方々の中から法務大臣が任命するということにしております。
 他方、刑事施設視察委員会の委員につきましては、先ほど申しました少年の健全な育成に関する識見を有することというのは任命の要件とはされておりません。そういったところに少年院の視察委員という特徴と申しますか、そういった特色はあろうかと思います。
 この刑事施設視察委員会の委員につきましては、弁護士会、医師会等の関係団体に推薦を求めまして、弁護士、医師、地方公共団体の職員から任命しているところでありますけれども、少年施設の視察委員会ということでありまして、少年の健全な育成を図るという観点に照らして、教育関係者、心理専門職などからも委員を任命することを予定しておりますし、地域との共生ということもございますので地元の方にもなっていただくと、そういった人選をしたいと考えております。
○糸数慶子君 次に、保護者との連携、そして保護者に対する支援についてお伺いをしたいと思います。
 少年の改善更生を図る上で、やはり保護者の果たす役割は大変大きいと思います。少年院においては、従前から保護者に対し、在院者の非行に関わる問題等に適切に対処できるよう指導、助言を行うほか、矯正教育に関する情報の提供、あるいは保護者講習会を実施するなどというふうに実行していると聞いておりますが、少年矯正を考える有識者会議の提言においても保護者との連携強化が挙げられており、少年院法案においては、保護者に対する協力の求め等に関する規定、これ十七条、それから退院者、仮退院者の保護者からの相談に関する規定、百四十六条ですが、それも置かれ、保護者に対する規定の整備が行われております。
 そこで、この在院者の保護者についてでありますが、保護者自身が貧困、DV、児童虐待などのそういう問題を抱えている場合も考えられ、このような場合にはこの保護者自身を支えることも不可欠であるというふうに思われますが、現在どのような対応をしているのか、お伺いしたいと思います。
○政府参考人(西田博君) お答えいたします。
 少年の改善更生、円滑な社会復帰を実現するには、委員御指摘のとおり、保護者の関わる問題についても配意しながら、少年との関係改善を働きかけることが重要であるというふうに思っております。保護者が貧困、DV、児童虐待等の問題を抱えているために監護に関する責任について自覚が乏しいといった事情がある場合には、少年院の長におきまして、その事情をできる限り把握した上で指導、助言等の措置を実施しているというところでございます。
 また、貧困、DV、児童虐待等の問題を抱える保護者につきましては、在院者の改善更生及び円滑な社会復帰を図る上でどのように支えていくかといったことも非常に重要でありますけれども、やはり少年側から見ると非常に難しい問題を多く抱えているんだろうと思います。矯正のみによる対応には限界もございますので、その個々の事情に応じまして、保護観察所、児童相談所、都道府県等の関係機関と連携して協力しながら対応していくことになろうかと思われます。
 以上でございます。
○糸数慶子君 今の御答弁いただいて大臣に御質問したいと思いますが、このような矯正教育の場面、少年に対して、あるいは社会復帰の場面等において保護者の果たす役割、大変重要でございます。先ほどもいろんな質問もございましたけれども、改めて大臣の御見解をお伺いいたします。
○国務大臣(谷垣禎一君) 保護者の役割が極めて大事だというのは、もうこれは否定することができませんね。
 多くの場合、保護者は、少年院にいる子供たちの引受人でもありますし、健全な社会復帰と申しますか、立ち直りを大きく支えていただかなきゃならない方々ですね。ただ、実際、少年院にいる子供たちは、そういう保護者との関係でいろいろ問題を抱えている子が多い。それから、今委員が指摘されたような貧困とかDVとかそういう問題を抱えておられる保護者もおられるわけですね。さらに、保護者の中には、なかなか、子供たちを指導、監督していくといっても、余り意欲のない方や、あるいは、どうしていいのか分からない、能力もないという方もしばしばいらっしゃるわけであります。
 そこで、少年院としても、職員がこういう保護者の相談に応じたり、あるいは指導、助言を行う、あるいは保護者会とか親子の関わり方をテーマとした講習会等々に参加を促す、こういうことをして積極的に働きかけをしていくということが大事ですし、それから、面会等々を通じて子供と保護者の関係を改善していく努力というのも、少年院としては努めなければならないのは当然のことだろうと思います。これは今後とも、前からそうでございますが、今後とも力を入れていかなきゃならない。
 今度の改正法案では、御審議いただいている少年院法案では、出所した後の、退院した者あるいは保護者等からまたいろいろ御相談が来ることがあると。今まではこれは付随的な業務としておりましたけれども、今回これを少年院の本来業務の一つとして、少年院にいる間だけではなくて、出てからの社会復帰や何か等にも相談に乗って、保護者との関係等もきちっとしながら、再犯防止、少年の社会復帰に努めていく、こういう体制をこの法案でつくっていただくことができるのではないかと、こう思っております。
○糸数慶子君 ありがとうございました。
 次に、面会についてお伺いをしたいと思います。
 これ、現行法には規定がなく、規則や各施設の運用に委ねられていましたが、今回の法案において面会について明文の規定が置かれております。法案によりますと、少年院の長又は少年鑑別所の長は、面会に関し、法務省令で定めるところにより、人数、場所、時間、回数等について、規律及び秩序の維持その他管理運営上必要な制限をすることができるとされております。
 そこで、各施設における面会の対応に関する運用はこれまでと異なってくるのでしょうか、少年の保護者等が以前より面会しにくくなるということはないでしょうか、お伺いしたいと思います。
○政府参考人(西田博君) お答えいたします。
 先ほど御指摘がございました、各施設の長が施設の規律及び秩序の維持その他管理運営上必要な制限をすることができるとされているところでございますけれども、こういった管理運営上の制限は、人的、物的な体制に限りがある施設におきましては現に必要な限度で行われているところでございまして、この制限が過度に拡大されるということではございません。
 面会は、少年にとって権利として性質を有するもののほか、何よりも少年院在院者の改善更生とか円滑な社会復帰を図る上で非常に重要なものでございますので、法案の成立、施行後、もし施行できるようになりましたらば、その制限は過度なものとならないように必要な範囲にとどめるものとして、引き続きその適切な実施に努めてまいりたいというふうに考えております。
 以上でございます。
○糸数慶子君 法案によりますと、付添人あるいはその付添人になろうとする者は、この面会の制限の対象から省かれております。しかし、少年鑑別所によっては、この面会の待ち時間が長い上、面会時間が原則として平日の日中に限られているところもあるというふうに聞いておりまして、これでは付添人活動に支障を生じるおそれがあるというふうに思われます。
 十分な付添人活動を行うためには面会時間の確保は大変重要であり、施設側は、その付添人とそれから面会時間の確保を損なうことのないよう十分配慮すべきというふうに考えます。さらに、この面会時間の確保と同時に面会室の十分な確保も必要であるというふうに思いますが、各施設における面会のその整備状況も併せてお伺いいたします。
○政府参考人(西田博君) お答えいたします。
 それでは、まず、付添人の面会のことについて御説明いたします。
 付添人は、在所者の権利を擁護してその代弁者としての役割を有しているほか、家庭裁判所に協力をしまして援助する役割も有しているものと承知しております。
 少年鑑別所におきましては、在所者と付添人及び付添人になろうとする弁護士との間の面会につきましては、平日の執務時間帯は面会時間についての制限をしておりません。それからまた、執務時間外の平日の夜間及び休日につきましても、日本弁護士連合会との申合せに基づきまして面会を実施しております。その場合には、来庁した付添人の対応とか面会者の面会室までの連行のために職員を登庁させるなど、そういったことで対応しております。
 少年鑑別所法案の成立、施行後におきましても、付添人等との面会時間の確保については、引き続き適切に対応してまいりたいと思っております。
 それから、面会室の設備でございますけれども、全ての少年鑑別所には面会室を整備しておりまして、保護者への面会ほか付添人の面会にも十分対応できる体制が取られているものと承知しております。
 以上でございます。
○糸数慶子君 ありがとうございます。
 次に、精神疾患を抱える少年の処遇についてお伺いいたします。
 少年矯正を考える有識者会議におきまして、出席した現場職員から、これは女子少年院の例でありますが、薬物依存症で精神科の薬を大量に服用しながら何とか処遇している少年、対人恐怖、それからPTSD、引きこもり、さらに摂食障害など、本来であれば精神科の病院に入院するような重篤な少年や、医療少年院で処遇して医療措置が終了してから一般少年院でという処遇が相当な少年もかなり抱えている。あるいは、そのような少年は暴れ回ったり自分自身を傷つけたりする者も多く、何人もの職員の手が必要で、ほかの少年への処遇が行き届かないということになるという指摘もありました。
 そこで、精神疾患のある少年が医療少年院に収容されず一般の少年院に収容されているのはなぜでしょうか。医療少年院の定員が少ないのか。あわせて、医療少年院の設置状況、収容人員、精神障害を持つ少年の収容定員はどのようになっているのか、お伺いいたします。
○政府参考人(西田博君) お答えいたします。
 医療少年院送致の判定は、心身に著しい故障があって、主として専門的な医療措置を必要とする者を対象としておりまして、仮に精神疾患を有しておりましても、その程度が著しいとまでは認められず、医療措置を主とした処遇を実施する必要がないと言われる者につきましては、そういった少年につきましては、今御指摘がありましたような医療少年院以外の少年院で収容して処遇するということがございます。
 ただ、これは、先ほど申しましたように、医療少年院送致の判定に至らなかった者がそういうことになっているところでございまして、医療少年院が例えば満員で収容できないとか、そういったことではございません。
 ちなみに、専門的な医療措置を行う医療少年院は、現在、関東医療少年院と京都医療少年院の二庁ございますけれども、これの平成二十五年十二月末日の収容人員は、関東医療少年院が三十二名、京都医療少年院が三十六名でございまして、それぞれ収容定員は百名を超える収容定員ございますので、もし治療的処遇が必要であれば、医療的措置が必要であれば、ここで収容できるというふうに思います。
 それから、あと、精神障害を持つ少年の収容定員というお話がございましたけれども、医療少年院は、身体疾患、精神疾患両方を収容しておりますので、精神障害を持つ少年の定員というような管理をしておりませんので、特に定員ということはございません。
 以上でございます。
○糸数慶子君 ありがとうございました。
 じゃ、最後に、女子入院者についてお伺いをしたいと思います。
 平成二十五年版犯罪白書によりますと、平成二十四年における非行名別構成比において、女子は男子に比べ、覚せい剤取締法違反、それから虞犯、覚せい剤が一八・五%、それから虞犯が一三%のその構成比が高く、年齢層が上がるにつれて傷害、暴行や虞犯の構成比が低くなり、覚せい剤取締法違反の構成比が顕著に高くなっております。
 そこで、このような女子の少年院入院者の特徴を踏まえた処遇プログラムの取組があれば御説明をいただきたいと思います。
○委員長(荒木清寛君) 西田矯正局長、簡潔に、手短にお願いします。
○政府参考人(西田博君) はい。
 先ほど御指摘ございましたように、女子の収容少年というのは覚せい剤取締法違反の者が多いという特徴がございます。男子と比べまして多い特徴がございますので、この薬物依存にある在院者に対して、特に平成二十四年からは少年院二庁を重点指導施設としまして薬物依存の処遇プログラムを実施しているところでございます。
 また、二十六年度からは、新たに少年院、女子少年院四庁を重点施設として指定して、民間の自助団体であるダルクなどの連携もいただきながらやっております。これも、薬物事犯につきまして、今後とも強力に充実させていきたいというふうに考えております。
 以上でございます。
○糸数慶子君 通告した質問、まだありましたけれども、時間でありますので終わりますが、今回の法改正におきまして、やはり何といっても少年の権利が保障され、さらに運用によって少年院の矯正教育が良くなっていく、そのことを期待を申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。
 ありがとうございました。
○委員長(荒木清寛君) 他に御発言もないようですから、三案に対する質疑は終局したものと認めます。
 これより三案について討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 まず、少年院法案の採決を行います。
 本案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
○委員長(荒木清寛君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 次に、少年鑑別所法案の採決を行います。
 本案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
○委員長(荒木清寛君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 次に、少年院法及び少年鑑別所法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の採決を行います。
 本案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
○委員長(荒木清寛君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、三案の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(荒木清寛君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後二時四十六分散会