第189回国会 本会議 第6号
平成二十七年二月十七日(火曜日)
   午前十時一分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
○議事日程 第六号
  平成二十七年二月十七日
   午前十時開議
 第一 国務大臣の演説に関する件(第二日)
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 議事日程のとおり
     ─────・─────
○議長(山崎正昭君) これより会議を開きます。
 日程第一 国務大臣の演説に関する件(第二日)
 去る十二日の国務大臣の演説に対し、これより順次質疑を許します。郡司彰君。
   〔郡司彰君登壇、拍手〕
○郡司彰君 民主党・新緑風会の郡司彰です。
 私は、会派を代表して、安倍総理の施政方針演説に対して質問いたします。
 質問に先立ち、イスラム過激派組織により殺害されたお二人の邦人に対し哀悼の意を表します。また、御家族の方々にお悔やみを申し上げます。
 昨日、衆院での代表質問で、我が党の岡田代表が冒頭に述べたとおり、民主党は、再び国民の信頼を取り戻すために、生活者、納税者、消費者、働く者の立場に立ち、多様な価値観や生き方をお互いに尊重する社会、自らの幸せを追求しながら、同時にお互いに支え合う共生社会を目指します。そのために、未来志向の改革政党でなければならないと考えています。
 さて、本年は戦後七十年の節目であることを踏まえ、施政方針で述べられた戦後以来の大改革と今日の諸課題について質問します。
 私は、いわゆる団塊の世代に属します。言い換えれば、戦後の連合国占領時代にこの国で生まれた世代です。
 私たちの先輩、そして後輩の皆さんと話をする中で、日本が主権を回復をした年月はいつなのか、ほとんどの方は、そう言われるとよく分からないと答えるのです。
 歴代の政府は、昭和三十八年以降、八月十五日に全国戦没者追悼式を実施しています。そのことは、戦没者を追悼し平和を祈念する日として今後も続けてほしいと願っています。
 他方、憲法施行記念日は、施行された昭和二十二年及び五周年までの間、その後は、平成九年の五十周年、平成十九年の六十周年に両院と政府共催の式典が行われました。平和条約発効による主権回復は、憲法施行五周年の昭和二十七年が二つの趣旨で開催、その後は、平成二十五年四月二十八日に、第二次安倍内閣の下で、主権回復・国際社会復帰を記念する式典として六十年の節目に挙行されました。つまり、戦後の占領が解けたのは昭和二十七年四月二十八日と理解できますが、なぜこの独立した日はこれまで余り我が国では一般的に認知されなかったのでしょうか。
 今後の主権回復、独立を記念をする式典の在り方についての考えと、なぜ憲法施行記念式典は行われなくなったのか、いきさつを含め、お答え願います。
 また、独立とは、領土とそこに住む国民がおり、そして国民が認める統治機構が機能することとすれば、昭和二十七年四月二十八日までにどのような主権の実態が回復をされたのか。総理は、七年間の占領時代がそのままその後の戦後になったのではという問題意識をお持ちのようですが、お答えください。
 また、講和条約については、領土、安全保障など、その時点で残された課題があり、いまだにその渦中と言えます。さらに、五五年体制と呼ばれた一つの極である自民党の結成は三年後のことですが、その自民党は、党の使命、党の政綱の中で占領政策の過誤を指摘し、自主憲法制定をうたっています。
 つまり、総理は、戦後レジームからの脱却、すなわち、教育再生や安全保障体制の再構築を含め、戦後長きにわたり続いてきた諸制度を原点に遡って大胆に見直すことの必要性を訴え、現在もその旗を下ろしていないと発言しています。脱却すべき原点は不十分な形で独立をせざるを得なかった戦後処理にあると考えるのか、真情を伺います。
 戦後の平和国家の確立と持続に極めて大きな役割を果たすとともに、人権意識や民主主義をこの国に深く根付かせる土台となってきたのは日本国憲法であるということは、多くの国民の認識するところであると考えます。総理は、現在の日本を形作る基本的な原則あるいは枠組みは何であると考えているのか、また、それがいつ誰によって形成されたと考えているのか、お伺いいたします。
 さらに、総理は、戦後七十年に当たり、その来し方を振り返りながら、次なる八十年、九十年、さらには百年に向けて、日本が目指す国の姿を世界に向けて発信するとしています。日本が目指す国の姿とはどのようなものか、国を形作るものと主体は何かという点についての総理の見解をお伺いします。
 戦後七十年の談話について、総理は、これまで、歴代内閣が踏襲してきた村山談話にある植民地支配と侵略、多大な損害と苦痛、さらに、痛切な反省と心からのおわびなどの重要な意味ある文言を使うかどうかに関し、細々した議論にならないように新たに出したいと発言しています。新しい談話を出す際は、国民の多数が受け入れられる内容となるよう、内閣のみ、与党のみではなく作成すべきと思いますが、お答えください。
 次に、TPP交渉について伺います。
 昨秋までの日米間協議において隔たりのあった分野について、昨年末から交渉が加速化していると報じられています。言うまでもなく、世界の貿易ルールは、ガット時代の物品に加え、金融、サービスを含んだWTOへと移行し、さらに、現在はまとまる範囲の地域間のFTA、EPAが主流となっています。
 そうした中でも、これまでは、自由貿易の拡大は、各国の歴史、文化に根差すセンシティブな分野に一定の配慮がありました。例えば、TPPでも、米国は譲らない物品を抱え、譲歩をしていません。しかし、今後ともその状況が続かないことは一月に発効した日豪EPAを見ても明らかで、これまでは日豪がレッドラインだったはずが、今回の報道内容はそれを著しく上回っています。
 国会決議について、最近では、判断は国会自身でと変わってきています。まず、総理は交渉に当たって国会決議に沿った交渉を指示していたのかを伺います。
 次に、これまでの交渉で決まった内容の影響評価がいろいろと口実を設けてなされていません。既に、将来を憂い、離農の動きさえ出ています。早急に影響評価の基準やルールを検討し、速やかに公表していただきたい。お答えください。
 また、私は十数年前から提起をしてまいりましたが、米国には、一九九三年、NAFTAの発効に備え制度化されている貿易調整支援プログラムがあります。具体的には、労働者に対する支援措置、現金支給や職業訓練など、企業には生産管理、品質保証、マネジメントなど、農家には輸入の増加により価格が一定程度下がった場合の代替作物の栽培に関する技術支援、現金給付など包括的な貿易支援措置ですが、我が国としても法制化すべきと思いますが、お答え願います。
 国益に対して損益を被るような産業、地域が出てくることを冷厳に見据えていただきたいと思います。命の産業であり、安全保障に欠くことのできない食料生産をおろそかにする国に明るい未来があるとは思えません。
 次に、岩盤規制にドリルで穴を空ける改革についてお伺いします。
 総理は、農業、労働などのいわゆる岩盤規制を撤廃することが成長につながるとして、具体的な法案の提出を検討しているとされています。
 まず、労働の分野ですが、日本再興戦略で提起された、時間でなく成果で評価される制度への改革を踏まえた労基法等改正案、さらに、昨年の常会、臨時国会と二度にわたり廃案となった、派遣期間の実質的な撤廃を行おうとする労働者派遣法改正案などであります。
 この改正で生産性が向上するのでしょうか。私は、労働生産性とは、自覚を持ち、働きがいのある職場で向上すると思っています。この改正で少子時代に変化は生ずるのでしょうか。正規と非正規での既婚率、同じく出生率は、共に非正規が約半分という数字が知られています。
 朝はサプリメント機能食品と免疫力を付けるドリンク剤を飲み、通勤電車に時間を割き、夜は遅くまで職場で仕事、退社後の付き合いは程々にして、土日、休日はひたすら眠る。家庭は持てない、要らない。携帯があれば。だって、私の子供が大きくなるときはもっと生きづらい社会になっているはずとの声が聞こえてきます。
 総理は御存じでしょうか。総務省の調査によると、学校卒業後に初めて就いた仕事が非正規である者の割合は、二十年前一三・四%であったものが、現在は三九・八%になっていることを。三年前のサラリーマン川柳第八位に、「何になる?子供の答えは正社員」とあり、笑えませんでした。
 非正規から正規雇用への応援をうたうより、今やるべきは、学校卒業後の初仕事は正規社員から始まる社会システムこそ必要ではないのですか、伺います。
 私の地元にある製鉄所は、造船不況が続く中でも人員削減を抑え、再び需要が伸びた際は他社に先駆けて増産に応えられました。職業人として、社会人として人材を育てる日本型の労働慣行には再評価すべき点も多いと考えています。年功や終身雇用は、企業の一体感だけではなく、結果として税の福祉予算の縮減にも寄与しているのです。従来の日本型雇用形態について、改めて見直す点はないと考えますか、総理の考えをお聞かせください。
 ホワイトカラーエグゼンプション、いわゆる残業代ゼロ法案の導入を含む労基法改正案、そして一生派遣を生み出す労働者派遣法改正案の提出は、過労死を招き、格差を固定化するもので、見送るべきが妥当と考えますが、総理のお考えをお尋ねします。
 農業分野では、農協改革について与党内の調整が終わったと大々的に報じられました。
 農協とは農業協同組合の略称です。その源流は十九世紀に遡ります。産業革命後の資本主義経済の発展は、農村、農民の疲弊を生みました。こうした中、キリスト教区を単位に、日本では集落単位に、農産物が買いたたかれないよう共同集荷を行う、その前段の資金確保のために無限連帯責任での農村信用組合が生まれ、経済事業も兼営する形が一般化し、総合農協へと発展し、現在では地域の協同組合として世界中で取り組まれています。
 今回の議論の中でも、農協は経済事業だけしろ、准組合員の利用を制限しろとの声も聞かれましたが、それは歴史を知らない証左です。
 現に欧州では、二〇〇八年のリーマン・ショックの教訓として、協同組合の預金は投資を収益源とする投資銀行の経営とは違うとの認識が広がり、ドイツでは、一〇年以降は医療や福祉分野などで千を超える協同組合が設立をされています。
 総理は、公的セクター、営利企業セクターとは別な非営利公益セクターが、地域でのインフラ機能を持ち、新たな事業を生み出し、雇用を創出する可能性についてどう考えているのか、質問します。
 農協法は昭和二十二年に制定されました。GHQの農政改革と農村の民主化政策の下でした。戦後の外貨はなく食料難の時代から、食糧管理法の下で農協は行政の末端機構の役割を担ってきました。戦前戦後の時代背景があったとはいえ、本来は行政と一線を画す世界の協同組合の潮流とは異なる歩みでした。
 総理は、現場よりも規制改革会議の意見を取り入れることが大事と捉えているようですが、その改革案を提示する前に、これまでの行政との関係を改めること、つまり、農協に対し、農政に御協力いただいたことに謝意を表すことから始めるべきではなかったのですか、お答えください。
 自ら変われない組織は淘汰されます。しかし、今回の改革なるものが、農業の成長戦略、つまり農業者の所得増と直ちに結び付くとは到底思えません。それよりも、今日の農業、農村のありようが改革されずにきているとお考えなら、それこそ、例えば米の保管料で経営をしてきた農協の体質、農産物の海外への販路開拓を夢想もしなかったことなど、長年の自民党農政が失敗だったことを認めるべきです。認めますか、総理、お答えください。
 総理の施政方針演説が報じられた同じ紙面に、西川農林水産大臣が補助金交付企業から政治資金規正法違反の疑いがある献金を受けていたことが掲載されました。また、本日の紙面にも新たな献金も報道されています。農政改革の指揮を執る大臣として、六十年に一度の農協法改正を所管する大臣として、看過することはできません。以前から度々問題を指摘されている大臣を任命した責任についてどう考えているのか、伺います。
 選挙年齢の引下げについて質問します。
 今国会で選挙権を持つ年齢を十八歳以上にする公職選挙法の改正が確実な流れになっています。来年の春に突然の解散がなかりせば、次回の参議院選からの適用が行われることになります。
 我が国の選挙権は、大正十四年の男子普通選挙法成立から二十年後の昭和二十年十二月十七日、GHQが五大改革の筆頭に掲げていた女性の政治参加を実現するものとして、選挙権を二十歳以上、被選挙権を二十五歳以上の男女に定め、成立しました。七十年前のこととなります。戦後初の総選挙は翌年四月に実施をされ、三十九人の女性議員が誕生したことは有名です。
 今回の改正により新たに有権者となる十八歳、十九歳の人口は約二百四十万人となっています。昨年末の総選挙の投票率は全国平均で五二・六%と戦後最低を記録しました。今回の集計がまだのため、前回二十四年の総選挙投票率を年代別に見ると、二十歳から二十四歳が三五・三〇%と最低であるのに対し、六十五歳から六十九歳が最高で七七・一五%と、倍以上になっております。これは単純に、若年者が熟年に達すれば投票に行くことには結び付かない課題を抱えているのではないでしょうか。強い危惧を覚えています。この原因についての分析があればお答えください。
 また、投票率の低下について、巷間流布されている説には、投票率が低いほど組織政党には有利、寝た子を起こすななど、あたかも低投票率を歓迎するかのごときものもあります。民主主義の根底を揺るがすもので見過ごすべきではないと思います。
 そこで、総理にお尋ねします。選挙権年齢が下がることに対して、政府として、対象となるこれからの十八歳、十九歳、あるいは更に若い年代にどのような啓発をしていくか、お考えを伺います。
 さらに、各国には、投票を促す施策や罰則を設ける等のあめとむちだけではなく、投票時に地域の公共事業の優先順位付け投票を行うなどの工夫を凝らしている例もあります。例えば、学生にはボランティア評価などと同様に、投票評価を導入して公民意識を涵養するなど、新たな仕組みを検討する考えはあるのか、伺います。
 次に、財政再建について質問します。
 我が国の財政は極めて深刻な状況に置かれております。一般会計では、毎年度、歳入と歳出の赤字差の四十兆円程度は国債の発行、つまり借金で賄ってきたのであります。国と地方を合わせた長期債務残高は、平成二十七年度末で一千三十五兆円、GDPの二倍を超える規模です。他の主要先進国がそれぞれの国のGDPと同程度の債務しか抱えていない中にあって、我が国の財政の悪化は目を覆うばかりです。いつ財政破綻に直面してもおかしくない危機的とも言える状況です。
 政府は、二〇一五年度の国と地方の基礎的財政収支、プライマリーバランスの赤字を対GDP比で二〇一〇年度の水準から半減することを閣議決定しております。平成二十七年度予算において、この目標は年度末の補正を含めてもなお達成せられると考えるのでしょうか、まずお聞きをします。
 さらに、二〇二〇年度には基礎的財政収支を黒字化することも閣議決定いたしました。内閣府が十二日にまとめた中長期の試算では、経済成長率が二%以上でも二〇年度の基礎的財政収支赤字は九・四兆円とされています。
 基礎的財政収支の黒字化を達成するためには、抜本的な歳出の見直しが不可欠です。平成二十七年度予算では抜本的な歳出見直しに取り組まれたのですか。総理は、具体的に平成二十七年度予算のどのようなところが二〇二〇年度の基礎的財政収支黒字化に先鞭を着けたとお考えですか、答弁を求めます。
 二〇二二年からは団塊の世代が後期高齢者に移行し始め、二〇二五年には全員が後期高齢者に達し、医療や介護などの社会保障関係費が急速に増加することが見込まれます。それまでに我が国の財政を健全化する道筋を付けなければ、財政の再建は一層難しくなるのではありませんか。安倍総理からはそうした危機感は感じられません。平成二十七年度予算で、構造的な社会保障関係費の増大に対して抜本的な見直しに取り組まれているのですか、お伺いします。
 また、安倍総理は、最近の為替の動向が財政再建の取組に対してどのように作用しているとお考えですか、お答えください。
 次に、地方創生について質問します。
 総理は、地方創生を内閣の最重要課題に掲げて、地方重視を懸命にアピールしています。
 しかし、これまでふるさと創生事業、地域振興券、第一次安倍内閣の頑張る地方応援プログラムなど数々の対策を講じてきたにもかかわらず、全く成果を上げられなかったことへの反省はあるのでしょうか。
 総理は、従来とは異次元の大胆な政策をまとめると宣言しましたが、出てきたのは異次元とは程遠い各省庁の施策の寄せ集めです。これでは、地方創生はアベノミクスの成果が上がっていないことを取り繕うための突貫工事だと言われても仕方がありません。四月の統一地方選挙対策との声も聞こえてきます。従来の政策と比べて、どこがどう異次元で大胆なのでしょうか、総理の見解を伺います。
 異次元で大胆な政策が出せないのは、過去の政策の徹底した検証が欠けているからです。
 その最たる例である平成の合併は、行財政基盤の強化等の名目の下、財政上の特例措置と地方交付税の削減というあめとむちにより強力に推進されました。しかし、今日の合併の先に待っていたのは、バラ色の世界ではなく、身近にあった役場がなくなり、周辺地域が衰退するという現実です。この合併により消滅の危機にあるのは、消滅させてはならないと総理が言った中山間地や離島なのです。これに対して、総理がよく引き合いに出す島根県海士町などの元気な町や村は合併を選択をしていません。
 今こそ平成の合併の徹底的な検証が必要だと思いますが、総理の見解を伺います。
 消滅の危機にあると言われている地域は、国土保全機能や水源涵養機能など合理性だけでは測れない機能を有しています。地方の創意工夫を支援することが地方創生であれば、霞が関の押し付けの長期ビジョンや総合戦略でそれが実現するでしょうか。同じようなコンサルタント会社が一部だけ変えた金太郎あめの企画書をまた作るのですか。総理がどのような地域社会をつくろうとしているのか、全く見えてきません。
 総理は、やる気のある自治体を支援すると言っていますが、競争重視のアベノミクス流の地方創生では、勝ち組と負け組の格差が拡大し、負け組が切り捨てられていくだけです。総理が描く地域社会のグランドデザインはどのようなものなのか、明確に示すべきではないでしょうか、見解を伺います。
 次に、人質事件について質問します。
 政府は、十日、イスラム過激派組織による人質事件に関し、一連の政府対応を検証する初会合を開いたと報じられました。四月を目途に報告書をまとめるとのことです。
 今回は、特定秘密保護法が施行されたことに伴い、これまでの検証とどこが異なるのか、報告書の公開はなされるのですか。さらに、それは読む側の疑問に応える内容となり得る根拠は何なのか、官房長官、お答えください。
 また、これまでの同様事件の検証により指摘されていた事項は、NSCにより戦略的に検証され、今回の事案に有効活用されたのか、官房長官、お答え願います。
 今にして思うと、政府が人質の情報に接し、対策本部を立ち上げた後に総理は解散・総選挙を決断し、実施をしました。その判断と解散後から新内閣発足までの間の対応はどうだったのか、総理にお伺いします。
 総理は、決める政治を標榜され、施政方針の中でも、全ては私たちの意思と行動に懸かっていますと力説されました。一方で、総理は、これまでの二年間、大事な判断や閣議決定を会期中以外で行い、国会は事後に追認すればよしとすることを続けています。加えて、法案策定前の与党協議で事足りるとする姿勢を強め、演説でも、批判だけを繰り返していても何も生まれませんと述べられました。
 私たちは、これまでも必要な対案を提出をしてまいりました。更に言えば、国会は野党の健全な政権批判があってこそ審議に堪えた合意形成となり、国民に理解をいただける法案となることを信じています。
 総理、この道しかないから始まり、これまでのように最後は数を頼りに強行採決を繰り返す、これでは民主主義とは言えません。国会の今後の論戦に真摯に向き合うことを求め、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 郡司彰議員にお答えをいたします。
 主権回復を記念する式典と憲法施行記念式典についてお尋ねがありました。
 政府としては、平成二十五年四月二十八日に主権回復・国際社会復帰を記念する式典を挙行しました。これは、日本国との平和条約の発効による我が国の完全な主権回復及び国際社会復帰六十年の節目を記念し、我が国による国際社会の平和と繁栄への責任ある貢献の意義を確認するとともに、これまでの経験と教訓を生かし、我が国の未来を切り開いていく決意を確固としたものにするという趣旨で行ったものであります。このような未来を切り開いていく決意は、節目ごとに、諸情勢を踏まえつつ確認していくものであると考えています。
 憲法施行記念式典につきましては、平成十九年に衆参両院主催で憲法施行六十周年記念式典が開催されたところであります。憲法記念日が国民の祝日として国民に十分に定着していることに鑑み、記念式典を執り行うことについては、時の節目において考慮されるに至っているものと理解しております。
 主権の回復及び戦後レジームからの脱却についてお尋ねがありました。
 一般に、国際法上、主権とは、国家が自国の領域において有する他の権力に従属することのない最高の統治権のことをいい、国家の基本的地位を表す権利を意味すると承知しています。
 我が国は、昭和二十七年四月二十八日のサンフランシスコ平和条約の発効により、主権を回復しました。七年間の占領時代につくられた我が国の基本的な大きな仕組みについては、変えられないと諦めるのではなく、二十一世紀となった今、時代の変化に伴い、そぐわなくなった部分については、自分たちの力で二十一世紀の現在にふさわしい新たな仕組みに変えていくべきと考えております。
 現在の日本を形作る基本的原則についてお尋ねがありました。
 日本は、戦後七十年間、ひたすらに自由で民主的な国をつくり、法の支配を重んじ、平和国家としての道を歩んでまいりました。そして、そうした土台の上に、世界第三位の経済大国として繁栄を享受し、世界から信頼される国を築き上げてまいりました。このような戦後日本をつくり上げたのは、私たち日本人のたゆまぬ努力の結果であります。
 さきの大戦では、祖国の行く末を案じ、家族の幸せを願いながらたくさんの方がお亡くなりになりました。その尊い犠牲の上に現在の平和があります。さらに、戦後の焼け野原の中から再び立ち上がり、日本を復興へと導いた先人たちがいました。誰もが頑張れば報われる、そうした真っ当な社会が高度経済成長の原動力となりました。
 今を生きる私たちには、先人から受け継いだ世界に誇るべき国、日本を次世代へと引き渡していく大きな責任があります。その責任を果たすため、時代の変化や国際情勢の変化から目を背けることなく、将来を見据えながら改革を進めていく。私は、いかなる困難な改革にも果敢に挑戦していく決意であります。
 日本が目指す国の姿と戦後七十年の談話についてお尋ねがありました。
 一般に、国とは、一定の領土とその住民を治める排他的な統治機構を持つ政治社会と理解されています。我が国は、戦後、自由と民主主義を守り、人権を尊重し、法を尊ぶ国をつくり、アジアと世界の発展に大きく貢献してまいりました。これからもこの平和国家としての歩みは決して変わることはありません。
 安倍政権としては、戦後五十年の村山談話、戦後六十年の小泉談話を始め、歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでおり、今後も引き継いでいく考えであります。戦後七十年の談話は、それを前提として作成するものであります。
 談話の内容については、さきの大戦への反省、戦後の平和国家としての歩み、今後、日本としてアジア太平洋地域や世界のために更にどのような貢献を果たしていくのか、次の八十年、九十年、百年に向けて日本はどのような国になっていくのかについて、世界に発信できるようなものを英知を結集して考え、新たな談話に書き込んでいく考えであります。
 まずは、有識者会議を早期に立ち上げ、二十一世紀の世界の在り方、その中で日本が果たすべき役割等について大いに議論していただき、政府として検討していきたいと考えております。
 TPP交渉における国会決議、影響評価及び支援プログラムについてのお尋ねがありました。
 TPP交渉については、衆参の農林水産委員会の決議をしっかりと受け止め、いずれ国会で御承認をいただけるような内容の協定を早期に妥結できるよう交渉に当たっております。
 また、交渉内容の影響評価や支援プログラムについては、現在、交渉に全力を挙げている中で、交渉の結果を予断するようなことを申し上げるのは適切ではありません。
 TPP交渉は最終局面を迎えております。いずれにせよ、守るべきものは守り、攻めるべきものは攻めることにより、国益にかなう最善の道を追求してまいります。
 雇用制度改革についてお尋ねがありました。
 政府が検討を進めている労働時間制度の見直しは、ワーク・ライフ・バランスの観点から、働き過ぎを是正するとともに、生産性の向上を図るものであります。提出を予定している労働者派遣法改正案も、派遣労働者のキャリアアップなどを通じ、生産性の向上に資するものと考えています。
 新規学卒者を取り巻く雇用環境については、新規高卒者の内定率がバブル景気時並みの高水準、また、新規大卒者での非正規雇用の割合が減少し、改善してきています。こうした動きを加速し、未来を担う若者が安心して働ける環境づくりを進めるため、若者雇用対策に係る法案の検討を進めてまいります。
 安倍内閣としては、これらの雇用制度改革を通じ、働きたいと希望するあらゆる人が、ワーク・ライフ・バランスを確保しながら、安心して働き、家庭を持つことのできる社会を目指してまいります。
 日本型雇用などについてお尋ねがありました。
 我が国の人事雇用管理には人を大切にするという優れた点があり、そうした点を失うことなく、企業の収益を伸ばし、働く方々にその成果が還元されるようにすることが重要であると認識しています。
 このため、検討を進めている労働時間制度の見直しでは、ワーク・ライフ・バランスの観点から、働き過ぎを是正するとともに、多様で柔軟な働き方を進め、労働生産性の向上を図るため、新たな制度を導入することなどを検討しています。
 また、提出を予定している労働者派遣法改正案においては、正社員を希望する派遣労働者について正社員の道が開けるようにするとともに、自らの働き方として派遣を積極的に選択している方については待遇の改善を図ることとしております。
 安倍内閣としては、働く方の個々の状況に応じ、あらゆる人が生きがいを持って創造性を発揮できる環境をつくってまいります。
 協同組合の役割についてお尋ねがありました。
 我が国には、自助自立を基本としながら、不幸にして誰かが困っていればみんなでこれを助けるという共助の精神が生きています。我が国の協同組合は、こうした助け合いの理念の下で、消費者や中小企業などを対象に様々なタイプのものが設立されています。
 農協は、農業者の協同組合であり、農業者が農産物の販売や生産資材の購入などを共同で行うことで農業者がメリットを受けるのがその中心的な役割であります。一方で、地域のインフラとしての側面を持っているのも事実であります。
 今般の農協改革においては、地域農協が地元の企業と連携した加工品の開発など自由な経済活動を行うことにより、農業の成長産業化、農村地域の活性化に更に重要な役割を果たすことを期待しています。
 行政と農協との関係についてのお尋ねがありました。
 農産物の生産振興など様々な面の農業政策を推進するに当たって、行政と農協は連携して取り組んできました。一方で、農業者の高齢化、農業生産額の減少など、我が国の農業の活性化は待ったなしです。規制改革会議の議論を待つまでもなく、農協を含めた農政への危機感を強く抱いていたところです。
 このため、安倍内閣では、農政全般にわたって抜本的な改革に取り組んでまいりました。その中で、意欲ある担い手と地域農協が力を合わせ、創意工夫を発揮して、ブランド化や海外展開を図っていける体制に移行することにしましたが、これが今般の農協改革の主要な目的です。こうした改革を進めることにより、農家に一番近い地域農協が本来の役割を発揮し、地域農業、地域経済の発展のために大きな役割を果たしてもらいたいと考えています。
 過去の農政の認識についてお尋ねがありました。
 これまで歴代の内閣において、時々の課題に応じて、米の生産調整を始め様々な施策を展開してきましたが、農業生産額の減少と高齢化の進展、耕作放棄地の増加等の構造的な問題は顕在化したまま、我が国の農業の活性化は待ったなしの課題となっています。
 このため、安倍内閣では、農地集積バンクによる農地の集積、輸出、六次産業化の推進による付加価値の向上、四十年以上続いてきた米の生産調整の見直しなどの農政改革に力を注いできたところであります。
 さらに、今般、意欲ある農業の担い手が活躍しやすい環境となるよう、農協、農業委員会、農業生産法人の三つの改革を一体的に行います。特に農協改革については、意欲ある担い手と地域農協が力を合わせ、創意工夫を発揮して、ブランド化や海外展開など自由な経済活動を行うことにより、農業者の所得向上に全力投球できるようにします。
 政策を総動員して改革を進め、消費者ニーズに応えた強い農業をつくり上げていけば、農業の可能性は広がり、農家の所得も増えていくと確信しております。
 閣僚の任命責任に関する質問がありました。
 政治資金については、政治家としての責任を自覚し、国民に不信を持たれないよう、常に襟を正し、説明責任を果たしていかなければならないと考えております。
 西川大臣に関する報道については、既に西川大臣が説明しているとおり、政治資金規正法上は問題ないと承知しております。西川大臣には、農林漁業者の所得を向上させ、農山漁村のにぎわいを取り戻すという大目標に向かって、農協改革を始めとする諸課題について、引き続き職務に邁進してもらいたいと考えております。
 若者の投票率についてお尋ねがありました。
 総選挙が低投票率となったことは大変残念です。その原因は、様々な事情が影響したものと考えますが、特に若い世代については、投票しなかった理由に、そもそも選挙に関心がないことを挙げた割合が高いという調査結果もあり、大変憂慮すべきことであります。
 国民の政治への関心を高めることについては、与党も野党もありません。大切なことは、各政党や候補者が具体的な政策の違いを国民の前で明らかにし、正々堂々と建設的な議論を行うことであります。民主党の皆さんとも、国民が政治に引き付けられるような議論を是非ともさせていただきたいと考えております。
 若い世代への啓発についてお尋ねがありました。
 選挙権年齢引下げが実現し、若者の声が政治に反映されることは大変意義のあることであります。若い世代の投票率の向上に向けて最も重要なことは、国や社会の問題を自分の問題として捉え、考え行動していく主権者を育てることであると考えております。
 幅広い御提案もいただきましたが、政府として、まず、学校教育と選管、地域が連携し、あらゆる機会を通じて主権者教育を進めてまいります。
 平成二十七年度予算と財政健全化目標についてのお尋ねがありました。
 今般の予算編成においては、平成二十六年度補正予算について、景気の脆弱な部分に的を絞り、補正予算の繰越しによる平成二十七年度の基礎的財政収支への影響を最小限に抑えました。また、平成二十七年度予算について、社会保障の自然増を含め聖域なく見直し、歳出の徹底的な重点化、効率化を行ったところであります。こうした取組もあり、二〇一五年度の財政健全化目標の達成が見込めます。なお、平成二十七年度において補正予算を編成することは想定しておりません。
 また、二〇二〇年度の財政健全化目標についてもしっかりと堅持し、本年の夏までにその達成に向けた具体的な計画を策定いたします。その際、歳出改革については、歳出全般にわたり聖域なく徹底的な見直しを行ってまいります。
 社会保障関係費についてお尋ねがありました。
 世界に冠たる国民皆保険・皆年金を始めとする社会保障制度をしっかりと次世代に引き渡していくため、不断に改革を進めていくことが必要です。
 平成二十七年度予算では、消費税増収分を活用し、子ども・子育て支援新制度の予定どおりの施行など社会保障の充実を図る一方、制度を持続可能なものとしていくため、経営の実態を踏まえた介護報酬の改定、協会けんぽへの国庫補助の見直しなどの取組を行うこととしています。
 今後とも、いわゆる団塊の世代の全員が七十五歳以上になる二〇二五年を展望しつつ、社会保障制度改革推進会議で議論をいただきながら、改革を着実に進めていきたいと考えております。
 最近の為替の動向と財政再建の取組についてのお尋ねがありました。
 為替の水準等について言及することは差し控えますが、その上で、一般論として申し上げれば、為替相場の円安方向への動きは輸出企業や海外展開をしている事業者等にとってはプラスとなる一方で、円安方向への動きに伴う輸入価格の上昇は原材料価格の上昇等を通じてマイナスの影響を及ぼすなど、経済に対して様々な影響を与え、結果として財政に対しても一定の影響を与えるものと考えられます。
 いずれにしても、安倍内閣としては、我が国に対する信認を確保するため、経済再生と財政健全化の両立にしっかりと取り組んでまいります。
 地方への支援の手法についてお尋ねがありました。
 今般の地方創生は、活力ある日本社会を維持するため、あらゆる施策を総動員して、集中的に切れ目なく講じることにより、人口減少の克服と地域活性化を一体として実現することを目指すものであります。これまでの施策の検証も踏まえ、国の示す枠組みに一律に当てはめるという手法をやめ、自立を目指す地方の主体的な取組を国が強力に後押しすることとしております。
 また、府省ごとの縦割りを排し、ワンストップの施策推進を行うとともに、雇用、移住など全ての政策に具体的な成果目標を設定し、国、地方共に徹底した効果検証を行うこととしております。
 平成の市町村合併についてお尋ねがありました。
 平成の合併について、その効果や課題が指摘されておりますが、政府としては、これらも踏まえ、全国の市町村に対し助言や情報提供をするとともに、その実情の把握に努めてきたところです。
 合併した市町村においては、行財政の効率化が図られ住民サービスが向上したという効果も認められており、今後、更に一体感を強める努力が続けられ、名実共に一つの自治体となり、その地域が発展していくものと考えております。
 地方創生の目指す地域社会の姿についてお尋ねがありました。
 地方創生では、地方自らの主体的な取組が極めて重要です。地方の皆さんが地域の資源の活用について知恵を絞り、地方版総合戦略を策定し、実施していただくことにより、それぞれの地域に適した地方創生の実現を目指します。
 国は、やる気のある地方の創意工夫を全力で応援するという方針に基づき、地方の取組に対し、予算、税制、人材等、あらゆる方策を使って後押ししていくこととしており、総合戦略は地方への様々な支援メニューを取りまとめたものであります。国と地方が連携して取り組み、地方で暮らすことが人生を豊かにすると思える地域社会をつくってまいります。
 邦人殺害テロ事件への対応についてお尋ねがありました。
 政府としては、昨年八月十六日に湯川さんが、また、昨年十一月一日に後藤さんが行方不明となられたことを把握した直後から、官邸情報連絡室、外務省対策室、警察庁連絡室及びヨルダンの現地対策本部において、政治状況のいかんにかかわらず、常に人命第一の立場に立ち、お二人の安全のために何が最も効果的な方法かとの観点から、関係各国と緊密に連携し、あらゆるチャンネルを最大限に活用し、全力を尽くしてまいりました。
 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
   〔国務大臣菅義偉君登壇、拍手〕
○国務大臣(菅義偉君) 邦人殺害テロ事件に関する検証及びNSCについてお尋ねがありました。
 テロ対策は、不断の見直しが必要であると考えております。今回の事件については、先日立ち上げました検証委員会の下に、特定秘密に該当するものも含めて政府対応全般について検証することといたしております。また、有識者の方々からの御意見も聴取をし、最終的に検証結果を取りまとめたいと考えております。
 その検証結果をどのような形でお示しするかについては、インテリジェンスや諸外国との関係などを考慮しながらも、今後のテロ対策に資するように公表してまいります。
 NSC、アルジェリア事件の教訓も踏まえて、外交・安全保障政策に関し、縦割りを排し、関係省庁が収集した情報を集約をし、官邸主導の戦略的、機動的な対応を行うための司令塔として設立をされました。今般の事案においても、NSCは、これまでの教訓も踏まえ、その機能を十分に発揮し、有効に活用されたものと考えております。(拍手)
    ─────────────
○議長(山崎正昭君) 溝手顕正君。
   〔溝手顕正君登壇、拍手〕
○溝手顕正君 自由民主党の溝手顕正です。
 私は、参議院自民党を代表して、安倍総理大臣の施政方針演説について総理に質問をいたします。
 総理は、施政方針演説で、戦後以来の大改革を掲げられました。経済再生と財政再建、社会保障改革の同時達成、農政改革やオープンな世界を見据えた改革、エネルギー市場改革、地方創生。政府・与党が取り組むこれらの改革は、少子高齢化やグローバル化など、先進国を始めとする多くの国々が直面する課題への対応でもあります。
 是非、東京オリンピック・パラリンピックの開催される二〇二〇年に向け、震災からの復興と、戦後以来の大改革を成功させ、成熟国家としての歩みを進める我が国の姿を全世界に発信いたしましょう。このため、これらの諸改革に取り組む総理を我々自由民主党としてもしっかりお支えをしていく考えであります。
 さて、今年は戦後七十年という節目の年であります。さきの大戦とその後の七十年の経験を踏まえて、総理がどのような談話を出されるか、各国が注目しております。最大の関心事は謝罪の有無であると報道等では伝えられていますが、果たして本当にそうでありましょうか。戦後七十年間の歩みの中で平和主義を貫いてきたことを、具体例を示しながら、国民に、世界中の人々に伝えることが大切であります。我が国の戦争に対する姿勢は一貫しております。
 総理には、是非、さきの大戦への反省を明確に示した上で、対米追従とやゆされるような外交でもなく、アジアの中の日本として、戦争に向き合い、未来志向の談話を発表していただきたいと思いますが、戦後七十年を迎えるに当たっての総理の思いとはどんなものか、伺いたいと思います。
 次に、衆議院総選挙後の最初の通常国会でありますので、選挙の総括について伺いたいと思います。
 昨年十二月十四日の総選挙の結果、自民、公明の与党で三百二十六議席と、衆議院の三分の二を超える議席をいただきました。これまで政府・与党が進めてきたアベノミクスを始めとする各分野の政策に対し、国民の皆様の御支持をいただいた結果だと考えます。野党の一部には、選挙に大義がないなど、民主主義を理解しない暴論もありましたが、国民の皆様は冷静な判断をされたのだと思います。
 総理として、この選挙の結果についてどう総括されているのか、伺います。
 では、施政方針についての質問に移りたいと思います。
 まずは、世論調査でも常に最大の関心事項であります経済政策についてであります。
 昨日発表されたGDP速報では、消費税八%への引上げ後、初のプラス成長となりました。昨年十一月、消費税の一〇%への引上げを延期するという総理の決断も、景気回復の追い風になることと思います。しかし一方、景気の行方を左右する個人消費の伸びにはまだ力強さが見られません。一〇%への引上げ延期が経済にどれほどのプラスの効果があるのか、また個人消費の今後の予測について、政府の分析をお聞かせください。
 アベノミクスを成功させるためには、引き続きプライマリーバランスの黒字化目標達成に向けた歩みを着実に進めていただきたいと考えます。その際には、単に目標実現に向けた財政指標の道筋を示すだけでなく、それを担保するための具体的な方策を提示することが極めて重要になります。また、二十八年度予算編成に円滑につなげるためには、夏までのできるだけ早い段階でこうした計画を示しておくことも必要であります。
 総理は、新たな財政健全化計画についてどのようなものを策定しようとお考えでしょうか。また、その時期としてはいつ頃を想定しておられるのでしょうか。財政健全化に向けた総理の御決意を伺います。
 次に、農林水産業であります。
 農林水産業は、多くの地域において基幹産業になっています。まさに、農は国の本という言葉のとおりです。地方経済の活性化のためには、農林水産業の強化が不可欠であります。農地中間管理機構による農地集積、六次産業化、輸出促進策など、地域に合わせた施策を進める必要があります。
 農協改革については、先日、全中の在り方を見直す改革案がまとまりました。六十年ぶりとなる大きな改革であります。総理も施政方針で言われたように、強い農業をつくり、農家の所得を増やすための改革ですから、その成果をしっかりと出していくことが肝腎です。
 是非、総理自らのお言葉で、日本の農業をどのように改革していくのか、そして、その改革により、農業、農村の未来をどのように切り開いていくのかについて、丁寧に御説明いただきたいと思います。
 同じくTPPについても、関係者の納得が得られるように慎重に進めていく必要があります。
 我々は、従来から重要五項目の関税を撤廃しないよう求めてきました。現在、日米協議が進展していると報道されていますが、合意を急ぐ余り、我が国にとって不利な条件を安易にのむことがあってはなりません。しっかりと国益を守っていただきたいと思います。総理のTPPに対する交渉姿勢を伺います。
 次に、労働規制改革であります。
 今国会には、昨年廃案となった労働者派遣法の改正案や労働時間の規制改革などの法案が提出される予定です。労働規制の改革については、国民の間に誤解や不安もあるため、丁寧に説明して理解を求める必要があると考えます。特に、若い人の長時間労働や低賃金労働に対する防止策もセットで示し理解を求めるべきだと考えますが、いかがでしょうか、お伺いいたします。
 さて、世界を見渡せば、経済の先行きは順風満帆とはいきません。特にヨーロッパでは、ギリシャで緊縮財政に反対する新政権が誕生したことが大きな波乱要因となっています。また、中国は、成長率の低下や不動産の値下がりなど、景気減速の傾向が見えております。ロシアは、言うまでもなく原油価格の低下で苦しい状態です。
 このように、世界経済には懸念材料も多々ありますが、我が国としては、これらをいかに乗り越えて成長を続けていけるのか、これから正念場を迎えると言えましょう。
 先週、トルコで開催されたG20では、日本経済はユーロ圏と並んで回復が緩慢だと指摘されました。総理として、世界の経済情勢と我が国の取るべき道をどうお考えか、伺いたいと思います。
 次に、社会保障、医療について伺います。
 将来にわたって持続可能で誰もが安心できる社会保障、医療の提供は、少子高齢社会を迎えた我が国にとって最大の政治課題とも言えます。
 昨年の消費税引上げ延期は、先ほども申し上げたとおり、景気対策の観点から必要であったと考えます。しかし、引上げ分は全て社会保障に使うという約束でありましたので、延期によって社会保障改革に影響が出ることは避けられません。
 社会保障改革への影響について、何が予定どおり実施できて、何ができないかを明確にし、国民の皆さんの不安を取り除く必要があると考えます。政府の対応を伺います。
 社会保障の中でも、特に年金制度に関しては、若い人を中心に将来への不安が払拭できていません。年金財政の更なる健全化と透明化が必要と考えます。
 政府は、今年四月から、マクロ経済スライドを初めて適用します。反発もある中で、年金の将来を考えた勇気ある決断であり、高く評価したいと思います。今後、デフレの場合、マクロ経済スライドをどうするのか、高所得者への年金課税の在り方をどうするのかなど、更なる課題もあります。安心で持続可能な年金制度の確立に向けてどのように取り組んでいくお考えなのか、伺います。
 医療費の増大は、先進国に共通の課題であります。しかし、我が国は、医療費の中で薬剤費の割合が多いことが他国と異なる特徴であります。医療費に占める薬剤費の割合は、欧米では一割台でありますが、我が国では二五%前後だといいます。
 中でも、大きな利益の出る新薬は、外資系の製薬企業が高いシェアを占めているというように伺っております。例えば、一定の条件を満たした新薬の薬価を加算する新薬創出加算の対象は、上位を外資系がほぼ独占をいたしております。
 国内企業の競争力が弱い原因は、規模が小さく、数が多過ぎるためだとも指摘されております。国内製薬企業の統合を更に進め、競争力、コスト削減を推進すべきであります。以前、菅官房長官もそのような趣旨の発言をされていますが、御見解を伺います。
 また、iPS細胞に代表される再生医療も国際競争の激しい分野であります。将来、最先端の医療を受けるために他国に特許料や使用料を払うといった事態にならないよう、国としてしっかり支援する必要があると考えます。具体策をお聞かせください。
 次に、防災、国土強靱化について伺います。
 最近、管理者不明のインフラが各地で見付かっています。例えば、高速道路をまたぐ跨道橋のうち、台帳に載っていない橋が多数あるとのことであります。全国の跨道橋の七%は、できてから一度も点検されていないという恐ろしい事態も明らかになっています。
 もし事故が起こっても誰の責任か分からない、こんな事態があってはいけません。少なくとも、誰も管理しないインフラがなくなるよう、全国的な調査を徹底して行い、保守管理に漏れがないようにすべきです。政府の対応方針について伺います。
 次に、都市型災害への対応です。
 本来、都市というのは、比較的安全だから人が集まって住み始めた場所です。京都、大阪、名古屋など、昔の大都市は風水に基づいて場所を選び、町がつくられました。東京はただの荒れ地だったそうですが、徳川幕府が長い時間を掛けて立派な都市をつくりました。
 それがいつの間にか都市ならではの災害を生むようになってしまったのですから、これは人災と言うほかはありません。豪雨による地下街の水没、地震による埋立地の液状化、そして山際ぎりぎりまで宅地を開発した結果、土砂災害も頻発しております。昨年の私の地元広島県で起きた土砂災害は、皆様の記憶にも新しいことです。
 こうした大災害でなくても、雪が降ると交通が乱れ、雨が降ると冠水するのは日常茶飯事であります。都市災害の対策については、住宅、土木、交通など個別の観点だけではなく、都市全体を俯瞰した総合的な観点から取り組むべきだと考えます。政府の取組をお聞かせください。
 今年十二月に国連気候変動枠組条約の第二十一回締約国会議がフランスのパリで開催されます。この会議では、二〇二〇年以降の世界の気候変動・温暖化対策の大枠が決まる予定です。
 福島原発事故以来、我が国の温室効果ガスの削減目標は不透明なままです。世界が納得する削減目標を打ち出し、COP21に明確な態度で臨む必要があります。そのためにも原発の再稼働は避けて通れません。電力のほとんどを火力に依存する現状では、温室効果ガスの削減には限界があります。
 これまで、川内原発一、二号機と高浜原発三、四号機が安全審査に合格しています。実際の再稼働は来年度になると伺っていますが、これらの原発を始め、今後の再稼働に向けた政府の方針を伺います。
 昨年十二月、トヨタが世界に先駆けて燃料電池車「ミライ」を発売し、大きな話題となりました。走る際にCO2を一切出さない究極のエコカーと言われる燃料電池車ですが、普及に向けた課題も多いと聞きます。
 特に、燃料を補給する水素ステーションが普及しなければ、日常生活に使える乗り物にはなりません。エネルギー基本計画では、二〇一五年内に水素ステーションを百か所程度整備するという目標を立てていますが、まだ半分にも達していない状況です。
 ここで政府が水素ステーションの普及を後押ししなければ、他の自動車メーカーの参入が難しくなります。燃料電池車は本当に未来の車のままで終わってしまいます。政府の目指す水素社会の実現も幻となりかねません。水素ステーションの普及目標を達成するための支援策を伺います。
 最近の原油価格の下落は、エネルギー輸入国である我が国にとって、原油安は良いニュースです。しかしながら、我が国はその恩恵を実際どの程度受けられているのでしょうか。世界の原油相場は、昨年夏の百ドル超から、およそ半分になりました。原油安のメリットが、ガソリン価格や電気料金など我々の生活に正しく反映されなければなりません。
 一方で、世界を見ると、原油安によって利益を受ける国や企業もあれば、不利益を受ける国や企業もあります。原油が余りにも安いと世界経済にとってリスク要因にもなります。
 こういったことも踏まえ、昨今の急激な原油安のメリットを最大限生かすとともに、リスクを最小限にとどめるため、政府が取るべき方策について伺います。
 次に、外交・安全保障について伺います。
 冒頭にも触れましたように、今年は戦後七十年という節目ですので、良くも悪くも我が国と周辺国の外交関係に注目が集まります。領土、領海への野心を隠さない中国、まだ首脳会談を行っていない韓国、原油価格の下落で経済的に苦しいロシア、拉致問題の再調査を約束しながら進展がない北朝鮮など、様々な課題がある中、これら周辺国との外交をどう進めていくのか、お考えをお聞かせいただきたい、基本方針について伺います。
 シリアで起きた湯川遥菜さん、後藤健二さんの拘束・殺害事件は、我が国の外交・安全保障や危機管理の在り方に大きな課題を投げかけました。我が国には何ができて何ができないのか、あるいはまた、今後何ができるようにするべきなのか、事件の教訓と、今後我が国が取るべき方策についてお考えを伺います。
 また、特に、海外において日本人が拘束された場合に自衛隊が救出できるのかという点は、国民的にも大きな関心事項だと思います。人質の救出は、憲法が禁じる国際紛争を解決するための武力行使には当たらないはずです。自衛隊が単独で動く以外にも、現地政府と共同で、あるいは米軍と共同など様々な状況が考えられます。政府としてはどのように検討するか、お伺いをいたします。
 最後に申し上げたいと思います。
 総理は、来年夏の参議院選挙後に憲法改正の発議と国民投票を行いたいという意向を表明されています。そのためには、参議院選挙までに国民の皆様の理解を得ておく必要があります。
 どの項目をどう改正すべきか、我々も憲法審査会などで議論を深めていきたいと考えます。憲法を改正する最終的な権限は、政府でも国会でもなく、国民にあります。国民的な議論を喚起することも我々の役割だと考えます。
 我が国の憲法がどうあるべきか、政治家や国民が大々的に議論するのは、大日本帝国憲法の制定時と日本国憲法の制定時に続いて、史上三回目となります。まさに歴史的な議論になるわけでありますから、後世に恥ずかしくない堂々とした議論をしたいものであります。
 総理は、施政方針で、知と行は二つにして一つという吉田松陰の言葉を引かれましたが、彼はこうも言っております。国家とともにという志がないならば、人ではないと。これは国民全てに当てはまる言葉ですが、最もかみしめなくてはならないのは、我々政治家でありましょう。
 議場においでの皆さん、国民の代表として、国家のために何ができるのか、国家のためにどんな憲法が必要か、真剣に考え、議論しようではありませんか。私は、このことを皆様に呼びかけまして、質問を終わりたいと思います。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 戦後七十年談話についてお尋ねがありました。
 安倍政権としては、戦後五十年の村山談話、戦後六十年の小泉談話を含め、歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでおり、今後も引き継いでいく考えであります。戦後七十年の談話は、それを前提として作成するものであります。
 談話の内容については、さきの大戦への反省、戦後の平和国家としての歩み、今後、日本としてアジア太平洋地域や世界のために更にどのような貢献を果たしていくのか、次の八十年、九十年、百年に向けて日本はどのような国になっていくのかについて、世界に発信できるようなものを英知を結集して考え、新たな談話に書き込んでいく考えであります。
 まずは、有識者会議を早期に立ち上げ、二十一世紀の世界の在り方、その中で日本が果たすべき役割等について大いに議論していただき、政府として検討していきたいと考えております。
 さきの総選挙をどう総括するかについてお尋ねがありました。
 さきの総選挙において、私たちは、この道しかないと訴えてまいりました。そして、再び連立与党で三分の二を上回る議席をいただけたことは、引き続きこの道を真っすぐに進んでいけと国民の皆様から力強く背中を押していただけたものと考えております。信任という大きな力を得て、選挙で国民の皆様にお約束した政策を一つ一つ確実に実現してまいります。国民の負託に応えるため、全力を尽くしてまいる所存でございます。
 同時に、三分の二という議席の重さをかみしめ、今後、国民から、より一層厳しい目線が私たちに注がれていることを強く意識しなければなりません。私たちが数におごり、謙虚さを失うことがあれば、国民の支持は一瞬にして失われてしまうでしょう。これまで以上に緊張感を持ち、政府・与党が一体となり政権運営に当たってまいる決意であります。
 消費税率引上げ延期と個人消費の予測についてのお尋ねがありました。
 三本の矢の政策により、経済の好循環が確実に生まれ始めています。
 他方、昨年四月の消費税率八%への引上げ等を背景に、個人消費等に弱さが見られ、実質GDP成長率は、昨年四―六月期から二四半期連続でマイナスとなりました。こうした状況も踏まえ、アベノミクスの成功を確かなものとするため、消費税率一〇%への引上げを十八か月延期することとしました。
 昨日公表された昨年十―十二月期のGDP速報では、三四半期ぶりに実質GDPが前期比プラス成長となり、二四半期連続で個人消費が前期比プラスとなるなど、前向きな動きが見られ始めています。
 また、今月閣議決定した政府経済見通しにおいては、平成二十七年度の我が国経済は、堅調な民需に支えられた景気回復が見込まれ、実質GDP成長率は一・五%程度、個人消費は二%程度の増加を見込んでおります。
 平成二十九年四月の一〇%への引上げを確実に実施するため、経済運営に万全を期し、経済再生と財政健全化の両立を目指してまいります。
 財政健全化への決意についてお尋ねがありました。
 安倍内閣としては、経済再生と財政健全化の両立を目指しております。二〇二〇年度の財政健全化目標はしっかりと堅持し、その目標達成に向け、デフレから脱却し、経済再生により税収を増やす、無駄削減など徹底した行財政改革もしっかりやるなど、歳出歳入両面にわたり取り組んでまいります。社会保障についても、効率化、合理化や重点化を進めてまいります。本年夏までに目標達成に向けた具体的な計画を策定いたします。
 農業改革についてお尋ねがありました。
 農業は、日本の美しいふるさとを守ってきた国の基であり、一方で、我が国の農業の活性化は待ったなしです。農業の成長産業化を図るため、安倍内閣では、農地集積バンクの創設、輸出、六次産業化の推進、米の生産調整の見直しなど、農政改革に力を注いできました。
 さらに、今般、意欲ある農業の担い手が活躍しやすい環境となるよう、農協、農業委員会、農業生産法人の三つの改革を一体的に行います。特に農協改革については、意欲ある担い手と地域農協が力を合わせ、創意工夫を発揮して、ブランド化や海外展開など自由な経済活動を行うことにより、農業者の所得向上に全力投球できるようにします。
 こうした改革を進め、消費者ニーズに応えた強い農業をつくり上げていけば、農業の所得も増えていきます。若者が自らの情熱で新たな地平を切り開く、強い農業と美しく活力ある農村を実現できると確信しております。
 TPP交渉についてお尋ねがありました。
 日米協議については、いまだ多くの課題が残っており、現在、まさに着地点を探っているところであります。政府としては、守るべきは守り、攻めるべきは攻めていくことによって、国益にかなう最善の道を追求し、TPPの早期妥結に向け、最大限努力してまいります。
 労働規制の改革についてお尋ねがありました。
 政府が検討を進めている労働時間制度の見直しは、ワーク・ライフ・バランスの観点から、働き過ぎを是正するとともに、多様で柔軟な働き方を進めるものであります。若い人を含め、働き過ぎの是正を図るため、企業に対し、働く人の意見を聞いて休暇を指定することの義務付けや、中小企業における時間外労働への割増し賃金率の引上げなどを検討しています。
 また、若者が社会に出て職に就く際、自らにふさわしい仕事を選べるようにするため、新たな法案の検討を進めています。
 また、提出を予定している労働者派遣法改正案においては、正社員を希望する派遣労働者について正社員への道が開けるようにするとともに、自らの働き方として派遣を積極的に選択している方については待遇の改善を図ることとしています。
 安倍内閣としては、こうした雇用制度改革の意義を国民にしっかり説明するとともに、あらゆる人が生きがいを持って活躍の場を見出すことのできる社会を目指してまいります。
 世界の経済情勢と我が国の取るべき道についてお尋ねがありました。
 世界経済は、中国や一部の新興国に弱さが見られるものの、アメリカの回復が続いていることなどから、全体としては緩やかに回復していると見られます。
 こうした中、安倍内閣においては、デフレ脱却を目指し、三本の矢の政策を進めることにより、経済の好循環が確実に生まれ始めています。昨日公表された昨年十―十二月期のGDP速報でも、三四半期ぶりに実質GDPが前期比プラス成長となっています。
 先週のG20財務大臣・中央銀行総裁会議のコミュニケにおいては、我が国経済について、回復が緩慢であるとされている一方、回復は続いているとの記載がなされたものと承知しています。また、同会議においては、各国がそれぞれの成長戦略を実施することとされたものと承知しています。
 経済の好循環を確かなものとし、景気回復の実感を全国津々浦々に届けるため、まずは、平成二十六年度補正予算を迅速かつ着実に実行してまいります。そして、農業、雇用、医療、エネルギーといった分野で大胆な規制改革を断行し、成長戦略をスピード感を持って確実に実行、実現してまいります。
 社会保障改革についてお尋ねがありました。
 消費税率の引上げは、社会保障制度をしっかりと次世代に引き渡していくためのものであり、その増収分は全額、社会保障の充実、安定化に充てられ、国民に給付されます。平成二十七年度予算案では、消費税率一〇%への引上げは延期しましたが、施策の優先順位を付け、四月から、子ども・子育て支援新制度の予定どおりの実施、国民健康保険の財政基盤の強化、地域包括ケアシステムの構築に向けた更なる取組や認知症施策の推進、難病対策などを行うこととしております。
 一方、限られた財源の中でこれらの対応を行うため、低所得者への福祉的給付など年金関係の充実については、法律の規定どおり、消費税率一〇%への引上げ時に実施することに加え、低所得者の介護保険料の軽減について二段階に分けて実施することとしました。
 受益と負担の均衡が取れた持続可能な社会保障制度を確立するため、改革の考え方や内容がしっかり国民の皆様に伝わるよう努めながら、社会保障改革プログラム法に沿って改革を着実に進めてまいります。
 年金制度についてお尋ねがありました。
 昨年行った公的年金の財政検証においては、日本経済が再生し、女性や高齢者の労働市場への参加が進めば、現行の年金制度の下、将来的に所得代替率五〇%を確保できることが確認されました。このため、高齢者や女性が安心して働ける環境の整備を進め、持続的な成長を目指してまいります。
 また、年金制度に関し、社会保障改革プログラム法で明示された検討課題について、制度の持続可能性とセーフティーネット機能の強化などの観点を踏まえ、検討を進めてまいります。
 国内製薬企業の競争力強化等についてのお尋ねがありました。
 医薬品産業は、国民の健康、医療の向上に寄与するとともに、高付加価値型、知識集約型産業であり、今後の経済成長の中核となる重要な産業と期待しています。
 政府としては、研究機関等の優れた研究成果を確実に実用化につなげていくため、臨床研究、治験環境の整備、承認審査の迅速化などの取組を行っていきます。企業においては、革新的医薬品を提供できるよう、国際競争力の強化に向けて、産業再編を含め、的確な事業展開を図っていただきたいと考えています。
 再生医療についてのお尋ねがありました。
 iPS細胞を始めとする再生医療の実用化については、日本再興戦略等に位置付け、政府を挙げて推進してきたところであり、昨年九月、世界で初めてiPS細胞を用いた患者への移植手術が行われるなど、大きな成果を上げてまいりました。
 政府としては、世界に先駆けていち早く再生医療を提供できるよう、再生医療を行う医療機関から企業に対し細胞培養加工の委託を可能にするなど環境整備を図るとともに、関係省庁が連携し、基礎研究から臨床段階まで切れ目なく一貫した研究開発助成を行うなど、再生医療の実用化に向けて全力で取り組んでまいります。
 インフラの点検、管理についてお尋ねがありました。
 インフラについては、一部に、建設年度が古いことなどにより台帳への記載が不十分なものや、人員や予算面の制約から点検が十分に行われていないものなどがあると認識しています。
 政府としては、平成二十五年十一月に策定したインフラ長寿命化基本計画に基づき、管理者ごとに行動計画を策定し台帳の整備を進めるとともに、例えば道路橋については五年に一度の定期点検をルール化するなどの取組を進めております。あわせて、地方自治体等が適切に点検等を実施できるよう、防災・安全交付金による財政支援を行うことなどにより、インフラの点検、管理に万全を期してまいります。
 都市型災害への対応についてのお尋ねがありました。
 我が国は、場所を問わず様々な災害が発生しやすい環境にありますが、特に人口、社会インフラが高度に集積する都市部においては、それに起因して被害が甚大となるおそれがあります。そのため、都市部における施設の耐震化、地下調整池の整備、地盤改良等の液状化対策など災害に強い社会インフラの整備を進めるとともに、企業等の事業継続に係る取組や一時滞在施設の確保等の帰宅困難者対策の推進などに努めているところです。
 今後も、これらのハードやソフトの対策を適切に組み合わせた総合的な防災対策を政府一丸となって取り組んでまいります。
 原発再稼働についてお尋ねがありました。
 川内原発一、二号機及び高浜原発三、四号機を含め、原子力規制委員会が世界で最も厳しいレベルの新規制基準に適合すると認めた原発については、地元の理解を得ながら再稼働を進めてまいります。
 水素ステーションの普及に向けた支援策についてのお尋ねがありました。
 燃料電池自動車の普及には水素ステーションが不可欠です。水素ステーションの円滑な普及には規制改革や技術開発が重要です。私は各省庁にまたがる規制を一挙に改革し、昨年、世界に先駆けて商業用の水素ステーションが実現しました。
 今後とも、規制改革会議も活用し、セルフスタンドの実現など更なる規制改革や技術開発に着実に取り組みます。加えて、導入期のコスト高に対応するため、今回の補正予算も活用し、財政的な支援を強力に進めてまいります。
 原油安に対する方策についてのお尋ねがありました。
 溝手会長の御指摘のとおり、原油安のメリットが国内エネルギー価格に正確に反映されることが重要であると考えます。国内のガソリン小売価格は昨年七月から下落していますが、その下落幅は、その間の輸入原油価格の下落幅におおむね相当しています。
 電気料金についても、燃料費調整制度を通じて、一部の電力会社では原料価格の下落を反映して既に下がり始めています。今後も適切に反映されるよう注視してまいります。電気料金の値上げ申請に対しては、原油価格の下落も踏まえ、適切な原価となっているか、厳正に審査してまいります。
 他方、この原油価格の下落が、資源開発投資の抑制等を通じて、再びエネルギー需給が逼迫する可能性を十分に考慮する必要があります。このため、省エネルギー、再生可能エネルギーの推進、資源権益の確保等のエネルギー対策に決して手綱を緩めることなく取り組んでまいります。
 近隣諸国との外交についてお尋ねがありました。
 中国とは、北京での日中首脳会談で戦略的互恵関係の原則を確認し、関係改善に向けて大きな一歩を踏み出しました。今後、様々なレベルで対話を深めながら、大局的な観点から、安定的な友好関係を発展させ、国際社会の期待に応えてまいります。
 韓国は、最も重要な隣国です。日韓国交正常化五十周年を迎え、関係改善に向けて話合いを積み重ねてまいります。日韓間には難しい問題がありますが、だからこそ、前提条件を付けずに首脳レベルでも率直に話し合うべきです。私の対話のドアは常にオープンであります。
 ロシアとは、プーチン大統領の訪日を本年の適切な時期に実現したいと考えております。これまで十回にわたり行ってきた首脳会談の積み重ねを基礎に、幅広い分野で協力を進めながら、平和条約の締結に向けて粘り強く交渉を続けてまいります。
 北朝鮮には、拉致、核、ミサイルの諸懸案の包括的な解決を求めます。最重要課題である拉致問題については、引き続き北朝鮮に対して、迅速に調査を行い、速やかにかつ正直に結果を日本に通報するよう強く求めていく考えであります。全ての拉致被害者の帰国に向けて、対話と圧力、行動対行動の原則を貫き、全力を尽くしてまいります。
 邦人殺害テロ事件の教訓と、今後取るべき方策についてのお尋ねがありました。
 テロ対策については不断の見直しが必要です。今回の事案に対する対応については、先日立ち上げた検証委員会の下、現在、政府部内において検証作業を進めているところであります。有識者の方々からの御意見も聴取して、最終的に検証結果を取りまとめたいと考えております。この検証作業を通じて、国際テロ事案に対する在留邦人の保護や今後のテロ対策の在り方についてしっかり検討してまいります。
 自衛隊による在外邦人の救出についてお尋ねがありました。
 今や、海外に住む日本人は百五十万人、さらに年間千八百万人の日本人が海外に出かけていく時代です。これら邦人が危機にさらされたとき、その救出について対応できるようにすることは国として当然の責務です。法制度の不備により邦人の命を守れないということはあってはなりません。このため、政府としては、領域国の受入れ同意があることを前提に、自衛隊による邦人救出を行い得るよう法整備を行ってまいります。
 もとより、このような自衛隊の活動は武力の行使を伴うものではなく、あくまでも警察的な活動の範囲内で行うものです。実際の救出活動に際しては、領域国政府との協力は必要不可欠だと考えています。米国を始めとする諸外国との協力も重要な課題であり、円滑かつ効果的な活動のための実施体制についても政府全体で検討を行ってまいります。
 以上、溝手顕正議員の質問にお答えいたしました。(拍手)
○議長(山崎正昭君) 質疑はなおございますが、これを次会に譲りたいと存じます。御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(山崎正昭君) 御異議ないと認めます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午前十一時四十三分散会